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1971-12-22 第67回国会 参議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月二十二日(水曜日)   午後零時二十分開会     —————————————    委員異動  十二月二十一日     辞任         補欠選任      山田  勇君     青島 幸男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         足鹿  覺君     理 事                 温水 三郎君                 渡辺一太郎君                 和田 静夫君                 中尾 辰義君     委 員                 河口 陽一君                 河本嘉久蔵君                 小林 国司君                 佐田 一郎君                 細川 護煕君                 小谷  守君                 黒柳  明君                 萩原幽香子君                 藤井 恒男君                 青島 幸男君    国務大臣        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        通商産業大臣   田中 角榮君        国 務 大 臣  中村 寅太君    政府委員        行政管理政務次        官        岩動 道行君        行政管理庁行政        監察局長     浅古  迪君        法務省民事局長  川島 一郎君        大蔵政務次官   船田  譲君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君        農林政務次官   佐藤  隆君        農林省畜産局長  増田  久君        通商産業政務次        官        林田悠紀夫君        通商産業省通商        局長       山下 英明君        通商産業省貿易        振興局長     外山  弘君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        経済企画庁国民        生活局参事官   斎藤 誠三君        大蔵大臣官房審        議官       松川 道哉君        大蔵省主税局税        制第三課長    福田 幸弘君    参考人        日本銀行理事   井上 四郎君        畜産振興事業団        理事長      岡田 覚夫君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和四十四年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十四年度特別会計歳入歳出決算昭和四十四年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十四  年度政府関係機関決算書(第六十五回国会提  出)(継続案件) ○昭和四十四年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第六十五回国会提出)(継続案件) ○昭和四十四年度国有財産無償貸付状況計算書  (第六十五回国会提出)(継続案件)     —————————————
  2. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十一日、山田勇君が委員を辞任され、その補欠として青島幸男君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 昭和四十四年度決算外二件を議題とし、前回に引き続き総括質疑を行ないます。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 和田静夫

    和田静夫君 きょう、十月五日の決算委員会でのドルショック、九月二十八日、九月三十日、十月五日と展開をしましたドルショック問題から引き続いて、そこにしぼった質問を行ないたいと思いますが、まず、一ドル三百八円、一六・八八%、こういう大幅な円切り上げ評価をめぐってでありますが、円切り上げそれ自体メリット、デメリットがあるわけですし、同時に適正な平価変更の幅を見出すことが困難であるだけに、一がいに評価はできません。   〔委員長退席理事中尾辰義着席〕 それは今後の問題にかかわってきますが、今後の政策的対応によってこれを災いとなすか福と転ずるかといったような問題であろうと思うのです。しかし、現時点でこのことだけは言えるんじゃないかと私はしろうとなりに思うのですが、つまりわが国国際収支にはIMF協定にいうところの基礎的不均衡があることを認めて平価調整に応じた、そうである以上は、水田大蔵大臣国際会議の場でわが国国際収支に基礎的不均衡はないが多国間調整には積極的に応ずると演説をされたと伝えられていますが、そんなことはだれも認めない。基礎的不均衡があるから平価調整に応じたはずだと私は思う。私自身、この国の国際収支に基礎的不均衡はある、そうでないとIMF協定との関係というのがどうも理解できない。つまり、基礎的不均衡の存在を認めて円切り上げやむなしと、こういう態度をとって、しかも、いわゆる小きざみ調整ということではなくて、ある程度恒常的で大幅な切り上げに踏み切った以上は、この切り上げ小幅ほど成功なんではないかとしろうとなりに思うのです。だから、政府は当初は一〇%以内に——いま田中通産大臣見えになりますが、田中発言のように言われることになる、押えたいと考えられる。次に、一二・五%、三百二十円の線を考えられる。さらには、三百十五円説が政府部内でまことしやかに伝えられる。今度の会議に臨むにあたっては、国金局長は、三百十円死守を大蔵大臣が誓って行かれたわけですから、円切り上げ小幅ほど成功であるという私が述べている論理、そのことを認められるかどうか。そして、それが一部の輸出産業輸入競争産業に大きなショックを与えている。これに伴う弊害が大きいという理由を示すまでもなく、自明の理だと思うのです。そういう意味では、一六・八八%三百八円という今度の切り上げ失敗であった。政府はこのことをはっきり認めるべきだと私は思うのです。佐藤総理にしても、水田大蔵大臣にしても、実はこの切り上げ記者会見で、円に実力がついた結果だという一般論でもって、少なくともことばの上では強気の発言をしているわけですが、それならば円はもっと大幅に切り上げられたほうがよかったのかということに逆にはなると思う。いまの時点での評価で問題になるのは、円切り上げ一般ではなくて、一六・八八%、一ドルイコール・三百八円という数字そのものだと思うのです。そこで、大蔵省は、この数字現時点での政策的判断として妥当であった、もっと言えば成功であったと、本心からそうお思いになっていますか。
  5. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 和田先生の最初の御質問でございますが、基礎的不均衡日本についてあったということを認めたのかどうかという点でございますが、御承知のとおり、この基礎的不均衡ということばにはいろいろの、何と申しますか、その状況によりましてなかなかはっきりした定義というようなものがないわけでございまして、今回の平価調整におきましては、これは多角的調整というふうに言われておるわけでございまして、ドルが相当の幅で切り下げをした、それに対して若干の通貨はパリティを金に対しては変えない、それで他の通貨切り上げをした、こういうことで、多角的調整ということで合意が成立をいたしたわけでございます。その経緯及び政府といたしましてのいろいろな考え方につきましては、これは事柄の性質上、大臣が御答弁申し上げるべき問題であろうと存じますので、この点については私としての御答弁は差し控えさしていただきたいと存じますが、この多角的な再調整、これはいままでやったことのないことでございます。まあIMF協定によりますところの平価変更と申しますのは、大体一つ通貨が上がるとか下がるとかいうことについて主として考えられておったわけだと存じますが、それが今回のような大幅の全体の問題、これはおそらく一番基本的にはアメリカ国際収支が非常に不均衡であるというところに実は問題の発端があったわけでございます。その意味におきまして、ドルが切り下がったということは、日本を含めましてほかの国も当然アメリカ国際収支調整のためにドル切り下げをすべきではないかということを主張しておったわけでございますから、アメリカがそれを受け入れてドル切り下げをやったということにおきまして、同時にそれぞれの他の各国がそれぞれの分に応じた平価調整をやったということであろうかと存じます。
  6. 和田静夫

    和田静夫君 基礎的不均衡があるということが前提になって、そうしてこれらの操作が行なわれている。それがなければ、たとえばIMF協定に基づいてこちら側から申し出て、そうして切り上げなら切り上げというような作業に形式的に入るわけですから、それは行なわれなくてもいいということになるのではありませんか。したがって、水田大蔵大臣わが国には基礎的不均衡がないんだということを前提にしながらものを言われているということは、まさに専門家であるあなた方は、大臣言い方は間違っているということは明らかに言えるでしょう。
  7. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 先ほど申し上げましたとおり、基礎的不均衡ということの定義自体が非常に別に確定的なものがあるわけではございません。たとえば、ことし日本国際収支を見ましても、非常にことしにつきましては黒字幅が大きいということは事実でございますけれども、その内容をよく見てみますと、非常に、ことにことしの前半でございますが、いろいろと臨時的な要因で、輸出がふくれ、あるいは輸入が落ちておるというようなこともございます。したがいまして、そういうような臨時的な要因を取り除き、かつ各国それぞれの国際収支目標というのがございます。これがまた、そういう目標をある国がとること自体、これが一体正当であるかどうか。つまり、わが国について申せば、経常収支につきましては、後進国援助GNPの一%を充てなければならない——充てるという目標からいたしますと、少なくも経常収支GNPの一%に当たる黒字はむしろ出るのが普通なんだということでございますから、それが各国ともそういう目標があるわけではございませんで、その国によって若干違うと思いますので、一体ある国の国際収支状況が基礎的に不均衡であるかどうかということはなかなかむずかしいわけでございまして、ある国のほうから言えば、これは基礎的不均衡ではないと主張いたしますし、また他の国から見れば、いやこれは基礎的不均衡があるのだという主張もできるというような、こういう関係にあるのだと思います。そういう意味で、いろいろと今回の場合につきましても、基礎的な不均衡であるかいなかというようなことでいろいろと議論が初めから行なわれたと存じますが、したがいまして、この点は、その国によって言い分が違うということがあるのではないかと存じます。今回につきましては、いろいろなそういうような議論の末に、ドルが相当な幅で切り下げをいたし、その他の通貨がそれぞれの分に応じた平価調整を行なったということで、適切な結果に到達したのではないかというふうに私は思っております。
  8. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣はこういうふうに言っているのですよ、決定直後の記者会見で。「日本としては、なんといっても不況を克服しなければならないが、このためには通貨不安を解決することが必要だ。われわれとしては、いろいろな見地から一ドル=三一〇円を限界だとの案を持ってきた。しかし最後に、一、二円譲るのと、通貨不安の解消をのばすのと、どちらがよいか、という選択を迫られ、為替不安を落着させる方をとった。日本にとっては、いい方の影響が大きいのではないか。」、こういうふうに述べております。すなわち、三百二十円、三百十五円、それから三百十円、いろいろの希望的観測をしたけれども、三百十円というのが、大蔵大臣が言ったように、いろいろの見地から考えてみた判断として限界だと考えていたのでしょう。しかし、どうしても他の国がうんと言わない。そこで席をけって帰ってしまえば、いまのままの通貨不安がもっと続くことになる。このマイナス考えてさらに妥協したと、端的にはそういうことですね。そばについていらっしゃったんでしょう、あなたは。
  9. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 私は、東京におりまして、今回のワシントン会議には出席をいたしませんでしたので、その間の事情につきまして申し上げるべき立場にございませんが、先ほども申し上げましたとおり、本件につきましては、レートの問題でございますから、元来、事務当局といたしましてどう考えるかという問題よりも、やはりすぐれて大臣自身の御判断による面でございますので、その点につきましては私から特に申し上げるのは適当でないと存じますが、やはりいまの三百八円という新しい平価につきましては、これは種々の要因をお考えになって大臣が御決定になっ  たのでございまして、全く適切な平価をおきめいただいたというふうに事務当局といたしては感じ  ております。
  10. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ、ついて行った人呼んでもらおうか、そういう答弁のしかたなら。あなた国際金融局長でしょう。そばにいないからいきさつわからなかったと言うなら、随行して行った人をひとつあんた呼んできてください。
  11. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 私がいま申し上げましたのは、そういう意味ではございませんで、むろん東京におりまして現地からの連絡を受け御相談を申し上げておったわけでございますが、しかし、最終的な御決意をいただいたのは、大臣のいろんな点を考えての御判断によったものと存じておりますということを申し上げたわけでございます。
  12. 和田静夫

    和田静夫君 ともあれ、あなたは電話なりその他で御相談にあずかった、そのことだけはっきりしていればいいのです。それで、あずかったあなたにしばらく大臣見えるまで聞きますがね、一ドル三百十円といういろいろの見地から考え限界を越えて、そしてさらに譲歩をしたということですね。すなわち、譲歩しないと、各国が言うことを聞かない、そしてそのことによってマイナスが大きい、したがって譲歩したということは、これはもう他国圧力に屈したということではありませんか。大蔵大臣ワシントンで、決して他国圧力に屈したのではない、円の持つ力を追認しなければ新しい秩序は出てこないと語ったと伝えられているのでありますが、この発言は、私がいま示した発言の語るところとたいへん矛盾している、責任のがれのための強がりとしか思えないのです。これは、水田大蔵大臣個人責任があるかどうかは別として、少なくとも他国圧力に屈せざるを得ない状況があったという、そういう言い方あたりが正確な表現ではないかと思うのですがね。私は少なくとも一連の報道を読んでそう思います。  通産大臣見えになりましたし、たいへん時間がないようでありますから、まず大臣にお聞きをしますが、日本は一ドルイコール・三百十円を最低の線として今度の蔵相会議に臨んだ、それが三百八円にねじ伏せられてしまった、表現は別として。たとえ一%でも末端に与える影響は大きいと大臣述べられていたわけですから、そこで田中通産大臣は、今度の二八・八八%、一ドルイコール・三百八円という結果をどう評価されますか、率直な感想をまず聞かしていただきたい。
  13. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 佐藤内閣として全部で決定をしたわけでございますから、この一六・八八%引き上げというものは、そのまま妥当な評価として受け取っておるわけでございます。しかし、私は、通産大臣という職務にございまして、この平価調整というものは私の所管事項にはたいへんな影響がございますので、やはりそういう自分の任務の上から見ますと、閣僚として、内閣の閣員として共同責任を負わなければならない立場と、以外にまた別な観点からの感じはございます。そういう意味から申し上げますと、多少高いんじゃないかなという気がいたします。それは私が逆に計算をさしてみたわけでありますが、一五%ぐらいの切り上げですと、大体正常な状態、何とか産業体制はやっていけるなという感じでごさいました。一七%近くなると——一六、一七%と計算してみたんですが、一七ぐらいの声を聞くと、政策を行なわないと、やはり輸出などはことしと比べて円建てでは横ばいもしくは下がるのかなあという計算をしておったんです。そういうことは国会でも述べておったわけでございますから、いまになってもその私の考えが変わっておるというわけではありません。しかし、私もこの経緯をずっと承知をいたしておりますが、これは十カ国のうちアメリカを除く九カ国は日本とみな同じ感じを持っておるんじゃないかと思います。アメリカが五%ぐらいしか引き下げまいと思っておったのを——フランスでもイタリーでもイギリスでもみんな据え置きかなあと思っておったと思います。ところが、アメリカが七%でも、八%でも、九%でも下げるぞと言って、そんなに下げられちゃ困ると、こういうところが最終的な決定のようでございますから、五%ないし六%から、それ以上下がったところの感じが、各国ともそうだと思うんです。私は日本アメリカ以外の国との調整は非常にうまくいっていると思います。これは、フランスとも、イギリスとも、また特に西ドイツとは五%以上の開きがなければならないと言っておったのが三%余できまっておるわけでございますから、そういう意味では、アメリカドル対の問題以外は大体みんな問題はないと思います。ですから、これは各国ともドルに対しては少し、アメリカがみずから切り下げますと、またヨーロッパが切り下げを求めたわけであります。日本も、アメリカがみずからのドル切り下げないで人のものを切り上げろとは何事だと言っておったら、最後の段階で、では御要請に応じて引き下げますと、こういうことでございますので、その分が多少私は重い負担感というものを他の国もみんな持っておると思います。日本はそれほどの重圧感、それほど日本が不利な立場になったとは絶対考えておりません。また、産業的には、それいう意味産業政策というものをやはり行なわなければならない、予算的に、また税制上とか、いろいろな問題でもって政策を行なう必要があると、こういうふうに考えております。
  14. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣臨時代理でもあった、その間田中大蔵大臣ですから、新聞紙上を読んでみますと、水田さんの個人的攻撃をするんじゃないんですが、人のよい水田大蔵大臣コナリーのはったりにひっかかったというような言われ方をしているわけです。そこに、閣僚の一人としてですね、戦術上の失敗というか、判断の甘さがあったんではなかろうか。私が一つ疑問に思うのは、金をわずかしか持っていない日本が、なぜ積極的にアメリカドル切り下げ金価格引き上げに加担したかということなのであります。一説によると、ニクソン・ポンピドーの妥協が成り立って、ニクソンがポンピドーを説得することができなかったとも言われております。で、ドル切り下げイコール金価格大幅引き上げを条件にして、金を多量に持っているフランスフラン大幅切り上げを認めた。つまり、ドル切り下げに誘発されたフランの大幅な切り上げ幅が軸となって、そしてマルクの切り上げ幅がきめられたと言われています。いま西ドイツのお話がありましたが、西ドイツのブラントからシラーに伝令が飛んで、日本切り上げ幅西ドイツの三%以下では西ドイツの議会で問題になる。そこで日本が泣かされた。いま大臣は五%というふうに巧みに事前に答弁でうまくやられたから、三%がさもいいように聞かれますけれども、どうもそういうような事情があるような気がするのです、いろいろの報道を読んで総合してみますと。  そこでお聞きをいたしますが、佐藤総理大臣記者会見で、ドル大幅切り下げが何かたいへんな成果であるように言っておられるのですが、ドル切り下げ日本にどういうメリットを与えるというのか。ドル切り下げイコール金価格引き上げが、ドル金交換の再開、いわゆるIMF体制の再建を展望しつつなされたというのならば、話は別ですけれども、どうもそうではなさそうですね。そうすると、ドル切り下げ日本にとってのメリットというものは、一体率直に言って何なのですか。
  15. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一つずつこれは分けて理論づけをしようと思うとなかなかむずかしい問題だと思いますから、簡単に申し上げますと、二次大戦が終わった後、IMFとか世銀とかDACとかガットとかいう新しい体制発足をしたわけでございます。これは国連の下部機構として、経済機構として発足をしました。その機構は、ドル中心にして、四分の一世紀世界平和維持に貢献をしたと言っても過言ではないわけでございます。また、この機構があったので、日本経済発展も、敗戦経済から自立経済国際経済へと三段飛びをなし得たわけでございます。それはドル中心にしておりまして、ドルと金との交換ということがございましたが、われわれは、管理通貨という、金を前提としない管理通貨体制——金を持っておらない日本としては、そういう国際体制の中で今日を築いてきたわけであるし、また私はやはりこの機構はどうしても平和維持のためにも絶対的に必要なものだと思っておるのです。ところが、アメリカも、一次大戦世界金保有高の七〇%も一国で持っておったアメリカではありますが、四分の一世紀も使ってきますと、無尽蔵ではないわけです。そこで、ドル防衛になり、シップアメリカン、バイアメリカン政策になって、そうして、ドルにかわる新通貨ができればいい、つくってもらってもけっこうですよと、それができるまではドルをささえるように努力をしてくださいというので、これはアメリカの一国の国際収支の問題ではなく、やはりガット体制IMF体制そのもの維持するかどうかの問題でもある。だから、そういう意味で、IMF加盟国、特に十カ国が総力をあげて、共同責任としてキーカレンシーであるドル維持協力をしてきたことは、もう歴史の明らかにするところでございます。そういう中で、ポンド不安も、ドル不安も、カナダドル不安も、過去十年間にあった大きな問題も片づいてまいったわけであります。SDRの制度をつくったのも、新通貨をつくるに至らない過程におけるものとしてつくったわけでございます。ですから、今度の各国平価調整というものは、テクニックの上では、コナリーがどう言ったとか、アメリカがどういふうにというような問題があるにしても、やはり平価調整多国間調整として歴史上初めての試みであったこのものが成功したということは、これは非常に意義のあることであると考えております。   〔理事中尾辰義退席委員長着席〕 これでIMF体制が崩壊したのだと言う人もありますが、私はそう考えてはおりません。この崩壊にかんぬきをかけて維持をしたと、こう評価をしておるわけでございます。ですから、日本はそういう意味で、日本だけではなく、あれだけ金保有制を唱えておったフランスもついに平価調整に応ぜざるを得なかったということでありまして、これは十ヵ国が中心になってやったけれども、加盟百十数カ国のやはり世界自由貿易の大多数がこの平価調整を肯定し是認するという立場の中で行なわれた決定である、こういうふうに思います。ですから、出さなければならない応分協力というものはみんながやったので、その応分が多いか少ないか、重さの感じがどうかということが問題なわけでございます。確かにアメリカは、私たち率直に言うと、アメリカだけは金の兌換はいたしません。また、いたすと言っておりません。同時に、ドル調整を行なったわけでございます。自分最後に、みんなにその調整を方向づけさしておって、自分が五%だと思わしておって、七%、八%と、こういう切り下げをやって、それ以上ドル切り下げをやっては今度は自分たち切り下げなきゃいかぬから困りますという態勢にまで追い込んだテクニックは、政治的にうまかったと言われるかもわかりません。わかりませんが、結果としては、私は大きな試みを成功させる過程においてはまあまあのことだったと思います。ただ、アメリカが多少有利になったというような感じ、これは外国で全部そういうふうに経済評論家が言っているなら、一体それは日本はどういうメリットがあるかといえば、それはやはり日本の貿易の三〇%が対米貿易でございます。これはドルショックとかいろんなことがあっても、暦年でもって計算をしますと、ことしの一月から十二月まで七十三億ドルという大きな輸出をやってのけたのであります。課徴金があり、これだけの問題を起こしながら、対前年度比三〇%ふえているのであります。これは多様化をしなければならぬことも事実ですし、いろんなこともありますが、現実問題として、やっぱりアメリカ日本のよき得意であることは間違いないのです。アメリカがぐらぐらされると困るんです。ぐらぐらすると、すぐ繊維の二国間交渉、こうくるわけですから、そういう意味で、やっぱりお得意がしっかりしておらぬと困るという考えからいうと、アメリカドルがしっかりすることは日本もよくなることである。ですから、まあ日本も百五十億ドルになりましたが、このドルを七・何%切り下げたのですから、これはもう日銀のドル勘定においてはそれだけすぐ損勘定は立ちます、数字の上では。ところが、ドルの価値が、比較的早く、アメリカ国際収支がよくなるというテンポが早まれば、ドル価値はそのまま回復が早くなるわけですから、そういまの時点においてだけ勘定して——きょうの時点でマイナスが大きければあすの時点にはマイナスは非常に少なくなる、こういうことにもなりますので、まあアメリカがキーカレンシーとしてのドルの位置はほうり出したにしても、それにかわるものがない。結局、キーカレンシーじゃないと言っても、ドルをキーカレンシーと認めて十カ国が、またそれをそのまわりにおける百数十カ国が全部これを認めて平価調整に応じておるのでありますから、ある意味調整後のドルは新しい新通貨だと言えなくもないわけでございますから、やはり基軸通貨国であるアメリカの経済が立ち直ることは、縮小均衡の道に行くことをとめられるということになります。また、拡大均衡路線を進めていくためにはお互いに努力をしなければならぬことでございますが、いずれにしても経済的混乱に対してかんぬきが入ったということは、貿易立国である日本にしては確かにマイナスよりもプラス要因である。プラス要因であるからこそ、日本切り上げに応じた、こういうことでございまして、一時的には日本の帳面づらの勘定はたいへんきついという面もあるわけでございますが、結果的にはそれ以外に拡大をしていく、安定をしていく方法はないのだ、こう平価調整に対しては総合的に判断をし、評価すべきである、こう考えております。
  16. 和田静夫

