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1971-11-09 第67回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月九日(火曜日)    午前十時八分開会     —————————————    委員の異動  十一月九日     辞任        補欠選任      上田  哲君     小野  明君      三木 忠雄君     多田 省吾君      高山 恒雄君     木島 則夫君      渡辺  武君     加藤  進君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 白井  勇君                 玉置 和郎君                 西田 信一君                 初村滝一郎君                 若林 正武君                 松永 忠二君                 山崎  昇君                 塩出 啓典君                 向井 長年君    委 員                 小笠 公韶君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 川上 為治君                久次米健太郎君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古池 信三君                 世耕 政隆君                 土屋 義彦君                 内藤誉三郎君                 長屋  茂君                 平島 敏夫君                 山崎 竜男君                 山本敬三郎君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                 上田  哲君                 小野  明君                 片岡 勝治君                 神沢  浄君                 沢田 政治君                 杉山善太郎君                 羽生 三七君                 藤田  進君                 宮之原貞光君                 森 元治郎君                 安永 英雄君                 多田 省吾君                 中尾 辰義君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 高山 恒雄君                 岩間 正男君                 加藤  進君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  高見 三郎君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   田中 角榮君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        郵 政 大 臣  廣瀬 正雄君        労 働 大 臣  原 健三郎君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣  中村 寅太君        国 務 大 臣  西村 直己君        国 務 大 臣  平泉  渉君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        総理府統計局長  関戸 嘉明君        警察庁警備局長  富田 朝彦君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁装備局長  黒部  穣君        防衛施設庁長官  島田  豊君        防衛施設庁施設        部長       薄田  浩君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     宮崎  仁君        経済企画庁総合        計画局長     矢野 智雄君        沖繩北方対策        庁長官      岡部 秀一君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省経済局長  平原  毅君        外務省条約局長  井川 克一君        外務省国際連合        局長       西堀 正弘君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君        農林大臣官房長  中野 和仁君        通商産業省通商        局長       山下 英明君        通商産業省重工        業局長      矢島 嗣郎君        通商産業省繊維        雑貨局長     佐々木 敏君        運輸省鉄道監督        局長       山口 真弘君        運輸省航空局長  内村 信行君        郵政省人事局長  北 雄一郎君        労働省労働基準        局長       岡部 實夫君        労働省職業安定        局長       住  榮作君        自治省財政局長  鎌田 要人君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        日本国有鉄道総        裁        磯崎  叡君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付) ○派遣委員報告に関する件     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)  以上三案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行ないます。  外務大臣
  3. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 昨日、アメリカ上院外交委員会におきましての核に関する質疑の全文を提出せよというお話宮之原委員からありました。それに対して、提出いたします、こういうお答えをいたしたわけです。それがまだ資料が全部整っておりません。しかし、鋭意努力しておりますので、後刻、つまり委員会の終了までには提出をいたす、さようにいたします。  なお、宮之原委員から、上院外交委員会報告書、その報告書において、日本関連法案がこの批准の前に成立するということを期待する、こういうことになっておりますが、関連法案というのは、一体アメリカはどういうふうな考え方なのかというお話でありました。アメリカ政府に照会をいたしましたが、アメリカ政府回答は、これは抽象的に関連法案といっておるのである、要は沖繩返還が円滑に実施されるということであります、こういうことで、日本の法律のどれこれと、こういうことを言うものではありません、そういう回答であります。     —————————————
  4. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 山崎昇君。
  5. 山崎昇

    山崎昇君 私は、社会党の最後質問者ですから、いろんな問題点について、自後の国会審議に役立てるように、多少整理をして政府の見解をお聞きをしておきたいと思うのですが、それに先立ちまして、ちょうど総理政権を担当してから、きょうでまる七年たつわけであります。そこでこの七年間を振り返ってみて、総理自身、満足のいくような政治をやられたと、あなたは思いますか、それとも、きわめて不十分な政治をやったとお思いになるか、まずこの七年間のあなたの政治姿勢についての感想からひとつお聞きをしたい。
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろ考えてみまして、思い出もありますし、また失敗もありますし、幾多の問題がございます。しかし、まあ、よくも長い七年間続けてやったものだという感じが自分自身でもいたしております。これは別に長いからどうこうというわけじゃありません。とにかく、その間、野党の諸君から非常な鞭撻、叱正も受けたし、また、与党の諸君からも心からなる支援を受けた。そういう事柄が私の長期政権、それにつながっておる。そして、ただいまの状況で、私自身も、なかなか効果の上がらなかったもの、また、それなりに評価されるべきもの等々のあることをこの際率直に、しかも謙虚に反省しておること、これだけを申し上げておきます。
  7. 山崎昇

    山崎昇君 私は、全国どこへ行っても佐藤総理色紙を見るわけであります。どこへ行っても、あなたの色紙は「調和」ということばですね。したがって、私は、あなたの政治基本原則というのは調和にあるのであろう、これが座右銘であろうと、こう考えている一人なんです。  もし、そうだとすれば、この七年間、あなたは調和のとれた政治をやったとお思いですか、それとも、調和がとれなかった政治だとお思いですか。重ねてお聞きをしておきたい。
  8. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) なかなか、とれたものもありますし、とれないものもあります。私がそういう調和ということを自分一つ目標にしておる、しかも、それができておらないという、そのほうに重点を置いて、こういうことで反省しておる。御了承いただきます。
  9. 山崎昇

    山崎昇君 こればかり聞くわけにいきませんけれども、私は、あなたの七年間の政治を見て、西洋のことわざではありませんけれどもボタンを最初かけ違えると最後まで直すことができぬということばがありますが、まさにそのとおりだと思う。中国問題にしても、国府を選んだことが誤りのもとになっておる。あるいはあなたは調和ということば安定成長を叫んだけれども、これは安定ではなかった。あるいは物価、公害、交通等等、きょうの新聞を見ても、ごらんのとおり、国民は五人に三人はいらいらだという。結果は、調和のとれない政治ではなかったのだろうか、こう思うのですが、重ねて聞いておきたいと思います。
  10. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの御意見をまじえての御批判、お尋ね、これはもう私もそれなりに謙虚に伺っておきます。  ただ、一つ申し上げておきたいのは、国府を選んだこと、これが間違いだ、ボタンかけ違いの始まりだ、かような御指摘ですが、私は、これは間違っておらなかった、かように思っております。いま軌道修正はいたしておりますが、しかし、私の選んだ道が間違っているとは思わない。これだけは、はっきり申し上げておきます。
  11. 山崎昇

    山崎昇君 そこで、具体的な問題で大蔵大臣一つお聞きをしておきたい。  予算委員会ですから、私は、あなたからもらったこの補正予算案、ずっと見ております。ところが、どうしてもこの予算編成について納得のできない点があるわけなんですが、これを見ますというと、不用額百六十二億というのがある。不用額とは、一体何なのか。どうして不用額が、予算ができてまだ半年なのに、百六十二億も出るのか。ひとつこの不用額を出した科目一つ一つについて明快な説明を願いたいと思います。  これは各大臣でもけっこうでありますし、大蔵大臣が全部やってもいいです。
  12. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まとめて主計局長から説明いたします。
  13. 相澤英之

    政府委員相澤英之君) 今回の補正予算に計上いたしました不用額は、総額九十八億一千百万円でございますが、そのうち、おもなものは恩給費十五億九百万円、社会保険国庫負担金厚生保険特別会計繰り入れが二十一億九百万円、これは、そのうち日雇健康保険勘定への繰り入れが七億三千万円、それから年金勘定への繰り入れが十三億七千九百万円、それから児童扶養手当不用額が三億九千万円、農業近代化資金利子補給補助等が十六億三千百万円、農地保有合理化促進費が二億一千四百万円、農林漁業金融公庫補給金が二億六百万円、大豆輸入自由化に伴なう国産大豆輸入なたねの保護対策費が六億四千六百万円、住宅金融公庫の補給金が七億三千五百万円、それから児童生徒急増市町村公立文教施設整備事業費補助金が三億円でございまして、以上の経費につきましては、それぞれ現在までの執行状況から勘案いたしまして、年度内に支出を必要としないことが確実となったものでございまして、各省庁協議の上、今回不用額として計上した次第でございます。
  14. 山崎昇

    山崎昇君 そこで、重ねてお伺いしますが、この補正予算案の一八八ページに、農林金融費というのがありますが、これが約十九億不用額として減少されているわけです。一体、この農林金融費というのはどういう性格のもので、なぜこの半年間に約一割近い十九億という金が不用額としてなるのか、もう少し説明願いたい。
  15. 相澤英之

    政府委員相澤英之君) 農林金融費として、今回修正減少いたしました金額は十九億七千五百四十七万八千円でございますが、このうち、おもなものは農業近代化資金利子補給補助金が十六億千八百十二万九千円、それから農林漁業金融公庫補給金が二億六百二十八万五千円でございます。その他は旅費、庁費等節約による減少であります。そのうち、農業近代化資金利子補給補助金の十六億三千百万円の不用額の計上について説明いたしますと、これは四十五年度貸し付け実績が当初予定を下回りまして、これは融資予定が千九百二十五億円でございましたが、実績が千三百十三億円というふうに大幅に減少いたしました。その貸し付け実績減少したこと及び四十六年度貸し付け予定を下回る見込み等によるものであります。四十六年度貸し付けは二千九百二十五億円を予定いたしましたが、約千億円ほどこの予定額を下回る予定でございます。この四十五年度並びに四十六年度貸し付け予定を下回った、ないし下回る見込みによるところの利子補給金減少がこの十六億三千百万円でございます。それから、農林漁業金融公庫補給金の二億六百万円余りの不用でございますが、これは貸し付け金の利息が予定を上回りまして増加したことによるところの補給金減少でございます。
  16. 山崎昇

    山崎昇君 重ねてあなたに聞きますが、この農林金融費は、昨年度、四十四年度、四十三年度はどれだけ不用額が出たか、説明してほしいと思います。
  17. 相澤英之

    政府委員相澤英之君) 農林金融費の項全部につきましては、ただいま手元に持ち合わせておりませんが、ただいま御説明いたしました農業近代化資金利子補給補助金につきましては、四十三年度には四億一千二百万円、四十四年度には十二億八千五百万円、四十五年度には十五億八千六百万円の不用額がそれぞれ生じております。
  18. 山崎昇

    山崎昇君 そこで、大蔵大臣に聞きますが、私がこの予算編成に多少疑問を持ったというのは、いま農林金融費を例にいたしておりますが、数字がないと言う。もし、私の間違いがなけりゃ私のほうで申し上げます。  昭和四十三年度が当初予算百五十一億、そして不用額として削ったものが十五億、四十四年度が当初予算百八十六億、削ったものが二十二億、四十五年度は二百三十二億、削ったもの二十七億、本年度は、当初予算が二百七十二億、削ったものが十九億、言うならば、毎年同じ科目について一〇%ないし一二、三%は不用額になっている。わずか予算が成立して半年ぐらいしかたたぬのに、その科目から一割ないし一割以上の不用額が出るという予算編成は、私はどうかと思う。これは一例にしかすぎない。あげろというなら、私は、厚生省予算から全部詳細検討してある。しかし、きょうはそこまでやらぬにいたしましても、政府は、何か水増しをしてこの当初予算を組むんではないだろうか。たとえば、これで言うならば、農林予算はこれだけとった、農林金融はもう間違いないんである、しかし、半年たったら一割ぐらい削る、こういう予算編成のしかたというのは、どうしても納得できない。どうですか大臣、どう  してこういうことになるんですか。  一般庁費の八%の節約についても私は意見があるけれども、それは別にして、どういうわけでこんなに毎年同じ科目について一割も、一割をこえる不用額を出さなきゃならぬのか、その予算編成について聞きたい。どうですか、大臣から答弁してください。
  19. 相澤英之

    政府委員相澤英之君) 農業近代化資金利子補給補助金につきまして、毎年度相当額不用額が出ていることについてのおしかりをいただいたわけでございますけれども、この農業近代化資金利子補給は、御承知のとおり、系統資金を活用いたしまして農業近代化をはかるために、その利子補給を行なっているのでございますが、これにつきましては、毎年度、ことしで言います一と、三千億円というところの融資ワク予定しているわけでございます。その融資ワクについて、そのような不用額が過去において発生しているのだから、それを縮めたらいいじゃないかと、こういうことになろうかと思います。しかし、これにつきましては、やはり農業近代化を積極的に促進していくには、そういうような一応大きな目標ではございますけれども、それを予定いたしまして、それに向かって努力するというたてまえで農林行政を進めたいという農林省の強い要請がございまして、予算額としては、毎年度そのようなものを計上いたしておるわけでございます。実行がなかなかその点に至りません原因につきましては、いろいろあろうかと思うのでございますが、予算を計上するところの考え方としては以上のようでございます。
  20. 山崎昇

    山崎昇君 それじゃ、農林大臣に聞きますがね。あなたのほうでどうしてもやりたいといってこれだけ組んだのに、どうしてこんなに不用額が出るのか。私は、多少ならば、それは予算ですから、やむを得ないと思う。しかし、毎年度毎年度一〇%から、多いときは一二%も不用額として削られているのですよ。こんな予算やり方は、ずさんだと思う。どうですか。
  21. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 事務当局から答弁いたしますけれども、大体におきましては、総合農政という走り出しをしましたときに、大幅に近代化資金等の増額をして、それで進めていきたいと、こういうことで増額したいきさつがございます。しかし、事実上は、実績上それほどの進み方がなかったということで減ったわけでございますが、なお詳しくは事務当局から答弁させていただきます。
  22. 中野和仁

    政府委員中野和仁君) お答え申し上げます。  ただいま農林大臣が申し上げましたように、たしか昭和四十四年だと思いますが、米の生産過剰というようなことから総合農政を展開する、そのためには農業施設その他の近代化施設を大幅にやらなきゃいかぬということから、系統金融を活用いたしまして利子補給をするという制度を、大幅に資金ワクを拡大したわけでございます。たしか当時三千億ということにしたわけでございますが、それ以前はたしか千数百億だったと私記憶しております。そういうことで大幅に拡充いたしました。ところが、農家のほうの資金需要がその三千億に及ばなかった。その後四十五年、四十六年ワクを変えませんで、そのまま当初予算に計上して資金需要のいろいろな面での努力を重ねてきたわけでございますけれども、やはり実績が当初の限度に達しなかったということでございます。
  23. 山崎昇

    山崎昇君 だから、私の聞いているのは、四十三年度でちょうど一〇%、四十四年度で一二・一%、四十五年度で一一・九%、本年度は七・一%の削減になっている。あなた方がそれだけ熱心にやるんなら、私は、それでいいと言うんです。しかし、予算編成技術からいけば、半年たたないうちに、毎年同じ科目について何でこんなに一〇%もこえるような不用額が出るんですか。あなた方の希望はわかりますよ。予算編成の私は技術からいっても、これは大蔵省おかしいんではないかというんです。私は、一%や二%の狂いは、そんなにとやかく言いません。あるいは去年までなくて、ことしだけ出たのなら、それも言いません。だが同じ科目について必ずといっていいぐらい一割近い不用額を出すような予算編成はおかしいではないかと、こう言うんです。ですから、大臣の答弁を求める。
  24. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 予算編成のときに、こういう政策的な経費については、こういうことが、これ一つじゃなくて、ほかにもありがちなことは事実でございます。それで、実績を見て、本年度はこの程度で適当ではないかと、それ以上は少し無理だと思う予算折衝でございましても、この政策は推進すべきだという政策に関した経費というものは、各官庁において、なかなかこれは引っ込まない。どうしても目標はここに置いてわれわれは努力するんだということで、予算折衝するときに、やはり政策的な経費は、いままできめた目標よりも少なくするということは現実的にはむずかしいというようなことから予算が決定しますので、それでこういう問題が起こってくるんではないかと思います。私は、政策経費はやむを得ないとしましても、問題なのは、そうでなくて、むしろ前年度実績はこうだから今年度もこの実績の何%は予算をふやさなければならないということで、なかなか各省との折衝がいつも骨が折れるわけでございますが、そうなりますというと、とった予算を使わないということは次の予算に関係するということで、無理にも使うというようなことから相当予算の非効率的な使われ方が行なわれているんじゃないかということを私どもは心配しておりますので、来年度のように、財政が非常に歳入がつらいというようなときには、なるたけいままでの実績を見た査定と同時に、率にこだわった、いままでこの率で予算は伸びてきたからというんじゃなくて、一ぺん既定予算の見直しをやって、そういう査定方針を来年は少し厳格にやりたいというふうに考えております。
  25. 山崎昇

    山崎昇君 これだけに私は終始するわけにいきませんが、大臣の言う政策予算だから私は重要視をしているんです。当初予算編成するときには、農村近代化資金はこれだけとりました、政府は一生懸命農村のことをやっていますといって、半年もたたぬうちに一割ぐらい削る、こういう予算やり方は、政策であるだけに私は重要視をしているんです。ですから、多くのことは申し上げませんが、もう少し私は予算編成にあたっては、きちっとするときはきちっとしてもらいたいということだけ申し上げておきたいと思います。  それから、次に人事院総裁に聞いておきたいと思うんですが、公務員給与については、完全実施の段階まできました。しかし、いま全国的に起きている意見あるいは私どももそうでありますが、もうそろそろ四月実施ということに人事院は踏み切るべきではないか、こういう声があることは御承知だと思うのです。これは理論的にも、現実的にも四月実施というのが正しいと私は思うんですが、一体人事院総裁は、次の勧告等の場合にこれを考慮するのかどうするのか、この機会に聞いておきたい。
  26. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) お答え申し上げます。  次の勧告時期というようなことをお約束するわけにいきません。それは抜きにしてお答え申し上げたいと思いますが、まず、おかげさまで完全実施を昨年から見ることができまして、たいへん喜んでおります。厚くお礼を申し上げます。  続いて、いまの問題でございますが、この勧告において五月一日実施をうたいましたのは昭和三十五年で、それから十一年ばかりずっとその形を踏襲してまいっております。また、私どもは、それにつきまして、これは決して間違っているやり方だというふうには考えておりません。しかしながら、いまおことばにもありましたように、近年になって四月一日実施のほうが筋じゃないかという声が相当高まってまいっておることも承知しております。したがいまして、私どもとしては、正しいことをやりたいという気持ちを常に持っております以上は、そういうお声についても耳を傾けて検討してまいっております。  そうして、これはときどき申し上げておるわけでありますが、なるほど、これは一理なきにしもあらずというような気持ちを持って問題に取り組んでおるわけでございますけれども、何ぶんしかし過去十一年にわたって、ある意味では、もう安定してきた形に現在の五月一日がなっておるということ、そういう意味から申しまして、軽々しくこれを変更するというわけにもまいらぬ。いわんや、また、われわれとしては、納税大衆を含む一般国民各位あるいは世論というものに納得していただけるだけの確たる根拠をひっ下げた上でなければ、そうやすやすと踏み切るわけにはいかぬという心がまえを持ちつつ、しかし、問題は重要な問題であるという心組みで、まあ、うしろ向きというよりも、いわば前向きの形で熱心に検討を続けておるというのが実際でございます。
  27. 山崎昇

    山崎昇君 総裁から、いま検討するというのだが、いま、日本の労働者の中で、その賃金が五月実施というのは公務員しかございませんね。同じ公務員でも、たとえば農林省でいえば、営林署関係は四月からになっておるが、その他の一般職は五月になっておる。そういうやはり矛盾が出てきているわけですから、この点について重ねてあなたの決意を聞いておきたいのだが、少なくとも、自分のやった五月実施にあまりこだわらずに、四月実施についてはひとつ検討を願っておきたい。  それからさらに、昭和四十三年に寒冷地給の一部改正があったきりで、ほとんどその後これが動いておりませんが、聞くところによれば、今月中ぐらいに勧告を出したいということで検討されているというふうに聞いておりますが、寒冷地給についてもどうなるのか。  それからもう一つ、重ねてお聞きしたいのは、最近、各地方裁判所から、公務員の政治活動をめぐっての判決が一ぱい出ておりますが、この問題についても、どういうふうに人事院は検討されておるのか。これもあわせて御回答を願っておきたいと思います。
  28. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) お答え申し上げます。  公労協関係のお話をよく承るのですけれども、これはわれわれのほうとは全然別の筋の問題だと思っております。御承知のように、公労委の裁定などをごらんになりましても、ごく最近は四月一日——最近じゃありません。四月一日できておりますけれども、組合側の要求は決して四月一日じゃないので、前の年の十一月だとか十月だとか、そういうところが要求となっておったのが実情でございまして、これはわれわれのほうの問題とは全然別個の問題だというふうに考えております。  それから寒冷地の問題、これも昭和四十三年でございますか、改定をいたしました際に、内閣委員会で附帯決議がありました。寒冷増高費等の関係において十分将来見きわめていけということで、われわれは、忠実にその傾向を、たとえば光熱費、北海道でいえば石炭の価格などの帰趨を見守ってまいっております。確かに今日の段階においては相当上がっているという事実も、数字までつかんでおります。しかし、その一方、御承知のように、寒冷地手当は定率分がございまして、これは本俸の上がりと比例して率のほうで上がっていくようになっております。幸いにして、ここ何年来、給与のベースアップもわりあいに、われわれとしては、大幅に認めていただいていると思うので、そのほうから申しまして、まだこれをもってカバーするに余裕があるという計算になっております。しかし、問題は問題として、これは重要な問題であります。皆さんの要望もございますので、なお今後もそういう各条件をずっと注視しながら、いつでも踏み出せるようなかまえでまいりたいという気持ちでおります。  それから地方裁判所の判決は、これは相当重大な判決だと思います。しかし、私どもといたしましては、まだこれは控訴されておるようでもございますし、その後の帰趨を十分見きわめた上でまた考えたい。目下、当面としては、地方裁判所の判決文を検討しておるという段階でございます。
  29. 山崎昇

    山崎昇君 次に、国鉄総裁——来ていますか。あなたにマル生運動で一言聞いておきたいと思いますが、マル生というのがたいへん流行語の一つになっておるわけです。そこで、私どもも、マル生って何ですかと、こう一般の人に聞いてみると、マル生というのは、上役が部下にお茶や食事をおごることではないんですか、これがまあ一般の言い方です。それぐらいこのマル生運動というのは、何かしらぬけれども、部下に一生懸命飯を食わしたり、お茶を飲ましたりして、そして国鉄労働組合からどこか別な組合にやらせることがマル生運動というふうにすなおにとっている、国民は。それだけに、この間、公労委でも、あなたに対して、関係労働組合に陳謝をせよという命令が出て、あなたは陳謝した。ところが、その後の推移を見ますと、ほとんどそれが第一線の管理者にはなかなか伝わっておらないと見えて、不当労働行為があとを断っていない。けさの新聞を見ても、その後千四百件にのぼっているという。こういう事態から考えるときに、あなたの責任はきわめて重いと思うのだが、このマル生運動について、あなたは、一体どうされるのか。ほんとうに労働組合にあやまったのなら、あやまっただけのことをしてみせなければいかぬと思うのだが、どうですか。
  30. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 生産性向上運動につきましては、当委員会におきましても御説明申し上げましたが、私といたしましては、国鉄再建の運動の一つであるというふうに考えております。ただ、いま先生のおっしゃったように、いろいろ誤解された点があったことは、非常に遺憾に存じております。  その後、いろいろ事例があるというふうにお話でございますけれども、私どもといたしましても、その後、各管理局長を集め、また関係の部長を集め、現場の末端まで浸透をはかっておりますけれども、あの受諾の際に私も申しましたとおり、非常に大きな世帯でございますので若干日にちをかしていただきたいということを申し上げておきました。きょうも実は関係の部長を集めて徹底をはかっておるつもりでございますが、すでに組合との間で紛争対策委員会というものをつくりまして、昨日も動労と第一回を開き、国労とはすでに第二回というふうな段階になっておりまして、私としても全力をあげて国鉄内部の問題として処理してまいりたいというふうに思っております。
  31. 山崎昇

    山崎昇君 総裁、私は、こういう問題というのは、あなたがどんなに優秀であっても、あなたは一銭の利益もあげることはできない。過酷な労働条件で夜中でも運転している労働者がなければ国鉄の収入をあげることはできない。そうならば、この国鉄に働く労働者の協力なくして、こういうものができるしかけにはなりませんね。しかし、いま起きている事態というのは、そうじゃないじゃないですか。中間の管理者がつれていってお茶を飲ませる、めしを食わせる、家族を脅迫をする。そして、おまえは国鉄労働組合から出なければおまえの昇進は見込めないという、そういうことが起きて、あれだけの公労委の命令が出ているのです。それが、いまもあとを断っていない。あなたは努力していると言うけれども、もしあなたの努力が実らなかった場合、あなたはどうしますか。あなたの威令が現場の管理職に伝わらないとするならば、そういう者に対してどういう処分をとるのか。私は、一番あなたがみずから責任をとらなければならぬ事態ではないかと思うのだが、どうですか。
  32. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 私は、国鉄の責任者として、私の趣旨が現場の末端にまで浸透するように、あらゆる努力を続けておるつもりでございます。もちろん、私の命令その他が徹底しないという事態になれば、これは私自身の問題であるというふうに考えます。また、私自身の責任につきましては、私は、総裁就任以来、一日といえども私の頭から責任問題が離れたことはございません。今後全力をあげて国鉄の再建に邁進いたしたいというふうに考えております。
  33. 山崎昇

    山崎昇君 あなたは一生懸命いま努力されていると言うが、しかし、現実はなかなかそうはならない。そこで、あなたは、いま関係者だけ集めていろいろやっておるようでありますが、この不当労働行為をなくするためには、もっと何か積極的な政策があっていいのではないかと私は思うのだが、あなたの具体的なそのほかの考え方があれば、この機会に聞いておきたい。
  34. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 御承知のとおり、国鉄の中には四つの大きな組合がございます。したがいまして、非常にその組合間の考え方も違っておる点もございますし、いわゆる労使協調と申しましても一つの限界があるということも事実でございます。そういう意味におきまして、私は、その四つの組合の、まあ最大公約数というふうに申しますか、それを求めまして、それと私ども考え方を一致していくということが国鉄再建の道であるというふうに考える次第でございまして、その趣旨に沿って私の考え方を現場の末端まで浸透さしたいというのが私の信念でございます。
  35. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、総裁、あなたは、あなたの指示にもし従わないで不当労働行為を続けているような中間管理者がおれば、厳重な処分をしますか、あなたは。それを聞いておきます。
  36. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 先ほども申しますとおり、多少若干の時間がかかるということはお許し願いたいと思います。極力、私の趣旨が現場の二万の管理者にまで徹底するように、全力をあげてやってるつもりでございます。しかし、若干の時間がかかるということはお認め願いたいと思いますが、なるべく早く私はやるつもりでございます。
  37. 山崎昇

    山崎昇君 私の聞いておるのは、若干の時間を聞いておるのじゃないんだ。いまだに、どんどんどんどん起きておる。あとで私は郵政大臣にも聞きたいが、いままた全逓が火を吹いてきましたよ。このマル生運動というのはね、生産性を上げるのじゃないんだ、阻害をしている、職場を暗くしている。それをやっているのは、あなたの意思に反して中間幹部がやっているのです。だから、そういう者に対して、あなたは厳重な処分をしなければ、時間だけかしたって、これはどうにもなりませんよ。重ねて聞いておきます。
  38. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 極力私の趣旨が徹底するようにいたします。
  39. 山崎昇

    山崎昇君 総裁、もう一ぺん聞くが、どうしてもそれに従わない、破る者がおったらどうしますかと聞いておるんですよ、これは。それを明確にしておいてください。
  40. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) その破る、どういう趣旨で破るか、どういう客観条件で破るか、これは、先生の御質問がいろいろな具体的なケースの御質問でございますから、ケース・バイ・ケースによりまして、総合的によく判断して私は措置をいたします。
  41. 山崎昇

