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1971-12-23 第67回国会 参議院 本会議 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月二十三日(木曜日)    午前十時九分開議     —————————————議事日程 第十五号   昭和四十六年十二月二十三日    午前十時開議  第一 国務大臣報告に関する件(国際通貨調   整に関する報告)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      —————・—————
  2. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣報告に関する件(国際通貨調整に関する報告)  大蔵大臣から発言を求められております。発言を許します。水田大蔵大臣。    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  3. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 去る十二月十七、十八日の両日ワシントンで開催されました十カ国蔵相会議を終えましたので、とりあえずその結果を御報告いたしたいと存じます。  政府声明によりましてすでに御存じのとおり、今回、多国間の通貨調整につき合意が成立しましたが、ドルは金に対し、現行一オンス三十五ドルを三十ハドルにすることにより切り下げを行ない、円は金に対し七・六六%切り上げることとし、その結果、円の対米ドル基準レートを、従来の一ドル三百六十円から三百八円に改定することといたしました。これにより円はドルに対し、自国通貨建て方式で一四・四四%、IMF方式で一六・八八%の切り上げと相なります。  国際通貨危機が生じて以来、四カ月余を経過いたしましたが、この間各位から寄せられました御理解と御協力に対し心から感謝いたします。  去る八月十五日に米国ドル防衛のために輸入課徴金の賦課、ドルの金への兌換の一時停止措置を講じて以来、これによって生じた国際通貨危機を打開するために、世界主要国は数次にわたる十カ国蔵相会議を開催し、局面の打開に努力を続けてまいりました。各国とも、国際通貨情勢の不安と動揺が長引けば世界経済に大きな影響を与えることを深く憂慮し、一日も早く解決すべきであると、共通の認識を深めてまいりましたものの、いずれの国も、国益を背景にした交渉でありますだけに、合意に達することがきわめて困難でありました。  しかるに、去る十一月三十日、十二月一日の両日ローマにおいて開催されました十カ国蔵相会議において、米国ドル金価格に対する切り下げを示唆したことから事態は急速に進展を見せ、今回のワシントン会議においては、最初から問題の核心に入り、米国の提案をめぐって論議が進められました。論議は、米国ドルを金に対して九%切り下げ輸入課徴金を即時撤廃することを前提に、その他の主要国に対し応分の負担を求めることから始まりました。その結果、ドル切り下げ幅各国通貨調整幅のバランスをめぐって種々交渉が行なわれましたが、最終的には、円については今次の切り上げ決定されたのであります。  このような決定に基づき、わが国は二十日から基準外国為替相場を改定するとともに、円の中心為替相場を一米ドルにつき三百八円とし、為替相場変動幅を二・二五%とすることを国際通貨基金に通報いたしました。また二十日は、新しい為替レートに対する適応を円滑にするために、外国為替市場を一日閉鎖する措置をとりましたが、二十一日より市場は再開いたしました。  今回のワシントン会議に基づき、当面の主要国通貨間の為替レート調整の問題は一応解決を見たわけでございますが、国際通貨制度長期的な視野に立った改革についての検討が今後の課題として残されております。わが国としましては、今後の国際通貨体制の安定のために、これらの問題の解決のために一そうの努力を続けてまいる所存でございます。(拍手
  4. 河野謙三

    議長河野謙三君) ただいまの報告に対し質疑の通告がございます。順次発言を許します。竹田四郎君。    〔竹田四郎登壇拍手
  5. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、日本社会党を代表して、円ドルレート決定についての大蔵大臣報告に関連し、政府所信と当面の政策について質問をいたします。  十九日政府は、一米ドルに対し三百八円、変動幅上下二・二五%を決定いたしました。八月十五日のニクソン米大統領声明以来混乱と不安の長い四カ月が終わることを待ちに待った国民は、再び政府声明を驚きと失望をもって聞いたことでありましょう。なぜこんなに大幅な譲歩をしたのかという疑問がありましょう。多国間のことだからしかたがないというのが政府考え方のようでありますが、国民にとっては、これは新たな苦しみであります。新聞報道によりますと、日本はついに孤立化し、アメリカとフランスに振り回され受諾のやむなきに至ったようであります。かくも大幅な円切り上げは、佐藤内閣経済運営に大きな誤りがあったものと思います。昨年来の円切り上げを迫る国際世論はきわめてきびしくなってきましたが、福田蔵相は、頭の片すみにもないとこれをはねつけ、その対策に手を染めようとしませんでした。政府は、世界的な国際収支均衡時代感覚を持つことができず、米国経済の絶対性を盲信するという硬直さを続けてきました。ニクソン・ショックを受けてからも、「為替管理は完ぺきで、世界に冠たるものだ」とあぐらをかき、無為に過ごしてきました。そのすきをついて為銀や商社投機等によって「ドルは大量流入し、ドル手持はたちまち百四十億ドル以上となってしまいました。これは国民犠牲銀行を大もうけをさせただけでなく、円切り上げ圧力を強める結果となりました。私ども自主性主動性をもって早期決着を促したにもかかわらず、政府は他国の動向に右顧左べんしてきたのであります。しびれを切らした商社は、ついに三百十円前後の円高レートで契約をし、この事実が今回の大幅譲歩につながったのでありまして、水田蔵相自身記者会見で告白しているところであります。佐藤内閣の対米依存経済運営による外国為替対策無為無策自主性のなさ、国際経済に対する適応力欠除等予想外円高レートをもたらしたものであります。十九日の記者会見でも、「切り上げ幅が一番大きいのを自慢するのは軽率だ」と佐藤総理記者からたしなめられているではありませんか。予想を越えた大幅な切り上げに、佐藤総理はどう責任をお感じになっているか、国民に大きな負担心配をかけようとしていることについてどのようにお考えになっているか所信お尋ねいたします。  第二点は、政府声明に盛られた四つの対策を完全に実施するつもりであるかどうかの点であります。おそらく第二項、第三項の対策については力を入れるでしょうが、第一の国民福祉充実と第四の沖繩対策はつけたりで、特有のリップサービスではないかという疑問を感じ得ません。日本経済が今日の情勢に追い込まれるに至った日本国内におけるところの真の原因を総理は正しく認識していないのではないか。あなたは総理になって以来、社会開発人間尊重ということばを流行させ、福田蔵相はゆとりと貯蓄のある財政時代を唱道されました。これらのスローガンは七年間実行されませんでした。高物価農民中小規模企業者の不安、公害交通戦争、低福祉過密過疎、まさに人間社会生活は破壊を早めました。反対に大企業は大幅な利潤を得て規模拡大してきました。こうした社会経済構造が今日の不況や大幅な円切り上げを招いたのであります。いまこそ七年間を反省して、生産輸出優先財政金融メカニズム転換して、国民福祉優先政策をとるべきであります。来年度予算編成においても、最近は、国民福祉をかなぐり捨てて、景気浮揚民間設備投資拡大を唯一の目標にし始めております。老人医療無料化所得減税も引っ込めて、公共料金引き上げに夢中になっており、公共投資を増大するといっても、国民のための社会資本ではなく、民間設備投資拡大を真の目標としているようにしか思えないのであります。第一項目がつけたりでないと言うならば、この際、次のことを明確に示すべきであると思いますが、いかがでしょうか。すなわち、一つ、国民福祉充実五ヵ年計画とその実施プログラムを具体的に示すべきであると思います。二、四十七年度予算編成方針を改め、所得税地方住民税大幅減税地方財政強化を明示すべきであります。三、生産輸出優遇税制金融措置を廃止すべきであります。  第三点は、通貨の再調整の問題であります。今回の通貨調整はあくまでも暫定的なものにとどまるものと思います。ドルは金一オンス三十ハドル切り下げたのでありますが、金・ドル交換性は回復しておりませんし、また、SDRの関係解決しておりません。アメリカ経済も急速に国際収支改善し、健全化するとも思えませんし、ベトナムからの完全撤退も早急に実現を期待できません。日本のほうでも、とにかく景気さえよくなればよいという態度転換も、どうもそう簡単にできそうもありません。過去のあやまちを改めない限り、円の再切り上げ可能性は残っていると思うのであります。一部においては、すでに再切り上げありとの議論もかなり行なわれております。水田大蔵大臣記者会見で、切り上げの幅が大きいから再切り上げはないと言っておられますけれども、今後五年くらいの間に再切り上げは、おっしゃるように、あり得ないと思うかどうか、お尋ねをいたします。  第四点は、円切り上げによって下がるべき輸入品価格末端消費者への還元の問題であります。円切り上げによって、輸入品価格は当然安くなるはずであります。過去四カ月、円高に推移してきましたが、輸入商品末端価格は上がることはあっても下がることはありませんでした。輸入小麦などは、政府売り渡し価格を下げればパンやめん類の価格は下がるべきでありますのに、食管会計の赤字を理由に、政府みずから差益国民に還元しておりません。こんな調子ですので、民間の業者は差益をふところにねじ込んでしまうのはあたりまえであります。政府みずから進んで輸入差益国民に還元するような措置を講ずるべきであることはもちろん、流通機構合理化近代化し、カルテル、再販を規制し、円切り上げのメリットを国内消費物価抑制に役立たすべきであります。政府積極的指導と監視を強化すべきでありますが、その具体的対策総理通産大臣からお示しいただきたいと思います。  この際、質問を追加いたしまして、貯蓄性預金利子切り下げようとしておりますが、この点についても触れていただきたいと思います。物価の上昇は経企庁のお話ですと、五・三%から四%だと言っておりますけれども、これではまさに零細な貯金の利息を食うだけではなく、元金まで食うという結果になってしまうのであります。貯金利子引き下げはすべきでないと思いますが、この際、追加して御答弁をいただきたいと思います。  第五点は、賃金給料についてであります。経営者団体は、大幅な切り上げによって大不況が来る、企業収益は大幅に減退すると誇大宣伝をしております。これは労働者賃金給料値上げを押え、労働強化を押しつけようとする謀略であると思います。あるいは、政府為替差損補償や過保護の政策をとらせようという魂胆であると思います。福祉国家転換するというならば、内外の経済均衡をはかるというならば、個人消費支出割合を増加すべきであります。国民支出に対する個人消費支出割合を見てみますと、昭和三十五年においては六三・七%、不況の年の昭和四十年には五五・三%のものが、昭和四十五年では五一・三%に落ち込んでおります。個人消費支出の増加は、景気浮揚にも大きな役割りを果たすことは明らかであります。政府は来春闘の賃上げについてもこれを大幅にするようにすべきであります。経営者側を説得し、賃上げストップ雇用停止解雇等を極力防止し、労働時間の短縮をはかるよう積極策を打ち出すとともに、他方、円切り上げ犠牲を受けやすい中小企業労働者、倒産、事業縮小など真にやむを得ざる事情によって職場から去っていく者、失業する者については特段の措置を講ずべきであると思いますが、総理の御見解を承るとともに、労働大臣からも具体的対策をお示しいただきたい。  第六点は、中小企業対策であります。佐藤総理は過日の記者会見において、もう相当な措置をとっているからいいだろう、おおむねこれでよいというような態度であったように私は拝見しました。ほんとうにそのように思っておられるのかどうか。もしそうだとするならば、まさに中小企業切り捨てと言わざるを得ません。対米輸出に占める中小企業製品割合の大きいことは御承知でありましょうし、大企業製品といっても、多くの部品が中小企業者によってつくられていることも御存じであろうと思います。雑貨等については、円切り上げ開発途上国からの追い上げと、まさに腹背に敵を受けている状況であります。その上、資金力が弱い。少しばかりの融資や減税によって対処すればよいというようなものではありません。また、中小企業は大企業からの値引き等もしいられるでありましょう。まさに今日、業種転換をせざるを得ない羽目に追い込まれております。長期信用銀行調査によっても大々的な業種転換をしなければ生きていけないだろうと警告しております。きめのこまかい総合的な対策を必要とすると存じます。過日わが党はその対策大蔵大臣通産大臣に申し入れをいたしました。その詳細をここで述べることは避けますが、特にその第二項に関連して、イ、転廃業する者には機械設備買い上げ措置、転業する者には長期利子資金を大幅に融資し、廃業する者については社会保障充実、就職のあっせんを行なうこと、ロ、事業縮小に対しても、資金の確保、税制上の特例措置など行政措置を講ずること、ハ、転廃業に伴う離職者への特別な配慮に万全の措置を講じ、労働債権優先して確保するように、という項目がありますが、この点にも触れて、田中通産大臣大蔵大臣より御答弁をいただきたいと存じます。  第七点は、貿易・資本自由化対策について、総理及び通産大臣お尋ねをいたします。今回の通貨調整措置について、アメリカは大きな条件を付しております。通商問題、防衛費の分担問題について各国の大幅な譲歩を求めているものでありまして、この三つの案件はワン・パッケージとも言えるものであります。新聞報道等を総合いたしますと、日本に対して残存輸入制限品目自由化、関税の引き下げを強く求めておるようであります。