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1972-06-07 第68回国会 衆議院 外務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月七日(水曜日)     午後一時開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 正示啓次郎君 理事 永田 亮一君    理事 山田 久就君 理事 松本 七郎君    理事 西中  清君 理事 曽祢  益君       田川 誠一君    豊  永光君       黒田 寿男君    堂森 芳夫君       楢崎弥之助君    三宅 正一君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 福田 赳夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君  出席政府委員         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省中近東ア         フリカ局長   魚本藤吉郎君         外務省経済協力         局長      大和田 渉君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君         通商産業省鉱山         石炭局参事官  飯塚 史郎君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君         運輸省航空局技         術部長     金井  洋君  委員外出席者         外務省アメリカ         局安全保障課長 松田 慶文君         通商産業省貿易         振興局経済協力         部長      山口 衛一君         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ————————————— 委員の異動 六月六日  辞任         補欠選任   石井  一君     園田  直君   北澤 直吉君     古井 喜實君 同日  辞任         補欠選任   園田  直君     石井  一君   古井 喜實君     北澤 直吉君 同月七日  辞任         補欠選任   勝間田清一君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   楢崎弥之助君     勝間田清一君 同日  委員野田武夫君が死去された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堂森芳夫君。
  3. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣に、時間がわずかしかありませんので、端的になるべく短く質問いたしまして、なるべく短く御答弁を願いたい、こう思うのであります。  新聞を見ておりますと、大統領補佐官キッシンジャー氏が日本に九日に来まして十二日まで四日間おる。そしてもちろん政府与党あるいは財界代表的な人たちとも懇談をする。そしていろいろなことが想像されますが、私は何といってもニクソン大統領中国を訪問して中国アメリカとの間の共存の橋をかけるような外交を展開しておる。それからまた、さきにソ連を訪問しまして、ある意味では米ソ平和共存の基礎がいよいよ固まってきた、こういうふうに概略して言えると、こう思うのであります。そこで、この二つ頂上会談内容は、アメリカ世界政策の大きな、最重要の意味を持っておると思うのであります。いわばこれはアメリカ世界政策の戦後の四分の一世紀間における大きな一つの大転換である、こういうことは私は否定し得ないと思うのであります。そして、総理大臣あるいは外務大臣等に対していろいろとこうした重要な問題について説明があることは当然だろうと思うのであります。  そこで今日こそ、わが国が、第二次大戦後アメリカ共産主義封じ込め冷戦体制外交をやってきた、このアメリカ政策に何といっても追随してきたのが、私はわが国外交の本体であったということは明らかだと思うのであります。しかしあなたはこの間も、三日にプレスクラブ外人記者団と会見されまして、非常に重要な問題について発言しております。私はそれはある意味ではたいへん賛成な点だと、こう思うのでありますが、それはまああなたが次期総裁の布石として演説をされたのだと思うのでありますが、その一つは、サンクレメンテで佐藤総理が否定した台湾条項というものをあなたは今日まで総理とは違う立場をとってこられたように、今回の国会においてもそういう態度を繰り返してこられた。しかし今度は佐藤総理態度を何か追認というか、ちょっとことばは当たらぬかもしれませんが、同じような態度を表明された。またわが国の今後の政府がやらなければならぬことは、一つは日中の国交回復であり、一つ日ソ平和条約の締結というこの二つの大きな課題を解決しなければいかぬ、こう言っておられるのでありますが、今度キッシンジャー補佐官が、おそらく大統領の代理といいますか、あるいはメッセンジャーといいますか、そういう態度で来ると思うのでありますが、その機会にあっては堂々と、今後のわが国外交政策のあるべき基本的な、あなたがおっしゃっておられるように長期的な安定的なそういう外交路線といいますか、安定的だとあなたは言っておられますが、そういうものを堂々と示さなければならぬ私は重要なチャンスであり、またわが国が今日こそ自主独立の、極東における、あるいは広く世界におけるそうした冷戦外交というものから脱していくような絶好の機会でもあり、そういう態度外務大臣としても表明してもらわなければならぬと思うのでありますが、こういう問題についてのあなたの所見をできるだけ具体的に、しかもただ口先だけでなしに、こういうふうにしてわしは解決していくんだという、そういう構想等答弁として発表していただきたいと、こう思うのであります。
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回のアメリカ大統領補佐官キッシンジャー氏の来日は、その趣旨は、キッシンジャー補佐官が重大な役割りを担任しておる。しかるにかかわらずアジアに対する知識、ことに日本に対する知識が非常に乏しい。またアジアに友人も少ないし、特にわが日本に少ない。そういうことから、わが日本を親しく訪問いたしまして多くの人とお目にかかり、日本認識を新たにいたしたいと、こういうことなんであります。したがって、特定の案件について討議をするとかあるいは取りきめをいたしますとか、そういうような要務は一切ありません。来日の形も、民間団体の招待という形になっておる。しかし堂森さんがいまお話しのように、キッシンジャー氏はいまアメリカで非常に重要な人だ、その人が来日される、非常にいい機会でありますので、総理大臣もあるいは私も、またその他の重要閣僚も、さらに各界の人がお目にかかるという準備が進められておるわけなんです。  私自身といたしましては、この機会キッシンジャー補佐官よりアメリカの見る世界情勢の今後、またアメリカのそういう世界情勢の動きに臨んでの考え方姿勢、そういうものを問いただしてみたい、そういうふうに考えております。同時に、わが国世界情勢の中でわが国の担任すべき役割りはどうだ、したがってわが国はそのためにはこういう姿勢をとるのだ。特に私は、経済的に非常に強大になったけれども軍事的強国にはならぬという、これは世界歴史と非常に違った行き方でございますが、そういう道をとらんとする日本考え方、こういうものについて十分話してみたい。アメリカの一部には、日本軍備を持たない。アメリカのこれに依存しておる、安全保障アメリカに依存をする、ただ乗り論というようなものがあり、これが高じてまいりますと、日米間に容易ならざる事態も発生しないとも限らない。そういう間においてわが国は、わが国のたどらんとする道につきましてこれはアメリカ十分理解をしてもらっておく必要がある、こういうふうに考えまして、その辺のこと、これはもう私は最も重点を置いて話してみたい、こういうふうに考えておるわけであります。  同時に、わが国がそういう考え方のもとに、一つ一つ外交問題あるいは日中の問題、日ソの問題あるいは第三世界というか、開発途上国に対する姿勢の問題、そういう問題、それらの具体的な問題についての考え方基本について意見の交換をしてみたいと、かように考えております。
  5. 堂森芳夫

    堂森委員 私は、キッシンジャー氏がわが国を訪問する、そういう機会にこそ、やはりアメリカのそういう有力な地位におる人の一人でありますから、さっきも経済大国になったけれども軍事大国にはならぬのだ、そんなことはあたりまえのことでありまして、当然のことであります。ちゃんと憲法はそう書いてあるのであります。軍備は持っちゃいかぬ、戦争はしない、当然のことでありますが、もっと積極的に日本のこれからのほんとうの外交はこうなければならぬ、いままで戦後の二十五年間の政権はほとんどあなた方保守政党の内閣でありまして、その外交政策基本は何といってもアメリカ外交政策すなわち冷戦政策に基づいた共産主義封じ込め世界戦略に追随してきたこと、これは否定し得ないと思うのであります。そこで私がさっきからお尋ねしたのは、もっとはっきりと、わが国はそういうものではないのだ、こういう長期的な安定的な、あなたがおっしゃるように体系的な外交政策を堂々と示してもらわなければならぬ、こういうことを私は申し上げておるのであります。いまそういうことを短時間で説明せい、あるいはそういうことをいま具体的にすぐここであなたにまたいろいろと答弁を求めたいのでありますけれども、時間がありませんからやむを得ぬのであります。  そこで、近くASPACがソウルで開かれますね。そしてあなたは出るとか出ぬとか、いろいろなことが新聞報道されております。これは、出られるのでありますか、どちらでございますか。新聞では出るにきまったとも書いておりますが……。それからまたお尋ねしたいと思います。
  6. 福田赳夫

    福田国務大臣 ASPACにつきましては、ASPAC事務当局に対しまして私が出席する旨の非公式な通告をいたしてあります。しかし、ASPACはこの十四日、十五日、十六日——十六日というと国会最終日になるわけです。そういうようなことで、国会の御了承というような問題もありますし、いろいろな問題が殺到して起こる、そういう時期でありますので、まだ最終的な正式な決定はいたしておりません。私を除くところの代表団につきましては、昨日閣議でこれを決定いたしましたが、私の決定だけはまだ留保されておる、こういう状態であります。
  7. 堂森芳夫

    堂森委員 私たちはこのASPACに対しては最初から反対の態度をとってきました。これはやはり私が言いましたように共産主義封じ込め政策の結果生まれてきた。これは何といっても反共軍事同盟的な性格を持って生まれたことは明らかなんであります。今日大きく変わりつつある世界情勢からいって、ASPACというものに対して根本的にもう一ぺん考え直さなければならぬ時期が当然来ておると思うのでありますが、外務大臣はこのASPACに対してどういうふうに今日になって——考え直すような心境ですか、あるいはこのままでいいのだとお考えですか。
  8. 福田赳夫

    福田国務大臣 ASPACにつきましたは、数年前にこれは反共軍事同盟的な色彩があるのじゃないかという一部からの批判があったことを承知しております。そういう批判にこたえまして、わが国は、この会合がそういう性格のものであることはよろしくない、そういうことで、軍事的反共というようなそういう政治的色彩を払拭しようじゃないかということを会議のあるごとに提唱してきたのです。今日わが国の主張が実現されておるという態様かと思います。しかしなお世界情勢も非常に動いておる、それに即してこの会議が運営されなければならぬ、そういうふうに考えますので、さらにこの問題点につきましては配意をしておきたい、こういうふうに考えます。  ただ、アジア諸国が相集まって、そしてアジアの繁栄、アジアの平和、そういうことを語り合う、そういうようなことはたいへんけっこうなことでありますので、その場を全然なくしてしまうというようなことはいかがであろうかというふうに考え、私どもといたしましては、ASPACという会議、それは存続させる、そういう方向考えではございますけれども、質的には、ただいま申し上げたような政治的色彩、つまり軍事的反共というような色彩はこれを一掃するというかまえで臨む、これが妥当である、かように考えております。
  9. 堂森芳夫

    堂森委員 もう時間がありませんので、どうにもならぬのですが、私は、ASPACというのが生まれた経過、その背景等考えましても大いに議論のあるところでありまして、この組織はもうすでに今日では何も存在価値がないと言っても——かえって今後の極東における、アジアにおける、太平洋地域における平和的な今後のあり方にとって私は決して有益なものではない、こういうふうに考えますので、もう一度考慮を要望しておきたい。  もう時間がありません。まだ二、三点いろいろ聞きたかったのですが、きょうは時間を厳守しなければいかぬということでありますので、しり切れトンボみたいで全く困るのでありますが、これくらいで私の質問を終わっておきます。
  10. 櫻内義雄

