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1971-12-20 第67回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会、内閣委員会、法務委員会、文教委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月二十日(月曜日)    午後二時十七分開会     —————————————   委員氏名     沖繩及び北方問題に関する特別委員     委員長         長谷川 仁君     理 事         鬼丸 勝之君     理 事         楠  正俊君     理 事         剱木 亨弘君     理 事         丸茂 重貞君     理 事         松井  誠君     理 事         森中 守義君     理 事         矢追 秀彦君     理 事         高山 恒雄君     理 事         岩間 正男君                 稲嶺 一郎君                 今泉 正二君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 片山 正英君                 亀井 善彰君                 古賀雷四郎君                 柴立 芳文君                 鈴木 省吾君                 園田 清充君                 竹内 藤男君                 西村 尚治君                 初村瀧一郎君                 宮崎 正雄君                 山内 一郎君                 若林 正武君                 占部 秀男君                 大橋 和孝君                 川村 清一君                 田中寿美子君                 田中  一君                 宮之原貞光君                 村田 秀三君                 森  勝治君                 上林繁次郎君                 原田  立君                 藤原 房雄君                 栗林 卓司君                 渡辺  武君                 喜屋武眞榮君    内閣委員     委員長         柳田桃太郎君     理 事         町村 金五君     理 事         安田 隆明君     理 事         上田  哲君     理 事         水口 宏三君                 源田  実君                 黒住 忠行君                 世耕 政隆君                 田口長治郎君                 土屋 義彦君                 長屋  茂君                 細川 護煕君                 山本茂一郎君                 足鹿  覺君                 矢山 有作君                 山崎  昇君                 塩出 啓典君                 峯山 昭範君                 中村 利次君                 河田 賢治君    法務委員     委員長         阿部 憲一君     理 事         後藤 義隆君     理 事         原 文兵衛君     理 事         佐野 芳雄君     理 事         白木義一郎君                 岩本 政一君                 木島 義夫君                 重宗 雄三君                 林田悠紀夫君                 平井 太郎君                 平泉  渉君                 星野 重次君                 吉武 恵市君                 秋山 長造君                 佐々木静子君                 野々山一三君                 藤原 道子君                 中沢伊登子君                 野坂 参三君                 河野 謙三君    文教委員     委員長         大松 博文君     理 事         久保田藤麿君     理 事         楠  正俊君     理 事         鈴木  力君     理 事         安永 英雄君                 金井 元彦君                 志村 愛子君                 高橋文五郎君                 内藤誉三郎君                 永野 鎮雄君                 濱田 幸雄君                 二木 謙吾君                 宮崎 正雄君                 片岡 勝治君                 鈴木美枝子君                 宮之原貞光君                 内田 善利君                 矢追 秀彦君                 萩原幽香子君                 加藤  進君     —————————————   出席者は左のとおり。    沖繩及び北方問題に関する特別委員会     委員長         長谷川 仁君     理 事                 鬼丸 勝之君                 楠  正俊君                 剱木 亨弘君                 丸茂 重貞君                 松井  誠君                 森中 守義君                 矢追 秀彦君                 高山 恒雄君                 岩間 正雄君     委 員                 今泉 正二君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 片山 正英君                 亀井 善彰君                 古賀雷四郎君                 柴立 芳文君                 鈴木 省吾君                 園田 清充君                 竹内 藤男君                 西村 尚治君                 初村瀧一郎君                 宮崎 正雄君                 山内 一郎君                 若林 正武君                 占部 秀男君                 大橋 和孝君                 川村 清一君                 田中寿美子君                 田中  一君                 宮之原貞光君                 村田 秀三君                 森  勝治君                 上林繁次郎君                 原田  立君                 栗林 卓司君                 渡辺  武君                 喜屋武眞榮君    内閣委員会     委員長         柳田桃太郎君     理 事                 町村 金五君                 安田 隆明君                 上田  哲君                 水口 宏三君     委 員                 源田  実君                 黒住 忠行君                 世耕 政隆君                 長屋  茂君                 細川 護煕君                 山本茂一郎君                 塩出 啓典君                 峯山 昭範君                 中村 利次君                 河田 賢治君    法務委員会     委員長         阿部 憲一君     理 事                 後藤 義隆君                 原 文兵衛君                 白木義一郎君     委 員                 林田悠紀夫君                 星野 重次君                 吉武 恵市君                 秋山 長造君                 佐々木静子君                 藤原 道子君                 中沢伊登子君    文教委員会     委員長         大松 博文君     理 事                 久保田藤麿君                 鈴木  力君                 安永 英雄君     委 員                 志村 愛子君                 高橋文五郎君                 濱田 幸雄君                 片岡 勝治君                 萩原幽香子君                 加藤  進君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        大蔵大臣臨時代        理        田中 角榮君        文 部 大 臣  高見 三郎君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        郵 政 大 臣  廣瀬 正雄君        建 設 大 臣  西村 英一君        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  木内 四郎君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局沖繩        法制参事官    系  光家君        内閣法制局第二        部長       林  信一君        人事院事務総局        管理局長     茨木  広君        総理府総務副長        官        砂田 重民君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁人事教育        局長       江藤 淳雄君        防衛施設庁長官  島田  豊君        防衛施設庁総務        部調停官     銅崎 富司君        科学技術庁原子        力局長      成田 壽治君        環境庁自然保護        局長       首尾木 一君        環境庁大気保全        局長       山形 操六君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        沖繩北方対策        庁長官      岡部 秀一君        沖繩北方対策        庁総務部長    岡田 純夫君        沖繩北方対策        庁調整部長    田辺 博通君        法務大臣官房司        法法制調査部長  貞家 克巳君        法務省民事局長  川島 一郎君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        法務省入国管理        局長       吉田 健三君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省条約局長  井川 克一君        大蔵大臣官房審        議官       前田多良夫君        大蔵省理財局次        長        小幡 琢也君        文部大臣官房審        議官       奥田 真丈君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文部省大学学術        局審議官     安養寺重夫君        文部省社会教育        局長       今村 武俊君        文部省管理局長  安嶋  彌君        文化庁長官    今 日出海君        文化庁次長    安達 健二君        厚生省公衆衛生        局長       滝沢  正君        厚生省医務局長  松尾 正雄君        厚生省社会局長  加藤 威二君        厚生省児童家庭        局長       松下 廉蔵君        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君        郵政大臣官房長  森田 行正君        郵政大臣官房電        気通信監理官   柏木 輝彦君        郵政大臣官房電        気通信監理官   牧野 康夫君        郵政省電波監理        局長       藤木  栄君        建設省計画局長  高橋 弘篤君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   長井  澄君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君        常任委員会専門        員        二見 次夫君        常任委員会専門        員        渡辺  猛君     —————————————   本日の会議に付した案件沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○沖繩振興開発特別措置法案内閣提出衆議院  送付) ○沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○国家公務員法第十三条第五項および地方自治法  第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の  地方事務所設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出衆議院送付) ○沖繩平和開発基本法案衆議院送付予備審  査) ○沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  (衆議院送付予備審査)     —————————————   〔沖繩及び北方問題に関する特別委員長谷川仁委員長席に着く〕
  2. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会内閣委員会法務委員会文教委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が連合審査会会議を主宰いたします。  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、沖繩平和開発基本法案及び沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  以上の各案件を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。上田哲君。
  3. 上田哲

    上田哲君 昨日、たいへん大幅な円の切り上げが行なわれました。この問題は非常に波及するところが大きいと思われます。この点について政府見解をただしたいと思いますが、政府側には大蔵大臣がまだお帰りになっておられないなど、いろいろな御事情もあるようでもありますし、私どものほうの方針として、そうした体制が整備されたところであらためて連合審査などの形をもって見解をただすことになりましたので、本日はあえてこれを後に保留をいたします。  私は主として防衛問題に関連して沖繩の問題をお尋ねいたしたいと思います。やはり中心になるのは核の問題であります。この核の問題は、しょせん今日までの政府側姿勢からすれば水かけ論になる懸念があります。国民が大きく不安と疑念を持っているのは、日本政府姿勢アメリカ側の言うところをそのままうのみにしてわれわれに提示するのみであって、アメリカ側に対して核抜きということを、その具体的な保障を求める方法を含めて、強く主張し切っていないのではないか、こういう基本姿勢の問題があります。総理はこうした疑念に対して、基本姿勢の心がまえの問題ですが、核抜きについて、そしてそれを含む日本平和保障の問題について、いわゆる防衛問題について、アメリカ側に対してきびしく日本側の主張を貫き通されるかどうか、まずそこを伺っておきたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもうたびたび私ども政府所信は表明した、さらに政府所信だけではだめだ、こういうことで、過日は衆議院でもはっきり決議されまして、非核三原則並びに核の持ち込みについての決議をされました。その際に、政府は厳粛にかねての所信を表明したはずでございます。以上、政府の考え方には毛頭変わりはございません。ただいまは米国に対して、さような点を明確にしておらないのじゃないか、こういうような疑念を抱いてのお尋ねかと思いますが、ただいまのところ、私ども返還協定にあたりましても、またそれ以前の、ニクソン以前のジョンソン大統領の際にも、日本は核を持たない、また、つくらず、持たず、持ち込みも許さない、このことをはっきりいたしておりまして、これが安全保障条約一つのよりどころにもなっておる。この点は御承知のことだと思っております。日本が核を持たないのも、また日本自身が軍備を持たないのも、ただいまのような平和国家としてスタートしておる、そういう立場からはっきり、われわれは自衛隊は持っておりますけれども、いわゆる軍というものを持たない。さらにまたその装備におきましても、平和的な局地防衛には当たりますけれども、これは通常兵器による局地防衛、こういうことでございますので、核などは持つ考えはございませんし、またその点はもう疑う余地のない政府方針でもあり、また衆議院の議決でもある、かように御了承いただきたいと思います。
  5. 上田哲

    上田哲君 防衛問題に関して、アメリカ日本側姿勢を十分に主張して貫き通す、こういう基本姿勢でありますから、具体的にひとつお伺いをいたします。これから先の核問題を占うためにも、これまでの核問題ということに対する姿勢の問題があると思います。ぐっとさかのぼりますけれども、われわれ日本国民核意識と申しましょうか、非核意識と申しましょうか、その原点は広島にあると思います。この広島に対する非核意識をどのようにきちんと主張し、守り通せるかというところに問題があると考えるのですが、ここに一つの例があります。これは広島原爆が落とされました直後に、アメリカ日本側専門家による調査団が一定の期間、ここで資料を収集いたしました。この資料がそのままアメリカに持ち帰られて、いまアメリカ陸軍病理研究所に保存されております。二百六十ポンドに及ぶ総量の資料でありますけれども、こういう資料があることを総理は御存じでありましょうか。
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の身うちにも実は被爆者でなくなったものがおりますし、また、私は総理として初めて広島原爆記念日にも出て、ことし参ったのでございます。そういうことで、この感じは非常に強くございます。また、ただいま言われますような共同調査したそういうことの資料も十分承知しております。
  7. 上田哲

    上田哲君 さきに同じような資料として、原爆フィルムと称するものがありまして、これはアメリカ側からわが国の文部省返還をされました。たいへん当然のこととはいいながら歓迎すべきものだと思います。同様に、この資料を完全に保存されているわけでありますから、ぜひこれを直ちに日本に返却をしてもらうということについて御努力をいただきたいと思いますが、いかがですか。
  8. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 原爆関係資料はこれは日本で保存する、また広島にもその一部はございます。ただ、いまのようなフィルムその他をあるいは公開というような話がありますと、私はあまりにも悲惨な状況ですから、それには私は反対でございます。その点は誤解のないように願っておきます。
  9. 上田哲

    上田哲君 ちょっと待ってください。公開かどうかの話ではないのでありまして、それを日本に返してもらうということが大事だと思います。念のために総理のお耳に入れておきましょう。これはアメリカ原子爆弾災害調査団、こういう名前でありまして、団長はファーレル代将、三十名でございまして、二十年の九月の八日に現地に参りまして調査をいたしました。さらに十月の十四日には再調査団という形で第二団が入りました。この場合にはアメリカ側責任者はオターソンという人でありまして、日本側責任者は東大でなくなりました都築正男さんでございました。この調査団によりまして収集された資料が、たとえば被爆者の衣料、白と黒のまだらのしま模様で黒の部分がよけいに焼けただれているとか、あるいは名刺が活字の部分がこげているとか、欄干の影が焼きついた写真だとか、あるいは病理標本等々が、実に点数で言うと数えきれませんが、これが現在アメリカ陸軍病理研究所に保存をされております。もっと正確に申し上げれば、登録番号は一五八九三〇というものでありまして、前もってこれは厚生省外務省当局に通知がしてあります。私はこの資料はことごとく犠牲者である日本国民の遺影でありますから、さき原爆映画とともどもに直ちに日本に返してもらう、こういうことが何より大切な非核の態度だと思います。公開かどうかという問題ではありません。事務当局の御答弁でなく総理からひとつ御見解を承ります。
  10. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまあげられましたそのものか、これはあるいは別か私存じませんけれども日本に一部返されております。これらについては厚生大臣からお答えいたします。
  11. 上田哲

    上田哲君 総理から返すように御努力なさいますか。
  12. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま一部返されておりますから、さらにそれが言われるものの全部であるかどうか、また類型のものを向こうで複写したものを持っておるのか、そういうことは私わかりませんから、厚生大臣から説明をいたさせます。
  13. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) ただいま御質問になりました米国病理学研究所剖検資料登録番号一五八九三〇、これが一九六九年にこの剖検資料はこちらのほうに返還をされまして、これにつきましては、御承知のABCCのダーリング所長等も非常に努力をいたしまして、再三交渉を重ねました結果、六九年にこちらに返還をされまして、ただいま広島大学医学部原爆医学標本センターに保管されておりますので、近く外務省と話をいたしまして、先般御質問があった模様でございますから、上田委員にお答えをいたすという手はずにただいまなっております。おくれておりまして申しわけございません。
  14. 上田哲

    上田哲君 それは違うのです。八月六日に総理広島に参られたときに、いま厚生大臣からお話のあったダーリング所長とお会いになりましたね。そのダーリング所長からそういう要請がありました。検討するというようなことで、まだ答えになっておりませんが、そのダーリング所長のところにこういう資料が届いておりません。届いているとすれば、きわめて一部が何らかの形できているんだと私は了解をいたしております。水かけ論にならないために、一部返っているのであれば、ぜひこれはもう日本人そのものの資料なんでありますから、ぜひ返してもらうように、総理から御意見を承ります。
  15. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) さらに再確認をいたしまして間違いのないようにいたしたいと存じます。もし一部であれば、あとの点のものも至急返還をしていただくように交渉を重ねます。
  16. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま厚生大臣からもお答えいたしましたが、私からもさらに厚生省を督励いたすつもりでございます。外務省の協力も得るように一そうこの問題は結末をつけるようにいたしたいと思います。
  17. 上田哲

    上田哲君 たいへんけっこうであります。サンクレメンテの会談でひとつこういうことも盛り込んでいただきたいと思いますが、核に関してはすべて大統領の専管事項となっておりますから、その声が一言かからぬと非常にむずかしいんでありますが、いかがでしょう。
  18. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) サンクレメンテでいろいろ話をすることになっておりますが、そのうちの一つにただいまのようなお話も入れておきます。
  19. 上田哲

    上田哲君 けっこうです。そこで、その問題に若干関連いたしますけれども、こういう話になりますもとは、広島と長崎にありますアメリカの施設であるABCCの問題です。これは先般私どもの委員会で質疑をしたのでありますが、政府側の答弁としては、二十五年以上これから先も継続すべきである、こういう見解が表明されております。実際にはしかし、いわゆるドル政策による差損を補償するために、今年度わずかな金がやっと追加計上されるというような、こういう段階でありまして、非常に従業員を含めて先行きに対して見通しを持っておりません。そこで、政府がこれを継続されるという方針があるんですから、それはそれとして、そもそも広島、長崎に落ちた原爆のあと始末というべきか、あるいはそれ以外の何らかの目的を有するものというべきか、こうした種類の施設が、たいへんはっきりしない目的のために二十五年も存続をするということは、やはり区切りの問題にならぬと思います。実は、これは先ほどお話を申し上げた被爆直後の調査団、これは日米合同の調査団のうち、日本側調査団はいかにもむざんだから手を引くと。アメリカ調査団が本国へ帰ってトルーマン大統領に上申をしまして、アメリカ原子力委員会がこれを認め、そして具体的な機関としては学士院学術会議をもって、この両者の間の契約に基づいてABCCが長崎、広島に設置されているわけです。たいへん複雑な形になっているんですが、このときの契約書によると——この契約書はAT−49−1−GEN−72号となっているんですが、この契約書の中には、本契約は一九四六年の原子力法に基づいて社会全般の防衛と安全のために取りきめられると、こうなっております。防衛というような形が、なおかつ原爆被災者のあと始末であるべき機関の目的として付与されておることは、非常に私どもは不穏当であると思います。この契約書は最近更新をされまして、AT(30−1)−72という契約書号になっております。これはこの中にどういうふうな目的が書いてあるかよくわかりません。公式にはわかりません。外務省当局にこのことを請求いたしますと、努力をするということになりまして、あとは手続の問題だと言われるのですが、私どものほうで非公式に入手した限りにおいては、はなはだその目的が不分明であります。かりに当初の契約書の中にあったように、防衛のために、つまり具体的に言えば、原爆を受けたらどういう被害が起きるか。したがって、この次の原爆を落とすときには、核投下をするときにはどうなるかなどというふうに理解をさるべき研究目的を有するようなものが日本国内に存置される。しかも二十五年もこれから継続されるということになっては一大事であります。当然、日本政府としてその点をアメリカ側に十分見きわめらるべきだと思います。その点の御判断と、もしそうであれば、こうした問題についてしっかりした措置をとられるように求めたいのでありますが、御見解を伺います。
  20. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 今後、さらに二十四年間継続をしたいという米国側の意向も、わがほうも同様でございまして、まだこれから、あるいは移転の問題その他の問題もあるかもしれないし、いまここで打ち切るということは好ましくない。さらに続けたい。しかし、その目的は広島、長崎で受けましたああいった事故に対する患者、それの及ぼす放射能の影響というものに限らるべきものでありまして、そうして、ただいまおっしゃいますように、今後、これから先の防衛のためにどう利用するかという点は、これは不穏当であろうと存じまするから、米側との交渉におきましても、外務省を通じまして御趣旨のようにやってまいりたい、かように考えております。
  21. 上田哲

    上田哲君 ということであるならば、アメリカ原子力委員会と学士院学術会議との間にかわされた新しい契約書の内容はきちんと読まるべきであります。また、それは国会に提出さるべきであります。今日まで再三の請求にもかかわらず出てこないということは私は納得をいたしません。可及的すみやかにその資料を提出されることと、その資料の内容について、前回の契約書におけるような表現が引き続き使われているような場合にははっきり押していただきたい。念のために申し上げれば、これは本来アメリカの機関であるにもかかわらず、たとえば四十六年度予算で日本厚生省の予算から、国立予防衛生研究所病理部への予算配賦という形はとっておりますけれども、六千万円が支出されております。その方向がはっきりしないで、その見解がはっきりしないものに、いかに国立予研の研究費目の中にあったんだからというトンネル操作があるにしても、こういうものをお出しになっていらっしゃるということは、日本の国費の使途としてははなはだ分明でないと思います。この辺をどのように御解釈になるか、これを踏まえてどのような処理をされるか。
  22. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) ただいまの協定書の問題は外務省とよく協議をいたしまし、私も直接確かめてみたいと、かように存じます。  なお、厚生省の予算に計上をいたしておりますのは、御承知のようにABCCと共同研究をしておりまする予防衛生研究所の支所の職員の人件費でございますので、その点は御了承いただきたいと存じます。
  23. 上田哲

    上田哲君 時間を節約するためにそのことをお尋ねしないつもりでありましたけれども、そういうことになれば、私はやっぱりもっとはっきりしていただかなければならぬと思います。人件費であれば、日本側ははっきりした目的を持たない外国の施設に金を出していいのかどうか、これはもう議論にならないと思います。問題は、非常に法理論的に、手続論的に詰めていけば、アメリカでは原子力委員会は公機関であります。学士院学術会議は民間機関であります。その民間機関の、俗にいえば下請である、出先機関である広島、長崎のABCCに、いかなる根拠に基づいて、たとえ人件費といえども協力という関係で金が出るという名目が立ちますか、どういう立場から日本の国費を使って協力をしていいということになりましたか。目的を明らかに説明することができず、しかも危険な、不安を持っている、しかも国会にすら明らかにできない、目的の上がっている協約に基づいての事業運営に一体金を出していいんですか、協力の根拠は、おそらくおっしゃるのは、二十七年十月二十三日のアメリカ大使館と当時の岡崎外務大臣との間にかわされた口上書だと思います。このくらいのことは調べてありますが、きょうこれは触れるつもりはなかった。この口上書では協力をしてくれと書いてありますが、この協力は、前後の文脈を見る限り、明らかにマテリアルは——材料ということばは使いたくないけれども、材料は被爆者なんですから、アメリカ人は日本人の協力を得なければABCCの作業ができない、だから協力をしてくれということでありまして、金銭上の協力をしてくれという項目は一項も一語もございません。  そこで、一体金を出すという協力関係はいつから出ましたか。私はこの問題じゃないところで議論をきょうしたいと思うんだけれども、そういうふうに言いのがれなさると、もっと追及しなければならなくなります。
  24. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 昭和二十三年に国立予防衛生研究所に対しまして共同研究の要請がございましたので、その共同研究という形で広島に支所を設けまして、そして職員を置いて共同して研究をしているということでございます。したがいまして、先ほど人件費と申しましたが、大部分は人件費でありますが、しかし、研究費も日本側の職員のやる研究費は計上いたしております。そして一緒に研究をするというたてまえをとっておるのでございます。
  25. 上田哲

    上田哲君 大間違いであります。どうしてそこまで質問をさせるのかわかりませんが、それは大間違いです。よろしいですか。あなたのおっしゃるのは、予研の病理研究所から人件費を若干出しているという話を広島まで拡大をされる。広島のABCCで働いている日本人は二百数十人おります。これはすべて日本国予算によって支出されている人件費ではなくて、本国アメリカから送達されるドルですよ。もっと言いましょうか。そのドルをどこでかえるかというと、ABCCの従業員は岩国まで行かなきゃならない。岩国基地まで行ってその中にあるエクスプレスからしか引き出せないんですよ。それから東京銀行へ行って金を持ってくるということになっている。二重手間、三重手間があるんです。冗談言っては困りますよ。広島、長崎のABCCの人件費などは日本国国費によってまかなわれておりませんよ。そんなばかげたことをここで言おうということになれば、もっと問題は幾らでも出ますよ。
  26. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 私はことばが足りなかったかも存じませんが、ABCCにいる日本人の人件費と申したのではございませんで、予防研究所の支所に所属している職員の費用ということでございまして、したがって、予研の広島の支所におります職員、それは日本で支弁をいたしている、日本の職員でありますから。しかしABCCにいる日本人、これはABCCの職員でありますから、これはABCCのほうの金で支払われておる。いまおっしゃるとおりでございます。
  27. 上田哲

    上田哲君 初歩的な誤りを訂正していては困るんですがね。だから、それならば国立予研の人件費を支出することはどうしてかまわないんですか。研究目的もはっきりしない、これをこれから調査しなければならないとおっしゃるあなたが、その人件費支出は協力ということでかまわないんだというのでは、話はぐるぐるそこで回ってしまうではありませんか。その点をしっかりお答えをいただきたい。これはこれ以上追及しようと思っているんじゃないんで、問題はそれてしまいますけれども、その点をしっかりお答えをいただいて、それを含めてきちっと調査をしていただきたい。そしてABCCというようなたいへんふしぎなものが今日まで残っている。それを日米両国が今後二十五年も続けよう、しかもドル政策で費用は向こうへ持っていこうとしている。そうすれば、全額日本の負担になるかもしれないということになる。簡単に協力体制などといっても、六千万円程度では話にならないんでありまして、いまはアメリカは年間四百万ドル出していますよ。アメリカが引き取ってしまって、日本がやるんだとなったら、四百万ドルを出しますか。こういう問題になってくるんだから、この辺はもう少しその場限りの御答弁ではなくて、きちっとした方針を出していただかなきゃならぬ。私は審議を進めたいと思うから、これ以上こまかいところに入りません。入らないで済むようにひとつきちっとお答え、方針を出していただきたいと思います。
  28. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 原爆による放射能の被害の調査ということは、これは学問的に考えましても、非常に必要なことだとわれわれも考えております。したがいまして、ここで打ち切らないで将来も続けていきたい。ところが、これを全部日本の費用でやってくれという話も一時ございました。しかしながら、もとはアメリカのつくった罪でありますから、その金ぐらい研究費はアメリカが出すべきであろうというてわれわれいままでおったわけでございます。そういう考え方のもとに研究は続けていくが、アメリカは贖罪の意味で金は出せ、しかし人はもうこちらにおれないというなら、その金で日本でかわってやる、こういう考え方でおるわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
  29. 上田哲

    上田哲君 ひとつその辺をしっかり整理して、アメリカの罪だから贖罪をしろということは、それで方針としてはけっこうでしょうが、結果的にはまたひとつ日本でやってくれということだけになってしまっては、これは話にならぬと思いますから、その辺はきちっとした方針を出して財政的な裏打ちの可否を結着をつけて御答弁をいただくことをお約束をいただきたい。  総理にお見せしておきますけれども、実は先ほどお話をした資料というのは——ちょっとこれはゼロックスをとってしまったのでよく見えませんが、これが向こうにある標本ですよ。こういう資料がございます。で、これはぜひひとつしっかり返還の交渉をしていただくようにお願いを申し上げるし、それから総理ひとつ——いまのABCC、いろいろ詰めていないところが多いわけですけれども、繰り返しませんが、しっかりした方針を立てて、次のしかるべき機会に御答弁をいただくということをお約束をいただきたいと思います。
  30. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 厚生省で十分検討させます。
  31. 上田哲

    上田哲君 総理は約束してくれませんか。
  32. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はただいま約束している。十分検討さすという、私が検討さすと言っているのですから、これは約束ですよ。
  33. 上田哲

    上田哲君 そういう約束だと思います。まあしかし、これは総理しっかりやってくださいよ。よく御存じない部分だろうから深追いはいたしません。私のきょうの本題はこの問題ではありません。  衆議院の審議以来、今日まで続いてまいりました沖繩問題について、私は、沖繩の軍事上の位置づけ、この問題を三点からひとつ見きわめてみたいと思います。  第一点は、アメリカの極東戦略との関係における側面、もう一点は、四次防との関係における側面、第三点は沖繩の自衛隊の任務の範囲に関する側面。これはひとつ総理及び新防衛庁長官にじっくりお話を伺いたいと思います。  そこで、まず伺いたいのは、ニクソン大統領の一連の訪中、訪ソ等の外交努力、このことによってアジア太平洋地域の緊張は雪解けの方向をたどっているのか、今日もなお軍事的警戒をゆるめ得ないような状態にあるのか、そのいずれかについてどうお考えですか。
  34. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 方向としては非常に好ましい、日本にとっても平和確保の上に喜ばしい事態が進みつつあると思います。ただ問題は、ほんとうにこれが極東の平和という形で国際情勢ということばで表現されるまでに定着するのにはまだしばらく様子を見なければわからない、定着までにはまだ期間がある、こう見通しております。
  35. 上田哲

    上田哲君 つまり、軍事的警戒をゆるめるような状態には達していないと、こういう見方ですね。——はい、けっこうです。まさにこれはアメリカ側の見方だと思います。アメリカはニクソンドクトリンによって海外から戦費と兵員を引き上げる、こういうことははっきりいたしておりますけれども、同時に、たとえば五月のアメリカの国防白書の中に明記されているように、トータル・フォース・コンセプト、全体戦略構想と訳しましょうか、そういう同盟国軍全体としてのトータルの軍事力は下げてはならぬということを明確に打ち出しております。私が先般会いました国務省のグリーン国務次官補も、目下中国の拡張主議に対して警戒をゆるめることは全くできないのだ、日本の軍事力を含む安全保障体制の確立こそ対中国政策として最も重要であるし、ニクソン訪中はそれ以上の効果を期待し得ない——私はこの耳で聞いてまいりました。ペンタゴンの安全保障局の高官の説明によっても、実はニクソンドクトリンとトータル・フォース・コンセプトが二本立てになっているのではなくて、トータル・フォース・コンセプトこそニクソンドクトリンの表現であると、こういう説明がなされております。私はこれは非常に明快だと思うんです。  もう一ぺんふえんしてお尋ねをいたしますが、アメリカの極東戦略は、目下のところ、対中国姿勢として軍事的警戒をゆるめるべき状態に立っているとは全く考えていない、こういうことでよろしいんですね。
  36. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 変化は顕著なものはないと思います。もちろん、これはペンタゴン筋の考え方でしょう。しかし、アメリカの国務省その他は、これはやはりだんだん雪解けの方向を実現していくという努力を重ねていくものと思っております。
  37. 上田哲

    上田哲君 だから、そういう考えが浅いんですよ。明らかに、二本立てではなくて、ニクソンドクトリンとトータル・フォース・コンセプトというのは一本のものなんである——国務省筋がそう言っているとおっしゃるが、国務省のだれが言っていますか。また、私が伺いたいのは、努力をしているかどうかの話ではない、現状において軍事的警戒体制を解除するに足るべき雪解けになっていると思っているかどうかということなんです。
  38. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは冒頭にお答えしたように、軍事的にはそういう事態には至っていない。定着までにはまだもう少し時間がかかると思っております。
  39. 上田哲

    上田哲君 そこで、重要なことは、全体としての戦力のレベルは下げてはならぬ、その中でアメリカが後退をすると、こういう構図になってまいります。さらに——その辺は単純な肩がわり論なんぞの議論を私はしようと思っているんではありません——そういうことになってくると、非常に象徴的な形というのは、今日までアメリカの対中国ガードをなしていた中国大陸に対する一番近い軍事的拠点であった台湾が、ニクソン訪中によって解除されるということのかわりに、縮めて言えば、台湾にかわって中国大陸に一番近いアメリカ外交の保障の堡塁が沖繩基地になると、こういう構図になってくると思いますが、いかがですか。
  40. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 私は必ずしもそういうことになるとは思っておりません。
  41. 上田哲

    上田哲君 具体的に伺えば、しからば沖繩の軍事基地は、返還後、久保・カーチス協定によって配備さるべき兵員を加えて、それまでのアメリカ軍の戦力と比べてプラスになりますか、マイナスになりますか。
  42. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) もちろんマイナス要因が出てくるという感じがいたしております。それから久保・カーチス協定によりまして——これは主権が日本に戻ってくるわけですから、われわれは局地防衛に出ていくわけです。当然これは現況よりはマイナスになると確信しております。
  43. 上田哲

    上田哲君 これは非常に特殊な御見解を承った。いいですか、長官、それで。具体的に申し上げれば、沖繩の米軍基地というのは、面積においても、八十八ですからほとんど変わりません。日本自衛隊がそこに行きます。ちょっぴり減りますよ、面積は。しかし兵員は決定的にふえますよ。にもかかわらず、沖繩全体のトータルではマイナスになるんですね。
  44. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは重要な点について、私、上田議員も御理解を願いたい。それは従来のアメリカが自由に使用できる沖繩の基地というそのあり方と、日米安全保障条約に基づいて規制せられる、しかも核抜き・本土並みというこの大きな現実を獲得したわれわれ日本の立場というものを考えれば、これははるかに縮小されるものと。だから、私は確信すると、こう申し上げたわけです。
  45. 上田哲

    上田哲君 これはたいへん注目すべき御発言だと私は理解をしておきます。  しからば、一つ聞いておきましょう。ウエストモーランド大将が、沖繩の軍事基地の維持、これを主張し続けています。ウエストモーランド氏の観測によれば、沖繩軍事基地は日本自衛隊六千八百を配備してもなおトータルとして下がることを認めているんですか。
  46. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) ウエストモーランドさんがどういう発言をしたか、私はあまり詳しくは存じませんが……。
  47. 上田哲

    上田哲君 それはだめですよ。
  48. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) いや、お聞きください。おおむね制服というものは、そういう軍事力ということについては非常に強い表現を用いたがるものなんです。それから私、ここでもしばしば答弁を申し上げておるのですが、このユニホームというものは基地を離したがらない。これは世界の軍隊の通有性だと思うのです。一たび獲得した基地はなかなか離さない。それを、ベトナム戦争が事実上停戦状況ではありますが、核抜き・本土並みと、ここまでアメリカ側でも説得することは、国務省としてはペンタゴンに対して相当骨が折れたのじゃないかと推測するわけです。そこで、こっちへ戻ってくれば、その段階でひとつわれわれはこの基地を縮小させていこう、こういうことをしばしばお約束しておるようなわけであります。
  49. 上田哲

    上田哲君 そんなことはちっとも聞いてないです。ウエストモーランドがどう言ったか、こう言ったかなんというのは御勉強なすっていなければ話にならぬ。非公式なところで新聞記者会見をしたとか、だれかに話をしたのじゃない。アメリカ上院外交委員会ではっきり証言したことが防衛庁長官わからぬじゃ、いかに新任早々であられても、これは答弁になりませんよ。しかし、それはそれとして、そんなことを聞いているんではない。制服はどっち側を向いて希望しているからの話じゃない。制服は専門家だから軍事力が上か下かということは見るでしょう。ウエストモーランドは、日本の防衛庁長官のことばのように、自衛隊配備を完了しても、なお、沖繩の軍事的価値は下がる、軍事力は下がるということを了解していると解していいかというのです。
  50. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) だから、ウエストモーランドは、そういう見解を示したか……。
  51. 上田哲

    上田哲君 ペンタゴンにしましょう。
  52. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) だから、それは私は十分調査もしますし、いま、防衛局長に聞いて、低下はしないという証言をしたもののようでありますが、しかし、現実には核抜き・本土並み、これはもう明らかな低下でありまして、アメリカ側としては、たとえばベトナムに直接爆撃行を行なおうということも、いままでは自由にやっておりましたが、これからは、やはり極東の範囲外ですから事前協議の対象になるし、これはずいぶん手間ひまのかかる形になってきたと思います。そして、またわが国の平和にとってそれがそこなわれるということになれば、当然、われわれはノーと言うこともあるわけですから、低下したと、こういうふうにわれわれは理解しております。
  53. 上田哲

    上田哲君 ひとつ、長官にお願いしたいが、データでお願いをしたい。解釈論の文学的表現はなるべくやめていただきまして、時間がありませんから。  そうすると、おかしなことになりますよ。私は、こういう議論はちょっとここではやめますけれども、おかしな議論になりますよ。兵員はふえているのですよ。兵員はふえているんだが全体が下がったということは、あなたの論理によれば核が抜けた分だけ下がったんだと、こういうことでいいんですか。
  54. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 核もなくなったし、同時にまた日米安全保障条約のいろいろな制約を受けると、このことをさしているのです。
  55. 上田哲

    上田哲君 少なくとも、事前協議その他について制約を受けないという理解に立つわけですから、そこのところは算術がたいへん狂ってきます。しかし、これ以上は無理でしょうから、低下をするんだという御見解であったことをたいへん奇妙に受け取って今後の議論を進めます。  四次防との関係に移りますが、久保・カーチス協定による沖繩配備というのは、当然、四次防の範囲ですね。念のためこれを確認しておきましょう。
  56. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) そういうことになります。ただ、問題は、とりあえず配備をする件につきましては、現在の兵員の中で流用してでも空白を置かないで配置をすることはできると、こういうことであります。しかし、終局的には御指摘のとおりです。
  57. 上田哲

