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1971-12-25 第67回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会、地方行政委員会、農林水産委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月二十五日(土曜日)    午後六時四十一分開会     —————————————   委員氏名    沖繩及び北方問題に関する特別委員     委員長         長谷川 仁君     理 事         鬼丸 勝之君     理 事         楠  正俊君     理 事         剱木 亨弘君     理 事         丸茂 重貞君     理 事         松井  誠君     理 事         森中 守義君     理 事         矢追 秀彦君     理 事         高山 恒雄君     理 事         岩間 正男君                 稲嶺 一郎君                 今泉 正二君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 片山 正英君                 亀井 善彰君                 古賀雷四郎君                 柴立 芳文君                 鈴木 省吾君                 園田 清充君                 竹内 藤男君                 西村 尚治君                 初村瀧一郎君                 宮崎 正雄君                 山内 一郎君                 若林 正武君                 占部 秀男君                 大橋 和孝君                 川村 清一君                 田中寿美子君                 田中  一君                 宮之原貞光君                 村田 秀三君                 森  勝治君                 上林繁次郎君                 原田  立君                 藤原 房雄君                 栗林 卓司君                 加藤  進君                 喜屋武眞榮君    地方行政委員     委員長         玉置 猛夫君     理 事         寺本 広作君     理 事         増田  盛君     理 事         占部 秀男君     理 事         河田 賢治君                 片山 正英君                 塩見 俊二君                 柴立 芳文君                 高橋 邦雄君                 鍋島 直紹君                 原 文兵衛君                 安井  謙君                 若林 正武君                 加瀬  完君                 神沢  浄君                 杉原 一雄君                 松井  誠君                 上林繁次郎君                 藤原 房雄君                 中沢伊登子君    農林水産委員     委員長         高橋雄之助君     理 事         亀井 善彰君     理 事         園田 清充君     理 事         前川  旦君     理 事         村田 秀三君     理 事         宮崎 正義君                 梶木 又三君                 河口 陽一君                 小枝 一雄君                 小林 国司君                 鈴木 省吾君                 温水 三郎君                 初村瀧一郎君                 星野 重次君                 堀本 宜実君                 山崎 五郎君                 川村 清一君                 工藤 良平君                 辻  一彦君                 鶴園 哲夫君                 中村 波男君                 二宮 文造君                 向井 長年君                 塚田 大願君     —————————————   出席者は左のとおり。  沖繩及び北方問題に関する特別委員会     委員長         長谷川 仁君     理 事                 鬼丸 勝之君                 楠  正俊君                 剱木 亨弘君                 丸茂 重貞君                 松井  誠君                 森中 守義君                 矢追 秀彦君                 高山 恒雄君                 岩間 正男君     委 員                 稲嶺 一郎君                 今泉 正二君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 片山 正英君                 亀井 善彰君                 古賀雷四郎君                 柴立 芳文君                 鈴木 省吾君                 園田 清充君                 竹内 藤男君                 西村 尚治君                 初村瀧一郎君                 宮崎 正雄君                 山内 一郎君                 若林 正武君                 占部 秀男君                 大橋 和孝君                 川村 清一君                 田中寿美子君                 田中  一君                 宮之原貞光君                 村田 秀三君                 森  勝治君                 上林繁次郎君                 原田  立君                 藤原 房雄君                 栗林 卓司君                 加藤  進君                 喜屋武眞榮君    地方行政委員会     委員長         玉置 猛夫君     理 事                 寺本 広作君                 増田  盛君                 河田 賢治君     委 員                 高橋 邦雄君                 原 文兵衛君                 加瀬  完君                 神沢  浄君                 杉原 一雄君                 中沢伊登子君    農林水産委員会     委員長         高橋雄之助君     理 事                 前川  旦君     委 員                 河口 陽一君                 小林 国司君                 温水 三郎君                 堀本 宜実君                 山崎 五郎君                 工藤 良平君                 辻  一彦君                 鶴園 哲夫君                 向井 長年君                 塚田 大願君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  木内 四郎君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局沖繩        法制参事官    系  光家君        内閣法制局第二        部長       林  信一君        内閣法制局第三        部長       茂串  俊君        総理府総務副長        官        砂田 重民君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛施設庁長官  島田  豊君        防衛施設庁総務        部調停官     銅崎 富司君        経済企画庁総合        開発局長     岡部  保君        科学技術庁長官        官房長      井上  保君        科学技術庁原子        力局長      成田 壽治君        環境庁自然保護        局長       首尾木 一君        沖繩北方対策        庁長官      岡部 秀一君        沖繩北方対策        庁総務部長    岡田 純夫君        沖繩北方対策        庁調整部長    田辺 博通君        法務省刑事局長  辻 辰三郎君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省条約局長  井川 克一君        大蔵大臣官房審        議官       前田多良夫君        大蔵省理材局次        長        小幡 琢也君        農林大臣官房長  中野 和仁君        農林省農林経済        局長       小暮 光美君        農林省農政局長  内村 良英君        農林省農地局長  三善 信二君        農林省蚕糸園芸        局長       荒勝  巖君        林野庁長官    松本 守雄君        水産庁長官    太田 康二君        運輸大臣官房審        議官       見坊 力男君        運輸省海運局長  鈴木 珊吉君        運輸省自動車局        長        野村 一彦君        建設省計画局長  高橋 弘篤君        建設省都市局長  吉兼 三郎君        自治省行政局長  宮澤  弘君        自治省財政局長  鎌田 要人君        自治省税務局長 佐々木喜久治君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○沖繩振興開発特別措置法案内閣提出衆議院  送付) ○沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○国家公務員法第十三条第五項および地方自治法  第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の  地方事務所設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出衆議院送付) ○沖繩平和開発基本法案衆議院送付予備審  査) ○沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  (衆議院送付予備審査)     —————————————   〔沖繩及び北方問題に関する特別委員長谷川仁委員長席に着く〕
  2. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会地方行政委員会農林水産委員会連合審査会を開会いたします。  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、沖繩平和開発基本法案沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  以上の各案件を一括して議題とし、これより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。杉原一雄君。
  3. 杉原一雄

    杉原一雄君 私は、沖繩振興開発特別措置法、これを軸といたしまして、第一点としては、沖繩振興開発座標は何か、第二点として、その一を実現する条件と障害、三点として、一、二の基調に立って、いま提案されている開発法は一体どうだろうか、四点としては、なお若干の開発プログラム等について政府の見解をただしていきたいと思います。  私は、いままで、かつて沖繩に一度も足を踏み込んだことはございません。それは、沖繩本土との空間的距離の問題あるいは渡航の手続のわずらわしさ、いろいろな条件等もあったわけでありますけれども、しかし、私が誇りに思うことは、毎年四月二十八日、サンフランシスコにおいて平和条約安保条約が締結されたその日、これをわれわれは屈辱の日として、沖繩から代表を迎えて、私の県内では足にまめをでかしながら大行進を毎年繰り返したことを、いまもなお誇りに思っております。その時点における私たちの願いと、沖繩の心を心として私たちが戦ってきたことの中核にあるものは、それは、いま国会の中で流れている政府の考え方、法案等々を検討する中で、実にそぐわないものを痛感いたします。端的に言って、私たちは、人間人権擁護、反戦平和、そして沖繩自治権確立をこいねがいつつ今日まで努力してまいったところであります。  そこで、先ほど申しました第一点の問題として、沖繩振興開発座標は一体何だと、こういうことなんでありますけれども、これは、総理が常に本会議等説明の中でも繰り返し言っていることばがあります。明るく豊かな平和な沖繩、これが総理がわれわれに提起している沖繩振興座標だと思います。  そこで、この三つ目標を、もう一歩具体的に掘り下げて総理のほうから説明をいただき、そのことから、沖繩県民のいまの復帰に対する大きな不安にこたえていただきたいと思うのであります。お答えになる前に、沖繩県民のこの復帰不安の問題等については、繰り返し各種委員会等の場で明らかにされておりますが、私なりに要約すれば、あるいは日本円の切り上げによる沖繩経済、それぞれの生活貧窮化の問題、次には本土への人口流出、いわゆる過疎化の問題、第三点としては、本土企業進出による環境破壊の問題、四点として、政治行政面において本土政府の官僚が高圧的に支配するのではないだろうか、こういったような復帰不安が今日もぬぐい去ることはできないだろうと思います。そこで、総理から答えをいただきたいと申しますのは、そうした私なりに要約した復帰不安等にもこたえるような意味において、まず、明るい沖繩、それは一体どういうことなのか、豊かな沖繩というのは、具体的に、経済政策社会保障その他を含めて一体どういうことなのか、第三点として、平和な沖繩、それは、いま提起されている基地等問題等を含め、きょうのVOA放送等を含めながら、いまだに私たちは平和の沖繩のイメージがはっきりしません。そのようなこと等について、総理から三点にわたって明確なお答えをいただきたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま杉原君からお尋ねがございましたが、御承知のように、いまや沖繩は米国の施政権下から離れて、そうして祖国復帰しようとしておる、その際に、やはり何と申しましても具体的にあげられる、ドルの生活から円への生活の切りかえ、同時にまた、本土には帰るが、青年——若い働く層の人たち本土へ流出する、これはたいへんなことだと思います。さらにまた、逆に本土からの資本の進出、そういうことが沖繩産業を痛めつけやしないか、さらに緑の島、緑の海、これを汚すことにもなるのじゃないのかと、こういうことを考えながら、同時にまた、自治、これは完全な自治をつくり上げなきゃならないが、どうも本土にそういう点について理解があるかどうかと、まあいろいろ当面する問題がありますが、私はそれらのことに関連を持つことではありますけれども、今日まで戦中戦後を通じて耐え忍んでこられた苦難の道、苦難生活、それこそは、私は、沖繩の同胞を暗い暗い谷底へ落としていたんじゃないかと思います。今度祖国復帰すれば、何よりも精神の面で、今度は本土と差別のない、まあ一部では第三の琉球処分というようなことがいわれますけれども、私は、そういうような事柄でなくて、本土と同じ、対等につき合うんだと、また対等に行動できるんだと、こういうところに明るさを取り戻していただきたいと思います。これは、われわれが敗戦後本土においても同じような暗い暗い感じを持ったものでありますけれども沖繩本土と事変わって、長い長い戦後の二十六年間、戦中のあの本土防衛の第一線になって焦土と化したこと、その後の異民族からの支配、これはほんとうに暗いものであったと思いますが、そのようなことを考えながら、私は何よりも明るい沖繩を取り返していただきたいと、これが私の第一の念願であります。同時に、物質的に恵まれなければ豊かな沖繩とはならない。心の豊かさも大事でございます。これはもう、心の明るさだけでも、けっこうだと、豊かさ、このほうは、どちらかと言えば、もっと本土との格差をなくする、いわゆる異民族支配下に置かれて、そうして土地も提供し、取り上げられた、あらゆる面で人権も侵害された、そういうものを、とにかく、第一に申したような明るい沖繩にするためには、克服していかなきゃなりませんが、その上、本土との格差をなくするために、沖繩に地理的に適応する産業、そういうものをやはり誘致し、そうして、これから心配される過疎状態ではなくて、沖繩もこういう産業があるんだと、こういうような地理的な状況に恵まれているんだと、そういうものを見つけて、亜熱帯地帯にふさわしい産業が起こり、そうして豊かな、あるいは物質に恵まれた心の豊かさも同時にそこから生まれると、かように思います。明るく豊かな沖繩ができる。そういうことをしたいと、かように思いますし、同時にまた、私どもは、平和憲法のもと、本土におけるいわゆる自衛隊法その他を含めて、われわれはもう軍国主義化しない、ほんとに平和に徹する国柄でありますから、沖繩も同様な形において今後進んでいきたい、そのためには、軍基地の整理なぞ、これが問題になると思います。これはもう少し時間をかしていただきたいと思いますが、過日の衆議院における本会議附帯決議、これに対しまして、私どもは厳粛に所信を表明したわけであります。まあ、基地性格それ自身も、核兵器がなくなる——毒ガスは撤去されたが核兵器はまだあると、かようにいわれておりますが、しかし、復帰の暁には核兵器ほんとうに取り除かれる、そうして、米軍がいままであるいは脅威を与えていた地域に対して出動するというような場合には、これは事前協議の対象になる。したがって、わがままかってに、自由かってに出かけることはない。そういうことを考えますと、私は、やはり平和への道、それは日本なりにとることができると、かように思うのでありまして、そういう意味から、私はまあ、わかりいい、平和に徹する日本、その一部の沖繩、これがやはり平和であること——ただいま軍基地が非常な密度であるこの状態で平和が望めるかと、こういう御意見もあろうかと思いますが、いましばらく時間をかしていただいて、そうして安保体制のもとにおける米軍、これは現在の状態とは事変わるのだ、これらのことを考え、同時にまた、いろいろおくれておる点がありますから、本土からの援助は必要だ、しかし、やっぱり、何といいましても、地方住民の意思は十分尊重されなきゃならない、自治は尊重されなければならない、その自治権確立されなきゃならない、これが私の言う、いわゆる明るく豊かな平和な沖繩、そういう県づくり、これに、本土ともども手を携えて進もうじゃないかというのが、私の気持ちでございます。
  5. 杉原一雄

