運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1972-04-12 第68回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月十二日(水曜日)     午前十一時四分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 青木 正久君 理事 石井  一君    理事 坂本三十次君 理事 正示啓次郎君    理事 永田 亮一君 理事 松本 七郎君    理事 西中  清君 理事 曽祢  益君       小坂徳三郎君    田川 誠一君       福永 一臣君    勝間田清一君       黒田 寿男君    堂森 芳夫君       中谷 鉄也君    楢崎弥之助君       中川 嘉美君    松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 福田 赳夫君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         外務政務次官  大西 正男君         外務大臣官房長 佐藤 正二君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省経済局長 平原  毅君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君         外務省情報文化         局文化事業部長 加川 隆明君         文部政務次官  渡辺 栄一君     ――――――――――――― 委員の異動 四月八日  辞任         補欠選任   大平 正芳君     田川 誠一君 同月十二日  辞任         補欠選任   山田 久就君     長谷川 峻君   勝間田清一君     横路 孝弘君   黒田 寿男君     楢崎弥之助君   三宅 正一君     山谷 鉄也君 同日  辞任         補欠選任   中谷 鉄也君     三宅 正一君   楢崎弥之助君     黒田 寿男君   横路 孝弘君     勝間田清一君 同日  理事山田久就君同日理事辞任につき、その補欠  として石井一君が理事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  連合審査会開会に関する件  参考人出頭要求に関する件  国際交流基金法案内閣提出第五六号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任についておはかりいたします。  理事山田久就君から理事辞任したい旨の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  引き続き、理事補欠選任を行なうのでありますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認めます。よって、理事石井一君を指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 櫻内義雄

    櫻内委員長 国際交流基金法案を議題として審査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。松本善明君。
  6. 松本善明

    松本(善)委員 この国際交流基金法案につきまして、外務大臣が今国会冒頭外交演説で、わが国対外活動経済的利益の追求に偏するとの批判や、さらには日本軍国主義復活懸念する声すら聞かれる状況であります、こういうときにあたり、誤った認識の払拭につとめるのがわが外交の急務であるということで、このために新たに国際交流基金を設立するということを述べておられるわけであります。私はこの国際交流基金法案が、わが国対外経済活動日本軍国主義復活という誤った認識、それを払拭するということが一つの動機になっておるということでありますので、この点についていろいろお聞きしたいと思います。  日本対外活動に対していろいろ言われているというのはどういうことがあるのか、またそれが誤った認識というのはどういう点が誤っているのか、外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  7. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は外務大臣に就任して九カ月目になるのですが、その前は大蔵大臣をやっておった。その間私がひしひしと感じますことは、世界におけるわが日本立場というものが非常に高くなってきている。世界じゅうから日本に対する期待というものがあるわけです。その期待というのは一体何であるかということをよく観察してみますと、これは日本経済大国なんだ、経済的に世界に寄与する立場になった、こういうことです。ですから、南米でもアフリカの諸国でも、あるいは中近東の諸国でも、もう国という国がほとんど日本に寄り添ってきて、何がしかの経済協力を得たい、こういう要請をする、私はそれはたいへんけっこうなことだ、こういうふうに思うのです。  ところが、この経済を軸とした結び方、これは私は非常に脆弱なものである、こういうふうに思うのです。一たび経済関係で亀裂が生ずる、利害の不一致が生ずるということになると、せっかく結びついたこれらの国々との関係というものは途絶しちゃう。のみならず、あるいは対立するというようなことにもなりかねない。私は、せっかくそういう結びつき世界国々との岡に出てきたこの機会に、経済結びつき、これをよすがといたしまして、その上に立って、これらの国々との間に心と心との結びつきをひとつ設定したい、こういうふうに考えるに至ったわけなんです。つまりそういうこと、これは非常に経済関係から見ればより長い時限の問題になりますが、少し時間はかけても、日本というものをよく理解してもらう、それから同時に相手方をもよく理解する、そしてそこに血の通った信頼感というものを生み出す、こういうことが大事な時期になってきている、こういうふうに思うわけでありまして、そういうことを考えながら文化交流を中心といたしました心と心とのつながり合いを確立したい、こういう考え方を抱くに至った、そういうことでございます。
  8. 松本善明

    松本(善)委員 できるだけ能率的に審議を進めたいと思いますので、お答えも簡潔に願いたいと思います。  海外での軍国主義復活懸念というのは、一体何を根拠にしておるのだろうか。海外では軍国主義復活ということを言う人たちが、日本の国の憲法第九条を一体知らないのだろうか、こういう点については外務大臣はどういうふうにお考えになっていますか。
  9. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、海外諸国にいま日本が軍国主義化しておるという考え方を持っておる人は非常に少ないと思うのです。ただその懸念がある、つまりいままでの世界歴史の中で、経済大国は常に軍事大国になる、日本もおそらくこの歴史の道を歩むであろう、こういう見方をするんじゃないか、そういうふうに思います。  憲法第九条に対する理解、こういうようなことにつきましては、私はさほど浸透しているとは思いません。日本を特別に理解している、日本に関心を持っているという人は、私と会話をいたしましても、かの有名なる憲法第九条なんということばを使いますけれども、これが普遍化しておる、こういうふうな認識は私は持っておりませんです。
  10. 松本善明

    松本(善)委員 日本軍事費伸び率世界一でありますが、これが海外から批判を受ける一つの原因になっているというふうにはお考えになりませんか。
  11. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはさほどには思いませんです。
  12. 松本善明

    松本(善)委員 憲法九条との関係で、この軍事費GNPとの比率、これはどこまで許されるというふうに外務大臣はお考えになっていらっしゃいましょうか。
  13. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは理論的にはGNP憲法第九条は関係ない、こういうふうに私は思います。
  14. 松本善明

    松本(善)委員 ただ、日本経済成長率が非常に高いために、これに比例をして軍事費が伸びていけば、あるいはこれは近い将来に世界の二位、三位くらいの非常に大きな軍事力を持つようになる、これがいま外務大臣の言われた経済大国軍事大国になるという懸念根拠になっているわけですね。だから、いまのままの伸び率でいけば、これはもうそういうふうになるだろう、一体GNPとの関係では、いまのような比率が維持されていくんだろうかという懸念は当然にあるわけなんです。これについての見解というか、そういうようなものについて外務大臣は別にお考えはないということでありますか。
  15. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国が持たんとすれば、強大なる軍備を持てる。戦前でいいますれば、予算の四五%、平時におきましても軍事費に使っているわけです。またGNPからいいますれば、六%これを使ったわが日本です。それが今日、GNPに比べましてはわずかに〇・九%、そういうような状態である。これがまあ日本の国のGNPがずっと伸びていく長い将来のことになればいざ知らず、当面GNPに比例してわが日本軍事費が同じ比率を保っていくということについては、これはゼロから出発したわが国防衛力でありまするから、私はこれが一つの強大なる軍備になる、あるいは他国を脅威する軍備になる、そういうふう一には考えませんです。
  16. 松本善明

    松本(善)委員 アメリカの元駐日公使のジョン・K・エマーソン氏が一九六九年一月のフォーリン・アフェアーズの論文でこういうことを言っておられます。「憲法上の合法性が明らかに挑戦を受けているという形で軍隊保持している国は、世界じゅうさがしても日本以外にないだろう。日本自衛隊憲法第九条の戦力保持禁止規定にもかかわらず、厳として存在するのである。」こういうふうに論文ではっきり指摘をされておるわけです。これについて、外務大臣はどうお考えになるか。これについての反省はないだろうか。憲法九条を当然によく知っているはずの元駐日公使がこういう矛盾を感じてこの自衛隊を見ているわけですね。この点についての外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  17. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、憲法第九条は、これは国の自衛立場禁止しておるもんであるという見解はとりませんです。まあエマーソン氏はどう言ったか、私はよく知りませんけれども、私どもはかたくさような考え方を持っております。
  18. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣に伺いますが、そうすると自衛立場禁止しているものとは考えないということは、自衛のためには戦力を持てる、そういうお考えだ、こういうことでございましょうか。
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 他国を侵してはならない、他国を脅威してはならない、しかし、みずからはみずからを守る権利がある、これは国際的通念であり、わが国憲法第九条もこれを否定しておるものではない、かように考えております。
  20. 松本善明

    松本(善)委員 私ども自衛ということを、そのものは否定いたしません。私がお聞きしておるのは、憲法九条は、自衛のための戦力を持ち込むことを許しているということを外務大臣はお考えかということをお聞きしておるわけでございます。
  21. 高辻正巳

    高辻政府委員 憲法の問題についてのお尋ねでございますのでお答えを申し上げたいと思いますが、この憲法九条、これからいろいろ御質疑があるのかもしれませんが、憲法九条二項に「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」と書いてあることは言うまでもないのでございまして、そこにいわゆる陸海空軍その他の戦力、これは自衛のために必要相当な限度をこえない実力部隊に限定されるというわけではありませんね、この字句そのものとしては。そういう意味わが国憲法九条所定陸海空軍保持したり、あるいは憲法九条所定戦力保持したりすること、つまり無条件の、そういうものができるわけのものではないことは確かでございます。  続いて申し上げたほうがいいのかどうか、一応それだけ申し上げておきます。
  22. 松本善明

    松本(善)委員 たくさんのことを一度に言われても困りますが、まず私がお聞きしたいのは、いまも外務大臣が、自衛立場を否定しておるものではないということを言われた。前にもNHKのテレビの討論会江崎防衛庁長官が、自衛のためには戦力が持てるかのごとき発言をされた。そういう点で、いま日本政府の閣僚は、この憲法九条についてどういうふうに考えておるのかということを私は伺いたいのであります。そのあとで法制局長官にいろいろ伺おうと思いますけれども、まず外務大臣自衛のための戦力を持つことができるというふうにお考えかどうか、これを伺いたいと思います。
  23. 福田赳夫

    福田国務大臣 いかなる国も、みずからの国を守る権利を持っておる、こういうふうに思います。したがって、憲法第九条は、これがあるがためにわが国自衛力保持することを禁止しておるもんではない、こういう見解です。
  24. 松本善明

    松本(善)委員 それを区別して伺いたいのです。自衛のための戦力憲法に言っておる自衛のための戦力と、あるいは自衛のための陸海空軍、こういうものは持てるというお考えかどうか、この点にしぼってお答えをいただきたいと思います。
  25. 高辻正巳

    高辻政府委員 全く憲法問題で、憲法問題については私は責任を負わされておりますから、私からお答えを申し上げます。  外務大臣がおっしゃったことを、それなりに政府考えとしてお受け取り願っていいわけでありますが、きわめて理論的にいえば非常に微妙なる問題がそこにありますので……。  先ほど申し上げたように、憲法九条二項というのはどうしても法律解釈になりますから条文をもとにして言わざるを得ませんが、この憲法が、保持しない、保持することを禁止している陸海空その他の戦力、これは自衛のための限界などというものを問わない、「陸海空軍その他の戦力は、」という場合は問うておりませんので、そういう意味陸海空その他の戦力を持てないことはこれは当然でございます。しかしながら戦力ということば、このことばも実はきわめてあいまいでございまして、きわめて広くいえば一億の国民そのもの戦力かもしれませんが、そういうことをここでは言っているのではなくして、やはり一定の規模、組織を持った一つ組織体である、物的、人的組織体であるというふうに限定していいますならば戦う力というふうにも言えましょう。そういう意味では自衛隊もまた戦う力、外国からの侵略に対してこれを防衛するという意味戦力ということは言えると思います。そういう意味戦力という場合に、自衛に奉仕する以外に奉仕し得ないもの、つまりその限界を越えないもの、その限界以内のもの、そういうものであれば戦力と申してもこれは間違いではないだろう。言うか言わないかそれは別として、つまり憲法禁止している戦力ではない、保持禁止している戦力ではないということになると思います。
  26. 松本善明

    松本(善)委員 ちょっと大事な問題なんで法制局長官によく聞いておきますが、そうすると、いまの、自衛隊憲法九条にいう戦力といってもいい。しかしこれは自衛のためであるから憲法九条違反にはならない、こういう趣旨の御答弁でありますか。
  27. 高辻正巳

    高辻政府委員 二つに分けて言っておるつもりでございます。  一つは、憲法戦力禁止しているという戦力は、そういう限界を問題にしてない戦力でございますので、その前提を置けば自衛隊戦力ではないと言わざるを得ない、限界を持っているものでありますから。しかしそういうことをきちょうめんに考えないで、一つ戦力であるかどうか、戦う力であるかどうか、これは前に答弁したことがあります、政府答弁として、戦う力と読めば、ただことばどおりとしてとれば、そういう意味戦力ではあるだろう、それが自衛限界にとどまるものであれば憲法保持を否認する戦力ではない、こういうことです。
  28. 松本善明

    松本(善)委員 これは法律解釈ですからかなり明確にしなくてはいかぬと思うのですよ。だから、結局は自衛のための戦力というのは持てる、そしていまの自衛隊戦力ということは言っても差しつかえない。しかし憲法九条はそれを禁止しているものではない、結論はそういうことですか。
  29. 高辻正巳

    高辻政府委員 松本さんは法律家でいらっしゃいますから私の言うことをおわかりだろうと思うのですが、要するに戦力というもの、憲法九条の覊絆的意味を備えた戦力ということばでいえば、自衛隊というものは戦力に当たらない。しかし戦力という用語それだけをとらえていえば、自衛隊侵略に対してこれを防衛するという意味で戦う力であろう、そういうものは、そういう限界内のものであれば憲法九条が否認するものではない、こういうわけです。
  30. 松本善明

    松本(善)委員 法律家であろうと普通の国民であろうとわかるように話をしなければならないと思うのです。私は、いまの法制局長官お話では、国民はとてもわからないと思いますよ。専門家がわかったらいいというようなものでもないですよ。  これは大事な問題だからいいかげんにするわけにいかないので、端的にお聞きしておきます。  自衛のための戦力を持つことを憲法禁止をしていないのかどうか、これをまずお聞きしておきたい。
  31. 高辻正巳

    高辻政府委員 私が前々からお答えしていたものを基本に置きながらお答えをいたしまして、そのとおりでございます。
  32. 松本善明

    松本(善)委員 自衛のための戦力を持つことは禁止してない。そうすると、自衛のための陸海空軍を持つことは禁止してない、こういう解釈になりますか。
  33. 高辻正巳

    高辻政府委員 そこに当然御質問がくるものだと思っておりましたが、これまたもう一ぺん私が誤解をされないように申し上げたいと思います。  憲法でいう陸海空軍というのは、自衛とか自衛でないとかいう限界を置かないものでございますので、そういうものは持てない。また自衛隊はそういう意味憲法九条所定陸海空軍ではない。しかし戦力について、いま松本さんがことば意味だけについておっしゃいました陸海空軍というものを一つ実力組織――これまた陸海空軍という場合に、日本は、憲法九条のもとでの戦力日本部隊というものは、どうしても一般にいう陸海空軍のような活動ができないわけでございますので、そういう意味陸海空軍と同視できるかどうか、はなはだ疑問でありますが、もしそんなことを無視して、対外戦闘に役立つものを陸海空軍というのであれば、やはり、自衛限界内のものであれば、お説のとおりにかまわないということになります。
  34. 松本善明

    松本(善)委員 結論だけ。こういう解釈というのは二義を許されない、きちっとはっきりしなければならないと思うのです。  結論においては、自衛のための陸海空軍は持てる、そういうことですね。
  35. 高辻正巳

    高辻政府委員 それが、何といいますか……(松本(善)委員国民にわかるようにしなければいかぬ」と呼ぶ)わかるようにというのが、非常に誤解を来たされるわけです、陸海空軍というのは持てるということ自身が。そこで、陸海空軍という呼称を用いないとか、自衛隊陸海空軍であるかどうか、軍隊であるか、総理大臣は、軍隊とは申しませんというようなお答えをしておりますが、そのために憲法九条一項を直視して、自衛隊というものを説明できればいいものを、他の概念にそれを持っていきまして、そこからまた出発して論議を展開するということがあり得るものですから、そこを間違いのないように非常に神経を使ってお話を申し上げているつもりでありますが、これも陸海空軍定義にかかるわけです。かかるわけですが、もしも、御質疑の中で陸海空軍というものが外国侵略に対して防衛する組織体であるということであれば、それがもっぱら自衛のためにのみ限定するものもまた陸海空軍と言い得るものであれば、陸海空軍と言ってよろしゅうございます。
  36. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、そういうことばを、いま法制局長官が限定されたようなことば意味であれば、自衛のための陸海空軍は持てる、こういうことですね。
  37. 高辻正巳

    高辻政府委員 要するに陸海空軍定義いかんでございますが、陸海空軍というものが外国侵略に対して防衛に当たる一つ武力組織、これを陸海空軍というのであれば、自衛隊はそういうものであるということを言って差しつかえございません。
  38. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、防衛に当たるというものが陸海空軍というならば、これは持てる。自衛隊はそういう防衛に当たる陸海空軍というならば言える、こういう見解ですね。
  39. 高辻正巳

    高辻政府委員 むろん、言うまでもないことでありますが、侵略に対して防衛に当たる武力組織である。しこうして、一般の陸海空軍という場合には、外国ではそういう実力限界というものが憲法上の問題になっているところは、少なくも私の知る限りでは明瞭な規定を置いたところはないと思います。行動の範囲についてはよく憲法の上に規定がございますが、実力組織そのものについてはないと思います。日本憲法はそういう意味で特異なものだと思いますが、そういう限界日本憲法で問われるということがあるということをつけ加えておけば、それで足りると思います。
  40. 松本善明

    松本(善)委員 法制局では昭和二十七年の十一月二十五日に、戦力に関する統一見解をつくったことはありませんか。
  41. 高辻正巳

    高辻政府委員 私のほうでは、いろいろな問題につきまして研究素材をつくることはございます。二十七年にもそういうことがあったと思います。しかし、むろんそれで決定をしたというようなことではございません。
  42. 松本善明

    松本(善)委員 いままで、この統一見解新聞に出ました統一見解に沿って大体法制局答弁がされていたと思います。その答弁は、侵略目的たる自衛目的たるとを問わず戦力を持つことを憲法九条は禁止をしている、こういう立場答弁であったと思います。私は、きょうの法制局長官答弁は、この見解から一歩変わったものだというふうに考えますけれども、これはいつから変わったのですか。
  43. 高辻正巳

    高辻政府委員 お答え申し上げますが、いまの二十七年のものは、いまごらんになっているのがそれかどうか知りませんけれども新聞に発表したことはもとよりございません。法制局新聞に発表することはいまだかつてないと思いますが、おそらく私どもがこの研究素材としたものが材料になったのであるかもしれません。それはよくわかりませんが、ところで、いまごらんになっているものが法制局見解として最終局に決定していたというものでは少なくもないと思います。しかし、いままで九条の論議というものはずいぶん長いことやっておりまして、確かに説明のぐあいが少し変わったように見えるところがあると思います。少なくも私はいま気がつくのは二つございますが、一つは、文民解釈が変わりました。これは明瞭に変わりました。文民解釈については、自衛官もまた文民であるという解釈を長くとっておりましたが、私が法制局長官になりましてから、これはお許しを得まして自衛官文民にあらず、したがって自衛官国務大臣になるわけにはいかないということを社会党の石橋さんにお答えしたことが一ぺんございます。これは明瞭に変えた一つでございます。そのほかには変えたものはまずございません。しかしもう一つありますと言ったのは、近代戦争遂行能力であるということをしばしば吉田内閣では使っておりました。これがはなはだ間違っているとは思いませんけれども、何か非常に説得力が薄いのではないかというようなことで、もう少しそれを分解してものを言っておるということはございます。まあそのくらいなものではないかと思います。
  44. 松本善明

    松本(善)委員 たいへん大事なことを次々と言われるもので、ちょっととめることができないのですけれども近代戦争遂行に役立つ程度のものをいままでは戦力と言った。この点について変わってきているということですけれども、これは非常に大事なんであらためて聞いておきたいと思いますが、日本のいまの自衛隊の持っておる実力というもの、軍事力というものは、これは外務省でもらいました「海外論調」の中にあります、ロサンゼルス・タイムズの七月十四日付のものですけれども日本防衛力世界非核国の中で第一級の軍事力に達している。だから、近代戦争遂行能力ということであれば、まさにこれに達しているわけですね。そういう点で、これを戦力というふうに考えてきている、こういうふうな意味でしょうか。
  45. 高辻正巳

    高辻政府委員 近代戦争遂行能力、先ほども申し上げましたように、吉田内閣までです、使いましたのは。鳩山内閣になりましてから以後は使ったことがございません。したがって、最近この前の話を持ち出されて、いまの政府解釈としてそのままの形で聞かれると、正直なところ実は困るのであります。昭和三十年ごろからもう十七年ばかりにわたりまして、いまのようなことばを使って御説明を申したことはございません。もっぱら自衛のために必要相当な限度を越えないもの、これだけでいっております。その説明は、また必要があれば防衛庁当局からでもお聞きになればいいと思いますが、理論的な言い方としてはそういうことでございます。
  46. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、近代戦遂行能力というものはもう問題にならない。自衛のためということだけが問題になってきているわけであります。規模については、もう限度を持たない、憲法上の限度はない、こういうことですね。
  47. 高辻正巳

    高辻政府委員 そこでいう自衛というものは、これはしばしばいままでの質疑応答で出ていることだからおわかりと思いますが、全くいわゆる刑法上の概念の正当防衛にも似た、きわめて厳格な意味自衛ということでございますが、自衛に必要なもの、その限度、これは大きな限度ではないかというふうに考えておるわけであります。
  48. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣に伺いたいと思います。法制局長官とのやりとりが少し長引いてしまいましたけれども、いまの論議でもわかりますように、憲法九条というものの解釈陸海空軍を持てる、自衛のためなら陸海空軍を持てる、あるいはその規模については限度もない、こういうような日本の政治の実態があれば、幾ら軍国主義復活という問題をそうではないんだということを海外に宣伝をしましても、これは信用されない。先ほどエマーソン元公使の論文を引用いたしましたけれども、事、実は、だんだん憲法九条はなくしていく、事実上意味のないものにしていく、こういうような方向が進んでおり、そして自衛隊世界で現在ではもう第九位の軍隊になっている。先ほどGNPとの関係外務大臣にお聞きしたところが、これについては別に制限はない。そしたらますます大きくなっていくだろう。これはもう日本人だってそう考えるのはあたりまえの話なんです。私どもはこれを軍国主義の復活と言っていますけれども、こういう実態を変えないで幾ら海外文化交流をやっても、軍国主義ではないという宣伝をしてもこれは役に立たない、根本を変えることのほうが必要ではないのかと思いますが、この点について外務大臣見解を伺いたいと思います。
  49. 高辻正巳

    高辻政府委員 先ほど私が言いましたことに関連がございますので、一言だけ言わさしていただきたいと思いますが、憲法九条のもとで自衛武力組織というものが持てるかどうか、実力組織が持てるかどうか、これを考えるのは憲法九条と自衛隊との関連の問題でありまして、これをそのまま論議をすればいいのではないかという観点から、私は先ほどいろいろなことを申し上げました。それを陸海空軍というようなことと結びつけて、そこからきた話を出発させるというようなことは、はなはだしく世に誤解をもたらすことがありますというので、いろいろ申し上げたわけでありますが、もう一ぺんあらためて申し上げますけれども、ただいま松本委員陸海空軍が持てるというではないかということから出発をされていらっしゃいますが、その陸海空軍というのは、念を押して申し上げましたように、もしも松本さんが外国からの侵略に対して国を防衛する一つ実力組織、これを陸海空軍というのであれば、この限度にとどまるものである限りは持てないわけではない。つまり、それが自衛隊でございますから、そういうことを申し上げたわけでありまして、いきなり陸海空軍が持てるということから出発させることについては、その点を十分に意識をされて、軍国主義の問題もそういうことに心をとめながらおっしゃっていただきたいという気がいたしますので、一言申させていただくわけです。
  50. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国は、先ほども申し上げましたが、持たんとすればたいへん強大な軍備が持てる立場にあるわけです。戦前のあれでいえば、平時におきましてもとにかくGNPの六%を費やしたわけです。いま六%のGNP防衛力にさくということになると、これはもうほんとうに世界で指折りの強大な軍備、そういうふうになると思うのです。それをやらない、これは軍国主義といえるか、こういうことを反問せざるを得ない。中国はどうだ、ソビエトロシアはどうだ、こういうことを考えますと、わが国はまさに平和主義の国ですよ。しかも軍備をしない。そういう余裕を世界のおくれた国々に奉仕しよう、まさにこれが文化国家、平和国家でなくて何であろうか、こういうふうに思います。
  51. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣、六%ということを言われましたけれども、六%なんかにしたらこれはもうたいへんなことなんですよ。二%だけでも、もう近い将来に世界で米ソに次ぎます。だから、この点について、私はむしろ外務大臣がもっと低いことを言われるのかと思ったけれども、そういうことも言われない。その点については、軍国主義復活についての、そうでないということの宣伝を外国にしようなんて言っておられるけれども外務大臣自身がそういう点について関心がないということは、私はたいへん驚いたことではないかと思うのです。そういうような態度では、とても文化交流なんか私は成功しないと思います。目的どおりにならないです。むしろ文化侵略といわれるだけの話です。実態はそういうことになりますよ。もし平和国家だということを言われるならば――軍国主義の復活をもっとさらに進めようという言論が自民党の中にありますね。憲法を変えて、明確に――いま法制局長官が言ったのは非常に回りくどい、たいへん国民をごまかすような言い方だというふうに思いますけれども、もっと明確に自衛のための戦力自衛のための陸海空軍を持てるんだというふうにしようという意見が自民党の中にあるでしょう。自民党の憲法調査会長稲葉さんの意見ではそうですね。外務大臣がこういうことに賛成かどうか伺いたいと思います。
  52. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は憲法改正問題を検討したことがございませんけれども自衛のために自衛力を持つ、これは国際通念上当然のことである、わが国だけがその例外であっては相ならぬ、こういうふうに私は考えております。
  53. 松本善明

    松本(善)委員 私の言いましたのは、自衛のために軍隊を持つということができるように明確に憲法を変えたいという意見が自局党の中にあるが、それについて御賛成か、こういうことであります。
  54. 福田赳夫

    福田国務大臣 自衛のための軍備の条項、いまそういうお話ですが、憲法全体について私はまだ改正を検討したことがございませんです。
  55. 松本善明

    松本(善)委員 それではこの問題は一応おきまして、文化交流についてでありますが、前の委員会でも外務大臣お答えになっておりましたが、社会主義国とは差別をしないということを一応言われました。言われましたが、実際上はベトナム民主共和国や朝鮮民主主義人民共和国、こういうところとは、いわゆる分裂国家ということを名目にして、事実上これとの交流はそうはいかぬという趣旨のことも言われました。実際上そうなりますと、一番重要なといいますか、ベトナムはいま侵略戦争が行なわれているところであり、それから朝鮮も日本にとっては非常に近くて、むしろ朝鮮民主主義人民共和国との交流というのは非常に要望される。そういうところについてはこれはやらないということになっていくならば、この文化交流というものもたいへん片手落ちの、一方的な、場合によっては反共諸国家と交流をしていくということになっていくようなことになりはせぬか、こう思いますが、その点についての外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  56. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、外交政策全般といたしまして世界じゅうのどこの国とも仲よくしていく、こういう基本的な考えを持っておるのです。つまり脱イデオロギーというか、そういうふうな姿勢で外交をやっていきたい、こういうふうに考えております。ただ、そうは言うものの、わが国と国交を持たない国との間には、多少の制約がある、多少の差異が出てくる、こういうことは当然そういうふうになるだろう、こういうふうに思います。
  57. 松本善明

    松本(善)委員 もう少しで質問を終わりたいと思いますが、経済援助、海外におけるわが国経済活動ですね、これがいろいろ批判を受けているということでありますが、経済援助についての基本的な態度、これを伺っておきたいのですけれども、七〇年十月の佐藤・ニクソン会談後、当時の木村官房副長官が、インドシナ援助はこれまでの人道的援助の立場から社会的安定のための援助となると述べられました。そして、七〇年以前の援助と七〇年以降の援助の性格、方法に違いがあるというのですね。社会的安定のための援助あるいは計画的援助、こういうことばが盛んに使われるわけでありますが、この基本的な違いというものを外務大臣のお口で説明をしていただきたいと思います。
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国は、経済援助につきましては非常に基本的に大事な政策である、こういうふうに考えておるのです。つまり、私どもは持たんとすれば持ち得るところの軍備を持たない、そこには余力が生ずる、その余力の一半はおくれた国内のわれわれの生活環境の改善に使う、しかし残された一半は、これは世界のおくれた国々の開発、安定、そういうものに使っていく、こういう考え方なんです。そういう考え方を各国に対して適用していく。ただ先ほどから申し上げておるとおり国交を持たない国との間ですね、この関係は国交を持っておる国との間に微妙な違いが出てこざるを得ない、こういうふうに考えております。
  59. 松本善明

    松本(善)委員 七三年度のニクソンの予算教書は、この援助について安全保障援助ということを言っております。日本のそういう経済援助が安全保障上の意味を持っておるのかどうか、このアメリカでのいろいろな論議と引き比べて考えますと、それに当てはまっておるように思いますけれども、その点について外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  60. 福田赳夫

    福田国務大臣 安全保障という意味はどういうことか知りませんけれども、私どもの与える援助、協力は、その与えられる国の社会の安定のためである、こういうふうに考えております。
  61. 松本善明