    上田哲君 四次防は、米軍との軍事協力体制の中で策定をされ、実施をされるということですね。おわかりになりませんか。おわかりにならなければ前の前の大臣が出された「新防衛力整備計画」(原案)があります。ここに書いてありますからこれはだいじょうぶです。米軍との軍事協力体制の中で策定し、実施されることになります。そうすると、配備されたとして、沖繩の自衛隊と沖繩米軍との協力関係というのはアプリオリに存在しているわけですね。
  58. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) アメリカとの協力体制といきなりおっしゃいまするが、これは日米安全保障条約のもとにおけるアメリカとの協力体制と、こういうふうに御理解を願いたいのです。沖繩については防衛の任務を分担するわけであります。
  59. 上田哲

    上田哲君 けっこうです。その限りでという中で話を進めます。その限りの中で、四次防は明らかに日米軍事協力関係の中にある。安保体制のもとでとおっしゃる、それでいいです。その中にありますね。したがって、沖繩における米軍と自衛隊の協力関係というのはアプリオリにあるわけですね。そういうことになると、ひとつお伺いをしたいのは、沖繩の米軍基地が存在をしなかったら、これだけ大量な久保・カーチス協定に基づく自衛隊配備は行ないますか。
  60. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これまた多少見解が違うわけですが、私ども沖繩の配備を過大だとは思っておりません。
  61. 上田哲

    上田哲君 そんなことは聞いてないですよ。大きいとも小さいとも言ってない。アメリカの軍事基地が存在しなくても、久保・カーチスに基づく自衛隊配備はしますかと聞いている。見解もくそもないです。
  62. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) もちろんいたします。
  63. 上田哲

    上田哲君 いたしますね。
  64. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) はい。
  65. 上田哲

    上田哲君 そうすると、四次防がなくても、沖繩配備はあり得ますか。
  66. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 当然であります。
  67. 上田哲

    上田哲君 どうなりますか、そうすると。沖繩配備は四次防の中だとおっしゃったでしょう。四次防がなくても、沖繩配備ができるというのは、どういう論理になりますか。
  68. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) それは、私そう申し上げません。究極的には装備その他、四次防の中に含まれるが、とりあえず、空白を置くことはできませんから、主権が戻ってくる以上は現在の保有勢力において配置をいたしますと、こういうことをさっき申し上げたつもりです。
  69. 上田哲

    上田哲君 これは無理があるのですよ。四次防というのは、後に触れますけれども、たとえば、軍事配置の問題から言っても、あるいは経済的な負担率の問題から言っても、かなりな議論があるところです。にもかかわらず、四次防を急がれるというようなことになるのは、やはり沖繩配備というのがどうしても四次防の中にあり、その沖繩配備を遂行しなければ、沖繩協定というものがあがってこないと、これはもう総理が何べんか確認されているように、基地提供その他のことが、アメリカ上院の批准の前提になると、この関係なんですね。だから、四次防の強行ということがここで出てくるのではないか。たいへん論理的にはあっちへいったり、こっちへいったりなさるけれども、やっぱりそういうことにしかならないのではないか。はっきりひとつ御見解承っておきますが、沖繩の自衛隊配備ということのために、四次防があるのかないのかということを、そのつながりにおいてきちっとひとつ言っておいてください。
  70. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 私、明快にお答えしておるつもりでありますが、要するに、主権が戻ってくる以上は、四次防が延期されようと、四次防のあるなしにかかわらず、これは当然、現在準備いたしておりまするように、西部方面隊を中心にして配備しなければならぬ。これは局地防衛及び民生協力、いつも申し上げているとおりであります。ところが、この装備を充実していく過程において、それは当然四次防の中に、その装備等は含まれますと、こういうことを申し上げておるんです。
  71. 上田哲

    上田哲君 そこで、具体的にお伺いをする。沖繩配備を、四次防なり、沖繩返還協定とは関係がなく、局地防衛とおっしゃるでしょうが、局地防衛のために考えられるわけですね。とすると、目下は、アメリカ軍なり、沖繩協定との関係で、久保・カーチス協定というのがあるけれども、一体、独自にあるとするならば——いいですか、独自にあるとおっしゃるのだから。四次防の関連がなくても、あるいは沖繩アメリカ軍基地の関係がなくてもとおっしゃるわけだ。そうであれば、独自に考えた場合に、沖繩に配備すべき本来の自衛隊の総量はどれくらいだとお考えになっているのか。
  72. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 現在、防衛庁で計画をいたしておりますこの程度のものは必要であるというふうに考えております。
  73. 上田哲

    上田哲君 どこまでが十分か、まだ十分でないのかということです。
  74. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 施政権が戻ってまいりましてから六カ月以内に、兵員で申しまするならば三千二百名程度、とりあえず、まず、それを実現したい。そうして、あとの六千八百は、さっきから御指摘があるように、装備その他の問題も関連いたしまするので、四次防とにらみ合わせながら配備をしていく、こういうことになります。
  75. 上田哲

    上田哲君 そうすると、六千八百人に及ぶ久保・カーチスの範囲で大体いいという見解ですね。
  76. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) そうです。
  77. 上田哲

    上田哲君 そうなると、具体的に伺いましょう。アプリオリに存在している沖繩の米軍と自衛隊の協力関係、この協力関係の中で、それぞれ受け持つべき任務、分担はどういうものですか。
  78. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 防衛局長から。
  79. 上田哲

    上田哲君 防衛局長じゃだめですよ。そんなことはだめですよ。
  80. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 御承知のように、沖繩におりまする米軍の任務は二つあります。一つは、極東の安全と平和、もう一つは、沖繩の防衛、それぞれに寄与するということであります。ところで、自衛隊の任務は、その沖繩そのものの防衛に当たるということであります。自余のものは、アメリカが依然として残る、アメリカに残るわけであります。
  81. 上田哲

    上田哲君 防衛庁長官、それくらいのことは言わなくちゃ困るじゃないですか。
  82. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) いや、そうじゃなしに、補足をさせたわけです。
  83. 上田哲

    上田哲君 補足じゃない。何にも言わないで補足っていうのがありますか。補足っていうのは、何か言ってからですよ。それくらいのプリンシプルはわかってもらわなければ困る。もっと簡単にお答えになるのは、自衛隊は沖繩局地防衛の任務に当たりますと、あなたは、繰り返したことばを言えばいいんですよ。
  84. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) そうです。
  85. 上田哲

    上田哲君 そうでしょう。
  86. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) あなたが詳しく知りたいとおっしゃるから、防衛局長に……。
  87. 上田哲

    上田哲君 あんなのはちっとも詳しくないですよ。そんな議論は、まだ就任早々の方としっかりやろうとは思っておりません。あなたの範囲で、しかし、やっぱり政治家としての方向を見せていただかなきゃならない。  そこで伺います。あなたのところで受けとめられる議論にしぼっているんですから、ぜひ答えてくださいよ。局地防衛だというわけですね。局地防衛だとすれば、自衛隊が、さっきおっしゃった六千八百の久保・カーチスの範囲で大体充足していいんだとおっしゃっているから、十分な条件だ。その六千八百の自衛隊によってまかなう局地防衛というのは、これまでアメリカ軍が持っていた全体の任務の中の局地防衛をすべて引き継ぐのですか、残りがありますか。
  88. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 当然、沖繩県そのものにかかわる防衛範囲、これは肩がわりをするわけであります。
  89. 上田哲

    上田哲君 肩がわりするなんということばを使っていいんですか。われわれが使うことばですけれども、そこは武士の情けとして。局地防衛日本軍が、日本自衛隊が引き取るというわけでしょう。
  90. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) そうです。
  91. 上田哲

    上田哲君 アメリカ軍は、そうすると、局地防衛はなくなっちゃって裸になるんですか。
  92. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) それは、当然、事がある場合においては、その局地防衛に日米安全保障条約で協力体制に入ることはございます。  それから、肩がわりということばは、われわれのほうから言うとおかしいかもしれませんが、私、そうおかしくないと思うのは、要するに、主権が戻ってきたときに、日本自体の局地防衛の、これは堂々と肩がわりするということばを使っていいと思うんです。
  93. 上田哲

    上田哲君 これはしかし、いいんですか、肩がわりで。肩がわりって——自主防衛なり、国を守る気概というのは、これは何ですか。議論は全然もとへ戻りますよ。総理、肩がわりするということばでいいですか。また防衛庁長官をいろいろしなきゃならないんじゃないですか。
  94. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) いや、誤解があれば、何も取り消すにやぶさかでありませんが、要するに、施政権が日本にくるから、その分についてはわがほうが受け持つと。それをそう表現したわけですから、不穏当であれば取り消します。
  95. 上田哲

    上田哲君 こっちはかまいませんよ。総理、どうですか、肩がわりするというのは。
  96. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの防衛庁長官の答弁を聞いていると、別に上田君と考え方が違っているわけでもないようですから、いいようですよ。
  97. 森中守義

    森中守義君 いまのは問題だよ、ちょっと委員長、いまの問題だから休憩しなさいよ。
  98. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  99. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。
  100. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いずれ防衛庁長官からも話しますが、これは本来、施政権が日本に返ってくれば日本が当然防衛の任につくと、かように御理解をいただく。それを肩がわりとかいうような表現をしているのは、いままで米軍がその防衛の役も果たしている、同時に、先ほども言われたように、防衛の役と、もう一つは他の極東の安全、そういうところにもある、そういうことはございますが、私どもは極東の防衛そのものについては、先ほど言ったような、決して日本の自衛隊がかわり得ないものもありますから、それはちゃんと防衛庁長官も心得て先ほどのような返事をしたのでございます。
  101. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) やはり肩がわりということばが非常に誤解を生むようですから、これは取り消します。私の申し上げた意味は、いままで沖繩局地防衛にも当たっておったアメリカ、これが施政権が日本に戻ってくれば、われわれは日本の主権の及ぶ沖繩県として当然局地防衛に任ずるために自衛隊を配置しますと、こういうふうに言い直します。
  102. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 肩がわりということばがいろいろ誤解を受けるようですから、その点ははっきり取り消しておきます。
  103. 上田哲

    上田哲君 やっぱり肩がわりなんということばがちょろっと出て、そこまではいいんですけれども総理が追認をされるということになると、これは根本的な問題になると思いますので、議論をまた後に引き継ぎたいと思います。  そこで、そうしますと、肩がわりではない局地防衛をおやりになる。その局地防衛アメリカは裸になるのか、そこのところどうなんですか。
  104. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 裸になるという意味はちょっと受け取りにくいんですが、要するに、局地防衛についてはアメリカは責任を持たないのかと、こういう意味ですか。——それは事がある場合には日米安保障条約に関連してそれは協力体制に入ることもあろうと思いまするが、とりあえず、当然これは任務分担でありまするから、日本側としては局地の防衛は自衛隊で引き受ける、こういうことになると思います。
  105. 上田哲

    上田哲君 これはまたおかしいことになる。局地防衛日本自衛隊で、ところがアメリカ軍が日本局地防衛をやるんですか。これはおもしろいことですね。
  106. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) だから、もし事があったときにはこれは日米安全保障条約で協力体制に立つこともあると、こういうことを申し上げたので、平時は当然日本の自衛隊が責任を負うべきものと理解しております。
  107. 上田哲

    上田哲君 平時にも何かあるんですか。私は平時でないとき、戦時の問題を、紛争が起きたときのことを議論しているんだといままで自衛隊については思っていた。平時にも何かあるということになるんですか。
  108. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) どうも私のことばが足りなかったようでありますが、要するに、当然、自衛隊が局地防衛を引き受けるわけです。もし事があった場合は、これは日本の要請に基づいてアメリカが協力することもあり得る、こういうことを申し上げたわけです。
  109. 上田哲

    上田哲君 やっぱり訂正されたほうがいいですよ。合わせて一本になるのじゃないかと心配をしますが、それではアメリカ軍が現在持っておる施設から自衛隊の引き継ぐ、たとえばレーダーサイト四カ所、これは全部引き継ぐんです。ホーク四中隊、ナイキ三中隊全部引き継ぐんです。それじゃ局地防衛アメリカが出てくるというのは、具体的にどういう兵器機能で、戦術機能で日本局地防衛に参加するのか、明確にお考え願いたい。
  110. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 私はあくまで、にわかに不正の何か侵略があった場合ということを申したのでありまして、平時においては局地防衛アメリカが出る場面というものはこれはございません。
  111. 上田哲

    上田哲君 時間がどんどんなくなりますから深追いはしません。やっぱりもうちょっと御勉強の上御答弁願いたいと思うんですが、局地防衛ということでしょう、自衛隊は。その辺くらいは整理しておいてください、てにをはでもって追及はしません。しかし、問題は、局地防衛を完全に自衛隊にゆだねたあとのアメリカ軍は何だということが出てくるんです、そのことをひとつ説明してください。
  112. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 極東の安全に寄与するためにアメリカ側としては沖繩の基地を借りたいということを申し入れているわけです。これは日米安全保障条約に基づいて今後運営されるわけであります。
  113. 上田哲

    上田哲君 答弁になりませんな。  具体的に進みましょう。局地防衛日本自衛隊がやるんだ、そうすると、それ以外の戦略目的をアメリカ軍が果たすんだと、こういうことになるわけですね、わかりますか。そうなっているんですよ、ただいままでの御説明では。そうなると、一つ出てくる問題は、局地防衛という名前の日本自衛隊は——もうひとつ前から言いましょうか。局地防衛を完全に日本自衛隊が遂行し得ることになる、これは先ほど十分の条件は久保・カーチスのレベルだとおっしゃった。そのレベルで完全に日本自衛隊が局地防衛の任務を遂行するようになったとして、アメリカ軍は撤退することがありますか、ありませんか。
  114. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) やはり極東情勢の緩和によって将来撤退し得ることはありまするし、まただんだん基地を縮小していくことも必要だと思っております。
  115. 上田哲

    上田哲君 そうではありません。極東情勢にかかわらず、日本がその極東情勢の中で局地防衛ができるとなったときにアメリカ軍は撤退するんですか、しないんですか。
  116. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) アメリカの極東戦略といたしましては、御承知のとおり対韓、対比とか、防衛条約も持っております。そういう情勢下においてアメリカ側としての独自の動きもありましょうが、だんだん私は撤退していく方向をわれわれがつくっていかなければならぬ、そういうふうに理解しております。
  117. 上田哲

    上田哲君 重要なところですから伺いますが、あるんですか、ないんですか。撤退することが。そういう方向をつくっていくとおっしゃることは、撤退することになり得るということですね。
  118. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 私はあり得ると思っております。
  119. 上田哲

    上田哲君 たいへんこれはやっぱりいままでとは全く違う、非常に前向きのお答えが一ぱい出てくるので私は歓迎をいたします。それは大いにけっこうです。撤退することがあり得るということになれば、これでけっこうですよ。  もう一ぺんお伺いするけれども局地防衛を完遂することになってもアメリカ固有の戦略配備ということはあるのではないかと私は思っているんですが、それにもかかわらず撤退することはあり得るんですね。
  120. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 私はそういうことは言っちゃいないんで、要するに局地防衛、要するに日本の防衛が全うしても極東の情勢が緩和しなければ、なかなかそれは撤退をするということはないでしょう。しかし、将来、長期の展望に立てば、極東情勢の緩和とともに、もともとここに大きな基地があるということは日本としても決して望ましいことじゃありませんので、これはだんだん縮小もしてもらうし、撤退をしてもらう方向にいく、これはそういう見道しを私申し上げたわけでありまして、今後ともそういうつもりで対処していきたいと思っております。
  121. 上田哲

    上田哲君 撤退すべき極東情勢の緩和というのは、具体的に何ですか。
  122. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは複雑多岐にわたるわけでありまするが、中国大陸との雪解けであるとか、その他ベトナムの終息であるとか、戦い状況の終息であるとか、また韓国とのかね合い、いろいろ複雑多岐にわたると思います。
  123. 上田哲

    上田哲君 そういう情勢は、クリアーアップするような情勢は当分ないということですね。
  124. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) そういう情勢を、冒頭、議論がありましたように、だんだん穏やかな形に、平和な形に定着させていくことが日本の外交路線としては望ましい、こう思っております。
  125. 上田哲

    上田哲君 非常に分析もあいまいであってよくわかりませんが、私はこういうふうに理解したほうが現実的だと思います。防衛庁の説明されるところでは、自衛隊の沖繩配備は局地防衛の専任部隊だ、そして、当分アメリカは戦略目的のために駐留を続けるだろう、そうですね。——そうしますと、日本本土にある若干の米軍基地の機能も含めて、いままで政府が単純に言ってこられた通常兵力が日本だ、核のかさがアメリカだと、こういう形態ではなくて、核のかさを上に置いて、その下に主要兵力としてのアメリカの戦略部隊があって、そして局地防衛という名前でその補助任務に当たるべき自衛隊がある、ことばはいろいろ議論があるかもしれないが、少なくとも結論的に申し上げたいのは、そういう三本柱の戦略配備になる、こういうことでいいんですね。
  126. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) そういうふうには思っておりません。当然、日本の自衛隊というものは沖繩県に全責任を持つ、これが根本であります。
  127. 上田哲

    上田哲君 さっぱりよくわからぬです。たいへんわからぬです。  時間のせき立てがありましたから、少し結論的なところへどんどん急いでいきますけれども、結局、沖繩に最大限の自衛隊配備を行なっても、これはアメリカ軍の補助任務でしかない、アメリカ軍自身の防衛任務でしかないということに戦術判断としては極言される。そういうものとしてのアメリカ沖繩の戦略配備がある、しかも、本土では、去年の十二月の合同委員会の決定によって大量に軍事基地の撤退ということがなされたことになっています。ところが事実は非常に逆行しておりまして、たとえば、たった一つであるべきだった岩国のほかに、横須賀についていえば、第七艦隊が佐世保へ行くということになっていたのが取り消しになって半永久的な母港になった。SRFの返還が四十六年一月だったのが一年延期をされた。攻撃型サブロック潜水艦、あるいは駆逐艦を伴った、護衛艦を伴った空母がどんどん入ってきている、こういう形で横須賀はどんどん強化されています。厚木はどうかというと、二4(b)という適用範囲には入りましたけれども、EC121というのが居残っている。一機、二機ともあるいは数機ともいわれる実態が確認をされております。  こういう形で、いまや日本列島の戦略体系というのはアメリカの核のかさ、そしてアメリカの戦略配備、そして自衛隊の補助配備、こういう三本柱の形になっている、これが実態だと思います。そして特に沖繩返還ということによって、いままでの岩国や横須賀や厚木に、比べものにならないようなアメリカ軍の戦略配備のウエートが日本列島全体としては高まった三本柱になる。これがこれからの日米安全保障体制の具体的な展開だというふうに理解をするのですが、それで間違っていますか。
  128. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 上田委員、たいへん御勉強のようですが、しかし、私は一時期的にそういう部隊が来たり、あるいはときに増強されたというような感じがする場面がありましても、大きな流れとしてだんだん私は縮小をし、米軍は撤退していくもの、また、そうでなければわがほうが自主的に撤退を求めていく、これくらいの気持ちで今後の政策を展開したいと思います。
  129. 上田哲

    上田哲君 答弁が全く尽くしませんから総理に簡潔に伺います。  アメリカの核のかさ、そして日本の通常兵力の増強、こういう形だけではなくて、核のかさ、そして戦略配備としてのアメリカ軍、そして日本自衛隊、ここいう三本柱になっていく、こういうふうに理解するのが正確だと思いますが、いかがですか。
  130. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日米安全保障条約、これはおのずから限度がありますから、これに、やはり忠実に理解しないと、ただいま言われることがその中に入っているのだ、それとは矛盾しないのだと私は思いますけれども、何か表現がやや日米安全保障条約を拡大しているような気がいたします。われわれのいま言っていることは、何と申しましても本土の防衛、この主体は自衛隊がこれにつく、そして足らざるところは米軍の援助を受ける、これが核のかさであり、あるいは本土防衛においても米軍の協力がある、かように私ども考えております。そういう意味なら御指摘のとおりだ、かように申してもいいかと思います。
  131. 上田哲

    上田哲君 最後の質問にしぼりますが、そういう状況というのは総理もほぼお認めいただいたのだが、これは安保条約の拡大解釈でも逸脱でも何でもない、きわめて正確な事実認識でありますけれども、それでも私は安保の範囲内だと思っていますよ。しかし、そういう形に変わりつつあるじゃないか、戦略配備体系が。これは事実認識として正確だと思うのです。そういう形で沖繩の軍事的位置づけというものが強化されていくということになればはなはだ危険である。元来アメリカの平和外交のたてになるような形ではなくて、むしろ先立ちをしてそういう緊張を緩和していくものとならなければならないということには異論がないと思うのです。  そこで、時計を見ながらですけれども、そういう軍事的側面の上に、昨日の大幅な円切り上げということで生活不安が非常に語られている。社会資本の充実というような問題もある。こういうことの中で四次防というものが非常に無理をして強行されることになる。これもまたなお四次防が強行されるということになれば、これはまさに沖繩配備、沖繩返還協定の前提としての沖繩配備へしゃにむに四次防という形で包み込んでいく以外にはならぬと思うのです。  そこで伺いたいと思うのですけれども、一体、四次防をこのままで進められるのかどうか、私は四次防をこの際そういう観点からたな上げされることが正しいという主張を申し上げたいのであります。で、防衛庁長官から一言先に伺う。防衛庁長官は、十二月十日の三大臣の話し合いで、四次防が年度中にきまるということをきめられたということになっておるのですが、いろいろな反論なり慎重論もあった中で、長官はこれをとめると士気にかかわるということで突っぱねられたというふうにも承っております。その辺はいかがですか。
  132. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは自衛隊そのものがゼロから出発したものですから、でき得べくんば五カ年計画をここで断続することなく継続をさせたいという主張で、いろいろいま折衝に当たっておるわけであります。士気に影響する、なるほどそれも一つの理由かもしれませんが、それよりももっと、たとえば兵器の更新であるとか、世の中が豊かになれば隊舎の環境整備であるとか、いろいろこれは多岐にわたるわけでありまして、そういうことを考えて、防衛計画というものは、にわかに今度は経済的にゆとりができた、そこで多額の予算をつけたから、すぐそこにあるものを求めてくる、こういうていのものではありませんので、継続することが望ましいと、こういう姿勢で現在準備をしておるわけであります。
  133. 上田哲

    上田哲君 大蔵大臣代理にお尋ねをいたします。たいへん財政見通しもむずかしくなってくるおりから、四次防というような固定的な予算を先取りする形をいまきめることは非常に財政運営上、見通し上問題があろうかと思うのですが、いまこのままいきますと、五千億を削減するという防衛庁原案に立っても、今後のたとえば七%程度の成長率を見込むと、防衛費をGNPの中で〇・八%に押えているという御自慢の数字がくつがえって、新防衛費がGNPの一%を上回ります。科学振興費を含めた文教費も一・二%でありますから、そこらあたりに肩を並べるという形になってまいります。こういう中で今日急いで四次防をきめられるということは、財政当局としてははなはだ問題があると思うのですが、いかがでしょうか。
  134. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど御指摘がございましたように、年度中にきめたいという三大臣の申し合わせでございますので、三月まで慎重に検討してまいろうということでございます。
  135. 上田哲

    上田哲君 総理に最後にお尋ねをしたいのですが、三大臣の決定がなされたということになっておりますが、これは政府部内の成規な手続ではありません。話し合いがそこでまとまった、方向づけたということだと思います。この三大臣が、防衛関係予算大臣が年度内に四次防を発足させようじゃないかということをきめただけでも世論は大きくいま、たとえばここにたくさん持ってきておりますが、各新聞社の社説でもそれに対して非常に慎重な態度を求める声が上がっております。私ははなはだ好意的に考えてみて、総理はこういう手続をなおかつ慎重に成規の手続にのぼせられずに、世論へのアドバルーンとして三相決定というものを出してみたんじゃないかとも考えてみたくなる。いかに何でもこの形で進められるということは非常に無理があるんじゃないかと思うのですが、一体、総理はこの三大臣の決定というものを正規の決定としてお認めになって、いよいよ四次防を年度内に確定するという方針を御決定になっておられるのですか。そうではないのですか。明確にお答えをいただきます。
  136. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 三大臣でいろいろ相談したということは聞いております。しかし、まだ国防会議にかかったというわけのものでもございません。ところで、来年度予算はその問題とは切り離して進行し、編成されると、かように御了承いただいて、その来年度予算ができたときに、これが第四次防の第一年になるのかどうかというようなこともあとで判断する、こういうことじゃないかと、かように思っております。
  137. 上田哲

    上田哲君 はなはだ不分明であります。ここまできますと、残っているのは政府原案に対して国防会議、それから閣議という手順しかありません。すでに参事官会議というのが十二月初めに防衛関係関係省の参事官で集まってやっております。二千億円というのはすでに人件費で四十七年度に入っております。こういう形になっていて、これで総理見解がそんな程度では困るのです。国防会議にかかってとおっしゃるが、あなたは総理であると同時に国防会議議長でもあられる。これは背中とうしろでやっているわけにいかない。しかも十二月十四日の参議院の協特委における総理の御答弁は、来年度に四次防の発足ができればけっこうですが、私はただいまの状況ではややそこらの点においておくれておるのではないかと、かように思っておりますとおっしゃっている。士気にかかわることも重大だと防衛庁長官はおっしゃっているが、総理の態度がどちらかにはっきりせられぬと、三次防がきまった三月十二日段階のような妙な形になってくる。この際、サンクレメンテの会談もあることでありますから、総理は一体年度内にきめられるのか、それともこれはアドバルーンであってやめられるのか、そこをはっきりお答えをいただきたいと思います。
  138. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 年度内と申しますか、三月中にはきめると、こういうことでございます。しかし、予算編成はそれとは別に進行しなければならない、こういうことを申し上げております。
  139. 上田哲

    上田哲君 四次防はやるのですか。
  140. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 四次防は三月中にはきめる、こういうことでございますが、予算編成とは別でございます。
  141. 上田哲

    上田哲君 わかりました。それは明快でありますから、非常にその点については大いに議論をしなければなりませんが、入口のところで質問を保留しまして、本日は終わります。
  142. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  143. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。
  144. 森中守義

    森中守義君 議事進行。  閣僚にちょっとお願いですが、質問者のほうはちゃんと持ち時間がきまっているのですよ。そこで、先ほど来のああいういきさつなどがありまして必ずしも答弁が明快でない。ですから要領よく端的に正確に質疑に答えられるように御注意いただきたい。
  145. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  146. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。     —————————————
  147. 長谷川仁

  148. 後藤義隆

    後藤義隆君 お尋ねいたしますが、刑法の第三条は、日本国民の国外犯を、また刑法の第四条は、日本国公務員の国外犯の処罰の規定であって、原則として日本国民の国外犯を処罰しないことになっておるが、沖繩日本国外であるか、それとも日本国内であるか、これをお答え願いたい。
  149. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) お答えいたします。  ただいま御指摘の刑法第二条、第三条、第四条にございます日本国という点につきましては、沖繩日本国ではございません、外国と解しております。
  150. 後藤義隆

    後藤義隆君 お尋ねいたしますが、憲法の第十八条には、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る虚罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」と、こういうようなふうになっておりますが、憲法第十八条の「犯罪に因る虚罰」とは日本の処罰規定を指すものであって、外国の法律に違反して、外国において処罰されたものはこの憲法第十八条の処罰に当たらないものだと思っておりますが、沖繩刑法によって、沖繩裁判所において言い渡されたる判決の執行を日本の刑務所において執行することは憲法第十八条の違反ではないか、こういうようなふうに考えますが、その点はどういうふうになりますか。
  151. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 今回の協定におきまして、沖繩の刑事裁判権を引き継ぐこととなったわけでございます。その結果、沖繩復帰前に確定いたしました刑事裁判につきましても、復帰後、わが国においてその刑の執行をいたすわけでございます。その点と憲法との関係がいかがかという御指摘でございますけれども、この点につきまして、私どもは、今回の沖繩の刑事裁判権の引き継ぎにつきましては、憲法との関係におきましては、ちょうど現在の憲法が施行されましたときの施行前の旧憲法時代と同じ状態にあろうと思うのであります。いわば、今回沖繩に憲法の第二次施行があるというふうに解すべきものであろうと思うのであります。  ところで、現在の憲法が施行されましたときに、旧憲法下における法律及び法律に基づく裁判というものにつきましては、憲法第九十八条第一項によりまして、旧憲法下に制定されました法律は、その内容が憲法の条章に反しない限り新憲法のもとにおいても有効である、したがって、その法律によって言い渡された裁判も、新憲法下において執行することができるということで、現に執行をしてまいったわけでございます。そういう意味におきまして、今回の沖繩の刑事裁判を引き継ぐということも、やはり憲法との関係においては、旧憲法下の裁判を、憲法の条章に内容が反しない限りは執行できると、こういうふうに解して執行をすることにいたしておるわけでございます。
  152. 後藤義隆

    後藤義隆君 お尋ねいたしますが、沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案要綱の第二節、刑事関係、第一の罰則に関する経過措置によれば、「復帰の際沖繩に適用されていた刑罰に関する規定は、政令で定めるものを除き、復帰前の行為について、なおその効力を有す」と、こうなっておりまして、そこで問題になるのは、復帰前と復帰後と二個以上の犯罪を犯したときは、沖繩刑法と日本刑法と両方とも別々に適用されるのかどうか。復帰前には日本の裁判権の及ばなかった沖繩の裁判について、復帰後さかのぼって日本裁判所が裁判権を持つことは、不遡及の原則に反するものではないか、こういうように考えますが、その点はどうですか。
  153. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) ただいま御指摘のとおり、今回の特別措置法案第二十五条におきましては、復帰前の行為につきましては、沖繩に適用されていた刑罰に関する規定が、原則としてなお効力を有するという規定がございますが、これによりまして、復帰後、復帰前の犯罪につきまして、日本の裁判所が裁判をいたす場合には、その行為時の法律、すなわち、これは復帰前でございますから、沖繩に適用されていた法律、それを新たに、この二十五条によりまして、日本法律として復帰前の行為に適用するという趣旨でございます。  そこで、憲法の刑罰不遡及の原則につきましては、これは、行為のときに適法である行為を、さかのぼって、あとから違法なものとして処罰するというのが、この刑罰の不遡及の原則に反するということになるわけでございますが、本件の場合には、行為のときにはまさしく沖繩法律によって犯罪とされていたものでございます。それを今回、復帰に伴う協定と、この法律案によりまして、日本法律として適用するわけでございますから、憲法にいう刑罰不遡及の原則には反しないと考えておるわけでございます。
  154. 後藤義隆

    後藤義隆君 刑法第五十六条の累犯加重に関するものでありまするが、五年以内の前科とは、日本の刑罰法規をさすものであって、外国の処罰規定によって前科があるからといって、刑法第五十六条の累犯加重の適用はないものだと考えられるが、この点についてはどうか。  なお、続きまして、これに付加してお尋ねいたしますが、沖繩において刑の執行猶予の者が、復帰後その期間内に日本において有罪の判決を受けたときは、沖繩の執行猶予は取り消されるかどうか、この点もお伺いいたします。  またさらに、復帰後の日本の裁判所の判決が、復帰前の沖繩の裁判所の判決の効力に影響を及ぼすのは不当である、こういうようなふうに考えるが、その点について、どんなふうにお考えでしょうか。
  155. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 第一点の、刑法第五十六条の累犯に関する規定に関しまして、沖繩で犯した犯罪につきまして、その裁判といいますか、その刑が刑法の第五十六条の累犯の要件になるかどうかという点でございますが、これは、ならないわけでございます。その理由といたしましては、先ほども申し上げましたように、この復帰前の行為につきましては、特別措置法案二十五条によりまして、沖繩に適用されていた刑罰に関する規定が適用されるわけでございます。その場合には、沖繩の刑法とか刑罰法規の各則はもちろん、沖繩の刑法総則の適用もあるわけでございまして、したがいまして、復帰前の行為について、復帰後、裁判をいたして、裁判の結果きめられます刑は、日本の裁判所が言い渡すわけでございますが、内容は、沖繩の刑法総則にいう刑を言い渡すという関係になりまして、このわが刑法五十六条にいいます懲役云々というものとは違う、こういうわけで、累犯加重の要件にはならないというわけでございます。  それから第二点の、復帰前に沖繩で刑事裁判に処せられて、それに執行猶予がついている、その執行猶予中の人が、復帰後にまた犯罪を犯しまして、日本の今度は刑を受けたという場合に、前の執行猶予が取り消されるかどうかという点につきましては、この特別措置法案二十五条の二項にその旨の規定があるわけでございます。二十五条の二項は、「前項の規定によりなおその効力を有することとされる沖繩の刑法第二十六条各号、第二十六条ノ二第一号及び第三号並びに第二十九条第一項第一号から第三号までの規定に定める刑には、この法律の施行後の行為について科せられた刑を含むものとする。」ということで、施行後の行為について科せられた本土の刑が、逆に沖繩の執行猶予の取り消しの刑になるということが、この二十五条の二項に規定してあるわけでございます。
  156. 後藤義隆

    後藤義隆君 そこで、私は、いまの点に関連してお聞きしたいのは、復帰後に日本において裁判されたその判決の効力が、復帰前に沖繩において執行猶予をつけてあるその執行猶予を変更して取り消すということは不当ではないか、こういうように考えるのですが、その点はどうですか。
  157. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 今回の沖繩復帰に伴います刑事裁判権の承継という問題につきましての憲法的な考え方は、先ほども申したとおりでございます。したがいまして、復帰前に沖繩において言い渡されました刑の執行猶予について、その執行猶予の取り消しをする場合に、復帰後の日本の裁判というものを影響させますことは、いささかも憲法的には問題がないと考えるわけでございます。なお、実際の必要上これを認めませんと、復帰前の沖繩の執行猶予というものは復帰後は一切取り消されないということになりまして、沖繩の秩序維持という観点から、とうていこれは認めることができないことになろうと思うのでございます。
  158. 後藤義隆