    杉原一雄君 よく言われますけれども屋良さんの建議書の中で「沖繩開発基本的理念」というものが提起されているわけです。いま総理答弁のところと、かなり重なり合っていることであって、屋良さんも半ば満足されている点もあると思います。繰り返し、屋良さんの三つの原則と申しますか、それをもう一度確認をし合ってみたいと思いますが、「第一の理念は、県民福祉向上にあります。所得水準向上のみを目的とした経済開発がなされてきたのでありますが、沖繩開発にあたっては、人間尊重ないし人間性回復精神を、その基底に置くものでなければなりません。」、ここらの点は総理のただいまの所信と重なり合っていることだと思うのであります。第二点のところでは、「自治権尊重の立場に立った開発でなければなりません。沖繩県民は、異民族支配下にあって、苦難な道を余儀なくされながらも民主的諸権利をかちとり、常に自治確立を希求してきました。」、そこで、そのあとを傾聴して耳にとめていただきたいのでありますが、「幾多の苦難の中で、県民が獲得し学んできた尊い体験は、復帰後においても無にすることなく、地域独自性多様性をゆたかに開花させるために、役立てられなければなりません。」、このところは、私なりに考えた場合に、先ほどの連合審査の中で文教関係の皆さんから提起され、総括質問の中でも提起されたことでありましょうし、わが党の占部議員から、地方自治体の職員の権利等問題等を含めて提起されていると思いますが、このことを、あらためて認識をしていただきたいことが一つであります。「第三の理念は、平和で豊かな県づくりを志向するものでなければなりません。」、この点に関する限り、総理のただいまの答弁とぴったり一致いたしますけれども、そのあとが問題です。「沖繩軍事基地は、質量ともに、本土におけるそれをはるかにしのいでおり、そのため沖繩経済社会に異常な影響を与え、第三次産業肥大化にみられるような産業構造畸型化を招くととともに、」、ここが、開発計画開発プログラムを今後設定する場合に非常に大切な、それを抜きにして考えることのできない重大な問題提起をしていると思います。「他方、基地のもつ非人間的、頽廃的性格がいく多の社会的問題を惹起しております。」云々ということで、その沖繩開発基本的理念を提起いたしております。このことについて、いま重ねて答弁を求める時間はございませんので、一応お互いの共通理解努力目標にしていただきたいと思います。  そこで次に、いま総理がおっしゃったそうした目標を実現すること、あるいは屋良主席が提起したこの三つ理念を実現するために、ぜひとも必要な条件、かつまた障害は何かということであります。  第一点は、私は、何としても、総理が申しましたように、沖繩県民の多年の苦難の中から、どうしても自由を求め、平等を求め、独立を求めてきたこの自立体制の確立が第一点だと思います。  第二点は、財政の充実の問題であります。これについては、すでに政府当局は、四十七年度の予算の中でいろいろめんどうを見ておられるわけでありますけれども、すでに十六日の地方制度調査会の答申等にあらわれたように、分家である沖繩もたいへんだし、同時にまた、本家である本土の側におきましても、地方制度の問題を検討する場合に、地方財政がきわめて困難な事情にあることは、制度調査会の答申がそのことを指摘いたしております。聞くところによると、大蔵大臣と自治大臣とが全く意見が対立する向きもある、こういうことが伝えられているくらいに地方財政は非常に窮迫をしております。そういう状況を踏まえながら、本土地方財政の確立とあわせ兼ねて、そうした困難の中からいまあたたかく迎えようとする沖繩総理がいま約束いたしました本土との格差をなくするというこの政策目標に向かって、財政的な努力、充実の努力は、どの程度いま四十七年度を目ざして作業が進み、沖繩県民にまかしておきなさい、だいじょうぶだぞということが、はっきり言い切れるような状態になっているのかどうか。この点を担当の大臣から明らかにしていただきたいと思います。  そこで、次に、障害になるものにつきまして、それは端的に言って、私は、今日の沖繩開発を妨げるものは、沖繩に広大な基地があるということであり、アメリカの兵隊がたくさんおるということであり、そのことが沖繩の経済を、経済学者がひとしく言うように、われわれも認めるが、基地経済であるということ、そのことが根本的な大きな課題であると考えます。これらについても担当大臣から所信を表明していただきたいのでありますけれども、ちょうどいま、この二十二日に琉球政府が発表いたしました一九七一年度、去年の七月からことしの六月までの沖繩経済についてその概要を発表いたしております。でありますから、お答えになる場合に、そうした概要をもちろん踏まえておいでになりますから、それを踏まえながら——いま基地経済ということで、ぼくは自分なりのことばを使ったわけでありますけれども、いまの概要発表の中にもそのことが裏づけられておりますので、そうしたことを踏まえながら、私は障害だと申しましたが、政府はそうじゃないんだと言うならば、そうでないことをねんごろに、わかりやすく説明していただきたいと思うのであります。  七一年度の沖繩経済について琉球政府が発表した内容の概略は、沖繩の経済は名目経済成長率が一五・八%、非常に順調な伸びであると言っておりますが、県民総生産九億八千五百三十万ドル、前年度に比べると一億三千四百六十万ドルの増加である、このように言っておるわけです。しかも、それはなぜか、一つは建設ブーム、あるいは政府、民間投資の大幅な伸び、それから石油産業の大型投資、本土政府援助の倍増などと、あげておるわけでありますけれども、そのあとが私非常に気がかりになり、今後の対策上憂慮すべき問題だと思うのでありますが、産業構造の分野の問題であります。これをどういうふうに分析しておりますかというと、第一次産業が七・六%、第二次産業が一八・一%、第三次産業が七四・三%となっており、第三次産業のウエートが非常に高いということを、この総生産、総所得の立場から分析をしているわけであります。だから、ここに私が言った、沖繩の経済が本土経済以上にいびつな状態を呈しているわけでありますが、この最たる原因は基地経済にあるというふうに、私は一方的な、きめつけ方をしたいと思うのでありますが、担当大臣から、そうしたことを踏まえながら、先ほど一点、二点、三点にわたって申し述べたことについての御答弁をお願いしたいと思います。
  6. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) ただいま琉球政府の行政主席の建議書というものを前提に踏まえた具体的な問題についての御質問であります。  第一点の沖繩開発にあたっての基本的な自立への指向目標は、県民福祉向上を踏まえて行なわれなければならない、その点は私どもも同様だと思っておりますし、ことに自立は行政的には自治権確立でありますし、質的には社会資本の充実、ことに立ちおくれております放置できない教育、あるいは社会福祉その他の基本的な人間性の維持のため、あるいは回復のための基本的な先行投資というものを急速に——これはまあ先行というふうな表現はおかしいんですけれども、立ちおくれを取り戻すための投資を進めていかなければならないと考えておるわけであり、そのような姿勢をとってまいりたいと思います。  さらに第二点の、来年の沖繩県として出発する際の財政の問題であります。これは、ただいまお話しになりましたように、国のふところも苦しければ、地方財政全体の台所も苦しい、したがって、また、地方交付税等が国税三税の三二%の比率で、それまた同じように、中央依存の財政から見れば、苦しい要因の大きな、国に直結した要素であるという点については、いま本土においても議論されるところでありますから、私も同感でありますが、さて、その苦しい中で、国も地方財政全般も苦しい中で、沖繩県の実質上の十カ年計画の初年度に耐え得る予算、そしてまた沖繩県が財政上、市町村も含めて、それに立ち向かえる予算というものを確保するのには相当な努力を必要とすると考えておるわけであります。もちろん、国はそれに対しまして、補助率等の別表並びにお手元に差し上げてあります政令案となるべきおおむねの要綱等について、補助率を、かつて本土に存在した補助率を、すべて旧奄美、北海道等も含めて、ほとんどが国の基本的な社会資本の形成については十分の十を前提として組み立てられておることは、すでに御理解願っておるところでありますが、さらにこれにも増して必要なのは、やはり閉鎖された国家の形を余儀なくされた沖繩県の狭い地域の中において、本土のように起債市場もなく、あるいはまた交付金制度も実際上確立しておりませんでした沖繩県の財政が、今日までに国の仕事も担当しながら、累積した赤字等もかかえてまいっておりますので、自主財源の付与ということもきわめて大きな問題であると考えます。したがって、沖繩県の累積赤字等については、この際きれいすっぱりたな上げをしまして、その年次償還額は国が予算として計上して、沖繩県にかわって払うという姿勢を持つべきであり、また、地方自治体等については、五年償還の非常に高利の市中銀行から、ひどい場合には役場の庁舎まで建てておるというような状態でありますから、これからも自治省とよく連絡をとりまして、新しい本土の交付税あるいはまた本土の起債等の肩がわり等を念頭に置きながら、地方財政の充実という点を十分に考えていきませんと、事業のみ過剰に行なわれて、沖繩県、市町村は地元負担に追われて苦しむというパターンを惹起するおそれもありますので、その点は十分注意してまいるつもりでございます。事実、そのような予算編成の要求額なり、あるいは補助率等の内容を定めておるわけであります。  次に、基地経済がもたらすいびつな産業構造の姿勢については、先ほどお話しになりました——まだ正式に私その書類は受け取っておりませんが、新聞等に発表された沖繩の実績に基づく最近の年次の一次、二次産業、三次産業に至る国民所得の依存度というようなものについて、それぞれ総所得から割り出したパーセンテージが示されましたが、これはやはり本土のどの県にも見られない顕著な第三次産業傾斜の、まさに建議書にある奇形的な経済状態であると思っております。その前提には、もちろん自分たちの意に反するところの、結果として取り上げられた基地というものの所在、その基地米軍というものが巨大なる投資をし、あるいはまた消費をしていく、そのことに人間の生きていく上の必死の知恵として、その周辺で取られた土地のそのせめてもの取り返しとしての三次産業形態が発展していったということは、きわめて気の毒でありますけれども、また、ある意味の必然的な、たくましい生命力がそこに芽ばえたものと思います。しかし、あくまでもこれはいびつな形であることは間違いのないことでありますから、したがって、沖繩においては、できれば三次産業の収益の高い所得比率というものを維持しながら、基地経済から平和産業へ依存していく道を模索しなければなりません。したがって、私たちは、沖繩の持っております立地条件の、本土のどの県も及ばない、すなわち最南端の亜熱帯地方の風光明媚にして、本島をはじめ全県が島嶼から成り立つ海洋県というようなところの新しい柱というものが、今後沖繩の、場合によっては農林漁業の底辺も含めて、新しい、本土がまねできない沖繩県の有利性というものを引き出すことによって、自然に、また急激なショックを起こすことなく、この経済の形態の移行をはかってまいりたいと考えているわけであります。  先ほどお話しになりました名目成長率の一五・八%は、本土の今日の状態に比べては高いわけでありますが、しかしながら、われわれとしては、いま作業中でありますけれども、来年度はやはり沖繩については二四、五%の名目成長率というものを前提に置きながら、経企庁との間で作業を進めておる次第でございます。
  7. 杉原一雄

