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1971-11-17 第67回国会 参議院 本会議 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月十七日(水曜日)    午前十時八分開議     —————————————議事日程 第九号   昭和四十六年十一月十七日    午前十時開議  第一 国務大臣報告に関する件(ローム斜面崩壊実験における事故について)  第二 所得税法の一部を改正する法律案内閣 提出衆議院送付)  第三 農業共済保険特別会計における農作物 共済に係る再保険金支払財源の不足に充てるた めの一般会計からする繰入金等に関する法律案内閣提出衆議院送付)  第四 天災による被害農林漁業者等に対する資 金の融通に関する暫定措置法及び激甚災害に対処 するための特別の財政援助等に関する法律の一部 を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  以下 議事日程のとおり      ——————————
  2. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。浅井亨君から病気のため二十九日間請暇の申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。      ——————————
  4. 河野謙三

    議長河野謙三君) 日程第一 国務大臣報告に関する件(ローム斜面崩壊実験における事故について)  木内国務大臣から発言を求められております。発言を許します。木内国務大臣。    〔国務大臣木内四郎登壇拍手
  5. 木内四郎

    国務大臣木内四郎君) ローム斜面崩壊実験における事故について御報告申し上げます。  このたび、科学技術庁国立防災科学技術センター中心になりまして行ないましたローム斜面崩壊実験におきまして、大きな事故を引き起こしまして多数の犠牲者を出したことにつきましては、まことに申しわけなく思っておる次第でございます。なくなられました方々に対しましては衷心より哀悼の意を表するとともに、傷つかれた方々に対してすみやかに回復されんことを御祈念申し上げる次第でございます。  今回の実験は、昭和四十四年以来進めてまいりました「ローム台地における崖くずれに関する総合研究」の一環といたしまして、川崎生田緑地公園内において人工的にがけくずれを起こさせ、ローム斜面におけるがけくずれの発生機構を解明しようとして行なったものであります。  当時、京浜地区中心土地開発に伴いがけくずれが増大しておりまして、東京、神奈川だけを取り上げてみましても、昭和二十四年以来昭和四十三年までに五千六百九件の多きを数えておるような次第でございます。また、昭和三十六年六月の、四十八人の死者を出した横浜市を中心としたがけくずれ災害昭和四十一年六月の、三十三名の死者を出した横浜市等に発生したがけくずれ災害昭和四十二年七月の、死者行くえ不明者が三百七十一名に達しました神戸、呉市等のがけくずれ災害などに見られるように、甚大な被害をもたらすものも発生しておったのであります。  このため、がまくずれ災害防止に対処すべき研究、特にローム台地がけくずれに関する研究の立ちおくれが、がけくずれ対策を講ずる上で大きな問題となりました。これに関する研究の早急な実施が要請されることとなったのであります。  このような背景からいたしまして、科学技術庁は、自治省、建設省、通商産業省などとともに昭和四十四年度より本件に関する研究開発を進めてまいりました。  事故の概要を申し上げます。この実験のために、今月九日午後三時半ごろより散水——水をまくことを開始いたしまして、十一日午後三時半ごろがけくずれが起こりました。その際、土砂流出が予測をはるかに越えた速度規模で生じたために、実験関係者及び報道関係者二十数名が被害を受け、川崎市、神奈川県警自衛隊等の必死の救出作業にもかかわらず、十五名が死亡され、十名が重軽傷を負われました。  事故対策につきましては、十一日直ちに科学技術庁事故対策本部を設置するとともに、川崎市、神奈川県警自衛隊等の御協力をいただき、遺体の収容及び負傷者救出を行ないました。  御遺族に対する補償につきましては、とりあえずの措置として見舞い金をお渡しいたしましたが、今後でき得る限りの補償措置を講じてまいりたいと考えているのでございます。  事故原因につきましては、十二日、総理府ローム斜面崩壊実験事故調査委員会が設けられまして、事故原因究明が行なわれております。科学技術庁といたしましては同委員会調査に全面的に協力するとともに、研究開発における安全性確保研究管理体制等について徹底的な検討を行ないまして、今後このような事故を二度と起こすことのないように万全の措置を進めている次第でございます。  以上をもって御報告といたします。(拍手
  6. 河野謙三

