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1971-10-22 第67回国会 参議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十月二十二日(金曜日)    午前十時三分開議     —————————————議事日程 第四号  昭和四十六年十月二十二日    午前十時開議 第一 国務大臣演説に関する件(第三日)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  一、国家公務員等任命に関する件  以下 議事日程のとおり      ——————————
  2. 河野謙三

    議長河野謙三君) これより会議を開きます。  この際、国家公務員等任命に関する件につきおはかりいたします。  内閣から、日本電信電話公社経営委員会委員土川元夫君、細川隆元君を任命したことについて、本院の承認を求めてまいりました。  内閣申し出のとおり、これを承認することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立
  3. 河野謙三

    議長河野謙三君) 過半数と認めます。よって、これを承認することに決しました。      ——————————
  4. 河野謙三

    議長河野謙三君) 日程第一 国務大臣演説に関する件  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。松井誠君。    〔松井誠登壇拍手
  5. 松井誠

    松井誠君 私は、日本社会党を代表して、主として内政問題の数点にしぼってお尋ねをいたしたいと思います。  世界一勤勉だといわれる日本勤労者は、低い賃金、低い米価、悪い労働条件のもとで、おくれた社会保障制度を補うために、乏しいさいふの底をはたいて貯蓄さえしながら、営々として働き続けてまいりました。そして、その結果報いられたものは、貯金の利子を上回る激しい物価上昇公害による生命そのものへの脅威、そして国民の汗の結晶とも言うべき外貨の大部分を占めるドルは、いまや金と交換のできない不安定なものに成り下がる。これが、戦後営々として働き続けてきた国民に、働き過ぎたがゆえに、いま突きつけられている計算書であります。いまこそ戦後日本保守政治がとり続けてきた内外二つ政策のあやまちを徹底的に改め、外に向かっては自主独立平和外交を、内に向かっては、大企業中心輸出優先GNP万能主義政策から、生活第一、福祉優先政策に大転換をなすべきときであります。すなわち、従来の飢餓輸出型の経済構造を可能にしてきた低賃金公害の放置、低い社会保障等々を改めるとともに、この際、貿易構造もまたアメリカ依存からの脱却、開発途上国に対する資源略奪型、冷戦型から互恵平等の平和志向型貿易への転換へと、大きく軌道を修正すべきであります。総理並びに大蔵大臣に、この基本的の認識についてまずお伺いをいたします。  こうして修正された軌道の上に、生活関連社会資本充実中小企業農業等政策転換など、勤労者がつくり出した富は確実に勤労者に還元する財政経済政策を新しく組み立てていくべきであります。政府も、最近は円切り上げ圧力に対する防衛策という発想がらではありますが、福祉政策への転換を唱えるに至りました。しかし、来年一月から昭和四十八年三月までを通したいわゆる十五カ月予算第一歩である今回の補正予算には、このような転換の芽は少しも見当たらないのであります。有言不実行という佐藤内閣特異体質がまたここにあら一われているのであります。  従来、社会資本充実という名前で、公共事業重点が、主として産業関連施設である幹線道路重要港湾などに置かれ、いわゆる生活関連社会資本、すなわち住宅下水道生活道路保育所、病院等々の建設がなおざりにされ、諸外国に比べてはなはだしく立ちおくれておることはいまさら申すまでもございません。そして、そのことが公害を生み、過密過疎を生み、総じて今日の経済混乱を引き起こした。このことに対する深刻な反省がいま強く求められているときに、公共事業追加支出は、依然旧来の惰性で動いており、むしろ生活関連事業中心とも言うべき住宅関係予算公共事業費に占める比率は、当初予算に比べかえって低くさえなっているのであります。社会保障費にしてもしかりであります。補正予算社会保障費はもっぱら人件費増に充てられるものであって、この不況物価高に、はさみ打ちになっている底辺の国民に対する追加支出は、たとえば生活保護費児童措置費社会福祉費等々の増額には少しもさかれていないのであります。補正予算といえども、単に景気対策だけでなく政策転換第一歩であるという以上、これらの施策をとり得ないはずはなく、また、とらねばならないのであります。  社会福祉政策の中で、いま、老人の問題がますます大きな関心を呼んでおります。全国で七十歳をこえる老人は四百三十二万、この人たちは青春の多くを戦争と動乱のうちに過ごし、戦後はまた、廃墟の中からの経済復興の原動力ともなった人たちであります。いま静かな安らぎを願うときに、農村では出かせぎの留守を守って重労働が肩にのしかかる、都会では核家族の風潮の中で一人孤独をかみしめる、そして一たん病を得ればまつ先に頭に浮かぶのが医療費の心配であります。総理、せめてこの老人を囲む多くの問題の中で一つだけ、老人医療費は一切ただにいたしましょう、健康保険の掛け金も要りません、どうぞ御安心をと、思い切って言えないものでございましょうか。  わが社会党は、九月十五日の老人の日に高齢者憲章案を発表し、年金増額はもとより、健康保険料をも含めた医療費の無料、そして高齢者がせめて子供の住まいと、みそ汁の冷えない程度の距離に住めるような配慮までも含めて多くの政策を主張しております。これを謙虚に取り入れて実現をするよう強く要求し、御見解伺います。  いま、いわゆるドルショック日本列島をすっぽりおおっております。労働者農民中小企業、すべてこれらの資本主義被害者は、そのために苦しみ、物価もまた新しい問題をかかえ込んでおります。このショックをまともにかぶっているのは零細な輸出関連下請業者とそこに働く労働者であります。いま全国の繊維、陶磁器、玩具、洋食器など輸出軽工業品生産地の状態は、いずこも大同小異、特恵関税課徴金円切り上げ、そして親企業工賃切り下げなど多くの悪条件に苦しんでおられることは御承知のとおりであります。  具体的な一つの例を申し上げましょう。  新潟県燕市、とこの金属洋食器産業貿易依存度八〇%、対米輸出に六〇%を依存するという特異の町であります。下請業者数二千四百、そのうちそして従業員数平均一・八人という零細な研摩下請業者の数が千四百をこえるのであります。この人人にとっては、中小企業のための特別緊急融資はほとんど素通りであります。何よりの理由担保を持たないからでありますが、担保を必要としない小口の融資を願えば信用保証協会の門前からさえ追い払われる。それは中小企業信用保険公庫保証協会に対する再保険対象にいろいろな条件をつけているために、その条件さえ満たせぬ人が多いからであります。最も融資を必要とする者が担保無能力のゆえをもって融資を受けられないという周知の矛盾がここで典型的にあらわれているのであります。ところが、補正予算信用保証協会への補助金は何と一億円、これを全国の都道府県に割り振って一体幾らになるというのでありましょうか。しかも大切なことは、いまや融資のワクを広げるといういわば量的な対策ではこの問題は解決をしない。信用保険公庫の運営を改めて、再保険対象そのものを拡大しなければなりません。これらの措置は、輸出振興対策ではなくて倒産防止対策であります。企業的融資から社会保障的融資への質的な転換、それこそが、まさにいま要求されているのであります。大蔵大臣の御所見伺いたいと思います。  農業もまた新しい局面を迎えつつあります。本年の米作について農林省は、九月十五日現在の作況指数九五、予想収穫量一千百十万トンと発表いたしました。かりにその数字が正しいとしても、農林省の見る年間消費量は一千百六十五万トン、単年度で見る限り、五十五万トンの不足という、実に驚くべき事態に立ち至りました。もちろん政府には昨年産の手持ち米百五十万トンがありますから、本年の端境期には一時的、局地的にはともかく、全体的に供給不足を生ずることはないでありましょう。しかし、すでに検査の結果明らかなように、本年産米上位等級米が少なく、等外米、くず米などが予想以上に多いのであります。したがって、実際の供給量予想収穫量を下回る一方、消費量はまた過去の例に従えば、不況のときには増加するのであります。したがって、政府がいまの減反政策米価据え置き政策を依然として改めない限り、来年度端境期米不足は避けられない。これは数字の示すとおりであります。しかし、この供給不足は決して冷害という偶然の現象だけで起こったのではございません。農民公害を配慮して、肥料、農薬の投入を手控える、先行き不安で荒らしづくりをする、うまい米づくりを目ざして冷害に弱いおくてを栽培する。これらの原因の複合がこの結果を招いたのであります。  私はいま食管制度について根本的な議論をするいとまはございません。とりあえず、この米の需給逼迫解決をするために、等外米買い入れを行なうとともに、買い入れ制限をやめること、そして来年度米作について、減反政策米価据え置きの従来の政策を本年の教訓にかんがみて再検討することを強く要求し、農林大臣の御答弁を求めたいのであります。  問題はもちろん米作ばかりにあるのではございません。農林省は十月六日、農業生産の観測を修正をし、本年度農業生産は前年比三%ないし五%の減少と見込むに至りました。これで三年連続減産、まさに昭和十七年から十九年にかけての連続減産以来の記録であります。時間の関係で詳しいことは申し上げませんが、その主たる原因は、農畜産物に対する自由化不安から生産の停滞を引き起こしていることにあります。加うるに、円切り上げは特に果樹生産者に対して大きな打撃を与えることは必至であります。農畜産物について、その国際競争力がつくまで自由化はすべきでないと思いますが、農林大臣の御所見伺いたいのであります。  農民はいま、減反、低米価自由化、そして不作、さらには円切り上げ、息つく間もなく襲ってくる悪条件に徹底的に痛めつけられ、現金収入の道を出かせぎに求めようとすれば、不況のおかげでいま求人は二割ないし四割減といわれております。劣悪な労働条件のもとに不自然な別居生活にも耐えてきた出かせぎの道さえ断たれ、いま出口のない袋小路に追い込まれて、ぼう然となすすべを知らない農民、その姿に心の痛みを感じない者に政治をになう資格はございません。基本的には農業の縮小、破壊の政策を改めて、価格支持制度食糧自給長期計画のもとで、見通しの明るい、働きに励みの出る農業の確立、そして冷害農民の当面の苦境打開のために、農業基盤整備などを中心とする救農土木事業の大規模な実施、そのことを総理並びに農林大臣要求をし、御所見を承りたいと存じます。  物価については、政府の全くの無策のゆえに議論することのむなしささえも感ずるのでありますが、いま円高による輸入物資価格下落不況など、物価下落の要因が重なり合っているにもかかわらず、九月の東京都区内の消費者物価は、前年同月に比べ、実に一〇・三%の急増であります。国債大型化インフレ圧力を前に、消費者米価、米の物価統制令適用除外など、一体どうするのか。しかし、いまは何をなすべきかという選択の時代ではもうない。やるかやらないかの決断の時期であります。総理の御決意をこそ伺いたいのであります。  財政経済政策最後に、国債の問題についてお尋ねいたします。政府は、今回の七千九百億に及ぶ国債建設国債だと強弁をいたしております。しかし、ことし、不況のあおりを受けて、国税の減収見込み四千七百五十七億、そして日本銀行政府への納付金は、円切り上げによる手持ちドル評価損を見越して六百九十八億の減収、合計五千四百五十五億の歳入欠陥であります。事実の経過をすなおに見る者にとって、国債の大部分は、まごうかたなく、赤字補てんのための赤字公債であります。昨日、自民党の塚田議員もこのことを指摘をされました。私は、いま政治的に赤字公債是非を論じようとは思いません。その是非論の以前に、この明々白々たる事実に目をつむってまかり通ろうとする姿勢そのものを問題にしたいのであります。(拍手国債が、これから、よかれ悪しかれ財政政策の中で定着してくる。日本株式会社といわれるぐらい政財界の癒着のはなはだしい日本政治体質は、いや応なしに財政規模をふくらます。だからこそ、財政法第四条は赤字公債を禁止しているのであります。政府は、昭和四十年のときのような特別法の制定をなぜしないのか。なぜその道を逃げて通ろうとするのか。これは、事実上の軍事公債発行への道を開くものであるだけに、明確にしておかなければなりません。(拍手総理及び大蔵大臣の御答弁を求めるものであります。  現に、政府は、来年度から始まる第四次防衛計画で、五年間実に五兆八千億の軍事費を予定をいたしております。不況の影響で若干の減額はあっても、その大筋は変わらないでございましょう。政府がいかに弁解をしようとも、この巨大な軍事費数字そのものが、世界、特にアジア人々軍国主義脅威となっているのは当然であります。ところが西村防衛庁長官は、先般、災害時の自衛隊海外派遣を、むしろ誇らしげに語ったのであります。長官は、あの残酷な日本軍国主義をまのあたりに見たアジアの国の人々の気持ちを一体どう考えているのでありましょうか。無神経にしてはひど過ぎる。これによって本格的な海外派兵への地ならしをしようという、とぎ澄まされた計算が衣の下に隠されているのではないかと疑わざるを得ないのであります。すでに本院でなされている海外派兵禁止決議との関係も含めて、お伺いをいたします。  さらに留意すべきは、この防衛計画は、あの悪名高いニクソンドクトリンのいわゆる総合戦力構想不離一体関係にあるということであります。それは、一言で言えば、アメリカの核の庇護のもとに、アジア戦争アジア人をして戦わしめるということであります。日本政府の最近強調する自主防衛論は、実はこのニクソンドクトリンの裏返しであり、まさに、アメリカによるアメリカのための自主防衛論、擬装されたアメリカ軍属がわり論にすぎないのであります。だからこそ政府は、沖繩復帰とともに、沖繩に七三年六月末までに実に六千八百人の自衛隊配備することを、久保防衛局長カーチス沖繩交渉団首席軍事代表との間の取りきめとして約束をしたのであります。総理は十九日の所信表明で、軍用地等継続使用沖繩返還の前提だと言明をされました。そして政府は、自衛隊用地取得のために、本土にもその例を見ない強制手段をもって臨もうとさえしているのであります。本来、自主的であるべき自衛隊配備が、返還協定とこのようにしてしゃにむに結びつけられているこの事実、これこそまさにニクソンドクトリンそのものであります。しかも、このニクソンドクトリン自体が、当の御本人の訪中訪ソあと、どういう運命になるかさえもいまわからないときではありませんか。久保カーチス協定は、まさにアメリカに国際的な大きな義務を負ったものであり、実質的な条約の性質を持つと言わねばなりません。当然、国会審議対象としなければならないと思いますが、いかがでございましょうか。外務大臣にお伺いをいたします。  政府がこの自衛隊配備を、沖繩県民ぐるみの反対をねじ伏せてまで強行しようとし、第三の琉球処分という非難を浴びているとき、私は、あらためて、沖繩問題とはわれわれにとって一体何なのかという原点に立ち戻らなければなりません。太平洋戦争の末期、あえてわれわれと言いますが、われわれは沖繩本土のたてといたしました。当時の沖繩根拠地海軍司令官太田海軍中将は、その最期にあたって沖繩県民献身ぶりをつぶさにたたえたあと、「沖繩県民かく戦えり、県民に対して後世特別の御高配を賜わらんことを」と言い残しております。やがて平和が回復し、サンフランシスコ条約が結ばれたとき、平和に対して最も大きな発言権を持たねばならないこの平和のいけにえを、またしてもその意に反してアメリカに売り渡してしまったのであります。沖繩学の父といわれる伊波普猷氏は、このことを早くも事前に察して、「地球上で帝国主義が終りをつげるとき、沖繩人はにが世から解放される」と悲痛な文章を書き残しているのであります。私はいま全く立場の違う二人のことばを引用いたしました。それは琉球処分ということばの持っている長い、実に長い歴史重みを考えたかったからであります。この歴史重みは、われわれが贖罪というような、外に向かっての罪の償いで軽くできるようなものではございません。みずからの内なる琉球処分を告発し続けて、その重みにたえていかなければならいものだと思います。政府は、この歴史重みを全く理解せず、いま沖繩復帰国民の悲願を逆手にとり、いわばこれを人質として自衛隊配備、さらには安保条約の変質を強行せんといたしております。まさに卑劣な人質政策であり、明らかに琉球処分であります。私は全身をもって抗議をしなければなりません。(拍手)  質問最後に、私は教育についてお尋ねをいたします。本年六月、中央教育審議会、いわゆる中教審は、教育改革のための基本的施策について答申をいたしました。それは第三の学制改革といわれるほど広範な改革であります。しかし、それがいま四面楚歌の中にあることは御承知のとおりであります。  その第一は、能力主義という名前差別主義であります。高校の多様化という名前で、実は資本にすぐに役に立つ教育人間人間としてではなく、労働力として見る教育が、今度は幼児から大学まで貫かれる。無限能力可能性を秘めているはずの人間が、すでに幼児のときから、エリートの入る幼児学校から幼稚園、保育所と選別をされてしまうのであります。  第二は、教育内容国家主義であります。答申は、この国家主義非難を免れようとして、憲法の目ざす国家理想実現のための教育などと言っていますが、その平和憲法軍国主義憲法にねじ曲げられている現実を見れば、この危険な性格は明らかでありましょう。  