    杉原一雄君 そこで、いろいろの点で見解をお聞きしたわけですけれども、先般、これは第三の問題に入るわけですが、十二月十五日の本会議の首相答弁の中で、非常に短いことばで表現されたので実は理解に苦しんでいるわけですけれども沖繩開発の一つの進め方として新全国総合開発計画の修正ということばを使われたように思っているわけです。その当時の首相の意図は、私なりに推察すれば、お答えいただければ一番いいんですけれども、新全国総合開発計画自体がいま一つの壁にぶつかっているとか、あるいは欠陥が暴露されたとか、そういう認識に立っての御発言であったのか、そうじゃなくて、新全総は現在本土で一つのネットワークをつくって計画をされているわけですから、沖繩ブロックというものはプラスアルファになる、プラスアルファになって、くっつくことが、修正を要する、計画の修正になりますから、そういう意図でおっしゃったのか、私は実は、とりにくかったのでありますが、これは簡単なことすでから、首相の意図をはっきりしていただきたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま御指摘になりました後者のほうに重点を置いてでございます。また、前者のほうも全然無視はできませんが、あわせて……。
  9. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは、前者のほうを——これは総理に聞くことでなくて、経済企画庁長官も御出席いただいておりますから、一応、本土でたいへんひずみが出た、仕事がやりにくくなった、会社、工場をつくろうにも抵抗があってやりにくいと、言うなれば、本土はいろいろな角度で、政府の計画もさることながら、資本主義の持っておる本質からして、いろいろな困難にぶつかっておるわけです。だから、ひとつ沖繩に逃げ込もうというようなことなどで沖繩へずれ込まれたら、たまったものじゃないと思うんです。でありますから、ここで、きちんと本土の新全総そのものがいまどういう欠陥を持っているかということを、お互いがはっきりと洗い出して確認をし、そこに首相の意図を含めながら一つの修正の方向を目ざして努力する、そういう、からだの——考え方、計画そのものを、ある程度あか落としをして、そして沖繩人たちに対する計画に臨むという姿勢が、首相の答弁等を通じて私は納得できますから、担当の大臣からして、一体その全国総合開発計画というのが昭和三十七年の十月五日にできましたその時分、私は県にあって県の総合開発計画の審議委員をして、これとタイアップしながら野党的立場から批判をして参画してまいったわけでありますが、この計画が年度が来たから新全総になったのでなくって、計画自体にやはり一つの大きな欠陥が出てきた。それは何であるか。どういうことであるか。同時にまた、ついででございますから言ってしまいますが、新全総が四十四年の五月三十日にできているわけです。だから、これが悪かった、欠陥が出たから新全総に移ったとして、それで新全総がいま展開をされているわけです。しかしながら、このドルの問題等を含めながら、国民あげて日本の経済について点検をし、お互いに見直しをしている時期でございます。でありますから、首相の国会答弁等におきましても、首相が七年前に愛知構想という形で出した社会開発という構想がいま日の目を見てきたわけです。悪く言えば、首相は七年間、その問題で、あまり本気でなかったということになるんですが、これは失礼ですから言いません。とにかく社会開発というのが、七年前に首相が組閣をするにあたって、時の参謀愛知構想として、これが国民に大きく提起されてきたところです。いま私は、それはそのこと自体がきわめて重要なときであり、屋良主席の建議書にもそのことを高くうたっているわけですが、そういうことを含めながら、全国総合開発計画の自己批判と申しますか、反省、そうして新全総に移り、そして新全総そのものにも、いまきびしく批判があがっているし、実際また日本の経済に大きなひずみがあらわに出てきておるわけです。何が何であるかは言いません。でありますから、その点を企画庁の長官から端的に、反省と今後の展望を含めて、お答えをいただければいいのではないだろうかと、こう思います。
  10. 木村俊夫

    国務大臣(木村俊夫君) いまのお尋ね、二つに分けてお答えしたほうがいいと思います。  第一は、昭和三十七年に策定しました旧計画、これがどうして昭和四十四年に新しく改定を余儀なくされたかという点でございますが、御承知のように、旧計画におきましては拠点開発主義と申しますか、新産都市あるいは工特地区、これで表現されましたような拠点開発主義を基本といたしまして、人口、産業地方分散というものが旧計画の基本的な考え方でございました。ところが、七年たちましてどうかと申しますと、その間における経済社会の非常にテンポの早い変化もございまして、どうも最初に目指したような人口、産業地方分散が必ずしも成功していないということから、いろいろ反省の結果、新全総に移ったわけでございます。  そこで、新全総では、御承知のように、その基本的な方向としましては、私は欠陥はないと考えております。ただ、その後における非常にまた大きな経済変動その他から申しまして、まず第一に経済成長のテンポが非常にその当時の、昭和四十四年の当時の想定よりは計画以上に急であった、高かったという点と、もう一つは、当時からもちろん予想したことでございましたが、環境問題がより以上に深刻化した。この二つの点から、私どもは、この基本的方向には欠陥はございませんけれども、この新しい情勢を取り入れて、明年度から新全総計画の全面チェックと申しますか、総点検を始めようとしておるところでございます。
  11. 杉原一雄

    杉原一雄君 そこで、いまここにおいて、沖繩県民が求めている新しい沖繩開発計画、方法論は別にして、求めているものは何か。理念は先ほど屋良主席の建議書を中心として申し述べたわけでありますが、一体どういうことを沖繩が求めているか。先ほど申し上げました、これは共同通信によるものでございますけれども、七十一年度の沖繩経済、これの数字を見ただけでも私はたいへんな経済だ、先ほどお答えの中にも山中長官からそういうことばがあったわけですが、確かにたいへんだろうと思います。こういうものを踏まえながら、沖繩県民屋良主席を代表として、この開発の方向と申しますか、そういうものを簡単に拾ってみると、こういう主張をしているわけであります。  一つは、先ほど申しました基地経済という表現をとりましたが、屋良さんは、「沖繩経済は、基地依存度の高い消費経済偏重の構造を有し、第三次産業の肥大化と極度に高い輸入依存度を特徴としております。このようなゆがんだ基地経済から脱却するためには、」と、ここで次の構想が展開するわけですが、「一定の工業化が要求されますが、臨海型装置産業の場合、雇用吸収効果ならびに自治体財政への寄与も少ない半面、逆にその誘致には、」、これは最初の全国総合開発計画の失敗をずっと見てきているわけですから、「逆にその誘致には、産業基盤整備のための財政支出が大きく、しかも公害発生の危険は避けられないのであり、誘致企業の選定にあたっては、慎重な配慮が必要であります。そこで、鉱工業は地場産業、既存企業の育成強化をはかることはもちろんであるが、県内に広く雇用の機会を造成するため、非公害型の電子工業、機械工業、縫製加工業等、労働集約型の企業の発展をはからなければなりません。臨海型工業については、土地利用計画にもとづいて、特定地域を指定して波及効果の高い業種を設定することが必要であります」云々、こういう提起をいたしております。加えて第一次産業の農業についてでありますが、「戦災によって耕地は荒廃し、生産手段もほとんど皆無に帰したほか、その後は軍事基地によるぼう大な土地の接収という厳しい条件下におかれてきました。その間、本土において実施されてきた農地改革、食糧管理制度、保護貿易制度など農民保護的な諸政策の恩恵をうけることもなく放置されてきました。復帰にあたって、国はこれらの制度によって、沖繩が当然に受けるべきであっただけの保護措置を保障するほか、沖繩の農業の独自性を育成しつつ、軍事基地の撤去などによって、農業基盤の整備をすみやかに推進しなければなりません。」、総理は、このあたりは気に食わないところだと思います。「そこで、従来からの甘蔗、パインアップルの保護育成を推進するとともに農家所得の向上をはかるために、今後土地改良等によって、農業基盤を整備し、沖繩の恵まれた太陽エネルギーを活用して、牧草の普及による肉牛の増殖、野菜類、果樹、熱帯花卉等の振興をはかって各地域の特性に適応した農業構造の改善をはかる」云々というように、きわめて具体的に工業の問題、第三次産業の観光産業問題等々に触れているわけであります。  いま申し述べた点は、かなり要約いたしておりますけれども、私は、百万県民を代表する屋良主席のこうした開発への期待、これに本土政府の皆さんがやはり協力をし、バックアップしていただかなければならぬのではないかと思いますけれども、これらについて、話は具体的になっておりますけれども、皆さんの時間の許す限り若干の示唆と開発の方向をお示しいただければ幸いだと思います。
  12. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) さらに今度は、具体的に沖繩開発のあり方の問題、そこらに入ってまいったわけでありますが、確かに、言われているように、ゆがんだ基地経済から脱却するためには工業化を要求するのだ、しかしながら、臨海型装置産業の場合には、雇用効果とかあるいは財政への寄与も、地方自治体の財政への寄与もあまりない。加えて最近は公害の心配も出てきた。したがって、その裏返しとして、やはり雇用にも貢献し、あるいはまた公害のないそういう型の、内陸型産業と申しますか、電子工業あるいは機械工業、縫製加工業、そういうようなものがあげてあります。このほかに造船あたりもやはり考えなければなりませんし、あまり公害を出しませんし、非常な人手を要しますし、また立地条件から考えても、最近はおそらく国際的に公海における廃油汚濁について各国が責任を分担すべき境界が定まってまいると思います。そうすると、日本の船はかってに、いま問題になっているような、廃油ボールになるような、洋上にビルジを流しながらシンガポールあたりまで行くというようなやり方は、早晩できなくなると思うわけであります。したがって沖繩の置かれた立地条件等は、そういう大きなタンカー等のすでにCTSあるいは精製等が行なわれておりますことも伴って、そういう造船の大規模造船も必要だと思いますが、目下のところ、本土の企業等がドルショックによって、川崎重工業の進出断念等によって、大きなものは実は少しずれそうになっておりますが、しかし、現地の既存産業で那覇の造船所あるいは糸満造船所、そういうところが本土資本のバックのもとに、自分たち沖繩における中規模クラスの造船所をつくろうといたしておりますので、そういうものには積極的に金融公庫融資等でもってバックアップをして、ここに言われているようなことをわれわれとしては念頭に置いて進めていかなければならぬと考えます。ただ、すでにもう本土政府の手の及ぶところではなかったわけでありますが、ガルフ、エッソあるいは東洋石油、あるいはまた三菱、あるいはアラビア等々のそれぞれの金武湾あるいは中城湾等に対する集約的な進出等が予見されているようでありますし、すでに操業も開始いたしておりますので、これらについては早急に本土法の、復帰いたしましたときの公害防止各規制条例というものをきびしく実施していきませんと、失われたものは再び帰らないという、私たちが過去の反省の上に立たなければならないものを沖繩で再び、主席のことばによれば、本土の轍を踏むことなくということが書いてありますが、そういうことを十分に念頭に置いていかなければならぬと考えます。  さらに農業の問題については、これはもうまさにここに書いてあるとおりでございまして、沖繩においては、先ほど申しました沖繩の立地条件を生かす場合において、農業について言うならば、沖繩の収益性の高い、第一の収益をあげようとすれば、立地条件の気候風土というものを最大限に利用することにあります。したがってキビ、パイン等は、少なくとも沖繩が最南端の県である限り、本土各県が追いつけないいい条件を持っておるわけでありますから、これについてやはり十分の土地改良等の基盤整備、そうしてまた、ことしの干ばつ等で示されたような根本的な壊滅的な打撃を受けないような農業用水の確保、こういう問題につとめて、さらに今後共済制度とか、そういう問題から始まる一連の農民の段階、そうしてまた企業としての存立について十分に考えてまいりたいと思います。ことしのキビ価格等についても、あしたの朝は緊急に円を切り上げるということがきまっておりましても、沖繩のことしの干ばつ、台風等を見て、総理の御裁断により円建てで買う、奄美大島並みの価格で決定いたしましたのも、そういう配慮を持っていかなければ、再生産への意欲をもし失ったならば、沖繩における有利なる基幹作目がだめになるということで、農業の上からの配慮をいたしたつもりでございます。さらに、それにパインやキビ等のそれぞれのバガスなり梢頭部なり、あるいはパインのしぼりかすなり等を利用した肉牛というものは沖繩においては非常に有望でございますが、それについては、来年度予算も含めて、肉牛の品種改良、導入、そういうものと、大敵であるダニの駆除、こういうものをことし石垣島でやってみましたところ非常に効果をあげましたので、これは引き続き実施してまいりますし、また沖繩においてはポンカン、タンカンあるいはメロン等非常に有望でございますが、ただ遺憾ながらミカンコミバエあるいはウリミバエ等がおりまして、これらの駆除が一応奄美大島等で成功した方式もございますし、それらのものも来年は久米島あたりから着手して、すでに本島はウリミバエがいないということが立証されましたために、メロン等は本土に対する、計画的な露地栽培でもできる沖繩でありますから、出荷がなされようとしている態勢は、たいへんけっこうなことだと思うわけでありますが、(「要領よく」と呼ぶ者あり)このようなことで、質問がたいへん基本的な問題でございましたので、おしゃべりが過ぎたということでありますからやめますが、要するに沖繩の持っておる有利性に私たちが援助をしませんと、普遍的にどこでもやれるような農業を、ただ目的なく援助したのでは、沖繩のためにならないというつもりでおるわけであります。
  13. 杉原一雄

