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1972-04-13 第68回国会 衆議院 外務委員会内閣委員会地方行政委員会法務委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月十三日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員   外務委員会    委員長 櫻内 義雄君    理事 青木 正久君 理事 石井  一君    理事 坂本三十次君 理事 正示啓次郎君    理事 永田 亮一君 理事 松本 七郎君    理事 西中  清君 理事 曽祢  益君       池田正之輔君    木村 武雄君       鯨岡 兵輔君    小坂徳三郎君       田川 誠一君    長谷川 峻君       福永 一臣君    豊  永光君       黒田 寿男君    三宅 正一君       渡部 一郎君    松本 善明君   内閣委員会    委員長 伊能繁次郎君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 山口 敏夫君    理事 大出  俊君 理事 伊藤惣助丸君    理事 和田 耕作君       辻  寛一君    葉梨 信行君       上原 康助君    木原  実君       楢崎弥之助君    横路 孝弘君       鬼木 勝利君    鈴切 康雄君       受田 新吉君    東中 光雄君   地方行政委員会    委員長 大野 市郎君    理事 上村千一郎君 理事 大石 八治君    理事 塩川正十郎君 理事 中村 弘海君    理事 豊  永光君 理事 山口 鶴男君    理事 門司  亮君       菅  太郎君    高鳥  修君       中山 正暉君    永山 忠則君       宮澤 喜一君    村田敬次郎君       山本弥之助君    桑名 義治君       林  百郎君   法務委員会    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 羽田野忠文君    理事 中谷 鉄也君 理事 沖本 泰幸君       大坪 保雄君    鍛冶 良作君       松本 十郎君    村上  勇君       河野  密君    林  孝矩君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   中村 寅太君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府総務副長         官       砂田 重民君         総理府人事局長 宮崎 清文君         警察庁刑事局長 高松 敬治君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         外務政務次官  大西 正男君         外務大臣官房長 佐藤 正二君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 高島 益郎君         郵政大臣官房電         気通信監理官  柏木 輝彦君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(外務省機密漏えい問題)      ————◇—————   〔櫻内外務委員長委員長席に着く〕
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより外務委員会内閣委員会地方行政委員会法務委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行ないます。  国際情勢に関する件、特に外務省機密漏洩問題について調査を進めます。  この際、申し上げます。  質疑時間につきましては、理事会の協議により決定いたしました時間を厳守していただきますよう、特にお願いいたします。  質疑を許します。長谷川峻君。
  3. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 せんだって毎日新聞記者逮捕されてから、知る権利、これを中心にしてマスコミがあげて憲法精神に反する、こういうことで共闘あるいは大きな盛り上がりがございます。また、野党もときにそれによって政府との対決であると、こういうことで毎日のように新聞に出ておりますが、私は、そういう論戦のさなかに政府においても非常に説明不足、あるいは混乱した面が多々あった、これが逆に問題の焦点というものをはっきりさせないでおる、こう思います。早い話が、政府のほうにおいてプレスコードを引用されました。前段のところは非常にいいところなんです。政府の好きなような引用なんですが、「公共の利益を害するか、または法律によって禁ぜられている場合を除き、新聞報道、評論の完全な自由を有する。」ここまで引用されましたけれども、そのあとの「禁止令そのものを批判する自由もその中に含まれる。」こういうところを抜かしたりするものだから、新聞マスコミ諸君は何だというふうな感じもあったし、一方また政府の中においても、所管外にかかわらずそういう論争のさなかにいろいろな発言をするものですから、ますます混乱した。これがどうも報道の自由に対して混乱を招いたゆえんでございますから、私はここでどうぞひとつ論点を整理されながら、そして国民のほうからしますというと、国民のほうではその知る権利もあるわけですから、ここにおいて総理大臣に大事なこの問題について——西山記者はようやく釈放されて喜ぶものですけれども、しかし、その東京地裁拘置取り消し理由の中に注目すべきものは、取材の自由は尊重するが、記者行為は、手段方法において担当性限度を越えている、こういうふうなことも出ております。そこにおいてか、私は、振り上げたところのこぶしをそのままずっとやっておりますというと、逆に言論自由擁護の戦いというものを危機におとしいれるというふうな感じを持ちますので、この際総理わが国マスコミの健全な発展をはかって、報道の自由という大問題と取り組んで問題を整理されて、この際、民主主義の将来のためにこの論争に明確な方向を与えられるように、ひとつ御所信をお伺いしたい、こう思うわけです。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 長谷川君はわが党ではありますし、また報道関係出身者でもあります。そういう立場から、経験に基づきながら、新しい民主主義の時代がいかにあるべきか、こういうことを基盤にしてのお尋ねだろうと思います。あるいはそのお尋ねにぴったり答えているかどうかわかりませんが、私の所信を申し上げたいと思います。  いろいろ問題になりました報道の自由、知る権利、いかにも政府態度を明確にしないために、政府国民に対して秘密主義あるいは知らさない、よらしむべしというようなまだ古い考え方ではないか、こういう誤解もあるのではないかと思っております。まず第一にその点を明確にしておきます。たびたびの機会に、政府はもちろん言論の自由、新聞報道の自由、これは十分その権利擁護する、かように申しております。これは申すまでもなくわれわれの立っておる民主主義民主政治、その基底をなすものだ、かように思うからこそ、言論の自由の大事なことは必要だと思っております。それだけで政府立場は明確になっておると思います。  私はその際に引用したのでありますが、マスコミのいわゆる倫理綱領というものを引用いたしました。いかにもこれを引用したがゆえに、そればかりを責めておるように思われる。大事な基本的なその態度をすりかえたんじゃないか、こういうような非難があちらこちらにあるようでございます。だから、そういうものではない、政府はどこまでも言論の自由、報道の自由、これは確保する。同時にまた、それに携わる諸君は、みずからが規定している倫理綱領、これはやはり守られるべきではないか。それぞれがそれぞれの分野において正しい形で運営されるならば、民主主義基底はますます強固になり、われわれの望むような民主主義社会ができ、民主政治が徹底する、かように私は思うのでございまして、いかにも私が倫理綱領を取り上げたことが、一方的なみずからの責任を果たさないような言い分だ、こういうような非難がございますから、その点は明確にして、政府の守るべき点、これはもうはっきりする。また同時に、報道関係者がみずから規律した事柄、これは当然守られるだろう、かように私は期待しておる、このことを明確に申し上げておきます。
  5. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 総理基本的態度は了解いたします。  そこで、私も、総理から言われたように同業出身でございますが、やはりお互い、いまの憲法の中においても、公共の福祉を害しない限り——最高裁判決等もございますので、その制度を受けることは、取材の自由も、あるいは報道の自由も当然制限される。これはやむを得ない。そうでないと、国民全体が法の平等の中にあって、新聞社あるいは新聞記者諸君だけが治外法権と、こういうことは私はあり得ないと思うのでありますが、そこでお尋ねしたいのは、中村国家公安委員長、一体なぜ、最高限度取材活動の自由を確保してやらなきゃならぬというときに新聞記者逮捕を行なったのか、その法的根拠並びに具体的理由をひとつこの際に、争点を明らかにする意味において明確に願いたい、こう思うのです。
  6. 中村寅太

    中村国務大臣 西山記者逮捕しましたのは、外務省蓮見事務官秘密書類西山記者に渡したというような供述を、みずから警視庁に出頭しまして申し出があったのであります。これは法的には、私はしろうとであるから、正確な自首であるか何とかということは承知いたしませんけれども、世間的にいう自首の形でそういう供述があった。その供述の中に西山記者関連しておることがきわめて濃厚になってまいりました。その取材の実態が国家公務員法百十一条の中にあるそそのかすの件に該当しておるという容疑がきわめて濃厚になってまいりましたので、それぞれの手続を踏んで、逮捕ということになったのでございます。
  7. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 ただいま中村さんは、西山記者国家公務員法百十一条に基づいて逮捕された、ここがまた非常にわからないところなんです。ということは、蓮見さんは外務省事務官ですから、国家公務員法適用された。しかしながら、全然公務員であらざる記者をこの法律逮捕した。これはくろうとの専門家ならおわかりでしょうけれども、一般の方々には、一体どういうことだ、だから法の拡大解釈じゃないか、こういうところに非常に問題を大きくしているゆえんもあるのです。ですから、あるいはほかの法律でやれば量刑がかりに重くなるかもしらぬからこちらのほうでやったのか。その辺、国家公務員法百十一条でやったというその理由をはっきりされることが問題をときに冷静にさせるゆえんじゃなかろうかと思いますので、もう一度ひとり御答弁をお願いします。
  8. 中村寅太

    中村国務大臣 刑事局長から答えさせていただきます。
  9. 高松敬治

    高松政府委員 国家公務員法百十一条が国家公務員以外の者についても適用があるんだということにつきましては、これはおそらく疑問のないところであろうと思います。国家公務員法は、もちろん国家公務員内部規律中心に定めておりますけれども、それに関連して、たとえば機密漏洩罪の実効を担保するために、外部の者がそれをそそのかした場合にもこれを処罰する、こういうことになっておりまして、この点については異論がないと思います。さきの北鮮帰還協定に関する秘密漏洩事件判決も、一審、二審とも、そのそそのかした公務員以外の者については百十一条を適用して判決をしている。それから今般の逮捕状請求勾留請求、それから勾留の却下の決定、いずれを通しましても、この点については百十一条の適用は認められておるというふうに思います。そこで、他の、刑法その他の法令を適用するかどうかという問題につきましては、刑法のいろんな規定がこれに該当するかどうかは必ずしも明確でないところもありまして、そこで、本質的にこのケースに一番適当な法律適用問題を考えまして国家公務員法第百十一条の適用を考えたわけでございます。
  10. 櫻内義雄

    櫻内委員長 関連質問を許します。羽田野忠文君。
  11. 羽田野忠文

    羽田野委員 法務大臣にお伺いをいたします。  今回の蓮見事務官西山記者逮捕事件表現の自由を侵すのではないか、あるいは不当の逮捕ではないかというような意見が散見をいたしております。これは非常に重要なことでございまして、国民の皆さまの前にこの事件の真相並びに国家がとった措置が妥当であるかどうかということを明らかにすることが最も必要だと思います。その点で、先般四月九日に東京地方裁判所決定をいたしました西山記者に対する勾留取り消し決定理由の中に非常に味わうべきことが述べられております。もちろん憲法二十一条の言論の自由あるいは表現の自由というものは高度に尊重されなければなりませんが、それと同時に、秘密を守ることが国益上必要な秘密を守ることも国家として最も重要なことであります。したがって、この守らなければならない秘密が漏らされた、あるいは漏らされることに加功した人に対しては、それ相当処罰規定によって厳粛に取り調べ、その措置を行なわなければならないことは明らかであります。  そこで、この決定理由に示しておるところによりますと、まず今回漏らされたいわゆる外務省秘密電報というものは、はたして保護する秘密に当たるかどうかという点について、実に明快な判断をいたしております。この文書は、外交の必要上、実質的にも刑罰による保護に値する部分があると認められると、はっきり示してあります。  次に、それではこれを漏らすことがいいか悪いかという問題であります。もちろん蓮見事務官国家公務員としてその秘密を知り得る立場にある者、この人が国家機密と知りながらこれを漏らした以上は、国家公務員法百条によってこれは責任をとるのがあたりまえでありますが、公務員でない西山記者の場合でございますが、これは百十一条によって、公務員にその秘密を漏らすことをそそのかした者は同じく罰するという規定があります。そこで、この西山記者のそそのかした行為がはたして許されるべきものかどうかという点についても、この裁判で明らかに示してございます。いわゆる憲法二十一条の精神は尊重されて、報道の自由というもの、あるいは取材の自由は大いに尊重されなければならない、しかしながら、その方法社会通念相当手段方法でなければならないし、無制限にこれを認めるものではないのだ、そうしてこの記者が行なった、いわゆる相手方の困惑に乗じ、または欺罔した場合のような、相手方に不当な心理的影響を与えて迷惑をかけたような場合には、これは限界の範囲を逸脱しておるのだ、したがって、やはりこの公務員法百十一条によって取り調べをすることは妥当である、こういうことを明らかに示してあります。  私は、この点について警察庁も検察庁も大いに自信を持って、国家権力の行使としてやらなければならないことは堂々とやり、そしてその結果を国民の前にはっきりさせるべきであると思います。  それから、西山記者勾留を取り消したということで、不当逮捕ではないかというような意見が出ております。この点についても、本件罪証隠滅のおそれが多分にある、したがって、前の裁判所が勾留決定をしたことは不当とは言いがたい、しかしながら、その後の取り調べ被疑者本件事実の主要部分を自白しておって、まだいわゆる罪証隠滅のおそれがないとは言えないけれども、身柄を拘束してまで調べる必要性には乏しくなったということで取り消しておる。だから、これは捜査が不当だとか勾留が不当だとかいう性質のものではない。  そこで法務大臣はこの点について、いわゆる守らなければならない国家秘密を漏らした者、あるいはそれをそそのかした者については、国益擁護法秩序を守るという立場で厳たる態度を持ってもらいたいと思いますが、法務大臣の御所見を承ります。
  12. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいまお話しのとおりでありますが、今回の事件の事実につきましては、まだ捜査中でありまするから、詳細なことはわかりません。ただ、客観的に見まして、先般の、ただいまお話しの準抗告に対しまする決定が明らかにいたしておりますことによってわれわれも自信を持っておるわけでありますが、ただいまお話しのとおりに、第一点、秘密とは何ぞやという問題であります。もちろんこれは形式的な秘密であることが必要ではありますが、形式的な必要と実質的な秘密と、この二つを兼ね備えたものでなければならぬという新しい見解を示しておるのでありますが、その二つから考えても、西山記者がそれに該当するということを暗に言っておるわけであります。  それから第二点の、取材についての自由というものに対しましてもやはり限界があって、先ほどお話しのように、相当性を逸脱した行為は許さるべきではない、こういうことも明らかにいたしておるのでありまして、十分客観性を持って逮捕したということであります。  第三点の、逮捕につきましても、逮捕した当時には確かに逮捕する理由があった、しかし現在になると、まだ証拠隠滅のおそれはあるが、強度でない、であるから、この際釈放すべきであるという結論でありまして、そういう客観性から考え、またあの決定から考えまして、現在まで捜査当局がやってまいりましたことは何ら違法ではない、また正しい運用であったと、かように確信を一いたしておるのでありまして、その点につきましてはわれわれはあくまで厳正に考えていかなければならぬと、かように考えておるわけであります。
  13. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 私は、いま秘密の話、機密の話が出ましたが、その限界についてお伺いいたします。  どこの役所に参りましても秘密書類が非常に多い。これはけさの新聞にも出ているように、ある意味では役人がいばる材料にべたべたと秘密判こを押す。だから、ときには官僚国家じゃなかろうかという非難も受ける。そこで、秘密としてこれを決定する者は、最後には、民主国家においては国民であるという抽象的議論はわかりますけれども、これはやはり整理していく必要があるのじゃなかろうか。たとえば、そういう機密を盗んだということで裁判になりますと、日本のいまの裁判は約十年ぐらいかかるでしょう。そうするとその間は表現の自由、言論の自由というものが失われるかっこうになるのです。しかし、どこの国においても、取材の自由のほかに、こうした機密のあることは、それぞれの国はそれぞれのからに似せて穴を掘りますから、スウェーデンの場合は、ああいう中立国にかかわらず、国防の問題プライバシーの問題、外交交渉経過問題等はちゃんと機密事項になっております。イギリスにおいて、せんだって労働内閣大蔵大臣が公定歩合の利率を事前に漏らしたことによって辞職に追い込まれています。そうしたことからしましても、行政目的秘密のあるということはわかりますけれども一、いまから先、私たち国会からしますと、行政府のそういう秘密事項をときに整理をさせたりあるいは牽制したり忠告するところに、秘密をなくするという立法府のつとめも私はあろうかと思いますが、この点に関してひとつ一旦房長官所見をお伺いしたい。
  14. 竹下登

    竹下国務大臣 お答えをいたします。  抽象的に長谷川委員が理解できるとおっしゃいました、いわゆる国民次元のものである、そういう問題は別にいたしまして、今日、俗に極秘扱いあるいは秘扱いとされておる文書の点につきましては、長谷川委員の御指摘はもっともであると思います。去る昭和四十年の一月、事務次官会議申し合わせによりまして、極力これを減らしていく方向で各省に通達をいたしました。昨日来私もこれを検討いたしておりますが、いわば追跡調査とでも申しましょうか、そうした点に努力の欠ける点があったと思います。したがって、今日各省庁とも、この秘文書取り扱い等においてばらばらの省も確かに存在をいたしております。そこで今回のような御指摘を受けた際に、それをあらためていま一度見直しをいたすべきである、このように思いまして、きょう十二時から事務次官会議を招集いたしておりまして、いま一度四十年一月事務次官申し合わせの点を確認するとともに、別の角度からさらに秘文書等取り扱いについての再検討を早急に加えることによって御趣旨のような趣旨に応じたい、このように考えております。
  15. 羽田野忠文

    羽田野委員 官房長官に重ねていまの関連でお伺いいたします。  私は、本件の問題は、結局は国家機密をどこに線を引くかという問題だと思うのです。言論の自由や表現の自由を尊重せなければならない。しこうして一方には国家機密を持たなければならない。この機密を広くすれば前の大事な自由を制限をする。この機密をあまり狭くしてしまうと国益が守れないという、この問題だと思うのです。そこでいま官房長官のおっしゃられたように、これだけは絶対に秘密を守らなければいけないというものの準則をぴしっと定めていただきたい。いまのところは不必要なものまで秘密ということを判を押してある。そのために秘密に麻痺してしまって、その秘密文書をもらった者も一、取り扱う者も、すべて秘密というものを秘密感じていない。これはもう全く秘密という決定をしないと同じ。そこでこの準則を厳にすること、もう一つはやはり取り扱い者に、秘密のものを取り扱う者は絶対に責任のもてる人であり、責任をもたせるという立場をとっていただきたい。というのは、秘密文書をいろいろリレー式に持って歩くということが責任の所在を明らかにしない。だから最終的にその秘密文書を保管するなりあるいは破棄するなりそういう最終処理をする人が秘密文書についてのいろいろな決裁をもらうというようなことは、その人が責任をもって初めから終わりまでやる、そうして最終処理をするという官庁内における責任体制の確立ということが最も一必要ではないかと思いますので、この点官房長官の御所見を承ります。
  16. 竹下登