    和田静夫君 大臣の時間の約束がありますから、所管の問題を一、二お尋ねいたします。  いまそういう御説明がありましたが、それで、貿易構造の転換とまで言わなくても、変化が起こってくるのではないだろうかと考えられますね。いわゆる日本が三〇%をアメリカ輸出している、こういういままでのパターンがこれからも続くと一体お考えになるのかどうか。私は、どうも続かないで、ヨーロッパ、オーストラリア、それから南米、あるいは額は小さいがアフリカとか、かなり日本の貿易市場というものは分散する傾向を持っていくのではないかと思うのが一つです。  まとめて言いますが、二つ目には、日米貿易のバランスの問題であります。これについてはどのようにお考えになるわけですか。さしあたって考えてみますと、アメリカ日本輸出できる商品というのは、電子計算機、航空機、これくらいのもの。日米貿易は、こういう形のものではバランスしないのではないか。日本アメリカの農業に依存するとか、あるいはアメリカの農業から大量のものを買い入れるという決意でもすれば別ですけれども、日米貿易における日本輸出超過というのは、これはもう大臣、さらに増大するものと思われますが、まずその二点どうですか。
  17. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一九五一年から七〇年までの二十年間の統計をとりますと、日本のほうが入超です。そこらが、日米貿易経済合同委員会以後、ずっと日米両国の間でもって議論してきている問題でありますが、二十年間のバランスの上では日本が入超であるということでございます。これは、アメリカ統計をとって毛、三億三千万ドルも入超でございます。しかし、一九六五年以降は、日米両国間のバランスだけをとってみますと、急激に日本のほうが黒字になってきたわけです。そして、ことしに入ってからは、思い切ってその数字が倍増してきたということでございます。二億ドル、三億ドル、四魔ドル、五億ドル、十五億ドル、二十億ドルと、このぐらいの幅で、これはただラウンドで数字を申し上げているわけですが、こんな方向で急激に伸びておるということであります。それで、ことし八月十五日のニクソン新政策が出ましたときには、アメリカが八十何年ぶりで貿易収支が赤字になった。幾ら赤字になった、二十億ドル赤字になった。どこから品物が来るから赤字になるのかと調べたら、日本から来るのだ、ちょうど日本の対米貿易の黒字が二十億ドルである、日本から二十億ドル黒字をやめてくれれば、アメリカは八十何年間続いておる貿易収支の黒字をことしもなお維持できる、これが日本に対して手きびしくコナリー第一声があったわけでございます。しかし、その後、一〇%の課徴金があり、ニクソン・ショックあり、いろいろなものがありましたが、現実問題とすると、日本の景気が不景気でありますから、これは三十七年、四十年パターンと同じことであって、日本が不景気でアメリカがちょっと調子がいいときには、アメリカ向けの輸出はうんと出ます。輸入はぐんと減るのであります。九月、十月の数字を申し上げますと、大体アメリカからの日本に対する輸入対前年度比六〇%、七〇%、八〇%という数字でございます。ですから、去年の六割、七割、八割、これは九月、十月、十一月の数字でありますが、そうすると三カ月間平均して七割しか入っていない、去年の。非常に少なくしか入らないわけであります。出るのはどうかというと、自動車は二一六——去年の二倍幾らも出ておるわけであります。それは、電子計算機にしろ、電卓にしろ、テレビにしろ——テレビは七〇%も出ておりますし、繊維にしても、とにかくひっくるめて三〇%以上出ておる。去年の対米輸出五十九億ドルが、暦年で一月から十二月、十二月はまだ半ばまでしか通関実績ありませんが、大ざっぱに私が見まして、先ほど言った七十二、三億ドル。ですから、もうそういう意味で、今度の平価調整を行なっても対米貿易は急激には減らぬなと、こういう数字をいろいろな学者が言っているのは、そういう数字的根拠に基づいて言っているわけでございます。  いま、七〇年度の実績をもって申し上げますと、日本輸出の中に占めるアメリカ向けは三〇%であります。ECに対しては六・三%であります。先ほどお話がございましたアフリカは四・四%であります。共産圏全体で五・一%でございます。中国大陸が二・二%でございます。この数字を見ますと、やはりアメリカ中心であるというのは、これはどうもまずいことであって、どうもほかのほうにたくさん出して輸出の多様化をしなければならぬことは当然でございますが、繊維製品でもってアメリカ向けのものをどこかに出そうとしても、向き向きがみんな違うわけであります。やはり日本の製品というものが、アメリカ向きのものが直ちにアフリカ向きになったり、東南アジア向けには向かないということもございまして、輸入の多様化、それから日本輸出製品の内容自体を全く再検討して多様化しなければならぬ、輸出先の多様化をしなければならないというのが、やっぱり十年間ぐらいかけて非常に堅実な総合的な政策を進めていかないと、輸出先の多様化というものにはなりません。ですから、いまの段階においてアメリカがどかんと半分に減ろうものなら、日本の経済そのものが参ってしまうというような実態にございます。あまりにもウェートが大きいということでございますが、先ほどあなたが御指摘になったように、アメリカから入るものというのはなかなかないのです。ですから、まあ飛行機とか、軽飛行機とか、いろいろなことを言っているのは、そういうことでございまして、農産物を買うわけにもまいりませんし、まあ子牛を買ってくれというようなのがいまのところでは主目的でございます。いまの日米間の問題の最大の焦点が、小牛を五千頭買うか買わぬかという問題でございますから、五千頭よけいにするかしないかというのがアメリカ日本とのいまの最大の問題でございます。ですから、アメリカから買うよりも、日本からのものが、一〇%の課徴金をつけてもなお輸出はそう減っておらないということもございますので、来年度急激に半減するということは私はないと思います。半減するというようなことはない。しかし、アメリカはあんまりこの分では困るので、いまのまんま出てきたら、繊維協定と同じように、オーダリーマーケティングという問題で、今度日本の自主規制を求めるという態勢になりますので、来年度はことしのように出ませんので、実績を見てからお互い話をしようじゃありませんかというのが日米間のいまの状態でございます。ですから、来年度は——四十七年度、いま平価調整を行ないました限りにおいては、ドル建てで対前年度比一〇%以下、円建てだと横ばいもしくはそれよりも少なくなるだろうというような見通しでございますので、対米もそういう状態で計算をすべきだと、いまの段階ではそう思います。
  18. 和田静夫

    和田静夫君 貿易の問題で、しろうとなりに考えると、一つたとえば困ることは、日本はこれからどうしても石油をやっぱり輸入していかなければならぬ。そうすると、中近東に対してはかなり輸入超過にならざるを得ないでしょう。そういう構造を持っているように思いますが、それをどこかでかせがなければならぬわけですから、日本としては、対米貿易が輸出超過になっているというのは、世界全体とのバランスという面から見ますと、均衡を保つ条件にはこれはなると思います。ところが、アメリカも、最近見るところでは、たいへん神経質な二国間貿易均衡主義であるわけですね。そうすると、私たちはこれに対して、国際分業の立場というか、よりグローバルな意味での均衡主義を主張すべきだ、こう思うのですが、これは大臣どうお考えになるか。  それから、今度の問題をめぐって、国内政策の転換ということが佐藤内閣全体として言われているわけですが、まとめての質問ですが、二つ目に、この輸出産業重点主義から、福祉優先、あるいは公共部門への資源配分という国内政策の転換と簡単に言われているのですね、佐藤総理記者会見の中で。しかし、そう一体簡単に転換できるのかというのがたいへん疑問なんです。  ところが、私は、主として自治省関係から聞いたことですが、自治体などの経験からずっと総合的に判断をしてみまして、たとえば下水道予算、今度の予算編成にあたって、各地方自治体から下水道予算をあげさせた。ところが、下水道施設整備の必要性、緊急性というのが、一ぱい大会がありまして、私も党を代表してあちこちあいさつをして歩いたのですけれども、あんな形で緊急性が盛り上がっているけれども、自治体からそれほど多くの予算要求がなかったというのです。これはどういうことかということを考えてみると、必要性に基づいて予算要求しても、それを消化する能力がいわゆる輸出中心だった日本産業にはないということです。いまの日本産業構造の中にはないということじゃないですか。これはきわめて象徴的な一つの事象ですけれども、言われるところの政策転換が、言ってみれば、TVAなきニューディール政策とでもいいますか、そういうことになりかねないのではないか。佐藤総理のんきに記者会見で、やあ切りかえていこうなんということを言われていますけれども、その点を第二点目にどう考えるか。  大臣、時間があるから最後にですが、今度の大幅円切り上げ一つの問題点は、言うまでもなく、それが不況下の切り上げであって、それが不況を促進するということではないかと思うのです。政府はさまざまな不況対策を打ち出されるわけでしょうが、当面の問題として公定歩合の引き下げの問題があります。これは田中通産大臣は、おととい、臨時大蔵大臣のときにこれをやろうと考えたとまあ語っていらっしゃるほどでありますから、田中通産大臣は積極的な公定歩合引き下げ論者のようでありますが、佐藤内閣は二十四日から〇・五%の引き下げをやるおつもりですか。
  19. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 第一の輸出輸入のバランスをとるというのは、これはもう二国間でいまとられておるものは、共産圏貿易は、これは輸入輸出というものはきちっとバランスがとられております。まあアメリカもその程度にしてはどうかと、共産圏貿易のように数字をぴしっと合わせなければならないというほどではない、ないが、お互いにやはり二年、三年というバランスの上では、お互いがバランスがとれるようでなければならない、こういうことでありまして、その一つが繊維交渉になっているわけです。こっちは二〇%増しを五%増しで押えているのですが、アメリカから見ると、アメリカの製品は日本には六割しか入っていないじゃないか、せめて去年並みに入れるようにしなさい、入れるものがないじゃないか、日本向けのものもつくらないで何を言うか、日本でつくればうんと金のかかる飛行機でも何でも買えばいいじゃないか、電子計算機でもみんなアメリカ製品で間に合うじゃありませんかと、こういうことで、二国間でいろいろ交渉が進んでいるのは、バランスをとろうじゃないか、バランスがとれないと、やはり長期的にお互いが友好関係を続けていけないということですから、これも当然ある程度のことは考えなきゃいけない。日本のように年率三〇%ずつも伸ばそうなんというのは、こんなことばかりやっていると、やはりイエローヤンキーと言われたり、たぶん日本のエコノミックアニマルと言われるような感じから抜け出せないということですから、これはオーダリーマーケティングというものを前面に打ち出さなければならないということは、御指摘のとおりでございます。  第二は、日本の国内的な構造を抜本的に変えなければいかぬ。これは、生産第一主義からもっと社会保障とかいろいろなものを言いますけれども、これはもう考えてみると、アメリカで言われておったことが、そのままわれわれ反省しなければならない。こんなに日本がたくさんアメリカ向けに輸出をしているけれども、そんなにもうけておらないじゃないですか。言うなれば、出血輸出じゃないか、ダンピングじゃないですかということですね。これは私が繊維業者の一部にも言ったんですが、糸は三年半分もお出しになったんですが、利益も三年半分積み立てましたかと言ったら、いや利益のほうはさっぱりないんです——と言うなら、これは汗ばかりかいて、人にきらわれるほど輸出をして利益はなかったかと、こういう——まあそれほどだとも思いませんが、それではノーマルな経済環境を保持するわけにいかないわけです。なお、住宅はない、道路は三分の一であるとか、社会資本の蓄積率においては四対一じゃないか——確かにそうです。アメリカ並みにするには、日本の都市の道路は三倍にならなきゃいかぬ。まあ下水とか、あらゆる面がそうでございますから、戦後急速に拡大をした社会保障の面といえどもまだ指摘される面もあるということで、そういう国内的な均衡をはかるために投資を行なわれなければならないということは、言うまでもないことでございます。まあ月給も高い、高いといって、確かにおととしは一八・二%、去年も一五・何%まあ上がってはおりますが、しかしアメリカの四千ドルに対しては半分でしかないということですから、これは上げていかなきゃならない。そういう面にやはりウエートを置いた分配というものも考えながら、国の資産も蓄積をしていくという面に重点を置いた政策を実行すべきであるということは、当然だと思います。これからほんとうに長期的な視野で見て、国際競争力を培養したり、コストダウンにするためには、それは、もう鉄道も、レールを一つかえても、三十七キロが五十キロになり、五十キロが七十キロになれば、時速は十キロずつスピードアップするわけでありますから、そうすればこそ流通機構も改正されるおけですし、コストダウンにつながるわけなので、そういうものとか、住宅の建設とか、港湾のキャパシティをあげるとか、いろんなものがあります。都市の公害除去のための投資を行なうというような面がありますから、そういうものに急速に変えていかなきゃならないんですが、それもやはり一年でできるわけはないんで、五カ年、十カ年、十五カ年という長期的な計画を持っていくべきだと思います。特に財政インフレというものを絶対に招来しないような投資でなければならないということを前提として考えていくべきだと思います。ところが、そんなことを言っても下水などに予算をつけても仕事ができない。仕事ができないことはないです、ほんとうは。これは政府にも責任があるんですが、政府でみんな直轄工事を行なったり、図面を書いたり、仕様書を書いたりするからめんどうなんでして、これは民間には非常な、政府よりもはるかに高い技術も能力もあるのでありますから、そういうものを総合的に考えていけば、この程度の社会資本の充実が日本の中でできない、そんなことは全然ありません。それでなければ、年のうち半分遊んでいる人もたくさんあるんです。ですから、特に季節労務者が大都会に全部出てこなければ働くところがないということを考えれば、こんなものが消化できないようなことは絶対にない。こういうことで、予算とか制度の問題でございます。特にあなたが御指摘になった地方の問題は、大蔵省ここにおりますが、地方債というものにワクをかけておりましたので仕事ができなかったわけですが、今度は地方債というものも相当大幅に認めなきゃならないし、市場の状況は非常にいいと、こういうことでありますから、そういう意味では、私は、今度は文句を言われないように、まあ自民党も責められないように、政府もやる気だなあとおほめにあずかれるような方向で、ひとつ大蔵省に予算を組んでもらおうということで、いまお願いをしておるわけでございます。  それから、公定歩合の引き下げは、これは新聞に出ておりますから、やるんだと思います。私もきのう長短金利の引き下げというものを要請いたしておきました。これは一六・八八%も円平価引き上げられたときに、同時に私どもは行なわるべきだと主張しておったわけであります。特に、私は大蔵大臣臨時代理でありますから、臨時のうちにどうもやるのも悪いから、ほんものが帰ってきてからやってもらおうということで、きのう要請をしておきました。これは去年から約一年の間に公定歩合は一%下がりました。この間に一番高いところは一・七五%下がったところもあるのです。アメリカとか、西ドイツとか、いまの平価調整の中で日本とぶつかるのは一体どこかと考えればすぐわかるわけでありますから、そこが一・七五下げているのに、日本が一%だけ下げておって、規制金利に〇・三しか下がっておらぬという状態で、私は計数整理ができるとは思わないんです。そういう意味で、やはり早急に金利を引き下げるべきであるという要請をしたわけでございますが、近く長短金利も下げるということが新聞にも出ておりましたし、先ほど水田大蔵大臣にどうなんだいと聞いたら、大体その方向ですなあと、こういうことでございますので、公定歩合などは引き下げられるその瞬間まで大蔵大臣さえ発言をしないことでございますので、私もよくわかりませんが、新聞を見るとそういう方向であるということでございます。
  20. 和田静夫

    和田静夫君 公定歩合はおそらく引き下げになると思います。  そこで、そのあとの問題は、大蔵大臣と少し論議をいたしますが、いま下水道の例を引いたのは、言ってみれば、いま急激にそこに転換をして予算をつけてみたところで、その部分におけるところの施設工事などに必要とする原材料産業というものに重点がなかったわけでございますから、そういう意味では、こういうものから脱していかなければいけないと、こういう意味のことを言ったわけです。  それから、地方債の論議でたいへん前向きの答弁がありまして、大蔵省よく聞いておってもらったと思うのですが、これは赤字国債その他に対応する交付金問題など、閣内の何といっても第一の実力者ですから、この国の自治を守るという意味で、十分な視点に立った、予算編成にあたってのそういう努力をしていただきたいと思います。それではけっこうです。  ちょっと、いまの通産との関係で、経済企画庁を済ませておきますが、今度の円切り上げの経済成長に対する影響ですね、それから物価に対する影響をどのように判断をされますか。
  21. 斎藤誠三

    説明員(斎藤誠三君) 今回の円切り上げ影響につきましては、現在経済企画庁でいろいろ検討いたしておりますが、たいへん恐縮でございますけれども、私は生活局の関係でございますので、物価に与える影響についてのみお答えをいたしたいと思います。  で、物価には、御承知のように、本年度は五・五%ということで一応努力してまいったわけでございますが、現在時点で先を見越しますと、どうも六%とか六・一%程度の物価上昇が本会計年度末までにいくのではないかということでございまして、円の切り上げにかかわらず、物価の抑制につきましてはわれわれもいろいろ努力しているわけでございますが、特に今回大幅な円の引き上げがございましたので、従来の物価抑制政策をさらに進展させると申しますか、非常に不況と物価高が併存する形では、いろいろことばはございますが、大きな影響があるわけでございます。そういう点で、円切り上げに伴いまして輸入物資の価格をことごとく引き下げて、円の切り上げに伴う利益を消費者にできるだけ還元したいということで、現在いろいろ具体策を検討しているわけでございます。昨日も物価政策会議の第四部会で報告がございまして、消費者に利益を還元させるために、消費者に対する輸入物資の価格の情報の提供、それから輸入価格の末端における価格の監視、それから行政の指導体制の強化という御指摘がございまして、現在時点で物価担当官会議等でいろいろ検討しておりますが、さらに高いレベルにおきまして具体策を煮詰めまして、輸入物資の引き下げの利益ができるだけ消費者に還元するようにということで検討いたしております。
  22. 和田静夫

    和田静夫君 じゃ、大蔵省に戻りますが、私は、水田大蔵大臣が十九日の記者会見で「円切り上げを避けるための、いわゆる円対策八項目はもっと早くやるべきだった。しかし、八月十五日以降では特に手抜かりはなかった。」と語っていられるのを新聞で読んで、実はまだこんなことを言っているんだろうかと率直に言って思ったんです。私は、あの円対策八項目に見られる根本思想にこそ問題があったと思う。大蔵省にはすでに反省があるんじゃないかと思うんですが、あの項目の中に明らかに外貨増に貢献する対内直接投資の自由化という項目がありましたね。そういう事実に象徴されますように、政府はこの問題を外圧として受けとめていたというか、対外政策考えている色彩が非常に濃厚なんですね。で、こうした姿勢から出てくる結論は初めからわかっていたと言えるかもしれません。また、円対策八項目のその他の項目についても、およそ円切り上げ以外の考えられるすべての外貨減らし策をただ羅列しただけで、そこには一国の経済政策決定に望まれる必須の条件、すなわち、政策当局の、何といいますか、自主的価値判断に基づいて政策目標を設定をして、そして適切な経済理論に照らして最も有効な政策手段を検討するという政策決定の原則が明らかに私は欠除していたと思います。こうした姿勢からは絶対に政治責任の意識が出てこないんだと思うんです。したがって、よかったんだというようなことしか言わないんだと思うんです。自主的価値判断がないわけですから、円が超大幅に切り上げられて日本経済に打撃を与えて大衆に迷惑をかけても、諸外国との関係でやむを得なかったという程度の認識しか出てこない。むしろまだ田中通産大臣のほうが、自分の所管のところでは実はこのぐらい切り上がっちゃって困ったもんだというさっきの答弁にあるように、あのほうがすなおだと思います。で私は、この政治責任の意識がこういう大幅な切な上げの中から出てこない佐藤内閣というのは、実はたいへん疑問に感ぜざるを得ないんですが、いま大臣まだ来てないから、そのことを強調してもあれですが、ここで言えることは何かといえば、民はよらしむべし、知らしむべからずという、言ってみればオブスキュランティズムですか、そういうような形で評価をされていることだけだろうと私は思います。で、「季刊現代経済」の中である著名な経済学者が、「日本の国際金融の現状について率直に批判したい点は、大蔵省日本銀行のミスティシズムであるというか、反啓蒙主義というか、ともかくもわけのわからないやり方である。つまり、一体、この分野の制度や政策の現状がどうなっているのか、政策当局がどういう政策手段を、どういう規準で操作しているのかがさっぱりわからないということである。たとえば「円転換規制」とか、「ユーロ・ダラーの取り入れ規制とか」、日本の対外債務や外貨準備の機成とか、現に法令により、あるいは「行政指導」なるものにより行なわれていること、あるいは相手国の関係者にはわかっていることであっても、一般の人々には発表されず、秘密とされていることが多すぎる」、私は一人のアマチュアとしてこの問題にかかわってずうっと八月以来いろいろ調べてきてみて、この経済学者の感想に全く同感であります。で、この反啓蒙主義的なものによって、あるいは秘密主義的なものによって国民が操作をされた、国もまた、国会もまた操作された、私もまた操作をされた。これは後ほど割引手形その他の問題で、この前の論議でかなり私はごまかされていることについて指摘をしたいんですが、とにかくこの国会自身大蔵省の官僚の頭の中で構成をされたもので操作をされた。私は、実はきょうの質問を通じて、この神秘主義といいますか、反啓蒙主義といいますか、こういうようなものを何としてでも打ち破りたい、そういう観点から幾つかの質問を展開してみたいんです。  そこで、変動相場制直前と、今度円切り上げ直前とに分けて、大蔵省なり日銀なりが行なった市場操作についてお尋ねをいたしますが、まず、いまでも率直に言って私わからないのは、八月十六日、向こうの日で言う八月十五日、ニクソン声明以降もなお為替市場を開き続けた理由です。これは私、何べんか、九月の段階、十月の五日の段階でも尋ねましたが、もう一ぺんこの理由を聞かしてもらいたいと思います。
  23. 船田譲

    政府委員(船田譲君) まず私からお答え申し上げたいと思います。  前回にも、前々回にも申し上げましたように、わが国の貿易決済の大半がドル決済であるということ、そのために市場を閉鎖することによって貿易の円滑なる運営にはなはだしい支障を来たすおそれがあるということ、それが一つの理由でございます。もう一つの理由は、わが国通貨、外国為替管理の体制というものが、いわばわれわれの自意識から申しますと、世界に冠たる為替管理と、自信をいささか持ち過ぎておったと言われるかもしれませんが、持っておったわけでございます。この二点から、とにかくあけておいてもだいじょうぶだという判断のもとに、東京外国為替市場をそのままに置いたわけでございます。
  24. 和田静夫

    和田静夫君 その二点から前々から言われているわけです。そこで、あの時点で、円平価維持の方針というのは論外として、市場閉鎖が貿易に及ぼす影響云々というこの前半、前に述べられた理由があるわけですね。で、この理由ですね、これは私は前々から疑問に思っているんですが、理由にどうもなっていないという感じがします。といいますのは、八月十七日以来この外国為替市場で先物の取引は、政府答弁にも前々からありましたように、きわめて少額しか出ていないということです。これは実際上、この期間貿易の契約は停止していたと言っても言い得るくらいの少額です。したがって、貿易への影響云々というのは、私は理由にならないんじゃないか。九月一日の衆議院大蔵委員会で、わが党の堀委員からその点を指摘された水田大蔵大臣は、実はこういうふうに述べているのです。「開いておるのと閉鎖するのとは全くこれは違うと思います。あの場合、閉鎖した場合に起こる混乱は、新しい取引ができるできないというのじゃなくて、もう金融が、一日を争っておる中小の輸出業者あたりが、金融上の措置の狂いによって倒産しないとも限らない。」ということを述べております。で、これに、あのときですね、資金を手に入れたのはそれでは中小企業かという反論にあいまして、そこで「むしろもう一定の率をきめた引き上げに踏み切ってくれることのほうがわれわれにはいいんだというような、中小企業の輸出業者を中心にした意見が出てきて、そこから問題が出てくるというような情勢を見ましても、これが中小企業の問題にどれだけの響きを持っておったかということは大体おわかりができることと思います。」と答えている。これは全く答弁にならない答弁水田大蔵大臣はしているわけです。この点どうですか、もっといい答弁が浮かんでいませんか、その後三カ月たっているのですけれども。
  25. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) ただいま政務次官から御答弁申し上げました点、若干補足をいたします。当時なぜ市場を閉鎖すべきでないという方針をとったかという点でございますけれども、当時は、先ほど政務次官からも御発言があったかと思いますが、政府といたしまして円平価を堅持するという方針をとって、もしも市場閉鎖をいたしますと、ほかのヨーロッパ諸国等と違いまして、この点も、先ほど政務次官から御答弁がございましたように、わが国におきましては対外取引の大部分が外貨建てでございます。その意味で、取引がとまってしまう。一日、二日ということでございましたらそのようなことでもたえられたかと存じますが、当時の状況におきましては、もし一度市場を閉鎖いたしますと、情勢の推移に応じましてどのくらい長くそれが続いたかわからないという情勢でございました。もしもそういうことで閉鎖をいたしますと、今度は開きますときに切り上げ決定するかあるいは変動相場制移行その他の新しい措置をとるかの措置をいたしませんと市場の再開ということができない。しかも、市場の閉鎖は、先ほど申しましたように、ほんの二、三日——せいぜい二、三日ということしかもたないであろう。もしそうでございませんと、新しい輸出の成約とい問題ではございませんで、一番問題でございますのは、大臣が御答弁をされておる点を先生も読み上げられましたが、要するに、輸出手形の買い取り、受け取りの外貨の円現金化と——新規の輸出の成約と申しますよりも、そういう点で支障が起こりますので、その点で社会不安が起こり経済の混乱を生じてはいけない、そういう配慮からとうてい市場閉鎖というのは長く続き得ない状況日本はあるわけでございまして、当時といたしましては、一度閉鎖をすればそれがどのくらい長く続くかわからない。しかも、他方で社会不安その他不安が起こります場合には、せいぜい三日か四日という閉鎖でまた再開をしなければならない。再開をいたしますと、ただいま申しましたように、まのときには切り上げなりあるいは変動相場制移行なり新しい措置を確保した上でないと開けない、こういう状況でございましたので、それで閉鎖をしないで市場を平常どおり続けているのが適当であるという結論のもとに行動をいたしたわけでございます。
  26. 和田静夫

    和田静夫君 いや、その理屈は納得ができませんです。これは前にも言ったからあまり深く触れませんが。  それからもう一つ、為替管理がきびしいから投機的資金の流入が防げるという問題ですね。これも判断に私は間違いがあったのじゃないか。これは私はいまから立証していきます。たとえば、ドル流入の最大の要素であった輸出前受け代金ですね。標準決済方法に関する省令で認められ、これ自体本来適法なものであるのに、疑いを持たれた。そして、今回の主たる原資であったこのたびの商社等の外国銀行からの借り入れを禁止したり、検査に入ったり、しまいにはその受け入れを許可制にしたりということは、すなわち大蔵省自身輸出前受け代金の流入に投機的なにおいがあったとかぎとったからでしょう、いかがですか。
  27. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 為替管理の面でございますが、この当時為替管理は日本におきましては相当きめこまかくやっておりますが、大体これくらいの外貨の流入と申しますか、あるいは外貨の流入と申しますよりもドルの売りがあるであろうという点の実は予測をいたしました。そのとき為替銀行の手持ちが約十億ドル程度ございますから、これはあのときのような非常の場合には市場に売り出されるであろうということは予測がつきました。それから輸出前受け、ただいま先生御指摘の点でございますが、これもいわゆる受け取りのリーズと申しますか、先取りというかっこうでああいう事態のときには当然相当の規模で起こってくるであろうということは予想をいたしました。ただ、いまの結果として申しますと、為替銀行の手持ちくずしと申しますか、そのほうは大体予想どおりの金額が売りに出されておりますが、輸出前受けのほうにつきましては実は予想を相当上回る多額の流入がございました。これはいま先生も御指摘になりましたように、標準決済規則で一年以内までは標準決済になっておるということから、また輸出前受けという制度そのものが商慣習に照らしましてある程度普通の商慣習であるという点につきまして、そのもとである外銀からの借り入れをとめるという措置をとればそれほど大きく入ってこないであろうというあれはいたしましたが、実際問題といたしましては、その点におきましては、やはり予想より相当多くの輸出前受けを通ずるドルの売りがあったということは事実でございます。その点につきましては、われわれといたしましても、予想を上回るものがあったと申しますか、あるいは予測において正確でなかったという点で反省をいたしておるわけでございますが、したがいまして、為替検査をいたしますと、あるいはこの検査の結果に基づきまして——まあ為替検査と申しますのは、法令違反の行為があるかどうかということと同時に、また各為銀及び商社とも適正にかつ全体のことを考えて行動してほしいという、そういう意味もあったわけでございますが、しかしながら、やはり相当程度の流入がございました。これはおくればせながら、この九月一日から輸出前受けの点につきましてこれを全面的に許可にかけるという措置をとりまして、その後はこれでこの点の売り上げは防げたわけでございますが、変動相場制に至ります間におきましてはこの点の流入が多かったということにつきましては、ここにわれわれの見通しの甘さがあったという点は反省をいたしております。
  28. 和田静夫

