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1972-03-10 第68回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月十日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 田中 武夫君    理事 八田 貞義君 理事 林  義郎君    理事 島本 虎三君 理事 岡本 富夫君    理事 西田 八郎君       伊東 正義君    久保田円次君       橋本龍太郎君    浜田 幸一君       松本 十郎君    村田敬次郎君       土井たか子君    三木 喜夫君       瀬野栄次郎君    米原  昶君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         中央公害審査委         員会委員長   小澤 文雄君         中央公害審査委         員会事務局長  川村 皓章君         土地調整委員会         事務局長    上原 達郎君         環境庁長官官房         長       城戸 謙次君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         厚生大臣官房審         議官      曾根田郁夫君         食糧庁次長   中村健次郎君         通商産業省公害         保安局長    久良知章悟君         自治大臣官房参         事官      立田 清士君  委員外出席者         環境庁企画調整         局公害保健課長 山本 宜正君         農林省農地局参         事官      住吉 勇三君         通商産業省公害         保安局参事官  森口 八郎君         通商産業省公害         保安局鉱山課長 蓼沼 美夫君     ————————————— 委員の異動 三月十日  辞任         補欠選任   土井たか子君     三木 喜夫君   古寺  宏君     瀬野栄次郎君 同日  辞任         補欠選任   三木 喜夫君     土井たか子君   瀬野栄次郎君     古寺  宏君     ————————————— 三月八日  狩猟者団体法制定に関する請願(宇都宮徳馬君  紹介)(第一二七二号)  同(金子岩三紹介)(第一二七三号)  同外三件(小金義照紹介)(第一二七四号)  同外六件(古屋亨紹介)(第一二七五号)  同外一件(山本幸一紹介)(第一二七六号)  同外四件(野田卯一紹介)(第一三三八号)  同(山崎平八郎紹介)(第一三三九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害等調整委員会設置法案内閣提出第六五号)  公害対策並びに環境保全に関する件(鉱山の公  害問題)      ————◇—————
  2. 田中武夫

  3. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいま議題となりました公害等調整委員会設置法案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  現在総理府に置かれている土地調整委員会中央公害審査委員会とを統合し、新たに国家行政組織法第三条の委員会として、公害等調整委員会設置し、現在の両委員会の職務、権限に加えて、公害紛争に関する裁定を行なわせようとするものであります。  公害問題は、申すまでもなく、現在緊急な解決を迫られている国民的課題でありますので、政府としては、従来から公害対策基本法の精神にのっとり、各般の施策を講じてきたところであります。公害紛争解決についても、現に公害紛争処理法に基づいて、和解の仲介、調停及び仲裁を行なう権限を持った中央公害審査委員会及び都道府県公害審査会等設置し、公害紛争の迅速かつ適正な解決のため努力を重ねているところであります。  しかしながら、現在の制度は、調停にしても、仲裁にしても、紛争当事者合意にその基礎を置いた解決方法でありますから、両当事者がその方向で誠意をもって努力する場合には、迅速に円満な解決が得られるという長所を持っておりますが、その反面、事件によっては、おのずからその解決に限界があることは御案内のとおりであります。  一方、最近における国民公害に対する関心の盛り上がりとともに、公害紛争の簡易、迅速な解決要望する声は、ますます高まってきております。  このような実情に対処するため、政府としては、公害紛争のもたらす社会性公共性のほか、因果関係究明の困難さ等公害紛争解決に固有の問題があることを考慮し、公害紛争処理制度充実、強化するための裁定制度について鋭意検討を重ねた結果、このたび成案を得た次第であります。  また、裁定制度を採用するにあたっては、かねてからの政府方針である行政機構簡素化能率化に資するため、土地調整委員会中央公害審査委員会とを統合して、新たに公害等調整委員会を設け、その機能の充実をはかることとしたものであります。  次に、法案内容について、その概要を御説明いたします。  公害等調整委員会は、国家行政組織法第三条第二項に基づき、総理府の外局として設置することとし、その所掌事務は、公害紛争処理法の定めるところにより調停仲裁及び裁定を行なうこと並びに鉱業等にかかる土地利用調整手続等に関する法律の定めるところにより鉱区禁止地域指定鉱業権の設定に関する不服の裁定等を行なうこと、その他これらの法律の施行に関する事務を処理することであります。  この委員会は、委員長及び委員六人で組織し、人格が高潔で識見の高い者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命することとしており、委員長及び委員は、独立してその職権を行なうこととしております。  また、新たに行なうこととなる裁定制度については、次のとおりであります。  裁定種類は、公害にかかる被害についての損害賠償責任を明らかにする責任裁定及び被害とその原因とされる行為との間の因果関係の有無を明らかにする原因裁定の二種類とし、申請については、それぞれその性格に応じて、責任裁定賠償を請求する者、原因裁定紛争当事者が申請することとしております。  裁定手続においては、当事者の立ち会いのもとに審問を行なうほか、職権証拠調べ及び事実の調査をすることもできることとしております。  責任裁定の効力については、裁定がされた後三十日以内に訴えの提起がなければ、当事者間に、裁定と同一の内容合意が成立したものとみなすこととしております。  また、原因裁定をしたときは、関係行政機関に通知するとともに、必要な意見を申し出ることにより、公害防止等に資することとしております。  以上が、この法律案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 田中武夫

    田中委員長 以上で提案理由説明は終わりました。  本案の質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  5. 田中武夫

    田中委員長 公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本十郎君。
  6. 松本十郎

    松本(十)委員 生野鉱山周辺におけるカドミウムによる環境汚染につきましては、政府としましても従来いろいろの対策を実施されてきたわけでありますし、また兵庫県におきましても土壌調査を行なったり、さらにまた相当な時間をかけましてかなり綿密な健康調査をやって、つい最近にその結果を発表したと聞いております。県の専門家からなるお医者さんを集めた委員会結論としては、その地区にはイタイイタイ病はない、こういう発表をしたわけでありますが、時をほとんど同じくいたしまして公明党さんが萩野医師あるいは岡山大学の小林教授、この二人に調査の依頼をいたしまして、イタイイタイ病初期患者が見つかった、こういうふうな発表をされまして、結果について正反対の診断結果が出てまいった、こういうことでございます。これを受けまして生野地区、またあそこから流れ出ます市川あるいは円山川流域地域住民としましては、まことに困惑したと申しますか戸惑いをし、不安感におびえているわけでありまして、国としてもこの現状にかんがみてしかるべき対策を早急にとっていただきたい、こういう意味で、私は地域住民の立場に立って質問なり要望なりをしてまいりたいと思います。  まず第一に、これまでこの生野地区カドミウム汚染につきまして、国が行なってまいりました対策と申しますか施策経緯、あるいはその概要、またその結果、把握されました実態の認識、実情、こういったものについてお答えをいただきたいと思います。
  7. 森口八郎

    森口説明員 お答え申し上げます。  生野鉱山につきましては、大阪鉱山保安監督部監督をいたしておるわけでございますが、カドミウムのことが昭和四十三年以来問題になりましたので、四十三年以来、特にカドミウム中心として鉱排水関係につきましては厳重な検査を実施してきたところであります。四十三年以降約二十回検査を実施いたしておりまして、検査のたびに環境改善に必要な工事指示をいたしてきております。  工事内容といたしましては、鉱水が流れ出ますところの沈でん池を十分な処理能力を持ちますように拡張をしろということ。それから、現在すでに採掘をいたしておりません休鉱がございますが、そこから鉱水等が直接川に流れ出ておりましたので、そういう汚濁水沈でん池に導けというような改善工事、あるいはすずの製錬等いたしておりますが、そのすずの製錬所の排水処理装置設置、それからカドミウムを除去いたしますために石灰中和をいたしておりますが、そういたしますと、PHに異常を来たしますので、PHを自動調整いたします装置設置というような必要な改善工事をそのつど実施いたしておりまして、現在におきまして、当鉱山から流れ出ます鉱水中におきますカドミウム十分排出基準も満たしておりますし、また環境基準も満たしておるというように報告を受けております。
  8. 松本十郎

    松本(十)委員 通産省としてのとられた措置は一応わかりますが、その前にその鉱山というのはかなり長い歴史を持っておるのですが、簡単でいいですからどういう経過をたどってきたか、現状はどうなのか、しかも近く休山する、こういううわさがあるわけですが、それはどういう理由なのか、その辺について簡単にお答え願いたいと思います。
  9. 森口八郎

    森口説明員 お答え申し上げます。  生野鉱山は、その歴史はきわめて古うございます。いまから千年以上も前の西暦八百七年ごろ、露頭が発見されたというように伝えられておりますが、戦国時代江戸時代と開発が進みまして、江戸時代は幕府の直轄明治時代政府直轄鉱山であったわけでございますが、二十八年三菱合資会社に払い下げられ、以後三菱系会社が継承して今日に至っておるというような状況になっております。  産出いたします鉱種といたしましては、当初は銀を中心といたしまして、これに金、銅を併産いたしておりましたが、その後選鉱法の進歩とともに、銅、鉛、亜鉛すず等も同時に併産をするというようになりまして、現在に至っております。  現在の鉱石量は約一万四千トン程度の鉱石採掘いたしておりまして、四百名の従業員がここで従事をいたしております。  鉱種といたしましては、先ほど申し上げましたように、銅、鉛、亜鉛すず、金銀若干というようなところが現在の鉱種でございます。  当鉱山は、製錬はすずの製錬のみを行ないまして、自余の鉱石につきましては、別途の製錬所に運びまして製錬をいたしておるというのが現状でございます。  以上のように、当鉱山歴史が非常に古うございますし、鉱脈はすでに尽きようといたしておるわけでございます。深部に至りますれば若干の鉱石はあるということは考えられるわけでございますが、深部採掘保安上非常に難点があるということで、三菱金属におきましては当鉱山は四十八年三月末をもって採掘は休止いたしたい。すずの製錬のみは自後引き続いて行なうという方針を表明いたしております。閉山にあたりましては、私ども当然今後鉱害が生じませんように、鉱山鉱害防止上必要な措置をいたしますように指示をいたしております。  なお、鉱山側におきましては、すず製錬を実施いたしましてからも、採掘部門の残りの鉱害防止施設の維持をはかりますことはもちろん、必要な管理人等は当然残すというようなことを明言いたしております。
  10. 松本十郎

    松本(十)委員 いままでの説明を聞いておりますと、千年以上の長い間いろいろな鉱石を掘ってきた、そうしてその間にいろいろのことがあったかもしれないが、最近の通産省監督なり実態調査によれば、排出基準は十分守っておる、しかも近く休山をするのだ、休山したあとは、そのあと問題を起こさないようにできるだけのことはやらせる、また監督は十分する、こういうことのようですが、現実しかしカドミウム汚染が、土壌汚染が出たということは事実でありまして、これに対して鉱山責任を感じて、土壌汚染に基づく一定基準を越えた含有量のある米については鉱山のほうで補償したと聞いております。これは地元十分話し合いがついたことでありましょうし、また四十六年産米についても同様に地元要望をくんで、その点は十分やらせる、こういうことですね。
  11. 森口八郎

    森口説明員 お答えいたします。先生の御指摘がありましたように、四十五年産米につきましては、四十六年十月に、それまで地元と十数回の話し合いをいたしまして、補償額五千二百万円を支払うということで地元と円満に話し合いがついております。なお、四十六年産米補償につきましては、これから地元と話し合うということでございますが、四十五年産米に関する経緯から見まして、おそらく円満に話し合いがつくものというように私どもは考えておりますし、会社側のほうにもそういう指導を強力に私のほうでいたしたいというように考えております。
  12. 松本十郎

    松本(十)委員 鉱山関係おおむねわかりましたが、これを前提といたしまして、環境庁あるいはその庁発足前の厚生省としては、この汚染に対してどのような手を打ってこられたのか、その経緯なり、またつかまれた実態について環境庁のほうからお答え願いたいと思います。
  13. 岡安誠

    岡安政府委員 環境庁といたしましても、生野鉱山周辺環境汚染につきましては重大な関心を払っておるわけでございまして、先ほど通産省のほうから御報告ございましたとおり、まず水質につきましての環境基準排出基準等につきまして調査をいたしましたところ、現状におきましては、環境基準また排出基準とも基準以下の状態でございます。ただし、問題はやはりカドミウムその他を排出するおそれがあるところでございますので、今後とも厳重に調査、監視は続けたいというふうに考えております。  次に、土壌関係でございますが、土壌につきましては、本年度から土壌汚染防止法に基づきます細密調査というものを県に補助金をもってお願いいたしまして、実施いたしております。百五十地点につきまして、土壌並びに玄米調査をいたしたわけでございますが、その結果玄米の中にカドミウムが一PPM以上含まれるという点数が八点ございました。それ以外は一PPM以下でございますけれども、問題はやはり土壌分析というものが現在まだ完了いたしておりません。土壌調査が完了いたしました暁におきましては、土壌汚染防止法によりまして対策地域指定その他所要の施策を講ずるように県のほうに指導いたしたいというふうに考えておるところでございます。
  14. 松本十郎

    松本(十)委員 土壌汚染関係はそれでわかりましたし、また先ほどの通産省からの説明によりましても、それに基づく米の汚染についてはしかるべき措置を講じておるし、これからも講じようとしておる、そういうことは理解できるのですが、健康被害と申しますか、カドミウム汚染が人体に対してどのような影響を与えてきたのか。これについて兵庫県が精密な健康調査をやったということのようでありますが、その報告概要はおそらく環境庁に出ているかと思うので、その概要についてまずお話し願いたい。
  15. 船後正道

    ○船後政府委員 生野鉱山周辺地域の、カドミウム汚染疑いのある地域健康調査でございますが、環境庁といたしましても、兵庫県と十分連絡の上この調査指導につとめてまいったのでございます。兵庫県におきましては、四十六年の四月以降疫学的調査をいたしまして汚染地区を選定し、その汚染地区につきましては、それぞれカドミウムによる暫定対策要領によりまして、地域住民健康診断を行なってまいりましたが、最後に要第三次検診者十三名が発見されまして、これらの要第三次検診者に対しましては、兵庫県は健康調査特別審査委員会専門先生方からなるこういう委員会を設けまして、詳細に検討いたしました結果、去る三月三日、最終的には、イタイイタイ病はもとより、イタイイタイ病につながるじん臓障害もない、こういう公式発表がございました。
  16. 松本十郎

    松本(十)委員 兵庫県の委員会はそのような発表をしたわけでありますが、そしてその委員会関西方面疫学公衆衛生学あるいはカドミウム関係分析、それぞれの専門家を集めた委員会でございまして、一応それで心配はないという発表があって、地域住民はひとまずほっとしたという感じであったわけでございますけれども、その前後から公明党さんのほうで萩野医師あるいは小林教授調査を依頼しておったようでありまして、公明党からの発表では、それとまっこうから対立するように、イタイイタイ病疑似患者、疑わしい者がある、第五期ではないか、こういうように出たわけでありまして、こうなってまいりますと、やはり地域住民としてはどちらがほんとうなんだろうか、われわれとしては心配でたまらぬ、不安感におびえる、これは人情として当然だろうと思います。これに対してやはり環境庁としてはしかるべき措置を講じてもらわなければとても安心感を与えるわけにいかぬ、こういうことで不安感を一掃する。またもし万一公明党さんのいわれるようなことであるならば、それに応じた対策を急いでとらなければならぬ、こういうことであろうと思いまして、環境庁はこれに対してどういうお考えを持っておられるか、ひとつ長官にお伺いいたします。
  17. 大石武一

    大石国務大臣 兵庫県の調査委員会結論では、イタイイタイ病患者は見出されないということでございますが、一部漏れ承りますと、富山県の萩野医師でございますか、その他の方々が一応自主的な調査をなさいまして、多少疑わしい者がある。まだ結果はさだかでないけれども、いろいろな検査の結果はまだ全部出ておらないけれども、多少疑いは持てるというような考え方があるということを聞いております。そういう萩野さん方のいろいろな調査の結果が出て、どのような判断が下されますかわかりませんが、かりにそれがイタイイタイ病であるという判定がなされました場合に、やはりこれは問題が残ると思います。  そういうことで、その場合にはやはりわれわれは、どこが中心になってもけっこうでありますが、できるだけそういう人と話し合いをして、どこに問題点があるのか、今後さらにどのような検査をしたらいいかということを煮詰めまして、さらにもっと実態を究明するような方向に進んでまいりたいと考えております。
  18. 松本十郎

