○木内国務大臣 私が立つと少し長くしゃべるのであまりしゃべらないで
——この間も長々しゃべりましてちょっと御注意を受けたような次第でありますので、簡単に申し上げます。
どうもこのPCBの問題はやはり
政府はちょっと手おくれのような形であります。しかし、私は言いわけするわけじゃありませんけれども、このPCBというのは欧米先進諸国もずっと前から使っておるわけなんですね。にもかかわらず、どうもこれに対して問題を起こしてない。したがってその文献もなかった。ところが、カネミ油の問題でああいう急性の問題が出てきたので、これはたいへんだということで、みんなびっくりぎょうてんしてあの問題を処理したことは御案内のとおりですが、それに基づいて、急性はこうだが慢性のものもこのままほっておくことはできないだろう、これは
研究してみなくちゃならぬというので、各省、厚生省とか労働省とか農林省集まってもらって、去年のちょうどいまごろですね、この間も私長々申し上げたのですが、
研究をしたわけです。ところが、そのときはまだ、こういう問題についてはいつも早く手を打つ
アメリカさえもまだ打っていないのです。
アメリカもカネミ油のあの事件でびっくりして、そうして、そう言っちゃ悪いけれども大体こちらの資料で、この一月ばかり前、三月十八日ですか十六日ですかに初めて概算的の標準を発表したというようなわけで、急性に対してですが、それを基礎にして一般のほうについても発表したのです。そんなようなわけで、欧米諸国はあれだけ長い間使っていながらこの問題について
研究もない、文献もなかったということは、この慢性の問題というのは非常にむずかしい問題だったんだと私は想像しております。
しかし、その問題に
政府としてはもう特に
——特にと言っちゃあれですけれども、去年のいまごろ取り組んで、私どもの記録によりますと、六月にもうすでにこの三千七百余万円という金を、各省で必要なら必要な金額を申し出てくれといって、申し出られた金、合わせて三千七百万円は、これはもう出した。そうするとこういう問題は、まあ
予算のことで御案内だと思うのですけれども、緊急で、ほかに
予算がないときには、この
研究調整費のうちから、私どもの九億五千万のうちから出しますけれども、それが糸口になって、口がついたらもう次の年は各省がそれに必要な
予算を要求するのが
わが国の
予算の仕組みなんですね。私は主計
局長流に言うわけじゃありませんけれども、緊急で間に合わないときにはこの
研究調整費から出す。そうして来年度、翌年度はそれの延長、それの何倍も要るかもしれぬのは、それは各省が大蔵省に要求して取るというのがこれがさっき
調整局長が言ったように
予算の仕組みであり、要求の
方法であると思うのです。
そこで、去年すでに着手した、そのときに資料がなくて、つかめない。大体分析の
方法が確立してない、これが非常にむずかしい。この間もお話ししたように、DDT、BHC、みな有機塩素系のものである。出てくるとPCBだと思ったら実はDDTとBHCの消毒薬として、農薬として使ったものが一緒に入ってくるという場合もしばしばあるので、私はしろうとですけれども、あの数値を発表したときにちょっと首をかしげたのです。疑うわけじゃありませんけれども、ちょっとはてなと思ったくらいにむずかしい分析。分析
方法を確立しなくちゃいかぬ。分析
方法を確立するのはこれは非常にむずかしいので、私どものほうで、理化学
研究所の有機微量分析室、これは非常に権威のあるもので、権威者の本間博士もおるのですが、そこで分析するのに機械は幾らかかるか、五千万も六千万もかかるという。それはたいへんだ、そんなことなら、もう全国至るところでやるのにたいへんだから、これを簡素化しなくちゃならぬ。確立し、かつこれを簡素化しなくちゃならぬ。
それからいま
調整局長が申しましたように、どうも急性なのはわかるけれども、慢性になってくるとさっぱりわからぬ。一体どういう実態であるか、それを把握すること。またどういうメカニズムでここまできているか。すなわちこの経路ですね、これも調べなければならぬ。こういう問題も出てきた。そこに持ってきて、いまの慢性に対する
対策の問題も出てきたりして非常にむずかしい、別に言いわけじゃありませんけれども。