    和田静夫君 見通しの甘さがあったぐらいではなくて、私は、たいへんやはり、あの機会において開き続けたというのは、そういう意味では誤りであったというふうに思うわけです。そこで、そもそもこの輸出前受け金の受け入れという行為ですね、これは通産省に聞くのですかね——どちらかわかりませんが、どのような法律に基づいて、どういう性格のものですか。
  29. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 外国為替管理法に基づきまして、輸出前受け制度というものは為替管理の中身として認められているわけでございますが、その背景は、長年の間貿易上の取引に伴いまして一つの契約ができたときに、その代金の前払いというふうなことがいろいろな商慣行等に基づいて多くあったんだろうと思います。それはまた、事実現在でも、商慣行に基づく前受け制度というものは、実際問題として取引の上においても行なわれているわけでございます。で、為替管理のたてまえから見まして、何と申しましても、外貨をなるべくセーブすると申しますか、出ていく外貨はなるべく押えるけれども、入ってくる外貨については、どうもやはりそういった点について商慣行をそのまま頭に入れて、そしてそれを必要最小限度に規制するというたてまえから、一定の期間をこえる毛のは標準外決済だけれども、その実際に前受けされたものが輸出の契約に結びついてくる場合に、あまり長いものは許可を受けなさいよというふうなたてまえから標準決済規則の中で前受け制度についての扱いがきめられたと、こういうふうに私どもは考えております。したがいまして、制度的にも裏づけのあるものでございますし、正常な貿易取引の中で輸出前受け制度というものは従来から長く行なわれていた実態であるというふうに理解をしておりますし、法令的にも一定の裏づけがあれば銀行がそれを証明して受けるというふうな制度をとっていたわけでございます。
  30. 和田静夫

    和田静夫君 それ自体は単なる商慣習上の行為、法律的には外国為替及び外国貿易管理法第四十九条、これには包括をされる行為ですね。すなわち、貨物を輸出しようというものに対して代金が事前に入ったという保証行為のわけですね。したがって、この輸出前受け金証明書にしたところで、その為銀が商社に対し金が入りましたよということを証明する証明書であるにすぎないわけです。したがって、こんなものを幾ら調べたところで、私しろうとだからそう思うんですがね、架空契約に基づく代金かどうかなどということはそもそもわからないわけでしょう、わからないんじゃないか。そういうことを点検するような書類じゃないわけですね、いま説明から承ってみても。それにもかかわらず、大蔵省と通産省がこの点検に入ったということは、私はこの検査それ自体が国民に対するゼスチャーにすぎないのではないか、非常にあれな見方かもしれませんがね。そういうような、たとえばわれわれの追及を事前にちゃあんとかわすためにこういう行為が行なわれていたんじゃなかろうか。いま九月二十八日から十月五日までのこの委員会における論戦を振り返ってみて、そういうふうに実は思うのです。皮相な見方だと言われれば、それまでかもしれませんけれども。それとも、あなた方がこの検査を通じてピックアップした仕向け地複数とかあるいはゼネラル・マーチャンダイズという表示のものを架空契約とみなして、したがって、それでこの見出された商社を、何といいますか、外為法違反で摘発をする、これはまあそういうことがあったら摘発をすると、こう前の委員会で——十月五日でしたか、答えられているのですがね。それはそういうことですか。
  31. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 先ほど稲村局長からも御答弁がございましたが、私どもといたしましては、正常な輸出前受けが量的にもその推移をたどっている限りあまり心配をしなかったわけでございますが、二十三日ごろから非常にまあ輸出前受けがふえてきた。そういうことにかんがみまして、これはやはり実際問題としては証明するだけでございますから、標準決済規則の許可を受けるとか、輸出契約にあたってしか行政的なチェックはできないわけでございます。しかし、その時点でこんなにふえてくるのは、何かただいま先生御指摘のような点で法令違反、つまり輸出契約を伴わないで、前受けという名前で金が送られてきているといたしますと、これはむしろ外国為替管理令、つまり物の流出に伴わない金の授受でございますから、これはそっちのほうの許可を受けなければならないわけでございます。したがいまして、輸出契約の裏づけというものがはっきりないものを前受けしてしまうということになりますと、その時点でもう法令違反があり得るわけでございます。したがいまして、そういった観点から、立も入り検査をいたしまして、法令違反のようなことになっているのかどうかということを調べたわけでございます。その際に、ただいま御指摘のように、仕向け地が複数になっているとか、あるいはゼネラル・マーチャン・ダイズというふうな表現になっている契約が多数あったことも事実でございます。しかし、これとても、従来正常な数字で推移しておりましたときの輸出前受けの取り扱い方とほとんど違っていない。従来からやはりゼネラル・マーチャン・ダイズというふうなことで輸出前受けというものは処理されてきたという長い間の慣行もあったわけでございます。したがいまして、その点をすぐに法令違反というわけにもいかないわけでございますが、同時に、そういった推移をたどっている限り、やはりもっと正確に輸出契約というものをはっきり見るべきであるというふうなことから、その立ち入り検査に伴いまして私どもの行政指導といたしまして、為替銀行に対してもっと正確に商品の名前なり仕向け国をチェックするようにということを強く申し入れしたわけでございます。で、それ以後契約のほうはだんだんと正確になって、そうして輸出前受けにつきましても、私どもの意図が通じまして、契約をチェックする上での改善が行なわれたというふうに聞いております。
  32. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  33. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 速記を起こして。
  34. 和田静夫

    和田静夫君 これからかなめに入るので、大蔵大臣約束の時間までに来ているわけでありますか。
  35. 船田譲

    政府委員(船田譲君) 先ほど来、和田委員から、すみやかに大蔵大臣出席せしめるようにという御催促がございました。私も手を尽くしましたのですが、協特の委員会との振り合いがございまして、どうしても実は私の腕ではとれないという状況になっております。それから、確かに協特の休み時間はございましたですが、予定時間より短うございました。その間に実は、明日は国債引き受け懇談会と、きょうもやっておりますが、きょう、あすと政府の税制調査会がございまして、予算の大綱をきめる前の一番大切な財源の問題でもございますので、院内の大臣室に担当の局長等呼びまして、大臣打ち合わせをしておりましたために、こちらに参ります時間を失しましたことは、私も政務次官としてたいへん申しわけないことだと思っております。もしも、あとの時間で、その部分だけ留保されまして、機会を見て御質問いただければと、こういうふうに考えておりますが、これは私のほうの希望でございます。
  36. 和田静夫

    和田静夫君 まあ、適当な時間を残します。  そこで、いまの続きですが、やはりこのチェックはキャンセルの時点で、事後的にやるわけでしょう。そうすると、大商社の場合、かりに当初それが架空契約に基づくものであっても、一年以内のうちに吸収してしまうわけでしょう。そうすると、キャンセルが出ているのは中小ばかりではありませんか。すでに、いまキャンセルが出ているやつがあるわけでしょう。全体としてのキャンセルの状況というのはどうなっていますか。
  37. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 輸出前受けを証明された金額がどう処理されるかということになりますが、最もオーソドックスな行き方が、一つ輸出契約に伴いまして、これは輸出認証のときにわかるわけでございますが、すでに前受けでこういう代金を受けておりましたということで、輸出認証のときにこれは一つチェックができるわけでございます。  それからもう一つは、いま先生御指摘のように、輸出契約がキャンセルされたというかっこうで、この前受けは実は返したいというふうなことがあり得ると思います。この点につきましても、ただいまどうなっているかという点でございますが、実は、そういうふうなことにかんがみまして、私どもといたしましても、輸出契約のキャンセルによる輸出前受け代金の返還ということについては、厳重なチェックをしております。九月の上旬、中旬、下旬、十月の上旬、中旬までに通産局が許可した件数が八件、それから為替銀行の承認した件数が四件ございますが、これは、それぞれ厳重に見た範囲におきまして、輸出契約の全部または一部がキャンセルされているということの証拠書類がはっきりそろっているものを認めたわけでございます。そういうことで、かりにも先ほど御指摘のような疑惑が前提にあるような前受け制度であれば、それが返還が容易に行なわれるということになりますと、きわめて問題でございますので、このキャンセルの申請につきましては厳重にチェックをしているわけでございます。  それからもう一つ、それじゃ、一年間にキャンセルもしない、輸出契約にも伴わないというものはどうするのかということになるわけでございますが、実は、こういうふうな経緯をたどった前受け証明書でございますので、これを全部取り寄せまして、それがどのように履行されるかということを厳重にチェックしてまいりたいということで、現在、私どものほうで、関係の為替銀行あるいは日銀等から書類をちょうだいいたしまして、それがどう処理されていくかということを今後ずっとフォローしてまいりたい、こう考えております。したがいまして、かりにもそれがそのまま使われないでいるということは、これはあり得ないわけでございます。それがどう処理されるかということをあくまでも追跡してみていって、そして先ほどのような問題がある前受けがあるかないか、これを今後ずっとフォローしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  38. 和田静夫

    和田静夫君 いま言われた中で、明らかな外為法違反というものはあったのですか。
  39. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 現在までのところございません。
  40. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、私はその調査に基づいて三井物産の輸出前受け金受領のいろいろの動きというのをある程度知っているのですが、大体申し上げてみますと、八月の十六日以前の輸出前受け金の受領額というのは、これは公表されておりますように五百万ドルくらい、それから八月十七日以降のやつは、これも出ておりましたが、三億三千百万ドルということになっているのですね。そうすると、こういう状況、しかも、これ内容的にずっと調査をしてみますと明らかになります。こういう状態はおかしくないか。変動相場制への移行を事前に知っていた、これは何べんも私は論議をしたのですけれども、これは三井物産の職員の発言もすでにあります、事前に知っていたと。そこで、情報がやはり事前に三井物産には流れた。これは調査をすればするほど、このことはもう明らかになっております。どうですか、そうお考えになりませんか。
  41. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 私どもあの時点で、あの時期に変動相場制に移るということについては全く知らなかったわけでございますし、商社のサイドから見ましても、そういう点について事前に漏れるとか、漏れないとかいうことは、私どもとしては全然そういうことはなかったと思います。ただ、全体といたしまして、ニクソン声明があったあと、何かやはり為替について動きがあるのではないかというふうな傾向が一般に感知されたことも事実でございます。したがいまして、輸出の売り急ぎと申しますか、早く契約のできているものはどんどん現金を取ろうとしますし、既契約になっているものについては、やはりできるものは前受け代金というかっこうで早く決済を急ごうというふうな傾向があったことは間違いないと思います。その辺を私どもは考えまして、不当な要素が入ってはいかぬということから、先ほど来金融局長も申し上げているとおりに、厳重なチェックをいたしましたし、さらには、その多くなった傾向にかんがみまして、九月以降円転換を押えるというふうなかっこうで処理したわけでございますが、当時そういったことが明らかにそういう人たちにわかっていたというふうなことは、私としては、そういうことはなかったのではないか、こういうふうに思っております。
  42. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃあなた、たとえば九月期決算についてのみの輸出前受け金の流入状況、これを対比をしてみますと、いまの三井物産は、これは延べにするともっとずっと大きくなると思うのですが、大体六億四千万ドル程度ですね。そして、これとの関係において商社のいわゆる九月期の決算の輸出前受けによる差損の回避をずっと見ていきますと、三井物産だけずば抜けているでしょう、新聞なんかに出ているのを見ると。これは一体どういうふうに——いまそんなことがなかったと言われるけれども、判断されますか。大体、六億四千万ドルをこえる状態、これはほかのところと比べると二倍、三倍というようなところですね。あるところとはもう大体五倍ぐらいも違う、同系列の物産、商事なんかを当たってみると。それでも、そういう事実はなかったと言われますか。
  43. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 確かに、御指摘のように、他の商社に比べまして三井物産の前受け額がきわめて多かったことは事実でございます。先ほど御指摘のように、九月期の決算におきましても、これによる差損回避額が御指摘のように六億四千万ドルございます。これはやはり、その前提となりまする輸出前受けが三億三千万ドルあったと、非常に各社に比べて多かったということから、差損回避額も多かったという結果になるわけでございますが、ひるがえって、なぜ三井物産だけ多かったんだろうかということになるわけでございますが、私ども、この辺、商社ごとの具体的な事情というのがそれぞれ違うんではないかというふうに考えざるを得ないわけでございまして、三井物産につきましても、一部の長期の延べ払い債権を除きますと、おおむねまあ半年分ぐらいの輸出受注残といったものを持っていたと思われます。この程度の前受け金額ということは、一応そういう受注残から見ますとあり得るわけでございまして、立ち入り検査におきましても、特に違法なものは見つからなかったわけでございます。他の商社よりも多いという点は、おそらくは輸出代金の回収のしかたについて、たとえば輸出業者と相手国バイヤーとの関係ということも一つの要素でございましょう。あるいは輸出業者と国内メーカーとの間のリスクの負担関係といったようなことも一つの要素でございましょう。いろいろ会社ごと、ケースごとによって事情があると思います。商社によって事情が異なると、契約方法とか、取り扱い商品といったようなことによりましても、あるいは営業政策といったようなことによりましても、違ってくるのではないかと思いますが、こういったような諸要素を見まして、特にまあこういう差が出てきているのではないかと、こういうふうに考えているわけでございます。
  44. 和田静夫

    和田静夫君 まあこれは、もっといま私もさらに追い続けていますから、いつか明らかにいたしますが、あなた、そういうような答弁をしておって、あとで答弁を変えるなどというような不見識なことのないように、腹をきめて答弁しておいてもらいたいんですが、たとえば、自由民主党の石原慎太郎議員は週刊ポストで、自民党筋がこうした情報を漏らして金を受け取ったといううわさがあるというようなことを大胆にずっと指摘されているんです。私はそのうわさはうわさというようなふうには見ません。ちゃんと調べ上げますけれども、たいへんな額のものが動いていることまではもうわかっているんです。そこで、九月期のみに関しての差損回避額ですが、いまあなたは、三井物産は六億四千万ドルと言われたが、どのくらいの額の差損を回避しましたか。
  45. 外山弘

    政府委員(外山弘君) 三億三千万ドルの前受けをしておりますので、その分の差損回避ということが可能であったと思います。ただ、別途長期債権等をいろいろたくさん持っておりまして、為替の買い持ちと申しますか、そういった意味での債権額はかなり多額に持っているというふうに聞いている次第でございます。
  46. 和田静夫

    和田静夫君 私はどう考えても、八月十七日から二十七日までの間市場を開いていたというのは、これはまあ為銀なり商社なりの救済措置としか考えられませんが、日銀の立場で井上理事どうですか。
  47. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) 先ほどから大蔵政務次官、いままた局長から御答弁がありましたとおり、あの際、市場を締めますと、日本の貿易が非常に混乱が起きるということで、開き続けておったわけでございます。
  48. 和田静夫

    和田静夫君 それではお尋ねしますが、八月二十三日から二十五日にかけて各外為銀行はそろってドル買いをやっています。東京銀行だけはドル買いはありません。しかし、二十五日に売りはゼロです。三菱は二十五日に四千五百万ドルぐらい、富士は八千万ドルぐらい、住友は一億三千五百万ドル、三井は二十四日に一千六百万ドル、第一は二十三日に一千八百万ドル、二十四日に四千五百万ドル、二十五日に七千四百万ドル、三和は二十四日に五千万ドル、二十五日に二千九百万ドルといったような状況が私の調査であがってきているんですが、これは大体私確信を持っていますが、これは要するに、円転規制がその時点で働いたということでしょうけれども、二十六、二十七日にドル売りがものすごい勢いで復活をしております。この辺がまあいまからもう一ぺんやりとりをする井上さんの行動との関係になるんですが、これはこの時点で円転規制の緩和があったからでしょう。この時点でなぜ円転規制の緩和をやったのか、その理由が私たちしろうとにはどう考えてもわからぬのです。いかがですか。
  49. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) 二十四日、五日に多くの為替銀行がドルを買いましたことは事実でございます。  円転換規制と申しますのは、八月までは月末残と月中の平残で規制をいたしておりましたので、八月十六日以降非常に世の中が騒然としておりまして、為替銀行はある程度円転をくずして売っておりましたわけですが、月末が近づくにつれましてドルを買い戻して平残規制を守らなければいけない状態になったわけでございます。ところが、その状態を放置いたしますと、為替銀行はそれ以上買い持ちをふやしたくない、輸出手形を一切買い取らないというようなことで、市場はたいへんな混乱におちいる、そう判断いたしましたわけでございます。一方、八月の十九日以来外銀借り入れの残高をとめておりましたので、これ以上外国銀行から金を借りて売ることはできない状態になっておりました。そこで、資金貸しを借りてドル建ての輸出手形を持っておりますのが円投入と認められておりまするので、前から為替リスクの関係で資金貸しを返さしてもらいたいという要望がございまして、急に外貨がふえるのはぐあいが悪いということで、その返済を押えてきております。ところが、いま申し上げましたように、十九日から外銀借り入れの増加を、これ以上は借りてはいけないというのでとめておりますので、そういうおそれもなくなったと判断いたしまして、為替市場の円滑な運転を維持するために資金貸しの返済を認めた。したがいまして、為替銀行は二十六日以降はドルを買い戻さなくてもよくなった、こういう事情でございます。
  50. 和田静夫

    和田静夫君 私は、大蔵大臣やあるいは日銀総裁含めて——きょうはまあ井上理事には日銀総裁の代理として、そういうふうに日銀のほうから念を押されていますから、出席を願っているわけですが、この時点から、この前も私が立証いたしましたように、八月二十一日、二十二日の大蔵省第一公邸における会議、それを受けた二十三、二十四の日銀氷川寮のああいう会議などからずっと類推をして、変動相場制に入るのはとにかく知っていた。しかも、その時点で円転換規制を緩和したということは、どう考えても為銀救済を目的としたものとしか思えません。くろうとのあなたがいかにうまく答弁をされても、案外アマチュアの感覚というものは当たるものでね。もう少し、五年もたって歴史的に振り返って見れば、やっぱり私の指摘のほうが正しかった、井上さんはたいへん苦しい思いをしてうそを言っておった、こういうことに歴史的にはなるんだろうと思うのですが、私は、この目的を達成するための行政行為として、先日来問題になったいわゆる日銀のあなた、井上理事の行動があったと判断をしています。そうでなければ、出向いたこともないような銀行にとにかく五つ出向かれる、二十六日の夕刻から、そして二十七日の午前中歩かれて、行き切れなかったところは一つは来てもらう、一つは電話で話をすると、こういうことはあり得ない。  そこで、井上さんにお尋ねをしますが、あなたが二十六日から二十七日にかけ歩くなり電話をするなりしてドル売りを、あなたの答弁によれば控えるように、私に言わせればドルを売るように、とにかくあなたの答弁を例にとって、ドル売りを控えるようにと言った七行ですが、これは、あなたがいかに答弁をされようとも、もうすでに明らかに大体なりつつあるように、二十六日、二十七日にかけて、圧倒的な数字ですね、売りの数字は。それはもう圧倒的な数字です。あなたの意図と全く逆の結果が出ていますね。この点については、どういうふうに一体お考えになるのでありますか。
  51. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) 前回、十月五日のときに、先生からお尋ねを受けまして御答弁いたしましたとおり、投機的な売りを差し控えるように説得して回ったわけでございます。結果において、投機的な売りは一切行なわれていなかったというふうに判断いたしております。もし銀行が投機的な売りをいたしておれば、もっとこの金額は多くなり得たはずでございます。
  52. 和田静夫

    和田静夫君 きょうはほんとうは村本さんに来てもらおうかと思ったんだけれども、大蔵大臣との論議のほうが大切だと思ったからやめたんです。どうしてもそういう答弁が続くなら、この次村本さんに来てもらってもう一ぺん——村本さんよりも七行のあなたの接触をされた人みんなに来てもらってやるということにせざるを得ませんが、特に第一の場合ですね、ほかの銀行の売りとの状況を比べてみますと、二十七日の二億三百万ドルという売りは、これは異常ですよ。飛び抜けて極端ですよ。あなたは二十七日に村本副頭取をたずねて、とにかくこういう結果が出ている以上、私が類推をするようにドル売りをすすめられた。これは間違いないでしょう。
  53. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) ドル売りをすすめました事実は全くございません。各銀行のその日の売りは、まず銀行のポジションと、それから顧客から持ち込まれたドルを売るほうと、両方ございます。前者のほうから申しますと、円転規制の関係は月中でございますから、たとえば八月十五日までにどういう状態であったかということで十六日以降の状態は変わってまいりますので、たとえば十六日から十七日までの状態がどうであったということでその銀行の売りは多いと判断はできないわけでございます。特に、商社との前受けの関係は、どの商社がどこの銀行に持ってまいりますかは、いろいろ取引関係はきまっておりますが、その日にどこの銀行に持っていくかということは全くその商社の関係でございまして、その銀行の売りが多いからその銀行のポジションと何か関係があるということでは決してないわけでございます。この点御理解をいただきたいと思います。
  54. 和田静夫

    和田静夫君 理解はできませんから、これは次回に、時間の関係もありますから、だんだん譲らざるを得なくなってきておりますが、私は次回に譲るにあたって、こういうことを申し上げておきます。この問題は、この辺で打ち切るというわけにいきませんから、なお引き続いて追及をし続けますが、まあたいへん残念な話ですが、日本銀行は金融機関ではないという極論まである。言ってみれば、金利政策では日銀は大蔵省銀行局の日銀部でしかない。外為の問題では、大蔵省国際金融局日銀部である。まあそういうふうに巷間言われるぐらい、つまり、大蔵省と日銀というのは常にペアになって、行政行為という形で民間銀行に対して機能しているということじゃないだろうか。私このことを少し研究すればするほど、そういうことを思うんです。もちろん、だからといって、大蔵省と日銀が全く違ったポリシーを持つわけにはいかないでしょう。しかし、たとえば、今度イギリスではかなりドラスチックな金融制度の改革が行なわれた。しかし、これは全く法的規制に基づくものではない。イングランド銀行と各金融機関の紳士協定で大転換ができたということだそうであります。イングランド銀行には、その協定を結ぶだけの他の銀行に対する説得力があるということであります。その点、日銀とは私はだいぶ違うような気がするんです。  私は、日銀が、大蔵省と一般銀行との間に介在をして、総体的独自性を持った金融機関として、なおかつ政府としてポリシーを貫徹されるといった、そういう側面がもっとあったほうがいいのじゃないかと思うのですが、それはあるというふうに御判断になっているわけですか。
  55. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) たいへん大きなむずかしい問題でございまして、十分御答弁ができるかどうかわかりませんが、まず為替の関係に関しましては、大方針は大蔵省の御指示を受けてやっております。平衡操作の形でございます。ただ、こまかい日々の操作は大体おまかせ願ってやっている。大方針をおきめになるときに、もちろん、いろいろふだん市場と接触しております点からのアドバイスを申し上げております。大方針の御決定は、大蔵省の御責任でやっておるわけであります。  以上でございます。
  56. 和田静夫

    和田静夫君 次に、今度の円切り上げ直前の市場操作の問題に移りますが、ここにも私はたいへんな神秘主義的なものがあったと実は判断をしております。十月八日の閣議できまった中小企業製品の輸出成約の円滑化のための先物予約、これについても商社が介在していますから、ほんとうの意味で中小企業対策になったかどうか疑問を持つのですが、ともあれ、この外国為替資金特別会計による外国為替公認銀行に対するドル預託ですね、この発動状況をちょっと示していただきたいのです。
  57. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) ただいま御指摘の、中小企業関係輸出成約を促進いたしますために、閣議決定に基づきまして外国為替資金特別会計から預託をいたしましたその大体の状況につきまして申し上げますと、それは十月から始まっていたと思いますが、全体のちょっといまこまかい計数は別といたしまして、七、八億ドルになっていたと存じます。やや正確に申しますと、十月二十日からでございまして、約八億ドルになっております。この中で十月、これはまあ日数も少なかったわけでございますから少ないのは当然でございますが、十一月はだんだんこの制度が活発に運用されまして、所期の目的どおり中小企業の輸出成約が回復していくのに大いに役立ったと思いますが、十二月に入りましてから外貨預託の額は非常にふえてまいりました。これは各行ごとに中小企業の輸出手形の買い取りの額に応じまして追加して預託をしていたわけでございます。大体八億ドルのうち、私の記憶が正しければ約半分くらいは十二月に入りましてから行なわれたというふうに存じます。
  58. 和田静夫