  11. 松本七郎

    松本(七)委員 時間がありませんから大急ぎでやります。  きのうの閣議終了前尾法務大臣が記者会見した内容、つまり朝鮮民主主義人民共和国に関する問題で、外務大臣の明確な答弁をお願いしたいのです。閣議終了後に言われたことは、この間の在日朝鮮人代表がハンガリーに行った点について、韓国側には多少文句もあるようだけれども北朝鮮へ帰したわけではないから、韓国としてもそこまで言うべきではないと思うと、非常に明確に言明されておる。これはたいへんけっこうなことです。  もう一つは、法務大臣は、奈良県の明日香村の高松塚古墳北朝鮮中国の学者と共同研究したいという高見文部大臣構想に関連して、純学術的な交流なら認めるにやぶさかではない、しかも、わが国考古学研究にも役立ち、国益にも合致する、こういうことを述べられて、これを認める方針を明らかにされたわけであります。これらのことはきょうは各紙とも朝刊で報道しております。  もう一つは、以前外務大臣にもちょっと伺ったことがありますが、技術者朝鮮民主主義人民共和国から日本への入国問題についても、これは輸銀問題とからまない民間貿易が成立した場合、最小限度必要な技術者を入国させるのは当然である、こういうことを述べられたわけです。法務大臣がこういうことを言明されると、もちろん学術研究のほうでも大いに期待を持つでしょうし、先般の委員会で私が指摘したように、現在は朝鮮日本鉄鋼界鉄鋼に関する引き合いをめぐってかなり商談が進んでおるわけですから、この技術者の入国については、日本財界もこの前尾発言相当期待が大きくなると思うのです。ですから、私が言いたいのは、いままでどうかすると、この朝鮮に関する問題では、せっかく外務省が前向きになると法務省うしろ向きになって引っぱる、法務省が前向きになったと思えば外務省がどうもはっきりしないということで、車の両輪であるべきものがちぐはぐに動いてきたということで停滞してきた事例がたくさんあるわけです。したがって、幸いこういう時期ですから、せっかく前尾法務大臣がここまで言明されたのですから、ひとつこの際、外務大臣としても明確な態度をここに打ち出して、そうして法務省外務省が車の両輪になって両方前向きに前進できるよう、国民の大きな期待に沿うように明確な御答弁をお願いしたいと思います。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 お尋ねの第一点、第二点についての前尾発言、これは私も同感でございます。これらは法務大臣専管事項ではございますけれども、私どものほうの意見も聞いてきます。聞かれた際におきましては同感であるというふうに返事をいたします。  それから技術者の入国問題につきましては、二つに分けて考えたいと思います。  一つは純粋な民間ベースの問題としてです。それからもう一つ輸銀の使用に関連をするケースの問題。そしてその二つの場合のうち第一の場合、つまり民間ベースの場合につきましては、これはやや弾力的なかまえで相談をしてみたい、こういうふうに考えておりますが、輸銀前提とする場合におきましては、これはまだ時期尚早である、こういうふうに考えております。でありますので、相談がありますればそのように応対をするというふうに考えておるのであります。  まあいずれにいたしましても、民間の場合にいたしましても——いまここで私は当該、具体的ケースにぶつかっておるわけじゃありませんから、ここでオーケーだというふうには申し上げかねますが、とにかくその案件一つ一つについてケース・バイ・ケース輸銀前提とした場合と違ってやや弾力的な応対をするかまえ、そういうことで相談を進めていくという考えでございます。
  13. 松本七郎

    松本(七)委員 さらに今後継続することにして、きょうはこれでとどめたいと思います。
  14. 櫻内義雄

  15. 青木正久

    青木委員 先日、イスラエルのテルアビブで起きました日本人による乱射事件はその後もだいぶ世界的な反響があったわけでございます。政府福永特使イスラエルに派遣いたしまして陳謝の意を表した、こういうことでございますけれども、この日本政府措置に対しましてイスラエルはどういう反応を示したか。新聞には非常にいい影響ということが出ておりますけれども福永特使からの御報告もあったかと思いますので、イスラエル反応をまずお伺いしたいと思います。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回の事件によりましてイスラエルに対してまず非常にショックを与えた、こういうふうに考えておりましたので、そこで福永特使の派遣まで考慮するということにいたしたわけです。稲永特使現地へ参りましてメイア首相はじめ要路の方々と面会し、遺憾の意を表明したわけでありますが、特にメイア首相においては、人間というものは悲しいときに他人の心がわかるというようなことばをもって福永特使の訪問に対する感謝のことばを述べた、こういうふうに報告されておるわけであります。つまり雨降って地固まるということでしょうというふうに福永特使はこれに答えた、こういう話でありますが、まあわが国の機を失せざる適宜な措置によりまして一応イスラエル日本との間におきましては、国民同士感情におきましてもあるいは国交の上におきましても従来の関係に何ら支障がないという状態が実現できるのではあるまいか、そういうふうに確信をいたしております。
  17. 青木正久

    青木委員 福永特使陳謝の意を表するために見舞い金といいますか賠償金というのですか、何か形でもっておわびのしるしをあらわそうというようなことを提案されたようでございますけれども、これはイスラエルばかりにやっちゃうと、アラブ関係もありますので非常にむずかしいと思いますけれども、この見舞い金に関して政府はどういうことを考えておられるか、お願いいたします。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 この事件による法律的責任問題、そういうことになりまするとこれはいろいろ議論があるところであろう、こういうふうに思います。しかし政府といたしましては、こういう問題は法律問題で論ずべき問題じゃない、これは道義的、政治的立場において解決すべき問題であるという見地から、イスラエル政府並びにプエルトリコに対しまして、赤十字社を通ずる義援金というか拠金を若干出すというようなことを考えております。同時になくなられた方に対しましては弔慰金、また負傷をされた者に対しましては見舞い金を出す、こういうことを考えておるんですが、さてその額をどういうふうにするかというようなことにつきましては、諸般の状況をよく見つめながら慎重にきめていきたいというふうに考えております。
  19. 青木正久

    青木委員 一部の報道に、今度の日本政府のとった措置がパレスチナの解放運動に対する敵対行動であるというような報道がございましたけれども、この点はどうお考えになりますか。
  20. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回政府がとりました措置は全く人道上の立場人間的立場に立つ行動でありまして、これが政治的意味合いを持つというふうな性格のものではない、こういうふうに理解をいたしておるわけであります。アラブ国々等日本イスラエルにとった措置が重過ぎるとか、いろいろの見方があるようでございます。ございますけれどもアラブ諸国イスラエル間に深いかつ長い紛争があることは私どもはよく承知しており、この両者の間の問題は国連における一つ解決の線というものが出ておる。それをわが国としては尊重するということを言っておるわけなんでありまするが、その線を今後といえども堅持するものでありまして、つまりわが国がいずれに偏するというようなそういう立場はとっておりません。今回イスラエルに対しましてとりましたところの見舞い金だとかあるいは赤十字に対する拠金でありますとか、そういうような措置、こういうことはイスラエルアラブとの間の国交の問題につきましては何らかかわりないことでありまして、私どもイスラエルとも仲よくしていかなきゃならぬ、アラブ諸国とも仲よくしていかなきゃならぬ。この関係はさらにさらに増進をさせたいという考えであるということ、これはもう誤解なくはっきり御認識願いたい、かように存じます。
  21. 青木正久

    青木委員 いまの大臣の御答弁ですけれども、いままで日本中近東に対する政策イスラエルアラブを等距離に置いておるような、こういう感じだと思うのです。これが今回の事件でどっちかに片寄るんじゃないか。まあそれぞれの見方はございますけれども、そういった報道があちらこちらにあるわけでございます。そこで、いまおっしゃられましたけれども、もう一度中東紛争に対して日本のとるべきこれからの態度、これを明確にお示しを願いたいと思います。
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 中東紛争に対するわが国立場は、これはもう不偏不党であります。そしてそういう線に沿いまして国連一つ解決案方向というものが出されておる。この線に沿って両者の間の紛争というものが解決されるということを深く期待をしておる。そういう立場でありまするから、繰り返してくどいようでございまするけれども、今回イスラエルに対しましてとった措置、これはひとえに人道上の配慮に基づくものである、この両者政治的関係にこれが何か影響を及ぼすということはわが国の深く欲せざるところである、かように御理解願います。
  23. 青木正久

    青木委員 最後に、今回の犠牲者プエルトリコ人が非常に多い。それで、プエルトリコ人といいますとニューヨークあたりにはたくさん来ているわけでございます。このプエルトリコ人日本人に対する感情が非常に悪くなっているという情報がたくさんあるわけであります。これも一つの重要な問題だと思うのですけれども政府はこのプエルトリコ犠牲者に対してどういう態度をとり、プエルトリコそのものに対してもどういう態度をとるか、それをお示し願いたいと思います。
  24. 福田赳夫

    福田国務大臣 私ども今回のこの不祥事件に伴いましてもう一つ心配事はまさに青木委員御指摘のプエルトリコの動向でございます。最初プエルトリコ人犠牲者が非常に多かったということからプエルトリコにおきますところの対日感情、これがかなり悪化したというふうに伝えられて私ども非常に憂慮しておったのです。その憂慮に基づきまして、在留邦人に対する処置でありますとか、あるいはわが国プエルトリコの皆さんに対する遺憾の意の表明でありますとか、また、現地当局に対する同様の措置でありますとか、いろいろ手を尽くしてまいったわけでありますが、昨今というか、最近最も近い時点におきましては、だんだんとそういう傾向も鎮静化してまいりまして、わが国立場というものに対しまして理解を示しつつある、こういうふうに見ております。しかし、プエルトリコの皆さんに多大の犠牲者を出した私ども日本国といたしましても、日本国民としても、申しわけないわけでありますので、先ほど申し上げましたような赤十字社を通ずる拠金というようなこと、あるいは犠牲者に対する弔慰金見舞い金、そういうようなことを実行いたしたい。なお、要すれば、またお見舞いの使節もひとつ派遣したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  25. 青木正久

    青木委員 終わります。
  26. 櫻内義雄

  27. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まず、せんだっての委員会で岩国発進のフライトプラン、四月、五月の分、資料として出せるかどうか、お願いをしておりました、それが一つと、それから岩国基地の司令官と運輸省の福岡管制部との間につくられておるローカルアグリーメソート、これが資料として出せるかどうか、お願いしておりました、それはどうなりましたか。——時間がありませんから、はっきりした段階で御答弁いただきたいと思います。  まず、外務大臣にお伺いいたしますが、米中、米ソ会談が行なわれたわけですけれども、そういう会談に象徴される新しい国際情勢、あるいはまたアジア情勢の中で、日本外交方針がこれまでとこの新しい情勢を踏まえた後とで、どのような変化が出てくるであろうか、これを私ども注目しておるわけです。どういう点で、変化させるべきだというお考えがあったら、承りたいと思います。
  28. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国世界に臨む姿勢、つまり、これは経済が強大な日本ではございますが、軍事大国にはならぬ、こういう考え方、これはいささかも動くところはございません。ただ、具体的な当面の日中、日ソの問題ですね、これは環境がたいへん改善されてきておるのじゃないか、そういうふうに考え、そういう認識のもとに日中、日ソ外交をとり進めてまいりたい、かように考えおります。
  29. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、そういう新しい情勢とのからみにおいて、そういう新情勢が今後の日本の防衛計画、四次防あるいは五次防、そういう防衛計画並びに安保条約との関係にはどのように変化していくという構想をお持ちでしょうか。
  30. 福田赳夫

