○川村清一君 私は、
日本社会党を代表して、
沖繩返還協定に
関連する
国内法案について、
総理並びに
関係大臣に対して
質問をいたします。
衆議院沖繩返還協定特別
委員会において不当不法にも強行採決された十一月十七日、
琉球政府屋良主席は、
沖繩問題の重大な段階において、将来の歴史に悔いを残さないため、また歴史の証言者として、
沖繩県民の要求や考え方をここに集約し、
県民を代表し、あえて建議をするとして、建議書を携行、上京したのであります。屋良主席上京の
日程は、
政府・自民党は知っていたはずです。それにもかかわらず、口を開けば、
沖繩県民の声を聞き、平和な豊かな
沖繩県をつくり、
県民をあたたかく
本土に迎えると言っていた
佐藤総理、総裁が統率する自民党は、議会制民主主義を破り、屋良主席の建議には一片の耳もかさずに強行採決を敢行したのであります。このことは、
沖繩県民をして
本土政府並びに
国会に対し、いかに大きな不信感をいだかせる結果になったか、はかり知れないものがあります。(
拍手)その意味で、
総理の
責任はきわめて重大であり、私どもは絶対に容認することができない。この際、
総理の政治
責任を明確にしていただきたい。なお、
佐藤総理は、その後
琉球政府の建議書をお読みになられたか、お読みになったら、それに対する御
見解をお伺いしたいのであります。
屋良主席の切々たる訴えに、私どもは強く胸を打たれ心からの感銘を覚えたのであります。徳川封建の時代には島津藩に収奪され、明治以来は
本土政府によって常に差別の政治を押しつけられ、
太平洋戦争では
日本軍隊によって直接
戦争にかり出され、あるいは防空壕から追い出され、あるいは集団自決を迫られるなど、十数万の非戦闘員がとうとい生命を失ったのであります。戦後は、異民族の統治のもとに、人権を無視され、あらゆる屈辱に耐えながら、いちずに
日本国憲法のもとへの
祖国復帰を
願い、戦い続けた
沖繩県民には、長い歴吏の流れの中から、
沖繩の心が強く形成されたのであります。屋良主席の建議書は、その
沖繩の心の叫びをもって、
返還協定並びに
関連する
国内法の制定に対し建議し、具体的施策の
実現を
要望しております。
沖繩の心とは何か。一つは反戦平和を貫く心であり、二つには
基本的人権の尊重を求める心であり、三つには
地方自治の確立を要求する心であり、四つには
県民本位の
経済開発を願う心であります。反戦平和を貫く
沖繩の心は、
米軍基地の完全撤去を要求し、
自衛隊の配備に対しては強く拒絶反応を示しているのであります。施政権が戻ることによって、
米軍の
基地機能はすべて
本土並みに、日米安保条約のもとに規制されるから心配がないとか、独立国である以上、国を守るために、
自衛隊の配備は当然であるとの
政府の論理は、
沖繩の心には通じないのであります。この点、
佐藤総理はどのように評価されるか、御
見解を伺います。
私は、反戦平和を貫く
沖繩の心を心として、まず
公用地等の
暫定使用に関する
法案に対し
質問いたします。
今日、
米軍が使用している
基地面積は、
沖繩の全土の面積比一四。八%、
沖繩本島の面積比は実に二七・二%に及ぶ膨大なものであります。その大部分は
米軍が
沖繩占領の初期に、住民を収容所に強制収容し、その間に好きかってに取得したものであり、さらに
朝鮮戦争を契機にして、
沖繩基地建設が本格化すると、一九五三年から五五年にかけて銃剣を突きつけ、ブルドーザーでならし、
県民から強奪したものであり、ポツダム宣言に規制せられた占領目的に違反し、しかもその
手続において
土地所有者に法的に争う道を一切認めない不法なものであります。したがって、施政権が返還された
時点で、これらの
土地が所有者に戻されることは当然であり、もし継続使用を望む場合は、
土地の所有者及び
関係人との間に任意に協議をし、契約を結ぶべきであります。しかるに、本
法律案は、現在どおり
米軍に使用させるため、
政府は
基地用地を強制的に取り上げ、しかも五年間の長期にわたり
米軍をそのまま居すわらせようとしており、さらに
米軍基地ばかりか、
復帰後、
沖繩に配備される
自衛隊の
土地使用についても強制使用をしようとしているのであります。一九五三年、講和発効の場合、
本土においても
米軍基地の使用継続をはかって、
土地使用、
米軍特別措置を制定したが、この場合は、六カ月をこえない期間として限定したのであります。
本土の場合は、一時使用の期間が六カ月であるのに対し
沖繩は五年、このことは明らかに
米軍の行なった
沖繩土地収奪の違法性、不当性を引き継ぐことであり、五年もの長期にわたり有無を言わせず強制
収用を許すことは、
暫定使用の名のもとに
土地強奪を合法化しようとするものであり、
県民の
基本権を不当に侵害するものであります。
さらに、
自衛隊の
土地収用については、安保条約の地位
協定に基づく
米軍への
基地提供とは全く異質のものであり、
本土においては、
自衛隊の用地使用には
土地収用法の
適用がなく、現行法のもとでは強制