    和田静夫君 これは数次にわたって預託されておりますから、その託預されたドルというのは売りに出されましたね。
  59. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 大体そのとおりでございます。
  60. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、私はこの売りは円切り上げ直前の市場でどういう機能を果たしたかということを考えてみたんです。そうすると、きびしい円転規制の中でドルの売りものをつくって、そうして国際通貨調整に臨むにあたって円高相場をつくる機能を果たした、これが国際通貨調整のためのかけ引きに使われた節があると私は思うんです。これなども、中小企業対策といったベールに包まれたきわめて不明瞭な市場操作だったんではないかと実は思う。時間もありませんから、これについては一括答弁をもらいますが、私はそう思う。いかがお考えになるか。さらに、中小企業政策とは言うが、大企業のものが絶対にまぎれ込まなかったと言い切れるかということを考えてみると、私は言い切れるとすれば一体どのようなメカニズムでそれが可能になるんだろうとふしぎに思う。その辺は一ぺん考え方を説明をしてもらいたいと思います。
  61. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) ただいまの御質問でございますが、この十二月に入りまして、確かに、先ほども申し上げましたとおりに、中小企業関係の預託の要請、これが日々各行から多く出てまいりました。これが為替銀行から市場に売られましたということも事実でございます。ただ、これは先生御指摘のところとは違いまして、われわれといたしまして、市場操作と申しますのは、決してある特定のところへ相場を持っていこうということで、日銀を通じて介入いたしたわけではございませんで、元来、介入の政策と申しますのは、毎日の取引に応じまして相場が大幅に乱高下するということになっては取引の安定を害します。そういうことのないようにというのが介入の趣旨でございます。そういう面で、介入の考え方に基づきまして先週までやっていたわけでございます。  それから、これが中小企業以外に流れたのではないかという点につきましては、これは、この制度を発足いたします初めから、われわれといたしましてはその点を最もおそれました。そういうことになってはいけないということで、いろいろと通産省とも相談をいたしまして、ほんとうにこれは中小企業のための、中小企業の輸出成約を促進するためのものであるということで、十分にそれを確認できるように手続を定めまして、それに基づいて行なったわけでございます。したがいまして、これは各為銀とも十分にその趣旨に沿って遺憾なく事務を遂行したことと確信をいたしております。ただ、この点につきまして、先週の半ばでございましたか、やや申請のピッチが早いという感じがいたしましたので、やはりこれは、そういうふうに手続を定めておりますけれども、この点が十分に確実に励行されているかどうかという点につきまして、為替銀行にもう一ぺん注意を喚起をいたしました。その点十分に励行されているように承知をいたしております。
  62. 和田静夫

    和田静夫君 最後の問題、一括しますがね、先ほど田中通産大臣から答弁いただきましたが、二十四日から〇・五%の引き下げをやる。これは大蔵省の松川審議官、あるいは日本銀行から答弁いただきたいのですが、そこで、〇・五%の公定歩合の引き下げが実現したとなりますと、当然預金金利に対する影響考えられます。プライムレートは五・五%から五%になる。そうすると、現状でもプライムレートが一年もの定期預金金利に逆ざやになっています状態というものを考えてみると、少なくとも三カ月、六カ月といった流動性定期預金金利の引き下げが予想されますが、この三カ月もの四%が三・七五%、それから六カ月もの五%が四・七五%に引き下げられるということですね。それから、郵便預金の金利が一体どうなるか。最近、これは大蔵大臣が郵政大臣といろいろ協議をされておるようでありますが、この辺がどうなのか。それから、長期金利の扱いは一体どうなるか。当面、引き下げる意思はもちろんあるでしょうが、いつの時期なのか。政府系金融機関の金利というのは一体どうなるのか。これは最も急がれることなんでしょう。その辺まとめてひとつ。
  63. 松川道哉

    説明員(松川道哉君) まず御質問の第一の公定歩合、それから貸し出し金利の点でございますが、御承知のように、公定歩合をどうするということの最終的な決定は日銀のほうですることになっております。現在の国際通貨情勢が新段階を迎えました。そして、ある程度の不況が予想される段階においてどうするかという点につきましては、私ども、それから日銀のほうも、判断においてそう大きな違いはないことと思いますので、おそらく日銀のほうでも適切な判断を下す、具体的にはただいま先生がお示しのような線で動くことになるのではなかろうかと私たちは思っております。  第二段のプライムレートと定期預金の金利が逆ざやになるという御指摘でございますが、これは金利だけを裸でとってみますと、まさに御指摘のような事実がございます。しかし、借り入れるとき、それから定期にいたしますときに、それぞれの動機があってやっておりまして、こっちで借りてきてすぐこっちで定期にやるというようなことは実際問題としてはあまり起こらないのではないかと、かように考えております。  次に、郵便貯金の問題でございますが、私ども今回の金利の全般的な見直しに際しまして、貯蓄性のものをどう扱うかということにつきましては、おおむねみんなの判断が一致いたしておりまして、これは大事なときであり、また貯蓄奨励というのをゆるがせに反対の方向へ持っていくべきではない、このように考えておりますので、いわゆる貯蓄性の預金には手をつけないでいってはどうだろうかという点でただいま検討いたしております。そのときに、郵便貯金でございますが、一口に郵便貯金と申しましても、事情がいろいろございます。その中で、どこまでをどうするのかという点につきましては、いろいろほかの金利体系との関連もございますので、ただいま全体をあわせて検討中でございます。  それから、長期金利につきましては、これからの世界経済、そしてその中に置かれましたわが国経済の行くえを見ますと、過去における産業偏重の経済から、住宅とか、その他非製造事業も広く含めました、そういった方面への融資というものに対する要請が強まってくるのではないかと考えます。これらの部門におきましては、御承知のように、付加価値性が少のうございます。製造業と比較いたしまして少のうございますので、長期的に見て、金利水準というものは低下さしていかなければならない。その中において、政府系金融機関の金利をどうするか、これも目下真剣に検討中でございます。御承知のとおり、ただいま予算の編成中でございますので、間に合えばこの間に何か方向を出したいということで、せっかく作業を進めておりますが、どうなるかという点につきましては、ただいまはっきりしたことを申し上げられない段階でございます。
  64. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) 日本銀行といたしましては、切り上げ後の情勢に対応いたしまして、公定歩合の問題を含めまして、金融政策全般につきまして、鋭意急ぎまして検討いたしております。ただ、今日の段階ではまだ結論を得ておりません。
  65. 和田静夫

    和田静夫君 私は、総括的にここで意見を述べておきますが、この貯金金利の引き下げというのは非常に問題がたくさんあると思う。不況になった、金融が緩慢になったということで預金金利を引き下げるというのなら、金融がタイトになったときに預金金利を上げたことがあるかと言いたいのであります。消費者物価が今年度八%もこえて上昇するものと見られているときに、預金金利を引き下げるということは、私は必ず大衆の反撃を食うと思う。そこは、政府としては、しっかり考慮に入れるべきだと、こう思う。そこで、時間が全くないので、ここで意見があれば最後に求めますが、それでもなお政務次官断行されるかどうか、この点についてひとつ答弁を聞きたいし、日銀もこの点について、まだ結論が出ていないと言われるが、どう考えられるか——いまの点についてですね。  それから最後ですが、今度の大幅円切り上げのもう一つの問題というのは、私は再引き上げという今度と同じ事態がまた繰り返されないという保証が全くないという形で切り上げがなされたということだと思うのです。極論をすれば、二、三年後にはもう一ぺんまたあるんじゃないかと言う専門家もいらっしゃるようですが、それは二つの面から私は言えると思う。一つは、国際通貨制度の改革がペンディングになったままで切り上げだけがなされたということ、それからもう一つは、国内政策の転換が少なくとも言われるほどにはそう簡単ではないということであります。私は、一九六八年に出されたアメリカの財務省のドル防衛白書を読みましたが、これを読みますと、今回の国際通貨問題がアメリカ国際収支を改善するだけで済む問題でないことが非常によくわかるのであります。アメリカ自身、SDRといったものに大きな希望を持っている。水田大蔵大臣も十月五日の私の質問に対して、この場所で、SDR本位制への移行を主張された。その移行の具体的プログラムをどのように考えるのか、いまはそれが一番大きな問題だと思うんです。これについては大蔵省はどうお考えになっておるのか。
  66. 松川道哉

    説明員(松川道哉君) 初めに御指摘になりました預金金利をどうするかという点につきまして、私ども、いわゆる預金金利の中には、大きく分けて二つのものがあるのではなかろうか——一つはすなわち貯蓄性の預金でございますし、一つは、商取引その他に関連しまして置かれております当座性の預金でございます。貯蓄性の預金につきましては、先生御指摘のように、なるべく恒常的な水準を維持するのが望ましいと、このように考えておりますが、当座性の預金につきましては、かつて金融制度調査会でも、場合によっては公定歩合と連動させて上下させたらどうであろうかというお考えが示されたこともございますし、また、外国におきましても、そのような慣行がある国もございます。したがいまして、この二つの金利につきましては、いろいろな政策考えますときに、分けて考えてもいいのではなかろうかと、このように考えております。
  67. 稲村光一

    政府委員稲村光一君) 御質問の新通貨制度の問題についてお答えを申し上げます。  御承知のとおり、今回の各国通貨多角的調整につきましては、これは緊急にその最も急ぐものをまずやるということで、これによりまして市場の不安を防ぎ、世界全体として経済が停滞しないように、上向いていくようにということで、最も急ぐものをまずやったわけでございます。御指摘のとおり、国際通貨制度の中期ないし長期の問題につきましては、いよいよこれからの各国間で討議が始まるわけでございます。むろん、全体の方向といたしましては、水田大臣が常におっしゃっておりますように、いままでのような一国の国内通貨世界の基軸通貨であったということは、いろいろの意味で問題がございます。将来の通貨制度といたしましては、やはり、そういう一国の国内通貨でなくて、SDRというようなもの、つまり国際的な観点から管理されますところのそういう新しいものを中心としていく方向に進むべきではないかというふうに考えております。その線に沿いまして、今後の新しい通貨制度の検討にわれわれといたしましても積極的に参加をしてまいりたいというふうに存じておりますが、これに関しましては、言うまでもなく、日本の国益にどういう制度が最も適するかということを第一にいたしまして、同時に、世界全体としても最も円滑かつ有効に動くような新しい国際通貨制度というものを一日も早く見つけ出し、実施に移していくという方向で今後努力をいたしたいというふうに存じております。
  68. 船田譲

    政府委員(船田譲君) せっかくお名ざしがございましたので、答弁させていただきたいと思います。  すでに事務の方からおよその答弁がございましたので、ただ私は、先ほど御質問になりました公定歩合の切り下げの問題につきましては、これはあくまで日銀総裁の権限でございまして、大蔵側としては、ただ意見を申し上げるということでございます。  それから、預金金利体系を見直せという問題につきましては、松川審議官からも申しましたように、商業決済上の預金と、それから貯蓄性の預金とは、おのずから分けて考えなければならぬ。特に、郵貯の問題とは関連して考えなければならぬと思います。郵便貯金の金利のほうは、これはももろん郵政大臣の御権限でございますから、これも大蔵側といたしましては希望を申し上げるにとどめるわけでございます。ただ、先ほどのお話にもございましたように、地方財政が非常に財源に苦しんでおられるという際におきます地方債の原資が資金運用部資金にかなり希望を持っておられる。その資金運用部資金の大宗は何といっても郵便貯金でございますから、これが著しく金利の引き下げのために減ることによって、財投の資金あるいは地方債の運転資金にこと欠くようになっても困ると思います。と申しますのは、財投の資金といたしましても、地方債にいたしましても、いわゆる社会資本の充実という本来の日本の経済の体質を改める方面に使われるべきものでございますから、その原資にことを欠くようになってはいかないということがございまして、これはあくまでお互いの横ににらみ方を十分目を通しまして、間違いのないようにやってまいりたいと思います。
  69. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) 預金金利につきまして、ただいま政務次官、松川審議官がおっしゃいましたことと、全く同感でございます。ただ、一言つけ加えさせていただきますと、過去において定期預金金利は上がったことも何回かございまして、やはりある程度弾力的に動かしていくのが本則だというふうに考えております。ただ、現在の物価もかなり上がっている段階におきまして、定期預金金利につきましては御指摘のような問題がございますので、慎重な上にも慎重に検討していかなければいけないと、こう考えております。
  70. 和田静夫

    和田静夫君 では、大臣に対する質問だけを残しまして、終わります。
  71. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  72. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 速記を起こして。
  73. 中尾辰義

    中尾辰義君 私は、食肉に関連いたしまして、畜産事業団の運営等につきまして若干お伺いしたいと思います。  すき焼きもだいぶシーズンに入っておりますけれども、とにかく食肉が高い。すき焼きもそう簡単に食べられぬようになった、こういったようなことが一般消費者の声でありますけれども、この前、十一月二十日の、通産省が公表いたしました「世界主要都市の消費者物価比較調査報告書」、これを見ましても、牛肉は東京世界一高い、こういう数字を示しているんですね。東京における牛肉百グラムの値段を指数にして、これを一〇〇とした場合に、ニューヨークが五〇、ロンドンが三六・三、パリで四七・三、香港で二六・五。実際価格で言いますと、百グラム、東京が二百五十二円、ロンドンが九十一円、パリが百十九円、ニューヨークが百二十六円、こういうような数字が出ておりますけれども、とにかく、こういうふうに高ければ、消費者から苦情も出ておるわけですが、畜産局並びに畜産事業団は、食肉の安定のために今日まで相当努力をしていらっしゃると思うわけでありますけれども、なぜこのように高いのか、どのような手を打っておるのか、その辺のところをひとつ——これはとなたに聞いたほうがいいですか、畜産局長に見解をひとつお伺いをしたいと思います。
  74. 増田久

    政府委員(増田久君) 御指摘のとおり、わが国の牛肉の値段が非常に高いということは、これはいなめない事実であろうかと思いますけれども、ただ、巷間に言われるほど、ほんとうにそれほど高いのかということになりますと、いろいろ問題があろうかと思います。厳密な意味で外国と比較をするということは、非常にむずかしい面がございます。と申しますのは、先生も御存じのとおり、たとえば、わが国で見ましても、和牛と乳廃牛、あるいはアンガス、あるいはヘレフォード、こういう品種ごとにもうすでに値段が違う。また、同じ和牛なら和牛でも、非常に品質のばらつきが大きいという問題がございますし、輸入肉をとってみましても、ブリスケと申しますか、たとえば腹のこの辺の肉をブリスケットと、こう言っておりますけれども、ここの値段は百グラム三百円ぐらいでございますが、一番いいテンダーロインという背中のほうの肉でございますけれども、これだと、いいもので千二百円しております。同じ牛肉でも三百円から千二百円の間の幅があるものでございます。そういう意味で、厳密な意味で比較ということが非常にむずかしいんではないかという感じがいたします。特に、わが国の和牛というのは、品質的には世界で一番いいといわれているものでございますので、厳密な意味でどれほど高いか、こういうことになりますと、なかなかむずかしい問題はあろうかと思います。ただ、消費者の実感としては、やはり日本わが国の牛肉は非常に高いんだということは、これはいなめない事実だろうと思います。  ただ、私、言いわけめきますけれども、通産省の調査で、東京は二百五十二円と、こういう値段を出しておりますけれども、実際の東京の上肉の価格は百九十円から二百円ぐらいでございますので、これはどういう価格を、価をとられたのかという点に、私率直に疑問を持っております。  それからもう一つわが国の場合に、牛肉の本場というのは、実は関西でございまして、関西のほうは東京よりも三倍の牛肉を食べております。しかも、関西におきます牛肉の値段というのは、東京より三割安い値段で売られております。そういうことで、これを東京を基準とせずに、もし大阪というものを基準にして比較をいたしますれば、東京とニューヨークというものはそれほど差のない値段になってしまうということが言えるんではないかと思います。  それは若干言いわけめきますけれども、どちらにしても、わが国の牛肉、特に和牛というものの値段が高い。これはなぜかと申しますと、やはり肉専用種でありながら、非常に零細な経営で飼われているというところに、私は基本的な問題があろうかと思っております。そういう意味で、これからは、特に和牛につきましては、現在どんどん資源の食いつぶしというような状況があるわけでございますので、そういうものをどのようにして食いとめて、これを多頭飼育のほうに持っていくかということに最大限の努力を払いたい、かように考えております。
  75. 中尾辰義

    中尾辰義君 とにかく、高いということは、これは消費者の声なんですよ、いまの食生活等から考えましてですね。ですから、まあ和牛の少ないことも知っておりますけれども、逐次お伺いしてみたいと思いますが、輸入牛肉と和肉ですね、これは事業団が扱っている段階で、どの程度価格が違うのか。さらに、牛肉の輸入依存度ですね。それから輸入牛肉の卸、小売り価格に及ぼす影響。それから三番目は、輸入牛肉はかん詰め等にも使われておると聞いておりますけれども、どういうふうに使われておるのか、その辺のところをひとつお伺いいたしたいと思います。
  76. 増田久

    政府委員(増田久君) 牛肉の輸入量のおおむね現在までの実績を申し上げますと、輸入量のおおむね半分は事業団が扱い、半分は民貿で扱う、こういうやり方をやっております。ただし、本年度の下期から割り当て方針を変えまして、民貿分は七千トン、事業団分は一万五千トンということで、七割が事業団、三割が民貿というふうに割り当ての方式を変えております。  それから、昨年までの輸入依存度は約八%でございましたけれども、本年度は、先ほど申しましたとおり、大幅に輸入のワクを拡大いたしました結果、おおむね依存度は一五、六%になろうかと思っております。  それから、小売りに対する影響はどうかと、こういう問題でございますが、これは先ほど申し上げましたことと若干関連をいたすわけでございますが、輸入肉というものは、どうしても大量に扱える店でないと、これを売れないという実態がございます。そういうために、東京から北のほうではなかなかこれが売れない。先ほどの一人当たりの消費量が少ないということと非常に関連があるわけでございますが、それで、どうしても関西のほうを中心として輸入肉が売られているという実態がございます。先ほど申しましたとおり、大阪は東京より三割も牛肉が安い、こういうことは、おそらくこれは輸入肉の影響によりまして末端価格が安定し、安くなっているのではないだろうか。さらに、関西におきましては、輸入肉が輸入肉としてそのままの形で売られているという形が非常に進んでまいってきておりますので、これが関東から北で輸入肉というものが売れるような形にもし今後なるとするならば、非常に小売り価格の安定に寄与するところが大きいのではないだろうか、かように考えているわけでございます。  それから、これは加工用ということでかん詰めに使われているわけですが、おおむね現在、肉の加工用に使われている大部分のものが輸入肉で、約六千トン程度加工用肉として使用されているわけでございますが、そのうちおもなものは、大和煮でありますとか、あるいはボンカレーというのがある、御存じだと思いますが、ああいういろいろな食品の加工の形として輸入肉が活用されている実態でございます。
  77. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、輸入肉が加工用に六千トン、そうしますと、あとの残りはどうなりますか。あとは食肉用ですか、それが一つ。それから、加工用というのは輸入肉だけですか。かん詰めを見たら、これは輸入肉であるというふうに考えてよろしいのですか。その点いかがですか。
  78. 増田久

    政府委員(増田久君) 加工用の全部が輸入というわけではございませんけれども、非常に多くの部分が輸入に依存しているというのは事実でございます。  この数字、ちょっと私の答弁が不正確でございましたので、訂正さしていただきたいと思います。かん詰め用に使われております牛肉の量が六千五百トン、それからハム、ソーセージに使われておりますのが八千五百トンでございます。それで、そのうち輸入に依存している量というのは、その両方合わせまして約四千五百トンだそうでございます。訂正させていただきます。  その他の加工用として、おそらく乳廃牛等のものが使われておるということになろうかと思います。
  79. 中尾辰義

    中尾辰義君 食肉用は。
  80. 増田久

    政府委員(増田久君) 昨年度で申し上げれば、昨年の輸入実績が二万三千トンでございますから、その差し引きました約一万八千五百トン程度のもの、これが生食用に回った、こういうことでございます。
  81. 中尾辰義

    中尾辰義君 ちょっと数字が合わない。加工用が六千五百トン、ハム等に八千五百トンですか、そのほかに食肉用に一万八千五百トン、これでは三万トンをこえるじゃないですか。
  82. 増田久

    政府委員(増田久君) いま申し上げましたのは、かん詰め用及びハム・ソーセージ用の全体の消費量が六千五百トンと八千五百トンである、そのうち輸入に依存しているのは四千五百トンでありますと、こういうことでございます。したがって、輸入の二万三千トンから四千五百トン引きましたものが生食用に輸入として回っているということでございます。
  83. 中尾辰義

    中尾辰義君 了解。  次にお伺いしたいんでございますが、輸入牛肉について畜産事業団扱いと民間扱いとの輸入ワクの割り振りは、いままでどうなっておったのか、また今後どうなるのか、この点は通産省と交渉があったようですが、このいきさつ、経過等についてお伺いしたいと思います。
  84. 増田久

    政府委員(増田久君) 事業団が輸入牛肉を扱えるようになりましたのは昭和四十一年度からでございます。そのとき、どういう割り振りをするかという原則は必ずしもはっきりはいたしておりませんでしたけれども、実績を見ますと、おおむね半々——民貿半分、それから事業団半分という扱いで私どもまいったわけでございます。しかしながら、今年度の下期からは輸入方式を変えまして、消費者物価等の観点から輸入ワクを大幅に増大するということ、それによる国内への影響を避けるために、民貿分につきましては上期の実績をそのまま据え置きまして、そのふえた分は全部事業団扱いにするというやり方に切りかえたわけでございます。したがいまして、数字的に申し上げますと、上期は一万四千ン、そのうち民貿七千、事業団七千、こういうことでございましたが、下期は、民貿が七千、事業団分が一万五千、こういうことにいたしたわけでございます。考え方として、今後輸入量がだんだんふえていくだろうと思いますが、そのふえる分は全部事業団扱いにするという考え方をとってまいりたい、かように考えております。
  85. 中尾辰義

    中尾辰義君 この通産省と農林省との交渉経過につきまして、新聞等にも若干報じられているようでありますが、とにかく通産省のほうは、消費者等にまかしたほうがもっと安くなるというような御意見もあったようです。それで、結果的にはこういうふうになったわけですが、その辺の見解はいかがですか、通産省にお伺いします。
  86. 山下英明

    政府委員(山下英明君) 通産省には牛肉をその原産地国から貿易通商上たくさん買ってくれという要望もございますし、物価安定等も考えまして農林省と意見を交換しましたが、もとより農林省のほうでは、生産業者への影響、販売秩序、価格安定、こういう立場から相当にこまかいところまで意見の交換をいたしましたが、結果はほぼ合意に達しましたので、一つの結論に達しております。先ほど増田局長の言われたように、七千トン民貿、一万五千トンは事業団、こういう結果でございます。今後のやり方についても、両者の意見はそれぞれ交換していくつもりでございます。
  87. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで、今後事業団のほうが大量に扱うわけでありますけれども、それに関連して畜産事業団の機構です。その中で食肉課というのがありますけれども、この食肉課というのはどういう働きをしているのか。それからまあ、事業団が直接輸入業務等もこれから営んでいくわけでありますが、この食肉課の構成等から考えてみて、はたしてそれが円滑にやられるかどうか、その辺私はちょっと心配なんですが、ですからちょっとお伺いしたいのですが。
  88. 増田久

    政府委員(増田久君) 現在事業団は五部十課一室という組織でありまして、御指摘の食肉課は、業務部に属しまして、職員は現在十名の定員で業務を運営いたしております。その行なっております仕事は、豚の買い入れ、売り渡し、その調整、保管、輸入牛肉の売り渡し、こういう仕事をやるわけでございますが、現在の程度であればこの十名程度でおおむねこなし得るという体制考えておりますけれども、今後輸入が相当増大するということになれば、当然相当機構なり定員のあり方というものはこの際再検討しなければならないものだというふうに考えておるわけでございまして、ただ、さしあたりのところは、たとえば業務部に二十四名の職員がおりますから、ほかの部課の職員も動員いたしましてこの仕事の遂行に当たらせる、こういうことを考えておりまして、さしあたりどうということにはならないと思っておりますけれども、将来の問題としてはこれは十分検討いたしたい、かように考えております。
  89. 中尾辰義

    中尾辰義君 私は、十人か十五人程度のこの食肉課の職員がはたしてやっていけるのかどうか、非常に心配しているわけですよ。ですからお伺いしたわけですけれども、この点は私はちょっと通産省にもお伺いしてみたいのですが、いまの私の質問に対して通産省はどのようにお考えですか。
  90. 山下英明

    政府委員(山下英明君) 事業団扱い分がふえてまいりますことと、流通の実態に合わして実際の仕事をしていかれることでありますから、正確に人員その他組織がどうということは申し上げられませんけれども、仕事の量はふえていかれることだろう、こう思っております。
  91. 岡田覚夫

