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1971-12-22 第67回国会 参議院 本会議 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月二十二日(水曜日)    午後九時三十四分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第十四号   昭和四十六年十二月二十二日    午後一時開議  第一 理容師法及び美容師法の一部を改正する   法律の一部を改正する法律案衆議院提出)  第二 輸出保険法の一部を改正する法律案(内   閣提出、衆議院送付)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、故元参議院議長佐藤尚武君に対し弔詞贈呈   の件  一、琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とア   メリカ合衆国との間の協定締結について承   認を求めるの件(衆議院送付)  以下 議事日程のとおり      ——————————
  2. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより会議を開きます。  元本院議長佐藤尚武君は、去る十八日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。  つきましては、この際、同君に対し、院議をもって弔詞を贈呈することとし、その弔詞議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。  議長において起草いたしました弔詞を朗読いたします。    〔総員起立〕  参議院はさきに参議院議長として憲政の発揚につとめられまた国務大臣としての重責にあたられました従二位勲一等佐藤尚武君の長逝に対しましてつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます     —————————————  弔詞贈呈方は、議長において取り計らいます。      ——————————
  4. 河野謙三

    議長河野謙三君) この際、日程に追加して、  琉球諸島及び大東諸島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長報告を求めます。沖繩返還協定特別委員長安井謙君。    〔安井謙登壇拍手
  6. 安井謙

    安井謙君 ただいま議題となりました琉球諸島及び大東諸島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、沖繩返還協定特別委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。  この協定は、昭和四十四年十一月の日米首脳会談の合意に基づき両国政府間で交渉を続けた結果、本年六月十七日に署名されるに至ったものであります。  そのおもな内容といたしましては、まず、米国が対日平和条約第三条に基づき沖繩で行使している施政権を本協定発効の日にわが国返還する旨を定め、次いで、日米の間に締結された条約等復帰の日から沖繩に適用されること、わが国日米安保条約及び関連取りきめに従い、米国に対し、復帰後の沖繩において施設区域使用を許すこと、わが国は、米国または現地の法令により特に認められた日本国民請求権を除き対米請求権を放棄すること、民事及び刑事事件に関し、わが国原則として、琉球政府裁判所及び米国民政府裁判所が行なった最終的裁判の効力を認め、係属中の事件について裁判権を引き継ぐこと、また、琉球電力・水道・開発金融の三公社の財産並びに復帰の日に米国に提供される施設区域外にある米国政府財産は、原則としてわが国に移転されること等を定めております。  さらにわが国は、米国資産わが国に移転されること、米国政府沖繩返還を、日米共同声明第八項にいう日本政府政策に背馳しないよう実施すること、及び米国政府復帰後雇用の分野等において余分の費用を負担すること等を考慮し、米国に対し、総額三億二千万ドルを支払うこととし、また、復帰後五年間、沖繩におけるVOA中継局の運営を認めることといたしております。  本件は十一月二十四日衆議院から送付され、十二月一日本会議において趣旨説明及び質疑が行なわれ、同日本特別委員会に付託されました。  委員会におきましては、十二月八日提案理由及び補足説明を聴取した後、佐藤内閣総理大臣福田外務大臣その他関係大臣並びに政府委員に対して熱心な質疑を行なってまいりましたが、二十日には公聴会及び福岡市でいわゆる地方公聴会を開いたほか、二十一日には沖繩において、沖繩及び北方問題に関する特別委員会と合同で現地公聴会を開いたのであります。  委員会におけるおもな質疑応答といたしましては、まず、協定の背景をなすアジア情勢日米共同声明に関連して、「共同声明以後、ニクソン大統領訪中決定中国国連参加ベトナムからの米軍段階的撤兵南北朝鮮間の接触など緊張緩和の要因となる重大な変化があったにもかかわらず、アジア緊張状態を前提とする共同声明基礎に、極東防衛のために米国が負っている国際的義務効果的遂行を妨げない形で協定を結んだのは、緊張緩和に逆行するものであり、安保の変質にもひとしい。沖繩県民及び国民世論の批判をどう受けとめるか」とただしたのに対し、政府より、「緊張緩和のムードがあることは歓迎すべきだが、まだ定着したとは言えない。共同声明の中のベトナム協議条項が死文化したように、実態としては平和の方向に動いている。しかし、安保条約はいささかも変更されておらず、その安保条約復帰後の沖繩にもそのまま適用される。協定は、核抜き本土並み、七二年早期返還原則を貫いた政府としての最高の努力の結果である。しかし、不満の点は復帰後に漸次改めるようにつとめる」との答弁がありました。また、「来たるべきサンクレメンテでの日米首脳会談では、少なくとも共同声明の中の台湾条項朝鮮条項は修正すべきであり、また、核抜き確認及び今後日本には核は絶対に持ち込まれないということも具体的に明らかにすべきである」とただしたのに対し、政府より、「共同声明は、二年前の世界情勢に基づき両国首脳の認識を表明したものであって、法的拘束力を持つものではない。サンクレメンテで新たな共同声明を出すかどうかはまだきめていないが、訪米前に党首会談を開き、御意見を十分に踏まえて率直に話し合うつもりだ」との答弁がありました。  次に、協定内容に関連して、「形式的には本土並みと言いながら、沖繩における米軍基地実態本土とは比較にならない。政府はすみやかに基地整理縮小具体的計画を明らかにすべきだ」とただしたのに対し、政府より、「復帰前にA表を変えることはできないが、復帰後には、中部の基地密集地帯演習地及び娯楽施設を中心にできるだけ整理縮小につとめる。この点はサンクレメンテでも持ち出したい」との答弁がありました。次いで、「政府はなぜ沖繩県民の対米請求権を放棄したのか。これについていかなる政治的責任をとるのか」とただしたのに対し、政府より、「政府が放棄したのは個人請求権行使に対する外交保護権であるが、これは日米間の法的関係をはっきりさせる意味で適切な措置である。個人請求権は残っているが、実際は死んだにひとしいので、政府で調査の上、必要に応じ適正妥当な措置をとる」との答弁がありました。次いで、「米国民政府裁判所による刑事裁判の多くは英語で行なわれ、弁護人もつかず、常識では考えられないような人権無視の判決が下されている。奄美の場合はすべてやり直し裁判を行なったのに、この協定ではなぜこのように不当な裁判を引き継ぐこととしたのか」とただしたのに対し、政府より、「沖繩の場合は、対象者の数及び期間の点で奄美比較にならぬばかりか、法秩序安定維持という見地からも引き継ぐこととしたが、復帰後は刑事訴訟法のもとで再審や恩赦の対象となり得る」との答弁がありました。  以上のほか、本土米軍基地に核兵器及び毒ガスが持ち込まれているという疑惑の問題、事前協議運用の問題、いわゆる特殊部隊の問題、わが国に引き継がれる資産内容と対米支払いの根拠、特にいわゆる核撤去費七千万ドルの内訳、VOAの問題、久保・カーチス取りきめと自衛隊配備問題、米軍通信基地、ことにロランCの問題、円ドル交換為替差損補償の問題、その他各般にわたって熱心な質疑応答が行なわれましたが、詳細は会議録によって御承知を願いたいと存じます。  本日質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して西村委員より反対自由民主党を代表して高田委員より賛成、公明党を代表して黒柳委員より反対、民社党を代表して柴田委員より反対日本共産党を代表して星野委員より反対意見がそれぞれ述べられました。  次いで採決の結果、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  以上で御報告を終わります。(拍手
  7. 河野謙三

    議長河野謙三君) 本件に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。西村関一君。    〔西村関一登壇拍手
  8. 西村関一