    杉原一雄君 沖繩経済の特色は、現在考えた場合、いまの相前後した話、お互いのやりとりの中に明確に出てきていると思いますが、考えてみますと、やはり対外収支構造が異様な状態になっている。つまり輸入が多くて輸出が少ない、だから赤字が多い。こういうことが非常に大きな問題であると思います。そのことが、結果的には米軍関係から受け取るお金をもってとにかく沖繩経済が何とかやりくりされてきている。そのことを私たち基地経済と言っておるわけですが、こうした今日までの経済の姿を大きく変革していくということがやはり山中構想の中で言われようとしておることだと思いますが、もう一度そのことを念には念を入れて私のほうからも要望しておきたいと思います。だから産業構造にしましても、やっぱり大きく第一次、第二次、第三次というこの産業の構成比によりますと、第一次が一〇・九、第二次が一九・一、そして第三次が七〇・〇%、七〇・〇%の中に女性の問題、口では言いかねる問題等もあるわけでして、こうしたいびつな状態を大きく変えていくということが今後の開発の大切な事柄だと思われます。なお、よく山中農林大臣代理が亜熱帯地方だからというので、何かすばらしい夢の国のような印象づけをさせられてまいったのでありますけれども、いろいろ調べてみると、そうばかりは言えないような気がいたします。豊かな太陽エネルギーがある、それはけっこうでしょう。だが、平均湿度が八〇%もあって、本土が七一%であるということ等から比較して、営農上大きな問題がある。あるいはトマトの色づきが悪いとか、干し草をサイロから出せば三日でかびつくとか、家畜には——家畜というのは大体四〇%から七五%ですから、湿度がかなり不適当である。農機具はさびつくといったような問題とか、雨の問題等、いろいろありますが、こうしたマイナス面の問題等は農林省当局では十分御検討なさっていることだと思いますが、今後の沖繩農業をどうするかということで、本土農業自体もたいへんな危機にあるわけですから、相当の計画性と情熱を持ってやらなければ問題の本質の解決にはならぬのではないか。牛がよく育つ、それはそうでしょう。だが一頭の生牛が本土に参る場合に百ドルの運賃が要るんだと、こういうことになりますと、これは商品としてたいへん扱いにくい問題になります。こうした問題等いろいろ整理をしながら沖繩経済、商工並びに農、各種産業のあり方について、それこそ本土のあやまちを繰り返すことなく、やはり沖繩の今後の経済開発に全力を傾けていただきたいことを特に希望しておきたいと思います。  最後に、だからそういう開発を進める場合に、やはり手だてが必要であります。それが今度の立法のねらいだと思いますが、この立法にも多くの問題点があります。屋良さんが指摘しているのでは、第一条のところに「沖繩の特殊事情にかんがみ、」云々とあるところに、「地方自治を尊重しながら、平和で豊かな沖繩をつくるため」と、こういうことを挿入していただきたいという意見が提起されているわけです。私は、もっともだと思うし、また政府当局は入れなくてもわかっているじゃないかと、こうおっしゃると思いますが、やはりこの点はきちんと規定しておったほうが沖繩県民も安心もするだろうし、政府はごまかしと、そうは言いませんが、きょう木島君が、六カ月たったらごまかされどうしだと言われたが、やはりそういう不安感は沖繩県民にもあるわけですから、正しくその点を述べられたらいいんじゃないかというふうに思います。  これは私、修正案などというのではありません。いまここで挿入をしろと言ったって、これは修正条項になりますから、手続上容易ではないけれども、私は、その点、精神的に今後の運営の面でも、この委員会を通じて確認をしていただきたいと実は思います。第三条のところで、第一項に「土地の利用に関する事項」とあるわけですが、このところで(イ)、(ロ)、(ハ)ということで問題提起をしております。(イ)は「軍事基地の跡地利用」、(ロ)は「軌道」、(ハ)は「都市の整備開発」、こういうことを入れてほしいということを言っておりますし、第四条では、第四条の二項の終わりのところに「関係行政機関の長に協議し……振興開発計画を決定する。」と、ここに「沖繩県知事の同意を得て」云々と挿入していただきたいという建議書の意見でございます。それから第七条の六項のところで、これは「全額を国が負担する」ということを入れてほしい、こういう要望等、まだその他あるわけですが、省略いたしますけれども、こうした要望は、私から見て、きわめて妥当な要望であると実は思います。その点、長官のほうの所信があれば明確に出していただきたいと思いますが、同時に、えてしてこうした開発特別措置法、こういうものによって——本土におきましてもたくさんのそうした立法があり、すでに審議会等が行なわれていろいろ計画が進められ、総合点検が行なわれつつあるということは事実でありますけれども、ただ、ことしの予算編成期を目ざしてさまざまな地方開発審議会が行なわれ、ほぼ終わったと思います。その終わった段階で、これは一つの新聞だけでありません、幾つもの新聞が——表現をすれば、こういう表現が一番妥当かと思いますが、飾りだけの地方開発審議会——もっと要約して、飾りだけの地方開発審という表現を用いてあるわけです。こうしたことは、私も、内閣総理大臣佐藤榮作という名義の辞令をもらったのは今度が初めてですが、ある地方開発審議会の委員をしております。この間ありましたので、いろいろ私も意見を述べました。ほかの人も述べました。私の隣におったある大学の教授は一言半句も述べませんでした。で、あとで教授に「あなたはいつ意見を述べるのですか」、「いや、きょう述べることができなかったので、またあるでしょう」と、「それはだめですよ、これは年に一回しかない」、「ああ、そうですか」と言ってびっくりして帰っていかれました。事ほどさように、そういったような審議会が形式化しているわけであります。でありますから、いま屋良さんが「県知事の同意を得て、」ということばの挿入を要求された気持ちも、それらの不安をあらわしているのじゃないだろうか。えてして、こうした開発審が結果的には中央で総理大臣の諮問機関として存置され、そうしていろいろなことがここで論議されるわけであります。そういうことでありますから、これは先ほど総理も明らかに、地方自治の原則、県民の心を心としてと明確におっしゃっているわけですから、いわゆる審議会の運営、計画の樹立、そういったこと等について、いまこの場を通じてやはり総理のお約束をもう一度確認していただきたいと同時に、先ほど各条章について若干、屋良さんの修正的な要望意見を申し述べた点については山中長官から御回答をいただきたいと思います。  これで私の質問を終わります。
  14. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 振興開発措置法の第一条「目的」に「特殊事情にかんがみ、」の次に「地方自治を尊重しながら、平和で豊かな沖繩をつくるため」と法律用語として入れてほしいという御意見であります。これは、私ども地方自治というものが実際上法律の中全部に、本土の知事であったならば、本土の市町村長であったならばという意味において侵しておるところが全くありませんし、北海道開発あたりにおいては認められていない知事の原案提出権等も認めておりますし、また、管理者としての市町村長等の申請がなければ、知事ももちろんでありますが、国は直轄はしないという姿勢も原則としてとっておりますので、その意味では、私たち法律の前提として地方自治の尊重は当然のことである。したがって、私も提案理由の説明の中では、建議書の参ります前に、最後にあらためてもう一ぺんこれは地方自治というものに対して十分配慮しておるのだということを申し上げたつもりで、記憶いたしておるわけであります。「平和で豊かな沖繩」というのは、これはもう私どもとしては、「住民の生活及び職業の安定並びに福祉の向上」という表現をいたしておりますので、平和ということばを私たちは文字どおり平和な島にしたいと思っておりますが、基地の議論になりますと、やはり安保条約基地提供、そうして基地の密度、そういうもので、平和ということばの意義は何ぞやという論争にもなりますので、その点は私も省略をいたします。  さらに、開発計画の内容に(イ)、(ロ)、(ハ)と書いて、それぞれ要望がございます。「軌道」についてはいろいろと議論のあるところで、いまのところは高速自動車道という構想を持っておりますが、総理の御答弁もありましたように、軌道というものも検討したいということでありますし、「都市の整備開発」については衆議院の修正で入りました。なお「軍事基地の跡地利用」については、私どもとしては、一応やはりめどの立ったものでないと、開発計画に織り込めない。そのためには、総理の姿勢としても院議を受けた整理縮小の方向に従って逐次組み入れていくということにいたすほうが現実的ではないかと思います。  さらに、沖繩県知事の同意を得てから総理大臣が決定をすべきであるという御意見、ごもっともでありますが、先ほども申しましたとおり、原案を提出し、そして審議会については、なるほど言われてみれば、そういう見方もあるのかなと思う点がありました。役人が十三名、そして二十五名の過半数という姿勢について私どもも率直に反省をいたし、衆議院の修正の三十名とし、学識経験者六名を十一名とする。したがって、ここに沖繩の代表者を十分に反映させるような人選をしなさいという言外の修正が行なわれましたので、これによって、もちろん知事は当然一義的に審議会の委員にもなられますが、その構成も衆議院の修正を踏まえて、沖繩県知事が同意しないものがそこでつくられるということは実質上ないという運営をいたしたいと存じます。その他は省略をいたします。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 杉原君にお答えをいたしますが、この自治、自主自立の地方制度、これを育てるということはなかなか容易なことではありません。これは中央においての考え方と地方においての考え方と、それが意気投合する、こういうことでないと、なかなかうまくまいらないと思います。と申しますのは、今回のような沖繩県の場合だと、どうしても中央から相当高い援助をしないと十分の振興もはかれない。そういう場合に、出過ぎたこちらからの自治の介入も避けなければなりませんが、また同時に自治権者も、そういう中央にたよるからといって遠慮するというようなことがあってはだめだ、かように私は思います。そのために必要なのは各種の審議会でございますが、それが飾りだけの審議会だ、こういうふうな批判を受けるようではとても目的を達するものではない、かように私は思っておりますから、十二分にそのところは、まあ中央、地方意気投合する、こういうことが望ましいのではないだろうか、かように思って、先ほど来の御意見はそのまま素直に、私は受けとめたつもりでございます。ありがとうございました。     —————————————
  16. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 辻一彦君。
  17. 辻一彦

    ○辻一彦君 私、農林水産委員会のほうから連合審査に参加をいたしております。質疑を行なうにあたって、私の沖繩返還の運動に対する体験を一言だけ申し上げておきたい、こういうように思います。  昭和二十八年の四月でしたが、沖繩の青年団が初めて本土へ参りまして、そのときに、沖繩の青年団を代表していたのが仲宗根悟君、今日沖繩祖国復帰協議会の事務局長としまして、二十年近く復帰運動、返還運動にあたっておる仲宗根君でありました。彼が日本青年館での全国の青年団の会議で発言しましたのは、昭和二十八年、いま沖繩では軍用地の拡大のために農家が戦車とブルドーザーで引きつぶされ、ガソリンがぶっかけられて、火をつけて焼き払われておる、その前にわれわれ青年は立って抵抗しているのだ、本土の青年はどう考えるかと、こういう強い発言を聞いたのが昭和二十八年の春であります。それを契機にして、当時の全国の青年団が昭和三十年に、沖繩県人会の神山さん等と一緒になりまして、沖繩祖国復帰国民運動協議会というのをつくりました。それが本土において沖繩返還の運動が県人会以外の方で取り上げられた初めての運動でなかったかと思います。そのときの出発点は土地であります。そして今日もなお沖繩の最大の問題は土地の問題だ、こういうように考えるわけであります。  そこで、総理をはじめ閣僚の皆さん、沖繩返還、アメリカが沖繩を返さざるを得なくなったその事情については、それぞれの御見解がありますが、私は、このように戦後四分の一世紀間全力をあげて返還闘争のために戦ってきた沖繩の青年や農民や労働者や市民のこの力が、ついにアメリカをして本土沖繩を返さざるを得なくなった、そういう原動力でないかと考えるわけであります。その点でひとつ総理大臣に、沖繩返還をやむを得ずアメリカがせざるを得なくなったその原動力は何であるか、そのことについてお伺いをいたしたいと思います。
  18. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま辻君が自問自答しておられる、辻君の御意見で十分だと思います。私自身も、沖繩の同胞がいかにして土地を取られ、いかにして土地を取り返し、いかにして自分たち生活を営もうか、これに努力したその苦難の歩み、これは私の聞いたところは、瀬長君の書いた「民族の悲劇」、この本でございますけれど、この本がただいまのような事情を十分にあらわしている。仲宗根君の言っているとおりの問題でございます。私は、これらのことを考えながらも、沖繩を一日も早く祖国に迎えること、これが本土のわれわれのつとめでなければならない、かように感じている次第でございます。
  19. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、沖繩の返還を今日の状況まで推し進めた歴史というものは、米軍に土地を接収されて、それに抵抗して戦ってきた農民の力が大きな運動の中心、中核になってきたのではないか、こういうように考えるわけであります。そこで、将来本土復帰するとすれば、まず第一に、一番辛酸をなめ、苦労した農村の農民に対してこたえるということが、復帰としてまず第一にやらなくてはならないことではないか、こういうふうに思いますが、この点につきましてひとつ総理の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  20. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私も、昭和三十年五月二十二日の衆議院会議において、沖繩本土と隔絶された中において島ぐるみの土地闘争をやっていることについて、時の鳩山内閣に対して、本土政府は座視すべきでないという緊急質問をやったものでございます。したがって私も、その沖繩復帰へのいわゆる原動力が何であったかについては、表現のしかたは異なりますが、追い詰められた弱者としての立場、あるいは戦敗国の立場を引き続き強いられた人々のほんとうに悲痛な戦いというものがその中核になっておったことは、否定できない事実であると考えます。  そこで、本土沖繩を迎えるにあたっては、私どもは、ともすれば沖繩本島のいわゆるトピックス的な問題に焦点を向けがちなきらいもございます。しかし私は、やはり沖繩の本島以外——まあ部分的には本島も含まれますが、本島以外の離島においてはどうしても農業、そしてまた漁業というものの振興をはかる以外に、この離島の人々の苦しみ、そしてまた今後沖繩における四十六の有人離島の方々のそれぞれの生活向上、福祉をはかるためには、どうしてもその根底に農業に対する愛情、そして沖繩の正しい農業政策のレイアウトというものを絶対にやらなければならない。そのための国の援助あるいは国の指導というものを惜しんではならないということを考えているもので、同感でございます。
  21. 辻一彦

