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1972-03-16 第68回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十七年三月十六日(木曜日)     午後零時三十六分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 池田 清志君 理事 本名  武君    理事 上原 康助君 理事 美濃 政市君       宇田 國榮君    小渕 恵三君       大村 襄治君    加藤 陽三君       佐藤 守良君    正示啓次郎君       田中伊三次君   三ツ林弥太郎君       湊  徹郎君    森  喜朗君       山下 徳夫君    豊  永光君       佐野 憲治君    中谷 鉄也君       西宮  弘君    伊藤惣助丸君       斎藤  実君    門司  亮君       東中 光雄君    安里積千代君       瀬長亀次郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         外務大臣官房会         計課長     柳谷 謙介君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省条約局長 高島 益郎君  委員外出席者         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ――――――――――――― 三月十一日  沖繩の通貨切替えに関する陳情書外二十四件  (第  八九号)  同(第一三四  号)  沖繩軍用地開放等に関する陳情書  (第九一号)  北方領土の早期返還に関する陳情書  (第九二号)  同外一件  (第一三二号)  沖繩浦添工業団地造成に関する陳情書  (第一三三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  沖繩及び北方問題に関する件      ――――◇―――――
  2. 本名武

    本名委員長代理 これより会議を開きます。  委員長は所用のためおくれますので、委員長の指名により、私が委員長の職務を行ないます。  沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。上原康助君。
  3. 上原康助

    上原委員 時間がきわめて限られておりますので、二、三にしぼって外務大臣にお伺いをしたいと思います。  昨日、沖繩返還協定のいわゆる批准書日米両国交換されて、いよいよ五月十五日、あと二月目に日本施政権下に入るわけですが、ここまでくるまでにいろいろと問題があったわけですが、まず外務大臣お尋ねしたい点は、批准書交換をされた、いわゆる法的な手続面というのはほとんど完了したということになるかと思うのです。しかし、御承知のように、まだ解決をしなければいけない問題というのがたくさん残っておる。そこで、この残された六十日の間に、おもに外務省としてどういう事柄を片づけなければいけないのか、また、円滑に本土施政権下に入るためにどうしなければいけない問題が残っているのか、そういう面についてお尋ねをしたいと思うのです。
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 きのう批准書交換されまして、条約上の一切の手続は終了した、こういう段階に入ったわけでありますが、お説のようにこの六十日間、この協定が効力を発生するまでの間において、まだ準備を取り急がなければならぬ諸問題があります。  その一つは、核の問題です。サンクレメンテ会談において、核につきまして両首脳が合意した点がある。それは、返還時点において、沖繩には核は存在をいたしませんという確認の問題であります。これはどういう方式にするか、サンクレメンテ会談以来ずっと協議をいたしておりますが、まだ最終的な結論には到達いたしておりませんが、いずれにいたしましても、五月十五日までにはこれをきちんとしたものにしなければならぬ、それが一つの問題であります。  それから、もう一つの問題は基地の問題です。基地につきましても、サンクレメンテ会談でこれは合意するところがあったわけでありますが、わがほうといたしましては、人口集密な地域の問題あるいは沖繩再建計画支障のある地域の問題その他、あるいはレクリエーション施設の問題でありますとか、いろいろな点を掲げまして基地に対する配慮要請したわけでありますが、これを大統領は了といたしまして、基地整理縮小には協力いたしましょう、こういうことになっておるわけです。ただ、これは沖繩返還前の問題ではありません。沖繩返還前の問題としてこれを具体的にきめるということになりますれば、これは返還協定改定になります。そういう立場はとりませんけれども返還後においてはこれに協力をいたします。こういうことなんですね。しかし、わがほうといたしましては、返還前にも下話というか、そういうものはできるだけいたしたい、こういうふうに考えておる。それが第二の点です。  それから第三には、これは施設庁が担任すべき問題でありまするが、労務契約また土地契約の更新、そういう問題があるわけでありまして、これは施設庁がいま鋭意努力をいたしておりますが、もし外務省において協力すべき点がありますれば協力をする、そういうかまえでございます。  まあざっと言うとそんな点ではなかろうか、そういうふうに考えております。
  5. 上原康助

    上原委員 大体そういう御回答があろうかと思ったのですが、特に、返還協定批准書交換する段階で、核問題についてアメリカ側から公式に取りつけ得なかった点、これはサンクレメンテ会談で、大統領の指示を受けてロジャーズ国務長官公式文書というものを取りつけるようになっているというような報道なり、あるいは予算委員会等における総理や外務大臣の御答弁があるわけですが、かなりこの点についてはわれわれ疑問を持っております。  この中身については、いずれまた機会を見て十分議論をいたしますが、復帰時点、五月の十五日段階では核はなくなるのだということを、これまで繰り返しおっしゃっているわけですが、それを確認する方法とか、あるいは具体的に、現在核が撤去される作業が現地において進められているのかどうかも全然わからない。ただ、五月の十五日段階で核はなくなりましたという声明なり文書というものを日本側に明らかにするということだけでは、依然として核抜きという保証というものが非常に立証しにくい。したがって、ここで一点確かめておきたいのは、批准書交換時点で、その核抜きの問題についても明確にできなかったいきさつ、また、五月の十五日に核はなくなるということですが、いつアメリカ側は公式な見解というものなり、核は完全に撤去されたという声明といいますか、日本政府との取りかわしというものをやるのか、そこいらについて、もう少し具体的に説明をしていただきたいと思います。
  6. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカ政府核抜き宣言というか声明というかあるいは書簡というか、そういうものは、これは五月十五日返還のその日にとり行なうということに相なります。  まだきまってないのはどういうわけだ、こういうお話でありますが、私どもといたしましては、このアメリカが発出する宣言なり声明なりあるいは書簡なり、これらのものをできるだけ内容を充実したものにしたい、こういうことがあって話し合いをしておる、こういうことであります。
  7. 上原康助

    上原委員 核抜きの問題は、昨年の返還協定審議過程でも最も対立した点なんです。五月十五日で明らかにするということですが、現実的に沖繩にある核兵器あるいは核体系貯蔵庫等も含めての撤去というものがなされていない。そういう意味で、まだ私たちは、非常にこの点についての疑惑を持っております。きょう時間がありませんので、一応この程度お伺いしておきますが、私たちは、やはり核を完全に撤去をさせるという確認というものまで取りつけなければいかない課題だと思うのです。本土基地にも核が持ち込まれたといういろいろな証言なりあるいは報道等がなされている段階で、米側が排他的に基地を構築をする中で核兵器を貯蔵している、それが具体的に撤去をされるという保証というのは、いまのところない。そこで、確認方法を含めて取りつけるように、この点は一応念を押しておきたいと思います。  次に、基地縮小計画ということがいまあげられたのですが、報道によりますと、サンクレメンテ会談に、人口集密度あるいは経済開発に必要な地域について、日本政府は何か十八カ所程度基地返還をしてもらいたいという要望をしたとかしなかったとかいうことがありますが、そこいらはどうなんですか。もし返還要求しているとするならば、具体的にどの地域についてアメリカ側といまお話し合いを進めているのか、明らかにしていただきたいと思うのです。
  8. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず、基地の問題でございますが、この基地の問題につきましては地図を広げまして、こういう状態であるという話を、これはもうずいぶん時間をかけてやったのです。ただ、アメリカ側の反応、これはなかなかきびしいです。つまりアメリカは、日米首脳会談に先立ち、その直前にヨーロッパの三首脳会談をしておる。この三首脳との会談におきましてはNATO兵力、こういう問題が論議の中心になったと聞いておりますが、特にドイツのごときは一兵も減らしたくない、金を積み増しをしますから、ぜひひとつ駐留を続けてもらいたい、こういうような要請をしておる。その直後のわが国首脳との会談でございまするものですから、私ども基地の問題、これは沖繩の問題ばかりじゃないです、本土も含めての話をまず出す。そうすると、非常にこれに対する理解が、ほかの問題に比べると鈍いのです。なぜそう基地基地と言うのでしょうかというような顔色である。私どもはそれに対しまして、誤解があってはならないと思いましたから、日米安全保障条約または日米安全保障体制というものは堅持する方針だ。ぜひこれを続けたい。わが国における基地存在というものを否定するわけじゃないのだ。ないのだが、その基地あり方について問題がある。  特に、そういう基地あり方ということになると、これは沖繩だということで、沖繩基地の問題に入っていっておるわけでありますが、沖繩は、なぜそれじゃ基地あり方ということに問題があるかというと、とにかく本土基地と違いまして、二十六年間、何か敗者と勝者というような関係に置かれておった、あの環境の中の米軍基地である。そういうムードというようなもの、背景というようなものがいやしくも返還後にあとを引くというようなことがあっては、これはたいへんだ。それから、地図を広げてというふうに申し上げましたが、実情からいいますると、もうとにかく自分の村の自分の役場が置けないというようなところもある。学校で、よその村に設置しなければならぬというところもある。そういうような状態であって、もし基地をそういう状態で放置しておきますると、基地存続自身にも問題が出てくる。これはよほど考えてもらわなければならないものなんだと——私は、行く前から、沖繩事情を知っておる人あるいは沖繩問題関係を持っておる人は、基地問題の重要性というものを理解しておったというふうには思っておったのですが、アメリカ首脳というものが、基地問題の重大性というものをよく認識しておくということが、今後の基地問題の扱いに非常に重大であるというので、これに時間もかけ、基地に対する基本的な考え方までも示して話し合った。  そういう結果、先ほど申し上げましたような理解が生まれてきた、こういうことなんでありますが、アメリカは、先ほども申し上げましたように、返還前に基地を返せという、こういう正式の交渉には応じない。正式のですよ。これは返還協定改定交渉になる、こういうかたい立場をとっております。わがほうにおいては、しかし、それにもかかわらず事前の、正式とは言わぬけれども事前準備はしておきたいというので、政府内部準備も進めまするし、それからアメリカに対しましても内々若干の接触をとりつつある、こういうのが実情でございます。したがって、どこの地点をどうのというようなことは、今日この段階では申し上げることができません。
  9. 上原康助

