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1972-05-11 第68回国会 衆議院 決算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年五月十一日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 福田 繁芳君    理事 白浜 仁吉君 理事 菅波  茂君    理事 濱野 清吾君 理事 森下 元晴君    理事 綿貫 民輔君 理事 西宮  弘君    理事 鳥居 一雄君 理事 吉田 賢一君       阿部 文男君    荒舩清十郎君       奥田 敬和君    菅野和太郎君       中村 弘海君    中山 利生君       丹羽 久章君    西銘 順治君       羽田  孜君    山崎平八郎君       北山 愛郎君    坂井 弘一君       瀬長亀次郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       渡海元三郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         行政管理庁長官         官房会計課長  鶴田 輝明君         行政管理庁行政         管理局長    平井 廸郎君         防衛政務次官  野呂 恭一君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         経済企画庁調査         局長      小島 英敏君         科学技術庁長官         官房会計課長  野崎 博之君         環境政務次官  小澤 太郎君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         法務政務次官  村山 達雄君         外務政務次官  大西 正男君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省経済協力         局長      大和田 渉君         外務省条約局長 高島 益郎君         大蔵政務次官  田中 六助君         大蔵大臣官房審         議官      中橋敬次郎君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君         文部大臣官房会         計課長     三角 哲生君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      木田  宏君         厚生政務次官  登坂重次郎君         厚生省児童家庭         局長      松下 廉蔵君         林野庁長官   福田 省一君         通商産業政務次         官      稻村佐近四郎君         通商産業省繊維         雑貨局長    佐々木 敏君         中小企業庁次長 進   淳君         運輸省鉄道監督         局長      山口 真弘君         労働政務次官  中山 太郎君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         建設政務次官  藤尾 正行君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         自治政務次官  小山 省二君         自治大臣官房審         議官      立田 清士君  委員外出席者         会計検査院長  白木 康進君         会計検査院事務         総局次長第五局         長事務取扱   鎌田 英夫君         日本国有鉄道総         裁       磯崎  叡君         日本国有鉄道理         事       小林 正知君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団総裁)   篠原 武司君         決算委員会調査         室長      池田 孝道君     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十六日  辞任         補欠選任   阿部 文男君     田村  元君   笠岡  喬君     中村庸一郎君 同日  辞任         補欠選任   田村  元君     阿部 文男君   中村庸一郎君     笠岡  喬君 同月二十八日  辞任         補欠選任   阿部 文男君     鍛冶 良作君   笠岡  喬君     中村 梅吉君   中山 利生君     中村庸一郎君 同日  辞任         補欠選任   鍛冶 良作君     阿部 文男君   中村 梅吉君     笠岡  喬君   中村庸一郎君     中山 利生君 五月九日  辞任         補欠選任   芳賀  貢君     中澤 茂一君 同日  辞任         補欠選任   中澤 茂一君     芳賀  貢君 同月十日  辞任         補欠選任   阿部 文男君     山手 満男君   笠岡  喬君     中村庸一郎君   中山 利生君     中村 梅吉君同日  辞任         補欠選任   中村 梅吉君     中山 利生君   中村庸一郎君     笠岡  喬君   山手 滿男君     阿部 文男君 同月十一日  辞任         補欠選任   荒舩清十郎君     西銘 順治君   石田 博英君     中村 弘海君   笠岡  喬君     山崎平八郎君   菅野和太郎君     羽田  孜君   村上信二郎君     奥田 敬和君 同日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     村上信二郎君   中村 弘海君     石田 博英君   西銘 順治君     荒舩清十郎君   羽田  孜君     菅野和太郎君   山崎平八郎君     笠岡  喬君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十四年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十四年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十四年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十四年度政府関係機関決算書  昭和四十四年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十四年度国有財産無償貸付状況計算書      ――――◇―――――
  2. 福田繁芳

    福田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十四年度決算外二件を一括して議題といたしとう存じます。  諸君御承知のごとく、これら各件は第六十四回国会に提出され、本委員会に付託されました。自来、第六十八回国会の今日まで、長時間にわたり、予算が効率的に使用されたかどうかを中心といたしまして審査をいたしてまいりましたが、去る四月二十五日、各省別所管審査を終了いたした次第であります。  本日は、これより各省別所管審査の経過に基づき、各件について締めくくり総括質問を行ないます。  この際、おはかりいたします。  本件審査のため、本日、参考人として日本鉄道建設公団総裁篠原武司君の御出席を願い、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 福田繁芳

    福田委員長 御異議がないようでございますから、さよう決定いたします。  なお、念のため申し上げまするが、佐藤内閣総理大臣に対する質疑時間は、理事会の協議によりまして約一時間二十分となっておりまするから、これまた御協力をひとえにお願いいたします。  これより順次質疑を許します。西宮弘君。
  4. 西宮弘

    西宮委員 私は、通告をいたしておきましたけれども、いわゆる経済援助海外経済協力という問題についてお尋ねをしたいのでありますが、まず第一に、この問題に対する基本的な理念とでもいいますか、そういう点について一言総理の御見解を伺っておきたいと思います。
  5. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 海外経済協力についての基本的な考え方、これは申し上げるまでもなく、OECDにおけるDACの申し合わせ、決議、その線を忠実に行なおう、これが日本の態度でございます。またそういう意味からも、いままでやってきたことについていろいろ反省もしながら、いわゆる民間経済援助DACの大体のねらいであるGNPの一%に近くなっておりますけれども、政府間の援助、そのほうがまことに少ないというのでこの割合を高める、こういう方向にさらに努力をする、これが現状でございます。
  6. 西宮弘

    西宮委員 総理の言われましたように、民間ースも加えると確かに相当の成績になっておるわけであります。その絶対額からいうと、あるいはGNPに対するパーセンテージというような点でいうと、アメリカの次ということになりますけれども、いま総理の言われたいわゆる政府ースの、政府開発援助という点になりますと、これは格段に低い。そこで、DAC勧告もありまするし、あるいは南の国々人たちの集まった、昨年十月のいわゆるリマ憲章、ペルーのリマできめたリマ憲章なるものがあるわけでありますが、それによりますと、GNPの一%、それから政府ース援助GNPの〇・七%、こういうふうに決定をしておるわけです。それを要請する、こういう形で決定がされておるわけでありますが、日本政府は、いま格段に低いと申し上げた政府援助リマ憲章なりあるいはDAC勧告に近づける、はたしてこういう用意があるかどうか伺いたいのであります。
  7. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 西宮君のただいまの御指摘のように、ただいままでのところ政府ースはわずか〇・二〇%、これをようやくこしているくらいであります。よく見てもせいぜい〇・二五%、こういうことではないかと思っております。それをただいまいわれるように〇・七〇に上げるということ、これはなかなか容易なことではございません。しかし、対外援助という限りにおいては、金額もふえなければならないが、質的にも改善をして、十分開発途上国に便するように努力しなければならない。これが先進工業国のつとめであるというふうに考えておりますので、ただいま直ちにとは申しませんが、あらゆる努力をして目標をその数字に近づけたい、かように実は思っておる次第であります。  なおただいまも御指摘になりましたように、アメリカに次いで対外援助日本が二番目であります。GNPの〇・九%程度だろうと思いますが、しかし、それがただいま言うように民間関係でありますから、質的に見ましてどうも満足な状態ではない、かような批判がある、かように私どもも考えますので、そこらは十分気をつけてまいりたい、かように思っております。
  8. 西宮弘

    西宮委員 実は私も一昨年東南アジアを克明に回ったわけでありますが、各所で聞かれます声一は、いわゆる民間ベース援助なるものは、援助の名においてエコノミックアニマルではないか――エコノミックアニマルということばは必ずしも使いませんけれども、こういう気持ちでわれわれに意見を述べるわけであります。要するに、われわれは月賦で何か買うのとちっとも変わらない、少しも援助でないじゃないか、こういうことをいわれるわけでありますから、いま総理の言われたような方向でぜひとも考える必要があると思うのですが、ただしかし、これは言うべくして相当にむずかしい問題であるということは総理指摘をされたとおりだと思います。  大蔵大臣がおりませんが、大蔵省の御見解をもしお聞きできるならばどなたかお聞かせ願いたいと思うのですが、政府ース援助DAC勧告に従うというようなことになりますと、一九七五年の日本GNPは四千億ドルと想定をされますので、その一%は四十億ドルであり、〇・七%は二十八億ドル、こういうことになるわけであります。一九七〇年の実績は四億五千八百万ドル、これをわずか五年間に二十八億ドルにしなければならぬ。大体六倍にふえるわけであります。それほど大幅にふやさないとDAC勧告どおりにはならぬ、こういうことになるわけでありまして、これはなかなか容易なことではないということを、数字を見ただけでもわれわれ常識的にも考えられるわけであります。そういう点も考え合わせながら、財政当局においてもはたしてこれに対する十分の用意があるのかどうか。すでにDAC勧告に従ってやるということは外務省のほうでも方針としてきめている。ただ、その年限をいつまでにやるということは言っておりませんけれども、この勧告どおりにやるということを外務省方針としてもきめておるわけでありますから、大蔵当局はそれに対応する用意があるかどうかということをお聞きしたいと思います。
  9. 田中六助

    田中(六)政府委員 お答えいたします。西宮委員指摘のように、GNPの一%を海外援助に向けるということを七五年つまり昭和五十年までに完成するということは非常に困難でございますが、一九七〇年の実績を見ますと、民間政府ベースを含めまして、GNPの比率にしまして〇・九三%を実行しておりますし、それは前年度の〇・七六%に比べますと、かなり上回っております。七一年はまだ数字が出ておりませんが大体そのベースでいきますと、何とか五十年つまり一九七五年までにはGNPの一%はいくのではないかという見通しを持っておりますし、わが国経済現状並びに見通しから考えましても、昭和五十年までには一%の目標に向かっていくという確信を持っておりますし、また努力していこうというふうに考えております。
  10. 西宮弘

    西宮委員 大蔵当局のかなり積極的な決意をお聞きいたしましたので、これ以上申し上げませんけれども、とにかく日本東南アジアの各国、東南アジアの十一カ国を比較してみますると、十一カ国の合計が、これは六八年の統計でありまするけれども、四百二十八億ドルというGNPであります。それに対して日本は千四百十八億ドルというのでありますから、十一カ国の合計の三・三倍に当たり、東南アジアにおいては日本経済力というのが極端な強さを持っている、こういうことでありまするので、日本の義務はそこからも当然に生まれてくると考えるわけでありますが、同時に、日本経済構造はたいへんに対外依存度が高い、とりわけ発展途上国に対する貿易の依存度が高い、こういう点ではおそらく先進国の中で最もそういう特性を持っているのではないか。つまり、そういう国々、この開発途上国発展なしには日本経済発展考えられない、こういう特殊な経済構造を持っているわけであります。ですから、われわれとしてはぜひがんばらなければならぬということを痛感するわけです。  次に、技術協力の問題でお尋ねをいたしますが、発展途上国国民技術を促すためには技術協力が一番いい方法だというふうにいわれておるわけであります。ところが、これがまた日本の場合は極端に少ないわけです。七十年が二千百万ドルというのでありまして、これはお話にならぬ少ない額であります。したがって、どうしてもこの額を上げなければならぬ。同時に、これは単に金だけの問題ではないはずでありまして、日本にそれだけの発展途上国国民を指導するだけの指導力を持った優秀な技術者を多数かかえなければならぬ。あるいはさらに、私もこの前旅行いたしまして、各所で皆さんから訴えられた問題は、身分の不安定というような点があるわけです。せっかくアジアで苦労しても、日本に帰るともう一ぺん初めからやり直しだ、あるいは就職の心配からしなければならぬ、こういうことで、そういう身分上の不安定ということを、これは政府の役人として行っている人からも、あるいは民間から行っている人からも、同じようにそういう問題を聞かされたので、そういう身分保障の問題があります。あるいは、同時にまた、日本技術協力の趣旨が必ずしも十分に徹底しておらない、理解されておらない。そのために、せっかく一生懸命やっておるのだけれども、君たちは一体何をしに来たのだ、そういうような目で見られる、そういう不満を訴えでおる人も何人かありました。ですから、この技術協力の問題は、金の問題がお話にならぬほど低いのでありますが、同時に、いまみたいな幾つかの問題があるわけであります。問題がたくさんありますけれども、時間がありませんから、総理、その金の問題、特に劣勢な現在の日本技術協力予算を、これも世間並みに引き上げる、そういう用意があるかどうか、その点だけお尋ねをしたいと思います。
  11. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん発展途上国、これから伸びようとする諸外国に、資金もまた技術におきましても欠くるところがある、かように私は思いますので、そういう点では積極的な援助姿勢を示さなければならない、かように思っております。姿勢はできておる、しかし現実に十分の効果をあげておらない、こういう御指摘でありますから、さらにわれわれは努力する必要があると思います。この努力が実を結べば、いま一部でいわれるような軍国主義化というような非難もなくなりますし、真に平和愛好国家として、お互いに手をとって繁栄への努力を、その道を歩もう、こういう姿も理解してくれる、かように私は思いますので、これは積極性をもっと持つ必要があるだろうと思います。私申し上げるまでもないのですが、昨日の本会議における中小企業白書につきましても、日本中小企業などの優秀性はそういう点にあると思いますが、ノウハウあるいはその他マネージメントサイド等においての技術、この援助が必要だろう、かように思います。したがってわが国に対しての留学生その他技術者養成、これについても万遺憾なきを期するが、出かけても、やはりただいまのような点を十分理解されるように指導することも必要だろう、こん然一体となるためにも技術的指導が一そう必要だと思います。またその意味において、わが国から出かけておる人たちが、最初からやり直さなければ身分上の保障も立たぬというようなこと、そういうような無理解な状態では、いわゆる技術協力もこれは効果をあげるとは思いません。したがいまして、私はいわゆる日本版ピースコアなどもそういう意味では役立っておると思いますが、もっと高度な技術、これが御指摘になるような点でわれわれもこれから考えていく必要があるだろう、かように思います。これは同感でございますので努力いたします。
  12. 西宮弘

    西宮委員 私は次に、援助のやり方と申しますか援助について、いわゆるポストベトナム、こういう点について日本政府相当用意をしておるのかどうかという点をお尋ねしたいのでありますが、寡聞にして、私はそういうものが準備されておるというふうには聞いておりません。アメリカではたとえばリリエンソール報告書というような実に膨大な報告書がすでにできておるわけであります。これは相当年月もかけ、あらゆる機関を動員してつくり上げた報告書であります。その要約を読むだけでも容易でないというのであります。そういう準備がされておりますが、日本の場合には、少なくともわれわれ新聞等で知る限りにおいては、そういうものがありません。  そこで佐藤総理お尋ねをしたいと思いますが、一体アジアの、特にインドシナ半島における平和はいつ返ってくるのか、つまり戦争終結見通しはいつなんだろうか、こういうことについて端的にお答えいただきたいと思います。
  13. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは端的に申せばわからないの一言に尽きるように思います。私は非常に期待をかけていた。ニクソン訪中の結果、必ずベトナムにも和平へのきざしがあるだろう、かように思っていた。ところが、訪中はしたが、その後北ベトナムからの南への浸透が始まった。その武器援助はソ連だ、かように指摘されておる。しかし、近くニクソン大統領の訪ソ、これはぜひとも実現するだろう、また実現させなければならない。そういう際に十分話し合っていただいて、そうして一日も早く平和がここに招来されるように心から願うものでございます。  ただいま港湾封鎖等非常措置がとられておるその際に、ただいまどうなるか、こういうことを申し上げることは非常に困難でございます。しかし、われわれの願い、それは一日もすみやかな平和だ、かように考えますので、ニクソン大統領が声明しておるその後段とでも申しますか、いわゆる封鎖はするが、話ができれば四カ月以内に撤兵する、全面撤兵、こういう事柄が可能な状態にぜひともいたしたいものだ、かように思いますので、そういう意味からも、アメリカ自身もいまのどろ沼戦争を継続する、そういう考え方はないようですから、われわれもやはりただいまの平和への道を探る、こういうことがわれわれのつとめじゃないだろうか、かように思います。  もちろん基本的には、こういう事態についてただいまの国連における安保理事会等でも議論されることだと思いますけれども、いまの状態自身で一体どうなるか、こういわれましても、ちょっと私にも判断がつきかねる、かように御了承いただきたいと思います。
  14. 西宮弘

    西宮委員 それでは、今回のニクソン大統領のとった措置、これは平和つまり戦争終結ということを早めるだろうか、あるいはそれとも逆に、かえっておそくなるだろうか、こういう点についてどういう効果を果たすだろうか。総理はどういうふうにお考えですか。
  15. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはきょうの本会議でもそういう点についていろいろお尋ねがあろうかと思いますが、私は、底に流れておるもの、これはやはり平和への探求である、かように見るべきだと思いますので、われわれとして大事なのは、その底に流れておる基底をなすところの平和を招来するその方向を指向しておる、その努力をやはり考えてやらなければ、ただ個々の状態、刻々変わっていく状態、それだけで判断するということがあってはならないのではないか、かように私は思っております。ただいまの状態、まことに不幸な状態だ、これは一日も早く平静に帰するようにいたしたいものだ、かように思います。
  16. 西宮弘

    西宮委員 いまの状態は非常に不幸な状態だ、こういうことでありますが、もし、かりに佐藤さんがニクソンであったならば、やはりあのとおりなさいますか。つまりあれ以外に方法がないとお考えでしょうか。
  17. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはどうもむずかしい話ですが、私自身全体の情勢を十分つかんでおりません。一部でいわれるようないわゆる非武装地帯、それを越して北から南へ浸透した、こういうような言い方をされておりますが、それをそのままとってよろしいのかどうか、ここらにも問題がありますし、またそういう場合に、あるいはもっとさかのぼって、アメリカ自身が南ベトナムへ進駐したこと自身が、南からの要請があったにしろ、はたしてそれがいいことであったかどうか、長い今日までの経過を見ていて、いろいろ疑問になる点もあります。しかし問題は、こういうようなどろ沼的なもの、その様相を見ていると、やはり早く戦争はとめたいというような気持ちにならざるを得ないのじゃないだろうか。だから、そのニクソン大統領のとられておる事柄が最も賢明な方法だ、かようには私は申しませんけれども、とられたことについてのある程度の理解はできないわけでもない、かように私思うのでございまして、これはどうも当事者でないと、どれがいいかというのはなかなかむずかしいことだ。これはやっぱり当事者自身が判断すべき事柄じゃないか、かように思いますので、別に逃げるわけじゃございませんが、この点は西宮君にも御理解をいただきたいと思います。
  18. 西宮弘

    西宮委員 日本政府の立場は、この問題については全くの中立であるのか、あるいはアメリカと安保条約の関係その他いろいろあるわけでありますが、そういう立場で、アメリカのやっていることをもっと理解を持って、言いかえれば、もう少しアメリカの態度を十分理解しながら対処しなければならぬ、そういう立場にあるのですか。それとも、これについては純然たる中立だ、こういう立場ですか。
  19. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本の立場は純然たる中立でございます。したがって、安保条約がございますけれども、事前協議事項、これは厳密に解釈されておる、かように思っておりますので、これは外務大臣もしばしばお答えしたとおりであります。それらの点については別に御疑問はないだろうと思いますけれども、また北からの浸透が始まる前ではありましたけれども、外務省からわざわざ課長がハノイに出かけた。そして何らかの平和への道を探る方法はないか、あるいはまた援助すべきような人道上の問題はないかなど、いろいろ検討しておる。これらのことをお考えになりましても、日本は純然たる中立の立場だ、かように御理解いただけるだろうと思います。
  20. 西宮弘

    西宮委員 佐藤総理もあるいは福田外務大臣も、しきりに北からの浸透ということを強調されるわけでありますが、どうも要するにアメリカのやっていることを弁護する、そういうニュアンスが非常に強いように思えるわけであります。したがって、これでは、ことに戦争終結後のインドシナ半島に対する日本の立場、そういう点がフリーハンドではなくなってしまうという点も非常に懸念をされます。しかし、いまそれを言っても水かけ論になりましょうから、繰り返しません。  ただ、きわめて常識的なことなんでありますが、先般発表されたニクソン大統領の演説、これを佐藤総理ごらんになっても、ちょっとこれはおかしいなという、きわめて市民的な常識から、少しおかしいんじゃないか、そういうお気持ちはないでしょうか。たとえば書き出しのほうには、最も悲劇的なものは、北ベトナムの人命無視の無差別砲撃であるというようなことを言っているのだけれども、同じことを、アメリカは爆撃をしているわけですね。あるいはまた、北ベトナムないしは解放戦線を国際的な無法者と称しているわけですね。しかし国際的な無法という点になると、私はアメリカ政府のやっていることも国際法上には多大の疑問があると思うのですね。あるいは北ベトナムが隣国の領土を侵している。この隣国の領土という点については、私は非常な問題だと思うのです。いまその議論に入りますと、とてもこれはちょっとには片づきませんから申し上げませんけれども、決して隣国の領土ではないはずです。あるいはこうも言っているわけです。ベトナムではソ連の将兵は何ら脅威を受けていない、脅威を受けているのは六万のアメリカ兵であると言っているのだけれども、これは確かにアメリカの兵隊が行っているから脅威を受けているかもしれませんけれども、アメリカ本国のアメリカ人は何の脅威も受けていないわけですよ。実にかってな言い方だと思うのです。ソ連も米国が同盟国への援助継続以外のことは予期できないはずである、こう言っているのだけれども、かりにニクソン大統領指摘するとおり、ソ連は北を助けてけしからぬというならば、アメリカが南ベトナムを助けることもけしからぬということにもなるだろうし、しかも、その中で格段な違いがあるのは、ソ連は武器弾薬を送っている、アメリカは軍隊を、かつては五十五万というような大軍を送り出して、あそこで戦争をしている、こういう点について、これは比較にならぬアメリカの介入ですね。ソ連と比較をするということ自体がおかしい。バランスがとれないと思う。こういうことを考えると、ずいぶん市民的な常識論で考えてもおかしいと思うのですが、総理はそのようにお考えになりませんか。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも国際情勢の問題は、短期的にまた部分的に見るわけにいかない、最近のような多極化した国際情勢のもとにおいてはいろいろ関係するところも大きいのではないかと私は思います。したがって、一面、大国だけで話し合ったからといって、われわれの行動を左右するわけにはいかない。いわゆるニクソン訪中によって米中の和解ができても、話し合いができても、北ベトナムは別だ、こういうような話をやはりはっきり言っております。あるいはまた、アメリカ自身もソ連を非難しながらも、またソ連もアメリカを非難しながらも、やはり話し合ってみよう、こういうことでただいま訪ソが計画されている。かようなことを考えると、やはり底流には和解への道もあるのだ、だからわれわれ第三者として育て上げるべきは、この和解への素地を強める、高める、こういうことではないだろうか、かように思いますので、ただいまの動きに一喜一憂ずる、こういうことでなしに、もっと大局に、また少し時間をかしていただいて、そうして事態を冷静に見ていただきたい、かように私は思います。私は、そういうことがこの際必要なことではないだろうか、かように思う次第であります。
  22. 西宮弘

    西宮委員 現象的な問題に一喜一憂するというようなことでは決してありませんけれども、今度のニクソン大統領のあの強硬手段というのは、これはもうだれがどう考えてみても、おそらく異常な強硬な態度だというふうに考えざるを得ないわけであります。先般、裁判所で判決をされた中にも、ベトナム終戦は世界の願いである、こういう観点から判決が行なわれたことは総理も御承知のとおりだと思います。それほどベトナムの戦争はやめてくれといっているときに、あのアメリカが世界の願いを無視してああいう強硬な手段に出てきたということは、私は、何としてでもこれは許すことのできない人道上の大問題だというふうにいわざるを得ない。これはほんとうに純粋な市民的な立場に立っても、そう考えるわけであります。しかも、さっき申し上げたニクソン声明の中に、アメリカは名誉ある撤退をしたい、こういうことを言っているわけですね。そういうことで、メンツにこだわっている。佐藤総理は先ほど、アメリカベトナムに出ていったのがよかったのかどうか、いま考えてみると問題だ、こういうことを言われたので、私は、その点は総理としても重大な反省だと思うのですよ。むしろ、いままではどちらかというと、アメリカだけを弁護してきた。あの北爆のときの答弁などを見ると、そういう点が非常に強調されているわけです。それに比べて、アメリカベトナムに行ったのが間違いかもしらぬという発言をされたことは、私は総理が大きな反省をしておるというふうに評価をしたいと思います。そういう間違ったことを、あえてその間違いをおかしておって、今度は名誉ある撤退をしたい、これはあまりにも虫がよ過ぎると思うのですね。最後の結びは、神の助けと支持によってこの大目標を達成しようではないか、こう言ってニクソン大統領は呼びかけておるわけでありますが、私は、ニクソン大統領の信ずる神あるいはアメリカ国民が信ずる神-実は私も若いころキリストの精神に非常に薫陶を受けたわけでありますけれども、私は、神がこういう暴虐なことにくみするということはとうていあり得ないと思う。私はたいへんな間違いだと思います。時間がありませんから、終わりにしなければなりませんが、最後に、総理に何かお考えがあったらお聞きをいたします。  もう一つ、林野庁長官出席を願っておりましたので、これは時間がありませんから、答弁できなければ答弁なくてもけっこうですが、指摘したい問題は、最近、たとえば歴代の営林署長が三人続いて警察の取り調べを受けておるという事件があり、あるいは鹿児島では、全く理論的に実施できないことを業者と契約をして、金をすでに払ってしまっているという問題が問題にされており、さらに、静岡県の函南町で、保安林を解除して宅地造成をやってしまったという点について非常に問題にされているわけです。私は、あそこで宅地造成をやっておる会社について相当な疑問を持っておるわけです。これはたとえば沖繩でも、同名の会社をつくって、たいへんな土地の買収をして、しかも、それは土地改良の行なわれた土地を買い上げてしまって、裁判ざたにもなっておる。こういうことでたいへんな問題を起こしておる会社であります。その他、私はこの会社についてはかなり疑問を持っておるわけであります。そういうのを承知の上でやったのかどうか。しかも、四十九ヘクタールを一ぺんに解除している。こういうことはいままでの実績ではおそらくないのではないかというふうに考えるわけです。  これは時間がありませんから、あとで資料を出してください。あの函南町の保安林の解除についてどういう経過をとったか、さらにまた、いま行なわれております保安林の解除はどういう状態であるか、つまり、一件どのくらいの規模で行なわれるというのが普通であるか、そういう点についてあとで資料をいただきたいと思います。  総理、御答弁ありますか。なければ終わります。
  23. 福田繁芳

    福田委員長 林野庁の福田長官に委員長として申し上げておきます。ただいまの西宮君の御質問の御要望事項を後日委員長の手元まで資料として御提出願いとう存じます。西宮君、時間の関係上、さように御了承願いとうございます。  総理から西宮君に対する答弁があるようでございます。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどの問題の続きですが、これはアメリカ国内におきましても、今回のニクソン大統領のとった処置についていろいろ批判があるという新聞報道も私、見ております。私は、ちょうど昨日も、長く大使をやっておられたマーフィさんが東京に見えていたので、たいへんいい機会だからお目にかかりました。約一時間ばかり話をし、そして、この事情についてもいろいろ打ちとけた話を実はしたような次第でございます。やはりニクソン大統領としてはずいぶん苦労し、くふうもしながら、最後に断を下した。国内における反対のあることをも承知しながらやっている。こういう事柄は、ことばの問題ではなくて、いま名誉ある撤退だとかいうことばに重点を置いての西宮君の御批判だが、そういうことばではなくて、やはり真実早く事態を平静に帰したい、そのためにあらゆる方法考えたいのだというのがほんとうの気持ちじゃないかと思っております。私どもも、同じようにアジアに位する国であり、ことに日米安保条約を締結しておる日本といたしましては、問題が、アジアの周辺地区においてもこういう事態が起こらないように、早く平静に帰することが何よりも望ましいことだ、かように思っておりますので、ここはむしろ冷静だといわれるかもわかりませんが、私どもも冷静にこの成り行きを見たい、かように実は思っております。心から願っておるのは、一日も早く平和が招来することであります。これをつけ加えさしていただきます。
  25. 福田繁芳

