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1972-05-31 第68回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月三十一日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 今澄  勇君    理事 大竹 太郎君 理事 佐藤 守良君    理事 中村 弘海君 理事 丹羽 久章君    理事 後藤 俊男君 理事 宮井 泰良君    理事 渡辺 武三君       荒木萬壽夫君    左藤  恵君       野中 英二君    山下 徳夫君       久保 三郎君    青柳 盛雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房         交通安全対策室         長       須藤 博忠君         警察庁交通局長 片岡  誠君         環境庁長官官房         審議官     鷲巣 英策君         運輸省航空局長 内村 信行君         海上保安庁次長 須賀貞之助君  委員外出席者         防衛庁防衛局運         用課長     福田 勝一君         環境庁大気保全         局企画課長   竹内 嘉巳君         大蔵省主計局主         計官      宮下 創平君         厚生省医務局総         務課長     木暮 保成君         運輸省自動車局         整備部長    隅田  豊君     ――――――――――――― 委員の異動 五月三十一日  辞任         補欠選任   土橋 一吉君     青柳 盛雄君 同日  辞任         補欠選任   青柳 盛雄君     土橋 一吉君     ――――――――――――― 五月十三日  貨物自動車安全輸送確保に関する請願外一件  (土井たか子紹介)(第三二〇七号)  同(井岡大治紹介)(第三二三八号)  同外一件(土井たか子紹介)(第三二三九号)  同(土井たか子紹介)(第三二八五号) 同月十九日  貨物自動車安全輸送確保に関する請願土井  たか子紹介)(第三五〇一号) 同月二十日  貨物自動車安全輸送確保に関する請願井岡  大治紹介)(第三六五八号)  同(土井たか子紹介)(第三六五九号)  同(土井たか子紹介)(第三七〇一号) 同月二十二日  貨物自動車安全輸送確保に関する請願土井  たか子紹介)(第三七一五号)  同(土井たか子紹介)(第三七六五号)  同(土井たか子紹介)(第三八八〇号)  同(土井たか子紹介)(第四一二七号) 同月二十三日  貨物自動車安全輸送確保に関する請願土井  たか子紹介)(第四二七九号)  同(土井たか子紹介)(第四四一四号)  同外一件(横路孝弘紹介)(第四四一五号)  同外一件(土井たか子紹介)(第四五五八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月二十三日  海上交通安全法案反対に関する陳情書  (第三六三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  交通安全対策に関する件(交通事故状況・施  策・概況に関する問題)      ――――◇―――――
  2. 今澄勇

    今澄委員長 これより会議を開きます。  交通安全対策に関する件について調査を進めます。  この際、山中総務長官から、「昭和四十六年度交通事故状況および交通安全施策現況並びに「昭和四十七年度において実施すべき交通安全施策に関する計画」について説明を聴取いたします。山中総務長官
  3. 山中貞則

    山中国務大臣 「昭和四十六年度交通事故状況および交通安全施策現況並びに「昭和四十七年度において実施すべき交通安全施策に関する計画」について御説明いたします。  この年次報告は、交通安全対策基本法第十三条の規定に基づき、政府が毎年国会に提出することとなっているものでありまして、本年度の報告はその第二回目のものであります。  初めに「昭和四十六年度交通事故状況および交通安全施策現況」について御説明いたします。     〔委員長退席渡辺(武)委員長代理着席〕  まず、昭和四十六年における交通事故状況について見ますと、道路交通事故は、七十万二百九十件、死者数一万六千二百七十八人、負傷者数九十四万九千六百八十九人で、前年に比べ、事故件数で二・五%、死者数で二・九%、負傷者数で三・二%それぞれ減少を示しております。  これは、これまで講じてきた交通安全施設等整備交通規制交通指導取り締まり強化等各般施策効果が逐次あらわれてきたものと考えられるのであります。  しかしながら、全国合計ではこのように減少しておりますが、これは主として大都市地域における減少によるものでありまして、反面地方部において増加した県の多いことは、今後対処すべき課題であります。  また、歩行中の死傷者数の占める割合が依然として減少していないこと、幼児や老人の死傷事故が著しく多いことなど、憂慮すべき問題が含まれておりますので、今後はこれらの事故防止施策の最重点とする必要があると考えます。  次に、鉄軌道運転事故は、七千三百十五件、死傷者数は四千七百五十三人で、全体としては減少傾向にありますが、このうち、踏切事故による死傷者数は二千九百十五人で、最近やや増加しております。また、海難にあった船舶隻数は二千六百隻で、減少傾向にあり、航空についても、事故件数は三十七件で、前年より十件減少しておりますが、昭和四十六年七月に二度にわたり重大事故が発生したため、年間死傷者数では、前年の六十二名に対し二百七十三名と、大幅に増加しております。  このような状況にあって、昭和四十六年度においては、交通安全施設等整備事業五箇年計画策定による道路交通環境整備推進するとともに、鉄道信号保安設備等踏切道航路航路標識及び航空保安施設整備並び航空交通安全緊急対策策定による空港及び民間定期航空自衛隊機等訓練空域との完全分離航空交通管制改善などの施策を講じました。  なお、沖繩に対しては、沖繩財政援助金により、道路海上及び航空交通安全対策推進のための所要の援助を行なっております。  次に「昭和四十七年度において実施すべき交通安全施策に関する計画」について御説明いたします。  まず、陸上交通関係では、交通管制センター信号機歩道等交通安全施設整備スクールゾーン設定等による歩行者保護のための面的規制実施、超大型・超重量車両通行制限等強化並び踏切道整備などの施策を引き続き推進するほか、パイプライン事業法制定等による危険物安全輸送体制整備都市公園整備五箇年計画策定による子供の遊び場の拡充、幼児交通安全のための総合的な対策推進路上試験導入等による運転免許試験制度改善、軽自動車車両検査実施のための法制整備などの施策を新たに講ずることとしております。次に、海上交通関係では、引き続き航路及び避難港等整備推進するとともに、船舶交通の著しくふくそうする海域における航行船舶安全確保のため海上交通安全法制定をすることとしております。  また、航空交通関係では、航空保安施設整備特別管制空域の新設・拡大、幹線航空路複線化等航空交通管制合理化航空法制整備などの施策を講ずることとしておりますが、中でも、大事故の再発を防止するため、空港用保安無線施設全国をカバーする長距離レーダー網整備などの施策を強力に推進することとしております。  なお、先般本土に復帰した沖繩県については、交通安全行政推進体制整備をはじめとし、交通安全施設等整備事業四箇年計画策定による道路交通環境整備その他当面緊急に講ずべき道路海上及び航空交通安全対策を強力に推進することとしております。  以上をもって説明を終わります。     —————————————
  4. 渡辺武三

    渡辺(武)委員長代理 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。左藤恵君。
  5. 左藤恵

    左藤委員 私は、まず最初に、きのう非常に問題になりました、大都市の中に入ってきます車の流入の規制というものについてのお考えをただしておきたいと思います。と申しますのは、御承知のように、先般東京都内石神井光化学スモッグのために中学生が相当たくさん被害を受けた。その原因につきましていろいろといわれておるわけでございますが、やはり車から出る排気ガス、これが非常に大きなウエートを占めておるということが一般的な原因として取り上げられておるようであります。そういたしますと、その車をどういうふうにして規制したらいいかということが当然問題になってきておるわけでございます。  それと別にいたしまして、ここ数年来の車の動きを見ますと、道路の面積あるいは道路整備というものが一〇%余しか伸びていないにもかかわらず、車は二倍三倍の増加をしておるということで、そういった公害対策とは別でも、とにかく車の渋滞というものは年々増大しておる。早晩この車の交通規制というものをしなければならないように思うわけであります。  その方法につきまして、美濃部知事がいろいろ言われた。それに対して、きのうまた、警視総監が、軽率な対策じゃ困るとかいうふうなことで、いろいろ論議が行なわれておるように思うわけでありますけれども、まず最初にお伺いいたしたいのは、警察庁としてすでにそういった問題について検討を始めておられるかどうか。いずれにいたしましても、こういった問題については、早晩、おそかれ早かれ検討しなければならないと思いますが、その辺についてまず警察庁からお伺いいたしたいと思います。
  6. 片岡誠

    片岡政府委員 お答え申し上げます。  私ども、いま御指摘がございましたような、大都市における都心部、その中心部に対する車の規制の問題については、大体次のような方針で現在実施をいたしております。  基本的な考え方としては、安全であり、かつ円滑であり、かつ無公害であるという三つの目的を達するのに一番適切な方法をとるべきではないかというのが、まず基本の前提でございます。それでそういう都心部に対して車の量がふえることを何とか抑制したい。ただ、抑制する方法として基本的に考えておりますのは、一つは、通過交通都心部を通らないでさばけるような道路交通のシステムが必要であります。それからもう一つは、通過交通でなくとも都心部に入ってくるものの中の不急不要な車はできるだけ抑制していく。その二つの基本的な考え方に立っております。  当面すでに実施しておりますのは、たとえば東京都の場合に、朝夕のラッシュ時間に非常に混雑が多い、七時から九時ごろだと思いますけれども、そういう時間帯には、物の輸送よりも人の輸送を優先さす。したがいまして、その時間帯は大型トラック通行規制をいたしております。それから、人の輸送の中でも、最も効率的な輸送をはかる。それは何かと申しますと、バス優先レーンとかバス専用レーンをつくることによって、大量公共輸送機関を優先さす、そのことをやっております。もう一つは、都心部における駐車規制強化していく、そして道路上の駐車を排除していく。車はできるだけ路外駐車場に入れる。路上駐車規制していく。そういうことによって間接的に不急不要の車の抑制をはかる。それが現在実施している基本的な方針でございます。  ただ、よく自家用車の都心部乗り入れ規制ということが従来からもいわれておりますけれども、これについてはいろいろ問題が多い、影響するところも非常に大きいものでございます。これについてはなお検討を続けておるという段階でございます。
  7. 左藤恵

    左藤委員 いまいろいろお話ありましたが、私はひとつ総務長官にお願いを申し上げたいのですが、たとえば無公害の車の開発というふうな問題を待っておりましても、相当、数年先の問題になろうと思います。また、いまお話がございました通過交通をスムーズに流すためのバイパスの建設といいましても、これは非常に金もかかるし、時間もかかる問題だと思います。いまお話のありましたようないろいろな対策ということについて、総合的な——官庁のなわ張り争いとか、そういうことでなくて、調整をひとつ総理府でおまとめいただいて、交通対策としてそういうものを積極的におやりいただけるかどうか、この辺についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  8. 山中貞則

    山中国務大臣 まず、総理府がいま総合調整をやっております交通対策は、交通安全ということから出発をしておりまして、したがって、当面の目標は、一番車に対して弱い立場にある歩行者事故、これを半減するところまで昭和五十一年に持っていきたいという悲願のもとに、各省庁を叱咤激励しながら連絡しておるわけでございます。それに伴って、いま一応警察庁から話がありましたが、そのほか、道路あるいはまた安全施設予算等警察庁の分もいろいろと含めながらその効果を逐次あげてきていると思います。  しかし、日本における交通安全も、車の、走る凶器型から、若干アメリカその他の先進国の走る棺おけ型の事故がふえつつありますので、これらに対する主として道路並び安全施設の面からの努力をさらに重点に置いていかないと、大事故が車それ自身あるいは車対車によって起こる可能性というものをこれから防ぎ得ないという心配を持っております。  そこで、ただいまの問題は、主として石神井において起こりました子供たち光化学スモッグによると思われる被害というものと自動車関係ということになると思います。これはやはり最初からすぐに自動車規制ということでなくて、どのようなことで、どのような物質がどのような排出原因によって、どのような環境因果関係をもってその子供たちの上に突如として振りかかってきて被害になったかという原因究明を、環境庁中心に急いでほしいと思います。  もちろん、全般的に見て、光化学スモッグの例は、アメリカのロサンゼルスの例等を見ても、自動車が、貢献と申しますか、寄与する度合いが非常に大きいことは、これはもう論を待たないところであります。といって、東京並びにその周辺における地形、気象状態あるいは工場群等配置等から見まして、川崎あたり工場群等大気汚染の流れてきましたものが、一定の温度と風速等気象条件その他によって問題を起こしておる点もまた否定できないところであります。しかし、その元凶が自動車にあるということでありますならば、その自動車に対する対策というものは放置できないことであります。同じアメリカでも、五大湖のほとりにありますシカゴでは、これまた自動車が非常に多いのでありますけれども光化学スモッグの現象は起こっていない。アメリカでもまだその因果関係が解明できない状態にあるように私は把握して帰ってまいりましたが、このようなことを考えますと、交通安全対策のみからの車両に対する行政のあり方というものに加えて、人々の健康そのもの、ことに小中学校生等にそういうものが起こり、学校の幼い児童に及ぼす影響というものが無視できない環境が生じているとすれば、これはやはり自動車規制その他の問題について、あるいはまた、手っとり早いところ、輸出車にはアフターバーナーをつけておるのに、国内販売車にはそれがつけていないという小さな問題から始まって、アメリカにおいてラッケルズハウス環境保護局長官が、俗にいうマスキー法といわれる排気ガスに対する基準というものを一年延期してほしいという要請を却下しておりますが、これらのものも、アメリカが大きな輸出先である日本自動車産業基幹産業として無視できない、放置できないことでありますし、日本側自動車産業も、アメリカに対する延期申請を一応いまのところ見合わせておるというような環境もございます。したがって、これは日本産業構造の上にも大きな影響のあることでありますので、これらの手近な問題に対して日本自動車そのものの技術というものを研究していかなければならぬでありましょうし、それに対応して、警察庁中心とするやむを得ない規制というものをもっと一歩前進をしなければならない時期にきておるかもしれないと思います。しかし、石神井事件だけでもってこの問題の犯人は自動車だといって、すぐに自動車対策で終わるという問題ではないのではないか。やはり基本的に石神井事件のなぞの究明ということからこの問題は出発すべきであろうと考えます。
  9. 左藤恵

    左藤委員 非常に詳細にお答えいただきましたが、そういった根本的な対策というものを見きわめていただいて、その上でひとつ交通規制の問題についても配慮していただきたいと思います。  いまのことに関連しまして、歩行者事故防止という点が非常に重視されておりますが、実は大阪で四十五年度から関目布施周辺地区、それから四十六年度から田辺、それから四十七年度から守口市駅周辺、こういうところでそういう特別のモデル地区を設定いたしまして、実際歩行者事故防止につきまして信号機を設置するとか、一方交通規制するとか、いろいろとそういう対策を、一地区に限ってでありますけれども、いたしました。結果といたしまして、四十五年度で実施前一年と実施後一年の比較をいたしてみますと、四十五年度からつくりました関目地区におきましては、人身事故率は三六%減少いたしております。それから布施周辺につきましては、実に六九・四%という非常に大きな人身事故率減少を見ておるわけでございます。そういったことで、私は、地区的ではありますけれども、非常に成功しておると思います。と申しますのは、やはり施設をつぎ込めばそれだけの効果があるのじゃないか。歩道を設置するとか、横断歩道をつくるとか、いろいろなそういう施設さえ設置すれば人身事故はかなり減るということが、このことで明らかじゃないかと思いますが、こういった問題について、少なくともモデル地区的なものでも全国的に推進していかれるお考えがあるか、さらにまた、こういったところで得られた教訓を全地域に広げていくという必要があると思いますが、その辺についての警察庁のお考えを承りたいと思います。
  10. 片岡誠