    後藤義隆君 次にお尋ねいたしますが、刑法の第二十五条の刑の執行猶予の条件として、第一項第一号には、前に禁錮以上の刑に処せられたことのない者、また第一項の二号並びに第二項にはそれぞれ条件を記載いたしてありますが、この禁錮以上の刑に処せられた云々ということは、日本裁判所の罰則によったものであって、復帰前の沖繩裁判所によって処罰された者は、いわゆるこの処罰に該当しない、こういうように考えるのでありまするが、その点はどうか。  なお、それでは復帰前に沖繩において禁錮以上の刑に処せられた者に対しても、復帰後執行猶予の判決をつけることと解することは不当かどうかという点についてお尋ねいたします。  また、執行猶予の規定をよく調べてみると、執行猶予の条件として、日本の犯罪者予防更生法第三十三条の保護観察中に犯罪を犯したことのないことが執行猶予をつける条件になっておりますが、沖繩の犯罪予防更生法というのは一体どうなっておるのか、はたして日本法律と同じであるかどうか。また、現在沖繩において保護観察中の者が復帰後犯罪を起こした場合には、これに対して執行猶予を付することができるかどうか、その点についてお尋ねいたします。
  159. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 刑法二十五条にいいます「前二禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコトナキ者」、その他の禁個以上の刑というのは、日本の刑法総則にいう刑でございますから、復帰前に沖繩で言い渡されました刑はこれには当たらないということでございます。  それから、第二点は、犯罪者予防更生法との関係はどうなるのか、執行猶予中の者の保護観察はどうなるのかという点でございますが、この点につきましては、この特別措置法案第二十七条でございますけれども、二十七条に、「刑事訴訟法、少年法、監獄法、犯罪者予防更生法その他の政令で定める刑事に関する法律」云々は、「この法律の施行前に沖繩において生じた事項についても適用する。この場合において、この法律の施行の際沖繩に適用されていた刑事に関する法令の規定に関する事項で本土の刑事関係法令にその規定に相当する規定のあるものは、当該本土の刑事関係法令規定に関する事項と、沖繩の刑事関係法令規定によって生じた効力は、本土の刑事関係法令上の相当の効力とみなす。」と、こういう規定がございまして、この「政令で定める刑事に関する法律」の中に、執行猶予者保護観察法を当然指定することと予定をいたしております。そういたしますと、沖繩の執行猶予者保護観察法は、沖繩の執行猶予者につきましては、復帰後は日本の執行猶予者保護観察法が適用されまして、そして、復帰前に沖繩の執行猶予者保護観察法に基づいて生じました事項は、さかのぼって日本の執行猶予者保護観察法の規定に該当する事項とみなし、さらにそのすでに生じました法律効果も、新たに復帰後は日本の執行猶予者保護観察法によって生じた効力とみなすということで、この執行猶予の保護観察をそのまま引き継いでいくということを予定しておるわけでございます。
  160. 後藤義隆

    後藤義隆君 お尋ねいたしますが、日本の弁護士法第六条第一項一号には、禁錮以上の刑に処せられたる者は弁護士となることができない。欠格事項としてありますが、これはもちろん日本法律において処罰された者をいうのであって、沖繩でもってこれを処罰されもたのをさすものでないことはもちろんでありますが、この点について、沖繩において禁錮以上の刑に処せられたる者は、日本の内地において弁護士になることができるかできないか、この点を明らかにしていただきたい。
  161. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 先ほど来申し上げておりますように、沖繩復帰前に処せられました禁錮以上の刑につきましては、これは沖繩の刑法総則にいう刑でございますから、刑法の執行猶予の要件とか、あるいは累犯加重の要件に定められております刑でないことはもとより明らかでございます。そういう意味におきまして、刑法の執行猶予であるとか、累犯加重というような点につきましての要件には当たらないということで前科にならない、かように申しておるわけでございますが、他面、この他の刑罰の効果と申しますか、その点につきましては、必ずしも法務省の所管ではございませんが、この特別措置法案の五十三条三項におきまして、同様の事項については、これを各法律の観点におきして、政令によりまして一つの欠格条項を、沖繩の欠格条項を、復帰後、日本の欠格条項にするかどうかということは、それぞれ関係法規の観点において検討し、それは政令で定めるというふうにしてあるわけでございます。したがいまして、弁護士法の場合も同様、将来政令でその適用をするかどうかという点がきめられることになろうと思うわけでございます。
  162. 後藤義隆

    後藤義隆君 弁護士会のことでお尋ねいたしますが、沖繩には、内地にないところの外国弁護士の制度があるようでありますが、外国弁護士の制度を認めることは、これは日本弁護士会に加入するのであるか、全然加入せないのであるか。また、日本弁護士連合会のほうでもって、これを同意をしておるのかどうか、その点についてお尋ねいたします。
  163. 貞家克巳

    政府委員貞家克巳君) お尋ねの外国人弁護士の問題でございますが、御指摘のとおり、特別措置法案の六十五条におきまして、復帰後その地位を認めるということにいたしております。  これを日本弁護士連合会に加入させるかどうかという点につきましては、さらに細部を定めました最高裁判所規則、あるいは日本弁護士連合会の規則によってきめられることになるのでございますが、従来の、昭和三十年までこちらにございました外国人弁護士の例に徴しましても、おそらくこれを準会員として日本弁護士連合会に加入させるという方向にいくものであろうというふうに予想いたしておるわけでございます。  なお、この問題の取り扱いにつきましては、アメリカ側との話し合いの段階から、日本弁護士連合会と終始密接な連絡をいたしまして、具体的な方策の大綱につきまして、完全に同意を見た上で話し合いがまとまったという経緯でございます。
  164. 後藤義隆

    後藤義隆君 お尋ねいたしますが、今度は民事関係になりますが、商法の関係ですが、沖繩においては、会社が設立されまして、ドルでもっていままでこれを表示されておりますが、これが復帰されるとどんな方法をとるのか、その点について簡単に御説明願いたいと思います。
  165. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) お答えいたします。  沖繩には現在千二百余りの株式会社がございますが、これが、復帰と同時に、日本法律による株式会社になるわけであります。お尋ねのように、沖繩の株式会社は、現在、アメリカ合衆国のドルの通貨のもとで、その額面株式の金額もドルで定められております。沖繩の商法二百二条の規定によりますと、額面株式の金額は一ドルを下ることができない、こういう規定がございます。日本の商法では、五百円を下ることができない、こういう規定になっておりまして、沖繩の株式会社が日本の株式会社になりまして、そのドルを日本円に切りかえました場合、五百円以下の額面株式というものが出てくることになるわけでございます。この点につきましては、これは特別措置法百五十六条の規定に基づく委任の政令によりまして特に経過措置を設けまして、この場合には特に五百円未満の額面株式を発行することができると、このような経過措置を講ずることにしております。そのほか、株券の表示のところにドルの記載がございますが、これも日本円、そのドルに相当する日本円の金額で表示されたものとみなす、こういうような経過措置を講ずることを考えております。
  166. 後藤義隆

    後藤義隆君 ちょっと民事局長に、ついでにお尋ねいたしますが、沖繩においても、戸籍制度は日本の内地とたいして違わないと思いますが、それは一体どうなっておりましょうか、沖繩の戸籍制度。
  167. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 沖繩におきましては、戦災によりまして戸籍簿が全部なくなりまして、その後、臨時戸籍というものを使っておりましたけれども、これでは正規の戸籍に使えないということで、その後、昭和二十八年でございましたか、戸籍整備法というものをつくりまして、この法律に基づきまして戸籍の整備を行なったわけでございます。それが八、九年間、整備事業を行ないまして完成いたしまして、現在は一応完備した戸籍がつくられております。これは沖繩の戸籍でありますので、復帰と同時に、これを日本の戸籍とみなすと、こういう措置を講じたいと考えております。
  168. 後藤義隆

    後藤義隆君 復帰に伴って、あるいは恩赦が行なわれるんじゃないかというふうなことが取りざたされておるのでありまするが、その点について法務大臣のほうは、どういうふうなお考えを持っていらっしゃいましょうか、御説明を願います。
  169. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 率直に申しまして、ただいまのところ、全くの白紙でありまして、いろいろ世間の意見その他は関心を持って聞いておるところであります。
  170. 後藤義隆

    後藤義隆君 済みました。ありがとうございました。
  171. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記をちょっととめて。   〔速記中止〕
  172. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。     —————————————
  173. 長谷川仁

  174. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、私からお尋ねいたしますが、さきに協定委員会のほうで、若干、裁判の効力について法務大臣あるいは外務大臣に概括的にお尋ねさせていただいたんですが、本日は具体的な現実的な手続面について特にお伺いさしていただきたいと思います。  復帰前の琉球政府の裁判所あるいは米民政府の裁判所の確定判決について、これは民事関係について、公の秩序、善良の風俗に反しない限り、これが有効であるということを承認して、その効力を完全に存続させる旨を協定第五条に取りきめられておりますが、この確定判決が公序良俗に反するものである場合は、復帰後この再裁判の方法について、具体的な法的救済措置について具体的にお伺いいたしたいと思います。法務大臣に御答弁願います。
  175. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 手続でありまするから、民事局長からお答えいたします。
  176. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 民事に関する確定裁判が公序良俗に反するという場合には、これは特別措置法の十八条であったと思いますが、裁判としての効力を有しないということになりますので、それは当然に無効でありまして、何らの手続を経ることなくその効力は認められない、こういうことになります。
  177. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、公序良俗に反するという判断をする人はだれであるか。結局、何らの手続を経ることなく無効ということでございますが、これは主観的に当事者が公序良俗違反だから無効だという判断をしていたのでは、これは法的な安定が保てないと思いますが、これはだれが公序良俗違反であるという判断をするのか。その判断をしてもらうためには一定の手続が要ると思うのでありますが、その具体的な手続をお尋ねしているわけです。
  178. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 公序良俗に反するものはおそらくないであろうというふうに考えておりますが、おそらく、当事者間で争いがあれば、訴訟を起こして、それを裁判所が判定する、こういうことになるのじゃなかろうかと思います。
  179. 佐々木静子

    佐々木静子君 公序良俗に反するものがないであろうというのは、これは政府の一方的な見解であると私は思うわけでございます。また、具体的に訴訟を起こすと申しましても、これは、一番最初から判決の無効の確認訴訟を起こすのか、あるいは再審に準ずるような再裁判の手続を起こすのか、そのあたりを具体的に伺わしていただきたいと思います。
  180. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 何らの手続を要しないで無効であるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。そこで、たとえば、その判決に基づいて強制執行をするという場合に、強制執行を受けた相手方が、この裁判は無効であると思う場合には、その執行文の付与に対する異議の訴えであるとか、あるいは請求異議の訴えであるとか、そういう方法によって、その裁判は無効であるからこの執行はとめらるべきである、こういうことを主張して争えばよいわけであります。問題のあったときに、こういった救済措置を講ずればよいのであって、事前に何らかの措置を講じておく、こういう必要はないわけであります。
  181. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、旧法判決の場合はわかったわけでございますが、たとえば、そのほかの判決の場合、そういう場合には、これは判決の無効の確認訴訟を起こす以外に方法はないと、いまの御答弁では思えるのでございますが、そうすると、これは特別の教済措置というものを講じないでも、日本復帰すれば、当然、日本法律で、それはもうきめるまでもなく、できることは間違いないわけでございますので、ですから、それでは特別の救済措置というものは、法務省としたら、なさらないわけなんでございますか。
  182. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 特に、特別な救済措置というものを、手続上特殊なものを設けて行なう、そういう必要はないものと考えております。
  183. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはやはり民事でございましても、特に米民政府で行なわれた民事裁判というのは、裁判の公用語が英語であるというようなこと一つとらえましても、当事者にとって非常に不利益、十分な納得のいく裁判が行なわれておらないという可能性も多い。公序良俗違反の判決が出されているという可能性もきわめて多いわけでございますので、そういう事柄に対する救済措置というものを法務省は今後もっと積極的に取り組んでいただきたいと、特に私のほうから要望する次第でございます。  それで、民事裁判のことばかり申しておりますと時間がございませんので、次に刑事の関係に移りたいと思います。  協定の第五条三項、四項によって、日本国は琉球政府の裁判所または米民政府の裁判所に係属している刑事事件の裁判権を引き継ぐものとしておりますが、これでは裁判所がした刑事の最終的判決を引き継ぐ、裁判の効力を引き継ぐ、あるいは裁判所がした刑事の最終的な判決の執行を引き継ぐということでございますが、これは国際慣行における先例などもいろいろあると思うのでございますが、国際慣習から見ますと、引き継がない場合のほうが多いというふうに聞いております。あえて引き継がれる理由を、簡単でけっこうですから、法務大臣にお答えいただきたいと思います。
  184. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 率直に申しまして、引き継ぐ理由は、長年間、まあ沖繩の法的安定性といいますか、非常に長い間にわたってそれに慣熟しながら法的安定性が保たれておるというところにあると思います。世界的ないろいろな事例を考えますと、むしろ、私は引き継ぐ場合のほうが多いように承知いたしておるのですが。
  185. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、先日、協定委員会で、この第五条の裁判の効力の引き継ぎの問題について、国民の人権というものを一番中心にして考えていきたいという総理の御答弁を得たわけでございますが、総理は、今度、いまの刑事裁判のこの引き継ぎの問題と、世界人権宣言の十条に、何人もその権利及び義務の決定に関して、また自己に対するあらゆる刑事上の訴追の決定に関しては、独立した公平な裁判所による公正かつ公開の審理を受けることについて完全に平等な権利を有するという宣言がなされておる。この世界人権宣言との関係、あるいは日本国憲法の基本的人権尊重主義との関連において、この五条の刑事裁判の効力の引き継ぎということをどのように考えておられるか、総理の御答弁をお願いいたします。
  186. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 法務大臣からお答えをさせます。
  187. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) いろいろと言われておりますが、いろいろ調べてみますと、まあ、私、いろいろ法務関係の沖繩における方々との連絡もあり、いままでいろいろな、また折衝もいたしておるのでありますが、まあ、世間でいわれておるような実態ではない、もちろん人権を尊重しなければなりません。それは引き継ぎ後におきまして、われわれが再審なり、あるいは恩赦法等を適用することによって十分償い得るものだと、かように考えておるわけであります。
  188. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま法務大臣は、長い間の沖繩の法的安定性を維持するためということが主たる目的のように御答弁なすったのでございますが、御承知のとおり、沖繩における法律というものの一番の頂点に立つものはアメリカの大統領の布令でございます。それは、米国の安全というもの、米国の利益というものを第一義的に考えている法律でございまして、その法律のもと、日本国憲法の基本的人権保障というものが非常に影の薄い存在となっていることは、これは各大臣においても十分御承知のとおりだと思います。そのような、米国の利益、米国の安全というものを第一に考えた法的安定というものを、日本復帰するに及んで、この現在の米国第一主義によってできた社会的な秩序というものをあえて引き継ぐということが、日本にとって有利かどうか、特に日本国民にとって有利かどうか、この点はどういうふうに考えておられるか。法務大臣にも、今度は総理大臣にも、私は御答弁をいただきたいと思うわけでございます。
  189. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 長い間の法的安定性を保つばかりではなしに、復帰時までは向こうのやはり施政権下にあるわけでございます。そこまでは、やはりアメリカの施政権下のものとしてわれわれも尊重していかなければならない。引き継ぎますとたんに変わっていくわけであります。でありまするから、その際には、いろいろお話のようなものについては政令によって引き継がない、また、布令にしましても、布告にしましても、自然犯に近いものは当然それは引き継いでいく、こういうような措置によって十分目的を達する、かように考えておるわけであります。
  190. 佐々木静子

    佐々木静子君 政令によって引き継ぐものと引き継がないものとをきめるという御答弁でございましたが、これは具体的には政令でどのようにお定めになるのか、もう少し具体的に内容を御答弁いただきたいと思います。
  191. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 率直に申しまして、これをただいまいろいろと申し上げますと、引き継ぐまでの間の安定性が保てぬ、こういうことになりますので、この点は、ただいま詳しく申し上げることだけはごかんべんを願いたいと思います。
  192. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、政府のほうもいろいろ御事情はあろうと思うのでございますが、私のほうも、復帰するまではもちろん施政権はアメリカにあるわけですから、これが日本国憲法に合わないからといって、これをいまの時点において沖繩県民に適用される法律日本国憲法のもとに改めよと言っているのではない。当然復帰するまではアメリカの施政権下にあるから、それはどうこう言っているわけじゃない。復帰した後にどうするかという問題でございますから、別段、いま、復帰後の処置として政令でどのようにきめているのかということを御答弁いただいても、現在の復帰までの間の沖繩の治安が、そのために乱されるというようなことは、これはあり得ないと思います。その点、いかがですか。
  193. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまから引き継ぎ後に適用にならぬ刑罰があるということがわかりますと、その間に、やはり秩序を乱されるおそれがあるということで、まあこの際は、私としましては申し上げるわけにいかぬというふうに考えておるわけでございます。
  194. 佐々木静子

    佐々木静子君 これを申し述べることはいかぬということは、私のほうとすると、国民の側とすると、それまで白紙にしておくというのじゃ話がわからないのであって、そのためにいま伺っているわけです。復帰になって、次からどうなるかということをお伺いするために、いまこうしてお聞きしているわけなんです。それを、復帰になるまで言うことはできぬというのじゃ、これはもう話し合いに、何のためにこの委員会を開いているのかわからぬことになるのじゃないですか。ですから、むろん復帰した後に適用される事柄について伺うわけですけれども、もう少し率直に話をしていただきたいと思います。その点についての御答弁を求めます。
  195. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいま、復帰前に、引き継ぎをしないいろいろな犯罪がわかりますと、まあそういう人はないかもわかりませんが、この際やれば、それは復帰後には何ら追及を受けるものでないということがわかりますことは、これは私は、やはり秩序を守る上にはよくない、かように考えておるわけであります。
  196. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういうことの堂々めぐりであれば、もう何を言ってもこれは話にならぬのじゃないですか。大臣がおっしゃりにくいのであれば、私のほうから逐一お尋ねしていきますが、たとえば、これは特別措置法第三十条にしるされていることでございますし、また先日、大臣から、軍の裁判は効力を認めないということの御答弁をいただいているんですが、その具体的内容としては、昭和二十七年の四月二十八日以前、すなわち平和条約締結までの裁判、あるいは三十年の四月十日以前の米民政府裁判所になるまでの裁判は、これは効力は認めないということ、これは明言されるわけでございますね。
  197. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) そのとおりです。
  198. 佐々木静子

    佐々木静子君 この三十年四月十日以後の裁判について、たとえば米民政府の下した裁判で、私、先日もちょっと触れたのでございますが、たとえば、十九歳の少年が、アメリカ軍があまりいばるので腹を立てて、まあ大たいした値打ち、財産的価値のないものであるが、二十個ほど窃取した。それに対して懲役二百年の判決が下った。これは米民政府の下した判決でございます。それからまた、同じように、ごく軽微な事件で、やはり沖繩の青年が懲役百三十年という判決を下されたという話もこの間申し上げたわけでございますが、そういうふうな不当な裁判に対しては、これは適切な救済の措置を講ずるという御答弁を先日いただいたわけでございますが、その米民政府の裁判所の下した判決で、そしてまあ違法、不当、非常に日本の常識から見て穏当を欠く、人権保障に欠けるというような裁判については、どういう救済措置を考えておられるのか、それをお述べいただきたいと思います。
  199. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) その後、沖繩で調べてみますと、最高百二十年があるそうであります。しかし、主文は十年——これは刑法の体系が違いますから、併合罪という制度がありませんから、二十年の判決を受けた、これは十年と十年、それで刑期は八年幾らで出獄して、もう刑は全然なくなっておる。これが最高であり、もう一人、殺人で無期が現在入獄しております。でありまするから、ただいまのお話のようなことは現実にはなかったようであります。
  200. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは日本弁護士連合会で調査いたしましたので、私はかなりの根拠を持っているものであると確信しているわけでございますが、もしないとすれば、むろん、それに越したことはないわけでございますが、その点につきましても、政府として十分に具体的に調査していただきたいと思うわけでございます。そして、このいまの併合罪の適用がないというお話でございましたが、これは、沖繩の弁護士の方々から聞きましても、米民政府の裁判は、ともかく在日米軍のうちで法曹資格がある者を、沖繩で裁判があるといえば、かき集めてきて裁判をやらす。そうすると、その出身の州によって適用の法律が違うので、とんでもない判決が下されるのだということを、これは沖繩の弁護士が異口同音に申し述べているところでございますし、また、裁判が英語で行なわれるために、何が何だか全然わけがわからないで有罪の判決を受けておる者もたくさんある。また、この米民政府の刑事訴訟の手続、この刑事訴訟規則というものが、一般沖繩県民に、また沖繩の弁護士にも公表されておらないという状態でございまして、裁判に関与することが非常に困難である、そういう意味でたいへんに人権保障に欠けているという点を十分御配慮いただきたいと思うわけです。  いま御答弁では、百二十年というのが最高であったということでございますが、これは、かりに御答弁どおりとしましても、百二十年といえば、たいへんなことでございます。そういうふうな不当な判決が現に行なわれている。執行されたのは、かりに短かかったにしても、現にそういうふうな日本の常識から見れば非常にめちゃくちゃな判決が出されている。それに対する救済の方法、これは、先日も救済措置を考えるとおっしゃったわけでございますが、具体的にどういう手続で救済される御方針であるのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  201. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 百二十年というのは、いろいろ計算でみなそういうことでありますが、先ほど申し上げましたように主文は二十年、こういうことになり、また同時執行でだんだん経過いたしまして、結果的には八年で刑が終わっておる。これが窃盗団の首謀者か何かでありまして、かなりこれは罪状の重いものです。でありまするから、お話のようなものは私ども調べました限りにおいてはないのであります。  また、通訳は十分許されておるのでありますが、おそらくそういうようなことになれなくて、いろいろな問題があると思います。それにつきましては、私は再審も、何も本人でなくても検事側からもできるわけであります。そういうような点から考えていきますと、復帰後十分いろいろな手を尽くしてみたいと、かように考えております。
  202. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまこの米民政府の不当な判決に対する救済方法の具体的な例として、再審一つだけを具体的におあげいただいたわけでございますが、御承知のとおり、日本の刑事訴訟法によりますと、再審事由というものはきわめて限定されておりまして、再審事件でこれが無実が認められるというようなことは、これは日本の裁判史上でも二、三しかないわけでございます。それくらいに再審事由というものは、非常にいまの日本の刑事訴訟法で制約されているわけでございまして、これは日本の刑事訴訟法自体の改正問題も国民の中から盛んに起こっており、日本弁護士会でもいまそれを非常に本格的に取り組んでいるくらいの事態でございますが、これは再審による救済といいましても、そのような状態でございますから、実際問題として再審によって救済される人の数は、いまの日本の刑事訴訟法によればごくわずかしか救われないのではないか、その点を非常に懸念するわけでございます。  この再審事由について、特別、ワクを広げるとか、再審事由を追加するとか、あるいは別の再裁判をする手続、そういうことを具体的にどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お述べいただきたいと思います。
  203. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 再審だけ——もちろん恩赦の関係もありますし、再審につきましても新しい証拠と申しておりますが、アメリカの裁判はあまり書面による証拠というのでないそうであります。でありまするから、そういう点から申しますと、新しい証拠というものはずいぶん出てくるのではなかろうか。したがって、再審事由に該当するものが非常に多い。またいろいろお話を伺った通訳の問題、そういうことによって不当な刑を受けた者というようなことになりましたら、これは当然再審の事由に入るのでありまして、そういう意味からいたしますと、現在の再審の制度で十分ではなかろうかというふうに考えております。
  204. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、いままでの日本の例から見ますと、検事の側から再審の請求をされたというのはもうきわめて——皆無ではございませんが、きわめて微々たる状態でございますし、また再審請求をした当事者に検事が協力したために、その検事が非常に検察庁内で不利益を受けたというような話もよく耳にするわけでございます。いま法務大臣が、当事者からだけではなく、法務省側としてもどんどんと再審の請求を行なうという趣旨の御答弁であったと思うのでございますが、そのことは積極的に不当な事案があれば検察庁から、検察官から再審の申請をどんどんやる、また当事者から再審の申請が出されたときに、当然だと思われる事案については、法務省、検察庁においても、それに十分協力するということを確約していただけるわけでございますね。
  205. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) もちろん、われわれが不当なり、あるいは違法だと考えましたものにつきましては、どんどん積極的にやるつもりであります。
  206. 佐々木静子

    佐々木静子君 先ほどの法務大臣の御答弁で、軍法会議、すなわち平和条約成立前の裁判あるいは米軍政府裁判所で下された裁判は効力を認めないという御答弁をいただいたわけでございますが、現実にその二つの裁判で、何人ぐらいの沖繩県民が禁錮以上の刑を受けているか、おわかりでしたら御答弁いただきたいと思います。
  207. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 引き継ぎの対象にならない昭和二十七年の講和発効以前の琉球政府裁判所の言い渡し人員及び昭和三十年四月九日以前の米民政府裁判所の裁判人員でございますが、これは内容がちょっと禁錮以上かどうか不明でございますが、一応、裁判した人員は、民政府裁判所関係におきまして約七千人弱、それから琉球政府裁判所のほうは約二万五千人でございます。
  208. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、その判決の刑とか内容についてはおわかりにならないわけですか。たとえば死刑の判決を受けた者が何人あるかとか、あるいは無期懲役の者が何人あるかというようなことがわかれば承りたいわけでございますが。
  209. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) その点は判明いたしません。しかし、よけいなことかもしれませんけれども、引き継ぎの対象になりました時期以後の裁判につきましては、民政府裁判所におきまして死刑の言い渡しをいたしました件は一件もございません。  それから琉球政府裁判所関係のほうは、死刑を言い渡しをいたしました者はございますけれども、現実に執行いたしました件数は一件もございません。
  210. 佐々木静子

    佐々木静子君 私がなぜ軍法会議あるいは米軍政府の裁判所で死刑を受けた者が何人いるか、無期懲役を受けた者が何人いるかということをお尋ねをしているかと申しますのは、これはその判決の効力は認めない、日本復帰した場合と政府は言われて、それで済む問題ではないと思うからでございます。これは、これらの人たちは効力の認められもしないような裁判によって、ひどい人は命を奪われ、あるいは無期懲役、あるいは長期の有期懲役によって理由なくして苦しめられてきた。日本国憲法のもとでは当然処罰されるべきでなかった——さるべきであった事案もあるかもしれませんが、アメリカ軍の占領下で、日本の憲法下では考えることのできないような裁判手続によってきつい刑罰を受けた。これらの効力を認めないというだけで、沖繩県民の人権が守られたとは私はとうてい言えないと思うわけでございます。不当な米軍の裁判によって命を奪われた者、あるいは長期の自由を束縛せられた者に対しては、当然、国がこれは刑事補償をなすべきであると考えるわけでございますが、その点に対して法務省はどのように考えておられますか。
  211. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 幸いに死刑は一人もないようであります。また、再審なり、そういうことが行なわれれば、やはり国家補償の問題が起こると思います。
  212. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま、幸いに死刑は一人もないと言われたのは、先ほどの刑事局長の御答弁では、米民政府の裁判と琉球政府の裁判所の裁判で、現実に死刑がなかったというふうに私承ったように思うわけです。私いま伺っているのは、軍法会議、すなわち昭和二十七年までの裁判、あるいは民政府ができるまでの軍政府の裁判による裁判のことをお聞きしているわけでございますので、その点についての御答弁をいただきたいと思います。
  213. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 引き継ぎの対象になります前の沖繩の裁判でございますか——その刑の内容の詳細については判明しておりません。しかしながら、当時におきましても、それぞれ所定の手続において琉球裁判所と、あるいは民政府の裁判所がそれぞれ裁判をいたしておったわけでございますから、それほどむちゃな裁判はないと確信をいたしておるわけでございます。成規の実体法、手続法のもとでそれぞれ裁判をいたしておったわけでございます。  なお、この今回の裁判権の引き継ぎは、平和条約三条に基づいてアメリカが行使しておる司法権、これが引き継ぎの対象でございますから、この三条より前のものにつきましては、法務省といいますか、われわれとしては、その対象にするすべがないわけでございます。
  214. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、昭和二十七年以前のことについての御見解はわかりましたが、この米軍政府の裁判についてのことが、これは裁判の効力は認めないという御答弁でありながら、それに対してこの効力の認められない裁判で有罪判決を受けた者に対する補償はいまのところ考えておらないということになるわけですか——そうしますと、先ほどの再審その他で米民政府の裁判がくつがえされたような場合は当然補償を考えるという法務大臣の御答弁だったんでございますが、そうしますと、米民政府の裁判で再審によってくつがえされたものに対しては補償がされる。米軍政府裁判所の裁判に対して当然効力の認められない裁判によって刑に処せられたものに対しては補償をしない、それは非常に均衡を失するのではないですか、その点についてもっと明確な答弁をしていただきたいと思います。
  215. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 引き継ぎの対象となっております裁判につきましては、これは琉球政府の裁判所の裁判であろうと、米民政府の裁判所の裁判であろうと、これは確定裁判は確定裁判としての効力を認めるわけでございます。したがって、それは再審の対象となるわけでございます。再審の結果、無罪ということになりまして、刑事補償の要件が備わるということがわかれば、これは刑事補償法が発動するわけでございます。しかしながら、引き継ぎの対象前の問題につきましては、これは先ほども申し上げましたように、いわば占領中のものでございます。平和条約三条による司法権の行使の結果ではないわけでございまして、日本政府としては、この判決はそういう事実があったというだけで、何らの効果を認めないと、こういうことに相なるわけでございます。
  216. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、平和条約が発効をしてからその後、米民政府の裁判が下されるまでの間に下された判決というものは一つもなとい言われるわけでございますか、その点をお伺いいたします。
  217. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 軍法会議の裁判を御指摘でございますか。——軍法会議は終始引き継ぎの対象にはなっておりません。
  218. 佐々木静子

    佐々木静子君 この復帰に伴う特別措置に関する法律案の第三十条で、「沖繩に設立されていた裁判所が刑事に関してした裁判で昭和二十七年四月二十八日前に確定したもの」、これはいまおっしゃったように平和条約締結前のものだから引き継ぎの対象にならぬ、それはわかるわけですが、そのあと、カッコのところを除きまして、「及び民政府の裁判所が昭和三十年四月十日前にした刑事に関する最終の裁判に係る事項については、適用しない。」ということがございますので、この昭和二十七年四月二十八日から昭和三十年四月十日までの間の裁判のことについて私伺っているわけなんでございます。
  219. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) わかりました。その間の裁判は引き継ぎの対象にいたしません。
  220. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、引き継ぎの対象にしない裁判で有罪判決に付せられて受刑した者に対する補償が結局できないということになるわけじゃないんでしょうか。
  221. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 再審または刑事補償というものの対象になりません。
  222. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、再審の対象にならないとすれば、ただ自然発生的に効力が認められないということにとどまるわけでございますね。そうすると、再審をやった場合には、再審に伴う刑事補償というものが出てまいりますが、再審ができないということになれば、何かその再審に伴う刑事補償にかわる救済措置を講じないと、この間に不当な判決を受けた者の救済ができないということになるのじゃないですか。いま刑事局長の御答弁では、講和前のものについては関与しないということをおっしゃっていたわけですから、それを裏を返せば、講和後のものについては政府が責任を持つということになると思うのです。その点、非常に矛盾のある答弁だと思いますので、お伺いしているわけです。
  223. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 民政府の裁判につきまして、講和発行から昭和三十年四月九日までになされたものについての取り扱いを御指摘になっておるわけでございますが、これにつきましては、先ほど来、今回の引き継ぎの対象にいたさないということでございます。したがって、その裁判というものは、日本にとっては何ものでもないということでございます。そういう事実があったという事実が残っておるだけでございまして、その法的効果はゼロでございます。何にもないわけでございます。したがいまして、もちろん前科にもなりませんし、何にもないのでございますから、この救済というものは刑事司法の分野の問題ではないというふうに考えておるわけでございます。
  224. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、その点について、これは法務大臣になるのですか、外務大臣になるのですか、刑事司法の問題でないというと、所管がわからなければ、総理大臣にお伺いしないといけないことになるわけですけれども、その救済について、人権保障は何よりも考えるということを先日の委員会で答弁なさいましたが、どのようにお考えになりますか、お答えいただきたいと思います。所管でない方に答えていただいても私はしかたがないと思うのです。所管の方に答えていただきたいと思います。あなた、所管じゃないのじゃないですか。
  225. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 刑事司法の分野の問題ではございませんということを申し上げたわけでございます。
  226. 佐々木静子

    佐々木静子君 それで所管の方に伺いたいと申し上げているわけです。所管がわからなければ総理大臣にお答えいただく以外に、私ども所管がわからないわけですから。
  227. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 本件は、先ほど来申し上げておりますように、何にも日本国としては認めないんだ、効果は一切認めないんだということでございます。本人が、かりにそういう前科的な事実がありましても、それを評価しないわけでございますから、一般的にはたいへん恩恵がむしろあるということになるわけでございます。その場合の特殊な事例として、もしそういう日本が全然効果を認めない裁判において何らかの人権侵害的なものがあった場合の救済をどうするかという御指摘でございますけれども、それは、一般的に言いまして、何ら効果を認めないわけでございますから、少なくとも刑事司法の分野においては、その救済を考える余地はないと考えておるわけでございます。
  228. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは何回も、なんですが、刑事司法の分野では救済を考えない、所管じゃない。所管でない方に幾ら伺っても、これは話はわからないわけでございまして、それじゃ所管の方はどなたかと申し上げているわけです。所管がないということであれば、政府はそのことについて担当する人をきめておらぬ。すなわち、これほど重大な沖繩県民の人権問題に対して政府はだれも担当者をきめておらぬということは、非常に政府が怠慢だということになるのじゃないですか。その点について政府責任者の御答弁をいただきたいと思います。
  229. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 第三十条で、「昭和二十七年四月二十八日前に」、講和発効の日以前に、「確定したもの」云々と書きまして、「及び民政府の裁判所が昭和三十年四月十日前にした刑事に関する最終の裁判」、これはすなわち布令百四十四号、刑法並びに訴訟手続法典が施行されたということによって一応民政府裁判所の実体が整った日ということに一応しておりますが、ただいま法務省当局の答弁によれば、法務省としては関知し得ない分野である、こういうことでありますから、それでありまするならば、沖繩県民について関知しなければならない者はまず私でありますので、その点についてはその期間内においてどのようなことが行なわれ、そしてそれがもし本土の国民であって、憲法施行下の人権を持ち、そしてそれらの基本的な侵されざるものを侵されているような事例があり得たならば、その事実については検討をしてみたい、いまの段階ではとっさのことでありますから、とりあえず、私の分野で検討するということを申し上げておきます。
  230. 佐々木静子

    佐々木静子君 非常にまあ不満足なのでございますが、あとの質問の時間もございますので、法務省にも、そして総務長官にも大いにこの点を御検討いただくということをお願いして、これは非常に不満足なことでございますので、また次の機会に、もう一度その点を政府も御検討いただいておいて、その点についてじっくりお尋ねしたいと思いますが、本日のところは、一応この問題はこのあたりで打ち切ろうと思います。  それでは、次に、裁判手続について、最高裁判所にちょっと若干手続的なことについて伺いたいのでございますが、今度は、ここの沖繩の管轄が福岡高等裁判所になるわけだと思うのでございますが、控訴審については。那覇支部を設置する予定であるのかどうか、そのことだけちょっとお伺いしたいと思います。
  231. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) お答えいたします。  那覇支部に福岡高等裁判所の支部を設置する方針を確定いたしまして、いま財政面で政府当局と折衝中でございます。
  232. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、最高裁にもう一つ伺いたいんでございますが、前の奄美返還の前に、復帰前の奄美群島での琉球政府の裁判所の判決の効力についてなされた最高裁の判決があると思うのです。ありますれば、その判決の主文と要旨を、時間がありませんので、ごく簡単にお述べいただきたいと思います。
  233. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) その点につきまして明確に出ておりますものは、「昭和二九年(あ)第三二三一号、同三〇年一〇月一八日第三小法廷判決」でございまして、判示事項は「占領中の琉球政府の裁判所による裁判と刑法第五条」、判決要旨、「奄美群島の占領中、琉球政府の裁判所による裁判については刑法第五条の規定の準用がある。」という趣旨でございまして、間を省略いたしまして、判示の一部を朗読いたしますと、「従つて右琉球政府の裁判所による裁判はもとよりわが国の裁判権にもとずく裁判ではなく、外国の裁判でもないけれども同裁判については刑法五条の規定を準用すべきものであることは当裁判所大法廷判決(昭和二九年(あ)第二一五号の趣旨に徴して明らかである。」というものでございます。なお、「昭和二九年(あ)第二一五号、」につきましては、判示事項につきましては明確には出ておりませんで、占領軍軍事裁判所の裁判の効果について言及しておるだけでございます。その点の明確な判示事項は二十九年の判例には出ておりません。
  234. 佐々木静子