    参考人(岡田覚夫君) 私、参考人としてお呼びいただきました、事業団の岡田でございます。  ただいまの御質問の点でございますが、食肉課は十名でやっておるわけでございますが、畜産局長からお話がございましたように、私のほうの食肉課の仕事といたしましては、御承知のように、豚の価格変動に対しまして、買い入れ、売り渡しをするという仕事が一つあるわけです。それに、輸入牛肉の買い入れ、売り渡しという仕事があるわけです。まあ二つの仕事をこの課でやっておるわけでございますが、さしあたって豚の買い入れ、売り渡しというふうな業務がございませんで、したがいましてその人員を全部輸入牛肉のほうにさいて使うことができる、こういうふうな状態でございますので、さしあたっての問題といたしましては、この十名でやってまいれるというふうに思っておるわけでございますけれども、しかしこれは、量的には今後ふえてまいるというふうに思われますので、それに対処する機構なり人員なりというものについては検討をしてまいる考えで、事業団に与えられました仕事が円滑にまいるようにやってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  92. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで、先ほどのお話で、下半期二万二千トンの輸入があるわけですが、これは通産省と事業団との割り振りの問題でずいぶん話し合いがまとまるまで長引いたようでありますし、ほんとうは年末年始にかけて輸入をこれは間に合わすべきものだったのですが、一体これはいつごろ来るのですか、それが一つ。  それから、これだけの輸入をいたしまして、食肉の価格にどの程度影響するのか。ざっくばらんに言いますと、安くなるのかどうか、この辺どうなんですか。この二点、お伺いします。
  93. 増田久

    政府委員(増田久君) 割り当てたものが入ってまいりますのは、来年の初めになると思います。来年の上旬に入ってまいることになろうかと思いますが、これもざっくばらんな話をして恐縮でございますが、すでにある程度見込み輸入というふうな形で保税倉庫に入っていたものも相当——二、三千トン入っているということもあるようでございますので、そういうことで、年末には十分間に合うと私どもは考えているわけでございます。と同時に、しからば小売りにどれだけ響くかという点は、非常に答えにくいむずかしい御質問でございますけれども、輸入肉というだけではございませんけれども、最近、十一月に入りまして、牛の卸売り価格がやや軟調になってまいってきております。牛の卸売り値段というものが下がってまいってきておりまして、そういうことから考えてまいりますと、これだけの輸入量が入ってまいりますれば、相当末端価格に影響するものというふうにわれわれは考えているわけでございます。なお、念のために申し上げますると、くどいようでありますけれども、大阪のほうはここ三年間ほとんど価格は動いていない、これに比べて関東以北が動いているという実態がございますので、その点もお含みおき願いたいと思います。
  94. 中尾辰義

    中尾辰義君 どちらにしても、いろいろな問題があるでしょうけれども、輸入をしたからすぐにそれが反映をしてがっと下がるというようなこともいろいろな問題があるでしょうけれども、まあわれわれとしては、やはりこれは物価を下げてもらわなければならない。これはもう私が言うまでもないことですからね。その辺のところをひとつ効率的にやってもらわないといけない。これは要望しておきますよ。  それで、輸入商社へ割り振りされます分ですね、後半期は七千トンですか、こういうものはどういうふうにして民間商社に割り振りをするのか、また商社は何社ぐらいあるのか、その辺のところをひとつお伺いします。
  95. 増田久

    政府委員(増田久君) 民貿の割り当てにつきましては、従来の実績によるシェアというものがきまっておるわけでございます。現在十六商社ございまして、もう過去の実績によりましてそれぞれのシェアで輸入している、こういうことでございますが、下期からは新しい基準を設けまして、輸入商社間に競争を行なわせるという、競争をやらせるという意味におきまして、数社新しく入れさせることをいま検討いたしているわけでございます。
  96. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうしますと、二十社ぐらいになる、そういうおつもりですか、その点。
  97. 増田久

    政府委員(増田久君) おおむねその程度の数になろうかと思っております。
  98. 中尾辰義

    中尾辰義君 それから、差益金につきましてちょっとお伺いしたいのですが、牛肉を海外より輸入する場合に、事業団あるいは民貿が扱う、日本食肉協議会なんか形式的に輸入した形をとるだけで、すべては商社まかせでありながら、いわば瞬間タッチ方式で、輸入したものに一定の割合で差益金を取ることが行なわれているようですね。これが問題になったんですが、今日まではそのような瞬間タッチ方式であったと思います。そこで、これは、民貿の場合は差益金、事業団の場合は調整金というふうに私は理解しておるわけですが、そこで、この差益金を取る法的根拠というのはどこにあるのか、この点ひとつお伺いしたい。
  99. 増田久

    政府委員(増田久君) 民間貿易の分につきましては、これはあくまでも自主的な積み立てでございまして、これは特に法的根拠はございません。それに対しまして、畜産振興事業団輸入牛肉の取り扱いにつきましては、畜産物価格安定法に基づいて行なわれているわけでございますけれども、法律の第四十二条の二という規定に基づきまして、ちょっとお読みいたしますと、「牛肉の生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、肉用牛の生産及び牛肉の消費の安定を図ることを旨として農林大臣が指示する方針に従って、しなければならない。」という規定があるわけでございます。この規定に基づきまして、農林大臣の指示に従い、事業団が内外格差、品質差、国内の需給事情、そういったものを勘案いたしまして、そこに調整金と申しますか、差益金というものをきめて、その織り込み済みの価格で売っているわけでございます。
  100. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうしますと、差益金なり調整金というものは、やはり牛肉価格の安定のためにこういう制度が設けられている、こういうふうに理解してよろしいのか。
  101. 増田久

    政府委員(増田久君) 先生御承知のとおり、現在牛肉については二五%の関税が課されているわけでございます。しかしながら、現実に入ってまいりますものに二五%の関税をかけましても、まだそこに内外の格差が生ずる、そういうことになりまして、それをそのまま放置いたしますと、いわゆる割り当て物資として一番悪い面としての超過利潤というものがそこに発生してまいります。これがそういう形じゃなしに、末端の消費者にそのまますなおに還元されるものならば、これはそういう課徴金等を取るべきでないと思いますけれども、現在の流通機構の中ではそれは残念ながら流通段階に取られてしまうというのが私は実態だろうと思うわけでございます。そういう意味で、割り当て物資としての最も悪い面が出てくる。そういうものなら、むしろ一定の金額をまとめまして、それを生産対策なり、あるいは流通対策、消費対策、そういったものに使ったほうがはるかに有効な使い方ではないかということで、この課徴金というものが取られているわけでございます。
  102. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうしますと、民間が差益金ですか、事業団の場合は調整金と、これは目的は両方同じことなんですか。
  103. 増田久

    政府委員(増田久君) 全く同じでございます。
  104. 中尾辰義

    中尾辰義君 ところで、片方の民間のほうは自主的な積み立てとなっているのですね。自主的に積み立てて、このあとどうなるのか、その辺のところも私はこれからお伺いしてみたいと思うのですがね。それで、商社の場合、差益金というものがどういう基準で、一体だれがきめるのか、そうして民間の場合はだれがどこから取るのか、その辺はどうなっているのですか。
  105. 増田久

    政府委員(増田久君) 民間の分につきましては、需要者団体というのが実はきまっておるわけでございまして、四団体があるわけでございます。その団体を通じて日本食肉協議会というものに一定額の差益金を納める、こういう形になっておるわけでございます。
  106. 中尾辰義

    中尾辰義君 その使い分けはどうなっていますか。
  107. 増田久

    政府委員(増田久君) 日食協におきまして農林大臣の承認を受けまして、この使い方というものは、この収益といいますか、差益の収入を使用しておるわけでございます。
  108. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、四十五年度の差益金の使途別はどうなっているのか、この辺ちょっとお伺いいたします。
  109. 増田久

    政府委員(増田久君) 日食協について、四十五年度について申し上げますと、差益金の金額は五億八千万でございます。そのほかに雑収入というものが六百七十万、それから前期からの繰り入れ分が六千百万円ということで、収入合計で六億四千八百万ばかりでございます。それに対して、支出が全体で四億七千九百万、次期繰り越し一億六千八百九十万、こういうことでございます。それで、四億七千九百万はどのように使われたかと申しますと、規格取引推進に七千六百万、食肉の流通改善対策に五千八百万、生産増強対策に一億三千万、それから食肉需要増進消費合理化対策ということで一億九千万、その他、こういうことに相なっておるわけでございます。
  110. 中尾辰義

    中尾辰義君 これは、ですから、農林大臣の認可を得てきめるわけですね。そこで、いまおっしゃいました支出の内訳のことでちょっとお伺いしますけれども、まず食肉規格取引推進対策七千六百二十八万、これはどういうふうに使われておるのですか、具体的には。
  111. 増田久

    政府委員(増田久君) 現在、各市場に——中央市場、地方市場通じまして、規格員というものを約九十名各市場に配置して、その食肉の格づけ業務をやっておるわけでございます。それに要する費用でございます。
  112. 中尾辰義

    中尾辰義君 その場合に、この五億八千万の差益金はどのような団体に交付されているか、まずそれを聞きましょう。
  113. 増田久

    政府委員(増田久君) 団体の名前を申し上げますと、団体は、日本食肉協議会、日本食肉市場卸売協会、全国食肉事業協同組合、日本ハム・ソーセージ工業協同組合、日本食肉罐詰工業協会、中央畜産会、全販連、全中、日本食肉山水会、日本冷凍食肉協会、全国肉用牛協会、中央酪農会議、全国畜産農協連、この以上申し上げました団体でございます。
  114. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、それが幾らづつ交付になっているのか、数字をおっしゃってくださいよ。
  115. 増田久

    政府委員(増田久君) 日本食肉協議会に対しては一億一千万円でございます。それから日本食肉市場卸売協会に対して七千七百万円、その次に全国食肉事業協同組合連合会、これに対して一億二千五百万円、日本ハム・ソーセージ工業協同組合に対して五千二百万円、それから日本食肉罐詰工業協会に対して二千四百五十万円、それから中央畜産会に対しまして八百二十万円、それから全販連に対しまして二千万円、それから全中は昨年度は——四十五年度はございませんでした。日本食肉山水会四百万円、それから日本冷凍食肉協会に五百三十万円、それから全国肉用牛協会に対して一千万円、中央酪農会議に対して百七十二万円、それから全国畜産農業協同組合連合会に対して四百五十万円、以上でございます。
  116. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは前に戻りまして、この差益金の支出の内訳でありますけれども、これは食肉規格取引推進対策が七千六百万円、食肉流通改善対策が五千八百万円、生産増強対策が一億三千万円、食肉需要増進消費合理化対策が一億九千万円、食肉産業人育成対策が八百三十九万円、こう出ておりますがね。それでお伺いしたいのは、この食肉需要増進消費合理化対策一億九千万円というのは、これは何をするんですか。肉を食べなさいというこれは消費合理化対策ですね。これをひとつ聞かしてください。
  117. 増田久

    政府委員(増田久君) ちょっと経過をお話し申し上げないとよく御理解願えないかと思うわけでございますが、現在では肉牛と申しますと非常に消費者の理解を得られまして、わりかた売れているようになっておりますけれども、昭和四十三年、四年ごろはこれはまことに不評判でございまして、事業団が入れたものはほとんど売れないというような実態があったわけでございます。これはおそらく、その一般の国民大衆、消費者の方々が、輸入肉というもの、特に冷凍品であるわけでございますので、それを日本と同じようなすき焼きスタイルで食べるものと、こうお考えになっておったのではないか。そういう錯覚というか、誤解があって、それをそういうふうにして食べたところが、全然おいしくないというようなことがありまして、なかなか売れなかったという事実があるわけでございます。それで、特に日本の主婦の方と申しますか、日本の肉の料理というものが非常にあまりおじょうずではないと言って私は過言ではないと思いますが、そういう意味で、そういう日本輸入牛肉の料理の方法というものをどうやって消費者に知らせていくかということを、われわれとしては四十三年ごろから非常に意を用いておったわけでございまして、これはテレビの料理講習——輸入肉を中心とする料理講習を中心にやったのでございます。それが先ほど申しましたものの金の大部分でございます。それが一つ。  もう一つは、大きな仕事は、日本のハム、ソーセージ、これは今後食肉の需給あるいは消費の形態の中で非常に大事なものであるわけでございまして、農林省といたしまして従来からJAS規格というものをきめておったわけでございますけれども、ところが残念ながらこのJAS規格というものがほとんぐ守られていないという実態があるわけでございまして、このJAS規格をいかに守らせ、そのJAS規格で消費者に訴えていくかということを四十五年特に力を入れてやったものでございます。その二つの事業がこの最も大きいものでございます。
  118. 中尾辰義

    中尾辰義君 それから、その他の対策千四百六十七万円、これはどういうことですか。
  119. 増田久

    政府委員(増田久君) 海外の食肉事情の調査とかあるいは食肉発達史の編さん事業、そういう調査費あるいはそういう資料をつくるための事務費がおもな内容でございます。
  120. 中尾辰義

    中尾辰義君 大体わかりましたがね。この支出につきましては、やはり先ほどおっしゃいました法文、条例等に基づいてその趣旨に合うように、いまごろまあ食肉需要の宣伝までしなくてもいいんじゃないかと、私はこう思うのですよ。それよりかむしろですね、いまこの流通段階というものが、非常に途中でマージン等もかなり追及されておるわけですが、もう少しこの点はあなたのほうでお考えになられまして、もっと効率的に使用をするように、これはひとつ、私の要望ですけれども、御検討なさったらいかがでしょうか、このように思うわけであります。  それからもう一点は、差益金がいま現状はどうなっておるのかですね、何かそれを二倍半ぐらいに上げるというようなことも聞いておるようですけれども、その辺の実情をちょっとお知らせください。
  121. 増田久

    政府委員(増田久君) 現在、冷凍物につきまして、部位によってキロ当たり十円、二十円、三十円という三段階に分けまして、差益金を取っておるわけでございます。冷凍品につきましては、従来どおり据え置く方針でございます。これは、御存じのとおり、昨年から、いわゆるチルドボール物と言っておりますが、冷蔵品が新しく入ってまいるようになっております。これは明らかに冷凍品とは品質の違うものでございますので、これにつきましてはやはり部位によりまして四十円、五十円、六十円という差益金を取ることを考えておるわけでございます。なお、先生が先ほど御指摘されましたとおり、この差益金の使い方につきましては、やはりいろいろと御指摘の点があるとおりでございますので、今年度下期から、事業団分も含めまして、農林省に管理委員会というもののような機構を設けまして、ガラス張りの中でこの差益金というものを使っていく。そして、それを生産対策なり、消費対策なり、あるいは流通対策というものに使っていく、それで疑惑を招かないようにガラス張りの中でやっていくということをいま考えているわけでございます。
  122. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、私がお伺いしたいのは、いまの段階で差益金をさらに上げる必要があるのかどうか。まあ先ほど、民貿の場合の支出の内訳をおっしゃいましたけれども、実際はあれは先ほど発表になったああいう諸団体に交付されるわけですからね。私はこの趣旨に反するようないろいろな点に使われておるようなふうにも聞いております。この段階になってさらに差益金を上げるということは、どうも私はその理由が明確でないと思うのです。もう一ぺんその点をお伺いしたい。
  123. 増田久

    政府委員(増田久君) 先ほども申し上げましたとおり、依然として輸入物と国内物との間には相当の価格差があり、そこに超過利潤が出るという事実、特に新しく入ってまいりましたチルドボール物につきましては、それが非常に大きいのではないかということが考えられるわけでございまして、それを冷凍物と同じ課徴金というのでは、むしろ均衡を失することになると私は思います。そういう意味で、われわれのほうは、チルドボール物につきましては、冷凍物との均衡の上において四十円から六十円の幅で課徴金を取ろう、かように考えているわけでございます。なお、民貿については、先ほど申しましたとおり、実績は現在七千トンであるわけでございますが、それをそれ以上あまりふやすことはしたくないと考えておりますので、したがって日食協に積まれる差益金というものはそれ以上大きくはならないということを考えているわけであります。
  124. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、いまおっしゃった冷凍物と生肉ですか、その均衡とおっしゃるけれども、その均衡という意味が私はわからぬ。結局、畜産局のものの考え方というものと、われわれ消費者側のほうから考えてみた場合と、これは違うんじゃないか。均衡という意味がもう一つわれわれとしてはよくわからない。要するに、消費者としては、幾らかでも安くしてほしい。結局ここにいくんでしょう。これは差益金は取るために取るんじゃないでしょう。目的はやはり、消費価格の安定のために、幾らかでも安くなるように、そのためにいまおっしゃったような流通対策等にも使おうと、こういう趣旨でしょう。均衡が目的じゃないですからね。その辺のところをどうお考えですか。
  125. 増田久

    政府委員(増田久君) 現在、その均衡ということばが適切かどうか別といたしまして、チルドボール物のほうが冷凍物よりも割り高に売られるという事実はあるわけでございます、日本の市場におきまして。そこで、超過利潤の発生の幅が冷凍物より大きいのではないか、そういう意味で私申し上げたわけでございます。これは取るのはあくまでも、課徴金を取るために取るのではなくて、そういうものを一括まとめまして消費対策なり生産対策に充当する、こういう意味でございますので、それがせんじ詰めていけば、全体的に見れば消費者のためになるのではないか、こういう考え方によっているものでございます。
  126. 中尾辰義

    中尾辰義君 それから、質問があべこべになりますけれども、民間の差益金の件ですが、これはほとんど民間まかせというようなことであったようです。これは民間まかせがいいのか、それとも、畜産局あたりで民貿の差益金を掌握して、あらためて目的にかなった方法によってこれを交付するのがいいのか、その辺はいかがですか。
  127. 増田久

    政府委員(増田久君) 先ほどお答え申し上げましたとおり、民貿の分については法的根拠があるわけでございませんので、これを国に取り上げるというわけにはいかないと思います。しかしながら、それは先生の御指摘のとおり、それを目的に的確に使っていくということはどうしても必要でございますので、先ほど申し上げましたとおり、農林省に第三者による管理機構を設けまして、その管理機構のもとにおいて事業団、民貿等も含めた金の使い方というものをガラス張りの中でやっていくということをいま検討いたしているわけでございます。
  128. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで、いまの差益金については、これはもう消費者のほうからもこの値上げは反対の意向でありますから、その辺ひとつよく検討してください。  さらに、事業団の場合のいわゆる調整金は、これはどのくらいになっておるのか、またどのように使われておるのか、その点ひとつお伺いします。
  129. 増田久

    政府委員(増田久君) 事業団の差益金は、食肉勘定から出た差益の八〇%を助成に充てるということに法律できまっておるわけでございます。金額を申し上げますと、四十一年に八千四百万、四十二年度には一億二千万、四十三年度には一千万、ところが四十四年には実にマイナス五千万、逆に損を出したわけでございます。四十五年には六千二百万、こういうことになっております。それで、事業団のこの差益金は全部、たとえば肉牛の価格安定基金というものが各県につくられておりますが、これに対する出資及び——このごろ県を中心といたしまして産地に牛肉処理施設というものをつくっておりますが、それに対する出資金に全部充てております。
  130. 中尾辰義

    中尾辰義君 四十五年度は、聞き漏らしましたが、幾らになっておりますか。
  131. 増田久

    政府委員(増田久君) 四十五年は六千二百万の益でございますが、これは来年度使うということで、四十五年度について申し上げますれば、四十五年からは、四十四年が欠損をいたしましたので、差益金の繰り入れはなかったということでございます。
  132. 中尾辰義

    中尾辰義君 そういたしますと、これは助成事業費等も一緒にプールして、そして全国の各いまおっしゃった価格安定基金ですか——のほうに出資するというような形で出るわけですね。それを助成事業費にプールするということも、これはちょっと考えてみる必要があるんじゃないかと思うのです。そうしないというと、差益金の使途というものが明確でなくなる。今度また値上げすれば相当ふえると思う。それが助成事業費の百三十三億——これは四十五年の場合ですが、この中に繰り入れたって、どこに使われたかわからなくなってしまう。そういうことでは、私はどうかと思うのです。差益金を取った趣旨と助成金の趣旨が、多少はそこに違いがあるはずです。その点いかがですか。
  133. 岡田覚夫

    参考人(岡田覚夫君) ただいま御質問の件ですが、法律上は輸入牛肉勘定から出ました利益は助成勘定に入れて使うということになっておるわけでございますが、従来の経過を申し上げてみたいと思います。四十二年度では、繰り入れいたしましたものが八千六百万でございますけれども、基金協会への支出合計額は一億二千七百万、四十三年度は一億二千三百万の繰り入れに対しまして支出いたしましたのが一億八千万、四十四年度は一千百万に対しまして九千五百万、四十五年度はございませんでしたけれども支出いたしましたものが二億八千七百万、四十六年度は、六千二百万入っておりますけれども、現在支出をいたしておるものが二億三千五百万ということで、牛肉勘定から入りましたものよりもかなり多額のものを支出をいたしております。そういうことでございますので、今後も相当需要があると考えておりますので、ただいまの点はそれほど御心配はないのではなかろうかというふうに思っております。
  134. 中尾辰義

    中尾辰義君 時間がありませんので、私は最後にこれは参考にお伺いしたいのですが、先ほど私は通産省の発表による世界の肉の価格を読み上げましたが、非常に英国は安いですね。ロンドン市場は安いようですが、英国が現在とっております牛肉価格の安定策というか、それはどうなっておりますか、その点一つお伺いしたい。
  135. 増田久

    政府委員(増田久君) イギリスにつきましては、御存じのとおり、英連邦と申しますか、豪州、ニュージーランドと一定の長期契約で無税で入れておるわけでございます。したがいまして、あそこのロンドンの価格というものは最も、何と申しますか、世界相場として通っている価格、一番安い価格であそこに入っているというふうになっているわけでございます。しかし、イギリスの場合は、そういう形で英連邦諸国から入れているわけでございますけれども、世界の牛肉需給というものは非常に逼迫しているということを前提といたしまして、牛肉の増産対策というものには非常に力を入れております。そのために、いわゆる不足払い制度を現在イギリスでは牛肉について実施している、そうして国内の増産対策を行なっている、こういうふうに理解をいたしております。
  136. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、国産の畜産業者に対してのこれは補助金でやっているわけでしょう。そして消費者のほうは安くしておる。そういうような制度をわが国もとれないのかどうか、その辺いかがでしょうか。
  137. 増田久

    政府委員(増田久君) わが国の肉畜生産の基盤というものがもう少し強くなった段階におきましては、あるいはそういう方法も一つの検討課題として考えていいかと思いますけれども、先生御承知のとおり、いまの肉牛生産という実態は、率直に申し上げて経営以前のような状態で、ちょっとの刺激があれば全滅をしてしまうような弱い基盤の上にあるわけでございます。そういう意味で、世界の需給から考えましても、私は、日本の牛をこれ以上減らしては国民に安定的に牛肉を供給することにはならない、かように考えておりますので、いまの段階でイギリスのような方式をとることはきわめて困難、したがって自由化は困難だと、かように考えております。
  138. 中尾辰義

    中尾辰義君 私言っているのは、自由化を全面的に認めろとか、そういう意味ではなしに、要するに国産和牛のほうが高いのですからね、いろいろ生産費等もかかるわけですから。ですから、そのほうには補助をやって、そうして消費者価格を、輸入肉のほうとその辺ひとつバランスとりながら、卸、小売りの段階でもっと安くならないか、こう思っているわけですね。その辺、私は、まあせっかく政務次官もいらっしゃるようですから、何も聞かぬのはまずいでしょうから、これを最後にお伺いして終わります。
  139. 佐藤隆

    政府委員佐藤隆君) いまおっしゃるお説、非常にいい考え方だと私も思います。しかし、もう少し詰めないと、実はいま畜産局長から申し上げましたように、いまの国内産の生産体制というものが非常に脆弱な基盤なんです。そういう意味で、しかも需要はふえている、供給は世界的に相当長期間にわたって不足するであろうといわれておる、こうしたときでありますから、何としてもまず生産基盤をしっかりさせたいということに目を向けながら、いまいろいろな手を考えておるわけでありますが、先ほど来お話が出ておりますように、まあ畜産振興事業団非常に評判が悪くて、私も遺憾に思っておりまするが、これを瞬間タッチ方式から、今度直売方式というか、ある程度ストックしながら、市況をにらみながら出していくというようなやり方をとるとか、いろいろなくふうを一つ一ついま進めているところでありますので、ひとつ多少の時間はながめていただきたい、かように思うわけであります。
  140. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ちょっとこの際、私からも佐藤政務次官に申し上げておきますが、これは農林省所管の際にもっと審議が進められると思いますけれども、先刻来の増田局長答弁を聞いておりますと、生産基盤が零細であるということ一点張りなんですね。流通問題にメスを入れるということに対しては、あまり積極的な意欲を示しておらない。また、なぜ基盤が零細なのかということについては、市場構造もなってない。いろんな点もやはり指摘して、それがどうあるべきかということを今後の方向を示さずして、ただ当面する問題のみ終始されておるということについては、まことに聞いておって不満であります。この点は、畜産事業団そのものの御質問でありましたから、あるいはそういう御答弁になったかもしれません。事業団が生まれてから今日まで相当年月も経ておりますし、よほど今後構造を一新されなければならぬのじゃないかと思う。たとえば、管理委員会というものを設けてガラス張りで運営をしたいということを言われますが、その中身は何なのか、どういう構成にして、どういう運営にしてガラス張りにしようとするのか、そういうことについても何ら明確な御答弁がない。もう少し核心に触れた御答弁を期待をいたしたいと思います。いずれまたその際には申し上げますが、なお最近五カ年間の畜産事業団の輸入食肉をめぐる諸資料を御提示願えればと思います。特に、先ほど補助金その他を支給しておられる数多くの団体名をお答えになりましたが、それらもあわせて、責任者、おもなる業務、支給基準、支給金額等を明らかにしていただけますか。
  141. 佐藤隆

