○内藤
委員 私は、
日本社会党を代表しまして、本
法律案に対する反対の討論を行なうものであります。
この
法律案につきましては、本
運輸委員会に四月の十八日に提案になりましてから、国会で許されるあらゆる手続を踏みまして私たちは審議を進めてまいりました。現地の
調査も行ない、また現地における意見も聞き、さらには参考人の意見、あるいは公聴会の公述人の意見等、またその背後にある
国民多数の皆さんのこの法案に対する大きな反対の声を承ってまいったのであります。先ほど来の審議の中におきましても、賛成の方におきましても、全面的に賛成をされた方はおらない、こういう
発言がしばしばございました。ことほどさようにこの法案は
国民の皆さんから、利用者の皆さんから、反対の声がまことに絶大でございます。
国民生活の面から取り上げましても、このたびの
国鉄運賃の
値上げ、旅客におきまして二三・四%貨物におきまして二四・六%、このような率での大幅の
値上げでございまするけれども、通勤通学等の内容をつぶさに検討いたしますと、三倍にもなんなんとする
値上げがあるのでございまして、今日の
物価の上昇にあえいでおります
国民の皆さんの生活からこれをとらえた場合には、とうてい許されるものではございません。しかも四十七年度におきましては、この
値上げによりまして千七百八十八億円の
国民の皆さん、利用者の皆さんの負担を強要しておるのでございます。
しかも私、腹に据えかねますのは、この増収が
国鉄の
人件費にほとんど食われるという表現がしばしば議論の中におきましてあり、あるいは
政府当局の
発言があるわけであります。しかしながら、私の見解におきましては、今日の
国鉄の
赤字の最大の原因は、長年にわたるところの
借り入れ金の累増にあるのでございまして、この
借り入れ金の総額は、四十六年度末におきまして約三兆円、かようにいわれておるのであります。この約三兆円の
借り入れ金があるために、ばく大な利息を払わなければなりません。また元金も払わなくちゃなりません。四十七年度の
支払いの元利これだけをとらえましても五千三百九十五億円、かようにいわれておるのでありまして、この三兆円に及ぶところの累増されました
借り入れ金が今日の
国鉄の
赤字の最大の原因であることは、衆目の一致するところであります。しかるに、これを
人件費が上がるからということでこの大幅の
値上げを提案しておるということ自体が、問題をすりかえまして
国民の皆さんの御意見、世論を分裂せしむるにある、かように私は
当局、
政府の悪らつなるその提案に対しては強く反対、
指摘をしたいと思う次第であります。
さらにつけ加えて申し上げたいのは、
国民の負担は、この十カ年の計画によりますると、われわれの積算によりますると五十六年までの間に六兆四千億円余りになるのであります。また
政府の負担は約二兆円でございます。
国鉄の合理化を含めてのその内部的な
努力は約二兆円でございます。この
数字は三、一、一でございます。私は
昭和四十四年に
前回の
国鉄の再建十カ年計画、この計画を審議いたしました際に、
国民、
政府当局、
国鉄当局、三方一両損ということばを巧みに使った記憶がございまするが、今日の場合におきましては、この十カ年計画は
国民の負担が三、
政府の負担が一、
国鉄の負担が一でございまして、これは三方一両損といわれました四十四年度の
国鉄の財政再建のあの審議の中から顧みましても、
国民の皆さんの負担がばく大に増加するというまことに三方一両損よりも悪化しましたところの
考え方、十カ年の再建の方策の内容でございます。
またこのことに関連しまして、
国民の皆さんの負担は、
国鉄の
運賃から来るところの直接の負担だけでありません。すでに皆さんもおわかりのとおり、
国鉄の
運賃値上げが提案され、報道されまするに従いまして、
公共料金の
値上げが続々と出ておることはおわかりのとおりでございます。私鉄の
運賃あるいは航空
運賃その他交通運輸関係の
運賃、
料金の
値上げだけでありません。
公共料金といわれるものが続々と
値上げを唱えておるのであります。したがいまして、この
国鉄運賃によるところの悪
影響、
国民の皆さんの負担の増大は、まことに
国民の立場から許しがたい、納得しがたいものであることは、私ここで強く主張をする以上に
国民の皆さんがよくおわかりのところでございます。
さらに、私ここで
国民生活の上に、この面だけで反対を唱えるほかに、もう
一つの点として申し上げたいのは、
国鉄の長期にわたるこの十カ年の計画というものは、四十四年のあの際にスタートしたわけであります。当時を振り返ってみますと、この
国鉄の十カ年の計画というものはどこから出てきたか、あるいは
国鉄の十カ年計画というものが出た際に論議されましたことは、
国鉄だけが十カ年というある
意味でナンセンスのこの長期の財政
再建計画を立てるところのその意義でありました。なぜかといいますならば、皆さんおわかりのとおり、今日の交通運輸の関係は、過密過疎の関係がございまして、まことに混乱をきわめておる状態であります。したがいまして、私たち運輸に関係する者の議論としましては、
国鉄のみでありません、いわゆる総合的な交通運輸の体系というものがなければ、今日の