そして第三に、この構想実現のために、教師の中に五段階制賃金を持ち込み、その分断をはかっていることであります。ところが政府は、まだ国民的合意を得ていないこの構想を、早くも実行に移すのために、先導的試行という、舌をかみそうな名前施策予算を来年度要求いたしておるのであります。文部大臣は、まずこの人体実験とも言うべき予算要求を取りやめ、国民的合意のために積極的に取り組むべきであります。  教育とは、人間の持っている無限可能性が花開くように助けることであり、その役割りは、個々の子供をよく知っている専門家としての現場の先生方にあります。国家役割りは、この花園に土足で入り込むことではなくて、豊かな教育環境をつくることにこそあります。たとえば、文部省の発表によっても、昭和四十四年度特別教室不足率は、小学校三九・九%、中学校二八・一%、教材の不足率は、小学校五二%、中学校五六%であります。文化国家として恥ずべきこの数字の解消こそが国の役割りでなければなりません。私は、中教審構想のままに進むならば、人生のスタートから差別され、ベルトコンベアに乗せられた人間が次々に忠良なる臣民として大量生産されていく学校という名前の工場を連想するのであります。総理、いまこそ教育基本法に立ち返って、強奪した教育権国民の手に返す、そのことから新しい未来の教育が始まるのではないでしょうか。そしてまさにこの教育の復権こそが、新しい政治基本に据えられなければならないと信じます。私が乏しい時間をさいてあえてお尋ねをするのは、その意味であります。教育に対する基本的な認識について、総理並びに文部大臣の御見解伺いたいと思います。  質問を終わるにあたりまして一言申し上げます。昨二十一日の国際反戦デーに結集した全国百万をこえる人々叫びは、長い間うっせきした国民の不満を代表する叫びであります。この転換時代に対応のすべを知らないばかりか、あえて旧来の道を歩き続けようとする佐藤内閣に対し、その退陣を迫る叫びであります。総理はその叫びに率直に耳を傾け、この厚い議事堂の壁を通して、国民のはらわたにしみ込むような方向転換ことばを語りかけるべきであります。もしそれができないならば、内閣存在理由はない。世論の示すところに従って進退を決すべきことを申し上げて私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最初に、政府がとってまいりましたいままでの経済政策、これは基本的に誤っているんじゃないか、ことに、自主独立性がない、あるいは大企業中心、また輸出第一主義、同時にGNP重点主義、これは間違っていると、こういう御意見でありましたが、御意見は御意見として十分謙虚に承っておくつもりでございます。  具体的な問題についてのお尋ねお答えをいたします。  次に、社会資本、中でも特に生活関連のものに重点を置いて整備せよとの御意見を開陳されましたが、私も同様にその必要を感じるものであります。わが国にとって目下最大の課題は、これまでの経済成長成果国民生活質的充実に結びつけることであります。政府は、これまでも国民福祉向上のため特に配慮してまいりましたが、今後も、転換期にふさわしく、真の国民福祉を目ざした施策を果敢に実施していく所存であります。特に、現在行なわれている新経済社会発展計画補正などを通じ、総合的な資源配分の一環として、国民生活に関連する社会資本充実のためには格段の努力を払う考えであります。私は、今後われわれに課せられた課題は、これまでの経済成長成果国民生活質的充実に結びつけることであり、それが国民各位の勤勉と努力にこたえるゆえんであると信ずるものであります。政府としては、このような見地から、補正予算の編成にあたっても、国民生活向上社会資本整備を一そう推進するため、道路下水道等一般公共事業災害復旧各種文教施設等について、事業費規模で約五千億円の公共投資を追加することとしたほか、これまでの国民各位のたゆまざる努力に報いるため、所得税大幅減税を特に繰り上げて年内減税を実施することとしたのであります。  次に、社会保障問題のうち、特に老人対策についてのお尋ねがありましたが、私は高齢者に対する施策充実は、現在及び将来にわたっての政治の重要な課題であると信ずるものであります。政府は、従来から年金医療住宅生きがい等各般にわたり所要の措置を講じてまいりましたが、特に最近における国民的関心の高まりをも勘案し、老齢福祉年金老人医療等の問題を中心にさらにその充実につとめたいと考えております。  次に、輸出問題について、中小企業等対策について、いろいろ御意見を交えてのお尋ねがありましたが、これは大蔵大臣からお答えをすることにいたします。  次に、農業政策についてのお尋ね、これまた赤城農林大臣からお答えすることにいたします。  次に、物価の問題でありますが、物価の安定が国民生活の安定にとって重要なことは言うまでもありません。御指摘のように、九月に入って東京消費者物価指数上昇いたしましたが、これにはいろいろの原因があること、これは御承知のとおりでありますが、物価上昇基調自体が強まっているとは私は考えておりません。ただ、政府としては、今後も物価の安定のため、低生産性部門構造改善流通機構改革等を一段と進めるとともに、円の変動相場制移行による物価抑制効果が働くよう適切な対策を講じていきたいと考えております。なお、今回、国債発行を通じて景気のすみやかな回復をはかることとしておりますが、景気の現状から見て、これが物価に悪影響を及ぼすものとは考えておりません。  次に、国債発行赤字国債であり、財政法第四条違反ではないかとのお尋ねでありますが、政府は、これは財政法第四条違反に当たるものではないと考えております。特別立法の必要もないと、かように考えております。  次に、防衛問題並びに沖繩問題についてのお尋ねがありました。わが国の自衛隊海外派兵は、憲法並びに自衛隊法のたてまえからこれを行ない得ないことは松井君も御承知のとおりであります。また、国会の決議にもあるところであり、政府自衛隊海外派兵は全く考えておりません。このことははっきり申し上げておきます。西村防衛庁長官のプレスクラブにおける発言は、国会を通じ、国民賛成し、関連法規に問題がなければ、将来、アジア地域における災害に、技術集団としての自衛隊が救助の手を差し伸べることができるのではないかということを、個人的な見解として述べたものなのであります。松井君の言われるように、海外派兵への地ならしをしようというようなものではありません。また、沖繩への自衛隊派遣はニクソンドクトリンに基づく米国の肩がわりをするものであるから、自衛隊配備についての米側との取りきめを国会審議対象にせよとの御意見でありますが、沖繩の施政権が返還されれば、わが国が沖繩防衛の主体的責任を持つのは当然のことであります。米軍の肩がわりということとは問題が本質的に違います。政府は、復帰後、沖繩の陸上警備、民生協力、沿岸哨戒、港湾防備等及び防空の諸任務を達成するため、最小限度必要な部隊を配備する計画でありますが、そのため必要な施設等は、現在米軍が沖繩で使用しているものを引き継ぐわけであります。したがって、この引き継ぎのための事務的な話し合いを米側との間に行なって所要の取りきめをしたものであることを十分御理解いただきたいと思います。  沖繩問題は、その原点に返れという御意見がありましたが、私も同感であります。政府はそのような立場からこの問題に取り組んでまいったのであります。少なくとも私は、戦中、戦後を通じて、言うに言われぬ苦悩を味わってこられた沖繩県民の心情を理解するがゆえに、この問題の解決にこん身の政治的情熱を傾けてきた一人であります。幸いにして、本年六月、米国との間に返還協定に調印するところまでこぎつけることができました。この上はすみやかに国会での御承認をいただき、かつ、関連法案の成立を見て、一日も早く復帰を実現したいと衷心より願っております。協定や法案の内容が完ぺきなものであるとは私も考えてはおりません。しかしながら、これ以上復帰をおくらせることは、それこそ、松井君の言われる第三の琉球処分になりかねないことをおそれるものであります。大局的な見地から、すみやかな御審議をお願いしてやまない次第であります。  最後に、教育問題についてお答えをいたします。中央教育審議会答申におきましては、学校教育改革に関する基本的施策について数多くの提案がなされておりますが、これらの諸施策の中には、今後さらに専門的な検討や慎重な準備を要するものもあります。もとより、施策の具体的な実施にあたっては、国民的合意を必要とするものと考えるものであり、政府としては、さしあたってこれらの課題について調査研究を推進しようとしているものであります。このことは教育の発展のためにはむしろ当然のことではないかと考えます。  しばしば、国と国民とを対立させて、そのいずれに教育権があるかという論議がなされておりますが、現憲法下の国家は、主権者である国民の信託を受けて国政を行なっているのでありまして、国と国民とを対立するものとしてとらえるのは基本的に誤りであります。国民が、親として自己の子弟を教育する権利を有していることは当然でありますが、現在の公教育は、もはや教育を一個人のこととして行なうのではなく、これを国に負託することによって、国民的関心事として国家規模で組織し、実施しているのであります。したがって、政府としては、国民の合意としての国会の制定する法律に基づく国民教育として不可欠なものを共通に確保するとともに、常に新たなくふうによって改善された標準的な内容の教育をすべての国民に保障し、さらに、国民が希望する教育を行なえるように努力することこそ、国民に対する当然の責務であると考える次第であります。(拍手)  最後に、昨日の国際反戦デーについての御意見をつけ加えられ、私の退陣を迫られましたが、これにつきましての御意見は私も謙虚に承っておきます。  ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  7. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) GNP万能政策から生活第一、福祉優先政策への転換が必要だという御意見は全く同感でございます。いま総理お答えになりましたように、これまでの成長の成果と国際収支のゆとりを社会資本充実に切りかえることをこれからの財政政策にするということをこの間の所信表明でも申したことでございまして、そういう方向に転換するのにはいま全く条件に恵まれておると、その条件が与えられておる絶好の機会であるというふうに考えますので、この補正予算から来年の予算にかけて思い切ってそういう転換をしたいというふうにいま考えております。  今度の補正予算にあらわれていないという御意見でございましたが、そうではございませんで、今度の補正予算は、この景気の下降を避け、これを克服するということを目的とした予算であるだけに、公共事業における投資と、それから所得税の減税を中心とした補正予算でありまして、この公共投資における事業量の増加を約五千億円にするというのが今度の補正予算の内容でございます。ただ、その五千億円の事業費の振り分けでございますが、これはいろいろ工事能力の点も考えなければなりませんし、また、用地確保の事情も考えなければならぬというようなところから、この割り振りについてはいろいろの不均衡があろうと思います。一番力を入れましたことは下水道の事業でございますが、これは三百億円以上追加することによって今年度予算は一千億円近くなるわけでございますが、昨年度予算に比べたら二〇〇%ということでございますので、画期的に事業量はふえました。また、有効需要の喚起という点から、また、国民生活の点から見まして、やはり住宅建設中心にするのが一番有効的だという御意見もございますが、住宅建設については、いま言ったようないろんな事情、公営住宅をつくることについての地方の事情を十分勘案しまして、補正予算では百二十億円前後の追加ということでございますが、その反対に、財政投融資の面において、住宅公団及び住宅金融公庫に六百何十億という財政投融資の追加をいたしましたので、両方合わせてみますと、昨年に比べて三六%増というようなことで、一般公共事業よりは、やはり住宅建設に力を入れておるというような結果になろうと思います。  そのほかに公立教育施設とか福祉施設というようなもので、国民生活関係のある、国民生活の環境整備に役立つような方向への予算というようなものも今回非常に考慮してあるところでございますが、来年度予算においては、さらにその方面への重点的な配分をしたいと考えております。  その次の問題は、輸出関連中小企業の問題につきまして、信用保証の拡大ということが重要だというお話でございましたが、その際、保証協会に一億円の補助というのは少ないんじゃないかというお話でございましたが、これは保証事務を円滑にするためということで、保証協会に地方団体を通じて配分するこれは補助金でございまして、実態的には、いま、国は各保証協会に対して、公庫で再保険をしておるということでございますから、その再保険のための予算強化をやることが重要だと考えまして、そこに二十億円、今度の補正予算で追加するという措置を講じておりますので、これによって、信用保証の拡大というものは相当期待できるというふうに考えておる次第でございます。  以上です。(拍手)    〔国務大臣赤城宗徳君登壇拍手
  8. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 見通しの明るい、働きに励みのある農業を確立しろと、こういう総理大臣への要望であり、御質問でありますが、私からお答えいたします。  御承知のとおり、また御指摘のとおり、今日、わが国の農業は、長期を要する構造改善の過程におきまして、米の生産過剰、物価公害等の問題や経済の国際化の進展に伴う農産物の輸入自由化の問題等、内外のきびしい情勢に直面しております。このような情勢に対処してわが国農業と農村の健全な発展をはかるためには、農家と農村の持っておりまする不安感を解消しまして、その信頼を得ることを基本的な姿勢としながら、農政の本格的な推進をはかる必要があると考えます。  このような観点から、まず、わが国農業の大きな方針としては、国際競争力を持った近代的な農業を確立するということ、もう一つは、食糧の需給のバランスをとる政策をとっていく、こういう方向から農業体質改善をはかることを基本といたしまして、農業団地の形成をはじめとする生産、構造、流通等の各般の施策を強力に展開するとともに、農家の生活生産の場でありまする環境整備を進めまして、明るい住みよい農村の建設をはかりたい、こう思っています。  食糧の供給につきましては、人口が一億をこえておるわが国におきまして、国民生活の基礎をなす食糧を大幅に海外に依存するということは適当でないと考えております。でありますので、国内生産が可能なものは極力国内でまかなうという基本的考え方に立ちまして、近年需要が増大してきておりまする畜産物、果実、野菜等の農産物について、生産、流通、加工の各過程を通ずる対策を拡充強化して、需要の動向と地域の特性に応じた農業生産の再編成をはかってまいりたいと、こう思っています。農業基本方針で総理に対する御質問でございまするから、基本方針を申し上げた次第でございます。(拍手)  具体的な問題の質問に対して御答弁申し上げます。  冷害によりまして、等外米買い入れあるいは減反等についてどういう方針かと、こういうことでございます。お話がありましたように、本年産米の作況見通しがよくないことは事実でございますが、政府におきましては、四十五年度産米の持ち越し在庫を十分に持っておりまするし、また、新米の需給計画においても、翌米穀年度に繰り越して消費すべき数量、いまお話がありましたが、百万トン、それを見込んでおりますので、不作の結果政府買い入れ数量が若干減少することになっておりましても、政府の需給操作の上では心配はございません。したがいまして、需給面からは等外米買い入れる必要はなく、また、等外米、規格外米につきましては、原則として政府買い入れによらないで、民間流通の道を開いておりますので、これによる流通をはかることとしています。しかし、災害がひどいところ、災害対策の一環として、激甚な災害を受けた地域のうち特定の地域につきましては、主食用として配給可能な品質のものの政府買い入れを行なうことを考慮しております。  また、四十六年産米政府買い入れの取り扱いにつきましては、生産調整の実効を確保するとともに、政府買い入れの適正化を期すために予約限度制を実施しておるところでございますが、需給上も不安があるというわけではなく、また、今後の生産調整に悪影響を及ぼすことは避ける必要がありますので、政府買い入れの取り扱いを変えるというようなことは考えておりません。  米の生産調整につきましては、年により豊凶の差はありましても、需給のバランスをとるということが農業政策でも必要でございます。農家にとっても必要であります。でありますので、米が恒常的に過剰であるという基調に変わりはないのでございますので、来年度も既定方針どおり米の生産調整を実施する方針でございます。  農産物の自由化についてのお話がありまして、国際競争力がつくまで延期すべきではないかと、こういうことでございますが、農産物の自由化につきましては、内外からの要請もあり、国内農業への影響に配慮をしながらこれを取り進めてまいってきたわけでございます。しかしながら、御承知のように、わが国農業はまだ国際競争力が弱く、その構造の改善、生産性の向上による国際競争力の涵養等が急務であり、また、現在わが国農業が稲作からの転換を推進している重要な時期にありますので、今後も農産物の自由化を進めるにあたりましては、農政の展開に支障のないよう慎重に対処してまいる所存でございます。  救農土木事業についてのお話がございました。現在農業基盤整備事業につきましては、現実の農業政策としても非常に力を入れておるところでございます。これはなお積極的に推進をはかっております。今回の補正予算におきましても、基盤整備事業の拡充には十分配慮しておるわけでございます。  なお、本年の北海道の冷害に対しましては、被害農家の現金収入の道を与えるため、四十六年度既定予算及び補正予算を通じ、地域の実情を考慮して、いわゆる、御指摘救農土木事業を実施してまいる、こういう所存でございます。  物価の問題に関連して、消費者米価に関する物価統制令の適用除外の問題をどう考えるかということにお触れになったようでございます。消費者物価につきましては、四十三年十月以降据え置かれ、大幅な逆ざや状況となっておりますが、その是正が望ましいことは言うまでもありませんが、他方、政府物価政策という観点からの配慮も必要としておりますので、これらの諸事情を勘案して、今後慎重に検討していくつもりでございますが、物価統制令の適用廃止につきましては、本年産米の作況あるいは現下の経済状況等を勘案しまして、慎重に検討を重ねてまいりまして、この際、本年十一月からの適用廃止は見送りまして、明年四月から実施することとしまして、適用廃止に伴う諸準備を進めていく方針でございます。(「米価は据え置きか、どうするんだ」と呼ぶ者あり)消費者米価につきましてはいま申し上げたようなことでございますが、生産米価につきましては逆ざやの問題もありますし、あるいはまた従来の方針もございますが、私は、これには抑制だ抑制だというふうにいくべきではなくて、ある程度弾力を持っていくべきだ、こういうふうに考えておりますが、これは来年の米価審議会というような過程を通じていろいろ検討するつもりでありますが、方針としては弾力的に考えなくちゃならぬ、そういうふうに思っています。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇拍手