    議長河野謙三君) ただいまの報告に対し質疑の通告がございます。順次発言を許します。竹田四郎君。    〔竹田四郎登壇拍手
  7. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は日本社会党を代表して、ただいま報告されました川崎生田緑地内に起きた崩壊実験事故に関連し、質問いたします。  質問に入る前に、事故犠牲者に対してつつしんで弔意を表し、負傷者の御全快の一日も早からんことを祈ってやまないものであります。  人類の自然への挑戦は毎日のように試みられておりますが、人類が得た技術に比べ、自然の魔力ははるかに大きく複雑であり、数多くの失敗や犠牲が絶えないところであります。今回の実験もまた自然を克服するための貴重なものであったはずであります。その成果については各方面から大きな期待が持たれていたものであります。残された資料の分析によって貴重なデータが明らかにされていくとは思いますが、十五名の犠牲者と多くの負傷者を出したことは返す返すも残念であり、政府としては御遺族負傷者方々に満足のいく措置をとるのは当然のことであります。  それにつけても佐藤内閣責任は重大であると言わなければなりません。今回もまた政府機関の手によって多くの人命犠牲になりました。事故の遠因は佐藤内閣人間無視経済高度成長政策にあろうと思います。いたずらに都市に人口を集中せしめ、土地住宅についての無策は、勤労者を危険の多いがけ周辺の地域に追いやる結果になりました。政府が、安全でかつ安い価格で土地住宅を提供してさえいれば、結果をあせった無謀な実験は行なわなくてもよかったはずであります。  質問の第一点は、安全に対する配慮がひどく欠けていたということであります。人間の命を守るための実験安全対策を怠り人命を奪ったのでありますから、全く驚くべき大ミスと言わなければなりません。現地調査に行った者の口から最初に漏れたことばは、普通の常識人がいたら、こんな事故は起こらなかったに違いないということでありました。実験は、担当者だけでなく報道関係者等にも公開されていました。四十名以上の見学者は、土砂の落下する方向場所に位置をしていたのであります。風下のすぐ近くで大火を見ているようなものであります。見学場所の十七メートルうしろは池であります。その上、避難場所避難方向指定もなく、警報の伝達体制もできておりません。警笛は揚水モーターの音にかき消される状態でありました。多数の人々が訪れる公園の一角であったのに、警備員警察官も配置されず、ただ立ち入り禁止の札と、ごく簡単ななわ張りによって区画されていたにすぎません。こんな体制実験を行なうことは非常識もはなはだしいと思いますけれども、総理大臣の御見解をお示し願いたいと思います。  今度の実験について事前警察署や消防署に連絡があったのかなかったのか。所轄警察署は知っていたのかどうか。従来もこのような危険を伴う各種実験においても警察警備配置を行なうことがなかったのかどうか。デモの警備だけでなく、進んで安全確認の処置をとるべきではないかと思いますが、国家公安委員長お尋ねをいたします。  防災センターをはじめ国や公共団体、さらに民間を含めて各種実験が行なわれているし、計画中でもあろうと思いますが、安全対策がこんな程度では危険千万であります。実験中のものは直ちに中止し、計画のあるものは再検討し、絶対安全の規定を制定し、万全の措置を講ずべきだと思いますが、総理の御見解を伺いたいと思います。  第二は、実験場所の適否であります。事故のあった場所公園の一隅であります。緑を求め秋をたずねて、児童生徒はもちろんのこと、一般人々の来園も多い公園であります。天文館あり、古い民家やD51の展示もあり、噴水もある広場からわずか百メートル足らずのところに実験地はありました。全く不見識な立地選定と言わなければなりません。総理、あなたはここの場所が適切だと思いますか。その他の実験等についても、その立地条件を再検討すべきであると思いますが、お尋ねいたします。  第三は、この実験にあたって関係機関、すなわち科学技術庁防災センター、消防庁の消防研究所工業技術院の地質調査所、土木研究所等が組織的な責任ある取り組みに欠ける面があったではないかと思うのであります。実験担当防災センターで、丸山第二研究部長、大石氏等が指揮班となっていたが、単なる寄り合い世帯にすぎなかったではないだろうか。また、各省庁間のセクトによって、事前に緊密な連絡と一貫した統制を欠いていたものと思われます。科学技術庁防災センターも、責任を持って他の研究機関を掌握し、組織的な責任体制で臨んでいなかったではないか。特に科学者相互研究機関相互間では対立も生じやすいものであります。その上、各省庁間のセクショナリズムが加わって統制は乱れやすいものであります。総理は、各種機関共同実験においては、組織的な責任体制を確立した上で実施するように、政府最高責任者として慎重に留意すべきであると思いますが、いかがですか。  また、事前調査が不十分であり、研究室だけの計算に依存し過ぎ、学者専門家の過信があったではないかと思われるのであります。冒頭に述べましたように、自然はまだまだ不可解な要件が多く、自然をおそれなくてはなりません。空中写真による崩壊地の解析だけでは十分でありません。自然の脅威に対する人間の対応の歴史を十分に考慮しなければなりません。古老の話、農家の習慣、生活行動等社会的要因についても調査をし、実験資料に加えるべきであると思います。伊勢湾台風の際に、科学の未発達な徳川時代につくった堤防は破壊されないで、近代的な技術を誇ってつくった防潮堤が一瞬にして災害を起こした教訓をいま想起すべきであります。  第四点は、計数誤りがあったのではないだろうかと思います。計画の十倍以上の速さ、三倍以上の土量が流れたのであります。現地における予備実験は、四月の二十七、八日、七月の八、九日の両日、そして十一月の四、五、六の三日間行なわれておりました。特に十一月の予備実験には相当量散水が行なわれております。また、七日は雨が降っております。これらの雨や散水による含水量というものが一体計算の中に正しく入っていたかどうか。これが入っていなかったではないかと思います。そのことが速度土量計算に誤差を生じ、被害を大きくしたものではないかと思うわけであります。技術庁の長官の御見解お尋ねいたします。また、防災センター実験施設がまことに不十分であり、そのために、事前模型実験やあるいは順序を踏まずに、一足飛びに現地実験を急いだために計数計算を狂わした一つ原因にもなっていると考えられます。政府は、いままでの研究施設等予算を、お金を出し惜しみをする傾向がありましたが、大規模実験施設をつくり、適切な経費を支出し、研究員を配置するように軌道修正をすべきであります。気象庁の観測をも強化し、正確を期すべきでありますが、今後の研究機関に対する問題点について大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。  第五点は、国の機関の行なう各種実験等について、地方自治体関係機関との緊密な連絡をとって行なうように総理大臣は即刻指示をすべきであると思います。今回の崩壊実験についても関係機関への連絡はなかったようでありますし、川崎市においては、非公式ではありますが、この実験を断わっているようでありますが、それにもかかわらず行なわれたのであります。今後も全国各地実験が行なわれるでありましょうが、事前に十分な連絡をし協力を仰ぐ体制をつくるべきであると思いますが、お尋ねを申し上げます。  第六点は、急傾斜地等危険区域指定及び規制等についてであります。昭和四十四年の調査によりますと、急傾斜地崩壊危険個所全国で一万八千カ所以上にのぼっており、急傾斜地崩壊による災害防止法第三条による区域指定を受けているものは、四十六年九月末で一割にも満たない千五百二十三カ所にすぎません。基準戸数五十戸にとらわれることなく、危険度に応じどんどんと指定を進め、必要な防災工事を促進をする必要がありますことはもちろん、開発行為制限等規制を加えていくことも大切であろうと思います。そのために積極的な予算措置を講ずべきであろうと思いますが、建設大臣大蔵大臣のお考えを承りたいわけであります。  また、都市周辺におけるところの崩壊による災害は、急傾斜地等の上面で開発工事途上大雨が降ったとか、あるいは排水不良の結果が多いようであります 急傾斜面擁壁等によって保護することも一つの手段として必要であろうかと思いますが、同時に、急傾斜地都市にとっては大切な緑地にもなっているわけであります。都市に不足している緑の保存という見地からも残すべきものは残さねばなりません。そのために、傾斜地の上と下との両面に一定の幅の区域を限って開発行為規制するように義務づけ、排水についても、排水路の整備をあわせ行なうように措置すべきであろうと思いますが、建設大臣の御所見を伺いたいと思います。  最後に、佐藤総理大臣責任についてお尋ねいたします。今回の実験政府の権威ある関係機関により、しかも一流の専門家の手によって行なわれ、結果的には十五名の死亡者と多くの負傷者を出す悲惨な大事故となったのであります。実験に参加した者はもちろん、よもやと予想した国民は一人もおらなかったと思います。しかし、現実には事故は起きたのであります。直接的な原因については今後の検討を待って明らかになると思いますが、国民の生命、財産の安全を守るべき責務を持つ政府機関の手によって起きた人災であることは事実であります。全く初歩的な安全への配慮さえすれば、また、政府実験に対する組織的な総合的な取り組みさえあれば完全に避けることのできた事故でありました。安全のための実験が人を殺すとは、全く驚きあきれるばかりであります。今回、当面の担当官庁責任者である平泉氏が辞職をしたことは当然であります。しかし、佐藤総理、あなたはどう責任を感じ、どう責任をとるつもりか、国民に対して明らかにすべきであろうと思います。数カ月前には百六十名余りのとうとい人命を失った自衛隊機による全日空機事故もまた政府の手によって起きた人災でありました。担当大臣を更迭しさえすれば総理大臣責任は免れたという態度は許されません。野党がうるさいから、沖繩審議に影響するからこの際更迭させたのだといううわさも聞きますが、これが総理の本心であるならば、全くもって許しがたいものであります。相次ぐ事故政治的責任はきわめて重大であります。総理を評してトカゲだと言う者があります。あぶなくなるとしっぽを切って逃げるということであります。もう何回かしっぽを切ったのであります。そのたびに政治に対する信頼は欠けていっているのであります。総理、今度はあなたが腹を切る番です。みずから辞職をし、国民に陳謝することが当然と考えます。佐藤総理、あなたはどう責任をとられるか明確にされたいのであります。  以上で質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  8. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まず最初に、お答えをいたします前に、お許しを得まして、今回の事故でなくなられた十五名の犠牲者方々につつしんで哀悼の意を表するとともに、御遺族皆さまに深くおわびをいたします。また、けがをされた方々にこの機会に心からお見舞いを申し上げ、すみやかな御回復をお祈りする次第であります。  さて、事故原因につきましては、専門家による事故調査委員会総理府に設け、すでにその究明に当たっておりますが、当時の状況から判断して、御指摘のとおり、危険区域内における実験班以外の人たち避難についての徹底を欠くなど、安全に対する配慮が十分でなかったうらみがあるものと思われます。しかし、今回の事故によってわが国科学技術の進歩が停滞してはならないと思うのであります。特に近年の都市化の進展の状況から見まして、このような実験の継続は、国民生活向上のため欠くべからざるものと考えます。したがって、政府としては、今回の事故を契機に、これら研究実施機関において安全確保が十分行なわれているかどうか、また、安全管理体制責任体制が明確にされているかどうかなどを抜本的に洗い直し、二度とこのようなあやまちを起こさないよう配慮する方針であります。  次に、竹田君から、実験場所選定誤りがあったのではないかとの御意見がありましたが、この点は、幾つかの候補地のうち、実地調査地元との非公式接触等を通じて、最終的に生田緑地に決定したものであります。また、これについては、川崎市の好意的な示唆もあったようであります。また、今回の研究は、防災科学センター中心となり、関係政府機関協力して実施したものであります。そうして、実験はこれら機関責任者による研究連絡調整会議によって研究の分担と協力体制を定め、実験指揮防災科学技術センターの職員が一元的にとっており、いわゆる寄り合い世帯だったからうまくいかなかったということではございません。やはり当初の予想を大幅に上回る急速な崩壊が発生し、これが惨事を招いたものと思います。御指摘になりますように、今日の科学技術、その学者が自然を甘く見たのではないか、こういうような反省ももちろんわれわれはすべきだと、かように思います。  最後に、さきの全日空事故に引き続き今回の事故が起こったことは、国政の最高責任者としてまことに遺憾に存じている次第でございます。主管大臣だった平泉科学技術庁長官は、事後処理の一段落ついた昨日、進んで辞表を提出いたしましたことはすでに御承知のとおりであります。政府といたしましては、一そう心を引き締め、その責任を遂行し、国民各位の御期待にこたえたいと念願しております。  重ねて、御遺族皆さまおわびを申し上げ、私のお答えといたします。(拍手)    〔国務大臣中村寅太登壇拍手
  9. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) お答え申し上げるに先立ちまして、犠牲者の御冥福を心からお祈りするとともに、けがをなさった方々の一日も早く御全快なさることをお祈りしたいと思います。  竹田議員質問の第一点、地元神奈川警察署といたしましては、責任のある方からの連絡はなかったようでございます。承知してはおらなかったようであります。  第二点、いままでのこういう実験に対する警察措置でありますが、当事者から連絡のあります場合には、当事者と種々打ち合わせまして事故がないようにあらゆる警戒体制等をとってまいっておるのが今日までの実情であります。さらに、連絡がなくとも、実験試験等によって視察者がたくさん集まるとかあるいは見物人が集まるとかいうような場合には、事故が起こらないように警察の独自の見解から警戒体制等をとってまいっておるものでございます。(拍手)    〔国務大臣木内四郎登壇拍手
  10. 木内四郎