特にアメリカは、オレンジ、果汁、牛肉の三品目については年内にも自由化時期の明示を、また、電算機、ICの自由化手続明確化を求めてきているようであります。これに対する政府対策はどうなっているでしょうか。果樹、畜産については、政府は十年前から農業構造改善選択的拡大農民に要請し、多くの負担をもさせ、その成果がようやくあらわれようとしているにもかかわらず、米国要求に応ずることは、農業に与える打撃がきわめて大きく、農民を裏切るものと言わなければなりません。農産物品目は、ニクソン選挙円切り上げの血祭りにされようとしております。アメリカ自由化圧力は決して突如として起きたわけではないのに、政府対策は一向に確立されておりませんでした。農業に対し近代的投資を行ない、国際競争力をつけておくべきでありました。農業に与える急激な大打撃を防ぐためにも、また一方では高い円切り上げを行なった以上、米国要求を拒否し、独自に近代的農業の育成を早急に進め、農民生活を確保すべきであろうと思いますが、その具体策総理並びに農林大臣からお答えいただきたいと思います。  なお、一昨日、衆議院の本会議における答弁におきまして山中農林大臣代理は、三品目については自由化しないと断言し、田中通産大臣は、自由化の方向を進めると答えているわけでありますが、一体どちらがほんとうなのか、総理大臣から統一的な考え方を示していただきたいと思います。  最後に、沖繩県民に対する施策お尋ねいたします。個人の有するところの現金、預金については復帰時において差損補償をすることとしたものの、日常生活物資の大部分を本土からの輸入によっている以上、新レートで再び大きな物価騰貴に見舞われるという心配があります。現地県民さき公聴会においても、即時円ドル交換を強く要請いたしました。また、全有権者の署名を集めて、立法院の決議によって三百六十円レートでの即時切りかえを要求していると伝えられております。政府沖繩県民の不安を解消し、物価抑制見地からも、即時円ドルの切りかえを行なうよう措置すべきであろうと思いますが、政府決意対策総理並びに担当大臣お尋ねいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 竹田君にお答えをいたします。竹田君から多岐にわたって政府施策についておしかりや御意見やまたお尋ねを交えてのいろいろの御意見をただいま聞かしていただきました。そのうちの基本的な問題につきましてお答えをいたします。不十分な点がありましたら所管大臣から補足させていただくことにいたします。あらかじめ御了承願っておきます。  まず、竹田君は、今回の円の切り上げは従来の政府経済運営誤りによるものだとの御意見でありましたが、私は、その点については見解を異にするものであります。これまでの国民各位の御努力政府の適切な経済運営が相まって、わが国産業競争力は格段に強まり、所得水準西欧諸国にほぼ匹敵するまでに向上してきたのであります。今回の通貨調整の結果、円の価値が高くなったのも、これまでの国民努力によって日本経済力充実したことの反映にほかなりません。政府といたしましては、今後このような充実した経済力を基礎として対外均衡をはかりつつ、真に豊かな福祉社会の建設を目ざして政策運営を進めてまいる決意でございます。また私は、竹田君のように円の切り上げ幅が過大だとは考えておりません。先ほど大蔵大臣から報告したように、各国が公平な負担を分かち合うという方針のもとに、また、これ以上世界経済を混迷させてはならないということも考えて今回の決定を行なったのでありまして、私は適切な措置であったと考えております。もちろん二十数年にわたって維持されてきた一ドル三百六十円の為替ルートが変更になりますのでありますから、いろいろの摩擦があることが予想されますが、私はわが国民のすぐれた適応能力によって、これに伴う困難は必ず解決されるものと確信しております。昨日や一昨日の為替相場などをごらんになりましても、また株式市場等ごらんになりましても、この点はわれわれは十分自信が持てるように思っております。政府といたしましても、国民各位とともに問題の解決に当たる決意であります。  次に、政府は、さき政府声明にも述べたとおり、円の切り上げを行なったこの機会に、国民福祉充実のための諸施策、すなわち住宅、生活環境公害、老人問題などの諸施策を一そう強力に進めていく方針であります。現在四十七年度予算編成作業を進めているところでありますが、予算編成にあたっても、当面する経済の停滞をすみやかに克服するとともに、各般にわたる国民福祉向上のための施策充実するよう努力しております。  また、政府は、新しい事態に即応した新しい長期経済計画を作成することとし、現在経済審議会と緊密な連絡をとりつつ作業を進めているところであります。新計画には、国民福祉充実を十分に織り込んでいきたいと考えております。  次に、税制についてのお尋ねがありましたが、財政政策による景気浮揚政策の一環として、この臨時国会において、所得税一般減税を特に早めて、すでに千六百五十億円の年内減税を実施したことは御承知のとおりであります。これが昭和四十七年度において二千五百億円程度の減税となりまして、景気回復のために相当の効果を発揮するものと思われますし、負担の面から見ても、まずまずの軽減になっているものと思われます。このような事情もあって、四十七年度税制改正においては、所得税に関してさらに上積みして一般減税を行なうことはいまのところ考えておりません。  また、住民税については、所得税年内減税が実施されたこともあって、所得税住民税課税最低限の格差が拡大しております。このようなことから、来年度において課税最低限引き上げ等により住民税軽減合理化をはかることが望ましいと考えられますが、現在税制調査会等審議中でありますので、その結論を待ちたいと考えております。  また四十七年度の地方財政については、目下大蔵自治両省間において検討を進めているところであります。いずれにいたしましても、明年度財政運営は、国、地方ともにきわめてきびしいものとなりますが、地方自治体の行財政の一そうの合理化努力を期待するとともに、国としても十分検討の上、必要に応じ適切な措置を講じてまいる方針であります。  なお、輸出産業に対する税制上、金融上の措置改廃等につきましては、大蔵大臣からお答えをいたします。  次に、物価の問題についてお答えをいたします。竹田君の御指摘のように、円の切り上げによる輸入品価格低下国内物価の安定に反映させていくことが必要であります。政府は、主要輸入品輸入価格卸売り価格小売り価格調査し、問題があると見られる品目等につきましては精密な追跡調査を実施することとしておりますが、今後、切り上げに伴う輸入品価格低下消費者価格に反映されるよう、流通機構改善合理化に一そうの努力をはかる方針であります。不当な価格操作や安易な値上げにはきびしい態度で臨むことをこの機会に申し上げておきます。  次に、勤労者への影響でありますが、政府は、財政金融面から積極的な景気浮揚策をとるとともに、明るい労使関係確立等により、円切り上げのしわ寄せをできるだけ勤労者に及ぼさないよう配慮してまいる考えであります。  労働時間の短縮は、本来労使の自主的な話し合いできめられる問題でありますが、勤労者福祉向上見地からも望ましいことでありますので、政府としてもできるだけのお手伝いをいたすつもりであります。  また、輸出関連産業、ことに中小企業等に対する対策、これにつきましては、金融財政税制等の各面から、これに対して十分の注意をするつもりですが、具体的には通産大臣からお答えをいたします。  最後に、農産物自由化についてお答えをいたします。これはどうも意見が一致しないということでありますが、私はかねてから申し上げておりますとおり、自由化の促進は、世界経済第二の経済力を有するに至ったわが国国際的責務であり、これを外圧に屈したものと考えるのは当たっておらないと考えます。この点につきましては正しく御認識をいただきたいと思います。このことは、農産物といえどもその例外ではあり得ませんが、ただ、わが国産業は、現在生産性の高い近代的な農業確立を目ざしてその体質改善を早急に進めているところでありますので、今後自由化を進めるにあたっても、国内産業にさらに十分な配慮を払っていかなければならないと考えております。自由化を可能ならしめるためにも、農業近代化を一そう進めなければならないことは言うまでもありません。これが基本的な方針であります。  また、沖繩の問題につきましてのお尋ねがありました。これがリップサービスだと、かような御批判がありましたが、私はかような御批判については断固反対するものであります。正しく認識していただきたい、私はかように考えます。この問題につきましては総務長官から具体的にお話をいたします。どうぞよろしくお願いをいたします。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  7. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まず、円の再切り上げがなくて済むかという御質問でございますが、この問題について少しく申し上げたいと存じます。  ただいま、円の大幅切り上げというお話がございましたが、はたしてどれくらいの切り上げが最も妥当であるかということは、当然私どもの最も心配して苦心した問題でございます。世界各国も、八月十五日から四カ月、百日ほどかかって各国の妥当なレートの模索をやって今日まできました。そのためには各国ともあらゆる研究がなされました。まず第一に、前回も御報告申し上げましたが、各国の経常収支の黒字幅というものがとことんまで計算されました。もし正常の条件の場合には各国ともどれくらいの経常収支の黒字幅を見ることができるかという計算がまず第一であって、その次には、各国とも必要な国際収支上の経費は、許さるべき黒字余裕というものはどれくらいかということになりますと、たとえば日本で申しますと、GNPの一%は諸外国の援助をするという国際的な約束になっておりますので、こういう余裕は当然日本は確保しなければならない、こういう必要な黒字も全部計算され、そういうものの差し引きを各国とも行なった結果、最も多く黒字の出たところが一番多い幅の切り上げをすると、この強弱に応じて均衡をとった調整幅をきめようというようなことが国際機関のあらゆる機関において研究され、その出た結果はみんなまちまちでございました。特に、私どもは、日本の現在の国際収支の特にいいことは異常な現象であって、不況のために異常な黒字の累積が行なわれているんだと、これは正常な状態でないから、これは一応修正されなければならないということをほとんどこの百日間主張して、日本の主張は相当各国のコンピューターをみな直させてきているというようなことから、最後案として出てきたものがいわゆるアメリカ案でございました。で、この案は、もうすでに国際的に発表になっておりますから御承知だと思いますが、日本に求めるものは二〇%の切り上げでございまして、これが最後に国際間で合意されて動かない率が一八・五%ということが、大体国際間の、もうきめられた、一応これで均衡がとれたレートというところになりましたが、私どもはこれに承服しませんでした。と申しますのは、やはり円の実勢というものがどこであるか、ほんとう日本の力というものをどの辺に評価することがいいのか。これを誤ったら、私と日銀総裁が代表でございますが、これは国家の利益を誤ることで、重大責任でございますので、この点は非常に私ども心配しまして、どこが適当か、妥当か。もしこれが幅が少なくて、実勢を離れて小さい幅にしたら、おっしゃられるとおり円の再切り上げは避けられない。そうして日本為替相場は落ちつかない、落ちつかなければ日本経済が依然として先行き不安で安定しない。そうすればこの不安、いまの不況というものが立ち直りのめどが立たない。これが最もいまの経済に悪いことですから、めどをつけて落ちつかせるということが、今度の通貨調整の一つの大きい意味でございますので、したがって、切り上げ幅が少なくて列国の同意を得られないレートに落ちつけることになったら、もうこの相場は安定しないし、通貨の安定がしないということでございますし、反対に過大な切り上げ幅をした場合には、これが国内経済に与える影響というものは、これはなかなか大きいのでございますので、その妥当性を越えた幅の切り上げということは、私どもにはどうしても承服すべきものではない。こういうことから考えまして、いろんな点で外国の同意をついに得た点は、やはり日本は三百一円から三百十五円にいく、これだけの幅の中でこの為替相場を安定させるということが日本経済にとって妥当な行き方だろうというのが私どもの結論でございまして、大体ワイダーバンドを入れて、その幅の中に入る中心を三百八円に求めて、私ども承知し、これを承知しない各国が多くて、各国ともみんな本国の請訓を仰いでもなかなかきまらないという事態で、私どもは非常に骨を折って、ついに各国の同意を得たということでございまして、これがはたして妥当であったか、なかったか、私どもはいまだに心配はしておりますが、しかし、これで日本経済に大きい動揺があったか、ショックがあったかというようなことを見ますというと、これでやはり日本経済が落ちつくんではないかと私は思っております。もしそうだとしますというと、いままで不況が、金を使っても、いろいろの施策をとってもなかなか不況回復ができなかったのが、先行き不安というものがあったために、投資家も採算が立たないで、めどが立たないために設備投資がなかなか起こらないという面もありましたが、経済活動の計算の基礎が立つということによって、私は日本経済がこれから初めて立ち直りの方向へ向かっていくものということに、強くこれを期待しているわけでございます。したがって、レートのきめ方から私は再引き上げに追い込まれるということは、いまのところまず考えられないということが一つと、そうしたらあとは何かと申しましたら、あとは今後の経済運営によるものだと思いますが、今後は、なかなか国際均衡を確保するということにはひまがかかりますが、しかし、八項目を実施するという方向を推し進めていくのでしたら、だんだんにこれはいまの黒字幅というものは縮小する。そうして貿易外収支の赤字とか、あるいは長期収支の赤字というものも、対外援助もどんどん進んでおりますし、赤字が少し拡大の方向にいくということによって、私は国際収支均衡の方向へ向かっていくものと思います。