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1971-11-02 第67回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月二日(火曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員の異動  十一月二日     辞任         補欠選任      稲嶺 一郎君     吉武 恵市君      沢田  実君     三木 忠雄君      多田 省吾君     内田 善利君      高山 恒雄君     向井 長年君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         徳永 正利君     理 事                 白井  勇君                 西田 信一君                 初村瀧一郎君                 若林 正武君                 松永 忠二君                 山崎  昇君                 塩出 啓典君                 向井 長年君     委 員                 小笠 公韶君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 川上 為治君                久次米健太郎君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古池 信三君                 世耕 政隆君                 土屋 義彦君                 内藤誉三郎君                 長屋  茂君                 平島 敏夫君                 山崎 竜男君                 山本敬三郎君                 山内 一郎君                 片岡 勝治君                 神沢  浄君                 沢田 政治君                 杉山善太郎君                 戸叶  武君                 羽生 三七君                 藤田  進君                 宮之原貞光君                 森 元治郎君                 安永 英雄君                 内田 善利君                 多田 省吾君                 三木 忠雄君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 岩間 正男君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  高見 三郎君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   田中 角榮君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        郵 政 大 臣  廣瀬 正雄君        労 働 大 臣  原 健三郎君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣  中村 寅太君        国 務 大 臣  西村 直己君        国 務 大 臣  平泉  渉君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        総理府統計局長  関戸 嘉明君        公正取引委員会        委員長      谷村  裕君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     宮崎  仁君        経済企画庁総合        計画局長     矢野 智雄君        経済企画庁総合        開発局長     岡部  保君        科学技術庁長官        官房長      井上  保君        科学技術庁研究        調整局長     石川 晃夫君        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省経済局長  平原  毅君        外務省条約局長  井川 克一君        大蔵省主計局長  相澤 英之君        大蔵省理財局長  橋口  收君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君        文部大臣官房長  井内慶次郎君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文部省管理局長  安嶋  彌君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省医務局長  松尾 正雄君        厚生省児童家庭        局長       松下 廉蔵君        農林大臣官房長  中野 和仁君        農林省農林経済        局長       小暮 光美君        農林省農政局長  内村 良英君        農林省農地局長  三善 信二君        農林省畜産局長  増田  久君        農林省蚕糸園芸        局長       荒勝  巖君        食糧庁長官    亀長 友義君        林野庁長官    松本 守雄君        水産庁長官    太田 康二君        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君        通商産業省重工        業局長      矢島 嗣郎君        通商産業省繊維        雑貨局長     佐々木 敏君        運輸省港湾局長  栗栖 義明君        海上保安庁長官  手塚 良成君        労働省労働基準        局長       岡部 實夫君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        労働省職業安定        局長       住  榮作君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会開会いたします。  この際、理事補欠選任についておはかりいたします。  補欠選任については、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 御異議ないと認め、理事向井長年君を指名いたします。     —————————————
  4. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)  以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、質疑を行ないます。山崎君。
  5. 山崎昇

    山崎昇君 予算委員会開会に当たって、私は、いま世界でもたいへん注目をされておりますアリューシャン列島、アムチトカ島におけるアメリカ地下における核爆発実験について政府がどのような態度をとられておるのか、まず政府見解を聞いて、二、三私ども意見を述べてこの問題に対処をしていきたいと思いますので、冒頭でありますが、外務大臣から政府見解について御説明いただきたいと思います。
  6. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま山崎委員からお話でございますが、政府は、核の拡散につきましては、従来とも多大な関心を示しております。  そこで、アリューシャンアメリカ核実験につきましては、その話を聞きました。かねがねアメリカに対しましては、そういう抗議をしておりますが、あらためて厳重な抗議を申し入れております。つまり停止せられたい、万一、停止を顧みず、これを実行するという際においては賠償の権利を留保する、こういう趣旨でございます。
  7. 山崎昇

    山崎昇君 いま外務大臣から、政府はいち早く抗議され、さらに賠償条件についても留保されるというような態度をとったといういま説明があった。  この問題は、私は、大きく分けて二つの点があろうかと思うのです。一つは、何といっても、いま世界核軍縮方向に向かっているときに、そして部分的でありましても、核実験停止を提唱したアメリカが、この地下という、いわば言いのがれを土台にして核実験を繰り返すということについては、私は、どうしても納得ができない。そしていまアメリカ国内においてさえ、これについては裁判が行なわれていると報道されている。さらにこれがもし実行されたとすれば、いわばアリューシャン一つの島であるわけでありますから、太平洋におきましても、かなり放射能の問題がある、あるいはその他の影響力は甚大なものがあります。また報道によりますというと、この核実験は五メガトンといわれますから、広島に投下された爆弾の約二百倍と言われる。こういうような状況においては、私は、深刻なことが次に起こるのではないだろうか、こう考えるときに、どうしても、この問題が起きる前に、やはりアメリカ反省をしてもらわなければならぬ。政府抗議をされたといいますが、もしほんとう佐藤内閣が平和を望むならば、佐藤総理に私は提案したいのだけれども、こういうときにこそ特使を派遣してでも、こういう問題についてはやめさせるべきではないか。やめさせるといえば少し言い過ぎになるかもしれませんが、もっと強い態度で私は要請をすべきではないだろうか。そうでありませんというと、これが契機になりまして、ますますこの核軍縮方向とは反対の方向に向かっていってしまうのではないか。さらに、この点は部分核停によりましても、フランス、中国はこれに拘束されておりませんから、勢いこれらの問題を契機にして、また核実験が繰り返されていくのではないだろうか、こう私は心配をいたします。どうかそういう意味で、政府は一応の抗議をされ、さらにいまお聞きのような態度をとっているようでありますけれども、ぜひもう一歩進めて、この問題は事前に防ぐようにしてもらいたい。  特に、昨日は日本における平和七人委員会アメリカニクソン大統領抗議をしているようでありますし、そういう国内世論等背景にしてやってもらいたいと思うんですが、佐藤総理見解を聞きたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外務大臣からお答えいたしましたのが政府態度でありまして、私は、そういう態度アメリカ交渉し、アメリカの出方を十分監視しておる、これが現状でございます。  なお、ただいま山崎君からも御意見をまじえての御発言がございましたが、政府は、全然同感でございますので、ただいま特派大使を出すと、そこまでは考えておりませんが、連絡の方法は、あらゆる機会を使って、駐米大使その他を通じて当方の意のあるところを十分に正確に伝え、そうして反省を強く求める次第です。     —————————————
  9. 徳永正利

  10. 沢田政治

    沢田政治君 まず、私は、きょうおもに国内問題に限って質問したいと思いますが、繊維、農業、物価公害に若干触れて質問いたしたいと思います。  まず、最初に繊維の問題でありますが、総理は、過般の衆議院予算委員会においても、密約説というものを否定しておられるわけであります。もちろん、私もこの場において、密約があった、ない、こういう水かけ論は避けたいと思っています。しかし、私のお聞きしたい点は、密約には、密約するぞということで双方が合意して密約をする場合と、相手に、ほんとうに約束してくれたんだと、こういうように受け取られる場合の両者があると思うのであります。そういう観点でお聞きするわけでありますが、特に佐藤総理があのニクソン佐藤声明を出す際、会談を行なったわけでありますが、もちろん大きな主題沖繩返還協定にあったことは間違いありませんが、その際に、繊維の問題がアメリカ側から提起されなかったかどうか。提起されたとするならば、どういう提起のしかたをして、佐藤さんはどうこれに対応したのか、これが私は大きなポイントになると思います。その当時の情景をできる限りここで記憶を思い起こして再現してほしいと思うんです。
  11. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沢田君にお答えいたします。  大統領と一国の総理が会いました際に、そういう際に問題になることは、これは申すまでもなく国際情勢一般、そういうことが問題になりますし、また当面しておる沖繩の問題、これが日米間の政治上の問題であります。また日米間の経済問題、そういうものが次々に話題に供せられることは、これは当然であります。そういうような意味で、いろいろ広範にわたっての話し合いをする、これが私とニクソン大統領との話し合い概況であります。そうして、そのものによりまして、特にただいま話題になりました沖繩返還交渉、これを主題にして私は出かけたのでございますから、それについてさらに詳細な打ち合わせをした、こういうことが当時の概況であります。  いまの国際政局から申しまして、いろいろ話題になる問題があります。それらの詳細は、これは沢田君も、おそらくこんな話をしただろうというような御関心がある、そういうような事柄で大体一致するだろうと思います。なおまた、日米両国間に経済問題、そういう問題があることも、これまた御承知のとおりでありますが、そういうような場合に、やはり繊維問題がその核心をなす、そういうことは、私どもも、もちろん話題にする。そういう問題を総体として話し合った、こういうことでありますが、密約説が出ておりますし、あるいは糸をなわにかえたんじゃないか、なわを糸にかえたんじゃないか、こういうような話までも出ておる。とんでもない話です。それぞれが結びついている話ではありません。沖繩問題沖繩問題繊維問題は繊維問題、さようなことであります。  私は、日米両国の間で誤解があったり、あるいは問題をあとへ残したり、そういうようなことは、したくありません。問題があるならば、そういうものもやはり掘り下げて、さらにそれを解決する。そういう努力をするのは、これは日米友好親善関係から見まして当然のことのように思っております。私は、それより以上には進んだつもりはございません。ただいまのような事柄をもって、これが密約だとか言われることは、私は、まことに心外でございます。しかし第二の段階で、そういうような点で佐藤は特別な関心を示したと、かように言われる。このことは、ただいま申し上げるように、懸案事項を残さないと、こういうような意味合いで、さらにお互いに突っ込んだ話をしようじゃないかと、こういうことを申したことは、これは事実であります。それが密約説だと言われるなら、これは何をか言わぬやであります。私とニクソン大統領、もちろんニクソン大統領最高責任者だと、私も政治上の責任は持っておりますが、最高責任は持っておりますが、繊維の実態についてのその詳細などはわかるはずはございません。ただ両国の問題にこういう事柄が未解決のままで残っていると、そうしてそれぞれの業界からそれぞれが突き上げられていろいろな話を聞いておる。お互い国益を守る立場にありますから、ニクソン大統領は米国の繊維業界を守るという、私は、日本繊維業界を守るその立場にあります。そういう意味で話は抽象的ならざるを得ませんが、そういうような話をしたこと、これは事実でございますから、その点は率直に私も皆さま方にそういうような話をしたと、こういうことを申し上げておきます。  これはいまになって初めて申すのではございません。いままでも密約説が出るたびに私はそのとおり御説明を申し上げてきております。そのとおりをただいま申し上げた次第でございます。
  12. 沢田政治

    沢田政治君 かりにあなたがアメリカと、密約は別としても、約束しなかったというようにあなたが感じておっても、これは微妙な外交交渉ですから、時と場所と事柄によっては、佐藤は約束したんだということで一方的にとられる可能性もあるわけですね。たとえば沖繩の問題、これは重大問題でありますが、その際に、つまり繊維の問題が出た、アメリカ懸案事項であるし、ニクソン選挙公約である、そういうことだから早期にアメリカ事情を了として解決してくれないか、こういうことを言われた際に、あなたがよくアメリカ事情がわかる、あなたがよくことばで使うように、前向きに解決するために努力しましょう、こういうような話をしたとすると、当然、向こうは沖繩引きかえに佐藤総理が約束をしたんだというようにとられる可能性もあるわけです。そういうようなやりとりがあったのかどうかですね、この際明らかにしてほしいと思うのです。  あなたが一生懸命これは否定しておるようですが、繊維交渉締結の際に、各新聞とも一斉に、やはりニュアンスの違いこそあれ、密約説というものをほのめかしているわけです。これはつまりマスコミがかってにこれをつくり上げたのではなく、多くの国民は、なぜアメリカが強硬にこれまで押してくるのか、その背後に何かあったんじゃないかという疑惑が解けておらぬと思うのです。もう一回この点について答弁を求めます。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま詳細に申しましたから、後ほど速記をよく十分御検討願いたいと思います。  私は、日米両国間に懸案事項は残したくない、そういう意味話し合いをする、こういう態度でこの問題に臨んでおります。沖繩とからませて、あるいは引きかえにということでなしに、この問題は解決すべき問題だと、かように考えております。
  14. 沢田政治

    沢田政治君 期限をつけて、しかも詳細な内容も明確にきめて、これにサインをしなければ一方的に対敵取引法によって輸入制限をする、こういうことがあなたの言う友好国のあり方でしょうか。しかも正規の外交ルートを通じない変則的な方向で突然に出てきて、こういうようなことを強引に押しつける、こういうことがはたして友好国にふさわしい態度とあなたはお考えですか。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沢田君も御承知のように、日米繊維交渉は三年越し交渉であります。私が沖繩交渉と取り組んだその際に始まっていること、これも否定はいたしておりません。その後さらに通産大臣外務大臣、愛知君と宮澤君が出かけて、そうして積極的な交渉を持った、これが解決されなかったと、そういう事実もございます。そういう経過を経て今日まできた。その間には業界自主規制という問題も行なわれたと、またその自主規制を行なってわずか二ヵ月たつやたたずで、ただいまのような問題に変わっております。アメリカ経済事情が非常に変わってきた、変化した。そこでニクソン大統領の、いわゆるドルショックといわれる声明が出されて、そうしてアメリカは急速に自分たち経済状態を立て直そうと、一般輸入課徴金を課すとか、あるいは金の兌換を停止するとか、あるいは国内に対しても賃金、物価の凍結を出すとか、一連の重大なる施策をとりました。  そういうことでございますから、前のつながりではございませんが、三年越し繊維問題、そういうものにやはり終止符を打ちたいという、そういう意味アメリカアメリカなりの処置をとった。これに対して、私どもがこれがけっこうだと、かように双手を上げて賛成してないことは、その経過でも御承知のとおりでありますし、私どもも、これはたいへんな事態アメリカ自身がやっていると。申すまでもなく、自由経済のその代表をもって認ずるアメリカ自身がみずから保護貿易に大きく百八十度転換する、これはたいへんな事態だと、かように思わざるを得ないのであります。それはやはりアメリカが当面しておる経済上の大問題、そういう意味において、アメリカ経済の実情もわれわれが考えてやらなければならないんじゃないかと、かように思います。いまそこで期限を切っての最後的な通牒、これはまあ経済的なものではございますけれども、これはほとんど最後通牒みたような問題です。私は、こういう事態が一方的にやられたら、一体わが国繊維業界はどういうような影響を受けるだろうか、そういうことを考えてみました。いまも繊維業界の中あるいは一部の皆さん方の中にも、アメリカが一方的にさようなことはできない、どうして政府はあわてたんだと、そんなものをあわてることないじゃないか、やれるならやってみたらいいじゃないか、こういうようなお話のあることも、御意見のあることも私は聞いております。しかし、アメリカが一方的に規制をしたら、日本業界はあの自主規制だけでもたいへんな打撃を受けております。それを一方的に規制をしたらたいへんな打撃を受けると、かように思います。これこそほうっておけない状態だ。私は、わが国産業わが国の企業、わが国従業者、それらの立場を考えれば、このときこそ政府で特別な交渉を持つことは、これは当然の政府の責務だと、かように思っておるのでございます。これがいわゆる外交ルートでない、これはやはり専門家の問題だとして、専門家同士話し合いをするという、そういう態度でこの問題が取り上げられた。いま置かれておる状態を十分冷静に考えると、かようなことは、政府としてなすべきことをしたと私はいま考えております。  いろいろの御批判もあろうかと思いますけれども、これによって、もしもアメリカだけにまかしたら非常な悪影響をこうむったであろう繊維業界が、少なくともある程度でとどめることができたと、かように私はみずから考えておるような次第でありまして、その点では沢田君とあるいは所見を異にするかと思いますが、それらの点についてのなお詳細に説明を必要とするならば、当時の担当者である田中君から十分答えさせたいと思います。
  16. 沢田政治

    沢田政治君 この問題に関するアメリカ側の要求というのは、まことにむちゃだと思うのです。一面においては資本の自由化を求め、そうして残存輸入制限を撤廃して貿易自由化を求め、円切り上げを求め、一方においては自分が制限するということですから、まさに論理のつじつまが合わぬまことにむちゃくちゃなことだと思うのです。  そういうことで、このことはあとに譲りますが、特に通産大臣にお伺いしたいわけでありますが、あなたは、ちょうど三週間前に日米貿易経済委員会があったと思うのですが、そのころまでは、政府間協定なんてとんでもない、こういうようにまことに元気のいい調子であったと思うのであります。それがある日突然、三週間もたたないうちに、君子豹変するかどうかわかりませんが、急に態度を軟化したその背景は一体何か。あなたは、国益上やむを得なかったと言われておりますが、その国益上やむを得なかったという理由も、私は、あとであなたに質問したいと思いますが、あなたがそういうように心境が非常に急速に変化した背景というものは一体何であるのか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  17. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、入閣をする前は自由民主党の幹事長の職にございました。このときには、長い経緯を経た日米繊維問題は自主規制以外に方法がないと、こういう考えでございました。また日米経済閣僚会議に出席にあたりましては、アメリカ側からいろいろな要求がありますけれども、事繊維問題に関しては非常にむずかしい問題であり、また対米貿易がそれほど大きいものではありませんし、自主規制をやってなお日が浅いのでございますから、一年間という実行の結果を見なければ他の新しい制度に踏み切るべきではないということを信じておりました。その意味で、日米間というものはお互いに理解を必要とするということで、両国の利益のためにもということで、繊維問題だけではなく、各般の問題に対して意見を十分戦かわせてまいったわけでございます。私が滞米中にも、非常にアメリカ側が困難な情勢に立ち至っておるという事実は理解をいたしましたが、しかし期限づきで一方的に規制もやむを得ないというような提案をするにはまだ時間があるだろう、少なくとも十二月一ぱいというと、七月一日からでございますから大体半年あります。一年と言わなくても、半年間くらいの実績を見ないで転換をするということのむずかしさは先方側もよく理解をしたと考えておったわけでございます。ところが、日米経済閣僚会議が終わった後、アメリカ側から非常に強い要請を受けたわけでございます。これはまあ率直に申し上げて、アメリカ側の困難な事情ということを私自身も理解をいたしておりましたし、またこれが課徴金と同じように、無差別で十月一日までに協定が行なえない場合は十月十五日から一方規制に入りますと、こういう通告でございましたし、極東四国に対する要求も同じものでございました。で、アメリカの非常にせっぱ詰まった、また不退転な気持ちということが理解できましたので、このような事態に入れば、もう事繊維だけではなく、対米貿易は非常に混乱をする。同時に、日米間の理解というものが全く得られなくなる。  それと、もう一つは、その後、私が対米の状態をずっと調べてみましたら、私が当初考えておったときよりも、対米繊維輸出というものは相当伸びておったということ。また、自主規制の中に入っておらない糸などは、これは三五一というのでございますから、三年半分ぐらい出ておったということでございます。それだけではなく、非常に驚いたのは、韓国、それから台湾からたくさん出ておって、台湾から米国に出ておった糸は二三〇〇という台でございますから、実績に対して二十三。それから、韓国は二四〇〇でございますから、実績に対して二十四年分、こういうことになりますと、これはもうアメリカが、十月十五日になると、一方的にやるということが実によくわかるわけであります。そういう面からも、これはもう政府交渉に移行せざる限り一方交通になってしまう。その場合の状態から考えますと、ほとんど繊維に関しては、全面対米ストップということになるわけでございます。そういうことがいかに日米間を悪くするかだけではなく、現実的にも、やらしてみろというような状態で済む問題でないということが考えられましたので、日米繊維政府交渉やむを得ないというふうになったわけでございまして、君子豹変というものでないことは、ひとつ御理解をいただきたい。
  18. 沢田政治

    沢田政治君 まあ、あなたの、わかるようなわからぬような、弁解ともとれるような御答弁で、私は納得できません。といいますのは、繊維の問題は繊維の問題だけじゃないと思うんです。なぜアメリカがこのような強腰で要請してくるのか、  一体その背景というものは何に基づいているのか、こういう面を考えなければ、繊維の問題を繊維の問題として承知しただけでは、悔いを私は相当残すと思うんです。あなたの答弁を要約しますと、アメリカのせっぱ詰まった、不退転な気持ちがわかったので豹変しましたと、こういう答弁になるわけでありますが、まことに私は落つると思うんです。私、考えるには、アメリカ繊維問題でこれほど強硬に押してきたという背景は非常に根が深い、幅が広い、こういうように私としては考えられてなりません。アメリカのウィリアムズ報告、つまり大統領の直属機関である商工委員会が七〇年代におけるアメリカの通商戦略という方向を決定して、具体的な対日要求を決定しておるわけであります。これは日本に関するものは七項目ほどありますが、輸出が急増しておる自動車、テレビ、これの輸入規制もはかる、あるいはまた電算機の——米国の関心品目、こういうものの関税を引き下げさせる。残存輸入制限の撤廃をはかる、貿易自由化ですね。さらに、電算機等の戦略商品の資本の自由化、あるいは経済援助の肩がわり、武器の購入、日米繊維協定の政府間協定、こういうものをすでに決定しているわけです。その手始めがつまり今日の繊維政府交渉であったと思うんです。それを簡単に、アメリカのせっぱ詰まった、不退転な気持ちがわかったので妥結に踏み切ったということでは、まことにお粗末だと思うんです。こういうことできたならば、しからば、あなたは、自動車あるいはテレビに対しても、アメリカが同様に期限を切って、不退転にして、せっぱ詰まった交渉を持ってきたならば、あなたはいつもこういうような協定をしますか、どうですか。たいへんなことだと思うんです。
  19. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) せっぱ詰まっておるアメリカ状態が前提ではございましたが、このままで政府交渉を行なわないでいった場合どうなるかということを考えたときに、政府交渉をやったほうが国益を守るゆえんである、こう考えたからでございます。ですから、アメリカ側の要請を受けて立つことが日本国益を守ることであり、対米輸出を健全なままに保持することである、それ以外に保持できない、こういうことで踏み切ったわけでございます。
  20. 沢田政治

    沢田政治君 重ねて言いますが、あなたの答弁を聞きますと、この繊維協定によってアメリカとの経済的ないざこざがもう相当解消できたと、これが犠牲になったけれどもあとに振りかかる火の粉を考えるならば、これで防げたんだから国益に合致する、こういう論法になると思うんです。しからば、テレビあるいは自動車、卓電その他の残存輸入制限の撤廃、こういうものが次々に出てきた場合には、好む、好まざるにかかわらず、あなたの先走った国益というものは国益じゃなく、むしろ突破口を開いた、アメリカ経済突撃の突破口を開いた、こういう大きな事実として残ると思うんですが、そうなった場合、あなたの責任どうしますか。
  21. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 輸入の自由化等は、ケネディラウンドを推進するという立場を、国際的に日本態度を宣明にしておるのであります。御承知のとおり、日本貿易立国でございます。貿易を拡大していかなければ、日本経済拡大、日本人の生活のレベルアップはないわけでございます。その意味で、自由な貿易を拡大していくということは国是でもございます。そういう意味で、敗戦経済、自立経済、国際経済と三段飛びをなす過程においては、IMFの十四条国であり、その場合、やむを得ず、日本は国際収支が逆調のときは為替制限ができるという恩典を受けてまいりましたが、各国の要請あるなしにかかわらず、日本自由化を進めなければならないということは当然のことでございます。しかし、急に進められないということで、日本輸入制限品目は四十品目になった、アメリカは五品目であるということであれば、五品目に近づけるように自由化を進めなければならぬことは当然であります。これは世界の協定にどうこうというのではなく、日本の生きるための国是を遂行することである、こう考えなければならぬと思います。それから、日米繊維交渉をやったことが突破口になってほかのものに及ぶおそれがあるということでございますが、私は、やらなければほかのものに及ぶおそれがあったからやったのでございます。これは日米間で交渉しておるときに、繊維は対前年度比一三〇ないし一四〇でございます。ところが、自動車はもうすでに上半期二一〇ないし二二〇ということでございますから、もう二年分以上も出ておるわけでございます。また、テレビや電卓等は六〇%、七〇%増しでございます。そういう問題が全部羅列をせられておりましたが、しかし、私は、繊維というものに対しては、少なくとも大統領が発言をしてから三年間、日米両国間において交渉をやってから二年間という歴史的な事実を踏まえておるのでございます。これからテレビを両国間で規制しようといっても、最低二年間ぐらいかかることはあたりまえであります。私はそういうことを言ったんです。この次に物を持ってきても三年はかかりますよ、こう述べたのでございまして、何にもやらないで日米間を正常な状態にしていこうということ自体が不可能なことでございます。私自身も、大蔵大臣の職にありましたときには、わずか二千万ドルの電電債を出してもらうために何回も頭を下げたのであります。十四条国から八条国に移行したときに、手持ち外貨は、二十億から十七億ドルに減りました。証券恐慌が金融恐慌につながることを食いとめるために、日銀法二十五条さえ発動しなければならなかったのであります。そういうときに、アメリカにわれわれは依頼をし、アメリカの協力によって戦後の経済を立て直し、八条国への移行をスムーズにやってきておるわけであります。いまやキーカレンシーであるドルそのものがたいへんな状態になっておるときに、アメリカが当面する国際収支を改善するんだ、それはアメリカの利益を守るだけではない、世界の自由貿易の拡大路線を守るためにはどうしても行なわなければならないワンパッケージの政策ですと、こう言っているときに、われわれは、この提案をすなおに受け取って、日本ができる限りの協力をするということは、私は、国益を守ることだと考えておるのであります。  そうでなければ、十月の十五日までに、説をなす人はやらしてみたらどうだと、やれはせぬよというような話も一部ありました。しかし、日米間においてわだかまっておるこれらの問題を片づけていくことが日米間の前進である。それは、アメリカの利益であるとともに、日本の利益であるという強い立場を私はとっておるのであります。十月十五日にもうストップになれば、対米繊維は全面的にとまるんです。中小企業が、一年、二年の混乱に耐え得るはずはありません。一年も二年もストップするなら、してみたらいいではないかといって、耐えられるのは日本の大手企業の一社か二社しかありません。そういうことを考えて私は日米繊維交渉に踏み切ったのでございまして、国益はそういう理由によって守ったつもりであります。
  22. 沢田政治

