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1972-06-07 第68回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年六月七日(水曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 池田 清志君 理事 本名  武君    理事 美濃 政市君 理事 中川 嘉美君    理事 小平  忠君       小渕 恵三君    大石 八治君       大村 襄治君    加藤 陽三君       木野 晴夫君    佐藤 文生君       佐藤 守良君    正示啓次郎君       田中 龍夫君    谷川 和穗君       箕輪  登君    湊  徹郎君       武藤 嘉文君    森  喜朗君       山下 徳夫君    中谷 鉄也君       桑名 義治君    門司  亮君       東中 光雄君    安里積千代君  出席国務大臣         外 務 大 臣 福田 赳夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      山中 貞則君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    吉田 文剛君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         沖繩開発庁振興         局長      渥美 謙二君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 高島 益郎君  委員外出席者         沖繩開発庁総務         局経理課長   和田 善一君         外務省アメリカ         局安全保障課長 松田 慶文君         文部省初等中等         教育局地方課長 鈴木  勲君         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ————————————— 本日の会議に付した案件  沖繩及び北方問題に関する件      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。中谷鉄也君。
  3. 中谷鉄也

    中谷委員 前回、事前協議主題となる戦闘作戦行動についての政府統一見解を求めましたが、この機会にお述べいただきたいと思います。
  4. 高島益郎

    高島政府委員 お答えいたします。  先日の当委員会におきまして、中谷先生から戦闘作戦行動とは何かということについて、政府のまとまった見解を示せというお話でございましたが、私ども、過去におきまして、昭和三十五年以来国会を通じましていろいろな形で答弁してまいりましたことをまとめまして、ここに戦闘作戦行動とは何かということにつきまして、わがほうの見解を申し上げます。  これ自体は、もともと国会答弁をいたしましたのは、事前協議対象になる主題は何かという質問が大部分でございました。その関連におきまして、その一部に戦闘作戦行動とは何かということを随時答えております。そういう点をまとめまして紙にいたしました。お読みいたします。  一、 事前協議主題となる「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内施設及び区域使用」にいう「戦闘作戦行動」とは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであり、したがつて、米軍わが国施設区域から発進する際の任務態様がかかる行動のための施設区域使用に該当する場合には、米国わが国事前協議を行なう義務を有する。  二、 わが国施設区域発進基地として使用するような戦闘作戦行動の典型的なものとして考えられるのは、航空部隊による爆撃、空挺部隊の戦場への降下地上部隊上陸作戦等であるが、このような典型的なもの以外の行動については、個々行動任務態様具体的内容を考慮して判断するよりほかない。  三、 事前協議主題とされているのは「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての施設区域使用」であるから、補給移動偵察等直接戦闘に従事することを目的としない軍事行動のための施設区域使用は、事前協議対象とならない。  以上でございます。
  5. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、本日の「「戦闘作戦行動」について」の政府統一見解について若干の質疑をいたしたいと思いますが、政府統一見解にもありますように、アメリカは「わが国事前協議を行なう義務を有する。」とあります。当然のことであろうかと思いますが、だといたしますると、本日の政府統一見解は、アメリカとの了解の上になされたと見解いうふうにお伺いしてよろしいでしょうか。
  6. 高島益郎

    高島政府委員 そのように御了解いただいてけっこうでございます。
  7. 中谷鉄也

    中谷委員 私たちは、いわゆる事前協議に関する交換公文、その後国会における口頭了解というものを承知いたしておりますが、そうすると、この政府統一見解はいつアメリカとの間において了解されたものでありましょうか。
  8. 高島益郎

    高島政府委員 一昨日五日の午前でございます。
  9. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、次にお尋ねをいたしたいと思いますけれども、「直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動」これは次のように理解をしてよろしいかどうか。すなわち、本日、私は統合幕僚会議編さんにかかる統合用語教範を引用しながら疑義をただし、問題を明確にいたしたいと考えますが、「作戦行動」とは「狭義にはある目的を達成するまでの一連戦闘行動をいい、捜索攻撃防御移動機動等及びこれに必要な補給活動を含む。」とあります。「広義には軍隊が、与えられた任務達成のために遂行するあらゆる軍事行動をいう。」ということは当然のことでありますが、いわゆるこの場合の「直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動」というのは、この教範狭義理解定義解釈、これでよろしいでしょうか。
  10. 久保卓也

    久保政府委員 それでは、私が初めに申し上げまして、もし不十分であれば外務省から答弁をしていただきます。  私、いまここで外務省答弁資料をいただいたわけでありますが、この解釈と、それから自衛隊で使っております教範の中での用語から申しますると、言うまでもなく「作戦」ということばは非常に広い意味であります。狭義の場合につきましても、この「戦闘作戦行動」に比べますると、非常に広い。たとえばこここで申しまする「捜索」でありまするとか「これに必要な補給活動」のすべてがオペレーションの中に入ってございますけれども、「戦闘作戦行動」、ここにいう「直接戦闘に従事する」という場合には、「戦闘」ということばが冠せられているごとく、こちらのほうが相当範囲が狭くなっているというふうに私はこれを読んだ次第であります。
  11. 中谷鉄也

    中谷委員 そういうことでありますると、あらためて外務省お尋ねをいたしたいと思いますが、米和軍用語辞典という非常に簡単な辞典であろうかと思いまするけれども、この中に、「軍事」もしくは「作戦」ということについて「狭義では、戦闘員を敵に対抗させる行動を、兵站行動と区別している。」とあります。この場合の統一見解の「直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動」とは、このミリタリーオペレーションのうら、狭義のものをさしていることは明らかであろうかと思われるわけでありまするけれども先ほど防衛局長説明をされた統合用語教範の「作戦行動」と、そして政府統一見解の「直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動」とは、どこが区別さるべきでしょうか、あらためてお答えをいただきたいと思います。
  12. 高島益郎

    高島政府委員 私、統合用語教範におきまする「作戦行動」の意味につきましては、全く承知いたしませんので、これとの関連でどう違うかということはお答えいたしにくいのでございますが、ここで条約上言っております「戦闘作戦行動」というのは、俗に言いますと、戦闘のための作戦行動ということでございまして、作戦行動のうらの、特に戦闘目的とする作戦行動という、狭い意味に従来から日米相互間で解釈しているという点だけ申し上げたいと思います。
  13. 中谷鉄也

    中谷委員 「戦闘に従事することを目的とした軍事行動」とあるわけでありまするから、ただ単に、戦闘のみに限らないと私は思うわけです。しからば、この場合、本日の私の質問主題は「戦闘作戦行動」をお尋ねすることにありますから、条約局では、「戦闘」ということばは、用語上どのように理解をされておられるのでしょうか。コンバットはどのように理解さるべきでしょうか。
  14. 高島益郎

    高島政府委員 「戦闘」、この意味につきまして、従来、私どものほうとして国会におきましても、こういう意味であるということを申し上げたことがないのは、実は「戦闘」というのは、それ自体が非常に常識的な、もう読んで字のごとしであるという観点からだろうと思います。しいてこの場で私とっさにお答えしなければならないのは、非常に実は困るのでありまするけれども、常識的に「戦闘」と申しまするのは、やはり相手方に対しまして、殺傷等行為目的とした行動というのが、常識的な意味での「戦闘」であろうかと思います。条約上あるいは法律上の用語として、特に定義があるというものではないと思います。
  15. 中谷鉄也

    中谷委員 「戦闘に従事することを目的とした軍事行動」でありますから、はたしてしからば、この場合の「軍事行動」というのはどのように理解すべきでありましょうか。
  16. 高島益郎

    高島政府委員 「軍事行動」は、戦闘そのものをもちろん含みまするけれども戦闘行動のほかに、それに至ります過程の行動を含めて「軍事行動」と申しましたので、これは「作戦行動」と全く同じ意味で、私どもわかりやすいことばとして使ってあるだけであります。
  17. 中谷鉄也

    中谷委員 作戦行動ということばは、そういたしますとどういうふうに理解をすればよろしいのでしょうか。
  18. 高島益郎

    高島政府委員 これもあるいは軍事用語かもしれませんけれども作戦行動と申しまするのは、補給偵察移動その他すべてのものも含んだ意味での、広い軍隊行動というものを私ども作戦行動というふうに解釈いたしております。
  19. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、時間が限られておりますのに大事な質問になかなか入れませんが、作戦行動というのは、いまのお話によりますると、捜索攻撃防御移動などを含むということでありまするけれども移動という軍事用語は「戦術的任務達成のために、戦闘を予期しつつ実施する移動」すなわち戦術移動と、「一般対敵顧慮を要しないか又は少ない場合に主として管理上の便宜を考慮した手段方法によって実施する移動をいう。」とあります。すなわちこの場合、戦術移動は直接戦闘に従事する中に当然含まれる移動であろうかと思われますが、いかがでございましょうか。重ねて政府統一見解を要求したいと思います。移動偵察捜索補給心理戦機動、もう一度申し上げます。移動偵察捜索補給心理戦機動、これらのことばが、私の見るところというよりは統合用語教範との関係においては、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動である場合が当然あることは、常識的に理解できると思うのであります。  たとえば、こういう質問はこれ以上申し上げることはむだになるかもしれませんけれども偵察なる用語は「作戦又は戦闘の行なわれる区域及び敵並びに住民等に関する情報資料を獲得するために目視又は他の探知手段によって実施される各種の行動をいう。」「一般に、敵又は所在不明の味方の部隊、人員又は物件等を捜しもとめることをいう。」というふうなのが偵察一般的な常識的な定義であろうかと思うわけであります。またそこへつけ加えますならば——統合用語教範を見なくとも、私、作戦要務令歩兵操典士官候補生のときにこういうようなことは習ってまいりましたけれども……。ですから、要するに「直接戦闘に従事することを目的」とするということの中に、ある場合には移動偵察捜索補給、それから心理戦そうして機動機動部隊機動であります。これらの問題が当然含まれる場合があると思うのです。それらについてひとつ大臣、あらためて政府統一見解を承りたいと思います。  この質問主題は、要するに事前協議制度を洗い直してみようじゃないかということがいわれている。そういう場合に、いわゆる明らかに緊急発進のような、戦闘行動と全く密接不可分関係にあるもの、あるいはそれ自体戦闘作戦行動と思われるようなものとして、移動があり、偵察があり、捜索があり、補給があり、機動があるだろうと思うのです。あるいはそういうものを排除する補給があるということも私は了解をいたします。ですから補給ということは、偵察ということばがイコール直接戦闘に従事しないんだということはいえないと思う。こんな補給は入ります、こんな捜索は入ります、こういう偵察は入るのです、こういう移動は入りますということにならなければならないと思う。統一見解をせっかく求めたわけでありますから、それらのことばについて仕分けをしていただいて、あらためてアメリカとの間の了解をとっていただいて、これらの問題についての統一見解を求めていただきたいというのが私の希望であり、事前協議制度を掘り下げる意味において意味のないことでないと思います。この点についての大臣の御所見を承りたい。
  20. 福田赳夫

    福田国務大臣 補給にいたしましてもあるいは偵察にいたしましても、これが戦闘作戦行動密接不可分関係にあるという場合におきましては、安保条約第六条に基づく事前協議対象となる、こういうふうに考えております。  たとえば補給について言いますれば、落下傘降下部隊降下して戦闘に従事する、それを上空から弾薬等の武器を補給する、これは補給行為の一面を持らますけれども戦闘作戦行動一環である、こういうふうに見ます。また偵察行動にいたしましても、相手の砲火をおかしあるいは偵察機といえども爆弾を塔載することが多々あるわけでありますから、そういうような形において偵察かたがた爆弾を投下するというような場合、これは戦闘作戦行動一環である、こういうふうに理解をいたします。要は、偵察なりあるいは補給なりその他の行動、これが戦闘作戦行動一環として見られる態様のものであるかどうか、それによって理解すべきものである、かように考えます。
  21. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、統合用語教範定義は、いま大臣の御答弁と一致すると思うのです。重ねて読み上げますから、少しお聞きをいただきたいと思います。  「ある目的」、「ある目的」というのは、それが防御戦であろうが、決戦であろうが、陽動作戦であろうが、そういうふうな「ある目的」ですね。軍隊の持っている戦闘のある目的、そういうものを「達成するまでの一連戦闘行動をいい、捜索攻撃防御移動機動等及びこれに必要な」、「これに必要な」というのは大臣先ほどおっしゃった密接不可分な、こういう意味だと私は理解をいたします。従来の政府答弁もそのとおりだと思う。「補給活動を含む。」こうあるわけです。そういたしますと、話をもとに戻しますけれども政府統一見解「直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動」というのは、いま私が申し上げたことと表現は違いますけれども、その定義範囲は一致する、こういうふうに私は理解いたしますが、いかがでございましょうか。そしてなお、先ほどその点についての若干の御答弁の漏れがありました。これらの点についての統一見解をあらためてお願いをする点についてのお答えをいただきたい。
  22. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は統合用語教範というものを見ておりませんから、それと私が申し上げたことが一致しておるのかおらぬのか、そういうことについてはここでお答えすると少し軽率なことになるかもしれませんから、その他の問題とともに、政府見解としてお答えできるようにいたしたいと思います。  それから前段の御質問ですね。あれは非常にむずかしくて、私にもなかなか理解できない面もありますから、まことに申しわけございませんけれども、ちょっとメモにでもしていただきますれば、私どもそれにお答えを申し上げることができると思います。
  23. 中谷鉄也

    中谷委員 ではあらためて、戦闘作戦行動というのが自明のことのように思われていて、そうしてそれによって生起するもろもろのことがあらゆる形で論議されたけれども事前協議制度を徹底的に掘り下げようというなら、戦闘作戦行動とは何か、配備とは一体何か、装備とは何かというふうな問題を、ひとつ機会をとらえて一項目ずつやってみようというのが私の考え方でありますので、いまの点について、私がお願いした点についてはあらためて統一見解をお願いいたしたい。  そこで、次に、昨日外務委員会等で若干の論議がされたようでありますけれども事前協議を行なう義務アメリカにあります。そこでお尋ねをいたしたいのでありますけれども通常の場合、どのようなかっこうで米軍わが国施設区域から発進をする、そういうことがどんな場合どういうプロセスでということを考えてみますと、まず作戦準備ということがあるだろうと思われます。用語を正確に申し上げたいと思いますけれども、「作戦任務を与えられた部隊等が、その任務達成のために必要な事前処置を行なうことをいう。また「武力戦準備」と同意義に用いることがある。」要するに作戦任務がそこで与えられている、そこでそういう作戦任務が与えられて作戦準備というものが行なわれる、そうしてその後作戦行動というものがある、一応そういう場合を設例をいたします。緊急発進等の場合を一応除きます。そういう場合に、事前協議の時期は、作戦準備任務が与えられたその時期に、そして作戦行動任務命令が与えられた、そうして発進をする、一体、作戦準備任務が与えられたその段階において、すなわち作戦準備任務が与えられる、命令が発せられて作戦準備に着手をする、その間において事前協議対象になり得るのか、すべきなのか、それとも作戦準備作戦行動との間において事前協議が行なわれるのか、事前協議の時期はいつなのか、多くの場合が設例として考えられると思うのでありますけれども義務である事前協議の時期いかん。事前協議ですから前ですよということはわかります。いつがいわゆる平和を守る歯どめになるのかという点、事前協議の時期についてお尋ねをいたしたいと思います。いつ行なわれるのが事前協議アメリカとしての義務を尽くすことになるのか、日本政府はどのような時期を望むのか、これらについてアメリカとの間の予解はありますか、お尋ねいたしたい。
  24. 吉野文六

    吉野政府委員 御承知のとおり、事前協議はいままでわれわれも受けたことがございませんから、したがってそれがいつ行なわれるかということについての指針は何らございませんが、しかしながら、われわれの想像するところによりますと、要するに日本基地から直接戦闘作戦行動を起こすということであるわけでございますから、最小限度その行動を起こす以前であれば足りるわけなんですが、しかしながら政治的に考えますと、日本基地をその目的のために使うということは、日米政府にとりまして非常に重大な決意が要るわけでございます。したがって、このようなことにつきまして、われわれに事前協議をかけてくる米国政府の態度といたしましては、作戦準備とかいうような技術的な行動の前に、そもそも日本基地を使って作戦行動を行なってよろしいかどうかという、もっと政治的な判断が先行すべきだろうと思いますし、また、それについて日本側の同意を前もって求めておかなければいかぬということになろうと思いますから、これらの行動は技術的には併行して行なわれる可能性はございますが、しかしながら、われわれに対して相談をしかけてくる時期というものは、政治的な考慮から、したがって時間的にもそういう行動を起こす相当前からわがほうにいってくるのじゃないか、このようにわれわれは想像しておる次第でございます。
  25. 中谷鉄也