    福田国務大臣 国際情勢は、端的に言いまして、緊張緩和の方向に向かっておる、こういうふうに見るわけです。局地的に見ますと、いろいろの問題はありますけれども、大きく見ますと、そういう方向に動いておる、その傾向をとらえまして、私どもはさらにそれを推進をする、こういう役割りを演ずるという、そのかまえをとるべきだ、かように考えております。  そこで、そういう状態でありますけれどもわが国の自衛力につきましては、これは私の考えとしては、自衛力漸増論です。しかし漸増いたしましても、憲法の制約もあります、あるいは国民感情もある、そういうようなことを考慮すると、あり得べき侵略に対する抑止力としては、これは足らない、そういうふうに考える、その足らざるところ、つまりギャップをどういうふうに埋めるかというと、私は、日米安保体制の堅持、これが大事になってくるだろう、こういうふうに考え、その規模だとかそういうものにつきましては、これは私も専門家でないから、はっきり申し上げるわけにいきませんけれども考え方、思想といたしまして、自衛力漸増の方針、これは堅持すべきものであり、堅持はいたしますけれども日米安全保障体制、これもまた堅持していかなければならぬ、そういう見解でございます。
  31. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この一両日、外務大臣はいろいろなところで発言をされております。私も読んでみました。そこで、問題もいろいろあるのでございますが、その中で、こういう新情勢を踏まえ、安保条約の洗い直しが必要ではないかというお考えが示されておるようであります。それだけ聞くと、いかにも緊張緩和の新しい情勢の中で安保条約を洗い直すということであれば、何となく国民に与える印象は、なるほどごもっともだというコンセンサスは起こしやすいと思いますが、その点だけを見ると、それはたいへんごもっとものように聞こえますが、その裏には、いわゆる自衛力の増強という陰の問題が含まれておる、これを私どもは非常に問題にするわけであります。そういう点から考えて、たとえば米軍の有事駐留といったような思想も出てきておりますが、その条件というのは、自主防衛力が一方において増強されるという、その関係にあるわけですね、そういう点をぼくらとしては問題にするわけです。そういう点も含めて、いよいよ新しい内閣ができれば、当然日中の国交回復問題は焦眉の外交課題であります。せんだって、当委員会で曽祢委員からの質問に対して、佐藤総理は、中華人民共和国を唯一合法の政府だというニュアンスの御答弁があったわけでありますが、これはどなたか質問されたかもしれませんが、もう一ぺんこの点について外相のお考えを聞いておきたいと思います。
  32. 福田赳夫

    福田国務大臣 総理大臣は、唯一合法の政府ということばを使っております。その趣旨は、日中国交正常化が行なわれますれば、中華人民共和国が中国代表する唯一合法の政府というふうになる、こういう意味だ、こういうふうに考えております。いままで総理大臣は、日中国交正常化ができれば、中華人民共和国は中国代表する政府である、そういうことになる、こういうふうに答えてもまいりましたが、代表するというその次に、唯一正統の政府であるということをつけ加えておるわけであります。それはそういう意味でありますが、前の表現今度総理が使われた表現と、どこが違うかというと、私は意味するところはちっとも違ってないと思うのです。中国代表する政府である、こういえば、ほかにだれが代表するのですか、こういうことでありますから、これはことばの上の問題だというふうに理解をしますけれども中国側において唯一正統というようなことをいっておるということも考慮しながらそういうことばを使うというに至ったものである、かように考えます。
  33. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 日本語はいろいろ意味がむずかしい場合がありますが、いまおっしゃったとおり、二つあったら代表ということにはならないのであって、一つであるから代表だ。つまり、代表という意味は唯一だ、唯一だから代表だ、そういう認識で外務大臣も今後の日中国交回復問題に当たる、そういうふうに受けとめておいてよろしゅうございますか。
  34. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおりに考えております。
  35. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 予算委員会で論議しておる段階よりも非常に明確になってまいったと思います。  そこで、日中国交回復の折衝を始めるにあたって、日中国交回復問題と日米条約あるいは四次防の問題は、交渉の過程において決して別ではない。そういう点で、日中国交回復が実現した暁において、安保条約なりあるいは四次防というものは一考を要する要素が出てこよう、このように思うわけですが、外相のお考えはどうでしょうか。
  36. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、わが国のいまとっておる安保体制は、日中国交正常化という問題とは別な問題であり、またこの正常化交渉と安保体制というもの、またそれとも関連しますが、自衛力の増強という考え方、これは両立し得る問題ではないかと思うのです。これが両立し得ないという考え方が一体どこから出てくるのか。中国側においても強大な軍備を持っている。そういう国がわが日本に対しまして、自衛力増強について、あるいは安保体制に対してどういう感触を持つか。まして安保体制というものは、これはかつて中国におきましては、中国封じ込め政策の出先日本と米国との間の紐帯をなすものであるという受けとめ方があったと思うのですが、その封じ込め政策の御本尊が対話の姿勢に転換をしちゃった、こういうのですから、その辺の受け取り方もかなり違ってきておるのじゃあるまいか、そういうふうに思います。  それはそれといたしまして、日中問題につきましては、いままで皆さんから承っていると、台湾問題の処理の問題、それから安保の問題、こういうことばかりに議論が集中されるような状態ですが、私はそれも大事なことだと思います。思いますけれども、もっと大事なことは、日中国交正常化した暁におきまして日中間の平和をどうやってもっていくか、こういう問題だろうと思います。そういう建設的な、また前向きな問題に対しまして、日中間の相互不可侵というようなことをどういうふうに保障し合っていくかということ、これが非常に大事な問題になってくるのじゃないか、そういうふうに思います。そういう段階においてはいろいろな話があるだろう、こういうふうに思いますけれども、ただいま私どもは日中国交正常化、皆さんが御論議される意味合いにおいての正常化の問題と、それから安保体制、自衛力の問題、これはかかわりのない問題である、両立し得る問題である、そういうふうな理解でございます。
  37. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これも一点確認をいたしておきますが、日中国交正常化の暁におきましては、六九年日米共同声明のいわゆる台湾条項は消滅する、このように確認をしておってよろしゅうございますか。
  38. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も同様の理解をいたしております。
  39. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が日中国交回復と安保条約あるいは四次防とが関係があるというふうに思いますのは、久保防衛局長もおられますけれども、昨年五月でございましたか、経団連の防衛生産委員会に中曽根長官とあなた方が行かれて、いろいろ懇談をされました。その中で中曽根長官は、四次防も含めて今後の防衛力整備計画は、中国の核開発を十分頭に置いた上で考えていく、つまり、中国の核開発あるいは核の実戦化というものを頭に入れ、それに備えるというニュアンスを持った四次防だ、こういうふうな話をされておるから、私は大いに関係があるというふうに受けとめてきたわけでありますが、そういう点で、新しい四次防は、この夏にきまるのでしょうけれども、やっぱり考え方の変化があってしかるべきだ、このように思うわけです。  そこで、これは五月の三十日の閣議でございますか、四次防の策定は新内閣でやればいいではないかという総理の発言があった。新内閣でやるということになると、当然一方においては直ちに、いま外務大臣がお話しのとおり、日中国交正常化へ具体的に取り組むという外交課題の問題がある。とすれば、やつ。はり四次防の策定というのは、日中国交回復ということを踏まえて、その後に策定をなすべきではなかろうか。したがって、四次防の策定があるまではいままでどおりいくことになるかもわかりませんが、そういう考え方外務大臣はおとりになりませんか。
  40. 福田赳夫

    福田国務大臣 日中国交正常化はすみやかにこれを実現したいという気持ちです。しかし、展望といたしまして、いついかなる時点でこの正常化が実現されるか、これはまだ見当がつかない。どんどん前進はしていくでありましょうが、正常化交渉すらもいつ始まるか見通しもまだ立っておらぬ。それまで四次防を休め、こういうような御議論のようでありますが、そういうわけにはなかなかいかぬだろうと思います。私は、四次防は四次防として、また日中交渉は日中交渉として、それぞれ別個に進めてしかるべき性格のものである、こういうふうにとらえております。
  41. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これはもう当然の話ですからはっきり申し上げますけれども福田外務大臣も次期総理、総裁の候補者のように承っております。もしあなたが総理になられたら、日中国交正常化はどのくらいの期間で仕上げるという意欲をお持ちですか。
  42. 福田赳夫

    福田国務大臣 私がもし自民党の総裁であり総理であるという、その仮定の上に立った御質問にお答えする、これはきわめてデリケートな問題でありまして、私もお答えいたしかねますが、政治家福田赳夫といたしましては、日中国交正常化は何とあってもやってのけたい、かように考えております。
  43. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私どもの常識で考えれば、これは早急に実現しなければならない問題だし、早急にやるという決意さえあれば、一年以内にできると思うのです。で、政治家福田先生はそういう意欲はお持ちにならぬのですか、一年くらいでやってみせるという。そのくらい言わないとちょっとぐあいが悪いのじゃないでしょうか、いろいろデリケートな問題も控えておりますから。
  44. 福田赳夫

    福田国務大臣 政治家福田赳夫はなるべくすみやかに日中国交正常化を実現したい決意であります。
  45. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 限られた時間でありますので、非常に中途はんぱになるわけですが、実はインドネシアの例の借款の問題について詳しくお伺いする予定があったわけですから、二、三点お伺いしておきますけれども、この交渉が始まったのは、五月二十三日の大蔵委員会でわが党の阿部委員が質問をした、それに外務当局がお答えになったところから見ると、昨年の暮れからということになっておりますが、福田外務大臣ことばをかりれば、そのアヒルの水かきはずっと前から始まっておったのじゃありませんか。
  46. 福田赳夫