    沢田政治君 まあ、通産大臣国益だということと私とはまっこうから見解を異にします。これ以上泥試合しても始まりませんが、総理、通常の二国間の協定あるいは国際協定の場合でも、通常の場合には外務大臣が当たるのが常識と、こういうふうに私は理解しておるわけでありますが、特にこの重要問題、しかも一千万人の方々の生活を左右するこの重大問題をどうして通産大臣を調印当事者、交渉当事者にしたのか、外務大臣にやらせなかったのか。特に繊維交渉に当たっては、外務省が特に今日まで相当の役割りを果たしてきたと思うんです。それを突然どうして田中通産大臣にあなたが命令してやらしたのですか。これはどういう経緯になっていますか。
  23. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは通常あり得ることなんです。たとえば漁業交渉、これは農林大臣がその衝に当たる。郵便協定、これは郵政大臣がその衝に当たる。これは総理がそういうふうに指名をするわけでありまして、今回の場合におきましても、閣議におきまして、この繊維交渉については田中通産大臣がこれに当たる、こういう決定をしております。これはほんとうに通常のルートでございまして、何ら私どもはこれは異例な措置をしたものであるというふうに考えておりませんです。
  24. 沢田政治

    沢田政治君 協定の期限が一応三年、その後は日米双方で話し合うということになっておりますが、これは三年で間違いありませんか。というのは、十六日に韓国でやはりこの種協定が提起されたわけでありますが、その際に、韓国の李商工相ですか、この方が、日本は三年であって、韓国は五年というのは不合理じゃないか、こういうような抗議をしておるわけであります、ケネディ特使に対して。その際に、ケネディ特使は、日本の三年というのは技術的な問題であって、五年であることには間違いありませんと明確に約束しておるわけであります。  そうなりますと、私は、皆さんのわれわれに対して示している協定あるいは報告というのは、まさに欺瞞であって、国会審議をのがれるための非常にえげつない戦術だと、こういうふうにとらざるを得ないわけでありますが、実態はどうなっていますか。
  25. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いまの質問にお答えをする前に、ちょっと正式な交渉はどうなるのかという問題に対して明らかにいたしておきたいと思います。  私がイニシアルをいたしましたものは、日米間で行なわれるべき原案に対してイニシアルを行なったわけでございまして、近く十一月一ぱいがめどでございますが、正式な外交ルートを通じて両国間の正式協定が行なわれるということでございます。これは外務大臣とコナリー氏が行なうことになるのか。また、アメリカにおります大使と向う側でもってやることになるのかは別といたしまして、正式な外交ルートで正式調印が行なわれるということでございます。  それから韓国に対してケネディ特使がどう述べられたかは存じませんが、日米間で協定をせんとしている繊維両国の協定は、期限は三年でございます。これは五年にしてもらいたいということでございましたが、五年では長過ぎるということで三年に縮めたわけでございますから、原案が修正せられた一つのポイントである、こうお考えいただくことが正しいと思います。三年後延長するかどうかということは、その時点において両国があらためて協議をして決定する問題でございますので、いま調印寸前にある両国繊維協定なるものは、期限は三年である、こういうことであります。
  26. 沢田政治

    沢田政治君 まあ期限が三年ということは、それでけっこうですが、協定はそうだとしても、あなたが何か書簡の交換か何かによって、さらに二年間の再延長があり得るような何らかの書簡の交換というものがなかったのですか。
  27. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 当初、取りきめの期間は七一年十月一日から五カ年間というのが原案でございました、これは。原案からこの申し出の条項を削除したわけでございます。削除をした事項に対しては、ケネディ特使から私あてに書簡が参っております。この書簡に対しては、私が書簡で答えておるわけでございまして、あなたの要請があったことをテイクノートする、記録にとどめるということだけ返事を出しておりますから、これは三年後延長する場合には、あらためて周囲の情勢を勘案しながら、両国で協議をし決定すべきものである、こう理解をしております。
  28. 沢田政治

    沢田政治君 ケネディ特使から受け取った書簡をあなたが記録にとどめるという、こういう書簡を出しておるわけでありますから——私は、外交の専門家ではありませんので詳しいことはわかりませんが、大体そういうようなテイクノートといいますか、そういうのは、大体アメリカの言うとおりにならざるを得ない道義的な責任を負うという現実が多いように聞いておるわけです。あなたはそういうことを意識して、その書簡に対するあなたの回答を寄せたわけですか。そうじゃなく、文字どおりここで説明しているように、釈明しているように、絶対三年である、これは動かすことができない、こういう前提でその書簡に応じたわけですか、どうですか。
  29. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ちょっと訂正申し上げますが、いま申し上げた書簡は、多国間協議に移したいという要求がありまして、それを除いて書簡形式にしたということでございまして、こういう問題に対しては、私が書簡を返して、そういう申し入れがあったということをテイクノートしたと、こういうことでございますので訂正いたします。  それから、期限に関しては五年が三年になっているのでございまして、これは全然先ほどから答弁をいたしておりますように、三年の期限が切れた場合、あらためて向う側の要請があれば、その時点において検討をし、相談をするということでございまして、これに対しては何らの取りきめもなし、通告もしておらないということに訂正をいたします。
  30. 沢田政治

    沢田政治君 本調印を十一月中とあなたが言われておることが新聞に載っておりますが、十一月中にできますか。私、聞くところによりますと、非常に成文化とか専門家会議の煮つめ方とか、事務的に錯綜した問題があるやに聞いておるわけです。そういうことで、十一月中の調印は無理、あるいは二カ月、三カ月かかるんじゃないかという説もありますが、もちろん、われわれは、こういうものを協定することには、これは反対の前提で聞いているわけですが、いかがですか。
  31. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 事務当局にあらかじめ見当をつけてもらいますと、まあ三週間ぐらいは少なくともかかるんじゃないか、そう言っております。しかし、それで済まぬかもしらぬが、まあ大体十一月一ぱいにはできそうだ、こういうふうに申しております。
  32. 沢田政治

    沢田政治君 最近は、通産大臣も、そうあまりPRをしなくなりましたが、最初は、実績の五%増を確保したんだから成果だなんて、こう言っておるわけでありますが、業界あるいは関係者から聞きますとね、とんでもない−ナンセンスだということばが適切かどうかわかりませんが、ナンセンスだ、大幅な輸出減になることは必至だ、おそらく田中通産大臣繊維の内容というものを知らぬからそう錯覚を起こしたんじゃないか、わかっている人じゃこれを協定するはずはないのだ、わからぬから、めくらヘビにおじずでやったんだと、こういうことを言われておるわけでありますが、あなたは、実績からさらに伸びるということを獲得したという根拠を具体的に、根拠は何か、その言に対して責任を持てるかどうか、この際明らかにしてほしいと思うのです。
  33. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知のとおり、自主規制は、対前年度比の伸び、基準数量から五%アップでございます。ところが、この自主規制では困るので、両国政府間協定にしてもらいたい、その政府協定というものが牛場・フラニガン会談で長いこと詰めて詰まらなかったわけでございます。それから、先ほど総理がお答えになりましたが、愛知、宮澤両君がアメリカまで出向いて、ロジャーズ国務長官等と複数で非常に真剣な努力を何回も重ねたにもかかわらず、詰まらなかったところがございます。それは、自主規制と違うところでございます。  それはどこが違うのかというと、綿製品協定の中の規定に非常に近い規定——今度の原案の第七項、初め提示をされたケネディ案の第六項でございます。俗に言われるシフトとトリガーの規定が存在をするわけでございます。もう、繊維製品というようなものは、新しいものは実績がなくとも非常にたくさん輸出ができますが、実績があっても、移り変わりが非常に激しいために全然出ないものもございます。出るものに対しては五%ないし一〇%の頭打ちになっておって、出ないものの死にワクの活用ができないとなると、実質的五%増だとは言いながら、何年かの長い間には、実績よりも減っていくわけであります。それが、綿製品協定によって、十年間で四〇%の輸出減につながっておるわけでございます。ですから、このシフトとトリガーの規定がどうしても死にワクを完全に活用できるようにしなければ協定ができなかったということでございます。これはもう、私よりもあなたのほうが専門家でございますから、よくおわかりだと思うのであります。その分だけはどうしてもきまりがつかなかった。それが、今度弾力条項を挿入いたしまして、協定に前文を入れました。そして、政府専門家会議というものをつくりまして、毎月一回ずつ協議をすることにいたしました。  そういう四つの項目によって、少なくとも五%増し全額を獲得できなくとも、原案のように自動的に減っていくのだということに対しては、かんぬきを入れたことだけは御理解をいただけると思うわけでございます。ですから、これから努力をすることによって、五%増しをそのまま右に、協定に移しかえられるように努力を続けるわけでございますが、しかし、私は、必ずしも五%全部というところにはまいらないと思います。思いますが、原案のように、また綿製品協定のように、死にワクの活用ができないことによって年々対米輸出が漸減をしていくという方向に対しては、かんぬきを入れられたと、こういうことを考えておるのであります。
  34. 松永忠二

    ○松永忠二君 関連。重要な問題でありますので、少し時間をお許しをいただきたいと思うわけであります。  いま、だいぶ、国益を守るために必要なのだ、当然なことである、いや、いいところもできてきているのだと、こういうお話が出てきているわけであります。私は、四十五年の三月二十六日に参議院の商工委員会の決議があるのでありますが、前文は省略いたしますが、「次の諸点を厳守すべきである。一、米国繊維産業の被害の立証を前提とすること。一、輸出規制業界の納得をえた上で、重大な被害又はその恐れのある品目に限ることとし、包括規制はあくまでさけること。一、関係多数国の協議で問題の解決をはかること。」——この「厳守すべきである。」という三つの項目は完全に無視されているものであると考えるけれども、これに御異議はございませんか。
  35. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 繊維日米政府交渉政府間協定につきましては、衆参両院の商工委員会及び衆議院の本会議の決議がございます。でございますが、これは、御承知のとおり、自主規制に踏み切る前、また、牛場・フラニガン会談の前、佐藤ニクソン会議によって両国政府交渉を始めるという決定の前に行なわれたものでございます。でございますから、その後いろいろな事態の変化があったわけでございます。ですが、私は、日米経済閣僚会議に出ますときには、この両院の決議を踏まえて日本側の主張を明確に行なったわけでございます。その後、全く新しい、期限つきの、十月一日までに協定が行なえない場合十月十五日からは一方的規制に入ります、こういう正式な通告を受けたわけでございますので、その通告の真偽、真に行なわれるかどうかの見通し、政治的な判断、こういうものを見きわめた結果、避けがたい事実である、その意味において、両国間の協定が結べないような事態が来た場合、それこそ、対米輸出は一時中断をするし、大混乱が起こる、こういう新しい事態が起きましたので、協定真にやむを得ずと考え、私は衆参両院の商工委員会の席上で、その間の事情を質問に答えて申し上げております。記録に明らかなところでございます。非常に激しい御質問をいただいておりますが、こういう事態になっておりますので、国益を守り、両国間の正常化を確保していくためには政府間協定への移行もやむを得ざるものと思量されますということを明確に答えておるのでございます。それだけではなく、与党の執行部にも、また、野党三党の代表者にも面会を求めて、このような状況にございますという事前の御了解、それは公式に得られなかったわけでございますが、まあそれならやむを得ぬ、やりたまえということは得られなかったのでございますが、私は事実を披瀝して理解を求めておるのであります。
  36. 松永忠二

    ○松永忠二君 関連で、私は短時間に質問をしているので、この内容はつまり無視をされているのではないかということを聞いているのであって、その後変化があったとか、こう判断したとかいうことを聞いているのじゃないので、そこで、あなたがそれだけ申されるならば、私のほうでも少し申し上げます。  「米国繊維産業の被害の立証を前提とすること。」ということが言われているけれども、これは、七〇年の一月二十一日に米政府は駐米日本大使を通じて、輸入急増による米繊維産業の損害を立証するという資料統計を日本政府に提出をした。で、二月の二十三日には、米国内の被害の状況が不明であるため、追加資料の提出を要求をした。宮澤大臣は、アメリカ側から送られました資料について見る限り、被害を与えているとは、にわかに私どもは判断できない——あなた自身は、繊維による実体的な被害の立証よりも、貿易収支のその中で繊維がまず第一に取り上げられたということである。アメリカの言っていることは、国際収支が二十億ドル最低赤字になるので、対米出超二十億ドルを取ってもらえば、そういう点でいわゆる貿易の収支がよくなるといっただけであって、こまかい、つまりその立証、いわゆる産業の被害の立証を前提とする資料というのは明確でなかった。これに誤りはないわけですね。  また、その次に、「輸出規制業界の納得をえた上で、重大な被害又はその恐れのある品目に限ることとし、包括規制はあくまでさける」。だから、業界の納得を得られないということは、これはもう明確なことであり、行政訴訟に訴えようとしたり、繊維労働者が違憲の訴訟を訴えて出ていこうというのだから、納得はしていない。しかも、今度の内容は、つまり、毛製品、人造繊維のすべての商品の品目の増加が年率一〇%以下であることを条件に、その伸び率を全体で五%とするというふうな意味で、これは包括的規制であるということも事実。  第三に、「関係多数国の協議で問題の解決をはかる」ということも、二国間協定でやっている以上、これまた完全に無視をしたわけです。  そこで、私は、この商工委員会で決議をした三つの条件は完全に失われていますねということを聞いたのに対して、その内容とは違っていますならいます、同じですなら同じです、こういう答弁をしていただけばいいのであって、その後の変化の状態とか、あるいはまた、それが国益を守るかどうかということについて私は聞いているのではありません。その点については、その次に、もう一点を続けてお尋ねをしたいのでありますが、いずれにいたしましても、情勢が違っていた状況であったけれども、とにかく参議院の商工委員会の厳守すべしとした三つの条項のいずれをも満足をさせていなかったということについて、お認めになりますかどうですかということを聞いているのであります。
  37. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 参議院の商工委員会の決議から、私が仮調印をしなければならなかったまでの間には、時間的に相当幅がございます。その間に前提条件か大きく変わってきておるという事実もございます。そういうことで協定のイニシアルを行なったわけでございます。また、参議院商工委員会の決議というものが、いかなる状態になってもその条文どおりということを意味したものではなく、日米間の正常な繊維の輸出を確保していくための一つの手段として理想的なものを求めたものだと思います。でありますから、私は、そのときの条文だけで読むべきではなく、その後の情勢の変化があったならば、その変化を織り込んで当然評価をすべきものだと理解をいたしております。しかし、私は、結論的に申し上げて、その事情はどうあれ、参議院商工委員会の決議の精神というものに完全に沿ったイニシアルであるとは思っておりません。そういう意味では遺憾な点もあったと思います。
  38. 松永忠二

    ○松永忠二君 だいぶ長々と答弁をされるんでありますが、その内容については、事情の変更はあったといたしましても、その内容が完全に行なわれているというよりは、完全に無視をされていると、こういう点については、いまの御答弁を通じても、はっきりしてきていると思うんで、そうでないというならば証拠を示すべきである。それはもう、はっきりしている。  そこで、その次に行くのでありますが、そこで、あなたは、今度の衆議院予算委員会等でも、国会の決議どおりにならなかった、その間の事情を国会に説明して了解を得るよう努力する政府責任があるということを答弁をされているわけです。そんなこと、疑問だと思うなら、ここで速記録を読み上げますよ。
  39. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) どこですか。
  40. 松永忠二

    ○松永忠二君 衆議院の、あれじゃないですか、予算委員会の席上で、そういう答弁をされているじゃありませんか。何か、うそのようなことを言われるんですが、これは、ここのところ、昭和四十六年十月二十五日予算委員会議録第二号に、あなたの発言がこう出ている。「国会の決議どおりにならなかったという結果に対しては、その間の事情を十分国会に説明をして御了解を得る努力をいたさなければならないという政府責任を感じます。」、こう言っている。私の言ったとおりじゃありませんか。しかも、いまお話によると、この沢田委員の質問に対して、たいへんに強いことばでいろいろ説明をされているわけであります。いや、これは国益なんだ、国益を守ることだ、これはもうアメリカの利益であるとともに日本の利益でもある、大体わからないのがおかしいんだというような、こういうものの言い方でしょう。つまり、国益を守るということは何であって、これはもうアメリカの利益にも通ずるし日本の利益にも通ずるんで、これはもう当然なことだと、こういうふうな話をされているわけです。総理大臣も、先ごろ、いまの御答弁の中にも、米国が一方的規制をやればたいへんだから、国益を守るために必要だというようなことを言われているわけであります。それだけ日本の利益にもなるということであり、日本国益を守るというようなことであるとすれば、いま申しました衆議院の本会議や参議院の商工委員会の決議と内容が全然違っているのだから、この際、国会の意向を問い直す、政府間協定で国会の承認を求め、その際よく事情説明をし意見も聞いていくということこそ、国会尊重のゆえんではありませんか。また、よく佐藤総理が使うことばで、民主的な方法で決着をつけましょうというようなことをよく言うじゃありませんか。民主的な方法で決着をつけるということは、これを政府間協定として国会にかけ、国会の多数を持っている与党が自分責任で行なうという、民主的な方法で決着をつけることだというふうなことになると思う。そういう意味から言うならば、あなた方が全く国益を守るためにやむを得ずやった措置であり日本の利益であると、そういうことを、野党がああだこうだ質問をしたら、そんなことわからぬのかと、そういうような説教的な答弁をされているでありましょう。それだけの自信がおありであるならば、国会で決議をしたことと全然違った内容が行政協定によってきめられようとしている、しかも、まだきめたわけではないと言っているこの行政協定を、そういう意味から言うならば、いま言うとおり、政府責任を明らかにするという意味からも、国会において正式な討論を通じてこの決着を民主的につけていくということこそ当然ではないか。国会が開かれましたから、国会で御説明をいたしますなどという、そんな方法でものを解決すべきことではないでありましょう。この点について、通産大臣の明確な御答弁を聞きたい。その事と次第によって、また、もう一つお聞かせをいただきます。
  41. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国益論につきましては、まあ衆参両院でるる申し述べておるわけでございまして、どうぞ御理解をいただきたいと思います。これは、私の限られた発言で申し上げるよりも、これは与野党という立場ではなく、どなたでも、日米間が正常な状態を保つことが望ましいことであり、国益に合致をすることであるとは、どうしてもお思いになると思うんです。なぜかと言うと、日本の輸出の三〇%は対米貿易なのであります。ですから、対米貿易の中の、そんな大きなものではなく、一〇%弱の繊維の、しかも五%か三、四%減るおそれのあるということでこれだけ大騒ぎをしておるじゃありませんか。どれだけ日本アメリカの間の貿易の正常化というものが国益につながるものであるかは、私どもが申すまでもないことであります。ですから、十月の十五日になれば一方的に規制を行なうと、現実的にストップをするんですということになると、これは、日米間というものは全く無協約状態になり、混乱は避けがたくなるわけでありますから、そういう立場日米間の正常な関係を保持しようとしたことは国益に合致をするものであると、こういう判断を私はいたしておるわけであります。  それからもう一つは、これを国会の決議案件として提案をするかどうかの問題でございますが、これは、私は立法府の議員ではございますが、法律解釈の専門家ではないわけでございます。でございますから、私がイニシアルをしたものが国会の提案案件であるのかどうかということに対しては、専門家の決定を待つ以外にはないわけでございます。法制局及び外務省条約局の見解によれば、これは政府に授権された範囲内のものであり、行政協定である、よって国会の議決案件ではないと言われておるのでありますから、いまの状態において国会に提出しなければならない協定ではない、このように理解をいたしておるのであります。
  42. 松永忠二

    ○松永忠二君 もう一つ。はっきり言わないから私はやってるんです。別に何も、わざと関連で時間をとってどうこうしようということを言っているんじゃないのです。疑義をただしている。いま私の言ったことに対して、何ら御答弁がないでしょう。国益であるとかどうかという判断を私は言っているんじゃない。あなた方は、国益を守ることであり、日本の利益であると、こう言うならば、決議の決定の内容と大幅に相違をし、特に参議院における商工委員会の決議とは全然内容が違っているんであるから、その経過や、その国益を守るゆえん、あるいはまた、そういうふうな問題について国会を通じて明確にその責任を負っていくということが必要だ。あなた自身は、政府責任があることを答弁されているでしょう。国会の、説明して了解を得る、これが一番いいことは、いわゆる政府間協定を国会に出して、そして国会の承認を得ていくことであるということになるわけである。  そこで、総理にお尋ねをいたします。  私は、いま、行政協定であるかどうかということを聞いているのじゃないんです。政治的に、よくあなたが申す、いわゆる問題について、非常な大きな見解の相違がある。どうしても理解がし合いにくいというならば十分な議論をして民主的な方法で決着をつけていこうということを、よくあなたはおっしゃるでしょう。また、それは決してそれが全然理屈のないことではないと私は思う。そういう方向以外に解決の方法がない場合があると思う。しかも、常にあなたは国会を尊重するということを言っている。そういうことを考えてみると、この問題については、やはりまだ行政協定も決着がついているというわけではないのであります。単に通産大臣が、いわゆる覚書に仮調印をしただけであるのでありますから、これは明らかに国会の承認を求める必要があると私は思うけれども、この点について、どうお考えになるか。  もう一つ。今度のアメリカのやり方については、るる沢田委員が言われたように、また世論もそう言っているように、全く暴挙である。全く一方的な規制のしかたであり、矛盾もしている。こういうアメリカのやり方について、この問題を通じて、あなたはどういうふうにお考えになるか。それをどういうふうにこれから解決をしていこうと考えられるのか。  この二つの点を明確に答弁をしていただきたい。こんな答弁を繰り返している通産大臣は、まさに私は、これは問責に値すると思う。明確なことをちっとも言わないで、ただ自分の主張だけを述べて、そしてそれでよしとしているような、そんなものは認めることはできません。総理意見を聞いて、私は関連の質問を終わりたいと思うのです。明確にひとつお答えをしてください。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国会は国権の最高機関である、このことは、もう私が申し上げるまでもなく、国会の当然のあり方でございます。しかし、最高機関ではありますが、国会と、また行政府と司法府と、それぞれが担当するおのずからその範囲がございます。私どもは、やはり国会が最高権威として活動される場合においても、行政官庁のなすべきことは行政官庁においてなす、それがしかし、国会において審議されると、ただいまのように御意見が十分これに加えられる。また、そうしてそれに対して、是は是、非は非として率直な御意見を聞くこと、これは正しいことだと思います。また、そうなければならない、かように思います。これで第一問についてのお答えはいたします。  第二の問題。私は、アメリカのやり方、これはたいへんな納得のいきかねる処置だと思っております。ただ、私が考えますのは、日米間はかようなことが二度と繰り返されないようにあるべきことだと思っております。また、こういう事柄がたびたび起これば、われわれがいかに日米間を大事だと、かように考えましても、その状態は続きかねるだろう、かように思いますので、こういう点で十分アメリカ側反省も求めたいと、かように思っております。これは、核実験についてわれわれの正しい主張、また本来の要求すべきことを要求したと同様に、アメリカ側反省を求める次第であります。
  44. 松永忠二