    西村関一君 私は、日本社会党を代表して、琉球諸島及び大東諸島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件に絶対反対であるという立場から討論を行なうものであります。(拍手)  私は、反対趣旨を述べる前に、一言触れておきたいことがあります。去る十二月二十日本院において行なわれました沖繩返還協定特別委員会公聴会において、一般公募に応じた人たちの中から選ばれた上原成信という公述人発言を聞きまして、反対賛成の他の学者や有名人の発言公述よりも強いショックを受けたのであります。上原さんは沖繩出身者であり、東京の片すみで細々と生活を営んでいる、市井のちりにまみれた一平凡人であります。彼は、こう言いました。  軍事基地使用を認めるこの返還協定には絶対反対です。悲惨な沖繩戦争を経験し、占領下の異民族支配の中で、差別人権じゅうりんイバラの道を歩まされてきた沖繩の者としては、これをすなおに認めるわけにはいきません。また、参議院自然成立を目ざして日時を逆算して、十一月十七日衆議院強行採決した政府自民党のやり方にも抵抗を感じ、憤りさえも覚えます。この事態に対して参議院議員諸公はこれを何と受けとめられますか。これでは参議院無用論が出てきても、しかたがないではないでしょうか。私は、新聞公聴会公述人が公募されているということを知り、迷いに迷った末、締め切りまぎわに応募しました。私は、いまも、あるむなしさと、やり切れなさの思いで、しゃべっているのであります。いままで国会において強行採決が何度もやられてきました。そのたびごとに、反対の集会や激しいデモが行なわれました。新聞やテレビの解説者も一様にその非を鳴らしたことでした。しかし、ものの半月もたたないうちにみんな忘れ去られてしまいます。今回の強行採決も、またいつもの同じパターンだと思うと、腹を立てたり、がっかりしたりするのはばかだと思われます。そこで参議院議員皆さま方に思い切って言いにくいことを言わせてもらいます。衆議院におけるこのような強行採決は、参議院人々に対する大きな侮辱ではないでしょうか。議員の任務を無視された暴挙ではないでしょうか。そのことを思っていただいて、議員皆さま方は総員辞職されてはいかがでしょうか。そうすれば、衆議院採決は無効となり、本協定も流れてしまうと思います。  私は、この上原さんのとっぴとも思われるような発言の中に、切り取られたトカゲのしっぽのような、本土から分離された沖繩人々の怨念の叫びを聞くような気がいたしました。(拍手)  かつて日本は、沖繩というしっぽを切り捨てて逃げました。その切り捨てられたしっぽが、いま日本に根底からの問題を提起し、歩むべき道を差し示しているように感じました。  私は、沖繩出身詩人中島竜美氏の「尻っぽの歌」という詩を読んだことがあります。いま、この詩を深く考えさせられているんであります。このたびの沖繩返還協定審議するにあたって私の念頭から消えることのなかったこの中島さんの詩を皆さんに御紹介したいと思います。    尻っぽの歌                 中島竜美  日本の尻っぽ  軍靴に踏みつけられた尻っぽ  ふまれるほどに固くなり  神経は筋金に変わり  肉は角質化して丸棒になった  軍靴は次第に足場が悪くなった  尻っぽよ!  沖繩よ  お前はもうヤッカイな長物ではない  祖国のよろめく姿勢を正し  背骨をシャンとして  独立と平和に向かって進ませる  これは  日本の舵だ!  きたえられた尻っぽ沖繩よ!  栄えある尻っぽ沖繩  私どもは、今度は逃げることはできません。鍛えられ、強くなったしっぽ沖繩によって、単にいままでの暗罪をするのではなく、沖繩を含めた日本の新しい道へ進むべき義務を負ったのだと思います。(拍手)  さて、そこで、私はこのたびの沖繩返還協定に対して基本となる次の三点から反対趣旨を述べ、政府自民党猛省を促したいと存じます。  第一には、このたびの沖繩返還協定世界平和、世界の安全にとってプラスかどうかという点であります。申すまでもなく、沖繩返還協定は一九六九年の佐藤ニクソン共同声明基礎に置いております。そこには、アメリカとの安保体制維持強化により、アメリカ極東戦略への協力を代償として沖繩返還を行なう意図がありありとあらわれております。すなわち、安保条約の堅持、極東の平和と安全にとっての沖繩にある米軍重要性確認日本自主防衛努力意図の明示、引き続きベトナム戦争への理解協力を誓ったこと、朝鮮半島と台湾をめぐる緊張や危機なるものと、それが日本の安全にとってきわめて重要だとする指摘、さらに、沖繩における米国及び米国企業の財政的、経済的利権の尊重、アジアに対する日米経済侵略促進と、米国ドル防衛政策に対する日本協力としての自由化促進約束など、これら一連のものと引きかえの返還約束の取りつけであると疑われてもしかたがない内容であります。刻々と変わっていく国際情勢と無関係に、相変わらず共産主義国に対する敵視政策日米安保条約アジア核安保条約に広げようとする内容のこの共同声明の本旨は、今日の流動化する国際情勢の中でそぐわなくなっていることを率直に認め、この共同声明を土台につくられているこのたびの沖繩返還協定締結さるべきではありません。  沖繩は依然としてアメリカ軍の自由な使用にゆだねられ、B52などによって、好むと好まざるとにかかわらず日本国民ベトナム戦争協力させられているのであります。  安保条約沖繩への適用という形の上での本土並みは、実質的には本土と同じということではありません。本土全体の基地沖繩基地はほぼひとしい面積であり、したがって、面積だけからいっても、沖繩本土の二百倍以上の密度を持つのであり、その上、基地としての装備や米軍兵員の数にしても、本土とは比較にならぬほどの濃密度を示しております。これから将来B52が沖繩基地から飛び立つことを考えれば——そういうことがないと言われましてもその保証はございません——安保条約極東の範囲は一挙にベトナムまでを含むことになり、事前協議政府の言う弾力的運用によって、常にアメリカに義理立てさせられることになるでありましょう。さらに、いままでの岩国基地についての審議のいきさつに見られるように、また、原潜や、原子力空母寄港の際に、核は積んでいないというアメリカ側説明をひたすらに信頼し、うのみにするだけで、査察もできず、したがって、事前協議対象にならなかったという例から見れば、沖繩に核を残しながら、沖繩に核はないと言明することで、事前協議の問題になり得ないとする状態が十分に考えられるのであります。こうして、進んでアメリカ軍肩がわりをし、ベトナム戦争への協力約束し、沖繩返還協定と引きかえに、アメリカ経済的要求をのもうとする政府自民党態度は、絶対に許さるべきではありません。(拍手)  特に、中華人民共和国の国連参加朝鮮南北会談の開始など、新しい国際情勢のきざしを前にして、昔と同じ反共精神の上に成り立つこの沖繩返還協定は、世界の平和に背中を向けるものであると断言できましょう。(拍手)  第二に、このたびの返還協定が、沖繩人たち人権福祉プラスになるかどうかという点を考えねばなりません。いまさら申すまでもなく、沖繩の受難の歴史は、はるか昔、いわゆる「島津琉球入り」に始まりました。現在の沖繩が、アメリカ高等弁務官に属する民政府支配のもとにあり、琉球政府自己のつくった法律自己のとった行動を拒否し得る権力に服さなければならないこの体制をいち早く沖繩にしいたのは、わが本土のわれわれの祖先であったということを私たちは忘れてはなりません。  明治初年には、沖繩に対する廃藩置県を断行するために、そして中国に対して日清両属の主張を拒否するために、沖繩人々には何の相談もなく、清国との間にいわゆる琉球分条約を調印し、宮古、八重山の二群島を沖繩本島から切り離して清国に譲ろうとさえしたのでした。この条約は実施されるには至りませんでしたが、沖繩人たちに、そんな日本がもちろん沖繩祖国であるはずはない。したがって、敗戦とはいいながら、彼らが沖繩アメリカに売り渡したのも同じ理由からであるとまで、沖繩のものの本には書いているんであります。このような不信感は、政府責任において払拭すべきであると考えます。  旧県制下沖繩に対する差別待遇は申すまでもありません。戦時下においても、本土決戦の声の犠牲になり、悲惨な戦場と化し、住民の三分の一を死に追いやった沖繩悲劇は、戦後もまた異民族支配基地公害によってさらに続いているのであります。このような沖繩に対する歴史的差別から生じた本土との格差、本土による事実上の経済的締めつけ等、現在の不平等の問題を直ちに根本的に考え改むべきであります。特に、琉球政府県民の総意に基づいて作成した「復帰措置に対する建議書」の五原則、すなわち、一、地方自治確立、二、反戦平和の理念、三、基本的人権確立、四、県民本位経済開発、五、県民福祉の向上という基本要求を全く無視したこの返還協定の本質は「島津琉球入り」と何ら変わるものではない。いな、それ以上に悪質な、沖繩県民に屈辱をしい続けるものであると言わねばなりません。この点からも、この沖繩返還協定締結すべきでないことが明確なのであります。  第三に、このたびの沖繩返還協定日本平和憲法にどこまで忠実な返還なのかという点を考えなければならないと思います。憲法第九条をはじめ、第十四条、第二十九条、第三十一条、第三十二条、第九十五条など、多くの違憲の疑いのあるこの協定を、十分に審議されないまま衆議院強行採決され、参議院においてもまだ納得のいくような解明がなされていない現在、憲法を守る立場にある政府は、このたびの協定を無理やり締結すべきではないと考えます。この沖繩返還協定によって憲法精神がくずれていくおそれは十分にあり、憲法が空洞化していく危険が十二分にあるのであります。今日、憲法に対して、本土より沖繩人たちのほうがより忠実であり、より深く理解しているということは、それだけ沖繩において基本的人権が守られにくく、平和が脅かされ続け、その中でひたすら日本人としての理想であり基盤である憲法を順守したいとの希求が、願いが強いのだと申すことができましょう。私どもはその意味で、沖繩日本に返るというよりも、本土沖繩がともに憲法に返るという姿勢でこの返還協定を再検討すべきであると考えます。平和憲法下日本への完全復帰を願って今日まで耐えに耐え、戦い戦い続けてきた沖繩百万県民に対し、もはやこれ以上犠牲をしていることは許されません。  沖繩軍事目的のために日米両国で利用し、施政権返還とすりかえに自衛隊を配備し、沖繩を依然として日本最前線基地にしようとするこの沖繩返還協定は、沖繩を裏切り、平和憲法下日本を裏切るばかりではなく、新しい段階に進みつつある国際情勢を無視するものであることを政府自民党は肝に銘ずべきであります。  以上、私は、この協定が、沖繩県民人権福祉を踏みにじり、日本全体の将来にわたる平和と民主主義を脅かし、さらに世界の平和への流れに逆行するものであるということを警告いたしまして、政府自民党猛省を促し、反対討論を終わります。(拍手)     —————————————
  9. 河野謙三