    松本(十)委員 一昨日の兵庫県の県議会でも問題が提起されたようでありまして、県知事としては、至急できれば萩野医師とも会って、調査担当者がいろいろあれしてみたいといって、富山県のほうへ行き、萩野医師にも会い、また富山県の衛生研究所にも立ち寄って、いろいろイタイイタイ病についての話なり、生野で見られたという患者のことなどについて聞いたそうですが、あまり核心に触れた結果が出ないで帰ってきた、こういうふうに聞いておるわけでございまして、やはりそういうことでありますと、何としても早く環境庁にあげまして、環境庁に前からあります鑑別診断班と——これは幸いにして全国の事イタイイタイ病に関しては権威といわれる医師が多数入っておられますし、また先ほど生野地区イタイイタイ病疑似患者があると指摘された萩野医師も入っているようでありますから、やはり実証的にデータに基づいてチェックをするというか対策をしながら、正しいのはどちらなのか、そして絶対にイタイイタイ病のおそれはないという、ないし将来も発生しないという兵庫県の見解が正しければ、それが正しいということを早く環境庁でオーソライズしてもらうべきではないかと思いますし、もしもその辺に問題があるならば、その問題の出方に応じて対処していただく必要があると思われます。この鑑別診断班で早急に取り上げて、何らかの結論を急いで出していただきたい。これは地域住民の切なる願いでありますので、これについての長官の御意向を伺っておきたいと思います。
  19. 大石武一

    大石国務大臣 お話はよく理解できますが、まだ別に萩野医師方判断イタイイタイ病であるとは決定いたしておりません。結論イタイイタイ病ではなかったということになるかもしれません。そうなれば問題はございませんので、それまででございますが、かりにそれがイタイイタイ病であるという認定が出ました以上は、やはりおっしゃるとおりいろいろな手段を講じまして、医学的にいっても正しい総合的な判断を行ないまして、考え方をはっきりさせたい、この考えておる次第でございます。
  20. 松本十郎

    松本(十)委員 何としても早く白なのか黒なのか、それを知りたいのが人情でありますから、何らかの措置を講じて至急にやっていただきたいと思いますし、また、鑑別診断班というのは大体机上データに基づいていろいろ対査されるのではなかろうかと思うわけでありまして、兵庫県のやりました一年近い調査の結果をデータとして持ち寄って、そして萩野医師鑑別診断班に入っておられますので、その班員の間でいろいろ対査しながら、クロスチェックをしながら一応の結論を出されると思うのでありますが、地域住民としましては、もちろん机上でいろいろ念入りな綿密な対査をしていただくのはいいのですが、事と次第によっては、やはり実地にまた調査団でも派遣していただきまして、そして必要ならば現地の患者に直接また当たっていただいて、この症状ではどうだとか、あるいは長い間の経験から見てこれはだいじょうぶだとか、こういうことまでやっていただかなければ地元は安心しないと思うのであります。もちろん、これは新聞の発表でありますからどこまで正確か保証の限りではありませんが、萩野医師のことばによれば、イタイイタイ病疑いは十分ある、しかも、兵庫県の調査委員会のメンバーは一人としてイタイイタイ病にそれほど臨床の経験がないじゃないか、そういう人たちがどんな根拠でイタイイタイ病でないと言えるのか、こういう言い方までされておるやに聞くのであります。そうなると、やはり急いで環境庁としても取り上げていただかなければ、不安感がだんだんと強くなってくる、こういうことでありますので、格段の御善処をお願いしたいわけでございます。
  21. 大石武一

    大石国務大臣 兵庫県でいろいろな患者の診察なり診断を行なっておりますが、これは環境庁としても、十分連絡をとりましていろいろな指導も行ないましてやっておることでございます。したがいまして、私どもは、その診断につきましては権威のあるものと確信いたしておるわけでございます。しかし、これはやはり絶対的ということはなかなかむずかしいのでございますから、そのような異論が出れば、それにつきましても十分に検討して、そしてすべての点からこれを総合的に最後に正しいと信ずる結論を出すことが大事でございますので、やはりわれわれは慎重を期しておるわけでございます。もう一度いろいろな検査をするのがよかろうということでございますが、大体いままでのケースでわれわれ間違っておると思いませんけれども、やはり行政で国民の気持ちに安心を与えることも大事でございますから、重複するようなことがありましても、そのような必要があれば、またいろいろな手段を講じまして、まだ検査の足りないところを補足するなりいろいろなことを講じまして、地域住民の方々の気持ちを安定させることも必要かと思いますので、そのような措置もとろうかと考えておる次第でございます。
  22. 松本十郎

    松本(十)委員 必要があれば調査団の派遣もひとつ考慮していただく、こういうふうに解して、長官に対する質問は終わりたいと思いますが、最後に、少し時間をとりますが、委員長にひとつ善処方をお願いしたいことがあるわけであります。  と申しますことは、去年の三月十六日ですか、当委員会におきまして、群馬県の安中市におけるカドミウム公害の問題が審議されたわけでありますが、その際に、参考人として出席されました小林教授、先ほど生野についてかなり断定的な発言をしておられます教授でございますが、その教授が、参考人として、われわれ同僚議員の質問に対しまして答えられました速記録を読んでみますと、「私は御承知のように分析屋でして、病気の問題については触れてないわけです。」とか、あるいは「私は、カドミウムにつきまして、もちろん医者でありませんから医学的なことはしろうとでございます」そういうことを言っておられながら、去る七日、一昨々日の当委員会における発言、これは速記録でありませんから、私もその内容、ニュアンスにあるいは聞き違いがあるかと思いますが、しかし、こういう趣旨の発言をその同じ小林教授がやっておられるわけであります。「人体がカドミウム汚染されてからイタイイタイ病になるまでの症状は、一期(潜伏期)、二期(警戒期)、三期(疼痛期)、四期(骨格変形期)、五期(骨折期)の五段階に分けられるが、症状判定の一つのきめ手とされるエックス線写真では脱灰現象が進み、骨の三〇%以上が失われなければ異常があらわれない。一〇ないし二〇%の初期症状はエックス線写真に出ないが、写真に異常がないからといって、イタイイタイ病でないとは言えない。厚生省は一期から三期までを単にカドミウム中毒症と言い、四期以上の重症になって初めてイタイイタイ病と呼んでいるが、最近は早期発見が進み、症状の軽いうちに見つかる人が多いため、レントゲン写真に異常があらわれないだけだ。生野や安中の患者にはたん白尿や骨の痛みがはっきり見られる。これはカドミウム中毒症というよりも、イタイイタイ病の初期症状というべきである。」こういうことをこの委員会の席で答弁しておられるわけでありまして、一年前には「医学的なことは何も知らぬ。私は分析だけだ。」こう言っておきながら、医学的なことを発言し、他の医者のことばを引用されたわけでありますが、これは問題ではないかと私は考えるわけであります。さらに、去年の蒸し返しになりますが、三月十六日の同じ発言におきまして、例の安中の女性の臓器のカドミウム含有量を調べました際に、これまた同僚議員に対する答えでありますが、同僚議員の質問はこんなのです。「解剖のときには遺体の状況とか臓器の状況をあとの記録として残しておかれることは初歩的な常識であるというようなお話でございましたが、そういったときの写真をとっておられないかどうか、ちょっとお尋ねしたいと思います。」こういう質問に対しまして、小林教授は、「実は私はこういう大きな問題になると初めから予想してなかったわけでして、もの好きな仕事のお手伝いというくらいの気持ちで実際やってみたところ、こういう大きな値が出たのでびっくりした。したがって、証拠写真をとるとかいうことはやっておりません。」こういう言い方をされておりますし、この委員会で発言された速記録をあっちこっち読んでみましても、何となく、われわれしろうとから見ましても、はたしてこれで科学的な実証的なやり方をしておられるのかという感じがしないでもない。おられない方についてとやかく申し上げたくないわけでございますが、クロスチェックすべきではないかということに対して、いや、そんなことやっておりません。私の分析は信念を持ってやっておりますから結果は確かでございます、こういうことでございまして、何となくこの辺のところに、しろうとして釈然としないものが残るわけであります。  さらに、また、萩野教授、私はお目にかかっておりませんので何とも申し上げられませんが、たまたま去年の夏ごろの「文藝春秋」ですか、ルポライターの田村洪氏が書いております。「イタイイタイ病悲劇のかげに対立する三人の公害告発者」「果して誰が真実を語っているのか?十年前、奇病の原因解明に取組んだ萩野昇、小林純、吉岡金市の三博士が「栄誉」の座をめぐって繰り拡げる宿命の対立」こういうことで、かなり長いレポートが出ております。これは権威のあるものでないと言われればそれまでのことでありまして、私どもそれほど申し上げませんが、私が受けておりますイメージからしますときに、萩野医師がはたして臨床に徹しておられるお医者さんであるのか、私個人の感触から言えばやや疑問とせざるを得ない、こういうことでございまして、やはりこの辺で、どうもカドミウムというものとカドミウム中毒症というものとの相関関係はありましょう。さらにまた、それからイタイイタイ病に至るまでのつながり方につきまして、相関関係、牽連関係はあるのでありましょうが、はたして因果関係ありと医学的にあるいは科学的にはっきりと言えるのかどうか、どうも私としては疑問が残るわけでありますし、おそらく同僚委員の中にも同様の感触をこれまでの当委員会におけるいろいろの審議の場を通じて感じておられる方が多いだろうと思うのでございまして、なかなか厚生省の中にもいろいろな調査会があって、かつてイタイイタイ病についてやってこられたようでございますが、この辺で当委員会権威にかけましても、そういった詳しい方々を参考人として呼んでいただきまして、そして、いろいろ質疑を重ねたがら、結論は出ないでも、多数説のおもむくところはどこにあるのか、大かたの現在の科学なり医学なりの解明し得る限度におきまして、イタイイタイ病あるいはカドミウム中毒というものの実体というものはどうなのか、こういうことについてほどほどの結論に近いものでも出せればありがたい、こういうことでございまして、そういう機会を持つことについて、委員長において御善処願いたいと思うわけでございます。
  23. 田中武夫

    田中委員長 松本君に申し上げます。ただいまの参考人を呼んでと、こういう御提案につきましては、後刻理事会で相談の上、前向きに善処していきたいと考えます。
  24. 松本十郎

    松本(十)委員 ありがとうございました。  そこで、最後に結論として環境庁にも御要望したいと思いますが、何と申しましても、公害に基づく健康被害というものは、その地域住民のみならず、広く国民全般にとっても重大な関心を持っている。早くこういったことについて、決着をつけるというか、結論を出していただきたいという願いでございます。なかなかそれは医学的にはむずかしいところもございましょう。しかし、それに対して最善の努力を早急にひとつやっていただく。万が一不幸にして、そういう健康被害因果関係として出てきたということであるならば、これはまた不幸なことでございますが、またこれに対する対策というものを早急に立てていただく、これを重ねてお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  25. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまの御意見はごもっともと思います。私どももできるだけ迅速な正しい判断を行ないまして、この公害問題に対して対処してまいりたいと考えております。願わくは、できるだけ公害患者はないほうがいい、こう願っておりますが、しかし、われわれ環境庁というものの立場は、被害者を救済する、そういう立場にあるのがわれわれの立場でございますので、そのような患者がもし不幸にして出た場合には、そういう点十分な措置ができるような方向に進めてまいりたいと考えます。
  26. 田中武夫

    田中委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。林義郎君。
  27. 林義郎

    ○林(義)委員 ただいまの松本君からの御質問の中で、環境庁長官のことばに、私ちょっと疑問点がありますので、重ねてお尋ねしたいと思います。  いま松本先生からの話でありました中で、まだはっきりしておらない、いずれにしても萩野先生その他の方々が調べられたものについてははっきりしておらない、それだから調べるんだという話がございました。どうも私、かってでございますが、新聞等を読みますと、もうはっきりしているんだというような印象で聞いております。その辺は、環境庁なり厚生省のほうでどういうふうな形で確かめられたのか。どうも長官の見解と新聞で得たところのわれわれの感じと違うものですから、その点はちょっともう少しはっきりとお答えいただきたいと思います。
  28. 山本宜正

    山本説明員 お答えいたします。  私ども、今度の生野の問題につきまして、萩野先生に直接話をまだ聞いておりません。私ども、現在聞いておりますのは、県のほうとして鑑別診断研究班を今月中には一応催す予定がございます。そういったときに、県のほうから持ち寄っていただきましたとき、萩野先生も当然御出席なさいますのがいつもでございますので、そのときにいろいろお聞きしてみたい、こういうことでございまして、新聞報道のほかに、私どもまだ萩野先生のほうには確めておりませんが、まだ検査等につきまして、萩野先生がお持ち帰りになりました検体の検査が全部済んでいないというようなことを私ちょっと漏れ聞いておりますが、確認しておりません。
  29. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、私ちょっと長官の答弁が、私が聞いていましたのはちょっと違うんじゃないか。何か長官の答弁は、萩野さんのほうはまだ出ておらないというようなニュアンスで聞こえましたが、その辺はもしそれなら、長官の答弁と新聞に出ておるのとちょっと違いますし、いままた環境庁の答弁と違いますから、その辺ははっきりしておいていただいたほうがいいと思います。
  30. 大石武一

    大石国務大臣 別に私はそれは違いはないと考えております。実は、山本課長からいろいろな報告を聞きました際に、萩野医師患者検査をしたけれども、まだ全部の検査が終わっておらない、結果が出ておらないという段階でございます、という報告を聞きましたので、やはりまだ結論は出ておらないと考える以外にございません。どのような検査をしましても、検査の結果が全部出て、それを総合して病気であるかどうかは判断するものでありますから、まだ検査の結果が出ておらない段階におきましては、断定できるはずはございません。そういう意味で私はまだ、その萩野医師に聞いたわけではありませんが、検査が終わっておらない段階ならば、どんなことがあろうと結論が出るはずがございませんから、まだ出ておらないと私は考えているわけでございます。
  31. 林義郎

    ○林(義)委員 わかりました。どうもありがとうございました。
  32. 大石武一

    大石国務大臣 ちょっともう一つ。誤解のないようにわれわれの考え方を申し上げますけれども環境庁としては、すでにいままで兵庫県と十分に連絡をいたしまして、そうしてイタイイタイ病患者疑いに対する検査をしてまいっているわけでございます。その結果は、イタイイタイ病患者はないという結論でございますから、われわれはそれを信用いたしております。いたしておりますが、ただ、萩野医師その他から疑いがあるということで問題が提起されておりますので、たとえそれがわれわれと直接、厚生関係関係のない方にしましても、そのような疑いが提起されておれば、地域住民にいろいろな不安を与えます。そういう意味で、不安を除去することもわれわれの行政の一つであろうと思いますので、そういう意味で、かりにイタイイタイ病であるという萩野医師結論が出ましたならば、それをやはり十分に考慮に入れまして、さらにいろいろな手段を講じまして、あるいは萩野医師兵庫県の審査会の方々との話をすることも必要でしょうし、学会で検討することも必要でしょうし、あるいはいろいろな鑑別診断班を出すことも必要でございますが、そういうことをいろいろとそのあとで、その結論が出ましたならばそういういろいろなこれまた処置を講じまして、その最後の正しい判断をいたしたいと考えておるわけでございます。
  33. 田中武夫

    田中委員長 松本君の質問を終わりました。  次に、三木喜夫君。
  34. 三木喜夫

    三木(喜)委員 三菱金属生野鉱業所から排出されるところのカドミウム汚染について私もお伺いしたいと思います。  いまだんだんと聞いておりまして、問題は、調査のしかたにあるんじゃないだろうかと思うのですね。兵庫県は大体断定に近いところの結論を出しておりますけれども萩野医師中心にして、これは疑いがあるということをやはりデータによって主張しておられるわけです。   〔委員長退席、八田委員長代理着席〕  そこで、私は環境庁あるいは厚生省にお伺いしたいのですが、調査の上で疑問はないか、これをひとつお伺いしておきたい。どなたでもけっこうです。きょうはわざわざ非常に熱心な長官もおいでいただいておりますので、この点をひとつ突き詰めておかぬといかぬと思いますので、最初、両者の調査に違いはないか、そういう点をお伺いしたいと思う。
  35. 船後正道

    ○船後政府委員 兵庫県が実施いたしました健康調査は、環境庁から出しておりますカドミウムによる環境汚染暫定対策要領、これに基づいた検査でございます。萩野医師がどのような検査をなさいましたかは、現在私どもは承知いたしておりません。それらの詳細につきましては、とりあえず県の衛生部長の報告を求めたいという手はずをしておるところでございます。
  36. 三木喜夫