    佐々木静子君 先ほどお述べになりましたのは、もう一度、最高裁、要約いたしますと、琉球政府の裁判所の判決は、日本の裁判とは認められぬという趣旨でございますね、わかりやすく言いますと。
  235. 長井澄

    最高裁判所長官代理者(長井澄君) ではないが、刑法第五条の関係で、外国の裁判に準ずべきものであるという表現でございます。それ以上は、判決の内容でございますので、判示に従って御判断いただきたいと思います。
  236. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、次ぎ、最高裁で、いまのお話のように、琉球政府の裁判所の判決は、刑法五条、つまり外国裁判所の判決と同じように扱われるものだという最高裁判決が出ているということでございますので、次の登記制度の問題に、時間がございませんので移りたいと思います。  先ほどの後藤委員の御質問にもあったかと思うのでございますが、沖繩諸島が今次の戦争で戦場となり、そしてその戦災の結果、不動産の登記原簿というものがほとんど焼失した、そしてその結果、戦後、所有者その他、権利者からの申請に基づいて土地台帳をつくったのであるが、その土地台帳というものが、きわめて不備で、実情に合わない状態である、不動産に関するその他の権利関係について一番大きな意味を持つ登記の原簿が非常に不備だということは、今後、国民の権利関係を確認する意味において、特に取引の安全をはかるためにも非常にこれは遺憾な点が生ずると思うのでございますが、この登記原簿のいまの実情並びに今後どのような方法でその実態を把握する方針であるかということを、時間もございませんので、簡単に法務大臣あるいは民事局長からお話しいただきたいと思います。
  237. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) お話のとおり、沖繩では土地の登記簿、土地台帳、それから公図といわれる土地台帳の付属地図、こういったものがすべて戦争で滅失いたしまして、そこで昭和二十一年から昭和二十五年にかけまして、土地所有権に関するいろいろな資料を集めまして、土地台帳、それから付属地図というものを再製いたしまして、二十五年には登記制度も再開いたしたわけであります。しかし、ただいまのお話にありましたように、たいへん急いでつくったものでありますし、また資料が十分集まらなかった、いろいろ困難な事情のもとでやった作業でございますので、その公図に間違いが相当あったということは事実でございます。  そこで、沖繩におきましては、これをもう少し調べ直す必要があるということで、昭和三十二年に土地調査法というのをつくりまして、沖繩全島にわたる地籍調査を始めたわけでございます。その調査の結果に基づきまして、これを登記所のほうに送付して登記簿を直すとか、あるいはいままでの地図を正しいものにつくりかえるというような作業をして現在に至っているわけでありまして、大体現在までに沖繩全島の五七%の地籍調査が行なわれたということでございます。  復帰後におきましては、この土地調査法というのは沖繩法律でありますので、なくなりますので、それにかわるものとして、政府でいろいろ国土調査とか、そういうような方法によりまして調査をさらに進めまして、これに基づいて登記簿、地図の整理を行なって、実情に合うものをさらに改善していきたい、こういう状況でございます。
  238. 佐々木静子

    佐々木静子君 この一番問題になっているのは、特に軍用地の測量でございますね。所有者が、この軍用地の地形が変わってしまっている、あるいは境界線が全くわからなくなっている、そういうふうな場合に、この軍用地の土地の地籍図が不備なために非常に所有者が困っているという問題があります。また、軍用地の一部を売却しようと思っても、軍用地の中に現在の時点ではなかなか入れないので測量ができない。したがって、分筆ができない。分筆ができないために売買の対象にならない、権利設定もできないという状態で多くの県民が泣いているわけでございますが、この軍用地の測量については、具体的に、復帰後は国の責任でもって実際に即した地籍図を早急に作成されることができるわけでございますか。どういう方針ですか。
  239. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) 軍用地につきましては、いろいろ問題があることは御指摘のとおりであります。現在では軍用地の土地の分筆、これは許されないことになっております。それから地籍、地目の訂正、そういったこともできないことに、これは地目の訂正につきましては、工兵隊の認可を得て行なうというようなことになっておりまして、かなり制限がございます。こういった実情にございますけれども復帰後は可能な限り測量も、これはもちろん米軍の協力を得るわけでございますが、測量を実施いたしまして、地籍もこれは現在のような制限がなくなりますので、正しく改めていきたいと、このように考えております。
  240. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまおっしゃいました地目の変更ですね。現実には宅地になっているけれども、軍用地にとられた当時原野であったために、登記簿上は原野となっている。そのために賃借料が非常に安いというようなことで県民が苦しめられておりますが、復帰後はこの地目の変更もこれは国が責任を持ってなさるわけでございますか。
  241. 川島一郎

    政府委員(川島一郎君) ただいま申し上げましたように、現在では地目の変更について制限がございますけれども復帰後はそういった制限がなくなりますので、これは自由にできることになるわけでございます。登記簿と現況とが違っている場合には、これは現況に基づいて登記簿の記載を訂正する、これが自由にできるようになるわけです。  それから地代のお話がございましたが、これは現在、沖繩では土地借賃安定法という法律がございまして、この法律によりますと、登記簿に記載された地目に従ってそれぞれの最高借賃というものが定められております。その最高借賃以上の地代をとってはいけないと、こういうことになっておりますが、この法律沖繩法律でございますので、日本返還になりますと当然効力がなくなります。したがって、いま御指摘のような問題は解消するものと考えております。
  242. 佐々木静子

    佐々木静子君 時間がありませんので、まだ伺いたいのですが、売春犯罪対策について若干お尋ねしたいと思います。  二十六年に及ぶ米国の植民地の支配、軍用地支配の中で、沖繩県民は生活と権利が破壊され、民主政治が奪われてきたわけでございますが、特に婦人は差別と劣悪な条件の中に放置されてまいったわけでございます。米軍基地が本土と比べて異常に多いことなど、また戦争による貧困とか、根強く残る男女差別の歴史的な因習が結びついて、沖繩では売春を生活のかてとしている婦人の数が、本土と比べると非常に多いということも顕著な事実でございます。このことは婦人の人権、ひいては全国民の人間としての尊厳を失わせることであり、また性道徳の退廃をもたらすことは明らかでございます。一九七〇年の七月にようやく売春防止法が一部施行されて、復帰時から本土法が適用される運びとなっておりますが、基地と密接に結びついているために、単に売春防止法をつくったからといって、無力な婦人を刑務所に追いやるだけのことであって、根本的な対策にならないのではないか、その点が大いに憂慮されますし、また特に前借制度で、意に反して強制的に売春をさせられている婦人もたくさんいる。また、知能的にも問題のある婦人が転落していくケースも多いようでございますが、このような現実に対して、今回の特別措置法案並びに改廃法案などでは沖繩における売春事犯に対する積極的な措置が講ぜられてないというふうに思うわけでございます。まず、沖繩諸島における売春事犯について、具体的に統計的にどのようなものを把握しておられるのか、これは時間がございませんので、簡単に法務大臣のほうからお答えいただきたいと思います。
  243. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 現在までにおきます沖繩における売春関係の刑事事件の状況でございますが、沖繩におきましては売春関係は二つの法令によって処罰されておるわけでございます。まず第一の布令第百四十四号、「道徳に反する罪」という、これは米軍要員に対する売春事犯でございますが、この事犯につきましては一九六五年に二十三人、六六年に十四人、六七年二十一人、六八年五人、六九年一人、それから第二の法令でございます「婦女に売淫させた者等の処罰に関する立法」、これは沖繩の立法院の立法でございますが、この立法の違反につきまして、これは一九七〇年に二人、一九七一年の六月までに二人と、かような者がそれぞれ処罰の対象となっております。
  244. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま数字が出されましたけれども、私がお聞きしているところでは、そういうふうな特殊な事情で、婦人の罪ではなしに、特殊な婦人としていま非常に苦界にあえいでいる御婦人が推定一万人近くあるというふうな話も聞いているわけでございます。ところが、これに対して今度の措置法案を見ますと、婦人補導院の新設についての規定がないわけでございます。これは御承知のとおり売春防止法におきましては単に取り締まるだけではなくて、婦人に売春をしないでも生きていけるだけの職業訓練を行なう、あるいは性道徳に対する考え方を正していくというふうな意味で婦人補導院というものが本土には幾つかあるわけでございますけれども沖繩にはそれが用意されておらない。それはどういうわけで、売春対策、非常に深刻な沖繩における問題だと思うんですが、婦人補導院が用意されておらないのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  245. 辻辰三郎

    政府委員(辻辰三郎君) 現在本土におきましては婦人補導院は全国に三カ所あるわけでございます。東京と大阪と福岡でございます。これの三つの施設の収容人員が、定員が二百十五人でございますが、本年十一月末現在におきましては、中に入っておる収容人員はわずかに二十八人でございまして、本土におきましてはもうがらがらの状況でございます。かような事情がございますので、復帰後、沖繩の補導処分を受けました方々につきましては、これを福岡の補導院のほうに収容いたしまして、そこで補導をいたしたいと考えておるわけでございまして、そういう意味で沖繩に新しく婦人補導院を設置する考えは持っていないわけでございます。
  246. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの御答弁で、婦人のための補導院を沖繩に設置しないということがわかったわけでございますが、これは本土と沖繩と非常に事情が違いまして、この戦後四半世紀、米軍基地の中であえいできて、みずからの性を商品として売春を余儀なくされてきた数多くの御婦人の人間回復のために、これは政府として積極的な施策を設けていただきたいとお願いするわけでございます。そうして、そのために、いま法務省のほうで婦人補導院は特に設けない。そういう必要があれば福岡の婦人補導院を用いたいという御見解でございましたが、厚生省の用意では授産の補導とか、あるいは、母子福祉の問題などにおいて現地でどのような対策を講じておられるのか、御説明いただきたいと思います。
  247. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 御承知のように、沖繩の売春防止法は、先ほどおっしゃいましたように、保護更生の面は来年の一月一日から実施をするということになっておりますので、したがって、相談員でありますとか、婦人保護施設でありますとか、また相談所というようなものをいまもうすでに準備をいたしておりまして、来年の一月一日からは実施できるようにいたしております。これには政府のほうも授助費といたしまして約二分の一の補助をやっております。したがいまして、復帰をいたしましたら、今度はこちらの責任になりますので、これをさらに拡大をいたしまして遺憾なきを期してまいりたい、かように考えております。
  248. 佐々木静子

    佐々木静子君 それで実はまだいまほかの問題も伺いたいのですが、時間がまいったようでございますので、実は先ほどから法務省並びに関係官庁にお伺いしているこの刑事裁判に対する人件保障の問題、特に先ほど来申し上げております特別措置法の三十条の「適用除外」の部分、平和条約発効後昭和三十年の四月九日までの犯罪者に対する救済というようなことについて、これは私、実は非常に心外に思いましたのは、こういう事柄について関係大臣や当局の方は非常に何度も何度も討論し、研究し合った後に考えていらっしゃると思ったのでございますが、私がお聞きしますと、結局そこのところは空白状態であって、だれもあまり考えておられなかったというふうな様子でございまして、人権保障を中心として今度の協定五条の問題を解決するとおっしゃっていらっしゃる。これは佐藤総理の御方針とも非常に食い違っている。その点たいへん私遺憾に思うわけでございます。そうしていまの御答弁では、私自身とすると、この質問に対する正確なお答えをまだ十分にいただいておらないと思いますので、さらに政府のほうで御検討いただきたい。私もこの点について再度質問さしていただきたいと思いますので、私の質問を保留さしていただきまして、時間がまいりましたから一時私の質問を終わらしていただきます。     —————————————
  249. 長谷川仁

  250. 峯山昭範

    峯山昭範君 私は、連合審査にあたりまして米軍の弾薬庫の安全性について初めにお伺いしたいと思います。  米軍基地の安全性につきましては、もうすでにいろいろなことが言われておりますのですが、地位協定によりまして国内におきます弾薬とか、いろいろなそういうふうなものの適用を受けておりますいわゆる火薬類取締法ですか、この火薬類取締法は米軍基地には通用しない、適用されないと、こういうふうに聞いておるのですが、この点について、そう間違いないかどうか、また、どうしてそういうふうな法律が適用されないのかということを初めにお伺いしておきたいと思います。
  251. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 火薬類取締法は米軍の弾薬の処理等につきましては適用されないと……。
  252. 峯山昭範

    峯山昭範君 されない理由は。
  253. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 日本の国内法令は米軍の施設区域内においても原則として適用され、合衆国軍隊等はこれを尊重する義務があることは言うまでもありませんが、他方、合衆国は地位協定第三条及びその合意議事録によりまして提供される施設、区域内において、これらの設定、運営等のため必要なすべての措置をとることが認められておりまして、この限りにおきましては合衆国軍隊は日本国の法令の適用を免れるという趣旨でございます。ただし、米軍としては当然日本の国内法は尊重するべきものである、こういうことでございます。
  254. 峯山昭範

    峯山昭範君 ちょっとわかりにくいのですけれども。それを読んだだけではどうも意味がわからない。もう少し、大臣、いま最後のほうの話がありましたけれども、こういうふうな火薬類の取締法につきましては、その火薬の種類によりまして、国内においてはその火薬を置いてあるところから保安距離というのが現実に設けられているように聞いております。現実にここに私、表を持ってきておりますが、一定の距離が必要であろうと思うのです。いま答弁の最後のほうにございましたけれども、米軍基地においても、たとえ地位協定で定められておりましても、当然私は保安に必要な一定の距離というのは準用されるべきものであろう。こういうぐあいに思うのですが、大臣どうですか。
  255. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御指摘の点、まことに重要でありまするから、私もそうあるべきだ。特に、先ほど読んだのを聞いておりましても、国内法を尊重する。こういう一項目がありまするので、これは尊重願わしいものだと思います。
  256. 峯山昭範

    峯山昭範君 それじゃ、いま大臣から、当然その法律は準用されるべきであろう。そういう答弁がありましたが、これは防衛施設庁としては、先ほど施設庁長官から答弁がありましたが、火薬類取締法の保安距離の問題について、たとえば爆薬二十トン以下、十九トン以下、十八トン以下とか、こう種類がありますが、二、三、どの程度の距離を保つようになっているのか。第一種保安物件、第二種保安物件、第三種保安物件、第四種保安物件とありますが、これに基づいて、大体二、三例をあげて、どの程度の距離が必要なのか、一ぺん説明してもらいたいと思います。
  257. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 先ほど申しましたように、当然、米国としては日本の国内法規を尊重すべきでございますので、国内の保安規則と同趣旨の保安規則に基づきまして安全対策には十分意を用いているところでございます。そこで、いまの日米の保安距離の比較でございますが、一、二、例を申し上げますと、十トンの場合、第一種の施設につきましては三百四十メートルの保安距離でございます。米国の場合におきましては、これは二万ないし二万五千ポンドでございますが、これにつきましては千五十五フィート、したがいまして、これをメートルに換算いたしますと三百二十一メートルということでございます。それから、十五トンにつきましては、日本の場合が四百メートル、これに対しまして米側の場合は三百六十七メートル、こういうことでございます。
  258. 峯山昭範

    峯山昭範君 大臣、いま答弁ございましたように、日米双方そう変わらないようでありますが、いずれにしましても、三百メートル以上の保安距離が必要であるということは明らかになったと思います。この点を頭に入れておいていたきたいと思います。総理もその点、お願いします。  そこで、具体的な問題に入りますが、先般、江田島におきまして中国火薬という会社がございまして、中国火薬が爆発をいたしまして、幸い死者は出なかったようでございますが、負傷者を五十三名出しました。しかも、江田島から数キロ離れております呉市ですね、隣りの海を隔てた呉市におきましてさえ、窓ガラスとか、そういうようなものが相当破損された。そういう報告が現実にきております。ですから、三百四十メートルとか、三百メートル以上の距離があってさえ、こういう火薬が爆発した場合に、相当のいわゆる保安距離が必要であるということは、私たちはこの事故からも認識を新たにしたような次第なんですが、実際問題として、この江田島に秋月弾薬庫というのがあるわけですね。この秋月弾薬庫でもしも同様の事故が起きたら、これはたいへんなことになるのじゃないか、こういうぐあいに私たちは考えるわけでありますが、この点どうでしょう。
  259. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御指摘のように、保安施設につきましては十分配慮をしてまいりたいと思います。もちろん爆発事故などがあったらこれはたいへんなことになると想像できまするので、十分配慮するように愼重に対処いたします。
  260. 峯山昭範

    峯山昭範君 大臣、慎重に対処するということでありますが、私は現実の問題として、大臣は、秋月の弾薬庫のまわり——私も現実に調査をいたしましたが、まわりに民家がたくさんありますね。その問題について秋月弾薬庫、いわゆる秋月の米軍弾薬庫ですが、その米軍弾薬庫のまわりにどの程度の民家があって、どのくらい離れているのか、この点どうですか、見たことございますか。
  261. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 私まだ赴任早々で見ておりませんので、その間の詳細については施設庁長官から説明いたさせます。
  262. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 秋月弾薬庫の提供面積は、五十五万五千平米程度でございます。そして、弾薬庫は上屋式が十棟、それから隧道式が十八棟、それから土堤式が十二棟、それから野積み場が九棟、これは旧軍のコンクリートの弾薬庫が山の中に入っておりまして、それを使用しているということもございますが、いま先生おっしゃいましたように、近くに民家があるということも事実でございまして、これにつきましては、私どもも米軍に対しましては弾薬の保管については十分留意するように、その点についてはかねがね申し入れているところでございます。
  263. 峯山昭範

    峯山昭範君 大臣、いま施設庁長官の答弁でございますが、先ほどから言っておりますように、保安距離三百メートルという話があるわけです、現実に。私はいまの答弁の中にもございましたように、秋月弾薬庫は五十五万平米もあるわけです。ですから何も民家のすぐ近くに弾薬庫をつくる必要はないわけですよ。少なくとも法律に定められた保安距離をとってつくれぬことはないと私は思うのです。この辺のところも含めまして、実際は、現実に写真を私ここに写してきましたけれども、現実に何枚も写真はあります。ありますが、長官ちょっと見てほしいのですがね。これちょっと見てください。  いま見ていただきましたように、現実の問題として、秋月弾薬庫では弾薬がもう民家のすぐ近くに保管されているわけです。もう一つ、私は質問を詰める意味におきまして、先般から委員会で相当問題になっております弾薬のシンボルマークというのがありますね。その弾薬庫のシンボルマークについて、シンボルマーク4の弾薬庫にはどういうものが——一般的でけっこうです。核とかいろんな話はありますけれども、私は一般的でけっこうですが、シンボルマーク4のところにはどういう弾薬が保管されているのか、またシンボルマーク3のところにはどういう弾薬が保管されているのかということを、先に説明しておいてもらいたいと思います。簡単でけっこうです。
  264. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) シンボルマーク3のものは正規のコンテナに梱包されたクラス2の弾薬、それから、ファイア・シンボル4はクラス4から7までの弾薬、これは比較的爆発の危険性の多い弾薬を含めております。
  265. 峯山昭範

    峯山昭範君 クラス2とか、もうちょっとわかりやすく説明してもらいたいわけですけれども、まあけっこうです。けれども、いまの答弁の最後のほうにありました爆発性の非常に危険なものという説明がありましたが、その爆発性の非常に危険なそのシンボルマーク4というのがいわゆるこの弾薬庫からわずか百メーターも離れていない。百メーターも離れていないところに現実に民家があるわけです。またシンボルマーク3のところには、私の手元に写真もありますが、その貯蔵庫は斜面距離にして四十メーター、水平距離にして二十五メーターしか離れていない。そういうところにこういう弾薬庫があるわけです。非常に私はこれは危険だと思うんですよね。少なくとも国内法を準用さしておるとか、何とかかんとか言いながら、私は政府としてこれは厳重に申し入れて、少なくとも、この弾薬庫が狭いのなら、これは全部のけてもらえば一番いいわけですけれども、少なくとも住民を安心させる意味におきましても、五十五万五千平米という広い面積があるわけですから、民家のそばのそういうような弾薬庫は少なくとも片づけるように私は申し入れるべきであると思うし、ここら辺のことについてはどう考えていらっしゃるのか、総理並びに長官にお伺いしたいと思います。
  266. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御指摘の点はきわめて重要だと思います。私、見ておりませんが、いまその写真で見ますと、まあうかつな話ですが、しかし、きわめて至近の距離に民家があることがよくわかります。そこで、いま施設庁長官に一体どういうことなんだ、これはいかにもひどいように思うがという設問をしましたところが、実はその民家に最も近いところには危険なものは入れておらないと、こういう回答に接しております。詳しくは施設庁長官から補足をさせることにいたさせます。
  267. 島田豊

    政府委員(島田豊君) いま御指摘のように、若干の貯蔵庫につきまして保安距離において不足をしておるところがございます。しかしながら、かねてわれわれのほうもこの安全につきましては厳重に申し入れをしておりますので、現在米側といたしましては弾種を限定いたしまして、ここの部分は小銃弾ということでございますが、そして貯蔵量につきましてもできるだけ制限をいたしておりますので、一応安全は確保されておると、かように考えておるわけでございます。なお、この問題につきましては……。
  268. 峯山昭範

    峯山昭範君 ごまかしちゃいかぬよ、ごまかしちゃ。
  269. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 米側にもさらに詳細その実情について私どもとしては調査をしてもらうようにいま申し入れをいたしておるわけでございます。
  270. 峯山昭範

    峯山昭範君 とにかくこの弾薬庫の、いま施設庁長官がおっしゃったのはシンボル3の貯蔵庫のことです。この貯蔵庫については私はあとで質問しようと思っておりましたが、長官から先に答弁があったからちょっと言いますが、現実に小銃弾と照明弾としか入ってないというのを、現実に近くの住民で問題が起きて一緒に見にいってるわけです。見にいって、私はこれも問題だと思うんです。見にいって、確かに小銃弾と照明弾であるかどうかということは、これが小銃弾でこれが照明弾だというその現地の人の説明があって、地元の住民の人たちはなるほどそうかと思ったわけですけれども、現実には専門家も何にも立ち会わせていない。だから、それだけのことじゃ安全かどうかもわからないわけです。しかも、私はこう写真を示したのは、この小銃弾が入っているというのとは全然違うところをわざと写真を見せているわけです。これは小銃弾が入っているところじゃなくて、先ほど久保防衛局長が説明したようにシンボルマーク4のところなんです、これは。4のところをちゃんとわざわざ見せた。これよりもっと近いのは二十五メーターの距離にあるというのがこれなんです。したがって、そんないいかげんな答弁じゃ私納得できませんよ。いつ調査に行ったんですか。
  271. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは重要な問題ですし、事実そういうところに危険物を貯蔵しておるとすれば、これはやはり捨ておけませんので、厳重に調査して、わがほうとしても抗議すべきものは抗議する。調査をいたします。
  272. 峯山昭範

    峯山昭範君 ぜひともこれは大臣、もう一言言っておきますがね、この写真は何カ月も、何年も前にとったんじゃない。この間とったとこなんですよ。だから危険なものは入っていないとは言いますが、そんな答弁じゃ私はとてもじゃないけれども納得できない。現実にシンボルマーク4になっている、現実に。きょう現在なっておる、現実に。そのなっておるものをあの中には小銃弾しか入っていない、そういうふうなことじゃこれはいかぬと思う。厳重に調査をしてもらいたいと思う。  それから、まだある。これはいま答弁したものです。これから言うのは、これは米軍のその地下の弾薬庫の上に民家があるということで新聞等にも報じられ、これも相当もめた問題です。この点についてはどうなっておるのですか。
  273. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 御指摘の点はすでに新聞でも報道せられましたので、私どもも現地の防衛施設事務所から職員を派遣いたしまして調査いたしました結果、この部分はその弾薬庫の上に民家があるということは、これは事実に反しておるという調査の結果になっております。
  274. 峯山昭範

    峯山昭範君 事実に反しているなんと言うとね、全然その事実に反しているような感じを受けますけれども、実際はそうじゃない。先ほどから言っているように、斜面距離で四十メーター、直線距離ではかれば二十五メーターのところにあるというのがこれです。真上とは言っていない。真上じゃないけれども、しかしながら、これだけの近くの距離にある地下なんですよ、地下。その地下で爆発を起こしたら——その上にある、はすかい斜めであっても。事実と反するなんという答弁でいいんですか、そんな答弁で。そんなことでみんな住民は安心して眠れませんよ。あなたの家がはすかい斜めにあって真上じゃない。しかしながら、現実に地下にあることは間違いない。事実と違うなんということじゃ納得できませんね、そんな答弁じゃ。もう少し前向きに何とかすべきじゃないですか、こんなことは。
  275. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) お説の、この御指摘どおりだということなら、これはやはり問題があると思います。そこで、最近は基地の周辺整備の法律によっていろいろな整備をしておるときに、弾薬庫の真上でなくても斜め横にしろ、ほぼその下とおぼしきところに弾薬庫があるなんというようなことをほっておいちゃなりませんので、これはひとつ、どうぞ前向きで調査をし、もしそういう事態があれば善処いたしまするので、お預けを願いたいと思います。
  276. 峯山昭範

    峯山昭範君 大臣、私はもう一点、これはつけ加えて言っておきたいのでありますが、現実に調査する場合ですね、やっぱりしろうとだけじゃだめだと思うのですよ。やはり専門の人もちゃんと立ち会って——また、ぼくはもっと端的に言いますと、初めから言っておりますように、広い、ものすごく広い五十五万平米もある弾薬庫なんですよ。先ほど一番初めに私が言いましたように、国内のこの法律を準用すると、そうでしょう、これ。総理大臣どうですか、これ。準用すると言っているわけですから、少なくとも二十五メーターとか、そんな問題じゃないわけです。いずれにしても民家からうんと離してやるべきだと私は思う、少なくともこの法律を準用しても。この法律以外でいっても非常に危険であるということは、先ほどの火薬工場の爆発事故でも明らかです。したがって、こういう点についてはもっと慎重に取り組むべきだと思うのですがね。総理どうですか、これ。
  277. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま防衛庁長官がお答えしたとおりでございます。私ももっと真剣に取り組むべきだと思うし、またもっと離して——これは地域住民としてはたいへん心配たろうと思います。それが三百メートル離れていてもたいへんなことだと思います。だから、実際のもっと防護、遮蔽、その他適当な処置ができるだろうと思いますから、現地についてとにかく十分調査をして、しかる上で対策を立てる、またその趣旨は御指摘のとおりにしたいと、かように申しておりますから御了承願います。
  278. 峯山昭範

    峯山昭範君 さらに私はもうちょっと言っておきたいのでありますが、現実にこの米軍の弾薬庫の中でたびたび事故が起きておる。外部に漏れた事故だけでも何件かあるわけです。ことしに入ってからでもこの秋月の弾薬庫で、この四月にですが、黄燐性のM34型の特殊手投げ弾というのが爆発しまして、七人の人たちが負傷しております。現実に秋月の弾薬庫の中での事故であります。しかも、それだけじゃなくて、この近くに御存じのとおり岩国の飛行場がある。その関係から米軍の飛行機というのがたびたびといっては何ですが、何回か近くの海に落ちておる。こういうようなものが万一落ちたりしたら、これは近くの住民の人たちの不安なんというものはたいへんなものだと思うのですね、私は。そういうような意味からも私は早急にこの問題に取り組んでもらいたい。そして、ほんとうに住民の人たちが安心して、枕を高くして眠れるようにしてもらいたい、そう思うのですが、どうですか。
  279. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御指摘の点、十分配慮して善処したいと思います。
  280. 原田立

    原田立君 関連。  防衛庁長官。ただいまのこと、善処するというお話でありますけれども、では一体調査をいつごろまでにして、当委員会にいつまでに報告する、そういうお約束をしてもらいたい。
  281. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは至急、すみやかにやりましょう。写真を見せていただいて、大体わかるような気がしますので、いまも総理とここでささやいておるわけです。これはどうもちょっと重大だなあというわけで、総理も非常に心配しておられますし、すみやかに、これはいつ幾日というふうには申し上げませんが、これは至急すみやかに。御信頼願いたいと思います。
  282. 原田立

    原田立君 至急すみやかにと言っても、当国会が二十四日までなんです。いまここで質問しているんですから、それを会期はずれた時期になってのこのこやられたんでは困る。
  283. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) いま施設庁長官と打ち合わせたわけですが、国会ではきょう初めて問題になったわけですが、すでに新聞に出ました時点で府中の米軍に対して照会をして警告を発しておる。こう申しておりまするので、これすみやかにひとつ返事をとるようにいたします。
  284. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは、私はこれだけじゃない、ほんとうは。私はきょうは具体的に一つ例をあげただけなんです。国内の法を適用する、準用するとはいいながら、現実に、防衛施設庁はこちらが指摘してから調査するというのはほんとうはこれはもう怠慢ですよ、こんなことは。私はそう思うのです。  そこでさらにもう一点これはお伺いしておきたいのですが、現実の問題としてこの秋月の町の人たちは非常にまあ不安なわけです。なぜかといいますと、もしそこで事故があったら逃げるところがない。その一つの秋月の部落は逃げるところがないので、もし事故があったら、現実にはその基地の上の道を通って逃げにゃいかぬわけです。基地で事故が起きているのに基地の上を通るわけにいきません、現実の問題として。そういうような意味で、地元からは何とかトンネルをつくってくれという要望が現実に出ておるわけです。というのは、七百メーターくらい離れたところに隣の小さな部落がある。そこまで何とかトンネルをつくって退避するような道を何とかしてほしい。しからずんばのけてほしい。こういう要望が出るのも私は当然だと思うのですよ。こういうような問題について、私は早急にこれはこの問題についても解決してもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  285. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 避難場所がないということは、これはまあきわめて原始的な困ったことですから、これもやはりあわせ、真剣に考えてみたいと思います。
  286. 峯山昭範

    峯山昭範君 さらにこういうふうな実態から考えてみまして、この沖繩の米軍基地の安全性なんということになってくると、これはもうほんとうにわれわれが想像に絶するものがあると思う。そういう点から考えてみても、少なくとも先ほど大臣、また皆さん御答弁になりましたように、国内の法を準用するとは言いながら、こういうのを見のがしてあるということは、これはたいへんなことだと私は思うのですけれども、それ以上に、私は沖繩におきましても当然この法律は準用しておっても守られていないわけでありますけれども、準用するのは当然のこと、その沖繩の基地におきましてもこの米軍基地は残るわけでありますから、当然弾薬庫やいろんな問題、核の問題もありますが、まあ核はないとはおっしゃっておりますが、それであってもいろんな問題がこれは残っております。したがって、そういうことも含めて、私は沖繩も早急にこういうようなことについても実態の調査をやり、ほんとうに住民の皆さんが安心して生活できるようにしていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  287. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御指摘の点、ひとつそういうようにしたいと思います。全く勝者が敗者というか、負けた国に対してやることというのはとかく気のないことがいろいろあろうかと思うのです。それだけにひとつ戻ってきた時点におきまして十分配慮いたします。
  288. 峯山昭範

    峯山昭範君 これ以上、この問題については私言いませんけれども、現実の問題として、国内でさえもう二十数年たってるわけです。その間、現地の人たちは非常に不安な思いで生活しているわけです。そういう点から考えてみても、ぜひとも早急に取り組んでもらいたいということをこの問題について要望しておきます。  それから次に、私は同じく基地の公害対策についてお伺いしたいと思うのです。特に基地の公害対策の問題の中でもその騒音対策についてお伺いしたいと思うのですが、この基地の騒音対策という問題は、これはもうそれこそ相当な年限を経ております。すでに私の手元にもいろいろな報告書が来ておりますが、たとえば日弁連の沖繩の報告書に基づいてみましても、これはもうたいへんな状況が述べられております。いわゆる沖繩の公害の中でも、私はきょうは騒音を取り上げたいと思います。騒音にしぼります。その騒音の中でも、騒音による被害の具体的な例というのもいろいろと述べられております。こういう点から考えてみて、私はまず沖繩を論ずる前に、国内のいわゆる航空機騒音というものが一体どういうぐあいになっいてるのかということについて、政府はいまいろいろな問題があると思うのでありますが、初めに、在日米軍の基地、現在国内の基地並びに自衛隊の基地の騒音ですね、この騒音の対策はどういうぐあいになっているのか、この点について初めにお伺いをしておきたいと思います。
  289. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 私どもの基地周辺対策の中でも、この防音対策というものはやはり一番重要視しておるわけでございます。基地がありますために、その地元の周辺の皆さん方がいろいろ騒音に悩まされておられるということについては、私どももその状況はよくわかりますので、これにつきましては最も重点を置いておるところでございますが、四十五年度までにこの騒音対策のために用いました経費が、駐留軍関係で三百五億一千八百万円、自衛隊関係で二百三十九億九百万円、合計五百四十四億二千八百万円。さらに本年度の計画といたしまして駐留軍関係が四十四億八千九百万円、自衛隊関係が五十二億四千七百万円、合計九十七億三千七百万円、こういう対策費をもちまして、現実に各種の防音工事をはじめとします対策を講じておるところでございます。
  290. 峯山昭範

    峯山昭範君 施設庁長官の答弁を聞いておりますと、何といいますか、防音工事が進んで非常に熱心にやっているように見えますが、実際はもう全然逆でございまして、実は私の手元に騒音防止対策工事全体計画というのが出ております。これは昭和四十三年に防衛施設庁で作成したものであると私は聞いておりますのですが、この昭和四十三年に策定した騒音防止対策工事全体計画、これについて、ことしまでの進捗状況並びに全体の計画そのものについて説明を願いたい。
  291. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 騒音防止対策につきましては、一応われわれのほうも全体計画を立てながら各年度の事業を進めておるわけでございますが、ただ、これは要するに内部的な一つの計画でございまして、いわゆる三次防、四次防というふうなものとはちょっと性質が違います。一応われわれのほうで四十二、三年ごろ立てました全体計画は千二百十一億ぐらいのところでございます。しかしながら、これはその後物価の値上がり等もございますので、これはおそらく、今後もこの計画でやっていきますとすれば、全体計画はもっとふくらむものだと考えられますが、そういう意味におきまして大体現在までのところ約半分程度、全体の金額にしまして。そういう進捗状況でございます。
  292. 峯山昭範

    峯山昭範君 全体計画が四十二、三年ごろできたわけないでしょう。四十二、三年といったら、二年じゃないか。いつできた。
  293. 島田豊

    政府委員(島田豊君) これは四十二年ごろと聞いております。
  294. 峯山昭範

    峯山昭範君 だめだ、ごろなんて。おかしいじゃないか。全体計画がごろなんておかしいじゃないか。
  295. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 四十二年度に部内で計画しました全体計画でございます。
  296. 峯山昭範

    峯山昭範君 やはり私はね、この四十二年に策定した全体計画、私はこれもさらに焦点をしぼります、この四十二年に策定したこの全体計画は、現在まで、先ほど金額で話がございましたが、教育施設の中で学校が何校のうち何校現在進捗しているのか、そして金額にしてどの程度のものが完成しているのか、この点をお伺いしたい。
  297. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 教育施設関係といたしまして、先ほど申しました全体計画が千七百九十六校、金額にいたしまして八百三十六億一千八百万円でございます。このうちに四十五年度までの済み額が六百十九校、金額にいたしまして四百十九億八千九百万円、四十六年度の計画が六十九校、そして金額が七十二億四千七百万円、こういうことでございますので、合計いたしまして六百八十八校ということになりますので、この全体計画からすればまだ半分程度と、こういうことでございます。
  298. 峯山昭範