    片岡政府委員 いまお話のございました大阪歩行者保護地区の実験と申しますか、モデル地区をやりましたことについては、御指摘のように非常に成果がございます。私どももそれを踏んまえて、また、愛知、東京その他でも同じような発想でそれなりの効果をあげている施策がございましたので、それを全国的に推し広めるという意味で、ことしの春の安全運動からスクールゾーン全国的に拡大していくという施策を、総理府中心として関係省庁集まりましてとったわけであります。春の安全運動スクールゾーン内における交通事故が激減いたしておりますので、秋の安全運動を通じましても、このスクールゾーンを少なくとも市街地の小学校にはぜひ拡大していくということによって、大阪成果と同じような成果全国的に及ぶことを期待し、また強力に推進してまいりたい、かように考えております。
  11. 左藤恵

    左藤委員 もう一点お伺いをいたしたいと思いますが、商店街の荷物なんかの積みおろしとか、いろいろやむを得ないこともあろうと思いますけれども大阪でも、せっかく一方交通実施いたしております堺筋とかいったところでも、駐車禁止をしておりますが、やはり終日駐車しておるとかいうふうな実態がございます。こういったことについて、最近、時間制限によるパーキングメーター制というふうなものを東京でも実施しておられ、そういう駐車違反に対する取り締まりというものに対する考え方を少し変えてきておられると思います。中には二重駐車までしておるというような、せっかくの車の流れをよくしようとした対策に対して非常に反対する方向のことが幾つか見られるわけであります。せっかく交通監視員制度なんかも認められ、拡張されているのですから、こういった点についてどういう取り締まり方針をお持ちになっておられるか。それが一つ。  それから長官には、こういったことで国民の順法精神——駐車違反を見のがしておることによってかえって助長しはせぬか。このことについて、基本的にどういうふうにしたらいいか。たとえば、無理なところは時間的に駐車を認めるとか、そのかわり、いけないものはきびしく取り締まっていくということを考えるべきであると思いますが、その辺の御見解を伺いたいと思うわけでございます。  そして、きょうの新聞にもありましたが、青空駐車を取り締まるために、車庫の規制法に基づく政令の一部改正というものもお考えになっておられると思いますが、これがどのくらい実効があがるかということについて、私は若干疑問を持っております。今後こういった問題について基本的な問題を取り上げて検討される御用意があるかどうか、この辺についてもお伺いいたしたいと思います。
  12. 片岡誠

    片岡政府委員 駐車規制について、先ほども少し申し上げましたけれども、私ども基本的な考え方は、都心部における交通円滑化を著しく阻害しておる駐車を強力に規制もし、取り締まりもしたい、それがまた結果的には不急不要の車の都心部乗り入れ抑制にもつながるという考えでやっております。     〔渡辺(武)委員長代理退席委員長着席〕 ただ、いま御指摘のございましたように、やたらに駐車規制だけをふやして取り締まりが担保できないということであれば、違法駐車がたくさん発生するという、順法意識の問題もございます。そういうところで、私どもとしては、交通規制はきびしくする、しかし、その実行担保も強力にやる、そのために交通巡視員制度も設けられましたし、現在警視庁中心ではございますけれどもレッカー作戦をやっております。そして単に違反の告知をするだけではなかなか出頭してこない、正直者がばかをみるということになっても困るわけでありまして、レッカー車で引っぱっていく、このレッカー作戦が相当功を奏しまして、警視庁の場合、ことしの一月から四月までにレッカー車で移動した件数が三万九千二百二十八件、大阪では千七百五十二件でございますが、レッカー車が来ると、車のすぐそばに運転者がいる場合は、飛んで出てきて移動するというような事態になってきております。このレッカー作戦はさらに強化してまいる。  ただ、もう一つ、いまお話ございました、しかしながら、そうは言いながらも、路外駐車場が必ずしもまだ十分に整備されていない、そういう地区で、業務用の短時間の駐車がどうしても必要だ、そのためには、長時間駐車はさせないけれども、短時間の業務用駐車にスペースをつくるという意味で、パーキングメーター制度を復活したわけでございます。これもすべり出しよく、現に東京都内では、中央区に七百四十基、千代田区百四基、港区四十五基、計八百八十九基のパーキングメーターができておりまして、これが大体有効に使われておる。これは四十分の規制でございますけれども、一日一基当たり十回ばかり使われておって、うまく利用されている。これを副都心だとか池袋、上野あるいは渋谷といった方面に伸ばしていくというのが、警視庁基本的な考え方でございます。  そういったことで、駐車違反取り締まり件数も、昭和四十四年が七十四万四千五十四件、四十五年が百二十万七千七百四十七件、四十六年には百七十四万千三百七十五件というふうに急激にふえておる。この駐車規制をきびしくすることによって、道路有効利用と、同時に都心部に対する不急不要の車の乗り入れ抑制をやっていくという方針でやっております。
  13. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいまの順法精神という問題でありますが、これは私は、大体運転者人たちも順法する意思はあると思うのです。ところが、交通事故というものの特質が、ある瞬間に、ある地点で突然加害者になる、被害者になる、あるいは突然悪人になるという性格のものを持っております。ことに、先日お年寄りがはねられた、たまたまそれが往来の激しい国道であったために、目撃者の話によっても、数台以上の車が次々とはねた、そして粉みじんにからだが砕け散ったという話が出ておりました。おそらく皆さんは、自分たちがそういうことをしたその瞬間前には、するとは思っていなかった人たちだろうと思います。しかし、その現場に差しかかった際にそのような行為を犯してしまって、その後みずから良心の苛責にたえかねて名のり出た人はいない。いろいろその他の例もあるようでありますが、あの人がよもやと思われるようなりっぱな人が、つい一ぱい飲んだために、ときには警官までそういうことを起こすわけでありますから、これは法律はもちろん知っている、知っているが、自分がその当事者になったとたんに、順法精神よりか、むしろ、法律を知っておるために、それを逃げようとする人間の本能というもののために自分の良心が引きずられて私はそういうことがあるんだなということを思っております。  しかし、それはともあれ、きまったことに従うということがなければ、法治国は存在しないわけであります。典型的な例として私、前からあげておりますが、車庫証明がなければ車は売らない、これは私は当然だと思うのです。しかし、はたしてその後ほんとうにその車庫を使っているかどうか、あるいはときには、車庫証明を出したその車庫は、その人の常時、少なくとも相当時間居住する根拠地とあまりにも非常識な場所であって、それはおかしいというチェックをしているかどうかについてすら疑問があります。ましてや、そのあとの車検のときに、最初購入するときに添付した車庫を使用しているかどうかの確認というものはなされておりません。これはやはり法制上、取り締まり上の不備等もあると思います。また人手不足等も伴っておると思いますが、少なくとも大雪のあくる日に屋根に雪を乗せて走っている車を見れば、届け出た車庫を自分で持っているとは思われません。  そういうことを考えますと、やはり若干苦情も出るかもしれません、しかし、車を持ちたいという夢と、社会人の中の守るべきモラルは守るという自分というものとは同一でなければなりませんので、そこらのところは逐次国民の理解を求めながら、場合によっては、いまおっしゃったような政令改正等の手段も考えなくちゃならぬと思います。  交通巡視員等をお願いをしましても、私はいろいろ表彰したりなどして懇談をしますが、一瞬は言うことを聞こうとする、しかし、何だ、おまわりじゃないのかと言うて捨てぜりふを吐いていかれるときほどつらい思いをすることはないということを言って訴えておられます。そのような社会奉仕の気持ちでなっていただいておる人たちに対して、そういう権限のあるないによってばかにされてまで町かどに立っていただくということに対しても、忍びない気がいたします。かといって、これに警察官と同じ権限を与えられるかといいますと、また問題がありますので、ここらのところも今後の検討課題であろうと思います。
  14. 今澄勇

    今澄委員長 丹羽久章君。
  15. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 山中長官年次報告説明をしていただきました。長官は非常に御熱心にやっていただいておりますので、私は感謝いたしておりますけれども、先日の質問にも申し上げましたように、このままの状態でいくと国内は車で充満してしまう。それに対する対策方法として、先日も申し上げましたように、長い伝統と歴史を持っておる農地でさえ、あるときには、離作もし休耕もせよという政策をとったではないか。この際、不要不急の自動車というものをおもしろ半分で乗り歩くという、その夢を持たせることがはたしていいであろうかどうであろうか、この点について長官に私は質問をいたした記憶を持っております。長官は、やはりそれは現段階としては夢を持たしてやることのほうが必要である、それを考え対策を持っていくことのほうが重点である、これに制限を加えることはどうかという御発言でありました。若い人たちがただ無意識的に、ガソリンは比較的安い、自動車は銭を出さなくても月賦で買えるんだ、そしてその月賦は、いよいよ払わなければ車を取り上げられるんだというような単なる考え方で、非常に無謀運転をしておる。これが、若いからハンドルの切り方もうまいし、事故は比較的少ない現象にありますけれども、さらにそれにおけるところの影響を受けて、片一方のほうではハンドルを切って徐行するために、片一方のほうが被害になるというような現象が都市に非常に多いということは事実明らかであります。こういうような点についてもう少し——これから規制をせられるであろうと思いますけれども、不要不急ということの限界は非常にむずかしいでしょう。ただ、一軒のうちで、むすこも持っておるが、奥さんも持っておる、御主人も持っておるというのは、一体何に使うかといえば、主人は会社につとめる、奥さんは遊びに乗る、買いものに行くために乗る、むすこは学校に通うために乗っておる。こういうような自動車制限というものに長官はどういうお考えを持っておられるか、ひとつお聞きいたしたいと思います。
  16. 山中貞則

    山中国務大臣 これはきわめてむずかしい問題だと私は思うのです。ですから、何べん質問があっても歯切れのいい答弁はできないのですが、いまおっしゃったような典型的な例をとれば、確かにそれはぜいたくだと思うのです。そういうことまでして車を一家で三台も持つ必要があるのか。かといって、世界各国の自動車状態を見ますと、やはりセカンドカーというようなものの需要がどうしてもある。しかし、これはいけないことであると断定することは、なかなかむずかしいと思います。  また一方、農村等において事故が最近ふえている傾向にありますが、これは実は後継者等をつなぎとめるために——昔は、オートバイを買ってくれれば自分はあとを継ごう、しかし、最近は、やはり自動車を買ってくれというような子供たちもふえておる。そういうことで、農家の人たちは乗用車を持つ必要はないではないか——なるはと、農作業には乗用者は要らないと私は思います。しかし、むすこは人並みに自動車を持ちたい、親はそれを買って与える、そして後継者も一応親の希望どおりにとどまってもらうというようなこと等も、農村においてはあり得るわけです。  そういうようなことを考えますと、基本的には、自動車というものがアメリカに比べて何人当たり何台という比較だけではないのであって、日本においては、走り回る走行許容面積というようなものから考えれば、アメリカの数倍に及ぶ密度をもって自動車が走り回っていることは明白である。  こういうことを考えれば、経済成長と狭い国土の上で公害を出してきた日本の現実のもう一つの問題としては、そのような速さ、便利さ、快適さ、そういうものを求める人間の心情というものがもたらした自動車の需要というものが、すでに最大の自動車国であるアメリカよりも濃い密度をもって日本の国民は走り回り得る範囲の中で行動しているんだ、そのために起こる被害というものは当然予想されている結果が出てくるんだという現象はありますから、したがって、自動車の国内販売について、所得幾ら以上の者は何台しか持っていけない、所得幾ら以下の者は自動車を持つことは禁止するとかいう、そういうことは私は不可能だと思います。  基本的には、丹羽君のいま言われるような考え方を持って、大局的な種々の法律、政令等いたします場合には、そういうことを念頭に置きながら考慮はいたしていくべきものだと考えます。
  17. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 関連質問ですから、もう一問だけ。  また長官の御出席いただいたときにいろいろとお尋ねし、長官の御意思を聞きたいと思いますが、この年次報告のうちに、四十六年における報告は、四十五年よりやや減少しているという非常にいい結果である。「これは、これまで講じてきた交通安全施設等整備交通規制交通指導取締りの強化等各般施策効果が逐次現われてきたものと考えられるのであります。」こういうように表現してあります。しかし、ここで忘れてならないことは、民間の非常に大きな協力者があるということを一つ忘れていただいてはたいへんだと私は思っております。警察官はもちろんのこと、これは使命感を帯びて人命尊重の上に立ってあらゆる苦労をしてやっていただいていることはよくわかります。それから、総理府が総合的に交通対策に対する施策の指導をしていらっしゃることも、これはよくわかる。しかし、より以上に民間の人が、とうとい時間をさいて、そしてお互いにわが子のために、あるいは交通整理のためにということで、交通安全協会だとか、またそうした婦人会の組織とかいうものを総動員せられて、朝べに夕べに立ってそして交通に協力しておるという点がここに重きをなさなければならぬと思っておりますが、それはどこにこの文面のうちにあらわれておるでありましょう。私は、もしここの文面のうちにあらわれておるとすれば、どこの個所だということを長官にお尋ねしたいと思います。また、御存じであろうと思いますが、どうですか。
  18. 山中貞則

    山中国務大臣 あるいはそういう表現を入るべきであったかもしれませんが、政府のいわゆる俗にいう白書といわれるものは、そういう政府が講じた施策、講ぜんとする施策というようなことについて述べることになっておりますから、したがって、表現の上で民間の理解者による協力ということばが抜けている、その点は御指摘のとおりだと思います。実際にはそれらの人々のささえというものがあって初めて施策は生かされるものでありますし、さらにまた、今後子供の遊戯道路スクールゾーン駐車制限とか、そういうことをいたします場合には、どうしても地域の人々、PTA、商店会、こういう人たちの協力がなければ、ただ警察の権限、規制行為だけでは警察もなかなかやりにくいという実態をよく知っておりますから、この席をかりて民間の協力者に対する感謝のことばを表明すると同時に、政府においても、それらの方々については、長年にわたり顕著な功績をあげておられる方々がおられますので、なるべくたくさん表彰その他の行為によってお報いできるならばということで、そういうこともやっておりますので、わかっていただいておるものとは思いますが、政府のそういう説明の中に入ってなかったという点についての私の釈明を一応いたしておきたいと思います。
  19. 今澄勇