    福田国務大臣 この交渉は、交渉というほどのことはありませんけれども、昨年の春ごろですか、あるいはもっと前であったかもしれませんが、私記憶はありませんが、とにかく昨年の早い時期かあるいは一昨年のおそい時期か、その時点かと思います。スハルト大統領から、わが日本が公害で悩んでおる、それはアラビア方面から高硫黄の石油を輸入しこれを使っているところに基因する、わがインドネシア政府は、またインドネシア国はIGGI借款等でたいへん日本にお世話になっておる、そのお世話になっておる日本国にせめて低硫黄の油を供給するということによって恩を返したい、こういう意向が伝えられたわけであります。そこで佐藤総理も非常に感激をいたしまして、この要請を検討してみるというか、受けとめてみるというか、そういう気分になられた。同時にわが国は、九〇何%に相なりますか、とにかくわが国の必要とする膨大な石油のほとんど大部分をアラビアに、中東に依存をしている。これはどうしてもこの状態を直さなければならぬ。あるいはシベリアというようなことを考えてみたり、アラスカということを考えてみたり、インドネシアということを考えてみたり、そういうやさきにインドネシア、スハルト大統領からそういう話がありましたから、非常に総理はその気持ちに感謝をし、また関心を持たれたわけであります。それで若干の往復がありまして、そして事務的交渉の段階に入ったのがいつごろであるか私もさだかでありませんけれども、まあ事務当局が言っておるならそれがほんとうでしょう、昨年の暮れかもしれません。そういういきさつでございます。
  47. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 昨年の五月十四日に神谷正太郎さん、これはトヨタ自動車販売の社長、それから田中清玄さん、田中技術開発社長、それから佐藤隆太郎さん、アジア海洋掘削の常務、佐藤総理の御長男だそうです。このお三人が昨年五月十四日にインドネシアに行かれて、民間ベースのこのプロジェクトの話をスハルト大統領になさったというような事実はお聞き及びじゃありませんか。
  48. 福田赳夫

    福田国務大臣 はて、佐藤隆太郎さんがその問題に関係しているかどうか、私聞いたことはございませんです。ただ田中清玄氏、また神谷さん、それらの方々がこの油の問題に関心を持っておられて、そうしてスハルト大統領から、会ったおりに、日本に対して低硫黄を供給すること、これはインドネシア側といたしまして日本国民に、日本政府に対して感謝の意を表明するゆえんであるということを力説しておるという、そんなようなところが話の発端になったんじゃあるまいか。私もあまり詳しいことは存じませんけれども、そういうことかと存じます。
  49. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がありませんから一点だけ最後にお伺いしておきます。いろいろ問題はありますが、この五千八百万キロリットルの低硫黄原油、これを受け入れる日本の機関、これは現在でも約二千四、五百万キロリットルその種の原油を日本は入れておる。しかもそのルートは、プルタミナも出資をしておるファー・イースト・オイル・トレーディング・カンパニーのルート、それからカルテックス、日石のルートと二つある。この二つあるルートのほかに新受け入れ機関をつくるという話も出ておりますが、これは国民の膨大な税金を投資するわけでありますから、その受け入れ機関について外務大臣としてはどういう機関が望ましいとお考えでしょうか。
  50. 福田赳夫

    福田国務大臣 外務大臣といたしましてはかかわりのないことでございます。
  51. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 全然関心はございませんか。その海外経済協力だけは約束している。それがどのようになろうと、全然かかわりのないことでございますか。
  52. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういうことをどういうふうな機構で実現するかという問題のようでありますが、それはもう通産省の仕事の分野になってくるので、私どもが容喙すべき問題ではない。私どもは借款を供与するとか、それからまた油の輸入の確保に当たるとか、そういう問題です。通産省から意見を求められればまた申し述べますが、私どもがこうしなければならぬとか、私どもが進んで考うるべき問題ではない、こういうことを申し上げておるわけです。
  53. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 通産省の方、見えておりますか。——どういう姿が望ましいと思われますか、それだけ承っておきます。
  54. 飯塚史郎

    ○飯塚政府委員 ただいまの先生の御質問でございますが、原油につきましては民間機関がこれを引き取るわけでございますので、民間におきましていかなる形の組織の機関会社が適当かということは今後検討されていくものだと思いますが、当然でございますが、低硫黄原油を一番必要といたします石油精製会社、電力、鉄鋼、こういった関係がこの引き取り会社の中心になっていくものと考えております。
  55. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、中途はんぱですけれども、時間がありませんから、一応ここで中断をしておきます。
  56. 櫻内義雄

    櫻内委員 西中清君。
  57. 西中清

    ○西中委員 先ほどもお話が出ておりましたが、キッシンジャー大統領補佐官が九日に来られるということで、日本側としては米ソ、米中、こういった会談について何らかの報告を受けられると思います。日本側としてはいま問題になっておるのは沖繩基地の態様、日米安保体制、安保条約の洗い直し等の問題があろうかと思います。で、この辺われわれとしてはアジア情勢の変化、いわゆる緊張緩和ということもございますので、重大な関心を持つわけですが、新聞報道では、佐藤総理が外務委員会で、近く来日するキッシンジャー大統領補佐官との会談で、日米安保条約のあり方について話し合う。沖繩の米軍基地は施政権返還前とその後で性格が変わるべきで、事前協議制の運用や極東の範囲についても明確にする必要がある、こう答弁されております。さらに福田外務大臣は、自主防衛力を増強し、将来は米軍に帰ってもらう、こういうようなことが報道されておりますが、この日米安保体制の洗い直しを外務省としても始めたような報道もございますが、基本的にどういうことをお考えになっておるのか、御説明をいただきたいと思います。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、その席の総理の隣におりましてよく聞いておりましたが、一部新聞に伝えられておりますように、安保体制の洗い直しをするということばは使っておりません。話は、もっぱら事前協議の話でありまして、その事前協議の問題、つまりこの制度の運用につきまして、キッシンジャー補佐官が来る、いい機会だから、話をしてみたらどうだ、こういう話が委員側からありまして、総理はお話でありますので、そういうことも話してみたいと思います、こういうふうにお答えをしておるのです。  私は、その席で総理に補足しておるのですが、キッシンジャー補佐官は特定の要務を持って来るのじゃありません。これは一般的な大きな世界情勢アジア情勢ということについての話は出るでしょう。主たる目的は、日本についての知識を得たい、日本に友人を得たい、そういうところでありますので、具体的な個々の案件の討議、そういうことはありそうもないことではありますが、総理がそう言ったのですから、総理自身としては、とにかく事前協議の問題の話、これも提起してみるおつもりか、かように存じております。
  59. 西中清

    ○西中委員 外務大臣は、自主防衛力を増強し、将来は米軍に帰ってもらうというようなニュアンスのお話をされたようなことを書いてございますが、これは安保体制を堅持という立場に立っての御発言だろうとは思うのですが、新聞報道で有事駐留、改定するということでしょうが、こういう問題も出ております。それから友好条約的なものにするという考えもあろうかと思います。さらにまた、考え方を変えれば、現在世界情勢が三極化、または冷戦構造の破綻ということで、今日この日米安保条約というものは、かつての冷戦構造の落とし子である、こういう考えからいっても多極化、また三極構造が定着しつつある今日におきましては、やはり政府も緊張緩和であるという評価はされておろうかと思います。そして今日に至りましては、米中ソの間の戦争というようなものも、まずまず不可能な状態ではないか。こういうような考え方が広がっているように思います。その中で、日本の安全を維持するためには四次防、さらには五次防というような軍事の増強、それでもって日本の安全を維持するというような考え方、これはやはり重大な問題があろうかと思います。できるならば米中ソ——先ほども中国交の話が出ておりましたが、中立政策的なそういう立場に立って、日本の将来の安全維持というものを考えていくべきではないか、そういう時期に来ているのではないか。そういう意味合いにおいて、私はキッシンジャー氏とお話し合いの一つもぜひやっていただきたいものだ。これは私たちの希望でもあり、また国民の願望ではないかというように考えるわけですが、そういう点で、政府はどういうような考え方を持っておられるか、御所見を伺いたい。
  60. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが日本が強大な経済力を持つに至った。その日本がその安全の重要な部分をアメリカの軍隊に依存しておる。しかも米兵が多数わが国に駐とんしておるというような状態は私は好ましくない、こういうふうに考えます。さればこそ自衛力を増強したい、そして米兵にも逐次撤退をしてもらいたい、こういうふうに考えておる。しかし、そうは申しましても、わが国は自衛力を増強いたしましても、これは憲法上またわが国国民感情を考慮いたしますときにおのずから限界がある。どうしてもあり得べき侵略に対しましては欠くるところが出てくるわけです。その欠くるところをいかにして補うかというと、これは日米安全保障条約にたよらざるを得ない。米兵は少なくなった、わが国におること少ないものになったというても、しかしながら、アメリカがわが日本の安全について責任を持つという状態、これに対しましては、有事におきましてはまたわが国に派兵が行なわれるというようなこともちゃんと準備をしておかなければならぬ。それには補給だ、補修だ、そういうようなこと、あるいは受け入れの施設だということ、そういうことを考えますと、完全にアメリカの兵隊がわが日本からいなくなる、こういうようなことは考え得られない、こういうふうに思うのです。思想的には曽祢さんなんかのおっしゃる有事駐留、こういうふうに言ってもいいと思いますけれども、全部が全部いなくなるという意味合いの有事駐留ということになりますと、私はそれにはにわかに賛同いたしかねるのです。そういう意味合いにおきまして安保体制はこれを堅持する、こういう考え方をとらざるを得ない、こういうふうに考え、この体制を近い将来変更するというような考え方、これには賛成はいたしかねます。  ただ、いまいろいろな国から接触が始まる。これは多極化外交の時世であるがゆえだ、こういうふうに思います。わが国日ソの間に、あるいは日中間に国交をさらにさらに進めたい、こういうふうに考えておる。そういう際に、新たなる局面に臨みまして、あるいは中国からあるいはソビエトからアジアにおける安全保障体制をどうしようかというような話しかけがあるということになりますれば、わが国は喜んでその討議に参加する、こういう姿勢をとるべきだ、こういうふうに思いますし、またそういう多角的な安全保障処置がかりに成立いたすといたしますれば、これはたいへんけっこうなことだ、こういうふうに考えます。しかしそれも、とにかくわが国の安全ということにつきましては、ほんとうに最後の最後まで責任を持たなければならぬ、そういう立場からいたしますと、日米安全保障体制というもの、これもまた堅持していく、集団的なアジアの新しい機構というもの、またそれが安保体制、これと両立し得るものである、こういうふうに考えております。
  61. 西中清

    ○西中委員 きょうは今回の国会の最後の質問になろうかと思います。時間が短くて、いろいろ聞きたいことがございますので、簡単にひとつよろしく……。  あと項目的に幾つかお伺いしておきたいのですが、台湾条項につきましていろいろな国会論議が今日まであったわけです。サンクレメソテの日米首脳会談の終了後の記者会見で、佐藤総理はこれは消滅した、こういうお話があって、その後直ちに外務大臣のそうではないのだという御発言があった。それから三日の今度はプレスクラブ外人記者団と会見された場合には、台湾条項は事実上は消滅した、こういうような報道になっておるわけでございますが、どうもわれわれとしては、こう二転、三転しますと非常に迷うわけなんで、先ほども御質問が出ておりましたが、これは非常に重要な点でございますから、政府としては確たる考え方、見解というものを示していただきたい、こういうふうに思うわけですね。その点、外務大臣、統一見解としていまお話ししていただけるものがありましたらおっしゃっていただきたいと思います。
  62. 福田赳夫

