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1972-03-17 第68回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月十七日(金曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 正示啓次郎君 理事 永田 亮一君    理事 西中  清君 理事 曽祢  益君       池田正之輔君    石井  一君       小坂徳三郎君    福永 一臣君       黒田 寿男君    堂森 芳夫君       三宅 正一君    中川 嘉美君       渡部 一郎君    松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         外務政務次官  大西 正男君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省条約局長 高島 益郎君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ————————————— 委員の異動 三月十七日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     不破 哲三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。黒田寿男君。
  3. 黒田寿男

    黒田委員 現在わが国が直面しております最大の外交課題は、日中国交回復を実現し、平和条約締結することであります。この問題は非常に大きなスケールを持っておるものでありますから、きょう一日で私の質問問題点を尽くすことはできないと思いますので、後日あらためてまた質問を継続したいと思います。  終戦後から最近までのわが国歴代保守党政府の対中国政策路線を振り返って見ますと、そこにはっきりとした特徴が認められます。一言で言えば、いわゆる冷戦思想を基調とした路線であったと思います。中国に対するわが国外交基本路線は、吉田首相によって敷かれました。それはアメリカ政府アジア戦略に追随したものであったと思う。連合国との平和条約を、中ソ等を排除した単独講和にした、日米安全保障条約締結した。その後中国との間の二国間条約締結にあたりましては、中華人民共和国政府を無視して、台湾蒋介石政権を選んで、いわゆる日華条約締結した。かような選択を行ないましたことが、その後の中華人民共和国わが国との間の関係を矛盾と対立に満ちたものにする原因となったのであります。歴代保守党政府は、しかも忠実にこの路線を踏襲し、単に踏襲しただけでなくて、佐藤首相のごときはさらにこれを発展させてきた。この詳細は申しません。ところが国連における中華人民共和国地位復活と、台湾政権の追放、それからニクソン大統領中国訪問共同声明の発表及びわが国の大多数国民日中国交回復の要求の急速な盛り上がりなどで、従来の外交路線決定的な打撃を受け、いま根本的な転換を迫られております。これが現状である。従来の対中国政策の破綻、失敗、誤りを率直に認めて、すみやかにこの路線根本的転換を実現すべきであります。それは早ければ早いほど国益にかなうと私は思う。これはイデオロギーや党派を超えての国民的な要望であると私は考える。またこれをなし得る政権のみが日中の国交回復中華人民共和国との平和条約締結という歴史的な世紀の大事業をなし得るものであります。ジャーナリズムは、日中関係打開策を持つかどうかが次期政権担当者としての資格要件を持つというようにささやいておる。外務大臣後継者の一人と新聞でも書いておりますので、ひとつきょうは大いに前向きに答弁していただきたいと思います。——いまのは余分なことばでありますが、私の真剣な要望であります。  そこで先ほど申しました従来のわが国政府歴代とってまいりました外交基本路線転換の必要ということについて、外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国は、いま黒田さんからの御指摘がありましたように、国民政府を選択して、これと条約関係を結んだ、あの当時の客観情勢のもとにおいては、私は、是認される措置であった、こういうふうに思います。ところが最近になりますと、客観情勢そのものが非常に動いてきておる、私はこれは多極化時代という大きな世界情勢転換が行なわれてきておるということも申し上げておるわけです。その多極化情勢の中で緊張緩和という動きも強く押し出されておる、こういうことも申し上げておるわけです。その多極化というのは一体どういうことかというと、これはヨーロッパにおけるECに対するイギリスの加盟という問題もある、またアジアにおきましては中国国連加盟、こういう問題もある。そういうようなことをとらえまして、私は、これはもはや米ソ二大勢力支配世界体制ではない、こういうことを申し上げておるのですが、そういうふうにこの世界客観情勢が非常に変わり、特にその中において中国立場地位というものが変わってきておる、これをよくとらえておかなければならぬ、こういうふうに思うのです。そういう意味において、日中国交回復、これは私は歴史流れの勢いになってきておる、この流れとまっ正面から取り組む、これが日本外交一つの大きな課題である、こういうふうに考えておる。そういう考え方に従って逐一これから対中政策を進めていく、これが私の基本的な考え方でございます。
  5. 黒田寿男

    黒田委員 ただいまの御答弁は、従来の外交路線転換する必要があるという結論であると私は理解いたします。  そこで次に、日中問題打開のかぎは台湾問題の処理いかんにある、これはだれも認めて疑わないところであります。きょうはこの問題を中心に質問したいと思うのでありますが、その前に一、二質問しておきたいと思うことがあります。  その第一は、ニクソン大統領は、先般の中国訪問の際に、中国提案しました平和五原則を受け入れました。わが国中華人民共和国との国交回復交渉にあたりましても、中国側からわが国に対し同様の提案があることは想像にかたくないのであります。この平和五原則提案わが国としてどう受けとめるか、五原則を認めるかどうか、外務大臣のお考えを聞きたいと思います。
  6. 福田赳夫

    福田国務大臣 いわゆる中国の平和五原則、これは国際社会におけるルールといいますか、そういうものの最も大事な五点を摘出したものである、こういうふうに私は理解しております。国際連合憲章のその精神とも全く一致するものである、こういうふうに見ております。したがいまして、もしこういう話が中国から、ひとつこの線でやり合おうじゃないかというようなお話があれば、全面的に賛成するつもりでございます。
  7. 黒田寿男

    黒田委員 よくわかりました。  次に質問したいと思いますことは、この平和五原則を認めるということは、中国平和愛好国であるということを認めることになる、私はそう思うのであります。また、中華人民共和国国連における地位を先般回復しましたことは、国連憲章の条章に照らしまして、中国平和愛好国として国連から歓迎されたことを意味すると思います。国連は、かつて、一九五一年二月一日、その総会におきまして、朝鮮戦争における中国軍事行動侵略であるとする非難決議を行なっております。国連は、現在まで形式的にはこの決議を取り消してはおりませんが、中国国連諸機関への地位復活を歓迎したことにより接して、この決議は実質的には取り消されたと同様に見なければならぬと思います。わが国政府は、従来中国国連復帰反対する理由一つといたしまして、この決議を引用して、中国平和愛好国ではないというように認定してきた。しかし、中国の平和五原則をいれ、及び中国国連への地位復活が実現いたしました今日、わが国といたしましても従来の中国に対する考え方を、すなわち中国は好戦国であるとか、あるいは侵略主義であるとかというような見方をここであらためて、中国平和愛好国と認めて国交回復交渉に着手すべきである、こう私は考えます。これに対して外務大臣の御見解を聞きたいと思います。
  8. 福田赳夫

    福田国務大臣 中国国連に参加をした、こういうことはその前提として、中国平和愛好国である、こういうことが認識されておる、そういうふうに理解をいたしております。したがいまして、わが国といたしましては、中国平和愛好国である、こういう認識に立って中国政策に対処する、こういう基本姿勢をとります。
  9. 黒田寿男

    黒田委員 わかりました。そうすると、ただいまの外務大臣のお考えは、従来のわが国冷戦思想的対中国外交路線を変えたものと、私は善意に受け取っておきます。  次に、わが国といたしましては、平和五原則を受け入れる以前の問題としまして、中国との国交回復交渉に入るに先立って、御承知のように中国提案しております対日政治原則というものがあって、これに対する態度を明確にしておく必要があると思う。私がいまさら言うまでもありませんが、その三原則は、一つ中国敵視政策をとらない、二には二つ中国をつくる陰謀に加わらない、三は、日中両国国交正常化を妨げない、こういうものであります。こういう提案中国側から出しておるのでありますから、わがほうとしてもこれにこたえる必要があると思うのです。ことにわが国政府二つ中国をつくる陰謀には加わらないということが必要であると思うのです。政府アメリカ政府二つ中国陰謀に加担していたのではないかと私は思う。加担していたのではないかと思うというのではなくて、加担しておりました。私はそう断定します。アメリカ政府は、朝鮮戦争理由にしまして、台湾台湾海狭に軍隊と艦隊を送って、中国本土台湾とを分断して、中華人民共和国政府が全中国のほとんど全部といっていいほどの地域人民とを——台湾をいま形式的に除外いたしますれば、その他のほとんどを現実に支配しておる、そういう正統政府であることを、アメリカは事実上は認めないわけにいかぬ。だから、事実上は認めておりながらも、しかもその承認を今日まで拒絶し続けてきておりました。そして一人立ちのできないような無力な蒋介石政権条約を結んで、これを支持し続けてきたのである。これは中国を二分し、統一を妨げるものでありまして、ここに二つ中国陰謀があらわれておる、そう言わなければなりません。最近はニクソン中国訪問によりまして、アメリカの対中国政策転換が一応表明されました。ところがわが国はどうか、わが国政府は、戦後アメリカ政府二つ中国政策陰謀にすばやく乗せられてしまった。アメリカ政府の対中国政策転換後の今日も——一応アメリカ転換したと見られる今日も、私には、わが国政府、なお依然として従来の態度を固執しておるように見えるのです。元来、日台条約、いわゆる日華条約締結したことが、この二つ中国陰謀にひっかかったことを意味するものだと私は思う。現在までこの条約廃棄をはっきりと表明し得ないでおるのは、いまなおひっかかっておるからだ、このことを示すものではないかと私は思います。これに対して外務大臣はどうお考えになりますか。
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま黒田さんから読み上げられました中国側の対日三原則、これは私どもといたしましては異存のないところでございます。特にその中で台湾独立運動の点に触れられましたが、これはわが国としては非常にかたい方針を持っているのです。台湾独立運動には加担せず、こういうことであります。私も独立論者があるということは承知しております。そういう人とときたま接触があることがある。そういう方に対しましてはかたく台湾独立というようなことを考えてもらいたくないのだ、こういうことをお願いをしておる、こういうような状態でありますから、政府側にそういう動きがあるというようなことについては、これは全くないことだというふうにかたく御理解を願いたい、こういうふうに存じます。  それから第二点といたしまして、日華平和条約を破棄せよ、こういうようなお話でございますが、これは日華平和条約というものは現存をしておる。そしてわが国中国との間にまだ国交も開始されていない、そういうような状態にあります。そういう状態下においてこの日華平和条約廃棄する、こういうことはできない。私ども日中政府間接触、その過程においてこの問題は処置さるべき問題である、こういう認識でございます。
  11. 黒田寿男

    黒田委員 いわゆる日華条約廃棄の問題につきましては、あとからあらためて少し詳しく私の意見を述べ、外務大臣の御所見をも承りたいと思いますが、ただいまのお答えで、わが国アメリカのたくらんできた二つ中国陰謀に加担してはいない、そういう事実はない、こういうふうにおっしゃったと思うのであります。これは従来政府が、私ども質問に対しましていつも答えてこられたところであります。  そこで私はこれについていま一つ質問いたしますが、昨年の国連における中国代表権問題でわが国がとった態度、すなわちアメリカ政府などとともに二重代表制提案した。私はこの考え方二つ中国陰謀の露骨なあらわれであったと思うのです。昨年の九月二十二日に佐藤総理記者会見をして、中国国連代表権問題につきまして次のように話された。すなわち「台湾議席も守り、北京政府をも国連に迎える。そして北京政府安全保障理事会常任理事国にする。それが適当な方法である。」こういうふうに話して、さらにその上に、「このわが政府決定は、中国代表権問題について、わが政府としての単に一歩前進の決定であるだけでなくて、格段の大躍進である。」こういうように自画自賛したのです。しかしこの二重に代表させようという考え方、それに基づくこの提案台湾海峡の両側の中国一つであるといっております。その一つ中国二つ代表席国連の中につくる、こういうものをつくり上げようとしている。これは二つ中国をつくろうとする陰謀であったということは、明々白々であると思うのです。政府が、ただいまも外務大臣お答えになったように、従来も二つ中国陰謀に加担しておるというようなことなどはとんでもないことだ、こういわれるのですけれども国連に、世界外交のひのき舞台でありますあの国連に、堂々と二重代表制というようなものを提案するということは、私から見れば頭隠してしり隠さず、これでも日本政府二つ中国をつくる陰謀に加わらなかったというようなことが言えるでしょうか。二重代表制提案は否定されましたので、あの際における二つ中国陰謀は成功しなかったのであります。幸いに成功しなかった。しかし陰謀を企てたということは、私は否定できないと思うのです。もし政府日中国交回復を願うならば、この陰謀はすみやかに放棄しなければならぬ。外務大臣はどのようにお考えになりますか。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 二重代表決議は、黒田さんの御理解は御理解といたしまして、私どもは、これは総理が言うとおり、非常な勇断をもってこれを提案した。つまりいままで中国国連議席がない、その中国国連議席を得せしめる、しかも常任理事会議席まで中国にこれを与えようじゃないか、こういう趣旨なんです。そこまでにつきましては黒田さんにおきましても何らの異存もなく私ども考え方と完全に一致するんじゃないか、そういうふうに考えますが、さて、現に国連議席を有しておる国民政府立場を一体どうするかということにつきまして、私ども提案いたしましたのはこれは普通の過半数の投票方式ではいかぬ、これは三分の二方式をとるべきである、これは国連運営精神ともいうべきものです。これは国の問題ではありません。政府の問題ではあります。問題となりました代表権問題は政府をだれにするかという問題でありまして、憲章のいわゆる国の脱退をきめる問題ではございませんけれども精神はまさに政府にしても国にいたしましてもそこにあるんじゃないか、そういうような考え方のもとにおいて、この国連から国連決議をもって脱退をせしめるというような行為、行動をなす場合においては慎重な配慮を要する。そこで三分の二の議決を要するのだ、こういう考え方をとったわけなのでありまして、私はあえて矛盾する考え方ではない、そういうふうに考えます。現にわが国は、この二重代表決議の説明にあたりましては、中国一つである、こういう見解を申し述べ、アメリカあたりもそういう見解日本にあるのか、たいへん参考になる見解だ、こういうふうにも申しておりますので、その辺はアメリカと決して同じ考え方でもない。結果として二重代表決議案共同提案国にはなりましたけれども考え方としてはそこに大きな根本における考え方の違い、こういうこともあったわけなのです。しかし私どもは決してこれが提案されたからといいまして、これは台湾独立運動、そういうものを支援する態度だ、そういうふうには考えておりませんので、これは現実世界政治の問題である、こういうとらえ方をしておる、こういう御理解を願いたいと思います。
  13. 黒田寿男