    ○松永忠二君 初めのほうは納得しません。
  45. 沢田政治

    沢田政治君 まあ私は、一番重要なことは、やはりこれだけの問題を、法律解釈は別として、これは別の場で争いたいと思いますが、少なくとも、一千万国民の生活に重大な影響を与える問題を単に行政協定で報告する、こういうことでは国会尊重には絶対にならぬと思うのです。私は民主政治の破壊だと思うのです。次に今度は、テレビあるいは自動車の場合でも交易協定を結んで、報告だということになったならば、国会は一体どうなりますか。与党政府提案の投票機にすぎなくなるじゃありませんか。まさに私は民主政治の墓穴を掘ることだと思います。絶対に納得はできません。  そこで、私、先を急ぎますので、二つだけお聞きしておきます。  政府がこの救済資金のために予備費流用を今国会中に手続をとるといううわさがされております。もってのほかだと思います。これは、過去の慣例があるないという議論もあるわけでありますが、私はそうするのかしないのか、予備費の手続をこの国会中にとるのかどうかを明らかにしていただくこと、さらには、また政府がこれを強行した場合には、国民の世論に背を向けて締結した場合には、相当の私は失業者が出てくることは明らかだと思うんであります。そういう前提に立つならば、労働大臣、どういう対策をとっています石炭以上の大失業者の増大になると思うんであります。これに対する対策をどう考えているかお聞かせ願いたいと思います。
  46. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 繊維対策につきましては、織機の買い上げ等を含めて財政、金融、税制等諸般の対策を行なわなければならないと考えておるわけでございますが、まだ具体的な政策は、織機の十万台買い上げということ以外は、未定でございます。先般内閣につくられました繊維対策本部なるもので十分調査検討いたしまして適切な施策を行なうつもりでございます。なお、予備費の流用については全く現在まだ決定いたしておりません。予備費の流用をしなければならないのか、あらためて予算措置をとらなければならないのか、また、予備費の流用が国会中に行なわれるとすればいかなる措置をとらなければならぬのかは、全く決定いたしておらないことを申し上げます。
  47. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) 沢田委員にお答えします。  いま通産大臣からもお話がありましたが、離職者の出ないように政府としては万般の策をいたします。ただし、出る場合にはどうするかということにつきましては、まず繊維労働者——若年労働者が多いわけでございますが、このほうはいま求人倍率は三・二倍ぐらいありまして、若い方の離職は再就職がかなり容易であると思っております。問題は、中高年者が離職した場合にどうするか。まず第一には、むろん職業安定所において相談に応じ、職業安定機関を通じて再就職をあっせんします。幸いなことに中高年雇用促進法というのがことしの十月一日からこれが施行されております。この法律によりますと、中高年者については、いわゆる職業を求める方については職業安定あっせん期間中毎月平均一万九千円を支給することになっております。そうして落ち着いて仕事をさがしていただく。また、お世話もする。もしさらに、それでなくて、別の仕事につくために職業訓練を必要とするという方については月二万五千円支給して、半年ないし二年にわたって職業訓練をしていただく。そうして再就職をさしていただきたい。また、いまのところ、日本全体といたしましては、一般の人でも求人倍率は一・七倍であります。若い人たちについては三・二倍の求人率がありますので、まだ失業者がどのぐらい出るか、離職者がどう出るかということが私どもにわかっておりませんが、そういういま申し上げたようなものについて対策をやります。さらに、お尋ねの、どれほど離職者が出るか等については、いま現地において、いわゆる産地において調査をさしております。また、中央職業安定審議会がありまして、その委員の方にお願いして、近く現地へ行って実情を調査し把握していただこうと思っております。その上に、近く、さいぜんお話しのありました産炭地に対する対策程度のものをやる考えがあるかないかということでございますが、これにつきましては、近く繊維業界の労使の代表を労働省へおいでいただきまして、もう少し実情を聞かしていただく。さらに離職者がどの程度、いつ出るか等、詳細にひとつお互いにひざを突き合わして御懇談申し上げ、それで産炭地に対する離職者の対策等、必要であるかないか等も含めて、万般話を急速に煮詰めて、前向きに積極的に対策を講じる考えでございます。
  48. 沢田政治

    沢田政治君 次に農業問題についてお尋ねします。  総理に最初にお聞きしたいわけでありますが、今日の自民党農政には非常に農民が失望しております。マスコミの表現をかりますと、不安と焦燥と混迷の中に立たされておると思うのであります。多くの農民も、政府の農業政策というのはギャンブルの予想屋のようである、指導はするけれども、その結果に対しては責任は持っておらぬ、こういう批判をしておるわけであります。米をつくれ、つくれ、今度は余ったからやめい。しからば何をやるかということを提示しない。これが今日の私は政府の農業政策だと思っております。そういうことで、非常に混迷をきわめておるわけであります。総理も御承知のように、過般の参議院選挙の際には、自民党の農業政策を批判しておる候補者が相当おりました。私は名前を言いませんが、自民党の農業政策をまっこうから批判して、そうして運動しておるわけであります。私は名前は言いませんが、これはかなりあると思います。それだけいまの自民党の農政というものは、農民を納得せしめないのみならず、大きく責任転嫁をしておると思うのであります。そういうことで、日本の特に米づくり農業を中心にした農業を一体将来どのような方向に持っていこうとするのか、基本的な私は考え方をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  49. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本農業が曲り角に来ていると、こういわれてずいぶんだっております。また沢田君も、そういう意味では、農業のあり方に多大の関心を持っておられる方だと思っております。私は、いま国をあげて新しい農政、そういう方向に大転換をすべきときだと思っております。米の管理あるいは生産体制、また運営、そういうような問題がただいまいろいろ論議されておる。しかし、なかなかまだ、これだというものにはなっておりません。政府におきましては、いまの曲り角に来ておる農政、これと取り組むために各界の知識を集めて、そうしていろいろ検討しておる段階でございます。きまった後なら、もうこれで批判もできましょうが、ただいま産みの悩みをしておる最中でございますから、十分御意見のあるところはひとつ聞かしていただきたいと、かように思います。
  50. 沢田政治

    沢田政治君 どうも答弁はしたのはしたわけでありますが、中身は何もありません。これがいまの自民党農政を如実に私は証明しておると思うのであります。  そこで農林大臣、初め、こうちょっとした数字を簡単に聞きます。まとめて聞きます。  第一は、昭和四十六年度——今年の米穀の作況指数、これは全国的にどうなっておるのか。十月十五日以降変動があるのか、あれが確定か、北海道はどうなっておるのか。さらには、単年度需給で、この結果、作況指数によってどうなるのか、さらには、政府、地方団体の転作、休耕——これは政府ばかりじゃありません。地方公共団体も相当行なっております。これに対する合わせた金額はどうなっておるのか。この点、まず明らかにしてほしいと思うのです。
  51. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お答えいたします。  本年度の十月十五日の米の作況は、全国的に、いえば九三でございます。北海道は六二でございます。  それから、ことしの不作の関係からどれくらいの減収を予想されるかということですが、これは七十九万トンの予想でございます。  それから、生産調整、作付の転換や休耕、こういうのでどれくらいの支出をしているかということでございますが、千七百二十五億と、こういうことになっております。
  52. 沢田政治

    沢田政治君 去る二十二日だったと思いますが、農協中央会が、米穀対策中央本部ですかが、常任委員会等を開いて、たとえば減産の量ですね、米にして二百三十万トン、これは大幅に縮小してもらいたい、こういうまあ方向を打ち出したやに私は聞いておりますが、これに対する見解はどうですか。
  53. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私ども、不作予想によりまして四十七年度の需給には心配ないと思います。しかし、生産調整につきましては、今年の不作の予想もありますので、二百三十万トンという数字を必ずしも固執する必要はない。ことに本年度の調整等によりまして、地域別といいますか、地域別生産の指標などが十分盛り込まれておらないというようなこともありますので、そういうことも考慮して二百三十万トンに拘泥しないでこれはいま検討しておりまして、生産調整の米の量につきましてはこれから検討していきたいと、こう思っております。
  54. 沢田政治

    沢田政治君 全国平均四十六年度産米が作況指数九三%でありますが、明年はどうなるのかわからぬのは、これは農業の特徴であります、自然でありますから。まあ一九四〇年代以来地球は冷たくなる方向に行っているといいますから、これは気候でありますから、どうなるかわかりませんが、そういうことも予想しなくては政治ではないと思うのであります。そういう意味では、来年は必ずしもいまの二百三十万トンに固執しない、こう言われますけれども、もし来年、今年のような九三%の作況指数になったならば、これはたいへん需給関係において大きな問題が出てくると思うのであります。こういう点を考慮に入れておるのかどうか、この点を明らかにしてほしいと思うのであります。
  55. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 需給計画は非常に重大な問題でございまするから、いまのお話のように大体恒常的には米は余っておったのですが、不作の年が二年続くというようなことも例がないわけではございません。でありますので、そういうことを考慮して需給計画はなお立てていくつもりでございます。
  56. 沢田政治

    沢田政治君 政府が消費者米価の物価統制令からの適用排除を四月まで閣議で延期したようであります。私は、まあこの限りにおいては適切な措置だと思います。適用除外にはもちろん反対でありますが、これはある程度適切な処置だと思いますが、現に今年の作況が非常にかんばしくない。こういうことが反映して、自主流通米、やみ米が高騰のきざしを見せております。そういう点、現実から考えるならば、私はこれはある程度まあこの処置を認めていいと思うのですが、しかし、問題は来年の四月じゃなく、九月まで延期すべきだと思うのであります。といいますのは、四月では来年の作況はわかりません。九月ごろにならなければわからぬわけであります。特にまあ来年は不況下の物価高ということが大きな課題になっておりますから、これは少なくとも私どもは適用除外を認めませんが、できるならば九月ごろまで物価対策を考慮してさらに再延長する意思がないかどうか、この点を経済企画庁長官どう考えていますか。
  57. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 今回とりました物統令の適用排除、適用除外の延期措置、いまお話しのありましたような事情でこれを延期いたしました。しかしながら、まあ本年の米の需給状況には影響はないといたしましても、異例の作況からいいまして、当然心理的あるいは便乗的影響もないとは限りませんし、また、今後の、来年度の作況その他の影響もございまするので一応四月まで延期いたしましたけれども総理が去る衆議院予算委員会で述べましたとおり、そのときの情勢に応じてまた判断してしかるべきものだと思います。
  58. 沢田政治

    沢田政治君 四十七年度産米の生産者米価でありますが、四十六年度米価が若干上がったといわれますが、農家の手取りとしては三年間の据え置きだと私は判断するのが正しいと思います。そこで来年の生産者米価でありますが、これをいつ決定するのか、上げるのか上げないのか。しかも、予算米価として昭和四十七年度の予算当初にもうその中に織り込んでしまう、ここで決定するということもいわれておりますが、上げるのか上げないのか。  さらにはまた、米価決定の時期を予算米価できめてしまうのか。この点を大蔵、農林両大臣にお伺いしたいと思います。
  59. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 生産者米価につきましては、上げるか上げないかということをいまきめておるわけではございません。  それから、予算米価できめていくのか、あるいはまた、そうでない、いままでのようなやり方できめていくのかということでございますが、米価審議会の諮問という一つの段階もございますし、そういうことでございますので、いま予算米価で実際の米価をきめていくということでなくて、米価審議会の諮問を経てきめていく。でありまするから、来年ということになると思います。
  60. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま農林大臣のお答えのとおりでございます。予算米価で予算を編成するのか、あるいはその前に米価審議会を開いて来年度の米価を決定することになるのか、全くいまのところきまっておりません。
  61. 沢田政治

    沢田政治君 物価問題に私関連をしてお伺いするわけでありますが、最近新聞等で伝えられるところによりますと、何か消費者米価が来年上がる上がらぬということが出ておるようでありますが、特に総理に私はお伺いしたいわけでありますが、いい知恵があったならば野党に聞かせてほしいなんというのはとんでもない言い方だと思うのであります。政府自体が、みずからが打つべき手を全部、打てるべき手を全部打って、これ以上何かいい知恵がないのかということならば私はわかりますが、政府の手でとめ得る公共料金を過去どんどん上げてきて、逆にすわり直して野党に責任転嫁をされるということは私はうなずけません。まあ、そういうことは別としても、まず私は、物価問題、議論よりもできることをやるべきだと思うのであります。そのテストケースとして、来年予想されておる鉄道運賃の値上げ、あるいはまた消費者米価を上げるのか上げないのかということによって政府物価に対する具体的な現実的な私は態度の試金石になると思うのであります。これをどうするか、まずお伺いします。   〔委員長退席、理事村瀧一郎君着席〕
  62. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 鉄道運賃、消費者米価、これはたいへんな問題でございますから、政府は慎重に取り扱います。
  63. 沢田政治

    沢田政治君 これは消費者米価の決定を慎重に扱うことはあたりまえですよ。こんなものを軽々しく扱われたのじゃたまったものではありません。そんなことはあたりまえです。そんなことを聞いているのじゃないのです。あなたは物価問題にはなみなみならぬ意欲を燃す、大きな来年度の課題だと、こう言っているのだから、そう言っているからには、どうするかと、これを上げるのか上げないのか、あなたの物価に対する基本的な私は姿勢の問題だと思うのです。どうですか。
  64. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 公共料金、これを上げる、しかも改定をする、そういうことだと、公共料金が物価の指導的な役割りを果たす、こういうことがあるとたいへんなこれは諸物価影響を与えると、かようなことでございます。当然のことではありますが、さような意味をもって私は慎重にこれは取り組まなければならない、かように申しておるわけでございます。申すまでもなく、いまの消費者米価にいたしましても、逆ざやがいつまでも続いているとか、あるいは鉄道運賃、これがいつまでも経営者の経営努力にもかかわらず赤字である、こういうような状態をいつまでもほっておくわけにはいかない。それかといって、ただ赤字だからというだけでこの問題を取り上げて値上げをすると、こういうことではなかなか国民の納得を得ないんじゃないか、かように思うから、簡単ではありますが、私はこれと取り組む、その姿勢はまことに慎重でございますと、かように答えたのでございます。そのぐらいのことならわかっているとおしかりを受けますけれども、これは当然なことでございますから、ただいまの状況のもとにおいて、いま上げるのか上げないのか、簡単なことだと。上げないなら上げないと、上げるなら上げると、こう言えと言われましても、ただ、きめてない状況のもとにおいて、われわれがこれと慎重に取り組むんだと、この姿勢を明らかにすることがまず第一に必要なことでございますから、以上のような答弁をいたしたわけであります。
  65. 沢田政治

    沢田政治君 特にもう消費者米価の値上げが他の物価にどうなるかは私はここで議論しません。大きな誘因になるわけであります。誘発されるわけであります。でありますから、ここでイエスかノーかというアメリカ経済外交のようなことを言っているわけではありません。大きな影響があるから上げたくないと思っている——上げないと約束せよじゃない。上げたくないと思っているなら思っているということをやはりここで明らかにすべきだと思うんです。慎重に考えているということじゃ国民がわかりません。あなたの物価に対する誠意もこれは疑わざるを得ないんです。   〔理事村瀧一郎君退席、委員長着席〕
  66. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沢田君たぶん私の考え方には御理解がいただいたと思いますし、また国民の多数の方々も、先ほど申しましたように政府物価値上げの音頭とりになるようなことは慎まなければならない。公共料金の値上げというものは極力これを抑制するという、そういう態度であるということ、これはよく理解しておると、かように私は理解しております。
  67. 沢田政治

    沢田政治君 まあ答弁に不満足ですが、これだけで時間を費やしてもしようがありません。  そこで農林大臣、農産物の自由化はどういう展望ですか、将来。
  68. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御承知のように、日本の農業は国際関係には入っておりますが、農業生産というものが輸出産業というような形になっておりません。アメリカあたりとだいぶ違っています。そういう関係でありますので、日本の農業としては国際競争力を強化するという方針、国内においては他産業との競争力を強めるという方針、こういうような方針が一つの農政の基本でございます。でございますので、農産物の自由化等につきましても、できるだけ競争力が培養されるまでは、なかなかやりにくいのでございます。しかし国際関係もありましたから、いままでたくさん自由化いたしました。いま二十八品目だけ残っておりますが、ことし中に四品目だけはやりたいと思います。そうすると、二十四品目でございます。そのあと等につきましては、これこそいまの総理お話ばかりではありませんが、慎重といいますか、やらないような方針で慎重に検討していくと、こういう態度でございます。
  69. 沢田政治

    沢田政治君 どうも答弁が納得し得ないんであります。答えを求めていることに対しては慎重ということで逃げますから、まさに慎重内閣だと思うんです、これは。  そこで、もう一つ私、この際お聞きしたいのは、八郎潟の干拓ですね。これは赤城さんもあいさつに行っておりましたね、あそこの完成式のときには。未来の農業の象徴であるなんて一席ぶっておりましたが、その心境をいま聞こうとは思いませんが、一体ここがどうなるかということです。どれだけの経費を国費としてつぎ込みましたか。さらにはまた、目下工場敷地になるとか飛行場になるとかということで、入植者あるいは近隣近傍の農民が非常に疑惑と不満を持っておるんであります。一体ここを、政府政府の手でつくり上げたこの干拓をどういう方向に持っていくか、この際明らかに示してほしいと思うんです。
  70. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) さきの答弁に対して、おことばを返すわけじゃありませんが、私ははっきり申し上げているつもりでございます、ことばが悪いからはっきり通じないかもしれませんが。  そこで、八郎潟の干拓事業には、昭和三十二年着工して四十五年までに約三百七十八億円の国費を支出しております。で、私は、やはり八郎潟の干拓というものは日本の農業のあり方のモデルケースで、いまでもこれは、飛行場にしたりその他いろいろにしてしまうというような意見がありまするし、米の生産調整から、もうやめろというような意見もあります。しかし、私は、これはあくまで日本の農業のあり方として、団地的農業の関係からいっても、機械化農業からいっても、進めていくべきだと思います。しかし、米だけをつくるというようなことは私は考え直さなくちゃいかぬ。米は御承知のように自給率二七%ですから、そういう関係で、需給調整も生産調整もしているようなことでございます。ですから、八郎潟のせっかくのこの投資した費用というものを生かして、これからの農業というものは、やはり畜産、果樹、それからまた水田農業じゃなくて畑作農業というものが非常におくれておりますから、畑作農業というものにうんと力を入れなくちゃならぬ。こういうことから考えますと、八郎潟の現状も、なお入植等の残っている面積もございます。そういう面積もありますので、端的に言いますならば、畑地に転換する、あるいは畜産の草地造成にも向けられると、そういうようなことで、せっかくここに投入した費用を生かして、日本農業のこれからのあり方に相応していくようなことに持っていきたいと、こういうふうに考えています。
  71. 沢田政治

    沢田政治君 それじゃ、いま一説にあるところの、流布されておるところの飛行場説、まあ、ひどいのになると自衛隊の基地になるとか何とか、そういう話もあるわけでありますが、そういうもの、工業地帯にする、そういうことは否定しますね。ありませんね。
  72. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) そういううわさも私は聞いてないわけではございません。しかし、飛行場にするとかあるいは何とかにするとかというようなことを考えないで、あくまで農業のあり方を生かしていくということに使っていきたいと、こう思っています。
  73. 沢田政治

    沢田政治君 農林大臣、総合農政というのは一体どういうものでしょうか。非常に米をめぐる農業問題が深刻になるにつれて、まあ、政府のほうでは総合農政の展開によって明るい農業なんて、こうキャッチフレーズを出しておりますが、多くの農民は総合農政が何だかわからぬのであります。総合農政という器があるけれども、中身に盛るのは何であるかということは一向わからぬわけであります。でありますから、政府が総合農政といわれる中身は一体何ですか。私もわからない。農民もわからない。何であるかここでその中身を明らかにしてほしいと思うのです。
  74. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 大臣もわかんないだろうと言っておりますが、私も、農政は総合的でなくちゃならぬことは当然でございます。ですから、総合農政というのはあたりまえだと思っているので、また総合農政ばかりでなく、農政はやはり総合国政の中に入っていかなければこれはならぬと思うのです。そういう意味におきまして、総合農政の定義というものはっきりしておりませんが、私は、先ほど申し上げましたように、農政の行き方というものが、国際的にあるいは国内的にも国際競争力を強めていくと、そういうことになれば、国内的には生産性を向上する、また生活面からいえば他産業との所得の格差を少なくしていくというようなことになると思います。それからもう一つの大きな柱は、需要供給のこれはバランスをとるということが農業においても必要だと思います。需要供給のバランスがとれなければこれはいけません。そういう意味で、米については、先ほど申し上げましたように、一一七というように自給率がこえておりますから、こういうものはバランスがとれるようにしていかなければ、米作農民にとってもあるいは消費者にとっても思わしくないわけであります。あるいはまた自給率が足らないもの、こういうものにつきましては極力自給度を増していく、こういうようなことだと思います。  そこで、総合農政というようなことはどういうことかということでございますが、これは端的に言いますと、昭和四十五年の二月に閣議了解事項として「総合農政の推進について」と、方向をきめておりますから、それをちょっと読み上げます。一つは、規模が大きく生産性の高い近代的農業の育成、これが一。二は、米の生産調整と農業生産の再編成ということが二つであります。三つは、農産物の価格安定と流通加工の近代化。四は、農家所得の確保増大と生活水準の向上。五は、離農の援助促進。六は、生産基盤と生活環境の総合的整備、こういう六つを総合農政の内容としてきめております。でありますので、総合農政全体としてはちょっとわかりにくいのでございますが、これらのものを総合して推進するということが総合農政でございます。
  75. 沢田政治

    沢田政治君 私もこの問題についてはしろうとの一人に入ると思いますが、非常に何といいますか、内容がないのです。どういう手法で、いつ、どうやるかという明らかな展望がないわけであります。少なくとも私はしろうととして考えた場合でも、もちろん米の問題は米だけでは解決しない、農業の問題は農業サイドだけでは解決しない、これも私は知っています。しかしながら、農業の問題を考える場合に、少なくとも総合農政という現状を踏まえて、総合農政というからには、長期にわたる総農産物の需給計画というものを明確に私はすべきだと思うのであります。一体日本で将来の消費者の嗜好を含め、人口を含め、どれだけの総農産物が必要であるかという柱をまず一本立てること、そこにおいて国内の農民にどれだけの自給度をさせるのか、九〇%にするのか八〇%にするのか、いまのように五〇%に近いものにして外国食糧に圧迫されることをまかせておくのかという、こういう自給度を明確にすることだと思います。そうして品目別に自給度を決定してやるわけであります。そうすると農民が初めて、おれがつくったものが売れるのだということで適地適産の原則というものが初めて私は軌道に乗ると思うのであります。それを全然やっておらぬわけであります。総合農政という絵図面は書いておるけれども、まだ土台がないのであります。これを早急にやる意思があるかどうか、具体的に私はお聞きしたいと思います。
  76. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) やってないわけではございません。やっておりまして、自給度の指標というようなものもつくっております。たとえば五十二年で少なくとも現状程度を確保したいと思っております。米の自給率はいま言いましたように現在二七ですから、これを一〇〇とする。その場合、総合的には米を一〇〇とした場合に七七%、こういう自給度を明示しております。で、現在の自給率を申し上げますと、野菜とか鶏卵、これは一〇〇%自給できます。それから牛乳とか乳製品、肉類、果樹、これについては八から九割程度は国内生産でまかなっていく、こういう方針も立てて、一般にも知らしております。  なお、いまの適地適産ということでございますが、これにつきましても地域別にいろいろ生産目標というものが必要でございます。そういうことで、地域の生産ガイドポストといいますか、そういうものを昨年きめまして、そうして各府県に流しまして、その府県ではまた町村別にその自給ガイドポストに従って生産を進めていく、こういうものが必要だと。畜産地帯は畜産のほうでどれくらいやったらいいか、果樹地帯は果樹のほうでどれくらいやったらいいか、米はどれくらいにしたらよかろう。これは統制経済で統制的にやることができませんから、目標をつけて、その目標に従って自主的にやってもらうということで、県から町村まで流してこれをやっておるような次第でございまするから、ほうっておくわけじゃございません。
  77. 沢田政治