    竹下国務大臣 お答えいたします。  先ほど長谷川委員にもお答えいたしましたとおり、秘密文書取り扱いについての昭和四十年四月十五日事務次官会議申し合わせというものを、私も当時は内閣官房長官でありましたが、詳しく読み直してみますと、いまの御趣旨に沿った線でこれは定められたものであります。したがいまして、いま御意見に出たこと等につきましても、それらのことが確かに指摘してございます。しかしその指摘のしかたがいささか抽象的に過ぎるという点もございますので、それらも含めて厳正に保存なり破棄なり処分なりするように、そのような角度からも検討を加えたい、このように思っております。
  17. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 おそまきながら一生懸命官房長官がおやりいただくことをお願いいたします。  そこで今度の問題は法務大臣あるいは国家公安委員長のお話をお伺いする間に、やはり表現の自由の問題と違って刑事事件そのものであるというふうな印象を受けましたが、しかしここまで盛り上がったゆえんのものは、沖繩返還協定の中に密約があった、そういうことがずっと盛り上がってその出所があの文書であった。そこで今度は表現の自由の問題にエスカレートしてきていると、こう思うのです。もとは、ですから沖繩返還交渉の過程においてそういうものがはたしてあったかどうか、そうしますと私は非常に問題が明確になるのじゃなかろうか、こう思いますので、外務大臣の御意見をお伺いします。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 沖繩返還協定には、これは裏は全然ありませんです。つまり秘密の取りきめ、そういうものは一切ない。ただ交渉でありますから、その過程におきましていろいろなことが話し合われております。その過程の一つをとってみますると、何かこれは裏があるんではないかというような疑いを起こさせるような部分もある。しかし結論におきましては、これはもうほんとうに、正真正銘申し上げまするけれども、秘密の取引は一切いたしておりません。また裏協定も全然ありません。これは責任をもって申し上げます。
  19. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 その沖繩の問題については、福田外務大臣、世紀の返還協定ですから、お互いいろいろな交渉をする場合にやりとりのあることはわかります。しかし国益を損ずるようなそうしたことは私たちはないことを信じてもおりますし、それをまた明言された大臣のあらためてのお話に対して満腔の信頼を置くものです。  そこで私は、ここでお願い申し上げ、あるいはまた皆さん方にお聞きいただきたいことがある。ということは、今度の記者逮捕事件が起こって以来よくニューヨーク・タイムズの話が出るのです。第二のニューヨーク・タイムズでやろうじゃないか、こういう盛り上がりです。私は問題を明快にする意味において、せっかくニューヨーク・タイムズの話が出ておりますから、ちょっと調べたことを御披露して御参考に供したい。  それは昨年の六月の十三日の日曜版にニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストがベトナムの秘密文書というものを発表した。この事件でございますが、そのときにあたってニューヨーク・タイムズはどういう態度をとったかというと、新聞社は編集方針としてこの秘密文書を入手後、何と三カ月慎重に研究しております。そしてそれを自分の新聞に載せたのです。さらに公表にあたっては、新聞といえども治外法権の物権はないから、法の制裁は甘んじて受けるということ、これは副社長であるレストンが周恩来に会いにいって、その帰り東京で新聞協会の幹部と話をしているときにはっきりレストンは明言している。しかも公表したものはケネディ政権とジョンソン政権元の政権と前の政権のことであって、それらのものが引き続きずっとベトナムの問題の参考になるのじゃなかろうかということでやったのですね。そしてこれをトップシークレットとして連載し始めたとたんに、司法省がこれに対して国益を損ずるものといって掲載禁止しましたけれども、最高裁で審理した結果、六対三でそれはずっと連載を許可された。書類を持ち出したダニエル・エルスバーグは、持ち出したということと、書類をもとへ返してなかったということと、自分はこれを持って出たんだと名乗り上げておりますから、これはまだいま判決は受けておりません。しかし、入手して執筆したニール・シーハン記者はもちろん何の法的制裁も受けておりません。  私は、これと今度の事件とは比較して一体どういうことか、こう思うのです。似て非なるものであるということは新聞界の言論はあげて言うておる。千葉雄次郎さんが、われわれの先輩として、しかも新聞記者の研究所の所長さんとして教えられたあの人がせんだってこう書いておる。記者のモラルは場合によっては法律よりも上位にあるのであって、実質秘があろうと、記者はどしどし取材し紙面に公表すべきだ。その結果法律的には罪に問われても、記者としてはかえって評価が高まるだろう。たとえ証言拒否の罪に問われても、ニュースソースを守るというのは、記者の輝かしいモラルである、こう言うておるのです。ほんとうに思わずじいんとせざるを得ない。私はそういう立場からしますというと、同業の出身の一人として、今度の事件は、取材活動以外には使用しないという約束でその材料をいただき、その女秘書に迷惑をかけていること、あるいはニューヨーク・タイムズと違って、自分の新聞に連載しないで、その文書そのものが社会党の諸君に渡っている、いわゆる他人に渡っている。そして、正義感と良心に燃えていれば絶対だいじょうぶだというふうな、それをまたあげて声援するような形であったなら一体どうなるだろうか。  ここで私は前尾法務大臣に、先ほど西山記者の釈放の話が出ましたが、どうでしょう、蓮見さんをひとつ釈放されませんか。大新聞がついて、あげて声援しているところの記者は釈放された。妻よ死ぬなと泣いている亭主、私はだまされたのですと本人がはっきり言うて、私はもう桜を見ることができないでしょうかと言って亭主と別れていった蓮見さん、女であって——日本には女が多いのです。女は弱い。その人が四日に逮捕されてまだ入っている。片やよき弁護士なり大きなムードの中にあれば、そそのかした者が釈放されておる。私は主人の手記もざこに持っておりますが、一々読みません。おそらく訴える手もなく、お願いする手もなく、病弱の夫は、自分の妻が役所づとめし、かつてつとめた自分の役所、そういうところでこういう機密漏洩ということでこうなっていることにほんとうに泣いていると私は思うのですね。妻よ死ぬなと亭主は叫んだ。おそらく中にいる奥さんは、そう言われれば自分は死ぬだろうという気持ちもおありかもしれない。どうでしょう。その辺のことをいろいろお考えいただきながら、蓮見さん釈放という手はとれないものだろうか。それはこの話をしたからということじゃ政治的圧力とお考えいただいたらたいへんな誤解でして、事情をたくさん聞く間に法務大臣が御決定されるという、その姿勢でかまいませんが、私などの話も御参考にしていただいて、そういう決定の材料にされたならば、それこそ日本の女性全部が喜ぶのじゃないでしょうか。いないな、本人が最もです。お願いします。
  20. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 蓮見さんの釈放につきましては、あの準抗告に対する決定が出ました当時から私もいろいろと考えて心配をいたしておる問題であります。ただ、検察庁からいいますと、なお犯罪に対するいろいろ処刑の問題を考えますについては、心情、動機、あらゆる問題を捜査いたさなければなりません。またこの点につきましては、検察当局も非常に心配をいたしておりまして、その健康なりあるいはただいまお話しのようなこともあわせ考えて、どういう行き方が一番適当であるかということに苦慮しながらやっておるようであります。これは私のほうから別に指示したわけではありませんが、そういう点についての報告をしてきております。
  21. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 私は、今度の事件憲法上の表現の自由の問題とからんではおりますけれども、だんだんの御説明をお伺いし、あるいはいま私が申し上げたような材料等々詳しく言えば幾らも切りがありません。しかし結論とすれば、私たち、いないな日本の新聞記者の長い間の伝統とは逸脱したものであるということを残念ながら認めざるを得ません。すなわち表現の自由の問題じゃなくして、そうした外部に渡し、ニュースソースを死んでも守らなければいかぬ、それがちゃんと出て、そして一人の女が懲戒免職になって退職金もなく、いまからどうなるか、こういうたいへんな事件を起こしてもらったことを、私は心から遺憾に思うものです。  しかし一方また考えますと、私たちというものが信奉する議会制度の中においては、マスコミというものと共存しなければなりません。その意味において、私は現在の報道界に対して、総理はほんとうにいかなる期待と御希望を持たれているか、それをお伺いしたいのでありますが、一体世界を歩いてみまして、朝がけ夜討ちという記者根性、あるいは政治部の記者諸君の根性、あるいは至るところの日本じゅうの警察、そういう刑事部屋で社会記者が夜おそく、いないな一緒に刑事諸君と寝泊まりしながらも取材している姿、あるいは事件があると写真班などは命がけです。こういうふうにほんとうによく働き過ぎるくらい働くといわれる日本の新聞界です。一方また、日本の特殊の制度でございますから、閣議のあとにおける記者会見などというものは世界にございません。あるいは国会の中においても、本会議はもちろんこうした委員会も全部テレビで報道できる姿、外国の行事があると大ぜいの方々が、諸君が行って、日本にマスコミとして報道されてくるこの大量な力、こういうふうに日本のマスコミは花盛りといわれているのが特徴でございましょう。しかしそのマスコミが今度は一体——それによってお互い日本の政治も監視されているのです。だから私は日本の民主政治というものはいままで発展してきたという事実を認める。しかし一方、それじゃ監視する新聞は、どう、だれによって監視されるか。本来ならば先ほど総理大臣も言われた倫理綱領、こういうものがあるのでございますが、やはりモラルによって自己規制するわけでございます。その保障がなければ、何かの場合に共同戦線を張って、おそるべきところの権力集団になるのじゃないかという心配さえ私は持つので、早い話が今度の事件一つにしましても、新聞社の編集方針以下の、ニューヨーク・タイムズと違って、レベル以下で行われる記者の個人プレーといえども、法治国家においては治外法権として許されるようなことがあるならば、次に続くものは報道の自由でなくして言論の暴力でしょう。言論の暴力に対して言論機関を持たない一般市民は一体どうするか。その諸君が憤慨したときには、これは赤裸々なるところの別な暴力が生まれてくるのではなかろうか。そうするならば私は民主政治の崩壊だ、こういうふうに実は心配するものです。  私たちの大先輩伊藤正徳さんが執筆したのは、総理が引用されたこの新聞倫理綱領です。われわれはこれをプレスコードと言っている。そのプレスコードには、名文そのものですが、第一は新聞の自由、第二は報道、評論の限界、第三が評論の態度、第四が公正、第五が寛容、第六が指導、責任、誇り、そして第七に品格とある。品格の点だけ読み上げましょう。「新聞はその有する指導性のゆえに、当然高い気品を必要とする。そして本綱領を実践すること自体が、気品を作るゆえんである。」私はほんとうに強くなればなるほどこうしたものがあらためて読み直される必要があるのじゃなかろうかと思う。政治について監視されるわれわれの立場また監視する皆さん方にこれを私はお願い申し上げたい。  そこでちょっと駄弁でございますけれども、総理並びに閣僚の皆さん、ぜひひとつ……。今度の事件が起こって以来よく引用されるのは、この「新聞と政治の対決」というレストンの本です。レストンは御承知のとおり昨年周恩来と会見して、その記事が日本の新聞にも全部載った。そのレストンの書いておるものを私は読みながら一番感じたことは、一九四三年社長と一緒にソ連に入ったときに、彼は序文にしかも書いている。入ったときに、プラウダの編集社に行って編集陣に全部部屋を案内してもらった。最後には従業員の特別劇場まで見せてもらったけれども、びっくりしたことは、そこに、驚くなかれ編集者や記者連が集まってけんけんごうごうとニュースを論じ、記事を書く、あの新聞社の心臓というべき編集室がどこをさがしても見当たらない。そこで、こうこうこういう部屋はないのですかと尋ねると、彼らはきょとんとしていたが、そのうちに私たちの質問がわかったとみえて、ニュースはこの部屋の中からは生まれません。モスクワのどこかにある政府のしかるべき機関から電線を伝わってくるのだ。つまり記者は一種の技手にすぎない。私はモスクワの経験以来二十三年間、自由と全体制という二つの異なった社会の間の相克をカバーしていままできましたが、ここにアメリカの自由とソ連の新聞政策の違いを私たちは見ている。こう書いておる。私は、そうした意味からしまして、ぜひともひとつこの本を、新聞社に対するあるいは政治家の態度からいろいろな問題が、しかも世界的に書いてありますから、ぜひお読みをいただきたいと思うのであります。  しかも、その中に、一番大事なことは、現代の奇観のうち、すばらしいながめのうちに、マスコミと名づけたまるで一枚岩のいかめしい大団体、それを分析するのが大流行、しかつめらしい自称社会学者たちが全世界から集まっては、民主主義はいかにしてこの怪物と共存し、かつ生き延びられるかと乏しい知恵をしぼっている。私はほんとうに自分自身が発禁も受けたこともあれば、勾留、検束、入ったこともありますが、そうした立場からいたしまして、今度の事件を通じてマスコミの全体の問題についても御反省なりお考えをいただく問題が多々出ていると思いますし、また私たち自由民主党なり政府といたしましても一、報道の問題についてあらためて御認識いただいた問題があろうと思うのです。議会制度の中において、これはいまのレストンの話じゃありませんけれども、やはり議会というものと、この言論界というものが併存していかなければならぬと思います。すなわち民主政治の中に浮かぶ同じ運命の船であると私は思うのですが、総理大臣は、ほんとうに長い政権の座にあられ、それまでずっとトップの政治部記者諸君にお会いいただき、そうした経験を通じられまして、いまから先の日本のマスコミの、一番大事な民主主義の共同のにない手であるマスコミ諸君に対する御見解を御披露いただきまして、私たちに自信、そして政治に対するわれわれの確信というものをお与えいただくならばしあわせだと思うものであります。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんだだいまは長谷川君から新聞報道、自由という点からその及ぼす社会的影響その他について、国家的機構のうちの、その一つとしての役割り等に触れられました。ことにおもしろく伺いましたのは、レストンのいわゆる「新聞と政治の対決」その本でございます。その中に、ただいまのようなお話を盛り込まれ、そして政府新聞あるいは政治と新聞、そういうものがいかにも対立しておるかのように一部ではとられておる、そういうことにも触れられたように思います。  私は、日本の新聞社新聞の発展の経過を見ると、たいへん日本の新聞は反骨精神が旺盛だ、そういう意味政府を忌憚なく批判し、国民に真の姿、真の理想の社会を知らすという、そういう意味の反骨精神ですが、それで戦ってきた、それは高く評価されてしかるべきではないかと思っております。  先ほど私冒頭に、民主主義基底をなすもの、・そこには言論の自由がなければならない、こういうことを申しましたが、私はそういう意味で、政府、政治とまた新聞、これは高次元においては目的は一致しておると思います。最後まで対決の状態であるべきはずはない、またそうなくてはならないと思います。  そこで、最も大事なことは、新聞国民にものごとを知らす。いま私が新聞倫理綱領を引き合いに出すことはどうかと思いますが、しかし、やはり偏向しないように教えてはもらわなければならない。だから悪を憎むという意味において、悪についてもよく知ってもらうという、そういう意味において万全を尽くされるが、同時に善についてもこれまた知らしてもらいたい。そういう意味から見ると、はたして新聞記事に偏向がないだろうか。われわれは知らされない部分も多分にあるのではないか。いま冒頭にソ連の問題を引き合いに出されました。しかし日本の新聞が、最近国際的にもどうも触れたがらない問題、しかも国民としては最もこれが大事な現代の政治課題だ、こういうことで知りたがっている問題、そういうことはよけて通られておるように見受けます。私はこういうことを考えると、その目的——これは大目的は一緒なんだから、必ず併存はできるのだ、お互いに隠し合うとか、政府が隠せばあばくとか、これが仕事だ、その点ではいかにも対立抗争のように見えますが、そうではなくて、やはり国家目的を追求しておる、国民の利益を追求している、その意味においては、目的が一緒なんですから、必ず私は併存できると思います。これを、最初冒頭に申しましたように、政府といたしましても、これは尊重すべきものは尊重する、報道の自由、言論の自由、表現の自由、これまたわれわれはどこまでも尊重していかなければならない。しかし、みずからがきめられた倫理綱領、これまた十分守っていただきたい。そうすれば併存は容易だ、かように私思います。しかも私が、最近はだいぶ世代が変わっているからと思いますが、いわゆる古い新聞人、それらから聞かれることは、どうも最近の行き方についてはわれわれも反省を必要といたします、こういうことを率直に言われる。私自身も、政治そのものが何よりも反省を必要とすること、これはもう問題のないことでございます。新聞人自身もさような言い方をされると、私ども、ほんとうに同じように国のことを心配しているのだ、その意味においては一致するのだ、かように思うのでございます。  私がいろいろ今回の問題で誤解を受けている点もあろうと思います。しかし、外交機密について、これはもうどこまでも守られておる、また守らなければならない、こういう点のあることも各党とも承知しておる。しかし、沖繩返還交渉において、発表したもの以外に秘密事項はないという、これはもうはっきり私は胸を張って国民に言い得ることでございます。この点は、先ほど外務大臣も答えたとおりでございます。さようなことを考えながら、ただいまのプレスコードの問題について私が触れましたこと、あるいはお気にさわった点があるかわかりませんが、私はこれが正しい姿ではないだろうか、お互いにそれぞれの分野を守って初めてその目的を達することができるのじゃないか、かように思います。
  23. 櫻内義雄

    櫻内委員長 三宅正一君。
  24. 三宅正一

    ○三宅委員 ただいま長谷川君の質問を承っておりまして、私は外の空気とだいぶ違うなということを痛感いたしました。今回の事件は、横路議員が機密文書を国会で暴露いたしまして、それから西山太吉記者蓮見喜久子さんの逮捕となって、そしてその後準抗告で西山記者が釈放せられるという経過をたどりまして、またたく間に戦後最大の大きな事件になってきたと思うのであります。いまでは戦後最大の新聞政府との対決というかっこうになり、そうして民主主義と官僚的秘密政治との対決となってきたと私は感じております。  あの事件が起きて、社会党が七日の日に代議士会をやりまして、戦う態度をきめましたその日に、院外におきましても、事件のたった二日目でありますけれども、大きな盛り上がりを見ましたことは、私はこの事件は、政府がどう考えておられるか知らぬけれども、非常な大きな、第二の、尾崎、犬養両氏が先頭になって桂内閣を倒しました院外における大きな運動に転換する可能性を持っておる。あなた方が考えておられるよりも、もっと深刻な問題ではないかというふうに考えておるわけでございます。  これは、この事件が起きてあとの総理大臣の発言、衆参両院における発言だとか廊下で新聞記者に会われて話された発言だとか、いろいろを見ておりまして、ずいぶんきょう言ったこととあす言ったことと違うし、ずいぶんうろうろされて、また憤りも感ぜられたり、それから、どうしてこう政権の末期というものはいろいろの事件が起きるかということで、総理もほんとうに焦燥されたり、いろいろの空気があったと思うのでございます。  私は、その意味で、この間ちょっと週刊誌を見た。あらゆる週刊誌がいろいろ書いておりますけれども、週刊誌を見て——総理、これはごらんになっておられなかったら、あとから差し上げたいと思うのだけれども、ずいぶんいろいろのことを書いている。私どもの知らない、閣僚の名前などもずいぶんいろいろの人の名前が出てくるし、外務省の内部の問題などについてもいろいろ出てきておりまして、これじゃ総理が少しいやな顔をするのも無理はないという感じがいたしたのであります。  それで、私は、外の空気を一番よくあらわしておるのは、その七日の日に寄られたいろいろの諸君の怒りのぶちまけだと思うのであります。あのときに「多くの人々が、それぞれの立場で提案し、意見を述べた。」という書き出しで書いております一節をちょっと読みますと、「「沖繩返還協定を結ぶとき、佐藤政権は米国と密約した。日本に不利益になる形の(売国的といってもいい)約束をしながら、その事実を、ひたかくしてきた。国会で追及されてもウソをついて、主権者である私たち国民をダマしつづけてきた。そこで私たち国民の代表が、証拠物件をつきつけて糾弾した。と、佐藤政権は、秘密を洩らした外務省の役人(女性秘書)と、その秘密をスクープした新聞記者逮捕した」——これが、わかりやすく書いた、こんどの事件のいきさつだ。平易にいえ「悪いヤツは、罪を犯したのはどっちだ」というわけだ。こんな暴挙が許されていいのだろうか。」これが一人の人の発言であります。  それから、「太平洋戦争中、「竹槍ででも戦え」という東条政権の政策を、毎日新聞記者として紙面で批判、そのために報復的に戦場へ送られた新名丈夫さんもマイクの前に立った。言論弾圧の被害者だけに「私はこのような事件に接すると腹の底からシャクにさわるんです」ときり出した。「天皇制下の戦前には、天皇に対してウソをついたというだけで内閣が倒れた。昭和4年の田中内閣が」」——ここにも田中さんおられるかもしれませんが、おとうさんですが、「田中内閣が張作霖暗殺事件について真相をかくした。それが天皇にわかって総辞職した。新憲法で、いまは主権者は国民であり、国権の最高機関は国会です。その国民に対して佐藤政府はウソをついた。」「ひっくくるべき(逮捕すべき)は佐藤なんだ。それなのに佐藤は権力をカサに問題をすり代えてきおった。こんなことが許されては民主主義は成立しない。」「インチキの交渉をかくすために、役人が極秘のハンコを押す権限があるのか。国家公務員としてこれこそ、実にけしからん行為ではないか。第三に、新聞記者は個人で取材しているのではない。社の代表である。社の背後には全国民がいる。西山記者をひっくくったということは国民をひっくくったことになると思う。」、「この熱気を佐藤に味わわせたかったね。この会場の空気を知ったらこわがるだろうね」と書いておるのであります。  私は、週刊誌などを引用いたしますることが必ずしもいいかどうかは知りませんけれども、しかしこれは、週刊誌が自分の思惑で書いた記事ではなくて、その抗議の集会において国民がしゃべった、話をしたことでございまするから、これを引用したわけであります。あとから上げますから、ごらんになっておるだろうと思うけれども、ごらんを願いたいと思います。  そこで、政権の末期になるといろいろのことが起きて、いまも申しましたように、あなたもたいへん不愉快なことも多いだろうと思います。だからして憤激をされたり節度を失って、廊下で記者会見をやって怒声を発せられたり、毎日言われることが変わったりするのもあり得ることと存じます。そして、そのあげくに二人の逮捕になったのだと私は思っております。聞くところによれば、この事件逮捕に警察側は難色があった。それをあなたが指図されたということが私の耳に入っておりますが、まさかそんなことはないでしょうね。かつて指揮権の発動で逮捕を免れられたあなたは、今度はかよわき女性を含む二人を逮捕さすために指揮権を発動された。まさか指揮権というものではないでしょう、あのときの吉田さんのときとは違います。そうじゃないけれども、引っぱれというインフルエンスを及ぼせられたということは私はほんとうじゃないかと思いますが、一言でよろしいから、うそならうそと答えてください。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が指揮したようなことはございません。
  26. 三宅正一

    ○三宅委員 そこで、この問題の経過と本質について一言触れまして、それから私の本格的な質問に入りたいと思います。  今度の事件は、外務省の女の秘書とそして新聞西山記者国家公務員法違反容疑で逮捕されて、刑事事件に発展したことが一つのまず問題点であります。問題の文書外務省当局が極秘文書に指定したものなので、事務官行為公務員秘密を守る義務に違反したものであり、また事務官に法違反の行為を頼んだ記者も法に触れるというのが政府側の言い分であります。これが第一点。  第二点は、しかしこの事件は、単に官庁の秘密が漏れたことについての刑事事件の追及として処理されるには、あまりにも重大な問題を含むものといわなければならない。秘密とは何かという問題をはじめ、国家機密国民の知る権利との関係について正面から取り組み、徹底的に検討が行なわれなければならぬ問題だと考えます。そうしてこの事件の場合に、漏らされた秘密というのは、沖繩返還をめぐる交渉で日米間に軍用地の復元補償費についての密約があることを裏づける資料であった。政府は、このような密約の存在に関しては、国会でも一貫して否定する態度をとり続けてきた。沖繩返還という国民の重大な関心事である問題について、政府は、国民に目隠しをしたばかりでなしに、国民を欺いてきたといってよいのである。密約があったことを証明する資料が明らかにされることは、確かに政府にとっては都合の悪いことでありましょう。しかし、政府にとって都合が悪いということが、そのまま国益に反するといえないことは言うまでもないことでございます。国家機密の保護とは、決して政府による情報の独占を保護することを意味するものではない。もし政府が自分に都合のよい情報だけを国民に伝え、不利益な情報の伝達はこれを国家公務員法などで処罰するということであれば、国民の知る権利は紙にかいたもちとなります。政府にとって不利になる情報を入手した記者が直ちに国公法違反として処罰されるというのでは、事実上取材活動はできないことになり、国民の知る権利は大きく制限されるばかりか、政府の非を糾弾する新聞の使命は果たせられなくなってしまうのである。国民を欺こうとした政府行為とそれを国民に知らせようとした行為のいずれが罪が重いのか、今度の事件については、まずこうした観点からメスが入れられなければならないと私は信じます。しかしながら、これらの点についてはすでにもう衆参両院の同僚議員その他世論がいろいろ問題にしておりまするので、私が本日首相に聞きたいことは、それよりもあまり触れられなかった根本の問題について二、三点聞きたいと思います。  前置きが少し長くなりましたが、首相は、立法、司法、行政の三権に加えていわゆる言論権とでもいうべき第四権、すなわち取材の自由、報道の自由、知る自由、こういう新しい言論権ともいうべき権利を法制的にも、慣行的にも確立することが民主主義の発展の上にとって非常に必要であるという点について、どうお考えになっておるかということであります。それに対応いたしまして、国民が知る権利があるということでなしに、政府には国民に知らせる義務があるという点、言論権の一面といたしまして、政府には国民に知らせる義務があるということの法理が世界的に確立されつつあるという傾向に対してどうお考えになるかということであります。今日のごとく外交も多元化し、そうして情報や伝達の機能が発達いたしまして、いわゆる間違った情報だけを政府の都合で流しておるようなことになれば、すなわち国民機密の情報を教えない、国民に間違った情報だけ流すという大本営発表のようなことがもし行なわれておりまするならば、それは犬に引っぱられた羊と同じで、管理社会における国民を盲目にするものであります。主権在民の今日におきまして、私は、いわゆる言論権というような第四権をひとつ立法化していく、具体化していくことが今日ほんとうに必要だということを痛感いたします。この点について総理の御所見を承りたいと思う。  私は法律専門家ではないからして、こういう方向に持っていきますることが少なくとも管理社会において、そうして主権在民の民主主義社会において、ほんとうに必要であるというその傾向について総理はどうお考えになるか。すでにイギリスにおきましても、フランスにおいても、ドイツにおいても、アメリカにおきましても、政府の情報を国民に知らせなければならぬ義務を法律化しつつありますることは御承知のとおりでございます。こういう点において、全体主義の国家でなしに民主主義国家において、この道を広げていかなければならない。その意味においては、知る権利ということはやかましく国会の論議において言われましたが、政府国民に知らせる義務がある、こういう考え方についてどうお考えになるか。さっき長谷川君がレストン記者の「新聞と政治の対決」を引っぱり出して、自分の都合のいいところだけを引っぱって話をしておりましたから、私は私なりの判断をひとつ申し上げますけれども、レストン記者は、ニューヨーク・タイムズの副社長といたしまして、キューバの危機のときにスクープいたしました情報を手に入れまして、これを発表することが国益であるかどうかということについて、彼自体が言っておりますことは、数カ月苦慮したというのであります。それで結局発表しなかった。ところがキューバ事件のあれを発表しなかったことが、長い目で見れば、アメリカの国益に反するということを彼は悟った。CIAあたりが、あの社会革命で流れてきました反革命派を扇動して、そうして間違った情報を出してあれをやって、結局ケネディ政権のもとにおいてキューバ対策はそれこそ反動的な役割りだけしかしなくて、アメリカの威信を失墜したことは総理御承知のとおりであります。そういう大きな関係からして、それで今度はベトナム戦争の情報が入りましたときに、レストン記者は、これはもう発表すべきだ、いま現に戦争をやっておる事態でありますけれども、大きな意味国益の見地からして発表すべきだということで、発表をいたしましたことは御承知のとおりであります。  アメリカは、一九六七年、ベトナム戦争のまつ最中に情報の自由に関する法律というものをつくりまして、そうして外交、防衛の問題についても知らせる義務がある、このような外交秘密だ、防衛の秘密だといって秘匿する神権はないんだということを確立いたしましたことは御承知のとおりでありまして、こういう傾向に対しまして、民主主義の国としては当然そちらの方向へ行かなければならぬとわれわれは考える。その点について、したがいまして機密保護法なんという問題は、あとから申しますけれども逆の道でありますが、総理に一言だけ御答弁を願いたい。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 三宅君とこういう問題でまさか論争するとは思わなかったのですが、意外な出会いになりました。  ただいまいろいろ広範にわたる御意見を述べられました。私どうも要点をとらえにくいのですが、それぞれ分離してお尋ねいただくとたいへん答えやすいので、この次はどうかひとつそういうようにお願いをしたい。  そこで、ただいま言われるこの三権分立、それに対して第四権をつくったらどうか、これが趣旨だろうと思います。ところで私は、さっきも申し上げたのですが、民主主義民主政治基底になるものには言論の自由がある、これは政府が守らなければいかぬ、かように申しておりますので、いわゆる第四原則、第四権利、かように申していいかどうかわかりませんが、また法律をつくるべきかどうか、そこはなお検討を要すると思いますけれども、ただいまの民主政治のもとにおいては、この言論の自由、それに当然つながる表現の自由、取材の自由、そういうことは拘束すべきものではない、拘束しようとしたらそれはとんでもない間違いだ、だから言われるように、民主主義の国においてはそのことはちゃんと確立している、全体主義国は別だ、こういうお話でございます。私もそのとおりだと思っております。でありますから、ただいまの点では私も同一の見解に立っておる、そのことをはっきり申し上げたいと思っております。  ただ、レストンの書巻を引用しての、政府に知らす義務、こういうお話、国民が知る権利、同時に知らす義務がある、こういうことですが、これは政府政府なりに知らす義務、これをやっておる、ことにただいま御提示になりましたようなベトナム戦争というような問題になれば、これは国家の大問題ですから、国民が十分理解し協力しない限りこれは目的を達するわけにいかないでしょう、これは当然知らす義務がある、かように私は思いますし、また政府もさように努力すると思います。ただ、先ほどの長谷川君にも申しましたように、政府側から出すものについては、どうもそのまま信頼されない。これは間違いじゃないか、偽りがあるんじゃないか、隠しているのじゃないか、こういうような疑問をいつも投げかけられる。これは私は、反骨精神というような表現で一応申しました。私は、それなりに報道機関の当然の職務だ、かように理解しておりますが、またそれでなければ、先ほどレストンの「新聞と政治の対決」で最初に書いておる、ソ連に編集室はない、そういうところの問題にぴったり合う、そういう話になりますから、これは反骨精神けっこうだ、また言論の自由という限りにおいて、そこらに十分検討が加えられてしかるべきだ、こういう意味、そこらからやはり新聞倫理綱領というものもつくられたんだ、かように思っておりまして、私どうもただいまの第四の権利、三権分立につけ加えて四権分立にしろというお話には、必ずしもただいまの状態で結論をまだ得ておりませんけれども、しかし言論を尊重しろ——ただ尊重という程度ではなくて、これは基本的な問題だということだけは私も認識しておりますから、その点でお許しを得たいと思います。
  28. 三宅正一