    黒田委員 ただいまの大臣のおことばのうちに、私が賛成する部分があるだろうとおっしゃいましたけれども、残念ながら私は賛成できません。これは周知の事実でありますが、中華人民共和国蒋介石政権国連議席を持っておる以上は国連に復帰しない、こういっておるのでありますから、蒋介石政権にも議席を与え、同時に中華人民共和国政府にも代表権を与えるということは、実はていのいい中華人民共和国政府排除方法にすぎない、私はそういうように考えます。したがって、決して賛成はできぬわけです。  次に、きょうはあまり時間がないので、どの程度まで進められますかわかりませんが、日華条約の問題についてこれから質問を始めてみたいと思います。  日華条約廃棄を、少なくとも表明するか、それともこれに固執する態度をとるかということが、日中国交回復日中関係正常化交渉政府が着手できるかいなかの分岐点になっておる、これは私が言うまでもないことと思います。これは常識です。私などの見方ではこの問題を解決しなければ、すなわち少なくともいわゆる日華条約廃棄表明しなければ、日中関係正常化がかちとれないというだけでなくて、正常化交渉に入ることさえ不可能だと思う。これを廃棄し得ないということ、すなわちいわゆる日華条約にこだわる、どういう理由であろうと、その存続にこだわるということは、二つ中国陰謀を捨て切れないことを示すものであると、こういうふうに断ぜざるを得ないのであります。日中国交回復を願うわが国の多くの人々組織、これらはすべてこの問題では、大臣も知っておいでになりましょうが、態度をもうすでにはっきりさせておるのであります。たとえば超党派の組織日中国交回復促進議員連盟加盟しております議員には、自由党の党員もありますが、そういう諸君も日華条約廃棄を公然と表明しておる、そういう人々がおるのです。ところが政府はいまなおこの問題でははっきりした態度を示しておりません。そこで私がこれから日華条約についてわれわれの見解を一応述べて、そして政府見解を聞きたいと思います。これは非常に重要な問題でありますから、すなわち日中問題解決のポイントになるような重要な問題でありますから、慎重に答えていただきたいと思います。  先般、台湾帰属問題で政府見解として示されましたようなあいまいもことして何やらわからないような言い回しではなくて、明解な表現で答えていただきたいと思うんです。  最初に明らかにしておきますが、われわれはいわゆる日華条約締結にあたりまして、当時私どもも国会におりましたが、強くこれに反対をいたしました。連合国との平和条約締結にあたって吉田内閣中国やソ連を除外したいわゆる単独講和、これを締結しようといたしましたときも、私ども全面講和を強く主張したのであります。それでも単独講和締結せられて、同時に日米安保条約締結されましたときに、その承認に私ども反対をした。続いて中国との間の二国間条約締結されましたときに、蒋介石政権を選択すべきではなく、すなわちいわゆる日華条約締結すべきではなくて、中国人民共和国とこそすみやかに平和条約締結すべきであると主張したのであります。当時占領下であったために、アメリカ政府世界政策アジア戦略に従属することをしいられた事情もあったことを私どもも知っておる。同時にそれだけでなくて、保守政党の中に存在するいわゆる反共意識というものがアメリカ政策と重なり合って、いわゆる日華条約なるものが締結せられたと思う。しかしこの条約には幾多の虚構があります。と申しますよりも、私はこの条約そのもの虚構である、こういうように考えるのであります。蒋介石政権中国本土人民の支持を失って台湾に逃げ込んだ、台湾という小範囲の地域を占拠して独裁政治を行なっております。本土正統政府から見れば、これは反乱者立場にある政権である。こういう政権と、中国との平和条約であるかのごとき名称をつけたいわゆる日華条約締結して、あたかもこれで中国との平和条約が成立したかのごとく国民に宣伝し、国民を欺瞞しようとしたのであると私は思う。これを中国との平和条約なりとこじつけるのは明らかに虚構であります。国連において中国を代表するものが蒋介石政府である、長い間このように固執したことが虚構であって、世界歴史流れの中でついにその虚構を維持することができなくなって、中華人民共和国政府国連における正当な地位回復し、蒋介石政権国連から追放せられた。そういう状態があらわれております今日、だからこれと同じように日中平和条約としては虚構そのものであるにすぎないところの日台条約、これは国連から蒋介石政権が追放せられたと同じように、わが国としてもこういう条約はすみやかに廃棄すべきである、これが真実を追及するまじめな政治家態度であると思います。繰り返して申しますが、真の日中国交回復中華人民共和国との平和条約締結のためには、日台条約は破棄しなければならぬ、蒋介石政権との関係をここで清算しなければならないのです。少なくとも日台条約廃棄、この表明こそが新しい日中関係の開始の端緒となるのだ、そう考えます。これができなければ、どんなに政府中国との交渉を希望されましても実現不可能である、私はそう考える。その意味において、この条約廃棄すべきであるということの表明をされる必要がある。そういう政治家が初めて日中打開をなし得る資格条件を備える者であると私は考える。この条約虚構であるということに関してどうお考えになりますか。
  14. 福田赳夫

    福田国務大臣 黒田さんはいま日中国交回復交渉——交渉です、この交渉に入る前に日華平和条約は破棄する、しなければならない、これが常識だ、こういうふうなことをおっしゃいますが、私は必ずしもそれが常識だとは思いません。私ども立場を申し上げますと、わが国日中国交打開正常化、これをどうしてもやる必要がある、こういう認識でございます。そういう認識に立ちまして、中華人民共和国中国を代表する政府と認めまして、そういう認識の上に立ちまして、そしてその政府との間に政府間の接触を持ちたい、こういうふうに言っておるわけであります。その政府間接触過程において、日中間にはいろいろな問題がありますが、それらの諸問題を解決していきたい、こういう考え方でございます。  いろいろな問題があるというその一つ日華平和条約問題もあるわけなんです。これをどうするか。これもその交渉過程において解決をしていく、こういう考え方です。むしろそのほうが常識的なんじゃないでしょうか。交渉も始まらぬ前にああもしなければならぬ、こうもしなければならぬ、それを聞かなければ交渉が始まりません、こういうものじゃないと思うのです。私は、中華人民共和国を見ておりますと、米中会談におきましてもかなり現実的な考え方をしておる。現実的な考え方に立ちますればそういうふうなことになるんじゃあるまいか、そういうふうに見ておるのでありまして、決してその問題が解決しなければ政府間の接触は始まらぬ、さような見通しは持っておりませんです。
  15. 黒田寿男

    黒田委員 外務大臣と私どもの間には日台条約、いわゆる日華条約そのものの本質に対する見方根本的な違いがある。私どもは、このいわゆる日華条約日中間平和条約としては全く虚構なものだ、こう考えます、だから、そんなものを交渉の途中でどうするかこうするかというような性質のものではないのです。それが私ども見方です。  そこで、私はきょうは、もう少し、この日台条約虚構性について具体的に証明してみたいと思います。  第一に、いわゆる日華条約蒋介石政権との条約であって、中国との条約ではないのです。これを中国との平和条約と思わせるような態度をとってきたのが虚構であると私どもは言うのです。吉田首相は正直に次のように言っておる。「日華条約台湾及び澎湖島を現に支配しておる国民政府との条約であり、調印された条約としては国民政府を全中国を代表する政権としては承認したものではなかった、」これが吉田首相のこの条約に対する見解であります。また、これはあらためて言うまでもないことでございますが、この条約の交換公文で「この条約の条項が、中華民国に関しては、中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある」という旨が両者の間で了解に達したということが確認されております。だから、この交換公文の内容が吉田首相の限定承認論とあわせて限定性、地域性を示しておる。われわれは日台条約そのものを認めないものであるが、しかるに、戦後の保守党政府はこの虚構性を解消する方向に向かって努力するのではなくて、逆に、徐々に国民政府を全中国の代表と見ていわゆる日華条約締結したかのような説明をする、そういう方向に向かってこの虚構性を発展させてきた。その著しい例は佐藤総理です。「日本は国府との間に戦争を行ない、日華条約を結んで戦争状態は終結した」とか、「日華条約中国を代表する国府との間に締結された、」こういうことをしばしば国会でも答弁しておる。これは吉田首相の限定承認考え方とは違うのです。この限定承認考え方を完全に否定した、悪い方向に向けて発展さしたものである。こういう佐藤総理日華条約の解釈は虚構だ、日華条約を日中条約であるというように強弁するのは虚構である、私はそう考える。この点について、外務大臣のお考えはいかがですか。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 国際政治はあくまでも現実に即して行なわなければならぬ、こういうふうに思いますが、日華平和条約締結されたというあの際に、全中国を代表する政府一つでありますれば問題はなかったわけなんです。ところが不幸にして二つ政府がある。さあそのいずれを相手とすべきやという選択の前に立たされたのがわが日本国です。その日本国は、国際社会においてより多数の承認国を持っておる国民政府を選択するという立場をとった。これは私は虚構でも何でもない、国際現実に即した行き方であった、こういうふうに思うわけでありまして、その辺が私は黒田さとん話がだんだん食い違ってくるもとになるのじゃあるまいか、そういうふうにお聞きしたわけであります。  それからなお、初めのスタートはまあまあといたしまして、だんだんと国民政府が全中国を代表する政府のごとき固めを行なった、それは特に佐藤内閣であるというような御理解でございますが、これもいささか何か御理解が私と違うのです。つまり、最初からわが国平和条約国民政府との間に締結した、これは全中国を代表するものとして国民政府を選択した。ですから、当初からそうなんです。ただし、現実というものはある。現実は、先ほども申し上げたとおり二つ政府がある。そして二つ政府の実効的な支配勢力を見てみますると、国民政府台湾、澎湖島、そういうことで大陸に支配力を持っておらぬ、その現実もまたこの条約の背景として尊重されなければならぬ、こういう立場にあったわけであります。そういうことでございますので、この考え方、これはもう当初からある考え方でございまして、にわかに佐藤内閣になってそういう考え方が固まってきた、こういうことじゃないのでありまして、その辺も黒田さんと私の理解がちょっと違うもとになっておるというような気持ちで、いま御意見を拝聴したわけであります。
  17. 黒田寿男

    黒田委員 時間がございませんので、予定した問題に全部触れることができませんが、いま一点だけ質問したいと思います。  その前に、ただいま外務大臣お答えになりましたことは、これは全く事実に反する。締結者である吉田首相考え方とも違うし、それから、いわゆる日華条約の条文の内容とも違う。決してこれは全中国を代表するような内容を持っておるものではないのです。そこで、私は、それでもなおかつ全中国を代表する平和条約だというようなことを外務大臣が強弁——私はあえて言います、強弁されますので、いま一点だけ、いわゆる日華条約虚構性を事例をもって証明してみたいと思うのです。  この条約の前文には、日本国及び中華民国の間の「戦争状態の存在の結果として生じた諸問題の解決の必要を認め、平和条約締結することに決定し」た云々とあります。それから、この条約の第一条に、「日本国と中華民国との間の戦争状態は、この条約が効力を生ずる日に終了する。」とこういうふうに書いてある。佐藤総理は、いま福田外務大臣がおっしゃったと同じ解釈に基づいて、このいわゆる日華条約によって、中国との戦争状態が終結したんだ、こういうことを国会でたびたび答弁しておる。これは私は虚構もきわまれるものだと思う。虚構もここまでくれば批評のしようもないほど極端なものだと思います。福田外務大臣は、佐藤総理と同じように、いわゆる日華条約によって中国との戦争は終結したと一体お考えになっておるのでしょうか。それならあらためてここで中華人民共和国を相手にして、日中平和条約締結する交渉において戦争終結の問題に触れる必要はないわけです。何もかも片づいたということにならなければならぬわけです。あなたも、このいわゆる日華条約日本中国との間の戦争状態は終結したのであるというように考えておられますか。私はそういうものではないと思うのです。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国中国戦争を経験したわけでありますが、その中国戦争の相手方は国民政府であったわけであります。その国民政府との間に平和条約締結した。私はこれでこの戦争状態は終結した、こういうふうな理解をいたしておるわけです。ただ、この問題につきましては、先ほども申し上げましたが、日中間にいろいろ問題がある。その問題の一つとして、あるいは中国側から、いま黒田さんがおっしゃるような議論が展開されてくるかもしらぬ。これはまあ先方の議論です。しかし、わが国はあくまでもそういう立場で応対をする。そしてどういう両名の間の理解になるか。それはこれまた交渉過程においてきめられるべき問題である。こういうふうに考えております。
  19. 黒田寿男