    今澄委員長 後藤俊男君。
  20. 後藤俊男

    ○後藤委員 第一番に、白書につきまして二、三お尋ねしたいのです。  この五ページにあります厚生省の統計による四十五年度の死亡事故は、二万一千五百三十五名になっております。ところが、先はど読まれました報告説明では、死者が、これは四十六年でございますけれども、一万六千二百七十八人、昨年より二・九%の減である。これまで講じてきたいろいろな諸施策がその功を奏したのだ、こういう言い方がしてあるわけなんです。  私、考えてみるときに、厚生省発表の統計と、それからいま言われましたところの警察庁の資料による統計とは食い違いのあるのは、その通りだと思います。二十四時間以内の分と、二十四時間ではなしに、交通事故原因で死亡したのだと推定される数が厚生省の統計には入っておる。そこで、四十六年度は厚生省の統計で見ると一体どうなっておるのだろうか。  私、なぜこういうことを聞くかといえば、政府としても、さらに自治省としても、いろいろ御心配を願っている関係で、救急医療というのは、不足不足といいながらも前進しつつあると思うのです。そうなってまいりますと、この厚生省関係の統計の中には、その効果も含めてあらわれてくると思うわけです。そうなると、先ほど長官が言われましたように、四十五年度に比較しますと四十六年度は死亡率が二・九%の減であります。ところが、いま申し上げました医療設備等の充実によりまして、交通事故にあったけれども、たとえば極端な話が、十年前にやりました交通事故が、いまは非常に手当てがよくなって助かった、あるいは半年もった、一年もった、こういうのも、この厚生省の統計の中には入るわけなんです。そうなりますと、四十六年度の厚生省の統計が一体どういうことになってあらわれるだろうか、これはやはり興味のあるところであり、さらに重要な点ではないかというふうに私としては考えるわけなんです。先ほど長官が言われましたのは、ただ、交通事故を起こして二十四時間以内に死んだ者が減ったという簡単な言い方なんですね。そうではなしに、交通事故によってどれだけ一年間に死亡した人があるだろうか、このことのほうをかえって重視すべきじゃないかというふうに、私はこの白書を見まして感じたので、この点、第一点としてお伺いいたしたい。  それから二つ目の問題でございますけれども、これもやはり白書の中にありまして、二一一ページから二一二ページにある責任保険の問題です。これは運輸省関係でございますか、昭和四十一年に百五十万になり、四十二年に三百万になった、さらに四十四年には五百万、今日、四十七年で五百万、こういうように責任保険の金額が改定されたことは、御承知のとおりだと思うのです。ところが、今日の事故状況から考えてみますと、たとえば死亡事故を起こした場合に、はたしてこの責任保険だけで解決ができるかというと、具体的に示談の問題に入りますと、四百万、五百万、六百万ではなかなか解決できない事故が非常に多いと思うのです。さらに、われわれがタクシーなりその他自動車に乗っていろいろ話を聞いてみますと、極端な人は、五千万円ぐらいにしたらどうだ、それぐらいの力のない人に自動車を持たすことが間違っているのだ——これは私が言うわけではないのですが、そういうことを言う人もあるわけなんです。そういうような点なり、示談の点なり、金額の点等を考えてみますと、四十四年十一月に改定した五百万のままで今日来ておる、このことについて、金額の点等で検討すべき段階に今日来ておるのじゃないかと思うのです。ほとんどの人が任意保険に入るならば、これはまた心配も一部は消えるかもわかりませんけれども、この白書の中にも書いてありますように、任意保険に加入しておる人たちは、ゆうべもちょっと見たわけでございますけれども、約半数ぐらいじゃないかと思うのです。高い人の中には三千万円からの保険に入っておる人もございますけれども、……。ところが、一たん事故を起こしてしまえば、相手に力があろうとなかろうと、被害者のほうはたいへんな問題なんです。そこで第一番に問題になりますのが責任保険の問題だと思うのです。そこで相手に支払い能力があるかないかというようなことが問題になってくるわけなんですね。  そういうようないろいろな情勢から考えると、この五百万というのは、はたして今日の情勢で妥当であるかどうか、これは早急に検討すべき問題ではないかというふうに私は白書を通じて感じましたので、この点、長官としてはどういうふうにお考えになっておられるか。  それとあわせて、その問題につきまして当委員会でも一ぺん問題にしたことがあるのですけれども、この責任保険の保険料に対する免税の問題ですね。ほかの保険と名のつくものは、掛け金に対しまして全部免税となっておると思うのです。ところが、自動車保険だけは全然税金のことは考えておらないわけなんです。責任保険といえども、やはり税金をどうするという考え方は一切入っておらぬわけなんです。これは一体どういうわけでこういうようなことになっておるのだろうか。先ほどの話じゃございませんけれども自動車はどんどんふえてくる、事故は多くなる。事故を起こした場合の示談その他の問題につきましても、全国的に多くの問題をいま巻き起こしておる。それだったら、事故を待つというかっこうじゃございませんけれども、それに対処するだけの姿勢、責任ということだけは政府としても十分考える必要があるのじゃないかと私思うわけなんです。あわせてそういう人に対しては税金の面でも十分考慮していく。ほかの保険が全部やっておるのですから、これだけやれないということは私はないと思うのです。この点について長官としてどういうふうにお考えになっておられるか。  この三つの点の質問をいたしたいと思います。
  21. 山中貞則

    山中国務大臣 ほとんど他省庁の話でありますから、私の答弁で行き届かない点はいずれまた御質問を願いたいと思いますが、確かに、厚生省の死亡統計の数字は、WHOへの報告の資料ともなっております権威のあるものだと思います。ところで、私が先ほど読みました報告に関する文章でありますが、それはいままでずっと、二十四時間以内の死者数であっても、絶えず対前年比増加をしてまいったのが、悲しいことでありますが現実であります。しかし、初めて四十六年において前年に比べて死者数減少した。交通事故件数が減り、そして負傷者数も減りました。そのことは、やはりみんなが一心同体となってやったこととはいえ、好ましくない対前年比増加、あるいは別な表現で言えば、前にそういう数字はないわけですから、史上空前ということを活字で書かれても抗弁のしかたがなかった、そういう現象が停滞を始めた、そして初めて対前年比減になったということでありますので、厚生省の四十五年までの死亡者数というものも逐年増加の一途をたどっておりますが、     〔委員長退席渡辺(武)委員長代理着席〕 ただいま申し上げましたような統計の全体から見て、おそらく厚生省の統計の数字も対前年比減になるのではないかと思っておりますが、まだしかし最終的に厚生省の統計は出ていないということだそうであります。これはさらに結果が出てから分析をしたいと思います。  それから、責任保険の五百万が妥当かどうかという問題は、私どものほうでも、実際に交通事故被害者の立場に立って追跡調査というものをしておりますが、なるほど確かに幾らという金額はきまった、しかし、それをはたして払ってもらったかどうかというようなことを調査しております。新聞等で見ましても、自分が加害者になった、そして賠償金の支払いを命じられた、そのことにたえかねて今度は自分が自殺をしてしまう加害者もいるというようなのが、社会の大体普遍的な因果関係交通事故にあらわれた現象だと思いますので、この責任保険の金額が高ければ高いほど——死者の値打ちというものは計算はできないわけでありますけれども、しかし、やはり方向としてはそのことのほうが望ましいと私も思います。しかし、これはまだ始めて四年目でありますか、五百万になってから四年目でありますので、死者並びに後遺症の限度額五百万について、これは私は適正妥当な金額だとは思っておりませんが、これをすぐにいま七百万に変えるとか一千万にするとかいうそこまでの検討はいたしておりませんし、それよりも、交通事故によるそのような賠償はどのように解決をされたかという実態をいま調査中である。その実態調査に基づいて、場合によっては、必要なことは関係省庁と連絡をしてみたいと思います。保険料免税の問題も、これはもっぱら運輸省あるいは通産省と大蔵省との問題でございますが、私の知り得ております範囲では、生命保険とか火災保険とかというふうに、人間がこの世に生きておりますとどうしても遭遇する可能性が強い保険というものに対する若干の税制上の恩典があります。しかしながら、自動車を運転したいという場合において、自動車を購入し運転する場合においては、他人を傷つけることもあり得るし、あるいはまた自分自身が傷つくこともあり得る。しかし、それらのことは承知の上で、リスクをみずから負担するというつもりで自動車というものは購入されるいわゆる耐久消費財であるという考え方で一応割り切って、自動車損害保険に対する掛け金についての所得税の軽減等については手当てがなされないというふうに聞いております。  しかし、これは私のきめたことではありませんが、一応御質問でありますのでお答えはしておきますが、そろそろ日本も、先ほど来議論しておりますような自動車王国、生産、消費の面から見てもその段階になりつつありますから、やはりここらで、そういう税制の面から見ても、いつどこでだれが加害者になり、被害者になるかわからないという問題等踏まえてみますと、ただいまの御意見というものは、今後検討する価値のある御意見だと思います。     〔渡辺(武)委員長代理退席委員長着席
  22. 後藤俊男

    ○後藤委員 第一番の、いま長官言われました厚生省と警察庁の統計、それはそれなりで私は話はわかるのです。ところが、医療制度がどんどんと進展してまいりますと、単に事故が起きて二十四時間以内に死亡した死亡しないということで比較統計するというのは、問題が今後としてあるのじゃないかということを私は申し上げておるわけなんです。二十四時間という時間を切って、その間に死んだ死なない、減った、ふえたということは、これからの統計を出す場合にはいささか問題があるのじゃないかという気がしましたもので、その点はひとつ今後とも検討をしていただく必要があると私は思うのです。  それからその次の五百万の問題ですが、これも直接長官がどうこうという話じゃないかもわかりませんけれども、いずれにしたって、交通事故の問題はあなたが一番親方だという見方をしておるのです。それだけまたやってもらわなければ困るわけなんです。各省がどうとかこうとか、そんなことはあまり言わぬようにしてもらわないといかぬように思うのです。私は調査してどうこうという段階じゃないと思うのです。四十一年にやり、四十二年に改定し、四十四年に改定し、現在四年目でございますけれども、四年間これは放置されておるわけなんです。われわれも示談の問題につきましては数多く参加するわけなんですが、これは一千二、三百万から一千五百万。それでは、責任保険だけでは五百万だから、それ以上の金を一体どうしてつくろうか、そうなってくると、あなたの話じゃないけれども、自殺するとか、そういう問題が出てくるわけなんです。ですから、こういう情勢を考えるならば、この責任保険の五百万というのは早急に検討していただく必要がある、こう私は思うのです。このことに対しては、さらに運輸省から、簡潔でいいですから、あとからひとつお答えいただきたいと思うのです。  それから、税金の問題ですが、長官、あなたはいろいろいま言われましたけれども、そういうようなかっこうで、保険というのは人命に影響する非常に大きい問題なんです。ですから、自動車を持っておる以上は五百万の責任保険に入らなければいかぬと、これは強制保険なんですね。強制的に入れる保険ならばなおさら税金の問題で考慮すべきだと私は思うのです。ほかの生命保険であるとか火災保険というのは強制保険じゃないと私は思うのです。そういう点から考えるならば、この税金の問題につきましても、この前も大蔵省の関係の人に来てもらって話は聞いたのですが、時間がなかったから、端的に聞いただけで終わりになりましたけれども、これはひとつ長官もお忘れなくこの問題については早急に取り上げていただいて、直ちにこれは検討をしていただく必要があるというふうに私は考えておるわけなんです。  以上三つの問題を、白書をいただきましたのがきのうの午後でございますので、まだまだ十分見せてはいただいておりませんけれども、感じたままを意見を申し上げまして、強く要望すべき点三点を申し上げたのです。  次には、最近新聞を非常ににぎわしておりますところの光化学スモッグの問題なんです。これは環境庁がおいでになると思うのですが、この原因は一体何でありますか、お尋ねいたします。
  23. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  最近いわゆる光化学スモッグとして被害が報ぜられております問題につきまして、昨年あるいは一昨年来問題になっておりました光化学スモッグとは、各種の条件において全く異なったものがあるわけでございます。率直に申しまして、光化学スモッグの当然起因となりまするオキシダント濃度につきましても、非常に低濃度である。それから気象条件等につきましても、もともと日照がかなりあって、つまり日が照っておって、そして微風ないしは無風状態、そして逆転層がある、そういう状況のもとで光化学スモッグというものは発生をしておるわけでございますが、最近の状況は、風もかなり強い、大体秒速で五メートルから八メートルないし十メートルというような、かなりの風が吹いておる。それから、どちらかというと曇天である。逆転層もない。また、これまでの光化学スモッグというのは、被害者の発生地域が相当の範囲にわたっておりますけれども、今度はきわめて局限された地域である。こういったようなところで、従前の光化学スモッグの問題としてとらえておりました概念と全く違っております。したがいまして、新聞等では、光化学スモッグと、一様の表題をつけられておりますけれども、私ども、確かに光化学反応に原因する大気汚染ではないかという疑いはございますけれども、率直に申しまして、学者の先生方の意見を徴しましても、また、光化学スモッグに関連してこれまでずっと検討を続けてこられたところ、あるいは環境庁のほかに東京都、神奈川県、千葉、埼玉というような関係都府県等とも協議を重ねておりますけれども、現在のところ、最近におけるたとえば石神井南中学校を例にあげまするような光化学被害については、はっきりした原因というものはまだつかめておりません。そういう状態でございます。
  24. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、はっきりした原因環境庁としてつかむのにこれから半年か一年かかるのですか。
  25. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 環境庁としてできるだけこれの原因あるいは解明については急いでまいりたいと思っております。半年、一年といわずに、できるだけ早い機会に私どもとしては解明をしたいというふうに念願はしておりますけれども行政ベースでものごとを急げば、一生懸命やればすぐ解明できるというものでもございませんし、科学的なデータを積み上げ、あるいは学者の意見あるいは各種の実験等を積み重ねながら、基本的な発生条件の解明ということがあくまでも必要でございます。私どもとしては、昨年来からことしの七月、八月にかけまして、一都三県の協力を得まして、総力を結集した形で光化学スモッグについての解明調査を実施するという予定にもいたしております。そういう意味で、光化学スモッグの解明その他についてもかねてから予定をいたしておりますが、また必ずしも光化学スモッグと言い切れるかどうか、最近の石神井南中学校のケースにつきましてもできるだけ早い機会に究明をいたしたい、かように念願して努力している次第でございます。
  26. 後藤俊男