  9. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 松井さんから久保・カーチス取りきめ、いわゆる、その取りきめにつきましてのお尋ねでございます。沖繩がわが国に返ってくるに伴いまして自衛隊配備する、これにつきましては、ただいま総理からお答えを申し上げたとおりであります。いま安保体制下でありますから、アメリカ配備状況がどうなっておるか、わがほうにおいてもこれを知らなければなりません。また、わがほうの配備状況がどうなっておるかアメリカに知らせる必要があります。そういう話し合い、その話し合いの結果をメモにした。これがいわゆる久保・カーチス取りきめ、さようなことでありまして、これは条約でもなければまた協定でもない。したがいまして、国会の御承認を得る必要もないものである。かように考えております。(拍手)    〔国務大臣高見三郎君登壇拍手
  10. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 松井さんから御質問になりました点については総理からお話がございましたので、中教審答申は、人間の豊かな個性を伸ばし、その可能性を最高度に発揚させ、ほんとうに自主的であり自律的である力を身につけさせるという人間を育てることが教育の使命であるということを中央教育審議会答申では指摘いたしております。また、日本憲法の目ざす国家理想の実現のために、国民教育として不可欠なものを共通に確保するとともに、国民が希望する教育を行なえるように努力することが政府国民から課せられたところの大きな使命であるということも指摘せられておるのであります。  さらに、教育と申しまするものの最大の要素は、何と申しましても、教員の資質であると思うのであります。すぐれました教員を得ますことは、何としても大切な問題でございまするが、その教員の処遇改善につきまして抜本的に改造することが必要であるという指摘を受けております。したがいまして、給与の一般的な大幅の改定をすることを示しておりますると同時に、高度の専門的教養を身につけました者に対する優遇措置を提案しておるのであります。このような観点は中教審答申に示されておりまするが、これがわが国の教育改革を推進する一つの指針であると私は考えておりまするし、国民の御理解と御支持を得まして、今後この問題は段階的、継続的に推進をいたしてまいりたいと考えております。  中教審はもう一つ学校教育一つの体系といたしまして、四、五歳児と小学校低学年との間に一貫した教育体制をつくってみたらどうかという提案を持ち、同時にまた、中学校と高等学校とを一貫した一つ教育体系を考えてみたらどうかというのがいわゆる先導的試行の提案であるのであります。しかし、この提言を具体的に実施いたしまするためには、国民的合意を必要とすることはもちろんのことでありまするけれども、これを実現いたしまするためには今後十年間ぐらいの期間を置いてという提案でございまするが、現行制度のもとにおきまして、実験的な学問的な研究をし開発をしてまいりますることは、何としても必要な問題であるのではないか、かように考えておるわけであります。(拍手)     —————————————
  11. 河野謙三

    議長河野謙三君) 多田省吾君。    〔多田省吾君登壇拍手
  12. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、公明党を代表して、特に沖繩基地問題を中心に、日中問題、経済問題について質問いたしたいと存じます。  初めに沖繩返還についてお伺いいたします。沖繩は一九五二年のサンフランシスコ平和条約第三条によって本土から切り離されたときも、沖繩県民の意思は完全に無視されました。また、今日の沖繩返還に際し、重要問題については、またもや沖繩県民の意向は全く無視されたのであります。すなわち、平和で豊かな島としての返還希望は、膨大な基地つき返還となり、苦心してかちとった自治権は抹殺され、強く反対した軍用地強制収用も、自衛隊配備も強行されようとしております。ドルショックによる経済危機も本土に数倍するものがあります。その上、本土からの土地投機もすさまじいものがあり、また、干ばつや台風の襲来など、沖繩県民の方々の苦しみはまさに絶頂に達しております。私は、このような沖繩県民の意向を全く無視した返還協定は、交渉をやり直して、真に沖繩県民の希望する平和な島として返還できる返還協定に改めるべきことを強く訴えるものであります。(拍手)  初めに、核抜きの確認についてお尋ねいたします。  核抜き本土並み返還における核抜きの問題につきましては、総理のたびたびの発言にもかかわらず、沖繩返還協定には核抜きが明記されておらず、その上、日米共同声明第八項には「米国政府の立場を害することなく、」とあり、アメリカ上院では、これが核兵器再持ち込みの論拠と証言されたこともあり、核抜き、再持ち込み禁止を願う国民にとってなお強い疑惑が残るのであります。  核抜きの確認について、政府は二転三転した答弁を繰り返した末、一昨日、総理は矢野書記長に対し、「何らかの形で確認を得たい」と答弁しました。昨日午後の記者会見で竹下官房長官は「アメリカ側の声明など何らかの形でアメリカ側が意思表示することによって確認するなどの方法を模索中だ」と語ったそうでありますが、総理は、具体的にアメリカ大統領の声明や書簡の形で確認をとるよう折衝をしておるのかどうか、また、一歩進んで、以前の答弁のように、アメリカ軍基地立ち入り検査をアメリカ側に要請すべきであると思うが、そのはっきりしたお考えをお聞きしたいと思います。  次に、核撤去作業の危険性とその安全対策についてお尋ねいたします。  わが党は、一昨年の沖繩米軍基地総点検に引き続き、本年八月以来数回にわたって沖繩調査団を派遣しましたが、その際はからずもアメリカ空軍司令本部テキサス州ランドルフ空軍基地発行の核兵器輸送に関連する資料を入手いたしました。この資料には、核兵器を輸送する場合のおそるべき危険性が詳しく述べられております。そのきわめて一部分を御紹介いたしますと、すべての核兵器はそれぞれ異なった量の核物質、それから通常型起爆薬、さらに高性能爆薬HEで構成されております。衝撃を与えたり気温の影響を受けたりいたしますと大爆発を起こし、放射能の危険も生じます。特に高性能爆薬HEは、ときとして溶けて流れ出し再び凝固する、その上を歩いたり車が走ったりすれば直ちに大爆発を起こしてしまいます。そうして爆発地点から三百フィート内の他の武器や高性能爆薬HEの爆発を誘発いたします。さらに爆風とこの核兵器からの破片の危険は一千フィートまで及び、その範囲内の住民やその他は、爆風や飛んだ破片で生命を失ったりあるいは重傷を負ったりすると書いてあります。さらに二千フィート以内の距離でもきわめて危険な結果を及ぼすと書かれているのであります。さらに、その資料によれば、核兵器の貯蔵や使用や運搬は、もはや少数の米軍基地やミサイル設備所に限定されず、アメリカ軍の基地内外で絶えず行なわれております。そのため、危険性や処理法などを知っている必要があると書かれているのであります。最も危険性の多いのは、核兵器を積んだところの飛行機事故、核兵器を輸送するトラック、列車、また核兵器の貯蔵されている地域の火災であると書かれているのであります。  すなわち沖繩における核の撤去は、人口の密集地を通るだけに最も危険であり、さきに行なわれた毒ガス移送以上の注意と安全対策を考えるべきであります。しかも毒ガス移送でも二回の事故が発生しております。一回は天願桟橋で毒ガスが十数メートルも落下して、たたきつけられております。また、世界で発生した十九回の核兵器事故も、すべて核兵器移送の際に発生したものであります。しかるに、このようなおそるべき危険な核撤去作業を、国民に一切知らせることなく、秘密の中で行なおうとする政府の考えは、人道上からいっても断じて許さるべきではありません。沖繩県民無視もはなはだしいといわなければなりません。ちなみに、核兵器の輸送に際しては、知花弾薬庫からホワイト・ビーチヘ、また南部弾薬庫から那覇軍港へと、二つのコースが考えられます。われわれの計算によれば、危険な二千フィート以内の住宅戸数は約一万戸、住民数は約五万人に及んでおります。政府は、この核撤去輸送の際、いかなる安全対策、避難対策を考えておられるのか、また、いかにそれをアメリカ側に要求するのか、核撤去費七千万ドルの積算根拠を含めて、まさに人命尊重の人道的立場から、総理に明確にお答えいただきたいと思うのでございます。  次に、米軍基地返還についてお尋ねいたします。  沖繩米軍基地の返還につきましては、返還協定の付属文書とも言うべき米軍基地に関する了解覚書に詳しく書かれておりますが、この文書はきわめて誤りが多く、欺瞞に満ち満ちたものであります。すでに何回も言われているように、返還されるアメリカ軍基地はわずか七分の一にすぎません。返還時におきましても、アメリカ軍基地は、沖繩全域については一二・三%、沖繩本島だけを考えれば二二%の面積を占めております。したがって、本土における米軍基地面積の割合の〇・〇八%に比較いたしますと、沖繩全域では本土の百五十倍、沖繩本島は本土の二百八十倍という基地密度を有しているのが現状であります。基地の中に沖繩があるという現実は、沖繩返還時においても何ら変わることなく、本土並み返還がいかに欺瞞であるかということは、だれの目にもはっきりしたことなのでございます。すなわち、返還されるというC表の基地を見ますと、コザ憲兵隊支署とか、コザ憲兵隊詰所、那覇の憲兵隊詰所の名前が返還される基地として載っておりますけれども、これはすべて民間のアパートとか店の一部を借りたものにすぎません。コザ憲兵隊支署などはわずか五十平方メートルであり、そして、これらのアパートを返還基地三カ所と、全く水増しして数えております。逆に返還されないいわゆるA表の基地について見れば、嘉手納飛行場は、従来の三つの基地を合わせて一基地と数え、面積は何と二千百万平方メートルもあり、また、嘉手納弾薬庫地区は、従来の九つの基地を合わせて一つの基地と数え、面積は三千二百七十七万平方メートルに及んでおります。このように、返還されないほうの基地はわざと極端に数を少なくしております。これは、日米両政府が全く国民沖繩県民を愚弄しているのにほかなりません。しかも、沖繩米軍基地機能は最近いよいよ強化拡充されつつあり、普天間海兵隊飛行場の増強工事等が進められております。また、核戦略体制保持に最も必要なマッハ三の超音速戦略偵察機SR71は、二機から、この六月に四機に増強されました。毎日午後一時から一時十五分まで、また、夜間にも一機ずつ嘉手納飛行場から飛び立っております。さきにSR71の中国領空侵犯がありました。また、今月も、十二日と十九日に朝鮮領空侵犯がありました。昭和三十五年五月に、アメリカ国務省は「日本国内の空軍基地から情報飛行を行なわない」と声明したことがありますが、政府は、返還時においては、SR71偵察機の撤去、同じく特殊部隊やVOA放送などの撤去を強く求めるべきであると思いますが、総理はいかがお考えでございますか。  また、米軍基地了解覚書A表の中に、返還されない基地の中に、すでに撤去されたはずの戦術核兵器メースB基地が三基地も含まれております。しかも、いまだに、発射台ランチャーが中国大陸を目標にしたまま現存しているのであります。これは、将来において再び沖繩が核基地として使用される可能性が十分にあり、きわめて危険と言わなければならない。総理は非核三原則を沖繩においても堅持するというのならば、返還時において断固撤去を求めるべきではないかと思いますが、総理のお考えをお聞きしたい。  同じくA表の返還されない基地には、戦術核兵器ナイキ・ハーキュリーズの五つの基地も入っておりますので、これも撤去を求めるべきであります。特に憤激にたえないのは、日本人オフリミットの米軍専用の海水浴場が二カ所もまだ返還されておりません。沖繩県民感情からいっても、返還時に日本人立ち入り禁止の海水浴場があることを総理はどのように考えておられるのか、お聞きしたいものであります。  昨日も指摘されましたが、A表の中の返還されない基地には、布令二〇号によらない、基地でない基地が七つも含まれております。そのうちの三つの基地は、すでにこの六月に、市町村との間に契約が切れております。純然たる民間地です。そして、現在でも、各市町村は再契約を強く拒否し続けております。その中の一つの、名護市の瀬嵩訓練場は、市民の意思による総合中学校建設予定地として、市民は絶対基地反対を唱えております。このような、契約が全然ない民有地まで総理は基地として強制収用するつもりなのか。逆に、了解覚書ABC表に全然入ってない基地が南部の糸満と那覇市内にありますが、このような誤りの多い欺瞞にあふれる了解覚書は付属文書として歴史に大きな汚点を残しますので、断じて再交渉して、つくり直すべきであると思いますが、総理の明確な御決意をお尋ねしたいものであります。  次に、政府返還協定の関連法案として提出いたしました公用地等暫定使用法案、いわゆる軍用地の強制収用法案についてお尋ねいたします。  政府は、国会対策上の見地から、米軍基地、自衛隊用地及び公共用地の取得を一本の法案にまとめておりますが、真のねらいは沖繩米軍基地の維持であることに間違いございません。しかも、現地の地主が賃貸契約や政府による買収を拒否いたしましても、向こう五年間は強制的に現状どおりの使用を認めさせようという悪法であり、地主の不服申し立ての権限をも奪う完全な強制収用法案であります。すでにこの法案には、琉球立法院も屋良主席も、また多くの地主も、とうていのめるものではないと強く反対しております。そしてこれこそ本土との歴然たる差別であると憤激しているのであります。本土では、土地収用の際には、たとえば成田空港の場合でも、政府と空港公団の間に県知事や裁判所が入って代執行が行なわれる。形だけでも地方自治のたてまえを尊重しているのに、この沖繩の軍用地強制収用は、地主の意思も沖繩県の権限も一切否定しているのであります。しかも、本土では米軍基地の場合でも暫定期間は六カ月でありますのに、沖繩では五年間も強制収用するのはたいへんな私権の侵害であり、まさに正気のさたではありません。さらに、自衛隊の場合には、本土では強制収用は全く認められていないのであります。総理は、この軍用地強制収用について、返還の前提であるから了承せよというのでありますが、ここにこそ返還協定の欺瞞性と沖繩県民無視があり、返還協定そのものを再交渉する必要があるのであります。したがって、返還協定の再交渉と、この軍用地強制収用法案の撤回を強く求めるものであります。この法案は、憲法第九十五条にいう一つの地方公共団体のみに適用される特別法でございますから、当然、憲法十四条及び九十五条によって住民投票にかけるべきであります。総理が住民投票を必要ないものとして拒否するのならば、その明白な理由を示していただきたいのであります。  次に、自衛隊配備についてお尋ねいたします。  沖繩自衛隊を大量に配備しようとするのは、明らかにアメリカに強制された米軍の肩がわりであり、しかも、最小限度と言いながら、本土の三倍の密度に当たる六千八百名の自衛隊配備を考えております。これに沖繩県民は強く反対しております。世論調査でも、沖繩県民の五六%の方々が反対しているのであります。沖繩県民の方々は、あの沖繩決戦の悲しい思い出もあり、旧日本軍の悪いイメージも、この自衛隊配備の反対の理由になっております。総理は、沖繩の方々が、二十六年前、日本軍によってスパイ容疑で惨殺される、集団自決を強制され、防空ごうから追い出されたというような、数々の悲しい思い出を持っておられ、二度とこのようなことがないようにと平和を強く希望して、そうして自衛隊配備に反対しておられる姿を知ったならば、どうしていままでのような通り一ぺんの答弁ができるのかと、私は言いたいのであります。  