    黒田委員 それでは、きょうはこれで終えますが、要するに中国との間の戦争状態はあの条約によって終結しておる。だから新たな、政府がいま求めておる中華人民共和国との平和条約締結に際してこの問題に触れる必要はない。これは私は驚くべき外務大臣の御意見だと思います。私は先ほども申したように、党派を離れ、イデオロギーを離れて日本の国益のために台湾問題の打開ということを通じて、政府もいま欲しておる日中国交回復の実現、平和条約締結という方向へ持っていこうと思っておる。けれども、ただいまの外務大臣のような御見解では、とても佐藤内閣で日中国交回復ができないことはこれはもう天下の世論ですが、福田外務大臣のお考えでも、とても日中国交回復交渉にさえ入ることができないということを残念ながら私は断定せざるを得ないのであります。きょう私はまだもう少し予定した問題点を持っておりましたが、時間が参りましたので、あとはこの次に質問を続行することにし、質問を留保いたしましてきょうはこれで終わります。(拍手)
  20. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 正示啓次郎君。
  21. 正示啓次郎

    ○正示委員 与えられた時間にたいへん大事な問題の二、三について伺います。  まず第一に、大先輩からいろいろお話しがありましたので、静かに拝聴いたしておりましたが、ちょうど二十数年の歳月、先輩の御郷里の岡山へいまから前には東京から何時間かかりましたかね。それがいまや五時間弱ですぐ岡山に行ける時代になりました。お話を伺っておりますと、まあたいへん失礼でございますけれども、いわゆる唯物史観といいますか、歴史観といいますか、そういうものに立脚されてものごとを流動的、発展的に把握される先輩が、きわめて固定的にあの当時の論理を展開されておることにまず私はたいへん残念に思ったわけであります。  たとえば、これは外務大臣に伺いたいと思うのですが、先ほど黒田先輩から今日中華人民共和国国連議席回復し、安全保障理事会党任理事国になられたという事実をもって、すなわち国連侵略国である決議もこれは死滅したんだということをあげられたのでありますが、私は同じ論理に立てば、日本はすでに国連加盟してから何年になりますか。また戦後のいわゆる平和憲法を採択してから何年になりますか。その日本にいわれもなき軍国主義の非難があるということについて、黒田先輩はどういうふうにお考えにたっておられたのかということをふしぎに思ったわけであります。外務大臣からは国連加盟した今日において、中国侵略国としての国連決議は死滅したんだ、こういうふうに言われたことと、日本のステータスとをあわせ考えて、たいへん割り切れないものを感ぜざるを得なかったということを申し上げるわけであります。  それから、先般の米中会談に基づくいわゆる共同コミュニケ、これを読みましての一番強い私どもへの感じは、かねがね日本が主張しておりました中国一つである、こういう考え方が非常に強く、ニクソン大統領にインフルエンスを与えておるということを考えざるを得なかったのでありますが、こういうふうなことについても、私はいままでの、この国会において日中問題を議論した、これは与党、野党を問わず、ひとつ大いに参考にすべきことではなかろうか、こういうふうにも考えます。  さらにまた、昨年のいわゆる中華人民共和国国連加盟、このときにわれわれが最も重点を置いたのは、いわゆる逆重要でございまして、逆重要ということを私はあまり好まないのでありますけれども、と申すよりは、中華人民共和国国連加盟することは当然である。また常任理事国になることも当然であって、問題は国民政府というもの、これを追放するというアルバニア決議案は単純多数決であるけれども、その追放ということは、三分の二の多数をもってすべきが国連の一般的ルールから言って当然ではないか、きわめて明快な考え方をわれわれは最も強調したのだと思うのであります。そういうことを静かに考えながら、いまの質疑応答を拝聴しておりまして、私は、歴史流れという外務大臣考え方、また脱イデオロギー、いまや日中問題は、歴史流れに沿い、脱イデオロギーの立場においてこれを処理すべき段階にきた。すなわち、いままでは、黒田先輩をはじめ社会党の先生方、あるいは公明党の先生方、いまや民社党の先生方も、いわゆる中華人民共和国接触をされるわけでございますけれども、やはり国交正常化政府交渉にまたざるを得ないという決意のもとに、福田外務大臣は、いつでも北京に行きたい、この意想を表明しておられることに、私は非常な敬意を表するわけでございますし、また、同感の考えを持っておるわけでございますが、この歴史流れ、また脱イデオロギー、そういう時代の推移に従って私ども外交のあり方というものを考えていくという現実的な政策を、私はひとつ思い切ってこれからも進めていただきたい、こう思う。これに対して、非常に残念なことは、いまのような固定的に過去の事実ばかりをつかまえて、いつまでもそれは変わらないものとして、残念ながら日本の政界の中に、いわゆる外交というものは、できれば超党派的な支持を得てやるところに力強さがあるのにもかかわらず、これが不幸にして非常に分裂をしておるというふうなことは、たいへん残念なことだと思うわけでございますが、いまや対中国外交を率先してみずから身を挺して政府間折衝に当たろうとしておる外務大臣のこれに対する御所見をまず伺っておきたいと思います。
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 中国問題は、私はかねがね言っているのですが、もう今日、この両国の間に国交回復する、これはもう歴史流れだ、こういうふうに理解をしておるわけなんです。過日の米中会談、これを見ておりますと、大体あの共同声明に出されておること、また、会談自体がかもし出した雰囲気を見まして、アメリカ中国問題につきましては、いままでとってきた封じ込め政策、これから大きく転換をいたしまして、対話の米中関係、これを設定しようというところへきておる。わが国といたしましては、このアメリカ考えよりはもっとはっきりした考え方を持っておる。アメリカは、北京訪問、それに先立つワルシャワ会談、またこれから展開するであろうもろもろの接触、そういうものを積み上げまして、米中間の関係の整理をしていこう。ですから、共同声明を見ましても、そのようなことをはっきり言っておるわけなんですが、米中関係の改善ということなんです。私どもはそうじゃないのです。日中国交正常化、これを目ざしておるわけなんです。しかも、中国一つである、中華人民共和国中国を代表する政府である、そういう認識、それでもろもろの問題を話し合いましょうや、こう言っておるのです。おのずから結論は、その話の過程で出てくるのです。先ほど黒田さんからいろいろ具体的にお話がありましたが、そういうものを全部洗いあげて、さあこれから話し合いだ、交渉だ。交渉の必要も何もありません。そうじゃないのです。これから政府が腹を割って信頼の上に立って話し合いましょう。もう話せばわかる。そういうわかる段階までの私どもは意思表示をしておるわけなんでありまするから、どうかひとつ、中華人民共和国わが国の意のあるところを率直に受けて、そして政府交渉を一刻も早く始められたい、こういうふうに期待をいたしております。
  23. 正示啓次郎

    ○正示委員 大体外務大臣のお考えを伺ったのでありますが、この間実は、この道の先輩で権威である曽祢委員から、今回の英中の共同コミュニケにつきまして、台湾問題に触れられたところを御質問になって、私も実は同じ疑問を持っておったわけです。あの英中共同コミュニケにおきましては、いわゆるアクノレジですか、英語は得意じゃありませんが、アクノレジということをたしか認識とかいうふうな軽い表現で訳しておったと思いますが、今回の英中の共同コミュニケにおきましては、同じ英文で見ますと、アクノレジということばとレコグナイズということば二つ使っておるわけでありますけれども、これを両方とも中国語では、われわれの言う承認というふうに訳しておるようであります。そこで、これはいろいろな問題に関連をするわけでありまして、いわゆる条約論、法律論あるいは政治論というふうにわれわれ常識的に外交折衝においてはあるわけでございますが、私は、米中共同コミュニケよりもこの英中共同コミュニケのほうが、そういう点において、同じアクノレジということばを使っておるけれども、やはり一九五〇年にこの中華人民共和国承認しておるイギリスの立場というものとアメリカ立場というものとはおのずから違っておるというふうなことからきたんではないかという感じもいたします。その米中と英中との間にはいろいろ違った関係もあることは申し上げるまでもありません。香港問題その他あるわけでございますけれども、こういう点について外務大臣はどういうふにお考えになっておられますか、この際、国民に対してはっきりとお考えを述べていただきたいと思います。
  24. 福田赳夫

    福田国務大臣 米中共同声明と英中共同声明、これは立場が通うんです。米中共同声明は、まだ承認関係が出てこないのですね。また、出てくる前途というものはまだまだ紆余曲折があるだろうと思う。そういう際の中国に対するアメリカ認識が述べられておる、こういうことなんですね。ところが、英国のほうは、もう御承知のとおり、承認関係がずっと前からできておる。ただ、大使の交換ができなかった。その大使交換についてここであらためて英国の中国に対する認識を述べておこう、こういうことなんでありますから、自然そこに両者の間に中国への見方、これの違いというものが出てきておると思うのです。私は、率直に申しまして、英中間における英国の中国に対する認識のほうが、中国にとってはアメリカの場合よりもやや進んでおる、こういうふうに理解します。つまり、あの英中声明におきましては、中華人民共和国台湾中国の一省であるとの立場をアクノレジする、こういうことです。確かに私はこの文章から見ますと、米中間のあの共同声明台湾条項、これから見て一歩進んでおるというふうに思いますが、さて、一歩進んでおりますが、その一歩がどのくらいのものであるかということは明確ではないのです。私どもも注意深く英国政府にも、このアクノレジというのはどういう意味なんですということを問いただしておるのですが、それはその文言のとおりに御理解願うほかはありませんという答弁が繰り返しはね返ってくるだけである。また、英国の国会で労働党のシャドーキャビネットの外相といわれる方が労働党を代表して政府見解を求めております。それは、今回の共同声明によって英国の中国に対する見方、特に台湾の帰属問題について、従来の方針を変更したものかというきわめて明快な質問をいたしておるのに対して、ヒューム外務大臣はこれにまともに答えておりません。台湾の問題は中国内部において解決されるべき問題である、あとはコミュニケをごらん願いたいというような程度のことで、これもまたはっきりしないのですが、ニュアンスというか、とにかく一歩前進したものが感じられるというのは、率直に私の所感として申し上げることができる、かように存じます。
  25. 正示啓次郎