    福田委員長 この際、鳥居一雄君の発言を許します。鳥居君。
  26. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 総理にまずお伺いしたいと思うのです。  これはことしの四月二十五日、某紙に載ったものであります。インドネシアにおける国立大学でナンバーワンのインドネシア大学における日本学科が中国学科に吸収合併されてしまったという報道があります。これをよく考えてみますと、外務省が行なう東南アジアにおける対外援助、文化援助、これが非常にずさんである、そうして教科書も送らないし先生も足りない、そういう中で今日まで日本学科があった、こういうことを報じているのでありますけれども、きょう十一時半にスハルト氏にお会いになるそうでありますが、中国学科に吸収されてしまった、そういう背景のある文化援助、これについてまず伺いたいと思うのです。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はその記事を存じあげませんが、ただいまたいへんいい時期に御注意がございました。スハルト大統領見えておりまして、昨日も二時間ばかりいろいろ話をいたしました。また懇談も夜その時間を持ちまして、昼間われわれごちそうになるということになっておりますから、さらにそういう話につきまして十分確かめてみたい、かように思っております。もちろんインドネシアは、今日までのところ、国連におきましても私どもと同じような行動をとってきておる立場でございますから、それらの点においてまさか誤解はないだろうと思いますので、よく話し合いはできる、かように思っております。
  28. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 私は、鉄道新線の建設につきまして、三十九年に鉄建公団が設立されまして、五十年をめどに、現在建設中の基本計画にある路線の建設を急いでいる、そういう段階で、四十五年度事業の決算がここにようやく上がった、そういう段階で、ちょうど十カ年計画の半分を過ぎた段階でこれを考えてみたい、このように考えるわけであります。  まず新線建設につきまして、全国で何カ所、特にAB線につきまして、全体とAB線、総工事費と、今日まで、四十五年度までの投資額、これについて伺いたいと思うのですが、公団、どうですか。
  29. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 鉄監局長から御説明を申し上げます。
  30. 山口真弘

    ○山口政府委員 日本鉄道建設公団の工事線は現在五十七線、二千七百八十三キロでございます。そのうち着工線四十七線、二千二百九十キロ、未着主線十線、四百九十キロでございますが、その中でただいまお話がございましたAB線は、総工事費三千八百四十三億、四十六年度までの投資額千百二十六億、二九%。それからC線が総工事費二千二十七億、それに対しまして四十六年までの実績が八百十四億、したがいまして四〇・二%の進捗。それからD線が総工事費二千五百九十六億、それに対しまして四十六年度までの投資額千八百六十一億で、七一・七%の進捗率。それからE線でございますが、二千十四億の総工事費に対しまして、四十六年度まで百八十六億、九・三%の進捗率。それからG線でございますが、これにつきましては総工事費七千六百億、それに対しまして四十六年度までの総投資額が四十億、〇・五%の進捗でございます。
  31. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ただいまの説明で、AB線の投資額、四十六年度末まで何%ですか。
  32. 山口真弘

    ○山口政府委員 AB線の投資額でございますが、総工事費といたしましては三千八百四十三億、それに対しまして、四十六年度までの投資額といたしまして千百二十六億、進捗率が二九・三%でございます。
  33. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 国鉄にお伺いしますが、現在ローカル線で廃止を検討しているもの、これは何線ありますか。
  34. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私のほうは、昭和四十三年に、八十三線区、二千六百キロ、これは部外の方々にいろいろお集まり願って、鉄道としての使命が大体終わったものということをきめまして、それに基づきましてすでに十一線、約百十キロの廃止をいたしました。中には来月の中ごろのものも含めましてでございますが、全部地元と円満に話をいたしまして廃止いたし、すでに済んだもの並びに来つき中に廃止できるものが、全部で百十六キロ、十一線でございます。なお現在、七線、約八十キロについて地元と話を進めております。
  35. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 鉄建公団に伺いますが、国鉄のほうで廃止を検討している八十三線に直接接続をしようとする新線工事は何線ありますか。
  36. 篠原武司

    篠原参考人 八十三線に接続する新線は二十五線ございまして、そのうち着工線が十九線、未着工線が六線でございます。それから昭和四十五年度まで、これらの線区に対しまして投資額は約五百四十億ございます。これらの路線につきましては、今後建設について鉄道の特性が発揮できるよう、建設意義が大であると認められる路線につきまして重点化、効率化を運輸省で検討してきめていただいて進めてまいりたいと思っております。
  37. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それでは具体的にお伺いをしなければならないのですが、ここに鉄道線路図があります。総裁ごらんになれるかと思うのですが、総理、北海道の先端にあります根北線、六一のナンバーがついております。この根北線について具体的に取り上げたいわけでありますけれども、在来線の斜里―越川間の十二・八キロ、これはすでに廃止になった路線であります。それにつなげようとする根室―標津―越川間の工事、いわゆる新線建設根北線でありますけれども、この根北線の工事につきましてはどういうふうに進めていかれる考えですか。鉄建公団いかがでしょうか。
  38. 篠原武司

    篠原参考人 根北線につきましては、運輸省から基本計画の御指示がございましたけれども、その後いろんな情勢で国鉄でもこれをやめたいという話が出てまいりまして、われわれのほうといたしましても、もう数年前から根北、小国、北松、この三線につきましては予算を計上しておりませんで、路盤も未着工でございます。そういうような形でまいっておりまして、国鉄で根北線の一部を廃止したということになっておりますので、これを将来基本計画から落としていただかないとわれわれとしても困るということで、運輸省にもお願いしているわけでございます。
  39. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 そうすると、そういうふうに落としていただこうという路線はどのくらいありますか。具体的にどれとどれと指摘していただきたいのです。
  40. 篠原武司

    篠原参考人 運輸省でおきめいただいた線をわれわれが工事するのでございまして、私のほうでこれをどうするこうするということは申し上げられないわけでございますが、運輸省といろいろ相談いたしまして、根北、小国、北松、この三線は数年間予算をつけておりません。そういうようなことを御報告申し上げておきます。
  41. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 しかし、それは現実にはおかしい話でありまして、調査線が昇格されてすでに工事線になっているわけでありますから、工事線として予算がつきさえすれば、つくのを待って工事に取りかかるというのが現在の法的な根拠になっているわけでしょう。ですから工事線に昇格した段階から工事が進むものとなっているのが現実の姿じゃないですか。さらに今日までの投資額の非常に大きかったものに窪江線というのがあります。四国の宇和島の近くでありますけれども、窪江線につきましては、三十二年七月に着工になった分で今日まで五十四億九千八百万円が投資されております。総工費八十億円であります。  この窪江線について取り上げてみますと、この窪江線が接続しようとする在来のローカル線があります。この在来のローカル線が宇和島線であります。昭和四十三年すでに国鉄のほうとしては、この宇和島線については将来バスにかえたい、こういう計画で色が塗りかえられたわけでありますけれども、現在まで年々これに投資をして五十四億九千万にのぼるものが投じられている。これが近い将来バスになってしまった場合には、これは無効投資になるのじゃないですか。鉄建公団としては、つくり上げてしまえば国鉄におそらくはしょわせる形でしょう。しかもそれだけのものを投資した。それで欠損ということはないわけですからね。公団としての欠損はない。そういう形でどんどん建設が進み、でき上がったものが国鉄のほうに回るという形になるとすれば、これはもう雪だるま式に赤字ができるのは目に見えているわけですよ。  やはり投資額の多いものに高千穂線があります。この高千穂線の投資のしかたを考えてみますと、あと十年かかりますよ。今日までに三十七億一千万投資しております。総額百十五億円の工事であります。三十七億一千万投資したけれども、今日までの工事のやり方からいくと、あと十年かかる。運輸大臣に伺いますけれども、こうした工事はどういうふうにお考えになりますか。
  42. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 御承知のとおり八十三線は、たしか四十三年国鉄諮問委員会で、撤去線として諮問の結果勧告をされた線でございますが、これらにつきましては、まだ私のほうといたしましては、これを妥当と必ずしも認めておりません。いわゆるオーソライズされてない線でございます。しかし根本の考えは、ただいま御指摘がございましたように、今日におきましては、諸般の事情を勘案いたしまして、鉄道としての特性が十分発揮できる、そして多量輸送に耐え得る、また地方開発に非常に役立つ、それから鉄道網形成の上におきまして非常に効果的であるというような線路は、重点的にこれを施工させる、しかしながら、そうでない、代替輸送も十分きくというようなものは、やはり国民経済の点から撤去してまいりたい、こういうふうな方針でございます。  実は先般もその点につきまして、委員会においても御指摘がございまして、いわゆる経済効率の点からいたしまして、代替輸送がきくのじゃないか、その点でどうしてやったのだというような御指摘も具体的にございまして、それらの点は十分再検討する。ただいませっかく鉄建審のほうから御勧告がございました路線、ただいま進めている路線におきましても、御承知のように油須原線のごとき、その一番おもな輸送需要の目的が石炭にあった次第でございますが、これは廃鉱になった。やはり経済事情の変革、その後におきまするいろいろの事情の変更によりまして、これは鉄道としての需要が非常に少なくなった。こういうようなものにつきましては、これはほんとうにいままで見込み違いで申しわけなかった次第でございますが、そういったものはやはり思い切ってこの際は撤去をしよう、そしてほんとうに国民経済から見まして有意義なものを重点的にやっていこうという基本方針で、いま再検討をせっかく命じさせている次第でございます。
  43. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 私が指摘しているのは、国鉄のいわゆるローカル線で廃止しようかどうしようかと現在検討しているわけです。それにつなげようという新線は、その建設自体宙に浮いてしまうのじゃないかということなんです。具体的な事例は、ただいまあげました窪江線にしましても、高千穂線にしましても、近い将来廃止です。現在一部廃止になっているものにつなげようとしている工事もありますよ。  具体的に申します。これは越美線というのがあります。ちょうど中部に当たりますけれども、勝原のところに越美北線それから越美南線、この両方にはさまれようとしている新線工事が越美線です。この越美線について言いますと、すでに越美北線というのが一部廃止です。貨物輸送が廃止になりまして、間もなく乗客輸送も廃止しようというその線につなげようというナンセンス工事が行なわれておるわけですよ。いいですか。これはもうでき上がるまでの間にあと幾年かかるかわかりませんが、できたときにはすでにレールも敷けないという状態になるわけです。そういういわゆるナンセンスの工事が二十五、単純に指摘できるじゃないかと言いたい。  会計検査院に伺いますが、二十五線区で四十六年度末までに投じた投資額……。
  44. 鎌田英夫

    ○鎌田会計検査院説明員 お答え申し上げます。いま手元にちょっと資料がございませんが、四十五事業年度までの実施額で申し上げますと、三百六十七億六千万円、こういうことになっております。
  45. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 総理、この二十五線区は、在来線の  ローカル線を、まさに廃止せんとするものにつなげようとする工事です。決算の上からいきますと、三百六十七億六千万円、四十五事業年度までの投資額でありますけれども、これがまさに無効投資になろうとしているわけです。新線建設については、こういう曲がりかどにある今日、もう一回総点検をする必要があるのじゃないか、こう思いますが、いかがでありますか。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 結論から申し上げまして、総点検しろと言われますが、私もすべきだ、かように思います。
  47. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それでは制限時間が参りましたので、この続きの論議はまたいたしたいと思います。
  48. 福田繁芳

    福田委員長 承知いたしました。  この際、吉田賢一君の発言を許します。  吉田君にお願いいたします。お打ち合わせのように、あなたの所要時間は二十分になっておりまするから、よろしくお願いします。吉田賢一君。
  49. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 総理、残念でありますけれども、簡単に要点だけ伺いますから、例によってあなたの直截簡明な御答弁をひとつお願いいたします。  昨年の臨時国会におきましても、本年の通常国会におきましても、佐藤内閣の所信表明といたしまして、従来の経済成長一本やりを大きく転換いたしまして、福祉社会実現に向かって進んでいこうとする姿勢が明らかになったのであります。そこでこれは論ずれば際限ないのでありますけれども、ちょっと一、二点伺っておきたい。たとえばドイツに国籍のある有名なレプケ教授は、人の不幸、たとえば廃疾、病人、老人などの不幸を救うのは、自己の責任、自己の能力であくまでもやり得るならば理想的だ、国の社会保障でお世話になるというのは、あくまでも第二だ、   〔委員長退席、白濱委員長代理着席〕 人間の尊厳としては、やはり自己の能力で、自己の責任でという処理のしかたが理想的だ、こういうことを指摘しておりますが、おもしろい発言だと思っております。そこで、今後の日本の福祉国家のあり方につきまして、一体どこに大きな支柱を置けばいいのか。財政なくして福祉国家はできませんから、一本は財政の構造であると思います。もう一本は、日本独自のものがありそうに感じます。いま申し上げておるのはそこなんです。日本人の過去の文化、文明の発達のあとを顧みても、その能力といい、あるいはまた国民性といい、勤勉性といい、戦後の日本経済の成長の土台をなしましたところの国民の資質といい一この資質というものは、自己の能力をもって処理し得るという、確かに大きなものを持っておると私は思うんです。これが一つの柱になることがなければ、いまの、たとえばイギリスにおけるいわゆる英国病を他山の石として考えていくようなことになりはしないかということをおそれます。この点につきまして、福祉国家への構想の大きな支柱として、総理に一本打ち出しておいてもらうべきだと思うんですが、いかがでございますか。
  50. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 社会福祉、そういう問題について、吉田君は吉田君なりの御意見でございますが、必ずしも、個人的に処理すべき問題だ、かようには私は考えません。そういうものが中心にあるという、いわゆる天はみずから助くる者を助くという考え方、これは必要かと思いますけれども、何といっても人間は社会的な動物というか一つの社会を形成している、お互いに助け合う、そういう本質的な、本能的なものがあるのだから、それをやはり生かすべきではないか、実はかように思うのでありまして、それがただいまの福祉国家形式への最近の動向ではないかと思う。そういう観点から考えると、みずから助ける者、みずからやる者については、政府が云々することもないけれども、幼児だとか老人あるいは心身障害児だとか心身障害者、さらにつけ加えて母子家庭、その他だんだん範囲を広めていって、そうしてお互いの社会性を十分に発揮する、お互いに助け合うような、そういう方向へ持っていくのが当然の社会形成ではないか、これがやはり国家形成への道ではないか、かように私は考えるのです。いままでのところ、どうもそこまで思いがいっておらない、こういう意味ではいろいろ不足分があった。しかし、そういうことの反省があって、最近はだんだんそういう方向へ目を向けてきた。ことしの予算などが皆さん方の御賛成を得たのもそういう点にあるのじゃないか、かように私は思います。
  51. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私の問いのことばが足りませんでした。もちろん日本は、制度、法律はやや整ってきたけれども、先進国に比べまして福祉はきわめて貧弱である、社会保障もきわめて弱い、これはもう認めざるを得ない。この前提にもちろん立つのですよ。立つのでありまするけれども、それは将来、年間数兆円、いま数倍の財成を組まねばならぬかもわかりませんが、こういった将来のことを考えてみましたときに、やはり根本はみずからの力をつちかうのだということを一本入れておかなくちゃいくまいじゃないか、こう言うのであります。親方日の丸、助けてもらうのは何でも、自分の手を出すのは損、失業したら何でもお金をもらう、監獄に行ったらテレビが見られる、こういうことになってしまわないようにするということが、いま原点に立って進んでいこうというそのときにこそ大事じゃないか。この点なんです。これは、具体的な福祉政策をどうするか、福祉国家をどうするかということを論ずる前に、やはり総理といたしましては、これらにつきまして、イギリスのチャーチルが戦後の福祉国家について大きな発言と決意を持っておりましたように、根本的にそういうものを持つことが必要ではないであろうか。これは幾多の先例があるから私は申し上げのです。どうでしょう。
  52. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が吉田君の高邁なる考え方を十分理解しなかったこと、たいへん申しわけございません。私も、ただいま申し上げたのは同じような考え方でございます。もう一つつけ加えさしていただくなら、われわれ人間としての情愛の問題情の問題をもっと生かしていく。能力ばかりでなく、その情の問題も生かさないと、どうも機械的になる。ここらにあじけなさを感じます。こういうところにやはり今後の方向があるのではないだろうか、かように思います。
  53. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 総理の人間性尊重ということを地で行くと、ここに一つの大きな柱が要ります。  そこで、時間の関係があるので飛びますが、ずいぶん古くしてまた新しい問題で、悩み抜いていつでも解決が約束されぬのは物価問題なんです。どうも解決しない。しかし、提案は何ぽでもされる。物価の重要性はそのつど強調しておられる。これなんですが、ほんとうに消費者物価を安定せしむることは可能なのかどうか、あるいはまた、国民の大勢といたしまして、そのような合意ができつつあるのかどうか、さにあらずして、所得さえあるならば物価が上がってもいいのじゃないかというのが大半であるのかどうか、そんなことにおかまいなく、なりふりかまわずに、宵越しの金は持たずというような調子でいくのがいまの実情であるのかどうか、物価問題の結論は可能性を把握しておるのかどうかということが第一点。第二点は、これまた古くしていつまでも新しい問題は地価対策の問題であります。世界で日本ほど土地問題に執着して地価の問題で狂い回っている国はございません。三十年つとめましても、土地を持ち家を持つ、自家を建設するということは、給与生活者では困難な実情でございます。こういった点から考えてみまして、やはりこれも議論倒れになってはいけませんのですが、地価対策というものは、これこそ大きな政治生命をかけまして取り組んでいかなければならぬ問題だと思うのです。この二点、どうでしょうね。
  54. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはたいへんな大問題を提案されまして、わずかな時間の間になかなかお話ができないかと思いますが、最初の物価の問題について、このごろ盛んに貿易の自由化をやられる、そうしてまた関税も撤廃する。本来からいえば、円高のこの際、輸入が非常に楽なはずだ、しかもただいまのような関税を引き下げるとか、そういうような利益をどうして消費者に還元することができないのか、このことでまず一つぶつかる問題がある。そうすると、いろいろ総代理店の制度にメスを入れなければならぬ、こういうような話が出る。あるいは組合が輸入の利益を壟断している、こういうものにやはりメスを入れなければならぬ。その実態についてもだんだん変わりつつある。いままでのような流通機構では物価は下がらない。幾ら競争条件だけを整備しても、これはなかなか下がらない。やはり流通機構に対してメスが入ってこなければいかぬ。また国内において生産者また消費者だ、こういう立場で考えると、生産者保護というようなことばが消費者保護に変わらなければ、本来の行政あるいは政治の姿ではないのだ、かようにもこのごろは考えます。そういたしますと、ただいまのような物価を引き下げるためのいろいろな条件、競争原理を取り入れるとかいうことがございますけれども、結局、いままでの流通機構そのものにメスが入らない限り、新しい物価体系はなかなかできないのじゃないだろうか、かように実は思うのでありまして、私は、そういうものに最近はメスが入りつつある、かように考えてもいいのではないだろうか、かように思います。最初に言われたことでありますが、スーパーができた際、品物の悪いのがスーパーだ、こういう言い方をされたものだ。しかしながら、スーパーもその後だんだん製造元と直結するようになって、いい品質のものが出てくるようになった。そういうことなどは、ただいまの流通機構の改善、これに直接当面し、メスを加えた結果ではないかと思うのであります。ぜひともそこへわれわれは手をつけなければならない。またただいまの輸入の自由化、これはたいへんいいチャンスでありますから、この輸入の利益がそのまま消費者を潤す、そのためには総代理店制などの中間搾取機構、いわゆる流通過程でそういうものが消えないようにさらにわれわれは積極的な態度をとることが必要ではないか、かように思います。  物価の問題については一応見通しが立ち得る、かように思いますけれども、地価の問題についてはどうも簡単でないように思っております。いろいろ線引きあるいは課税問題等々がございますけれども、これもなかなかうまくそのとおりにはいかない、かように思っております。とにかく、いわゆる不当所得あるいは不労所得、そういうものにメスを入れるような思い切った税制でどこまで地価を上げないで済むか。私は所有者だけに課税するということはいかがかと思いますが、売買することによるその利益は、売買してもふところには残らないのだ、こういうように感ずるようになると、よほど土地の扱い方も変わりはしないだろうか、かように思いますので、これらはひとつ十分皆さんからの御意見も拝聴いたしまして、りっぱな地価対策をぜひつくりたいものだ、かように思います。   〔白濱委員長代理退席、委員長着席〕
  55. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 終わりに、政治をやる者は、行政に携わります者は、自己の利害、自己の立場よりも、国民に奉仕するということが基本姿勢であることは申すまでもありません。そこで、そういった面について絶えず謙虚な反省が行なわれるということが必要ではないであろうか。たとえば、最近におけるいわゆる連合赤軍のああいう行動につきまして、国民はひんしゅくしております。これにつきましても、やはり教育の基本問題に何かひっかかるものではないであろうか、あるいは政治の姿勢そのものにもつながりはないであろうかということも考えられます。あるいは財政をもっと科学的に管理するという問題、予算を効率的に執行するという問題、何回かこの委員会で論じ論じ繰り返し論じておるわけでございますけれども、あとを断たず、幾らでもふえていくというのが現状でございます。一体何によるのか。これらにつきまして常に生死を超越するくらいな決意をもって、尾崎行雄翁が演壇に立ったときのような、あのくらいな決意をもって、一国の総理は、政党の首領はこの種の問題には取り組んでいって、あとは濁さない、あとは狂わさない。みんなそれぞれと将来の大きな、豊かな展望を見詰めて努力するというふうにしていかねばならぬ。みずからそういう姿勢が必要ではないであろうか、こう思います。もちろん全国会議員が責任は分かちます。同様に全公務員が責任を分かたなければならぬ。こういうところにやはり公害も交通も、いまの連合赤軍のような問題も、あるいはまた血税の食い流しのような問題もみんなひっかかってくるのじゃないか、こう思いますが、これについて最後に総理のき然とした一言を得まして、これでおきます。
  56. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 吉田君から政治に携わる者の基本的な心がけ、その決意等について述べられました。私も全く同じ思いをいたすものであります。さらに御叱正、御鞭撻を賜わることをお願いいたしまして私のお答えといたします。
  57. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 終わります。
  58. 福田繁芳

    福田委員長 この際、諸君にお願い申し上げます。かねて諸君の御了承を得ておきましたとおり、内閣総理大臣には、もう時間が参りましたので退席を願うことにいたします。  次に国務大臣に対する質疑を行ないたいと存じます。通告がありますので、順次これを許します。綿貫民輔君。
  59. 綿貫民輔

    ○綿貫委員 私は、自民党を代表いたしまして、総括の質問を行なおうとするものでございます。  最初に、環境庁に公害の問題からお伺いいたしたいと存じます。  昨年の八月に当決算委員会では、私の出身県でございます富山県にイタイイタイ病の実態調査に参りました。この正月には、さらに引き続きまして瀬戸内海を中心にいたしまして公害の現地視察を行ないました。当決算委員会といたしましては、今日公害問題を抜きにしてはもう政治も行政もあったものではないという強い姿勢を打ち出しておるわけでございます  そこで、まずお伺いいたしたいことは、世界の各国では日本をして経済アニマルあるいは公害の国日本ということで評価がたいへん高くなっておるのでございます。今度大石環境庁長官が初めての環境国際会議出席されるやに聞いておりますが、わが国はこれらの汚名を返上して、国際会議で指導的なキャスチングボートを握るためにどういう提案を用意されておられるのか、またどのような主張をされるのかお伺いいたしたい、こう思うわけであります。
  60. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 お答えいたします。お説のとおり、ストックホルムの人間環境会議は、世界各国が初めて人間環境に手を組んで取り組む重大な会議でございまして、これに対しましてわが国といたしましては、御承知のように準備委員会あるいは政府間作業部会というのがございまして、その準備委員会にも五つの政府間作業部会にも、アメリカ日本だけが全部参加いたしておりまして、すでに準備過程におきましてお説のようなリーダーシップをとりつつあります。なかんずく、この会議の重要課題でありまする宣言の中に、核兵器の実験の禁止、また環境に関する教育の問題等は、わが国の準備過程における主張が取り入れられて宣言の内容になる形になっております。このような状態になっておりまするし、まことに苦い経験ではありますけれども豊富な経験と、それからまた進んだ研究開発、また法令的にも各国に比べますと進んだ制度を持っております。こういうものを携えてまいりまして、会議の席におきましてわが国がいわゆる環境問題についてはリーダーシップをとりたい、このように考えて、その態度で臨むつもりでございます。
  61. 綿貫民輔

    ○綿貫委員 ただいま政務次官から御答弁がございましたが、どうか進んでリーダーシップをとるようにぜひやっていただきたいと思います。  第二番目に、最近通産省を中心に公害救済基金制度が検討中というふうに聞いておるのでございますが、国際的には、OECDを中心にPPP、つまり発生者負担の原則を採択しておりますが、各国との協調性の問題もからみ、このPPP原則からわが国のあり方について批判が寄せられるということはないかどうか、これについてお伺いいたしたいと思います。
  62. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 PPPの問題は、御承知のとおりさきにOECDにおいて議題となりまして、また関係閣僚会議において採択された、当然これは原因者負担の原則を貫くということでございまして、その意味におきましてわが国もまたその例外ではあり得ないのでございます。環境庁といたしましては、このいわゆる原因者負担、PPPの問題と、それから先ほどちょっとお触れになったこの救済基金の問題、あわせまして中公審に現在諮問いたしまして、研究を進めていただいておりまして、その成果を踏まえまして、わが国においてはわが国の実情に適する形においてこれを実行いたしたい、このように考えておる次第でございます。
  63. 綿貫民輔

    ○綿貫委員 ところで、今国会に提案されております無過失賠償責任の問題ですが、環境庁の当初の原案よりもだいぶん変更され、因果関係の推定規定を取り除いたということから骨抜きになったという意見も出ておるのでありますが、現行の政府の原案で十分国民の要望にこたえられるかどうか、この点についてひとつお伺いいたしたいと思います。
  64. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 法案の制定の過程におきまして、環境庁が最初用意いたしました因果関係の推定の問題等が、提出しました法案には落ちております。そういうような関係から、いわゆる骨抜きとか後退とかいうような印象を与えておりますことは事実でございます。しかし、たとえばこの因果関係の問題につきましても、われわれ法案をつくる過程においていろいろ検討いたしました。ところが、なかなか複雑な問題でございまして、ことに民法の原則でありまする、過失なきところに責任なしという原則を全くくつがえすような法案でございます。因果関係の推定は非常に複雑でございまして、ともすれば誤解がありまして、すべて因果関係というものが推定されるのだという誤解から、かえって被害者の側にもむしろ必要以上の期待を持たせ、かつ失望を起こす、あるいは誤解のために非常に混乱が起こる、こういうような懸念があることがわかりましたので、御承知のように現在裁判所の判決もこういう問題については一つの事実を構成しつつあります。このような状態でありますので、これは裁判所の判断にまかせるほうがむしろ適切である、こう考えまして落とした次第であります。また一面におきまして、硫黄酸化物等のいわゆる複合汚染について、これを対象に取り上げておるというようなことから、私はかなり進歩した被害者保護の法案である、このように考えております。決して後退したとか骨抜きになったとは考えておりませんが、しかしまだまだ公害の実態とか、被害者の状況とか、これから先いろいろな問題があると思います。それとあわせましてこの法案も将来にはさらにより完ぺきにいたしたい、このような考えを持っておる次第でございます。
  65. 綿貫民輔

    ○綿貫委員 ただいま裁判にまかせたほうがいいというような御意見でございましたけれども、イタイイタイ病の問題が大きな社会問題になっておりますが、この二審の判決も間近と思われております。しかし同じようなことで各地で公害裁判が続出して、大きな政治社会不安をかもし出しておるわけでありますが、この裁判になる前に当事者同士で話し合いができないかどうか、これらの処置をどういうふうにお考えか。  またこれと関連いたしまして、私の富山県では、今後に対処するために三井金属と立ち入り検査などを含む公害協定を取り結んだのでございますが、こうした行き方に対してどういうふうにお考えか、お聞かせ願いたいと存じます。
  66. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 被害者の被害救済の道はいろいろございます。直接原因者とおぼしき者と交渉するという問題、あるいは公害に対する補償に関する審議会に提案する問題、それから国民の権利として裁判所に持っていく等、あるいは次善の方法として、いまお話しのような企業者との協定を結んで、これの実施を自治体なり関係者が監視していく等、いろいろな方法がございます。いずれもその被害者の選ぶ方法によって進めるべき問題である、このように考えておりまして、そのいずれの方法をとりましても、環境庁といたしましては、被害者の救済の立場から、その推進については権限の可能な限りにおいて協力いたしたい、こういうような考えを持っておる次第でございます。
  67. 綿貫民輔

    ○綿貫委員 公害の監視ということに関しまして十分ではないということが行政管理庁の勧告にあるわけでありますが、いかに法律や政令をつくりましても、実際に住民に接する面で技術者は不足し、測定器もなく、全くの有名無実。たびたび申し上げますが、私の県などは公害デパート県といわれておるだけに、毎日数カ所から調査や検査の依頼があるわけでありますが、衛生研究所に持ち込まれた件数の中で去年の春のものがまだ処理されていないというようなのが現状であります。こういう意味において、このくらいのことは実行していただけると思うのでありますが、どういうふうにお考えでありましょうか。  それからまた、相も変わらず各省のなわ張り根性や縦割り行政のひずみが方々に出ておるのでございまして、一日も早く環境庁の主体性を持った行政をやっていただきたいということを強く要望したいと思うわけでありますが、これについてひとつ御意見をお漏らしいただきたいと思います。
  68. 小澤太郎