また、ただいまの総理は、西村防衛庁長官が、去る十一日に外人記者クラブで、アジアの天災救援に自衛隊海外派遣をも考慮するとの演説を聞かれまして、幾つかの条件つきとはいえ、まさにこれは見のがすことができない重大発言であります。内外情勢の大転換期に、しかもアジア諸国が日本軍国主義を懸念しているときに、総理はこのような発言を黙認なさるのか、総理も同じような危険な考えを持っておられるのか、この際、総理の考えを明確にお答えいただきたいと思います。  沖繩経済の一つとして、お伺いいたします。沖繩では、日本政府の先行きの政策待ちから、企業活動を手控えており、職場を失う人が増加し、緊急な景気浮揚対策本土以上に望まれております。いま沖繩には、鉄道は一本もありません。そこで、都市交通機関整備、また雇用促進の面から、沖繩本土の学者、経済人によって、強く沖繩の鉄道敷設が論ぜられております。すなわち、人口過密な那覇市からコザ市、石川市を通り、将来は北部へと向かっていく鉄道敷設こそ、公共投資ともなり、将来の平和産業にもつながっていくという有力意見がありますが、総理は、沖繩の方々が強く望むなら、このような提案を積極的に取り入れるお考えはないか、お尋ねしたいと思うのであります。  次に、日中問題についてお尋ねいたします。  総理は、所信表明演説で、「政府は、あくまでも中国は一つであるとの基本認識に立っている」と言っておりますが、一方、国連の中国代表権については、中華人民共和国を安保理事会常任理事国として確認するとともに、経過的な措置であろうとも、中華民国もまた国連で議席を維持する方針をきめております。この二つの発言は全く矛盾しており、これは「一つの中国、一つの台湾」以外の何ものでもなく、それを一つの中国であるとの基本認識に立っていると強弁するのは、全く原則を無視し、国民を欺くもはなはだしいと言わなければなりません。政府があくまでも「中国政策に関する重大な転換」とか、「中国は一つ」と言うのであれば、いさぎよく中国政策の大転換をはかり、中華人民共和国を中国を代表する唯一の合法政府と認め、真に国連に議席を与えるアルバニア案に賛成してこそ、政府の言う「一つの中国」ということになるのであります。また、「一つの中国、一つの台湾」を意図するものではないとあくまでも主張するならば、国民の納得する理論的根拠を示していただきたい。また、総理は、経過的措置は両政府の話し合いがつき、円満解決するまでと言うのは、まさに中国側にげたを預けた、まことに主体性のない消極的な外交姿勢だと思いますが、いかがでございますか。  総理は、一昨日、矢野書記長の質問に対し、逆重要事項指定方式の採決が敗れても、「国連加盟国の多数による決定と、わが政府政治的責任と、直接結びつけて考えるのは妥当ではない」と述べ、昨日も同じ答弁を繰り返しているのは、明らかに詭弁であり、責任のすりかえであります。総理が、国民の反対、党内の反対をも押し切って、総理自身が全責任を負って決断し、逆重要事項指定方式の共同提案国となり、国連加盟国に積極的に働きかけたのであります。すなわち、事実上、中国の国連復帰を阻止し続けた中心者は総理御自身でありますから、当然、総理政治責任を考えるべきであると、何度でも、私たちは強く叫ぶものであります。再び総理見解を求めます。と同時に、総理が言う責任回避の理由を、国民の納得のいくように説明していただきたいと思うのであります。  総理は、中国敵視政策をとっていないとしばしば明言されますが、日本政府は、一九六六年の国連総会以後、国連の朝鮮問題決議の共同提案国として票集めの中心となってきました。この朝鮮問題決議の中には、一つは、中国の国連代表権回復を妨害してきた決議として有名な、中国を侵略者として規定した決議が含まれ、また、アメリカ軍に三十八度線突破を認めたものと佐藤政府が解釈している決議も含まれております。もう一つは、朝鮮政府の国連総会への無条件出席を妨害する決議も、この朝鮮問題決議の中に含まれております。したがって、政府は、中国敵視政策をとらない、中国の国連復帰に同意するというならば、ここではっきりと、今後は国連の朝鮮問題決議の共同提案国にならないと明言すべきであると思いますが、総理見解伺いたいと思います。  さらに総理は、しばしばいかなる国とも仲よくすると申されておりますが、これは、当然政治体制やイデオロギーを異にした国であっても変わりはないと存じます。韓国と同じく三十六年間、わが国の植民地政策の犠牲となってきた国、そして現在、南北朝鮮赤十字会談を進めている朝鮮民主主義人民共和国と交流拡大をはかり、友好関係をさらに開くお気持ちはないかどうか、お伺いしたいと存じます。  次に、経済問題でお尋ねいたします。  社会保障、社会保険の中で、最も重要な課題となっている老人福祉問題でお尋ねいたします。わが国の厚生年金は、五年ごとに修正する修正積み立て方式をとっておりますが、積み立て方式は、掛け金がインフレで減価してしまうために、非常に不利になっております。特に世界一のインフレに悩むわが国では、そのために老齢年金は貧弱となり、厚生年金で月額二万円程度、国民年金の十年年金で月額五千円、積み立てなしの老齢福祉年金はわずか月額二千三百円という貧弱な姿であります。すでに西ドイツ、フランス、イタリア等は、最終の給料の約七割は保障されており、積み立て方式から賦課方式に転換しております。わが国でも、老人福祉のために、六兆円に及ぶ厚生年金の積み立て金等を活用して、西ドイツや欧米諸国並みの賦課方式の厚生年金国民年金に切りかえて充実していく気はないか、お尋ねしたい。  また、消費需要の拡大のため、直ちに老齢福祉年金を現在の月額二千三百円より五千円に引き上げ、その他各種年金の大幅増額生活保護費の引き上げなどをはかる必要があると思いますが、いかなる対策を立てようとしているか、お聞きしたいと思います。  また、景気浮揚のため速効性をねらって政府は、所得減税とともに公共投資に力を入れていますが、従来の住宅道路のみならず、さらに速効性のある老朽校舎や老朽病院の建てかえなどに重点を置くべきだと思いますが、総理の御見解をお伺いしたい。  最後に、地方財政のピンチについてお伺いいたします。  今日の地方財政は、長期の不況ドルショックの追い打ちを受け、健全化の一途をたどってきたものが、一転して重大なピンチに立たされております。このままでは、昭和四十年以上の深刻な財政危機に見舞われることは明らかであります。特に、地方議会の九月補正予算の中で目立っているのは、米国の輸入課徴金の実施などで、まともに打撃を受けた輸出関連中小企業の救済対策であり、繊維、金属洋食器、皮革製品など、輸出中心の地場産業を抱えた府県、市町村では、特別融資制度を新設したり、融資ワクを拡大したり、年末融資の繰り上げなど、積極的な措置を打ち出しておりますが、このような財源捻出に苦慮しているのが実情であります。したがって、何らかの歳入補てん措置を国がとらない限り、赤字転落組の地方団体は続出し、一方、公共事業の返上という事態も予想されますが、政府は、地方交付税率の引き上げをも含め、この際、抜本的な税、財源の国、地方との適正配分等を行なう用意があるかどうか、総理所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 多田君にお答えいたします。  沖繩返還は、サンフランシスコ平和条約第三条によって、米国の施政権下に置かれていたわが国の領土及びそこに住む日本国民を本来あるべき姿、すなわち日本国の施政権下に復帰させるという問題であります。  政府としては、一昨年十一月の私とニクソン大統領との共同声明以来、終始、誠心誠意を尽くして沖繩返還協定作成交渉に当たり、今回、右共同声明にうたわれた核抜き本土並みの原則を完全に貫き、沖繩住民をはじめ国民の十分な納得を得られる協定に合意し得たものと確信している次第であります。したがって、政府としては、この協定の承認及び関連法案の成立が今国会で実現し、明年中のできるだけ早い機会に沖繩本土復帰がかなえられ、平和で豊かな沖繩県の建設に一日も早く積極的に取り組みたいと考えているものであります。したがって、協定の再交渉は全く考えておりません。  次に、沖繩の核抜き返還については、一昨年十一月の日米共同声明及び今回の沖繩返還協定第七条により、明確に約束されているところであります。政府としては、多田君の御意見のような形で具体的に確認することは考えておりませんが、沖繩県民の意向もあり、何らか県民の安心のいくようにいたしたいと、かように念願しておる次第であります。  次に、政府といたしましては、およそ沖繩における危険な物資等の取り扱いについては万全の措置を講ずるよう、かねがね米側に要望しており、米側においても、その点につき、核兵器も含めてその取り扱いについてはいやしくも遺漏のないことを確信している次第であります。  また、政府は、沖繩返還に伴って三億二千万ドルを米側に支払うことに合意したのでありますが、その中に約七千万ドル程度の核撤去の費用が含まれているものと御理解いただきたいと思います。その積算の根拠を示せということでありますが、その積算の根拠は私どもここで申し上げることはできません。  沖繩における施設及び区域に関する了解覚書には多くの誤りと欺瞞があるとの御指摘でありますが、政府としては多田君の御見解に同意できません。政府としては、鋭意折衝の上、米側と合意に達した了解覚書を再交渉してつくり直す考えはただいまございません。  次に、沖繩にあるSR71型機は高空偵察等を任務とするものでありますが、領空侵犯は行なっていないと承知しております。沖繩配備されていたメースBは昨年七月までに撤去を完了しており、その弾頭はもとより、発射台もすでに撤収されていると承知しております。復帰までに返還されることとならない旧メースB基地は、他の提供予定の施設の中にあり、物理的に分離がむずかしく、当分当該部分のみを返還することは、施設の管理が困難となるので、これら旧メースB基地も引き続き提供することとしたものであります。また、旧ナイキ・ハーキュリーズの基地については、補給等のための基地となっているので、同じく返還の対象にはなっておりません。  なお、海水浴場についてのお尋ねでありますが、一般に良好な勤務状態をつくり出すために、福利厚生施設が必要とされることは言うまでもなく、安保条約に基づいてわが国で施設・区域の使用が認められている米軍についても、かかる福利厚生施設の維持が許されるべきものと考える次第であります。現在米軍が、軍の目的のために使用している設備用地は、必ずしも布令二〇号によるものとは限っておりません。御指摘の一時使用地は布令二〇号の土地ではありませんが、復帰後は地位協定のもとに施設・区域となるべきものであるので、当然A表に含める必要があります。復帰後、わが方が米側に対し、地位協定に基づく施設。区域として提供をする用意ある設備用地は、A表に記載されているものに限られており、それ以外には提供されるものはありません。  沖繩の土地等の取得については、できるだけ地主等関係者の合意を得るようつとめる所存であり、沖繩復帰に際しての経過的、暫定的措置としてやむを得ないところの立法であると考えております。かつて小笠原復帰の際に同種立法を行なった先例もあり、決して沖繩本土とを差別するものではありません。ところで、同法案は沖繩の復帰という特殊な事態に対処するものであり、憲法第九十五条にいう地方特別法に当たるとは考えられないので、住民投票の問題は生じないものと考えております。特段の御理解を賜わりたいと思います。  次に、本土復帰後の沖繩配備する自衛隊の部隊は、沖繩の地理的特殊性等を勘案すると、復帰後はわが国が負うことになる同地域の局地防衛及び民生協力の責務を果たすために最小限度必要なものであると考えております。それにいたしましても、沖繩の防衛には県民の支持と理解が必要であるので、部隊の配備にあたっては県民の支持を得るように努力したいと考えております。  また、西村防衛庁長官の発言については、先ほど松井君に御説明したとおりでありますが、私としては、同長官の私見は何ら問題のないものと考えております。同長官演説は、全体としていわゆる海外派遣は絶対に行なわないという政府の一貫した方針を強調したものであると理解しております。  次に、日中問題についてお答えをいたします。  政府は、従来より一貫して、中国は一つであるとの認識に立っており、二つの中国あるいは一つの中国、一つの台湾の考えをとったことは、いまだかつて一度もありません。国連における中国代表権問題に関し、わが国も共同提案国となった二つの決議案の意図するところは、相対立する二つの政府のいずれの立場をも傷つけることなく、中国問題の最終的解決は当事者間の話し合いにまかせることとし、それまでの経過的措置として、中国の現状をそのまま国連にも反映させようとするものであります。  なお、政府といたしましては、中国問題が両当事者間の話し合いにより、円満妥当に解決されることを強く希望するものであり、そのような解決が見出されれば、おのずから経過的措置も必要がなくなることは言うまでもありません。  私は重ねて申し上げますが、北京も国府も、いずれも中国は一つなり、かように申しておりますので、外国から、二つの中国だとか、あるいは一つの中国、一つの台湾など、外国からとやかく言う資格はございません、外国が言う資格はない。このことをもう一度重ねて申し上げておきます。  そもそも、国際連合機構をはじめ、いわゆる多数国間国際機関の会議におきましては、常に多くの決議案が提出され、あるものは可決され、あるものは否決され、その中から当該国際機関として準拠していく指針が出される仕組みとなっているのでありますが、これはそのときそのときの投票の数の多い少ないということだけできめられるので、票数が下回ったからといって、直ちにその決議案の共同提案国となったおのおのの国の政治的責任が問われるべきであるというようなことはあるものではないと思います。もちろん政府としても国連加盟国の多数の意見は十分尊重してきたし、将来も尊重し、国連と歩みをともにしていくという基本方針に変わりはありません。日中問題について言えば、このような国連における代表権の問題という限られた面だけではなく、もっと広い二国間の全般的問題として、日中両国関係の長期的安定を目ざして常に慎重に検討中であることは御承知のとおりであります。  次に、本年の国連総会においては、朝鮮問題は一般委員会の勧告によって議題からはずされたので、今次総会に関する限り、朝鮮問題で共同提案国になるとかならぬとかの問題はありません。  次に、北朝鮮との関係についてでありますが、最近の南北の赤十字会談に見られる朝鮮半島の緊張緩和傾向を政府は歓迎するものであります。わが国と北朝鮮の間に行なわれている人的、物的交流もこの緊張緩和の趨勢に沿ったものと考える次第であります。  なお、わが国は韓国との国交正常化以来、同国に対して経済協力を行なっておりますが、これは韓国の経済発展と民生の安定を目ざしたものであり、このような対韓友好協力関係の維持はわが国として北朝鮮に対して敵対的態度をとることを意味しないことはもちろんであります。北朝鮮との交流につきましては、朝鮮半島の国際情勢の推移を十分考慮しつつ対処していく考えであります。  最後に、老人福祉対策の問題でありますが、私は老人対策充実こそは現在の政治に課せられた重要な課題であると信ずるものであります。このような見地から厚生年金国民年金につきましても真に所得保障の実効を保ち得る年金水準を確保していくことが重要であり、今後制度の改善、充実についても一そうの配意をしてまいりたいと考えております。なお、御指摘のように、公共投資の拡大にあたって老朽病院や老朽社会福祉施設、あるいは老朽校舎の建てかえ等を重点的に行ないたいと考えております。この点は多田君と同意見でございます。  最後に、地方財政の問題を危機としてとらえた御質問がありました。確かに明年度の地方財政につきましては、地方税、地方交付税等の地方の一般財源の伸張はあまり期待できないようでありますし、また、歳出面でも人件費の増加、公共投資の拡大に伴う地方負担の増加等が予想され、全体として相当の財源不足を生ずるように思われます。政府といたしましては、このような事態に対処するため地方団体自体の行財政の一そうの合理化努力に期待するとともに、必要に応じ適切な措置を講ずるよう今後十分検討してまいりたいと思います。お願いいたします。(拍手)    〔国務大臣斎藤昇君登壇拍手