そうすれば、一方予算福祉政策への重点というようなことによって、財政政策転換もあわせて考えますなら、私は再び再引上げに追い込まれるような事態がなくて済む、また済ませなければならぬ、そういうふうに考えている次第でございます。次の御質問は、貯蓄性預金の問題でございましたが、この通貨調整の行なわれたあとは、世界各国とも低金利政策の促進という方向へいくんだろうと思います。金利が下がっていく、各国とも金利を下げる方向へいくと思いますが、日本も国際化の中にある以上、同様の方向を金融政策としてとりなければならないと思います。そうしますというと、長期金利をもう一歩下げるというところへ来ますというと、預金金利というものをどうするかが日本においてはこれから当然日程にのぼってくる問題だと思います。そこで、私どもはいろいろこの問題について考えておりますが、なかなかむずかしい問題でございます。したがって、当面いま一歩金利水準を引き下げるという仕事をするために、一度にはいきませんので、定期預金三カ月、六カ月、一年、一年半というようなもの、積み立て貯金というような貯蓄性を持ったものは一時そのままにしておき、そのかわり、要求払いの預金、当座預金、この通常預金というものはこの際若干の預金金利引き下げをやることは合理的である。その辺まではいかなければ、やはり日本の国際的な動向に沿った金融政策の遂行ができないということになりますので、この点は今後、当面の問題として検討すべき問題であるといっていま検討いたしておりますが、それいかんによっては、もう一歩の金利低下をこれはやらなければならないというふうに考えております。  その次の御質問の問題は、中小企業についての転廃業、転廃その他の問題でございますが、これは去る九月二十九日の閣議におきましてきめましたとおり、変動為替制の採用について、中小企業について政府関係機関の特別優遇レートの融資を決定いたしましたが、この線に沿って、今回の措置によって起こる中小企業に対してもこれを適用するというような方向で金融についての措置は私ども十分考えるつもりでございます。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  8. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 三点お答えいたします。  第一点は、輸入価格低下のメリットを消費者価格に反映させよということでございます。当然の御要求でございます。円平価の調整によりまして、ドル建てで買い入れております輸入品価格は相当程度低下をするわけでございますが、これを直接消費者価格に反映をせしむるためには、流通や加工の段階において吸い取られることのないように十分監視、調整をするということに尽きるわけでございます。口で申し上げると、このように簡単明瞭、簡明直截でございますが、しかし、なかなか具体的な問題としてはたいへんな問題でございます。これを御指摘のようになすために、通産省は流通過程、加工過程というものに十分配意をいたしまして、監視の目が届くように、そしてこのメリットが国民経済に還元されるというために全力を傾けてまいるつもりでございます。例を申し上げますと、OPECの原油の値上げによって相当石油価格が上がったわけでございますが、変動相場の中でこれを吸収されておるわけでございます。今度は円平価の調整幅が非常に大きいのでありますから、この変動為替相場制の中で安く買い入れられたものよりはるかに大きな差益が出るわけでございますから、そういう意味で、灯油価格などは最盛期の十二月——二月等の価格よりも、OPECの値上げがあっても引き上げないということを申し上げておるのでありまして、引き上げないだけではなく、今後はこの種のものは引き下げていくように努力をしなければならないということでございますので、通産省も一生懸命でやります。皆さんからもひとつ御協力のほどを切にお願いをいたします。これは国民的監視の目が届かないと実効があげがたいというものでございますので、その意味で御協力のほどを切にお願い申し上げます。  第二は、中小企業対策でございますが、御指摘のとおり、この平価調整でもって一番影響を受けるのは中小零細企業であることは申すまでもないことでございます。その意味で、九月二十三日閣議決定をいたしましたごとく、財政金融税制各般にわたって相当な措置を行なっておるわけでございます。特に、中小三機関の貸し付けワクの拡大、信用補完の制度を拡充する等、諸般の施策を推進しておるわけでございますが、しかし、これは日本中小企業、零細企業というものの特殊性ということを考えますと、これでもって足れりというものではないわけでございますから、事態の推移を十分見詰めつつ、対応する施策をタイムリーに行なうということでなければならないと思います。なお、制度上の問題としましては、国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律等、皆さんに御審議をいただいて成立をいたしておるわけでございます。まあ、そういう制度上の問題にも万全の対策を講じなければならないと思います。なお、景気浮揚という中には、中小企業、零細企業対策が万全でないと、申し上げるような景気浮揚にはつながらないわけでございますし、景気浮揚という面からも、中小企業に万全の対策を進める。また平価調整の中でも、一番しわの寄るのが中小企業、零細企業でございますので、事態の推移を見ながら十分やってまいります。この国会にも二つ三つの法律案を御審議をいただき、もうすでに成立を見ておるような状態で、御理解がいただけると思うのでございます。  第三は、通貨調整自由化の推進、関税の引き下げ等の問題についてでございますが、これはわが国自由化というのは、この一年間で相当進んでまいりました。百二十から八十に、六十に、四十に、その四十をまた年度末までには三十にしたい。こういうことでありますから、日本から諸外国に述べるときには、こんなスピードで自由化を進めておる国がどこにありますかと言えるのでございますが、しかし、年度末になっても四十が三十にしかならないじゃないかと、アメリカ自由化していないものは五つでしかない、五つと三十の開きはどうするんだ、しかも、アメリカドル切り下げる状態である、日本は円を切り上げる状態である、アメリカ並みの五つにはできなくとも、せめて三十を十五ぐらいにしてはどうですか、というのがアメリカ側の発言でございます。そんなに急にはできないというのが日本側の発言でございまして、その間の事情は十分御承知だと思います。そういうわけで、自由化は進めてはまいっておりますが、諸外国から日本に対する自由化、関税一括引き下げ要求の強いことは、私が申し上げるまでもないのでございます。その意味で、自由化の推進スケジュールは、八項目として国の内外に明らかにいたしております。ですから、円平価が切り上げられたので八項目はどうでもいいんだということは考えられるわけではないのでございまして、八項目は当然基本どおり推進をしなければならぬわけでございます。ですから、国の内外に対して八項目は既定方針どおり推進をいたしますと閣議で再確認をし、申し上げておるわけでございます。しかし、御指摘がございましたICや電算機自由化は一体どうするんだ、これは計画をすでに国の内外に明らかにいたしておりまして、このスケジュールどおりに進めたいということで、それ以上の変更はない、こういうことでございます。  なお、自由化に対して農林大臣との発言の間に食い違いがあるという御指摘でございますが、まあ、通産と農林の品目をどちらのほうを先にしたほうがいいのか、国内的な体制もありますので、そういう相談をいたします。農林省のほうがおくれたほうがいい、通産省品目を先にしたほうがいいというような過程において意見の食い違いは——食い違いではなくて、これはもう議論をする段階において議論をしているだけでございます。最終的に決定をするときには、内閣が一つの結論を決定するわけでございますから、両省の間に、自由化、関税の引き下げに対する意見の食い違いはないということで御理解をいただきたいと思います。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣原健三郎君登壇拍手
  9. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) 竹田さんにお答え申し上げます。  私に対する質問は二つございまして、一つは、消費需要の喚起、景気浮揚の一環としても政府は今後大幅な賃上げや時間短縮を行なうべきものであるという御主張でお尋ねでございます。私は、就任以来、日本労働行政も国際的視野に立って再検討すべきときに来ておるということを主張し、そのとおりいま考えて進めております。それで、賃金のほうは、毎年、この上昇率、率でございますが、率だけで言うならば、世界一でございます。この賃金の実情から見ましても、最近ヨーロッパ並みになってまいりました。もちろん、アメリカには及びませんが。それで、今後とも、これは国民経済と調和の上に、実質的に改善されるものと期待いたしております。  実は、国際的に見まして、非常に格差のあるのは労働時間でございまして、ヨーロッパ、アメリカ及びソ連などにおきましては、夏休みもあるし、週休は二日でございます。かなり前からやっております。日本は、夏休みもなければ、週休一日でございます。それで、これは総理大臣からもお話がございましたが、労働時間の短縮はもう世界的な趨勢でございますし、この趨勢に向かって、日本も国際的に時間はやはり検討すべきときに来ていると思います。しかしながら、これは労使の話し合いを基調とすることが根本でありますが、労働省といたしましても、今後、週休二日制を推進していく考えでございます。  さらに、労働者福祉対策を積極的にいたしたい。たとえば、勤労者財産形成法というのも、皆さん方によって成立させていただきましたので、これについても、持ち家、持ち株等を推進し、この内容も、法律の内容も改善して、来年度予算要求もいたしておるところであります。  もう一つの御質問は、円の切り上げ犠牲となって離職する労働者に職業転換対策等を積極的にやるべしということでございますが、もちろん、さいぜん総理からもお話がございましたが、政府としては、円切り上げに伴う不況に対するいわゆる景気浮揚対策は万端いたしつつあるし、いたす考えであります。しかし、対策をやりましてもそういう離職者が出ることも考えられますので、出た場合におきましては、職業の紹介、職業訓練の推進、職業転換給付金制度の活用をはかっていきたいと思っておりますが、さらに、本年の十月から発足いたしておりまする中高年齢者等雇用促進法というのも活用いたしまして、御指摘のように、就職援護期間の延長等もこの法律によって果たしていく考えであります。なお、今後、雇用の動向については、的確にその実情把握につとめまして、各種就職援護措置充実を含め、実態に即応した対策を推進して、離職者の再就職の万全を期していく考えであります。(拍手)    〔国務大臣山中貞則君登壇拍手
  10. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 農業関係自由化についての基本的な姿勢と長期的な展望は、総理の言われたことと変わりはありません。しかしながら、わが国農業は、工業と違って、先進国では断じてないのであります。したがって、わが国の農家が、いま米を中心とした農業の基本的なあり方から、過剰に伴って、逐次膨大な国家的な出費や農民犠牲も払いつつ、作付転換その他に従って新しい総合農政への旗じるし、果樹、畜産、園芸等の旗じるしを目ざして進んでおりますこのときにあたって、その基本的な旗じるしが一つ一つ倒れるようなことを、日本の国家として、そして農林省としてはとることはできません。すでにグレープフルーツの自由化において、われわれは、アメリカとの間に、当然日本の温州ミカンの解禁州の増大を要望いたしました。アメリカもそれにコメントいたしておりながら、いまなおその解禁州の増加の実績はかちえておりません。したがって、私どもは、これ以上、果樹、畜産等の基本的な日本農業の進路にかかる問題については、自由化に応ずる意思はございません。わが国農業は、少なくとも、遠洋資本漁業、あるいは国際的な商品価値を持っていないとはいえ、米等について以外は、私たちの国の農業というものは決して農業先進国ではないということをこの際私は皆さま方に申し上げておきたいと思います。  次に、沖繩の問題について申し上げます。たびたび繰り返しておりますので、詳細は申し上げません。結論だけ申し上げますと、ドル・チェックに伴うところの交付金の支給は、当然今回の平価切り上げによるそれだけの国家は支給義務を負いますから、予算を追加支出をいたします。さらに、学生、長期療養者についての措置も同様であります。さらに、物価安定に対する基金の支出についても同様であります。財源手当てをいたしたいと存じます。さらに、今日では行なわれておりませんが、直接沖繩中小企業者を中心とする緊急融資を適用するための作業をいまいたしておるところでございます。  そこで、残る問題は、復帰前における即時一ドル三百六十円への切りかえの問題であります。これは、衆議院の本会議において、基本的な姿勢を総理、外務大臣から、事務的な検討を含めて御答弁がありました。私は、その検討の過程において、施政権下における布令第十四号の、アメリカ合衆国ドルのみを資産とすると定めた法律を、どのように対外折衝で極秘に、しかも相当すばやい折衝ができ得るかどうか。さらにまた、それをやっても、交換した現地において円とドルとが相互に通用する場合に、為替管理法のない沖繩においてどのような投機ドルの防遏ができるか等の具体的な問題について、いま検討をいたしております。(拍手)     —————————————
  11. 河野謙三

    議長河野謙三君) 中尾辰義君。    〔中尾辰義君登壇拍手