そんなようなわけで、世界の各国で文献がなかったのでそんなになったんですが、私は実はきのうの新聞を見て驚いたのです。もう二十三年も前にそういう報告が出ているということが新聞にあったので、これはどうもえらいことをしちゃった、そういう報告が出ているのなら、それを基礎にして当然
政府は処置を講ずべきであったと私は思う。ところが、去年集まったころは、こういう分析
方法もない、実情も把握できない、そのメカニズムもわからない、それから慢性のものに対して
対策をどうしたらいいかというのがわからない、文献もない、資料もないじゃないか、世界の各国にもあまりないじゃないかというので、そこで、そういう
項目に対して各省が分担して
調査するようになったが、さあきのうの新聞を見たら二十三年前にもそういう報告があった。私は実はその報告の内容を読んでませんから、どういう報告だか、これは
関係各省お読みになっているかもしれぬけれども、私はちょっとその報告もどういう程度に言われたのか疑問を持っているのですがね。しかし、そういう報告が出て、しかも慢性のうちでも特にそれを扱っている者が著しい被害を受けたということになってくると、その事実がわかっておったとしたらこれは私どもの所管でありますが、
政府全体としてまことに申しわけない話だと思うし、また、それをやっておった企業自体の責任も私は非常に重大だと思うのです。そこで、私はまず野村博士ですか、何とかいう人の報告、一体どういうことをやっておったかということ、どういう報告をされたか、それを見ないと、それを受けた松下電器産業ですか、それの責任もよくわからないですが、もし非常な
——われわれは、それを扱っておる者にあるなんていうことは考えなかったのです。かすかなものであるが、それは魚を通じ、野菜を通じ、その他食物を通じて、長い間に人体に蓄積するから初めてそこに害が出る、こう思っておったので、体内に吸収して被害があると思っておったのに、今度は扱っておった者に被害があるということになると、これはなかなか容易ならぬ問題で、その報告いかんによっては、私は
政府の責任も相当重大だと思うのですよ。また産業のほうも、これは世の中に対して申しわけないことだと思うのです。
そんなようなわけで、いままでわかっていなかったものですからそういうふうになったのですが、各省が全力をあげて、厚生省も通産省もみなやってもらっておるのですから、その点もひとつ買っていただきたいと思います。ただ、去年はとにかく分析
方法、それから汚染の実態を把握することさえもできなかった。しかも、いわんやそのメカニズムに至っては、これを把握することができなかったという
状態にあったので、いまになってみると多少手おくれ
——多少といってはおこられるかもしれぬ。その報告いかんによっては相当著しい手おくれだったと思うので、申しわけなく思っておるのですが、
日本がどうも一番やかましいらしいですな。しかし、こういうものを使うのは、われわれよりももっと早く欧米先進諸国は使っておったのですから、もうちょっと問題になりそうだと思うのですよ。とにかく、いま、二十三年前にそういう報告を受けていたということを聞いて、私ども驚き、かつ責任を痛感しておるわけなんですが、今後は全力を尽くして、各省と協力してやるようにしたいと思います。
ただ、
予算の面は、この間私は連合
審査会で申し上げたのですが、私どものほうが中心になってそういうことをやっている。ところが、環境庁さんがここに出てこられると、私どものほうはちょっと二次的になってしまう。そこで遠慮しながら現在しているということばを使って申しわけないのですが、そういうことばは適当であるかどうかは別として、そんなようなわけで、環境庁さんが中心になって、しかも三億五千万円の
予算を取っていられるのですから、それでできるだけやっていただいて、足らない場合には、私どものほうは九億五千万円、これも、この間も申しましたように、PCBだけで持っているのじゃないので、ほかに緊急な
研究がたくさん出てくるとそれに使わなければなりませんが、その九億五千万円のうちからできるだけは出していく。そして、なお足りなければ、こういうことこそいま近江
委員がおっしゃったように、
政府は幾らでも金を出すべきじゃないかというので、私は大蔵大臣は当然これに対しては予備費でも何でも要るだけの金は出すべきものだ、平生節約しているのはこういうときに使うためだ、私はこういうふうに理解しております。ですから、そういう
意味で、できるだけ出してもらいたいと思っております。