  14. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 老人の福祉対策、特に年金制度の充実につきましては総理からお答えになったとおりでございますが、さらに現在の修正積み立て方式を欧米並みの賦課方式に即時切りかえてはどうかという御質問でございますが、この点は、御承知のように、わが国の年金制度はまだ非常に未成熟の段階でございまするし、また、日本の人口構造から考えますると、老齢化現象が急速にまだ今後進むわけでございます。したがいまして、この段階において賦課方式に切りかえますると、後代者の負担が非常に重く相なりまして、均衡を失するように考えまするので、御意見の点は十分参酌さしていただきますが、ただいまはこの賦課方式に直ちに切りかえることはいかがなものであろうかと、かように考えている次第でございます。  なお、不況対策の一環として、老齢福祉年金、また、その他の社会保障を、この際引き上げてはどうかという御意見でございますが、お説のように、老齢福祉年金と他の年金、あるいは恩給、生活保護費、その他いろいろとこれに関連するような社会福祉の引き上げ問題がございまして、これが今日の景気浮揚対策と直接どの程度に結びつくかという検討も要しまするので、これらの点につきましては、関係閣僚問でも、いろいろと話し合いをいたしましたが、次の、来年度予算において、これらを実現するように努力をしようではないかということに決着をいたしたような次第でございます。  さらに、公共事業の中に福祉関係の事業も繰り入れるべきではないかというお尋ねでございますが、これは、ただいま御審議のために提案をいたしております補正予算の中に、国立病院あるいは療養所等の改築、新築、そのほかに、補助対象といたしまして、各種の社会福祉施設、廃棄物の処理施設、また、水道水源の開発施設等につきましても、本年度内に消化し得る事業に対しましては、相当の思い切った補助をいたすべく予算をただいま提案をいたして、御審議を願うことになっておりますので、御承知をいただきたいと存じます。(拍手、「あるものないなんて答弁はとんでもない。だれが見てきたのか。メースB現にあるじゃないか。」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の先ほどの答弁で、ややおわかりにくかった点があるようです。また、答弁漏れもあるようですから、それにお答えをいたします。  メースBは昨年七月までに撤去を完了しており、その弾頭はもとより、発射台もすでに撤収されていると承知しております。これが私がお答えしたところであります。(「承知しているということはあることなのか」と呼ぶ者あり)だから、さようなものはないということを言っているわけであります。  それから、答弁漏れについてお答えいたします。  沖繩の鉄道の問題でありますが、古くは那覇から東西を結ぶ鉄道のあったこと、これは私も記憶がございます。今回必要とするのは、西海岸を走る鉄道、これが必要だと、いま言われておるのであります。これらの点につきましては、さらにもっと調査し、そうして、この必要の有無等もよく検討し、必要あれば、それについて対策を立てる、これは当然でございます。しばらく検討さしていただきたいと思います。(拍手
  16. 河野謙三

    議長河野謙三君) これにて、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      ——————————    午時一時四分開議
  17. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  国務大臣演説に対する質疑を続けます。田渕哲也君。    〔田渕哲也君登壇拍手
  18. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、民社党を代表して、当面する重大問題につき、総理並びに各大臣にその所信をただしたいと思います。  総理所信表明の中で、沖繩返還、中国問題、国際経済政策の三点に触れ、その中で、国民に対し変革期の認識を持つよう強調されました。しかし、変革期を認識しているだけで、政策担当者としてそれをどのように具体的政策に反映しようとしているのか、この点については全然明らかにされておりません。これでは、今後の国際外交の中で日本の進路は一体どうなるのか、また、通貨問題から生じつつある深刻な不況にどう対処したらいいのか、現在大きな戸惑いの中にある国民の不安をぬぐうことはできません。私は、総理並びに各大臣に、現下の大きな変革に対処する政府の具体的方針を明確にされることを強く望むものであります。  まず第一に沖繩問題について質問いたします。  私は、沖繩県民百万の悲願であり、また、わが国民すべての願望である沖繩本土復帰が一日も早く実現することを心より望むものであります。しかし、どんな形でも返ってきさえすればいいというわけにはまいりません。それは本土と差別のないこと、すなわち、わが民社党が当初から主張し、現在わが国民の合意となっている完全本土並み返還が大前提であることは言うまでもありません。しかしながら、この点について返還協定には数々の問題があることは明らかであります。  その第一は核抜きについてであります。総理は、核抜きは間違いないと再三言明されておりますが、国民は、佐藤・ニクソン共同声明第八項及び沖繩返還協定第七条の取りきめだけでは完全に疑念を払うことはできないのであります。第二の問題は、ベトナム戦争遂行のための補給基地となっている、本土の基地とは質的に異なった、攻撃的性格の強い米軍基地の存在であります。第三は、本土法に適合しない中国向け謀略放送施設VOAの存続であります。これらの点をそのままにして本土並み返還と言うのは国民を欺くもはなはだしいと言わざるを得ません。私は、佐藤総理が政権担当者として残された任期のすべてをかけているといわれている沖繩返還が、沖繩県民を含めた国民みんなに喜ばれる形で実現されるよう望むとともに、政府のいま一段の努力を強く要請するものであります。この考え方に立って、以下順次総理の御見解をただしたいと思います。  まず初めに、最近の国際情勢の変化をあげなければなりません。一昨年の佐藤・ニクソン共同声明はもちろんのこと、本年六月の沖繩返還協定調印の時点と現在とでは情勢は大きく変わっております。すなわち、ニクソンドクトリンの推進、米中対話時代の到来により、アメリカの中国封じ込め作戦は終えんを迎えつつあり、かつて米中冷戦構造の中で沖繩の基地が果たしてきた極東のかなめ石としての役割りは大きく変化せざるを得なくなっておりますが、この点は総理はどう考えておられるかお尋ねしたいと思います。  私は、これらの情勢の変化を踏まえ、政府アメリカ政府沖繩返還についての再交渉、再協議をすべきだと考えます。総理は再交渉の意思のないことを言明されておりますが、もし外交技術的に返還協定そのものを変えることがたとえ困難であるとしても、少なくとも次の点に関し、日米の話し合いを煮詰め、国民の前に疑点を明らかにすることこそ政権担当者の責務ではないでしょうか。(拍手)  その一つは、返還協定の条文上の不備を補い、核抜きを国民の前に明らかにするため、基地の点検により核抜きを確認すること、国会で非核三原則の決議を行なうこと、アメリカ大統領の核抜きについての声明を取りつけること等を行なうべきだと考えます。もし、それらがすべて行なわれないとするならば、それにかわるどういう手段で核抜きを明確化されようとするのか。総理は、何らかの方法で沖繩県民の安心を得る方法を考えると言われておりますが、その方法を明確にしていただきたいのであります。  次には、基地については、協定第三条に基づく了解覚書について米国と再協議を行ない、いわゆる特殊部隊の撤去はもとより、基地全体の整理縮小についての具体的スケジュールを明らかにすべきであります。  さらに、VOAについては、米中関係が変化を迎えつつある現在、協定第八条にいう五年の期間にこだわらず、日米の協議によって、沖繩本土復帰までに撤去を実現すべきであります。  以上、三点について、協定の批准に先立って、政府アメリカ政府と再協議し、沖繩返還本土並みにする努力をする意思があるかどうか、明確に御答弁をいただきたいと思います。  次に、きわめて重要なことは、沖繩問題本土復帰で終わるのでなく、本土復帰から始まるといわれるごとく、沖繩の経済自立の基盤をどのような方向で実現するかということであります。現在の沖繩経済を見るとき、沖繩GNPに占める基地関係支出は二八%にも達しており、また、基地関係労働者沖繩労働者数の四分の一を占めております。米軍基地は早急に縮小、撤去されるべきものであり、また、最近の国際情勢からするならば、その可能性は十分あると言わざるを得ません。基地なきあと沖繩経済は、放置すれば直ちに地盤沈下を起こし、たちまちにして過疎、貧困地帯に転落することは、火を見るより明らかであります。政府は基地なき沖繩経済の確立のため、いかなるビジョンを持つのか、早急に長期計画を策定すると同時に、直ちにその実施に着手しなければ間に合わぬと考えますが、この点を総理に明確に示していただきたいと思います。  次に、外交、防衛問題についてお伺いいたします。  去る七月十五日のニクソン大統領の訪中決定は、戦後四半世紀の間、幾度かの手直しを経ながらも何とか維持されてきた戦後国際政治の構造を最終的に変えようとしていることは明らかであります。特に、米ソ、次いで米中間の冷戦と、日米提携の上に組み立てられていたアジアの力のバランスは、いまやその根底から修正を迫られていることは否定できません。総理及び外務大臣は、その所信表明の中で、米国への敬意や日米の友好信頼の基調の維持増進を強調されております。私は、日米友好の重要さを否定するものではありませんが、より大切なことは、日米関係が大きく変質しつつある事実を正しく見詰めることであります。米国のわが国の頭越しの中国接近、ニクソン経済政策の衝撃的発表、日米繊維交渉の強引な一方的譲歩の押しつけ等々、いずれもアメリカはすでに日本を従順な庇護国としてではなく、手ごわいライバルとして認識しているあらわれではないでしょうか。このような情勢の中で、旧態依然たるアメリカ追随は時代錯誤であり、わが国がいかにすみやかに冷戦時代の感覚と惰性的な対米依存のムードから脱却し、新時代に対応し得る外交防衛政策を確立し得るかが最も重要な課題と言わざるを得ません。しかるに、政府所信表明の中では、この新しい情勢に対処する姿勢が明らかにされておりません。私は、この問題に関連して、次の四点について政府見解をただしたいと思います。  まず第一は、日米安保条約についてであります。わが民社党は、かねてより、アメリカとの友好関係を維持しつつも対米従属を脱却し、わが国の自主・平和外交路線を強化するため、日米安保条約を改定し、米軍の基地駐留を排除することを主張してまいりました。いまこそわが国は、その具体的検討を進めるべきときと存じますが、総理見解をお伺いしたいと思います。  第二は、日中関係の正常化についてであります。政府の方針は、従来のかたくなな態度に比べれば、やや柔軟性を帯びてきた感じはしますが、まだまだ具体性を欠さ、矛盾に満ちております。私は、佐藤内閣として日中国交回復に踏み切る意思があるのかないのか、もし意思があるとすれば、今後どのような方向で具体化していくのか、明らかにしていただきたい。特に総理は、「日中両国の間で相互理解と相互尊重の立場に立った新しい原則を確立する」と述べられていますが、それが、中国側が主張しておる諸原則すなわち平和五原則や日中議連との共同声明にいう四原則とどのような相違点があるのか、具体的な内容を明らかにすべきではありませんか。  第三は、四次防の再検討についてであります。最近防衛庁は、国内経済情勢の悪化を考慮して、四次防の規模を縮小する方針を固めたと言われております。縮小の理由は、単に財政上の理由によるものか、あるいは冷戦構造の変化という新しい情勢も加味してのことか、この点を防衛庁長官お尋ねいたします。私は、米中間、北朝鮮・韓国間、米ソ間の接近による国際情勢の緩和や、日米関係の質的変化に対応して、わが国の防衛力の規模、内容等に再検討を加えるべきだと思いますが、政府見解をお伺いしたいと思います。  第四は、ホットラインの設置についてであります。ホットラインは、現在すでに米もソ・英・仏間に設置されており、本来は偶発的核戦争予防の手段として設けられたものでありますが、最近のニクソン訪中の抜き打ち的発表、ドルショック、繊維交渉の難航などを考えても、単に軍事上の目的だけではなく、国際社会の複雑化に伴う微妙な利害対立を解決する平和的手段として、相互の緊密な連携、相互理解をはかる上で有効と考えます。わが国の場合、当面は米ソを対象に、将来は中国との間にもホットラインを設けるべきだと思いますが、この点についての総理見解をお伺いしたいと思います。  次に、繊維交渉について質問いたします。今回の繊維交渉の経過を見ると、アメリカのやり方は強引きわまりないものであり、経済交渉の常識を逸脱したものと言わざるを得ません。このようなアメリカの常軌を逸した出方を見るとき、総理はそのつど否定しておられますが、沖繩返還にからんだ密約説は事実ではないかと思わざるを得ないのであります。もし密約が事実であるとするならば、ニクソン大統領の選挙にからむ思惑と、佐藤総理の外交交渉の軽率さによって、日米両国間の友好親善にひびを入れたことになり、日米両国民にとってはこの上もない不幸と言わざるを得ません。また、絶対に密約なんかないと言われるならば、このような理不尽なアメリカ要求に屈して、わが国民に多大の犠牲を強要する政府の責任はまことに重大であります。このいずれに当たるのか、総理の明快な答弁をお伺いしたいと思います。  次に、今回の政府間協定が国会の承認を経ずして行なわれることは、憲法第七十三条に違反すると思うが、この点について政府見解を求めたいと思います。政府は、行政協定だから差しつかえないと言われるかもわかりませんが、実質的には国家間に権利義務が発生し、国民の多くが損害をこうむることを考えるとき、このような協定を国会の承認を経ずして結ぶことは行政権の乱用以外の何ものでもありません。また行政協定は、本来、条約あるいは法律に基づいて結ばれるべきものであるが、繊維の政府間協定はどの条約の第何条に基づくものか、具体的にお答えいただきたいと思います。  さらに、この政府間協定はまことにやむを得ないものと言われておりますけれども、なぜやむを得ないのか、その理由を明らかにしていただきたい。もしアメリカの一方的な規制なら、当然ガット二十三条による報復措置がとれるが、政府間協定によりこの権利を放棄したことになるのではないでしょうか。また、政府間協定では課徴金撤廃のメリットがあるとされていましたけれども、最近ピーターソン米大統領補佐官は、協定を結ばない国に対してもすべて繊維の課徴金の適用を免除すると言明しております。この点はどう解釈すればよいのでしょうか。以上諸点に対し、通産大臣の答弁をお願いいたします。  また、総理は、昨日の本会議質問に答えて、繊維協定を契機に日米経済関係が改善に向かい、他業種への波及を抑止し得ると述べておられますが、米国政府は、最近わが国に対し、現在米国市場を荒し回っている自動車、カラーテレビ、電子式卓上計算機の三輸出商品について、日本政府間協定など具体的な輸出規制に応じない場合、二〇%以上の大幅な円切り上げ要求すると通告していると聞いております。これは昨日の総理答弁と全く相反するもので、むしろ繊維を突破口として、次々と輸入規制を行なおうとするかまえを見せているのが事実ではありませんか。総理は、これについてどう考えておられるかお伺いをしたい。また、他産業についての政府間協定は絶対に拒否するのかどうか、通貨調整にからませて他産業の協定に追い込まれることはないのかどうか、この点、明確な答弁をいただきたいと思います。  最後に、経済政策についてお尋ねいたします。ニクソンの新経済政策の発表により、国際通貨体制は危機に瀕し、これによりわが国が円切り上げに追い込まれ、国内経済は深刻な不況に巻き込まれようとしております。今回の国際通貨危機は、わが国のみが原因とは言えないにしても、外国よりの円切り上げ圧力で苦悩しなければならない事態を招いたのは、生産中心主義国民生活充実をなおざりにした佐藤内閣の誤った経済政策に起因するところ大と言わねばなりません。  わが国の国際競争力が強いといっても、それは国民生活の犠牲の上に築かれたものであります。生活環境、社会保障賃金労働条件、そのほとんどすべてについて、欧米と比較して低位にあるわが国が、国際競争力が強いといって円切り上げに追い込まれるのは、働く者にとっては何としても納得しかねるところであります。(拍手)  政府は、外貨をため込む前に、国民生活充実のための必要な施策のために金を使い、また国際的に公正な労働基準の実現のため必要な施策をとり、円切り上げを回避すべきではなかったかと思います。これからの政府経済政策はこの点についての反省から出発しなければならないと思いますが、総理見解をお伺いしたいと思います。  また総理は、一応は、景気対策は単なる高度成長への復帰を意図するものではなく、国民生活質的充実を目ざす、また、活力に満ちた福祉社会の建設に向かう、と述べておられますが、内容は抽象的で、まことに通り一ぺんであります。補正予算案を見ても、単なる当面の景気対策に終始している感が強いのであります。もしもいままでの反省の上に立って、国民の福祉重視への政策転換を決意するのであれば、所信表明の中でも、補正予算案の中でも、その長期的、具体的構想を打ち出すべきではなかったでしょうか。すなわち、生活環境の改善については、少なくとも住宅道路下水道建設公害除去等についての長期計画の練り直しを行なうべきだと思いますが、この点についての構想があればお聞かせいただきたい。  社会保障充実については、医療制度のひずみ是正、老人対策充実等についてビジョンを示すべきであります。賃金労働条件については、国際的に公正な労働基準に近づけるため具体的にどういう措置をとるか、労働時間に関するILO四七号条約の批准や、労働基準法の改正、最低賃金制の確立などについての考え方を具体的に示していただきたいと思います。  以上、沖繩、外交防衛、繊維、経済政策の各項にわたり、大きな変革期に対処する政府の方針をただしました。もし佐藤総理が、沖繩返還だけは何とか自分の手で行ないたいが、あとのことはだれかがやるだろうというお考えのもとにこれらについて明確な答弁をされないとするならば、それは政権担当者としてまことに無責任と言わざるを得ません。政府の明確な答弁を期待し、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  19. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 田渕君御指摘のとおり、今日、わが国をめぐる国際情勢はきわめてきびしいものがあり、この中にあってわが国がいかに処していくかの問題は、決してなまやさしいものではありません。また私は、このような変革期にあって国民の間に大きな不安と動揺の生じつつあることも十分認識しております。この難局を乗り越えるための具体策については、すでに所信表明演説で詳細に申し述べましたので、御理解を得ていることと思います。  