○木内国務
大臣 浜田委員に申し上げたいと思います。
いろいろ御心配をかけましてまことに恐縮でございます。実はこの点について五分ばかり時間を拝借して申し上げたいと思うのですが、この
PCBが問題になりましたのは、御案内のようにカネミ油の中に
熱媒体に使っておったものが流れて入った。しかも濃度の高いものが短時間に人体に入った。そこでここに急性の汚染を生じたわけであります。ところがこの急性の汚染あるいは亜急性の汚染というものは、わりあい濃度が濃いし、比較的これはわかりやすい、それで非常に問題になったのですが、
政府といたしましても、この急性の問題に対する
対策はもちろんでありますが、さらにこれら濃度の薄いものが長期間にわたって食品のうちに蓄積し、あるいはひいてはこれが人体のほうに蓄積されてくるということになればこれは重大な問題になるからというので、最近は非常にやかましくなってきましたが、一年ばかり前はこれほどでもなかったのです。去年のちょうどいまごろ、これは
政府で何とかやらなければならぬというのでこの問題を取り上げたのですよ。ところが当時はまだ
環境庁がありませんし、
中心になるのは一体どこだということで
科学技術庁が
中心になりまして、
厚生省、あるいは農林省、あるいは労働省、これらの
関係各省にお集まり願って
研究をし、
相談を始めたのですが、御案内のようにこの
PCBは産業の面においては非常に役に立つ重要なものである。と同時に毒性が非常に強い。にもかかわらず、この問題については今日まで世界的にもあまり問題になっておらなかった。イギリスでもアメリカでもスウェーデンでもどこでも、みなこれを産業の面において非常に使っておる。にもかかわらず、この毒性というものに対する
対策というものはあまり世界の各国で論議されておらなかった。さっき
厚生大臣のお話もあったように、文献を集めようと思ってこちらの科学技術情報センターなどをわずらわしてやってみても、これというものはないのですよ。そこで
関係各省集まっていろいろ
相談した結果、まず一番困ったのは、いま申しました、カネミ油のような短期間の急性あるいは亜急性のものならわかるけれ
ども、濃度の低いもの、しかもこれはDDTあるいはBHCと同じような有機塩素系のものである、調べた結果出てくるけれ
ども、大体未熟な検査でやるとこれはことごとくDDTのあれか、BHCのあれか、みんな一緒になって出てくるので、高いといっても実は
PCBであるかDDTであるかBHCであるか、みんなこんがらがって出てくるので、これは実際、そう申しては失礼ですけれ
ども、未熟な
分析家が
分析した結果というものはわからないのですよ。
PCBだけでなくほかのものもみんな一緒になっておる。そこで濃度は低い。そういうあいまいなみなこんがらがってしまうものがある。これではいかぬ。これは
分析技術を確立しなければならぬというので、
関係各省が集まって、
研究の第一項目としてこれをあげたわけです。
それはそれとして、しからば汚染の実態はどうなっておるか。短期間に来た急性のものはわかるようですが、薄いものが出てきている。それを、一体汚染の実態はどうなっておるか。しかも汚染のメカニズムすなわちその経路ですね。これが一体どうなってここまで来ているのかということはわからぬですから、これを究明しなければ、
対策といったところで、
分析の技術も確立していない、汚染の実態またそのメカニズムもわからぬということではいかぬので、それを
研究の第二の項目にした。
それから第三の項目は、薄いものは慢性的に来る。これは一体どういうふうに来るのだろうか。それで動物実験などをしなければならぬ、そういう
研究もやる。
この三つの項目をあげて
研究することにしたのですが、
関係各省で集まったところ、予算がないぞ、こう言う。予算がなくたってこれは大事な仕事だからやらなければいかぬということで、それでは
科学技術庁は
研究調整費から出そうというので三千七百余万円というものを出して、この
研究に
厚生省あるいは
水産庁、とにかくやってもらった。ところが、そこまで来ましたところが、当時は
環境庁がなかったけれ
ども、今度は
環境庁さんができて第一線に出てこられた。
環境庁を
中心にして今日その
研究を進めておるわけです。その実態を把握した後にこれに対する
対策を講じなければならぬというのが今日の
現状です。いま申し上げた三つの項目だけでなく、また
分析の
方法とか——いま私のほうでは非常に有名な本間博士が
分析の権威者としてやっておられますけれ
ども、それも
方法がいろいろあるけれ
ども、一台
分析機を買うのに五千万も六千万もかかるというのでは、どこでもここでもやるというわけにいかぬから、
分析方法を簡単にしなければならぬという問題もありますし、それからいま
浜田さんがお話しになった、この問題が非常に大事だと思うのですが、もう出ているものはどうするか。将来新しく出るものは、
通産省の御心配によって、これは非常に産業の面において有用なものだが毒性がある、これを消すことはできない、このままにしておいてはたいへんだというので、製造を禁止されたということは非常に大きな第一歩だと思うのですよ。
鐘淵化学それから
三菱モンサント、これはこの製造を禁止して、もとを絶ってしまったのだから、あとはいま出ているものをどうするかという問題になる。そうなってくると、この
処理の問題が出てくる。そこで、いまお話しになった放射能でやること、これは非常にいいから、もちろん私
どもで放医研に
研究させます。また、私
どもの理化学
研究所では、それを酵素によって微生物によってなくしてしまおう。ところが、これは御案内のように、日本
全国の海まで散らばっているものを放射能でやるといったってえらいことになってしまう。今度は放射能の扱い方というものが問題になってくるし、
全国の海水その他の中に入っているものを、放射能でやる、酵素でやるといったって、なかなか実際できませんけれ
ども、私
どもの理化学
研究所では酵素、微生物によってやる
方法、その他どうしたらこれを防ぐことができるか、あるいはこれの代替物をどうするか。産業で非常に重要な世界各国であらゆる方面に使っておるものを、これをやめてしまうと、たとえば新幹線な
ども動かなくなってしまう、ほかのほうにもいろいろ影響があるので、それをどうするかという問題と、それからすでに出ているものをどうするかという問題、これは全力をあげてやるつもりでおるのです。ところが、私
どもは基礎科学ですけれ
ども、基礎科学のほうでいま申し上げたようなことをやりますが、同時に、これを行政面に
適用するというのは、
厚生省、
通産省あるいは魚の面では
水産庁、こういうことになっておりますので、私
どものほうは
環境庁さんがおできになるまでは世話役としてやっておりましたけれ
ども、いまは
環境庁さんができておりますので、ちょっと遠慮と言っては悪いけれ
ども、第一線は
環境庁でやる。私
どもが第二次的に——私のほうは三千七百余万円を出しましたが、
環境庁さんは今度は三億五千万という金をもって
対策を講ぜられることになったので、それにおまかせする。もしこれが足りないということになれば、私
どもは九億五千万の
研究調整費を持っておるから、この一部——これは
PCBだけに出すわけではありません、ほかの
研究も大事ですけれ
ども、でき得る限り応援し、足りなかったら大蔵
大臣に——大蔵
大臣はさいふを締めておるけれ
ども、大事な問題ですから、私は必ず必要な金は出してくれると思っております。そんなわけで、私
どもはいままで世話役をしておりましたが、
環境庁ができましたので、多少遠慮しながらできるだけのお手伝いをするつもりでおります。