    松本(善)委員 これは結局において、ニクソンの予算教書でいえば安全保障援助です。そこの反共諸国家――国交の回復していないところといるところということの区別をもっていま外務大臣お話しになりましたけれども、実際上は、東南アジアなどの例を見ればわかりますけれども、そこの社会の安定、いわゆる安全保障ということにすぐつながる問題なんです。この経済援助でありましても、その援助を受けた国は、その援助のために軍事費に予算を回すことができるようになる。そういう意味ではまさに安全保障援助の性格を持っておる。私はそういうことが海外批判をされている内容なのだと思う。先ほどは軍国主義復活の問題について申しました。それから経済援助の性格の問題についていま申しました。こういう態度、日本海外活動の根本的な態度を改めることなしに、それをそのままにしておいて、文化交流そのものだけが切り離して進んでいくわけのものではない。私は、この点を考えるならば、外務大臣のお考えは、この国際交流基金の構想というものはその根本をかえない、そうしてその実態を、何といいますか、そうでないかのように宣伝をしていく結果になるのではないかというふうに思います。この点についてはまだ若干の質疑もありますけれども、きょうはほかの同僚委員も御質問があるようでございますからこの程度で質疑を終えたいと思いますけれども外務大臣はそれらの諸点をさらにお考えをいただきたいと思います。
  62. 福田赳夫

    福田国務大臣 安全保障という意味、あなたがおっしゃる意味が、これが平和だ、こういう意味であるとすれば、私はまさにわが国経済協力を通じて国際社会に臨む態度、つまりこれは平和を希求するものである、こういうふうに考えます。この考え方には私は間違いない、間違いがあれば見解の相違である、こういうように思います。
  63. 松本善明

    松本(善)委員 最後に、外務大臣言われたので、一言言っておきますけれども、その平和のためといっても、アメリカも平和のためということで東南アジアに兵を出しておるわけです。それと一致するようないわゆる安全保障援助ということになると、これは日本海外に対する経済援助というものは重大な、考え方をかえなければならない侵略的なものだということを言って私は質問を終わりたいというふうに思います。
  64. 櫻内義雄

    櫻内委員長 永田亮一君。
  65. 永田亮一

    ○永田委員 福田外務大臣は連日非常に御多忙でお疲れのことだろうと思います。いじめられてお気の毒に思っておるので、きょうは私はいじめる質問じゃない。のんびりした少し気の長い話かもわかりませんが、これはしかしまじめな質問でありますので、そのつもりでお答えを願いたいと思うのであります。  今度の国際交流基金法案というのは私は非常にいい法案だと思っておる。外務省が自主的に出された法案として、私はまことにけっこうだと思う。外務省は最近は黒星続きでまことに評判が悪いのでありますが、この法案を出されたことは私はたいへんよかったと思っておるのであります。ただ、欲をいえばことし五十億、来年百億というような、それをまるまる使うというのじゃなくて、基金にするというので、いかにもみみっちい話でありまして、できればもっとふやしていったらいいと思うのでありまして、たまった外貨もこういう方向に使っていくということが必要なんじゃないかと思うのであります。この前の提案理由の御説明を伺っておったときに、中にも書いてありますが、「わが国に対する諸外国の理解を深め、」特にその「心と心の触れ合いをつちかう」、そうして国際親善を促進する、こういうことが書いてある。特にこの「心と心の触れ合い」を通じて日本というものを理解してもらい、国際親善を促進する、このことはたいへんけっこうなのでありますが、こういう目的に向かって進んでいくときに一番障害になるのは何か、これはことばの問題だろうと思います。日本語というものが非常に難解でありまして、外国の人にはなかなか理解しにくい。このことばの問題についてお尋ねをするわけでありますが、この間後宮大使が書かれた経済と政治でしたか、外交でしたか何かいう雑誌、ここへ持ってきてあったのを読んでみますと、後宮大使がタイ国におられて七年間の経験を書いておられる。その中に、タイの外務大臣が、日本に留学生を送りたいのだけれども日本語が非常にむずかしくて困るのだ、不便だ、わずか一年ぐらい日本語を勉強しても、日本語で自然科学であるとか法律であるとか経済であるとか、そういう日本語の講義を聞いてもさっぱりわからない、たいへんむずかしい、理解が困難だ、それでしかたがなしに欧米とかあるいはオーストラリアとか、そういうところへ留学させる、こういうことを後宮大使が書いておられたのを読んだのでありますが、私はそのとおりだと思う。ことばの障害ということが大臣の意欲されておる心と心の触れ合いというようなことに非常にネックになっておるのではないか。このことばの障害を克服するということで大臣はどういうおつもりを持っておられるか、まずそのことをちょっと伺いたいと思います。
  66. 福田赳夫

    福田国務大臣 まさに永田議員御指摘のように、わが国世界では非常に特殊な立場にあると思うのです。その第一は、日本語ということばを使う民族である。これはほかの国では一般的には使われないことばです。また、その他人種的にも世界でもただ一つの民族である。そういうこと、それから風俗、宗教、習慣、そういうような点につきましてもこれは独自の立場日本はある。こういうことを考えますと、わが国が国際社会における立場というものを考えまして、これに溶け込むという上にずいぶん障害が多いのです。それだけに私ども日本国は、それらの障害を乗り越えて国際社会の中でその任務を尽くさなければならぬ、こういう努力をしなければならぬ、こういうふうに考えるわけでありますが、その中でもことばの問題ですね、これはほんとうに越えがたい障害だ、こういうふうに考えておるわけであります。  そこで、私の考えを率直に申し上げます。これは日本語をもう少し海外に普及したらいいじゃないか、こういうような考えを打ち出しておる人もあります。しかし、私はこれはなかなかむずかしいことだ、言うべくしてむずかしいことだ、こういうふうに思うのです。今日においては何といっても英語をしゃべる人口というものが非常に多いわけでありますが、その辺は実際問題、現実政治の問題として十分考えておかなければならぬ問題ではあるまいか。しかし、日本に親近感を持つという以上、英語が世界語である、こういうふうにいたしましても、やはりある程度の日本語への理解というものは、これは捨ててはならない、こういうふうに思うのです。ただ、日本語を主軸にした国際交流というものを考えたら、これはとうてい実現できないことである、こういうふうに思います。
  67. 永田亮一

    ○永田委員 よくわかりました。  そこで、これは私の持論なんでありますが、提案を一つ申し上げたい。これは気の長い話でありまして、いますぐということではありませんが、世界語というものを日本が率先して普及させたらどうかということなんであります。これは二十年先、三十年先あるいは二十一世紀にかけての私の夢なんでありますが、私は国際会議その他へ行ったときにいつも考えておることなんで、ちょっと申し上げてみたい。  世界じゅうの人がそれぞれ自分の国のことばは使っておるかもわかりませんが、国際会議なんかで世界語を使ってほしい。これは日本が一番利益をするわけであります。いま世界語としてあるのはエスペラント語なんです。実は私がまだ学生時代に、いまから三十五、六年前でありましたか、エスペラント語が一時流行したことがあるのです。私も夜学へ行きましてエスペラント語を習った。半年習ったらもう卒業なんです。それは非常に簡準なんです。半年といっても月水金ですから一週間に三日しか行かない。一時間ずつやって半年やったら、卒業しちゃった。もうやることがない。  なぜこんなに簡単に覚えられるかというと、これは人間がつくったことばですから、動詞の変化とかなんかいっても不規則動詞というものは一つもない。みんな規則的になっております。それからたとえば名詞の語尾はOで終わっているし、形容詞の語尾はAで終わっている。それから字を読んでも読まない字なんというものはないのですから、字のとおり読めばいいのだし、発音も簡単だし、聞いておってもよくわかる。そういうことで半年エスペラント語を習ったら、もう習うことはない。当時、私はエスペラント語で書いた小説だとか新聞なんか読んで、よくわかる。非常に便利だと思っておった。それから三十何年使わないからさっぱり忘れてしまいましたけれども、そういう経験があるのです。半年やったらもうあとは単語さえ覚えておればそれで役に立つのがエスペラント語でありました。  いま、この地球が非常に狭くなった。世界一つだというような考え方がだんだん広がってきております。世界連邦というような考え、国会でも世界連邦の議員連盟なんかできて、世界一つになりつつある。経済の問題でも、これは大臣は御専門でありますが、経済でも通貨でも、IMFその他国際通貨というものを使っている。ドルでなくてもう世界に共通する国際通貨を使う時代になってきた。こういう時代のあと十年、二十年先のことを考えてみますと、ことば世界語ができて一向おかしくない。私はこの世界語というものを日本が率先して世界に普及をするようにはかったらどうかと思いますが、大臣のお考えを聞きた  いと思います。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまお話を承りましてずいぶん御熱心なエスペラント派がおるものだと思って感銘を受けて聞いておったのです。私も実は若いころエスペラントというものに興味を持ちまして、教科書も買ったり、それをもとにして学習をしてみたり、ある程度のところまでいっちゃった。ところが今日は全部忘れております。あなたと同じです。  しかし、さあこのエスペラントというものが普及し得る可能性があるか、こういうことを考えてみると、なかなかこれはむずかしいことじゃないか、そういうふうに思います。永田さんのような、そういう熱心な方がおって、また、同志が各国におって、そしてこれを盛り上げるということになると、あるいはこれは可能性がない問題とは言えないかもしれない。しかし、これは現実の問題として、さあそれがどこまで行き得るかということについては、私はそう明るい見通しというものを持ち得ないのです。私は世界語がほしいと思う。ほしいと思うが、現実政治の問題とすると、やはり英語あたりが基盤になるのが、これが実際的じゃないか。こんなような感じもするのですが、しかし、あなたがエスペラント語に情熱を燃やしておる、これはたいへん敬意を表する次第でございまするから、どうかひとつ大いにやっていただきたい、そして成果がありそうだというならばお伝え願いたい。その上で私もまた考えてみたい、こういうふうに思います。
  69. 永田亮一

    ○永田委員 いますぐの問題と言ったわけじゃないのですが、いまの現実の問題では、やはり大臣おっしゃったように、英語なんかを主として使うのが現実的だと思うのです。しかし、これをいつまでもほっておいたら、いつまでたっても世界語というものはなかなか広がらない。これはなぜかというと、英語とか、フランス語とか、ドイツ語とか、そういうものは大体親類同士なんです。語源はラテン語か、ギリシア語か、そういうものから来ているから似たようなものであって、国際会議をやっても英語でしゃべっていればフランス人も大体のことはわかるし、フランス語でしゃべっていれば英国人も大体のことはわかる。西洋人は不自由を感じないわけです。ところが日本語とか、中国語とか、こういうものは全く別個のものなんですから、国際会議なんかをやって日本ことばが通じないために非常な不利な立場に立つ。困るのは日本なんです。英国やフランスやドイツやスペイン、そういう国はあまり困らない。だから黙っているわけだ。これはどうしても日本が率先して習わなければ、いつまでたってもこの世界語というものは普及しないと思うのです。このエスペラント語にしても、これはザメンホフというポーランド人が発明したことばなんです。語源は三分の二がラテン話で三分の一がギリシア語だ。だから、英語やフランス語やドイツ語に非常によく似ているから、彼らは習いやすいのです。それでも日本が率先してこれを言わなければ彼らが自分から世界語を使おうなんということは言わない。不自由を感じてないからだ。不自由を感じているのはわれわれなんですから、われわれが言わなくてだれが言うか、こういう感じがするわけであります。私はそれでこの国際交流基金を、ある一部分を通じてことしからやれというのじゃありませんけれども、大臣にお考えをいただきたいのですけれども日本でこのエスペラント語の普及に多少ずつ使ってもらう。それから諸外国で、この前堂森議員の御発言に対して、日本が文化センターを各国につくっていくというお話しがございましたが、そういうところでエスペラント講座というようなものをやって補助金を出す。そういう形の――日本だけがエスペラント語を一生懸命やったってほかの国が使ってくれなければ何にもならぬわけですから、よその国でも徐々にエスペラント語というものを浸透していくように、この国際交流基金を活用していってほしいのです。そして二十年先、三十年先にもう国際会議というものはエスペラント語でやるのだ、これが実は私の夢なんです。もう前からそう思っておることなんですが、こういう講座をつくったり、あるいは諸外国に、そのエスペラント講座に補助を出したり、こういうことを将来やってほしい。さしあたっては日本でエスペラント語の辞書なんか発刊するときに、この基金から補助金を出す、そういう形にして徐々に世界語というものを日本がイニシアチブをとって世界に広げていってほしい、こういう希望を持っておるのですが、大臣いかがですか。
  70. 福田赳夫

    福田国務大臣 非常に遠大な御構想でございますが、私はこれは世界津々浦々でそういうような空気でも盛り上がりまして、そうして各国協力してそういうことをやってみようというような体制になれば、私はそれは一つ考え方かと思います。  あなたのおっしゃったように昭和の初期、大正の末期、あのころはそういう空気があって、世界のそういうことに関心のある方々がずいぶん努力された。ところが、やってみたけれども、どうも実現の可能性はないというので、その後エスペラント運動というものがなくなったといってもいいような状態の今日である。それを盛り上げることができるかできないか。そこが、再び盛り上げることができるかできないかということは、これは問題だろう、こういうふうに思うのですが、御努力等によって世界のすみずみからそういう運動、そういうふうにしてみようじゃないか。――私はわが日本だけじゃないと思うのです。アフリカの諸国なんかはみんなことばが違う、こういう国々もずいぶん不便をしておるのじゃないか。中近東の国々もそうです。そういうようなことで、私はエスペラント運動の可能性、そういうものについては私は一るの期待は持ちまするけれども、かなりこれはずいぶん努力か要する問題であり、しかもこれは日本だけの努力ではどうにもならぬ。もし、そういう運動でも盛り上がるというようなことになりますれば、私ども日本としても率先してこれに指導的役割りを演ずる、これはたいへんいいことだ、こういうふうに思います。
  71. 永田亮一

    ○永田委員 文部政務次官来ていらっしゃるので、ちょっと関連して私の意見を申し上げますが、政務次官は、それはたいへんいい考えだから考えておく、そういう御答弁でけっこうなんですから……。私の考えでは、中学校の一年生に入ったとき、義務教育で英語をやるわけです。それからずっと英語を――ぼくらも中学から大学を出るまでずいぶん英語をやったけれども、さっぱり役に立たぬ現状でありますが、この中学校の一年生で英語をやるかわりに、エスペラント語をやったらどうかと思うのです。これは私の経験で言うと、半年エスペラント語を習ったあと、ほかのことばをやるのが非常に入りやすいのです。私は夜学へ行ったときはフランス語の夜学でありましたけれども、先にエスペラント語をやっておくと、あとでフランス語をやったら、もうとてもやさしくやれたという感じがしたのです。それで、日本でも、いますぐやれというわけじゃないのですよ、そういう考えを私は申し上げるわけですが、中学校の一年生のときはエスペラント語をやる。私は半年でも卒業したくらいですから、一年やればもうエスペラント語では習うことはないのです。このエスペラントを一年やったあと二年から英語をやる、あるいはほかのことばをやっても非常にやさしい。私はそういうことを将来考えていただけたら、非常にエスペラント語の普及には役に立つ、またほかの外国語をやるにもやりやすい、こういう考えを持っておるのですが、政務次官の御意見をちょっと伺いたいと思います。
  72. 渡辺栄一

    ○渡辺(栄)政府委員 お答えを申し上げますが、実は現在の中学校の教育の中では英語は別に必修になっておるわけではございませんので、現在は選択になっておるわけでございます。現在中学校におきまして外国語を指導しておりますのは、主として外国語を聞き、話し、あるいはまた読み、書くという能力の基礎を養いますが、これを通じましてそれぞれの国の人たちのあるいは生活であるとかものの見方でありますとか、先生は心の触れ合いということをおっしゃっておりましたが、そういうようなものを基礎的に理解をさせまして、そして国際理解の基礎を深めていこう、こういうところから語学をやっておるわけでございます。そういう意味で現在中学校の外国語とし属しては英語、ドイツ、フランスというような各国のことばを指導しておるわけでございます。したがって、いまエスペラント語、たいへん御熱意をお持ちでございまして、私ども敬意を表しまするけれども、現在のところはエスペラント語を国語として扱っておる国はないわけでございますし、そういうような立場からいいますと、現在直ちにこれを中学校の必修にするということは非常に私は困難ではないかと思います。ただ現在、クラブ活動というのが必修になっておるのでございますから、そういうようなクラブ活動等におきましてエスペラント語を指導していくというようなことは非常に望ましいことではないかと思っております。そういうようなことを出発といたしまして今後エスペラント語が普及をし、非常に盛り上がってくるということになれば、先生の御趣旨に沿うようなことになるのではないかと思います。目標としましてはいまそのような考え方を持っておるわけでございます。十分私ども検討してまいりたと思います。
  73. 永田亮一

    ○永田委員 外務大臣に御質問を旧申し上げますが、いまことばの問題というのは世界の大政治家がみんな非常に関心を持ち悩んでおる問題だと思います。実は、去年二月に私は藤山訪中団の一人として中国に行きましたけれども、周総理にお会いしたときに周総理が非常に注目すべき発言をされた。それはどういうことかというと、岡総理がわれわれと会っておったときに質問をしたのです。どういう質問をしたかというと、日本は明治維新以来非常に急激に発展をした、すばらしい躍進を遂げた、それは一体何が原因だと思うかと向こうから聞いたわけです。こっちは何て答えていいかわからぬから、みんな顔を見合わせておったのですが、そうしたところが周総理が言われるのは、それは日本は昔かたかなとひらがな、こういうものを発明した、これがたいへんに文化の発展に貢献したんだ、そういう話しだったのです。いまその中国で子供がむずかしい漢字を覚えるのにたいへんな時間がかかる、労力がかかる、エネルギーを費やす。それでもなかなかむずかしい漢字をみんな覚えられない。それでもしその漢字を覚えるための時間とエネルギーをほかの、たとえば化学であるとか物理であるとか数学であるとかそういう勉強に費やせば、どれだけ中国の子供が助かるか、また伸びるかということを考えるときに、このむずかしい中国の漢字というものは何とかしなきゃいかぬ、こういう発言がありました。それでいま中国では全力をあげて略字の運動をやっている。私ども人民日報を読んでみても、見たことのないような略字がたくさんあるのでわからぬのですが、それは略字辞典というものを引いて、ああこれはほんとうはこういう字だということがわかる。そういう略字の運動を盛んにやっておる。これはちょっと余談でありますが、そのときに、日本でもし略字の研究をしておる学者がいるのだったら中国へ招待をして一緒にわれわれと略字の研究をやろうじゃないかという話もしておられたのです。その周恩来のことばを聞いておって、さらに注目すべき発言があったのです。それはどういうことかというと、いままで中国では略字運動というものを一生懸命やって、やさしい漢字をつくっておる、しかしいまから二十年先、三十年先、二十一世紀になったころ、周恩来総理はもう自分はそのときは死んでいないだろう、その二十年先、三十年先の自分の理想は、もう漢字を全廃してしまうのだという話をしたのです。どうするのかといったら、ローマ字にする。これは注目すべき発電だったと思うのです。日本新聞は身近な政治問題とかに非常に紙面をさいて事こまかに報道されますけれども、この周恩来が、二十一世紀には自分の考えだけれども、中国の漢字をやめてしまう、そうしてローマ字にするのだ、そうしなければ中国の科学技術その他の発展というものがなかなか急速に進歩しない、そういう発言をされたのであります。私はそれを聞いておってさすがに大政治家というものは三十年先の民族の将来のことを考えるものだと感心をしたのでありますが、福田外務大臣も近く総裁になられる方でありますし、大政治家であります。この周恩来総理の言ったことをよくお考えいただいて、日本民族の発展のために世界語というものを普及する、これによって西に周恩来あり東に福田赳夫あり、この提携によって世界語というものをもっと進めていただきたい、こういうように私は感じますが、いかがでしょうか。
  74. 福田赳夫

    福田国務大臣 だいぶ遠大な御構想でありますが、しかし当面の問題としますと、私どもは現実の政治と取り組まなければならぬ、こういうふうに思うのです。周恩来首相との会談のお話がありましたが、私は去年日韓閣僚会議がありましてソウルに行った。そうして朴大統領に会った。そのとき朴大統領にすすめたことがある。それは朴大統領が従来の漢語を入れて話す韓国語を一切漢字を抜きにしたわけです。これは一種のナショナリズムというところから出てきたのだろう、こういうふうに思いますがその点を指摘しまして、いまアジアではとにかく八億の漢語を使う中国人がいるじゃないか、また漢語を中心とした日本語を使う一億の日本人がいるじゃないか、その間にはさまれて朝鮮半島、それが漢語を一切抜きにする、こういうことになった場合において一体この三国の交流関係はどうなるのだ、この辺も考えてもらわなければならぬ、これはずいぶん強く私は意見としてすすめたのです。そうしますと朴大統領はそのときは格段の反応を示しませんでした。朴大統領は非常なナショナリストである、そういう立場から漢字はこれを追放する、こういうたてまえをとったわけであります。ところが微妙な変化が最近あらわれてまいりまして、漢語を使うようになってきておる。これは私は私の意見を採用してくれたのだろう、こういうふうに思っておりますが、やはり現実の政治とすると、何か身近なそういう問題から考えていく必要があるのじゃないか。ただ、漢語というものがお説のとおり非常にむずかしい、これを簡素化する、こういう問題も、アジアの漢語を使うところの人々、またアジアには中国、朝鮮半島あるいは日本ばかりじゃない、広く華僑というものがアジア諸国に蟠踞をしている、そういうようなことを考えますと、その辺から問題を整理していったらいいんじゃないかというような感じがいたしますが、先ほどのエスぺラント運動、これも遠大な構想といたしまして、あなたがそういうことを今日なお考えられておるということには深く敬意を表します。そういうような敬意のもとに立ってあなたの提起される問題、これも私どもの検討問題、考えるべき問題といたしたい、かように存じます。
  75. 永田亮一

    ○永田委員 もう一問で終わります。  私の考えは、自分の理想を申し上げたわけで、いますぐやれということではございませんが、お心にとめておいていただきたいと思うわけであります。  最後に、この国際文化交流基金法案というのは非常にりっぱなよい法案だと私は思いますが、この前も堂森委員が御質問になったときに、この金額ではどうにもしようがないじゃないか、ことし五十億で来年は百億になるけれども、それをまるまる全部使ってしまうんじゃなくて、それを基金として使うというのではいかにもみみっちいということであります。私もこれくらいの金ではたいしたことはできないと思っておるわけでありまして、堂森委員が、野党がもっと増額修正するなら私も賛成しようと思っているのですが、将来もっと増額をしていただきたい、このことだけ申し上げて終わります。
  76. 櫻内義雄

    櫻内委員長 松本七郎君。
  77. 松本七郎

    松本(七)委員 たいへん時間が詰まりましたし、まだ同僚議員がおられるわけですから少し急いでおもな点だけをきょうは質問したいと思います。  同僚の松本善明議員が指摘した憲法との関係、これはやはり文化交流の基本的な問題として非常に大事だと思います。しかしなるべく重複を避けて、この交流基金をつくるに至った基本的な発想といいますか、さらにそれが、運営にあたっての基本的な問題にも及んでくるわけですが、そういうことを一つ。それからさらにには、今後の基金の運営をどうするかという、この二点を柱にして質問したいと思います。  最初の点は、これは松本善明さんが指摘したように、施政方針のときの外交演説にも出ております。さっき松本善明さんが指摘したように、やはり経済大国になっていろいろ外国から非難、批判を受けておる、それを何とか理解を深めたいという発想が根本にある。それは三月二十二日の本委員会でこの基金法が審議されたときにも外務大臣答弁の中にやはり出ております。それを一応ここであらためて読み上げる予定でしたけれども、時間がありませんから省略します。ただ私が言いたいのは、真の文化交流なり真の理解というものは、日本経済大国になって外国から、やれエコノミックアニマルじゃないか、軍国主義が復活し、強化されるのではないか、そういう非難が出てきたからひとつこれを打ち消すために日本を理解してもらうんだ、根本はこういう発想なんだ。私はそこに問題があると思うです。やはりほんとうの文化交流というのは――もちろんここにも相互理解ということが一応はうたってありますが、日本を理解させるという態度が美本になる。この基金法自体がそうなんです。それはなぜそういうふうになったかといえば、先ほどから松本善明さんも指摘しているように、あの外交方針演説にも出ていますよ。経済的には大国になった、しかし非難が出てきたし、今後その非難が強くなる危険がある、だから日本をもっと理解をさせるんだ、こういうたてまえです。これではほんとうの文化交流はできない、ほんとうの理解も得られないと私は思うのです。一番大切なことは、まず相手国を日本自身が理解すること、それが根本にあって相手を理解するということが中心になって、初めて外国にも日本はほんとうに理解を生んでくると私は思うのですよ。そこが逆になっておる――この第一条がどういうことになっておるかというと「わが国に対する諸外国の理解を深め、」ということが中心になっているのですね。これを改めるべきじゃないか。いまの根本的な考え方からいうならば、やはりこれを、かりに条文的に言ってみれば、わが国が諸外国国民及び文化への認識を深め、かつ諸外国わが国に対する理解を助け、国際相互理解を増進するとともに、国際友好親善を促進するため、国際文化交流事業を効果的に行ない、もって世界の文化の向上及び人類の福祉に貢献することを目的とする、こうなれば、私はほんとうの文化交流の基本的態度として正しいものが出てくると思うのです。そこのところはどう考えられますか、外務大臣
  78. 福田赳夫

    福田国務大臣 その点は私は松本さんと全く同感です。すでに私はこの法案の提案理由の説明もしておりますし、それに対する補足の説明もしておる。その際に私ははっきり申し上げておるのですが、これは二つの目的がある。第一は、わが国に対する正しい理解を求めることである、第二は、わが国が正しく外国を理解することである、こういうふうに思うのです。特に私が政治家として非常に頭にありますことは、いまわが国はもうアジアの一独立国じゃない、世界にも影響をすみずみまで及ぼし得る日本国である。そういうようなことを考えますときに、わが国外国の知識を持つ、一人一人がみんな国際感覚を持つ、これが非常に大事なことだと思うのです。全国民が国際感覚を持つ、そういう状態になりませんと正しい外交政策というものは行なわれない。いまわが国は国際経済協力を雄大に進めておるわけでございますが、これに対しましてもずいぶんこれは、国民コンセンサスというほうでは問題があるのです。つまり、国内がこんなにおくれておるじゃないか、そのおくれを取り戻す、これは当面の緊急課題ではないか、それなのに海外援助協力をするとは一体何だ、こういう問題がある。これは国民に対して説得するのに非常に努力を要する問題だろうと思うのです。しかし、問題はありますけれども、今日の日本国は戦後の五等国、六等国という日本じゃない、指折りの国の日本国です。その日本国が今後わが国を繁栄、発展さしていくということを考えると、もう世界じゅうが繁栄しなければわが国には繁栄はありません。世界が平和でなければわが国に平和はないのです。そういうことを考えますときに、どうしても国際感覚、世界の繁栄の中に、世界の平和の中にわが国の平和、繁栄を求める、こういう考え方国民全体にみなぎるということによって、私は雄渾な日本外交というものが展開され、そこに初めて日本の国の使命、世界における使命感というものが止まれ出ていく、こういうふうに考えますので、あなたがおっしゃるとおりです。日本を知らしめる、これも非常に大半なことでありますが、外国を知る、その世界の中で日本は生きていくんだという、この感覚を持つこと、これもまた非常に大事なことである、そういうふうに認識しております。
  79. 松本七郎

    松本(七)委員 私の意見に賛成されたわけなんですが、いままでは経済的に非常に進んだが、文化交流というのは非常におくれていた、こういう認識なんでしょう。それだから、いま諸外国から経済的な発展に対していろいろな批判や何かが出てきた。あわててこういうものをつくって、さあこれから文化交流をやろうというかっこうですね、かっこうは。だからこれを取り返すだけの運営もそうでなければならないし、それからこの基金法そのものがやはり、これを挽回するだけのはっきりした本質のものにする必要があると思うのですよ。だからいまこのことを条文的にいえばこういうことのほうがいいという形でわざわざ申し上げたのだから、それに賛成ならば私の言ったように修正に応じますね。
  80. 福田赳夫

    福田国務大臣 委員会でよく御協議を願います。
  81. 松本七郎

    松本(七)委員 そういうまるで政府と国会というものが別なもののように、困ってくると委員会まかせ、国会まかせ、そうしていいようにしろ。結局大臣がそういう態度ならば与党は原案どおりということを押し通しますよ。それがいままでの国会の運営の常じゃないですか。そういうことから国会で常に欺瞞の問題だとか、それから政府がほんとうに国民に向いて答弁をしていないという問題も出てくるわけなんですよ。私はいまこういうふうにしたほうがよくないかとわざわざ具体的に読み上げた。それに対して委員会まかせというのは何ですか。あなた、賛成なら、けっこうですという答弁がなぜできないのですか。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 自由民主党の委員はそう硬直した考えは持っておりませんです。ですからよく御相談ください。そして御相談の結果、そういう文章が整うということになれば私も賛成します。私の考え方は、先ほど申し上げたとはり全国民に国際感覚を持たせたい、これがこれからの外交政策の基本になる。そういうことが表現されるということは私としては非常にけっこうなことである、こういうふうに考えます。
  83. 松本七郎

    松本(七)委員 はい、わかりました。それじゃ、大臣は賛成ということですから、その賛成の意見をもとにして私も与党の諸君と折衝します。  委員長、よくそれを覚えておいてください。
  84. 櫻内義雄

    櫻内委員長 審議の経過はよく承知いたしました。
  85. 松本七郎

    松本(七)委員 それから次に、これは運営の問題に入るのですが、この基金ができて、国民がやはり一番関心を持っているのは――それは、そういう文化交流のお金がまだ足りないという点もあるでしょうけれども、もっともっと金をふやしてせっかくこれを大きなものにしても、いま言う基本的な取り組む姿勢と、それからそれに基づいて今後どう運営するかというこの基金の構成とそれから運営が、いままでよくこういう団体にあるようにもう結局官僚の管理にまかせるとか、役人の天下り人事が行なわれるとか、こういうことをこの機会に一切なくしたいというのが私は国民の一致した期待であると思うのですね。ですから、そういう観点からこれを見ますると、まず考えられる問題は、理事長一人、それから理事四人以内、監事一人、こういうことになっているのですが、そうして職員数が五十五人ですか、そして予算案でいうと理群は三名ですね。それの根拠はどういうところにあるのでしょうか。この職員数とそれからこういった役員の比率一つの問題ですが、理事長一人、理事四人以内、予算面が三人、これの根拠は。
  86. 福田赳夫