    福田国務大臣 佐藤総理はどこでありましたかの委員会におきまして一九六九年の共同声明における台湾条項は消滅した、こういうふうにお答えをいたしておるわけです。それをこの間外人記者クラブにおいて私は解説をしたわけです。つまり、共同声明というものは条約でも協定でもありません。両首脳のその時点におけるところの認識を語り合う、そういう性格のものである。したがって台湾海峡に対する佐藤総理姿勢というものが六九年のいわゆる台湾条項という形で述べられておる。その述べられたときの認識というものは、今日アメリカ大統領中国訪問というような事態により一変しておる。そういうことを総理意味しておるものと解する、こういうふうに申し上げたわけでありまして、さように御理解願いたいと存じます。
  63. 西中清

    ○西中委員 その際に、台湾条項の消滅について同じ考えを米政府も持っているというようにお答えになったように書いてありますが、その点はどうでしょうか。実際問題としてこういうことは確認された事実があるのかないのか。
  64. 福田赳夫

    福田国務大臣 この点につきまして別にアメリカと話し合ったことはありませんけれどもアメリカ大統領が北京を訪問する、そうして緊張緩和の空気をかもし出す、そういうことでございまするから、これは当然のことだ。アメリカ大統領といえども台湾海峡が非常に緊張しているというあのプェブロ事件の後のアジア情勢のとらえ方はしておらぬ、これは話すまでもないことである、かように考えております。
  65. 西中清

    ○西中委員 次は、日中問題で一つだけ聞いておきたいのですが、ことしの二月四日の予算委員会で北山委員の質問に対しまして、佐藤総理は訪中されるニクソン大統領に、「十分日本理解していただくように北京政府にもよく話してください。これは私、最も時宜を得た方法じゃないかと思う。」要するにアメリカ大統領に何らかの依頼をしたのじゃないか、こういう質問に対しての総理答弁だったと思います。これはアヒルの水かきじゃございませんけれども、こういうことで何らかの依頼があったのか。また新聞報道でも若干あるんじゃないかと思いますが、総理が二回ほど親書を手渡した、周総理に送ったというような、これはまあ事実はわかりませんが、そういったことが若干書いてあったようなところでございます。そういう点で、外務大臣としては、総理がそういう何らかの接触のための努力をされた、その結果どうも思わしくなかったというようなことについて、今日御報告のできるものがあるかないか、その点はどうでしょうか。
  66. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、佐藤総理が周首相に対して親書を書いたという話は聞いておりませんです。しかし佐藤総理佐藤総理なりに、日中国交正常化につきましては非常に熱心でありまして、いろいろな機会、いろいろなルートをとらえましてたいへんな努力をされておる。その努力は、そうきわ立った動きとはなってあらわれておりませんけれども、徐々に実りをあげておる、こういうような感じを持ちながら私は見ておるわけであります。
  67. 西中清

    ○西中委員 それからこれも先日の報道でございますが、沖繩の空港に、那覇だろうと思いますが、B52が台風の来襲に備えて再び来るのではないかという情報があった。これに対して外務省アメリカ大使館に問い合わせをした、こういうようなことが報道されておりますが、これについては結局はどうであったか、その辺の事情を御説明いただきたいと思います。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 何か、そういう情報がペンタゴンのほうにあったという話は聞いております。それで、アメリカ側に事の真相はどうだ、こういうことを確めた事実はあります。たいしたことでもなかったようですが、アメリカ局長からお答え申し上げます。
  69. 吉野文六

    ○吉野政府委員 このニュースがありましたものですから、アメリカ大使館に本国政府に照会してもらいましたら、台風が来るからB52が沖繩のほうに避難するという事態はない、こういうような返事でございました。
  70. 西中清

    ○西中委員 この前の質問で外務大臣は、今後台風によって緊急にどうしても嘉手納に来なければならぬ場合も絶無とは言えない、こういう意味の御発言がございました。私はこの点について、そういう姿勢であれば、過去の例もございますように、それを一つの口実として将来また駐留することが当然あるのじゃないか。まあ、これは否定されておりますから、その問題はおくとしまして、そういう危惧を持っておるわけで、はっきりしておきたい点があるわけです。要するに台風ということ——まあ悪天候ということですから、非常にきつい場合は台風でしょう。これでもってB52が一々沖繩へ避難しなければならぬ、こういうことははたして絶対的な条件としてあるのかどうかという問題が私は残っておると思います。ということは、四十五年の十二月に嘉手納からB52が姿を消した。そして沖繩返還まで二回飛んできておりますね。その理由というのは実は台風によるということでございますが、私は気象庁に問い合わせましたが、どうも該当する台風はないわけなんです。それはいいとして、グアム島にはB52を台風から守るだけの設備がないものだというように考えておられるのかどうなのか、その辺はどうでしょうか。設備が不十分でどうしてもこれは置いておけない、避難しなければならない、それだけの対応条件がそろっておらない、こういうように考えておられるのかどうか、またそれについて調査をされたことがあるかないか、その辺をお伺いしたいと思います。
  71. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そこら辺の詳細はわれわれ存じておりませんが、常識的に考えまして、普通の飛行場であれば、多少の風が吹いたぐらいでは避難する必要のないくらいの施設は整っておるものだろうとわれわれは考えております。
  72. 西中清

    ○西中委員 いうなれば、グアムはB52の基地で、それだけの設備がないということは私は考えられぬと思う。これは外務省として一ぺん責任を持って調査をしていただきたいと思うのですが、どうでしょう。
  73. 吉野文六

    ○吉野政府委員 米側がどの程度われわれの質問に答えてくれるかどうか、いまから保証できませんが、照会してみます。
  74. 西中清

    ○西中委員 それから、台風が理由であるならば、たとえば去年一年間十回にわたって台風がグアム島周辺を襲っております。ですから、少なくともこのときにはどこかへ避難をしなければならぬ。沖繩へ来てなければどこへ避難しておるのか。その辺は外務省として掌握、把握をしておられるかどうかお伺いしたいと思います。
  75. 吉野文六

    ○吉野政府委員 その辺はわれわれは把握しておりません。ただし御存じのとおりフィリピンその他にやはりB52がつける飛行場の施設がございますから、そういうところにあるいは避難したかと思います。
  76. 西中清

    ○西中委員 それから先日の五月二十日の場合でも、グアム島は晴れ、沖繩はにわか雨、こうなっておるわけですね。こういう点で問題が起こったわけですが、外務省としては再確認をされましたか。どうでしょうか。
  77. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先般のB52が三機嘉手納に来た経緯につきましては、先生の御指摘のとおりグアム島は晴れておりまして、むしろ沖繩の周辺が不連続線があったわけでございます。B52はいずれにせよあそこに緊急着陸したわけでございますが、われわれの察するところは、おそらく空中給油が不可能であった、したがってあそこに、嘉手納に着陸せざるを得なかった、こういうように想像しております。
  78. 西中清

    ○西中委員 にわか雨程度で給油ができないなんということを言い出しますと、これはしょっちゅう理由はついてくるということになりまして嘉手納空港へ来る。参考までに申しておきますが、去年一年間台風のグアムを通ったときには沖繩は晴れが三回、あとは曇り、雨が降ったのはたった一回だけだ。こういう状況の中においてすらB52は嘉手納に来てないわけなんですね。返還が行なわれたとたんにこういう理由をつけて駐留する。しかも政府はこういう場合はしかたがないじゃないか、非常に甘い姿勢でおられるわけでございますが、こういう点もあわせて、十回も台風が来ているので、そのときはどうなったんだ、先ほどの問題とあわせて、米側にはっきりした調査をしていただいて次の機会にできるだけ早くこの報告をいただきたいと思います。  時間が参りましたので終わります。最後のお願いに対して答えだけ下さい。
  79. 吉野文六

    ○吉野政府委員 昨年の経緯につきまして、どの程度米側が記録を持っておるか、それからその次に、これについてどの程度われわれに的確な答えをくれるかどうか予想できませんが、ともかく先方に問い合わせてみます。
  80. 永田亮一