    三木(喜)委員 要するに、こういう調査はやはり住民の不安を除く、いまもお話ありましたが、住民が非常に不安がっておるわけです。県が公的な立場で断定を下したということで安心する。方はやはり学問的な立場からそうでないという疑問を投げかけている。そうなりますと、地域住民はたいへんに不安になってくるわけですね。  そこで、いま質問したことに対する答えになっていないのですが、片っ方は知らぬ、片っ方は厚生省なり環境庁からいったやり方で調査をしておるのだ、こういうことなんですが、不安の中にある問題といたしましては、やはり最近、公害の実地調査に対するところの住民参加ということなんですね。今度の場合、県の調査というものはその住民の願いというものを果たしておったかどうかということ、それからその結果については地域の区長とか、こういう人々にはよく話をされておるようですけれども住民との話し合いはされておるかどうか、不安という点でお伺いをしておきたいと思うのです。それは兵庫県のことだから知らないわい、こういうことなんですか。それともこれはこうなんだという御説明をいただけますか。調査のしかたについて、あるいは調査をした結果について、住民との対話あるいは調査のしかたに住民参加があるのかどうか、こういう点をお伺いしておきたいと思います。   〔八田委員長代理退席、委員長着席〕
  37. 大石武一

    大石国務大臣 御質問に的確な答えになるかどうかわかりませんが、考え方を申し上げたいと思います。  われわれは兵庫県と連絡をいたしまして、兵庫県の組織する学者団によりましてイタイイタイ病に関する一斉検診をいたしました。どのようなことをやりましたか、こまかいことはわれわれも聞く心要もありませんし、それは存じません。当然、医者として、医学者として検査をするに必要な検査をされたと思います。住民の対話ということがどういうことかわかりませんが、住民の対話とどういうようにつながるかわかりませんが、学者として、医学者として、医者としての妥当な検診をいたしたものと私は考えております。その結果は、イタイイタイ病はなかったという判定でございますから、私どもは喜んでもおり、安心もしておるわけでございます。住民はそれで安心したと私は思うのです。ただ、やはり、さらにイタイイタイ病のいろいろな経験を持っておる萩野医師という方々が、学者としての良心から、医者としての良心から疑問を持たれて検査をされたということでございましょう。それは直接環境庁関係ございませんが、しかし、直接関係はなくとも、一部の方々からでもそのような疑問が出れば、これを無視することは正しくありません。ですから、萩野医師結論がまだ出ておりませんということでございますから、これは聞いてみますと、兵庫県の衛生部も萩野医師話し合いをしておることでございますし、結論は出ておらないそうでございます。ですから疑問を持つのは当然でございます。正しいことだと思います。その検査の結果何でもなかったということになればそれで済むと思います。万事おさまります。しかし、不幸にして、その結論イタイイタイ病であるという判断に達しました場合に、やはりこれは問題が残ります。ですから、その場合には、こういうものは今後どのような検査をしてもっと実態を究明したらいいかということが問題になりますから、その結論が出たあとにやはりその対策を立てるということにするわけでございまして、いまの段階は萩野医師診断を待っておるという段階で、それによってすべて方向がきまっていくと考えております。
  38. 三木喜夫

    三木(喜)委員 その御答弁は先がた松本委員のほうにもいただいたのでわかるわけですが、両者の調査のしかたの中に、私は感じとして、両方とも比較対照し、いま松本委員のほうから言われましたように、ここにおいていただいて、その調査された中身を聞きましてはっきりするのですけれども、しかし、聞くところによると、この萩野医師は十三年前からこれを調査されておるということですね。それから、兵庫県は一年がかりでやられておるということですね。やはりその時間的なウエートをかけなければこういう問題はわからないのじゃないかと思うのです。私はもうちょっと現地の中身に入った質問をしてみたい、あるいは検討してみたいと思うのですけれども、そういう点が違っておるような感じがするわけです。  それから患者についても、こういう状況は老化現象であるというきめつけ方と、あるいはそのレントゲン写真とイタイイタイ病のいままでの経験のあるところと対比してみて、そうしてこれは確かにそういう疑いがある、こういう見方とあると思う。  それから、先がた、これは長官にお伺いせぬと、事情を知っておられる人に聞きたいと思うのですが、住民が納得するやり方としてどういう説明をしたか、こういう質問をいたしましたが、たとえばある地区の学童全部の髪の毛を出させて、それを調査されておりますが、これに対する結果は、住民なり学校に知らされておりますか。小さい枝葉のようなことを言うようですけれども、不安という問題から私は申し上げるので、御存じないですか。
  39. 大石武一

    大石国務大臣 それでは私に関する質問からお答えいたします。  萩野医師に私はお目にかかったことがありませんが、一開業医として一生懸命にイタイイタイ病に取っ組まれまして、いろいろと十数年も努力された姿には心から敬意を表しております。この十数年という萩野医師経験はたっといものと思います。イタイイタイ病につきましての十分な見識と信念とをお持ちのことと思います。ただ医学というものは客観的に判断をするものでございます。その道の経験がなければ診断がつかないというのは、いまから四、五十年前の医学でございます。徒弟制度のような医学の時代にはそういうようなことが行なわれましたが、いまの医学にはそういうことは許されません。すべては正しい客観的な知識と検査の方法、診断の方法というものは確立しておりますから——もっとも、わからない病気は別でありますけれども、そういうことで、たとえそのような患者を見たことがない医師でも正しく診断し得るような態勢にいまなっておるわけでございます。そうなってなければ、とうていいまの医療というものは信頼してかかることができないということでございます。したがいまして、たとえ兵庫県で組織されておる審査委員の方々がこれは必ずしもそう十分の、イタイイタイ病に対する経験が少ないとかなんとかということがありましょうとも、それはりっぱな、すぐれた医学者でございますし、いまの検査の方法、診断の方法で決して間違いはないと考えます。ただし、やはりこれは疑いを持つと、医学で疑いというのはしろうとの疑いとはちょっと違いますが、これは全部客観的に判断するとは申しましても、やはりそこには多少の、いろいろな経験とか自分の勉強なりすべてのものの見方なりについて、自由な判断というものがまだ残っておると思います。そういうものの違いが今回の萩野医師疑いを持たれたところであろうと思います。したがいまして、私どもは、それに対しては十分に萩野さんの経験なり努力というものを尊重いたしまして、その結果をお待ちしているわけなんです。決してそれは無視はいたしません。幸いに萩野医師がこれはイタイイタイ病でなかったという結論が出れば、それにこしたことはございません。住民も安心をすると思います。不幸にしてこれがイタイイタイ病であるという結論が出れば、これはどちらが正しいか、というとおかしいのですが、それを十分に、今度はお互いに、萩野医師の見識というものを検討する機会をつくりまして、そして医学的な最高の権威によって最後の決断を、判定をするように持っていきたい、こう考えておるわけでございます。
  40. 山本宜正

    山本説明員 私ども県から届きました報告書を見てまいりますと、四十七年の一月二十日に第二次検診の結果について公表しておりますが、その中に、学童及び地域人たちの毛髪中のカドミウム濃度を検査しております。人数についてはここに記載されておりませんが、それぞれの地域ごとの濃度をあらわしてございます。そして、学童の毛髪中のカドミウム濃度については異状が認められなかったというコメントがついております。ただこれが個々の人に対して結果の報告がなされたかどうかということについては私聞き漏らしておるわけでございますが、おそらくこれは、この地域を考える場合に、地域の全体の汚染状況を調べる一つの目安として毛髪のカドミウム検査をしたのだ、こういうぐあいに理解をしておるわけでございます。
  41. 三木喜夫

    三木(喜)委員 その答えだけでもちょっと満足しませんね。結局毛髪にカドミウムを含んでおるかどうかという調査ですね、こういう問題でも、異状がなかったということは、異状にもいろいろあるのですね。全然なかったのかあるいは他の地域と比べるとかなり濃度が高かったとか、そういうことによって、さらに、いま長官の言われるいわゆるイタイイタイ病でないというような、いまの疑いのある人がそういうものでないといたしましても、カドミウム汚染住民にやはり広がっておるということから考えて、一長期的にそれがどんな影響を及ぼすかというところまで発展していかなかったら、調査したことが、ただその場をのがれるために調査をしたということに終わってしまうおそれがあるわけです。長年にわたってやはり鉱害があの地区には及んでおるのですから、それが及んでなかったらこういう心配は持たないのです。長官は現地を御存じないと思いますけれども、現地では、田の入り口のところに「ためお」といいまして、深く穴を掘りまして、そこへ入ってくるところの鉱害の水を一ぺんそこで沈澱させるのです。一筆一筆田にはそういう措置がとってあるのです。そうしなかったらそれが田の全部に及びますからね。その被害を少なくするために、ここもう何十年来それをやってきております。それから鉱害というばく然とした、この鉱害に対する補償として、昔でいえば多い地区は一反歩三円、少ないところで五十六銭という、大正から昭和の初め、そういうような補償のしかたもしてきておるわけですから、そういう事実がなかったらこういう不安は持たないわけです。だから、毛髪に異状がなかったという、こういうとらえ方だけではこれは困ると思うのです。他地区と比べてこの地区はどれだけ毛髪の中にカドミウムがあったかなかったか、そういう取り扱いをしてもらいたいと思うのですね。これはいまの課一長のお話に対してですが。  それから、またあとで岡本委員のほうから詳しい質問もあるだろうと思いますけれども、尿中のカドミウムの残量、こういうものですね。なぜ私がこういうことを言うかといいますと、阿賀野川の水銀汚染の問題で、科学技術対策特別委員会でもこの問題をずいぶん論議いたしました。初めのうちは企業側も全然ない、そういうものをうちが出したおそれはないのだ、こういうことでしたけれども、やはり毛髪の中に残量がありましたし、いろいろなことがいま長官の言われる客観的なデータになって出てきたわけです。だから、客観的なデータといたしましては、尿中のカドミウムとかあるいは三十歳以上の人についてだけ調査をしておるという、この限定のしかたもおかしいと思うのですね。三十歳以下もやらなければいかぬと思うのです。まあ、ある地区で私聞きますと、部落の該当人数は百四十人、三十歳以上になると九十人、その中で第二次の調査をやったのが十三人、こういう調査のされ方をしておりますけれども、やはり三十歳以下もやらなければいけないと思います。抵抗力の少ない子供に対してもやらなければいかぬと思いますし、それから調査のしかたですけれども土壌汚染の場合、最初は二・五反について一筆調査をやっておったようでありますけれども、しまいには一町歩に対して一筆、これは抽出調査ですからそれでもいいのですけれども、しかしやはりこまかにやっていただくほうが、全体の汚染の広がりというものが客観的につかまえられると思うのです。そういうやり方、こういうものを総合してこそ長官の言われる客観的なデータだと私は思う。そういうぐあいに考えてみますと、どこに信を置くかということを住民に知らさなければいかぬ。それには住民が参加して、なるほどそうだという納得のいく客観条件と、それから調べられたらその調べられた結果について知らせていただきたい、こういうぐあいに思います。その点どうですか。何かいまの毛髪の問題でも根拠が薄いような感じがするのですがね。
  42. 大石武一

    大石国務大臣 いまの山本課長の答弁は少しことばが足りなかったと思います。おっしゃるように毛髪の検査なりあるいは尿の検査なり、そういうものは全部調査しましてりっぱなデータができておると思います。ことに、あの地区は御承知のように十分にイタイイタイ病を考えなければならない心配の土地であります。と申しますのは、先ほどの答弁にもありましたように、少なくともあの地点においては玄米の中に一PPM以上のカドミウムが含まれておるのでございますから、やはりこれは十分に、そのようないままでかりに出ていないにしても、将来はなお出ないように、心配のないように厳重に調査検査をする必要がございます。そういう意味では毛髪の検査あるいは小便の検査、その他いろいろな検査はしたでしょうが、それはけっこうなことでございますが、それらはみんなりっぱに記録に残っておって、今後のいろいろなさらに調査をするなりあるいはいろいろな対策を立てるなりのりっぱな資料になっておると私は考えております。そういうことを残さない科学者ではございませんから、そうしておると思います。  ただ、そういうことを一般住民に知らされておるか、知らされていないかというお話でございますが、それはそうでございますね、たとえばどのような形で、こういうわけで心配ないのだから安心してよろしいというような、どういうことをしたか知りませんけれども、やはりある程度の、一般にはそのような民衆に対する説明はあったほうがいいと思います。毛髪の結果はどうだったかこうだったと、それは小学校中学校等の人間には意味がないかもしれませんけれども、全体としてそのような安心を与えることはやはり行政上大事だと考えております。そういうようなことを、もし不十分ならば、われわれのほうからも十分連絡いたしまして、住民に納得できるような、安心を与えるようなことをやらしたいと考えております。  それから三十歳以下の者を調べなかったということは、私はわかりません。医学的にそれがやり方が正しいのだという方針だったと思いますが、どういうことで三十歳以下に関係があるかないか私はわかりません。以下のところはわかりませんから、でございますが、間違いなく手落ちがなくやっておると思いますが、そのことにつきましてもさらにわれわれは連絡をとりまして、なぜそういうことがあったかということを調べてみたいと思います。  それからたんぼの場合も、なるほど一枚のたんぼを全部検査すればそれは一番間違いないと思いますけれども、そのような努力は決して間違いないと思いますが、一般の調査のしかたというものは方式がございますから、私もよくわかりませんけれども、やはり妥当な方式によってやったのではなかろうかと考えておりますけれども、なお不十分な点があれば、住民に不安を与えてはいけませんから、もう少し詳しい調査も必要かと思いますので、そのことも十分に連絡して検討したいと思います。
  43. 三木喜夫

    三木(喜)委員 課長にお願いしておきますけれども、そういうデータを提示してください。尿中とかあるいはまた毛髪とかという問題の。これは単にこんなところで議論のための議論をやるのではなくて、それを一つの足がかりにしたいという考え方があるから、他の地区と比較してこの地方はどれだけ多いか、そういう検討がなかったら国会の審議にならぬと思うのです。単に異常ありませんでしたという、そういう言い方だけでは私は困ります。だからそういうデータをひとつお出しいただきたいと思います。  せっかく長官の御答弁ですけれども、一筆ごとはむずかしいでしょうけれども、二・五反にしていけば客観性がより具体性を持って出てくるわけです。ぼっと飛ばしますと、たまたまそこには水やいろいろな関係汚染度がきつかった、こういうところに当たる場合もあります。しかし大体その地方はどうだということがこれではちょっとわかりにくいので、これは調査のしかたですからそこはまかしておいたらいいのですけれども、こういうぐあいに変更された理由というものも問題になってくるし、そういう意味合いで、そういう点もひとつ聞かしてもらいたい、データとしてお出しいただきたいと思います。  それから、厚生省と農林省にお伺いしたいのですけれども、いま汚染米の話が出ました。永年カドミウム汚染した米を食べておるあるいは水を飲んでおる、そのことがどんな影響があるかということに非常に関係があるわけなんですけれども、厚生省と農林省に聞きたいのは、農林省は一・〇PPM含んでおる米はだめだということでそれは廃米とする。それから厚生省は、いやそうじゃない、〇・四PPMだと言う。この両官庁において違いが出ておるようなんですが、これも地元では不安の一つです。毛髪、尿中、調査のしかた、そしてカドミウム米としてこれは廃米にする、こういう基準が違っておるように思うのですが、この点どうですか。
  44. 中村健次郎

    ○中村(健)政府委員 お答えいたします。  ただいまの問題でございますが、食糧庁といたしましては、厚生省の食品衛生法に基づく規格で、玄米中に一・〇PPM以上のカドミウムの含有のあるものは食品として有害である、こういう結論を出しておられますので、それに従いまして  一PPM以上の米は政府としては買わない、あるいはそれがわかるまでに買ったものはこれは食用に回さないということをいたしておるのでございまして、厚生省の見解と食い違いは全くございません。
  45. 三木喜夫