    ○小澤(太)政府委員 監視、測定に関しましては、まず一つは、監視、測定の器材、機器が残念ながらまだ不十分なものがございます。そしてまた、これがいろいろまちまちでございまして、それから出ました数値が必ずしも一致しないという面もございます。そこで、環境庁といたしましては、この監視、測定の機器の開発並びにこれの統一化をはかりたい、このように考えております。また、これを運営する行政当局がこれを十分に働かしていただきまして監視を徹底するということにつきましては、環境庁といたしまして、それぞれの機関にさらに協力をお願いするという指示もいたしてまいりたいと思います。  それから、昨年の七月に環境庁設置法によりまして環境庁ができまして、いままで各省縦割りで行なっておりました環境行政が一元化されたわけでございます。したがいまして、環境庁がたとえば規制の問題、監視の問題公害のメカニズムの問題あるいは予防の問題等の仕事をいたしますが、関係各省がそれぞれ公害に対する施設の整備等の仕事をしていただいております。環境庁がこれらの総合調整をやる機能を持っておりますので、中心となりまして、政府が一体となって環境行政が統一的に行なわれるように今後も努力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  69. 綿貫民輔

    ○綿貫委員 ただいまの政務次官の積極的な御意見をぜひひとつ実現するように御努力願いたいと思います。  それでは、次に大蔵省にお伺いいたしたいと思います。  最近ひんぴんと起こっております金融機関の不正事件についてお尋ねいたしたいと思います。銀行や信用金庫、相互銀行等の金融機関は、最近住宅ローンや土地ローンということで大衆と深くつながりを持ってきておるのでありますが、それと比例するように金融機関の不祥事件が続発をいたしております。私のいただいた資料を見ましても、昭和四十六年度では不正事件が三百五十九件、三十億六千万円というような額にものぼっております。これにつきまして、いろいろと理由があるとは思いますけれども、特に信用金庫などにおきましては、貸し付けをチェックする監査制度が非常にずさんであるということ、またその土地に密着しておりますために、地域性が濃く、地元の有力者が理事長になっておるというようなことで、情実的なものが非常に強く支配をしておるというようなこと、第三番目には、金融機関の業務が拡大され複雑化したにもかかわらず、監督官庁たる大蔵省の銀行局による業務検査が二年に一度しか行なわれていないというようなことなどが指摘されると思うのでありますが、こうした大衆不安を招く不正事件をなくするように、どういうふうに今後監督行政をおやりになるか、これについてお伺いをいたしたいと思います。
  70. 田中六助

    田中(六)政府委員 お答えいたします。綿貫委員指摘のように、大体三つの要件で不正事件があちらこちらに起こっておることはまことに申しわけないことだし、遺憾に思っております。大蔵省といたしましても、一昨年の七月に銀行局長通達によりまして、内部のいい意味のチェックあるいは検査の強化、あるいはモラルといいますか道徳、そういう面の粛正によりまして内部をチェックするように通達し、いろいろ指導しております。しかし、それでも四十六年、御指摘のように三百五十九件も出ておりまして、遺憾に思っております。どうしてこういうことが起こるのかということをいろいろ調べ、あるいは考えてみますと、銀行業務の拡大あるいは近代化、組織がだんだん拡大しておるのに、人間的なモラルといいますか、そういう人的な構成あるいは道徳の面で、地元との癒着とかあるいはいろいろなことでそういうふうになっておるわけでございますが、私どもといたしましては、やはり自主的にこれを内部で解決してもらいたい、あるいはまた、そうすべきことでございますし、できるだけそういうことのないようにという指導をしていっておるつもりでございます。
  71. 綿貫民輔

    ○綿貫委員 ただいまの御答弁で、いろいろな御意見がございますが、根本的に中小銀行の過当競争というようなことが背景になっておるのじゃないかというふうにも考えられるのであります。こういう面からも、将来銀行のいろいろの統廃合というようなことが望ましい姿ではないかと思うのでありますが、これについてはどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  72. 田中六助

    田中(六)政府委員 信用金庫とかあるいは相互銀行あるいは一般の市中銀行の統廃合というものは、コストという面から考えましても非常に望ましいことでございますし、私どももそのように指導してきております。ただ申し上げたいのは、こういう金融関係の不正事件というものと銀行の合併というものを結びつけて考えることは妥当かどうかという問題でございます。と申しますのは、銀行合併というものは、私ども大蔵省では、これは頼まれ仲人であるというふうに言っておりますが、幹部あるいは行員の相互の信頼、あるいは十分な機構の整備などがあって初めてそれが実現できるのでありまして、ただやみくもに合併しろ合併しろということで行政指導いたしましても、した結果が悪い方向に行きますと、それこそ何にもなりませんし、ただいい意味で合併をするということにつきまして、私どもも、一生懸命やれば結局コスト安あるいは良質な貸し出しができるのじゃないかということで、その面からは十分進めていこうというふうに考えております。
  73. 綿貫民輔

    ○綿貫委員 いずれにいたしましても、銀行とか金庫とかいうものは、大体まじめな人が集まってまじめな業務をやっておるものだというような受け取り方をみなしておるわけでありますが、こういう不正事件がたくさんあるという実態を知るにつけまして、非常に不安な気持ちがいたすわけであります。これから庶民金融というような、いろいろな名前でローンが流行するわけでありますから、信用をバックにして立っておる金融機関でありますから、そういう信用の失地回復という面について、今後さらに一そう特段の御努力を賜わりたいということを強く要望申し上げたいと思います。  次に、天下り人事を中心に外務省に質問をいたしたいと思います。ただいま取り上げますこの問題は、外務省だけではなく、ここ数年にわたって各省の天下りを決算委員会でいつも指摘してまいりましたが、特に海外技術協力事業団というのを例にとって質問したいと思います。  過去に、ここにおられます先輩の丹羽先生が、同じこの決算委員会で御指摘になった問題でございまして、これがいまなお、その当時指摘されながら争いの焦点になっております。きょうも国会の前でビラをまいております。これは、決算委員会指摘はしたけれども、まあそのときは何とか答弁をして通り抜けて、それでいいのだというような甘い考え方があるのじゃないかということを非常に嘆かわしく思うわけであります。当時、丹羽先生のときに指摘された田付理事長は、現在も理事長でその職責におられるわけでありますが、四十五年の二月に、天下り人事排撃の労働争議を中心に理事四名が辞職されております。そこで、丹羽先生の質問に対しまして田付理事長は、今後天下り人事はやらない、同じような問題を二度と起こさないと表明されておるのでありますが、二年後の今日、やはり天下り人事反対のきびしい闘争が事業団で繰り広げられておる実情に対して、どういうふうにお考えであるか、お聞かせ願いたいと思います。
  74. 大西正男

    ○大西政府委員 お答えいたします。いわゆる世間で申しております天下り人事というものと、それから御指摘になっておりますOTCAに関するいわゆる天下り人事というものとの間に多少のそごが、考え方にそごがありはしないかという気も私はいたしておるのでありますが、OTCAができましてから十年の歳月が流れたわけでございます。当初この事業団は、申し上げるまでもございませんが、各省にまたがる非常に専門的な、また技術的なしかも非常に多岐にわたる問題を遂行していかなければならない機関であるわけですが、したがって当初できました当時には、そういう各省からの専門家がこれに参加をしなければ事業団自体が動かない、こういう関係にあったわけでございます。したがいまして、そこに出向いたしております各省からのいわゆる現役の役人の人たちが、これは世間で言っておる、ある一定の地位へ到達をした役人が、その地位を勇退をして、そうして民間のいろいろの団体にいわゆる天下ってくるというのとは多少変わったものではないかと思われるのでございます。しかしながら、その事業団に、本来そこへ就職をいたしまして、そこで働いてきておられる方々、そういう方々の将来の地位の向上、そういうことについては、もちろん外務省といたしましても当初から考えておったわけでございまして、したがって、そういう方々のその職務に対する知識、経験、そういうものを大いに向上させていただきたいという意味において、そういう方々のいろいろの訓練とかいったようなことに力を注いできたわけでございます。したがいまして、当初各省から出向その他の形において出ておりました人たちとそうでない人たちとの比率というものは、当初は非常に多かったわけでありますが、現在ではそれが非常に減っておる、こういう関係になっておるのであります。  大ざっぱでございますが、そういう状態でございまして、今回のいわゆる争議行為といいますか、そういう問題が起こっておるわけでありますが、これらの経過並びに事実関係等につきましては、経済協力局長が参っておりますから、御聴取を願いたいと思います。
  75. 福田繁芳

    福田委員長 この際、ただいまの政務次官の御答弁に関連して、大和田経済協力局長の答弁を求めます。大和田君。
  76. 大和田渉

    ○大和田政府委員 ただいま大西政務次官が御説明いたしましたのが概要でございます。  外務省といたしましても、四十五年の争議を踏まえまして、できるだけ事業団の内部から人材を登用しだいという方向に管理関係者を指導いたしまして、かなりその実績はあがってきていると思います。現実には、先ほど大西次官が申されたように、現在事業団が扱っております職種は百をこえております。したがいまして、関係各省の専門的知識というものを非常に期待せざるを得ないという実情にあるわけでございます。しかしながら、やはり部内から登用するという基本的な考えはわれわれも賛成でございまして、そのラインで指導しております。現在行なわれております争議は、一般的な待遇改善ということから出まして、いわゆる天下り人事反対、部内人の登用という要求を掲げまして、事業団本部は三月三十一日から超過勤務拒否闘争というのに入っております。ただ、従来から外務省が指導してきておりました実績をいま数字で申し上げますと、OTCA、事業団の発足当時、いまから十年前、昭和三十七年でございますが、その当時、管理職二十四名中十二名がいわゆる他省出向者でございました。昭和四十七年、つまり本年の二月現在で申しますと、六十四名中の十九名、他省出向者の占める比率というものははるかに少なくなってきております。つまり部内登用者の占める比率が多くなってきているということはいま申し上げたとおりでございます。なおわれわれといたしましては、今後とも部内登用者、部内の実際に能力のある人というものを大いに登用して、この事業団の能率を向上する、あるいは体質を改善するという方向に持っていきたいと思っております。  ただわれわれとしては、いわゆる機械的な天下り人事反対ということばには、この事業団の仕事の内容から申しまして、必ずしも賛成できかねると申し上げざるを得ないと思います。  以上でございます。
  77. 綿貫民輔

    ○綿貫委員 ただいまのストライキということがありましたが、これは先ほども申し上げましたように、二年前からずっと、ほとんど仕事をしていないのです。ストが職業みたいなことをやっているので、こんなばかな外郭団体があるのかと思うと、全く憤慨にたえないのでありまして、これに関しまして、丹羽先生からひとつ重ねての関連の御質問があるようですから、ひとつ十分御答弁願いたいと思います。
  78. 福田繁芳

    福田委員長 この際、丹羽君の関連質問の御要求、これを許します。丹羽君。
  79. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 私は、きょうは関連でなく、実は私自身お尋ねをいたしたいと思っておりましたけれども、時間の関係で少しだけお尋ねいたしたいと思います。  特に大西外務政務次官から御答弁がございましたが、非常に丁寧な答弁でありますけれども、それは次官としての御答弁であって、実際、この海外技術協力事業団の内容というのは実にずさんきわまるあり方であると申し上げて私は過言でないと思うんですよ。いま大和田経済協力局長は質問に対してお答えになりましたが、三十七年当時は二十四名のうち十二名である、そして現在、四十七年において、六十四名中十九名が天下りというのか、一応出向的なものであるから、率からいくならばそんなに多くなっておりません、減っておるような傾向にありますと、こうおっしゃいます。しかし予算の上から、三十七年と四十七年の予算の上から考えてまいりますときに、そうした十九名の取っておられる給料等々を調べてみますると、非常に高額なものなんです。もし違うというならば、あとで資料を出していただくということにしてもけっこうだと思いますが、それよりも私の心配することは、一体ほんとうに現在の理事長が、この大きな使命を帯びておるところの海外技術協力事業団の理事長として適格なりやいなやということを、私は、責任ある外務省、そして外務政務次官にお考えをいただきたいと思うのです。なぜならばというと、日本がこれだけ経済発展してきたから、海外にも技術者を派遣して、そうしてその国の援助的役割り、技術的役割りを果たそうということで若い人たちが派遣せられる。派遣せられて技術を覚える人たちは一体どこに住んでおるとお考えですか。この海外技術協力事業団のすぐ裏に合宿しているのですよ。いいですか、合宿しているのですよ。この合宿している連中が日本にあこがれを持って来て、いろいろ覚えたい、そして故郷へそれを持って帰って、それで第一線に立とうという真剣な気持ちで来ておるのを、その玄関の入り口で、明けても暮れても、いまの話でないがストライキ、ストライキだと言ってやっていて、それでほんとうに理事長はこの問題の解決をようしていかないようなこんな状態なら、私は失礼だけれども、理事長はおやめになってかわったほうがいいと思う。もっと能力のある人にやってもらいたいと思う。皆さんどうですか。私は与党ですから、こういう極端な言い方をすることはいささか行き過ぎたことばかもしれませんけれども、きょうはこの程度にしておきまして、本人に出てもらいましょう。私が前回質問したときにのうのうとして調子のいいことをしゃべっておる。事実その後はよう始末をしておらぬじゃないですか。そしてその青年たちは、希望を持って来ておりながら、おふろにも行けない、食堂にも行けない、全くみじめなかっこうで、何という考え方日本というものを見ていくでしょうか。こういうところを私は天下りより以上に問題点の一つとして指摘をしなければならぬと思うのですが、この責任者であるところの特に協力局長は何と考えております。  さらに、海外協力に対して、いま日本からも若い人たちが出ておるのです。その若い人たちが出ておるのに対して、たいへん御苦労さんと言って、平和の使者として自民党からこういうパンフレットが出ておる。それを読まれましたか。そうして海部俊樹君だとか、藤波孝生君だとか、河野洋平君だとか、暑い所をいろいろ回りながら実態をつかみ、その国の人々と話し合ってきた。そうしたものが一つの本になって、読んでくださいと出ておる。私はこの本を読んでみた。そのうちに海外経済協力でモロッコへ行くようなことは、モロッコではたしてほんとうに開発のため日本から派遣するところの平和な使者として使命を果たすようなことができておるのかどうだということになってくると、政府がこれらの人たちをこういうところに出したということの責任等々はほんとうに十分に検討せられていない。ここに出ておる人は測量で行っておるけれども、もう向こうの人は、来てもらっても、全くほんとうによく来てくれました、私はあなた方の指導のもとに一生懸命やりましょうという体制で受け入れてない。それでしかも向こうの大使館では、どうせあなた方はかってに来たようなものですから、かってにやったらいいでしょうというような態度。そして予算から見ると年々ふえておる。ことしの予算は百二十数億ですか、百十六億六千万円、もう百二十億近い金が四十七年度は計上せられておる。四十六年には百主億という金が計上せられておる。そういうようなばく大な金がそういうような方向に進められていくために計上せられておることには、私はむしろまだ多いとか少ないとかいうようなことを考えておりません。必要があれば幾らでも予算を計上せられることはけっこうですけれども、実際この問題に取り組んでいく事業団の実態というものにもつとメスを加え、もっと真剣に考えるべきではありませんか。たとえばこれは外務省だけの責任でない。出向する関係から、いやだとも言えぬで受け取られたと思うけれども、たとえば一つの例をあげれば、元イタリア大使であった田付さんが理事長になっておられる。原子力研究所の寺岡さんが専務になっておる。大蔵省の造幣局長が常務理事をやっている。通産省の東京通産局長の中西さんが同じく常務理事をやっている。元農林省の近畿農政局長ですか、この人は一応農政局長をやっておるから少しはそういうことはわかるでしょう。しかし元原子力研究所の所長だとか大蔵省の造幣局長が専務理事をやって、ほんとうにこういう仕事はできるでしょうか。私は自民党で政府・与党でありますから、そういやらしいことは言いたくないと思うのですけれども、これはやはり直さなければならぬ。国民の血税が使われていくのですから、私は率直なものの言い方をするのです。特に政務次官は誠意ある御答弁をしておられますけれども、これはもう一度手直しをする必要がある。しかも国会の前で明けても暮れてもこんなものを配って、天下りストップだとか天下り出向だとか、要求貫徹だとか並行線だとか、われわれは最後まで戦うとかなんとかいうようなことで、あなたのところだけじゃないですか。これで田付理事長というのは、ほんとうにこれだけの仕事をしていくところの力のある人かない人かということになると、実際私はノーと答えるより方法がないですよ。少しお考えをいただきたい。  委員長、この次に理事長に参考人として出席していただいて、ほんとうにどういう考え方でこんなふうになっておるのかということを、もっと私どもそれぞれの議員であらゆる角度から質問をしたいと思いますので、理事会におはかりをいただくことを要求しておきます。  そこで政務次官と局長に、いま私の申し上げたことについて簡単でけっこうですけれども、一応答弁だけしておいていただきたいと思います。
  80. 福田繁芳

    福田委員長 丹羽君に委員長として申し上げます。  あなたの御要望事項は、いずれ次回の理事会に提案しまして御協議申し、善処いたします。  そこで、ただいまの丹羽君の御質問に対して、まず大西政務次官から一応総括的の御答弁を願います。
  81. 大西正男

    ○大西政府委員 お答えいたします。現在、そういう争議行為が行なわれまして、そして御指摘のように本来の業務が阻害をされている、これは遺憾にたえないところでございます。ですが、争議行為というのは、御承知のように組合の方々が自己の要求を貫徹するために行なう行為であって、それはその業務を阻害するのが目的なのでございますが、そういうことで、いずれにいたしましても、そういう本来の業務が阻害をされておることはまことに遺憾なことでございます。外務省といたしましては、理事者を監督、指導いたしまして、問題を早期に解決できるようにしむけていきたい、このように考えておるわけでございます。  そう考えておるのでありますが、御指摘のように、また技術協力ということは非常に大切な事柄でございます。その技術協力をするについて、日本から海外へ出て、そうして開発途上国人たちを指導する、そういう立場にある人たちに対してのいろいろの待遇の面とかそういう面で、今日十分ではありません、御指摘のとおりでございます。また海外から日本の国内へお招きをして、そして訓練をしていただく、そういう人たちに対する処遇というものについても、これまた決して十分ではございません。むしろ非常に不満足な状態にあるということを私は率直に申し上げていいと思います。ですから、これらの点を十分に今後改善をしていかなければならないわけでありまして、そしてこれを改善をしていかなければ、口で技術協力などと申しましても、それは実現をされないと思います。そういう意味外務省といたしましても、今後思いを新たにして、これらの点の改善、向上につとめていく所存でありますが、どうか議員諸公におかれましても、そういう点について、ひとつ外務省をバックアップしていただきますように、この機会にお願いを申し上げておきたいと思うのでございます。
  82. 福田繁芳

    福田委員長 丹羽君、大和田経済協力局長が来られているから、補足的な答弁をさせます。
  83. 大和田渉

    ○大和田政府委員 いま大西政務次官が話されましたように、研修員の受け入れ、あるいは専門家の派遣につきまして、徐々にではございますが、年々改善しております。ただ、遺憾ながらまだ十分というところまでいっていないわけでございます。  先ほど、OTCA本部の裏の研修員、外国から来た留学生が非常にみじめな状態にあるという御指摘がございましたが、これはOTCAの東京センターのことだと思います。その研修員の諸君が受ける滞在費あるいは厚生費が直接には問題になると思います。その点に関しましては、先般、国会の御承認を得ました四十七年度予算でも、金額的には個々にかなり増ワクされております。しかし、まだ十分でないということは言えますので、今後ともその方向努力をいたしたいと思っております。  それから、モロッコの点で御指摘がございましたが、これはいわゆる青年協力隊のことだと思います。事実、これはことばの関係でトラブルがございました。その点を日本の、わがほうの大使館と協議いたしまして、大使館が、こちらから派遣した協力隊員について、とりあえず語学研修をやるという方向で、一応現在は問題は解決しております。  以上でございます。
  84. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 待遇の問題は、これからまたゆっくり質問いたすことにするが、いまストライキをやっているけれども、いろいろ問題を起こして、腕章を巻いて要求貫徹だとか、あるときにははち巻きをしてというようなことで、年がら年じゅうごちゃごちゃやっているじゃないですか。この海外技術協力事業団というのはほかと違うんですよ。私が質問して以来、ほんとうにすっきりしたことがない。そのすっきりしたことのない奥には、だれが住んでおるか。技術を覚えたい連中がいま日本に来ているが、この実態を見て、日本というのはこんなふうなものか。これをどう一掃するかということを、われわれは前回もやかましく言って、団交的な話をするならする、あるいは理事長が中心になって解決しなさいと言ってすすめてきた。ところが、また今度も天下りだ、ああだこうだと言ってきている。何回となしにこういうことをしている。それでは調和がとれませんよ。春闘だって、ああやってわあわあ言って、全国でとめてしまうんだと言ったけれども、ある程度はちゃんと話し合いが進められたじゃありませんか。ここだけが話が進まないで、年がら年じゅうこんなことをやっておるというのは、理事長自体の手腕がほんとうにないということを私は言うのですよ。あるいは理事はまじめさがないということをいわざるを得ない。外国から来た人たちは、ほんとうにみじめにそれを見詰めつつ、われわれはこんなことではおふろにも行けない、あるいは食堂にも行けないということがあるんですよ。私の言うことを調べてみなさい。局長は、ただ単なる答弁だけではだめですよ。現地へ行って、どんな実態にあるのかということを、いままでの経過をずっと調べてみなさい。そうすると答えがもっと明白になって、みずから姿勢を正さなければだめだという考えになりますよ。次官でもそうだと私は思うのです。私は、何も無理を言っているのじゃない。きょうは木村経済企画庁長官がいらっしゃるけれども、天下り人事に対して、退職積み立て金だってパーセントを減らされた。これは事実、給料以外においてそういうような余分な積み立てをすることはあまりいいことではありません、この程度でひとつしんぼう願いたいと言って決算委員会で表明せられて、その積み立て金というのは下がったのですよ。だから、天下り人事に対しては厳正に考えていこうということをちゃんと長官はそのときに約束せられた。そういうことで今度でも、天下り人事という前に、現在の人事で仕事をしていく、国際的な事業をやっていく上において、そうしたことが常々毎日のように行なわれておるということは、はたしてほんとうに解決するだけの力があるのかないのか。なかったならば、外務省が本腰をあげて始末をする以外にないんじゃないですか。こういうことを私は申し上げるのです。  きょうは関連ですからこの程度にしまして、後日来ていただいて、しっかりこの問題の結末をつけて、今後の姿勢のあり方というものをはっきりさしていきたいと思います。どうかひとつよく調査をして、今度は理事長に出席を願うようにいま委員長にお願いをしておきましたから、そのときには、どこから聞かれても、いままでの経過、そしてその当時よりうんとよくなったという一つの数字が出てくればよろしい。出てこなければ、みずからお考えいただくことが適当であろうと私は思います。言いにくいことですけれども、これはやはりきちっとしておかなければいかぬと思っておりますから、率直に申し上げたわけであります。私はあえてあなた方をしかったり文句をつけたりするのではないのです。何度も何度も問題になっておることですから、ひとつしっかりやっていただきたい、こうお願いをいたしまして、一応質問を打ち切ります。ありがとうございました。
  85. 福田繁芳

    福田委員長 外務省の大西政務次官並びに大和田経済協力局長、お二方に委員長としてお願い申し上げておきます。  先ほど来丹羽委員から、あらゆる角度から外務省関係に対するごもっともな御質問がありまして、皆さんたちの御答弁の趣旨もよくわかりまするが、次回の委員会までに、相なるべくは現地調査の上、いまの質問に対して万遺漏ないようにしていただきたい。この点お願いを申し上げておきます。  次に北山愛郎君に発言を許します。北山君。
  86. 北山愛郎

    ○北山委員 私は、当面の非常に大きな内政問題である地価問題についてお尋ねをしたいと思います。これは主として税制の問題が中心でありますが、大蔵大臣がまだお見えでありませんので、まず企画庁あるいは建設省のほうにお尋ねをしたいと思います。  最近においてわれわれ国民を驚かしたニュースの一つは、五月一日に税務署から発表になりました高額所得者の番付だと思うのです。それは昨年も一昨年もそうでございましたが、ことしは一億円以上の高額所得者は二千七百四名、しかも上位百番目までのうち、土地の譲渡所得によるものが九十五人。去年は九十二人だった。そういうふうに、四十四年度から始まった土地税制の結果として、一部の地主、特に大地主に対して非常な減税の恩典を与えておる。ことしは、宮城県の関兵馬さんは約三十九億の所得である。これに対して、おそらく二十億以上の減税をやっておると思うのです。ですから、この土地譲渡所得を分離課税にして減税をしたという特例、これによっておそらく全体とすれば数千億の特別措置をやっておると思うのです。非常な不公平ですね。一〇%の分離課税ですから、年に四十万円、月に三万円も収入があれば、一〇%の所得税がかかるのですが、数十億円の土地譲渡所得があっても、これにはやはり一〇%しかかからないというような税制をやっておる。その結果があのような長者番付にあらわれた。この点について、一体経済の運営に当たる企画庁長官なりあるいは建設大臣なり、どういうふうに考えますか。企画庁長官
  87. 福田繁芳

    福田委員長 北山君に申し上げます。あなたの御質問の劈頭に申された大蔵大臣は間もなく参りますので、それまでに、幸いに経済企画庁長官木村君が参っておりまするから、その発言を許します。木村長官。
  88. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 いま御指摘の、土地税制の結果がその所得面に非常な形であらわれておる、これは、私どもも事実そのとおりであると思いますが、ただ、土地税制の目的が土地政策の一環として税制面を通じて土地政策に何らかの大きな効果を与えたいという意図であったことは、これはもう当然のことであります。ただ、そのメリットもたしかあったとは思いますが、その反面、社会面にあらわれたああいうような異常な高額所得者の出現ということで、たいへん社会的公平という面で望ましくない印象を与えたということは私どもも否定できないと思います。したがいまして、これは大蔵大臣からお答えすることでありますが、経済運営面から見れば、いまや土地問題というのは、単に一つの経済問題だけでなしに、社会問題として、社会的緊張の一つの大きな原因としてこれをとらえなければならぬ。こういう意味において、すでにありました土地税制の一つの反省ともいうべきものを踏まえて、政府としても今後大いに研究して検討していきたい、こう考えておる次第でございます。
  89. 北山愛郎

    ○北山委員 その意図した四十四年度からの土地税制というものは一体効果は出しましたか、結果として。地価は押えられましたか。四十四年もやはり二〇%、四十五年も、少し差がありますけれども、やはり二〇%近い地価の上昇は依然として続いているのですね。おそらく、昨年の場合は景気の沈滞というものが大きく影響をいたしますけれども、とにかくそれだけの不公平な税制をやって、言うならば庶民の感情をさかなでするようなそういう結果になりながら、地価抑制には何ら効果がなかった、この事実についてはお認めになりませんか。これは建設大臣でもいいし企画庁長官でもいいです。
  90. 西村英一

    ○西村国務大臣 企画庁長官も申し上げたのですが、その志は、土地を持っておる人がいつまでも地価の騰貴を目当てに保有しておっては困る、早く土地を出させたい、早く出すものにはまけますよ、こういう志でやったわけです。したがって、土地は出たと思います。土地はあれだけの方が取得したのですから……。ただ、残念なことには、この前提条件、その土地がどこに買われたかという調査をあわせてすべきものだったと私は思うのです。その土地の取得をはっきり私のところはつかんでいないわけです。したがいまして、これは土地を非常にたくさん持っておった人は放出したけれども、それが有効に使われておるかあるいは有効でないかということについては、十分の調査ができておりません。したがいまして、これから先生御質問があろうと思いまするが、いまから今度は法人所得の土地問題の税制につきましても現状を十分把握するということが一番必要であろうと思っております。したがいまして、今後は非常に注意したい、かように思う次第でございます。
  91. 北山愛郎