    ○永田委員長代理 曽祢益君。
  81. 曾禰益

    ○曽祢委員 私はかねて本委員会あるいは予算委員会で、私が問題にいたしました横須賀における米軍の基地の日本に返還の問題、なかんずく艦船修理部門の日本返還の問題について、この際外務大臣並びに防衛庁長官及び運輸大臣のかわりとしての船舶局長に御質問いたしたいと思います。  簡単に経過を申しますと、四十五年の十二月二十一日の日米安保協議委員会において、多くの日本の基地の整理縮小が発表された。その中にいわゆる通称SRFの返還については、第六号ドックを除いて翌年の六月三十日までに日本側に返還する、こういうことで、アメリカの修理の要求を充足することが条件になっておりますけれども日本に返還する。ところが四十六年の三月の末に、日米共同発表によって、それが向こう一年間延期された。さらにその後の四十六年の末の状況を見ると、どうも日本の自衛隊がそのうち一号から三号までのドックを使うというその方向だけが進みまして、むしろその犠牲としての四号、五号のほうは当分、つまり本年の六月三十日までにも返せないのではないか、一号−三号の自衛隊用のほうだけを返して、あとは無期延期になる可能性が非常に濃厚だというので、私は本年の一月二十五日に外務、運輸、防衛庁各大臣にそれぞれこの点について申し入れをいたし、さらに二月八日には三大臣に対して神奈川第二区選出の衆議院議員がそろってこの問題の善処方すなわち全部そろって民間に返還すべきである、少なくとも防衛庁用だけが先行しては絶対にいかぬ、こういうことを強く申し入れたわけであります。二月十二日には横須賀の市民大会が開かれて、そして横須賀のあらゆる各党各派、市議会、市長全部一緒になって、伝えられる米空母の永久基地化は反対である、特にSRFをすみやかに、はっきりと民間に返せという決議が成立いたしました。そこでこの三月の二十三日に私は予算委員会の第二分科会で各省特に防衛庁長官に強く訴えたのは、自衛隊が一号から三号まで使えば、四号、五号の民間のはどうなってもいい、そんな政治姿勢は許されないではないか、したがって、もう一ぺん外務省も運輸省を正面に立ててアメリカともっと積極的に交渉して、この問題の焦点であるところの、少なくとも一たん日米両方が返すときめた基地がその後の都合によって返されない、特にその返されない基地が、自衛隊のほうだけは返ってくるけれども民間のほうは返らない、そんなことが行なわれたならば、これは単に横須賀の問題であるのみならず、日米安全保障、基地のあり方に対する最も典型的な悪い例として、これは日米外交上非常に大きな問題になる。この点でぜひひとつ善処方を強く訴え、特に防衛庁の長官に、三月三十一日になると、自衛隊のほうはもう四月一日から予算をもらっているのですから、そっちだけ見切り発車するようなことは断じてしないな、絶対にそういうことがあってはならないということを申し上げ、防衛庁長官もその善処方を約された。やはりこれは自衛隊の分も民間に予定されている分も一本にして、強力に外務省のバックのもとに運輸省がむしろ前面になってアメリカと交渉する。防衛庁のほうもそれをバックアップする。そして民間にあろうがあるいは自衛隊にいこうが、日本に返ってくるものは一から四、五まで全部がすみやかに円満に返るように努力しようということを約されたわけであります。ところが三月三十一日になってみると、外務省のほうはやはり六月三十日というデートラインをぼかしたような、自衛隊のほうも、それから民間に返るべきほうのドックも、これはアメリカとの話が煮詰まったらむろん解決するけれども、それまではやや期限なしに、六月三十日という期限をむしろはずして、表現は交渉がととのい次第返すというのですけれども、悪くいえば無期限に交渉に引っぱられるような決定になったようであって、それは非常に不満であるというので、また二区選出の衆議院議員がもう一ぺん三大臣にお目にかかって、特に外務大臣に対して、インガソル大使が就任されるようだけれども、マイヤー大使はもう帰るのだけれども、インガソル大使が来たらさっそくこれはもっと政治的なハイレベルの問題としてぜひ取り上げて、施設に直接関係あるアメリカの軍人は何だかんだといってむずかしいことをいう、なかなからちあかないわけだから、もっとハイレベルの交渉によってこれをひとつぜひ実現に努力して、しかも新大使に事の重要性を十分に印象づける強力な交渉をやっていただきたい。また防衛庁長官には申すまでもないことでありますけれども、この二月の予算委員会におけるあなたの公約は間違いないんだ、未来永劫ということは無理かもしれぬけれども、とにかく交渉継続中に六月になったら、これはもう打ち切りで、自衛隊のほうだけは先に実行してしまおう、返還を実行して、要するにぼくの言う見切り発車で、四、五を切り離して、自衛隊だけが自分の地位を充足するというようなことは、絶対やってもらっては困る、その点を強く訴え、あなたはこれを善処方をはっきり約束されたと私は了解しているんだ。そしてまた、運輸省にもっとしっかりアメリカとの交渉を、日本造船技術の名誉にかけても、アメリカの言っていることを十分に反駁し、向こうの正当な要求はこれは入れてやるのにやぶさかでない。日本の造船技術をもってすればいかなるアメリカの技術的な要求も、ほんとうに向こうが誠意があるならば十分に充足できるということも話を大いに詰めてくれ、まあこういうことを申し上げたわけであります。  以上の経過にかんがみ、本国会もこれで最後になりますから、六月三十日になってみたらいつの間にか自衛隊のほうだけが見切り発車しておっても困るし、内閣もかわるんで、この問題はどこにいったのかわからない。日米間の政治折衝なんかどこにいったのかわからない。そんなことじゃまことに私はよくない、こう考えますので、きょうは特に三大臣においで願って、もう少しこの問題を詰めておきたいと思ったわけであります。したがって、冒頭まず運輸大臣のかわりとして船舶局長から、従来の交渉の経過、これはもう結論だけでけっこうです。したがって、現在残っている問題点、これからいかにしてこの問題点解決していくか、この問題について、特に技術的の面からの報告をしていただき、その次に外務大臣から、いま申し上げたインガソル大使との交渉を含めての今後の交渉の見通しと決意を伺い、最後に一番本日の花形である防術庁長官が、断じて見切り発車みたいな、シビリアンコントロールの精神に反するようなことはしないという、明確な一つの御方針を再確認していただきたいと思うのです。  まず、委員長、運輸省からの答弁を求めます。
  82. 田坂鋭一

    ○田坂政府委員 お答え申し上げます。  二月十一日以後四回、私ども中心になりまして、外務省のあっせんにより関係各省庁集まりまして、協議をいたしてまいっております。今後ともさらに打ち合わせを細密に続けていきたい。またいく段階にございますが、現在問題になっております点につきましては、第一に、現在SRFが持っております艦艇修繕技術レベルをいかにして維持していくかという問題、次に特殊装置、いろいろの武器等がございますが、特殊装置の修繕につきましての問題、特にその部品の供給の問題、それから艦艇の修繕問題でございますので、即応性の問題、特に契約問題を含めて即応性の問題、こういうことが問題になっております。  前段の問題につきましては、私どもとそれから米軍側の専門家と細密な直接的な打ち合わせを、委員会をつくりまして今後続けていくことになっております。また、契約問題につきましては、現在米軍側が私どもの申し入れについて検討を進めておる段階でございます。
  83. 曾禰益

    ○曽祢委員 いまお聞きのように非常にまじめな技術的な話は今後とも進んでいくと思うのですが、私の感じは、率直にいえば、たとえば随意契約かそれとも公開入札、そんなことをいえば公開入札がすべての民主的な政府の根本的なルールにきまっているけれども、ああいう特定な場所で、横須賀で、ほかのドック関係の会社を加えた公開入札なんかというのは実際上あり得ない。日本でもそういう場合には随意契約という道が残っているので、そういう面についても——それからある種の部品は、幾ら何だって、日本のほうでアメリカの武器までつくってやれるわけはないのですから、これはある種の部品については、アメリカが本国から供給するというようなことで、そこに技術協力の気持ちがあれば、そんな問題は解決できると思うのです。私も実際アメリカ側の担当者、軍側及び国務省側の人とも話をしてみたのですけれども、やはり技術の問題は確かに重要であるから、これはまじめにやらなければいけませんけれども基本的には私が言っているような一たん返すと約束した基地ですから、これから新たに返せ、返さぬというような議論はなかなかむずかしいということはわかります。一たん返すといったのをあとで情勢が変わったから返されない、これは幾ら何でもまずいじゃないか、そういうやはり政治的な段階のあるいは政治的なレベルの話し合いをどうしてもしていかなければならぬ。私はさように考えるので、ひとつ外務大臣からインガソル大使との従来の接触、今後の御交渉の方針をいま申し上げたように、どうしてもこれは外務大臣が正面に立ってやっていただかないと、ただ事務的のレベルの詰めだけでは私は済まないと思うので、御所見をお伺いしたいと思います。
  84. 福田赳夫

    福田国務大臣 本件に対する曽祢さんの御所見につきまして、私はごもっともだ、こういうふうに思うのです。ただいきさつが変わったからという御理解ですが、技術的になかなか問題があるということが発見された、こういうことというふうに私は理解しているんです。つまりわが国民間施設に四号、五号がなりましても、米軍の艦船の修理、補修には支障はないようにする、そのための技術の問題です。そこがつかえて今日まで至っておるんですが、その辺は打開の道がないわけがないじゃないかというのが私どものたてまえでありまして、運輸省に頼みまして強力に、いま日米双方においてその辺の調整を急がしておるというのが現状でございます。  そこで、曽祢さんがこの問題を提起されてから私ども正式に数回の事務レベルの接触を持っております。また今週もこれを行なうというようにいたしておるわけですが、私も新任のインガソル大使に対しまして、幾つかの問題点のうちの一つとして善処されたい旨を申し入れておるわけでありますが、何とかして一括移転、こういうことになるように、自衛隊だけが見切り発車というようなことにならないように、急いでこの問題が解決されるようにということを念願しながら、ただいまこれを事務レベルまた政治的レベルの折衝を推進いたしておる、こういうのが現状でございます。
  85. 曾禰益

    ○曽祢委員 おことばですけれども、結論としては、インガソル大使にも話していたし、今後もこの問題について政治レベルの交渉も事務レベルの交渉と並行してやると承ってその点は了とします。ぜひやっていただきたいのですが、ただお話の中に情勢が変わったのは、民間の引き受けの条件が云々と言われますけれども、そんなものは初めから向こうは自衛隊でやってもらうとか、そういうあれはなかったわけですよ。要するに、日本側に渡して結果的にアメリカの修繕の要求を充足してくれるならばいいと言っていたんで、むしろ自衛隊が一口乗ったんで一号から三号は自衛隊のほうが常時は使うということになる、そうなってくるとむしろアメリカのほうとしては、じゃ四号、五号は居すわろうか、悪く言えばそういう感じを起こしたのではなかろうかと、私はその心理過程としてそういうことはあってもふしぎはないと思うのですね。したがって、問題の根本は、自衛隊が使うのがいいかどうかという問題であるけれども、この問題をここで議論しても始まりませんから、やはりどちらに行くにせよ、日本は自衛隊だけが独走してはいかぬという、これをプリンシプルとしてハイレベルの交渉と、それから事務レベルの詰めと、これをやってせめて六月三十日までには、これはやはり解決するぐらいな気持ちでやらないと、しかし六月三十日も目睫の間ですから、それが事実上できないならば、すみやかにこの交渉をやって、特に強力な外務省のバックで、政治レベルの交渉を大いに先行させるぐらいな気持ちでやっていただきたい、こういう意味ですから、その点ひとつお願いします。よろしゅうございますか。
  86. 福田赳夫

    福田国務大臣 せっかく努力をいたします。
  87. 曾禰益

    ○曽祢委員 最後に防衛庁長官ですが、そういうわけですからぜひひとつ見切り発車などということを言わないで、どこまでも民間と一緒に円満に返還ができるように御努力願いたいと思うのですが、いかがですか。
  88. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 曽祢議員をはじめ関係の皆さん方からしばしば非常に熱意を傾けてのお話でございますので、私ども防衛庁としても外務省に協力いたしまして同時返還、亘万から五号までの一括返還ということで一生懸命実は努力をしております。特にお聞きのように外務省側では新大使に向けても非常な熱意を傾けてお話をしてやっていただくというふうに聞いております。  一号から三号までを自衛隊が予算がついておるので見切り発車というか、それだけ返還を受けて使うことはないのか、これは御心配の点は私どももよく横須賀市民感情といいますか、神奈川県民感情といいますか、地元の空気もわかりますので、一号から三号まで自衛隊だけが使うということは決して望ましいことでないという気持ちで、一括返還ということに重点を置いて今日まできておるわけでございます。なお今後も、七月一日になったからといって、その時点でにわかに一号から三号までだけは予算がありますから自衛隊でやりますなどという気持ちはございません。なお、外務省側の交渉、それに対するわがほうの交渉協力といったような形で一括返還されることを大いに望むわけであります。  ところが、ただ一つ困ったことは、一号から三号までの、これは自衛隊に肩がわりする場面の人員の人件費の問題、それから施設が戻ってまいりました場面でこの施設に改良を加える経費、こういった経費が御承知のとおり計上されておるわけなんです。それで七月一日の時点ですぐにわかにというつもりはございません。これは一括返還を求めて一生懸命われわれも協力する姿勢には変わりはありませんが、あまりこれが長引きますと全く防衛庁としては困ってしまうわけです。それはどういうことかというと、自家施設ということになれば、艦船修理というものの修理経費が低く見積もってあるわけであります。そのかわり人件費であるとか施設費が計上されておるわけですからこれは当然なわけですが、そうなりますとわがほうの艦船を随時修理、整備いたしていく上にたいへんな支障を来たす、これは非常に困るのです。だからそれをどういうふうに解決するか、したがってこういった問題もひっくるめて外務省側が問題にしながら、別々では地元感情もよくない、したがってここで一括返還せられることが事を一番円満に解決する方途であるという、交渉の道具に使っていただいてでもとにかく促進したい、こういう気持ちです。ただ、あまりこれが長引きまして、どうしてもという形になりますと、これは地元側の御了解を求めて何とかしなければならぬときもくるのではなかろうか、これを実は責任者としては憂慮いたしておるわけでありまして、そういうことにならないで、一括すみやかに返されること、これをなお努力したいと思います。しかし、またどうしてもという事態があれば、あらためてひとつこれは御相談に乗っていただきたいと考えておりますが、心情はいま申し上げたとおりでございます。
  89. 曾禰益