    福田国務大臣 この機構は結局国費を使うものでありまするからなるべく簡素なものがいい、そういうふうに考えておるのです。一番大事なことは何であるかというと、その企画が私の申し上げたような趣旨に十分適合するものになり得るかどうか、その辺に問題があるのです。ですから、それには運営審議会というようなものをつくりまして、そうしてこれは民間と私は申し上げません、そんな小さな問題じゃない、国民の総点がそこに結集されるような、そういうものにしてみたい、こういうふうに考えております。  運営につきましては、これは金は役所で出すからこうせいという、そんなけちな立場はとりませんです。
  87. 松本七郎

    松本(七)委員 この理事三人という根拠を伺っているわけです。
  88. 加川隆明

    ○加川政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、法律的にはただいま理事長一名、それから理事は四名以内と書いてありますが、来年度の予算では三名分ということになります。  そこで、どうして三名かというお尋ねでございますけれども、私たちといたしましては、ただいま総務部、講演展示部、文化事業部、人物交流部、海外普及部、視聴覚部というようなものを大体考えております。もちろんこれはまだいろいろ各界と相談をいたしましてきまるものでございますが、一つのたたき台としてそういうものを考えております。そこで総務部担当の理事が一人、それから人物交流、これは前々から御説明申し上げているとおり、今度の基金の一つの重要な仕事でございますので、人物交流担当の理事を一人、それからその他各部を統合する理事を一人、とりあえずそう考えております。これから海外等の支所でもできるようになりますと、またその担当の理事も要るかと思います。そういうことで四名ということを一つの目標にしている次第でございます。
  89. 松本七郎

    松本(七)委員 そこで、大臣も天下り人事はなるべく避けるということをこの前の委員会で言われておるようですが、天下り人事はしないという保証はこの基金法にはないわけですね。だけれども、これは非常に大事な点なので、まあ聞くところによると給与額との関連でやはりいわゆる民間から優秀な人をといってもなかなかそれが困難だから結局外務官僚かどうか知らないけれども、役人の理事長就任ということに落ちつくのじゃないかというようなことがもっぱらうわさされているのですが、もう今回は理事長は必ず役人からは天下りさせないのだという言明はできますか。
  90. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは非常に大出な構想なんです。ことしは五十億円ということで出発しますが、これは数年後におきましては千億くらいの規模にはしたい。そしてわが国の国際社会における使命遂行という上から見まするとこれは非常に重大なものです。私はこれからこういう種類の海外経済協力、また海外との諸交流、これくらい大事な問題はわが日本の政治課題としてないというくらいにまで考えておるのです。その出発の機構でございます。そういうことなんで、この機構をどういうふうに運営していくか、これは非常に大事なことだ、こういうふうな認識です。ですからその陣容も、全国民的な立場から見ましてこれがベストであるというようなものにいたしたい、こういうふうに考えております。役人の収容所、そんな考え方は全然持っておりませんから、その辺は御心配なくひとつお願い申し上げます。
  91. 松本七郎

    松本(七)委員 趣旨はわかりましたが、それでは理事長には役人を就任させるということはないと理解していいですね。
  92. 福田赳夫

    福田国務大臣 私の念頭には理事長に役人を起用するというような考え方はただいまは持っておりませんです。
  93. 松本七郎

    松本(七)委員 それじゃ役人外で、いまここで発表できないでも、大体目当てがあるのですか。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 この基金の発足はことしの十月なんです。ですからずいぶん間のあることでありまして、まだ私としては構想を固めておりません。おりませんが、これは十分私が申し上げたような趣旨において評価されるような人事をしてみたい、こういうふうに考えております。
  95. 松本七郎

    松本(七)委員 現在のところまだ具体的には考えてないが、まだ時間があるので今後検討する、しかし役人は避ける、こう理解していいですね。――はい、わかりました。  その次は国際文化振興会が今度一緒になるわけですが、国際文化振興会のいままでの実績その他かなり伺いたい点がいっぱいあるのです。時間がありませんから、ごく概略いままでの実績等についてなるべく簡潔にお話し願います。
  96. 加川隆明

    ○加川政府委員 昨年度でございますけれども、大体外務省のほうから九七%程度の補助金を出しております。仕事といたしましては三億円程度の仕事をしていただいております。仕事の大宗は、もちろん日本の文化の紹介、たとえば歌舞伎を派遣するとか能を派遣するとか、そういうようなこと。それから出版、これはきわめてじみな仕事でございますけれども日本文化の紹介をたとえば英語にする、あるいはフランス語にして出版をするというようなことを主軸に、三億円程度の仕事をしていただいております。なお、ことしは、ただいま松本先生の御指摘のとおり、十月から国際交流基金の中に発展解消いたしますわけで、これから十月までの間には大体二億程度の仕事をしていただきまして、それからあと基金になりましてからは五億程度の仕事をしていただく。仕事の内容は、寄付行為にございますように、この交流基金の仕事とほとんど同じでございますので、ただいま申しましたように、日本文化の紹介、それから人物交流、それから外国の文化を日本に紹介するというようなことをする予定になっております。
  97. 松本七郎

    松本(七)委員 いままでの活動を反省されて、どういうところにおもな問題点、今後改善すべき点があるとお考えですか。
  98. 加川隆明

    ○加川政府委員 御指摘になりましたとおり、文化交流というのは、日本といたしましては世界の各国に比べて少し立ちおくれた、こう思っております。いままでやっておりましたことで反省と申しますと、やはりお金が少なかった、これが根本の原因でございまして、やはりこういう仕事は予算がなくては、お金がなくてはできない。したがって、何とかしてお金を十分つぎ込んで幅広い活動をしたい、こう思った反省が福田大臣の御構想とも結びつきまして今度の基金になった、こういうことでございます。
  99. 松本七郎

    松本(七)委員 いろいろ問題点があると思いますが、金の少ないことももちろん大きな原因でしょう。しかし、この振興会の場合も、私は、外務省の影響というものが、管理というか、コントロール、そういうものが十分な成果をおさめ得ない一つの大きな原因になっているのじゃないかと思いますよ。外国での振興会の職員の扱いだとか、外務省から行っている大使館、公使館の館員との比較とかそういういろいろな問題があると思います。きょうはそういうところまで一々やっておられませんから素通りしますが、いずれ私はあとで、これは委員長にも御相談したいと思うのですが、今後この基金がうまく運営できるために、こういう問題をこの際洗いざらい整理してみたいと思っています。  それで、さしあたり、この振興会の職員は全部引き継がれるという確認を得たと見ていいですね。大臣から答弁してください。
  100. 加川隆明

    ○加川政府委員 本件につきましては、ついせんだって国際文化振興会の理事会と評議員会がございまして、そこに大臣のかわりに参りまして申し述べた点でございますけれども、私たちといたしましては、今度の基金というものは、新しい理事長が職員の任命その他の権限を持っておりますので、現在外務省といたしまして当事者能力は持っておりません。しかしながら、監督官庁という権限がございますので、監督官庁たる外務省といたしましては、話し合いによる退職というのがあればそれはもちろんそうでございますけれども、それ以外の場合は、国際文化振興会の職員は今度の新しい基金に一括して引き継ぐという方針で、今度の新しい理事長に引き継いでいきたい、こういうふうに考えております。
  101. 松本七郎

    松本(七)委員 そうすると、外務省としては話し合いによる退職があり得るというようなことをいま言われましたが、いわゆる肩たたき、退職を勧告するとかそういうことは一切ないと理解していいですね。
  102. 加川隆明

    ○加川政府委員 私たちは、肩たたきというのは私もよくわかりませんが、別に特におまえさんやめろというようなことを言うわけではございません。ただ、こういう引き継ぐ際でございますから、たとえば自分は前からやめようと思っていたのだけれどもというようなことがあれば、もちろんいい機会でございますので、私たちとしては退職金等も特別に考えられると思います。したがって、もしそういう方があれば、そういう御希望であればという意味でございます。
  103. 松本七郎

    松本(七)委員 実は現在の振興会の理事長に対して、現在職員が要求書を出したのを御存じでしょう。――御存じですね。国際文化振興会労働組合員の全員一括雇用を保証すること、それから質金その他労働条件の切り下げを行なわないこと、それから移行にあたり国際文化振興会労働組合員に対し不利益を与えないこと、これが出て、それに対して理事長のほうからは、第一項の全員一括雇用については、去る三月三十日開催の当会理事会において、外務省文化事業部長が任意退職者を除き全員引き継ぐ旨言明したことを証明をする、こういう証明が出ておるわけです。また、いまの御答弁と現理事長の確約、これをあわせて新しい理応長に十分これが実行できるように外務省としてもひとつ御努力願いたい。これを外務大臣から、ひとつこの確約をお願いしておきたいですね。
  104. 福田赳夫

    福田国務大臣 その辺のことは文化事業部長にまかせてありますから、文化群業部長お答えで御了承願います。
  105. 松本七郎

    松本(七)委員 それからいろいろな官庁からの出向が十人くらい予定されているというのですが、どうなんでしょう、なるべくならよその役所からの出向なんかはやめて、新職員で補充することが、こういう新しい官僚統制臭のないものに、最大限そういうものにしなければ、せっかくのこれが生きてこないのですから、そういう出向もやめて、新職員で補充するという方針のほうが妥当だと思いますが、どうでしょう。
  106. 加川隆明

    ○加川政府委員 ただいま松本先生のおっしゃった、十名出向を予定しているというようなことは全くございません。先ほど大臣からも答弁がありましたように、十月一日からの発足でございますので、よだそういうふうに具体的には考えておりません。ただし、新しい事業団でございますので、先生のおっしゃるように、新しい皮袋には新しい酒を盛るという考えでやっていきたい、こういうふうに考えております。
  107. 松本七郎

    松本(七)委員 新職員の採用はどういう方針ですか。試験をいつごろされるのか。
  108. 加川隆明

    ○加川政府委員 実は、私のほうでもそれとなく各大学等にただいま当たっておる段階でございます。もちろん採用にあたりましては、ある種の試験ということは当然したいと思っています。ただし、なかなかむずかしい。ということは、十月一日の発足なものですから、たとえば新卒業生を四月にとるというわけになかなかいきません。それから、ここで法案を御審議いただいておる段階なので、将来非常に不安というようなこともございますので、たいへんむずかしい段階にありますけれども、私たちといたしましては、たとえば大学の新卒というような方の使命感に燃えた方ということが、この基金に参画してくださるということを考えております。ちなみにこれは予定でございますけれども、月給等も先ほどちょっとお話がありましたけれども、特殊法人でございますので、たとえば公務員よりはずっと高くなる、こういうふうに考えております。
  109. 松本七郎

    松本(七)委員 それから、予算書によると管理職が大体十四人。全体の規模からいうと十四人の管理職というのはちょっと多過ぎるような感じですがね。それと、部長、課長、係長、こういうものも考えられておるのでしょう。こういう点、文化交流というような仕事はあんまり命令系統こまかくしたりしないで、やはり全員でもって文化交流全体に取り組むというようなそういうかまえと運営が大切じゃないかと思うのですよ。そういう点からいうと、部長一人ぐらいで十分やれるのじゃないか、またそのほうがこういうものに全員が熱意を注いで仕事ができるのじゃないかという気がするのですがどうでしょう。
  110. 加川隆明

    ○加川政府委員 実は先ほど大臣からちょっとお話がありましたとおり、この基金はますます大きくなる、将来には千億円にもなろうということを頭に置いておりますので、予算折衝の段階で、たとえば管理職等の人数も将来のことを考えて、実は多くとっております。ただし、これは管理職の十四名ということで予算がはじいてあるから、管理者が十四名できるということではございません。十名でもいいわけでありますし、あるいは二十名でもいいわけであります。これは今後実際の状況に照らし合わせて、われわれ各界とも相談してきめていきたい、こういうふうに考えております。
  111. 松本七郎

    松本(七)委員 それからもう一つは、この運営にあたって大事な点で、第三章の二十一条三項、いわゆるさっき大臣が言われた運営審議会があるからということをちょっと触れられましたが、これがこの法案でいうと、結局単なる諮問機関的なものになっている。この審議会を形式化しないためには、もっとこの審議会の意見を反映させなければならぬという、はっきり義務づける必要があるのじゃないかと思うのですがどうでしょう。おそらくこういう規定では最初のころは運営審議会活発にやっているけれども、いつの間にか実際の運営にあたってたいした影響力もなくなる、形骸化するということは、いままでもたびたびあることなのですから、この際ひとつ運営審議会というものの力をもっと法律そのもので保障するということが必要じゃないかと思うのです。
  112. 福田赳夫

    福田国務大臣 法律にもそのとおり書いてあるわけです。意見を十分聞くような仕組みになっておるはずです。また、運営といたしましてはこの審議会に非常に重点を置いていきたい、こういうふうに私は考えております。大事な仕事でございますので、これは同氏の衆知を集めるという形の通常をしてみたい、これが私の基本的なかまえです。
  113. 松本七郎

    松本(七)委員 意見を聞くということにしておいて、そして実際に運営にあたって、いま大臣の言われるような運営がなされれば、それはたいへんいいですが、しかし、過去においてそうじゃないのだ。この運営審議会というようなものが、たいてい意見を聞いて聞きっぱなし、ほんとうに尊重されないから、意見というものがだんだん不活発になってくるのですよ。だからせっかくこういう新しい基金をつくるなら、ここでひとつほんとうに運営審議会というものの意見が反映されるように義務づけに規定をして、そういうことがだんだんに普及した後には、それは義務づける必要はないでしょう。もう意見を聞くということの規定だけで、実際に生きてくることもできるでしょうけれども、いままでの日本のこういうやり方というものは、特に外務省なりその他が一応管理権を持っているというような団体においては、どうしてもこの運営審議会というものが名目倒れになりやすいのですよ。だからこの際この運営審議会の意見は反映されなければならないというふうに、もう少しきちっとしておけば、この運営審議会に入る人もそれだけ迫力をもって運営に対する参画ができますよ。それがなくて意見を聞くということにとどまっておるから、だんだんにその運営のしかたいかんでは、自然に運営審議会というものと役員が浮いてくる、分離してくるというような状態になるので、この際ひとつ義務づけるということ、どうですか。
  114. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話のように運営審議会というのはいろいろの機構についておりますが、これは実質的に非常に効果をあげておるというものもあれば、お話のように形骸化している、空洞化しておる、こういうものもあるわけなんです。私どものいま考えておるこの新しい財団法人、これの運営審議会は決して形骸化はさせません、これを十分尊重してやっていく、そういう考えでありますから、これはひとつそのように正しく御理解いただきたいと思います。ただ法律で幾らどうやってみても、実効があがらなければそれきりのものでありますから、その辺は、これは運営審議会という名前でございまするけれども、その運営をどうするかということに重大な意義がある。私どもはこれを極力尊重していくということで御理解願いたい。
  115. 松本七郎

    松本(七)委員 そこで今度は運営審議会委員が問題になるわけです。結局人の問題になってくるわけです。その人選はどこでやるのですか。
  116. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは外務省でやります。
  117. 松本七郎

    松本(七)委員 そうでしょう、結局外務省が運営審議会を任命するのでしょう。これはどうかと思うのですよ。こういうところに何で外務省が介入する必要がありますか。
  118. 加川隆明

    ○加川政府委員 実はまだ発表しておりませんですが、これは大臣の御発想もありまして、今度の基金の発足に際して、設立準備会議、仮称でございますけれども、そういうものを設けて、各界の意見を聞こうということになっております。  そしていまそういう委員の方をお願いしておるわけです。これはもう各界各層の方々でありますけれども、そういう方々の御意見も承って、やはり将来の運営のしかたも考えていきたい、こう考えております。  それから運営審議会の委員は、これは理事長が任命いたします。ただし理事長ができるまでのたたき台みたいなものは、現実的におそらく外務省がいまの準備会議等の御意見も承って、こんな人はどうだろう、こういうことになる。現実的にはそうなると思います。
  119. 松本七郎

    松本(七)委員 それはどうも形式は確かに理事長が任命するのでしょうが、それまでに人選を外務省が進めるというのはどうもふに落ちないですね。ほかにもありますね、いわゆる外務大臣の認可条項、三章二十二条、これなんかも要らないのじゃないかと思うのですよ。それから第五章三十四条一項ですね。大臣の承認、これもやはり自主交渉権というものを妨げるのではないかという問題が出てきますね。それからさらには第六章三十六条の一項、大臣の監督権、これもやはりいま運営審議会の意見は尊重すると言われるけれども、結局基金の自主性を侵す危険がここにはらんでいるのではないか。各所に出てくるのですよ。いままでと同じような団体になる危険がここにはらんでいる。したがって、きょうはもうたいへん時間がおそくなりましたから、あと午後の審議に影響が出ますので、一応きょうはこの程度にしておきますが、これらの問題がまだ広範にあるということを御了承願って今後の審議に備えたいと思います。  それで、これはそうそう何回も何回もこれを重ねるわけにもいかないでしょうから、ひとつ委員長に提案があるのです。それは、やはり私が指摘した問題点だけあげましても、なかなかこれは大臣の言うように、そううまくいく保証がない、したがって、いままでのたとえば国際文化振興会の実情とか、あるいは海外技術協力事業団ですか、ずいぶんいろいろ労務管理の問題で問題が起こりましたね。ああいう問題を少し実情を調査したいと思うのですが、なかなか審議は急がれる、実情調査する日数もないというようなことで、むしろ能率をあげるためには、そうたくさんの人数でないでいいですから、関係者を参考人として意見聴取をお願いしたいと思うのです。具体的にはあとであれしますけれども、ひとつこのことを委員長にお願いして一応きょうはこれで終えておきたいと思います。
  120. 櫻内義雄

    櫻内委員長 ただいまの松本委員申し出理事会にはかって善処をいたしたいと思います。西中清君。
  121. 西中清

    ○西中委員 時間が、午後の審議に差しさわるそうでございますから、質問は途中までになるかわかりませんが、少しやってみたいと思います。  重複するところはできるだけ避けますが、先ほども現在の日本の置かれました状況から、この国際交流基金というものがどういう性格を持つか、こういう問題でわれわれとしては若干の危惧を持つわけであります。先ほど松本委員からも、一方的な目的の中の諸外国の理解を深めるということで論議がありました。この点は私も同じような危惧を持っておるわけでございますが、むしろこういう目的でございますと、将来対外宣伝機関の性格を持ってくるのではないか。先ほども大臣から、修正には賛成だということがございました。それはそれとして、そういう対外宣伝機関としての性格を帯びるようなことは絶対ないかどうか、その辺について御説明を願いたいと思います。
  122. 福田赳夫

    福田国務大臣 その辺は間違いございません。
  123. 西中清

    ○西中委員 やはりこういう点では相手側を積極的に理解する、こういう基本的なわがほうの、日本のほうの姿勢というものが一番必要であろう。先ほど論議が十分なされたようでございますので次に移りますが、その点重ねてわれわれとしての考え方、危惧、そういうものを十分認識をしていただきい、このように最初にお断わりしておきます。  先ほども出ましたが、出向の役人が大勢を占めるのではないか、こういう御心配が各委員から先日も出ておったわけでございます。いま文化事業団のお話がございましたが、それに関連して、海外技術協力事業団の場合も外務省の監督のもとにあるのではないかと思いますが、いま盛んにチラシをまいておられるわけですが、このチラシの中に書いてありますことは、要するにこの事業団の場合、理事はもちろん、部長級の全部、課長級の四割が天下り出向者で占められておるということが述べられております。それはそれなりの御説明は当然あると思いますけれども、こうしてみますと、外務省をはじめ各省からそうした天下り出向の方が来ておるわけでございます。このためにはえ抜きの職員といいますか、そういう本来事業団で採用したと思われるその他の方々が、天下り人事、出向等によりまして仕事の意欲を失う、またはそういう人たちが一時的な腰かけ的な考え方で仕事を進めるためにどうも仕事がうまくいかないとか、責任がどうもないというような訴えがここに述べられておるわけでございます。この点、今回の基金の場合は役員のほか職員が五十五名、そのうち部課長が二十名というようなことも述べられておるわけですが、結局出向者、それから天下りということがあって、しかも部課長が二十名近くも占めるというような頭でっかちな形であっては、これは仕事の上では非常におかしなものになるだろうと思います。先ほどは、この基金が将来大きくなるからそのかまえとしてこういう形になっているような御説明でございますけれども、そういうことを考えた場合、むしろいまはそういう中途半端な役付きばかりを並べるのではなくて、大事なのはむしろ精鋭をそろえて仕事をするということだろうと思います。その点をもう一度、天下り出向はこの事業団をあわせまして――基金のほうは先ほど説明でわかりました。ここのところ、海外技術協力事業団の場合ももう一考する必要があるのではないかと私は思いますけれども、その点はどうでしょうか。
  124. 福田赳夫

    福田国務大臣 技術協力事業団については私はいま内容をよく承知しておりませんからお答えできませんが、今度できるこの財団法人につきましては、よくこういう仕組みにあり得る、腰かけで一時役所から出ていってまた帰ってくる、そういうような腰かけ人事、これは絶対にいたしませんから御安心を願いたい、こういうふうに思います。  それから部課長が多過ぎるというようなお話でございますが、これは先ほどお話がありましたように、将来かなり雄大な構想をもってのスタートなんです。その仕組みを考えてのことである、こういうことでありますので、これは御理解を願いたい、かように存じます。
  125. 西中清

    ○西中委員 時間があと六分くらいしかないんで、もう少し質問が残っておりますので、次の機会にするとして、一つだけ提案をいたしておきます。  せんだって御承知のように高松塚の古墳が発掘されております。これについては非常な文化的な価値というものが報道されておるわけでございます。せんだっての質疑の中で、社会主義国等も特別に差別する気持ちはないというような意味の御答弁もあったわけでありますが、これは京大の長広教授、それから奈良の国立文化財研究所の坪井さんその他考古学の何人かの方が、日本、中国、そして朝鮮、こういう各国の学者がこの古墳のところで集まって、そして研究、シンポジウムをしたらどうかというような、そういう夢をまた希望を提唱しておられるようでございます。私は、この国際交流基金というものが文化交流ということに純粋な立場に立っての卒業を行なっていくということであれば、たとえばこういったような問題なんかはまことに適切な援助すべき、また働きかけるべき性質のものではないか。これは一つの提案がございますから、私も非常にいいことだと思っておりますが、もちろんこれは政治的に国交が回復していない北朝鮮等の問題もございますから、むずかしい面はいろいろあるかと思いますが、こうした学術的な面については、私は政治を抜きに、イデオロギーを抜きにした場合には実現の可能性も十分あるというように考えるわけでございますが、この点外務大臣としては、おもしろいじゃないかという、こういう学者の提案に対してはどういうようにお考えになるか、またそれを場合によっては推進してもいいというようにお考えになるかどうか、その辺について御答弁を願います。
  126. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はしばしば申し上げておるとおり、文化交流には国境はない。脱イデオロギー、こういう姿勢でいきたいと思います。ただ国交のない国との間は、多少その適用上国交のある国との間と違った問題が出てくる、こういうふうに思いますが、いまお話しの問題ですね、これは文化庁がおそらく関係すべき問題じゃないかと思いますが、考え方においては私は支障のない問題である、こういうふうに考えます。
  127. 西中清

    ○西中委員 それでは時間がございませんので、一応留保いたしまして、本日はこれで終わります。
  128. 櫻内義雄

    櫻内委員長 午後一時四十五分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十二分休憩      ――――◇―――――    午後一時四十六分開議
  129. 櫻内義雄

    櫻内委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  この際、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  ただいま当委員会で審査中の国際交流基金法案について、参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、日時及び人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  131. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  132. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次に、連合審査会開会の件についておはかりいたします。  当委員会において調査中の国際情勢に関する件のうち、特に外務省機密漏洩問題について、内閣委員会、地方行政委員会及び法務委員会からそれぞれ連合審査会開会の申し入れがありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会の開会日時は、関係委員長の協議により、明十三日午前十時より開会する予定であります。      ――――◇―――――
  134. 櫻内義雄

    櫻内委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。青木正久君。
  135. 青木正久

    ○青木委員 外務省のいわゆる機密漏洩問題につきまして御質問申し上げます。  この問題は、すでに参議院の予算委員会を中心に一とおりの質疑が続けられたわけでございますけれども、この質疑を通じまして焦点が幾つかはっきりはしてきた。いわゆる機密を漏らした点、二番目は国会における政府側の答弁とこれの真偽の問題、それからニュースソースが発覚したという問題、さらにいわゆる取材したニュースをほかのところに流した、大きく分けましてこの四つくらいあると思うのです。それでここ一週間この問題で論議が集中いたしまして、新聞報道が盛んに行なわれている。新聞社側でも異常と思われるほどの熱血をもってこの問題をフォローしているわけでございます。  最初にお伺いしたいのは、大臣は、新聞のこの問題についての報道をずっとごらんになりまして、どういう御感想を現在お持ちか、お伺いしたいと思います。
  136. 福田赳夫

    福田国務大臣 新聞の報道はたいへん混迷しておると思うのです。いま青木さんが四つの問題に分けたああいう分け方をして、そうして一つ一つの問題の是非について論ずるということでありますと、国民もたいへん理解がしやすいんじゃないか、そういうふうに存じますが、それを全部一緒くたにして報道され、議論されておるというところに私は問題がありはしないか、そんなような感じを持ちながら新聞を見ております。
  137. 青木正久

    ○青木委員 実は私もそういう感じがいたしまして、いろいろな問題がごっちゃになっているという感じがするわけなんです。  そこでちょっと分けて御質問申し上げますけれども、機密を漏らした点、これは日本新聞が非常に競争が激しくて、しかも世界的な体制をとっているわけであります。いまは知りませんけれども、かつてはいわゆる夜討ち朝がけというのは、日本新聞記者とインドネシアの新聞記者だけしかやっていないといわれたほどであります。あるいは各外国におります特派員を見ましても、どの国よりもたくさんの特派員を出している。したがって、極端にいうと、特だねというものはほとんど全部が機密漏洩に関係してくるのではないか。機密をとらなければ特だねにならないのではないかという歴史がずっとあるわけであります。私も身に覚えがないわけではございませんが、そういうものだと思います。したがって、今度の西山記者、蓮見元事務官の関係の問題だけではなくて、日本新聞界の体質と外務省の体質の違いがたまたま今度の問題になってあらわれてきたのだ、こう思うわけです。  そこで、外務省側に立って考えてみますと、そういう日本新聞の体質ということにつきましてどういう認識を持っていたか。  そこで、具体的に今度の文書が出ましたことにつきまして、問題の文書の中に、秘密が漏れて困るということが出ているわけです。マイヤー大使が、施設、区域の表とかあるいは企業に関する書簡などが紙上に漏れ、本国政府も迷惑をしている、関係者によろしく御注意を願いたい、これに対して愛知大臣は、実は自分も困っており、常々注意しているが、日本のプレスは容易に防ぎきれない、こういうのが出ているわけです。この段階で外務省としては何かの対策をとるべきだったと思うのですけれども、この点いかがでしょう。
  138. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、言論の自由、これは民主主義の鉄則である、こういうふうに考えておるのです。言論の自由また表現の自由、それに伴いまして取材の自由、これもまた厳重に尊重されなければならぬ、こういう立場をとるわけです。  しかし、これが絶対的に自由であるかというと、そうじゃないのです。これは憲法によって与えられた自由でありますけれども憲法の与えておるところの自由は法律による制限がある。今回の事件は、その法律によるところの制限に関係するわけです。国家公務員は職務上知り得た機密を漏洩してはならない、こういう問題に関係をしてくるわけです。そこが問題になってきておる。また、漏らした人の責任が問われておる、こういうことであります。  そういう問題はありますけれども、わが日本新聞社の方が非常に努力をされて取材活動を行なう、私はそれ自体に対しては深い尊敬の念を持っております。しかし同時に、その新聞報道の取材に当たられる各位も、これは自由自在にというわけじゃない。取材のためには人を傷つけてもいいのかとか、あるいは盗みをしてもいいのかというと、そうじゃない。そういうことはそれとして社会規範として法律規定されておる。その辺もまた御理解を願っての取材の自由、こういうことであるべきか、かように考えております。
  139. 青木正久

    ○青木委員 そこで、そのニュースを漏らした蓮見元事務官ですけれども、たいへん大切な機密文書を取り扱っていた方ですけれども、蓮見さんは外務省のメンバーとして、当然資格があると思いますけれども、どういう資格の立場、たとえば初級公務長とかいろいろございますけれども、どういう資格の方でございますか。
  140. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 外務事務官でございます。いまの先生のお尋ねに答えるためには、おそらく試験出であるとかそういうふうなお尋ねであろうと思いますが、いわゆる雇いという形から入りました事務官でございます。省内で任官いたしまして、事務官になったものでございます。
  141. 青木正久

    ○青木委員 そうすると、初級公務員試験も通っていないわけですか。話によりますと縁故で入ったという話でございますけれども、この点いかがですか。
  142. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 初級公務員試験も通っておりません。
  143. 青木正久

    ○青木委員 縁故で入ったのでしょうか。
  144. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 縁故でございます。
  145. 青木正久

    ○青木委員 全然その資格もない方で、しかも縁故で入ったというような方に、たいへん重要な機密文書の責任を持たしたというところにも、私はいろいろな問題があると思うのです。蓮見さんの行動はいろいろ新聞に出ておりますけれども、料理屋やナイトクラブで西山記者にごちそうになった、こう伝えられておりますけれども、こういう招待ですね。プライバシーの問題もございますし、また勤務時間外のこともあると思いますけれども外務省の秘書というのはこういうナイトクラブとか料理屋に招待されているのが慣例になっているのでしょうか。あるいはこの点をどう御指導されているのか、お伺いしたいと思います。
  146. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 秘書というか外務事務官としてよばれてどうかというふうにお尋ねになっても、これは全くプライバシーの問題なものでございますから、何とも申し上げようがございませんが、重要な仕事をしている人間といたしましては、そういうふうな危険のあるところではなるべくしないほうがいいということは、一般的にいえるのではないかと思います。
  147. 青木正久