    中谷委員 作戦準備事前であるべきだと思われる、そうすると、武力戦準備というのが作戦準備の以前にありますが、そういう関係お答えいただけますか。
  26. 吉野文六

    吉野政府委員 こういうことは、実は米側と話をいたしましても、こういう定義の問題も含めて技術的な問題を話しましても、彼らはそういうような技術的に問題を詰めてくることにこの問題はなじまないということで、先方はなかなかこういうような問題に深入りしてわれわれと話し合うことを拒んでおります。
  27. 中谷鉄也

    中谷委員 念のために条約局長お尋ねをいたしておきたいと思いますけれども欺騙行動とか——欺騙行動の中には陽動陽攻というのがございますね。欺騙行動というのは、「一般に敵にわが配置、能力及び企図を誤認させ、これにわが欲する行動をとらせるように企図した戦術行動をいう。」そうしてその陽動の中には、「欺騙行動の一方法であって、敵の判断を誤らせるために行なうみせかけの行動をいう。」こういうふうにあります。これらのいわゆる陽動行動というのは、非常に重要な意味を持っていると思います。戦闘あるいは戦略において重要な意味を持っておるこのような陽動行動は、事前協議対象たる直接戦闘行動に当たりますかどうか、いかがでしょうか。これも政府統一見解をいただけますかどうか、お答えをいただきたい。
  28. 高島益郎

    高島政府委員 私、そういう軍事的な用語に全くなじみませんので、的確なお答えをいたしかねる次第でございますけれども、要するに、事前協議対象になる事態と申しますのは、わが国施設区域から発進される戦闘作戦行動ということでございますので、実際に目的といたします戦闘行為そのものと、わが国施設区域との関連性が非常に直接的である場合ということでございますので、そういう観点から、実態に即して判断するというより以外にどうも方法がないように思います。私、全く先生の御質問お答えできないのが残念でございますけれども陽動行動というのがどういうことであるか、また、それがはたして戦闘作戦行動の一態様になるのかという点については、私としてはお答えいたしかねます。
  29. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで次に、以上の質問の経過から次のようなことを指摘せざるを得ません。すなわち、統一見解の第三項、事前協議主題とされているのは中略——であるから、補給移動偵察等直接戦闘に従事することを目的としない軍事行動のための施設区域使用は、事前協議対象とならない。とあるのは、文言上きわめて不正確な表現ではなかろうかと思うのであります。大臣答弁のとおり、六〇年安保以来の政府答弁以来、中間なもの、密接不可分なものということはすでに何べんか議論をされているわけでありまするから、この統一見解第三項は、少なくとも「補給移動偵察等のうち」と、「のうち」と入れるか、あるいはまた「直接戦闘に従事することを目的としない補給移動偵察等」と入れるか、そうでなければ、補給移動偵察がすべて排除される趣旨にすなおに読めばこの第三項は読めます。これは、私は統一見解としてははなはだ不正確な文章だと思いますが、「のうち」と入れて読んでよろしいか、入れるべきであると思いますが、いかがでございましょうか。
  30. 松田慶文

    松田説明員 第三項で「補給移動偵察等直接戦闘に従事することを目的としない軍事行動」と申しましたのは、それに何らの注釈もつけておりませんので、通常の概念における、ことばをかえれば、一般的な意味における純粋ないしは通常意味での補給移動偵察等ということを念頭に入れて、このように注釈なしで書いた次第でございます。  その関連で言申し上げさせていただきたいのは、前段の、戦闘作戦行動の典型的な例はこのようなものである、しかし、そのうちであると観念されることのあり得べき典型的なものは、個々具体的内容を考慮して判断するということで、先生が御指摘の三項の文は、私どもは二項後段の文も含めて考えた次第です。
  31. 中谷鉄也

    中谷委員 ですから三項の文章は、二項との関連においても、文章表現としては「直接戦闘に従事することを目的としない補給移動偵察等」と改めるか、「通常補給移動偵察等」と、あるいはまた私が冒頭に申しましたように「補給移動偵察等のうち」と改めるか、でなければ、いまおっしゃったような説明があったとしても、一項、二項、三項の中からすべての補給を排除する意味ではない、すべての移動を排除する意味ではない、すべての偵察を排除する意味ではないということはもうすでに明らかなんですから、この文章はひとつこの機会に、せっかくの政府統一見解でありますから、この場所ですでにもう明らかなことですから、「のうち」とか、これは文章を逆にしますとかということで、ひとつお答えいただきたい。
  32. 高島益郎

    高島政府委員 お答えします。  先ほど安保課長から説明のあったとおり、ここの意味は「通常補給移動偵察等」という意味でございます。
  33. 中谷鉄也

    中谷委員 「通常の人」と入れられますか。
  34. 高島益郎

    高島政府委員 けっこうでございます。
  35. 中谷鉄也

    中谷委員 では、統一見解の三項の「補給」の上に、「通常の」ということを入れることで統一見解にしていただきたいと思います。それは一昨年アメリカ了解されたということでありますけれども統一見解了解は「通常の」と入れるということについては、一体どういう了解になるのでしょうかというふうなことをちょっと言いたくなってくる。要するに、あたりまえなことかもしれませんけれども、そういう微細な点、しかもそれが非常に重要な点、それがやはりないということ。私はもう同じことを何べんも言いませんけれども、随時協議を何べんもやりなさい、あるいは話し合いをいたしなさいということを野党の諸君が質問をしている意味も、こういう点にあるのではないかと思うわけであります。  そこで、偵察そのものについての定義は先ほど申しました。そういたしますと、大臣が内閣委員会で大出委員の質問についてお答えになって、そのままに、若干中途半端になっておるように私伺っているのですけれども、RC135、EC135がB52に先行していわゆる偵察をする、これは一体直接戦闘に従事するということを目的とした軍事行動に当たるというふうに、先ほど私が引用いたしました偵察定義からいいまして、思われると考えられますが、御所見はいかがでございましょうか。
  36. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは先ほども申しましたが、偵察行動の実態がどういうものであるかということによって判断さるべき問題である、こういうふうに考えます。
  37. 中谷鉄也

    中谷委員 時間が参りましたのでたいへん残念ですけれども そうするとRC135、EC135あるいはまた岩国から移動いたしたといわれているF4、それらの実態についてはどういうことに相なっているのか。この二つについてかなり各委員会において論議が集中をいたしました。F4とそして私が申し上げたRC135、EC135、この実態はどのようなものであって、どのような事前協議とのかかわり合い、戦闘作戦行動とのかかわり合いにおいてはいかなることに相なっているのか、この点について、私の時間もう超過しましたから、ちょっと簡単にお答えください。
  38. 松田慶文

    松田説明員 御質問のRC135及びEC135につきましては、先般国会において問題の提起がありましたあと、米側に問いただしました上、かつ嘉手納におもむきまして調査をいたしました結果、これは全くB52の戦略行動とは間接的にも直接的にも一切のかかわりを持たない、通常偵察機活動であることを確認をしております。  なお、この問題については、先般内閣委員会において大出先生に対し御答弁をいたした次第でございます。
  39. 中谷鉄也

    中谷委員 これで質問を終わりますが、一体通常偵察行動がどこのどの区域に対する偵察なのかという問題がまだ残りますが、時間が参りましたので終わりたいと思います。先ほどの統一見解については、もう国会の会期も終わりのようでありますから、あとは外務か内閣のほうでお願いいたしたいと思いますが、ひとつ四、五日程度でまとめていただきたい、よろしゅうございますか。——では、終わります。
  40. 床次徳二

    床次委員長 東中光雄君。
  41. 東中光雄

    ○東中委員 B52について、先日の新聞によりますと、グアム島付近に台風が発生して、グアム島に近づく危険がある。しかしタイやフィリピンの米空軍基地は、戦闘爆撃機の戦闘作戦行動補給活動が立て込んでおり、百機近いB52を受け入れることは困難であるから、沖繩へ避難という形で来る可能性があるということが報道されておるわけでありますが、そういう動きはあるのですか、いかがですか。
  42. 吉野文六

    吉野政府委員 われわれも同様なニュースを最初NHKから聞きまして米側に照会したところ、当面そのような状況はない、すなわちB52が台風避難のために日本基地に避難してくる、こういうような状況はない、こういうのが先方の返答でございました。
  43. 東中光雄

    ○東中委員 北爆に使うB52を二百機ぐらい増強をするという国務省筋の話が出ておるということでありますが、その点はいかがですか。
  44. 吉野文六

    吉野政府委員 われわれは、北爆を強化するためにB52をアメリカ側が方々の基地において増強している事実は聞いておりますが、何機がどこにというようなことは、一切通報を得ていませんし、またこれらについては、先方は答えておりません。
  45. 東中光雄

    ○東中委員 タイのナムフォン基地を整備し、再開するということ、そういう形で増強するということのようでありますけれども、いまその空港を整備しなければいかぬ。沖繩の嘉手納なら、そのまま使えるという関係があるわけですが、そういう動きはないのですか。ナムフォン基地はまだそのままでは使えない。第七番目の基地として整備するのだというふうなことがいわれておりますが、北爆強化のための増強として沖繩を使用する、そういう動きはないのかどうか、もう一回はっきりとお聞きしておきたい。
  46. 松田慶文

    松田説明員 六月二日、米国防省の担当官が記者会見で、ただいま御指摘のナムフォンの基地を再開する計画がある旨、言及した経緯はございます。
  47. 東中光雄

    ○東中委員 増強計画があって、そして再開といっても、これは基地を整備しなければいかぬわけですが、沖繩へB52が北爆強化のためにやってくる、あるいは台風避難という形でやってくるというふうな申し入れなり何なりがあった場合に、外務大臣、それははっきりと拒否されるということをお聞きしておいてよろしいですか。
  48. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも仮定の場合についてのお尋ねで、まことにお答えいたしにくいのですが、先般B52三機が沖繩に緊急着陸をいたしたわけなんです。そのとき、緊急着陸ですから、人道上というような見地から見ましてもやむを得ない、こういうふうに考えたのですが、その際、緊急の場合といえども、しばしばこういうことがないように、沖繩県民の感情、そういうものも考慮してほしいということを申し入れておるわけなんですから、そういうことにつきましては、アメリカは深い理解を持っておる、こういうふうに信じております。  ただ、それにもかかわらず緊急着陸だというような際どうするか。これは非常にむずかしい判断の問題です。人道上これを拒否するというふうなこともなかなかむずかしいことじゃないか、そういうふうに考えますが、アメリカ日本の事情はよく承知しておりますから、そのとおりの努力をしてくれる、こういうふうに期待をいたしております。
  49. 東中光雄

    ○東中委員 どうも、ニュアンスが少し変わったように思うのですけれども、B52が緊急着陸といえども反復するようなことはないようにということを厳重に申し入れて、それをアメリカ側が了解したというふうに前は答弁されておったように思うのですが、いまはどうもそうでもないように思うのですけれども、B52が入ってくるということになった場合に、法的にそれを拒否することができるのか、できないのか。この点はいかがでしょう。
  50. 福田赳夫

    福田国務大臣 B52が緊急着陸にせいあるいは移駐にせい、そういう申し入れがある。こういう際に、法的にはこれを拒否する立場にありません。ただ、沖繩からベトナムへ向けて直接出撃をするということについては、事前協議対象となる。わが国の方針といたしましては、そういう事前協議の申し入れがありますれば、その申し入れに対しましては応諾を与えない、こういう方針でございます。  それから、何かニュアンスが変わったという話でありますが、ニュアンスは変わっておりませんから、そのとおりに御理解願います。
  51. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、B52が台風避難その他、いわゆる人道的といま言われたわけですが、軍事行動で人道的というのも、どうも私あまり了解できないのですが、いずれにしましても、緊急避難あるいは緊急着陸あるいは台風避難、いろいろ言い方があるようでありますけれども、そういうことで反復して入ってくる場合に、それはやめてくれという申し入れを前回のあの三機のときにはやられた。それに対して、アメリカ側は日本側の申し入れを了解したということであるのか。深い理解をしておるものと確信しておる、こういうふうに言われたわけで、ここがニュアンスが違うということなんですが、アメリカ側は了解をしたということになっておるのか、了解しておるとこっちが確信しておるということなのか、その点はどうなんでございましょう。
  52. 福田赳夫

    福田国務大臣 二つの場合に分けて考えてもらいたいのです。緊急着陸、これはやむを得ないことと思うが、こういうことが反復されますと、沖繩県民の感情等から見ましてわがほうとしては迷惑です、ですから極力そういう事態のないようにしてもらいたい。しかし、アメリカ側が気をつかいましても緊急着陸というようなことがあるかもしれません。そういう際に、これを拒否するというわけにはいかぬケースであろう、こういうふうに思いますが、アメリカは、そういう緊急着陸というようなことのないような配意を十分いたす、こういうふうに私は確信をいたしております。  それから第二の問題は、緊急着陸ではなく部隊の移駐なんです。部隊の移駐については、私どもとしてはかたくお断わりをいたしたい、こういうことを申し入れておるわけでありまして、これにつきましては、アメリカわが国の事情を了としておる、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  53. 東中光雄

    ○東中委員 前回というのは施政権返還の前でありますけれども、B52が沖繩からベトナム爆撃に連日出て行ったあの当初も、台風避難ということで来ておるわけであります。だから、台風避難ということで、いわゆる緊急着陸ということで入ってきて、そしてそれが移駐になってしまうという過去の経緯があるわけであります。移駐については、安保条約上の義務としては承認をせざるを得ない。しかし、申し入れをして了としておる、こういま言われたわけですが、安保条約上はアメリカは入ってくる権利を持っており、日本はそれを容認する義務を負うておるけれども、移駐を拒否するということを厳重に申し入れて、了解した。B52については、そういう点では安保条約上の権利を、文書でやるとかなんとかいうことじゃありませんけれども、個別の了解で移駐しないということが——米側は了としておると言われた内容ですけれども了解事項になっておるのかおらないのか。
  54. 福田赳夫

    福田国務大臣 私の申し上げたことでおわかりと思いますが、緊急着陸、これは反復しないようにアメリカは配意すると思います。しかし、これは緊急着陸ですから、ない、そういう保証はないわけであります。万一という場合があるかもしれぬ。移駐については、私ども厳にこれを抑制されるように要請しております。私は移駐ということはないと思います。しかし、いずれの場合にいたしましても、特に前の緊急着陸の場合にいたしましても、わが国基地からベトナムに戦闘作戦行動のために発進するということはありません。もし、それで事前協議の要請を受けましても、わが国はこれに対して応諾を与えません、こういうことを申し上げておるわけです。
  55. 東中光雄

    ○東中委員 結局、事前協議についての立場というのは、これははっきり明確に言われておるわけですが、移駐についての立場というのは必ずしも明確ではない。了としておるというふうに確信をしておると、こういうふうに言われている。非常にあいまいもことしておるという感じを私、受けるわけですが、時間がありませんので次の問題に移ります。  前回、内閣委員会で那覇空港のことについてお聞きしたわけですが、ここにおるP3がどういう任務でおるのか。並びに、P3以外の海軍機が数十機おるということであったわけですが、防衛局長ひとつ内容を明らかにしていただきたい。
  56. 久保卓也

    久保政府委員 P3の任務は、沖繩周辺、したがいまして東シナ海それからそれをさらに北に上がっての海域についての哨戒をやっているということであると思います。  それからP3以外の各種の飛行機が二、三十機おりますが、この点についてはいわゆる雑用機という程度のものでありまして、格別特に任務を持っているというふうに私、思いません。常時どういうような任務をやっておるか、これはわかっておりません。
  57. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、哨戒行動というのは直接戦闘作戦行動であるかないかは別として、軍事行動であり、問題によっては、それはすぐ何か激突すれば、哨戒行動をやっているわけですから、激突すれば戦闘作戦行動にも変わっていく。そういう性質を持っておるんではありませんか。
  58. 久保卓也