    ○後藤委員 そうしますと、環境庁としましては、いま問題になっておる光化学スモッグ、これの原因はわからない、自動車の排気であるのか、工場の煙突から出るところのはい煙——はい煙というと語弊があるかもしれませんけれども、それであるのか、原因はさっぱり何だかわからない、こういうふうに解釈していいわけですか。  それとあわせてお聞きしたいのは、半年、一年かかってもらったのではたいへんな問題です。この原因がはっきり明確にわからなかった場合にはどういうふうな対策考えておられるのか、その点もあわせてお答えいただきたいと思います。
  27. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答え申し上げます。  私ども石神井南中学校を例にとりましたケースについて原因がはっきりわからない、こういうふうに申し上げましたが、それは、いわゆる光化学反応を起こす諸条件が満たされないままにあのような被害が起こったということにつきまして、汚染物質あるいは原因物質が何であるかという発生条件の解明が未解明であるという意味で申し上げたわけであります。ただし、一般的に都市におきます大気汚染のこのような光化学スモッグの起因と見られる汚染状態の、俗にいう主犯とでも申しますか、主因物質として考えられるものの発生源は、これは工場や発電所等のばい煙あるいは自動車の排出ガス、この二つが原因であること自体については、これはもうはっきりしておるわけでございます。ただ問題は、これが自動車排出ガスというようにきめつけられるかどうか、あるいはまた、工場や発電所等から出ます窒素酸化物、硫黄酸化物等の影響と相またなければこのような被害が生じないものかどうか、そこらあたりについての発生メカニズムというものについて非常に疑問点が多いということを申し上げたわけでございます。  したがいまして、私どもとしては、いずれにいたしましても、都市におきますこのような光化学反応による大気汚染対策といたしまして基本的に考えておりますことは、もちろん、工場等におきます硫黄酸化物あるいは窒素酸化物の低減策という問題が第一点に入ろうと思います。第二点といたしましては、自動車排出ガス対策というもの、これは早急かつ積極的に強化しなければならないという点もはっきりしておるというふうに私どもは理解しております。さらに、単に自動車だけでなくて、ガソリンスタンド等のような、ガソリンの貯蔵所と申しますか、こういったところから蒸発してまいります炭化水素類というものの影響も決して無視はできないわけでございます。そういった要素を総合いたしまして、私どもとしては、現在まで硫黄酸化物につきましては規制強化もし、窒素酸化物につきましては近く環境基準の設定を予定いたしておりますけれども、これに基づきまして窒素酸化物の排出規制もさらに強化をいたしたいと思っております。なお、自動車の排出ガスの規制につきましては、いわゆるアメリカマスキー法に相当するような、それを十分考慮した排出規制というものの長期方策を現在中央公害対策審議会において検討をいたしておるところでございますけれども、これの結論もできるだけ早い機会に得て、自動車排出ガスの許容限度の積極的な規制というものに進みたい。  以上が、私ども基本的なこの都市型の大気汚染に対する施策として予定しているところでございます。
  28. 後藤俊男

    ○後藤委員 そこで私、長官にお尋ねするわけですけれども、いま環境庁が言われましたように、最終的にこれだという原因は突き詰めておらぬ、しかしながら、工場排水なりあるいは排出物その他自動車の排気、これらにつきましては当然考えなければいけない、できるだけ早く今回のこの事件につきましては原因を探求して対策を立てたい、こういう話なんです。  そこで、毎日の新聞の記事を読んでおりましても、さらに情報等を総合して考えてみましても、東京都としては自動車規制問題がかなり取り上げられまして、きょうあたりは警視庁あたりともいろいろと話をしておられるのではないかと思うのです。ところが、警視庁のほうとしては、一口に言って、そんなことを言ったところで、たとえばそういうことをやったとするならば、さらに交通事故がふえてしまうのではないかというようなことで反論が出ておるような新聞記事が毎日出ておるわけなんです。これが実情なんです。  そこで、国として、中央交通対策本部としまして、この問題は東京都の問題であり、警視庁の問題であり、環境庁考える問題であるということでは済まないと思うのです。連日起きておるこの問題に対しまして、さらに東京都と警視庁の間でいまもいろいろ問題になっておりますこれらの点を考えた場合に、国の中央交通対策本部としましては、これは考える必要があると思うのです。全部おまかせだというわけにはまいらぬと思うのです。考える義務があると思うのです。こういう情勢に対してどういうふうなことをお考えになっておるか。さらに、行政上どう指導すべきであるという考え方を持っておられるか。これはもうその時点に今日の段階で来ておるのではないかと思うのです。その点どういうふうにお考えでしょうか。
  29. 山中貞則

    山中国務大臣 この問題は、先ほどもお答えしましたように、やはり公害というものの原因者としての自動車というものをとらえての論争でありますから、環境庁の持っておられる権限で、原因究明、そしてその自動車の寄与率に応じた規制の勧告等を警察庁とか取り締まり官庁等にされるべき問題であり、それが調整がつかないという場合においては、これは交通安全対策に関する本部としての立場でない総理府の立場からまた調整することもありましょうが、現時点においては、まず原因究明、そして自動車に対するそれの加害者としての判断、それに対する規制方法というものを取り締まり官庁と相談してもらうということがまず第一段であろうと考えます。
  30. 後藤俊男

    ○後藤委員 私が申し上げるまでもなく、こういうような光化学スモッグと申しましょうか、今度のこの問題につきまして、東京都内における自動車規制その他のことを行なうのにも非常にいいチャンスであるという見方もありましょうし、さらにまた、東京都内には現在二百四、五十万台の自動車があるが、この際五十万台ぐらいに押えるべきではないか、こういうようなある大学の先生の意見もありましょうし、一方では、そんなことをされたらおれたち通勤する者は一体どうするのだ、もう少し足の問題を考えなければいかぬじゃないかという問題もありましょうし、いろいろな問題が今日出てきておるわけです。  それとあわせて、光化学スモッグの問題につきましては、環境庁のほうとしては、現在原因の探求中である、東京都は警視庁といろいろ折衝しておるけれども、なかなかむずかしい問題があるというので、直ちにこの問題がどうこうという解決の糸口がつかないような気がするものですから、いま申し上げました点を尋ねたわけなんです。  そこで、東京都としては、第一段階として実施できる面からひとつやろうじゃないか、こういうふうな意見が今日出ておると思うわけなんですが、これはあえて東京だけじゃなかろうと思うのです。新聞では大阪でもこういうあれが出ておりました。さらにまた、全国的にもこういうことが起こるのじゃないかという危険性は十分あると私は思うのです。そのことが発生してしまってから、原因を探求しましてというようなことを言っておったのでは、今日この流れの早い世相には通用しないと私は思うのです。ですから、環境庁としても、もう少し事前に調査しろと言うとおかしいですけれども、諸外国その他の資料もたくさんあることでございますから、十分なる調査研究は平素から怠りのないようにひとつやっていただく、これが非常に大事ではないかと私思いますし、さらには、いま長官が言われましたが、いまのところは、こういうお話でございますけれども、これはあえて東京都だけの問題として考えるとそういうことになるかもわかりませんけれども全国的な問題として考えるならば、国としても直ちに考えなければいけない問題だと私は思うのです。そういう立場で、政府といたしましても、この種の問題につきましては対応できるような対策を早急にひとつ検討をしていただく、これは交通事故防止の面からも必要じゃないかというふうに私は考えるわけなんです。  あわせて、これらの記事と同時に、ハワイにおける台数制限の法律がハワイ州の議会を通過いたしましたね。これは長官もお読みになったと思うのです。われわれがハワイに参りましてもあれだけの空気がきれいなところを、一体なぜ自動車の台数まで制限するのだろうか。さらに、一昨年私はニューヨークに参りました。ニューヨークも車でたいへんでございますけれども、これはもう三年か四年しまするとニューヨークの市内は車で麻痺してしまうのじゃないかと言いましたら、向こうの交通局長は、絶対に麻痺はいたしません。絶対に麻痺いたしませんというような説明のできる根拠、理由は一体どこにあるのだ、こう聞きましたら、ニューヨーク市内における台数というものはもう制限をいたしております。これは三年前でございますけれども、そこまで考えておるわけなんです。  ところが、日本自動車の問題につきましてはいかがでございましょう。五年たつと倍々になってくる。それならはたして道路の容量が倍になるかというと、倍にはなっておらぬと思います。事故はどんどんふえてくる。先ほど長官も、この種の問題については、歯切れのいい答弁は、何べんやってもできませんという話がございましたので、いま申し上げましたような点をもうこの辺で日本の国としても考える必要があるのじゃないか、考えなければいけない段階に来ておるのじゃないかと私は思うのです。これは自動車メーカーとの関係日本の産業経済発展の関係からいろいろな影響があると思いますけれども、それよりかは、やはり人命尊重の立場に立つならば、自動車はどんどん年々増加をしていく、五年たつと倍々になってくる、昭和五十年になり六十年になれば一体どれだけの自動車台数になるか。そのときになりまして、光化学スモッグじゃないけれども原因を調査いたしまして対応策を考えましてと言っておったのではおそいと私は思うのです。そのことを考えるのが国の責任であり、交通政策じゃないかというふうに私は考えるのですが、このことに対して、長官として、これはこれからの問題だと思いますけれども、国としてもいま申し上げましたような問題に対する方針というのを早急に決定をしていただいて、その方向で断固たる態度で進めていただく、そのことが日本の将来、十年、三十年先の住みよい日本の国にする一つの大きな原因にもなろうというふうに私としては考えておるわけですが、いろいろ白書を読ましていただいて、最終的にいま申し上げましたようなことを感じましたので、その点に対する長官としてのお考えをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  31. 山中貞則

    山中国務大臣 確かにハワイにおいては、最近、州法でそういうことをきめたことも記憶しておりますし、ニューヨークでもそういうことをやっている。しかし反面、ニューヨークではリンゼー市長が英断をもって都心乗り入れを禁止してみたのですが、それは失敗に終わったという一つの実績を持っておるようでありまげ。日本においても、この狭い国土の中で、国民の居住可能面積の範囲内で走り回る自動車の台数というような問題から、生産そのもの、自動車会社の生産台数から押えろという意見から始まって、いろいろな提言があります。したがって、国がそれに対して、ただいまの御意見も踏まえながら、わが国としては、わが国の自動車台数、あるいは大都市人口密集地域における自動車台数の適正化、こういうものについて、法律で、あるいは行政措置で、あるいは取り締まりでどのような手段をとるかという問題は、いろいろな面から検討してみなければなりません。私が例にあげました、車庫証明を出していながら車庫を持っていない者は、見つけ次第直ちに所有を禁止するということ一つ措置をやってみても相当台数は減るだろうと思いますけれども、それらのことを考えましていろいろの手段を講じていく必要があると思いますが、いまここで、国はわが国の自動車保有台数というものをどうする、あるいは東京都内の保有台数は何台にとどめるということまでまだ決心をいたしてあるわけじゃございません。
  32. 今澄勇

    今澄委員長 宮井泰良君。
  33. 宮井泰良

    ○宮井委員 私は、先ほど総務長官から年次報告がございましたが、航空関係では、「大事故の再発を防止するため、空港用保安無線施設全国をカバーする長距離レーダー網整備などの施策を強力に推進する」、このようになっておるのですが、そのやさきに、昨日飛行機事故があったわけでありまして、これは幹線航空路に力を入れている間に、不定期のローカル航空がエアポケット的になりまして大きな事故になっておるという昨日の飛行機事故、それから、最近問題になっております海上交通の安全に非常に危険視されておりますイペリット爆弾の問題この二点をきょうは質問いたします。  そこで、航空交通の安全につきましては、昨年二大事故が起きまして以来、その安全をいかに高めるかということにつきまして、当委員会においても活発な議論がされておりました。また、政府もいろいろと対策を講じて、近くは交通安全特別緊急点検を行なっておる、このように聞いておるわけでございますが、昨日また航空事故が発生いたしまして、とうとい十名の人命が奪われたわけであります。まず、つつしんで、おなくなりになった方の冥福をお祈りいたしますとともに、時間がございませんから、簡単に事故状況について御報告をお願いいたします。
  34. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 昨日、横浜航空のセスナ機が墜落いたし、乗客及び乗員の方十名がおなくなりになりまして、最近の連続する交通事故防止に対しまして万全の策をはかりたいと思って努力しておりました最中でございますが、まことに遺憾でございまして、御遺族の皆さまはじめ、国民の皆さまに対してつつしんでおわび申し上げたいと思います。  そこで、事故原因につきましては目下調査中でございますが、大体いままでにわかりました範囲の概況を御説明申し上げます。  横浜航空の運航するセスナ式四〇二A型JA五一六二でございますが、これは五月三十日に、同社の不定期便といたしまして、有視界飛行方式によりまして、紋別空港を午前九時七分離陸、飛行時間一時間の予定で、旭川市、滝川市を経由いたしまして札幌飛行場に——丘珠でございますか、午前十時七分到着の予定でございました。ところが、午前九時四十七分に札幌飛行場の管制塔に対しまして、滝川市上空通過ということを連絡した後に消息を断ったわけでございます。同機には、乗り組み員二名と乗客八名が乗っておられたということであります。  そこで、その後さらに三十分ぐらいいたしましても消息が依然として不明であるということで、直ちに通信捜索を開始いたしますと同時に、北海道警、あるいは自衛隊等に丘珠事務所から依頼をいたしまして捜索を開始したわけでございます。そこで、道警、自衛隊、消防団等によりまして空からあるいは地上から捜索を行なっていただきました結果、大体十四時ごろ、自衛隊のヘリコプターによりまして、空知支庁樺戸郡月形町付近の山中に同機らしい物件が発見され、地上からもその確認を急ぎました結果、十八時三十五分に現場で七遺体を確認いたし、十九時十五分までに全員の遺体を収容申し上げたわけでございます。なお、おそくなりましたけれども、大体夜半ぐらいに全遺体を月形町の福祉センターのほうに収容いたしました。で、大体けさほど以来遺族の方々にお引き取りをいただいておるという状況でございます。  以上が概要でございます。
  35. 宮井泰良

    ○宮井委員 そこで、旅客を運送する国内の会社と申しますのは、大体、日航、全日空、国内航空、この三社である、このように考えておったわけでございますが、この事故を起こしました横浜航空という会社は、どの程度の規模の航空会社であるかということが一つ。それから、法的にいかなる免許に基づいて運送事業を行なっていたのかということであります。また、このような種類の会社に対しまして、その運航、整備等について当局はいかに監督し、また指導を行なっておるか、その点をあわせてお答えいただきたいと思います。
  36. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 現在定期航空運送事業会社といたしましては、先生御指摘のように、日航、全日空、国内航空の三社でございます。ただ、そのほかに、旅客を運送するものといたしましては、不定期航空運送事業会社と称するものがございます。横浜航空もこの不定期航空運送事業会社の一つでございます。  横浜航空株式会社は、昭和四十四年に設立されまして、現在の資本金は一億五千万円、従業員は三十三名、うち操縦士が十一名、それから整備士が十二名でございます。それから使用航空機は六機を持ちまして、航空機使用事業、それから不定期航空運送事業というものを行なっておるわけでございます。  したがいまして、その法的根拠と申しますのは、航空法に基づきまして不定期航空運送事業の免許を受けて事業を行なっておるわけでございます。  そこで、それに対する監督でございますが、ちょっと御説明申し上げますと、不定期航空運送事業と申しましてもいろいろあるわけでございますが、横浜航空が行なっておりましたのは、その中でもやや特殊でございます。地点を定めて反復運航するという形をとっております。ただ、その時刻でございますが、これは一応ダイヤグラムというものを編してございますが、これはその安全上から、天候のいい日に限って行なう、すなわち、有視界気象状態のときに限って飛んでよろしい、天候の悪いときには飛んではならない、こういう条件をつけております。したがいまして、タイムテーブルがございましても、必ずしもタイムテーブルというものを確実に履行することはできないし、また履行することを義務づけておらないという性格のものでございまして、そういった意味でこれを不定期航空の範疇に入れて輸送を行なっておるということでございます。ただ、そういった性格のものでございますから、私どもといたしましても、一般の不定期よりはもっとシビアな監督というものを実際上は行なっておったわけでございます。すなわち、その路線を定めた不定期事業、こういうものを行なう前には、事前に当局の承認を得てはしいということを条件づけまして、毎年運航開始に先立らまして現場に入って検査をする。整備施設がどうであるか、整備人員がどうであるか、あるいは運航規程がどうであるか、整備規程がどうであるかということを厳重に審査いたしましてこれを認めておるという状況でございます。したがいまして、運航規程等におきましても、当該路線につきましてはどういう高度をどういうふうな経路で通るかというふうなことまでも含めましてそういった運航を認可するというふうなことによって、一般の不定期よりはもっとシビアな監督をしておった、そういうふうなつもりでございます。
  37. 宮井泰良

