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1972-04-20 第68回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年四月二十日(木曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 渡部 一郎君    理事 木野 晴夫君 理事 前田 正男君    理事 石川 次夫君 理事 近江巳記夫君    理事 吉田 之久君       大石 八治君    加藤 陽三君      小宮山重四郎君    橋口  隆君       井上 普方君    堂森 芳夫君       内海  清君    山原健二郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     井上  保君         科学技術庁研究         調整局長    千葉  博君         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君  委員外出席者         原子力委員会委         員       山田太三郎君         環境庁水質保全         局企画課長   河野 義男君         厚生省環境衛生         局環境整備課長 山中  和君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 鴛淵  茂君         水産庁調査研究         部長      松下 友成君         通商産業省公害         保安局公害防止         指導課長    松村 克之君         通商産業省重工         業局電子機器電         機課長     関山 吉彦君         通商産業省化学         工業局化学第二         課長      小幡 八郎君         通商産業省繊維         雑貨局紙業課長 村田 文男君         通商産業省鉱山         石炭局石油業務         課長      根岸 正男君         海上保安庁警備         救難監     貞廣  豊君         労働省労働基準         局安全衛生部労         働衛生課長   山本 秀夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(原子力開発及び  環境科学技術に関する問題)      ————◇—————
  2. 渡部一郎

    渡部委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田之久君。
  3. 吉田之久

    吉田(之)委員 原子力開発の問題につきまして、特にその安全性等の問題で若干の質問をいたしたいと思うのです。  特に、わが国の将来のエネルギーを考えるときに、原子力発電開発が当然必要であり、かつまた妥当であるということは、われわれの大前提でございます。しかしながら、一方において国民の間には、原子力危険性あるいは原子力発電がもたらすところの公害について、いろいろと不信感が急速に増大しつつあるということもいなめない事実でございます。問題は、その安全性についてでありますけれども、一方においては、絶対的意味において安全であるということは、まだ十分に確認されているとは言い切れない。しかし、ほぼ安全であることには間違いはないし、一方においては、いま申しましたような実情の中でどんどん開発も進めていかなければならない。こういう状態の中で、特に国民の側から見れば、目やはだで確かめることができない問題でありますだけに、非常にまた一方、技術的レベルでたいへん難解な問題の一つでもあります。そういう点で幾つかの困惑が出ております。私は、この問題を政府もあるいは民間電力会社も、あらゆる努力を傾倒して問題を一つ一つ解明していかなければならない、実証していかなければならないと思うわけでございますが、大まかに分けまして、まず住民の不信のあるなしにかかわらず、われわれ、政府として、特に科学技術庁として、解決し、究明し、証明していかなければならない問題が多々あると思うのです。まずその辺のところから、一つずつ順を追ってお伺いをいたしたいと思います。  私は、この安全性の確認の問題について、そろそろ政府として何らかの明確な原理、原則と申しますか、安全性の哲理と申しますか、そういう安全フィロソフィーというものが確立されていかなければならないのではないかというふうに考えるわけでございますが、そうした観点に立ちまして、まず具体的にはECCSの問題でございます。この問題をめぐりまして、いろいろとロフト計画完成前にはまだ確たることは言えないもろもろ事情もわかりはいたしますけれども、この問題をめぐってボストン学者グループが、GEのブレイらと非常に激しい論争を展開していることを承っております。この論争に対して、原子力委員会としてはどのような見解を持っておられるか、この機会に御表明をいただきたい。
  4. 山田太三郎

    山田説明員 ECCSの問題は、現在におきましても、アメリカのルール・メーキング・ヒアリングと申しますか、規則をつくるヒアリングにおいてディスカッションが行なわれております。その中には先生指摘の、例のボストン科学者グループというグループもございますが、なお、さらにもっと技術的には、アメリカ原子力委員会専門家の中においても、このECCSに対しての現在の中間指針と申しますか、インテリムクライテリアについて疑問があると言っておる者もございます。われわれは、そういう外部的な状況だけではございませんで、アメリカ中間指針につきまして、原子力委員会の中の安全専門審査会の中にECCS検討会というものを設けまして、ずっと検討してまいっております。その中におきましては、アメリカにおけるできごともフォローいたしておりますけれども、さらに日本が独自に問題点と思われるものにつきましても、十分な検討をいたしております。  全体としての感想は、このECCSのクライテリアと申します基準というものの中にはいろいろなフェーズがございまして、たとえばECCSが働かなければならないような冷却材喪失事故の際におきましては、最初にブローダウンと申しまして、水が流れ出す段階がございます。さらには中の水がなくなってから、ECCS等によりまして水をだんだんに入れていく段階、リフィルの段階というのがございます。さらにそれが進みまして、原子炉の中の燃料にまで到達してからあとの問題、リフラッド、これは燃料をもう一ぺん冷却し始めるわけでございますが、そういう三つ段階がございますし、さらにその中を詳しく十数個の段階に分けて検討がなされておりまして、その計算におきまして、これはアイダホの実験等も考慮した計算でございますが、いろいろなファクターを入れた計算を行なっております。その中では明らかに——問題といたしておりますのは、燃料温度アメリカの現在の基準でいきますと、華氏の二千三百度に到達してはいけないという基準でございますが、その温度がわざわざ計算によって上がり過ぎるような、すなわち、どう申しますか、コンサーバティブという表現を使っておりますけれども、そういうようないまあげました十数段階の中におきまして、そういう部門相当ございますが、しかし、中には、これはどうもちょっとおかしいのではないか、必ずしもこれは安全側にはならない結果になるのではないかという部門も若干ございます。  それにつきましては、日本におきましても、やはりその中のいろいろな数値を変えております。これは感度分析と申しておりますが、そういたしますと、たとえばいま一応水の流れを一といたしますと、その一であるかどうかわからないといたしまして、たとえばそれが八割になった場合、あるいはほんとうはもっと多くて一・二倍になった場合といったようなときにどうなるかというような計算をいろいろいたしまして、それによってどのくらい実際に燃料温度が変わるか、こういうような計算を十分やっております。それにおきまして、日本の場合におきましては、ほかでは確かに非常に安全側でございまして、そういう仮定がたくさんございますが、そういう、どうかなと思われる点を若干検討いたしました結果、実際にはそうならないということはもう明らかなんでございますけれども、かりにアメリカ計算、非常に保守的な計算はちょうど合っておるとこう仮定いたしまして、それでややおかしいなと思われる部分について計算をいたしますと、もう少し温度が上がるかもしれないというような計算をいたしました。これは実際には、ほかの段階においてずっと温度が低くなる可能性が多いのですけれども、そういうことを考えまして、二千三百度と申しておりますアメリカ基準よりも、もう少し日本はきびしく考えたほうがいいんではないかという段階に到達いたしまして、大飯の場合、あるいは美浜三号の場合におきましては、アメリカの言う華氏二千三百度に対して、さらに余裕を見た二千百五十度以上になることはいけない。日本は少し考え過ぎておるかもしれませんけれども、現在いろいろ論争のある段階におきましては、そこまで慎重になるのがいいのではないかというような考え方をいたしております。  そういうような意味で、われわれといたしましては、このボストンのサイエンティストの反論、あるいはさらにアメリカ公聴会に出たといわれておる——実物を見ておりませんけれども、いわれておりますところの反論、これはAEC内部技術者でございますから、もう少し信憑性が高いわけでありますが、そういう議論等を全部考慮いたしまして、さらに最近におきましてアメリカ状況も調べまして、アメリカではたぶんいやな顔をすると思うのですけれども、アメリカは二千三百度Fでいいと言っておるのですが、それを日本の場合にはもう少し慎重なステップをとるべきであるというので、二千百五十度になるように燃料温度を下げるような努力をいたしております。具体的にはピーキングファクターと申しまして、全体の平均の温度に対する最高の値でございますが、その値を下げるようなふうにしなければ運転をしてはいかぬ、こういうような決定をいたして許可をした次第でございます。
  5. 吉田之久

    吉田(之)委員 では次に、米国の一〇CFR一〇〇とわが国立地基準との間に若干の差があるのではないか、どうもその差が、一口に言って、日本のほうがどちらかといえば甘い基準になっていはしないかというふうな印象を、とかく与えているようでございます。われわれは、日本の場合、その国柄からいっても、いろいろな歴史的背景から申しましても、もろもろ特殊事情からいっても、立地基準というものは諸外国のどれよりもきびし過ぎていいはずだと思うわけでありまして、またその辺の問題がはっきりしないと、なかなかに国民の合意というものは得られるべくもないというふうに考えるわけでございますが、この辺の差のあるなしについて、原子力委員会としての見解を御説明いただきたいと思います。
  6. 山田太三郎

    山田説明員 ただいまの問題につきましては、参議院で辻先生から、しばしば御指摘がございます点でございます。基本的に申しますと、日本立地基準は、発生の過程から申しまして、イギリス型の原子炉、すなわち東海発電所審査した経験と、それからアメリカ型の原子力発電所審査した経験、その二つから盛り込まれておるということでございます。  それは、なぜかと申しますと、東海村の発電所の場合におきましては、燃料を溶かすということが非常にたいへんなことであるということをわれわれは早くから認識いたしまして、そのためには、あらゆる努力をして燃料を溶かさないようにすることが安全の最大の点であるという考え方に立ったわけでございます。しかしながら、仮想事故におきましては、アメリカと同じように、あらゆる手段がだめになって、とうとう燃料が溶けてしまった状態にどうなるかというような計算になってまいっております。ところが、アメリカの場合には初めから、燃料は溶けてしまう——溶けると申しますと、ちょっと語弊がありますけれども、溶けたに相当したフィッションプロダクトが出てくる可能性があるという段階だけを事故として考えておりまして、それがいわゆる退避関係のある二時間というものと、それから退避をしないでもいいという無限大時間と、この二つの時間の差によって重大事故仮想事故という、われわれ言いますようなものを考えてございます。重大事故と申しますのは、非居住区域に対応した部分でありますし、それから仮想事故と申しますのは低人口地帯と申しますか、ロー・ポピュレーション・ゾーンといわれておるものでございます。したがいまして、この仮想事故のほうはアメリカと全く一致するはずでございますが、重大事故につきましては、考え方がもともと違いますからして、これは必ずしも一致しなくてもしかたがないことになるかと思います。  ところが、アメリカは、発生的にながめてまいりますと、アメリカ原子炉安全性を考えた歴史は、初めは、いま申し上げましたように、燃料が全部溶ける、しかし、それに対する対策としては格納容器というものがあるではないかということが、基本概念であったわけでございます。ところが、一九六七年になりまして、アメリカ原子力委員会内部グループ研究がございました。これはタスクフォースと申しておりますが、そこでは、一九六七年にアーゲンリポートいうものを発行いたしまして、燃料を溶かしてしまったならば、そのあと状態は非常に重大なことになる。したがって、アメリカはいままですぐ、燃料が溶けてしまったあとどうこうと言っておりましたけれども、溶かさないことが非常に大事であるという考え方になってまいったわけであります。そこで初めてアメリカでは、ECCSというものを非常に重大視し始めたのでございます。それまでは、ECCSというものがありましても、これはやや飾り的に考えておりまして、そういうものがあるにかかわらず、結局燃料が溶けた場合を計算する、こういう言い方ばかりしておったわけですけれども、そういうことはできなくなりまして、一九六七年以来は、このECCSとそれから格納容器と、この二つ安全防護系統の主軸になるというふうに考えてまいったわけでございます。そこら辺で少し日本考え方と始めから違っておるわけでございまして、そういう意味でいきますと、日本のほうがアメリカよりだいぶ先行しておったというふうに言うことができると思います。  さらに、その問題をアメリカとしてもっと詳しく調べてまいりましたのが、今度のECCSにおける暫定指針でございます。これは冷却材喪失事故があった場合に、燃料が溶けてしまうということは非常に困るのですが、溶けてしまうということが困るばかりではなくて、かりにある温度で一たんとまったといたしましても、だんだんにまた水を入れてまいりますと、今度は燃料が何かのはずみでもってぱちんとこわれてしまうということになってしまうこと、それを非常に重大視しておるわけでございまして、まあそれをシャッタリングと申しておりますけれども、燃料がぐずぐずになってしまって、あと冷却が非常にしにくくなるという状態になっては困るというのが、今度のECCS暫定指針でございます。そういう意味でいきますと、われわれが考えておりましたよりも、その点はやや進歩しておるわけでございますけれども、基本的精神においては、日本考え方に非常に近づいてきたということが言えるのでございます。  これは基本でございますが、実際において日本やり方計算した場合と、それからアメリカやり方計算した場合の結果が違うではないかという御批判がよくあるわけでございます。これにつきましても、やはりアメリカはだんだんに日本やり方に近づいてきておるということを申し上げることができると思うのであります。アメリカにおきましては、初めからTIDの一四八四四という非常にラフな、そのかわり非常に安全側仮定をいたしまして、それによって、ただいま申し上げました非居住区域距離であるとかあるいは低人口地帯距離であるとかいったようなものを計算しておりましたけれども、最近になりまして、一九七〇年以降になりまして、彼らはTID一四八四四というものを依然として残しておるのでございますけれども、実行上はセーフティーガイドというものを約二十ぐらい出しまして、それに従って実際の審査をやっております。その中にありますセーフティーガイドの、たとえばPWRに対してこういう計算をしなさい、あるいはBWRに対してこういう計算をしなさいというガイドをながめてまいりますと、そこにおいては日本の場合とほとんど差がないということが明らかになってまいっております。ただし、アメリカの場合には、どうも日本の考えと少し違いまして、実際の計算において距離が非常に遠いところまでとれるような場合、たとえば人口二万五千人ぐらいの町が原子炉から三十キロ離れておりますと、二十キロぐらいまでをロー・ポピュレーション・ゾーンにする、それに合うような計算を逆にしておりまして、そういう意味でいきますと、なるほど日本の場合よりも——日本の場合には、それが数百メートルの範囲に入ってしまいますから、非常に日本計算は甘いという感じがいたしますけれども、もしも実際の距離が一キロとか二キロぐらいのところに低人口の町がございますと、その場合には、それに対応するようにいろいろなファクターを全部入れて計算する。日本の場合には、すべてのファクターを初めから全部入れて計算をしておるということになっておりまして、非常に一貫性を持っておりますが、アメリカの場合には相手に応じて、その土地に応じて計算をしかえておるというようなことが、どうも日本人の心理としてわからないのですけれども、彼らのセーフティーガイドの中で、こういうファクターをとってよろしいというファクターを全部考えてみますと、全く日本と同じでございます。それから日本の場合には、さらに非常に大ぜいの人に対する遺伝線量の問題も同時に、日本立地基準は考えておりまして、マン・レムという概念を入れておる。これは実は世界にはまだない時期に、日本で考え出して入れたものでございます。あとになりましてカナダで入れてまいりましたけれども、そういう三つファクターを持ったものが日本立地基準及び実行方針でございます。  したがいまして、アメリカの場合には、個々の例で出てまいりますものは、距離が非常に遠いところに都市がある場合には、なるほどそれの三分の二ぐらいの距離の低人口地帯をとるわけですけれども、距離が近い場合にはやはり数百メートルということになってまいりまして、それは全く同じ基準でありますが、その中のファクターをどれだけとるかということについて、彼らは一々変えておる。日本の場合には、それを一切変えずに全部含めておるという違いがございます。
  7. 吉田之久

    吉田(之)委員 いまお話を聞いておりますと、いろいろ原理的には日本のほうがアメリカのそれよりも進んでいる、また実際の計算上から見ても、決してこちらはまさるとも劣らないんだというふうに承りますけれども、しかしいろいろと、そうは言ったって日本のほうが甘いんじゃないかというふうな感じを現に与えているようであります。それが誤解であればそれ以上望ましいことはないわけでありますけれども、もう少しその辺のところを、さらにいろいろとよく理解されるように、やはり説明のされ方という点が非常に重要であります。すべての国民人たちに、アメリカ日本立地基準比較検討が一目りょう然わかるような、そういう方法を一そう努力して進めていただきたい。こういうたいへん専門的な問題ですから、なかなか容易なことではないと思いますけれども、特に低人口地帯にいたしましても、日本の場合とアメリカの場合とは、当然その社会の構成そのものから違うわけでございまして、その辺にたいへんいろいろと危惧がつきまとっているのが現状でありますから、その辺のところを十分心して、いろいろと御説明を今後試みていただきたいというふうに思うわけでございます。  次に、安全性に関する具体的な研究が、政府機関でも各機関で行なわれていると思います。たとえば原研の場合には、いわゆる一般基礎研究が主たるテーマにはなっていると思いますが、また動燃のほうでは、ウラン濃縮等についての特に安全性研究がなされているだろうと思います。ウラン濃縮でも、動燃遠心分離であれば、理研のほうはガス拡散のほうでいろいろと研究が行なわれているのではないか、あるいは電気試験所とか、いろいろそういうふうに、政府が行なっている研究所のいろいろな安全性の具体的な研究、それが各テーマごとになされているはずでございます。  こういう、なされている研究成果というものを、どう統合して、そしてその成果を具体的に民間産業にどう対応させていくのか、この辺のところが国民によく理解されないと、また現実的に進んでいかないと、単なるパートパート学者研究に終わったのでは、一向に間に合わないことになりはしないかという点をわれわれは案ずるわけでありまして、その辺のところについて、これはまず科学技術庁のほうからもお答えいただきたいと思うのですが、そういう研究成果を組み合わせる努力はどうなさっているのか。
  8. 成田壽治

