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1971-11-09 第67回国会 参議院 本会議 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月九日(火曜日)    午後三時三十二分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第八号     —————————————   昭和四十六年十一月九日    午前十時 本会議     —————————————  第一 通商産業大臣田中角榮問責決議案(竹   田現照君外四名発議)(委員会審査省略要求   事件)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  一、日程第一  一、昭和四十六年度一般会計補正予算(第1   号)  一、昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1   号)  一、昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機   第1号)      ——————————
  2. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  野々山一三君から病気のため、二十九日間請暇の申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。      ——————————
  4. 河野謙三

    議長河野謙三君) 日程第一 通商産業大臣田中角榮問責決議案竹田現照君外四名発議)(委員会審査省略要求事件)  本案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、これを議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。よって、本案議題といたします。  まず、発議者趣旨説明を求めます。竹田現照君。    〔竹田現照君登壇拍手
  6. 竹田現照

    竹田現照君 私は、日本社会党、公明党、民社党日本共産党並びに第二院クラブを代表して、通産大臣田中角榮問責決議案について、提案理由説明いたします。  まず、決議案文を朗読いたします。     通商産業大臣田中角榮問責決議(案)   本院は、通商産業大臣田中角榮君を問責する。   右決議する。       理 由   田中通商産業大臣は、わが国繊維品輸出に関し、米国の一方的な圧力に屈し、繊維業界ならびに繊維労働者あげての反対国民世論に反し、しかも「米国輸入制限をすべきでない」との衆参両院決議昭和四十四年四月十五日、昭和四十五年三月二十六日の参議院商工委員会昭和四十四年五月九日の衆議院会議)を無視して、米国政府間協定仮調印を行ないその実施を強行しようとしている。   かかる暴挙は、憲法を無視し、国会を軽視する国民不在政治であり、はなはだしい屈辱外交というほかはない。のみならずこの協定実施されれば、わが国繊維産業は壊滅的な打撃を受け、繊維労働者生活権をうばわれ国民生活に与える影響は甚大であり、田中通商産業大臣責任はきわめて重大である。   これが本決議案を提出する理由である。  以下、少しくこれを補足いたしたいと思います。  本院において国務大臣に対する問責決議議題となりましたのは、去る昭和三十九年六月二十日、賀屋法務大臣に対するものと、過般の十月二十八日、福田外務大臣に対するもの、及び、ただいま議題となりました田中通産大臣に対するものを数え、わずかに三件であります。まことに異例に属すべき議題と言えるのであります。  とりわけ、今回の問責決議案は、前二者のものとは違い、院議無視に対するものであります。これは、良識の府としての本院に対する最近の世評にかんがみ、本院の権威を守るためにもきわめて重要なものであることを、まず最初に申し上げます。(拍手)  田中通産大臣は、今日、政府与党の中にあって、そのすぐれた頭脳と政治的手腕をもって将来を嘱望される有能なる政治家であり、ポスト佐藤の有力なる後継者の一人とも見られるだけに、本院史上その例を見ない問責決議案を突きつけざるを得ないことは、私としてはまことに遺憾にたえざることであり、本院はもちろん、田中通産大臣にとっても惜しむべきことであると言わなくてはならないと存ずるのであります。  しかし、事は立法府たる本院の権威に関することであり、また、一国の産業の存亡にかかわる問題であります。国会決議が行政府のかってな解釈によって踏みにじられるならば、わが国議会制民主主義は根底からくつがえるものと言わなければなりません。  一面、繊維産業のみならず、繊維機械工業を含め、さらに、中小企業者や、そこに働く労働者及びその家族のことを考えますならば、あくまでもその責任の所在を明確にしなければなりません。  御承知のごとく、佐藤内閣は、国会決議を無視し、関係業界労働組合等反対を押し切り、全く国民的合意のないままに、繊維政府間協定了解覚書仮調印を済ませ、強引に政府間協定締結を行なおうとしております。もちろん、その根本をなすものは佐藤内閣総理大臣にあることは、いまさら申し上げる必要もありませんが、しかし、当面の責任者として仮調印を行なった田中通産大臣は、まず、その責任を負わなければならないことは、これまた当然のことであります。  そもそも、日米繊維問題の発端は、一九六八年、アメリカ大統領選挙に臨み、私が当選したら毛・合繊を含む全製品に対し国際取りきめが締結されるようすみやかな措置をとるというニクソン公約にあることは明らかであります。それが、対日輸入増大規制という経済問題にすりかえられて、わが国への理由なき要求となって突きつけられてまいりました。  これに加うるに、一昨年十一月、沖繩返還交渉協議のため渡米した佐藤総理は、ニクソン大統領との会談で、当然の国民的要求であるべき沖繩返還の実現にこの繊維をからませ、これを政治取引の具に供したといわれることは、いまや公然たる事実となっています。世に、「佐藤ニクソン密約説」「糸を売って、縄を買った」といわれるのは、これをさしているのであります。  ともあれ、アメリカ要求に対し、わが国業界は、第一に、被害なきところに規制すべき理由なし。第二に、もし規制するにしても包括規制は受け入れられない。特定品目だけの選択規制にすべきである。第三に、ガット第十九条によって、二国間協定でなく、ガットの場での多国間協定にすべきであるという反対理由に問題をしぼって、あくまで筋を通し、あいまいな解決をすることは、かえって日米友好関係にマイナスだとの見解を表明しました。これに対し、一般世論もほとんど、この際、変な妥協をするよりも筋を通すべきだとの意見が強かったのであります。通産省首脳も、この問題で原則を曲げた妥協をすると、日米貿易だけではなく、世界貿易発展にも禍根を残すと、がんばっていたはずであります。  本院商工委員会においても、昭和四十四年四月十五日、米国繊維製品輸入制限阻止に関する決議各党一致をもって行ないました。この決議は、同年五月九日、衆議院会議決議内容とほぼ同様のものでありましたが、その後の諸般の情勢にかんがみ、昨年三月二十六日、より具体的内容を示し、再度決議を行ない、本問題に対する私どもの重大なる関心を明らかにしたのであります。  その内容をあらためて申し上げますならば、    米国繊維品輸入制限に関する決議  米国の求めている毛・化合繊製品輸出自主規制は、明らかにガット精神に違反するものであり、かかる制限は、目下構造改善を推進しつつある繊維工業に深刻な打撃を与えるのみならず、中小繊維業者にとっては死活の問題であつて、これを容認できないことは昨年四月の決議で表明した通りである。  政府は、繊維輸入制限問題についてはあくまでガット精神に基づいて解決すべきであるとの基本的立場を堅持し、次の諸点を厳守すべきである。一、米国繊維産業被害立証前提とすること。一、輸出規制業界納得をえた上で、重大な被害又はその恐れのある品目に限ることとし、包括規制はあくまでさけること。一、関係多数国の協議で問題の解決をはかること。   右決議する。  以上のものでありました。  翌三月二十七日、本院予算委員会において民社党向井委員はこの国会決議についてただしたのに対し、佐藤総理は、「政府がその国会決議を無視して行動するということは、これはできることではございません。私はそれをたてにするとかいうわけではない、当然のことだと、かように考えておりますので、その点でいわゆる二国間協定というものはないと、かように私も考えておりますし、皆さん方も期待しておられると、かように思っております。」と答弁されているのであります。  また、昨年十二月三日、本院商工委員会においてわが党大矢正委員の、「かりに日米政府間で話がついた段階において、その内容業界に提示して業界理解納得を得るよう努力するということでありますが、もしその段階業界は、とてもこれは大幅な縮小であるから、のむわけにはいかないという場合には、日米間で合意された内容といえども、それをもう一回やり直しをするという可能性は残されているのか」という質問に対し、宮澤通産大臣は、「それが国会の御決議の私は趣旨だというふうに考えております。」と答えているのであります。  この政府答弁と今回の仮調印との隔たりは、一体何と弁解なされようとしているのか。責任の継承という点からも、田中通産大臣のとった行為は断じて承認するわけにはまいらないのであります。(拍手)私どもは、国会における政府答弁を、単にその場のがれのものとして見過ごすことは決して許してはならないことであると思うのであります。  本年三月八日、わが国業界は、繊維問題が投げかける日米経済間の摩擦を防ぐため、大乗的な見地に立ち、七月一日から対米繊維輸出自主規制宣言を行ないました。この措置は、自由、無差別のガット原則を無視した筋の通らないアメリカ側要求に対する最大限の譲歩でありました。政府は、この業界自主規制に対し歓迎の意を表し、官房長官談話をもってこたえたのであります。いわく、政府は、わが国業界が自主的に輸出規制実施に踏み切ったことを歓迎し、この困難な問題が円満に解決する見通しが立ったと考える、というのであります。  この自主規制は、日米間で話し合いの進んでいた「秩序ある輸出」の趣旨にのっとったものであるにもかかわらず、アメリカ側は、政府間の公式ルートを通さず、さまざまな動きを示してまいりました。わが国政府もまた、歓迎談話を出しながら、一面では、これと違った動きを示していたことを私たちは見落としてはいなかったのであります。  参議院選挙後の佐藤改造内閣外務大臣に就任した福田赳夫氏は、その就任にあたっての記者会見で、どういう問題から手がけていくかとの質問に、まず繊維問題、日本業界自主規制でようやくスタートを切ったが、問題は終わっていない、何とか片がつかないと、いろんな問題に波及することになりかねないと答え、また、日米経済委に先立って、業界政府間協定締結を打診したり、総理自身業界の一方的規制宣言が出されているのに、本年四月、ケネディ特使と二時間近く会談、さらに六月末、また、七月二十四日には、二時間四十五分に及ぶ長談議など、政府側奇径動きを考え合わせるとき、佐藤総理ニクソン大統領に「善処する」と約束した責任をいかに果たすかに頭を悩まし続けていたと言うことができましょう。  このようなことを、田中さんは、自民党幹事長として、また改造内閣通産大臣として、知らないはずはありません。しかるに田中通産大臣は、去る九月、日米経済閣僚会議において、アメリカ側に対し、政府間協定を結ぶ意思がないと強硬な態度を伝え、その主張は認められ、田中さんの言によれば、オール・セーフだと、たいへんごきげんであったように伝えられたのであります。さすが田中だ、実力者だと、世間はこれを評価するにやぶさかではなかったのであります。それが、一体どうなったのでありましょう。アメリカから帰国した直後、九月二十一日、「アメリカ大統領は、日本はじめ極東四国に対し、十月一日までに品目別個別規制に基づく政府間協定を結ぶ交渉を行なう。協定に応じない場合は、十月十五日から米側は一方的に輸入規制……」という外電が舞い込んできてからの田中通産大臣動きは、君子豹変どころの騒ぎではなく、協定締結に向かって一直線、十月十五日、ケネディ特使との二度にわたる会談仮調印という、まさに電光石火の早わざをやってのけたのであります。しかも、その内容は、ガット原則を完全に無視したアメリカ側の一方的主張のまるのみと言っても差しつかえないものであります。常日ごろ、「日米間に話し合い解決できぬものはない」と力説されていた田中通産大臣の言う日米話し合いの実体はかくのごとしであります。政府は、仮調印と同時に、国益上やむを得なかった旨の声明を発表しましたが、なぜ国益に結びつくのか、私たち国民の前には明らかにされてはいないのであります。今臨時国会における所信表明から両院会議予算委員会の質疑を通しましても、「見切り発車」の具体的な理由は何ら明らかにせず、ひたすら、やむを得ない措置であったの繰り返しのみであります。私は、やむを得ずということばは圧制の口実であるという詩人ミルトンの言をあらためて思い起こすのであります。ニクソン大統領への約束を果たすため、国民には、何も納得させ得る説明もできず、「やむを得ず」の連発では、業界には甚大な被害を与え、大量の失業者産地ぐるみ倒産危機に立っている現状に目をおおうのであれば、まさしく圧制以外の何ものでもないと思うのであります。(拍手)  仮調印後、ニューヨーク・タイムスは、十月十六日付社説で、「アメリカ政府は、極東四国輸入割り当てという経済的原爆でおどして、これら緊密な同盟国に降伏をしいた」。また、ワシントン・ポストも、「アメリカのおどしに日本屈服」と報じています。国民には納得のいく説明もできず、アメリカ要求の前に屈服と言われようと何と言われようと、わき目も振らず一もくさんに政府間協定に踏み切ったことは、屈辱外交以外の何ものでもなく、外交上の一大失態と言わなくて何と言えましょうか。これを推進した田中通産大臣責任ははなはだもって重大であります。(拍手)  私は、日米間の繊維問題が政府間協定という形の終止符を打たれようとすることについて、本院決議とも関連して、次の諸点からきわめて重大な問題があることを指摘いたします。  第一に、アメリカ繊維輸入量は、国内の繊維品消費量に占める輸入の割合で見ますとわずかに八・四%、わが国からの輸入量はその三分の一の二・五%で、金額にして六億ドル足らずであります。また、わが国からの繊維製品は低価格品が多く、アメリカの中低所得層の需要を充足しており、むしろ、アメリカインフレ抑制役割りすら果たしていると言えるのであります。しかも、アメリカ側が提示した被害立証資料によっても、繊維輸入アメリカ繊維産業被害を及ぼしていることが立証できないばかりではなく、これまでアメリカ繊維産業で倒産した例は一つもないのであります。このような事態からするならば、繊維協定は明らかに、「被害なきところに規制なし」というガット原則を踏みにじるものであり、米国繊維産業立証前提とすること、という本院商工委員会決議の第一項を無視するものであり、まことに遺憾であると言わざるを得ません。  第二に、今回の協定は、六百十一品目に分類され、その一種ごとにこまかな規制が行なわれているため、品目が少し違えば、直ちに規制される仕組みになっております。このような品目別グループ別規制では、伸び率化合繊で五%、毛で一%とはなっていても、この数字は死んだものと同じであります。繊維製品は、周知のごとく流行を追うのが特色でありますから、それを前年度の実績でワクをはめられては全く輸出ができなくなるという実態があり、ものによっては七〇%も減少するものすらあります。田中通産大臣は、こうした繊維の実情を無視して、弾力条項をつけたとか、伸び率が確保されたとか主張していますが、これは群盲象をなでるがごとしで、かってな解釈をしているにすぎず、「輸出規制業界納得を得た上で、重大なる被害又はその恐れのある品目に限ることとし、包括規制はあくまでさけること。」という決議第二項とは全く異なるものとなっているのであります。また、この協定実施されると、わが国繊維産業壊滅的打撃を受け、二十万人以上の失業者が出ることになり、繊維産地はほとんど倒産してしまうことは先に述べたとおりでありますが、それだけではなく、田中通産大臣は、この協定締結によって他の製品への波及は食いとめ得たごとくに申しておりますが、その保証は全くありません。現に、ホワイトハウス当局は、十月十五日の記者会見で「アメリカ繊維衣服産業現状」と題するパンフレットを配布、その説明文の中で、品目別アメリカ国際収支として繊維以外のものも取り上げ、たとえば国際収支の赤字は、合繊製品十三億六千五百万ドルに対し、鉄鋼十五億ドル、自動車二十億ドル、家電製品十六億ドルといったぐあいに数字を並べ立てているのは、問題が繊維だけではないことを示しているとしか思えません。また、ニクソン繊維政府間協定を公約させるための陰の立て役者ともいわれるキャラウェー二世は、「もう貿易戦争は始まっている、いまや繊維だけでなく、自動車鉄鋼電子機器も同じように政府間協定を結ぶことを要求するときが到来した」と語っていることを見ても、他のわが国製品貿易制限のための政府間協定を、ドル危機に悩むアメリカが、国の威信にかけて要求してまいりましょう。こうしたことを予想するかのように、政府はすでに業界輸出自主規制を引っぱり出そうと動き始めているではありませんか。これは日本経済国民生活に深刻な打撃を与える結果を招来することは明らかであります。繊維のみ犠牲にすれば何とかアメリカ要求をつぶせるだろうと考えた田中通産大臣決断日本経済の将来にいかなる結果を生むのか、これは重大な問題であり、政府失態業界の協力によって償おうとするようなことは絶対に許されることではありません。(拍手)  第三に、政府は、政府間協定行政協定であり、政府の権限だとして、国会承認事項として逃げ込もうとしています。行政協定というものは、その執行のために国内的な新しい立法措置や多額の財政支出をしないことが条件となっていますが、今回の協定によって、業界救済のためだけでも二千億円以上の財政支出が必要であると田中さん自身が語っており、この点だけでも国会承認が必要であると思います。さらに、政府が、協定期限が三カ年だから国会承認を必要としないと主張します。これは国民を欺く以外の何ものでもありません。通産大臣ケネディ特使の間で取りかわされた書簡によれば、ケネディ特使は、取りきめの期間は一九七一年十月一日から五年間とすることを要求し、これに対し田中通産大臣は、閣下の希望をテーク・ノートした、と返事をしていることは、繊維交渉におけるこれまでの経緯から見て、日本政府が拘束されることは必至であり、韓国、台湾、香港と結んだ協定仮調印が五年間の期限つきになっていること、韓国との仮調印の際、韓国側日本規制期間が三年で韓国の五年に比べ有利なことを指摘した際、ケネディ特使は、「それは主として技術的な問題で、三年後に二年間延長されることは確実である」と説明されたといわれることなどからしても、協定期間が事実上五カ年間であることは間違いありませんし、綿製品協定のようにさらに延長されることになると思われるのでありまして、理屈とこう薬はどこへでもつくと申しますが、世間には何事も理屈では解けない一種の道理があるはずで、サギをカラスと言うがごとき田中通産大臣の言は、国会冒演ずるもはなはだしきものと言わざるを得ないのであります。  また、政府は、事あるごとに日米間の友好云々を口にしますが、わが国アメリカ圧力の前に屈服したことは関係各国に大きな迷惑をかけ、ヨーロッパにも、次はわれわれであるとの危機意識を強めさせているともいわれています。とするならば、アジア、ヨーロッパを含めた諸国間との友好はどうなってもよいということなのでしょうか。私は、一国のウェートよりも、ガット等国際機関のウエート、多国間との友好をこそより重要視すべきだと思います。  田中通産大臣の今回とられた措置は明らかに失敗であります。一毫の差は千里の差となるのたとえもあります。失敗を謙虚を反省され、すみやかにその責任をとられることこそ、大政治家たらんことを指向される田中通産大臣の今日とられるべき道であると思うのであります。(拍手)  最後に、この機会に、与党自民党皆さんにもとくとお考えをいただき、本院の権威を守るために、本決議案に対し全会一致の賛同を賜わることを心から期待いたしまして趣旨説明を終わります。(拍手
  7. 河野謙三