    ○宮井委員 そこで、定期運送事業と不定期運送事業というものがどのように違うのか、まだはっきりしないわけですが、経営基盤の弱い、いわば航空の中小企業というふうなこういう会社は、不定期とはいえども乗客を運ぶということになりますと、ややもすれば営業が優先になる。少々天候が悪くても、もうお客さんの要望もあれば、定期的に、自分の技術を過信して飛んじゃうというようなことで、聞くところによると、もう定期航空と同じようになっちゃっているというようなことでもありますから、運航とか整備とか、安全面というものが第二義的になってしまっておる。それがこのたびの事故を誘発したのではないか、こう考えるわけであります。この点、政府はどう考えますか。
  38. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 まず第一に、こういう中小企業に旅客を運ばしてもいいかどうかという御指摘の問題が一つございます。  現在の不定期航空運送事業者は、全国で三十四社でございます。その規模を資本金別に見ますと、一千万円以上が七社、三千万円以上が三社、五千万円以上が十社、一億円以上が十一社、三億円以上が三社となっておりまして、こうした中から見ますと、横浜航空の場合は一億五千万でございますから、こういった不定期会社では比較的大きなほうということが言えるかもしれないと思います。  そこで、なぜこういったものに旅客の輸送をさせるか、させていいのかどうかという問題でございます。これは、発生的に申し上げますと、昔、国内航空という会社がございまして、それがこういった事業を北海道路線でやっておりましたが、非常に採算上赤字が出る、なおかつ需要が少ないということで、YSとか、そういったものを使ってはとても運航ができないということで、この運航をやめたわけでございます。しかし、一方におきまして地元のほうでは、やはり北海道における航空事業というものがどうしても必要なんだ、たとえ数は少なくても質的に要るのだ、こういうことから、北海道なり紋別市あたり非常に強い要望がございました。そこでこの横浜航空が、そういった場所を、需要と見合ったような小型の飛行機でもって結びたいということになったわけでございます。そこで私どもといたしましても、いわゆるその需要の面から見ますと、これは確かにその点はうなずけるし、やはり一般大衆のためにもその需要というものを満たす必要があるであろうということは考えておったわけでございます。ただ、一方におきまして、そういったものの安全性がどうであろうかというふうなことについては、実は相当真剣に考えたわけでございます。しかし、そういうふうなことでいろいろ検討いたしました結果、やはりこれは有視界気象状態というものに限って——これは正確性、定時性という点においてはあるいは欠くるところがある、その意味におきましては利用者の方々に御不便かもしらぬ、しかし、それは安全を考えれば、天気のいい、よく見えるときに限るべきであるということで、定時性というものにかえまして安全性に重点を置きまして、一応有視界飛行というものだけを認めてきた。ただ、それにつきましても、先ほど申し上げましたように、たとえば運航管理者については、法規に要求されていないけれども、事実上そういうものを置くということを指導いたしまして、安全面には欠くるところのないように指導いたしたつもりでございますが、今回のような事故が起きまして、まことにこの点は申しわけないと思っております。この点、やはりこういったものの必要性というものは否定できないと思いますから、その安全性の向上についてはさらに検討いたしまして、よりよい方法をできればとりたいというふうに考えております。
  39. 宮井泰良

    ○宮井委員 そこで、時間がありませんから、あと一点だけ。それと、総務長官も最後に一言考えを聞かしてもらいたいと思いますが、この横浜航空は遺族補償の能力があるのかどうかという点。現在の保険で遺家族にカバーができるか。さらに、遺族補償の万全を期すために政府は会社に対して十分な指導をしてもらいたい、このように思うのですが、そのことが一点。  それから最後に、この事故にかんがみて、政府はこれから航空施策に対してどのようにこの事故を反映さしていくかという点を、簡単に、航空局長、そして総務長官に答えていただきたいと思います。
  40. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 まず、御遺族に対しまする補償の問題でございますが、運送約款によりますと、賠償額は六百万円を限度とするということになっております。この限度額は、現在の国内定期航空三社と同様でございます。  そこで、六百万というものを担保するために、同社としては保険に加入したということによってこの担保を保証しております。それは私どもも指導いたしまして保険に加入さしております。保険の加入額といたしましては、この六百万円を上回る額を保険化しておると思います。今後さらに御遺族の皆さま方に御納得のいくように、私どもといたしましてもできるだけ努力をいたしまして、十分な補償をさせたいというふうに考えております。  それから、この事故の結果をどうするかということでございますが、これにつきましては、事故調査がまだ完了いたしておりませんが、なるべく早急にこの事故調査を終わらせまして、それによりまして、今後こういった不足期航空に対する安全性の確保というおとについて十分の努力をいたしたいというふうに考えております。
  41. 山中貞則

    山中国務大臣 空の交通安全ということからいきましても、今回の教訓は、やはり不定期航空路といえども、有視界飛行ということにおいてのみ許可がされている、このことは、日本列島のレーダーの完備ということも先行しなければなりませんが、やはり少数といえども、あるいは不定期といえども、人の命を預かって一ぺん空に舞い上がりますと、文字どおり運を天にまかせなければいかぬということではいけませんので、レーダー飛行というものが原則になるような、そういう体制の整備というものをしていかなければならない。それでなくて、その整備が整うまでの間許さざるを得ない地域状況があるとすれば、それに対してやはり整備その他において十分だいじょうぶであるというだけのものが先行しないと、私は、今回の問題等については、その有視界飛行であったということや、あるいは整備がはたしてどうであったかという点は、今後究明さるべき重大な点を含んでいると思いますので、そういう全体の空の安全の点について、今後貴重な教訓をむだにしないようにしていきたいと思います。
  42. 宮井泰良

    ○宮井委員 そこで次の問題に入りますが、先ほども申しましたように、イペリット弾は旧日本軍の毒ガス弾、これが大量に海底に投棄されておるということが最近また大きな問題になってきまして、とみに社会問題になっておる。佐藤総理は、海水路に影響があり、日本列島周辺で総点検の必要がある、判明したのは政府で処理をすると約束しておりますが、どのように具体的にこれが進んでおるか。——これはどなたですか。防衛庁ですか、環境庁ですか。
  43. 鷲巣英策

    ○鷲巣政府委員 お答え申し上げます。  今月の二十五日に関係の各省が集まりまして、毒ガスの問題をどのように処理するかについて打ち合わせ会を行なったわけでございますが、その場合、問題を二つに分けまして、現に害が出ているところと、それから将来あるいは害が出るかもしれないところと、こういうふうに分けまして対策考えたわけでございます。  当面の問題は、御存じのように大久野島の問題でございまして、これにつきましては、環境庁あるいは水産庁あるいは厚生省、大蔵省、それぞれどのような対策を講ずるかということにつきまして、至急その対策を持ち寄るということになっているわけでございます。  それから、将来害が出てくるかもしれないという地域につきましては、全国の旧陸海軍基地等におきます毒ガスの状況とか、あるいは戦後におきます掃海作業の実施状況、こういうことにつきまして、防衛庁が中心になりまして調査をいたしまして、この連絡会議にとりあえず御報告いただく、こういうふうになっているのが現状でございます。
  44. 宮井泰良

    ○宮井委員 そこで、さきには千葉県の銚子沖、あるいはさらに別府湾、大分、青森の大湊などにあると聞いておるのですが、特に山口県宇部沖には相当大量にこのイペリット弾が投棄されておる。聞くところによると、数万個ぐらいあると聞いておるのですが、どのような区域でどのぐらいの量が投棄されておるか。瀬戸内海は海が浅いために、漁民は非常に心配をしておるわけであります。また、しゅんせつ船などは危険であります。この宇部沖のイペリットはどのように処理するか、この点を……。
  45. 福田勝一

    ○福田説明員 お答え申し上げます。  宇部沖の問題につきましては、一昨日防衛局長のほうに山口県知事から連絡がございまして、そういう情報が最近土地の者から入って、しかもそれが相当確実である、こういうことで山口県当局のほうであそこに潜水夫をもぐらして調査をいたします、その結果によって防衛庁に相談に行きたいと思うので、よろしく、これが実は周防灘におきますところの現在の状況でございます。  先ほど環境庁のほうからもお話がございましたけれども、総理が総点検をするようにということで連絡会議をいたしまして、防衛庁がこの総点検におきまする調査について中心になりなさい、もちろん、これは関係各省庁の御協力を得なければならない、こういうことでございます。したがいまして、周防灘につきましても私ども非常に関心を持っておるのでございますが、たまたまただいまのような地元から連絡がございましたので、この連絡をちょうだいするのが、この周防灘におきますところの実態を把握するのに一番よろしいのではないか、かように考えて、いま山口県から相談に来られるのを私どもは待っておる、こういう状況でございます。
  46. 宮井泰良

    ○宮井委員 これは県は非常に一生懸命力を出しておるけれども、そういう報告を待っておるようではだめだと思うんですね。私は、きのうから、このイペリット弾について質問をすると言いましたところ、総理府は、これは私のほうは関係ない、海上保安庁に連絡すると、これは担当官庁は環境庁だ、それで、きのうの夜まで、環境庁だと私は思っていたのです。そうすると、朝から、環境庁じゃないんだ、これは防衛庁が責任を持つんだということですね。総務長官に私は聞いてもらいたいと思うんです。そういうことなんです。だから、一体どこの官庁がほんとうに最終的に責任を持つのか。そういうたらい回しをしてはいけないと思うんです。で、どこに質問していいかわからない。末期的な政権とはいえ、ここまできたか、たるみ切っておるかという、悪いことばですが、そう感じておるわけで、総務長官も閣僚の一人ですから、この点、このような状態をどう考えておられるか、簡単にひとつ……。
  47. 山中貞則

    山中国務大臣 私も末期内閣の閣僚でありますが、しかし、一日も行政、政治というものは停滞できませんし、ことに大久野島のような問題が起こりますと、前々から言われておったことでありますから、現実にそういう被害が出た、しかもかつての従業員の人たちのいろいろな疾病等が伝えられております、ほっておけないことであります。敗戦の後遺症ともいうべきものでありますから、やはりこれは日本列島全体の環境という意味からいえば環境庁でもありましょうし、大久野島は、国立公園といいますか、国民休暇村でございますし、これは当然大久野島そのものは環境庁が責任を持たなければなりません。しかし、実務については、やはり自衛隊しかこれを処理する能力がありませんので、そのような限界は一応分かれざるを得ないだろうと思いますが、先ほど説明しましたことと重複はいたしますが、その責任の所在について問い合わせを逃げ回った感じがあったということは、私もはたはだ遺憾に思います。これはむしろ積極的に協力し合わなければならぬことでありますが、一応、五月二十五日の決定というものを読を上げますから、これに従って各省庁がやってもらうということで、その範囲内で逃げ回ることのないように私からも今後監督をいたします。  1、佐藤内閣総理大臣の指示に基づき、環境庁は、内閣官房の協力を得て、昭和四十七年五月二十五日午後四時、六時、第一回関係各省庁連絡会議を開催した。  2、第一回連絡会議の合意事項は次のとおりである。  (1)当面緊急の措置として、大久野島において今回問題となったドラム罐の掘りおこしとその内容物の検査を、環境庁が自衛隊等の協力を得て、直ちに実施する。  (2)大久野島に関する毒ガス問題については、それぞれ次のように必要な対策検討し、できるだけすみやかにその検討結果を連絡会議報告する。   イ、大久野島の陸上における毒ガス問題については、環境庁中心となって必要な対策検討する。   ロ、大久野島の周辺海域に投棄された毒ガス問題については、農林省水産庁が中心となって必要な対策検討する。   ハ、大久野島毒ガス工場元従業員等の毒ガス被害者に対する措置については、大蔵省および厚生省が中心となって必要な対策検討する。
  48. 宮井泰良

    ○宮井委員 総務長官、途中で申しわけないのですが、よくわかりました。ちょっと時間がないから、大体その辺でけっこうです。  大久野島、大久野島ということだけしか出てきませんので、これは全国的にそういうことで防衛庁なら防衛庁ということで一本化して……
  49. 山中貞則

    山中国務大臣 その次に出てくるのですよ。
  50. 宮井泰良

    ○宮井委員 それじゃそこだけ……。
  51. 山中貞則

    山中国務大臣 そこに来るまで待たなければいかぬ。  (3)大久野島毒ガス問題に関連して、全国の旧陸海基地等における毒ガスの状況、戦後における掃海作業の措置の状況等を防衛庁が中心となって調査し、これを連絡会議報告する。  (4)これらの検討及び調査については、関係各省庁は、積極的に協力することとする。 となっておりますから、(4)に若干きのうの夜の時点で欠けるところがあったのだろうと思います。  以上です。
  52. 宮井泰良

    ○宮井委員 とにかく、これからはそれをきちっと守ってもらいたい、かように思います。  それでは、まとめて質問しますから、まとめて答弁してください。  海上保安庁には、昭和二十五年から三十二年まで、山口県宇部沖に、宮田己三郎さんというサルベージをやっておった人が証言しておるわけですけれども、周防灘に九十六カ所弾薬が海底にある、そのうちイペリット弾三カ所、これは確認済み。昭和三十二年十月四日、イペリット弾を回収して十一隻の船に積んで、一隻二トンから約五トンを宇部海上保安署に持っていったところ、それは危険だからもとのところへ捨ててきなさいという海上保安署の指示で、また捨てたという。それも途中でめんどうだからまいていったというようなことも伝えられておるわけです。海底に二万から三万発くらいある予想である。なぜそのときに処理しなかったのかと私は考える。日ごろ海上保安庁は弾薬などの処理をどのように指示しておるのか。海上の安全を保つ立場を持つ保安庁が、イペリット弾の対策もないままに再び海中に捨てた。それをいままで放置しておったということは問題である、このように思うのですが、その点を答えてもらいたい。  それから環境庁には、国立予防衛生研究所の話では、イペリットは海水より比重が重いために、砲弾から液が漏れた場合、海底に沈でんし、海流や波などの影響でイペリットが海岸に打ち寄せられる可能性が十分にあるということで、危険であるというような見解をとっておるが、これはいかがですか。  それから、イペリット弾はある程度期間がたつと破損してきて、中のガスが漏れてくるといわれておるが、イペリット弾の処理にはどのような対策を立てておるか。これは防衛庁か、あるいは環境庁かと思います。  それからイペリット弾の掃海、処理、補償の費用の予算は、どこからどのような方法で出すのか。これは大蔵省主計官来られておったら答弁をお願いいたします。  その他、もう一点だけ、海上保安庁と思いますが、イペリット弾の調査の結果、危険区域ということになると、海上保安庁で区域を指定してそこをパトロールする、また、全国の漁船やサルベージ船、しゅんせつ船に指導、指示を適切に与えていくということが必要ではないかと思いますが、その点をそれぞれ答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  53. 須賀貞之助