    ○北山委員 だれが買ったかも問題ですけれども、とにかく結果としては地価抑制には効果がなかったのではないですか。確かに土地の供給はふえたでしょう。土地の取引もふえた。これは企画庁の経済白書によっても、四十四年でもう六兆円からの取引があるやに聞いておりますけれども、一年に一兆円くらいずつ取引がふえるだろうといわれますから、いわゆるGNPの一〇%くらいの土地の取引だというのですから、どんどん土地の売買はふえているのですよ。供給はふえているのですよ。供給がふえれば土地は下がるだろうというのが政府考えではなかったのですか。供給はふえたけれども土地はさっぱり下がらない。それはなぜか。これは私のほうからいえば、当時もう土地税制の審議のときにも私は指摘したのです。一体何で法人を野放しにするのか、いわゆる法人の仮需要とかそういうものを野放しにして、そして個人だけは短期譲渡の税率を高くして個人の投機は取り締まっておきながら、法人は野放しにする。一番資金力のある法人は野放しにしておりますから、当然四十四年その当時の不動産会社はもちろんのことですよ、もうあらゆる種類の事業会社が子会社をつくったりなんかして、土地の買いあさりに狂奔している。これは新聞その他で報道されるとおりですよ。その事実は認めませんか。売った先を調べるなんということも、それは必要ですよ。必要ですが、総体から見て、だれが見てもそのことは明らかだと思う。たとえば今度の一番の高額所得者である関さんはだれに売ったか、自分の会社に売っておるじゃないですか。自分個人のものを自分の会社に売って、土地の造成なんかして高くして売るのだろうと思う。そのために大減税をやっておる。関兵馬氏自身が言っておるじゃないですか。この税制は行き過ぎである。一番恩典を受けた最高の高額所得者自身政府の土地税制を批判しておるのですよ。ですから、これは大蔵省の管轄の問題ではあるにしても、やはり閣僚の皆さんは地価対策閣僚協議会のメンバーでもあるし、みんな関係のある人ですよ。そうしてその土地税制は地価対策の重要な一環ですよ。それが効果がなかったという事実は認めませんか。ざるに穴があいておったのです。だから、どんなに土地供給がふえても、仮需要というものを押えなければ地価は抑制できない。そこに大きな欠陥があったということを率直に認めるべきであると思うのですよ。企画庁長官どうですか。
  92. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 いま御指摘の面、私どもも非常に同感の点が多いのでございますが、ただ土地税制で、売りと申しますか、手放すもののほうだけを考えまして、それを取得するほうの面をやや軽視したという面もございましょうし、またせっかくあるりっぱな地価公示制度というものの働きも決して十分でなかった。すべてそういうような土地政策には総合的な政策が必要であるのに、どうも税制また土地政策のある面がやや統一を欠いて全体的な効果が発揮し得なかったという点は、私どもも反省しなければならぬと思います。したがって、そういう上に立って、いま政府考えておりますのは、建設大臣からお答えがあろうと思いますが、もっと総合的な面で土地税制、地価問題の解決、あるいは土地取得の受け入れ体制、そういうものを総合的な一つの土地政策の問題としてとらえまして、今後それに向かって努力を傾注するということであろうと思います。
  93. 西村英一

    ○西村国務大臣 個人に対する譲渡所得、それから法人に対する譲渡所得の問題は、これは建設省としては同時にやるように強く閣僚会議でも話があったし、また地価対策の閣僚会議決定した事項にも入っておるのですが、法人の所得については税法上の技術的問題でむずかしい問題があるということなので、大蔵省としてはなかなか踏み切りがつかなかったのが実情でございます。しかし、大蔵大臣も最近ではたびたびおっしゃっておるように、これは税制調査会に諮問して今後はひとつ考えようということになっておるのでございます。したがいまして、これはやはり両方やらないと行き先がわからぬ。ことにあなたがいま御指摘になりました、最近は金融が非常にゆるんでおるということと、あるいは産業構造が非常に変わったために民間投資がほかの投資に移りつつあるというようなことから、新聞紙上でもたいへん土地の買いあさりということが行なわれておるように報道されております。また事実私も多少は知っておりますが、やはりその中では画一的ではございません。政府は一方においては工業の分散を進めております。産業の分散を進めておりますから、善良に、ほんとうに産業を地方に分散しよう、過疎の地域にりっぱな工場を持っていこうというような志の者もあれば、また一もうけしようというような志の者もあるし、ことに最近は観光レジャーブームでございますから、それを当て込んでやろうというさまざまな、同じ土地の買収でも画一的でないわけです。したがいまして、むやみやたらにスプロール化で買われても非常に困りますから、ひとつ実情を把握したいというので、建設省は、先般行政管理庁の許可を受けまして、法人の保有する土地についても全面的調査をやることにいたしました。東京証券取引所第一部、第二部上場法人約千三百社を調査対象といたしまして、昭和四十一年一年一日から昭和四十六年十二月三十一日までの間に取得した十ヘクタール以上、市街地では一ヘクタール以上の一団の土地については、第一番には地区の所在地、二番には面積、三番には取得の時期、四番には取得土地の資産区分、五番には土地取得の目的、六番には土地取得後譲渡時期及び面積等の各項目につきまして調査してアンケートをとるようにいたした次第でございます。調査表はここにありますが、これをもってひとつ実情をつかみたい、こういうことでございます。企業の土地取得状況等に関する調査票を先般送って、ひとつ実情をつぶさに知りたい、なお主要な都道府県の担当者会議をいたしまして、この事情をよく聞きたい、こういうふうに思っておる次第でございます。私は法人の土地取得の問題についても、個人と同じように、やはり何らかの措置を講じなければたいへんな結果になる、かように思っておるような次第でございます。
  94. 北山愛郎

    ○北山委員 相当これは手おくれですよ。おそいですよ。いまから調査するなんて、証券会社のほうはちゃんと調べておる。こんな問題はいま出てきた問題じゃないのです。もう四十四年以前から法人の土地取得というのはどんどんふえておるのです。いろんな統計にも出ておる。それが四十四年の土地税制でさらに拍車をかけられたのです。ですからいまごろ調査するというのは少し手おくれだと思うのです。確かに大臣のお話しのとおりに、法人を土地税制でもって規制するということは技術的にむずかしいということは私もわかるのです。だからいままでも大蔵大臣は、それはむずかしい、法人の規制は別な手段でやってもらいたいということをしばしば答弁しておるのですよ。別な手段とは何か。そこで、これはたしかこの国会でもどこかの委員会で問題になったようですが、法人が土地をただむやみに自由に買えるのではなくて、一定の条件で許可制にする、これは宅地だけじゃありませんよ、山林でも原野でも、山林や原野をどんどん買っておるのですから、そういうものを地元の自治体の許可制にするということことについて、これが一番手っとり早いのじゃないか、一定の面積以上のものを取得する場合には、地方自治体が一番地方の土地の利用なり開発なり住民の生活の福祉なりの責任のある立場ですから、そういう人たちの許可を受けるということにしたらどうですか。これについては建設大臣は何かお考えを持っておられるとどこかの委員会で話をされたように聞いておりますが、どういうお考えですか。
  95. 西村英一

    ○西村国務大臣 ことに自治大臣もおいでになりますが、今回は市街化区域内につきましては許可制でなしに届け出制をしいて、ある人が土地を譲るときには必ずひとつ公共団体の長に届け出をしてくれ、そうして公的な機関が使うならなるべくそれに譲ってもらいたいという、許可制じゃないが届け出制です。また事業は認定をしておればこれは許可制になるわけですが、市街化区域内以外の山林、農地――農地あたりもいまはやはり農業委員会があって届け出制ですから、審査を受けなければならぬことになっておるのですが、これは有名無実になっておるのじゃないかと私は思っておるのですが、いずれにしても、今回の公有地の拡大の推進に関する法律はその一環でございます。  なお、これを山林、農地、あらゆるところに進めていくということにつきましても、これは十分検討を要するというふうに思っていますが、その一つとしては、やはり地方公共団体が一番よくわかるのですから、それで条例をつくって、ある面積以上の土地を開発しようというときは必ず地方公共団体に届け出をしなさい、そうしてそれが住宅になれば、道路も要るし、水道も要るし、公共の施設も要るのですから、公共団体には直接関連ができますから、地方公共団体がそれぞれ条例をつくって、やはり許可制をとるようにしむけたらいいのじゃないかと私は思っているわけでございます。したがいまして、私のところは土地に対して最も重大な関心を持っていますが、これは地方公共団体のことでも自治省のことでもありますから、今後の対策につきましては、自治大臣と十分この市街化区域外でも一つの方策を考えたい、かように思っている次第でございます。
  96. 北山愛郎

    ○北山委員 自治体の条例でもって、自治体の長が許可制を検討する、こういうことはできますか。自治大臣、どうですか。
  97. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 市街化区域内につきましては、いま御審議賜わっております公有地の拡大の推進に関する法律案によりまして、一定の条件のもとに届け出制をやったわけでございます。市外化区域外の土地に対しましては、いま建設大臣がお述べになりましたように、そのようなことはまだいたしておりません。しかしながら、農地等に対しましては、それぞれ農林省関係の法によって規制されておりますから、そういうことはできないと思います。また山林等につきましては、そういった意味からはいま北山委員指摘のようなおそれは十分にあると思いますが、宅地開発等が行なわれる場合におきましては、許可を必要とするような宅地開発に対しましては、それぞれの自治体が土地開発要綱というものをつくりまして、地方自治体の要望に沿うように許可の段階におきましてそれぞれ話し合いを進めておるという段階でございます。ただ、今回の法律では、届け出制に関しましては市街化区域内だけでございますが、土地開発公社あるいはその他に対する地方自治体が必要とする用地の獲得に対しましては、市街化区域内以外に対しましても土地開発公社等が実施することができますので、そういった無計画なものが行なわれないように、それだけの力を地方自治体に与えることによりまして、規制を加えていくという姿よりしかたがないのじゃなかろうかと思っております。ただ県等におきまして法律で、まだ自然保護法等はできておりませんけれども、条例をつくって、一定の観光地帯に対する無規則な開発を規制しておるというのが現況でございます。その面におきましては、なお北山委員指摘のような困難性はあろうと思いますが、関係各省と連絡をとりまして、逐次そういった方向が是正されますように努力してまいりたい、検討を進めておるのが今日の段階である、かように考えております。
  98. 北山愛郎

    ○北山委員 建設大臣の言うように、自治体の条例でその地域内の土地取得についての許可制をとれるというなら、これは問題は自治体ごとに処理をすればいいのです。ただしかし、率直に言って、それには法律上の問題点があると私は思うのです。それを解決するためにはやはり法律をつくればいいのじゃないか。一番簡単ですわね。国が法律でもって、地方自治体が条例に基づいてその地域内における法人の土地取得あるいは宅地開発とか観光開発だとか、そういうものについての許可制、チェックできるという法律をつくったらいいのじゃないですか。それが必要じゃないですか。どうですか、検討しますか。これがいわゆる大蔵大臣が言われた税法以外の法人に対する規制だ、これはいろいろな角度から見て当然だと思うのですね。これは地方自治の立場からいっても、いま市町村長も知らないうちに、東京から出ていって、山をどんどん買っちゃって木を切っちゃったり、それじゃ環境の保全も何もできませんよ。宅地開発をされても同じですよ。それに対する生活のいろいろな施設をやるという責任が自治体にありますから、それをかってにどんどん自分の地域で団地をつくったり何かされたのじゃかないませんから、やはり制度上きちっとしておく必要があるのじゃないか。法律でもって法人のそういう行動について、土地取得なり開発について一般的な規制ができるのだ、そしてその細部は条例によるのだということもひとつやってみたらどうですか。これは自治大臣あるいは建設大臣にお伺いしたい。
  99. 西村英一

    ○西村国務大臣 私はあなたの御意見に賛成です。というのは、おのずから地方公共団体が自分の区域の地区住民を守る、また自分の管轄しておる地域の健全な発達をしたいというなら、これから好むと好まざるとにかかわらず、どうしても公共団体の長として、そういうようなある程度の権限を持たなければ、ただ金を持っておる人が直接所有者にぶつける――それは百坪とか二百坪とか、そんな小規模な土地ならいいけれども、大々的に買うというのを公共団体の長が一口も口が出せないというようなことは健全な地方発展にならないと思います。したがって何らかの方法で、現に地方公共団体でも、千葉県等もその例でございますけれども、やはりおのずからこれは困るぞというような気持ちがいたしておるのが千葉県のみではございません。今後おそらくあちらこちらの県について、とにかく土地開発に対する条例とまではいかぬでも、要綱をつくってやっておるのですが、これを制度的に政府として考える必要がある。また十分それができる。できなければ地方公共団体も健全な開発はできない。私はかように思っておる次第でございまするから、私個人としては十分関係の大臣と相談をしていきたい、かように思っておる次第でございます。
  100. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 いま建設大臣から建設的な前向きな御答弁をいただきましたが、自治大臣といたしましては、もとより今回の法案につきましても、できれば調整区域に対しましても、ある一定の条件のもとに届け出制度等も行なっていただきたいというふうな希望もありましたような状態でございますので、今後とも検討してまいりたい。ただ、あの法案によりまして土地開発公社の買いつけますところの土地というものは、市街化区域に限ったことでございませんので、自治体が真に必要とするものであれば、そういうような面から土地を確保することによって防止できるのでなかろうかと考えております。また観光開発等に対しましては、今回環境庁が出しておられます観光地に対する保護のために公共団体が交付公債のもとに買い取りを進めていくことによって、民間の営利的な観光開発というものを阻止いたしまして、秩序あるところの自然観光というものを保存していくというような方法のために六十億のワクも置いていただいておるという姿でございまして、逐次これらの方法によって処置してまいりたいと思っておりますが、各省と十分協議いたしまして、御趣旨のような線に持っていくように、できれば法制化をしていきたい、これが自治省としての態度でございますので、今後ともに検討さしていただきたいと存じます。
  101. 北山愛郎

    ○北山委員 建設大臣と自治大臣から非常に前向きな御答弁をいただいたのですが、しかしこれは急ぐんですよ。実はもういまたいへんな問題になり、新聞、週刊誌――私らの地方にも不動産会社だけじゃなくて、たくさんいろいろなその他の会社も出てきて、いまや何十万坪とか何百万坪という土地をどんどん取得しておるのですね。そういう事態が進行しているのですから、大急ぎでやらなければならぬということです。公有地の拡大の問題も今度の国会に法案が出ておりますが、これは自治体の先買い権といっても、ほんとうの先買い権じゃないですね。届け出をして、二週間なりその期間が過ぎてしまえば、話がととのわなければそれで済むのですから、終わるのですから、あんなゆるいものじゃしようがないと思うのです。もっと強力な権限を地方自治体に持たせる必要があると思うので、私はこれは早急に検討し結論を出してもらいたい。問題はある意味では簡単だと思うのです。やってもらいたいと思うのです。  そこで、ちょっと話がそれるかもしれませんが、先ほど建設大臣から、最近の法人の土地買いあさりというのは、金融がゆるんじゃって、ほかに目ぼしい投資の対象も少ないということで土地の取得に向かったのじゃないか、こういうお話があった。これは明らかですよ。土地と株ですね。株も法人買いが盛んで非常に高い。ですからこの不景気だといわれる時代に、証券界、まあ株と土地だけはどんどん景気がいいという、そういう結果になっていますが、そういう際に今度さらに金利を下げる、公定歩合を下げる、それについて預金金利まで下げるということがきょうの新聞に出ていますね。土地対策がいまのようなままで、法人がどんどん土地や株を買うというような状況をそのままにして金融緩和をしても、金利を下げても、そういうようなギャンブルみたいなほうへ向かっちゃうのじゃないですか。しかも庶民から見れば、物価は上がるわ、預金の金利は下がるわ、しかもその金を利用するといったって、庶民金融というのは日本の場合非常に貧弱ですからね。金利を下げてもらったって、大衆全体としてはほんの一部でもって、これによって潤う者は企業です。その企業がいま言ったように株や土地の投機に流れてしまうというのでは、これは問題があるのじゃないですか、今度の公定歩合の引き下げなり、あるいは預金金利の引き下げというのは。これは経済企画庁長官どうお考えですか。
  102. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 これは所管からいえば大蔵大臣からお答えすべきことですが、報道されております点は、まだ政府としても、また金融当局としてもきまったものではございません。ただ大勢といたしましては、やはり低金利の方向に向かいつつある。これは一つの国際的な傾向でもあるし、またわが国の金利体制というものが従来どちらかと言えば高過ぎるというような状態を改めるいい時期ではないかというような発想にも基づくものでございます。したがいまして、これが今後どういうふうなスケジュールで行なわれるか、私もまだ知るよしもございませんが、かりにそういうものになった場合に、いま御指摘のような、経済に対して、あるいはいま問題になっております土地問題、物価問題に一体どういう影響を及ぼすか。いろいろあると思います。私どもいまの経済の状況で考えておりますのは、やはり現在の不景気、景気後退を、早急にこれを回復させなければならぬ。こういうのを当面の大きな課題にいたしておりますが、このままでまいりますと、いま底固めはしつつあるとは申しながら、とうてい急速な回復はおぼつかない。そういうような状態で、やはり一つの景気回復に対する牽引力としてのいろいろな総合政策を今後とってまいりたいと考えておりますが、その一環としての金利体系の改正ということも考えられるわけでございます。したがいまして、それが今後、この需給ギャップが非常にまだ大きい現段階で直ちにこれが物価に非常に悪影響を及ぼすということは、私ども予想はしておりません。ただ、金融がこれ以上に金利の低下によって、かつ融資の条件が非常に有利になることによって、なお一そう土地の売買、投機的な面にそれが有効に働いた結果、地価がそれによってまた上昇するのじゃないか、こういう御指摘を十分私ども戒心しなければなりません。  そこで、いまの金融緩慢からくる土地に対する投機的な面、これは先般の経済閣僚協議会でも非常に大きな問題として取り上げました。日銀総裁もその席におられましたが、日銀金融当局から各都銀あるいは地方銀行に対しても、厳重にその面についての自粛と申しますか規制をしてほしいという通達もされたようでございます。したがいまして、そういう金融緩慢の状況から、この土地の投機的な取引、これが将来とも起こるということは十分戒心しなければなりませんが、ただ金融当局だけのそういう自粛要望だけでは、とうてい達成ができない。私は、いま建設大臣、自治大臣からお答えがありましたけれども、そういう土地に対する一つの抑止力と申しますか、そういうような制度もあわせて、しかも早急にこれは実現しなければならぬという考えでございます。
  103. 北山愛郎

    ○北山委員 その金利問題というのは、ここで論争しようというふうには思いませんが、ただ指摘しておきたいのは、景気の対策にしても、いわゆるいまの不況の原因というか、それが需給ギャップであるとするならば、大衆の有効需要、そういうものをふやすところに景気対策を置くべきであって、公定歩合なり預金金利の引き下げは、企業の利潤をあげるとか、そういうことを中心にした従来のパターンだと私は思うのです。景気対策ならば、むしろ金融の中で庶民金融に回る分をうんと拡大するとか、そういうほうがずっと景気対策ですよ。ただ、私がここで言っているのは、長官も言われましたけれども、こういう金利を下げるとかなんとかという場合に、少なくとも政府が国鉄運賃を大幅に上げてみたり、あるいは医療費を上げたり、公共料金をどんどん上げて、そして物価を上げるようなことをやることと、その預金金利を下げるというのは、これは矛盾した政策ではないか。まあ政府とすれば矛盾してないかもしれませんが、大衆から見れば、二重の圧迫を受けるのじゃないですか。少なくとも預金金利を下げるならば国鉄の運賃の引き上げはここでストップだ、これならわかるのですよ。そういう点の配慮がないのじゃないか。金利が下がることによって物価が上がるという観点よりも、私はそういう観点でほんとうは考えていただきたい、こう思うのです。しかし、ここでは土地対策ですから、少なくともいまのような穴のあいたざるのような土地対策をそのままにして金利を下げ、金融をゆるめるという行き方は、土地対策のサイドから見て、一そう悪くなるのじゃないか、こういう心配があるということを長官は認められましたね。したがって、そういう点からしても、一そう、いま申し上げたような法人の土地の取得を規制するとか、そういうことをどんどん断行すべきなんですよ。検討するのじゃなくて、もう実行する段階ですよ。内閣の中に地価対策の協議会ができてから何年になりますか。何回方針をきめましたか。私のところにある四十五年の地価対策を見ても、法人の買い需要、これを規制するようなこともやはり案の中にあるのですよ。ただ実行しない。法人を規制する問題だけは実行しない。土地の供給をふやして、こうはやってみたが、これは効果がない。いわゆる仮需要を取り締まらない。この規制をしないと効果がないというのは、もう明らかなんですよ。とするならば、税制はもちろんでありますけれども、やはり先ほど来言っておるような法人の規制、法人を野放しにしておくということ、これはたとえば許可制にするとか、一定の規制を加える。これはさっそくにやってもらいたい。前向きな答弁がありましたので、各閣僚にこのことを特に切望しておきます。  それからもう一つ、どうやらいま新全総というものが、ちょうど四十四年から始まりましたね。新土地税制も四十四年から始まっておる。その新全総そのものも、土地対策を欠いた新全総というものは、むしろ地価を引き上げる作用をしておるのじゃないか、こういうふうに私は考えるのです。たとえば新幹線にしても、あるいは高速自動車道にしても、どんどんそれを通せばその付近の地価が上がるのじゃないか。あるいは最近大規模な、たとえばむつ小川原湖のようなそういう大規模な開発プロジェクト、これはまぼろしのような計画なんですが、それを出しただけでその地域の土地が上がっておる。土地ブローカーというか不動産業者がどんどん入って、土地を買うでしょう。そっちのほうが先行しちゃうのです。そのほうを野放しにしておる。アドバルーンだけはあげておる。こういう作用が新全総にあるのじゃないかと私は思っておるのです。そこで、現実にむつ小川原湖ですね、これなんか企画庁の人に聞いてみても、はたしてあのプロジェクトができるものやらできないものやらかいもくわからないのですね。あそこへ行くという予定の製鉄なりあるいは石油なり化学企業が、行くというところが一つもないのでしょう。これからの経済が従来のパターンで成長するかどうかもわからない。そういう上に成り立っておる大規模開発プロジェクト、まぼろしの計画なんですね。計画がない。しかもその計画はどこでつくるのか。政府に責任があるのだ、県が開発の主体だという。県は政府をたよっておる。責任の主体がない。そして政府民間企業なり地方自治体が一緒になって、何とやらセンターだとか、何とやら会議だとか、あるいは株式会社だとか、そういうものをつくって、その中間でこれだけの大計画を進めようとしておる。結果としては、土地の値上がりだけですよ。そうじゃないですか。そして政府にも責任はないから、これが御破算になっても、むつ製鉄や何かと同じように、だれも責任を負わないのですよ。ばかを見るのは地元の人たちだけだ、あるいは県。一体あそこのプロジェクトができると思っておるのですか。できるという確信があるのですか。どういうような企業が行くのですか。計画はいつできるのですか。企画庁長官にお答えを願いたい。
  104. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 まず新全総計画、そういう面で総点検の必要を認めながら、いま作業中でございますが、新全総計画で私ども一番その面で欠陥と申しますか、はっきり申しますと、やはり環境問題への対応がまだ手ぬるいということと、それから土地政策というものがその背後にはっきりしていないということが一番大きな欠陥であろうと思います。したがいまして、いま御指摘の、環境問題を含めましてこの二つの点、この総点検においてはこれを大きく取り上げていきたい、こう考えておるわけでございます。  さて、むつ小川原の問題は、御承知のようにこれは新全総計画の中の大規模遠隔開発でございますが、そのプロジェクトとしての今後の見通し、まあこれからの問題でございます。したがって、そういう構想は打ち出しましたものの、ただいま青森県が主体となって土地取得、また、マスタープランもできておらぬ段階において、いずれの企業がそこへ来るか来ないかということは、まだそういうことをとやかく言う段階でもございませんが、私ども、大規模遠隔工業基地を構想いたします上においては、ぜひとも各企業が喜んで来るような開発でなければならぬし、また同時に、そこの地域住民がそれに対して理解と協力を持っていただくというような開発でなければならぬ。したがいまして、いままでのような、たとえば工特とかあるいは地域開発的な考え方でこれをやるのでは失敗に終わる可能性もあるから、したがってそういう面に非常に大きなウエートを置いて、慎重に、また新しい考え方でもって、心がまえでもってこれをやらなければならぬ、ということを私は事務当局に強く指示しておるところでございます。したがいまして、まだこれがどういうふうに具体的に展開するか、もちろんこれは新全総計画の中の大きな一つの目玉でございますから、これをぜひ成功させたい、また成功させなければならぬという考え方のもとに、いまいろいろ申し上げましたような眼目のもとにこれから計画を進めていきたい、こういう段階でございます。
  105. 北山愛郎

    ○北山委員 まだマスタープランもできておらぬというわけですが、まだ、いま調査の段階だ。しかし、いつまでも調査というわけでもないでしょうが、マスタープランはいつごろできるか、あるいはそのマスタープランをつくる作成の主体というのは一体どこなのか、その辺はどうです。
  106. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 ただいま青森県で第一次案を作成しまして、これを地元にお示しして、その地元のいろいろな御意見あるいは希望をその中へ取り入れようとしておる段階でございます。したがいまして、それが地元の十分な理解と協力を得られたような段階において、これを今度は国が取り上げましてマスタープランを作成する、こういう段階でございますが、いま申し上げたような順序で進みますが、重ねて申しますが、そこにやはり地元の理解と協力が前提になっておりますから、その得られた段階でこれを作成するということにおいて、いまいつというめどをはっきり申し上げる段階でございません。
  107. 北山愛郎

    ○北山委員 それは逆じゃないですかね。地元の協力というのは、やはり一定の計画なりめどがあって、しかも政府がこれを強力に推進するなら推進するというような、そういう姿勢があって初めて協力するとかしないとかいうのは出てくるので、そういうものをまぼろしのままにしておいて、地元の協力が成り立った上に立ってプランをつくるというのはおかしいじゃないかと思う。一体この姿勢というのは、最近における宅地開発なりあるいは地域開発の一つの形として企業を入れて、政府の行政の担当官がそれと一緒になって、地方自治体とそれから企業と、それから政府の、しかも行政庁の末端の人たちが行ってそこで作業する。政府は責任を負うんだか負わないんだかわからない。そういうかっこうで、いわゆる第三セクターというような考え方ですね。そういう考え方にちょっとあいまいさが一つあるのじゃないかと思うのです。それが新しい方式だと言うかもしれませんが、私はむしろ逆であって、いま公害とかあるいは住民のいろいろな意思、利害、そういうものが非常に鋭く出ておる場合においては、むしろそういう混合された、官民混合の、どちらかといえば、結果としては企業にサービスをするような、そういう姿勢であってはならないのじゃないか。やはり公共の利害を代表するものとしての地方自治体なり政府、国なりが責任をもって取っ組むんだという姿勢でなければならぬのであって、第三セクターというような混合方式というのは、いまの要請から、特に国民のほうの、住民のほうの要請から見れば、むしろ逆行しているのです。住民のほうはそういうことは考えないから、やはり政府のほうを見て、県も政府のほうを当てにしているわけなんで、そういう幻想を与えることは非常にまずいと思うのです。しかも、その中で開発株式会社ができて、それから開発公社ができて、土地の取得だけはどんどん進んでいくといったような、そういうやり方はまずいのじゃないですか。どうですか。建設大臣はどう思いますか。先ほどの問題へ戻るのですけれども、やはりこういう点についても、土地取得というものをもっと自治体が規制できるようなことでなければならぬ。聞くところによれば、開発株式会社とか開発公社はまだ土地は取得していないらしいのですね。ところが、その下の不動産業者のほうはちゃんと取得しているのですよ。安く買っているのです。予算委員会でも問題になったでしょう。安く買ったものを今度は高い値段で開発公社なり開発株式会社が買うという道筋になって、早く売った住民、協力した住民はばかを見るということになる。そういうことが現にむつ小川原だけじゃなくてどこでも行なわれておると思うのです。こういうことを規制するためにも、私は先ほど来申し上げたような土地の取得の規制というものは必要だし、それから地域の開発にしても、観光開発にしても、やはり地方の自治体の承認を得たものとして行なわれなければならぬし、民間デベロッパーに仕事をやらせる場合においても、それは一つの地方自治体がみずからやることを委託するんだという形でなければ、ほんとうにいまのような複雑な情勢の中で、やはり国民、住民の希望するような開発に結びついていかない。ひとつ考え直したらどうですか。この今度のむつ小川原湖の問題だって、それからその他の開発でも、まずさしむきは土地対策、先ほど言ったような土地対策というものをまず実施をする、その上に立ってでなければいけない。どうでしょうか。
  108. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 確かに、いろいろその総合性においてわれわれも反省しなければならぬ点があることは事実でございますが、しかしながら、むつ小川原開発その他の計画にいたしましても、このスタートする構想は、やはり土地問題、国土の利用問題がその眼目でございます。したがいまして、従来のようなパターンと申しますか、大都市に産業、人口が集中して、それが土地問題が発生し、地価問題が発生するというようなことであってはならぬというので、地域開発が取り上げられたわけでございますから、その軌道には私は誤りはないと思います。ただ、それを実行する面において、いまお話がありましたような諸点において、ただ総合的あるいは統一的な準備が足りなかった、不十分であったということは認めざるを得ません。したがいまして、大きな方向としては私どもはこれを改める気持ちはございませんが、それを完成するため、それをまた成功させるための諸般の土地問題についての政策、措置というものは、早急にこれを急がなければならぬ、こういう考えは御指摘のとおりでございます。
  109. 北山愛郎