    成田政府委員 安全性研究につきましては、最大重要課題として原子力委員会も重点的に取り扱って、予算も非常に大きくとってやっておるわけであります。これらの研究は、どの政府機関あるいはどの機関項目が適当であるかという分担は、委員会計画によってきめておるわけであります。そうして共通の問題につきましては、各機関共同研究の形をとって協力して行なわせるというかっこうをとっております。それから民間に対してやらせる場合は、委託研究かっこう民間に公募をしてやっております。そして、民間研究したものが実用化に非常につながる問題等につきましては、あるいは国の研究機関基礎研究が今後実用化につながる場合には、原研等を使いまして、大型装置を用いて実用化に近い試験を行なわせるというようなかっこうをとっております。そして、こういう国の研究機関研究成果民間企業によって十分活用されるように——こういう研究成果は、原子力基本法によって公開原則に基づいて行なわれておりますので、いろいろな研究発表会とかあるいは学会に対する発表等によりまして、民間にその成果は周知させるようなかっこうをとっておりまして、そういう意味で、国の研究機関も、公開成果によって民間あるいは関係機関が十分活用して、安全性実用化に近づける体制をとっている状態でございます。
  9. 吉田之久

    吉田(之)委員 それじゃ、たとえば具体的な問題として、クリプトン八五の除去方法原研動燃共同研究によって開発された、あるいは開発されたというところまでいくのかどうかは別として、相当共同研究が進んだというふうにわれわれは聞いておりますけれども、たとえばそういうことの成果がどのように産業ベースに対応されるのか、レスポンスされるのかというふうな問題、具体的な問題としてお答えいただけませんでしょうか。
  10. 成田壽治

    成田政府委員 クリプトン八五を、活性炭に吸収させる方法あるいは四塩化炭素に吸収させる方法につきまして、原研動燃共同研究の形で、昭和四十一年度から四十三年度にわたって共同研究として行なって、一応の研究成果原研研究発表会において公開されておりまして、これが今後民間等実用化研究につながっていくことを期待しておるところであります。  それから、ことしの原子力平和利用委託費という予算民間に対する委託費項目がありますが、ここにおきましても、クリプトン八五の回収に対して民間研究テーマが出てきておりますので、これも委託費かっこうで推進していきたい、そして民間等研究によって実用化、実際取りつけ得る段階にだんだん近づけていきたいというふうに考えております。
  11. 吉田之久

    吉田(之)委員 いま御説明ありましたように、活性炭の吸着及び四塩化炭素溶媒吸収によって九九%以上のクリプトンの回収率を持つであろうというように伝えられておりますけれども、そういう成果がPNC計画等にもまだ反映されていないのではないかというふうな気がいたします。いろいろと前向きに考えてはおられるのだろうと思いますけれども、一そう具体的に進めていただかないと、たいへん緊急な課題の一つだと思いますので、その点を特にお願いいたしておきたいと思います。  次に、海洋投棄の問題は、いろいろと国際的な問題もありますし、なお検討さるべき余地がございますが、しかし、それはそれなりにいろいろと研究も進められてきていると思います。しかし、一方、陸上投棄をどうすればいいのだろうかという方面の研究がどの程度進められているかという点につきましては、われわれもあまり知らされていないように思うわけでございます。もちろん、アメリカやあるいはソ連の大きな大陸の、まず人間環境とは無関係のところに埋めさせてもらう方法はだれしも考えることではございますけれども、しかし、これとても他国の領土でありまして、そう簡単には進まない。だとするならば、日本独自で、たとえば一つの孤島を利用して、その安全性等を確認しながら深く埋没するということも、われわれしろうとなりに、一度は研究してみてもいい問題ではないかというふうに考えるわけでございますが、こういう陸上投棄の問題について、きょうまでどのような考え方が進められているのかということをお伺いいたします。
  12. 成田壽治

    成田政府委員 原子力発電所から出ますところの廃棄物をどうやって処分するかという問題は、日本だけでなくて世界的に非常に頭を悩ましている問題、また、そういう意味研究開発が非常に緊要になっている問題であります。日本におきましても、海洋投棄のための基礎研究と並びまして、陸上処分を前提とする研究開発をいろいろ進めているところであります。  たとえば放医研等の国立機関におきましては、放射性物質が陸上の環境中でどういう挙動を示すかという基礎的研究を行なっております。それから原子力平和利用委託費によって、土中の放射性廃棄物を処分する際の安全性検討するための基礎的資料を得るため、土質と放射性物質の相互の関係研究、それから地質構造に関する研究等も行なわせております。  それから四十七年度、今年度の予算案から、新規に国内の陸上処分地点、これは単なる想定の地点でございますが、そこにおける水の水理とか地層とか地形等の諸条件を検討するために、建設省の国土地理院に、金額はまだ非常に少ないのでありますが、そういう調査を開始するための予算も計上しておるのであります。  それから、陸上で処分する場合は、そういう環境に対して放射性物質がどういう関係を示すかという研究と一緒に、陸上へ処分する際の放射性廃棄物の固化法等の研究が重大でありまして、この研究につきましても、海洋の場合と同様、原研等機関におきまして、四十七年度にもさらに進めて研究を行なわせております。  そういう意味におきましては、これは世界各国とも非常に重点的に研究をやっておりますが、陸上処分につきましても、日本関係機関をあげていろいろなテーマに取り組んでいる状態でございます。
  13. 吉田之久

    吉田(之)委員 東京電力や日立製作所において、この廃棄物を焼却するといいますか、蒸し焼きにするといいますか、そういうことをして、陸上に投棄するという方法の一助をいろいろ研究しているかに聞いておりますけれども、こういう研究政府ベースでは行なわれていることではないと思いますが、その辺、今度は逆に民間がやっているものと政府との連係ですね、そういう点で科学技術庁としてはどのように対策を進めておられるのか、ちょっとついでに聞いておきます。
  14. 成田壽治

    成田政府委員 東京電力と日立等で、廃棄物を焼却して、それをフィルターにかけて処理するという研究が行なわれていることは事実でありますが、まだ非常に基礎的な段階のようでありまして、これがかなり進めるべきテーマとして取り上がった場合には、平和利用委託費等で国も強力に進めたいと思っておりますが、まだ四十七年度のテーマとしてはその関係の申請はない状態でございます。
  15. 吉田之久

    吉田(之)委員 次に、安全審査の問題について、これは原子力委員会のほうにお聞きしたほうがいいのではないかと思いますが、この安全審査というのは、いよいよこれから重要な役割りを果たすべき機関になってまいると思います。大げさにいえば、日本の将来のエネルギーや民族の生死にかかわる問題でもあるわけであります。そういう重要な安全審査のメンバーが、大学の教授に委嘱をして、いわばパートタイマーみたいなかっこうでやっていただいているという現状に対して、われわれは非常に心もとないというか、体制上、組織上の不備というものを感ぜざるを得ないわけであります。この辺、いわゆる専属の教授陣によって安全審査そのものにかかり切ってもらうべき時期に来ているのではないか。あるいは専門審査官というようなかっこうで配置すべき問題ではないか。ついでに、将来としては、単なる学者グループからだけではなしに、いわば政府のお役人の中からほんとうの専門的な人を養成して、そういう任務に常時当たっていただくというのも一つ方法ではないかという気がするわけでございますが、その点で山田委員は、安全審査の今後のあり方について、いかがお考えでございますか。
  16. 山田太三郎

    山田説明員 安全審査が非常に重要な問題であることは、先生指摘のとおりでございまして、現在の日本やり方は、ある意味で申しますと、中立であり、しかも独立であるという点に非常に重点が置かれまして、まず、原子力委員会の手からほとんど離れておるといってもいいぐらいの形にいまなっておるわけでございます。その意味で、大学の教授の方々及び原子力研究関係機関専門家、半々ぐらいでございますけれども、それによって構成された安全審査会が、安全審査の実務をほとんど全部やっておるというのが実情でございます。  アメリカと比較いたしますと、アメリカは、この安全専門審査会に対応しますものは諮問委員会でございまして、日本では三十人おりますが、アメリカは十五人というように、この専門審査会の構成はすでに日本のほうが多いぐらいでございます。しかしながら実際の、たとえば原子力局で申し上げますと原子炉規制課といったようなものにつきまして見ますと、日本の場合には十数人というのに対しまして、アメリカのほうでは、これにダイレクトに関係した者でも二、三百人おる。しかもそれが非常な専門家であるという点では、確かに先生の御指摘のとおりのような状態があるのではないかというふうに考えられます。  この点は、内部の人が審査をいたしますと、これはある意味でいうと行政的な影響を与え得る可能性が非常に強くなるという点で、独立性が失われる可能性があるわけですけれども、片や、パートタイム的な大学の先生ですと、たとえば大学紛争が起こりますと出席される方が少なくなってくる。それで、たとえば、この原子力安全専門審査会におきましては定数が非常に重要になっておりますので、会合が開けない状態も起こったことがないわけではございません。そんな意味で非常に外部に影響され過ぎるという点は確かにございます。したがいまして、これは日本の官吏の制度にどういうふうに影響するかわからないのですけれども、官吏の中でこういう専門官といったようなものが、一つの仕事に五年とか十年、おれはこれが仕事なんだというような人が、ただ出てくるというだけではだめでございまして、できるような組織にしなければいかぬと思いますけれども、そういうことをだんだんに考えていかなければならないというふうに考えております。現実に、ことしから少しそういう方向をとろうといたしておりますが、原子炉規制課におきましてもある程度の審査がやれるような能力をつけていくということで、その方向に踏み出しておりますが、しかし、これは吉田先生指摘のように、もっとしっかりした形でなければとてもできませんことでございますからして、将来におきましては、そういう専門審査官をふやすことができれば非常にけっこうだ、そういう方向に行くのがほんとうではないかというふうに考えております。しかしながら、現在の日本やり方も、これは中立性という意味では非常に高いわけでございまして、あるいは独立性といったような意味では、原子力委員会が何も言うことができない。そういう意味では非常にいいことであるわけですが、しかし、あまりに事務的なことを全部させてしまうのは、大学の教授という仕事をおろそかにする場合が出てくるというような非難を受けております。したがいまして、その両者のコンプロマイズをいかにしてやっていこうかということを考えておりますが、その方向は、やはり吉田先生指摘のような方向にあるのじゃないか。まだ現実にそういう方向に行っておりませんけれども、そういう方向に行けるような努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  17. 吉田之久

    吉田(之)委員 中立性、独立性の問題で、わが国の安全審査会はそれなりにいろいろと、そのニュアンスで長所をもあると思います。しかし、いま聞きましたように、非常にいろいろと他の諸条件に拘束されたり、影響を受けたりする危険性もありまして、いわゆる審査官のメンバーの安定性といいますか、そういう点で、特に大学紛争等なかなかの時代でございまして、いささか危惧を感ずる点もなしといたしません。こういう点で、いま原子力委員会としては中立性の立場を、たてまえを踏みながら、かつ、いま原子力委員会のサイドから見られた御意見をわれわれ承ったと思うわけでございますが、科学技術庁長官として、この問題についてどのような見解をお持ちでございますか。
  18. 木内四郎

    ○木内国務大臣 当委員会におかれまして、かつて原子力委員会を設ける際の法律あるいは安全専門審査会の規定を置くような場合におきまして、いろいろ御意見がありまして、この安全専門審査会の構成には大いに気をつけるように、そうしてそれの結果というものはこれを尊重するように、こういうようなお話がありまして、そこでそれはあるまでもなく、この問題は非常に重大な問題であると思うのであります。ことに独立性を持たせる、先ほど山田委員からお話がありました独立性を持たせるということは、非常に大事なものですから、今日まで、人選についても非常に気をつけてまいったつもりでありまするけれども、先ほど来、吉田委員からいろいろお話しになった点も大いに検討に値する、といってはたいへん失礼ですけれども、そういう御意見でありまするので、今後の運営につきましては、原子力委員会委員の諸先生方の御意見も十分に尊重をしつつ、いまお話しになった点を十分に頭に置いて処理してまいりたいと思っております。
  19. 吉田之久

    吉田(之)委員 次に、今後のわが国のエネルギー需要に対応する発電の中で、それぞれが複合的に公害を発生するおそれが当然予見されると思うのです。われわれはそれをどう除去していくかという問題に立ち向かわなければなりません。  そこで、たとえば昭和六十年の時点ではおそらく六千万キロワットの需要が必要であろう。おそらくこのままの推移でいくならば、その時点においても、やはりその二分の一は火力であり、そして四分の一が原子力であり、残る四分の一が水力であろうと思います。水力の場合にはほとんど問題はございませんけれども、たとえばその伸びゆく需要の中で火力による公害がどの程度想像され、また原子力によるいろいろな影響がどの程度想像される——そういうものが、何も一地点にかたまって火力と原子力があるわけではございませんけれども、やはり相互関連的な環境に与える影響というものは、そろそろ検討を始めなければならないのではないか。たいへん大きな問題で、質問もしにくいし、お答えもしにくいだろうと思いますけれども、たとえば人体に与える影響として、火力の側から与える何PPMと、それから原子力が与える何ミリレム、そういうものが、それぞれこの程度ならば、どの地点においても、どのように複合してもまず安全であろう、それが安全でないとするならば、その配置等につきましても、あるいは立地の選定等につきましても、いろいろと根本的な検討を急がなければならないということになると思うのです。ちょっと大きな問題で恐縮ですけれども、そういう総合的な考え方検討を現に政府としてはお進めになっているのかどうか、あるいは原子力委員会としてはその辺まで問題を考えておられるのかどうかということでございます。
  20. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いまお話しの問題は、お話しのようにたいへん大きな問題でありますが、今日の段階、これからまた将来の原子力発電の規模の拡大していくことにかんがみまして、研究しなければならぬ重大な問題だと思っております。  そこで、この問題はひとり原子力発電だけでなく、火力のほうのこともいろいろありまするので、環境庁のほうでこの点を非常に心配しておるわけです。私どものほうとも力を合わせてやっておるのですが、両方とも違った公害といいますか、を持っておる。原子力発電のほうは、原子炉規制法とかその他の放射能の管理の法律とか、いろいろなことで厳重にやっておりますが、また火力発電のほうも、いろいろ取り締まりの規則があるようでありますが、これでいろいろ調べまして、どちらのほうがいいとかどちらがどうかということは、まだ判定を下す段階には至っておらないと思うのですが、この間衆議院の予算委員会でこの質問がありました際に、環境庁長官は一般的な意見として、自分は原子力発電のほうが安全だという意見を持っておるんだということを言いましたが、その根拠については、まだ詳細にこれを示す段階には参っておりません。しかし、この点につきましても、いま御発言がありましたように大事な問題でありまするので、今後科学技術庁原子力委員会また環境庁と、あるいは通産省とも連絡をとりまして、十分に研究してまいりたい、かように思っております。
  21. 山田太三郎

    山田説明員 確かに大きな問題でございますが、まだ十分な検討をしておるとは申し上げられません。この比較をいたします場合に、いろいろな観点がございまして、たとえば去年ありましたジュネーブ会議などにソ連から出した論文によりますと、原子力のほうが百倍もいいんだ、こういうような非常に簡単な答えを出しておる論文もございます。その論拠は、たとえば何PPMというのが片方の普通の公害、片方はたとえば五百ミリレムというような段階といったもので人間がどれだけ影響を受けるかというような比較をしたものでございます。しかし、そんなもので答えになるかどうかわかりませんけれども、一つのそういう計算はございます。  さらに、この問題はどうせ長期的に考えていかなければならぬわけでございまして、いまのところは、原子力発電の利点といたしますのは、酸素を使わないことといったようなものがあるわけです。これは現在潜水艦、特に原子力軍艦に使われておることにすぎませんけれども、地球における炭酸ガスと酸素のバランスを一体どう考えるかといったような、将来の問題を考えていきますと、いままでいわれている議論以外にもたくさんまだ問題があるのではないか。さらには、地球が数億年かかってつくった化石燃料を、この二世紀ぐらいの間に使い切っていいのだろうかといったような問題等もあるわけでございまして、問題は広げてしまえばますますわからなくなるわけですけれども、しかし、そのくらい長期的に見た問題ではなかろうかというふうに私は考えております。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕 したがいまして、すぐ目の前の温排水の問題あるいは低レベル放射線の問題、もちろん大事でございますけれども、もっとグローバルな見方も必要ではないかというふうに考えております。
  22. 吉田之久