    上原委員 あまり要領を得ない御答弁なんですが、私がお尋ねしているのは、確かに返還前にどこどこを返してもらいたい、あるいはこうこうするということは、政府のいまの立場ではやれないということかもしれませんが、要は、各自治体なり地主のほうでぜひ返還をしてもらいたいという地域というのは、すでに日本政府に対して何度か陳情なり請願というのが出ていると思うんです。そういう地元要求に基づいて、米側復帰後の基地縮小整理というものを進めていくお立場にあるのか。あるいは、日米安保条約の線に沿ってということになりますと、やはりアメリカ側の主張というものが第一義的に考えられる。そうではなくて、あくまでも地域自治体なり住民の要求に沿った復帰後の基地整理縮小返還というものを考えて、いま下準備なりいろいろやっておられるのか。その点はいまでも明らかにできると思うのですよ。そういった政府姿勢というものをまず伺っておきたいわけです。十八カ所程度返還要求したというようなことは、どうなんですか、もう少し姿勢の問題と、具体的な中身は明らかにできないにしても、どういう立場でやっていかれるということ……。
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 姿勢のほうは申し上げます。  地元の御要請、これなんかは重要な資料といたします。また、沖繩のこれからの建設計画考える場合の必要性、こういうものも重要なる資料といたします。また、レクリエーション施設等々の問題につきましてもこれを取り上げる、こういうふうにいたしますが、まあそれは当方の要請になるわけです。しかし、米国側といたしましてはまた米国側立場に立っての要請があるわけです。そこで話し合いと、こういうことになるわけです。そういう種類の話し合いが、返還が実現いたしました暁におきまして始まっていく、こういうふうに御理解願います。  それから、具体的にどこのどれをどうのという点については、今日この段階では申し上げることができませんです。
  11. 上原康助

    上原委員 この点は、もちろん私たち立場というものは、基地そのもの存在というものを否定をいたします。しかし、膨大な軍事基地をかかえているという現実的な面を踏まえます場合に、少なくとも自治体なり地域開発に必要な部分基地密度というもの、面積というものを早急に——復帰後の沖繩経済地域開発の面で大きな支障を来たしている部分については、アメリカ側立場だけをとらえるのでなくして、ぜひ解決をすべき緊急な課題だと見ているわけなんです。この点について直接の対米折衝に当たる当局として、もっと前向きで取っ組んでいただくように、この点も要求をいたしておきたいと思うのです。  そこで、大臣の御説明の中で一つ抜けたものが私はあると見ているんですが、復帰までに片づけなければいかないものに、現在那覇空港に駐留しているところのP3の問題がまだ解決を見ていないと思うのです。これについては一体どうなさるのか、また、現段階米側とどういう話し合いがなされているのか、御説明をいただきたいと思います。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 那覇空港は、返還時に日本にきれいな形で返還をする、こういう約束になっております。その約束は履行されるんです。したがって、P3はもう那覇空港にはおらない、そういう状態になり、それに必要な施設、これは日本国有財産に移管をされる。そしていま、P3の移転先はどこだというと、普天間飛行場です。そういうことはまあ大体ここで、そういうはっきりした見通しだと申し上げていいと思います。  ただ、多少問題が残っておりますのは、これは沖繩の問題じゃないんです。つまり、普天間にP3が移った場合に、その普天間飛行場が狭過ぎる。そこで、そこにある一部の飛行機を本土のほうに移したら、というような意見米軍内部にあるようであります。まだ私どもに対してはっきりした申し出はございませんけれども、そういうことになるとまた本土のほうでなかなかやっかいだなあといって頭をかかえておる、こういうのが率直な実情でございます。
  13. 上原康助

    上原委員 アメリカ局長いらっしゃいますか。このP3の移転費用ですね、いま、那覇から普天間に移駐なさる、移転先だという大臣の御説明ですが、この移転費用というのは日本政府が持つおけでしょう。その額は幾らなのか説明していただきたいと思うのです。
  14. 吉野文六

    吉野政府委員 お答えいたします。  この費用は、先方とわれわれの大体の概算からいいますと約二千万ドルぐらいだろうといわれております。当面、来年度の予算といたしましては三十八億円、われわれとしては要求しております。
  15. 上原康助

    上原委員 移転先普天間だ。そうしますと、現在普天間飛行場にあるKC130というのが岩国に移る、あるいは岩国のP3が三沢移転要求している、これがアメリカ側態度だとわれわれ見ているわけなんです。大臣は、沖繩から本土に移駐させるということはやっかいな問題が起きるということなんですが、アメリカ側がそういう要求をしていることに対して日本政府は今後どうしていかれるのか、また玉突き方式で、この問題は、非常に内心は、実際御苦労なさっていると思うのですね。やっかいな問題が関係していると思っていると思うのですが、今後の基地問題とも重要な関係があるし、政府姿勢というものは、沖繩だけでなくして、本土を含めて非常に注目していると思うのです。最終的な解決方法はどうなさるのか、大臣の所見を明確に賜わっておきたいと思うのです。
  16. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ、これはやっかいなうわさが出てきているなと思っておるのが、率直な実情でございます。これは正式なアメリカ要請が出た場合に、どういう事情でどういうふうになるのか、こういうことを詳細に伺った上判断をする、こういうのが今日の態度でございます。
  17. 上原康助

    上原委員 いま、アメリカ側の正式な要請があった場合に御判断なさるというお答えですが、アメリカ側からまだ全然、具体的な要請なりこうしてほしいという申し入れは、日本政府にないのですか。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだうわさ話を聞いておるという段階でありまして、正式な要請には接しておりませんでございます。
  19. 上原康助

    上原委員 正式な要請を受けてないということですが、仮定お尋ねをしておきますが、普天間にあるKC130というものを岩国なりに移す、あるいは岩国にあるP3をさらに三沢に移す、そういう移転費というものも全部日本政府肩がわりをすることになるわけですか。日本政府費用移転はさせることになるわけですか。
  20. 吉野文六

    吉野政府委員 この御質問は、仮定段階でございますから、具体的に実情がはっきりするまでは正式にはお答えできない性格のものと思いますが、しかしながら、御存じのとおりP3は那覇空港から出てほしい、要請したのは日本政府でございまして、P3が出ていくためにはわがほうが費用を持ってもいいからひとつ出てほしい、こういうことで話がきまったわけでございますから、したがって、それに要する費用日本側が公平の立場からも持たざるを得ない、こういうことでございます。
  21. 上原康助

    上原委員 たいへんなお金が、国民の税金が使われるわけなんです。この二千万ドルというのは、アメリカ側に払う三億二千万ドルには入ってないわけでしょう。これは、新しい追加予算として負担をしなければいけない費用だと見ていいわけですね。
  22. 吉野文六

    吉野政府委員 三億二千万ドルにはもちろん入っておりません。三億二千万ドルは、御存じのとおり、協定に規定されておるとおりの方法で支払うわけでございます。なお、このP3が移転するために必要な費用というものは、先ほど申し上げましたとおり、日本政府がこれを要請した以上もたざるを得ない、こういうことでございます。
  23. 上原康助

    上原委員 軍事面にはいろいろ予算というものをかげながら、一方においては全然出していただけない。たとえば基地労働者の問題など、どんどん解雇をされても、……。二千万ドルもあれば、もっと有効に県民の要求にこたえていく政治というものができると思うのです。その点を一言だけ付言をしておきたいと思います。  時間が限られておりますので、この中身についてはもう少し、私のほうでもいろいろ調査していますので、後日議論をいたします。  あと一点お尋ねしておきたいのは、復帰後のことになるのですが、中国の代表が沖繩に行きたい、卓球選手なり、そういうことがいま進められつつあります。そこで、もちろん施政権返還されますと、現在のような渡航の繁雑さなり困難性というものはすべて取り除かれるわけですから、支障はないと思うのですが、外務大臣お尋ねをしておきたいことは、中国要人なり中国方々沖繩訪問をしたいということに対して、復帰後、あるいは復帰前でもいい、政府としてこれに対してどう扱うのか、施政権返還されても、膨大なアメリカ軍事基地があるということで、何らかの干渉なり介入、あるいはまた渡航させない、入域を認めないというようなことがあっては困ると思うのです。これに対してどうお考えなのか、御答弁を賜わっておきたいと思います。
  24. 福田赳夫