    国務大臣木内四郎君) 今回の実験研究室計数のみに依存したのではないか、そこに大きな間違いがあったのではないかと、こういう御質問でございました。  今回の実験にあたりましては、従来の研究データあるいは集中豪雨等によるところの土砂くずれの観測結果に基づきまして、実験現場の土質、地形等を加味いたしまして実験計画を立案いたしたのでございます。しかしながら、このたびの実験は、自然斜面を用いましたわが国最初実験でございまして、従来の室内実験に比べましてスケールが非常に大きいものであったために、結果的に見ますと、土砂流出速度あるいは規模の点におきまして予想をはるかに上回りまして今回の惨事を引き起こしたものであります。このようなスケールアップが大きい場合には万全の対策を講じて臨むべきであったと、深く反省している次第でございます。  なおまた、十一月七日の雨量を考えていたかというお話でございますが、七日の雨量は約二十ミリでありまして、実験にあたりましてはこれはもちろん計算に入れておったのでございます。  また、今回の実験に際して地方自治体との連絡に不備があったと思うがどうかというお話でありました。この点につきましては、ローム台地におけるがけくずれに関する総合研究は、すでに昭和四十二年度から準備を進めておりました。当初は、崩壊実験現場としては、横浜市の磯子地区、南多摩の造成地川崎周辺等、四、五カ所が候補にのぼっておりましたが、現地調査地元等との非公式の接触等を通じまして、それぞれについて地形一般市民への安全性等の面から検討いたしまして、最終的に今回の生田緑地内の現場選定されたのでございます。この生田緑地が最終的に決定された際におきましては、同地区土地占用許可昭和四十五年二月十八日付で正式に川崎市長から許可書を得ておるのでございます。さらに、実験実施にあたっては、事前実験計画書川崎市当局に説明するなど、できる限り密接な連絡をとりまして、市当局の御了解のもとに進めていたと聞いておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男登壇拍手
  11. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) お答えいたします。  急傾斜地崩壊対策につきましては、御承知のように、昭和四十二年に一億円の予算をもちまして補助制度を発足いたしましたが、その後、四十四年度になりまして法律が制定されました。すなわち、急傾斜地崩壊による災害防止に関する法律というものでございます。この法律ができましてから、昨年度は六億円、本年度は五〇%増加の九億円の予算を計上いたしましたが、特に先般の補正予算におきまして、四億二千五百万円追加補正を行なったばかりでございますのに、こういう事故を起こしまして、非常に残念に存じます。来年度の予算編成におきましては、さらに十分の配意をいたしたいと存じます。  そこで、御指摘となりました研究実験施設の問題でございますが、ただいま事故原因その他を調査しておりますので、この成果を待って、今後、いままでのような実験設備ではいかない、他にもっと大きい実験研究設備が必要であるというような結論が出されまして、関係省庁意見が一致して概算要求ということになる場合には、当然、各省庁の意向に沿った、要望に沿った措置をとりたいと存じている次第でございます。(拍手)    〔国務大臣西村英一登壇拍手
  12. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 私もまた、今回の事故によりましてなくなられた方々並びに御家族に対してつつしんで御弔意を申し上げる次第でございます。  竹田さんの御質問は、急傾斜地崩壊危険区域をすみやかに指定せよということと、もう少し防災工事をすみやかにやれということでございます。年々歳々、がけくずれのためにたいへんな死傷者を出しておることはまことに相すまなく思っておる次第でございます。建設省は、昭和四十四年度から全国的に実態調査をいたしまして、がけの高さ五メートル、その下の民家五戸以上、こういう危険の個所を調べまして、現在のところ、竹田さん数字をあげましたが、正確なところ、全国的に一万三千三百二十四カ所の多くの危険個所があるわけでございます。しかし、これは工事をする補助対象となるためには、都道府県知事が危険区域指定するわけでございます。指定区域は千五百三十三カ所、この九月まででそういうことになっております。したがいまして、さらにわれわれといたしましては都道府県知事を督励いたしまして、指定区域を進めてまいるように心がけております。指定基準に合いましたところはすみやかに工事を進捗させたいと、かように思っております。  いままで、大蔵大臣から申しましたが、昭和四十二年から今日まで、私は、必ずしもこれらの金額は大きいとは思っておりません。総事業費、四十六年度までに五カ年間に五十四億五千万円、事業費として使っております。大蔵大臣が言ったのは、そのうちの国費でございます。したがいまして、来年度からさらにこの工事の進捗をはかるように、大蔵省とも折衝をいたすつもりでございます。  竹田さんの一つの提案は、そういうような危険区域については排水設備をうまくやって、そうして、がけの下は緑地にしたらいいじゃないか、これは私も大賛成でございます。しかしながら、これは所有者との関係もありまして、非常にその点に困難を来たすのでございまするが、今後、いろいろそういうような心がけ検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  13. 河野謙三