    沢田政治君 まあ適地適産をやっているようなことは言っておりますが、しからば米だけに限っても適地適産になっておりません。たとえば四十六年度米の二百三十万トンの減産分の割り当てに対しても、若干地域的な考慮は入れていますよ。これは考慮を若干入れたという感じだけの問題で、ほとんど過去の実績で割り振っておるわけであります。でありますから、北海道で五〇%というああいうリスクが出てくるのです。これは完全に実施されていません。これは早急にやはり適地適産の原則に私は戻らせるべきことと思います。そのためには、転作した場合には米ほどの収入はない、こういうことでありますから、主要農産物については価格支持政策というものがその背景になければ、私は転作というものは永久に不可能だと思いますが、その付近の御見解いかがですか。
  78. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 米の生産調整で、地域別の特徴といいますか、あるいは生産目標というものがあまり要素に入っていないじゃないかということは、そのとおり、入れてはおるのですが、十分入っていないという見解もありまするし、私どももそういう点があると思います。でありますので、米の生産等につきましては、そういう地域目標、こういうものを相当考慮に入れて生産調整の割り当てといいますか、そういうことをやっていきたい、こう思います。  それから転作と転換、あるいは果樹あるいは畜産その他に転換するということについて、米の生産よりも転換したほうが所得が減るというようなことでは転換の目標に沿わないじゃないか、こういう御指摘でございます。確かにそのとおりでございます。でございますので、いまの生産調整につきましても、単に休耕するというよりも、転作したものには手厚い生産調整金も出しております。  それからもう一つ、価格の面を考えなきゃだめじゃないか、こういうことでございますが、いまの農水産物の大体六、七割近くは価格支持政策を行なっています。でありますので、転換すれば転換しただけ所得も、米の生産などよりも減らないというような方向で、価格支持政策、これもどんどん進めております。お話のような方向で進めていくというふうに私どもは進めておりまするし、なお一そうその点注意しながら進めていきたいと思っております。
  79. 沢田政治

    沢田政治君 あなたの答弁では、あたかも転作がスムーズにいっておるような答弁に聞こえるわけでありますが、そういっていないのです。たとえば転作の場合に、休耕よりもこれは多いのですね、受け取る額は。だけれども、他のものをつくったとしても米ほどの収入が上がらぬわけでありますから、したがって申しわけ程度に、一ヘクタールにばらばらと何か野菜をまいたなという程度で、転作をしましたということが非常に一般的に行なわれておるわけですよ。なぜそういう休耕とかあるいはまた転作に対する補助とかをもっと別の分野に使わぬかということですね。やはり適地適産で、米が非常に生産性の上がるところは米をつくらせる。他に転作する場合には、再生産のきかないそういう手当てではなく、価格差補給金でもいいから、そういうもので私はその金を生かして使うべきだと思うのですが、いかがですか。
  80. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 根本的に言いますと、その稲作地帯は稲でもいいが、一般の水田というものは、やっぱり畑にも使えるような、かんがい排水でもあるいは客土でもして畑に使える、あるいは草もまける、野菜もやれる、果樹もやれる、こういうふうに畑地にも使えるというような、土地改良といいますか、構造改善といいますか、そういうことが生産調整を最終的にはっきりさせるのには必要だ。そういう意味で、私は土地改良もいままでのように稲をつくるばかりの土地改良じゃなくて、いまの土地改良も畑として使えるような土地改良をやっていくと、こういうことが大きな面で、転作というよりも畜産とか、あるいはその他の果樹とか、畑作の点にも必要だ、あるいはまた畑地に土地改良というものはほとんどしていません。畑作農業というものは捨てられております。でありますので、いまの点などからいっても、畑作農業のほうになかなかいきにくい。ですから、いまの御指摘のように、価格差補給金を出したらいいじゃないかという御議論も出てくるわけであります。でありますので、根本的には、やはり日本の農地というものを農地の構造改善、体質改善、これもしていかなくちゃならない、それからまた現在の転換におきましても、転換した分につきましては、ただ休耕しているよりは転換の生産調整の奨励金というものを多くするということは考えております。ですから、今度の予算その他につきましても、その点も十分考慮に入れなければならぬ、こういうふうに思っています。
  81. 沢田政治

    沢田政治君 農業問題については、相当、農林大臣と私は長時間かけて詰め合わせなくちゃならぬと思います。非常に一方的な聞き方、一方的な答弁のしかたで、歯車が合っておりません。ただ、田畑輪換の整備をやるということは、これは当然行なうべきだと思うのです。特に最近出かせぎが激増しているんです。これをどういうように労働省で把握していますか。動物的な飯場とか、家族の何というか解散ですか、瓦解ですね。それから蒸発、動物的な飯場、賃金の不払い、災害の頻発、こういうものに対して私は暫定法でもいいから、現実に出ているんだから、百二十万か百五十万かはわかりません、実態は。こういうものに対して保護立法をつくる気はありませんか。どうですか、労働大臣。
  82. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) お答え申し上げます。  出かせぎ労働者の問題は、いま非常に方々で議論されておるところでございまして、われわれもそれについて研究を進めております。現在、御承知のように、製造業が非常に出かせぎを雇うのが弱まっております。また、反対に公共事業がだんだん出てまいりますので、これで補えるかどうか、あるいは地方においては冷害等もあって出かせぎ者がふえるというような客観情勢をとらえて、たとえばいまおっしゃったような、賃金不払い、労働災害、動物的飯場、留守家族の問題等々いろいろ問題をかかえておることは私どもよく承知をいたしております。それでこれをどういうふうにやるか、いろいろやっておるところでございますが、一番多いのは、建設業に出かせぎ者が働いておる場合が多いのでございます。それで賃金不払い等につきましては、これは不払いになった場合には、元請——下請にも人が行っておりますが、元請に注意を与える、あるいは発注者に注意をして、こういう事実を知らすことにいたしております。かなり減ってきております。それから賃金不払い等については、自主的に業者が賃金支払い保証制度というのをつくっております。それで、ここに通達して、労働基準監督官が支払いをするように催促いたしております。だから、かなり進んできております。  労働災害については、これは非常に一番建設業に多いのでございまして、これを何とかなくしたいと思って、労働基準監督官を督励して、元請事業から下請事業、一貫した管理体制をやるように指示いたして、いま行なわせております。それから危険な作業場については、未熟練労働者を使ってはならぬという禁止をいたしております。第三には安全衛生教育をやっておる等々いろいろやっておる。  それからもう一つお話のありました飯場が動物的であるという、前にはかなりひどいものでありました、労働省で調査した場合でも。それで昭和四十三年四月に建設業附属寄宿舎規程というものを設定して、いまこれの基準に照らして一々点検いたしております。それでその規程に沿うようにやらせているような次第でございます。その他留守家族の方々等の相談にも婦人少年室協助員をしてそれをやらせている等々、いろいろやっております。  それからいまお尋ねになりました、結論的に申されました出かせぎ労働者に対する立法措置をやるか、やる用意があるかと、これは、やれるかどうかということを労働省でも調査いたしましたが、なかなか立法上非常になじみにくい点があります。たとえば一番多く建設業の下請などにくる。その場合において、仕事についてしまうと出かせぎ人と出かせぎでない方との区別はないわけでございます。これをどう区別するか、しないか、あるいは製造業に入っている方でも、出かせぎの人と出かせぎでない労働者とありますが、これを区別するというわけにはいかぬし、区別がなければ特別の立法にもならないし等々、非常に困難なところがございまして、結局私どもといたしましては、来たるべき通常国会に労働安全衛生法という単独法を提出する考えでおります。現在あります労働基準法では十分でございませんので、労働者の安全と衛生を特に強調した単独法を通常国会に提出して御審議をいただこうと思っております。その場合においても、いま沢田委員のおっしゃられた出かせぎ労働者に対してもその法律の中において処置するようにいたして御期待に沿いたいと思っております。
  83. 沢田政治

    沢田政治君 地域住民の相当の反対にもかかわらず、まだ国有林野がヘリコプターによって除草剤というものを散布しているようですね。あれは塩素系ですか、一時はベトナムで使われたあの枯殺剤、あれを使っておったわけでありますが、あれは一応やめたようでありますが、なおかつ、非常に地域の住民が不安を感じておるわけであります。公害問題がやかましい今日、国がその安全性もはっきり科学的にわからぬものを使うということは、即時中止すべきだと思うのであります。農林大臣と環境庁長官いかがですか。
  84. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いままで除草剤は山林労働者の減少傾向に対応して実施してきておるのでございますが、いまお話の塩素酸の塩類は、その使用の実態からも人畜とか自然環境に悪影響はないと考えますけれども、今後とも公害防止、自然保護については十分な配慮を加えていきたいと思います。問題が二カ所ばかり起きていました。私どもも十分これについては深い関心を持ちまして、一般の農薬につきましては、農薬の害のあるものはやめさせたと、今度またやめさせております。山林だけでこういうものを使っておりますが、山林におきましても極力これを使わないようにいまやっています。しかし、全面禁止というところまでまだいっておりませんが、これはやめる方向で進めているわけであります。
  85. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) ただいま農林大臣がお答えしたとおりでございますが、いままでは大体三つの農薬が使われております。そのうちのBHCはことしの秋からこれは使用禁止になりましたし、また、除草剤である二四五Tですか、これも催奇性があるということで、これもこの春から使用禁止をいたしております。残るものはクロレートソーダでございますが、という薬品がいま空中散布をされている状態でございます。これはわれわれ及び農林省の調査では、人間に対しても魚類に対しても毒性はほとんどないと、ただ劇薬には指定されておりますが、毒性はないし、また催奇性も、その他残留性、こういうものはほとんどないということで現在は使用いたしております。しかしそれにつきましても劇薬でございますから、十分に注意をしまして、人畜に被害のないように、そのような方面で厳重な監視をしながら、それを使用さしていきたい、こう考えておる状態でございます。
  86. 沢田政治

    沢田政治君 農林大臣はやめるような方向にもっていく、今度は、環境庁長官は監視しながら使用させる。これどっちですか、やめさせるべきですよ。
  87. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 私どももこれを使用しないことには賛成でございます。したがいまして、できるだけ早い段階でこれが使用しないようになることを心から願っております。
  88. 沢田政治

    沢田政治君 最後にお伺いしますが、むつ・小川原ですか、あそこを工業地帯にするということで現地では非常に反対運動が起こっております。これは単なる反対運動ではなく、該当地区の住民が、たいへんな公害がくるのじゃないか、こういうことで、鹿島地区ですか、あそこを見学した結果、これはたいへんだと、こんなものを持ってこられたんじゃとてもわれわれは住めなくなるということで、非常に純粋な、イデオロギーとか政治の問題とかじゃなく、やはり環境を守るという面から非常に強い反対運動が起こっていることは御承知のとおりであります。したがって太平洋ベルト地帯はまさに汚染地にし尽され、残っておる緑にまでもこれを公害の広域化をするということは全く許されないことじゃないかと思うんです。日本列島の総公害化につながると思うんです。そういうことでありますから、特に環境保全、これには非常に熱心だという、評判のいい環境庁長官、どう考えていますか。  さらにはまた経済企画庁長官、あくまでもあそこを工業立地にするつもりですか、どうですか。
  89. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 日本の国の経済がバランスのとれるように、国民個人個人の経済のバランスがとれるような意味におきまして小川原湖地域にそのような工業地帯がつくられることは、私は国の全体の経済から望ましいことだと思います。ただ問題になりますことは、このような公害のない自然環境のきわめていい地域に公害を持ち込むことは非常に困ると思います。そういう点で公害のない工業地帯をつくり得るように十分な計画を検討いたしまして、その他の実施をする場合にはあらゆる条件を考えまして、公害のない地域、それを大きな見地から考えまして、そのような地域をつくることにわれわれも全力をあげて協力してまいりたいと願っておる次第でございます。
  90. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) いま環境庁長官からお答えしましたとおり、むつ・小川原開発は新全総に基づく大規模開発プロジェクトの一つでございます。従来あったような公害を全国にばらまくようなことをしないために、むしろ新全総できめた大規模計画でございますので、もうあらかじめそういう環境正常システムと申しますか、事前調査、予防を完ぺきにして、そういうようなことを盛り込んだマスタープランのもとに基づいてやる、こういうことでございます。いま御指摘のようなことは絶対ないように心がけていきたいと思います。
  91. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上をもちまして沢田君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  92. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 引き続き、塩出啓典君の質疑を行ないます。塩出啓典君。
  93. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは私は内政問題にしぼりまして総理並びに閣僚にお聞きしたいと思いますが、総理は今回の施政方針演説で、国民福祉と経済成長の調和のとれた新たな繁栄への条件をつくる、そのように言っておりますが、六年間政権を担当してきた佐藤さんのその路線が延長されるのか、ここで方向転換するのか、その点をお聞きしたいと思います。
  94. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 塩出君がただいま指摘されましたように、過日の施政方針演説で私は内政に向かって、しかも国民福祉の立場に立って、いままでの経済成長のあり方、これを見直す、総点検する、こういう考え方でスタートする、これが御理解をいただいておると、かように思っております。
  95. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 では佐藤総理は今日までの佐藤内閣経済財政政策というものは失敗であったと、そのように認めますか。
  96. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は失敗であったとは思わない。いま経済成長は、ただいままでのところすばらしい成長を遂げてきた。これは自由世界陣営において第二位のその地位にまで上がった、かように私は考えております。こういう際にこそ余力ができたのでありますから、内に外にやっぱりいままでのような態度ではなしに、やり方を軌道修正をしていく、これは当然のことじゃないかと、かように思っております。
  97. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 どうもその点はなはだ私は納得できないわけですよね。きのう本委員会の答弁で大蔵大臣も、そういう財政政策の失敗を認めたわけです。また、昭和四十五年に、経済社会発展計画、これはもちろん人間性豊かな経済社会へという総目標で昨年できたわけでしょう。それがもう改定しなければならないということは、私はやはりいさぎよく失政を認めるべきじゃないかと思うのですが、きのう大蔵大臣はちゃんと——四十四年度の、ああすればよかったという責任を感ずべきじゃないかと私は思うのですが、その点いかがですか。
  98. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は責任を回避するとか責任をとらないと、こう申すわけじゃございません。過去の実績そのものの見方が、ただいまのように重点を変えた見方をすべきそのときにきておる。だから私は過去のわれわれがとってきたその政治路線、それが間違っていたとは思わない。しかしこの段階になってきて、いままでの路線を守る、そういうことだけではいかぬ。われわれがさらに発展するためにはやはり軌道修正していくべきだ、かように思っておるのでございまして、それについて全然責任がないとか回避するとか、そういう意味で以上のような発言をしておるわけではございません。私はいままでの経済発展は経済発展としてそれなりに評価願いたいし、この段階になると、われわれはもっと内に外に考うべき事柄、いままであまり力点を置かなかった点をさらに力点を置いて軌道修正すべきではないか、かように思っておるわけであります。
  99. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあ佐藤総理は、そういう軌道修正の必要は認めるけれども自分の間違いではなかった。このことをやりとりしてもこれは切りがありませんから次に進みますが、そこで、今度軌道修正をした新しい佐藤内閣の路線の実態はどういうものですか。これは経済企画庁長官。
  100. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 当然経済運営の問題でございますが、従来輸出第一主義と申しますか、あるいは民間設備第一主義において経済成長率の高さのみにウエートを置いてまいりましたが、今後はただ経済成長率のみならず、その質的内容、たとえば社会福祉重点主義の、あるいは政府投資重点主義の経済運営に切りかえていくという点が一番おもな面であろうと思います。
  101. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 きのう本委員会でいろいろそういう新経済社会発展計画等も改定をすると、そういうようなお話であったわけですが、この新しい佐藤内閣の路線についての裏づけとなるそういう計算等はまだ全部なされてないと、そういうことですか。
  102. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 先般、補正予算を機会に一応経済見通しの暫定作業をやりましたが、当然いま現行の新経済社会発展計画、この改定作業をやらなければならぬ時期であろうと思います。経済審議会と緊密な連絡をとりまして、明年、全般にわたって本格的なこの改定作業を行なおうと考えております。当然その中では、いま申し上げたような基本的な資源配分のパターンも変えなきゃならぬでございましょう。そういう意味の内容を盛り込んだ見直し作業をいまから始めようと、着手する段階でございます。
  103. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 佐藤さんにお伺いしますが、まあいろいろ新しい路線の話がきのうからも出ましたけれども、結局まだその具体的なものは何もない。ただ観念的なものであって、言うなれば、まぼろしの路線といいますか、これから実体を、計画をつくっていくというのですから、そういう点私は非常に無責任じゃないかと、そういう気がするんですけれども、どうですか、そういう点は。
  104. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 審議の経過でやや時間的なズレがあるだろうと思います。御承知のように、ただいまは臨時国会で、そして緊急な必要な問題と取り組んでおります。いま言われる本格的な軌道修正なり、あるいは経済見通しなり、また国内に対する施策なり、これは来年度予算審議の際に、通常国会において論議されると、かように御理解をいただきたいと、私はそれだけ申し上げておきます。
  105. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 じゃ、この補正予算ではまだ軌道修正はなされてないと、そう見ていいわけですね。
  106. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 片りんは出ておるが全貌は明らかじゃないと、かように思います。
  107. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあなかなか……。  次へいきましょう。それで大蔵大臣にお聞きいたしますが、まあ公債の問題についてはいままでもたびたびここで論議をされ、いま財政制度審議会にも答申を求めているそうで、そこで公債の消化についてこの基本的態度を聞いておきたいと思うんですが、きのうも日銀総裁は、今回の補正予算の公債の消化は外為交換による資金があるために消化は可能だと、そういうお話でございましたが、四十七年度、これは一兆五千億から七千億の公債を発行すると聞いておりますが、そういう公債の消化が市中で、銀行の消化が可能であるかどうか、見通しをどう考えているのか。
  108. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は可能であると思います。と申しますのは、金融緩和基調は来年も大体変わらないと見ますし、皆さんが、来年相当の国債を出すときには日銀引き受けの国債になるんじゃないかということを心配される方もございますが、この必要というものは来年ない。と申しますのは、もう現在、市中が相当の公債、政府債を一兆円以上持っておりますし、また、いまの日銀は一般貸し出しがゼロというようなことでございますので、この金融政策に対する弾力性というものは非常に持っておるときでございますからして、したがって日銀が公債の消化のために日銀引き受けをしなけりゃならぬというような必要性というものは、おそらく来年はないというふうに思われます。また政府としましても、利回りのいい十年債とかいうようなものも来年は発行する予定でおりますので、そうしますというと民間の消化ということも考えられますので、私はこの点の心配はないというふうに考えています。
  109. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、きのう日銀総裁は、市中銀行で一年を経過しなければ日銀が買い上げることはしないと、これを守っていきたいと、そういうお話でございましたが、この一年というのは、これは大体何に基準を置いているのか、どういうわけで一年になっているのか、ちょっとその点をお聞きしたいと思うのですが。
  110. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは大体金融事情に応じて一ぺん民間がまず公債の消化をする、そうしてこれが完全に消化し終えたという公債に対しては、一年過ぎてこれを日銀が買い取るというようなことなら、いわゆる日銀引き受けというものとは全く機能の違うものになるということで、特別のめどはございませんが、やはり一年という程度が妥当だろうというふうにきめたわけでございます。
  111. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 何できまっているのですか、どういう基準でこれきまっているかということ。だれがきめたのか、一年というのは。
  112. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは日本銀行がオペをする場合の内部の取り扱いできまっております。
  113. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 で、まあこの一年という期間を自由自在に短縮をしたんでは、これは非常に公債の歯どめという点においてもよくないのじゃないかと思うのですが、そういう点で、大蔵大臣としてはこの一年という期限を短縮するようなことは絶対ないと、そのように約束できるかどうか。
  114. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 市中消化の原則と、この一年というものはもう変更しないというつもりでございます。
  115. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、今回の補正予算について、景気に及ぼす効果といいますかね、これは大蔵省、経済企画庁としては大体どの程度を考えているのか。これは経企庁ですけど。
  116. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 今回の補正予算によってわが国の年度内におけるGNPに対する効果は約〇・九、まるくして一%程度だと考えます。
  117. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 経済企画庁長官は、これは九月の二十一日ですかね、そのときに、ことしの不景気のために実質成長率は七・五だと、ところが課徴金とか為替変動によってマイナス二%、それで五・五に落ちると、これをいろいろ公定歩合の引き下げとか補正予算によって五%台に下がるのを七%台に上げたいと、そのように言っておるわけですが、大体経済企画庁長官の見通しというのは、こういうようにわずか一月もたたぬ間にしょっちゅう上がったり下がったり、非常にわれわれもそういういいかげんなものかなと思って判断に苦しむわけです。その点はどうなんですかね。
  118. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 国際経済情勢がいろいろ流動的でございますので、われわれとしましては一応政策的努力を加味した見通しをそのつど申し上げますが、しかしながら、政府として公表いたしましたのは、先般閣議で説明をいたしました見通し作業の五・五でございます。
  119. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうすると新聞記者等の会見で発表したのは、これは正式な発表ではないと、こういうことですね。
  120. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) これをそのつどいろいろ私の個人的見解も含めて記者諸君には懇談をしております中で、そういうものがあらわれてきたと思いますが、政府の公式な立場は、あくまで見直し作業の結果である五・五というふうに御了承賜わりたい。
  121. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、大蔵大臣に外貨の準備高について二、三お聞きしておきたいと思いますが、十月末で百四十億ドルに達したと報ぜられておりますが、今後の見通しはどうなっているのか。
  122. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いまのところではまだ増加額は毎月非常に少なくなってはおりますが、まだしばらくふえるんではないかという見通しでございます。
  123. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大体この適正準備高というのはどの程度を考えておられるのか。
  124. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これにはいままで通説がございませんで、学者のうちには、極端な意見は、別に準備高をそう多くとる必要要らないという諭者からありますので、どれくらいを持たなければならぬという基準というものはいままでございませんが、一般によくいわれておるのは、輸入の四カ月分程度持ったらいいんじゃないかというようなことはわりあいに多くいわれておりますが、そうしますというと、私どももしばしばここで答弁したことがございますが、もしその程度ということになりますというと五、六十億ドルということになろうかと思いますが、基準はとにかくございません。
  125. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 現在の百四十億ドルの内訳というのは大体どうなっておるのか。これは別に、ここでなければあとから資料として提出されてもいいわけですが、その点よろしいでしょうか。
  126. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それじゃ申し上げますが、百四十億ドルは、御承知のように、変動為替制度をとる前に異常にふえたということで、そのふえた内容が前受け金、いわゆる前受け金がふえたものの一番大きい部分であるということでございますので、このふえ方は異常なものでございますので、今後だんだんに入ってくるべきものが先に入ってきたというようなことで、これからの外貨流入というものは非常に少なくなっていくんではないかというふうに思っております。
  127. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この余分の外貨を今後どういうように使っていくかということでございますが、総理としてはこういう外貨をどう使う方針なのか。
  128. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 輸出を円滑にするために外貨の預託制度をつくりましたので、そういう点にも利用されますが、しかし御承知のように、この外貨がたまるということは、同時にそれだけの円を国内に出して外貨をためるということでございますので、これを使うためにはそれだけ今度は円を外為会計に入れるということをしなければ、これは使えないということになりますので、したがって、よくこのたまっておるからすぐにこれを外国援助にどんどん使えばいいじゃないかというのですか、たまったものは、これを使う場合には、それだけの予算を組んでそうして使わなければ、使えないということでございますので、できるだけこの外貨の活用は考えますが、活用するためにはやはりこれを予算の上ではっきりと予算化した使い方をしなければいかぬという問題がございますので、この点について調和のとれた使い方を十分研究したいと思います。
  129. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで総理、これは私お願いしたいわけでございますが、防衛大学の猪木さんも、外国人のそういういろいろこちらに呼んだりする費用は安全保障費だ、そういうように話をされておるわけですが、やはりどんどん自衛力、そういう装備に力を入れることよりも、やはり日本の青年や主婦や学生をどんどん外国に行かせ、また外国の人を日本に呼ぶ、これがやはりほんとう意味の安全保障じゃないかと思うのですね。そういう点で、学者の中にも外国へ招待されてもなかなか行けない、行ったらまたこっちへ帰ってきて、呼ばなければ、その予算がないからなかなか行けない、そういうお金が非常にないということ。私はそういうやはり国民外交を推進する、あるいは文化外交、きのうもここで話が出ましたけれども、そういう点にはひとつ大いに力を入れて、これがほんとうのやはり安全保障だと、私はそのように思うのですが、総理、お考えどうですか。
  130. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ安全保障ということばの持つ意味ですが、そういうこともその一助にはなるだろうと思いますけれども、私はもっと学者、一般人、これが外国と交流すること、これがもっとひんぱんに行なわれてしかるべきだと思っております。ずいぶん観光旅行なぞはひんぱんに行なわれておるようですが、観光旅行であとに一体何が残るか、これなぞ考えると、いま指摘されたような文化人等の交流あるいは若い人たちの交流、これは最も大事なことではないだろうか。いまのわが国のたてまえが平和だ、平和をまず第一に考える。こういうことを考えますと、もっと知識を広く外国にも求める、こういうことでなければならないと、かように思います。いままでもこちらから派遣される人たち、これが先生方を主として予算化、どの程度できているか、いつも問題になるのでございますが、ただいまもお話がありましたので来年度予算編成にあたりましてはこういう点には力をいたしたい、かように私考えております。そのことだけ、つけ加えておきます。
  131. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 総理は「社会資本、社会保障を充実するなど国民福祉」につとめる、そのように今度の演説で述べ、「今回提出する補正予算は、その手始め」だ、片りんだといま言われましたけれども、今度の予算で社会保障の面ではどういう処置がとられていますか。
  132. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 公共事業費の増加分にいたしましても、これはただ単に道路だけではなく、やはり住宅、下水道の整備あるいは養老院その他児童福祉施設、そういうもの、あるいは学校等の整備にもやはり補正予算は使われておる、その中身は皆さん方も十分御審議をいただいておるものだ、かように思っております。
  133. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大蔵大臣は、今度の減税でございますが、減税については「国民各位のたゆまざる御努力に報い、また、景気のすみやかな回復」をはかるために今回の減税をした、そのように提案の中に述べておるわけですが、そういう趣旨は私も非常に敬意を表するわけですが、まあしかし今回、そういう減税の内容も上に厚く下に薄いといわれておる。しかも二千五百万人もいるいわゆる課税最低限の収入であるそういう低所得者、そういう人たち、あるいは生活保護、老人、そういう年金等に対しては何一つ報いてないわけですね、今度の内容は。まあ物価上昇というのは非常にいまきびしいわけですから、そういう点ではちょっと不公平ではないか、私はそう思うのですけれども、大蔵大臣。
  134. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 所得税の減税で控除の引き上げということで八百三十億ということでございますから、相当この引き上げによって減税の恩典は大ぜいの人に及んでおると思います。で、きのうもお話しましたように、年金その他のものは社会保障制度として、これは恒久的な制度として考えらるべきものでございますので、これを景気対策とか不景気対策とかいうような一時的な財政政策に使うということは不適当であるという考えから、そういう種類のものは今度の不況対策には入れなかった。そのかわり、来年度の本予算編成のときにそういうことを考えたいということで、これを今度は見送ったということが一つと、もう一つは、社会福祉的なことについては相当考慮いたして、百八十億程度の予算は補正いたしておりますが、しかしそれもいま言ったような考えからでございまして、この福祉施設とか病院、療養所、そういうようなものの施設費と人件費というものに今回は限ったということでございますので、実体的ないろいろ経費を支出する、個人個人にこれが及ぶというもの、たとえば生活保護費のようなもの、当初予算で本年度は相当大きい引き上げをしておりますので、こういう問題についての考慮は、この不況対策という一時的な措置からは省いたということでございます。この次の予算編成のときに十分考慮したいと思っております。
  135. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあ大蔵大臣の言われることは納得ができないわけでございますが、ともかく次の来年の予算においてはそういうのは検討すると。大体、いま、もう来年度の予算編成はできていると思うのですが、厚生大臣にお伺いしますが、そういう来年度の社会保障、特に年金等のそういうのはどういうようになっておるのか、厚生省の要求をお聞かせください。
  136. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 来年度におきましては、総理の施政方針で述べられましたような趣旨に大きく切りかえられるものと、かように期待をいたしておるのでありますが、つきましては、まずさしあたって、老人対策といたしまして福祉年金を大幅に引き上げたい。それから各種の老人対策をはじめ心身障害児あるいは障害者、また原因不明の疾病等で苦しんでいる人たちの療養等をはじめとしまして幅広くやってまいりたいと思います。同時に、医療保険制度の改正によりまして高額な一部負担で困っている人たちも相当あるわけでありますから、そういう人のないようにいたしてまいりたい、かように思いまして思い切った予算の要求をいたしておるわけでございます。
  137. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 現在の老齢福祉年金は来年度は大体幾らに引き上げる方針でございますか。
  138. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 来年度は月額千三百円を引き上げまして三千六百円にいたしたい、かように考えております。
  139. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 佐藤総理にお願いしておきますが、こまかいことは時間もございませんけれども、先ほど佐藤さんも、来年度の予算から福祉優先に本格的に転換をすると、そういうことをはっきり言われたわけですから、いろいろ予算要求等も、こういう転換する前の予算要求もあると思うんですが、さらに前進をしていかなければならぬわけですから、そういう点、来年度の予算案に福祉生活優先をはっきり反映させると、そのように、ひとつ非常に抽象的ですけれども、約束をしてもらいたいと思いますが、その点どうでしょうか。
  140. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの段階は、私に頼まれるよりも、また私を鞭撻されるよりも、大蔵大臣を鞭撻されるほうが最も望ましい形ではないかと思っております。  私の基本的な方針は、すでにこの席でも申し上げましたし、また本会議の席上でも申し上げたとおりでございます。また、ただいまたいへん苦心しておるのは大蔵大臣でございまして、いまのような社会福祉関係の支出要求は非常に大きい。しかしなかなか予算の財源は十分でない。その財源のほうは、ずいぶんまた皆さんからも公債発行するのじゃないか、そのほうは締めろとか、あるいはまた公共料金を上げるのじゃないかというようなことで、ずいぶん監視されております。私は、大蔵大臣なかなかむつかしいんじゃろう、骨が折れるだろう、かように思っておりますので、どうかそれらの点も含めて、ひとつ大蔵大臣にも御鞭撻いただくように、どうぞよろしくお願いしておきます。
  141. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 じゃ大蔵大臣ひとつ。
  142. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 社会保障費関係は、ことしの率で言いますと一七・八%です。相当当初予算で多くして、一兆三千五百億円近い経費になっておりますので、今後、いま総理の言われたような方針に沿って財政政策の転換をはかりますが、何ぶんにも歳入に相当制約されるところが多いものでございますから、来年これをどの程度伸ばせるか、まだいまのところそこまでの構想はできておりませんが、予算の査定の過程で、とにかく編成方針を、いままで述べた財政方針の線に沿った編成をしたいと存じます。
  143. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いま大蔵大臣、総理も言われたように、非常に自然増の伸びが減ってくる。一方においては社会保障、そういうような点で非常に財源的にも公債発行も限界があると思うのですけれども、そういう点で大蔵省は新税を考えている、そういうようなことを新聞で見たわけですけれども、そういう点はどう考えているのか。
  144. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 税制調査会の前回の答申もございまして、一つ方向というものは示されております。その中に、やはり間接税のあり方についてというものもございますが、しかしこの間接税というものは非常にむずかしくて、そう急にこれを税体系の中へうまく取り込める間接税というものはなかなかむずかしいと思いますので、したがって来年はそういう意味で新しい財源というものが実際問題としてあまりないということで、いまいろいろ苦心しておるところでございます。
  145. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 新聞等ではギャンブル課税とか、航空機のガソリンに課税するとか、広告税をするとか、そういう点はどうなんですか。
  146. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま言われたような問題、それから特別措置の問題、洗いざらいとにかく来年度は税制を検討するつもりでございます。
  147. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、まあこれは総理にもお願いしたいわけですけれども、洗いざらい税金を検討すると、これはもちろんまあ平等に取る意味ではそれは非常にいいと思うんですよ。けれども、やはり同時に出すほうも洗いざらい検討してもらわないと、国民に対して、税金を取るほうばかり一生懸命で、出すほうをやはりもっとやっていかなきゃいけないと思うんです。そういう点で、ひとつ行政改革の問題、あるいはまた四次防の削減、当然今回は社会発展計画も全部全面変わるわけですから、当然やはり防衛計画のそういう長期構想等も、これは根本から変えなければいけない。そういう点で四次防も引き延ばすとか、そういう意見も出ているわけですが、そういう点、どう考えているのか、総理見解をお聞きしておきたいと思うんです。
  148. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお尋ねになりましたように、来年度予算編成はたいへん苦労、苦心を要するだろうと、かように思います。私は大蔵大臣のお立場についても十分理解しておるほうでございます。しかしてただいまわれわれが考えておる方向は、やはり国内消費、しかもそれが老人あるいは子供——幼児ですが、そういうようないわゆる社会福祉対策を積極的にやれと、こういうようなお話が出ている。これが学者によりましてはいま減税をしてもそれは貯蓄には回るが消費のほうにはつながらないぞと、むしろ積極的に消費に役立つのは老人年金だろうとか、あるいは幼児の手当だろうと、こういうような議論をする人もございます。またそういう意味でわれわれも当面する経済対策からこういう点も他の効果のあることをも見のがさないで、本来の年金そのものでなしに、十分経済的な効果も考えていきたいと思います。  また、ただいまも御指摘になりましたように、入るほうについても総点検をする。ただいまの段階だと、新税をつくることについて、これがたいへん気やすく議論されますが、具体的に新税をつくるとなると、これはたいへんな問題だと思います。これはなかなか容易に国会の御承認を得ることは困難だろうと、かように私は想像をいたします。そういうことをも考えながら、支出について総点検しろと、ことにまあその場合に一番問題になるのが四次防といわれるものでございます。私自身もまだ四次防そのものの全貌を明らかにしておりません。たいへん不勉強じゃないかというおしかりがあろうかと思いますけれども、まだただいまのところそういう段階であります。しかし、私が抽象的に申しますのは、いままでもしばしば申しましたように、わが国土、わが祖国、これはわれわれの手で守る。こういう気概を持ってこの問題と取り組むべきだと、かように思いますので、四次防のマイナスの面ばかり指摘されましても、これはいかがかと思います。私は備えあれば憂えなしという、これがいわゆる戦争をするということじゃなくって、そういう軍備自身の戦争抑止力、それに特に注意していただきたいと思います。私は戦争をやらないためにも、そういうみずからの国土はみずからの手で守るという、そういう気概を持つと同時に、それにふさわしい姿でありたいと、かように思います。しかし今日の段階で、ただいまの四次防をいかにするか、こういうことは非常にむつかしい段階だと、かように思っておりますので、私はいわゆる四次防ということでそれがどういう点に力点が置かれるだろうか。そういうことをも含めて、ただいま研究段階であります。その際に塩出君のただいまの御発言などは十分参考にすべき問題だと、かように思っております。まことに抽象的な答えをいたしまして恐縮でございますが、私はただいまのように防衛費、これ自身の考え方はいまのような考え方でございますから、その点は誤解のないようにお願いしておきます。
  149. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 総理は、いろいろ国際情勢も変わってまいりましたし、また国の経済の動向も変わってきたわけですから、そういう点で四次防についても根本的に検討し直すと、そのように判断していいですね。——わかりました。  それで、ただいま私お聞きした中で、ひとつ行政改革の問題がございますが、これは前の臨時行政調査会の会長だった佐藤さんが、お役所仕事はどれぐらいむだがあるかということを調査しようとしたけれども、なかなか調査できなかった。いろいろ調べてみると、大体一兆円から五千億円ぐらいのそういう損失があるだろうと、そういうようなことを言っているわけですけれどもね。まあもちろんこれが出たときといまとは違うと思うのですけれども、私はいよいよこういう事態を迎えて、この行政改革というものをほんとうにやはりやってもらいたい。また、そのためにはやっぱり佐藤さんが、総理ほんとうにリーダーシップをとっていかなければこれはできない問題だと思うのですね。私はほんとうに企業においても緊急時を迎えて皆いろいろ経費の節約をやっているんですから、国もやはり率先して示していかなければならぬ。そういう点で私は総理の決意を聞きたい。それが一番大事なわけですけれども
  150. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は行政官庁の長でございます。最高責任者でございます。そうして今日の行政機構そのものについてはいろいろの批判がある。また非現代的だと、こういうのは一番当たる批判ではないかと思います。もっと効率をあげなければ国民の要望にこたえ得ないと、かように私は思っておりますので、これには非常な勇断を必要とする、かようなたちの改革、そういう問題だと、かように思っておりますので、その点では皆さん方の御鞭撻を心からお願いする次第であります。
  151. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  152. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。  午前の審査はこの程度とし、午後は三時半より再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時五十九分休憩      —————・—————    午後三時四十分開会
  153. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、塩出啓典君の質疑を続行いたします。塩出君。
  154. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは総理がまだお見えになっておりませんので、ちょっと質問の順序を変えまして、まず最初に私は、この公害問題に対する政府の姿勢についてお聞きしたいと思いますが、去る九月に通産省は重金属全国調査におけるたれ流し工場の公表をしたわけでございますが、そのときに工場の名前は秘密だといって発表しなかった。こういうことは私は、今後の公害行政において全くよくないと思うのですが、通産大臣はどう思いますか、その点は。
  155. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 当時そのことは新聞にも報道せられたわけでございますが、私も新聞を見ましたときには積極的に公表をすることが望ましいと考えたわけでございます。そして事務当局にその間の事情をただし、法制上の根拠等を調査をいたしましたら、御承知のとおり、法律的な権限は通産省にはなく、都道府県及び環境庁に権限が存するわけでございます。でございますので、都道府県が公表することはできるとしても、通産省が調査をした結果を発表する場合には都道府県の承諾が前提となるわけでございます。でございますので、一部の都道府県が、みずからの権限のある都道府県が発表すると同時に、残された数府県と連絡をしまして、その承諾を求めて、通産省もおくればせながら発表したわけでございますが、しかし、法律的な根拠からいたしますと、通産省には調べたものをそのまま——常識的な考え、また公害問題が非常に重大なときでございますから、気持ちの上ではよく理解できるのでございますが、明確に法律で通産省がやっていい、また発表してもいいという根拠がないわけでございまして、そういう事情が判明しましたので、これからは何か通産省が妙に業者をかばい立てしているようなことを考えられることだけでも行政の威信にもかかわることでございますから、そういう問題があった場合、都道府県の承諾を求めて一緒に発表するなら発表する、発表しないなら都道府県から——権限を持っておるところの都道府県に発表してもらうというふうに明らかになすべきだと、こう考えております。
  156. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ともかくそういうことは道理から考えても、人命尊重の上から当然これは発表すべきだと思うのです。発表できないような体制はちゃんと改めて、今後はそういう国民の生命にかかわるところに出る資料については発表すると、隠したりはしないと、そういうことをひとつ約束してほしい。
  157. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま申し上げたとおり、通産省には権限がなくて、府県にあるわけでございます。でございますから、府県は権限に基づいて調査をしたものを発表できます。ところが、通産省が行なう場合には府県の承諾を得られたものについてのみ発表できるということでございますから、これは通産省が発表するのか、府県が統一をして発表するのか、誤解を生まないような状態を確立すべきだと思います。
  158. 内田善利