    ○須賀政府委員 お答えいたします。  昭和三十二年に、先生のお話のように、イペリット弾を持ち込んだ人に対して、もとのところへ戻せ、危険だからということを私のほうの宇部保安署の職員が言った、こういうお話でございますが、この件につきましては、われわれもそういうことについて、今回、現職の者あるいは退職した者、あるいは北海道から九州に至るまで、関係しておる者をいろいろ調査したわけでございますが、この件につきまして、何ぶんにも十五年前のことでありますし、現在までの調査では明確な状況の判断はいたしかねるということでございます。海上保安庁といたしまして、従来から現地海上保安部長に、イペリット等の危険物が引き揚げられた場合と、そういう通報を受けた場合には、これを直ちにもよりの防衛庁の出先機関に連絡してその処理を依頼するように、その指導をしておったわけでございまして、そういう先生のお話のようなことがもしあったとすれば、われわれの意図に反したことであるということに考えるわけでございますが、どういう状態であったかということにつきましてなかなか状況判断が非常にむずかしいといったような状況でございます。  なお、この件につきましては、ちょうどそのころ大分県のほうにおきましてイペリット弾が非常に問題になっておったときでございます。昭和三十年七月四日付で海上保安庁次長あてに防衛庁の次長から書面が来ておりまして、協力方をお願いしたい、こういう書面でございまして、その第一項には、防衛庁はイペリット弾及び黄燐弾の調査並びに処理を行なう、こういうことで、あとよろしくひとつ協力をしていただきたい、こういうことがありますので、もちろん、こういう書面がなくても、前々からそういう方針海上保安庁も指導しておったわけでございます。また、大分県においてこういう問題が非常に問題になっておった第七管区海上保安本部の部署であります宇部保安署におきましてそういうことがあったとすれば、非常に遺憾なことであるということに考えておる次第でございます。  それから第二点の、イペリット弾がその地域に見つかった場合に、これを危険区域としてパトロールする、あるいは標識をここに設置するかどうか、こういった問題であるわけでございますが、この毒ガスイペリット弾につきまして、船舶の航行そのものについて特に障害があるというものではないわけでございますが、これが漁業、それから、浅いところでありますと、海水浴客その他に及ぼす影響が非常に大きいということでございますので、こういうことがはっきりいたしますれば、われわれのほうといたしましても、関係省庁あるいは山口県等と連絡をいたしまして、これに対しまして標識を設置するということ、それから事故防止等について、われわれもパトロールその他のことを行ないまして指導をしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  54. 鷲巣英策

    ○鷲巣政府委員 イペリットが流れまして海岸にどのような影響を及ぼすかという問題につきましては、現在私のほうではまだそこまで研究してございません。至急厚生省のほうに問い合わせて研究いたしたいと思います。
  55. 福田勝一

    ○福田説明員 イペリット弾が海中にありまして、そのボンベ等が腐食しまして海水中に流れた場合にどうなるかということなんでございますが、その辺の研究につきましては厚生省の国立衛生試験所等におきまして権威の先生がいるやに伺っておりますが、私どものほうにおります化学課等の専門家の話の受け売りではなはだ恐縮なんでございますが、大体百時間海水と混合しておれば無害化する、こういうふうに聞いております。日数にして四日余りということのようでございます。  なお、打ち上げられたイペリット弾等の処理対策の問題でございますけれども、従来私どもがそういった場面に遭遇し、そこで作業をさせていただいているやり方は、イペリット弾をドラムかんに詰めまして、そしてそのすき間をコンクリート詰めにして、そして二千メートル以上の水深の海中に投棄するのが一番よろしい、こういうふうになってございます。もちろん、その作業の際におきましても、マスクをかけ、特殊なイペリット防護用につくったものを着てやる、非常に厳重な作業をしなければならないということでございます。
  56. 宮下創平

    ○宮下説明員 お答えいたします。  第一の点は補償の問題でございますが、国が損害賠償等を補償いたします場合の根拠といたしましては、国家賠償法とか、あるいは民法の不法行為に基づく損害賠償ということが考えられますが、国家賠償法につきましては、御承知のように、公権力の作用で故意または過失によって相手に損害を与えた場合に国が補償義務を負う、それから民法の不法行為の場合でも、同じく故意または過失によって他人に損害を与えた場合に補償するということに相なっておりまして、本件はそういうものに該当しないのではないかと思うのでございますが、それ以外にも、損害賠償にまで至りませんけれども、しかしながら国が何らかその行為に関係を持っている、それから社会的、道義的に何らかかかわりを持っているというような場合に、何らかの措置を講ずるというような例も過去においてございます。本件がどのような措置を要するかということは、今後の検討を待たなければ何とも申し上げられないわけでございますが、したがいまして、具体的な事情に応じて、予算措置が必要であれば所要の措置を講ずるということに相なろうかと思いますが、参考までに、前回の銚子沖におきますところのイペリット関係の予算措置についてちなみに申し上げますと、当時、当初予算にはそういう経費は計上がございませんでしたので、予備費の使用によりまして、千葉県が行なう掃海事業等に対しまして水産庁から委託費を支出する、あるいはイペリットのかんを引き揚げるに際しまして補助金を支出するというような措置を予備費をもってしたような例もございます。
  57. 宮井泰良

    ○宮井委員 終わります。
  58. 今澄勇

    今澄委員長 この際、委員長から政府に対し要求いたします。  ただいま宮井委員質疑の中にありましたイペリット弾等の概要について、次回委員会までに当委員会に資料を提出されたい。便宜上、総理府において連絡されるよう要求いたします。  渡辺武三君。
  59. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 総務長官にお伺いをいたします。  配付されました報告書の八三ページに「交通安全施策の総合性の確保」ということが書いてあるわけですが、御承知のように、交通安全につきましてはその業務は各省庁にまたがっておる。これは言うまでもないことでございます。そこで、全体的にその総合性の確保が必要になってまいる。そのために政府自身がいろいろな組織をつくって、山中総務長官交通対策本部長、こういうことになっておるのではなかろうか。ところが、ここに書かれておることをそのものをずっと読んでまいりますと、はたして総合性の確保ができるであろうかどうか、きわめて疑問に思わざるを得ないわけでございます。なぜかと言うならば、ここに書いてありますことどもは、つまりは各省庁がそれぞれの立場において交通安全対策を打ち出された、それを羅列したにすぎないのではないであろうかとさえ思われるのでありまして、それを総体的にまとめてそして総合性を確保するという意味で、交通対策本部長としてほんとうにこれで総合性が確保できると思っておられるのかどうか、この基本的な問題についてまずお伺いをしたいと思います。
  60. 山中貞則

    山中国務大臣 これは評価の問題ですから、反論をする気はありませんが、やはり総理府においては実務ということまではいたしておりませんので、したがって、行政の斉合性、国民から期待される、セクト主義におちいりやすい行政の弊害の排除、そういうものはやはり総理府がやらなければなりません。そして政治の目標である、交通問題であるならば、まず交通事故の根絶に向かって前進をしなければならない基本姿勢、そういうものに向かって各省庁の行政施策あるいは取り締まり、あるいは予算措置、そういうものが斉合性を持って行なわれているかどうか。交通安全予算なんかに例をとりますならば、建設省が道路をつくりながらつくっていくやり方と警察庁が独自でつくるやり方とは、やはり一体となっていかなければならないというようなことなども、重要な問題になって登場してきているわけでありますが、このような問題を逐次やっていきますから、交通対策本部のいろいろな決定事項あるいは本部長指不というようなことで流していきますことを、大体において各省庁はそれを受け取って関係省のとるべき分野においてやってくれておりますので、交通対策本部長の指示、あるいはもっと上の交通関係閣僚会議の決定にきわめて不服従な役所があるというふうには、いまのところ考えておりません。やはり私が指示しております遊戯道路、決定の指示としては、人口二十万余の都市並びに県庁所在地の小学校単位で必ず日曜祭日に一本は遊戯道路をつくれという指示等についても、なかなか全国的に実現しておらない。これらの問題等も、PTAとか地域住民とか、そういう人たちの協力が要るというようなことで、文部省あたりの協力もいま求めておるということでありまして、完全であるとは思っておりませんが、いまの斉合性を保つための行政施策としては総理府のやっておる交通対策本部の行政というものは一応効果をあげているものと考えます。
  61. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 一応効果をあげておるという自己満足をしておられるようでございますが、私ども客観的に見た場合に、やはり非常に多くの問題点を残しておるのではなかろうか。御承知のように、アメリカなり西ドイツなりでは、この総合性の確保の必要性から、交通省なり運輸省なりという一つの省にまとめて総合性の確保ということに非常な熱意を持ってやっておられる。ところが、日本の場合は各省庁にそれぞればらばらにまたがっております。したがって、道路一つつくるにいたしましても、これは建設省道路局がその主たる任務を持つことは当然でございますが、しかし、交通安全という立場から、その道路の設計その他に対してやはり言うべきことはしっかり言わなければいけないし、それを確実に守らせていくという権限そのものも対策本部長として持っていなくてはいけないのではないだろうか。そういう点を考えていきますと、まだまだ考えなければならない問題が非常に多いのではないだろうか、こういうふうに考えるわけでございます。  さらに、先ほど問題になっておりました排気ガス公害、あるいは先年問題になりました柳町交差点の鉛公害にいたしましても、私は、やはり、総合性の確保がほんとうにあれでなされておるのだろうか、こういうふうに疑わざるを得ないわけでございます。と申し上げますのは、あの柳町交差点の鉛公害によって、直ちに自動車のガソリンの加鉛を制限する、こういう対策がとられたわけですね。それによって、つまりオクタン価を上げるために芳香族をまぜた、それがいまや光化学スモッグの発生に非常な寄与をしておるのではないかという疑いすら持たれておる。そういうふうに考えていきますと、原因が不明なままにそのような内張りこう薬的な対策が安易にとられて、そしてまたあとで副次的ないろいろな問題が出てくる。これはやはりどうしても、総合性の確保ということがほんとうにはかられているのだろうかという疑いを持たざるを得ないわけです。  こういう事例が各所にあると私は思うのです。あの鉛公害のときでも、ほんとうに自動車のガソリンに入っている鉛分が人体的にどのような影響があるのだろうかということすら、世界的に、医学的にまだまだはっきりしていなかった。ガロン当たり二cc程度をガソリンの中に加鉛するのであれば、むしろわれわれが日々食しておる食品の中から摂取される鉛量よりも少ないではないかとさえいわれておる。そういうことがいわれておりながら、ある種の世論が起きますと、総合的な判断をせずにそれのみで対策を講ずる、こういうことが従来からの方法ではなかったのだろうか。  そうしますと、やはりどうしても、この中心的な立場にある、それらの各省の協力関係なりあるいは連携を強化する目的で持たれた対策本部というものの機能がもっともっと強化されなければいけないし、そういう方面の努力がもっともっとなされていかなくてはいけないのじゃないか、私はこういうふうに考えるわけですが、いままでのそれらの事例から見て、ほんとうに長官としていまで十分効果があるとお思いになっておられるのかどうか、やはりまだまだ相当改良しなければいかぬというお考えを持っておられるのかどうか、あらためてお聞きしたいと思います。
  62. 山中貞則

    山中国務大臣 機構というものは、複雑怪奇であるよりも、単一明快な機構であるにしくことはない、これはもう明らかでありますから、交通省を設けておる国というものは、明快に割り切った機構を持っておると思います。しかし、その交通省も、いま言われたような公害問題そういう問題になると、権限というものがはたしてどうなっているだろうか。道路行政までそこがやっていると私も思っておりませんし、やはり問題の接点は存在していると思います。  しかし、よその国を批判するのは能じゃありませんで、わが国はどうするかという問題でありますから、ただいま私は満足しておるわけではありませんで、いまの交通安全対策本部というものは役に立っているかと言われれば、役に立っている、しかし、それで完全かと言われれば、ただいまの石神井の問題、あるいはひるがえって、柳町の公害で加鉛をやめて芳香族にしたためにあるいはオキシダントの発生が高くなったということ等は、やはり科学的にも普遍的にも認められた現象でありますから、今後も、それらの反省の上に立って、やはり検討は慎重、そして結論が出れば行動は果断にということで、有機的な行動力を発揮していくべきである、そのように考えます。
  63. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 そこで、交通安全対策というものを考える場合に、三つの段階に分けて考えるべきではないだろうか。つまり、事故が発生するまでの安全対策、これは予防的な意味を持つわけでございます。それから、不幸にして事故が起こった場合、この白書でもいっておりますように、走る凶器から走る棺おけ型に事故の態様が変わってきておるとするならば、事故が起こった場合に、車に乗っている人々がとうとい生命を落とさないような対策、これは主として車をつくる側の責任に帰するところが多いかと思いますが、エアバッグの開発とか、いろんなことがあろうかと思います。それからさらには、不幸にして交通事故が起こってしまったあとの対策、やはりこの三つを総合して交通安全対策の万全を期していかなければならないのではないか、かように考えておるわけです。  そこで、第一の問題の予防的な交通安全対策、これがやはり最も重要視されていかなければならないことは、申し上げるまでもないわけですが、いろいろ多種多様な事故が起こっておりまして、それらを詳細にわたって分析をし、その分析結果に基づいていろいろな対策が講ぜられていくのではないだろうか、こういうふうに考えるわけです。  そこで、警察庁がそれぞれ事故の現場に出向かれていろいろな調査をしておられるようでありますが、はたしてこの調査の内容そのものがいいかどうかという検討も、やはりしてみなければならないのではないか。つまり、調査した結果が今後のアクションにどう結びつけていくかということを重点考えていかなくてはいかぬ。単に交通法規に違反したかしなかったかということだけでは、やはり今後の交通安全対策上重要な問題点は出てこないわけですから、そういう重点的な、今後にどのような問題点が引き出せるであろうかというような事故の調査が必要ではないだろうか。ところが、残念ながら、いまの警察庁は、やはり法を守るという立場で取り締まるという態度から、道交法に違反したかどうかが最重点になっておるのではないかというふうに考えるわけです。いろいろ資料もお見せいただいたところ、相当詳細にわたってお調べになっておるようですが、はたしてこれだけの中から今後に益する交通対策というものが導き出されてくるであろうかどうであろうか。私ちょっと拝見したところでは、たとえば運転免許取得を調査することになっておりますが、運転免許取得月日から運転経験を推定するというのは、非常に誤りが出てくるのではないだろうか。御承知のように、免許を取得いたしましても、実際に自分がマイカーを持って運転するまでには相当の年月を経る人もおります。数年前に免許をとったのだけれども、買ったのは一カ月前だという人もおるわけでしょう。だから、事故のときに、免許証を見て、この人は経験五年というように書かれてしまうと、あとの対策が非常に狂ってくるのではないだろうか。そういう意味で、本来ならこれはほんとうの運転経験年数をもとに調べていかなければいけないのではないだろうか。私どもがちなみに地元でいろいろ調べていきます場合でも、主として運転経験年数に重点を置いて調べております。そういたしますと、起こっております事故の半数以上が運転経験一年未満の人々によって起こされておるという事実が判明いたしてまいりました。そうなりますと、やはり運駅免許をとられて実際に運転をされてから最初の半年間くらいはある程度の範囲の規制をするとか、いろいろな交通安全対策上の問題点がそこに生み出されてくるのではないだろうか、こう考えるわけです。ところが、いま一生懸命におとりになっていただいておるこの資料そのものが、ほんとうに交通安全対策に役立っておるだろうか。私は全然役立っていないとは言いませんが、ある一部分のみしか役立っていないのではないか、あとは統計を見ておるだけということに終わっておりはしないだろうか、こういうおそれすら実は持っておるわけでございます。そういう点についての交通局長の御見解、あるいは総合的に交通安全に取り組まなければならない本部長の山中総務長官の御見解、ともに承っておきたいと思います。
  64. 片岡誠