    ○北山委員 そうすると、いまのいろいろなお話を総合してみると、マスタープランの責任というのはやはり政府にある、国にある、こう考えていいですね。
  110. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 この開発、第一次的には青森県が土地取得その他において持っておりますが、最終責任はもちろんこれは政府にあることは申すまでもございません。
  111. 北山愛郎

    ○北山委員 先ほどお尋ねしたように、そのマスタープラン、調査だっていつまでもやっているというわけじゃないでしょうから、いつごろまでにプランをつくるのか。どうですか。その点は。
  112. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 もうすでに、まぼろしの計画とおっしゃいますが、青森県で第一次案をつくりまして、地元の住民の方々にお示ししておる段階でございます。したがいまして、その中に地元のいろいろな意見とか希望を取り入れたものを政府が取り上げてマスタープランをつくる、こういう第二段階にいつごろ入れるか、私はまだここではっきりした日時を申し上げる自信はございませんが、できるだけ早くそういう段階に入りたい、こう考えております。
  113. 北山愛郎

    ○北山委員 これは農業の開発とかなんとかと違うんですからね。しかも大企業が行くとか、そういうことに関連した、しかも大規模な公共投資も必要になってくる。これが一体、県の計画で住民い信頼されますか。おそらく県がそんなプランをつくってみたところで、それこそまぼろしであって、それの裏づけも何もないじゃないですか。そういうものをよりどころにするというその長官の考え方はおかしいじゃないですか。これは正しい判断は、私は住民であった場合だってできないと思うのですね。県がそんな一つの構想を描いてみたところで、構想は構想で、それじゃ協力するか、そんなことは考えられないじゃないですか。よほどの錯覚でも起こさなければ……。裏づけがないじゃないですか、県の計画には。だから、その県の計画がまず第一次にあって、それで協力を求めるというのは、むしろそれこそまぼろしの計画で、住民をだます結果になるかもしれぬですよ。そういうことを繰り返してきているから住民も釈然としないわけですよ。ですから、全体のこの道筋というものを改める必要がある。これだけの大事業をやるなら国はちゃんとした責任を持つ姿勢でそこへ乗りかかるようにしなければこれは住民だって信用できませんよ。そういうところがぼくは一番の問題だし、いまのところでは長官からの話を聞いただけじゃ、何が何だかわからないんです。マスタープランはまだできていないし、いつできるか。しかも、それはこれからの経済発展ともからみ合っている。製鉄にしても、石油にしても、石油化学にしても、そういうものがきまらない。そのままで、ただ土地取得だけが進行していく。協力してくれ、これじゃ逆じゃないかと思うんですがね。ひとつこの考え方を御破算にして、あらためてやり直したらどうですか。
  114. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 県が地元にお示ししておる第一次プラン、もちろんこれは政府の責任において、県と連絡の上の案でございますから、決してまぼろしの案でもなければ、また政府が責任を持たない案でもありません。十分住民としてはこれに対していろいろ意見が出ることと考えております。ただ、それはもちろん基本的な問題でございますから、広域生活圏等の問題もございますし、農業との関係もございましょうし、そういう基本的な大まかなプラン、したがいまして、大きくエリアを区切るというような案でございまして、コンビナートその他をこれからどう具体的にきめるかということは、これはもちろん政府がマスタープランできめることでございますから、そのマスタープランをなるべく早く、先ほどまだ時期は申し上げられぬと申し上げましたが、できれば二カ月ぐらいの時期に第一次プランをつくりたい。もちろんこれは第一次プランで終わるものではございません。第二次、第三次、あくまで慎重な取り扱いをしてまいりたい、こう考えております。
  115. 北山愛郎

    ○北山委員 この点は長官とは考えが違うし、また私の聞いた範囲では、これは住民はもちろんわからないと思うのですが、まず第一に、一体法律的な根拠は何もないんですね。予算上も、ただ調査費をつけているだけだ、あるいは開発会社に若干金を出資している、その程度のことなのです。これは法律が必要じゃないのでしょうか、やるとすれば。だから法律をつくるなり何なり、とにかくほんとうに国が方針としてプロジェクトをやるとか、そういうことでないと、県の計画が第一次の案だなんて、そんなことじゃできないと思うんですね。法律を一体必要とするのですか、考えているのですか。
  116. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 私どものほうでは、この開発構想の進捗を見まして、ある時期には法律を制定する必要が起きてくる、こう考えております。
  117. 北山愛郎

    ○北山委員 それでは、また税制の問題に戻りますから、長官と大臣はいいです。自治大臣もいいです。私はいいです。  では、私はまたあとで……。
  118. 福田繁芳

    福田委員長 吉田賢一君より質疑の通告があります。これを許します。吉田賢一君。
  119. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 自治大臣に伺いますが、ここ一両年来の景気の落ち込みなどによる地方の財政収入の減ですね。それからまた逆に、やはり高度成長一本から福祉国家建設へ切りかえなければなりません。これは佐藤内閣も総理を先頭にいたしまして、その姿勢は本会議等においても明確になっておりますし、すでに世論もその方向に大体一致しております。いやおうなしにその方向に進んでいかなければなりません。  そこで考えたいことは、そういたしますると、入るべきものは十分に入ってこない。行政と財政の需要はますますふえていく。この事態に追い込まれておるのは地方公共団体でないか、こう思うんですね。これにつきまして、地方財政計画も背景にいたしまして、歳入歳出の状況も見てみましたが、やはりもっと本格的に地方財政を充実するということを重要な基本問題として取り組んでいくのでないと、だんだんとあちらこちらに無理、破綻ないしは目的を達せないような状態に追い込まれていくのじゃないだろうかということを私は考えるのであります。  そこで、概況どのような考え方で財政の収支をつかんでおられるか。これは数字のことですからもう言わずもがなでありますけれども、一応基本的な姿勢としてどのような線でこの歳入は減り需要はふえるべき段階で対処しようか、国の姿勢としてどうあるべきか、これは非常に大事な根本問題だと思うのですが、自治大臣としての考えをひとつ明確にしておいていただきたい。
  120. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 地方財政は昭和四十年、四十一年の不況によりまして相当きびしい状態におちいってまいりましたが、当時、御承知のように交付税率を二九・五%から三二%に引き上げる、あるいは年度限りの特例交付金を国の一般会計から受け入れ、なお足りないものは特別会計からの借り入れも行ないました。また公共事業の増加に伴いまして景気浮揚対策が行なわれたものに対しましては、元利補給の特別事業債というものを発行してまいったのが状態でございます。その後三二%に引き上げられた交付税の景気の好転と相まっての増収あるいは地方税の増収等によりまして相当地方財政が好転してまいりましたことは吉田委員も御了承のことと存じます。  ところが、昭和四十五年ごろから再び不況におちいってまいりました。地方税収あるいは交付税額が少なくなってくるという姿、しかも社会資本充実、福止政策への転換ということで地方の財政需要は増加してまいりました。このような傾向のために、昭和四十六年度におきましてはすでに五千億程度の地方財政計画上の赤字が生じた次第でございます。これに対しましては、所得税の年内減税が地方財政に及ぼす額五百二十八億は一般会計から交付していただく、あるいはベースアップ、また国税三税の減収に伴うところの交付税の減というものは、特別会計からの借り入れを受けまして交付税を確保し、また地方税の減収に対しましては減収補てん債、また公共事業の国の拡大に対しましては起債をもって充てるという姿で五千億余りにのぼりますところの赤字をカバーしてまいったのが昭和四十六年の財政状況でございました。本年度におきましても景気の回復はございません。国税三税の税収も伸びを期待することはできませんので、交付税並びに地方税の減収という姿、他方国の景気浮揚のための公共事業の拡大、また地方公共団体自身が固有の任務として行なわなければならないところの社会資本の充実、福祉政策、そういったものに多大の財政需要を生じ、約八千億に近い地方財政上の赤字と申しますか、手当てをせなければならない状況におちいったのが昭和四十七年度の状態でございました。   〔委員長退席、森下(元)委員長代理着席〕  昨年暮れから今年当初にかけましての予算折衝におきまして、これらの赤字をいかにして補てんするか協議いたしました結果、交付税におきましては特別交付金一千五十億、また借り入れ金千六百億、さらに沖繩の返還に伴います沖繩県並びに市町村の行財政を円滑に行なうための特例交付金といたしまして三百六十五億、これらを入れまして交付税は昨年度と同様約二〇%程度の伸び率を示すような交付税を配布さしていただくことができました。しかしながら地方税の減収は相当な額でございますので、これだけでは足りませんので、その他の分に対しましては、起債の措置としまして、昨年度に比べまして一般会計におきまして四千九百億余の地方債のワクを増額することによりましてその不足分を補ったような次第であります。  なお、そのほかに地方財政の貧困を助けるために、あるいは小学校の建築補助率の引き上げ、または老人医療に対しましては国が三分の二を持っていただくというふうな一連の国庫補助負担金の拡充等によりまして処置を講じてきたような次第でございます。  このような状態で、一方には、地方住民の強い要望でありますところの地方税の減税も、住民税あるいは事業税におきまして初年度一千億をこす減税を行ないながら、他方、国の公共事業の消化、また地方の単独事業に対しましても、昨年同様の二二%程度の伸び率をもって処置し得るというような姿に地方財政計画を組ましていただき、昭和四十七年度国の予算を上回りまして一十一兆七千四百九十八億という地方財政計画を立てさしていただいたような次第でございます。しかしながら、いま吉田委員指摘のごとく、地方財政、起債ではまかなっておりますが、八%という公債依存率になっております。なお今後行政のふえてまいります住民の要望に対して財政需要というものも相当ふえてくるのではなかろうか。抜本的に考えなければならないのは当然でございまして、私たちは長期的に地方制度調査会あるいは税制調査会等の御審議を賜わりまして、地方の自主財源の確保というものに今後ともつとめてまいらなければならない。特にそのためには都市財源の充実という点に意を用いながら、今後とも地方財政の健全化に資していかなければならない。このような努力を続けておりますのが今日の状態でございます。
  121. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 時間の関係がありますので簡単にいたしますから、御答弁もそのようによろしくお願いいたします。  そこで、今後の財政需要の問題でありますが、とりわけ社会保障の面におきましても、相当長期計画下において増額するであろうという対象の拡大内容、財政的な検討をしていくことの必要がないか。これを一体どの程度にお考えになっておるか。現状におきましては、たとえば四十七年度の一般会計と比較いたしますると、社会保障費は、一般会計が十一兆四千七百億円に対して、一兆六千四百十億円でありますから、前年同様一四・三%ということになりますが、そこで国及び地方公共団体の公費補助は大体三〇%になっております。これはおそらく今後は、率はともかくとして、実質の数字はずっと拡大していくことは申すまでもございません。こういたしますと、具体的な例を一、二指摘いたすだけでも、老人の福祉施設にしましても、いまのままではいけません。あるいはまた、児童保障全体の問題児童手当にいたしましても、これは普通年度にもやがて入りますし、婦人福祉の問題があるし、母子家庭の問題があり、身障者リハビリティーション等々幾多のものがくびすを接して待っております。これは全部充実を要する対象でございます。そういった面から考えてみますと、この社会保障費は相当拡大していくのではないか。特に、日本といたしましては、現在多病の国であります。したがって、環境衛生、生活環境整備というものは、格段の充実が必要でないだろうか。イギリスと比べて、日本の下水道施設は十分の一というような程度では、どうにもいくまいと思うのですね。その方面の技術は国の責任といたしまして、地方におきましても、安閑として国の技術の進歩発達を待つわけにいくまいと思う。としますと、みずからの研究も必要ではないであろうか。そういった面、具体的な施設あるいは調査研究、これに伴う人員の補充等々いたしますると、これは結論的には財政需要が膨大になってくる。このようなものは、長期計画下におきまして、地方は地方なりに立てておかねばいかぬのじゃないだろうか。あとから追っかけていくというのであっては、いまの日本で公害がわんさわんさと国を騒がせておるように、みんなあとから問題が紛糾していくだけです。だから、この辺から考えますと、地方財政の計画について、もっと抜本的な立場に立った財政計画がなければいくまいじゃないか。いまでさえこの状態でありますから、私はそういうふうに思うのでありますが、そこらについて、自治省といたしまして、当初お述べになりましたごとくに、相当積極的な前向きの姿勢で、との財政問題と取り組んでいってもらわねばなるまいじゃないか、これが一点。  それならば、財源の再配分というところまで発展するのかどうか、こういうことになると、大蔵大臣との直接の関係がございますが、三割自治を返上するというところまでいくのかどうか、そういうところまで議論は展開していくのじゃないか。財源の再配分というところまでいくのじゃないかと思います。これはまた問題は重大であります。  前者においては、長期計画をもって地方財政の計画を具体的に立てるべきである。特に社会保障あるいは公共事業と申しましても、公共事業と社会保障がごっちゃになっている面もありますけれども、いまのように一般的な建設公共事業ではなくて、福祉国策につながるところの公共事業、その二面と財源の確保をどうするか。再配分というところまで進んでいくのかどうか。この二点は、根本に横たわる重大なことでありますので、これはしっかりとした考え方で御答弁を願っておきたいと思うのであります。
  122. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 今後の国の財政方針は、いままでの経済優先型から福祉政策への転換をはからなければならない。おくれております社会資本の充実をはからなければならない。これは今日の日本に課せられた課題でございます。その第一線で実行に移していくのが地方自治体でございますので、吉田先生の御指摘になりましたことは、当然地方自治体として考えていかなければならない問題であると考えております。  今年度の地方財政計画におきましても、その点も十分考え合わせまして計画さしていただきましたような次第でございまして、いま申しました十  一兆七千四百九十八億、昨年度と比べて二〇・九%の伸びでございますが、社会保障関係におきましては三〇・七%、生活環境施設に対しましては六二・七%という伸び率を示し、そういった部面の財政を特に重視して地方財政計画を組ましていただいたという姿になっております。  なお、今回、国の制度として取り上げられました老人の医療対策におきましても、大蔵省におきましては、現在でもすでに三十数県がやっておるのじゃないか、地方自治体は行なっておるのじゃないか、とにかく新しく国が金を出すのだから、二分の一でしんぼうしろという御意見もございましたが、社会保障の充実という点からもぜひとも国において三分の二を負担していただきたいということで御了解をしていただき、地方財政がこれをまかない得るように処置さしていただいたのもその姿でございまして、児童手当等につきましても、国の施策として伸び行くものに対しましては、地方財政で十分それの補完ができるという姿を今後とも長期的に考えていかなければならない、このように考えておるような次第でございます。  また、四十一年度の際におきましては、いろいろ国の施策をやっていただきましたが、非常に苦しい時代でございましたのでこの際は、国の補助金のある公共事業はできるだけ行なうが、地方独自の単独事業は節約をして押えろということで、地方財政計画におきましても、あの当時は一四%そこそこの伸びしがなくて、地方団体の単独事業の節約を行なったというのが四十一年度の姿でございました。今回は単独事業こそ社会資本の充実、最もきめこまかい福祉政策に通ずるものであるという意味から、苦しい財政でございましたが、公共事業の伸びと同様に、昨年度に劣らぬ伸びが各地方自治体で行なわれるように、単独事業の伸びも二〇%をこえて組ましていただいた次第でございます。  また、長期的な計画を立てることはもとより必要でございます。昭和四十五年度におきまして、私たちは一応の経済見通しのもとに、大体百十兆円程度の公共事業を昭和五十五年までに実施し得るという見込みを立てまして、これらに対する公共事業の長期ビジョンを立てておりますが、その百十兆円にのぼりますところの公共事業の中で、特に生活環境施設に重点を置いて今後地方自治体にやっていただくように、自治省といたしましても長期ビジョンの中で計画を立てておるような次第でございまして、各地方団体におきましても、そのような長期計画の中においても、生活関連施設を中心として実施に移すよう事業を計画していただくように指導をしておるような次第でございます。
  123. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 終わります。
  124. 森下元晴

    ○森下(元)委員長代理 北山愛郎君。
  125. 北山愛郎

    ○北山委員 きょうは土地、特に地価対策の問題を中心に先ほど来質問したのですが、大蔵大臣がおいでになりましたから、税制の面でお尋ねをいたします。  時間がおくれておりますから、かいつまんでお伺いしますが、四十四年度から始まった新しい土地税制、その結果として、ことしの五月の税務署の発表も、いわゆる長者番付の発表も、大半が土地を売却した地主の譲渡所得者で、それがもう上位を占めておる。ことしは一億円以上が二千七百四人ですね。去年は千二百人くらい、一昨年は六百六十四人。いわゆる土地税制が始まる前の四十三年はたった六十一人しかいなかった。それがいまや四十四倍になっておる、その一億円以上の長者が。これに対して一〇%というようなものすごい安い税金をかけて、大減税をやっておるのですね。だから、五月一日のあの新聞発表を見て、国民はびっくりあきれたと思うのですね、こんなばかばかしい……。それで、まず最初に、この結果について大蔵大臣としては一体どういうふうに考えますか、反省がありますか。
  126. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この結果についての評価はまた非常にむずかしいと思いますが、昭和四十四年この税制をつくるときの一般からの要請と申しますか、何でもいいから土地の供給をもっと広く早くしてもらいたいということで、供給が促進されない限りは住宅も建てられませんし、地価は高騰するし、どうにもならないということで、何をおいても土地の供給の促進ということが当時の要請でございました。それをやる方法として、ほかの手段による促進策を講ずるならこれは別でございますが、これを税の制度においてこの促進策を考えろということでつくられたのがこの土地の分離課税の問題でございましたが、もし税制において税を重くするということになったら、いつになっても地主は土地を売らない。古いときから持っている土地は安いものでございますから、したがって持久力を持っている。何年たっても税が高いということであったら、これは売りませんし、売る場合にはまた税の高い分だけが土地価格の中に繰り入れられてくることは当然でございますので、したがって、税の上に若干の不公平とかいろいろなものがあるのを目をつぶって、どちらに重点を置くか、とにかく早く土地を出させることということできめられたのがこの税法でございますので、そういう意味から見ますと、この税制によって土地の供給は相当拡大されているということで、私はそういう意味からの目的はある程度果たしているのではないかと思います。ことに、これは御承知のように、最初の二年は一〇%で、次の二年間は一五%になり、そして昭和四十九年、五十年は二〇%というふうにこの税率を累進的に上げていく、そして昭和五十年では打ち切ってしまう、それまでなるたけ早く古いときから持っておった保有土地は売ってくれ、こういうことでございますので、様子を見ておりましたところが、一〇%から一五%へことしの一月から変わるということになりましたら、去年の暮れになって急に土地を譲渡するものがふえてきたということで、税収も予想外に伸びたということでございますが、その税の納まり方から見ましても、そういうねらいを持った税制としては一応所期の目的はりっぱに果たしているのではないかと私は考えます。  ただ、それが、それなら実際の需要者の手にそれだけ広大な土地が渡っておるかと申しますと、そうではなくて、実需要者に渡っておる部分と、そうではなくていわゆる法人にそれが買われておるという部分が非常に多いということで、この点に非常に問題があるようでございますが、大蔵省としましては、四十四年のときの分離課税で譲渡した土地の現状がどうなっておるかということで、法人所有の土地についての特に抜き取り調査を東京の五つの税務署ですか、これを中心にしてやりましたところが、やはり土地を買った法人は大部分これは不動産業者であったということと、不動産業者でありましたために、もう四十四年のときからすでに買ったものを売却してしまっておるというのも相当ございますかわりに、土地造成をやって、これから宅地として供給するというものが非常に多いというようなことで、またその他の法人としましては、現に工場の敷地に使ったり、工員の宿舎の敷地に使ったりして、これから地ならしをして建物を建てるというふうに、実際に工場用として使っているものがほとんどであるという、一般の法人はそういう抜き取りの結果が一応出ております。そういたしますというと、これを個人の実需要者に売ろうとしても、やはりある程度住宅地としての開発ができておらなければ、なかなかそこを個人で買って住宅にするということはむずかしいので、だれかの開発を待たなければ実需要者の手には渡らないということでございますので、そういう意味から見ますと、不動産業者でその仕事を担当してそういう使命を果たしておるというものも、これは相当あるというふうに調査の結果では出てまいります。こうなりますと、法人の所有にはなったけれども、これがどういう形でできるだけ早い機会にあまりもうけがなくて安く需要者の手に渡っていくかという過程が問題であって、この点をもう少し見ないと、この税制が成功であったか悪かったかという評価はなかなかむずかしいのではないかというふうに私は考えております。もし、あのときにあいあう税制で土地を手放せということで手放すことをさせなかったら、まだみな保有しておるものが多い。多かったらこれはやはり宅地開発がおくれて、需要者はいまよりも困っておる事態になっていはしないかというようなことを考えますと、この税制があながち失敗であったというようなことも言えないのではないかということで、きのうも委員会でこの問題の評価問題が出ましたが、これは簡単に失敗であったとか成功であったというふうに評価することはなかなかむずかしいのではないかと私は考えます。
  127. 北山愛郎

    ○北山委員 そういうことでは困るんですね。要するにこの立法理由というのは、土地の供給をふやして地価を抑制するという目的だったのです。ただ土地がどんどん売り出されたって、高くなったのでは、庶民は買えませんよ。この土地税制が出たって、なるほど供給はふえたけれども、しかし値段が毎年二〇%近く上がるのじゃ土地税制にならないじゃないか、ねらったのが地価抑制ですから。それに庶民は幾らでも金を持っておる法人とは違うのですよ。やはり大衆の必要な住宅を建てるとかなんとか、そういう実際の需要者に買える値段で土地を供給するのでなければだめですよ。途中で法人の手をくぐっちゃって、どんどん高くなっておる。そういうものではなかったはずなんです。この土地税制そのものが地価抑制だったのですよ。私は当時、あなたが大蔵大臣でない、福田さんが大蔵大臣のとき、大蔵委員会でもやり合いましたよ。この税制は、なるほど土地を手放すかもしれぬ、しかし買うものは法人で、法人は野放しじゃないか、個人の短期譲渡についてはそれは規制した、だから個人の投機については規制したけれども、法人は野放しだから、法人にとっては土地が買いやすくなる税法なんだ。それからまた、ほかの委員が、これは地主擁護になってしまうのだ、こういうふうに言ったのですが、まさにそのとおりになったじゃないですか。地価抑制にはさっぱり役立たないじゃないですか。そして地主に、関さんみたいなのが代表的ですけれども、おそらくことしは、譲渡所得が二千五千億くらいというのですから、おそらく租税特別措置で五千億くらいの減税になっておると思うのですね。三年間でおそらく一兆円くらい地主に減税をしておる。そうしてその結果は地価が下がらないのですよ。土地がありさえすれば幾ら高くなってもいいというのではないですよ。そうすると、やはり地価が上がり過ぎておるからこれを押えなければならぬ、それがこの立法のねらいじゃないですか。なるほど取引額はふえた、供給もふえたけれども、地価は上がったじゃないですか。それは仮需要を取り締まらない、しかも一番資金力のある法人を規制しないから、せっかくの土地税制が生きなかったのじゃないですか。その点は率直に反省すべきだと思うのですよ。しかもいまお話しになったようなことは、ほんの一部の抽出調査じゃないですか。大体から見て、四十四年度以前から法人の土地取得というのはふえてきましたけれども、さらにこれに拍車をかけたのが四十四年度のこの税制なんですよ。そのころからもう不動産業者といわず一般法人、魚会社であろうと何会社であろうと、みな子会社をつくって、金融機関はもちろんのことですが、金にまかせていま土地を買う。しかもいま景気が悪いということで適当な投資の対象がないものだから、株と土地を買う。むちゃくちゃですよ。そこがしりぬけだったから土地税制は生きなかった。法人を規制しなければならぬじゃないですか。建設省からは、大蔵省に、税制上法人も同じように規制すべきだという提言があったはずだ。それを大蔵省が、いや、税法上むずかしいとかなんとかいってやらなかったのじゃないですか。そこに問題があるということを率直に反省すべきなんですよ。こんな税制が天下に発表になって、みんなびっくりしている。三十九億の関さんは一体どのくらい減税になっているか。二十何億も減税になっておるでしょう。しかもその売った土地というのは、自分の会社に売っておる。何にもならないじゃないですか。地価抑制にならないじゃないですか。庶民に安い土地を供給するという政策目標を達成できなかったんじゃないですか。そんな答弁では、私は納得しませんよ。
  128. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは別に私がつくった法律じゃないですから、特別に私が弁護するわけではございませんが、地価の抑制のためにつくられた法律であることは間違いないと思います。地価を抑制するためにはどうしたらいいかと申しますと、供給が少ないためにいま非常に地価を高騰させている。だからここで供給を急速にふやす方法をとらなければならない、それでなければ地価の抑制はできないということで考えた税制であったと思います。その目的を果たそうとするなら、税率が不当に高くては目的を果たすわけにいかない。ですから、みんなが税が安いからいまのうちに手放せと言って、これが誘因になる税制をつくる以外にありません。したがって、こういうことになった。また現に税の収入ぐあいを見ますと、税が上がるときには、みんな切れ目の前にかけ込みの売りがたくさん出ておるということから見ましても、土地供給については相当効果があったと思います。もし土地の供給がここまでなかったとしたら、何兆円という土地がこういう税制によって処分され供給されたという事実がなかったとしたら、いま地価はまだどういう水準にあったかと申しますと、これは結果論ですからわかりませんが、いまより地価は高くなっておるかもしれませんし、これはどういうことになったかわかりませんが、少なくとも供給が非常に多かったために地価は一定の値段に抑制されておった、こういう効果はあったろうと私は思います。それはそれなりに評価しなければなりませんし、反省すべき問題は、そういう場合にまだほかのやり方がなかったかとかいうようないろいろな問題がございましょう。そういうことも考えないで、ただこの制度自身がよかったよかったと言うことは悪いと思いますが、私は、この制度はそれなりの効果を果たしたものというふうに考えています。
  129. 北山愛郎

    ○北山委員 大臣、せっかく供給をふやすようなことにはなったけれども、買ったものは、法人の仮需要を押えなかったために、実際の需要者の手に渡らないで、法人の手をくぐって、それが値上がりをしている。仮需要がどんどんふえたのでは、せっかく供給をふやしてもだめなんです。供給をふやすこと自体はいいでしょうが、それだけではだめだということです。その当時からわれわれはそういう議論をした。一方でそういう法人とか力のある者の仮需要を押えなければならぬ。ところが、当時土地税制は、個人の短期譲渡、いわゆる取得してすぐ売るというものは、高い税金をかけて規制したでしょう。法人は規制しなかったじゃないですか。そこに落ち度があったのじゃないかとぼくは聞いている。その点は率直に認めたらどうですか。しかもこれは四十四年ではなく、四十五年だって地価対策閣僚協議会の決定で、「今後早急に検討すべき施策」として、土地仮需要の抑制、法人による投機的土地取引の抑制、あるいは一定の適正な評価額をこえる分については土地高価譲渡所得税をかけるとか、あるいは開発の利益を分配するとか、そういうふうなことを早急にやるべきであるといって、四十五年に閣僚協議会できめているじゃないですか。法人の投機的土地取引を取り締まらなかったら、せっかく供給をふやしたってだめなんです。その結果が総合的にあらわれて地価の抑制には役立たなかった。一年に二〇%も上がったのでは、庶民は土地がありますと言われたって買えませんよ。高ねの花ですよ。それで政治がいいのですか。そして一方においては大地主に大減税をしておる。何千億も減税しておる。最終的な結果としてはこの税制の意味がなかったのだ、そういうふうに反省すべきだと思うのです。またそういうふうに反省をして、大蔵省としても再検討すると言われているのですよ。検討していますか。どういう点を検討していますか。
  130. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私はそれはおっしゃられるとおりのことでもないと思います。たとえば山林を持っている人が、あの税制のために相当広い山林をここで手放した。しかしその山林をそのまま実需要者一人一人に渡そうとしたって、これは宅地として供給されるものではございません。したがって、これはだれかの手によって宅地造成がなされて初めて個々の需要者はそれを宅地として取得することができるということでございます。現在開発されてない山みたいなものは、所有権は手放されているのですが、まずこの手放しがなければ問題にはなりません。あったあとでも、不動産業者、デベロッパーがこれを開発するというのなら、これはしていいことであって、その手にかからなければ宅地供給にはならないと私も思います。これはいいのですが、もしそれが不動産業者であるとしますならば、開発を業とするのですから、もしそこから利益が出たら、当然コスト以上の利益は利益として税の対象になって、税を納めてもらいますし、もし不動産業者でなくて一般の法人で、土地を投機の対象にして不当にもうけた者があるとするなら、それについての特別な税のしかたはないかというようなことも当然考えましたが、これはいつも申しますとおり、なかなかむずかしいことでございます。これについての技術的な問題その他は税制調査会でもいろいろ研究を願っておることで、あれこれいろいろやりましたが、結局、公示制度というものが普及して、その公示価格を不当にこえて利益を得た者は、別に切り離して、それに高率課税をするとかなんとかいう方法考えられるだろう、そうなりますと、不当価格ということをきめるためには、やはり一つの公示価格というものができなければなりませんし、これがある程度普及しないと税制としてそういう踏み切りはなかなかむずかしいというようなことで、いまいろいろな点にわたって検討はしておりますが、不動産業者の手に渡って土地が開発されている限りは、これはそのまま本業としての利益に対して課税するのですから、問題はございません。投機をやった他の一般の法人というものについての問題でございますが、売らないで持っておる限りは、評価益に対して課税するということは税制の理論から見てむずかしい問題ですし、これは言うべくして税制として踏み切るためにはなかなかむずかしい問題がございますので、これらの点についてはいろいろ検討中でございます。
  131. 北山愛郎