    ○三宅委員 佐藤総理、あなたは問題の本質を十分に把握しておられないと思うのでありますが、あとの議論の進行の上でその点がわかってくると思います。私が第四権と申しまするのは、日本などは三権分立、これがオーソドックスの民主主義の政治形態だと思いますけれども、しかし、たとえば中国の国民党にいたしましても五院制度で考試院と監察院を持っている。政治の金の使い方を監察いたしまするに監察院も持っている、考試院も持っているのでありますが、今日のような時代になってきまして多元化し、複雑化し、しかも国民に知らせなければ政治がほんとうに必ず間違った方向へ行くという危険性などがあります時期において、こういう方向政府の知らせる義務、国民の知る権利、そしてこれを守りますために独立の機関としての言論院のようなものがあって、そして政府の都合のいいことだけ発表させないというぐらいの姿勢を、これが私は将来の一つの大きな研究題目だと思って、あなたもその意味じゃ反対されたわけじゃないから、ともに研究をしていきたいと思うのであります。  そこで、権力の性格というものは、長く続けば必ず腐敗するというのが政治の原則であります。そして官僚は、都合の悪いことは隠したがる特性を持っている。そうして都合の悪いことでないことまで隠すという特性がある。これは天皇制時代からのいわゆる悪い伝統が、まだ日本には特に残っておると思うのであります。軍人官僚、軍部などにおいては、軍機の秘密ということでもってこれまた戦前ひどい目にわれわれは出会ったわけでありますが、こういう状態があるのであります。その意味におきまして、したがって、新聞にとりましては、すっぱ抜きは新聞国民に対する義務であると私は考えるのであります。こういう点について、あなたなどとちょっと考えが違いますのは、政府に協力するんじゃない、政府なんというものは権力が長く続くと必ず悪いことをする危険性を歴史の教訓で持っているのですから、お互い反省しないと。したがって、すっぱ抜いて政府をたたき、政府に反対し抵抗するというような、そういう国民の姿勢が許されておるところにほんとうの意味国家の繁栄がある、民主主義の繁栄があるという点がわからないと、昔の理念でもって、政府が出したものさえ承知すればよろしいということじゃ問題になりません。したがいまして、アメリカにおきましてもすでに確立されておる伝統といたしまして、政府新聞の検閲をしてはならない、これは前から、日本でも戦後においてはある。その逆で確立された伝統は、新聞政府を検閲するということであります。政府言論機関の言論について検閲などする立場にない、新聞政府を検閲するという義務がある、これが私は、ほんとうの意味民主主義の行き方ではないかと思うのであります。主権が国民にあって、国民に知らせる義務やいろいろ持っておるその新聞が節度のあることはもとよりわかっておりますけれども、これが私は民主主義の行き方じゃないかと思うのであります。この点について、あなたの内閣は言論弾圧を、今度の問題だけでなしにずいぶんやっておりますよ。たとえば一、二の例をあげれば、田英夫君や大森実君がやめた例をごらんになりましてもわかります。田君は国会にも出ておりますから、あなたは御存じでしょう。田君が四十三年北ベトナムの報道をやったら、もう一週間たったら自民党の広報委員会と逓信部会が部会を開いて、経営者に圧力をかけて田君をやめさせております。そこへいくと、同じ民主主義の伝統でも日本とだいぶ違うのはアメリカでありまして、CBSテレビがベトナム戦争の実態を、すなわち米軍と南ベトナム軍が解放戦線の捕虜を虐殺したのをのせますと、軍のほうはおこって、これはでっち上げだといって政府筋に言った。そこでもう一ぺんさらに写真をとりに行きまして、これをもう一ぺん再放送するという勇気がございます。そして、これに対して日本にもこの伝統というもの、がだんだんできていかないと、また非常な危険な方向に入っていくということを心配をいたすのであります。まずこれで一分か二分答弁してください。時間がないからあまり長いのは……。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 新聞政府を検閲をする、私どもは新聞を検閲する、そういう制度はいまありませんけれども、政府新聞が検閲する、これはお断わりいたします。三宅君も、もちろん節度はあるがと、かように言われたから、それがやはり私の断わる理由でもあります。節度が守られれば、これはけっこうです。しかし、それが問題になっているんです。今日問題になったのはそうだと、かように理解しております。
  30. 三宅正一

    ○三宅委員 押し問答をしていると時間をとりますけれども、佐藤さんの感覚というものは私とだいぶ違うと思う。一体全体ずいぶん、たとえば汚職の問題にしても、それからこの間の外務省秘密文書の問題にいたしましても、あれは黙っておってとうとう外へ出ないと、大局的な長い目で見て国益に実際反しますよ。だからして、間違った政府の不正だとかいろいろなことについて、それこそ主権者を代表する立場で国会もやりますけれども、国会だって資料が出てこなければ、極秘極秘で資料を提出しなければやれぬじゃないか。いま言ったことは、私はむき出しのことばで言っておりまするけれども、政府新聞を検閲するというのは、これは全体主義の国のやり方であり、民主主義のほんとうに進んだ国は、もちろん節度はあるけれども、新聞政府の非違を、それを検閲をする。検閲と言ってはことばはおかしいけれども、警察的意味があるけれども、検閲をし、そうしてその真実を知らせる、これが非常に大きな問題だと私は思います。  その次に私が申し上げたいことは、第一、機密機密ということを言いますけれども、平和憲法を持った国に機密などはないという立場にだんだん持っていかなければいけない。外交だって何だって、もちろんその経過において公表のできぬことは、話が済んだら公表したらいいじゃないか。調印ができた時期に、あなたは、福田外務大臣にしても公表しておられますれば問題はないのに、機密にしておって、いまごろになって解除しているじゃありませんか。私は、ほんとうの意味民主主義を考えますと、国家機密よりは思想、心情、良心の自由が優先するという原則をほんとうに立てなければならぬと思うのです。これについては、第二次世界大戦が新しい法理を確立したと私は思います。それは、第二次世界大戦の軍事裁判におきまして、東京裁判もニュールンベルグの裁判もそうでありますが、あの裁判におきまして新しい事実は何かと申しますと、平和と人道に対する罪ということが初めて刑法上の罪になってきました。それで、その裁判におきまして、犯罪行為を命令した者が処罰されるのは当然ですが、命令されて犯罪行為を行なった兵卒までやられておるのであります。日本の東京裁判にも出ておりまして死刑になった軍人がおりますが、東京裁判でなしに、その裁判で死刑になった軍人がおりますが、明らかに間違った人を虐殺するようなことを命令されて、とても良心が許さないというのに、上官の命令は朕の命令と思えというようなことで重ねてやられて人を殺した。それが捕虜虐待となったり、虐殺となってその人が殺されておる。したがいまして、第二次大戦がきめました新しく確立された法理というものは、命令した者も処罰されるが、命令に従って犯罪行為を行なった者も処罰されるということになってくる。でありますから、良心に反すること、平和に反することについては、上官の命令といえどもこれを聞かないというこの法理というものは、聞くべきでないという法理、宗教、倫理の立場においても、その昔におきましても平和に関する犯罪とか、こういうことについてはもちろん倫理的には罪とされた、宗教的にもされたのでありますけれども、法理上こういうことが確立いたしましたということは、これまで宗教的、倫理的な罪とされた人道、平和等に対する罪が法律的に法理として確定したという意味は、すなわち私はいかに主権在民の国において、民主主義の国において、その権力者の命令でも、基本的な良心の自由だとかそういうことに反することについては、それよりも上だという新しい意味の法理というものがだんだんと確立されつつあると私は考えておるのでございます。こういう点について、またあなたに答弁を求めても食い違うことは明らかだからして、時間のむだかもしれませんけれども、どう考えるかちょっとお伺いをしたいと存じます。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも戦争裁判のことをいまになって考えますと、いろいろ言いたいこともわれわれにもあったと思っております。これは一方的な判決である、裁判である、かように私は思いますから、これを引き合いに出されることはいかがでしょうか。
  32. 三宅正一

    ○三宅委員 ばかなことを言っておられますね。あなたの言われたことも、明治の者として私どもにもよくわかりますよ。わかりますけれども、問題はそうじゃない。たとえばドイツにおいてもナチスが六百万人のユダヤ人を虐殺するというようなああいう事件、南京において日本軍がそれこそ中国人を大虐殺したというような事件、そしてそれは、人間というものがいかにそういう場合に狂うかという証拠でありますけれども、上官が狂って命令をして、それで自分の良心に反すると思ってもやらされるということについては、やった者も、また命令した者も処罰されるという法理が確立いたしたということ、そして日本の新しい憲法というものは、法律でもって基本的人権は縛ってはならぬとなっているでしょう。そういう意味において、新しい方向というものはそこへ行きつつあるのだ。その新しい法理というものが、今度の言論の問題、今度の事件についても、うしろ向きに機密保護法をつくりたいという考えで対処するのでなしに、前向きに対処していかなければ、それこそ世の中をさかさまに引きずっていくことになるという、その意味において私は聞いておるのでありまして、あなたは顧みて他を言うような——あなたはほんとうにわかっておらぬぞ。私の話がわからぬと言うけれども、私の言う意味がわかっていないというほど、あなたは頭がうしろ向きになっておるのだ。答弁は要りません。
  33. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま言われたような大虐殺の事例から全体を批判されるから、私どもにも言い分がありますということを言ったのです。そういうあげられた事例について、これは当然でございますけれども、その他のことについては私は言い分がある、そういうことを言っているのです。
  34. 三宅正一

    ○三宅委員 あなたは話を横へすりかえる名手でありまして、今度の事件なども、言論に関する、それから国家機密に関する、国益に関する大きな、高い次元の問題をあっちのほうへ持っていっちゃって、どうもほんとうにすりかえるくせがあって、そういうことがじょうずだから七年半も政権を続けたのか知らぬけれども、私はどうもあまり尊敬しませんよ、そういう態度は。  そこで私は、だからして、一体今度の問題で一番大きなもう一つの問題点は何であるかというと、政府がうそをついたということですよ。(「ついてないよ」と呼ぶ者あり)ついてない、ついてないと言うけれども、あなたがあやまられて進退についての表現までされましたのは、うそをついたということだ。そんなことをあなた、うそをつかぬなんと言って強弁してはいけません。少なくとも、福田さんまでが言われたのかどうか知らぬけれども、局長などは、そん事実ありません、電報打った事実もありません、電話で……。うそじゃないか、そんなことは明らかに。そういうことについてごまかしてはいけません。あれはあなた、福田君が言われたとおり、あのときに、確かに交渉はあるけれども言えない、それから相手のあることだからして、四百万ドルの問題でも、あなた方の立場から見ればけしからぬと言われるかもしらぬけれども、これだということでいかれまするなら、反対、賛成は別にして、その態度ならよろしい。いやしくも国会に対してうそを言い、主権者たる国民に対してうそを言う。今度の罪なんというものは、うそを言う罪というものは、私は西山君を引っぱったり蓮見さんを引っぱったりすることよりはもっと大きな罪であって、佐藤総理大臣をひとつ逮捕しなければならぬけれども、法律がない、その法律が。逮捕しない。そういう法律がないのはどういう意味であるかと申しまするならば、それは行政的な次元よりも国会議員の立場というものは、政府立場というものはもっと高い次元だということであります。  イギリスにおきまして、何と申しましたか、陸軍大臣がスキャンダルを起こした。それが問題になりましたときに、男だからして——男だからといっていいわけじゃないけれども、スキャンダルが起きたこと自体は、それはそれとしてひとつ反省されればよろしいけれども、うそを言ったことはけしからぬといってとうとう首にしたじゃございませんか。イギリスの国会の伝統というものはそれですよ。  日本の憲法においても、うそを言った、明らかにうそを言った、取り消してそれでよろしいというものではありません。憲法において、うそを言って国に不利を与えても引っぱられたりいろいろすることがないのはどういうことかといえば、イギリスに始まった議会制民主主義の伝統のとおりに、それはもっと高い次元において政治的責任をとるということであります。日本では、どうも言い間違いでした、前言を取り消します、それでいっておりますけれども、イギリスの国会の伝統は、私もそう詳しいことは知りませんけれども、ともかくイギリスの国会の伝統は、うそを言ったらそれはもう承知をしない。そうして一ぺん言ったことは取り消させない。言論に対して責任を持ち、高い政治家としての進退については、その点では責任を持つという意味におきましても、私は、確かにあなたも責任を持たれましたからこの間ああいう発言をされましたので、いまさら、あしたやめるのか、いつやめるなんというその質問をここで繰り返したいとは考えません。しかし、根本的な問題について、私はあなたに、もうあなたもやめられるわけになるからして、お互いに政府対野党として対決する機会があるいはこれが最後かもしらぬ、私とあなたとの関係において。それで私は、友人としてあなたに一つ申し上げたいのであります。  それで、今度のうそつき事件につきましても一、政府のうそつき事件についても、福田君についても処分するとかなんとか言っておられるけれども、処分されるのはあなたですよ。それでトカゲのしっぽだけ切って、そしてあなただけ残るという行き方、もう内閣それ自体が責任を負われるべきときだと思うのであります。しっぽ切りには私は反対だ。それは福田君の責任も重大だけれども、しっぽ切って自分だけが助かろう、そんなことを考えておられるので、この間の意思表示だから、それはそれでわかりますけれども、そこでこの間からの議論を見ておりましても、私はやはりこの問題一つについても非常な対決、食い違いがある。結局は国氏に判断してもらわなければなりませんから、ほんとうなら解散すべきですよ。しかし、いまあなたは解散するということを考えられたって、閣僚が判を押しやしない。あなたが解散してやったら、あなたの総理で解散なんていったら、それこそべちゃ負けに負けると思いまするからして、それは承知なんかしませんよ。吉田さんの最後のときと同じことで、承知しません。したがって内閣総辞職をやられるべきであって、私は早いほうがいいと思いますけれども、あるいはあなたとすれば、予算が成立した機会と考えておられるかもしらない。それで、内閣総辞職のやり方について私はあなたに承りたいのであります。  その前に一つ、二つ、これも私はあなたに伺っておかなければならぬ、認識を伺っておかなければならぬことがあります。あなたはいま、日本の現状についてどの程度の危機感を持っておられますか。いまの日本の現状というものは、日本の国に三つの大きな危機があった。明治の維新において、中国まで領土化した外国の侵略に対しまして、西欧帝国主義の侵略に対して、明治維新が日本の第一の危機であります。第二の危機は、戦争に負けた戦争のときであります。そうして私は、それに匹敵する第三の危機がいま来ておると思うのだが、あなたはそれだけの危機感を持っておられるかどうかということが、私は実は心配しているのであります。どういうことかと申しますというと、明治維新の改革をやって明治政府ができまして、われわれの先輩大いに努力いたしましたけれども、日本人の悪いくせというものは、行き過ぎちまうということであります。節度が足らないということが、私は日本人の欠点じゃないかと思うのです。だからして、とうとう世界じゅうを相手に、富国強兵といっておって軍備で興った日本が軍備で滅びたのが第二次大戦、この間の大戦のときの経過であります。私はいまの危機は何かと言えば、経済で興った日本が経済で滅びる危険性があるということでございます。あなたはしばしば、GNPがどこまでいったとかなんとか言っておられるけれども国内自体についてだって、過密過疎の問題から、物価から、公害から住宅難から、交通事故から、私はこれだけだってほんとうに危機だと思いますけれども、もっと心配なのは、国際的に孤立化しちゃったということでございます。いまのような根性でやって、この間私は、実は沖繩の尖閣列島の問題を見たいので、休みを利用いたしまして個人的に行ってきました。それで八重山群島へ入りますというと、驚いたのは、日本の不動産業者や会社が金を持っていって、坪百円ぐらいでもってあの土地をだあっと買い占めちゃっている。ああいう状態で国土を、先祖から受けて子孫に残さなければならない大事な国土をめちゃめちゃに、営利主義のためにしてしまうという姿勢で外国へ出ておりますれば、国際的にも孤立することは明らかですよ。そうして、もう一ぺん排日運動が方々に起きたときに軍備を使うという姿勢をとれば、東条英機の亡霊がまた出てくることは明らかです。私はその意味において非常な危機感を抱いておるのでありますが、おそらくあなたも、そういう点についての憂慮は持っておられると思うのです。思うのですが、そういう状態が来た一番大きな原因が、どこにあったかということを私はあなたに聞きたい。私の見るところでは、私のほうにも責任がありますけれども、力の足らぬ点がありますけれども、一番大きな原因は、二十数年にわたって自民党の一党政権が続いたということだと思う。その大きな累積したひずみが今日の日本の危機を来たらしておることと思うのでありまして、かりに福田君がなられるか、田中君か、だれがなるか知らぬけれども、かりに次の総裁が出てきましてやったって、いまの姿勢を少しぐらいことばだけ直したって、あなたが内閣をとられたときだって、人間尊重ということは言われたでしょう、社会開発とか言われたでしょう、言われたけれども、いわゆる大きな資本の営利主義というものに巻き込まれてしまって、できなかったじゃありませんか。その意味におきまして、私は、ここで政権をかえなければならぬ時期が来ておると思うのであります。その政権をかえるという意味におきましても、私は、あなたにひとつ大きな英断と決断を持ってもらいたいことは、二十一年続いた政権のたらい回しをまたやって、党内で権力闘争などをやるようなばかなことはやめて、あなたは一番早い時期に総辞職をされる、そうして自民党総裁の地位は残っておるのだから、あなたの先輩の吉田茂氏が、百四十三人というほんとうにいまの野党の持っておるよりも少なかった、比較第一党にしかならなかった社会党に投票されて、片山内閣をつくられて、ともかくこういう慣例をつくろうとされましたことが、次に吉田さんの政府が非常に長く続きました一つの原因なんですよ。今度はあなたが、もうここで、またあとの内閣を自民党で続かせるということではなくして、選挙管理内閣をわれわれにつくらせる。やりなさい。総辞職をして、すぐ総理大臣は選ばなければならない。そのときに総裁として長い目で見たら、ほんとうに大局に立って考えたならば、総裁としてはここでひとつかえなければならない。野党連合内閣をつくらせて選挙管理内閣をつくらせる。それは、少なくともあなたの内閣よりは、野党の内閣でも社会保障にもっと熱心になり、公害対策にもっと熱心になり、軍備の増強などは押えて、諸外国の軍国主義化などの疑問に対して大きく国際的にも寄与するということは、もうだれが見たって明らかなんですよ。それはあなたが、先輩の古田さんが考えたと同じように、特に人間は功をなせば去るということわざがあります。そうして大悟一番した人が、欲のない形において、一体日本の民主主義をどう進めるかということをほんとうに考えられまするならば、私は、その点について野党に選挙管理内閣をつくらせることが適当だと思う。その上で選挙をやって、それでも野党の未成熟によって自民党がまたよけいとられますならば、それでほんとうに安定します。そうでなしに、たらい回しをして、それで金力を使ったりそういう立場でもって選挙をやられていったら、日本の国はしまいに、ちょうどあぶないあぶないと言いながら大東亜戦争に入って滅亡したと同じように、経済のいわゆる高度成長の政策の行き過ぎのために、経済で興った日本が経済で滅びる危険性があると思うのであります。この点についてあなたどう考えておられるか、ひとつ——まあ答弁ができぬかもしれぬけれども、簡単に……。
  35. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御満足がいかないかもわからないが、答弁はできます。  私は、ただいまの危機感、この御指摘、これは私も同感である。同じような考え方で実は心配をしております。しかし、私は政府をつくっておるのですから、ただ心配だ心配だと言うだけでなしに、それに対する対策を立て得るのです。これはどうも三宅先輩とはちょっと違う。そういうことですから、これは心配はしておる、そしてそのことを考える、こういうことを申し上げる。  その次の、いわゆる選挙管理内閣をつくれ、こういうお話ですが、私は、選挙管理内閣をつくると言いながら、同時に社会保障をもっとやるとか、何もやるかにもやる、平和外交を進める、これはもう選挙管理内閣じゃないな、そこまで政権がほしいのかなと実は思ったのですが、政権の授受、このでき方は、ちゃんといままで国会が、総理の任命権がございます、したがって、これを乱るような形で、幾ら都合がいいからといってそういう方向には私は進むべきではない、かように思っております。吉田さんが第一党、これが過半数とれなかった、そういう時代のこともよく知っております。私はその時分に政界入りをしたばかりでございますから、これも記憶に存するところであります。しかし、私は、吉田さんが第一党でなかった、そういうところでいさぎよく譲られた、こういうことは望ましいことだ、これは憲政の常道として当然のことだ、かように思っておりますが、それだからといって、いまの状態でやはり国会できまる事柄を云々するわけにはいかない。これは国会で総理はきめればいい、かように私は判断しております。ただいまの点で、以上の私の所感を申し上げておきます。
  36. 三宅正一