    峯山昭範君 私はね、大臣、ここで聞いてもらいたいのですがね、これはこの注意書きにもあるのですが、この点も私は問題にしようと思っているのですが、全体計画で要するにこの騒音の一級及び二級——自衛隊では一級から五級まで定めている、その中の一級と二級といいますと非常に騒音がきびしいところです。その騒音のきびしいところが全部で千七百九十六校ある。そのうちいま答弁ございましたように、昭和四十六年度まで六百八十八校、まだやっていないほうのがものすごく多いわけです。しかも、これは三級、四級、五級の騒音のところを入れたらこれはもうとんでもない数になってしまう。こんな状態では私はまだまだ、それは確かに担当の皆さんは一生懸命やっていらっしゃるでしょう。しかしながら、この騒音対策が進んでいるなんということには私はならないと思うのですが、どうですか。
  299. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 毎年予算を非常に多く計上をするべくやっておるんですが、なかなか手が回らない。まあ、これを見てみますると、予定金額の半ば以上になるわけですが、どうも個所数が少ない、いかにも残念に思います。こういう問題は、やはり基地公害という名前が最近出てきたくらいですから、十分ひとつ予算措置をして、すみやかに完成できるように努力を今後も続けていきたいと思います。
  300. 峯山昭範

    峯山昭範君 さらに私は事務当局にお伺いしておきたいのですが、これは要するに飛行場の形態によって一級、二級、その一級と二級だけを調査表に入れたという理論的根拠は一体何ですか。
  301. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 先生もおっしゃいましたように、一級、二級は非常に騒音の強度なり頻度が高いところでございまして、これは建物の改造をいたしまして、二重窓なり一重窓にする。こういうことでございまして、その点を特に取り上げて申し上げたつもりでございます。
  302. 峯山昭範

    峯山昭範君 いまの答弁なってない。私は一級地、二級地だけをなぜ取り上げたのか、三級地、四級地はなぜはずしたのだ、一級地、二級地だけを入れた理論的根拠というのは一体何だと、こう聞いておる。
  303. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 一応一級から五級までございますが、最初重点を置いてやりましたのが一級工事でございまして、学校につきましては一級工事はほぼ目的を達成しておる、計画を達成しておるように思いますが、現在二級のところを逐次実施をいたしておるということで、まだ三級以下のところについては手が及んでいないと、こういうことでございます。
  304. 峯山昭範

    峯山昭範君 一回でちゃんと答弁してくれ、いまの答弁なっていない。
  305. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 騒音の度合いの激しいところから、予算が足りませんので解決をしておると、こういうことを説明したわけですから、これはひとつ御了解を願いたいと思います。そうかといって、三、四、五級と、こうきめておりながら手をこまぬいてそれに対処しないということではいかにも困ったことでありまするので、今後ともあわせて解決ができるような形で進めていきたいと思います。
  306. 峯山昭範

    峯山昭範君 大臣、そうおっしゃいますが、私が防衛施設庁に言いたいのは、要するに物理的に何メーターのところは何級地というようなきめ方をしているが、そういうような物理的なきめ方じゃなくて、現実にその航空機騒音がどういうようなものであるのか、具体的に実態調査を行なって、そして住民がどの程度困っているかということを調査をして、その上で一級地、二級地をちゃんときめるならいい。ところが物理的に滑走路から何メーターはどうなんというきめ方はおかしいというのです。私はそれを言いたいわけです。しかも、現実に東京都の公害対策本部ですか、東京都にありますね、向こうが調査した横田の資料によりますと、一級地、二級地以外でも現実に相当の騒音がしてたいへんなところがある、風向きとか、いろんなぐあいによって現実にそういうふうな騒音がしているというデータも出ておりますよ。そういう点から見ても、国は指摘されるまでその調査も何にもやれないというんじゃ私はいかぬと思うのですよ。ただ単に、これも部内の資料ですと言っていますけれども、こういうような部内の資料で片づけられちゃったんじゃ、しかも、いま答弁がありましたが、この中のまだ一級地がやっとということでしょう。そういうようなことじゃ、あたかもこの防音対策というものをやってるようには見えるけれども、これは何にも進んでないということにならざるを得ないわけでありますが、こういう点についてどうお考えですか。
  307. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) まず最もきびしいところから解決をしたわけでありますが、公害の解決ということが非常に問題になっておりまするときに、こういう問題がそのままであってはよくありませんので、十分ひとつ今後予算計上などをしまして努力してまいりたいと思います。
  308. 峯山昭範

    峯山昭範君 私はねえ、もうそんな答弁じゃ全然納得できないわけでありますけどもですね。大臣、この少なくとも公害の全体計画というのは四十二年にできて、部内資料とはいえ、ちゃんとあるわけですね。この少なくともデータに載った範囲内はこれは少なくとも早急に実施すべきだと思う。しかも、私はいま教育施設をこの資料に基づいて質問をしておりますがね、現実には医療の施設のこの公害対策、騒音対策なんていうことになってくると、このデータによりましても六%です。これはほんとにもうたいへんなことだと思うんですよ。こういうふうな状態じゃ、何のためにこれをつくったのかと言いたいわけです。おもてに出てくる資料は非常によくやってるという資料しか私の手元にもなかなか入ってこない。ところが現実にはこういうふうな状態であるわけですね。だから、そういう点も含めてこれは早急に、まあ早急にって言うよりも、少なくともこの全体計画に出た計画というのは一体いつごろまでにこれを完遂するつもりなのか、そこら辺のところはどうですか。
  309. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 私どもも極力計画の達成に努力をいたしたいという気持ちでございますが、防衛施設庁、御承知のとおりに事業といたしましては騒音対策のみならず、非常に各般の広範な対策をきめこまかくやっておりますので、やはり予算の制約もございまして、これがなかなか私どもの期待どおりには進捗しないということは事実でございます。したがいまして、今後はそういう予算の獲得にもできるだけ努力をいたしまして、一年でも早くこの計画の達成ができますように努力をいたしたいと、かように考えるわけでございます。
  310. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは政治的配慮を必要とするわけです、予算の問題ですから。ですから、十分ひとつこれは私どものほうで——もういますでに予算編成に取りかかっておる時期でありまするから、意を用いて、少しでも多く予算を計上してすみやかに解決したいと思います。
  311. 峯山昭範

    峯山昭範君 急いで次にいきますが、いずれにしましても、騒音対策というのは、これは非常に私は重要な問題であろうと思います。しかも、この問題については今後いろいろな機会をとらえて私は質問したいと思っておりますがね。さらに、きょうはこの問題にあれしまして、沖繩の基地の騒音の問題について質問したいと思います。  本国会を通じまして、沖繩の基地がその密度におきまして本土の数倍であるとか、いろいろな問題が相当出てきております。この委員会等でも相当明らかになってきておりますが、いままでこの沖繩の騒音対策というのは、これはどういうぐあいになっておるのか、その点初めにお伺いしておきたい。
  312. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 現在は琉球政府米国の援助資金を仰いでおるわけです。それから、本土政府からもこれに対策費ということで協力をして、特に学校等の防音に意を用いておるわけでありまするが、これはいま御指摘をいただきました日本の本土における対策よりも微々たるものであるというふうに承知をいたしておるわけであります。したがいまして、私どもとしましては、いま約五千万円余を概算要求いたしまして、そうして、詳密に調査をして、四十八年度からこの騒音対策を初めとする基地周辺整備の問題に積極的に取り組んでいこう。また、最も顕著な、たとえば嘉手納飛行場の中に入り組んだような形で学校もある実情でありまするから、そういった施設等については緊急対策ということで十億余をやはり要請をして対策をしていこうとこういうふうに考えております。
  313. 峯山昭範

    峯山昭範君 いま大臣から答弁ございましたが、現実の問題として、私は本土からも沖繩のこの騒音対策のために調査団を派遣したというようなことを聞いておりますのですが、その結果とか、そういうようなものについてはどういうぐあいになっているか、お伺いしたい。
  314. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 飛行機の爆音によるものが小学校七校、中学校五校、計十二校、高等学校被害校が六校ということになっておりますが、今日までの予算においては、昭和四十五年度予算、昨年でありますが、五千九百四十三万一千円、これは読谷村の古堅小学校と嘉手納村屋良幼稚園及び嘉手納幼稚園、それぞれ防音工事等をいたしました。御承知のように一番ひどいところは嘉手納周辺でございますから、今年度の昭和四十六年度予算では二億五千二百三十一万四千円、これは嘉手納小学校及び嘉手納中学校の防音工事、それから本土の防衛施設周辺整備法では認められていません十分の十補助による嘉手納村の老人、あるいは幼児、あるいは子供たちの予習、復習の場所としての一応公民館という名前になりますかどうか、そういう村立集会場というようなものに対して全額補助でそれをいま着工にかかっておるところであります。
  315. 峯山昭範

    峯山昭範君 私はいまの答弁を聞いておりますと、沖繩は非常に騒音のたいへんなところは少ないように思いますけれども、いまの答弁だけですと、しかしながら、現実に私の手元にきております昭和四十四年の本土政府派遣の基地公害調査団の報告によりますと、嘉手納周辺地区だけでも一番ひどいところが一〇一ホンを筆頭に、この本土における一級、二級という分け方をいたしますと、その一級、二級の該当校でさえも三十校以上ある。そういう報告が現実にあるわけです。その中で当時防音装置をしておった学校は三校だということを私は聞いておりますのですが、いまの報告を聞いておりますと、防音装置をしなくちゃいけない学校はほんとに少ないような感じでありますが、現実の問題として沖繩本島全体から考えてみて、こんなに少ないものじゃ私はないと思うのです。そういう点から考えて、これはちょっとおかしいんじゃないかと思うのですが、一つ資料として出してもらいたい。  それからもう一つは、今後こういうふうな問題についてどういうぐあいにお考えなのか、私は少ない学校ではないと考えているわけです。もっと該当する学校は相当ある。嘉手納地区周辺だけでもこれだけの学校があると聞いておりますのですが、そこら辺のところはどうでしょうか。
  316. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) さっきちょっと申し上げましたように、五千余万円の調査費で本格的に調査をするわけです。施設庁は七百四十九名、これは概算要求ですが、土地の契約等のために向こうに出向きます。その中の相当数をさいてそういった調査に真剣に取り組む、こういう形ですから、十分ひとつこれも本土並みにいけるように対策をしたいと思っております。
  317. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 来年度の予算におきまして要求いたしておりますのが、教育施設は合計十四件ございまして、そのうちに学校が九校、それから講堂が三件、幼稚園が二つ、こういうことで予算を要求いたしておるところでございまして、今後やはりこれは当然拡大されなければなりませんけれども、さしあたり現在最も騒音の激しい嘉手納あるいは那覇周辺、こういうところについて重点を置いて来年度は実行していきたい、かように考えております。
  318. 峯山昭範

    峯山昭範君 確かにいまおっしゃるように、重点的にやるのは私は当然であろう、また緊急処置としてやるのも当然であろうと私は思うのですが、本土の先ほどの全体計画にございましたように、沖繩全体もやはり本土と同じように具体的に計画を立てて、そして、そういうような問題をいつごろまでにこれを解決しようという方針を立てるということは大事だと思うのです。この点どうですか。
  319. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これはもう当然であります。詳密な計画を立て、ただ計画倒れにならないように予算的な裏づけもしてまいりたいと思います。
  320. 峯山昭範

    峯山昭範君 さらに私は本土においても、これはいろいろあると思うのでありますが、特にきょうは沖繩の問題をお伺いしたいのですが、基地騒音公害による被害者の救済ですね、これは私は非常に重要だと思うのですが、この現実の問題として、いろんな報告書の中に沖繩におけるいわゆる航空機騒音公害によるところの何というか、公害病といいますか、そういうようなのが報告をされております。たとえば具体的に言いますと、いろんな問題が出ておりますが、まあ一般的に言いますと、五〇ホンですと頭痛とか心臓の異常がある。また六〇ホン以上だと血圧の上昇とか、消化機能の減退などがある。また、それ以上になってくると、騒音性の難聴があったり不眠症があったり、またノイローゼとか、高血圧、こういうようなものがいろいろと報告をされているわけです。しかも、こういうふうな患者が何人かいるということが相当報告書の中にあるわけですけれども、こういういわゆる航空機騒音を中心にした被害者の救済という点についてはどうお考えなんでしょうか。
  321. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 従来は、ベトナム戦争を遂行しておりましたし、大型のB52なんという飛行機が、ひんぱんに飛び立ったりおりたり、まあいま御指摘のような点が想像にかたくありません。これは人道上の問題ですから、あわせ考慮してまいりたいと思います。
  322. 峯山昭範

    峯山昭範君 それじゃ、次に環境庁長官にいまの騒音の問題でお伺いしたいのでありますが、先々国会ですか、国会で騒音防止法がさらに充実したものになったわけでありますが、この航空機騒音に対して環境庁はどういうふうに取り組んでおられるのか、ここら辺のところをお伺いしたいと思います。
  323. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 航空機の騒音につきましては、まあいろいろとその規制法なり、その対策をいま練っております。御承知のように、航空機騒音につきましては、世界的に何らの基準がございません。しかし、何らか手をつける必要があると思いますので、われわれはその基準をつくるべく一生懸命努力いたしておりますが、大体今月中には完全な基準とは申せませんが、一応の指針はできる見通しになっておりますので、実は公害対策審議会におきましては、二十三日の部会においてこのことをきめまして、私のところに答申を持ってまいりますので、それによって、これは一応の指針でございますけれども、そういう対策を講じてまいりたいと考えておる次第でございます。
  324. 峯山昭範

    峯山昭範君 いずれにしましても、この騒音対策という問題は、いま環境庁長官のもとで、二十三日までに、いま答申が出るような話でございますが、いずれにしても環境基準等を早急にきめて、そうして、これは対策を講じていかないといけないと思いますし、さらにまた航空機騒音によって学童が耳が非常に聞こえにくくなったなんというのがずいぶん出てきておるわけですね。そういうような問題に対しても私は取り組んでいくべきだと思うのですが、そこら辺のことについてはどうなんでしょうか。
  325. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) 一応の公的施設、学校とか、病院のようなものにつきましては、基地周辺のみならず、一般の空港におきましても一応の防音装置をいたしておるわけでございますが、もちろん完全なものではございません。これをもっともっと規制をしなければならないと思いますが、さらに問題になりますのは一般の民家でございます。これについては残念ながらいまのところ一切何らの救助の方法もありませんので、こういうものも、騒音の規制の指針の場合にはそういう対策も考えてまいりたいと思う次第でございます。
  326. 峯山昭範

    峯山昭範君 私はこの航空機騒音につきましては、少なくとも一日も早く環境基準等をきめていただいて、そして早急に取り締まり等も厳重にやっていただきたいということをお願いして、次にいきたいと思います。  総理大臣、かねがねから問題になっております自衛隊の公用地の暫定使用法に関する問題でございますが、この点について、きょうは二、三質問をしたいのでありますが、初めに総理にお伺いしたいのですが、現在の自衛隊は、これはまあ、自衛隊ができた沿革等を私も読んで、自衛隊がどういうふうな経過で現在の自衛隊になったかということは承知しておるつもりなんでございますが、警察予備隊から保安隊になりましたですね。その保安隊当時の保安隊の使命というものと任務というものと現在の自衛隊と自衛隊の任務というものは、これは相当変わってきていると、私は現実に思うわけです。現実に、いろいろな雑誌とか本を見ましても、その任務の内容は変わってきていると、こういうぐあいに書いているわけでございますが、そこら辺のことにつきましては、総理はどう認識をしていらっしゃいますか。
  327. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 自衛隊のほうが保安隊よりか——保安隊というのは、国土防衛というところにあまりはっきりしたことはないように思っておりますが、自衛隊では、そこらが明らかになったと、かように思います。なお、この点では法制局長官から十分説明させます。
  328. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。  保安隊——まあ警察予備隊というのがその前にございましたが、これは、おそらく明らかに御存じのとおりだと思います。保安隊は、保安庁法でございますが、そのときの任務といたしましては、「わが国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護するため、特別の必要がある場合において行動する部隊を管理」するというわけで、警察予備隊とはだいぶまた性格が違っておりますが、いまの自衛隊のように国の防衛ということを表に出した規定は、ここの保安庁法の任務の中には直接には出ておりません。しかし、いま申し上げたとおりに、「人命及び財産を保護するため、特別の必要がある場合において行動する部隊を管理し、運営」するということばは、当時の法律に出ております。
  329. 峯山昭範

    峯山昭範君 そうすると、現在の自衛隊と、当時の保安隊ですね、保安隊というのですか、とは、具体的には違わないという、いまの答弁ですね。そうではなくて、現実に、これは皆さん御存じの解説によりましても、保安隊は、警察予備隊と同じく、国内の治安維持を任務としたものである。また、自衛隊はこれまでの保安隊、警察予備隊と異なり、直接侵略、間接侵略に対して防衛することを主任務とすることになった。ですから、私は、こういう点では明らかに、その内容的にはやっぱり変わってきたと、こう認識しているのですが、どうですか。
  330. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) これは、率直に申し上げて、警察予備隊ができまして、保安隊ができて、自衛隊ができたという過程を逆に、こう、見てまいりますと、保安隊というのは、ことばの言い方が悪いかもしれませんが、ちょうど警察予備隊、それが自衛隊との発展段階における一つの過程を示したものであろうと思います。それは、いま保安庁法の四条を申し上げたわけでありますが、警察予備隊と自衛隊との規定を読みながら、いまの規定を見ますと、ちょうど、その発展と申していいのかどうか知りませんが、経過的な一つの過程を示したものだというふうに理解するのが適当ではないかと思っております。
  331. 峯山昭範

    峯山昭範君 法制局長官の答弁というのは非常にむずかしくて、わからぬね。要するに、私が先ほど言ったことは、あれは合っているわけですか、違うのですか。
  332. 久保卓也

    政府委員久保卓也君) 大体おっしゃるとおりだと思いますが、保安隊のころには、治安維持を目的とする行動というのが入っております。したがって、「目的」だけですと、ちょっとわかりにくいのですけれども、「行動」のところをごらんいただきますと、よくわかるので、結局、外国からの武力攻撃に対する防衛ということが保安隊当時は入っておりません。もう一点、領空侵犯措置に対する規定が保安隊当時は入っておりません。これは、航空自衛隊がありませんでしたから、そういうことであります。
  333. 峯山昭範

    峯山昭範君 それで、はっきりしてきた。  そこで、土地収用法の問題について質問に入りたいと思うのですが、これは特に衆議院でも一回論争されたことでありますが、法制局長官がちょっとごまかしたきらいがありますので、私はそこを確認したいために、いまのことを前もってやったわけです。  そこで、今回のこの土地収用法につきましては、いずれにしましても、私は、現在の自衛隊の用地が土地収用法の対象となり得るかどうかというのは、これは非常に疑問がある。なぜかといいますと、これはあとで順番にあげていきますが、従来——従来といいましても、古いほうの土地収用法では、第二条で、土地を収用する場合、「国防其ノ他軍事ニ関スル事業」というのが明確に入っておりまして、そうして、実は昭和二十六年の五月二十五日の衆議院の建設委員会におきまして、この問題について、当時の政府委員から、古い収用法から新しい収用法に変わるときの説明があります。その説明についてちょっと申し上げますと、「現在の収用法はきわめて抽象的な規定をいたしておるのでございますが、それに比較いたしまして、今回の改正法におきましては、条文でごらん願いますと、おわかりでございますが、」——まあいろいろありますが、もっと端的なところを申し上げますが、「従来の規定におきましては、国防、その他軍事に関する事業、それから皇室陵墓の建造ないしは神社の建設に関する事業が、公益事業の一つとして上っておりますが、新憲法のもとにおきまして、当然不適当であると考えられますので、これは廃止することにいたしております。」と、こういうぐあいな答弁になっておりますのですが、この点については、どうお考えなんですか。
  334. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 御指摘のことは私もよく存じております。当時、政府委員の説明として、皇室陵墓の建造ないしは神社の建設に関する事業と一緒に、新憲法のもとにおきましては当然不適当であるということで、それが削られたわけであります。当時の土地収用法では公益事業の一つとしてそれがあげられていたわけでありますが、旧憲法時代からの土地収用法でありますので、当時はまだ自衛隊もむろんなかったわけでありますが、その旧憲法時代の「国防其ノ他軍事ニ関スル事業」、これは、土地収用法上は旧国防ないし軍事に関する事業を念頭に置いていた規定であったわけでありますが、それは当然、憲法の規定からいえば、これははずされるのがあたりまえであろうというわけで除かれたわけでありまして、その後できた土地収用法の規定からいって、結局、その旧憲法時代の国防、軍事、そういうものが除かれることは当然でありますが、新憲法下において認められるか認められないか、それはいろいろ議論があるにいたしましても、自衛隊法というものができ、それが防衛庁の管理のもとに属し、防衛庁の——これはまあ一々条文をあげれば、あるいは御理解いただけるかと思いますが、そういう防衛庁の仕事としての演習場なり施設なり庁舎、土地収用法の三十一号でございますが、そういうものから該当しないかといえば、該当しないことはないであろうという意見が、昭和二十七年だったかと思いますが、出ておりますが、それは、その後の土地収用法の当該規定の解釈から出てまいるではないかということでございます。  なお御質疑があればお答えをいたします。
  335. 峯山昭範

    峯山昭範君 いまのね、私は法制局長官とは一一やり合うつもりはないんですが、いずれにしましても、いまの、法制局長官が、今回の自衛隊の用地を土地収用法第三条三十一号の解釈の問題について、この自衛隊を適用するというのは、少なくとも、当時、昭和二十八年でありますが、昭和二十八年当時の法制局当時の次長の林修三さんから保安庁次長の増原さんにあてた見解に基づいて、今回の自衛隊が適用すると、自衛隊が沖繩で適用すると、そういうふうな答弁を長官がされているわけです。ということは、先ほども私は初めにお伺いしましたように、当時の保安庁と現在の自衛隊とは実態もみな変わってきているわけです。そういうような変わってきた時点では、少なくとも、この当時の答弁がこれは生きてくるのではないか。少なくとも、この政府委員の説明、あるいは昭和三十九年五月二十二日に、当時の河野国務大臣がこの問題について答弁をされています。この答弁によりますと、「公共の」という条件がついておりますが、この軍事施設を公共の範囲に入れるということは適当でない、これはもう社会通念じゃなかろうかと私は思います。そういったことに反したものについてこれをやることは適当でない、私はこういうふうに解釈している、という答弁がなされております。こういうような答弁から見ても、保安庁当時のいわゆる収用法を適用をしたこれと、現在の自衛隊とは、実質も内容もみな違ってきている。だから、私は、これを根拠に、少なくとも、このいわゆる土地収用法を適用するというのはこれは不適当である、こういうぐあいに思うのですが、この点、どうですか。
  336. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) おっしゃることはよくわかります。最初に法制局の意見として前の林次長の名前で出ているものでございますが、それが当時、保安隊の当時であったこともよく存じております。いま申し上げるのは、その保安隊の当時にこの意見を出した、その意見の論旨を申し上げているわけでありまして、それと同じ論旨でもって、土地収用法の三十一号、先ほどもあげました三十一号の解釈として、同じ論旨でもって同じ結論が出るではないかということを申し上げるわけでありまして、一々申し上げればいいのかもしれませんが、一つ一つ条文に照らして言えば、それと同じ論旨でもって同じ結果が出るではないかということを申しておるわけであります。  もう一つ、建設大臣が申されたのは、これもよく出ることでございますが、公共用地の取得に関する特別措置法、あの中の対象になっております事業は公共事業でございますが、その特定公共事業の中の一つとして政令で定める、その中に公共ということばがございますが、その中には自衛隊の施設は入らないということをおっしゃっているわけでありまして、私も、同じように質問を受ければ同じように答弁を申し上げることになると思います。要するに、それがそうであるから、したがって、自衛隊は——この土地収用法の適用の関係で自衛隊の施設というのは防衛庁の施設でありますが、それが土地収用法上もアウトになるという結論にはならぬだろうということを申し上げてきた次第でございます。
  337. 峯山昭範

    峯山昭範君 私は、その長官のおっしゃるのはよくわかりますけどね、どうも納得できない。なぜかといいますと、その河野大臣の答弁は、軍施設についてはどうするかという質問に対して、その軍の施設というのは公共の範囲に入れないということは、これはもう、現在考えてみると、この見解がやっぱり変わってきています、やっぱり、少なくとも自衛隊そのものの、先ほど話がありましたようにね。それから、この問題に対する解決がまだついていない。  私、もう一つは、なぜかといいますとね、その前の昭和二十六年のこの見解ですね、これから見ても、少なくともこれは、当然、新しい憲法のもとでは、こういうのを入れるのは不適当であるということになっているわけですからね。まあ、いまのあなたの答弁では納得できませんが、もうあんまり時間もありません。もうちょっと、まだ質問したいことがたくさんありますので、次へいきますが、いずれにしても、こういうふうな非常に矛盾した公用地等暫定使用法案というのは、これはいい法案じゃないですね、いずれにしても。いずれにしても、こういうような問題をばっちり解決しないと……。これは時間があれば、もうちょっと何らかのときに、私は、この問題についてはさらにやりたいと思っております。そのときに譲りまして、時間がもうあと一分か二分しかありませんので、もう一点私は聞いておきたいのです。  これは、総理ですね。現在、現実に、今回の法案の中に、沖繩の人身事故に対する法案が出ております。これを審議するにあたりまして——たとえば、具体的に申し上げますと、沖繩復帰に伴う防衛庁関係法律の適用の特別措置等に関する法律案というのがあるんですが、この法案の中に、沖繩における講和発効前の人身損害というものに対する規定があります。しかしながら、その政府答弁の中には、こういうふうな——政府の答弁ですよ。答弁の中に、西村大臣も、皆さんいらっしゃる前で、総理大臣もいらっしゃる前で、政府委員の答弁の中で、こういうふうな法律について、法律があればそれに基づいて支給することになるのであるが、必ずしも法律を必要としない。——もっと全部読みますわ、もう一回。人身損害に対する見舞い金の支給でございますが、こういう種類の見舞い金は、もちろん法律あるいはそれに基づいて支給することになるのでありますが、必ずしもそういう法律を必要としないというふうにも存じております、こういう答弁をしておるわけです。ということは、端的に言いますと、こういう法律は要らぬと言っとるわけですね。要するに、政府が出した法律は要らぬということを、あなたのほうの政府委員が答弁をしておるわけです。この点、どうですか。これはもう引っ込めますか、どうですか。防衛庁長官総理、含めて。
  338. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) それはちょっと不穏当だと思います。すでに講和前の人身障害については人道上の問題ですから、これは見舞い金という形で交付しようという特別措置をしておるのに、どうしてそういうことになりましたか、ちょっと経緯がわかりませんが、しかも、その見舞い金という名称がいかにも悪いわけですが、これは、高等弁務官布令六十号で補償をされた人と、それに遜色のないように対処をしていこうという、誠意を込めた、実は運用面でも措置をしていこうというわけでありまするから、それはどういうことでそういうことになったのか、ちょっとつまびらかにしませんが、事実上はそういうことで進んでおりまするので、御了解を願いたいと思います。
  339. 峯山昭範

    峯山昭範君 もう私はこれで終わりますけれども、いずれにしても、こういう答弁は納得できませんよ、いずれにしても。これは、要するに、いまの法案を審議する最中、総理大臣の前でです。その前には、当時の西村長官がいらっしゃる前です。こういうふうな、政府の中に見解の不統一がある。しかも、出した法案そのものについて、私たちは一つ一つが重大な法案であろうと思っております。しかしながら、そういうような法案について政府委員がこういう答弁をするというのは、非常に私はいかぬと思う。そういう点も含めて、あとで総理から答弁をもらいたい。  それから、もう一点だけお伺いして私の質問を終わりますが、琉球大学の問題ですね。この問題、非常に問題がたくさんあるわけです。私は、きょうは質問を保留して、これで終わりますけれども、現実に、従来から那覇の病院であったものが、国立大学になるために、要するに、従来から診療を受けておった人たちが診療が受けられなくなるとなんという問題が起きております。こういう問題については、どういうぐあいに考えていらっしゃるのか。文部省は、この問題について、付属病院は教育の機関であって、地域診療をやるあれじゃないなんということを言っているということが出ておりますんですが、これは非常に大きな問題であろうと思うんです。そういう点も含めて、総理並びに関係大臣の答弁をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  340. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 琉球大学の問題は、後ほど文部大臣からお答えするとして、さっきの請求権の問題ですが、請求権を放棄した場合に、いわゆる見舞い金を交付することができるといっても、全然法律になしに、予算的に計上したからそれで済んだというものではないだろうと私も思います。先ほどの防衛庁長官からの説明のように、やはり理屈のあるものでなければ、そう簡単に出せるものじゃない……。
  341. 峯山昭範

    峯山昭範君 答弁は取り消すのですか、もしそういう答弁があったら。
  342. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりに私は思います。だから、その点は訂正されてしかるべきだ、かように思います。
  343. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答え申し上げます。  新しくできます新那覇病院は、保健学部の付属病院という性格と、同時に、これは本土にはないことでありまするけれども、地域病院としての性格を持たせる総合病院といたすつもりでおります。したがいまして、地域の人たちが診療が受けられないというような事態は起こさないつもりでおります。
  344. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) この際、午後七時まで暫時休憩いたします。    午後六時二十五分休憩      —————・—————    午後七時八分開会
  345. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから本連合審査会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。鈴木力君。
  346. 鈴木力

    鈴木力君 私は、いま沖繩が施政権が返還をされて本土に返ってくる、そういう前提に立って、私どもの所管である教育あるいは文化あるいは国民生活等を一応考えてみますと、どうも委員会で審議をする場合の政府側の答弁なんかをお伺いいたしましても、何かむなしいような気持ちがあって非常に心配な点がありますから、そういうサイドから若干質問を申し上げたいと、こう思います。   〔委員長退席、沖繩及び北方問題に関する特別委員会理事剱木亨弘君着席〕  で、まずいろいろと総理大臣にしても、あるいは担当の総務長官にしても、ことばに関する限りは非常にいいことをおっしゃっていらっしゃる。しかし、具体的な問題で委員会で討議をいたしますると、担当大臣なり担当局長なり、政府委員なりの答弁というのは——総務長官がおっしゃったり、総理がおっしゃったりする、そういうものは、なるほどと思えるような節が非常に少ない、そういう角度で若干伺いたいんですが、もう一度といいますか、初めに総理大臣から今後の沖繩の教育、文化あるいは学術、そういう面についての考え方をまず最初に伺っておきたいと思います。
  347. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、アメリカの施政権下にあって、沖繩の教職員の方々が、真の日本人をつくる、教育しようと、こう言って意気込まれて、その教育行政、並びに教育の実体にも、そういう点でたいへん健闘されたその結果が今日その方向に実を結びつつある。これは私が毎年一回ずつ沖繩から出て来る豆記者諸君から受け取る感じでございます。私は、そのことを考えながら、今後ともほんとうに本土と一体となったりっぱな日本人ができ上がること、これを心から教育の問題では願っておるのでございます。やはり教育ということは、もうすべての基本でありまして、われわれの政治も、また日本の経済も、また社会的秩序も、そのもとにおいて初めてりっぱなものができ上がる、かように思いますので、いままでのようなりっぱな意気込みでひとつ教育に精を出していただきたいと思います。
  348. 鈴木力

    鈴木力君 すべての基本に教育あるいは文化を位置づけてといういまの総理のお話は、一応伺っておきまして、もう少し伺いたいのです。どうもわれわれがいまの沖繩の現状を見ますときに、そういう教育環境を今後つくるためには、ただ単にすべての基本であるとか、あるいはりっぱな日本人をつくると、ことばで幾らここで言ってみたところでなかなかむずかしいと思う。私は、教育をすすめるという立場から言いましても、あるいは文化面の交流をはかる、発展をはかる、そういう立場から言いましても、それにふさわしい環境をつくるということがどうしても大事だと思う。だが私は、沖繩に行ってみましても、あるいはいま政府がいろいろと議論をされているようなことを見ましても、私はさっきむなしいような気持ちになると申し上げたのは、まず本来の沖繩というものの姿がだんだんだんだんに失われていくのではないかという心配を実は私はするのです。はっきり具体的に申し上げますと、沖繩という地域は、ご存じのように、サンゴ礁でできておる、学術的に言いましても非常に重要なものがたくさんあそこにはあるわけです。しかし、そういう沖繩の島が、いまさら申し上げるまでもございませんけれども、戦争でいろんな形で破壊をされてしまっておる。それが今度本土に復帰をして、今度は開発という新しい問題が出てまいります。あとで具体的にもう少しお伺いしたいと思いますが、軍用地その他の影響も受けまして、そうしたまず、基本的にといいますか、まとめて言ったら、美しい沖繩がだんだんに失われていくのではないかと、こういう心配をまず持つんであります。そこで私は、こういう点につきましては担当の総務長官に、まずいま私が申し上げたような心配があることに対する考え方を伺っておきたいと思います。
  349. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 沖繩には、古来やはり文化的に琉球文化という非常に伝承された古いものがあらゆる分野に残っておりますし、それらのものの保存にも、あれだけの大戦火を浴びながらやはり文化財保護委員会の皆さんや博物館等を中心にして非常な熱意をもって保存伝承を続けようとしておられます。やはり沖繩の人たちの心の誇りというものも、その長い文化の所産にきざすところもあろうかと私は思うわけであります。したがって、本土政府の援助でわずかずつではございますが、残されたたとえば円覚寺なり、あるいはまた琉球王朝正殿、そういうもの等を復元したいということでいろいろと予算措置もいたしておりますが、琉球王朝の一帯の景観を何とか復元したいために、まず来年度は歓会門からその復元を始めようといたしておるわけであります。また、一方においては、博物館の陳列場等が非常に狭くて困っておられる現状を拝見いたしまして、来年度予算で陳列場としての博物館の方々の御労苦に報い、また、それらのものが保存されるための新しい増築もしたいというようなことを考えておりますが、これはまあ一つの心の問題としてとらえて形にあらわそうとして努力をいたしておるわけであります。また他面においては、いわゆる金武湾、中城湾等の一帯にすでに復帰前に石油産業等がどんどん立地をいたしております。これらはいままでも大気汚染なり、水質汚濁等の問題で議論をされたところでありますが、これは魚族の問題とか漁業の問題とか等も関連のあるやはり広範な沖繩の美しい青い海というものに直接関連を持ってくるわけであります。勝連半島から平安座、宮城と海中道路でつなぐようなことになりますと、はたして海流等が金武湾等の水産動植物にどのような影響を与えるか、シーバースにおける事故があったときにどういうことになるか、こういうこと等も非常に心配をいたしまして、会社のつくる海中道路ではありますが、潮の干満において以前と変わらない状態を確認できるような橋梁等もつくらせて、そこを潮が通るようにしたというような配慮は一応いたしておるわけでありますが、しかし沖繩の今後の開発計画を定めて、さらにそれを工業化というある部分をとらえて申しますと、まさに今後これ以上私は石油基地ということは沖繩では考えたくありませんし、やはり沖繩の比較的本土に比べて豊かな雇用労働力というものが多く吸収されるような企業、造船業やあるいはまた内陸型の弱電産業等、そういうものができていくことによって、そういう沖繩の美しい景観をそこなわず、そして雇用需要に貢献する第二次産業のあり方へ進めてまいりたい。概略を申し上げておきます。
  350. 鈴木力