    ○辻一彦君 農民に対する愛情が第一である、そういう点で御同感であれば、農民は第一に土地を要求しておると思います。まず農民に土地を与える、このことは、私は、真に沖繩農民に対する愛情のあらわれであると、こういうように考えます。そこで、九月に私も何回目かの沖繩に参りました。空から行ったのは初めてでありますが、海から行ったのと違って、空から沖繩をたずねてみて、これは全く基地の中に沖繩がある。下におれば道路の周辺に金網があって基地が囲まれておるように思いますが、上から見ると、人間が歩いているのは——沖繩県人が歩いているのは、金網で囲まれた中を歩いている。全くそういう意味基地の中に存在をしている、こういうように思いました。そこで一番いいところを軍用地に米軍が接収をしている。これでは幾ら農業の振興策を考えても、たんぼや畑に一番いいところを米軍に押えられているので、農業の発展策、こういうものはあり得ない、こういうように思ったわけでありますが、今日沖繩本土と非常に農業の格差が大きいわけでありますが、その最大の原因というものは一体何であるか、これをひとつ担当大臣にお伺いいたしたい。
  22. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 沖繩の本島においては、まさにおっしゃるとおり、軍事基地というものが唯一最大の農業振興のガンであると思います。また、農業をやろうにもやれない土地の状態の中に追い詰められて、ただそこの上に住んで生活をするために余儀なくされたことが結局第三次産業の、先ほど杉原委員との応答にありました異常な奇形的な発達ということで示しておりますように、やむを得ずくわを持つ手を切りかえて、いろんな基地関連職業を選ばざるを得なかったというところにあることは、私も同感であります。しかし、私ども政府の立場としては、現在御反対ではありますけれども、一応外交的な取りきめによって基地の相当部分を再び提供いたしますので、これらについての農業の新しい沖繩本島における計画の設計について、あるいはまた新しい経済開発についてきわめて大きなガンは軍用土地であるということについては、私も認めざるを得ない立場にございます。しかしながら、やはり沖繩においては、農民の大部分は本島以外の各離島に散在しておられて、それで通信、交通等の非常な悪条件の上に立って、あるいはまた、キビがいいといっても、本土では事業団の買い上げ対象にならない含みつ糖しかつくれないような島で、やはりキビにしがみついておられる。これらについて、私たちは、それらの多くの離島住民のほとんどが農民であり、そして漁業であっても、ほとんどがくり船である、そういうような前近代的な姿というものに対して十分に意を払って、沖繩の農漁業の振興ということをはかってまいりたいと考えるわけであります。沖繩本島における軍用地の阻害というものについて、直ちにいまそれをどういうふうに計画的に撤去して、どういう営農形態をつくるということを、私自身もいまここで明言できない立場に、基地の存在というものがあるということは私も承知いたしております。
  23. 辻一彦

    ○辻一彦君 いま担当大臣から、軍用地が農業問題の最大のガンである、そして農民に対する愛情ということを第一に考える、まあ土地を返すということ——これは具体的な問題は別として、原則的にはそうだと、こういう確認があったわけでありますが、それならばいま米軍が使っていない黙認耕作地があります。これをどうするかということが、いま御発言になったそれを具体的にあかしとして実証されるかどうかということになると思います。そういう意味におきまして、まず米軍基地内または外における黙認耕作地の実態をひとつお伺いをいたしたい。これは防衛庁長官からお願いします。
  24. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは御指摘のとおり、確かに相当数量があるわけです。ただ、問題なのは、今後私どもこの施設を米軍に提供していく上においても、区域を提供していく上においても絶えずその実態を見きわめていくことが必要になってまいると思うんです。したがいまして、いま御指摘の黙認耕作地でありまするが、これは米軍と賃貸契約を結んで、そしてその上で耕作地として利用をしておると、こういうところもあるわけなんですね。したがいまして、これを直ちに黙認耕作地であるから軍用適地から除外するということがはたして地主にとって最適であるかどうか、このあたりは施政権が戻りましてから一つ一つのケースに従って慎重に検討をする、相談をしながらいく大事なところではないかというふうに思います。そういう特性があることは、おそらく辻さんも御存じだと思いますが、そういう特殊な実は地域というものについて配慮を加えながら、なお施政権が返還されました暁は解除をしていく方向で努力をしてまいりたいと思います。
  25. 辻一彦

    ○辻一彦君 もう少し具体的な黙認耕作地の実態、それから面積等、具体的にひとつ御報告を願いたい。
  26. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 黙認耕作地は、御承知のとおりに、布令二十号で米軍が一時的に使用を認めておるところでございますが、許可面積——米軍が市町村長に対しまして許可をしておるその許可面積は、民公有地が約五千四百七十七万九千平方メートル、国県有地が約百八十四万三千平方メートル、合計で約五千六百六十二万二千平方メートル、そのうちに実際に利用しております面積は、民公有地で約一千九百八十一万三千平方メートル、国県有地で約百八万平方メートル、合計約二千八十九万三千平方メートルでございますので、いわゆる非利用面積——許可はありましたけれども実際に利用しておらない面積が約三千五百七十二万九千平方メートルございます。そこで、この利用面積のうちに農耕をいたしておる部分が——耕作面積が民公有地、国県有地合計いたしまして約一千五百十一万三千平方メートル、耕作者の数は、土地の所有者が約八千四百人、それから土地の所有者でない、いわゆる第三者が耕作いたしておりますものが約二千五百人、合計一万九百人でございます。それから山林、原野につきましてまき木を採取しておるところがございます。この利用面積が民公有地と国県有地合計いたしまして約四百一万四千平方メートル、利用者が約五千人でございます。許可面積に対する利用率が約三七%。なお全軍用地、このうちから一時使用施設、北部を中心としました一時使用訓練場を除きまして、公社等を含んだいわゆる全軍用地に対する割合は、許可面積が約一九%、それから利用面積が占める割合が約七%……。
  27. 辻一彦

    ○辻一彦君 その程度でけっこうです。
  28. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 以上でございます。
  29. 辻一彦

    ○辻一彦君 こまかい数字じゃなしに、いま御報告の何によりますと、米軍基地内の耕作地は千五百ヘクタールというように聞きましたですね。ところが米軍の七〇年六月三十日の資料によると、基地内に四千二百六十ヘクタールの黙認耕作地があるという統計が出ておりますが、この間数字が非常に違うのですが、どうなんですか。
  30. 島田豊

    政府委員(島田豊君) ただいま申しましたように、許可をした耕作地なりあるいはまき木の採取に許可をいたしました面積が約五千六百六十二万二千平方メートル、そのうちに実際に利用しておりますのが約二千八十九万三千平方メートルと、こういうことでございます。
  31. 辻一彦

    ○辻一彦君 そこで、数字は、いま御報告のように、米軍基地内に五千七百八十九ヘクタール、大体五千八百町歩の黙認耕作地があると、こういう数字に大まかになります。そこで、私も沖繩に行ったときに、この黙認耕作地の実態を見ましたが、一つの例は基地の金網の中に年老いた農民が細々とくわをふるっている、そういう姿が一つ黙認耕作地としてありました。私は、施政権を日本に取り返してこんな状況に一体おいておいていいのかどうか、こういうことを一つ強く感じました。いま一つは、これはたとえば施設庁のほうも御存じのとおりでありますが、コザ市の近郊には五十町歩前後の黙認耕作地がありますが、全部を含めて二百町歩近い近郊地があります。ここを私はコザ市の農林局の農政課の皆さんと一緒に歩きましたが、このコザ市は野菜が非常に足りないで困っておるんだが、もし、ここが解放されて野菜団地として使うことができるならば、二百ヘクタールのりっぱなこの林や畑を使って野菜団地ができるんだと、こういうことを強く伺ったんであります。このように、あの屈辱的なああいう姿を黙認耕作地の中に農民を置いておいていいのかどうか、これは感情的な問題もありますが、しかし、いま言ったように、沖繩ほんとうの農業の振興をはかろうとすれば、いま使っていないような黙認耕作地は一刻も早く解放さすと、こういうことが私は大事じゃないか、こう思いますが、その点いかがですか。
  32. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御指摘の点は、私も同感であります。ただ、まあ勝者というものは、かってな相当欲ばったことをするもので、その結果があの巨大な基地になったものと思われます。したがって、施政権がこちらに戻ってくれば、そういうものをきめこまかに、しさいに検討をして、さっき申し上げましたように、地主の側からいって賃貸契約を結びながら黙認耕作地として耕作を続けることのほうが経済的にプラスなのか、あるいはいま野菜栽培の適地ならば、これはやはり解除をすることによって野菜の適地としてむしろ効率をあげることのほうが経済的にプラスなのか、そのあたりは微妙な問題もあろうかと思いまするが、いまの屈辱感の問題はよくわかりまするし、よくその辺は所有者のふところぐあい、経済事情というようなことを勘案しながら、きめこまかに対処をしてまいりたいと思います。
  33. 辻一彦

    ○辻一彦君 それでは、私は、その黙認耕作地というものの意義といいますか、どういう意味なのかということを、一般的に黙認耕作地と、こう言われておりますが、ちょっと正確な解釈を一ぺん確認をしたいと思うんですが、黙認耕作地というのはどういうように説明されますか。
  34. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 布令二十号の中にその表現がございますが、その部分をちょっと読んでみますと、「合衆国に緊急な必要がなく、また琉球経済の最上の利益に合致するならば、合衆国はその規定した条件のもとに賃借土地を一時使用する特権を所有者又はその他の者に許可することができる。ただし、合衆国はその自由裁量により何時でもこの特権を取消すことができる。」ということでございまして、市町村長に対しまして一時使用の許可をいたしまして、そして市町村長は土地の所有者を優先させて耕作なり、あるいはまき木の採取をやらせる、ただし所有者だけが耕作なり、まき木採取をやるのでございませんで、第三者もやっております。その土地所有者と第三者との権利関係が必ずしも明らかでございませんが、結局賃借料を米側は払いながら、しかしながら、ここに書いておりますような場合におきましては、これはそこを一時的に耕作を黙認する、こういう形でございますので、本来、本土でございましたら、そういうふうに耕作を認める場合におきましては、実は賃借料から若干の、そこから上がります利益分を差し引いて賃借料を払うというのが本土の例でございますが、沖繩の場合におきましては、賃借料はそのままにしておいて、そして農業を営ませる、こういうことを認めておるということでございます。
  35. 辻一彦

    ○辻一彦君 むずかしい法律は別として、要するにこういうことであると思うのです。黙認耕作地とは米軍が必要以上に接収しておいた軍用地で、さしあたり必要としない場合、一定の条件のもとに地主等に一時的に居住、耕作を許している土地で、米軍の要求がある場合、その理由のいかんを問わず、いつでも取り上げてしまう土地である。まあ平たくいえばこういうことであろうと思うのですが、こういう言ってみれば米軍——先ほど長官も勝者はかってであると言われましたが、非常に余裕をもって軍用地を確保して、そして実際は要らない、だから余っているから貸すのだ、こういうことになっている。だから要らない土地であれば、今日の政治情勢は、これは国会でも決議されておりますが、基地を縮小するという方向を向いておるのでありますから、こういう要らない黙認耕作地は農民に返す、こういう方向を出すということが私は必要であると思うのですが、その点ひとつ基本的にどうお考えか、お伺いしたい。
  36. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 基本的には全く同感です。そこで、さっき申し上げたような特殊な事情下にありまするので、そのあたりをよく相談をしながら実情に即して処置をしてまいりたい、また基地を縮小する方向についても全く同感であります。
  37. 辻一彦

    ○辻一彦君 総理は一月の上旬にアメリカに渡られて、サンクレメンテでニクソン大統領と会談をされる。このとき沖繩における具体的な基地縮小について話し合いをされる用意があるのかどうか、お伺いしたい。
  38. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 二日ニクソン大統領と会いますから、一日は沖繩問題について十分時間をさいて話しするつもりであります。他の一日は世界情勢、ことにアジアの情勢、かように一応区分けしておりますが、おそらく沖繩の問題以外の日米間の問題は、それまでに大体の方向づけが終わるのじゃないだろうか、かように期待しておりますので、沖繩の問題については十分話し合うつもりであります。そういう際に、ただいまのような点も、もちろん基地の縮小ということについてはよく話し合わなきゃならぬと思っております。
  39. 辻一彦

    ○辻一彦君 その基地の縮小は、いま申し上げました黙認耕作地を農民に少しでも返還をしていく、そういう方向を含めてお話し合いをされるのかどうか、もう一度重ねてお伺いしたい。
  40. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもうかっこうの材料ですから、もちろんそれを含めて話しをするということでございます。
  41. 辻一彦