収用は許されない。
自衛隊法百三条による防衛出動の場合のみに限って認められているのであります。したがって、
本土においてはできない
自衛隊用地の接収を、
復帰に伴う暫定
措置とし、
米軍基地使用に便乗して
土地収用を強行しようとすることは、許されることではありません。しかも、
復帰後の
沖繩と
沖繩県民のみに
適用されるという特別法であることは、
沖繩県民のみに差別をつけ、著しい不利益を与えることであり、不当であります。さらに、その
手続は、本法の施行前に告示し、施行後は通知することによって権利が取得されることになっており、現行法にいまだその例を見ないものであります。結論的にいって、本
法律案は明らかに憲法第九条、十四条、二十九条、三十一条、三十二条、九十五条に違反する疑いがあり、軍事目的優先と
国民基本権の抑圧であると断ぜざるを得ません。したがって、このような戦後立法史上かつて例を見ない悪法は直ちに撤回されることを要求し、
総理並びに
防衛庁長官の御
見解をお尋ねします。(
拍手)
次に、
復帰に伴う
特別措置法並びに
沖繩振興開発特別措置法を中心に
関係大臣に
質問いたします。
人権の尊重を要求する
沖繩の心は、
社会保障の確立した豊かな
生活を希求し、今日まで二十六年間にわたって
米軍の支配によって受けた非人道的な人権の侵害に強く抗議し、人的、物的な損害の補償を要求し、不当な裁判に対しては、
日本国憲法のもとにおける公正、平等な裁判を受ける権利を主張しているのであります。
沖繩返還協定第四条で、
日本国及び
日本国民のすべての請求権を放棄したが、直接の被害者である
沖繩県民の意思を退け、
県民固有の権利を放棄した
政府の態度に対し
沖繩県民は強い怒りを表明しております。国際法上の原則に従えば、施政権者である米国は、施政権の返還にあたり当然原状回復の
義務を負うべきであります。にもかわらず、
責任を回避し、
日本政府は、これに対して法的承認を与えたことは、
県民の
基本的人権の回復と補償を要求する
沖繩県民に対する挑戦であり、国際信義にも反する米国
政府の行為を認めた
政府の政治的、道義的
責任を強く指摘せざるを得ません。(
拍手)
対米請求権の放棄に伴う債務性補償の具体的
措置については、当然
復帰に伴う
特別措置法に明文化して国が
責任を負うべきであります。しかるに、一部を除いてはほとんどの部分について講じていないことは容認できない。したがって、対日平和条約の発効前及び発効後、施政権返還までの間、米国の施政権下において
沖繩県民がこうむったすべての損害について、国の
責任において補償するための必要な特別立法を講ずべきであります。その用意があるかどうか、
政府の
見解を明らかにしていただきたい。
返還協定第五条は、米施政権のもとに行なわれた裁判の効力について、民事、刑事とも原則としてそのまま有効として承認し、
日本国がその効力を引き継ぐ旨を規定し、この引き継ぎには、米民
政府及び
琉球政府の裁判が下した確定判決の執行も含まれております。米施政権下の裁判の効力をそのまま承認することは、二十六年間も
沖繩県民の人権を無視し、侵害し続けてきた異民族による軍事優先の米国統治下における屈辱的な裁判の効力をほとんど無
条件に近い形で認めることであり、
沖繩県民を含めた
日本国民の肯定することのできないものであります。本
協定の先例ともいうべき奄美
返還協定においては、民事判決は、公序良俗に反しない限りこれを認めることとし、刑事判決についてはその効力を否定し、返還後、服役中の者または事件係属中の者に対し、
日本があらためて裁判権を行使できるとされております。国際法上の原則及び
日本国憲法のたてまえから言っても奄美方式が妥当であるにもかかわらず、
政府はいかなる
理由によって
沖繩県民の人権を無視する
方針を打ち出したのか、明確な御答弁をいただきたい。
自治権の確立を願う
沖繩の心は、異
民族支配から脱却する運動の中から生まれてきたものであります。今日までの
復帰運動は、人権回復運動であり、
自治権確立の闘争でありました。米民
政府布告、布令及び指令が、漸次
沖繩の独立を認め、
琉球政府の権限の拡大をもたらしたものは、実に
復帰運動のエネルギーであったことを認めなければなりません。
沖繩返還に伴い、中央には
沖繩開発庁が
設置され、
沖繩には行政組織では類例のない機構と権限を持つ
沖繩総合事務局が
設置されることになるが、この
機関は、
沖繩の
自治に重大な影響を与えるものとして危惧されており、
本土と
沖繩の一本化という名目のもとに機械的に一元化せんとする
政府の施策に反対しております。今日まで
沖繩は、異民族の支配下といえども一個独立の
琉球政府を構成し、
県民の
自治意識は、戦いの歴史を通じて、他府県に比べ最も高く定着しております。この
県民の
自治意識を高揚し、これを
開発の原動力にすることが
沖繩振興開発政策の
基本でなければなりません。
政府提案の
開発行政組織とその運営
方針は再検討する必要がある。