    山崎昇君 それじゃ、措置をしますね。これは確認をしておきます。  そこで、運輸大臣、こういう事態になっているのだが、監督官庁としての運輸大臣一体どうされるのか。
  42. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 国鉄の職員の不当労働行為につきましては、私、先般も委員会で申し述べましたとおり、まことに遺憾でございまして、これらの不当労働行為が絶対に起こらないことを期している次第でございます。  そこで、その基調といたしまして、国鉄がいま非常な危機に瀕しておりまする財政再建のために、あるいは増収をはかり、あるいはまた合理化をはかりまして、そうして国民の足としての真の誠実を見せようという精神教育はもとより必要ではございますが、その基調となるものは、あくまでも労使が一体となりまして血の通う国鉄経営をなすことが基調であるということを私はいつも念願をしておる次第でございまして、そうして、それらのことが直ちに実現ができまして、そうして国鉄が再建の道に進むように念願をしておる次第でございます。私は、そういう趣旨に従い、まして、ただいませっかく指導をしておるつもりでございます。
  43. 山崎昇

    山崎昇君 関連して労働大臣に聞きますが、労働大臣は、たしか調停に入るということでいろいろ動かれたようだが、いま一体どういう態度を労働大臣はおとりになっていますか。
  44. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) お答え申し上げます。  私は、過般来、秋ごろから、国鉄当局と労働組合の間に非常な不信感がある、しかも感情はきわめて先鋭化しておるということを察知いたしましして、国鉄再建の基礎、基盤は、労使双方が協調していくことである、労使双方が信頼を取り戻して仕事に打ち込んでいくことでなければならぬと、こう考えまして、しかも、それが労使間に非常な紛争をいたしておることは純然たる労働問題になってきておるということを考えまして、官房長官や運輸大臣の了承を取り、了解も得まして、その仲介に乗り出しました。現段階において、私が仲裁いたしました、まあその間において、衆議院の委員会、参議院の委員会においても、これについての審議を進めていただきました等々で、事情が非常に明かるくなってまいりました。私も事情を聴取もし、私の意見も申し上げる、国鉄当局及び労働組合に。そして最終的に両者を呼びまして、いままでのようなそういういつまでも不信感を持つのはやめて、誠意をもって自主的に労使の交渉に入るように、話し合いに入るように、こういうことを私が申し上げましたら、国鉄当局も労働組合もそれを了承いたしまして、これから積極的に話し合いに入りましょうと、こういうことになりました。  それからその以後がお尋ねのことでございますが、その以後の第一に、国鉄総裁は公労委の救済命令を受諾して、国鉄労働組合、動力車組合とに陳謝文を出しました。これが第一段階。第二においては、マル生運動がいろいろ誤解を招いておるから、二カ月にわたって一時このマル生の教育を中止する。第三は、さいぜんも申し上げました、国鉄総裁からもありました、紛争処理の委員会、紛争対策委員会というのを設置してやる。ここまで来て、この紛争対策委員会も進めております。  それで、私が初めからいろいろ国鉄当局、国鉄労働組合、動力車労働組合から、両方から聞いておった意見も、大体この程度に進んでまいりまして、両方の話がかみ合って、双方の話し合いが軌道に乗っておる。これからの見通しは、私は、話し合いが急にはいきませんが、さいぜん質問も非常にございました。四十万も四十五、六万人もある労働組合ですから、総裁から命令を出しても、不当労働行為をやめいと言っても、やはり誤解しておる人もあるであろうから、二カ月間この教育をやめて、その間に全部命令を出して不当労働行為もやめさして、労使双方で話し合いの軌道に乗っていく、乗っていく委員会もできた。私は、非常に明るい見通しで、喜んでおる次第であります。
  45. 山崎昇

    山崎昇君 いま労働大臣からも答弁がありましたがね。私は、これだけ大きな問題になって、国会でもかなり議論されている。新聞でも報道されている。こういう事態がわからぬ管理者というのは、私は管理能力がないと思うのです。ね、そうでしょう。もしそうだとすれば、多少の時間をかすことはいいとしても、あなたの国鉄総裁の命令が消化されるというのは、なかなか私どものほうで今度は理解ができない。だから、これはもっときつい態度で中間管理者に臨んでもらいたいということを強く要望しておきますが、郵政大臣に、これに関連して、お聞きをしておきたい。  最近、また全逓で問題が起きてきておる。昨年、トップ会談と言われて、当時の郵政大臣と全逓の委員長との間に話し合いがついた。しかし、第一線の管理者は、そのトップ会談に違反をして、不当労働行為が絶えない。いままた険悪な状態になってきているんですね。言うならば、このマル生運動そのものに欠陥がある。このマル生運動をやる限りにおいては、この紛争というのは直らない。そういう意味でいくと、郵政大臣一体どういうふうにお考えになるのか。これから年末を控えて私はたいへんだと思うんですよ。あなたの見解を聞いておきたい。
  46. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) 郵政事業の円滑な運営ということにつきましては、何と申しましても労使関係が正常でなくちゃならないということは当然でございまして、昨年いろいろまあ紛争があったことに基づきまして、昨年の暮れに、御承知だと存じますけれども、十二月十四日に、労使間でこのことについて確認事項がきめられたのでございまして、私どもは、これに基づきまして、その精神、つまり労使関係については不信感を持っちゃならない、誠意を持って対処していかなければならないという、その精神をたびたび現業のほうにも通達いたしますとともに、また、地方郵政局長、郵政監察局長、電波監理局長というような全国的な会合を本省で持ちますたびごとに、その精神は徹底するように申し渡してありますわけでございます。しかし、御承知のように、最近私どもは現業がうまくいっておると思いますけれども、全逓の先輩であられます国会議員、あるいは社会労働の国会議員の方々が現業局を何局か視察したいということで、いまやっておられますようでございますが、私どもは、国鉄と違いまして、全逓から公労委に申し出をいたしましたのは四件でございまして、そのうち三件は、すでに労使間で話し合いがついて、解決をみておりますわけでございまして、残っておりますのは一件だけでございます。こういうことで、国鉄とはずいぶん違いますと思いますけれども、現業を御調査なさいました結果を、いずれ私どもにお聞かせをいただくと思いますので、それに基づきまして善処してまいりたい。御指摘のように、年末の非常に郵便局の多忙の時期も控えておりますから、これまでには何とか解決をしていかなければならない。こういうように考えておりますわけでございます。
  47. 山崎昇

    山崎昇君 郵政大臣ね、話し合いがついて、そういう不当労働行為はやりませんと覚え書きを交換したのは去年ですね。一年たっている。そして、なおかつそういう問題が起きてきて、いままさに全逓は、年末を控えて大闘争をやろうとしている。その混乱はどうなりますか。あなたがここでそんなうまい答弁をしても、現実にあなたの部下は違ったことをやっているじゃないですか。そういうことについて私は納得ができない。これは国鉄も同様になってくると思うのですよ。だから、そういう中間幹部、能力のない中間幹部を、それじゃ一体どうするのですか。あなたの意思に反してやっていることをどうしますか。それが除去されない限り、年末の混乱は必至ですよ。その点、しかと、ひとつ返事してもらいたい。
  48. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) ただいま申しましたように、御調査の結果は、いずれ私どもの耳に入ると思いますので、それに基づきまして、誠意をもって、不信感を払拭いたしまして、十分善処してまいりたいと、このように考えております。
  49. 松永忠二

    ○松永忠二君 関連。  いま、郵政大臣から、国鉄と違って私のところはたった一つしかそういうものは残っていないというお話がありました。しかし、私たちは、郵政の職場を回ってみてですね、ほとんど全部国鉄と同じような問題がそこに介在をしているという事実を承知しておるわけです。また、私は、こまかい資料はいずれ伺いますけれども、現在、地方の局長というのは、居住地等で、夫婦で移住してそこで仕事をやっている者の数というものは非常に少なくなってきているわけです。これは、大臣総理大臣などはあまりこういうような実情は御存じでないと思うのでありますが、局長などが独身で自分一人で赴任してきて、そうしてしかも期間はほんの一年、二年等の期間そこに赴任をして、そうしてまた他の赴任場所にかわっていくという実情でありますが、それが局長ならまた別であるのに、課長のようなものも、たとえば私たちの静岡県などでは、名古屋の郵政局のほうから赴任をしてきて、独身でそこで仕事をやっているわけであります。  この全逓、郵政の、郵便局の局長などというのは、まあ国鉄の駅長もそうでありますけれども、比較的地域性が強いわけであります。地域の人と非常に交流もされ、地域の人からも非常な親近感をもって迎えられているというのが、郵政の局長であるのであります。ところが、現在は、そういう局長はほとんどまれである。ほとんどが、任務を持って独身赴任をして、そうしてそのある短期間そこにいれば、その後はまたもとに帰るという状況であるわけで、したがって、何のために一体この地域に来て、そうしてこの郵政の仕事をやっているのかということについては、いわゆる労働対策として赴任をされているのではないかという気持ちすら実は持つわけであります。現実にそういうことがこの局内における労使の紛争になってきて、そうして非常な険悪な状況が各局にあることは事実であります。こういう点では、ほとんど国鉄のいま現実に出てきていることと同じような状態がこの各郵政の局内に行なわれている。だから、問題は、これが提訴されるとか、いろいろな形をもってまだ出てこないだけである。したがって、数回にわたって、労変闘争という名前で、職場で、ふんまんにたえないという形の中から紛争の起こっていることも事実であります。それで、ひどいものは、主事が一体自分の机から何分離れたなどということを記録をしている状況であるでしょう。しかも、国労、国鉄で問題になっているように、主事になるためにはあなたの態度を変えなければならないというような不当の勧告、圧力というものが現実に出ていることは事実であります。あなたが、私の職場は、私のところは国労とは、国鉄とは違いますなどというようなことを言っているとすれば、全く認識の甘いところである。そういう現状ではないということを私たちは強く感じている。そういうことが、いま山崎委員から話のあったとおり、年末を控えてこの問題が大きくクローズアップして、国民にも非常に大きな影響を与えてくることは必至であると思うのです。こういう意味から、いまのような状況であるならばあるほど、もっと調査を的確に行なって、そうして、もうすでにこれは国労のそのマル生運動とは違って、もう一年有余たっているわけでありますから、この趣旨が何ら管理する中間管理者に徹底をされてないということであるならば、その管理者の責任を明確にするということは、これは当然のことだと私は思うのです。そういう意味で、私は、あなたの認識は実情とは遠いのではないか、そういうことが年末における大きな問題を引き起こしはしないかというわれわれの心配に対して、再度あなたの的確な御答弁を聞きたいと思うのであります。
  50. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) 御趣旨はよくわかりましたので、十分調査いたしまして、昨年暮れの労使間の確認事項に基づきまして、不当労働行為のないように、また、適材適所、人事の刷新等もいたしまして、地域社会の福祉の向上というようなことについて十分貢献のできるような逓信事業、郵政事業たらしめたい、このように努力いたしたいと思います。御趣旨はよくわかりました。ありがとうございました。
  51. 松永忠二

    ○松永忠二君 いや、そういう御答弁では困りますよ。いま山崎委員も言っているように、この趣旨が十分に徹底をされない場合には、その責任というものを明確にしてこの問題の徹底をはかると、こう言うならいい。ただ調べるとか、いろいろなことを言っているのではなく、もうあなたのところは一年も前にやったことである。私は、あなたの確認書が各局に回った際に、局長には、あなたのところに確認書が来ているでしょう、趣旨が伝達されているでしょうと言ったら、そうです、まいりました、まいったなら、そのことを、内容を職場の職員等にも明らかにして、そうしてこの説明をしていくという措置が必要ではないでしょうかと言ったらば、いや、それは私たち管理者に来たことであって、職場に周知をする必要はございませんと、こういうふうに局長は言っているわけです。そうなれば、一方的にやはり局長が責任を負うべき筋合いだと私たちは思うのであります。したがって、この趣旨が徹底をされず、あるいはそれが確実に行なわれていないという事実があるとするならば、相当長い期間でもあるので、それ相応に責任をひとつ明らかにいたしましょうと、こういう御答弁であれば私はわかります。その点はどうなんですか。
  52. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) 責任を明らかにするということも含めて、さっき、適材適所人事をやると、このように申したつもりでございますけれども。私の申した意味は、責任を明らかにするということももちろん含んでおるわけでございます。
  53. 山崎昇

    山崎昇君 そこで、佐藤総理、いまお聞きのとおりだと思うのです。すでに総評では、ILO提訴のために代表団がもうスイスへ向かいまして、これはいまや国際的な問題にまたなっている。国内的に言えば、これからまた年末を控え、輸送がだんだん込んでまいります。また郵便事業もたいへんなところに来ると思うのです。しかし、その根源は、何といってもこのマル生にあることだけは、もう事実でありますから、総理一体どういうふうにこの関係機関を督励をして、この問題について対処するのか。さらに、また、いまも話のやりとりがありますように、中間の幹部は必ずしも大臣や総裁の言うとおりやってない。だから紛争が絶えないんですね。そういうものに対して、一体総理はどう各大臣を督励してやられるのか、この際、総理の決意を私は聞いておきたい。
  54. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も、ずいぶん以前ですが、終戦後、国鉄の、運輸省の次官をいたしました。当時は、まだ国鉄は公社でございませんから、直接労使の折衝をしたその経験はございます。しかし、その後なかなか——一時はよほど改善をされたと思いましたが、なかなか改善されない。まあ冒頭に、各地へ行くと、佐藤総理の書いた「調和」というその色紙をよく目にすると、こういうように言われましたが、私は、労使双方、これは、同じ職場で働き、そうして対立抗争これをなくすることが何よりも必要なことだと思っております。ただいまそういう観点に立って調和の必要性をいよいよ痛感するのでありまして、どうもいまなお対立抗争がある、それをなくすること、それについても努力しなければならない。それが、先ほど来国鉄総裁やあるいは郵政大臣からお答えしたような具体的な問題はございますけれども、基本的な問題としては、その調和の精神を欠くところに問題が起こるのじゃないだろうかと、私、かように思います。  とにかく、われわれは、国鉄にしろ、また郵政にしろ、国民のためにサービスを提供しておるのであります。そのことを考えると、お互いの小さな立場にとらわれることなしに、総体として国民に奉仕する、そういう立場に立って、もっと自分たちの置かれておる職責の重きを十分自覚していただきたいと、かように思います。どうも私の話が精神訓話になったと、こういうことでは申しわけないのでございますが、最近は近代的な労使双方の協議機関がございますから、そういうものを通じて、そうして十分に成果があがるようにいたしたいものだと、かように思います。
  55. 山崎昇

    山崎昇君 いま総理の答弁ですから、それでいいと思うのですがね。その人の昇給をとめてみたり、あるいは試験に合格した者を、おまえだめだと取り消してみたり、やっていることは卑劣だと思うのですよ、私は、人間として。だから、それがこのマル生運動という運動を媒体として労使の紛争が起きているのですから、そういう卑劣な行為はやっぱりやめる。堂々と、労働組合に協力を求めるなら、労働組合の存在があるのですから、話をしてもらう。そして、それに違反をする中間幹部は断固処置をとってやっていくだけの決意がなければ、私は、この混乱は収拾できないと思うのです。それだけのことを、最後に私のほうから指摘をして、要望しておきたいと思うのです。  それから次に私はお聞きしたいのでありますが、きわめて小さいことでありますが、最近、国民の祝日について、ずいぶん総務長官はやっておられるようですが、きょうは、労働大臣にちょっと聞いておきたいのです。  それは、国民の祝日がふえることもいいし、日曜日と重なったのを翌日休みにするのも、私はけっこうだと思う。ところが、残念ながら、この祝日に休めない労働者がたくさんおる。特に中小の企業の労働者というのは、国民の祝日を休みにせよという要求さえ掲げてストライキをやっているところさえある。そう考えますと、この国民の祝日に関する法律の第一条には、「国民こぞって祝い、感謝」すると、こうなっているのだけれども、そういうことになっていないのです。そこで、労働大臣は、これは労働基準法とも関連があるのでしょうけれども、行政指導等を通じて、この日は有給で、こぞって中小の労働者も、国民の祝日が祝えるような措置がとれないものかと、この点、ひとつ労働大臣の見解を聞いておきたい。
  56. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) お答え申し上げます。  御趣旨は賛成でございます。そこで、労働基準法によると、週一日休むべしということを規定いたしております。それから、お尋ねの祝日について休まないところがあるというお話がございましたが、労働省といたしましては、労働基準法に従って祝日も休むように、中小企業や全部にそういう行政指導をやり、それをすすめてやらせておるところでございますが、なお、ただし、これは協定によって祝日も休まないという話し合いが出た場にはやむを得ぬとしておりますが、そういろ話し合いをあまりしないように、願わくば祝日は休むようにという行政指導をいたしております。今後、もっとこれを徹底して、休ましていくようにいたしたい。私どもの労働省の調査によると、必ずしも、中小企業でも、休むことが生産性を減退するゆえんではなくて、休むことのほうがむしろ生産性をあげて、お互いに豊かな生活もできるし、生産性もあがるし、両々相まっていくという統計も出ておりますので、積極的にそういうふうに指導をいたしていく考えでございます。
  57. 山崎昇

    山崎昇君 たいへんけっこうな答弁なんですが、それが現実になるように、ひとつ要望しておきたいと思うんです。  特に、五日の朝日新聞に投書がありまして、「日給者には喜べぬ休日増加」ということになっています。ですから、私は、やっぱり恵まれない人というのが、いつまでも、こぞって国民が祝う  日でさえやれない、こういうことにならぬように、重ねてこれは要望しておきたいと思います。  次に、私は国家公安委員長一つ聞いておきたい。  これは、警察から出ている「教養旬報」という、三二二号であります。これによりますというと、こういう文章が随所に出てきます。それは、「国際共産主義勢力としての中共は、「鉄砲から政権が生まれる」という毛沢東の暴力革命の理論を真理として、わが国から訪中する者(昨年中は約三〇〇〇人)に対して一様に「戦闘的友誼」を強調するとともに、これら親中共糸団体等に対し、革命の輸出的言動をもって反政府、反軍国主義闘争などの革命的闘争を支援・せん動していることなど、治安的にも看過できないところである。」という文章が随所に出てくる。これは警察が出しているものですね。これは一節だけ読みましたが、ほとんどこういうことでこれは占められておるんだが、一体日本から中国に行く者は、全部これは中国から扇動されて、向こうの革命の輸出的言動に共鳴をして帰ってくるというふうになる。そして、治安的な立場からこれを見ておる。こういうことがはたして許されていいのかどうか。あなたはこれを是認をしますか、否定をしますか。
  58. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 私は、その書類を、不勉強で、読んでおりませんので、よく検討してみまして——いまあなたのおっしゃるようなふうに扇動されておるとは思いませんので、その点、よく検討してみまして、いつか機会のあるときにお答えいたしたいと思います。
  59. 山崎昇

    山崎昇君 いまお見せしますよ。警察庁警務局教養課、この論文を書いたのは、警察庁警備局外事課長補佐警視斉藤明範。これね、中身を読んだら、不当ですよ。特に「中共要人の訪中者に対するこの種の言動は他にも数多くあるが、このことは治安的な観点からも看過できない」というのは、周総理と行った方々がいろいろ話をする、それがすべて革命的言動の扇動だという、そして治安的に許されないという、こういうことが警察庁の認識としてこの日中問題を扱っているとなれば、私はたいへんだと思うのです。どうですか、国務大臣。私は、うそを言われたら困るから、あなたに、これ、見せますよ。
  60. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) ただいま読まれたようなことが、私は、警察庁の基本的な考え方ではないと思いますので、よく調査をしまして……。
  61. 山崎昇

    山崎昇君 ないたって、そう書いてあるのです。だから、あなた、それを是認するかどうかというのです。
  62. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) よくこれは調査をして、事実そういうことを考えておるとすれば、考え方を訂正させます。
  63. 山崎昇

    山崎昇君 大臣、私が聞いているのは、それをあなた是認するかと、それ、読んで。是認しないで、否定するのですね、それ。
  64. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 私は、これはよく読んでおりませんので……。
  65. 山崎昇

    山崎昇君 時間を与えますから、読んでください。
  66. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) あとでよく答えます。
  67. 山崎昇

    山崎昇君 だめだよ。それ、いま、あなたに時間を与えるから、読んで、是認しますか、是認しませんか、それだけ答えてください。実際、警察は行き過ぎですよ、やっていることが。
  68. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  69. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。
  70. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) その点は、書いておる警備局の者を呼びまして、よく検討しまして、休憩後の再開の委員会の際に答えさせていただきます。
  71. 山崎昇

    山崎昇君 それじゃ、その点だけ留保して、質問を続けたいと思うのです。  そこで、もうほとんど時間がなくなってきましたので、中国、沖繩で、二、三だけ確認をしておきたいと思います。一その一つは、国連における愛知全権の演説があるわけですけれども、その中に、もしも国府が国連から抜けるようなことになれば新しい緊張が起きるんだという趣旨のことが述べられているわけです。そこで、佐藤総理にお聞きしたいんですが、この前後を省きますが、国際連合における中国代表権問題の検討にあたって、あえてこれを無視することは極東における緊張緩和を実現するどころか、かえってこの地域における国際均衡をくずし、緊張を激化することをおそれる、こう演説されておる。どういう緊張が激化するというふうにお考えになって、こういう演説をされたのか、まずその点からお聞きをしたい。
  72. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それはそのとおり演説をしたんだろうと思いますが、ともかく急激な変化が来る、こういうことは少なくとも現状を変化させるものである、こういうことであります。したがって、現状変化に伴うところのいろんな摩擦現象、そういうものが出てくる。そういう結果、あるいは緊張激化ということになるかもしらぬ、こういうことを言っておると私は考えております。
  73. 山崎昇

    山崎昇君 私の聞いているのは、これは九月二十七日、英語でやられた愛知さんの演説なんです。明確にこの地域における国際均衡をくずし、緊張を激化することをおそれる。こう述べているからには、ある程度の想定があってこういう演説になった、少なくとも百三十一カ国の前でこれをやったんですから、具体的にどういうことを想定してこの演説をされたのかを答弁願いたい。そんな抽象的なことを私は聞いているんじゃない。
  74. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 具体的にはいろんなことがあろうかと思いますが、そこで言っているのは抽象的なことでありまして、急激な現状の変化、これは緊張の激化を起こすおそれがある、そういう意味合いであります。
  75. 山崎昇

    山崎昇君 だから私の聞いているのは、国連総会では抽象的な演説ですよ、政府はどういうことがその裏にあってこういう演説になったのか、具体的に聞いている、述べなさいよ。
  76. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 現状が変化するんだから、それに伴っていろんな摩擦現象が起きてくるであろう。これはいろんな現象が起きてくるであろう、こういうことなんでありまして、現状変化に伴うところのいろんな変化、そういうことを意映しておるわけであります。
  77. 山崎昇

    山崎昇君 だからそれを教えてくださいよ、それを。緊張激化するというんだからどういうふうに激化するのか、それを具体的に教えてくださいよ。私どもわからないんだから、これは。少なくともこれは愛知さんが国連でやった演説なんだから政府は答える責任がある。内容がどうなのか私どもわからぬから聞いている。具体的に言ってください。
  78. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 具体的に言いますと、これは関係の国々も多いわけであります、そういうようなことで、これは私は、ああいうことが想像される、こういうことが想像される、そういうことを言わないほうがむしろ緊張を激化するということを防ぎとめるゆえんではあるまいかというふうに考えますので、それは私の頭にあることですから、それを申し上げるということを差し控えさしていただきますが、とにかく急激な変化があるとそれに伴って波風が起こる、こういうことは私はそういう事態があるだろうと、そういうふうに思うんです。そういうことを愛知代表が言っておる、こういうふうに御理解願います。
  79. 山崎昇

    山崎昇君 私は、理解できないからあなたに聞いているんですよ。理解できれば聞きませんよ、こんなことは。理解できないから聞いている。アメリカの核の話みたいなことを言わんで、もっと具体的に政府は述べなさいよ。じゃ重ねて聞きますが、一体緊張が激化したような状態になったですか、その現状認識についてはどうですか。
  80. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 緊張が激化することがあっては困るというふうに考えておったんですが、あの事態によって非常に緊張が激化するような様相があると見ておりません。しかし、そういうことが万が一にもこれからもないように、わが国として努力していく、これがわが国のつとめでなければならない。こういうふうに考えております。
  81. 山崎昇

    山崎昇君 やはり国際舞台で他国をどうかつするような、こういう言い方というのはやめるべきである。あなた、やはり中身がないから言えないのでしょう。これ以上私は言いませんが、この演説はやはり不穏当だと思うのですよ、これは。その点だけ指摘をします。  その次、私は総理にお聞きをしたいのですが、この間もちょっと触れましたが、十月の二十六日に蒋介石総統が声明を出している。これを見ると、これはまたいろいろなことばが使われている。第一に、国連は罪悪の根源と化し、中華民国の国連脱退声明は、すなわち国連の崩壊宣言と同じだと、こう述べている。まずこれについては、総理はそのとおりと思いますか。
  82. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、蒋総統が国連を脱退したそのときの声明、これは必ずしも国連を正確に見ておらない、かように私は思います。ことに国際世論というものは蒋総統の考えられるようにはなっておらない。このことははっきり申し上げておきます。
  83. 山崎昇

    山崎昇君 そうすると、いまのこれは否定されますね。
  84. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 否定するとか否定しないとか、肯定するとか、こういうものではございません。これはもう蒋総統の声明、それはそのままあるんだと、かように私は承知しております。しかし国際情勢はさようなものではない、こういうことを私として考えておるということでございます。
  85. 山崎昇

    山崎昇君 国際情勢としてはそんなものではないということは、実情に合わないということですね。そう私は理解しておきます。さらに、中共は中華民国の反乱集団であり、大陸七億同胞の公敵である、これもまた実情に合わないと思う。どうですか。
  86. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはどうでしょう、いろいろお尋ねがあるから私もいろいろお答えはいたしておりますが、とにかく、あまり当方に直接関係のないことだし、われわれは、いま、中華人民共和国とただいま国交の正常化をはかろうとしておる、そういう際でございますから、それだけを申し上げておいて、あまり気に食わない点を批判を率直にすることはいかがでしょうか。これは、しばらく国際間の問題は問題として、やはりそっとしておくことが望ましいんじゃないかと思います。
  87. 山崎昇

    山崎昇君 私がなぜこれをあなたに聞いているかと言えば、日華条約をもって日本は台湾と密接なんですね。いま台湾の問題がたいへん重要性を帯びてきている。そのときに、これだけの声明が出るわけですから、仲よくしていた日本としては、これに対してどうするかは考えておかなければいかぬでしょう。だから、あなたに聞いているのです。しかし、あなたは否定も肯定もできないかもしれない、いまの状態からいって。しかし少なくとも実情に合わない声明であるということだけははっきりした。この点だけあなたに申し上げておきたいと思うのです。この間も一点だけ聞いたけれども最後に、一致団結してますます奮起することによって光復大陸を完成させようではないか、いわば大陸反攻を呼びかけている。だから、こういうことをいずれ日本は清算をしなければ、日中国交回復の問題が進まないだけに、私はこれを取りあげているわけです。あなたはあまり触れたくないようですから、これ以上触れませんけれども、少なくともこの蒋介石の声明というのは今日の情勢にあまり合わない、何を言っているんだという内容にしかとれないと思うが、どうですか。私は、そう理解するんだが間違いですか。
  88. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろの考え方がございますから、われわれが国際に処していく場合に、各方面、八方にらみより以上の気を使う。こういう状態で平和、繁栄その道を歩んでいく、これがわが国のいま選んでおる道であると、このことだけ申し上げておきます。
  89. 山崎昇