    吉田(之)委員 いまお二人から御説明ありましたように、何となく感じとしては、火力のほうよりも原子力のほうがはるかにクリーンエネルギーなんだというふうに、みんな思い込みたいし、思い込みがちでございますけれども、しかし、大臣いまおっしゃったように、じゃ確たる科学的証明があるのかというと、どうとも言えない。まず、まあそんな感じはするのじゃないか。それにはうなずけるわけでございますけれども、しかし、問題は、火力のほうの排煙脱硫をいかに本格的に進めて、その与える公害を極限まで落としていくかということ、これはなさなければならない一つの問題。それにしても、やはり累増するそういう公害の蓄積が、やがていつかの時点で限界に達するかもしれない。だとするならば、需要の伸びの中で、やはり火力のほうは当然どこかで一つの頭打ちにならざるを得ないのではないか。だとするならば、原子力は一〇〇%安全なのかどうか。やはりこの辺の問題がはっきり解明されないと、わが国のエネルギー対策を立てるかぎを持てないと思うのですね。だから、いろいろ御研究のことだろうとは思いますけれども、ひとつそういう総合エネルギー対策の進め方の重要なかぎや柱として、この両者の公害との相関関係あるいは限界、そういうものに一そうの研究政府の主導的な中で進めていただかなければならないのではないかということを、強く思うわけでございます。  それからいま一つは、原子力の平和利用そのものについて、あるいはわが国の非核三原則そのものにかかわってくる問題でございますが、そしてきのうもフランス、オーストラリアとの協定の問題の中でも若干、われわれもお互いに申し上げたことでございますが、一体わが国の非核三原則基本的な政策と、それから一方、たとえば濃縮ウランの技術の限りなき発展の可能性と、それがどこかで交差しはしないだろうかという心配でございます。やはり学問的、科学的には——これは哲学的にはどう切り分けてみたって、諸外国から見れば、ウラン濃縮の技術が高度に発展してしまえば、それはいつでも核兵器をつくり得る能力を持ったことにイコールになると思うのですね。そういう点で諸外国に対して、あるいは国民に対して、いかにそういう技術が進んでも、それは全く軍事利用とはかかわり合いのないことであるという証明をどういうふうにつけていくのか、あるいは説明をさせていくのか、実証させていくのかという問題は、やはりいつまでもつきまとう非常にむずかしい問題だと思うのです。積極的に政府がそういう研究を、将来軍事的な目的のために結びつけようとする意図はないことはわかります。しかし、科学的にはそういう可能性を持つということはいなめない事実だと思うのです。その辺について、長官としてはどのような所信をお持ちでございますか。
  23. 木内四郎

    ○木内国務大臣 この問題もなかなか大事な問題だと思うのです。いろいろ御心配願っておりますが、もちろん、ウラン濃縮の技術が進んでいく、そういう段階になりますれば、これは科学的には軍事利用のほうに、原子爆弾のほうに使っていくということも可能である。これは明らかなんですけれども、わが国におきましては、御案内のように原子力基本法によって平和利用に限る、しかも自主、民主、公開、こういう原則でやっていることは、動かすことのできない大原則といいますか、この原子力に対する憲法ですから、それを変えるというようなことはとうてい考えることのできない問題でありまするし、また、政府は非核三原則ということを言っております。その方針でやっておりますし、また、国会におきましてもそういう御決議をなさっておる。こういうような段階でありまするので、私どもはそういう心配は毛頭ないと思うのですよ。しかし、いろいろな意見を持っておる人がありまするので、日本もここまで経済的に力がついてきたり技術も進んでいけば、あるいはまたつくるのじゃないだろうかというような心配をする人はあると思うのですけれども、私どもは、科学技術の担当をしておる者としまして、また政府といたしまして、決して平和利用目的以外には使わないとかたく決意をし、またその方針で進んでまいりまするので、ひとつそういう御心配はないように、また、そういう心配をする人があったら、そういう心配は無用であるということをひとつ説いていただくようにお願いいたしたいと思うのです。  ただそこで、いまお話がありました、ウラン濃縮事業がだんだん進んでいく、日本でもこれを開発していく。日本開発すれば、当然これは公表しますね。公開します。ところが、外国と一緒に共同開発する場合にはどうなるか、こういう問題が出てくる。外国のほうでは、日本では国家で機密を守るあれはないから、機密が十分に守られないから、この機密は日本には示すことはできないという問題が相当あるだろうと思うのです。そうなってくると、共同事業をやる場合にも、その事業を経営する形式について考えなければならない。たとえば日本の国内へ持ってきてやるというような場合になってくると、外国の機密、もしある場合に、これはどういうことになるか。私は、外国はおそらく、日本に持ってきてやることを承知しないだろうと思うのです。かりに万一持ってくる場合にも、そこはブラックボックスといいますか、だれにも示さないということでなければ持ってこられないというだろう。そうなってくると、日本原子力基本法の自主、民主、公開原則に反するということになるから、私は、おそらく外国はこちらへ持ってくるということは承知しないし、困難だろうと思うのです。そうなってくれば、共同の事業をやるという場合には、これは日本の国内ではできない、アメリカでやるというようなことになる。アメリカあるいは豪州その他の地域でやるということにならざるを得ないと思うのです。それからさらに、しかし、向こうでやっても、日本人はそれにどういうふうに参画するか。日本人に対しては、機密の部類に対しては関与させないというようなことになるんじゃないか。こんなようなことも考えられるし、いろいろな困難な問題は出てくると思うのですが、しかし、とにかく日本の国内でやる限りにおいては、自主、民主、公開原則に変わりはありません。ただし、そこに、日本でいまやっております問題あるいは将来やる問題につきましても、商業上の機密という問題はいつも問題になるのです。私は、商業上の機密を守らなければ企業間のいろいろな取引はできないと思いまするので、これは守らなければならぬと思うのですけれども、これについても、機密はけしからぬ、こういう意見は必ず出てくるだろうと思うのです。そこに非常にいろいろな問題が出てくるだろう、かように思っておるのですが、そういう点はどういうふうに今後運用してまいりますか、それは非常にむずかしい問題だと思うのです。私どもは、企業の持っておる機密というものは、商業的の機密というものは守らなければならぬものと思っておるのですけれども、そういう点について今後どういうふうにしていくか、論議はいろいろ起こってくるということを、私どももそういうふうに考えておるのですけれども、その問題の解決は今後にゆだねられる問題だと思います。
  24. 吉田之久

    吉田(之)委員 長官おっしゃるとおり、決意表明はきわめて明快だし、簡単にできると思うのです。また、その決意に、政府国民も何ら狂いはないと思うのです。しかし、実際科学の分野というものは、進めていけばいくほど、原理的にはいわゆる軍事利用にも肉薄していっているわけですね。一九八一年には、アメリカの濃縮ウランの供給能力が限界に達するだろう。そうすると、当然その時点から日本は、日本独自でやるか諸外国と共同でやるかは別として、濃縮に入らなければならない。そういう場合に、日本国内には彼らはなかなか持ち込むことを喜ばないと思うのです。こういうオープンな国柄であることは百も承知でございますから、そういうことによって機密が漏れることは困る。そうすると、日本が諸外国へ行ってやることはかまわぬのかといえば、やはりこれは、持ち込まないあるいはつくらない、そういう三原則からいえば、一つのワクを出たことになって、現在の国の方策からいってはみ出したのかはみ出さないのか、非常に微妙な問題になりますけれども、しかし、概念としては、あるいはわれわれの哲学としては、諸外国ででも、日本研究陣が共同開発の中で一緒に軍事利用の面まで踏み込んでいるということは、やはり一つの重要な問題に抵触すると思うのです。おっしゃるとおり、そういう問題が一つ出てきます。  それからいま一つは、日本独自で濃縮技術を開発していく場合に、現在の濃縮技術はここまででございます、これは平和利用には十分間に合うレベルではございますけれども、軍事利用に転化するにはまだまだほど遠いものでございますということを絶えず公開しておれば、それはそれなりに一つの証明にもなるし説得力になります。またさらに、この段階ではここまでまいりましたけれどもまだだいじょうぶです、もはやだいじょうぶではございませんけれども、このようにしてわれわれは国家的な安全の施策を十分に公開の中でやっております、あるいはつくられてきたプルトニウムも現在これだけたくわえられておりますけれども、これは軍事に利用できないようにこのように完全に保管され査察されております。何かこの辺のところを絶えずほんとうに公開していかなければ、やはり諸外国からの、日本は核武装に刻々近づいているのではないかという誤解を完全に払いのけることがむずかしくなってくると思うのです。  そういう、あえて諸外国との関連を無視してでも、日本日本の特殊な使命に立脚した国家として、断固大胆にウラン濃縮の技術を公開していくかどうかという問題でございますね。その辺をさらにお聞きいたしておきまして、実はあといろいろお聞きしたい点もございますが、あと委員との時間の関係もございますので、一応きょうはこの辺で終わらせていただきたいと思います。
  25. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いまの御心配もごもっともでありますけれども、私どもは、さっき申しましたように、国内で開発するものは、その開発成果はこれを公開するということになっていますから、日本の科学技術の進歩がどの段階にいきましても、つまり、ウラン濃縮の技術がどの段階にいきしても、これは当然公表されるものだと思います。また、わが国原子力発電がだんだん進んでまいる、そうして再処理工場もできてくるということになれば、プルトニウムも当然ここにたまってくる、こう思うのでありますが、それがたまってきても、また技術があっても、われわれはこれは軍事目的には使わない、平和目的に限るというのですから、そこはひとつ御心配のないようにお願いいたしたいと思います。もちろん、日本が経済力がついてき、また科学技術の力もついてくれば、日本は何をするかわからぬという疑念を持つ人は必ずある程度はあると思うのですが、そういうことはありましても、とにかくわれわれは平和目的以外には使わないとかたく決意をしているわけですから、その点はひとつ御了承願いたいと思うのです。
  26. 吉田之久

    吉田(之)委員 通産省に来ていただいておりましたけれども、ちょっときょうの質問時間の関係で、後日またお伺いしたいと思います。
  27. 石川次夫

    ○石川委員長代理 次に近江巳記夫君。
  28. 近江巳記夫

    ○近江委員 この間の十三日、十四日にPCBの連合審査をやったわけでございますが、政府としてもそれぞれ使用禁止をはじめとした一連の対策ということはわかるわけでありますが、その後も次々とそういう汚染状態というものが全国各地で出てきておるわけでございます。  そこで、まず初めにお聞きしたいのは、大阪の豊中の松下工場ですけれども、排水路から一六三二PPMという最高のPCBが検出されたわけです。御承知のように、琵琶湖の草津の日本コンデンサであったと思いますが、あそこからも排水路あるいはため池から何万PPMというようなPCBが検出されたというようなことで、私は全国的な調査を一日も早くやってもらいたい、こういうように言っておったわけです。それがまた、こういうように新たな事実として、大阪衛研で調べたものが出たわけですが、これについての報告をまず初めに聞きたいと思うわけです。
  29. 関山吉彦

    ○関山説明員 御指摘の松下電器株式会社の進相用コンデンサー事業部豊中工場における汚染問題でございますけれども、これにつきましては一昨日、大阪府が御指摘のデータを発表したわけでございます。  通産省といたしましては、さっそく昨夜松下電器の責任者を呼びまして事情聴取をいたしたところを御説明申し上げますと、この松下電器の進相用コンデンサーにつきましては、当時外国の文献などに電気的特性の非常にいい材料が開発されたというようなことがございましたので、昭和二十八年に米国のモンサント社からサンプル輸入をいたしまして、それを原料として試作を開始いたしました。三十二年になりまして、現在の豊中工場という新しい工場を新設いたしまして、そこで進相用コンデンサーを製造しておったわけでございます。四十六年までの累計の総使用量は三千八百三十八トンでございまして、なお、先般のPCB使用機器に関します通達によりまして、その工場では四十七年三月にPCB入りの製品の使用を全部中止しております。  松下電器といたしましては、当省といたしましても今後の対策を積極的に行なうように指示いたしましたところ、まずため池でございますけれども、これは豊中市の市有地ということになっておるそうでございますが、そのため池並びに関連の水路のしゅんせつを早急に行なうということを大阪府及び豊中市と現在相談しておりまして、それにつきまして技術的な問題もございますので、大阪府大の山口教授とも具体的な方法につきまして相談中ということだそうでございます。  なお、付近には一部水田もございますので、これにつきましては大阪府が至急その汚染状況の分析を行なうというようなことで、いま対策を進めております。  以上でございます。
  30. 近江巳記夫

    ○近江委員 水田と言いますけれども、水田は米をつくっているわけでしょう。米はどうするのですか。また補償とかそういうことは将来もし——琵琶湖も、例の草津のところから出た、あの辺の周辺は全部汚染されておる。あれは非常に大きな問題になってきておるわけですね。そういう点でこれはどうするんですか。
  31. 関山吉彦

    ○関山説明員 現在豊中工場の周辺の水田につきましては、いま申し上げましたように、至急大阪府のほうで分析を進めるということになっております。その結果につきましては、企業といたしましては非常に善意を持って対処するようにということを指示したわけでございます。
  32. 近江巳記夫

    ○近江委員 それであったら答弁は繰り返しなんですよ。私が言っておるのは、水田がある以上米ができるでしょうというんですよ。当然それに対するストックなんかあるわけでしょう、その水田からできた。その米の調査とか、もしも汚染された場合、補償とか、いろいろな問題があるわけですよ。そういう点についてはどうやるんですか。
  33. 松村克之

    ○松村説明員 お答えいたします。  現在PCBの汚染問題につきましては、工場の排水系統については私どものところで総点検をする。それから公共用水域、河川とか海域でございますが、そういうところにつきましては環境庁等で調査をしていく。それから食肉類あるいは魚類といったようなものにつきましては、厚生省及び農林省のほうで調査を実施なさる、こういうふうな全体的な調査を現在計画いたしております。  そういうことでございまして、現在まだ、PCB使用工場周辺のお米の中にどれだけPCBが入っているかということについて、全体的な調査は、まだ実態は十分に把握されてないという段階でございますけれども、本件につきましては、その調査の結果を見まして、私どもといたしましても関係省庁と十分連絡をとってその対策を実施していきたい、それによって企業を指導していきたい、こういうふうに考えております。
  34. 近江巳記夫

    ○近江委員 ここで非常に問題になっているのは、作業員の健康被害なんですよ。この大阪府の公衆衛生研究所の発表によりますと、十五年前、昭和三十二年当時すでに従業員の半数近くが、カネミ・ライスオイル事件のようなひどい症状ではないけれども、そういうような外部には見えるいろいろな症状があったわけですよ。そういうようにいわれているのですけれども、こういう事実をどう認識しておりますか。きょうは各省来ておるでしょう、労働省もみんな。どなたでもけっこうです。一番関係の多いところ言ってください。
  35. 山本秀夫

    ○山本説明員 御発表が四十四年の九月ということでございますが、われわれが認識をいたしましたのはその後でございます。ところが、それより前に実はカネミの油症事件がございましたので、てまえどもといたしましては、まず職業病の常道といたしまして、やはりメーカーが一番被害が多かろうということで、例のカネクロールというものをつくっている会社について調べてみたわけです。そのときには、しかしすでに非常に状況がよくなってきておりまして、患者さんはおりませんということでございました。その後なおほかにもあるというような聞き込みもありましたので、昨年まで漸次調査を続けてまいりました。われわれといたしましては、皮膚障害というようなものが大部分であるというふうに理解しております。そしてカネミ油症のような重症ではございませんが、一応てまえどもが昨年公布いたしました特定化学物質によりますところの障害防止規則というものの中にこのPCBを含めまして、設備の改善とかあるいは健康診断というようなものを規定して指導しておるわけでございます。
  36. 近江巳記夫

    ○近江委員 松下で半数以上がそういう症状が出ておった、これは私たいへんな問題だと思うのですよ。そのほかに、北陸電気とかあるいは三菱モンサント化成四日市工場、こういうような従業員に症状があらわれていると聞いておるのですけれども、PCBを大量に使用しておるあるいは製造している企業等において、ほかにもこういうような事例があるのと違いますか。どういうように把握しておるのですか。
  37. 山本秀夫

    ○山本説明員 先生指摘のような工場にはあるということを聞きまして、われわれのほうで立ち入りをいたしまして現在調べております。それでは、三菱モンサントは近いうちに労災補償を申請するというようなことを聞いております。それから、北陸のほうのあれは、二名の患者がおりましたので、これは富山労災病院というところで精密検査をいまやっておるというような状況でございます。  なお、そのほかに、科学技術庁のPCB調査研究班の鑑定によりまして、滋賀県の、お話がございましたような症状の従業員につきましても、健康診断を三月に実施して、その実態は明らかにするということになっております。
  38. 近江巳記夫

    ○近江委員 大阪府の公衆衛生研究所の調査は、工場労働者の健康にPCBがどういうような影響を与えているかということを昭和二十八年から三十八年まで実施しておったわけですが、この時点ではっきりとしたPCBによる症状をつかんでおったわけですが、それを労働省としては、ほんとうに労働者のそういう健康状態ということを真剣に考えておれば、当然これは重大事だということはわかったはずなんです。これで手を打てたのだ。しかも、その後、昭和四十三年には、カネミ・ライスオイル事件が発生しているわけです。労働省は対策を立てたといいますけれども、特定化学物質による障害の予防規制にしても、四十六年の四月にできたばかりなんです。そういう点から考えたときに、一体何をやっておったかということになるのです。労働者の健康ということを真剣に考えておったのか。非常にこれは問題ですよ。この点について、どう思いますか。
  39. 山本秀夫