    福田国務大臣 外国人の入国問題、これは法務省専管事項でありますが、たまたま外務省意見を求められることがあります。そういう際には、私どもは弾力的な配慮をしたい、こういうふうに考えております。
  25. 上原康助

    上原委員 弾力的な配慮ということになりますと、前向きであるかのような、ないかのようなお答えなんですが、日中国交回復ということが、いま当面日本外交の一番重要な課題だと思うのです。そういう意味でも、むしろ歓迎するという立場で、外務省としてはあたたかく迎え入れる、そのことが国交回復にも大いにプラスになると考えます。弾力的という意味はどういうことなのか、もう少し大臣の腹の中を率直に聞かしていただきたいと思うのです。
  26. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ弾力的でおわかりと思いますが、好意的というふうにいってもいいです。これは一般論を言っておるのですからそういうことばになるので、何か特定の問題が起きてきますれば、それには的確にお答えしますが、一般的には、好意的な配慮をするという態度法務省に望む、こういうふうに御理解願います。
  27. 上原康助

    上原委員 これとの関係でもう少しお尋ねしておきます。  卓球選手とかあるいは貿易関係ですと短期間の滞在になりますので——もちろん日本本土にも、これまで中国要人なりそのほかの人々が来ておられるわけですから、さほど問題はないかと思うのですが、特に、沖繩風しん障害児治療に対して、中国はり師を招きたいということが出されているわけなんです。また、関係者からも強い要望があって、どうしても中国はり治療によって治療をしたい、子供たちの健康を回復をさせたいという方々要望が強く出されております。こういうはり師のお仕事をするという場合は、かなり長期の滞在ということも考えられます。もちろんこのことは、法務省にもいろいろお尋ねをしたいわけですが、何といったって外交問題の重要な課題でありますので、こういうはり師を招くということに対しても、これは本土でもそういう要望は出されておると思うのです。特に沖繩の場合ですと、何かとアメリカ側からの横やりのいろんなものが出るかもしれない。こういった医師、医療の治療をやる、そういう医師関係を招くという場合にも、先ほどお答えがあったように、弾力的に前向きに好意的に取り計らうお考えがあるかどうか、お聞きをしておきたいと思うのです。
  28. 福田赳夫

    福田国務大臣 はり、きゅうですね、これのごときは、中国では非常に進んだ技術を持っているわけですから、これのごときが問題になりますれば、これはもとより、先ほど申し上げましたような姿勢で対処する、これは法務省にお願いをする、こういうことになろうかと思います。
  29. 上原康助

    上原委員 ぜひ現地あるいは関係者要望にこたえられるように、外務省としても積極的なお取り計らいを要望いたしておきます。  時間が来ますので、もう一点。  私はたびたびお尋ねをしてきたわけですが、いわゆる基地労務者の問題なんです。大臣も、全軍労の代表、また私も、直接お会いしていろいろ御要望も申し上げたのですが、残念ながら、七日からきょうまでの十日間のストライキという期間中に組合の要求というものが前進しない。そこで、さらに一週間のストライキを継続していくという方針を、いま決定をみているわけなんです。率直に申し上げてたいへん残念なことであり、復帰を目前にしていろいろ他にもなさねばならない仕事が多いにもかかわらず、通貨問題やあるいは大量解雇というようなこと等で、現地が非常に混乱をしている。これには大臣もお骨を折っていただいて、十一日の段階で、いわゆる間接雇用移行に伴い、日本政府は三月九日、全軍労側の主張を承知した上で、間接雇用切りかえ条件のパッケージ案に対する修正案を示唆した。米側はこの案を目下検討中であるという公式な声明まで発表なさったわけですが、その後アメリカ側とどうこの話し合いを進めているのか。また、日本政府が提示をした、示唆をしたという案はどうなのか、お尋ねをしておきたいと思うのです。  それと、どうしても政府立場アメリカ側との交渉というものを進めていく中で、労使が納得できる妥協点というものを見出していかなければならないと思うのです。労働者だって、十日間ストライキを打たれれば、一人大体六十ドルから七十ドルの賃金カットになるわけですね。それが二十日近くになりますと、生活上にも大きな問題なんです。もう少し政府としても、この問題を解決していただくように、外務省が中心になって、防衛庁あるいは総理府と三者一体で早急に解決をすべき問題だと思うのですが、あわせて、いま一度大臣なり局長の御見解を聞かせていただきたいと思うのです。
  30. 吉野文六

    吉野政府委員 上原先生もいま御指摘のとおり、政府としても今回のストライキを非常に心配しておりまして、したがって、三月十一日に御指摘のような政府の見解を表明いたしまして、米側は、わがほうの提案した仮合意案に対する修正案を目下検討している最中でございます。  そして、すでに三月十四日、この問題につきまして会合をいたしております。御存じのとおり、われわれといたしましては、まず第一に、二月十八日に発表されました千六百二十九人の解雇の撤回ないしは解雇予告の撤回ないしは猶予、それからもう一つは、第四種の労務者の第二種ないし第一種への切りかえ、こういうことを主張しておりますが、この解雇の撤回につきましては、先方は非常に強い態度を示しておりまして、見通しは楽観できない。なお、第四種の切りかえにつきましては、これについても先生方は基本的には本土並みということで、一応の回答を得ておるわけでございます。  最もいま問題になっておりますのは、基本給についての手直しとそれから夜勤及び語学手当、この三点につきまして、われわれは特に先方の再考慮を要求しているわけでございます。いっこの点につきまして先方から満足のいくような回答がくるかどうかということは、いま申し上げることができないのでございますが、いずれにせよ、今週中にもさらに会合を持ちまして、事態の早急な解決をはかりたいと思っております。
  31. 上原康助

    上原委員 ちょっと時間をあとしばらくとりますが、大臣先ほどお尋ねしましたように、基地の飛行機を移転するとか、そういうものについてはどんどんお金をいま使っておられる。それはそれなりに政府の言い分もあるでしょうが、五月の十四日に首を切られる、あるいは五月の一日から十四日までにほとんど千六百二十九名が解雇されるわけですね。こういうむちゃくちゃなことをいまやっている。そこで、時間がありませんからここで提案をしたいわけですが、基本給の調整にしても、勤務年数を加味して号俸というものを調整をする、これは当然の要求なんですよ。全軍労の場合も、譲歩をする中で、せめて二号俸ないしは三号俸のアップをやれということまで譲歩しているわけですね。これさえも聞こうとしない。あるいは語学手当の問題にしても夜勤手当の問題にしても、長い間沖繩の環境の中で制度化された問題ですから、諸法律、制度だって五カ年間の暫定措置というものを設けたわけでしょう。これとてそんなに不当な要求でもなければ過多な要求でもない。さらにこの面については、ぜひアメリカ側交渉する中で、早急に合意点を見出していただきたいと思うのです。これはアメリカ側と、本土政府が中に立ってやらなければいけないこと。  もう一つは、もちろん、解雇の全面撤回ができればそれにこしたことはないわけですが、しかし、いまのところでは、局長の御答弁にもありますようになかなかできない。     〔本名委員長代理退席、委員長着席〕 だが、解雇をされていく人々の退職手当なり賃金というものは、積み立て年金の問題を含めて、五月の十四日の段階で、アメリカで全部支払うというのですよ。支払った場合には三百六十円の換算というものがもうできなくなっている。  私はここで一例を申し上げますが、いま民政府方々が全部解雇をされる。皆さんはこういうことまでおわかりでないかもしれない。たとえば退職金七千ドルをもらう人が、幾らの損失になると思いますか。三百六十円換算ができないとする。三百八円という基準レートをとっても千百八十ドルの損失になるわけですね。さらに格差分をいま日本政府が補償しておられる。この格差に対しても、三百六十円の保証というものはないのですよ。だから、私は先だっても大蔵大臣にもお会いをして申し上げましたが、日本政府として、首を切られている労働者に対して、せめてこの退職手当やあるいは日本政府がいま補てんしている分について、三百六十円の旧レートで換算をしてあげるということくらいはできる相談じゃないですか。外務大臣は大蔵大臣をなさった御経験もあられるので、こういうことをやれば、もう少し、現地でいろいろ苦労している労働者の立場というものが私は解決できると見ているのです。これに対して確答は得られないにしても、ぜひ外務省なりほかの関係省庁とお話の上で、要求に沿える解決策を見出すということの御回答を得たいわけなんです。また当然その程度のことは、日本政府としてやってもやり過ぎということじゃない、あたりまえのことじゃなかろうかと思うのです。これについての明確な御答弁を賜わっておきます。
  32. 福田赳夫