    議長河野謙三君) 上林繁次郎君。    〔上林繁次郎君登壇拍手
  14. 上林繁次郎

    ○上林繁次郎君 私は、公明党を代表して、去る十一日、川崎市生田において科学技術庁など政府機関が起こしたローム斜面崩壊実験事故について、総理並びに関係閣僚に若干の質問を行なうものであります。  質問に先立ち、この実験でとうとい生命を失った十五名の方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、御遺族皆さまに衷心より哀悼の意をささげる次第であります。  佐藤総理は、しばしば人間尊重の政治を行なうと国民の前に明言されてきました。しかし、最近の相次ぐ大事故を見ますと、さきの自衛隊機衝突事故といい、近鉄の事故といい、その事故原因はすべて人災であることが特徴であります。したがって、総理の言う人間尊重の政治とはうらはらに、人間軽視の政治が行なわれていると断言せざるを得ないのであります。このたびの人工実験は、台風や集中豪雨のたびごとにがけくずれを発生させる、言うならば日本の宿命をいかにして防ぐかという研究目的を持った実験であったことは理解のできるところであります。しかし、いかなるりっぱな研究目的であったにせよ、二十数名の死傷者を出したことは、実験計画のずさんさと安全対策の不備から起こったものであり、その結果が優秀な技術者及び報道陣までも犠牲にしてしまったのであって、この実験はまさに前代未聞であり、日本の科学技術の幼稚さを世界にさらしたものと言えましょう。これはすべて政府責任であり、あとを断たないこれらの事故に対して、国民は不安と強い憤りを覚えていることでありましょう。特に科学技術庁関係における最近の事故を取り上げてみても、三井造船所内のイリジウム紛失事件、各地における放射能事件、さらには海洋開発のシートピア計画のずさんさ等、科学技術庁における一連の事故は、科学の最たる行政機関として、最も初歩的で基本的な人命尊重を忘却したきわめて遺憾な事故であります。  そこで、まず第一に総理にお伺いしたいことは、総理政治責任遺族に対する補償問題であります。一家の柱を失い、残された御家族の方々の気持ちを、よもや総理は他人事とは思ってはおられないと思いますが、今回の災害はあくまでも政府機関によって起こされたものであり、その責任は、科学技術庁長官のみならず、政府最高責任者たる総理自身であることを、あなたは認識すべきであります。その責任をどうとるつもりなのか、また、遺族の方に対する補償については暫定的措置として百十万円が支給されておりますが、今後どのようにこれを対処するのか、具体的な答弁をお願いしたいと思います。  第二は、実験計画は万全であったかどうかという点であります。政府としては、この実験計画に対して五千五百余万円の予算を費やしながら、具体的な計画内容をいかにチェックしたのか。もしチェックしたとするならば、政府安全性に対する認識は非常に危険な認識であり、見のがすことのできない重大な過失としてクローズアップされるでありましょう。また、反対に、これがチェックされておらず、現場防災科学技術センターにまかせ切りであったとするならば、まさに政府行政の怠慢と言う以外になく、きびしく追及されなければなりません。この点について科学技術庁長官がチェックしていたのかどうか、この点を総理お尋ねいたしたいと思います。  特に、これほどの大規模な野外実験は世界でも最初のものであり、それだけに実験計画は慎重かつ万全を期さなければなりません。ゆえに、この実験については、室内実験から野外実験へ踏み切るための完全なデータが整っていなければならないと思います。なぜなら、室内と野外では、予測できない大きな差があることは当然の理であり、したがって、野外へ踏み切るためには多くの室内実験が必要なことは論をまたないのであります。そういう意味において、いままで何回にわたって室内実験が行なわれてきたのか、そして、どのような判断のもとに野外実験の決定がなされたのか、総理お尋ねしたいと思います。  また、今回の実験による人工降雨量を一挙に四百七十ミリまでふやした判断の基準はどこにあったのか。去る九月に千葉県におきまして発生した事故死者五十六名を出したがけくずれの原因となったのは、台風による三百二十ミリという降雨量でありました。しかるに、今回の川崎における実験が、土質も同じ関東ローム層であって、降雨量四百七十ミリの規模ということを考え合わせるならば、この事態を当然予測でき得たと思うのであります。この千葉県の事故とこのたびの事故は全く同型のものであります。よって科学技術庁は、はたしてこれらの災害に対して綿密な実地調査を行なったのかどうか。これらの貴重な体験をどのようにとらえ、いかに研究してきたのか。もし過去の幾多の経験を生かすことなしにこのたびの人工実験を行なったとするならば、自然の力を全く見くびったとしか言えないし、政府責任は重大であります。したがって、この実験計画は大幅な見込み違いとしか考えられないのであります。この点をどうとらえておられるのか、総理お尋ねいたします。  次に、実験前に行なわれたボーリングによる分析がなかったのではないか。崩壊した土砂の中かられき岩層も発見されていると聞きます。この場所の粘性については、きちんと事前に調べたのかどうか。もし調べていないならば大きな手落ちであるが、その点を伺いたいのであります。  次に、実験場所選定については適当であったかどうかということであります。現場付近の環境は、盛り土があり、その上方は一般通行道路となっております。現在、第二次崩壊の危険があるために通行できない状態になっているのであります。そのような環境にもかかわらず、何ゆえにこの場所実験場所として選定されたのか。この点、総理並びに長官に伺いたいのであります。  第三は、実験に対する安全対策避難対策の問題であります。結論から申し上げるならば、安全対策についても避難対策についても何ら万全の手が打たれていなかったということであります。具体的に申し上げるならば、安全性については、くずれた土砂が途中のくぼ地で勢いが弱められるだろうというようなあいまいなものであり、実際と大なる食い違いを生じさせたのであります。また、その避難対策においてはもっとお粗末であり、十名の実験班員のみが避難方法を知っており、一般見学者や報道陣にはそれが徹底されていなかったということであります。また、土砂くずれの際、警笛を鳴らしたともいわれておりますが、その警笛の意味についても事前に十分な認識がなされていなかったといわれております。  以上の点からも、技術の最先端をいく実験の安全・避難対策としてはまことに無神経きわまりないことであります。これらについて具体的な確認、または適切な指示を与えていたのかどうか、この点について総理所見をお伺いいたしたいと思います。  第四に、国家公安委員長にお伺いしますが、今回の事故実験計画上ずさんな手落ちがあり、安全・避難体制の皆無な点からして、まさしく人災であります。警察庁では、その事故原因究明とともに刑事責任の追及をなさっておりますが、現在までの調査状況を伺いたいのであります。  最後に、特にこのたびの人工実験の反省とともに、今後二度とこのような人災を繰り返さないために、政府は、各分野の実験安全性を総点検する用意があるかどうか、これをお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 上林君にお答えいたします。  政府の行なった科学技術実験、特に災害防止技術開発のための実験において、安全確保のための配慮が十分でなかったために、今回のような事故を引き起こしたことはまことに遺憾であり、政府としてその責任を痛感しているところであります。なくなられた方々に対し深甚なる弔意を表するとともに、御遺族に対し重ねておわびを申し上げる次第であります。また、負傷された方々に対して心からお見舞いを申し上げるとともに、一日も早く回復されるようお祈りいたしたいと思います。  なお、政府といたしましては、この種の実験研究実施にあたって、今後二度とこのような事故を起こすことのないように、安全確保に万全を期する決意であります。  次に、なくなられた方々に対する遺族補償につきましては、政府としてできる限りのことをする方針であります。ただいま具体的には、ただこの気持だけを、また方針をお伝えするだけであります。  また、今回の実験実施にあたっては、昭和四十四年度以来、四省庁研究機関研究連絡推進会議を設け、研究の分担と協力体制を定め、安全対策につきましても検討した上で実施されたと承知しております。しかしながら、今回のような事故の発生は、安全対策上何らかの不備があったと思われるので、政府としては、総理府に第三者で構成する事故調査委員会を設け、徹底的にその原因究明しているところであります。  最後に、今後研究開発の推進にあたって、今回のような実験実施に当たる者自身が事故を起こすようなことが二度と繰り返されてはなりません。政府としては、この事故の機会に安全確保の立場から、現在実施中の各種実験計画の再点検を行なうとともに、今後引き続き研究開発安全確保をはかっていく決意であります。その他の問題については所管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣木内四郎登壇拍手
  16. 木内四郎

    国務大臣木内四郎君) 私に対する御質問お答えいたします。  今回の実験には無理はなかったかというようなお話がございました。今回の実験実施にあたりましては、これまで生田試験地におけるところの各種事前調査結果、またこれまでのがけくずれによる被害関係データの収集、解析等を行ないまして、今回の実験に臨んだものと聞いております。しかしながら、今回のように、非常にスケールが大きくなってまいりました場合には、万全の安全対策を講ずべきであるという点を深く反省いたしておる次第でございます。  また、実験場所事前調査をしたかどうかというような御質問がありました。もちろん、今回の実験は、四十四年度から三カ年計画で行なわれたローム台地におけるがけくずれに関する総合研究の最終野外実験でありました。四十四年度以来、各種調査を行ない、前年度には崩壊のための予備的な実験を行なっておるのでございます。以上のように、今回の実験事前調査観測に基づいて行なわれたものと聞いております。  また室内実験のどのような結論によって屋外実験に移行したのか、こういう御質問でございました。今回の実験におきましては、ローム層についての各種事前室内実験及び調査、分析を行ないました。さらに生田試験地周辺の地形、地質調査等を行なった上で崩壊実験に移行したものであると聞いております。  また、今回の実験場所公園の内に求めており、また周囲の状況から見て、実験場所選定誤りがあったのではないか、こういう御質問でございますが、ローム台地におけるがけくずれに関する総合研究は、先ほども申しましたように、四十四年度から継続して行なっておるものでありまして、本研究については、すでに昭和四十二年度から準備を進めてまいっておるのでございまして、当初は、崩壊実験現場としては、先ほども申しましたように、四、五カ所候補にのぼっておったのでありますが、現地調査地元との非公式の接触等を通じまして、それぞれについて地形一般市民への安全性等の面から検討いたしまして、最終的に川崎市からの了解も得られたので、今回の現場において実験することになったような次第でございます。  また、台風二十五号による千葉県の集中豪雨に関する調査をしてその結果を取り入れたかというお話でございました。この二十五号は、本年九月七日、八日、房総半島に集中した豪雨でありまして、地くずれによりまして五十数名の犠牲者を出しております。その地くずれの発生状況調査するため、国立防災科学技術センター及びその他の機関から調査班が現地に参りまして事情を調査し、その結果を今回の実験にあたって十分に考慮しておったものと承知いたしております。  また、今回の実験において降らした四百七十ミリの雨量の判断基準はどこにあるかというような御質問もありましたが、過去のローム台地がけくずれ災害では、一日七百ミリの降雨量が見られ、これらを参考にして、実験斜面が崩壊に至るまで散水する、水をまく計画であったのであります。この実験におきましては、十一月九日から三日間で、累計約四百五十ミリで崩壊に至ったものと承知いたしております。    〔国務大臣中村寅太登壇拍手
  17. 中村寅太