    ○三宅委員 佐藤さんは、全く顧みて他を言って、私は気に入らぬわ。吉田さんが、社会党は百四十三人の比較第一党でほんとうに小さいものであったけれども、憲政の道をつくるために押えてやられたでしょう。それから、いまあなたは賛成だとは言われなかったけれども、識者は、二十何年自民党の一党政権が続いたことがあらゆる弊害につながっておるのだから、憲政の常道で佐藤内閣のあとにまた自民党のたらい回しをやるのでなしに、少数党だけれども、反対党に政権を渡す、それで選挙をやって勝ったものがもう一ぺん安定したものを持つというその行き方をとることが——そのルールをひとつあなたつくらぬか、自民党総裁として党内をまとめて。総理、古田さんはあなたの党の票をちゃんと片山さんに入れたじゃないか、それをおやりなさい。それを選挙管理内閣が社会保障ができぬ。そうして、少なくとも国民は、社会党にまかせれば、あなた方の党でやった社会保障よりは、平和政策だって何だって、それは少なくとも軍備の増強などは押えるということについての信頼感はあると思うのであります。私はそういう意味において話をしたのであります。  私は、この意味におきまして、ひとつほんとうに佐藤さんが最後をきれいにしなさい。私は吉田さんを人間として尊敬しているけれども、あの最後は実にきたなかったです。ほんとうにみじめだったです。ひとつ、あなたがどういう政治をやった、あなたがどうしたということは後世の史家が判断することであって、棺をおおうて名定まるというけれども、少なくとも主観的には、日本のほんとうの民主主義を樹立するために戦うという気がまえがなければならぬし、それから欲を失ったほんとうの大悟した気持ちというものが、私は、日本の方向、政治のルールをきめるのに絶好のチャンスだと考えますので、その点をお考え願いたい。私どもは、もしあなたがそういうことについてもなお変な態度をとられまするならば、いやなことだけれども、もうここへ来てやめることはきまっておるのに内閣不信任案でもないけれども、もう一ぺんあなたと本議場において対決することを申し上げて、私の質問を終わります。
  37. 櫻内義雄

    櫻内委員長 中谷鉄也君。
  38. 中谷鉄也

    ○中谷委員 佐藤総理に、最初に、私は次のようなことを申し上げたいと思います。  議会民主主義の問題、報道の自由という非常に重要な課題、この二つがいま問われているわけであります。二つとも憲法上の基本にかかわる問題であると私は思います。それが外交の問題、国益の問題、秘密の問題、それらの問題と多くの関連を持って問われている、こういう問題について私はお尋ねをするわけでありますが、総理と私との間に共通の土俵をまずつくりたいと思うのであります。  まず、次のことを、当然のことではありまするけれどもお尋ねをいたしたいと思います。  知っていることを知らないと言うこと、あることをないと言うこと、それは食言であります。失言や放言ということは、そのことを聞いた人間が抗議することはできても、食言についての抗議はできないと思うのであります。重ねて申し上げます。ケース・バイ・ケースだというふうに外務大臣はおっしゃっているようでありまするけれども、共通の土台をまずつくるのでありまするから、まともにまずお答えをいただきたい。知っていることを知らないと言うこと、あることをないと言うことは食言だ、うそである。このことをまず第一点に私はお尋ねをいたしたい。
  39. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 議会民主主義また報道の自由、これは共通の考え方としていずれも大事であり、いずれも尊重される。民主義の基底に立ってこれは守られる、こういうことだと思っております。だからこれはまあ共通の問題。それから出てくるただいまの知っていることをどうして隠すのかとかあるいは知らないと言うのか、あるいはもう一つはあることをないと言う。これはただいまの前提をひとつ承認していただいて、そうしていま問題になっておる事柄については、もうすでに他の委員会の場においてそれぞれが遺憾の意を表明しておりますから、これはそれなりにひとつ評価していただきたい。
  40. 中谷鉄也

    ○中谷委員 了解ができない点なのです。基本的な問題を含んでいると私は思うのです。そのことが、議会民主主義が問わなければならない問題であると思うのです。国民の知る権利というのは、国民が知ったことによってどのような政策を支持するかという選択をする権利、そのような政府をいいものとして支持するという権利あるいは抗議する権利、いろいろなものが派生してくると私は思うのです。  そこでお尋ねをいたします。同じような共通の土台をつくるための質問であります。国会にはいわゆる議院証言法という法律がございます。議院証人法という法律がございます。そこで、その証言法において、知っていることについて——じゃもう一つクッションを置きましょう。知っていることについて、そのことについては言えないんだということを言わずにそんなことは知りませんと言うこと。証言法のもとにおいて宣誓をした証人、すなわち総理外務大臣やアメリカ局長があることをあるともないとも言えないという。最低そういうふうに理由を申し述べて答えられるのではなしに、かりにあることをないと答えられたとするならば、それは私は偽証の罪に問われると思うのです。そういう共通の認識がなくて私の質疑は進みません。ケース・バイ・ケースなどというような問題じゃないと私は思うのです。その点についてお答えいただきたい。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 厳格に弁護士的な議論をなさればただいまのようになろうかと思います。しかし、お互いにやはり話をするときに不十分な表現を使う場合もございますから、事柄によってはそういう意味で了承もできる、こういうこともあるのではないか、かようなことを私は先ほど申したのでございます。
  42. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そこで私はお尋ねをいたしたいと思うのであります。重ねて私の立場を申し上げておきまするけれども、問われていることは国会とは何か、国会と外交、行政機関との関係、内閣との関係は一体何か、国権の最高機関としての国会の国政調査権はいかにあるべきかという問題を私は問いかけたいのであります。  考えてみると、国会における国政調査が明らかにされた事実をめぐってのいろんな評価——それでこそ国政調査というものがあり、国会の審議というものがあると私は思うのです。ねじ曲げられた事実、虚偽の事実、そんな事実の中には、国会における審議というものは正当な判断というものを誤ることは当然であります。  そこで、じゃ外務大臣お尋ねをいたしたいと思いまするけれども、あなたは沖繩返還協定特別委員会等におきまして次のように答弁をしておられるわけであります。三億一千六百万ドルという数字が出たことも、記録もメモもない。十二月十三日答弁であります。私は会議録の詳細をあらためて検討してみました。明らかにこれはあったことをないとおっしゃったこと、事実御認識をしておられることを認識がないと言われたこと、食言であります。そういうふうな事実について、それはケース・バイ・ケースでという答弁、ある委員会等においてはそれは答弁技術がまずかった、答弁が意を尽くさなかった、こんな問題ではないと思うのであります。それは国民の知る権利、国政調査権というものを奪っていることだ、私はこのように考えます。この点について外務大臣の御見解を承りたい。
  43. 福田赳夫

    福田国務大臣 中谷さん、それは少し認識が違うんじゃないかと思います。私は、いま問題になっておりますのは、わが国が三億二千万ドルという支払いをいたす、その中には四百万ドルという財源提供があるんじゃないか、こういうことであります。そこで、三億一千六百万ドルがきまって、それに四百万ドルを上積みした、こういう御疑念がある。それに対しまして私は、そういうことはない。三億二千万ドルがきまった、そのきまった三億二千万ドルの中で、アメリカ側は四百万ドルを復元補償費に使いたい、こう言っておる。それをめぐっての論議、これが電報で漏洩をしている、こういうことなんです。ですから私ははっきりもう何回も申し上げている。三億一千六百万ドルという数字が出た段階というものはありませんと。三億二千万ドルがきまって、その後にいろんないきさつがあった、こういうことでございます。
  44. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そういうことは全然——私はきょう、最低、議会において守られるべきモラル、憲法の倫理、そしてうそは言ってはいけない、こんな問題をあなたにお尋ねをしたいと思うのです。  あなたの国会における答弁は次のとおりなんです。三億一千六百万ドルという数字が——交渉過程の中においてもという意味なんですよ。出たことも、そういうふうな記録も、そんなメモも一切ありません。これがあなたが答弁された答弁の結論なんです。結果としての協定がどうこうということをいま政府は盛んに弁解をされる。その点についてわれわれは密約があるのだと言う。しかしその点をいま問題にしようとするのではない。最低限議会民主主義を守るためにおいて、あなたの立場に立ったとしてもこれは食言でしょう。こんなことを言われるのはうそでしょう。うそを言ったことになるでしょう。単に、それは答弁技術がうまかった、へたであったという問題ではございませんでしょう。議会民主主義というものの大事さ、国民の知る権利というものの尊重さるべきであるという観点、こんな観点に立って、私は政治駅としてのあなたにお尋ねをしているわけなんです。
  45. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は私の良心においてお答え申し上げます。私は虚偽な答弁、さようなことは一切いたしておりません。   〔発言する者あり〕
  46. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御静粛に願います。
  47. 中谷鉄也

    ○中谷委員 じゃアメリカ局長お尋ねいたします。政府委員というのは一体どういうものなのか。それと、あなた自身は同じく四百万ドルの問題について、そのような交渉過程はないということを十二月七日、十三日においてお答えになっている。この点についてこれはうその答弁、国政審議を危うくしたものだ、こういうふうに言わざるを得ないと思うのです。結論だけを言ってください。
  48. 吉野文六

    ○吉野政府委員 政府委員立場というものについての最初の御質問でございますが、私も法律的にはよくその点は研究してございませんですが、国会において、担当大臣を助けていろいろ補足説明するのがわれわれの役目であろうと当面考えております。  そこで、その十二月七日及び十三日の議事録を見ますと、確かに私の発言は事実と違っておるということは認めますし、またその点につきましては、この席をかりまして再三おわび申し上げた次第でございます。しかしながら、三億一千六百万ドルというような数字が交渉の過程において出てきて、そしてその上にさらに四百万ドルを上積みしたんだ、こういうような交渉があったかどうか、この点につきましては、私はそのようなことは絶対ございませんと、こういうことを確言いたしましたし、その点は私はいまもって事実と違った陳述をしたということは絶対ございません。
  49. 中谷鉄也

    ○中谷委員 私は次のように思うわけなんです。要するに、結論としての密約はなかったということは政府は言いたい。それに対してわれわれは密約はあったんだということを強く主張している。しかし、答弁をいま私が問題にしておるのは、交渉のプロセスにおいてもそういうことはなかったんですというのがアメリカ局長の答弁、そうして外務大臣の答弁は、そういうことについては数字も記録もメモもない、これがあなたの御答弁なんです。そこでこの点について、関連質問として楢崎さんが質問いたしますから、私は結論を急ぎまするけれども、アメリカ局長自身の本日の答弁は、その点については事実に反する、こういうふうにおっしゃった。政府委員というのは内閣を補佐をする、そういうことになっている。内閣全体としては憲法六十六条によって行政権の行使について連帯して責任を負うことは当然であります。重ねて申し上げまするけれども、国会の中において知っていることが知らないと言われたり、あることがないと言われたりということでは、審議というものは不可能であります。民主主義の基礎がくずれるわけであります。そんなことについての責任というのは一体どういうことになるのでしょうか。そのことについての責任というものを私は総理に強く問わざるを得ないわけなんです。国民の知る権利が奪われているのではありませんか。別のことばで言いますならば、国民が判断し、選択し、ときに支持し、ときに抗議するという機会が奪われているじゃありませんか。このことを私は、報道の自由の問題、知る権利の問題との関連において総理の御所見を承りたいし、総理に、佐藤内閣に、沖繩国会におけるこの一連の答弁というものは明らかに責任がある。いわゆる憲法上の責任がある、憲法違反である、憲法精神に反する、憲法の倫理に反する、国会法の精神に反するということを私はあえて申し上げたいのであります。
  50. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま問題になっておるこの復元補償費の問題、これが三億一千六百万ドルがまずきまりまして、それに上積みして四百万ドルがきまった、こういうことを、そういう事実はありませんとこう言ったら、これは実質的に大きな問題、およそ私はたいへんなことだと思います。そうじゃない、三億二千万ドルというものはきまって、その過程においてアメリカとの間にいろいろな議論があった、そういう問題なんです。だから、その実質問題につきましては、私は中谷さんよく御了解を願いたい。三億二千万ドルというものがきまったんだ、その過程において三億一千六百万ドルというような数字があったというふうには、私どもは考えておりません。ただ私が申し上げたいことは、いま古野政府委員も申しましたが、電報をちらちらとさせながらというような形におきまして、こういう事実がありましたか、ああいう事実がありましたか、そのときパリから電報が来ましたか来ませんかというようなことにつきまして、これは機密の問題だからお答えはできません、こう言うべきところを、そういう事実はありませんとこういうふうに申し上げた、そういうことは——しかしいずれにいたしましても、交渉の過程の問題でありますから、なかなかこれは回避できない問題であろう。それをそういう表現において申し上げた。しかし表現がそういう表現を使ったということにつきましては、政府委員としても遺憾の意を表明しておる。私もこれを監督する者として遺憾の意を表明しておる。そういう状況であることをひとつ御了解願いたい、かように存じます。
  51. 中谷鉄也

    ○中谷委員 重ねてお尋ねをいたしまするけれども、きょうは私はぎりぎり一ぱいのことをお尋ねしているわけなんです。最小限、交渉過程の問題について食言をしておられるでしょうと聞いているんです。交渉過程の問題についてメモもないし、記録もないし、そういうことをおっしゃったでしょうと——それは決して答弁についてのうまいへたの問題、遺憾の意を表して済む問題ではないでしょうと言っているんです。もしそのような答弁というのが間違いの答弁だということがわかったならば、委員会においては証人として証言を求めるという手続をとったに違いない。あるいはまた記録の提出を求めたに違いない。そんな機会を、あることをないと言われ、知っていることを知らないと言われたために、その機会を国会は奪われたわけなんです。そういうことが問題になるじゃありませんか。国会というものが共通の事実、最大限明らかにされたところの事実のもとにおいて論議されてこそ民主主義が成り立ちます。事実が隠されている。こんなことでいいとは思わないんです。ましてうその事実が与えられた中で、うその情報が与えられた中で、うその答弁を基礎として論議をされるというふうなことは、総理民主主義の基本にかかわる問題じゃありませんでしょうか。そのことが佐藤内閣に責任がある。そういうことの答弁が、私は一つの例をあげましたけれども、ずいぶんたくさんあるじゃありませんか。極東放送の問題について総理御自身が、ニクソンのおじさんの問題を大出委員が提出をした、あれは全く私は知らないんだと言われたけれども、私は次のように総理に申し上げたい。知らないとするならば、ずいぶん総理はのんきであるかあるいはまた、率直に申し上げさせていただきたいと思いますけれども、きわめて政策に対して不熱心であるか。郵政大臣について非常に不満の意を表明していることについて知らないとおっしゃるなら非常に不熱心であるか、私はそのいずれかだと思う。しかし無能であることは許せます。不熱心であることは許せます。しかし、うそをついたことについては私は許すことができない。私は総理が知らないと言われたことについて決して信用できない。あんなことを知らないという事実は私はないと思うのです。これを含めて、いまの点を含めて、私は総理の御答弁をいただきたい。
  52. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国会はもちろん国政の審議権がある。国政の調査権、それに基づいて調査し、審議をしておる。その場合に、行政府が適当なる審議の材料を提供しない、しかもそれが事を分けて、出せない、こういうわけで出せない、これで断わるならともかくも、そういうものはありませんとか言うことは、これは先ほど来ずいぶん声が大きく廊下にも聞えておりましたが、とにかくおしかりを受ける材料だと思っております。したがって、この問題については、いままでも再三再四にわたってこれは申しわけがなかったことだ、こう言って釈明、表明もいたしております。私はそれはそれなりに今日皆さん方にもあやまっているのですから、これは御理解がいただけるだろう、 かように思います。  ところで、ただいまの極東放送の問題であります。私は実際知らなかったんです。これは無能だといわれてもしかたがありません。あるいは不熱心だといわれてもしかたがございません。しかし私はあの段階においては知らなかった、これは間違いございません。お許しを得たいと思います。
  53. 中谷鉄也

    ○中谷委員 私は次の質問をいたしたいと思います。  知っていることを知らないと言うというようなことは国政調査権に対する侵害であります。大きな法益が害されていることであります。だとすると、最近報ぜられている新聞等によりますと、政府委員のアメリカ局長に対しては減俸あるいは戒告処分などというようなことが報ぜられている。私は思うのです。蓮見という女性の事務官が即刻懲戒免職になる。私は、バランスのとれないことおびただしいと思うのです。そういう点から言いますと、私がきょうは言いたかった点の一点は、もし議院証言法で宣誓をして証言をしておられたならば三カ月以上十年以下という、そんな刑事問題を起こすことを答弁されたでしょう、そのことを私は申し上げる。そういたしますと、蓮見事務官がいまなお勾留されておるなどということは均衡を失するもおびただしい。私はそういう意味で、私も法律家の一人として、国家公務員法についての憲法上の問題、秘密の問題、時間があればいろいろな議論をいたしたいと思いますけれども、一点だけ法務大臣に私は要望いたしたい。蓮見事務官の釈放というものはすみやかに行なわれるべきである。それは法益均衡の立場、ほんとうに人間らしさという点からいって正しい行為であるということ、あるべき姿であるということ、この点を私は法務大臣に御答弁をいただきたい。
  54. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 その点につきましては先ほど長谷川君に申しましたように、できるだけ早く出すべきだと私も思っております。ただ、検察庁としましては、証拠固めばかりではなしに、いろいろな観点から心配をしておるようであるということを申し上げたわけであります。
  55. 中谷鉄也

    ○中谷委員 知る権利報道の自由の問題について私は総理に最後に一点だけ、常に引かれることばでありますけれども、判決文の全文の中の一部分だけの引用ということがはたして適当であるかどうかは別として、いわゆるニューヨーク・タイムズ対合衆国、ワシントン、ポスト社対のこの事案について、私は、ダグラス裁判官の次のことばについての総理の御所見を承っておきたいと思うのです。この点については、ダグラス裁判官の同意見は次のとおりであります。「政府内の秘密は基本的に反民主主義的であって、官僚主義的誤りを永続させることになる。公の争点を公開で議論し、討論することはわれわれの国の健康にとって肝要である。公の問題に関しては公開で健全な議論がなされなければならない。」こういうふうなことばを、ニューヨーク・タイムズ対サリバン事件の中においてダグラス裁判官がこの判決の中で特にその点を強調しているわけです。この問題について、このことばについて私は総理の御所見を承りたいと思います。
  56. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ダグラス裁判長を私はとやかく批判する立場ではございませんから、あるいはお尋ねの件とは違うかわかりませんが、私はどうも国家機密というものはあるように思うのです。たとえば、いまの外交上の交渉の過程、そういうものを全部公表する、こういうことは相手方もあることですし、これはいつもでき上がったときならけっこうですが、でき上がらない場合に、ずいぶんまけた交渉をしたとかいわれても相手方も困るでしょうし、また相手方の言いなりになったといわれても困りますし、そこらは非常にむずかしいことですから、大体外交の基本方針、これは明らかにする、また結果は必ず公表する、そうして公表以外にはない、中間のことは秘密を守る、これが普通の行き方のように思っております。したがっていまダグラス判事の話云々よりも、こういうような取り扱い方をしておる。しかしそれがあまり多くなって何もかも秘密だということになると、国民は全然知る権利が奪われる。そういうことで、国家の大事にそういう意味で協力を得られない、こういうことにもなるでしょうから、それらの点については適切でなければならない、かように私は思います。
  57. 中谷鉄也

    ○中谷委員 沖繩返還交渉の過程においてあるいは防衛、外交等において密約が、さらにあるいは裏取引、裏取りきめ、そういうようなものがあるなどというふうな疑惑が国民の中に高まっているわけです。こういう問題について、私はこの機会に同僚の楢崎委員関連質問委員長にお許しをいただきたい、こういうように考えます。
  58. 櫻内義雄