    ○曽祢委員 最後に、そういう意味ですから一括交渉でなるべくすみやかに一括返還実現に努力する、私、いまのあなたのおっしゃることはわからぬではありません。予算がいつまでも使われない、あるいは修理そのものが外注の予算をとっていないとか、いろいろありましょうから、たとえば十月のおそらく補正予算の臨時国会というようなこともあるでしょうから、そこら辺になったら何とか決意しなければならぬということもあると思います。そういう場合にはいま大臣のおしゃったように地元と十分相談の上、そういう意味ではやはり話し合いで解決する、独走は一切やらぬというふうに解釈していいですか。相談する。よろしゅうございますか。その点だけ……。
  90. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 やはり地元の御理解がなくして効果を発揮することがむずかしいと思いますので、十分地元側に事情を尽くして御説明する。しかしそれまでにやはり政府としての誠意もわかっていただくような努力、これが積み重ねられることが先決だ、大事だというふうに思います。
  91. 曾禰益

    ○曽祢委員 終わります。
  92. 永田亮一

    ○永田委員長代理 松本善明君。
  93. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣に伺いますが、あるいはこれが今国会最終の質問になるかもしれませんけれども、今国会で一番大きな問題として問題になりましたことの一つに事前協議の問題があります。これについてはいろいろ洗い直しをするとかいろいろの答弁がありましたけれども、いままでの運用でありますとか答弁を見ておりますと、これが日本が戦争に巻き込まれない歯どめとしての役割りというものはとても期待できないかということが明らかになってきたのではないか、これを指摘する、いろいろ世論も非常にあります。問題の中心はむしろ事前協議といいますよりは安保条約にあるのだということが、この国会で論議をされた結果の結論でなかろうかと私は思います。  そういう意味で若干伺いたいわけでありますが、いまベトナムでの米軍は補給の名のもとに日本の米軍基地をベトナム戦のために使用している、ベトナムと日本が直結をするということになってまいりました。もしこのベトナムでのアメリカ軍の行動が侵略だということになりますならば、安保条約で基地を提供することはできない。これはいままでの外務省答弁でも明らかになっております。この米軍の行動が国際法に違反をしているかどうか。いわゆる自衛ではないのではないか。私どもは米軍の行動は侵略だというふうに考えますが、外務省から考えましても自衛権の発動の範囲を越えているのではないか、国際法に違反をしているのではないかというようなことがあった場合には、これは安保条約で基地を提供できないことになるわけですから、きわめて重大な問題であろうかと思います。日本政府がそういうような国際法に違反をしているのではないか、こういう疑義をベトナムでの米軍の行動について持った場合に、外務大臣はいかがなさるおつもりでありましょうか。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカのベトナムにおける軍事行動を含めての諸政策、これは南越の国民が自由に選ぶべき政体、これを維持する、こういうために南越政府の要請に基づきとった行動である、こういうふうに説明され、その説明に対しましてはわれわれといたしましては理解を示し、これを支持しておる、こういうことであります。  一つ一つの軍事行動が戦闘法規に違反するかどうか、そういうようなことになりますと、私どもにもなかなかこれは判定ができません。これは国連憲章五十一条による発動行為である、こういうような主張も行なわれ、安保理事会にもこれが通報されておるというようなことでございますから、そういうことになりますと安保理事会あたりで判定を下さなければならない問題ではないか。わが国といたしましては個々の軍事行動につきましては、これが国際法上どうであるかということにつきましては判定すべき立場にはない、こういうことでございます。
  95. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣のいまのような答弁はもうすでに伺っていることでありますので、私の聞いておりますのは、さらに進んで伺っておるのでありますが、これからもいろいろ米軍の軍事行動はやみそうにもありません。国会でもいろいろ、これは違反しているじゃないか、侵略ではないかというような議論も起こってくるかと思います。今後とも絶対にアメリカ軍は侵略というような国際法違反はないのだと頭から外務大臣がきめているのでなければ、当然にそういう国際法違反が起こった場合にはどうするのかということについて、国民の前にそのお考えは明らかにされるべきだろうと思うのです。私はそういう疑いが、あるいは国会での議論でありますとか、あるいは世論の中でいろいろ問題になってきた、政府もそういうふうに感じたという場合には一体政府はどうするのか、そういうことは起こり得ない、こういうふうに一方的に考えておられるのですか。
  96. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカがベトナムにおいてとっておる行動、これは軍事行動を含めまして、ただいま申し上げたような考え方に基づくものであり、わが国としてはこれに深い理解を示し、かつこれを支持する、こういう立場にあるわけであります。これは今後といえども変わりはない、かように御理解願います。
  97. 松本善明

    松本(善)委員 それではお聞きしましょう。  私は、前の委員会外務大臣に堤防破壊のことをお聞きをしました。そうしたら、そういうことを故意にやっているとは思えない、こういうふうな御答弁でありました。ところが、私はあのときには時間がありませんで十分やれませんでしたけれども、五月の二十四日に、アメリカの国防総省の広報担当のジェームズ次官補が、北爆について「今後いかなる爆撃目標も除外しない」ということを述べたということが各紙に報道をされております。これはどういうものであっても爆撃の対象になるということであります。  それからさらに、委員会で、覚えておられると思いますけれども、沖繩の第七心理作戦部隊でつくっていたビラが、これは無差別爆撃を公言をしておるものである、これを沖繩国会で私は外務大臣に聞きました。外務大臣は、無差別爆撃というのはよろしくないという答弁をされました。方針としてそういうことが実際に行なわれております。ことばでも出ておるわけです。これについて外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  98. 福田赳夫

    福田国務大臣 無差別爆撃、そういうことをアメリカがやるとは私は考えません。また何か、無差別爆撃をやるのだというような声明をしたようなことをおっしゃられますが、そういう話は私は聞いておりません。とにかく戦争というものはこれは不幸なことです、きびしいものです。その不幸なまたきびしい態様を持つ戦争、その一つ一つ行動の一々をあげつらって、これが正当なのかこれが不当なのか、そういうことを私どもとしては言うべき立場にはない、戦争というものはもうそういうものである、そういうふうに考えますが、これによって、この戦争に関係のない一般大衆が受けるという被害、これは戦争両当局においてみずからきびしくこれを自省しなければならぬ問題である、そういうふうに考えます。
  99. 松本善明

    松本(善)委員 ジェームズ次官補の発言については、これは聞いてないと言われるけれども、はっきり各紙に報道されております。これについては何の確かめもしていないわけですか。そういうような疑義が起こった場合には知らぬ顔をするのかどうか。これは安保条約で基地を提供できないような事態になるわけでしょう。それについては、アメリカ行動は何であっても正しいのだというたてまえで行動するというのでなければ、いまのような態度はとれないはずだと思うのです。そのために国会議論をしているわけでしょう。どんなことをアメリカ——こういう形で基地を提供するのはおかしいじゃないか、幾ら問題が起こっても、政府アメリカ行動は支持しているのだから何の行動もしない、こういうことですか。
  100. 福田赳夫

    福田国務大臣 米軍のとる行動が国際連合の憲章あるいはその精神に反するということであれば、これは私どもとしては、理解もできない、支持もできない、そういうことかと思います。しかしそれはわからないのです。私どもは戦争の当事者ではない。またその現地へ行って一々の作戦行動を見守る立場にもないのです。だから、それはおのずから良識のある南北両当局において自省すべき問題である、そういうふうに考えるのです。私どもは一々の両者のとった行動について、それが違法であるとかあるいは不当であるとか、そういうことを言う立場にはない、こういうことを申し上げておるわけです。
  101. 松本善明

    松本(善)委員 私はあとで条約局長にこまかくこの問題についても聞こうと思うのですけれども外務大臣に聞きたいのは、そういうことでいっておられるのかどうかということなんですよ。安保条約に基づいて、ベトナムでのアメリカの軍事行動に対して政府は補給だというふうに名目をつけていますけれども、とにかく軍事行動に基地を提供をしているでしょう。ベトナムでのアメリカの軍事行動が違法であれば、これは安保条約で基地を提供するということは日本政府としてはできないはずでしょう。そうだとするならば、米軍の軍事行動については、一つ一つについて、これは違法ではないかどうか、日本政府として責任を持って基地を提供しているのは、これは正しくないのではないか、侵略に加担をしているのではないかということについての厳粛な反省がなければ、検討がなければ、これは歴史にとっても、それから人類にとってもたいへんな大罪悪を犯しているということになりますよ。そういうような検討は何らしないで、無条件で、米軍がやっていることは一々わからぬのだからもう何も文句は言わないのだ、こういう態度でいかれるのかどうかということを再度確かめたいと思います。
  102. 福田赳夫

    福田国務大臣 くどいようでありますが、わが国アメリカのベトナム政策、これは軍事行動を含めての意味であります、これを支持するという立場に立っておるわけであります。その支持するアメリカの軍事行動、その一々がどういう形態のものであるか、そこまで介入する立場にはない。しかしそれが国際法に完全に違反をするとかあるいは国連憲章に違反するあるいはその精神に違反する、そういうものであれば、これはそんなことをすべきものではありません。しかしこれはそういう性格のものであるかどうかということはわれわれにはわからない、これは国連が判定すべき問題である、こういうふうにいま申し上げておるのです。とにかくわが国はベトナムにおけるアメリカのベトナム政策、軍事行動を含めましてこれを支持するという立場にありますので、安全保障条約をそういう立場に立って運用する、これはわが国の義務である、こういうふうに考えます。
  103. 松本善明

    松本(善)委員 あとは条約局長に聞こうと思いますけれども外務大臣に一言言っておきたいのは、太平洋戦争のときも、これは自衛だということでやっていたわけでしょう。私はいまの時点で日本政府が、いまのベトナム戦争についての性格についても真剣な検討をしなければならないということを言っておきたいと思います。  外務大臣は時間があるようですから条約局長に聞きたいと思いますけれどもも、日本政府は、ベトナムでは北からの浸透があるということを言っておりますね。それから集団的自衛権の行使だということを言っておるようですけれども、この北からの浸透というのは、ジュネーブ協定に違反をしている、こういう意味ですか。
  104. 高島益郎