    政府委員佐藤隆君) 委員長から御指摘をいただきましたが、ただいまの資料は提出いたします。  それから、生産基盤云々だけで、ほかの施策について説明なしに、どういうことかなということでございますが、いまやはり一番問題になっておりますのは、生産基盤の問題もございます。しかし、それに加えて中間的経費の多い流通機構、これをどう改善するか、この問題があるわけであります。そこで、輸入物に対しましては、先ほど来お話が出ておりますように、畜産振興事業団にたとえばこのたびは下期一万五千トンというものを置いて市場を通じて小売りに出すとか、あるいは指定小売り店を設けて、スーパー、あるいはデパート、生協、そういうところに指定小売り店として直売をしていく形、こういうことを考えながらやっていこう。さらにまた、国内産については、まあ生産団地の近くに、産地処理施設というか、そういうものもつくりながら、そして問屋から小売りということをスムーズにいけるように、なおまたプリパッケージなどの助成も、実はことしから東京、名古屋ということでいま始めておるわけであります。これを逐次大消費地へ向けていかなきゃならぬのじゃないか、こんなことで、流通問題ということで、実はいま真剣に考えているところであります。なお、先ほど局長から触れました、事業団を含め、その差益金の使途を明らかにするというか、大衆にわかりやすいやり方をするために、農林省の中に管理部門を設ける、このことにつきましては、まあその構成はまだ決定いたしたわけじゃございません、いまいろいろ模索をしている段階でありますが、たとえば学識経験者とか、そうした方々を重点にしたいわゆる第三者、そうした方々によっていろいろなアドバイスをいただきながら、その管理部門の機能をひとつ果たしていきたい、こういう考え方でおるわけであります。ただ、まだそれほど固まった具体的な方法論が省内にあるわけではございません。いま検討をまさに始めたというところでありますので、御了承いただきたいと思います。
  142. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  143. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 速記起こして。
  144. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 じゃ、法務省関係はあとでおい出くださるようでございますから、まず大蔵関係のことから質問を始めてまいります。具体的な問題があるわけでございますけれども、それは大蔵、法務両省にお聞きしたいと思いますので、その問題はあとに回したいと思います。  まず、大蔵省にお尋ねをいたしますけれども、さきの三月二十日の予算委員会で私が妻の評価を税制上に求めるために二分二乗について検討するつもりはあるかということをお尋ねいたしましたときに、さきの福田大蔵大臣から税調にはかるという御答弁があったわけでございます。このたびこの問題が日の目を見ることにならなかったわけでございますけれども、その理由について承りたいと存じます。
  145. 船田譲

    政府委員(船田譲君) 萩原先生の御指摘のように、前大蔵大臣からそういう御言明がありまして、政府の税調にも検討をお願いしておったところでございます。ただ、二分二乗法につきましては、かなり大きな税制上の変革にもなりますのでございますし、たとえば夫婦の場合のほかに、兄弟でたまたま同一の仕事をしておるとか、いろいろ他の例との均衡もございますので、もちろん前向きで検討しておるところでございます。
  146. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 これまでにもよほど——ぼつぼつと言ったほうがよろしいかもしれませんが、その二分二乗については御検討が始まっておったように聞いておるわけでございます。したがいまして、これまでにどこまでの検討がなされましたのか。これはまた、外国のほうにもお出ましになったようでもございますので、そうした資料につきましてはまた後ほどちょうだいをいたしたいと存じます。この問題につきましては、あらためましてまた予算委員会の席上で詳しくお尋ねをしてまいりたいと考えます。その節にはよろしくお願いをいたしたいと思います。  次いで、来年度において相続税の減税を行なおうとしておられるように伝えられておりますけれども、それでは現行相続税についてはどのような問題点がありますのか承りたいと存じます。
  147. 船田譲

    政府委員(船田譲君) 最近大都市の居住者の居住用財産が、地価の上昇であるとか、あるいは評価の改定等によりまして、かなり所得の低い階層まで相続税がかかるようになってまいりました。このことは一つの社会問題にもなりますので、課税最低限を引き上げる問題、あるいはさらに所得税の数次にわたります税率の改正を行なっておりますから、所得の低い者に対しますところの税率の改正等も検討しなきゃならぬという問題もございます。また、先生がかねてから御研究なっておられます夫婦間の財産の相続の問題、これはまあ事業用資産の場合はちょっと問題があると思いますが、居住用資産につきましては、これはそれだけの資産を生むためには妻の貢献した度合いが少なくとも半分はあるじゃないかという考え方に着目をいたしまして、二分の一までは控除すべきだ、税の対象にすべきではないというような御意見もあるやに伺っておりますので、これまた重要な検討事項だと思います。さらに、扶養家族の中に障害者がいます場合の障害者控除等、こういった問題が現在大きな問題になっております。
  148. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 お尋ねしない分野についてもお答えがあったわけでございますね。たいへん御丁寧でございます。  そこで、減税の方法といたしましては、先ほどお答えがございましたように、課税最低限の引き上げと、または税率の調整、あるいはその両者の並行的実施、こういうことが考えられるわけでございますけれども、大蔵省はこのたびはそのいずれに重点を置いて減税をされるおつもりなのか承りたいと存じます。
  149. 船田譲

    政府委員(船田譲君) ただいま申しました中では、夫婦間の財産の相続につきまして一番重点を置いております。
  150. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 夫婦間のということでございましたけれども、さっき政務次官は、減税を考える場合には、課税最低限を引き上げるか、あるいは税率の調整をするか、そういうことをおっしゃったわけでございますね。そこで、私がお尋ねをしておりますのは、そのいずれに重点を置いてお考えになっているのか、こういうことを承ったわけでございます。
  151. 船田譲

    政府委員(船田譲君) 私の答え方がたいへんとまどいまして、恐縮いたしました。課税最低限のほうを引き上げるか、それとも税率の緩和のほうに重点を置くかという両者の問題、これはなかなか今回の税制改正ではむずかしい問題でございますので、それより先にまず夫婦間の相続の問題を取り上げていく、こういう意味でお答え申し上げました。
  152. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 政務次官のおっしゃってくださることはたいへんよくわかりますが、私がもう口を開けば、夫婦間の相続、贈与、こういうふうに申しますものですから、非常にその点に重点を置いておっしゃっていただくことは、ありがたいわけなんです。しかしながら、現行相続税における問題点からいたしますというと、国民の大多数を占める一般勤労者階層の経済的安定をはかるために考えますというと、やはり課税最低限の引き上げということが目下の急務ではないだろうかと思うのです。先ほど政務次官もおっしゃいましたけれども、地価の高騰であるとか、あるいは諸物価も非常に高くなったとか、そういうことから考えると、どうしても課税最低限の引き上げを大幅にしなければ、ほんとうは相続税を減税をしてもたいした効果はあがらない、こういうことを私は申し上げているわけなんでございますね。ですから、そういうことについて政府はどのようにお考えになっておりますのか、こういう点についてのお答えをいただきたいと思います。    〔委員長退席、理事温水三郎着席
  153. 船田譲

    政府委員(船田譲君) ただいま萩原委員の言われましたこと、私よくわかります。それで、これは十分検討していかなければならぬ問題でございまするけれども、なおまだ検討に未熟な点がございますので、先ほどの繰り返しで恐縮でございますが、三者のうち、つまり、課税最低限の引き上げと、税率の緩和と、それから夫婦間における相続税の軽減という三つの点を同時に対象として取り上げました中では、その一番最後に申し上げました夫婦間の相続の税の軽減の問題をまず第一に実行に移していきたいと、こういう意味でございます。
  154. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ただいま、お忙しい中を法務大臣においでをいただきましたので、さっそく法務大臣にお尋ねをしてまいりたいと思います。  私は、一昨年から本年まで引き続きまして、予算委員会におきまして、主として妻の座の確立をめぐる法律問題を中心に、私の見解、私の意見を明らかにしながら、政府の見解をただしてまいったところでございます。すなわち、現在わが国の制度上妻が非常に不当に取り扱われているということ、そしてこれを改善しなければならないということを主張してまいったわけでございますけれども、それに対しまして、昨年は、当時の小林法相が、それは税制の問題だと逃げられました。ことしは福田前蔵相が、これは民法上夫婦の財産関係の別産制で問題があると述べられたわけでございます。このように、政府はこの問題に対して法務、大蔵両省で責任のなすり合いをされていたように受け取れるわけでございます。ところが、ただいま承ってまいりますというと、大蔵省ではこの件につきましては非常に前向きの姿勢で検討をしていただいておりますようで、私は非常にうれしいと思うわけでございます。そこでまず、きょうは、私の相談室に持ち込まれました幾つかの問題を紹介しながら、両大臣の妻の座確立に対する基本的な姿勢をお伺いしてまいりたいと思います。  で、まず初めに、「三男であった夫と結婚して十三年、二人の兄たちはそれぞれ結婚して家を出て、私ども夫婦が両親のめんどうを見ながら、家業に専念をしてまいりました。両親は口ぐせのように、この家のものはおまえたちのものになるのだから、しっかりやってくれと言われておりました。ところが、ことしの五月、夫が交通事故でなくなりましてから、両親の態度がだんだん変わってまいりました。現在の家はもとより、他の財産もみなしゅうとの名義になっております。悲しいことに、私たち夫婦には子供がありませんでしたので、私は涙金程度の慰謝料をもらって実家に帰らなければならなくなりました。近々上の兄夫婦が帰ることになっているということを聞いております。そうしますと、私は全く十三年間ただ働きをしてきたのと同然になります。現在、いなかでは私のような立場の女性がまだ数多くございますが、こうした問題は何とかならないものでございましょうか。」、これが私に対する第一問でございます。  二番目は、「四十二歳の妻です。結婚当時は何もなかった私たちでしたが、実家の父から援助を受けて、小さな飲食店を開きました。おかげでよくはやって、店もだんだん大きくなり、三年前には少し離れたところにさらに新しい店をつくりました。ところが、夫は去年の暮れごろから、新しい店をはやらせるためにと、そのほうへほとんど行きっきりになってしまったのでございます。最近になって、初めに店を頼んでいた人をやめさせて、自分の好きな女をおかみにしていることがわかりました。私の推測では、新しい店をその女のものにしようとしているのではないかと思います。私はその新しい店を私名義にしてくれと申しますと、夫は、税金がかかるだけだと、笑って取り合ってくれません。私は煮えくり返るような怒りをどうすればいいか思っております。」、こういったような問題でございます。  そして最後には、結婚三十年になる妻の訴えでございますが、「しゅうと、しゅうとめと同居して苦労しながら三人の子供を育て、夫を助けて働き続けました。その間に村から分けられた雑木山を開墾してブドウ畑にし、かなりの収入を得るようになりました。昨年、続いて両親がなくなったときに、夫は私の労苦に報いるためと、二人で開墾したブドウ畑の半分を私の名義にしようとしました。ところが、驚いたことに、これには贈与税がかかるというのです。びっくりして税務署に行きましたら、法律ではそうなっていますという冷たい返事に、がくんときました。」というわけでございます。  こういう訴えは、まことに枚挙にいとまがございません。大臣も、おくにに帰られますと、おそらく支持者の方たちからいろいろ御相談を受けられると存じます。こういう問題は、一人の未亡人、あるいは一人の飲食店のおかみの問題として笑って済まされぬ問題かと考えるわけでございます。しかも、こうした問題は、現在の情勢の中でほうっておけないものになるかと考えるわけでございます。そこで、お忙しい法務大臣に、大臣ならこういった問題についてどのように御答弁をなさいますのか、まず法務大臣の御回答を承りたいと存じます。
  155. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 最初にお話しのとおり、税金の問題と、また民法上のいろんな財産関係、私は、これは全く別個のものでありまして、何も民法が直らないから税法が直せないとか、あるいはその逆の考え方、そういうことをとる必要は全然ないと思っております。  そこで、まず最初のお尋ねの件でありますが、妻に代襲相続を認めないという点については、私は確かに疑問があると思います。ただいまいろいろ法制審議会で検討されておるように聞いておるのであります。率直に言えば、個人的な意見としましては、代襲相続を認めるべきではなかろうか、あるいは相続を認めるか、あるいは貢献度に応じまして特別の財産として妻が得られるような方式をとるか、これはまあいろいろありましょうが、何か解決してやらなければならぬ問題だと、民法上の問題だと思っております。  それから第二点の問題につきましては、結局、妻と二人で共かせぎのものは、まあほんとうは、実際は共有である。しかし、名義が夫のものであれば、夫の個別財産として考えるというような、やはりここに民法上の問題があると思います。ただ、税金の問題になりますと、相続税につきましては、御承知のように、二つの性格があるわけです。といいますことは、子供に対して相続税を取ります場合には、全部に近いまでかなり高い税金を取る。これは、子供が再出発といいますか、できるだけ平等で、無財産でやるべきだという思想があると思います。その一面に、やはり所得税をずっと取ってきたんだが、それに対して逋脱されておる部分がある、なかなか所得税というものは完全に取れません。だから、所得税の逋脱でかなりの財産ができておるのじゃないか、こういうような考え方も実はあるんです。要するに、所得税の補完税だというような考え方も実際にはあるわけなんです。そういう面で考えましたり、あるいはまた、妻に対して課税しますときには、そういう考え方もあるかもしれませんが、将来起こる相続税に対して、補完税といいますか、逋脱をさせないように、そういう際に税金を取っておくという、将来起こるべき相続税に対して贈与税を取る、こういう思想もあるわけで、ただ、先ほども申しましたように、妻の場合は、何も素手で、平等で競争させるという必要はないわけでありまするから、当然低かるべきものだ、かように考えるのであります。要するに、問題は、どの程度に軽くするかということであったり、あるいは場合によって、理想から言えば、ほんとうに共有、二人で共かせぎのものなら二人のものだというふうな考え方に立てば、あるいは無税でいいというようなことも考えられるわけで、ただ税金の問題にしましても、民法自体にしましても、新民法になってから、社会の現実といいますか、一般の通念がなかなか理想のところまでまいりません。非常なズレがあるのじゃないか。また、取引の安全、客観的に考える場合、また二人の中で考える場合、いろいろありますから、それに対してほんとうの法制の問題としてどうあるべきかということは、なかなかむずかしい問題じゃないかと思いますが、それについていろいろ御討議を願っておるものだと、かようにお考え願いたいと思います。
  156. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そうすると、大臣、いまのお答えから考えますというと、この民法七百六十二条だけでは、こうしたような妻の問題というのは解決することがむずかしいと、こういうふうなお考えでございますね。そういたしますと、この七百六十二条というものについては、もう少し項を起こすとか、条をふやすとかいったようなことをやらないと、いまのような問題の解決はできないと、こういうことになるわけでございますね。  そこで、お尋ねしたいのですけれども、前の植木法相は、民法部会にはかって、こうした問題をできるだけ国民の世論に訴えて解決したいという御答弁があったわけでございますけれども、そういうことに対する引き継ぎはいかがでございますか。
  157. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) たしか引き継ぎはあったと思いますし、引き続きずっと、我妻先生でありますか、中心になって、小委員会でいろいろやっていただいておるわけであります。
  158. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ずっとという御答弁でございますけれども、私が質問をいたしましたのは、ことしの三月の二十日でございます。それから大体何回ぐらいこの民法小委員会が開かれましたのか、承りたいと存じます。
  159. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 私からお答えさしていただきます。  法制審議会の民法部会は、ことしの三月、先生の御質問がありましたときに、それまでの経過を御説明いたしてありますが、昭和四十一年以降身分法に関する調査をしばらく中断いたしておりましたが、昨年の十二月に開かれました民法部会におきまして、身分法の審議を再開しようということになりまして、身分法の小委員会を再開することにいたしたわけであります。その後委員の人選などに多少手間どりまして、再開の第一回の身分法小委員会をことしの六月十五日に開催いたしまして、今後どういう方向でどういう問題について審議していくかということを相談いたしたわけであります。その結果、身分法のうち親族編の部分はすでに一応審議が終わっておりますので、今度は相続に関する部分から始めていって、そしてそれに関連する親族法関係の問題もあれば、あわせてそれも取り上げていこうと、こういうことにいたしまして、基本的には相続に関する問題を取り上げるということにいたしたわけであります。そして、九月十四日に準備会というのを開きまして、十月十九日に第二回の身分法小委員会を開催いたしました。このとき初めて実質的な議論がいろいろかわされたわけでございますが、妻の地位に関する問題といたしましては、ただいま大臣が御指摘になりました妻の代襲相続権の問題、それから妻の相続分の問題、こういった点が検討されたわけでございます。その後、いろいろな都合のために会議は開かれておりません。大体そういう経過でございます。
  160. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そこで、ことしの税制調査会が答申をしておりますことにつきまして、大臣はたぶん御存じだと考えるわけでございますけれども、その税調の答申でございますが、これに配偶者の財産形成に対する貢献を一そう評価する方向で現在より優遇措置の拡充をはかるべきであるとする意見があり、さらには、より基本的に、相続税は世代をこえる場合に課税すれば足り、夫婦間の財産移転はすべて非課税とすべきであるといった考え方である。これらの点については、民法の財産制度とも密接な関連を有するので、これらとの調和を保ちつつ、かつ、今後の法制審議会における審議状況の推移にも配慮しつつ、引き続き慎重に検討することが適当であると、こういうふうに述べられておるわけでございますね。ですから、これは非常に関係があるということを述べているわけでございますけれども、その関係というのは一体どういうところだというふうにお考えでございましょうか。
  161. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私は率直に言ってあまり関係があると思っておりませんので、どういう意味でそういうことが言われておるのかよくわかりませんが、結局正常な相続分というものに対するものと、何か異常なものに対する相続というようなこととか、そういうようなことを考えておるんじゃないかと思います。というのは、以前遺産相続と家督相続というのは非常に違って課税をいたしておりました。そういうようないろいろな問題もあるからという意味かもわかりませんが、私には、率直に言って、民法が直らなければ相続税を変えるということはないような感じがいたします。   〔理事温水三郎退席、理事和田静夫着席
  162. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 しかし、先ほど、大臣、私は具体的な問題を出したわけでございますけれども、たとえば、ここまでは妻のものですよと言ったときには、これは明らかに私は大蔵のいわゆる税の問題になってくると思います。しかし、ここまでをはっきり妻のものと認めますよというところまでは、これはやっぱり私は民法の問題だと思うんです。ですから、関係がないということにはならない。やっぱりここをはっきりしていただかないと、たとえば末亡人代襲権というものを認めてもらわなければ、何ぼ大蔵のほうで、これは税金まけてあげたいんですよ、税金まけてあげたいんですよとおっしゃっても、そうはならない。こういうことがございますので、私はやっぱりこの一番問題になるところをはっきりしておいていただかないと、妻というものはほんとうは救われないということになるのではないだろうかと思うんです。二つ目に私が申しました問題にいたしましても、妻への財産復帰の問題とか、共有財産の問題とか、当然共有と考えられる場合、名義変更は可能にすべきだといったようなことがなければ、これは税制だけではどうしようもない問題になってくるのではないだろうか、私はそういうふうに考えるんです。ですから、ここで税制のほうで、これは民法とのかね合いを考えながらということをおっしゃったところが、そこら辺にあるのではないだろうかというふうに考えるわけでございますけれども、それでは伺いますが、十月の十九日にその未亡人代襲権の問題についてはどのような審議がなされましたのか、承りたいと存じます。
  163. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 妻の代襲相続権についてどういう審議がかわされたかということでございますが、実は私その会議に途中までしか出ておられませんでしたので、詳細は記憶していないわけでございますが、相続権に関しては、たとえばどの範囲の者に相続権を認めるかという問題がございまして、その範囲についていろいろな問題が取り上げられたわけでございますが、その中で特に問題となりましたのが、ただいま申し上げました妻の代襲相続の問題、それから養子の相続権に関する問題であったと思います。養子の場合は、これは養親と実親と両方から相続するというのはむしろ逆に制限すべきではないかという立場からの御意見であったのに対しまして、妻の代襲相続の問題、これが認められないためにいろいろ不都合な場合が生ずるので、むしろこれを認めたらどうかというような御意見が数名の委員から述べられたと、このように記憶いたしております。
  164. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 民事局長さん、先ほど出ておられなかったのではっきりとわからないけれどもとおっしゃいましたけれども、こういった大事な問題でございますから、やはり私は、秘密会議になさることもけっこう、そして秘密会議になさってどんどん御意見を戦わしていただくこともけっこうでございます。しかし、出ました問題につきましては、やはり記者会見なんかをなさいまして、こういう問題が出ているということをはっきり国民にお示しをいただいて、そしてまた、そういった問題について国民はどう考えるかということを結集して初めて、こうしたむずかしい、むずかしいとおっしゃる法律の問題がだんだんと解決されていくのではないか、私はそのように考えるわけでございます。あまりにも秘密主義をお守りになりますと、国民はつんぼさじきに置かれたかっこうになりまして、私たちはこのような不合理な問題を一ぱいかかえているんだけれども、一体国のほうではこれをどういうふうに考えていてくださるのかということがちっともわからない状態のままで、不満を残しつつ暮らしているというのが現状でございます。したがいまして、私は、この未亡人代襲相続権の問題につきましては、これはぜひ七百六十二条の中に一項起こしていただきたいと考えているわけなんですけれども、局長さんいかがでございますか、その考え方は。
  165. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 法制審議会の審議につきましては、外部には発表しないというたてまえになっております。これは個々の委員が御自由に発言をいただくものですから、どの委員がどういうことを言ったということが場合によっては審議の公正を妨げることがあるんではないかということを心配されているためであろうと思います。しかしながら、法制審議会におきましては、ある程度審議が進みました場合に、それまで審議いたしました結果をまとめまして、重要な問題につきましては、必ずと言っていいぐらい、中間発表というものをいたしております。そしてさらに、その中間でできました案を関係の学会とかそのほか関係のあるところにお送りいたしまして、意見を伺うというようなことまでいたしておるわけでございます。おそらく、このような問題についてある程度審議が進んだといたしますれば、法制審議会としては、いままでの慣例に従いまして、当然そのような措置をとることになる、このように考えております。
  166. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 四十三年でございましたね、家族法に関する世論調査というのをおやりになったわけでございますね。その中にこういうのがございます。「あなたは老後の生活費はおもに自分で出すつもりですか、お子さんに出してもらうつもりですか、それとも国に期待しますか」、こういうのがございました。それに対しまして、自分が出す、あるいは配偶者と一緒にいる場合に配偶者が出すと答えているのが六三%でございますね。そして子供というのが一七%、国に期待をするというのはわずか八%しかございません。これも私は非常に問題だと思うんです。いま国がほんとうに老後を保障してくれてないから、国に期待してみてもどうしようもないということにも関連があるのではないかと思いますけれども、しかし、もっと問題になりますのは、女性の場合は、その二十歳代では、私は老後を自分で生活をすると言っているのが七〇%もあるわけでございます。ところが、それがだんだん年齢が高くなるにつれまして減ってまいります。そうして、五十歳代になりますと、五〇%になってしまうわけでございます。これは、女性は男性に比べてそういうことに対する読みが浅いと言われれば、私はそれも肯定いたしますけれども、そればかりではないと思いますね。男性の場合は、二十歳でも、六十歳でも、大体自分でみるという率は変わっておりません。こういうことは何を意味するかと申しますと、女性の場合は当燃自分の財産となるべきものも自分のものになし得ないところに原因があるんではないだろうか、私はそういうふうに考えているわけなんです。そういたしますと、この七百六十二条の問題につきましては、よほど慎重な御検討をしていただかない限り、女性の立場は救えないのではないかというふうに考えるわけでございますけれども、大臣、これはいかがでございましょうか。
  167. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) そこが非常にむずかしい問題だと思います。というのは、金銭的な能力からいいますと、まあやはり女性が劣っておる。ただそれだけの評価で、いままでの観念はどうもそれが強かったわけです。精神的に、いろいろな内助の功というものでありますか、そういうものが評価されてない。ところが、そういうものを実際にどう評価するかというと、なかなかむずかしい問題だと思うのです。やはり女性の方は経済的な能力がないから男性に依存していかなければならぬということで、そういうような数字が私は出ておるのではないかと思います。しかし、おっしゃるように、二人で共かせぎの場合、片一方の奥さんが全然事業はやらなくても、家事を手伝うなり、いろいろなことなり、また精神的な励ましとか、そういうようなことによって二人で築き上げた、こういうことになると、これは均分して考るべきだ、こういうような主張が出てくる。それが、先ほど来申しておりますように、社会的な通念といいますか、それがだんだん終戦後も変わってきたわけであります。現在どの程度の考え方まで進んでおるかという内部的な問題と、また外部からどういうふうに考えるか——これも、世間的には、まあ常に収入を得ているのはほとんど主人の力だというふうに考えておったのが、だんだん変わってきておるわけであります。そこらの現実に即していろいろ考え直してみていかなければならないというような問題を含んでおるのではないかと思います。
  168. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 まあ、GNPというようなことが、これは経済だけの中で考えられているというところに、私非常に問題があると思うのですね。いま大臣もお話しになりましたけれども、やっぱりそれじゃ妻というものは——たとえば原料を幾ら幾らで買い入れました。ところが、それを自分が調理して、それをみんなに食べてもらう。そうすると、原料費というものはわずかだけれども、もしそれだけのものを外で食べるということになったら一体どうなるでございましょうか。そういうことを考えますと、妻の働きというものは決して私は消費経済だけをつかさどっているのではないと考えるわけなんでございますね。ですから、そういうことを考えましたときに、やはりこの妻の内助の功というものはもう少し高く評価していただくことがなければいけないのではないか、そういうことも考えるわけでございますね。  したがいまして、私はもう一つお尋ねしますけれども、日本では、この財産制につきましては、七百六十条、七百六十一条、七百六十二条とわずか三条でございますけれども、各国でそのようなものの規定がそんなに少ない国がありますのか。もちろん、中国とソ連は一条だということは私も存じております。しかし、それ以外の国で、このようにわずかな規定しかしてない国があれば、お教えいただきたいと思います。
  169. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 率直に申しまして、私は外国の例はよく知らないわけでありまするが、結局、従来から、家族制度というようなことであったり、また夫婦財産制という問題について、非常に、何といいますか、以前はみんなそんなに考えなかったといいますか、あるいは夫婦の財産問題がいろいろ論議されるのは、率直に言いまして、離婚とか、そういうような清算する場合、あるいは死亡する場合、こういう場合に限って財産の問題が起こるので、それまでの間はあまり問題は起こらないというような、日本の習俗といいますか、習慣、そういうようなもので、わりあいに家庭内の問題は、こまかく外国のように規定して、そうしてどういうふうに効率的な財産の計算をやるかということが問題にならなかったのだと思います。しかし、時代がどんどん変わってまいっておりますから、将来当然問題にもなりますし、またその間におのずからいろんな原則なり法則が出てきて、規定をするほうがより適切であるというような問題が起こるのじゃないかと思います。
  170. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 大臣、私は、そういうことにつきまして、いま核家族化しているということを頭に置いて考えないと、非常にむずかしい問題があるのではございませんかと思います。この三月二十日に私がこの問題を質問いたしましたときに、あとでずいぶんたくさんの婦人から、いろいろ激励の手紙やら、いろんな手紙をもらいました。その中に、夫婦が生きていたら、別に夫のもの、妻のものなんて言わなくたっていいじゃないかというような意見は、私たちにはもう当てはまらないということを言っているわけでございます。せっかくこうして苦労したものを、なぜ私たちは生きて喜び合えないのだろうか。死ななければその夫のものをもらうことができないといったようなことは、まことに悲しいことでございますと、そういったことを訴えてきた妻もあるわけでございます。それじゃ、この妻はさっそくに離婚でもしようとしているのかというと、そうではなくて、非常に円満な家庭の主婦でございます。しかし、そういったことを言う主婦がふえているということを、やはり大臣は十分御認識をいただかなければいけないのではないだろうかと思います。  そこで、新民法が制定されましてからもうすでに二十数年も経過をいたしておりますし、国民の意識も大きく変化をいたしております。また、学説もこれを反映して変わりつつあることも明らかなことでございます。そういうことに対して、大臣はどのように認識をされておりますか、もう一回明確な御答弁をいただきたいと思います。
  171. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 率直に申しまして、法は朝令暮改であってはなりませんが、その法の適用される社会は、非常に、ことに最近においては急激に変化をしておるわけでございます。やっぱりその変化に即応していかなければならない。終戦前の旧憲法下においては、長い間民法の規定がほとんど変えられるというようなこともありませんでしたし、また、民法を制定するのには、非常に長い時間を要したのでありますが、そういう時代ではなくて、もっと社会の変化は急激でありますから、それにやはり即応して考えていくべきだと、私はそう思っております。
  172. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 大臣、お時間だそうでございます。どうもありがとうございました。あとは民事局長さんにお尋ねしてまいりたいと存じます。  それでは、質問を前に戻してまいります。  先ほど私は——法務大臣は非常にお忙しいおからだでございますので、先ほど三つの例をあげまして、法務大臣のお答えをちょうだいしたわけでございますけれども、今度はひとつ大蔵のほうで、政務次官のこの問題についてのお考えを承りたいと存じます。
  173. 船田譲