    議長河野謙三君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。江藤智君。    〔江藤智登壇拍手
  8. 江藤智

    江藤智君 私は、自由民主党を代表して、ただいま提案されました通商産業大臣田中角榮君に対する問責決議案に対し反対討論を行なうものであります。(拍手)  ただいま竹田現照君から提案理由説明が行なわれたのでありますが、その述べられたところは、事実に照らし、全く理解に苦しむものであります。  問責のおもな理由は、日米繊維政府間協定に関する問題でありますが、本件については、すでに再三にわたる審議におきまして、田中通産大臣はまことに懇切丁寧に、わが国国益を踏まえていかにその責務を遂行してきたかを明らかにするとともに、国民各位に対しても、同大臣談話及び政府声明などによってその理解が得られるよう、繰り返し説明されているところであります。  申すまでもなく繊維問題は、過去三年もの長きにわたる日米経済問題の大きな懸案であり、これまで政府数次にわたり国会決議に従って交渉を行なってまいりましたが、遺憾ながらその妥結を見るに至らなかったのであります。この間、田中通産大臣は、常に本問題に関する国会決議精神を尊重しつつ、過日の日米閣僚会議において、米国の強い要請に対し断固これを拒否するとともに、その後に始まったケネディ特使らとの折衝においても、終始わが国主張を強力に展開してまいりました。さらに、重大な新事態のもと、政府間取りきめもまたやむなしとの判断に至る過程におきましても、田中通産大臣国会における決議を尊重し、再三にわたって業界納得を得るべくつとめるとともに、各党幹部とも事前に会談して、その事情をつぶさに説明する等の努力を重ねてまいりました。これらの事実に照らしても、田中通産大臣国会決議を十分に尊重して事に当たったものと言うべく、これに違反したものとは断じて言い得ないのであります。(拍手)  わが国繊維業界は、本年七月一日より一方的自主規制実施してまいりました。政府もわれわれも、これによって事態が収拾されることを期待していましたが、米国側はこれに満足せず、数次にわたり日本側に対し政府間協定締結を強く迫り、もし政府間協定締結されないときは、一方的に輸入制限をも辞せずとの強い決意を表明してまいりました。このような険しい新事態に対処して、田中通産大臣は、当面並びに長期的に見たわが国の真の国益のためには政府間協定締結もまたやむを得ないものとの判断に基づき、相互理解と互譲の精神に基づき、米国側と根気よく不眠不休話し合いを重ね、その大幅な譲歩を得て日米間の了解に達したのであります。もしわが国政府が強硬な態度を取り続け、ために米国が一方的輸入制限実施した場合を考えますと、その影響はきわめて重大であります。すなわち、わが国繊維製品輸出は急激かつ深刻な打撃を受けることはもとより、日米経済関係は極度に悪化し、動揺激しいガット体制危機に瀕し、ひいては貿易によって生きるわが国経済発展に著しい悪影響を与えることは明白であります。このような時点に立って田中通産大臣の下した決断は、対米繊維輸出に関する最悪の事態を回避するとともに、日米経済関係全体の改善、ひいては自由貿易の維持に大きく寄与するものとして高く評価されなければなりません。今回の困難かつきびしい状況下における交渉にあたって田中通産大臣は、規制実施時期、経過措置輸出規制総ワクの活用及び輸入課徴金の撤廃、特に極東三国に先がけて弾力条項を確保する等、数々の成果をかちえたのであります。その努力と政治的手腕に対しましては深く敬意を表するものであります。(拍手)  しかも、この際留意すべきことは、今回の覚書調印によってその大綱は決定されたものの、なお、本協定に至るまでには、弾力条項の運用をはじめ幾多の明確にすべき重要なる協議事項が残されているのでありまして、これを有利に解決するかいなかは、わが国業界に対してきわめて重大なる影響を及ぼすものであります。それには重ねて田中通産大臣の一そうの努力に期待しなければなりません。(拍手)  私はこの際申し上げたい。ただいまわれわれのなすべきことは、田中通産大臣問責することではなく、大いにこれを支援、激励することにあると存ずるのであります。(拍手)  わが国繊維業界は、わが国の経済をささえる最も重要にしてかつ輝かしい歴史を有する産業であります一今回締結される協定が、これら業界並びに百七十万に及ぶ従業員の諸君にできるだけ急激な打撃を与えないようにするとともに、その長期的安定をはかることは今後政府に課せられた重大な責務と言うべきであります。これに対し、先般内閣において臨時繊維産業対策推進本部が設置されたことは、まことに時宜を得たものと考えられますが、その対策実施にあたっては、現下のきわめて困難な経済情勢のもとにおいて、財政、金融、税制をはじめ、きめこまかい施策を勇断をもって実行せねばなりません。これを完遂し得る人は田中通産大臣をおいて他に人なく、まさに余人をもってかえがたきものと確信するものであります。(拍手)  以上、申し述べました理由により、このたびの田中通産大臣に対する問責決議案には断固反対するものであります。  以上をもって私の反対討論を終わります。(拍手)     —————————————
  9. 河野謙三