    ○辻一彦君 かっこうの材料ということは、この基地縮小、黙認耕作地の返還について努力をする、こういうお約束をいただいたと私確認しますので、その努力はぜひひとつ沖繩農民のためにお願いをいたしたいと思います。  そこで次に、最近新聞の報ずるところによりますと、沖繩で地価が非常に上がって、土地の買い占めがいろいろな形で行なわれておる、こういうことを新聞で見るわけであります。そこで、その背景として報じられておるのは、観光開発あるいは別荘づくりに本土の土地ブローカーが乗り込んでおる、土地会社や観光会社の進出がある、あるいは伝えられる海洋博のこれを目ざして土地の先買いが行なわれようとしておる、こういうことで土地の買い占めがいま広範に起ころうといたしておるということでありますが、この実態について、山中長官からひとつお伺いしたい。
  42. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そのような報道が現地あたりでたびたび出ますので、私のほうとしても調査団を派遣いたしました。したがって、農林省、建設省、それから私ども沖繩北方対策庁、それぞれ参加いたしたわけでありますが、沖繩本島、読谷、恩納、名護、本部、上本部、西原、中城、石垣、宮古、これらを調査いたしました。宮古並びに石垣等については、個所も少のうございますから、わりとわかったのでありますが、この本島のほうは、ゴルフ場とかいろいろ入りまじっておりまして、よくこの調査ではわかりませんでした。いま琉球政府のほうでも調査を開始いたしたようでございます。ただ、琉球政府のほうでは布令並びに琉球政府立法によって、非琉球人という表現でございますが、沖繩県民以外の者が土地を取得し、あるいは地上権あるいは永小作権、そういうものを取得する場合においては、琉球政府の主席の許可が要るようになっております。したがって、いわゆる買い占めとか買いあさりとかいう場合において、そこに琉球政府の許可権の行使があるわけでありますから、沖繩の観光開発なり、あるいは将来のあるべき海洋博の姿等を阻害するような不当な投機的な買い占めというようなもので、沖繩の経済にはかえってデメリットを及ぼすというようなものについては、おそらくその法律のもとに主席の許可が出ないものというふうに私どもは見ておりますが、なお、しかし農業の立場からも、やはり沖繩のこのような状態が全体の沖繩の経済発展に寄与するものであるかどうか。そういうものについて、琉球政府側と、私どもは干渉はできませんが、よく連絡を緊密にしてまいりたいと思います。
  43. 辻一彦

    ○辻一彦君 沖繩北方対策庁、建設省、農林省、三者が調査団をつくって行かれて、いまのような具体性のない御報告では、私非常に残念に思うのですが、まあ二、三いま琉球政府の農林局から最近聞いた数字等がありますから、一ぺん申し上げます。  十一月九日の新聞では、いま長官の言うように、本島ではゴルフ場に百三十二万坪が買われている、宮古に百六十二万坪、石垣島に三百三十万坪と、これは新聞の報道であります。しかし、一つ、知念、佐敷の両村の山、朝日観光が守礼カントリークラブの名義で四十万坪を買い取る計画で、現在三十三万三千四百四十四坪は登記済みが一つ。第二に、宮古・下地町で町有林で東急開発グループ、二十二万六千八百七十五坪が買われている。第三、八重山自然保護地区、沖繩日誠総業が六十三万五千二百五十坪買い占めた。八重山平久保、日誠総業が十万坪を買い占めた。こういうものが琉球政府の農林局の最近の調査で私は伺っておるわけです。  ところが、さらに、この新聞——現地の沖繩タイムスや琉球新報等が報ずるところでは、本土における映画俳優、芸能人、こういう人がすでにこの東村で十三万坪の土地を買う話がついた、あるいはさらに恩納村のあの海岸地帯にそういう動きがどんどん進んでいる、こういうことが、新聞報道でありますが、出ております。この状況を見ると、私は実態はなかなかつかみにくい、確かにそのとおりでありますが、個人の名義貸しあるいは合弁会社がダミーをつくって、あるいは本土沖繩の土地を交換をする等、いろんな裏工作によって現実に土地の買い占めが着々と進んでおるのではないか。こういうふうに考えますが、そこらの実態はどうお考えでありましょうか、お伺いしたいと思います。
  44. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私どもの調査でも、ただいまのような点もありますし、また、いま聞いて、私の知らないものもございます。しかし、いずれにしても、やはりこれはいわゆる米軍の土地取り上げみたいなことはできないわけですし、そこで合意しなければその売買契約も成立しないわけですけれども、それが沖繩において主席の許可を得るための前提条件であるいろいろの条件を満たしておらなければ許可が出ないということになるわけでありますから、したがって、いまのものはいずれもまだ許可が出たものにはなっていないわけで、いま私どもの手元で調べた結果では、許可の出たものとしては、パイプニット株式会社、これは石川市であります。松下電器産業株式会社、これは糸満市にあります。浜田文二、恩納村、これがたぶん、植物果樹園予定と書いてありますが、それだと思うのですが、さらに平良市で大洋水産株式会社がウナギの養殖でございます。そういうもの等が一応主席の許可を得ておるという報告は出ております。
  45. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、九月に沖繩調査に参ったときに、あの戦跡の摩文仁の、糸満市の喜屋武という部落——参議院の喜屋武さんと同じ名前ですが、この部落で、晩に農民と夜おそくまで懇談会をやりました。そのときに農民の皆さんが、この悲劇の沖繩にいま土地の買い占めに来るような本土の業者がおる、このことは自分たちの感情としてどうしても受け入れることができないという。こういうことを強く指摘しておったと思います。これは感情の問題です。しかし、先ほどもお話が出ましたが、沖繩のこれからの開発ということを将来考えていけば、どうしても観光立県ということが一つ大事だと思います。その場合に、有名な人が一番いい所を別荘に買い取ってしまう。あるいは観光施設資本が——いろいろな本土の資本がいろいろの形で大事なところを買い取って、言うならばスプロール化が起これば、これは物理的に、これからの沖繩開発計画を進める上に非常に大きな障害になるのではないか。  また第二に、土地の値上がり、新聞では、最近すでに三倍ぐらいになっていると、こういうように言われておりますが、地価が上がれば公共投資をする場合にほとんど土地代に食われて、これからどうしてもわが国が、本土が行なわなければならない将来の沖繩の公共投資に対して、こういう土地代にどんどん経費が食われて、思ったような開発ができなくなる。この二つを考えますと、私は、少なくも沖繩開発の正確な青写真がしっかりつくられるまでは、寸土といえどもこういう土地を渡さないというくらいの何か歯どめがあってしかるべきだと、こう思うのですが、これはいまの自由経済の中でむずかしい問題ですが、何か具体的なこういう歯どめをかけるお考えがおありかどうか、お伺いをしたいと思います。
  46. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 本土のほうも、相対ずくでありますとあちこちでそういう現象がいま起こっているわけですが、沖繩においては、やはりいま琉球政府のもとに完全に法が施行されておりますから、私どものほうでは、それを直接に琉球政府で許可しろとか許可するなとか、そういうようなことまで立ち入ることはいけないと思うのです。ただ、しかし琉球政府のほうあたりで、たとえば海洋博というものが昭和五十年といっても、もうすぐだ。そうすると、いまのうちに琉球政府自身が敷地の手当て等を始めなければならない。いわゆる先行取得というものに対して、どうしても琉球政府は金がないから起債等をとりあえず認めておいてくれというような話等がございますので、こういう国家的な行事ができないようなスプロール化がなされることは、これは国際的な行事でありますだけに、沖繩の未来にとってもいけないことでありますので、それらの点については十分に琉球政府と打ち合わせて、琉球政府の御希望されるような方向に本土政府は協力をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  47. 辻一彦

    ○辻一彦君 それをもう一歩進めて、いま言われたように、「非琉球人による土地の恒久的権利の取得を規制する立法」、一九六五年立法第百十号があります。これは将来沖繩本土復帰するとすれば、そのときに廃棄になる内容であると思いますが、これを五年とかあるいは三年とか、少なくもこれを残して失効させない。そうしてその期間に、たとえば二年間内にこの土地の移動があった場合には土地台帳に登録しなければならない、こういうようにすればザル法のようになって逃げることができない歯どめをかけることができると思うのですが、そういう具体的な問題についていかがです。
  48. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) それもあるいは一つの案かもしれません。ただ、しかし、復帰いたしますと、農地法というものが沖繩にもかぶりますから、そうすると、やはり農地の地目を変更する場合においては、当然適正なる変更をしなければ農業委員会が認めないということが沖繩にも出てまいりますので、ただ、その移り変わるときに、法律では琉球の人の名前を使ってもいかぬと、こういうことでダミーも禁止してありますけれども、そういうものが復帰の瞬間に覆面を脱いで、農地法の適用以前の姿で非合法な取得をするというようなことが防げますかどうか、それらの点については今後検討させていただきたいと思います。
  49. 辻一彦

    ○辻一彦君 沖繩のいま起こっている土地の買い占めは、単に農地に限らず、海岸地帯、山林原野、こういうところにどんどん起こっているんですから、農地法が適用になっても残念ながら農地法の範囲外になる分野が私は非常に多いと思う。その点、これは十分ひとつ検討されて、ぜひやっぱり歯どめをかける、そして完全な沖繩の観光開発開発の青写真ができるまでは土地を少なくもブローカーの手や、そういう業者の手に移らないように最大の私は努力をする必要があろうと思います。  そこで、農林大臣、まあ同じですが、お伺いしたいんですが、この農地法の関連で、琉球政府のこの復帰対策要綱の第一次分に対して、具体的な措置要請が琉球政府から出ております。それの四の産業経済のところに、具体的措置内容として、農地等の権利移動の制限について、暫定措置としてこういう要請が出ておりました。それは、「農地法第三条(農地等の権利移動制限)および第五条(農地等の転用のための権利移動制限)の規定については、復帰前に売買した農地等で、まだ権利の設定または移転の登記および引渡しの」……
  50. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  51. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。どうぞ。
  52. 辻一彦

    ○辻一彦君 「いずれもが完了していない農地等についても適用すること。」と、こういう要請がこの前に琉球政府から出ておるんですが、農地法の関連において、これをどう思いますか。
  53. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 実は「復帰措置に関する建議書」というものは確かにここにあるんですが、それには実はございません。ということは、中間でそういうような案も検討されたということは聞いておりますけれども、私、いまちょっとここにないものでありますから調べたところ、それは建議書には載せるに至らなかったと、これは琉球政府のどのような事情によるのか、私もよくその点はわからないわけでございます。
  54. 辻一彦

    ○辻一彦君 だから第一次分の対策要綱に対する要請書であると、こう申し上げたんですが、それじゃ、これがなぜ削除されたか、建議書の中に盛られなかったかという事情については、担当長官のほうでわかりませんか。
  55. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは、実は返還協定と私の所管でない土地暫定使用法案を除いては、建議書の文章、活字と、それからほんとうは私どもが打ち合わせをいたしまして合意しているものと、いろいろと違う点がございます。したがって、私どもは、その一条一条について、公文書ではこう言ってあるが、建議書では違ったことを言っているということをここであげつらう気は実はあまり持っておりませんので、そこらのなぜ変わったのかについては、あまりせんさくをしないでいることにいたしておるわけでありますが、そういうことも手伝って、なぜ建議書に入らなかったかというところまでは、私も承知いたしておりません。
  56. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ、これは内政干渉になってもいかぬ問題でありますから、まあこれで終わりたいと思います。とにかくこの農地にせよ、あるいは一般の土地にせよ、そういうものがいまのような形で買い占めというような方向で進むことのないように、最大のひとつ歯どめをかける具体的な対策を励行してもらいたい、こういうように最後に要望しておきます。  次に、私は、沖繩における農業の具体的な問題について触れたいと思います。  沖繩農業の基本的な基幹作目、これがキビとパインであるということは、先ほど同僚杉原議員の御質問にもお答えがあったとおりです。ところがこのキビとパインが、とくにキビが異常干ばつと台風でたいへんな被害を受けた。本島で二五%の減収、宮古、八重山では九〇%減収と、たいへんな被害です。台風は、これは天災という面が非常に多いんですが、干ばつは人災の面がかなり強いということは、宮古、八重山の干ばつというものを考えてみると、あそこに地下水もあり、せきとめられる水もある、そういうものが利用できなかったということは、沖繩の第一次産業に基本的な土地の基盤や水利に対する投資がほとんどなされていなかったと、こういう点にあると思います。  これは過去にアメリカに施政権があったわけでありますが、しかし、私は、この点は本土政府の責任もやはり大きいのでないか、こういうように考えるわけなんです。そこでいま、この先島の農民は一年を暮らす経費がない、再生産の経費もない、どうすべきか、こういうことでとほうにくれている。こういうことが私は現状だと思います。すでにいろいろな形で救済策が取り上げられておりますが、本土における最高の水準における救済の手が打たれたということを、過日私が十月五日の農林水産委員会沖繩問題を取り上げたときに、御答弁があったんですが、対策庁から、それはひとつ事実かどうかということを念のためにお伺いしたいと思います。
  57. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは、本土においては、たとえば生活資金的なものはその対象になっていないんですけれども沖繩の場合においては、今回は単に救農土木のみならず、あるいはまた借り入れております農家の融資の返済に伴う利子の補てん、それ以外に生活資金というものもどうしても見てあげなければ、再生産への人口流出ということも出かせぎ等の形ですでにあらわれつつありますから、大蔵省と相談をいたしましたが、大蔵省としては、やはり本土にない制度ということで、これは暗黙の了解ということで、琉球政府に必要なる利子補給としての金額三千万円というものを琉球政府がお使いになるということで、その使い道については担当大臣の私が責任を持つ。したがって、大蔵省は現在の大蔵省としての財政法支出上許された範囲以外の支出はしていないというような、まあ役所同士の変な理屈でありますけれども、そういうことまで考めて、とにもかくにも先島を中心とする干害から台風と打ち続く壊滅的な、端的に言えば来年度の生活の見通しも立たない状態人たちに対して、本土政府として、琉球政府の要望にほぼ応じられる限度いっぱいの大体合意を得る結論を得たと私も思っております。
  58. 辻一彦