    久保政府委員 一般に哨戒行動そのものは戦闘作戦行動ではございません。ただし、たとえば何らかの理由でP3が攻撃を受けて対応の射撃をするというようなことになれば、これは戦闘作戦行動でありましょうし、かりにまた、何らかの理由でP3が潜水艦なり海上の艦艇を攻撃する命令を受けた場合には、これはやはり戦闘作戦行動になろうと思いますが、通常のわれわれの了承しておる範囲では、海上の艦艇、海中の潜水艦の哨戒、つまり海中、海上の艦艇の動きを見ている、偵察をしているという任務であると承知いたしております。
  59. 東中光雄

    ○東中委員 ということは、単なる連絡、修理というために入ってくるのではなくて、明らかに哨戒行動という一つの軍事行動で、場合によってはそこから発展をして直接戦闘作戦行動にも変わる可能性を持っている。蓋然性があるかどうかは別としても、任務可能性は持っている。そういう意味で、連絡あるいは補修のための飛行機の発着というものとは性質がだいぶ違うと思うのですが、そうじゃございませんか。
  60. 久保卓也

    久保政府委員 私が戦闘作戦行動に入り得る可能性を示唆いたしましたのは、これは全く仮定の話でありまして、たとえばいま申し上げたように、P3が攻撃を受けた場合でありますから、これはどのような飛行機でも攻撃を受ける可能性という意味ではあり得るかもしれません。その場合の自衛行動というものがあり得るということを申したのでありまするし、たとえば艦艇を攻撃するという場合には、これはその艦艇の所属する国と何らかの理由で開戦が行なわれる、開戦、つまり戦争行為が行なわれたその一環としてそういう行動を行なうことがあれば、それは戦闘作戦行動であるということを申し上げただけで、現実のアメリカのP3の行動は、そういった戦闘作戦行動に入ることは予想できません。可能性としてあげましたのは、いまのような仮定の場合であります。したがいまして、通常補給一般の修理といったようなものとやや性格は異にするかもしれませんけれども戦闘作戦行動に入らないということは同様であろうと思います。
  61. 東中光雄

    ○東中委員 一般の連絡、補修行為とは、防衛局長のおことばによると、やや性格を——ややがついておりますけれども、性格を異にするということを言われておる、わけですが、地位協定二条4項(b)のあの統一見解、四項目ないし五項目ありましたが、従来の補給、連絡のための出入りに使うという条項とはやはり性格がまるっきり違うわけであります。そういう点で、今度の那覇の二4(b)のいわゆる逆共同使用については、これは非常に新しい、この四月一日から始められた板付の共同使用も、二4(b)で同じような傾向を持っておりますけれども、那覇の場合は特に日本側のタワーによる航空管制のもとで、米軍が哨戒行動軍事行動をとるということを認めるという新しいタイプの二4(b)の協定が結ばれた、こう思うのですが、その点は重大な変化だと思います。この前内閣委員会で論議をしましたので、これは性格が違うということをはっきりとお認めになりますか。外務省、どうでしょう。
  62. 吉野文六

    吉野政府委員 P3の飛行機の行動が、たと、えば修理のために飛行機が飛んでくるとか、補給のために飛行機が飛んでくるというのと違うという意味では、多少そこにニュアンスの違いがあるような気もいたしますが、いずれにせよ、ともに平和的な、普通の平時において軍隊の行なっている行動一環でございまして、われわれとしては、特に質的にP3の行動が、たとえば板付に入ってくる補給のための飛行機の行動と違うという実質は何ら認めることができないと思います。
  63. 東中光雄

    ○東中委員 時間がありませんので全然別の問題になりますが、一点だけ外務大臣にお聞きしておきたいのですが、沖繩の施政権が返還されて、沖繩の空がいまなおアメリカの管理に全部ゆだねられている。しかも米軍がいわゆる進入管制もあるいは航路管制も全部やっているだけではなくて、沖繩の一部である与那国さらに西表、この地域は米軍の管理ではなくて、台北の管理になっています。空の主権というのは領域の上空についてはそれぞれの国が排他的な主権を持っておるというのは、ICAO条約の第一条にも書いてあるとおり、当然のことであります。いまなお米軍が管理をし、また台北のFIRの中に入っておるという状況、これは外務省としては、主権にかかわる重要な問題ですが、まだそのままでおられるつもりなのか、その点お聞きしておきたい。
  64. 福田赳夫

    福田国務大臣 空中の管制につきましては、ただいま米軍が沖繩に駐留をしておる、ことに航空部隊が多い、こういう状態ですから、いずれか一方に管制を統一する、こういう必要があるわけです。これがまちまちであるというような状態ですと、航空の安全に支障がある、こういうふうに考えます。そこでいまとにかくアメリカにおいて実際上の技術だとかそういう施設を持っておるわけですから、それにやってもらう。しかし、なるべく早くわが国の航空管制に全部移したい、そういうふうに考えておりますが、さしあたりは進入管制、これから始める。これはそう手間はかからぬと思いますが、それから始めまして、早く全部日本で空の管理をする、こういうふうにいたしたい、そういう考えであります。
  65. 東中光雄

    ○東中委員 アメリカ側と言われましたが、台北のFIRに入っておるところもあります。それから小笠原はいまだにグアムのFIRの中に入っています。あのICAOの条約でも、排他的な主権にかかわる問題だ。領域の上の空というのはそういうものだということを加盟各国は承認したというふうに、これはもう大原則であります。ところが、日本の領土である小笠原がまだ、米軍といったって沖繩の米軍じゃなくて、グアムの米軍、グアムのFIRの中に入っている。特に沖繩の一部が、いま外務大臣の言われたように統一してやらなければいけないということであったら、なぜ与那国や西表が台北のFIRの中に入っているのか。こういう状態がそのまま置かれているというのはこれは全く従属的なというか——しかも台北というんですから、どうされているんですか。主権にかかわる非常に重要な問題でありますが、これはそのまま、問題にされないままで済んできた、こういうことなんでしょうか。
  66. 松田慶文

    松田説明員 御説明申し上げます。  FIR、すなわち飛行情報区の区域の設定は、御指摘のとおりICAO条約によりまして、原則として主権の範囲を基礎とするということになっておりますが、他方、航空交通の安全を確保するという見地から、技術的な調整を加えることも現実問題として行なわれており、たとえばヨーロッパの諸国においては、国境と必ずしも一致しないFIRが結ばれておる現状がございます。わが国の場合、御指摘のとおり、小笠原、硫黄島、鳥島等はグアムFIRに入っておりますが、日本といたしましては、わが国の航空管制能力等の向上に従い、この辺のFIRの境界を再調整するということで、目下検討を続けておると承知しております。なお、西表、与那国の件につきましては、台北と沖繩間の距離、与那国の位置、航空機が台北を出発して、沖繩に向かいます所用時間等を技術的に検討いたしまして、領土、領海の範囲といささか食い違いますけれども、むしろこの際は航空の安全を確保するという見地を優先いたしまして、現状のFIRの魔界が定まっていると承知しておりまして、この点につきましては、運輸省では従来より検討を加えておると聞いております。
  67. 東中光雄

    ○東中委員 質問を終わりますが、いま安保課長が原則とするというようなことを言われましたが、ICAO条約第条では「締約国は、各国がその領域上の空間において完全且つ排他的な主権を有することを承認する。」大原則ですよ。例外がいろいろありますというような原則じゃないですよ。そうして、いまの台北のFIRの中に入っているというようなことは、これは何でもないようにお考えになっているとしたら、これはもう日本外務省、完全かつ排他的な主権を持っておるという、そういう原則をきわめて簡単にやっておられる。ほかの北方関係のFIRの関係というのは非常にこまかく領域を分けてやっています。ところが、台湾だろうが、グアムだろうが、米軍だろうが、日本だろうが、みなごっちゃにして、きわめて簡単にこういうものはやられておる。これは早急に処置さるべきものだ、こう思うのですが、外相の所見をお聞きして質問を終わりたいと思います。
  68. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も空の専門的な知識はありませんで、的確にはお答えいたしかねますが、気持ちといたしましては、なるべくすみやかにわが国の空の管理体制を整備いたしまして、そうしてわが国が、わが国全域の空の管理の体制をとるというふうにいたしたい、さように存じます。ただ、技術上の問題ですから、管理体制の進んだ国にまかせるというようなことがありましても、これが私ども主権の問題として論ずる、そういうことはいかがかとも思いまするけれども、しかし、なるべくわが国の領空はわが国が管理することが妥当である、こういうふうに思いますので、さような方向で精一ぱい努力をいたしたい、かように考えます。
  69. 東中光雄

    ○東中委員 質問を終わります。ただ、主権の問題というのは条約にはっきり「主権を有することを承認する。」という、わざわざそういう条約になっているわけですよ。台北のほうが技術的に進んでおるというふうにまさかお考えになっていないと思うのですよ。それは日本国が空の管制が技術的に十分できなくて、あるいは不十分であって、台北に一部まかしている、いわばこんな屈辱的なことは私はないと思うのです。早急に処置されることを強く要求して終わります。
  70. 床次徳二

    床次委員長 中川嘉美君。
  71. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 まず北方領土のことにつきまして外務大臣に伺いたいと思いますが、今回のイシコフ漁業相の来日、これは日本政府の招きによって実現をしたというふうに出ておりますが、政府としていかなる意図をもって同漁業相を招いたか。単に儀礼的なものであるか、それとも何かそこに具体的な実務上の問題というものが存在しておったか、この点を伺いたいと思います。
  72. 福田赳夫

    福田国務大臣 端的に申し上げますと、イシコフ漁業相が多年わが国との間に漁業交渉の責任者として当たってきておられる。そこで、この方がわが国に対しまして、いろいろな面において、議論もいたしましたが、ずいぶん協力もしてくれた。そういうお方でありますので、この際謝意も表し、また今後の御協力もお願いをしたい、そういうことで、まあ親善的な意味においてお招きをいたしました、こういうことでございます。
  73. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、日ソ平和条約の下交渉について、日本としてイシコフ漁業相とこの機会に話し合いをする予定を持っておられるか。少なくとも、日本政府の意図するところをソ連の本国に伝達を依頼するというような、そういうような考えを持っておられるかどうか、この辺はどうでしょうか。
  74. 福田赳夫

    福田国務大臣 漁業関係の話し合いというか、懇談ぐらいのことはありましょうが、平和条約交渉あるいは領土問題、そういうものにつきましては話し合いはいたしませんです。
  75. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 たとえば先日の当委員会におきまして、北方領土の問題について大臣が御答弁された中で、自衛隊を駐留させないとか、あるいはまた、日米安保を適用させるつもりはないという領土に関する御答弁がありましたけれども、すなわち、非武装化の条件というふうに言ったほうがいいかと思いますが、こういった非武装化の条件を持ち出すという形で、日本は返還をしてほしいという要請、これはもちろん一般論からすればということですが、こういったことも交渉の一つの手段である、こう思いますけれども、こういうことに対する大臣の考えはどうか。
  76. 福田赳夫

    福田国務大臣 日ソ平和条約交渉に臨むわが国の方針は、国後、択捉以南の北方諸島は本来わが国の固有の領土である、いまソビエトがこれを占拠しておる、これは不法の占拠である、こういうたてまえでありますので、こういう条件をつけますから返してくださいというようなことは一切いたしませんです。これはわが国の固有の領土であるがゆえに、当然返還せられるべきものである、そういうたてまえでございます。
  77. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私としても一般論としてお聞きしたまでで、政府の考え方としてここで承っておきたいと思います。  領土問題について、ソ連は実際何らかの態度を変更したということを政府として何か感知しておられるか。すなわち何らかの妥協の余地を示してきたというようなものを感知されたかどうか、依然として解決済みなのか、この辺ですが、そのうちのどちらであるかという問題、ソ連側の態度に領土問題について幾らかでも変更を感じていれば、率直に承りたいと思います。
  78. 福田赳夫

    福田国務大臣 ソビエトロシアは、従来北方領土問題につきましては、解決済みであるという主張で一貫をしてまいったわけです。ところが、今回は平和条約交渉に応じましょうということになってきた。平和条約交渉といえば何であるかといえば、これは領土交渉でございますが、領土交渉の実体であるところの平和条約交渉に入りましょう、こういうこと、またこの問題はすでに解決済みであるという従来の表現を用いないこと等から見て、北方領土問題に対しまするところのソビエトロシアの態度には微妙な変化が出てきておる、こういうふうな認識でございます。
  79. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、この北方領土問題を二段階に分けまして、第一段階においては日ソ平和条約を締結をして、そして歯舞、色丹を返還する、そして第二段階として平和条約の締結の後に、たとえば五年ないし十年に国後、択捉を返還するというようなことが一部にいわれているわけです。政府は、そういう方法もはたしてあり得るというふうに受け取っておられるかどうか、この辺についてお聞きしたいと思います。
  80. 福田赳夫

    福田国務大臣 二段方式、つまり歯舞、色丹は直ちに引き渡す、国後択捉、これは将来の問題にするというようなことを言われる向きもあります。そういうことでどうだというようなことを言う人が一部にありますが、私どもはそうは考えておりません。あくまでも平和条約締結の前提は国後、択捉以南の諸島がわが日本に返還される、その上で初めて平和条約を締結する、こういう考んであります。
  81. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 これはせんだっての予算委員会でも、たしか大臣がこのような意味の、ただいまおっしゃったような答弁があったと思います。念のために一応伺ったわけであります。  次に沖繩のほうに関してちょっと触れてみたいと思います。沖繩問題、昨年の十二月の九日の衆議院沖特、内閣、地行、大蔵委員会連合審査会提出資料ですね。これを見ますと、沖繩国会において野党側が、核の撤去費七千万ドルは非常に多過ぎるんだというような質問をしたわけですが、この野党の質問に対して、この資料の中には「米国が沖繩の基地に投資したばく大な軍事資産は将来施設区域を返還する際に無償で置いてゆくことになること等の事情もあり、米側からは多額の支払要求があったのであるが、米側と種種折衝の結果、右の核抜き返還の米側義務に対応するものを含め七千万ドル程度の支払につき妥結をみたものである。」こう書いてあるわけです。それで、沖繩にある軍事基地日本側に返還する場合には、確かに無償でわが国に返還するということになっているのかどうか、アメリカとはっきりと合意ができているかどうかという点、これを伺いたいと思います。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 これははっきりいたしております。
  83. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 どのような形ではっきりされておるか、この点どうですか。
  84. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは地位協定によってはっきりするわけなんですが、地位協定がそのまま沖繩に適用されるという結果そういうふうになる。今回の沖繩返還交渉において、アメリカは投下資産、これは非常にばく大なものらしいです。アメリカ側のいうところでは五、六億ドルのものになる、こういうふうにいいますが、地位協定適用上、特例は設けないということになっておる。したがって、無償でこれらはわが国に引き継がれる、こういうことになります。
  85. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 大臣がいま地位協定というふうにおっしゃられたわけですが、地位協定の四条一項で裏づけるわけですか。
  86. 高島益郎

    高島政府委員 お答えします。  日本が、補償する義務を負わないという規定は四条の二項でございます。
  87. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 たとえば、嘉手納基地を返還するときに、膨大な施設アメリカはそっくり日本に移譲していくことに合意ができているかどうか、この点、返還する際にアメリカ施設を撤去して持ち帰るというようなことはないと思うが、この点はどうでしょうか。
  88. 吉野文六

    吉野政府委員 地位協定の規定によりまして処理されます。すなわちアメリカはこれらを持ち帰ることはございません。
  89. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、返還協定の付属文書である了解覚書のA表、B表によって基地が提供されたと思います。これは日米合同委員会で決定したものと思いますが、この点はどうですか。
  90. 吉野文六

    吉野政府委員 最終的には五月十五日零時に合意が成立いたしました。合同委員会の決議できまりました。
  91. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうであれば、米軍に提供した施設区域は当然官報に掲載されなければならないと思います。今日まで私の知る限りでは官報に掲載されていないわけですが、これはどういう理由であるか。官報に掲載されない限り、国民はどこを米軍に提供したのか全くわからない。そのために、まかり間違えば刑特法にかかってとんでもない被害をこうむるおそれも出てくるのではないか。政府は、はたして官報に掲載したかどうか。しないならばなぜ掲載しなかったのか。この点を伺いたいと思います。
  92. 松田慶文