    議長河野謙三君) 原田立君。    〔原田立君登壇拍手
  10. 原田立

    ○原田立君 私は全野党を代表して、ただいま議題になっております田中通産大臣問責決議案に対して賛成の討論を行なうものであります。(拍手)  七〇年代の世界経済の動向は、自由貿易の拡大へと進むことが時の流れの必然であります。しかるに、このたびの日米繊維協定締結されたことは、まさに時代逆行の最たる保護貿易を推し進めることとなったのであります。このことは、世界の自由貿易の拡大にとってまことに憂うべき事態をかもし出したと言えるでしょう。  ニクソン大統領の選挙公約に端を発して、三年の長きにわたりくすぶり続けた日米繊維交渉が最悪の事態で終結したことは、国民にとってまことに不幸なことであり、日本人としてたえがたい屈辱であります。  さて、この日米繊維問題の、いわゆる佐藤ニクソン会談における密約説については、佐藤総理がどんなに否定されても、その欺瞞的行動であったことは国民周知のことであります。特にこのたびの政府間協定締結に際しても、六月二十九日の佐藤・ケネディ会談におけるアメリカ案提示に起因していることも事実なのであります。  繊維業界は、すでに七月一日から一方的な自主規制に踏み切り、政府も承諾の上、七百五十一億円という思い切った融資と補償措置を行なっており、こうした経過の中で、業界の一方的自主規制の二日前には、業界を裏切るような政治会談佐藤総理みずからが行なうとは言語道断もはなはだしい。私は、総理のこのような、経済の論理もわきまえず、政治の力づくによって解決しようとしていた繊維交渉当初からの考え方に、国民とともに憤りを覚えるのであります。  わが国における繊維産業は、有史以来、日本経済に最も長く貢献してまいった産業であるといわれております。そして日本経済が立ち直りを見せた戦後十年の日本経済発展の歴史は、すなわち繊維産業の歴史でもあったのです。そのことに経営者も従業員も限りない誇りと使命感を持って働き続けてまいったのであります。ここ十年間、ややもすれば、はなやかな重化学工業たる鉄鋼業、自動車、造船、電機などにその主役を奪われたかの観がありますが、黙々と構造改善及び設備の近代化と取り組んでまいったのが繊維産業なのであります。そのやさきに、業界の実態を無視した政府の無責任政治行為は断じて許すことができないのであります。(拍手)  特に、七月の内閣改造により田中通産大臣が就任したことで、党人としての経歴、力量を知る国民からは、ひそかにその活躍を期待され、大方の好感をもって迎えられていただけに、まことに残念でならないのであります。このような国民の期待にこたえるどころか、かえって、最初の試練とも言うべき日米繊維交渉において早くも挫折し、アメリカ経済外交の強圧に屈して、繊維政府間協定に、あえて主務大臣として仮調印をしたことは、まことに遺憾なことであり、その政治責任は重大であります。今回の政府間協定によってもたらされる影響は、業界傘下の各企業経営者並びにその従業員、家族を合わせて九百万人に及ぶ国民の深刻なる窮状と重大なる不安を与えたのであります。  そこで、私は、田中通産大臣問責決議案に全く同感、全面的に賛成する立場から、次にその理由を述べるものであります。  その第一は、通産大臣みずからが認めているように、繊維に関する国会決議の重要性を十分認識しながら、あえてこれを無視し、同時に、すでに業界で踏み切った自主規制に対し、これを支持することを表明しながら、国会にはからず、かつ、業界必死の反対を退けて政府間協定覚書に仮調印をしたことであります。  言うまでもなく、議会制民主主義のもとにおいて、国会は国権の最高機関であります。したがって、党派を越えて国会でなされた決議は、主権者たる国民の総意にほかならないのであります。ゆえに、民主国家における行政府責任者は、国会の意思を尊重することは当然であり、特に、党人である田中通産大臣は、いかなる圧力を受けようとも、行政府責任者として、議会制民主主義の立場に立って国会決議を尊重すべきであります。しかるに田中通産大臣は、小手先を弄し、政府間協定期間を三年にすることをもって本協定を行政権の範疇に引きずり込んだのであります。この形式的策謀は、十月五日、日本繊維連盟が明らかにしたとおりであります。また、重ねて明らかにされたことは、通産省は六月二十九日付文書によって、日本米国に対し多国間協定に努力することを約束しているのであります。すなわち、日米国間協定は、多国間協定前提であるというのは明瞭なのであります。したがって、この政府間協定が長期固定化することは、さきの綿製品協定の二の舞いになり、日本経済の重大な打撃を生ずることはきわめて明らかなことであります。  このように、国会無視はもちろんのこと、かかる策謀のもとに政府間協定を独断で行なった通産大臣の行為は断じて許されるべきものではないと思うのであります。  第二は、アメリカの一方的規制の脅迫に対し、その法的根拠を明確にせず、また、積極的にその点を解明せず、業界と一ぺんの相談もなく、政府間協定に見殺し発車をしたことであります。少なくとも、日米貿易経済委員会における通産大臣主張は、この問題の本質に触れたものでありました。特に、アメリカ国内消費に占める日本製品の比率わずか一・九%、アメリカ規制のための被害実証をあげ得ないことを知りつつ、しかも、規制による日本側被害の大きさを強調したことなどは、日本通産大臣として当然のことであります。また、アメリカ国内でも繊維交渉の強圧は、国益上の問題でなく、むしろ、ニクソン大統領の選挙公約の達成が目的である旨の批判を受けていることは御承知のはずであります。したがって、アメリカ規制のための根拠となる国内法を明示せず、しかも、実施不可能とされる一方的割り当て規制を振りかざしてきたことは、友好日本に対して、あるまじき隷属的扱いの行為であると見る以外にないと考えるのであります。このような不可解な要素を持つ政府間協定に調印するという態度は、国民の名において、当然認めることはできないのであります。(拍手)  第三は、アメリカの一方的押しつけによる判断で、対米繊維貿易に混乱を招くずさんな協定を調印しながら、通産大臣は、政府間協定によって総括的に五%の伸びを確保することを得たと、ぬけぬけと言う甘い考えは、通産大臣みずからの繊維に対する不明を暴露したものであります。このような結果は業界壊滅的打撃を与えるだけでなく、国内市場への圧迫となり、さらには、わが国製品の欧州市場への流入となって、新しい問題の提起となることは明らかであります。その上、あいまいもことした国益論によって政府間協定を推し進めようとする通産大臣の姿勢は、断じて容認できないのであります。  以上三点に要約いたしまして、田中通産大臣に対する問責決議案に賛成する討論を述べ、終わりといたします。(拍手)     —————————————
  11. 河野謙三