    ○山本説明員 確かに、御指摘のように、少し時期がおくれたということは残念なことだと思っています。ことに松下電器の件につきましては、四十四年から以後われわれのほうで調査をしたわけですが、その当時はすでに罹病者がいないというようなことでございました。それから、その他の電気工場につきましても、実は昨年幅広くやりましたところ、わかったわけでございまして、少しおくれておったというようなことについては申しわけないと思っております。
  40. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは申しわけなかったで済む問題じゃないのですよ。もっと真剣に、ほんとうに労働者のそういう健康状態ということについては、ほんとうにからだを張って働いているのですから、あらゆる把握もしてもらい、対策も立ててもらう必要があると思うのです。その辺がどうも労働省はばく然としている。これは労働省だけではない。きょうは各省来ておられますけれども、皆さん方からも、もっと労働省に——これは政府全体としての責任を負わなければならぬ。これは連帯責任です。皆さん方自体が人の健康などということについて真剣に考えてないから、こういうことが起きるのですよ。それで、あとになって申しわけない。それだけでは済まぬと私は思う。  それから、通産省としても、日本でPCBが使用されたのは昭和二十九年が最初である、このように言っているわけですけれども、こういう事例からしますと、昭和二十七年あるいは二十八年から使用していた、こうなるわけですよ。これについてはどう思うのですか。
  41. 小幡八郎

    ○小幡説明員 お答えいたします。  昭和二十九年にわが国で初めてPCBを生産いたしました以前に、若干のPCBの輸入が行なわれていたということは聞いておりましたけれども、その数値が把握できなかったということで、私どもの作成いたしました生産輸入の表には掲げていなかったわけでございます。この点につきましては、その表にその旨をむしろ付記すべきで、あったのではないかと考えますけれども、特にこの点を隠すとかいうような他意があってそういう表をつくったわけではございませんので、御了承願いたいと思います。
  42. 近江巳記夫

    ○近江委員 それだけ掌握しておらなかったということも、それはずさんさ以外の何ものでもないわけです。政府がもっと真剣にこういう問題も把握をしておく、そういう野放しのような行政だったら困ると思うのです。  それから、これは松下の件でありますけれども、PCBを大量に使っておるそういうコンデンサー工場あるいは感圧紙のそういうようなところ、あるいは媒体を使っておるところ、あるいは製造工場、いろいろあるわけですが、いずれにしてもそれに関係する従業員、これは何も松下だけの問題ではないのです。各種関係工場の従業員についてはどう考えますか。これから政府としてはどうするのですか。
  43. 山本秀夫

    ○山本説明員 規則もできまして、したがいまして昨年の九月に全国的に、全部とは申しませんが、約六十工場につきまして監督指導をいたしました。その結果、設備的に問題があるというところが約三割ほどございましたので、その是正を命じました。なお、当時健康診断をやっておりましたものの中で、皮膚炎というようなものの発見をいたしました率が一・二%ということでございます。  なお、われわれは今年度も、PCBのようなものにつきましては、重点といたしまして職業病の予防に全力をあげる予定でおります。
  44. 近江巳記夫

    ○近江委員 全力をあげていただくということ、それは非常にけっこうだと思うのです。しかし、もう少し具体的にお聞きしますが、私が申し上げた大量に使用しておるあるいは製造しておる、要するに関係の工場について従業員の健康診断の一斉点検といいますか、それはやるのですね。
  45. 山本秀夫

    ○山本説明員 すでに四月に実は通達を発しまして、全国のPCB関係従業員、あるいはもう取り扱いをやめたというような人たちについての健康診断もやるように推進をはかっておりますし、それからいろいろの資料としてわれわれ必要でございますから、健康診断結果報告をただいま求めている最中でございます。
  46. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、当然そこまで求めておるとおっしゃるなら、関係工場は何百社か何千社か知りませんが、幾らあるのですか。
  47. 山本秀夫

    ○山本説明員 全国的にわれわれがおよそつかんでおりますのは約百でございます。
  48. 近江巳記夫

    ○近江委員 要するにこういう事件が一つ発生したわけですから、この健康診断の厳重な一斉調査をするように、これはやりますね。もう一度はっきり聞きます。
  49. 山本秀夫

    ○山本説明員 やります。
  50. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、いま百社ということをおっしゃったわけですが、私はそれは多いか少ないかわかりません。しかし、あらゆる関係のそういうところを全部やって、わずか百社ぐらいであるかどうかという素朴な疑問が起きるわけです。これは別に労働省でなくてもけっこうですから、通産省もいろいろな関係のところがあるのですが、どんなものですか、その数値は。
  51. 松村克之

    ○松村説明員 お答えいたします。  現在通産省では早急に排水中のPCB含有量についての総点検をするということを先ほど申し上げたわけでございますが、これにつきまして、現在幾つの工場がPCBを製造しあるいは使用しているかという調査を行なっているところでございます。最終的な結果はまだはっきりいたしませんけれども、現在判明いたしましたところでは、PCBの製造工場が二社でございます。それからPCBを用いましてコンデンサー、トランス等を製作している、こういった工場が約四十社でございます。それからノーカーボン紙をかつて製造していた工場が四工場でございます。そのほかに熱交換器用の熱媒体としてPCBを使っていた。これは製造ではございませんで、熱交換器の中にPCBを入れて、その熱交換器を工場用に使っていたという工場等を含めますと、これが大体二千社ぐらいではないか、こういうふうに考えます。  以上でございます。
  52. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、大きな数値の差があるわけですよ。そのほかにまた開放系のところもあるわけでしょう。それはどのくらいあるのですか。
  53. 松村克之

    ○松村説明員 いま熱交換器使用工場等が約二千あると申し上げましたが、この中に、塗料でございますとかそういった開放系の工場を含めております。含めて約二千ということでございます。
  54. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、厚生省さんもいま率直に国民の健康という観点からそれを支持するということを言われた。それは非常にけっこうだと思うのですが、あまりにも数値の差があり過ぎるわけです。この辺はよく通産省と連携をとってもらってやっていただかないと、ここで私やかましくは言いませんけれども、いまおっしゃった数値のことについて労働省から通達を出すなり何なりやっていただかないと、概数だとは思いますけれども、百社対二千何百社の比率といいますと、何十分の一になるわけですよ。その辺のところはやっていただけるわけですか。
  55. 山本秀夫

    ○山本説明員 十分連絡を密にいたしたいと思います。
  56. 近江巳記夫

    ○近江委員 やっていただくということで、あとは、二千数百社といいますと、大中小の規模が工場にあると思いますけれども、実際働いている人は、私はばく大な数になると思うのです。当然家族もいることですし、これはひとつ力を入れてやっていただきたいと思うのです。  それから、この工場の一斉総点検、これは私は前にも申し上げ、その後推進してもらっていると思うのですけれども、全国的にその二千数百社の一斉総点検、そして緊急対策についてどうするか、こういうことを早急にやってもらわなければいかぬと思うのです。中でも、たとえばこの前に私この委員会で琵琶湖のPCBの問題を取り上げたわけですが、特にああいう琵琶湖から淀川水系に流れ、そこから水を取っている。関西の場合でいえば琵琶湖が一千万人の水がめになっているわけです。こういうところが汚染されてくるということになってくると、たいへんな問題になる。現実に京都の衛研等においてもかなりのPCBが検出されているし、あるいは大阪の衛研でも、おかあさんのおっぱいから〇・七PPMという世界最高のPCBが検出されている。それはどこから出ておるかということなんですよ。食物連鎖やいろいろな可能性が考えられます。けれども、琵琶湖が、上流が汚染されているということになってくると、水からも相当数入ってくるということになる。これはしろうと考えですけれども、そういう点に行き着くのではないかと思うのです。ですから、こういう水系があるところとか、そういうところは一斉総点検の中でも特に緊急を要すると私は思うのです。その辺の考えについてお伺いしたいと思うのです。この松下工場の例にあるように、排水池あるいは排水路ですね。私が心配するのは、今後製造も使用も中止するという段になってきますと、たとえばそれが、改善命令が出されたとしても、もう中止になるのだからあまり金を入れるのは詰まらぬ、企業の立場であればそういう方向に私は流れるのじゃないかと思うのです。したがって、そういう方向が非常に心配なんだ。  ですから、問題は非常に多岐にまたがったと思いますけれども、全国の緊急一斉総点検、なかんずくそういう心配があるところを最重点に考えてやっていくべきではないか、それは手順の問題でございますが。それと、さらに強力な行政措置を言うことを聞かないところについてはやっていく。国民の健康ということは一番大事です。通産省は、企業もいろいろな立場で理解される度合いが深いように私は思いますけれども、これはそういうことを言っておれない。そうした問題についてどう思いますか。関係各省、特に答えてください。
  57. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いまお話しの総点検でございますが、私ども現在、関係各省と相談をいたしまして、総点検を実施すべくいろいろ計画を練っている段階でございますが、汚染源につきましては、先ほど通産省のほうから御答弁がございましたとおり、通産省の責任によりまして工場並びにその排水汚水等につきましては点検をするという予定でございますし、その周辺の水質、土壌それからまたヘドロ、底質等につきましては、私どものほうで全国の主要な汚染地域につきましては至急点検をいたすということで現在計画を作成中ということでございます。
  58. 松村克之

    ○松村説明員 お答えいたします。  通産省といたしましては、環境庁等とも十分御連絡を密にしながら、工場排水及び排水系統についての調査を早急にいたす予定でございますが、その場合に、やはり私どもといたしましても重要な水源地域、そういった地域については、御指摘のように非常に重要な問題でございますので、重点を置いて実施してまいりたい、かように考えております。
  59. 近江巳記夫

    ○近江委員 たとえば琵琶湖の例をとりましても、あの草津の日本コンデンサ工場ですか、それから甲賀のコンデンサ工場ですか、ほかに熱媒体のそういう関係が五、六社あるはずなんですよ。そういうところは当然流れておるのはわかっておるわけですよ。しかも淀川周辺のあの水系にもそういうような工場から各放水路を伝わって、排水路を伝わって流れ込んでおる、そういう心配もたくさんあるわけです。特に、現実にこれだけの問題も出ておるわけですし、そういうような重点としてどういうところを考えておりますか。
  60. 岡安誠

    ○岡安政府委員 やはりお話しのとおり、PCBを扱っております工場の立地ですか、それを当然考えまして、そういうところは重点的に周辺の環境汚染という状態調査いたすというつもりでおります。
  61. 松村克之

    ○松村説明員 御趣旨のように、そういった重要な地域、一般の住民に対して非常に影響を及ぼすような、たとえば上水源として使っているような水域に立地している工場といったようなところは、重点的にこれを調査の対象として実施していきたい、こういうふうに考えております。
  62. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで大体の傾向はわかりましたけれども、たとえば琵琶湖あるいは淀川水系とか、あるいは東京でいえば利根川になるのでしょうか、そういう特に大都市圏を中心としたその辺のところは非常にあぶないと私は思うのです。それについてもう少し具体的に、特にどういうところを考えておるのですか。
  63. 岡安誠

    ○岡安政府委員 実は、どこをやるかということはまだ具体的にきまっておらないわけでございますけれども、考え方を申し上げているわけでございますけれども、お話しのとおり、やはりPCBの従来の出荷の状況等は当然勘案しなければなりませんし、また、最近いろいろ各県等で行なわれております環境汚染の実態等も勘案いたしますれば、近畿地方なり関東地方というものはやはり重点的に調査の対象に入るであろう、したがって、そういう地方におきます公共用水域、それから土壌、水質等につきましては、私どもは重点的に調査するつもりでございます。
  64. 近江巳記夫

    ○近江委員 特に通産省にお聞きしますけれども、草津の場合なんか、ため池から何万PPMですよ、そして排水路から琵琶湖へ流れているんですよ。そうでしょう。甲賀にしたってそうでしょう。あなた、これは特にそっちの管轄でしょう。環境庁なり何なりと特にその辺は連携をとって、これは緊急の中の緊急というような観点に立ってやろうとしているのですか。責任を問いますよ、これは。
  65. 関山吉彦

    ○関山説明員 草津の日コンは、コンデンサーの非常に大口のメーカーでございましたので、消費量も非常に多量にわたっており、かつ、琵琶湖という関西地区の飲料水源というような立地点にもございますので、御指摘の点につきましては、十分環境庁と連絡をとって推進したいと考えております。
  66. 近江巳記夫

    ○近江委員 この豊中の場合も、私もこれは地図を持ってますけれども、御承知のように、これは猪名川へ流れているわけですよ。猪名川は豊中市が水源にしているんですよ。こんな大きな数値がこの猪名川へ流れておるわけですよ。これはもう、こういう点から見ていきますと、至るところそういう水との問題がからんでくるわけでしょう。しかもこれは地下へ浸透している可能性もあるわけでしょう。各衛星都市においては、やはり地下水をくみ上げて簡易水道でやっているようなところも、簡易水道でなくても一般水道でやっているところもあるわけでしょう。そういう心配も多分にあるのです。そういう地下水に浸透ということはないのですか、厚生省。水道水の立場からどう思うのですか。
  67. 鴛淵茂

    鴛淵説明員 ただいまのお話でございますが、水の検査は水道課のほうで実は所管してやっているわけでございますが、ただいまのところ、どろ中にはPCBを証明してございますが、河川水のPCBの値は非常に低うございます。ほとんど不検出のところが多うございまして、検出する場合も大体一以下のPPBオーダーでございます。現在のところは非常に低うございます。  それから地下水の関係は、井戸水の調査を実は水道課のほうでやっていただく予定にいたしておりますが、まだはっきりしたデータを持っておりませんので、検討をしたいと思っております。
  68. 近江巳記夫

    ○近江委員 これはもう言わなくてもおわかりのとおり、水と空気というものがなければ、人間はもうすぐ死ぬわけですよ。京都の衛研でも水道水からかなりの量のPCBを検出しているわけですよ。だから水道水の中に流れ込んでおることはわかっておるわけですよ。あれだけ浄化をしたってそれだけ出るんでしょう。原水であれば、これはもっとありますよ。全国的にその辺のところを、水道水、水道原水、そういうところについて、特にそういう水道原水の系統をたぐっていただいて、そういう主要工場とか、その辺の流れ込む危険性とか、その辺のところは関係各省——もう何回も私は、連合審査でも各委員からもお話がありましたけれども、各省の連携というのは、各省によって非常に強いところ、弱いところあるわけですよ。私は同じ線の皆さん方の決意とそういうような対策というものがほしいわけですよ。何か弱かったり、ある程度前進しているようなところもあるし、それではならぬと思うのですね。政府が一丸となって——これだけ国民が心配していることでしょう。どうしてあなた方はもっと真剣になって、関係各省が力を合わせてやらないのですか。その水道原水の問題について真剣にやっていただけますか。
  69. 鴛淵茂

    鴛淵説明員 ただいまの問題につきましては、分析法の検討も済んでおりまして、計画的に水系の調査をするべくいま調査中でございますので、結果が間もなく、あと一カ月くらいしますと大体わかると思っております。
  70. 近江巳記夫

    ○近江委員 その問題は力を入れてくださいよ、ほんとうに。また、データ出たらくださいよ。もう関係各省、最近は何かというとマル秘を押して——これはちょっと別ですけれども、ひとつ公開すべきことは公開していく、こういう基本的なことを各省に申し上げておきます。  それから感圧紙が、私聞いてみますとばかにならぬ量があるわけですよ。それが水にほうられたり、あるいは一般焼却炉で焼かれたり、いま大気中にだってだいぶPCBが出ているのですよ。そこで一枚に至るまで回収するということはなかなかむずかしいかもしらぬけれども、たとえば銀行とか官公庁とか、大口使用のそういうところは大体めっこがつくわけですよ。ですからある程度の回収等については私は考えられるのじゃないかと思うのです。しかも最近はそれをつくらないようにしたといっていますけれども、ストックもかなりあるはずなんですよ。それをそのまま放置しておいたら、かってに使われていくし、あるいは古い使った分だってどう処理されていくかわからない。これが幾ら製造禁止したといったって、何年間は汚染源としてそれが残っていくわけです。この点についてはどう考えておりますか。
  71. 村田文男

    ○村田説明員 PCBの感圧紙につきましては、御存じのように昨年の三月に生産を中止いたしております。また、昨年の十二月にその故紙を製紙原料として回収し、あるいはこれを原料として使うということについてもこれを中止いたしております。したがって、そういう面から汚染が今後進むということは考えられないわけでございますけれども、先生指摘のように、三十七年から四十六年三月まで感圧紙が紙のベースで十一万トンばかり、PCBを換算いたしますと五千トン程度と思いますが、これが生産されたことは事実でございまして、その辺の、故紙として古い伝票類というような形でこれが需要者の手元にあることは十分推定されるところでございます。私どもは目下その辺の実態の調査をいたしておるところでございます。先生指摘のように、家庭に入り込んだ一枚一枚までこれを回収するということは困難かと思いますけれども、使用の形態から申しまして、郵政省その他一部の官公庁、あるいは銀行等の金融機関、地方公共団体等にかなりまとまったものがあるのではなかろうかというふうに推定いたしております。これにつきましては早急にこれを回収し、安全に処理するという方向で対策を講じておるところでございますけれども、単純にこれを都市の焼却炉で燃やすということになりますと、先ほど御指摘のように、大気にPCBを拡散するというようなおそれも出ておりますので、焼却の方法等につきましても技術的な面の検討を急がなければいかぬということで、各省と目下相談中、こういうような段階でございます。
  72. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでいま官公庁、銀行、それから全国の地方公共団体ということを例をあげられたわけですが、そのほかに大口使用としてどういうところを最重点に考えておられますか、ほかにあれば具体的におっしゃっていただきたい。
  73. 村田文男