  12. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 私は、公明党を代表して、円のドルに対する大幅な切り上げに関して、その政治責任と今後の日本経済に対する政府対策について、総理並びに関係閣僚に質問を行なうものであります。  政府は、十九日のワシントン十カ国蔵相会議合意に基づいて、対ドル為替レートを二八・八八%切り上げ、一ドル三百八円と決定しましたが、まず疑問に思うことは、通貨調整年内解決は、よくて五分五分、あるいは七分三分と予想されていたのであります。ところが、急遽年内解決となったことは何らかの要因が働いたのではないかとしか思えないのであります。一ドル三百十円なら米国の課徴金がつく、あるいは三百八円ならつかないというわけでもないのであり、それにもかかわらず、わが国円切り上げ大幅譲歩をしたとたんに、難航必至を予想された十カ国蔵相会議が急転直下解決したことは一体何が原因なのか、何ゆえ政府は一ドル三百八円の為替レートにしなければならなかったのか、中小企業はじめわが国経済に与える痛烈な打撃を知っておりながら、何ゆえ大幅な譲歩をしたのか、大蔵大臣の専横の処置については全く理解に苦しむものであります。私は、このような決定をしたほんとうの原因は、沖繩返還を急ぐあまりの佐藤内閣の対米追随外交、対米隷属外交にあると言いたいのであります。今回の通貨調整は、戦後米国世界じゅうにドルをばらまき、冷戦構造のささえとしてきたものを、いま日本をはじめとして各国にツケを回して清算をはかったものであります。特に、米国のベトナム戦争への巨額な出費がその拍車を一段と強めたことは疑う余地がありません。アメリカが一連の国際通貨会議では終始自国の経済外交政策の失敗で生じた国際収支の悪化を黒字国に責任転嫁をはかり、結果から見ても、ほとんど責任転嫁をなし遂げたというのがニクソン大統領の偽らざる心境ではないかと思うのであります。  ここで言いたいのは、IMFの創設にあたって、黒字国が自国通貨切り上げて国際的調整の責任を果たすべきであるとする英国のケインズ案を拒否したのは、ほかならぬアメリカ自身であり、また、金とドルのかわりにバンコールという名の国際準備単位を創設し、それを国際準備通貨とせよというケインズ案を拒否したのも、これまた米国であります。しかるに米国は、その態度とは正反対に、今回の通貨調整においてはその役割りを黒字国に負わせ、すでに基軸通貨としての地位のゆらいでいるドルの威信をさらにゆるがせているこの米国態度は、あまりにも身がってなものとしか言えないのであります。しかも、今回の通貨調整で一応主要国は固定為替相場に復帰することになったのでありますが、肝心のドルと金の交換性は依然として停止されたままになっているのであります。このようなアメリカに追随し切った向米一辺倒の政府の外交姿勢が、結果的にはわが国の貿易、経済に大打撃を与える円の大幅切り上げをもたらしたものと思うのであります。政府は何ゆえこのような米国追随の通貨調整に終始をしたのか、その政治責任をどう考えているのか、総理より御答弁を願いたいのであります。  第二にお伺いしたいのは、何ゆえドルをささえねばならないのかという点であります。総理はしばしば日米安保条約による核のかさを強調しておるのでありますが、経済においてもドルのかさを強く意識しているのではないか。しかし、ドルがそれほど強固であり、ドル経済支配力がそれほど偉大であるとは思えない。それはニクソン・ポンピドー会談で、あれほど米国が拒否をしていた金の対ドル価格引き上げを行なったことでも証明されていると言えるのであります。また、経済力においても米国の比にもならないフランスの要求米国が屈したということは、言いかえれば、それほどドルの威信が低落しているということである。しかるにわが国は、米国のどうかつにあって一度にすくんでしまったのは何としても理解ができないのであります。沖繩返還の前には大幅な通貨切り上げもやむを得ないということで、一切手をこまねいてきたとしか見えませんが、この点、お答えを願いたい。  さらに、これから先再びドルが基軸通貨として堅持される見通しは少ない。だからこそSDRに対して再び各国検討が始まっておるのでありますが、このような不安のあるドルを何ゆえ日本は大事にしなければならないのか、日本経済自主性はどこにもないとしか言えないではありませんか。これこそ、対米隷属のあらわれであり、総理の頭の中には、沖繩返還を急ぐあまり、日本経済の自立については何もないとしか見えないのであります。防衛においても、経済においても対米追随となれば、どこにわが国が主権国家としての自主性があるのか。むしろドルに一方的に依存するよりも、金及びマルク、フラン、ポンド等の複数の国際通貨に依存して、経済の独自性を保つべきであると思うが、総理の所見とその責任をお伺いしたいのであります。  第三番目には、政府は円の切り上げ幅予想以上に大きくなったのに対して、決して敗北でなく妥当な線であった、このように主張をされておるのでありますが、一六・八八%、つまり一ドル三百八円というレートは、国民も、おそらく政府自身も、全く予想だにもしなかった数字ではないか。譲歩できる最大限の線は一五%か一六%といわれていたが、それを大きく上回ったことは、まさに対米追従に終始した通貨外交の完全なる敗北としか言えないと思うのであります。この責任は実に重大であり、また政府は、世界経済の大きな変容に対する見通しを誤った点はきわめて怠慢であると言えるのであります。  すなわち、いままでの生産第一主義、高度成長の経済運営はまさに暴走ぎみの経済までも引き起こし、世界経済協調の動きに対応できなかった、これが第一の怠慢であります。第二番目は、国際収支の黒字国としてその節度と責任を二の次にして昨年の金融引き締め解除のタイミングを誤った。さらに第三番目が、本年六月の円対策項目策定についても、その実行を渋り、第四番目に、変動相場制への移行のズレを大きく引き起こしたことであります。これらの数々の失態と怠慢が重なり合って、不況のもとにおける円の大幅切り上げという最悪の事態を招いたのであります。この政治責任はきわめて重大であります。円切り上げなど、私の頭の片すみにもない、円の切り上げは国益を害する迷妄である、このように再三国会で答弁をされ、平価切り上げは主権の問題とうそぶいて、単独でも三百六十円のレートを堅持するかのようなかまえを見せたのは、ついきのうまでの政府の姿勢であったはずであります。  大蔵大臣は言うに及ばず、総理みずから、内外経済政策の失敗による今回の結末は、わが国手持ちドルの価値を邦価換算にして約九千億円も減価させ、日本国民は、みすみすばく大な財産を失った結果となりましたが、政府はその責任をとって、内閣はみずからその職を辞し、国民にその失政を陳謝することを私は進言するものでありますが、総理の御所見を伺いたいのであります。  第四の質問は、中小企業をはじめとする日本経済に対する影響施策についてであります。とにかく、予想以上の大幅となった円切り上げ経済界は深刻な表情でありますが、特に中小企業の倒産が一番心配されるのであります。繊維、陶磁器、洋食器、メガネワク、雑貨等の業界では、輸出商品の値上がり、需要の減少、生産の減退になるか、それとも、製造の段階で切り上げ分を吸収するか、そうでなければ、生産者や、下請業者に負担をかけざるを得ないと見ており、数年間はその影響が大きくあらわれ続くものと見ております。また、ドル債権を持っている造船界では、いままでの債権分だけで二千七百億円の為替差損が出るといわれ、これからの国際競争力低下が憂慮されているし、肥料業界では硫安だけでも五十億円の売り上げの減少を予想しているし、為替差損財政援助を求めておるのであります。このように、日本経済の中で苦況に立つ業界が非常に増加することは明々白々であります。特に、この影響は明年三月ごろにあらわれてくると見られるだけに、政府の万全の対策を求めてやまないものであります。  しこうして、経済にあらわれる今回の円切り上げ影響は、円高による輸出の減少、輸入の増大によるほか、いわゆる商社ドル引き揚げや、ホットマネーの流出、また外人株主のドルの引き揚げなどで、現在百五十億ドルに達するといわれる外貨準備金が相当減少することも予想されるのではないのか。その点の見通しについてお伺いいたしたい。  もし、そうなれば、必然的に国内の金融逼迫の事態を招くおそれがあるのではないかと思われるのであります。それに加えて、不況の進展は、最終需要の減少を招き、政府が行なった公共投資の追加も三月までには多くの期待がかけられないと思うし、また、納税期にかかるだけに一そう三月危機の様相が強くなると見なければならないでのあります。政府は、金融税制財政面で対策を講ずると言っていますが、その効果はほとんど期待できないのではないかと心配されるわけであります。経済企画庁長官にお伺いしたいのでありますが、明年上半期の経済は一体どうなるのか。私の申し上げたようなおそれはないのかどうか承りたいのであります。  第五番目に、通産大臣にお伺いしたいのでありますが、中小企業は大企業の円の切り上げ対策のため下請単価を引き下げられ苦境におちいっていますので、それだけに、対策については一そうきめこまかいものが必要となってくるのであります。下請中小企業に対してはどのようなきめこまかい対策を講ずるのか伺いたいのであります。いままでの中小企業の官公需の確保についても、その金額ははなはだ少額としか言えませんが、この拡大に対してはどのようになさるのか。  さらに、現行の中小企業基本法に始まる一連の中小企業対策は、どうしても優秀なる中小企業、つまり優等生だけを守ったものになっておりますが、今日このような危機を迎えようとしているときにあたって、第一線で中小企業対策を行なっている市町村に対して不況緊急対策としての補助金を支給すべきであると提案するものであります、その補助金は、市町村の指定する金融機関から、中小企業が借りている資金利子補給を市町村が持つために使うようにする。さらに、市町村が、その補助金から中小企業をおもな対象にする金融機関に預託をさせ、小口融資のワクを拡大するような金融のきめこまかな対策をはかるようにすべきであると思うのでありますが、通産大臣はどのようにお考えになるのか。すでに、不況対策条例をつくって、政府対策の前に救いの手を伸べている市町村もある現在、政府はその対策を急ぐべきであると訴えたいのであります。大臣の明快なる御答弁要求してやみません。  第六に、政府の内外にわたる失政による通貨外交の敗北のために、不況に加えて、輸出規制、そして今回の大幅切り上げ、さらには特恵関税や発展途上国の追い上げで壊滅的打撃を受けた繊維、雑貨等中小企業のメーカーには、一般中小企業と異なる特別の対策が必要であるが、政府は一体どう対策を講じようとしているのか。少なくとも、年内にはガイドラインを発表し、対策を年頭早々に打ち出すべきと思うが、その対策の中身と今後の見通しを伺いたいのであります。  最後に、今後のわが国輸入政策は、国民福祉優先、国際協調という点から是正されるのは、これは当然と思われるのであります。これまで自由化、あるいは関税引き下げ円切り上げによる輸入価格低下消費者価格引き下げにつながらないのが現状であります。  そこで、この際、円切り上げ後の輸入品価格低下の恩恵を国民全体に及ぼすため、これらを阻害している総代理店契約による一手輸入といったようなもの、あるいはまた、国内産業保護のための価格支持制度、流通のメカニズム等の改善について政府はどのように対処していく所存であるか御説明を願いたい。また、政府自身もこの点について、主導的役割を果たすべく、小麦の輸入価格引き下げ分を、末端のパンの小売り価格に反映できるよう対処するつもりはないのか、経済企画庁長官にお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 中尾君にお答えをいたします。  まず最初に、大蔵大臣から報告いたしましたように、年内解決の危ぶまれていた国際通貨調整の問題が、今回ワシントンで開かれた十カ国蔵相会議で、曲折を経ながらも解決を見たことは、私は喜ぶべきことだろうと思います。    〔議長退席、副議長着席〕  今回このような解決を見ましたのは、各国が、不安定な国際通貨情勢が続けば世界経済に大きな影響のあることを深く憂慮し、できるだけ早く解決すべきであるとの共通の認識を深めてきた結果であり、また、各国が応分の負担を分かち合う決心をしたことによるものであると考えております。中尾君は、一ドル三百八円の決定は大幅な譲歩であり、また対米追随外交姿勢のあらわれであるとお考えのようでありますが、そのようなことはありません。  大蔵大臣から報告いたしましたように、またさらに先ほど私からも社会党の竹田君にお答えしたように、わが国としてはわが国の立場を十分に主張した上で、また国際協調のために、各国とともに応分の負担をするという方針に立って今回の決定を行なったものであり、私は正しい措置であったと確信しております。もちろん、長年にわたって維持されてきた一ドル三百六十円の為替レートが変更されたのでありますから、いろいろの摩擦のあることは予想されますが、政府といたしましても、必要に応じ、中小企業対策等、摩擦緩和のため万全の措置を講ずる方針であります。私は、わが国民のすぐれた適応能力により、今回の事態に伴う困難は必ず克服されるものと確信するものであります。  次に、今後の通貨対策についてのお尋ねがありましたが、基本的な問題について私が答えることとして、なお大蔵大臣から後ほど補足してもらうことにし、私は一応基本的な問題についてお話をいたします。  国際収支に関しましては、今回の円切り上げにより、次第に均衡の方向に向かうものと私は考えております。政府といたしましても、今後とも八項目の推進をはじめとする適切な経済政策の運用により、その均衡の確保につとめる方針であります。また、今後の国際通貨体制のあり方につきましては、わが国の国益を十分に反映し、かつ、世界の利益と調和がとれたものであることを基本として、国際的な検討に積極的に参加したいと考えております。  次に、中尾君から、今回の円の切り上げは、従来の政府政策の失敗によるものだとの御意見を伺いましたが、いままでも申しているように、私はそのようには考えておりません。中尾君も御承知のように、わが国経済は、数年前までは国際収支の低い天井に悩まされながら、国民所得水準向上を目ざしつつ成長を続けてきたものであります。その結果、わが国産業競争力は格段に強まり、所得水準も西欧先進国に匹敵するまでに向上してまいりました。