    鈴木力君 まあ概略で伺ったんでありますが、私は、まず一番先に自然の問題からもう少しはっきりと伺っておきたいと思うのです。これは環境庁の長官あるいは文化庁の長官に伺ったほうがむしろいいかもしれませんが、たとえば、いまの沖繩の名護から北のほうの海岸等はもうすでにサンゴが死んでおる、あるいはあそこにあるところのオニヒトデでありますか、これはもう死滅しておる。そういう現状で、たとえばいまからもう石油工場を持ってこないといったようなそんなことでは、あの沖繩の美しい青い海は守れないと私は思う。あるいは時間がありませんから一つ一つ事例についてはあまり申し上げませんけれども、たとえばせっかく天然記念物にしておきました、これはおそらく東村の字平良というあそこには、御存じのようにメヒルギという植物の群生林があるわけです。それのうちの平良のところはもうすでにこれは立ち枯れて絶滅をしてしまった。あの東村であと残っておるのは三カ所しかない、慶佐次ですか、浜川、河口、これも天然記念物に指定をされておりますけれども、いまのような現状でほんとうにこれを守るために手を打たなければ、天然記念物もなくなれば、あるいはさっき総務長官が青い海の沖繩と言われましたけれども、この青い海もなくなりはしないかと、こう思うのです。それで、この点につきましては一々の事例についてあまり申し上げませんが、時間の都合上、文化庁の長官にこの天然記念物の保護、それから環境庁の長官には自然保護の今後の対策と構想について伺いたいと思うのです。
  351. 今日出海

    政府委員(今日出海君) まことに私は個人のことを申しますが、戦前の沖繩は、いまのひめゆりの塔、健児の塔のありましたところは非常にみごとなガジュマル、榕樹の林でございました。まことに美しい。いまのお話は青い海のお話だけでございますが、実はあのガジュマルの景観、自然の景観というものはまことにみごとなものでございました。私、戦後参りまして実に驚いたのは、榕樹が一本もない、ただの荒野と化していた。そのことを考えますと、御指摘のごとく自然の景観というものを取り戻すということは非常にむずかしい、困難な、不可能に近いことではないかということを痛感するのでございます。いま御指摘の天然記念物にもうすでに指定したもの、そういうものも枯死寸前であるということを考えますと、まああとでも機会がございますか、いろいろな文化財あるいは無形文化財というものとともに非常に私はこれを回復し、保存していくということになみなみならぬ努力をしなければならぬということを考えておりまして、いま調査団を、戦後も何回となく派遣をして、まさに枯死するものを、あるいは消え絶えなんとしておるところの動物その他のものを保護したいという熱願を持っておりまして、自然と、そのような天然記念物の保護というものには、いま報告が参っておりますが、これを保存保護していこうということに、私は非常な熱意を持っておるということは申し上げておきます。
  352. 大石武一

    国務大臣(大石武一君) お話のとおり輝かしい太陽とか青い海、そういうものは何としても沖繩に残したいと思います。ただ、そういうものをいつまでも残しますには、何も手をつけないでおることが一番望ましいわけでございますが、いままでの沖繩の人々のことを考えると、将来のことを考えます場合には、何としてもやはり経済開発ということを行なわなければならないと思います。しかし、経済開発を行ないますと一挙に重化学工業が入ってまいり、大量に入れば必ず公害が起こります。何としてもこれは防ぐことはできません。しかし、これは行なわなければならないことでございますから、やはり月並みな言い方でありますが、公害をできるだけ予防しながら、これらの産業の開発をはかる以外にないと思います。それには先日の通産大臣の答弁や、いま山中総務長官の御答弁のように、やはりいろいろな立地の問題とか、あるいはそこに持ってこられるいろいろな企業の種類であるとか、あるいはタイミングの問題とか、そういうものを十分に勘案しまして、そうしていくほかございませんが、一番大事なことは、それらの地区を全部沖繩全面にばらまかないように、一部の地域に限るということと、もう一つは、やはり何と申しましても新しくつくるのでございますから、どのような規制もできるわけでございますから、できるだけ基準をきびしく規制をして、これに耐え得るようにしていくということが大事だと思います。そういうことを中心として、あまりあっちこっちの自然を破壊しないように、そういうことにしてまいるのが根本的な方針でございます。その他いま沖繩ではいろいろと政府でも自然を保護いたしまして、いわゆる沖繩政府立公園とか、そういうものがございます。こういうものもわれわれはできるだけ十分に調査をいたしまして、そういうものを国立公園なり国定公園に指定いたしまして、十分に沖繩の自然景観を守ってまいりたいと思います。先ほどの海岸のオニヒトデの問題でございますが、これがサンゴを死滅させる一番悪い原因のようにいま考えられます。これにつきましては、現在もぐっていってもりで突いてとる以外に方法はないのでございますが、来年からは来年度の予算におきまして、われわれも何とかして、これに対処する方法を考えて予算を要求してございますので、できるだけ早く、これに対処し得るような方策を考えてまいりたいと思う次第でございます。
  353. 鈴木力

    鈴木力君 経済開発をやめて沖繩を自然の沖繩にしろと、私もそこまで言うつもりはもちろんございません。ただ、経済開発という名のもとに、あるいは経済開発が自然というもの、あるいは天然記念物というような貴重な学術的な資料、そういうものを無視してやっておる。もうこういう例が非常にたくさんあるわけでしょう。これは、いまのところはまだ施政権がアメリカにあるということですから、直接の責任はないというおっしゃり方もあるだろうと思うんです。しかし、やっと解決はしたことではありますけれども、たとえば久米島の真謝の福木並木ですか、この問題なんかはまさに経済開発と自然の景観、あるいは記念物とのこれの争いであったわけですね。相当沖繩県の中で長いことこれの争いがあって、開発か保護かということで、どうやらまあ文化財保護委員長のあっせんで何とかかっこうがついたということがあるわけです。だが、ここはかっこうがついたところですが、かっこうがつかないところがまだ非常にあるわけです。これを今後調査をしてというような——私はさっきからむなしい気持ちになったと申し上げたのは、何かわれわれがこういう問題を具体的に指摘をすると、政府側の答弁は、いま調査中でございます、調査して——方向はきわめてりっぱであるけれども、その間にむしばまれている。だから私は、どうせ沖繩が本土に復帰をするというなら、もう直ちにでも手をつけなければならないものがあるはずだ。具体的にここがどうしているというようなことの二、三の事例の御答弁が実は出てくるのではないかという期待があったわけです。しかし、それがなかったということは、私はやはりむなしい気持ちがなくならないのです。具体的に若干の問題について伺いますが、たとえば、これは通産大臣に伺ったほうがいいと思いますが、南部の地区の天然ガスの開発がいま計画をされておる。おそらく私が知っておる限りは、まだ着手はされていないようには聞いておりますが、これがまた学術的なといいますか、学者間でも地盤沈下につながるという心配が相当にいまされておるわけです。しかし、企業側のほうはといいますか、あれは都市ガスに使うんだからというようなことで、そして地盤沈下についてはあそこの地盤は固いからとか、いろいろなことを言っておる。しかし、どうしても学術的には地盤沈下につながると言う。あの天然ガスは特に地下水を非常に多くくみ取らなければならないガスであります。そういうことがあるわけです。そうして、もしも南部が地盤沈下をしてしまったら、これはまたたいへんな問題になってくる。  それから、もう一つは、具体的な事例で、もし対策があれば伺いたいのは、西表島です。西表島は、これは有名な場所ですからいまさら私が説明を申し上げるまでもないことです。しかし、すでにあそこも十条製紙ですか、たぶん十条製紙と記憶しておりますけれども、ああいう企業が開発にもう入り込んでしまっておる。あそこは非常に貴重な学術的な資料がたくさんあるわけですね。イリオモテジマヤマネコなどはその標本でありましょうが、それがいまこのままでは侵されようとしておる。そうすると、開発が始まっておれば、調査の上、将来というような、ここで御答弁をいただいたような、そんなのんびりした問題じゃないと思うのです。この二つの点について、具体的にどういう手を打っていらっしゃるのか、伺いたいと思います。
  354. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 本島の南部に水溶性ガスが多量にあるということは、調査の結果明らかになっておるわけでございます。これの埋蔵量は百億立方ともいわれ、二百億立方ともいわれておるわけでございます。本州全部でもって採取しておりますのが二十四億立方だと思いますから、これに比べれば相当大きなものであることはそのとおりでございます。また、この堆積層は非常に年齢的に古いものでありますから、だいじょうぶだといいますが、水溶性ガスは多量の水のくみ上げを伴います。だいじょうぶ、だいじょうぶと言った新潟の地盤沈下は、水溶性ガスのくみ上げによって起こったわけでございますし、また、いまの江東地区なども、かつて江東ガス、いまは工業用水のくみ上げ等によって地盤沈下が起こっておるという例に徴しまして、これが採取に対しては慎重を期しておるわけでございます。まあ、安いものであるし、高い硫黄分のを使っておる沖繩としては、これをたきたいという気持ちは確かにございます。また、これをたくことによって、大気汚染も防がれるという面もありますが、地盤自体が沈下をしては元も子もなくなることでありますので、これは水溶性ガスの採取ということに対しては相当強い規制も行なわなければならないということで、慎重にこれが計画を考えております。これは簡単に掘り始めることのないようにしたいと思います。  それから第二の製紙工場の問題は、いまあるものはちり紙をつくっておるわけでございまして、この原料のパルプはつくっておらないわけで、本土から古い紙を持っていって再生しておるわけでございますから、いまのところ公害はあまりないわけでございます。一時、沈でん水を流したために漁業界との間に問題がございましたが、これは漁協との間に協定ができましたので、そういうことに対する本土のような大きな影響はないわけでございます。しかし、新しい製紙工場ということになりますと、これはもうパルプをつくる過程においてはいろいろな障害が起こるわけでありますので、これは本土に復帰前といえども琉球政府等と連絡をとりながら、公害を起こさないように厳重な規制ができるように考えておる次第でございます。
  355. 鈴木力

    鈴木力君 私は、いまの通産大臣の答弁のうち、あとの西表島の十条製紙の開発について、後段の御答弁のとおりであれば、それでいいのですけれども、パルプ材の伐採から運搬の開発道路、それらによって、天然記念物であるいろいろさまざまな貴重な資料が、これも死滅に瀕しようとしている。そうすると、ああいう企業の開発に、施政権が日本に来たら——日本政府が施政権を持ったら直ちにでもあれには手を打たざるを得ないだろうし、また、返還前といえども放置しておくわけにはいくまい。そういう観点で聞いたのですから、簡単にでもはっきりと伺いたい。
  356. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 西表に、確かに八重山開発株式会社と琉球政府との契約によって、一万八千ヘクタールの伐採と琉球松の植樹ということで、切り出しが行なわれていたわけでありますが、現在は、その後イリオモテヤマネコの問題等も自然保護の観点から議論になりまして、一万三千ヘクタールに改定をされております。しかしながら、最近琉球政府の林政審議会で、これを六千ヘクタールくらいまで縮めたらどうかという意見等も出てきているようであります。また一方、私も現地に参りまして、こういうものはやめたほうがいいという意味の率直な意見を申し上げましたところ、やはり西表の西海岸の白浜、租納部落等は全く山の生活のみで生活をしておられます。したがって、全然山の伐採というものを禁止された西表島ということであれば、自分たちは生きていけない。これは琉球政府のほうもそういうふうにやはり認めておられますので、したがって、今後伐採、植林の許容面積を幾らにするかという問題を詰めてまいりたいと思いますが、なるべく自然保護で進めてまいりたいと思います。  なお、メヒルギ、オヒルギの、東西両方の河川に密集しております地帯について、林道を——一時、全く原始的な、急斜面を直角に切って砂を落としていくだけの林道をつくっておりましたので、これはやはり東と西の部落の人たちは直接行き来のできない、石垣市まで船で行きませんと戻ってこれない、そんな島の中の東西の部落が行き来できないという状態で、痛切に連絡道路を要請しておられますので、この林道規格をやめて、復帰記念の十分の十の国庫補助によるきちんとした県道規格の道路として、そういうような土砂をかってに削って谷に落とした結果、メヒルギ、オヒルギ、アダン等の林に影響を与えることのないような、規格のきちんとした横断道路にしてあげたいということで、それでいま政府も地元も合意をいたしましたので、その線で計画を進めようといたしておるわけであります。
  357. 鈴木力

    鈴木力君 私がいま、こういうことを申し上げたのは、まあ具体的にいろいろいい御答弁はちょうだいいたしましたが、この沖繩振興開発特別措置法案を読んでみますと、どうも私には心配な点がある。心配な点があると言いますのは、振興開発特別措置法の二章には、特にこの教育及び文化の振興に関する事項、あるいはそれに関するいろいろないま申し上げたような点が項目としてはある。しかし、この第十一条の工業開発地区の指定のところには、私が心配なのは、この第十一条の第一項ですが、「工業の開発を図るため必要とされる政令で定める要件をそなえている地区」と、こうなっておる。この政令の中身が一体どういうことを考えておられるのか、これをまずひとつ伺いたい。  それからもう一つ、この第五条でありますが、第五条に国の負担または補助の割合の特例というのがあって、別表によって、これは国がどう、どう、どういうやつというのがずっと出ておる。残念なことに私が見た限りにおいては、この場合にはこの法律による。教育なり文化なり、あるいはいまの自然保護なり、それらに対する国の負担または補助の割合ということは法的には何ら根拠がなされていないみたいに見える。そうすると、悪く解釈をすれば、長官の御答弁を伺っても、非常に自然に理解があるような、教育、文化に御理解があるような御答弁はいただくけれども法律そのものは軽視しているのではないか。もう一つは、この政令の中身いかんによっては非常に重大な問題があると私は感じますので、まずその別表からはずした理由と、それから政令の中身、考えていらっしゃる構想を伺いたいと思うんです。
  358. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 振興開発特別措置法の第十一条、   〔委員長代理剱木亨弘君退席、委員長着席〕 工業開発地区の指定は、その手続は沖繩県知事の申請に基づいて審議会の議を経て、関係行政機関の長に協議して定めることになるわけでありますが、その際に第三項で、沖繩県知事は申請する場合にはあらかじめ関係市町村長の意見を聞かなければならないというふうに……。
  359. 鈴木力

    鈴木力君 そこを聞いているのじゃなくて、将来どういう政令を、どういう項目を出すのかということを聞いている。
  360. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 地域の同意を得てやるわけでありますが、その場合の政令としては低開発地域工業開発の特別措置法、これを大体参考にして定めたいと思います。御承知のように低開発地域工業開発促進法施行令第一条では「工場用地及び工業用水並びに労働力の確保が容易であり、かつ、輸送施設の整備が容易であること。」等が基本的な条項として定めてございますが、これを受けまして沖繩においても輸送施設、労働力、工場用地、こういうものの確保に資するような条件を定めるということでございまして、たぶんお手元にはおそらく政令案要綱の形でお届けはしてあると存ずる次第であります。さらに別表並びに別表をさらにこまかく定めました補助率、負担率の一覧表はお手元に届いておると思いますが、ただいまお話しになりましたのは、本土でいわゆる予算補助と申しまして、法律で補助率、負担率等を定めていないで予算で補助するもの等がございます。定額補助等もございますし、そういうものについて、沖繩についてはやはり本土の一般よりも特例を定めたいと思っておりますが、これはやはり予算補助でございますので、文字どおり予算編成の際に案をつくってみないと、これが実際上要綱であっても非常に出しにくい、動きやすいもんでありますから、その点を省略しているわけでございます。
  361. 鈴木力

    鈴木力君 私が不満だといいますのは、これは沖繩ばかりじゃないと思うんです。文部大臣に伺っても文部大臣はここでは答弁しにくいだろうと思いますけれども、本土の中における予算措置なり、それらについても、どうしてもこの教育、文化あるいは学術、これらについては私は経済面と比べると非常に軽視されているように思えてならない。それがいま、たとえば総理の先ほどの御答弁によりますと、すべての基本だと言っておる。すべての基本だと言い切りながら、国の負担については法制化しないで、予算を何か編成してみなければわからないという答弁が飛び出すところに、私は言うこととやっていることと違うのではないかという感じがしてならない。だから、少なくとも私はいま、先ほど以来申し上げました沖繩のこれから文化財なんかについても若干伺いたいんですけれども、そういう現状を考えますと、いま総務長官から伺ったような姿勢では私は納得するような結果が出てこないと思う。だから、いまこの別表にほんとうは私はそういう面は入れるべきである、あるいは政令で工業開発地区を指定する場合、前提条件として重要な文化財あるいは重要な記念物のあるところ、そういう地域は避けなければいけないという点が、これはやはり私は法制化されるだけの値打ちはあるものだと思う。それをあえてしないということはやはりあまりにも経済優先主義だ、そういうふうに考える。これは総理大臣の御見解を伺っておきたい。
  362. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへんむずかしい問題でございます。先ほどもちょっと触れられましたが、開発か保存か、これは絶えずいつも重点をどちらに置くのだと、開発、保存、まあその二つがときに矛盾する、撞着する、こういうようなことになりますが、これはまあたいへんむずかしい問題です。私はその間にうまく調和をとることが必要なことではないだろうか。奈良県の明日香村について、私どもはあそこを保存するということでいろいろくふうし、諸施設を設けましたが、やはり明日香村の方々もぜひとも開発のほうにもつと力をいたしてくれ、ここだけはいつまでもいなかですかと、そう言われるようなことになってはたいへん御迷惑だと思いますので、そこらの開発と保存、両者の調和、これに重点を置くべきじゃないかと、かように思います。ことに沖繩の場合、もう一つ大きな問題は、何といってもおそらく出てくるんだろうが、軍基地、これが一つある、そういうまあ非常にむずかしい場所でございます。支あ幸いにしてたいへん広い地域、ことにまたそれが島々である、そういうようなところからも、これはまあ本島だけが開発、保存と、こういうことで競争しておるわけでもない。全体として、そういうことも考えるべきじゃないだろうか、私はさように思います。
  363. 鈴木力

    鈴木力君 私が伺っているのは、経済開発をするなということは言わないということを最初から申し上げているはずなんです。いま総理がおっしゃったように、開発と保存との調和ということをおっしゃっておる、調和をおっしゃるなら、ここに保存のことが出てこなければうそだということなんです。片手落ちではないかということを私は聞いておるのです。
  364. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 確かに法律にそのような地区を指定する場合には、教育、文化あるいはまた天然記念物等を配慮してつくれということを書くことも、私はやはり可能だと思います。しかし、関係の市町村長の意見を聞かなければならない、そして聞いて知事が申請したときにやるわけでありますから、もちろん、それを受けた場合でも、それらの点は留意してまいらなければならないことの一つでありますから十分留意はいたしますが、現在の法のたてまえとして、その点を前提条件に法律化していないという御指摘があり、おしかりがあるならば、私もあるいはそのような点で配慮が少し足りない点があるのではないかと思いますが、法律としてはこれで、私は大体地元の町村長さんがよく知っておられますので、そのようなことは現実には避け得るであろうと考えております。
  365. 鈴木力

    鈴木力君 時間がありませんからこれ以上繰り返しませんけれども、しかし、やはり姿勢として何か手落ちだというような印象が与えられるようなことはやっぱり避けてほしいということは、これは強く要望申し上げておきたいと、こう思います。  そこで、時間がどうも早くなくなるので、あと簡単に文化財の問題について若干の点だけ伺っておきたいのですが、これは文化庁の長官に伺ったほうがいいと思いますけれども一つは、文化財保護委員会が今度の施政権の返還によって本土法が適用になると思うのです。だが実際はいままで文化財保護委員会は、沖繩では一つの行政機構としてやってきているはずです。それが今度は諮問機関になると思うのですね。だが実際のいままでの文化財の保護あるいは文化財の調査、こういう点について相当に努力をされておるこの機構をいつどういう形で変えられていくつもりなのか。それをひとつお伺いいたしたいし、時間の都合上、御質問を並べて申し上げますから、あとでまとめて御答弁をいただきたいと、こう思いますが、あと一つ一つの文化財の保護についてはもう私は伺いません。ただ重要文化財で、あるいは国宝に匹敵するものもある。あるいは国宝には匹敵しないが、重要文化財としてきわめて値打ちのある、こういう文化財で沖繩県内から他に流出をしているようなものについての調査があるのかないのか。ないとすれば、今後何か考えているのか、いないのか、伺いたいのであります。と申しますのは、御存じのように、沖繩県にある重要文化財がアメリカに相当に行っておる。これは実はアメリカの当局の協力を得てある程度沖繩に返ってきているはずであります。博物館にも戻ってきているはずであります。だがしかし、博物館の館長の話によりましても、全部戻ったとは思えない。そうすると、さらにもう一度でも、あると思うところの協力を得ながらでも、もう一度調査をする必要があるのではないかということであります。また、いま本土にも相当に流れておるのではないかといわれておる節が相当にあるようであります。そういう調査の計画があるのかどうか伺いたい。なければ、早急にでもこれは調査して保存の方法を考えていただきたい。  それから第三点は、無形文化財についてでありますが、特に私は紅型と壺屋に行ってみましたけれども、これは私はまだ確証を握っておりませんのではっきり申し上げられませんが、聞くところによりますと、紅型あたりは本土の中でもうすでにみやげ品としてイミテーションがつくられているらしい。もし、そういうようなことになってきますと、あの紅型は放置しておけば経済的につぶれてしまうのではないか。あるいは壺屋にいたしましてもそうだと思います。非常に古い歴史を持っておりながら、いまやあそこは、もう煙突の煙で公害問題なんかまで起こっておる。そういう形で放置しておくと、これもまた将来が危ないのではないかと思うのです。しかし、伝統的な紅型や壺屋等でありますと、私は十分この無形文化財に指定をして保護する値打ちがあるのではないかと、これはもうしろうと考えみたいですけれども、そんな気持ちがしてならないのであります。  この三点についての文化庁長官の御見解を伺いたいと思います。
  366. 今日出海

    政府委員(今日出海君) 先ほどの第一の御質問にお答えしますが、いまのところ、沖繩の文化財保護法によりまして琉球政府の文教局の外局になっております行政委員会が、文化財保護委員会というものをその中に置いております。その仕事を遂行するために、その文化財保護委員会の中に事務局が置かれておりますが、本土復帰後は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律が適用されることになりまして……。
  367. 鈴木力

    鈴木力君 あまり詳しくなくていいです。
  368. 今日出海

    政府委員(今日出海君) ああそうですか。それでは簡単に申しますと、教育委員会と同じ形になります。それで、教育委員会が文化財の問題を取り扱うことになりまして、文化財保護の仕事に当たるのでありまして、現在十二人ぐらいおりますが、復帰後においてはもっと文化課といいますか、文化財保護課という、よく県にございますような課ができて、その間、従来の仕事を移管して十分にやれると思います。  それから琉球には、大体国宝、重要文化財に類するものが、いまの現在の沖繩できめておりますものが三十ぐらいございます。で、その三十のものは海外に出ておりません。なお、それに準ずる重要なものがあるかもしれませんが、それは速急にいま調べて、海外流出というものを、あるいは沖繩本土からの流出を防げると思います。  それから紅型染色類、それから壺屋、陶芸というようなものは、これは無形文化財として今後国の指定にするように、きびしく正しいもの、本物というものを保護していきたいと思います。
  369. 鈴木力

    鈴木力君 時間がありませんから、あまり申し上げませんけれども、第一の点は、私は制度論で言えば、本土法が適用になるということが、教育委員会法もそうだと思います。私は、きょうは時間の都合で教育委員会法には触れませんけれども、これはあとでうちの同僚委員から特別委員会のほうで質問する予定になっておりますから、私は触れませんが、機械的にそういう形に移行するということを私は心配している。いままで行政機関として、外局として相当に技術的にもずっとこう把握をされておる。だから、そういう機構をいきなり教育委員会の諮問機関というような形に機械的にやらないような、実際の仕事の内面的な指導ということがほしいのではないかという気持ちなんです。これはひとつお考えおきをいただきたいと思います。  時間がありませんから、あと軍事基地と教育施設の関係について伺いたいんであります。これは先ほど来他の委員からも御質問がありました。そして、防衛庁、施設庁からも御答弁があったのでありますが、端的に私は伺いたいのは、沖繩にあるこの騒音障害を受けて、教育がほとんど機能的に麻痺しているような学校が相当にある。まあ先ほど来、三十あるとか何十あるとかという話がありました。きょうはその数字や何かのこまかいことには触れませんが、それについての施設庁が、具体的にことしは何校、来年は何校というような計画があるのか、ないのかですね、それをはっきりと伺いたい。
  370. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 先ほどもお答えをしておったわけですが、来年度予算に五千数百万の調査費を計上いたしまして、そうして詳密な調査をして、四十八年度から、四十八年にはどれだけ、四十九年にはどれだけ、この騒音防止工事ができるかというような計画を本格的に、これは全土にわたって調査の上立てるわけです。しかし緊急のもの、だれが見てもこれはひどいというものは、もうこれは調査をしないでもわかっておりまするので、その経費については、五億円程度のものをとりあえず概算要求をしておるような次第であります。詳しくは施設庁長官から……
  371. 鈴木力

    鈴木力君 いい、詳しくは要らない。緊急のものが五億円と、こういうことなんでして、その点の防衛庁長官の考え方が私はどうしても理解できない。できないというのは、先ほどあげた三十何校というのは、これはみんな緊急なもんですよ。現在もう授業ができないんです。しかもそれを一級、二級とか言っているけれども、私が行って見た限りでは嘉手納小、中とか屋良小とか、あの辺にばかり盛んにやった、やったと、こう言っているでしょう。ところが実際はそうでないところの南のほうの、たとえば普天間第二中学校ですか、小学校だったかとも思いますが、新しくできた、新しく建築をされた校舎にも防音施設がない。そしてヘリコプターの演習が四六時中行なわれている。授業を中断せざるを得ない。だから緊急を要するものとか要しないものとか、いまや四十八年度からなどということは、私は問題にならぬと思う。  そこで担当の総務長官に伺いたいのですが、総務長官がことしの十一月二日の予算委員会で、わが党の安永委員の質問に対してこう答えておる。まことにりっぱな答えなんです。もう一度読んでみなくてもいいと思うけれども、たとえば教育、「子供にとって、一年は取り返しのつかない一年でありまして、その環境の中で嘉手納小学校、中学校」云々とある。非常に私は理解のある答弁だと思う、担当大臣としてですね。そうして「このような防音装備については、直ちに本年度予算で処置を終わっておるところであります」と、こうなっている。総務長官は予算委員会で予算で処置を終わっておると答弁をしておる。防衛庁の長官は、緊急なものについては五億円の予算をつけておるが、あとは四十八年度だ。その緊急の度合いについてもどうも私は疑問に思う。こういう形で、一方のところは適当においしいようなことを言って、献立はいいところを並べておいて、実際にはそれは腹減った人にだけ——極端に腹減ったと、こっちが認定する者には食わせるが、あとは食わせませんぞ、ということにしかなっていない。もしも、いまの防衛庁長官のおっしゃることがほんとうであれば、総務長官の答弁はあまりにもちゃらんぽらんだ。どっちがほんとうだかはっきりしてもらいたい。
  372. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私が安永委員に答弁をいたしましたのは、私が屋良小学校に行ってそして直接その騒音の状態も知り、そして直ちにそれが本年度予算で嘉手納、屋良小中、嘉手納中学校を処置したということを申したのでありまして、ただいまの防衛庁長官の言われました、一方来年度予算において実施すべき学校数、その場所名というものは、当然要求額としては防衛施設庁長官のほうで説明できるものと思います。
  373. 鈴木力

    鈴木力君 もう要らない。時間がないから要らないです。私は数字をひとつとか、どっちがどうとかということじゃなくて、これはもう政府全体がほんとうに真剣に取り組むべきことではないのかと思うのです。  そこで私は、もうあんまりやりとりはしませんけれども総理大臣がさっき私に答えた、教育はすべての基本である。すべての基本である教育の場が、いま言ったような状況で放置をいままではされておったというのですよ。屋良小学校を全部防音校舎をつくりましたと、文部省からそういう報告があった。私が行ってみたら、なるほど防音校舎はつくった、しかしそれは間に合わせのものだ。しかも沖繩は非常に暑いとこですから、冷房装置がなければ防音校舎の意味がない、二重窓は。その冷房装置はアメリカ軍の古いものの払い下げをつけてある。半分しか使いものになっていない。そういうような現状で、処置をしました、処理をしましたと片ずけているところに、私は政府全体が教育の問題はすべての基本であると言い切るそのものに、真意があるのかないのかという心配をむしろ持つのです。これはだから、防衛庁の長官にいま伺ったのは、事実上の予算の数字だと思いますが、しかし、私はこれはまだ予算が決定したわけでもないし、政府案がきまったわけでもない。総理に直接私は、これはほんとうに強い御要望を申し上げておきますが、ほんとうに国の第一の基本である、そういう気持ちで取り組むならば、少なくとも一年間で相当部分はやってやるというような予算措置を、ぜひ今度は組んでみせてもらいたい。それがもしできないで、五億円なら五億円という、そんなところで済まされるなら、私はやっぱり総理の答弁も、これもまたあやしげなものだ、ことばとやることとは全然違うという解釈を、予算を見てから解釈をしたいと、こう思います。これは御要望を申し上げておきます。  それから、もう一つ、私は総理大臣に、もう御質問よりも御要望のほうがいいと思うんですがね。私はこの防音校舎、教育の障害条件のある校舎を防衛庁、防衛施設庁の所管にしておるということが、どうしてもわからぬのですよ。国費が出る、国費でやるんですから窓口はどちらでもいいわけです。それならば文部省が直接の担当で、そしてやることがほんとうに筋が通ると思うんですが、これは午前に喜屋武氏からもそういう筋の御質問があったと思いますけれども、担当を文部省にして、文部予算に置きかえて、教育の場からのもっと真剣な取り組みというようなことに変える気がありませんか。総理大臣に伺いたいと思います。  いや、これは沖繩だけの問題ではない、本土でもあるから……。
  374. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そのことではありません。ただいままでの言われた話では誤解があるように思いますので……。私も防音工事を施したという名ばかりの教室に入ってみました。そして非常に暗く、螢光灯をつけて、そして弱視や近視の子供がふえるというようなことも聞きまして、その場で根本的なりっぱな防音工事の予算というものをつける決意をして、本年度予算で処理をしたということでありますので、誤解のないようにお願いをいたします。
  375. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの御要望については、十分私沿いたいと思いますが、ただいま基地公害、そういう意味で、防音装置は本土内でも防衛庁の所管でございます。したがって、これはやはり文部、防衛両省庁で十分連携を緊密にして、そうして教育上支障のないようにする、これが必要なことだと思います。それで御希望に沿えると思います。
  376. 鈴木力

    鈴木力君 予算については検討していただくという御答弁ですから……。  いま私は、所管の問題は、まあどこが所管でも結局うまくいけば、別にどうということはないと思う。しかしやっぱり文部省は、教育の場としての学校の機能というものについては、何といっても専門だと私は思うのですね。本土がそうなっていることは、私は百も承知なんだ。そうして、いままでに本土でいまの防衛施設庁がやった工事の中に、教育的に見るときわめてしろうと的な設計なり工事なりが数々あったから、その点を申し上げた。これはまあ、検討しておいていただければ幸いだと思います。  時間がないので、最後に、まだ、軍事基地と学校の校地との接触しておる問題や、あるいは工事それ自体が安全を保障できないような条件の問題や、さまざまありますけれども、どうも時間がありませんからこれは後日に譲ることにいたしまして、文部大臣に若干の問題について伺っておきたいのでありますが、この公立文教施設の拡充についてですね、文部省は五カ年計画を出して予算要求等もなされていらっしゃる、このことについでは私は承知しております。だが、私は文部大臣がここでほんとうに考えてもらいたいのは、いまの本土の公立文教施設というのは私はきわめてお粗末な、きわめておくれていると思うんです。と申しますのは、六・三制がスタートしたときにいろいろな校舎の基準や何か——これは補助基準でありますけれども、基準をつくってそのまま、多少は改善をしたにしても、いま進んだ初等教育なり中等教育なりの場から見れば、あの考え方の校舎では、もう使い物にならぬ状態に来てる。だから私は逆に、本土のそういう文教施設の基準について再検討する時期にいま来てると思うんです。——時間がありませんから抽象的に申し上げます。だからこの際沖繩がこれを、まあ数字や何か一々は申し上げませんけれども、いまのその本土と比べてももう数十%水準が低いわけですから、この際五カ年計画でそれをやられるということについては私は、まあ一年でやれと言ったって、それは無理な話であれば五カ年計画でやるべきだ、やむを得ないと思う。しかしそのやり方については、将来早急に本土も変えていくんだという前提で、新しい発想のもとでやるというのではないと、おくれたまま、さらにおくれたような状態を繰り返すようなことはやるべきじゃない。抜本的な考え方をもって検討してみる用意がないかということも、一つ伺いたい。  それから、時間がありませんからまとめて申し上げます。特に過密地域につきましては、たとえば、御存じのはずでありますけれども、那覇市あたりではせっかく校舎をつくったけれども、間仕切り教室なんというちょっと珍しい名前の教室がございましょう。五教室分の校舎を建てて、その間仕切りをこまかく仕切って、六教室なり、そんな教室で授業しているような現状です。こういうことについての特別な処置ということが、いま考えられておるのかどうか。  もう一つ沖繩復帰したときに教科書の準備ができておるのか。これは、私は沖繩で副読本を出せというようなちゃちなことじゃない。もしほんとうに国民が喜んでというような——あるいは喜ばないでということになるかもしれない。少なくとも沖繩の施政権が日本に返ったという場合には、全国的な教育をそういう点でやらないと、本物にはならないだろうと思う。その教科書なり教材なりの準備ができているのか、計画があるのか。この三つを伺いたい。
  377. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答えいたします。  鈴木先生御指摘のように、実は私も内地の学校の建築基準もある程度改めなければならぬという段階に来ておると思うのであります。しかし、沖繩の場合におきまするというと、これはお話にならぬほどの状態で、御指摘の間仕切り教室というようなものが、これが基準になってはならぬと思うのであります。したがいまして、考え方といたしましては、少なくとも本土基準に一刻も早く到達するようにいたしたい。  それから、先生御指摘になりましたが、五年なんて気の長いことで、というお気持ちがおありだろうと思うのでありますけれども、これは琉球政府局当とも打ち合わせてみたのでありまするけれども、やはり能力的に見て五年はかかるという御意見でございます。そこで五カ年計画ということにいたしたわけであります。なるべく単年度の計画で進めたいと思いますが、そういう事情だということを御承知いただきたいと思います。  それから、復帰に伴います教科書の問題でございますが、実はこれは申しわけない話でありますけれども、すでにもう来年度のものは印刷をいたして、配布をいたしておる段階なのであります。いまこの記述を改めることはとても間に合わない状況にあるんでありますが、しかしこれにつきましては、沖繩の問題につきましては、もうすでに多くの教科書が、その返還交渉が日米間で進められており、一九七二年には返還されることになっておるということを記述をいたしております。したがって、さしあたり沖繩復帰という客観的事情の変化によって変更を要する部分については、各学校において指導をしていただくようにいたしたい。その後においていろんな問題が起こりますならば、そのつど指示をしなければなりませんし、それからまた、今後新たに記述を加える必要のあるものがありますならば、これは一般の改訂の場合と同様正確を期してやっていきたい、かように考えております。
  378. 鈴木力