    山崎昇君 時間が過ぎて申しわけありませんが、もう一つだけお聞きをしておきます。  これは核について、私は確認をしておきたいと思うのですが、各政党ともこの核についていろいろ議論があって、総理から、まとめて言えば、沖繩が返還されたときには核はないんだと、それはニクソン大統領と約束したことだ、あるいはこの間の上院の外交委員会でロジャーズもそう言っておる、これが今日までの政府の見解。さらに政府は、非核三原則があるからどんなことがあっても核の持ち込みはやりません、こういう答弁なんです。その限りで私は異議がないのだが、どうしても一つひっかかるものがある。それは何かと言えば、やはり共同声明をあなたがつくられたあとで、ジョンソン国務次官の背景説明というのが当時問題になった。そのときに共同声明の第八項は、特別の事態に際し、アメリカがもし必要と認めれば日本と協議を行なうというアメリカの権利をきわめて慎重に留保しておる。しかも、このことが核兵器に適用されることは明確でありますと、こう述べられておるのですね。そうすると総理は、核兵器についてはいま私が整理して申し上げたような態度をとっておるけれどもアメリカは権利を留保しているというから、当然何かの機会には持ち出されてくるのではないだろうか。その場合に、あなたはこの間の答弁では、どんなことがあっても核については一切事前協議は「ノー」であります、こう答えられたが、はたしてそれを再度確認していいかどうか。どうも私は、このアメリカ国内におけるいろんな説明を見ていると、そうならないのではないかという心配があるものですから、重ねてこの点は確認をしておきたいと思います。
  90. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この席上で、また衆議院等において、私は厳粛な気持ちで私の所見を述べております。これはまた国民の皆さん方も私の話を聞いておられると思います。ただいま整理してお尋ねになりましたとおり、最高責任者同士が確認したことでございますから、返還時において沖繩に核があろうとは思いません。またわが国のはっきりした非核三原則、これを堅持しておりますから再持ち込みなどあろうわけはございません。それらの点をはっきり申し上げて、いま確認されたとおりでございますから、重ねて確認しておきます。
  91. 山崎昇

    山崎昇君 時間だから、これを最後にやめますが、この間外務大臣、あなたの不信任案のとぎに、衆議院では十二名の人が欠席をされていろいろ問題になっている。そのときの一人の河野さんの談話を見るというと、当然外務大臣はあの国連決定に基づいて責任をとるべきだと、こう述べられておりますね。そしてそれに引用するのに——あなたが二十六日に毎日新聞の上田という政治部長と対談をされた記事が引用されておる。その中であなたはこう言っている。見通しは接戦だ、どちらとも言えない。勝ち負けいずれにしても数票差だ。そこで質問は、かりに破れた場合佐藤内閣の責任についてどう考えるか。それは重視してない。たとえば都知事選のようななだれを打ったということなら政治責任が出る。こうあなたは答弁されているのだが、当然あれだけの差が開いて決定したということは、なだれ現象だと私は思うんだが、あなたの政治責任は一体どうなのか。この記事と河野洋平さんのこれを引用されたことと、あわせて考えるときに、当然政治家はみずから言ったことですから、この責任をとるべきだと思うが、どうですか。
  92. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国連の決定は、なだれ現象とは私は見ておりません。五十九票対五十五票、四票差です。これはほんとうにすれすれで、私がその対談でも、勝ち負けいずれにしてもこれは数票の差であろうという、そのままのことが結果として出てきておるのです。ですからその点につきまして、何ら私は責任を感じておらぬ。その新聞の記事から見たあなたの御所感でござますが、そういう点につきましては、私は責任は感じておりません。
  93. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 時間が経過しておりますから、簡単に。
  94. 山崎昇

    山崎昇君 大臣、アルバニア決議案が通ったときのことをこれは述べておるのですよ。あれは先議をするかどうかというのは、あなたの言ったように五十九対五十五です。しかし、国連加盟がきまった段階では七十六対三十五ですよ。これはなだれ現象だと全部が言っておる。あなた方だってそう感じたのではないですか。だから、あなたはみずから自分でこういうことを述べるだけにやはり責任を感ずべきだと思うのだ、政治家というものは。あなたのほうの代議士でさえこれはそう言っておる。そして不信任案に欠席までしておるのですよ。これ以上私は詰めませんが、どうですか、もう一ぺん。
  95. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国連総会におけるビッグ・イシューというか、最大の関心事は、逆IQが一体どういうふうになっていくか、こういう点にあるわけです。その上田政治部長の質問もアルバニア決議案が最後に採決をされておる、そのときの状態がどうなんだろうと、こういうのではないのです。逆IQが一体どうなんだと、こういうことなんです。そこで数票の差である。私が申し上げたような数票の差で結論が出ておる。私は、その点については責任は感じておりません、こういうことを申し上げておるわけであります。
  96. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上をもちまして山崎昇君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  97. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、矢追秀彦君の質疑を行ないます。矢追君。
  98. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間があまりありませんので、明確に答弁をお願いしたいと思います。  最初に、アムチトカ島の実験につきまして一言だけ外務大臣総理にお伺いしたいのですが、米国内の反対あるいはまた各国の反対を押し切ってアメリカは実験を行ないました。津波等の被害はございませんでしたけれども、放射能による被害等につきましてはまだこれからの問題になってまいりますが、やはり非核三原則を非常に大きな政策として掲げるわが国としては、今後この地下実験につきましてもやはり国際舞台で反対をしていく、全面的な核実験の停止を日本が先頭を切って呼びかけをやるべきだと私は思いますが、今後国連等におきましてそういった決意でお臨みになるのかどうか、一言だけお伺いしておきます。
  99. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) かねて、御承知のように、わが国は地下核実験といえどもこれを支持しない、反対である。こういう方針をもちまして、あるいは軍縮委員会において、あるいは国連においてそういう主張を展開してきておりますが、今後さらにさらにその努力を強化いたしまして、この二つの場を活用いたしましてこれを押し進めていきたいと、そういう方針でございます。
  100. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、沖繩の基地の問題に入りますが、実は質問通告はしておりませんでしたが、これは防衛庁長官にお伺いしたいのですが、けさの新聞あるいはニュース等で沖繩における自衛隊の配備計画の要旨が発表されておりますが、これについて報告を願います。
  101. 西村直己

    国務大臣西村直己君) けさの新聞の報道も私は拝見いたしましたが、まだ沖繩の自衛隊の配備そのものについては、具体的に私どもの手もとでは検討する段階には至っておりません。
  102. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 では、この新聞報道は、どうわれわれは解したらよろしいですか。
  103. 西村直己

    国務大臣西村直己君) いずれは、復帰のときに、自衛隊は配備をしなければなりませんけれども、しかし、その以前に各種のいろいろな協定を批准していくとか、あるいは関係法案を御審議願うとか、こういう段階を通らなければなりません。したがって、ただいま新聞に報道されておるのは、従来の久保・カーチス協定等をめぐっての、一応そういうようなものについての一部の人が研究はする場合もありましょう。しかし、防衛庁全体としてはまだそれを具体的にどうしようという段階の案をもってきめたと、こういうようなことはございませんです。
  104. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうすると、これはこの防衛庁の内部で検討されてあったものが漏れた、こういうことで、これは防衛庁としては最終決定ではない、こういうことですか。
  105. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私どもは、漏れたとか、そういう問題でもないと思います。この点につきましては、もし御不審がありますれば、その取りきめ自体に関係しました久保防衛局長からも、内容的に、その新聞等に対しての御説明はしてよろしゅうございます。防衛局長から御説明いたします。
  106. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沖繩への自衛隊の派遣、これはもう、ここでもいろいろ問題になっておりますが、最高指揮官は私でございまして、まだ私のところへ参っておらないのです。したがって、ただいまも、一体どういうことなんだといって、うしろで話をしていたような状態でございますから、そのことだけ私がお答えしまして、そうして、沖繩ではいろいろ自衛隊について議論がございますから、これは十分——駐留さす場合には、どうしても県民の積極的な理解がなければできません。したがって、私は慎重でございますから、それらの点はそういう方向で慎重にこれを取り扱う。ただいままだ私のところまで参っておらない、そういう状態でありますから、きめたというような状況ではございません。そのことだけ申し上げておきます。
  107. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それでは、最終的には、どの辺の時点までにきめられて発表される計画ですか。
  108. 西村直己

    国務大臣西村直己君) いま総理からお答えがありましたが、同時に、私自体も防衛庁としての責任者であります。また、内局も関係を持っておりますが、まだ案を具体的にきめているそれぞれの機関の段階ではございません。これは、はっきり申し上げておきます。ただ、こういう一つ状況を想定して検討する場合があると思います、準備でございますから。その程度だろうと思います。そこで、私どもとしては、その検討する個人の意見というものが、場合によれば推測を増していくというような場合が記事になってあらわれたのじゃないか、という感じがしております。
  109. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まあ、これは正式発表でないということでありますけれども、この内容、それからまあいろいろ米軍基地の撤去の問題、基地縮小の問題等、いろいろこの間まで議論がございましたが、沖繩が返還されたときにおける沖繩基地の米軍を含めての威力といいますか、力というものは、現在の、いわゆるアメリカはキーストーン・オブ・パシフィックと言っておりますが、その基地の役割りを下回るのか、あるいはプラスマイナス・ゼロなのか、あるいはプラスアルファになるのか、その点はいかがですか。
  110. 西村直己

    国務大臣西村直己君) まあ、御質問は沖繩の基地の戦略的価値と、こういうふうに受け取って御答弁申し上げたいと思います。御存じのとおり、アジアにおきましては米中接近、あるいは中華人民共和国が国連に迎えられた、朝鮮半島におきましてもやや緊張緩和の問題が出ております。そういうような観点から、アジアにおいて全体には緊張緩和のきざしは見えておる。しかし、これは具体的なものになって、まだあらわれていない。それから同時に、これがいかなる形で出てくるかということは、なかなか将来の見通しが困難だと思います。一面におきまして、アジアにおきましては、まだ開発途上国におきましていろいろな問題を持っております。特に、御存じのとおり、アジア周辺におきましての緊張感の起こっている分野もある。また、いろいろな軍事面からの動きにおきましても、必ずしもその軍備を縮小していくというふうな傾向でない面もある。具体的に申しますれば、ソ連の海軍等もアジアにおいては増強され、太平洋において相当な訓練もやる、いろいろな要素がございます。したがって、沖繩自体が直ちに戦略的な価値が下がるという断定もしにくいでありましょう。しかし、一方において、アメリカはニクソン・ドクトリンによって、兵力を少し削減もしていっている傾向がございます。これらを勘案するというと、私どもは、将来へ向かって沖繩の価値は下がっていく、言いかえれば、基地というものに対するそういう、よい意味の——よい意味と申しますか、われわれの期待するような価値になっていくのではないかと、こう考えております。
  111. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの長官の御意見だと、沖繩の基地の戦略的価値は下がると、このように言われましたが、それでは、この沖繩の戦略的価値というものがやはり下がる方向に、自衛隊の配置あるいは米軍の基地縮小、こういうことが、前向きに、具体的に、出てこなければならないと思いますが、その点についてはどのような方向をお考えになっておりますか。
  112. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 自衛隊の配備そのものは、あくまでも自衛でございます。私は、自衛隊というものを自衛に徹していきたい。したがって、国土の守りであります。ですから、必ずしもアジア情勢がどうなるからということよりは、国土の最小限の守りというものは自衛隊の任務であります。これは御了承を願いたいと思います。したがって、沖繩に配置になります自衛隊は最小限度の基幹部隊と、こういうふうにお考えを願う。かたわら、離島等を控えておりますから、民生協力あるいは救難等の仕事にも従事せしめたい。アメリカサイドは、確かに、安保条約上も極東の安全——これは日本を含めてでありますが、の任務を持っておりますから、われわれの自衛隊とは任務の内容は違うわけであります。ただし、これは安保条約上の制約の中での今度は活動に変わる、こういうふうに解釈をいたしております。
  113. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そこで、私は、その沖繩が返還された場合でも、なおかつ基地というものの戦略的価値は減少しないし、へたをすると、さらに強化をされる可能性があると、こういう疑いを持つわけでありまして、先日来、本委員会における黒柳委員の質問等から考えまして、また、アメリカ上院外交委員会におきましても、パッカード国防次官は、米国の軍事的存在を減少させることは望ましくないとも答えておりますし、また、ウエストモーランド米陸軍参謀総長も、依然として西太平洋におけるきわめて重要な戦略的価値を有している、その機能は日米安保条約の適用によって低下することはないと、こう言っているわけでありまして、結局、その沖繩の基地が返還されても、いろいろ米軍基地等の移管等があるかもわかりませんが、その途上においては、かなり米軍との共有といいますか、一緒に混在をして、一応は形では分けられておりますが、たとえば那覇空港の場合でも、米軍と自衛隊とそうして民間と、三つが同じところにおるわけです。こういう点を考えますと、やはり返還後においても決して戦略的価値は低下しないし、むしろ強化される。いま自衛隊は防衛であると言われますけれどもアメリカ・プラス日本の自衛隊で、かなり強化をされてくるのではないか、こう考えるのでありますが、その点はいかがですか。
  114. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私どもは、単に軍事面だけでなくて、アジアにおきましては、各国の平和努力、言いかえれば外交によって今後いろいろな打開がはかられる、また、これを強くわが政府といたしましても国民の協力を得て期待を強くいたしております。そういう中においてのアメリカの安保条約上のいわゆる戦略的基地、わがほうから見ますれば、したがって、それはわれわれの国並びに関係国が平和努力をするに従って、その基地の戦略的価値というものは縮めていくことができる。  それからいま一つは、基地の縮小の問題は、率直に申します、占領下において入ってきた軍隊でありますから、かなり非効率に使っております。これは、今後も私どもは効率化を、思い切り、はかってもらうことによっても、基地のある程度機能というものを維持しつつ、基地縮小というもの、整理統合というものは当然できる、こう考えております。
  115. 多田省吾

    多田省吾君 関連。
  116. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 多田君。——いいですね、矢追君。
  117. 多田省吾

    多田省吾君 いま矢追委員が、那覇空港においての米軍それから自衛隊あるいは民間、この三つが共同使用するようになるおそれがあるんじゃないかと、こういう質問をいたしましたが、答弁がございませんでした。前から政府は、那覇空港にある対潜哨戒機P3は撤去されるんだというようなことを宣伝しておられましたけれども、どうもまだ九月、十月、十一月になっても、P3対潜哨戒機の撤去ということは、アメリカ軍が言っていないわけです。それで、返還されるべきC表の中には、「那覇空港」あるいは「那覇空軍・海軍補助施設のうち日本政府が使用する部分」は返還されるんだということですが、こういうことでは、P3対潜哨戒機が九機もいるんでは、那覇空港にアメリカの空軍、海軍がはっきりともう居すわっていると、こういう感じです。そこでたとえば、羽田空港にアメリカの空軍、海軍が、対潜哨戒機が九機も居すわるというようなことになれば、何が本土並みかと、こうなります。なぜ嘉手納空港のようなところに早く引っ越せないのか。そうしてまかり間違えば、那覇空港の中の滑走路だけが民間航空で使用できる。そうして、民間航空と自衛隊とアメリカ空軍が三者で共同使用するなんということになるんじゃないかというおそれもありますけれども、それはどうなんですか。これが一点。  それからもう一点は、SR71の問題。私も本会議で質問しました。領空侵犯のおそれもあるんじゃないか。領空侵犯はさせません、問題はありませんということです。しかし、きのうの答弁では、外務大臣は、SR71が出撃するような事態があれば、これは事前協議の対象になるだろう、こう答弁しております。これは食い違いじゃないかと思う。それじゃ、外務大臣は、SR71が、われわれが言うように核戦略体制の一環として出撃しているんだ、それから領空侵犯のおそれもあるんだ、あるいは爆弾なんか積んでいるおそれもあるんだということをお認めの上で、事前協議の対象になるとおっしゃったのか、これを明確にお答えいただきたい。この二点、お願い.します。
  118. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず那覇空港におけるP3の問題ですが、これは、返還時までには撤去する、そうしてきれいにして日本にお返しいたします、こういうことになっておりまして、これには一切変化はありませんです。何かけさの新聞を見ますと、どうもそれが怪しくなったんだというような記事が出ておりますが、そういう状態はありませんですから。  それから、きのう申し上げましたSR71、これは、これが出撃をする、つまり、どっかに交戦状態があって、その地域に対してSR71が戦闘目的を持って出撃をする、こういうような事態がありますれば、これは事前協議の対象になる、こういうことを申し上げたわけであります。それから、平時におきましては、これは返還後は、他国の領海を侵犯をするというようなことがないように、十分当方といたしましても警告し注意してまいりたい、さように考えております。
  119. 多田省吾

    多田省吾君 お答えの内容はよくわかりましたけれども、われわれが那覇空港に行きましても、P3が現在あるわけです。空軍海軍補助施設が、きちっと、広大な面積にわたってあるわけです。それがほんとうにいままだ全然撤去していない。それで撤去するとすれば、嘉手納空港あたりに当然格納庫とか付属設備を整えなければならないと、米軍も言っているわけです。それはほんとうに、いまからやって間に合うのかどうか。その上でP3は絶対返還時までに撤去される、もし撤去されなかったらどうするのか、そういう確信がおありなのか。もし撤去されなかったら、これはA表C表がうそになるのか、それが一点。  それからもう一点は、これ、SR71でもちょっとはっきりしないんですが、出撃のときというのは、領空侵犯を前提にいたしまして、爆弾でも積んで交戦状態になるというような事態も考えた上で、これが事前協議の対象になると、こういうお考えなんですか。
  120. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 出撃ということですから、もちろんこれは戦局行動がどこかに展開されておりまして、それにSR71が参加する、こういうことなんです。それでその場合に、どういう装備をしておるか。これはいろいろの形があろうと思いますが、爆弾を積んで行くというようなこともなしとしない。要するに出撃をする、その戦闘行動に参加をする、そういう際におきましては、これは事前協議の対象になる、こういうことを申し上げておるわけであります。  それから、第一の那覇空港の問題、これはアメリカが約束をしているんですから、この約束に違反するというようなことは万々あるまいと確信をいたしております。
  121. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの那覇空港の問題ですが、P3もどけられるんですね。というのは、那覇空港で、御承知のように米軍がいま使っておる那覇空軍、海軍補助施設というのは残るわけでしょう。その点はいかがですか。
  122. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) P3は撤去する、したがいまして、そのP3が使用いたしました諸施設、これはあとに残るわけでございますが、これはP3には関係のないものとして残るわけであります。
  123. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、沖繩が返還された後の海上自衛隊の防衛の範囲ですが、かつて予算委員会で、中曾根前防衛庁長官は、南鳥島、尖閣列島等も含まれると、東京中心に半径千海里と、こういうことを言われておりますが、これは、いまも変わりませんか。
  124. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 海上自衛隊は、当然わが国の海上周辺、本土の海上周辺地域を直接担当いたします。したがって、本土に返ってまいります沖繩に入るべき部分は、一応防衛の対象になるわけであります。
  125. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 防空識別圏については、現在きめられておりますか、まだ未定ですか。
  126. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 防空識別圏いわゆるADIZと申しますものは、これは現在は米軍が持って、米軍の立場からやっておるわけでありますが、わがほうは、わが国の自衛の立場から防空識別圏というものはいずればつくらなければならぬが、目下検討中であります。
  127. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 防空識別圏、衆議院におきまして社会党の楢崎議員が一応公表されております。その資料、まあいまきめておられないとおっしゃっておりますが、それと、それからいまの海上自衛隊の防衛の範囲、その中に尖閣列島が入っておるわけでして、これが非常に今後問題になるのではないか。日韓条約のときに問題になりました竹島、向こうも自分の領土だと言い、わがほうもわが国の領土であると。この竹島については防空識別圏からはずされておるわけです。ところが、尖閣列島は、やはり台湾も領有していると言い、中国ももちろん自分たちの領土であると言い、わが国もわが国の領土であると。非常に、これから中国との間の国交回復の上には一つの論点になるところであります。そこが海上自衛隊の防衛の範囲になりあるいは防空識別圏の中に入るとなると、やはり中国を刺激することが考えられる。中国との国交がきちんとしない限りは、そういったところについては、現在のところははずしておくほうが妥当ではないかと考えられるわけですが、その点、海上自衛隊、防空識別圏を含めて防衛庁長官はいかがお考えですか。
  128. 西村直己

    国務大臣西村直己君) これは、私どもは、外務大臣とも打ち合わせてやりますが、防空識別圏というのはかなり、機種を明らかにするという意味で一つの図上的な意味でありますが、海上自衛隊の一応の防衛の範囲は、もちろんわが領土である尖閣列島を含むという考え方でおります。
  129. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 外務大臣は、今後の中国との交渉を考えた場合、いまの問題が当然問題になると思いますが、そうでなくても中国は、わが国の軍国主義は復活をしたと非常に強い主張をしておる。わが党の代表団が行った場合もこの問題についてはかなり議論をして、共同声明では、復活しつつあると、こういうことになったわけでありますけれども、この点が相当問題になると思うのですが、その点は、いまも言われたように、あくまでも防衛の範囲の中に入れて、やはり自衛隊がしょっちゅう防衛に回ると、こういうような事態が今後出てくると思いますが、その点はいかがですか。
  130. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 尖閣列島につきまして、あるいは国府において、あるいは北京政府において問題としておる、こういうことはよく承知しておりますが、私といたしましては、これは尖閣列島がわが国の領土であるということについては一点の疑いも持ちませんです。したがいまして、これに対する防衛の措置、そういうものにつきましては当然そういう考え方の中に包括されるべきである、かように考えております。
  131. 多田省吾

    多田省吾君 関連。  外務大臣にお伺いしますが、いま矢追委員が質問したのは——当然わが国は尖閣列島の領有権を主張しています。で、日韓国会のときにも、竹島の領有権は、わが国は強く主張したわけです。それと同じように、いまアメリカの上院でも、尖閣列島に関しては中立たるべきだというふうな意見も有力に出ております。やはり国際紛争の種にならないように、竹島の場合と同じように領有は主張してもよろしいが、少なくとも防空識別圏からはずして、そういう紛争の種をまかないほうがよろしいのではないか。竹島の場合は防空識別圏からはずしているわけです。そういう質問なんです。何も領有云々を言っているのじゃない。防空識別圏からはずしたほうが、紛争の種をまかないほうがいいんじゃないか、こういう質問なんです。
  132. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 識別圏の問題ですから、私から、やや技術的でありますから申し上げます。  防空識別圏は、御存じのとおりに、わがほうの機種であるかあるいは国籍不明機であるかを一応の図上において観念的に各国がきめるラインであります。しかし具体的に、そこまで別に緊急発准していくようなものではございません。はるかに後方のところでもってスクランブルは行なわれるわけであります。ただ、わが国の領土であるという御主張でもあり、われわれもそう思う以上は、防空並びに防空識別圏の中に入れるというのは各国の例でありますから、私どもはそういう意味で考えてまいりたいと思います。
  133. 多田省吾

    多田省吾君 竹島はどうなんですか。竹島はどうして入れなかったのですか。
  134. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 竹島の場合には非常に離れておるわけでありまして、地域的には違うと思います。
  135. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それはちょっとおかしいと思うのですけれどもね。じゃ、どれくらい離れておりますか。
  136. 西村直己

    国務大臣西村直己君) この竹島は、御存じのとおり、過去において非常に深い経緯がありまして争われたものでありますが、今回の場合におきましてはまだ具体的に争われているわけではないのであります。わがほうとしては領土として主張しておる。したがって図上において引く技術的な識別圏にはこれは入れていいじゃないか。ただ率直に申しまして、別にそこに具体的な兵力の配備であるとか、あるいはスクランブルがそこで行なわれる、そういう意味じゃありません。観念として、わが領土であるという以上は、私どもはこれは識別圏の中に入れていい、こういう考えのもとに検討を進めておる。
  137. 多田省吾

    多田省吾君 これは防衛庁長官の先ほどの答弁とは食い違っておりますけれども、それは取り消しますか。先ほどは距離が近いからはずしている……。いや、実際は、距離は竹島のほうが近いんだ。地図を見ればわかる問題です。もう尖閣列島といえば沖繩本島と台湾との間の中間なんですから相当遠い。それは取り消しますか。
  138. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 距離の問題は、ちょっと私も十分な答弁でなくて、その点は取り消してもけっこうでありますが、なお、条約上の問題もからんでまいりますから、条約局長から、さらに補足をいたしてもらいます。
  139. 井川克一

    政府委員(井川克一君) この防空識別圏の問題と安保条約第五条の問題、直接関連のありやなしをちょっと別にいたしまして、安保条約第五条におきまして、いわゆる第五条は、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」というふうになっているわけでございます。この「施政の下にある」と申しますと、現実的に竹島は、現在わが国の実際の施政の下にないわけでございます。したがいまして、この第五条の地域からは現実的に離れているわけでございます。一方、尖閣列島は、施政権が返還されますとともに、当然わが国の施政権が——もともとわが国の領土権があるものでございまするが、施政権が復活いたしまして、当然、第五条地域に含まれるわけでございます。そのような意味におきまして、尖閣列島と竹島とに相違があるということが、申し上げることができると思います。
  140. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 アメリカ意見と、いまのは違うようですが、その点はいかがですか。
  141. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 先生、アメリカ意見とおっしゃいましたのは、尖閣についてでございましょうか。——尖閣につきまして、アメリカ意見とは、私全く相違がないことを申し上げているつもりでございます。と申しますのは、サンフランシスコ平和条約によりまして、わが国が放棄いたしました領域は第二条に明記されてございます。そして、わが国が領土権を持ちながらアメリカに施政権を渡したところが第三条に明記されているわけでございます。したがいまして、今回の協定におきましても、施政権を返すと、その施政権を返す地域に尖閣列島が含まれているわけでございます。つまり、かぶっておりました施政権が取りはずされてもとの状態になる。もとの状態になるのは、わが国が領土権を持っているからでございます。そして、そのことは、アメリカ側が、上院におきましても、あるいは先日来も申しておりますとおりに、領土権については云々と申しておりまするけれども、もとの状態に、施政権を取りはずしてもとの状態に戻すということを申しているわけでございます。もとの状態に戻すのは、潜在主権が顕在化するということでございまして、アメリカの申しておりますことと、私が申し上げておりますことは、何ら相違がないものと確信いたします。
  142. 藤田進

    ○藤田進君 関連。  非常に重要な条約局長の発言のように思いますので、特に質問者からお許しを得て関連をしたいと思います。  第一の、この尖閣列島について、アメリカの上院における証言と、いまの答弁は、かなり違うように私は思う。私の間違いならば御指摘いただきたい。アメリカとしては、尖閣列島はかかる紛争もあることであるから、アメリカは直接これに関与しない形であると、こう言っているように思います。  それからさらに重要なのは、防空識別圏云々というよりも、日韓条約に関連して、総理、いまの総理佐藤さんは——韓国の国会では竹島は、これは韓国の領有である、日本もこれを認めているんだと、こう言っていて、その速記録を、韓国議会の速記録を出せということでもめましてね、結局、外務省はこれを出さなかった。しかし、私どもはこの速記録は別にソウルで手に入れまして、調べた結果、韓国は自分の領土であるということを、やはり答弁しておりますね。しかし、わが日本としては、あくまでもこれはわが日本領土である、こういうことで、先般の私が質問いたしました場合も、これはやはり領土権を現内閣も主張している。ところが、いまの御発言では施政権はないのだと。尖閣列島については施政権がそのまま返還された、アメリカから。しかし竹島については施政権はない。だとすれば、いつから施政権を放棄し、領土権を放棄したのか、あるいはどっかに信託統治になって、潜在主権だけがあって施政権はないというのか、これはまあ重要な領土に関する問題だと思うのです。これはひとつ次元の高いやはり問題でございますから、総理なり、外務大臣なりから明確に御答弁をいただきたい。いつから施政権がなくなったのか。じゃ、いま竹島はどういう姿にあるのか。国家統治権の中にないのか、日本の。こういう点、前回の日韓会談並びに条約に関連しての御答弁とは非常な違いがここに生じてきたように思います。——総理からやってくださいよ。
  143. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 条約局長の答弁をあれして、それからやってもらいます。
  144. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 私の発言で問題にされましたので、私から一応申し上げたいと思います。  第一の尖閣列島の点でございまするけれども、私は、アメリカの上院における聴聞会のことは、私がただいま申し上げたことで間違っているとは思いません。ロジャーズ国務長官は、これらの島島の法律的な地位にこの取りきめは全く影響を及ぼさない、この協定の前の状態、前の法律的なシチュエーション——地位がどんなものであろうとも、この協定のあとにおいてその前の状態がカムズ・イントウ・エフェクト、そのようになってくる、つまりもとの状態に戻るんだということでございます。私が申し上げましたとおりに潜在主権を持っている。そして向こうに移っている施政権が今度取りはずされる、日本に返る、そしてもとの状態に戻る、完全な日本の領土権及び施政権のもとに置かれる、こういうことでございまして、アメリカ側が言っておりますことと私が申し上げたことに何らの相違はないと確信する次第でございます。  第二点の竹島につきましては、私は施政権がないと申し上げたことは全くございません。現実にわが国の施政が及んでいないと申し上げたつもりでございます。これは法律的な見解と事実上の問題の大きな相違だと思います。したがいまして、現実に施政が及んでいない地域である。わが国はこれに対して領土権を主張している、しかし現実にわが国の施政が及んでいない。そういう意味からいたしましてこの安保条約第五条の「日本国の施政の下にある」という地域からは除かれている、現実の施政が及んでいないから。そういうことを申し上げたつもりでございます。
  145. 藤田進