    片岡政府委員 交通事故の分析でございますけれども、私ども交通事故の調査をやるときに、四つの目的でやっております。一つは、刑事事件として、業務上過失致死傷害事件として捜査をする。もう一つは、免許の行政処分でございますね。取り消し、停止のための事実調査をする。もう一つは、結果的には民事の事件の実況見分調書が最大の証拠になっていくということが一つございます。それからもう一つは、先生おっしゃいました事故防止対策をその中から選び出していく、そしてフィードバックして、警察のやることはやるし、道路管理者のやることはやるし、あるいは自動車メーカーあるいはその他安全教育の面にフィードバックしていくのが私どもの仕事だと思っております。ただ問題は、数が多いこと、たとえば飛行機の事故とか船舶の事故であれば、一つ事故でしかも専門家がたくさん集まって検討できる余地がある。自動車事故の場合は、死傷事故だけでも年間七十万ございます。そういうものについて、しかも現場の警察官が短時間に原状を回復しなければならないという制約のもとで調査をしているということで、調査内容そのものがどうしても現場の警察官に確実に判定できる、信頼できるようなデータに制約されるというような問題がございます。それとは別個に、専門家による調査もあわせて行なっておりますけれども、いままで主としてやっておりましたのは、一つは、道路交通環境との関連で、個々の地点、事故のあった地点、あるいはそれを全体として分析をしていって安全施設にフィードバックしていく、これは相当徹底して行なわれておると思います。  もう一つは、違反の形態によって、今度は指導、取り締まりのほうにフィードバックしていく、これも相当行なわれていると思います。  問題は、一番むずかしいのは教育の問題だと思います。それともう一つは、車の欠陥の有無の問題だと思います。  それで、教育の問題につきましては、先生御指摘のございましたように、半年未満あるいはもう少しとりますと一年未満、一年未満のドライバーが問題であるということを私どもも認識しまして、今国会で成立しました道路交通法の一部改正でそこに焦点を合わせまして、初心者対策をひとつ打ち出すということでやりました。一つは、いままで箱庭で練習して、箱庭で試験するという仕組みであったのを、まず路外で基礎練習をし、仕上げは路上で練習して、路上でほんとうに安全に運転できるかどうか見きわめるという路上試験制度を導入した、これが一つでございます。それからもう一つは、免許証を取ってから一年以内は車に標識をつける、そして自分がまだ未熟な運転者であるということを認識するとともに、ほかの道路利用者もそれを見て注意をしていくということによって、初心者の事故を減らしたい、そういう面にもフィードバックを始めております。  そういうことで、まだまだ問題はあると思いますけれども、私ども日々検討しながら、よりよいものに今後もしてまいりたい、このように考えております。
  65. 山中貞則

    山中国務大臣 一応限定された問題としては片岡君の答弁でよろしいと思いますが、やはり交通事故の態様は、先ほど私が申し上げました一うに、走る凶器から走る棺おけ型に変わりつつありますし、また、その同じ走る凶器型の被害者でも歩行者事故が依然として多いし、その中でも老人と子供が多い。こういうような問題点がやはり事故の分析の結果は明確に出ておるわけでありますから、これらをさらに重点的な教訓として進めてまいりたいと思います。なお、道路構造等についても、かって中央高速道を中央分離帯なしの二車線部門を一定期間に唐突につくったために、取り返しのつかない人命を失って、その人体実験の結果、あわてて分離帯つきの四車線に変える作業を行なっておるというような、そういう失態もございました。今後はこういうことは二度とは繰り返されないと思いますから、各般の行政を講ずるにあたっては、安全に反するようなことのないように、教訓としてそれは学び取っていきたいと思います。
  66. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 時間がないようでございますので急ぎますが、それでは第二の問題を通り越して、第三の問題の、いわゆる事故後の処置はどうなっておるだろうか、救急医療体制ははんとうに万全であろうか、こういうことでございますね。先ほども数字の違いについていろいろ御質問がございました。つまり、二十四時間以内に死亡する方、その時間に関係なく交通事故原因となって死亡された厚生省の資料、これは明らかに食い違っております。ところが、事故が発生をして救急車で運び込まれる、その救急医療体制はどうなっておるだろうか、こういうように見ていきますと、なかなか寒心にたえないものがある。今週号のアサヒグラフをごらんになりましたか。これを見ますと、「担ぎこみ先が命の分れ目」、これはどういうことかと言いますと、いわゆる救急医療体制では、救急車が負傷者を拾ってもよりの病院へ連れていくということになっている。ところが、もよりの病院へ行ったけれども、特に頭部外傷等があった場合には、そのかつぎ込まれた医者は十分経験がないため、手おくれになって、それで落とさなくてもいい命を落としてしまうという例が間々ある。これは国がつくりました救急センターの医者がそう言っているのですね。開業医に持ち込まれた、そして数時間もたってから、どうにもしようがないので持ってこられる。持ってこられてみると、実は手おくれだったということがある。そのために、落とさなくてもいい人命をなくしてしまっている。こういう事実があるわけですね。  さらに救急医療病院そのものは一体どうなっておるだろうかというように調べていきますと、いわゆる申し出制度になっている。申し出制度になっておったのを、厚生省が分析をすると、いま東京はともかくとして、地方へ行きますと、総合病院だとか大学病院、公立病院が、この救急病院になることを非常にいやがっておる。半分もなっていない、こういう事実があるわけですね。そうすると、一体これは何だろうかということなんです。むしろ、私は、そういう公立病院こそ、進んで国民の命を守るために救急病院として申し出るということが至当だろう、まあ当然一〇〇%なっているのだろうと思っておったのですが、実は半分もなっていない。そして先日新聞紙上をにぎわしておりましたように、札幌のように、救急車と病院とが結託をして、そして運び込むことによってお金をもらったりたばこをもらったり、こういうことが一方で行なわれている。これは非常に重大な問題ではないであろうか。なぜ、少なくとも公立病院くらいはその救急指定病院とできないのだろうか。あとの開業医は、それはもう申し出によってやられるということもけっこうだと思いますが、少なくとも公立病院なり大学病院は進んで救急指定病院にすることができないのかどうか。これについて厚生省の御見解を承ると同時に、これもやはり対策本部長である山中長官の御意見もあわせて承りたいと思います。
  67. 木暮保成

    ○木暮説明員 お答え申し上げます。  救急医療につきましては、昭和四十二年度を初年度といたしまして救急医療センターを全国で百十二カ所つくるという計画を立てた次第でございます。この計画自体は順調にまいりまして、四十七年、本年度で三カ所をつくれば一応完成をするという状況でございます。また、百十二カ所の計画を立てましたあと、高速道路整備とかその他、そういうことがございまして、百十二カ所では需要がまかない切れないという面もございますので、四十六年度からはそれにダブらせましてサブセンターをつくるということを始めておるわけでございます。そういうことで、設備の整備は一応できるような状況になっておるわけでございますけれども、しかし、いろいろなネックがございまして、私ども考えましても、救急医療体制が十全であるというふうには申し上げられない状況でございます。  そのネックの一番大きな点は、いろいろございますけれども、医師の不足ということがございまして、救急医療センターをつくりましても、かなり大きな病院を救急医療センターにしておるわけでございますけれども、夜間の当直を見ましても、内科系医師一人、外科系の医師が宿直をするということが確保できればまずまずというような状況でございます。したがいまして、交通事故が発生しまして患者を輸送する場合にも、消防庁のほうでいろいろくふうをしていただいておりますけれども、必ずしも万全な体制がとれていないという状況があるわけでございます。そういう状況がございますので、施設整備並びまして、本年度から消防庁や地元の医療機関等が相談をいたしまして、搬送をどういう病院にしたらいいか、搬送後の各病院間の連携をどうしたらいいか、そういうものをテスト的にやるという予算を計上いたしまして、ただいま都道府県に準備をさせておるわけでございます。  それからもう一つ、国公立病院が救急医療をやるべきだという御指摘でございますが、私どもも、公的病院が当然やるべき仕事の一つというふうに考えているわけでございます。先ほど申し上げました百十二カ所の救急医療センターも、国公立あるいは公的医療機関を対象といたしまして整備をしておる状況でございます。今後サブセンターをつくっていく場合にも、この公的病院を中心にしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  なお、先ほど先生から、公的病院の救急医療機関の申し出が少ないじゃないかという御指摘がございましたのですが、確かに一〇〇%救急を担当しているという形にはなっておりませんけれども、国立の場合には、精神病院とか結核療養所等がございます。それから都道府県に参りましても、そういう結核病院や精神病院を持っておりましたり、また肢体不自由児を収容する病院もございまして、救急医療を受け持つのに適当でない病院もかなりあるわけでございます。そういうものを除外して考えますと、公的病院は大体救急病院の申し出をしていただいておる。ただ市町村関係の病院が五〇%を割る状況でございますが、市町村の場合には必ずしも大きな病院ではないわけでございますので、一〇〇%救急医療を担当していただくわけにはいかない、かように考えておる次第でございます。
  68. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいまのような現状でございますが、日本の救急医療センターというものの普及の範囲も問題でありますから、ただいまサブセンターその他検討しておるということであります。ただ、医師の確保の中で、脳神経外科のお医者さんというものが、医者のレベルの高い、質の高い日本としては、比較的少ない分野であるように思います。ここ両三年あたりから、脳神経外科と交通事故の頭部損傷との関係というものは、ただいまおっしゃったように、運び込まれた先が命の分かれ目というようなはっきりした状態が出ておりますから、そういうことについてやや長期的な展望で心がけなければならぬと思いますが、要するに、そのようなことをひっくるめて、交通事故にあった人でも、手当ていかんによりまして助かる人、あるいはまた後遺症の残らない人、いろいろな分かれ目があるということは、まことに重大な問題でありますから、きょうは人の身あすはわが身ということばがありますとおり、やはりほっておけない問題であるということで、厚生省を中心に取り組んでまいりたいと考えます。
  69. 渡辺武三

    渡辺(武)委員 あと一問だけお尋ねしますが、長官、わが国は自衛隊がございますね。この自衛隊は、国民の生命と財産を守るために、いつ起こるかわからない脅威に対処して何十万という人がばく大な費用を使ってやっておるわけですよ。ところが、一方、交通事故はベトナム戦争以上の死者が出ているわけです。毎年毎年小規模な戦争より以上の死者、つまり国民の生命が失われていったわけだ。だとするならば、同じ国民の生命と健康を守るという立場から見るならば、もっともっとそういう方面に力を入れなければいけないのではないか。大学の先生がなければ、医者がなければ、国の力でそれをつくるとか——医学部というのは非常に学資が高いそうですからなかなか普通の人では相当金がなくちゃなれない。これを国の力でつくるとか、いろいろなことが考えられると思うのですよ。一方であれだけの膨大な人員と膨大な予算を使って国民の生命と財産を保護しておる。片一方では、小規模の戦争以上に毎日毎日死傷者が出ているにかかわらず、非常に対策が手ぬるくやられてしまっておる。これはウエートとして考えると、日々小規模な戦争以上の死傷者が出ておるとするならば、相当重大な問題に考えていただいて、もっともっと積極的な施策が必要ではないだろうか。そのためには、本来各省庁に分かれておるけれども、もっともっと強い権限を総務長官お持ちになって、ほんとうに真剣になって取り組んでいただかないと、何かマンネリ化してしまっておる。あまり非常事態と考えないような形で毎日毎日が過ごされてしまっておるのではないか。その一つ一つ対策を聞いていきますと、いまもおっしゃっておるように、警察のほうでいろいろなこまかいデータをあとのためにつくっていこうとすると、人間が足らぬとか、あるいは人材がないとか、病院のほうはどうかというと、該当する先生がないとかということになってくる。これは私は非常に重大な問題であると思うのです。だから、そういうところに重大関心を払っていただいて、日々おなくなりになっておる国民の生命と財産を守る、あるいは健康を守るという立場も相当重大に考えて、積極的にやっていただかなければならぬのではないか。特に最後に総務長官の決意のほどをお伺いしておきたい。
  70. 山中貞則

    山中国務大臣 少なくとも国内的に現実に平和な日本の中で、戦争ということばをつけておかしくないのが交通戦争一つだけだということを考えれば、これに対して国がどれだけ予算なりその他の行政上の努力を傾注しても、過ぎることはないという御意見については、私も同感でございます。したがって、ただいまの御発言を体して今後さらに一そうの努力をいたします。
  71. 今澄勇

  72. 青柳盛雄

    青柳委員 私に与えられた時間は十分でございますが、大臣お急ぎのようでございますから、先にお尋ねいたします。  先ほど御説明がありましたのは、交通安全に対する対策についての白書でございますので、交通公害と申しましょうか、交通事故とか交通災害とは直接結びつかないけれども交通があるがために、直接的ではないが間接的に公害が起こっている、その最も典型的なのは、排気ガスなどによるスモッグでございます。当然これは政府としては——光化学スモッグなとは全国的な現象になるかもしれない。自動車はもう全国にびまんしておりますから、これがまき散らす排気ガスが至るところで大気を汚し、オキシダントその他の有毒なガスが人体あるいは植物に悪影響を及ぼしているということが考えられるわけです。したがって、この問題について政府はどう考えておられるのか。オキシダントの原因は何であるのか、あるいは光化学スモッグ原因は何であるかの研究をするんだという話がありました。研究はけっこうですが、私どもは、どのように研究をしてみても、自動車の現在出している排気ガスが無関係である、犯人は別だという結論は絶対に出ないと思うのですね。だから、自動車排気ガスをどう処理するのか、有毒部分を除去するについてどのような措置をとるべきであるか、政府はどう考えておられるか、それをお尋ねいたしたい。     〔委員長退席渡辺(武)委員長代理着席
  73. 山中貞則