    福田国務大臣 上原さんのお話には、米側が了承しなければでき上がらぬ問題もあるし、またそうじゃなくて日本側だけで考えられる問題もある、そういうふうに伺いましたが、そういう諸点を心得まして、今後のこの問題の処置に当たりたい、こういうふうに考えます。
  33. 上原康助

    上原委員 あまり納得いきませんが、十日間のストライキを続けて、さらに、単なるこれは全軍労だけの問題じゃないわけなんです。沖繩経済全般にわたる問題として早急に解決をしなければいかない問題ですから、大臣お答えがありましたような、アメリカ側と詰められる問題については早急に局長で詰めていただいて、そして、いま申し上げた差損については当然補償すべき問題だと考えますので、ぜひ現地要求に沿えるように、また私がいま提起をした問題が近日中にも解決される方法をとっていただきたいと思います。  そこで、対策庁長官もお見えですので、関係ありますから……。これはそんなに金のかかる問題じゃないと思うのです。三億ないし四億までもいかないような数字じゃなかろうかと思うのです。そういう面で対策庁としても積極的にやっていくというお考えがあるのかどうか、また現段階でどうこの作業が進んでいるのか、一応お聞かせを願って、私の質問を終えたいと思うのです。
  34. 岡部秀一

    ○岡部(秀)政府委員 総務長官も、この問題につきましてはいろいろと苦労をいたしておりまして、関係者方々が来られたときに、ひざを交えていろいろと話をいたしておりますが、まだ全般的に各関係省庁との意見が一致しておりませんので、その点についてのごあっせんをするという立場で現在進んでおる状況でございます。
  35. 床次徳二

    ○床次委員長 斎藤実君。
  36. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 私は、時間の関係もありますので、要点を二、三点にしぼって、特に北方領土問題について基本的なお考えを伺いたいと思います。  本年一月にグロムイコソ連外相が来日をしまして、共同声明が発表されました。本年中に平和条約交渉を行なうように合意を見た。この背景にはニクソン大統領の訪中、さらには五月にまたソビエトに大統領が行かれる、国内的には日中国交回復の機運が盛り上がっている、こういった国際情勢の変化の中で、この北方領土問題を話し合う場ができたということは、私は非常に前進だと評価をしております。しかし、平和条約の締結の話し合いといっても、やはり領土問題ということが私は大きな前提になろうかと思います。いままでの経緯から見まして、相反する見解をずっと日本、ソビエトはとってきましたし、相当この交渉は難航するだろうと思っておるのですが、この平和条約交渉に当たられるに際して、外務大臣に、基本的な考え方をまず最初にお尋ねをしたいと思います。
  37. 福田赳夫

    福田国務大臣 日ソ平和条約は当然領土問題がひっからまってくるわけです。まあ端的に言いますと、平和条約というのは領土確定条約だ、こう申し上げてもいいくらい、平和条約の中におけるこの領土問題の地位は高いわけであります。  そこで、わが国といたしましては、国後、択捉、歯舞群島、色丹、これらの島々はわが国の固有の領土であり、平和条約にいう千島列島には含まれないものである、こういう立場をとるわけであります。したがって、いまソビエト・ロシアがあの島々を占拠しておる、これは不法な占拠である、こういう姿勢をもってこの交渉には臨む、これが基本的な考え方であります。
  38. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 共同コミュニケの中で、交渉を開始するという旨ははっきりしておりますし、私は、ソ連側の基本的な態度がどうであったか、と申しますのは、共同コミュニケの中には領土問題というのは触れてないわけですね。この領土問題についてのソ連側の態度が、あの共同コミュニケの背景の中でどういう考え方であったのか、その点お伺いしたいと思います。
  39. 福田赳夫

    福田国務大臣 領土問題につきましては、ソビエト側はあまり触れたがらないのです。いままでの状態でありますと、領土問題をわがほうから提起する、そうしますと向こうは、もうこの問題は解決済みであるということで、相手にならぬ、こういうような態度でございましたが、今度はそれとちょっとニュアンスが違ってきておる。領土問題をわがほうにおいて提起したわけです。そうすると、わが国にはわが国事情があるのです、頭が痛いことです。こういうようなことで一向からまってこない。私は、微妙な変化が出てきておるのではあるまいかと思う。しかも平和条約、これは領土確定条約だというくらいな、大事な領土問題を含めての平和条約交渉です。その交渉を年内に始めましょうや、こういうことでありますから、これはとにかく領土問題の本式の論議を、こういう正式な平和条約交渉という場において展開することができる、そういう立場にわが日本がなったということは、非常にいいことであったというふうに考えております。
  40. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 いま大臣の御答弁で、ソビエトのほうは領土問題に触れたがらない、わがほうにはわがほうのいろいろな事情があるのだ、日本側としては四島ということを強く主張したという御答弁ですけれども、やはり双方で協議を始めるという合意をしたわけですから、その会談の見通しといいますか期待といいますか、今後やはり何らかこちらの領土問題についての対応策といいますか、そういったものがなくてはならないのではないかと思うのですが、この点はどうですか。
  41. 福田赳夫

    福田国務大臣 事は交渉である。相手のあることである。したがいまして、わがほうがそういう立場をとっておる、ソビエト側が従来どおりのかたい立場で臨んできた、こういうことになりますると、この交渉はかなり長引くのじゃないか、そういうふうな感じもいたします。しかし、私どもといたしましては、この島々の領有権、これについて一歩も譲ることはできないと思います。いやしくも領有権という問題につきましては、私はこれを引くことはできない、こういう姿勢で対処するほかはない。それで交渉が長引くというならばこれはしようのないこと、どこまでも粘り強くやっていくのだ、こういうことだと思います。そう御理解願います。
  42. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣の御答弁、基本的な考えはわかりましたけれども大臣も御承知のように、日ソ両国間の主張というのはいままで言い尽くされてきた。これ以上新たな論拠は、いままでの過程では出てこないのではないかと思うのです。したがって、これからの交渉ですから、そこに何らかの、やはりソビエト側が譲歩するかあるいはこちら側が譲歩するか、あるいは両方譲歩し合うというような了解に達するのかどうか。これは今後の交渉だと思いますが、やはり相手のあることですから、そういった対応策というものがなくては、長引くということもいま答弁がありましたけれども、あまり期待が持てないのではないか、何らかの対応策というものをお考えになっているのか、その点どうですか。
  43. 福田赳夫

    福田国務大臣 交渉ごとでございまするから、先方には先方のいろいろの言い分があると思うのです。しかし、大事なことは、わが国の領土権の問題である。この領土権の一点については、これはわが国としては断じて譲ることができない、こういうふうに考えております。  ただ、それに付随した経済問題とかいろいろの問題があるだろうと思う。そういう問題のことを斎藤さんあるいはおさしだ、こういうことであれば、私どもはいろいろの話をこれに関連していたしたいつもりでございますけれども、いやしくも領土の領有権の問題、この一点だけは譲ることができない、こういう考えです。
  44. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 これは大臣答弁されるかどうかわかりませんけれども、かりにソビエトが交渉の過程で、あの四島を安保条約の適用外にしてくれとか、あるいはこれは非武装化地域というような、そういった条件を出した場合は、政府はどう対処されますか、その点ひとつ。
  45. 福田赳夫