    ○藤田進君 それじゃ、なおさらおかしい。  じゃ聞きますが、わが国領土で施政権が及んでいないのはどこどこであるのですか。施政権が及ばないということについてはどうしてそれが断定できるのですか。今後漁業なりあるいは地下資源なりで問題があれば、これはやはり当然及ぶべきもので、いま具体的施策が行なわれていないということと施政権という国家の主権が及ばないということとは、これは別問題だと思うのです。
  146. 井川克一

    政府委員(井川克一君) わが国の領土でございまして法律的に施政権が及んでいないのは第三条地域つまり沖繩でございます。現実にわが国の領土でありながら現実に施政が及んでおりませんのは北方領土及び竹島でございます。
  147. 藤田進

    ○藤田進君 竹島は日韓の間に紛争があった、しかし、前回の日韓の条約でこれは解決された、北方領土とはすでに事情が違うのだ、あの当時の総理の答弁からいって。総理、違いますか。北方領土は、まだ日ソの国交が再開されていないし、平和条約もない、そうでしょう。しかし、日韓に関する限りは、これはソ連も中国も、あるいは台湾も関係のない話です、竹島は。韓国と日本との関係、これはすでに平和条約のみぎり、竹島はわがほうの領土である、これを宣言されて日韓の平和条約というものが、事のよしあしは別として締結された。総理いかがでしょう、この返事は。総理、ひとつ、あなたが一貫して答弁してこられた竹島の帰属なんでありますから……。
  148. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 竹島はわが国の領土であるという、わが国は主張を堅持いたしております。そうして日韓条約におきましては、その最後にございまする紛争の解決に関する交換公文によりまして、竹島の問題はこの交換公文の手続に従って解決するということになっているわけでございます。
  149. 多田省吾

    多田省吾君 関連。  いま藤田委員総理の答弁ということをおっしゃっているし——矢追委員の防空識別圏の問題で、竹島の場合は防空識別圏の中に入っていない、わが領土と主張しておりながら。なぜ尖閣列島だけを防空識別圏の中に、そういう紛争がありながら、また予想されながら、入れようとしているのか、その辺の明確なお答えを最後総理からお願いします。
  150. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この竹島の場合と尖閣列島の場合は違うのです。竹島の場合はわが国の領土だという主張はしているが、現実に施政を行なっておらぬ、こういうことなんです。ところが、これは今度の協定で経緯度をもってはっきりしておるように、米国の施政権下に入った尖閣列島があの経緯度の中に入ってくるのです。わが国の領土が復元をされる、施政権が復元をされる、そこで完全な領土としてわが国のものになるわけなんです。ですから、ここにわれわれが防衛上の責任を持つ、これは当然だろうと思います。
  151. 藤田進

    ○藤田進君 関連。
  152. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 簡単に願います。
  153. 藤田進

    ○藤田進君 それでは聞きますが、竹島については、その領有帰属が韓国か日本かまだペンディング——未定である、こういうことなんでしょうか、竹島については。総理、どうなんでしょう。これは条約局長じゃないですよ、総理から答えてください。日韓条約であれほど言われて——条約局長なんかに、そんなものは聞いていない。君の答弁は何の権威もないじゃないか、ここで。聞いていない、そんなもの。下がれ。何べんも総理の答弁を求めているじゃないか。委員長は何をしているのだ。
  154. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が答えないから、ずいぶん審議をおくらして申しわけございません。しかし、私、日本政府は竹島についての領土権を放棄したことはございません。ただいま韓国との間にペンディングになっていることは、これはもう事実でございます。そのとおり、これがまだ解決はしておらない、日本は領土権を主張している、こういう状態でございます。
  155. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ちょっといままでの議論を少し整理しながら意見を踏まえて質問いたしますけれども、竹島につきましては領土権は主張しておるが、しかし施政が及ばない。そうしていま総理は、ペンディングと言われました。その場合、日韓条約というのが——百歩譲って政府の言い分を一応認めたという上で、それが防空識別圏からはずすことがかりに妥当としても、一応、日韓の間に条約というものが結ばれたあとの問題になっているわけです。ところが沖繩について、この尖閣列島についてはわが国の領土である、もちろん、それは私は領土でないと言うのじゃないのですよ。返ってきた領土——わが国の領土である。ところが、中国、台湾でさえも、特に中国は、この尖閣列島については相当——わが党の代表団が行ったときの向こうとの話し合いの中で、尖閣列島の議論というのはこれはたいへんである、向こうは資料をそろえてかかってきておるので、相当腹をくくって議論をしないと、これはなかなかむずかしい、こういうことを私は報告で聞いております。結局、中国との間に平和条約がまだ結ばれていないのに、尖閣列島というものをこういう防空識別圏の中に入れる、あるいは海上自衛隊の防衛の範囲の中に入れるとなると、結局紛争が起きる。韓国との間にいま問題が起きないのは——私たちはいままでの政府の議論には反対ですけれども、百歩譲って——条約というものが一応あるわけです。今度は、中国との間にはまだ話し合いができていないわけです。そういうときに、防空識別圏の中に入れること、あるいはただ領土であるんだからだけで言うのは、一応この際は少し考えてはどうか、話し合いがついてからはっきりやってはどうかと、こういう主張なんです。この点いかがですか。
  156. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、ただいまアメリカが施政権を持って、そうして、いわゆる沖繩、琉球、琉球列島、その一部として施政権を持っておる、その区域でございます。したがって今回の祖国復帰、その場合に、これを明確にするように、経度・緯度でちゃんとこれが入っておる状態で日本に返ってくるのであります。もちろん、そういう地域、これは無人島でございますから、いろいろ領土権を主張する者もございましょうが、しかし、ただいままでの経過から申しまして、アメリカが施政権を及ぼしておるその区域、それが日本に返ってくる、こういうことでございますから、これは日本の領土であり、また、今回の祖国復帰に際して、その一部を取り残すようなことはしないで全部が返ってくると、かように御了承いただきたいと思います。  また先ほど来、竹島の問題、これは韓国との間にペンディングになっていると、こういうことを申しましたが、これは御承知のように、韓国から竹島を占領している、そういう状態で、韓国は、韓国の領土だと、こういうことを言っておる。したがって、日本は領土権を主張しておるが、そこに施政が及んでおらない。いわゆる施政権が及んでおらない。——施政が及んでおらない。これは実際にここに施政を及ぼしておらないと、こういう事実を申し上げた。これはもう施政権を放棄したと、こういうものではございません。誤解のないように願っておきます。
  157. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 中国との話し合いについて。
  158. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 中国との話し合いは、ただいまいろいろ議論が出ておること、これは私どもの耳に入っておりますけれども、私は、古くからこの琉球諸島、その一部である尖閣列島、これが日本の領土であること、これはわれわれも確信しておるところで、他からとやかく言われる筋のものでないと、かように思っておりますので、どうか、そういうような話が出ましたら、皆さん方も、与野党ともにひとつそういう主張をされないように、十分御協力願いたいと思います。
  159. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間が超過しまして恐縮ですが、最後に一言だけ通産大臣にお伺いしますが、前々から議論になっております繊維の問題につきまして、一つは、政府はこの二国間の行政協定に踏み切られました、国会の承認をされないと。それについてはいろいろ議論が出ておりますが、一向に、これが正しいんだということで突っぱねておられますが、二国間のこういう協定を結ぶ場合、国会にかける、かけないの基準はどこに置かれておるのか。それがまず第一点。  次に、行政協定仮調印後に、輸出貿易管理令はいつ発動されましたか。輸出貿易管理令の発動、これはもうされたと思いますが、これは違法であるのかどうか。その点について。
  160. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 私がイニシャルをいたしました日米間の繊維協定の仮調印案文とほぼひとしいものが近く正式外交ルートを通じて、日米両国間の協定として成立をする予定でございます。この協定は、政府に授権されておる範囲内のものであり、国会の議決案件でないというのが政府全体の考え方でございます。私は、いつも申し上げておりますが、立法府の議員ではございますが、法律の専門家ではありません。私は、そういう意味で現行法の判断、解釈というものは、法制局及び条約局の見解によるわけでございますが、両専門当局の意見としては、政府のみで行なえる行政協定の範囲の中にあるものでございまして、国会に提出をする、議決を求めなければならない案件ではないと、こういうことでございます。それから……
  161. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 その基準ですね。国会にかける、かけないの、政府でできる行政協定の基準ですね。
  162. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) これは法制局長官からお答えをいたします。
  163. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 行政協定あるいは条約として国会に承認を求めるか求めないか、これの基準を述べろということでございます。きわめて重要な点であると思いますが、御承知のように、わが憲法は、この憲法の「内閣」の条章でございますが、その中に、七十三條二号には、「外交関係を処理すること。」というのが内閣の事務になり、また「條約を締結すること。」というのが、たしか第三号であったと思いますが、この、条約として国会の承認を求めるべく、われわれ法制当局としては、それをむろん原則として考えておりますが、条約の中には、つまり国際取りきめの中には、その取りきめ自身実施力を持つのではなくして、国内法の介在によって実施されるものがございます。今度の繊維協定は、はたしてそういうものになるか、ならないか、まだこれから締結されるものでありますから、それを見ないことにははっきりしたことは申せませんが、しかし、いまの繊維に関する政府間取りきめは、そういう方向で物事が運ぶような話し合いになっております。したがって、もしも私がいま申しますように、条約あるいは国際取りきめ、その中身がそのままに実施されるのではなくて、国内法の媒介によって実施されるということになれば、国民の権利義務関係は、実は国内法の律するところによるわけでございますので、その国際取りきめについて、ことさらに国会の御承認にかける必要はないであろう。それが逆に、その国際取りきめ自身がみずから実施力を持ち、国民の権利義務をみずから律するということになれば、むろん話は別でございますが、いまの繊維取りきめはそういうものではなくして、輸出貿易管理令等の国内法令の規定に従って処理されるということでありますために、重ねて申し上げますが、国民の権利義務の関係は、その国内法令の律するところによるわけでございますので、その取りきめについて国会の御承認を、ことさらに得る必要はないというのがわれわれの見解であり、また、その基準は何かということになれば、いま申し上げたところが基準になるわけであります。
  164. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 貿管令につきましては、十月の十二日に化合繊糸を追加をいたしました。十月の十八日にニット生地、合繊ニットズボンを、十日間の船積みに限定をいたしました。十一月の二日には、化合繊糸につきまして割り当て方式を採用いたしておるわけでございます。
  165. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 あと簡単にやりますから……。  で、かつてココム判決がございまして、このことについてはよく御存じだと思いますが、残念ながら、これはまあ原告側が負けておりますけれども、この判決文の中を読みますと、このココムの輸出の規制につきましては、違法であるということがはっきり出ておるわけでして、この点から考えましても、今回、貿管令を出されましたけれども、これの出された理由は、この「外国貿易及び国民経済の健全な発展を図るため必要があると認めるとき」、これだと思いますが、この今回の繊維、これから輸出規制が行なわれたあと、はたして国民経済が健全に発展をするかどうか、非常に私は疑問である。というのは、この繊維問題が口火となって、現在いろいろな不況もきております。円の切り上げを中心とした、いわゆるニクソン・パッケージなるものがわが国に押し寄せてきておる。こういうことを考えますと、決してこの「国民経済の健全な発展を図る」ということには私はならない、むしろ逆である。したがって、今回のこの貿管令の発動というものは、これはよくない、私は本来の趣旨に沿うものではないということを主張したいわけですが、それに対する意見と、もう一つは、この別表第一の中に「南アメリカの地域を除く」ということが入っております。「南アメリカの地域を除く」。この辺は変えられたのですか。その点も含めまして伺って、質問時間がありませんので、以上で終わります。
  166. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 前段の問題について私からお答えをいたします。  日本国民経済の利益の上から見て、日米繊維に関する政府間協定が、一体、利益であるのかどうかということに帰一いたすわけでございます。そうでなければ、その協定の実効をあげるために貿管令の発動ということになるわけでございますから、その意味では、日米の繊維交渉が行なわれなければ、もう十月一日から一方的規制を行なうということでございます。一方的規制が行なわれれば、もうすでに糸などは、原案によりますと三年分以上も出ておりますから、三年半ぐらいは全然出せないということになるわけでございます。しかも基準の数字も非常に少ないものになります。なお、基準に対する増加率は三%ということでありますから、繊維に関しては、大体一年間ぐらいは全面ストップになるおそれがあるということでございます。日本の貿易の三〇%が対米貿易であるという現実から考えてみても、日米間の正常な経済関係を保持するために不可欠の協定であるとしたならば、それを結ばなければどうなるか、私が言うまでもなく、日米間はオール・ストップという状態が考えられるとしたならば、それは国益を守る道ではないことは言うまでもありませんし、日本の経済上の利益などは、もう守れるはずはないわけでございます。でございますから、その協定の実効をあげるための貿管令の発動ということでございますので、貿管令の発動そのものは、同令の一条に書いてある規定のとおり、国益を守り、経済的利益を守るということに帰一すると理解すべきだと思います。
  167. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ココム判決はどう……。
  168. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 実は、ココム判決それ自体をいま手にしておりませんが、あれは、たしか四十四年のときだったと思いますが、ココムに関して、輸出貿易管理令をとにかく政治的な理由からこれを使うのはどうか、むしろ純粋に経済的な理由でなければいけないというような趣旨の判示があったと思います。むろん、今回の行政取りきめに基づく、先ほども話をいたしましたが、これの介在になるのが輸出貿易管理令でありますので、輸出貿易管理令については、むろんその条規の定むるところに従ってやられなければならぬことは当然でありますが、御指摘のココム判決があるからといって、今回のがまさにそれと同じであるというふうな結論は、私は出ないものと考えております。要するに、輸出貿易管理令の趣旨とするところに従って運用をされればいいし、また、されるべきであろうと考えております。
  169. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 御指摘になりました別表第一の「南アメリカの地域を除く」という部分は変わっておりませんので、念のため申し上げておきます。
  170. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上をもちまして、矢追君の質疑は終了いたしました。  午前の質疑はこの程度とし、午後一時四十分再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      —————・—————    午後一時四十六分開会
  171. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。  中村国務大臣より発言を求められております。これを許します。中村国務大臣
  172. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 先ほど山崎議員から指摘されました「教養旬報」等を読んでみたのであります。これは「日中友好運動の現況」ということで、最近盛り上がってきております中央・地方における日中友好運動の大体展望を書いて、その中には、国民の中には反中的な団体、あるいは思想を持った人等がありますので、そういう人たちが中共と親善を結ぼうというような人たちに対して不法行為をするようなことがないようにということを一つうたっておりますし、さらに、中共にたくさん出かけて行っておられる方々の中で、あるいは国会議員とか、財界の人とか、あるいはその他の人たちを対象にしておるのではございませんが、極左階級的な思想を持ったような若い人たちが——行った人の中では、中共に行って、いろいろきびしい中共のことば等に刺激をされて、国内に帰ってきて不法行為等につながるような行為があってはならぬ、まあそういうことで、左右両方の不法行為等に対しては警察として十分配慮していかなければならぬという思想を大体うたったものでございますけれども、しかし、中を読んでみますと、山崎議員の指摘されるような点が全然受け取れないこともないような点もございますので、今後こういう書類を出しますときには、私としましても十分監督をいたしまして、そういうことのないように注意をしてまいりたいと思います。
  173. 山崎昇

    山崎昇君 いま公安委員長の答弁がありましたが、中国をいま訪問をしておりますのは、何も極左が行っているのじゃないのですよ。日中議連の方、言うならば、あなたの所属する自民党の方も行かれる。公明の方も行かれる。これから民社の方も行かれます。もちろん社会党も行ってます。そのほか、ピンポン外交、あるいはスポーツ関係者、あるいは財界、そういう方々も引っくるめて、帰ってきてから、何か向こうは革命的な言辞だけをおっつけてよこして、そしてそれに扇動されて行動をとるような錯覚を与えるようなことを書いている。すべて治安的な問題からだけ見て、これはけしからぬというような言い方をしておるわけです。これは、何としても、やはり行き過ぎであります。最近の警察の行動を見ますというと、どうもそういうところに基調があるものだから、したがって、勢い、治安関係のやり方についてもきわめて行き過ぎなやり方をとってくる。そういうことを私ども憂慮しているわけであります。ですから、いま公安委員長から……。いろいろなことがあるにいたしましても、もちろん一部の右翼の動きもあるでしょう。しかし、それと一緒くたにされたのでは私はたまらぬと思います。そういう意味で、厳に警察の行動については慎しんでもらいたいし、やっとこ渋い腰を上げて佐藤内閣も日中友好に踏み切ろうとしている段階に、警察がそういうやり方をとるということは私は許せないと思うから、厳重にあなたは内部の統制をして、そういうことのないように、強くこれは私から指摘をいたして、この質問は終わっておきたいと思います。どうですか、長官。
  174. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 私は、いまお答えした中にも言っておると思いますけれども、いまおっしゃるような、国会議員とか、あるいは財界の人とか、そのほかたくさん行っておる人たちを対象に考えておるのじゃございません。先ほど言いましたように、極左暴力的な人たちが行って、もしもそういう人たちが帰ってきて、不法行為等につながるようなことがあってはならぬという配慮をするという意味で大体は書いたものだと考えます。警察としてもそういう考え方を持っておりますので、それが、いま山崎議員が指摘なさるような感触を受けるような点があるということになれば、これはやはり気をつけなければならぬことでございますから、今後私が十分気をつけてまいると、こういうことでございます。     —————————————
  175. 徳永正利

  176. 高山恒雄

    高山恒雄君 総理にお伺いしたいのですが、四十四年のこの予算委員会において、繊維の問題で私は質問をしたのでありますが、当時、愛知外務大臣は、国益に反する経済外交はやらないんだと、こういうことを答弁しておられます。さらに、総理もそれに同調して、いま愛知大臣が言われたとおり、私としてもそういう不利な経済外交はやらないと、こういうまあ御答弁をされておるわけであります。ところが、いま、政府は大きな国益に反するような経済外交をやっておられるというたてまえに立って、私は質問したいと思うのであります。  総理にお伺いしますが、二国間の繊維の規制による、今後の日本の経済の外交上きわめて不利であり、同時に国際的にも理不尽な道を開かれたと思うが、この点を総理はどうお考えになるか。
  177. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、国益を守る、また国益をそこなわないように行動する、これはもう基本的なものの考え方でございます。しかして、それはただ単に個々の具体的な問題について、そのときそのときで考えるべきものではない。われわれはやっぱり長期的観点にも立ち、大局的観点にも立って、そうして、ものごとを判断していかなきゃならないと思います。私は、今回とられた繊維交渉、これは大局的見地に立ち、また長期的観点に立って、いわゆる国益を守っておると、かように判断しておるわけでございます。これからさらに具体的にお尋ねがあるだろうと思いますが、以上のような立場をはっきり冒頭に申し上げておきます。
  178. 高山恒雄

    高山恒雄君 貿管令を適用して、この適用に対しては、アメリカにも日本にもかなりの批判が出ておるわけです。しかも、政治的に取りきめをせざるを得なかったという、いま国益に関連して政治的にこれを解決つけなくちゃならなかったというその理由は一体何なのか、これをひとつお聞きしておきたいと思います。
  179. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 繊維問題は、たいへん長い日米両国間の懸案事項であります。しかして、これがようやくわが国の繊維業界の自主規制、多大の犠牲を払っての自主規制、これをやることによって何らか解決がついたかのような感もいたしたのであります。しかしながら、当方の考え方アメリカ側の考え方の間には大きなズレがある、そこに問題があったように思います。ことに、アメリカがニクソン大統領のドル防衛、経済立て直しについての声明をして以来、この点が非常に大きく変化を来たしております。いままでの繊維関係ではなくて、この段階において、ニクソンの声明、これを一つのエポックにして、非常な格段の問題、これがアメリカにあらわれてきたわけであります。したがいまして、なるほど継続的な交渉には違いありませんけれども、しかし、アメリカのとってきた態度はこれによって非常に大きく変わっておる、だから、アメリカ側の処遇、処置だけにまかしたらたいへんな悪影響を日本の繊維業界はこうむるだろう、また他の面にも多大の影響が及ぶだろうと、われわれはそれを考え、それを実は心配した、そこで、ああいうような処置をとらざるを得なかったと、こういうことでございまして、それらの関係は高山君にもよくおわかりだろうと思います。在来からアメリカが、自主規制では足らないと、かように言っておりましたが、その時分のアメリカの主張というか、それと、ニクソン大統領の経済立て直しについてのあの声明以来というものは、考え方がさらに強化されておる、格段の相違がある、この点をわれわれは認識せざるを得ないと、かように思っております。
  180. 高山恒雄

    高山恒雄君 自主規制は日本政府も了承してやったのであります。その自主規制をやった後に、さらにアメリカは、アメリカのドル防衛の立場からでありましょうけれども、強引な圧力をかけてきた、それに日本政府は屈したと、こういうふうな見方をしてもよろしいですか。
  181. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本政府が屈したか屈しないか、これはまあ別として、とにかく、われわれは、過去のような繊維の自主規制、それだけではその場が過ごせなくなった。そこで、ただいま申し上げるように政府間協定に踏み切った、これによってより以上の損害を食いとめる、こういう立場に立って政府間協定に乗り出した、かように御理解をいただきたいと思います。
  182. 高山恒雄

    高山恒雄君 それじゃ総理に聞きますが、総理は、安保問題の破棄の問題については、議会決議を承認しながらわれわれは今日まで継続してきておるんだ、こういう自重論をおっしゃっております。ところが、繊維は政府間協定をやってはならないと、こういう国会決議があるわけです。その国会決議を無視してやらなくちゃならなかった理由は、政治的な要素があるならば具体的にひとつ話してください。単なる将来の先行きは、これからわかりません。五年先や十年先はわかりません。その点をひとつはっきりしてくださいよ。
  183. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ安保の問題はこれは別です。私はただいま安保ということを口にされると、最初繊維協定、この問題は沖繩問題にからんでいる一つの密約説というものが非常に国民の間に信用されておる、有力なものです。しかしようやく、時のたつに従って、密約のないことは私は国民も理解したと思っております。私、やっぱり日米間には、沖繩沖繩、繊維は繊維、こういうようにはっきり区別さるべき筋のものだと、さように理解してきたと思っております。私はそういう意味からも、七月から実施した業界の自主規制、これを、これですべての話がつくならばたいへんいいことだと、かように思っていたこともその時期においてはあります。しかしながら、アメリカ側はこれでは満足しておらない。そこへもってきてさらに、先ほど言うようなニクソンのドル防衛、一連の施策が発表になった。そこでまた懸案の事項についてそれがまず取り上げられた、かように解すべきではないかと私は思っております。そうして、アメリカ側のもしも一方的な対策にまかしたならば、わが国の業界の受ける悪影響、損害、これはもうばく大なものだと、かように考えますから、われわれはそれを避けると、こういうような意味でも、またそれを緩和するという意味でも、政府間協定をすることのほうが望ましいと、かような政府考え方に立って通産大臣がケネディ特使と交渉を持ったと、かような経過でございます。私は、アメリカ政府にまかした結果、まかしてもいいという御議論がありますよ。そのことも私の耳に入っております。まかしたってアメリカはできないんだと、あとはたいしたことはないんだと、こういうような話もありますが、私はさようには考えない。一方的にそれをアメリカの処置にまかしたら、わが業界の受ける損害は多大なものだと、かように考えるがゆえに、ここは日米間で話し合って、そうして双方でがまんし合う、お互いに譲り合って一つの結論を得ようと、かように考えた次第でございます。
  184. 向井長年

    ○向井長年君 いま総理が、ニクソンのドル防衛から、こういうことでございますが、これはアメリカ独自の、私たちから言うならば、アメリカ独自の政策の誤り、たとえばベトナムに対するあの戦争、紛争、軍事費の増大、あるいは国内のインフレ、あるいは失業、あるいは産業不振というようなアメリカ自身の欠陥を、ガットの精神に反して、日本がなぜ犠牲をこうむらなければならぬのかということを私はまず質問したいと思います。なお同時に、これを素朴な国民の立場から言いますならば、アメリカは、ドル防衛という、言うならば、大きな病気になったということだ、したがって、重病になって入院をしなければならぬ、あらゆる治療をしなければならぬ、日本は健康体であるけれども日本も一緒に病気になって入院しろということを、しいているに間違いないと私は思う。こういうことを、ただアメリカが根本的な規制をするからという、私は、いま、おどかしだと思う。ガット精神から言うならば、そんなことは許されません。そういうことを理由にして行政協定の調印をやられたということは、どうしても国民は納得できません。言うならば、田中通産大臣は行政上権限が政府にあるんだからやったということでございますけれども、幾らどう言おうと、国民の中には、業界をはじめ、あるいはその中で働く労働者の大きな犠牲、ただ繊維だけではなく、今後は電算機からあるいは自動車その他の産業まで大きな影響をもたらすものを、ただ行政権があるという形でやったということについては、これはどうしても了解できない。特に、国会が開会されている以上は、幾ら行政権があろうとも、なぜ国会にこういう趣旨を報告されて、そして国民の理解を得るようにしなかったのか、この点について、総理なり通産大臣に質問いたしたいと思います。
  185. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、アメリカのとった処置を正しいことをしているとか、あるいは間違いのない処置をとったと、かように申しておるわけじゃございません。しかし、一国は当然みずからの権益を守るという、そういう立場に立っていろいろの行ないをするのであります。そういういわゆるアメリカの主権に基づいてアメリカが判断し、アメリカが処置しようとする、そのことが日本の業界にどんな影響があるか、これはたいへんな影響があるんだと、かように思うから、われわれはそれを避けようとした、こういうことであります。いまアメリカの処置を私は是認してやっておるわけじゃない。アメリカも通常の状態ならかようなことまでは言わないだろうと思います。私どもはいままでアメリカは自由経済の総元締めだと、かように考えていました。しかしながら、これが全部の輸入物資について課徴金を課すと、これなどは自由経済、そのもとで考えられないことじゃないですか。そういうような処置をしなければアメリカの経済がどうしてもやっていけない、その原因が、ただいま言われるようにベトナム戦争、それが大きな原因であろうが何であろうが、とにかくそれはまたそれとして、いまやってきているその処置に対して、われわれが最善を尽くしてわれわれの業界を守り、また同時に、われわれの産業、これに従事しておられる方々の利益を確保すると、その努力をするのは、これは当然のことだと思います。私は、アメリカの処置がただいまのような度外れて、普通の処置では考えられないことをやろうとしておる、それに対応するために、通常において考えられないような政府間協定に踏み切ったんだと、この点を皆さん方にぜひとも御了承いただきたいと、かように申すのであります。アメリカが重病人であるのに、健康体であるわれわれを道連れにするのはよけいだと、かように言われます。私どもは別に、健康体だが、これが道連れになったとは思いません。しかし、今日の状態でやはり日米間の貿易を続けていこうとする場合に、われわれが非常な差別を受ける、これは日本だけが受けるわけじゃありません。いわゆる保護貿易的な方向で日本が不利な立場に立つと、そういうことがあってはならない。われわれはそういうことをできるだけ薄めるというか、損害が軽微にとどまるようにあらゆる努力をする。これが繊維協定、これを政府間の話し合いにまで及ぼしたゆえんであります。御了承願います。
  186. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 簡単に願います。
  187. 向井長年