    櫻内委員長 関連質問を許します。楢崎弥之助君。
  59. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がありませんから、私はごく簡単に要点を述べて御見解を承りたいわけであります。  本問題の本質あるいは核心は、決して機密漏洩事件ではない。政府がいままでやってきた対米の外交交渉のあり方、つまり国民の利益に反する追随の秘密外交のあり方及びその交渉の内容、さらに国会においてそれらの問題をめぐりうその答弁で終始をしてきて、国会、国民を侮辱した、こういう政治姿勢が本質問題であります。このような政府の姿勢は単にこの沖繩密約問題だけではない。私はいま一つ、新しい事実を指摘したいと思うわけであります。   アメリカの海軍と日本の海上自衛隊でしょう、海軍同士が、ひそかに日米共同の核戦力部隊の創設及び配置について、すでに日本とアメリカは話し合いを始めております。このような事実を総理は御存じですか。
  60. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は知りません。
  61. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外務大臣はどうですか。
  62. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も存じません。
  63. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 防衛庁長官はどうですか。
  64. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私も、もちろん知る由もありません。
  65. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もしいま御三方が御存じないとすれば、おそらくあなた方の頭越しにユニホーム同士が証し合いに入っておる、このように思わざるを得ません。そこでもしこれが事実ならば、私はたいへんなことだと思うわけです。私を含めて私どもがかねてから指摘しておったとおり、日本がもし核武装に踏み切るとするならば、おそらく海上自衛隊が一番でしょう。日本の自衛隊自身が、これも何度か私は指摘をいたしましたが、すでに有事核装備体制に入っております。つまりいまのところ普通弾頭であるけれども、その発射機、ランチャーは、核と非核のいわゆる装備を全部持っております。代表的な例をあげましょう。陸の場合はホークあるいはR30型ロケット、海の場合はターター、DASH、アスロック、あるいは空の場合はファントム、それからナイキハーキュリーズ、つまりナイキJでありましょう。これらは全部核、非核両用兵器であります。それをすでに自衛隊は装備するに至っております。それから日米の軍同士のいわゆる共同の軍事会同はどのような実態になっておるか。これは一九六三年日米了解事項(覚書)であります。これでFTC、これは統幕レベル、FTS、その下のレベル、FTG、これは各幕同士であります、共同作戦の組織がもうすでにできております。これは国会で明らかになったところである。一九六四年十月十六日、昭和三十八年であります。これはサイミントン報告で明らかなとおり。バッジ作戦委員会。これも日本側からは航空幕僚監部、航空自衛隊司令官、米側からは第六電子システム局、こういった組織。一九六七年、安保協議委員会小委員会の安保分科会、これは日本側からは外務次官、アメリカ側からは在日大使、在日米軍司令官、太平洋軍司令官代理、ワシントン書記官。一九六八年十二月、第九回、安保協議委員会日米幕僚研究会同。こういった組織がすでに日米の軍同士はあるんです。  それから背景としては、もう四、五年前から日本は海上のほうにABMを持つかもしれない、これはすでに言われております。それから三次防の技術研究開発計画の中には、もう当然原子力潜水艦を持つという想定のもとに研究が進められておる。これも事実でありましょう。それから次の四次防技術研究開発計画の中にPXというものがある。これは対潜攻撃機、おそらく重爆型の兵器になるでありましょう。  私はこれらの問題を背景に考えるときに、いわゆるニクソン・ドクトリンの日本化、これは条約的には日米のあの六九年の共同声明であったと思います。しかし、これを実力の問題として、何かそれを裏づける話が出てくるはずだと私どもは見ておった、いま私はこの事実を目の前にして、はたせるかな、このように思ったわけであります。私は、この話し合いはすでに昨年七月四日、レアード長官が来たときから始まっているのではなかろうかという疑いを持ちます。どうしてもあなた方が否定なさるならば、時間がありませんから私はその資料をお見せをいたしたいと思います。ここに英文と日本文とありますから、ちょっと総理外務大臣防衛庁長官見てください。  これはアメリカの海軍省の極秘文書であります。海軍電報。内容はどうなっておるか。緊急。発信時は一九七二年一月五日午後二時五十二分。海軍長官より在日米海軍司令官あて。これは横須賀であります。転送先、国家安全保障会議、太平洋安保グループ指揮官、太平洋軍司令部電子情報センター、太平洋艦隊司令官、在日米軍司令官。そしてこれは限定配付になっております。内容は「特別委員会は、日米海軍核戦力部隊の創設計画を検討した結果、日本政府との予備会談を続行することが必要だと考える。  委員会は、多くの要因によって、第三国による核脅迫を阻止する手段の一つとして、日米核戦力部隊の配置に関する取決めが必要になったという結論に達した。  これらの要因としては   1 中国が核戦力の増強につとめていること。   2 ソ連が太平洋地域の海軍力を増強させていること などがあげられる。  在日米軍兵力の削減に伴い、機動的核部隊の重要性が増大している。  白米核戦力部隊に関する取決めの不利な点は、日本が米国の核兵器を利用しうる状態になってしまうことである。  利点は   1 日本が独自の核兵器開発をしないですむ。   2 日本及びその他の外国における核アレルギーの原因を除去できる。   3 アジアにおける西側の利益を拡大するうえでの日米両国間の協力関係がさらに緊密化する。 などである。  会談を再開するため、あらゆる措置がとられねばならない。  詳細な指示は、パウチで送る。」こういう内容であります。パウチというのは行嚢です。袋みたいなもの。これは外務省は御存じであります。  それでは、この文書の問題点は、まず典型的な日米秘密交渉。二番目に、政府は国会、国民に公約し、国会決議までした非核三原則に公然と挑戦する会談の内容である。三番目に、かねてわれわれが指摘しておったとおり、日米安保条約は変質したのではないか、つまり核安保に変質したということを立証する内容である。これは国の安全あるいは国民の命にかかわる重大な問題であります。もしこれが事実であるとすれば、私は、これはもう失礼ですが、佐藤総理の率いる内閣のもとで国会審議が続けられるかどうかという大きな疑問を持つわけであります。私は、直ちにこの事実の究明に入っていただきたい、このようにお願いを申し上げます。委員長の御見解を承りたい。
  66. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま楢崎君から提示された資料、この事実、これは私のほうも政府としても重大な問題だ、かように考えますから、十分取り調べるつもりでございます。
  67. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 さっき私が知る由もないと言ったのは、もしこういうことがありとするならば、それは外務省を通じてわれわれのほうへ来るので、外務大臣の知らないことは知らない、こういうことを言ったわけです。  それからこれ自体については、いま総理が言われるように、われわれは全然関知しておりません。のみならず、私どもは、アメリカは日本は核装備の必要なしという見解に立って今日まで来ておる、こういう認識に立っておるわけですから、いまいきなりこれを見せられてはたして一体どうであろうか、これはやはり調査をいたしましょう。一体、いま米中友好というような方向が打ち出されておるときに、その方向とは反対の指令を日本に出すということはあるだろうかというような疑問を率直に私は思っております。(発言する者あり)いや、そういう意見を申し上げたわけです。そういうことは知りません。
  68. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで問題なのは、この中に「予備会談を続行」ということがあるから、前に会談が行なわれていないと続行ということにはならない。それから最後のほうに「会談を再開する」という下げがついておりますから、前に会談があるはずである。そしてこの内容を見られればわかるとおり、これは日本の自衛隊にも核にタッチさせる、ボタンはアメリカが持つ、内容は核を供与するということだと思います。これ以上は私はわかりません。ただ背景は、これを裏づけるに足る十分な背景があるとわれわれは思わざるを得ないので、この究明についてどうされるか、これは委員長の御見解を承りたい。
  69. 櫻内義雄

    櫻内委員長 楢崎君に申し上げます。  ただいま佐藤総理からも、きわめて重要な発言であるという趣旨のことを言われました。委員長としても、きわめて重要な発言でございますので、きょうのこの会議終了後に直ちに理事会を開きまして協議をさしていただきたい、かように存じます。御了承願います。  沖本泰幸君。
  70. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 委員長……   〔発言する者多し〕
  71. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次の発言者を指名しました。  沖本泰幸君。
  72. 沖本泰幸

    ○沖本委員 私は、本日問題になっております問題につきまして、国民の知る権利はいかにあるべきか、またいかにして守らなければならないか、こういうことにつきまして、憲法の根本に立って総理大臣所信を伺っていきたいと思うわけであります。  そこでまず第一に、われわれ一番大事にしなければならない憲法の根本精神、こういうものに一度立ち返ってみたい、こういうことで考えていきますときに、日本国憲法の前文を一度読んでみたい、こう思います。  日本国憲法の前文には、「日本国民は、正常に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵澤を確保し、政府行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」。  また、憲法の第一条にも一国民主権の原則が定められております。日本国憲法で最も重要なことは、もう一度繰り返しますけれども、第一番目に「主権が国民に存する」、たびたびこれは口にされることですけれども、いま前文を読みましたことは、その意味するものがどれほど重大であるか、こういうことのために申し上げたわけです。  二番目に「国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」、こういうことであります。  そこで、今回の事件及び現在までの国会の審議を通して明らかになってきました最も重要なこの問題、これは政府が国政の信託者である国民を欺いた——これは先ほど社会党の三宅先生の週刊誌を取り上げてみても同じことが言えますし、いままで議論してきた過程の中でも言えるわけであります。そういう観点に立って総理はこの責任をどのように感じ、これをどういうふうにしようとしていらっしゃるか。それとも、国民の信託にこたえていると現在でも断言できるのでしょうか。この点いかがですか。
  73. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過日、これらのことを含んで私の反省と釈明をいたしたはずでございまして、この点では私、一応皆さんに釈明した、それに今日も変わりはございません。
  74. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまのお答えは私としてははなはだあいまいで、私がいま尋ねておりますのは、主権者である国民に対してこたえていただきたい、こういうふうに考えて申し上げておるわけです。ですから、信託におこたえになっていらっしゃるわけですかどうですか、その点もう一度おっしゃってください。
  75. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん国会が国権の最高機関、これは国民を代表する、こういう立場において最高機関としての審議機関、立法府とこう言われておるのですから、ここにおいて、この正式の場において私が反省もし、また釈明もしたということは、とりもなおさず国民に対してしておるわけでございます。
  76. 沖本泰幸

    ○沖本委員 その辺が私はもう一つ納得しないわけです。国民の信託に、いままでの問題を通じておこたえになっていらっしゃるかどうかという点なんです。その点いかがですか。国民の信託にこたえ切っているかどうか。
  77. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 信託にこたえておらない点があった、かように思うがゆえに、反省もし、釈明もし、そうして御了解を願っておる、かように申し上げておるのでございます。ただいまの言われておることはそういうことではないだろうか、かように思っております。
  78. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これは問題なんですね。信託にこたえていらっしゃらない、だから釈明もし、いろいろやっていると——これは大問題です。信証にこたえていなければ、国民はあなたに政治をまかすわけにはいかないわけです。そういうことになるわけです。いわゆるその責任をどうお感じになりますか、どういうふうにその責任をとっていかれるのですか。
  79. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはそのときに各党の党首が私の釈明を御理解になった、それで私も別に反論もしないし、また各党の党首もそれより以上は追及しない、こういうことで、私はそれなりに皆さん方の私に対する責任、これを理解しておる、かように御承知を願います。
  80. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまここで私がいろいろ論じておるということは、党首の発言で総理がおっしゃったそういう事柄についてではないわけです。そのために憲法の前文をお読みしたわけです。憲法の前文の中には「國民の厳粛な信託」に対してということになるわけですから、信託にこたえられないということであれば、それだけのことをあなたはおとりにならなければならない、こういうことになるわけです。その点いかがですか。
  81. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この憲法の前文のその趣旨に沿って私が行動しておると、かように御理解いただきたい、こういうことを先ほど来申しておるのであります。
  82. 沖本泰幸

    ○沖本委員 憲法の前文に沿って行動している、ところがその前文に沿っていない内容が出てきたから、現在この委員会で問題にしているわけです。そこが国民の疑惑になっているところなんです。その疑惑にこたえなければ、信託にこたえたということにならぬじゃないですか。いまその問題を先ほどから論じておるのはうそがあった、疑惑が出てきた、問題があった、さらに先ほどから楢崎委員の発表された問題でもますます疑惑を生み出すような密約が出てきた、これは大問題であるということになるわけです。それに対して大臣はこたえていかなければならない、信託にこたえられなければあなたはやめなければならないわけです。主権者は国民なんですから、ですから国政は総理のものではないはずなんです。主権者は国民なんです。主権者にこたえていかなければならない、こたえられなけばこれは責任をとらなければならない、こういう結論になっていくわけです。ところが、疑惑が出てきて問題になっているからここで問題をやっているわけです。だから、そのこたえている、いろいろ説明もしているし、遺憾である、わびてもおると、こういうことだけでその信託にこたえている、そういうふうな表現でこれは済む問題ではない、重大問題である。中身はどうかというと外交上の問題で、日本の国の行くえをどうするとかこうするとか、国民の福利、国民の生命、財産、国家の安危にかかわる問題が秘密になっておる、そこに問題があるわけです。ですから、あなたがその点についてただ遺憾に思うとか、責任感じておるとかいうだけで済まされるのであるということでは、これは国民は承知できませんです。その点もう一度答えてください。
  83. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 きょうこの機会に新しい問題というのは、先ほど楢崎君の提示された問題が新しい問題でございます。もうすでに、いま論議されておることは過日来からたびたび論議され、私もその事件については国民の信託にこたえるべくちゃんと釈明もし、私の態度も表明をしたわけでございます。
  84. 沖本泰幸

    ○沖本委員 国民の疑惑というのは、秘密文書が明るみに出たということなんです。まだまだ秘密があるんじゃないかということなんです。  で、先ほど総理もおっしゃったとおりに、国民の前には秘密があってはならない、こういうことをあなたはおっしゃっているわけです。ですから、その秘密を明らかにしていかなければならない、こういう点に問題点があるわけです。先ほどの御答弁の中にもありますけれども、その沖繩返還協定に関しては全然秘密はないんだ、こういうふうにおっしゃるわけですね。その点はいかがですか。
  85. 福田赳夫

    福田国務大臣 沖繩協定には裏協定もありませんし、また秘密のやりとりも全然ございません。ただ問題は、はっきりさせてもらいたいのは、交渉の経過、これが一々電報で在外公館との間で往復される。その電報がまたそのつど漏洩をするということになりましたのでは、これは交渉はできません。これはどこの国でもそうであります。その守らるべき機密が守られなかった、その電報が漏洩した、こういう問題なんでありまして、私どもは何も秘密外交をやっておるわけじゃない。ないが、外交には手続上そういう機密もある、こういうことをよく御了知願いたい、かように思います。
  86. 沖本泰幸

    ○沖本委員 外交秘密がある、それはその外交の過程である程度のことはあるでしょう。しかし長い目で——短い間にはそういうことも考えられるわけです。たとえば現在の沖繩返還協定の内容にしぼって問題を考えてみましても、総理は何ら秘密はない、こういうふうにおっしゃっているわけです。しかし、おとといの決算委員会でわが党の坂井議員が追及した中に、在日米軍の電話の使用料金の八十三億円が、沖繩返還交渉から大詰めを迎えた五月、電報の時期と同じです、突然わずか二億八千五百万円の電話施設修理費を受け取るという全く不可解な方法でケリがついた、こういうことが決算委員会ではっきりしておるわけです。これは日米密約の新たな疑惑です。国民立場からとれば疑惑なんですよ。密約はないとおっしゃるけれども、あるじゃありませんか、現実に。ないとおっしゃるのならこの会議録を出してくださいよ。お出しになって国民の前に公開していただくのが当然じゃありませんか。主権者は国民である。そこが問題なんです。ことばの上で国民が主権者と言うのではないわけです。国民のための政治なんですから、国民の前に明らかにしなければならないはずです。その点、いかがですか。
  87. 福田赳夫

    福田国務大臣 一両日前新聞を見てびっくりしたのですが、公明党から、何か米軍の電話料ですかの支払い、これが五月ごろ妥結した、これが沖繩交渉とからんでいる、こういうような趣旨の話でありますが、そういうからみは全然ない問題であります。私も当時大蔵大臣でありましてちょっと知っておりますが、これは沖繩交渉とは何の関連もなく、その時点においてきめられておる、こういうことでございます。
  88. 沖本泰幸

    ○沖本委員 先ほどから総理外務大臣のお答えを伺っておりますと、全部ことばの上でおっしゃっておるんです。ことばの上で密約はないのだ、そういうものは一切ありません。ことばの上だけなんです。ことばの上だけでおっしゃる。しかし、問題が明らかになったというのは、文書、証拠を突きつけられて、密約はあったと言っておるわけです。その辺に国民の疑惑が全部出てきているわけです。国民は疑惑に思うから、うそを言った、うそじゃないか、こういう疑問を出しておるので、三宅先生がおっしゃったようなことばがどんどん国民の間に出てくるわけです。その国民の疑惑にこたえるのが、信託を受けている総理の、やり方じゃありませんですか。そういう点を考えていくときに、当然ことばの上だけでなくて、この問題を国民の前に疑惑を明らかにするというのであれば、沖繩返還協定の全部を明らかにすべきじゃありませんか。国民の前に公開するのが当然じゃありませんか。もう交渉は終わったんですから、返還協定の内容全部を国民の前に公開したらいいじゃありませんか。その点どうですか。
  89. 福田赳夫

    福田国務大臣 沖繩返還協定の交渉の経緯の大方、また結果、そういうものにつきましては、延々二カ月半に及びました沖繩国会におきましてるる説明をしてある。また、今国会においても補足的ないろいろな説明をしておるわけであります。もうこの問題は解明し尽くされておる、私はこういうふうに思うのです。ただ、一部の電報が漏れましていろいろ皆さんに御論議が起こっておる、そういうことでございまするが、それだからといって、全部の電報を公開するということはとうていできません。つまり外交というものは相手の国との間の話し合いの問題です。その話が、たとえあとからでありましてもこれが外部に公表される、日本の国会ではそういうことをしなければ承知しないのだということになったら、もうわが国を相手にして話し合いをするというような国はなくなってしまいます。これでは私は適正なる外交はできない、国益は確保できない、かように考えます。
  90. 沖本泰幸

    ○沖本委員 その辺が問題なんですよ。公開しなければ国民の疑惑は晴れないですよ。それじゃ、幾ら総理はことばの上で信託にこたえている、遺憾の意をも表しているし、いろいろと説明もしていってその疑惑にこたえる、信託にこたえているつもりだとおっしゃるけれども、こういう問題が出てきているから国民は疑惑を持ち出したわけです。国家の主権者は国民なんですから、総理は先ほどから、国民秘密があってはならないとお答えになっていらっしゃるわけです。そうであれば、国民返還協定が終わったあとで、その内容を公開するのは当然じゃありませんか。秘密があってはならないのですから、国民に知らしむべきではありませんですか。問題をちゃんとしてください。
  91. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま外務大臣からお答えいたしましたし、また私も先ほど来の質問者に答えたように、三外交には秘密はあります。これはやはりできるだけ公表すべきだと思いますけれども、ものによってはできないこともあります。だからこれは、やはり最初の基本的な方針、さらに結末、これだけはもうはっきりさせなければならない。しかし、中間の問題は、ただいま外務大臣もお答えしているように、これは皆さんからもある程度は御了承願っているように、しばしば皆さんからも聞くところですが、各党とも口をそろえて外交ですからやはり秘密はありましょう、しかしそれにしても多過ぎはしませんか、こういうようなおしかりを受けていたと私は思っておるのですがね。それで、ただいまのように経過も一切を公開しろ、こういうように言われると、それは外務大臣の言っているように、これから外交はできません。それこそ信頼の問題ですから、これは各国とも、日本外交は全部を公表されるから、さようなものは相手にはならない、こういうことで、私は、デリケートな外交交渉などできっこないと思います。だからやはり国民に知らすということ、それは何といっても公表したもの以外に約束ごとがある、秘密外交がある、こう言うならそれは大いに責められてしかるべきだと思っております。ただいまさようなことはございません。(「それがあるのだ」と呼ぶ者あり)委員長、不規則発言をとめてください。うるさくてやれません。
  92. 櫻内義雄

    櫻内委員長 静粛に願います。
  93. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だからこれは、何といいましてもこの経過的な取引、交渉、そういうものの全貌を明らかにしろということは御無理というものです。   〔櫻内外務委員長退席、永田外務委員長代理着席〕しかしながら、事柄が主要な点について、そういうものをやはり全部は公表はしないにしても、そういうものもやっぱり話をするようにできるだけ秘密の事項を減らせ、こういう御趣旨は私も理解ができますから、そういう方向ではわれわれも今後は努力はしたい、かように申しておるのです。
  94. 沖本泰幸

    ○沖本委員 もう一度もとに返って考えてみますと、私は、主権者は国民であるという点から申し上げているわけです。で、返還交渉に関して、いままではないと、こう言われておった。秘密はないのだということをおっしゃっておった。ところが文章がはっきり出てきて暴露されてきて、初めてそれが明るみに出たんじゃないですか。そこから疑惑が起きているんじゃありませんか。そうすればその国民の疑惑を晴らすためには、当然それに関連した内容の問題、返還協定の内容の問題を国民の前に公開しなければ、主権者たる国民は納得しないはずです。そこが問題なんです。そのことにあるわけです。それが信託を受けた総理の、政府のとるべき道じゃありませんか。
  95. 福田赳夫

    福田国務大臣 繰り返し繰り返し申しておるのですが、この協定には裏協定とかあるいは秘密だとかそういうものはありませんです。ただ、いきさつはいろいろあります。そのいきさつが今度電報で一部漏洩した、こういうことでございますが、たからといいましてここで電報の全部をさらけ出せ、これは私はずいぶん御無理な御注文じゃないかと思うのです。そういうことになったらもう日本の外交のやりとり、これはもうできませんです。私は、それは決して国益に沿うゆえんじゃない、そういうふうに考えます。疑惑疑惑というお話でございます、がもうその皆さんの持たれる疑惑に対しましては、私どもは精一ぱいの解明をいたしておる、こういうふうに考えておるわけであります。外交のいきさつ、経過にはこれは漏らすことのできないものもある、それが漏れた、そういう状態である、そういう辺をひとつ御理解願いたい、かように存じます。
  96. 沖本泰幸

    ○沖本委員 その辺にお互いの考えの違いがあると思うのですね。総理は、また外務大臣も、国家の主権者である国民の前に秘密はないのだ、こうおっしゃるわけです。そして国民には国政のすべてを知らせなければならない義務があるわけです。信託を受けているのが政府なんですから。それといまおっしゃっていることとは、うらはらになっていくわけなんです。ですからそれは、外交交渉の間には、ある程度のことは短期的には考えなければならない問題は出てくるかしらないけれども、それが完了したあとは国民に公開しなければ、主権者に対して知らせないということになるじゃありませんか。じゃ天皇主権のときだったらどうだったかということになるのです。天皇に知らせなかったら問題だということになるでしょう。主権はいま国民にあるわけです。その国民に知らせなければならない。終わった段階ではすべてを明らかにして国民の同意を得ていく、これが国政のほんとうのあり方じゃありませんですか。そういう原則に立って公開しなさいと私は申し上げているわけです。
  97. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、交渉の経過といえどもいろんなやりとりがあるのです、これは。その一々の電報をここでさらけ出す、そういうようなことになりましたら、これは外交はほんとうはできないです。これは沖本さんもよくおわかりになられるのじゃないか、そういうふうに思いますが、これはひとりわが日本だけではありませんです。先進各国みんなそういうようなたてまえをとっておる。イギリスのある首相のごときは、回顧録を書きたい、当時機密であったものもその回顧録には入るということになるので、わざわざ閣議の了承を得た、こういうような丁寧な扱い方をしておる、こういうことなんで、交渉事が済みましたからそこで全部のその電報を、一々全部それをさらけ出すということは、とうていこれはできないことである。御了承願います。
  98. 沖本泰幸

    ○沖本委員 私は、外務大臣のお答えではありますけれども、総理のお答えでもありますけれども、公開していただく必要がある、国民の前に。特にこの返還協定に関しては、疑惑が出ているわけですから、少なくともそれを縮めて、そして交渉の全過程の中で一歩譲って、一歩も百歩もお譲りして、国民立場に立って疑惑を晴らすんであれば、この電報で明らかになった問題について、全過程でなくてもいいから、少なくとも四百万ドルに関するこの疑惑はお晴らしになるべきじゃありませんですか。だからその資料を出してください。
  99. 福田赳夫

    福田国務大臣 資料といえば、もう電報を機密を解除いたしましたから、あの電報をようくお読みください。あれではっきりおわかりになると思います。
  100. 沖本泰幸

    ○沖本委員 国会でなくて国民に公表してください。私は国民立場で申し上げておるのです。主権者の国民立場で申し上げておるのですから、四百万ドルの過程を政府のほうは明らかにすべきじゃありませんか。
  101. 福田赳夫

    福田国務大臣 ここで時間をとっていいならここでまた繰り返して申し上げますが、これはもう何回も国会で説明しておるのです。この電報につきまして、そして御指摘がある、そういうようなことに基づきまして何かいろいろな御議論がありまするから、その御議論に対しまして、これはこういう意味の電報であります、この電報のいきさつというものはこういうところから出ておるのですと、この電報は電報といたしまして、結論といたしまして何らの裏取引もありませんとるる説明しておるのです。もう私は十分解明されておる問題である、こういうふうな見解であります。
  102. 沖本泰幸

    ○沖本委員 さっきから議論の行き違いになっておるのですが、ことばの上でないないとこう言っても、ことばの上だけではいま信頼できない段階に来ておるわけです、国民自体。疑惑が出ているわけです。だからここへ来たわけなんです。ですから、少なくとも四百万ドルに対するこの間の疑惑を晴らすという意味の内容の資料を明らかにして、国民の前に明示すべきであります。それは、新聞社の皆さん方に公表して国民に知らしていただいても何でも方法をとって、国民に明らかにする方法があるじゃありませんか。
  103. 福田赳夫

    福田国務大臣 一番有力な材料は沖繩返還協定であります。この協定には、アメリカは復元補償費を自発的に支払う、こういうふうに書いてある。それ以上の大きな証拠はないと思います。問題は、わが国が財源を提供してアメリカにお願いをいたしまして復元補償をさせておるのじゃないか、こういう疑いがある、こういうことでございますが、そうじゃないのです。自発的に支払います、こういうことであります。もう非常にはっきりしておる。
  104. 沖本泰幸