国民の皆さんの足をすら守ることができない。過疎地帯の皆さんの問題、あるいは過密の都市の皆さんの問題、あるいはその中間地帯の皆さんの問題、これらを含めて総合的な交通体系がなければならぬ、そういう時期である、したがいまして、運輸省は総合的な交通体系と真剣に取り組むべし、こういう議論でございました。その中から総合交通体系のいわゆる大宗といいますか、骨格といいますか、
考え方が出てまいったわけであります。これは四十四年の十カ年計画の際におきましても、
国鉄のみが十カ年という長期の計画を立てましても、今日の交通運輸の混乱の実態の中で、これのみを遂行することは不可能である、したがいまして、総合的な交通体系を立てて、その中で
国鉄の占めるべき分野をきめ、また
運賃等におきましても、調整をしなければならぬ、これが議論の眼目であったと私は思っております。そういう中に今日までまいりまして、まことにそのとおり、四十四年におきまして十カ年という長期のある
意味では無謀な計画を立てましたことが、三年後の今日の段階におきまして、新しい十カ年計画を立てざるを得ない、この
現実になったわけであります。われわれの議論はまさにそれは当を得たものと私はいま顧みる次第であります。そうしていま総合交通体系が眼目だけでもできたさなかに、またまたこの十カ年という長期の計画を立てた、このことであります。私たちは過去の例を見ましても、この十カ年の長期、そのものに問題がある。しかも今日まで五十有余日、あるいはこの時間を含めて五十数時間の審議をした中におきまして、この十カ年計画というものが、内容におきましてもいろいろ問題があるということがますますはっきりしてまいったわけであります。このように議論をしてまいりますると、私は、今日の
国鉄の再建というものは、まことにその美名といいますか、その志といいますか、その出てくるところはわかりますけれども、われわれの立場からいろいろ議論します際におきましては、
国鉄の財政の再建はおろか、このことによりまして、ますますいわゆるわが国の交通運輸関係の総合的な体系というものが、この十カ年計画によりまして混乱の度を加えるのではないか、かように私たちは審議の中を通じまして深く強く感じた次第でございます。
また、この問題の中におきまして、特に私は、長々と申し上げる時間もないようでありますから、結論を急ぎますけれども、
国鉄の
性格につきましては、まだまだ、この論議が進む中におきまして、私たちは納得いかない点が出てまいりました。特にこの審議のさなか、
鉄道建設審議会なるものが、新幹線の新たな路線というものを審議決定いたしました。これなどはわれわれが真剣に、しかもいままでになく強行採決をしない、物理的抵抗をしない、慎重に審議をするということで、真剣に国会が、
運輸委員会が、この
国鉄の財政再建促進のための十カ年計画を審議してまいりましたさなかに、全然無関係と私は言いたいのでありますが、東北新幹線の延長、あるいは九州新幹線あるいは北回り新幹線等の建設が、
鉄道審議会におきまして、審議決定しておることであります。このこと自体、私は今日のこの十カ年計画というもの、あるいは皆さんがいろいろお話しておりますけれども、
現実におきましては、この十カ年計画というものは、いま申し上げました新幹線の新たな路線の設定等のこの関係につきましても、まことに問題がある十カ年計画である。しかも私は議論する中におきまして、
国鉄の公共性というものがある
意味では確認をされたと思っております。独立採算制というものは、これは精神的なものである、このような議論も私たちはいたしました。ところが今日の新幹線、新路線の決定等のあの経過を見まして、
国鉄の
体質というものが、公共
企業体、公共性というものが、この議論の中におきましてある程度われわれは確認されたと思っておりましたものが、あの
鉄道新線建設の関係等から
考えますと、新幹線を中心とした、いわゆる独立採算といいますか、独算制の関係だけがまた全面に出てきているというぐあいに疑わざるを得ないのであります。
かように議論してまいりまして、またこの
運賃問題、まことに私たちいろいろ世論を感ずる中で、あるいはこの
委員会で議論する中で、
国民生活のしからも、また
国鉄の十カ年の財政の再建の上からも、これは議論を深めれば深めるほど、私たちは納得することができない、かように結論づける次第でございまして、本案につきましては、私も本
会議で提案の際にも質問いたしましたけれども、これはすみやかに撤回をされまして、そして
物価の問題、
国民生活の問題、他の交通機関との
運賃の調整の問題、
公共料金その他の波及的な
値上げの
問題等を
考えまして、
運賃値上げはこれを撤回し、また
国鉄の十カ年計画も、もっともっと
国鉄の
体質の改善とあわせて、
政府の財政的な投融資、あるいは大幅の出資、こういうものをもっと徹底的にやらなければ、真の
国鉄の十カ年計画は達成できない、真の
国鉄の十カ年とは言えません、
国鉄の財政再建というものはできない、こういう結論に達しておる次第でございます。
以上、申し上げましたような理由によりまして、私は本案を撤回しまして、そして今日の
国民の皆さんの要望にこたえる、あるいは
国鉄の真の十カ年計画、
再建計画というものを実現をする、こういう趣旨を申し上げまして、反対をさらにさらに強く主張をいたしまして、本案の撤回を重ねて強調して、私の反対討論を終わる次第でございます。(拍手)