    松田説明員 官報登載手続は防衛施設庁の担当でございまして、責任ある者がおりませんので、私承知しておりますところを申し上げますと、昭和二十七年に行政協定に基づきまして、わが国において米軍に提供する施設区域の最初の提供をいたしました際に、施設区域の台帳と申しますか、リストを日米間で確定いたしまして、その後の返還等につきましては台帳を整備する形で現在に至っております。沖繩につきましては八十七件を五月十五日に提供いたしまして、これにつきましては、もとより閣議決定を了し、合同委員会の決定をいたしたわけでありますが、これに基づきまして、昭和二十七年作製の基本台帳に追加等の措置をとりまして、その手続を最終的に了しまして官報告示をするのが施設区域の告知の慣行となっております。その手続は、私の承知するところでは、もう一両日、近々中に官報登載の運びとなるものと聞いております。
  93. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 もう五月十五日を過ぎておる今日において、先ほど申し上げたように、沖繩の県民にとってみればはたしてこれがA表なのかB表なのか、全く判断の基準がない。返還された時点において官報によって県民に知らさなければ、先ほど申し上げたとおりのいろいろな事態が当然巻き起こってくるのじゃないか。こういうことであれば、沖繩の県民に対して非常に不親切なやり方ではないか。県民は返還されたと理解している人もたくさんあるわけです。そういった意味で、もし提供してあればこれはたいへんなことになるので、政府としてはこれは怠慢というようなことばではなくて、むしろ重大な責任問題に発展していくものがある、こういうふうに私はこの問題についてたいへん痛感するわけですが、そういった点については、またさらにこういった問題にしぼって御質問を展開していくべきだ、このように思います。  あと二つばかりお聞きしたいことがあるのですが、一つは、沖繩返還協定の第七条の後段で、例の三億二千万ドルの件ですが、協定の効力発生の日から一週間以内に一億ドルを支払って、残額は四回の均等年賦で毎年六月に支払うということになっているわけです。一億ドルはもう支払われたと思いますが、この内訳といいますか、米軍資産の引き継ぎ、それから核撤去、それぞれ幾ら支払ったものか、詳細を伺いたいと思います。
  94. 吉野文六

    吉野政府委員 この送金の業務は大蔵省がやったはずでございますが、われわれの推定するところでは、内訳というものはないはずでございます。アメリカ側に対して負っている義務は、一週間以内に一億ドルを支払う、これだけでございます。
  95. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 きょうのところの答弁は、たぶんそのようなところではないかと私も思っておりましたけれども、たとえば五月十五日付の沖繩の核抜き確認に関するロジャーズ国務長官から福田大臣あての書簡ですが、ここにございますが、この一通の書簡が七千万ドルを意味するのか。これを見ますと、「これら諸島に対する施政権が日本国へ返還されるこの機会に、沖繩の核兵器に関するアメリカ合衆国政府のこの確約が、完全に履行されたことを、アメリカ合衆国大統領の指示と許可の下に、閣下に通報することができますことは、本長官の大きな喜びとするところであります。」云云と書いてありますが、この一通が七千万ドルというものを意味するのか。毒ガス撤去のときあれだけの騒ぎであったわけですが、はるかに危険な核の撤去において、七千万ドル、すなわち二百億円もの金を支払う対価がこの一片の書簡であるのかどうか。私たちが最高の政治的配慮をもって、国会において非核決議をしたわけでありますが、何かこの書簡だけを見ていると鼻をつままれたような感じがするわけです。私たちはそういうことを覚えるわけですが、政府見解を伺いたいと思います。
  96. 福田赳夫

    福田国務大臣 三億二千万ドルにつきましては、内訳は確定はいたしておりません。ただ見当といたしまして、資産の引き継ぎ、また労務費、それにさらに七千万ドルの政治的加算をいたしました、こういうことなんです。政治的加算はどういう意味かというと、核が撤去されること、また、米軍が将来撤退する際に、わが国にその資産を無償で引き継いでまいるということ、その他、わが国からの要請で特殊部隊の整理をするとか、いろいろそういうことがあります。それらのこと全部を考慮いたしまして、七千万ドルというふうにいたしたわけでありまして、一枚のロジャーズ長官から私あての書簡の代金七千万ドルなり、こういうような性質のものじゃございませんです。
  97. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、この書簡がそういうことを意味するものではないというふうにここで受け取っておきたいと思います。  最後に一つだけ伺いたいのですが、例の福地ダムについて、これはすでに完成したのでしょうか、どうでしょうか。
  98. 吉野文六

    吉野政府委員 まだ完成しておりません。
  99. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 完成してない、こうおっしゃるわけですが、あとどのぐらいかかるとか、どの程度のところまで建設されたものかですね。
  100. 吉野文六

    吉野政府委員 目下これは建設省の主管になっておりますから、あと何日ぐらいたったら建設が完成するかということは、われわれとしては答えかねますが、いずれにせよ、復帰後は、わが国が建設工事を引き受けて自余の工事を完成するというのが、これに関するわれわれの了解でございます。
  101. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 建設省というふうにおっしゃいますが、去年の十二月の十三日にアメリカ大使館から口上書が出ている。これは沖繩国会のまつ最中であったわけです。外交チャンネルで出ている以上、外務省としては当然こういった問題もフォローだけはしていかなければならないのじゃないか。なぜその経緯を把握しないのかという問題になってくると私は思います。別に技術的な建設のこまかい点を私たちは要望していない。しかしながら、福地ダムがどの程度まで進行しているのか、これは金の支払い問題も関係しているわけですから、そういうものがつかめてないということは、やはり外務省としてはもう少しこの点を把握する努力が必要ではないかと私は思います。これ以上きついことを言う何ものも私はありません。この建設問題の技術的なことまではここで話にのぼるものではないと思います。  それで、口上書によれば、たしか千二百万ドルですかのうち、未使用分は琉球水道公社に移転するというふうにありましたけれども、こういったこともあるのでさっき伺ったのですが、千二百万ドルのうちどれだけが水道公社に移転したのか。この辺はどうでしょうか。
  102. 吉野文六

    吉野政府委員 先生御指摘の、昨年十二月の口上書の問題につきましては、われわれは一応その範囲内においてはフォローしておりまして、この千二百万ドルのうちの実際の未使用分は約二百万ドルでございまして、これは復帰前の五月十二日に水道公社に移転しました。水道公社は、この受け取りました残額を五月十四日建設省に渡しました。
  103. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 時間も来ているようですので質問を終わりますけれども、いまの御答弁の中で、この口上書の範囲内ではというお話があったわけですが、それだけに確かにこの把握は当然な話なんで、この福地ダムの建設ということに関連して、やはり外務省として、ここからここまでは当然把握しておかなければならないという点は、ひとつがっちりとフォローしていただきたいことをここで最後に要望しまして、きょうのところはこれで終わりたいと思います。
  104. 床次徳二

    床次委員長 森喜朗君。
  105. 森喜朗

    ○森(喜)委員 大臣が途中でお見えになるということでございますので、それまでに総理府及び文部省の方々に、今度の沖繩復帰に関する諸行事のことについて若干の御質問を申し上げたいと思います。  佐藤内閣の悲願でありました沖繩復帰の行事がすべて滞りなく終わったのだろうと思いますが、何となく国民の共感を覚えないような、そんな印象を私ども否定できないような感じもいたしております。したがって、行政というのは国民にいい政治をやって、それを周知徹底させることだろうとぼくらは理解しているわけであります。そういう復帰準備に関して、その後新聞あるいはその他報道関係にある者、私どもが本土で目にする範囲内においては、あまりかんばしくないというふうにぼくらは理解をするわけですが、その辺について御質問を続けていきたいというふうに思います。  そこで、私はいまこういうメダルを持っておるのですが、これは総理府でおつくりになったメダルでございます。どういう意図で、どういう観点でこれをおつくりになったのかということをまず事務局から御説明願いたいと思います。
  106. 和田善一

    ○和田説明員 お答え申し上げます。  このメダルは沖繩の復帰を記念いたしまして、沖繩県の義務教育の学校に在学しております児童、生徒全員に、復帰記念の意味で贈与する目的でつくりましたメダルでございます。
  107. 森喜朗

    ○森(喜)委員 幾つぐらいおつくりになられたのですか。
  108. 和田善一

    ○和田説明員 児童、生徒の数に対応いたしまして、二十万四千個作製いたしました。
  109. 森喜朗

    ○森(喜)委員 そうしますと、お金でどれくらいになるわけですか、二十万四千個といいますのは。
  110. 和田善一

    ○和田説明員 単価が九十円でございますので、千八百三十六万円という予算でございます。
  111. 森喜朗

    ○森(喜)委員 これは経理課長では御無理かもしれませんが、復帰に伴って義務教育の学校の子供に配ろう、そういう意図ですが、メダルにしようというところにきまるまでにどういう経過を経られたのか、あるいは小中学校の子供たちに復帰を記念して何か配らなければならないその理由などがわかりましたら、御回答願いたいのですが……。
  112. 和田善一

    ○和田説明員 お答え申し上げます。  まずメダルにきまりました経緯でございますが、沖繩の復帰を記念いたしまして、国としては沖繩復帰記念式典を東京及び那覇で挙行いたします。で、現地沖繩の児童、生徒の方々に何か記念になるものを差し上げるのが一番子供たちにも喜ばれるし、国の記念行事の一環として適当な施策であろうという結論に達しまして、何を差し上げるかということでいろいろ検討いたしました。たとえばシャープペンシルのような筆記具等も考えたわけでございますが、そういうものは比較的こわれやすい、あるいはどこにもあるというようなものでございまして、結局記念の意味で、いつまでもとっておいていただくにはメダルの形にするのが一番よかろうという結論になりまして、メダルにいたした次第でございます。
  113. 森喜朗

    ○森(喜)委員 それでは、配布計画というものをどういうふうにお立てになられたのですか。
  114. 和田善一

    ○和田説明員 メダルの配布につきましては、私どもで検討いたし、また関係省庁とも御相談申し上げました結果、当時の琉球政府にお願いいたしまして配布するのが一番よい方法であるという結論に達しまして、事前に琉球政府の御了解を得ました上、正式に公文書でお願い申し上げまして、メダルを琉球政府あてに発送いたしたわけでございます。琉球政府におきましては、文教局がこの配布を担当するということになりまして、文教局長名で各連合区教育長あてに通達を発しまして、五月十五日の朝、児童生徒に配布するよう、教員及び関係者に周知させてもらいたいという通達を発しております。そういたしまして、学校からすぐに取りに来られますように、五月十日ごろまでにメダルを各教育区まで分散送付いたしております。
  115. 森喜朗

    ○森(喜)委員 そうしますと、琉球政府が文教局を通して、つまり学校を経由して渡すというふうに琉球政府から言われたんですか、それとも総理府のほうからそういう計画で流してほしいというような線で進められたのですか。
  116. 和田善一

    ○和田説明員 総理府といたしましては、琉球政府に配布を何ぶんよろしくお願いしたいということで、琉政の中で文教局が担当して流すというふうにきまったわけでございます。
  117. 森喜朗

    ○森(喜)委員 そうしますと、琉球政府のほうでは文教局でということにきめたという、その間文教局、当然そうなれば学校になるわけですね。したがって、そういうことの話し合いを向こうの政府のほうでやられたことについての経緯は御存じですか。その辺について何か報告はありましたですか。
  118. 和田善一

    ○和田説明員 事実上いろいろ琉球政府とも連絡をとりまして、こういう方法で配布するということは、両者重々承知あるいは話し合いの上でこういう措置になったわけでございます。
  119. 森喜朗

    ○森(喜)委員 いや、私の申し上げたことがちょっと理解されなかったのかもしれませんが、文教局のほうでも全部承知の上で、私どもでやりますということを当然おっしゃったことになりますね。
  120. 和田善一

    ○和田説明員 もちろんそうでございます。でございますから、文教局長名で各連合区の教育長あてに通達を流して、五月十五日に配布せよという文書を流しているわけでございます。
  121. 森喜朗

    ○森(喜)委員 そうしますと、これも経理課長は御無理かもしれませんが、御存じの中で回答願いたいのですが、当然文教局は先生方と話し合っておられると思います。事前先生方、学校に対して、そういうことで配布するんだということを話し合っておられるでしょうか。その辺の経緯は御存じですか。
  122. 和田善一

    ○和田説明員 文教局が先生方とどう話し合いしたか、あるいはしなかったかという点につきましては、承知いたしておりません。
  123. 森喜朗

    ○森(喜)委員 そうしますと、それじゃその話はあとにしておきまして、メダルは、先ほど二十万四千個とおっしゃいましたが、いつ、何個、どういうふうな形で送られましたか。その辺の状況をこまかくお話し願えればと思います。
  124. 和田善一

    ○和田説明員 お答え申し上げます。  まず、昭和四十七年四月五日に、各離島に送る分を含めまして約五万個を発送いたしまして、次いで四月十四日に残りの全部約十五万個を琉政あてに発送いたしました。
  125. 森喜朗

    ○森(喜)委員 現在までのその配布状況ですね、五万、十五万と渡ったわけですが、どういう状況になっておりますか。
  126. 和田善一

    ○和田説明員 これはまだ県のほうから正式に報告がございませんので、正確なところはまだつかめておりません。聞くところによりますと、那覇地区の大部分、那覇地区では児童生徒数は約六万一千でございますが、那覇地区の大部分とその他の地区の一部でメダルがまだ配布されていないというふうに聞いております。
  127. 森喜朗

    ○森(喜)委員 まだ配布されてないということは、どういう理由だという報告はされておりますか。正式な報告がないということですか。——それではどういうふうに聞いておりますか。
  128. 和田善一

    ○和田説明員 現在、新聞報道等で承知しているわけでございますが、現地の教員組合の中に配布反対の動きがございまして、それによって配布がおくれているというふうに新聞報道等で承知いたしておりますが、県からはまだ正式にそのことについて報告は受けておりません。
  129. 森喜朗

    ○森(喜)委員 新聞で状況を御存じだということでございます。私も五月三十日の沖繩タイムスのコピーを持っておりますが、これは沖教組では復帰メダルを返上することを決議しておりますね。そうして返品をするということもしているし、それからすでに配布済みについては、総回収するということもきめておりますが、こういうことがもうすでに新聞に出ておる。あなたは、いま報告は正式にはないけれども、新聞で承知をして知っておるというようなお答えですが、これだけはっきりしたことが出ておるのですが、これについて総理府はどう思っておられるのですか。
  130. 和田善一

    ○和田説明員 メダルの配布につきましては、県に正式にお願いしてあるわけでございますので、あくまでも県を通じまして配布の促進方を再三お願いしたところでもございますし、今後もそういう方針でお願いしたいと思っております。
  131. 森喜朗

    ○森(喜)委員 じゃ、そのことについては、あなた方は——新聞ですでにこれだけ出ておりますね。  ちょっとおもなところを読んでみましょうか。「さる二十一日、平敷委員長が津嘉山県教育長と話し合った結果、すでに学校に配布して学校止め、あるいは市町村教委止めになっている全メダルを教育庁に返品することで話し合いがついた。」と書いてあります。それから各地区で、そういうことに対して非常に先生方も困っておられる状況が出ておりますが、これは略しますが、この教育庁への返品決定がきまったことによって、現場、つまり先生方ですね、現場ではほっとしておるということが新聞に書いてあります。そして「配布済みの学校における事後処理については教育的な立場を考慮、復帰のあり方などを現場で指導し、子どもたちが自主的にメダル返上をするようにしたい方針である。」これだけはっきり出ているのです。この沖繩タイムスをごらんになったことがありますか。
  132. 和田善一

    ○和田説明員 ございます。
  133. 森喜朗

    ○森(喜)委員 とすると、いま読み上げましたこと、そしてこれから「配布済みの学校では特設授業などで「真の復帰とは何か」「復帰は祝うべきものか」など指導して、子どもたちの自主的な判断によって返品させることにしている。」これだけはっきりしているわけです。なのにあなたのほうは、頼んで、向こうはやってやると言ったからそれを待っております、こういうことでしょう私はあなたとそういう議論をしておると、頼んだのだからおれは知らない、新聞のいっていることは単なるうわさだろうから、こういうことになるわけですが、これでは行政の進め方として私はちょっと問題があるように思うのでありますが、いままで私が申し上げましたことについて、当然、あなたは新聞を見ておるとおっしゃった。あなたは少なくとも総理府でお金を扱っておられて、しかもこのお金は、先ほどから申し上げておる千八百三十六万、国家の予算からいえば小さいことかもしれませんが、しかしこれは国民の税金なんです。税金でメダルをつくって子供たちに分け与えようというそういう趣旨、何にしようかということで、ペンシルでは困るし、子供たちが長く保存しようということ、しかもメダルというのは、たとえば怪獣なんかのメダルでも子供たちは非常に喜びます。私も、実は先ほどありましたあのメダルを子供たちに見せると、やはり喜んでいるのです。子供というのはメダルを非常に好みます。ですから、その辺の選定は私は悪くはなかったと思う。しかし、こういうふうに新聞に出てしまいますと、生徒さん自身が非常に戸惑いを見せる。お金のむだづかいはもちろんでありますが、これはたいへん指摘しなければならない問題がありますけれども、五月十五日、ほったらかして、しかも翌月の六月になっているのに、子供たちにとっては、行ったところとか行かないところとか、もらったところ、もらってないところ、当然そういうものはあるわけですね。それなのに、配った日本政府といいますか総理府は、その辺、何もないから、聞き及んでおりますという形で片づけておいていいものだろうか。それについてどう思っておられますか。
  134. 床次徳二

