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松本(十)
委員 必要があれば
調査団の派遣もひとつ考慮していただく、こういうふうに解して、
長官に対する質問は終わりたいと思いますが、最後に、少し時間をとりますが、
委員長にひとつ善処方をお願いしたいことがあるわけであります。
と申しますことは、去年の三月十六日ですか、当
委員会におきまして、群馬県の安中市における
カドミウム公害の問題が審議されたわけでありますが、その際に、参考人として出席されました
小林教授、先ほど
生野についてかなり断定的な発言をしておられます教授でございますが、その教授が、参考人として、われわれ同僚議員の質問に対しまして答えられました速記録を読んでみますと、「私は御承知のように
分析屋でして、病気の問題については触れてないわけです。」とか、あるいは「私は、
カドミウムにつきまして、もちろん医者でありませんから医学的なことはしろうとでございます」そういうことを言っておられながら、去る七日、一昨々日の当
委員会における発言、これは速記録でありませんから、私もその
内容、ニュアンスにあるいは聞き違いがあるかと思いますが、しかし、こういう趣旨の発言をその同じ
小林教授がやっておられるわけであります。「人体が
カドミウムに
汚染されてから
イタイイタイ病になるまでの症状は、一期(潜伏期)、二期(警戒期)、三期(疼痛期)、四期(骨格変形期)、五期(骨折期)の五段階に分けられるが、症状判定の一つのきめ手とされるエックス線写真では脱灰現象が進み、骨の三〇%以上が失われなければ異常があらわれない。一〇ないし二〇%の初期症状はエックス線写真に出ないが、写真に異常がないからといって、
イタイイタイ病でないとは言えない。厚生省は一期から三期までを単に
カドミウム中毒症と言い、四期以上の重症になって初めて
イタイイタイ病と呼んでいるが、最近は早期発見が進み、症状の軽いうちに見つかる人が多いため、レントゲン写真に異常があらわれないだけだ。
生野や安中の
患者にはたん白尿や骨の痛みがはっきり見られる。これは
カドミウム中毒症というよりも、
イタイイタイ病の初期症状というべきである。」こういうことをこの
委員会の席で答弁しておられるわけでありまして、一年前には「医学的なことは何も知らぬ。私は
分析だけだ。」こう言っておきながら、医学的なことを発言し、他の医者のことばを引用されたわけでありますが、これは問題ではないかと私は考えるわけであります。さらに、去年の蒸し返しになりますが、三月十六日の同じ発言におきまして、例の安中の女性の臓器の
カドミウム含有量を調べました際に、これまた同僚議員に対する答えでありますが、同僚議員の質問はこんなのです。「解剖のときには遺体の状況とか臓器の状況をあとの記録として残しておかれることは初歩的な常識であるというようなお話でございましたが、そういったときの写真をとっておられないかどうか、ちょっとお尋ねしたいと思います。」こういう質問に対しまして、
小林教授は、「実は私はこういう大きな問題になると初めから予想してなかったわけでして、もの好きな仕事のお手伝いというくらいの気持ちで実際やってみたところ、こういう大きな値が出たのでびっくりした。したがって、証拠写真をとるとかいうことはやっておりません。」こういう言い方をされておりますし、この
委員会で発言された速記録をあっちこっち読んでみましても、何となく、われわれしろうとから見ましても、はたしてこれで科学的な実証的なやり方をしておられるのかという感じがしないでもない。おられない方についてとやかく申し上げたくないわけでございますが、
クロスチェックすべきではないかということに対して、いや、そんなことやっておりません。私の
分析は信念を持ってやっておりますから結果は確かでございます、こういうことでございまして、何となくこの辺のところに、しろうとして釈然としないものが残るわけであります。
さらに、また、
萩野教授、私はお目にかかっておりませんので何とも申し上げられませんが、たまたま去年の夏ごろの「文藝春秋」ですか、ルポライターの田村洪氏が書いております。「
イタイイタイ病悲劇のかげに対立する三人の
公害告発者」「果して誰が真実を語っているのか?十年前、奇病の
原因解明に取組んだ
萩野昇、小林純、吉岡金市の三博士が「栄誉」の座をめぐって繰り拡げる宿命の対立」こういうことで、かなり長いレポートが出ております。これは
権威のあるものでないと言われればそれまでのことでありまして、私
どもそれほど申し上げませんが、私が受けておりますイメージからしますときに、
萩野医師がはたして臨床に徹しておられるお医者さんであるのか、私個人の感触から言えばやや疑問とせざるを得ない、こういうことでございまして、やはりこの辺で、どうも
カドミウムというものと
カドミウム中毒症というものとの相関
関係はありましょう。さらにまた、それから
イタイイタイ病に至るまでのつながり方につきまして、相関
関係、牽連
関係はあるのでありましょうが、はたして
因果関係ありと医学的にあるいは科学的にはっきりと言えるのかどうか、どうも私としては疑問が残るわけでありますし、おそらく同僚
委員の中にも同様の感触をこれまでの当
委員会におけるいろいろの審議の場を通じて感じておられる方が多いだろうと思うのでございまして、なかなか厚生省の中にもいろいろな
調査会があって、かつて
イタイイタイ病についてやってこられたようでございますが、この辺で当
委員会の
権威にかけましても、そういった詳しい方々を参考人として呼んでいただきまして、そして、いろいろ
質疑を重ねたがら、
結論は出ないでも、多数説のおもむくところはどこにあるのか、大かたの現在の科学なり医学なりの解明し得る限度におきまして、
イタイイタイ病あるいは
カドミウム中毒というものの実体というものはどうなのか、こういうことについてほどほどの
結論に近いものでも出せればありがたい、こういうことでございまして、そういう機会を持つことについて、
委員長において御善処願いたいと思うわけでございます。