    国務大臣中村寅太君) お答えいたします。  警察当局といたしましては、事件発生直後、直ちに業務上過失致死傷容疑事件として、所轄警察署に、刑事部長を長といたしまして、捜査員七十七名をもって捜査本部を設置して鋭意捜査に当たっているところでございますが、現在までの状況といたしましては次のような状態であります。  第一は、当面の捜査方針といたしましては、現場の検証の徹底、実験関係書類、資料の収集、事故関係者からの事情聴取等、特に崩壊実験責任者の取り調べを重点といたしまして、入手した各種資料を分析、検討して事故原因究明し、実験計画実験方法、安全対策など全般について総合的に捜査を進め、刑事責任の所在を解明することといたしております。  第二に、十一月十二日から十五日までの四日間、専門家協力を得まして現場検証を実施し、量水計、メモモーションカメラ、テープレコーダーなど百八十四点を押収いたしております。また、十二日、崩壊実験を主宰した国立防災科学技術センターの捜索を行ない、本件の崩壊実験計画書やこれに伴う予算書など、関係書類五十三点を差し押えいたしております。  さらに、目撃者、負傷者実験関係者については、現在も事故当時の事情を聴取しておりますが、これによると、関係者が当初予想した以上の規模と速さで土砂がくずれたことにより本件事故が発生したと見られますので、事前にこれを予知できなかったかどうか、あるいは実験各種データを観察して危険を察知し関係者に警告したり、避難誘導はできなかったかどうか、あるいは防護さくの安全性はどうであったかなどについて鋭意捜索いたしまして、事故原因、刑事責任の所在を一日も早く明確にしたいとつとめておるところでございます。(拍手)     —————————————
  18. 河野謙三

    議長河野謙三君) 中村利次君。    〔中村利次君登壇拍手
  19. 中村利次

    ○中村利次君 私は、民社党を代表して、政府から報告のございましたローム斜面崩壊実験事故に対しまして質問をしようとするものであります。    〔議長退席、副議長着席〕  この川崎市の生田公園科学技術庁中心になって実施した人工がけくずれの実験によって、実験担当者報道関係者など十五名の方々が死亡をされ、十名の重軽傷者を出したという事故は、政府機関によって引き起こされた大惨事であるというところに事の重大性があり、断じて見のがすことのできない一大不祥事であります。私は、つつしんでなくなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、この取り返しのつかない失態を演ずるに至った政府対策について、佐藤総理並びに新しくその任につかれた科学技術庁長官及び関係大臣の所見をただし、その責任を明らかにしたいと存じます。  このたびの事故で、私たちが最も重視しなければならないのは、この実験が、科学技術庁国立防災科学技術センター中心として、建設省、通産省、消防庁等、いわゆる国の研究調査機関が三年にわたる実験研究の結果実施されたものであるにもかかわらず、その計画のずさんさと安全対策の無策から、起こすべくして起こした重大な人災であるという事実であります。  最近相次いで起きた重大事故に対して、政府は、そのつど遺憾の意をあらわし、二度と繰り返すことのないよう確約をしてこられたのでありますが、またまたこのような重大なミスを犯されたのみでなく、政府みずからが惨劇惹起の主役となられたのでありますが、このような事態に対し、はたしてどのような償いと、どのような政治責任をおとりになるおつもりか。加えて、技術開発と安全性の問題について政府の基本的姿勢をまず佐藤総理にお伺いをいたします。  今日、庶民大衆にとって、わが家を建てるということはきわめて困難になっています。東京周辺に例をとりますと、都心から一時間半程度の通勤距離で十万円台以下の土地を求めることは不可能であります。これは、勤労者が三十年、四十年と一生をささげて働いて得た退職金では、わずか五十坪の土地すら買うことができないということなんです。総理、よく聞いてください。庶民生活に縁のない人たちには、庶民大衆が真剣に働いて、そして生涯かかってなおかつわが家すら持てないあせりが実感としておわかりにならないでしょう。だからこそ、庶民の納得できる住宅政策や勤労者の立場を考えた土地対策はいつまでたっても生まれてこないのであります。何とかして安い土地を求めたいという庶民があまりにも多過ぎるところから、そこに安全を無視した不動産業者の土地造成の必然性が生じ、今度の実験が緊急切実な問題として取り上げられたのではありませんか。もちろん、狭い国土の有効開発をはかることは当然であり、否定されるべきことではありませんが、このたびの事故の真の原因を探求すれば、佐藤内閣住宅政策、土地対策の貧困に起因するのでありますが、この機会に、私は、政府住宅政策、なかんずく土地政策について、これは先ほど衆議院の予算委員会におきましてわが党の和田議員が具体的な問題提起をしておりますけれども、これを抜本的に見直し、天井知らずの土地の値上がりに有効な対策を講ずる意思がおありかどうか。建設大臣お尋ねをいたします。  しかも、今度の事故は、この貧困な土地政策のひずみから生じた事態に対して、近代科学技術政府の手によって動員し、結果して、決定的とも言える醜態をさらして、国民にいわれなき不安と科学技術に対する不信感を与え、もって、本来前向きであるべき科学技術の振興に重大なブレーキをかけることになったのでありますが、一体、このような事態をどのようにお考えになり、そしてどのような対策をおとりになるのか、明確なお答えを要求いたします。  わが国科学技術は、六〇年代において目ざましい進歩を遂げ、技術革新時代を現出し、技術的にはみごとな成果をあげつつあることは事実であります。しかし、きわめて遺憾ながら、これを人間福祉の面から見れば、公害問題をはじめさまざまなひずみ現象を露呈していることは、何人もこれを否定できないところであります。政府もまた科学技術白書の中で、「従来の技術革新の展開において、配慮が十分でなかった自然との調和、人間との調和をはかることが不可欠である」と述べ、「そのためには、人間や社会に与える影響などの社会的要因も重視し、国民の価値観、要請の多様化に十分こたえられるような態度で技術開発を行なうことが重要である」と言っています。しかし、この白書でなぜこのようなことを言わなければならなくなったのか、その原因についての反省は全く見られないのであります。  先ほども触れましたように、歴代自民党内閣の非庶民的な体質が、元来人間のためにこそあるべき科学技術の開発を、高度経済成長中心のものにすりかえた結果が、あるいは公害となり、あるいは社会的なひずみとなって、今日多くの国民的な問題を引き起こしているのではありませんか。その意味では、今度の事故も、実験関係者の安易な姿勢から計画違いや安全対策が足りなかったということだけでは済まされないものがあります。  総理は、機会あるごとに人間尊重を口になさいますが、たとえば事故現場に私も行ってつぶさに実情を見ましたが、だれが見ても、まさにお粗末千万と言う以外表現のしようがないほどの安全設備のもとであの事故が起きているのであります。この事実が安全追求や人間尊重にどうつながるのでしょう。また、このような事故に対する不信感が将来の科学技術の正しい振興にどのような影響を与えるのか、お考えになったことがございましょうか。もし、人間尊重、事故絶滅がただ単なるスローガンでないとおっしゃるならば、今度の場合、あらかじめ小規模現場実験を行ない、その実験データに基づいて大型実験に移るのが当然ではなかったでしょうか。また安全の追求は、万分の一、百万分の一の可能性に備えるべきのもであって、結果して安全設備がむだになるほどのものでなければいけないと思いますが、予想外の速度とくずれ方であったということだけでは納得できないものがあると思います。あの事故では、この安全上の不可欠の絶対条件が全く無視されているのであります。  私は、この実験に対する予算の裏づけが不十分であったことをここに指摘しなければならないと思います。この研究実験に充当された予算は、三年間にわずか五千五百余万円なんです。科学技術庁お答えによりますと、予算は十分だったということであります。しからば、なぜ完備されるべき安全施策を怠ったのか。そして安全無視の危険をおかした結果、現実に重大な不祥事を起こしておきながら、ぬけぬけと予算は十分だったとおっしゃるということは、一体これはどういうことなんでしょう。安全対策費がゼロで、人命軽視、生産技術中心を強行するのが佐藤内閣の本質とでもおっしゃるのでしょうか。私は、結果的に見ても、今度の予算措置は不十分なものであり、誤りであったと思いますが、今後、国策上の巨大科学のみでなく、じみで目立たない国民の日々の生活に密着した科学技術の推進に思い切った予算を投入する意思がおありかどうか。総理及び科学技術庁長官所見をお伺いいたします。  以上、私はこのたびの事故について、国民のやり場のないふんまんの一部を、短い時間で申し述べたつもりであります。政治の末期的症状は諸悪を生み、百難一時に来たるといいますが、国民は、いまや佐藤内閣の末期的症状をまのあたりに見るここちになっているのではないでしょうか。私は、この救いがたい症状に総理がどのような処方せんをお持ちかお伺いをし、国会でのやりとりだけでなく、ほんとうにこのような惨事を断じて繰り返さない体制の確立を国民とともに心から希望をして私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  集中豪雨によるがけくずれの発生を解明し、その防止対策を樹立するための政府機関科学的な実験によりまして、当事者のみならず、報道関係者にもとうとい犠牲者を出したことを深く遺憾に存ずる次第であります。政府は、その責任を痛感し、遺族方々に対しできる限りの補償を行なうなど、誠心誠意、その事後措置を講ずる考えでありますが、同時に、これによってわが国科学技術の進歩が阻害されることのないよう、今後の安全対策等各般の施策に十分な配慮を行なう方針であります。主管大臣平泉科学技術庁長官は進んで責任をとって辞任いたしましたが、政府としては、今後より一そう人命尊重を重視し、犠牲者の霊に報いたいと考えるものであります。  次に、中村君は、今回の事故科学技術振興の妨げになるのではないかとの御懸念を表明されました。私もその点は十分留意しなければならないと思います。政府は、近年、特に環境の保全、都市問題の解決など、国民生活の向上をはかるための研究開発の推進に力を注いでおります。防災関係研究についても、地震対策あるいは雪害対策等のための研究や、気象調節の研究など広範な研究を進めておりますが、わが国地形的、気象的に災害を受けやすいなど考慮に入れて、さらに前向きにこれら防災関係研究に力を入れていく考えであります。  今回の実験は、これまでの研究結果を実際のがけくずれの観測結果と比較する点に主眼があり、予算的に不足していたから小規模実験を省略したものではありませんが、政府としては、科学技術の振興こそ民族興隆のかぎであると考えております。したがって、各種の基礎研究をはじめ国民生活に密着した科学技術の推進のためには、予算面におきましても、今後できる限りの配慮を行なう考えであります。  最後に、国民政治に対する信頼を高めることは、私ども政治家に課せられた共通の使命であると考えます。政府は、人間尊重の政治に徹するとともに、綱紀を厳正にし、各種の安全施設をさらに見直して国民生活の安定をはかるとともに、国民福祉の向上を期したいと念願しております。各位の特段の御協力を切望してやみません。  お答えといたします。(拍手)    〔国務大臣西村英一登壇拍手
  21. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 地価対策が十分でないから地価が高い、したがって、無理な土地造成をするから危険個所がふえるのじゃないかというようなことでございますが、人口の都市集中に伴いまして、がけくずれのあるような危険な区域に宅地が造成されることになりがちでございます。したがいまして、政府としては、これまでに宅地造成等規制法の法律によって規制を徹底さしてまいりました。また、新都市計画法によりましても開発許可に対して適正な措置を講じてまいり、がけくずれによる災害防止につとめてまいったような次第でございます。しかし、全体的に見まして、がけくずれと申しましても、宅地の造成ばかりではございません。さいぜん申しました危険個所全国一万三千三百二十四カ所につきましても、自然のがけが大部分でございます。九三%が自然のがけ、造成した人工のがけが約七%ぐらいでございまして、両者とも、宅地造成についてはもちろん十分な注意を払う。のみならず、自然のがけについても十分注意を払わなければならぬということでございまして、この種の実験もまた重要であろうかと思っております。  土地対策でございます。これは基本的には最も重要なことでございます。われわれといたしましては、基本的には土地対策につきまして、土地利用計画に従いまして宅地の大量な計画的な供給を促進するということと、また土地は投機的な対象になりやすい。また、これを売り惜しみをするというような現象がありますから、この点を基本的な態度として十分土地対策に取り組んでまいりたいと思っております。地価対策閣僚協議会がございまして、それに従いまして根本的な方針はきまっておりまして、それに基づいて建設省としてはやっていっておる次第でございます。都市計画区域内でただいまやっております市街化区域、市街化調整区域等の問題、これもその一環でございます。さらに、市街化区域内につきまして、改正しました建築基準法によって、宅地の利用計画をつくるということも土地対策でございます。さらに、大規模な宅地の開発をやると、こういうようなこともその一環でございます。いずれにいたしましても、政府としては真剣に宅地対策取り組みまして、地価対策取り組みまして、地価の安定をはかりたいと、かようなつもりでやっておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣木内四郎登壇拍手
  22. 木内四郎