    ○向井長年君 いま総理は、アメリカがやっていることが正しいとは思わぬ、無理なこともやっているということでございますが、それであるとするならば、国内にも大きな影響をもたらすこういう重要問題については、幾ら行政権があろうとなかろうと、まずやはり国民の意思を聞くということで、国民にも理解してもらおうという立場から、なぜ国会にそういう問題に対する理解を求めなかったのか。求める余裕がなかったんですか。国会が開かれていたじゃないですか。この点、政府のとった態度については、ただ行政権の問題だけで突っぱねたということは、これは私は、国会の決議もあるにもかかわらず、無視ではないか、こういうことを申し上げたい。
  188. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、これが、国会の決議、それに忠実であるとは思っておりません、政府のやったことが。したがって、この協定、イニシアルをするまでに、皆さん方といろいろそれぞれの交渉を持ったこと、これは御承知のとおりであります。私はそういうことで積極的な御理解は得られなかったと思いますけれども、全然内緒で話が進んでおらない、それらの点も政府はあらゆる努力をした、そういうことでございますから、それらの点をも御勘案願って、ただいまのように、どういうようにすればわれわれの利益が守られ、われわれの業界が安定するか、そういう観点に立って、ただいまのように、いや法律がどうとか、国会がどうとかいうことではなしに、ただいま申し上げるように、どうしたらその損害あるいは被害を最小限に食いとめるか、そういう点について積極的に考えていただきたいと思います。私は、政府はそういう立場に立ってただいまの処置をしたつもりでございます。そういう意味でお話を伺わしていただくなら、私どもも十分これにこたえる用意がございますから、御了承願います。
  189. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 ただいまの繊維協定は行政協定の範疇で政府が処理をしたということでありますが、その場合に、一般的になるかしれませんが、条約とか協定、まあそういうものが今日でもたくさん国会に承認を求めております。ただいまの沖繩返還協定、これも協定であります。ところがこれもいま国会で審議中であります。あるいは各国との文化協定、これも国会に承認を求めておるはずであります。あるいは郵便協定、これも国会で承認を求めておるはずと思います。そこで私が聞きたいことは、こういった条約、協定ひっくるめまして、広い意味での条約といいますか、これを国会に承認を求める求めないの、その判断の基準になるべきものは何かあるのか、この問題は、私の記憶では、かつて日韓条約のときにも問題になったはずです。あらためて、ひとつ、その基準というものがあると思いますから、それを答弁してもらいたい。
  190. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。  きょうの先ほどの休憩前の時間にも御質問に対してお答えをいたしましたが、さらにあらためての御質疑でございますので、さらにまたあらためてお答えを申し上げます。  憲法七十三条の二号に「外交関係を處理すること」というのが内閣の職務に入っておりますが、同時にまた三号には「條約を締結すること」とありまして、御指摘の点は「條約を締結すること」の場合に、「事前に、時宜によっては事後に、國會の承認を」要するという規定がございまして、それと外交関係の処理としてやるものとの相違いかんということにもなると思いますが、かりにわが国政府と外国政府との間においてある種の取りきめを定めるものでありましても、その取りきめが国内的に直接の実施力を持つとされるのではなく、言いかえれば直接に国民に義務を課し、その権利を制限するというのではなくして、既存の国内法令の執行として、つまり国内法令の定める国民の権利義務の関係において実施することができるものであり、すでに締結について国会の承認を経た条約を害するということがないものでありますならば、憲法の趣旨に照らして特に国会の民主的な統制のもとに置く必要性が認められませんので、行政取りきめとしてそれにつき国会の承認を経なければならないものとは解されないのであります。このような解釈は実は政府が従来からとってきたところでありまして、今回にわかにとることにしたものではございません。  ついでながら私どもは当然の職責といたしまして、ある国際取りきめが国会の承認を経べきものであるかどうか、経なくてもいいものであるかどうか、これは私どもが当然政府部内では専門的な責任者として非常に厳格な目で見ておるつもりでございます。いま申し上げましたのは今回の取りきめに関して行政取りきめの性格を申し上げましたが、さらに申し述べますならば、すでに締結について国会の承認を経た条約の執行としてなされる取りきめ、しかもこれが先ほど申し上げましたのとは逆な関係になりますが、国内法令を何ら害するところのないもの、そういうものについても別に国会の承認を経ないでよかろうと、あるいはまたこれは別のほうからの説明もできますが、既存の予算の範囲内で執行できるもの、特に国庫債務負担行為などについていまの関係が出てまいりますが、そういうものについては行政権の範囲内でできるものでありますので、特に国会の承認を経ることはないという考え方を持っております。これの見方につきまして、解釈のしかたにつきまして、特に具体的なケースにつきましては、われわれとしては目を輝かしてそれは見ておるつもりでございます。  一応基準として申し上げればそのようなものでございます。
  191. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 簡単に願います。
  192. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 じゃ、ただいまの長官の答弁は、これは要約しますと、一番目は、二国間においてすでに条約ができておる、この条約に基づいて協定等を結ぶ場合は、これは要らないと、国会の承認はですね。二番目は、国内法によってすでにもう法制化されておるわけですから、それに基づくところの協定であればこれも承認は要らないと。三番目は、既存の予算の範囲内でできるもの、こういうような答弁でありましたが、ところがこの前の日韓条約のときに当時のこれは藤崎条約局長の答弁によりますと、これは国会で承認を得る、この条件としては、法律事項を規定するもの、あるいは財政事項を規定するもの。三番目が法律事項も財政事項も含まなくとも政治的に重要と認められるものと、こうなっている。これは条約局長がこのようにきちっと答弁をしておるわけです。あなたの答弁ではこの三番目の政治的に重要と認められるもの、このところが抜けているように思うんですが、あなたは、この条約局長の答弁、これも私は公式答弁と思うんですが、見解の差異があります。その点いかがですか。
  193. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答えを申し上げますが、ただいまの法律事項関係あるいは財政関係、これはまあことばの言い方が違うだけで、実は私が申し上げたことと中身は少し砕いて申せば先ほど申し上げたとおりであります。政治的に重要なもの、これはおそらく、私は申し述べませんでしたが、私は先ほどの説明で申し上げましたごとくに、国会の承認を要するか要しないか、憲法上必要であるか必要でないか、そういう観点から申し上げますならば、先ほど私が申し上げたとおりのものが基準でございます。
  194. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私は、この三番目の政治的に重要と認められる場合、これははなはだ大事だと思うんです、今回の繊維協定で。まあこの協定を結ばないというと、今後の日米関係が相当悪化するであろう、これは通産大臣の答弁にもありました。いろいろと政治経済等の勘案をしたあげくが政府はとらざるを得なかった、こういったような意味合いの答弁でありますから、当然今回の日米繊維問題は政治的に重要なこれは問題なんです。そこで政府にはたしてこの今回の日米繊維協定が政治的に重要であるのかないのか、私はこれを答弁を求めたい。重要であるとするならば、当然、政府がこそこそっと黙って国民の代表であるこの国会に一つも断わりなしでやるということに私は問題があると思うんです。その点を一ぺん答弁を願いたい。
  195. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいま外務省の条約当局からそのことを聞きましたが、私は先ほど申し上げましたように、私は法制局長官だものでございますので、憲法上の必要性、そういう観点から実はお答えしたわけです。おそらく前の条約局長政治的重要性のあるもの、これはどうしたってもう認定が入りますので、必要性があるかどうかと、ぎりぎり一ぱいの問題としてよりも、そういうものを国会にかけた——おそらく文化協定なんかそういうたぐいのものだと思いますが、文化協定あたりを頭に入れて、そういうものを出しても別に憲法がこれは出してはいかぬというしろものではない、そういう趣旨で言ったのではないかと思います。  私は繰り返して申し上げますが、憲法上の必要性から申し上げれば先ほどのことが基準になると重ねて申し上げます。
  196. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 私は、今月一ぱいぐらいに正式な外交ルートで調印せられる予定になっております日米両国間における政府間協定のいわば原案なるものにイニシアルを行なったわけでございます。まだこの協定は正式に調印を行なわれておりません。ですから、正式に調印を行なわれた場合、国会に出すのか出さぬのかという問題が当然出てまいります。私は、その意味で、イニシアルを行なう状態において私がイニシアルを行なうこの両国間の協定なるものは、憲法上国会の批准案件になるのかならぬのかということを法制局にただしました。私は、先ほど申し上げたとおり、皆さんと同じように立法府の議員ではございますが、私は法学博士でも何でもないんです。ですから、現行法の解釈というものは専門家にゆだねる以外にはありません。そういう意味で、条約局長及び法制局の意見をただしましたところ、これは行政協定の範疇にございまして、国会の批准を要する案件ではございません、こういうことが言明をせられましたので、私はその後の質問に答えて、そのままオウム返しに、国会に提案をしなければならない案件ではないと思いますと、こう答えておるわけでございます。まあ常識的に、皆さんも、いまのお話、中尾さんのお話もですな、これは案件でなくとも、政治的に国会の議決というような前提があるのだから、そういう意味で国会に承認を求める手続をとることは、より配慮をしたことになるのではないかという立場からはよく理解できます。理解できますが、憲法上、法律的に内閣に授権をせられた範囲内のものであって、出さなければならないものではないということだけは、これは法律の上では十分理解できるわけでございます。ですから、これは法律的に出さなければならないものであるということになると、これは、政府は法律違反を行なうことになりますし、そうではなく憲法上も、法律的にも適法のものであって、国会の批准案件ではない、こういうことであるならば、あと残るものは高度な政治的な判断だけしか残らないわけであります。
  197. 徳永正利

    委員長徳永正利君) いいですか関連。質問続けていただけますか。
  198. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 内閣は連帯をして国会に責任を負っておるわけでございますから、これだけ私が公式の場で発言をいたすには、それなりに、内閣において、この問題に対して結論を出しております。内閣は、本件は批准案件として国会に提案するものではない、政府の専権によって行なわるべきものであって、授権の範囲内である、こう結論を出しておるわけであります。
  199. 高山恒雄

    高山恒雄君 総理ですね、いま問題になっておりますように、非常にこれは重要な問題ですが、総理考え方からいけばですね、経済外交の日本としての正しいこの一つの歯どめというものは、一体国際的に何を持っておられるのです。——わかりにくければ申し上げますが、ガットはその一つの歯どめじゃないですか、自由化に対する。それを無視してやったのじゃないですか。
  200. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ちょっと、最初に、立ち上がるのがおくれたのは、何を答える、どういう意味でお尋ねかなと、かように思ったんですが、ただいま言われるとおり、ガットは一つの歯どめだと、かように思っております。ガットの場におきましても、今回の繊維協定などはいろいろ論議されると、かように思っておりますが、われわれも、多国間の、多数国間で話がつくという、そういう事柄について、これは通産大臣もいろいろそこらも考えのうちに入れておることだと思いますので、お聞き取りをいただきたいと思います。
  201. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 国際的な経済拡大の基本は、無差別でなければならない、縮小均衡の方向をとってはならない、しかも、第二次大戦終幕後は、大きな問題の一つとして、経済的に縮小均衡の道を選ぶ場合、平和が破られるということで、拡大均衡路線をとらなければならない、その過程においてケネディラウンドの精神等が大きく浮かび上がり、わが国もその基本的な姿勢に対しては賛成をいたし、自由化を促進をいたしておることは御承知のとおりでございます。なお、ガットやOECD、DACやまた、第一次製品、第二次製品というような国際的経済機構が国連の下部機構として四五年に誕生してから四分の一世紀、世界の経済拡大のために大きく寄与しておりますことは、世界の方向が原則的にこのようでなければならないということを意味しておるわけでございます。でありますから、経済は拡大の方向に、そしてそれは無差別なガットの精神に準拠したものでなければならないことは言うを待ちません。しかし、最後に一言付け加えて申し上げますと、これは御質問ありませんが、申し上げますと、今度の繊維に関する日米の交渉は、具体的に見ると、その無差別ガットの精神に反するような気持ちがいたしますが、それは大きな長期的な視野に立って拡大基調を確保するための過渡的な一つの措置としてとられたものでございます。究極の目的は一向変わるものではないということでございますし、この協定の中にはガットの規定は侵すものではないことを明らかにいたしております。
  202. 高山恒雄

    高山恒雄君 通産大臣ね、そんなおかしな答弁ないと私は思うのですよ。それはよけいなことですよ。第十一条には、数量的制限の一般的なものは廃止する、こうなっている。十一条にきちっとしておるのですよ。それにもかかわらず、数量的な問題で政府間協定を結んだのじゃありませんか。そうしますと、この結んだそのこと自体がこれはガットの精神を無視して、しかも日本は今後の経済外交に対するあらゆる問題に対してアメリカ政府間協定を結ばなくちゃならぬというはめをひとつはずしたことになる。それを私聞いている。どう考えますか。基準を失ったのじゃないか。
  203. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) ガットは無差別自由を望むものでございますし、そのための規約でございますから、それに反するような課徴金制度とか関税障壁を設けるとか、タリフクォータをとるということは原則的に排除しておることはもう申すまでもありません。ですから、ガット十一条には明文がございます。しかし、書いてはありますが、それはそうかと言って、ある過程において二国間の行き過ぎた状態、ノーマルな状態に持っていくための過渡的な措置としてそのようなことを絶対にやってはならないというものではないことは、これは御理解いただけると思います。これはかつて今度の不安においてイギリスは二年間課徴金制度を行ないましたし、またカナダもカナダドルの維持のために一年間課徴金制度を行なっております。いまアメリカ自体が課徴金一〇%という制度を行なっておること、これはガットの精神から見れば非常に違反をしておるようなものではございます。ございますが、ガットの機構自体を確保するためにドルを守らなければならないとかいろんな過渡的な状態に対処する一つの方法として、手段としてとられておることも御承知のとおりでございますから、私は日米間の政府間交渉を行なわなければ、これこそもう混乱をして、そういう世界的な機構の存続さえもあやうくなるというおそれのある現時点において日米間正常な貿易経済の発展のためにという前提をもってかかる協定を行なったということがガットの精神、ガットに全く沿うものであると言っても、これは詭弁になるかわかりませんが、これはガットがねらっておる同じ目的を達成するための過渡的な、真にやむを得ない措置である、こう理解すべきであると思います。
  204. 高山恒雄

    高山恒雄君 それじゃ、大臣、あなたがいまおっしゃった答弁から聞いていると、将来こうしなければどうにもならない状態になるのだというあなたの見解をひとつ、何がそうなのか、それをひとつ、見解をはっきりしてもらいたい。
  205. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いま私が申し上げました今度の日米の協定はガットの協定を制約するものでないことは、明文が置いてございますから、そのとおりでございます。第一、今度の、私は衆議院でも参議院でも、自分でお答えをしておるのでございますが、国会の決議もございましたが、これはアメリカにガットの精神に反するようなことをしないように、アメリカにとにかく一方的規制などをやらせないように、二国間協定を要求させないようにアメリカを押すべしだということでございました。私もそのとおりなんです。ですから、私自身も自主規制が望ましいことであるということで、時の与党の幹事長として与党を代表して、自主規制はあの時点における最良のものであって、あれ以外に解決の道はないという談話を出しておるわけでございます。私は、七月の五日に通産大臣になりましたときも、自主規制以外にはない、少なくとも七月一日から発足をした自主規制は半年、一年間の実績を見ないでこれを政府間協定などに移行せしむるものではないということを明らかにいたしております。同時に、その次に行なわれた日米経済閣僚会議に対しては、日米間における政府間協定の不可なることを明らかにいたしておるわけでございます。でありますから、あのような状態でずっと続いていくならば、私はあの当時の考えを今日も持ち続けてきたと思います。前提条件が全くがらっと変わったじゃありませんか。それはアメリカは七月一日から規制をやります、十月の一日までに政府間協定を行なわなかった場合、十月の十五日付で七月一日にさかのぼってやります、こういうことになったわけでございます。そうなると一体どうなるのかというと、これは全面的にストップするんです。現実問題として全面的にストップいたします。これはあなたも御承知のとおりですが、これもう全面的にストップいたします。(発言する者あり)いえ、それはなるんです。そこに問題があるんです。糸は三百五十一出ておるんです。三百五十一とはどういうことであるかというと、実績に対して三年半分出ておるんです。それが今度の協定によりまして、その糸は、初年度は、経過規定によって弾力条項を発動しましょうと、しかも残った分は、次年度からのワクで調整をいたしましょうと、こういういろんな弾力的な条項を挿入したことによってストップしないで済むようになっておることは事実でございます。三年半分の実績が出ておって、もうすでに出てしまって、そうして去年の四月一日からことしの三月三十一日の実績で規制をいたします、こう言っておるんですから。あと残るものはやると言っているがまさかやるまいということが一つあります。もう一つは、やるやると言ったってやれないから、やらしてみようじゃないかと、現にそういう話があります。そういう問題しかないのであります。もしそれが私たちの考えておりましたとおり、アメリカが一方的規制に踏み切った場合、糸などは全面ストップになります。現実的に三年半分出ておれば、もう三年半はストップになるにきまっております。だから、それはやらない、なりませんというのは、これは衆議院にもそういう話がありました。やらせてみたらどうか、やりはせぬからと。しかしそれは日米間においてそんな考え方で私は日米の友好を保持することはできない。これはもう絶対できない。それは労使の間でもって新しい要求が出たときに、そんなことでもってロックアウトができるもんか、そんなことでゼネラルストライキができるもんか、やらせてみようじゃないかというに似たる議論でありまして、新しい議論が提案せられたならば、それに対して正面から取り組んで、正常な労使間の慣行を確立するのはあたりまえの話であります。日米間で新しい要請が出てきたと、前提条件が変わってきたときに、これと正面から取り組んで最悪の事態を解決するのは、これはあたりまえのことだと私は考えております。
  206. 高山恒雄

    高山恒雄君 それは、アメリカは対敵取引法を適用するかしないかという問題で、米国提案は現在七億七千万平方ヤードと言ってくる。そうなると、あんたのおっしゃるようになる。しかし、九億五千万ヤードというものでこの協定をされております。そのときにはまだ協定はないんですよ。協定がないから、そのない理由を筋を通さなければ経済外交は成り立たぬじゃありませんか。経済外交を無視して、基本的なものを無視してだ、日本アメリカに従属する外交をやっておるところに、こういう規制ができたんじゃありませんか。そのことを忘れて——あんたの答弁では、それは話にならぬですよ。アメリカがこう言ったからこうした、香港がこう言ったからこうしたというのと回しじゃありませんか。それだったら大臣として経済外交をやる価値なしです。
  207. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 日米間において繊維交渉は唐突に生まれたんじゃありません。もうニクソン大統領が繊維の輸入に対して規制を行なうという声明から三年一ヵ月であります。しかも、日本との間にはまる二年間、ときには政府間交渉、ときには自主規制というように、波を打ちながらも二年間続けてまいったわけであります。そして最終的に牛場・フラニガン会談等によって、もうトリガーやシフトの条項、今日の日米間に行なわれた協定第七項の、この非常にこまかいところだけを詰めれば政府間交渉はやむを得ないというような、そういう状態になりましたときにも、この第七項のシフトやトリガーの条項がそのままきまったとしても、これは綿製品協定と同じように運用せられるおそれがある。その場合に結局十年間で四〇%減ったという歴史に徴して、これは結局五%増しとか三%増しとかという輸出秩序を確立するための協定ではなく、これは漸減を目標とした協定になるおそれがあるからということで、ついに決裂をいたしたわけであります。そして最終的な段階をそのまま形を変えて移しかえたものが今度の五%増しという自主規制でございます。でありますから、私自身も、自主規制というものが望ましいことであるということを考えておって、日本政府も、時の官房長官保利君も、当時、官房長官として政府を代表して、望ましいものであると賛意を表したわけでございます。ですから、民間も、これは自主規制という名の政府間交渉である、こういうことを言っておるのは、その間の事情を裏書きするものでございます。  ところが、相手方は——日本政府日本の業界はそれでもう終われりと思っておったが、アメリカ側はその自主規制というものに承諾を与えておらないのである、二年間依然として交渉は継続しておるという立場をとっておるわけでございます。それで最終的に八月十五日にニクソン新政策の発表になる。その後第一弾として出てきたものが御承知の宣言の問題でございます。今度は新聞にも出ておりますが、きょうコナリー氏が来るのである。われわれまだ内容も知りませんし、お互いは日米間の経済の内容に対して意思の疎通をはかり、理解を語り合おうと思っておるんですが、コナリー氏の要求は日本平価の切り上げだろうということを新聞に書いてあるじゃありませんか。  こういうふうに次々々々とアメリカは当面する現実を基盤として世界各国に対していろいろな協定を申し込んでおるわけでございます。ですから、そういう事実を前提にして考えるときに、やはり可能な限り、際限一ぱいで日米間の理解と友好というものの基盤を確保しながら最悪の事態を避けなければならない、私はそういう意味で、日米間の交渉が行なわれなかったならば、これはあなたがいまいみじくも指摘をされた七億七千万平方ヤードということを基準にして三%でもって押えてくる、こういうことでございましたから、これはもう全面的に一時ストップになることはもう言うまでもありません。ですから、私は弾力条項を挿入する等、六、七項目の原案修正を行なうことにより、なお一カ月に一ぺんずつ日米間の専門家会談においていろいろな問題を協議をする。特に死にワクの活用を行なうことができれば、五%増しといういまの自主規制のワクに近づけることも不可能ではない。これを近づけて真に自主規制と同じことを確保するためには、日米間の理解が前提である。日米間が話し合いができないような状態でどうして五%一体確保できるのか、私はそういうところにこの協定のメリットを求めざるを得なかったわけであります。
  208. 松永忠二

    ○松永忠二君 委員長、関連。  このガット精神に全く適合しているかのごとく今度の行政協定が、繊維協定が行なわれているのだという重大なことを言っておられる。まず初めに、何か政府側は国益を守るというようなことを盛んにあなた方は強調されますけれども、私たちも国益を守る立場から議論をしているのだということをお忘れにならないようにひとつしていただきたいと思うのであります。自分らだけが国益を守っているのじゃないということであります。  まず、将来のいわゆる貿易の均衡というか、調整を得るならば、いまの段階において量的にも規制をしてもいいんだという、これはガットの精神に全く適合しているのだというお話でありますけれども、現に政府アメリカの課徴金の一〇%を撤廃してもらいたいという根拠は、ガットの精神に合致をしていないから撤廃してもらいたいと言っているのでありましょう。あなた方のように、やはり一〇%の課徴金を認める、やらざるを得なかったアメリカの経済情勢、それだけ立ち上がっているアメリカという国が、そういう考えであるならば、将来において日米の経済の拡大をはかるならば、これを認めてもいいのではないかという議論さえここに成り立つじゃありませんか。あなた方の主張しているのは、つまり一〇%の課徴金を取るということは、ガットの精神に反しているからこれは取ってもらいたい、こう言っているわけでしょう。したがって、今度のこの政府間協定が、この繊維協定がガットの精神に合致をしているなどということを言える筋合いでは私はないと思うのですよ。しかも本参議院においても、衆議院においても、その中心が何であるかというと、ガットの精神に違反しないようにやれということであり、衆議院も参議院もそういうことを言っているのである。しかも宮澤前通産大臣は、政府はガットのルールにもとる——ルールですよ、ガットのルールにもとる形で問題解決をするつもりはありませんと、こう言っているじゃありませんか。また総理は、ガットのルールに基づいて重大な被害またはそのおそれが生じているなら、そのことを立証するよう主張してまいりましたと、こう言っているわけです。  したがって、今度の一方的なアメリカの強制によって行なわれたこの協定は、ガットの精神に違反をするところがあるからといっていままで抵抗してきていたじゃありませんか。それがまた根拠として、少なくも自主規制の線へといって、いままでそういうふうな方向に持ってきたのじゃありませんか。しかもオリビエ・ロング、ガット事務局長が九月二十一日に来日をして、加盟国政府から何らかの申し入れがあれば当然これに応ずることになろうと、こういうことを言っているわけです。あるいはまた、EC諸国はガットの場での協議を強く希望しておる。日本がいま政府間協定を結んだ段階でも、十一月に予定されるガット理事会にかけて、従来の主張を一段と強めるということが予想される状況にあるのであります。それをこの仮調印をした政府間協定がガットの精神に将来的に合致をするものだなどというような、そんな強弁をされて、いままでの主張の根拠も、今後の主張の根拠もないじゃありませんか。あなたはそうおっしゃるならば、政府のいままで約束をしてきたそのルールに基づいて、ルールですよ、このルールに基づいて、これをガットにいわゆる訴え出て、多国間の場で協議をしていくという用意があるのかどうなのか。そんなことはできないでしょう。そういう点もいまの御説明でははなはだ矛盾をしておるのであります。  また法制局長官が、何かこれは行政で行なうことができるのであって、行政協定の範疇のものであって、国内にこれを適用する法律があるのだから、あらためて何もそういうものを協定として国会にはかる必要はないというお話でありますけれども総理大臣は、こういうことを言われているんですよ。強権発動という形で輸出貿易管理令を発動することは——ここに一つことばがありますけれども、現在のところ全く考えておりません、はっきり申し上げておきますと、こう言っているじゃありませんか。そういう意味から言うならば、そういう法律があるとしても、それを適用するということはやりたくない、やらないと約束をしてきておるのに、こういうものができ上がった段階において、しかも、ガットの精神を守れと議会が決議をし、しかも、守ろうと言っていた政府であるわけでありますから、最小限でも国会にかけて、この意思を問うということなくして、どこに一体国会の決議尊重の気持ちがありますか。それを通産大臣のごときは、これはガットの精神に将来的に適合するなどというような、そういう強弁をやられているようなことでは、こんな通産大臣に将来の私たちの通産の行政をまかしておくことはできないじゃありませんか。それでまた従来政府国民に明示をしてきたことと全く違った解釈をして、そうしてここで押し切っていこうなどというのはふらちだと私は思う。もし私の言っていることに御意見があるなら、ぜひひとつお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  209. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) ガット十一条から十四条までを読むまでもなく、無差別な自由な経済交流を拡大をしたいということは、これは人類の理想であり、希求しておる目標であります。ですから、このガットに対して、アメリカが課徴金制度をとったり、二国間交渉を要求してくる態度そのものは、ガットの精神からよろしくないということは当然であります。だから私は、日米経済閣僚会議で難詰をいたしたわけであります。当時の新聞に書いてあるでしょう。(「何が難詰だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)だから、難詰をしておった。だから私は、そのときには、日本が自主規制以外にはない、こういうことを言っておったわけです。総理大臣も宮澤前通産大臣も私も同じ考えを持っておった。事態は変わってきたのであります。変わってきたことと、変わってこないこととを全然考えないで、事態を同じ状態で考えておるところに、そのような議論が生まれるんです。国は百四十もあるんですから。(発言する者多し)これはそのとおりです。あなた方の言うことだけが正しくありません。私どもは私どもで……(「何言っているんだ」「事態が変わっていることを聞いているんじゃない」と呼ぶ者あり。その他発言する者多し)
  210. 徳永正利

    委員長徳永正利君) お静かに願います。
  211. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 前のこととは事態が変わっておるのであります。アメリカは十月の十五日から一方的規制をやるという、新しい二国間の国際的な事態が起こってきたじゃありませんか。その事態において、日本の国益をどうして守るかということを国務大臣が考えるのはあたりまえであります。日本の繊維産業は、いま日米間で政府間協定をしたことによって、七十七万台の織機のうち三十五万台買い上げてくれと言っているじゃありませんか。(「何言っているんだ」と呼ぶ者あり。その他発言する者多し)
  212. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 不規則発言は遠慮してください。
  213. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) そのような事態であるということを考えるときに、通産大臣は、日本の繊維事情や日米間の正常な貿易を守るために、どうしなければならぬかということを具体的に考えるのはあたりまえであります。
  214. 高山恒雄