今回の多国通貨調整により円の価値が大幅に上昇したのも、これまでの国民努力によってわが国経済力充実した、そのことの反映にほかならないのであります。  また、八月十六日以降の一連の措置につきましては、政府が内外の情勢を勘案しつつ最善を尽くしてきたのであり、決して経済運営が間違っていたとは考えておりません。  なお、政府は、今後充実した経済力を十分活用し、そうして社会資本の整備や国民福祉水準の向上につとめ、真に豊かな福祉国家の建設に向かって進む方針であります。  いろいろ、保有ドルの評価損、それが九千億円にのぼる、この処置はどうするのか、こういうようなお話がございましたが、これをあえて評価すれば評価損が計上されます。しかしながら、ドルドルとしてアメリカではりっぱに通用するのでありますから、私は、短期的な評価損をただいま計上することは当たらないと、かように考えております。  次に、中小企業等に対する対策は、政府としても十分きめこまかく配慮している方針のつもりであります。去る八月以来、所要の立法措置を含め、財政金融税制等の各段にわたる総合的な緊急対策を講じてきたのでありますが、今後、さらに諸施策の拡充と機敏な運用をはかり、当面の困難を克服しなければならないと考えております。  なお、政府としては、地方公共団体等の施策との総合的均衡性を考慮しつつ、十分な効果のあらわれるよう配慮する所存であります。そういう際に、先ほども御指摘になりましたが、特に輸出に重点を置いたドル建ての造船企業であるとか、あるいは肥料産業等の問題につきましては、個別的に私ども税制金融上特別な対策を立てて、これらの事業の困らないようにしなければならないと、かように思います。  以上私から答えまして、他の点については、関係大臣から補足いたします。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  14. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) お答えいたします。  年末、急遽通貨調整ができたのはどうかという理由につきましては、ただいま総理からお答えになりましたとおりでございまして、もう各国がどうしても解決を急ぐ必要があったこと、そのほかは、もうただいまのとおりでございますが、特にさっき私が申し述べましたように、いままで米国は、米国国際収支の赤字から起こった問題でありながら、自国通貨切り下げをするということを約束しない。他国通貨切り上げによって、この応分の負担をしてほしいということでございましたので、なかなか解決がむずかしい状態でございましたが、今回はっきりと米国が自国通貨切り下げを案として提案してきましたので、これがきっかけで急速にやはり妥結する方向にいったということが言えようと思います。そこで、各国とも、当然責任ある国が自国通貨切り上げをもって対処すべきだという主張を全部しましたので、その主張がいれられたことは非常にけっこうですが、各国予想よりも米国切り下げ幅が少し多かったというところに問題がございました。米国は九%の切り下げ提案でございますが、とうとう各国論議した上で〇・五%減らして八。五七%の切り下げで終わったわけでございますが、これはなぜかと申しますと、かりに米国が、各国はそのままにおってほしい、自分の国の問題だから二〇%切り下げますと、もしアメリカが提案したとしませば、各国通貨調整をしなくっても、自然に各国通貨は二〇%の切り上げになるわけでございます。そうしますというと、もう国際多国調整とかなんとかいう問題じゃない。みんな一斉に二〇%の切り上げに終わるということでございますので、これは当然問題になりません。そこで、アメリカにどれだけ切り下げてもらって、そのほかは多国間の不均衡を調和することによってレート調整しようじゃないかというのが多国調整でございまして、米国も一部を責任を持つし、他国も応分の責任を持とうというのが最初からの出発でございましたので、米国一カ国でドル切り下げをしてもらえばそれで済むという事態にはまいりません。そこで、そうしますというと、九%がいいか悪いかということになりますと、各国平等に九%の切り上げを承認するということでございますので、これは国によっては非常に重い負担でございます。対米貿易で一つも黒字をかせいでいない、赤字になっている国までが、全部九%の切り上げをするということですから、たとえばイギリスのごときは、とうとうやはりこの問題には抵抗いたしまして、八・五%というところで各国が妥協しましたので、世界全部が平等に八・五七%の切り上げ各国ともしたということになります。  ただ最後に、これではなかなか問題が多いといって問題が残ったのがイタリーとスウェーデンでございましたが、これは各国相談によって、交渉によって一%だけこの二国はマイナスをみんなが認めるということで、切り上げ幅が七・五七%に落ちついたという例外はございますが、そのほかの国は全部平等に八・五七%切り上げを承認したということでございます。そのほかのところにおいて各国の今度は均衡の問題が起こったのですが、欧州諸国全部合わせても、アメリカとの貿易において現在黒字をかせいでおりません。そうですから、対米貿易の黒字の相手と申しますと、日本とカナダ二国である。そうしますというと、欧州から見ましたら、日本とカナダが米国の対外赤字の解消のための責任を多く持ったらいいじゃないかということになりますので、したがって問題は、日本と欧州EC諸国の間の均衡ということが、非常に国際協調の間では、なかなかもめて困難であったと、こういう事情がございますので、したがって、いま御質問にありましたようなことを聞いておりますと、何か対米追随で、アメリカのために日本が全部強引にきめられたというような印象をお持ちのようでございますが、そうではございませんで、アメリカのためには、世界各国が全部八・五七%を平等に負担するということできまったことでございまして、そのほかは各国の貿易状態、対米貿易のあり方、準備資産の状態等、このようなものを七二年を大体基準にして、あと二年間に世界経済がおのおのどういう方向へいくだろうかということを勘案した総合的な多角的な調整でございますので、この点は、決して一国のわがままが許されたわけでもございませんし、また一国の強圧が世の中を通るわけでもございませんで、こういう点は非常に、私は最後は妥当なところにいっているのじゃないかということを考えておるわけでございますので、この点はあらためてここでもう一ぺん誤解のないように御説明いたしたいと存じます。  それから交換性の問題が出ましたが、これは今度は解決いたしませんで、コミュニケの中で、次に、すぐに検討に着手すべき問題の中に含まれるということになりますので、当然、この今後のドル交換性の問題は引き続き論議されることになろうと思います。  それからドル財産、日本にあるドル資産、外為会計の保有ドルをはじめとして非常に国損——損失をかけた責任はどうかというようなお話でございましたが、これは私はどうもその点がはっきりいたしませんが、円の持っている財産、日本国民の持つ円財産というものは、これによって全部一律に評価が高くなっておると、円の価値が上がったんですから、国民財産は全部対外評価というものが、資産が上がっておると、この上がり方はどれくらいか、おそらく計算もつかぬ利益になるだろうと思います。  それから、今後日本国民生活必需品をはじめとして、原材料というものは、円の価値が上がったのですから、外国から買うときに全部割り安で買える。円が、もし切り下げられたのであるとするんなら、これはたいへんでございますが、円が切り上げられたことによって、外国から買うものが全部下がる、日本国民生活は、対外的にそれによって上がるということは、国民にとって決して損失ではございませんで、今後続く大きい利益だろうと思います。そういたしますというと、かりに、いま外為会計の中に持っておるドルに損をかけないようにする方法を考えたら、円を切り下げたらこのドルは完全にもうかるということでございますが、そういうことはできませんで、したがって、この問題で国損をしたとか国益したというような問題は、国民経済全体の問題から考えなければ、そう簡単に言える問題ではございませんで、したがって、これが大きい失敗であるかのようなことを言って政府の責任云々ということは、私はこれは少し当たらないんじゃないかと考えます。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 中尾さんから、いま、今回の措置は対米追随に過ぎるのじゃないか、こういうようなお説でございます。私は、この見解は当たらないと思います。まあ、そもそも対米追随というのは、十年前、二十年前、こういう時期におきましては、あるいはあったかもしれない。しかし、今日はわが日本経済的地位というものは、アメリカに次いで世界第二位である。また、それに伴いまして、わが国の国際的地位も、とにかく、もう実力を持って世界各国にものの一青にるような日本国になってきておるんですから、そういうことでありまするから、アメリカに対しましては、これはまあ、十年前、二十年前は対米依存というか、そういう度合いが強かった。しかし、今日はこれはもう共存  競争的共存と、こういう時期になってきておるわけであります。したがいまして、わが国の外交が、通貨問題に限らず、アメリカにつべこべをする、追随をする、そういう状態では決してありませんです。私は、いま沖繩交渉があるから対米追随になるんだというような話でありますが、沖繩交渉は、もう大体大筋がきまっております。そこまで飛躍をするという考え方、私はこれは理解できません。私は、もっといま日本の国は世界じゅうに向かってものの言える日本国になったのだと、世界の中の日本国であるというところに大きく自信を持つべきである、こういうふうに思うのであります。(拍手)  また、通貨問題の中身につきましては、いま水田蔵相からお答えがあったとおりでございます。(拍手)    〔国務大臣木村俊夫君登壇拍手
  16. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) 私に対するお尋ねは二点ございます。  第一点は、来年上半期における景気の見通しでございます。八月に新しい事態が生じまして以来、わが国景気は一そう停滞を続けてまいりました。しかしながら、その反面、この四ヶ月近くの間にわが国経済各面の新しい事態への適応が相当程度進んでおります。また、今回の通貨調整によりまして、米国輸入課徴金が撤廃されました。また、新しいレート決定によりまして一種の気迷い状態が解消いたしました。国際経済環境にも明るさが増すこと等から申しまして、今後さらに大幅に景気が落ち込むようなことは考えられません。また、政府はすでに昭和四十六年度補正予算におきまして、公共投資の大幅な追加、所得税年内減税景気浮揚策を講じております。その効果が次第にあらわれてくるものと考えております。金融面におきましても、現在の緩和基調は引き続き維持され、景気の下ざさえになるものと思われます。さらに四十七年度予算におきましても、政府は思い切った大型予算を編成いたしまして、積極的な経済運営をはかることにいたしておりますので、景気は来年度に入りまして漸次回復に向かうものと考えております。その結果、まだ正確な試算はしておりませんが、四十七年度には実質成長率は七%をこえる程度に持っていきたい、こういう見通しを立てておるところでございます。  第二点は、円の切り上げに伴う輸入品価格低下のメリットをどうするかということでございます。これは先ほど総理からもお答えいたしましたとおり、これを国民経済全体に結びつけるということは、これは当然のことでございます。そのために、価格低下の効果が流通、加工等の段階におきまして、中間段階で減耗することがないように、厳重な監視と行政指導を強化してまいりたいと思います。御指摘の、総代理店契約、あるいは価格支持制度、あるいは流通メカニズムの近代化がおくれておる。これはもう御指摘のとおり、これが価格低下の阻害要因をなす大きなおそれでございますが、これにつきましては、今後、政府といたしましてこの問題点を十分に検討いたしまして、所要の対策考えてまいりたいと考えております。  また、麦の政府売り渡し価格につきましては、御承知のとおり、現在の食管法では、国際価格の騰落にかかわりなく、安定した価格で供給する、こういうたてまえにはなっておりますが、今回の円切り上げの利益を消費者に還元するための方策を検討する場合には、その影響が些少な場合でありましても、食管全体の問題とあわせて、御指摘の点については十分大蔵省、農林省と検討してまいりたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  17. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 中小企業及び下請企業対策についての御質問でございますが、先ほどお答えをいたしました部分を除きまして、御指摘の二、三点に対して申し上げたいと存じます。  その一点は、中小企業対策に対して国と地方公共団体との関係、特に中小企業団体の指定金融機関に政府余裕資金等を預託する等のことによって資金量を確保せよというようなことでございますが、まず、いままでの実行いたしましたものにつきましては、設備近代化資金の償還期限の延長を行なう府県に対して、すでに三億八千五百万円の資金を計上いたしてございます。なお、信用保証協会のために地方公共団体に資金を計上いたしておることは御承知のとおりでございます。また、余裕資金の預託等につきましては、その必要があるかどうかは、実態をよく調査をいたして、しかるべく処置いたしてまいりたいと、こう考えるわけでございます。  第二点は、特に中小企業の官需工事の実行に対しての御要求でございますが、これは例年に比べて多少減っておるというような実情でございまして、内閣でも官需工事、公需工事という官公庁の需要に対しまして、中小企業、零細企業対策というものが実行されるようにいま相談をいたしておりますので、実効があがるようにいたしたいと、こう考えております。  なお、特に下請に対するしわ寄せというのが非常に大きな問題でございます。平価調整のしわがどうしても下請に寄るのが過去の例でございますので、この圧力が下請に寄らないようにするためには、元請や親企業に対して協力を求めてまいる以外にはないわけでございまして、通産省の責任でございますから、通産省はきめこまかく、今度の円平価調整のしわが下請企業に寄らないように格段の処置をいたします。  なお、支払い遅延防止につきましても、実態を調査をしながら、特に厳重な注意をいたしてまいりたいと、こう考えます。下請代金支払遅延防止法ももうすでに施行せられてから長い日時がたっておるのでございますが、元請と下請との特殊な関係ということがございまして、法律が規定をした成果が必ずしもあがっておらないということは、事の性質上まあそうなるのでございましょうが、新しい制度をつくろうとしてもなかなか知恵がないのでございます。お互いの間にもないのでございますから、何かいい知恵がございましたらお聞かせいただいて、これ全く政府与野党御協力のもとにできるだけのことをいたさなければならない。これがこれからの中小企業、下請の問題に対しては一番めんどうな問題でございますが、一番やらなければならない重要な問題であるという認識のもとに進めてまいるつもりでございます。  なお第三点は、特に中小企業、下請企業の中でも円の切り上げ、特恵の供与、発展途上国の追い上げ等で特に影響を受けるものに対してはアクセントをつけなければならぬわけでございまして、御承知のとおり、繊維等に対して過剰設備の買い上げ、長期低利資金の拡充、中小企業振興事業団への返済の繰り延べ等に対してもうすでに千二百七十八億円の計上を行ない、うち一般会計五百二億円というようなものを政府間で内定をいたしておるような状態でございます。そのほか国際経済調整法、特恵臨時措置法等々法律もあるわけでございますが、新しい事態に対処してほんとうにきめこまかく——というよりも、実態に即応してタイムリーに施策が行き届かなければならないわけでございまして、細心の注意を行なうと同時に、スピーディに的確な処置をしてまいるつもりでございます。(拍手