    福田国務大臣 非常に仮定の問題で、お答えすることがなかなかむずかしいのですが、かりにこの島々がわが国に返ってきた、そういう際に、現実の問題として米軍があの島々に新たに基地を持ちたいというようなことを言い出す、そういうようなことは私は万々あるまいと思うし、またそういうことをかりに——これはかりにです。万々一そういうことがあるにいたしましても、わが国といたしましてそういうことに対してイエスと言うか、これはそのとき慎重に考えなければならぬだろう、こういうふうに思います。その辺でひとつ御理解のほどをお願い申し上げたいと存じます。
  46. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣から、これはあくまでも四島返還をするという基本姿勢答弁がございましたので、私は、これはひとつぜひ貫いてもらいたいと思います。  先ほど大臣経済協力の話をちょっと答弁されましたけれども、日ソ両国が経済的に非常に積極的な話し合いもされているということをいわれておりますが、経済協力について、当面具体的に何かお考えになっていることがあれば、承っておきたいと思います。
  47. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ固まった考えはないのでありますが、ソビエト側から油田——チュメニというところがありまして、そこに豊富な油田開発の可能性がある、こういうので、日本に、その開発に関連いたしましてパイプラインの設定、それへの協力方の依頼というか提案があります。それから、北樺太近海における石油開発、またガスの開発、こういうもので日ソ両国協力の可能性についての提案というものがあります。また、無煙炭を開発することの問題、そんなような話が出ておりますが、これは先般開かれました日ソ経済合同委員会においてそういう話し合いが行なわれましたけれども、その具体的な計画についての、これが実現可能性についての検討は未了であります。  さらに、わが国といたしましては、経済視察団が五月にソビエトを訪問いたしました際に、これらの問題をなお話し合いたい、こう言っておりますが、民間のそういう使節団がこれらの問題をどういうふうに理解してまいるか、その報告を聞いた上、政府としてはこれをどうするかということをきめたい、こういうのが現状でありまして、話は幾つか出ておりまするけれども、まだ政府として正式にタッチするという段階まで来ておりません。そういう事情でございます。
  48. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 次に、共同コミュニケの中に、「双方は既存の招待に基づく日ソ両国首脳の相互訪問を実現するよう努力する」という一項目があります。やはり一国の最高責任者が、大きな平和条約の締結の交渉ということにだんだんなってまいりましたので、これはきわめて意義がある、われわれもしばしば、この問題については積極的に総理が訪ソをすべきだということを主張してまいりましたけれども、具体的に総理が訪ソできる状態にあるのかどうなのか、この首脳というのは総理をさすのか、その辺の点はいかがですか。
  49. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国においては総理大臣をさしております。それから、ソビエト側は総理または党の第一書記というのですか、最高のお方だ、こういう理解でございます。  お互いにその首脳が行き来できるような状態をつくり出そうじゃないかということを共同声明で表明したわけなんでありまするが、その時期をどうするかというようなことにつきましては、今後外交ルートを通じまして話し合いましょう、こういうことにいたしておりますが、これは世界の客観的な情勢がどういうふうに展開していくか、特に大きな問題はニクソン大統領の訪ソの問題があります。その後のソビエトをめぐる客観情勢の変化があるのかないのか、あればどういうふうに変わっていくのか。また、もう一つ考えておかなければならないことは、先ほど斎藤さんからも御指摘の領土問題、これについてどういうソビエト側の態度の変化があり得るのか、その辺もよく見詰めなければならぬ問題じゃないか。そういう両国間の関係もこれあり、また、広く国際社会全体の動き、そういうものを見詰めた上、相互訪問の実現の段取りをきめたい。まだ今日の段階ではその段取りまではいっておらぬというのが実情でございます。
  50. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 わかりました。  次に、時間もありませんからはしょって御質問しますけれども、北方水域の漁業の安全操業について、きわめてこの問題には現地としては関心が高いわけですね。それで、今回の日ソ定期協議で、この安全操業についてどういう話し合いをされたのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  51. 福田赳夫

    福田国務大臣 安全操業は領土問題が確定するまでの暫定的な措置である、そういうふうな基本的な認識に立っての交渉であります。そこで、日ソ間に漁業をめぐりましてごたごたが続く、しかもその間におきまして、わが国の漁船がしばしば拿捕される、そういう事態を回避するためには、一つの操業区域についてのルールをつくっておく必要があるだろう、こういうふうに考えまして、昨年初め以来、新たなる見地からの安全操業交渉というものを始めておるわけなんです。これがなかなか、両者とも意見の違いがありまして妥結をしない。そこで、昨年の暮れになりまして、わがほうといたしましては、譲り得る最低限を考えまして、新関駐ソ大使に訓令を出しておるわけなんです。その訓令を基礎にして、あらためてソビエト側と交渉し、妥結せられたい、こういうことにいたしておる。  その訓令が発出されまして、新関大使がその訓令を踏んまえての交渉を開始するその直前の段階で、グロムイコ外相の訪日が行なわれたわけでありますが、私はもちろん、両外相の会談におきましてこの問題を取り上げまして——内容は言いません。実は新関大使に対しまして、わが国はあらためて交渉態度を現実的なものにして訓令をしておる、したがって、この訓令を踏んまえての新関大使の交渉に対しましては、これは真剣にひとつ取り組んでもらいたい、また促進をせられたい、こういう要請をし、グロムイコ外務大臣は、これは実は私の主管事項ではない、イシコフ漁業大臣専管事項になっておるが、帰ったらイシコフ漁業大臣にこのことを忠実にお伝えして、この問題の決着をはかりたい、こういう意思表示をいたしておるわけなんであります。  その後新関大使が、昨年暮れの新しい訓令を受けまして、ソビエト側と接触をとっておるはずでございます。
  52. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 大臣も御承知のように、北方海域での操業というものは非常に零細漁民で、この五カ年の拿捕件数を見ても数がふえておるわけですね。相当拿捕者も出ておりますし、未帰還船も出ておる。それで、この海域を調べてみますと、三海里から十二海里の水域の中で被害が発生しておる。私はこれに関連をして、こういった事故を防止するという一つのためもありますけれども、これは総理大臣も、漁業専管水域を十二海里まで拡大する方向を考慮しているというような答弁もあったようですが、この際、漁業専管水域十二海里を設定する必要がもうそろそろ来たのではないか、こう考えるわけですが、大臣いかがですか。
  53. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国は一貫して領海三海里説をとってきたわけであります。それがわが国の漁業に最も有利であるというふうに考えたからであります。しかしながら、国際社会の動きは、それにもかかわらず、領海を拡大するという方向に動いておるのでありまして、十二海里という程度のところがまず国際的な水準になりつつあるのじゃないか、そういうふうな認識をいまいたしておるわけであります。したがいまして、いま直ちに三海里説を撤回するという考え方はいたしておりませんけれども、来年国連の海洋法会議というのがあるわけでありまして、そこでは必ず領海の範囲というものが問題になるであろう、こういうふうに見ておりますが、その際には、この国際的な趨勢を踏まえた対応のしかたをしなければならぬかな、ただいまそう考えております。
  54. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 次に、北方地域の墓参の問題です。これは昭和三十九年以来四十五年まで六回にわたって実施をされてまいりました。昨年は実施ができなかったわけです。引き揚げ島民にしては、年に一度の墓参については、領土問題を別として、人道上の問題としてこれは強い要望を持っておりましたし、昨年が墓参できなかったということについては非常に不満を持っておるわけですね。それで、この墓参について、やはり昭和四十七年度にはぜひともこれは実現をしてもらいたい。なお、この問題についてはいろいろ準備等もございますので、こういう北方領土の返還のムードが盛り上がってきたときでありますが、昭和四十六年度はなぜこの実現が許可できなかったのか。昭和四十七年度についてはどういうお考えなのか、承っておきたいと思います。
  55. 福田赳夫

    福田国務大臣 昨年墓参が実現しなかったことはまことに遺憾でありましたが、ことしはぜひ実現をさしたい、こういうふうに考えておりまして、近くその申し入れを具体的にソビエト側に対して提示するという段取りを進めております。そうして、この夏、秋のころにはそれが実現をされるのだということにぜひしたいものだという考えでございます。  四十六年度の、昨年の墓参ができなかったその事情につきましては、欧亜局長のほうからお答え申し上げます。
  56. 有田圭輔

    ○有田政府委員 お答え申し上げます。  昨年度は、ただいま大臣から申し上げましたように、北方の島々については墓参ができませんでした。ソビエト側が許可してまいりましたのは、バイカルの南のソ連本土のウランウデと、それから南樺太の墓参だけでございました。当時私どもも、数回にわたり強硬にこの点抗議いたしましたが、ソ連側の当時の説明では、北方の島々は外国人の立ち入り禁止区域である、したがって、今回はどうしても許可できないという答えの一点ばりでございました。  過去の経緯を考えますと、昭和四十三年に一度、この北方諸島について墓参が実現しなかった経緯がございますが、それ以外は各年にわたり実現しております。わがほうもこの点を指摘いたしまして、今回突如として、これが外国人禁止区域であるから、この墓参を許可できないというのはきわめてふしぎな説明であるということで抗議いたしました。  本年は重ねてこの実現に努力いたしたいと思います。で、早急に申し入れいたしまして、八月が最も関係者に都合がいい時期のようでございますから、八月にはぜひこの北方の島々についての墓参を実現したいと考えております。
  57. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 沖繩返還批准書交換されましたし、五月十五日が沖繩返還ということで、外交上の問題としては、あとは北方領土なんです。私は、この北方領土返還について、この領土問題というものを前提として積極的にひとつ交渉をしてもらいたいし、またあわせて安全操業、こういったものもひとつ積極的に粘り強く、わが国の国益を守るという立場から交渉を進められるよう強く要望申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
  58. 床次徳二

    ○床次委員長 本会議散会後委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時五十一分休憩      ————◇—————     午後四時五十二分開議
  59. 床次徳二

    ○床次委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。瀬長亀次郎君。
  60. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 本会議終了後でありますから、最初にほのぼのとした質問から行ないます。  外務大臣はきのう、いわゆる沖繩協定、私はこれは新たな軍事条約と見ておりますが、この屈辱的な、侵略的な日米沖繩協定、この批准書交換されたそのときに、沖繩特産の泡盛で乾杯されたと聞いておりますが、おいしかったですか。
  61. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、泡盛は生のままで飲むのがいいのですが、きのうのは少し薄めてありまして、少し調子がよくなかったような感じがいたします。
  62. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私がそれを聞きますのは、泡盛も沖繩特産でありますが、特に沖繩に核爆弾があるということは、すでに外務大臣は、にらんでおるというところまできておられます。  そこで、この写真でありますが、これは伊江島の基地で現在でもまだ隠されておるBDU12、核模擬爆弾の写真です。これは、いわゆる模擬爆弾としての実物で、これは、落としたときの破壊されたものであり、これは、爆弾投下の演習のときの状況であります。この模擬爆弾の一個が、東京のどまん中で、すなわち日本橋三越の七階で沖繩展が開かれた、この沖繩展でこの実物が持ち運ばれております。このことをお聞きになったことがあるか、あるいは見られたことがあるのか、それを聞きたくて泡盛の話を出したわけであります。
  63. 福田赳夫