次に、私は、国際情勢が変わったから沖繩役割りも変わるということではなく、沖繩本土復帰が国際情勢の好転を可能にしたと理解するのが妥当なとらえ方だと考えるものであります。しかしながら、同時に、国際間の緊張緩和は、各国がそれぞれに主体性を持ち、き然たる態度を維持しつつ、対決によらずして平和的な話し合いにより問題の解決につとめるための努力をしてこそ初めて可能になるものであります。言いかえれば、一面で万一の事態に対する備えを固めておくことによって、他面、緊張緩和のための大胆な政策を打ち出すことができるのであります。このような見地からすれば、沖繩基地の性格は復帰とともに大きく変化しますが、極東におけるこの重要性は今後といえども大きく変化することはないと考えております。  次に、沖繩の核抜き返還は、一昨年十一月の私とニクソン大統領との共同声明並びに今回の沖繩返還協定により明確に約束されているところであります。また、わが国の非核三原則は、これまで繰り返し私が強調してきたところであり、わが国の基本政策としてすでに定着したものであり、海外諸国においても十分理解されているところであると考えます。したがって、この際あらためて非核三原則を国会決議として採択する必要はないと考える次第であります。  さらに、米大統領の声明を要請せよとの御示喚でありますが、ただいま述べましたとおり、佐藤・ニクソン共同声明及び返還協定により核抜き返還が明らかに約束されている以上、日米間の友好と相互信頼に基づいてそのような措置をあらためてとることは考えておりません。しかし、政府としましては、この点に関する国民の不安を除くためにも、何らかの形で核の撤去されていることの確認を得たいと希望している次第であります。これは、昨日も本日も重ねてお答えしたとおりであります。  沖繩の復帰後も、日米安保条約に基づき米軍の駐留を認める以上、所要の施設・区域を提供すべきことは当然であります。しかし、政府としては、返還協定の交渉過程において、日米安保条約の目的に留意しつつ、沖繩住民の要望に十分の考慮を払い、沖繩の民生向上並びに経済開発のためその移転ないし返還が望ましい基地については、日本側の意向が十分反映されるよう鋭意米側と折衝いたしたのであります。したがって、政府としては、この折衝によって米側と合意に達した了解覚書を再交渉してつくり直す考えはありません。しかしながら、復帰後も米軍の使用する施設・区域の必要性につき引き続き検討を加え、安保条約の目的のため、もはや必要とされないものについては、日本側への返還を実現するための折衝を進めていく考えでございます。ただいまさような考え方を持っておりますが、詳細なスケジュールを述べろとおっしゃっても、ただいまの抽象的な考え方以上には出ません。  VOAについての問題でありますが、その中継活動を五年間暫定的に存続することに同意しておりますが、田渕君の御意見につきましては、今後十分参考にして対処してまいりたいと存じます。  田渕君御指摘のとおり、沖繩問題は、復帰実現のその日から新しく始まるとの認識は、私もしっかりと持っております。政府としては、復帰後における沖繩経済の振興開発をはかるため、新全国総合開発計画を改定するとともに、沖繩振興開発計画を策定する方針でありますが、これらの計画の中で、できる限りすみやかに沖繩の経済が本土並みの水準に達するように検討を加えてまいりたいと存じます。詳細につきましては、山中総務長官からお答えをいたします。  次に、田渕君から、日米安保条約を改定せよとの御意見がありました。私も民社党の主張はよく存じておりますが、政府として安保条約を改定する考えはありません。引き続きこれを堅持してまいる決意であります。  日中関係の正常化は、今後政府が真正面から取り組んでいかなければならないきわめて重要な課題であります。日中両国間には長い交流の歴史と両民族間の深い親近感がある半面、現在では、政治体制やイデオロギーを異にし、また経済の発展段階にも差があり、したがって、両国関係を末長く安定したものにしていくことは、決して容易ではなく、かつ息の長い作業であると考えます。私が新しい原則と呼んだのは、このような認識に立った上で、日中両国が相互理解と相互尊重の立場に立った原則ないしワク組みをつくることが、政府間接触を進めるにあたって必要と考えるという趣旨であります。このような新しい原則は、言うまでもなく、主体的でかつ広範な国民的合意の基礎の上に成り立ち、日中双方にとって受諾され得るものでなくてはならないことは申すまでもありません。私はこのような新しい原則の確立にあたって、御指示のあったいわゆる中国の平和五原則や日中議連訪中団の四原則等をも十分勘案し、参考にしていきたいと考えております。  わが国をめぐる周囲の重要なる国々との間に緊密な連携を保ち、相互理解をはかるべきことは御指摘のとおりであります。このような観点から、わが国が関係国の政府首脳と直接話し合うための連絡網、いわゆるホットラインを設けることには意味があるものと考えます。ただし、わが国と中国の間にはいまだ国交が回復されておらず、政府間接触も実現していないことは御承知のとおりであります。  次に、繊維問題についての御質問お答えいたします。  最初に、繊維についてはニクソン米国大統領との密約があったのではないかとのお尋ねでありますが、そのようなものは一切ありません。今回の措置は、米国のよりきびしい一方的輸入規制という新しい事態に対処して、これを防止するとともに、悪化している日米経済関係の改善のためにやむを得ず講じたものであります。この点については御理解をいただきたいと思います。  次に、今回の了解事項に基づいて両国政府間で結ばれることになる政府間取りきめは、すでに法令によって政府に与えられている権限の範囲内で実施し得るものであり、またガットの関係でも、わが国がガット上有する権利が影響されないものであることも確認されているので、行政取りきめとして締結することに支障はないと考えております。  また、貿易管理令の適用については、別に外為法の趣旨に反するものではないと考えております。  次に、繊維協定の他への波及の問題でありますが、これまでのところ、カナダ、欧州諸国等から、わが国からの繊維その他の輸出品について政府間協定を結ぼうとする新たな要請はなく、また、日米間においても、これを契機として経済関係が改善され、他業種への波及を抑止し得るものと、かように考えております。自動車、カラーテレビ、電算機の三品目について、わが国が輸出規制を行なわなければ米国が二〇%以上の円の切り上げを求める、あるいは求めたとの報道があったそうでございますが、政府に関する限り、そんなことはございません。はっきり申し上げておきます。  通貨調整にからめて他産業の輸出規制協定を結ぼうとするような話は、いままでも米側から出たことはありませんし、今後もそのようなことはないと信じております。ただ、わが国産業の利益を守るため、輸出秩序の維持等の施策を適時適切にとっていくことは必要であると政府は考えております。  次に、田渕君は、佐藤内閣経済政策は誤っていたとのお答えのようでありますが、私はこの点につき認識を異にするものであります。私が特に申し上げたいのは、わが国の経済力の充実は、国際収支の制約に悩まされることなく経済運営を進めることができるまでになったということであります。私は所信表明でも明らかにしたとおり、拡大した経済力を国民生活の質的向上に、より積極的に振り向け、国民福祉重点を置いて経済政策の運営を行なっていく考えであります。  次に、政府としては、社会資本充実、産業構造の転換物価の安定、医療保険その他諸制度の見直し等の基本課題に積極的かつ果敢に取り組んでまいりますが、社会資本等長期かつ総合的な資源配分の一環として考慮しなければならない問題については、現在行なわれている新経済社会発展計画補正などを通じ具体化してまいりたいと考えております。なお、道路下水道住宅等の整備公害に対する対策等に関する五カ年計画については、当面はその計画の達成に努力していきたいと考えております。  また、今後一そう社会保障制度の拡充をはかれとの御意見でありますが、この点につきましても、政府はこれまでも努力してきたところであり、わが国が今後進むべき道は国民福祉向上重点とすることにあると考えますので、今後の社会、経済の変化に対応しつつ、さらにその拡充に努力してまいる決意であります。  まず、医療の問題につきましては、今後とも国民が安心して必要な医療が受けられるよう、疾病構造の変化、医学技術の進歩などに対応して、医療保険の抜本改正、医療機関の整備など、必要な施策を講じ、国民医療の確保に万全を期してまいります。  また、老人問題につきましては、健康で生きがいのある豊かな老後をすべての老人が送れるよう、老人生活各般にわたり、きめこまかな対策を推進することとし、特に当面老齢福祉年金老人医療等充実重点にその推進をはかってまいる所存であります。  以上、私のお答えを終わります。(拍手)    〔国務大臣山中貞則君登壇拍手
  20. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 田渕君の言われましたように、復帰後の沖繩が過疎と貧困の県になってしまうということでありますならば、私たち祖国の償いというものは立証されない、むしろそれを裏切ったということに、結果が相なるわけでありますので、この点が一番大きな問題点であると私も考える次第でございます。ことにアメリカは、財政上の理由から、もしくは極東の緊張緩和等の理由から、基地の縮小あるいは削減その他の方向に進むであろうことは、大局の示すところでありましょうから、それに伴って、直接の軍雇用者として働く労働者の方々や、あるいはまた、基地が存在することによってやむなく営業を続けておられますような基地関係の業者の方々の転廃業その他に直接に結びつく問題が、これからもどんどん出てくるだろうと考えるわけであります。一面においては、これは、歓迎すべき平和な島へ、そしてまた、新しい未来づくりの障害となっている基地がなくなっていくことにおいては喜ばしいことには違いないのでありますが、それらの個人的な立場あるいはまた企業としての、一職業としての立場からいえば、これに手をつかねておるわけにはまいりませんので、今回、国会に提案をいたしました特別立法の中において、これらの方々については、人の問題については、再就職の促進手当あるいはまた技能訓練、雇用促進支度金等のそれぞれの手当の支給対象としての、沖繩においてのみ通用する特別な恩典のための手帳を給付してその行為を行なうことを定めておりますし、また、職種として転廃業されまする、やむなく余儀なくされます方々については、沖繩振興開発金融公庫の融資対象として、法律の中において、明確にそれらの人々の再出発のための援助をいたす旨を定めておるわけでございます。したがって、これからはそれらの、そのつど出てまいります問題に対処すると同時に、長期的な展望において沖繩の未来図の設計図を描いていかなければなりませんが、一応今国会に提案をいたしました法律において十年間の計画を設定して、それの初年度の気組みをもって、新しい未来図の設計図に取りかかる姿勢を示しておるわけでありますけれども、昨日も申し述べましたとおり、沖繩の単に本土との格差是正のみならず、沖繩が置かれておる有利な条件、すなわち立地的、気候的な条件を最大限に生かし、パインあるいはキビ等の基幹作物を中心として、これから畜産や漁業等の振興に大いに、底辺にそれらの重点を置くことによって、新しい未来図の設計も可能でありましょうし、また、沖繩の置かれた立地条件、東南アジアに最も近いという条件を有利に設計をすることによって、新しいまた二次産業への進展の道も開き得るものと信ずる次第であります。本日、午前の閣議において、昭和五十年に沖繩において万国博覧会の中の特別博として海洋博覧会を開催する旨を、日本側から正式に、パリにおける十一月に予定されております関係条約国の理事会の会議に提出することを前提に、閣議決定をいたしておるわけであります。このことは、五十年までに相当な大規模公共投資を含め、民間投資を含め、そして未来にわたっては、沖繩立県の基礎に観光がしっかりと腰をおろすような、あとあと沖繩県民のためになるような施設づくりのための大きな投資が決定されたということにも言えるわけでありますので、それらのことを両々相まちながら、沖繩県の未来が過疎と貧困の県にならないように全力を尽くす覚悟でございます。(拍手)    〔国務大臣西村直己君登壇拍手
  21. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 田渕議員から、四次防の縮減についてというお尋ねでございます。御存じのとおり、第四次防衛力整備計画は、複雑な国際情勢のもとでわが国の独立と平和を守るために必要な防衛力を、三次防に引き続いて段階的に整備していくために立案をされたのであります。その当時立案されましたにあたっては、わが国の国力、国情を勘案し、また他の重要な国家の諸施策との調和を考慮して計画の規模はできております。四次防原案の作成にあたりましては、具体的には計画期間中——昭和四十七年から五十一年でありますが——における国民生産を新経済社会発展計画に基づいて防衛庁におきましては総額を六百二十兆円という推計をしまして、これを前提として、さらにベースアップの分を含めて、総額約五兆八千億円の規模を定めて原案を作成した。御存じのとおりであります。しかし、その後におきまして、いわゆるドルショックを契機とする最近の経済情勢の変動に伴いまして、今後GNPの伸びが低下し、計画期間中におきます総額が、四次防原案の規模となっております防衛庁の推計を下回る見通しが出てまいりましたために、当然四次防原案の規模も多少縮小しなければならぬと、関係省庁の間で検討を始めております。一方、中国や朝鮮半島をめぐります諸情勢も最近緊張緩和のきざしが見え始めております。この見通しにつきましてはまだ明確ではございません。また、四次防自体が特定かつ具体的な脅威を前提としているものではないのでありますが、いずれにいたしましても、これらのわが国をめぐる国際情勢としては好ましい傾向でございます。この点からも防衛力の段階的整備のテンポを若干おくらせてもよいのではないかと考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  22. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 繊維に対しましては五点御質問がございましたが、その四点に対しては総理大臣からお答えがございました。でございますので、残る一点と、繊維協定を結ぶことのやむを得なかった理由について補足をいたします。  第一点の、日米政府間協定を結ぶということにつきましては、御議論の存するところでございます。七月一日から一カ年間自主規制に入ったわけでございます。まだ三カ月半しかたっておらないのでございまして、自主規制の結果さえもさだかに見通すことができない状態でございましたので、日米間のためにも自主規制が望ましいことであると私も考えておったわけでございます。しかるに、その後、十月十五日までに政府間協定が行なわれない場合、一方的規制を行なうというアメリカ側の強い申し出があったわけでございます。でございますから、この新しい提案に対して、一方的規制を受ければいいじゃないかという問題が当然起こってまいります。一方的規制になりますと、原案どおり七月の一日から実施をすることになるわけでございますが、もう今年度すでに輸出済みのもの、及び契約済みのもの、契約認証が済んでおるものが多数ございます。でございますから、両国の間に政府間協定を行なわないで、一方的交通に入る場合には、事実十月からの対米繊維輸出の大半が全面的ストップをするという事態が想定をせられるのでございます。そうなることは両国のためにプラスをもたらすものでないことは、私が指摘するまでもないわけでございます。そういう意味で、協定を行なうことによって経過措置をとることができまして、対米繊維輸出が全面的ストップが免れたということもございますし、なお、契約済み、認証済み等のものに対して、長い期間で消化をするような弾力条項も規定をせられましたし、また、繊維輸出に対して、両国間が専門家会議をつくって毎月一回ずつ協議を行ない、円満な輸出の確保をはかるような協定になりましたので、一方的規制よりもまさるものであると断ぜざるを得ないわけでございます。  第二点は、課徴金摘廃という問題をまあそういう譲歩を取りつげたからこの協定を結んだんだという理由一つにあげておるのに、その後、協定を結ばない国も適用除外になるというようなうわさがあるが、一体理由はどうかということでございますが、これはすなおに申し上げて、米国の課徴金撤廃という姿勢は、わが国及び極東諸国等が米国との間に政府間協定を結んだことを前提にしてそのような動きが出てきたのであって、われわれが結ばなければそのような事実は起こらないわけでございます。言うなれば、課徴金撤廃という議論が起こってきたことは、日米間に政府間協定が行なわれた一つのメリットと見るべきであると、こう思うわけでございます。  なお、自動車、カラーテレビの問題対米輸出規制と円平価との問題オーダリー・マーケッティングの問題等については、総理大臣から詳しくお述べになりましたので除外をいたします。(拍手)    〔国務大臣原健三郎君登壇拍手
  23. 原健三郎