    議長河野謙三君) 藤井恒男君。    〔藤井恒男君登壇拍手
  12. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 私は、ただいま提案されました通商産業大臣田中角榮君に対する問責決議案に対しまして、全野党を代表して、これに賛成の討論を行なうものであります。  私は、本来、この問責決議案なるものは、三年余にわたって日本繊維産業を踏み台にし、わが国をしてニクソン大統領にかしずかせ、彼が言うなりの、まさに屈辱的な結果を導き出す演出を陰で試みた佐藤内閣総理大臣その人に当てられるべきものであると確信するものであります。しかしながら、今回の日米繊維協定仮調印の当面の責任者として、当然、田中通産大臣をここに糾弾し問責せねばならないのは、主権者国民を代表する本院として当然の行為であります。  私は、この際、あえて国民各位に対しまして、わが国繊維産業の実態なるものについて、若干申し述べたいのであります。  わが国繊維産業は、わが国業界で最も古い百年の歴史を保ち、幾多の辛酸をなめつつ、絶えず陰にあって、じみに黙々としてわが国の社会経済の開発に貢献してまいりました。ことに敗戦後、荒廃したわが国業界の中にあって、日本経済をよみがえらせた原動力が繊維産業であったことは、日本国民のひとしく認めるところであります。しかも、この繊維産業の特色は、そのほとんどが中小零細企業において構成され、そこに働く第一線の労働者の実に七十数パーセントが婦人労働者によって占められているのであります。そして、ここに働く婦人を主体にした多くの労働者は、かつて女工哀史という歴史が示すごとく、過酷な条件の中で黙々と額に汗して働きつつ、産業を守り、社会に貢献し、その歴史の中からみずからの生活を高めてきました。田中さん、あなたにも娘さんがおられるそうですが、みずからの問題として聞いていただきたいのであります。繊維産業に働く者の七十数%の婦人のほとんどが未成年者であります。彼女たちは、中学を卒業すると同時に、十五歳という若さで、初めて親元を離れて就職するのであります。目にいっぱい涙をためて親兄弟との別離を惜しみ、集団就職列車に乗り込む彼女たちの姿を、あなたもテレビで見たことがあると思います。幼い彼女たちは、初めて社会人として寄宿舎での集団生活の中で、二交代勤務に従事します。朝勤は午前五時からの八時間、午後勤は夜十時までの八時間の労働であります。しかも、彼女たちは、私たち産業日本をささえてきた歴史ある平和産業であり、この産業を通じて社会に貢献し、世界の平和に寄与するのだとの誇りと使命感に燃え、力一ばいがんばっております。さらに、最近の傾向として彼女たちは、働きながらりっぱな社会人たるべく、ほとんどの者が、みずからの余暇時間をさいて、定時制高校に通っているのであります。田中通産大臣、あなたは、今度の政府間協定強行妥結の大義名分は、日米友好関係の維持という名の国益の確保と言っておられるし、同時に、今回の協定は、弾力条項によって死にワクは解消するのだし、現状繊維輸出を減らしたり凍結するものでもない、五%増なんだから、と言っておられます。が、しかし、現に自主規制から品目別政府間協定に移行した綿製品長期協定においては、初年度の六三年で総ワクの九〇・四%、七〇年においては実に六三.四%しか遂行率をあげ得ない現状に照らして、あなたが業界の絶対反対を押えて品目別規制を強引に締結したことは、全くの誤りであり、米側の、現状を減らすことはないということばに乗せられ、ケネディ特使のことばをうのみにし、たいへんなあやまちを犯してしまったことになるのであります。現に、あなたは、いまになって、織機を十万台、いや最近では二十万台、三十万台買い上げると発言しておられるし、業界も、今度の政府間協定により三〇%減になると言っているではありませんか。一口に織機十万台を買い上げると言われるが、繊維産業は垂直的にすべて連鎖している産業であり、いまかりに織機十万台をカットすれば、その至近な前後工程、紡績、織物、染色、二次製品だけでも、その影響を受ける人員は二十八万人に及びます。さらに、原糸、原綿メーカー、問屋、商社にまで累を及ぼすなら、その波及人員はさらに増大します。いま、最も大切なことは、織機には人がついている。織機がなくなれば、そこで働いていた人はどうなるのかということであります。先ほど申した、親元を離れて、職場につき、あすに希望を持って働きつつ学んでいた若い女子労働者、彼女たちが職を失って親元へ帰れるだろうか。身寄りのない土地で彼女らが第二の職場を切り開いていけるだろうか。働きながら学ぶことに喜びを持った彼女たちのこれからの人生はどうなるのか。アメリカが、繊維失業者がいると、数字も示さず、見せかけの言辞を弄し、あなたはそれに加担したが、日本労働者、しかもアメリカのそれよりもはるかに高率の失業者がいま生まれようとするとき、あなたは一体どのような手を差し伸べているのですか。織機を一台二十五万円で買い上げ転廃業せしめればよいと言うが、転廃業させられた業者はこの不況の中でこれから何によって生きていくのですか。そこで働く最も大切な人の問題をどうするのか。一体あなたはどこの国の大臣だと言いたくなり、がまんがならないのであります。  田中通産大臣、これから申し上げる数字は、あなたがよく御存じのものであります。一九七〇年におけるわが国の対米繊維輸出米国の国内消費に占める割合は、全繊維において二・三%、化合繊は一・六%です。何でこのことが米国繊維市場を撹乱することになるのか。米国に、これから輸入量が急増することをおそれるという声があるかもしれないが、わが国繊維業界は、不況、特恵関税、ドルショックの三重苦にあえぎながら、なおかつ、秩序ある輸出を守るため、血を吐く思いで自主規制に移行したばかりではありませんか。一九七〇年のわが国の対米輸出は五十九億四千万ドル、そのうち繊維は約一割弱の五億六千万ドルでしかありません。これが米国経済にとってどれだけのドル救済になるのですか。しかも、米国繊維業界は、売り上げ、利益、雇用量ともにわが国繊維産業よりはるかに安定しているではありませんか。一九七一年上期の対米輸出の前年同期比の伸び率を見るとき、鉄鋼は三〇%増、自動車一二三%増、二輪自動車六一%増、テレビ四六%増、卓上電算機三〇%増。これに比して繊維はこれらを下回り、二六%増でしかありません。なぜこのようなとき繊維だけがねらい撃ちをされなければならないのか。あなたは過日の日米経済閣僚懇談会で、これらの数字米国にぶっつけ、米国政府間協定締結への申し出を粉砕したとみずから発表なさいました。そして、あなたは旬日を出ずして、まさに突如として、日米友好維持のためと称して、米国のどうかつ外交の前に屈し、屈辱的繊維協定締結してしまったのであります。私は、この間の事情を冷静に判断するとき、ワシントンの外交筋も言明しているごとく、今回の繊維交渉が、一つに、繊維輸入規制は、ニクソン大統領が南部の支援を得るため、大統領選出馬の際公約済みであった、二つに、佐藤ニクソン会談佐藤首相の発言をニクソン大統領は約束と受け取った、この二点の理由が最も明確な分析以外の何ものでもないと確信せざるを得ません。一九六九年十一月の佐藤ニクソン会談以降の日米政府動きは、もともと米側の言うなりに政府間協定締結しか選択の余地がなかった仕組まれた筋書きであったと断ぜざるを得ません。この結果、一つの産業を経済外的要因で、すなわち政治の強圧で壊滅的状態に追い込み、しかも、これからの繊維産業の生くる道を何らさし示していないのであります。このことは、わが国憲政史上に最大の汚点を残したものであり、その当事者たる田中通産大臣は、当然その責めを負わなければなりません。わが国が今回の政府交渉で示した対米追随の屈辱的外交姿勢は、韓国をはじめとする近隣友邦諸国に大きな失望と迷惑を与えたことはもとより、米国をして、日本は結局、力ずくでないと応じてこない、あるいは、強硬な態度に出れば日本は受けるという印象を与えたことは否定できず、これからのわが国外交上はかり知れない損失をこうむることになると憂うるものであります。  以上私は、田中通産大臣問責決議案について賛成する趣旨を申し述べてまいりました。  ここで、これを要約して申し上げるなら、わが国は憲法上、国民に新たな義務を課しあるいは国民の権利を制限ないし侵害する場合は、国権の最高機関である国会の議決を経た法律によるか、国会承認した条約などによらねばならないたてまえをとっているのであります。ところで、本協定締結により、わが国繊維産業界が対米輸出規制を受け、貿易業者はその自由な取引を制限され、ひいては繊維業者の転廃、倒産、関連企業労働者の賃金カット及び解雇等、国民の営業権、財産権、勤労権等の侵害が相次いで予見されるのであります。にもかかわらず、政府が本協定について国会承認を取りつけようとせず、また、取りつける意思もないことは、国会その他においてしばしば公言しておるところであります。のみならず、従来の国会の慣例によれば、一つ、新たに相当額の財政支出を必要とせず、二つ、協定の効力が長期にわたらず、三つ、国際法、国際条約並びに国際慣例に背馳する中身を含まない協定に限って国会承認を必要としないとされているのであります。いま仮調印された協定は、被害企業等の補償費、救済費等に少なくとも一千億円をこえる新たな支出が見込まれております。協定内容に明らかなように、三年をこえて長期に規制が継続されることがあらかじめ予測されております。ガット等の国際取りきめの精神に明らかに背馳するものであります。しかるに政府は、本協定を、あえて詭弁を弄して国会承認の手続を避けようとしているのであります。政府のこのような態度は全く不可解で、まさに不当、違法であり、さらに違憲のそしりを免れ得ないのであります。ことに本協定は、三回にわたる国会決議趣旨に反し締結されたものであり、国権の最高機関たる国会の意思に反し、憲法の求める手続もとられていない本協定は、無効であると言わざるを得ません。政府は、国民の権利を守るためではなく、憲法により保障された国民の基本的権利を侵害するために存在するのかと言わざるを得ないのであります。  田中通産大臣、あなたは、日米繊維協定仮調印の当面の責任者として、えりを正し、国民のために、国家百年のために、国民に謝罪し、もってその政治責任をとらなければなりません。  私は、ここに、ただいま上程されました田中通産大臣問責決議案について賛成の趣旨説明し、満場の御賛同を得たいのであります。  以上をもちまして問責決議案討論を終わります。(拍手
  13. 河野謙三

    議長河野謙三君) これにて討論は終局いたしました。  これより本案の採決をいたします。  表決は記名投票をもって行ないます。本案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。  議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  14. 河野謙三

    議長河野謙三君) 投票漏れはございませんか。——投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。    〔投票箱閉鎖〕
  15. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  16. 河野謙三