振興開発審議会の構成は、少なくともその半数以上は
沖繩県民をもってあて、
総合事務局は
設置の必要がない。米民
政府にかわって
沖繩代官政治にならぬようきびしく
政府に反省を求めて、
政府の御
見解を伺います。
県民本位の
経済開発を願う
沖繩の心は、
県民福祉の向上を第一義とし、
自治権尊重に立った
開発、平和で豊かな県づくりを志向した
開発を求めております。
沖繩の
経済開発は、異常な
基地依存経済から早急に脱却して、健全
経済に移行することが最大の課題であり、そのためには
米軍基地が縮小、撤去されることが絶対の要件であります。
経済の中心地になるべき中部地区における
基地面積は、総面積対比実に五四%、嘉手納八八%、コザ市六七%、まさに
基地の中に
沖繩が
存在するような現状では、
開発のための
土地利用基本計画を立てることも不可能であり、第一次
産業一〇%、第二次
産業二〇%、第三次
産業七〇%という跛行的な
産業構造を均衡のとれた構造に変化し、
福祉豊かな、平和な
沖繩の
建設は、とうてい望むことはできない。一九七〇年、
琉球政府が作成した長期
経済開発計画は、一九七二年
復帰を前提として、七一年を初年度とし、八〇年を目標年次としているが、その
時点における
基地収入の総需要に占める割合は皆無となる。つまり十年後にはほとんどの
基地が開放されるものと想定しております。山中
総務長官も、
沖繩開発計画の中で一番障害になっているのは
基地であることを認めているが、はたして十年後には
基地が完全に撤去されることになるのかお伺いいたしたいのであります。
次に、
振興開発計画は、
昭和四十七年度を初年度として十カ年を目途として達成されるような
内容のものでなければならないと規定してあるが、
昭和四十七年度の
資金計画はどうなるのか、
資金計画のない
開発計画は、絵にかいたもちにひとしいので、この際明らかにしていただきたい。
さらに
総務長官は、海洋
開発に
努力すると言明しているが、その構想と展望についてお伺いいたしたい。
沖繩は亜熱帯に位置し、黒潮の流れと
関連して、さんご礁と白い砂と透明な海水は、熱帯的
観光資源として貴重な価値を持つものであり、また、この海域は水産資源に恵まれ、漁場価値も高く、将来の水
産業の
発展に大きな希望を持てる
地域であります。ただし留意すべきは、観光
施設は自然の破壊につながるので、破壊防止には万全の策が講じられなければならないし、工業公害や
米軍演習で漁民の漁業権行使を侵害することを許容してはならない。要は、
県民福祉の立場に立ち、自然破壊と海洋汚染を伴わない海洋
開発が
推進されなければならない。これに対する所信をお伺いいたしたい。
次に、
関連して
外務大臣にお尋ねします。
先日の本
会議において、また、ただいまの本
会議において、福田
外務大臣から、
尖閣列島の領土権について御答弁をいただきましたが、納得できないのは米国
政府の態度であります。
尖閣列島は、現在、石垣市に編入されており、魚釣島、久場島、南小島と北小島は個人の所有地であり、大正島その他は国有地であります。しかも
米軍は、久場島と大正島を射爆場として使用し、所有者に対し年間一万ドル以上も使用料を支払っており、今回の
米軍基地了解覚書A表の(八四)黄尾嶼射爆場は久場島であり、(八五)赤尾嶼射爆場は大正島である。この事実から見て
日本に施政権は返還するが、その帰属については
関係しないと称している米国
政府の論理はあまりにもえてかってであり、国際法上も認められるものではありません。したがって、
政府は、米国
政府に強く抗議すべきであります。この点についての御
見解を伺います。ただし
尖閣列島周辺の大陸だな資源
開発は別の問題であります。東支那海、黄海は、中国大陸、韓国から広大な大陸だなが続いており、その地下には豊富な良質の油田が埋蔵されている
可能性が調査の結果判明したため、この大陸だな資源をめぐって国際的に問題が生じてきたのであります。
琉球政府の長期
経済開発計画にも、
尖閣列島周辺の海底石油の
開発が将来の展望として示されており、
沖繩経済開発のため重要な問題であります。しかしながら、一方、現在
わが国外交上最大の課題である日中国交回復のための外交交渉では必ず問題になり、避けて通られない問題でもあります。これに対して、
政府はどのような
見解を持っているのか、明らかにしていただきたいのであります。
最後に、
佐藤総理にお尋ねいたします。
米国
政府は、
日本の
国会において、
関連国内法が成立しない限り批准書は交換しないと言っているが、これは明らかに
日本国の
国会の権限を拘束する内政干渉であり、われわれは容認することはできません。この声明は、
関連法案全部をさしているのか、それとも何か特別の
法案を示しているのか、
佐藤総理、ニクソン大統領との間に何らかの約束がなされているのか、この際、
国民の前に明確にされたいことを要求して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