    ○北山委員 地価を適正な価格にするという考え方は大臣はないのじゃないですか。いまの地価は昭和三十年に比べまして約二十倍になっておるのですよ。もちろん消費者物価指数なんか問題にならない。物価指数に比べて十倍も上がっているでしょう。しかも、国の経済発展したからといったって、GNPだって八倍ちょっとですよ。国の経済発展の二倍以上も地価が上がっている。しかもそれが公共投資をしようにも用地費がどんどん高くなってできない。公共住宅を建てても家賃は高くなる。大きな問題じゃないですか。いかにしてこの地価を押えるかということが問題でしょう。そのどきに供給をふやすということも一つの手段ですよ。しかし供給をふやしても、仮需要、中間需要がどんどんふえたならば、商品も同じことでどんどん値段は上がっていきますよ。地価が上がっていきますよ。地価が上がっていっていいのですか。やはりそれを規制するのが土地政策じゃないのですか。不動産業者が何をやっても、それは土地の取引がふえ、供給がふえればそれでいいのだというものじゃないのじゃないですか。どんどん上がっていくのですよ。押えようとするなら、一方で供給をふやしながら、一方ではそういう中間仮需要というものを規制しなければならないんじゃないですか。その考えは持っているのでしょう。
  132. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 その問題は、しょせん税制というものは土地政策としては補完的な機能を果たすものであろうと思います。税によってその問題を解決しようとすることは私はなかなかむずかしいということを言っておるものでございまして、もしおっしゃられるように、土地をどうこうしようというのでしたら、税以外の方法で土地問題は解決すべきだろうと私は思います。私どもが税をひねくっている限りは、安くして供給を早めて物価を押えようとすれば、いまみたいに不当にだれかをもうけさせるとかなんとかということで非難がくるし、重税にしたら一切土地というものは出てきませんし、供給はとまってしまって土地の値段を上げるばかりになるので、どっちをひねくっても税でこれをうまくやっていくということはむずかしいので、税は補完的な機能は果たしますが、本来の土地政策というものは私はほかでやるしかしかたがないと思います。これを税制でばかりどうこうせいという方向は間違っているのじゃないかと私は思います。
  133. 北山愛郎

    ○北山委員 だから私はそういう広い角度から答弁してもらいたかったのです。私は何も大蔵大臣が税金だけの番人だとは思いませんよ。やはり閣僚として地価問題なりそういうものを総合的に考えて答弁してもらいたい。たとえば今度のような特別措置で地主に相当な恩典を与えたにしても、その結果として地価が下がった、庶民が安い土地を買えるようになったとなるなら、それはがまんするでしょう。地価は上がるわ、不動産業者、ブローカーはいま金融が緩和されておりますから、どんどん土地を買いあさって、そうして実際にほしい人はますます土地は買えなくなる。結果はそうなってしまって、そして大地主だけが一〇%大減税、何千億も減税を受けている。これでは国民は承知しませんよ。やはり閣僚として国務大臣として総合的なそういう判断に基づいて答弁してもらいたい。ちょっと税金を下げただけでは一つの限界があることは私も承知しています。また福田さんもそのことを言われました。私は、法人の土地取得の規制については、すでにあなたが来られる前に建設大臣やあるいは企画庁長官なり自治大臣にその点をただしたわけなんです、ほかの手段についても。しかし税制の面についてもやるべきことはあるのじゃないか。たとえば、これは予算委員会で私は提案したのですが、この分離課税の税制を実際に家を建てる需要者に売った場合とか、あるいは公共用地に売った場合とか、そういう場合にこの適用を限定したらどうですか。若干技術的に問題はあるかもしれないけれども、できるでしょう。そうすれば初めて売った土地がほんとうに家を建てる人、必要な人の手に渡るのじゃないですか。あるいは公共用地にいくのじゃないですか。先買い権なんというような権利を使わなくたって、公共用地に売ればずっと税金が安くなるのだから、誘導政策としてもなるのじゃないですか。そこで初めてこういう土地税制も生きるのじゃないですか。あるいはまたみな比例税が一〇%あるいは一五%でしょう。何十億あっても一〇%、何十万円でも一〇%、おかしいじゃないですか。やはり累進的にやったらどうですか。そういう手直しはできるのじゃないですか。全然考えられないのですか。
  134. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 実需要者へ売った場合という区別でございますが、中間に何もなくて直接所有者から実需要者へということでありますと、私はケースが少なくなるのじゃないかと思います。と申しますのは、もう手を加えなくてあしたから自分の手でそこへ家を建てられる土地というものはほとんど残されていない。みんなこれが宅地として開発されるのでなかったら、自分の住宅を建てる土地としてそこを購売する人はいないというようなところばかりがいま実際に残されておるというのが現状でございますので、土地所有者から直接買って家を建てた人だけに適用するというようなことだったら、適用されるケースというものは非常に局限されるのじゃないかと私は思います。
  135. 北山愛郎

    ○北山委員 だから、いまの自治体の宅地造成事業なんかうんと拡大して、今度の公有地拡大法案なんかでも開発公社がやって、そしていま言ったような誘導政策で公共用地を買って地方自治体がみずから宅地造成をして売るとか、あるいはみずからやらなかったら民間デベロッパーに委託をしてやらせるとか、そうやったらいいじゃないですか。それだったら決して幅は狭くなりませんよ。税法でひとつそういう限定をしたらどうですか。何十億やっても一〇%ないし一五%、そういう分離課税の比例税一本やりでいく、それはおかしいじゃないかと思うのですが、段階をつけたらどうですか。少なくともいま五月一日の発表を見た国民は、うまいことをやったなんて黙って見ていませんよ。こんな不公平なことをやっても、しかも結果としては、会社は金にまかせてどんどん土地を買っている、地方にまで行ってどんどん買いあさっているでしょう。そうしてその結果として土地が上がる。だんだん自分の貯金なんかでは買えなくなってしまう。これは国民の率直な気持ち、感情をさかなでするようなものですよ。だから、私は税制だけでものごとは解決するとは思わないけれども、しかし、いまこういう結果になってきたから、そこでやはり四十四年の土地税制というものを再検討して、早急に手直しすべきものだ。いま私が提案したようなことを検討してみる気がありますか。どうですか。私は、政府といわず、われわれ議員としても、こんなことが法律で国会を通って、その結果がああいう結果になって、それで政治家の責任はつとまらないと思うのですよ。政治不信というものになりますよ。このまま見のがしてはならないと思うのです。できるなら私はこの国会で解決をつけるべきだと思うのですよ。どうですか。検討して、土地税制そのものも若干の手直しぐらいの可能性はあるのですから、やってみる気はありませんか。
  136. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 税の誘引力を利用しないで土地問題を解決しようとするためには、どうしても土地の私権の問題に触れざるを得なくなると思いますが、それに率直に触れたいろいろな策というものが行なわれるかどうかがやはりこれからの問題になると思いますが、それはそれとして、その補完的な役割りを果たす税制として、いまの税制に改善の余地がないかどうかということは、いまいろいろ問題を提起されている法人の問題を中心に検討しておるときでございますので、個人のものでも、個人に対する措置についても当然一括して私どもは検討していきたいと思っておりますが、ただなかなかむずかしい問題であるということだけは申し上げたわけでございます。
  137. 北山愛郎

    ○北山委員 時間がないからこの程度にしておきますけれども、率直に大蔵当局も、前の福田さんの時代だったからということもありますけれども、こういう結果が出てきたなら、すなおにすぐに再検討すべきですよ。そうでなかったら、私は民主政治なんて言えないと思うのです。こんなことを、ああでもないこうでもないという官僚的な言いわけをして、それで済むという問題ではないですよ。大臣だって野人なはずなんだな。そういう点ですなおに、こういう不合理な結果が出てきたなら、税制だけじゃなくて、あらゆる角度から土地がこれだけ上がってくるということを押えるための徹底的な措置をやるべきだと思うのですよ。私は何も土地を国有にしろとかなんとか言いませんよ。せめて可能な一いま申し上げたようなことだって、何もむずかしいことじゃないですよ。言いわけをするのじゃなくて、そういう措置をとるという気持ちを持ってもらいたいのです。
  138. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 言いわけじゃなくて、実際に私どもが、たとえばいまの税制をやめて個人の土地譲渡に対する特例措置をかりに再検討する以上は、もうこれはやめようということになって、やめたとした場合に、土地の供給というものはいまより当然減ってくると思いますが、それが地価をいまより高騰させないかどうかということについて、私どもは実際問題として的確に判断ができない。やめなくてもいいから、一五%をもう少し倍にしろとかどうとか、そういうような措置がとれないか、それでも土地供給については心配はないのだというのでしたら、税の公平というような問題からこの税率を上げたいということは、当然私どもも考えておりますが、上げた結果、土地の値上がりを押えることに一体なるのかならぬのかということを考えますと、最初に申しましたように、この税の評価についてはなかなかむずかしくて、自信がない。せっかくいまきめた税制ですから、ことしからまた税率も上がることでありますので、もうちょっと様子を見ようかというのがいまの私どもの考えでございますが、いい方法があるのなら、実際においてそれによって土地の供給に支障を来たさなくて、地価が上がらないで下げることのできる税制というものがあるなら、いつでもそういう税制はとりたいと思っております。
  139. 北山愛郎

    ○北山委員 それは供給をふやす方法だって、何もこれだけではないのですよ。いろいろな方法があるのだから、こういう方法をとらなくたって。供給をふやさなくてもいいと私は言いませんよ。ほかにもいろいろな手があるのですから、それを検討すべきだし、模様を見るのではなくて、これだけ明らかなことを模様を見るなんて言わないで、早急に検討してもらいたい。  それからもう一つは、すぐ税制調査会なんて言うけれども、税制調査会の中には特別委員として不動産業者の親玉が入ったりしている。こんな税制調査会ではだめですよ。ああいうふうな不動産業者の代表者が宅地審議会や税制調査会の中に入っているから、そこで法人に対する規制は野放しになったと私は思っているのですよ。ああいうものをやめて、もっと国民的な立場に立った学者なり専門家を主体にした税制調査会にすべきですよ。土地税制だけではないのです。税制調査会に諮問したから、こういうおかしな税制ができたんじゃないですか。そういう点もあわせて検討していただきたい。  時間がありませんから、以上で私の質問を終わります。
  140. 森下元晴

    ○森下(元)委員長代理 吉田賢一君。
  141. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 水田さんに伺いますが、私はきょうは福祉財政の構成の問題をこさいに聞きたかったのでありますけれども、時間がなくなってしまいました。  そこで、当内閣も、活力のある福祉社会を実現する、こういう表現をもってはなばなしく福祉国家を打ち出してきたのでありますが、何といっても財政の基盤を確立するということが一つの重要な要素になっていることは申すまでもありません。したがって、こういう福祉政策もあり、こういう福祉施設もあり等々、いろいろ案が出てきましても、裏づけするものは財政である。だから健全財政という前提なくしては、とても福祉国家は実現できないということは議論の余地のないところであります。そこで大蔵大臣といたしましても、閣僚の一人として、福祉国家にしなければならぬ大きな至上使命がある。そこで財政はどうあるべきか、この課題に取り組まれておることはたいへんな事業であると考えるのであります。  そこでまず前提として、大体日本がねらっていくところの福祉国家というのは、先進諸国と比較して、たとえば比較的どこの国に近いものをねらうのであろうか。独特のものを打ち出していって、独特の日本的な福祉国家にしようというような構想、理想でもあるのであろうか。その辺について、ちょっと聞かしておいてもらいたいのです。
  142. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 福祉政策の眼目は二つあると思います。一つは生活環境整備を中心とした社会資本の充実、これはやはり福祉政策の一つの眼目になると思います。   〔森下(元)委員長代理退席、委員長着席〕  もう一つは、いわゆる社会保障制度でありますが、この社会保障制度は、日本で言いますと、先進諸国におくれておることは、予算に対する社会保障費の比重がまだ少ないということでございますが、これは御承知のとおり、年金制度が未熟であるために少なくなっておる。しかし制度それ自身としては一応先進国並みの整備ができておるということでございますので、今後はこの内容を先進国並みに整えていくということが福祉政策の一つの目標になればいいのじゃないかと思っております。社会資本の充実という方向から見ますと、先進国のストックというものが非常に大きく、問題になりません。したがって、おくれた投資をどうしても計画的にこれから馬力をかけてやっていかないと、とうてい追いつけないということになりますので、これを充実させるというためには何としても長期計画というものが必要になってくると思います。  そこで、それと財政との関係でございますが、いまおっしゃられましたように、財政方針をしっかりしなければとても福祉政策というものは遂行できない。財政の持つ機能は、景気、不景気を調整する一つの機能と、国民資源を再配分するという機能と、国民所得の再配分機能、こういうのが財政の持つ機能でございますが、いま言った社会資本の充実ということは国民資源の再配分の問題でございまして、この点については、下水問題にしろ、公園の整備の問題にしろ、廃棄物の処理の問題にしろ、一応ここで一通り五年計画というものが今年度の予算で大体確立したということになりまして、これは今後、一応の将来の見通しもできたことでございますので、これによった財政の準備がなされればいいと思うのですが、全くできておりませんのがいま言った所得再配分のほうの社会保障計画ということでございます。これをやはり計画化して、今後の見通しをつけることをしないというと、ほんとうの将来の財政方針というものも立たないということでございますので、これはぜひやりたいと思いますが、そのもとになるのは、やはり経済社会発展計画と、国の将来の経済情勢を見通したこの見通しが、何としてもそういうものの一つの基準になることでございますので、いま政府としては新しい基準――いままでのはもう基準としての価値が相当なくなっておりますので、いま新しい基準をつくる、見通しをつくる作業をやっておりますが、この作業ができれば一つの長期計画のめどが与えられると思っております。そうすれば、それによった財政の見通しとか将来のいろいろな計画というものも大体立てて、健全に福祉政策を推進していく方法も私はできるのではないかと思います。  どういうことを目標とするかといいましたら、もう経済力がここまできた日本でございますので、やはり欧米の先進国並みの社会保障制度、社会資本の充実、これを目標にするというのが一番適切な目標じゃないかというふうに考えます。
  143. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 たとえばドイツあたりのように、年金制度が非常に発達した国もございますし、またスウェーデンとかあるいはイギリスあたりのように、もっぱら公的扶助というような点に力点を置いてやっている国もあるようでございますが、いずれにいたしましても、今日、たとえば児童、あるいは身障者、あるいは疾病、廃疾、老人等々につきましては、これは単なる年金制度にたよっておりましても間尺に合わぬという面がずいぶんあることは申すまでもございません。としますと、これはずばり公的扶助をもって臨まねばならぬということになりますと、これは一般財源等等によらねばならぬ、中央、地方の財源によらねばならぬ、こういうことになるのでございましょうが、いずれにいたしましても、いまおっしゃった社会資本の充実ということは、文明国としまして、経済がここまで発展しました国としまして、当然のことでございます。ことさらに社会保障もしくは福祉国家という形容詞や名詞をつけなくても、これは文明国としての当然の責任でございます。もっと狭義における社会保障的なもの、これの充実ということにつきまして、やはりこれは個人の負担を相当かけさすということによって進んでいこうとするのか、それとも公の補助という面をもって進んでいこうとするのか、保険でとるのか、国の扶助でやるのか、この辺につきましても、姿勢相当はっきりさすべき段階に来ておるのじゃないだろうか、こう思うのであります。いまのわが国におきましても、大体において六割までは保険らしいのでありますが、これは予算の負担の内情はそうなっておるようでありますが、その辺もはっきりしなければいかぬのじゃないかと思うのであります。そこで、大蔵省といたしましても、大体の方向づけの段階に来ているのじゃないかと思うのですが、そして将来漸次充実していく、それの財政計画はどうするか、財源は何に求むるか、財源は依然として将来ともやはり保険の掛け金というものを相当当てにしていくということが将来の方針になっていくのか、そうでないのか、それなら税金でも取るのかという辺につきましては、これはやはり社会的な文明から見ましても、どっちか重点を置くことが当然じゃないか、そうさせられておる立場ではないか、こう見るのですが、大体どういう方向へ進んでいこうとするのか。欧米の先例をとってみましても、もう少し明白に、具体的に方向づけをしておかぬと、これは言うだけでなかなかうまくいかぬということになりはしないかと思うのです。そこはどうでございましょうね。簡単でよろしゅうございます。
  144. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 保険制度によって社会保障をやっていくものと、国が補助金的なもので直接経費を支出して社会保障の実をあげるものと、それからさらに、資金の直接支出ということではなくて、税によって行なうべき施策と、この三つに分けて、やはりおっしゃられるとおりこれを制度的にはっきりする必要があると思います。  保険制度といいましても、まだ未発達の時代でございますので、いまちょっとでも足らなくなればこれは全部国費でそこを補うというようなことが行なわれておりますが、これでは本来の保険制度の適切な運用ということもできないので、そこらが非常に混同されて、まだ整理がついていないのがいまの実情だと思いますが、将来、福祉政策を推進する上においては、この三つを適当にあんばい調整していくのがいいのじゃないかと思っております。
  145. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 この点も言うはやすくしてなかなか行なうはむずかしい、こう思うのです。たとえば社会資本の充実、給与所得の減税、大幅な減税ということがいわれておりますが、減税するというのと、税を当てにして福祉財源をつくろうというのと、一体どうなるのだろうか。ある分野においては減税をする、ある分野においては税の負担を増加するということになれば、それならそれでわかる。一体何を対象にして増税していこうとするのか、そうでないところに求めようとするのか。それとも、いま少し行なわれております、たとえば三兆円くらいありますかね、厚生年金の積み立て金。国民年金もあれは七、八千億円ございましたか、そういうようなものの流用の問題もいま現に行なわれておりますが、そういうようなことを当てにしていくというだけでもいくまい。これは財源が枯渇すればものになりませんから、根本的にどうしたらいいのかということになります。やはり社会資本の充実ということになりますと、日本の二重構造ないしはいろいろな社会的断層、こういった面についても、これはたちまち問題になりますから、その辺についての調整をしていかなければいかぬ、地ならしをしなければいかぬ。その地ならしをするということが社会資本の充実につながっておるのでございますが、むずかしいですね。そこはどうしたらいいのであろうかということになるのでございまして、それぞれやはり区分いたしまして調整していくより手はないと思うのです。ちょっと途中で失礼でありますが、委員長、予鈴ですね。――やむを得ません。また別の機会にしましょう。  大蔵大臣、あなたに一つだけ御答弁いただいておきましょう。高福祉高負担ですね、この回答をずばりとやっておいてください。高福祉高負担、これはいまの内閣の姿勢でございますので、しばしば公にもされ、文書にも出ておるのでございますが、高福祉高負担のしからば負担の内容は何ぞやということをずばりと言っておいていただきたい。また別の機会に詳しく伺います。
  146. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 高負担のしかたは、社会保険の保険料負担という形をとりますか、税という形をとりますか、いずれにしろ国民負担はいまよりも重くなるということでございまして、では国民負担が重くなったら国民は困るかと申しますと、そうじゃございませんで、この前提は、国民の所得水準が上がるということが前提でございまして、所得水準が上がるという場合には、この国民負担率というものが若干上がっても実質的な負担にはならないということでございますので、もう先進国においては、国民負担というものは日本の倍くらいのところへ行っておるのに、そういう点から見ましたら、日本国民負担率というものは非常に少ない。では少なければ国民負担は軽いのかといいますと、そうじゃなくて、国民の所得水準が問題でございますので、やはり水準を上げるということによって、この負担が徐々に上がっていくという方向をたどって福祉政策を充実させていくというのがこれからの行き方であろうと思います。
  147. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それは少し掘り下げていきますならば、多くの矛盾を持っておりますが、別の機会にしましょう。時間がなくなってまいりました。  これは恐縮でございますが、労働省の皆さん、通産省の皆さんにちょっと申し上げるだけにしますから、簡単に答弁しておいていただきまして、また別の機会を持つことにいたします。  通産省は繊維雑貨局長ですね。実は通産省関係におきましては、去年のドル・ショック以来、その前年から、さらに繊維の自主規制問題以来、円の切り上げ等をめぐりまして、その他アメリカの提案を内諾しました、ことしまたそれを本式に調印いたしました、そのような影響来たるべき繊維業界の今後の新しい発展方向、あるいはどのような市場を求めていくか、進出はどうするか、業界はどうするか。ことに中小企業の大部分をかかえておりますような繊維業界におきましては、一方において開発途上国からの特恩の供与による追い上げがございますし、現実にその面も大きな圧力になっておる次第でございますので、その辺の問題があり、資金面もあり等々、幾多の問題をかかえておりますので、この問題につきまして、それぞれ解明をし、資金面において、技術面において、構造改善の面において――構造改善も延長することに相なりますから、それらの面も通して体質の強化――新しいシェアを求めていくとか、ファッションを求めていくことにいたしましても、簡単じゃございません。うろうろしましたならば後進国にやられてしまうのでございますから、まあそういうような立場に置かれておるのが日本の繊維産業かと思いますので、これに対しまして通産省は、言うならば、これはもう超時代的なぐらいな大きな立場に立ちまして、この日本の将来の繊維業界のあり方の構想を明らかにして、施策に盛り込んでいく、こういうふうにいくことが必要であろう、こう考えるのであります。これをぜひひとつ述べておいてもらいたい。  それからもう一つついでに、やむを得ませんから、労働省にも言っておきますが、労働省に対しましては、実は働く婦人の福祉の問題でございますので、これはきめのこまかい施策がずいぶん要りますし、福祉ということになりますると、どうしても厚生省の関係がございまするから、ことに児童をかかえた、乳児をかかえた母親が、働く職場と家庭というようなものの両全を期する、妻としての立場、夫にサービスもしなければいかぬし、みずからの健康も維持しなければならぬ等々ございますので、これはたいへんなことでございますから、これらの問題も相当詳細にわたって御質問を申しませんとこれは尽くせないのであります。これはまた非常に重大なことでございますので、働く労働者としての婦人の福祉の問題最近パートタイマーなんかが大はやりでございますけれども、ただ単にいたずらにはやることによって内容を充実したということになりますので、その辺のこともありまするから、よほどこの際は、厳とした姿勢をもって婦人の立場を守り、福祉の充実を期して施策を進めるということが内閣の責任になってくるであろう、こう考えるのであります。それをすることなくして、千百万の雇用婦人の希望にこたえることはできません。非常に重大な立場にあることは言うまでもございませんので、そういう意味におきまして、私は、数個の点からだんだんと聞いていこうとしたのでございますけれども、こういう状態に立ち至りまして、やむを得ないのでございますから、この点、御多忙の皆さんにひとつ御了解をいただいて、また別の機会にいたします。簡単でよろしゅうございます、一言でよろしゅうございますから、これに対して両省関係の御答弁をいただいておきたい、こういうふうにしたいと思います。  どうぞ委員長、さように御了承を願います。
  148. 福田繁芳

    福田委員長 両省関係政府委員諸君に委員長としてお願い申しておきます。  ただいまの非常に広漠たる吉田賢一先生の御質問で、本来ならば、諸君から詳細にお答え願いたいのだが、本会議がもう数分に迫っておるので、当委員会は暫時休憩して、本会議散会後に再開いたしたいと思うのでありますが、一応きょうの政府委員諸君、言いかえれば通産省、労働省を代表して、稻村政務次官が来られておるから、いまの吉田君の御質問に対して、一応の御答弁を願いたいと思う。
  149. 稻村佐近四郎

    ○稻村(佐)政府委員 お答えいたします。御指摘の繊維業界の今後の対策でございますが、御承知のように、典型的な中小企業であり、また国内経済もたいへん停滞の中で、その方向づけということはたいへんむずかしいわけでございますが、通産省といたしましては、特繊法改正の御審議をちょうだいすることになっております。そこで余剰設備の買い上げ等々を実施をいたしまして、数字の問題でございますが、自主規制におきましては百十一億、政府間協定による三百七十七億、これは全額国庫負担でございます。総計、振興資金あるいは高度化資金あるいは離職、就職、こういったものを合わせて二千四十六億、こういうふうに今後の救済対策と申しますか、今後の方向として考えておるわけでございます。  ただ最後の、一番大きな問題でございますが、輸出の問題に触れられたわけでございますが、しかし日米繊維協定にも見られるように、アメリカをはじめといたしまして、カナダあるいは英国あるいはEC諸国等で保護貿易主義、こういった傾向がたいへん強くなっておることは、これは見のがすことができないことでございます。通産省といたしましても、こういったことを踏まえまして、できるだけ地域的な集中、あるいは地域的な品目の集中を避けるようにいたしませんと、また規制等々の問題が出てまいると思いますので、通産省といたしましては適切な行政指導をとってまいりたい、こういうふうに考えております。
  150. 福田繁芳

    福田委員長 もう本会議でありますが、吉田賢一君の質問に対して一応締めくくりをつけるために、労働省の高橋婦人少年局長が参っておりますから、答弁さして休憩いたしとう存じます。高橋君。
  151. 高橋展子

    高橋(展)政府委員 働く婦人の福祉につきましては、かねてからその労働条件の向上あるいは能力の向上等につきまして各般の施策を進めてまいっておるところでございますが、御指摘のように、働く婦人の問題の重要性がきわめて大きくなっております今日、さらに一そう働く婦人の福祉のための施策を強力に進めてまいりますために、今般勤労婦人福祉法案を国会に上程いたしまして、ただいま御審議を願っておるどころでございます。本法案成立の上は、さらに関係各省庁の施策とも関連を持ちつつ、強力に施策を進めてまいる所存でございます。
  152. 福田繁芳

    福田委員長 ただいま諸君御承知のように本鈴が鳴っておりますので、直ちに本会議場にお臨み願いたい。  本会議散会後に再開いたすこととし、暫時休憩いたします。    午後二時三十一分休憩      ――――◇―――――    午後四時二十三分開議
  153. 福田繁芳

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  各国務大臣に対する質疑を続行いたします。吉田賢一君。
  154. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 行管の長官に伺います。  一点は、例の行政監理委員会の、昨年の十月でございましたか、白書、勧告が出ましたね。これはあなたが会長をしておられますので、言うなら一切の責任者の立場でございまするが、あの白書によりますると、私も本会議におきまして四十五年度の決算の質問にも若干触れたのでございまするが、皮肉にも監理委員会勧告決議というものが行政改革について何か政府の隠れみののように利用されておる、つまり、ああいうものを出したならば、それで行政改革は進行しておるのだというふうに思われておる、こういうような風評さえ世間に与えておる、これはまことに遺憾である、こういう趣旨のことが述べられてありましたが、これはもっともなことでありまして、それぞれと権威者が真剣に取り組みまして、日本の行政のあり方につきまして最も合理的な姿を実現するためにもあの白書が出ておりますことは申すまでもありません。そして、あなたがその責任者である。そこで、この際、第三次の監理委員会が発足したのでございまするので、一体行政監理委員会の位置づけはどうなさるつもりであるか、昨年のあの一つの批判的な意見についてどういう感想を持っておられるか、この二点をまず伺っておきたいのであります。
  155. 中村寅太