    ○青木委員 大臣にお伺いしますけれども、今度の問題で機密が漏れたのが、外務省の責任のある者から取材するのではなくて、秘書から関係文書が漏れたという点です。これをどうお考えになりますか。非合法とお考えになりますか。
  148. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、これからの機密の扱い、そういうものに対しまして非常に大きな示唆を与える問題である、そういうふうに考えておるわけです。ですから、この問題が起こりますと、すぐ私は、次官を長とする綱紀粛正というかそういうことについての委員会の設定をいたしております。それから本件自体につきましては官房長に事態を糾明するようにということを命じたわけでありますが、あとの問題、つまり官房長の扱いました事態の糾明というのは、その糾明の途中において蓮見事務官の自首となってあらわれた、こういうことでこれは一応終わったのですが、次官の主宰するほうの第一の問題、これはこの際徹底的にやってみたい、こういうふうに考えております。
  149. 青木正久

    ○青木委員 新聞の側があらゆる方策を用いて取材をするというのは当然なことだと思います。そこで、いろいろ知恵をしぼるわけですけれども、弱いところに向かって、つまりとりやすいところに近づくというのはこれまた常識だろうと思います。そこで今度の場合も蓮見元専務官のところに近づいたわけですけれども、同じ職に長くいますと、どうしても気がゆるむといいますか、なれっこになってしまうという点もあります。また今回の問題のようなこういう問題にも関連をしてくる。  そこで、警官とかあるいは税務署の職員なんかは定期的に異動しているような例があるわけであります。外務省では、このいわゆる配置転換といいますか、そういう内規はどうなっておりますか。何年間いたらかわるとか、秘書というものはどういう内規によって職をかえるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  150. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 特にはっきりした、何年たったらかわるというような内規というものはございません。ただ秘書とかいうようなものは、そこに長くおりますと、どうしてもいろいろ問題が起こる可能性がございますから、なるべく、少なくとも同じポストと申しますか、秘書役は秘書役でも同じポストにはしないようにするとかいうことは考えて人事異動をやっておると思います。
  151. 青木正久

    ○青木委員 次に、機密そのものの問題ですけれども、蓮見元事務官の取り調べに対する答弁で、問題の三件以外にも十数件を漏らしたということがいわれておりますけれども、この十数件はどんなものであるか外務省はもうすでに調査になっておられると思いますけれども、どういうものですか。
  152. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 これは実は、私のほうで蓮見君から告白を聞きましたときには、その三点についてのみ話を聞きまして、その段階で警察のほうに捜査依頼をいたしまして、それと同時に蓮見君が自発的に出頭したという形になっておりまして、その後にいまの十数点という話が出ておるわけでございます。私は、その十数点が何であるということはまだ聞いておりません。
  153. 青木正久

    ○青木委員 先ほど読みました、問題の文書の中に出ておりますところの施設、区域の表、それから、企業に関する書簡案ですか、これも毎日新聞に出たんじゃないかと思うんですけれども、これは西山記者から出たと推測されますか。
  154. 吉野文六

    ○吉野政府委員 当時の新聞に、愛知書簡らしきもの、それから基地の表が出たことはわれわれも承知しております。しかしながら、これが西山記者から出たのかどうか、その点はわれわれは知りません。
  155. 青木正久

    ○青木委員 それはこれからの調査を待ちまして明らかになると思いますけれども、今度の三通の電信についてお伺いいたしますけれども、この三つの機密電報ですね、これは外務省はどういう基準から秘密に指定されたのですか。その基準が何かあると思うんですが……。
  156. 福田赳夫

    福田国務大臣 相手のある仕事、これが外交でございます。それで、相手との話の内容、これは、例外で公表してもいいという以外は話をいたさない、こういうことにしておるのです。そういたしませんと、これはざっくばらんな話というものはできない。もし今回のような事件が反復するということに相なりますると、今後アメリカはもとより第三国も、日本の方とはそう腹を割った話ができない、こういうことになる。そういうようなことで、相手方との会話自体が漏れるということに重大な問題がある、会話自体に機密性がある、こういうふうに考えておるわけです。
  157. 青木正久

    ○青木委員 相手のあるものが機密になると、こういうことでございますけれども、それは性格によって違うと思いますけれども、一度秘密に指定したもの、これがしかし永久に秘密のまま残るのか。ある程度の時間がたてばこれは解除してもいいんじゃないか、あるいは一つ外交交渉で交渉がまとまった場合はその交渉の経過を発表すべきじゃないか、こういう意見があるわけです。交渉最中はわかりますけれども、いままで外務省はほとんど交渉経過というのは発表したことはないと思いますけれども、こういう点はどうお考えでございますか。
  158. 福田赳夫

    福田国務大臣 機密文書にも、期限つきのものと期限のついてないものがあるのです。期限つきのものにつきましては、その期限がきますればこれは秘密性を解除する、こういうふうなことにいたしております。それから、ある問題についての交渉が一段落をした、こういう際になれば交渉の経過を公表してもいいんじゃないかというようなお話でありますが、これは大体におきまして、外交交渉の経過はそう簡単に発表すべきものじゃないというのが、これは国際的な慣例でございます。で、各国においても非常に厳重なそういう機密保持の体制をとっておるわけでありまして、したがいまして、そういう国々との間において行なわれた交渉を、問題が落着した、だからといって、そのとき行なわれました文書、電報のやりとり、これを全部さらけ出す、こういうことは、これはなかなかむずかしい問題だろう、こういうふうに考えるのです。ただ国民にもその経過につきましてはなるべくこれを理解しておいてもらったほうがいい、こういうふうにも考えますので、そのつど、たとえば国会が開かれておりますればその国会の質疑を通じましてこれを明らかにするとか、努力はいたしておりまするけれども、しかし電報そのものをさらけ出す、あるいは会談要録をさらけ出す、こういうことは非常に困難な問題であろう、こういうふうに考えております。
  159. 青木正久

    ○青木委員 そういたしますと、今度少なくとも三通の電信が漏れたということになったわけで、今度の秘密漏洩事件によりまして国際的にも国内的にもいろいろな反響があると思いますけれども政府というよりも国民がいかなる損害を受けたか、それからもう一つは、アメリカ側からどういう反響があったか、その点をお知らせ願います。
  160. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカは、かねがね日本に言っているんです、日本との交渉、それがときどき漏れて困ると。キッシンジャー訪中ですね、昨年七月十五日の問題です。あれなんか、もう少し早くなぜ連絡できなかったんだろうかという話をしますと、日本に言えば必ず漏れますよ、こういうようなことをもって応酬してくる。そういうようなことで、まあアメリカわが国の機密保持の点につきましては非常に重大な関心を持っておる。去年の秋行なわれました日米合同委員会、あの合同委員会に臨むわが国の姿勢またアメリカの姿勢、それを表明するところの冒頭発言というのが、これも新聞に事前に漏れまして、そのときもアメリカからずいぶんきつい抗議を受けた。今回につきましては抗議らしいものは受けておりませんでございます。これはアンダーソン事件なんというものがその後ありましたから、なかなかアメリカもそういうことを言いにくい立場にあるんじゃないかと、こういうふうに思いますが、内心はさぞ心配しておることであろうと、こういうふうに思いますし、アメリカ以外の第三国においても重大な関心を持っておる、こういうふうに考えます。
  161. 青木正久

    ○青木委員 先ほどから引用しておりますところの愛知前大臣のことばでございますけれども日本のプレスはなかなか防ぎ切れない、こういうことが書いてあります。私は、この姿勢がちょっと問題じゃないかと思うのです。むしろ、防ぐという姿勢よりも、新聞と協力をして、そして国益をそこなわないようにする、これが私はほんとうの姿勢ではないかと思う。これまでの経過、例を見ましても、たとえば日ソ交渉のときに当時の河野農林大臣が特派員を集めまして協力を呼びかけて、相当なニュースを出しまして、そして一緒にやっていこうという呼びかけをした例があるわけであります。また外務大臣の場合は、もうなくなられましたけれども、岡崎元外務大臣は、東南アジアの賠償交渉に出かける前に、編集局長を集めまして、それである程度の内容を全部しゃべりまして、わが国はこういう方針でいるんだからひとつプレスのほうも協力をしてくれ、こういうことをやった前例があるわけであります。日本のプレスは防ぎ切れないという、こういう姿勢じゃなくて、積極的に、可能な限り秘密の情報も新聞のほうに出して、そして協力する、そういう姿勢が私はほんとうの姿勢じゃないかと思いますが、この点いかがでございましょうか。
  162. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのお話は、私も非常にごりっぱな御所見と思います。これはやっぱり外務省だけが交渉をやっているというわけにはいきません。どうしても国民の世論というものを背景にして初めて強力な外交ができる、こういうふうに思います。そういうようなことを考えますときに、国民の世論、それに重大な関係のあるマスコミの皆さん、これとの協力、そのもとに外交政策を進める、これは非常に大事なことじゃないかと思います。今後とも私はその点につきましては心してまいりたい、かように考えます。
  163. 青木正久

    ○青木委員 いま大臣と霞クラブとの間にはオフレコの会見というのをやっておられますか。
  164. 福田赳夫

    福田国務大臣 正式な記者会見、これは毎週二回取り行ないます。その他ほとんど毎日オフレコの会談、これを懇談といっておるのですが、懇談を持っております。またときには自宅懇談ということもあり、今晩はその自宅懇談の晩でございます。
  165. 青木正久

    ○青木委員 このオフレコという制度、これをもう少し活用して、特に大切な場合には報道側とも正式の約束をするとか、オフレコでもあまり内容がないものが多いのじゃないかと思うのですが、内容を出していただいて、報道側とも固い約束をする、そういう方式をもう少し進めていけばこういう問題は起こらなかったのじゃないか。外交といいますと大部分が秘密であることは当然でありまして、したがってオフレコ関係、秘密関係も非常に多いと思うのです。そういう点でオフレコで会見をする、漏れる、新聞社側は必ずしも信用できない、こういう御判断でございましょうか。
  166. 福田赳夫

    福田国務大臣 オフレコと申しましても、これはなかなかほんとうのオフレコにはならないのです。私がしゃべったこと、それは府田外務大臣という面接な引用はされませんけれども政府部内においてはというような形で表現をされた報道になるとか、いろいろむずかしい問題があるわけでありまして、その辺はよほど話者クラブとも話してみなければならぬ問題かとも思います。しかし根本におきまして、私はわりあいに正直なほうなんです。率直にものを書いたいんです。その私の願いがかなう、こういうような何か規律正しい方式ができるということにつきましては、私はこれはたいへんいいことだ、こういうふうに存じますので、この上ともひとつ話し合ってみたい、かように考えます。
  167. 青木正久

    ○青木委員 今度の事件で、西山記者が新聞で発表しないでほかのところに流したというのが私は筋が違うと思います。やはりあくまでも属する新聞なら新聞に発表すべきであって、これをほかに流したというのは、こういうことが是認されますと、天下の公器である新聞の力を利用して、ニュースをとって政党に流したり会社に流したりいたしますと、これは収拾のつかないことになると思います。この点は西山記者の態度を私は正しくはないと思っておりますけれども、しかしながら西山記者の談話を見ますと、国会における政府答弁がいいかげんである。新聞で直接は書かなかったけれども、これをにおわすことを書いてあるが、一向に政府は反省をしない。したがってやむを得ず問題の電信を社会党に渡したんだ、こういうことを言っているわけですけれども外務省は毎日新聞にこの文書を掲載することについて何か妨害をしたかそういうことはございますか。
  168. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは西山記者の今回の事件が始まってから、私どもは、外務省の大事な電信が西山記者の手に入っておるということが明らかになったわけであります。そういうような事情でありますので、この全文の掲載、そういうものにつきまして毎日新聞とタッチしたという事実はございませんでございます。
  169. 青木正久

    ○青木委員 しかし、四山記者の態度でございますけれども政府の言うように不合理なことをせざるを得ないように西山記者、追い込まれたのだ、そのところ、もう一ぺん御答弁をいただきたいのです。つまり、新聞にある程度のニュースは出した、しかしながら政府のほうで真実の答弁をしない、したがって西山記者はやむを得ず社会党にこの情報を流したのだ、したがって政府に責任があるという論があるわけですけれども、その点いかがでございましょう。
  170. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、政府に責任があると、こういうふうな受け取り方はしておりません。これはやはり、政府は、機密の問題、これは漏らしてはならない、こういう立場にあるわけでありまするから、その機密が漏れたことそれ自体につきましては、今後そういうことが反復しないようにという反省を深くしなければならぬ、こういうふうに思っておるわけでありますが、西山記者の言動、これはいま司直の手で取り調べ中でありまして、はたしてそういうことを言っているのか、これは真実のことはよくわかりませんから、これに対しての批判は差し控えますが、いずれにいたしましても、私どもは、今回を契機といたしまして、役所の機密保持の問題、たとえばこれは、機密事項が多過ぎる、そういう問題もあるのです。そういう問題、それから、いま青木さんの御指摘になったある種の問題につきましては、永久な機密ということになっておりますが、これを永久機密とする必要があるのかないのか、そういう問題とか、いろいろな問題を含めまして、今後この種のことが反復されないようにという反省だけはぜひしていきたい、こういうふうに考えております。
  171. 青木正久

    ○青木委員 時間が参りましたので、やめますけれども、最後に一つ……。  この問題、よくエルズバーグ事件と比較されるわけであります。そして、日本には報道の自由がアメリカほどないという論が散見されるわけでありますけれども、私は、このエルズバーグ事件とは、今回の事件はおのずと違うという感じを持っておったわけです。裁判所で判決があったのは、文書を新聞に掲載することについての可否でありまして、本貫的に違うと思うのですけれども、大臣はどうお考えになっておりますか、この点をお伺いしておきます。
  172. 福田赳夫

    福田国務大臣 エルズバーグ事件につきましては、青木さんと同じ理解を持っております。つまり、アメリカでは、新聞掲載について、これを政的が発言権を持っておる――国防総省の機密文書が盗まれた、この盗まれたという、機密漏洩ですね、この問題はまたこの問題として、あるのです。そして、これは、事件は係属中であります。しかし別に、アメリカ政府が、機密文書の新聞掲載に対しましてこれを停止するような要請をした。それに対して裁判所は、これは拒否した。こういうことで、おのずから問題は別である、今回の事件とは全く対比できない問題である、そういう理解をいたしております。
  173. 青木正久

    ○青木委員 終わります。
  174. 櫻内義雄

    櫻内委員長 松本七郎君。
  175. 松本七郎

    松本(七)委員 今回の問題で、参議院でもいろいろ答弁されておりますし、いま青木さんの質問で外務大臣が答えられた中に、機密漏洩については反省しているが、これは全体的に政府の責任という考えは全然ないということを言われるわけですが、これは、戦後二十五年間の日本外交の姿勢の根本について、もう少しこの機会に政府なり外務大臣が反省し、これでいいのかという謙虚な気持ちがあるならば、私はそういう答弁が出てくるはずないと思います。そういう観点から少し伺いたいのです。  機密漏洩ということにしぼって政府考えておられる。そのこと自体に問題がある。私は、今度の蓮見事務官をめぐるコピーの問題、あるいはいま西山記者の心境なり意見について青木さんも触れられておりましたが、これは、よく機密外交ということがいわれておりますが、秘密が多過ぎるとか秘密外交だということ以上に、私はどっちかというと今度の事件に関する限りは典型的な欺瞞外交だと思うのです。なぜかというならば、政府はもう現に参議院においては吉野アメリカ局長が、あの沖繩国会のときの答弁は、これは本実に反していたということで陳謝をしておりますね。そのことを見ても明らかなように、単に事実を隠したということだけではなしに、国会の追及なり質問に対してあることを否定した。ただ機密に属するから言えないというのではなく、明らかに積極的にこれを否定してきた。それが事実に反することが今回の事件で明らかになったのです。こういう観点から、それじゃ今回だけかというと、それが決してそうではない。私は長い間外交問題で国会の場で政府といろいろの質疑応答をかわした中で、このことを私自身が一番痛切に感じているのです。事実をありのままに述べながら、それに対する意見の相違を国民の前に明確にするという姿勢がだんだん薄れてきたのではないか、これは振り返っていろいろ具体的な事例をあげるまでもありません。安保のときには事前協議、これはやはり国民にそういう真相を訴えるのではなしに、政府立場を非常に固執しながら、どうやって国民をごまかすか、国会の論議を無難に切り抜けるか、そのことだけに終始しておるというような政府の態度。日韓のときもそうです。日韓のときには政府日本国民日本国会を通じてなす答弁と、韓国の政府が韓国の国会を通じての韓国の国民に対する説明とは全然相反している。われわれは事の真相をどうやって知るか。それは政府答弁ではさっぱりわからない。そこで外国における論議外国の資料等をできるだけたんねんに調べることによって、ああこれは政府の言うことと逆ではないかという疑惑がそこに生まれてくる。こういうふうに、長い間の日本政府外交は機密外交であり、あるいはそれ以上に日本国民を欺瞞する外交が展開されてきたというところに、私はいま青木さんの指摘した、西山記者が、自分はこういう事実を突きとめた、一部には新聞にも書いた、しかし政府の国会における答弁はどうかというと、全くひた隠しにするばかりでなしに、うそをついて欺瞞しておる、こういう政治の姿勢なり外交の姿勢が続く限りは、事の真相を知っておる者は、かりに幾らそれが重要な機密事項であっても、これが国民の利益のためには、国益のためには何らかの形で国民に明らかにしたほうが国のためだという義憤を感ずるのは、私は自然だと思うのです。そういう観点から、今度の事件に限ってみますと、これはあなた方も説明された、私どももそれを十分前提に置いて沖繩国会に臨みましたが、アメリカの基本的な方針で重大な点は、一つは沖繩の軍事基地の機能はそこなわないという大原則、もう一つは施政権は返すが金はびた一文も払わないという原則、おそらくアメリカの国会その他の動向を見れば、これが大事な原則であるということは、これはだれにもわかるでしょう。ですからその点から言うならば、この交渉の過程で、当然表面はあたかもアメリカが負担するようなかっこうはつけても、この基地の復元補償については日本に肩がわりさせるという、そういう主張が出てくることは、論理からいっても当然これは予想されることです。そのことがもしも明らかに国民になされて、あるいは途中で漏れて、これが第三国と日本との外交交渉や、第三国と日本関係に非常な重大な関係があるということになれば、これは国家の機密に属してくるでしょう。しかしこれはそうじゃない。日米間で沖繩施政権の返還をめぐる一つの交渉の問題で、これは漏れても第三国と日本との関係には大して影響はない。間接的にはそれはいろいろ影響は出るでしょうけれども、直接的には日本国民の外で――さっき世論を背景にしてやる外交が大事だということを言われましたけれども、こういうときにこそいま少し、アメリカは施政権を返すという、そうして返還を受ける日本はどちらかというと弱い立場にある。特に今度の政府のように少々なことがあっても返還がいまは大事だ、私どもとそこは立場が少し違う。私どもはもちろん返還は必要だ、けれどもこの非常に重要な時期に、しかもこれから平和共存という方向が具体的にだんだん世界の大勢になろうとしておるときに、このときにこそ年半基地という問題も、全面的な返還も、百%いかなくてももっともっと獲得すべきだ。返還だけやれば、あとで事を処するということでは、かえって日本は苦しい立場に追い込まれるという、そういういろいろな観点の違いはあります。だから、政府立場からいうならば、少々の無理はのもうという気持ちを持たれることはわかるのです。けれどもアメリカのほうもさっき言った二原則にしても非常にきびしい態度で来ておる。日本政府はこれに応ずるにあたって、少々のことはひとつ国民にも納得してもらおう、がまんしてもらおうという気持ちがあるならばなおさらのこと、結果においてはあなたは負担は自分のほうで肩がわりをしなかったという答弁をされておるが、同じ結論に持っていくにしても、国民的な背景でこの外交を進めるという姿勢が私は大切なのではなかろうか。戦後の日本外交で、一番戦前のを大きく改めなければならぬ点が、私はそこだと思うのです。平和憲法下にこれからの外交を進めるにあたっては、戦前流の外務省のエリート意識に燃えた秘密外交ではなしに、最大限の公開、最小限の機密、もっと早くこういうことに切りかえるべきだった。それは、いま青木さんも指摘された記者会見についてのやり方その他についても、そういう姿勢の変化というものは当然求められると思うのですけれども、それ以上に私は、もっと国民にできるだけのことを知らせる、そうして国民的な背景をもって外交を展開するということが、もっともっと考えられてよかったのではないか、こういう点を反省する機会がここに到来した、私は最もいいチャンスであると思うのですが、政府答弁は、さっきもあなたがおっしゃるように、機密漏洩ということに限って、それについては反省をするが、政府の責任という観点はみじんも出ていない。そうして一事務官をやめさせたり、あるいは審議官に行政処分をしたり、あるいはアメリカ局長が参議院であやまる、それだけで済まそうとしているのですが、もう少し日本外交そのものの根本に触れた反省というものを、私はせっかくこういう論議が国会でなされるなら、外務大臣から伺いたい。ほんとうにこれは情ないですよ、政府は責任はないというふうなことをぬけぬけと言われるというようなことは。どうでしょう。
  176. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、外交に秘密があっては相ならぬ、こういうふうに思うのです。つまり、同国の交渉という場合におきまして、最後に妥結する、しかし、妥結の裏に何か秘密の約束事があった、こういうようなことは断じて許すべきではない、そういうふうに思います。しかし交渉の過程におきましてはこれはいろいろのやりとりがある、その一々が漏れる、こういうようなことになりますと、これは人と人との話、これを主体とする外交政策、これが運行できなくなる、そういうようなことを申し上げておるわけなんです。私は、反省してないという話でございますけれども、私が責任がない、こういうふうに申し上げましたのは、秘密の取りきめは一切しておらぬ、こういうことを申し上げておるわけなんです。  しかし私のほんとうのいまの気持ちを申し上げますれば、今回のできごとは非常に不幸なできごとであった、この不幸なできごと、この不幸を転じて幸いとする、こういうふうにいたしたい、こういうふうに思うのです。そういうようなことを考えますと、機密事項の整理あるいは機密の期間の問題、そういう問題も考えなければならぬし、また同時にそういうふうに限定された機密、これが漏れないようなための措置、そういうものを考えなければならぬし、それから同時に交渉の経過等につきましても、とにかくこれは国民に知らしておいたほうがよかろうというものにつきましてはこれを国民に知らせるための努力をするとか、とにかく外交国民世論を背景にしてやっていくんだということにつきましては、今後深く心してまいらなければならぬことじゃないか、そういうふうに考えております。
  177. 松本七郎

    松本(七)委員 それじゃ、この問題で沖繩国会のときにこの交渉の電報だとかそれから語録というものがあるんだろうという追及に対してないと否定されたところにごまかし、欺瞞の始まりがあるわけです。機密があるからこれは言えませんということならまだ許せるのですよ。ところがこれをはっきり否定した、その否定したことがうそであったということが今日明らかになったのですから、もう少しこれに対する、国民に対してごまかしたことについては陳謝する態度というものがあってしかるべきだと私は思うのですが、どうですか。
  178. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま具体的な問題にお入りのようでありますが、横路委員が電報をちらつかせながらというか、表現はどうかと思いますが、こういう電報があったのかあるいはこういう事実はあったのかという問いに対しまして、政府委員のほうでほんとうはそれは外交の機密の問題ですから申し上げられません、こう言えば非常に率直な答弁だったと私は思うのです。私が先ほど申し上げましたとおり、一々交渉の経過についての対話、これを漏らすわけにはいかぬ、これは松本さんも御理解願えると思うのです。ですから、そういう事情を申し上げて、そしてこれはもうお答えすることはできないんだ、こういうふうに申し上ければよかったかと思うのです。それをそういう事実はありませんとかそういうふうなお答えを申し上げた、これはまことに申しわけないことである、こういうふうに私はさきの予算委員会でも申し上げたわけなんです。それから総理もそういう問題を含めまして所信の表明をいたしておる、こういうような次第でありまして、今後そういう際における答弁ぶりについては十分注意してまいりたい、かように考えております。
  179. 松本七郎

    松本(七)委員 外務大臣がこれは答弁のしかたとか答弁ぶりの問題にしているところに実はたいへん間違いがあるんですよ。どうしてそういう答弁が出るかということ、これはもう外務省のあるいは日本外交の基本姿勢の問題として考えてもらいたいのですよ。あれだけ、あなたちらつかせたと希われるけれども、事案の経過をちゃんと知っている政府当局、外務省当局とすれば、あの際それはあります、そういうものはありますけれども内容については申し上げられませんということばが、ほんとうの日本国民に顔を向けた国会の審議の態度、日本国民を背景にした外交という姿勢が根本にあるならば、当然あの際そういう謙虚な態度が出てくると思うのです。それが全然いままで、あれに限らない、常に今回出たような態度が国会でも出てくる。そこに私は日本外交が機密が多過ぎあるいは国民をだますような結果になる本質をはらんでいるんだ。この点を外務大臣は、今後そういう答弁をなくすように努力するというようなことではなしに、日本外交の姿勢、政治の姿勢そのものをこの際外務大臣はもう少し反省をしていただかないと、この問題は一答弁者の責任ではないのです、私はこれはあなた自身の責任だと思いますよ。そういう観点で、もう少し本質的にこの点についての反省を強く求めるのです。どうでしょう。
  180. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま申し上げておるように、私は今回の事件は非常に不幸な事件であった、ですからこの不幸な事件を転じて幸いとしたい、そういうつもりなんです。いろいろ教えられるものがある。そういうことを踏まえましてこれから外交の姿勢、これを正しくやっていきたい、こういうふうに申し上げておりますし、また知らぬ存ぜぬという問題につきましては先般来深く遺憾の意を表明しておる。重ねてでございますけれどもきょう遺憾の意を表明いたします。
  181. 松本七郎

    松本(七)委員 きょうはこの問題を契機にしてさらに問題を提起した横路委員、楢崎委員、両者からさらにこれを掘り下げて論議をする予定でございましたが、横路委員は都合で出席ができなくなりました。したがって楢崎委員があとの時間を十分活用して質問を展開することになっております。  私は重ねて、これを単なる答弁のしかただとかあるいは機密漏洩、そういう点にしぼる観点ではなくて、もっと大きく日本外交のあり方がどうあるべきかという観点から今後ほんとうに災いを転じて福となすためには、そのような観点から取り組んでいただく必要があるということを強調して終わりたいと思います。
  182. 櫻内義雄

  183. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいま主題になっておりますこの密約問題は、本来ならば昨年十一月の沖繩協定委員会でも私どもとしては取り上げる予定であった。当時の協定委員会の委員長は今日の外務委員会の委員長でありますし、私の質問の時間に強行打ち切りを提案された青木さんもおられるのでたいへん感慨無量であります。きょうはひとつじっくり――それといっても時間がやはりきめられておりますから、その時間内でじっくりお伺いしてみたいと思うわけです。  そこで、この密約問題に入る前に、これもやはり日米交渉との関係のある問題として、実は十日の日でございましたか、参議院の予算委員会で――私もちょうど傍聴に行っておりましたが、最近のベトナム情勢に関して岩国からあるいは横須賀から直接ベトナム戦線へ参加する米軍の状態に対して事前協議制度との関連で問題が出された際に外務大臣は、この事前協議制度の運用の点についてはこの際再検討をする必要を自分は感じておるというような御答弁があったように思います。そこで、きょうのニュースによりましても沖縄の第三海兵師団から千五百名、これが第七艦隊の艦船に乗ってベトナム戦場へ行ったという報道があっております。さらに三つの部隊がやはりベトナム戦場へ行くためにいま沖繩で待機命令が出されておる、そういう情勢であります。  そこで、このきょうの報道にあります第三海兵師団から千五百名が第七艦隊の船に乗っていったということは、これは私どもかねて、第七艦隊あるいは第三海兵水陸両用部隊あるいは第一海兵航空師団、こういったものはすべてコンバット・レディ・フォース、戦闘即応部隊といいますか、もともとそういう性格の部隊である、そしてその実態はいろいろありますが、その中で私どもはこういうことをかねてより指摘をいたしておりました。第七艦隊は、この沖繩の第三海兵師団の歩兵一個大隊上陸チーム千五百名です、それと第一海兵航空師団、これは岩国の分です、この第一海兵航空師団のうち第三六飛行群、これは沖繩にいるわけですが、所属は岩国に司令部を置く第一海兵航空師団であります、この第一海兵航空師団の第三六飛行群から上陸川の中型ヘリ輸送中隊HMMの戦闘支援部隊が、先ほど申し上げた第三海兵師団の歩兵千五百名と常に二、三カ月おきに交代してその第七艦隊に乗船しているのです。これはかねてわれわれが明らかにしたとおりであります。きょうの情報、ニュースを聞きましても千五百名が行ったということはまさにこの部隊が行っているのです。千五百名常時乗艦しているのです。そして何かあったらすぐ行くのです。やはりその部隊が行っておる。したがって、こういう沖繩に駐在する第三海兵水陸両用部隊あるいは第七艦隊、これは横須賀に本拠を置きますけれども、岩国の第一海兵航空師団も含めてこういったものは全部コンバット・レディ・フォースであるからいつどこでどのような戦争が起こっても、たとえ核戦争が起こってもこれははっきりと即応できる部隊である、こうなっておる。で、このようなコンバット・レディ・フォースが存在する沖繩はもうやがて返ってくる。こういう部隊に対して、これは当然事前協議のワクをもともとはみ出ておる性格を持った部隊である、だからこれは事前協議にかけようと思ってもかけられない部隊である。指揮系統の編成上も在日米軍の系統に入っていないのですから。一体そういう部隊に対して事前協議との関連でどのように外務大臣はお考えでしょうか。
  184. 福田赳夫