    ○正示委員 同じアクノレジということばを米中、英中ともに使いながら、中国側はそれを違ったようなことばで表現しておるところに、私は、政治論と法律論といいますか、条約論といいますか、そういうところまで踏み込んだイギリスと中国との関係が微妙に表現されておるというふうに実は読み取ったわけでありますが、同じ御見解を伺ったわけで、その点はおきまして、次に進みます。  先般の予算委員会で、佐藤総理台湾地位について御発言になりました。私はあの佐藤総理は失言じゃないと思うのです。相当インテンショナリィに条約論と政治論を一緒にやられて、そこで統一見解に発展いたしまして、そうして一つのコンセンサスが少なくとも自民党の中にはできた。できればこれを国会の中にずっとコンセンサスができ、国民の中にできれば、対中国外交というものは非常に強力に展開されると思うのであります。先ほどの黒田先輩の御質問から見ると、なかなかほど遠いというような点は非常に残念でありますけれども、私はあの統一見解の中に、やはり条約論、法律論と政治論がぴったりと併存しておると思うのですね。すなわち、台湾地位についてはサンフランシスコ平和条約からいくとわれわれは発言する地位にはない。しかしながら、中国との外交をこれから転回するという政治の場面においては、中華人民共和国の主張というものを十分に理解してこれから取り組んでいくのだ、たいへんおもしろい統一見解が出されたことを私は喜んでおるわけであります。さきに美濃部東京都知事に保利書簡を託すことに、やはり外務大臣も、これは大いにいいことではないか、中国との間にあらゆるチャンネルを通じて理解を深め、そして政府交渉へ持っていくことはいいことではないかという態度をとられたということは大きなプラスであったと私は思うのですが、その保利書簡においては、たしか中華人民中国国民台湾というふうな表明をとられておったと思うのでありますけれども、今度は中華人民共和国の主張に対して十分な理解を、というところで、たいへん表現は違うけれども、前向きに進むという意欲を示されたという意味において、今回の統一見解というものがたいへん進歩、前向きのものであった、こういう点を評価するわけであります。特に福田外務大臣は、予算委員会等あるいはその他の機会に、北京に行ったら、まず、戦争でたいへん御迷惑をかけた、この点を中華人民共和国政府首脳並びに国民の皆さまに心から遺憾の意を表して、そこから話し合いに入りたいということをいままで言われた。私はこれは態度として非常にいいと思うのですね。このことをやはりわれわれとしてはまずしっかりと、自民党の政治家全部がそういう気持ちに徹することが必要だ、こういうふうに思っております。  それから、いろいろと断片的にいま出ておるのでありますが、たとえば吉田書簡はすでに死滅したのだということを閣議において確認をされた、ココムも廃止の方向においてこれからやっていくのだということも言明しておられるわけですね。この統一見解以後、あるいはその前後において、美濃部さんの保利書簡携行を含めまして、北京政府中華人民共和国政府に対する政府交渉を呼びかけようとする意欲というものは私はいろいろな機会に表明されておると思うのであります。これはまたいわゆる歴史流れであり、脱イデオロギーとしてその外交の当然たどるべきコースだ、私はこう思っておるわけでありますが、この際それらの問題について、ちょっと外務大臣から、やや体系的に、ここではっきりと政府交渉を呼びかける基本的な心組みについてお話をいただきたいと思うのであります。
  26. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、日中接触につきましては、アメリカのような一つ一つ積み上げていくというまだるっこい方式をとっている必要はない、こういうふうに思うのです。もう両国の首脳、総理同士の会談あるいは外相同士の会談等の方式によりまして日中間に横たわる諸問題を話し合う。これを包括しまして私は政府間接触と言っているのですが、もうずばり政府間で諸問題の話し合いに入る。その目ざすところは日中国交の開始である、こういうことでいいのじゃないか。これはアメリカ考え方、行き方と非常に違う点なんです。アメリカはこれからぽつぽつ積み上げていこう、その先はどういうふうにするかまだ示しておらぬという次第でございまするから、基本的な違いがあるわけです。いま私はそういうことを考えながら、これからの日中間の問題をどういうふうに打開するか、これを展望してみますると、まず第一段階は、その政府間接触が始まるまでの段階、そういうふうに思うのです。これは先ほど黒田さんから、いろいろな問題について日本側が態度を示さなければだめだというようなお話がありましたが、私はそうじゃないと思う。私は、日本がもうとにかくそういう国交正常化という大旆を掲げて、交渉の正当な相手方であるという認識のもとに中華人民共和国接触をする、それでもうすべてをカバーしている問題じゃないか、そこまで考えるわけでありますから、そのことの理解がどういうふうに北京政府との間に通ずるか、これにはまだ若干の時間を要する、私はこういうふうな見通してございます。しかし、もし——もしというか、日中政府間接触が始まる、その段階になりますると、そのあとはそう多くの時間を要しまい、私はこういうふうに考えておるのでありまして、多少時間はかかりましても、ほんとうによく根回しが届いて、そうして相互に信頼関係を持った政府間接触が始まる、これが正当な両国間の関係を樹立する上においてほんとうに正しい姿勢じゃあるまいか、また、これが長続きをするところの日中関係を築くゆえんではあるまいか、私はそういうふうに考え、日夜そういうふうな事前の努力をいま傾注しておる最中でございます。
  27. 正示啓次郎

    ○正示委員 いわゆる平和五原則というものは、もう国連憲章精神からいっても当然のことであるというふうなこともありましたし、対日三原則についても、これは何も固定的にこちらは絶対にどうだこうだということを言っているわけじゃなくて、交渉過程においてやりたい、いま福田外務大臣中華人民共和国に対しては非常に積極的な姿勢を示しておるという点についてはもう疑いの余地がない、これだけははっきりしておるということをわれわれとしてははっきり認識するわけでありますが、たとえば、くどいようでありますけれども、もう一度重ねて、吉田書簡、これは長い間たいへんこだわりをわれわれに、モラルオブリゲーションというのですか、を感じさせるようなものとしてあったのを、先週の閣議でございますか、これは吉田さん個人の書簡であり何ら拘束力を持たないものであり死滅したものであるというふうにおきめになった。またココムについてもこれは廃止の方向においてこれから交渉していく、こういうことを言われたということは非常に重要だったと私は思うのですね。ところがそういうことがまだあまり一般の理解を得ていないのではないか、先ほど黒田先輩の御質疑に率直に申し上げたように、それぞれ歴史的な役割りは確かに果たしたものでありますけれども、それがいまや死滅しあるいは廃止の方向にあるということについて、もう一度この際外務大臣からお話しをいただきたいと思います。
  28. 福田赳夫

    福田国務大臣 吉田書簡は申し上げるまでもなく吉田総理総理をおやめになったあとで、時の国民政府の張群秘書長に対して差し出した書簡でございます。したがってこれは全く個人の間の書簡であります。しかもその吉田さんはもうなくなられちゃった、そこでこれが廃棄論というのがありますが、廃棄というのは一体どういう手続をとればいいのでしょうか。これは個人から個人にあてた手紙、それを廃棄せよ、その手続をどうするか。私どももうなくなった古田さんに、どうかあの手紙は廃棄してくださいとお願いするわけにもいかぬ。しかし私は、これは日中間一つの政治問題だというふうにもなっておりますので、これをどういうふうに処置するかということを考えておったわけでございますが、これは当然死滅したものである、換言すれば政府はもうこの書簡によって何らの拘束を受けないという状態にあるということなんです。これでこの問題は万事もう議論の余地のないところに位置づけられておる、こういうふうに御理解願っていいのではあるまいかと考えます。  それからココムに対しましては、これは先ほども申し上げたのですが、私どものとらえ方は、過去四半世紀の間のいわゆる米ソ対立の世界情勢が変わってきた、そうして正示さんもおっしゃられるように、いまや多極化の時代において緊張緩和、すなわち脱イデオロギー、こういうような流れも出てきておる、ココム体制もその流れに応じてこれを見ていかなければならないという認識でございます。その認識をどういうふうに実現するか、これは廃止の方向である。ただ全然廃止といいますと武器なんかがあるのです。こういうものが若干残るというような可能性も考えておく必要があるんじゃないかと思いますが、まずまず、そういうぶっそうなものは特別といたしまして、あとは全部廃止していいんじゃないか、いまパリでココムに関する会議が行なわれておりますが、そういう方針のもとにわが国は対処しておる、またこの会議にもかなり大きな影響を与えておるのだということを、この際御報告申し上げます。
  29. 正示啓次郎

    ○正示委員 あと青木理事に一問残し示すから、最後に、けさのNHKで私聞いたのですが、尖閣列島について東京のアメリカ大使館が言ったことがたいへんショッキングなニュースとして伝えられたのであります。すなわち、アメリカは尖閣列島の帰属云々について発言しないというふうなことを言った、これは日本を孤立化させるんじゃないかというニュースの取り上げ方であります。しかし、私は、これはアメリカとしてはあたりまえのことを言ったんだと思うのであります。そこで、尖閣列島については先般外務省が見解を示されたことからいっても、これは日本の固有の領土ということに何ら疑いない、またアメリカ日本との関係においてはそういうことにして、別に新しくけさ見解を言ったものではないと私は理解しておるのですが、その点だけ外務大臣からはっきりお答えいただいて、青木理事に関連の質問をしていただきます。
  30. 福田赳夫

    福田国務大臣 尖閣列島がわが国の固有の領土という点につきましては一点の疑いも持っておりません。国によってはいろいろな見方がありいろいろな主張もございましょうが、わが国といたしましては、これは一点の曇りもない、かたい結論を持っておりますから、どうかその私どもの所信を踏んまえまして御声援あらんことをお願い申し上げます。
  31. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 青木君より関連質問の申し出があります。これを許します。青木君。
  32. 青木正久

    ○青木委員 いま大臣お話で、日中問題たいへん前向きに取り組んでおられるという姿勢がよくわかりましたけれども、いまの大臣の御発言の中で、政府交渉政府の方針だ、外務大臣同士、あるいは佐藤総理なりが出かけていって交渉するその前の段階がある、それをいま慎重に検討しているということでございますけれども、現在、公式、非公式を問わず、また場所を問わず、広い意味において何らかの接触政府はされておるかどうか。外交の問題ですから具体的なことはお聞きしませんけれども、そういう接触をすでに始めておられるかどうかについてお伺いしたいと思います。
  33. 福田赳夫

    福田国務大臣 日中政府間接触の事前段階の問題だろうと思いますが、これにつきましては、政府間接触が始め縛るような両国の理解が実現するための努力、これはあらゆる機会をとらえまして、そういう方向で進めております。
  34. 青木正久

    ○青木委員 そういたしますと、すでに接触は広い意味において始めていると理解してよろしゅうございますか。
  35. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとおり御理解願います。
  36. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 西中清君。
  37. 西中清

    ○西中委員 いま外務大臣から政府間折衝を考えておるんだ、その前の段階として関連の質問がございましたが、これは中国としてはそれなりの原則というものがあるわけでございまして、先ごろの委員会におきましても領土の問題等がいろいろと論議になりまして、政府は統一見解を出された、こういう経緯があるわけで、はたしてそういう領土の問題なり日華平和条約の問題なりというものが、いまの政府の姿勢で、政府交渉というものがいきなり行なわれるかどうかということも、これは非常に問題があるわけでございまして、われわれとしては、具体的にどういう接触を行なっておられるか、これが聞きたいわけでございますけれども、おそらく答弁としては無理だと思います。  そこで、この領土問題に先立ちまして、今回もう一度確認をしておきたいことがございます。  それは日中間に戦争状態が今日もなお継続しておる、しておらない、こういった問題が過去にさまざまに論議をなされてまいりました。現在こうした新しい事態、さらにまたせんだっての台湾問題に対する政府統一見解というものを出された時点におきまして、再度確認をいたしますが、日中間に戦争状態は現在も継続しておるのかどうか、政府はその点どういうようにお考えか、まず最初にこの点について答弁を願います。
  38. 福田赳夫

    福田国務大臣 結論的に言いますと、日中間には戦争状態はございませんです。わが国中華人民共和国と戦争をしたということはございませんし、また中国全域を包含するというたてまえのもとにおいて国民政府との間に平和条約締結しておる、こういうこともあります。私どもは、戦争したこともない相手との間に戦争が継続しておる、そういう考え方はどうも理解はできませんです。
  39. 西中清

    ○西中委員 再度確認をいたしますが、日中間の戦争状態日華平和条約で最終的に確定的にかつ法的に終結した、こういうように理解をしてよろしいんでしょうか、いまの答弁は。
  40. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのとうりにお考えくださってよろしいと思います。
  41. 西中清

    ○西中委員 この点は過去にも論議がされて、非常に意見が分かれております。きょうはその点についてお話をするわけではございませんが、中華人民共和国と戦争はしたことはないのだ、こういうことでございますが、それもやはり法的にそういう意味であろうか、それとも実体的にもそうなんだろうか、その点はどうなんでしょう。
  42. 福田赳夫

    福田国務大臣 実体的にも法的にもさようでございます。
  43. 西中清

    ○西中委員 たしかこの外務委員会だったと思いますが、愛知前外務大臣はやはりいまのように戦争状態は終結した、北京政府は法的には日本国との間に戦争状態は終結していない、こういう見解をとっていることを承知しているというような話し方をされておりますが、福田外務大臣は、そういうように中国が法的には戦争状態が終結してないという見解をとっていることは御承知でございましょうか。
  44. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう見解中国側にあるという話は聞いております。
  45. 西中清

    ○西中委員 ここで承知しているまたは聞いているということでございますが、それに対しては承知しているまたは知っているというようにおっしゃいましたが、単にそれは認識しているということであって、これは何らか考えなければならぬという意味において受け取っておられるのかどうなのか、その辺の見解をお聞きしたいと思います。
  46. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国立場は、あくまでもただいま私が申し上げたとおり、法的にも事実上も両国の間に戦争状態が継続しておるという見解はとりませんです。ただ中国側が、私が聞いておるような状態で戦争はまだあるのだ、こういうようなことで、政府間接触、その過程でそういう議論が出てきますれば、これこそまた私が常々言っている政府間接触のその過程においてこの問題をどう処理するか、そういう結論が出てくるのだ、こういうふうに私は考えております。
  47. 西中清

    ○西中委員 政府は先ごろの統一見解で、第三項のところで「政府は、右の認識に立って積極的に日中国交正常化に努力する所存である」こういうように申されたわけですが、日本政府が、日華平和条約によって戦争状態は法的にも実際的にも終結したという立場をいまも言明をされておりますが、われわれとしては、こういう立場であっては日中関係の前進というものはまずあり得ない、そういうような考え方であります。実際に過去の経緯から見ましても、こういう立場である限りは、ほんとうに日中国交正常化の実りというものは期待できない、このように考えておりますが、そういう立場で、なおかつこの三項でおっしゃるような努力をし、いわゆる戦争状態というものが実際的にも現実的にも終結したという立場を終始とり続けて日中問題が解決するというように認識をしておられるのか、その点はどうでしょうか。
  48. 福田赳夫

    福田国務大臣 この種の問題は日中政府間接触、その交渉の中で結論が出てくる問題だ、こういうことです。そういう認識で私は政府間接触は始め得る問題である、初めから結論を出しておかなければ政府間接触は始まらないのだ、そういうふうな理解はしておりませんです。
  49. 西中清