    国務大臣木内四郎君) 今回のこの実験の失敗によりまして、国民に非常に不安、不信感を与えまして、ひいては科学技術の振興に非常に害があるのではないか、こういうようなお話でございまして、総理からもお答えがありましたが、もちろん、今回の事故によりまして関係者及び国民の間にいささかでも科学技術振興に対して疑念が生じたとするならば、これはきわめて遺憾なことでございます。しかしながら、この種の研究は、国民生活全体の向上から見まして、どうしてもやらなきゃならぬものでありまするので、今回の事件の原因を徹底的に究明いたしますとともに、至らざるところがありましたならこれを補いまして、研究体制の整備に取り組むことによりまして国民の不安を払拭いたしまして、あわせて科学技術の振興に全力を傾けたいと思うのでございます。  先ほど予算が足りないじゃないかというお話がありました。もちろん予算は多々ますます弁ずるのでありまするけれども、今回のこの事件というものは、必ずしも予算が足らなかったから起こったというものではありませんで、この安全に対する配意においてやや欠けるところがあったと、こういうことであると思うのでありまして、しかし、もちろん予算は多々ますます弁ずるのでありまして、今後におきましては、科学技術研究のために、各機関研究のために、なるべく多くの予算を取るように心がけたいと思うのであります。各位の御協力を切にお願いいたしたいと思います。  今回の事件で重視しなけりゃならぬのは、防災センターというような専門家によって行なわれたものであって、計画がずさんであって安全対策の不備から重大な惨事を起こした、こういうお話であります。もちろん、今回の実験におきましては、安全対策につきまして事前検討を行ない、危険区域に表示を行なうとともに、計測器を用いた観測によりまして警告を発する等のこともやったのでございます。しかしながら、警備避難方法のような安全面の配意が、先ほども申しましたように、ややというか、多少不十分でありましたために、この点は深く反省しなければならぬと思うのでございます。今後このような事故を二度と起こすことのないよう、研究実施機関における安全管理体制について抜本的な洗い直しを行ないまして、不備があれば早急にこれを改善するように努力をいたしたいと思っておる次第でございます。  また、科学技術の振興は、ややもすれば巨大科学のほうに結びついて、国民生活に密着するほうの科学技術の振興には欠けるところがあるんじゃないかというような御意見がございました。政府におきましては、先ほども総理からお話しのありましたように、もちろん、巨大科学の推進とともに、国民生活の向上、経済社会の発展のために科学技術の振興に大いに今日までつとめてきておるのでございます。特に、近年は、環境の保全、都市問題の解決、災害防止など、国民生活の向上に密接な関連を有する研究開発の推進に力を注いでおるところでございます。今後ともこれら国民生活の向上に意を用いまして研究開発に力を注いでまいりたい、かように思っておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  23. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 加藤進君    〔加藤進君登壇拍手
  24. 加藤進