    山中国務大臣 結論から申しますと、どういう調査をして原因を解明しても、その加害者のおおよそのウエートを持っているものが自動車排気ガスであろうことは想像にかたくありません。しかし、先ほどアメリカの例をちょっと申しましたが、自動車王国アメリカで、ロサンゼルスでは確かに光化学スモッグというものが起こっている。これは相当な大先輩でありますが、かといって、ニューヨークでは聞かないしシカゴでは、内陸部でありながら、現象がいまだ、一ぺんも発見されていません。そうしますと、光化学被害、その現象による被害という公害面からの究明というものは、どうもなかなかむずかしいような気がいたします。といって、その原因究明したところで、その加害者の大半は自動車排気ガスの中の物質であろうことは想像にかたくないことでありますから、その点では私も見解を一にいたします。  したがって、環境庁というのは私が手がけてつくった役所でありますけれども環境庁にはきわめて強力な権限が与えてございます。すなわち、環境庁長官たる国務大臣は、調査もし、報告も求め、勧告もできますが、さらに、勧告をした場合に、各省庁の大臣はそれに対して報告をしなければならぬ。とった措置についての報告が気に入らなければ、総理の指揮権というものを要請することができるという、きわめて強力な権限が与えてございます。したがって、環境庁長官が、そのような石神井なら石神井の例をとって、それが明らかに交通規制の手段をとるべきであるということを判断をした場合においては、まず勧告から始まりますが、警察庁なり、あるいはまた国家公安委員会なり、あるいは交通安全対策とどのような規制をやった場合関連が起こるか、だいじょうぶかといったこと等について、私どものほうなり何なりに、そういう環境庁長官の法律に基づいた権限の行使があるだろうと思います。それを待ってのんびりやるという意味じゃありません。やはり主管の役所がその問題について明らかにして、しかる後に自動車規制あるいは交通安全という問題と総合して検討して結論を出すべき問題と考えます。
  74. 青柳盛雄

    青柳委員 時間がありませんから、簡単にお尋ねいたします。  きょうのテレビを聞いておりますと、アメリカのネーダーの仲間の人たちが帰国するにあたって感想を述べたようです。それだと、日本では自動車排気ガスを整理するというか、要するに、有害ガスの中で一酸化炭素とか炭化水素とかいうようなものを除去する装置としてアフターバーナーというようなものが問題になっているのだけれども日本から輸出される自動車については、少なくともアメリカに入る自動車については、アフターバーナーのようなものがついていなければ輸入を認めない、ところが、日本の国内ではそういう規制は何にもない、これは一体どういう意味かという非常に疑問を述べておったようであります。私どもも数年前からアフターバーナーのことは党の方針といたしまして提唱をし、関係方面に、また一般の方々にも訴えているわけでございます。一般の世論も、少なくともアフターバーナーぐらいなものは、法的規制によって、日本ではんらんしている自動車につけることを義務づけたらどうか。メーカーも、また使用する者も、その義務は当然履行しなければいけないということにしておかなければ、単に東京都の条例で指導あるいは勧告するというだけであっては、何ら罰則もありませんし、強制力もありませんから、ほとんど期待できない。早い話が、お役所あたりで使っている自動車でも、ほんの何%かしかこれをつけていない。こういう状態では、民間に協力を求めるなどといっても、それはもう全く期待できない。ですから、世界の趨勢ともいうべき少なくともアフターバーナー程度、現在開発されている除去装置、これは完全なものではないかもしれませんけれども、少なくともオキシダントの原因となっているところの炭化水素、あるいは光化学スモッグは硫酸ミスト等にも関係があると思いますが、一酸化炭素等を除去することのできる、これを法的につけるという施策をおやりになる気持ちはないのかどうか、それをお尋ねいたします。
  75. 山中貞則

    山中国務大臣 私は前からそのことはすでに指摘をいたしておるわけであります。したがって、これは運輸省の検査規格の問題でもあり、それを受けて通産省がメーカーとの間に当然そういう行政指導をすべき、私は政治道義、あるいは自動車メーカーのほうはモラルの問題だと思います。外国に売る場合には、規制がきびしいから、アフターバーナーをつけて売らなければやむを得ないからつける、しかし、国内で売る場合には、一台当たりが何万円か高くなるから、したがって、大量生産の販売のためにはマイナスの要因になるので、現行は規制されていないから、国内においてはかまわぬのだというようなことがまかり通るということについては、かねがね疑問を表明しておりますけれども総理府が直ちにそれを総理府の法律としてきめることは不可能なことでありますから、なお引き続き運輸省、通産省等とよく協議をして、そういうことは私はすみやかに解消すべきだと思っております。
  76. 青柳盛雄

    青柳委員 もう一点だけ大臣に。  環境庁の予算の中に、自動車の有害物質を排出することについて研究をするというものがあるわけですね。だから、これをやはり励行してもらいたいということを訴えたいわけです。その点いかがでしょうか。たとえば本年度の予算の中に、環境庁分として、常時監視の機器整備補助等の分が六億四千万円、別に光化学スモッグの調査一億一千万円というのがあるわけですね。これを励行してもらえばある程度の措置がとれるのではないか。
  77. 山中貞則

    山中国務大臣 環境庁が来ておりますから、私はこれで……。
  78. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 ただいま御指摘のありました自動車排出ガスの規制措置の問題でありますが、基本的には、大気汚染防止法の第十九条に基づきまして、環境庁長官自動車排出ガスの許容限度を規定いたしまして、それを受けまして運輸大臣が道路運送車両法に基づく保安基準を設定するという仕組みになっておるわけでございます。したがいまして、それにつきましては、一昨年の七月の運輸技術審議会の中間答申をもとにいたしまして、一応四十八年、五十年という二段階の規制の予定があったわけであります。その四十八年実施の分を実はやや先取りをいたしまして、この三月の二十九日付で、環境庁としては一酸化炭素あるいは炭化水素についての規制強化したわけでございます。  アフターバーナーの問題でございますけれども、一般的に申しますと、一酸化炭素についての減少装置についてのアフターバーナーというものについては、ある程度の効果がすでに期待されておるわけでありますけれども、実質的に、現在問題になっておりますような光化学スモッグ原因物質である窒素酸化物、炭化水素、この二つについての減少効果というものは、現在の段階でかなり進んではおりますけれども、まだまだきわめて短距離の走行で性能が非常に落ちている。この点はアメリカでも同様でございまして、これらの触媒装置等に基づきますアフターバーナーないしはこれらの炭化水素、窒素酸化物の減少装置のための研究という問題が、御承知のように、マスキー法の施行の一年延期の問題ともからみまして最近非常に議論を呼んだということも御承知かと思います。  これらの問題を前提にいたしまして、私ども自動車公害専門委員会を通じまして、できるだけ早い機会にわが国における自動車排出ガスの規制問題というものの目標を立ててまいりたいと思っております。  なお最後に、先ほど御指摘がありました監視測定の約六億余りの補助につきましては、これは地方公共団体に対する補助でございます。光化学スモッグの予算の約一億と申しますのは、これはもっぱら、先はどから御指摘がございましたように、光化学スモッグ原因あるいは光化学反応についていろいろのミステリーが多うございますので、これらの問題を解明するという意味の調査研究費でございまして、先はど御指摘のような排出ガスの問題についての予算といたしましては、これらの開発等については、運輸省並びに通産省、あるいは総合研究費として科学技術庁の研究委託という形で開発が促進されておるということも、あわせて申し上げておきたいと思います。  以上であります。
  79. 青柳盛雄

    青柳委員 時間がありませんから、もう一点だけでおしまいにいたします。  けさの八時半のNHKテレビによりますと、二十九日午前十一時に練馬区石神井南中学校で事故が起こった際に、あそこの大気を横浜国立大学のこの方面のプロジェクトの人たちが採取いたしまして検査をした結果、すでにこの大学のプロジェクトの人たちが昨年発見をしたといわれるアクロレインというものが発見された。アクロレインについては、われわれは実はあまり詳しく知らなかった。オキシダントというのは耳にたこができるほど聞いておったのですが、光化学の元凶がアクロレイン、別名は——正確な別名なのかどうか知りませんが、アクリルアルデヒドというのだそうですが、これは軍事用毒ガスにも使われるのだそうです。非常に強力なもので、大気汚染防止法の環境基準には入っておらぬというのですね。これが実は原因は何かといえば、先ほどもお話が出ましたが、加鉛ガソリンをやめたかわりでございましょうが、オクタン価を上げるために添加するところの芳香族化合物、これが原因だそうです。まさに自動車が犯人であるアクロレイン、こういうことは非常にショッキングな話で、風があるとか、その辺にはあまり自動車排気ガスも行かないとか、天気が悪いとかいいとか、どうもオゾンがどうとかいうのと関係なさそうな地域において、奇妙な現象といわれるようなものとして、ちょうどオキシダントの場合と同じような症状あるいはそれよりも強力なものが出ているという原因のようであります。  これは一つの説のようでありますから、科学的に光化学スモッグのアクロレインが今度の南中学校の原因というところまで断定できるかどうかわかりませんけれども、少なくともこの点について政府は研究しているのかどうか。この問題は、昨年の五、六月ごろに横浜市立神奈川中で一カ月に六回も発生をして、二十六人が倒れ、合計二百四十四人の被害が出たということから、横浜国大と市立大学のプロジェクトチームが研究した結果、発見した。もう一年も前にこれは出ている。政府のほうではこれを一体知っていたのかいないのか。知っていたとすれば、今度の石神井南中学の場合にこのことにすぐ思い当たるはずだと思うのですけれども、この点いかがでしょう。
  80. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  アクロレインは、いわゆる還元性物質でございまして、ホルムアルデヒドなどと同様に非常に刺激性の物質でございます。これの発生施設は、アクリル酸の合成工場あるいはアクロレインの合成工場、乾性の油の不完全燃焼によって発生するということから、いわゆる獣骨の処理場あるいは羽毛の処理場というようなところの排出ガスから非常に出ることが多いわけでございます。また、自動車の排出ガス中からも、いわゆる芳香族オレフィン系のものが鉛にかわって混入をされましたときに検出されることがございます。そういう意味で、すでに大気汚染防止法第十七条の規定によります特定物質といたしまして、大気汚染防止法施行令第十条でアクロレインは特定物質として指定をいたしまして、マークしている物質でございます。  問題は、自動車の排出ガス中のアクロレインの検出の問題でございますけれども、いわゆる労働衛生の環境基準といたしましては、わが国の場合でも〇・一PPMというのを労働衛生の環境基準にアクロレインをチェックしているわけでございます。医学的な所見等から考えてまいりました場合に、実はアクロレインが人体被害を起こすという濃度に達しまする以前に、これは非常に刺激性の臭気の強い物質でございます。したがいまして、私ども、悪臭防止法の悪臭物質としてこれを指定をするという方向で、一昨年来かなりこの物質についての検討、研究は重ねてきたつもりでございます。ただ、いま申し上げましたように、かなりの臭気の段階ではすでにもう人体被害を生ずるということから、悪臭防止法よりも、むしろやはり大気汚染防止法の特定物質としてすでに指定されており、必要に応じてはこれをさらに有害物質として常時規制の対象にまで持っていくべきではなかろうかという検討を現在続けておるところでございます。  ただ、この石神井南中学校におきまする光化学反応による汚染被害と見られますケースにつきましては、横浜の国大及び市大の方々を中心とするグループから、先はどお話がありましたようなアクロレイン検出の報告がございましたが、実際問題として、私ども並び東京都の公害研究所が、現地でその場においてすでに大気汚染測定車等を持ち込みまして検出に当たり、あるいはその学童あるいはその付近の住民等の被害を訴えられている方々からのアンケート調査等から見ますと、アクロレイン特有の臭気という段階は実はチェックできなかったわけであります。したがいまして、アクロレインという、きわめて——何と申しますか、人体被害がある段階ではもうすでに相当のにおいを持つ、こういう化学的な性質を有する物質でございますので、私どもとしては、もちろんこれの影響ということも一応仮定として置きながら検討を進めてまいるつもりでございますけれども、いまのところ、石神井南中学校の問題は、アクロレインだけが単独に働いたという科学的な立証にまでは実は至っていないということから、私どもとしては、それによるという断定を下すのにはまだ少し時間がかかるのではなかろうか。特に、現在被害者の健康診断並びに医学的な調査に当たっておられます医師の方々、特に東大の内科の講師をしておられる三上先生を中心検討を急いでおりまして、大体六月の上旬ぐらいには一応の結論を見た上で結果を発表したいというようなことも聞いておりますので、その辺の医学的な反応等を分析した上で私どもとしては結論に至りたい。いまのところ、必ずしもこうだと一〇〇%否定はできませんけれども、その可能性がないとは言い切れない、そういう状態でございまするので、御了承いただきたいと思います。
  81. 青柳盛雄

    青柳委員 わかりました。もしその研究の結果、アクロレインというものが一つ原因であるという結論が出た場合に、当然のことながら、そのアクロレインをばらまいたものは何者かというところまで研究が進まなければうそだと思うのです。先ほど、加鉛ガソリン等にかわるものとして、オクタン価を高める芳香族化合物が加えられるということも公然の事実のようですから、これに対して規制をとるための措置を運輸省と相談しておやりになる予定かどうか、それだけお聞きしたいと思います。
  82. 竹内嘉巳

    ○竹内説明員 お答えいたします。  アクロレインは自動車の排出ガス中から検出されることがあるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。もともと私のほうで考えております自動車排出ガスの許容限度規制の中には、炭化水素類を含めましてこれらの物質の規制強化したいというふうに考えております。  なお、発生源の追跡調査確認ということは、これは当然のことでございます。もちろん、そういう段階に至りまして、アクロレインないしはホルムアルデヒドといったような物質の影響が認められる限りにおきまして、これが対応策を発生源にそれぞれ即応した形で厳重にいたしたいと思います。  なお、ガソリン中の鉛にかわる芳香族の混入等についての規制の問題は、主として通産省の所管でございますので、私どもとしては、この点については、かねてから、ガソリンの無鉛化計画推進とあわせまして、通産の鉱山石炭局の所管課長等と随時連絡を重ねながら、この問題についての検討を急いでおるところでございます。  以上でございます。
  83. 青柳盛雄

    青柳委員 終わります。
  84. 渡辺武三

    渡辺(武)委員長代理 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十一分散会