    ○沖本委員 その辺が議論のすれ違いになっておるわけで。すれ違いになって、外務大臣はそうおっしゃいますけれども、そこが問題なんだといって各委員会で問題になってきておるわけですよ。それに、外務大臣は問題はないのです、問題はないのです、それじゃ話の行き違いだけで、国民に疑惑を晴らすような問題になっていかないわけです。ですから、密約があったんでしょう、あるような内容がありますよというわけで、十一日の衆議院の決算委員会でまた密約じゃないかというものが出されてきたわけです。次から次から疑惑を生むものが渦を巻いてくるわけです。ですから、少なくともいま言ったような内容、それからこの決算委員会で問題になった電話施設の修理費に関するいきさつがわかるような議事録を出すべきである、こういうことを申し上げておるわけです。その点どうですか。
  105. 福田赳夫

    福田国務大臣 結論として電話料の問題は、これはもう沖繩交渉とは全然関係がありませんです。ありませんその事情につきましては、郵政省のほうからお答えを申し上げます。  その他四百万ドルを上積みしたのじゃないかということについての解明ということでございますが、これはもう非常に精細に何回も何回も御説明しておるところでございまするから、省略させていただきます。
  106. 沖本泰幸

    ○沖本委員 もうこれでは時間がたつばかりですから、大臣もそうだなんておっしゃっていますけれども、問題を言っておるわけなんです、私のほうは。問題だから、疑惑だから、疑惑を晴らせ、そう言っておるわけです。  そこでもう少し問題を前に進めます。憲法の前文及び先ほどお読みしました第一条の精神を受けて、そして憲法の二十一条が規定されている。表現の自由が保障されているわけです。そう考えなければならない。私は、その表現の自由の保障は、国政がゆがんだ歩みをしないようにするために表現の自由が最大限保障されている、こういうふうに考えるわけです。いろいろな保障の問題、表現の自由の保障はありますでしょう、各方面にわたって。だけれども、最高のものは、国政がゆがんだ歩みをしないように表現の自由が憲法で保障されている。その根本に、憲法で保障されるところの根本、二十一条は、いわゆる憲法の前文並びに第一条を受けてそういうふうになっている。私はそういうふうに考えるわけです。この点について総理、いかがですか。
  107. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど三宅君からも、三分立でなしに四権分立、そういう立場で立法すべきではないか、こういう御指摘がありました。まさしくただいまの、憲法の条章に基づいての御議論だ、かように思いますので、これはあのときお答えしたとおりで御了承願います。
  108. 沖本泰幸

    ○沖本委員 したがいまして、その辺にだいぶ、総理のお答えをこう見ていきますと、反骨精神であるとか、少し偏向がかってきておるとか、こういうふうな御見解をいろいろお述べになっていらっしゃいましたけれども、そうではなくて、いま申し上げている意味、根本的な面からとるとそのとおりだと総理はおっしゃっているわけです。だから、そういう観点に立って、結局、政府の政治のゆがみ、このゆがみを指摘する行為は、表現の自由、この二十一条で守られなければならないんじゃありませんですか。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政治の姿勢あるいはゆがみ、そういうものを訂正することについて、言論機関は言論機関なりに役割りを果たしております。また同時に、われわれも一行政機関も行政機関としての役割りを果たしておる。皆さん方も、立法府としてそれぞれ役割りを果たしていらっしゃる。私は、言論機関だけでそうなると、かようには必ずしも思いません。だから、それぞれがそれぞれの分野において、やはり政治が正しくなるように守られておる、かように解釈すべきが当然ではないだろうか、かように思います。
  110. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ですから、それぞれに守られていると総理がおっしゃるんですから、国政の主権者である国民の利益を守るために表現の自由が保障されており、その表現の自由は主権者たる国民のためにあって、それが十分に駆使されて、国民の前にその福利を享受できるような形に持っていかなければならない。そこに表現の自由の根本があるわけです。ですから、それにのっとって、それでその政治の、国政のゆがみというものをいわゆる表現の自由で指摘していくその行為ですね、指摘行為というものが守られなければ、保障されなければならないんじゃありませんですか。その点いかがですか。
  111. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 言論の自由、当然取材の自由、そういうものが守られておると、かように私は思っております。
  112. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうしますと、当然守られていく、こういうことになるわけですから、それじゃ、間違っていますと、国政がゆがんでいますということを明らかにして、とらえられたわけです。先ほどの三宅先生の議論と同じことになってきますけれども、結局は正しいほうが、国民立場に立って指摘した正しいほうが、言いかえてみればですね、懲役一年というのが待っているわけです。身柄は釈放されましたけれども、結果的に、これは裁判所の判決できまるわけですけれども、罪状がきちっとそういうねらったところに判決があったとした場合には、懲役一年がきまっているわけなんです。正しい正義、正しい国民立場に立って政治のゆがみを指摘した、その指摘した行為が、その者が結局懲役一年に処せられるということは、これはもう言語道断だといわざるを得ないわけなんです。それで指摘されたほうがそのまま安泰であると、こういう不合理なことはない。これは三宅先生おっしゃったとおりなんです。その点についてもう一度お答えになってください。
  113. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、言論の自由と、しかしそれにもおのずから限度があるということを、やっぱり沖本君も御了承の上でただいまのような議論を展開しておられると思います。言論の自由、取材の自由、これはわれわれも保障するということにやぶさかでございませんけれども、しかし社会秩序を乱ってまで、法律に違反してまでこういうことは許せないことじゃないかと、かように私は思っております。だから、そういう点で、ただいまの裁判のような問題を提起されましたが、これはもう裁判の、司法権の問題でございまして、そのほうはそのほうでやっぱり専門に独立して行なわれますから、私がとやかく法律論をここで展開する、これは不適当のように思いますので、また私は弁護士でもありませんし、これはひとつお許しを得たいと思います。
  114. 沖本泰幸

    ○沖本委員 総理の御答弁ではありますけれども、実際に国民立場に立って、そして、いままでないないと言われたものを明らかにして国民の前に秘密を明らかにしていった。そして国政のゆがみを正そうとしてきたこの行為が、いまは問われているわけです、現実に。そういうことであったのでは、これは表現の自由を保障されているということにはならないじゃありませんか。おことばではそうおっしゃいますけれども、そういうことになるじゃありませんか。
  115. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 言論の自由、これは私ども尊重しますけれども、何をしてもいいというわけのものではないとただいま申したとおりでございます。われわれは生きる権利を持っている。生きる権利があるからといって、相手方の財物を取ってまで自分で生きている、そういうわけにはならぬでしょう。言論の自由は尊重されますが、やっぱり言論の自由があるから何をしてもいいんだと、こういうわけにはいかぬでしょう。そのくらいのことはおわかりだと私は思います。
  116. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そこで、結局国家公務員法の百十一条で、何をやってもかにをやってもそそのかし、そそのかしで当てはめられていっては、これはどうしようもないことになるんです。片や表現の自由は保障されておってもです。何をやってもいいものじゃないと、こうおっしゃるけれども、片っ方では何をやろうにもそういうワクをはめられてどんどん締められたんでは、これはどうしようもないじゃありませんか。そうしますと、結局はこの法律が、先ほどから申し上げている、憲法を裏返してしまうようなことになるじゃありませんか。   〔永田外務委員長代理退席、櫻内外務委員長着席〕
  117. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国会は法律をつくることも直すことも廃止することも、これは可能でございます。だから、それは立法府として当然の権利を行なわれたらいいと思います。また私がいまここでお答えをしないのも、これは司法権の立場で——裁判になるんだと、これは百十一条の適用になってどういう量刑だ、そこまでのお話でございますが、これは司法権の問題ですよ。私どもはここでとやかく言う問題ではないと、かように言って、私はその答弁をお断わりしたわけです。
  118. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ところが、きのうの参議院のほうの決算委員会でわが党の黒柳議員が、マル秘文書は合計で十二万五千件もあるんだと、どれもこれもマル秘マル秘、あれもこれもマル秘では、それを今度はさわったらそそのかしたとか何であるとかかんであるとかということになってきたら、現実にはできないということになるわけです。こういうふうなめちゃくちゃなマル秘扱いというものを、総理はどうお考えになりますか。この中で言っていることは、われわれが調査権をもって調べようにもわれわれにもまた壁が出てきているわけです。そういう膨大なめちゃくちゃな、それを一課長が自分の独断の考えで全部きめていくような内容であっては、これはもってのほかだということになるわけです。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまさら申し上げるまでもなく、これは行政府できめることでございます。その行政府できめ方が行き過ぎれば、これはまた立法府からもおしかりを受ける、また国民も納得しない、こういう結果になりますから、先ほど来冒頭において官房長官から、この秘扱い文書取り扱い方についてはこれから十分検討する、かように申しております。私はまたそうあってしかるべきだ、かように思います。
  120. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そこで、初めから一つの原則に立って私は質問しているわけですけれども、憲法の前文ですね。国家の主権者は国民である。その国民が国政のすべてを知ろう、あるいはゆがみを正していこう、こういう方法のあり方としては知る権利、そういうものを行使するためには結局表現の自由、マスコミの活動にゆだねる以外に方法はないはずなんです。そこが問題になるわけなんです。ですから、昭和四十四年の十一月二十七日の最高裁の大法廷の判決マスコミ取材の自由も表現の自由の一つとして憲法上保護されているという判決があるわけです。そういう観点に立ちまして、それで現在、総理が先ほどもおっしゃっておったことは、危機感がある、三宅先生の御質問に対して総理は、私もその危機感を感じている、こういうふうな重要なときこそこういう問題に対してきちっとした内容をきめておかなければならないとおっしゃった。私は現在を申し上げているわけじゃないわけです。現在の問題だけについて議論しているのじゃありませんです。私はこれからの問題、将来に向かってどうあるべきかということについて質問しているわけです。そういう点からいきますと、国家公務員法の百十一条は明らかに取材をストップさすような内容になってくるわけです。拡大解釈すればいろいろな方法がとれるということになってくるわけです。やりようによっては、これはやられては困るということになれば、その百十一条が手かせ足かせになってくるじゃありませんですか。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 百十一条、これは法律ですよ。これは国会で審議されたのです。そしてそれができたのです。だから、これはやはり立法府として制定されたこと、それは尊重すべきではないでしょうか。これがじゃまになるから百十一条をやめろ、かようにおっしゃっても、私は、それはよろしゅうございますともここでは言えない。国会の審議、そこにあるのじゃないでしょうか。これはおわかりだろうと思うのです。私はただ非常に残念に思いますのは、いわゆる西山記者がスクープしたという。そこでもっと同様な事件が次々にあり、しかも西山君のスクープしたことには、これは協定には関係がなかったが、まだそのほかに隠しているもののうちにやはり協定に関係のあるものがあるのじゃないか、こういう疑惑を持たれておる。こういうような御趣旨に先ほど来のお尋ねを聞いたのですが、それについてははっきり外務大臣が発表したとおりの結果でございまして、それ以外には秘密協定などございませんとはっきり申しておりますから、それはそれなりにひとつお聞き取りをいただきたいと思います。
  122. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大臣のお答えは、何かしまいのほうは違う方向へ行ったように思うのです。私は百十一条のことをお伺いしていたわけです。君はわかってないな、こういうふうなお答えなんですけれども、私がお聞きしているのは、憲法の前文あるいは第一条、そういう点に立ち返ってみて、そして国家の主権者たる国民が国政のあり方あるいはそれを正そう、こういう方法をとろうとした場合には、表現の自由をもってする以外に方法はないわけです。それで主権者は国民なんです。そういう観点から考えていきますと、当然表現の自由が十分に駆使されなければならないということになるわけです。そういう観点からいきますと、百十一条で規定してあることは、それとは全然逆のことになっていくじゃありませんかということを申し上げておるわけなんです。そういう観点から御質問したわけなんです。ですから考えがお違いになっていらっしゃるのは、総理のほうなんです。
  123. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は先ほど来はっきり国家公務員法、これは立法府で制定された、手続上間違いのない、また憲法違反でもない法律だ、かように思っております。しかしその点ではどうも沖本君と私は所見を異にしておるようです。どうも憲法の前文、第一条等からあんな国家公務員法をつくっていることが間違いだ、こういうような結論のようですが、法制局長官がいますから、とくと法律的な説明をいたさせます。
  124. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 委員指摘のように、民主主義のもとで国政の運行ばかりではございませんが、表現の自由の持つ価置というものは非常に大きい。その表現の自由には取材の自由というものも含まれておって、これもまた憲法の法のもとに立つというようなことについては、総理の答弁もお聞きになっていらして、その点をどうこう言われているようには私は全然思いません。そういう限りは、委員のおっしゃるとおりだと思います。問題は、だから取材の自由というものは無制限に自由かということになると、これもおそらく委員は無制約であっていいとはおっしゃらないと思います。  そこで具体的な問題としては、国家公務員法の百十一条、そそのかしがどうかということでありますが、およそ取材というものはすべてそそのかしに当たるというようなことになれば、あるいはおっしゃる意味もある程度通るかもしれませんが、そそのかすというのはやはりそれなりの意味があります。これは判例によってもある程度固まった考え方がございますが、そういうもの、犯罪の実行を決意させるに足りるような慫慂行為に限って、実は国家公務員法の百十一条が働くことになっております。そうでない場合にもすべて百十一条が働くというものではもとよりないということを、まず御認識いただきたいと思います。  それからもう一つ、総理大臣が言われたことでありますが、もしも、それにしても国家公務員法はよろしくないというのであれば、政府当局、行政府法律を誠実に執行するのがその職責でございます。もしも行政府法律を誠実に執行しなければ、これはむしろ憲法違反でございます。したがって、もしもこの国家公務員法百十一条がよろしくないというのであれば、やはり立法的にこれを解決されるのがしかるべきではないか。これは総理のおっしゃることでございますし、私もそのとおりに思います。あなたのことを申し上げるわけではありませんが、多少筋道を立てて申し上げれば、そのとおりでございます。
  125. 沖本泰幸

    ○沖本委員 長官も分かっているようなわからないような内容のお答えをなさった、こう思うわけです。この国家公務員法全部をとらえて私は申し上げておるわけじゃないのです。ですから、総理も、国家公務員法をはずせというのは暴言じゃないか、こういうことをおっしゃっておりますけれども、私は国家公務員法を全部はずせ、こう言っておるわけじゃないのです。百十一条をはずせとも言っているわけじゃないのです。百十一条は、いま問題になっているから、そこへ話が集まってはおりますけれども、百十一条は何も取材の問題に関してだけではないのでしょう。そのほかもろもろの問題があったからこそ百十一条というものができてきた、こういうことになるのじゃありませんですか。それはいかがですか。
  126. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 おっしゃいますように、国家公務員法の百十一条は取材行動だけを目当てにしたものではありません。しかし取材行動を省くものでもございません。要するに百十一条に該当する事実、すなわち犯罪行為をそそのかすということになれば、これは国家公務員法の百十一条が働くというのが現行規定でございます。したがって、現行規定に従ってそれぞれの法律執行の責めに任じている者はそのとおりに実は執行しているというのが現在の姿でございます。
  127. 沖本泰幸

    ○沖本委員 第一番目の長谷川先生の御質問にもありましたけれども、取材する記者というものはもう全く涙ぐましい努力を払ってやっていらっしゃる、こういうことをおっしゃっておったわけです。ですから国民立場に立って報道関係者取材記者が自分のニュースソースを得るために、あるいは政治のゆがみを正そうあるいは政治の歩みを見てみよう、こういうことから国政の内容の中に手を入れていこうとすれば、その前に、それがあるからどこまでいったらどうなるのかという危ぶみが出てきて、こういう事態に至ったら取材におそれが出てくるじゃありませんか。あれもいけない、これもいけない、こう言われ出したら、そこから前へは進めないというのが現状になっているわけじゃありませんですか。ですからわれわれのほうは、この法律を守って使っていく以外にない、こういうことをおっしゃいますけれども、そういうふうなひずみ、いろいろなものが現在起きてきているわけです。その点を私は申し上げたいわけです。ですから、表現の自由が憲法で保障されているのですから、当然取材の自由も保障されなければならないということになるわけじゃありませんですか。総理がおっしゃるとおり何もかもかってにと、それは当然その取材をなされる記者のモラルの中にかかっているわけじゃありませんですか。守らなければならないモラルというものはあるはずです。そういうことになるわけです。ですからそのひずみが起きて、それが壁になって手の出しようがないということになれば、何もかも表に出た問題しかつかめないということになってくる。そういうことになるわけです。現実にそのおそれが出てきているわけです。ですから取材の自由は保障されなければならないという最低の限度から、この百十一条の中からその適用取材に関してははずしたらどうですか。法務大臣いかがですか。
  128. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 けさほども先般の決定お話ししたわけでありますが、その中にも言っておりますように著しく常軌を逸したといいますか、正当性、社会通念から考えて適法な取材であるというものについてあれが適用されるわけではないんでありまして、とにかく相当、まあ異常と申しますか、社会通念から考えて異常な圧迫を加えるとか、そういうことがそそのかしに該当するわけであります。したがって、現在新聞記者諸君取材をやっておられますが、社会通念から考えて何も心配なしにおやりになっておるわけであります。ただ、非常に異常な場合が今回の例だと申し上げる以外にはないと思います。
  129. 沖本泰幸

    ○沖本委員 現実にこのことがありまして、私たち自体がその資料を要求し、いろんなことを調査するにも壁がだんだんとできてきていることは事実です。そういうために先ほど参議院の黒柳議員の問題を出したわけです。  で、この点は、私が特に申し上げたいことは、ここでこういう問題がクローズアップされて、これ以上にいままでの取材ができなくなってくる、こういうことになってはならないと思うのです。向こうのために申し上げるわけなんですから。ですからもっと自由な取材が許されていいはずなんです。その点、総理いかがですか。
  130. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来申したとおりでございます。法令に違反しないで取材する、そうして便宜をはかる。これはもう政府も当然やらなきゃならない。国民の知る権利、また国民に知らす義務、これがわれわれに課せられたものじゃないか、かように思います。これはもう長谷川君に私答えたとおりでありますので、いかにも報道関係者政府と対立するようですけれども、それはもう最終的目的は見失うことないように、両方が併存するものである、かように私も思いますし、またその方向で御理解していただきたい、かように思います。
  131. 沖本泰幸

    ○沖本委員 最後に、やはりこの問題にかかるわけですけれども、総理法務大臣もこの百十一条の適用という内容についてはもっと深く検討していただいて、何らかの改正なり何なりをお考えいただきたい。こういうことを要望いたしまして、私、質問を終わります。
  132. 櫻内義雄

    櫻内委員長 曽祢益君。
  133. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は、今回の沖繩協定に際する、特に米軍の軍用地の復元補償に関します政府秘密取りきめと議会に対する食言並びにこれに関連して発生いたしました外務省機密漏洩事件新聞記者逮捕、このような三つの重大な問題について、これを分けて要点だけを御質問申し上げたいと思います。  すなわち第一は、秘密裏取引と食言に対する首相、外相の政治責任の問題、第二は秘密漏洩に示された外務省の綱紀のゆるみに関する問題、第三は国の機密国民の知る権利に関する政府、国会、報道機関それぞれの権利責任の問題、このように一応分けまして御質問をいたしたいと存じます。  まず第一の問題ですが、これは衆議院の予算委員会におきまして、この問題については特に総理の釈明と社会、公明、民社三党の党首の意見表明がありまして、その結果、また最終の結果が出てはおりませんが、総理が深く政治責任を痛感し、適当な時期においてその責任を、私は総辞職の形においてとられるものと期待しております。したがってそういう意味での問題は、一応私はここで取り上げません。これはもう既定の問題だと思って、その実行を国民とともだ見守ってまいりたい。ただ秘密交渉について政府は国会に対し、またしたがって国民に対し二つの道義的、政治的の罪を犯しているんじゃないか。これは、法律的の罪になるかどうかは別とします。  政治的、道義的の罪、その第一は、協定の第四条第三項に、いわゆる軍用地復元補償についての米側の支払い義務を、まあ自発的という形であるにせよ、はっきり書いてあります。ところが今回の機密漏洩事件等によって明らかになったように、実はこのことについては日本側がその財源を肩がわりして、究極的には三億二千万ドルという、まあ言うならばつかみ金の中に含めて、その中から四百万ドルをこうイヤマークして別個取り扱いするということは、これは最終的になくなったようでありますが、少なくとも三億二千万ドルの、きわめて最高の政治的な配慮をしたというこの日本側の支払いの中から米側にこれの財源を提供している。これはもう一点の疑いもないところであります。したがってこれは実に変な外交交渉の結果でありまして、日本側に対しては、日本政府は、これは米側が支払うということを協定ではっきり書いている。実は米側のほうは、国務省といいますか、議会に対して、いやこれは日本側から別途財源が出されるのであって、米側としては、特に政府としては国会に財源を求めない。言うならば、結果的にいって、両外務省及び国務省がそういったような、それぞれの自分の国民に対して都合のいいといいますか、うそをついているといいますか、こういうような結果になっているのではないか、これはまことにゆゆしき問題ではないか。確かに外交交渉のことであります。加えて言うならば、何と言われても、これは平等、対等の交渉ではない。日本側が幾ら言ったって、まあ理屈はサンフランシスコ平和条約にもありますが、とにかくアメリカから沖繩を返してもらうという、こういう立場から、いろいろ日本側の正しい主張がそのまま通らないことはあります。たとえばこの三億二千万ドルの中に、外務大臣がしばしば言っているように一億七千五百万ドル、これもほんとうはつかみ金だと思いますけれども、これは資産の継承等の費用だ。七千五百万ドルは労務者解雇の費用で、これこそ、少なくともこれこそはアメリカだけが払うべきものです。しかしそれをしもアメリカが払えない。しからば日本側が三億二千万ドルの中に七千五百万ドルはイヤマークして、沖繩同胞の労務者の解雇のために、人道的な、これは屈辱的であるけれどもやむを得ないからそうやっている。私はそういうことはあってもしかたがない。なぜ、この軍用地復元補償だけわざわざ四条三項で麗々しくこれはアメリカが払う、こう書いておいて、これはもう電報等の経緯が明らかなように、最終段階のではないけれども、もうはっきりしていることは、アメリカ側はあくまで、これはアメリカ側が国会に別途の費用を要求しない。日本側は、いわゆる三億二千万ドル、特に外務大臣の言う最後の上積みというか、最後の七千万ドルというところに、核撤去の費用だって、これはほんとうはアメリカ側がやることでございましょうが、それを含めた政治的判断の七千万ドルはこの中に入れている。これは私ははなはだ不明朗である。そんな小手先を弄することがどこにあるのだ。堂々とと言っては語弊があるかもしれませんが、やはり核撤去の費用の問題、それから労働者に対する解雇手当の問題、そうしてこの四条三項に該当する、これは一部ですけれども、一部の復元補償についてついに話し合いができなかったからこれは日本側のほうで出すのですと、なぜそれをすっきりと言わないのです。なぜこんな複雑な、アメリカに対しては日本側から支払いのファンドをもらっているからやるんだ。実質的には日本側が肩がわり。日本国民に対しては、これが追及されるまでは、これははっきりとアメリカ側が払うんだ、日本側が肩がわりするんじゃない。なぜそんな複雑な、しかも結果的には、多くの同僚議員が指摘しているように、国民にうそをつくような、そういう手の込んだことをするのですか。私は不対等の場合には国民はわかってくれると思う。私はこれは外交上の汚点ではないか。二十二年間にわたって国会議員として、特に私は外務委員の職に当たってきた者でありますが、このような策を弄した外交というものは私はほかの例を知りません。はなはだ遺憾千万である。わが外交史上の汚点であると言っても私は言い過ぎでないと思う。この点を最高責任者の総理、それから外務大臣、これは外務大臣はそのときは大蔵大臣だが、協定については、外務大臣じゃなくで、総理大臣から、なぜそういう策を弄した、そういう外交というものはいいのか悪いのか、もっと真剣にお考えになって、お答えを願いたい。
  134. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に策を弄したわけではございません。曽祢君もこの種の交渉、こういうことは御経験からおありだろうと思いますが、大体アメリカから要求したものはずいぶん大きな額でございました。またその額をめぐっていろいろの批判があったこと、これはおそらくある程度はお聞き及びだろうと思います。そして私どもが最終的段階になりましてきまったものが、ただいま御指摘になりましたように、引き継ぐもの、これが一億七千五百万ドル、同時にまた労務関係費、これが七千五百万ドル、核撤去その他合わせて七千万ドル、こういう三本柱ができて、そういうところで最終的に、いわゆる外務大臣のことばをもってすれば、高度の政治的判断で結論を出した、こういうことでございます。  私はその間における個々の問題一つ一つについてとやかく申すわけではございませんが、この種の交渉事はただいま申し上げるようないきさつにある、かように思っております。  私はかつて大蔵大臣当時に、ガリオア・エロアのある始末をする、こういうことでアメリカと交渉いたしました。これは戦後の日本に対するアメリカの援助だ、かように思っていたものを返す、そういうことになり、そしてその金額をめぐっていろいろな議論があった。しかし当時の資料をアメリカから出してもらって、そして日本と突き合わせて折半してもらった。これも最終的には政治判断でございます。この種のことで私がいまだに記憶しておるのは、当時の、アンダーソン財務長官と申したのですが、この種の債権債務は時間がたつに従って金額が減るものだ、利子がつかないものだ、かように考えておる、それはどういうわけだ、ありがたみがなくなるのだよ、こういう話をしたことがございますが、もちろんそのとおり池田内閣で結論がつけられたと思っております。吉田内閣当時の金額から見まして、池田内閣当時にきまったガリオア・エロアの金額は全体として減っております。  それらのことをも考えながら、今回の沖繩交渉において、ただいま御指摘になりましたように、最終的には政治的判断がわれわれに要求された、かように思っておりますから、そのとおり外務大臣が答えておる、かように御了承いただきます。
  135. 曾禰益