    ○加藤進君 私は、日本共産党を代表して、今回引き起こされました崩壊実験による事故に対して、総理並びに科学技術庁長官に対して質問するものでございます。  質問に先立ちまして、今回の実験事故による多数の犠牲者に対し、心より哀悼の意を表するとともに、政府に対しその責任をきびしく追及するものであります。  今回の事故は、単なる災害ではなく、まさに災害防止実験によって発生した災害という点で、また、最も科学的であるべき科学技術庁実験によって引き起こされた災害という点で、まさに前代未聞の事故と言えるものであります。また、犠牲者の中には報道関係者も含まれたということにおいても異例のものであります。  本来、実験を行なう際、その実験に伴う危険はある程度想定し得るものであり、それに対する安全措置が講ぜられてこそ、初めてその実験計画が効果的に行なわれることは論をまたないところであります。ところが、今回の実験の経過を見ると、たとえば、がけ上にいた研究員が吹いた警報さえ、どういう意味のものかが、報道関係者はもちろんのこと、全体にも明らかにされおらず、知っている者さえどう処理すべきかが指示されておらなかったという重大問題がございます。あるいは、観測所のあるプレハブ小屋が切り立ったがけの真下にあったとか、その安全対策が何ら講じられていなかったことは枚挙にいとまないほどでございます。こうした安全対策のないずさんな実験計画こそ、十五名ものたっとい生命を犠牲にする大惨事を引き起こしたものであります。まさに人為的に引き起こされた災害の典型と言っても過言ではないと思います。  そこでお伺いしたい。なぜこのような危険な実験がみすみす容認されてきたのか、なぜこのような安全性を無視した実験が強行されてきたのか、明確な御答弁をお願いいたします。  私は、いわゆる関東ローム層のがけくずれ防止実験の必要性を決して否定するものではありません。建設省調査によっても、全国がけくずれ危険個所が一万三千三百余カ所もあり、約三十万戸がその危険にさらされているという現状を見るとき、あるいは、毎年のごとく繰り返されるがけくずれによって多数の犠牲者が出ていることを考えた場合、かけくずれ災害原因究明のための実験は当然行なうべきものであると考えます。問題は、その実験安全性にあります。今回の大惨事は、突き詰めるところ、最も基本となるべき安全性を無視した実験が、しかも政府みずからの手によって強行されたものであり、この意味で政府責任はまさに重大であると言わなくてはなりません。総理、一体かかる惨事責任はだれが負うと言われるのでありましょうか。きのう総理科学技術庁長官を更迭されましたけれども、総理は、それでこの事故責任は免れたと思われるのでしょうか。これこそ、人命軽視の自民党政府責任ではないでしょうか。この点、総理並びに科学技術庁長官に明確な答弁をお願いするものであります。  このたびの事故原因を調べてみると、そこに政府科学技術振興政策の基本に関する問題が多々あることに気づくものであります。すなわち、その最大の問題の一つは、研究体制に関する問題であります。今回のいわゆるがけくずれ防止実験は、科学技術庁をはじめとする四省庁にわたる共同研究として計画され、実施されたものであるだけに、またその実験内容が未知の要因を多分に含んでいるものであるだけに、当然それに必要な研究所間の意思の十分なる疎通並びに研究者の組織的な共同研究体制が不可欠のものとして要求されるものであります。しかるに今回の実験計画を見ると、共同研究にふさわしい四つの省庁研究所間の連絡は全くなく、そのため、実験参加者は自分の研究のテーマだけに関心を持ち、他の研究テーマには注意さえ払い得ないような状態にあったといわれているのであります。これでは実験参加者がそれぞれ独自の立場から実験でのがけくずれの規模を想定し、それに基づく安全対策を提起していても、それを受けつけ、それを総括する機構さえつくられていなかったというのであります。こうした総合的研究体制の欠除と、研究者の創意をくみ上げ得ない非民主的体制こそ、今回の大惨事を引き起こした直接的原因なのであります。こうして見ると、これらを容認し、むしろ科学技術研究協力体制を妨げ、その成果をばらばらにして、独占大企業の利益のみに奉仕させてきた佐藤政府科学技術政策こそ、まさに大惨事の根本原因として問われなければならないのではないでしょうか。  そこで総理並びに科学技術庁長官に聞くが、一体このようなばらばらなずさんな研究体制を放置し、かつ、独占奉仕の科学技術政策を抜本的に改めずして、再びかかる事故を引き起こさせないという保証がはたしてあるのでしょうか。特に研究実験が大規模になればなるほど、研究者、技術者の創意と意思を反映する総合的研究体制確立の必要が強く叫ばれている今日、これに逆行し、研究の細分化を強め、研究者の創意を押える管理体制のみを強調する佐藤政府科学技術政策を根本的に改正することこそ、現下の急務であると思いますが、いかがでしょうか。にもかかわらず、佐藤総理がこうした事故発生の根本原因には全く目をつぶり、長官の首のすげかえということで問題の所在をおおい隠そうとするごときは、もってのほかと言わなくてはなりません。もし、政府にして今回の惨事を深く反省し、かかる事態を再び引き起こさせないというなら、まずもって、研究者の要望を無視した現在の非民主的研究体制をこそ抜本的に改めるべきであり、人命尊重、人間優先の科学技術行政をいまこそ断固として打ち立てるべきであると思いますけれども、明確なる答弁をお願いするものであります。  最後に、私は、今回政府の引き起こした災害によって、一瞬のうちにとうとい生命を失われた犠牲者遺族方々に対し、政府は深く陳謝し、責任を持って十分な補償を行なうよう強く要望して、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 加藤君にお答えをいたします。  昨日来、衆参両院を通じまして繰り返し申し述べておりますとおりに、今回の不測の事故に対し、政府はその責任を痛感しております。国民災害から守るための実験において、このような痛ましい事故が発生したことはまことに不幸なことであり、衷心から遺憾に存ずる次第であります。  この研究を推進してきた研究者、技術者は、ひとしく、このような防災研究を強力に推進することによって、毎年多くの犠牲者を出している災害の根絶に少しでも役立つことを目ざしてきたのであります。今回の実験で多数の死傷者を出したことは、ほんとうに残念でありますが、今後は、このようなことのないよう十分注意をするよう、一そう強力に各種防災対策のための研究を進めてまいりたいと考えております。  私は、ただ単に大資本に奉仕するとか、あるいは独占資本に奉仕するとか、こういう立場ではなく、国民のため、ただいまのような事故防止に役立つ研究をしなければならないと思います。これが今回の実験犠牲者の霊に報いる道でもあると、かように考えております。このため、研究開発の推進にあたっての安全性確保の問題については、関係省庁、付属機関、付属研究機関等々、広く意見の交換を行ない、万全の措置を講じてまいりたいと考えております。  被災者及びその遺族方々に対してはおわびの申し上げようがありません。補償の問題につきましては、政府としてもちろんできる限りのことをいたす考えでございます。この点は、いままでの方にもお答えしたとおりでありますから、御了承をお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣木内四郎登壇拍手
  26. 木内四郎

    国務大臣木内四郎君) 今回の実験は、各機関内の連絡が非常にまずかったのじゃないか、こういうようなお話がありましたが、今回の実験にあたりましては、先ほど来申し上げておりますように、国立防災科学技術センター統括のもとに、これらの機関によりまして構成される研究連絡推進会議等を設けまして、研究の分担と協力体制を定め、さらに研究担当者間でも幾たびとなく打ち合わせを行ないまして実施したものでございまして、実験の総括責任者を置いて統括してやったつもりであります。しかしながら、警備あるいは避難の方法のごとき安全面への配意においてはどうも不十分の点があったかと考えまして、この点は深く反省いたしておる次第でございます。今回の実験を貴重な経験といたしまして、研究実施機関間における連絡、あるいは安全管理体制について、抜本的な洗い直しを行ないますとともに、不備の点がありまするならば早急に改善いたしまして、このような事故を二度と繰り返さないように最善の努力をいたしてまいりたいと、かように考えております。(拍手
  27. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これにて質疑は終了いたしました。      ——————————
  28. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 日程第二 所得税法の一部を改正する法律案  日程第三 農業共済保険特別会計における農作物共済に係る再保険金支払財源の不足に充てるための一般会計からする繰入金等に関する法律案   (いずれも内閣提出衆議院送付)  以上両案を一括して議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長前田佳都男君。    〔前田佳都男君登壇拍手
  29. 前田佳都男