    福田国務大臣 沖繩から出撃する、これはまだ沖繩がわが国に施政権が来ない、こういうようなことでありますので、まあ外論の問題である、こういうふうに思います。問題は横須賀基地、また岩国基地である。そこでこれらの基地から移駐する米軍、それがどういう先々でどういう行動をとるか、そこが問題点であろうか、こういうふうに思うのですが、いままでの日米間の事前協議の対象、これはどういう場合かというと、わが国を基地といたしまして戦闘行動をする、そういう際におきましてはわが国の事前協議を要する、こういうたてまえになっておるのです。個々具体的にどういう場合がどうかということになりますと非常にいろいろとデリケートな問題がありますが、しかし概括的に申し上げますると、横須賀を出港した場合、また岩国から発進する場合、その場合に直接戦闘に参加するという態勢かどうか、これが事前協議になるかならないかの判断の基準になる、こういうふうに考えております。
  185. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 次に、六九年の日米共同声明第四項のベトナムに関する再協議条項と今日のベトナム情勢との関係についてお伺いしてみたいと思います。  共同声明には、これは大事な点ですからここだけ読んでみますと、四項には「総理大臣と大統領は、ヴィエトナム戦争が沖繩の施政権が日本に返還されるまでに終結していることを強く希望する旨を明らかにした。これに関連して、両者は、万一ヴィエトナムにおける平和が沖繩返還予定時に至るも実現していない場合には、両国政府は、南ヴィエトナム人民が外部からの干渉を受けずにその政治的将来を決定する機会を確保するための米国の努力に影響を及ぼすことなく沖繩の返還が実現されるように、そのときの情勢に照らして十分協議することに意見の一致をみた。」これがいわゆる共同声明の第四項、再協議条項であります。  そこで今日、まあ外務大臣の見られるところ、今日起こっておるベトナム情勢の――これは新たな情勢であります、この今後の推移は共同声明でいういわゆる返還時にベトナムが解決していないときという状態になるのではないかという一つの見通しをわれわれは持っておるわけです。外務大臣はどのような見通しを持っておられますか。
  186. 福田赳夫

    福田国務大臣 米中会談が行なわれました時点におきまして、アジアに緊張緩和が招来されるであろう、そういう見方が一般的だったんです。私はそれに対しまして、それはちょっと甘いじゃないか、ことにベトナム問題、これは逆に激化をする、そういう可能性も含んでおるんじゃあるまいか、そういうような判断も持ってアメリカとの間にそういう話をしたことも覚えております。ところが現実はどうかといいますると、私のほうの判断は当たっちゃったんです。おそらくアメリカが予想もしないような事態がここで出てきておる、事態はきわめて危険である、こういうふうに考えます。しかし一九六九年の共同声明で、ベトナムの事態が返還までに片づくこと、これは希望するところであると、こういうふうに書いてありまするけれども、希望しない事態が起きてきておるんだろう、こういうふうに思います。まだ少し五月十五日まで間がありますから、その間にどういう変化が起こるかわかりませんけれども、とにかくゆゆしい事態が起こっておることは今日この時点では明らかです。  そこで沖繩返還にどういう影響を及ぼすかと、こういう問題でありまするが、もう五月十五日に沖繩を日本に返還する、こういうことにつきましてはもうきまったことでありまして、これは動くはずがありません。返還の態様がどうなるかということは、いまお読みの共同声明に関連をしてくるんじゃあるまいか、そういうふうに思います。しかし私は、沖繩が五月十五日には日本に帰ってくる、そして沖繩の基地は本土並みに運用される、こういうことになるわけなんですから、それも私は変化はない。そういう状態のもとにおいて、今度は事前協議という問題があるいは起こってくるかこないか、まだアメリカから何らの反応はありませんけれども、そういう事態があるいはあるかもしれない、しかしこれはないかもしれない。その問題はその時点においてまた判断すべき問題である、こういうふうに考えます。
  187. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はこの四項にいう再協議の内容は、いま考えられるのはやはり外務大臣も御指摘のとおり基地の運用の問題、つまりいままでは自由使用しておる。ところがベトナム情勢がいまのような状態であれば、いままでの使用の状態が変わらないように、つまり四項でいうその米国の努力に影響を及ぼすことなく沖繩の返還が実現される、つまり基地の使用状態はいままでと変わらないようにというような問題が当然起こると思います。そういうことが再協議の場合の内容の重要な課題になる。したがってそういう問題も含めてあるかもしらぬがないかもしらぬという、そんなどっちともつかぬような判断ではなしに、福田外務大臣としては、この四項による再協議条項が起こる可能性があると判断されておるかどうか、その判断をお聞きしたい。
  188. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は判断はどうかといえば、これは絶対的な判断はできません。できませんが、どうもそういうような情勢はないんじゃないか、そういうようなケースは起こらないのじゃないかという判断、これはあるいは希望的な要素も含めてのことかもしれませんけれども、とにかくベトナムのあの激しい状態、これが五月十五日まで続くということをいま、私なりの見解といたしまして予想しない。しかしこれは絶対じゃありません。どういう変化があるかしらぬ。
  189. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ものごとは絶対にというふうにはあまり起こらないのでありまして、私もそう思います。しかし外務大臣見解と違うところは、共同声明四項の再協議条項の発動が起こらない可能性のほうが多いという外務大臣の判断に対して、私は逆に起こる。たとえばきょう沖繩から第三海兵師団の千五百人が行った。これは、いまの時点では沖繩は日本の施政権下にないから事前協議の問題は起こらないとさっきおっしゃいました。しかし返還後は当然事前協議の対象になりますね。しかもさっきくどく言ったように、これはコンバットレディ・フォースでありますから、この性格は変わらない。そうすると、常時そんなふうに千五百名が交代して乗っているのですから、いまのような状態か続く限り当然――それがあと一月で終わるかどうか、これは大臣と同じようにわかり戻せんけれども、非常にその可能性が強い。そのときには当然いわゆる再協議条項が発動するのではないか、その可能性のほうが大きいのではないか。あるいはせんだっても岩国あるいは横須賀からベトナムに行った。きょうは沖繩から行った。こういう今日の状態がずっとこの一月の間ある程度まで続いていくときに、外務大臣としてはその事前協議とかかわる問題だというふうに判断されて、いわゆる安保協議委員会の開催を早められる気はないか。私に言わせれば即刻行なう必要があると思うのですが、その辺はどのように判断されますか。
  190. 福田赳夫

    福田国務大臣 私が日米安保協議委員会を開催する、こういうことを申し上げておるのは、たしかあなたに予算委員会の席でお約束をした、こういうことがあります。そこでどうせ日米安保協議委員会を開催するという際であります。そういういい機会でありますので、この事前協議事項につきまして相談をしてみたい、こういう考えを持つに至ったのです。つまり安保条約が結ばれて十二年にもなる、それからその後沖繩返還という重大な事態が起きたわけであります。そういう沖繩返還という問題をとらえたときに、まずこの辺で事前協議事項の問題、これをおさらいをしておく、こういうことが妥当じゃないか、こういうふうに考えまして、この開催をいま考えておるわけなんでありますが、しかしこれは開催するのはそう簡単なことじゃないのです。いまちょうど、これは率直に申し上げますが、アメリカの太平洋軍司令官が更迭の最中なんです。それからアメリカの大使も交代したばかりである。この安保協議委員会は、わが国のほうでは外務大臣防衛庁長官でありますが、先方は太平洋軍司令官とアメリカ大使である。その相手方の二人が交代の途上というか、交代の前後にある、こういうことでございますので、なかなかこの協議委員会の開催はそう簡単にはまいりません。まいりませんが、国会が終了するその後は、十分諸問題を検討いたしまして、幅広い検討を日米安保協議委員会の場でやってみたい、こういう考えでございます。
  191. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではこの事前協議制度の意義、なぜこれが設けられたか。これはもともとわが日本が自分の意思に反してアメリカが関与する極東の紛争に巻き込まれないための歯どめとして設けられたとわれわれは理解をいたしております。また六〇年安保論争のときには、そういうことがきちんと政府側から出された。その事前協議制度の意義については、今日もあなたは変わらないとお考えですか。
  192. 福田赳夫

    福田国務大臣 今日も私はそのとおりに考えております。
  193. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 事前協議制度の協議課題の重要な一つとして、いわゆる戦闘作戦行動に日本本土を使って米軍が発動するときが重要な一つの協議事項ですね。こういう日本本土から直接出撃するというような問題は、これはもともと緊急の問題です。だから、そういう緊急な事態がもし起こったら直ちに即応するのが事前協議でなくては意味をなさないじゃありませんか。事前協議というものはなかなかそう急には開けません、相手もあることですからなんという、のんびりしたお考えでこの事前協議を把握しておられれば――もともと戦闘作戦行動の問題なんて事前協議にかける意思がないからそういうのんびりしたことをお考えじゃないんですか。
  194. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも楢崎さん、私の言うことを取り違えているようです。私は日米安保協議委員会はそう簡単には開けません、こういうことを言っているのです。
  195. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは外務大臣、事前協議制度はどこで行なうのですか。
  196. 福田赳夫

    福田国務大臣 私が申し上げております日米安保協議委員会、これはあなたの御指摘になった諸問題もある。また私が尊前協議制度、これをひとつさらってみたい、こういう考え方もある。そういう準備のために時間が要るのです。ですから急に開けない、こういうことを言っておる。事前協議そのものを言っているのじゃないのです。事前協議は形は問いません。大使が私のところに来てもいいし、あるいは公使が局長のところに来てもいいし、これはいかようにもできる問題です。
  197. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外務大臣、それは違いますよ。それはうしろから直されたほうがいいんじゃないですか。つまり安保条約の六条を協議する機関は何であるかと、きちんとなっているじゃありませんか。それはかってに大使と話してもいいしだれと話してもいい、そんな問題じゃないですよ。何たることですか。そういう根本の理解が外務大臣にないとすれば、これはたいへんですよ。冗談じゃありません。
  198. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府委員から……。
  199. 吉野文六

    ○吉野政府委員 事前協議は、先ほど大臣が申し上げたとおり、何ら形式はございません。これは全く、マイヤー大使が福田大臣のところに来ようと、あるいはアメリカの大統領が直接総理のところへ連絡しようと、そこら辺の形式はきまっておりません。
  200. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 冗談じゃありませんよ。これは、国会で確認しておりますよ。第四条の随時協議、第六条の事前協議にかかわる問題は。日米安保協議委員会でこれを行なうとなっているじゃありませんか。往復書簡、見てごらんなさい、そうなっているでしょう。何を言っているのですか。
  201. 吉野文六

    ○吉野政府委員 事前協議と申しますのは、先生も先ほど御指摘のとおり、これは緊急の場合に開かれるがおそらく通常だろうと思います。このような場合には、もちろん日米双方の政府の意見が合致するか合致しないか、こういうことでございますから、このような場合には形式は問題になりません。先生のおっしゃるのは、おそらく通常の随時協議なりあるいは日米安保協議のことを言われるのだろうと思います。
  202. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 違いますよ。それははっきりしてください。いつからそうなりました。これは確認しておるのですよ、私どもは何回も。そうして、これはどちらから開催の申し込みができるかというような論争もしているのです。結局、どちらからもできるという、これは定着した解釈になっているんですよ。いまそういうふうなことを言われちゃ困りますね、あなた。
  203. 吉野文六

    ○吉野政府委員 御存じのとおり、安保協議委員会につきましては往復書簡がございまして、それにつきましては一応の経路みたいなことが書いてございます。しかし、いずれにせよ日米間の協議というものは「両政府が適当な諸経路を通じて行なうことになります。しかしながら、同時に、本大臣は、両政府間のこれらの協議のために時宜により使用することができる特別の委員会を設置することが非常に有益」である、したがって、安保協議委員会を開きましょう、こういうことになっておるわけでございまして、事前協議自体はこれはもうこのような安保協議委員会のような一般的な協議ではございませんでして、これは先ほど御指摘のとおり、緊急の場合に開くことが大部分だろうとわれわれは想像しております。
  204. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その往復書簡には、四条及び六条と書いてあるでしょう。六条は何ですか。事前協議の問題でしょう。だから、四条の随時協議あるいは六条の事前協議制度の問題を論ずる特別委員会として日米安保協議委員会をつくるというのが、この往復書簡の中身じゃないですか。緊急の場合に代替されることはあるかもしれませんけれども、日米安保協議委員会というのはそういうものをやるんだということはきちんとしておるのですよ。間に合わないときに、緊急の場合に、日米安保協議委員会に代替するものを考えることはあるかもしれないけれども、その辺はきちんとしておってもらいたいと思いますね、往復書簡で明確なんだから。
  205. 吉野文六

    ○吉野政府委員 事前協議という特別な制度につきましては、先ほど私が申し上げたとおりでございます。ただし、四条とか六条の、すなわち日米が随時に協議するということについては、何もこの経路に限らないが、安保協議委員会というものを設置するほうが便利ではないか、したがってそれで通常やりましょう、こういうことでございます。
  206. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が言っているとおりじゃないですか。そういう随時の、適当なあれもあるけれども、この際特別委員会をつくったがいい、つまり日米安保協議委員会をつくったがいい――そのとおりでしょう。私、それを指摘しているのです。だから、日米安保協議委員会で事前協議の問題を論ずるのは、主題の問題だと思うのですね、あの往復書簡からいって。それは間違いないでしょう。
  207. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先生のおっしゃる意味は、おそらく、事前協議の運営について一般的に論議するのに日米安保協議委員会というものは適当ではないか、こういうことだろうと思います。そのとおりだと私も考えます。
  208. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はそんなこと――あなた、かってに私の言っていることを何かおおむ返しにして変なふうに言って、私もそう思います――何を言っているんですか。じゃ、安保協議委員会では事前協議の主題にかかわることは協議事項にならないのですか。
  209. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この安保協議委員会につきましては、特に主題となることがどうでなければならぬということは書いてございませんが、「両政府間の理解を促進することに役立ち、及び安全保障の分野における両国間の協力関係の強化に貢献するような問題で安全保障問題の基盤をなし、かつ、これに関連するものを検討することもできるでありましょう。」こういうように書いてございまして、もちろんこの席上で同時に事前協議をやってもそれは全然差しつかえないわけでございます。
  210. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間が限られておるのですから、私はその内容を最初から読み上げてやりたかったけれども、時間がかかるからやらなかったのです。だから私の言っておることは間違いないのです、もうこれは触れませんけれども。  そこで外務大臣にお伺いしますが、先ほど事前協議制度の運用について再検討したい、大体何を、具体的にどういう点を再検討したいわけですか。何か具体的にお考えありますか。こういう点をやってみたいという具体的なお考え……。
  211. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ一般的に申し上げますと、とにかく十二年の歴史を持っておる事前協議です。それから沖繩返還が実現された。これは十二年後の今日、沖繩返還という大きなできごと、この際この問題を考え直してみるいい機会だ、こういうことなんで、まだ特定の考え方はきまっておりません。しかしよくおさらいをしてみたい、これが私の気持ちなんです。そういう考えを持つに至ったのは、楢崎さんあたりからずいぶんむずかしいお尋ねにしばしば接しまして、そのつど政府ある。そういうことのないようにこの問題をよく整理する、つまり事前協議の対象となるその対象とその対象とならざるものとの間を明瞭にしておく必要があるだろうと思います。その点を主として頭に置いておる、こういうように御理解を願います。
  212. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは具体的に聞いてみましょう。  当時の事前協議事項の内容として、重要な装備あるいは配置の変更、直接出撃の問題、そうしていわゆるゼントルマンズアグリーメントによって、その中身は、たとえば空と陸の場合は一個師団以上、海の場合は一機動隊以上、そういう了解がある。ところがそれはいまおっしゃるとおり十二年前、いわゆる原子力航空母艦もない時代の話であります。だからその当時の海の場合の一機動部隊というのは、原子力空母のない時代である。だから戦力を基準にして考えれば、今日、原子力空母が出現した段階で、はたして昔、十二年前の一機動部隊戦力と、原子力空母を中心としたいわゆる機動群の場合は、今日のほうが強い、そういうこともあるんだ。そういうものも含めてというふうに理解しておってよろしゅうございますか。
  213. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は十二年の経過ということも言っておるわけです。沖繩の返還ということも言っておるわけです。それからいろいろ御質問で、具体的なケースについての判断をどうするかという問題もあるわけです。そういうものを総合的に洗ってみたい、こういうことでございます。
  214. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だんだんわかってきたのですが、大体やはり具体的に洗ってみたいということでしょう。どういうものを協議にかけるのか、どういう場合に協議にかけるのかということを具体的に洗ってみたいということのように承りましたが、それでよろしゅうございますか。
  215. 福田赳夫

    福田国務大臣 それでよろしゅうございます。
  216. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その際に、先ほど確認しましたとおり、事前協議制度の意義は、いわゆる歯どめの意義だ、外務大臣が洗い直してみる、整理してみるというその方向は、この事前協議制度の意義を確立すると申しますか、歯どめの意義を確立する方向で再検討されるのかどうか、その辺お伺いしておきたいと思います。
  217. 福田赳夫

    福田国務大臣 もちろんそのとおりです。
  218. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、もう一つ具体的にお伺いいたします。いま非常に問題になっているのは、この日本の本土を使って米軍が直接出撃をする場合、実際にはベトナムの戦場に行っている、ところがいままでの政府解釈でいくと、何か領域の外に出て命令を受けたら、これは事前協議の主題にならないとかなんとかということで一貫されてきましたが、それは実際には合わないことだと思うのです。そんなこと言っておったら、出撃問題を事前協議にかけるなんて意味がない、実際問題として、そういうことで、いつ命令を受けたかということを、そういう紛争とか戦争の性質上、前もって言うなんということは、常識上ないのだから。だから、たとえば命令のいかんを問わず、日本の基地を使って米軍が直接戦場に行く場合は、やはり事前協議の主題にしたほうがいいという、こういうお考えがもしあれば、それこそ平前協議制度の歯どめの役割りを強化することになると思うのですよ。そういう点はどうですか。
  219. 福田赳夫

    福田国務大臣 その点はなかなかこれは判断のむずかしい問題なのです。例を申し上げますと、この間、岩国からF4戦闘機が南方へ行くという、事実はフィリピンのようであったのです。おそらくこれがベトナム戦争に、これは私の想像でありますが、参加しているのじゃないか、その場合には、フィリピンが基地になるわけですね。わが国の岩国が戦闘基地になるわけじゃないのです。そこで私どもは事前協議の対象にならぬ、こういうふうにお答えもいたし、そういうふうな理解をいたしておる。ところが、そういう際に、いまベトナムで戦争が行なわれているじゃないか、いずれはベトナムに行くんじゃないか、そういうような想定をいたしまして、そしてこれは事前協議の対象になる、なるべきである。こういう主張をすることは非常に困難な問題じゃないかと思うのです。つまり、アメリカの太平洋軍というものは、艦艇を太平洋全域に浮かべておるわけなのです。そういう際ですから、さて平和的な目的で、あるいは戦争の目的でなくて出動しておりまして、その途上におきまして戦闘作戦に参加する、こういう命令を受ける、そういう場合もあるわけなのですから、その辺は非常にデリケートな問題である。ただ、いまあなたが言われました直接ベトナムに向かって出動するという場合はどういうふうになるかというと、わが国を出港する、わが国の基地から出かけるその時点で戦闘作戦命令を受けておらなければ、これは事前協議の対象にならない、こういう状態であったわけでございますが、しかし、そういう問題も含めまして日米安保協議委員会、そういうところで話し合ってみたい。相手のあることでございまするから、ここでそういたします、こういう御返事はいたしませんです。
  220. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いずれにしても明前協議制度の意義である歯どめの役割りを強化する方向で再検討したいということだけは確認されましたから、これ以上この問題、時間ですし、次の問題がありますので、終わらしていきたいと思います。そうすると、もう一ぺんだけ確認しておきますが、この事前協議制度の問題を含めた再検討のための安保協議委員会というものは、見通しとしてはこの国会中はだめなのですか。
  221. 福田赳夫

    福田国務大臣 この国会中はむずかしゅうございます。
  222. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この国会は沖繩返還後も続くわけでござい映すね、だから沖繩返還の直前くらいに開かれるのがいいんじゃないのですか。さっきも君われたとおり、沖繩も返ってくることだし、だから沖繩返還前に開くような努力はできないのですか、五月十五月前に。
  223. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは先ほども申し上げたのですが、アメリカの太平洋軍の総司令官がちょうどそのころ更迭するのです、そういう事情もある、またアメリカの大使がついきのうですか、信任状を捧呈した、こういうような状態で、そういうことも考え、またわれわれもいま国会で忙殺をされておるわけでありまして、これはとてもとても準備どころの話ではないのです、いまは。これは率直に申し上げます。そういうことを考えますときに、やはり国会が終了してからその諸準備に取りかかる、こういうことにならざるを得ない、まことに御期待には反しますが、そう申し上げざるを得ないのであります。
  224. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そんなことおっしゃいますと、かわるというのはアメリカのほうだけじゃないのです、いやほんとうに。そうしたらあなた、稲田外務大臣もねらうところがありましょうから、いつまでも外務大臣ではない、そうすると、新しい内閣ができて、ずるずるとその辺はだんだん延ばされていくのではないのですか、どうなんですか。
  225. 福田赳夫

    福田国務大臣 とにかく最善を尽くしまして、なるべくこれを早く開催するということをはっきりお答え申し上げます。
  226. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その問題は残しておきます。また内閣委員会もあることだし、この委員会もありましょうから……。  それで次に、沖繩密約の問題に入りたいと思います。  私はもう一ぺんこの問題の核心と申しますか、そこに返ってみたいと思うのです。いまわが党横路委員あるいは私どもから出しましたこの問題が、その後いろいろな形で発展して、いろいろな問題が出てきました。しかしそれらはどこへつながっておるかというと、やはり現在の憲法であろうと思うのです。この憲法上国家の機密とは何か、あるいは憲法上表現の自由の位置はどうなるのか、あるいは欽定憲法と違って、いま国民が主人公であるし、国民がそういう憲法のもとだから、国民の知る権利というものは最高のものである、すべて私はからむところは憲法であろうと思います。まずそれを明確にした上で、この問題は私二つあると思うのです。  もう一ぺんおさらいしてみたい。一つは沖繩返還交渉が、実は非常にわれわれから見ると筋の通らない金を支払わせるような屈辱的な交渉の内容がある、つまり交渉の内容自体、二つ目にはそれらの経過について国会でうその答弁をわれわれは聞いてきた、その二つの問題であろうと思うのです。  そこで最初の交渉の問題について、時間の関係がありますから、一、二点しぼってここでお伺いしておきたいと思います。  七千五百万ドルという軍労務者のための費用、これはなぜ日本側が支払うのですか。
  227. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  御存じのとおり、沖繩返還に伴いまして、沖繩の基地の軍労務者は直接雇用から間接雇用に切りかわるわけでございます。米側といたしましては、この際に全部基地の労務者を一応形式的には解雇いたしまして、日本政府が再雇用してこれを提供する、こういう方式も十分成り立つわけでございます。そして、それに必要な退職金というものは米側としても払う用意が十分あったわけでございます。しかしながら、これはまた現地の軍関係の労務者にとっては非常に耐えられない待遇の……。
  228. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がないから――そんなわかり切ったことを聞いているのじゃないのです。何かこれを支払う根拠があるかと言っているのです。
  229. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そこで米側は、いずれにせよ、沖繩返還のために特に米側の個々の負担となるような支出はしない、またそのような金はない、こういうことでござい出したから、労務者を日本の本土の労務者と同等に扱うという根本原則に立ちまして、この分は七千五百万ドルとして計上する、こういうことで話し合いがまとまったわけでございます。
  230. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは、この前、三日に私が申し上げたことと関連しているのです。本土の場合、あの占領軍から駐留軍にかわるときの総司令部の覚え書きでは、その変動期を考えても、全額米軍が負担することになっているのです。同じことじゃないですか。つまり、いまの説明を承っても、支払わなければならない根拠は全然ない。全額アメリカが支払うべきものなんです。それを、アメリカのほうから、支払う金がないと言われたから、しようがないから政治的に出した、そういうことでしょう。
  231. 吉野文六

    ○吉野政府委員 御存じのとおり、沖繩返還につきましては、アメリカとしては、ともかく日本政府が沖繩を早く返してほしいという要求に先方も応じまして返すことになったわけでございますが、先方といたしましては、ともかく沖繩返還のために特に議会に対して支出を要求しないという一般的な原則があったわけでございます。したがって、もし軍雇用者の退職金を考えますと、どうしてもこのような解決をせざるを得なかった、これが実情でございます。
  232. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いろいろ害われたけれども、結局そういうことでしょう。沖繩を返してもらうために、しようがないから金を出したのだ、こういうことでしょう。何のかんの言われるけれども、一番わかりやすくいえばそういうことだ。それを福田外務大臣は、高度の政治判断ということばを何回も使われましたね。結局そういうことなんです。  それから官房長官まだお見えじゃございませんか――まだですね。それではそれは残します。  何回も繰り返し繰り返し申し上げてまことに恐縮なんですが、外務大臣、あなたは国会でうその答弁をしたことを認められますか。
  233. 福田赳夫

    福田国務大臣 私はざっくばらんなほうでございまして、大体知っていることは申し上げております。知らないことは知らない、そういうふうにお答えしておるつもりでございます。
  234. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 また繰り返すことになりますが、あなたは、私の十二月十三日の質問に対して、交渉のどの段階においても三億一千六百万ドルなんという数字が出たことは記憶の中にも記録にも一切ありません。両局長に対して調べたところもそうです、だからそういうことは絶対ありません。ところが、どの段階でもじゃありません。あなた方のおことばをかりましても、一定の交渉の段階でちゃんとあったことを認めたじゃないですか。そうすると、事実と違うことを言ったことになる。あなたは十日の参議院における上田君の質問に対し、事実と違う答弁をしたことについては云云ということを言われました。それを認められますか。
  235. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は別に皆さんにうそをつくというような表現のことを申し上げたつもりはございません。三億一千六百万ドル、こういうことにつきましては、交渉の過程において出たことはない、私はこういうことは申し上げておりますが、そのとおりだと思っております。
  236. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まだ三億一千六百万ドルというような数字が交渉の話の途中で出たことはないといまもおっしゃいますか。
  237. 福田赳夫

    福田国務大臣 こういうことなんですね。きまったことは三億二千万ドルです。そこで、かたがた復元補償問題というものがありまして、四百万ドルをどうするか、こういう往復が途中であった、引き算をすれば三億一千六百万ドルになります、そういう意味の三億一千六百万ドルというものは出たかもしれませんよ。しかし、そうじゃない三億一千六百万ドルというものが交渉の途中で出てきて、そうして四百万ドルを積み上げました、こういうことはありません、こういうことを申し上げておるわけです。
  238. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうじゃないです。あなたは十二月十三日のそのくだりをそこで読んでみてください、あなたが答弁されたことを。議事録がありましょう。私はこれは当然のことだと思って、きょうは議事録を持ってこなかったんですよ。何と答えておられますか。
  239. 福田赳夫

    福田国務大臣 この答弁は、いま私が申し上げたとおりのことが書いてあります。つまり、「三億一千六百万ドルという数字が出まして、それに四百万ドルを上乗せをした、こういうことになるべきはずでございますが、いかなる段階でも、三億一千六百万ドルという数字が出た、そういう記録も、また両局長の記憶もない、」こういうことでございます。
  240. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃあ、違うじゃありませんか。三億一千六百万ドルという数字は、話の途中では出ておるじゃありませんか。いまごろまたそういうことをおっしゃるのですか。
  241. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは少しお話が違うんじゃないですか。三億一千六百万ドルというものがあって、それに四百万ドルを上乗せいたしまして三億二千万ドルというふうになったということは、これはいかなる過程においてもありません、こういうことを申し上げておるのです。
  242. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた、そんなことばのあれをやっちゃいけませんよ。あなた方の言っていることをそのままとしても、つまり、結局は三億二千万ドルになったのだということをそのまま前提にするとしても、その過程の中で三億一千六百万ドルというやりとりがあったことは事実なんでしょう。それを、あなたの言い分によると、結局拒否したのでしょう。
  243. 福田赳夫

    福田国務大臣 私が言っておりますのは、三億一千六百万ドルというものが交渉の過程であって、それに四百万ドルを上積みしたのじゃないか、こういう御議論ですから、そういう過税はありません、こういうことを申し上げているのです。ただ、この三億二千万ドルというものがありまして、一方において復元補償四百万ドルという問題があったのです。ですから、引き算をすれば三億一千六百万ドルになる、これは当然のことでございます。
  244. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういうことじゃないんですよ。そういうやりとりがあったことは吉野さんも認めて、そうしたあなたは、参議院で十日の日にあやまったじゃないですか。あなたはうそを何回言ったといって上田君から指摘されて、どうも悪うございましたと言ったじゃないですか。
  245. 吉野文六

    ○吉野政府委員 私は参議院の予算委員会で、私の事実に違った答弁をしたことにつきまして遺憾の意を表しました。しかしながら、それは、たとえば往復の電報があるかということに対して、私が、全然ございません、こういうように申し上げた点が事実と違っておる、この点につきまして私はおわびを申し上げたわけでございます。  そこで、この三億一千六百万ドルという数字が交渉の途中において出てきたかということでございますが、この愛知大臣の応答ぶりにもわかりますように、せっかく三億二千万という額がきまったのに、三億一千六百という端数となってはおかしいじゃないか、説明が困るじゃないか、こういうことを言ったこの個所だけでございます。これはすなわち、先ほど大臣が説明したとおり、三億二千万から四百万を引いて三億一千六百万というような端数になっては困るじゃないかということでございまして、われわれもこの会談に参加をしておったわけなんですが、当時いろいろの事情があったかと思いますが、このやりとりは、この部分に関する限りは、記憶にもほとんど残っていないくらいのものでございます。したがって最初に三一六という数字があって、そこにプラス四をした、こういうことではございません。
  246. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外務大臣は自分自身としては事実と違う答弁をしたことはないとおっしゃいますか。
  247. 福田赳夫