    ○村田説明員 いまPCBにつきましては、感圧紙につきましては、これはメーカーから板紙という形で印刷屋に出されまして、印刷屋から各ユーザーに伝票類、あるいは電算機のアウトプット用の用紙等の形で出荷されるわけでございますが、その経路を通じましてどこにどういう形で使われているかという実態を調査中でございますが、そういう使用の形態からいきまして、大きな事務所、一般の庁舎、あるいは製造会社でありましても大きな事務所等には残っていることも十分考えられると思います。
  74. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで回収の通達なり、いつごろに回収されるのか、大体のめどをひとつお聞きしたいと思うのです。
  75. 村田文男

    ○村田説明員 先ほど来申し上げておりますように、非常に広範囲な範囲に広がっておりますので、いま実態を至急調査中でございますが、大体一月ぐらいかかるのじゃなかろうか、この辺で見当をつけまして、処理方針をきめ、それで回収を行なうということで考えておりまして、ちょっといま時間のめどをはっきり申し上げるわけにはまいらない、残念ながらそういう状況でございます。
  76. 近江巳記夫

    ○近江委員 回収をするということについてはっきりおっしゃったわけですので、いずれにしてもこれは特に汚染源として国民も協力してくれると思うのです。ですからあらゆるPR等もやって、そういう大口のところだけではなく、小口のところもできるだけのそういう協力してもらえる体制を政府としてはとっていただきたい。これについてはどうですか。
  77. 村田文男

    ○村田説明員 各省とも相談いたしまして、そういう形でできるだけ集まるという体制をつくるように研究いたしたいと思っております。
  78. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで焼却等も、焼却炉も専門は二つしかないということも聞いておりますし、こういうところにはお金を入れても国民は決して文句を言いませんよ、これは。国民の健康のためなんですから、こういうところにこそ金を使えばいいんですよ。それをわれわれから見て首をかしげるようなところに金をたくさん入れている。こういうところにこそ入れなければいかぬと思うのですね。  それで、科学技術庁研究調整費でいろいろ出すわけですが、私は環境庁の人やら各省の人からもいろいろ聞いておりますけれども、今回のこのPCB問題についてもいろいろな研究を進め、いろいろな調査をやっていくにしても、ひとえに科学技術庁研究調整費にたよらなければならないというのが現状だといっているわけですね。ところが科学技術庁は、言うなればもう小さい大蔵省みたいなものだ。非常にその辺がシビアだと。こういうことはシビアでなくてもいいんですよ。前に大臣は要るものについてはどんどん出しましょうということをおっしゃっていただいたわけですよ。こういう点については、国民の健康に関係あることで、大臣は少なくともいままでの関係大臣の中でも一番、そういう点は非常に関心の深い方だと思っているのですけれども、しかし、そういう声が出るということについてはもっと実践に移さなければ困ると思う。これはまず研究調整局長にお聞きして、それから大臣、大臣は二番目にやってください。大臣はあとでよろしい。研究調整局長、いままで、去年何ぼ出したのですか、三千何百万でしょう。そんなことでこれだけの大量のことが、それは関係各省予算を取っていると思うけれども、それじゃだめですよ。それでからになったって、私らまたかけ合いますよ、大蔵省にも。絶対文句言いません、これは。出していただきたい。あなたの基本的な考え、またどれくらい今年は予算の中から決意しておられるのですか。
  79. 千葉博

    ○千葉政府委員 非常に事務局が渋くて金を出さいような方向だといまおしかりを受けたわけでございますが、実は私のほうは、昨年の三千七百万でございますけれども、あれにつきましても、こういっては何でございますが、まだそうPCBの問題が、特に慢性毒性の問題がやかましくならない前に、私のほうとしてはもう各省が使うのにやっとやっとぐらいな相当な量だったと思うのです。あれでもってまあ鋭意このPCBの、御存じのとおり実態の調査、汚染の実態とか、それからその汚染の経路、慢性毒性の内容、分析のやり方、こういった点を推し進めておりまして、先ほどから先生が盛んにこれを重点的に早く調査しろということなんですが、この中でも御案内のとおりの琵琶湖の辺の調査、これはもう相当進んでおります。それで、これにつきましては魚の汚染でございますね、その辺を中心に進めておりますし、コンデンサー工場の作業者の健康診断につきまして、まず三千七百万のお金の中でいまどんどん進めておりまして、これはもう来月ぐらいにはっきりしてまいります。これがはっきりしましたら、ぜひ公表したいということでやっております。この琵琶湖中心の水の汚染、この問題についてはきわめて重大な問題だと思っております。さらに、この汚染がどういったような毒性を実際に人体にあらわしてくるかというような問題につきましても、この辺のところは重点的にやっております。東京、大阪、高砂、四日市、それから徳山、それに対しまして非常にいいところ、霞ケ浦あたりはいいところ、対照にするようなところ、そういったところがいま対象となってやられておるわけでございます。  そこで、それから先の、いまいろいろな御指摘の問題につきましての金の出し方の基本的な考え方でございますが、これにつきまして私はまだ一言も各省とも話しておりませんのでございますが、基本的には来年度予算、まだ予算が通過しておりませんので、いまいろいろ申し上げる筋じゃないかとも思いますけれども、実は関係各省の連絡会議をいまやっております。これは環境庁と科学技術庁が中心となりまして厚生、通産、労働、農林あたりの担当の方に集まっていただきまして、一体この緊急対策としてどの程度金が要るのか、また、だれが出すべきかというようなことを検討しておりますので、おそらくその席で、みな科学技術庁出してくれというような話で、いやそんな大きな額はということで事務的にやったんじゃないかと思いますけれども、実は御案内のとおり、この緊急対策といたしましては三千七百万でもう手をつけましたものでございますから、普通のたてまえからいいますと関係各省がもうPCBの問題についてはそれぞれ予算要求して取っているはずのものでございます。また、そういったような姿勢で四十七年度は当然自分の持っている範囲内で相当調査費なり何なり支出すべきものだと私どもは思っております。関係各省で精一ぱいひとつやっていただきまして、その不足な分とか不足の穴のあいているところとか、その他関係各省の中で、特に環境の部分については環境庁がおやりになる。それで環境庁がやられてもまたとても手に負えないというところですと、これは私のほうに九億五千万の特別研究促進調整費がございますので、その中で、特に必要な点を出すようなかっこうになるというようなことでございます。実態は、環境庁、さらに科学技術庁あたり、実際にどのくらい金を出すべきかという点、私どもまだつかんでおりませんので、私といたしましては極力、とにかくできるだけの御協力をして、九億五千万のお金のうちでこのPCBの問題のいろいろな解決のために、特に科学技術庁でございますので、研究とかそれから開発とかいう面が主体となるかと思いますから、そういった面で協力してまいりたいというように考えております。全然そういったようなシビアで何にも出さないんだというようなことはございません。
  80. 木内四郎

    ○木内国務大臣 私が立つと少し長くしゃべるのであまりしゃべらないで——この間も長々しゃべりましてちょっと御注意を受けたような次第でありますので、簡単に申し上げます。  どうもこのPCBの問題はやはり政府はちょっと手おくれのような形であります。しかし、私は言いわけするわけじゃありませんけれども、このPCBというのは欧米先進諸国もずっと前から使っておるわけなんですね。にもかかわらず、どうもこれに対して問題を起こしてない。したがってその文献もなかった。ところが、カネミ油の問題でああいう急性の問題が出てきたので、これはたいへんだということで、みんなびっくりぎょうてんしてあの問題を処理したことは御案内のとおりですが、それに基づいて、急性はこうだが慢性のものもこのままほっておくことはできないだろう、これは研究してみなくちゃならぬというので、各省、厚生省とか労働省とか農林省集まってもらって、去年のちょうどいまごろですね、この間も私長々申し上げたのですが、研究をしたわけです。ところが、そのときはまだ、こういう問題についてはいつも早く手を打つアメリカさえもまだ打っていないのです。アメリカもカネミ油のあの事件でびっくりして、そうして、そう言っちゃ悪いけれども大体こちらの資料で、この一月ばかり前、三月十八日ですか十六日ですかに初めて概算的の標準を発表したというようなわけで、急性に対してですが、それを基礎にして一般のほうについても発表したのです。そんなようなわけで、欧米諸国はあれだけ長い間使っていながらこの問題について研究もない、文献もなかったということは、この慢性の問題というのは非常にむずかしい問題だったんだと私は想像しております。  しかし、その問題に政府としてはもう特に——特にと言っちゃあれですけれども、去年のいまごろ取り組んで、私どもの記録によりますと、六月にもうすでにこの三千七百余万円という金を、各省で必要なら必要な金額を申し出てくれといって、申し出られた金、合わせて三千七百万円は、これはもう出した。そうするとこういう問題は、まあ予算のことで御案内だと思うのですけれども、緊急で、ほかに予算がないときには、この研究調整費のうちから、私どもの九億五千万のうちから出しますけれども、それが糸口になって、口がついたらもう次の年は各省がそれに必要な予算を要求するのがわが国予算の仕組みなんですね。私は主計局長流に言うわけじゃありませんけれども、緊急で間に合わないときにはこの研究調整費から出す。そうして来年度、翌年度はそれの延長、それの何倍も要るかもしれぬのは、それは各省が大蔵省に要求して取るというのがこれがさっき調整局長が言ったように予算の仕組みであり、要求の方法であると思うのです。  そこで、去年すでに着手した、そのときに資料がなくて、つかめない。大体分析の方法が確立してない、これが非常にむずかしい。この間もお話ししたように、DDT、BHC、みな有機塩素系のものである。出てくるとPCBだと思ったら実はDDTとBHCの消毒薬として、農薬として使ったものが一緒に入ってくるという場合もしばしばあるので、私はしろうとですけれども、あの数値を発表したときにちょっと首をかしげたのです。疑うわけじゃありませんけれども、ちょっとはてなと思ったくらいにむずかしい分析。分析方法を確立しなくちゃいかぬ。分析方法を確立するのはこれは非常にむずかしいので、私どものほうで、理化学研究所の有機微量分析室、これは非常に権威のあるもので、権威者の本間博士もおるのですが、そこで分析するのに機械は幾らかかるか、五千万も六千万もかかるという。それはたいへんだ、そんなことなら、もう全国至るところでやるのにたいへんだから、これを簡素化しなくちゃならぬ。確立し、かつこれを簡素化しなくちゃならぬ。  それからいま調整局長が申しましたように、どうも急性なのはわかるけれども、慢性になってくるとさっぱりわからぬ。一体どういう実態であるか、それを把握すること。またどういうメカニズムでここまできているか。すなわちこの経路ですね、これも調べなければならぬ。こういう問題も出てきた。そこに持ってきて、いまの慢性に対する対策の問題も出てきたりして非常にむずかしい、別に言いわけじゃありませんけれども。  そんなようなわけで、世界の各国で文献がなかったのでそんなになったんですが、私は実はきのうの新聞を見て驚いたのです。もう二十三年も前にそういう報告が出ているということが新聞にあったので、これはどうもえらいことをしちゃった、そういう報告が出ているのなら、それを基礎にして当然政府は処置を講ずべきであったと私は思う。ところが、去年集まったころは、こういう分析方法もない、実情も把握できない、そのメカニズムもわからない、それから慢性のものに対して対策をどうしたらいいかというのがわからない、文献もない、資料もないじゃないか、世界の各国にもあまりないじゃないかというので、そこで、そういう項目に対して各省が分担して調査するようになったが、さあきのうの新聞を見たら二十三年前にもそういう報告があった。私は実はその報告の内容を読んでませんから、どういう報告だか、これは関係各省お読みになっているかもしれぬけれども、私はちょっとその報告もどういう程度に言われたのか疑問を持っているのですがね。しかし、そういう報告が出て、しかも慢性のうちでも特にそれを扱っている者が著しい被害を受けたということになってくると、その事実がわかっておったとしたらこれは私どもの所管でありますが、政府全体としてまことに申しわけない話だと思うし、また、それをやっておった企業自体の責任も私は非常に重大だと思うのです。そこで、私はまず野村博士ですか、何とかいう人の報告、一体どういうことをやっておったかということ、どういう報告をされたか、それを見ないと、それを受けた松下電器産業ですか、それの責任もよくわからないですが、もし非常な——われわれは、それを扱っておる者にあるなんていうことは考えなかったのです。かすかなものであるが、それは魚を通じ、野菜を通じ、その他食物を通じて、長い間に人体に蓄積するから初めてそこに害が出る、こう思っておったので、体内に吸収して被害があると思っておったのに、今度は扱っておった者に被害があるということになると、これはなかなか容易ならぬ問題で、その報告いかんによっては、私は政府の責任も相当重大だと思うのですよ。また産業のほうも、これは世の中に対して申しわけないことだと思うのです。  そんなようなわけで、いままでわかっていなかったものですからそういうふうになったのですが、各省が全力をあげて、厚生省も通産省もみなやってもらっておるのですから、その点もひとつ買っていただきたいと思います。ただ、去年はとにかく分析方法、それから汚染の実態を把握することさえもできなかった。しかも、いわんやそのメカニズムに至っては、これを把握することができなかったという状態にあったので、いまになってみると多少手おくれ——多少といってはおこられるかもしれぬ。その報告いかんによっては相当著しい手おくれだったと思うので、申しわけなく思っておるのですが、日本がどうも一番やかましいらしいですな。しかし、こういうものを使うのは、われわれよりももっと早く欧米先進諸国は使っておったのですから、もうちょっと問題になりそうだと思うのですよ。とにかく、いま、二十三年前にそういう報告を受けていたということを聞いて、私ども驚き、かつ責任を痛感しておるわけなんですが、今後は全力を尽くして、各省と協力してやるようにしたいと思います。  ただ、予算の面は、この間私は連合審査会で申し上げたのですが、私どものほうが中心になってそういうことをやっている。ところが、環境庁さんがここに出てこられると、私どものほうはちょっと二次的になってしまう。そこで遠慮しながら現在しているということばを使って申しわけないのですが、そういうことばは適当であるかどうかは別として、そんなようなわけで、環境庁さんが中心になって、しかも三億五千万円の予算を取っていられるのですから、それでできるだけやっていただいて、足らない場合には、私どものほうは九億五千万円、これも、この間も申しましたように、PCBだけで持っているのじゃないので、ほかに緊急な研究がたくさん出てくるとそれに使わなければなりませんが、その九億五千万円のうちからできるだけは出していく。そして、なお足りなければ、こういうことこそいま近江委員がおっしゃったように、政府は幾らでも金を出すべきじゃないかというので、私は大蔵大臣は当然これに対しては予備費でも何でも要るだけの金は出すべきものだ、平生節約しているのはこういうときに使うためだ、私はこういうふうに理解しております。ですから、そういう意味で、できるだけ出してもらいたいと思っております。
  81. 近江巳記夫

    ○近江委員 元主計局長が大蔵省に強烈なハッパをかけられたわけですが、どうぞひとつ大蔵大臣のほうにもこうした点を大臣のほうからも伝えていただいて、一応腹がまえをしておけ……(木内国務大臣「この間、予算委員会の席上でも大蔵大臣にさしで言っておきました」と呼ぶ)そうですか。いま二次的ということもおっしゃったわけです。それは使っていいかどうかということは問題だけれどもと言いながらもおっしゃったわけですが、結局二次的とか、環境庁が先頭に立って次に続くという、各省がそういう考えではやはりいかぬと思うのですよ。やはり各省が全部一線に並んでこの対策をやっていく、ひとつこういう観点でお願いしたいと思うのです。局長さんも大臣も、要るものについては全力をあげてやるということをおっしゃっていただいたわけですので、ほんとうに各省も期待もしておるわけです。そういう点で、これについては、たとえ補正を組もうが何しようが、ばく大なことになっても文句を言う人はおらぬと思うのです。ですから、これについてはひとつ全力をあげてやっていただきたいと思うのです。  それから、もう時間がありませんので簡単に終わりますが、先ほど厚生省の方が非常に濃度が低いということもおっしゃったわけです。もとに返って恐縮でありますけれども、これは濃度が低い高いの問題じゃないのです。長い間摂取している間に全部体内に吸収されるわけでしょう。そういう蓄積性が問題なんです。わずかでもあるということは大問題だ。そういうただ数値だけで多い少ないという感覚であってはならぬと思います。そうは思っていらっしゃると思いますが、これはひとつ特に私は感じましたので、おくれましたけれども一応申し上げておきます。  それからあと一点お伺いしたいのは、この間の連合審査でも私は申し上げたのですが、このPCBだって、初めは非常に安定性があっていいということでどんどん使っておってこういう問題が出てきた。そうしますと、何千とある化学物質ということ自体が非常に大きな脅威の対象じゃないかと思うのです。そういう点で、現在農薬取締法あるいは食品衛生法などがあるわけですが、私はこの化学物質取締法、これは仮称でございますけれども、そういうものを当然つくっていくべきじゃないか、こう思うのです。それについてどう思われますか。
  82. 小幡八郎

    ○小幡説明員 従来毒物劇物取締法の対象になりますような毒性の高い化学物質は、その毒劇法で十分な管理が行なわれているわけでございますけれども、いまや毒劇法の対象にはならない低度な毒性のものであっても、これが分解しないあるいは体内に蓄積するということから新しい問題が出てきたわけでございます。したがいまして、そういった物質につきましては、やはり何らかのチェックの基準、体制というものをつくってまいりませんと、再びPCBのような問題を起こす可能性があるということは認識しております。そういった観点に立ちまして、通産省におきましては、近く当省の審議会におきまして、新しい化学物質のチェックの基準及び体制について検討を進めてまいりたいと考えております。
  83. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまの化学物質取締法ですね。これはどこの官庁になるかわかりませんけれども、長官にこの点をお伺いして、閣議にはかっていただくなり何なりの処置はしてもらえると思うのです。ですから、どこの官庁が所管するということは度外視して、国民に対する政府の大きな骨をつくるという意味において、当然私はつくるべきじゃないか、こう思うのですが、長官の御意見を……。
  84. 木内四郎