    ○前田佳都男君 ただいま議題となりました二法律案について申し上げます。  まず、所得税法の一部を改正する法律案は、税制調査会の答申に基づき、景気振興策の一環として、千六百五十億円の所得税の年内減税を行なうため、昭和四十六年度の当初改正に引き続き、再び改正を行なうものであります。  この改正によりまして、基礎控除等所得控除の引き上げに伴い、夫婦子二人の給与所得者の場合で、課税最低限は昨年の約八十八万円、今年当初の約九十六万円から、今回さらに約百万円に引き上げられることになっております。  また、税率構造について、課税所得階層百五十万円以下の三十万円刻みを四十万円刻みにする等、税率緩和を行なおうとするものであります。  なお、以上の改正による昭和四十六年分の減税は、給与所得者にとりましては年末調整の際に、申告所得者にとりましては確定申告の際に、それぞれ行なわれることになっております。     —————————————  次に、農業共済保険特別会計における農作物共済に係る再保険金支払財源の不足に充てるための一般会計からする繰入金等に関する法律案は、昭和四十六年度の農業災害の多発に伴い、農業共済保険特別会計の再保険金支払い財源の不足が生ずる見込みであり、これを充足するため、一般会計から同特別会計の農業勘定に四十九億四千二百十二万円を繰り入れる等の措置を講じようとするものであります。  委員会におきましては、両案を一括して質疑を行ないました。特に所得税法の一部を改正する法律案につきましては、景気浮揚策としての効果、各所得階層に及ぼす影響、今後の財政と減税のあり方、物価と租税との関係、地方税減税の考え方等を中心政府との間に論議が行なわれましたが、それらの詳細は会議録に譲りたいと存じます。  両案の質疑を終わり、まず所得税法の一部を改正する法律案について討論に入りましたところ、日本社会党を代表して竹田四郎委員より反対、自由民主党を代表して嶋崎委員より賛成、公明党を代表して多田委員より反対、民社党を代表して栗林委員より反対、日本共産党を代表して渡辺委員より反対の各意見がそれぞれ述べられました。  討論を終わり、本案を採決の結果、可否同数となりましたので、国会法第五十条後段の規定により、委員長、これを決し、原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、農業共済保険特別会計における農作物共済に係る再保険金支払財源の不足に充てるための一般会計からする繰入金等に関する法律案については、討論なく、採決の結果、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上、報告を終わります。(拍手
  30. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 所得税法の一部を改正する法律案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。小谷守君。    〔小谷守君登壇拍手
  31. 小谷守

    ○小谷守君 私は、日本社会党、公明党並びに民社党を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行なうものであります。  まず、第一の反対理由は、今回の減税規模千六百五十億円が量的に少なきに失しているという点であります。  いまや、わが国経済は、ニクソンのドル防衛政策の打撃によって深刻な不況に当面しているのでありますが、この不況を克服する方策は、第一に社会資本の充実、第二に公共投資の拡大であり、第三に大幅な大衆減税による個人消費支出の増大をはかり、需要を喚起することが肝要であろうと思うのであります。とりわけ、減税政策は不況克服にとって強い即効力を持ち、そのゆえに景気浮揚効果も大なるものがあるのでありまして、政府が今日の不況対策を真剣に配慮されたとするならば、千六百五十億程度のけちなことではなくて、少なくとも年度当初の千六百六十六億と合わせ、五千億規模の減税策を断行することは具体的に可能であったと思うのであります。すなわち、四十年度不況の際にとられた四十一年度の減税規模は、自然増収に対して六九・七%であったのでありますが、今回のそれは、所得税自然増収見込み約七千八百億に対し、年度当初の減税千六百六十六億を含めてもわずかに四二・五%にすぎないのであります。このように、政府の今回の減税政策は、不況克服の熱意に欠けるまことに中途はんぱなお義理程度のものでありまして、とうてい賛意を表することはできないのであります。  第二の反対理由は、本法案の質的な内容についてであります。今回の改正案は、総理じきじきの指示に基づき、大蔵大臣のことばをかりますならば、勤勉な国民に対するボーナスであり、景気浮揚対策の目玉商品のように宣伝をされてまいったのであります。したがって、真に景気対策としての考えを貫くとすれば、減税による個人消費の増大、需要刺激拡大に重点をしぼるべきであったのであります。すなわち、最も消費指向の高い、そして納税人口の九四%を占める広範な低所得層への減税に重点を集中して行なうならば、その減税政策の効果は大きく実現されるでありましょう。そればかりか、租税公平の原則をも実現するという一石二鳥の賢明な政策となり得たのでありましょう。しかるに、政府は、基礎控除、給与所得の定額控除、配偶者控除、扶養控除の引き上げに最重点を置くことを怠り、高額所得層に最も減税効果の及ぶ税率改正に八百十五億を割り当て、低所得層に減税効果の大きい所得控除分に八百三十五億しか配分しないという誤りをおかしたのであります。この結果、納税者数の九四%を占める約二千五百万人を数える二百万円以下の低所得層には約七百億の減税、全納税者の六%にすぎない二百万円以上の高額所得者層百五十六万人に対しましては約九百五十億の減税という、金持ちにはきわめてあたたかく、勤労大衆にはたいへんに冷たい文字どおり上厚下薄の税制と相なるのでありまして、税の実質公平の原則に背中を向け、政策効果の期待を裏切るものであります。政府国民に宣伝した大幅所得減税の年内実施という政策の中身は、まさに看板に偽りあり、羊頭を掲げて狗肉を売るものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  第三の理由は、四十七年度において、財源難を理由に所得減税を行なわないとする政府の態度についてであります。税の実質公平を無視した今回の改正を押し通し、明年度の所得減税をほおかぶりで見送ろうとする政府の態度は言語道断であります。政府は、その口実として財源難ということを強調されるのでありますが、はたしてそうでございましょうか。政府が真に税における公平の原則を実現し、所得再配分による国民総福祉実現に対する熱意があるならば、高額所得者優遇と大資本擁護のために設けられた悪名高き租税特別措置法の思い切った改廃を断行すべきであります。また、すでに役割りを終わった輸出振興税制、利子配当所得の分離課税、航空機用ガソリン税免除などの廃止、交際費課税の強化等をすみやかに行なうべきであります。これらの措置を断行することによって所得税減税財源は余りあるものと考えるのであります。  また、一方において、中国の国連加盟、米中接近、南北朝鮮赤十字の話し合いの前進などの情勢を正しく踏まえ、軍事予算の削減、とりわけ第四次防計画の大幅削減による財政支出の縮減を行なうならば、大型国債発行を行なわずとも、減税財源に事欠かない点を強調いたしたいと思います。(拍手)  最後に、今回住民税の減税が行なわれなかったことにより所得税課税最低限との格差が一そう拡大したことは、政府の公約違反であることを指摘し、明年度これが是正を求めるとともに、四十七年度における所得減税を必ず実施すべきことを強く要求して私の反対討論を終わります。(拍手
  32. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決をいたします。  まず、所得税法の一部を改正する法律案の採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  33. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 過半数と認めます。よって、本案は可決されました。      ——————————
  34. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 次に、農業共済保険特別会計における農作物共済に係る再保険金支払財源の不足に充てるための一般会計からする繰入金等に関する法律案の採決をいたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  35. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。      ——————————
  36. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 日程第四 天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法及び激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。災害対策特別委員長小柳勇君。    〔小柳勇君登壇拍手
  37. 小柳勇

    ○小柳勇君 ただいま議題になりました法律案について、災害対策特別委員会における審査の経過並びに結果を御報告いたします。  この法律案は、天災融資法について経営資金の貸し付け限度額を二倍に引き上げ、現行の三分資金及び六分五厘資金のほかに、減収率三割以上の被害農林漁業者を対象に、五分五厘資金の制度を設けるものであります。また、激甚災害法について、天災融資法の特例措置である貸し付け限度額及び中小企業者に対する貸し付け金の限度額をいずれも二倍に引き上げようとするものであります。  委員会における質疑の内容につきましては、会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終わり、討論に入り、別に発言もなく、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、各派共同提案により、全会一致をもって附帯決議を行ないました。  以上御報告いたします。(拍手
  38. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これより採決をいたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  39. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決されました。  本日はこれにて散会いたします。   午後零時四分散会