    ○西中委員 初めから結論を出さなければ政府間接触が始まらないというような認識に立たない。そうしますと、中国がその点を何らかの譲歩をしなければ政府間接触は始まらない、こういう認識でございますか。
  50. 福田赳夫

    福田国務大臣 日華条約の廃止ということもそうでありますし、また戦争状態が継続しておるというところの認識、そういうものです。それらについていろいろ中国側で言っておるという話は聞いております。ことに日華条約の点につきましてはかなりはっきりそういうことを言っておる、そういうふうに私承知しております。ただ平和条約、つまり戦争状態が続いておるのだという認識ですね、この問題につきましては、日華条約の廃止の問題と私聞き方が少しこれは薄いのです。それほど強い主張があるというふうには伺っておりませんです。おりませんですが、いずれにいたしましても私は政府間接触を始める、その始める前提としては中国一つである、または中華人民共和国中国を代表する政府である、つまり正当な交渉の相手である、こういう認識でやるのですから、政府間接触が始まりますれば、それらのいろいろな問題がある。先方には先方の主張がある。こっちはこっちの主張がある。譲らなければならぬところが、出てくるかもしれませんけれども、いまここで譲れるとか譲れないとかそういう問題じゃないのです。要は政府間接触を始めましょうということなんでありますから、さような御理解をいただきたい、さように存じます。
  51. 西中清

    ○西中委員 要はまず政府間折衝を始めよう、こういうような御答弁でございますが、むしろそれは本末が転倒しておるのではないか。少なくとも日華平和条約の処置というものを含めて、国交正常化の日中交渉過程解決をしていきたい。このような方針は、何といっても中国がすでに繰り返し日華平和条約というものを認めない。この日華平和条約の処置について中国との交渉解決することが可能であるかどうか。この辺は私は逆の考え方で実はおるわけであります。日華平和条約については、むしろそういう中国の認めておらないという立場からいけば、政府間折衝の議題というよりも、やはりその前に日本のこの処置というものが基本になって、その上での話し合いというならこれは話はわかります。私はそういう点で政府の答弁というものは、やはり本末がどうも転倒しておるような考えがするわけであります。日中国交回復で結局これは避けて絶対に通れない。まず政府日華平和条約廃棄なり無効なりということを宣明するのがやはりほんとうの姿勢ではないか、このように考えるわけであります。そこで初めてこの国交回復交渉も始まるのではないか。これで政府は、こういう日華平和条約の処置をしないで政府間折衝がほんとうに始まるというふうにお考えかどうか、再度お伺いします。
  52. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのように考えております。
  53. 西中清

    ○西中委員 この辺は意見が変わっておりますので、非常に時間もたっていますからとどめますけれども、いま申し上げたように、過程解決すべき問題かどうか。少なくとも日華平和条約中華人民共和国がすでに最初から認めておらないという、こういう立場に立って考えていかなければならない、このように思うわけであります。  そこで、台湾の帰属について、統一見解では佐藤総理の前進的な見解を結局は否定するような立場で、政府の従来の見解というものを繰り返し認識をしたというにすぎないというように私は感じております。そこでひとつ確認をしたいのでありますが、台湾の帰属を決定する、このことは第一項にサンフランシスコ平和条約によって台湾に対する一切の権利、権原を放棄したから、それについては発言する立場でないというような見解でございました。それでは、その帰属を決定する権限を持つのは一体だれだとお考えなのか、その辺はどうですか。
  54. 福田赳夫

    福田国務大臣 事実上は、連合国、特に連合国の中のおも立った国の意向というものがその帰属をきめていく、こういうふうに私は思いますが、法的にいいますと、わが国はそれしもいう立場にはない、だれがその帰属をきしめるのか、わが国はもう放棄しただけでありまして、それすらも法的には発言の根拠は持たない、こう御理解願います。
  55. 西中清

    ○西中委員 これについても委員会でしばしば論議がされまして、その点で、いままで出ました確定的なことばではなかったかもしれませんけれども一つは対日平和条約の署名国というようなお話がありました。これはやはり疑問であろうと私は思っております。それからもう一つは、国際会議、こういったものでという発言が前外務大臣からも発言があったようなこともあります。さらにまた、アメリカとかイギリス等の主要国ではないか、こういうようなニュアンスの話もあったようでございます。整理しますとそういったことがございますが、まず最初の署名国という説でございますが、これは平和条約にもちろん規定はございませんから、日本台湾に対する権利、権原の放棄だけであって、署名国に帰属決定権を付与することについては何も規定しておらない、確かに法的にそういうようになっていると思います。したがって署名国が台湾の帰属を決定する権原を平和条約は与えていない、このように解釈するのが正しいと思っておりますが、その辺はどうでしょうか。
  56. 福田赳夫

    福田国務大臣 法的には私どもは、台湾の帰属がどうなるか、これはまたどういう国がきめるのか、どういう手続できめるのか、それらについて発言をする立場にはないということははっきり申し上げます。
  57. 西中清

    ○西中委員 いまの発言は、署名国ということはやはり法的にはいえないというようにとってよろしいのでございますね。
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ事実上はこの条約においてわが国台湾の領有権を放棄したわけでありますから、事実上は帰属をどうするかということについて、この条約の署名国、これが関係をしてくるんじゃないかというような一つの判断もできます。また、あるいはいまお話しのように、国際会議が開かれるんだという説もありますし、あるいは持ち回り承認というようなこともあるかもしれませんし、いろいろなことが考えられますが、とにかくわが国は、法的にいいますれば、何ら発言をできる立場にはない、それは帰属という問題もそうでありますけれども、その帰属の手続、そういうものについてもまたしかり、こういうふうに御理解願います。
  59. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、前愛知外務大臣のいわゆる国際会議において決定されるというような発言がございましたが、これは根拠がなき発言であったというように受け取ってよろしゅうございますか。
  60. 福田赳夫

    福田国務大臣 愛知外務大臣がどういう発言をしたか、私はいまここで見ておりませんけれども、しかし愛知大臣の発言は、常識的に見てそんなことがあるんじゃないかというような趣旨のことか、こういうふうに思います。
  61. 西中清

    ○西中委員 少なくともこれもやはり法的にはそういうことはないということははっきりしておると思います。  それから最後に、先ほども申しました主要国ですね、こういったものが決定するんだという考え方、これも根拠はない、こういうように認識しておりますが、政府はやはりそういうようにお考えかどうか、その辺どうでしょうか。
  62. 福田赳夫

    福田国務大臣 この条約署名国の主要国の動き、これが事実上影響力を持つ、こういうところからいまお話しのような見解というものが出るんだろうと思いますが、私どもは法的にはそういうことはあり得ない、こういうふうに理解しております。
  63. 西中清

    ○西中委員 大臣の御答弁からまいりますと、法的にはどこがどうするということはあり得ないということが明確になっておるわけであります。結局結論としていえることは、台湾の帰属の問題というのは、結局カイロ宣言、ポツダム宣言によって、台湾中国に帰属した事実を各国がそれぞれ自主的に認めるということ、そうしてこれを法的におのおのが裏づける、実際問題としてはこれしかないのではないか、こういうように考えますが、こういう考え方はどうお考えになるでしょうか。
  64. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも法的に聞かれますと、どこまでもわが日本は、この台湾の帰属については発言権はない、こういうふうに答えざるを得ないのですが、しかし実際問題とすると、おのずからきまっていくのではないか、おのずからということは、いろいろいきさつもあって、いま西中さんがカイロ宣言だとかあるいはポツダム宣言、こういうようなことを御引用でございますが、そういうことも重要な資料になるであろう、こういうふうに思うのです。私ども日本としては法的には何にもいえませんけれども、しかしそういうこと、それから中華人民共和国がいまや国連において有力なる存在となってきた事実、また世界的に中国一つであるというふうに認識されておる事実、そういうものを考えますと、これはおのずから結論が出てくるのではないか、そういう認識を持っておる、そういうことを統一見解でも申し上げておるわけであります。
  65. 西中清

    ○西中委員 政府としては、結局発言する立場にないというところでとどまっておられるわけですが、現実問題としては私は、署名国ないしは主要な国、そういったものが自主的に認め、そして法的に裏づけをしていく、これしかないというように認識をするわけであります。そこで外務大臣は非常に慎重に、この点については政府統一見解も非常にバックをされて、いまやまるで貝のからの中にとじこもって、そこから一歩も出ないぞというような姿勢でございました。われわれとしては日中国交回復を進める上でも非常に残念な思いをいたしておりますが、そのようにおっしゃってまいりますと、これは参議院におけるわが党の黒柳議員質問に対して総理が答えておられるのは少しおかしいのではないかというように私は感ずるわけであります。ということは、台湾の法的地位については発言すべき立場にないが、従来の経緯から見て中華人民共和国政府の主張するところは理解できる。日中国交正常化がなった時点で台湾中華人民共和国の領土になる、このように明快におっしゃっておりますが、発言すべき立場にないのになぜこのように御発言になるのか、これも実は言い過ぎではなかったのかというように読み直しておるわけでありますが、その点どうでしょうか。
  66. 福田赳夫

    福田国務大臣 その辺は言い過ぎと見まするか、率直というふうに言うのがいいでしょうか、御判断に待ちますが、要するに法的にいうと発言する立場にはないのです。しかし中華人民共和国政府が、中国台湾中華人民共和国の領土である、こういうように主張しておる、それはいろいろないきさつから見て理解できることである、こういうのです。ですからその理解というものが、いま理解という程度にとどまっておりまするか、もう一歩前進した形がどういうふうにして出てくるか、その見通しについて総理は申し上げたのではないか、非常に率直な気持ちとも理解できるわけであります。
  67. 西中清

    ○西中委員 それは外務大臣少しおかしいのじゃないですか。少なくともここで——これは本会議だったと思いますが、明快にこれは総理お答えになっておることであって、この台湾の領土について言及をなさっておるわけです。認識とはここにはおっしゃっておらなかった。それならばこれは取り消していただかなければいまの発言とはだいぶ食い違いが生ずるように私は思います。しかもこの点で、外務大臣との間には見解の相違はないというように総理は念を押しておられるわけでありますが、この点、どうでしょうか。はっきりとここには、国交回復すれば領土は中華人民共和国のものであるというように明快におっしゃっているわけですから、それならそれでその過程においても何らかのあれがあるでしょうし、いろいろな法的な問題もあるでしょうし、これは単に見過ごすわけにはいかない問題になってくると思います。その点どうでしょうか。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 総理は法的にはということを非常に冒頭に強調しておるのですよ。何ら発言する立場にはない、しかし私の見通しはこうだという見通しを言っておる、こういうふうに御理解願いたい。率直な総理の見通しに対する見解、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  69. 西中清

    ○西中委員 見通しとは御答弁にはないわけなんで、明らかに、従来の経緯から見て中華人民共和国政府の主張するところは理解できる、とまず理解をされておる。その上で、日中国交正常化がなった時点で台湾中華人民共和国の領土となる、この点では外務大臣との間に見解の相違はない。見通しだから——いままで私かお話ししてきておりますように、領土については全然発言権がないんだ、こういうように言っておられるわけですから、その点は同じ位置に属する問題でありまして、見通しだからいいということになれば、当然これは何を言ってもいい、台湾の領土権についてはどう発言してもかまわない、こういうような逆の論法も出てくるわけでございますから、その辺私は納得がちょっとできないわけです。これでは参議院における黒柳質問に対する答弁がやや政府見解とは違った——このときの総理の発言は少し言い過ぎだと言いますか、政府立場からすれば、われわれとしては当然のことだろうとは思いますけれども、この点がどうも明快ではないというふうに考えます。これはあらためてまた参議院でもいろいろと質問が行なわれると思いますから、きょうはこの質問はこれでとどめておきますけれども、その点私としてはまだ了承できない、こういうことでございます。  次に、統一見解の第一項で、わが国はサンフランシスコ平和条約によって台湾に対する一切の権利、権原を放棄しているから、台湾の帰属について発言する立場にない、こういうように述べられております。御承知のように当時すでに中華人民共和国は一九四九年に成立をしていた、そういう経緯がございますが、結局そのときに中国の参加を抜きにしてできました対日平和条約に対しては、中華人民共和国はこの条約の効力を認めていない、こういう立場でございます。結局、その当時の周恩来外交部長も「対日平和条約の準備、起草及び署名に中華人民共和国の参加がなければ、その内容と結果のいかんにかかわらず、中央人民政府はこれをすべて不法であり、それゆえ無効である」というように五一年の八月十五日に言明をしておるわけであります。したがって中華人民共和国日華平和条約のみならずサンフランシスコ平和条約そのものの効力も認めでおらないという立場に実は立っておる。そうしますと、政府統一見解のこういったものも中華人民共和国については実はまことにおかしな発言であるというようにとられるわけでありまして、結局台湾の帰属というものは、対日平和条約とは無関係、その以前のカイロ宣言、ポツダム宣言によって中国に返還されるという、こういう認識に立つことが実はほんとうなのではないか、こういうようにわれわれは考えるわけであります。これは先ほど申しましたように主要国なり関係国なりこういったものがお互いが承認する、これで台湾というものの立場というものは明快になってくるのではないか、このように私は考えるわけでございます。また、それ以外に実際問題としても現実問題としても、台湾の帰属を決定する万策というものは実はあり得ないのではないか、こういうように考えますけれども、その点大臣はどのようにお考えなんでしょうか。
  70. 福田赳夫