    鈴木力君 時間がありませんから、もう一つだけ伺います。いまの問題等についても、そのままそうですが、と言い切れない問題もありますけれども、もう一つだけ沖繩の教育について伺いたいのは、今後沖繩も本土と同じように通信教育なり、そういう形の教育を行なわなければいけないと思うのです。ところが、沖繩の放送局のいまのOHKでありますが、あの施設なり設備なりを見ますと、およそ通信教育にこたえられる設備だと私は思っていない。あるいは教育——まあNHKの東京でいうと第三チャンネル、教育放送番組、放送教育をいま学校でも相当取り入れておる。しかし沖繩県の放送教育は、およそ放送教育になるしろものではない。カラーテレビはまだありませんし、白黒のテレビで、しかも飛行機で電波が障害ばかりされておる。こういうような教育放送をやるために、文部省はどういう構想を持っておるのか。あわせて郵政大臣に沖繩の電波関係といいますか、放送教育関係の整備の考え方——NHKにまかせるのか、政府として直接指導をしながらやっていくのか、伺いたいと思います。
  379. 安永英雄

    安永英雄君 関連。  ここで時間もありませんから、二点ほどいまの問題につけ加えて質問をいたします。  沖繩の教育を復帰に際して本土側からどう見るかという問題は、これは予算委員会で私も聞いたわけでありますが、少なくとも教育水準というものはあらゆる面で低い、これを引き上げていくという問題であります。したがって、この沖繩の五カ年計画というもので引き上げていくということでありますけれども、この沖繩の問題を見た場合に、一つの例として僻地の級別指定という問題について、いま引き上げるという問題からいった場合に、全くこの沖繩は、教育的に見れば沖繩全域が教育的な僻地というふうに私は見るべきだと思う。したがって僻地の級別指定の場合には、本土では一体船が通ったからといってこれを級地が下がってみたり、電灯がついたからといって僻地を下げる、いわゆる教員の僻地手当の問題くらいしか考えていませんけれども、これを同一視してはならないと私は思うわけです。したがって、長くなりますからここでちょっとお聞きしますが、へき地教育振興法の規則二条の十二号、ここで本土は本州、北海道、四国及び九州の本島をいうということになっておりますが、これは復帰した場合には、この規則の中で沖繩を本土につけ加えるのか、あるいは九州までにとどめておいて、そして沖繩全域がすべて僻地、離島というふうに見ていくのか、その点については重要でありますし、これはただ単に給与の問題だけではなくて、今後このへき地振興法に基づいて沖繩の教育というものをぐんぐん引き上げなければならぬと思うわけで、重要な意味を持っておりますから、この点の僻地級別指定の問題について、明確に文部省の考え方を述べてもらいたい。  それからもう一点、山中長官にお聞きをいたしますが、円切り上げの問題については、これはわが党としてはあとの機会に十分に質問をしていくつもりでありますが、しかし早急を要する問題は、この前、変動相場制への移行に伴う臨時措置、緊急措置というものをとられたわけであります。とまろが現在、もうすでに各大学の入学試験等も受付を開始いたしておりますし、近々のうちに入試も行なわれる。本土では学資をめぐって本土にやろうかどうかという父兄あるいは学生自身の心配もある。この中にこの一ドル三百八円というこの決定がなされ、これが公示された。こういった問題でありますから、他の政策、財政その他一切についてはあとで十分お聞きするとして、この変動相場制への移行に基づいての緊急措置というのは、私は不十分だったと思うんです。これは長官どう思われるか知りませんけれども、現実に沖繩の学生等と私は会ってみて、あれだけではやはり不安なんだ。親元から送ってくる学資という範囲もずいぶんまちまちなんです。それで特に大学の納付金の問題、この問題は差し迫っているわけでありますから、これについて明確なひとつ長官の態度をお示し願いたい。この二点だけを聞きたいと思います。
  380. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 鈴木先生の通信教育の問題でございますが、沖繩の通信教育はまことに不十分なものであります。実は沖繩で通信制の高等学校というのはたった一つあるだけでありまして、しかも、それが昭和四十六年五月一日現在の生徒数は五百七十七名、いままだ卒業生は出ておりません。が、NHKの高校通信教育講座は、現在沖繩で放送が流れておるだけでございますけれども復帰後は設備を改めまして沖繩のいかなる僻地へも流れるようにするという方針でおるのであります。  それから、安永先生にお答えを申し上げますが、僻地の問題でございます。お話のように、沖繩におきましても本土とほぼ同じ内容のへき地教育振興法が制定せられておりますけれども、これはこの僻地学校の指定の基準も本土と同様の基準を用いておりますので、本土への移行に際しましては、円滑に移行し得るものと考えております。ただ沖繩では、現在のところ沖繩本島、それから宮古島及び石垣島を本土として取り扱っておりますけれども復帰後は宮古島、石垣島は僻地として取り扱いたいと、かように考えておるわけであります。  それから、ドルの移行の問題につきましては、山中長官からお答えをいただくことにいたします。
  381. 廣瀬正雄

    国務大臣(廣瀬正雄君) 教育放送のことについて鈴木先生からお尋ねがございましたので、お答えいたします。  御指摘のように本土におきましては、公共放送のNHKも民放もまたラジオもテレビも、相当のパーセンテージをさいて、学校あるいは教育の放送をいたしておりますことは、御指摘のとおりでございますが、これに比べますと、沖繩は非常に劣っておるのでありまして、テレビはOHKが放送をやっておりますけれども、これはNHKの番組を一部利用しているというようなかっこうでございまして、一日に二時間半くらいしか放送いたしておりません。それから、ラジオは民放が三つありますうち、二つだけ教育放送をいたしておりますが、これもNHKの放送を利用いたしておりまして、これは琉球政府のあっせんによってやっております。文教局のあっせんによってやっておりますけれども、これは二つの民放でわずかに六十数分しかやっていないというような状態でございまして、まことに気の毒でございます。そこで、ただいまOHKのほうで教育テレビの局を三つ建設中でございまして、これに対しましては日本政府から約四十二万ドルの建設費の財投を出しておりますわけでございまして、このような現状でございます。それから、ただいま高見文部大臣から申しましたように、本土帰還後は、すべてNHKの教育放送の番組、これを全部沖繩にかぶらせるということにいたしますわけでございます。ただ問題は、ただいま御指摘になりましたカラー放送でございますが、これについては佐藤総理が特に一日も早く沖繩にはカラー放送を提供するようにという、たいへんな御熱意を込めての御指示がありましたので、昭和四十五年度から工事を進めておりますわけでございまして、約三十二億円かけまして来年の復帰時までに、まあ何月に復帰になるかわかりませんけれども、六月中までにはカラーテレビが一つだけは沖繩に送れる。ただいま本土から沖繩に四回線の見通し内のマイクロケーブルを建設中でございますが、そのうち一つだけが六月にできる、ただ残りの三つは十二月までにできる、このようなことになっております。それから、いま一つの問題は、これまたお話のございました先島の問題でございますが、これは現在本島と先島の間に電話を通じておりますマイクロウエーブ、これは見通し外のマイクロウエーブでございますけれども、これを多少開発すれば白黒テレビぐらいは送れるかもしれないというので、郵政省の来年度の予算に四千数百万円計上するように、いま大蔵省と折衝中でございますが、これをやりまして、これの開発ができれば白黒のテレビを、ただいま電話に利用いたしておりますマイクロウエーブを利用して白黒のテレビを放送することができるのでありますけれども、これができなければ、昭和五十一年度か二年度までのうちにNHKが深海用の海底ケーブルを開発するというようなことで研究を進めておりますわけでございまして、これが成功すれば五十一年か二年には先島にもテレビが行くというようなことになりますわけでございます。さよう御承知おき願いたいと思います。
  382. 鈴木力

    鈴木力君 時間ですからこれで私の質問を終わりますが、ひとつ委員長に要望を申し上げておきたいと思うのであります。総理のおことばをかりても、教育、文化はすべての基本だと、こういう問題が、今度のこの沖繩返還という重要な課題の中に、法律もたくさん出ているわけです。少なくとも文教なら文教の一つ法律だって、二日か三日討論しないと問題点が明らかにならない。それが連合審査という形でかろうじてこれができましたけれども、こんな時間で審査を終えたなどと言われるような運営は、私は改めていただきたいと思うのです。きわめて重要な問題をたくさん含んでおると思いますし、ほんとうに十分に審議をして、みんなが納得するようなものでないと、これは将来疑点を残す、あるいは悔いを残す、こういうことがあってはならないと思います。私はさらに、教育問題では教育条件や何か、こまかいことも、あるいはいま風疹児などという非常に重要な問題もあります。その他、教育委員会制度、重要な問題がたくさんありますが、きょうはそれを保留しておきますけれども、こんな形で審議を終えたといって、この特別委員会を終えていかれないように、再び重要な問題については十分審議できるような機会をつくるように強く要望申し上げて、私の質問を終わります。(「答弁漏れ」と呼ぶ者あり)
  383. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 安永委員の関連質問に簡単にお答えさしていただきます。  ただいまのお尋ねの、本土留学の学生にかかる差損補てんの支出につきましては、さきに一億、琉球育英会に出しておりますが、この中には、月謝並びに入学金というものも含めておるわけでございます。ただし、御承知のように切り上げ等が大きくなりましたので、これに対しては当然追加をする予定でございます。     —————————————
  384. 長谷川仁

  385. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 いただきました時間が私はたいへん少のうございますので、御回答はできるだけ明確に、要領よくお願いを申し上げたいと存じます。  まず、円の大幅切り上げによる沖繩措置の問題についてお尋ねをするわけでございますが、政府は、通貨交換は沖繩復帰後に実施すると言っておられますが、現地におきましては、即時切りかえを強く要求されておるわけでございます。この問題につきましては、午前中にも質疑があったようでございますし、政府からの御答弁もあったようでございますので、私は、この問題についての御答弁はいただかないことにいたしますけれども、この現地の要望には一日も早くこたえていただきますように、私も強く要望を申し上げておきたいと存じます。  さて、変動相場制に移ったときに、在本土の留学生並びに研修生に対する為替差損の補てん措置として一億円、物価高その他に対する補償措置として十億円のお金が組まれた、手当てをされたと聞いておりますけれども、今日までにそれらの支出の状況はどうなっておりますのか、伺いたいと思います。  さらに、本月の中旬ごろに十億の手当てをされたと伺いますけれども、このたびの予想外の切り上げによって、沖繩における損失に対してはどのように追加をなさるおつもりか、あわせて承りたいと存じます。これは総理並びに大蔵、長官、皆さまから、一言ずつでけっこうですが御答弁をいただきたいと存じます。
  386. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) お話にもありましたように、すでに二十億——十億を追加いたしまして二十億にいたしましたが、最初の十億の支給事務その他がやや手間どりまして、現在十億を追加支出いたしました点では、その消費率が約五億ぐらいと見られた時点において、切れ目のないように追加支出をいたしました。なお十億の追加の際に、長期療養者で確認をされました者について支給する一千二百万円も、同時に支出することにきめたわけでありますが、なお、お話しのように大幅な切り上げをいたしましたので、さらにその不足については今後追加してまいるつもりでありますが、学生の送金については十二月精算ということに一応なっておりますので、現在の金額で一応これまでの分は精算できることになりますので、あと復帰までの分を追加したいと考えます。
  387. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 実情を十分見きわめました上、総務長官と相談の上善処いたします。
  388. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま二人の大臣から答えたとおりですが、十分実情を調べまして、そうしてなお手当てに不足がないように気をつけるつもりでございます。
  389. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 一言ずつと申し上げましたので、まことに一言ずつの御答弁であったようでございますが、私はその十億について、あるいは五億について、詳細にどのように支出をなさったのかという、その支出の明細が承りたいと、こういうふうにお願いをしたわけでございます。しかし時間がございませんので、それは資料としてひとつ私の手元までぜひ御提出をお願い申し上げたいと思います。  それでは時間の都合で次にまいるわけでございますが、たとえば、この入学受験期を控えましての学生の渡航もございましょう、そしてまた、万やむを得ず内地に向かって渡航する者もあるわけでございますけれども、そういうときに沖繩で即時証明書を発行いたしまして、政府はすみやかに指定銀行などを設けて、そういう証明書を持った者に対しては三百六十円レートで補償してやることが非常に大切なことではないかと、このように考えるわけでございますけれども、それにつきましての御意見を承りたいと存じます。
  390. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはそのつど毎月毎月やらない形で琉球政府とよく、文教局それから琉球育英会と相談ができておりまして、東京事務所の預託しております円勘定というものの中から、琉球政府が確認をして支払ってくれておりますので、その面に事務上の支障が起こっているということは報告を受けておりません。
  391. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それは、いわゆる内地への渡航者ということの中で学生についてだけでございますね。そうでなくて、公務員の場合も緊急な問題があって内地に渡航する場合があると思います。そういう人たちに対しても、私はこの措置はぜひ必要だと思うのですが、それはいかがでございましょうか。
  392. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 公務員については、琉球政府と相談をいたしまして、東京で円建ての旅費の支給ができるということで話はついておる次第でございます。
  393. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 では、これはやはり三百六十円レートで補償していただいていると、こういうことでございますか。
  394. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 琉球政府は本土政府の援助金、ことしは対策費でございますが、それをやはり本土政府に本土の中で指定銀行に円勘定として持っておるわけでありますので、そこで操作ができるということでございました。
  395. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そうした問題につきましても、やはり私は詳しい資料を後ほど提出していただきたいと存じます。  で、質問を教育問題に移してまいります。山中長官にまずお伺いをいたしますけれども、長官が沖繩に行かれましたときに、制度のよしあしにかかわらず教育は本土並みにすると発言されたと承っておりますけれども、その真偽のほどを承りたいと存じます。
  396. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) それは部分的にではありますが、真のほうであります。
  397. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 真でございますか。
  398. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 真です。
  399. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そういたしますと、私は非常に問題がございます。と申しますのは、教育は真善美を追求するためであることは、私がいまさら申し上げるまでもございません。悪い制度であっても本土並みにしなければならないとお考えになった根拠について承りたいと存じます。
  400. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そういう言い方をされると、それは偽のほうになりまして、私は制度のよしあしの議論は別にして、という言い方をしたことを記憶しておりますから、そう申し上げたのです。ということは、本土のほうはアメリカの敗戦国日本に対する御承知のような教育制度視察団というのが参りまして、それの勧告によって教育委員の公選制も、あるいは六・三・三・四制というものも、一応日本政府はそのままやったわけなんです。ところが沖繩においては、どういうわけか、それを逆に主席の任命制というものでもって中央教育や連合教育の委員を任命制にしようという姿勢をとったのでありましょうが、日本と西ドイツに対して、アメリカが国として教育制度の民主的な制度として勧告したものとうらはらなことを、琉球政府の中では実はやっておるわけです。それに対して沖繩の教職員会が中心になって、断じてそれを許さないということで、総理もたびたび言っておられるように、敬服するような努力を続けられて、そのときにおける本土並みの公選制をかちとられたということの歴史が、同じアメリカを相手にしながら少し違っておりましたので、そこらの事実について私はわかっておりましたから、どちらの制度のよしあしは別として、やはり義務教育の生徒たちは、おとうさんがどこに転勤しようと、同じ制度の中でいくべきものが、やはり本土の各県を通じてのものではなかろうか。これは教育制度についての私の差し出口かもしれませんが、そういうことを申した記憶がございます。
  401. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 長官ね、あなたにちょっとお尋ねしたいんですけれども、本土と沖繩の教育制度の歴史というものをどのように御検討なさって、またどのように御認識をなさっておりますのか、長官から承りたいと存じます。
  402. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは本土の教育制度の歴史についても、ある過程において賛否相分かれて議論をしたこともございます。したがって、沖繩の制度について、これの賛否を主観をもって議論することは、私は差し控えたいという気持ちがありますので、そこで制度のよしあしの論議は別にしてということを言いましたりは、どちらがいい悪いという話を自分はしたくない。こういうことを言ったわけでありますので、やはり批判はしたくないと思います。
  403. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 その御答弁、ちょっとおかしいんじゃないでしょうか、その制度のよしあしということは。やっぱり本土と沖繩の教育委員会の歴史というものは違うと思うんでございますね、そのことを踏まえないと——そのよしあしにかかわらず、やはり本土並みにというような意見、そのおことばが出てくるその一番の根源が、いまあなたのおっしゃったところに私はあるように思うわけなんです。そこでですね、この問題はもっともっと詰めていかなきゃならない問題だと思います。そこで、文部大臣にひとつお伺いをしてまいりましょう。  制度というものは生きものでございます。特に教育制度というものは、住民や教育関係者の理解と合意がなければ適切な運営は期待できない。これは、私が申し上げるまでもなく、大臣は十分御承知のとおりだと考えるわけでございます。そこで、沖繩の教育委員会制度を一挙に本土並みに去れようと大臣がお考えになっております理由は、一体どこにございますのでしょうか。
  404. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答え申し上げます。  沖繩が本土に復帰してまいりますこの機会に、私は国民の共通の課題として、教育問題をとらえて見る場合に、地域によって教育行政の制度が異なっておるということは、必ずしも望ましい姿ではないと思うのであります。その意味から申しまするというと、昭和三十七年でありましたか、本土では任命制になりました。これについては賛否の議論がいまもまだいろいろ残っております。残っておりますけれども、少なくとも沖繩が今後本土に返ってくるという場合には、沖繩だけが別な制度だということが望ましい姿ではないと考えまして、その意味から申しまするというと、沖繩も鹿児島県と同じように教育委員会が任命制度になることのほうがよりよい制度ではないか、かように理解をいたしておるものであります。
  405. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ただいまお述べになった理由で、せっかちに本土並みを強制されるということは、私はどうも理由が希薄だと思うのでございます。無用な混乱と対立を招くということのほうに御心配はございませんか。私は、むしろそういったことをお考えいただかなければならないと思うわけです。沖繩の教育は、戦後一貫して民主主義と平和の理念を守り続けてきたことは、もうすでに御承知のとおりでございます。しかもそれは本土とは違い、沖繩みずからの血であがなったものと言えるのではございませんでしょうか。沖繩戦では教師の三分の一が戦死をいたしました。そして校舎の九割は破壊をされたわけでございます。そうした中で、しかも米軍基地に取り囲まれ、重圧に苦しみながらもひたすらに日本国民を育てるということを唯一の誇りとして平和教育を確実に推進して今日に至ったのが、沖繩の姿ではございませんでしょうか。そういう中で、中核ともいうべき教育委員会制度は五八年以来、教育委員の公選制を基調として、民主的制度として長年なじんできたところでございます。しかも、この制度は沖繩の教育に多大の功績を残してまいったということも、大臣はおそらく否定はなさるまいと考えるわけでございます。こうした本土とは全く異なった沖繩の状況というものを十分配慮するということがなければ、せっかちにこうしたことを——まあ同じことをやらなければ、本土に復帰したんだから一つだけ違ったんではぐあいが悪かろうといったようなことでは、私はどうも納得をしかねるというふうに考えるわけでございますけれども、大臣の御見解をもう一回伺いたいと存じます。
  406. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 同じことを繰り返すようでございますけれども、私は少なくとも教育行政の制度というものは、一国の文教制度のあり方としては、できるだけ同じ条件のもとに同じ水準での教育をやるということが、まず根本的に大切な問題ではないだろうかと存じます。もちろん私は沖繩の教職員の皆さんが、昭和三十三年でありますか、ただいまの公選制をかちとられた。そのときは異民族の支配のもとに任命制では服するわけにはいかないという、私は日本人としての非常な力強い御決意であったと思うのであります。今度は客観条件を異にいたしました、日本本土へお帰りになるのであります。日本沖繩県としてお帰りになるのであります。そういう意味から申しまするというと、沖繩県と鹿児島県とが違う制度のもとに教育行政が行なわれるということが望ましいとは考えておりません。
  407. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 この問題については、また別の機会にあらためて大臣にお聞きをしてまいりたいと存じます。  次いで、教育の施設、設備についてお尋ねをいたしますが、政府沖繩と本土の格差をなくするために、五カ年計画を考えておられるわけでございますけれども、その五カ年計画の総額は幾らでございますか。
  408. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答えいたします。  五カ年計画の整備に要します総額は、二百十八億円になります。所要の面積は六十万平方メートルということになっております。
  409. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 その費用で、本土のどのあたりまで格差が縮まってまいりますのか、承りたいと存じます。
  410. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 本土のほぼ現在の状態まではいけるという考え方でおります。
  411. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 過疎、離島の学校の現状について承るわけでございますが、「「ほら、あそこから空が見える。」「あ、ここからも」——子どもたちが指さした教室の天井を見上げると、青空がのぞいていた。」これは六九年の十月二十二日に出ている沖繩報告の一節でございますけれども、現在、本土と類似県の比較について一体どのようになっておりますか。こうしたところがもうほんとうになくなっておりますのでございましょうか。その点について承りたいと存じます。
  412. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 政府委員から……。
  413. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) 現在沖繩の僻地の学校は百十六校ございまして、教員の数が千百五十名でございます。これは本土に比べますと、小規模学校の数で申しますと、沖繩のほうが本土よりも平均いたしまして少ないわけでございますが、僻地の数から申しますと、本土よりもかなり高いというふうな状況になっております。
  414. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 文部大臣、そういったような青空の見えるような学校へ大臣は行ってごらんになったことがございますでしょうか。
  415. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私はまだ、実は参っておりません。まことに申しわけないことに存じております。
  416. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 やはり大臣には少なくともそういったことをほんとうに見ていただいて、そこで学ぶ子供たちの気持ちになって考えていただかないことには、ただ数字だけをはじいていただいたのではどうしようもないというふうに私は考えているわけでございます。ただいまも五カ年計画の総額をお述べになったあとで、まあこの費用で大体は現在の本土並みになるでしょうということでございました。しかし、そのときには現在の本土はもっともっと進んだものにならなければ、世界に伍していくことはできないのではございませんか。五カ年たったときに現在の本土並みにまでということでは私はどうも承服をいたしかねる、こういうことなんでございますね。
  417. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 私の申し上げ方が悪かったんでありますが、本土並みと申しまするのは五年後の本土並みという意味であります。五年後の本土の施設、設備の状態並みという意味でございます。間違いましたから……。
  418. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そうしますと、大臣、あれでございますか、これだけの費用を出せば、五年先には本土と全く同じ条件の学校ができる、こういうことなのでございますね。そうでございますね。
  419. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) さようでございます。
  420. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それではお尋ねいたしますけれども、先ほども鈴木委員のほうからお尋ねがあったわけでございますけれども、那覇市における過密状態でございますが、これは早急に解消できる問題でございましょうか、いかがでしょう。
  421. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 那覇、浦添の両市におきましては、御指摘の社会増の現象が非常に顕著なわけでございますが、この両市におきましては、四十七年度から五十一年度までの五カ年間におきまして、小学校七校、中学校五校の新設が必要とされております。これがために必要な用地面積は約二十二万平米でございますが、これを五カ年計画で補助をしてまいりたいというふうに考えております。同時に、これらの小中学校を整備いたしますために、建物といたしましては、約四万三千平米の建物が必要でございますが、これも五カ年計画で補助をしてまいりたいという考え方でございます。
  422. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それは、用地の確保はできるわけでございますか。
  423. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 琉球政府から可能だという報告を受けております。
  424. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それでは大蔵省にちょっとお尋ねをいたしますけれども、これはおそらく文部省のほうが一生懸命になっていらっしゃることなんでございましょうけれども、実際大蔵省がお金を出してくださらなければ何にもやれないわけでございますから、大蔵大臣いかがでございますか、これは文部省から出されたものについて、沖繩に関する限りは、文部省から出されたものについては、全部そのとおりに一銭一厘まけてくれと言わないで査定をすると、こういうことが言い切れるでございましょうか、ちょっとお伺いをしておきたいと存じます。
  425. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 沖繩の教育施設を本土並みにしなければならないということは、沖繩の中でなさなければならないいろいろなことの中で一番重要なことだろうと思います。そういうためには適切な支出は当然行ないます。しかし、いま御指摘になりましたように、文部省の要求は一銭一厘もということは、文部省にも間違いもあるだろうと思いますし、これは政府として最終的に合理的な予算を組むわけでございますし、連帯して国会に責任を負うわけでございますので、文部省と大蔵省が十分相談をしまして共同で責任を負える体制をとって国会に予算の御審議をお願いするということでございます。五カ年計画をいま出しておりますし、しかもことし五十億程度の要求がございます。そうすると、まあ五カ年にすれば二百億をちょっとこすわけでございますが、これは事業費ではなく補助費で申し上げておるわけでございます。まあ、そういう意味で沖繩の教育の問題には、大蔵省も前向きに措置をいたしたいと存じます。
  426. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 大蔵大臣、「前向き」はもう困りますね。やっぱり沖繩は、ほんとに、沖繩の人の心を心として、とおっしゃったのは一体どなたでございますか。そういうことになりますと、文部省といたしましても、これは力一ぱい一日も早く、ほんとに沖繩の人たちが安心できるようなその教育施設なり設備なりをやりたいということで一生懸命になってのあれでございますね。まあ文部省としても間違いがあるかもしれないなんておっしゃるのは、とんでもないことでございますよ。だから、出されたものについては、私はそのとおりにやっていただかなければいけないのではないかと思います。
  427. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ちょっと、前に申し上げた発言のうち、間違いがあるかもしれない、というくだりは取り消します。しかし、これは、予算は一銭一厘もまけないでいたします、とはお答えできません。これは、最終的には閣議で決定するものでございますし、総理大臣が述べられた基本的精神が貫かれておって、しかも合理的なものであり、理想的な予算を組みます、こう申し上げておきます。
  428. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それではひとつ、総理から御答弁をいただきたいと思いますね。ただいまの大蔵大臣の御答弁、総理はいかがでございますか。
  429. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 予算を編成する大蔵省は、これはもうどこの省にもまして自分たちの責任の負える予算を組む、かように理解すべきでありまして、また各省ともいろいろの要求はいたしますが、その要求どおりなかなか通らないのが予算でございますから、その辺のところは質問される萩原さんもよく御承知だから、いまのようなお尋ねが出てくるんじゃないかと思っております。私は、文部省が別に水増しをして要求するとも思いませんけれども、だけど私は、これらの点については両省でよく話し合った上で責任の持てる予算をつくると大蔵大臣がさっき申しました、その点が一番大事なことだと、かように思います。
  430. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 しかし、総理大蔵大臣も聞いておいていただきたいんですが、沖繩の場合は、これはほんとに特別な場合でございますね。ですから私は、くどくこのことを申し上げているところなのでございます。ですから、この査定を私は見まして、ほんとに沖繩は大事だとか、沖繩をあたたかく迎えるんだとかおっしゃったことが、どの程度ほんとであったかどうかということは、予算によって私は見せていただくよりしかたがないと思うんですね。そういうことをどうぞひとつ十分御理解をいただいておきたいと思います。  あわせて次に、重ねて大蔵大臣にお伺いをいたします。円の切り上げに伴う四大施策の中で、国民福祉の充実ということもうたわれておりますけれども、その四大施策の中で、教育についてお述べになっておらないのはどういうことでございましょうか。人づくりこそ緊急の問題だと思いますが、いかがでございましょうか。私たちが考えて大事だということは、結局、予算をくださるということでなければ、大事だとは私には思えないんです。そういうことで、この施策の中に教育についてお述べにならなかったことは、私は非常に不満でございます。そしてまた、この沖繩における教育施設、設備の充実については三カ年ぐらいに縮めていただきたいと、先ほどもお話がございましたが、これは能力がないという文部大臣の御答弁でございましたね。しかし、能力がないということは一体どういうことなんでございましょうか。これは大蔵大臣、文部大臣、両大臣から承りたいと存じます。
  431. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 円との直接の問題でございますが、平価の調整と教育問題というものの直接関連性がないということでございます。それからもう一つ、教育施設の充実その他についてでございますが、これは本土の類似県——宮崎県それから佐賀県、高知県、徳島県、島根県というような県等と比べてみますと、小学校の普通教室がどうであるか、社会科教室がどうであるかというものは、つまびらかに数字の上で差が出ておるわけでございます。それから、これから三年後、四年後、五年後にこれらの県がどうならなければならないか、またどうしようかという計画はあるわけでございますから、この計画に合わせてピッチを上げなきゃならない。しかも、長いこと苦労してこられた沖繩の方々を思えば、本土よりも、場合によってはよくしなければならないということもございますから、これはあなたが述べられるように、五年間を三年間に繰り上げなさいと言われなくとも、そうしたいぐらいな気持ちでこの問題と取り組んでおる。しかし、いま五年間を三カ年計画にいたしますと申し上げるよりも、まだ沖繩に適用する施設というもの——いま公民館なども、比べれば三分の一でございますが、規模の小さいものはたくさんあるわけです。そういうことを考えて、ただ数の上で本土と同じにすることが平準化されるわけではありませんし、沖繩に適合する特殊な施設も必要でございます。そういうものも研究をして五カ年計画と、こう言っておるのでございますが、五カ年を六カ年にするというよりも、これは四カ年に、三カ年にというような、そういう前向きな姿勢であるということで、ひとつ御了解のほどをお願いいたします。
  432. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答え申し上げます。  先ほどもお答え申し上げましたが、実は、私のほうでは琉球政府の文教局と打ち合わせをいたしました結果、五カ年にしてもらいたいという御要望がございまして、五カ年という計画を立てたわけであります。私のほうの、かってで、きめたわけではございません。
  433. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 文部大臣、琉球政府は、なぜ五カ年ぐらいというふうに御遠慮なさったんでしょうか。どういうことでそういうふうにおっしゃったんでしょうか。三カ年にしてあげてもいいというお気持ちが本土にあるのにもかかわらず、五ヵ年でけっこうでございますと琉球政府がおっしゃった、その理由は一体何なんでございましょう。
  434. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 実は、いま沖繩で本年度予算の工事すらもおくれておる状態で、繰り越しになろうといたしておるような状態でございます。そこで、先ほど申し上げましたように、消化するには五カ年を要すると、こういう意味であったのであります。私どものほうは、できることなら三年でもけっこうだと思っておりますけれども、さような意味で五年という一応のめどをお出しになったと理解をいたしております。
  435. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 沖繩がそれだけの力がないとおっしゃるのなら、なぜ、本土がそれだけの分を持ってあげるということをおっしゃらないのでございましょう。それを、沖繩がこうだから、こう言うから、だから、やはりこれくらいでないとしようがないんじゃないかというのでは、あまりにも冷た過ぎるのじゃございませんか。その点、いかがでございましょう。
  436. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 本年度の沖繩の公立文教関係の予算は約二十一億でございますが、現在、消化できましたものが大体十億ぐらいでございまして、あと、さらに年度内に十億を消化しなけりゃならない、これは地元の工事能力その他の関係もございますので、にわかに工事量をふやしましても、なかなかその消化が困難であろうと、こういう意味を申し上げておるわけでございます。
  437. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 しかし、これは、やっぱり本土のほうですべてのめんどうを見るという気がまえさえあれば消化できるということになるのじゃないでしょうか。この点大蔵大臣、いかがでしょう。
  438. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) でございますから、私は非常に前向きな姿勢でございますと、こう申し上げておるのです。しかし、限界がございまして、規格的な公営住宅をばたばたと何戸建てればいいというものではないのです。これは、その島その島によって、こういう社会施設をつくってくださいというような、いろいろな地元の希望もございます。これは、高知県とか徳島県、一県の教育施設を全部ある水準まで建て直すということでございますから、実際的、合理的にやろうとすると五年がやっぱり限度だと思います。だから、これは大蔵省の立場で年度予算を削ろうという立場から五カ年と申し上げておるのじゃありません。これは、やはり内容を充実させなければいけませんし、ただ同じものをばたばたっと戸数だけつくればいいというものではないのであって、これは魂が入らなければならない。魂の殿堂をつくるのでございますから、そういう意味で、ひとつ政府の意のあるところを信用していただきたい。
  439. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 大蔵大臣、何でもべたべたと建てたらいいんじゃない、そんなことは、大蔵大臣からお聞きしませんでも、私は教育の任に当たった者でございますから、どういうものをどうつくるかということは、まことに失礼でございますけれども、私は大蔵大臣よりよく知っているかもしれないと思うんです。ですから、私はそういうことを決して言っているわけではございません。いわゆる教育の殿堂としてのその校舎、学校、そうしたものについて、私は、できるだけ前向きにといいますか、三年ぐらいでいろいろな能力をそこへ集中してやっていただきたいということをお願いしたわけでございます。しかし、これは幾ら繰り返しておりましても、もう際限がございませんから、この問題はここで切ります。  そこで、先ほど峯山委員のほうからも質問のございました基地周辺の小中学校の飛行機騒音の状況についてお伺いをするわけでございますけれども、大体学習可能な騒音度というものはどれぐらいでございますか。そしてまた、それは断続音の場合ではどうか、あるいは連続音の場合ではどうか、こういうことについての御見解を承りたいと存じます。
  440. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 防衛施設庁におきまして防音工事に対する補助をいたします場合の一応の基準を告示として出しておるわけでございますが、その中で、たとえば学校につきましては七十ホン以上の音響が十回以上、または八十ホン以上の音響が五回以上、これは一授業単位の時間、つまり五十分の場合を標準としておりますけれども、ただし、八十ホン以上の音響が四回以下の場合であって、その継続時間の合計が次のそれぞれに該当するときは八十ホン以上の音響が五回以上とみなす、ということでそれぞれ規定がございまして、一応防音工事をやります場合の基準をこの辺に置いておるわけでございます。
  441. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そうしますと、いま嘉手納基地周辺の小中学校では大体どういうことになっておりますか。これは文部大臣から、ひとつお伺いをいたしたいと存じます。
  442. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答えいたします。  実は、先ほど喜屋武先生あるいはほかの先生からも御質問がございましたが、騒音公害の学校というものが、文部省へ琉球政府の文教局から参っております報告と喜屋武先生のおっしゃる数字とが、あまりにも食い違っておりますので私もびっくりいたしたのでありますが、ただいまのところ、文教局から正式に参っております書類では、小学校七校、中学校五校、それから高等学校六校。ところが、私想像しますのに、喜屋武先生のおっしゃったほうが、ほんとうじゃないかという感じがするのであります。と申しますのは、どうも、おそらく、もう授業に絶対耐えられないという数字が、いま申し上げた十八校になっているんじゃないか、少なくとも教育上重大な支障があるという学校は六十三校あるとおっしゃったが、そのほうがほんとうじゃないかという感じが私にはいたしておるのであります。
  443. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 大臣、私にはいたしておりますということでございましたら、ひとつ、どっちがほんとうか、大臣の目で確かめてきていただかないと、これはお答えにはならないんじゃないかというふうに考えますので、一ぺん、どうぞひとつ大臣、お正月でも済みましたら、沖繩へお出かけいただいて、どっちがほんとうかを、しっかり大臣の目で確かめてきていただきたいと存じます。それがどれくらいたいへんなことかということを、ほんとうに大臣が知っていただいたら、これはほうっておけない問題だということになろうかと私は考えるわけでございます。  問題を移します。教員の現状につきまして。  いま沖繩では教員の問題が非常に多くあると思います。教育を高めていく上には人の問題があると思うわけでございますけれども沖繩の教員の、年齢別、資格別にお伺いをしてまいりたいと存じます。特に資格別になりますというと、実際は、中学なんかにおきまして、社会科の免許状を持ちながら英語の教員をするとかいったような、無免許運転になっている例もあるのではないかというおそれがございます。そうしたことについて、ひとつ実態をお聞かせいただきたいと存じます。
  444. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) これはもう、萩原先生御指摘のとおりであります。実は、日本じゅうで一番——女の先生だから悪いと言うわけじゃありませんけれども、女教師の比率の高いのは沖繩県でございまして、沖繩の小学校では実は七三%ぐらいになっております。中学校で、たしか私の記憶では四七、八%、ほとんど過半数に近くなっておるという状態でございますのと、もう一つの特徴は、二十歳から三十歳までの先生が非常に多くて、それから四十歳から五十歳の先生は非常に少ない。逆に、今度は高齢者の、六十をこした先生が三・七%もいらっしゃる。これは、戦争という一つの大きな惨禍がございましたから、おそらく、この四十から五十という年代の方々は、戦争で、なくなられた方々だろうと思うわけでありまするが、そういう意味から申しますというと、先生の質の上においての断層が非常にあるということは、これは避けがたいことであろうと思うのであります。文部省といたしましても、この先生の質の向上のために、研修会をやるとか、また出張いたしまして研修をやるとかいう措置をとって、質の向上に努力をいたしておりますけれども、何と申しましても、いま申し上げましたような実情というものは、これは、いなみがたい事実であるのであります。
  445. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 僻地、離島が非常に多い沖繩でございますね。先生の研修ということも、私は非常に困難だと思うのです。そういう先生の研修状況、これは一体どういうふうになっておりますのか、ちょっと承っておきたいと思います。
  446. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) 御指摘のとおりでございまして、ただいま大臣から申し上げましたように、非常に若い先生方が多い。しかも、御婦人の先生方が七〇%をこえるというのが小学校の実情でございます。そういうことで、毎年百名ぐらい本土に迎えまして研修をいたしておりますほかに、私どものほうから指導員を派遣いたしまして、向こうのほうで講習会をやるというふうなことをやっているわけでございます。今後も、教員の質的な向上という点につきましては、本土並み、あるいはそれ以上に力を入れてやるというふうな方向で、従来からやってまいりましたことを引き続きやってまいりますほかに、本土の各種の研修会にもお呼びしたいというふうに考えているわけでございます。
  447. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 時間がなくなってまいりましたので、もっと、ここらは詳しくお尋ねをしてまいりたいところなんでございますけれども、また、あと文教ででもお尋ねをすることにいたします。  そこで、最後に、教育の両輪ともいわれる社会教育の立ちおくれは、これは、はなはだしいものがあると考えるわけでございますが、社会教育の場、社会教育を進める人、これもなかなか沖繩はおくれているような感じがするわけでございます。そこで、社会教育局長さんにお尋ねをするわけでございますけれども、来年度において最も重点を置かれておりますのは、社会教育ではどの点でございましょうか、伺っておきたいと思います。
  448. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) お答えいたします。  本土の社会教育施設に比べて、公民館、図書館、青年の家等の施設が非常におくれております。その格差を埋めるということを最大の問題にしているわけでございます。
  449. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それは、場でございますね、場のほうでございますね。それじゃ、社会教育を進める人の問題はいかがでございますか。
  450. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 社会教育主事あるいは各種青年団、婦人団などのリーダーの問題もございます。それに重点を置いていないというわけではないわけでございまして、そういう方々の研修については特に多くの人を国立の社会教育研修所に呼ぶとか、あるいは、特に関係者と打ち合わせをしてみますと、本土と長く離れておるということについて非常な不安感がございます。それで、婦人団体、青年団体のリーダーを内地の各県よりもより多く本土に招聘して、なるべく本土の事情になれてもらうといいますか、なじんでもらうということを大きな力点にいたしております。
  451. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 学校教育では大体五カ年計画ということでございましたが、社会教育では、本土並み水準までに何カ年計画で進めるおつもりでございますか。
  452. 今村武俊