    床次委員長 森委員に申し上げますが、間もなく沖繩開発庁の玉置政務次官と渥美振興局長が参りますので、お含みおき願いたいと思います。
  135. 森喜朗

    ○森(喜)委員 お金を預っておられる立場として、いま申し上げたようなことについての御見解を……。
  136. 和田善一

    ○和田説明員 これは児童生徒に配られませんと国損が生じるという結果になりますので、これはぜひとも配られなければならないというふうに考えております。
  137. 森喜朗

    ○森(喜)委員 だからぜひとも配らなければならないというふうにあなたは思っておられるのに、さっきからのお話では、もう県に頼んで向こうの教育庁がやるといったのだから、私どもはあとで新聞で聞き及んでおるだけで、黙って手をこまねいているというふうにわれわれにはとれるわけです。それはゆっくりとあとでいけばいいのだ、そんな性質のものじゃないと思うのです。というのは相手は子供でしょう。小学校、中学校——中学校については多少説明がつくでしょう。新聞を見れば彼らもある程度意味がわかってくるでしょう。しかし小さな小学校の、隣の三郎君がもらってうちの太郎君がなぜもらえないのか、あるいは学校によって違うかもしれない、クラスによって違うかもしれない。同じ学校に行っている子供で、おにいさんがもらってきたのに弟がもらってこないということだってあり得るわけでしょう。そういう子供たちの心をどうやって——それをいつまでもほっぽらかして、何か言ってくるまで待とうということでは、いま政務次官お見えになるそうだからその点についてお聞きしますが、国損であるということをあなたははっきりおっしゃっておられるのに、いつまでもほっておくということはおかしい。総理府のほうで向こうのほうへそのことについて問い合わせをなさっておられるのじゃないですか。私はそのように仄聞しておりますが。
  138. 和田善一

    ○和田説明員 総理府のほうから、県当局に対しまして、早く配布の手段を講じるようにということは再三連絡いたしております。
  139. 森喜朗

    ○森(喜)委員 そうしたら、やっぱりやっておられるのでしょう。何もしないで待っておるわけではない、向こうのあれを待っていたわけではない。それであなたのほうはそうされた。向こうは何と言ってこられましたか。
  140. 和田善一

    ○和田説明員 県が一たん引き受けたことでございますので、これは配布するべく全力をあげるという回答でございます。
  141. 森喜朗

    ○森(喜)委員 それはどなたからですか。
  142. 和田善一

    ○和田説明員 副知事から回答がございました。
  143. 森喜朗

    ○森(喜)委員 まあこれは、ここにいらっしゃる先生方も御経験があると思うのですが、私どもでも、選挙あるいは講演会なんというのをやりますと、選挙の場合は当然法定に、あるところはさまっているわけですが、講演会あるいはいろいろな行事をやりますと、われわれは当然ポスターをつくる。何村に、何町に、どれくらいつくるか、何枚つくったらいいか、当然われわれは計画しますね。配布計画は、先方にだれが持っていってくれて、どうやって張ってくれるか、ベニヤ板が何枚要るのか、そんなことを全部われわれはやります。それはやはりお金がかかることですから、それがたまっておったら、これは話にならぬわけで国すね。だから、そういうことから見ると、事前の打ち合わせということが、きわめて——あなたは損だとおっしゃったから、あえて私はその問題に焦点をしぼりますが、はっきりいえば税金のむだづかいですよ。だって、これは、これからどう努力されるのかは問題ですが、すでにこれはやらないということははっきりしているし、委員長と教育長とが話し合った結果、返上することで話し合いがついたということまではっきりしているわけでしょう。あなたのほうは望ましいと言われる。それが配られなければ国損である。こんなことでやっておられたら、これはたいへん税金のむだづかい、当然これは決算委員会なんかで問題になるかもしれませんが、私はこのあたりが、学校側と事前にもっと話し合いをしておく必要はなかっただろうかと思うし、配布の計画については見通しが甘かったのではないか。当然沖繩の今日までの状況から見て、こうしたものが学校を通じて、先生を通して生徒さんに渡るということは、われわれはどう見たって理解はできなかった。その辺については、総理府の見通しはきわめて私は悪いと指摘したいのですが、どう思われますか。
  144. 和田善一

    ○和田説明員 これを計画いたしましたときは、琉球政府を通じて配布方お願いするのが一番よいという方針で、琉球政府にお願いいたしましたところ、琉球政府においてこれを引き受けるというお話がございました。したがいまして、私どもといたしましては、当然五月十五日の朝は配布されるものと期待していた次第でございます。
  145. 森喜朗

    ○森(喜)委員 課長とこれをやりとりしておっても平行線でしょうが、それでは課長、もう一つだけお聞きしておきますが、沖教組が配らないというふうに言った理由はなぜですか、どのように聞いておられますか。
  146. 和田善一

    ○和田説明員 これは私、非常に理解に苦しむのでございまして、どういう理由かということは私も現段階で詳しく承知しておりません。
  147. 森喜朗

    ○森(喜)委員 承知してないというのはちょっとおかしいのですが、じゃ、新聞なんかで出ている理由だというふうにあなたはとっておられますか。  やりとりをされましたね。副知事から返事がきておるのですね。あなたいま副知事とおっしゃった。副知事にあなたがかけられたのですか。文書でかわされるのですか。電話ですか。
  148. 和田善一

    ○和田説明員 副知事には、開発庁事務次官から電話で連絡いたしました。
  149. 森喜朗

    ○森(喜)委員 電話で事務次官がおやりになった、そのやりとりはお聞きになっておられないのですか。
  150. 和田善一

    ○和田説明員 これは副知事のほうで配るように努力するので、いましばらく時間をかしてもらいたい、県として配ることを前提のお答えがあったと聞いております。
  151. 森喜朗

    ○森(喜)委員 それでは、文部省お見えになっていますね。地方課長。  学校を通してこういうものを配ったという例、これは本土ではこうしたことがございますか。
  152. 鈴木勲

    ○鈴木説明員 政府あるいは内閣等から、全国一斉に一定の物品を児童、生徒の手に渡したということは、私の承知しております範囲では、義務教育無償の教科書を配ったという以外には現在までのところ承知をいたしておりません。
  153. 森喜朗

    ○森(喜)委員 事前に総理府からこのことを向こうの琉球政府、そして文教局にやられたというやりとりは鈴木さんもお聞きのとおりだと思いますが、事前にそういう学校を通してやったらどうか云々ということについては、総理府から御相談があったのですか。
  154. 鈴木勲

    ○鈴木説明員 このメダルにするといういきさつにつきましては、各省連絡会議等におきまして承知をしているわけでございますけれども、具体的な配布計画、配布のルート等につきましての御相談は、私のところでは現在までのところ承知をしていなかったわけでございます。
  155. 森喜朗

    ○森(喜)委員 私、先ほど和田さんとの議論の中で、学校によって差別がつく、生徒によって差別がつく、あるいは時代的に、そういろ例が具体的にあったかどうかわかりませんが、兄弟によってもらったとかもらわないということがある。そういうようなやりとりがかりにあったと仮定しまして、地方課長、そうした全国の小中学校の児童の総元締めといいますか、そういう責任ある立場としてそういうことがいいと思われますか。
  156. 鈴木勲

    ○鈴木説明員 やはり国の意思によりまして、児童生徒に配布することが適当であるということでございますならば、配られた生徒と配られない生徒があるということにつきましては、子供の側にとりましても童心を傷つける点もございますし、国家の慶事という形のそういう趣旨を徹底する意味におきましても、無理があってはいけないんではないかというふうに考える次第でございます。
  157. 森喜朗

    ○森(喜)委員 文部省はこれをお聞きになりまして、すでに沖繩が復帰されて、日本の国の沖繩県として、この問題について何か手助けをするとか、文部省から向こうのいまの地方教育委員会ですか、いまそちらへ話をするとか、そういうことをなさる御意思はございますか。あるいはまた、総理府からでもそういう頼みごとがあって通達をするとか、とにかく、いまあなたがおっしゃったように、童心を傷つけないために、やらないんならやらない、やるんならやる、そのあたりを徹底しなければならぬと私は思いますが、そういうふうな準備など、あるいは話し合いなどなさっておられますか。
  158. 鈴木勲

    ○鈴木説明員 この現地におけるメダル問題のトラブル等につきましては、はなはだ申しわけないのですが、最近承知したような次第でございまして、これが、五月十五日の式典の日に、ほんとうは子供の手に何らかの形で渡れば問題はなかったわけでございますけれども、かなりの時間が経過をしておりまして、しかも現地において教育長と沖繩県教職員組合の委員長との間に、先生がいま指摘されましたような話し合いが行なわれているといたしますと、かなり困難な問題があるんではなかろうかと思いますし、その辺のところは近く教育長が参りますので、私のほうで十分な事情を調査いたしまして、総理府のほうとも相談をいたしたいというふうに考えております。
  159. 森喜朗

    ○森(喜)委員 総務長官が間もなくお見えになるそうでありますから、この問題については後ほど総務長官からお聞きすることにいたしまして、ただ地方課長にお願いをしておきたいのは、先ほどから申し上げましたように、もちろん国費のむだづかい、これはたいへんなことでありますが、これは和田さんのほうですから、後ほどまた総務長官の御意見も承りたいのでありますが、やはり何といっても私は童心を傷つけてはいかぬということ、それから子供の教育というのは、最近行なわれている連合赤軍事件等々から、やはり子供のころの一つの大きな心に与える影響、そういうことから、私は教育がすべてなのであって、きのう高見文部大臣のところに京大の学長が来られて、頭を下げて、大学教育の限界を知ったとかいろいろ言われておりますが、私は、大学教育や高等学校の教育が子供を変えていく、つくり上げていく、これは多くの中の一つの過程であって、やっぱりそういう過程の中から見て、特に人間形成の一番大事な幼児期の教育、そのあたりのことを一番われわれは考えておかなければならぬ。そういう中で、おとなの、つまり政争の具にされている、先生方の教組と国あるいは県と教組というような、そういう政争の中にこういうことを巻き込ましていって、そしてメダルをやったとかやらなかったとか、こんなことがあるということ自体、私はたいへん沖繩の子供たちにとって、日本に復帰したその日に——そういうメタルを見るといつもそういうことを思い出す。つまり私に言わせれば、反対するほうから見れば、返品させようとしたほうから見れば、それがねらいであったのかもしれない。子供たちに、沖繩の返還というものは決して喜んではいけないんだよということを教えるについては、これだけいいものはなかった。ある意味では政府から見れば、和田課長からもお話を伺ってみれば、実にずさんな計画です。そういう計画から見れば、逆に、いいえさにありついたということに私はなると思うのです。だからそういうことを考えますと、教育長がお見えになるそうでありますが、文部省として、これから文部省の中の所管の問題になっていくわけですから、前向きにすみやかにこれの処置に当たられますようにお願いを申し上げておきたいと思いますが、ひとつここで確約しておいていただきたいと思います。
  160. 鈴木勲

    ○鈴木説明員 ただいま森先生からお話がございましたが、これは実は、琉球政府文教局と内閣との話し合いのもとに、琉球政府文教局ないしは主席の責任のもとに行なわれるべきことであったわけでございますが、それを、かわりました県の教育委員会がどのような形で引き継いでいるか。さらにそれを引き受けました経緯、また、どうしても教員を通じましてやらなければいけなかったのかどうかということにつきましては、また詳細に私のほうも承知しておりませんし、文部省が責任をもって指導すべきだといわれましても、やはりその経緯がございますので、限界もございますので、県の教育長が上京したときに、教育行政の立場から詳細に事情聴取をいたしまして、他に何らかの方法がないのかどうか等も含めまして、文部省の守備範囲において検討いたしたいというふうに考えておるわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
  161. 森喜朗

    ○森(喜)委員 それでは、総務長官お見えになりましてから、この問題の総理府の御見解も承っておきたいと思いますが、鈴木地方課長御承知のように、沖繩返還に伴って、ただいま沖繩の選挙が行なわれております。私どもは、いろいろな問題があった、しかも沖繩特別委員会でかなり私どもも突っ込んだ議論を国会の中でもしてまいりました。問題点がたくさんあったといたしましても、返還がされて沖繩が日本の国になったということは、われわれも喜ばなければなりません。そういうことだけに、私はさっきのメダルの小さな一つの問題も非常に気にするわけでありますが、いま沖繩選挙が続けられている中で、私はいろいろな話を聞いております。特に私は、先生方が選挙戦に介入をされておられるんじゃないかというような危惧、そういう話をよく耳にするわけでありますが、そのあたりについて先生方の、教職員の選挙に対する考え方を文部省のほうではどのようになさっておられますか。今度の沖繩選挙についてでけっこうでございます。
  162. 鈴木勲

    ○鈴木説明員 この件につきましては、従前の沖繩におきましては、市町村の教育区の教育職員につきましては、地方公務員法に相当するような規定もございませんし、政治的活動あるいは公職選挙法による選挙活動等についての制限規定がなかったわけでございます。しかしながら、本土復帰に伴いまして、沖繩復帰に伴う特別措置法の定めるところによりまして、選挙が行なわれるということが明確になっておりますので、文部省におきましては、五月二十六日、文初地第三〇九号をもちまして、初等中等教育局長名をもって「教職員の選挙運動等について」の通知を沖繩県の教育委員会の教育長あてに出してございます。  この内容は、従来と異なりまして、特に地方公務員たる公立学校の教員については、教育の政治的な中立あるいは全体の奉仕者というような観点から特別の規制がございますので、従来のように無制限で選挙活動をしてはならないという趣旨を特に徹底する必要がございます。  そこで、この関係法令の周知徹底をまずすることと同時に、触法行為が行なわれましたならば、厳正な措置をする必要もございますし、そういう点について、服務規律の格段の配慮をするようにという通知をいたしまして、指導を強化したという経緯がございます。
  163. 森喜朗

    ○森(喜)委員 屋良候補の確認団体は、革新共斗会議であるということをわれわれは承知いたしております。この確認団体の事務局長は福地曠昭さんという方ですが、文部省はこの方についてどの程度のことを御存じでいらっしゃいますか。
  164. 鈴木勲

    ○鈴木説明員 福地曠昭氏は、現在沖繩県の教育委員でございます。その方は、四十六年に、当時の琉球政府の中央教育委員会の委員に公選で当選をされまして、現在まで引き続いてやっております。この任期は、特別措置法の定めるところによりまして、本年の十二月三十一日まで教育委員としての任期を保有しておるわけでございます。それから、同氏は、沖繩教職員組合の書記長という職についておりまして、こういう形で教育委員の職務をされているという方でございます。
  165. 森喜朗

    ○森(喜)委員 教職員組合の書記長が教育委員をなさっておられることも、これまでの沖繩の一つの残されたものとしては非常に特例なんでしょうが、県教育委員であるということについて、この十二月三十一日までは県教育委員であることには間違いないわけですね、地方課長。
  166. 鈴木勲

    ○鈴木説明員 これは先ほど御答弁申し上げましたとおり、公選の委員が任命制の委員にかわるまでの間、みなし委員としての経過規定がございますので、四十七年十二月三十一日までは県の教育委員としての身分を保有するということでございます。それは間違いございません。
  167. 森喜朗

    ○森(喜)委員 といたしますと、しかし今度の選挙はあくまでも日本の国の選挙ということになるわけですね。したがって、今度出された、いまおっしゃった岩間初等中等教育局長の通達、これは当然本土の選挙と同じたてまえをとって施行してもらわなければならない、こういうことになります。私、その通達を見ますと、「教育委員会の委員についても、積極的に政治活動をすることおよびその地位を利用して選挙運動をすることは禁止されていますので、念のために申し添えます。」こういうふうにお書になっておりますね、地方課長。
  168. 鈴木勲