    福田国務大臣 繰り返すようですが、法的にいうと、わが国台湾の帰属につきましては何ら発言する立場にはございません。しかし、常識というものがありますが、常識とすると、いろいろな手続が考えられる。また、その方向につきましては、これも常識がある。つまりカイロ宣言、ポツダム宣言、これは平和条約的な効果は持っておるものじゃございませんけれども、そういう歴史的事実があったということも国際社会ではよく知られていることである、かように存じます。
  71. 西中清

    ○西中委員 時間が参りましたので、これは若干立場の変わった質問になるのですが、次回の質問のためにお聞きをしておきたいのですが、これは一つの仮定でございますから、その立場をお聞かせ願いたいと思いますが、中国一つである、こういうふうにわれわれは政府見解も聞いております。これからそういう立場に立ち、さらに台湾中国の領土の一部である、そして中国を代表する唯一の正統政府は中華へ民共和国であるという立場にかりに立った場合には、そういう立場をわれわれも繰り返し主張しているわけですが、こういう立場に立った場合に、台湾日米安保条約でいう極東の範囲から除外されると思っておられるのでしょうか、それともこれは除外されないのだ、こういうようになるのでしょうか、その辺は理論的に言えば当然これは除外されるというように理解すべきだと思いますけれども、この点どういうふうに外務大臣はお考えになるでしょうか。
  72. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは前提がいろいろあるようでお答えが非常にむずかしいのでありますが、非常な常識論を申し上げますと、これは日米安全保障条約わが国だけの立場ではきまりません。これはアメリカとも相談しなければならぬ、こういう問題がある。しかし、方向としてはこれはいま中国には二つ政府があるわけですが、これは一つ政府になってしまった、台湾等も含めての一つ政府であるということになると、おそらく見通し、傾向といたしましては、安保条約の対象外に台湾等はなる、こういうふうに思いますが、あくまでもいろいろ前提のある話でありまして、また相手国のあることでございまするものですから、断定的なことは申し上げませんけれども、ざっとした常識論、そういうものに立ちましての見通しといいますか、そういうところを申し上げますと、さようなことじゃあるまいか、かように存じます。
  73. 西中清

    ○西中委員 外務大臣から除外されるのは、これは常識的に言っても、単純な理論から言っても、これは当然のことであろうと私も思います。そうなると、日米安保並びに一九六九年の共同声明は明らかにこの日中国交正常化の基本的な姿勢である、中国一つ台湾中国の領土の一部、そして中国を代表する唯一の正統政府中華人民共和国であるという立場をとるということは非常にむずかしい。むしろ日米安保条約並びにこういった共同声明がさわりになっておるということも逆に言えないことにない、こういうふうに言わざるを得ないわけでございますが、政府がこの立場に立てない、唯一正統政府、そういった立場、または台湾中国の領土の一部である、こういった点で非常なつながりがあるということが過去にもしばしば指摘をされておりますが、これは大きなウエートになっておるというふうに私たちは感じまが、外務大臣、どのようにお考えでしょうか。
  74. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は日中国交正常化と日米安保体制、これはもう両立し得る問題である、そういう結論でございます。もう世界情勢はぐるぐる変わっておる、流動しておる。ことに米中会談を契機として米中間が非常な大きな転換をしておるのです。中国封じ込め政策、そういう事態じゃもうないのであって、話し合いの米中関係、こういう情勢にいまなってきておる。過去におきましては封じ込め政策、その一翼をわが日本がになっておるのだというような見方、これは中国側には確かに私はあっただろうと思う。そういう際における安保体制への評価、それから封じ込め政策から今度は台湾関係に移り変わった、その際の日米安全保障条約に対する評価、これは変わってきていると思うのです。その辺ひとつ私どもといたしましては慎重に検討しなければならぬ問題だというふうに考えておる次第でございます。
  75. 西中清

    ○西中委員 終わります。
  76. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 曽祢益君。
  77. 曾禰益

    ○曽祢委員 最初に、この間の当委員会で私が質問いたしました中英共同声明ですか、あの中に、これは同僚委員からもきょうもあげられた点ですけれども、英語で見ると、中華人民共和国台湾は一省であるというその立場に対して、これはアクノレジするとなっているけれども、同じアクノレジが、今度は中国文はまだ手にしていないからわからないけれども中国側から得た日本訳によると、承認というふうになっているようだ。これは米中共同コミュニケの場合に、特に私がアクノレジということばは非常に幅が広いので、いろいろな意味があるが、政府の仮訳によると、中国語の認識、レンシーということばを使っているけれども、これはちょっと適当でない。もう少し認識よりかもっと強いのが普通のアクノレジのことばじゃないか。承認は少しオーバーにしても、了承とか、了知くらにしたほうがよいではないかということを申し上げたのに、今度の中英共同コミュニケのアクノレジはほんとうに承認になっているかどうかということを伺ったのですが、そのときにまだ御答弁がなかった。その点はどうなっているのですか、まず御答弁願います。
  78. 福田赳夫

    福田国務大臣 その点は台湾の領土帰属問題に関しまして、有力なる英国の見解に触れる問題でありますので、私どもといたしましても根掘り葉掘りというくらいに英国政府の意見というものを聞かしたのですが、しかし、英国政府の言うところによりますと、これはアメリカ中国との間の共同声明、あそこでアクノレジということばが使われておる、その同じ意味であるというふうに了知願いたい、こういうことにとどまっておるのです。  なお、非公式な言い方でありますが、アクノレジということは、これは意味するところは、これは鏡にあるものを映す、そういうようなことを意味しておるのだ、こういうようなことでございます。つまり、そういうことからいうと、中華人民共和国台湾中国の一州であるというその立場、ポジション、これをアクノレジする、そういうポジションを鏡に映しておる、こういうようなことになるわけでありますが、どうもその日本語と英語の微妙な違いといいますか、妥当な訳をどういうふうにすればいいのか、非常にこれはむずかしい問題だろうということだけはよく私にはわかるのであります。
  79. 曾禰益

    ○曽祢委員 いや、そっちのアクノレジのことばの解釈の問題じゃなくて、中国語にはどうなっておったのか、これはイエスかノーか、認識と書いてあるのか、承認と書いてあるのか、他のことばになっていたのか、これを教えてくれというのです。
  80. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 技術的な問題でございますから、私からお答えいたします。  中国語の訳はアクノレジのところも、そのあとに法律的な用語としてレコグナイズということばが出てきておりますが、その両方のことばをともに承認というふうに訳しておりまして、中国語ではレコグナイズもアクノレジも区別いたしておらない訳をとっております。しかしことばといたしましては、前段はアクノレジでありまして、後段の法的効果を発生しておる部面につきましては、承認するというレコグナイズということばを使っておるわけでございます。
  81. 曾禰益

    ○曽祢委員 これはまあ中国側のことですからかまわないことですけれども、私の言わんとするところは、むしろこの前の米中共同コミュニケの祭に、中国側認識ということばに飛びついて、いまの、鏡に映したような、要するに現状認識だけであって、価値判断がないんだという、アクノレジの一番薄いほうのことはに訳して——日本語訳はですよ。まあアメリカのあれはたいしたことないんだ、どちらかといえば。しかも主語も中華人民共和国の主張じゃなくて、海峡の両側のすべての中国人が中国一つで、台湾中国の一部だと習っているんだ、しかもその立場アメリカはアクノレジという一番やわらかい、一番当たりさわりのない、チークノートと同じくらいの訳にしておくというところに私はどうも何とはなしにすなおに見るよりも軽く見ようとする動きがあるんじゃないかという気がしたので、この問題を提起したわけです。  今度のこの英中のを見れば、両方あるから、結局承認したとしても、とにかく中国側承認ということばを使っているのですね。というのは、イギリス側も中国側では承認ということばを使うことを認めているわけですね。これは英国側は中国側と二十三年間も交渉しておいて、中国側承認ということばを使うということに、うかつに使わせているはずはないのです。だから、アクノレジということばはほんとうは英語の語感からいうと非常に軽い意味なんだから、中国側承認ということばを使わせて、そこで妥協をはかっているんだろう、私はそういうふうに考える。したがって、これは日本に直接はね返る問題じゃないけれども、こういったような、中国の領土である、あるいは中華人民共和国の領土であるという主張を、統一見解等によれば、よく認識するというようなことばでやっておられるようでございますが、もう少し事態をシビアに見て、特に日本の場合には、事のよしあしは別として、歴史的に中華民国との間に条約まで結んでいるのですから、ただ台湾に関する中華自民共和国の領土権の主張について、ごく軽い、当たらずさわらずのテークノート方式でいけるんだというふうにもし考えているとすれば、これは非常に認識を誤るんじゃないか、また国民を誤らせるんじゃないかと思いますので、やはりもう少し——イギリスはかなり強い線で承認までいっているんだということは、はたしてそれこそ認識しておられるのか。その立場承認しなくてもいいですけれども、あまり軽く取り扱っているのは私は間違いだと思うので、あえてこの点にこまかい質問をしたわけです。その点はどうなんですか。認識だけを伺って、次の問題に進みます。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほども正示委員質問に答えましたが、台湾の御上帰属についての英中共同声明、これの態度は米中共同声明におけるアメリカ態度、これに比べると前進をした姿勢である、こういうふうに受け取っております。ただその前進がどの程度であるかということは、これはなかなか捕捉できない。それが現状でございます。
  83. 曾禰益

    ○曽祢委員 次の問題に移ります。  昨日の新聞報道によると、インドネシアの閣議で、マラッカ海峡を通る二十万トン以上のタンカーは、今後マラッカ海峡ではなくて、ロンボク及びマカッサル海峡のほうを通らせるようにするという閣議決定があったということが伝えられております。この問題を私が提起いたしたいのは、この問題は今日始まったのではなくて、先般来もうすでにマレーシア、シンガポール、インドネシアの三国はマラッカ海峡を国際水域と認めない、一種の三国の共同の内水とでもいいましょうか、そういう方向でこの水路の問題、あるいは沿岸国のいろいろな公害等から利益を守ろうとする姿勢がすでにもう前からあったわけですが、もしこれが、今度のインドネシアの主張が現実に行なわれるとするならば、これは国際水路としての地位に非常に大きな問題が起こる。少なくとも二十万トン以上の日本のタンカーがこれを遠回りしてロンボク、マカッサルを回るとすれば、運輸省の試算によると一隻一航海当たりで二千四百七十万円のロスが起こる、たいへんなことだというふうにいっていると伝えられておる。この問題はわが国としても非常に重大な関心を持たなければならないし、すでにこの問題が、この三国をめぐって、中国側は三国側の主張に賛成、ソ連はむしろ国祭水域という立場を強く主張して、これまた日本側にも何らかそういったことで、日本側の意向はどうだというようなアプローチをしているやに伝えられております。  以上のようなこの問題に対する沿岸三国側のナショナリスティックな主張、これをめぐってすでに四極ゲームとでも申しますか、東南アジアの四極ゲームが始まっているような感じがいたします。日本政府はこれらの問題についてどうお考えであるか、また従来の経緯がどうであるか、簡単でいいですから外務大臣から御説明願いたいと思います。
  84. 福田赳夫

    福田国務大臣 この問題は、一九六七年にあの海峡で海難事故がありましてから問題化いたした。あの海峡に浅瀬があるのじゃないか、そういうようなことがまた特に取り上げられたわけであります。そこでこの三国からわが国に対しまして水路調査の依嘱がありまして、わが国はその要請をお受けいたしまして調査も行なったわけでありますが、その結果を見ますと、やはり浅瀬があるというようなことも報告をされておるわけです。なお要請があれば、引き続いてさらに突っ込んだ調査、これもしたい、こういうふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、わが国は特にアラビアから持ってくる石油の関係がありまして、あの海峡をわが国の貨物船が航行するということはわが国の重大な問題であります。これが閉鎖的な方向に動くということにつきましては、多大な関心を持たざるを得ない。そういうようなことから、この三国の主脳とわが国首相あるいは私どもが会うことがありますが、その際にはいつもこの問題をテークアップしまして、そうしてわが国の船舶の航行ができ得る状態に置かれたい旨の要請をしておるわけであります。まだ私は正確な情報をつかんでおりませんけれども、いまお話しのように、インドネシア政府の何らかの意思表示があったということでございますが、そういう問題がマラッカ海峡の封鎖的な方向に発展をするということになれば、これは多大の影響がありますので、この問題につきましては、あくまでも船舶航行の自由という方向において対処していきたい、かような考えでございます。
  85. 曾禰益

    ○曽祢委員 国際法から見まして、このマラッカ海峡はいわゆる公海といいますか国際水域といいますか、そう見るのが正しいのか、それとも沿岸国側の領海と見るのか。それはいろいろと入口や幅の問題もございましょうが、その辺は日本政府の明快なる法律的解釈はどうであるかを、まず伺います。
  86. 高島益郎