    内田善利君 委員長、関連。  いまの答弁ですけどね、通産省が調査をしてそれが発表できないという法的根拠はどこにあるのか。いまの重要法案の中にあるのかどうか。  それから環境庁長官もこの措置については通産省にけしからぬということを言っておられるようですけれども、この点を環境庁長官は了解をなさっておるのかどうか。この二点をお聞きしたいと思います。
  159. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 通産省は都道府県と協力をして任意に調査を行なっておるわけでございまして、法律に基づく調査の権限は府県にあるわけでございます。でありますから、法律で権限のある都道府県はみずからの判断において調査の結果を公示することができます。ところが通商産業省は、協力をして調査をしたりしても、これを発表するということになりますと、都道府県のいわゆる権限者の承諾を求めてからでなければ発表できないということでございます。
  160. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 発表できないという法的根拠はどこにありますか。
  161. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、法律で権限を与えられておる者は発表できないという制約規定のない限り発表はできます。ところが、根拠法規を持たない通産省が行政で行なったものを何でも発表できるということはないわけでございます。これは言うまでもなく、感情論や常識論だけではなく、厳密な法律論として発表したものを、本人の承諾もしくは権限者の承諾を得ずして発表した場合、有力な反対論を提起された場合、これに対抗する法律的な権能を有しておらないということであります。
  162. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 公用水域の汚濁の状況につきましては、県知事が調査をして、これを発表いたすよう義務づけられております。そういうことでいろいろな工場のたれ流しやその他につきましては、これは公用水面、水域の汚染と考えられますので、やはりこれは都道府県知事が発表すべき義務があると考えております。  先日の通産省との発表の問題につきましては、これは通産省が任意的に調査したのでございまして、われわれのほうとも事務的な打ち合わせがございまして、どちらで発表しようかという話はしておったのでございますが、ちょっとした手違いによりまして妙なことになりまして、あのような結果になったわけでございますが、その点は十分に御了解を賜わりまして、やはり、しかし、公害というものは国民に安心を与えるものでなければなりませんから、対策が……。やはり数字というものはできるだけ正確に発表して国民に安心を与えることが大事だと考えておる次第でございます。
  163. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 自今、調査をいたす場合には、権限者である都道府県知事の承諾をあらかじめもらっておいてやるつもりでございますので、調査後は発表するようにいたします。
  164. 内田善利

    内田善利君 いまの答弁ですけれど、あの内容は非常に重要法案が通過したあとの重金属の排水状況のデータで、非常に国民にとっては悪いデータが多かったわけですね。発表後の状況を見ますと、非常にひどい汚染なんです。こういった汚染の状況を通産省が調査しておきながら、そういった都道府県が発表すべきであるというようなことで、国民に発表しないという、そういう姿勢が私はどうしてもあのときふに落ちなかった。そのような悪いデータが出ておりながら、そういう発表をする権限がないから発表しないという、そういう姿勢は私はよくないと思うのですが、その点どうでしょうか、総理大臣。
  165. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま通産大臣から、自今さようなことはない、自今調査する場合には権限者と相談して調査するから、その結果を発表すると、かように申しておりますので、過去の事柄事柄、今後はこれが改められる、かように御了承いただきたい。
  166. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 同じような件で、これは科学技術庁でございますが、徳山湾の赤潮調査のときの工場排水のデータも科学技術庁が公表を渋り、委員会で追及されてしぶしぶ出した。また、これは先日、厚生大臣の諮問機関である医道審議会で、これが麻薬取締法違反、医師会法違反、その他刑事事件二件が取り上げられて、そういう医師に対する行政処分がなされたわけですが、それもやはり慣例によって個人の名前を発表しないということになっている。私はそういうものを含めて、国民の生命を守るために、やはりこのようなことがあってはならないと思うんですけれども、これは厚生大臣と科学技術庁長官の考えをまず聞きたいと思うんですが。
  167. 平泉渉