    福田国務大臣 聞いたことはございませんです。
  64. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この模擬爆弾の実物は、B57がBDU12、BDU8がB43。この実物は、小型の核爆弾であり、二千ポンドのB43という爆弾であります。この一月の十一日まで、この核爆弾を投下する演習が行なわれておる。  これにつきましては、去る七日の予算委員会で、共産党の不破議員から一時間余りにわたって質疑があり、そのときに吉野外務省アメリカ局長は、沖繩において現在模擬核爆弾の投下演習が行なわれているという指摘について、アメリカ側に照会したところ、肯定も否定もできないという回答があった、そこでさらに照会を続けているということが言われ、さらに、それをまた裏づけて福田さんも述べております。同じようなことが述べられておる。この場合、七日から、きょうは十六日でありますから、約十日間たっておるが、照会を続けておると言っておるが、実際アメリカに対する照会というのはどういう形でやるのか。事実このような演習を行なっているのかどうかということを照会するのか、あるいは現地に行って調査をしながらやっていくのか、どららか、これをはっきりお答え願いたいと思います。
  65. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはいま瀬長さんのおっしゃるように、アメリカに、そういう報道があるが事実か、こういうような聞き方をしておるのだろう、こういうふうに思います。同時に、わがほうにおきましては、専門家がおるわけなんです。つまり、防衛庁にそういうことの鑑識能力を持った人がおる。そういう人は、これは照会とは別に、あれはどういう性質のものだろうかという、その観察というか調べといいますか、そういう種類の行動をとっておる、こういうことでございます。
  66. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この核模擬爆弾の訓練というのは、いざという場合、非常事態になればこういう核爆弾を落とす、それとつながっておるわけであります。それと関連なしに核爆弾の投下訓練をやるということは、これは常識では考えられません。したがって、沖繩における沖繩県民のこの爆弾に対する——あの沖繩展においては、核模擬爆弾と書かれておるのではなかった、原爆の模擬爆弾というふうに表示されて、実物がちゃんと据えられております。そして観覧者は、こんなのがほんとうに沖繩にあるのかなと、びっくりしておりました。去る二月十三日にパリで、インドシナ諸国人民の平和と独立を守るためのパリ世界集会が開かれたときに、この写真を持っていきました。八十四カ国の代表が集まっているが、まさかと思っていた、現にこれがあるのか、ほんとうにあ然として、大きいショックを起こしております。  いまわれわれが核爆弾に対し、核兵器に対し、核管理部隊に対し、核訓練部隊に対して、真剣にその撤去を迫り、要求していることは、これは単なる、私がいまここでことばだけ述べておるのではなくて、死の恐怖につながっているのです。沖繩において復帰不安、これまでの生活が従来どおりいけるかどうか、かちとった権利は、一体このとおりずっと存続できるかどうか、身分はどうなるか、そういう不安はもちろんあります。一番の不安は、この死の恐怖である。しかも沖繩県民は、毒ガスからさらにB52の墜落、この知花の核爆弾の貯蔵倉庫といわれているここの百メートル前で墜落した。そういう生命、安全に対する危険を日夜味わっているからこそ、核兵器をどう撤去させるのかということを、われわれは真剣に考えているわけなんです。  そこで、外務大臣にお聞きいたしますが、従来の、沖繩国会から現在までの御答弁は、アメリカを信頼しておる、アメリカ大統領が、復帰時点にはきれいに核はなくなっているということをサンクレメンテ会談でも言った、これだけが核を抜くという一つの証言として出されている。アメリカ福田さんたちが信頼するせぬは、自由かってでありましょう。だが、沖繩県民は、長い二十七カ年のあの軍事占領支配のもとで、アメリカを信用しておりません。だから、いま、五月十五日にはいよいよ施政権返還されるという段階で、一体われわれの政府であるところの日本政府は、アメリカ大統領が核は抜かれましたということを、どう国民にかわって、県民にかわってこれを検証していくのか、こういうことを非常に心配しております。この心配に対して説得力のある、核抜きのほんとうの姿をいま政府が提示しなければ、百万の沖繩県民だけではなくて日本国民の不安は、解消されるどころか、ますますこの不安は広がり、そして深まっていく、これは確かであります。これに対する外務大臣の御所見を承りたい、こう思います。
  67. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカ政府はつとに、沖繩返還時においてはもう沖繩には核はないということをしばしば表明をしておる。それからまた、その表明を引用いたしまして、返還協定自体もできておる。こういうことですから、私どもは、この協定にまで盛られたそういう約束ごとは違反がある、こういうふうには思いません。また、しかしながら、それにしても皆さんから御意見があるので、返還時たる五月十五日にはアメリカ政府から何らかの確認をとる、こういうふうにいたしておるので、そこまでの手続をとっておりますので、これは私は、もう沖繩返還時及びその以降において、核がなくなるということについては一点の疑いも持たない。これはまあいろいろ疑いをお持ちになって、そしていろいろのことを言う人があるかもしれませんけれども、とにかく日本政府は、沖繩百万の県民に対して責任をもって、核は五月十五日以降はありません、こういうことを私ははっきり申し上げますから、この点はひとつよく御理解の上、そういう疑いを持っておる人がありますればひとつ御説得願いたい、お願い申し上げます。
  68. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 御理解願いますと言っても、理解できないから聞いているわけです。  一つお聞きしますが、いままでいろいろアメリカ資料に基づいて調査されたのは、共産党からも社会党あたりからも発表されておるんですね。嘉手納に第四百弾薬整備部隊MMS、この部隊は普通爆弾だけじゃなしに核爆弾の整備、さらに搬入搬出、管理、これまでやっておる部隊だということ、これは明らかになっておる。しかも価サンダーチーフあるいはF4C、こういったような飛行機は、こういう核爆弾を運搬する兵器であるということも明らかになっており、さらに海兵隊、これは侵略の先兵だといわれておる。こういったようなもの。さらに水陸両用部隊、こういったのがあり、これは核訓練をやり、核訓練部隊であり、いざという場合には核兵器を自由に使うという部隊である。この部隊が沖繩におるということは、協定の中に書かれておることを見る場合に、ほんとうに返還時点で、福田外務大臣が言われたようにこういった部隊がなくなるのか。あるいはあった場合に、たとえばこの第四百弾薬整備部隊の中から核を操作する部分はなくなりましたと彼らが言う。ほんとうになくなっておりますと、自信をもって沖繩県民をはじめ日本国民に知らしめることができるわけですか。そこを聞いておるわけなんです。現実にあるんです。あることを、福田外務大臣はどうもにらんでおるところまできておられるでしょう。だから、そこら辺を明確にしてもらわないと、あなた方の核抜き本土並みなどということが単なる宣伝にすぎないと言われても、反論の余地がないと私は信じておるわけなんです。
  69. 福田赳夫