    ○辻一彦君 そこで、本土の最高の救済措置と、こういうことになりますが、本土には農業災害補償法があって、農業共済の制度があります。本土の米は北海道で九割も減収すれば、かなりな共済、災害補償の補償金が払われる。キビが九割減収したとすれば——ほかのものはなるほど本土の最高水準にあったとしても、この農業災害の補償に見合うだけの手当てが数字としてされておったかどうか、そのことをひとつお伺いしたいと思います。
  59. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはキビを農業災害の対象作物とするということ、そのことがまだ研究課題でございます。地域の作目でありますし、それに対して掛け金給付という形をとるには、はたしてそれだけの保険というものが構成できるだろうか。パイナップルは果樹共済の中で取り組んでいける大体のいま検討の過程にありますが、やはり今回の事例を見ても、いまの救済策はとにかく農家の場合の、農家自身の段階における減収というものは直接カバーしてくれる制度は何もないわけであります。   〔委員長退席、沖繩及び北方問題に関する特別委員会理事楠正俊君着席〕 したがって、今回は——もちろん現地においては若干の米の生産もございますから、もし本土であったならば、掛け金をかけておると同時に給付もあり得たと思いますけれども、しかしそれも対象外でありますから、その点は本土よりか措置がなされていない点も、引っ込んでおる点もある。しかし、私としては、今後——農林省事務当局とももちろん相談の上のことで、臨時代理だけの意見ではありませんので、これはキビというものも地域共済として、たとえば一例を、一つの方向を考えるならば、その県が行なう共済についてキビを作目に取り入れる、そしてそれに対して国が再保険というような形が考えられないだろうかというようなこと等は、一つのアイデアでございますが、検討をいたしておるわけでございます。パイナップルについては先ほど申し上げましたが、本土であったならばと考えても、やはりキビの場合においては、現在の災害共済制度の対象に入っていないという問題点が一つ提起されておることを私も問題にしておるわけでございます。
  60. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、あれだけの災害を干ばつで、台風で受ければ、少なくも災害補償制度がなくても、それに見合うものだけの援助の手というものが沖繩に伸べられなくてはならないと、こういうふうに思います。  そこで、農業共済の問題ですが、まあ残念ながら来年水利を、ダムをつくってもすぐ干ばつがなくなるとか、台風がなくなるという、そういう問題ではないと思うんです。そうすれば、どうしても沖繩においては、このキビとパインは本土における米と、あるいはこの大事な作物に相当するものであって、どうしてもこの災害の場合に何らかの救済の手を、補償の手をつくらなくてはならないと思うわけなんです。そこでですね、このパインは果樹新種共済の中であれを扱うお考えがあるのかどうか。あるいはキビは——まあ新聞では、一部来年調査をして、再来年試験を一ぺんやって三年ぐらいたってからやろうというような、非常にのんびりした内容が出ておりますが、私は、一刻もこれは猶予できないものじゃないか、そう思っておりますが、その点についていかがですか。
  61. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) パインは確かに果樹共済の対象に具体的に取り入れることが可能であるという方向で検討しております。  しかしながら、キビについては、これはやはり全国的な規模の掛け金と給付という形でありませんと、きわめてむずかしい問題があります。たとえばキビをやるについては、鹿児島県の奄美大島郡あるいは種子島というところも現実に甘味資源特別措置法の指定地域になっておりますし、国内甘味資源の立場から言えば、北海道のビートも対象にしなければ当然バランスがとれないでありましょう。したがって、それらの問題をかりに総合的に取り入れても、応分の掛け金と、最悪の場合の補償金がもらえる、共済給付がもらえるという仕組みのそれだけではちょっと、この沖繩にとっては米にもまさる基幹作目であることははっきりしておりますけれども、それだけでもって国の共済としてじかに直接全国の対象としてできるかどうかについては疑問がありますので、予算上は、来年はどのような方式ならばそれが運営できるかという調査をする予算になっていることは事実でありますが、このことは、ことしの干害の収穫皆無、あるいは取れても反収一トンというようなまことに気の毒な状態から考えれば、まずその被害を農民自身の生産者の段階でなるべく補てんをしてあげて、そうして、取れた残ったキビが工場の買い入れ価格等によって配慮されていくということでありませんと、いまはそれがじかに工場の買い入れ価格と生産者価格と二本立てでしか操作できませんから、生産者価格を幾ら上げても、生産者価格の恩典に浴する収穫がきわめて多大な打撃を受けておれば、これはもう全く本人の手に入る金は少ないということになるわけでありますから、ここらのところは、すぐに来年四月からの新年度でキビを共済の作目にするというには、やはりもう少し研究を要する。しかしながら、この基幹作目に対して農民の自身の減収の段階で何らかの補てんをする、いわゆる共済的なものが行なわれなければ沖繩の今後の基幹作目としての地位はゆらぐという気持ちがしておりますので、その方向で検討さしていただきます。
  62. 辻一彦

    ○辻一彦君 いま長官の発言のとおりです。やはりキビは——たとえば北海道で米に災害補償がないだろうと思うんですよ。そういう重大な大きなウエートを沖繩で占めておると思います。そういう意味で、これは何としても、やり方はいろいろあろうと思いますが、具体的な対策を立てて、キビ、パインが災害の対象に何らかの形でなるようにぜひ努力をしていただきたい、こういうように思います。  それから、続いてキビの価格問題についてお伺いをいたしたいのであります。このキビは、何回も繰り返すようでありますが、米作農民にとってこの米価がきまるのと同じように、キビ作農民は産糖の買い入れ値段、またそれに含まれるところのキビの価格、これに非常に深い関心を、あるいは利害を持っておると思います。そこで、昭和四十五年、四十六年をずっと見て、本土とそして沖繩産の産糖買い入れ価格あるいはキビの原料最低買い入れ価格というものがかなり差がありますが、これは一体どういうことになるのか、この点をひとつお伺いしたい。
  63. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 一番大きな開きは、やはり歩どまりの問題で分かれると思います。ブリックスは、さすがに沖繩は南でありますから、全部十八度をこして非常に良好でありますけれども、歩どまりがどうしても一二%をなかなかこえにくい。琉球政府の実績では一一・七六ぐらいだろうと思うんですけれども、しかしながら、本土のほうではやはり一応の合理化目標価格的なものがございまして、それについて、沖繩ならば大体何度はなければならないはずであるという、これは奄美大島についても同じことでありますけれども沖繩において十二度以下という歩どまりの設定は困難である。やはりどうしても沖繩でキビをつくる場合に十二度以上の歩どまりでなければならないはずである。これにはいろいろと今年の干ばつとか台風は除いても、沖繩においては非常に恵まれた条件であるがゆえに、本来ならば三期以上の株出しをしてはならないものを四期以上の株出しのウエートが非常に高いとか、その裏にはまた人手不足等もございましょうが、そういうものとか、品種改良あるいは矮化病を防ぐための原原種農場設置、いろいろな面からそれらの反収を上げると同時に、どうしても歩どまりの向上ということにつとめなければなりません。その点は、現実の沖繩側が今年はじき出しました歩どまりと、それから本土のほうで一応奄美大島と比べて設定した歩どまりとの差、琉球政府の要望との差があるとすればそこであるということでございます。
  64. 辻一彦

    ○辻一彦君 それは原料キビの最低価格の問題ですね、この産糖買い入れ価格が、たとえば今年はトン当たり本土九万六千六百円、沖繩九万一千四百円、この差はどういうようにしてついているのか、それをお伺いしたい。
  65. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) それは一応沖繩における企業のほうのコストの計算がございます。したがって買い入れ価格、原料価格は一緒でありますから、そこでは計算の違いは出ないのでありますけれども、そのあと一応企業のコストの段階において、それを三百六十円のドル換算の円にするか、あるいはまた企業の段階においては、一応平価が定まりましたので、その定まった平価で計算をする、すなわち現在の沖繩の従業員の方々が取っておられる給料は確保できるわけであります。その給料を下げる上げるの問題ではありませんが、幾らと見てそれを買い入れ価格にするかの違いがそこに出ておるわけでありますが、それらの違いについては、別途臨糖費と呼ばれる臨時糖業対策特別費の中においてこれを消化していくための予算の中で、沖繩側に臨糖費の交付をして、そのバランスを埋めていきたいという考えでおります。
  66. 辻一彦

    ○辻一彦君 臨糖費で埋められるということは——これは何かの手を打たれるということは、それはやり方としてわかります。しかし価格決定の原則的な問題として、企業のコストの計算が違うというならば、本土の産糖と沖繩のとは——そうすれば沖繩にあれだけ島がたくさんあって、沖繩ではむしろコストの差、運賃の差というものが非常に大きいわけですよ。しかし、沖繩の中では一定の同じ価格で買われていると思うのです。で、もし本土沖繩が一体であれば、一物一価の原則によって産糖の値段が本土沖繩の間に差がつくということは矛盾を感ずるのですが、その点はどうですか。
  67. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは種子島から波照間島までのあれだけの長い緯度の中に——緯度経度の緯度でありますが——点在する島についての砂糖キビについて一本価格できめることそのことが、やはりもう沖繩復帰いたします現実の前に立っては矛盾に逢着していると思います。すなわち工場規模で場合によっては含みつ糖しかつくれない島もありますから、しかし含みつ糖は買い入れ対象にならない。これはまあ琉球政府が今日までとってまいりました原料は一本価格の公示、そして含みつ糖については琉球政府補助、これに対して復帰後は本土政府が補助をしていく、琉球政府の支出に対して補助をしていくというややこしい形をとらざるを得ないわけでありますけれども、いま内部で検討いたしておりますのは、あれだけの長い列島の中に全部一本価格ということはむずかしいし、したがって、現実に沿わないからこれをやはり工場規模あるいはまた当然伴ってくる操業、実績、生産量、そういうようなもの等を勘案しながら、やはり何段階かに分けた買い入れ価格の設定が必要ではなかろうか。これは現在沖繩を除く本土においても、奄美大島では南と北と二本立てにすべきである、あるいは種子島を別にすべきである、三本立てにすべきであるとか、あるいは工場規模別にすべきであるとか、いろんな議論が長いこと議論されておりますので、沖繩復帰の機会に、これらの一本価格というものも検討しなくてはならぬと思いますが、いまの差のある問題については、これは現在琉球で従業員の方が取っておられる現実の給与というものをやはり計算せざるを得ない。これは大蔵省と議論もしたところでありますけれども、一応やはり現実の給与というものは変わらないわけでありますから、その点において、今回は操業コストにおいて差が出たという現実の結果になったわけであります。
  68. 辻一彦

    ○辻一彦君 いまのようなやり方が通るとすれば、政府の農産物支持価格のこのやり方というものは、地域別に値段が変わってくるということになるんですが、砂糖キビだけではなしに、そういう原則というか、そういうやり方が通用するなら、政府の買い上げる農産物の支持価格については、地域ごとに価格が変わってくるということになりますが、そこらの間の問題はどうですか。
  69. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは、私は全部の農産物の問題についてそう考えているわけではありませんので、これは大体熱帯性作物のキビでありますから、南に行くほど有利なはずであります。先ほどのコストの問題の中には、工場の操業規模というもののまた違いもあるわけでありますけれども、南に行くほど有利なはずである。したがって北限がございます。種子鶴までは何とか甘味資源特別措置法の指定地域にしておりますが、鹿児島県の薩摩半島の南で黒糖をつくっておりましても、これはたとえば分みつ糖工場にしても、それはちょっと北限を越しているというようなことで、その指定の対象にはできないというようなこと等もありますので、特殊な作物として、南に行くほど有利になる作物を一律の買い入れ価格ということは問題があろうということで、内々の作業を復帰を前にしてしておるということでございます。
  70. 辻一彦