    議長河野謙三君) 玉置和郎君。    〔玉置和郎登壇拍手
  10. 玉置和郎

    玉置和郎君 皆さん、ありがとうございます。  私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております琉球諸島及び大東諸島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件の賛成討論を行なうものであります。  この協定は、戦いに敗れた国家が、全くの平和と互いの信頼の上に立って、失った国土の返還を実現し、主権の確立をかちえたものだけに、わが国外交史上最もすぐれた成果であると確信いたします。と同時に、戦後はいまここに初めて終わったという深い感慨を込めて本協定に心から賛成の意をあらわしたいと思います。(拍手)  振り返って考えてみますと、沖繩歴史は長く苦しいイバラの道でありました。はなやかな琉球文化を築いた三百年前の王朝時代でさえ、薩摩藩から重圧を加えられるとともに、お隣の中国にも年々みつぎものをささげなければなりませんでした。明治の初め、沖繩県が誕生して以来、本土との風俗習慣の違いなど、大きなギャップを埋めながらようやく近代化が軌道に乗り始めたときに、悲劇の第二次大戦によってすべてを失ってしまったのであります。さらに、打ち続く二十六年間、ただひたすらに耐えて生きるだけの生活をしいられた沖繩県民にとって、祖国日本への復帰は、何よりも強い民族的願望であり血の叫びでもありました。  昭和二十年三月、文字どおり激戦のるつぼに巻き込まれ、多くの同胞がそのとおとい生命を散らされたわけでありますが、いまここに戦火の犠牲となられた多くの県民、軍人のみたまに対し、あらためて心からその御冥福をお祈りするとともに、命にかえて守り抜こうとされたその沖繩が、いままさに祖国に返らんとしていることをつつしんで御報告申し上げる次第でございます。  以下、数点にわたって、今回の歴史的な沖繩返還の意義について申し述べたいと存じます。  その第一は、沖繩返還が、アメリカ合衆国の善意に基づいて、あくまで平和のうちに取りきめられたことであります。  かつて、私がアメリカをたずねた際、さる高官が、当時本土復帰を要望した松岡琉球政府主席をきびしく批判したことを思い出します。そのアメリカ高官ことばも荒く、「沖繩悲劇日本真珠湾奇襲攻撃に端を発したものであり、戦争による犠牲責任は、あげて日本自身にある。アメリカ沖繩を占領できた陰に、数万に及ぶアメリカ人犠牲のあることを、日本琉球政府はほんとうにわかっているのか。」と言われたのであります。このことばに私は、アメリカ人の持つ沖繩に対する強い執着を感じるとともに、戦って敗れるということがいかにみじめなものかをつくづくと思い知らされたのでございます。  また、昨年ハワイ日本人会の幹部の方々と話し合いをいたしましたが、その際、ハワイ日本人会方々はこうしたことを申されました。もし、第二次大戦日本が勝ち、多くの同胞犠牲によってハワイを占領し、その上に施政権確立されたとすれば、いかに二十数年の平和関係が続こうとも、その施政権を返す気持ちになれるかどうか。かつて、日清戦争でかちとった大陸での権益をロシアから守るというだけで国をあげて戦争をした日本ではないか。沖繩返還を当然のごとく考えている人たちに、このお話をよく伝えてほしいと言われたのでございます。  私は、アメリカ政府が、沖繩施政権日本返還しようとする好意をすなおに受け取って、その理解ある態度に深く敬意を表してこそ、礼節を重んじる真の日本人態度であると信じるのであります。また、そうした相互の理解信頼があってこそ、はじめて野党の諸君が心配される核の問題、基地縮小の問題等々も、わが国にとってきわめて有利に解決されるのではないでしょうか。ただもうアメリカに反発する素材の一つとして沖繩をあげつらう一部の勢力がありますことは、日米間の相互信頼のきずなを断ち、沖繩県民をより深い混迷の中におとしいれる以外の何ものでもないことを、この際、はっきりと申し上げたいのであります。  さて、第二の点は、本協定世界史的意義についてであります。およそ、昔から「戦場で失ったものを講和のテーブルで取り戻すことはできない」といわれております。敗戦国として文句のつけようのない領土の処分問題が、このように平和な話し合いによって、戦いに敗れた国の希望を大きくいれて円満に解決されるということは、古今東西の歴史にほとんどその例を見ないのであります。また、このことは、自由世界の東西の極点に立つといわれる日米間の強いきずなを世界に示すものとして高く評価されている問題でもあります。  御承知のように、返還協定の成立を見ますまでには、長期間にわたる外交交渉が繰り返されたわけでありますが、かつて屋良主席ですら、「自分が生きているうちは返ってこないかもしれない」と漏らされたほど、たいへんむずかしい交渉を重ねて今日に至ったのであります。全世界の目が、その外交交渉に注がれ、今日の成果に大きな意義を見出しているはずでございます。なぜかと申しますと、「戦わざれば得られず」という考え方が過去のものとなり、お互いの忍耐と努力によって平和のうちに国土、権益ですらこれを得ることができる時代になったという証拠であるからであります。実に沖繩返還協定はこの意味において、新しい世界の夜明けと呼ぶにふさわしいものではないでしょうか。(拍手)  第三の点は、施政権返還が即沖繩県民基本的人権の回復であることであります。  現在の沖繩県民皆さんは、まことにお気の毒ながら、基本的人権をすら侵された生活を余儀なくされております。たとえば、外国人から違法行為を受けて泣き寝入りさせられる生活本土の国民が想像できるでしょうか。日本人でありながら、買いもの一つにもドル、セントといったお金を使わなければならず、本土との行き来にめんどうな手続が要る。こうした人間として、日本人として認められないような生活から、いま、解放されるときが来たのです。革新の屋良主席でさえ、「協定の再交渉を求めるものではない」と発言いたしておりますことは、協定の個々の内容について幾つかの不満はあっても、一日も、いっときも早く、本土の法のもとに返り、人間らしい生活がしたいという心からなる叫びがあるからにほかなりません。(拍手)  沖繩百万県民が、二十数年にわたって待ち望んだ人間復活のドラマは、いま輝かしい幕をあけようとしております。その新しい時代の幕を開くことこそ、何にもまして私ども政治家に与えられた大きな責務ではないでしょうか。  次に第四点は、この協定の成立によって本土との格差をなくし、経済上の不安を取り除けることであります。  今日の沖繩は、二十四万の賃金労働者のうち、基地労働者が約四万五千名、基地関連事業で働く人々やその家族を加えると実に沖繩人口の半数にも及ぶといわれております。それだけに米軍基地につきまとう第三次産業の肥大化につれて、その産業構造がいびつになっており、加えて、沖繩県民所得は本土の約六割というありさまでございます。こうした中で復帰後の暮らしがかえって苦しくなるのではないかという不安を訴えているのが実情であります。ですから、この際、本土との格差を埋めて現在より豊かで希望の持てる新しい沖繩を築くためには、何としても沖繩に適した産業の振興開発を積極的に行なう必要があります。税制その他に適切な措置を講じるのはもちろん、社会福祉や教育などの充実向上につとめ、地元の伝統産業や、新しい産業の振興育成に懸命の力を尽くし、明るく豊かにたくましい新生沖繩を期しているわけでありますが、そのためには、まずもって、現在、沖特委で審議されている関連諸法案が一刻も早く可決されなければなりません。(拍手)  以上、四つの点について述べてまいりましたが、さらに、今国会における審議のあり方について触れてみたいと思います。  野党の諸君は、核の問題について、日米共同声明第八項、協定第七条、及びアメリカ上院外交委員会のロジャーズ国務長官、パッカード国防次官の証言によって、返還時に核が存在しないことを重ねて表明しているにもかかわらず、これを全く理解しようとしないばかりか、さも日本本土にまでも核があるとか申しております。これほど国民を不安におとしいれるものはございません。またもし、野党の諸君が反対立場をとられるのであれば、本協定にかわるべき、即時実現でき得る対策を国民の前に堂々と御提示されるのが政治家としての責任ではないでしょうか。(拍手沖繩百万県民が、いま真の平和と人間復活を得ようとするとき、イデオロギーを持ち込んで、その悲願を妨げるようなことが断じてあってはならないと思うものであります。  さらにまた、本協定に対し、沖繩県民の大半が反対されているかのごとく言われておりますが、そうした考えを持つ諸君に一言申し上げたい。沖繩県民の政治の最高機関である立法院で、本協定の早期批准を決議したのはどう考えるべきでしょうか。また、協定調印直後の参議院選挙で、七二年返還を公約した自民党稲嶺議員が、県民の圧倒的支持を受けて当選されたのをどう理解すべきでしょうか。これこそ、沖繩県民の大多数が本協定賛成していることのあらわれにほかなりません。  本協定の成立は、沖繩県民大多数の心であるとともに、民族の悲願なのであります。そしてまた、日米両国の友好信頼関係を確固不動のものとして、同時に、わが国の太平洋新時代とも言うべき新たな局面を開かんとするものであります。全世界が注目する中にあって、平和共存共栄の新時代への力強い一歩を踏み出すかいなかは、かかって良識の府である参議院の決断によることをお考えいただきたいのであります。この際、党利党略にとらわれることなく、真の日本人として、その心意気を四海に披瀝するためにも、本協定はもちろん、重大な関係にある沖繩関連法案の会期内成立に十分な御配慮あらんことを切望して、私の賛成討論を終わらしていただきます。  ありがとうございます。(拍手)     —————————————
  11. 河野謙三