    ○高島政府委員 わが国は領海は三海里という立場をとっておりますので、その限りにおきましてはマラッカ海峡は公海だと考えております。ただし、この問題につきましては、御承知のとおり来年海洋法に関する会議がございまして、領海の幅員を含めて海洋法一般についてのレビューが行なわれます。その段階でこういう問題を含めて建設的に考えていきたいと考えております。  なお、かりにこの三国側が主張しておりますとおりこの海域が領海だといたしましても、曽祢先生御承知のとおり領海条約によりますと、国際海峡においては普通の無害通航以上の自由通航を認めなければならないというたてまえになっておりますので、私どもはそういう見解をとっております。
  87. 曾禰益

    ○曽祢委員 法律的な見解から見て、これは国際水域としての自由通航を主帳する十分なる理由があると思います。しかし、そうばかりいかない政治の議論がありますが、これはあとで触れます。  その前に、先ほどちょっと私みずから申し上げたのですけれども、ソ連のトロヤノフスキー大使から外務省にこの問題についてアプローチがあったのかないのか、新聞の伝うるところによるとあったというのですが、あったとすれば、どういうことであるのか、お知らせを願いたいと思います。
  88. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 三月の三日にソ連大使が外務省の森次官のところに来訪しまして、ソ連はマラッカ海峡の自由通航を確保すべきであるというふうに考えるという申し入れをしたわけでございます。それをインドネシア、シンガポールに対して行なった。ついては日本政府はどういう感触であるかということを打診してきたということでございます。これに対して当面の外務省の見解といたしましては、国際海峡等の一般的な法律問題は明年のジュネーブにおける海洋法会議でいろいろ検討するということにしたい。とりあえずマラッカ海峡の航行安全を確保する。衝突事故等を未然に防止し、海水汚濁の危険を防ぐようにするというような問題で、現在関係国と協議中である。当面航行安全を確保するためにわが国は沿岸国の要請によりまして水路測量を行なっておる、こういうことでございます。
  89. 曾禰益

    ○曽祢委員 一方中国側は、これは新聞の伝うるところによれば、ソ連は日本と共謀して沿岸国の主権侵犯をたくらんでおる、けしからぬ、こういうような声明、あるいはインドネシア、マレーシアに対するそういう申し入れといいますか、見解表明があったやに聞いておるのですけれども、これは外務省の公式ルートあるいは得られた新聞情報でその点は確認できますか、中国側のそういったような主張。お答え願いたいと思います。
  90. 吉田健三

    吉田(健)政府委員 中国側は十二日の北京放送で、ソ連修正主義社会帝国主義国は、マラッカ海峡の国際化を売りつけるため、日本反動派と結託しておるという趣旨の放送を行なったということは承知しており残すが、別に中国のほうから直接われわれのほうにこの問題について、現在のところ、間接的にも正確な情報なり打診は伝わっておりません。
  91. 曾禰益

    ○曽祢委員 外国の主張がどうであれ、私は日本の主張は法律的にも国際水域であることは正しいし、それから日本の平和的経済的な利益からいっても、この通航が妨げられないように、むろんそのために必要な沿岸国に対する技術協力等は惜しむべきではありませんが、これが日本の主張であることは間違いない。われわれはそれを支持するものです。ただ問題は、この際よほど考えなければならないのは、単に一片のドライな国際法の理論、自由通航はあたりまえじゃないかでいき得ないところに問題がある。特にわが国の場合は確かにこの水路は重要である、日本の経済の動脈に触れておる問題ですから。しかし、何かというと最近マラッカ海峡国防第一線論といいますか、いわゆるマラッカ海峡生命線論といったような議論が行なわれる。そういう点がわが国の軍国主義化じゃないかというような東南アジアの開発途上国、あるいは日本の技術的な協力を求めつつも、日本のそういう巨大な経済力、それにまたすぐ日本人みずからが、マラッカ海峡生命線論というようなことを不用意にも言っておるということは非常に大きな疑惑を招く。そういうことが沿岸国等に非常に悪く響く。国際的にも日本の名誉からいってもゆるがせにできないような問題にかかっておるのじゃないかと思うのです。こういったようなマラッカ海峡生命線論をどうお考えになるか、外務大臣から御所見を伺いたい。
  92. 福田赳夫

    福田国務大臣 マラッカ海峡生命線論というのは、軍事的意味でそういうことが唱道されるとすれば、これはたいへんな間違った考え方だろう、こういうふうに思います。つまり、わが国は海軍力を増強してマラッカ海峡の航行を確保する、こういうような考え方に基づいてそれを推進するという意味だとすると、これはたいへんな間違った考え方だろう、こういうふうに思うのですが、そうではなくて、あそこを平和裏に航行する、これはわが国の経済、またわが国の存立にとって非常に大事な問題である、こういう意味でありますれば私はそのとおりだ、かように考えます。
  93. 曾禰益

    ○曽祢委員 そんなことばのあやじゃ済まぬのですよ。第一、満州国は生命線だとかそういうことをかつて日本が言ったわけです。ですから、その生命線論というものはもっと非常に危険な、それは地勢学的にも政治的にも軍事的にも勢力範囲的にも、あそこまでを日本が当然守らなければ日本は息が絶えるのだ。むろん現在の石油の供給からいっても、九〇%以上がペルシャ湾地帯から来るのですから、あそこの航行が安全でなければ困る。その他のいろいろな原材料、日本の対外輸出から考えても重要な水路である。これはいいのですけれども、かつての満州生命線論、ああいう議論からいけば、初めは満州で始まったのが、いつの間にか北支にいって、今度中国全体で、今度仏領インドシナ、そして今度は蘭領インドシナをとってそれが太平洋戦争に進んだ。ああいったような、どこの地域までは生命線だということをいえば、これは台湾海峡だって非常に重要な生命線です。しかし、それではマラッカ海峡から先のペルシャ湾で国際紛争が起こったら安全なのか、これもやはり生命線だということになると、すなわちそういったような日本の政治的、軍事的なあれに、とめどのないような巨大化ということを心配させるような非常に軽率な——外務大臣がそう言っておるのじゃありませんよ。ただ軍事的でなければいいというふうに言われましたけれども、そういう生命線論なんという取り上げ方は非常に外交上害がある。そういうことでなくて、日本のテクニックを持っていって、あそこでたとえば必要なら水路を掘ったり、あるいはいまお話があったようにあそこら辺の公害なんかを起こさないようにする、二十万トン以上のタンカ−が座礁でもしたらえらいことになりますから、そういうことを日本が真剣にやるけれども、あそこに行って日本の生命線を守るために——軍事的でなくても、日本があそこへ進出していっていろいろ口きくのはあたりまえだというような姿勢でいくと、現地のナショナリズムにこちんとぶつかるのじゃないか、こういうふうな感じがいたしますので、そういう意味でないということを、この際外務大臣からはっきり国民の前に示しておく必要があるのではないか、かように考えるわけですが、いかがです。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 曽祢さんの御所見のとおりに考えております。
  95. 曾禰益

    ○曽祢委員 ぜひこの点が徹底されるようにお願いいたします。  次に、昨日の国会、たぶん本院だったと思うのですけれども、予算委員会でしたか、あるいは沖特でしたか、ちょっと覚えてないのですけれども、こういう質問があった。簡単にいえば、日ソ平和条約交渉にからむ領土問題について、歯舞、色丹等が返ってくる、その場合にはそこに軍事基地を設けないというような考慮をしたらどうかというような趣旨の御質問に対する外務大臣の御答弁、あるいは御答弁そのものよりもそれを伝えた新聞の書き方に、私はちょっと心配に考えたのですけれども、何かあの返還地域日米安保条約の適用外の地域にしてもいいんだというふうにとれるような記事の書き方をしている新聞もあります。そうじゃなくて、そこに軍事基地を設けるなんかということはありそうもないけれども、そういうときには慎重に考える、ソ連から返ってくる日本の領土にわざわざアメリカの軍事基地をつくってやるばかもないでしょうから、そういうことに対する否定というならいいんだけれども、北方領土が返るのに安保条約からはずれた地域にするというようなことに持っていってもいいんだととれるような御答弁か、あるいはそういう記事の取り上げ方、これは私は筋がちょっとおかしいのじゃないかという感じがしたのですが、真相並びにお考えを伺いたいと思います。
  96. 福田赳夫

    福田国務大臣 きのうの沖特です。そこで、いま曽祢さんからお話しがありましたように、日ソ平和条約締結する際に四つの島が返ってくることにきまった場合に、それを安保条約の適用外にするか、こういうような質問です。そういう条件を向こうが出してきたらどうする、こういうようなことも含まれておったようでありまするが、私はそれに対して非常に明快に答えておるつもりなんでありますが、歯舞、色丹、国後、択捉、これらの島々が返ってきた場合に、そこによもや新しく軍事基地を設けるというような事態は起こりますまい、これはそういうことが起こりそうもない、そういうことで御理解願ったらどうでしょう、こういうような趣旨のお答えを申し上げておるわけであります。そのとおりにお受け取り願いたい、かように存じます。
  97. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は、軍事基地をそこに設けるなんかということは全く意味もないし、不必要に刺激的なんで、そんなことはアメリカも持ってくるはずもないし、来たってそんなものは断わればいいんだけれども、ただ質問者のあれが、私は悪いけれどもよくわからない。第一、ソ連側は返すことの条件として安保の適用からはずれる、あるいは安保がなくなれば返してやるというような甘いあれじゃないのですね。これはもうそれこそヤルタ秘密協定によって自分の憲法まで変えて編入しちゃっているから、これはもう確実にきまっているんだ。何らの傷なしに、あるいは条件なしに——日本が安保条約を結んでいるからとか、その土地がアメリカの軍事基地に使われるからとか、そんなことじゃないのですね。それにもう一つは、安保条約のよしあしは別として、安保条約がある限り、ある地域を安保条約の適用外にするから返してくれなんということは、全く全体の姿勢としても意味をなさないと思うのです。そういう意味でちょっと気になったので御質問したわけで、これはこれ以上進めるつもりはありませんが、やはりこの領土問題ははっきりと、日本の固有の領土なら交渉によって平和条約の前に返還はあくまで要求するんだということで、こっちから条件を出すがごとき態度はよくないと私は考えます。  最後に、時間がありませんけれども、一言だけ伺いたいのは、実は朝鮮問題であります。  実は今度の米中共同コミュニケでわりあいあっさり片づけられている感じがするのは朝鮮問題なんですが、しかしことしの国連総会を考えてみれば、やはりこの朝鮮問題がほのぼのと以上に日程にのぼってくるのは当然だと思う。アメリカ中国が軍事的解決からとにかく国交調整のプロセスに——これは相当な長いプロセスが要ると思うけれども、入っている。やはりその次に緊張の焦点である朝鮮半島の問題が当然に議題になることはあたりまえなんです。わが国はむろんこの韓国との間に、国連決議に従ってこれを唯一の正統政府と認めた日韓国交条約を結びまして、われわれはあの時点においてはその選択に賛成した。しかし、かといって南北の和解の方向が一番望ましいし、この国連総会ではどうしても朝鮮問題がもっとクローズアップされることは当然だと思います。私はむしろ朝鮮を含むいわゆる分裂国家ですね——中国問題は全然別ですけれども、ベトナムとかあるいはドイツとか朝鮮とか、こういったような分裂国家といいますか、分裂地域といいますか、これは両方とも国連参加という方向に基本的には進むべきだという感じがいたします。さしあたって、国連においては従来のように韓国側だけは無条件に呼ぶ、しかし北鮮、つまり朝鮮民主主義人民共和国のほうは、国連の権威を認めるというような一つの踏み絵をしてからでなければ呼ばない、ああいうような態度でなく、無条件にともかく朝鮮統一問題に関する国連総会の論議に両方呼ぶというくらいなことは当然であるし、むしろその点を日本が推進すべきではないかと考えますが、朝鮮問題についてももうそろそろちゃんと国連総会に対する対策だけでもきめておかなければならない時期が迫っていると思いますが、外務大臣のお考え並びに今後の段取り等につきましてお伺いいたしましてから、私の議論、質問を終わりたいと思います。
  98. 福田赳夫

    福田国務大臣 朝鮮半島の問題は、日中問題に次いでわが国の大きな外交課題となってくる、こういうふうな認識でございます。特にことしの秋国連総会が開かれる、その際にこの朝鮮半島の問題、これが議題になる、そういうことが考えられるわけなんです。それに対してわが国がどういう対処をするか、これはお話しのようにいまから準備をしておかなければならぬ、こういうふうに考えておりますが、ただこの問題が国連で取り上げられるのは秋ですから、まだ間がある。それまでの客観情勢動き、それらをよく見詰めまして、誤りなき対処のしかたを打ち出していきたい、こういうふうに考えておりまして、曽祢さんのおっしゃるとおり、すでに全く私どもの頭の中にその問題があるわけでありまして、目下検討中である、かように御理解願います。
  99. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 松本善明君。
  100. 松本善明