    国務大臣(原健三郎君) 田渕さんにお答え申し上げます。  田渕さんは、賃金や労働時間などの労働条件を国際的基準に近づけるという具体策はどうかと、その御趣旨には全く賛成でございます。そういう労働条件を国際的基準に近づけるために、われわれも日夜努力いたしておるところであります。いままでのところ、日本の経済の成長の結果、労働条件向上には著しいものがございまして、現在では労働賃金や労働時間の実態は、欧米先進国のそれに近づきつつあると申し上げてよろしいと思います。政府としては、労働条件向上や労働環境の整備については、従来からも努力しておりますが、今後、豊かな勤労者生活実現を期して一そう努力を進めていきたいと存じます。  次に、賃金の最低基準、すなわち最低賃金制についてどうかという話でございます。さきの中央最低賃金審議会の答申もございまして、その答申に基づきまして、すべての労働者にその適用を及ぼすべく、年次計画を立てて、目下拡充に鋭意努力をいたしておるところでございます。  また、労働時間を短縮するということは、労働者の福祉の向上から望ましいことでございます。私どももそれにいま力をいたしておりますが、これも、労使が自主的な話し合いにより、実態に即して進められるよう、その機運の醸成に労働省としてもつとめてまいる所存でございます。  なお、労働条件向上は、経済の発展、生産性の向上、その他社会経済の実情に即して、まず、労使の理解と協力によって行なわれることが望ましいところであります。しこうして、労働基準法の改正とか、ILO四七号条約の批准等については、なお慎重に検討すべきものであると考えておる次第であります。(拍手)     —————————————
  24. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 星野力君。    〔星野力君登壇拍手
  25. 星野力

    ○星野力君 私は、日本共産党を代表して、幾つかの問題について佐藤総理質問いたします。  総理は、所信表明演説の中で、沖繩、中国及び国際経済の三つを、わが国が当面している重要課題としてあげられました。この三つの課題のいずれについて見ても、戦後四半世紀にわたって自民党政府がとってきた対米従属と大資本奉仕の政治の再検討と根本的転換をはからない限り、国民に納得のいく解決の道はないというのが、今日わが国の政治が直面している状況であります。ところが、総理所信表明で、アメリカの言いなりになってきたこれまでの政治基本姿勢を改めるどころか、国民多数の世論にあえて挑戦して、日本をますます深く、政治的にも軍事的にも経済的にも、アメリカに結びつけ続ける方針を述べられました。  そこで質問いたします。  まず、沖繩協定の問題であります。総理は、沖繩施政権の返還が、アメリカ歴史的な決断によるものであると言って感謝しておられますけれども、もともと日本の領土である沖繩を、二十六年間も、軍事的、植民地的支配のもとに置いてきたアメリカの不法行為こそが非難されなければならないのであって、施政権の返還は当然のことであります。しかも、今回の沖繩協定は、核も基地もない沖繩の全面返還を要求する沖繩県民の願いを踏みにじって、広大な基地とその機能をほとんどそっくりそのまま施政権返還後の沖繩に残すことを取りきめております。これは、アメリカアジア戦略のかなめ石である沖繩の米軍基地を半永久的に確保することを目的とした新しい軍事協定にほかなりません。  第一に、ベトナム侵略の基地としての沖繩についてお聞きいたします。沖繩の米軍基地がこれまで果たしてきた最も主要な役割りは、ベトナム侵略戦争のための出撃、兵たん、補給、謀略、通信などの大基地であるということであります。アメリカ自身が、沖繩の基地なしにはベトナム戦争の遂行は不可能であったろうと言っております。沖繩はこれまで、アメリカの軍事占領下でベトナム侵略に使われてきたのでありますが、沖繩協定発効後は、日本政府の同意のもとで侵略戦争の基地として使われることになります。つまり、日本が侵略戦争の直接の共犯者の立場に立つのであります。総理は昨日、返還後は沖繩の米軍の性格が変わるのだと答弁されておりますが、一体どのように変わるのでありましょうか。かつて愛知外務大臣は、事前協議で沖繩基地からの米軍の出撃についてイエスもあると言って、返還後の沖繩からのべトナムへの出撃を認める態度を明らかにいたしております。ベトナムへの出撃が、日本の平和と安全に対してどのように寄与すると考えておられるのか、総理答弁を求めます。  ベトナム戦争アメリカの不正義の侵略戦争であることは、いまや世界の前に明白であります。それにもかかわらず、総理は、一昨日衆議院における答弁において、アメリカのベトナム戦争に対する支持を再確認されました。その際、総理は、アメリカの目的は南ベトナムが民族自決を達成できるようにするにあると言われました。これは一体どういうととかお聞きしたいのであります。もともとベトナムは一つであります。ベトナムのことはベトナム民族にまかせる。それが民族自決ではありませんか。一万キロの太平洋を越えて、アメリカが陸、海、空の大軍隊を送り込んで、ベトナム、ラオス、カンボジアで、残虐なみな殺し戦争を展開する必要がどこにあるでありましょうか。  第二に、沖繩基地の核の問題であります。  総理は、衆議院での答弁で、核撤去の確認を何らかの形で考えているかに答える一方で、昨日は、わが党の不破書記局長の質問に対して、点検など考えてはいない旨答えておられます。点検しなくては、実際に確認のしょうがないではありませんか。アメリカの大統領や総理の抽象的なことばだけで信頼しろというだけでは、国民の不安はぬぐえるものではありません。核兵器撤去の確認について総理はどのような具体的方法をとろうとしておられるのか、「何らかの」だけではなしに、総理は、その内容を、沖繩県民をはじめ国民の前に納得のいくように明らかにすべきであります。明確な答弁を求めます。  また総理は、共同声明の第八項及び沖繩協定第七条で核の撤去は約束されていると、こう言われますけれども、これらの規定は、アメリカが核の再持ち込みをする際、事前協議でこれを許す可能性を封じてはおりません。核持ち込みを絶対に認めないという端的な約束を総理に求める次第であります。  第三に、沖繩への自衛隊配備と、日米間で行なった沖繩の直接防衛に関する取りきめの問題についてお聞きいたします。  総理は、沖繩が返還される以上、みずからの国はみずから守るのが当然だと、こう言われますが、それならば、何ゆえに自国の領土に自国の軍隊を配備するのにアメリカと協議し、特別な国際取りきめまで結ばなければならないのでありましょうか。総理は、特別の国際取りきめをしたわけではないと、こう言われますけれども、はたしてそうでありましょうか。現にアメリカの上院に、この沖繩直接防衛取りきめが、協定と切り離せない重要な附属文書として提出されておるではありませんか。このことは、アメリカ側が施政権返還の前提条件として、自衛隊沖繩の局地防衛を引き受けさせ、配備すべき兵力や配備の期限まで定めて、それを条約上の義務として実行を迫っていることにほかならないのであります。振り返ってみると、戦前の沖繩は、第二次大戦に帝国軍隊のあの大部隊が配置されるまでは、軍備らしいものはほとんどない非武装の島、平和の島々であったことを総理も御存じであろうと思います。その沖繩に、いまなぜ、密度からいって本土の三倍もの自衛隊配備しなければならないのか。自衛隊が引き受ける基地の役割りと分担からするならば、結局、沖繩配備自衛隊は、米軍基地の防衛と、米軍との共同作戦の任務につく以外にはないではありませんか。総理は、沖繩協定について、戦争で失った領土を平和裏に回復するという歴史にないことをやるのだと自賛しておられます。しかし、実際に土地を失った沖繩県民の手に失われた土地は返ってこないのであります。政府が今回提出した公共用地等暫定使用法案、これは話し合いを一切抜きにして一括土地を取り上げ、あとで所有者に対して通知または公示を行なうなど、所有権を全く否定するものであります。これは国民基本的権利である財産権を守るための土地収用法の手続規定ばかりか、安保条約による地位協定や小笠原返還に伴う暫定措置法の規定にもない全く異例のもので、米軍のこれまでの土地強奪を引き継ぐところの憲法違反の法案であります。しかも総理は「軍用地の継続使用が返還の前提だ」と、こう言っておられます。このような三矢作戦まがいの戦時立法で県民の土地を強奪することがどうして本土並み返還などと言えましょうか、責任ある答弁を求めます。  次に、日中問題について質問いたします。  総理は、口では日中国交正常化をうたい、中国政府の国連参加を求めると言いながら、国連の場では、日本が、逆重要事項、複合二重代表制両決議案の共同提案国になることを指示しました。これでは、実際の行動で中国の国連復帰を妨害し、日中国交回復の道をみずから閉ざすものと言わなければなりません。中国は一つであり、中華人民共和国政府が中国を代表する唯一の正統政府である。台湾は中国の領土である。国連において中国を代表するのは中華人民共和国政府であり、台湾は国連から追放されなければならない。日本は中華人民共和国政府と平和五原則に立って平和条約を結ぶ、日台条約は廃棄する、これが日本共産党が終始一貫主張してきたところであります。この立場に立ってこそ、正しく日中の国交を回復し、真に日中両国人民の友好関係を確立することができると思います。総理は国際信義を口にされますが、長年にわたる侵略戦争で、その生命、財産にはかり知れない損害を与えた八億の中国人民に対してこそ、日本は、厳粛な反省の上に立って信義を尽くさなければなりません。  そこでお聞きいたしたい。総理は、中国問題についての国連の決議の帰趨と政府政治責任は別だと答弁しておられますけれども、世界の大勢と国民の世論に逆行した政府の外交上の失敗は、今後の国の進路を誤る最も重大な問題であると言わなければなりません。総理は、一体、国連総会が台湾を追放し、中国の正統な代表権回復という決議を可決しようとも、この点については何らの政治的責任も感ぜず、これまでどおり日台条約を維持し、蒋介石政権擁護の政策を続けるおつもりなのかどうか、はっきり答弁を求めるわけであります。  最後に、経済政策についてお聞きします。  今日、総理自身も認めざるを得なくなっておる戦後体制の行き詰まり、国際通貨制度の危機、そのもとで国民は、政府経済政策日本経済の進路の根本的な転換を求めております。しかるに、総理は、国際通貨制度の危機が米国の国際収支の逆調からきていることを認めながら、このドル危機が、ベトナム侵略戦争中心とするアメリカ戦争と侵略の政策を根源としておるという、世界周知の事実については一言半句も触れておりません。このドル危機を他国の国民の犠牲で解決しながら、ベトナム侵略戦争を続けようとするニクソンドル防衛政策に協力して、円の大幅切り上げ、貿易の自由化、さらには繊維協定の締結さえもやむを得ないものとして、国民に押しつけてきております。この政府の対米従属の経済政策の結果、国民は、円切り上げなどによる中小企業の経営難や倒産、労働者の新規採用中止や首切り、自由化による農業の荒廃、地方財政の危機、いろいろ大きな打撃を受け、日本経済は戦後最大の危機に見舞われております。このような事態をもたらした責任は、安保繁栄論などというものを唱えて、対米従属、大企業本位の経済政策に終始してきたところの総理自身が負わなければなりません。  総理はきのう、国際通貨危機に対する国内政策としては、国民生活防衛こそが焦眉の急務であるという、わが党の不破書記局長の主張に賛同の意を表されました。それならば政府は、輸出関連中小企業をはじめとして、苦境にあるすべての中小企業に対し、制限された不徹底の措置ではなしに、大規模な低利長期の緊急融資、大幅な減税、下請代金の支払い遅延や、切り下げの禁止などの緊急措置をとる必要があります。また、急増する農産物の輸入に対しては、ガット十九条の緊急輸入制限条項を適用するなど、輸入制限措置をとり、農産物の価格補償制度を根本的に改善拡充して、日本農業を保護する措置を直ちにとらなければなりません。また、政府は、インフレと物価値上げとなるところの赤字公債の大増発はやめてしまって、景気浮揚のために、国民の消費を刺激する最良の道として、賃金を大幅に引き上げ、今回のような部課長減税ではなしに、低所得者を中心としたところの大幅減税を断行して、物価を安定させる施策を進めるべきであります。総理は、これを実行する意思がおありかどうか、具体的な答弁を求める次第であります。  特に国民が最も不満を持っている点は、円切り上げによって、石油など輸入価格が低下しているにもかかわらず、輸入原料に依存するところの大企業の製品価格が引き上げられ、その上に政府のインフレ、公共料金引き上げ政策によって、不況下に物価が急騰していることであります。総理は、このような政策で今後物価が値上がりしないと断言し、国民生活を安定させることができると確約できるのかどうか、ひとつ明確に御答弁を願いたいのであります。  今日の危機は、歴代自民党政府の対米従属と大企業本位の経済政策を打破し、社会主義国との貿易の制限を撤廃し、すべての国との対等、平等の経済関係を発展させるなど、日本経済の進路を、国民生活向上と経済の自主的、平和的発展の方向に、根本的に切りかえていく以外には打開できないのであります。  いま日本が当面している諸問題を解決し、国民の苦しみを取り除くためには、対米従属、大資本本位の自民党政治に終止符を打って、日本の平和と中立、国民生活向上中心に、日本政治のかじを大きく切りかえていくしかありません。そのことをはっきりと申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  26. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えをいたします。  政府としては、復帰後の沖繩に米軍の駐留を認めることが、沖繩を含むわが国土の安全確保のために必要と考えるものでありますが、沖繩の米軍は安保条約のワク内においてのみ設備・区域の使用が認められることは申すまでもありません。この点がたいへんな変化でございます。政府は、たびたび申し上げておりますとおり、今後とも現地の要望等を念頭に置いて、復帰後の基地の整理、統合に取り組み、沖繩住民の福祉の向上に一そう努力してまいる所存であります。  また、共産党の調査による沖繩の核武装部隊の撤去を求められましたが、米国の施政権下にある現在のことは、政府として公式に申し上げる立場にありません。  沖繩の核抜き返還は、一昨年十一月の私とニクソン大統領との共同声明第八項で明らかなとおり、日米最高首脳間の深い相互理解と信頼に基づく確約であって、その実施については何ら疑いの余地のないところであります。今回、これをさらに明確にするため、協定第七条において、核に関するわが国の政策に背馳しない沖繩返還条約文として明記した次第であり、核抜き返還は明確に約束されておることを御理解いただきたいと思います。  核の持ち込みの場合は、これは本土と同様、事前協議の対象になるものであります。これは昨日もお答えしたとおりであります。また、政府は、核が撤去されたかどうか具体的に点検することは考えておりません。ただし、沖繩県民の強い要望もありますので、日米間の友好関係に基づいて何らかの形で確認したいと希望しているものであります。  また、土地等の取得は、できる限り関係者の合意を得るようつとめる所存であり、沖繩復帰に際して経過的な暫定措置であることを御理解いただきたいと思います。(「理解できない」と呼ぶ者あり)かつて小笠原復帰の際の——(笑声)小笠原群島復帰の際の先例もあり、決して沖繩を差別するものでないことを御理解いただきたいと思います。  次に、返還後の沖繩は、安保条約及び関連取りきめが本土と同じようにそのまま適用されるのでありますから、米軍の性格も、当然、米国の施政権下にある今日とは異なるものがあることを、その道理をよく御理解いただきたいと思います。  沖繩本土復帰後における自衛隊配備は、本土の場合と同じように、わが国の自主的判断に基づいてきめたものであります。今回取りきめという形で取りまとめたのは、わが国が沖繩の局地防衛を引き受けるにあたって、現にこれを担当している米国との間で、引き受ける段取りについて調整する必要があったからであります。また、沖繩がわが国土の一部となる以上、同地域に所要の部隊を配置して防衛及び民生協力の任に当たらせることは、政府として当然の責務であり、配備を予定している部隊は、この責務を果たすために最小限度必要なものと考えております。復帰後の沖繩には安保条約がそのまま適用され、米軍基地は、本土の場合と同様、安保条約のワク内においてのみ使用が許されることとなるのであります。  政府は、米国のベトナム政策の究極の目的は、南ベトナムの住民がその将来をみずから決定し得るような環境をつくることにあり、そのため、南ベトナム政府の要請を受けてこれを支援しているものと了解しております。極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、米軍がわが国の施設・区域を使用することは安保条約第六条により許されるところであって、この点は本土沖繩で何ら異なるところはないのであります。したがって、沖繩基地は、これまでのような使用はできなくなりますが、外地に出る場合におきましては事前協議の対象となる。(「そのときはイエスとなる」と呼ぶ者あり)イエスもノーもあるということは、たびたびお答えしたとおりであります。  次に、国連における中国代表権問題についての帰趨を現時点で予測することは適当でないと私は存じます。いずれにしても、政府は、国連の多数意思を尊重しつつ、国際間の緊張緩和につとめてまいる所存であります。  日中二国間の関係につきましては、中国は一つであるとの認識に立ちつつ、相互理解と相互尊重に基づいた新しい原則を確立して、日中関係の正常化に努力する所存であります。また、中華人民共和国政府と中華民国政府間の問題は、たびたび申し上げましたとおり、政府として、相互の話し合いによって円満に解決されることを強く望むものであります。  次に、日米関係についてのお尋ねお答えいたします。現在の国際通貨体制の危機は、米国の国際収支の著しい逆調を背景としたものであります。また、米国の国際収支悪化は種々複雑な要因が重なって発生したものでありますが、特に国内におけるインフレの高進と米国産業の国際競争力の低下による貿易収支の大幅な悪化が大きな原因であります。米国は、新経済政策により、国内的にはインフレの抑制を、対外的には多角的平価調整を通じて国際収支の改善に努力しているものであり、政府は、世界経済全体の繁栄の見地から、米国経済の早期立ち直りを望んでおります。現在、ベトナムにおける和平実現のため。ハリ会談における話し合いが続けられており、ニクソン大統領の中国、ソ連訪問の決定など、インドシナ和平の機運は少しずつ高まってきていると思われます。わが国としては、一日も早くベトナムに和平がもたらされることを念願するものであります。  次に、今後の経済政策のあり方についての御質問お答えします。わが国経済は、これまで四半世紀の間目ざましい成長を遂げてきた結果、いまや、かつてのように国際収支の制約を受けることなく経済運営を進めることができるようになりました。私は、このような経済成長成果を活用し、福祉社会の建設を目ざして経済運営の転換をはかるべき時期が来たと考えるものであります。そのため、政府としては、環境保全、公害防止につとめるとともに、社会保障住宅建設物価対策等を通じて国民生活質的充実をはかり、真に活力に満ちた福祉国家建設に向かって邁進する考えであります。  以上お答えをいたします。(拍手)     —————————————