    三木(喜)委員 〇・四はどうなの、間違いないですか。
  46. 中村健次郎

    ○中村(健)政府委員 〇・四の問題は厚生省からお答え願ったほうがいいかと思いますが、〇・四につきましては、私たちが厚生省から聞いておりますのは、人為的なカドミウム汚染があるかどうかの目安をつける第一歩として米のカドミウム含有量を調べて、玄米中に〇・四PPM以上のカドミウム濃度のものがある地帯では何らかのカドミウム汚染があるのではないか。したがって、そこでいろいろなカドミウム汚染についての人体への影響その他の調査をしなければならない、こういう意味で、そのめどとして〇・四PPMというものを出しておられるのでございまして、食品衛生上からは〇・四PPM以上のものでも一PPM未満のものは有害でないという結論を出しておられます。食糧庁といたしましては、したがいまして一PPM以下の米については、要観察地域の米でありましても、あるいは人為的なカドミウム汚染があるということで知事が線引きをされました地帯の米につきまして、これは食品衛生上何ら有害ではございませんから政府は買い上げをいたします。しかしこれを配給する場合に、消費者の中に〇・四PPM以上のものはやはり気持ちが悪い、有害じゃないかと思うというような不安な感情が御承知のようにございまして、そういったような不安な感情がある間はこの米は配給に回さないということで保留をいたしております。そういうふうな取り扱いをいたしておるわけでございます。
  47. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そこで、食糧庁にお伺いしておきたいのですけれども、〇・四PPM以上は気持ちが悪い、こういうことなんですが、住民の感情なり消費者の感情を言われたのでしょうけれども、あなた方はどうなんですか。そういうようなものは配給しないことにしておるのでしょう、〇・四PPM以上一・〇PPM以下。それで、それは地域住民は食べていいということなんですか。その辺はっきりと聞かしておいてください。
  48. 中村健次郎

    ○中村(健)政府委員 〇・四以上でありましても、一PPM以下のものは食品衛生上厚生省として有害でないという結論を出しておられますので、食べて一向差しつかえないものだというふうに思っております。
  49. 三木喜夫

    三木(喜)委員 その辺が非常に怪しくなってくるのですね。あなたはそういう自信を持って言うておられますけれども、これは医学的な立場というものをよく検討された上ですか。〇・四あるいは一・〇以下、これならばいい、こういうことですか。そこだけはっきりしておきたい。
  50. 大石武一

    大石国務大臣 どうもこれは私の直接の所管ではございませんけれども、おそらくこれは間違いないと思いますが、厚生省では十分に医学的基礎の上において、一・〇PPM以上のカドミウムを含有する米は有害のおそれがあるということで、これは食品とすることを禁止したものだと考えます。したがいまして、〇・四PPM——たとえば〇・四PPMならば一とずいぶん違いますからこれは問題にならないと思いますが、いわゆる食品とした場合には、たとえば〇・九と一PPMはどう違うかということがいろいろ問題になるわけでございます。一PPMが悪くてなぜ〇・九PPMはいいのか、たいして違いはないじゃないか。あるいは〇・九九PPMと一PPMでどれほど違うのかということになりましょうけれども、これはまあどこかやはり線を引かなければなりませんから、少なくともこれ以上のものはいけないというのは、医学的には十分安全性をとりまして、たとえば致死量が一である場合には使っていい場合には〇・一ぐらいしか使わせないというのが大体医学上の常識でございますから、そういう意味で、一PPMであっても必ずしもそう危険はないかもしれないけれども、危険の最低限度に一PPMを置いたのだと私は考えております。ただ、〇・四を配給に回さないというのは、食糧庁のこれは一つのやはり親切な行政ではないかと思うのです。そういうことで国民が不安がっているうちは、やはり食糧庁としては大きな赤字になりましょうけれども、それをあえて配給に回さないで、それで国民を穏やかな気持ちにしていこうというあたたかな配慮ではなかろうかと考えております。  実は私は先月水俣に行ってまいりました。患者調査をしてまいりましたが、あそこでは御承知のように、水俣でとれる魚はいまだに水銀の汚染があるということで買いたたかれるとか、それからあそこの魚は食うのがこわいという人があるのを聞いておりますので、私は行って注文して、実はとれた魚のさしみを——一回、二回食ったってどうということはありませんが、食べてまいったのは、あえてそういう一つの行政の気持ちをあらわそうということでやったわけでありますが、この〇・四PPMの米を配給に回さないのもそのような配慮だろうと私は考えております。
  51. 三木喜夫

    三木(喜)委員 これは科学でもかなり問題になったのですけれども、こういう汚染、そしてそういう病気というものは、一気になるものじゃないですね。やはりそういうものが魚の中でかなり濃縮されるということでおそろしいわけですけれども、人間の場合にどうかということは科学的にもう少し詰める必要があると思うのです。〇・四はあぶないから、親切なという意味合いで、不安があるからという、こういう観点だけでは食糧対策に対しての見識にはやはりならぬと私は思います。それは後の問題といたしたいと思います。  とにかく住民に対する不安解消ということで、松本委員からもお話がありましたし、あとで岡本さんからもおそらくお話があるだろうと思いますけれども、農民の中にはもの言わぬ農民がいるのですよね。そういうレッテルを張られることがこわい。たとえばイチゴもやっておる、野菜もやっておるでしょう。それが売れなくなると困るという、そういう配慮がある。だから、公害の一つの争いとして大きく火をふくのは、そんなことが全部無視された後において住民運動になるわけですけれども、いまはそういう不安を持っておるわけですね。もの言わぬ。それからもう一つは、知らないということなんです。いままでの公害の企業側の態度は知らせないという態度が圧倒的だったわけです。知らしたら補償の対象になりますからね。だから、そういうことが一つ問題ですから、そういう点も考えに入れて住民の不安を解消するようにひとつお願いしておきたいと思う。  それから補償措置をひとつお伺いしておきたいのですが、十アール当たり四十五年度産米で六千五百円、米はつくっておりませんけれども、安中では十アール当たり八万円、この差は一体どこから出てきているのか。あなたが言われる、〇・四PPMの米も配給しない、それでも買い上げる、こういうところにあるのか。その安中と、ずっと長い明治の時代から公害をたれ流しておった生野鉱山との差は、六千五百円と八万円というこの差は、一体どこから出てくるか、こういうことの行政指導なり地域住民に対するわかりやすい説明をしてもらいたいと思うのですが……。
  52. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 生野鉱害問題につきまして、四十六年の十一月に、それまで八回の交渉が持たれたようでございますが、最終的に五千二百万円の補償解決をしたというふうに聞いておるわけでございます。これの内訳といたしましては、改良資材の投入に三百六十万、それから四十五年産米の自家保有米につきまして二百五十二万、それから四十五年産米の自主流通米について四百三万、それから会議費として六百七十五万、それからいま申し上げましたような項目に入らない金額を一括いたしまして見舞い金として三千五百十万、これを合計して五千二百万ということで解決をしたという報告をもらっておるわけでございますが、いま先生お尋ねの四十五年産米の自家保有米、それから自主流通米の単価それからこれからくる反当たりの単価につきましての考え方というものは、私ども現在のところは聞いていないわけでございます。
  53. 三木喜夫

    三木(喜)委員 もう時間がないですから、そういう聞いてないことを別に言うていただかぬでもいいわけです。とにかく違いはどこかということを御検討いただいて後ほど知らせていただきたいと思います。  それから鉱山局来ておられませんか。——この問題につきまして三菱金属の社長が、早く統一見解を出してくれ、こういうことをきょうの地元の朝日新聞で発言されておるようですが、早く、早くという意味は、そんな一朝一夕にきまる問題でもありませんし、両者の言い分の統一見解ということになると、足して二で割るということになる。片一方は、たとえばかりに六十万円補償を要求する、片一方は十万円でいい。そうすると、中をとって三十万円、そうすると、一方は提示した十万円から三十万円になったから三倍とれたというような、こういう補償考え方があるのですね。そういうことではなくて、鉱山局として、何か来年閉山になるそうですけれども、これに対する補償措置というものをどういうように指導されて、閉山してからでもこの補償措置はとられるのかどうか。それから鉱山局のほうからおいでになっておれば聞いておきたいのですが、その補償措置が、補償額が多いために、これは労働者がここでやめる人が多いのですね。その労働者が職を失います、この対策関係はないか、その辺もお伺いしておきたいのです。補償問題もかなり大きく出てくると思うのですが、いかがですか。
  54. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 本日三菱金属鉱業の社長が早く統一見解を出してもらいたいという要望をしたという先生のお話でございます。私まだ正確に社長の要望がどういうものであるかということは聞いてはいないわけでありますが、想像いたしますに、やはりイ病の原因について早く統一見解を出していただきたいという要望ではあるまいかと思うわけでございます。  それから、閉山にあたりまして、鉱害補償の問題、それから労務者対策の問題が非常に大きな影響を受けることはないのかというお尋ねでございますが、閉山をいたしましても、鉱業権者といたしまして、加工した結果出た鉱害についてはやはり依然として賠償責任というものはそのまま続くわけでございますので、これは当然三菱金属鉱業が賠償するということになるわけでございます。  それから労務者の対策にあたりましても、これはやはり私どもも閉山にあたりまして一つの非常に大きな指導対象としているわけでございますし、過去にいろいろこういう大手の鉱山の閉鎖という問題があったわけでございますが、いずれも自社もしくは自社系統の企業に吸収をいたしまして、大きな問題は残していないわけでございます。
  55. 三木喜夫

    三木(喜)委員 最後ですが、農林省にお伺いしたいのです。  いま、ずいぶん汚染土の客土の問題の話が出ておりましたし、地元ではずいぶんこれはやかましく言っております。したがいまして、これは構造改善事業の対象にはならないのか。構造改善事業は大体二百町歩を単位としていますね。しかし、現地では大体九十五町歩でこういう客土ができる対象にならぬかという要望が非常に強いわけです。いま課長に伺いますと、土壌汚染防止法によって対策事業として十アール単位でやれる、こういうお話もあったのですが、そういうことで兵庫県と連絡し客土を早急にやらなかったら、ここでとれるところの農産物に対するところの不安は一向に解消されない、土がそのままでしたら……。そういう点に対するところの対策と見解を聞きたいと思うのです。これは地元では非常に重要な問題ですから伺っておきたい。
  56. 住吉勇三

    ○住吉説明員 ただいま公害防除の特別対策事業の実施の方法でございますが、先生御案内のとおり、この特別事業を進めてまいりますためには、まず土壌汚染地域指定がせられまして、これに対しまして対策事業を各知事が立てられまして、農林省の承認を得て、さらに土地改良事業としてこれは実施することになっておりますので、土地改良事業の手続をやっていただきまして事業を実施するというような運びになるわけでございます。  この生野につきましては、まだ汚染地域指定を受けておりません。したがって、手続は上がってまいりませんが、農地局といたしまして、来年度予算でも、この申請された場合を予想いたしまして、国費で約一億六千万というような事業予算を要求しております。手続が参りました場合には、受けてすぐ事業を実施できるという準備を整えております。
  57. 三木喜夫

    三木(喜)委員 現地の試算によりますと、大体一反歩に対して三十六万円費用がかかる。小さい地域ですけれども、ここで大体三億円くらいの費用が要る、こういうことなんですが、それに本年度土壌汚染防止法によっての対策事業としてはわずかに国は二億円、これで環境庁長官、客土をしたり汚染対策がやれるかどうかという問題ですね。こういうかなり長い間汚染が浸透しておる地域に対して、年間二億円だけでどう対策を立てていくのか。一地域だけでも三億六千万円ぐらいの金が要るのですが、どうされるのがいいと思われますか。それだけ伺っておきたいのです。
  58. 大石武一

    大石国務大臣 いま土壌汚染度を調査しておりますので、おそらくはその結果が出次第、これはその指定地域になると思います。そうしますと、いまお話しのように土地改良が行なわれるわけでございますが、これは全部国費でやるわけではございません。企業者が大部分を負担いたします。そうしてその一部を国で出すということになりますから、どのくらいかかりますかわかりませんが、相当の仕事ができるはずでございます。ことに、いろいろな地形にもよりましょうけれども、客土というのは、反当三十六万円といいますと、これは相当、埋め立てをするくらいの、大きな新しい干拓をするくらいの予算になりますから、反当三十六万円というのは私は相当過大な——土地柄によりますが、一般には客土はそれほど金はかからないと思います。そういう意味で、企業の負担が中心になりますから——いまの二億で足りないかもしれません。そういう地域が多くなれば足りませんが、一応やれる。もし足りなければやはり国費として、いろいろ予備費の支出もできますから、そういうことで、足りなければ十分に努力してまいりたいと思います。
  59. 田中武夫

    田中委員長 三木君時間が参りました。もう一間だけ許します。
  60. 三木喜夫

    三木(喜)委員 大体終わりましたが、結論を急げとかあるいは統一見解を早く出せとかいう問題は、イタイイタイ病というカドミウム汚染の頂点の問題ではなくて、汚染全体にわたるところの対策やそういう企業責任を明確にしたところの結論を出してもらいたいと思うのです。いまお話のありましたように、汚染対策としては、半分は企業、残りの五五%が国、そしてその残りを自治体、その地域の町村と県ということになっておりますけれども、これはえらい金が要りますから、そういう対策はやはり相関的にお立てをいただきたい。これは環境庁長官に特にお願いしておきたいと思います。  終わります。
  61. 田中武夫

    田中委員長 三木君の質問は終わりました。次に、岡本富夫君。
  62. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま論議されておりますところの市川流域のカドミウム汚染につきまして、若干私も質問いたします。  まず、市川流域の汚染調査をなさいました。それから福島県の磐梯町の調査もなさった。これは私も現地を調査してやったわけですが、この相違について、まずこれは農林省のほうからお聞きしたい。米の交換とかいろいろなことがあると思いますけれども……。
  63. 中村健次郎

    ○中村(健)政府委員 調査につきましては、私のほうでやっておりませんので、私のほうからお答えしかねると思いますが、その磐梯町あるいは生野地区におきます食糧庁が扱っておりますカドミウム汚染米の在庫その他につきましては私のほうで調査をいたしておりますので、この点についてはお答えをいたしたいと思います。  まず、生野地区でございますが、ここの地区につきましては、四十五年産米以前の米につきまして食糧庁が買って現在持っておりますカドミウム汚染米は約七十トンでございます。このうち約四トンが一PPM以上の米でございます。六十六トンが一PPM以下でございますが、配給に回さないということで保留をいたしております。そのうち十トンは農家の保有米と政府米と交換をした結果、政府の所有になったカドミウム汚染米でございます。磐梯町につきましては、四十五年産米以前の米が政府で保留いたしておりますカドミウム汚染米といたしまして三百七十八トンございます。いずれもこれは一PPM以下の地域の米でございます。四十六年産米につきましては現在調査の途中でございますので、確定した数量は申し上げられませんけれども生野鉱山関係地域におきます地域生野町と朝来町、大河内町の三町村につきましては、県のほうで一PPM以上の米が生産される地域とそれ以外の地域というふうな線引きが終わっておりますので、この町村の数字は確定いたしておりますが、残りの町村につきましては現在そういった作業をいたしておられるようでございますので、一応関係しております部落全体の米を私のほうで保留をいたしておりますが、その数量を申し上げます。四十六年産米につきましては生野鉱山関係地区で約三百トン程度がいま申しましたようなカドミウム関係の米として政府が手持ちするようになることと思います。そのうち約六トン程度が一PPM以上の米になろうかと思います。それから農家が保有米と交換をしてもらいたいという希望を持っておられます数量が約二十六トン程度になると思います。磐梯町につきましては約百七十七トンの米が政府の保留する米に相なると思います。そのうち十八トンが一PPM以上の米ができるということで県のほうで線引きされました地域からの米でございます。
  64. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで長官のほうにお聞きしたいのですけれども、いま食糧庁から話があったように、カドミウム汚染米の政府手持ち、これが四十七年度だけを見ますと、要するに福島県の磐梯町では一PPM以下が百七十七トン、それから一PPM以上が十八トン、それに対して市川流域の四十六年度を見ますと一PPM以下が三百トン、以上が二十六トン、こういうことになります。私これを見まして、この量からいっても決して相違はないと思うのですが、福島県の磐梯町は要観察地域になっております。ところが市川流域はそうなっていない、なぜ同じようにしないのか、この点をひとつまずお聞きしたいのですが、いかがですか。
  65. 大石武一

    大石国務大臣 詳しいことは局長に答弁させたいと思いますが、大体要観察地域にする場合には、環境庁地元の県との間の話し合いによって、両方の了解によってこれをすることにいたしております。たとえば話は違いますが、生野の地方、これもお話によれば大体要観察地域になってしかるべき土地と思いますけれども、これは兵庫県ではそうしてほしくない、われわれ独自の力でやるんだ、われわれでやるからただ協力だけしてもらえばいいという、そういう兵庫県の希望がございますので、あそこは要観察地域になっておらないのでございます。今度の場合もそうじゃないかと私は一応考えまして、そういう答弁をするわけでございますが、なお正確なことは局長から答弁させたいと思います。
  66. 船後正道