    ○高島政府委員 お答えします。  北からの浸透ということば最初に使ったのはかなり前のことかと思いますけれども、これはたしかジュネーブ協定に基づきます国際監視委員会、ICCというのがございまして、そのリポートがたしか一九六一年か何かに出ておりまして、その中ではっきり北からの浸透ということの事実を認めた報告を、ソ連及びイギリスの共同議長国に提出しております。それをもとにしまして北からの浸透があるということをわれわれ申しておるわけであります。これはたしか一九六二年、はっきり覚えておりませんが、たしかそのころだったと思います。
  105. 松本善明

    松本(善)委員 私の聞いておるのは、自衛権の行使だということの根拠として北からの浸透をあげるのは、ジュネーブ協定に違反をしている、こういうことを言いたいからかというのです。南北の境界線は、これは国境でも何でもありませんね。
  106. 高島益郎

    ○高島政府委員 南北の境界線につきましては、これは国際的ないわゆるコンセンサスでございますけれども、政治的な意味におきまして確かに国境ではございません。しかし、武力の行使をしてはならないという観点から見た場合のいわゆる休戦ラインあるいはそういう暫定軍事境界線というようなものは国境と同じようにみなすというのが国際連合での従来からの慣習でございます。たしか一九七〇年、一昨年の総会でございましたか、決議が採択されまして、このような意味での国際的境界線は侵してはならないという総会決議がございます。そういう観点からとらえますと朝鮮の場合もそうですし、ベトナムの場合もそうです。いずれにしても、これは国境線ではございませんけれども、武力を行使してはならないという境界線と同じであるという決議がございます。
  107. 松本善明

    松本(善)委員 条約局長、審議を進めるために、聞かないことを、よけいなことはあまり答えないでもらいたいのです。問題点にきちっと答えてもらいたいと思います。  要するにジュネーブ協定に違反しているということを言いたいようですけれども、もしそういうことを言うならば、アメリカが軍事基地を南につくったりあるいは軍隊を入れたり、武器を供与したり、これは明白にジュネーブ協定に違反しておるわけでしょう。こういう関係については日本政府はどう考えておるのか、簡単に答えてください。
  108. 高島益郎

    ○高島政府委員 米軍の行動だけをとらえますとあるいはそういう見方も可能かと思いますけれども、これは双方に言い分がございまして、先ほど申しましたような北からの浸透があるということで、そういう観点からは、北のほうが先にジュネーブ協定に違反しているのであるから、これに対して南越政府の要請に応じて米軍がいろいろ軍事顧問団を派遣し、その他の方法によって軍事的に援助してきたということが実態であるように私ども考えております。
  109. 松本善明

    松本(善)委員 北が先にジュネーブ協定に違反したというのは、アメリカ側の判断と資料提供によるわけですね。
  110. 高島益郎

    ○高島政府委員 先ほど申しましたとおり、一九六七年のICCのレポート等を判断の材料としてそういうふうに考えているということでございます。
  111. 松本善明

    松本(善)委員 それから自衛権の行使というのは、対応するその行為にふさわしいものでなければならない。たとえば北からの浸透が、数人の人間が越えてきたというのに対してB52の大爆撃とか、あるいはいまやられているような大量の虐殺とか、こういうような形のものがなされているのは、これは今度は自衛の名のもとに明白な侵略ということになると思うのです。いまアメリカのやっていることはまさにそういうことだと私は思う。最初が北からだということでも認めているわけではありませんけれども、いまの条約局長立場に立ってもそういうことになりはしないか。そういう問題の判断が起こるであろう。この点についてはどういうふうに考えておるか。
  112. 高島益郎

    ○高島政府委員 私、先ほど大臣がお答えした範囲内で法律的な問題としてお答えいたしますけれども、自衛権の本来の性質から申しまして、先生ただいま御指摘のとおり、まず侵略が先行いたしまして、その侵略に対抗するやむを得ない手段として、これに対応する範囲で攻撃を加えることが許されるというのが自衛権の法理でございますので、そういう意味ではもちろん相応性という一つの原則がございます。
  113. 松本善明

    松本(善)委員 アメリカが相応性の限界を常に守っているということが言い切れますか。
  114. 高島益郎

    ○高島政府委員 このことにつきまして先ほども申しましたとおり、大臣の御答弁の範囲内で私はお答えしているわけでございまして、私が一々範囲を越えているか越えていないかということをここで言う限りではないと思います。
  115. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、日本外務省としてはそういうことについては判断はしていないということですか。外務大臣答弁の範囲内で答えるというけれども外務省としてそういうことを考えていないのかどうかということを聞きたいのです。アメリカ行動がそういう自衛権の限界の中で常にやらているかどうかということについて判断をしていないのですか。
  116. 高島益郎

    ○高島政府委員 米軍の行動に対しましては、それに先行する北側の行動があるわけでありまして、その行動の実態というものを正確につかんでいない限り、これに対応する米軍の行動というものをわれわれの立場から判断し、批判することはできない理屈ではないかと思います。
  117. 松本善明

    松本(善)委員 いまの答弁によりますと、結局実態はつかまれていないということですね。実態はつかまれていないにもかかわらず、結論だけはアメリカが集団的自衛権の行使をしているんだ、正当なんだ、こういう結論になっているといわざるを得ないんじゃないですか。いかがですか。
  118. 高島益郎

    ○高島政府委員 この点は先ほども先生が御指摘のとおり、また大臣もお答えしたとおり、安保条約というのは国連憲章のワク内で運営されるものでありますので、当然米国はこの国連憲章に従った行動をとっているというのが大前提であります。そういう意味でございますので、米軍の行動は一般的にいいまして、個々の行動についてはわれわれいろいろ批判する材料を持ち合わせておりませんけれども、自衛権の行使をしている、国連憲章の第五十一条の範囲内で行動しているということはいえようかと思います。
  119. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると結局私の言ったように、個々の一つ一つについて客観的な事実に基づいて自衛であるかどうかということを判断しているのではなくて、米軍は国連憲章の範囲で行動しているはずだ、これを信頼している、こういうことになると思いますね。そうだとすると、日本政府はそういう立場行動していて、客観的に、歴史的にあとからいろいろな資料が出てきて、実はこれは侵略だったということが全世界で認められるような事態が起こらないとは限らない。ベトナムの秘密報告書のようなこともありました。そのほかのいろいろな資料が将来歴史的に明らかになり、侵略だったということになることもあり得るということですね。
  120. 高島益郎

    ○高島政府委員 そういう意味で、われわれとしましては、憲章五十一条に基づく自衛権の行使については、やはり安保理事会が公正な立場から客観的な判断を下すべき機関である、したがって、これの主宰のもとにそういう自衛権の行使あるいはそれに先行します侵略の実態について世界に明らかにするのが正当であるという立場をとっております。
  121. 松本善明

    松本(善)委員 問題をそらしてはいけないので、私は、安保条約に基づいて基地を提供するについて、日本政府としてこれは自衛権の行使かどうかということについて判断をしなければならぬという立場です。日本政府としては判断をしていない、あるいは客観的にはあとで侵略になるということもあり得る、こういうことに理解をせざるを得ないと思うのです。そうすると日本政府としては、あくまでもこの問題についてはもう事実に基づいて正当な判断をするということは放棄をしているということになりますね。その点についてちょっと伺いたい。
  122. 高島益郎

    ○高島政府委員 何回も繰り返すようですけれども、要するにベトナム戦争全体に対する判断と、個々の軍事行動の判断については、私ども立場が違いますので、個々の軍事行動についてどうこうという判断をする材料を持ち合わせていないということでございます。
  123. 松本善明

    松本(善)委員 条約局長は前の委員会で、機雷封鎖については初めての問題であるから検討するということを言われた。検討の結果はどうですか。
  124. 高島益郎

    ○高島政府委員 当時は、たしか五月八日だったと思いますけれども、いわゆる機雷封鎖ということば新聞等で報ぜられたその直後だったものですから、何ら材料を持ち合わせておりませんでした。その後いろいろ事態を調査し、かつ米国が安保理事会に提出した報告等をよく読んで検討しました結果、これはいわゆる封鎖というものとは全く性質の違うものである、単に機雷を敷設する——単にと申しますか、機雷を敷設することによって、実際上いろいろな補給物資が北越に入らないようにするというのがねらいであるというふうに受け取っております。この行為自体がいわば国際法上の封鎖というのではなくて、そういう意味での一種の軍事行動である。したがって、米軍はそういう意味で封鎖ということばを全然使っておりませんで、しかも封鎖が通常及ぼすような第三国に対する影響というものは直接にはない。つまり通常の封鎖でありますと、公海においていろいろ第三国の船を臨検し捜査するということがあり得ますけれども、公海については何ならそういうことは行なわれない。機雷敷設の水域につきましてはもっぱら領海及びその内水の範囲内であるということがその後わかった次第であります。しかもこの機雷敷設の行為自体につきましては、航空母艦等から発進しました航空機によって低空から落としたというふうなことまで大体わかっております。
  125. 松本善明

    松本(善)委員 堤防破壊について聞きますが、堤防破壊が自衛権の行使として認められるかどうか、これについて端的に見解を伺っておこうと思います。
  126. 高島益郎

    ○高島政府委員 全くこれは一般論として申し上げますけれども、堤防破壊自体が自衛権の行使として認められるかどうかという点についてはお答えのしようがないと思います。これは堤防を破壊することによって相手の軍事目標——堤防自体が軍事目標となってくるかどうかという観念がわかりませんと、堤防自体を破壊することがどうかということはわれわれとして判断しようがないわけであります。
  127. 松本善明

    松本(善)委員 堤防を破壊をして洪水を起こさせて、いまベトナムでやられておることです。洪水を起こさせて大量の住民を殺す、こういうことが自衛権の行使の名のもとに正当化されることがあるかということです。
  128. 高島益郎

    ○高島政府委員 従来の国際法、つまり慣習国際法も含めまして堤防については実は何ら規定がないのです。それでジュネーブではいま真剣にその点を研究いたしておりまして、特に国際赤十字でございますけれども、国際赤十字が中心になってつくりましたジュネーブ四条約、これは一般の市民の保護のための条約でございまするが、この条約の一部を改正しまして、将来そういう堤防とか発電所とかいうようなものの破壊について何らかの措置をとる必要があるということをいま現に研究中でございます。そういう観点からいたしまして、実はこの点はいわゆる戦時における慣習国際法の一つの欠けた点であるという意識が各国から持たれまして、日本も参加いたしましてそういう新しい改正をすべきであるという研究をいましているところでございます。
  129. 松本善明

    松本(善)委員 終わります。
  130. 永田亮一

    ○永田委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次回は来たる十五日午前十時より理事会、午前十時十五分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後三時十三分散会