    政府委員(船田譲君) 先ほど法務大臣からの御答弁にもございましたように、民法上の問題と税法上の問題は、もちろん関係はございますけれども、しかし、民法がいかにありましょうとも、税法上改正できるものにつきましては改正してまいりたいというのが、大蔵省の基本的な態度でございます。  それから、御質問の一番あとにございましたブドウ園の問題でございますが、現在の贈与税の配偶者控除が居住用不動産に限られておりますことから生じた事象だと思うのでございます。そこで、これを事業用の不動産にまで拡大する問題につきましては、なお相当なる調査を要すると思いますし、同時に、事業所得に対する課税につきましての問題も含めまして、考え方を進めてまいりたいと思うのでございます。  なお、先ほど私、二分二乗のときに、ちょっと申し落としましたので、ちょっと補足さしていただきたいと思うのでありますが、先生から御依頼がございました、欧米等を視察、調査をいたしました資料につきましては、主税局のほうから至急整えまして提出いたさせたいと思っております。  なお、そのときに、やはりいろいろと問題がございまして、たとえば独身婦人との問題、あるいは夫婦共働きの家庭との均衡の問題、さらには寡婦とそのむすこなり娘がともに所得がありましたような場合との均衡の問題等がございますので、先ほど私はかなり積極的な答弁をいたしておりましたけれども、なお非常にむずかしい点があるということだけ申し添えさしていただきたいと思います。
  174. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それは私のほうも十分承知をいたしております。しかし、むずかしいからというわけにはまいらない。そういうこともお考えをいただきまして、この問題につきましては、次のときに、十分いろいろな例をあげながら、私のほうも質問をさせていただきますので、どうぞ十分また御答弁をいただきたいと存じます。  そこで、先ほど私が申しました夫婦相続税の問題のほかに、政務次官から、身体障害者の問題についての御答弁をちらっといただいたわけでございましたですね。それは、私の友人に、脳性麻痺の子供を持っている友だちがあるわけでございます。これは手広く、かなりな商売をしているわけでございますけれども、一番の心配は、その脳性麻痺の子供の問題でございます。そこで、この子供に財産を譲っても、おそらく相続税を取られるのじゃないか。たくさん取られてしまえば、その子供は、結局、財産を残してやっても、一生生活をすることはむずかしいんではないだろうか、こういうことを常に言って嘆いているわけでございますけれども、これまでそういったような重症心身障害者といったような者に対して、相続税はどのようにかけられておりますのか、承りたいと存じます。
  175. 船田譲

    政府委員(船田譲君) お答えいたします。  いままでのところは、特別の措置はございません。
  176. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それでは、今度はこういう人たちにもあたたかい配慮をということになっているわけでございましょうか、その点を承っておきたいと思います。
  177. 船田譲

    政府委員(船田譲君) これは、先ほどの二分二乗の問題と違いまして、身体障害を持つ扶養家族を持っておられる家庭におきましては、他との顧慮なく、やはり積極的に課税を軽減する方向で検討していくべきだと思います。ことに、わが国の社会保障が、先生方の御指摘のとおり、まだ十分でない現状を踏まえまして、十分前向きに善処してまいりたいと存じます。
  178. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 どれぐらいの率でこの控除をしてくださるおつもりなんでございましょうか、そこを承りたいと存じます。
  179. 船田譲

    政府委員(船田譲君) 実はまだ検討中でございまして、具体的な率の数字を申し上げる段階には至っておりません。
  180. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 しかし、いま予算編成期でございますから、いま詰めておいていただかないと、さっそくの間に合わないということになるんではございませんか。
  181. 船田譲

    政府委員(船田譲君) 課長から答弁させます。
  182. 福田幸弘

    説明員(福田幸弘君) 御質問の点、技術的な点にわたりますので、私から答弁いたします。  現在ちょうど作業中でございまして、近く固まると思いますが、考え方としましては、現在未成年者控除という制度がございまして、二十歳までは、残された子供さんの年齢との差額といいますか、十五歳の子供が残れば五年間、これにつきまして一年一万円という税額を、たとえば、いまの例でしたら五万円の税額控除であります。その方式にならいまして、ある年齢、たとえば相当高い生存年齢を想定して個々の年数をきめなきゃいけない。これは普通の人と同じにこの年数を想定しまして、それと残された子供さんの年数の差の年数に対して一定金額、いまの重症の例でしたら未成年者よりは当然高くなると思いますが、その金額を掛けて税額を引くという方向でいま厚生省と——身体障害者がどれだけの追加的な負担を負っているかというのを、重症、それから普通の障害者と分けまして、現在その数字を、どのくらいの増になるかということを研究して、数字をきめつつあります。
  183. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ぜひその面につきましてはあたたかい御配慮を重ねてお願い申し上げる次第でございます。  で、その次に、いわゆる相続税を勤労者も非常にかけるようになったということで、できるだけ相続税の減税をということでございましたんですが、過去数年間の相続税税収の推移について承りたいと存じます。
  184. 福田幸弘

    説明員(福田幸弘君) 数字だけ申し上げますと、相続税、四十二年に課税件数一万一千件、税額五百十一億でございますが、四十六年の予算では、件数につきましては二倍以上、二〇七%増で二万三千四百件、金額では三倍以上となっておりまして、千五百六十一億ということでございます。
  185. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 これ、大体どの層が多くかけているんでございましょうか。
  186. 福田幸弘

    説明員(福田幸弘君) 階層別に見ますと、いまここに手持ち資料がございませんが、私の記憾でいきますと、件数では、資産額三千万のところですでに七八%ということになっております。そういうことですから、下のほうの件数がふえているということだと思います。
  187. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 次いで、夫婦の財産移転における妻の贈与税を無税にするという問題については、大蔵省はどのようにお考えでございましょうか。
  188. 船田譲

    政府委員(船田譲君) この問題につきましては、高額の所得の場合と、それから婚姻期間が著しく短い場合とがございますので、まだここで具体的にどのようにということを申し上げかねる状況にあります。
  189. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 いや、私がお尋ねしておりますのは、妻の贈与税というものを相続税と同じようなお考え方がしていただけますのかどうですかということをお伺いしているわけです。
  190. 船田譲

    政府委員(船田譲君) 現在のところ、相続税のほうに重点を置いておりまして、贈与税につきましては本年度改正をすでに行なっておりますので、それに続いて、順序からいいますと、あとになって検討していきたい、こういうことでございます。
  191. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それじゃ、あとで検討をするということでございますと、やっていただけるということでございますね。
  192. 船田譲

    政府委員(船田譲君) 相続税の問題がとにかくある程度曙光を見出しますまでに、ここで必ず贈与税につきましても実行いたしますということは申し上げかねるのでございますが、もちろん十分検討してみたいと思います。
  193. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ちょっとそれは聞こえませんと私は申し上げたいわけでございますね。と申しますのは、税調の長期答申の中に、「夫婦間の財産移転はすべて非課税とすべきである」というふうに書いてあるのでございますが、わが国の税制は一税目一税法というのが原則になっておりまして、贈与税法というものがない。そして、その贈与税というものは相続税法中に規定されております。これはもう私が申し上げるまでもなく十分おわかりいただけているところでございますけれども、そういたしますというと、この贈与税というのは相続税の補完税であるということになるのではございませんか。そういたしますと、その相続税というものが減免措置を考えられておりますのにもかかわらず、贈与税にそれは及ぼさないというお考えは少々おかしいんじゃないかという感じがするわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  194. 船田譲

    政府委員(船田譲君) 先生のおことばでございますが、相続税のほうでの検討が十分行き渡りますれば、贈与税についてはどの程度まで検討すればよいかという、一つの、何といいますか、従属的な問題が出てくると思います。したがって、相続税のほうをまず検討していくべきだと、かように感ずるわけでございます。
  195. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 まあ、あとでもっともっと予算委員会あたりで、もう少し贈与税の問題は詰めさせていただきたいと考えておりますが、しかし、ほんとう言えば、相続税をおやりくださるのなら、一緒に贈与税も考えていただきたいと私はお願いをしたいところでございますね。しかし、これにもいろいろ問題があると。伺うところによれば、贈与税をやっていると脱税行為の心配があるというようなことでございますから、まあこういった問題があるとすれば、どういう層にそういう問題があるのかと、こういうことも後ほど伺わせていただきましょう。  そこで、贈与税というものは居住用はあるわけでございますね。私はこの前のときに、二十五年の二百万というのに対して、前の福田大蔵大臣に、二十五年というのは長過ぎる、二百万なんていう居住用財産は何ですかと、こう申し上げましたら、次のときには、二百万を思い切って倍の四百万にいたしました、そうして二十五年は長過ぎるということですから二十年にいたしましたと、ちょっと値切られたわけでございますけれどもね。しかし、だいぶよくしてくださったことは確かでございます。しかし、いまのこの物価高騰の中で、居住用財産の四百万というのもまあまあ少ないと私は考えるわけでございます。それでもまあ、居住用に限っては贈与税を取らないと、こうおっしゃるのですけれども、それではブドウ畑のようなときにはなぜ贈与税をお取りになりますのか。贈与税を、言いかえれば、居住用に限られたのは、どういうことでございますか、承りたいと存じます。
  196. 船田譲

    政府委員(船田譲君) 先ほどもちょっとお答え申し上げましたように、事業用不動産に及ぼしてまいりますと、つまり事業所得の課税との関連の問題もございますので、なお十分な研究を要するということでございます。
  197. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 やはり、ちょっと私の頭の中では、もう一つ、頭が悪いせいでしょうか、すっきりしないのでございますけれども、政務次官のおつむの中では非常にすっきりしているのかもしれませんけれども、私はどうもこの問題ちょっとひっかかるわけなんでございますね。さっきのブドウ畑の問題にいたしましても、あるいは、二つ目に述べました、いわゆる自分の実家からお金を借りて、そして商売を始めた。ところが、その商売を始めたものが、はやったものだから、そのお金はとりあえず実家に返した。しかし、もうかったものを元にしまして、そしてまた次に一つ店をつくった。こういったような場合ですね、これはまあ明らかに妻と夫のものでございましょう。そういうものでも、この夫の名前になっているものを分けた場合には、それを妻の名義にした場合には贈与税をかけると、こうおっしゃるんでございますから、こんなばかな話あるでしょうか。私がほんとうに腹が立つのは、そういう点でございます。この点、政務次官いかがでございますか。
  198. 船田譲

    政府委員(船田譲君) 非常にむずかしい問題ですから、税制三課長に答えさせます。
  199. 福田幸弘

    説明員(福田幸弘君) 私でよろしければお答え申し上げますが、非常にむずかしい問題で、税の基本に触れる点があると思いますが、贈与税と相続税の関係ということでございますけれども、やはり、先ほど言われたように、こういうような場合には相続税がある、相続税があって、それ以前にいろいろ贈与をやってしまえば——贈与税がもしなければ、その間、贈与税、相続税がともになくなってしまうものですから、御承知のように、贈与税があるわけでございます。なぜ贈与をやるかという理由になってきますが、夫婦間で贈与をやる理由というのは、やはり生きておるうちに名義がはっきりしておったほうが安心であるというのが生活感情であると思いますけれども、税法的にいいますと、生きておるときに名義を分けてしまいますと、特に事業用でございますと、夫婦で実際経営をやっておる場合に、一緒に働いている場合に、その二つに形式的に分けますと、任意的に分けられて、その所得のほうがそれだけ分割されたことになりますと、所得課税は私の専門ではございませんが、累進構造の税率ですと税金が安くなってしまうという税法の問題がございます。  それから、相続税はいま取り組んでおるわけですが、相続税で相当の融通ができれば、日本にはあまり遺言の慣習はございませんけれども、やはり生きておるうちに遺言でできるだけはっきりさせる、また死んでから不満のないように関係者で妻に実際にいくようにするというような慣習ができていけば、おのずから生前で贈与という重要性がだんだん減っていくんじゃないかというのが私なりの考えですが、この辺、実態をよく研究してみたいと思います。
  200. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 遺言の問題でございますね。さきの私の例でもおわかりいただけたように、ぽっかりと交通事故で死ぬということだってあり得るわけでございます。ところで、元気にぴんぴんしていらっしゃる御主人に対して、あなた心配ですから、ちょっと遺言書いといてくださいというようなことは、私はちょっと言いづらいと思うんです。いまの若い方でございますと、こういうこともあろうから、ひとつあなた早ようから遺言書いといてくださいというような元気のいい方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうふうに言われたときに、おそらく殿方にいたしましても、けっこう、じゃ書いておこうということはちょっと言いにくいんじゃないか、何言ってんだみたいなことになるんじゃないかという感じもするわけでございます。そうすると、遺言がなければというようなことになると、これもまた非常にむずかしい問題になってまいりますね。ですから、私は、こういったはっきりしているものについては、これは贈与ではないというたてまえをしっかりしていただくことが一番大事なことになってくるんじゃないか、これが私の申し上げた基本でございますね。だから、夫がもとから持っていた特有財産はさることながら、これは別々にしたらややこしいということになりましょうけれども、特有財産はしかたがないとしても、二人でつくったものについては、これは妻の持ち分だということをはっきりしていただくようにしなければ、これは安心して生きることができない。  それにまた、相続ということになりますと、妻は三分の一、自分のものが半分あっても三分の一というところで区切られるところにだって問題がございますね。そうして、何にもやらない、もう別居してしまっている子どもたちが三分の二を相続する、こういうことであっては、これは聞こえないと思うんですね。ですから、もっと言えば、二人でつくった財産というものは、これは明らかに二人のものだから、夫が死んだという場合には、夫は権利放棄でございます。したがいまして、一体である妻が全部もらってしまって、そうして自分が死んだときに初めて子供たちが相続するということだってよろしいじゃございませんか。だから、税調では、同世代間においての相続税はおかしいと、これは世代を越えるときにのみ課税すればよろしいと、こういうことを言っていらっしゃるわけなんですね。これは当然のことだと私は考えるわけでございます。  そういったようなこともございます中で、いま贈与税の問題がとやかくされるということ、云々されるということは、ほんとにいまの時代の考え方とはよほどずれたものになってきているのではないか。もしそういうことが非常に御心配でございましたら、もっとたくさんいろいろのときに、こういうときにはこうだ、こういうときにはこうだということをおきめいただいたらよろしいではございませんか。たとえば、みんな持って妻が再婚しちゃうというのだったら、再婚するときは置いていけということをおつくりになったらよろしいじゃございませんか。そういうところまで考えていただかないと、私たちはどうしても、これ納得して、安心して暮らすことがだんだんむずかしくなったという現実でございます。どうぞひとつ、その点いかがでございましょうか。
  201. 船田譲

    政府委員(船田譲君) 先ほど来先生の言われる、夫婦間の財産というのは二人がつくったものであるから——税調の基本的な考え方、同じゼネレーションの間の贈与については、あるいは相続については、これは税金をかけるべきではないという考え方は、これは将来の目標としてはそのとおりだと思いますけれども、現在のところは、先ほど来お話がございましたように、居住用財産については次第に配偶者控除を上げてまいったわけでございます。千里の道のごくわずかな一歩ではありますけれども、一歩一歩積み上げてまいりまして、先生の言われるような贈与税にまで将来は及ぼしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  202. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 民事局長さんにお尋ねいたします。お忙しい委員の方でいらっしゃいますから、会議を開いていただきますのは、先ほどのお話のように、六月であった、その次は十月だったといったような、長くお開きにはなれないというようなことがございますね。それで、私が考えますのには、せめて夏休みとか冬休みとかを利用して、快的な場所で集中的に会議を開いていただくといったようなことをお考えいただくことはいかがでございましょうか。法務省としては、こういったような審議開催についてどのような御努力をなさいましたのか承りたいと存じます。
  203. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 確かに、本年は、あまり回数多く開くことができませんでした。これはいろいろな事情によるものでございますが、御参考までに民法部会の構成を申し上げますと、委員が三十四名おりまして、ほかに幹事が二十名くらいおります。部会を開きますと、五十名以上の会議になるわけでございます。そこで、小委員会というものが設けられておるわけでございますが、その小委員会でも、委員が十七名、それから幹事が十数名ございます。委員の中には東京以外の場所に住んでおられる方もいらっしゃいますので、そういう方にお差し繰りいただいて御出席いただくために、なかなか適当な日が見つからないということもございますけれども、今後はなるべく回数をふやして審議を促進してまいりたい、このように考えております。  それから、集中的にやったらどうかというお話でございますが、これは、いままでのやり方といたしまして、ある程度審議が将来の形を考えられる段階に至りましたときに——先ほど申し上げました準備会というのがございます。これは、小委員会の委員の特に何名かの方にお願いいたしまして、それに幹事若干が加わりまして、小委員会で審議していただく基礎をつくるわけでございますが、この準備会でかなり集中的に審議をすることがございます。これは身分法につきましては現在のところまだそこまでいっておりませんので開催しておりませんけれども、将来案がまとまりそうになってきた場合には、その準備会というものを、集中的に何日か委員、幹事の方々に一カ所に集まっていただいて作業をすると、こういうこともしなければならないのではないかと、このように考えております。
  204. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そうしますと、来年度の予算でございますけれども、どれほどその身分法小委員会の審議促進のために経費を計上されておりますのか、承りたいと思います。
  205. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) これは法務省では実は調査部の所管でございますが、聞いてまいりましたところを申し上げたいと思いますが、昭和四十七年度における民法部会及びその小委員——その小委員会というのは、身分法小委員会と財産法小委員会、二つございます。こういった会議の開催につきましては、総計で大体年間十六回程度予定しております。そのための予算を目下要求中でございまして、財政当局と折衝を進めているところであります。  なお、民法部会のほかに、法制審議会の中には商法部会、強制執行制度部会、国際私法制度部会など幾つかの部会がございまして、これらの部会を通じまして、約六十回を開催する額を要求いたしておりまして、これが多少予定どおりまいらないところもございますので、それを融通し合うというようなこともいたしておりますので、運用上はかなり融通がきくという実情でございます。
  206. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ことしは三回でございましたね、身分法小委員会は。六月と九月と十月。そうしますと、ことしはずいぶん予算が余ったんでございましょうね。融通をするとおっしゃいますけれども、しかし大体来年は十六回程度、ことしの分は大体何回ぐらい組んであったんでございますか。
  207. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) それは、先ほども申し上げましたように、法制審議会の中にありますいろいろな部会を通じて運用ができるようになっております。そうして本年は、実は商法関係の部会、それから特に強制執行制度に関する部会、この強制執行につきましては、非常にことし作業量が多かったわけでございます。その関係で、こういったほかの部会のほうにかなり開催回数を充てたものですから、まあ予算が現在どういうふうになっておりますかは私承知しておりませんけれども、そういうことで毎年やっておるわけでございます。特にその民法部会の回数が少なければ、それだけ余る、そういう性質のものではないと思います。
  208. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 たいへん身分法小委員会のほうは謙譲の美徳を発揮されたかっこうになりますね。よそのほうにたくさんお回しになった。ところが、私たちにすれば、一日も早くこの委員会をたびたび開いていただいて、こうした不合理な問題をできるだけ早く是正をしていただきたいと、こういうふうに考えているわけでございますけれども、まあ過ぎたことはいたし方がございませんが、それでは今後の審議計画をひとつお聞かせいただきたいと存じます。
  209. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 今後審議する内容につきましては、先ほど申し上げましたように、相続に関する問題を中心にいたしまして、それに関連する親族法上の問題をあわせて審議をしていく、こういうことでございます。  それから、開催回数などにつきましては、これは審議会自体でおきめになるわけでございますから、私何回ということははっきり申し上げられませんけれども、ことしは確かに御指摘のように回数が非常に少なかったので、これは正常にやってまいりますと二カ月に一回ぐらい、まあ夏と冬は若干間があくかと思いますけれども、二カ月に一回ぐらいの割合で開催をいたしていきたい、このように考えております。
  210. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それでは、十六回ではなくて六回ということでございますか。実際問題として六回ぐらい、こういうことでございますか、二カ月に一回ということでございますと。
  211. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 夏がちょっとあきますけれども。
  212. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 夏はもっとたくさん集中的におやりになる、そういうことでございますか。
  213. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) いや、夏は夏休みですから、まあ夏は委員の方々がお集まりいただけない場合が非常に多いわけでございます。そういうことで七月、八月はあくことになりますので、まあ普通にまいりますと五回くらいという計算になろうかと思います。
  214. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 夏はもっと非常に快適な場所でも選んでやっていただくというような方法がとれないものなんでございましょうか。七月、八月は暑いからやめておこうかなということではなくて、大体、学者の先生方も七月、八月というときだったらお集まりいただける条件がそろっているのじゃないかと思うのです。ですから、暑いところでやるのじゃなくて、まあひとつ涼しいところで——だから私は去年、前の大蔵大臣に対しまして、この身分法小委員会を開かれますときの予算は十分組んでくださいとお願いをいたしましたら、大蔵大臣は、それはそのようにいたしますという確約をしてくださったわけです。したがいまして、こういったことで七月、八月といったようなときを省かれませんように、こういったときにはできるだけ快適な場所を選んで審議をしていただけますように、ひとつよろしくお願いをいたしたいと存じます。  それから、時間がだんだん迫ってまいりましたので、最後に、大蔵あるいは法務両省に対してお願いなりお尋ねをしてまいりたいと思いますけれども、まあ大蔵省は、ことしは海外調査団などもおつかわしになって、とにもかくにも妻の座に対する税制改正、二分二乗についても研究をされてきたやに承っております。そしてまた、今度のこの妻の座に対する相続税の問題、これには真剣に取り組んでくださる姿勢がうかがわれて、私はたいへんうれしいと考えたわけでございます。しかし、まことにこれ比較をいたしまして、とやかく申し上げる気持ちは全然ございませんけれども、法務省は、いままでのところは、まことに牛の歩みよりまだおそく——こういう表現がたいへん悪ければお許しをいただきたいのでございますけれども、そういったことで消極的な域を脱していないのではないか、こういう感じがいたします。これでは国民の意識、社会生活の実情についていけないのではないだろうか、こういうことを考えるわけでございます。妻の財産問題につきましては、法務、大蔵両省相携えて取り組んでいただかなければ根本的な解決がむずかしいことは、前にも申し述べたとおりでございます。そこで、法務省は常々こうした研究をお進めいただきまして、必要に応じて資料も整備され配付をしていただきたい、こういうことをお願い申し上げておきたい次第でございます。  さきにも述べましたように、幾つかの例からも御理解をいただけました、私どもの周囲には、こうした不合理な問題は山積をしているわけでございます。私はきょう時間の都合もございましたので、たまたま私の相談室に持ち込まれた問題を三つだけ具体的に紹介をいたしましたわけでございますけれども、こうした問題はもう数限りなく私の手元に届けられてまいります。法務大臣も今後こういったような問題についてどのようにやってくださるおつもりなのか、もう一回私は民事局長の御意見と御決意のほどを承りたいと存じます。
  215. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 何かこの問題に法務省が消極的ではないかというお疑いでございますが、決してそのようなことはございませんで、私どもといたしましても、これは非常に重要な問題であると考えておりますので、今後とも十分御趣旨に沿うように検討を進めてまいりたいと考えております。ことに、ことしの三月には、この身分法の小委員長でもあり、民法部会の部会長でもある我妻先生が予算委員会において萩原先生からのお尋ねに対していろいろお答えをしたというような経緯もございまして、我妻先生もこの問題については非常に深い関心を持っておられまして、最近ジュリストにもそのことを書いておられることは、御承知のとおりかと思います。そういう次第で、法務省のみならず、この法制審議会におきましても、きわめて積極的な姿勢でもってこの問題に取り組んでいきたいと考えておりますので、どうかその点についてひとつ御了承いただきたいと思います。
  216. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 たいへんどうも失礼を申し上げたわけでございますけれども、さっき法務大臣は、各国状況についてはどういうふうになっているかまだ自分承知をしていないと、こういうお話でございましたが、局長さんはいかがでございますか。
  217. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 私は若干本などを読んで承知しておりますつもりでございます。しかし、先ほど条文のお話がございましたが、規定を一々見ておりません。ただ、学者の書いたものはいろいろございますので、そういうものには目を通しております。まあ、それによりますと、各国さまざまいろいろな制度があるようでございます。それだけに、この問題非常にむずかしい要素があると思いますけれども、確かに日本の民法の規定、これが現在の時勢に照らして適当であるかどうか、そういった点につきましては、十分検討を要するものがある、このように考えております。
  218. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それでは、ぜひ前向きのそういったような考え方で、この七百六十二条の問題については、条を起こすなり、あるいは項を多くするなりしていただいて、できるだけ私たちが考えておりますような方向へ持っていていただきますようにお願いをいたしたいと存じます。まあ、この問題につきましては、さらにまた予算委員会とかその他の場におきましてお伺いをしてまいりたいと存じます。  そこで、最後に、大蔵省まことにいろいろとやっていただいたわけでございますけれども、先ほどの質問を通じて私は申し上げましたように、まだ根本的に贈与税の問題は大きく残っておるわけでございます。そして、私たちの考えておりますような、ほんとうに生きていて喜べるような形にはなっておりません。そういう問題につきましても、また二分二乗方式につきましても、日を改めまして詳しくお尋ねをしてまいりたいと存じますので、どうぞひとつこれから先も続けて前向きの状態で、妻が喜べるような、生きていてよかったと身障者の人も考えていただけるような形の税制に持っていっていただきますことを特にお願いを申し上げる次第でございます。その点につきまして、ひとつ政務次官の最後の御決意のほどを承って、質問を終わります。
  219. 船田譲