  27. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) 喜屋武眞榮君。    〔喜屋武眞榮君登壇拍手
  28. 喜屋武眞榮

    ○喜屋武眞榮君 第二院クラブの喜屋武眞榮であります。  激動する国際情勢の中で、東西の緊張は雪解けの方向へ進みつつあり、いま祖国に復帰しようとしている沖繩は、もろもろの不安にゆれ動いております。すなわち、復帰不安、異常干ばつと台風災害ドルショック、目に余る外人犯罪の激増による生命の不安など枚挙にいとまがありません。第六十七回臨時国会は、いわゆる沖繩批准国会と銘打って開かれておりますが、わが国が当面する重要課題は、沖繩問題、そして中国をめぐる諸問題、国際経済問題にあることは論をまちません。  そこで私は、特に沖繩問題にしぼって佐藤総理質問をいたします。  戦後、わが国の経済成長はまさに世界第二位を占め、バラ色の繁栄だと謳歌されておりますが、しかし、そのかげりとして、内政問題として大きな政治課題となっております公害物価、交通、住宅、過疎の問題もさることながら、戦後四半世紀にわたる沖繩県民の耐えがたい苦悩の数々、すなわち生命、財産、人権の抑圧など、まさに祖国繁栄の陰に埋もれている犠牲を見過ごされてはならないと思います。  そこで、沖繩の復帰措置にあたっては、四半世紀にわたる沖繩の戦後処理として、沖繩県民の声を十二分に反映させてもらわなければなりません。そのことは、一つに、県民福祉を優先すること。二つに、地方自治を尊重すること。三つに、反戦平和の復帰をすること。四つに、人権回復を確立すること。五つに、住民主体の経済開発を尊重するということでなければなりませんが、佐藤総理はどのようにお考えでございましょうか、率直な御見解を承りたい。  次に、佐藤総理は、昭和四十年八月、戦後初めて沖繩を訪問され、「沖繩が復帰しない限りわが国の戦後は終わらない」と名せりふを残されました。沖繩にとって「祖国に帰る」というととは、異民族の統治から解放されるということであるばかりでなく、同時に、それは軍事的重圧と支配からも脱するということでなければなりません。(拍手)そこで、沖繩が復帰してわが国の戦後が終わるのではなく、「沖繩の戦後処理が完全になされずしてわが国の戦後は終わらない」と、総理の名せりふは書きかえられなければならないと思いますが、総理はいかがお考えでありましょうか。(拍手)  また、筆舌に尽くしがたい辛酸をなめてきた沖繩百万県民に対し、御苦労に報いるためにも、一日も早く円滑な復帰を実現して、明るく、豊かで、平和な沖繩県を建設することが総理に課された使命であると信ずると述べておられますが、明かるく、豊かで、平和な新生沖繩県政の青写真と財政需要の見通しをどう持っておられるか、その内容を具体的に示してもらいたいのであります。  次に、沖繩県民沖繩の完全復帰を心から望んでおります。それは、核も、基地もない、戦争の危険につながる一切のものを否定し、平和な沖繩として平和憲法のもとに返ることを心から望んでおります。  そこで総理に次のことをお尋ねいたします。  一つ、核抜きと言われながら、核を抜くという明文化がないのはいかなる理由からでありましょうか。  二つ、本土並みと言われながら、本土並みではなく、基地の中の沖繩のまま返還されるのは、一体どういうわけでありましょうか。  三つ、アジアの平和と日本の安全を真に望むならば、沖繩の非軍事化宣言に同調してもらうべきだと思いますが、総理はいかがお考えでありましょうか。  四つ、沖繩の返還後も、沖繩に存続されることになっておるRS71戦略偵察機、グリーンベレー、第七心理作戦部隊や、中国大陸に向けての放送であるVOAなども、いつどのような方法で撤去させるという、基本的姿勢と具体的な方針を明らかにしてもらいたい。相手があることだから、復帰後いつかは撤去させるということでは、もはや沖繩県民は断じて納得いたしません。  次に、去る六月十七日調印をされました返還協定、その後の沖繩における県民世論は、返還協定粉砕、返還協定阻止、返還協定反対、返還協定やり直せという世論がほうはいとして起こっております。そして返還協定賛成という自民党支持者の中にも、その内容に不満であるという層が五六%もあることに注目せねばなりません。返還協定阻止、反対、やり直せという、それぞれ表現は異なっておりますけれども、共通するものは、復帰は当然であり、いささかも反対するものではないが、返還協定の内容は断じて承服するわけにはいかないという要求であるということであります。返還協定やり直せということは、復帰に反対するものであるととらえる者の考え方からは、沖繩県民の心を理解できるはずがございません。ここで強調しておきたいことは、復帰ということと返還協定を同一視する向きがあるが、それは間違いであります。返還協定は復帰の重要な要素ではあるけれども、これがすべてではないということであります。  さて、このように沖繩県民多数が返還協定やり直しを叫んでいるのは、沖繩県民の立場からのみこれをとらえているものではございません。沖繩がどのような姿で復帰するかということは、沖繩が復帰した後における七〇年代の日本の進路につながる重大な意義を持つ復帰であることを忘れてはなりません。以上のことからも、返還協定はやり直すべきだと思うが、総理はいかがお考えでありましょうか、率直な御見解を承りたい。もし、再交渉の必要がないとおっしゃるならば、その理由を明らかにしてもらいたいのであります。  次に、沖繩県民の請求権についてお尋ねいたします。  昭和二十年の米軍占領以来、米軍並びに米合衆国政府の法令、または米合衆国政府要員などの行為によって、沖繩県民に与えた損失については、沖繩県民の請求権を認め、復帰のときまでに補償がなされないものについては、日本政府が責任を持って補償する措置を講ずべきだと思いますが、日本政府は、返還協定第四条第二項を除く国民のすべての対米請求権を放棄しておるばかりでなく、復帰対策要綱でも、講和前人身傷害未補償者にかかわる請求権については実情を調査の上、国において適切な措置を講ずるとなっておるだけで、県民の請求権がどのように措置されるのか、また戦時中、日本軍の使用のために県民がこうむった人身、土地、財産等に対する県民への補償の処理も明らかでありません。これら損害に対する請求権は当然の権利であり、いやしくも、特恵的に措置されてはなりません。当然日本政府がこれらの損害に対する請求権を認め、すみやかに法的措置を講じて補償すべきであると思いますが、総理はいかがお考えでありましょうか、御見解を承りたいのであります。  このように戦前、戦後を問わず、沖繩県民はみずからのことをみずからきめる自由を持たず、自分たちの全く関知しないできごとによってその生存を脅かされたり、生活を破壊される羽目に立たされてきた苦い体験を多く持っております。すなわち、かの講和会議による県民の意思にかかわりなく、全く一方的に祖国から分断されたことや、最近における毒ガス撤去問題、そしてドル通貨の使用からくる経済的損失などそのよい例であります。  このようにわが沖繩は、常に国家権力の政治的取引の具に供されてきたのであります。が、さらに、防衛庁が施政権の返還と同時に自衛隊沖繩配備を決定していることや、米軍と自衛隊の基地使用を五年間、強制的に確保するために、今国会に公用地暫定使用法案を提出したことなど、沖繩県民の心情をさかなでするものであり、このような政治的差別は断じて許されてはなりません。(拍手沖繩県民は、いまゼネストという非常手段に訴えてまで沖繩協定に反映させようとしておりますし、また、自衛隊配備に反対する四十万人署名運動を始めております。このように、沖繩協定は全く沖繩県民の心を踏みにじるものであるばかりでなく、わが国にとりましても危険な道を歩む路線であることを知るならば、だれしも再交渉を要求すべきであると信じます。もし、このままでいくならば、沖繩に新たな軍事支配が定着することになり、このことは明らかに世界の潮流に逆行するものであり、中国と東南アジア諸国における日本軍国主義復活に対する強い批判とあわせてアジアに新たな緊張をかもすものとなりましょう。  総理政治生命にもかかわる重大な問題であることをここに率直に指摘し、総理の御決意を承り、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  29. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 喜屋武君のお許しを得まして、先ほどの星野君に対する答弁漏れがありますので、ひとつそのほうを先にいたしますが、お許し願いたいと思います。  中小企業対策が落ちたと、こういうことでございますが、私は、ドルショックというような表現でありましたので、特に重点を置かれてないのかなと思っていたんですが、平素、中小企業対策に御熱心な共産党の方だからこれはわかる、かように思い直してただいま答弁をいたします。  もちろん、今回の繊維産業をはじめ、その他輸出中心にする中小企業がこうむる打撃、これはたいへん大きなものがあるだろうと思います。したがって、特にそれについての対策を聞かれましたと、かように思いますが、政府も、そういう意味で、ひとり繊維産業の中小企業ばかりでなく、本来生産性の低い、基盤としても弱いもの、そういうものに対して、今回の事態に対処するために、財政投融資もふやしますし、金融も特に見るし、また税制等の面からもあたたかい救済の手を差し伸べなければならない、かように考えておりますので、ただいまのような点をつけ加えさしていただきます。御了承願います。ありがとうございました。     —————————————  喜屋武君にそれではお答えいたします。  沖繩出身の国会議員の立場から、復帰にあたっての県民の要望を切々と訴えられましたが、いずれもごもっともであると思います。政府としては、これまで琉球政府と密接な連絡をとって、今回提出した復帰関連法案に県民の要望を盛り込むための努力を重ねてきた次第であります。中でも県民福祉の向上については、政府として最も力を入れてきたところでありますが、今後とも再重点施策一つとして努力いたしたいと思います。また今後、総合的な沖繩の経済開発を推進することとしておりますが、県民の手による県民のための沖繩振興をはかるため、政府としてはできる限りの援助を行なう方針であります。復帰後、県民各位の各分野にわたる意欲的な御活動を期待しておる次第であります。具体的にと、かようなお尋ねでございましたが、いずれ具体的な問題は委員会等において審議されると思いますので、そのほうに譲らしていただきます。  次に、県民にとって復帰とは何ぞや、申すまでもなく、日本憲法のもとへの復帰ではないかという御意見でありますが、まさにそのとおりであります。戦後われわれ日本国民は民主主義を信奉し、平和憲法のもとに議会政治を確立し、社会の発展と経済的な繁栄に努力してまいりました。沖繩県民は、復帰のその日からまさにこのような祖国の一員となられるわけで、この点については一点の疑問もないはずであります。ただし、沖繩の参加そのものは、本土と一千キロの地理的な距離ばかりでなく、二十余年の歳月によって生じた大きな断絶があることは否定できないところであります。この断絶をいかにして短期間に、短時間に埋めていくかは、政治の責任であると同時に、喜屋武君をはじめ沖繩出身国会議員の責務であると私は存じます。各位の一そうの御協力を期待する次第であります。  次に、沖繩における基地縮小の問題、本土との経済的格差の問題、社会資本の立ちおくれの問題など、一連の問題点を沖繩の戦後処理の問題としてとらえておられると思うのでありますが、これらがいずれも重要な課題であることは申すまでもありません。政府としては、沖繩県民の意向を体して、今後ともできる限りの努力をいたす所存であります。  核抜きの問題については、今国会においてもしばしば述べてきたところでありますから、すでに十分な御理解を得ていると思いますが、沖繩県民の最も関心の深い問題でありますから、重ねて申し上げます。  沖繩の核抜き返還は、一昨年十一月の私とニクソン大統領との共同声明第八項で明らかなとおり、日米最高首脳間の深い相互理解と信頼に基づく確約でありまして、その実施については何ら疑いの余地もないところでありますが、今回さらに明確にするために、協定第七条において、核に関するわが国の政策に背馳しない沖繩返還条約文として明記した次第であります。核抜き返還は明確に約束されていることを御理解願いたいと思います。  また、本土並みの点については、返還協定第二条に明確に述べられているとおり、安保条約とその関連取りきめはそのまま沖繩に適用され、この結果、米軍は復帰後の沖繩においては安保条約の目的のワク内においてのみ施設・区域の使用が許されるのであります。また、事前協議制度も何ら変更なく沖繩に適用されますが、国益確保の見地から自主的に判断してこれに対処するという政府基本的態度は、本土沖繩を通じて全く変わりがございません。これらをもって政府本土並みと申し上げているのであります。  次に政府は、明るく豊かな平和な沖繩県を建設するため、今国会に提出している沖繩振興開発特別措置法に基づいて沖繩振興開発計画を策定いたします。そして、この計画に沿って産業の育成、振興、道路、港湾等社会資本充実、水資源、電力その他エネルギー資源の開発、県民の社会福祉の向上、職業の安定、教育、文化の振興、観光開発等について総合的な施策を推進し、各般にわたる本土との格差をできるだけすみやかに是正するとともに、沖繩の地理的自然的特性を生かして振興開発をはかっていきたいと考えております。なお、この計画の原案は、新しく誕生する沖繩県知事が作成し、地元代表はもちろん、学識経験者を含めた沖繩振興開発審議会の議を経て決定されることとなっております。  現在の国際情勢のもとにおいては、国力、国情にふさわしい自衛力を整備するとともに、米国との安全保障体制によってわが国の安全を確保する必要があります。このような見地から、本土においても米軍に施設・区域の使用を認めている次第であります。沖繩についても所要の施設・区域を提供することがわが国の安全とわが国を含む極東の平和と安全を確保するために必要であると考えます。また、沖繩本土に復帰して日本の国土の一部となる以上、沖繩の局地防衛のため自衛隊が同地域に所要の部隊を配備することは当然であります。いわゆる沖繩の非軍事化宣言、本土と切り離しての非軍事化宣言、これには同調いたしかねます。  沖繩協定をやり直すべきだとの御意見でありますが、政府は再交渉する考えはございません。  一昨年の日米共同声明以来、政府は誠心誠意この問題と取り組み、米側と交渉を重ねてまいりました。交渉の核心であった核抜き本土並みについても、わがほうの要求を貫き得てようやく調印にまでこぎつけました。この上は、一日も早く復帰を実現することが国民、なかんずく沖繩同胞の負託にこたえるゆえんであると確信するものであります。私は、大多数の沖繩県民はそれを心から、心の底から望んでおられると信じております。  次に、請求権の問題についてお尋ねがありました。法律的に申せば、国が請求権を放棄したからといって、直ちに米国にかわって補償しなければならないということにはなりませんが、返還協定に基づいて米国政府が処理する旨定められているもの以外の沖繩住民の請求については、実情を調査の上、国において適切な処置を講ずることといたしております。  なお、これらのうち、講和前の人身損害に対する請求については、今国会提出の特別措置法により見舞い金を支給できることにいたしております。  最後に、公用地等の暫定使用の法律についてお尋ねがありました。同種の立法例として、平和条約発効の際と小笠原群島復帰の際の例があります。平和条約が発効の際は、本土内のことでもあり、相当以前から関係者との交渉など、準備を進めた上で、交渉相手の数も比較的少なかったのであります。しかしながら、沖縄の場合には、約三万数千人の地主等と全く新しい契約を締結する必要があり、しかも、米国の施政権下にあるため、事前準備にも制約があるなど、平和条約発効の際のように、短期間で使用権の取得ができない事情にあるわけであります。そこで、前例もあり、五年を限り使用権を設定することにしたのであります。  以上お尋ねに対するお答えといたします。(拍手
  30. 森八三一

    ○副議長(森八三一君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十二分散会