    国務大臣(平泉渉君) お説のとおり、この種の資料はできる限り発表いたすと、こういう所存であります。
  168. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 先般医道審議会で医師、歯科医師等の処分について審議が行なわれました。その結果は、従来の方針どおり、内容、個々の名前は言わないということで審議会が終わったようであります。したがってその方針でやっておるようでありますが、まだ処分はいたしておりません。処分をいたしましたら、これは隠しておくべき問題ではないと思っております。
  169. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでもう一つ、これは通産省にお聞きしたいんですが、これはいわきの工場、これをことしの八月から九月にかけていわゆるたれ流しを調査をしたわけですが、そのときに予告された公害調査日と、通産省が来るということを予告して、そうして行っておる。これは非常に、われわれも各地の公害の視察に行きまして、企業の煙が、昼間はいいけれども夜は多いとか、またわれわれが調査するときは非常にいい水が出るように制限しているけれども、それ以外はたれ流しだと、そういうようなことを聞くわけなんです。そういう点で、通産省の調査に予告をしていくというのははなはだよろしくないと思うんですけれども通産大臣どうでしょうか、その点は。
  170. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 本日付の新聞に、「通産省が来るゾ」と、こう書いてございますが、この件でございますが、これは私もちょっと奇異の感じがいたしましたので、事情を調べましたら、これも気持ちの上ではよくわかるのでございますが、しかしいままでも通産省設置法に基づいて調査を行なっておるわけでございまして、これはいま考えている環境庁の調査、それから都道府県知事の公害調査というものとは別に、通産省自体が基準に合っておるかどうかということだけで行政調査を行なうという範疇のもののようでございます。でございますから、これはもう絶えず、何月何日にはどこをやりますということを工業組合を通じまして会社側にも予告をしておくということがずっと過去の例でございます。で、まあただ過去の例であっても、近来とみに公害問題が大きく取り上げられてまいっておりますときに、従来からやっておるものであるし、また将来もそれ以外に方法はないんですと、査察や、それから全く無警告に行って現場を押えてどうするという種のものではないのでありますから、ということはわかるにしても、国民自体がそれを理解するかどうかということで、何かひとつ考えられないかということを先ほどまで事務当局といろいろやっております。まあこの問題、また将来もやりますが、ただ現在の法制下におきまして、通産省が、設備が適法であるかどうかという設置法に基づく行政調査ですと、従来ともこうやっておるし、将来とも税務署が特別にばんと行って現場を押えるというような状態にはいかないのですと、そうするにはそのように、いま環境庁に与えられておるようなものを、旧工場法のように通産大臣に権限を与えてもらって、それでやらないとそれはむずかしいというような法律的な問題があるようでございます。これは都道府県、それから環境庁所管の事項等ともあわせて少なくともこういうような調子で国民に見ていただくようなことから誤解を起こしてはまずいので、何らかのひとつ方法を考えられれば考えたいと、こう思っております。
  171. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは環境庁長官にお願いしたいと思うのですが、非常に企業の工場排水、私は呉でいろいろ企業の工場排水を調査したわけですが、常時水面下の排水があるわけですね。それから、潮が引いているときは水面に出ているけれども潮が満ちてくると水面下になる場合があるのです。こういうことでは、これはほんとうの抜き打ちの検査もできないわけですね。それは企業を信用せよと言いますけれども、まあ先国会で問題になった廿日市の硫酸流し事件とか、またいま呉でも淀川製鋼の油の不法廃棄がいま裁判になっておりますが、そういうやはり企業のモラルというものが確立されていない現在においては、そういう排水口が、どこの排水口、どこの工場の排水口で、それでいつでもそこでサンプルを取ることができると、そういうやはり状態を確立して、それでいま法律的な問題もありましたけれども、そういう法律は改めて、まあ政府、環境庁なり通産省なり都道府県なりがどんどん抜き打ちに検査して国民にデータを発表して、安心できるようにしていかなければいけない、私はそう思うのですけれどもね。環境庁長官としてそういう方向で検討するかどうか。
  172. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 工場のいろいろな排水、そういうものにつきましては、これをまあ監視するわけでございますが、その監視の権限がいま全部地方庁に移っております。実は県知事の権限になっておりますので、われわれとしては十分に各県とも連絡調整をいたしまして、おっしゃるように十分に監視体制がうまくいきますように、そのような方針で進んでまいりたいと思います。なお、このようにして、まあ一生懸命にわれわれは日本全土が一体となりまして日本の水質汚濁を直そうと考えて努力しているわけでございます。必ずその方向で進んでまいると思いますが、現在の状態では非常にあらゆるものが全部水の中に捨てられまして、また、これに対する規制をしようと思いましても、いろいろな企業体がございますので、設備がすぐ間に合わない状態でございます。そういうことで、いまの水質に関する基準というものはわりあいに甘いような感じがいたします。私どもは、さらにこれをできるだけ早い機会に強化いたしまして、監視体制をさらに強化するように努力いたしまして、ほんとう公害、水質の汚濁が早く直りますように、十分な監視体制ができますように努力してまいる決意をいたしております。
  173. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、環境庁長官、いま言った企業の排水口が常時海面下とか、また潮が引くと上に出るけれども、満ちたときに下に入っているというのは、これはいろいろできないかもしれないけれども、やっぱりそういうのはちゃんと水の上に出させると、そこには何々工場ぐらいちゃんと出させるくらいのことは別に大した金もかからぬわけですからね。そういう点検討してもらいたいと思うのですけれどもね。
  174. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) いまのような点につきましては、排水口のよしあしにつきましては、十分に地方の県庁のほうに監視をいただきまして、これは立ち入り検査もできますから、十分に立ち入り検査をいたさせまして、そうしてでき得る限りそのような中途はんぱなものでないように、ちゃんとりっぱな排水のできる、そうしてそれが監視できるようなものに直させるように調整指導してまいります。
  175. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 では、総理も参りましたので、まあ総理もただいまのそういうデータの公表についてはただいま答弁もありましたので次に進みますが、総理は先ほど、まあ行政改革については非常に熱意を持って進む、そのようにいま言われたわけですけれども、先般行政監理委員会の六人の委員が任期がきて解任になったわけでございますが、総理はこれらの人たちにはお会いになっておるわけですけれども、この行政監理委員会の今日までの業績に対してどう評価されているか。
  176. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) なかなか皆さん方熱心に行政監理委員としての職責を果たされたと、政府もその答申また御意見などは十分われわれの行政改革に参考にしておくと、かように考えております。りっぱな功績をあげられたと、かように思っております。
  177. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この行政監理委員会の人たちは官界、財界、労働界、言論界、学界、そういう各代表が含まれ、そして、提出された意見はすべて全会一致でなければ提出しない、そういうことで決定された意見が今日まで出されているわけでありまして、私も、そういう意見は実施できないようなそういう突拍子もない意見ではなくて、実施できる妥当な意見であると、私はそのように考えているんですが、総理はどうでしょうか。
  178. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 行政監理委員の方々が十月の十七日に任期がきまして、これは円満に任期がきて退職をなさったのでございます。解任というおことばでございましたが、解任というとちょっと当たりかねるかと思いますので——。  それから、いろいろ長年にわたりまして行政改革について非常にとうとい意見等を今日まで出してもらいましたのですが、その具体的な問題につきましては、でき得る限り尊重いたしまして、行政に取り入れていく方向でやってきたわけでございますが、塩出議員の御指摘のように、問題によってはやはり未解決のものがありますが、そういうものは、行政の根本に触れる問題とかあるいは非常に関連の多いような場合、まだ実現の域に達しておらぬというような点もありますが、政府としてはできるだけ委員意見を尊重して、実情に合うように行政の機構を改革してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  179. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ただいま行政管理庁長官は一生懸命尊重してやっていると言いますが、この本を読む限りは行政改革の現状はとにかく委員会の目的とはほど遠い。まあ本委員会や決算委員会等でわが同僚議員がいろいろこういう外郭団体の問題あるいは特殊法人の問題等を追及した点を見ても、私はやはり、この「行政改革の現状と課題」と書いているように、行政改革というのはなかなか遅遅として進んでいない、そのように私は思うわけでございますが、総理は現状でいいのかどうか、やっぱり反省しているのかどうか、その点どうでしょうか。
  180. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほども申しましたように、行政改革はよほど勇断を要する問題でございまして、なかなか思うようにまかせないというのが現状ではないかと、かように私も評価しております。
  181. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 確かに非常にむずかしい問題です。やはり最高責任者である総理ほんとうにその気になっていかなければいけない問題だと思うんですけれども総理は今後この問題に真剣に取り組んでいただけるかどうか、その決意をお聞きしたいと思うんです。
  182. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 監理委員会を開くだけが能ではございません。せっかく皆さん方が貴重な御意見を出していただくんですから、これはやっぱり熱意を持ってこれを実施することにあると、かように思います。ただいまもお尋ねになります点もさような意味で鞭撻されていると、かように私受け取っておりますので、今後ひとつよろしくこの上とも経過を見ていただきたいと思います。
  183. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 総理は今後とも努力をされるとおっしゃったわけですけれども、ここで言われても、何からやるか。総理は、いままでと同じじゃなくて、いままでより一歩前進するならば、どういう点をいままでと違ってやっていくつもりなのか。もう少し具体的に——ただここでやりますと言われたからって、ああそうですかというわけにはちょっといかないと思うんですけれども、その点どうですか。
  184. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 委員会から出してくる御意見も広範にわたる問題でございます。一体どういう点をまず取り上げるべきか、こういうのがそのときどきに問題があるわけであります。たとえば環境庁をつくった、これ一つだって、やはり行政管理庁の意見委員会意見も一応われわれは参考にしている、かように思っておりますし、また行政の簡素化と申しましても、これまた簡単な問題でもございませんが、総定員法をつくりましたこともやはり指示に基づいてやったことであります。私はお役所をつくることにはあまり共感が持てない。そういう意味では、いわゆる行政監理委員会の答申そのままでもない。いわゆる簡素化の方向、あるいは能率をあげるという、効率化、こういうようなことで具体的な御意見が出ておればそういうものについて積極的に取り組むと、こういうことが私に課せられた仕事のように思っております。したがいまして、ただいま塩出君からいろいろ御意見も出ておりますが、ただいまのような点でこういう点を、まあ委員会から出したからといって、ただそれだけでなしに、特にこういう点に重点を置けとかいうものがあればこの際に聞かしていただきたいと思っております。私は、現在の行政機構のうちで、やっぱり何と申しましても行政の効率化をはかる、このことが一番考えられる問題でございますから、そういう方向でいかにあるべきか、これは絶えず苦心しておるような次第でございます。
  185. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、行政監理委員会の先ほどの六人の委員の人が任期が切れて現在空白になっておるわけでございますが、これは一体——まあこれは再任をしてもいいことになっているわけですけどね。私は、これからますます行政改革が大事だというときになって、時代も変わって、やはり一方では非常に忙しい、夜残業までやっている、こっちは非常にひまだ、そういうようなアンバランスもあるわけですね。そういうのを、ほんとうにやはり税収が少なくなってくる点から考えても、これはやっていかなければいけない。そういう大事なときに全部交代してしまう。それでは空白ができるんじゃないかと思うんですね。そういうわけで、どういうわけで全部交代するのか、そのあたり理解に苦しむわけですが、その理由は何でしょうか。
  186. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 塩出委員の御指摘なさいますように、いままでの委員の方もきわめて優秀な方でございます。ただ、今回私が全委員交代の線を考えております根拠は、任期が大体一回が三年でございまして、非常に長くなる方が多いのでございます。三回目になりますので九年ということになりますので、私は、やはり今度全委員かわってもらおうという態度を大体基本的にきめました要素の中には、非常に長いということがやはり考え方の要素の一つであるということを御理解願いたいと思います。
  187. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 長いといえば佐藤さんも総理では一番長いわけですよね。早くやめなければいけないでしょう。長いからといって、そうじゃなしに、やはり行政改革というのは長くちゃいけないなんという法律はないでしょう。ほんとうに行政改革にプラスかマイナスかというのが判断の基準であって、長いからやめさせる、そんなのはちょっと道理に合わないと思うんですよね。それで、新聞ではあなたは、新しいセンス、気分一新のために交代してもらうんだ、そういうことも言っているが、そういう気持ちはないんですか。
  188. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 私が全体一新しようと考えました要素の中の一つが、いわゆる非常に長いということが一つであるということでございます。私も正直に申しまして非常に優秀な人でございますから全員残ってもらおうかとも考えた時点もございましたけれども、諸情勢等いろいろ考えまして、ここでやはり人心を一新する意味で新しい角度から検討してもらうという体制をつくることも必要ではないか、こう考えましてかわってもらうような方向でいま検討中でございます。
  189. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 じゃ、行政管理庁長官の言う新しい角度というのはいままでとはどういう違う角度なんですか。
  190. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 私はまあ新しい角度と申します、どういうことで新聞に言うたかはっきりいたさないのでございますが、私はやはり七〇年代の行政のあり方というものをひとつ新しい角度で検討してもらったらいいんじゃないか。国内経済の情勢あるいは外交を取り上げてみましても、いろいろ日本の大きな変革の時期である、こう考えましていままでの委員の人たち、六年以上いままでのいろいろの問題に取り組んでいただきまして、御承知のように第四日書で大体いままでの行政のあらゆる問題点については解明を尽くしていただいておるというような気持ちもいたします。それで、新しい角度から新しい人によって七〇年代の行政のあり方をひとつ検討してもらうということもこれまた一つの道じゃないだろうか。こう考えたわけでございます。
  191. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この「行政改革の現状と課題」には今後のやはり行政観察のあり方というふうにちゃんと書いてある、今後の方針を。七〇年代を迎えてこうあるべきだ、こう書いてあるんですよ。あなたの言う新しい角度とはこれとは違うんですか。この内容とどうなんですか。あなたの考えとは違うんですか、一緒なんですか、どうなんですか。
  192. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 私はいままでの監理委員の人たちが長年にわたりましてたんねんに一つの考え方をまとめていただいて白書になっておると思います。やはり人がかわってまた新しい角度から見れば、また違う一つのニュアンスも出てくるのではなかろうか。いま委員の人たちが出していただいた結論というものは、これはもちろん今後の行政改革にできるだけこれを取り入れていく。これは私の責任であるから全力をあげていくということを考えて、そういうことと考えあわせまして、新しい人によってひとつ検討してもらいたい、こう考えておる次第でございます。
  193. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 総理にお願いしたいんですけれども、やっぱり新しいセンスとか長いからとか、いままで言ったように佐藤さんだってやっぱりかわれば気分一新になるでしょう。けれど依然として佐藤さんが総理でおるというのはあとがいないとかいろいろ理由があって、まだやっているわけですから、いやしくも行政監理委員をただ気分の一新だとか新しいセンスとは何か、何もないですよ、ちゃんとこれに新しい方向も示されているわけですから。やはりそういう点で私はまあしかもこの一ぺんにかわるということは、それだけ中断しちゃうわけですから、世間では今度の行政監理委員の人たちはあんまり政府の痛いことを言うから交代したんじゃないか、そういうような意見も聞かれるわけなんです。そういう点でこの人の任命は総理にあるわけですから、やはり現在の委員また前回の委員あるいはまた臨時行政調査会でやってた委員の方もいらっしゃるわけですから、そういう人も含めて、その中でやはり次の時代をになうさらに最適なメンバーを選ぶ。そういう点で中断をしないためには再任もいいと思うんですよ、いい人であれば。私はそのようにひとつ再検討していただきたい。総理に御要望したいんですけれどもどうでしょうか。
  194. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ、ただいま要望したいと言われる。これはその御意見はよく聞きましたといえば、それでいいようですが、どうもそれだけではなしに要望をかねての私の意見を徴された。かように思いますので、そのとおりお答えしたいと思います。なかなか委員の方で、だれはよろしい、だれは悪い、こういうのをつけることは非常にむずかしいのですね。いわゆる全員交代ということも、考えたのはそういう点にもあったのじゃないだろうか、かように私は善意にものごとをとっておるわけです。  それから、もう一つはやはり行政委員になるということは、まあ、いろいろ立場上もございますが、その点でなかなか人事の問題は複雑なものがありますから、そう簡単に割り切るというわけにもいかない、そこらにむずかしさがある。ことに総員交代というふうなことならば比較的受け入れやすいが、そうでないとなかなかむずかしい。また、行政監理委員の諸君のやっておられるお仕事などは、いわゆる専門的な問題というよりも、これはむしろ社会的あるいは事業的経験等を生かされるというか、そういうような意味で比較的に人選上は困らないような方々が多いのであります。だから、そういう意味もありまして何か区分けをした、できふできを考えた。こういう印象のないほうが運営上楽だ、こういうようなことで行政管理庁が全員総入れかえということを考えたようであります。私はむしろそのほうが適当ではないだろうか。ただいまの塩出君の言われることもわからないではございませんけれども、ただいま申し上げるように事柄を成績によって区分したということは、やや、お願いをしておいて皆さん方に非常に御迷惑をかけるということでもありますから、私の率直な気持ちを申し上げて、ただいまのような、私も中村君から相談を受けて、全員交代いかがでしょうと言われるから、それはいいでしょう。どうもそのうちの適当な方を残すとか、これはどうだとかああだとか、こういう議論はどうも困るから、これはむしろ総員入れかえ私も賛成しよう、かように申したような次第でございます。事柄事柄でございますだけに、ただいまも申し上げるように、率直に申しまして御賛成を得たいと思います。
  195. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 総理が賛成してくれというけれども、大体、前回、三年前のときにはやはり委員の一部交代もあるわけですからね。あくまでも行政委員会は機能を中心に考えるべきであって、佐藤さんが非常に義理がたいということは今度の台湾問題でもわかっていますけれども、しかし、そういうものは時代に合わないと思うのですね。そういう点で私は佐藤総理が幾らそういうことを——やはり都合悪いから、こっちの人に悪いから——けれど、行政改革というものは国の一番の問題じゃないですか。そういう気持ちを、佐藤さんのそういう考えを変えてくれないから行政府進まないと見えると思うのですね。そういう点で私はさらにそういう義理人情じゃなしに、その人の働きがどうか、それで検討した結果、やはり新しい人が見つかった、それならいいですよ。けれども、やはりそういう点で、まあ、臨時行政調査会の人たちもいるわけですから、そういう人も含めて再度検討していただきたい。私はそうしていただかないと納得できないと思うのですけれどもね。
  196. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの私の実際のいつわらない意見を率直に披露した、なかなか御賛成を得ないようで、なお、この問題をここできめるわけでもないだろうと思いますので、具体的な人選の場合にはただいまの点がどういうように考えられるか、しばらく時間もあることですから、そのほうおまかせくださって、なお、皆さん方の御賛成を得られるようにいたしたいと思います。
  197. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは行政管理庁長官が今回の行政管理委員会にも毎回出席をされて、前回の荒木大臣のときにはあまり出席されなかった。そういうのに比べれば長官が努力されていることは認めるわけでございますが、しかし、行政監理委員会のもう一つは専属の人が非常に少ない、私の調べるところでは一人しかいないわけですね。前に臨時行政調査会においては、少なくとも二十人ぐらいは、その行政監理委員会委員の人の手足で働くような人がほしいと、そう言っているわけですが、そういう点も私は検討してもらいたいと思うのですけれども、どうですか、長官。
  198. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) いま塩出議員の言われましたような点は、この間から監理委員の人たちからも詳細にお聞きいたしたのであります。私は、これはやはり委員会の運営等のことを考えますと、手足というようなものがやはり必要であるということはよくわかります。現在新しい人をその委員会につけるか、いまのところ運用の面で行政管理庁の機能を十二分に生かしたほうが、私は、そっちのほうが効果的ではないだろうかと、二つの考え方があると思います。しかし、何か方法を考えなければならぬということだけははっきりいたしますので、今後の問題として検討してまいりたい、かように考えております。
  199. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 じゃ、これはまあ定員をふやす方向で検討されるということですね。
  200. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 定員をふやすという方法で考える場合と、現在の行政管理庁の機能を十二分に委員の人たちの意向によって使うことのできるように、運用の面で考えられる、二つ行き方があると思うのです。それでどっちにするかということは、そういうことを含めて検討してまいりたいと、こう考えておるわけでございます。
  201. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、この問題はまた来年度予算にかかってくる問題でございますので、そのときにまた検討さしていただきたいと思います。  それから、もう時間もありませんので、最後に物価問題について二、三。  特にまあいま秋野菜の値上がりが非常に急騰いたしまして、これはもうたびたび本委員会でも問題になっておるわけでございますが、そういう点について、一つは、非常に作付面積が減っていろわけですね。先般、総理は、できが悪い、天候のせいだ、そういう点もありますけれども一つは、やはり作付面積が減っていることも大きな原因じゃないかと思うのですが、そういう点で農林省はどう考えているのかですね。
  202. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 経過を申しますと、昨年の秋、冬の野菜が非常に高かった。それでことしは事業推進等をずいぶんしたものですから、ことに七、八月は出回りがよかったわけです、野菜の。九月、十月になってからずっと悪くなったと。それは一つは台風などの関係確かにあります。それから作付がまだ——作付指定はしてありますが、それに対して強い力を持っていないと、こういう点があります。でありますので、作付指定団地といいますか、そこなどに統制力というか、力が足らない。それから価格の面などで——不作の場合もあります。あるいはまた余った場合もあります。ことしなどの白菜などは、御承知のように八月ころだいぶ余って捨てるようなかっこうになった。そういうときに価格の補償をするわけです。その補償の額なども少し大きくしてやらなくちゃならぬと、こういうような面もあります。いろいろな面で、なかなか需要と供給との調整がとれないで、いまのような状態になっておるわけでございます。
  203. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 で、農林省はこういう野菜対策として事業団構想というものをこの間発表されたそうですけれども、この事業団はほんとうにやる気なんですか。
  204. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) これは経済企画庁とも相談したのですが、野菜の行政というものが、非常に一生懸命やっていても微力でございます。微力でございますので、野菜の価格安定の協会というようなものもありますので、その協会などを事業団のように変えて、そうして高いとき安いときの調整をしていくという方向は、経済企画庁などでもそれはよかろうということで、私のほうでもその方向は確かにいいと思っています。いいと思っていますが、いま事業団に切りかえるということまでに、結論には達しておりません。しかし、そういう事業団も必要だというくらいに、野菜の行政というものは、いま一生懸命やっていてもなかなかうまくいきませんから、そういうものができたと同じような気持ちで、野菜に対する行政に力を入れろと、こういうことで、いま督励している次第でございます。
  205. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 結局これはそういう気持ちで力を入れるということで、別にそういうのをやるとかいうのではないのですね。精神的な意味でやるということだけなんですか。
  206. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いま事業団に持っていくということは決定しておりませんということを申し上げたのでございます。しかし、そういう事業団でいくかどうかということにつきましては検討して、それでやったらもっと強力にできるということであれば、そっちのほうをやってもいいと思うのです。いまやらないというわけではない。研究中なんでございます。研究中においても、捨てておくわけにもいきませんから、事業団ができたというようなことで、実質的に大いに仕事をしろと、こういうことを督励しているわけです。
  207. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ともかくひとつそんなのんきなことを言わないで、野菜が値上がりするのは秋から冬ですから、ひとつ早急に、やるならやると前進をしてもらいたいと思うのですよ。  それで、特に先ほども総合農政ということを言われましたけれども、現在農林省の予算や人員の面を見ましても、非常に米中心で、野菜に関する予算も少ないし、人員も少ない。いま全国の米の消費量、野菜の消費量を見ると、大体野菜のほうがむしろトン数では多いくらい、金額でも多いくらい、そうなってきているわけですね。たとえば予算は、米関係は六千四百二十九億円、野菜関係は二百七十五億円、また人員の面においても非常に大きな違いがあるわけでございまして、まあ農業の米のほうは二万五千九百名ですか、野菜のほうは千名にも満たない、そういうように非常なアンバランスがあるわけでございますけれども、そういうような点も、総合農政であるならば、時代に適応さして——特に行政管理庁等は、食糧庁、食糧事務所の人員等をもっと削減をしろとか、そういうことも言っておるわけでありますから、そういう点をひとつ検討されるかどうか、農林大臣。
  208. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 確かにこの農業の転換という点でも、米作を生産調整したり、その他で力を入れていくのは、果樹、あるいは畜産、野菜、こういう方面に力を入れておりますから、確かに野菜関係の定員といいますか、人員は少ないのは御指摘のとおりでございます。ですから、行政機構の改革だけで野菜の問題が解決するのならば、あしたにでもやってしまうと思うのですが、行政機構の改革だけで、事業団をつくったということだけで解決がつきませんから、ほかの方面で大いに力を入れて、行政機構で事業団ができたと同じようなくらいに野菜には、農林省の蚕糸園芸局ばかりではなく、ほかの方面まで動員して、野菜対策本部や何かをしながら力を入れているのが現実でございます。なかなか力足らずで、いろいろ非難も受けておりますが、野菜行政というものを粗末にしているということは全然ございません。大いに力を入れている次第でございます。
  209. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に、通産省の、いわゆる粗鋼の生産について、いま各鉄鋼業界から勧告操短の申し出が出ているように新聞で拝見したわけですが、通産省としてはこれを認めるのか認めないのか、その点。
  210. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 勧告操短をやってもらいたいという意思表示が業界から出ております。三十七年及び四十年の二回行なっておるわけでございますので、いま、どのような方法でどうしなければならないかという実態を調査をいたしておるわけでございます。  また、やり方は、通産省設置法に基づく勧告操短というものの三番目としてやるのか、独禁法による不況カルテルでやるほうがいいのかという問題もございますが、まあ率直に申し上げて、公取と十分相談を申し上げて、適当な操短をやらなければならないのではないかというところまできておりますが、具体的に結論を出しておる段階ではないわけでございます。
  211. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあ不況カルテルというのは独禁法で認められているわけですけれども、それでいくというようにはまだきまってないわけですね。いわゆる昭和四十年の勧告操短になる場合もあると。まだ未決定ですか。
  212. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まだどっちとも決しかねてはおりますが、新聞等で公取さんの意見もあるようでございますし、まあこういう問題、疑義がないように、すべての人々に納得が得られるようでなければならないと思いますから、公取と十分意見調整しながら、いい方法を考えようというのが実態でございます。だから、まあ不況カルテルでもってやれば、これはもう問題なくやれるわけでありますし、通産省設置法に基づく勧告操短等をすれば、過去二回やったものの三回目ということになりますし、その他にいい方法があるかと、こういうことになれば、両方が、両方の前二つの案を合理的に調整をすればなお第三の案もあるだろう、こういうことになりますので、さだかにどうしようかということを決定しておるわけじゃありません。
  213. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 公正取引委員会は、この問題についてはどういう見解を持っていますか。
  214. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 公正取引委員会といたしましては、従来とも、真に不況な状況にあり、何らかの不況対策が必要であるという実態でありますならば、法律に基づく不況カルテルによってやるほうがよろしい、やるべきであると、かように従来とも申しており、今回も、もし通産省のほうから御相談があれば、そのような形式をお願いしたいと思っております。ただし、実態がどのようであるか、どうであるかというふうなことについては、まだいまのところ実態について承知はいたしておりません。
  215. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 通産大臣も、先ほどデータの公表のときには、法律にはっきりないようなことはしないと言ったのですからね。こういう問題についても、鉄鋼業界だけそうなれば、ほかの業界にも波及する危険もありますし、また昭和四十年に、当時の通産大臣も、勧告操短は今回限りだと、そのようにはっきり言っているわけですから、そういう点公取もちゃんと反対だと言っているのですから、その点ひとつ納得のいくように、変なことはやらぬようにしてもらいたい。それはやはり国民立場として要望しておきたいと思うのです。通産大臣のその考えを聞いて終わります。
  216. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 通産省及び公取は、二者十分連絡をいたしまして、公取の納得のもとにちゃんとしてやります。
  217. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 以上をもちまして塩出君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  218. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 次に、安永英雄君の質疑を行ないます。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  219. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記を起こして。  安永君。
  220. 安永英雄

    ○安永英雄君 私は、教育問題に限って質問をいたします。  まず、沖繩返還に伴う教育問題について質問をいたしたいと思います。  戦後四分の一世紀にわたって、異民族の抑圧のもとで苦しい生活をやってきた、この精神的にも、物質的にも非常にしいられた苦しい生活をやってきた沖繩の人を、これをあたたかく迎えるということは、これは当然なことであります。ことにこの中で考えなければならぬことは、沖繩の人が、われわれは日本人であるというこの自覚、誇り、これをこの長い間待ち続けて、そして教育の面におきましても、はっきりりっぱな日本人を育成するのだというこの考え方で進んでこられた。あるときは軍政府の圧力で、教育基本法を制定する場合に、たった、「日本人として」という字句を入れるのに、銃剣の前に立たされて、からだを張ってこれを何とか守ってきた、いわゆる植民地化というふうな方向に対して、教育を守り通してきた、このことは私ども高く評価をしなければならぬと思うわけです。この間における教育関係者、この方々の努力というものは、非常なものであったわけでありますが、この返還を迎えて、今後の沖繩の教育を考えた場合に、このとうといこの努力、あるいは経験、こういったものを生かさなければならないというふうに私は考えるわけでありますが、総理の、返還に際しての教育について、こういった立場における基本的な姿勢をひとつお示しを願いたい。
  221. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 安永君がただいま御指摘になりましたように、沖繩県民、これはりっぱにアメリカの施政権下にありながら、日本人としての教育に遺憾なきを期すという、これは県民が団結して立ち上がられたその姿の成果だと私は高く評価しております。ただいま言われるように、アメリカの施政権下ではあったが、日本の教科書を使っている。日本語を通じて、日本国民としての教育を受けてきた。これはいろいろ制度上の難点はありました。また本土とは相違した制度のもとではございますが、これは高く評価さるべきものだと、同感でございます。
  222. 安永英雄

    ○安永英雄君 そこで、私が言いたいのは、 いま、あたたかく迎える、そうして教育関係者なり県民が日本人という教育を守り通してきた、これは高く評価をする、こうおっしゃったわけでありますが、具体的に、この沖繩の教育、あるいは沖繩の生徒、児童、青少年というものを迎えるにあたって、私は、ほんとうにあたたかい手を伸べるというための第一に私どもが仕上げなければならぬ問題は、何といっても、返還後に核が全くない、核兵器が全くない、基地もない、そうしてB52がこの沖繩の基地からベトナムに向かって発進している、こういった状態も全くないという教育条件を、環境をつくって迎えるという私ども立場でなければならぬと思うのです。この点について、総理のいま基本的におっしゃった、あたたかく迎えるという、私は第一にこれは果たさなければならぬ問題だと思いますが、総理見解をお伺いしたいと思います。
  223. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沖繩県、これが平和な豊かな沖繩県であるようにと、これがわれわれの返還後の沖繩県づくりの目標であります。その場合に、ただいま言われるような点が必ず問題になる。申すまでもなく、沖繩——沖繩県はできたが、その軍基地は現在と変わらないのじゃないのか、こういうようなことがあったり、あるいはまた本土における米軍と沖繩における米軍は、本土は安全保障条約のもとに提供された施設区域であるが、沖繩の場合は占領下の続きではないか、こういうことで区別されがちだと、さようなことがあってはならないと私は思うのでありまして、ただいまも米軍の話が出てまいりましたが、この沖繩が祖国に復帰すれば、今度は沖繩に駐留する米軍は、本土に駐留する米軍と同様、安保条約のワク内においてのみその施設区域が提供され、その行動も制約を受けると、かように理解していただきたいし、したがって、そういう点からは、自由出撃というようなことはないのでございます。当然、今後直接軍事行動に出ると、こういうような場合には事前協議の対象になる、そういうことでございますから、その性格が変わってきたと、かように理解していただきたいし、私は、現在の軍基地の密度、これが適当だとは思っておりません。こういうものはもっと密度が変わる、そのことが望ましい状況だと、このことを私も考えぬではございません。そのとおり思います。しかし、私は、この際は、何といっても沖繩が早く本土に復帰することだと、そうしてわれわれ同胞が一体となって、県民の皆さま方に、長い間御苦労でしたと、その一言が言いたいし、またそのもとで手を握って、平和な豊かな沖繩県づくりに邁進することだと、かように思っております。米軍基地のあり方についても、ただいま申すように、本土の米軍駐留軍と同じ資格において行動するという、そういうことにこれは限られるのだと、またそういう意味において、どうもただいまの基地は密度が高い、そういうことで、さらにさらにこれが改正されるべきだと、かように思います。ただいまの状況では、直ちにいつまでにと、かような点は約束はできませんが、私はあらゆる政治家が——佐藤内閣だけではございません、これはもうどの内閣ができましても、そういう点については県民の心情にもっと直結した努力が払われると、このことだけは間違いのないことだと、かように思いますので、この機会にはっきり申し上げておきます。
  224. 安永英雄