    ○船後政府委員 生野地域は国の要観察地域になっておりませんが、兵庫県ではこれに準じまして独自に要健康調査地域として実質的には同じような措置をとってまいっております。今後の問題といたしましては、兵庫県ともよく相談いたしまして、要観察地域指定の要否は検討してまいりたいと考えております。
  67. 岡本富夫

    ○岡本委員 兵庫県が市川流域にはイタイイタイ病あるいは今後そういうものが起こらないということを発表をいたしておりますときに、それに対して環境庁山本公害保健課長はこういう談話を発表しております。兵庫県からはまだ聞いていないが、市川流域は要観察地域に含まれておらず、常識的には考えられない、こういう談話を発表しておる。これは間違いないですか。
  68. 山本宜正

    山本説明員 お答えいたします。  私が四十五年のカドミウムの総点検以降の兵庫県の汚染データを見ておりまして、一応そのときには県から実は聞いておらなかったわけでございます。新聞のほうからの問い合わせに対しまして、いままでのデータから考えればないであろう、こういうぐあいに私思っておったわけでございます。しかしそのときにさらに県の調査を十分見て最終的な考え方をしたい、こういうぐあいに実はつけ加えておるわけであります。そういった趣旨のお答えをしたように記憶をいたしております。
  69. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官、ここで私判断していただきたいのですが、いま食糧庁から話があったように、要観察地域の福島県の磐梯町と何ら変わりがないのが生野鉱山の市川流域の姿である。しかもあなたの答弁では、兵庫県のほうから要観察地域にしなくてもよろしい、私のほうでやるからというのであれば要観察地域と同じじゃないですか、結果的に見て。であるのにあなたのほうの課長さんの、要観察地域に含まれていないからそういうものが出てくるというのは常識的には考えられないというような非常に軽率な見解は私はおかしいと思うのですが、いかがですか。
  70. 大石武一

    大石国務大臣 どうも多少表現のしかたが舌足らずであったような気もいたしますが、そのほかのいろいろな発言もあったのでしょうけれども、ある短い部分だけをとられますとそういうことにもなりますので、以後はよく注意するようにいたしますので、ひとつ……。
  71. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、環境庁長官にお伺いするのですが、兵庫県のデータは全部出ておりますか。要するに尿中カドミウムあるいはいろいろなデータですね。全部環境庁のほうに出ているでしょう。それをひとつ提示してもらいたい。
  72. 大石武一

    大石国務大臣 総括的な一応の調査報告が来ておりますが、なお詳しいデータにつきましては十五日に県のほうから書類を持ってまいるということになっておるそうでございます。
  73. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで兵庫県が発表いたしましたこの見解につきましては環境庁のほうに指示を受けたのかどうか、連絡があったのかどうか。前の日に兵庫県から環境庁のほうに連絡に来ておる、こういうことを私は兵庫県のほうからあるルートを経て知ったわけですけれども、その点はいかがでしょうか。
  74. 山本宜正

    山本説明員 お答えいたします。県が発表される前日に私のほうへ参りまして、いま長官からお答えいたしましたようなデータにつきましてのあらましを口頭で承りました。県の最終判断につきまして判断がむずかしいような点がありましたならば、国の鑑別診断研究班というのがあるので、そこへ持ち込んでくれればそちらで判断してもよろしいという点を十分含んだ上で県の判断をしていただきたい、こういうことをつけ加えて当時お話をして別れたわけでございます。
  75. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで長官、こういうことを考えますと、県が発表するというのであればおそらくこの検査につきましてはいろいろと環境庁のほうも関係していると思うのです。全然してないことはない。いままでこの汚染をいろいろと厚生省あるいは農林省、通産省、こういったところと一緒に調査しているわけですから、そうするとこの健康被害についても県が独自で発表する、それについてはやはり環境庁のほうに連絡に来ておるはずです。それをチェックもせずに、しかもいま聞きますと十五日にいままでのデータを持ってくる、尿中カドミウムとかいろんなもの、あるいは血液の検査、あるいはディスクですか、そういうのを持ってくるというのですが、そういうものをあなたのほうで見ずに、ただ支障がなかったらいいだろう、これでは私は軽率ではないか、こういうように思うのですが、非常にきびしい言い方でありますけれども、私はこれは住民の皆さんとしても納得できない、こういうように思うのですが、いかがですか。
  76. 大石武一

    大石国務大臣 今度のカドミウム患者についての検査のことでございますが、これはすでに以前から十分な連絡をとりまして、御承知のようにカドミウムによる暫定対策要綱というのがございまして、これくらいの厚いパンフレットがありまして、そういうものを中心にして検査の方法なりやり方をすべて十分に打ち合わせをしてやっておるわけでございます。しかも兵庫県としてはりっぱな仕事もやる県でございますし、それからあの委員もみなすぐれた優秀な学者でございます。そういう点からわれわれはその仕事については、結果につきましては十分な信頼を置きます。したがって、先ほどの課長の話にもありましたように、鑑別診断を要するならばこちらでそういう努力をするということをすでに申し伝えておりますが、そういうものを向こうで要らないという方針のもとに発表しておりますから、われわれは決してこれは軽率ではない、十分に検討者の能力と実力というものをわれわれは信用しての上でございますから、そのような判断をいたしておるわけでございます。
  77. 岡本富夫

    ○岡本委員 しかし、この兵庫県でやったところの——これも兵庫県でやってないんですね、診断班を別につくっておるんですね。何といいますか一つの逃げ道をつくっているわけです。変な話をしておかしいのですが……。いずれにしてもこうしたものを発表するときには、やはりあなたのほうに発表していいかどうかいろいろな連絡がある。これは私いままであちこちで試験データを見たときに発表せいというと、いやこれは国のほうに許可を受げなければ発表できないんだとか、あるいはまだ連絡してないんだとか、そういうことがたびたびあったのですが、そうしますとやはり長官のほうで、環境庁というものは全体を統括しなければならぬという立場から全体のデータを見て、しかも長官はお医者さんです、そんなしろうとではないわけですからチェックをして、そうしてこれならよかろうということにならなければ、信頼しておってもこういうことでは今後——いままでのところはしかたがないとしましても、やはり注意すべきじゃないか、こういうように私は思うのですが、いかがですか。
  78. 大石武一

    大石国務大臣 実は私は環境庁長官になりました当初からいろいろと皆さまに御意見を承って御指導を賜わっておりましたが、その中の一つの大きなことは、すべてのデータは手を加えないで正しく公表ぜい、できるだけデータというものは広く公表して知らせなければならぬという御指導は賜わっておりましたが、私はその方針を堅持しておるまでのことでございます。なまじわれわれがその結果がおかしいと思ったって、われわれが直接検査もしないでそのチェックをしたりすることは正しいことではないと考えておりますので、私はそのような環境庁が上級役所ぶって手心を加えるということにあまり賛成ではないのであります。
  79. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうでしょう、データに手心を加えたりあるいはまたデータをごまかしたり、そういうことはしてはいけないという長官の強い姿勢、それならば私は、この兵庫県の見解発表発表されるときに全部データを公表して、こういうわけだからカドミウム中毒あるいはイタイイタイ病は今後起こらないのだという、きちっとしたところを公表して初めて住民の皆さんは納得すると思うのです。これは長官がいまおっしゃったとおりです。ところがデータは伏せておいて、ただここに項目がずっと出ておりますけれども、こういう検査をしました、ところが何でもありませんでした、これでは私は少し納得ができない。次に申し上げたいことは、尿中カドミウムの濃度について二十四時間三〇マイクロリットルをこえるものがなかった、こういうことを発表するならば、それならば尿中カドミウムはこれだけであったというほんとのデータをやはりつけるべきではないか、そうでなければこれは一方的の見解発表じゃないかと私は思うのですが、長官の現在の考え方をひとつ教えていただきたい。
  80. 大石武一

    大石国務大臣 データを公表するということと、たとえば検査の結果をすべて細大漏らさず一人一人の尿中カドミウムについて何がどうのこうのというこまかいデータまで発表するということは別のものだと私は思うのです。これはイタイイタイ病であるかないかということを中心とした検査のことでございますので、それについてはあらゆる検査をしたでしょうが、その結果については、大体イタイイタイ病ではない、その根拠はこうこういう理由であるということの発表であれば、私は十分だと思います。ただしその場合のいろいろなデータについて、専門的に必要がある場合には幾らでも発表する、知らせてよろしいけれども、一々何も、医学的に判断も何もつかない人までねらって、すべて一人一人の患者の尿中の何がどうであるこうであるといったって、これは私はほととうに意味のないことだと思います。そういうことで、正確な判断とそれに関する基本的な論拠と申しますか、そういうものは正しく出してけっこうですが、それ以外のこまかい検査については、その必要があるという方に対しては公表するということで十分ではなかろうかと考えるわけでございます。こまかい、どのような発表をしましたか、私は実際に書類をまだよく見ておりませんので、正確なお答えになるかどうかわかりませんが、そのような基本的な考え方でよろしかろうと私は考えます。
  81. 岡本富夫

    ○岡本委員 山本課長に聞きたいのですが、あなたこの発表について、長官にも相談しなかったの。いま、こまかいことは全然聞いてないと言っている。
  82. 山本宜正

    山本説明員 県が独自に調査を進めた問題でございますし、私ども、県の進める手順の問題につきましては、こういった専門先生を集めて、その専門先生方の御意見を聞いて最終発表に持ち込みますということでございますので、発表文の内容等につきましては、私ども当時聞き及んでおりませんし、したがいまして、長官にも御相談はしなかったわけでございます。
  83. 岡本富夫

    ○岡本委員 私はその点について、やっぱりちょっと軽率だと思う。これをなぜ私が言いたいのかと申しますと、実はまだ中間発表です。全部の検査はまだできておりません。これは私は記者の皆さんにも申し上げました。そこで、尿中カドミウムにつきましても、私どもがとって、富山衛研で検査をしてもらったら、一日の量で三一・四マイクロリットル、こういうようなものが出ているわけです。それからディスク、このイタイイタイ病のパターンというのがある。あなた御存じだろうと思いますけれども、それも二人はちゃんと出ている。それから、イタイイタイ病になりますと、無機燐の定量が非常に少なくなる。これも一・四あるいは二・七が普通ですけれども、一・二ミリに落ちてくる。これは神戸衛研で調査した。またエックス光線、レントゲンの写真を見ましても、相当骨が改変層の徴候を示している。こういうことを見ると、カドミウム中毒によって——カドミウムというのは、御存じのようにカドミウム中毒がずっとイタイイタイ病に移行するわけですから、このイタイイタイ病を分けたというのは大体おかしいのですけれども、これは長官御存じのように、病気というのは一ぺんにぱっとある日突然なるのではなくして、それまでの経過というものがあるわけです。そうしますと、このまま置いておくと骨折になってしまったりして、今度ほんとうのイタイイタイ病になる。そして今度それをなおすというのはたいへんな手間がかかる。それよりも、早く初期になおしてあげる、救済の手を伸べてあげるということがほんとうに患者にとっては大切ではないか。これはあなたもお医者さんの立場で御承知だろうと思います。そうでなかったら予防医学というものは必要ないと私は思う。そこでお聞きしたいのですけれども、そういった疑いがあるものに対して長官はどういうふうに考えられるか、ひとつお聞きしたいのですが、いかがですか。そういった徴候ですね。
  84. 大石武一

    大石国務大臣 はなはだ申しわけありませんが、私はイタイイタイ病については何らの知識がございません。したがいまして、ただその信頼すべき医学者なり医者の判定を私は尊重するだけで、実際私個人としてはイタイイタイ病についてはほとんど知識がありませんので、何ともお答えすることができないのでございます。
  85. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたの談話の中に、疑わしいものはやはり救済すべきであるというのが出ておるのですけれども、これは間違いありませんか。
  86. 大石武一

    大石国務大臣 ございません。
  87. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、事実患者の家を私は約一年間かかってあちらこちら回りました。そして約二十数人に会いました。ところが、痛いものですから、行くと拒否する人がいます。また家族の人も、もういいから置いておいてくれと言う人もいます。理解ある人もいます。そういう中から私は聞いてきたわけです。したがって、長官に申し上げたいことは、お役人さんの仕事というものは、ここで診断するからいらっしゃいと言ったら集まってくるような人はまだ軽症です。ですからそういう人の診断と、実際に家に寝たきりで動けない、行ったら拒否する。私はレントゲンを持っていきました。そうすると、ふとんをつかんで、痛いものですから叫んでいる。そういう人がほんとうは救えない。そういう実際の事実を私は申し上げておる。その中から、私どもは今日まで約一年かかって一人一人調査し、あるいはまた理解を受け、診療所に連れてくるのに並みたいていのことではありませんでした。前の日にもうお断わりだというのを、またなだめすかして連れていって、そして診察をしてもらったわけです。こういうことを考えますと、長官、私はイタイイタイ病に対しては全然認識がないのだとおっしゃらずに、認識していただきたいのです。そして萩野先生に薬をもらいまして、ずっとそのたびに届けた。そうすると非常によくなってきた。こういう人もいるのです。しかも先ほど三木委員から、長年の水じゃないかというお話でありますけれども、私どもが調べたところによりますと、国道三百十二号線をずっと行きますと、生野峠を越えて生野町の真弓地区、そのちょっと向こうに生野高校があるのですけれども、ここに宮谷川という川がある。その川に宮谷橋という橋がある。そのわきに市川の水を取り入れたときの開通記念碑が立っておる。それから後鉱毒水が入っておる。そして汚染されておるわけだ。ですから、この記念碑はいつ立ったかということをまだ調べてませんけれども、そういうことから考えますと、これはどうしても再調査——兵庫県がただ何でもなかった、今後起こらないという見解は、私は違うのではないか。こういうことを考えますと、ひとつ長官のほうでほんとうにこの被害者の立場に立って、そしていまの間に救済してあげれば——それはいまは三菱さんは非常に良心的な排水のあれもやっております。しかしそれは四年ほど前からです。先ほど通産省からの答弁のように、それまではそのままだった。私中を見て来ました。そうしますと、一人でも二人でも一みなというわけにいきません。私たちも全部調べるわけにいかない。そうすると、一つでも二つでも基準をこえれば疑うのが医学として常識ではないか。そして救済をしようというのが私は環境庁長官のあるべき姿ではないか、こういうように考えられるのですが、いかがでしょうか。
  88. 大石武一

    大石国務大臣 私が疑わしきものは救済せよという指示を出したのでございますが、これは一人でも公害患者が見落とされることがないように、全部が正しく救われるようにいたしたいという気持ちから出したのでございます。ただし、疑わしきは救済せよということは、疑わしいということは、これは御承知かと思いますが、医学的な用語と普通俗に世間で使うことばとは内容が違います。疑わしいというよりも、まず八〇%怪しいとか九〇%そうらしいとか、あるいは二、三%しか怪しくはないけれどもあいつは怪しいんだというように、ピンからキリまでございます。しかし、医学的には、そういうものは三%とか一〇%というものは疑わしいという範囲には入りません。まず五〇%、六〇%、七〇%も大体こうであろうけれども、まだいわゆる定型的な症状が出ておらぬとかなんとかいうような、そういうものが疑わしいという医学用語になるわけでございます。私の使っております水俣病の場合の疑わしいというのは、そのような医学的な根拠を土台としたわけでございますが、それが一般にはどうも誤解されまして、何でもかんでも片っ端から患者と見てしまえというようなうわさが流れたのは残念でございますが、私の判断はそのような判断でございます。もちろん、かりに生野にそのようなイタイイタイ病患者があれば、これはどんなことがあっても見のがしてはいけません。絶対にこれは救済しなければならぬと思います。ただ、私の気持ちとしては、そのような患者のいないことを望んでおります。これはあれば不幸なことでございますから。ですから、あるかないかは厳密な医学的な検査を経なければなりませんから、そういうような厳密な検査を心から願っておりまして、たとえば兵庫県でやる診査委員にしましても、いずれもりっぱなメンバーでございますから、万が一にも間違いはないということで、われわれは安心いたしておるわけでございます。それにいたしましても、いまのお話のようにだいぶ痛がっている患者もあるようでございますから、おそらくはそういう患者もこの診査委員のほうで見のがすはずはないと思いますけれども、念を入れてもう少し事前に連絡しまして、十分手落ちのないように兵庫県にも連絡いたしたいと思います。なお、間違いないとは思っておりますものの、なお萩野さんというような専門家がおられまして、一応疑いを持っておられるのでございますから、そういうものも尊重して、その結論を見て、かりにそういう萩野さんのイタイイタイ病であるという診断が出ましたならば、それも十分に考慮に入れまして、さらに今後ともより一そうの調査なり検討を重ねてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  89. 岡本富夫