    福田国務大臣 私の知る限りにおきましては、私はそういうようなことを申し上げていることはないように存じております。
  248. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたは、この三億二千万ドルの積算基礎を、昨年の沖繩国会で各党がひとしくその問題を質問したときに、大臣は、いわゆる核抜きの費用を含む七千万ドルについては積算基礎になじまないものがあります。政治的な判断による金です。だからつかみ金じゃないかとさらに重ねて追及されたら、そう言われればそのとおりですとあなた答弁しております。しかし一億七千五百万ドルのいわゆる公社等の資産買い取り及び七千五百万ドルの軍労務者に対する費用、これは積算基礎はちゃんとしておりますとあなたはおっしゃいました。ところがことしの予算委員会でこの問題を出しましたときに、あなたの答弁はこう変わっている。結局三億二千万ドルはすべて高度の政治的判断による金だ、こう変わったのです。それは認められますか。
  249. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは正確にお聞き取り願いたいのですが、三億二千万ドルというものは協定にもちゃんと書いてあるのです。つまり資産の引き取り、あるいは労務費の支払い、それから核抜きの問題、そういうもの等を考慮いたしまして決定いたします、こういうふうに書いてある。そのとおりなんです。法的にはそのとおりであるけれども、そうしてこの法的にきまった三億二千万ドルというものは高度の政治判断としてきめたわけでありますが、ただその政治判断の中身は一体何なんだ、こういうふうに聞かれますものですから、これは一応のメドとして、資産買い取りについてはこれは積算の根拠がある、それから労務費につきましても積弊の根拠がある、それから七千万ドルにつきましては何もありません、こういうことを繰り返し申しておるわけなんです。それを総合して御判断願いたいと存じます。
  250. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではいまのは私は了承しませんよ。そんなふうなことじゃないのです。私議事録はいま持ってき来せんでしたが、私が言ったとおりなんです。一億七千五百万ドルと七千五百万ドルについてはきちんと積算の基礎はあります。そう昨年はおっしゃったのです。それから、それではあなたは答弁のしかたが悪かったというのは、自分自身の答弁は悪くなくて、両局長答弁のしかたが、言えないとか知らないとか言えばよかった、こういうことですか。あなたが何回も委員会でおっしゃっているのは。
  251. 福田赳夫

    福田国務大臣 大体そういうことです。
  252. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほど取り上げましたどの段階でも、三億一千六百万なんという数字は出たことはない、話の中にも出たことはない、あなたは確実にそう答弁されておる。それを、その意味はこういうことだなんということをいまごろ言ったってだめですよ。それは秘密理事会でもやったでしょう、私は秘密理事会のことは書いたくないけれども。秘密理事会でもずっと否定されたじゃないですか。特にあの十三日の日、横路君は、五月二十八日愛知・マイヤー会談といって、あの内容を全部言っていますよ、今度明らかにしたとおりのことを、あの段階で。それを否定したのです。あなたたちは否定したのです。そんなものはありません。公電でもないかと聞かれて、公電でもない。私は全部電話でやりました。そうでしょう、まだあなた方は強弁するのですか。絶対に事実と違うことは言っておりませんと、ここではっきり言えますか。
  253. 福田赳夫

    福田国務大臣 三億一千六百万ドルというのは、三億二千万ドルから引き算をすれば当然出てくる数字です。そういう意味合いにおいて、これは当然四百万ドルが問題になれば三億一千六百万ドル、それは話に出てくる。しかし私はそんなことを議論しているのじゃないのです。これは一体、あなた方もそうだろうと思う。あなた方の議論は、三億一千六百万ドルというものがあって、そうしてその上に四百万ドルを上積みさせたんじゃないか、こういう御議論ですよ。そうじゃありませんでしょうか。そういうような意味合いにおいて、三億一千六百万ドルという数字が出てきたという段階はありませんと、今日でもはっきり申し上げます。
  254. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もうほかにうそついておることないですか。
  255. 吉野文六

    ○吉野政府委員 昨年の十二月の沖特で、電報が一切ないとか、それから記録がないとか、いろいろ申し上げたことにつきましては、確かに私の表現が事実に違っており、この点は深くおわびいたし出す。  なお、われわれといたしましてはもっぱら記憶をたどって返答しているわけでございますから、万一それが事実と違うこともあり得るかとは思いますが、しかしながらそういうことはほとんど、この四百万ドルと、いま言われたつまり復元補償の問題につきましては、特に私は意識的に事実を曲げて返答したというようなことは、私としては考えておりません。
  256. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 意識的に言ったことはないなんて、そういうことをいまごろ言っちゃだめですよ、あなた。何を言っておるのですか。もう少しまじめにやりなさいよ。自分で悪いことがなかったら、どうしてあやまったんだ。自分が正しかったと思えば、どうしてあなたはあやまったんだ。  それから、ほかにうそを言ったことはありませんか。もううそを言っておることは。
  257. 吉野文六

    ○吉野政府委員 どうも私の記憶ではございません。
  258. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 また出たら困るから、そのときのためにそういう言い方をしているのでしょう、あなたは。  四月三日の日に、こういう質問を横路君がしております。いまの問題の最終段階の了解事項、これは表題は横路君は言っていないようです。中身をまず申し上げる。「日本政府は、沖繩返還に関連し、財政問題の一括決済として、第七条に同意する。日本政府は、アメリカ合衆国政府が第四条三項に従って、慰謝料」横路君は復元補償ということばを使っている。「慰謝料を支払うため、この一括決済の中から四百万ドルを留保することを了解事項とする。」こういう文書について、あなたは御記憶はありますか。
  259. 吉野文六

    ○吉野政府委員 どうも、そのような文書については覚えておりません。
  260. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 覚えていないというお答えですね、否定はしないのですね。
  261. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この復元補償の問題につきましては、私も予算委員会でたびたび御説明したとおり、先方は、最終段階になって支払うべき金がない、したがってこれを何とかくめんしてほしい。その意味でいろいろ手紙だとか了解案のようなものをわがほうに差し出してきまして、そしてこの線でわがほうに応じてくれ、こういうようなことはございました。しかしこれらは御存じのとおり、わがほうは全部拒否したわけでございます。しかしそれ以外のことにつきましては、その点が全然記憶にございません。
  262. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 さっきは覚えがない、いまは記憶がない。それはあるかもしれない、ないかもしれない、わからない、こういうことですか。――もう少しつけ加えましょうか。英文もあるはずである。英文のほうの表題を申し上げてみたい。「コンフィデンシャル・レター・フロム・フォーリンミニスター」、何と訳すのですか。
  263. 吉野文六

    ○吉野政府委員 外務大臣からの秘密書簡と申しましょうか……。
  264. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それの内容が先ほど申し上げた内容です。
  265. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほども申し上げましたように、先方はそのような手紙を書いてほしいということはたびたび言ってきたわけでございます。しかしながら、それは先般も明らかになりました電報によっても明らかのとおり、そういうものはわがほうはのめない、こういうことでわがほうは最後まで拒否したわけでございます。
  266. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この内容は拒否されておりませんね。これはいまあなたの訳されたとおり、向こうからどうしてくれという書簡じゃないですよ。愛知外務大臣からの向こうに対する秘密書簡です、あなた訳したとおり。あるかないか聞いているのです。
  267. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そのような書簡はございません。  それから、まず先方がそのような書簡を、こういうような書簡を書いてくれ、こういう意味で先方が出してきたんだろうと思いますが、それにしても、いずれにせよないわけでございます。
  268. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、あなたはさっきは覚えがない、記憶がないと言われましたが、いまは否定されたわけですか。
  269. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そういうような書簡があるかということでございますから、それは否定いたしました。  なお、四月三日にそのいろいろの交渉が行なわれたかということでございましたから、その点は記憶しておらないということでございます。
  270. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何ですか、その四月三日というのは。私が知らぬことをあなたがなぜ言うのです。
  271. 吉野文六

    ○吉野政府委員 四月三日と申しましたのは、これは私の聞き違いのようでございますから……。  いずれにせよ、交渉の経緯としては、先方はそういうような手紙を書いてくれとか、いろいろなことを言ってきた、しかしながらわがほうは断わった、これが真実でございます。
  272. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、いま私が明らかにしたこの文書は、向こうから、こういうふうにして愛知外務大臣から手紙をいただければたいへんしあわせですというような形で、向こうの希望する書簡の原稿ですか。
  273. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そのとおりと思います。
  274. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 出せますか、それを。
  275. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは案文でございますから、いずれにせよ、そういうものがほんとうに出たわけでございませんから、いまでは単なる交渉のやりとりの一環でございます。しかしながら、交渉のやりとりの全般につきましては、われわれは相手方がございますから、これは当分の間外部には公表できない、こういう立場をとっております。
  276. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私どもは、できれば私どもが要求した資料を政府みずから出していただきたいのです。出していただきたい。また、こういうことがあるではないか、その証拠となるものがない限り――あなた方はいままでごまかしてきた。できればそのようなものをわざわざ出さなくても真実が述べられて、それに基づいてわれわれは審議をしたいもしわれわれがその証拠となるものを出さない限りは、あなた方は秘密会に持ち込んでもうそを押し通されたじゃないですか。そのとき、そのあなたたちのごまかしなりあるいは国民に対するうそを、これは明らかにすべきである。そしてこれ以外に方法がないというときに、そういうときにのみわれわれはその証拠を出してきた。いいですか。どうしてもお出しになりませんか。いいですか。あの国会で明らかになった、あなたと突き合わせをしたやつは、それで秘密解除になった。もう中身は明らかじゃないですか。なぜそれに関連するほかのものが出せないのですか。まだ隠そうとなさるのですか。
  277. 吉野文六

    ○吉野政府委員 その内容を説明することは差しつかえないかと思いますが、これはともかく相手国もありますし、それから、いずれにせよこれは交渉経緯のことでございますからいずれは明らかになると思いますが、いまの段階では、まだいろいろの問題があるだろうと思いますから、われわれとしても非常に考えてみないといかぬと考えるわけでございます。
  278. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 きょうの審議の過程を見ましても、あなたは、最初は記憶がない、その次は覚えがない、そして最後は、ありません。そして今度は、交渉の過程としてはそういうものがあります。どう変わるのですか。これでまともな審議ができますか。まさに佐藤総理大臣のあの答弁と一緒ですよ。くりくり変わっている。何を審議するのですか。何を基準にしてわれわれは審議するのですか。これでまともな審議ができますか。そういうことではだめです。  委員長のお取り計らいを願いたい。――委員長のほうから、出すように言ってください。
  279. 櫻内義雄

    櫻内委員長 しばらくお待ちください。――楢崎君の質問に関する事項につきましては、後刻理事会においてよく相談を申し上げ、できるだけ御発言の御趣旨に沿うようにしたいと思います。
  280. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは本日ということですか。
  281. 櫻内義雄

    櫻内委員長 後刻、外務大臣の時間も制限されておりますので、この委員会終了後に直ちに理事会を開きたいと思います。
  282. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは委員長のお取り計らいに従います。日本文と英文を出してください。お願いをしておきます。  官房長官まだお見えじゃございませんか。
  283. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この手紙でございますが、これはあくまでも案文として先方が提出したわけでございますから、それについてわれわれは出すことは考えていなかったわけですから、訳文はつくっておりませんが、訳文でよろしいということであればお出ししますが、日本文の正文というものは御存じのとおりないわけでございます。これはあくまでも先方がわがほうに提案してきた内容でございますから……。
  284. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた何言っておるのですか、国会のルールを。この問題は理事会で預かりますとおっしゃったじゃないですか。何を言っているんですかあなた。
  285. 櫻内義雄

    櫻内委員長 楢崎君に申し上げます。理事会において協議をいたします。
  286. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうでしょう。それを突如として手をあげて何のかんの、何言っているのですか。
  287. 櫻内義雄

    櫻内委員長 なお楢崎君に申し上げますが、官房長官が三時二十分の出席の予定でございましたが、他の委員会におきましていまだ質疑応答が終わらないようでございますので、後刻、外務大臣退席後に御質疑をお願いしたいと思います。
  288. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、ただいまの問題も含めて、一応保留させていただきます。
  289. 櫻内義雄

    櫻内委員長 それでは西中清君。
  290. 西中清

    ○西中委員 先ほどからの論議を聞いておりまして、依然として外務省が事の真相をできるだけ秘密にしようというような姿勢が残っておることを非常に残念に思っております。私もきょうは四百万ドルの問題とあわせまして、いま疑点を抱いておる二つの問題について御質問をいたしたいと思っております。   〔委員長退席、永田委員長代理着席〕  最初に、外務省のこの秘密文書問題は、国民の知る権利というものを侵害するものとして非常に遺憾である。また沖繩返還交渉の協定の質疑をいたしましたわれわれとしても、国会そして国民にうそをついてきたということについては、まことに憤激にたえないような状況でございます。さらに、それにまつわる政府の責任というものも、私はまことに重大だと考えております。そこでこの沖繩返還協定にまつわる質疑の中で、しばしば、たとえば日米安保条約の運用の問題、さらには先ほど質問がございましたベトナムの出撃の問題、その他核の持ち込み、こういった問題についてもさまざまの食い違いがあったわけであります。私は、こうした一連の問題を通して、国民はこれから外務省がどのようにわれわれの持っておる疑惑というものを晴らしていくのか、これが一つの大きな焦点だろうと思っております。  先ほど、参議院の予算委員会等通じましても論議がされておりますが、政府はいわゆるこうした四百万ドル等の問題について、経過としてはそういう話があった、しかし結論としてはそういうことは関係がないのだという立場お話をされておるわけであります。しかし国民は、そうしますと、そういう疑惑に対して、最後の結論に至るまではどういう話し合いがあってどういう納得をし、そして説得し、最後はそれと全く関係のない結論として三億二千万ドルになったかという点については依然として不明であることは、私はみんなが持っておる疑問であろうと思っております。経過措置としてはあったのだ、突如として解決したのだということでは、これは話の経過がわからないわけであります。その点は今後外務省として、少なくとも国民が納得できる、論理の通った、筋の通った解決がなければならないと思いますが、説明がなければならないと思いますけれども、そういう誠意のある姿勢をおとりになる気持ちはないか、あるか、その辺のところを最初に外務大臣にお伺いをしておきます。
  291. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は秘密外交ということは、絶対にこれを排撃します。つまりこれは裏取引がありますとか、あるいは国民に知らせないところの何か約束があるとかそういうようなこと、これは絶対に排撃していかなければならぬし、そういう気持ちでこの外交をやっております。その点につきましては誤解のないようにひとつ御理解をいただきたい。ただ、交渉の経過におきましてそれを一々を公にしておったら、交渉事は成り立ちません。今回の三億二千万ドルの交渉、これは私当時は大蔵大臣の職にあったのでありまするが、ずいぶんよく外務省やってくれたといって喜んでおったわけでございますが、アメリカ側の最初の要求というのは膨大なものだったわけです。それをとにかく値切りに値切って三億二千万ドルとなった。これは私は国民に対しまして喜んでいただかなければならぬことである、こういうふうに思いますが、ところがその交渉の途中において、一々こまかいことを公表する。そういうようなことによってそういう結果が得られないというようなことになったら、私はそれこそ国家、国民のために不幸なことになるのではないか、こういうふうに思うわけであります。  それから最初に西中さん、うそうそというふうにおっしゃいますが、いま申し上げましたとおり三億二千万ドルにきめたその裏に、裏取引だとか裏交渉は全然ないのです。これはほんとうに信じていただきたいと思います。ただ、交渉の途中でいろいろないきさつがあった、これは率直に申し上げます。議員の皆さんから電報をちらつかせながらこういう事実があったかないかということについて、それはもう申し上げられない機密でございます、こういうふうにお答えすればよかったものを、そういう事実はありません、こういうふうな表明をいたしましたことは、私は、これはまことに遺憾なことであった、こういうふうに申し上げ遺憾の意を表明しておる、こういう次第でございますが、今回の問題は外交というものがどういうふうに行なわれるべきかということについて重大な姿勢を示した案件である、こういうふうに考えます。これからいよいよ戒心いたしまして、外交国民を背景にして堂々とやらなければならぬ問題である、そういうことを踏んまえながらさらにさらに精進をいたしていきたい、かように考えます。
  292. 西中清

    ○西中委員 それでは時間もありませんので具体的な問題にさっそく入ります。  最初に、これは確認の意味でございますが、地位協定第四条一項の解釈、これは読めばわかるというようなものでございますが、米国がわが国に施設及び区域を返還するにあたって、米国は原状に回復する義務はない、またそれを回復するかわりに、日本に補償する義務を負わない、こういうように理解をしておりますが、間違いございませんでしょうか。
  293. 高島益郎

    ○高島政府委員 そのとおりでございます。
  294. 西中清

    ○西中委員 次に第二項、米国が施設及び区域を返還する際に、そこに残される建物または工作物に対しては米国は補償する義務はないし、すなわち買い取る義務はない。わが国はこれらの建物、工作物を無償で引き受けるということだと解釈しておりますが、間違いございませんですか。
  295. 高島益郎

    ○高島政府委員 第四条二項の解釈もそのとおりでございます。
  296. 西中清

    ○西中委員 要するに、わが国が提供した後に、みずから施設及び区域に加えた改良または新たに設置した施設、建物、工作物、こういうものに対しては、返還時に際してそれをそのまま残していこうと、あるいは撤去し持ち去ろうと、またはそれをこわしていこうと、どういう処置をしようと米国は自由であるというように理解していいのかどうか、その点はどうでしょうか。
  297. 高島益郎

    ○高島政府委員 四条の解釈といたしまして、米国が施設、区域を返還するにあたって、その残った工作物を自由に撤去したりこわしても差しつかえないということは、特に第四条に書いてございません。ただ、残したものについて日本が補償する義務を負わないということが趣旨でございます。
  298. 西中清

    ○西中委員 私もそのように理解をしております。  それで、ここでこの地位協定の四条一項、二項というものは、これはもうしばしば国会でも論議されておりますから言うまでもないと思いますが、返還後の沖繩にそのまま適用される。その点は間違いございませんね。
  299. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そのとおりでございます。
  300. 西中清

    ○西中委員 これは外務省のほうからお出しになっておる資料でございますが、昭和四十六年十二月九日、衆議院の沖特、内閣、地行、大蔵の各委員会の連合審査会での野党委員からの要求でございます。この中の文章によりますと、二のほうでございますが、いわゆる核の撤去について、これは七千万ドルということでございますが、この七千万ドルは核兵器の撤去費だけではなくて、いろいろの要因を含めたところの政治的な妥協である、こういうような意味のことが書いております。したがって、七千万ドルの支払いは積算の基礎または根拠を出すことはできないのだ、このようにここで述べておると思いますが、この点は間違いございませんか。
  301. 高島益郎

    ○高島政府委員 七千万ドルの内訳につきまして、米国政府側の要求といたしまして、単に核撤去のみならず、米国が沖繩の基地に投資したばく大な軍事資産は、将来施設、区域を返還する際に無償で置いていくことになること等の事情もあり、米国側からそういう理由に基づいて多額の要求があったということでございまして、わが国がこういう理由に基づいて七千万ドルを決定したということではございません。
  302. 西中清

    ○西中委員 だから、それに対して、政治的判断で妥結したというようにその次のページに書いてあるでしょう。それでいいですね。  そこで、外務省提出の資料によりますと、これは四ページ、いまあなたが読まれたところですが、「米国が沖繩の基地に投資したばく大な軍事費産は将来施設・区域を返還する際に無償で置いてゆくことになる」と述べておりますが、この事実は間違いございませんか。
  303. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そのとおりでございます。
  304. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、これは地位協定第四条一項が返還後の沖繩に適用される、また二項も適用されるということと別の問題になってくるのではないかというように思うわけでございます。また、言い方をかえますと、アメリカが現在沖繩にある施設、区域を返還する際に、無償でわが国に置いていくことの意思表示をしたということだろうと私は解釈するのですが、それは間違いございませんか。
  305. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そういうことでございます。ただし、御存じのとおり、大体外国軍隊がよその国の領土に行きましていろいろ不動産その他施設をつくった場合には、これらのものは無償で置いていくというのが国際法上も慣例になっておるわけでございます。
  306. 西中清

    ○西中委員 無償で置いていくということは、これはただごとではないと思うのですね。単に小さな基地が一つあるとかないとかいう問題ではなくて、沖繩にはばく大な基地がございます。しかもそれは明らかに純粋に軍事的な施設として一切が使われておるというのが大半でございます。そういう場合に、たくさんの基地があって、こういうような現在あるばく大な軍事資産を将来返すときは無償で置いていくという約束を何を根拠にしてやられたのか、その辺はどうでしょうか。
  307. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは形式的には復帰後は地位協定が適用される、したがって四条一項、二項によって無償になる、こういうことでございますが、実質的には、そのような膨大な資産をアメリカは実際上持って帰るわけにはいかない、これが事実でございます。
  308. 西中清

    ○西中委員 地位協定四条一項、二項は、無償であるという点は確かに言えると思います。置いていくということとは関係がございません。そうじゃないですか。
  309. 吉野文六

    ○吉野政府委員 置いていくということと無償であるということの違いということでございますが、結局アメリカはあそこにある膨大な施設を事実上持ち帰ることをしない、したがって、そこに置いていく、しかもそれに対しては何ら求償しない、こういうことでございます。
  310. 西中清

    ○西中委員 私が言っているのは、置いていくという根拠がない。話し合いをされたというのは、どなたとどなたが約束したのですか。少なくとも膨大な基地があって、それが返って、たとえば整理をする場合に、わが国にとっては大きな負担になる、こういうことだってたくさんあるわけですよ。何もかもそのまま置いておいたらいいのだ、そういう約束を一体だれがやったのですか。少なくとも返還協定におきましては、付属文書等でかなりの部分までいろんな取りきめをしておるわけです。二階に置かれた分まで、これを撤去するとかせぬとかいうことまで取りきめておいて、膨大な基地がそのまま残る。ばく大な軍事資産は将来施設、区域を返還する際に無償で置いていく、これは少なくともいまの基地を想定されているのでしょう。それを、無償であることはわかります、現状をそのまま置いていくということはどういうことなんですか。そういう重大な問題が、一体どなたとどなたで約束をされたのか。これはたいへんな問題ですよ。
  311. 吉野文六

    ○吉野政府委員 形式的に言えば、返還協定の第二条によって、地位協定、安保条約がそのまま適用される。地位協定の第四条の第一項は、アメリカ側は原状回復の義務を負わない、こういうことになるわけでございます。
  312. 西中清

    ○西中委員 そういうことを聞いておりません。これだけのものを勘案して政治的に金を払っているのですよ。だから、それはそのまま残るという前提をはっきりしておかなければならぬということを言っているのです。少なくとも本年の予算の中にもその一部は含まれると解釈をしなければならぬ。その置いていくということの根拠がはっきりしていない。これは将来返す地域ですよ。そういうふうにおっしゃるのだったら、将来どういう形で残るのですか。いまのままの姿なのか、ふえるのか、減るのか、その辺はどうなんですか。
  313. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど申し上げましたとおり、返還協定の第二条によって、沖繩には地位協定及びその他の協定が適用される。それから第一条によりまして、わが国アメリカ側に対して施設、区域を提供する。その二項におきまして、アメリカ合衆国が一の規定に従ってこの協定の効力発生の日に使用を許される施設及び、区域については、安保条約第六条に基づく施設及び区域であり、地位協定の第四条の規定を適用するにあたり、つまり第一項の規定が適用される、こういうように書いてあるわけでございます。したがって、協定上先生のおっしゃられたことが全部裏づけされるわけでございます。
  314. 西中清

    ○西中委員 そういうことを聞いておりません。無償で置いていく、現状そのまま置いていくという根拠にこれはならないじゃないですか。無償はわかりますよ。私がいま問題にしているのは、七千万ドルは一体どういう内容なのかというこの資料要求に対しまして、いろいろな条件がここに書いてございます。その中で、「ばく大な軍事資産は将来施設・区域を返還する際に無償で置いてゆく」というのは、一体どういう根拠でおっしゃるのか。単なる話し合いなのかどうなのか。たとえばこの沖繩の基地というものが――来年、再来年ならおそらく皆さん方もおられるでしょう。しかし十年、二十年、三十年先になった場合には、同じ立場でおられるわけではない。そのときに、無償でそのまま置いていくというそういう約束があったとかなかったとかということが問題になるのです。無償というとややこしいから、置いていくということについて、これは重大な問題です。  というのは、先ほどから言っておりますように、この条件が支払いの中に入っておるということです。言いかえるならば、アメリカと折衝する段階においては、皆さん方はこれをちゃんと話し合いをして、それに対しての含みとして七千万ドルというものをきめておられるはずなんです。それがはっきりしなければ、「ばく大な軍事資産」ということが書いてありますけれども、極端な言い方をすれば、これは、もし基地があと一つでなくなるとすれば、それをいまから先にお金を払ったということですよ。将来のことについて言えば、そういう形になりかねないわけですよ。私が言っているのは、そういうように将来どういう形で残っていくかわからないものについて、いまから、話し合いの中で先の撤去の問題まで含めたというのは一体どういうことなのか、これはおかしいじゃないですか。当然地位協定が適用さるべきところにこういうことが起こるということは理解に苦しむわけです。その点はどうでしょうか。
  315. 高島益郎

    ○高島政府委員 西中先生の御質問の趣旨が、必ずしも明確に私わからないかもしれませんけれども、一応御答弁いたします。  この政府のほうで提出いたしました資料の中で、七千万ドルの内容、内訳、これを明らかにできない理由、及び政治的配慮とは何かという個所につきまして、私のほうでまとめました書類が先生の御引用の部分でございます。そこで書いておりますことは、将来沖繩が返還の暁には当然地位協定が適用されますので、地位協定四条の解釈といたしまして、将来その施設、区域が日本に返還される場合には当然無償で日本に返還されるということを受けまして、将来施設、区域を返還する際に無償で置いていくことになる等の事情もあり、アメリカ側がこういう膨大な要求をしてきた。これは日本のほうの見積もりではございませんで、米国のほうで、こういうことがあるので膨大な要求をしてきたということを、私のほうの説明としてここに書いておるわけでございます。
  316. 西中清

    ○西中委員 だからこそ、向こうでけっこうですよ、どちらから言ったにしても、これを含んでの七千万ドルということがここに出ておるわけなんです。この外務省が提出した資料がはっきりいっているのですから、これについてはどういう人がこういう約束をしたのか。わずかな基地じゃないのですから、当然これは明確にしておかなければならぬはずでしょう。それは地位協定の先ほどの説明がありますけれども、いまの基地を置いていくことには何の関係もない。そういう点について、どういう根拠で無償で置いていくことについてお金を出す気になられたのか、この辺の根拠がはっきりしないのです。
  317. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカはいま沖繩で膨大なる軍事施設を持っているわけです。その投下額はおよそ、五億六千万ドルでしたか七千万ドルでしたか、その辺までなるくらいな膨大なものでございます。それを、地位協定によりますとこれは無償で置いていく、こういうことになるわけなんです。それだけの施設を無償で置いていくという事実が地位協定によって出てくるわけなんです。そうすると、その五億六、七千万ドルにもなります多大な施設をただで置いていくという事実、これはまたアメリカ日本との間の財政問題においても考慮せらるべし、つまりそれは配慮されなければならぬ問題である、そういうことになるわけなんです。これがごくわずかなものでありますれば、これはそうたいした問題にはならない。しかし五億六、七千万ドルというような巨額の施設、これがまたさらにふえるかもしれない、そういうようなものを無償で置いていくのだ。これを無償で置いていくということは地位協定できまっていることであるけれども、その無償で置いていくという事実、これも配慮しながらこの対米支払い額をきめるべきである、こういうことを申し上げておるわけなんです。
  318. 西中清

    ○西中委員 無償ということに重点を置けばそういう話になるかもしれない。しかし基地というものはそれなりの、また沖繩県民の所有にもかかるところの問題がたくさんあるわけです。こういう基地を無償で置いていくといったって、五億ドル以上というようなお話でございますけれども、それが日本側にプラスになる面とマイナスになる面とがたくさんあるわけなんです。このまま五億ドルの値打ちがあるのだ、そういう見解であるならば――これはほとんどが軍事基地に使うしかないわけです。そんな考えでこれがありがたいなんという考えでは、私はますます問題だと思う。したがって、どういう形で無償で置いていくという話になったのか。これは政府が出しておる堂々たる資料ですから、秘密文書じゃないのです。これは具体的にいうとどういう形で置いていくのですか。
  319. 福田赳夫

    福田国務大臣 置いていく形態は、これは地位協定にはっきり書いてあるわけです。地位協定に従って置いていく、こういうことでございます。  何かマイナス面も相当ある、こういうお話でございますが、マイナスもそれはありましょう。ありましょうが、とにかく五億六、七千万ドルもあるという膨大な資産のプラス面というものも考慮しなければならぬわけなんでありまして、そういうものも考慮いたしまして、また基地の問題、また特殊部隊をわがほうから依頼をして撤去させる、こういうような問題、それらを含めまして七千万ドルとした、こういうことでございます。
  320. 西中清

    ○西中委員 いままでの御答弁ではなかなかこれは理解しがたいのですが、私が言っているのは、基地に投資したばく大な軍事資産、これに金を払うのは非常に問題があると思いますが、それはそれとして、将来返還する際にその置いていくものについてお金は払う、これはそれなりのはっきりした合意なり何らかの了解事項というものがおそらくあったものと私は解釈せざるを得ない。ちっちゃな基地が一つだとか――一つでも問題は問題で、本質はかわりませんけれども、その膨大なものをそのまま、基地を撤去して引き揚げるときには一切そのままの形で残しておくというふうに番かれたのですから、あなたのほうはそれはそれなりの説明ができるはずでしょう。どうでしょうか。
  321. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは地位協定が今度は沖繩に適用される、当然無償で置いていくということになるので、これははっきりしております。
  322. 西中清