    ○安永英雄君 返還後においては、私が先ほど申しました核の問題や、基地の問題や、あるいは出撃、この問題については、全く変わったような、変わるんだというふうなことをおっしゃったけれども、これは沖繩の青少年、子供は了解しないと思う。理解しない。と申しますのは、沖繩の子供というのは、おとうさん、おかあさん、いわゆる父母や祖父母という方々が、あの第二次世界大戦で、あの沖繩本土の戦いで、激しい戦いの中で、同胞を失い、あるいは父を失い、母を失い、膨大な人が死んでいったのであります。本土のようにではありません。実際にアメリカ軍と銃剣をかわしながら、そこで殺されたのであります。だから、いまの子供というのは、その父や母や祖父母からなまなましい話を生まれながらに聞いておるし、あの山、この川、それ自体に、隣のおじさんが死んだということまで、血を流したということまで、よくよく身近に聞いてきておるのであります。もの心がついてからB52のあの爆撃機がベトナムに飛んでいっておるという姿は、このことを聞いておるのです、見ておるのですよ。米軍のあの無謀な暴力、常駐するあの姿というのも見て育っておる子供なんですから、要するに戦場の中の子供と言っていいくらいの青少年なんです。それに佐藤総理が、もう心配することはない、内地並みになって、基地もないのだ、あるいは核もないのだ、あるいはB52の出撃も、これは自由使用でいままで出撃をしておったけれども、それはないのだと、こうおっしゃっても、これは私どもとしては、この子供がこれでほんとに平和な国になったのだと言ってそういう暗い環境の中からおどり出て青空をのぞくような気持ちにはなれない。これは具体的に申しますならば、たとえば昨日の総理の答弁の中で、核というような問題については、これは多少前進の私は答弁があったように思う。このことは、すでに沖繩の青少年はもうぴんときている。しかし、まだまだ佐藤さんは日本人の手であるかないかという核の点検というところまでは言っていられないということを知っているのですよ。あるいはまた、自由出撃ということは、これはないかもしれないけれども、事前協議という問題については、あなたはイエスもあるけれどもノーもあるということは、ぴんともう現地の子供にはいっているのです。これはやっぱり、自由出撃ではないけれども、事前協議の条項に当てはまるけれども総理大臣は、アメリカの出撃したいというときには、これはもう行きなさいと、使ってよろしい、出撃しなさいという承諾を与えるという場合もあるのだということで、非常に危険に感じておる。また、基地というのは一つも縮小されていない。こういった状態は、いかに佐藤総理が先ほどのことを沖繩の青少年に向かって言っても、私は納得しないと思うのですけれども佐藤総理はこれで納得するとお思いになりますか。
  225. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、さきの戦争で本土防衛の第一線に沖繩がなったと、したがって沖繩がほんとに山も川もあの海も全部が戦火に巻き込まれた、また年とった人も若い者も、男も女も、すべてが戦火をこうむったというこのさきの戦争の苦しみ、これはよくいまの子供たちも知っておると思います。それが言い伝えられたと、かようなことであろうと思います。しかし、私は明るい面もあるように実は思っております。と申しますのは、私は毎年沖繩を代表して出てくるいわゆる豆記者の諸君と会っております。これは沖繩の青年諸君、学童諸君を代表する諸君でありますが、この豆記者諸君に会ってみると、たいへん気持ちが明るくなってきていると、最初に会ったときと、ことしなどの豆記者諸君の表情、また私に対する質問なども、これはよほど変わってまいりました。私は、何といいましても、さきの戦争のつめあと、これはわれわれもさわらないように、さわらないようにはすべきだとは思いますが、とにかく祖国復帰、その日が近づいたということ、そのこと自身があの明るさを取り戻しているんじゃなかろうかと、かように思います。私は、これら豆記者の諸君のあの気持ち、これをやはり育てることが、今日われわれがあたたかく迎えるとか、いろんなことを約束するよりも、一番具体的な方法ではないだろうかと、実はかように思うわけでございまして、私はあえて、私の体験から、その会見の一部を御披露するような次第でありますが、私は、ただいま安永君の言われるように、ずいぶん伝え聞かれ、言い伝えられていると、こういうことで、軍基地は絶対反対だと、こういう気持ちがあるが、同時に、祖国復帰、その日が近づいたと、こういうことで明かるさも取り返していると、かように思いますので、そういう方面もひとつうんと伸ばしたいと、かように思っておるような次第でございます。
  226. 安永英雄

    ○安永英雄君 豆記者の会見の感想を述べられましたけれども、これは私は沖繩に行って実際現地でいろいろ調査をしている。そして、一番この沖繩の青年やあるいは少年が、生徒児童が疑問に思っているのは、共通して言えることは、平和とは一体何だという、この疑問が絶対解けないということなんです。教育の大きな柱の一つとして平和教育というものがあります。そして、日本の憲法の九条の精神にのっとって、どんな理由があろうとも戦争は絶対にいけないんだ、軍備は持ってはいけないんだ、平和に徹しろという教育をいかにやろうとも、そこに核がある、そしてベトナムにどんどん爆撃機が飛んで行っておる。いかに説いても、この平和とは何ぞやという問題については、これはどうしてもぬぐい切れない、解明できない問題であります。現地教師が一番悩んでおるのはここであります。沖繩の教育をあたたかく迎えるとするならば、この国会を通じて佐藤総理は、核の問題、基地の問題、あるいはこの事前協議の歯どめの問題等については、私ははっきりしなければならぬと思う。この点、私は、その中の一つで、たとえば協定によって返還後にこの基地の中から爆撃機が飛んで行く、これは飛んではいけない、事前協議のときにノーしかないんだと、こういう答えといいますか、または総理の決意というものが私は表明されてしかるべしだと思う。また、そのことにおいて、アメリカとの返還協定について、再度これについては協議するんだという体当たりの総理態度というものが、沖繩の教育を左右すると私は思う。そういう気概なり、そういったお考えはないものかどうか、お伺いしたいと思う。
  227. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 事前協議の対象になると、したがって沖繩から自由出撃というようなことはあり得ないと、事前協議の対象になると、そのときの状況によって政府はノーもイエスも事前協議という限りにおいては言えると思う。私どもは、わが国の安全も確保するが、同時に、わが国が戦争に巻き込まれないように、これはもう最善の努力を払うことは当然であります。私は、わが国が戦争に巻き込まれない、そういう立場に立って事前協議に対応すると、これが私の考え方でもございますから、それらの点をよく御理解いただきたいと思います。
  228. 安永英雄

    ○安永英雄君 総理はそうおっしゃいますけれども、先ほども申しましたように、沖繩の教師は子供に平和という問題について教育をするときには行き詰まってしまっておる。基地もある、核の点検もできない、B52が出撃する可能性がある、こういう中で平和に徹するという教え方を、これは率直に言って私は、総理がたとえば小学校の六年生というものを対象にしてどう教えていくのか、お教え願いたいと思う。一応先生になった気持ちでひとつ教えてもらいたい。
  229. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私がいま申しますことは、日本総理として申すことでございます。沖繩アメリカの施政権下にある。そのもとの先生方が生徒に教えること、これはたいへんむずかしい状態だろうと思います。しかし、平和を愛好するということは、どこの施政権下にあろうと、これは言えることだと思っておりますから、私はそういう意味において、沖繩の先生方も、いままでも平和愛好、平和に徹すると、そういう考え方で教育はしておられると思います。ただ、いままでの具体的事例について、軍基地、あるいは現にベトナムに飛び立つその飛行機を見て、目の前にして、そして平和に徹すると言っても、それはから念仏だと、こういう感がすることは、否めない事実だろうと思います。しかし、私は、そういうことも、もう祖国へ復帰すれば、そんな矛盾あるいは説明のしにくい状態は解消するんだと、かように思いますので、それらの点で、やっぱり祖国復帰をまず第一に実現すること、それが望ましいことではないだろうかと思います。
  230. 安永英雄

    ○安永英雄君 まあこの点は、さらに機会がありますから、次のときに深めていきたいと思います。  この沖繩復帰について、大体、沖繩の教育諸制度というものと本土の諸制度は、ほとんどよく共通した面が多い。たった一つ教育委員会の制度について違うわけであります。これは御存じのとおりであります。この制度をどうしようとお考えか、文部大臣にお伺いいたしたい。
  231. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答えいたします。沖繩において任命制による教育委員会の制度をつくろうといたしましたときに、沖繩の教職員団体が全力をあげて反対をいたしまして、公選制を実現いたしました。これは、沖繩県民が、   〔委員長退席、理事村瀧一郎君着席〕 琉球教育基本法にありますように、「日本国民の」ということばを入れるのに命がけであったと同じように、異民族の支配のもとに任命を受けるということは日本国の面目にかけて承知できないというところで、あくまで公選制を主張いたしたのであります。今度は沖繩が本土へ返ってくるのであります。新しく沖繩県ができるのであります。そこで、新しくできます本土としての沖繩県では、どうかひとつ同じ制度で、同じ教育の機会を与えるという意味において、私どもは、従来の公選制でなしに、今度は任命制に変えて、本土と一体化したいと、沖繩県の教職員各位が命がけで日本国民としての教育をやっていただきましたこの精神を生かして、今度はどうぞ同じ日本の教育としての立場に立って教育制度も一体化したものにいたしたいと、かように考えておるわけであります。
  232. 安永英雄

    ○安永英雄君 沖繩教育に、文部大臣自身が言われるように非常に大きな役割りを果たしておるし、この制度は現在定着している。これを本土並みにするというわけでありますが、現在のこの教育委員会制度に著しい弊害というふうなものがあるのかどうか、お伺いしたいと思います。   〔理事村瀧一郎君退席、委員長着席〕
  233. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 弊害の有無ということは、御承知のように、日本で教育委員会制度が公選制でありました時分にこれを任命制に切りかえましたときのいきさつから考えてみますというと、御承知のように、その当時はどうしても政党的な色彩が強くなる、あるいは推薦母体がなければ当選ができない、あるいは膨大な資金を要するというところから任命制に切りかえたのであります。任命制と申しますけれども、この任命制は、御承知のように、県民の意思によって選択せられました知事が県民の意思によって選任せられましたところの議会の承諾を得て任命するのでありまするし、同時にまた、同一政党に属する者が片寄って多くなってはならないという制限をつけておるということから考えまするというと、私は本土でいまとっております制度、これが沖繩でいま定着しておるからこれでいいじゃないかというのでなしに、この際すなおに考えまして、本土に返ってくるこの機会に、本土並みに一切の教育制度も変えいくほうが一番公教育の立場からいっていいじゃないか、こういうような考え方に立っておるのであります。
  234. 安永英雄

    ○安永英雄君 かってな解釈を大臣がされては私は困ると思うんです。あとで私は触れますけれども、教育権という問題についてもかかわりのある問題でありますから。県民の意思を代表して県議会がある、その意思に基づいてそこに教育委員の任命をまかしているんだから、その意思を十分聞いているんだからということと、沖繩で現在行なおれておる定着しているといわれるこの公選制というのは全くこれは質が違うんです。だから本土でそうことになっておりますから、これに右へならえするのがすなおだという、こういう理論は沖繩の教育委員会の現在の実績、定着度合いからいって、そう簡単に右へならえするわけにはいかないし、弊害が徹底的にあるなら別、なければ、しかも、あなたが言ったように、大きく称賛しなければならぬという点があるとするならば当然これは残しておかなければならないというふうに考えるが、再度文部大臣の見解を聞きます。
  235. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私の申し上げておりますのは、同じ日本国民として平等の教育的な制度のもとに同じ教育機会を与えるという観点から申しまするというと、本土で任命制をとっておりまする関係上、本土の制度に従うことが一番筋が通っておるんじゃないか、かように考えておるのであります。
  236. 松永忠二

    ○松永忠二君 委員長、関連。  沖繩の教育委員の公選制の問題についていまお話があって、非常に定着をしている。そこで、衆議院でも議論をされたように、この際この沖繩の復帰にあたって国民、県民の投票をしたらどうか、その地域だけに適用するというような性格の法律であるから憲法第九十五条にいうところの国民投票を行なったら、県民投票を行なったらどうかという意見衆議院で出たことは事実であります。私たちは、そういう措置が一番必要だというように考えているけれども政府の答弁を聞いてみると、いやそうじゃないんであって、一度日本に復帰をして、それからその次の段階で九十五条を適用するということは考えられるけれども、復帰をすると同時に、それを適用するということは法的にも疑義があるというような説明をされているわけなんです。で、私たちの主張としては、つまり復帰の際に教育委員の公選制の問題等についても、むしろ日本国内の制度を改めてやるべきであると思うけれども、まあ百歩譲って、それじゃ復帰をした段階、次の段階において——今度の特別措置法でもある任期中はこれを認めていこうというような気持ちがあるのだから、そこでお話しのように公選制というのは沖繩に定着をしている、しかもまた、沖繩県民もこれを持続してほしいという気持ちを強く持っている、そうしてまた、かつて私たちの国でも行なっておったし、それについて野党が反対をしたけれども強硬に任命制が実施をされたという各般の事情から考えてみて、復帰の暁に、この教育委員の任期の切れる前段階において、この九十五条を適用して教育委員の公選制の問題について沖繩の県民の意向を確かめるという方法が私はあると思うんです。これならば法律的にも合法的でもあるし、また、沖繩県民自身がこの公選制の中で教育を実施をし充実をしてきたという、こういうふうな事実をも含み合わせて私はこういう措置というものは考えられるのではないか、それで、そういう権利は沖繩の県民の人が持っているはずである。新たに観光都市とするための第九十五条を適用するとは違って、事実実施をされている。しかも、この特別措置として任期までの延期を認めている、こういう段階の途中において復帰後において第九十五条の適用を、憲法第九十五条において沖繩県民の意思をこの教育委員会制度に実施をしていくというのは最低のせめての私たちは要求でもある、理解得られる方法ではなかろうかということを私たちは考える。あえて別に事を企てて反対をしているという意味でなしに、かりに率直に野党の意見を聞く気持ちがあり、沖繩県民の願望を聞くということであるならば、そういう段階において、九十五条の適用をはかっていくということも一つの方法ではないかと思うけれども、まあ、口では非常に県民の意思を尊重する、しかも、政治は民主的に行なっていくというようなことを言っておられるんだから、せめてこういう問題についてこういうふうな措置が考えられないのか。どうかこの点をひとつ、まことに失礼ですけれども御三人の方に——沖繩の問題の担当官の山中総理府長官と当面の責任者である文部大臣並びに大きな立場から総理大臣の最終的なお考え方を私は聞かしていただきたいと思うのであります。
  237. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 高見文部大臣がお答えしておることが大体そのとおりでありますが、ただ、誤解を生んではいけないと思いますが、私としては、なるべく公開の席において、このような答弁をいたしたくないんでありますが、しかしながら、この問題については、本土政府側の意向について、琉球政府側の対策要綱に対する意見を正式に徴しました段階においては、琉球政府局長会議の議を経て賛成である旨、すなわち復帰後本土並みの任命制に移行することを賛成する旨、公文書で返答をいただいております。しかしながら、その後革新団体、あるいは教職員組合その他の御要望等がありまして、現時点において主席以下の関係者の態度は、できれば残してもらいたいという御要望であることは私も承知いたしておるわけであります。しかしながら、このような事実がありまして、その後に事態が変化したことについては、一応そこまでの御質問であれば、お答えをいたさざるを得ない、やむを得ないことであると考えます。なお、私は文部大臣と同じく義務教育の制度の置かれた制度というものは、その制度のいずれがすぐれているかの賛否の議論は別にして、やはり本土の四十六都道府県と同じ制度のもとに義務教育の制度を置かれるべきが至当ではなかろうかという文部大臣の意見に賛成をいたしておりまするし、したがって、現在の沖繩のみ中央教育委員、あるいは連合区、教育区、あるいは市町村教育委員会というような三段階の制度をそのまま公選制によって残して、そのことによって、憲法九十五条の関係住民の意見を聞くべき対象としての県民の投票を仰ぐということについての措置をとる必要はなかろうと考えておる次第でございます。
  238. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私は、何度でも同じことを申し上げますけれども、義務教育段階における教育制度というものを、できるだけ——できるだけじゃありません、これはぜひ全国統一した姿において、事のよしあしは別といたします、政党、政派によってそれぞれの御批判があることも承知をいたしておりますが、正式に国会の議決を得て、ただいまの教育委員任命制ができておるのでありまするから、本土に準じて本土並みにすることが最も適当ではないかと、かように考えておるわけであります。
  239. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 事柄は教育問題ですし、たいへん重大なる問題だと、かように思いまして、政府はこの結論を得るまでには、たいへんあちらこちらの意見も徴したわけでございます。で、慎重に審議した結果、ただいま高見君並びに山中総務長官から説明したような、最後の結論を下したような次第であります。何とぞ御了承をお願いいたします。
  240. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 簡単に願います。
  241. 松永忠二

    ○松永忠二君 御答弁がありましたが、特に文部大臣は、義務教育の問題については、やはり同じような形に置くのがいいというお話だけれども、たとえば今度の中教審の問題でも先導的試行というようなことをやられているわけであります。一面で制度を行なわれながら、一面先導的な試行としてのことも行なわれているわけです。すでに先導的試行というのは実験済みであるわけです。で、しかも山中長官も言っているように、最初のときにはそういう回答したかもしれぬけれども、これはまあある程度相当強力なものを言ったという点もあって、その後、つまり沖繩政府を中心として、県民の意見もそれぞれ固まってきたわけです。だから、そういうことについて、さっきの繊維の問題でも同じですけれども自分たちの言っていることがよくて支持をされるという見通しがあるならば、むしろ、そういう方法で決着をつけていくことのほうが非常にいいんだということを私たちは考えているわけなんです。別に私はあなたから御答弁をいただかなくてもいいけれども、いま言った御三人の御答弁で、それでいいものだということには私たちは考えていないので、この点についてはなお機会を見て委員会等もあるわけでありますので、たまたまいま安永委員が非常に定着をしてきている事実もあり、こまかいお話は出てきておりませんけれども、そういうこともあり、私たちは本土の任命制を公選制にしたいという気持ちを持っておりますので、積極的に私も時間をいただいて発言をしたのであります。積極的に御答弁をするというお話なら別でありますけれども、あなた方の言われるように、この問題についてそのままにはいかないということを申し上げて関連を終わります。
  242. 安永英雄

    ○安永英雄君 いま質問がありましたが、憲法九十五条の適用という方法で何とか教育委員会の制度というものをそのまま残すという考え方は全くないわけであります。また、この制度というものは、これは当然私どもとしては、この制度を適用しなきゃならぬ事案ではないかというふうに考えていますが、政府の考え方はどうか、長官からお答え願います。
  243. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私は、復帰対策要綱を一次、二次、三次と定めるに当たりましても、現地の皆さま、ことに民意を代表して現在責任のある地位にあります主席あるいはまた文教局を中心とする局長会議、そういうものに十分に議論をしてもらいまして、それが固まったところで、一次、二次、三次の復帰対策要綱を定めておるわけてあります、したがって、閣議において決定をいたしました時点において琉球政府との間には意見の相違はなかったわけであります。しかし、その後そのような御意向が各方面から出ている事実については、私も肯定をいたすものでありますが、経過において私自身があるいはまた私ども本土政府というものが沖繩側の意に反して閣議決定をしたという事実はございませんし、したがって、再度のお尋ねでありますが、沖繩にそのような経過を踏まえてなおかつ現在の沖繩の御意見、これは全部であるとは私思いませんが、そういうことに従って国民投票、県民投票をやって、憲法九十五条の立場に立った意見を聞いてきめろということでありますけれども、やはり政府政府との話し合いで一応まとまったものが閣議決定されておりますので、政府立場としては、御意見はわかるわけでありますけれども、本土において任命制の切りかえのときにも、議会政治の中に幾つかの数えられるような紛争騒ぎまで起こして制定したものでありますから、賛否はいつまでも私は分かれているものと思いますけれども、要するに、本土政府が現実においては任命制をとっております以上は、やはり義務教育について同じ制度をとることについて今後とも沖繩の方々に粘り強く私としては御了解を求める努力を続けたい、かように考えておる次第でございます。御了承をお願いいたします。
  244. 安永英雄

    ○安永英雄君 教育の直接の責任者であります文部大臣どうですか、いまそれでよろしいか。
  245. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) ただいま山中総務長官からお答えがありましたとおり、政府見解はそういうように一応いたしております。
  246. 安永英雄

    ○安永英雄君 この制度の問題についてはさらに検討する機会がありますから、そこで深めていきたいと思います。  先ほどあたたかく迎えるという総理のおことばでありましたが、現在沖繩の設備、施設あるいは教材費その他一切が苦しい県財政といいますか、こういったために、私の調査の結果では五年ないし十年本土からおくれている。こういった問題について総理並びに長官、文部大臣のお考えをお聞きしたい。
  247. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 沖繩で最もおくれており、しかも、最も本土並みに急がなければならないものは教育施設並びに社会保障、社会制度でございます。したがって、私としては、社会福祉政策並びに文教施設の環境整備というものを重点的に本土に追いつかせる努力をしなければ相済まないことであると考えておるわけであります。したがって、五カ年計画で本土に追いつくように環境整備を施設その他はかりたいと考えますが、沖繩の児童たちの環境というものは、先ほど総理とのやりとりの間にもございましたが、嘉手納小学校等に私も訪れましたけれども、まことに気の毒な環境の中で勉強いたしております。その子供にとって、一年は取り返しのつかない一年でありまして、その環境の中で嘉手納小学校、中学校の子供というものは、あるいは屋良小学校の子供というものは自動車の警笛を鳴らしてもよけてくれない、困ったもんだという話も聞きました。それは自分たちが消しゴムを削って、騒音に耐えるために耳に差し込んで、それが取れなくなっておるんだというふうな話も承ったわけであります。まことに私たちとして、日本国民でありながら、次の世代を負う児童たちに対して申しわけない状態に置いておると考えまして、このような防音装備については、直ちに本年度予算で処置を終わっておるところでありますけれども、極端な例を申しましたが、その他全島的に考えて、各離島等も含めて、職員室もなければ校長室もましてない、あるいは特別教室もない、あるいは屋体の普及率も本土に比べてはるかに四分の一ぐらいしかできていないし、沖繩は海があるではないかといっても、本土に比べてプールもたいへん少のうございますし、それらの環境から考えて、高率の十分の九補助をもって義務教育の施設の整備、環境の整備に重点を置いてすみやかに、五年目には本土並みに追いつけるような努力をいたしたいと考えて、文部省と打ち合わせをいたして予算要求しておるところでございます。
  248. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 山中長官から詳しくお話がございましたが、ほんとう沖繩の教育施設というものは、たいへんなおくれ方をいたしておるのであります。それで、私どもは来年度を初年度といたしまして、五カ年で本土に追いつくということにいたしたいと思いまするが、公立学校全般について見ますというと、基準面積の達成率は校舎で六二・三%、本土の場合は九一・四%でありまするが、それに対して六二・三%、それから屋内体操場、屋内運動場は十二・五%、本土は七〇・三%でありまするに対して十二・五%という状態であるのであります。沖繩の公立学校施設の整備計画につきましては、先ほども山中長官からお話がございましたように、私どもは五年を目標といたしましてほぼ本土並みに達成させたいと、そのつもりでその目途のもとに整備計画を策定中でございます。整備計画を達成いたしまするに必要な事業量は約六十万平方メートルと見込まれておるのであります。昭和四十七年度概算要求におきましては、このような計画を前提といたしまして、初年度分の総額四十六億円、これを対前年度に比較いたしますると、一一五%の大幅の増加要求を行なっておるのであります。  また、沖繩における教材につきましては、昭和四十四年に小中学校につきましては、本土と同内容の教科基準を定めてその整備を進めてきたところであり、理科教育設備については早くから本土の設備基準に基づいて整備が進められておるのでありますので、本土との格差はこの面については比較的少ないのでありまするが、教材の整備あるいは理科設備整備とも復帰後に一定期間高率補助を行なう方針を立てておるのであります。  また産業教育の実験、実習のための施設設備につきましては、その整備状況が現在本土の実は半分にも達していないという状況であるのでありまして、実験、実習の充実をはかります上で大きな障害になっておるのであります。これを本土並みに引き上げることが何よりも必要であると考え、これについても復帰後高率の補助を行ないまして、昭和五十年度を目標に本土との格差是正をはかるつもりでやっておるのであります。
  249. 安永英雄