    福田国務大臣 まあ私は、せっかくのお話でありますが、核がなくなるというこの確認、これは非常にむずかしい問題だろうと思うのです。私はサンクレメンテに参りまして、その会談で、核というものに対するアメリカ政府の扱い、これがいかにむずかしいものであるかということを痛感をいたしましたが、全くこれはもう大統領専管事項というような扱いになっておる。そういうようなことからしまして、いまだアメリカ政府においては、沖繩に核があるということを公式には表明しておらないんです。しかし、それにもかかわらず核がありそうだ、私どもはそういうにらみを持っておるわけだ。そこで、私ども自身も心配しておるものですから、先ほどから申し上げておりますように、アメリカ政府に対しまして、もうとにかく、いまあるかないかは別として、五月十五日の時点において核は一切ないということの保証要請をしておる、こういうわけなんです。アメリカ政府はその保証をいたします、日本政府の核政策には協力します、これをおごそかに宣言します、こういうことなんです。でありますから私どもはそれを信頼する。もしそういう保証なりあるいは宣言なりに反した行動があるということになれば、これは日米間のほんとうに重大な事態であります。  私は、そういう重大な事態を引き起こすような背信行為がアメリカにあろう、こういうことはもう夢にも思いませんでございます。そういうことからいまの議論、今日の時点、またこれまでの時点において核があったかなかったか、そういうようなことは別といたしまして、とにかく五月十五日の時点においては、核はもう一切ないということについては自信を持って百万県民に申し上げることができる、かように考えております。
  70. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 外務省ではいろいろベテランがそろっているので、アメリカが正式に公式に、沖繩における核問題を取り扱った文書はお持ちでしょうか。時間の関係で、大体五六年メルビン・プライス、このプライスを団長とするプライス調査団が沖繩にやってきた、土地問題調査に、基地を中心として。この五六年六月に発表したプライス勧告。この中に琉球諸島では「わが原子兵器の貯蔵ないし使用の権限に対し外国政府による制限が存在しない。」初めて使われております。いわゆる日本アメリカにとっては外国なんです。日本の口ばしその他諸外国の口ばしを入れたり干渉なしに、アメリカ核兵器を貯蔵し使用することのできる、こよなき地点が琉球諸島であると明確に打ち出した。と同時に、したがってこの沖繩を許すわけにいかぬ。ごたごたを起こすのは土地問題である。だから軍用地を一括して買い取ろう。そして一括払いということが提示されたあのときに、沖繩県民百万は、ほんとうに総立ち上がりになりました。プライス勧告粉砕、土地を売るな、領土権を守れ、四原則の貫徹の戦いがほんとうに盛り上がってきた。そしてこの戦いの中で領土は一つも渡さず済んだが、この核兵器の問題はあれからずっと伏せられていて現在に至っている。したがって、沖繩県民は、どこにあるということはアメリカは言わないが、どのような形で毒ガスが持ち込まれたか、毒ガスの持ち込み事故が起こらなければわからなかったはずであり、核兵器もどんどん戦いの中で調べ尽くして、ははあこれはおかしいぞ、あるぞとなって初めて外務大臣がにおいがする、にらんでいるというところまで日本政府もこう来ているわけです。したがって、いま繰り返し、巻き返し同じようなことを、アメリカを信ずる、大統領がこう共同声明約束したので、さらにまた、あの沖繩協定批准後も、サンクレメンテで会談したときに繰り返し言ったのでだいじょうぶだというふうなことを言われても——向こうは発表するでしょう、どのような形で発表するかどうかわからぬ。だが発表された内容についてどう確かめるのか、問題はここにあります。この確かめることについては、結局いま申し上げますように、私すらこういったような写真を——この実物はいまは一月十一日以後演習をやっておりませんが、伊江島にまだ残されて網をかぶされている。私も行ける。政府は、外務省は、あるいは防衛庁は、どんどん調査員を派遣していい。ほんとうであれば、君たちの言うものはそんなものじゃないんだ、うそだというふうな反論が出そうなんだが、事実はそういったことはやっていない。なぜ、そういったことまで確かめる努力を日本政府としてしないのか。沖繩県民であれば信じておる人がたくさんおりますよ。おかしいな、日本政府はわれわれの政府であるはずだが、個人でもあるいは一つの小さい政党でも調べることができるのに、なぜ日本政府がこれを調査できぬのかな、ふしぎに思っておるのですよ。どうなんでしょう、外務大臣
  71. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまはとにかくまだ施政権が返ってこない。いままではそうなんです。あと二月たちますと施政権が返ってくるのです。ほんとうの意味日本の領土ということになってくるわけなんです。ですから、五月十五日後のものの考え方と、今日のこの時点のものの考え方、これはもうおのずから私は違ってくる、こういうふうに思うのです。しかしそういう違いはあるにしても、いま問題の伊江島の模擬爆弾の問題なんか、そこでアメリカに照会もする、また防衛庁のそういう目ききの人にそれを調べてもらう、そういうようなことをしておるわけなんです。いま、とにかく向こうが権利として基地を持ち、そして本土のように安保条約、そういうような制約なんか全然ない、自由に使用しておるというそういう基地でございますから、五月十五日後の、わが国の完全なる施政権下において、安全保障条約の制約下において存在する基地の性格とはおのずからそこに違いが出てくる、こういうことも御了知おき願いたいと思います。
  72. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 この核の問題につきましては、まだ相当追及しなければならぬことがたくさんありますので、これは保留して先へ進みます。だが、これに対して希望を申し上げたいのは、われわれすらできるのに、あんなに大きい政府がなぜ現地に行って調査しないかという問題に対する解明は、直ちにやってもらわなければいかぬということだけは追加しておきます。  いま沖繩で全体的な統一要求になっておるのは、一ドル対三百六十円で直ちに通貨を切りかえろ、これは労働者であれ企業家であれ、沖繩の一〇〇%の県民の統一された要求になっておる。この問題。  さらにもう一つは、ちょうどきょうまでに十日、いわゆる二百四十時間のストを打って立ち上がる、これだけでも通らないので、あと延長してなおストを続けるといった基地労働者、全軍労に結集する基地労働者のあの要求、これは沖繩基地があるから生まれた要求なんです。  外務大臣にこの点について、最初に基地労働者の問題からお聞きしますが、いわゆる愛知外務大臣時代からさらに福田さんにかけまして、一九六九年にあの共同声明なるものが出た、その六九年共同声明準備する中で、いわゆるニクソン・ドクトリン、これが共同声明の骨になっていままでやってきておるが、この六九年から七二年までに一種、二種の軍労働者の首切りは何名になっておるかというと、六九年が二百十四名、七〇年が千九百四十八名、七一年、去年が二千四百六十八人、そして一九七二年、ことしが三百十七人で、合計四千九百四十七人になっておる。これは琉球政府労働局の調査によります。さらに、これに加えまして、去る十八日に一千六百人をこす解雇予告がまた出ております。  そこで私は、二つに分けて質問をします。  いままで申し上げましたように、一九七二年まで四千九百四十七名、五千人近くの首切りがすでに行なわれた。この間外務省は、一体アメリカに対して基地労働者要求——首切りは撤回してほしいとか、いろいろな要求が出されております。これに対してアメリカと効果的に折衝して、こういった要求に対して、日本政府のほんとうに真摯な姿勢をあらわしたことがあるかどうか、まずこの点。  もう一つは、これはいまさつき上原委員からも質問がありましたが、十八日に解雇予告が出て、千六百名余り、これに対して一体どういう救済措置をとられようとするのか、最初にこの二点について明らかにしてほしいと思います。対米折衝はいま外務省以外にないということを、この前山中総務長官も言いましたが、この問題は防衛庁、防衛施設庁ということより外務省であるということもはっきりおっしゃっておったし、対米折衝はもちろ外務省であるわけなんです。  さらに第三点は、いまの円・ドル問題なんです。  最初去年あたりは、総理に会いましたときに、彼には沖繩議員クラブ全員として会いましたが、自民党も含めて沖繩出身議員七名、そのときにこのドル問題で、沖繩庶民、大衆ということばを使っておりました。庶民、大衆に絶対不利益を与えないようにする、これは総理の発言。さらに政府は、いや政府がその腹になればアメリカ関係なしにドルは円に切りかえることができると言ったことが、現在ではもうすでに、アメリカがどうも難関らしい。われわれは当然、アメリカと対米折衝をしないでドルと円がどうかえられるのかと、前からはっきり指摘していた。なぜか、五八年に出されたあの布令によって、われわれは通貨にドルを使えと押しつけられたわけなんです。そういうアメリカが、ただ日本政府がその腹になればかえられるなどということをのむはずはないと思っておったら、あにはからんや、いまになったらアメリカが許さぬ、あれは技術上むずかしいのだ、こうなのだ。毎日毎日沖繩県民は損をさせられておる。いまは三百八円、ところが実際は、今度立法院議員がこっちに陳情にやってきた、ドルを幾らでかえたか、一ドル二百九十円でかえた、こういうように毎日毎日損失を受けておる。円が上がることは、われわれ沖繩県民が使っておるドル価値の低下である。こういうはさみうちの中にあって四苦八苦しているにかかわらず、いまだに政府はその具体案を出さないだけでなく、むしろ復帰前の交換はむずかしいとか、一ドル三百六十円の換算は不可能であるとか、単に差損金だけをわずかに二百六十億なにがしを沖繩予算なるものに組んでおる。  こうなりますと、一体、労働問題であれあるいは全体的な要求になっておるこの円・ドル問題であれ、一つとして沖繩県民の要請にこたえていないということは明らかなのだ。基地も自衛隊を引っぱってきて強化をする、そして円はどんどん切り上げられて、ドルはどんどん下がってくる、はかり知れない損失を受ける。しかたがありません、首を切られてもしかたがありません、がまんしろ、これが日本政府態度であるのかということで、だんだん怒りが燃え上がりつつある。  これは三月十五日の現地新聞であるが、屋良主席が帰ってから、いわゆる「見通し暗い三六〇円交換」、「確認もれ救済困難」、「全軍労問題スト収拾策見出せず」、つまり、お先まっ暗だということをこの新聞の記者会見で発表をしておる。一体いま御指摘しました労働者の問題、特に基地労働者の問題や円・ドル問題、これはやはり外務大臣の所管なんです。これに対して明確に答えてほしいと思います。
  73. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま沖繩で行なわれております軍労務者のストライキですね、これは私も非常に心配しているのです。ああいう事態が長引くというと、軍労務者自体の問題もありますが、同時にまた、軍労務者と基地の商人というか、商売人ですね、それとの間の関係、こういうようなものも出てくる。そういうようなことを考えますと、あれが長引くということはなかなかゆゆしい事態になる、そういうふうにいま私も考えておるわけです。そういうような事情上原康助さんからも、また現地の軍労務者の代表の方からもよくお聞きいたしております。そういう事実の認識を踏んまえまして、私はアメリカの大使とも話をいたしたわけでありますが、まあ、アメリカ側においても事態の重大性を認識いたしまして、ひとつ考えてみようかというふうなところまできたのですが、まだ結論は出ておらぬ、こういうのが現況でございまして、とにかく、わが外務省といたしましても、この問題の収拾ということにつきましては全力を尽くしておる、こういうふうに御理解を願いたいのであります。  それから、三百六十円換算の問題ですね。これは、私は今回のドルの切り下げの問題、また円の切り上げの問題、これが沖繩経済にかなり深刻な影響を及ぼしておる、こういうことはよく理解できます。同時に、沖繩県民が早くこの円通貨体制に移行することを希望する気持ちもよくわかる、私自身とすると、そういう理解の上に立って、何とかしてというような気持ちになるわけなんでございますけれども、これはまたなかなか技術的に非常にむずかしい問題があるということです。まあ聞いてみると、そういう問題もこれはなかなか等閑視できない、そういうようなことで、政府といたしますと、この問題に対してまだ御満足のいくような回答もできないような状態でございますが、とにかく技術上、投機ドルを一体どうするか、こういうようなことを考えてみますと、なかなか容易なことじゃないのです。外交上アメリカとの間に関係がどうだ、これはさほどたいした問題はない、技術的な問題が解決すればおのずから解決される問題じゃないか、こういうふうに思いますが、とにかく通貨交換の問題というのはなかなか波及の大きい問題でありまして、どうしてもわが大蔵省においては技術的に自信が持てぬ、こういっておるのが現状なんです。ひとつ御理解のほどをお願い申し上げます。
  74. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは、いかに理解してほしいといっても、毎日毎日損させられるわけなんだから、沖繩県民は理解するわけにはいかぬと思うのです。この問題は、沖繩県民あげて問題にしている問題であるだけに、さらにあとで質問することにいたしまして、残された時間で問題を整理して、二つの点だけお聞きします。  一つ沖繩関係予算、これが全体で二千二百二億円と組まれております。その中に三百八億円、これは例の三億ドル余りのアメリカに支払うときめられたもののいわゆる一億ドル、これが入っており、さらにP3対潜哨戒機三十八億が入っておる、こういった問題が沖繩関係予算の中に入れてあるものだから、今度は沖繩関係予算は二千億余りかなどといわれておりますが、この予算の組み方につきまして、これは事実上沖繩予算の中に組まれて、沖繩の民生安定などというものに役立つものではないわけなんです。どういう意味政府は、これを沖繩関係予算として二千二百二億円の中に入れられたのか。  もちろんもっとたくさんあります。沖繩関係予算は、いわゆる対米的に資産買い取りのあの金額とか、あるいは地代を肩がわりして今度から払うあの地代の問題とかたくさんある中で、この三百八億円とP3対潜哨戒機の一二十八億、これが入っておるわけなんです。沖繩予算の中に一体なぜこれが組まれたのか、これをまず明確にしてほしいと思います。
  75. 福田赳夫