    政府委員(今村武俊君) 学校教育との平仄を考え、それから現地の文教局の担当者等の方々と十分協議いたしまして、五カ年とすることにいたしております。
  453. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 たいへん仲よく五カ年計画ということのようでございますけれども、社会教育の立ちおくれは、さらにきびしいものがあると私は考えるわけでございますね。そういう点から考えますと、もう少し、がんばっていただかないと、これはなかなか標準並み、本土並みにはなりにくいということを考えますので、この点については十分の御配慮をいただきたいと思います。大蔵大臣も、うんうんと、こうおっしゃっているわけでございますから、この社会教育についての予算につきましても、どうぞひとつ格段の御配慮をいただきたいと思います。  時間がまいりましたので、結論を申しますけれども、とにかく、教育行政制度の本土化をはかられることよりも、教育条件の本土並みこそ緊急な問題ではないかと考えるわけでございます。まあ、行政は早く本土並みにしようということで御努力のようでございますけれども、そんなことよりも、もっともっと教育条件のほうが本土並みに早くならないと、これは、子供はしあわせになれないわけなんですね。そういう点を十分お考えいただきたいんですけれども、最後に、その点について、総理、大蔵、文部両大臣の御決意のほどを承って、私の質問を結びたいと存じます。
  454. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 全くお話のとおりでございます。私どもは、教育水準を高める、設備を充実するということに全力を注ぎますが、しかしながら、制度の問題も、私は、この際はやっぱり本土並みにすべきであるという考え方を変える気持ちはございません。
  455. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 教育施設の充実のためには全力を傾けてまいります。なお、先ほど申されたとおり、公民館等社会施設を見ますと、本土の類似県で見ますと、公民館等は四十九館に対して二館という状態でございます。まあしかし、基準以下のものがたくさんあります。六百もある。これは島が多いということだと思います。公立図書館は平均十館に対して三館である、博物館は三館に対して一館であるということでございますので、これは根本的に見直さなきゃいかぬという数字がここにあるわけでございます。先ほどから述べられましたことを肝に銘じまして、これが予算化には誠意を持ってこたえるつもりでおります。
  456. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 文部大臣、大蔵大臣がお答えしたので、もうよくおわかりだと思います。私も沖繩の子供たちに会って、教育施設がたいへん本土と見劣りがすると、その施設の整備をぜひはかってくれと、こういうことを直接訴えられております。また、ただいまは、社会教育の場もたいへん不足していると、不十分だと、こういうことでございますから、学校教育、社会教育、ともに本土並みにするようにさらに力をいたすつもりでございます。
  457. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ありがとうございました。それでは、私は、ほんとうを言えば、教育条件が本土並みになった段階で、教育行政制度をお考えになっていただいてもよろしいんじゃないでしょうか。制度だけは早いこと本土並みになったけれども、条件は五年先、十年先なんていうことは、ちょっといただけないと思いますので、この点、また後ほど詳しく文部大臣にお尋ねをしてまいりたいと存じます。  終わります。     —————————————
  458. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 加藤進君。
  459. 加藤進

    加藤進君 まず、総理にお尋ねします。  総理は、去る沖繩問題特別委員会での質問に答えて、沖繩にあるよきものはさらに生かし、県民の声は率直に聞きます、こう言われました。私は、このことばこそ、沖繩の教育の振興のために尽くされる総理の心からの気持ちだと受け取りたいと思いますけれども、それに間違いないでしょうか。
  460. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの民社党の萩原君に答えたところで十分お聞き取りいただいたろうと思います。私どもの願うところのもの、これは、ただいま言われたような点にもあります。
  461. 加藤進

    加藤進君 沖繩における教育の真に学ぶべき点、よき点はどこにあるか、言うまでもなく、教育の外的条件ではありません。戦前、戦中、戦後、世界で比類のない、あの苦難の歴史を経てきた沖繩県民が、アメリカの軍事占領下においていかに奪われた人権を守り抜いていくか、そのために平和こそ、ぜひかちとらなくてはならぬことであり、民主主義こそ力を込めて実現しなくてはならぬ、この決意に燃えて教育を真剣に県民のものにしたからにほかならないと思います。そして、その先頭に立たれたのは、総理も言われたように、沖繩の教職員の皆さんであることは言うまでもありません。しかし、沖繩の教職員を先頭にして、その背後に、沖繩県民が総力をあげて、この教育を真に実現するために尽くしたその根底には何があるか。その根底には、これを保障する制度としての沖繩の公選制教育委員会があった。このことは、私はおおいがたい事実であると思いますけれども、その点、総理はいかがお考えになりましょうか。
  462. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ、それぞれがそれぞれの見方をするようでございますが、加藤君のいま言われる点も、私は、その上にさらにつけ加えて、りっぱな日本人になりたい、また日本人にする教育をする、こういうことがあったろうと思います。これは教育に携わる人たち。そうしてまた、占領下の行政、これにあきたらなくて、公選制について断固戦ってきた、これは軍政下、民政下、そのところにおいて初めて教職員の方々が立ち上がったんではないか、私はさように思います。
  463. 加藤進

    加藤進君 もう一つお尋ねをします。  これは御承知の、復帰措置に関する建議書であります。政府の一部の担当者は、沖繩の公選制問題について県民の中にも反対の意見がある、こういう答弁をされたことを私は聞きました。しかし、この沖繩の建議書の中には何が書いてあるかということは、私が読む必要はないと思います。ここには、沖繩政府は言うまでもなく、教育委員会のすべて、教育長協会、PTA連合会等々のすべての教育関係の団体、さらに沖繩の県民、この諸君のすべてが、このような公選制教育委員会を守れということを強く要求している。このことに対して、政府はあえて冷たい仕打ちを強行されようとしている。私は、このことは沖繩県民が許しがたいことであるばかりでなく、われわれ日本国民としても納得しがたいものがあると思いますけれども、その点はどうでしょうか。
  464. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま加藤君は、この建議書について述べられましたが、建議書にはそのように書いてあります。しかし、私どもは、この建議書どおりではない、所見を異にしている。これはもう、祖国に復帰したその暁においては、祖国と別な制度のもとに教育制度があっていいとは思いません。やっぱり制度は同一であるべきだと、かように思います。
  465. 加藤進

    加藤進君 先ほど山中長官は、制度にはよしあしがあるからこれは言わぬこと、などというようなふうに表現されました。沖繩の公選制のいいことも一部認められていると思います。しかし、同時に、本土には任命制という、りっぱな教育制度があるじゃないか、こういうお考えがその根底にあると思います。はたして、本土における任命制の教育委員会の制度、これはよきものでしょうか。私は、こまごま説明を申し上げる時間はありませんけれども、かつて政府は、この教育委員会制度について、こう申しています。その一つは、第二国会における教育委員会法の趣旨説明——森戸辰男文相が行なっています。この中身は、私は申し上げる時間がありません。第二に、文部省の著作「教育委員会設置の手引」をごらんください。この中には何とあるかといえば、これは、公選制教育委員会こそ憲法、教育基本法の基本的理念を具体化したものであるということが強調されておるわけであります。ところが、このような教育委員会を——先ほど文部大臣も触れられましたけれども、昭和三十一年、どういう仕打ちでこれを破壊したんでしょうか。国会には、かつてこんなことのなかったような警官隊が導入されました。強行採決がやられました。国民の世論も無視し、議会制民主主義をも破壊して、この教育委員会の公選制がついに廃止されたんです。この歴史をわれわれ国民は忘れることはできません。こういう歴史の上に今日任命制教育委員会が存続しておるんじゃないでしょうか。どれほどいいことをやっているのですか、任命制教育委員会は。  私は、こまかい実例をあげる時間はありませんが、第一、任命制教育委員会が今日の段階においてやっていること、その一つ、教師は不足だといいながら、政治的、思想的な理由を理由にして、教員の不採用は今日千名をこえています。この事実は、文部大臣の地元である静岡大学教育学部において顕著です。時間内に食い込む職場集会をやったという理由で行政処分を受けた教師は、なんと二十六万をこえています。しかも、このような行政措置に対しては、すでに佐賀県教組、東京都の教組判決で明らかにしたように、これが違法であることまで明確になっています。にもかかわらず、文部省は、今日なおこのような判決に服しておらぬじゃないですか。国鉄や全逓におけるマル生が国会においても問題になり、たびたび郵政大臣や運輸大臣は頭を下げました。このことについては、文部大臣もまた国会において頭を下げる必要があるんですよ。しかも、このような任命制教育委員会自身が腐敗しています。汚職が頻発しています。その証拠は、最近の大阪の大阪市教育委員会に起こった事件です。ついに自殺までされているではありませんか。自殺をせざるを得ないような悪いことをやったんです。こんなことは、公選制教育委員会には、かつてなかったということを忘れずにおいていただきたいと思います。沖繩では、こんなことは起こりましたか。  以上は、ほんの一例です。一例ですけれども、憲法と教育基本法に基づいて直接国民に責任を負う真の教育の道を踏みはずして、教育に対して時の政府の政治介入を許し、教育を腐敗と荒廃に追いやってきた、その一つの大きな根源は、まさに任命制教育委員会にあると言っても過言ではないと思います。平和と民主主義教育をみずからの手でつくり上げた沖繩県民が、一体どうしてこのような教育委員会制度を受け入れることができるでしょうか。このことをよく反省していただかなくてはならぬと思います。沖繩に従来育ってきた教育慣行、これは尊重さるべきであります。これは、佐藤総理もその気持ちになってもらわなきゃ困ると思います。現行公選制はそのままにさせて、できるだけ早く、本土もまた、かつての公選制教育委員会に復活すべきであると、私たちは主張いたします。これでなくては、ほんとうの民主的教育は実現されません。  私は、もう一つ事例をあげます。過去十年間に、教員の行政処分の行なわれた数字は前に申しました。つい最近、佐賀教組の公判、東京都教組の公判に政府が使った費用は、一体どれくらいありますか。行政処分をしておいて、訴訟になったら、これをさらに押えつけるために、あたら国民の費用をこれだけ使っております。どれだけでしょうか。佐賀県教組では千六百五十六万円、東京都教組においては三千八百七十五万円が使われているのです。しかも、これには弁護料や、手当や旅費その他は含んでおりません。こういう状態を今日まで続けてきておるのは、教育委員会制度じゃないでしょうか。  私は、この立場から、あえて結論として申します。本土と日本の教育行政の一体化ということを主張されるなら、いいほうに一体化したらよろしい。悪いものを捨てるにやぶさかであってはなりません。沖繩に育ち、沖繩県民を、あれだけ日本国民の誇りを持って育ててきたあの教育、その教育の根幹をなす公選制教育制度、この制度こそ生かして、真に本土にも移し、本土にもこれをさらに発展させて、文字どおり民主的な本土・沖繩の教育行政の一体化をはかるべきである、このことを、強く、まず要求するものであります。  第二の問題です。これは先ほども他の委員が触れられましたけれども、文部大臣は、沖繩の教育の振興のために、本土との格差是正五カ年計画をつくって、これこれしかじかの学校の建設の計画があると、こうおっしゃいました。私はあえて聞きたいのは、計画はあるかもしれない。予算はそれにつけ加えられたかもしれない。しかし、沖繩にそのような校舎を建設する土地は、どうやって求められるでしょうか。私は、たぶん苦労をしておられると思いますけれども、その苦衷の一端をでもいいですから、ひとつ文部大臣の口からお聞きしたいと思います。
  466. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答えいたします。  御指摘のように、軍に接収されております土地が非常に広い、そのために部落を追われまして、一定のところに集落を営み、そこで教育をしておるという状態になっておるのであります。この事実は、冷厳な事実として認めざるを得ません。得ませんが、私どもは、ただいまのところ、六十万平方メートルにのぼる新しい校舎をつくり、それに伴う校地を確保するために努力をいたしております。ただ、願わくは、軍用地が幾らかでも縮小せられ、そこへ住民が移動してくれまして、新しい集落ができ、そうして学校ができるという状態でなければならぬと思うのであります。教育というのは、子供がおらないところで教育はできないのでありまするから、そういう姿は、これは教育の問題じゃなくて、産業全体の問題にもなりましょう、文化全体の問題にもなりましょうが、私どもは、いま、乏しいながらも用地を確保する努力を現にいたしております。また成功もしておるわけであります。しかし、先生御指摘の問題がないという否定は、もとよりいたしません。
  467. 加藤進

    加藤進君 私は、特に那覇市の状態を若干申し上げたいと思います。御承知のように、那覇市の周辺は軍事基地で取り囲まれ、市の総面積の三一・六%は軍用地です。そして、本土並みの過密地帯です。このために、どの小、中学校も、本土には類例を見ないようなマンモス校になっています。最高のマンモス校は、なんと五十七学級持っています。教室不足、狭い運動場、これにひしめいておるというのが那覇の市民の子弟の現状です。したがって、少なくとも、これを本土並みに近づけるというなら、新たに十五校かあるいは十七校の小、中学校をつくらなくてはならぬ。これが那覇市当局の要請でもありますし、文部省もそのことはよくお聞きになっておると思いますが、いかがでしょうか。
  468. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) 先ほどもお答えしたとおりでございますが、那覇市及びこれに隣接をいたします浦添におきまする社会増、過密の状態は、相当顕著なものでございますが、琉球政府当局からの報告によりますと、この両市合わせまして、小学校七校、中学校五校、計十二校を五年間で建設したい、そういたしますれば、御指摘のような過密過大の学校の解消ができると、こういうことでございます。
  469. 加藤進

    加藤進君 そうやすやすとできるなら、次のような問題は起こらないのです。那覇市には、米人企業であるマネング社というのがあります。広大な地域を占有しています。これは米人の企業です。そのマネング社の所有する広大な占有地は、国有地があり、県有地があり、市有地があります。その市有地を返してほしいというまことに強い願いが、那覇市長をはじめとする議会その他から出されておることは、皆さん御存じですね。この問題について、去る十二月の六日の衆議院の沖特の連合審査会の中で、わが米原議員が質問いたしました。これに答えられたのは福田外相だと思います。この福田外相のお答えによりますと、この問題は調査をして、そうして適切な処置をしたい、こういうことでございました。今日もこの答弁は変更ありませんか。
  470. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、もっと詳しくお答えをしておるのですが、マネング社が持っておる那覇市の市中の土地には、国有地、県有地があるのです。これは、一年間は協定上認めざるを得ないようなことになっておりますが、返還後一年を経過した後におきましては、これは再契約をすることになっておりまするから、その際は、学校が非常に少ないというような事情を考慮いたしまして、善処するようにいたしたい、こういうふうに考えております。それから私有地のほうは、これはどうにも政府としてはならないのです。しかし、マネング社というのが、いまこの土地をめぐりまして訴訟を起こしておる、そういう関係もありまして、このマネング社も、おそらく市のそういうような苦しい土地の状況、これに私は協力してくれるのじゃないかというような観測もしておるのでございますが、まあ法的な力はありませんけれども政府として、勧告だとかアドバイスでありますとか、そういうようなことで、できることがありますればしてみたい。そうして円満に私有地の問題が解決されるということを念願をいたしております。
  471. 加藤進

    加藤進君 いまの答弁では納得いきません。第一、契約はあるんでしょうか。契約は切れているんじゃないでしょうか。私はこの契約書を持っています。契約書には、この契約期間は一九六五年七月一日から一九七〇年六月末日までとすると書いてあります。切れているじゃないですか。切れているものに対して、外務大臣、あなたはどうしてアメリカと交渉しないのですか。返してくれと、どうして言えないのですか。切れているんです、契約は。契約は存在しないのですよ。存在しないものに対して、たとえ訴訟を起こそうが、供託金を出そうが、そんなことではなしに、権利は消滅しておるんだから、そのことについて断固としてあなたは交渉に当たるべきじゃないでしょうか。
  472. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 契約が切れておるというんでは何をか言わんです。もうそれは契約は期限が切れて消滅をするということになるんですが、私が聞いているところでは、その辺が問題になっているんじゃないかと……。
  473. 加藤進

    加藤進君 ちょっと見せますよ。見てごらんなさい。十二月六日に質問をして、調査すると言いながら、今日まで何をやっておられたのですか。これはたいへん怠慢だと思いますよ。もし契約が切れておるなら、何をか言わんやでしょう。とにかく返してもらう以外にないのです。返してもらう努力をすると、はっきり言ってもらえませんか。山中長官でもけっこうですよ。
  474. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私契約のことですから、政府がこれに介入するということは法的にはできません。
  475. 加藤進

    加藤進君 いかに愛知・マイヤー書簡がありといえども、市有地に、那覇の市の所有に対して、個人企業が——この契約の、もはや有効な段階は終わった、切れた。こんなときに、日本政府は黙ってこれを見ておるのですか。  私は文部大臣に聞きたい。このためにどれだけ那覇市の子供たちが苦しんでおるかということです。この那覇市の周辺の子供たち、五つもあります学校の子供たちは、この用地がないために、校舎は一ぱい、何とかこれを返してほしいと、血の出るような声を出して、市長を先頭としてやっておるのです。私は、軍用地をすぐ返せ、こういうことが、たとえむずかしくとも、このような市有地なら、政府が真剣な努力を払って交渉するならできるし、これを文部大臣は黙っておることはできないと思いますが、どうでしょう、文部大臣。
  476. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) せっかくの加藤先生のお話でございますけれども、文部大臣がその私契約についてとやかく申し上げる筋合いのものではない。ただ、私も、先生がおっしゃるように、あそこに那覇商業高校がありまして、それが非常に校地が狭い、しかも、そのわきは全部アメリカの住宅ができておるという状態であることは、よく承知をいたしております。けれども、まあ一年たてば何とか返してもらえるのじゃないか、そのときにこそ思い切った教育施設ができるとぎじゃないかと、外交交渉をひたすら待っておったわけであります。
  477. 加藤進

    加藤進君 山中長官、ぜひ一言、この問題についての所見をお聞きしたい。
  478. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは、私は、ずっと前に喜屋武さんから、那覇商業高校の校地の狭い問題と、その隣りの広大な面積の米系法人のマネング社の問題を現地で聞かされました。その後、私としても、よくその事実関係を調べてみたのでありますが、米原さんが衆議院特別委員会で言われましたような、やはり経過をたどっておるようであります。ただ、法律手続上は、マネング社は競売で入札で取ったような形になっておりますので、その場合において、住宅供給公社ですね、民政府の、これとの間に、はたして地上権設定なり何なりの問題は合法的に行なわれていたのかどうか、ここらのところに、私有地の人たちの主張との、訴訟に持ち込まれた問題が存在しているように思います。したがって、これは単に公式的な答弁でなくして、やはりこの問題は、復帰までには、ちょっと、いま裁判中で、沖繩の裁判所で争っておりますので、それまでに結審が出るかいなかはわかりませんが、いずれにしても、裁判ざたは裁判ざたとして進行中でありますけれども復帰以後一年の期間内において、国有地の条件等がついておりますし、これについては基本的にやはり問題点のあるところを掘り下げて、本来の望むべき姿にどうしても戻さなければならないだろう。その証拠には、マネング社でも、一時は、自分たちの地上権設定をしていないことを認めた証拠とも言える、一戸五千ドルならば、払えば、渡してやろうというようなことも地主に言ったという経緯等を踏まえてみましても、ここらに何だか問題が、施政権下とはいえ、存在しているように私は思います。したがって、この問題は、担当大臣としても、よくいきさつをさらに掘り下げて、問題はおそらく復帰後の問題になると思いますが、ただいまの学校敷地の問題等、公共性の高い問題と隣接した土地でありまするだけに、私としては、重大問題として今後これに取り組んでまいりたいと思います。
  479. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま土地賃貸契約書というのを見ました。そうしますと、これは「し」と申しますがね、市のほうです。那覇市のほうなんです。私が先ほどから申し上げましているのは、私の契約、こっちのほうと、それから国と県、このことを申し上げたのです。これを見るのは私初めてです。これを見ますと、確かに一九七〇年六月末日までとすると、契約期間がきめてあります。おっしゃるとおりです。去年です。しかし、いまこれは、市といたしますると、借地権というような問題があるかのように政府委員のほうで言っておりますが、とにもかくにも、争いがあるというならば、法律上の介入はできませんけれども政府としては、なるべく妥当な解決ができるように、アドバイスというか、そういう立場において努力をするということにいたしたいと存じます。
  480. 加藤進

    加藤進君 じゃ、ひとつ政府に注文があります。第一、この資料というのは、米原代議士が、もうちゃんと、あなたたちに渡したものでしょう。いや、渡したと言っていました。私にその写しが来ているのですから。こういう資料が手元に渡っているのに、何ですか。怠慢と言わなくちゃならない。知らないですか。もらわなかったですか。——それじゃひとつ、そのことはもらわなかったという言明がありますから、これは私は尊重して、至急検討してください。そして那覇の市長、市民、子供たちを喜ばせるような、ひとつ、この市有地の返還努力してください。お願いします。いいですか。その点につきまして、私は、文部大臣、権限があるとかないとかいうことでなしに、事柄は子供の教育の問題であるし、この市有地は学校のためにほしいのだといって返還を求めておられるという教育上の問題だから、私はあえて文部大臣にその決意を聞いたわけでございますから、佐藤総理大臣も、ひとつ、よく念頭に置かれまして、各大臣を督励してやってください。いいですか。  もう一つ、これに関連する問題ですけれども、先ほどの国有地、県有地の問題があります。で、県有地というのは、私は国有地とは違うと思います。県有地は沖繩県民のものです。沖繩県の財産です。これを愛知・マイヤー書簡の中では、一年間は貸す、そしてその間に検討する。福田外相もそう答えられましたね。県有地に対して、政府がこれをどうこうするというようなことをきめるということは、これは憲法第九十二条地方自治体の本旨に違反する疑いがあると思いますけれども、その点、どうでしょうか。これは当然返すような交渉をすべきである、国有地とは違う、こういうふうに私は考えますけれども、その点はどうでしょうか。
  481. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) マネング社が関係しているので国有地と県有地がありますが、これは一年間貸しておこう、しかし、一年後におきまして、その一年の間に、一年経過後においてどうするかということは十分検討すると、こういうことにしてあります。そこで、国有地につきましては、これは政府のあれでできますが、県有地につきまして、いまこれは自治を侵すものじゃないかというようなお話でございまするけれども、とにかく、米系の企業というものが、沖繩には、施政権執行中にずいぶんできたわけなんです。これを一夜で取りのくというわけにはいかない。また、これも社会的にそれなりの活動をしておるわけですから、そういうので、企業体につきましてはこれを大体認めると、こういうふうにいたしたわけなんでありますが、特にこの土地の問題につきましては大事でありまするから、そこで、国有地、県有地につきましてはそういう特例を設けたというわけです。復帰後になりますれば、これは、沖繩県、わが国の沖繩県のものになる、これはもう当然です。しかし、まあ一年間十分ひとつ、そういう経過的なものですから、検討するということにしたわけなんで、そういう県有地であるという、その事態を踏んまえましてこの問題は考えていくという考えでございます。
  482. 加藤進

    加藤進君 もとをただせば、第一、マネング社がこの土地を占有しておること自体が不法占拠だと思いますよ。こういう不法な占拠の状態を何らかの形で正常な状態に戻して、沖繩県民の利益に沿うように努力する、これが日本政府の私は仕事だと思います。その立場に立って、この問題についても努力していただきたい。  もう一つ、コザ市のすぐわきに北谷村という村があります。この北谷村の村議会から、九月九日に、軍用地の早期解放に関する要請書が来ているはずです。総理、また山中長官、御存じでしょうか。
  483. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私は、村長並びに村議会の方々と、その要請の図面等を前にして、よく相談をいたしました。残念ながらA表には入っておりますが、しかしながら、地元の人々は、それを全部返してしまえというような乱暴な御意見ではありませんでした。自分たちが、いま谷間に押し込められている現在の状態と、米軍が利用している施設の実際の利用状況のうち、こういうところは私たちの村に返してもらってもいいと思う、客観的にもお思いくださるはずですと、そういう意味の、私としては、ほんとうに真剣に御相談を申し上げた内容のものでございましたので、現時点ではこれはいかんともなしがたいわけでありますが、復帰後の計画その他について、外交折衝を通じながら、院の決議も踏まえて、日本政府姿勢として、そのような、単にこれは北谷だけには限りませんが、嘉手納も読谷も、それぞれみんな計画を持っておられますけれども、そう、そんなむちゃをおっしゃってもというような意見を持っていらっしゃる方はないようでありまして、十分にそれらの御見解を相談をしながら、要望に沿うような努力を進めるべきであると私も考えております。
  484. 加藤進

    加藤進君 山中長官のお答えですけれども、私の手元にある九月十日の北谷村議会報によりますと、この要請書の文章は非常に切々たるものがあります。これは、特に文部大臣にお聞き願いたい点ですけれども、この北谷村では、村で学校をつくりたくても、米軍基地に総面積の七五%がとられているために学校がつくれないんです。そのために北谷小学校はどうしているかというと、北谷村に学校が建てられないので、コザ市内に学校をつくっているんです。コザ市内の学校です。それから砂辺の児童生徒たち、これは嘉手納村の学校に通学しているんです、現在。村当局は、米軍がいま使っていない地域があるから返してほしいと、こういう要求をしたんです。米軍はいまは使っておりませんと。事実使ってないんですから。使ってないけれども、将来アメリカ軍人の子供の学校をつくる予定だから、これは返せぬ、こう冷たく拒否したんです。私はその点でお尋ねしたいわけでございますけれども、まず、政府は、こんな状態をこのまま放置して、沖繩の教育の振興だとか、沖繩と本土との教育行政の一体化などと、はたして言えるのか、この状態を直すだけの政治力がなくして、一体、お題目だけを述べているということにならないのか、この点を、まずはっきりお聞きしたいと思います。私は、直ちに学校用地として返してもらうように、断固として交渉すべきだと思いますけれども、どうでしょうか。外務大臣。
  485. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いわゆる基地問題につきましては、しばしばお答えしているのですが、これはなかなかむずかしい問題なんです。A表は提供します、こういうことになっていますが、このA表によれば、沖繩における基地の密度は非常に高い、皆さんからおしかりを受けます。しかし、これは精一ぱいの努力をしてのことなんです。これ以上一体どうするかという問題につきましては、これはもう、せいぜい努力をする。衆議院におきましては、院の決議まであった。努力はいたしまするけれども、そうそう簡単な問題ではない、よほどの努力をしないとこの問題は解決しないということだけは、ひとつお含みおき願いたい。精一ぱい尽くしてみます。
  486. 加藤進

    加藤進君 文部大臣、お尋ねします。  学校教育法の二十九条をごらんください、学校教育法の二十九条。必ず市町村内に学校をつくらねばならぬ。義務です、これは。そうですね。もし生徒児童を他に委託する場合でも、土地がございませんとか、財政事情でそうはできませんなどというような委託は許せない、こういう学校教育法の規定があるのです。本土と一体にするというなら、これ、どうしますか。学校教育法を変えますか。
  487. 安嶋彌

    政府委員(安嶋彌君) ちょっと法律上の問題だけお答えいたします。  ただいま学校教育法二十九条を御引用でございますが、それを読みますと、「市町村は、その区域内にある学齢児童を就学させるに必要な小学校を設置しなければならない。」ということでございまして、区域内ということは、この規定からは出てこないわけでございます。もちろん、区域内に設置することが原則、通常の姿ではございますが、二十九条自体はそういう書き方はいたしていないのでございます。
  488. 加藤進

    加藤進君 いや、私は、そういう疑念が出るであろうと思いまして、きのうも文部省にちゃんとこの点のだめを押したのです。そうしたら、文部省見解もまさにこういうことであって、学校をつくらなくてはならぬ、そして、ほかの財政的、土地のないというようなことは委託の理由にはならぬ、こう言っていますよ。そこで、この問題を、一体これで、法解釈だけではこうだと言って終わりますか。文部大臣の所見をお伺いしたいところです。
  489. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 法律の解釈は局長がいたしましたとおりでありますけれども、これほど異常な状態は私はないと思っております。したがって、何とかしてこの問題を解決することは、これは文部大臣としての私の仕事であるという理解に立って今後の努力をいたしたいと、かように考えております。
  490. 加藤進

    加藤進君 ぜひ、その決意でこの問題を早期に解決してください。これをやらなければ、文部省は何をやっているか、教育教育と言うけれども何もできぬじゃないか、この現状では、こういうことが、はね返ってくることは私は当然だと思います。  もう時間がありませんから、私は以上の二点だけの質問に終わります。しかし、これに対する政府の答弁でも、結局、沖繩協定と関連法案によっては、沖繩の教育がどのようなゆがめられた状態に落ち込んでいくのか、これは明らかになったと思います。一方では、人権を守り、平和と民主主義、日本国民の誇りを育ててきた沖繩の教育の根幹をなす公選制は廃止するという、そして悪名の高い任命制を強行しようとする。他方では、沖繩協定と関連法案によって、米軍の基地は言うまでもなく、米国の企業の用地さえ依然として存続させられる。これを直ちに取り返すこともできぬ。こうして、教育の大前提である学校の用地さえ沖繩では確保できないという状態が明らかになりました。これで一体どうして文部省の言う、質の高い教育、本土並みの教育条件というものができるか、こういう根本的な問題にぶち当たらざるを得ないと思います。沖繩協定と関連法案によって、沖繩に育ってきた教育そのものが踏みにじられようとしておるという現実です。そして、本土においていま押し進められている教育の反動化、軍国主義化が沖繩にまで押し進められようとしておるというのが現実だと思います。これが政府の言う、教育における本土と沖繩の一体化という実体じゃないでしょうか。  私は、最後に、次のことを質問して終わりたいと思います。  いま本土では教育上何が起こっているのか。これは、すべてのことを申し上げる時間はありませんけれども、これを端的に示しておるのは、一連の教育訴訟です。教科書訴訟、佐賀県教組事件、東京都教組事件など、一連の判決において、政府はこの判決にさえ耳をかさないで、国民世論にさからって、教育の権力支配をあくまでも強行しているという事実は明らかであります。つい十二月の十七日に、最高裁は、教科書訴訟に関連して、教科書検定の審議議事録の提出を文部省に命じました。新聞によりますと、岩間局長はこう言ったと言っています。提出命令に応ずるかどうかは、文部省に有利かどうかで判断する、こう言うのであります。もってのほかです。大体、文部省が訴訟を起こされて、その判決の結果に服しないで、あえて再訴訟をするなどということ自体、世界にどこに例があるのですか、こんなことが。事は、憲法と教育基本法に基づく教育行政の担当者でしょう、文部省は。この文部省が、あえて最高裁の命令にも、あるいは地裁の判決にも服しない。最後は最高裁まで訴訟を続けるのだ、金は幾らでも用意しようなどというような、まことに非教育的な態度をとっておられるのでは、国民承知できないと思います。かつて文部省は言ったことがあります。一審に服さないのは、それが地裁の判決だからだと、最高裁の判決ではないからだと、こう言っていました。いまや、どうでしょうか。最高裁なら従うという文部省の従来の態度さえ、いまや秘密主義を押し通そうとして、この判決にさえ服そうとしておらないのじゃないでしょうか。事柄は、憲法違反かどうかということにかかわる重大な裁判です。これに対して、文部省が最高裁に資料の提出を命令されて、これに従わないなどという態度は絶対に許しがたいと思いますけれども、文部大臣、いかがでしょうか。
  491. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 最高裁の抗告却下の理由は、この問題は最高裁が扱うべき問題でないという理由で却下をいたしたのであります。提出を命令したわけではございません。しかし、私の私見を申しまするならば、東京高裁が提出しろと言って、最高裁が、わがほうの権限外であると、憲法違反の、憲法下の問題じゃないというんでありまするけれども、私の意見としては、これは出すべきものであると、かように考えております。
  492. 加藤進

    加藤進君 その文部大臣のそ言明を信頼いたしまして、私の質問を終わります。
  493. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) それでは、木連合審査会はこれにて終了することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  494. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 御異議ないものと認めます。  以上をもちまして本連合審査会を終了いたします。  これにて散会いたします。    午後十時一分散会