    政府委員(船田譲君) 相続税につきましては、特に積極的に検討を進めてまいりたいと思います。  贈与税の問題につきましては、なおかなり調査を要すべきことがございますので、十分その調査を進めてまいりたいと思うわけでございまして、いずれにいたしましても、せっかく御激励をいただきましたことでございまするから、大臣にも十分このことを申し上げまして、検討していきたいと存じます。
  220. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 終わります。
  221. 黒柳明

    ○黒柳明君 時間もおそくなりましたんで、要点だけ端的にお伺いしていきたいと思います。  昨日のこの行管の勧告事項、私も読まさせていただきまして、一応前向きにいろいろ勧告している、こういうふうに思っております。三番の、経理あるいは会計に対する基準を設けよ、あるいは四番の、管理台帳を整備しろ等々あります。ただし問題なのは、あくまでも形式的な締めつけではなかろうか、こういうことを私は感ぜざるを得ない。  そこで、言うまでもなく、たびたびこの公益法人の問題が国会で論議されております。運輸省の自動車局にせよ、あるいは農林省の食糧庁の問題にせよ、この公益法人の問題点、その基本になるのがいわゆる天下りの問題であったわけであります。ところが、この天下りの問題については、これは一言も触れていない。こういう点について私は若干不満があるわけですけれどもね、この点はどのような認識をされての勧告であったのか。
  222. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) ただいま黒柳委員の御質疑で、前のほうの項目は大体御了承だと思いますので、最後のその点だけを私からお答え申し上げます。  私も、おそらく黒柳委員が指摘をなさろうとしていらっしゃる意図はよくわかるのでございまして、私もやはり天下りというものについて世論の批判もきびしいということを承知いたしておりますので、実はこれも出したいと思ったのでございますが、その中には特殊のものがありまして、たとえば科学技術庁関係であるとか、そのほか、純粋に職員の福利施設を目的にしておるようなものであって、そういうのに現職の人が役職員の中に名を連ねておって、そしてその中の職員のめんどうを見ていくという制度になっておるようなものもございますので、そういうものを一括して発表いたしますと、これは多少やはりきびしい批判の中に一切がこう含まれてしまう、こういうことを考えまして、この間の新聞に発表するのは控えたわけであります。
  223. 黒柳明

    ○黒柳明君 私も、従来取り上げる観点というのは、すべて公益法人が悪いという点で取り上げたわけではありません。当然、公益法人認可の基準にのっとって認可され、そして公益のために一生懸命やっているところも数多くあるわけで、その中にあって、やはり四千数百にものぼる公益法人ができちゃった。しかも、ここで行管が調べた範囲の四〇%です。しかしながら、無作為抽出ですから、この四〇%というのが四千にも通ずるのではなかろうかと思うのですけれどもね。その根本というのは、やはり天下りから始まるわけであります。各省庁、局どころか課ごとに、私に言わせれば天下り先を持っている、こういうようなことも私現に指摘しました、その事実をあげまして。ですから、確かにそういう特殊なもの、私はいままでそういうことを言ってきたつもりじゃありません。しかし、大臣がおっしゃったように、これだけきびしく国民の批判がある中で、そして行管としても、総理の命を受けてここまでやったら、形式的なものじゃなくて、やはり本質的なものをここで改善するという気がまえが当然あっての作業だと思います。また、それが表に出てこないと、あくまでもいままでのシステムというものが、要するに公益法人が改まらないということは、これからも続いていくのではなかろうか。形式的な締めつけでは、勧告ではだめなんではなかろうか。ですから、大臣、百六でお調べになったその範囲、しかも特殊なもの、これは当然いいわけですよ。そうじゃないものがあるわけです。また、天下りの全部じゃなくても、この面だけではこれはやはりうまくない、共通してこういう点も、それは当然あると思うのです。これは常識的にもあり得べきことなんです、調べる以前の問題においても、これも指摘しております。ですから、何らかの形でこの天下り問題について昨日御発表できない、また特殊な点も考慮しての上——しかしながら、私は、いままでの調査で、また国会論争で、そして世間のきびしい批判も、このいろいろな仕組み、その根本には、天下りという問題を除いて、行管が、失礼ですが、どれほど前向きな勧告をやろうと、これは抜本的な改善というものはできないのではなかろうか、またいつの時点か同じことの蒸し返しになるのではなかろうかという意味から、公表できるような点ですね、あるいは具体的なことじゃなくして、基本的なことは、こういうことはうまくない、公表しないまでも、こういうことについてはこれから改善していきたいと、こういう点でもあるいはあれば、御示唆、御発表していただけませんか。
  224. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) この公益法人の監察については、私の省では政務次官に専念していただきまして、きびしく監察していただいておりますので、詳細なことは政務次官のほうがよく承知しておりますから、政務次官からお答えさしていただきます。
  225. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) ただいま黒柳委員から御質問のありました天下りの問題でございまするが、これにつきましては、私一応それを二つに分けて考えてみたいと思っております。  それは、一つは、まさにただいま黒柳委員が御指摘になりましたように、役人をやめまして、そうして自分関係しているような公益法人の役職員になった者、これがいわゆる世間にいう天下りであろうかと思います。  それから、いま一つ私ども監察の結果明らかになりましたのは、公益法人の役職員に現役の公務員が兼務をいたしているという実態が明らかになったわけでございます。そして、私どもの行政監察の範囲と申しますのは、実は、逃げるわけではございませんが、公益法人自体がどのような活動をしているのかということを主体として監察を行なったような次第でございます。したがいまして、そこにどのような役人がどういう経緯でなったかというところまでは実は監察もいたしておりませんし、これはそれぞれの監督官庁においてのいわゆる人事管理に関連した問題でもございますので、私どもはその点までは深く入ってはおらないわけでございます。一応どういう者がその役員に就任しているかということは調べてはございまするが、それがいいか悪いかということは、これは別途人事管理の面からいろいろと検討をしていただきたいと、かように考えておるわけでございます。したがいまして、私どもはまず、監督をする官庁が監督される公益法人の中に入って、その現役の公務員が被監督の立場にある公益法人の役職員になっていることは、これは監督と被監督の立場からいって、行政の姿として正しいものであるとは考えられない、こういう観点から、今回の監察の結果といたしまして、特に現職公務員が監督をされるような立場にある公益法人の役職員になっておることは適当でないので 厳にこれは抑制すべきである、こういう勧告を関係省庁に申し入れをいたしたような次第でございます。
  226. 黒柳明

    ○黒柳明君 二点。一点は、さっき大臣おっしゃったように、天下りの問題——世間からきびしい批判があると納得している、認識している、そういう目でこれをやったのかやらないのか、もしやらないとすると、私前段で言ったように、非常に前向きの勧告であるが、公益法人の性格は改まらない。はたして、大臣おっしゃったように、この天下りというものを、ある程度主体にしても、あるいはサイドにしても、除いては、この公益法人は成り立たないのだ、この悪というものは天下りにあるのだ、相当のウエート、こういうことであったら、天下り問題について行管が全然タッチしなかったということは、これはどうなのか。  それからもう一つ、現職——これは確かに各省庁の人事権です。ところが、問題は現職じゃないわけです。これも問題ですよ、確かに。大多数は、やはりやめたあとです。これはどこがコントロールしますか。この際、結局行管でコントロールしなくちゃならないでしょう。人事院がコントロールできますか。この二点。
  227. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) 天下りにつきましては、確かに私ども、大臣も申されたように、いろいろと世間の批判の対象になっていることは、私どもも十分認識もいたしておりまして、これは何らかの形においてその批判にこたえるような姿になっていかなければならないという一般的な認識は十分に持っておるわけでございます。ただ、これはやめた役人がどこに行くかということは、必ずしも行政の範囲を越えたものでございます。しかも、公益法人という場合には、これはいわば、公益法人と申しましても、一つの私人と申しまするか、そういうものでございます。したがいまして、行政監察の範囲としてこれを取り上げるかどうかには、いまだ私どもは疑問を持っているような次第でございます。現職公務員が、自分の監督する企業、営利事業会社に就職するかどうかにつきましては、これは人事院が規則でもって制約をいたしております。それと同様なことがこの公益法人についても今後考えられなければならないかどうかということが、新しい問題として私は検討を要するのではないだろうか、かように考えているような次第でございます。
  228. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ新しい問題として検討するということは、若干の前向きかと思いますけれども、そうじゃなくて、もうすでにあらゆる角度から指摘されたその中心が、私に言わせれば、やはり天下りから始まったのです。すべて天下りから始まったのです。その天下りというものについて、いや私たちはそれにタッチする行政権がありませんよと言って、それで勧告をつくったとするならば、それこそこれは形式的なものである、こう私は言わざるを得ない。それじゃどこでこのいわゆる天下りを監督するのですか、監督するとこないじゃありませんか。だからこそ、行管で調べて、勧告するための材料をつくったのでしょう。その勧告するための材料というものは、公益法人をよくするためでしょう。よくするためということは、これはいろんなシステムがあります。ところが、その大きな原因は天下りの人事ということですよ。ところてん式に横すべりになっちゃう。それに伴って、再度指摘したように、補助金、助成金を持っていく。それがまあ、これから指摘をしますけれども、いろいろこれから批判をさらに受けるような使い方にもなっちゃう、こういうようなことですよ。それに対して、あるいはこの前のときは農林省のことで政策の名目みたいなものをつくったこともあったですね、薬事研究所みたいな、農薬研究所みたいな。そういうことは、すべて天下りから私に言わせれば発生しているのです、公益法人が指摘を受けている、きびしい批判を受けている根源は。その根源を除いて、そして帳簿、台帳をつくれ、あるいは経理経営を監督しろと言ったから、これは全然改まる方向に行かないというのが私の考えです。もしこの考えですれ違うなら、しようがない、私は二カ月かかって調べた全部の天下りの高級官僚の天下り先から給料まで各省全部あげます。それで反省の材料にしていただくよりほかないのではないか、こう思います。天下りを除いて、公益法人の前向きの改善なんかあるか、ここにある一つ一つのことが実行できるか、私はできない。だからこそ天下りという問題が批判を受けた、大臣がおっしゃったとおり。その問題を考えていない。考えたにしたっても、勧告の対象にしない、あるいは公表を差し控える何らかの理由がある。やましいか、やましくないか、理由がある。であるならば、はたしてこれが勧告のとおり前向きにいくか、いかないか、疑問だと思いますね。まあこの点でやっていたんじゃ私のほうはおかしい、皆さん方はいやそんなことはないと言う、すれ違いの答弁になるならば、私はここに矛盾、問題というものを、いままでの国会審議を踏まえて出して、さらにこれによって反省をしていただきたい。検討をしていただきたい。さらに、それで反省しない、検討する余地がなかったら、どんどん公益法人の問題はやはり国会一つの大きな論争の的にしていかなければならないのではなかろうか、残念ながらと、私はこう残念に思っておりますね。せっかくここまで勧告したのに、どうですか、いまの問題、これは並行線ですか。
  229. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) 御指摘の点は、まさに私どもも傾聴に値する御意見だと思うのでありますが、まず私どもは、そもそも公益法人というものが実態としてどういう姿にあるかというところから実は調査を始めたような次第でございます。その中に天下りの問題も一つ出てくるわけでございましょうが、とりあえず私どもは、まず公益法人がどういう姿で実際に運用されているのかどうか、このことから出発をしなければならない。かような意味におきまして、まず公益法人は具体的に活動しているのかどうか、活動しているとすれば、はたして設立の目的に沿ったような活動をしているのかどうか、あるいは、その公益法人を許可するにあたって、何らかの公益的な基準をもって全省庁がそのような統一された姿で公益法人を認めていってるのかどうか、さらには、そのような公益法人の経理の実態がはたして適正に行なわれているかどうか、特に国から補助金あるいは委託費等を受けて事業をやってる場合には、その経理は特に厳正に行なわれているのかどうか、こういったようなことを中心としてまず公益法人の実態を把握する、そこに私は姿勢を正していくもとがあるのではないだろうか、かように考えまして、そのような観点からしさいに監察を行ない、今回の勧告をいたしたような次第でございます。
  230. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、天下りということについて全然無視したわけじゃないと。まず端緒は、その実態というものを調べて、あるいはその次には天下りの実態というものを調べて、それに不合理があればメスを入れて改善するというかまえがあっての今回の勧告ですか。
  231. 岩動道行

    政府委員岩動道行君) 監察の結果、そのような事態も私どもある程度把握できましたので、これは勧告をするという段階ではございませんけれども、今後さらに検討はいたしたいと、かように考えておる次第であります。
  232. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ昨日公表しないですから、今日その内容について言えと言ったって無理だと思います。  そこで、大臣、ここに私、一覧をつくりました。二カ月かかりました。四千百九十四ですが、御存じのように。行管から資料をもらうだけで一カ月かかりました。その資料をいろんな角度から検討するだけで二ヵ月かかりました。それだけかかってつくったのが、わずかこれだけの一枚の紙。まあ公益法人に対して国民のいろんな批判がある。それを私は一生懸命やってこれだけの資料にまとめました。これに対して大臣が、まあうちのほうもつかんでいるからこれから何らかの手を打つと。だけれども、これだけのものをつくるにしてもたいへんな作業です。これをあくまでも私はここで指摘したい。どれだけ天下りが弊害になってきたか。これはいままで言いましたよ。持参金つき天下りとか、渡り鳥の天下りとか、あるいはアルバイトで本を出すとか、いろいろな問題を取り上げました。きょうは残念ながら、具体的な問題まで時間の関係で入れません。そこで、総括的に四庁十二省にわたってどういう天下りの実態かということを、四千百九十四、これを調べました、二カ月かかって。それについて大臣、ひとつお聞きいただきたい。  まず、ちょっと十分ぐらい時間かかるかと思います。これはもう昨日御発表のように、公益法人四千百九十四。それから休眠が三百三十二。天下り法人は六百四十です。それから天下り役員、これは有給の役員ですよ、それが千二十七名。それから補助金ないし委託金、助成金をもらってるの、要するに国家から補助を受けている、八百五十九。こういう総括的な実態。  各省庁別にしますと、外務の天下り法人数が二十九、法務二十一、大蔵三十四、文部五十三、厚生三十、農林百三十、通産百二十四、運輸九十八、郵政三十六、労働三十七、建設二十、自治八、経企が四、科学技術が八、警察庁が六、総理府が二、計六百四十。  天下りの有給の役員ですね、それが、外務五十四、法務二十九、大蔵七十六、文部百四十四、厚生七十八、農林三百五十二、通産三百九十八、運輸が二百六十五、郵政九十四、労働が八十、建設四十一、自治二十三、経企六、科学技術庁十七、警察庁十五、総理府三、計千六百七十五。すみません、これは有給、無給を含めてです。そのうちの有給が千二十七。数字を省きます。  それで大臣、問題なのは、その人たちが取ってる給料。いいですか、一番高いのが六十八万、総理大臣以上ですよ。六十万が大蔵で二人。五十万から五十九万が大蔵で二人。四十万から四十九万が大蔵四人、運輸四人、計八人ですね。三十万から三十九万が外務一人、大蔵四人、厚生五人、農林五人、通産十五人、運輸十人、郵政三人、門建設三人、自治一人、経企三人、科学技術一人、警察庁一人、計五十九人等々。以下、二十万から二十九万が三百四人。十万から十九万が四百一人。十万以下が二百五十一人。計有給が一千二十七名。  さらに、そういう高額所得者はだれか。いわゆる前役人であったときの最後の給与、それをそのまま平行移動しちゃうような考えです。だから高い給与になっちゃうのです。一番高い人、これは一ぱいありますけれども、一番が櫛田光男さんです。元大蔵理財局長日本不動産研究所、六十八万です。それから二番目、元大蔵省の管財局長窪谷直光さん、行ったところは証券投資信託協会、六十五万。たいへんな金でしょう。局長の倍くらいじゃないですか、これは。それから三番目、古川汎慶さん、これは元大蔵省日銀政策委員、五十八万。行ったところは生命保険協会。六十万、五十万等々です。全部で三十万以上の方が七十名ぐらいいます。一覧で。  これは、いま言ったように、なぜこういう高額になるかというと、前の局長なり、事務次官なりの平行移動、その延長であり、給与ですよ。しかも、六十八万だ、六十五万、五十八万、五十一万、四十八万、四十万台ざら、三十万台ざら、こういう高額を取って、そしてこれがはたして妥当であるのか。これからまたさらに批判を受けたその上塗りの結果になるのではないだろうか、こういうことを放置しておくと。これはただ一つの面ですよ。給料の面だけとっただけですよ。前の局長なり次官だったときをそのまま延長するからこういう考えになっちゃうんですよ。十万、二十万、まあそれが妥当だという人もいるでしょう。しかしながら、こういう高額が妥当なんていうことは、これはもう絶対言えない、こういうこともあります。   〔理事和田静夫退席委員長着席〕  さらには、天下り、そして補助金、委託金を持っていく例、補助金、委託金、事業費のアンバランスの件、収入に比較しての人件費が多いもの、人件費と事業費がアンバランスなもの等々、相当いろいろあります。これは一覧にしております。まあここで言ったところでしようがないと思います。何らかのまた御参考にしていただければと思いますけれども、人件費と事業費のアンバランス、いわゆる天下りということは人件費に食われる、こういうことも前に指摘した。まあ生命保険協会、古川さんいらっしゃるところは、九千九百万の事業費で人件費が一億二千万。あるいは全国社会保険協会連合会、館林さん、厚生省の環境衛生局長だった人が行っているところ、これは事業費が七百万、人件費が八千百万、こういう例なんです。あまりにもそれはアンバランスだ。収入と人件費の問題、あるいは補助金問題——日本離島センター、七百六十万円補助金があって、事業費はたったの百八十万しかやっていない。これは一年だけじゃないですよ。なぜそんなら毎年こんな補助金を出すのか、これは問題です。あまりにもアンバランスである。こういうようなこともわずかですよ、全部調べたらとても時間がかかってたいへんです。そういうようなことをたんねんに調べてみた。なかんずく問題は、こんなに多くの天下り、こんなに高給、高額所得者、これが天下っている。このことが、先ほどから言っていますように、いままでの公益法人に対する批判、大きな元凶だったわけです。これを改めずしてはたしてこの勧告が生きるかどうか、非常に心配だ。まあ時間も少なく、要点だけと言って時間がたっちゃって、申しわけありまんん。  最後大臣、私のいま言ったつたないまとめ、それについて、大臣一言、どのようにお感じになるか、一言だけお述べをいただきたいと思います。
  233. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 私は、今回行政管理庁でやりました監察の結論を聞きまして、やはり先ほど政務次官が言いましたように、いろいろ項目で説明を聞き、そして各省に勧告いたしましたのであります。やはり私が受けました気持ちの中には、いま黒柳委員が言われるような、やはり強い一つの世間の批判をあらわしたような意見というものが、私の感じの中にかなり強く響いたのであります。しかし、第一——第一と言いましては語弊がありますが、抽出的に監察をした結果等を聞きまして、いろいろの観点から四項目ぐらいあげて監察したようでありますが、やはりその人事の面に対する一つの監察というものは、先ほど政務次官も言いましたようなこともあるいはあるかもしれませんけれども、私は、公益法人に対しての監察の中には、それもやはりやっていかなければならぬ一つの課題であると思っております。それで、今回の結論の中には、抽出的にやりました関係で、黒柳委員が、昨年五月ですか、総理に質問をなさってからこれが出発したようでありますが、そのときのいきさつを私はよく承知いたしておりませんけれども、ただいま黒柳委員が指摘をなさったような、やはり基本的な考え方に立って私は監察を慫慂なさったと思うのでございます。今後私は、この問題は、やはり私のほうの監察の中では、関係省庁にも十分注意をしておると思いますが、いまの人事の問題にある程度のメスを入れなければ、やはり公益法人というもののあり方が正常化されるとは私も正直考えない。それで、担当大臣といたしましては、今回の監察をもってやはり万全であるとは考えない。まあ時間的にもかなり急ぎました関係で抽出的な監察をやりましたので、そういう点が私は必ずしも十分であったと思いませんし、さらにやはり引き抜いて監察いたしました関係で、発表にも多少事務当局としてはちゅうちょした面もあると思いますが、しかし私は、やはり今後黒柳委員の指摘をなさった焦点にひとつ考えをいたしまして監察をさらに続けていって、今日世評の的になっておるような悪い点を公益法人等から除くようにいたしたいと思います。御指摘になりましたように、これは私も詳細に調べたわけではございませんが、やはり公益法人に横すべりするときの人事の給与体系等には私は問題があると思います、率直に申しますが。そういう点について何らかの規制の手を考えないと、いまの立場から言えば、先ほど政務次官が言われたように、あるいは直接の職分ではないかもしれませんけれども、権限はないかもしれませんけれども、私はやはり、権限のあるなしにかかわらず、一つのきびしい世論にこたえる役割りを果たすのが行政管理庁の職責である、かように考えておりますので、今後は黒柳委員の指摘なさったような点につきましても検討を加えてまいりたい、かように考えます。
  234. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十五分散会