    ○安永英雄君 琉球大学の国立大学移行の計画について詳しく述べてください。
  250. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 琉球大学は、名称を復帰後も琉球大学と一応することにいたしておりますけれども沖繩県に変わったあと琉球とするかどうかの問題は、後ほどまた相談をしなければならないことでありますが、一応現在の琉球大学をそのまま国立大学に移管することにいたしておるわけであります。なお、付属病院の教授の問題その他についても現地の御要望等に——本土においては例がないことでありますけれども、大体そういう定員を確保できる等の措置を講じ、また医学部がありませんが、付属の病院もいま建設完成に近いところまできておりますが、これは保健学部の付属病院として残してそのまま国立へ移すことにいたしております。なお、来年度予算においては沖繩大学に医学部を設けるための調査費を計上して、具体的な沖繩大学医学部設置に乗り出す決意でございます。
  251. 安永英雄

    ○安永英雄君 沖繩の問題は、他の委員会で十分これは教育問題は深めていきますが、総括的に私は総理大臣の沖繩を迎えるにあたって、いままでいろいろ意見の交換をやったわけでありますが、総括してどういう現在の御心境で進めて迎えられるのか、総括してひとつ御答弁願いたい。
  252. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 総務長官や文部大臣から詳細にお答えいたしました。また、ただいまは大学の問題にまで触れられました。私はどちらかといえば素朴な豆記者の諸君の気持ち、それを御披露するのが一番いいかと思いますが、豆記者諸君からの強い要望は図書室がない、同時にまたプールがない、こういうことでございました。私はこれらのものが順次整備されるように心から願っております。ただいま先ほど来山中総務長官から、また文部大臣からお答えいたしましたように、その他にも幾多の充実すべき施設が残っておる、本土との格差は非常に教育の面において大きい、こういうことをただいま考えておるのでございまして、私はこれらのものが復帰後において、できるだけ早い機会に本土との格差が解消されると、そのことを心から望んでおるような次第であります。
  253. 安永英雄

    ○安永英雄君 次に、六月に中央教育審議会が学制改革の問題について答申をいたしました。この問題については、本会議の総理大臣の施政演説の中でも触れられた点であります、改革をしていきたいと。私は総理に率直にいまなぜ学制改革をやらなければならぬのか、その基本的な事由といいますか、これをひとつお述べ願いたいと思うのです。
  254. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今回取り組もうとしておるものが日本の三度目の学制改革だと、かように言われております。明治初年、さらにまた敗戦後の教育制度、これにメスを入れるべきその時期が来ていると、かように言われておるわけであります。私は二度目の改革が自主的自立的なものでなかったこと、これはいなめない事実であります。教育そのものがだれのものか、いろいろの考え方が出ておりますが、少なくとも日本人の教育は日本人のものであること、これも間違いないことだと思っております。私はそういう意味で自主的であり、自立的であるべきだと、かように思います。しかも、戦後二十六年たって、ずいぶん世の中は変わってきておる。ただいま占領軍から与えられた学制、その制度を見直すべきその時期にも来ておる。これが中央教育審議会に政府が答申を求めたゆえんでございます。そういう意味で中央教育審議会に答申を求めた、中教審の答申は出てきた。今後はこれをいかに具現するかという、そういうことになっておると、かように私は承知しておりますし、また皆さん方にも御了承願いたいと思います。
  255. 安永英雄

    ○安永英雄君 文部大臣、第一、第二、第三の教育とこう言われますが、どういう意味ですか。これが国民が一番理解しにくい点であります。第一の教育の改革というのは何か、第二は何か、そしていま第三というのは何か、この点はっきりしていただきたい。
  256. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答えいたします。  第一の教育改革というのは、明治六年に行なわれました学制改革でございます。第二の教育改革は、敗戦後行なわれました教育改革、これにはそれぞれ社会的な非常な大きな変動がありまして、それを背景として改革を行なったのであります。今回の改革は、平常時における改革なのであります。その改革の基本線は、学校教育体系だけの問題じゃありません。教育というものを、人間生涯にわたる教育という観点に立って教育制度というものを見直してみようというところで、四年間にわたって、中央教育審議会が長い期間をかけて御検討いただいた答申を、六月にいただきました。この答申に基づきまして、できるだけこの線に沿った教育の改革をやっていこう、これを私は第三の教育改革、中教審もさように答申の中にうたっておるのであります。さように私も理解をいたしております。
  257. 安永英雄

    ○安永英雄君 平常時における学制改革というのがなかなか問題なんです。これをよほど国民に、なぜ改革をしなければならないかということを、これはよほど示さないと国民的合意は得られません。この点もう少し詳しく。
  258. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 御承知のように、教育制度というのは、学校体系を変えるということは、教育制度の改革だと一がいに早合点するわけには私はまいらないと思うのであります。したがいまして、中教審も先導的試行などという新しいことばを使っておるのでありまするけれども、先導的試行などというものが、学校体系の改革という形においては相当国民各位の御批判、御意見があることだと思う。これを私はすなおに聞かなければならぬと思っておるのであります。ただ、御承知のように、教育というのが人間の人格の完成を目ざすのが教育であります。したがいまして、生まれてから死ぬまでの間が人格完成の期間であり教育の期間である。こういう観点に立って教育というものを考え直してみようというのが、今度の改革の趣意である、かように考えておるのであります。
  259. 安永英雄

    ○安永英雄君 大臣かってなことを言ってもらっちゃ困るんですよ。中教審に基づいてということであれば、中教審はそう言っていないんです。人間の能力、人格の完成は六三制でできませんから、六三制のねらうところは——ここなんですよ、どこが違う、どこをかえなきゃならぬのです。六三制をなぜ変えなきゃならぬ。もう少し説明してください。
  260. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 六三制という制度は、私はある意味においては定着した制度であると考えておるのでありまするけれども、六三制のほかに考える余地はないか、たとえば小学校の六年は六年として、あるいは後期中等教育の段階において考え方はないのか、高等教育について考え方はないのか、ことに一番おくれておる幼児教育について考える余地はないのかと、これらの問題を考えてみますというと、ずいぶん中教審の答申は幅広い答申でありまするけれども、考えさせられる幾多の問題が私はあると思うのであります。これをすなおに、ひとつ国民の皆さんの御意見を伺いながら進めていきたいと、かように考えておるわけであります。
  261. 安永英雄

    ○安永英雄君 非常に意外に思うんですけれどもね。六三制のたとえば一部欠陥があると、これをそれぞれ変えていくというのが学制改革の趣旨ですか。六三制の制度にのっとってそれを補充するという立場ですか。
  262. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私は、六三三制の制度というものが必ずしも非常に間違っておるとは思っておりません。しかし、これでいいかということになると、戦後二十五年を経ました今日、こんなに世の中が変貌しておるときであります。また遠い将来の未来を展望いたしまするときに、このままの制度でいいのかという問題については、これは国民全体がやっぱり一ぺん考え直してみようという空気が私はあるんじゃないかと思う。その空気があればこそ、中教審の答申というようなものもいろんな批判はございますけれども、一応肯定をされるという状態に私はなっておると思うのであります。六三三制について、あるいは六三がいいのか、六四四がいいのか、六三四がいいのか、これについてはまだこれからの検討段階なのであります。これから文部省といたしましては、まず行政財政の整備をいたしまして、そして広く国民の皆さんの御意見を伺うと同時に、初等、中等教育の問題あるいは教員の処遇の抜本的な改善の問題など、十分検討すべき問題がたくさんあるのであります。しかし、これは一挙に解決のできる問題ではございません。したがって、この問題につきましては、十分な検討を経て、学問的な基礎に立っての実証の上に制度の改正の必要があれば改正をする。今後、したがって中教審も十年という期限を、おおよその目安の期限をつけておるのであります。それぐらいの間のやはり検討は私は必要であろうと思う。そう簡単に教育制度がここがいかぬからこう改めるというような性質のものではないと、かように考えておるのであります。
  263. 安永英雄

    ○安永英雄君 意外なことを聞きますがね、中教審のねらっておるのは、六三制をほとんど否定しておる立場に立っておる。そして幼稚園から大学まで、さらに一生涯といういわゆる根本的、抜本的な改正をやろうとしておる。こういうふうに私どもはとっておるわけですが、いまの大臣の答弁では、六三制というものの基礎の上に立って、そういった世の中の変化というものを多少考えて徐徐に改定をしていくんだという立場をとられる、どこなんです。
  264. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 中教審の答申が六三制を否定しておるというお考えは、私はいかがかと思うのであります。中教審の答申の一番のねらいは、人格完成のために教育を行なうのは、生涯にわたる教育でなければならないということを主張しておるのであります。したがって、六三制の制度がいいのなら、そのまま続ければいいのであります。何もそれを、中教審の答申があるから変えなきゃならぬと、私は考えてはおりません。
  265. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 関連。  文部大臣にお聞きしますが、六三制のあり方の問題について、中教審はいざ知らず、その答申を受けて文部大臣としては、この六三制度問題についてどう考えているんですか。ただ、先ほどの答弁を聞きますと、どうかはわからないけれどもいろいろ検討してみたい、こういうものの言い方なんですがね。そういう形で、この六三制度のあり方の問題ということについても検討したいと、こうおっしゃる。もし検討したいとおっしゃるならば、その中身は、こういう欠陥があるから、この可否について検討したい。これならば、国民は私はわかると思うんです。そこの点を明確にしないままに、何だかわからないけれども六三制の制度のあり方についても検討してみたいというんでは、これは、国民の間にいろんな混乱を起こしてくるのは当然と思いますがね。いかがですか。  なお、いま一点は、私は総理にお聞きしたいと思います。いいですか、総理大臣。  総理は、先ほど安永君の質問に対しまして、第二の改革であるところの戦後の教育改革に対して、自主的、自立的でなかった云々と、こういうお話でありますが、それは、その占領下という事態のもとにおけるところの教育改革であったからそうでなかったという意味なのか、それとも、その中身が自主的でない、あるいは日本人らしくないというふうにお考えになっておるのかどうか。その点は、私はやはり明確にしてもらわなけりゃ困ると思う。いかなる方法できめられようとも、その中身がよければいいはずなんですよ。そこらは一体、総理はどう考えて、第三の教育改革の時期に入ったとおっしゃるのか、その点を明確にしてもらいたいと思います。
  266. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私よりも宮之原先生のほうがよほど詳しいわけでありますが、私は、六三制を中教審は否定しておるとは思っておりません。六三三制の制度は、制度なりに評価してよろしいということをいっておるのであります。ただ問題は、生涯にわたる人間の教育というものを考える場合に、学校教育の段階と幼児の教育の段階とをどうするか、あるいは社会教育、職場教育との関連をどう考えるか、あるいは児童・生徒の心身の成熟度というものを考えまする場合に、幼稚園と小学校との連関をどう考えるかというような問題について、いわゆる先導的試行というようなことばを使っておるわけなんであります。したがいまして、この問題はよほど慎重に扱わなければならないと、私自身が覚悟いたしておるのであります。何も六三制を、初めから肯定してかかっているわけでもなければ、初めから否定してかかっているわけでもございません。これからの検討を重ねることによりまして、新しい制度を見つけ出したい、かような考え方に立っておるわけであります。
  267. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 六三制、これはもう私が申し上げるまでもなく、占領下において施行された問題だと、当時六三制になじまない方向から考えますと、これは占領軍から押しつけられたと、こういうような表現もありました。このことは御承知のとおりでございます。しかしまた、六三制にだんだんなじんでくると、六三制もそう毛ぎらいしなくってもいいじゃないか、こういう御議論が今日あることも私は承知いたしております。少なくともアメリカ式の六三制であることだけは、これはもうはっきりしている。そのアメリカ製のものが、日本で育って今日まできた。そうして今日では、量的には、非常に教育は普及度が高まってきた。そういう意味では喜ぶべきことだと、かように考えますが、やはり質的には、やっぱり考えざるを得ないものもある。しかしそれは、教育という問題でございますから、私はどう考えようと、そういう個人で教育の問題をとやかくすべき問題ではない、かように考えますから、中央教育審議会に、いかにあるべきかと、こういうことを答申を求めた。これがいままでの経過でございます。したがいまして、ただいま言われますように、この問題についてはいろいろ基本的な問題があるが、その議論はしばらく預かって、とにかく占領下において実施されたと、こういう事実だけにとどめて、話をできるだけ前向きに進めていただきたいと思います。
  268. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 文部大臣が、中教審は六三制度の問題については触れておらない、こう言っておりますけれども、触れておるじゃありませんか。幼児学校ということで、四歳児と五歳児と小学校一年生と二年生と合わせるところの幼年学校なるものを、ちゃんと一つの構想の中に描がいて、しかも、四四六制を指向しているということは明白なんです。それを、あえてあなたはここで否定されるつもりですか。もし、そうでないとおっしゃるならば、いわゆる中教審にあるところの四四六なんという一つのものの考え方については、否定するなら否定すると、明確にこの場ではっきりしておいていただきたい。そのあたりがはっきりしてないだけに、先ほど来国民の間に、一体どうするんだかと、ここに大きなやはり不安と、いろんな問題点がある。  それから総理にもう一回お聞きをしたいのですが、私が質問をいたしているのは、いわゆる六三制度の問題でないのです。総理は、少なくとも中教審の改革が第三の教育の改革だと、施政方針なり所信表明の中でも言っておられる以上は、これは、第一の明治初年の教育改革のように、あるいは戦後の教育改革のように、大きな一つの画期的な、歴史的な意義というものがなければ、やたらに第三の教育改革ということばは出てこないはずなんです。そういう角度から見るならば、単に制度の問題でないんですよ。それを制度の問題だ云々と言ってごまかされようとされますけれども、軽く逃げようとされますけれども、問題は、制度の問題よりも、いわゆる戦後教育の中に盛られているところの精神、いわゆる「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する」という、この教育の指針、方針と、いわゆる今日の平和憲法なるものが一番その根幹になっているというのが、少なくとも今日の教育基本法のあり方の精神なんです。その精神についても、これでは困るから、今後の教育のあり方について、第三の教育の改革とという観点からこの問題について議論をしよう、こうお考えになっておられるのかどうか。そこらあたりはやっぱり明確に御答弁いただきたいと思います。
  269. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私申し上げたつもりであったのですが、六三制の制度を中教審が頭から否定してかかっておるわけではございません。ただ問題は、その前の教育、あるいは中等学校と高等学校との間の連携、それらの問題について改革の必要はないだろうか、これがいわゆる先導的試行ということばで出ておる、まことになじまないことばでありまするけれども、表現であります。私ども考えてみましても、幼稚園と小学校、あるいは幼稚園前と幼稚園まで、この間もずっと一貫して教育が行なわれておる、教育の機会はあるわけであります。ただ問題は、子供の心身の発達の状態から見て、場合によれば、だから中教審は、一つの例として先導的試行の幼児学校ということばを使っておるのであります。先導的試行学校というものを、すぐにやれということを中教審は要求しておるのではございません。私ども、これはよほどの実験と科学的な評価の上に立ってでなければ、この学校体系の変形というものを即座に受け入れるわけにはまいりません。これだけははっきり申し上げておきます。
  270. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 軽々しく四四六制はとらないということなんですね。
  271. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) そういうことなんです。したがいまして、私どもは、何とかして幼児教育と小学校教育とのつながり、あるいは中等教育と後期中等教育とのつながり、これらのものについて何らかのくふうはないだろうかということを中教審は指摘しているものだと、かように受け取っておるのであります。
  272. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ですから、四四六制は否定されるんですね。
  273. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 四四六制を否定するわけじゃございません。場合によれば四四六制をとるかもしれませんが、いま、私はとるという確信を持っておりません。
  274. 徳永正利

    委員長徳永正利君) いいですか。では安永君。
  275. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 答えてくださいよ。おかしいじゃないですか。この質問に答えないのですか。
  276. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) さっき答えたように思いますが。どういう点を再質問なさるのですか、まだ私聞いてない。
  277. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 しかし、そう不まじめでは困りますね。
  278. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まじめですよ。まじめだから、まじめに答えている。
  279. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 人の質問はよく聞いておいてください。
  280. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 高見君にお尋ねじゃなかったんですか。
  281. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 あんたはそこでうなずいておったじゃないですか。うなずいて聞いておったじゃないですか、あんた。
  282. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと整理しますから。宮之原君もう一度、総理に対する質問を繰り返してください。
  283. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 先ほど総理は、第二の教育改革という問題の中身について、いわゆる六三三制度の問題を中心にして答弁をされたのですけれども、少なくとも第三の教育改革と名打つ限りは、いわゆる日本の教育改革の歴史的な意義というものがなければならぬでしょう。いわゆる明治五年の、今日の学制改革の基本をなしたところの第一、あるいは戦前の教育と抜本的に違うところの、第二の教育改革と言われたところの戦後の教育、言うならば、それと匹敵するところの第三の教育改革という意味合いを持たせて、おそらく総理は所信表明の中で言われたと思うのです。単に制度が、いや六三がいいのか四六がいいのかという、そんな形の問題ではないと思うのです。そこで、その基本の精神というものを、総理は、先ほど安永君の質問に答えまして、これは占領下であったために自主的、自立的に直す必要があると、こうお答えになった。しかしながら、これは、今日の学校教育の基本をなしておるところの、憲法の理想を実現するために教育の力をまたなければならないと、教育基本法に明記をし、しかもその教育は、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求するところの教育という教育基本が明確にされておるわけです。そういう教育の根本も再検討しなければならないからして、第三の教育改革とあなたは名づけられておるのですか、どうですかと、そこのところを明確にお答えいただきたいということを、先ほど来私はいろいろ懇切丁寧に申し上げておるのです。
  284. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、先ほど来懇切丁寧にお答えしたつもりでございます。また、高見君も、先ほど来申すように、第一、第二とも、これは社会的変革、そういうもとで行なわれた、今回の第三のものは、平常時であるだけに非常にむずかしいものがありますと、こういうことを高見文部大臣もお答えしております。私は、この占領下においてとられた制度が、これはだんだん国民にもなじんできたと思いますが、その意味において量的には非常に教育も普及した。しかし質的にわれわれはやはり不満なものもあります。しかし、それを総理一存で、これが不満だからどうこうというわけにいかない。だから、それを中央教育審議会にはかって答申を求めて、そしていま答申を得ている。これからその答申をいかに具現するかということで、いまおはかりをしておるのだと。
  285. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 第三の教育改革の一番基本方針を聞きたいというんです。
  286. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これが第三の教育改革……。
  287. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 中身がないじゃないですか。中身を聞きたいんですよ。
  288. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 中身を聞きたいと言われるけれども、いま、第三回目の教育改革として中央教育審議会に意見を求め、その答申が出てまいりましたと、これまでを申し上げている。これをいかに取り扱うか。これは先ほど来文部大臣その他がいろいろ御説明を申し上げておるとおりでございます。この点は先ほども申し上げたのですが、これは私の速記をごらんになればダブっておると思います。
  289. 安永英雄

    ○安永英雄君 これは私が総理に質問をしたように、国民の皆さんが、個々の議員の中ではなくて、国民の皆さんひとしく、この平地に波乱を起こすような学制改革、平時の改革について、よほどの理由がなければならないが、その理由が非常にわからない、率直に言って、わからないというのが、これが現在の教育に関心を持っておる国民の皆さんのひとしく疑問として持っておるところです。それを、いかにいままで言われても、占領政策下の制度であったからというだけでは納得しないんです。これは総合的に説明をしなければ、どうしてもこれは明らかにならない。  そこで、私はそういった答弁の中で気づくことは、中教審の答申を受けて政府並びに文部省というところが、この中教審の答申をどのように位置づけしているんですか。もうまるまるこの中教審の答申は、全部が全部、いまの政府の行政の中でこなしていこうという、これはもう、即政府態度になっておるのか。あるいは、いまみたいに先導的試行あたりをちょくちょく説明されるが、つまみ食いするつもりなんですか。ここのところはっきりしてもらえばわかる。
  290. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 御指摘のように中教審の答申の中には、問題点として提起されておって、具体的にどうしろということが示されておる面が非常に多いことは、安永先生御承知のとおりであります。これをこなしていきますものは、これは文部省の仕事であります。だから私は、中教審の答申をできるだけ忠実に守っていきたいと思います。できるだけ忠実に守っていきたいと思いますけれども、疑問として投げられている問題につきましては、これは文部大臣として私が考えるべき問題であろう、また皆さんにおはかりをすべき問題であろうと、かように考えております。宮之原先生が先ほどから御指摘になります問題で、総理からお答えがありましたけれども、今日の教育で、私は教育が細分化されて一番困った問題は何であるかというと、やっぱり人間性の回復という問題が、ややもすれば軽く見られがちである。教育という問題は、少なくとも学校教育におきましては、先生と生徒の人間の精神的交流というものによって教育というものは生まれるということを考えまする場合に、学校の先生の処遇をいかにするかというような問題は、中教審は一応の答申を出しております。けれども、これを具体的に進めていくということになりまするというと、文部省がさか立ちいたしましても、大蔵省もあることでありまするし、同時にまた人事院というものがあることは御承知のとおりであります。これらの問題をこなしていきますことは、これは容易な問題ではないことは御承知いただけると思います。したがって、私はこれを抜本的に改正をするというならするで、ひとつ皆さんの御意見も十分伺いながら、文部省のこれからの進め方というものに取り組んでいきたい。そのために、文部省に教育改革推進本部というものをつくりまして、ただいま鋭意検討を進めておるところであります。だから、端的に申し上げますと、中教審の答申をまるのみにしてやるのかとおっしゃいましても、まるのみにしてやれない面があるということは、私が申し上げるまでもなく、先生が御存じのとおりだと、問題点として提起されている問題も数多くあるということは、これはもう御承知のとおりだと思っておるのであります。
  291. 安永英雄

    ○安永英雄君 そうすると、中教審の答申まるまる文部省の行政の中で具現をしていくということではなくて、国民的な合意を得ると、これは総理もおっしゃったわけであります。しかし、先ほども私が申し上げたように、この中教審の答申は、幼稚園から大学まで、広範にわたって、しかも教育的な理論を加えて構成されたものなんです。いわゆる基礎が、一定の教育理念を持っておるわけです。これを、実施できるもの、できないもの、いろんなことでつまみ食いをしては、そのつまみ食いだけでは、これは趣旨は大きく変わっていく。これ全体を国民の批判の前にさらしていかなければならぬと思うんですよ、ものの考え方を。こういった国民的合意、こういったものについて、これを国民にいまから合意を得るのだという手だては、どういうふうに考えていますか。
  292. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) まず行政機構を、体制をつくらなきゃなりません。同時に、国民各位の御意見をできるだけ広い範囲にわたって聞かなきゃなりません。しかし私は、中教審の答申が四年間にわたる二百数十回の検討を経てつくられました、この努力に対しては非常な敬意と評価をいたしておるのであります。ただ、その中に課題として提起されておって、これは検討すべきであるというような問題につきましては、行政の最高責任者として私は考えるということを申し上げておるのであります。中教審の答申を無視するなどというような考え方は毛頭ございませんけれども、中教審の答申の中に課題として提起されている問題については、これは、これから研究開発本部で十分検討し、また同時に、国民皆さま方の御意見を各方面にわたって伺っていくという考え方でおるのでありまして、政府の考え方がいつの場合でも正しいのだというほど、こと教育に関しては思い上がった気持ちは持っておりません。これだけをはっきり申し上げておきます。
  293. 徳永正利

    委員長徳永正利君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  294. 徳永正利

    委員長徳永正利君) 速記をつけて。  それでは、本日の質疑はこれまでとし、散会いたします。    午後六時四分散会