    議長河野謙三君) 塩出啓典君。    〔塩出啓典君登壇拍手
  12. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました琉球諸島及び大東諸島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定、いわゆる沖繩返還協定締結について承認を求めるの件に対し、反対討論を行なうものであります。  反対理由の第一は、この協定の国会審議において示された政府与党の、議会民主主義のルールを無視し、沖繩同胞百万の心を踏みにじった強行採決の暴挙をあげなければなりません。過去において自民党は、国の進路を決定しまた国民生活に重大な影響を持つ法案、あるいは六〇年安保条約、日韓条約批准承認案件等について、たびたび強行採決の暴挙を繰り返し、そして、そのたびに、野党の引き延ばし作戦に対決するものとしてこの強行採決の暴挙を正当化しようとの党略をめぐらしてきたのであります。そのため、国会を混乱におとしいれ、国会の威信を著しく傷つけ、国民の政治不信を増大させてきたことはまことに残念であると言わなければなりません。現在高まりつつある直接民主主義の思想と直接行動、思想の混乱、暴力を伴う青年の過激的な行動も、その根源を求めれば、これら議会民主主義を踏みにじった自民党強行採決にあったことは認めざるを得ない事実であります。  わが党は、今日までこのような自民党の政治姿勢に対し強い反省を求め、事態の収拾に積極的に努力をしてきたのであります。それは、国会において与野党の不毛の対立がいたずらにエスカレートすることを避け、院外においては社会の秩序を維持し、もって議会民主主義確立をはかることを願ったからにほかならないのでありました。しかしながら、自民党の暴挙はたびたび繰り返され今日に至っていることはまことに遺憾のきわみであり、自民党責任を深く追及するものであります。  今回の議題であるいわゆる沖繩返還協定批准承認案件は、二十六年にわたる外国施政権下に置かれた沖繩同胞の苦悩を解消し、平和な沖繩の建設を目ざす沖繩県民の長きにわたる悲願が達成できるかどうかを決定する重要なものであります。したがって、国民からの負託を受けた衆参両院において、あらゆる点から深く審議をし国民的合意を得ることにつとめるべきは当然であります。しかるに、衆議院における審議においては、沖繩選出の二名の議員を含め野党の質問予定者も残っており、しかも正常な状態のもとで審査が行なわれているに毛かかわらず、自民党は、参議院における自然成立の条件を満たすため、あのような強行採決を行なったことは、まさに党利党略であり、断じて許すことはできません。沖繩県民の声を聞くための現地公聴会衆議院では開催されておらず、なおかつ、琉球政府屋良主席が沖繩百万同胞の心の訴えをまとめた「復帰措置に関する建議書」を抱き締め羽田に着いたときには、この理不尽な採決が行なわれていたのであります。私は、このような、沖繩同胞の心を無視し、議会民主主義のルールを無視した審議に対し、自民党に強く反省を求めるものであります。  反対理由の第二は、疑惑に満ちた核撤去の問題であります。政府は、すでに御存じのように、核抜き本土並みということを繰り返し繰り返し宣伝してまいりました。  政府は、返還協定第七条及び日米共同声明第八項において、核が返還時までに撤去されることは間違いないと言明してまいりました。しかし、本返還協定第七条においても、「日本国政府政策に背馳しないよう実施する」とあるだけで、全く抽象的な表現のみで、国民はとうてい理解のできないところであります。返還協定の第七条において、日本の負担する対米支払いのうち核撤去費として七千万ドルを含んでいると政府は言明しながら、撤去の方法、時期、撤去費の内訳などは全く明らかにされず、高度の政治的判断で決定したと繰り返すのみであります。さらに、国会審議の過程で、岩国、横田、厚木等の基地にも核や毒ガスが隠されている疑惑が出されましたが、これらに対する政府答弁は、アメリカを信用せよというだけであり、はたして沖繩県民をはじめとする日本国民はこれを信頼することができるでありましょうか。屋良主席の建議書にも示すとおり、あの毒ガスでさえ撤去すると公表してから、撤去までに二カ年以上の時日を経過していることを知っている沖繩県民は、毒ガスよりはるかに危険な核兵器が、はたして残り幾ばくもない復帰時までに撤去されるのかどうか、大きな疑惑と不安に包まれながらその行くえをじっと見守っているのであります。また、本土内における米軍弾薬庫についても、たとえば国会でも問題になったとおり、広島県秋月弾薬庫では、まわりの民家との間に定められた保安距離も全く保たず、目と鼻の先に危険な弾薬を貯蔵していることから考えても、米軍に対する不信の念は強く、不安は一向に解消されないことはまことに残念と言わなければなりません。世界で初めての原爆投下を受け、数十万に及ぶとうとい人命を一瞬にして失い、戦後二十六年を経過してもいまだ消えることのない深い深い傷あとを残している日本の国民の気持ちを代表し、政府は国民の納得のいく処置をとるよう強くアメリカに要求すべきが当然であります。このような核抜きに大きな疑惑と不安を残す本協定賛成するわけにはまいりません。  反対理由の第三は、本土並みという政府の宣伝を大きく偽る本協定内容であります。核抜きと同様、政府本土並みということをしばしば宣伝してまいりましたが、本協定内容は、国会の審議でも明らかにされたとおり、政府の言う本土並みが全くの偽りであり、まさしく国民を欺瞞するこじつけ論であることを示しております。あとにも述べるとおり、日本本土比較にならない高い密度の米軍基地と自衛隊の配置、日本本土には全くなく、共産主義国家向けの謀略放送といわれるVOA放送の存続、第一特殊部隊、第七心理作戦部隊、SR71戦略偵察機の配置など、本土並みでないことはだれの目にも疑うことのできない事実であります。本土並みという政府の公言にもかかわらず、その内容はそのことばに全く反対をしている本協定には強く反対をするものであります。  反対理由の第四は、沖繩軍事力の増強の問題であります。すでに御存じのとおり、昭和二十年四月一日夕刻、米軍沖繩本島に上陸して以来六月二十二日まで、実に歴史上最も悲惨といわれた沖繩戦が展開されたのであります。この沖繩戦において約十一万の日本兵が死んでおり、それにも増して特筆されるものは、日本軍が持久戦法をとり、一刻も長く持ちこたえ、生き延びようとしたために、圧倒的多数の沖繩県民犠牲者を出し、当時四十七万人強の沖繩本島の人口のうち、実に二十万人に近い人が命を失ったといわれております。この沖繩戦に生き残った沖繩県民は、二十六年前の忌まわしい記憶を呼びさましつつ、重苦しい口調でその当時の戦争の残酷さを物語っております。それ以来、沖繩県民の心の奥深く焼きつき、永遠に消えないものは、戦争という悪に対するのろいであり、そして平和を願う真実の叫びにほかならないと確信するものであります。  そして、沖繩はそのままアメリカ施政権下に今日まで実に二十六星霜を数え、世界一の軍事基地とし、アメリカ極東への軍事的キーストーンとなってきたのであります。その間、朝鮮戦争に、またベトナム戦争へと出撃する爆撃機の爆音と、そして戦争の恐怖におびえてきたのであります。長きにわたる祖国復帰がいよいよ実現するという喜びもつかの間、重苦しい沖繩軍事基地のイメージは返還後も一向に変わることなく、むしろ軍事機能は強化されようとしております。沖繩施政権返還されても重要な米軍軍事基地は存続し、かてて加えて、久保・カーチス協定により六千八百名の自衛隊の配置を沖繩返還の条件として米国約束し、一方的に押しつける政府態度こそ、戦争を憎み平和を願う県民の心をむざんにも踏みにじるものでなくて何でありましょうか。沖繩百万同胞の願いは、軍事基地のキーストーン沖繩を平和のキーストーンとすることにほかならないと私は強く確信をしております。  中国の国連加盟、米中接近、朝鮮半島における南北赤十字会談の成功による朝鮮統一の雪解けのきざし、ベトナム戦争の終結への努力等、極東の平和は一歩一歩と明るさを取り戻そうとしております。このような平和への歴史の歯車の回転に協力し、多大の努力をしていくことこそ、日本に課された使命であり、これこそ沖繩同胞の願望にほかならないのであります。にもかかわらず、極東緊張を増大させ、米軍軍事基地の存続、自衛隊の増強等を含む、国際世論の動向に逆行する本協定に対し断固反対するものであります。  反対理由の第五は、とうてい納得することのできないいわゆる資産の買い取りの問題であります。その対象となっているものは、琉球開発金融公社等の三公社をはじめ、かなりの範囲に及んでいるのであります。日本政府が引き継ぐことになっているこれらの資産は、形式はともあれ、その実質においては、元来米国の所有に属するというよりは、沖繩県民に属すると考えるべきであります。すなわち、開発金融公社等の三公社は米国から沖繩に向け支払われたガリオア資金で、占領地域の復興、難民救済を目的としたもので、これらのガリオア資金については、沖繩県民には返済の義務のないことは明らかとなっております。沖繩県民の今日までの努力によって築かれた県民財産と言うべきが当然であり、米側が返済を求める根拠は何もないのであります。にもかかわらず、日本政府がこれら米国資産の買い取りに一億七千五百万ドルを支払い、しかも、その評価基準の内容も全く明らかにされていないのであります。このような道理に合わない資産の買い取りは断じて賛成できないところであります。  反対理由の第六は、沖繩県民の心を踏みにじる対米請求権の放棄の問題であります。アメリカ沖繩支配してきた二十六年間において県民のこうむった損害、奪われた人権は筆舌に尽くせぬものがあり、その間、補償または賠償の名に値するほどの救済措置はほとんど講じられず、まさに泣き寝入りの状態であったことは、屋良主席の建議書にも明らかであります。しかるに本返還協定では、ごく一部を除きこの請求権は放棄され、県民のこうむった損害の賠償、侵された人権の回復には考慮が払われていないことは全く理解に苦しむものであります。沖繩県民の同意を得ることなく、それにかわる救済を確立することなく、安易に対米請求権を放棄した本協定に強く反対するものであります。  最後に私は申し上げたい。政府与党が今日までしばしば発言してきたことは、「まず沖繩復帰することが先決である、不満な点は復帰後に改めていけばよい」ということであります。沖繩祖国復帰の実現こそ、沖繩百万同胞の長きにわたる悲願であり、沖繩復帰の実現を願う気持ちはいささかもひけをとるものではありません。しかし、だからといって、返還してもらうのだから、不満があってもやむを得ないという弱い姿勢で、一億の国民の将来を預かる政府として、はたしてよろしいでありましょうか。  沖繩県民の真実の心を心とせず、勇気と決断に欠け、対米追従の敗北主義に終始してきた政府態度に対して強く遺憾の意を表明し、私の反対討論を終わります。(拍手)     —————————————
  13. 河野謙三