    議長河野謙三君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数         二百四十三票   白色票             百十票   青色票           百三十三票    〔拍手〕  よって、通商産業大臣田中角榮問責決議案は否決されました。(拍手)      ——————————   〔参照〕  賛成者(白色票)氏名      百十名       塩出 啓典君    喜屋武眞榮君       野末 和彦君    山田  勇君       内田 善利君    藤原 房雄君       栗林 卓司君    藤井 恒男君       中村 利次君    青島 幸男君       原田  立君    中尾 辰義君       木島 則夫君    柴田利右エ門君       上林繁次郎君    矢追 秀彦君       三木 忠雄君    阿部 憲一君       松下 正寿君    萩原幽香子君       峯山 昭範君    田代富士男君       柏原 ヤス君    黒柳  明君       田渕 哲也君    中沢伊登子君       沢田  実君    山田 徹一君       鈴木 一弘君    宮崎 正義君       向井 長年君    高山 恒雄君       渋谷 邦彦君    二宮 文造君       多田 省吾君    小平 芳平君       中村 正雄君    村尾 重雄君       伊部  真君    田  英夫君       上田  哲君    工藤 良平君       竹田 現照君    戸田 菊雄君       前川  旦君    沢田 政治君       杉山善太郎君    田中寿美子君       松永 忠二君    森中 守義君       野上  元君    西村 関一君       中村 英男君    阿具根 登君       森 元治郎君    瀬谷 英行君       羽生 三七君    加藤シヅエ君       藤原 道子君    鶴園 哲夫君       鈴木  強君    片岡 勝治君       辻  一彦君    佐々木静子君       須原 昭二君    加藤  進君       水口 宏三君    小谷  守君       神沢  浄君    鈴木美枝子君       宮之原貞光君    小笠原貞子君       杉原 一雄君    竹田 四郎君       安永 英雄君    松本 英一君       和田 静夫君    塚田 大願君       大橋 和孝君    川村 清一君       中村 波男君    森  勝治君       村田 秀三君    山崎  昇君       星野  力君    林  虎雄君       佐野 芳雄君    松本 賢一君       小林  武君    茜ケ久保重光君       松井  誠君    渡辺  武君       須藤 五郎君    矢山 有作君       占部 秀男君    大矢  正君       横川 正市君    小柳  勇君       河田 賢治君    岩間 正男君       加瀬  完君    吉田忠三郎君       小野  明君    田中  一君       足鹿  覺君    成瀬 幡治君       藤田  進君    秋山 長造君       野坂 參三君    春日 正一君     —————————————  反対者(青色票)氏名      百三十三名       松岡 克由君    久次米健太郎君       亀井 善彰君    川上 為治君       熊谷太三郎君    温水 三郎君       濱田 幸雄君    森 八三一君       小山邦太郎君    棚辺 四郎君       中村 禎二君    橋本 繁蔵君       原 文兵衛君    桧垣徳太郎君       志村 愛子君    竹内 藤男君       高橋 邦雄君    柴立 芳文君       古賀雷四郎君    黒住 忠行君       小林 国司君    今  春聴君       大松 博文君    玉置 猛夫君       永野 鎮雄君    山崎 五郎君       石原慎太郎君    長田 裕二君       菅野 儀作君    石本  茂君       佐田 一郎君    鬼丸 勝之君       安田 隆明君    藤田 正明君       源田  実君    長谷川 仁君       二木 謙吾君    河口 陽一君       木村 睦男君    土屋 義彦君       中村喜四郎君    栗原 祐幸君       木島 義夫君    米田 正文君       津島 文治君    徳永 正利君       丸茂 重貞君    平島 敏夫君       江藤  智君    鍋島 直紹君       新谷寅三郎君    植竹 春彦君       木内 四郎君    杉原 荒太君       上原 正吉君    松平 勇雄君       郡  祐一君    古池 信三君       安井  謙君    重宗 雄三君       細川 護煕君    岩動 道行君       上田  稔君    佐藤  隆君       中山 太郎君    川野 辺静君       河本嘉久蔵君    金井 元彦君       片山 正英君    梶木 又三君       岩本 政一君    若林 正武君       長屋  茂君    増田  盛君       矢野  登君    山本敬三郎君       渡辺一太郎君    鈴木 省吾君       山崎 竜男君    高田 浩運君       佐藤 一郎君    中津井 真君       寺本 廣作君    久保田藤麿君       園田 清充君    鹿島 俊雄君       植木 光教君    玉置 和郎君       町村 金五君    橘直  治君       高橋文五郎君    大森 久司君       岡本  悟君    吉武 恵市君       大谷藤之助君    塚田十一郎君       小笠 公韶君    前田佳都男君       堀本 宜実君    柴田  栄君       大竹平八郎君    平井 太郎君       剱木 亨弘君    青木 一男君       迫水 久常君    西田 信一君       増原 恵吉君    赤間 文三君       斎藤  昇君    林田悠紀夫君       船田  譲君    今泉 正二君       嶋崎  均君    稲嶺 一郎君       世耕 政隆君    初村滝一郎君       星野 重次君    山本茂一郎君       山内 一郎君    柳田桃太郎君       宮崎 正雄君    楠  正俊君       高橋雄之助君    内藤誉三郎君       西村 尚治君    後藤 義隆君       伊藤 五郎君    白井  勇君       平泉  渉君    田口長治郎君       八木 一郎君    山本 利壽君       山下 春江君      ——————————
  17. 河野謙三

    議長河野謙三君) これにて休憩いたします。    午後四時五十分休憩      ——————————    午後七時三十四分開議
  18. 河野謙三

    議長河野謙三君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  この際、日程に追加して、  昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)  以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 河野謙三

    議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。予算委員長徳永正利君。    〔徳永正利君登壇拍手
  20. 徳永正利

    ○徳永正利君 昭和四十六年度補正予算三案につきまして、予算委員会における審議の経過並びに結果を報告します。  今回の補正予算三案の内容につきましては、十月二十三日政府側から説明が行なわれました。十月三十日衆議院からの送付を待って、十一月一日より九日まで七日間、国政全般にわたり熱心な質疑が行なわれましたが、そのうちおもなものにつき概要を御報告申し上げます。  まず中国問題につきまして、日華平和条約は中華民国政府の国連加盟が前提であり基礎であったことからすれば、今日、国府が国連から追放されたことによりその土台はくずれたのではないか、政府はこの際日華条約を破棄する考えはないか、日華条約があっては、日中の国交正常化はむずかしいと思うが、今後どのような方法で日中接近を進めていく決意であるかなどの質疑がありました。  これに対し佐藤内閣総理大臣及び福田外務大臣より、日華条約は吉田書簡に基づいて国府の国連加盟が前提となっていたことからすれば、国連追放によりその基礎はくずれたとも言えるが、しかし、日華条約があることは現実であり、国際信義の上から条約には権利もあれば守る義務もあるわけであって、日華条約の取り扱いについては慎重ならざるを得ない。中華人民共和国の国連代表権が決定したのであるから、この国際世論を踏まえて、中国は一つであるという従来の方針で、日中国交正常化の交渉過程において日華条約の扱いを解決していく所存である。日中復交の進め方については、しかるべき人を通ずるとか、国連安保理事会の場を利用するとか、いろいろ考えられるが、政局を担当する者が矢面に立ってまっ正面から取り組んでいく決意であるとの答弁がありました。  次に、沖繩問題につきましては、政府の努力が足りぬため返還後も基地の密度は一向縮小されず、かえって自衛隊が派遣されることに沖繩県民は多大の不安を感じている。またロジャーズ米国務長官は上院の証言で、沖繩基地の維持、核その他装備、兵員等重大な変更に対して日本政府が事前協議でノーと言うことはないと発言しているがどう思うか。沖繩には核基地が現存しており、県民は危惧の念を持っている、核兵器撤去の安全策や点検にどのような具体策を持っているか。沖繩の返還時期について、米国は七月一日を考えているようだが政府の考えはどうか等について質疑がありました。  これに対し佐藤内閣総理大臣及び福田外務大臣より、基地縮小については最大努力したが、了解覚書のABC表を動かすことは困難である。しかし、国際情勢の変化によっては規模を縮小できる余地はあるし、返還後実行上の努力で何か考えられるのではないか苦心している。自衛隊の派遣は、日本国民全体で国土を守るということで県民の理解を得たい考えである。また返還後は本土に適用されているのと全く同じ安保条約が適用されるのだから、現状とは万事異なる事情になるのであって、沖繩からの自由出撃など事前協議の対象にはイエスもノーもあり得るが、核についてはイエスと言うことはない。核兵器の存在については明らかでないが、その撤去には多大の危険性が伴うことはよくわかるので、米側とも十分折衝し県民の安心を得られるよう安全については万全の措置をとるつもりである。沖繩の復帰については日米双方とも準備万端が必要であるが、沖繩県民の意思は一日も早い復帰を望んでいると確信しているので、四月一日復帰ができるよう最善の努力を尽くしたいとの答弁がありました。  次に、財政問題につきましては、昭和四十六年度補正予算に盛り込まれている七千九百億円の公債増発は、財政法第四条の拡大解釈による実質的な赤字公債と見るべきであって、昭和四十年度と同様、特例法を国会に提出すべきではないか。またこのようなやり方が慣例となれば、公債発行の節度が失われ歯どめがなくなるおそれがあるのではないか。今回の所得税減税は上に厚く下に薄い措置であるばかりでなく、減税の恩恵に浴しない階層に対し何らの配慮もなされていないのは不公平ではないか。政府は予想される今後の財源難に対処するため付加価値税その他各種新税の創設を考えているのではないかとの質問がありました。  これに対し水田大蔵大臣より、七千九百億円の国債増発は全部公共事業遂行のための建設公債として使用されるものであり、財政法第四条に何ら違反するものではない、また、今回特例法を提出しないのは、四十年度においては当初予算において公債発行を予定していなかったが、四十一年度以降は当初予算において公債発行による財源調達を行なっているので、あらためて特例法を制定することは、法律上特別の意味がないと判断したからである。また、赤字公債のほうがむしろ歯どめがないとも言えるわけであって、財政法第四条による公債対象経費の決定、さらに市中消化の原則を堅持するほうが健全財政を守れると考えている。なお、公債発行については種々の議論もあるので、財政制度審議会に付して検討したい。今回の所得税減税は、税率の調整を行なっている関係上、一見、中所得階層に重点を置いているように見られるが、本年度当初の所得税減税分とあわせ考えれば、低中所得階層の税負担軽減割合はバランスがとれていると思う。また、減税の恩恵に浴しない階層に対し社会保障上の措置が行なわれないのは不公平であるとの批判もあるが、一時的な不況対策のために個々の社会保障制度を手直しすることは、政策間のバランスを失するおそれがあるので今回は見送ったわけで、この点は来年度予算で十分考慮を払う所存である。財源が乏しいため予算編成に苦慮しているのは事実であり、このため税の洗いざらい検討を考えているが、付加価値税については準備期間も必要であり、早急な実施は困難である旨の答弁がありました。  最後に、経済問題につきましては、経済の高度成長政策はいわゆるドルショックが起きなくても経済政策路線の切りかえを必要とする時期に来ていたと思うが、政府の考えはどうか。ベトナム戦争の結果生じた米国のドル防衛政策のおかげで日本経済は深刻な影響を受けているが、通貨調整についての話し合い現状及びこれに対する政府の具体的対策はどうかなどの質疑がありました。  これに対し水田大蔵大臣及び木村経済企画庁長官より、ドルショックがあったからにわかに財政政策の転換をするのではなく、日本経済の内在的な要請からも転換しなければならぬ時期にあったわけで、政府はすでに、いわゆる円対策八項目その他を実施中であり、不況対策と経済政策の転換を同時に行なえる一石二鳥の環境にあると考えている。国際収支に余力のある今日こそ、軌道修正のため内外経済政策の総点検を行ない、従来のGNP、輸出、民間設備投資第一主義の考え方を反省して、国民福祉の向上、環境整備、公害防止など、社会資本の思い切った充実をはかれば景気の回復は困難でないと考える。ドルショックによる日本経済への影響は、実質成長率にして一・五%ないし二%程度であり、特に影響の大きい輸出関係中小企業等に対しては十二分の対策を講じ、遺憾なきを期している。通貨問題は各国とも早期解決を望んでいるが、ドルの切り下げ、課徴金の撤廃、米国国際収支の改善幅などについて国際間に意見の一致を見ていないのが現状であり、結局、平価調整は多国解決以外に方法はなく、円の単独切り上げは意味を持たないとの答弁がありました。  委員会での質疑は、このほか、アムチトカ島の核実験、日米繊維交渉、教育制度、総合農政、物価問題、公害対策、国鉄再建問題、その他各般の事項について活発な論議がかわされましたが、その詳細は会議録によって御承知を願いたいと思います。  かくて、本日をもちまして質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して山崎委員が反対、自由民主党を代表して初村委員が賛成、公明党を代表して塩出委員が反対民社党を代表して木島委員が反対日本共産党を代表して加藤委員が反対の旨、それぞれ意見を述べられました。  討論を終局し、採決の結果、昭和四十六年度補正予算三案は、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  21. 河野謙三