    高山恒雄君 通産大臣、それだけ重大な問題であるならば、なぜ国会にかけないかということです、そのことを言っておる、国会にかけるべきだというのはそのことを言っておる、それだけ重大なら。あなたがそれだけ力説をしなくちゃならぬ問題であるならば、これだけ国民に影響を及ぼしておるという重大問題を、なぜ国会にかけないか。
  215. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) それは、私が先ほど申し上げたとおり、私はイニシアルを行なって、現在まだ協定は成立をいたしておりません。今月一ぱいで成立をするでありましょう。この協定が国会に対する批准案件なのかどうかをわきまえずしてイニシアルを行なうわけにはまいりません。その意味で、私は、イニシアルを行なう前に、みずから行なうイニシアルをする協定が、三権の中で政府間だけの専権で行なえるものなのか、国会に対して批准を求める案件なのかということをただしたわけであります。それに対しては、先ほど法制局長官が述べたとおり、これは政府に授権された範囲内のものでございまして、あなたがイニシアルを行なうこの協定は、行政協定でありまして、国会の批准案件ではございません、こういうことでありますので、私はそれをそのとおり信じて国会で述べておるにすぎません。
  216. 高山恒雄

    高山恒雄君 ただいま連絡を聞けば、田中通産大臣には問責の決議案が出ておるようです。したがって、いま、興奮されての御答弁を聞いておっても、これはたいへんだと思うんですよ。そういう認識で経済外交をやられたということについては、これは問題だと思う。したがって、私は、まだ時間がありますけれども留保いたします。質問を留保いたします。
  217. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 田中通産大臣の問責決議案が提出されたのでございまして、理事会において協議いたします。  暫時休憩いたします。    午後二時五十三分休憩      —————・—————    午後五時五分開会
  218. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、高山君の質疑を行ないます。高山君。
  219. 高山恒雄

    高山恒雄君 今夜、米国のコナリー財務長官が訪問されるということですが、こういう悪例を残した経済外交の中で、今後のテレビ、あるいはまた自動車、電卓等の規制の要請はないと考えるのか、この間非常に重要な問題だと思いますので、お聞きしておきます。
  220. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いま御指摘になりました、自動車、テレビ、電卓等、対米輸出といたしましては、前年度に比べて非常に伸びておるものでございますが、その後、新政策の発表、また変動相場制の移行等を考えますと、いまこまかい計算をやっておりますが、来年は今年ほど高い伸びが確保できるとは思えません。また、輸出秩序の確立ということを各業界でもみな考えておりますので、繊維問題のように、政府間交渉案件になるとか、またアメリカ側が規制を求めるというようなことはないと思います。また、私自身も、日米経済閣僚会議を通じ、その後もずっと各品目に対してこまかい予想をいたしておりますし、また業界との話し合いによりまして、業界自体も輸出秩序の確立ということを十分考えておりますし、また値段を引き上げて、国内販売価格よりも対米の輸出価格を引き上げるというような方向にございますので、正常な輸出を確保することが一ぱいでございますということを十分実情を私は説明をするつもりでございますし、この間においてお互いが意思の疎通がはかれると、理解が十分得られるだろうと、こういう考え方でございます。
  221. 高山恒雄

    高山恒雄君 繊維以外の規制の要請はないと信じてもよろしいんですね。
  222. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まだコナリー財務長官と話をいたこともないわけでございますから、これはないとは私からは言えませんけれども、これは、もしそのようなことがあっても、事情を述べて、お互いが意思の疎通をはかったりすれば、理解ができるという考えでございます。
  223. 高山恒雄

    高山恒雄君 理解ができるという自信のほどですが、しかし、そうなってくると、繊維だけを犠牲にしたと、こういう判定をしてもよろしいか。
  224. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) まあ、繊維だけ犠牲にしたのではなく、繊維は先方側から一方的規制を行なうという提案がございましたし、それはどうも歴史の上から考えてみても、やらないというようなことでは、そういう見通しは立ちませんでした。あの事態でじんぜん日を送れば、必ず一方的規制になり、混乱をするということで、全くやむを得ず日米両国間の交渉にしたわけでございますが、他のものは、対米輸出というもの——繊維は実際は出そうと思えばもっと出る状態でございますし、それからほかのものは、ちょうど日本の景気が非常に低い成長率の状態であって、輸出ドライブがかかったような状態になって、特殊な要因もございます。しかも、港湾のストライキ等のアメリカ国内における輸入急ぎというものもありましたし、いろんな問題がございます。しかしまあ、繊維というものは非常に力があるし、いい品物を安くという国際競争力の問題もありましたので、アメリカ側もあのような要請を行なったわけでございますが、他の問題に対しては、私は説明をすれば、日米間で、そんな私がもう一ぺん問責決議を受けるようなことは絶対にしないで済むような状態、また真剣にひとつ日米間の意思の疎通をはかろうと、こういう考えでございます。
  225. 高山恒雄

    高山恒雄君 いや、私はそういうことを聞いているんじゃないんです。他の業種にはそういう危険性はない。押し切るつもりだと言われるから、繊維だけを二国間協定に、犠牲にするつもりでやったのですかと、こう聞いておるんですよ。
  226. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) いや、繊維だけを犠牲にするつもりではないんです。ですからそこをひとつよく御理解いただきたいのでございますが、あのままになってしまったら日米の繊維輸出はほとんどストップする。ストップするよりも、比較をすると、いい方法をとったわけでございまして、そこをあなたも意地悪く言われるわけではないと思いますが、私もそんなに繊維だけを犠牲にしたというのじゃありません。繊維はもうあの状態においてやむを得ない状態であり、しかも、あのまま突っ込むよりも、やっぱり両国の利益を守る唯一の手段だと、こういうふうに理解をし、判断をしたわけでございます。しかし、あなたの立場で、それは結論的にほかのものは全然二国間交渉というような形態にならず、繊維だけがなったということになれば、そういうふうに表現をされてもしかたがないと言われれば、それはもうそうかもわかりませんが、私には犠牲にするというような考え方は毛頭なかったんだ、ないんですということだけはひとつ御理解いただきたい。
  227. 高山恒雄

    高山恒雄君 あなたの答弁はそれしか言えないと思いますけれども、実際問題としては、それはガットのルールまで無視してやらなくちゃならぬところに、私は犠牲にしたのじゃありませんかと、それで、他の産業にはその影響を食いとめる自信があると、こうおっしゃる。したがって、繊維だけを犠牲にしたのですなと聞いておる。それだけ追及してもしかたがないと思いますが、一体政府は弱小企業の転換指導と助成を具体的にやるとおっしゃっておるが、この不況時代に一体何に転換させようというひとつ方針があるのか、それを聞かしていただきたい。
  228. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) せっかくのお尋ねでございますからこの際申し上げたいと思いますが、私は七月からずっと繊維の問題を中心にして、中小企業の各界の問題を調査をいたしてみました。そうしますと、日米の政府間交渉だけではなく、やっぱり繊維自体は他の要因においても、ちょうど見直し、洗い直しをしなければならなかったような状態でございます。これは繊維だけではなく、洋食器においてもそのとおりでございます。新潟に燕というところがございますが、ここでは洋食器の製造能力は二千五百万ダースから三千万ダース近くございます。輸出実績は千九百万ダースが最高でございましたが、それを政府間で話し合いをし、自主規制をやりまして、千百万ダースに押えたわけでございます。だから実質的には九百万ダースぐらいしか出ないということにいまなっておりますが、これが正常な状態でもって進んでも、やはり設備投資が行き過ぎておるという面が非常にたくさんございます。設備投資というのか、生産能力が非常に大きいというのか、私はそういう意味で、中小企業各般の面でやはり見直し、洗い直しということをしなければならない時期、言うなれば戦後二十五年、四分の一世紀たって、そういう時期がちょうど迎えられておるんだというふうに理解をしたわけでございます。ですから繊維の、さあいよいよ対策を行なうというときになりますと、対米貿易が五%減るとかいうことではないわけです。この間、あなたも先ほど御指摘がございましたが、五%増しの自主規制までにはもうすでに七百五十一億——約二億ドル以上の大きな投資を行なうわけでございます。その上になおいまの状態では六十七万台のうち、五万三千台の織機を買い上げたということになっておったんですが、その後は七十七万台、いま通産省には八十万台近くあるというふうに、だんだんと織機もふえてきております。その中で、三十万台ぐらい政府に買い上げ対象にしてくれという要請がございます。そういう意味で、あらゆる階層——いまつくったばかりのより糸機というような非常に大きなものを三分の一スクラップにしてほしいという要請もございます。そういう意味で、日米の五%増しに縮小したときにも、七百五十一億だけで済むのかというとそうでもなく、また五%が、対前年度実績だけを確保するといったら、五%減る部分だけに対策をすればいいかというとそんなものではとても済まない。一〇%、一五%、二〇%、三〇%、これが対米輸出が三〇%減るから三〇%に処置をすればいいのではなく、対米輸出は五%しか減らないにしても、前年度実績を守り得るような状態であっても、繊維企業に対しては抜本的な施策を行なう必要がある。これは現実問題としてこれから出てくることでございますし、私は各党からの御要請も受けますし、また労働組合からの要請も、どうぞひとつ専門的なものを出してください、こう言っておるわけでございますから、そういう意味では、どうもいままで通産省の繊維局でもって私たちに教えておったような数字よりも、もっと手を入れなければならない実情であるということは事実でございます。  それから大ざっぱに言うと、いままでは重工業主体のものでございましたから、これから十年たって、自由世界の石油の三分の一以上を日本に運び込まなければならぬ。同じように、鉄鉱石にしろ何にしろ、重工業主体で一体やれるのかどうかという問題もありますので、通産省は答申を受けながら知識集約産業にだんだん移していかなければならないということでございます。  もう一つ、来年度予算を中心にして公害問題や過密の問題の対応策をあわせて行なっており、産業立地政策ということで、今度は団地をつくるとか、過密都市内から工場を移そうとかという、いま長期的な政策を進めております。そういうものといまの繊維や地域的な金属洋食器というような問題とか、またいろいろなものがございます。毛製品の地域とか、いろいろなものがございます。これはほうっておいても半分ぐらいずつ変わっていかなければならないという地域がございます。その意味で、私も非常にこの一カ月ばかり勉強さしていただいたということで、これはよかったと思います。そういうことで、当面する政策だけではなく、五カ年間にはどうする、十カ年にはどうするというような産業政策の新しい青写真を書いて来年度からスタートしなければならないということでございまして、一般的な中小企業、零細企業対策、産業政策とあわせて、その中に繊維企業対策をどうするか、中小企業対策をどうするかということとかみ合わせてまいろうということでございまして、まあ繊維に対して青写真をきちっと出したい。ですから率直に申し上げると、繊維は五年ぐらいかかりそうな気がいたします。これは繊維の業界と話し合いをして三年間でもってどうですかと、こう言ってみても、三年間で物をつくることもさることながら、やはりいますぐやらなければならぬもの、来年の予算でやらなければいかぬもの、その移り変わりを見ながら三年間でおおよそこの程度のもの、しかし最終的には四年目、五年目というところまで考えることがベターだろうというような気もいたしております。これは四十七年度予算編成までには業種別にひとっこまがいものを書きたいと思っておりますし、特に、平価調整がもし行なわれるとすれば、その影響は日本の産業別にどう影響するかということをいま試算をいたしておりますので、そういうものもあわせなければ、全貌をここで申し上げるというところには至っておりません。
  229. 高山恒雄

    高山恒雄君 時間がありませんから、一括して申し上げたいと思いますが、各関係の大臣からお答え願いたいと思います。  いま通産大臣から御答弁いただいたそのことは将来の問題であって、実はこの問題は、政府規制をしたところに問題があるのであって、それは十月から実施されるわけです。したがって、いまにも転換しなくちゃならぬと、こういう情勢がきておるわけです。そのために、織機を七万五千台から十万台買い上げると、こういうことになるのでしょう。そうしたら、この不況の中で、一体いま構想を描いて、何に転換しようとする指導をされるのか、この不景気に。いままで自主規制である場合ならば、これは自然の中に何か考えて転換することができるけれども、一応五%なり八%なり減るという前提に立てば、輸出生産をしているところはとめる以外にないのです。したがって、これは何か転換せざるを得ないわけですね。政府はこういう不況の中で一体、せきをとめたのだが、何の指導をしようかということを私はひとつ具体的にお答えを願いたいと思うのです。これが一つ。  もう一つ、これば杞憂かわかりませんけれども、流れにさからうほど人は美しいといいます。けれども、これだけ日本の労働者なり企業家を苦しめて、決して流れにさからって美しいのじゃないのです。それは人のためになることが流れにさからって美しいというのであって、私は大きなあやまちだというふうに考えざるを得ないのです。  それから各大臣に御質問申し上げるのですが、経済の立ち直りの見通しをお伺いしたいのですが、多少私の意見も入れます。私は、企画庁の中山参与から発表されておるように、まさに深刻だと思うのです。輸出はほとんど規制を受けるという状態にいま日本は追い込まれておる。しかも、繊維の労働者は切っても切れない農村とのつながりを持っております。機械工業と繊維工業というのは、農村から切り離すことのできない兼業部門におるわけです。しかも繊維だけを唱えても、家族を含めて一千万人といっております。農業をごらんなさい。農林大臣のお答えも願いたいのですが、ほんとうにいま日本農業は、北海道のあの異常気候によりあるいは例年にない災害により、予定の米も取れなかったじゃないですか。そういう不況状態ですよ。この人口は約二千八百万人おります、家族を含めて。労働者は一千二十五万人。繊維を含めて約三〇%の人が不況の波に実際はさらされるわけです。そこにもってきて、機械工業に対する、かりに自動車なりテレビなり、そういうものに規制を加えて日本の製品が外国に輸出をしないといったら——政府は拡大せよ、拡大せよと今日まで努力をしてきたのじゃありませんか。それを一挙に波をとめるような施策をとって、あたかも流れにさからうことが美しいような方法でやっておられるのが通産大臣の姿勢だと私は思う。これは大きなあやまちだ。一体、ここ一年やそこらでこの経済挽回、立ち直りができるのか、できないのか。その点をひとつ大蔵大臣なり企画庁長官なりから私の納得のいく御答弁を願って、私の質問を終わりたいと思います。
  230. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 繊維企業では、いま転換をしたり、中小、零細の中には廃業しなければならないような面もございます。そういうものに対して財政、金融、税制上の措置をいたしたい、こういうことでございます。しかし、各業界別に、繊維の中のまた部門別でどのようになるのか、地域的にどうするかという問題は、まだ繊維の業界関係からはさだかな数字としては出ておりません。だから、先ほども申し上げたとおり、いまやってもらいたいものは、まあ金融の中で期日の来ているものをまずつないでくれ、その金をつなぐことだけに飛び歩いておって、何をしようかという前向きのことを考えるいとまもないようた状態では困るので、まずつないでくれ。それではつなぐことにはどうするのかといったら、織機な十万台買うということになれば、届け出をするとか封印をするとか、いま五万三千台をやっているような、ことし一年もかかるようなことではなく、これはもう十万台買い上げるといえば、二百五十億に関しては、組合がオーケーを与えたものに対しては、期日がきても、それはあとは金利をだれが負担するか、どうするかという問題だけであって、一時、期日がきても全部それはたな上げになるわけでありますから、まずそれをやる以外にないということであります。それから、まず暮れをどうして越すか、そういうことをやりながら、これから自分たちの業界をどういうふうにして整理をしていこうかというのをまとめるのであって、いま口では三〇%、五〇%転業しなければならないようなことは流布されてはおりますが、さて工場別に、この工場は一体二〇%廃業するのか、こういうと、それは待ってくれというのであります。これは繊維企業の特性でもって、これは無籍の織機が蔵の中にしまわれておって、景気がよくなると繊維をやり出すという特殊な状態、あなたは専門家ですからよくおわかりだと思いますし、私も自分の回りにございますから案外よく知っているのです。だからそういう状態で、実際私の工場の中から何分の一廃転をします、整理をしますという案はまだ出てこないのです。ですから、これはこれから通産省も各会社別、部門別によく話をいたします。ですから業界はあまり急なことを言って、一年とか二年ではだめですよ、最低三年ですよ、三年というよりはあと二年の予備を見ておいたほうがより親切だ、こういうのは私も事情わからなくはありません。だからこういう意味で、まだ通産省に対して、たいへんだということはわかりますけれども、どれだけ整理をしなければならないのだ、転廃業は幾らであるというもののさだかな数字は出てきておらぬわけであります。ですからお答えするとすれば、これは知識集約産業型のものにやってまいるということが一つでございます。もう一つは、都市に過度集中をしておって、これはもう物価の問題、何をおいても過度集中を是認している限りにおいては片づかない問題がありますから、公害問題一つ考えてみれば、これはもうすぐわかることであります。そういう問題で、産業立地政策を年次的に進めることによって収容しよう。もう一つは、いままで人がなくて困っておった第三次の産業は、今度はもう人がようやく得られるわけでございます。ただ、無計画にやると、それが全部東京や大阪という拠点都市へ集中をするという弊害はございますから、いま通産省では、省をあげて五年後、十年後、十五年後、六十年までの青写真を書いて、産業分布図を新しく書かなければ、四十七年度までに間に合わせないと、これはもうたいへんなことになる、こういうわけで、前向きの政策と繊維のようにうしろ向きの政策と、これは一つの中で処分をしようという考え方でございまして、いま繊維の地域別、業種別、部門別で、何をどうしますということが、いま述べられるような状態にない。これはもう十一月、十二月、毎月毎月、県別、会社別、部門別の調査を進めて対応策をとってまいりたいということでございます。
  231. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 確かに、現在、わが国の景気、たいへん深刻になっております。また、業種によりましては、先ほどからお話がありましたとおり、整理を余儀なくされる業種も出てきつつあります。しかしながら、そういう景気の落ち込みを、何とか財政金融措置によって大幅な落ち込みを防ぐように、今回御審議を願っております補正予算を中心といたしまして、極力そういう効果を早く出すように努力しなければならぬと思います。また、当然明年度に及びましては、やはり今回とりました補正予算の延長といたしまして、景気拡大の大幅予算を組んでいかなければならぬ。そういうような景気拡大策の中で、財政主導型による公共事業の振興その他によりまして大幅な景気の落ち込みを防ぐと同時に、いま申し上げましたような産業の調整をはかっていく、こういうことが必要であろうと考えます。
  232. 高山恒雄

    高山恒雄君 大蔵大臣の見通し……。
  233. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 来年度の経済見通しは、いま企画庁において作業中でございます。十二月までには大体政府の見解がまとまる予定でございますので、それをもとにいたしまして、いま企画庁長官が言われましたように、景気の落ち込みを防ぎ、逆に景気克服の予算財政面、金融面から総力をあげて来年度はこの予算編成にかかりたいと、できたら年内にもこの予算作業をやりたいというのが、いま政府の大体予定でございます。
  234. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上をもちまして高山君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  235. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、喜屋武眞榮君の質疑を行ないます。喜屋武君。
  236. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、持ち時間も多くありませんので、特に沖繩問題にしぼって質問をいたしたいと思います。  そこで、佐藤総理は、所信表明の中で、また本会議並びに委員会の中で、一貫して強調されましたことは、明るく平和で、そして豊かな沖繩ということを繰り返し繰り返し強調されてこられました。そしてその中で、県民福祉向上について特に政府として最も力を入れてきた、今後も最重点に施策の一つとして努力いたしたいと、こういうことを一貫して強調されました。ところが、私はそのおことばを聞きながら、はるか沖繩思いをはせながら現実の沖繩と結びつけて考えました。そしてまた、返ってくるその後の沖繩と結びつけて考えてみた場合に、まことにうらはらな感じを抱かざるを得ません。まことにうつろなむなしさを感じざるを得ません。そこで私は、幾つかの質問の中でそれを裏づけていきたいと、こう思うのでありますが、総理はじめ関係大臣の、はっきりした、しかも明確なお答えをまずお願いいたしたいと思います。  そこで、その質問をいたす前に佐藤総理にもう一ぺん確認しておきたいことは、復帰後の沖繩の課題、そしてそれも復帰前の沖繩を抜きにしては復帰後の課題ということはあり得ないと思います。将来の沖繩ということも、当然それは現在の沖繩を無視しては将来の沖繩はあり得ないと思います。そのことについて、いま起こっておる問題に目を伏せて、素通りして、あすの沖繩、将来の沖繩、復帰後の沖繩があり得るはずがない、私はこのように考えるものでありますが、総理の御見解はいかがでありましょうか。
  237. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 喜屋武君のお考えのとおりでございます。過去は語らないで未来を語ると、そういうわけにはまいりません。また、今日現状は過去の続きでございますから、そういうことで、やっぱり一体として全体を考えないと、その部分的なとり方ではいろいろ間違うだろうと、かように私は思います。したがって、ただいま、ものの見方、ものの考え方、かようにあるべきだと、喜屋武君と同感でございます。
  238. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それで、現在の沖繩にいま何が起こっているかということについて一、二の問題をここに提起をいたしまして質問いたすのであります。総理は、いま台風災害に関連した、八重山の農民が、去る十月の二十七日から十五名の農民が日本政府沖繩事務所前ですわり込みをしておるということ、このことを御承知でありましょうか。
  239. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 聞いております。
  240. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そのことがいま沖繩に起こっておる重大な問題の一つであります。そして、これは石垣市長から長文の救いの電報がきております。そして電話が今日まで私に三回、そのすわり込みをしておる代表から、何とかしてもらいたいと、こういうことがまいっておるのであります。このことについて、政府とされて、その理解の上にどう対処されてきたか、そしていま何を考えておるか、そしてそれがいつ具体的に、この農民を救う一つの具体的な問題解決として何をなしておられるか、それを承りたい。
  241. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 現在の沖繩事務局にずっとすわり込みをしておられる事情は、私逐一承知いたしております。その背景には、ことしの二月から、九十九年ぶりといわれる異常な大干ばつの中で、ほとんどキビ、パイン等の収穫が壊滅に近い状態になっておりましたところに、さらにこれはまたまれな台風の直撃を受けた、その二重の被害のために、ことしの収穫はおろか、来年の農業収入もおぼつかなくなった農民の方々が、琉球政府、そして琉球政府が本土政府に要請した予算の援助あるいは支出方の早急なることを願って、私どもの出先事務局にすわり込んでおられることの背景であると承知いたしております。したがって、すみやかにこの問題は解決したいと考えまして、最初に宮里副主席と私との間で四時間かかって詳細に詰めました。ということは、干害対策の経費を支出いたしました場合に、本土における予算支出のルールと——沖繩に必ずしも私は当てはめることはできないと思いますが、著しく差のある、あるいは著しくルールを乱す支出というものがなかなかしにくいものでありますから、よく相談をして先般の干害対策費というものを一応支出をしたわけであります。ところが、今回持ってこられましたものは、一例をあげますと、生活資金あるいはその他の利子補給等について、干害対策の場合には本土政府と琉球政府と二分の一ずつ分担し合おうというルールになっていたのでありますが、今回は十分の十の負担である、要求であるというようなことがございまして、したがって、もう少しこれを琉政のほうでも検討したい、私どものほうもこのままいただくわけにいかぬということで、副主席に一ぺん帰ってもらいまして、それからさらに主席が印刷物を持って上京されましたが、中身はまた同じでございましたので、そこでよく聞いてみますと、琉球政府の中の農林局その他の原局がばらばらに出したものをそのまま印刷したものであることがわかりまして、予算を担当する企画局においてこれを琉政全体のものとしてきちんと整理をして持ってきてほしい、救農土木等、あるいはまた生活資金等のダブリの部門等もございますから、それらの分の整理をお願いしたのでありますが、できれば先週中には片づけたいと思いまして、琉球政府予算責任者の上京を待っておりましたが、きのう月曜に上京してこられたために、今日ただいまの時点においてはいま検討中でございますが、持ってこられました内容は、当初と全然変わっておりませんので、これをどのように相談すべきかについて、いま時間の合い間を見ては一生懸命相談をいたしておるところでございますが、これは非常に急がなければならない問題である。ことにハンストにも突入するというような一応の情報等もいただいておりますので、そういうようなことになってはたいへんなことになると考えておりまして、琉球政府ともよく連絡はとっておりますが、私どもが宮古、八重山の干害から、台風に打ち続く被害の農家の方々に早くこたえてあげなければならないと思うにつけても、やはりその予算の内容はつかみ金でやるわけにはまいりませんので、少なくとも積算の根拠のある数字にしなければなりません。その点において少しく私の目算よりもおくれておりますけれども、少なくとも今週中には決定できるというふうに考えておる次第でございます。
  242. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この深刻な事態を聞けば聞くほど、知れば知るほどこれは黙っておれません。あすではおそい。いま、今週中に解決をすると、こうおっしゃいましたが、今週中とおっしゃらぬで、もっと近い日にそれは確実にこうすると、こういったお答えはできませんですか。
  243. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私どもは、やはり大蔵省のほうに予算の執行については合意を得なければなりません。やはり大蔵省にしか予算の執行を是認する権限はないわけでありますから、少なくとも合意を前提としない限り、できませんので、その大蔵省との相談をするための作業を、いま、琉球政府当事者も交えて、きのう、きょうと、やっておるわけであります。この会が始まるまで私も参加いたしておりましたけれども、それが詰まりましてから大蔵省と話をいたしますので、できれば今夜じゅうにでも、あしたでも、という気持ちでおりますけれども、先日喜屋武議員には土曜日までに片づけたいと私ここで話をしまして、実は、理由は、琉球政府のほうから、予算局から、企画局から予算担当者が来なかったことが理由であっても、このように週を越してしまいましたので、念のために今週一ぱいと申し上げたのでありますが、なるべく早く片づけたい、このことについては私も同感でございます。
  244. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もう一ぺん重ねて念を押しますが、なるべく早く、おそくとも今週一ぱいには間違いない、こういう確約ができますね。
  245. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) いまのような前提でありますれば、確約できると思っております。
  246. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは、私もその確約を信頼いたしまして、今晩直ちに現地に連絡いたしますので、ひとつ御了承願いたいと思います。  次に、問題二つ。最近特に、さかのぼれば共同声明時点から、返還協定調印の時点からと、こう言いたいですが、特に最近、目にあまる外人犯罪が激増しておるということは総理承知でありましょう。いかがですか。
  247. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 外人犯罪については、それぞれ山中君から聞いております。
  248. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) この点は、私も、現地の最高責任者であるランパート局等弁務官にたびたび面会の際話をしておることの一つでありますけれども、どうしてもベトナムの、いわゆる戦地と言ってよろしいでしょうが、その戦場の雰囲気を身につけた、しかも二十歳、二十一歳ぐらいの若いアメリカの青年兵士たちが、アメリカに帰ります前に沖繩に立ち寄って休養をとって本国に帰るというような形もあるようでありまして、沖繩に長年おるような兵隊はよく沖繩のことをわかっていてくれている節もありますけれども、その反面において、ベトナムの一時沖繩で休養するような兵隊等を中心にして、依然として犯罪があとを断たない、いわゆる善悪の区別を、戦地と沖繩とは違うんだということを、よくわきまえていない兵隊が多いことを私は遺憾に思って、その点もよく指摘をいたしておりますが、依然としてそれがあとを断ちませんし、自動車強盗あるいは婦女子に対するあるまじき行為その他があとを断っておりません。あるいはまた、自動車のひき逃げ等も、当然考えられなければならない人間としての人道的な処理もしないまま、治外法権的な行為をとろうとする、そのようなことによって、沖繩の人々が、もうがまんできないという心理のもとに、絶えずトラブル、一触即発の手前に行っているということを私は非常に心配をいたしておりますし、そのようなことが、沖繩の人々の前で、あと何カ月がまんしろというのかという、そのお気持ちに私たちは早くこたえなければならぬというふうに考えておりますが、はなはだ遺憾なことでありまして、私たちは、すみやかにこれらの事情を、外務大臣とも相談をいたしておりますけれども、それぞれのルートで連絡をとりつつ、少なくとも沖繩を戦地のようなつもりでふるまうような犯罪、そうとしか思われない犯罪というものの絶滅を、私は施政権者として期してもらいたい、心からそう願っておるものであります。
  249. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 総理に念を押したいと思います。沖繩県民は虫けらではないぞと、もう言い出しております。沖繩県民は虫けらではありません、このように怒り心頭に発して騒然たるきのうきょう最近の実情であります。とのことに対して、どのような、日本政府として、ランパート弁務官に、あるいは大使館に抗議でもされたかどうか、お聞きいたしたいと思います。
  250. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまの問題につきましては、私もたいへん心配しているのです。ことに昨今沖繩県民の気分がたいへん険しくなってきている。また屋良主席も、いても立ってもいられないというような気持ちであられる、こういうこともよく承知しております。そこで、何とか方法はないか。これは前々から、まあずいぶん申し入れもし、総務長官も努力をしておる。それからランパート弁務官も、八月には軍紀粛正についての声明を発する、こういうようなことでありましたが、遺憾ながら今日の状態である。そこで、実はけさ私から高瀬大使に対して訓電を発し、ランパート弁務官と十分話し合うようにされたいと、こういうふうに言っておりますが、高瀬大使も全力を尽くして話し合いをする、こういうふうに思いますが、何とかして県民の感情をひとつ融和していただきたい。ちょうど沖繩返還が目の前に迫っておる。そういう際に、こういう状態であることは、はなはだ私も残念に思います。全力を尽くすつもりでございます。
  251. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それで、私要求をいたします。きのうもきょうも、ここにもう字で一ぱい、こう、書き出してありますが、時間の都合で読み上げるわけにいきませんが、枚挙にいとまなしということで結びたいと思うのでありますが、そのようなことに対して、私は、いまからでもおそくはない、ぜひ総理の名においてアメリカ大使館に、それからランパート高等弁務官に抗議を申し入れてもらいたい、こう要求いたしますが、いかがですか。
  252. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) できる限り御意向に沿うような措置をとってみます。
  253. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは、念を押すようでありますが、このようにやったということを、ぜひひとつ知らしてもらいたい。お約束できますね。
  254. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お約束申し上げます。
  255. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に移ります。  沖繩の経済開発、もろもろの沖繩の復興、その裏づけをなすものは、何としてもその計画が絵にかいたもちにならないためには、基地の解放というものが前提にならぬ限り、沖繩の経済開発は絵にかいたもちにしかすぎない、こう私は信じておりますが、総理、いかがでありますか。
  256. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは、まさにおっしゃるとおりでありまして、一例をあげますと、衆議院で建設大臣が答弁をされたのでありますが、沖繩の今日の交通事情から見て、本島の縦貫道路というものが必要である。しかしながら、建設省の調査団が実地に行ってみますと、どうしても那覇から石川までしか計画は立てられない。それから名護のほうへはやはり軍用地が横たわっているし、それをよければいまの海岸通りの一号線その他になってしまう。それでは、新しい活力を付与する大動脈にはならないというような報告等もあるわけでありますが、これは一例でありますし、あるいは那覇市の都市計画をつくる場合においても、あの広大な面積を占める牧港住宅街といわれている上之屋一帯というものをどうするかということをきちんとしなければ、那覇市の都市計画はかけないだろうというふうに、例は枚挙にいとまがないと思いますが、要するに、嘉手納や北谷、読谷等のごとく八割以上の、その前後の敷地を、旧村有地を、全部軍用に取られている地域の人たちに、経済開発をしようにも、やはり軍用地の問題が解決されない限り、いわゆる沖繩の永久的な村づくり、町づくり、県づくりというものには大きな支障があると思っております。また、外務大臣総理大臣も、そのようなことは報告を受けて御承知でございますし、外務大臣もそういうたびたび答弁をいたしておりますので、私としては、沖繩の明るい豊かな未来を築くためには、どうしてもやはり米側に対して、われわれの立場からする基地の返還要求というものを、沖繩の未来図の設計のために必要なものとして要求する態度を続けていかなければならぬと考えておる次第でございます。
  257. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 基地リストにABCがあるわけでありますが、それについて、いまさっきのお考えに基づいて、ABCに再検討、再折衝されたかどうか。お答え願いたい。
  258. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ABCリストにつきましては、返還が実現をするまで、これを変更することはもう非常にむずかしいと思います。つまり、協定の付属文書でありますが、このABC表を変更する、改定する、これは私はむずかしいと思う。しかし、返還後においては、逐次そういうものを、お話のような気持ちで整理をしていく。そのための要請はしてみる。そういうつもりです。しかしそれは、何も返還後を待っているということじゃないんです。そういう話は、返還前といえどもいたしておきたいと、こういうふうに・い得ております。
  259. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もう一ぺん念を押しますが、いまの外相の御答弁では、むずかしいと思いますというおことばがありましたがね、それは、折衝したけれどもできなかったという意味であるか。あきらめて、まだ折衝しておられぬという意味か。どっちですか。
  260. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、ときどきそういう話をしています。しかし、なかなか政府といたしましても、変更は困難であると、不可能であると、こういう見解です。
  261. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは重ねてお聞きしますが、七月の二十二日、六十六回の国会の参議院予算委員会で、増原当時の防衛庁長官は、私に、十三万二千坪の泡瀬ゴルフ場を基地リストA群からはずすべく再検討を私が迫りましたことに対して、具体的な問題として十分検討する、折衝したい、こう約束されましたが、その折衝の結果はどうなっておりますか。
  262. 島田豊