    議長河野謙三君) 萩原幽香子君。    〔萩原幽香子君登壇拍手
  14. 萩原幽香子

    ○萩原幽香子君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま上程されております琉球諸島及び大東諸島に関する日本国アメリカ合衆国との間における協定について承認を求めるの件に対し、やる方なき悲憤の涙とともに反対討論を行なおうとするものでございます。  昨年六月、私は沖繩を訪れました。その際に、現地の婦人たちと懇談する機会に恵まれたのでございます。短い時間ではありましたが、私たちは一分を惜しんで語り合ったのでございます。四分の一世紀の長い年月、米軍基地の島として、その支配下に置かれた百万県民生活は、ずいぶんゆがめられたものになりました。特に一番大きく被害を受けたものは婦人と子供であったのでございます。話し足りない恨みを残して去ろうとした私に、どうぞ一日も早く安心して暮らせる沖繩になるようにお力添えをと、しっかり握られた手のぬくもりが、いまなお私の手のひらにあざやかに残っております。安心して暮らせる沖繩にしてほしいという素朴な願いは、現在の沖繩人々にとって当然の要求ではございませんか。そして、この願いは、日本人である限りひとしく持つ悲願のはずでございます。総理は、この沖繩の婦人たちにどう答えるおつもりでございますか。この返還協定がこのまま締結されれば、はたして沖繩婦人の願いは達成されるでございましょうか。総理、私はことしの三月の本会議の席上、「戦後最長の総理として、どうか国民の心にほのぼのとした喜びを残して、有終の美を飾ってほしい」と御要望申し上げましたが、お忘れになったのでございましょうか。あのとき私は、今日あることを予期してのことばだったのでございます。沖繩の今日ある問題は、決して、先ほどのおことばもございましたが、党利党略に使ってならないことは、賢明な総理には十分御理解いただけるところと存じます。  たびたび申し上げますが、核抜き本土並みは、わが民社党が当初から主張し、私どもはその線に沿って国民の理解を求め続けてまいったのでございました。しかし、このたびの協定については、国民の疑惑は実に深いのでございます。それは、このたびの返還協定核抜き本土並みと言いながら、まことに実の伴わないヤマブキ協定だからでございます。  以下、私は、本協定に対し、三点から反対理由を申し述べたいと存じます。  まず第一点は、この協定の柱でもある核と基地の問題が実にあいまいだということでございます。佐藤総理とニクソン大統領共同声明の中にある、日本立場を了承するということが書かれてあり、また、ロジャーズ国務長官が、アメリカの上院外交委員会で、返還時には核はなくなるであろうと証言されたと聞いております。けれども、核に対する今日までの考え方、今日までの厳然とした事実は何でしょう。核に対しては、どこにあるとか、これをどこに動かすとか、どうするかということは、アメリカ大統領の専権事項なのでございましょう。一国務長官がかりにそんなことを言われたとしても、それが核撤去の証拠になるのでしょうか。もし核撤去が事実なら、核は置かない、持ち込まない、また、いつ撤去するということを具体的にニクソン大統領に声明してもらってこそ、初めて国民は納得できるのではございませんか。それがはっきりしない現状では、沖繩県民はもとより、国民の不満と不安はぬぐえないことを総理は銘記すべきだと存じます。  また、基地についても、基地の中の沖繩、金網におおわれた沖繩といわれる現状とほとんど変わらぬ状態で、現存基地の七五%がそのまま残り、しかも、今後の返還スケジュールすら示されない状態では、アメリカを信じろ、政府を信じろと言われても、まことに無理な話ではございませんか。  第二の反対理由は、国際情勢の変化が無視されているという点でございます。仮調印後の国際情勢、とりわけ極東情勢の変化を総理はどのようにとらえておられるのでございましょう。特にこのたびの返還協定調印後、ニクソン大統領訪中が決定されるなど、国際情勢に大きな変化があったにもかかわらず、この点が全く無視されていると存じます。特に中国の国連加盟並びにニクソンの訪中決定という事態は、日米両国の合意の前提条件が全く変わりつつあることを意味するのではございませんか。にもかかわらず、従来の戦略遂行のための基地施設をそのまま残すことは、全く意義のないことだと言わざるを得ません。その上、政府が六千八百人にものぼる自衛隊員を沖繩に派遣しようとするに至っては、全く国際情勢無視もはなはだしく、沖繩県民の心情を踏みにじったものと言うべく、とうてい許せるものではございません。  反対理由の第三は、今回の沖繩返還にあたっての政府の政治姿勢に対する不満でございます。政府は、今回の沖繩返還について、戦争でなくした領土が平和的に返されることは、世界歴史を見ても全くまれなことであり、ありがたいことだとして、国民に自画自賛されておりますが、私たち多くの国民は、そのようには理解をしておりません。これは、アメリカ自身の政治、経済、軍事などの状況から、沖繩に対する国民の評価の変化であり、いわゆるニクソン・ドクトリンのあらわれだと考えます。にもかかわらず、米国に対してあまりにも譲歩し過ぎた姿勢ではございませんか。  核、基地についてはさきに述べたとおりであり、VOA放送についても本土法のワクを越えてこれを存続させるといったことは、本土並みという原則は完全に骨抜きの状態であり、また特殊部隊の取り扱いについても、第三国人訓練部隊を除くほとんどの部隊の存続を認め、その行動については安保のワク内にとどめるということですが、そもそも安保のワク外にあるものをワク内にとどめるという発言は、全く笑止のさたと言うべきではございませんか。  さらには、対米請求権は一方的に破棄されたことも私ども理解に苦しむところでございます。また、米国資産引き継ぎにしても、歴史的経過からすれば、当然わが国が買い取る性格のないものまで買い取ろうとしているのはどういうことでございましょう。あるいは裁判の効力の問題についてみても、はたして復帰後再審の道が講じられるのでございましょうか。これまた、必ずしも明らかではございません。  このような状態で、二十六年の長い歳月を苦しみ続けてきた沖繩人たちをどうして納得させることができましょう。せめてこのたびの予想外の円大幅切り上げについて早急に現地にこたえるぐらいの配慮がなければ、形の上での一体化はなし得たとしても、心の一元化は望むべくもございません。政府の政治責任を強く追及するものでございます。  以上、私は三点について反対理由を申し述べてまいりました。総理の深い反省を求めるとともに、今後真の国益のために、民族発展のために最大の努力をされることをきびしく促して私の反対討論を終わります。(拍手)     —————————————