  18. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 栗林卓司君。    〔栗林卓司君登壇拍手
  19. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私は、民社党を代表して、今回の国際通貨調整の問題について、佐藤総理並びに関係各大臣に質問をいたします。  まず最初に総理に伺いたいのは、なぜこのような大幅な切り上げを受諾せざるを得なかったのかという点であります。総理は、これはわが国の国力が強くなったあらわれであるとたびたび言明されてまいりました。では一体、わが国の国力の水準は那辺にあるのか、この点について、むずかしい議論の必要はありません。国民生産の数字とうらはらに、公害物価高、住宅難、通勤難に苦しむ町の光景を見れば一目りょう然であります。しかも、ニクソン大統領の新経済政策発表後、強引に為替市場を開き続けた政府の気持ちは、円の切り上げを絶対に回避したいということであったはずであります。にもかかわらず、なぜドルに対して一六・八八%もの大幅切り上げを受諾せざるを得なかったのか。いま必要なことは事態をあるがままに直視することであり、ことばを飾って問題をそらし、一時しのぎをすることでは決してありません。この意味で私は総理に対し、これまでの国際通貨調整の経過に対する反省を含めた率直な見解を求めたいと思います。  わが国輸出のほとんどがドル建て契約である実情を考えると、今回の大幅切り上げは、わが国経済に甚大な影響を及ぼすものと言わなければなりません。すなわち、米国を除く地域に対する輸出を考えると、円切り上げ直前の円変動幅約一二%を大きく上回る切り上げであり、また、米国市場との関係でも、輸入課徴金撤廃の穴埋めをして余りある大幅な切り上げ幅であります。もちろん、円切り上げの効果として、輸入品、特には輸入原材料が安くなる面があることは事実でしょう。しかし、世界経済は先進十カ国によってのみ構成されているわけではありません。多くの開発途上国にとって、経済開発をささえる主たる輸出商品は資源であります。これらの国々にとって、ドル切り下げられ、したがって資源の国際価格が下落の危機に直面したことは、経済政策の根幹をゆるがす大問題であります。当然の努力として値上げを迫ってくるものと判断すべきでありましょう。そのときに、南北問題の解決に貢献すべき立場にあるわが国が、また、これらの国々が豊かな市場として発展することを期待すべきわが国が、目先の損得勘定だけで取り組んでいいものかどうか、きわめて疑問であります。  以上、要するに、輸入価格引き下げに多くを期待することは困難だと言わざるを得ません。すなわち、当初の政府見解がそうであったように、円の切り上げは極力回避すべき問題であったということであります。この意味で、従来経済成長の成果配分を誤り国民福祉向上をなおざりにし、見せかけの国際競争力によって外貨準備高を積み上げ、今日の事態を招いた過去の経済政策こそ、最も激しく批判され、反省されなければならないと思います。そして同時にまた、国際経済社会におけるわが国発言力の弱さ及びベトナム戦争の平和的解決を含めて、アジアの緊張緩和に対するわが国の主体的努力の欠除を指摘しなければなりません。そして、これらの問題に政府が従来から真剣に取り組んできたならば、今回の不幸な事態も回避され、そしてまた、沖繩の人たちに不必要な不安と苦痛を与えずに済んだと言わなければなりません。  以上の諸点について、反省を含めた総理見解を伺いたいと思います。  同時にまた、円・ドル交換の即時実施を訴える沖繩の痛切な叫びに対してどのようにこたえていくのか、重ねてではありますが、政府見解を伺います。  またあわせて、今回の大幅切り上げは、今後福祉優先政策を進めていく上で大きな阻害要因になると思いますが、この点についての見解も伺いたいと思います。  次に、直接交渉に当たられた大蔵大臣お尋ねをいたします。今回の通貨問題の発端は、いまさら申し上げるまでもなく、米国国際収支であります。そこで、わが国大幅切り上げを求めた米国がみずからに対してはどのような努力をすることを確約したのか、また、この問題についてわが国米国に何を求めたのか、明確なお答えをいただきたいと思います。  さて、問題はこれからどうしていくかということであります。以下、政府の諸施策についてお尋ねしてまいりますが、その前にまず私は、政府が今後どのような施策を講ずるにもせよ、これを阻害する最大の要因として土地問題があることを指摘しておきたいと思います。政府は今後の対策として、国民福祉充実あるいは公債発行を前提とする大型予算の編成などを掲げております。しかし、そのいずれも土地問題の解決なしには実効を期しがたいと言わなければなりません。いまこそ積年の懸案である土地問題の解決に真剣に取り組むべきだと思いますが、総理決意政策を伺いたいと思います。  次に、今後の政策について、時間の制約上幾つかにしぼりながら総理並びに各大臣にお尋ねいたします。今回の円の大幅切り上げは、わが国が国際化時代の渦中にあることを痛烈に示していると思います。同時にまた、今回の国際通貨調整は、今日の国際経済社会がきびしい国際競争の反面で、国際協力を求めて努力している姿を示していると思います。こうした中で、今後のわが国に求められているものは、国際的視野と観点に立って国内問題に取り組むことであり、また外交にしても、外務省を通じての政府交渉という範囲を越えて、政治、経済労働、文教のあらゆる分野にわたる多面的な国際関係の上に築き上げていくべきだと思います。この意味で、どのような考え方わが国の内政、外交を進め、国際社会におけるわが国発言力を高めていこうとされるのか、総理見解を伺いたいと思います。  次に、大蔵大臣に伺います。現在、景気対策及び社会資本充実が緊急の課題であることは言うまでもありません。しかし一方、公債の発行にあたっては、財政法四条の精神を堅持すべきであることも当然であります。したがって、現在は建設公債の発行を基礎に対策が考慮されていると聞いております。しかし、元来財政法四条の精神は、赤字公債の発行を禁じたものであり、建設公債の形をしてさえいれば無限に発行を認めていく趣旨のものでないことは明らかであります。したがって、この際は、事態の異常性にかんがみ、無理な便法によるよりも、特別立法によって赤字公債発行の道を開き、国会の審議を裏づけとして緊急対策の万全を期すべきだと考えますが、いかがでしょうか。  次に、今後の通商産業政策について伺います。まず、今後先進工業諸国及び開発途上諸国との関係で、わが国の産業配置をどのように選択していくのか、その展望と具体的政策は何かであります。また、こうした中で一そう困難な環境下に置かれることになる中小企業に対して、どのような対策を用意していくのか。これまでわが国の見せかけの国際競争力をささえてきた有力な柱の一つは、経済の二重構造を背景にした中小企業であります。円の大幅切り上げ及び今後の国際経済環境の変化にさらされる中小企業に対し、当面いかなる予算措置を講じて対策に取り組んでいくのか、将来の産業配置の問題とあわせて通産大臣に伺いたいと思います。  次に、労働大臣に伺います。わが国国際経済社会の一員として発言力を強化しつつ発展していこうとするのであれば、賃金、労働時間あるいは休暇休日等について、国際的に見て公正な労働基準を満たしたものにしていかなければなりません。今日の事態はこのことを一そう強くわが国に迫っていると考えます。先ほど一部御回答のあった点ではありますが、重ねて大臣の抱負と政策を伺いたいと思います。また、ILO条約のうち、わが国がいまだ批准していないものが数多く残されている現状についてどうお考えになるか、あわせてお尋ねをいたします。  最後に、私は文部大臣に伺いたいと思います。場違いだとお感じになるかもしれません。しかし、私は今回の円の大幅切り上げを招いた遠因が、過去の高度成長政策、すなわち経済優先、功理主義尊重のもとで、教育を軽視してきたことにあると考えるがゆえに、あえて御見解を伺いたいのであります。しかも、今日国際化時代にあって、もはやわが国は、自分さえよければという態度を払拭し、国際的な視野と観点に立って国内の問題に取り組むという、新しいものの考え方を育成していかなければなりません。また、過当競争を是とし、産業秩序の確立に無関心であったわが国産業社会の姿勢を正すことも急務と言わねばなりません。これらは経済政策の問題であると同時に教育の問題であります。この意味で、最後に文部大臣に対し今回の円の大幅切り上げをどのような問題意識で受けとめられたのか、また、今後社会教育の面でいかなる抱負と政策があるのかをお伺いして、民社党を代表しての質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 栗林君にお答えをいたします。  いろいろ御意見を交えてのお尋ねでありますので、全部にはたして私が答え得るかどうかやや疑問なきを得ないのですが、私も大体聞き取った、さような意味で御返事を申し上げたいと思います。  まず第一は、円の大幅の切り上げを招いた原因について、私は大体御指摘になったのが三点あったように思います。したがいまして、その点についてお答えをいたしたいのですが、残念ながら栗林君と私は所見を異にするものであります。  その一つは、いままでの経済政策についてでありますが、私は、栗林君が、今日までの政策で間違ったんだ、こういうようなお話でございますが、今回の国際的な通貨調整によりまして、円の価値が大幅に上昇したのは、これまでの国民努力と適切な経済政策とが相まってわが国経済力充実したことの反映にほかならないと考えるものであります。政府は、今後このような充実した経済力を基礎として対外均衡をはかるとともに、真に豊かな福祉国家福祉社会の建設を目ざして政策運営を進めていく方針であります。  第二番目は、国際経済社会におけるわが国発言力についてでありますが、今回の円切り上げは多角的通貨調整の一環としてなされたものであり、当面の国際通貨不安の解消、世界貿易の縮小均衡への傾向の阻止を目的とした国際的共同行動の中で、わが国は応分の責務を果たしたものにほかならないのであります。わが国を抜きにしては国際間の経済的な協議は成り立たなくなっているのでありますから、むしろ、各国ともわが国が積極的に発言することを期待しているという事実を認識しなければならないと思います。  その三は、アジアの緊張緩和のためのわが国の主体的努力についてでありますが、私は、わが国外交方針の原点は、平和に徹することにあり、具体的には世界の緊張緩和、中でもアジアの緊張緩和をはかることが最重要目標であることを申し上げておきたいと思います。私は、平和を念願するわが国努力が、良識あるアジア諸国のみならず、国連の場におきましても評価されていると信じております。また、今回の通貨問題におきましても、この点では高く評価されておると、かように確信をしております。  最後に、現在ドル圏にある沖繩、この沖繩同胞がいよいよ復帰を前にして固定相場、一ドル三百八円、こういうことになりました、たいへんなショックを受けている、こういうことを御指摘になりましたが、私は、これにつきましては、先ほど山中総務長官から詳しくお答えをいたしましたが、私も、現在とっている政策、さらに対策、これをきめこまかくもっと精査して、そうして沖繩県民に不安なからしめることが私ども中央政府の大事な責任だと、かように考えておりますので、この点については、なお推移等をも勘案いたしまして、最善な努力をはかる決意でございます。  円の切り上げによりまして今後の福祉優先政策は阻害されるのではないか、という御意見でありましたが、私はそのようには考えておりません。私は、今回の円為替レート切り上げは、戦後におけるわが国の著しい成長による経済力充実を象徴するものであると考えます。政府といたしましては、今後、真に豊かな福祉社会の建設を目ざして生活関連社会資本の拡充、社会保障充実公害の防止等の基本的課題に一そう積極的に取り組んでまいる方針であります。  また、栗林君から、国民福祉充実あるいは社会資本充実のために積極的な経済政策をとろうとしていても土地問題が解決しなければ実効はあがらないとの御指摘がありました。私もそのとおりに考えます。