    議長河野謙三君) 三案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。松永忠二君。    〔松永忠二君登壇拍手
  22. 松永忠二

    ○松永忠二君 私は、日本社会党を代表し、昭和四十六年度補正予算三案に対し反対いたします。  佐藤内閣の最大の欠陥は、長年政権を担当してきた自民党内閣の政策に対する反省がなく、その政治責任を明らかにしないことであります。  現在、日中関係について、長期的展望に立った基本政策を持たず、その場その場の外交工作に終始した結果、国連においてむざんにも国際世論の否定的審判を受けたことに対する反省とその政治責任を明らかにすることを強く求められていることは申すまでもありません。  繊維についても、国会決議を無視し、二者択一を迫る米国政府の強圧的態度屈服しながら、あえて国益と強弁し、行政的措置と称して、国会政府間協定を提案して、民主的決着をつけることを避けてその政治責任を明らかにしようとしないのであります。  経済問題について、日本が不況の中で通貨調整に追い込まれ、七千五百億の国債の発行を含む補正予算を提案せざるを得なくなったことに対する反省とその政治責任の意識が欠除しているのであります。総理は、戦後体制の行き詰まりが経済面で国際通貨の危機となったと言って、その責任を戦後体制にかぶせ、大蔵大臣は、国際通貨不安の根本的な原因は米国国際収支の悪化したことにあると、これまた責任をなすりつけているのであります。蔵相は、国際収支の黒字の累積は、もっぱら不況や投資などの異常が原因で、日本には基礎的不均衡はないと主張していますが、西独のシラー経済相は、世界最大の黒字国である日本に基礎的不均衡がないなら、世界じゅうの経済学の辞典から「基礎的不均衡」という文字を削除するほうがよいと言っています。世界一の赤字国の米国が基礎的不均衡なら、世界第二の黒字国の日本にも基礎的不均衡があるという考え方のほうが自然でしょう。米国の不当が責めらるべきは当然ですが、同時に、誤った景気調整によって国際収支の黒字が大幅になったことや、より根本的には、日本経済の円平価調整を不可避ならしめるような、長い輸出第一主義と低い労働分配率、社会資本の不足、生活環境の破壊の上に成り立った高度経済成長など、経済発展の体質に対する反省と、これを推進してきた自民党政府責任を感ずべきであります。(拍手)  政府が景気浮揚の方法として補正予算に組み込まれたものは、公共投資、減税、大幅な国債発行の三本の柱であります。今回政府は補正にあたって七千九百億の国債の発行を予定しました。当初発行予定額を含めて一兆二千二百億円であり、国債依存度は一二%になります。景気浮揚のため財源不足を国債発行に求めることを否定するものではありませんが、政府態度には、総額が、公共事業費、出資金、貸し付け金のワク内なら、歳入不足を補う内容であろうが、所得減税の財源だろうが、どんどん国債を出せという安易な姿勢が見られます。これは財政法第四条一項にいう建設国債発行の趣旨を乱用するものであります。また、公共事業その他の施設の七〇%が国債でまかなわれているのは、一般会計の予算構成上からもはなはだ不健全と言うべきであります。四十七年度は一兆七千億の国債発行も考えられるというのでありますから、景気情勢の変化に伴う国債収束の容易でないわが国政治風土からも、累積していく国債を財政体質改善を進めながらどう処理していくかという一応の構想を示して、その歯どめをする必要があります。この安易な姿勢は、不況下のインフレを心配させるものがあります。  為替レート一〇%の引き上げは、卸売り物価による間接効果を含めて、消費者物価〇・八%、卸売り物価二・〇一%引き下げの効果があるといわれます。しかし、それには平価調整を物価に反映するための市場環境の整備、競争原理の貫徹、輸入自由化の推進、関税の引き下げなど、原価——コストの低下を物価面に十分生かす諸政策が必要であります。通貨調整のときこそ流通革命の好機であり、インフレ退治の絶好の機会であります。ところが、事実上の円切り上げの変動相場移行の影響は現在のところ皆無で、むしろ物価上昇を見ている状況です。公共物資の国鉄運賃割引廃止、トラック運賃、バス代等、公共料金の値上げが簡単に認められつつあります。これでは不況下の物価高の心配が十分ありますのに、大蔵大臣は、物価を心配していたら何もできない、いま心配しなくても済む状態だと言い切っていますが、はたしてそうでしょうか。内閣の調査でも、いま八〇%の人たちが物価上昇の不安感を持っています。政府輸出関係中小企業について約七十五億の追加、対米繊維輸出規制対策費六十二億を計上しています。不況と円切り上げで打撃を受ける中小企業地域、個人に十分な対策を講ずることは必要でありますが、本土復帰と円切り上げによる二重の打撃を受ける沖繩県民に対する補償も不可欠なことであります。ドルショックと、これに便乗する経営者の手で、人員整理や臨時工、出かせぎの解雇、新規採用の取り消し等が行なわれています。無謀な繊維政府間協定により数十万人の失業者と多数の倒産が出ると、繊維協会の大屋会長は警告しています。公務員の給与引き上げも、その要求とは大きな隔たりがあります。ドルショックのもとで賃金の抑制は当然であり、労働時間の短縮など、いまそれどころではないと、日経連も日本商工会議所も言っています。これでは、変動制下の最大の犠牲者は労働者であり消費者だということになります。  次に減税であります。政府はこの補正で千六百五十億の減税を提案しています。年内減税はけっこうでありますが、中堅所得者という名の高額所得者の優遇のため、多くもない減税額の二分の一がさかれているのであります。先進諸国に比べて低所得者層の所得税負担は重く、租税特別措置や企業交際費非課税が多く、諸外国に比較して軽い法人税とのアンバランスを是正する必要があります。ここで特に指摘しなくてはならないことは、減税の恩典に浴さず、かつ不況の中の物価高で苦しむ低所得者層への配慮を含めて社会保障を抜本的に拡充することや、公害対策の充実について配慮が払われていないことであります。これでは、総理大臣が、社会資本、社会保障を充実し、国民福祉と経済の調和のとれた新たな繁栄をつくり出すと言ってみても、大蔵大臣が、経済成長の成果を国民生活の質的充実に結びつけると演説してみても、全くのから念仏で、そこに見られるものは、なりふりかまわぬ景気対策のみであります。国際通貨危機と不況の中で財政支出の増加に積極的に踏み切ることは、それとして大切なことでありますが、具体的内容及び支出の対象について、従来の景気刺激対策と異質の配慮が必要であります。新しい日本経済の体質改善の目標に沿って集中的な投資を計画的に振り向けるべきであります。およそ望ましい経済成長率とは、従来のようにGNP何%ということではなく、望ましい社会保障、社会資本、公害規制、労働時間の短縮などの構造上の変革を行なうことの結果として得られる経済成長率でなくては何の意味もありません。(拍手)  最後に、公共投資の問題であります。公共投資は、一般会計で事業規模約五千億が追加されました。本年度は、公共事業だけでも事業ベースで三兆八千九百億という巨額となります。公共投資は景気調整政策として期待されるものでありますが、本来の機能は短期の経済変動を調整するためにあるものではなく、長期的な資源配分の観点から取り上ぐべきものであります。景気調整として利用する場合には、機動性を欠き、浪費性を持ち、労働力、技術力の不足や地価の高騰等の欠陥もあります。したがって、機構改革を含む慎重な準備と地域計画、各省庁の事業別計画と斉合し、着手順位の一元的な判断ができる措置が必要であります。この長期的な資源配分政策の中で正しく位置づけられてこそ、巨額な国民の資金が浪費なく活用され、立ちおくれた社会資本の充実が得られるのであります。しかし、経済社会発展計画の修正もまだ行なわれておらず、本年度の公共投資が、補正を含めて、こうした計画の中で効果的に行なわれているという保証はどこにも感ぜられないのであります。今回、公共事業を追加するに伴って、地方団体に千五百二十二億の地方債の発行が必要であります。また、国の減収に伴って地方交付税も千二百七十二億が減額されますし、不況のために千三百三十四億の減収が見込まれます。公共事業総額の約四割が地方公共団体の負担であります。地方財政は再び財政の危機に直面せざるを得ないのであります。豊かな国民生活や福祉の充実は、まず地域社会から実現されていくのでありますから、地方公共団体の果たす役割りは今後一そう重要さを加えてまいります。地方自治体の自主性を強める方向で財源や事業の再配分ということが真剣に取り上げられなくてはなりません。  以上、私は、補正予算を通じて政府の経済政策の欠陥を指摘してまいりました。繰り返し申したいことは、国際通貨制度の危機と景気不況の中で政府に求められているものは、過去の日本経済に対する反省とこれに基づく経済政策の転換にあります。現内閣は、激動する国際情勢の中で日中復交の政治課題を遂行する能力があるかどうかを危ぶまれているのであります。経済問題についても、不況回復をはかりながら日本経済の体質改善や転換をはかることができるかどうかということであります。また、国際通貨制度の危機の中で、世界経済の新しい秩序をつくり、先進国としての責任を積極的に果たし得るかどうかということであります。私は、この経済的課題を解決するためにも、長い政権担当の中で行なってきた政策に反省と政治責任を欠く佐藤内閣は退陣を決意すべきときだと存じます。私は、これを強く要望して、反対討論を終わります。(拍手)     —————————————
  23. 河野謙三