    松本(善)委員 私は最初に、沖繩の那覇空港にありますP3の移駐問題をお聞きしたいと思います。  この問題については、外務大臣は昨日、沖繩北方特別委員会でまだ正式の申し入ればないという趣旨の答弁をされたということでありますけれども、このP3の移駐問題は、政府としてはこれについてどういう態度をとろうとしておるのか、この点について総括的にまず御説明をいただきたいと思います。
  101. 福田赳夫

    福田国務大臣 那覇空港におきまするP3は返還時におきまして、これを撤去していただく。それから那覇空港に存在する諸施設は日本政府に移管をしてもらう。こういうふうに考えておるわけであります。ところが、いま松本さんがお触れになりましたように、この問題はちょっとやっかいな問題があるわけなんです。いま、米軍におきましてはP3を普天間飛行場に移すという考え方、これは大体固まってきておるわけでございまするが、ところが、その普天間の飛行場がP3の移駐を受けますと、少し狭過ぎる、こういう見解があるやに承るわけです。そこで、その際、狭過ぎるものですから、そのうちのKC130いう種類の飛行機をこれを本土に移す。こういうことを考えておるやに承っておりまして、そういうことになりますと、なかなかいろいろやっかいなことが起こりますので、とにかくいま頭が痛い問題だな、こういうふうに考えておるのですが、まだ正式にアメリカのほうからこうするんだという見解は述べてきておりませんです。
  102. 松本善明

    松本(善)委員 このP3を移駐するということについては費用を新年度予算に組んでいるのではありませんか。その予算関係の御説明をいただきたいと思います。
  103. 福田赳夫

    福田国務大臣 P3の移転につきましては、三十八億円昭和四十七年度予算に計上してあります。
  104. 松本善明

    松本(善)委員 その三十八億円は普天間への移駐ですね。そうすると日本政府の方針としては、アメリカ側から正式の申し入れがあれば日本の費用で移駐を行なう、こういう方針である、こういうふうに伺ってよろしいですか。
  105. 福田赳夫

    福田国務大臣 那覇飛行場から普天間へのP3の移転につきましては、これは日本の負担において行なうというはっきりした方針を立てております。
  106. 松本善明

    松本(善)委員 念のためですが、正式の申し入れがあれば受け入れる、やるとこういうことでありますね。当然のことで、念のための御質問でありますが。
  107. 福田赳夫

    福田国務大臣 那覇飛行場からP3が普天間に移駐をするということにつきましては、 これは当然これを受け入れる、こういう考えでございます。
  108. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、KC130は岩国に移るのではないかと思いますが、このKC130を移したいというこのことについては、アメリカ側から申し入れがあった場合、日本政府はどうするという考えでありましょうか。
  109. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは申し入れを受けまして、ほんとうにそういう事情が、必要なのかどうかというようなこともよく確かめてみなければならぬ、こういうふうに思います。まだ正式にどういう事情でどういうふうにしたいんだという申し出がございませんので、まだ検討もいたしておりませんです。
  110. 松本善明

    松本(善)委員 しかし、客観的な事情としては、P3が普天間に来ると、そこにいる、いま先ほどお話があったようにKC130はどこかに動かさなければならない、こういうことになるのではないのですか。
  111. 福田赳夫

    福田国務大臣 その客観的事情というのがよくわからないのです。そこで、正式な客観的事情の説明を受けて、それから考える、こういう段取りでございます。
  112. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、別の観点から伺いたいのですが、日本政府としては沖繩にあるKC130にしろ、米軍の軍隊が本土に移駐してくるということは許さないという方針でいるかどうか、伺いたいと思います。
  113. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ許すとも許さないとも、正式な申し出がありませんものですから、態度はきめておりませんです。
  114. 松本善明

    松本(善)委員 私がお聞きしたいのは、KC130についてはこれから検討ということのようでありますが、一般的に沖繩にいる米軍部隊の本土への移駐というのは許さないという方針は持っていない、こう受け取っていいのかどうか。場合によってはそれは認めていくんだ、こういう考え方外務大臣はおられるのかどうか、この点を伺いたいわけであります。
  115. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは沖繩がわが国に今度は戻ってくるんです。それで沖繩を含めて日本国土全体でリロケーションというものが行なわれる。ことに関東平野なんかは大規模のリロケーションというか整理縮小が行なわれるわけなんです。ですから、そのリロケーションを絶対に認めない、こういう考え方はいたしておりませんです。
  116. 松本善明

    松本(善)委員 確かめますが、そうすると、沖繩協定発効後は沖繩の基地も本土の基地も同じように考えて、その間の米軍移駐というものは日本側としても同意をしていくという考え方だ、こういうことでありますか。
  117. 福田赳夫

    福田国務大臣 原則論といたしましては、さように御理解願ってよかろうと思います。
  118. 松本善明

    松本(善)委員 そういたしますと、これは私どもが従来から指摘をしておったのでありますが、沖繩の米軍基地が果たしていた米軍のアジア戦略の中での重要な役割りというものを日本全土で今度は負っていくという結果になるのではないかと思いますけれども、その点については外務大臣いかがお考えですか。
  119. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は原則論を申し上げたんでありまして、個々の適用、それはそういうふうにはなりません。どこまでもケース・バイ・ケースで判断する。いまのKC130につきましても、客観的事情はどうなんだということをよく調べた上、これは差しつかえなかろうとか、やむを得ないとかいう判断になりますればそうしまするけれども、なるべく——気持ちを率直に申し上げますと玉突きなんていわれるような事態にならないように希望するのでありますが、どういう客観的事情があるのか、その辺をよく調べてみなければこれは結論が出ない、こういう性格のもんです。
  120. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣お話は一般的には沖繩の基地も本土の基地も同じように扱っていくという考えだけれども、具体的にはどうなるかは今後の問題だ、こういう話でありますが、別の観点から伺いたいのでありますが、もし、日本側がこのKC130なりの本土への移駐を認めない。そして事実上P3が普天間へ来ることについて、日本側が認めないためにいろいろな支障が生ずるというような事態が起こった場合、そういう場合は那覇空港を返すという問題は御破算になるのか。ことばをかえて聞きますならば、那覇空港を返すということはそういう条件つきのものであるかどうか。P3移転を日本側が責任をもりて行なうということの条件つきのものであるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  121. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは関連はありますけれども、条件つきとまで言えるかどうか。とにかく那覇空港は返還時にはこれを完全に返してもらいたい、こういうふうに考えておるわけなんです。そのかわりP3の普天間への移転費はわがほうにおいて負担をいたします、こういうことになっておるんです。その線でいま動いておるんですが、その結果普天間の飛行場が狭益に過ぎる、他の飛行場へ一部のものを移転させなければならぬかな、こういう意見もアメリカ側で出ておるというので、前広ではありまするけれども、頭の痛い問題である、こういうふうに心得て心配をしておるというのが現状です。
  122. 松本善明

    松本(善)委員 P3が普天間に来た場合に、普天間のKC130が岩国に来、それから岩国のP3が三沢に行くという話が出ておりますが、そういう場合の予算措置というものは政府部内で考えているのかどうか。考えているとすれば、どのくらいのことを考えているのか、お話しをいただきたいと思います。
  123. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ予算措置というような現実的な段階まで事は動いておりませんです。まだ正式にそういう話を承っておりません。こういう段階ですから、予算の問題、まだ検討もいたしておりません。
  124. 松本善明

    松本(善)委員 これはたいへん大事な問題でありますが、これはまた別の機会に今後とも伺っていきたいと思います。  朝鮮問題で少し伺っておきたいのですけれども、朝鮮問題が非常に重要な外交上の課題であるということは、先ほど来外務大臣の言われていることでありますが、あらためてここで私が伺いたいのは、ことしの一月に私も日朝議連の超党派の代表団の一員として朝鮮民主主義人民共和国に参りました。この訪朝議員団の行動について、外務大臣は現在非常に朝鮮問題というものが見通しとしても重要になってきている時期に、この行動をどういうふうに評価をしているのかということについてこの際伺いたいと思います。
  125. 福田赳夫

    福田国務大臣 訪朝議員団の方々と考え方の細部につきましては、私ども必ずしも一致はいたしておりませんけれども、訪朝議員団は議員団なりのお考え方で日朝国交のために努力されておる、そういう御努力に対しましては敬意を表します。
  126. 松本善明

    松本(善)委員 この際共同声明と貿易合意書の調印をしたわけであります。当然外務大臣はその内容を御存じと思いますが、共同声明や貿易合意書について、外務大臣としてはこれはいけないというふうに思われる点があるのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  127. 福田赳夫

    福田国務大臣 ございます。
  128. 松本善明

    松本(善)委員 その点について、外務大臣見解を伺いたいと思います。いまの内容について、いけないと思うこと。
  129. 福田赳夫

    福田国務大臣 あなた読んでください。
  130. 松本善明

    松本(善)委員 これは相当長いものですから、読むだけでたいへんですからね。またこれは別な機会にやってもいいと思いますが、要点で、こういう点というこう点とこういう点、こういうことをおっしゃっていただければと思いますが……。
  131. 福田赳夫

    福田国務大臣 それを言ってください。
  132. 松本善明

    松本(善)委員 それでは伺いましょう。日本と朝鮮民主主義人民共和国との間で貿易が拡大する、ということはけっこうなことではないかと思いますが、この点については外務大臣どうお考えですか。
  133. 福田赳夫

    福田国務大臣 けっこうなことだと存じます。
  134. 松本善明

    松本(善)委員 朝鮮の技術者の入国問題を解決をすること、それから日本輸出入銀行の資金を使うということ、この二つが障害になっていて、これを解決すると飛躍的に拡大をするということを外務大臣は御存じかどうか、この点を伺いたいと思います。
  135. 福田赳夫

    福田国務大臣 飛躍的に拡大するかどうか、私はそこまでは考えませんけれども一つの関門がはずれる、こういうふうな感じがいたします。
  136. 松本善明

    松本(善)委員 この関門をはずされる御意思あるいはそれについての見通しについて外務大臣考えを伺いたいと思います。
  137. 福田赳夫

    福田国務大臣 長期的には私は日朝経済関係というものは進んでいくだろうと思うのです。ただ当面の問題として考える、そういう際に、いま韓国がわが国国交正常化しておる。その韓国は非常事態宣言まで発して国民の士気を高揚しておる。そういう客観情勢考えるときに、政府が介入いたしまして経済協力を進めるというところまではなかなかふん切りがつかないのです。今日この段階では民間貿易の範疇におきましてこれを進めていく、こういうふうにいたしたい、これが私の考え方です。
  138. 松本善明

    松本(善)委員 それから文化交流ですね、科学や芸術の交流が促進されることはいいことだとお考えですか。
  139. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういうふうな方向で考えていきたい、かように考えております。
  140. 松本善明

    松本(善)委員 その交流については認めていくという方向で処置をされていきますかどうか。
  141. 福田赳夫

    福田国務大臣 認めていくという方向でケース・バイ・ケースで処理したい、こういうふうに考えます。
  142. 松本善明

    松本(善)委員 最後に一つ伺いますが、いま在日朝鮮人の学者や芸術家がヨーロッパへでも研究に行って日本に帰ってくることができる状態にあると外務大臣はお考えになっているかどうか、この点は外務大臣認識として伺いたいと思います。知らなければ知らない、そう答えていただけばいいと思います。
  143. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういうような事実があることを承知しておりません。
  144. 松本善明

    松本(善)委員 これは大事な問題、在日朝鮮人についての非常に重大な人権問題だと思う。実は再入国が許可をされていないために、いま申しましたように在日朝鮮人は日本の国外に出たら帰ってくることはできないわけです。いま日本人は、パリへ行ってものを見てくる、研究してくる、これはだれでもできます。これが在日朝鮮人にはできないという事態を外務大臣御存じないとすれば、これは早急に調べていただいてぜひ解決をしていただかなければならない。在日朝鮮人の再入国の問題は考えなければならない問題だと思いますが、その点についての外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  145. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはわが外務省の問題ではないのです。法務省の専管事項でございます。したがって私がここで権威あるお答えをするわけにはまいりませんが、結局これはケース・バイ・ケースの問題じゃないか、こういうふうに考えます。つまりその案件が政治問題とからまりがある問題であるかどうかということが法務省の判断の基礎になるのじゃないかと思うのです。私法務省の専管事項を荒らしては申しわけございませんから、それ以上のことはお答えいたしません。
  146. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣の御答弁、再入国の問題は外交上の関係があるものだからいろいろむずかしい問題になっている。所管大臣が法務大臣であることは十分存じておりますけれども外交上の関係があるから外務省の発言権も非常に強いと思うわけです。そういう意味で、外務大臣、在日朝鮮人の再入国問題については前向きで、前進方向で進めていくというふうにいまの御答弁を伺っていいかどうか、その点だけお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  147. 福田赳夫

    福田国務大臣 再入国の問題は政治問題にひっからまりますとやっかいな問題で非常に困難になると思います。これはあくまでも人道上の問題だというような際におきましては、私ども外交当局といたしましては、法務省が再入国を許可するということにつきましては何ら異存を申し上げるものではございません。
  148. 松本善明

    松本(善)委員 また後ほどやりますから……。
  149. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、来たる二十二日午前十時理事会、午前十時十五分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時二十分散会