    ○鈴木説明員 森先生がお読みになった、全くそのとおりでございます。
  169. 森喜朗

    ○森(喜)委員 私は、ここに「革新共斗ニュース」という五月二十四日のパンフレットを持っておりますが、この題字と五月二十四日の下に「発行人 福地曠昭」とちゃんと明らかに名前が書いてあります。「一ドルを三百五円におさえ、物価をあげた佐藤自民党政府」というたいへんな見出しでありますが、福地曠昭氏は、この革新共斗ニュースに発行人としてはっきり名前をお書きになっておる。この運動は、私は、少なくともいまの教育委員は、積極的に政治運動をしてはならないという地方教育行政の組織及び運営に関する法律、服務条文の十一条の五項に明確に規定されておるところにこれが該当してくると思うのでありますが、地方課長、いかがでございますか。
  170. 鈴木勲

    ○鈴木説明員 ただいま森先生おあげになりました革新共斗会議というこの団体が、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の第十一条の五項に規定しておりますような政治的団体であるということでございますければ、その事務局長として、いまおあげになりましたようなニュース等を発行するとかということがございますれば、積極的な政治運動をするというようなことに該当するのではないかと推定されます。
  171. 森喜朗

    ○森(喜)委員 該当すればということでありますが、少なくとも私は、この共斗ニュースでこれだけ名前を明らかにして、しかもこの配布は、五月十八日第一号から、かなり無差別に相当な数が沖繩県の中に配布されている事実がもう明らかであります。しかもこの団体は、屋良知事候補の確認団体であるということもはっきりいたしております。しかも県教育委員である福地さんは、屋良さんが任命をされておられるわけです。現職のまま確認団体の活動をしていることは、私は明らかに違法行為であろうと思います。地方課長、そう思いませんか。
  172. 鈴木勲

    ○鈴木説明員 革新共斗会議の性格が、いま先生のおあげになりましたように、公職の候補者の選挙を支援するということが明確になっており、しかもその中枢である事務局長として名を連ねておるということでございますので、そういうことを考えますと、政治活動に該当するというふうに考えます。
  173. 森喜朗

    ○森(喜)委員 ということになれば、これは当然知事の責任において罷免しなければならぬわけであります。いま選挙をやっているわけですが、規定違反の場合には、文部省としてはどういうふうに取り扱いなさいますか。
  174. 鈴木勲

    ○鈴木説明員 この十一条五項の服務義務の違反につきましては、罰則はないわけでございます。ただ七条の一項に「地方公共団体の長は、委員が心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認める場合又は職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、当該地方公共団体の議会の同意を得て、これを罷免することができる。」という条項がございます。これは、森先生がいまおあげになりました条項であろうかと思いますが、この教育委員である福地曠昭氏の行為が、七条の一項に書いてありますような服務義務違反ということでありますれば、沖繩県知事は、この条項に照らしまして罷免することが可能だという規定がございますので、そういう余地が残されているわけでございます。ただ、これはその前段階といたしまして、教育委員会内部の服務規律の問題がございます。教育委員の中に、罰則の規定はないけれども、法令に違反するという者がいた場合の措置をどうするかという問題がありますので、知事の罷免の問題の前に、教育委員会内部の服務規律の維持の問題として、教育委員会内部において処理をする段階があるのじゃなかろうかというふうに考えております。
  175. 森喜朗

    ○森(喜)委員 地方課長だいぶ気にしておられるようでありますが、文部省からの通達で、五月三十日毎日新聞では、一番あとに、「政府の教職員に対する圧力だ」という批判もあるなんて書かれているものだから、文部省おそれているんじゃないですか。それは調べなければならないといって、それじゃ、一体いつやられるのですか。選挙はどんどん進んでいるのです。教育委員である福地さんの名前でどんどんパンフレットが出ているのです。終わってからやったんじゃ意味ないですよ。いつやられるのですか。調査をする、あるいは違反しているかどうかをいつやられるのですか。
  176. 鈴木勲

    ○鈴木説明員 先生の一番初めにおっしゃいました知事の罷免権の問題につきましては、議会の同意を得てという問題がございますので、かりにそういう事態がございましても、議会の同意か必要でございますので、直ちにその罷免権を発動するというようなことにはまいらない。そこで、教育委員会の服務規律、内部規律の問題といたしまして、教育委員会においてその違反について注意を喚起する、あるいは辞職を勧告するというふうな段階があろうかと思います。そういう点については、近く県の教育委員長を文部省に招致をいたしまして、福地曠昭氏の、おあげになりました当該行動についての事情を十分調査しますとともに、そういう委員会内部としてなし得る問題をまず早急に措置すべきだという指導をいたしたいというふうに考えております。
  177. 森喜朗

    ○森(喜)委員 総務長官がお見えでございますので、時間がありませんから地方課長に申し上げておきますが、早急にやらなければならない、近く教育長を呼ぶというような、そんなゆうちょうなことはおかしい。すぐ呼びなさいよ。きょう、飛行機で来ればすぐでしょう。あしたまでのうちにお呼びになってちゃんと調べて、明々白々にちゃんと措置をしておかなかったら、日本の国の沖繩県として選挙をやっておるのに、教育委員は前の公選制だからそのまま残されて、昔の沖繩はそれでよかったけれども、いまだってそのまま続けていくような、そういうふうな惰性でものごとをやられてはいけない。やはり事、教育に関することである、子供たちが見ておるんだということ、さっきのメダルと同じです。そういうことで疑義が生ずるようなことは、断固早く処置しないと——今度のいろいろな事件だって文部省の措置がおそ過ぎると私は思う。きょうすぐに連絡をして、あしたじゅうにお呼びになることを私は要求します。よろしゅうございますか。
  178. 鈴木勲

    ○鈴木説明員 森先生の御指摘はよくわかりましたので、できるだけ早急にそういう措置をとりたいというふうに考えております。
  179. 森喜朗

    ○森(喜)委員 それじゃ、総務長官お見えでございますので……。  先ほどメダルのことにつきまして経理課長と議論をさせていただきました。経理課長は、これが配布されないということは、千八百三十六万かけたわけでございますので国損でございます、こういうふうにおっしゃっておられます。私は、この国損であるということはもちろんでありますけれども、もっと大事なことは、いたいけな童心に、配ったとか配らないとか、あるいは配ったものを回収させるとか、こういう説明をこれから子供たちにどうしていくのか、むしろそのことを私はおそれております。今度の事前の議論は、長官お聞きをいただけなかったわけでありますが、大体御推察いただけると思いますが、今度のこういう問題につきまして、配布をしなかった沖教組ではこれを返還することにした、返すことにした、こういう申し合わせを教育長とやっておりますが、今度のこうした事態について、総務長官の御見解をまず承っておきたいと思います。
  180. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、事前に沖繩、当時の琉球政府とよく相談をして、事務当局においても、復帰の記念の、しかも義務教育の生徒二十万数千に限って配布する、いわゆる国民の善意のプレゼントでありますから、おとなになっても永久に保存しておくようなものでありたいということで話し合いは完全に合意いたしておったわけであります。ただ、それを子供たちに配布いたしますときに、だれに頼んで配るかという問題になって、ただいまのような、先生方にお願いをして学校ごとに配っていくというのが、子供たちの一番集まる場所ですから、その手段をとることを、琉球政府の当時の文教局とそういう手段でいきましょうということで相談ができておりました。したがって、私も現地に参りまして、それまでの間に、組織としての教職員会というものが自分たちの意思と反するメダルである、われわれは喜んでいない、したがって、それを子供たちに配る自分たちの行為というものは拒否するというような動きがありましたことをきわめて心配いたしまして、現地でも、十三日に着きましてからすぐ、私どものほうの事務局長以下関係者を当時の政府と連絡させまして、琉球政府としても、そのようなことはいろいろありますけれども、しかし子供たちに全部メダルを差し上げるという記念の内容についてわれわれは異存があるわけではないので、御心配要りませんという返事を聞いて帰ってきたわけであります。  しかしながら、やはり伝達手段を、組織の加盟者の方々の教職員の方々にお願いしたということが、結果においてはこのような現状にとどまっておるわけであります。たいへん残念なことであります。  私どもは、こういうことが決して沖繩県民の祖国復帰の気持ちを傷つけるものでもなく、またそれを無理に喜べと言っているものでもなく、できれば子供たちの生涯の思い出に、現在の義務教育であるいわゆる国が責任を持って教育を施しておる児童たちにぜひそれをもらってほしかった、こう思います。また、ほかもいろいろと記念の鉛筆を配った団体とかいろいろあると思いますが、そういうものはそう拒否されておるという情報も聞いておりませんので、あるいはわれわれの自民党政府という立場に対する、選挙もからまっておるかもしれませんが、子供たちには関係のないことでありますから、そういうことがかりにあったにしても、先生方の手で拒否されるとすれば、あるいは町村の方々にお願いをして、自分がいやですという、中学三年生までおれば別でありますが、子供たちは、普通のあのお菓子の景品のメダルでも非常に喜ぶわけでありますから、特別に沖繩県民を何か差別するような、しいたげるようなメダルではありませんし、そういう意味で受け取ってもらえることを信じていますし、また沖繩県のほうも、これはちょっと予想しない事態でございましたけれども、みんなに行き渡る努力はしますという態度をとっておりますので、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  181. 森喜朗

    ○森(喜)委員 いま選挙中ということでしょうから、そういう意味での時間的なことが配慮されなければならぬと思いますが、これはひとつ、学校でできないならば、いまおっしゃったように市町村、町内会、いろいろな方法があると思いますから、とにかく一日も早く子供たちにこれが行き渡るように、最善の努力をしていただきたいということをお願い申し上げておきます。  次に、またぶり返すようで恐縮でありますが、いま大臣お話のように、沖教組は、われわれの運動の趣旨に反するというようなことを言っております。今度配れなかったという、そういう問題点を——配らなければならぬ、子供たちには分け与えなければならぬことははっきりしているわけでありますが、先生方がそれを拒否したということ、その趣旨に反するということ、その辺がどういう含みで、どういう中身であるということは、大臣御存じでございますか。
  182. 山中貞則

    ○山中国務大臣 教職員会というのは沖繩における復帰運動の中核であります。それらの人たちが、私どもが少なくとも沖繩を復帰させるための最低の条件だということで、やむなくいろいろとアメリカと交渉いたしましたその内容、そういうものについて異論があることは、私は承知いたしております。沖繩県民の、戦前の沖繩のようにしてアメリカ基地も一つもない、兵隊も一人もいない沖繩にして返せという要望があったということもわかっておりますから、その意味では、確かにパーフェクトな条件のもとに復帰したとはいえないかもしれません。しかし、復帰がおくれてもいい、あるいはできなくてもいいということがかりにその反面において考えられるとすれば、やはり県民の人たちの立場上、自分たちはそう言えないけれども、復帰したその日から、交通取り締まりも沖繩県警が当たっているし、あるいは裁判管轄権も、自動的にその瞬間から、沖繩県、日本国に渡っているわけでありますから、あらゆる問題を含めて基本的人権その他において、外国人から独立国の国民であるべき沖繩県民が受けていた差別、そういうようなもの等は青天白日の姿になったと私は思います。そのようななことについて、しかし私たちは強制をしているわけではありません。喜ぶとか、あるいはまた喜ぼうと思うがそれをことばには出せないとか、自分たちはほんとうに喜ばないとか、そういうのはやはり沖繩県民の自由でありますし、県民の自由な意思は団体における表現の自由でありますから、私はそのことについてはやむを得ないことだと思います。ただ、私どもとして先生方に伝達の手段のルートとしてお願いをした、このことがこのようなトラブルを起こしたことになったんだろうと思います。その他もっと配慮をすればよかったかもしれません。しかし、少なくとも現在の沖繩県である琉球政府が承知した、そういうふうにして私たちのほうで配りますからということを言っていただいたことを前提にいたしておりますので、そのあとで起こったことでありますから、当初の見通しを自分たちが誤ったと言われればそれまででありますが、相なるべくんば、できればそのままで配ってほしいし、どうしてもいやだということであって——新聞投書その他では、もらた児童の父兄については非常に喜んでおられるし、ほかの学校も全部配るようにしてほしいという投書も出ておるようであります。でありますから、いまおっしゃったような町村の単位あるいはまたPTA単位、そういうようなものへお願いをしてでも、子供たちに届けたいものだと念願をいたしておる次第であります。
  183. 森喜朗

    ○森(喜)委員 配布についてはよくわかりました。  沖繩の返還に伴って、子供たちにいろいろな意味での刺激を与えて、将来に一つの大きな心の中の傷にならないようにぼくはこいねがっておるわけです。したがって、一番私が心配しておりますのは、さっきも、大臣がお入りになる前に私は議論をしておりましたが、堂々と教育委員が選挙運動をやっておられる、政治活動をやっておられる、こういうこともいままでは許されておった。しかし、それは五月十五日をもってはっきりしてもらわなければならない。そういう面で多少遠慮があるのではないか、そんなことを実は私は心配をいたします。したがって、私は特に、この新聞記事だけの資料で多少責任がないのかもしれませんが、もう配布済みの学校で、子供たちに特別授業で、真の復帰とは何かとか、復帰は祝うべきものかどうかとか、子供たちが自主的にメダルを返上するようにする、そういうことを教育でやっていくということをうたってあることは、私はたいへん危惧いたしております。どうぞそういう意味で、私はさっきちょっと言いましたが、メダルを喜んでもらうはずなのに、そのメダルによってかえって向こうに好餌、いいえさを与えた。それによって生徒に特別授業をして、沖繩復帰は喜ぶべきものじゃないんだとか、聞くところによると、これは日の丸がついておるとか、沖繩おめでとうという袋に入っておるとか、おめでとうではないんだとか、言わなくてもいいようなことを言って、そういう気持ちを子供たちに与えるということを私はおそれます。  問題は、これは文部省が主管になるかもしれませんが、文部大臣とも御相談をしていただいて、これからの子供たちの教育に対する偏見的な授業内容がないように、私はぜひお願い申し上げたいというふうに思いますので、大臣の御決意をといいますか、私のいま申し上げましたことに対してお答えを願えればと思います。
  184. 山中貞則

    ○山中国務大臣 全くの善意でやったことがこのような結果になるということは、ときにあるかもしれませんが、私としては非常に心外なことでありまして、ましてやそれが教育の場において——教育は中立的なものであるべきでありますし、不偏不党、特定の政党活動、政治活動を持ち込んではならない場所であります。赤く染めても黒く染めてもいけない場所であります。その場所に、いま言われたような特設授業的なものをメダルのために持ら込まさざるを得ないようなことになると、これはメダルの配布を計画した当面の責任者として、私の反省すべき点もあろうかと思いますが、願わくば教育の場においてそのようなことが行なわれないように、私自身も切望する次第です。
  185. 森喜朗