    ○木内国務大臣 私がしゃべるとどうも長くなるので簡単に申し上げますが、いま説明がありましたように、食品関係の平生の取り締まりというようなもの、これは一番大事です。そこで食品衛生法もあるし、あるいは農薬取締法もあります。あるいはまた薬事法というものもあったり、あるいは労働省関係では基準法のうちにもそのことはあると思います。さらに水質汚濁防止法にもあるし、いまの毒物劇物取締法などもありまして、今日までのところは化学薬品ですか、そういういろいろなものの取り締まりについては、政府でも全力を尽くして各方面の取締法などあるのですけれども、何しろいろいろなものが新しくできてきたり、また、いままでいいと思っておった、毒物として取り扱っておられなかったものが長く蓄積すればこういうふうになる。また、それは毒物の取り締まりの基準には合わないけれども、非常な汚染を生ずるというようないろいろな問題が新しく出てまいっておりまするので、そういう点を頭に置きながら、今後お話しのような問題は政府全体としても検討していかなければならぬ筋の問題だと考えております。
  85. 近江巳記夫

    ○近江委員 これで終わります。
  86. 石川次夫

    ○石川委員長代理 関連質問の申し出がありますからこれを許します。堂森芳夫君。
  87. 堂森芳夫

    堂森委員 長官が一時までだそうでありますので、五、六分で終わりますから、関連して伺います。  ただいまも近江委員から御質問がございまして、PCBはじめ、こうした公害に関連した問題について科学技術庁長官としてのお考えを伺いたい。  そこで、このPCBに関する研究調査について、三千七百万円を技術庁のほうから予算を出されました。調査研究をやってくれる、これは当然のことでありますが、科学技術庁長官というものは一体何をする国務大臣なのかということを、私、いまも質疑応答を通じて考えておったのです。そうしますと、科学技術庁設置法を見ますると、「科学技術庁は、科学技術の振興を図り、国民経済の発展に寄与するため、科学技術に関する」云々と、こう書いてありますね。そこで、私もこの設置法の制定のとき、たしかこの委員会におった、こう思うのでありますが、技術庁長官は、科学技術の振興に関する責任者として国務大臣である、これは当然のことでありますが、PCBのような非常な激しい公害を伴うような問題等について、内閣としては、いまも近江さんから質問がございましたが、一体科学技術庁の長官はどういうような役割りを果たしていかれるような決意でおられるのか、これをもう一ぺんあらためてお聞きしておきたい、こう思うのです。  あなたはさっき、研究だとか対策がちょっとおくれたとか、非常に簡単に言っておられるわけです。そんなことじゃないと思うのです。ちょっとくらいじゃないですよ、あなた。たいへんなことです。そういう認識では、私は、あなたは大臣として適格じゃないと思うのです。ちょっとくらいじゃないですよ、あなた。冗談じゃないですよ。しかも、一九七〇年の世界各国のPCBの生産量をちょっと見てもわかるのですよ。アメリカのような広いところで三万トンくらいでしょう。日本のような小さい国で一万トンをこえるPCBを生産し、輸入もある。私、全部覚えていませんが、スウェーデンは五百トンですよ。日本より国土はうんと広いでしょう。そして人口は少ない、非常に違いますが、国土からいったら広いところが五百トン、日本は一万何千トン、輸入もある。それをだっと使って、しかもいままで、きのうおとといあたりの、きょうの新聞を見ても、毎日どの新聞見たって、PCBの問題について記事が出ない新聞はないです。毎日どの新聞か、ひどいのになると三面にわたって書いておる新聞もあります。というふうに、全国に散らばっておるPCBと関連した工場ではたれ流しておるのですよ、いま。廃液をどんどん流しておるのです。そして一万何千トンというものを七〇年においてはつくって、アメリカから見れば国土がうんと小さい国でこんなにつくってたれ流す。こういう状況に対して、科学技術庁の長官としてはどういう態度でこの問題に対処をしていかれるか、その決意のほどを伺っておきたい、こう思います。
  88. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いまたいへんおしかりを受けたのですが、さっき近江委員に私は御説明申し上げましたように、ちょっとと言っちゃしかられるだろうということを申し上げて、これは今日になってみると相当手おくれであったということを近江委員におわびをしておるのですから、その点は御了承願いたいと思います。  これは、私からさっきも申しましたように、PCBというのは欧米先進諸国でもずっと前から使っておるのですよ。にもかかわらず、それがあまり問題にならなくて、文献などを見ても、ほとんどこれらしいというものはないですよ。そこで、ことしは毎日のようにPCBが新聞に出ていますが、去年のいまごろはどうでしょう。去年のいまごろの新聞にPCBなんて出たらおいPCBって何かというようなことで、そのことば自体さえもまだあまり知られなかった。ただ、たまたまカネミ油事件で、熱媒体のところへ入れておったパイプが破れてそれが油の中に入った。したがって、多量のものを短時間に吸収したから急性の問題で出てきて、ここで初めて問題になった。  そこで、われわれは急性の問題だけじゃない、これはやっぱり毒性がある以上は慢性の問題についても研究しなくちゃならぬというので、関係各省集まって、私どもは科学技術の全体の連絡調整の機関でありまするので、皆さんに集まっていただいて、去年、いまのような新聞などに出ないころ、方々にいろいろな例などが出ないときに、カネミ油のあとのあれで、やはり慢性のことも研究しなくちゃならぬというので研究しようとしたが、文献もない。大体、分析方法もまだ確立、よくわかっていない。非常に、さっき申しましたように、有機塩素系のDDTあるいはBHCというのは、農薬としてどんどん使われておる。それと同じ系統のものであるために、分析が非常にむずかしい。  さっきも私申しましたように、出てきている数値というものについて私は疑うわけじゃありませんが、私はしろうととしてもちょっと首をかしげるような状態にさえあったのですが、それで分析方法もわからない。一体汚染の実態が把握できておらない。それからまた汚染のメカニズムがわからない。どういうふうに回ってきたかもわからぬ。われわれは、それは魚あるいは食べものなどについておったそれを人体の中に吸収して、それで汚染を生ずるのだと思っておったところが、今度は二十三年前ですか、これはそれを扱っておる者の皮膚その他からも入ってくるというふうに、その汚染の経路などもわかっていない。そこで、アメリカはこういう問題について非常に敏感で、早く処理する国であるにかかわらず、それがこの三月十八日に初めて、しかもカネミ油のときの統計を基礎にしてあれの標準値を一つ発表した、こんなようなわけであります。  それですから、私は言いわけするわけじゃありませんけれども、去年のいまごろ関係各省、厚生省その他がお集まりになって研究されたということは、むしろそんなことを言うとまたしかられるかもしれませんが、君らよくやったなと言われてもいいくらいな、問題になる前に始めておった。そのあと研究がやはり手間どるものですから、今日その対策が十分にいっていないというのが現状ですから、その点はひとつ御了解を願い、また、関係各省に御同情をお願いいたしたいと思います。
  89. 堂森芳夫

    堂森委員 まともにあなた答弁してないですよ、それは。さっきの説明を繰り返しておるだけであって。しかし、カネミ油のあの中毒事件というのは、研究があれは足らぬですよ、あなた。あなたは学者でもないくせにそんなことがわかりますか。あれは足らぬのですよ。研究費がなくて、中途で、徹底的には調査しておられぬということですよ。あれでどうだ、そんな自慢できるような研究じゃないですよ。もっともっと金があればもっと徹底した、そしてPCBの中毒に対するもっと本質を究明していくような研究がなされなければならぬのが、金がなくて途中で研究者もやれなかった、こういうことですよ。あなた少し思い違いじゃないでしょうか、私はそう思います。一体政府はどういう態度で、あなたはどういうふうな所信でこの問題に対処していくのですかとこう言ったのでありまして、さっきの説明を二度も聞かぬでも、幾ら頭が悪くてもわかりますよ、そんなこと。自慢にならぬですよ、そんな話。絶対自慢にならぬですよ。もう一ぺんあなたの所信を承っておきます。
  90. 木内四郎

    ○木内国務大臣 私は、それですから先ほど近江委員にもおわびしたように、決して自慢はしてないのですけれども、とにかくことしと去年とはPCBに対する一般の世論というものはそれほど大きな違いであったという事実だけを私は申し上げて、それによっていろいろ御判断を願うことは、これは御判断は御随意だと思うのですけれども、その事実を、私は重複したことではあると承知しながらも、貴重なお時間を拝借して誤解のないように一応申し上げただけの話であります。ことにきのうきょうの新聞で二十三年も前にそういうことが企業者のほうに話をしてあったということを聞いて、私は実は驚いたし、また企業者も責任を痛感しておるでしょうし、政府としてもその点は、そういうことを考えるとたいへんに手おくれだったということを申し上げておるのですが、この問題は大事な問題でありまするので、さっき近江委員にもお答えしたように、予算のことは足らなければ大蔵大臣に要求して、大事な問題だから大いに予算も出してもらって、関係各省で十分にひとつ研究をして必要な対策を講じたい、かように申し上げておきます。
  91. 堂森芳夫

    堂森委員 もう関連ですから終わりますが、それは私は、世界一のPCBの公害国であるということを頭に置いてもらわなければいかぬ、こういうことですよ、あなた。よそにあまりなかったから日本もそうだ、そんなことは理由にならぬですよ。こんな狭い国で、たくさんのPCBが何万トンとかいってたれ流しになっておるのでしょう。それはあなた、公害がくるのはあたりまえですから。そして予算はどうとか、いろいろお話がありましたが、私は関連ですから申しませんが、あなたもっとがんばって、科学技術庁長官ですよ、大いに他の閣僚に号令するような気持ちでがんばってもらわなければいかぬ、こういう意味で申し上げたのであります。  終わります。
  92. 石川次夫

    ○石川委員長代理 次に山原健二郎君。
  93. 山原健二郎

    ○山原委員 もうすでに御承知と思いますが、最初にちょっと事件の概要を申し上げたいと思うのです。  本年の三月十四日の午後六時五十分でございますが、高知県土佐清水市足摺岬南南東約百六十キロの地点におきまして、東京の上野ケミカルタンカー所属の豊隆丸、四百七十八トン、乗り組み員八名でありますが、この二番タンクの排出弁に故障を起こしまして、その故障を直しに行きました一等航海士の若林さん、これがガス中毒のために倒れ、それを救出に行きました甲板長の勝又さん、引き続いて船長の鈴木さんが次々とガス中毒を起こして死亡いたしました。  そして、船長を失ったこの豊隆丸は漂流を続け、その中で巡視船「むろと」によって救出をされたのでありますが、その船は日東化学大竹工場の廃液七百トンを積みまして、三つのタンクから海中投棄をしようとしておったものであります。その廃液の中身は、アクリロニトリルを製造する過程で生ずる廃液であったわけです。この会社から高知海上保安部へ投棄届けが出されておりますが、それによりますと、その廃液の成分は硫安水であって、硫安が五ないし一〇%、有機シアン化合物が大体〇・〇二%、あとは水が九〇ないし九五%、この三つであるということになっておるわけです。  ところで、こういう事件が発生をしまして関係者は非常なショックを受けたわけです。まさに猛毒が海洋投棄をされておったということがわかったわけでありますが、この状態から考えまして、一体現在日本近海における海洋投棄で何が投棄をされておるのか、そういう実態について把握をしておられるのか、あるいは把握をする手だてというものがあるのかということについてまず最初に伺っておきたいのです。
  94. 岡安誠

    ○岡安政府委員 御質問の第一点で、現在海洋にどういうものが投棄をされているか、それを把握しているかという問題でございますが、実は、結論から申しますと、詳細にはわかっておらないわけでございます。問題は、今後把握する手段があるかという点を重点的にお答え申し上げます。  海洋汚染防止法によりますと、船舶に積載をいたしましてこれを海洋に投棄する場合には、その船舶につきまして登録その他を受けなければならないというような規定がございまして、これが施行になるわけでございます。そういたしますと、船舶の構造上の問題のほかに、どういうようなものをどこに捨てるかというようなことも把握ができるわけでございまして、私どもはそういうような海洋汚染防止法の施行を通じまして、確実に把握し、指導等につきましても、投棄すべき海域並びに投棄方法について規制をするわけでございますので、今後は関係省庁と強力な連携のもとに適正な投棄——なるべく投棄しないことが望ましいわけでございますけれども、やむを得ず投棄する場合には適正な投棄がなされるように指導してまいりたいと考えております。
  95. 山原健二郎

    ○山原委員 現在までは全く無法状態であったということが言えると思いますね。  ところで、こういう問題が起こった後に、六月二十五日から実施をされる、中央公害対策審議会の答申というものも出ておりますので、それまで一体このまま放置しておくのか。三月十四日にあの事件が起こりましてから、現在どういう対策がとられておるのか、伺っておきたいのです。
  96. 岡安誠

    ○岡安政府委員 現状——六月二十五日以降施行されます海洋汚染防止法の内容は別にいたしまして、現状どういう取り締まりの体制になっておるかということをお答え申し上げますと、現在海洋投棄につきましては、それが廃棄物である場合——主として廃棄物が投棄されるわけでございますが、廃棄物である場合には、廃棄物の処理及び清掃に関する法律によりましてこれを処理しなければならない。その場合におきましては、その政令によりまして、廃棄物の処理は原則として陸上処理、やむを得ざるときにこれを海洋に投棄するわけでございますが、海洋投棄につきましては、必要な処理をいたしましてそれから投棄をするということが義務づけられておるわけでございます。その中に、たとえば廃棄物の中にもたとえば毒物及び劇物取締法の規制を受けるというものにつきましては、その毒劇法によりましてなお規制も受けるというような体系になっております。六月二十五日以降におきましては、海洋において投棄できるものにつきましても、投棄できる海域並びに投棄方法等についてさらに規制が加わるというのが現在の法体系でございます。
  97. 山原健二郎

    ○山原委員 こういう形で国が汚染をされておるわけでありますけれども、この事件は、沿岸住民にとりましては全く重大な衝撃的な事件であったわけですね。いままでこんなことが放置されておったのかということで、これは政府としても重大な問題だとお考えになっておると思うのですが、この事件が起こってどういう感じで受けとめられたのか、これを伺っておきたいのです。たとえば県とか県の漁業協同組合としては、ほんとうに重大な決意をせざるを得ないということで、政府に対してもしばしば陳情も行なわれておるわけでありますが、これをどう受けとめておられますか。
  98. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いま先生からお話がございました高知沖の毒物の投棄の関係の事件でございますが、問題は二つあると思うのです。  一つは、船員の方々が死亡いたしたわけでございますが、これはやはり廃液の中に相当量の無機シアンが入っていたわけでございまして、その無機シアンの扱いにつきましては当然毒物及び劇物取締法に従いまして処理をしなければならないところ、それが十分であったかどうか、その点に不備があったことによって船員等の死亡が起きたのではなかろうかという点、これは現在司直の手によって調査されております。  もう一つの点は、こういうような廃液が海洋に投棄されることによりまして、海洋汚染、環境汚染をもたらすかどうか、特に漁業等にどういう影響があるかという問題がございます。私どもは、この廃液が三〇〇PPMをこえるような無機シアンを含んでおりますので、今後ともこういうようなものは当然このまま海洋に投棄されるべきではないというふうに考えておりますけれども、濃度の低い無機シアン等を含む廃液等について、漁業への影響等についてどうかということを当然これは調査いたさなければならないというふうに考えております。濃度の低い、たとえば一PPM以下の無機シアン等を含む廃液等につきましては、現在これの海洋投棄を禁止する規定がないわけでございます。それらにつきまして、もしこれが水産業等につきまして影響があるというような結果が出た場合には、当然それを規制する手段というものを考えなければならないというふうに実は考えておるわけでございます。
  99. 山原健二郎

    ○山原委員 この投棄されたものについての海上保安庁のほうの現在の調査状況、一体どういうものが投棄されておったかという分析がなされておると思いますが、これについて経過を報告していただきたい。
  100. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 事件が起こりまして、私どものほうでいま捜査を進めておりますが、概略御説明申し上げます。  まず第一に、この豊隆丸の船主、それから上野ケミカル——運航者、それから八人乗っておられましたが、生存者の五人の乗り組み員、それから日東化学の本社、及び大竹工場、これら関係人の取り調べをいたしております。それから次に、死亡なさいました三名の方の検視、解剖及び内臓の鑑定をいま嘱託いたしております。それから次に、豊隆丸、大竹工場からとりました廃液、これも鑑定を嘱託中でございます。それから、過日新聞に出ましたけれども、日東化学工業株式会社の本社、大竹工場、それから運航に当たりました上野ケミカル株式会社の東京本社、それから実際のこの船の所属の、石巻にある鈴木海運株式会社、これの捜索、差し押えをやっております。  そうしたところから業務上過失致死被疑事件としていま捜査中でございますが、関係機関に嘱託を依頼しておりますその鑑定の結果が、今月中には出てくる予定になっておりますので、その結果をもとにいたしまして、関係地方検察庁と協議の上、本件を処理するような段階になっております。
  101. 山原健二郎