    議長河野謙三君) 若林正武君。    〔若林正武君登壇拍手
  24. 若林正武

    ○若林正武君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和四十六年度補正予算一案につきまして、賛成の討論を行なうものであります。  わが国経済の動向を見るに、昨年の秋以来景気は急速に下降線をたどり、自来沈滞を続けてまいりましたが、四回にわたる金融緩和措置をはじめ、弾力条項の発動による財政投融資のてこ入れ、公共事業の繰り上げや、長期金利の引き下げ等一連の景気浮揚策を打ち出したことにより、六、七月にかけて景気はようやく回復のきざしを見せ始めましたが、去る八月十五日、米国の新経済政策の発表に伴って輸入課徴金の賦課及び円の為替変動幅の制限の暫定的停止等の新たな事態が起こり、わが国の実態経済面に大きな影響を生じたのであります。  今回の補正予算は、このような経済事情を背景に景気停滞による歳入の減少、景気浮揚のための大幅な公共投資の増額と所得税減税追加の要請というむずかしい環境の中で編成されたのであります。  以下二、三の事項について申し述べてみたいと思います。  まず、国債の増発と公共投資についてであります。政府は、昨秋以来の景気停滞に対処して、公定歩合の引き下げや、公共事業の繰り上げ施行など景気浮揚対策を実施してまいりましたが、ドルショック以後の異常な経済情勢に立ち至り、国民生活の向上を中心とする社会資本充実のために積極的な国債政策をとることとされたのであります。当面の経済運営の緊急課題は財政を中心とした積極的な景気振興をはかることであります。金融はすでに緩和されておりますが、企業の設備投資意欲は盛り上がらず、金融面からの景気浮揚にはおのずから限界があることを示しております。公共投資の拡充は有効需要を喚起するだけでなく、民間設備投資に対する社会資本の著しい立ちおくれを回復して均衡ある経済を建設するためにもぜひとも必要であり、いまこそ絶好の機会であろうと思います。政府が、このような観点から、今日の異常事態に対処して国債を増発し、景気の回復をはかったことは、経済政策としてまさに当を得たものであります。  次に、所得税減税についてであります。政府は、不況下の税収不足の中で異例ともいわれる大幅な所得税の年内減税を行なうこととしております。その内容は、各種控除の引き上げによる課税最低限の引き上げと税率の緩和を中心とするもので、その規模は千六百五十億円にのぼり、年度当初の所得税減税の規模にまで達しております。しかも、本年四月にさかのぼって年内実施を見るに至ったことは、全国民の喜びとするところであります。このような所得税の年内減税は、国内の消費需要を喚起し、景気浮揚に即効性を発揮することが期待されるところであります。さらに税制面において、米国輸入課徴金制度の実施により、打撃を受けた中小企業者のための救済措置として純損失または欠損金の繰り戻しによる還付制度の特例を設けることにしております。  最後に、公務員の給与改善に関してでありますが、私はこの機会に、政府並びに公務員諸君に要望いたしたいのであります。申すまでもなく、人事院勧告は公務員の能率増進と民間給与との均衡をはかる趣旨から国会及び政府が尊重することは、公務員制度を適正に運営するための重要な課題でありまして、今回政府がきびしい国家財政のもとでその完全実施を行ないましたことを是とするものであります。政府はこのような高額の給与改定を行なうにあたっては、今後は一段と行政能率の向上をはかるほか、行政機構の簡素合理化の強力な推進を望みたいのであります。また、公務員諸君においては、公務員が国民全体の奉仕者であるという自覚を新たにし、その給与が国民の負担においてまかなわれていることに深く思いをいたして、厳正な綱紀の維持と公務員倫理の高揚につとめることはもちろんのこと、ふるって公務能率の増進と行政サービスの向上に徹していただきたいと思うのであります。  以上、今回の補正予算案は、四十六年度当初予算作成後に生じました緊急事項を現行の法規、制度に基づいて財政措置を講じたものでありまして、そのいずれも適切な処置と考えるものであります。  さらに、今回の補正予算案は、成長型から福祉型へと財政政策が転換されようとするときに編成されたもので、七〇年代の福祉社会の建設を目ざして、未来を先取りする新しい政治路線、経済路線への出発点となることを期待し、補正予算三案に対する私の賛成討論を終わります。(拍手)     —————————————
  25. 河野謙三

    議長河野謙三君) 宮崎正義君。    〔宮崎正義君登壇拍手
  26. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております昭和四十六年度補正予算三案に対し、反対討論を行なうものでございます。  佐藤内閣が発足以来、人間尊重、安定成長を政策の基調としてまいりましたが、いまやその実態は、高度経済成長をますます増長させ、そのため二本の柱はむざんにも打ち砕かれ、危殆に瀕しているとも言えます。物価高騰は依然と続き、低福祉、低賃金、未曾有の不景気は、全く国民大衆の生活を窮地に追い込み、さらには、公害の多発は社会環境を破壊し、深刻な不安をかり立てているのであります。それに加え、ニクソン大統領の新経済政策によるドルショックは、まさしく政府の通貨政策の誤りであり、国民に膨大な損失を与えたのであります。のみならず、沖繩県民のドルショックの打撃は甚大であるばかりか、干ばつ、台風による被害も忘れられたのか、沖繩対策予算については全く貧困な措置で、沖繩県民の期待を大きく裏切っております。  さらに、中国の国連復帰という世界的な政治、経済の展望を失った佐藤内閣の対米依存の経済外交の行き詰まりは、いまさら申すまでもありません。  このような現状に照らし本補正予算を見るとき、佐藤内閣政治姿勢は依然として変わらず、転換が何らなされていないのはまことに残念であり、最大多数の国民大衆の立場に立つとき、断じて認めるわけにはまいりません。  以下、その理由を五点にわたって述べるものであります。  反対の第一の理由は、不平等な所得税減税の内容であります。国民各位のたゆまざる御努力に報い、あわせて景気のすみやかな回復を目的とした年内減税を実施しようとする政府の意図は認めるにやぶさかではありませんが、問題はその減税の内容であります。今回の減税は、課税最低限の引き上げと税率の緩和を行なっておりますが、高額所得者が優遇され、低所得者に冷たいものとなっております。すなわち、夫婦子供二人の場合、年収百五十万円、つまり月給十万円程度では、減税額はわずか月四百円余りであり、一方、全勤労者のわずか三%にすぎない年収三百万円以上が優遇されております。たとえば、年収三百万円では年に二万八千二百五十八円、年収五百万円では年八万八千三百四十七円の減税額となるのであります。その上、全国就労者の四割に当たる約二千万人の課税最低限以下の低所得者にとっては、びた一文も減税の恩恵はないのであります。したがって、今回の減税は、一流企業の部長、高級官僚を優遇し、不平等を増長させる処置と言わなければなりません。また、減税の一つの目的である景気の回復をねらうという点から考えても、もっと低所得者に減税の重点を置くべきであったことは、税制調査会においても指摘されたとおりであります。これら税制調査会での意見も無視され、さらに、サラリーマンが期待していた給与所得控除の引き上げ、また二分二乗方式等もついに見送ってしまったのであります。このような幾多の矛盾をはらみ、結局は、景気刺激に名をかりた高額所得者を優遇する減税政策には反対せざるを得ません。  第二に、社会保障に対する施策の貧困であります。生産第一主義の政策を福祉優先に改めるというにもかかわらず、物価上昇に苦しむ低所得者階層、お年寄り、身体障害者、生活保護者等への社会福祉の充実こそ、まず第一に補正予算に取り入れるべきであります。補正予算の社会保障費は、全くないと言わなければなりません。政府は、公共事業関係費の増額で福祉優先を貫いたと主張しておりますが、この公共事業費の内容は、道路、港湾整備等を中心とする産業基盤整備が優先され、国民の切なる願望である住宅建設への配慮にきわめて薄く、最も強く要望されている社会福祉施設等のための予算はわずか四億円、まさに皆無と言わなければなりません。このような、経済成長より福祉を願う国民の気持ちを無視し、産業基盤整備を優先し、社会福祉への配慮のなされていない内容には、強く反対せざるを得ないのでございます。  第三に、今回の不況で最も大きな打撃を受けている中小企業に対する施策の不十分な点であります。米国の、国際正義に逆行する理不尽な処置により、対米貿易も大幅に低下しようとしており、全国の中小企業者の景気低下による被害は筆舌に尽くせぬものがあります。なかんずく、アメリカの理非をもわきまえぬおどし外交に屈した繊維政府交渉の結果、全国約九百万人の繊維関係者の打撃は、その最たるものであります。その対策として、本補正予算には中小企業対策費として七十六億円、対米維繊輸出規制対策費として六十二億円が組まれておりますが、その大半は融資であり、ほんとうに困っている小規模企業は、担保がないため貸し出しができず、名のみありて実質のない予算と言わなければなりません。佐藤内閣の失政の結果生じたこれらの中小企業の打撃の救済としては、まことにさびしい限りでございます。このような申しわけ程度の対策には断じて同意できないものでございます。  第四に物価対策の欠除であります。最近の消費者物価の上昇は異常であり、全国平均では、九月末で、対前年度同月比八・四%の上昇で、特に庶民に最も関係の深い生鮮食料品の高騰は目をみはるものがあることは御存じのとおりでございます。また、今回政府のとった景気対策は、総需要を喚起することになり、結果は、物価を押し上げ、わが国も本格的なスタグフレーションへ突入することは、時間の問題ともいわれ、いまこそ、不況対策と並行して生産面、消費面に強力な物価対策を実行することこそ最重要事項であります。さらに政府は、野菜価格の安定のため、事業団をつくるとか、流通庁をつくるとか、流通機構に直接介入するとか、口先だけで言うのみで一歩の前進もないことは、まことに無責任のそしりを免れることはできません。緊急を要する物価対策でありながら、本補正予算の内容を見る限り、何らの手も打たれておらず、国民、特に低所得者にとって最も重大事である物価対策に全く熱意が示されていないことを強く指摘しておきたいのであります。  最後に、私は、すでに両院予算委員会でも冒頭より問題となった、公債発行に対する政府の安易な姿勢を指摘しておかなければなりません。わが国の公債は、財政法第四条により、公共事業費及び貸し付け金、出資金のワク内のみで発行が許されているのであります。このことは、赤字公債の乱発を防ぎ、かつての戦時国債の二の舞いを再び繰り返さないよう、財政の節度を守ることが財政法の趣旨であることは御存じのとおりであります。しかるに、今回政府は、景気対策に名をかり、巨額な公債発行を予定しております。その中に明白な赤字公債が含まれているのであります。すなわち、追加公債発行額七千九百億円の支出のうち、財政法第四条で認められる公共事業費等の限度額は二千三百億円であり、残りの五千六百億円は経済の停滞による歳入欠陥及び年内減税実施のための財源不足を補うためのものであり、財政法違反であることは明白でございます。政府は、公債発行額が公共事業費などの経費の限度内であることを理由に、建設公債と主張しておりますが、まさに、財政法を自分の都合のよいように曲げて解釈した、こじつけと言わなければなりません。もし、政府の考え方が正しいとすれば、今後、景気後退により歳入が減少したとき、常時年度途中で公共事業を公債に置きかえることにより、財政はいちずに膨張を来たすことは火を見るより明らかであり、健全財政を柱とする現行財政法の精神を踏みにじるものと言わなければなりません。  政府は、四十年度において、経済の不況を打開すべく、歳入補てん公債の発行のとき、臨時特例法を国会に提出しているのであります。今回においても、四十年同様の臨時特例法を国会に提出すべきが当然でありますが、それをせず、詭弁をもって避けるという節度なき財政運営は、悔いを後世に残すものであり、了承することはできません。このような政府の安易な姿勢を断じて認めるわけにはまいりません。  以上、私は、国民にかわり、強くこのことを政府に要望いたしまして補正予算案に対する反対討論を終わります。(拍手)     —————————————
  27. 河野謙三