    政府委員(島田豊君) この問題につきましては、喜屋武先生が増原長官を長官室にたずねられまして、泡瀬ゴルフ場の返還について要求をされたということは私も聞いております。その際に、増原長官もこれについては検討すると、こういうお話があったと承っておりますが、この問題は直接防衛庁、防衛施設庁という問題であるよりも、むしろ外交折衝の問題でございますので、外務省のほうにこのことは十分伝えてあるというふうに考えますし、外務省もこの問題については十分認識をしておられると思いますので、その後外務省のほうで何らかの措置をとられたというふうに考えておるわけでございます。
  263. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) この問題につきましては、われわれ十分現地の要望を承知しておりまして、たびたび現地に参りまして実情を調べ、かつ現地の司令官とも返還の可能性等につきまして打診しておりますし、一方アメリカ大使館に対してもこの問題で再三交渉しております。しかしながら、いまのところなかなか困難であるというのが先方の反応でございます。
  264. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまアメリカ局長から申し上げましたような実情でございますが、まあそのいまのゴルフ場に限らず、私もいろいろ考えております。ことにコナリー財務長官が来ると、こういうような話で、この間、岸元総理に頼んでそういう話をしてもらった。その際に、コナリー財務長官が行くから、よくその人に話してもらいたいという話でもありますので、その問題ももちろんテイクアップすると、こういう考えです。
  265. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 どうもいまの御答弁では、結局あの時点では、その場限りで、その場のがれのこういう答弁にしかすぎなかったという感触を受けるんですが、ほんとにまじめにあのゴルフ場をA群に含めることはどう考えても合点がいかない。しかも、あの運営がどのようになされておるか。そして、それからくるところの人道問題にまで発展しているということを御理解いただくならば、ただその場限りの、のがれの答弁では、私は承知なりません。もう一ぺんそれに対する外務大臣のはっきりしたひとつ決意を承りたい。
  266. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その場限りの答弁なんかしておりませんよ。ちゃんと一生懸命やっている。一生懸命これからもやるということをはっきり申し上げます。
  267. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それと関連いたしまして、もう一件。先ほど私が、豊かな沖繩づくりということは基地の解放なくしては期待できぬと、こう申し上げたのは、豊かな村づくりで一生懸命になっている村がたくさんあるわけですが、その一つの例として北谷村、これは基地に接収された典型的な村でありますが、その代表が入れかわり立ちかわり本土に参って、政府にも折衝いたしております。そのことについても五月十七日の沖特の連合審査委員会で、この問題私がただしております。その後、北谷村の解放について、どうなっておりますか。折衝の経過をひとつお聞かせ願いたい。
  268. 吉野文六

    政府委員(吉野文六君) 先ほど山中長官がお答えしたように、北谷村はいま七四・六%基地でございます。それからその隣りの読谷村は六八・六八%基地であると、こういうような状況は、われわれは現に現地でよく調査し、かつ、いかに沖繩住民の方々がこのために苦しんでおるかということはつぶさに体験してきている次第でございます。したがって、これらの地域の基地につきましては優先的にひとつ解放してほしいということかアメリカ側に何回も折衝しておりますし、また現在もこの交渉を続けております。しかしながら、何ぶん先方も基地の点につきましては非常にかたい態度をとっておりますので、現在のところ特にお約束することはできないわけでございますが、この点につきましては、先ほど福田大臣が申し上げておりましたように、なお米側の最高部と折衝しておると、こういうことでございます。
  269. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 どうもすっきりしない御答弁でありますが、私はそれをお聞きしながら思いますことは、典型的な基地の実態がこの北谷村になるわけですが、あのような特殊な実情を理解しますならば、せめてあの北谷村の解放だけでも私は実現さるべきだと、ここに日本政府の姿勢、また意欲というものが見い出し得る。沖繩県民が不安と不信感を持つことは、いまの答弁を聞いて納得するはずがありません、県民が。このような調子で沖繩が復帰した場合にどうなるのだろうかということを不安を持ち、疑惑を持ち、不信感を持つことは、これは理の当然であります。いかがでありますでしょうか、総理
  270. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沖繩の状態は、喜屋武君も先ほど言われたように、やはり過去を全然なしに、抜きにして現状を論ずるわけにいかない、かように言われましたが、これはさきの戦時中において焦土と化したその中で、ただいまのように残ってきたもの、それがまた引き続いて、その占領状態が続いておると、これが現状だと私思いますので、われわれも安保のワク内に入る今日、沖繩が本土に復帰するその際に、軍基地はできるだけ縮小したい、かように思いまして、ずいぶん折衝はいたしました。しかしながら思うようになっておらない。ただいまそういう点について非常な不満のあることをお示しになりました。だからこそ、われわれも、今後ともこの問題について、積極的に取り組んで、真に沖繩県民のしあわせになるように、基地の縮小整理、これと取り組まなければならぬ、かように私は思っております。申し上げるまでもないことですが、過去が過去でございます、それだけに、今日もただいまのような状態が続いておる、まことに残念でございます。また、先ほど米軍の犯罪、それらが次々に起こっておる、これらにも触れられましたが、これまた同様の経緯でございます。そういうことを考えるにつけましても、一日も早く祖国に復帰して、そうして、それらのものが安全保障条約のもとと、そのワク内、それにいたしましても沖繩に特殊事情、いままでのようなその特殊事情が続いては困りますから、そういうようなもののない、本土と一体になるように、これは考えて進めていかなければならないと思います。また、本土の各地方自治体と沖繩県との格差のあることも、これまた詳細に承知いたしておりますので、それらもできるだけかけ足で、早目に本土の自治体との均衡がとれるようにしたいと、かように私ども考えておる次第でございます。ただいまのように軍基地、それがいまなお外から見ては必要ないじゃないかと思えるような基地まである。先ほど来言われるゴルフ場にしても、これが三つもある。こういうようなことはちょっと考えられない。そういうものに積極的にわれわれは取り組まなきゃならない、かように思いますので、われわれの責任はまことに重大と言わなきゃならない、かように思っております。とにかく、皆さんと心を一にしてこういうような状態を解消するように一そうの努力をいたしたいものだと、かように思います。
  271. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連。
  272. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 岩間君。簡単に願います。
  273. 岩間正男

    ○岩間正男君 簡単にします。  吉野アメリカ局長の先ほどの答弁は非常に重大だと思うのです。つまり本委員会の審議そのものが実りあるのかないのか、ことばの口先だけで答えているのじゃ話になりません。したがって、当然、何回も交渉したといっておりますから、アメリカと何月何日にどのような申し入れをしたかという資料を当委員会に出す必要がある。これは当然委員長からも要求していただかないと、これだけ熱心に現地の実情を喜屋武さんが反映して質問されているのに対して、全くことばだけで逃げてしまう。これじゃまずい。具体的にひとつどういうことをやったのか……。
  274. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) せっかくのお話ですが、私どもは口先ばかりでやっているのじゃないんです。ほんとうに誠心誠意精魂を尽くしてやっておるんです。これはもう記録になるものならないもの、そういういろんなものがありますが、これは枚挙にいとまなし、そういう状態です。そういう状態でありますので、申しわけございませんけれどもそういう資料は提出いたしかねます。
  275. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それじゃこの問題まあ努力していただく、決意をしていただく意味において再確認していただきたいのですが、この北谷村は七五%軍用地に接収されている。いま解放願っておるのを合わせても四四、五%になる。あと五十何%接収されるわけですがね。ところがその基地の実態は、不要不急の地域もあるんです。そういった遠慮した、謙虚な気持ちで、せめてこれだけは解放してもらいたいという、こういう願いを込めてお百度を踏んでいるわけですがね、そういう中で村が四散、分散、そうして学校も自分の村内につくれないでよそのコザ市に敷地を求めて他村に学校、今度一方では学校の子供を嘉手納村のよその村に小中学校の生徒を出している。こういうぐあいに、村自体が四分五裂している、こういう状態。しかもそこは折衝のいかんによっては解放される可能性が十分ある。これを総理見てください。
  276. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 現地をもっともよく知っておるのは担当大臣の私でございます。したがって泡瀬のゴルフ場の問題にしても、図面の上では軍用地の中ということになっておりますが、実際上は道路を隔てたところになっておりまして、ゴルフ場だけがぽつんと別にあるわけでして、実際上に現地の方々から見れば、これはゴルフ場はゴルフ場として別に建設されておることを明確にだれでもわかるわけであります。しかもそこを追い払われた人たちがもらっている借地料というもののそれ以上のものを払って別の村に行って生活しておられる人たちの心情を思いますときに、私はやはり担当大臣として外務省、あるいはときには総理に向かってこの実情をお願いをいたしておりますが、いまの北谷村のお示しの地図にしても、これは完全に軍用地と言ってもそれは荒蕪地的な形態を呈しているところだけをせめて返してくれという北谷村の方々の切実な願いである。おっしゃるとおり学校もよその村内に求めなければならない。したがって、北谷小学校は北谷村の中にはないというような実情等は、これは私からよく外務大臣総理大臣にも説明をいたしておりますので、今後の外交折衝に——相手のあることではありますが、沖繩県民のそのような実情、村ごとに嘉手納、読谷、北谷、それぞれ違った様相がございますが、全体としてやはり今後の県づくり、町づくり、村づくりに障害となっていて、そしてこれは折衝すればアメリカ側もうんと言うはずだ。たとえばゴルフ場等は、アメリカの上院等において、陸海空三軍がそれぞれゴルフ場を持つ必要はない、ぜいたくであるという指摘をアメリカの上院議員がしておるほどでございまするし、このようなことも踏まえながら、ねばり強い折衝を外交当時者にお願いしていくつもりでございます。
  277. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの問題は、実現するまでは機会あるごとに追及いたしますから、ひとつそのおつもりでがんばっていただきたいと思います。  次に移ります。核撤去に関連して質問をいたします。  いままで核論争が一貫してなされたわけですが、私もいまだに核の問題にはすっきりしないものがあります。納得いきません。そこで、そういうことを前提にしまして、総理に確認いたしたいと思います。核は復帰の時点で完全になくなる、こうおっしゃいましたが、それを再確認いたしたいと思いますが、いかがですか。
  278. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沖繩が復帰の時点では核はなくなる、これはもうはっきり申し上げます。
  279. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは、あの核撤去費用に向けられるということになっております七千万ドルのその使途、内訳についてお聞かせ願いたい。
  280. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、たびたび申し上げたとおり、高度の政治判断でございますので、その一々どういうことでどういうような使い方をするか、こういうことは申し上げるわけにはまいりません。
  281. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私がそれをあえてお聞きいたしますのは、返還時に核がなくなるという、ボタンを押したらぽっとなくなるはずはありません。返還時に核がなくなるという前提に立つならば、その前から計画されてそれが撤去しなければ、返還時にはなくならないと、私はこう理解いたします。なぜかというと、あの毒ガス撤去の事例を見ればはっきりいたします。あの毒ガス、一万三千トンの毒ガスが六十日近く、五十何日かかつてようやく最後に撤収したわけです。そうすると、核が復帰の時点でなくなるということであるならば、前もってそれが計画されなければ、運ばれなければその時点ではなくならない、こう思います。そこでいつからその撤去が始まるか、そのことをまず聞きたい。
  282. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アメリカ当局は核があるんだというふうに言っていないのです。しかし、私どもは、いろいろな外形状況から考えまして、あそこには核があるなあというような推測をいたしております。しかし、アメリカ当局がはっきり言っておりますのは、とにかく復帰の時点におきましては核がないような状態になります、なっております、これだけは非常にはっきり言っておるわけでありまして、まあ核の性質、つまり核が、アメリカがとらの子というか、ほんとうに最高の戦略兵器としてこれを大事にしているという点から見まして、これをどういうふうに、もしありとすれば、撤去するのだとかなんとかそういうことを追及する、これはどうも私どもがいままで折衝した経過から見ますると不可能である、こういうふうに思います。まあとにかく、総理はそこまでおっしゃっておる、またアメリカの大統領も言っておる。また上院におきましても、ロジャーズ国務長官がはっきりと言明をしておる。これを信頼をするということにいたしたいと、かように存じております。
  283. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私があえてきめこまかにお聞きしますのは、決して観念論で問うているのではない、また御答弁になってもこれは意味のないことなんです。問題は、具体的に煮詰めていく中から県民の、国民の納得というものがいくのでありましてね、観念論で議論のかみ合わない立場であっては、これは不信を生み疑惑を生むだけである、こう思います。  だから、納得するためには、まず核兵器はいつから撤去するか、その撤去のコースは一体どうなるのか、毒ガス撤去のあのコースを使うのであるか、それとも新しいコースを使うのであるか。それはどうですか。
  284. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) こたはアメリカ当局を信頼するほかはないのでありまして、私から申し上げるわけにはいかない、そういう性質のものであると、どうもせっかくのお尋ねでございますが、そう答弁する以外に道はないのであります。
  285. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それは、そういった御答弁をなさればもういたしかたないという思いもいたすわけですが、あえてそういうことを追及いたしますのは、具体的に県民が納得しなければ核に対する不安もますますこれは連鎖反応的に深まって、高まっていくだけである。だから、コースは一体どうなるのか、次にそれは公開されるのであるか、されぬのであるか、こういうことが明確にならなければいけないと思います。さらに、避難を必要とするのであるかどうか、こういうことも具体的にいまから進めていかなければ、いかに復帰の時点で核がなくなるんだと言ったところで、これは納得いたしません、承知いたしません。そういう点、いかがですか。
  286. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあいま申し上げたとおりなんですが、もし危険があるというようなことがあっちゃ困る。  そこで、米国政府に対しましては、それらの危険がないように、絶対安全の措置をとるようにという要請をいたしておるわけでありまするが、どうもアメリカ政府で、今日、核が沖繩にあるということ自体を言わないんです。そういうような状態でありますので、なかなかこれは詰めのむずかしい問題であります。これは喜屋武さんも核がアメリカにおいてどういう地位を持っておるものであるかと、こういうことは、御了解いただけると思うんでありまするが、とにかく万全の対策をとるというふうにアメリカ政府が申しておりますので、それを信頼するほかはない、かように存じます。
  287. 藤田進

    ○藤田進君 関連。  これは本日、私どもに提供された資料、これはわが党の宮之原委員が要求した「沖繩返還協定上院外交委員会聴聞会(十月二十八日)(パッカード国防次官、ランパート中将の証言——核関係)(仮訳)」と、こういうふうになっております。四ページ一番下段に、「パッカード国防次官 次のことをちょっと申し上げたい。ロジャーズ長官は、「現在沖繩にある核兵器は復帰日には取り去られているのであろうか」」との問いに対し「「しかり」と述べた筈である。」、こういうふうにはっきりしているじゃありませんか。あるときは上院の証言を大きく引用し、あるときは全くわからないといい、これは政府の資料なんですよ。日本語だろうが英語の翻訳だろうがそう違いはないはずです。どうなんですか。
  288. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのあとのほうも読んでもらいたいのです。最後に、「すなわち沖繩に核兵器が存在するとしても、」と、非常に慎重なことばを使っています。
  289. 藤田進

    ○藤田進君 どこですか、それは。
  290. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、いまあなたが言ったちょっとあとです。二、三行あとです。「それは復帰日には沖繩には存在しなくなっていることを確約できること。」そういうふうに言っているんです。「存在するとしても」という、非常に慎重なことばづかいをいたしております。
  291. 藤田進

    ○藤田進君 アメリカのやはり官僚組織というものから見て、これはあるかないかということは言えないということがアメリカの国内法としてありますね、大統領の専権事項が。それをこの三ページの下段から言っている。ロジャーズは二十七日のときに——時間があればみんな読みますよ——相当問い詰められたわけですね。そこで、こういうことは言うべきではないんだけれども、せっかくの御質問だからということで発言をしているんですよ。それを受けてロジャーズの、現在核兵器はあるけれども、これは復帰時には取り去られるのかと、こういうことに対して——これはロジャーズが言っているんですね——に対して、しかりと述べたはずでありますと。ところが、ランパートは、あるいはパッカードは、そういう政治的な立場にない人たちだものだから、後段、ちょっと立場上つけ加えているわけですね。その前をやはり言わなきゃだめです。あなた、後段だけとっておりますが、そういうアメリカの国内事情をあなたが知らないはずがない。議会におけるポジションというものを知らないはずがない。
  292. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ藤田さんが御指摘になられるような意味にもとれるような発言とも——とも見られるのでありますが、率直に申しまして、核があるかないかは私どもには言えないというのがわが国に対する正式の回答なんですよ。しかしながら、いろんなそういう上院のやりとり、あるいは沖繩における状況判断、そういうものからいたしまして、日本政府といたしましては、あそこには核があるに違いないと、こういう観測をいたしたんです。
  293. 藤田進