    ○山原委員 死体の検査とかというようなことは別にしまして、この廃液は、直接豊隆丸の積んでおった廃液を採取しまして、その分析を現在行なっているのですか。
  102. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 ただいま行なっておりまして、中間報告では無機シアンがあるような報告を受けておりまするが、責任ある鑑定結果はいましばらく待ってほしいということでございます。
  103. 山原健二郎

    ○山原委員 その委嘱しておる鑑定機関というのはどこですか。
  104. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 高知県と兵庫県の県警の鑑定機関でございます。
  105. 山原健二郎

    ○山原委員 兵庫県の県警のほうはまだその鑑定の結果は出てないのですか。
  106. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 いずれの機関からもまだ正式に提出がおくれております。
  107. 山原健二郎

    ○山原委員 高知県のほうは衛生研究所ですか、どこですか。
  108. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 私どものほうが鑑定を嘱託しているのは高知の警察本部でございます。
  109. 山原健二郎

    ○山原委員 高知県の衛生研究所というのは、残留農薬その他の問題におきましても、分析能力というのは非常に高く評価されておるということは御承知だと思います。ここでこの豊隆丸の二つのタンクからおのおの三リットルの廃液をとりまして分析をした結果が発表されておるのです。シアン関係につきましては総シアンが左舷のタンクで三一九・一PPM、右舷のタンクからは三〇五・二PPMというのが出ております。さらに有毒無機シアンにつきましては最高三一九・三PPMというのが発表されているわけです。  御承知のように無機シアンの毒性については、二七〇PPMで即死、一八一PPMで十分後には死亡する、一三五PPMで三十分後には死亡するというこれは猛毒であります。この猛毒が投棄されているということがわかったわけであります。  このほかに、廃棄物処理及び清掃に関する法律で海上投棄の禁止されておるところの全水銀、全クローム、砒素、鉛、カドミウム、こういうものが検出をされているのであります。  私は、この分析の結果というのは信用してしかるべきものだと思いますし、また、先ほど水質局長のほうからもその数字が出されたわけでありますが、こうなってまいりますと、これはもうまさに猛毒を海上投棄しておったという重大な責任の追及が行なわれなければならないと思うのです。しかも日東化学は昭和四十五年の四月から四十六年の三月まで、また四十六年の四月から四十七年の三月まで、広島海上保安部に対して足摺沖九十キロ以遠に投棄するということを届け出をいたしております。  このようなことについて、特に御承知のようにアクリロニトリルにつきましては劇物指定がされております。これは有機シアンの中に含まれているといわれるわけですが、こういう劇物として指定されておるものが、量はともかくとして投棄をされるということについて、それを届け出を受けながら調査もしないで今日まで放置しておったのかという疑問が生ずるわけですが、この点について見解を伺っておきたい。
  110. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 いま申されましたように、なるほど昨年の四月に海上保安庁の出先機関であります高知の海上保安部にそういう文書が届きました。現在の状態は、先ほど環境庁のほうから御説明もございましたが、いまこれを規制する根拠法規はございませんので、文書は出ましたけれども、これを海上保安庁が法律的に受理するというたてまえにはなっておりませんけれども、こういうものが来たときには海上保安庁の出先機関としてはどのように指導しておるか、そういう御質問かと存じまするが、高知にその文書が参りまして、直ちにこれを上級機関である第五管区海上保安本部に上げまして、ここの海上公害監視センターでは四月の十三日関係会社を呼びまして、投棄については現在法的な規制はない。しかしながら、海洋汚染防止上好ましくないので極力海には捨てなさるなと強く要請いたしました。また、どうしてもやむを得ず捨てるような事態であるならば、高知県の公害、水産担当の部局ともよく相談して、どこの海域にどのように捨てるのかということを聞きなさい、そのように指導させております。
  111. 山原健二郎

    ○山原委員 私はいま高知県の衛生研究所の分析の結果を発表しましたが、もしいま委嘱しておる兵庫県警また高知県警の結果が、それと合致するかまたはそれにほぼひとしい無機シアンの検出がなされた場合は、これは明らかに毒物劇物取締法違反ということになると思います。その際にはどういう処置をするつもりでございますか。
  112. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 海上保安庁といたしましては、現在刑事事件としてこれを厳正に追及いたしておりまして、業務上過失致死容疑として処理する方針でございます。
  113. 山原健二郎

    ○山原委員 業務上過失致死容疑というのは、対象はだれですか、この場合は。日東化学の社長ですか、どこですか。
  114. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 これはまだ送致にも至っておりませんし、捜査中でございますが、それを出した工場の関係者、それから船の責任者、そういうふうなことになろうかと思いますが、いまのところだれということはここで御説明するのは差し控えさしていただきたいと思います。
  115. 山原健二郎

    ○山原委員 こういう問題はややもすると企業責任がすりかえられていくという可能性が非常にあるわけでございますけれども、こういう毒物を平然として海洋投棄しておるこの企業の責任というものは断じて許すことはできないことだと思うのです。そういう点での本質をそらすようなやり方では私はだめだと思います。これまた捜査の今後の経過について私どもは十分注目をいたしたいと思います。  水質保全局長、時間があまりないそうですから、この問題と関連しまして伺っておきたいのです。実は、高知県におきまして、PCBの問題ですけれども、先ほどもお話が出ましたが、六十六歳の漁民でありますけれども、これが一八・〇四PPMという全国最高の数字を出すような結果が出たわけであります。これはもうテレビその他で御承知だと思いますけれども、これも高知県衛生研究所において、昨年の十一月から三カ月にわたりまして、直接PCBに関係をしていない漁業者、農業者、それからサラリーマン、ホワイトカラーについて調査をしているのでありますが、その中で圧倒的に多いのは漁業者であります。その中で六十六歳の今日まで漁業をしながら魚介類を食べて生きてきた老人から一八・〇四PPMという数値が出てきたわけですね。あの工場の少ない土佐湾でありますけれども、そこにおいてなおかつこういう事態が発生をするということは、これは海洋投棄の問題と関係があるのではないか、私はこう考えるのです。この点についていかに日本近海が汚染されておるかということもおわかりになると思いますが、こういう事態についてどういうふうにお考えになるか、見解を伺いたいのです。
  116. 岡安誠

    ○岡安政府委員 私もいま、高知の漁民につきまして相当高程度のPCB保有がわかったということは聞いております。実は工場のないところの漁民がどういう経路でPCBを多量に摂取したのかということにつきましては、なお追跡その他の調査をする必要があろうというふうに実は考えております。もちろん一般的にPCB汚染のメカニズム等につきましては、四十六年度科学技術庁の特調費によりまして、主として水産庁にお願いをいたしまして現在調査中でございますけれども、考えられますのは、廃棄物として海洋に投棄をされ、それによって海洋を汚染し、魚族が汚染をするという経路も考えられますけれども、むしろ河川等からの汚染された河川水、これが海洋に流出をした結果か、または魚族等につきまして特定のPCBによって汚染をされたえさを食べた魚を人間が摂取した結果であるか、そういうような経路ではなかろうかと実は考えております。  と申しますのは、従来乏しい資料でございますけれども、海洋におきますPCBの汚染というのは、私どもの入手いたしております資料ではPPB単位として私ども承知いたしておるのでございまして、PPB単位の海水の汚染からどのような経路で魚に濃縮をされるかということは、必ずしも現在解明をされておらないというふうに考えております。もちろん事実といたしましては、そういうような人間の汚染が出たわけでございますので、早急にそういう経路の解明はいたしたいというふうに考えております。
  117. 山原健二郎

    ○山原委員 漁業者の場合は七・五PPM、農業者の場合は二・七五PPM、いわゆるホワイトカラーの場合が二・六〇PPMという数値が出ているのですね。これを見ましても、明らかに漁業者の汚染というものが激しくなっているわけです。そういう点から考えまして、実際に先ほど私が申し上げましたように、海洋投棄といったところで何が捨てられておるかわからぬ、猛毒さえ捨てられておるという実態の中で、こういうことが起こるのは、このまま放置するならばますます汚染されるという状態が出てくると思うのですね。これについて、環境庁として断固たる処置をとってもらいたいと私は思うのですが、時間がございませんから、あなたの見解を最後に伺っておきたいのです。
  118. 岡安誠

    ○岡安政府委員 お話しのとおり、海洋に廃棄物を捨てるというのは極力避けるべきであるというのが私どもの基本的な態度でございます。やむを得ず廃棄物を海洋に投棄する場合におきましても、お話しのように、有害物質を含むような廃棄物、これは極力投棄をさせないというように考えております。特にPCBのようなものにつきましては、これは国際的にも非常に問題になっておりまして、絶対に海洋投棄を認めるべきではないというような見解も国際的にいま認められております。私どもも今後、海洋汚染防止法の政令その他を検討いたしておりますけれども、それを実施にあたりましては、そういう方向で有害物質の海洋投棄は極力規制をするというような方向で処置をいたしたいと考えております。
  119. 山原健二郎

    ○山原委員 海洋投棄の問題についてさらに質問をしたいのですが、今度の中央公害対策審議会の答申によりますと、廃棄物の種類、排出海域、排出方法ということを答申をいたしておるのであります。その中で、海洋還元型の廃棄物につきまして、これをA海域と呼んでおりますが、これが領海の基線から五十海里をこえる海域となっておるわけです。ところが、答申の海域設定についての考え方というのが出ておりますが、これによりますと、まず第一番に、「水産動植物の生育環境及び漁場として重要な海域を除く」ということが書かれております。それから二番目に、「広範な海洋の浄化能力を利用するため黒潮、親潮等の海流に乗せやすい海域であること」ということが出ておるのでありますが、この問題に関して、各投棄場所として設定をされておる、特に和歌山あるいは高知県などにおきましては、漁民の強い要求として、五十海里ではだめだ、百五十海里にしてもらいたい、あるいは百二十海里以遠にしてもらいたいという要求が強くあるわけです。しかも考え方の中に出ております第一番には、ただいま申しましたように、「漁場として重要な海域を除く」ということがあるわけですが、こういう漁民の要求に対してこたえる考え方があるかどうか、これを伺っておきたいのです。
  120. 岡安誠

    ○岡安政府委員 お話しのとおり、三月の十六日に中央公害対策審議会の廃棄物部会から、海洋の投棄につきましての考え方の答申があったわけでございます。海洋還元型物質につきましては距岸五十海里以遠ということに答申がなされておりますので、私どもその線に沿いまして現在政令を準備中でございます。お話しの、距岸五十海里で水産動植物の生育環境及び漁場として重要な海域の保全に十分であるかどうかというような御質問でございますが、私どもいろいろ全国の水産関係の漁場その他は水産庁を通じましていろいろ調査をいたしております。ほぼ大部分は、特に重要な漁場は距岸五十海里の中に入っているものというふうに私どもは考えております。もちろん例外的には五十海里をこえたところにもないわけではございませんが、大宗といたしましては五十海里以内に入っているということで、今回の海洋還元型物質の海洋投棄につきましては五十海里以遠でほほ環境汚染のないような、それを防止する目的を達成できるというふうに考えております。  なお、高知沖の漁民の方々で百二十海里、百五十海里という御意見があるというふうに伺っておりますけれども、かりにこれをさらに遠くいたしますと、先ほど先生もお話しがございました、海洋還元型の物質につきましては黒潮とか親潮等の海流に乗せやすいということがやはり必要要件でございます。あまり遠くなりますと、そういうような海流の海域外にまたはずれるということもございます。私どもは、海洋還元型の物質につきましては、相当フレがある海流につきまして大体五十海里以遠であるならば、毎年海流が南北にフレましても、常に親潮、黒潮等には乗せ得るというふうに考えておりますので、あまり遠くに行くことはいかがかというふうに実は考えております。  なお、五十海里以遠におきまして特に重要な漁場があるような場合には、私どもは個々に指導等によりまして、海洋投棄につきましては厳重な注意を払うように、そういうような指導はやってまいりたいと考えております。
  121. 山原健二郎

    ○山原委員 漁民が一番要求しておるのは陸上における処理です。これは、その点ではだれしも一致するところだと思います。もし陸上における処理ができない事態の中で海洋投棄する場合には、この五十海里ではだめだというそれだけの根拠があるわけです。いま個々については検討されるというお話がありましたので、ちょっと申し上げてみたいのですが、これは高知県の漁業協同組合から出ております政府に対する陳情書でありますけれども、「本県沖合いにおける五十海里周辺海域はカツオ、マグロを主体とする全国屈指の優秀漁場であり、本県漁業者のみならず他県漁業者の同漁場への依存度はきわめて高く、さらに同地点は黒潮主軸流の北限にあたっているが、この地点からの黒潮分枝流は、本県沿岸に接岸し、沿岸の優秀漁場をも形成しているのであります。この地点で排出して黒潮流に乗せて拡散しようとしても、むしろ分枝流に乗って、沿岸への流接は強く沿岸海域の汚染は免れないと存じます。」という陳情になっております。  事実、これは春夏秋冬の黒潮の主軸の図面がありますけれども、たとえば春季の場合、これはいま一番うまい、いわゆる土佐カツオのたたきのカツオがとれる時期でございますけれども、その時期には黒潮の主軸はずっと北へ接近してくるわけですね。その北限のところに今度の五十海里の線が流れているわけです、これを見ていただいたらわかりますが。ところが、その北限からは、ちょっと図面に書いてきましたけれども、黒潮の赤い主軸から分枝流がこういうふうに回っているわけですね。この北限のところにいま言われる五十海里の線が大体流れているわけでありますから、そうするとそこで投棄をする場合には、当然陳情書に指摘されておるように、分枝流に乗って沿岸漁場が汚染されるという問題が出てくるわけですね。しかもこの付近は御承知のようにたいへんな漁場であります。  もう一つ重要な問題は、このちょうど五十海里の線の引かれておるところは、アメリカ第七艦隊の実弾射撃場であるリマ海域という広大な面積がとられているわけです。これは日本近海における海上基地としては最大の基地でありまして、この図面を見ていただいたらわかりますけれども、まさにその立ち入り禁止区域としてしばしば指定されるところのリマ海域のどまん中を五十海里の線が通っているわけであります。このことについて漁民はこういうふうに述べているのです。「足摺沖漁場ではリマ水域、あるいはその周辺が米軍及び自衛隊の演習海域であり、高知、鹿児島、宮崎、大分、愛媛の各県関係漁業者はこの海域の優秀性、重要性からして指定解除など漁業者の漁場奪還運動を展開している歴史的経過事実がある点からしてもかけがえのない好漁場であることが立証される。」というふうに書かれているのですね。  私も、リマの問題については数年来調査もいたしておりますが、ここは単に高知県だけでなくして、九州あるいは四国の漁民にとっては重大な漁場なんです。そういう状態を考えましたときに、この五十海里という一律の線の引き方というものは、あまりにも形式的であって、現実の漁民の感情にはそぐわないものだと思うのです。したがって、県をあげてこの問題については五十海里では不適当だから、漁民の要求としては百五十海里という数字が出ておりますけれども、数字はともかくとして、これは個別に考えるべきものだと私は思うのでありますが、この点について見解を伺っておきたいのです。
  122. 岡安誠

    ○岡安政府委員 まず一つの海流が海岸のほうに流れておるという問題でございますが、私ども、当然そういう点は承知をいたしております。そういうことも考えまして、五十海里以遠であるならば流速その他を勘案いたしまして、環境汚染の被害が非常に少ないものというふうに考えておるわけでございます。  もう一つ、特に具体的な漁場が五十海里の線の近辺にあるというお話でございますが、それについて画一的な五十海里以遠というきめ方はおかしいという御意見でございます。私どもももちろん海洋投棄の場所を考える場合に、こういう画一的な線のほかに、もっと具体的に海洋投棄を認める場所を設定するという案も実は考えたわけでございます。しかしながら、いろいろ検討いたしました結果、漁場その他を勘案いたしまして、海洋投棄を認める場所を具体的に設定することは、短時日の間には全く不可能であるという結論に達したわけでございます。これは五十海里以遠にもお話しのとおり優秀な漁場がある場合もありましょうし、五十海里以内にも廃棄物の投棄を認めてもよろしいような場所もあり得るということで、出入りが非常に複雑になるし、それを確定するにあたりましても時間を要しますし、かりにこれをきめましても取り締まりの面におきまして非常に困難を生ずる。かりにまた、海洋投棄をするものにつきましても位置を確定することが非常に困難である。また、取り締まりのほうでも非常に困難を生ずるということで、取り締まり法規としての海洋汚染防止法にはきわめてそぐわないおそれがあるということもございまして、多少の問題を含むことは承知いたしておりますけれども、この際は五十海里以遠ということに一応きめたい考えでおります。もちろん今後なお検討いたしまして、この五十海里以遠という線がはなはだおかしいというような場合には、当然見直しということをしなければならないというふうに考えております。それらにつきましては今後の調査といいますか検討を待ちまして、結果いかんによりましてはこの基準を改定をするということ、これは用意があるわけでございます。
  123. 山原健二郎