政府といたしましても、いままで土地問題の解決のため公共用地の取得制度の改善、土地税制の適正化など、一連の対策を講じてまいりましたが、今後さらに地方公共団体による土地の先行取得制度の拡充強化、公的機関による宅地開発の推進などをはかってまいる方針であります。  次に、今日のように政治の多極化、経済の国際化という表現は、現在の国際情勢を端的に示すものと思いますが、その間にあって、国内政策の面でもこれに対応する施策が行なわれなければならないことは、申すまでもありません。今回の多国間の通貨調整において見られたごとく、わが国経済力世界経済に与える影響が大きいことを十分に自覚し、国際協調につとめつつ、自由貿易を推進しなければならないと思います。同時に、国民福祉の実現を第一義とし、内政の充実をはかることが、世界経済の安定的発展につながるという認識を持つものであると考えております。  これが基本的な考え方でありますが、これは政府だけでできることではありません。御指摘にありましたように、今後の外交のあり方につきましては、私も御指摘のありましたとおり、国際社会が多面化し、国民生活のあらゆる分野において国際交流が緊密に行なわれつつある現在、対外問題を処するにあたって、国民の英知を集め、国民のコンセンサスの上に立ってこれを行なうべきことは当然であります。政府といたしましては、これまでたとえば列国議会同盟、ILO、ユネスコ等の場において、広く国民外交を展開してきたのでありますが、今後も各界の協力を得、国民一体となっての外交を進めたいと考えております。  以上お尋ねに対してお答えをいたします。不十分な点があれば所管大臣からさらに説明をいたさせます。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  21. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今回の通貨調整において世界米国に何を確約させたか、日本アメリカから何を取ったかという御質問でございますが、この一番大きい収穫は、私は、基軸通貨国も今後国際収支均衡の責任を持つということを約束したことだろうと思います。従来、基軸通貨国は他国と違う特別の考えを持っておって、他国は国際収支の赤字を出してはいけないが、基軸通貨圏は別にそれに拘束されないというような考え方が濃厚過ぎたのではないかと思います。これが今回の国際通貨の不安を起こさせた原因の一つでございまして、この米国国際収支均衡を直すんでなかったら国際経済というものは安定しないと。ここから今度の通貨調整の問題が始まっておるものでございますから、米国も今後国際収支を赤字にしないということでなかったら再びこの通貨の混乱が起こるということでございますので、これが一番各国の関心のもとでございましたが、それの約束だけではいけないんで、現実に証拠として示してもらうというのがいわゆるドル切り下げでございます。もし、この切り下げをやるということでしたら、これは簡単でございませんので、財政金融政策、あらゆる国内政策においてその責任を持たせられるということでございますので、今後、米国財政赤字というものについては相当の節度を守ってくることでございましょうし、対外投資の問題についても、おのずからここに節度が出てくるというようなことで、米国が国際通貨ほんとうに安定をするための自国の経済、国内政策をまず健全なものにするという約束が、世界に対する一番大きい収穫ではなかったかと私は考えます。同時に、輸入課徴金の撤廃ということでございますが、これは御承知のとおり、日本は輸出の三分の一が対米貿易でございますので、この課徴金の影響を一番多くこうむる国が日本でございますので、他の国と日本はこの問題の被害の受け方が非常に違うという特殊な国でございますので、この課徴金を撤廃するということを約束させたことは、日本にとって他の国よりも一番有利なこれは約束ではなかったかと考えます。  次は、財政法第四条による公債発行の問題の御質問でございましたが、それだけでは対処できないと、したがって、ここでいわゆる赤字公債の必要があるんだが、それを赤字公債としないために特別の立法による公債を発行する意思はないかというお話でございましたが、私はその必要はないと考えます。と申しますのは、国債発行を必要とするというのは何かと申しますと、国が民間資金を活用しろ、国の手によって民間資金を吸収して活用するということでございますので、民間資金の活用方法としましたら、国債もあり政保債もあり、また住宅公団の借り入れ金があり、公募地方債があるというふうに、いわゆる公共債というものは他にたくさんございますので、これら全体のバランスをとった活用を考えるのならそれでいいんであって、ひとり国債だけにこの比重を集中することが、不況対策であるということにもならないと思います。そういう見地から見ますというと、少なくとも二兆五千億円以上の民間資金の動員は、来年度においてこれは見込みがつきますし、さらに政府関係機関の民間資金の活用という方向を考えますと、四兆五千億円以上の民間資金は公共の手によってできるという見込みがつきますので、そういたしますというと、特別立法による国債発行というような必要は来年ない。やはり国の財政は、現在の財政法を守ったいわゆる健全財政のワク内で対処することが私はいいんじゃないかというふうに考えている次第でございます。(拍手)    〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  22. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) わが国今後の産業配置の展望についてという御質問がございました。いままでは、重化学工業を主軸といたしまして高度成長を遂げてまいりましたことは、御承知のとおりでございます。その過程で、国内的には、社会資本の不足や環境問題などが深刻になってきたこともまた事実でございます。また、所得水準の上昇によりまして、国民の欲求も高度化、多様化をしてまいりました。国際的にも、発展途上国等から合理化、分業体制の確立等要求されておるわけでございます。そういう意味で、これからの日本の産業というのは、環境の保全、公害の防止ということがもとになり、しかも、国民生活を質的に向上させることに資する産業でなければならないということになります。そういう意味で申し上げますと、知識集約的産業形態へ移行しなければならないということになるわけでございます。  第二には、公害の排除、国内均衡等を考えますと、都市集中のメリットもおおむね限界に参ったわけでございます。そういう意味で、都市集中から全国総合開発へと方向転換方針といたしまして、新しい産業立地政策を強力に推進しなければならないということでございます。  第二の問題は、中小企業対策についてでございます。先ほどから種々とお答えをいたしてまいりましたとおりでございます。円平価調整を含めまして国際経済の波動を最も直接に受けるものは、申すまでもなく中小零細企業でございますので、その対策につきましては、先ほど申し上げましたとおり、万全を期してまいりたいことを、ここで重ねて申し上げておく次第でございます。(拍手)    〔国務大臣原健三郎君登壇拍手
  23. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) 栗林さんにお答え申し上げます。  栗林さんは、国際協調主義の時代に、労働時間、労働賃金等は国際的に公正なものでなければならぬ、わが国においても公正なものでなければならぬということを唱えられました。私も全く同感でございます。そういう趣旨に沿うて労働行政を進めていきたいと考えております。御承知のように、近年、日本経済が急速度に高度成長を遂げてまいりました。その結果、労働条件も非常に改善されてまいりました。急速に改善されました。わけても労働賃金の上昇率は、さいぜんも申しましたが、世界一でございまして、現在すでにもうヨーロッパ並みに上昇を来たしております。今後とも、日本経済と見合った労働賃金が上昇を続けるであろうと思っております。  次に、労働時間の短縮、週休二日制等についての御意見でございますが、日本のようなこういう高温多湿の国においては、私は、夏休みを一週間ぐらい有給休暇で与えたほうが労働能率があがるし、生産性向上するものであるということが、諸般の統計で明らかになっておりますので、これを進めたいと思います。また週休二日制につきましても、これを実行することが生産性があがるし、勤労者の心身ともに健全に発達するし、ほとんどその弊害が認められないところでありますので、ぜひ労働省としても週休二日制を進めていきたいと思います。ただし、あくまでも労使が自主的に話し合いすることが本質でございます。  さらに、勤労者福祉対策等につきましては、一例を申し上げますと、東京の中野駅前には百億円を投じて二十三階建てで勤労青少年センターというのをいま建設を急いでおります。あと一年でこれは完成いたしますが、まさに世界に例のないものでございます。  次に、労働条件が国際的レベルに達していないのは、現在ILO条約がいまだ批准しないものが多いからであろうということでございますが、ILO条約の数は百三十一ございます。日本はいま二十九採択をいたしております。加盟国が平均してどのくらい批准しておるかと調べてみましたら、三十一でございますから、決して多いほうではございませんが、あまり少ないほうでもない、こういうところでございまして、このILO条約の中には植民地だけに適用するという条約がかなりあります。日本は植民地でございませんから、これは適用できない。改正条約が採択され、または発効したために批准の対象にならなくなったというものもございます。等々のような実情でございますが、私は、ILO条約の批准をできるだけするほうがよろしいと思いまして、いま事務当局に、もし、批准できるものがあるならばいたしたいという方針で、前向きで検討を命じております。そういうように進みたいと思っております。(拍手)    〔国務大臣高見三郎君登壇拍手
  24. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答え申し上げます。  今回の国際通貨問題は、世界の国々がそれぞれの国の利益と他国の利益の調和をはかる国際協調の精神のもとにでき上がったものであると、私はかような理解に立っております。  御承知のように、廃墟の中から日本が立ち上がりまして今日の経済繁栄をいたした。どなたも、よく、国民努力と勤勉のたまものであると仰せられます。しかし、このことは間違いのない事実でありますが、もう一つ忘れてならない大事な問題が私はあるような気がするのであります。それは、明治以来つちかわれてまいりました日本の教育の水準の高さ、日本国民に対するところの教育水準の高さというものは、アメリカの焼夷弾も爆弾もこれをぶちこわすことができなかった。この基礎の上に立って日本の今日の経済の繁栄はあり得たということを忘れてはならないと思うものであります。さような考え方から申しますると、栗林先生先ほど御指摘のように、わが国の教育に対する投資というものがもう少し大きなものでなければならないと私は感じております。教育こそは、長期に見まする一番大きな社会開発投資でなければならないと考えるからであります。そういう意味におきまして、私は、栗林先生の御発言を御激励と受け取りまして、ありがたくお礼を申し上げます。そういう観点から社会教育の問題を同時に考えなければならないものであると思うものであります。個人の完成を目ざしますると同時に、あくまで国家的、あくまで国際的な観点に立つ広い視野の国民の育成こそ、私どもが今後考えなければならない生涯教育の基本的な目標でなければならないと存じておるのであります。  以上お答え申し上げます。(拍手
  25. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 渡辺武君。    〔渡辺武君登壇拍手
  26. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、日本共産党を代表し、総理並びに関係大臣に質問いたします。  今回、資本主義の全世界を襲った通貨危機の根源が世界通貨としてのドルの危機にあり、また、このドル危機の最大の要因がベトナム侵略を中心とするアメリカの戦争と侵略のための国外支出にあることは、すでに予算委員会での私の質問に対して総理も認められたとおりであります。ところが、ニクソン米大統領が八月中旬発表した政策は、このようなドル危機をもっぱら他国の負担によって切り抜けて、戦争と侵略の政策を続けようするものであり、アジア人をアジア人と戦わせるという悪名高いニクソン・ドクトリンの経済政策の面でのあらわれにほかなりません。政府は、このニクソン・ドクトリンに従って、アメリカのベトナム侵略の責任を一言半句も追及せずに、今回一六・八八%という他国に類例のない大幅な円切り上げを行なったのであります。このことは、結局、日本負担アメリカのベトナム・インドシナ侵略に協力することではありませんか。また、このような大幅な円切り上げ日本経済国民生活に大きな打撃を与えることは、政府自身も認めているとおりであります。政府は、ベトナム侵略に協力するためには、国民生活犠牲にしてもいいと考えておられるのか、総理の御見解を伺います。  また、政府は、今回の国際通貨調整によって、資本主義世界経済の新しい発展の時代が始まる、日本経済も明年中に回復に向かうなどと期待しております。しかし、依然として、基軸通貨国であるアメリカがベトナム・インドシナ侵略を続ける以上、また、ドルと金との交換を停止している以上、ドル危機と国際通貨体制の動揺が一そう激しくなるととは、避けることはできません。また、今回の各国為替レートの設定が各国世界市場競争を一そう激しくさせる新たな要因であることも、衆目の見るところであります。資本主義世界経済は、明らかに新しい動揺と混乱の時代に入ったのであります。政府は、日本世界経済の安定のために、アメリカに対し、ベトナム侵略をやめること、ドルと金との交換性を回復すべきことを要求すべきだと思うが、いかがか。これはアメリカの内政問題ではなく、日本に緊要な国際問題であります。総理並びに大蔵大臣答弁を求めます。  