    ○藤田進君 五ページを読んでみなさい。ロジャーズは撤去すると言っているじゃないですか。これははっきり言っているんです。
  294. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。  七千万ドルの内訳はおっしゃらぬと言えばそれでいいですが、アメリカ折衝をして七千万ドルを計上するときに、日本は、核があるかないかわからないけれども、七千万ドルを計上しますが、御了承くださいということですか。アメリカは、ないけれども御意思を尊重して七千万ドル計上しておいてくださいと——これはおかしいですよ。折衝の過程で何にもないものが——中身はいいですよ——予算面に出てくることがすでにおかしい話だから、これは明らかにしてください。
  295. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 核々とおっしゃいますが、七千万ドルが核に全部使われるという趣旨じゃないのです。一億七千五百万ドル、つまり資産承継ですね、それが、まず大体きまった。それから軍労務者が七千五百万ドル、これがきまったと。そうすると二億五千万ドルなんです。アメリカの要請は、これはもうたいへんな多額なものでありまして、つまり、今後軍事基地は逐次撤廃されるであろう、そういう際にはそういう施設はただで置いていくんだと、あるいは特殊部隊の撤去というような問題も起こるであろう、いろいろなことを考えて、これはかなりの額を日本政府に負担してもらわなきゃならぬと、こういう要請で、額を申し上げるわけにはまいりませんけれども、多額の要求をしてきたのです。それに対しまして、わがほうといたしましては、そういう事情はわかると、それから私どもとしては、何としても核の問題が非常に心配なんだと、大統領と総理大臣のあの共同声明、これでもはっきりしているが、協定上何らかこれを裏づけをしたいと、こういう考え方もあったわけでありまして、核に関する共同声明の部分を具体化するという意味も考慮いたしまして、高度の政治判断からさらに上積みをいたしましたと、これが七千万ドルであります。
  296. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 核論争は限りなく続くと思いまするが、あえて、結びをつけたいのですが、あやまちを繰り返すなという、あの毒ガス撤去をめぐって沖繩県民は、当然アメリカがこれを撤去するものと思っておったら、ところが一切その費用はかまわぬと、こういうことを言い出したもんだから、琉球政府屋良主席はあわてて日本政府に泣きついて、そして処置してもらった、こういういきさつがあるわけなんです。だからそれを事前の撤去の計画はアメリカまかせにするのであるか、あるいは日本政府も立ち会ってその撤去の具体的な詰めをするのであるか、それに対する費用は一体どうなるのであるか。そして住民の避難に対する一つの安全対策、補償対策あるいは道路対策、そういうことがどうなるのであるか、そういうことが明らかにされないままに、ただ復帰の時点でなくなるのだと、こう言ってみたところで、これはますます不安と疑惑はつのるだけであって理解いたしません。それに対する外務大臣意見……。
  297. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それらの問題は全部アメリカ政府の責任においてやっていただく、こういう考えであります。それじゃその金は一体どうするのだといいますると、総額三億二千万ドル、しかもこれは政治的判断として七千万ドルを二億五千万ドルに積み重ねておるわけであります。そういう事情もありますので、全部アメリカの負担においてやってもらうと、こういう考えであります。
  298. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、返還協定について総理にお伺いいたします。  返還協定調印後、本土にもそうなんですが、もろもろの世論の表明があります。それは御承知だと思います。その沖繩における返還協定調印をめぐる世論をどのように判断しておられるか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  299. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 沖繩復帰に関する沖繩県民の受け取り方と、こういうことかと思いますが、これはまあいろいろ御意見があるようでありますが、結局これは立法院においてどういうふうな考え方をしているかということ、これが最も私は権威のある材料というか、資料と申しますか、そういうことじゃないかと思います。立法院におきましては早期復帰を熱望する、そういう決議をいたしまして、つい数日前も総理外務大臣、総務長官、関係大臣にそういう書面による決議を持ってきた、こういうような状態でありますので、まあそれが最も権威のある資料ではあるまいか、沖繩県民はいろいろ不満もあります、問題もある、しかし何よりも早期復帰を熱望しておる、こういうふうに見ております。
  300. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それではお聞きいたしますが、具体的にいうと返還協定やり直しという声もあるし、また賛成の声もあるわけですね。ところが、これをどう判断されますか。終戦以来いちずに祖国復帰を求めて、苦しくとも悲しくとも、歯を食いしばって即時復帰を願ってきて、その大衆運動の先頭に立ってやった復帰協を中心とする、このいちずに復帰を求めてきたこの層が、いざ復帰となるとやり直しという、こういう考え方を持っております。今度は終戦以来一貫して復帰には消極的であった、あまり積極的でなかったどころか反対もあった、あの時点では。そういった一貫した足あとをたどってみた場合に、復帰に消極的であった層が、いま返還協定調印に賛成、そしていちずに復帰を求めてきた県民がやり直しと言う、これをどう判断なさいますか、総理
  301. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはいろいろな御意見があることをよく承知しております。それから復帰協の最近の動き、これも承知しております。しかしそれがまた沖繩県民全体の意見を表明しておるのかというと、私はにわかにそうも判断もできない。やっぱり権威のある沖繩県民の意向というものは、沖繩県民によって選ばれた立法院がどういう態度をとるかと、これを見るよりほかはないと、こういうふうに思うのですよ。この立法院の早期復帰、この決議に対して反対をするという向きに対しましては、やっぱり何よりも何よりも先に急ぐべき問題は何だと、復帰なんだと、復帰後に不満も何もそういうものを逐次片づけていこうじゃないかという説得、御理解、これに努力をするというのがわれわれに課せられた現在の段階ではあるまいか、そういうふうに考えております。
  302. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの御答弁にも問題があるということ。すなわち、立法院でもあれは強行採決していったいきさつがあるわけですがね、そこにも問題があるということを申し上げまして次に移りますが、総理にお聞きいたします。  総理はこの前の予算委員会で、復帰に向けての県民の明暗——明るさと暗さというこの立場から、豆記者にお会いになって、非常に明るかったと、こういう例を持ち出されて、そうしてそれは復帰が近づいたからだ、こういった結びつきで、豆記者が非常に明るくして復帰を喜んでおるという、こういう取り上げをしておられた。私はこれを全面的に否定するものではありませんが、しかし非常に大事なことを取り落としておられる、忘れておられるか、お気づきでありましょうか、いかがでしょうか。
  303. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の豆記者から受けた感想、これは私が過日も率直に申し上げたのでございます。ただいま、何か忘れてるんじゃないかと、こういうお話ですが、もうちょっと具体的におっしゃっていただいたほうが——私はものわかりが悪いほうですから、どうもはっきりおっしゃらないと、ちょっと、何を忘れているかなと思っておりますが……。
  304. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 賢明なる総理であられますので、ちゃんとお察し願えるものと思って申し上げたわけですが、それじゃ具体的に申し上げます。  それは、過ぐる戦争で、沖繩の教育者が、当時の教員の二五%、四分の一、戦争の犠牲になりました。生き残った教育者が何を叫び、何を考えたか。教育を守ろう、教育を守ろう、それが日本国民の教育なんだと、こう誓い合って教職員会という組織を結成し、そうしてその教職員会に四本柱を打ち立てて、復帰の実現を期す、平和教育を推進する、人権を守る、子らの仕合わせを願う、守ると、これを沖繩教職員会の四本柱として、ずっと四半世紀貫いてきている。そうしてその教育を守るとりでは、布令を撤廃さして——悪布令を撤廃さして、われわれの手によって教育を誕生させて、それによって日本国民の教育を進めていくんだと、こう誓い合って、けられては、踏まれては、しがみついて日本国民教育の基本法を制定したいきさつは、総理よく御存じだと思います。この日本国民の教育をいちずに沖繩の政育者が進めてきたというこのことが、子らが、植民地支配にもめげずに、奴隷化もせずに、基地ナイズにも打ちひしがれずに、こうして心身ともに健康な日本国民として成長したゆえんだと、私はかように確信いたしておりますが、いかがでありますか。
  305. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 具体的に御意見を述べられましたが、私もほんとうによく教育の問題ではお守りをいただいたと、そうしてりっぱな日本国民を育成されたと、かように心で感謝しております。ただいまお話もございましたが、四つの柱、そのとおり守られておると、かように思っております。私はこのことを、同時にこの議場を通じて全国民にも知っていただいて、私どもが口先だけでなしにほんとうに沖繩復帰を、祖国復帰をあたたかく迎えると、こういう気持ちは全国民一体となって県民の方のこの過去の努力に対してもあなたたかく迎えることこそわれわれのつとめじゃないかと、かように私思いますので、そのことを一言申し上げて私のお答えといたします。
  306. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もう一つ言わしていただきたいと思います。これもまた総理にお伺いいたします。  敵を知りおのれを知れば百戦危うからずと孫子の兵法は教えております。ところが、敵ということばを私好みません。だから相手を知りおのれを知れば百事なると、私はいつもそう申しております。ところが、私があえてこれを引例に持ち出しましたのは、備えあれば憂いなし、こうこの前総理はおっしゃいました。ところが、軍備の歴史からしますと、第四次防に関連した質問でありますが、軍備の歴史からしますと、必ず軍事競争、軍拡に発展しておる。そしてその行く末がどうなっておるかというと、これは世界の歴史の証明するところである。そこでこの理論でいきますならば、備えあれば憂いありということにもまかり間違うというとなりかねない。そこで一体そのバランスを、チェックをどのように考えておられるか、ひとつ……。
  307. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、過去の日本の歩んできた道、そこに一つの反省があって今日の憲法下における自衛隊が生まれた、かように私は思っております。いわゆる備えあれば憂いなしと、そういう方法です。いまはもうあまり俗っぽい言い方だから最近は耳にいたしませんが、どろぼうに対する戸締まり論というものがございました。私は、いまの自衛隊というものは、ただいまのような戸締まり論、それより以上には出てこないように思っております。私どもがただいまの状態でみずからの国を守る、侵略から侵されない、そういう立場に立ってこれは必要だと、こういうことでございます。外国に対して脅威を与えるとか、外国と戦うためにこの自衛隊を持っておると、かような考え方ではございません。  そこらにまだ喜屋武君と私との間に何か認識の相違でもあるのかと思いますが、私は、いわゆる自衛隊そのものは昔の軍隊とは性格が違うと、弱いとか強いとかというだけの問題ではございません。性格の相違でございます。そこにいわゆる敵に対するとか、あるいは攻めるとかいうようなことばのないもの、ただ自己防衛、みずからを守るというだけのものであります。そのことが戦争抑止にはつながると、日本と戦争すればあそこに自衛隊がいると、その反撃を受けると、こういうことは考えるだろうと、私は戦争抑止には有効だろうと思いますけれども、いわゆる戦争の脅威、そういうものではないと、これが自衛隊の本質でございます。私はその点を考えながら、数が多いとか少ないとか、あるいは自衛官と昔の軍官、まあ大小の差があるとか、そういうようなことでなしに、本質的に相違していると、かように私は考えておるのでございまして、その辺では、ただいまも言われるように、敵ということばは使わないとおっしゃる、そのとおりです。敵ということばは私どもの頭の中から消し去って、ただ、みずからを守っていくと、かように徹することがこれは大事なことじゃないかと思っております。
  308. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上をもちまして喜屋武君の質疑は終了いたしました。  質疑通告者の発言は全部終了いたしました。補正予算三案の質疑は終局したものと認めます。     —————————————
  309. 徳永正利

    委員長徳永正利君) これより三案の討論に入ります。  討論の通告がございますので、順次発言を許します。発言者は、賛否を明らかにしてお述べを願います。山崎昇君。
  310. 山崎昇

    山崎昇君 私は、日本社会党を代表して、補正予算三案に対し反対の討論を行なうものであります。  国際外交の焦点となっておりました中国の国連代表権問題は、去る十月二十六日の国連総会において、圧倒的多数をもって、中華人民共和国の国連招致と国民政府の追放を内容とするアルバニア案が可決し、中華人民共和国の合法的権利が回復されました。国際世論の潮流に目をおおい、米国に追随して、重要事項あるいは逆重要事項指定などの方法により、中華人民共和国の国連参加を実質的に妨害する政策をとってきた佐藤内閣の外交は、もはや失敗であることは明らかであります。あやまちを改むるにはばかることなかれとありますが、失敗であることが明らかとなった今日、すみやかに日華条約を廃棄し、中華人民共和国との国交回復をはかることが当面の急務であるにもかかわらず、いまだ対中外交の転換に戸惑っていることはきわめて遺憾であります。  佐藤内閣の失政は、いまや外交ばかりではなく、経済、社会のあらゆる面に及んでおります。佐藤内閣は、その成立以来安定成長によるひずみの是正を経済政策の基本とし、人間尊重の政治と社会開発の推進を最大の公約としてきたにもかかわらず、経済は、四十年度の構造不況に始まり四十二年から四十四年度は岩戸景気を上回る超高度成長、四十六年度はまた深刻な不況になるなど安定成長どころか不安定成長の連続であります。ひずみは是正されるどころか、物価、公害、過密、過疎などなど数えあげればきりがないほど拡大されております。企業の設備投資や輸出の増大によってGNPは世界第三位になったとはいうものの、個人消費支出や社会保障費等のGNPに占める割合は先進国中最低であり、下水道の普及率のごときは欧米諸国の三分の一にも満たない状態であります。  一方、ふえたものはGNPの規模と物価の上昇率公害及び減価が予想される外貨準備だけであるといっても過言ではありません。佐藤内閣の政策は、まさに大資本擁護のための産業発展と輸出増強の政策であり、国民生活無視の政策であったことは明らかであります。  日本経済は、いまやこのような佐藤内閣の政策の失敗により、外には繊維協定、円切り上げ等の外圧を招き、国内経済は戦後最大の不況に直面しようといたしております。経済政策はいまや景気の対策の面から見ても、国民生活の面から見ても、産業発展より国民福祉重視の政策へと、根本的な転換を迫られているのであります。今回の補正予算は、この意味において、経済政策転換への好機であるにもかかわらず、その対応策はきわめて不十分であると言わねばなりません。  以下数点についてその理由を申し述べたいと思います。  その第一は、減税についてであります。  国民福祉を最重点とした経済政策への転換が当面の急務である以上、まず必要なことは、低所得者層を中心とした大幅な減税であります。低所得者層の減税は、消費性向が高く、個人消費支出の増大を通じて、景気対策の要請にも沿えるからであります。しかるに、今回の減税措置の内容を見ると、基礎控除などの所得控除引き上げと税率の緩和を半々とし、依然として高所得者層優遇の減税を行なっているのであります。また、来年度の減税については、今回の減税と年度当初の減税により、来年度に生ずる減税効果は四千八百三十億円にのぼるとして、財源難を理由に減税を見送る意向を示しておりますが、これはドル・ショックの直後明らかにされた五千億減税構想と今年度減税とをすりかえるものであり、国民を欺くもはなはだしいものであります。石橋内閣の三十二年度予算では、一兆円の予算規模で一千億減税、一千億施策を行なっております。その十倍をこす来年度予算規模で五千億円程度の減税ができないはずはないのであります。四千数百億円にのぼる租税特別措置の整理、社用消費をあおる交際費課税の拡大等々、財源はあると思われます。要はその姿勢であり、大企業、高所得者擁護の税制を、この機会に根本的に改めるべきであります。  その第二は、公共投資及び社会保障関係費についてであります。  景気が沈滞し、住宅や生活環境施設を中心とする社会資本の立ちおくれが目立っている以上、公共投資の追加が必要なことは当然でありますが、今回の補正の内容を見ると、景気浮揚策のための社会資本充実という美名に隠れて、実は、大企業に対する設備投資を国が肩がわりするものにほかなりません。つまり、その四割が道路、港湾、空港等の整備に充当されているのに対し、住宅は六%、生活環境施設は一六%の低位にとどまっており、依然として産業優先の色彩が濃く、福祉重点政策への対応はきわめて不十分であります。また、社会保障関係費については、減税が上厚下薄のものとなった以上、当然に生活保護費や福祉年金の引き上げ、老人医療の無料化等恵まれない人たちに対する施策を中心に大幅に拡充すべきであるにもかかわらず、わずかに義務的経費を百七十七億円補正したにとどまっております。  その第三は、物価対策についてであります。  不況下にあって国民生活を圧迫している最大の要因は物価の上昇であります。政府は、今年度の改定見通しにおいて、消費者物価の上昇率を五・五%に据え置き、不況下の物価高というスタグフレーションの印象を国民に与えるのを避けようとしておりますが、九月の全国消費者物価指数は、前年同月比ですでに八・四%、十月の東京都の区部の指数は六・八%の上昇を示し、不況下の物価高はもはや必至の情勢にあります。われわれは、これまで公共料金の抑制をはじめ、管理価格、野菜対策、地価対策等、生産、流通、消費にわたる強力な物価対策を繰り返し要求しておりますが、政府は何一つとして有効な措置を講じていないのであります。補正予算に物価対策が示されないことは、きわめて遺憾であります。  その第四は、公債政策についてであります。  公債の発行については、財政法に認められている以上、われわれは全面的にこれを否定するものではありません。しかし、安易に公債を増発すべきでないことも、財政法四条が例外的に認めている趣旨から見ても明らかであります。政府は、今回の補正予算において、減税及び歳出の追加と景気の停滞による歳入欠陥を補てんするため、七千九百億円の公債を追加発行することといたしておりますが、このうち三千八百億円はいわゆる歳入補てん債の性格を有するものであります。歳入補てん債は、歳入の欠陥を補てんするための赤字公債であり、建設公債とは厳に区別すべきものであります。この意味において、昭和四十年度補正予算に際しては、財政法四条一項の例外的措置として特別立法により措置されたのでありますが、今回は歳入補てん債としての実体においては昭和四十年度の場合と少しも異なるところのない三千八百億円についても、公共事業費や出資及び貸し付け金等の公債発行対象経費ワク内にあることなどを理由に、特別立法の措置を講じていないことは、きわめて遺憾であります。公債増発への安易な態度は、財政の節度の上から問題であるばかりでなく、やがてインフレ財政へと導く危険があることは、昭和五年の金解禁以後の日本財政がたどった歴史を見ても明らかであります。このほか、地方財政沖繩関係費、中小企業、繊維輸出規制対策等予算措置はいずれも不十分であります。  以上述べましたように、政府は目まぐるしく推移する情勢への的確な対応を示さないばかりか、世界の潮流に逆行し、依然として対米偏重、大企業本位の政策を維持し続けようとしており、これらに関するわが党の質疑に対しても、国民が納得できる答弁はついに得ることができなかったのであります。  以上をもって昭和四十六年度補正予算三案に対する反対討論を終わります。
  311. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 初村滝一郎君。
  312. 初村滝一郎

    ○初村滝一郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和四十六年度補正予算三案に対し、賛成討論を行なうものであります。  昨年来の景気後退を背景に、政府昭和四十六年度予算をいわゆる中立機動型予算とし、政保債の発行限度の弾力措置を活用するなど、経済動向に即応せしめる体制を整え、予算成立後も数次にわたる金融緩和措置、財政融資の追加及び公共事業の繰り上げ実施など、積極的な景気浮揚策を講じ、その結果本年六、七月には景気回復のきざしがあらわれ、本年度の後半には安定成長路線に復帰するものと見られるに至っていたのであります。ところがそのやさき、八月十五日、突然アメリカのドル防衛対策が実施され、このため国際通貨体制が大きく動揺し、わが国は変動為替相場制への移行を余儀なくされ、輸出環境の悪化、設備投資意欲の減退等、実体経済面において深刻なる影響を受け、四十年度の不況期を上回る成長率の落ち込みが予想されるに至ったのであります。  このような景気の先行き不安を解消するために政府は円平価の安定を多国間調整の場で解消すべく懸命の努力を払うとともに、国内措置として公共投資の大幅追加あるいは年内減税の断行等の積極施策を講じた二千四百四十七億円の規模を持つ補正措置及びこれに関連して二千六十四億円の財政融資の追加など、きわめて広範かつ意欲的な景気対策を推進することといたしたのであります。  以下、補正予算案の特徴について簡単に要旨のみを申し述べたいと思います。現在最も緊急を要する課題は、いかにして不況からの脱出をはかるかということであります。公共投資は、国内需要を喚起し、景気の回復を促進させる強力な手段であり、民間設備投資が停滞している今日においては、公共投資主導による不況対策は最も効果的なものと考えられます。したがって、政府は国庫債務負担行為の追加措置を含めて事業規模で約五千億円の追加支出を行なおうとしているのであります。同時に公共投資以上の即効性があり、大きな波及効果が期待されております所得減税を、この際あわせ実施し、一挙に不況からの脱出をはからしめる目的をもって、今回千六百五十億円の規模を持つ減税を行ない、しかも、その減税を特に繰り上げて年内減税に踏み切ったことは、画期的な意義を持つものとして高く評価するものであります。世間では、今回の減税をいわゆる部課長中心の減税であるときめつけている批判もあるやに聞いておりますが、本年度、二回にわたる減税措置を通じてみた税負担の軽減割合は、下に厚く上に薄いバランスのとれたものであり、その非難は当を得たものとは申せないのであります。このようにフィスカルポリシーの原則に基づく景気対策を講ずることに伴いまして、これらの財源措置として、今回七千九百億円の公債を追加発行いたすことにいたしております。この発行をめぐり種々な議論がなされておるようでありますが、これは財政法第四条による公債発行対象費の範囲内であり、日銀の引き受けも行なわれないこと等から考えまして、その性格は建設公債であり、歯どめも厳格に守られており、しかも、政府は公債政策を不況期を乗り切るための暫定手段として行なう意向を表明しておられますし、四十一年度以降、国債依存率を逐年低下せしめ、財政審答申の五%目標以下におさめた実績に徴しても明らかなごとく、今後も節度ある運営が行なわれ、放漫財政を招来する懸念はないものと確信する次第であります。  次に指摘しなければならない特徴は、経済運営の転換期に対し、内政重視政策への転換が行なわれていることであります。今回の補正予算案は、先般佐藤総理が所信表明の中で触れているように、積極的な景気浮揚策にあわせ社会資本及び社会保障の充実をはかり、国民福祉と経済成長の調和のとれた新たな繁栄への条件を創出するべく政策を推進し、活力に満ちた福祉社会を建設するという基本的課題を進めていく手始めとして編成せられたものであります。この考え方は十五ヵ月構想として、当然四十七年度予算に引き継がれるものと思われますが、これは単に過去の高度成長への復帰を意図するものではなく、国民生活の質的向上を目ざした発展に重点を置かれたものでなければならないことは申すまでもないところであります。  このほか、財源の窮屈化が見られます地方財政について、一般会計からの繰り入れ、資金運用部資金からの借り入れ等が行なわれ国、地方を通ずる財政運営に遺憾のないよう十分な配慮がなされ、また、国際環境の変化によって影響を受けた輸出関連中小企業についても、財政面で手厚い措置が講ぜられるとともに、人事院勧告に基づく、公務員の給与改善費等が計上されておりますが、いずれも適切妥当な措置であると存ずるものであります。  以上、昭和四十六年度補正予算案については、現下の緊急を要する不況克服に十分こたえ得るものとして、満腔の賛意を表するものでありますが、ただ、最近の微妙なる物価動向にかんがみ、政府におかれては、今後積極かつ強力な物価政策を推進するよう要望いたしまして、賛成討論を終わります。
  313. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 塩出啓典君。
  314. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、公明党を代表し、ただいま議題になっております昭和四十六年度補正予算三案に対し、反対の討論を行ないます。  現在わが国を取り巻く情勢は、外には、中国の国連加盟、ニクソン声明によるIMF体制の崩壊、日米関係の再調整、そして沖繩返還、円切り上げ問題、内には、公害、交通事故、物価高、まさに歴史の大転換期に直面しております。しかるに、本委員会で示した政府の姿勢は、これらの新しい時代に対処し得ず、わが国の前途に重大な憂いを残しているのであります。そのような政府の姿勢は、補正予算案にも如実にあらわれております。今回の補正予算は、今日の事態に対処することはもちろん、政府の経済政策の転換の手始めとなるべきものでなければならないと思われます。この観点から見て、補正の主たる目的である景気浮揚の内容に疑問がある上、従来の国民生活無視の経済政策から抜け出せない諸点をあげ、反対を表明するものであります。以下三つの点について反対理由を述べます。  その第一は、今回の公債発行に対する政府の姿勢であります。政府は、今回の補正予算において、七千九百億円という多額の国債発行を予定しております。当初予算の国債発行と合わせ、一兆二千二百億円という巨額の国債発行といわれております。が、今回の七千九百億円のうち、公共投資の財源分は二千三百二十億円にすぎず、残りの五千六百億円は、租税等の減収分を補てんするものであります。したがって、実質的に赤字国債であることは明らかであるにもかかわらず、政府は、公共投資額の範囲内という理由をつけ、建設国債と強弁しておりますが、これは国会及び国民を愚弄するものであります。もしこのような政府の態度が正しいとすれば、年度途中で租税の減収等による歳入欠陥が生じた場合も、公共事業費等のワク内で自由に建設公債として発行されることになり、財政の節度が失われることは、明らかに財政法の精神に反すると思うのであります。今回の事態は、政府がいかに弁解されようとも、昭和四十年度当時の国債発行の背景とほぼ同じ条件下にあり、当時とられた特別立法の措置を講ずべきであります。にもかかわらず、財政法の条文を曲解し、赤字国債を建設国債と偽ることは、国民政治不信をさらに深めるものであり、かかる政府の態度には断じて納得できません。  次に、本補正予算案に反対する第二の理由は、年内所得減税の内容についてであります。政府は、ドルショック等によるわが国経済の不況に対し、景気刺激としての減税政策といわれておりますが、今回の減税は、全勤労所得者の数%である。年間三百万円から九百万円の高額所得者対象のものであります。これら高額所得者の減税が、景気回復に有効であるとは納得のいかぬところであります。むしろ全勤労所得者の九〇%を占める年間二百万円以下を対象としてこそ、より大きな消費効果があることは明らかであります。さらに、最も減税を必要としている低所得者に対する大幅減税はもちろん、課税最低限の大幅引き上げ、また、それら減税政策の恩恵に浴さない低所得者に対する生活保護費や、老齢年金等の引き上げなど、社会保障費の拡充などが同時に取り上げられてこそ、政府の言われる消費需要拡大の景気対策と言えると思うものであります。したがって、今回の減税政策は、高額所得者を優遇するものであり、税負担の公平、平等の基本原則を無視し、さらに不平等を拡大するものであります。  反対の第三の理由は、公共投資の内容についてであります。この補正予算案一つの柱として、政府は、公共事業費増額により、社会資本の充実、またそれによる景気回復を述べておりますが、その内容を見ますと、道路整備事業費が全体の三五%を占め、住宅対策費は八%と依然として低く、下水道中心の生活環境施設費が若干増加しているのみで、社会福祉施設費等は皆無に近い現状であります。  また、財政融資の四回目の追加二千六十四億円について見ましても、地方債引き受け分を除いては、国鉄、電電公社、道路公団など産業基盤投資が中心に行なわれております。  今日、国民の要求する社会資本の充実とは、高速道路とか新幹線とか産業港湾より、むしろ住宅、下水道あるいは公園、病院、保育所など、日常生活の環境諸施設なのであります。これらの諸点への配慮に欠け、産業基盤中心の公共投資の姿勢には賛成できません。  以上述べました理由により、私は、本補正予算案に反対の意を表し、討論を終わります。
  315. 徳永正利

  316. 木島則夫

    木島則夫君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま議題になっております昭和四十六年度予算補正三案に対し、これから申し上げる理由によって、反対の意向を表明をするものです。  その第一の理由でありますけれど、このたび政府が行なおうとする国債の増発についてであります。なぜ七千九百億円もの国債を追加発行をするかといえば、これは明らかに今年度の租税及び印紙収入等の減収に対して、その穴埋めをすることが主たる内容であったことは明白なる事実なんです。それならば、どうして昭和四十年の際にとられたように特別立法を講じなかったのか、これははなはだ疑問とするところです。今回の措置は、何と弁解をされようとも、財政法の歯どめを無視したものであって、明らかに赤字国債であることに間違いはないのであって、私はこの点をきびしく指摘をしたいのであります。  その第二の理由です。減税のやり方についてです。今回政府は、千六百五十億円の所得減税を行なおうとしております。そしてそのねらいというものが、景気刺激策の一環としていることも理解されるのでありますけれども、ところがその大部分は、直接消費が低く、景気刺激効果もきわめて薄い高額所得層を優遇する結果になることは明らかであります。適切な減税はもちろんとられなければいけないと思うのでありますけれども、現在勤労者が最も強く要望をしておりましたものは、給与所得控除の大幅な引き上げであったはずでございます。全勤労者のわずか三%にすぎない高額所得層を主眼にした今回の減税は、政府の意図するところとはなはだ矛盾をするというものであります。ただ減税をすればそれで中身はどうでもいいのだというような政府の態度こそ、きびしく私は批判されなければいけないというふうに考えております。  第三の理由です。歳出の面で、依然として道路整備などを中心にいたしました産業基盤整備関係の公共投資が優先をされているということなんです。私は、何も産業基盤整備がいけないと言っているのではありません。現在急がれているのは、住宅不足を解消するための対策をはじめとする生活環境の整備に重点を置いた公共投資をこそ行なうべきであると、こう主張したいものであります。これこそが成長第一主張から、生活第一主義に転換をはかる具体的な証左であるはずなんでありますけれども補正予算では残念ながらこういった配慮がなされていない。重要な沖繩返還協定よりも、補正予算を先議したにもかかわらず、国民の期待に反するこのような予算に私は賛成をすることはできないんであります。  以上、本案についての反対理由でございました。
  317. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 加藤進君。
  318. 加藤進

    加藤進君 私は、日本共産党を代表して、昭和四十六年度補正予算三案に対して、反対討論を行なうものであります。  反対の第一の理由は、膨大な赤字公債の増発であります。  今回の予算案では、七千九百億円もの赤字公債の発行が計上されています。これが、インフレを一そう高進させるものであり、また、来年度から予定されている四次防のための膨大な軍費事や、アジア諸国へのアメリカの肩がわりの侵略的済経援助の急増をまかなうための財政制度上の道を開くものであることは、かつての戦前のあの忌まわしい経験の教えるところであります。  日本共産党は、財政法第四条の原則を踏みにじり、軍国主義復活とインフレーション高進の道を切り開くかかる赤字公債の発行をやめること。財源は、大企業に対する特権的な減免税を取りやめ、さらには軍事費や海外援助費を大幅に削ってまかなうべきであることを強く要求するものであります。  反対の第二の理由は、政府の行なわんとする公共事業が、依然として大企業本位のものであるということであります。  政府が、景気てこ入れ策として追加した公共事業費は、国鉄、電電公社、高速道路公団など、従来も大企業に大もうけを保障してきたものが中心であり、国民が真に望んでいるような身近な生活道路や、住宅の建設は本予算案ではほとんど顧みられておりません。  反対の第三の理由は、この補正予算案が一応講じている中小企業対策、減税、給与引き上げ、地方財政対策などがきわめて不徹底、不十分であることであります。  すなわち、中小企業対策費は、輸出関連中小企業の一部に対するきわめて制限された金融的な措置にすぎず、所得減税も結局は年収四、五百万円以上の高額所得者だけであるという、潤すものであるということしかこの内容としてはありません。  また、地方財政対策費も、地方自治体の要求をとうていみたすものではなく、沖繩対策費も円の変動相場制移行に伴う物価値上がり対策費や、干ばつ対策費など緊急に必要な費用が何ら組み込まれてはおりません。  日本共産党は、今日、最も深刻な打撃を受けている国民の、生活と経営を改善することを主とした緊急対策をこそ当面の景気対策とすべきであることを要求するものであります。  すなわち、何よりも物価を安定させ、低額所得者中心の大幅減税を断行すること、労働者の首切りを防ぎ、賃金を大幅に引き上げることであります。また、苦境にあるすべての零細企業中心に、大幅な補助金と、無担保、無保証、無利子の大規模な緊急融資を行なうこと、冷害農民などの救済措置を緊急に講ずるということを強く要求するものであります。  さらに、地方自治体に対する地方交付税率を大幅に引き上げ、超過負担を解消し、住宅の建設、環境の整備、生活道路等の改修などを中心とした地元の潤いのあるような公共事業を大規模に行なうこと、沖繩対策費を大幅に組み込むことを要求するものであります。  わが党が本予算委員会の質問で明らかにしたように、今回の重大な事態は、アメリカのベトナム侵略の破綻と、佐藤内閣の対米従属政策を根源として生み出されたものであることは明らかであります。今日の国民生活と日本経済の危機を根本的に打開するためには、歴代自民党政府の対米従属、大企業奉仕の経済政策ときっぱり手を切り、わけても社会主義諸国との貿易制限を打破し、すべての国との自主、平等、互恵の経済関係を発展させ、日本経済の進路を自主的、平和的な方向に切りかえなければならないときであります。  私は、このことを強調して反対討論を終わります。
  319. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上をもちまして、討論通告者の発言は全部終了しました。よって、補正予算三案の討論は終局したものと認めます。  これより採決をいたします。  昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を問題に供します。三案に賛成の方の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  320. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 起立多数と認めます。よって、三案は原案どおり可決すべきものと決定しました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  321. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  322. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、派遣委員報告に関する件についておはかりいたします。  前国会閉会中、予算執行状況に関する調査のため、四班に分かれ委員派遣を行ないましたが、これらの派遣委員報告は会議録に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  323. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  これにて散会いたします。   午後七時十七分散会      —————・—————