    ○西中委員 またもとへ戻っちゃうのですよ。無償で置いていくのじゃない、いまのままで置いていくということになっている。無償はともかく横へおいておきましょう。それは地位協定では何の関係もないと最初にはっきりしているじゃないですか。つぶそうがどうしようが、ともかくそれはこれとは関係ないことなんだ、返還時において無償であり、義務を負わないというのが地位協定の条文の解釈なんでしょう。それはおかしいですよ。
  323. 福田赳夫

    福田国務大臣 地位協定は、米軍が引き揚げる際にその施設を無償で置いていきます、こういうことになっているわけなんです。その状態は、今後沖繩から米軍が引き揚げる、そういう際に置いていく資産、そういうものにそのまま適用になるのです。少しも疑問はないところであります。
  324. 西中清

    ○西中委員 どうもそれは御理解いただけてないようですが、じゃかりに一つのたとえ話として、あそこは何らかの形で全部基地が破壊されたとして、そのままアメリカへ引き揚げていったときは、この金はどういう形になるのか。めちゃくちゃになったところ、先にお金を払ったという形になるわけでしょう、完全に。その点どうでしょうか。
  325. 吉野文六

    ○吉野政府委員 われわれのアメリカに支払うべき三億二千万ドルの中には、民生用資産の引き受け、引き継ぎということで一億七千五百万ドルが払われております。ほかに、先ほど福田大臣もおっしゃられているように、七千万ドルという高度の政治的な金額もある。したがって、少なくともわれわれのアメリカ側に対して、資産、その引き受けのために支払うという額は一億七千五百万ドルプラスアルファという数字でありまして、五億ドルとか七億ドルの、アメリカのあそこに投資した軍事施設全部について支払いを行なうわけじゃございません。
  326. 西中清

    ○西中委員 全部じゃないことはわかっていますよ。一部たりといえどもこれは血税ですよ、出すところは。そこで私は問題にしておる。むしろ私はこういう文書の中から何らかの了解が行なわれているのじゃないか。そうでなければ、こういうふうに明快に将来にわたったことまできちっと約束してお金を払うなんということは、これはやはり問題が多いのじゃないか。はっきりしたものがないのにそういう話があったとかないとかということになった場合にはどうなるのか、これは非常に問題が多いと思います。  時間もだいぶ迫っておりますから、私は引き続いて次の機会にこれをやるとしまして、もう一つの疑問といいますか、変だなと思う話をお聞きをしておきたいと思います。  これは例の西山記者が七一年六月十八日に書いておる記事であります。「さらに、対米支払いの総額は、この三億二千万ドルをはるかに上回る。沖繩返還にともない一本側は、米軍施設改良工事費の名目で、来年度から二百三十四億円(六千五百万ドル相当)の円を支払うことになったからだ。このカネは一応、米軍施設改良工事費となっているものの、実際の使途は、「米側の自由」ということのようだ。」この文章があります。かなり断定的に前段は書かれております。これははたしてこういうことがあったのか、なかったのか。またはこういう点はひょっとして実際問題として予算に別の形で組み込まれる危険性というものもありますので、私はこの際聞いておきます。これはどういうことになっているのですか。
  327. 吉野文六

    ○吉野政府委員 その、先生御引用の新聞の記事は、必ずしも正確な事実の内容を伝えているとはわれわれは考えておりませんが、いずれにせよ交渉の過程において、復帰時及びその後におきましてアメリカ側が沖繩の基地を整理統合する過程におきまして、かなりの代替施設の建設その他が行なわれることになるわけでございます。それに要する費用を先方は見てほしいということでございまして、これはわが国といたしましても地位協定に従いまして見るつもりである。先方はその額を大体当時の見積もりとして六千五百万ドルと見たということでございますが、これは何も限度がある金ではございません。地位協定に従いましてわれわれは支払っていきたい、このように考えております。
  328. 西中清

    ○西中委員 こういう話があったことは事実ですね。もう一ぺん確認しておきます。
  329. 吉野文六

    ○吉野政府委員 事実でございます。
  330. 西中清

    ○西中委員 私はこれは非常な問題があると思いますね。いままで四百万ドルが問題でございましたが、この点についても沖繩国会では明確ではなかったと思うのです。そしていまお聞きしますと、何らかの形で、そしてこの事実もあったということですね。もう一度、その点はどうなんですか。
  331. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは協定とか約束とかいう意味ではございません。御承知のとおりわれわれとしては沖繩における施設を整理統合してほしい。先方もそれは彼らの任務の範囲内においてやりましょう、しかしながらそれには新たな施設の建造を要する、そこでそれは地位協定に従いましてわがほうも負担しましょう、こういうことでございますから、これは特別に取り立てて問題にすべき問題ではないのだろうとわれわれ考えております。
  332. 西中清

    ○西中委員 地位協定を適用するのは復帰してからの問題でありますから、それからの話でもこれはいいわけですね、ほんとうを言うと。これは協定上には出てきてない。また付属文書の中にも出ておりません。いま聞いたところはっきりしてきましたけれども、これも了解事項か合意事項か何か知りませんけれども、書類があるのじゃないですか、どうでしょうか。
  333. 吉野文六

    ○吉野政府委員 その点は何ら政府間の合意はございません。先ほど申し上げましたとおり、そのような形式のやりとりがございました。   〔永田委員長代理退席、正示委員長代理着席〕 それがわれわれとしては唯一の交渉の経緯でございます。
  334. 西中清

    ○西中委員 それでは六千五百万ドル相当の内容はどういうようになっているのか。私はむしろ地位協定第二条及び第二十四条の規定を見ても、アメリカに提供した後の施設、区域に対して補修、改良、新設、増設に対してわが国が財政負担する義務というものはないことは明らかだというように判断しております。この点について政府の第二条、第二十四条、この二つの解釈もあわせて説明をしていただきたい。そしてこの六千五百万ドルというのは一体どこからそういう根拠て出ておるのか。あなたは先ほど肯定された。どういうものをどうするのですか、どういう基地をどういうように統合するのですか。
  335. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは具体的にはどのような基地をどういうように整理し、どのように統合するかということは、何ら先方もわがほうに提示しませんでしたし、われわれもまたそのような要求をいたしましたが、先方もそれはきまっていない、こういうことでございます。しかしながら、いずれにせよ、そういうもののために、相当の費用がかかるだろうということでございます。これは先生御指摘のとおり、地位協定の二十四条の経費の分担の規定によりましてわがほうが持ち得るものは持つ、持ち得ないものは持ち得ない、こういうことであります。
  336. 西中清

    ○西中委員 委員長にお願いしたいのですが、いまの問題は、これは国家の財政に関する問題でございます。もう少し明確に資料を出してもらわなければ私は納得できない、少なくとも局長のほうからは肯定的なお話があったわけでございますから、どういう話し合いになったのか、この点を資料としてお出しいただきたい、このように御配慮願いたいのですが、どうでしょうか。
  337. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは単なる交渉の際のやりとりでございまして、特に差し出すべき資料もございません。なお、これは予算でございますからそのつど施設庁が予算を請求ますることでございますから、その予算の際に審議していただく、こういうことになるだろうと思います。
  338. 西中清

    ○西中委員 予算関係の部分でございますし、しかも、これからこれを肯定的にあなたは進めようとされようとしているのですから、これに対してはっきりとした答えを出すのが当然じゃありませんか、そのようなことをやらないのは問題ですよ。きちっとそれははっきりしてくださいよ。それを委員長におはからい願いたいと思うのです。
  339. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 私は代理でございますが、西中委員に申し上げます。この問題は、先ほど来アメリカ局長がたびたび言っておりますように、地位協定によってどの程度日本側が負担するかということがいま問題でございまして、それがきまりますると、これは防衛施設庁の予算から出す問題でございます、こういう答弁をしておるように私は聞き取ったわけでございます。したがいまして、きょうこの委員会が済みましたあとで理事会も開かれることでございますから、その席でさらにこまかく、詳しく申し上げたいと思います。
  340. 西中清

    ○西中委員 委員長お話は了解いたしました。ただ、もう一点申し上げておきたいのは、この問題では、三億二千万ドル以外には負担すべきものは何もないとしばしば沖繩国会で答弁があったわけでございます。したがいまして、きょうは、もう時間もありませんからこれ以上進めませんが、しかし、何らかの話し合いがあったことは事実、そして、あなたもそれを肯定された。私は、金額の積算とかそういうものは要求はいたしませんにしても、どういう経過があったのかということはまた資料として御提出願いたい、こういうわけでございます。そして、時間がございませんが、先ほどの七千万ドルにおける限り、ばく大な軍事資産の問題、これを無償で置いていくことについても、こういう重大な問題が暗黙の了解とされたのか、何らか別の文書があるのか、この点私はまだ釈然としないものを残しております。さらにまた、いまの六千五百万ドル、これまたお話し合いをされたことは事実で、肯定をされました。すなわち、私たちが言いたいのは、こういうことについても、沖繩国会のこの答弁とはかなりニュアンスが違ってきておるわけでございます。こういうような状態では審議というものも――非常に残念なことでございますが、私たちもいままでの論議というものが、非常に国会を軽視しておるように思われてなりません。今後外務省としてはその点は十分御反省を願いたい、このように思うわけでございます。  それでもう一つの問題は、昨日の決算委員会におきまして、わが党の委員が在日米軍の電話の使用料につきまして、これはいままでの政府答弁からいきますと、当然請求すべきものだという立場から一転して、帳消しというような、そして沖繩交渉と何らかの関係があるものではないかというように伝えられておりますが、こういう問題について、坂井委員からは、日米合同委員会の議事録の提出を求めております。これについてはまだはっきりした結論は出ておらないようでございますが、私は、ここでこの合意議事録を含めまして、今日までの日米合同委員会における合意議事録というものはほとんど出された、公表されたことはございません。こういう際にもう何年も何年もこの議事録というものは秘密として置かれておるのですが、むしろ今回のこのような事件を契機としてお出しになったほうがいいのではないかというように思うのですが、この点はどのようにお考えでしょうか。
  341. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この合同委員会の記録は、そのままは発表しない、不公表にしておくというのが従来の取り扱いでございまして、したがって、今回の点につきましても議事録を提出することはひとつかんべんしていただきたいと思います。  なお、御存じのとおり、合同委員会の議事録はそのつど要旨だけは発表しております。したがって、それによって十分目的は達せられているとわれわれは考えております。
  342. 西中清

    ○西中委員 要旨ではよくわからない、できるだけわれわれとしては詳しく知りたい、そういう気持ちにあるわけですね。しかも古い資料をいつまでも秘密扱いにするということはないと思う。少なくとも秘密外交としてのいま批判を受けているところでございますから、むしろ積極的に出すべきではないかというように私は考えております。過去にやはり出されたという前例というものがあるでしょう、どうでしょうか。
  343. 吉野文六

    ○吉野政府委員 過去におきましても、国会の御要請によりまして要旨はすでに提出しております。これもその一つでございます。このような要旨はときどきまとめまして、必要があれば提出できると思います。
  344. 西中清

    ○西中委員 もう時間も参りましたので、最後に外務大臣一つだけ……。  先ほどから事前協議の問題がいろいろとございました。きょうの新聞では福田外務大臣の十日の参議院予算委員会における事前協議再検討発言として、その意味するところはどうこうというように伝えられておりますが、福田外務大臣が事前協議について再検討される、これはいろいろと先ほど具体的な問題の提起がございました。しかしこれは問題がかなりたくさんございます。どういうお考でそういう発言をされておるのか。簡単に言いますと、外務大臣は、悪くいえば、当面何とかこれは話をしてということで、今日のこの事態をあまり波立たせないように発言をしたのだという解説もございます。それ以外に実際に取り組むとされるならば、たとえば岸・ハーター交換公文の改定を意味するのであるかどうか、または事前協議の運用のみを再検討されるのか、またはそのほか在日米軍の戦闘作戦行動、こういう具体的な問題についていろいろ国会で問題になっていることを一々チェックをされるのか、その辺のところはどういうふうにお考えになってこの発言をされておるのか、御説明願いたいと思います。
  345. 福田赳夫

    福田国務大臣 事前協議の基本的な考え方を変える考え方は持っておりませんです。ただ、その運用、適用ですね。これは国会でも皆さんからいろいろ御質問を受けて、そのつど答弁に当惑をするような状態でありますので、明確にお答えができるようにおさらいをしてみたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  346. 西中清

    ○西中委員 終わります。
  347. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 続いて、曽祢益君。
  348. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は明日の連合審査会におきまして、外務省の機密漏洩問題について、言うならば本格的な論議質疑を行ないたいと思いますので、きょうはその問題に深く触れるつもりはございませんが、ただ昨日の参議院の段階でございましょうけれども、漏洩した電報、これは現状においては少なくとも三本というふうに承っておるのですが、そのうち二本は秘密を解除した、こういうふうに伝えられております。はたしてそうなのか。なぜ二本は解除され、三本目は解除されないのか。解除した基準はどうなのか。それから解除された以上は少なくとも直ちに国会、本院においてはこの委員会に解除したそのものをお出し願いたいと思うのですが、その御用意があるかどうか、これをまず外務大臣から伺います。
  349. 福田赳夫

    福田国務大臣 漏れておると考えられます電報が三つあるのですが、二つは往電でありまして、一つは来電であります。その往電の二つの分につきましては、すでに議員のほうからも公表されております。そういうことで私どもがこれを秘密にしておく必要はない、こういうふうに考えておるからこれを解除した。それからもう一つの来電のほうにつきましては、来電がある事実はこれは議員のほうから公開をしておりまするけれども、まだその電文の全容につきましてはこれを公表しておりません。私どもとしてはこれはまだ機密にしておく必要がある、かように考えております。
  350. 曾禰益

    ○曽祢委員 そういたしますと、外務省の機密文書の扱いにはいろいろな基準があると思うのです。それで電文がそっくり出ると、やはり暗号保持上の機密を解除せざるを得なくなる、あるいはそれがばれた、こういう意味でばれたものだけはやむを得ず秘密から解除するのか、どういう基準なのですか。文書の内容の機密とそれから暗号の機密保持のための機密と両方あるのじゃないかと推測されるのですが、どうなのですか。
  351. 福田赳夫

    福田国務大臣 外務省の機密と申しますのは、これは申し上げるまでもございませんけれども、人と人との話、それを電報に載せるというケースが非常に多いのです。そういうものを一々公開したんじゃこれは外交交渉はできない、こういうようなケースが多いわけであります。今度漏洩したその往電ですね、まさにその点に該当する、こういうことで機密にしておったわけでありますが、不幸にしてそれが漏れちゃった。もうこれを隠しておく理由もなし、隠しておくこともできない、こういうことになりましたので、この機密を解除する、こういうことになったわけなんです。  もう一つの問題は、暗号上の問題があるわけなんです。今度日本の電報を、秘密を解除するということになりますと、暗号に大きな影響がある。この暗号につきましてもまた考え直さなければならぬというようなことにもなり、非常に当惑をいたしておる、こういう状態でございます。
  352. 曾禰益

    ○曽祢委員 これ以上きょうは深くやりませんが、解除されたものをいまここに直ちに出していただく御用意ございますか。この私の質問中にでも、どういうものが解除されたのだか、それと議員側が提出した、あれは委員会に提出しているのじゃないのですけれども、発表したといいますか、それとの検討をしてみたいので、これを御提出願えますか。
  353. 福田赳夫

    福田国務大臣 曽祢さんにお届けすればいい問題なんですか、あるいは委員全体に配れという問題なんですか。
  354. 曾禰益

    ○曽祢委員 委員会に御提出を願います。
  355. 福田赳夫

    福田国務大臣 それじゃ委員会に提出をいたします。
  356. 曾禰益

    ○曽祢委員 それではそれを見た上であるいは質問を変えるかもしれませんが、私は他の問題について質疑を行ないたいと思います。  最初に、明十三日からチリのサンチアゴにおきまして国連の貿易開発会議が、第三回目の非常に重要な会議が開催されるわけでございます。この会議に臨む日本政府の基本姿勢、これについてひとつ外務大臣からここにはっきりと御説明を願いたいと存じます。
  357. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまお話しのように、このサンチアゴにおけるUNCTAD第三回の総会はきわめて重大な意味を持つ、こういうふうに思います。つまり五極時代ともいわれ三極時代ともいわれますが、もう一つの極があるわけなんです。その極を度外視する世界政治、これは私はあり得ない、こういうふうに思います。そういう意味合いにおいて、今回の会議は非常に重大だと思う。  特にわが国経済的に非常に強大になってきた。そこでおくれた国々から非常な期待を持たれるわけであります。これはもうアジアの国々はもとよりでありますが、アフリカの国々に至るまで、世界のすみずみから期待を持たれる。その期待を持たれる日本がどういう姿勢を示すか、そういう意味合いにおいて、この会議わが国にとりましては一つの試練の場でもある、そういうふうな基本的な認識を持っておるわけであります。   〔正示委員長代理退席、委員長着席〕  そこでわが国といたしましては、いろいろこの対処の方針というものを検討しておるわけでありまするが、その具体的なことは、これは愛知全権に御一任をいたしております。その会議における雰囲気、そういうものもとらえて出していかなければならぬ姿勢でございますので、これは一任しておりますが、問題は三つあるのです。一つは通貨の問題であります。一つは通商の問題であります。それからもう一つの問題は対外経済協力、こういう問題であります。  通貨の問題につきましては、これは昨年の秋世界的な規模で通貨調整が行なわれた。そうしますと、これが大体十カ国蔵相会議においてきめられるというようなことから、開発途上国のほうではかなりこれに反発を示したわけであります。それでおそらくこのUNCTADの三回総会でもこれが問題になるであろう、こういうふうに思う。その辺につきましては、私どもはこのUNCTADにおける開発途上国側の立場、こうこうものに理解を示しながら対処していきたい、こういうふうに考えております。  それから第二の問題である通商の問題でありますが、これは特恵関税につきましては御承知のとおりの状態となりましたが、まあ関税につきましてもさらに問題もあります。ありますが、関税外の諸問題、開発途上国の商品が先進工業国によって受け入れられやすいような状態にすること、特に開発途上国は第一次産業製品が多うございますから、そういうものに対する対策をどうするかということでございますが、これに対しましても、わが国は開発途上国の立場を尊重するかまえをとりたい、こういうふうに考えております。  それから、第三に申し上げまする国際経済協力の問題ですが、これはこの会議において最も大きな問題になるだろう、こういうふうに思う。これがわが国のまた試練の場であるというその意味合いにおいての問題点なんです。わが国はすでに量的にはアメリカに次いで世界第二の経済協力を行なえるような国になってきましたけれども、しかし、その経済協力の規模よりも質の問題というのが論議されるだろう、こういうふうに思います。質的側面からいいますると、わが国経済協力というものは、まだ世界に対しまして誇り得るような状態ではない。むしろ批判を受ける状態でもある。こういう情勢下において、わが国がこの会議においてどういう対処の方針を示すのか。これはもう申し上げるまでもございませんけれども政府開発援助、この比率を高める問題です。これがわが国の財政と関連いたしまして大きな問題でありまするが、これに対してどういうような受け答えをするか、これは愛知外務大臣に一任をいたしております。それから、政府援助の条件でありますとか、そういうことにつきましては、大体愛知外務大臣に基準を示しまして、それで応待するように、こういう指示をいたしておるわけであります。  いずれにいたしましても、その三つの点が大きな課題になる。その三つの点につきましては、ただいま申し上げましたような姿勢で対処する、こういうかまえでございます。
  358. 曾禰益

    ○曽祢委員 何といいましても、わが国の基本的な対外姿勢の重要な柱として、特に発展途上国からエコノミックアニマルだ、日本だけのことを考えているのではないか、とかくこういう非難もあります。また、実際上の日本経済侵略ではないかという誤解等も、援助といいながら非常にその点に問題があるわけです。これは非常に重要な段階でありするから、いま大体三つに分けられました問題の中で、まず開発援助のことについて私からさらに伺いたいと思うのですが、お話のように、わが国の援助の額からいえば、七〇年におきまして十八億二千四百万ドル、GNPの〇・九三%、大体額においては世界第二位だといっていばっているようでございます。この前の会議GNP一%のラインにほとんど近づいた、こういうものの、現実には大部分がいわゆる輸銀の借款でございまして、それは結局、日本のビッグビジネスがあるいはプラント輸出あるいは造船等のクレジットのあれであって、ほんとうに開発国の社会的発展あるいは地場産業の開発等にプラスとは必ずしもいえない、こういううらみがございました。しがって、大部分が輸銀のクレジット、それが十一億四千四百万ドル、いまの大別の言われたように、その中で政府の援助が、これは全体で四億五千八百万ドルにすぎない。全体では総額の四分の一である。しかも、その中の純粋の贈与はたった一億二千万ドルにすぎない。この点から見ますると、なるほど総額では世界第二位といいながら、その開発国、受け入れ国から見ると、いかにもしわい、けちな政府援助であって、政府援助としては実はGNPの、これは七一年度の計算のようでありますが、GNP対比はたった〇・二二%にしかすぎない。フランスは〇・六五%、オランダは〇・六三%、先進国平均が〇・三四%、これから比べと非常に低い。むしろ政府援助からいうとわが国は第十三位。この中には、先進国の中には自分の旧植民地に対する援助等政治的理由もありましょうが、それにしてもあまりにも政府援助が少な過ぎるではないか。これが非常に大きなポイントでありまして、少なくともこの点について〇・七%までGNP対比でやらなければならないというこの要請にこたえる、この問題があるわけであります。しかし、これは単に総額の問題じゃなくて、対外経済援助あるいは技術援助の姿勢そのものを根本的に直す。日本の貿易促進あるいは向こうからローマテリアルを取るために必要な開発だったら幾らでも金を出すというのではなくて、もっと開発途上国のために、その社会的経済的進歩、南北問題の解決に持てる日本が応分の役割りを演ずるのだ、だから政府援助を多くするのだという基本姿勢がなければならない問題じゃないか。さらにまた、この借款にいたしましても、やはりわが国の借款の条件そのものが、現状においては平均年率は三・九%、期限は二十一・四年、据え置き期間が六・七年でございまして、これは先進国の平均が年率二・八%、期限が二十九・九年、据え置き期間が七・四年、こういう点から見てももう先進国水準じゃ全然ないのだ。クレジットの内容を見てもそういう点があまりにも露骨にあわれていると思うのです。これをどう考えるか。  単に愛知――あなたは愛知外務大臣と言われたけれども、前外務大臣ですが、それにまかさないで、これこそ日本の姿勢を正す非常に重要な、ことに国連としては第二のいわゆるデケード、十年計画のスタートにおける七〇年代における重大な、そして日本の姿勢が非常に問われているときに、この政府援助の内容を非常に大きくする、そういうような対外援助の姿勢そのものを直す。クレジットにしてももっとベターな条件を出す、こういう対外援助の姿勢そのものを基本的に直す。その結果が、いま直ちでないにしても、GNPの〇・七%が政府援助だという理想をはっきりこの機会に対外的にも打ち出す、こういう姿勢が必要であろうと思うのですが、その点だけに限って大臣のもう一ぺんの確たる方針をお聞かせ願いたいのであります。
  359. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府開発援助は、これは非常に財政資金を要する問題なんです。これは金融資金の問題じゃない。一昨年、一九七〇年度でいいますと、約千億くらいを使っておるわけです。それがかりにいまお話の〇・七の目標に達する、これを目標一九八〇年というふうに設定いたしまして考えてみる、その場合にはGNPがどういうふうにこれから伸びていくかということを想定しなければならぬわけでありますが、かりにノミナルで一三%成長だ、こういうことを前提にいたし、一九八〇年にGNP〇・七の政府開発援助を達成するということにいたしてみますると、この千億円の額が実に九千億内外になるわけなんです。それが財政資金を必要とする、こういうことになる。そこで〇・七%、なかなかこれは容易ならざる数字なんです。でありますが、開発途上国は一致の意見といたしまして先進工業国に〇・七%の援助の要請をしておる。そういうようなことを考えますと、この要請を度外視するというわけにもいかぬ。しかし〇・七%という目標を日本として承諾をするということになりますと、それを達成する期限を示す必要があろうかと思うのですが、そうなりますとこれはかなり大きな財政負担を年々積み重ねるという問題があるのです。期限を示さないでわが国は〇・七%達成しますと言うと、たいへん問題がぼやけてしまう。イギリスなんかはそういう同じような悩みがあるんだと思います。そこで〇・七%ということを言わないようなんです。中間の数字を言いまして、中間の年度、何年先にはここまでいきますということを言っておりますが、わが国においてどういうふうにいたしますか、これは愛知代表がその場の空気を見てひとつ対処していただきたい、こういうふうに言っておるのです。わが国としては先ほども申し上げましたとおり、開発途上国に対しこれは世界的な課題としてわが国として答えていかなければならぬ、こういうふうに考えておりますが、その辺で御理解を願いたい、こういうふうに考えております。非常に積極的にしかも勇気ある態度をもってこの会議には対処するつもりでございます。
  360. 曾禰益

    ○曽祢委員 会議におけるやりとりといっては語弊がありますけれども、〇・七%にしても期限の問題がからんできましょうし、そこら辺にはテクニックの分野もありますからこれは出先の代表でもけっこうですけれども外交政策の大きな柱の一つとして、それは対米外交、対中国外交、対ソ外交、平和外交、安全保障の外交、いろいろございます。しかしもう一つの柱はやはり南北問題に対する日本の姿勢を外に示しまた国内の姿勢もそういう点に国民の協力を求めるという大きな姿が必要ではないか、こういう意味で特に強調したわけです。これは息の長い政策目標としてひとつぜひ真剣に取っ組んでいただきたいわけです。  対外援助のそういったような政府援助及びクレジットの内容の改善のほかに、いま御指摘のように通貨問題についても、たとえば開発途上国側からはSDRについてもこれを何とかひとつ開発のほうにリンクする方法を考えてくれ、こういうようなこともあります。また援助についていわゆるひもつきでなく、日本のやつは全くひもつきで、原料は開発して持っていってしまうし、それで日本の商品はゴリ押しで押しつける、いわゆるアンタイドエードというのがない、ひもつきをやめろという、これはむろん貿易の問題になりますけれども、基本精神においてやはりそういったようなエコノミックアニマル、日本商品のはんらんだけを目的にしないような態度が必要ではないか。通貨の問題及びひもつきの問題この点についてはどうお考えですか。
  361. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま御指摘の条件の問題それからアンタイドの問題それはお話しのような態度をもってこの会議に臨んでおるはずでございます。
  362. 曾禰益

    ○曽祢委員 商品の問題につきましても、先方はやはり第一次産品の価格の安定という点から非常に望みを持っておりますし、また向こうの一次産品の買いつけについてやはり割り当て制度ぐらいはっきりしてもらいたい。マーケットシェアリングといいますか、そういう希望もあるようでございますが、この点についてはどうお考えですか。
  363. 平原毅

    ○平原政府委員 お答えいたします。  一次産品のアクセスの問題に関しましては、わが国は農産物資を中心といたしまして過去数年間開発途上国からの輸入が逐年ふえておるという実績がございますので、この点を今後とも努力するということははっきり言えるわけでございます。  なお開発途上国からの輸入のシェアをどうするかという問題に関しましては、商品協定的な需給関係の調整という点にはわが国といたしましても相当積極的な面が出せるかと思いますが、御存じのように、一方自由化要請ということもございまして、グローバルの割り当てということを一般的にわが国はいたしておりますので、これを開発途上国にはっきりした形でシェアをそれぞれ与えるということは実際問題としては一般論からいって非常にむずかしい、むしろ商品協定的な面の需給の調整という面で開発途上国の希望というものをある程度かなえる方向にいきたい、こういうふうに考えております。
  364. 曾禰益

    ○曽祢委員 最近のいわゆる南北問題の中に、発展途上国の中に先発のグループと後発のグループとの間にかなりの利害関係の衝突が起こっているようであります。わが国としては何といっても地理的な関係もございますし、アジア特に東南アジア等の途上国を中心に考えてきたことは、私は間違っていないと思います。しかし、同時にわが国の援助に対する国際的な割り合い、役割りからいって、それだけにとどまらない、やはりグローバルな見地からの援助にもむろん加わるという意味で――日本だけがじゃこざいませんが、加わる必要に迫られているのじゃないか。その点について後発発展途上国とそれから先発のグループとの関係、それから日本としてアジア以外の途上国に対する態度、これについてどうお考えですか。
  365. 福田赳夫

    福田国務大臣 先発、後発の関係につきましては、やはり先発というか、テークオフの段階に入った発展途上国、そういうものにつきましては後発国に対するよりは条件において差異が出てくるとか、やはりその相手国の状況を配慮しながらやっている。つまりわが国の財政にも限りがあります。そこで、なるべく先発の国にはわが国の財政負担を軽くして、その分を後発のほうへ回す、こういう配慮をするわけです。  それから地域的に見ますとやはりアジアの諸国、これはわが国の安全というような問題あるいはアジアの平和というような問題、そういう問題にも関連のある地域でございますので、特にいままで配意をしてまいったわけでございますけれども、これはいま曽祢さんの御指摘のように、いまやわが国はアジアの日本という立場ばかりじゃありません、やはり世界日本である、世界に使命を持った日本であるという立場でもありますので、最近はアフリカの諸国なんかにも非常に多くの接触を持ってくるようになってきております。南米についてはもとよりでございます。また中近東諸国、これにも接触を持つ、こういうふうになりつつある。世界じゅうのおくれた国々に対しましてわが国経済力を背景としての奉仕、これをいたしたい、かように考えております。
  366. 曾禰益