    ○岡本委員 私が富山県のイタイイタイ病の問題を四十二年に取り上げました当時の厚生省の館林局長、厚生省では栄養失調だということをどうしても主張して譲らなかった。その間、それから一生懸命に私どもは現地とそれからまた政府の皆さんにもお願いして、研究班をつくっていただいたりして、とうとうあれがイタイイタイ病だと認定されたりが四十三年園田厚生大臣のときであります。したがいまして、この問題については、相当ねばり強く長官のほうも取り組んでいただかなければならないのであります。  そこで、私、もうあまり時間がありませんから、申し上げたいことは、まず要観察地域にして——兵庫県がかまわぬと言うのだからうちのほうはしないのだということじゃなくして、同じ条件なんですから、まず要観察地域にすることが一つ、この点についてひとつお答えいただきたい。
  90. 大石武一

    大石国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、県と環境庁との間の話し合い、相談によって指定することになるわけでございます。ただ、県のほうでは、われわれ十分自信がございます、われわれ権威を持っておりますということで、十分環境庁とも連絡はいたしますが、要観察指定地域にしなくても、われわれ同じような十分の効果をあげますという考えでおられるのでございますから、必ずしも無理無理押しつけなければならぬということはないと思いますが、せっかくのお話でございますから、さらに兵庫県にもかけ合いまして、一もう少し検討してみたいと思います。
  91. 岡本富夫

    ○岡本委員 この問題は、環境庁と相談して、そうして要観察地域にも指定するというような答弁を知事が県会でしておるわけです。それを全部私知っています。ですから、ひとつ強力に指導をして、そしてそういう方面にまず持っていく。次には、環境庁事務次官からの通達がございますが、この四ページの第2に、「軽症の認定申請人の認定」これは「症状の軽重を考慮する必要はなく、もっぱら当該疾病が当該指定地域に係る大気の汚染または水質の汚濁の影響によるものであるか否かの事実を判断すれば足りること。」だ、こういうように、軽症者でも救っていこうという態度が見受けられます。しかし、これは公害指定地域でなければ何の効力もないことになるのではないかと私は判断するのです。ということは、救済法の第三条からきておりますから、そうしますと、この市川地域のここをひとつやはり指定地域にしなければならぬじゃないか。そこで聞きたいのですが、指定地域の要件として、多発するというのは大体何人くらいを多発と言うのか、「相当範囲」とある「相当範囲」とはどのくらいの範囲か、これをひとつ明らかにしていただきたいのです。
  92. 大石武一

    大石国務大臣 なるほど、多発とか相当範囲というのは適当な表現でございまして、私もあまり妥当な表現とは思いませんが、では、一人か二人か十人かということになりましても、はっきりそこに何人でなければならぬとか、何ヘクタールでなければならぬというような基準もつくりにくいと思います。そういう意味で、それがあいまいな適当な表現をしたと思いますが、これはやはりいろいろそのときの情勢なり行政の情勢なり判断によってこれを指定するということをしなければならないと思いますので、あまりそのようなこまかいことにはこだわらないで、正しい常識とそのときの情勢によって判断しなければならないのではなかろうかと考えております。
  93. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうももうひとつ何やらわからぬのですが、そこで、私が大気汚染の場合で尼崎市を指定地域にしていただいたときは、国から調査が来た。国から調査がなかったらできなかった。富山県も新潟県もやはり国から調査がなければならなかった。今度の問題はいかがでございましょう、ここを指定地域にする場合ですね。
  94. 大石武一

    大石国務大臣 まあ公害患者にいろいろ差異があると言うとはなはだ失礼になりますけれども、たとえばイタイイタイ病であるとか水俣病のような病気、これは断じて発生してはならないものでございます。しかし、過去の不幸ないろいろな事情によりまして発生するかもしれません。ですから、このようなイタイイタイ病とか水俣病のようなものが一人でも発生しましたならば、当然その人は公害病として認定されるように、そして地域指定されることが私は当然だと思います。そういう意味で、あまり形式的なことにこだわらないで、常識というのはそういうことでございますから、そのようなことで正しく判断してまいりたいと思います。
  95. 岡本富夫

    ○岡本委員 その正しく判断するにつきまして、やはり国から調査をしないと指定地域にはしないのか、それとも県段階あるいは向こうの段階だけで指定地域にすることができるのかどうか、これだけちょっと……。
  96. 大石武一

    大石国務大臣 いままでの行き方は、公害認定地域として、公害地域ですか、認定地域として指定しております。これはおっしゃるとおりに形式的には国から話をしまして調査費を出しまして、何かいろいろな段階を経て、そして第三番目に大体指定するという形になっておりますが、それはいままでのやり方でございますが、緊急な場合、あるいはどうしても指定しなければならぬ事情があります場合には、そういう形式にはこだわらないでしなければならぬものは当然認定すべきだ、こう考えておりますので、そのような判断でやりたいと思うわけでございます。
  97. 岡本富夫

    ○岡本委員 そういう判断でひとつこの地域指定をしていくように、そうでなかったならばこの事務次官通達は生きてこないということをひとつ強調して要望しておきます。  時間がありませんので、次に、四十三年五月八日の「富山県におけるイタイタイ病に関する厚生省の見解」、この中に、「イタイイタイ病の本態は、カドミウムの慢性中毒によりまず腎臓障害を生じ、次いで骨軟化症をきたし、これに妊娠、授乳、内分泌の変調、老化および栄養としてのカルシウム等の不足などが誘因となってイタイイタイ病という疾患を形成した」ということになれば、この主因はやはり何といってもカドミウム中毒ではないか、こういう見解が出ておりますね。この点についてもう一ぺんはっきりお答え願いたい。
  98. 大石武一

    大石国務大臣 私もそのとおりと考えております。
  99. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、兵庫県の見解である、カドミウム中毒は認められる、しかしイタイイタイ病ではない。カドミウム中毒をそのまますっとおいておきますと、骨はどんどん脱灰して、骨折にならなかったらイタイイタイ病でない、こういうことを厚生省できめておる。これは厚生省に頭のいい橋本さんというのがおりまして、あの人がきめたらしいのですけれども、そういうところをひとつ長官、やはりいまおっしゃったようにカドミウム原因によってイタイイタイ病になる。イタイイタイ病というのは痛いからイタイイタイ病というようになるという逆称ですから、イタイイタイ病という名前があるので痛い痛いというのではなく、痛いからイタイイタイ病という名前をつけたわけです。しかもこの病気については、萩野先生が二十一年に復員して帰ってからずっと手がけてきた。その当時厚生省は、絶対違う、風土病だ、あるいは栄養失調だと譲らなかった。それをやっと当時の園田厚相がいろいろな面から研究してきまして、イタイイタイ病と認定した。そのためにいまたくさんよくなっておる。動けなかった人が歩けるようになった、そういうような経緯もございますので、ひとつこの点を御留意の上、適切な処置をいただきたい。長官、その点についてどうですか。いまイタイイタイ病カドミウムの中毒によるのだということが明らかになりましたが、今度は進行を早くしない間に救っていこうという態度、これをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  100. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまの、早期に診断をして早期に治療をするという御方針には全く賛成でございます。
  101. 岡本富夫

    ○岡本委員 あと一問だけ……。先ほど三木委員から食品につき、要するに米の問題のお話がございましたが、これも長官にひとつ要望しておきたいのです。厚生省が食品衛生できめておるところの米の濃度、これは一PPM、厚生省できめておるところの水の中に含まれたカドミウム基準は〇・〇一PPMです。何と百倍です。米が〇・四PPMという場合は四十倍です。そこで、水質基準は〇・〇一PPMというのは決して厚生省がきめたのではなくして、世界保健機構、WHOですか、これできめたものを採用しておるだけだ。これは世界の基準になっておるのだ。米あるいは水は一PPM。ある学者がこれを研究しました。五PPM入れた水をマウスに飲ませても何の骨の異常もないのです。ところがえさ、米に〇・四以上与えると、そのマウスは異常が起こる。そういう試験データも出ておるのです。だから環境庁でその点を一ぺんよく研究して、この厚生省の基準というものがほんとうにそれでいいのか悪いのか。暫定基準ですよ、これは。しかも先ほど食糧庁次長のほうから答えがありましたが、これは経緯を知らないからああいうゆうゆうとした答弁をしたと思うが、ほんとうは食糧庁のほうで〇・四をきめたのです。あとで一PPMを厚生省できめたのですよ。だから三木委員に対するところの答えというものは、私はどうしても納得いかぬと思うのですけれども、これはもうしかたがない。そこでこれは要望しておきます。この研究をひとつして下さい。そして、住民の皆さんの心情はわかりますよ、わかりますけれども、いま全世界あげて公害問題に取り組んで、何といっても人命を尊重しなければならぬ。病気を起こしちゃならないというのが環境庁の一番の役目じゃないでしょうか。だからこの点について疑わしいものは全部救済してまず早くなおしてあげる、これも一つでありますけれども、やはり次に病気が起こらないようにするという面から考えましても、こういった研究が必要じゃないかと私は思うのですが、いかがですか。
  102. 大石武一

    大石国務大臣 全くお説のとおりであります。私は環境庁としていろいろな環境基準なりあるいは排出基準をきめておりますけれども、率直に申しましてそれが全部最も正しいとは必ずしも考えておりません。まだそれだけの十分なる研究なりそういうものがそろっておらないわけでございます。しかしまずまずこの程度ならば間違いなかろうという点では、私は信用いたしております。ですからこれからはやはり、この基準というもの、環境基準というのは理想的な基準でありますから、いまのような基準でも困ると私は思います。いまのような環境基準は、近い将来は暫定基準であって、さらにもっと二段なり三段上の環境基準もきめなければなりませんし、それを達成するための排出基準というものにつきましても、より厳密な検討なり研究が必要と思います。そういう意味で、実はあまりいろいろな公害の問題が多過ぎますのでなかなか手が回りかねまして、そこまでまだ手をつけておらないのでございますが、公害対策研究所ができましたらその一つの大きな仕事として、的確な、最も必要で最も合理的な基準というものを早くつくり出すように、そのような努力をいたさせたいと考えておるわけでございまして、できるだけ早く御趣旨に沿うように努力してまいる覚悟でございます。
  103. 岡本富夫

    ○岡本委員 そういうことで、基準というものは非常にあいまいな点があると思うのです、医学が進んでいきますと。そうすると鑑別診断班基準というものもやはりこれは暫定的ですから、これももう一ぺん検討をして、そうしてあなたがおっしゃったようにカドミウム中毒によってイタイイタイ病が出てくるのだということになれば、もう一ついまの、何といいますか基準より下げて救済をしてあげなければ、軽症の患者、要するに第三期くらいのところの人たちが救えないのだということも頭に置いて、そしてやっていただきたい。これを要望しますが、その点についてひとつ……。
  104. 大石武一

    大石国務大臣 よく御意見を尊重いたします。
  105. 田中武夫

    田中委員長 これで岡本君の質疑は終わりました。  次に、島本虎三君。
  106. 島本虎三

    ○島本委員 前回の三月七日十時十五分から参考人の意見の聴取が、いわば休廃止鉱山公害対策の一つとして行なわれました。その意見がいろいろ開陳され、関係者からの意見もあわせて十分問いただしてみたのでありますが、この中では、ことに通産省、行政当局の怠慢ぶりが、目に余るようなものが出てきている。私は一つ一つこれをあげて、この対策についてきょうは聞いていきたい。厚生省来ておりますか。それから自治省も来ておりますか。  まず通産省。確かにこれは鉱山保安局の指示どおりやっておらないようですが、これは下部のほうでは製練所には堆積場の両側にみぞをちゃんと掘って、水が変にため池その他に流れ込まないように指示しているというお話です。そのとおり行なわれたんですか。それをだれが監督していたんですか、長年月企業べったりになって、こういうような対策を全然怠っていた責任はどっちにあるのですか。まずこの答弁を先に願いたい。
  107. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 土呂久の鉱害に関連しまして、監督局の指示事項に対する実施状況でございますが、当局の鉱山課長が現地を見てまいっておりますので、課長から現地の模様を入れまして、先生お尋ねのことに対して御答弁いたします。
  108. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 お答えいたします。  土呂久鉱山公害防止のための指示でございますが、これは昨年の五月及び六月の二回にわたりまして七項目、いずれも指示をいたしまして、この項目は七月上旬までには工事が終わっております。それから今回の問題になりました例のかまの問題でございますが、それに関連いたしまして、十一月十六日に九項目の指示をいたしました。その次に、それに関連いたしまして十二月二十日に監督官が現地に参りまして同じく九項目、計十八項目指示をしたわけでございます。十一月十六日の九項目の指示事項につきましては、大部分の工事は終わりましたけれども、一部未実施のものがございまして、これにつきましては十二月二十日付で不十分なものを対策強化の指示をいたしまして、追加事項の指示をいたしております。十二月二十日の指示事項につきましては九項目をいたしておりますが、一部ができ上がりまして、その他については三月の中旬までに完成をする予定でございます。いま申し上げた指示事項については、三月の中旬までに完成する予定でございますが、ことしに入りまして、一月十八日から約一週間にわたって精密検査をいたしまして、この結果に基づきましてまた三月四日付で十三項目の追加指示をいたしております。
  109. 島本虎三

    ○島本委員 もういいですよ。そういう指示、これが完全に行なわれていたかどうか聞いているのです。指示して、それが完全に行なわれたことを確認してありますか。御答弁願います。
  110. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 項目といたしましては全体で二十七項目ございまして、三月十五日で完了いたしますのが十八項目ございます。それから、追加指示をいたしておりますのが五月末ごろになる予定でございます。
  111. 島本虎三

    ○島本委員 それは、完了するのがおくれてもいい、こういうような指示を流してあるのですか。その完了がおくれた分は五月末までにできる、それは認めたのですか、認めないのですか。
  112. 蓼沼美夫

    ○蓼沼説明員 これは、一部につきましては積雪あるいは道路破損のために、現実にできなかったものを追加指示とした、こういうものもございまして、作業の進行上やむを得ないものもあったかと思われますが、進捗状況のおくれたものについては、追加指示をいたしまして促進させるようにいたしております。
  113. 島本虎三

    ○島本委員 明治初期から大正九年まで、昭和八年から昭和十四年まで、それからまた休んで昭和三十年から三十七年まで、こういうふうに断続的にやっていた。指示してやっているのはつい一、二年、これくらいしか指示してないじゃないですか。その以前はどうだったですか。
  114. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 先生御承知のように、鉱山保安法は昭和二十四年から施行されておるわけでございますが、金属鉱山につきましては、新法にかわりましてから、土呂久の場合には稼行中におきましては年一回ないし二回の監督をいたしておりました。監督のたびごとに必要事項については指示をしてまいっておるわけでございます。
  115. 島本虎三

    ○島本委員 二十四年からできて、必要な指示をしておった。それが守られておって、やはり土呂久のような亜砒酸中毒が起きるのですか、まずここを簡単に言ってくれ。あなた方の指示を守っていても、これは必然的に起きなければならないものですか。
  116. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 亜砒酸の製錬におきます鉱煙の問題につきましては、大気汚染関係の規制というものが大体昭和三十年代の後半から始まったわけでございます。したがいまして、それまでの間におきましては、具体的な規制条項というのもございませんでしたので、一般的な監督の一環といたしまして、SO2等の測定はいたしておったわけでございますが、公害防止ということを主眼にした規制というもりはやっていなかったわけでございます。
  117. 島本虎三