    ○曽祢委員 場合によって、日韓の場合でも、理屈にはならないかもしれないけれども、つかみ金で三億ドル、五億ドルの有償無償のいわゆる援助、日本は経済援助である、韓国側はこれは賠償である、こういうことはあり得ることですね。それから、こっちの言った条件で必ずしも通らない場合があります。しかしそれはそんなカムフラージュしないで、残念ながら、この軍用地の一部は復元補償についてどうしても向こうは出せない、その性質においてはこの軍労働者諸君の退職のお金、核撤去費と同じなんだから、これは日本側が負担せざるを得なかったと、そっくりそのとおり言ったほうがいいということを言っているのです。私はその政治姿勢については、これはあとで申し上げる交渉の過程についてのいわゆる食言といいますか、答弁の問題とは別に、こういうことをやることは国民を愚弄するものであるし不信感を買うものであるし、外交の姿勢として正しくない、これをはっきり申し上げたい。  時間がございませんから次に移ります。  これはもう多くの同僚議員が指摘されたところですけれども、第二の問題は、やはり国会における答弁においてうそをつくことは許されない。いろいろ記録をたどってみても、政府委員のこの問題に関する答弁の中に、たとえば十一月七日の横路委員の質問に対する政府側の答弁は、これは日本側の支払い、四百万ドル支払ってくれというようなアメリカ側との話ですね、向こう側の。これに対して、政府委員は、御指摘の事実は全然存じておりません。それから、十二月十三日に横路委員から、パリにおける愛知・ロジャーズ会談についての公電があったろう、メモじゃない、公電があったろうとただしております。全部本省と電話連絡をしている。完全なうそですね。これも完全なうそです。また、愛知・マイヤー会談で、四百万ドルを文書化したいと向こうの話があった、そういうことはないのか。それに対するやはり政府委員の答弁、そのようなことは全然ない。私は、これは話せない、場合によっては秘匿だ、あるいは知らないとい言うことは少しよくないかもしれない、そういうことでなく、これは明白に虚偽の、うその答弁ですね。したがって、本院の予算委員会においても、総理大臣は、三月二十八日に、全然知らないという答えをしたことはまことに不都合だ、言えないならば言えないと言うべきであった。私はこれはこういうふうな率直な態度でいいと思うのです。ところが、福田外務大臣は、部下をかばいたいという気持ちはわかりますが、表現が適当でなかった。表現が適当でないということと、うらはらのうそを言っておるということとは、これは全然違うのですよ。そういう態度は許されない。私は単に外務省の一局長責任だけを追及するのじゃない。局長外務大臣にかわってあるいは総理にかわって答弁している。そういう場合に、持ちなさい、それは政府としては申し上げられない。なぜそういう態度をとらないのですか。私は、やはりこの食言問題についての最終的な責任は、それこそ私の質問の冒頭で申し上げました最終的には総理の政治的決断にあり得ると思いますけれども、それにしても、けさの同僚委員の質問の中で、総理が単に釈明でなくあやまっているのだということを言われた。当然これはあやまるべきですよ。遺憾の意だなんということじゃないですよ。総理大臣、はっきりと陳謝しなさい。
  136. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかくいままでの経過として、たいへん御不満な点は多いと思います。また、国民から見たら、ずいぶん政府表現がわからないのか、これが意図的にかように言ったとすれば国民を愚弄すると、これは必ず国民から叱責されると私は思います。私のこの前の予算委員会における釈明、これは同時に国民に対してわびる気持ちがあったから、反省を込めて実は申し上げたのでございます。これについて三党首とも、それより以上は責めないけれども、とにかくそれぞれがそれぞれの期待を持っている、こういうようなお話をされました。私もあえてとやかくは申しませんが、そのとおり伺っておきます、こういうことを申したようなわけでございます。ただいまさらに陳謝しろ、こういうお話ですが、私別に陳謝するというそのことばにこだわるわけではございませんけれども、私は深く遺憾の意を表している、かように御理解いただきます。
  137. 曾禰益

    ○曽祢委員 くれぐれも、ただ一外務吏員の責任だけではございませんから、そのほんとうのあやまる気持ちを行動においてあらわしていただきたいと思います。  第二の問題に移りたいと思います。  私は、第三の問題の中で、国の機密政府、それからマスコミ、国会の国民に知らせる権利報道の自由等に関連する問題をさらにそこでやるつもりでございますが、一応今度の事件で、少なくとも外務省から機密文書が漏洩した、これを軽く見てはいけないと思います。したがって、私は、外交上の問題としては、やはり外交交渉中のことがそっくりそのまま筒抜けではわが国も困るし、また場合によったら、この外交交渉の相手方が非常に困るようなこともあろうし、そういうような意味で一定の限界においてこの機密というものがあり得る。これは外交問題交渉中の機密相手方の問題。それからもう一つは、やはり通信の道具であるこれは多くの場合には暗号を使います、電信の場合。暗号というものの機密は守らないと、筒抜けになったら困る。これは特殊の文書機密でなくて、通信の機密を守るための機密ということが外務省にあるのではないかと思う。私は、外務省が何でも、それこそかすみのべ−ルの中で秘密的なにおいをぷんぷんさせているのはよくない。そして同時に、こういう問題について、その職業的な意識からも、いやしくも一公務員が職務上知り得た機密を漏らしてはいけない。その他の外交交渉の非常にデリケートな問題、それを承知しているはずです。しかも電信の複写したものを絶対にそのまま外へ出さないという、これは多年の訓練がどんな外務省の下っぱでもあったはずだ。そういう意味秘密のベールの外務省ということを私は肯定するの、じゃない。外務省からこういう機密が漏れたということ、これは重大なその機密は、公務員法にも当然抵触するけれども、公務員法に抵触して一事務官があるいは逮捕拘禁されあるいは訴追せられるであろうというこのこと以上に、もっと外務省が綱紀のゆるみという問題を真剣に考えなければいけないと思うのです。  そこで、この機密漏洩に至った経緯といってもあれですけれども、一体機密をどういうふうに分類されておったか、これをひとつ御説明願いたい。
  138. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府委員から答えます。
  139. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 お答えいたします。  外務省機密は、前にも官房長官からお話し事務次官会議申し合わせに基づきまして、極秘と秘に分かれております。極秘の中に機密というものを含んでおります。
  140. 曾禰益

    ○曽祢委員 そういう形式的なことを伺っておるのじゃないですから、大きな問題ですから外務大臣からお答え願いたい。  こういう機密文書について、特に電信の写し等が回覧される場合にどういう機密保持の——これは当然の機密保持に相当な厳重な手段がとられておったと思うのだけれども、今回そういうところに抜かりはなかったのですか。
  141. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま外務省の扱う文書について非常に御理解のある御発言で私も感謝しますが、今回の問題を契機といたしまして反省しなければならぬという点は多々あると思います。しかし、現状におきましては、ただいま官房長から申し上げました次官会議決定に基づきまして、秘密文書取扱規程というものができております。この取扱規程自体がまたそう軽々に公開できるような性質のものじゃございませんけれども、それだけの配意をしながら機密文書の保持に当たっておる。しかるに今回こういうような不祥な事件が起こった、こういうことです。なぜ起こったのかという点を究明しなければならぬ。私は、あの事件が起こりました直後、佐藤官房長、ひとつこの当該事件調査に当たる一班を設け、また今後この事件を契機といたしまして、将来にわたり外交機密というものをどういうふうに保護するか、また機密機密という極秘判のものが多過ぎやしないかというような問題まで含めまして、また庁内の綱紀の問題、こういうものも考えながら、綱紀粛清に関する調査会を設けまして、徹底的にひとつ綱紀の粛清並びに外交機密の保護、そういうものに当たってみたい、こういうふうに考えております。
  142. 曾禰益

    ○曽祢委員 たとえば電信なんかを局長やえらい人に回覧する場合に、その保管等について、十分なる書類保管あるいは書類を回すときの機密保持の手段はとられておったのか。また電信なんかはなるべく早く焼き捨てる。たとえば安川審議官の部屋でこういう書類がいつまでも長くあった。そういうところに一事務官が、その行動はこれは公務員法上許されない機密漏洩ですけれども、やはり一事務官だけを罰すればいいという以上に外務省全体のゆるみですね、上の人を含めて。機密文書なり電信等についての注意が全然足りてなかったのじゃないか。そのことがこういう問題を派生したのではないか。罪なきじゃなくて、罪はあっても弱き者の一事務官責任で、それで満足している問題じゃ絶対ないと思う。電信等の処理についてどういうふうにされているのか、基本の点だけでいいですからお示し願いたい。
  143. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は外務大臣になる前から外務省文書の扱い、これは非常に気をつけなければならぬという考え方を持っておったわけです。電信はもう外交の命である、こうまでいわれておる。特に電信は通信技術の問題としても非常に機密性がある高度のものであります。そういうことでございますけれども、とにかく今回のような事件が起こった。これは私はやはり、あるいは気のゆるみというか、綱紀の弛緩というか、そういう問題もあるし、あるいは文書取り扱いの経路、そういうものについても、私は欠陥があったのじゃないか、そういうふうに思うのです。でありまするから、災いを転じて幸いとなせ、こういうような考え方を持ちまして、これを契機といたしまして、徹底的に綱紀の粛清並びに文書取り扱いにつきましての改革、こういうものを考えてみたい、こういうふうに考えております。
  144. 曾禰益

    ○曽祢委員 この不幸な事件を契機として、特に弱い下級の事務官だけをいじめる、断じてそういうことは許されないので、綱紀を粛清してもらいたい、強く要求しておきます。  第三の問題は、先ほど申し上げましたように、国の機密国民の知る権利関連する政府、国会、報道機関の立場といいますか、これはもう多くの同僚委員からも口をすっぱくして述べられているように、国民に知る権利がある。言論、出版の自由、表現の自由、これは憲法第二十一条に規定がありまして、これはわが国の民主主義制度のほんとうに根幹になるわけです。そこで、権力の座にある政府は特に国民に真実を知らせる重大な義務がある。その場合に、報道機関を通ずる場合、それから特に私が強調したいのは、国民を代表する議会制民主主義、代議制度、国権の最高の機関である議会を通じてこれを発表する、知らせる、これはもう当然の重大な政府の責務だと思います。ただ国の安全に重大な影響を及ぼしあるいは著しく外交を妨げるような場合には、これはすべてがガラス張りでやれない時間的の制約あるいは内容的な制約もあり得る。これは私は理論的にも実際的にもこのことを否定はできない。しかし政府が、自分の都合が悪いからといって秘匿する、隠す、こういうことが国の最高の安全の問題であるから、外国に迷惑をかけてはいけないからというような、変な理屈で政府の都合の悪いことを押し隠す、そんなことは断じて許されないと思う。けさ三宅長老が熱弁をふるって、戦前の暗い時代を絶対に復活してはいけないということで言われた、そこに重大な政府責任がある。それからまた、外交交渉中には発表できなくとも、やはり一定の期間、冷却期間が過ぎれば暗号の機密だってこれはなくなるわけなんだし、また一々の往復文書を、全部じゃなくても、交渉の経緯のこまかいことまでこれは発表するのが民主主義の国のやり方なんです。その期間が何年であるかは別として、時間が来れば公表が原則である。私はそう思うのです。これは明白だと思う。その公表の義務ということを認める。ただし一時的にごく限定された場合に、全部がガラス張りでないという、これは例外なんだ、これをきちんとしておかないといけない。要するに政府が、法律の範囲内で許されておるきわめて限定された機密保持の機能もありますけれども、それも国会の監督それからマスコミを通ずる国民の監視と批判、こういうものにちゃんと牽制されあるいは抑制され監督を受けて、それで最終的には国民がその善悪を判断する、これが民主主義の私は根幹だと思う。ですからまず第一に、必要に応じてこの秘密会においてでも国会で知らせる。秘密会そのものを私は決していいとは思いません。また議会側から言うことじゃない。政府としては秘密会を要求しあるいは党首会談においてお話しする、そういうことも含めて国民に知らせる、この機能と責任を果たすべきじゃないか、その点は総理はどうお考えですか。
  145. 福田赳夫

    福田国務大臣 事外交に関するようですから、私からお答え申し上げますが、いろいろ具体的な事例をあげての御提案でありますが、それらを含めましてこれから外交機密の保持と言論の自由、表現の自由というものをどういうふうに調和させるか、そういうものを根本的に洗い直してみたい、こういうふうに考えております。
  146. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま曽祢君のお話はずいぶん示唆に富んだお話でございます。私も清聴いたしましたから間違いはないと思っておりますが、大体御指摘方向でやるべきだ、かように思っております。さらにその中であるいは国会の秘密会あるいは党首会談等の御提案がありましたが、それは事柄がおのずからちょっと違うかもわかりません。必要があれば党首会談に応ずる、また秘密会も開催してもらうあるいは秘密理事会も開催してもらう等々のいろいろの問題がある、かように思っております。ありがとうございました。
  147. 曾禰益

    ○曽祢委員 定期に外交文書を、交渉の経緯等を刊行するのは、これは私は日本の外務省ですらやっておったのじゃないかと思う。その点はどうお考えになりますか。
  148. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 外交文書につきましては先生御承知のとおり、古いものから順々に刊行しております。大体現在のところ戦前に来ておりますが、その後の分を何年間で解除するかという問題につきましては現在検討中でございます。
  149. 曾禰益

    ○曽祢委員 そういうスローモーションじゃいけないんで、もう少し現代に合ったような——私はあえて二年とか三年とか一年とかいうことは言いませんが、これはスピードアップすべきだと思います。これはぜひ実行していただきたい。  それから、今回政府蓮見事務官供述に基づいて、同事務官のみならず西山記者公務員法百十一条教唆の疑いで拘禁した、これは、私は政治的には行き過ぎじゃないかという感じがいたします。不当だというかどうか、行き過ぎている。不法であるかどうかは、司直の手によっていろいろ明らかにしなければいかぬと思いますけれども。ただ、目的が西山記者から社会党に資料が流れたほうを押えようというような、内閣の御都合主義による、逮捕でなくてもその拘禁の長いこと、こういうのはよくない、私はそういうふうに考えます。特に参議院でわが党の田渕委員から、まさかそんなことないと思って否定のつもりで、まさか秘密保護法なんかお考えにないでしょうと質問したら、総理大臣が、えたりやおうと秘密保護法はほんとうは考えてるんだ。ここははっきり、本院のこの機会に、秘密保護法を制定する意図なしと断言をしていただきたいと思います。
  150. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 秘密保護法制定の意思なし、はっきり申し上げておきます。
  151. 曾禰益

    ○曽祢委員 額面どおり一応受け受っておきます。  私は、西山記者逮捕、拘禁といったこと、それからいま総理は否定されましたが秘密保護法制定云々、このことは、広範に認められるべき報道機関の取材の自由を侵したんではないか言いう重大な批判を招く、これは深刻に反省さるべきだと思います。ただ私は、報道機関の取材の自由といえども、たとえば一般刑法のたてまえ、あるいはさらに、法以前の一定の倫理の裏づけを必要とするものではないかと思います。特に報道機関は、入手した資料がかりに形式的には国家機密に触れても、なおそのベールを突き通してでも一日分の報道機関を通じて、自分の文章を通じて、新聞の記事を通じて報道する自由を持っている。けさほど議論されたように、ニューヨークタイムズあるいはニール・シーハン記者、これはむしろよく国の秘密を、責任をもって報道機関を通じて露呈したといって賞を得てるのですね。これくらいのものでございます。しかし、いずれにいたしましても、入手した資料を当該報道機関の活字を通じてやるのが原則でなければなりません。私は、その意味において、毎日新聞が六月の段階でこの材料を出さずに記事を書かれたことを評価するとともに、今回別のルートで国会の場に出された行き方には賛同いたしかねます。  私は最後の五分間を同僚の和田委員にお譲りしたいのですが、国会が最高の機関である、知る権利を有する国民の代表として国政を監督する立場から、政府秘密のべ−ルを突き抜けたような真相究明に努力することは当然の義務だと私は思う。ことに政府がともすれば何でもかんでも秘密にしたがる、こういう態度をもってすれば、それはやむを得ず証拠を突きつける、こういう気持ちになることも十分にうなずけます。しかし、機密の壁を破る場合でも、われわれ国会議員は憲法による免責権があります。したがって、われわれはその意味からニュースソースを秘匿し、人に迷惑かけない、こういうことを守る国会議員としてのモラルを要請されていると思います。そういう慎重な配慮が国会側にもある、私はこのことが必要だと思います。  しかし、最後に特に強調したいのは、冒頭に申し上げたように、権力を持っている政府の姿勢が、私が先ほど二つの政治的、道義的の罪を犯したということばを使ったくらい、沖繩交渉に関する秘密外交の姿勢によって、政府が一番重大な国民に真実を知らせる義務を欠いた。国会側の人は秘密会でなるべく取り扱おうとした。しかし、幾ら言ってもぬけぬけとうそまでついて、そしてこの責任を明らかにしないというところに、今回の不幸なニュースソースからいわゆる横に流れたというようなこの事件が起こったと思う。最後は、ですから何といっても政府の政治責任と、政府機密保持ではなくて国民に知らせる義務を極力最高まで認めて、国会に協力するという姿勢を示す、マスコミに協力するという姿勢を示すことが根本だと思います。したがって、その点についての総理大臣の最後の御所見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  152. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんはっきりした御意見でございます。私ども報道関係の人たちといろいろのつき合いを持ちますが、やはりそういう報道関係の連中も、大事なことは、ミスリードだけはしてくれるな、これが最後の言い方であります。事柄が話せないこともありましょうし、また秘密を守っていくことがある。しかし、そのことが最初から全然ないとかあるいは知らないとか、こう言われてはミスリードになるから、その辺はひとつわれわれを間違いさせないようにしてくれ、こういうことをいわれております。ただいまの国会に対しましてはもっとさようなことが、ミスリードするようなことがあってはならない、ある程度の機密は、これはもう曽祢君も御指摘のようにあるのですから、それはそれなりにやはり守らなければならない、かように私思いますが、両者ともに国益を守り、同時に国民のための活動でございますから、言論の自由、これがしかも民主主義民主政治基底だ、かように認識すればなおさらこのことは守られなければならない。したがって、少なくともはっきり言えることは、ミスリードしないこと、これが少なくともこの際に言えることじゃないだろうか、かように思います。
  153. 曾禰益

    ○曽祢委員 和田議員に……。
  154. 櫻内義雄

    櫻内委員長 関連質問を許します。和田耕作君。
  155. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いま曽祢委員から三点にわたって御質疑をいたしました。第一点は、今回の問題の発端になった政府沖繩問題についての答弁の重大なる失態が一つ、もう一つは、外務省における機密の保持についての欠陥、最後に、報道についての基本的な問題の質疑がございましたので、私もそれを受けましていろいろ質問したいと思いましたけれども、時間がありません。  それで、この問題はいかに重要であるかということを最後に指摘申し上げて質問を終わりたいと思うのですけれども、私このごろ毎晩座談会をやっております。一回約三十人ぐらいの人が集まるわけでございますけれども、この問題が出てから約十数回の座談会をしております。私は新聞で、特に毎日新聞をはじめ大きく報道しておりますので、さぞいろいろな問題についての質問があるだろうと思っておりましたけれども、驚くことに、新聞報道の自由という問題を理解をして、そうして新聞の主張は正当であるというような質問が一つも出ないんですね。私、実はこれは驚いておるんです。私こんな話をしておりますと、話の途中から切って、西山記者はけしからぬとかいろいろな話が出てくる。これは私は非常に重大な問題だと思います。新聞社はこの十数日、こんな大きな活字で報道しておるにもかかわらず、私の座談会に集まってくる人は、中小企業の人でありサラリーマンであり、特には労働組合の現場の人の座談会でございますけれども、積極的な報道の自由の重大性という問題を踏まえた質問というものがほとんど出てこない。これは私は、政府を弁護しているわけじゃありません。つまり国民報道の自由という問題の重大性を、理解をまだしていないんじゃないかということを強く感ずるんです。新聞は、ほとんど全部の新聞がこんな大きな活字でやっておるのですが、それにもかかわらず新聞の主張を理解しているような質問がないという事実。これは私の会った人は、十数回ですから約三、四百名の人になるでしょう。この問題は、つまり政府逮捕をしたという、警察がつかまえたということが、一般の人たちには、これはつかまえられたほうが悪いんだという印象がかなり強くあるという一つのあらわれではないかという感じがするんです。それだけに報道の自由の問題については、正しく論議をしていかなければならぬと思います。国民が正しく理解するような方法でやっていかなければならぬと思います。そのような意味で質問したいんですけれども、私、内閣委員会で今後ともこの問題は質疑してまいりたいと思いますけれども、ただ一点、今度のこの公務員法蓮見秘書をつかまえたことは、これは私は当然だと思います。しかし公務員法のどこに、公務員以外の人間つまり新聞記者なら新聞記者——新聞記者でなくてもいいんですが、公務員以外の人間を逮捕できるという条文があるのか。先ほどの刑事局長の答弁では、幾つかの判例によってこれをやったということですけれども、公務員法のどこに一般の公務員以外の人を逮捕できるという条項があるのか、この点だけをお知らせいただきたい。
  156. 高松敬治