    ○曽祢委員 次に、日ソ関係ですけれども、最近ソ連側の平和条約及び領土問題に関する考え方に若干弾力が出てきたようにとられる節々がなきにしもあらず、領土問題はこれは解決済みであるというよりも、この問題を踏まえた平和条約の問題について話し合いをしよう、これはもう本年の終わるころまでにはやろうということの合意があったわけですが、あなたのほうの外務省に得られている現在時点における情報から見て、領土問題について従来の硬直した姿勢に弾力性が出てきたというような、何かめどといいますか期待といいますか、ございますか。いかがでしょう。
  367. 福田赳夫

    福田国務大臣 日ソ領土問題につきましてはソビエト側に微妙な変化が出てきた、こういうふうに見ておるのです。それは何かと申しますると、平和条約交渉、これはもう領土確定交渉である、こう言ってもいいぐらいなものであります。その平和条約交渉を年内に開きましょう、こういうことを言うようになってきたことですね。これは私は、たいへん大きな変化である、領土問題について微妙な態度の変化がある、こういうふうに見ております。  しかし、さてこれが具体的に一体決着がつくかどうか、こういうような角度になりますると、これはなかなかまだまだ容易ならざるものがあるのじゃあるまいか、こういうふうに考えておるのです。日ソ関係全体としますと、これは最近のブレジネフ演説なんかを見ましても、日本に対しまして非常に親近感のある演説をいたしておる、あるいはソビエトと関係のあるいろいろな国々からの情報によりましても、わが国に対するソビエトの態度というものには非常に顕著な変化が出てきておる、こういう状態でございまするが、さて領土の問題になると、それが直ちに領土問題に反映してくるかということになりますると、私はそうは楽観はしてない。やっぱりこれは一億国民全体が火の玉のようになって今後しばらくソビエトに対して要請をし続ける、こういう姿勢がますます必要になってきた、こういうふうに考えるわけであります。
  368. 曾禰益

    ○曽祢委員 話題を変えまして、キッシンジャー特使が日本に来るのがおくれるようになったということをきょうのニュースで聞いているのですが、日本側にどういうような通報があったのか、お知らせ願いたいと思います。
  369. 福田赳夫

    福田国務大臣 諸般の情勢によりキッシンジャーの来訪がしばらくおくれる、こういう旨がキッシンジャー氏から牛場大使のほうに通報があった、こういうことでございます。ただ、これはおくれるのであって取りやめということじゃないようです。
  370. 曾禰益

    ○曽祢委員 大体、たとえば五月の三旬までとかそういういつまでということは言ってないわけですか、当分というようなところで。むろん氏が来ることには変わりはないけれども、当分ということで不特定の期間なんでしょうか。その点どうなんでしょうか。
  371. 福田赳夫

    福田国務大臣 キッシンジャー氏はいつまで延ばすのだということは特定をいたしておりません。おりませんが、これは私のほうの期待ですが、どうせキッシンジャー氏が来られるなら、これはニクソン大統領のソビエト訪問前に来ていただきたい、こういうふうに考えております。これは私の希望でございます。
  372. 曾禰益

    ○曽祢委員 申すまでもないのですけれども、当分おくらした理由について、やはりベトナム問題というようなことが最大というかほとんど唯一の原因ですか。そこら辺についてお差しつかえない限りおくれた理由について御説明願いたいと思います。
  373. 福田赳夫

    福田国務大臣 キッシンジャー氏がおくれました理由につきましては、諸般の事情により、こういうことだけしか申しておりませんけれども、私の想像ではベトナム問題であろう、こういうふうに存じます。
  374. 曾禰益

    ○曽祢委員 最後に、実はこの前の本委員会におきまして、アメリカは最近の日本の商品の輸入に対してまたまたいろいろな方面から輸入制限等の方法をとってきておるようだ、またダンピングの問題についても触れて私から御質問いたしました。はたせるかなと言っては言い過ぎかもしれませんが、昨日以来の新聞等の記事によりましても、ダンピングに関してもともと米財務省は、もう三月末に新しいドルレートで計算した輸出品の輸出価格がもしその商品の国内価格を下回っているような場合にはダンピングとみなす、こういうような運営規定をはっきりきめて、そういう方針に基づいて一般的に日本側、これは日本側だけじゃないかもしれませんが、これはどの商品に対してもそういう態度をとるのでありましょうが、通貨調整をやった国に対して通貨調整による円等の切り上げに伴う価格調整がほんとうにできてないような場合にはダンピング税をかける、こういう姿勢でわが国のほうにも申し入れたという記事がありましたが、その実情並びにこれに対する政府の基本的な対処の方針をお聞かせ願いたいと思います。
  375. 平原毅

    ○平原政府委員 お答えいたします。  最初先生の申されました三月末のアメリカの財務省の発表でございますが、ただいまおっしゃられましたとおり公正価格を下回る販売、すなわち、いわゆるダンピング問題の基準といたしまして、通貨調整後その通貨調整がはっきりと反映していない場合、これもダンピングと考えられるかもしれぬ。英語ではすべてクッドという過去形にいたしまして、はっきりとそのとおりであるとは言い切っておりませんが、財務省の発表といたしましては、そうなりかねないという基準を示しております。これの意味いたしますところは、発表自身は電報にいたしましてわずか三ページくらいの簡単なものでございますけれども、先生御心配のとおり、わが国の場合も含めましてこのようなはたして白か黒かというような判断の基準というものが実際の商売、貿易上必ずしも実際的でございませんし、もしこれを型どおり実施された場合は非常に困るわけでございます。そこで、幸いに昨年のサンクレメンテの会議におきまして日米双方の間においてこのアンチダンピング問題を今後協議しようじゃないかという話がございましたので、その第一回の会合を、これはアメリカ側の申し入れではございませんで、日本側からサンクレメンテで話し合ったアンチダンピングに関する日米協議をすぐ開こうではないかということを申し入れたわけでございます。そしてけさアメリカのほうから返事が参りまして、今月の二十七日にその第一回の会合をワシントンで開こうということに同意してまいりました。したがって、この日米協議を通じまして、私たちといたしましては、先方がこのような基準に基づきましてどれほど実際的にやろうと考えておるのか、またその考え方につきまして、いろいろ不当と考えるような点がございますので、その点をついていきたい、そのように考えておる次第でございます。
  376. 曾禰益

    ○曽祢委員 これでやめますが、先ほど冒頭にお願いいたしましたこと、外務省から、機密を解いた電報を本委員会に私の質問中にお配り願うと言ったんだが、それはどうなんですか、お確かめ願いたいと思います。
  377. 櫻内義雄

    櫻内委員長 ただいま取り寄せておるそうでございますので、委員会終了までに間に合わせたいと思います。
  378. 曾禰益

    ○曽祢委員 場合によったら、そのことについて一言二言質問する権利を留保して、これでやめます。
  379. 櫻内義雄

  380. 松本善明

    松本(善)委員 秘密文書問題も非常に大事でありますが、明日も連合審査が行なわれますので、きょうは事前協議の問題について外務大臣に伺いたいと思います。  三月二十五日の衆議院の予算委員会第二分科会で、外務大臣に事前協議の問題、かなりいろいろ伺いました。そのときに時間がありませんで残しまして、しかし非常に重要な問題がありますので、ここで伺っておきたいと思います。  それは事前協議の配置の変更に関する基準、事前協議を要するような部隊の規模についてですね。一個師団云々というようなことがありますが、この問題について、アメリカ側は、日本との間に了解はない、日本の国会でたびたび言明がなされているという、それだけである、そのジョンソン次官のサイミントン委員会での答弁を引用いたしまして外務大臣にお聞きした、覚えておられると思いますが、そのときの外務大臣の御答弁は、「「日本政府解釈が公式に記録されたと思う。」そこまで言っているのですから、非常にはっきりしておるのじゃないか」、「それできわめて事は明快じゃないか、そういうふうに考えております。」というふうな答弁でありました。時間がないために、それ以上詰めませんでしたけれども、これはいままでの事前協議についての政府答弁とは全く違うわけです。日米間では口頭了解がある、この配置の変更に関しては、それで一貫をしてまいりました。そういう意味での拘束力のある紳士協約があるという説明でありましたけれども、そういうものに違反をすれば、口頭了解でありましてもそれに違反をすれば、条約の義務違反になるほどの重大な問題であります。それをアメリカのほうでは、そういう口頭了解はないと言っているわけです。これは、藤山・アイゼンハワー口頭了解をアメリカ側が意に介していないということなんです。これは外務大臣がこの間三月二十五日に言われたようなことでは済まない問題であります。この点について、日本政府が何らかの意思表示をアメリカに対してしたかどうか、この点を伺いたいと思います。
  381. 高島益郎

    ○高島政府委員 ただいまの御質問で、配置の重要な変更につきましての政府の従来の見解についてのお尋ねでございますけれども、この点につきましては、従来からしばしばお答えしておりますとおり、陸上部隊の場合は一個師団程度、その他云云ということで日米間の了解がなされているということをお答えしております。  ただいま、サイミントン議事録の御指摘のやりとりの部分につきましてはこれと違うではないかというお尋ねでございますけれども、このやりとりの全体をお読みいただきますれば、米側としても、いまさっき述べましたような、日本政府が従来申し述べております見解で十分了解しているということは了解いただけるんじゃないかというふうに思います。
  382. 松本善明

    松本(善)委員 これは、サイミントン委員会の議事録を読めば、そういうものではない、基準はないということをはっきり言っておるので、いまの答弁ではとても満足できないということだけを言っておきましょう。  それから外務大臣は、アメリカ側とこの際事前協議問題についていろいろ全体話し合ってみるという話でありました。ところがジョンソン次官はサイミントン委員会でこういうふうに言っております。「米国政府日本政府も、あらゆる種類の不測の事態を想定し、いずれかの政府が事前協議が正式に採用されるべきであると考えるあらゆる状況に関して、あらかじめ確固とした了解に達しておこうとしたことはない。」と言っている。要するに、事前協議問題についてあらゆる状況に関してあらかじめ確固とした了解に達しておこうということはアメリカ側は考えていないんだ、そういうことはやらないんだ、こういう立場なんです。これはアメリカ側からするならば融通無碍で、この事前協議にかかるかのごとく、かからないかのごとく、そうして自由に日本の基地を使えるというのでアメリカ側としてはこういう考えに立つであろうということは十分に理解できる点であります。けしからぬことでありますけれども、そういうことを考えるであろうと思うわけです。日本政府は、本来その具体的な基準をきめて明確に――これは日本が戦争に巻き込まれるかどうかという非常に重大な問題でありますから、本来、いままでに明確な基準をアメリカとの間にやっておくべきであった。なぜいままでそういうことをやらなかったのか、この点については外務大臣はどうお考えか、お聞きしたいと思います。
  383. 福田赳夫

    福田国務大臣 非常に抽象的でありますけれども、明確な基準が設定されておる。これは御承知のとおりです。ただ、安保条約締結後十二年にもなりまするから、いろいろのことが考えられる、御論議もある、そういう際に、私どもも皆さんに対して明快なお答えができるようにしておきたい、こういうふうに思いますので、おさらいをしてみたい、こういうふうに考えておるんです。その際、あなたからこの前ずいぶん粘り強く聞かれましたね、駐留のこと、これなんかも明快にしておきたい、こういうふうに考えております。
  384. 松本善明

    松本(善)委員 抽象的ではあるが明確な態度がきまっているというふうに最初に外務大臣は言われましたけれども、やはりそうではないから、先ほど来あるいは今国会でも外務大臣がいろいろ答弁に困ったりする、それで明確にしたいと、こういうことでしょう。私はその明確でない、むしろあいまいもことして、これは役に立つか立たないか空文化されているという非難が非常に強くある。それは、そこに原因がある。その点ははっきりさしておかなければならない。  それから、いま私が申しましたように、アメリカ側ではそういうものをつくりたくないというのが基本的な態度にあるわけです。外務大臣、もし日本側がそういうことを話し合おうとすれば、日本側から明確な、こういうときにははっきりさしてもらわなくちゃ困るということについての日本側の態度をきめて、そうしてアメリカにこうしろ、こういうことを要求しなければ、これはとてもできる話ではないのです。外務大臣、そういうものを日本側として、こういう場合、こういう場合はきちっとさすんだということ、そういう作業をするというお考えがあるかどうか。
  385. 福田赳夫

    福田国務大臣 松本さんと私は、立場がどうも少し違うようですね。あなたのほうでは、おそらく安保条約不要論だ、廃棄論だ、こういう立場のように思います。私どもは、安保条約はぜひともこれは必要なんだ、こういう見地です。ですから、そういう立場に私どもは立ちまして安保条約をいかに円滑に運用するか、こういうことでアメリカ政府と話し合う、こういうことでありまして、安保条約不要論、廃棄論、そういうようなことを前提といたしましての話し合いはいたしませんです。
  386. 松本善明

    松本(善)委員 それはもちろん、外務大臣と私は立場が違います。違いますけれども、事前協議の運用について政府はどういうふうにやろうとしておるのかということを聞くためにこの委員会をやっているわけです。その立場が違うからというわけにはいかないんで、私のお聞きしておるのは、日本側から事前協議についてこういう場合とこういう場合はきちっとかけろということを明確にきめて、そうしてそれをアメリカ側に要求していくというような態度でやるか、そういうお考えかと、こういうことを聞いているのです。
  387. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのことを申し上げているのです。私どもも、アメリカと話をするのですから方針がなければならぬ。しかし、その方針の内容は、松木さんのおっしゃるようなあるいは期待されるような内容にはなるまい、いういうことです。
  388. 松本善明

    松本(善)委員 安保条約を円滑に運用するという方向で話し合うと言われる外務大臣の先ほどの御答弁は、結局アメリカ軍が自由に動けるようにということでないかという私は非常に危惧を感じます。  さらに伺いたいのは、事前協議の手続について先ほども議論が出ました、形式はないのだというような話がされました。これは三十八年の三月二日の衆議院の予算委員会が中川条約局長が、二つの場合が考えられる、一つははっきり事前協議だと申し入れのある場合、もう一つは事前協議とは言わなくて実質がそれに当たる場合やはり事前協議になるだろう、こういう答弁がありました。事前協議と明示しないで事前協議になるような問題が日本側に言われた場合、そしてそれを異議を言わないということによって事実上了解するというような黙示の了解ということは、この問題についてはあり得ますか。
  389. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この問題は、おそらく日本の基地から直接戦闘作戦行動に発進する場合に関する事前協議だろうと思いますが、そのような場合にはわがほうはイエスもあればノーもある。したがって、イエスと言うかノーと言うかどちらかしかないのだろうと思います。したがって、そのイエス、ノーを黙示で言うかあるいははっきり言うかというだけの話だろうと思いますが、普通はそういうものははっきりイエスと言うかあるいはノーとはっきり言うかどちらかではないかと、われわれ頭の中で考えれば考えられるのじゃないかと思います。
  390. 松本善明

    松本(善)委員 いまの答弁は、そうすると、一応黙示ということもあり得るけれども、普通の場合ははっきり言うのだ、こういうことですか。
  391. 高島益郎

    ○高島政府委員 私、中川元条約局長の御答弁の趣旨がどういう意味か、いま記録がないのでわかりませんけれども、この事前協議の問題に関しまして、政府の態度が明示でなくて、黙示でイエスとかノーとか言うことは考えられません。すべて明示的にイエスあるいはノーと言うことだろうと思います。
  392. 松本善明

    松本(善)委員 四月八日の参議院の予委員会で、今回の米軍のベトナム出撃について、外務大臣は、米軍から空軍の移動について六日に通告があったという話でありました。この内容をちょっとお聞きしたいわけですが、だれからだれにどういう内容の話があったか、まず伺いたいと思います。
  393. 福田赳夫

    福田国務大臣 スナイダー代理大使から私に対して通報があったわけです。
  394. 松本善明

    松本(善)委員 どういう内容の話ですか。
  395. 福田赳夫

    福田国務大臣 話は、岩国にあるF4飛行部隊を中心にして、あそこにある空軍関係が南方に移動をいたしますと、こういうことです。
  396. 松本善明

    松本(善)委員 このことについて、戦闘作戦命令を受けているかどうかということに関して、日本側から問いただしたということであります。これは明確に戦闘命令を受けているかどうかということをそういう形でお尋ねになったのでありましょうか。
  397. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおりでございます。
  398. 松本善明

    松本(善)委員 三月二十五日の外務大臣の私に対する答弁によりますと、従来問いただすということはしなかったし、今後もないだろう、しかし万一それを疑わしめるような事態があればアメリカに問いただすこともあり得ようという答弁をされました。今回問いただされましたのは、そういうきわめて例外的な場合だということだと思いますけれども、米軍の移動が戦闘作戦行動と疑わしめるような理由があったからなのか、あったとすればどういうことなのか、その点を御説明願いたいと思います。
  399. 福田赳夫

    福田国務大臣 米軍は、艦艇にいたせ飛行機にいたせ、それはその場所にへばりついておるというわけではないのです。これは艦隊あるいは航空部隊の性格上各所を転々としておるわけなんであります。その一々の場合に、あの移動はあるいは移駐はどういう性格のものだ、こういう問いただしはいたしません。ただ、岩国の今回の場合は、向こうから事前協議の対象ではないけれどもわざわざ通報してきた、そこでこれは事前協議該当事項かとも思いまして、私のほうから特に、これは戦闘作戦命令を受けておる行動であるかどうかということを問いただした、こういうわけなのです。
  400. 松本善明

    松本(善)委員 外務省政府委員答弁によれば、結局日本の基地を離れるときに戦闘作戦命令を受けていたかどうかということが基準であるということで、一貫した答弁でありますが、そういうことになりますと、基地を離れてから戦闘命令を出すということについて米軍が注意をしていさえするならば、日本の基地から自由に出撃することができる、米軍はそのことを気をつけていさえすればいい、日本の基地にいる間は戦闘命令を出してはいかぬ、離れてからそれを出すべきだ、こういう注意だけでこの事前協議条項ということは済むということになりませんか。これは自由出撃ということを結局は認めるということにはならないでしょうか。その点について外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  401. 福田赳夫

    福田国務大臣 その辺が私ははっきり割り切って考える必要がある、そういうことなんです。つまり、岩国から飛行隊が南方に移動する、これはいろいろの場合に移動があるだろうと思うのです。いまたまたまベトナムで戦争がある、そこで問題はありますが、しかし平時におきましても、ベトナムでああいう事態がない場合におきましても、あるいは演習とかなんとかいうことで移動というものが行なわれるのです。そういうことでありますから、どこでこの事前協議の対象とするという線を引くか、こういう問題でありますと、やはり私は、わが国の基地を利用いたしまして戦闘行動をやるあるいはやらないか、その辺が境界線になるのじゃあるまいか、そういうふうに思うのです。そういうことで従来とも政府答弁は一貫をいたしておる、そういうことでございます。
  402. 松本善明

    松本(善)委員 政府は、安保条約は脱法行為を前提としないという立場答弁をずっとやってきましたが、結果的に戦闘作戦行動のために日本の基地が使われたということになるならば、これは当然事前協議の対象にすべきであると私は思う。もしそうでないならば、その脱法行為、いま私が申し上げ決したように、基地を離れてから戦闘作戦命令を出すということさえ守れば自由にできる、脱法行為自由自在、こういうことになる。これは結果的に戦闘作戦行動の基地に日本を使っているというふうに判断ができる場合は、日本側から強く主張してそれをチェックするというのが当然のことではないかと思うのですが、その点についての外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  403. 福田赳夫

    福田国務大臣 その辺も私は松本さんと立場が違うのです。私どもは日米安保条約を結んでおる、日米関係は非常に強いきずなで結ばれておる、こういうことでありまして、アメリカが言うことを信頼をする、そういうことであります。結果がどうなるか、その結果までその結果が予測し得ない段階において判断をすることはできない、そういうふうに思うのですがね。どうも結果まで想像して事前協議の対象に加えるべしという御議論になりますと、私どもなかなか御賛同できない、こういうふうに存じます。
  404. 松本善明

    松本(善)委員 結局、外務大臣の御答弁では、アメリカ軍の自由出撃を認めるということにならざるを得ないということを私は指摘をして、質問を終わります。
  405. 櫻内義雄

  406. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 官房長官に緊急にお伺いしたいことがあります。外務大臣のお時間もあるようですから、手短に言います。  本日午後二時半過ぎ、警視庁の捜査二課長高田さんから横路議員のところに、この問題に対して参考人としてお会いしたいという申し出がありました。御存じですか。
  407. 竹下登

    ○竹下国務大臣 初耳でございます。
  408. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 われわれは、いまやこの横路君の問題は横路個人の問題ではなしに、社会党全体のものとして受けとめております。したがって社会党の立場でこれは拒否をいたしました。その理由としては、蓮見元外務事務官及び西山記者を公務員法百条あるいは百十一条で逮捕することすら違法である、われわれはそういう立場に立っておる。したがって、そのような違法の捜査にわれわれは協力することはできない。ましてや憲法で保障されたわれわれの国政調査権に対して警察権力が干渉するがごときは、断じて許されない。こういう事態に対してどう思われますか、官房長官。外務大臣も同時にその御見解を承りたい。
  409. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは捜査中の事件でございますので、政府としての論評は差し控える、こういうことを今日まで貫いてきております。いまの件につきましては、私には今日の段階、全く初耳の話でございますので、特に私の政府としての論評は差し控えさせていただきたい、このように思います。
  410. 福田赳夫

    福田国務大臣 私としても大体官房長官のお答えと同じですが、よもや警察が国政調査権に介入する、こういうようなことを考えているとは、私は思いません。
  411. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 事国会議員に対する問題に発展してきたんです。この問題は捜査段階でも何でもない。官房長官も国会議員でしょう。そういう立場からこのような事態をどう思われますかということを、見解を聞いているのです。
  412. 竹下登

    ○竹下国務大臣 率直に言って事態の認識が私にございませんので、政府としての論評は差し控えさせていただきたいと思います。
  413. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 われわれが拒否しましたら、聞くところによれば、今度は警視庁ではなしに、警察庁からも同じような申し出がある予定のようであります。  これは緊急の問題でございますから、特に委員長のお許しを得て、中谷議員の関連をお許しいただきたいと思います。
  414. 櫻内義雄

    櫻内委員長 関連質問を許可いたします。中谷鉄也君。
  415. 中谷鉄也

    中谷委員 官房上長官は事態の認識について認識が欠如しているから論評を避けたいと君われましたね。しかし問題は、いま楢崎委員が申し上げたとおりなんです。事国政審議権に関して、国会で議員が取り上げたその国政審議権の前提であるところの、所持しておったところの資料、収集した資料等について警察がとやかく言う、参考人としての出頭を求めるなどということが現に横路君に対して行なわれておる。しかし官房長官としては論評できるはずです。国政審議権をそのようなかっこうでやることは、警察が侵すことになりませんか。なるじゃありませんかということを私は明確にお答えいただきたいのです。国政審議権については憲法規定があります。しかし私はここで憲法論争をあなたとしようと思いませんけれども、明らかにいま申し上げた事実が真実の事実です。この事実についてあなたの御見解を述べていただきたい。私がお尋ねしたいことは、まずその点です。
  416. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私もまだ考え方の整理ができておりませんし、どういうことでそうなりましたものやら、特に私自身その間の法律的知識も乏しゅうございますし、いま私が官房長官でございますものですから、勢い政府見解ということになりますので、その点は差し控えさせていただきたいと思います。
  417. 中谷鉄也

    中谷委員 では、もう一点申し上げておきます。事実関係はそういうふうに非常に明確な事実ですね。そういう事実認識というような問題じゃない。そういう事実関係に基づいて法律的な評価をお願いし、見解を述べていただきたいと言っているのです。  そこで重ねてお尋ねいたしまするけれども、国会は国権の最高機関。そうしてその国会と行政府との関係については、国会議員たる者、国務大臣たる者は常に考えておらなければならない問題じゃありませんか。何も事新しくこの問題についての見解をどこかで相談してこなければ述べられないという問題じゃないと思うのです。これはまさに政治の姿勢に関する問題です。その点についての御見解を述べていただきたいと申している。いかがでしょうか。
  418. 竹下登

    ○竹下国務大臣 国政審議権また国会が国権の最高機関である、そのことは私も十分了知しておるつもりであります。しかし参考人として横路議員をどのような形で、何を背景にお願いしたかということが全く今日私にも知識がございませんので、これに対する私の見解の表明は差し控えさせていただきたい、このように思います。
  419. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 御案内のとおり、行政、司法、立法は分立しております。本件はまさに憲法でも保障された国政調査権に基づく立法府の本来の仕事である。われわれ議員の本来の仕事である。それに対して司法が介入するがごときはあっていいことですか。その御見解を承りたい。
  420. 竹下登

    ○竹下国務大臣 三権分立の厳然たるたてまえ、これは私も理解いたしております。しかし何回もばかの一つ覚えのように申し上げるようでありますが、全く事実認識がございませんので、私がこの場で論評することは差し控えさせていただきたいと思います。
  421. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは論評すべき性質のものでないという意味なのか、いま急に聞いて、事態がよくわからないからいまは論評できないという意味ですか。
  422. 竹下登

    ○竹下国務大臣 それは事の実態によりまして、私が事実関係を私なりに認識した場合、一つ見解を申し述べることも可能であるとは思いますが、また別の意味において三権分立――今日事件が捜査当局にゆだねられておる場合、その内容によっては論評を差し控えなければならない場合もある、このように思います。
  423. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 法制局の御見解を承りたい。
  424. 真田秀夫

    ○真田政府委員 私も事案の事実関係については全くタッチしておりませんので、一般論として、いまおっしゃったようないきさつを前提にいたしましてどういうことになるだろうかという感想を述べるにとどめたいと思いますが、何だかお聞きしておりますと、横路委員が院外で法案なり国政の審議をされる材料について何らかの活動をされたそのことを別の刑事事件の参考人として教えていただきたいという趣旨であろうかと思うわけでございますが、これは中谷先生百も御承知のとおり、任意捜査でございまして、参考人として任意に教えていただけまいかという趣旨でしかものは言えないわけでございますので、そういう参考人としての協力の要請があったことが直ちに何か三権分立を乱ったとか、あるいは警察が国会議員の方の国政審議の活動に介入したというようなことになるかどうか、私その辺どうも疑問に思う次第でございます。そういうものであるとすれば、特に三権分立のたてまえから憲法違反のことをやったじゃないかというようなことにもならないのじゃなかろうかという感じがいたします。
  425. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 官房長官、お時間がおありのようですから、明日連合審査が行なわれますその場で、佐藤総理に本問題に対する政府見解を出していただきたいと思いますが、お約束できますか。
  426. 竹下登

    ○竹下国務大臣 事の実態を調査の上、相談をしてみたいと思います。ここで私がもし約束をいたしても、いわゆる政府として捜査当局の参考人の問題について、統一見解とでも申しましょうか、そういうことを整理できるかどうかということについて、総理もいま物価対策特別委員会に出ておりますので相談をすることは一向やぶさかでありませんが、残念ながら、私が直ちにお引き受け申し上げていくというわけにはまいりません。
  427. 中谷鉄也

    中谷委員 真田部長に私のほうからもう少し答弁を正確にしていただくために申し上げておきたいと思います。  要するに、参考人としての捜査協力要請であることは先ほどから申したとおりであります。ただ問題は、申し上げていることは、国政審議権、国会における質問などについて、それに関連する事項について、警察権力が国会議員に対して、本来の国政調査権、国政審議権にかかわる問題について、たとえ参考人であるといえども、捜査協力要請の名において出頭をお願いするということで出頭を求めるなどということは警察権力の国政審議権に対する干渉である、こういうふうに私は考えるわけなんです。もちろん真田部長も面も御承知のとおり、同じことばを私のほうから申し上げますけれども、参考人というものが法的にこれに協力しなければならない義務を有するものであるということを私申しておるのではありません。そんなことがあればまたたいへんなことなんです。問題は、そんなことであったとしても干渉になるではありませんか、少なくとも干渉のおそれがあるではありませんか、こういうことを私は申し上げているわけなんです。この点について、事は憲法五十一条その他に関する問題であろうかと思います。こういう点について法制局のほうにおいても事実関係を――私のほうでもさらに非常に簡単な事実関係でありまするけれども明確にいたしますから、これについての見解を用意していただきたい。この点について御答弁がありましたらぜひ御答弁をいただきたいと思います。
  428. 真田秀夫

    ○真田政府委員 裁判所と国会議員あるいは行政府との間でいろいろな協力関係を要請するということはあろうかと思います。その強制力を持たない場合であっても干渉になるということはこれはあり得ると思います。かつて浦和充子事件で参議院の法務委員会で調査をなされようとした。その場合にもちろん強制力はなかったわけですけれども、これはやはり司法権に対する干渉になるということで、最高裁判所から強い御反論がありまして、それで事件は済んだと思うわけですが、それは強制力がない場合でも、協力依頼という形で捜査をするその目的批判をするというようなことであってはいけないということだろうと思うのです、事の核心は。今回の場合は、私先ほど申しましたように事実関係をよく知りません。知りませんからどういう趣旨で出頭の御依頼を申し上げたのかわかりませんが、もしそれが別の刑事事件の処理上事実関係を知りたいということだけで、任意に教えていただけませんかという形の御要請をすることが直ちに憲法違反になるとは私は思わないわけでございます。つまり国権の最高機関である国会の議員の国政に対する審議権に干渉したというふうには、直ちにならないのじゃなかろうかというふうに思うものですから、その趣旨のお答えを先ほど申し上げた次第でございます。
  429. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 すでにお約束の時間も来ておりますで……。しかし事は重大であるし、明日はこの外務委員会が中心になっての連合審査であります。したがって本問題に関する限り私は以後の処理については理事会にひとつお預けをして、問題を留保したいと思います。  希望申し上げておきますが、できれば明日この問題についての発言をお許しいただければ、このように希望申し上げて理事会にお預けをしたいと思います。委員長のお取り計らいをお願いしたいと思います。
  430. 櫻内義雄

    櫻内委員長 楢崎君の御発言のように、ただいまのお話理事会においてよく協議をさせていただきます。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十七分散会