    ○島本委員 三十年から三十七年までやっている。この時点で気がつけば当然指導しておかなければならないはずです。どうも行政のほうがおくれている。そのときにはやらなくてもいいというような指示だったからやらなかったに相違ない。これは政治の姿勢だ。しかし、いまこうなった場合には、一日も早くこういうような状態を回復させないとだめなんです。ところが、先般の参考人の意見、これはどういうことですか。鉱業協会の副会長、これは四十五年には七十九億円、四十六年百五億円、全部の二八・六%も鉱山公害にかけている。年二億公害賠償に応じている、こういうようなことをいろいろ言っているわけです。それに対してでもこれで当然だというような顔をしてやっているのです、顔はどうでもいいけれども。皆さんの指導というものがどこまでいっているのか、私はずいぶん疑問だった。金属鉱物探鉱促進事業団の理事長の平塚さんの発言によると、地下鉱物は、自然環境を荒らすのは免れないのだ、こういうような偉大なる発言があったわけです。あとからいろいろ弁明しておりましたけれども。その中に三十六年から四十六年まで比較して、生産鉱山が六百三十七に対して二百二十八に減っている。それから試掘鉱山が千二百八十九から三百五十九に減っている。合計、千九百二十六が五百八十七になり、千三百強が休廃鉱山になっておる。こういうような報告があったわけです。  そうすると、当然千三百強の休廃鉱山に対して適切妥当な指導がなければならない。はっきりわかって、法的にも措置しなければならないのだけでもこれほどあるといっている。しかし、予測される戦前からのものを全部入れると五千か千五百か、こういうようなことさえ考えられる。これが全部鉱害発生源として現在活躍中である、こういうようなことになるではありませんか。この千三百強に対してどういうような措置をしておったのか、この際はっきりさせておいていただきたいと思う。
  118. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 金属鉱山公害防止対策というものが本格的に行なわれましたのはここ数年でございまして、それまでの間におきましては、SO2であるとかそういうふうな健康被害に直接関係のあるようなもの、それからダム、鉱滓堆積場の大規模な崩壊というふうなもので直接生命に危害を及ぼす可能性のあるものに重点を置いて監督をしてきたわけでございます。鉱業というものにどうしても鉱害が伴っておったわけでございますが、むしろ軽微なものにつきましては賠償解決をする、そういう考えから、鉱業につきましてはすでに昭和十四年から無過失賠償責任というものを課しておったわけでございます。  確かに先生おっしゃいますように、鉱害につきましては五千をわずかにこえる数の現在の休廃止鉱山に、かなり多くの鉱害源というものが蓄積をいたしておりまして、これが私どもの仕事を非常にむずかしくしておるわけでございます。  これを防止するためにどういう措置をやっておるのかということでございますが、一つは、鉱山と申しますのは、条件が悪くなってきますと、体質が弱いと申しますか、体廃山に追い込まれるものが非常に多いわけでございますので、休廃山いたしましたときの鉱害防止対策というものは、鉱山が生きて稼行いたしておる間に始めなければならない。現に稼行しておる山に対する鉱害防止対策を強化することが休廃止鉱山鉱害防止対策の第一歩であろうと私どもは考えておるわけでございます。  それからただいまの、先生おっしゃいますように、すでに鉱害発生源としてあります休廃止鉱山につきましては、これは四十五年から組織的な調査をいたしました。そのうちの約千鉱山につきましては何らかの問題があるのではないかというふうに考えられますので、これを四カ年計画で悉皆調査をやろうということで進めておるわけでございます。この調査によりまして、やはり問題ありと申しますか、鉱害防止につきまして具体的にある程度の工事をやらなければならないという鉱山がかなりあるわけでございます。しかも、そういう山につきまして、鉱業権者に力のありますものについては、鉱業権者をしてその工事をやらせ得るわけでございますが、あるものについては鉱業権がすでに消滅をしておりまして、鉱業権者の行くえが知れない、それからまた、わかりました場合にも、無資力になっておりまして、そういう工事をやる力がないという場合も非常に多いわけでございます。そういう事実を踏まえまして、今年度から休廃止鉱山鉱害防止対策費というものを予算に計上していただきました。ことしについては九千七百万円の予算で、これは国が三分の二、県が三分の一を負担いたしまして、具体的に鉱害防止工事を進めるということをやっておるわけでございます。今回問題になりました土呂久鉱山の下流におきましても、同鉱山の稼行によりましてできました東岸寺の堆積場につきましては、この予算をもって工事を進めておるわけでございます。四十七年度については、本予算は二億四千万に増額をお願い申し上げておるわけでございますが、やはりこういうふうに相当国が直接力を入れませんと、公害防止対策というものの万全を期し得ない実情になっておるわけでございまして、私どももまた一段の努力をしていきたいと考えておるわけでございます。
  119. 島本虎三

    ○島本委員 それは何年計画でいつこれを完成させるか、対象鉱山もすべてそれに書いたものを資料として渡してください。
  120. 田中武夫

    田中委員長 できますか。
  121. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 できます。
  122. 島本虎三

    ○島本委員 なお、健康被害の点についても、まことに憂慮すべきものもあるのです。廃水が川の水を汚染する、そして採算だけによって掘ったりやめたりすることは、周囲に迷惑であり、住民にははなはだこれは迷惑なんだ。砒素を含んだ水、どろ、したがって歩けばくつが変色する、小林教授はそういうふうに言っていたわけです。その時点で、健康被害の点を自治体としてどういうふうに考えておったのか。土呂久の場合には特にこれは異常な現象なんですが、県当局のほうの資料、まことにこれは県のほうが権威を持っているという先ほどの話なんですが、しかし、権威を持っている県当局が企業べったりであったならば、その権威なんかどこへ消滅するかわからぬ状態である。おそらくこういうようになってしまった状態の中で、県当局がどういうふうなことをしていたのか、これは自治省のほうで知っておられなかったのですか。  あわせて、住民のほうで水道をつくるのに八十万円の金を用意したのに、個人負担でつけさして、その原因者である住友があえて何ら手を加えない。原因を与えながら、水が悪くて水道の水を飲むより以外にしようがない、八十万円かけてやったところが、ほんの十七万円補助したにすぎない。これはほとんど全部企業がやらなければならないのではありませんか。こういうような点は、宮崎県ではどういうような指導をしていたのですか。そして、こういうような点は、いまいっても通産省は知らないだろうけれども、全くこれは県当局が企業べったりであって対策を怠った、こう言わざるを得ないのです。自治省のほうではどういうふうに見ているのですか。
  123. 立田清士

    ○立田政府委員 ただいまお尋ねの件でございますが、宮崎県のほうにおきましては、先ほど通産省からお話がございましたような、むしろ廃鉱の問題として過去いろいろな対策について検討しておったようでございますが、いまの健康問題につきましては、いま御指摘のとおり、最近そういうようなことでいろいろな措置をいま講じてきている、こういう状況にございます。そこで、この点に関しまして、私たちのほうといたしまして、やはりこういう鉱害対策につきましては、もちろん、それぞれの専門分野におきますいろいろ調査あるいは対策が必要でございますけれども、やはり県自体におかれましても、積極的にこういうことに取り組んでいく必要があるというように私たちのほうは考えておりまして、特に最近公害対策全般につきまして、行政的にもそういう意味であらゆる角度から取り組んでいく必要があるというふうに私たちは考えておるわけでございます。なお、県のほうからは、直接私らのほうにこの点についての御相談はいままではなかった、そういう状況に過去はございます。
  124. 島本虎三

    ○島本委員 最近になってから、健康の問題で、これはもう異常な事態にあることがわかったというのです。そして資料を出さしたところが、土呂久地区とそれから山附地区、これを対照した資料を出してきたのです。双方の差があまりないからよろしいというような資料なんです。ところが宮崎県全体、日本全体との資料の対比が一つもされておらぬのです。最近になってから健康の異常がわかってきた、こういうのでありますけれども、土呂久地区では、昭和二十六年ごろ、日本全部の零歳から四歳までの平均の死亡率が一七だったころ、七六・九になっているのです。二十七年には日本全部の平均が一四だったころに二三〇というような、異常な死亡率を示しているのです。昭和二十七年です。二十八年には、同じ全国平均が一三という数字を示しているときに、これまた七六・九。二けたですが、高いのです。二十九年には、日本全国の平均が一二という数字を示しているときに、四六一・三という数字を示しているのです。それから三十一年には、日本全国の平均が一〇になった、この辺から一〇に平均してきたときに、三〇七・七。依然として高いのです。そして三十二年には、同じく日本全国の平均が一〇というときに、一五三・八と一〇〇台を下がらないのですよ。この辺から健康の異常が発生しているということがどうしてわからぬのですか。これは環境庁の発言によっても、県のほうが権威を持っています、こういうことなんですが、厚生省、この辺からもうはっきり異常があらわれているじゃありませんか、統計で。そして、県当局のほうから資料を仰ぐと、土呂久と山附地区、この対比した資料しか出さないのです。日本全国の対比から見るとこのように異常なんです。ほとんどこういうような状態ですから、山附方面のやつもやや似たような状態で出ているのです。あまり差がなく出ているのです。これでは、この地区は異常だということになるじゃありませんか。おそらくこういうような対策をほとんど怠っておったんじゃないか、こう言わざるを得ません。  そして、四十四年になってもやはりそのとおりです。平均が五・一五とこうなっておるときに——こっちのほうは数字が出てないからわかりませんけれども、とにかくこういうふうにして対比できる資料を持ってくると、宮崎県のほうの県当局が出している資料はおそらくずさんです。他に対比するとはっきりする。これは当方へは環境庁を通じてもこれが上がってこない。数回にわたった結果がこれだけの資料があらわれてきたのです。昭和二十四年、これは五三八という数字を示しております。それから、二十五年は二三〇という数字です。こういうふうにして、以前からこれがずっと高いのですから、もう気づいていなければならないはずなんです。ことに老人のほうの対比になると、土呂久では七十歳以上の老人はおらないじゃありませんか。ほとんど微々たるもの。七十代の死亡率が急に高くなって、八十歳になると全部死んでしまっているのです。過疎対策というけれども、過疎へ行けば行くほど老人の寿命が長くなるのです。ここでは、過疎だというけれども七十歳代は微々、八十歳以上の人がおらない。もうすでに健康が異常だということがわからなければならないはずです。厚生省当局は、こういうような点はどういうふうに見ておりましたか。
  125. 曾根田郁夫

    ○曽根田政府委員 土呂久の問題につきましては、私どものほうも、環境庁あるいは県の環境保健部当局から連絡を受けておりまして、先般その概要の中間報告がございました。  それから、目下第三次の精密検診が実施中で、近くその結論が出るであろうことも承知しておりますけれども、今回の一連の調査自体は、環境庁中心に、県あるいは関係諸団体等で行なわれ、その結果について一応の公表も行なわれておりますので、私どものほうは最終的には精密検診の結果を待って——まあ県の御連絡によりますと、場合によって患者の治療と申しますか、そういう問題全般について、環境庁も含めてあるいは厚生省の協力を得なければならぬというような実は連絡も受けておりますので、いまその結果を実は私ども待っておるところでございますが、先生御指摘のように、乳児死亡率あるいは老人等の死亡率云云につきまして、私ども具体的にその数字を持っておりませんけれども、御指摘のように、たとえば乳児死亡率だけについて言いますと、一般的に全国平均より宮崎県などが非常に高い数字を持っておることは承知しておりますが、問題は、県全体の平均と土呂久地区の当該地域との関連がどうなっているか、そういう具体的数字は私ども持っておりません。しかし、ただいまのような問題もございますので、場合によりますならば、環境庁とも御相談の上、私どものほうでも必要な資料等の整備に協力したいというふうに考えております。
  126. 島本虎三

    ○島本委員 宮崎県は全国平均より高いという、そのとおりですけれども昭和二十五年から二十九年までの間は、その宮崎県の三倍ぐらいの死亡率を示しているんです。高い宮崎の三倍、その地区が異常だということははっきりするじゃありませんか。だから、県当局が十分指導しなければならないのはその辺なんです。いわゆる企業べったりだからこういうことになるのです。そうして通産省自身は、せっかく公害保安局ができておっても有名無実のようなものだ。指摘されてからようやく走る。これはとてもだめです。いまようやく、五カ年計画でもって全部やるというから、その辺は芽を出してきた。こういうようなことでは、私どもはもう納得できないのです。あえて言うと、これは環境庁長官にあとでよく意見は聞いておきたいと思うのですけれども、後手後手にならないように企業に対して公害の面では完全に指導しておかなければならない。そのための公害保安局じゃありませんか。最近はもう方々に、マスコミにまで指摘されているようなことが起きてきている。これはもう裁判ざたになっている。これはもう全部保安局じゃありませんが、通産省も怠慢じゃありませんか。三菱造船、これは造船所でしょうけれども、水銀や砒素、PCB、こういうようなものも含む廃棄物を、下請を通じて五年間も不法投棄して港則法違反で検挙されておる。こんなものは企業として一つの道義的な欠如ですよ。通産省指導の点でこれはもっと解決されなければならないのです。三菱造船でしょう、これは。それから大分の興人佐伯が二十年間にわたって廃液を流しておって、養殖の真珠を全滅さした。大手のパルプ工場が廃水処理施設の届け出義務を怠って水質汚濁防止法違反でまた告発された。結局、皆さん方自身がこれをやらなければならないことをサボっている。下部末端まで行き渡っておらない。通産省の怠慢だ。検察当局にあげられるまで黙っておくとは何事ですか。両罰規定の法律まであるのですよ。これは全くなっておらない。これに対して意見を聞いておきたい。どうしてこうなるまでほっちゃらかしておいたのか。
  127. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 最近、大手企業の中で公害防止に関連をしまして新聞紙上に出る、ないしは告発を受けるというふうなきびしい処分を受けるものが出てきておる事実がございます。  第一の問題は、これは実は通産省の問題でなくて他省の問題でございますので、申し述べることを控えさしていただきたいと思いますが、大分県の問題につきましてはパルプの廃液処理の問題でございまして、私どもも企業の指導ということには相当努力をいたしておりますし、全体として見ますと、この一両年企業の幹部の公害防止に対する意欲というものは急速に高まっておるということは私ども強く感じておるわけでございます。やはり数多い中にときに間違いを起こすというものが出るわけでございまして、非常に残念な気持ちでおるわけでございます。なお今後ともこの点につきましては万全の指導をしていくつもりでおるわけでございます。
  128. 島本虎三

    ○島本委員 事故が起きて、それが訴えられてから、これは今後注意します、鉱山が爆発してしまってから保安上注意いたします、こんなことをやっておる間に北海道や全国の石炭の山がつぶれてしまって、そして残ったのは公害保安局だけだった、こういうことで一体どうなりますか。こういうようなのは注意は初めからしておかないとだめなんです。ましてこれ大財閥じゃありませんか。結局巻き込まれてしまっている。財閥だけじゃないですよ。和歌山市でも採尿の投棄船が未処理のまま近接の港に捨て続けて昨年責任者が廃棄物処理違反として書類送検された。これは自治省にもあるのですね。そういうのは何といっていいのか、前世紀の、当然やらなければならないような義務さえ怠っているというのは、これはもう困った問題ですよ。こういうのが行政の実態です。通産省はもっとこの方面には気をつけてやつ  てもらわないといけない。できたものを追うんじゃなくて、事前にもう起こさないようにこれは十分配慮すべきである、こう思います。ことにもう環境庁との間でもう少し密接な連絡をとってやってほしい。これは私聞いて遺憾だったのですが、きのう通産大臣それから総理府総務長官それから大石長官の決意と今後の態度をわれわれ了解して結局安心はしたのですが、無過失賠償責任のあの法律案、あれでさえもあれを葬り去ろうとする動きが出て、そういうような申し合わせさえもしている。自民党の中でこういうような動きさえあった。当然法案説明は、環境庁が出すのは環境庁説明に行けばいいんだ、自民党の商工部会へ説明に行ったのはだれですか、通産省でしょう。こういうような状態で、はたして公害に対する対策、こういうようなものは公害対策対策をやるのが通産省じゃないんですよ。ほんとうの公害対策をやらぬとだめなんです。どうもこの点等で私は遺憾だ。何のためにあなたが説明に行ったのか、また環境庁がさぼったのか、今後のこういうような行政に対してどうするのか、最後に決意を承っておきたいのです。そのあとで大石さん、今後こういうような教訓を含めて鉱山の廃液処理その他公害防止についてもひとつ感想を述べてもらいたいと思います。何のために自民党のほうへ提出者でもない通産省説明に行かなければならなかったのか。
  129. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 党の商工部会に対しまして無過失責任立法の現況につきまして中間報告を申し上げましたのは、商工部会の要請によりまして、私どものほうから環境庁とも連絡の上、御説明を申し上げたわけでございます。   〔島本委員「でございますけれども、八日の日に行って法案説明をしたのはだれか、それは環境庁がやるべきですよ」と呼ぶ〕
  130. 大石武一