  15. 河野謙三

    議長河野謙三君) 春日正一君。    〔春日正一君登壇拍手
  16. 春日正一

    ○春日正一君 私は、日本共産党を代表して、沖繩協定反対討論を行ないます。  沖繩は、敗戦と同時にアメリカ占領軍の手で本土から切り離され、さらに、サンフランシスコ条約第三条によって、不法にも今日までアメリカの軍事的、植民地的占領のもとに置かれてきたのであります。したがって、沖繩日本への返還は当然のことであり、核も基地もない沖繩の全面返還は、沖繩県民をはじめ平和とわが国の真の独立を望むすべての国民の切実な要求であります。しかるに、このたびの沖繩協定は、このような国民の要求を正面から踏みにじった危険きわまるものであります。このことは、自民党以外の沖繩選出議員で一貫して復帰運動の先頭に立ってきた人たちが、こぞってこの協定反対していることを見ても明白であります。  反対理由の第一は、この協定アメリカアジアにおける反共軍事同盟に日本を一そう深く組み入れ、対米従属のもとでの日本軍国主義復活を新たな段階に推し進めるきわめて侵略的な性格のものだからであります。この協定は、極東のかなめ石といわれている沖繩米軍基地施政権返還後もそのまま残すと同時に、極東諸国防衛のため米国が負っている国際義務効果的遂行を妨げないことを共同声明約束して、現在、アメリカ沖繩基地として行なっているベトナム、インドシナ侵略戦争返還後も公然と続けることを容認し、さらに韓国、台湾への軍事行動の必要が生じた場合、日本事前協議で積極的に賛成するものにほかなりません。しかも、このような沖繩米軍基地を防衛するために久保・カーチス取りきめを結んで大量の自衛隊を沖繩に配備し、米軍と自衛隊の密接な連携、共同の作戦を展開しようというきわめて危険な内容を持つものであります。  協定第三条で、アメリカに提供する施設区域には緊急出撃を任務とする第三海兵水陸両用部隊をはじめ、他国の領内に潜入して破壊活動を行なうことを任務とするゲリラ専門部隊  いわゆるグリーンベレー、謀略、脅迫ビラなど心理戦争専門の第七心理作戦部隊、スパイや撹乱挑発行動を事とするCIA部隊など、従来安保条約のワク外とされていた特殊部隊がそのまま存続することになっていますが、これらの特殊部隊安保条約下に組み入れることによって、安保条約の侵略的本質を一そうむき出しにするものであります。  政府は、「協定発効後は安保条約のワク内に入る、事前協議が適用になるから心配ない」と答弁してきましたが、わが党の追及で明らかになったように、現在沖繩から行なわれているベトナム侵略のためのB52への空中給油、海兵隊のベトナム出動、SR71スパイ機の連日の発進など、米軍の軍事行動のどれ一つとして政府はこれを事前協議対象にしようとは考えておらず、危険な核部隊や特殊部隊の任務や性格が変わるという保障は全くありません。  沖繩の核基地についても、政府は、わが党が委員会米軍自身の資料に基づいて繰り返し具体的に暴露してきた核攻撃訓練や核攻撃準備、さらに返還後も存続する核攻撃部隊の問題など、真剣に調査しようとせず、「アメリカ政府佐藤内閣を信用せよ」という従来からの答弁以上には一歩も出ていません。核戦争任務を持った部隊が、核武装は沖繩以外で行なうということは、だれをも納得させることはできません。核撤去の確認がなされない限り、核がひそかに残されているか、有事の際に持ち込むものとしか考えようがありません。  このように、沖繩協定とそれをめぐる日米取りきめは、日本の安全とアジアの平和にとってきわめて危険なものであり、われわれの絶対容認できないものであります。  第二に、私が深い憤りをもって指摘しなければならないのは、この協定の屈辱的な内容であります。周知のように、沖繩県民は四分の一世紀にも及ぶアメリカの軍事占領のもとでの米軍の残虐な仕打ちによって、筆舌に尽くしがたい苦しみを受け、生命、財産に大きな損害をこうむってきました。こうした損害を完全に賠償させることは、被害者である沖繩県民の当然の権利であり、国際法上の原則でもあります。しかるに政府は、協定第四条で、日本側の賠償請求権を、その全容の調査もせずに全面的に放棄しています。これは、県民の被害の賠償、侵された人権の回復という政府責任の放棄であり、アメリカの不法な占領支配を正当化するものであります。その一方、この協定は当然、沖繩県民に無償で引き継がれるべき電力・水道・開発金融公社その他の資産に対して三億二千万ドルという国民の血税を支払い、施政権を買い取るという全く屈辱的なものであります。  また、協定第五条では、米占領下の不当な刑事裁判を有効として引き継ぎ、復帰後の裁判に占領中の米軍の布令、布告も適用できるとしております。これは日本国憲法下の法体系と根本的に矛盾する、独立国としては世界に類例のない取りきめであります。  さらに、反共謀略放送であるVOA極東放送の存続問題、沖繩における米国企業の特権の擁護など、この協定は、わが国の電波法に特例を設けてまでアメリカ占領者の権益、権限を最大限に保護している反面、耐えがたい苦しみを受けてきた沖繩県民の権利や利益は何ら守ろうとせず、今後も長期にわたって米軍の半占領のもとにつなぎとめ、県民生活を一そう苦しめる反民族的な屈辱的な内容であることを示しております。  以上のような重大な内容を持つこの協定について、政府自民党が国民の納得のいく十分な審議を行なわず、参議院での自然成立を前提に、衆議院で不法不当な強行採決の暴挙を行なったことは、この協定の持つ侵略的、屈辱的な内容が国民の前に暴露されることをおそれたからにほかなりません。  いまアメリカベトナム侵略戦争を中心とする戦争と侵略の政策は大きく破綻し、ドル危機も一そう深刻化する中で、アメリカは苦境から脱出するため、ニクソン・ドクトリンへの協力、加担を日本に押しつけてきております。戦後二十六年、一貫してアメリカに従属してきた政府自民党の政治・外交路線が大きな矛盾と困難に直面する中で、ニクソン・ドクトリンの具体化である沖繩協定締結日本の進路を一そう危険な方向に導くものであることは明らかであります。  私は、核も基地もない平和な沖繩返還を要求し、佐藤内閣のこの協定締結の重大な政治責任を糾弾して、討論を終わります。(拍手)     —————————————
  17. 河野謙三