    議長河野謙三君) 木島則夫君。    〔木島則夫君登壇拍手
  28. 木島則夫

    ○木島則夫君 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま議題とされておりまする昭和四十六年度一般会計補正予算、同じく特別会計補正予算政府関係補正予算に対して反対を表明するものです。  いま私どもを取り巻いている環境は、くどくど申し上げる必要はないんでありますけれどもニクソン大統領の訪中、中国の国連加盟という国際情勢の大きな変化に加え、ドルショックによる経済混乱、打ち続く不況の中で、国民の多くは、政府がどのようなビジョンを持ち、どのように国民経済を立て直し、国民生活をいかに安定をさせるのかと、今回の補正予算を待ち焦がれていたのであります。野党各党が、重要な沖繩返還協定よりも、この補正予算の審議を先にすべきである、こう主張した理由も、ここにあるんであります。しかし、残念ですけれど、今回の補正予算は、全く国民の期待を裏切ったものなんであります。  私がこの補正予算に反対をする第一の理由は、今回のドルショックに対する政府措置がおくれて国内経済に不必要な混乱を招いたにもかかわらず、わずかの救済措置に終わっている点をまず指摘したいんであります。  わが国の安全保障というものが、日米安保条約によるアメリカの核のかさにたより、日本経済の成長をドルのかさにたよることに対し、われわれは、自主防衛をする必要と、ドル価値の低下に対する備えが必要であることを、政府に対し、これまでもたびたび忠告をしてきたんであります。政府は、この忠告に対し耳をかさず、ドルの上に安逸をむさぼってきた結果が今日のこの事態を招いたと思うんであります。  さらに、政府は、国会の議決を無視をいたしまして、屈辱的な日米繊維政府間協定締結をし、繊維業界並びに繊維に働く労働者に大きな犠牲をしいているんです。このような政府の姿勢のもとに編成をされた今回の補正予算には、経済政策の大きな転換という発想がありません。何のビジョンもございません。これが私の補正予算に反対をする第一の理由なんであります。  反対の第二の理由です。それは安易に過ぎる国債政策についてです。たとえば、補正予算については、二千四百四十六億円の原資はすべて国債に依存をしているんです。これまで公債を抱いた予算ということばはあったんですけれど、公債に抱かれた予算というのは今回が初めてであります。さらに、これだけではまだ足りませんで、昭和四十六年度当初見込みの租税・印紙による収入などの減収五千六百二十二億円をも補おうというのが七千九百億円にのぼる今回の国債の追加増発なんであります。しかも、どうかと思うことは、こうした歳入欠陥をもたらした原因について反省が見られないのは、たいへん残念なことです。今回の事態は、何とこれを強弁されようとも、赤字補てんのための国債増発でありますから、昭和四十年の際にとられたと同様の特別立法を講じない限り、明らかに財政法第四条の歯どめを無視した、全く乱暴なやり方であることは明白であって、この点を私はきびしく指摘をしたいんであります。国債を発行することについて、とやかく申し上げようとは思いません。たとえば、わが国の社会資本の立ちおくれを取り戻すために、積極的な公共投資計画を推し進めるため、明確なプロジェクトを設定して国債を活用をすることが、財政法にいう建設国債のほんとうの意義であるというふうに私は理解をしている。この意義を見失い、赤字国債として、その場限りの景気刺激策の手段に用いることには断固として反対をするんであります。  第三の理由であります。減税政策のそのあり方、やり方についてであります。政府は、今回、千六百五十億の減税を行なおうとしております。しかし、その内容国民大衆に与える効果を考えますと、首をかしげざるを得ません。なるほど、今度の減税というものは、景気刺激策の一つとして行なわれたことは理解できるんでありますが、減税額の大部分は、直接消費にはつながらない高額所得層に回されることになってしまう。これでは、政府がねらった景気刺激策としての効果は非常に薄いと思うんです。  その二は、勤労者が最も強く希望をしておりました給与所得控除の引き上げが全く見送られ、税率の緩和に重点を置いた結果、全勤労者のわずか三%にしかすぎない年間所得三百万円から五百万円の高額所得層を優遇することになってしまう。これは、税の基本的な原則であります税負担の公平を欠き、不平等を広げると言われても当然であります。減税をすれば中身は何でもいいんだというようなやり方では、物価高に悩み、倒産におののく中小企業、勤労大衆の生活を潤すことはできないと思うんであります。  私がこの予算案に反対するもう一つの理由でありますけれども、これは歳出面で依然として産業基盤整備関係の公共投資というものが優先をされているということなんです。たとえば、現在最も緊急の課題とされ、またとない機会でもあります住宅対策については、今回の補正措置で見る限り、わずかに百三十億円しか追加されておらず、このような生活環境の整備を軽視した公共投資のやり方は断じて容認ができないのであります。  最後に、私は、歴代自民党の高度成長政策というものがGNP自由世界第二位の経済大国を築き上げてはおりますけれども、その反面、交通事故はふえ、公害は日本をおおい、生活環境、自然環境は次々と破壊をされ、住みにくい、人間疎外の日本列島をつくってしまいました。政府はこの機会に、生産第一主義の経済政策というものをほんとうに生活第一主義の経済政策に大転換をし、住みよい日本、ほんとうの福祉国家日本の建設に着手し、七〇年代の政治という表現にほんとうにふさわしい経済政策を断行されんことを強く期待をいたしまして、私の反対討論を結びたいと思います。(拍手)     —————————————
  29. 河野謙三

    議長河野謙三君) 塚田大願君。    〔塚田大願君登壇拍手
  30. 塚田大願

    ○塚田大願君 私は、日本共産党を代表いたしまして、昭和四十六年度補正予算三案に対して反対討論を行ないます。  この予算案の最大の特徴は、高度経済成長政策の破綻とアメリカの戦争政策によるドル危機日本への転嫁によって引き起こされた今日の経済的困難を、一方では大企業本位の景気刺激をはかりながら、他方では国民のために必要な経費を徹底的に削減することによって切り抜けようとしていることであります。  第一に指摘すべき問題は、膨大な赤字公債の増発についてであります。今回の補正予算では、七千九百億円もの赤字公債の増発が計上されておりますが、当初予算の分を加えれば、今年度の赤字公債発行額は戦後最高の一兆二千二百億円にも達します。政府は、この公債は建設公債であって赤字公債ではないなどと強弁しておりますけれども、しかし、本予算案の公債金が、不況のための実質歳入減五千四百六十三億円を穴埋めし、さらには実質歳出増二千四百四十七億円をまかなうためのものであることを見ましても、これは正真正銘の赤字公債であります。このような財政政策が、インフレーションを高進させ、今日、不況下の物価高に苦しむ国民の生活を一そう圧迫することは火を見るより明らかなことであります。また、このような赤字公債の発行が、来年度から予定されている四次防のための膨大な軍事費や、アメリカに肩がわりしたアジア諸国への侵略的な経済援助の急増をまかなう財政制度上の道を切り開こうとしているものであることは、かつての経験の示すところであります。よく知られているように、財政法第四条は、公債の発行を原則的に禁止しているのであります。それはかつての軍国主義日本が、赤字公債を戦費調達の最大の手段とし、侵略戦争とインフレーションによって国民を塗炭の苦しみにおとしいれた忌まわしい経験を反省しているからであります。わが党は、政府が財政法の原則を踏みにじり、軍国主義復活とインフレーション高進の道を切り開こうとすることを絶対に許すことはできません。また、政府は、不況による財源難を赤字公債発行の口実としております。しかし、政府は、最近、円切り上げに伴って、石油や鉄鋼など、大企業や貿易商社などに生ずる膨大な為替差益に対して、事実上の非課税とする措置をとるなど、大企業に対しては、依然として特権的な減免税を行なっているではありませんか。わが党は、赤字公債の発行をやめること、財源は、膨大な四次防計画や大企業に対する特権的な減免税をやめ、さらには海外援助費を徹底的に削減することによってまかなうべきことを強く要求するものであります。  第二の問題は、政府の公共事業は依然として大企業本位のものであるということであります。政府は、景気てこ入れ策として、事業規模五千億円の公共事業費を追加したことを宣伝しております。しかし、この公共事業は、国鉄、電電公社、高速道路公団など従来も大企業に大もうけを保証してきた事業が中心であって、大企業を潤すことをおもな目的としたものであります。これに反して、国民がほんとうに望んでいる生活道路の建設は顧みられず、住宅建設もわずかに五千三百九十戸というありさまであります。  第三の問題は、この補正予算案が一応講じております中小企業対策、減税、給与引き上げ、地方財政対策などがきわめて不徹底、不十分であるということであります。すなわち、今回の中小企業対策費はわずか七十五億円にすぎず、輸出関連中小企業の一部に対するきわめて制限された金融的措置にすぎません。政府が鳴りもの入りで宣伝している所得減税にいたしましても、結局は、年収四、五百万円以上の高額所得者だけを潤すものであって、一般サラリーマンにとっては、およそ減税などと言えるしろものではありません。地方財政対策も、戦後最大の財政危機に直面している地方自治体の要求をとうてい満たすものでないことは明らかであります。  さらに見のがせないのは、沖繩関係の補正予算が、沖繩協定実施の準備経費などわずか四億六千五百万円にすぎず、円の変動相場制移行に伴う物価の値上がり対策費や、干ばつ対策費など緊急に必要な費用が何ら組まれていないことであります。  わが党は、円の事実上の切り上げなど、政府の政策によって最も深刻な影響を受けている国民の生活と経営を改善することを主とした緊急対策を当面の景気浮揚策とすべきであることを強く要求するものであります。すなわち、インフレを押え、物価を安定させて、低所得者を中心とする思い切った減税と労働者の賃金を大幅に引き上げることであります。また、輸出関連中小企業はもとより、不況の長期化によって苦境にあるすべての中小企業に対し長期、低利の融資を行ない、特に零細な企業には無保証、無担保、無利子の融資を緊急かつ大幅に行なう必要があると考えます。また、農産物の輸入自由化政策をやめ、冷害農民などの救済措置を緊急に講ずることを要求します。  地方自治体に対する地方交付税率を引き上げ、超過負担を解消し、住宅建設、環境整備、生活道路の改修などを中心にした、地元の潤う公共事業を大規模に起こさなければなりません。  さらに、戦後二十六年間、異民族の支配のもとで苦しめられてきた百万の沖縄県民の切実な要求に基づいて、沖縄対策費を大幅に組むことを強く要求するものであります。  日本共産党は、今日の国民生活日本経済危機を根本的に打開するためには、以上の緊急措置だけではなく、政府の経済政策と日本経済の進路を根本的に転換しなければならないと考えるものであります。  すなわち、歴代自民党政府の対米追随、大企業奉仕の経済政策ときっぱり手を切り、特に社会主義諸国との貿易制限を打破し、すべての国との自主、平等、互恵の経済関係発展させ、日本経済の進路を自主的、平和的な発展の方向に切りかえなければならないことを特に強調いたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手
  31. 河野謙三

    議長河野謙三君) これにて討論は終局いたしました。  これより三案を一括して採決いたします。  三案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  32. 河野謙三

    議長河野謙三君) 過半数と認めます。よって、三案は可決せられました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後八時四十三分散会