    ○森(喜)委員 それから最後に、国会委員会で持ち出すということはどうかと思いますが、特定の本を取り上げることも私は必ずしも賛成ではないんですが、先ほど私が質問を始める前にも申し上げたんですが、佐藤内閣がとにかく命運をかけて沖繩返還に取り組んでこられた。ところが、そうしたいろいろな善政をやはり国民に広く周知徹底せしめていくのが政治家のつとめであろう、また国会もその場であろうと思っておりますが、どうも一方的に、マスコミの偏見もあるような感じもしますが、特に沖繩の中での動きというものは、先ほどのメダル一つの動きについても明らかに出ておるわけでありますが、本土で出ておる出版物について見ても、どうも政府を批判することしかない。沖繩返還は沖繩県民は喜んでいないというような本がかなり出ております。私はここに毎日グラフを持ってまいりましたが、これを読んでいささかうんざりしております。特にこの中身については、日の丸というものは加害者の旗になっているとはっきりと確定的なことも書いてあります。あるいは写真のとり方なんかも、おもちゃ屋さんでわざとこうなったのかもしれませんが、私は沖繩のおもちゃ屋さんで調べさせていただきましたが、位置はこのままであったのかもしれませんが、タンクの上に日の丸が上げてある。これはああいう日の丸は戦争に通ずるのだという構図のとり方、あるいはもう一つは、たまたま復帰祝賀県民大会というのが光明会館で十四日に行なわれたのですが、参加者はばらばらで何人も入っていない。これは全然喜んでいないのだと解説がここに書いてあります。「日の丸の小旗もうんざりするほどあまってしまったのである」と書いてあります。ところがこれを調べてみますと、これはまだ大会が始まる前に演芸をやっておったとき五時ごろ写したものであって、同じ日の読売新聞にはちゃんと超満員の写真が出ておるわけであります。これなんかも多少意図的なものがあると私は思うのです。さらに「沖繩県」というお祝いの横のたれ幕が引き破られた。「横断幕も旗ざおで引裂いていった。あちこちで歓声や拍手もわいた。止めようとする者はだれもいなかった。そのとき沖繩の人びとの激しい怒りを見たのである。」こういうことでありますが、私は、これは調べが間に合わなかったのですが、その町にいた人たちにとってはそんなふうに拍手した者もいなかったし、これをやった人は逮捕されたということも私は聞いております。この毎日グラフというのは公正な毎日新聞——毎日新聞というのは最近いろいろ問題になっておりますが、そこで出しておられる。これが日本国じゅうのいろいろな喫茶店とか床屋さんだとかいうところにある。それを日本の人たちが見てひどいものだなと——いまの日本の国民は特に目で見る。新聞で活字を見るよりも、いまはテレビだとかの映像が非常に強いわけですから、なおさら日本の国民は、沖繩は何をやっているのだろうか、あるいは逆にいえば、日本の国民にとってそんなにいやならかってにすればいいじゃないかということが当時沖繩の特別委員会でも出た議論である。私は、いま毎日グラフをどうこうするというわけではございませんが、いま日本の中で行なわれていることについて、もちろんこうした出版社に対して、大臣からあるいは総理府からこうしろということは言えないかもしれませんが、少なくともこういうことに対して、何か抗議ということでもないでしょうが、毎日新聞に対してお話しなさったことがあるのかどうか、あるいはこういうことがこのまま行なわれておっても、やむを得ないのだということで放置されておいていいのだろうか、あるいはこういうことをされるなら、われわれは違うのだ、沖繩開発庁としてはこうじゃないのだ、総理府からももっと別の意味の広報というものを大いになさるべきではないだろうか、反論をなさるべきではないだろうか、私はこういうふうに思います。  時間が参りましたので、いま私が申し上げましたことについて、日本国民が喜んでほんとうに沖繩返還を、復帰というものを喜ぶべきことでないというならばそれも自由でありますが、同時に日本の国民に正しい真実を伝えるということも私ども政治家のつとめであるし、また行政府のつとめでなければならぬというふうに思っておりますので、長く申し上げましたが、そのことについて最後に御見解なり御所見を承っておきたいと思います。
  186. 山中貞則

    ○山中国務大臣 政府広報というものは非常にむずかしいものであります。私どもは自民党政府であります。したがって、私どもの立場から見ると、自画自賛的なものでは、場合によっては政府の広報のあり方として批判を受けるおそれもあります。しかし事実そのものは、批判は賛否両論あるわけですから、事実を知らせるという広報でなければなりません。その意味で、私ども沖繩復帰に関する各種の特例措置その他も含めた沖繩復帰に対する各界、各層の考え方を、本土の新聞の紙面を借りたり、現地紙を借りたりなどしながら、別段意図的なものでなくて、みんなの気持ちがなるべく通ずるようにという手段もとりました。一方、また民間の報道機関においても、それぞれ自分たらの特色ある報道はされるでありましょう。しかし、それはやはり真実というものでなければなりませんし、真実がきびしいならば、どれだけきびしくても私たちはそれを受けとめなければなりません。しかし、それが直実でないものを真実のように報道されるということについては、これはやはり報道のモラルというものがありましょうから、私は、何グラフということでなくて、すべての報道というものが真実であれば、どんなにつらくても受けとめなければならぬ。しかし、真実でないものを真実のように伝えて誤認させるということは、あなたのおことばの中にちょっとありましたけれども、もし沖繩の人たちが本土に帰ってくることをみんなが喜んでいないというふうに、沖繩県以外の他府県がほんとうに思い込むようになってきたら、私は沖繩開発庁をつくり、そして振興開発計画や、あるいはまた金融公庫その他をつくって、沖繩県民のために、ほかの府県民を含めた全国民が、償いの気持ちを持って最大限の努力をしたいと願っておることに、暗い影のさすおそれが出てくる心配があります。そのようなことは、私はやはり真実であってはならないし、そうではないと思います。みんな本土の人たちも、沖繩に対して、すまなかった、長い間御苦労でございました、私たちのできる限りのことをいたしますから、がんばってくださいよ、という気持らが最大公約数であると信じておりますし、また沖繩の人たちも、ほんとうは祖国に復帰してよかったのだ、日本本土の一県になったわけでありますから、その気持ちを否定する人はほんとうはいないのだろうと私は思います。そこらのいわゆる表に出ない真実のものも、善意のものであるならば、私はやはりそれをくんで施策を立てなければならぬと思います。そういうことに影響の出てくるようなことを、私はなるべくマスコミの人たちにもしてほしくないという気持ちがあります。しかし、ただいまあげられました毎日グラフがどうであるか、その問題についての論評は差し控えます。
  187. 森喜朗

    ○森(喜)委員 ちょうど時間が参りましたので、大臣の御決意を私もたいへんうれしく感じておりますが、佐藤内閣、また政府自民党、別に私どもの自画自賛であってはならぬと私は思います。足らざるを補っていかなければなりませんし、沖繩の人たちの心というものはやはり大きく傷がついておるのでしょうから、それをこれからも大きくカバーしていかなければなりませんが、どうぞひとつ、特に沖繩の県民にとっては最も信頼のある山中長官でありますから、これからも政治家山中貞則として、こうした問題のお互いの融和に相つとめられますように、御努力を私からお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  188. 床次徳二

    床次委員長 中川嘉美君。
  189. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 長官にきょうは二、三御質問をしたいと思いますが、五月十九日の委員会の席上で、山中長官は、沖繩開発庁長官就任のあいさつの中で、「開発庁長官の任を与えられましたこと、初代長官として身の引き締まる思いでお引き受けをいたした次第であります。」このようにあいさつをされております。一体、復帰前の沖繩と復帰後の沖繩、これが具体的にどのように変わっているかという問題、すなわち、復帰後の県民が、復帰してほんとうによかったという感じを持っておるかどうか。持っておるという人もいると思います。また、こんなはずではなかったという感じを持っている人もいると思います。そういうわけで、長官としては率直に現状の姿をとらえて、どのように感じておられるのか、一番最初にこの質問をしたいと思います。
  190. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私自身も想像しなかったような、いわゆる三百五円交換と三百六十円という、念頭にありました沖繩の人たちのドルの円に対する価値というようなものに対して、通貨の理論というのは非常にむずかしゅうございますから、去年の十月八日にクローズして、九日にチェックした金額については、三百五円になった場合には、三百八円の計算で予算計上してありました二百六十億は、それだけまた差額分だけふえて、完全に補てんされるのだという説明も、なかなかよくわかってもらえません。事実上、交付金は一週間おくれから差額交付が始まりましたから、その実感もわかなかったのかもしれません。三百五円でドルをかえられて、その日から物価は、いろいろありますけれども、三百六十円もしくはそれ以上になったものさえある。そうすると、自分たちは、かえてもらう金は少なくなって、その日から食うために、生活するために払う金は高いものを払わされるという生活の実感というものが、物価の混乱というものの心情的な反映にあります。したがって、私どもとしては、理論的にも現実的にも、十月九日以降の成長率の、国民一人一人、県民一人一人に帰属すべき分はどう計算すべきかというのは非常にむずかしゅうございますが、過去五年の可処分所得の平均等をとってみたりなどいたしまして、大体三十億からちょっと出るような金額は、そのあと補てんされるべきものではなかろうかということでいま努力もいたしておりますが、このようなことは非常に説明を要する問題であります。そしてまた、私も沖繩で請われて琉大の久場教授や屋良主席と一緒にテレビにも出ました。そしてこのことが、おそらく皆さんに一番納得を得られない点であろうと思って、重点を置いて説明をいたしながら、その説明をする私自身が、はたして県民の何割に私のこの説明がわかってもらえるだろうかという心配をしながら実は説明をしたわけであります。  でありますので、一般的には、いま言ったように、復帰の日における物価が三百六十円以上になったものも含めて混乱をした、自分たらは三百五円しか手に入らなかったという、その他、その時点における日本政府の仕打ちはけしからぬというお気持ちが、県民の間に、これは保守も革新も、あるいはまた財界も、農山漁村も、あるいは労働者も企業者も、普遍的にそういう心情におちいられたであろう、私はそう思います。  私自身も、就任いたしましてからちょうど八回目の訪問をいたしたわけでありますが、おそらく本来ならば一番うれしい気持ちの、県民と一緒になって喜べる日の訪問であったと思っておりましたけれども、過去七回に比べて、一般の街頭の行きずりの車、あるいは道行く人、あるいは周辺の住家の窓から顔を出している人、店頭の人、そういう人の視線は、私に対して最も冷たい視線であると私は感じました。したがって、これは沖繩の人たちにとって金融理論、通貨理論というものはきわめてむずかしくて、そして三百六十円を、一週間架空の相場のものを、現物を交換する場合、一日でできるならば場合によって奇跡的なことができたかもしれませんが、それができないために、十月九日にやって、しかしなおかつ三百六十円の要請は続けてきた。しかし、それが復帰の日に現物の交換が一日でチェックと同じように終わりますれば、これは私は断行できたとも思いますが、実勢は三百三円台の円の力のときに、三百六十円の交換をいたします場合、それは本人の金であるかどうか、会社の手持ちの現金なのか、あるいは外人に頼まれて持ってきたものなのか、投機ドル、ユーロダラーだけでも四百六十億ドルといわれておりますが、そういうものが一週間のうらに入り込んできたのではないのか、これらの確認は絶望的に不可能であります。そういう大蔵省の理論というものも、私はやはり政府の一員として承認いたします。したがって、われわれがやむなくとった措置でありまして、三百五円との差は五十五円ある、そのことについては完全に補てんするのでありまして、現にもうすでに七〇%ほど現金部門については交付が始まっております。六月一日からは預貯金部門が始まっておるわけでありますが、これらの点が、逐次各家庭にそれぞれ追加所得として三百六十円相当分が入ってまいりますと、幾分私、鎮静してくるとは思いますけれども、沖繩県民の人たちが、復帰の日、それから一週間、十日という間に味わった気持ちは、自分たちは復帰という現実の日を迎えたことによってなぜこのような混乱を味わわなければならないのかという、だれに言いようもないあるいはまただれも答えてくれない苦しみにおとしいれたことについて、まことに申しわけないと思っておる次第であります。
  191. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 確かにこの復帰は、私もせんだって復帰賛成派のある著名な人に、復帰はどうですかというぐあいに率直に聞いてみましたけれども、その人はどららかといえば遠慮がちに、心からなかなか喜べませんと申しわけなさそうに漏らしておりました。これが賛成派、反対派を問わず、私は沖繩県民の偽らざる心情ではないかというふうに思います。国民はもちろんですけれども、いまおっしゃったように、長官も沖繩の物価の混乱には非常に頭を悩ましておられるのじゃないかと思います。いまの説明で大体わかりますけれども、この混乱の直接の原因ですが、これはいま御説明をいただいた範囲で長官の答弁を受け取ってよろしいかどうか。
  192. 山中貞則

    ○山中国務大臣 直接の原因はいろいろあると思いますが、そのほかには、いわゆる三百五円でしかかえてもらえなかった、その日から物価は三百六十円あるいはそれ以上になってしまった、こういうことが一つの理由であります。  さらにまた別の理由としては、われわれが国会の議論等を通じ、あるいはまたPR手段その他においても、このような特例措置がとられますから心配要りませんといって、各種、沖繩の人たちの生活に関係のある輸入物資、あるいは本土との間の物品税がなくなったり、あるいは割り当ては以前どおりだいじょうぶですからとか、あるいは米の値段は上がりませんよというようなことも言っていたのですけれども、しかし、復帰の日以降は米の値段まで上がった。これは国が責任を持つ物資であり、沖繩で農協買い入れ売り渡しの、あと払い方式をかりにとっているといっても、この米の値段は上がるはずはないのでありますが、あるいは島産品も驚くべき比率でもって上がってみたり、これらの点について、やはり私どもの沖繩県民全体に対するPRがもう少し足りなかったなという反省もしております。  原因はいろいろあると思います。しかしながら、やはり物が高くなる場合には、物が足りなくて、買い手が殺到して売り手市場になって、かってに値をつけても売れるからという場合が一番典型的なパターンだと思います。しかし、今回の場合は、復帰直前に三百五円ということが閣議で決定されたとたんに、いまのうらに買っておこうという、復帰直前にものすごい買いあさりがございました。したがって、皆さん相当な必要量の物資のストックがあったわけであります。そしてまた復帰後についても、さらに、現実の交換が始まってみると、店頭の円表示が変わったこと、その現実感が伴って、物はあるのにそれに対して売り手のほうが高い値をつけていくということが行なわれたわけであります。これはもちろん、沖繩には公取も法律として存在しておりませんでしたから、したがって、沖繩総合事務局に公取の部屋をつくりましたけれども、そこの職員が、本土出張職員は一人でございましたから、現地の琉球政府職員を三名引き取って四名でありましたのを応援にやりまして、そして直ちに、公取法を本土並みにかぶったから処罰するという言い方ではありませんで、あなた方のやっていらっしゃいます価格協定、こういうものは本土の公取法によって違反になっております、したがって、それはおやめくださいという行政指導をいたしております。現在、とうふその他九業種にわたって価格協定を廃棄していただきました。したがって最近の情勢では、琉球政府がつくりました標準的小売り価格一覧表というようなものにほぼ落ちつきつつある、このように思っておりますので、この落ちつくまでの間の混乱というものに対して、いろいろ原因も考えておりますが、これはしょせん過ぎたことになってしまいまして、私としてもたいへん申しわけない、こういうふうに考えております。
  193. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私たちは、かつて四十五年の十一月二十日に閣議決定をした例の復帰対策要綱の第一次分、これで、「通貨の交換は、公定の交換比率を基準とし、交換の手続については、県民生活に支障をきたすことのないよう円滑に実施する。」こういうふうに決定されているわけです。そのうち幾度か沖繩から、一ドル三百六十円で交換するようにという陳情もありましたし、政府もそれを了承したような答弁も確かにあった。また、昨年十一月の、返還協定が強行採決をされたたしか翌日だったと思いますが、持参した琉球政府の建議書、これも三百六十円で交換することを強く訴えている。県民は、要するに三百六十円で交換になるということをその当時は夢にも疑ってなかった。その当然の期待というものがむざんにも破られた県民の心境といいますか、これがどんなものであるかということは、ここで申すまでもないことですけれども、さっき長官が言われたように、物価騰貴の最大の原因というものが三百五円による交換であるということは自明であります。これは外務大臣だったですか、この間答弁されたとおり、昨年の十二月にワシントンで開かれた通貨調整会議の結果によって国際的に円の切り上げが決定したのだから、政府の責任ではないのだという意味答弁がありました。そういったものをはたして県民が納得するかどうかということ、これは大きな問題だと思います。  それで、長官の開発庁長官就任のあいさつにもあったように、ほんとうに全力を尽くしてこの償いといいますか、それに当たっていただかなければならないと私は思いますが、この三百億円ともいわれておる交換差損、これに対してどのような補償措置を具体的にとられるつもりかという点を、ここで明確にしたいと思います。確かに、三百億までは至らないけれども、県に対してはしかるべくやってくれというような形で政府として本手を打たれたようですけれども、個人個人にとってみれば現状は四苦八苦の状態である。一人平均で大体三万円の差損というものを現実に受けておる。先ほど答弁をいただいたように、現実に物価はどんどん上がっているのだという現状を踏まえて、ひとつこういった補償措置をどのようい具体的におとりになるつもりか、現時点でお答えをいただきたいと思います。
  194. 山中貞則