    議長河野謙三君) 喜屋武眞榮君。    〔喜屋武眞榮君登壇拍手
  18. 喜屋武眞榮

    ○喜屋武眞榮君 私は、第二院クラブの喜屋武眞榮であります。  私は沖繩県民を代表いたしまして、琉球諸島及び大東諸島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定承認を求めるの件に対し、特に終戦以来置かれてきたわが沖繩の異常な立場を正常な立場に取り戻すために、百万県民の先頭に立ってあらゆる苦難をなめてきた私が、願いとほど遠く、こうして裏切られた形でいま沖繩の運命が片づけられようとするかと思うと断腸の思いで一ぱいであります。そこで、私は、心の底から激しい憤りをもって抗議の意を表明し、当該案件に全面的に反対するものであります。(拍手)  その理由を端的に申せば、第一に、四半世紀を越える永い苦悩と屈辱に耐え、ひたすら真の復帰、すなわち平和と人権と自治の回復とを求め続けてきた沖繩県民の願いを無残に踏みにじるものであり、第二に、秘密外交のヴェールに隠れ、平和を愛する日本国民の意思を無視して、対米従属、軍事優先の色彩を濃厚ににじみ出させているものであるからであります。  それでは一体沖繩県民が目ざしている真の復帰とは何なのかということが問われなければなりません。それは、これまで幾度となく私が主張し要求してきたように、沖繩が単純な領土回復として、単に日本政府の統治下にすんなりとはまり込むことではありません。沖繩県民が過去二十六年間米軍の銃剣のもとで探求してきた真の復帰は、日本国憲法の本旨とするところの、基本的人権がこよなくとうとばれ、平和で豊かな自治の回復であり、また、人間回復を希求する復帰であります。  アメリカ沖繩支配は、世界でも最低の悪例を残した統治であります。このことを許した歴代日本政府は、世界に恥ずべきでありましょう。そのことは、土地・人民を含めて生殺与奪の権限をアメリカという軍事基地権力者に与えた日本の為政者がいたことから起こっていることを思うときに、私はがまんができないのであります。(拍手)極端にいうならば、平和条約第三条において、焼いて食おうが煮て食おうがあなたまかせの軍事優先政策犠牲沖繩にしい、沖繩を人質に入れた上で、わが国の主権は一応回復したけれども沖繩問題は常に海の向こうの外国のできごととして扱われてきたのであります。沖繩県民は、とのような自民党政府の、世界にも類例を見ないまま子扱いとアメリカの野蛮な軍事的植民地支配から脱却し、核も基地もない平和な沖繩を取り戻すという、軍事重圧からの解放を掲げて戦ってきたのであります。そして、戦後四半世紀にわたって戦ってきた沖繩県民復帰要求は、即時無条件全面返還に集約されているとおり、国民主権の立場を回復し、日本国民としての義務責任を負い、一日も早く人権、民主、平和を本旨とする日本国憲法のもとに復帰するということ以外にありません。沖繩県民祖国は、戦争放棄を高らかに宣言し、基本的人権と住民自治を保障する憲法の中に存在するのであって、施政権さえ返ればそれでよいなんて、さらさら思っておりません。そのことを理解できないで沖繩の心は理解できないでありましょう。(拍手)  その沖繩の心を頭ごなしに踏みつけておいて、帰ってこいと言われたって、手放しでこれに応ずるほど沖繩県民は愚かなものではありません。そしてまた、沖繩がどのような内容で返るかということは、今後における日本の進路、いわゆる七〇年代の路線につながる重大な意義を持つものであることは、いまさら論ずるまでもありません。  この沖繩協定は、去る四十六年六月十七日に調印され、十一月十七日衆議院協特委で強行採決、そして同二十四日、同院本会議の異常な雰囲気の中で通過した前歴を持ち、基地特殊部隊もかかえ込んだまま、一九七一年十二月二十四日午前零時を期して自動的に承認されることになるのであります。沖繩にとって、いな、日本にとって、たいへんおそろしい屈辱と暗い歴史の始まりと言わなければなりません。(拍手)願わくは、本院におかれては、参議院の本来の使命を果たすべく、良識の府として、各議員諸君が、わが国のこれからの歴史に照らして汚点を残さぬよう、私の心からの訴えを受けとめていただきたい。そして本協定反対立場を支持くださるよう強く強く訴えるものであります。(拍手)  私が繰り返し申し上げたいことは、この協定が、必ずや、沖繩県民のみならず日本の将来に大きな不安と危険をもたらし、戦争への道へ誘うものであるということであります。私の言わんとするところは、復帰反対とか、復帰はおくれてもよいとかということではなく、内容をよくするために再交渉せよという、しごくあたりまえのことを言っておるのであります。  これまで各委員会等で申し述べてきましたように、沖繩県民の心を踏みにじった返還協定は、日本国民の目の前に巨象のように立ちはだかり、いまや国民を危険な道へ歩まそうとしていることを知らねばなりません。本院に対しても信頼はしておるものの、冷厳な現実として、沖繩の心は踏みにじられるのではなかろうかという危惧を持って見なければならないきざしがあることを思うとき、返す返すも残念無念、断腸の思いであります。  この沖繩の心とは、その一つは、戦争を憎み、平和を求める心、二つは、奪われた人権を回復する心、三つは、自治を求める心なのです。この三つの心を、むざんにも踏みにじる行為は許せるものではありません。(拍手)そして、平和と人権と自治を求める心は、沖繩県民のみの心にとどまらず、全日本国民の、いな、平和を愛する全世界諸国人民の心であることを知るべきであります。  ところで、佐藤総理以下閣僚は沖繩を踏みにじったとは、とんでもないと弁解なさるかもしれません。思うに、沖繩国会と銘打って開かれた国会の中で、沖繩がいかに踏みにじられ、顧みられなかったか、その論議の中で政府がとってきたその態度、その政治姿勢、そのあいまいな答弁は、どう見ても、沖繩県民をはじめ国民を納得させたとは言えません。たとえば、核の問題にいたしましても、問い詰められた結果、核があるとの心証を得ているが、どこにあるのかは不明である、というようにきわめてあいまいであります。また、復帰時点で核はなくなると言うけれども、その確認方法は、かいもく不明確であります。何ゆえに、ほんとうのことを言えないのかということに着眼する必要があるのであります。これほどまでに、たれに遠慮しなければならないのでしょうか。国民の前に真実を明らかにできないのは、とりもなおさず、その対米一辺倒の外交姿勢に問題が深く根ざしていると言わねばなりません。  また、沖繩は、アメリカ特殊部隊VOA、ロラン基地などを残したまま、アメリカの反共アジア侵略体制のかなめ石の役割りを何ら変えることなく返ってくるのであります。そしてまた、米軍支配下に生じた数々の人権侵略に関する県民の対米請求権放棄は、これまたいまだに敗戦国意識が残っているのか疑わせるものがありますが、放棄した請求権の補償については、政府は、実情を調査した上でという、あいまいな答弁で終始しているのであります。調査しなければ明確でないような請求権を放棄している。何を放棄したのかわからないまま放棄しているのであります。このような無責任態度がありましょうか。このようなことで、県民の心を十分にくんだ交渉がなされたとはどうしても思えないのであります。  このようにして、県民の声はもとより、沖繩県民の代表である琉球政府の屋良主席が持参した建議書、第一次ないし第三次にわたる復帰対策要綱、関連国内七法案なども総点検をなした上で県民各層の要求を反映させた建議書内容が全く顧みられず、また、これまでの国会論議も何らいれられないまま、さらに、幅広い国民の声にも耳をかさず、また、沖繩県民の声も、心も、そして切実な要求さえ踏みにじった本協定反対し、再度申し上げたい。  協定のやり直しを求め、たとえ自民党の多数で押し切られるようなことがあったとしても、沖繩県民はここに勇気と決意を新たにし、本土の平和と民主主義を愛する国民と幅広い戦いを組み、これを空洞化させるために立ち上がるであろうことをここに表明し、反対討論を結びます。(拍手
  19. 河野謙三