    中村国務大臣 お答えいたします。監理委員会が昨年任期のなくなる前に白書を出したのの内容あるいは第一次の臨調のときの答申等、これが政府が実行しておるものが少ないという御指摘だと思います。私は、長官になりまして、監理委員会の答申等にも目を通しまして、やはりこれはできるだけ実行に移さなければならぬというたてまえをもって対処はしておるのでございますが、行政改革は御承知のように非常にむずかしさも含んでおりますし、そういう点から、御指摘のようなふうに答申が完全には実施に移っておらぬという点は私も反省をいたすのでありますが、行政改革はなかなかむずかしい面もございますので、監理委員会の答申というものが全部なかなか実行には移しにくい面も生じてくると思いますが、いままでも多少のことは実行に移っておるということも御理解できるのではないか。今回は、御承知のように昨年十月に任期が明きまして、御承知のような経過をたどって新しい監理委員が六名そろいましたので、皆さんにお願いをいたしまして、第一次臨調の答申、あるいは前会の第二期の委員人たちの白書等の内容もよく検討していただくし、その中から、とってもって実行に移してもらわなければならぬものは引き続いて今度の監理委員人たちに尽力してもらうし、さらにまた社会情勢等の変化に伴って行政需要も多少変わってまいっておる実情を踏まえて、今後の問題等に取り組んでもらって、これを実行に移していくという努力をすべきである、かように考えて、監理委員人たちに目下種々検討を続けてもらっておる段階であります。
  156. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 一応の常識はそうなのでありまして、多少前進しておる、多少実行しておる、それは考えられます。だけれども、たとえば定員法の一部改正の問題にいたしましても、なかなか難航したことは御承知のとおりであります。それほど抵抗が多い。抵抗の多い実態はどうかということにつきましては、これまた公知の事実であります。あなたも承知し抜かれておるのであります。だれ知らぬ者はないのであります。知らぬ者はないけれども行なえないのは、一体どういうわけか。ここにむずかしさがあるとともに必要性が大きいのであります。行政改革は一体何のためにやるのだろうか。多少需要の変化が生じたというような表現もただいまございましたけれども、多少どころじゃございません。内外の政治、経済の激動のさなかにおきまして、日本の今後のあり方につきまして、行政を担当する者の責任はまことに重大であります。したがって、一億の国民は、全公務員に対しまして一つの期待もかけております。私はしょっちゅう言うのですが、日本の公務員の素質は、あらゆる角度から検討いたしまして、世界的に優秀ではないか。それならば、若い初任の人から定年等に至るまで、これらの人々の能力を最大限に発揮し得るような場を与えてはどうか。いたずらに老朽化しておる、いたずらに停滞しておる、能率があがらぬ、効率化しないというので毎回こういうことを繰り返さなくてはならぬ。仏の顔も三度でございます。決算委員会でこんなことばを何ぼ繰り返しておるかわからぬのでございますけれども、遅々としてその問題は進展を見ない、ここに問題があるわけです。それは内部の抵抗もわかります。またそれぞれとなわ張り主義のあるのもわかります。官僚の悪い風習のあることもわかりますが、こんな時代に処してこそやりがいがあるし、やる価値があると思うのです。決して首切りにはつながりませんよ。マル生運動とは関係ありませんよ。そして、その多くの人々が安んじてその地位にあり得るようにその地位も提供しよう、待遇もよくしましょう、能率もあげてもらいましょう、国民の負託にこたえてもらいましょう、こんなふうになっていくのですから、私はこんな大義名分、筋の通ったことはないと思う。大臣たるべき人は、このような大義名分に通じた問題については、全閣僚の意見を統一いたしまして、ここに前進の体制をとっていく。行管が何ぼ力を入れても、ほかでぴしゃっとやられちゃう。それは物価問題についての企画庁長官の力と同じになってしまうのです。とても私どもには及びませんということになってしまう。それなら、率直に申しますと、こんなことはやめてしまったらいいのです。ほんとうにそうなんです。常に冗費を省くこと、むだな公益法人もいいかげんに処理せいということは、特殊法人の問題でも何回かこの委員会で問題になったのであります。でありますから、そこにいささかでも停滞ぎみがありましたら、原因を追及されることをみずからやってもらいたいのです。せっかく新任の六名が出られたのでありますから、おそらくはつらつとした活動をしていかれると思いますけれども、それだけあなたの責任は大きいのです。何もいまあなたを責めているのでも何でもありません。出発のときだから事重要であります。最初ですから重要であります。最初にほんとうに重大な決心をもってやってほしいという気持ちから申し上げているのです。  そこで、転じて、四十七年度の計画を昨日策定されたということになっております。これも拝見いたしました。もっともなことであります。ほんとうにやる気があっておやりになるのかどうか、もう一度そこを、ひとつ明確にあなたの決意を聞かせてもらいたい。できるならば、このために閣僚会議もつくるくらいな意気込みで、ひとつ内閣で縦横の積極的な活動をやってもらいたいと思うのです。どうでしょうかね。
  157. 中村寅太

    中村国務大臣 私はきわめて微力でございまして、前回の監理委員等の白書も全部はなかなか実行には移し得なかったこと、これはみずから反省いたしておりますが、前回のあの白書を出してやめられました第二期の委員人たちがいろいろ検討をなさった一つの課題、生鮮食料品の価格の安定と需給の均衡をはかるということは、行監委員のたてまえによって、農林省の中に流通庁をつくって、そして生産から消費までの機構を一貫して、生産者の立場も完全に保護するし、さらに消費者には安いものをまんべんなく必要に応じて渡していくような機構をつくろうという行監の委員の意向がきまりまして、これは御承知のように農林省がその気になりまして、流通庁というところまではいかなかったのですが、流通局というものにして、農林省機構全体を大改革するようなことになって、今回の予算の中にも入っておると思います。あるいは航空事業に対しては、航空庁をつくって、そして国民の期待にこたえろというような白書でございました。それが庁というところまでいきませんでしたけれども、航空局を強化して航空安全の確保あるいは事故の調査機関を整備するとか、いろいろそういうことを私が長官になりましてから実行に移し得たと考えております。今度の新しい行政監理委員人たちは、新任早々でございますので、いま毎週一回ずつ集まっていただいて、そしてどういう問題と取り組んで、これをどういうふうに実施に移させるかというようなことをせっかく検討していただいておる段階でございますが、私は、この新しい委員会によって得られました結論はどうしても実行に移していくというたてまえをとって、皆さんに御勉強をお願いしておるところでございます。微力でございますが、必ず私は結論が出ました場合はこれを実行に移させてまいりたい、かように考えております。
  158. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 一例をあげますると行政能率の問題でありますが、予算期になりますと、全国から陳情団が殺到されますね。これも国民としましてはもっともなことでありますが、もしできますれば、電話一本で事が片づくときは、それで片をつけて効果があがるようにできぬものであろうか。もっともそういうことを言いますと、陳情に行く人は、吉田、何を要らぬことを言うということになるかもわかりませんが、やはり行政庁みずからも五時間の時間、八時間の時間は最善を尽くし得るような立場に置いてあげたいと思うのです。そういうことのためには、じゃま者扱いをするわけではないですが、むだな陳情ではなしに、ひとつ成果があがるような道はないだろうか。これも行政の効率化のためには一つの大きな問題点になるのじゃないだろうか。もっとも、いまあなたのほうは財政の効率化、予算執行の効率化のほうはあまりおやりになりませんけれども、しかし人が動く、施設がある。これは財政の裏づけなくしては運営されませんので、そういうことも兼ねて御検討になってしかるべきではないであろうか。これにはやはりあなたのほうと検査院とかあるいは大蔵省と横の連絡もしかるべくおとりになっていいのじゃないだろうか。そこまでどんどんと積極的な姿勢でワクを広げていったらどうであろうか。いま流通機構、消費者問題、物価問題がちょうど出ましたが、流通機構一つにしましても、単に機関をつくっただけでは流通機構の改善は困難でございます。いまの経済運営の実態というものは、私よりもあなたのほうが詳しいですけれども、鶏卵にしましても、一定の場所に鶏卵が参りまして、それを電話一本で適当に市場で値段をきめて、また供給の市場に流すということをやりましたならば、ぐるぐる回るところのむだが省けますというようなことで、その辺の能率化の問題でも手は何ぼでもありそうです。ですから行政の面につきましても、簡素化、合理化という問題は私は随所にあるのじゃないかと思われますので、この辺は場当たりではなくして、計画的に、組織的にずっと一ぺん割り切りなすって、できましたら決算委員会とも提携というか、資料を提供しろというくらいにまでひとつなさって、縦横の活動を行管はやってもらいたいと私ども思うのですがね。せめてそういうことが積み重なっていきますと、改革の機運はできますよ。国民の支持ができますよ。いまでしたら、国民は行政改革なんといったってわからぬのですよ。それはわかりませんわ。財政制度の改革はそれはわかりません。関心はしたがって持てぬ。だからアメリカの市民委員会みたいなものは日本ではできません。これと同じことです。ですから、その辺のことがありますので、あなたのほうもそういうふうにひとつ方針方法ということについてもさらに再検討される必要があるじゃないだろうか。せっかく四十七年度の運営方針決定いたしましたので、要するに、どうすれば運営の能率をあげるか、行政の合理化ないしは効率化を促進するかということに帰するようでございますけれども、あなたのほうのやり方自身についても相当御反省になってしかるべきでないか。  もう一つは、末尾にも書いてありますが、コンピューター時代に入っておりますこんな時代でございますから、行管は進んでコンピューターの活用もなさってしかるべきでないだろうか。情報化時代といわれるときですから、科学的に一切を管理するというような手を、合理的に時間と労力を節約していくというような手を、あなたのほうは先べんをつけてやってもらいたいと思うのです。これはすでに三年も四年もいろんな研究をしつつあるさなかでありますけれども、行管が率先してそういうものはいろんな面で実施に至らぬものであろうかどうか、この点も伺っておきたいのであります。  それからもう一つあなたに伺っておきたいと思いますることは、やはりできましたら、今度白書が出ましょうが、白書を出す前にもっと国民を啓蒙するというような手はないものだろうか。私も白書を読むごとにそう思うのです。こんなむずかしいものを出しても、ごく一部の人しか手にしません。国会議員四百六十名おりましても、一体あの白書を何名が消化しておるだろうか、何人読んでおるだろうか、こう思いますと、一年に三べんでも五へんでもお出しになったらどうですか。電車やバスに乗る人はみんな週刊誌を持っておりますよ。さっさっと読んでますよ。こんなうまい手があるのですから、正しいこと、必要なことをああいうような手でも国民に知らす方法はないだろうか。一々一億の国民に知らせろとは申しませんけれども、もっとそういう方法を何かくふうなさってはどうかと思います。あなたのほうの業務改善ということに帰しまするけれども、これらにつきましても、長官、ひとつあなたの任期中に画期的にこういう問題を幾つか取り上げて、そうして活動の体制を整備してもらいたい、充実してもらいたいと思うのです。どうでございましょうね。
  159. 中村寅太

    中村国務大臣 非常に示唆に富んだ御指摘をいただきまして、私も全面的に吉田委員考えておられるようなことを考えております。できるだけ今後御指摘のような具体的な問題についても十二分の努力をしてまいりたい。特に情報化時代で、コンピューターの問題等につきましても目下手をつけておるところでございますが、その概略を管理局長から答えさしていただきたいと思います。
  160. 平井廸郎

    ○平井政府委員 お答え申し上げます。電子計算機の高度利用によります行政システムの効率化という点につきましては、かねがね行政管理庁を中心といたしまして各省の連絡会議を持ちまして、検討を進め、かつ推進をはかっているところでございます。こういった点につきましては、現在の段階におきましては、政府全体の行政情報処理システムを開発するということを中心といたしまして検討を進めている次第でございまして、細目につきましては、非常にこまかな点にわたりますので、省略さしていただきます。
  161. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 よろしゅうございます。
  162. 福田繁芳

  163. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最初に福田外務大臣にお伺いします。  外務大臣は、いま嘉手納基地にいわゆるスパイ機、これはこの前も沖繩国会で非常に問題になったもので、SR71の飛行機ですね。これと一緒に同じスパイ機で、しかもSR71よりももっと陰険なスパイ機だといわれているEC135というのとRC価という飛行機、この二つのスパイ機が、現に嘉手納基地から作戦行動をやっておる。この点おわかりですか。
  164. 福田赳夫

    福田国務大臣 SRのほうにつきましては承知しておりますけれども、その他のことにつきましては、私その状況につきまして承知しておりません。
  165. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これはアメリカ局長とか、そういったような実務に携わっておる人も知らないのですか。
  166. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先生のおっしゃられたのはKC135、それからRC135でございますか。
  167. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 KC135は給油機ですね。同じボーイングから改装されていまのSR71機みたいな超高空を飛んでいるスパイ機がある、このことなんです。いわゆるECとRC、これがいま現に嘉手納飛行場からベトナムへ作戦をしておる。ECやRCの配備について、嘉手納基地当局は、戦略空軍すなわちSACに関することであるのでコメントはしないと言っておるが、事実嘉手納基地に働いておる労働者や基地周辺の人々、これは完全に確認している。この任務は、毎日定期的にインドシナ方面に出撃しているという問題と、北爆に備えて北ベトナムのECMすなわち電波妨害をやる。もう一つは攻撃機の先導、B52が行きますと、これを先導していく。この二つの任務を帯びているのがいま申し上げました陰険なスパイ機といわれているものでありますが、これを御存じないのですか。
  168. 福田繁芳

    福田委員長 瀬長君に申し上げまするが、あなたの御質問の趣旨は委員長はわかりますけれども、これはむしろ防衛庁のほうから御答弁してもらうほうがあなたの趣旨とも一致するわけなんです。幸いにして江崎防衛庁長官が参っておりますから、江崎長官に発言を許します。
  169. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いまの秘密の何か誘導機ですか、それについてはちょっと私いま存じておりませんので、至急調べまして、後刻当委員会が継続しておるうちにわかる範囲の御答弁を申し上げたいと思います。
  170. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私がなぜ外務大臣に聞いたかと申し上げますと、いまの沖繩基地はそのまま返る。五月十五日、あと四日しかない。そうなりますと、この基地はそのままの姿で置かれるということになるととんでもないことになるという意味で、特にこのスパイ機がSR71だけではなくて、こういうEC135やRC135などというSRに劣らないスパイの機能をもって高空を飛んで、ソ連、中国、インドシナ半島全域にわたってスパイをやり、現実にいま北ベトナムの電波妨害をやっている。と同時に、北ベトナムに対する爆撃をやる場合にその爆撃機の誘導、先導をやっている。この二つが目的であるということなんです。したがって、返還後もこのようなものが残されるのかどうかということについては、やはり外務大臣のほうが担当大臣ではないかと思って聞いたわけなんです。もちろん防衛庁長官関係はします。
  171. 福田赳夫

    福田国務大臣 SR71あるいはその類似の偵察機、これは高性能の偵察機になりますが、そういうものの存在につきましては、五月十五日以降といえどもこれを認める、こういう方針でございます。ただ、これが爆弾を積んで直接戦闘に従事するというようなことは、これは認めません。しかし、単なる偵察行動というようなことにつきましては、従前からのアメリカ側との了解に基づきまして、これは認める、こういう方針でございます。
  172. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 驚くべき答弁だと思います。この飛行機は爆弾を積んで落とすのが任務ではないが、いま盛んに爆撃をやっている。だから、そうなりますと、ベトナムでは自衛のためにどうしても電波でもって早目にこれをキャッチして落とすかなんかしなくちゃならぬということになりますが、この電波を妨害する。と同時に、これが夜であれ、昼であれ、天候のいかんにかかわらず、的確にベトナム人民を撃ち殺し、山河を破壊するために爆撃する。これを先導していく任務を持つ偵察機がそのまま許されるということになると、一体どうなるか。これは決して本土並みの基地ではなくて、安保条約のワク内を完全にはみ出しておるのではないかということが当然考えられることなんです。KC135が給油する場合には、給油は補給だから別にかまわぬなんという解釈からすると、またこれも詭弁が生まれてくるだろうと思いますが、これはたいへんなことだと思うのですよ。県民も非常に心配しているのです。
  173. 福田赳夫

    福田国務大臣 要するに、その行動の実態を見なければわかりませんけれども、直接戦闘作戦行動に参加する意図をもって沖繩空港を飛び立つ、こういうことでなければ、わが国としてはアメリカの行動を制肘する、そういう考えは持っておりません。
  174. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 このスパイ機は、ほとんど国際的にも知らないものはいないほど陰険なスパイ機として認められているものが、特にああいった形で北爆、侵略がエスカレートするに従ってこういったスパイの任務に従事している。防衛庁長官も答弁の中で調査されると言っておりますが、あと四日しかないのですね。そういう場合に、こういった飛行機も、これは軍事作戦行動の不可欠の一部である、これを認める方針だという外務大臣の答弁からすると、ますます沖繩県民はその身の安全についてどうしたらいいのかというふうに思う。そこら辺なんです。戦場化している。福田大臣はいま沖繩に行っておられぬからわからぬかもしれませんが、むしろ十五日がだんだん近づくに従って、何だ、これは妙な復帰だな、戦場になっているじゃないかということが実感なんです。海は那覇軍港でしょう。ホワイトビーチ、レッドビーチ、これからLSTがたいへんな勢いなんですね。トラック、それからコンテナ、このコンテナの中に何が入っているかわからぬ異様なコンテナがLSTで積み出される。しかも那覇軍港から、ホワイトビーチから、さらに天願桟橋から。もうすっかりそういった状態。嘉手納基地は、KC135だけではなくて、スパイ機を誘導し、電波を妨害するものまで束になって、第三海兵師団なども中心となって動き出すという、もう島全体があのベトナム侵略戦争に引きずり込まれつつあるという実態なんですよ。だからそういった意味で、ほんとうに沖繩県民の不安――安全というのはだれでも考えますからね。われわれはそういった復帰は望んでいなかったのだということを私は申し上げたいために言っているのです。それがそのままの姿で認められたらどうなるかといった問題なんです。
  175. 福田赳夫

    福田国務大臣 私どもといたしましては、とにかく沖繩といわず、日本の基地がベトナム戦の作戦行動の基地化することにつきましては、これは絶対賛成はできない。そういうことがありますれば、これはもうかたく拒否いたします。ですから、何かたいへん御心配のようですが、そういう御心配はありませんから、ひとつ御安心願いたいと思います。
  176. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 福田さんの安心しなさいという……
  177. 福田繁芳

    福田委員長 瀬長君、ちょっとお待ちください。初めてあなたの質問の要旨が私にもわかりましたから、防衛庁長官から補足をしていただきます。
  178. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 スパイ機とおっしゃるものですから、何かと思ってちょっと私も戸惑っておったわけであります。ところが、このSR71というのは偵察機ですね。SRというのは、おそらくサポート・リコネイサンスの略だろうと思います。したがって、従来でも偵察機というのはわれわれ自衛隊でも持っておるくらいですから……。あのRF4Eという、この間議論になって凍結になりましたものでも、あれは一つの偵察機であります。したがって偵察機が平常の偵察行動をする、しかもこれはサポートするほうですから、やはり合法的なものではないか。外務大臣の言っておられることが正しい。そんなに御心配になる必要はなかろうかというふうに考えております。
  179. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは心配するなと言っても、現実に偵察機がそういった任務を帯びて、爆撃の方向で作戦行動の不可分の一環としてやっているだけに、いまの二つの機種がほんとに入り込んでいるかどうか。防衛庁長官もお調べになると言ったが、ぜひこれは緊急に調べてもらいたい。  問題はもう一つ残ります。そういった作戦行動をしている場合には許せぬというのだが、作戦行動をしているかどうかは、どう確認されるのですか。これは外務大臣にお願いします。
  180. 福田赳夫

    福田国務大臣 SR71というのは、これは高性能の偵察機なんです。偵察活動をしている、こういうふうに思います。ただ、これがもし万一爆弾等を積載しまして、そして積載したままベトナムにおもむいて、そこで爆撃を行なったといえば、これは偵察行動ではありませんから、沖繩からの出撃になる。私どもはそういう事態につきましては、これは差し許しません。しかし現実はSR71の活動は偵察活動である、アメリカがしばしばそう申しておりますので、それが爆弾を搭載して、そして戦闘行動をやるということは想像し得ないことであります。
  181. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 ECとRCが事実――偵察というのは、日本語では偵察でありますが、ほんとうはスパイをする。敵国に行って爆弾を投下するものではなくて、いまEC、RCのことを申し上げましたが、特殊な装置をして、いわゆる電波妨害をするという任務と、さらに誘導するということを任務としています。もしそういったことが起こっても、なおこれは出撃ではないからまず沖繩基地にそのまま置くという方針であるのかどうか、さらに説明してもらいたいと思います。
  182. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はSR71のことは承知しておりますが、その他のことは承知しておりませんけれども、考え方といたしまして、要するに、沖繩の基地に駐留しておる飛行機何であれ、これが直接ベトナムに出撃をする、そういうようなことであれば、これは阻止いたします。しかし、そうじゃない、偵察活動である、あるいは電波の何かに従事しておるというようなことでありますれば、これは私どもは阻止するというような考え方は持っておりません。
  183. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 きょうの本会議で外務大臣は、沖繩の基地の問題について安保条約のワクに入るので、その範囲でやるんだといったような意味を言っておりましたが、本土の基地とは非常に機能もさらに量も違うと思うのです。そういった意味で、安保条約の運用面については再協議すると言われましたが、再協議するといっても、五月十五日はもう間近に近い。いつから再協議して、これは安保条約のワクをはみ出しておるぞと思った場合には規制したりするようなことになるのか。これが十五日以降一カ月にもなり二カ月にもなると、その間にどんどんいまのように、沖繩基地はベトナム侵略戦争に直接出撃するということになりますが、こういった協議はいつごろからやられるのですか。
  184. 福田赳夫

    福田国務大臣 一九六九年の日米両首脳共同声明におきまして七二年本土並み核抜き返還、こういう方針をきめたこの共回声明にもし万一変更を要する、こういうようなことがあれば、そういうことにつきましてはまた再協議をいたしましょう、まあベトナムの状況進展いかんによりますと、こういうようなことだったのです。しかし再協議の必要はない。もう七二年返還、これは五月十五日ときまっちゃった。これを動かすことはできません。あり得ません。それから安保条約の適用につきまして例外を設けるか、こういうと、その必要はないということで協議をいたしておりません。この問題につきましてまた今後協議をする用意もありません。
  185. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 協議する、いわゆる運用面について協議すると言われたから、それを聞いておるんだが、再協議する必要がなければ、沖繩の基地はそのまま認めて、アジア侵略の基地にするというふうな結論にしかならぬし、沖繩県民はそうとしか考えない。  これは時間がありませんから先に進みまするが、防衛庁長官お尋ねしましょう。  防衛庁長官に対しては、この前の委員会で、委員長の趣旨もいろいろありまして、特に軍用地の問題ですね、この法的な問題になると、あのときたしか施設庁の総務部長だったと思いますが、この人ではちょっと任務が重過ぎるので、大臣来られてからということであったので、引き続きその点を一、二点お聞きしたいと思います。  いま、日本軍による犯罪も相当明るみに出て、防衛庁管轄であります自衛隊、この自衛隊に対しましては非常に恐怖心を抱いております。私この前あちこち歩いたんだが、自衛隊はアメリカ軍の連れ子である、連れ子は大きくなる、連れ子はいまのところにこにこしてやってくるが、大きくなると、これはアメリカ軍にも劣らないようなやつになるんじゃないか、といったようなことを市街地のうち一、二カ所でなくて随所で聞いております。これは旧日本軍の犯罪がだんだん明るみに出るに従ってますます出てきておるのですが、もう一つそれを裏づけるのがあの土地収用法です。はっきり言えば沖繩における公用地等の暫定使用法、これは告示が四月二十七日に行なわれましたが、沖繩におきましてはまだ法域は別だ、いわゆる外国だというたてまえを日本政府はとっておられる。この告示も、いまさっき申し上げました土地収用法も、同じく五月十五日に効力を発生するということになるのでしょうな。そこら辺も確めたいと思う。
  186. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 旧軍隊の暗いイメージを持っておられる沖繩県民の皆さん方が、国の防衛に任じておる自衛隊というものに何となく不安を感じられる気持ち、これは私どもも察するに余りあります。しかし、もともと国に自衛権あり、こういうことで、海外派兵はしないし、特定の侵略者があったときのみに防衛に立つ、これは国民にかわってこの国の主権を守る、この自衛隊というものはもともと旧軍隊とは全然無関係なものであります。新しくこの新生日本に生まれた機関でありまして、そういうことをわれわれはよくよく沖繩県民の皆さん方に、あらゆる機会を通じて理解をしていただく努力をしてまいりたいと思っております。したがいまして、自衛隊のほんとうの姿というものが理解されれば、いま御指摘になるような不安というものはなくなろうというふうに確信をいたしております。  それから第二点の、土地を、五月十五日の時点で話し合いがつかなければ収用法にかけるのではないか。これは沖繩関連法案の審議でしばしば申し上げてまいりましたように、あくまで話し合いで決着をつけたい、こういうことを考えております。もちろん現在は主権が違っておりますので、ああいう形で告示をした。日本の場合ですと、基地の該当の土地というものの所有者がはっきりわかっております。ところが沖繩の場合は、いかにも所有者がわからない面もあるということが御承知のとおりあの掲示になったわけでありまするが、当然今後も引き続いて話し合いをしてまいりたいと思っております。おかげで、話し合いに関する限りは順調に進んでおるという報告を施設庁長官から受けております。
  187. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私の申し上げているのはそういったことではなくて、収用法、この告示は二十七日に行なわれましたね。それが発効する日時は十五日かということを聞いているだけの話なのです。その前は法域は向こうにある、外国だとあなた方言っているから。それだけなのです。
  188. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 この公用地等の暫定使用に関する法律の中にあります告示というもの、この性格につきましては昨年の沖繩国会において討議なされたところであります。  そこでこの告示は、御承知のとおりに、土地の地主がアメリカ合衆国の軍隊に提供する土地、あるいは自衛隊が使用する土地の中に入っておるかどうかということを十分判断するに必要な表示行為というふうに考えられるわけでございまして、この表示行為は暫定使用法の二条一項、このいわゆる本体の規定と一緒になって、復帰の日に使用権が効力を発生するということでございますけれども、この告示そのものの効力は、やはり告示を行なった日から効力が発生をするという解釈でございます。
  189. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 法律の効力はいつから発生するのですか。
  190. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 暫定使用法に基づきますところのいわゆる使用を行ないますその使用の効力そのものは、これは復帰日でございますけれども、告示は、その以前におきまして、その地主に対しまして、自分の土地が提供される施設、区域に入っているかどうかということを判断するための一つの表示行為でございますので、この表示行為そのものの効力はその告示の日に発生をする。したがいまして、この告示に対しまして異議の申し立てあるいは行政事件訴訟法に基づきますところの訴訟を提起するということは可能である、こういう解釈でございます。
  191. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは外国人であってもそうなるのですか。いまあなた方、沖繩は外国だと言っているのです。私はそれを聞いているのですよ。
  192. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 この問題は、昨年の沖繩国会におきましても議論されたところでございますけれども、沖繩に居住をしておるといなとにかかわらず、この告示の効力は沖繩人たちにも及ぶ、こういう解釈でございます。
  193. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間がありませんので、もう一、二点お聞きしますが、憲法が適用される、それに基づいて所有権は確認される、契約もまあ自由契約に基づいてやるわけだと思いますが、あちこちでいま契約を相当強制している向きを私よう知っております。で、契約の場合、あなた方が持ってきた契約の内容に、もし契約をしようとする地主が意見を差しはさんで、こういった条項を入れてほしいということになれば、国と地主は対等の権利でしょうから、そういう地主の意見もここに入れて契約を結ぶことができるかどうか、この点を明らかにしてほしいのです。もうつくられたものを押しつけて判をつかすのか。
  194. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 現実に今日まで土地の所有者と契約交渉を行なってまいりましたが、その際の賃貸借契約書の書式そのものは、原則的には本土の書式を用いまして、それに沖繩の事情に適合するように一部修正を加えたものでございます。そこで、これはただいま御指摘のように、両者間の対等の立場における契約でございますので、その間に地主の要望をその中に加味するということは、これは一般論としては可能であろうというふうに考えるわけでございますけれども、その具体的な内容がどういうことか、その内容のいかんにもよろうかと思います。
  195. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 たとえば、あの知花に毒ガスの入っていた弾薬倉庫がある。ここは核兵器があるんじゃないかと思われるところが知花ですね。その付近の地主にも会いました。これは高くなれば契約してもいいんだが、万一ここに核兵器があった場合には、毒ガスがあった場合には、あるいは思わないような妙なものがあった場合には、契約を拒否するという条項を入れることができるだろうなと言ったら、あなた方の係官は、そんなことはできませんというようなことを言っていた。それじゃ対等じゃないじゃないか、この契約は押しつけじゃないかということがいま起こっているわけなんです。どうですか。
  196. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 ただいまの御質問は、毒ガス兵器が沖繩に貯蔵せられておるという前提で、もしそういう心配があれば、契約書の中に、そういうものがもしあれば解約できるというふうな条項を設けることができるかどうかという御質問でございますけれども、これは実は政策的な問題でございまして、米軍は、毒ガスは本土はもちろん沖繩にもこれを持ち込まないということを確約をいたしておりますし、現実に毒ガス兵器は本土にも沖繩にもないということでございますので、そういうことに関しますところの事項を契約書の中に入れるということは、まずその必要性がないというふうに考えますし、国と国との間のそういう政策的な事項につきまして、これを私的契約書の中に織り込むということは適当でもない。必要もないし、適当でもないという解釈でございます。
  197. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは一例を申し上げたのですが、たとえば、施設庁が言っているような、地代が実際おりなかった場合にはいつでも契約を破棄することができるとかということを入れることができますかなと地主が直接言っているわけなんです。問題は、核政策がどうであるこうであるということは問題ではないのです。これを問題にしているのじゃないのです。いかに外務大臣から総理大臣から何べん説明されましても、もう核政策については安心はできぬというのが沖繩県民の状態なんですよ。だから、もしかりに、政策とは別にして、地主は実際不安があるわけだから、そういった不安があるので、不安が現実となってあらわれた場合にはこの契約は破棄しますということを書き入れることができるかどうか。書き入れることができなかったら、国家権力をもっての押しつけじゃないかというのが争点なんです。
  198. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 契約書の内容につきましては、これは両者間の合意に基づくいわゆる契約の内容でございますので、その中にある条項を入れてほしいということがございますれば、一般論的にはそれは可能かと思いますけれども、ただいまの御質問が毒ガスでございますれば、これはその契約書に書くか書かないかの以前の問題として、これにつきましては、そういう懸念がないということを地主の方々に十分御説明をいたせば御了解いただけるというふうに考えるわけでございまして、その問題で一々契約書の中に解約条項を差しはさむ必要はなかろうかと考えます。
  199. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この点については、いまの押しつけは承知しないような地主が、契約は対等だから、自由だからということで、自分の意見を入れることができるかと言ったら、できないという結論でありますから、これは押しつけであるという点が明らかになりました。  それで、もう一つお聞きしたいのは、地代の問題です。これは施設庁長官が百六十五億の中身を言っておられた。百三億が地代で、二十五億がいわゆる不動産購入費、三十七億が大体見舞い金、謝礼金と言ったのが、現地の施設庁の係官の説明では、だんだん変形しまして、この二十五億も地代に加わる、さらに見舞い金、謝礼金もだんだん地代に加わって、十億というように非常に縮まってきておる。これはどういうことですか。
  200. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 沖繩におきます借料関連経費につきまして、ただいまの御質問は若干の誤解がございますので申し上げますが、総体としまして百六十五億という予算を計上いたしております。そのうちに、提供関係のいわゆる純借料といたしまして百三億円、不動産購入費として二十七億円、借料関連の見舞い金として三十五億円。これは御承知のとおりに、地主の方々の強い御要望に応じまして、百八十八億という御要望に対しまして、そのほとんど満額を予算化いたしたわけでございまして、これを五月十五日復帰という期間調整をいたしますれば、百六十五億になります。この百六十五億をそのまま借料として認めるということは、本土との関連におきましてきわめてむずかしい。本土に対する波及等を考えますと、純借料そのものはある程度低いところに押えざを得ない。しかしながら、長年の米国の施政権下におきまして地主の方々が土地を提供してこられた、それに対するところの、いろいろな精神的な負担もございますし、経済的な負担もございますので、そういうものも加味して算定いたしたものが百六十五億円でございます。そこで、関連見舞い金につきましては、いま申しましたような要素で、これは施設として提供していただくすべての地主に対しまして支払うものでございますが、この際に、復帰に際してまして積極的にこの契約に協力していただくという方々につきましては、やはりそれに対する一種の報償的な意味で、そう大きな金額ではございませんけれども、若干の金員を支払うことが望ましいということで、その借料関連の見舞い金を計算をいたしておるわけでございまして、ただいまの御質問は、借料そのものといたしましては百三億、それに不動産購入費の部分を加味しまして、これが今後の、毎年毎年更改していきますその基礎になるところの借料になる、こういう考え方でございます。
  201. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間が参りますのでやめますが、私言いましたのは、あなたが私に言った説明が、二十五億が不動産購入費、三十七億が見舞い金、謝礼金、あとの百三億は地料だと言われたが、現地の施設庁の係官はだんだん形が変わってきて、この二十五億も地代に入れて百三十億にするとか、三十七億もだんだん動いて十億になっておる。十億が見舞い金、謝礼金だということになっておるが、そのとおりかということを聞いたわけなんですが、時間の関係でどうなるかわからぬが、ここら辺は一体どうなっておるのですか。非常に迷っておるのですよ。簡潔に答えてください。
  202. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 先ほど申しましたように、提供関係の純借料として百三億が計上されております。そして不動産購入費二十七億円、これは交渉を行なっていく途中におきまして、なかなか交渉がまとまらないというふうな場合に一応借料としてこれを使用できる、こういう性質のものでございまして、したがいまして、借料関係は、百三億に、不動産購入費の中から借料に回しますところの金額、これが今後の借料の基礎になる金額でございます。それと借料関連の見舞い金三十五億円、これは今後更新してまいります借料の基礎にはならない、こういう性質のものでございます。
  203. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 終わります。
  204. 福田繁芳