    大石国務大臣 行政全般にわたりましていろいろと御注意なりおしかりを賜わりましたのでございますが、よく心して行政をりっぱに持ってまいりたいと考えております。どういう点をお答え申したらいいかわかりませんが、いろいろな鉱山関係のあと始末につきましては非常に問題が多いのでございます。しかしこれは何と申しましていいか、過去のことをあまり責めてもいたしかたがないと思います。これは確かに日本の行政も悪い。もちろん企業も悪いけれども行政も悪かったと思います。そのような行政を許した日本全体の政治のせいだったと思うのです。しかしいまの時代は変わりまして、そういうことはなくなりました。これからは人間尊重のそのような政治の方向に進んでおりますから、われわれもそのような精神を十分に心いたしまして、ほんとうに今後人間の環境がりっぱに保全されるような、明るい健康で豊かなわれわれの環境ができるような行政にあらゆる努力を進めてまいりたいと考えております。そういう意味におきましても今回提案されます無過失損害賠償責任制度につきましては御激励をいただいておりますが、一生懸命にやる決意でございます。幸いにきのうの予算委員会の御質問によりましても、山中総務長官やそれから田中通産大臣は喜んで全面的に協力するという力強い発言もございました。私どもはこの目的に向かって一生懸命に進んでまいる決意でございます。
  131. 田中武夫

    田中委員長 島本君の質疑は終わりました。  次は瀬野栄次郎君。
  132. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 宮崎県の西臼杵郡高千穂町土呂久の亜砒酸公害、松尾鉱山問題点について、環境庁並びに通産当局にお尋ねをいたします。  御承知のように宮崎県の五カ瀬川の上流で、この川の支流になっております岩戸川、これは有名な天の岩戸のすぐ川上になりますが、   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕 私も本年の一月二十日から二十二日、また二月三日から五日まで、合計六日間二回にわたって現地をつまびらかに調査をしてまいりました。三月七日には岡山大学の小林教授をはじめ五人の参考人も呼んで事情をお聞きしたわけでございます。各大学の教授または現地学識経験者等の意見を聞きましても、まあ現在四日市ぜんそく、水俣病、あるいは富山イタイイタイ病とたくさんありますが、ある意味においてはこの土呂久の公害はいわゆる人間を消耗品化しているという意味から、公害史上最も悪らつな最大の公害である、こういったことがいわれております。  こまかいことについては先般からいろいろと委員会質疑が行なわれ論議されていますので省きますが、若死にをしている問題または狂い死にをしている問題、またとうとい人間が消耗品のごとく使われてきて、今日なお害を受けている人がたくさんいる。こういった点で現在でも現地の人はたいへん苦しんでおります。また現に当時仕事に参加した人が他県にとついだり、あるいは出かせぎに行ったり、あるいはすでに他県に移住したり、あるいはなくなったり、いろいろございますが、戦前戦後からこういった様子をずっと見てまいりますと、かなりの人があそこで働いていたということが追跡調査の結果わかっております。現に私のほうの熊本県の阿蘇郡高森町でもすでに十一名も被害を受けている人が出ております。追跡調査をすればかなり今後ふえてくると思います。  そこで、去る二月の三、四、五日に参りましたときに、岡山大学の小林教授も一緒に現地を調査いたしまして、このことについては、いわゆる坑内水あるいはズリあるいは米、稲わら、あるいは人間の髪、つめ、またはネズミシダ、こういったものを四十数点持ち帰っておりまして、現在試験データの検討をいたしております。この結果がいずれ近く判明をいたしますが、その結果を待ちまして、さらにいろいろと政府の見解をただすことにいたす考えでありますが、本日は本会議関係でかなり時間が制約を受けておりますので、以下、若干要点を、はしょってお尋ねいたしますので、明快に御答弁をいただきたい、かように思うわけであります。まず最初に、大石長官と、それから通産省にそれぞれお尋ねしたいのでありますが、この土呂久または松尾鉱山、こういった例は全国にもあまりないと言われておりますが、私の知るところではかなりあるんです。そして現在被害を受けている人がたくさんいる。もちろん県のほうでも第三次健康診断をしたりしておりますが、それぞれたくさんいるわけでありますが、こういう土呂久、松尾鉱山の問題に対して、具体的に救済対策は今後どういうふうに進めるのか、それを明快にお尋ねいたしたいのでお答えいただきたい、かように思います。
  133. 大石武一

    大石国務大臣 土呂久の問題につきましては、われわれもいろいろと心配いたしまして、できるだけの処置は講じたいと考えております。しかし、まだ実態が判明いたしておりません。どの程度の患者がいるのか、はたしてそれが何に基因するのか、いろいろと推測なり推定はございますけれども、まだ十分な鮮明はされておりませんので、われわれは宮崎県とも十分連絡をいたしまして、その実態の鮮明に努力をいたしております。それができ次第、わかり次第、万全の対策を講じてまいりたいと考えております。   〔島本委員長代理退席、委員長着席〕
  134. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 実態がはっきりわかり次第万全の対策をするという長官からの答弁でありますが、私、若干つけ加えておきますけれども、この土呂久は、御存じのように、歴史的には一応有名といわれております天の岩戸、高千穂、天孫降臨の地、高天原ともいって、観光地になっております。これは県側も、また地元のいわゆる商店街等も、いわば観光的な面からいろいろと苦慮していることも事実であります。公開の席であんまり具体的なことを言うのもどうかと思いますが、実は神聖で一番清らかであるべきところが、その天の岩戸のすぐ上流にこのような悲惨な公害によって汚染され、たくさんの苦しんでいる人がおるということは、これはもう観光の面からもいろいろショックを受けることであります。したがって、観光客も減るというようなことで、宮崎県自体としても、こういった問題については、この救済には十分尽くさなければならぬが、これがまたいろいろと明るみにされると、いろいろと観光客も心配したり、水、米、食料、あるいはまたいろいろなことから心配をして、観光客の足も減るということで、いろいろ苦慮していることも事実であります。こうしたいろいろな背景がありまして、今日までそうしたことが明らかにされていないという事実もございます。そういうことも考えて、後ほどいろいろお尋ねするわけでありますが、ひとつ早く実態把握をされて、鮮明にして、安心した観光地としてさらにまた脚光を浴びるように、さらに患者に対してはあたたかい手が差し伸べられるように対策をひとつ早急に実施していただきたい、かように思うわけであります。  そこで次に通産省にお尋ねしますが、久良知鉱山保安局長は、前回の質問に対する答弁の中で、昨年末土呂久の亜砒酸の焼きがまをこわした問題等について、設計図も写真も残っていますから心配ないような意味の答弁もありました。事実私も一月二十日、二十一日、二十二日と現地を調査しましたが、私が現地に着いたのは二十日の夜でした。二十一日に現地に参りましたが、二十日に証拠隠滅ともいわれてもしかたがないような、書類を山ほど焼いてまだあたたかいような灰が残っておりました。これらについては前回の質問でいろいろ明らかにされましたが、それはそれとして、今回この土呂久の上流の亜砒酸のかま跡をブルドーザーでこわしている。こわしているその現場を見ました。現地にそれを請負ってやった人夫の何人かが盛んに指示を受けておりました。それを谷合いに——ズリをこわしたので、Fにいわゆる誘水溝みたいなものをつくって、下に水を流す指示をしておりました。私はこれをつぶさに見まして、これはたいへんだ、このズリの中から流れてくるいわゆる坑内水、またはこういった亜砒酸を含んだ水が下流へ流れたらたいへんだ。これは何とかしなければということで指示をしておったと思うのですが、そんなことではたいへんでございます。こういったいわゆる亜砒酸等の焼きがま跡をブルでこわしておったが、どういうわけでこわすのか、また亜砒酸が残ったのを持っていくと困るということでそういうふうにするのか。現に土呂久の亜砒酸のかま跡には二トンの亜砒酸がありまして、佐賀関に持っていったことも事実であります。それがよそへ持っていかれると、毒性があるので劇物として人体に影響及ぼすということで、いろいろ心配してこわしたとも言っておられますが、それならいままでなぜ長く置いたか。またなぜ急にこれをこわしたのか。こわすならこわすでもっと対策を立ててやってもらいたいと思いますが、設計図、写真があるからといって決してこれは放置できない問題である、この点について私は私なりにあらためてひとつ御意見、御見解を承っておきたいのです。
  135. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 亜砒酸の焼きがまの処理の問題につきましては、前回お答え申し上げたわけでございますが、私どもあのかまがかくも長い間放置しておかれたということについてはわかっていなかったわけでございます。昨年の五月、六月の調査のときにかまの存在ということがわかりまして、先ほど先生がおっしゃいましたように、亜砒酸というものの猛毒性から、やはりその処理を早くしたほうがいいということで、これは劇毒物でございますので、県それから保健所と連絡をとりましてその処理をしたわけでございます。どうしてもれんがに残るもの、それかられんがにやはりしみ通っておる亜砒酸というものが考えられるわけでございますので、これをこわしまして土の下に埋め込むというような作業をいたしたわけでございます。
  136. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらにいまのに関連してお尋ねしますが、この鉱滓、すなわちズリ、こういったものが五カ瀬川の源流には何カ所もある。御承知のように、宮崎県は十三号から二十九号台風に至るまで千ミリ以上の雨がしばしば降ります。五カ瀬の学校が崩壊したこともありました。集中豪雨ということでもし土砂が流出したならば、一挙に谷合いにあるズリが五カ瀬川の下流に至るまで流れてたいへんな害を受けることは明らかでございます。七日の小林参考人は、現在でも佐賀関製錬所に搬出している、現に小林教授は七日の参考人の公述の中で、自分のくつにまっ白くついた砒素の写真等を示して、数カ所で鉱石の捨て場、ズリの山が流れ出し、毒水を防ぐ対策が緊急に必要だということを参考として述べておりました。また斉藤教諭も現地を代表していろいろと発言があった中で、現在鉱毒でよごれた川で学童が泳いでいる。これは健康上たいへんである。しかも学童の体位というものが、他の学校に比して低下している、これはデータがありますが、時間が制約されておりますので一々申し上げませんが、ずいぶん体位が落ちている、心配である、これは何とかしなければならぬ、こう言っております。こういったことについて通産省のほうから、こういった鉱滓、ズリに対する対策はどう考えているのか、どうしたいと思っているのか、また長官はどのように考えておられるか、簡潔にお答えいただきたい。
  137. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 土呂久地帯に残されております鉱滓、それからズリの硫砒鉄鉱その他の形で素が入っておるということは事実でございます。したがいまして、先生おっしゃいますように大雨、大水のときにやはり川に流入する可能性があるわけでございますので、ズリの堆積場につきましてそういう川への流出を防止する鉱滓扞止堤その他の設備をつくらせておるわけでございます。  それから学童の件につきまして、水の問題があるわけでございます。これは水に溶け込んだ砒素の問題でございますので、水の中の砒素の量の監視、これが排出基準ないしは環境基準を上回っていないかどうかということの測定を続けていきたいと思っております。
  138. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 局長、それで設備をつくらせておると言うが、現に土呂久はないのだけれども沈でん池をつくるとか当然いろいろやるべきだと思うのですが、土呂久にはさっそくつくるのですか。その点……。
  139. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 鉱滓につきましては土どめの工事をするということでございまして、現在鉱内水その他の水につきましては排出基準を上回るものはないわけでございますので、現在の状況では沈でん池をつくる必要はないというふうに私ども考えておるわけでございます。
  140. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 排出基準を上回るものがないと言うけれども、これは小林教授もいらして調査もしていらっしゃいますが、明らかにされておる。また実際調査の結果がわかれば判明するわけでありますけれども、そういったことを言っておいて、あとで問題になった場合どうするかと言いたい。時間の関係もあるし平行線をたどっておってもしようがありませんから、いずれにしても、こういう問題がたいへん児童にも、また下流にも影響を及ぼすということで、早急な対策が望まれるということでございます。  そこで、通産省にさらにお聞きするが、これは鉱山法違反にもなると思うが、見解はどうですか。
  141. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 ちょっと質問が聞こえませんでしたので……。
  142. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 こういった処置のやり方は鉱山法違反にならないかという問題です。
  143. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 公害防止の義務は、鉱山保安法の中と、その関係の法規の中にきめてあるわけでございます。崩壊の危険のある集積場その他については、崩壊防止の措置をする義務があるわけでございます。それに従いまして工事を進めさせておるわけでございますが、やはり厳密な意味においては規則の違反ということもあり得るかと思いますが、この点は、実態に即してもう少し検討しないとはっきりとここで明言することはできないと思います。
  144. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 実態に即してとおっしゃるが、実態はわかっておると思うのだが、これまた次回に詳しく詰めることにいたしたいと思います。  そこで、環境庁長官、時間もございませんが、健康調査で第三次検診をやっておりますが、他県におる者、すなわち先ほど申しましたように熊本県にも高森町に十一人おりますし、大分県、鹿児島県にもまた土呂久で働いていた人がおるわけですが、いずれ実態が鮮明にされたならば、こういった方も含めての一斉検診とということについても考えられるのか。こういった見解をひとつお伺いしておきたいと思います。
  145. 大石武一

    大石国務大臣 実態調査する上には、当時土呂久に住んでおられまして、いまはよそに行っておられる方もやはり十分に検診をする必要があると思います。あとでなくて、先にそういう方々もできるだけ手落ちのないような調査をしまして、その結果が出てまいると思いますから、そのような検診はあとでなくて前にやらなければならぬ、こう考えておるわけでございます。
  146. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで通産省にちょっとお伺いしますが、これまた端折っての質問になりますけれども、あと時間の関係で一、二問になりますが、休廃止鉱山、これは九州だけでも現在鉱山と名のつくものが約七百、現に繰業中のものが百、残りの六百のうち百は一応通産省関係でこれを点検をしておるというふうにいわれております。残り五百が全然点検もされてないという実態であります。私たちが知るところでも、土呂久に似たところが数カ所、九州山脈にもあります。特に玄武岩の地帯でありますので鉱山も多いわけであります。全国的にもこれは五、六千カ所あるというふうにいわれておりますが、こういった問題はたいへん重要な問題で、われわれもいままで谷川に行きますと安心して水を飲んだり、また魚を食べたりしておりましたが、その川の一番源流に、また源流に近いほどこういった鉱山が多いわけですが、そういったわれわれが知らないところでこういったズリによって毒物が流れ、汚染されておるという実態が全国でかなりあるのじゃないか。こういったことで自然環境をこわしていくという重大な問題を考えますときにゆゆしき問題である、こういった鉱山を総点検して、早急にこれは検討すべきであると思うのですが、そういったことについては通産当局はどう考えておりますか。
  147. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 先生ただいまおっしゃいましたように、休廃止鉱山の数というものが非常に多いわけでございますので、短期間に総点検をするということはむずかしいわけでございますが、土呂久の問題を契機にいたしまして砒素の関係の山、かつて砒素の鉱石を出しまして現地で製練した山、製練はしないけれども砒素の鉱石を稼行した実績のある山については総点検を実施したわけでございます。  それからその他の山と申しますか、数が非常に多いわけでございますが、こういう山につきましては、一応昭和四十五年来休廃止鉱山鉱害防止対策の一環といたしまして調査をいたしておるわけでございます。調査鉱山の選定にあたりまして、可能性の高い山を選んでいくわけでございますが、今後とも地方自治体とこれは連絡をとりまして、隠れたそういう山の発見ということにつとめていきまして、そういう山から手を打っていくというふうにしていきたいと考えております。
  148. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に大石長官に一つだけ質問して終わりますが、まあ長官は閣内では積極的に自然保護、またこういった鉱害対策には積極的にやっていただくということで国民も高く評価をしておるわけですが、先般も水俣病の調査のために九州まで出向かれて、われわれ敬意を表しております。今回土呂久松尾鉱山等、これもたいへん長官調査とまた現地をつまびらかに見てもらいたいという要望が強いわけです。環境庁独自の調査、並びに長官もいずれ近いうちに現地を見て、あたたかい政治の手を差し伸べてもらいたい、かように思うわけですが、御決意のほどを承って、質問を終わります。
  149. 大石武一

    大石国務大臣 環境庁といたしましては、まあ独自と申しましてもこれはひとりでは何もできませんので、十分に宮崎県当局と協力いたしまして、もちろんこれは努力を惜しむものではございませんが、全力をあげて土呂久の問題解明に働いてまいる決意でございます。  なお、私も出てまいれということでございますが、出てまいりたいと思っております。ただ御承知のように土呂久は時間的に往復に相当時間がかかります。ちょっと日曜日予算委員会を休んで回るというわけにもまいりませんので、国会の予算委員会が終わるまではちょっと行きかねると思いますが、そのうちおりを見てぜひ視察したいと考えております。
  150. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 どうもありがとうございました。  以上で大体終わります。
  151. 田中武夫

    田中委員長 これにて本日の質疑を終了いたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時五十九分散会