    議長河野謙三君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決をいたします。  表決は記名投票をもって行ないます。本件承認することに賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  20. 河野謙三

    議長河野謙三君) 投票漏れはございませんか。——投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。    〔投票箱閉鎖〕
  21. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  22. 河野謙三

    議長河野謙三君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数        二百三十九票   白色票          百三十一票    〔拍手〕   青色票            百八票    〔拍手〕  よって、琉球諸島及び大東諸島に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定について承認を求めるの件は承認することに決しました。(拍手)      ——————————   〔参照〕  賛成者(白色票)氏名      百三十一名       久次米健太郎君    亀井 善彰君       川上 為治君    熊谷太三郎君       温水 三郎君    濱田 幸雄君       森 八三一君    小山邦太郎君       棚辺 四郎君    中村 禎二君       橋本 繁蔵君    原 文兵衛君       桧垣徳太郎君    志村 愛子君       竹内 藤男君    高橋 邦雄君       柴立 芳文君    古賀雷四郎君       黒住 忠行君    小林 国司君       今  春聴君    大松 博文君       玉置 猛夫君    山崎 五郎君       石原慎太郎君    長田 裕二君       菅野 儀作君    石本  茂君       佐田 一郎君    鬼丸 勝之君       安田 隆明君    藤田 正明君       源田  実君    長谷川 仁君       二木 謙吾君    河口 陽一君       木村 睦男君    土屋 義彦君       栗原 祐幸君    木島 義夫君       米田 正文君    津島 文治君       徳永 正利君    丸茂 重貞君       平島 敏夫君    江藤  智君       鍋島 直紹君    新谷寅三郎君       植竹 春彦君    木内 四郎君       杉原 荒太君    上原 正吉君       松平 勇雄君    郡  祐一君       古池 信三君    安井  謙君       重宗 雄三君    細川 護煕君       岩動 道行君    上田  稔君       佐藤  隆君    中山 太郎君       川野 辺静君    河本嘉久蔵君       金井 元彦君    片山 正英君       梶木 又三君    岩本 政一君       若林 正武君    長屋  茂君       増田  盛君    矢野  登君       山本敬三郎君    渡辺一太郎君       鈴木 省吾君    山崎 竜男君       高田 浩運君    佐藤 一郎君       中津井 真君    寺本 廣作君       久保田藤麿君    園田 清充君       鹿島 俊雄君    植木 光教君       玉置 和郎君    町村 金五君       橘直  治君    高橋文五郎君       大森 久司君    岡本  悟君       吉武 恵市君    大谷藤之助君       塚田十一郎君    小笠 公韶君       前田佳都男君    堀本 宜実君       柴田  栄君    大竹平八郎君       平井 太郎君    塩見 俊二君       剱木 亨弘君    青木 一男君       迫水 久常君    西田 信一君       増原 恵吉君    赤間 文三君       斎藤  昇君    林田悠紀夫君       船田  譲君    今泉 正二君       嶋崎  均君    稲嶺 一郎君       世耕 政隆君    初村滝一郎君       星野 重次君    山本茂一郎君       山内 一郎君    柳田桃太郎君       宮崎 正雄君    楠  正俊君       高橋雄之助君    内藤誉三郎君       西村 尚治君    後藤 義隆君       伊藤 五郎君    白井  勇君       平泉  渉君    田口長治郎君       八木 一郎君    山本 利壽君       山下 春江君     —————————————  反対者(青色票)氏名     百八名       塩出 啓典君    松岡 克由君       喜屋武眞榮君    野末 和彦君       山田  勇君    内田 善利君       藤原 房雄君    栗林 卓司君       藤井 恒男君    中村 利次君       青島 幸男君    原田  立君       中尾 辰義君    木島 則夫君       柴田利右エ門君    上林繁次郎君       矢追 秀彦君    三木 忠雄君       阿部 憲一君    萩原幽香子君       峯山 昭範君    田代富士男君       柏原 ヤス君    黒柳  明君       田渕 哲也君    中沢伊登子君       沢田  実君    山田 徹一君       鈴木 一弘君    宮崎 正義君       向井 長年君    高山 恒雄君       渋谷 邦彦君    二宮 文造君       多田 省吾君    白木義一郎君       中村 正雄君    村尾 重雄君       伊部  真君    田  英夫君       上田  哲君    工藤 良平君       竹田 現照君    戸田 菊雄君       前川  旦君    沢田 政治君       杉山善太郎君    松永 忠二君       森中 守義君    野上  元君       西村 関一君    中村 英男君       阿具根 登君    森 元治郎君       瀬谷 英行君    羽生 三七君       加藤シヅエ君    藤原 道子君       鶴園 哲夫君    鈴木  強君       片岡 勝治君    辻  一彦君       佐々木静子君    須原 昭二君       加藤  進君    水口 宏三君       小谷  守君    神沢  浄君       鈴木美枝子君    宮之原貞光君       杉原 一雄君    竹田 四郎君       安永 英雄君    松本 英一君       和田 静夫君    塚田 大願君       大橋 和孝君    川村 清一君       中村 波男君    鈴木  力君       森  勝治君    村田 秀三君       山崎  昇君    星野  力君       林  虎雄君    佐野 芳雄君       松本 賢一君    小林  武君       茜ケ久保重光君    松井  誠君       渡辺  武君    須藤 五郎君       矢山 有作君    占部 秀男君       横川 正市君    小柳  勇君       戸叶  武君    河田 賢治君       岩間 正男君    加瀬  完君       吉田忠三郎君    小野  明君       足鹿  覺君    成瀬 幡治君       藤田  進君    秋山 長造君       野坂 參三君    春日 正一君      ─────・─────
  23. 河野謙三

    議長河野謙三君) 日程第一 理容師法及び美容師法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案衆議院提出)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。社会労働委員長中村英男君。    〔中村英男君登壇拍手
  24. 中村英男

    ○中村英男君 理容師法及び美容師法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の結果を申し上げます。  二人以上の理容師または美容師が常時従業している理容所または美容所には、昭和四十七年一月一日から、管理理容師または管理美容師の資格のある者を管理者として置くべきことを四十三年の改正で定めたのでありますが、その後の施行状況にかんがみて、その実施をさらに一年間延期することをこの法律案は定めているのであります。  委員会においては、別に討論もなく、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決しました。  以上報告いたします。(拍手
  25. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  26. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。      ─────・─────
  27. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 日程第二 輸出保険法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。商工委員長大森久司君。    〔大森久司君登壇拍手
  28. 大森久司

    ○大森久司君 ただいま議題となりました法律案につきまして、委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。  本法律案は、最近における輸出信用供与方式の多様化及び海外資源開発輸入の実情にかんがみ、輸出代金保険については輸出代金貸し付け契約を、海外投資保険についてはいわゆる融資買鉱方式にかかる貸し付け金を新たに保険の対象に加えようとするのがおもな内容であります。  委員会における質疑会議録に譲ります。  質疑を終わり、討論なく、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告いたします。(拍手
  29. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  30. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。本日はこれにて散会いたします。   午後十一時三十二分散会