ところで、本来、自国の通貨の平価の決定は一国の主権に属することであります。ところが、この自明の問題についての政府態度はどうだったでしょうか。円の変動相場制への移行から大幅な切り上げ率に至るまで、すべてアメリカ要求され、これに屈従してきたではありませんか。その上、繊維の輸出制限、貿易や資本自由化、アジア諸国へのアメリカに肩がわりした大幅な援助など、すべてアメリカ要求に追随して行なわれているではありませんか。政府がこのようにアメリカドル防衛政策に協力して、他国に例がないほど大きな負担を背負わされているのは、政府が日米安保条約によってアメリカのアジア侵略に軍事的にも経済的にも協力することを義務づけられているからではありませんか。特に、安保条約の第二条には、「締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する」とうたわれております。政府が円の大幅切り上げその他によって、アメリカのアジア侵略に経済的にも協力させられている根源がここにあることは明らかであります。今回の事態は、政府がこれまで唱えてきた安保繁栄論なるものが破産したことをはっきり物語っております。総理はこのことを率直にお認めになるかどうか。また、日本の安全をそこない、さらには国民生活にも重大な打撃を与える安保条約と日米経済協力をやめるべきだと思うが、その意思がおありか、承りたい。  次に、国内経済政策についてであります。わが国が今回のような大幅な円切り上げに追い込まれたもう一つの根源が、歴代自民党政府のとってきた大企業本位の高度成長政策国民生活犠牲とした生産・輸出第一主義にあることは、議論の余地のないところであります。ところが政府は、いま景気浮揚策と称して、建設公債という名の赤字公債の大量発行に踏み切り、大企業の為替差益を非課税とするなど、依然として大企業本位の経済政策を続け、円切り上げ犠牲をすべて国民にしわ寄せしようとしております。無反省もはなはだしいと言わなければなりません。このような経済政策ではなく、国民生活と経営の安定を第一とする経済政策を緊急にとることを私は強く要求するものであります。  すなわち、まず第一に、赤字公債の発行などインフレ政策公共料金引き上げをやめ、円切り上げによる輸入価格の値下がりを物価引き下げに活用し、所得税住民税個人事業税の免税点を年収入百四十万円にまで引き上げるなど、大幅減税を断行し、さらには、老人医療無料化など社会保障の根本的充実を行なうべきであります丁  第二に、労働者の賃金を大幅に引き上げ、首切り、採用中止、労働強化などを抑制する措置をとるべきであります。  第三に、輸出関連中小企業はもとより、不況長期化によって苦境にあるすべての中小企業に、無担保、無保証人、無利子の特別融資、さらには政府補助を大幅に行なうべきであります。  第四に、オレンジ、果汁、牛肉の輸入ワクの拡大をやめ、外国農産物輸入を制限して日本農業を保護すべきであります。  必要な財源は、大企業に対する税の特別な減免をやめ、また四次防をやめればつくり出すことができるのであります。  以上のことを緊急に実行するおつもりがあるか、総理並びに関係大臣の答弁を求めます。  特に、今回の措置によって最大の打撃を受けている沖繩県民が、復帰前に一ドル三六〇円のレート即時円に切りかえよという切実な要求を持っていることは、総理も御承知のとおりであります。外務大臣は、先日わが党の岩間議員の質問に答えて「復帰前の交換が技術的に可能なら対米交渉を始めてもよい」との趣旨の答弁をされました。そこで私は、次の手段をとれば為替投機を防ぎながら復帰前に円に切りかえることは完全に可能であることを強く主張するものであります。  すなわち、第一、個人の手持ち現金、預貯金ともにすでに確認済みのものは即時一ドル三百六十円で円に切りかえ、確認日以降の増加分については、琉球政府のもとに適切な機関をつくって検討し、投機的な増加とみなされるもの以外は即時切りかえる。  第二に、法人、各種団体の預貯金も、確認日の現在高は、政府も投機的なものはないと言明しているので、即時切りかえ、それ以降の増加分は右の機関で検討して、投機的増加とみなされるもの以外は即時切りかえる。手持ち現金については、現地の実情に照らし、右の機関で適切な基準を設けて、基準以下のものは無条件で切りかえ、基準以上のものも投機的なもの以外は切りかえる。  第三に、切りかえと同時に布令十四号を廃棄し、木上並みの為替管理を実施する。  総理並びに関係大臣は以上の措置検討し、直ちにアメリカ交渉すべきだと思うが、誠意ある御答弁を求めます。  最後に一言いたします。今回の事態は、資本主義の全般的危機が激化し、その中で、アメリカに従属している日本が最大の打撃を受けていることを明白に示しております。このような事態を根本的に打開するためには、日本経済の進路を、国民生活の安定と向上を基本とした自主的、平和的発展の方向に切りかえる以外にはありません。政府は、最低限日本の貿易の深い対米依存と、アメリカに肩がわりしたアジア進出、社会主義国との貿易の制限などをやめて、すべての社会主義国、すべての国との自主、平等、互恵の貿易関係を発展させるべきだと思うが、総理の御見解を尋ねて、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  27. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 渡辺君にお答えをいたしますが、まず今回の通貨調整は、多国間の緊密な協調とその努力によって結実したものであることを御認識いただきたいと思います。それにもかかわらず、米国のベトナム侵略に協力するものだとの御意見で、これはあまりにも一方的であり、まあ、いわば渡辺式と、かように私は思いますので、これはどうも納得できません。もちろん戦後二十数年間にわたって維持されてきた国際通貨体制が変更される背景には、いろいろの問題があります。その一つとしてあげられましたように、米国経済的停滞という問題があることは申すまでもありませんが、自由主義を基調とする世界経済全般の実情から見て、当然いつか来るべきものが来たということであります。  また、円の切り上げは、国民生活犠牲にするものとの御意見でありますが、いわゆる多極化時代の今日、自己の利益だけを主張し、国際間の調和をはからずにはたして真の国益が守られるでありましょうか。私は今回の措置が、長期的に国運の伸展と国民生活向上に資するものであることを確信しております。  次に、金とドルの交換問題でありますが、わが国米国に一方的にそれを要求して、それで問題が片づくものでないことは渡辺君も御承知のはずであります。今回のワシントン会議為替レート調整の問題は一応解決を見たわけでありますが、国際通貨制度改善は、改革は、長期的な課題として残されております。わが国としては、今後の国際通貨体制安定のため、できる限りの努力をする決意であります。  次に、円の切り上げは安保繁栄論の破綻にほかならないから、安保条約をやめて、日米の経済関係を断てとの——こまでは言われませんが、日米の経済関係についても考慮しろと、こういう御意見でありましたが、政府としては、今後とも日米安保体制を堅持し、日米間の経済関係をますます緊密にしていく方針であることをはっきり申し上げておきます。この問題は、お互いの立場の相違の問題でありますから、これ以上申し上げる必要はないと思います。この辺でやめておきます。  次に、当面の景気停滞を克服するための景気浮揚策として、来年度は思い切った大型予算を編成し積極的な公債発行を行なう方針であることは、政府声明で明らかにしたとおりであります。これは別に、いわゆる輸出第一主義だとか、あるいは大資本偏重の大資本擁護主義だとか、こういうものではございません。  農産物等の自由化の問題は、八項目政策を推進する中で前向きに対処するという基本的な考え方を重ねて表明するものであります。  減税あるいは金融、また、オレンジ、果汁、肉等の問題についてのお尋ねもありましたが、これらは関係大臣からお答えをいたします。  沖繩に対する問題につきましても、私はすでに申し上げたのでございますが、これは私から説明するよりも、沖繩担当大臣なる山中君にお答えしてもらうほうがいいかと思いますので、お聞き取りをいただきたいと思います。  最後に、わが国の貿易構造の問題に触れられましたが、わが国は自由主義経済の国家でありますから、経済原則に従って、いかなる国とも貿易することは当然であります。また、政治的には、いかなる国とも仲よくするというのが日本政府の信条でございます。この基本的方針に従いまして、今後の国際諸問題に対処してまいる決意でございます。誤解のないように御了承を願います。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  28. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ドルと金の交換性の問題は、ただいま総理お答えのとおりでございます。これから行なわれる長期的な課題としての通貨体制の検討の中で、この中で話し合いを進めたいと思います。日本としても、むろんこれは望むべきことでございますので、その方向で、この検討には参加することにいたします。御承知のように、ただいま現在のところで、米国はこの交換能力を持たないということははっきりしておりますので、今度の応急的な通貨調整によって、ドルの立ち直りということが徐々に行なわれる過程において、この問題は当然解決されるべき問題であると私は考えております。  その次は、減税その他について、これからの政策の問題でございましたが、これは福祉政策強化するというようなこと、減税政策をさらに考えるということにはもちろん異存はございません。ただ、具体的な課税最低限の問題が出ましたが、来年度実施すべき所得税についての実施を繰り上げているというようなことから、いま地方税との、住民税とのこの課税最低限の格差の問題が出ておりますので、来年度においては、やはり住民税の問題を当然考えなければならないと存じますので、そういう一連の減税問題につきましては、ただいま検討中でございます。(拍手)    〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  29. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 中小企業対策につきましては、先ほどからるる申し上げておりますとおりでございまして、その措置に万全をはかってまいるつもりでございます。  なお、第二の貿易の展望につきましては、四十五年の数字を申し上げますと、アメリカに対する輸出は、全部の三〇・一%でございます。なお、東南アジアに対する部分は二〇・七%でございますので、アメリカに対するウエートが非常に高いに両国のためにも重大であることは、数字が示すとおりでございます。  なお、貿易の長期的展望を考えますと、このように一国に偏することよりも、貿易先の多様化をはかってまいることが安全であることは言うまでもないのでございまして、このような方向で努力をしてまいります。なお、わが国経済長期的発展をはかってまいりますためには、いかなる国、いかなる市場に対しても貿易を拡大をするという基本方針をとっておるのでございます。社会体制、政治制度を異にする諸国との貿易を含めまして、広く世界市場を求め、世界経済全体の発展のために貢献できるように努力をいたしたいというのが貿易の将来的展望でございます。(拍手)    〔国務大臣山中貞則君登壇拍手
  30. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) ただいま、農林行政については、オレンジ、果汁、牛肉等の輸入ワクの拡大そのこともやめろというお話でございました。私は、先ほど竹田議員にお答えしましたのは、自由化についてはやらないし、できないということを基幹作目について申しましたが、輸入ワクについては、今日の農林行政といえども、やはり消費者の立場も考えなければなりませんし、需要というものがあって、それに対して国内の供給が不足いたします場合はこれは輸入はしなければなりませんし、現に不足分についてはいま輸入をいたしておるわけでありますから、これはやはり需給のバランスの問題として、輸入のワクの拡大までやらないという問題は、また異質の問題として、消費者とともに存在しなければならない今日の農林行政から考えて、その点はやはり国内事情を慎重に踏まえながら対処していかなければならないことでありますし、すでにこの問題は、関係閣僚の自由化推進の八項目の一つの柱にもなっておりますので、その点については、なおかつしかし生産者の立場からも、農林省としての姿勢は十分保ちつつ、検討してまいりたいと存じます。  次に、沖繩の問題について、具体的な一つの技術的な問題を含めての御提案がありました。これは私にとってはありがたいことでありますし、感謝すべきことでもあります。しかしながら、その中でただ一つ、アメリカの施政権下においてアメリカが行使する法律としての布令第十四号が、簡単にこれが廃止できるかどうかの問題、そうしてまた、現在行使できない為替管理法というものが、日本国民たる沖繩県民のみに対してそれが行使できるものなら別でありますが、在留するアメリカ軍をはじめとする外国人に対して、はたして施政権下で及ぶかどうかの問題、これらの問題等についていま具体的な検討をいたしておりますので、示唆をいただいたものとして考えますが、復循帰前に円をドルと双方適用させる問題であるのか、あるいはまた米関係者、外人の持っておるものも全部円に切りかえた円圏にするのであるか、ここらの問題も、やはり対米折衝が完全に可能であって、しかもすみやかに、秘密裏にオーケーがとれたという前提が一つありませんので、その問題について、外務大臣の御答弁もありましたように、検討をいまいたしておりますので、御提案の件は、やるとすれば考えられなければならない問題の一つ一つ具体的な問題でありますので、私どももいま念頭に置いておるところであります。(拍手
  31. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時一分散会      —————・—————