    福田国務大臣 沖繩関係費用は一体幾らなのかと聞かれますと、各省各費目に含まれているものを総合いたしましてごらんに入れる、こういうことだろうと思いますが、その総額を、中身をごらんになりますれば、おのずから、その性格は一体どういうものだ、こういうことはおわかりになるだろう、こういうふうに思います。  総括表をどういうふうにしてまとめたかということにつきましては、大蔵省のほうからお聞き取りを願います。
  76. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私が申し上げておるのは、あなた方が出した予算説明書なんですよ。沖繩に対する予算は四十六年度四百八十億だったが、今度二千億に大きくなったんだといったようなことが沖繩振興対策費として説明されておる。この中を全部調べましたら、ほんとうは沖繩関係予算は一千億内外にしかならないわけなんです。こういったような組み方の中で、現在の政府が、いかにも沖繩県民の復興のために、これだけのばく大な金額を使ったんだといったような説明のしかた、この中にまた、県民と何ら関係のないようなものも含まれて膨大になってしまっておる。こういうものを、大蔵省関係ではなくて、事実この資産買い取り費としての三百八億の問題、さらにP3対潜哨戒機の移転の問題、これは二千万ドルといっておりましたが、三十八億になっておる。これはどういう計算でそうなったかわかりませんが、いずれにしても、これを私が質問する趣意は、これを各省ごとに明確にして、事実上沖繩に落ちる金は一体幾らか、これを分析しなければならぬからこそそういう話をしているわけなんです。  もう一つは、時間もありませんので、いわゆる久保・カーチス協定の問題に移ります。この久保・カーチス協定に基づきまして、いわゆる自衛隊なる日本の軍隊が沖繩に派遣される。この久保・カーチス協定は、沖繩の、アメリカ軍に基地を提供するあの土地収奪法も含めて、県民は非常に反対をしておる。この久保・カーチス協定の取りきめのときには外務大臣が出ておる。この取りきめによりまして、自衛隊は沖繩に派遣され、派遣された自衛隊はまた、あの現在の軍用地をアメリカと一緒に使うような方向で、土地強奪法、いわゆる暫定使用に関する法律ができておる。したがって私が伺いたいのは、この久保・カーチス取りきめ、このときは外務大臣もちゃんと出ておられる。そういうことには沖繩県民は承服できない。このような形のこの取りきめによりまして、事実、日本の軍隊にまでのし上がっておる自衛隊、陸海空が、あれだけの量が入り込んで、基地はそのままアメリカと一緒に共同して使う。そうしてそのことによって沖繩基地を強化する方向に行こうとしておる。この久保・カーチス取りきめ、これに対して外務大臣も出ておられる。これは実際沖繩において、日本本土と違った特別な協定、取りきめをつくって沖繩に派遣する、いわゆる沖繩基地の強化、これと重なっておる。だから、われわれ沖繩県民としてこれは承知できない。この前の、あの物資を移送されて、そうして国会の追及を受けてあれをまた取り戻すということまで失態をやらかした。これはこの久保・カーチス取りきめに基づいているわけなんです。したがって、この久保・カーチス協定をわれわれは廃棄を要求をし、さらにあの、いま申し上げました暫定使用法、これは土地の強奪法である。これにも地主たちはみんな反対をしておる。こういったものと関連して、これを基本にして、なぜこのような形で強硬に、いわゆる自衛隊なる軍隊を、県民の反対をも押し切って派遣しなければならぬのか、ここら辺を明確にしてもらいたいと思います。
  77. 福田赳夫

    福田国務大臣 五月十五日になりますと、沖繩わが国施政権下に移るわけであります。したがいまして、わが国沖繩につきましてこれが防衛安全の全責任を負う、こういうことであります。どういうふうにして負うかといいますと、これは自衛隊を派遣をする、こういうことになる。これはそう多くの説明を要しないんじゃないかと思う。  久保・カーチス協定に言及されますが、これは米軍と防衛庁の間で結んだというか、まあ一種の取りきめというような形になっておりますが、久保・カーチス会談の記録を整理をしたというような性格のものでありまして、これは何もわが国条約上のあるいは法的の義務をアメリカに対して負っておるものであるというふうには考えておりません。わが国は当然沖繩を守らなければならぬ、そういう立場からこういう計画を持っておるという意図表明をこの会談において行なった、その記録をつづってあるものである、こういう理解でありまして、瀬長さんのおっしゃること、どういうことか、あそこにいま自衛隊反対運動がある、そういうようなことから、あえてそこまでせぬでもいいんじゃないか、こういうようなお話かとも私聞き取りましたんですが、やはり日本政府は、国土の防衛については全責任を持たなければならぬというところから、ひとつ御理解を願いたい、かように存じます。
  78. 床次徳二

    ○床次委員長 瀬長君、大体約束の時間が参りましたので、簡潔に結論をお願いいたします。
  79. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これでは、質問はまだ終わっておりませんが、時間もたっておると言いますので、締めくくりとして、日米安保協議委員会で取りきめられたのがこの久保・カーチス協定、すなわち久保局長とカーチス中将、この名前が付されておるので、これは協議委員会できめられております。これと沖繩におけるあの暫定土地使用法、これとが一つのものとなって、沖繩のこれまでの米軍の土地を継続して使用するだけではなくて、自衛隊を派遣するという法的根拠になっているわけです。これを明確にしないと実際の——ほかの県にないのです。これは沖繩を特別扱いしている、そういった憲法上の問題も自然に出てきますが、そういったことを深めることは次の委員会あたりでやることにいたしまして、私はこれで閉じますが、いままで申し上げた中で基地問題、この基地問題を中心にして沖繩県民の復帰に対する不安、怒りとなってだんだんあらわれつつあるという点を明らかにし、さらに次の諸問題は次の委員会で伺うことにして、きょうはこれで終わりたいと思います。
  80. 床次徳二

    ○床次委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十四分散会