    ○山中国務大臣 琉球政府を国の立場でとらえてみて、国民総生産、国民所得、そして国民の可処分所得、こういう区分けをいたしまして検討してみますと、沖繩経済の可処分所得における向上率は、平均いたしますと一六・四%に相当するようであります。昨年の十月九日チェックいたしましたのは、それまでの沖繩県民のいわゆる個人に帰しておる個人所得について、完全に補てんする目的でやったわけでありますが、これについてはその後三百五円に交換レートが定まりましたことによって、先ほど申しました二百六十億の予算が十五億ふえます。そしてその後、預貯金の債権債務相殺のあとを補てんするいわゆる名寄せの段階において、想像いたしました件数よりもコンピューター作業において件数がふえましたので、いろいろ大蔵としては異論はありますが、実際上それを承認するという形をとりまして、それを含めますと、件数増による金額の増加を含めて、先ほどの十五億も中に入れて合計いたしますと三百九億に達するわけであります。それだけのものは、十月九日の時点における三百六十円との差額は完全に補てんされるわけでありますが、それから五月十四日までの足かけ八カ月に及ぶ間の、いわば個人所得に帰したであろう経済成長に見合う分はどうするということについて、先ほど申しました可処分所得の一一六・四というものを足がかりにして、八カ月、一年の四分の三をかけてみますと、三百九億に対する金は約三十二億くらいになります。これだけの金額のものは、理論的にも現実的にも——配付の方法はきわめてむずかしい理論的あるいは現実的な問題が起こりますから、これは沖繩県とよく相談をいたしますが、そういうものを沖繩の人たちに補てんする必要があるというふうに考えておるわけであります。  なお、この三十二億というものについては、一応の積算の根拠はありますが、これをどのように配分するかという問題について、私どもいろいろの案を検討はしておりますが、琉球政府のほうからは、卸売り市場というようなものをつくってくれとか、あるいは婦人団体連絡協議会では消費生活センター的なものをつくってくれとか、いろいろの要望がありますが、それらが、はたして県民のそれぞれの所得の向上に見合った分のいわゆる差損分を補てんしたこととして、皆さんが納得してもらえる手段であるかどうか、これらは疑問なしといたしませんので、いまは選挙の最中でしょうから、選挙でも済みましたならばどのような手段がいいかということを相談をして、県民多数の納得を得る道で最大限の補てんをしてまいりたいと思います。
  195. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いまたいへん具体的な御答弁があったようですが、確かに県民の納得というものが得られないということになると、またこれ新しい問題に発展をしていくわけですから、その点をさらに慎重に詰めていただいて、ほんとうにそのような問題が解消するような方向にひとつお願いをしたいと思います。  二、三問と申しましたので、もう一つだけお伺いしますが、現在、沖繩の業者が運転資金を必要としていることは事実ですけれども、非常に低利の運転資金を早急に配慮することが急務じゃないか、このように思いますが、こういったことによって商品が入手できて、そして物価の安定に少なからず役立つのではないかと思います。そういった意味で、こういったことの責任も、三百五円にしたことが直接の原因ではないかと私は思いますけれども政府として何らかの措置をとるべきじゃないかと思うのですが、この点はいかがですか。
  196. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、御審議願いました沖繩振興開発金融公庫、これで、従来の資金量の数倍になるようなものが一応予定されておりますし、ことに復帰と同時に、雇っている人たちが雇われている人に対して三百六十円相当の円を支払う立場が、ほとんど経営者として、これは欲すると欲せざるとにかかわらず、雇われている人たちの要請として普遍的に行なわれておりますので、これに対して与野党の御希望等もございましたし、政府も、大蔵委員会における金融公庫法設置の可決の際の附帯決議を受けて、八十億、七年償還、年利三分、二年据え置きという条件の金を設定をいたしましたが、これは直らに必要となる金でありますので、復帰の日、五月の十五日に金融公庫の受付業務を開始をいたしまして、順調にその処理が進んでおりまして、受付ばかりでなしにすでに貸し出し等もきまったわけでございます。  当初、事務的には事前PRの手段をとっておりましたが、中小企業の定義は一応当てはめて、中小零細企業にこの八十億は回す。別途産発資金、大衆金融公庫等の既定のワクについては、これは大企業等もいいというようなことで一応やっております。その中で、貸し出しの制限額は一千万円である、こういうふうに一応言っていたわけでありますが、しかし理論上は中小企業の定義を当てはめますと、従業員は三百名までこれを認めていかなければならぬということになります。そうすると、一千万円では大体年間一人八万と計算をして、八十億でありますから、約十万名というものを考えたわけであります。三百名の数の中小企業というのは沖繩にあまりありませんが、理論的にはあり得るわけでありますから、その人たちは一千万円ということで頭打ちということになりまして、その点はきわめてむずかしい、混乱を起こすということで、現地で私どももそのような苦情を聞きましたので、直ちに帰りまして、大蔵と折衝して、そしてきまっておりました内容の業務方法書も書きかえまして、そして沖繩県民に、あらためて一千万円のワクを取っ払いましたから、従業員の数に八万円をかけた金額まで貸し出すということで処理いたしましたところ、この復帰直後の資金手当てというものは順調に消化されつつあると考えます。今後は、沖繩のそのような混乱と痛手をこうむった中小企業を中心とする経済界の資金需要にこたえるために、振興開発金融公庫の本来の目的を急速に達成するための業務的な努力、行政的な配慮をしてまいりたいと思います。
  197. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 これで終わりますが、この国会が終了しますと間もなく佐藤総理は引退を表明して、佐藤内閣も総辞職することが常識となっているということ。したがって、総務長官の場合もその職を去られると思いますけれども、私たちは、山中長官が二度にわたって総務長官として沖繩問題に真剣に取り組んでこられた態度には、これは率直に敬意を表したいと思います。ただ、事志と違って、政府の公約がほとんど——ほとんどといいますか、なかなか実現していないということを沖繩県民とともにはっきりいって残念に思うわけですが、長官はひとつ残り少ないあとわずかの任期中に、総務長官の政治的職責を最後まで全力投球して、そういった姿勢で全うして、沖繩県民に報いるように強く御要望いたしまして、終わりたいと思います。
  198. 床次徳二

    床次委員長 門司亮君。
  199. 門司亮

    ○門司委員 きわめて簡単に二、三だけしか聞きませんが、最初聞いておきたいと思いますが、公取の諸君に来てもらっておるはずでありますので一応聞いておきたいと思います。  沖繩の物価が非常に高くて、これを何とか抑制しなければならぬということで、閣議の決定で、公取委員の発動ということばはどうかと思いますが、出かけられて処置をされたということでありますが、その後の経過はどういう形になっておるか、それをひとつ御報告願っておきたいと思います。
  200. 吉田文剛

    ○吉田(文)政府委員 お答え申し上げます。  公正取引委員会は、沖繩におきます緊急の物価問題に迅速に対処してまいるという方針で、現地の公正取引室の応援といたしまして、これまで五月二十五日からでございますが、三名の係官を派遣いたしまして実情を調査させたわけでございます。その結果といたしまして、豚肉、クリーニング、食パン、プロパンガス、ゆでめん、とうふ、美容、飲食店、理容、この九業界におきまして、これはやっているものは組合等の団体でございますが、九業界におきまして価格等の協定の独禁法違反の疑いの事実が判明をいたしましたので、それらの協定を破棄するように行政指導を行ないました。それによりまして、当該業界ではこの行政指導を了承いたしまして、自主的に協定を破棄いたしました。公正取引委員会といたしましては、今後も独禁法に基づく事業者団体の届け出、これは復帰の日から六十日以内に届け出るということになっております。七月十三日までの間に届け出をしなければいけないわけでございますが、この届け出を督促いたしまして、独禁法の周知徹底をはかるとともに、独占禁止法違反の事実があれば、迅速適切に規制措置を講じてまいりたいと思います。  なお、その後の協定を破棄した結果どうなったかということでございますが、これは、二週間以内にこちらが命じました改善措置の結果をこちらに報告するということになっておりまして、一番早い日に命じたのはパンでございましたか、五月二十七日でございまして、期限が六月十日ということになっておりますので、まだ違法な協定を破棄しました、それでどういうふうな措置をとりましたという報告は参っておりませんけれども、こちらで調べましたところ、パンと豚肉につきましては、前に比べて若干値下がりをしておるという報告を受けております。その他の品目につきましては、まだ十分に実情を把握しておりません。おりませんが、関係部局ともあるいは沖繩県庁ともこれは連絡をいたしまして、至急そのあとがどうなったかということをいま調べておる段階でございます。なお、沖繩主婦連も、いま申し上げました協定破棄を命じた九品目について、その後どうなったかというのを調査するということになっております。私どもも早くその実態を調べた上、承知して、もし協定破棄の実効がないようならば、これは関係省庁とも連絡いたしまして、価格の引き下げ等の指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  201. 門司亮

    ○門司委員 これはちょっと長官のほうにお尋ねをするのですが、まあいまのことでまだはっきりした数字、はっきりした報告はない段階で詰めていってもどうかと思いますが、最初物価対策の費用として十億ですか十一億ですか、向こうへ措置されたはずですが、これらの効果は幾らか出ておりますか。お金を向こうへ渡して、そうして向こうで小売り価格というようなものについてのチェックをされた、いわゆる復帰前の措置としての態度ですが、これは幾らか効果が出ておりますか。これと今度の場合と関連がないわけじゃないのであって、その辺の問題、おわかりならひとつ御報告願っておきたいと思います。
  202. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは復帰前に四十六年度予算と四十七年の暫定予算、いわゆる沖繩の復帰までのこま切れ予算ですが、これを通じて、当初四百四十品目に合意いたしましたときの対象外にしておりましたユーザンスにかかるもので、三月三十日までに入ったものの復帰後支払いがくるものもこれを見ようということになりましたために、合計六十億を支出することになっております。したがって、この効果は明らかになっておりまして、大蔵省にどうも見てもらいたくない写真まで登場したわけですけれども、復帰前に那覇港の埠頭にかけ込み的と思われる、いわゆる差損が補てんしてもらえるわけですから、物資が相当シートをかぶって、あと流通段階に引き取らせるのにずいぶん苦労いたしましたが、そういうようなこと等もありまして、相当効果をあげたものと思っております。したがって、今回の物価高騰による混乱というものは、先ほどもちょっと答弁をいたしたのでありますが、正常な形である——物資が足らないために売り手が高く値をつけても幾らでも買い手がつく、売り手市場になったがために物価が高騰したわけではなかった。いわゆる三百五円でしかかえてもらえなかった、これは正確にはそのとおりでありませんが、その時点においてはそういう受け取り方をされてもやむを得ない現実でございましたし、そして、その日からあるものは三百六十円以上に換算されて物価が上がっておる。それを買って生活しなければならないというような混乱を起こしたわけでありますから、その意味における私たちの配慮というものが足らなかったという点は確かに問題があったと思います。しかし、これは復帰の日から交換が終わり、そして一週間後から、先ほど答弁したわけでありますが、御不在でありましたけれども、三百九億に達する差損の為替の交付を始めております。これは大体七〇%も渡っております。六月の一日からは預貯金の交付をいたしておりますので、これらのものがまいりますと、大体において、十月九日時点における県民所得というものに対しての三百六十円との差は五十五円の開きになったこと、三百五円になったことによってそれがふえたわけであります。したがって、その差は完全に補てんされる。しかしながら、十月九日から五月十四日までの沖繩県の経済成長の、個人の所得に寄与したであろうと思われる成長の分が理論的にも現実的にも見てありませんので、これについて大体三十億余りというものをいま理論的に計算をして、どのような手段が、一番県民が普遍的に納得をし、完全に補てんされたという実感を持って受けとめられる手段になるだろうかということで検討いたしておりますが、これは県知事でも選ばれたあと御相談申し上げないと、いまはとてもそういうあれはないかもしれませんが、しかしその用意があることは、いずれ政府として具体的に県民の方にお示しをして、安心をしてもらわなければならぬと考えております。
  203. 門司亮

    ○門司委員 それ以上詰めてもしようがないと思いますから、もう一つ聞いておきたいと思いますが、これはもう沖繩には全然ないことだと私も確信をしておりますが、奄美のときに、この実にやっかいな問題が一つあって、いまだにその解決がつかないものがある。いわゆるガリオアの資金の行き先であります。まだ返済の十分に終わってない——大蔵省はもうこれは二度ぐらい打ち切りの処置をしましたけれども、まだそれでも残っているのがあって、この間徳之島から手紙が来て、何とかしてもらいたいというあれがあるのですが、こういうのは沖繩には全然ないのでしょうね。水道の資金だとか電気の資金にはガリオアが入っているようでしたけれども、ほかにそういう資金が民間のほうに出ておるということはないでしょうね。
  204. 山中貞則

    ○山中国務大臣 奄美大島の問題がまだ片づいていないということは実は私は初耳でありますが、この問題が提起されたのが——奄美大島の問題としてそういうガリオアによる資金がとても返せないようなものが、なおかつ奄美振興開発金融公庫に残っておる、そういうことが言われましたのが昭和三十六年ごろでした。それから御相談もしながら、大体不良債権あるいはまた見込みのないもの等に対する切り捨て等を行ないましたので、もう終わっていたかと思うのでありますが、そういう陳情の手紙が来たということであれば、あるいは特殊なケースの人が、まだいずれの切り捨て、たな上げ等にも該当しない方が残っておられるのかもしれません。沖繩の場合に当てはめてみますと、おそらく開発金融公庫の前身でありました民政府の金融公社のガリオア資金の分、この分でやはり奄美大島にも似たようなケースがあらわれたのではないかということで、典型的なのは沖繩紡績等の問題が、これはまあまあ再建策いかんによってはそういう範疇に入らないかもしれませんが、ありますから、対個人の問題でも一応事前に十分に、前車の轍を踏まないような措置はいたしておるつもりでありますが、出発した後も資産を承継したからといって、それが全額出資に回ったからといって、それであとはどんどん取り立てるんだというようなことは考えておりませんし、奄美大島の二の舞いは踏まない、前車の轍は踏まぬ。したがって、もしこれから実態を洗ってみて、そうしてほんとうに奄美に見られたような例で、もうとても大体返せと言うほうが無理だというようなものがありましたならば、これは主として小口の個人の問題になると思いますが、そういうものについてはすみやかに処理をしていきたい、そういう御心配をかけないように片づけたいと思います。
  205. 門司亮

    ○門司委員 それでもう一つだけ聞いておきたいと思いますが、これはやはり沖繩経済全体にいえることで、いまの問題とやや関連性を持った問題であります。これは調べればむずかしい問題でもありませんし、私どものところにも幾らか資料がありますが、なおこの機会に確かめておきたいと思いますことは、沖繩の経済の中の資金の構成が一体どうなっているかということであります。これはいろいろいわれております。沖繩の諸君の持っておる経済界における資金というのは、非常にパーセンテージが低いのだ、あとはほとんど外から来ているのではないかというような、要するに経済関係に最も縁の深い沖繩における資金構成というものが、われわれの知っている範囲でも多少わからないわけではありませんが、この機会に、もし政府のほうで、これが的確とはいえないかもしれないが、構成がわかっておるならひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  206. 山中貞則

    ○山中国務大臣 金融機関ごとのそういう統計の数字はもちろんあります。しかしながら、たとえばアメリカ系の企業、第三国の企業その他の実績もちゃんとわかっておりますが、はたしてたとえば琉球セメントのカイザー社の資金が何%とか、そういうふうに的確に全琉の経済の中で沖繩県民以外、日本本土以外の資金、外国の資金がどれだけのウエートを占めておるかという問題については、そのような詳しい調査、区分けというものはきわめて困難であるせいもありますが、実際はまだそこまでいっておりませんので、これは今後沖繩経済の資金量、そして経済の自身の力というものをやはり判断する上に必要でありますし、またよく議論されました、既存外資系企業の既得権というものの中身は一体何なんだ、単に営業形態ばかりではないはずでありますから、ここらの問題は、今後私どものほうで詰めてまいりまして、そういうことで沖繩経済の実測を誤らないようにしたいと考えます。
  207. 門司亮

    ○門司委員 私がそういうことを聞きましたのは、やはりいま長官からもお話のありましたように、経済の推移というのは非常にむずかしいのであって、ことにアメリカがいまドル防衛に必死になっておりまして、これがどういう形で引き揚げていくか、どういう処置をするかということは、沖繩経済に、かなり私は各方面にいろいろ影響が出てくると思うのです。そして、ことに沖繩の力は非常に弱いのでありますから、アメリカさんにいじめられるともうそれっきりになってしまうというのが、かなり私は出てきやしないかと思う。そういうものを心配して聞いたわけでありますが、ひとつ政府でもそういう点については十分御配慮を願って、そういう事件の起こらぬようにひとつ処置していただきたいことをお願いをしまして、きょうの質問は終わりたいと思います。
  208. 床次徳二

    床次委員長 次回は来たる十五日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時四十分散会