    福田委員長 これにて昭和四十四年度決算外二件についての質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  205. 福田繁芳

    福田委員長 昭和四十四年度決算についての議決案は、理事会の協議に基づき、委員長において作成し、各位のお手元に配付してあります。  これより議決案を朗読いたします。     議決(案)   昭和四十四年度一般会計歳入歳出決算、同年度特別会計歳入歳出決算、同年度国税収納金整理資金受払計算書及び同年度政府関係機関決算書につき、左のごとく議決すべきものと議決する。   本院は、毎年度決算の審議に際し、予算の効率的執行並びに不当事項の根拠について、繰り返し政府に注意を喚起してきたにもかかわらず、依然として改善の実があがっていない点があるのはまことに遺憾である。  (一) 昭和四十四年度決算審査の結果、予算の効率的使用等、所期の成果が十分達成されていないと思われる事項が見受けられる。    左記事項は、そのおもな事例であるが、政府はこれらについて、特に留意して適切な措置をとり、次の常会のはじめに、本院にその結果を報告すべきである。   (1) 政府及び政府関係機関所有物品の亡失または損傷の件数、金額は年々増加している。     物品については、適正かつ効率的に供用し常に良好な状態において管理すべきである。     例えば、防衛庁の魚雷(訓練用)の亡失も演習時の回収にはかなりの困難を伴う場合があるとしても、本件魚雷は回収設備のついた、物品管理法の適用をうける高価なものであるから、その回収については、なおいっそうの努力が必要である。政府及び政府関係機関は、物品の管理にあたっては今後万全の処置を講ずべきである。   (2) 水質汚染をはじめ、公害現象は年々多発広域化の傾向を強めて来ているが、現状ではその対策は必ずしも十分とはみえない。     例えば、瀬戸内海の水質保全については、内海沿岸等の十四府県に関係があるが、その監視体制や公害担当技術職員等の面において少なからぬ問題がある。かかる現状を改善するため、政府は、地方公共団体等に対する補助の増加や公害費用の事業者負担の原則の確立をはかるとともに、地方公共団体と緊密な連携のもとに公害に対する認識の啓発や監視・取締体制の整備、水質基準の強化等の施策を総合的に推進すべきである。   (3) 開発途上国に対する経済援助費については、最近相当の改善をみているものの、なお、質量両面からみるとき、国際連合による勧告目標をかなり下廻つている。     政府は、開発途上国に対し、政府ベースの開発援助、とくに技術協力費の増額等、援助内容の充実改善をはかるとともに、過去の援助実績を十分に把握、検討し、援助が効率的、有機的に行なわれるよう考慮すべきである。     また、援助の実施が数省にまたがり、とかく非能率におちいりがちである点にかんがみ、事務の一元化をはかる等によつて、能率を向上し、責任の所在を明確にする必要がある。   (4) 日本住宅公団の住宅団地には、立地条件が悪かつたり、地況等の調査や関係地方公共団体等との調整が十分でなかつたなどのため、居住者に不便を与えているものや、完成後相当期間使用できないと見込まれているもの、あるいは、応募者が著しく少ないものなどがでている。     また、その住宅のなかには、雨漏りや、ベランダの落下等施行上の手落ちに起因するとみられる事故を起しているものがある。     政府並びに公団は、これらの点につき、すみやかに改善の措置を講ずると共に、公団の体制整備をはじめ今後の住宅政策のあり方について再検討を加えるべきである。  (5)日本鉄道建設公団が実施している鉄道新線の建設において、投資の効果があがつていない事例がある。     すなわち、追分線、白糠線、油須原線は、路盤等の工事のほぼ全部がしゆん功しているのに、営業開始についての日本国有鉄道との協議が難航したため、長期にわたつてその後の工事が中絶されたままとなつている。     ことに、追分線においては、国の財政投融資や、鉄道建設債による借入金を原資としているのであつて、多額の利子を負担しなければならないものである。     かくのごときは、工事着手当時に比し道路輸送の伸展、沿線人口の流出等社会的、経済的な情勢が変化したこと等によつて生じた現象であるとみられる。     鉄道新線の建設にあたつては、政府及び各関係機関はこれらの事情にかんがみ常に相互の連絡を密にして、有効な投資を行なうよう十分な措置を講ずべきである。  (二) 昭和四十四年度決算検査報告において、会計検査院が指摘した不当事項については、本院もこれを不当と認める。    政府は、これら指摘事項について、それぞれ是正の措置を講ずるとともに、また、行政管理庁の勧告等を尊重して制度、機構の改正整備をはかり、官紀を粛正して、今後再びこのような不当事項が発生することのないよう万全を期すべきである。  (三) 決算のうち、前記以外の事項については異議がない。   政府は、今後予算の作成並びに執行に当つては、本院の決算審議の経過と結果を十分に考慮して、財政運営の健全化をはかり、もつて国民の信託にこたえるべきである。 以上でございます。     ―――――――――――――
  206. 福田繁芳

    福田委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がございますので、順次これを許します。菅波茂君。
  207. 菅波茂

    ○菅波委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま委員長御提案の昭和四十四年度決算議決案に賛成の意を表示するものであります。  昭和四十四年度決算は、昨年二月本委員会に付託され、委員会においては同年四月以来、各省庁及び政府関係機関等につき、順次審議を続けてまいり、その間、是正改善を必要とする事項については、質疑を通じてそのつど政府当局に善処を求めてまいりましたが、特に、物品管理、公害対策、対外経済援助、公団住宅及び鉄道新線の建設等に関し、予算が効率的に使用されず、所期の成果が十分達成されていないと思われる事項が見受けられたことはまことに遺憾に存じます。  また、会計検査院の指摘による不当事項についても、毎年その根絶を要望してまいりましたが、昭和四十四年度においても、百五十三件、二十億円余にのぼる指摘があり、依然としてそのあとを断たないのはまことに残念であります。  政府においては、ただいまの議決案の内容はもちろん、本委員会における審議の動向をも十分に考慮して、今後の行政運営にあたり、国民の負託にこたえるよう努力していただきたいのであります。  最後に、公務員の綱紀粛正について一言申し添えておきたいと存じます。このことに関しては、これまで再三注意を促してきたところでありますが、最近、外務省の秘密文書事件をはじめ、秩父営林署、日本道路公団その他の機関において数々の不祥事件が発生しております。申すまでもなく、公務員の姿勢の乱れは国の損失につながるばかりでなく、行政の不信をも招くことになりますので、政府においては、綱紀の粛正につき格段の努力を払われるよう特に強く要望いたしまして、ただいまの議決案に対する私の賛成討論を終わります。
  208. 福田繁芳

    福田委員長 次に西宮弘君。
  209. 西宮弘

    西宮委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま委員長から提案されました昭和四十四年度一般会計歳入歳出決算はじめ三件の議決案について反対の意見を表明いたします。  議決案は、(一)において、政府に対し特に留意して適切な措置をとることを求めた諸事項をあげておりますが、これについては私も賛成であります。これらについては、政府はぜひとも誠意と勇断をもって実行されるように要望いたします。  (二)において「会計検査院が指摘した不当事項については、本院もこれを不当と認める。」とあります。これは戦前から決算委員会の審議は、会計検査院の報告を中心にして審議してきましたが、会計検査院の指摘事項は、いずれも重要な事項だと思います。しかし会計検査院の検査は抽出検査にすぎないので、この報告事項はまさに氷山の一角にすぎません。したがって、この議決には賛成ではありますが、なお、これ以外にも多くの不当事項の存在することを申し添えなければなりません。  次に「決算のうち、前記以外の事項については異議がない。」との議決については、とうてい賛成するわけにはまいりません。この決算の中には、予算審議の際にわが党が反対した事項もたくさんありますし、また予備費の支出について承諾を与えることに反対した事項も入っております。  さらに、四十四年度より、土地分離低率課税が実施されました。しかるにこれは、土地の値上がりをもたらし、一部地主に億万長者を生み出しただけにすぎません。以上の事実に照らし、法人所有土地に対する税制上の対策を含む投機的やり方の規制、個人所有地の分離課税の再検討があらためて問われているのであります。土地対策、税制対策を根本的に検討し直すべきであります。  国鉄用地の上に建てられました建物の借り上がという特殊な事例による契約といたしましては、事前の調査が不十分であり、配慮が足りない点が問題とされました。しかも会計検査院の検査が国鉄、運輸省ばらばらに行なわれて、その間に横の連絡がなかったことも指摘されなければなりません。  住宅政策について、だんだん家賃が上がって、比較的高額な所得者が入居できるという矛盾を招いております。  昭和四十四年度予備費については、農林省所管の稲作特別対策事業費について、二百二十六億円余の巨額なものが計上されておりますが、事業ということになれば、一応の常識的な概念があるわけであります。しかるに、その事業としての具体的な計画が全くなく、大蔵大臣は米価据え置きをしたためにおける激変緩和のためのものであると説明されております。それならば、従来しばしば批判されてまいりましたいわゆる政治加算にすぎません。  なお、このほかにも審議の過程において指摘された数々の不当事項ないしは綱紀の紊乱による不正事項等がありますが、それらについては十分審議の過程で指摘されておりますので、万全の改善措置をとられるよう要望を申し添えまして、私の反対討論を終わります。
  210. 福田繁芳

    福田委員長 鳥居一雄君。
  211. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました昭和四十四年度一般会計歳入歳出決算外三件に対し、不承認の意を表明し、以下おもな理由を述べるものであります。  第一に、本委員会指摘した日本住宅公団の欠陥団地についてであります。  足なしの花見川団地、水なしの稲毛海浜ニュータウン、天然ガス鉱区の上に建設した東寺山団地等、多数が欠陥団地の実情にあります。さらに、その他の公団住宅の中にも雨漏りやベランダの落下等、明らかに施工上の手落ちに起因するものと見られる事故を起こしているものが数多く見られ、その対策は急務であります。そのため昨年十月、本委員会指摘した欠陥団地及びその他の公団住宅について、早急に対策を立てることを確約したにもかかわらず、去る四月二十九日には、千葉県の湖北台団地でベランダが根こそぎ落下し、また、五月七日には東京の金町団地で、約ニトンものコンクリート壁が、大音響とともにくずれ落ちるという事件が相次いで起こり、そこに住む人たちは、昼夜危険にさらされている現状であります。現在、全国で百三十万戸の住宅が不足している実情にあり、今後五カ年間に、公団は四十六万戸の建設を目ざしている中で、このようなずさんな計画や施工が許されてよいわけがありません。公団のただ建てさえすればよいという姿勢、親方日の丸のような事業計画に猛省を促し、今後こうした事態を呼び起こさないよう建設省は慎重を期して、早急に改善すべきであります。  第二には、防衛庁の所管の物品亡失損傷状況についてであります。  物品の管理については、物品管理法に基づき、適正かつ効率的に供用し、常に良好な状態において管理すべきでありますが、政府及び政府関係機関所有物品の亡失または損傷の件数、金額は、年年増加している現状であります。特に防衛庁の物品亡失損傷状況を見ますと、四十三年は千四百二十九件で二億五千二百万円、四十四年は千九十件で二億九百万円、四十五年は三千百七件で四億九千百万円と多額にのぼっています。防衛庁物品亡失損傷の中でも、訓練用魚雷は回収設備がついているにもかかわらず、四十二年度から四十五年度までの四年間に五十六本の魚雷が回収されずに海中に沈んでいるのであります。このうち主力のMK44の魚雷は四十六本も回収されてないのであります。こうした回収できない訓練用魚雷は、四十二年度から四十五年度までの四年間で、総額六億四千九百万円の国損になっているのであります。四十五年度のMK44の訓練用魚雷についてわかりやすく言えば、五本の魚雷をそれぞれ一年に二回発射すると、二回目の発射をし終わらないうちに、五本のうち一本を亡失するという割り合いで、約十年間も欠陥魚雷の原因究明もされず、放置されてきたのであります。本来、訓練用魚雷は、回収設備のついたもので、一〇〇%近い回収が当然であります。したがって、これらの物品管理については万全の処置を講ずべきで、防衛庁は緊急に改善すべきであります。  第三に、日本電信電話公社が米軍に提供している電話専用線の使用料は、約二十年前から日米間で紛争し、未解決のままでありましたが、昨年五月二十七日、沖繩返還交渉の大詰めの段階に来て、急転直下、日米合同委員会で解決の合意に達したのであります。しかし、日本政府及び日本電信電話公社は、米政府に対して、昭和二十七年日米平和条約発効以来、在日米軍電話使用料を、請求権ありとして請求してきたのであります。その請求額は四十五年末累計額八十三億三千万円の高額に及ぶにもかかわらず、わずかJGCP施設の保守工事未払い額一億九千五百万円と、これまでの利子分九千万、合計二億八千五百万円で、八十三億三千万円が棒引きになったのであります。これは電電公社にとっては、まさに減収であり、国損であります。電電公社及び政府は、十数年間も解決できなかった理由と、請求金額の一割弱に決定した積算の根拠並びに日米間の交渉経過を国民に明白にすべきであります。  なお、電電公社は、政府とは別な法人格の公共企業体であるので、日米両国間とは別に、政府に対して請求し、国内間の問題として整備し、常に業績の向上をはかり、増収につとめるべきですが、それを行なっていないのであります。  第四に、ただいま委員長より朗読のありました議決案のうち、第三項の「決算のうち、前記以外の事項については異議がない。」という点については、四十四年度決算審議が終了しても、限られた審議日程の中において、各省の全支出項目にわたって審議したとは言えず、第一項、第二項の指摘事項は一部代表的なものであり、将来において指摘事項が起こらないとは限りませんので、この項の「異議がない。」という議決案については、承認することはできないのであります。  以上、おもな理由を申し述べ、不承認の意を表明するものであります。
  212. 福田繁芳

    福田委員長 吉田賢一君。
  213. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま上程されました四十四年度決算等に対しまして、結論的には賛成をいたします。ただ、賛成はしますけれども、以下の数点を述べておきまするので、これは少数党の弱い発言と思わずに、内閣の責任を持っておる与党は、少数意見尊重という憲法、議会政治の本旨にかんがみまして、十分にひとつお聞きおきいただきたいと思うのであります。  第一は、予算の審議は非常に慎重綿密でございます。ただし予算といえども、今日の日本国会の実情を見ますと、予算審議は政策論議が少ないのであります。これは国会の一員といたしまして、さびしく思っております。でき得べくんば、各省、各項目につきまして、どんどんと政策論議が展開されることを心から望みたい。しかしそれにも増しまして、決算の審議を非常に軽視しておるのが特に政府の態度に見えるのであります。予算のときは目をとがらかして注目しておりますけれども、決算の審議は、いつ終わるやら、いつ審議があるやら、委員会がありましても、大臣は多用でなかなか出席せられない、出ても出なくても損にならぬというようなことであるのではないか。要するに決算に対する認識が不足であるならば、決算を無視したら、その代表者は首です。取締役会といえども、総会でこれは否決します。それほど決算は重視します。しかし、さきに鳥居さんもお述べになりましたように、親方日の丸という思想が日本じゅう浸透しておりますためか、使いっぱなし、使ったものは、そのあとは知りませんと言わんばかりでありますので、この点につきましては今後十分に戒心をしてもらいたい。決算重視の傾向を助長するように努力されんことを、特に要望しておきたいと思います。  それから検査院につきましては、これは財政法、検査院法等によりまして、検査院の権限も明確にしてありますし、憲法に始まりますけれどもただ今日の検査院法の規定が、たとえば二十九条の報告書のくだり、三十四条の意見表示などがありますけれども、その範囲が法律の違反、当、不当ということに限定されておるような感じがいたします。この点はしばしば指摘いたしました。しかし現実に決算委員会が問題にしておりますのは、法律に違反しておるか、あるいは当、不当という意味も、これは文理解釈的にはあいまいであります。あいまいでありますが、当、不当に限定するというところに、本来の決算、予算の財政の性格から申しましたら、非常に不確実な表現でありますので、こういう観念によりまして検査院が検査を行なって、その報告書を書くということはいかがなものか。しばしば私ども指摘しておりますのは、国民の期待するところは血税を大切に使ってくださいということなんです。大切に使ってくださいということは、百万円でできるものが、もしくふうするならば九十万円で済む、そのときはやはり予算が百万円あるのだから、百万円使おうじゃないかというのでなしに、十万円も大切にしましょう、そして血税でありますから、かくして使い残り、不用金ができたらけっこうじゃないか。いまの不用金、たとえば四十四年度の不用金を見ましても百二十六億円あります。こんなに膨大な不用金ができておりますが、これはくふうの結果不用ができたというものではないのであります。予定しておったけれども、そのとおり使わなかった、こういうことだけであります。消極的であります。したがいまして、今後できますれば、法改正でも意図されまして、検査院もおられますが、日本の財政運営につきまして、会計検査院の検査のあり方、権限、そして報告書の内容、ないしは政府が今後の予算作成の上におきまして相当参考になり得るようなものも含むというくらいな規模内容のものに、検査院の制度を法的に改正されてはいかん。その方面に向かって進んでいかれることを希望したいのであります。これは世界の検査院の会議等におきましても、おそらくは重要な点として論議しておると私は思うのであります。このことも強く要請しておきたいのであります。なぜならば、憲法によりまして、国の決算は検査院の検査を受けて、そして国会に報告せられる、これが当委員会に回ってくる次第でありますから、検査院の検査というものはきわめて重要な機関でありますので、そのような意味におきましてぜひともそのような改正の方向を進めてもらいたいと思います。  もう一つは予備費の問題でございます。憲法八十七条によりましてこれは規定されており、予見しがたい経費の不足を補うということになっておりますけれども、どうも最近の予備費の使い方を見ましたならば、たとえば給与ベースの引き上げ等に引き当てておるかのような、そのようなあらかじめ予定しておったようなものが、今度はそうではなくして別の項目に使われるということにされていくということも見受けられますので、こういったきらいがありますから、このきらいにつきましては、やはりそういうことのないようにしていただきたい。なぜならば、一たん予算を組む以上は、その予算予算の趣旨に従いまして使っていくということにしなければいけませんので、反対、賛成のいかんにかかわらず、一たん国会で成立して国民の意思として最終的に決定した以上は、それをごちゃごちゃにしないで、その趣旨を尊重してこれを使用するというふうにしてもらいたい。  要は、この決算委員会で私どもが強く指摘したいことは、予算の執行につきましてはできるだけ効率化してもらいたい。使用のことにつきましては、できるだけ能率をあげてもらいたい。管理につきましては、できるだけ科学的な手法をもって管理をしてもらいたい。そのためには、たとえばPPBSの導入にいたしましても、事業別予算制度の導入にいたしましても、もっとも後者につきましてはすでに現制度がしかりという御意見もございますけれども、しかし綿密に検討いたしましたならば、いまの予算制度というものはどこが使うかという規定が主で、何のために使うかということは従であります。何のために使うかということが、これがこの決算委員会の追及の対象でありますので、その辺につきましても、できるだけその趣旨を尊重してもらいまして、そして効率化する。一たん組んだ予算はその管理は最も適切に行なう。政策目的に沿いましてこれをほんとうに効果があがるように執行していく。それを大きな目を見開いていくというのが検査院であり、われわれであり、国会であり、ないしは行管でありますから、その辺のことを十分に今後は取り入れて、そして予算の制度なりあるいはその他法改正等について重要な参考にしてもらいたい。  私は繰り返しますけれども、当委員会におきまして一たん議決いたしまして、発言がございましたならば、次の予算の編成に際し、予算の執行につき十分にこれをしんしゃくし、尊重するということがなければ、予算の議決は国会の意思として尊重するけれども、決算の議決は国会の意思としないというような、そんなことになりましたら国会軽視であります。国会無視であります。したがいまして、一たんここで議決され発言がございましたならば、発言につきましては十分綿密にこれを玩味していくというのが、これが行政府の責任であります。憲法によりまして、行政府の行政のあり方につきましては、国会は十分に監視、監督をしていく権限があるのでありますから、国会の意思表示といたしましてこれは受け取っていただきたいと思うのであります。このように幾多の問題点があり、われわれは意見を持っておるのでございますので、どうかこの辺につきましては、今後とも十二分にお考えおきを願いたいということを強く行政当局には要請したいのであります。  かくいたしまして、この議決案件につきましても、これは文章表現につきましては、どうかできましたら委員長、次期国会におきましては文章の表現を再検討していだたきたいのであります。やっぱり最後に問題になります「異議なし」ということばはどうも表現適切にあらず。だから「ほぼ」という形容詞か何かつきましたらというふうに思いますので、来年はひとつこの辺につきましても再検討いたしまして、実に沿うような表現を、適切にこれを書き出すようにしていただきたい。そして権威のある議決にして、来年からは予算の執行についてできるだけ問題の少ないように、幾多指摘されましたところの綱紀紊乱につながるような金の使い方につきましては、これはもう論外であります。それほどに私どもは、こういう問題がありましたら、ほんとうに皆さんは弁解のことばがないぐらいにまでなっていただきたい、こう思いますので、どうかえりを正しまして、当委員会の議決の趣旨をひとつ尊重するようにしていただきたいということをつけ加えまして、私は冒頭に述べました意見を結ぶことにいたします。  以上であります。
  214. 福田繁芳

    福田委員長 吉田君に申し上げます。あなたの御高説、私もえりを正して拝聴いたしました。  これにて検討は終局いたしました。  これより採決に入ります。  昭和四十四年度一般会計歳入歳出決算昭和四十四年度特別会計歳入歳出決算昭和四十四年度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十四年度政府関係機関決算書、これを議決案のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  215. 福田繁芳

    福田委員長 起立多数。よって、議決案のとおり決しました。  次に、昭和四十四年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和四十四年度国有財産無償貸付状況計算書の両件について討論に入るのでございますが、別に討論の申し出もございませんので、直ちに両件を一括して採決いたしたいと存じます。  両件はいずれも是認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  216. 福田繁芳

    福田委員長 起立多数。よって、両件は是認すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました各件の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いとう存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  217. 福田繁芳

    福田委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決定しました。     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  218. 福田繁芳

    福田委員長 この際、御出席の国務大臣より順次発言を求めとう存じます。水田大蔵大臣
  219. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ただいまの御議決に対しましては、政府といたしまして十分これを尊重いたし、関係各省との緊密な連携のもとに、御趣旨に沿うよう遺憾なきを期してまいりたいと存じます。
  220. 福田繁芳

    福田委員長 次に、江崎防衛庁長官
  221. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 ただいまの御議決の趣旨を十分尊重いたしまして、魚雷の回収には一そう努力いたす所存であります。
  222. 福田繁芳

    福田委員長 次に、大石環境庁長官
  223. 大石武一

    ○大石国務大臣 ただいまの議決につきましては、御趣旨を十分に尊重いたしまして善処いたします。
  224. 福田繁芳

    福田委員長 次に、福田外務大臣。
  225. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま御議決のうち、対外経済協力の質量ともにこれを増強すべしという御意見は、かねて私もそう思っておったところでございますので、御激励を賜わったと存じまして、いよいよ精励いたしたいと存じます。  なお対外経済協力の事務の一元化につきまして御議決がありましたが、この点は、私もずいぶんいろいろあれやこれやと苦慮しておるのですが、やりそこないますと、これがまた二重機構にも相なります。そういう点もありますので、皆さんの御議決も尊重しながら慎重に配慮してまいりたい、かように存じます。
  226. 福田繁芳

    福田委員長 次に、丹羽運輸大臣。
  227. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいまの御議決に対しましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、遺憾なきを期してまいりたいと存じます。
  228. 福田繁芳

    福田委員長 次に西村建設大臣
  229. 西村英一

    ○西村国務大臣 ただいま御指摘を受けました諸点につきましては、今後かかることのなきよう、すみやかに用地取得体制の強化等をはかり、良好な居住環境を備えた住宅の供給に一そうの努力を行なうとともに、事故の発生を未然に防止するため、住宅設計の改善及び工事監督の強化をはかる等、万全の方策を講じ、今後遺憾のないよう措置する所存であります。
  230. 福田繁芳

    福田委員長 次に、渡海自治大臣。
  231. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 ただいま御議決になりました事項につきましては、自治省といたしましても、十分これを尊重し、今後一そう改善に努力いたす所存でございます。
  232. 福田繁芳

    福田委員長 以上をもちまして、各国務大臣からの発言は終わりました。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時一分散会