    高松政府委員 国家公務員法第百十一条に規定がございます。「第百九条第二号より第四号まで及び第十二号又は前条第一項第一号、第三号から第七号まで、第九号から第十五号まで、第十八号及び第二十号に掲げる行為を企て、命じ、故意にこれを容認し、そそのかし又はそのほう助をした者は、それぞれ各本条の刑に処する。」この中の前の号を引っぱっておりますが、その前の百九条の十二号と申しますのが、百条に違反して秘密を漏らした者ということをあげておるわけであります。
  157. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 時間が超過しておりますから、これは詳しくは申し上げません。公務員法の第一条には、この法律はもっばら公務員だけに適用する法律であるとはっきり書いてある。そのあとの文句は、それを受けての文句であって、百十一条の問題でも、公務員の中でもそそのかしたりいろいろな悪いことをしておるのがあるでしょう。そういうふうな条文だと、私は何べん読んでもそういうふうに理解するんですけれども、これは法律家じゃないからあとからただしますけれども、この問題について法務大臣から一言……。
  158. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 ただいまの条文はあのとおりに、ことに別個に公務員自身に対する刑なり処罰の規定はあるわけであります。公務員以外の人についても、百十一条等に書いております処罰の規定があるということでありまして、これは刑法でもいわゆる幇助とかあるいはそそのかすというような場合に、その人の身分にかかわらず、身分のない人も罰するという場合があるわけであります。それに該当するわけであります。
  159. 櫻内義雄

    櫻内委員長 東中光雄君。
  160. 東中光雄

    ○東中委員 私は、政府秘密としておられる秘密の内容及びその内容の性格についてただしたいと思うんです。  最初に外務省にお伺いしたいのですが、外務省外交交渉をやられてそして締結された、たとえば協定あるいは取りきめ、合意書、いろいろ名前はあるでしょうけれども、要するに政府間のそういう広い意味の協定で秘密にされておるものがいまどれくらいあるのか、特に日米間の関係でつくられておるものについてお聞きしたい。
  161. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府委員のほうからお答え申し上げます。
  162. 吉野文六

    ○吉野政府委員 いわゆる不公表ないしは秘密扱いにしておる日米間の合意ないしは合意議事録というものだろうと思いますが、一般の協定ないし合意である限り、正式な条約であり合意である限りは、これは御存じのとおり国連憲章によりましてみな公表されておりますから、そういうものはないと思います。ただ、たとえば日米合同委員会の合意議事録、これは従来から不公表になっておりまして、このようなものが幾つくらいあるかということは、われわれもいまここではすぐにお答えできませんが、そういうものはございます。
  163. 東中光雄

    ○東中委員 協定ないし取りきめ、これで秘密にしておるのはずいぶんたくさんあるんじゃないですか。私きのう、もう二十四時間も前になります、外務省にその点について問い合わした。そうしたら夕方になって、御要望にはこたえられません、政府委員諸君はこう言いました。中に入って非常に困っているんです、漁業交渉のことなんかもありますし、北米一課だけじゃなくて二課にもあるので、なかなかその数字がわからないんだ、こう言っている。秘密の協定が、数がすぐに出ないくらいに多いんじゃないか。秘密にされておって、われわれが知っておるものは若干あります。それでも百数十はあるという。いまの合同委員会の協定ですね、安保条約地位協定第二条に基ずく個々の施設区域に関する協定、こういうものは全部秘密にしているじゃないですか、それだけでも百数十件あるんじゃないですか。
  164. 高島益郎

    ○高島政府委員 日米間に限りませんで、日本が政府として締結した一切の条約、協定におきまして、秘、密というものはございません。ただ、いろいろいま先生の御質問にございましたような日米合同委員会の合意書、こういうようなものは秘密ではありませんけれども、いままでその内容について要旨を説明していることはございますが、そのもの自体を公表するということは、米国との関係上やっておりませんけれども、一般的に申しまして条約、協定その他政府が締結します一切の約束につきまして、秘密ということはございません。これは前々から大臣から申しましているとおり、外交秘密——交渉につきましてはありますけれども、いわゆる秘密外交として秘密の取りきめをするということは、われわれ許されておりません。
  165. 東中光雄

    ○東中委員 条約が秘密でないのはあたりまえであります。国会の承認を得るんだから、あたりまえのことです。問題は協定で、政府間の話し合いができて、文書につくって、そして秘密にしているのがずいぶんたくさんあるじゃないですか。現に先ほどあげた地位協定の二条に基づく個々の基地に関する協定、これはどうしても明らかにしないじゃないですか。  一つ重大な問題について具体的な例で申し上げますが、航空交通管制に関する合意並びに航空交通管制に関する合意第三付属書、昭和二十七年の六月二十五日につくられたのが本協定、三十四年の六月四日につくられたのが第三付属書、これは文書をどうしても政府は出さないじゃないですか。日本の空をアメリカが軍事的に支配しているんだということが、ずいぶん問題になりました。しかしその文書はいまだに出されない。この文書は、あることはもう間違いないですね。航空交通管制に関する合意第三付属書——と書いてあるんです。この文書は一体外務省秘密文書としての指定をしているのかしていないのか。しているとしたら、それは極秘になっているのか、機密になっているのか、秘密になっているか、その点を明らかにしていただきたい。
  166. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは合同委員会の合意でございますが、これは指定は極秘として指定されております。
  167. 東中光雄

    ○東中委員 日本の空の管制権に関する重要な問題です。それが極秘にしているんです。これが交渉をやって——現に去年自衛隊機が衝突をしたときに、マイヤー大使を佐藤総理が呼んで、これの改定について交渉に入ったんだということを私の質問に対して答えられたことがある。交渉を現にやっているわけです。そういう交渉を重ねてつくった。外交交渉の過程は秘密だけれども、結果は全部公開だ、何が公開ですか。極秘になっているじゃないですか。総理大臣、その点いかがでしょう。
  168. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは書類といたしましては極秘になっておりますが、その要旨はすでに公表しております。それは昭和三十五年三月二十五日に一括して交渉いたしました。いままで極秘にしておる理由は、合同委員会の議事録ないし合意は一切不公表にする。しかしながら、国民権利義務、安全その他に関するものは要旨をそのつど公表しておりますし、またまとめて公表しております。
  169. 東中光雄

    ○東中委員 合同委員会のことは秘密にするというのは、何によってきめているのですか。アメリカが言っているからそうしていると言うんですか。日本は日本として極秘にする必要があるのかないのか、その点。総理は先ほど、必ず結果は公開する、こう言われた。結果が逆になっているのですから、いかがでしょう。
  170. 吉野文六

    ○吉野政府委員 地位協定に基づく日米合同委員会の合意をなぜ不公表にするかと申しますと、これはやはり日米間の安全に関するものでございまして、このような内容をそのまま出すことは諸種の見地から適当でない、こういう判断に基づくものでございます。なお、米側はもちろんこれを不公表にすることを要請しております。
  171. 東中光雄

    ○東中委員 先ほど、昭和三十五年三月二十五日にその概要は発表してある、こういうように言われた。なるほど発表しています。ところがそれを見たら、原文の量にして約六分の一ぐらいです。内容的には、非常に重要な問題は全部その発表された概要からは出てこないという扱いになっていますよ。たとえばアメリカ軍にしろ日本の自衛隊にしろ、計画された戦闘演習をやるときには、最優先権を持つんだというようなことが書いてある。概要からは、発表された文書からは全然出てこない。そのほか、日本の空を米軍が、いつでも空域を制限できるというような規定がある。しかし、それは政府の発表した概要から出てこない。概要からはわからない。さらに防空識別圏を設定するについては、在日米軍と協議をして設定することになっている。アメリカと一々協議をして設定をしなければいむないような、そういうことが書かれているわけです。そういうものは一切隠されているわけですよ。それを隠すことが安全にかかわる——それは日本の主権にとって非常に重要な問題です。主権が侵害されている問題でしょう。そういう問題を、きわめて屈辱的な対米従属的な内容を持っている分を隠しているわけです。外交の結果は必ず公表するといま言われた。しかし現実にそうなっていない。これは一体どういうことなんでしょう。何を基準にやっているのですか。総理の見解を、総理はそう言っているでしょう。現にそうなっていないのですから。一体どうなんでしょう。
  172. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、とにかく公表する、これが原則だ、たてまえだ、しかし先ほど申しているように国防に関する問題、防衛に関する問題、これには機密があるということ、これで特例、例外的なものがあるということを申し上げていたように思います。したがって、ただいまの取りきめにいたしましても、外交上の問題になれば、いわゆる機密というそういうものは非常に局限されている。しかし、防衛に関しては、ときどきただいまのように明らかにしないものがある、御了承願います。
  173. 東中光雄

    ○東中委員 総理は先ほど声を大にして、外交交渉について結果は必ず公開する、原則と言われなかったです。これは外交交渉であります。  さらにもう一点お伺いしておきますが、松前・バーンズ協定というのがあります。これも日本の航空総隊司令官と米第五空軍の司令官との間の——これは日米空軍の共同作戦に関する非常に重要な問題です。まかり間違えば、このことによって日本が戦争に巻き込まれるかもしれないということだってあり得るわけです。そういう重要な問題を協定を結んでおられる。この協定書は書面があるということを前に答えられておりますけれども、これはやはり極秘ですか、どうなっているんですか。
  174. 久保卓也

    ○久保政府委員 極秘であります。
  175. 東中光雄

    ○東中委員 なぜ極秘になっているのか。
  176. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 安全保障上の問題だからでございます。
  177. 東中光雄

    ○東中委員 安全保障上の問題は、全部極秘にするというのが佐藤内閣の方針ですか。
  178. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはしばしばお答え申し上げておりまするように、公にできるものは公にいたします。しかし、やはり国益をそこなうという判断に立ちますものは、これはやはり秘密文書にするということは何べんもお答えしてまいったとおりでございます。
  179. 東中光雄

    ○東中委員 何べんもお答えされているようですけれども、これはむしろ逆でございまして、政府が松前・バーンズ協定について答えておるのは、こう答えていますよ。昭和四十三年三月二十五日、参議院の予算委員会、このいわゆる松前・バーンズ協定については「全体として特別に秘ということではございませんが、相手方のあることでございまして、相手方といたしましては秘にしてほしいという要望でございます。でございまするから、こちらも信義の原則に従いまして秘扱いをいたしておるわけでございます」。そして内容は、質問者側が内容を指摘すれば、大体そのとおりでございますという答弁をしていますよ。内容が秘密なんじゃなくて、これこそまさに、アメリカがそう言っているから——国益どころじゃないじゃないですか。内容は秘密じゃないんだ、全体として特別秘というものではございません、こういう答弁をちゃんとしているのですよ。何が極秘ですか。
  180. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これもいつも申し上げるように、なるべく概要については申し上げていく。その協定そのものをお目にかけることはひとつお許しを願いたい。しかし、国会を尊重するたてまえで、極力申し上げられる範囲のことは何でも申し上げます。その趣旨に沿っていま言われた点は申し上げたもの、こういうふうに考えます。
  181. 東中光雄

    ○東中委員 松前・バーンズ協定は全体として特別に秘ということではございませんという当時の増田防衛庁長官の国会答弁があるのですが、この答弁はいまも維持されるわけですか。いかがですか。
  182. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 文書としては極秘であります。しかもアメリカ側の要請もあって極秘扱いにしております。しかし国会を尊重するたてまえで申し上げますというので概要を説明されたものだ、こういうふうに思います。
  183. 東中光雄

    ○東中委員 質問に答えていただきたいと思うのです。問題をそらしたらいかぬと思うのです。全体として特別に秘というものではございませんという評価をしているのですから、それは維持されておるのか、されていないのかということを聞いているわけです。
  184. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いま防衛局長が申し上げましたように、極秘扱いをしておるわけでありまするからやはり秘密扱い、これが正しい答弁になると思います。増田さんの言われた意味が間違いとは思いません。これはやはり御質問があり、追及があって極力極要については申し上げていこう、こういう姿勢で言われたというわけですから、そういう姿勢はやはり今後もとることが望ましい、私も同感でございます。
  185. 東中光雄

    ○東中委員 相手方としてのアメリカが秘にしてほしいという要望がございます、それに従ってやっているんだ、こう答えている。アメリカはなぜ秘にしてほしいという要望を日本政府にしているのですか。
  186. 久保卓也

    ○久保政府委員 一般に防衛関係というのは、戦争が起こらないようにする、つまり抑止に役立つように運用するのが一番よろしいわけでありますが、その場合に、抑止力として役立つのにいわゆるあいまいの戦略、つまり味方の手の内を見せない戦略というのがございます。したがいまして、一般的な意見で申せばオペレーション関係、つまり運用関係というものはなるべく公表したくない。これは日本側にとりましても米側にとりましてもやはり同じことでありまして、その範囲においてお知らせできるものは、できるだけお知らせするというふうに私どもつとめております。
  187. 東中光雄

    ○東中委員 内容は、そういう問題じゃなくて、スクランブルの際には指揮系統はどうするか、米軍の指揮はどうするか、自衛隊の指揮はどうするか、一緒に行動するについては一つの指揮、指導室に入るのだ、こういうことなんでしょう。そういうことは国会で全部答弁しているのです。しかし文書はとめている。しかも極秘だと言っているのです。全くこういうのを——これは全部情報に接近をして、そしてこの内容が明らかにされて初めて政府は出してくる。そうでなければ全部隠しておく。防衛、安全保障に関することは全部そうするんだと言っているじゃないですか。むしろまさに逆なんで、国の安全に関することは、それだけよけいに、全部秘密扱いをやめるべきだ。一々公表する必要、そんなことを私言っているのじゃないのです。全部秘密扱いをやめるべきだ。そして問題があれば、国民の要求があればそれは当然出すべきだ、こういう性質のものだと思うのです。  それで法制局長官にお聞きしておきたいのですが、国家公務員法秘密漏洩罪というのは、形式的に秘密であるだけじゃなくて、実質的秘密が要るというのが判決立場でもあるし、むしろ通説だと思うのですけれども、先ほど申し上げたような「全体としては特別に秘ということではございません」というふうに政府の担当大臣が国会で答弁している。その文書が形式的には極秘になっているのです。これを暴露したら、やはり全体として特別に秘ということではございません、しかしそれでも処罰するというふうな政府の考えなのか、法的見解を聞いておきたい。
  188. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 事は刑事関係、具体的にはそういう関連におけるお尋ねでございますので、それについては私よりも専門の政府委員からお答えしたほうがいいと思いますので、お許しを願いたいと思います。
  189. 東中光雄

    ○東中委員 時間がありませんからいいです。内閣の法律の番人だといっている法制局長官が、すぐに見解が言えないような状態なんです。現実にその文書が極秘ということで置かれているわけです。それに対して接近していくというのは、もう当然のことですよ。こういう不合理な判こを押し、別に秘密ではないというような答弁をしながら何でも全部秘密にしている。こういう中で国民の知る権利というものは、もう全くじゅうりんされている。もともと民主主義社会というのは、国家統治に国民が参加していく、参加のしかたはいろいろあるでしょうけれども、最終的に判断をするのは国民なんですから、正確に知る権利、そのためには報道機関が問題の所在に接近する権利、これがあるのは当然であります。だから私は、世界人権宣言がその十九条で、あらゆる手段を尽くして情報に接近していく権利がある。「あらゆる手段」ということばを使っています。そういう性質のものだと思うのです。接近したらいかぬのだというような、あるいは秘密は守らなければいけないのだ、接近させないようにしなさい、防衛庁の秘密文書取り扱いについての規定を見たらそう書いています。そういう条文があります。こういうものではないというふうに思うわけであります。だから私はここで総理に、報道の自由、国民の知る権利という点から見て、世界人権宣言でいっておるあらゆる手段を尽くしてやる、それが権利だ——もっともそれは、暴力を使ったり詐欺をやったら、これはいかぬということはわかり切っていることですよ。そういう点で、この世界人権宣言を総理は認める立場でおられるのかどうかということと、それから外交、防衛関係については、特に国の、安全に関することについては機密が原則であるような、そういう言い方をされておりますけれども、これは絶対に、安全に関することであるからこそ——投機とかあるいは競売の利益を、競売の直前にその秘密を守る、それはもう守るのはあたりまえで、そういうことはあり得べきです。国の安全保障に関することであればあるだけ、これは当然に国民に隠すべきものではない、個々の具体的戦術の問題じゃないんですから。その点を強く要請して、日米間の安全保障に関する一切の合意書を公開する意思があるのかないのか、あるいは秘密を解くべきだ、その点についての総理所見をお聞きしたいと思います。
  190. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御質問ですが、これはやはり防衛上の秘密ということはあるというふうに考えます。  それから、松前・バーンズ協定は、さっきも申し上げまするように、わがほうとしてはさしたる強い秘密文書でないと思っても、アメリカ側からこれはひとつ秘密にしてくれないかと言われて、共同防衛、まあ私どもは専守防衛ですから、もしにわかに不正の侵略があった場合、攻撃的な面はこれはやむを得ずアメリカにまかせるという場面もあるでしょう。そういうたてまえにある以上、向こう側からこれは秘密にしてくれと行われて、それを守っていく、これもやはり一つの信義だと思います。ですから、日本側としての解釈によればということで、国会審議におまかせする意味で、はっきりと概要については申し上げておる。これはひとつ、むしろ政府側が皆さんの御質問に誠をもって答えておるというふうに御理解を願いたいですね。いまおっしゃるように、何もかも防衛については明らかにしろ、われわれは、極力明らかにするように努力をいたします。努力はいたしますが、守れないものもある。これはさっき防衛局長が言うたとおりです。私、操り返したくありませんが、この間共産党の岩間さんにも申し上げたのです。やはり安全保障ということは、これは一つの勝負ですから——われわれは勝負いどみませんよ。相手が撃ってきたときだけこれを守ろうというわけです。じゃんけんでも一つの勝負でしょう。ところが、私がグウを出すかカミを出すかということがわかっておってごらんなさい、これはもう問題にならぬじゃありませんか。(発言する者あり)いや、だから繰り返したくないけれども、同じことをおっしゃるから申し上げるのです。だから、私が何を出すかわからぬところに、あなただって慎重にならざるを得ない。これが防衛の原則ですよ。だから、何もかもあけっぴろげにしろという意味は、私は通らないと思います。これは御理解願います。   〔発言する者あり〕
  191. 櫻内義雄

    櫻内委員 御静粛に願います。
  192. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 世界人権宣言、これは尊重されねばならぬ。第一問。  また、日米間のいろいろの取りきめ等については、差しつかえないものはもちろん公表いたします。しかし、先ほど来、防衛に関するものにはどうも秘密がつきまとっている、この事情をひとつ御了承いただきたいと思います。
  193. 東中光雄

    ○東中委員 それじゃ、先ほど法制局長官が専門の人に聞いてくれということでありますので、法務大臣のほうから、すでに内容は全体として秘でない、そして内容的には説明をしている、しかしその文書には極秘の判こが押してある、それに接近できないのか。それは秘密漏洩罪になるのか。実質的秘になるのかならないのか、この点の見解を明らかにしていただきたい。
  194. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 その点につきましては、先般の決定が非常にはっきり申しております。形式的だけ秘密扱いになっておっても、それだけではいかぬ。やはり実質的に処罰に値するべき、保護していかなければならぬ、やはりこういう客観性を持ったものでなければならぬ。私もそう思います。したがって、これは外部の人でありまするから、部内の人のいろんなことがわからぬという場合においては、結局は良識で判断していただく。要するに社会通念で、これは重要なる秘密であるという認識によって判断される。そこで、いろんな争いが起こった場合には裁判所がこれを判定する、こういうことだと思うのです。
  195. 東中光雄

    ○東中委員 私は一般的、抽象的な話をいまやっておるんではなくて、具体的に松前・バーンズ協定というものがある。極秘という判こが押されておる。そしてその内容については、政府はこういう見解を発している。現にそれは、いま百条の適用を受けるか受けぬかという問題があるわけです。それは政府としては受けるとお考えになっておるのか。実質的秘密がなければいかぬのだというふうにいわれているけれども、一方では特別に秘ということではございませんという政府見解があっても、やっぱりそれは、実質的秘密だとまさか言われないと思うのですけれども、そういう見解をおとりになるのかどうか、政府の見解を聞いているわけです。
  196. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 国家公務員法規定します秘密を漏らす罪にいう秘密につきましては、先ほど法務大臣が御答弁になったとおりでございます。そこで、ただいま御指摘の協定について、これを漏らすことが国家公務員法秘密を漏らす罪になるかどうかという点につきましては、この秘密が実体的に刑罰をもって保護するに値するものかどうかという点が最終的な判断になろうと思うのでございます。この協定がさような刑罰をもって保護するに値するものであるかどうか、この点につきましては、争いになった場合には、最終的には裁判所の判断するところでございましょうけれども、裁判にならない場合におきましては、当該行政官庁が関係法律趣旨等にかんがみて指定しておるということが一つ尊重されるべき基準であろうと、かように考えるわけでございます。
  197. 東中光雄

    ○東中委員 全然質問の答えになっていないわけです。専門家なら当然わかっているはずです。法制局長官お笑いになっていますけれども、そうだと思うのですよ。実質的秘密になるのかならないのかということを聞いているのであって、形式的に極秘の判こを押しているということはきまり切っているんですよ。それを前提にして言っているんですから。だから政府は、それについてどういう立場で臨むのかというのは、最終決定裁判所にあるけれども、最終決定の前に逮捕したり何かするんでしょうが。政府は見解を持っておって、その見解に従って逮捕したりするんでしょう。いま現に西山さんを逮捕しているんでしょうが。だから政府はどういう見解を持っているのかということを聞いているわけですよ。西山さんを逮捕した、あるいは蓮見事務官逮捕して勾留をしている。請求しているのは政府側でしょう。それは実質的秘密だと考えてやっているんでしょう。あんなものは実質的秘密でも何でもないですよ。外務省の交渉経過だから秘密だ、こんなことは言えぬじゃないですか。交渉経過だからといって、うそのことを国会でやった場合に、その内容をはっきりさしていく、あたりまえのことじゃないですか。私は、実質的にはあれはもう秘密じゃないと思うから、いまこの具体的ケースについてどうなのかということをお聞きしているんで、答弁してもらったらいいんです。答弁を回避されるから、こういうことを言わざるを得なくなるわけです。
  198. 前尾繁三郎

    前尾国務大臣 漏洩なりあるいはそそのかすというような人でありましたら、おそらくその事柄についての判断は十分できるはずであります。それで、先ほど来申しておりますように社会通念でそれを判断すべきだと、かように考えます。
  199. 櫻内義雄

    櫻内委員長 以上で本日の連合審査会は終了いたしました。  これにて散会いたします。    午後二時五十九分散会