    ○山原委員 局長に最後に申し上げたいのですが、和歌山県の場合、私の聞きましたところでは、もう漁民みずからが自衛の手段をとらざるを得ないという状態まできまして、投棄をするところの企業側と話をして、百二十海里以遠に捨てなさい、企業側もそれを了承する。そしてその間廃棄船が通りますときには、その通る緯度というものを漁業協同組合に報告をして、そして良心的に捨てに行くという状態ですね。もしその間に、途中において投棄するとかいうようなことがあれば、これはうわさでありますからはっきりは知りませんけれども、漁船みずからが監視をしまして、そしてその投棄中のものを確認をした場合は懸賞金十万円をつけるというような話まで聞くわけです。というのは、それだけ切実なわけですね。それだけ漁民にとっては切実な問題であり、それだけの自衛手段を講じなければならぬ、こういう状態にあるわけです。これに対して国がこたえるというのは当然のことであって、そういう個々の問題についての話し合いがつくとか、あるいはそういう点で政府としてもその辺の問題を個々にも処理していける面があるのではないかと思うのです。基準そのものを将来において変更するということももちろん今後考えられることだと思いますけれども、そういうように漁民自身が各県各県ごとに創意をこらしてやっておる、こういう努力に対して、皆さんのほうではこれを何とか補うような措置を講ずる考えがあるか、聞いておきたいのです。
  124. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いまお話しの和歌山県の漁民のお話でございますが、私ども聞いております。やはりそういうような必要のあるところにつきましてはいろいろな手段が講ぜられるであろうということも想像ができるわけでございます。私どもは、もちろんこの海洋汚染防止法によりまして、五十海里以遠について海洋還元型の廃棄物を投棄してもよろしいというようにいたしましたのは、当然のことながら権利を設定したわけではございませんで、そういうところに捨てる場合には罰則をかけないというようなことでございます。したがって、個々の場合におきまして、漁民と企業者等がお話し合いをされましていろいろな約束をされるということはけっこうなことでございますし、そういうようなことの中から、私どもが考えておりますような画一的な海洋投棄の許容範囲ではなくて、もう少し具体的な範囲というものが生まれてくるかもしれません。そういうようなときには、当然私ども先ほどお答えいたしましたとおり、見直しということもいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  125. 山原健二郎

    ○山原委員 局長はちょっと用事があるそうですから出ていただいてけっこうです。  続きまして、この計画投棄量の問題ですけれども、これはどちらへお尋ねしていいかちょっとわかりませんが、現状を申し上げますと、神戸第五海上保安本部の調査によりますと、船会社調査が行なわれておりますが、これによると土佐沖と和歌山県の潮岬沖にかけまして、年間約五十五万トンの廃棄物の投棄がなされておるというふうに発表されております。それから高知県の水産課の調査によりますと、阪神、瀬戸内海工場地帯の九社の年間投棄計画が発表されておりますが、これは四十六年の八月現在の調査でありますが、十四万三千二百七十トンを土佐沖に投棄しておるという状態が出ておるわけです。この投棄物については、時間の関係で省略しますが、中には悪臭だけでなく回遊魚類にも影響を与えるものがあるということで漁民はたいへん心配をしているわけです。  それからもう一つは、廃液運搬船のことでありますが、これは大体三千トン級のものもありますけれども、ほとんどが平均して四百トンないし五百トンであまり海洋へは出られないというような現実にあるわけです。したがって、なるべく近くに投棄していこう、こういう考え方が出てくるわけです。それからもう一つは、なるたけ日が暮れて夜漁民に見つからないような状態で投棄しようという考え方が出てきておると思うのです。これは今度の豊隆丸事件にしましても午後六時四十分ですから、少なくともこの冬場におきましてはもうすでに日は暮れているわけですね。そういう中で行なわれるわけです。  ところで、そういう状態に対して、海上保安庁のほうへ伺いたいのですが、はたしてこれを監視できるのかという問題です。それだけの能力を海上保安庁が持っておるかどうかですね。これから六月までにかけての間はどうするか、あるいは六月以後においてもそういう監視というものがはたしてできるのかどうか、これについて伺っておきたいのです。
  126. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 ただいま申されましたことは、率直に申しまして非常にむずかしい問題であります。現在海上保安庁は海上の汚染の監視につきましては、特に汚染のひどいいわゆる重要区域として東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、こういったところを重点海域にきめまして、空には主としてヘリコプター、海面では高速巡視艇、この連係でもって努力をいたしております。ところが、今度こういう廃棄物が、ただいまお話がありましたが、かなり外洋の遠くへ捨てられる、これに対してどのような監視体制をしくかということを目下真剣に検討中でございますけれども、こういう廃棄物を出す区域から許される海洋の投棄地点、これについて一応経路が出るわけでございます。そういう経路の要所に巡視船を配置し、航空機でもって連係をもって監視をするというふうな方向でいま検討いたしております。  なお、夜間の問題については、これはきわめてむずかしいことでありますが、ただいま投棄船の技術基準、これらの投棄船がどのような航路を通っていつどのように行動したかというふうな自動航跡自画器というものを義務づけるようにいま検討中でございます。
  127. 山原健二郎

    ○山原委員 困難だといえば、それは広い海上のことでありますから、また人員も船舶も少ないという状態の中で困難性はわかるわけですけれども、だからといってこれをこのまま放置するということはできないわけです。そういう点でもう少しきちんとしたこの体制というものを私はつくる必要があるのじゃないかと思うのです。それで、これは特に海上保安庁あるいは厚生省になりますか、どこになるかちょっとわかりませんが、二つの点について伺っておきたいのです。  一つは、この六月の防止法適用期日以前においてこういう海洋投棄についての強力な行政指導というものは考えておられるのではないかと思うのですが、この点が一つです。通産省はどういうふうにお考えになっておるか、あるいは厚生省としてはどういうふうにお考えになっておるか、海上保安庁としてはどういうふうにお考えになっておるか、これを簡単でけっこうですから伺いたいのです。  それから二番目は、産業廃棄物の海洋投棄については、事前に海上保安庁長官に届け出を義務づけることが必要であるというふうに私は考えるのでありますが、この点についての見解を伺っておきたいのです。今度法案にはその点の義務づけがされていないと思うのですけれども、届け出を義務づけるということが非常に必要になってきておるのではないかと思いますが、この点についての見解も、二つ伺っておきたいのです。
  128. 河野義男

    ○河野説明員 後段の点についてお答え申し上げます。  産業廃棄物につきまして、海洋に投棄する場合に海上保安庁長官に届け出をすべきではないか、基準としてそういうふうなことを考えるべきではないかという御質問でございますが、現在検討しております廃棄物の海洋投棄に関する基準につきましては、先ほどお話がございましたように、三月十六日の中公審の答申を尊重いたしまして、これに基づいて政令案を検討しておるわけでございます。その中では、産業廃棄物あるいは一般廃棄物に限らず、それぞれの廃棄物の性状によりましてそれの適した海域、それから海域に投棄する場合に、個々の廃棄物についてどういう前処理、中間処理をすべきであるか、こういうふうな基準をいま考えておるわけでございます。  御質問の点の、取り締まり等の実効をあげるためには御指摘のように届け出制は確かに実効が考えられるわけでございますが、海洋汚染防止法、それから廃棄物処理法におきまして、廃棄物を処理する業者につきましての許可あるいは廃棄物船についての登録、それから廃棄物を投棄した場合のその廃棄物船に備えておくべき記録簿、こういうものでそういった点は取り締まり面における効果は期待できるんじゃないかろうかということで基準は考えておるわけでございます。
  129. 山中和

    ○山中説明員 前段の六月以前、現在指導していることを申し上げます。  厚生省の環境衛生局でございますが、一般廃棄物、産業廃棄物がございまして、一般廃棄物の海洋処分につきましては屎尿がございます。これにつきましては少なくともいま瀬戸内海、ああいうところに投棄しているのは今年度一ぱいで撤収するということで、先般現地でも関係五十四カ町村を集めましてチャーター方式による遠海投棄、屎尿処理施設ができるまでの遠海投棄を指導しております。  なお、沿岸全部ではございませんが、そのほかにも市町村がございます。この市町村に対しましても、少なくとも相当の距離ということで、これは環境庁と検討しております、海洋汚染防止法ができる前でございますけれども、そういう指導をいたしております。  それから産業廃棄物につきましては、廃棄物処理法ができまして約八カ月たったわけでございますが、都道府県知事が産業廃棄物の処理計画をつくることになっておりまして、これを強力に指導しております。処理計画をつくる前段としまして、実はそれまで産業廃棄物について手がかからなかったわけでございますが、現在、県内の産業廃棄物がどういうものがどれだけの量出るかというのを大部分の県において調査中でございます。これによりまして、これをどういう前処理をし、そしてどの部分が海へ持っていかれるかという調査をしておるわけでございますが、その策定計画についてこれを促進をいたしております。それによりまして廃棄物処理法の原則でございます陸上処理の原則を強力に進めて、万やむを得ないものを海に持っていくという指導を今後もいたしたい、こう考えております。
  130. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 先ほども申し上げましたように、前段の件につきましては海洋汚染防止法に基づく政令が定められることを待っておりますけれども、その以前におきましても、できるだけ海洋には捨てないで陸上で処理するように関係機関と連絡をとりながら業者を指導してまいりたい。それから基準が出ましたならば、施行前といえどもこの基準に照らして強力に指導する、基準後はもちろん基準に照らして厳正な取り締まりをする、かように考えております。
  131. 山原健二郎

    ○山原委員 もうちょっと時間をいただきまして、最後に水産庁松下調査研究部長がお見えになっていますから伺いたいのですが、私の先ほどからの質問の内容、お聞きくださっておると思うのですが、漁場というものはいろいろな形態があると思うのです。土佐沖、和歌山沖あるいは日本海側の漁場、それぞれ形態が違うと思うのですが、私の質問を聞いておりまして、実際に漁業を守るという立場で水産庁が考えましたときに、今度出されようとしておる五十海里といういわゆる線引き、これに対して水産庁としては、これは妥当なものであるというふうにお考えになっておるかどうか、伺っておきたいのです。
  132. 松下友成

    ○松下説明員 水産庁といたしましては、産業廃棄物は本来陸上処理さるべきが原則であるというふうに考えておるわけでございます。やむを得ず海洋投棄をする場合におきましても、漁業に与える影響を極力少なくするようにという立場に立ちまして、水産動植物の生育環境に支障を生ずるおそれのないような方法なり海域を選んで投棄するように対処すべきであるというふうに考えておるわけでございます。  ただいま先生の御質問の点でございますが、私どもといたしましては、この答申の内容というものは、水産、先ほど申しました観点から見ますと、かなりの程度盛り込まれておると考えるわけでございます。ただし、先生が御指摘になりましたように、いろいろ個々に具体的なケースになりますと、たとえば五十マイルの外でも優秀な漁場もございますし、また中でも、投棄してもあまり漁業に大きな影響のないような水域もあるわけでございます。そこら辺につきましてはさらに水産庁といたしましても、そういう漁業への影響を最小限に食いとめるという立場から十分検討いたしまして、その調査結果その他についてさらに関係省庁と十分協議してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  133. 山原健二郎

    ○山原委員 いま私が申しましたように、これは漁民にとりましては非常に重大な関心のある問題です。したがって、水産庁のほうへもおそらく漁民団体のほうから、あるいは地方自治体のほうからも要請があると思いますが、その点については実情に即した形で、各省庁と連絡をとり合って問題を処理していくという態度をぜひとも堅持していただきたいということを申し上げたいと思うのです。  最後に、通産省にお伺いしたいのですが、これも公害問題と関係をしてまいりますけれども、去る四月十六日に田中通産大臣が愛媛県の県庁に参りまして記者会見をいたしております。それが新聞に発表されましてかなりの物議をかもしておるのでありますが、それはこういう内容であります。  私も直接その場におったわけではありませんし、新聞を見る限りでありますが、「間もなく五十万トンタンカー時代になる。そのタンカーがはいれる水深四十メートル以上の良港は志布志(鹿児島)、宿毛(高知)、橘(徳島)、むつ(青森)しかない。特に宿毛湾は深さが五十メートルもあり、タンカーが瀬戸内海へはいれない時期はすぐ来る。石油はパイプラインで輸送すべきだ。パイプは長浜を経て」長浜というのは愛媛県の長浜ですが、「本四第三架橋」今治−尾道ルートです。「を渡し本州につなぐ。途中から佐田岬半島にも分け北九州に送る。工業再配置は公害を出さぬようにするので、公害を理由に反対しないでほしい。」こういう新聞発表であります。新聞に出たまま、私読み上げたわけであります。  御承知のように、この宿毛湾には伊藤忠が巨大な原油基地をつくるという問題が発表されまして、伊藤忠がすでに不動産業者を通じて土地の買収などを行ない、昨年一年間たいへんな混乱が起こったわけであります。特に漁民がこの問題について、昨年一年間漁民騒動といわれるくらい、数百名の漁民が県庁に押しかけるというような問題も起こりました。またここは、御承知のようにこの七月には国立公園に昇格をするというところでもあります。そういうところでありますので、昨年一年間かかりまして、ほぼ県民の一致した見解としては、現在のところ原油基地というものについては反対である、これは宿毛の市長、県知事もそういう意思を表明をいたしまして、問題はやや落ちついたときなんです。そのときにこういう発表がなされまして、公害を理由に反対をしないでほしい、こういう発表がなされたものですから、また大きな混乱が起こっているわけであります。しかも企業は、この通産大臣のことばをもとにしまして、非常に元気づいている。そうして、再び地元に混乱を起こすというような事態が起こりかねない現状にあるわけであります。  この点について、通産大臣おいでになるわけではありませんので、真意をここで伺うわけにはいきませんけれども、どういう意図でこういう発表が突然なされたのかということがおわかりになっておりましたら伺っておきたいのであります。  それともう一つは、本四第三架橋なるものが大体いままでもずいぶん問題になってまいりましたけれども、通産省としては一体いつごろ完成をするつもりなのか、あるいはそれができてからパイプラインを通すというわけですが、そういう構想として大体いつごろそういうものができるという判断をしておるのか。これは計画として持っておられると思いますので、伺っておきたいのです。おそらくずいぶん年月を要する問題だろうと思いますけれども、しかし、このことを基礎にして企業はまたどんどん建設を進めていくという体制に入るわけですから、これは非常に重大な問題でありますので、伺っておきたいのです。
  134. 根岸正男

    ○根岸説明員 お答え申し上げます。  大臣の御発言につきましては、私も詳細にまだ聞いておりませんけれども、御承知のとおり、瀬戸内海周辺におきまして有力なCTS候補地とされておりますのは宿毛湾とか橘湾等あるわけでございます。もちろんこれらの地点におきまして、地元の支持、御了解が得られるという前提でそういう建設計画が具体化されれば、瀬戸内海における海上の過密の緩和と、それから石油の安定供給という面から望ましいものであると考えられるというニュアンスではなかったかと思います。もちろん地元の御支持、御了承が得られて建設に当たりますとすれば、もちろん公害予防、それから防災対策等につきましても、十分事前の調査を行ないまして、地元との協調のもとに、万全の処置を講じてまいるということになると思います。  ただ、先ほども本四架橋その他にからみまして、実際に具体的計画がどのようになされているかという第二段の御質問でございますが、これは通産省といたしましても、全然勉強してないというわけではございません。一応勉強はしておりますけれども、いま申し上げましたようないろいろな候補地があるわけでございます。そういう候補地につきまして、将来の大型タンカーという面から、CTSとしての価値といいますか、そういうものの一般的な判断というような勉強をしておる段階でございまして、また本四架橋に伴って四国からパイプラインを中国まで持っていくあるいは九州まで持っていくというような具体的な案についてはまだ検討しておりません。  以上でございます。
  135. 山原健二郎

    ○山原委員 最後です。  こんなかって気ままなラッパを吹かれては迷惑千万であります。大体本四架橋の問題にしましても、現在まだ架橋の基礎工作機械の開発をしなければならぬというような状態にある時期ですね。そして大体いつかかるかわからないというような状態、しかもそれにパイプをつけるというような、ほんとうに夢ではなかろうけれども、まだ遠い将来の構想、そういうものを基礎にしてこういうことを発表され、しかも公害はないんだから反対をしないでほしい。漁民などというものは簡単に公害の問題で考えておるのではないのです。原油基地ができたときに、パイプラインができるということにおきましても、入り船、出船、入ってくる船だってあるわけです。そういう五十万トンのタンカーがあの小さな港に入ってきたときに、大体スクリューを回しただけでも海は濁ってしまうのです。そういう問題まで漁民は考えて検討した上で、昨年度の漁民騒動というものが起こるような事態が発生しておるわけですね。それに基づいて地方自治体も、それならばそういう無理はしないでおこうという話がなされておる状態なんです。しかもこれから十年、二十年かかるかわからないパイプラインの問題というものを、本四架橋という問題を、そのころになって石油なんかが五十万トンのタンカーが積んでくるような状態にあるのかどうか。すでにこの委員会においても原子力エネルギーの問題が論議されておるときに、そういう荒唐無稽に近い、しかも十分構想も練られていないような問題を、その場所場所で行き当たりばったりに発表されては住民はたまったものではないということを、私は申し上げておきたいのです。その点はまた通産大臣に対して私は場合によっては公開質問状を出したいと思っておるのでありますけれども、こういうかってなラッパを吹くことは厳に慎んでもらいたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  136. 石川次夫

    ○石川委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時十八分散会