    ○辻一彦君 この論議はやればもう少しありますが、時間がもうありませんから打ち切ります。  そこで、パインの問題ですが、これはもう御存じのように、パイナップルは沖繩のやせ地、傾斜地、酸性の土地、ああいうところに生産ができて、零細な農家の所得をかなり維持していると思います。だけど、ハワイのパインやあるいは台湾のパイン——ハワイの大規模、台湾の低労賃、これに挾撃をされたら一たまりもないと思う。結局、輸入割り当て制と五五%の関税というものによってこのパインがいま維持をされていると思いますが、過日、まあ農林政務次官は、パインは絶対自由化せぬと、こう言明しましたが、現地の人の不安がこの点について非常に強いので、担当大臣にこの点についてもう一ぺん確認したいと思うのです、簡単でけっこうですから。
  71. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはもうすぐ隣の台湾は六ドル五十セント、沖繩では八ドル八十セントでありますから、自由化したら一たまりもないわけであります。かつて自由化を閣議で決定しました後、沖繩のパイン産業の重大さに陳情その他で気がついて、一ぺん決定した自由化を取り消したことがあります。その結果はやはり今日の割り当て制度として残って、沖繩のパイン産業の隆盛のもとになっておりますので、これが復帰してまいりましたならば、当然、これは沖繩の、本土としての一県の中から生産される生産物が国内のマーケットの中に出回った後において、初めて外国からの輸入品の割り当てということがいまより以上に簡単になるわけでありますので、いまは沖繩産のパインを買い付ける商社も、同時にまたその他の地域——台湾その他から買い付ける商社も同一商社でありますから、どうしてもその価格の交渉において沖繩側が本土商社より不利な立場に立たされている、この点は私は復帰とともに非常に有利な売り手市場になり得ると考えますので、その他の割り当て操作等で国内の沖繩県産パイナップルのかん詰めについて十分に保護されるように、通産省ともよく相談しながら今後運営していくべきだと考えます。
  72. 辻一彦

    ○辻一彦君 あと五分になったので、最後に、私は、アメリカの原子力潜水艦の放射能汚染と漁業問題について、科学技術庁長官に質問をいたしたいと思います。  一九六八年、三年前にアメリカの原潜が那覇軍港、那覇商港に入港して放射能コバルト六〇を放出をして非常に問題になったと、こういうことは十分御承知のとおりです。ところが、そのときに魚の値段が非常に下がって、大暴落でもう休業するはかなかった、こういう漁民の方がこの補償を申し出た。しかし、米琉両政府による合同調査で、直接魚貝類とコバルトは関係がないというような調査報告がされて、取り合ってくれない、こういうことで本土政府に補償を申し入れた。こういうことをこの間、私農林局で聞きましたが、この問題がどういうように扱われているか。あともう一つ質問がありますから、簡単でいいですからお願いいたします。
  73. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはいわゆる補償を要するもので法律の要るもの要らないものを区分けをしますと、法律は要らないものだと思うのです。本土において佐世保で一ぺんそういうことがありまして、見舞い金を支給したことがございますから、これは実際にはコバルト放射能というものが影響がなかったのだといっても、それによってやはり魚をみんなが買わなかったり、少なくともべらぼうに買いたたかれて漁業収入が激減した漁協のあることは事実でありますから、これについてはアメリカ側が放射能漏れの事実がなかったと、——まあ検査の結果もなかったようでありますが、いずれにしても、魚価が暴落して漁民が被害を受けたことは事実でありますから、これは復帰後防衛施設庁とも相談をしながら調査をいたしまして、そうして適正な額を評価したならば予算措置でもって、佐世保方式に見習って、それらの被害についての本土政府の措置ができると考えております。
  74. 辻一彦

    ○辻一彦君 科学技術庁長官に最後にお伺いします。  いま山中長官が言われましたが、これは私は放射能に関係がなかったという結論は非常に問題があると思う。というのは、過日、沖繩の琉球政府の放射能研究室に行っていろいろ聞いてみましたが、今日、那覇の商港の海底のどろはとることはできるけれども、原潜が寄港しておった那覇の軍港の底のどろはこれはとることが許可されないのでできないということが一つ、それからいま原潜はホワイトビーチに行っておりますが、ここでサンプルを調べておるのですが、しかし残念なことに、ここのサンプルをとったらいいんじゃないかという、そういうどろや砂やあるいは魚や貝類がとることが許可されないのでできないと、だから、科学者の良心において、ここの資料をとって調べたいという、ところが調べられないという事情があるわけですよ。だから、私、はこういう形で幾ら調査してみたって、これはほんとうのものが出るかどうかわからないと思うんです。そういう点で、科学技術庁で那覇軍港の海底のどろを正式にひとつとって調べる、あるいはホワイトビーチのもっと自由な地域で、科学者がここの資料がほしいと、そういうところの資料をとることができるように、科学技術庁で私は努力していただきたいと思うんですが、いかがですか。
  75. 木内四郎

    国務大臣(木内四郎君) ただいまの御質問にお答えしますが、いまお話しのように、アメリカの原潜が入っておったのはホワイトビーチと那覇港でありますが、その海域の調査は、四十三年分夏ごろまではアメリカと琉球政府が合同で調査しておったわけなんです。その後は、琉球政府が単独で調査しておるんですが、その際にはいつも海水をとり、また海底のどろをとり、また海産物を持ってきて、それを調査しておるのですが、その調査の結果は、私ども科学技術庁としては、外務省、また沖繩北方対策庁を通じまして入手しておるのです。それによりますというと、ホワイトビーチのほうにおきましては、海水からも海産物からも、どろからも、放射能を検出しておりません。  そこで、那覇港はどうかというと、那覇港は、御案内のように、入り口が狭くて、こう停滞しているところなんですね。そこでは四十四年の調査のときは一キログラム当たり約三〇〇〇ピコキュリーあるいは八〇〇ピコキュリーを検出したのですが、その後四十四年の秋からは那覇港には原潜が入っておらないのですよ。したがいまして、いまのピコキュリーのコバルト六〇、これはだんだん減ってまいりまして、ずっと入っておらないものですから、この夏の六月調べてもらいました結果によりますというと、その当時——いまの四十四年の秋の当時ですか、その当時の三十分の一程度に下がっておるというのが私どもの得ておる資料であります。
  76. 辻一彦

    ○辻一彦君 いま長官は、私の前の半分の質問をどうも聞いておられたかどうか疑問なんですが、肝心のとりたいところのどろがとれないから問題があるんだと、だからそのどろをとれるように科学技術庁がやってほしい、こう言っておるのですよ。  それからもう一つ。初めにコバルト六〇の放射能が多量に検出をされて、だんだん最近減っているということは、原潜がホワイトビーチへ行かないんですから、減るのはあたりまえですね。ということは、原子力潜水艦がいかに大量のコバルト六〇を出しておったかということを実証していることなんですよ。だから、いまないからといって、そんなものはちっとも安心ができないのです。軍港のどろを、あるいはホワイトビーチの、もっとさがさなければならないところのどろや魚や貝を十分にあの科学者の人たちが、また科学技術庁が直接行ってとって、ひとつ十分調べてほしい。その努力をしていただけるかどうか。
  77. 木内四郎

    国務大臣(木内四郎君) いまの御質問にお答えしたつもりなんですけれども、十分に意が通じなかったようですが、いまは行政権は向こうにありまするので、私どもが行って、科学技術庁で向こうの調査をするというわけにはまいりません。しかし、いま申しましたように、沖繩のほうの人々も科学技術庁のほうへ参りましたりして、放射線医学の研究所等でいろいろ研究してまいりまして、そうしてアメリカと合同でやっていたのを沖繩のほうで単独でやっていくようになる。ところで今回行政権がこちらのほうに返りますれば、私どもは、内地と同じことに放射能の監視体制をしきます。すなわち、横須賀あるいは佐世保と同じことにしくことができるんですから、その上においては、もちろん海底のどろをとって、あるいは海産物あるいは海水、みなこれをとりまして詳細に調査をするつもりでおります。
  78. 辻一彦

    ○辻一彦君 ホワイトビーチは米原潜の寄港地ですからね、簡単になかなかどろをとらせぬのですよ。だから、ひとつ最大限の努力をして、ぜひひとつあすこをよく調べていただきたい。  それから、もう時間がきて残念ですが、四十四年から以降、この放射能がどのぐらい減っているか。そういうものをぜひひとつ資料として出していただきたい。時間があれば、私は次の別の機会にこの問題についてはさらにお尋ねしたいと思います。
  79. 木内四郎

    国務大臣(木内四郎君) いま時間がありませんから詳細にお答えするわけにいきませんけれども、こちらへ施政権が返ってまいりますれば、内地と同様であります。内地と同様にやるということはアメリカのほうでも了解を与えておりまして、第一次冷却水は出さない、こういうことになっておりまするから、その方針で内地と同様に私どもこれを処理してまいるつもりでおります。
  80. 辻一彦

    ○辻一彦君 時間がありませんので、どうもありがとうございました。終わります。     —————————————
  81. 楠正俊

    委員長代理(楠正俊君) 宮崎君。
  82. 宮崎正義

    宮崎正義君 私は、復帰後の沖繩における農林水産業という第一次産業の問題点、これはもう農業にしましても漁業にしましても、たくさんございますが、この中で特に水産関係にしぼりましてお伺いをいたしたいと思います。  まず、復帰後の沖繩水産の位置づけでございますが、現在の沖繩水産経営者といいますか、そのうちの年間千ドル以下の収入の漁業者が六三%以上の過半数を占めておりますし、沖繩独特の生産性の低いくり舟による沿岸漁業者なのでございますが、わが国にとって水産業は、私がいまさら申し上げることもなく、ますます需要の面におきましても、これは大きく将来の課題になっていくことでございます。特に、沖繩につきましては、いままでは基幹産業というものが放任された形でございましたので、この復帰を目ざして、政府沖繩県民にこれからの目標を示して、希望のある基幹産業としての育成をしていくべきである、この具体策をお伺いをいたしたいと思います。  それについては、御存じだと思いますが、先ほどもちょっと触れましたのですが、漁業経営者の生活状態というものは、年収別に見ますと、五百ドル以下の経営者が千九、約三五・五%、五百ドルから千ドルが七百七十九、二八・一%等と、総体的には年間千ドル以下の漁家、経営者が千八百八という、これが先ほど申し上げました六三・二%もあるわけでありますが、生産性の低いくり舟漁業、月のうちに三分の一漁業ができればいいんじゃないか、沖繩の特殊性から考えまして三分の一も操業ができればいいといわれている。こういう状態の中で復帰いたしますと、今度は本土との経済交流が当然なされてくるわけであります。そうなりますと、本土並みの諸物価の価格になっていく傾向になってきます。いままででさえ、これは総理も、それから長官も御存じのように、食えればよいといわれるほどの気の毒な生活をなさっている方々でございます。今度はこの生活が、食えればいいという形が変えられていくようにも私はなるんじゃなかろうか、こういう心配をしているわけであります。こうした沖繩における農林水産の第一次産業としての水産漁業をどう計画し、育成していくか、この点につきまして、まず総理に所見を伺って、その対処方を伺っておきたいと思います。
  83. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が漁業の問題について感じを申し上げるというのもずいぶんおこがましいかわかりませんが、沖繩県は、南の島、南方海域、大体暖流に恵まれた地域だと。したがって、基地の中に沖繩があると言われますけれども、漁場の中に沖繩があると言ったほうがいいくらいなところじゃないだろうかと思います。そういうことを考えると、もっと明るい、漁場の開発なり、漁業の将来というものは、沖繩において初めてわれわれは期待できるんじゃないだろうか。また、これは力の入れがいのある仕事のように実は思うので、この点は復帰後において私どもさらに力を入れて、りっぱに皆さん方とともども水産沖繩県をつくりたい、かように思います。
  84. 宮崎正義

    宮崎正義君 その決意のほどはわかったんですが、私の申し上げましたのは、どういうふうな計画性をお持ちになってやっていかれようとしておられるのかということを伺っているわけなんです。
  85. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 総理には基本的姿勢で御許容を願いたいと思います。ただいま言われました、沖繩は漁場の中に島がある、このことは確かに事実でございます。しかも、現実には、沖繩本土からの輸入した魚に大部分が島内消費は依存しておりますから、高級生鮮魚介類に二〇%、あるいはまた大衆生鮮魚介類にも一〇%という物品税のかかったものを消費しなければならないという現状に置かれていることが雄弁に物語っております。この相反する理由は何かといえば、まさにただいま言われました沖繩の漁業の近代化がおくれておる。くり舟一トン未満が八二%にも達している。この事実は、やはり大きな問題を投げかけていると思います。まずとりあえずは、このくり舟を少なくとも近代化、大型化しなければなりませんので、この点はすでに本土政府の米の援助に伴う向こうの売却積み立て金を流用いたします米売却資金の活用によりまして、二分五厘という低利でもってくり舟の近代化のための融資を開始いたしておりますが、復帰後もこの本土政府の米資金援助のその方式を踏襲いたしまして、本土には前例がありませんけれども沖繩開発金融公庫法案の中には、くり舟に対して今後も二分五厘の低利融資を行なって、すみやかに近代化、大型化していくという方法を考えておるわけでありますが、しかしながら、いずれにしても、いまは漁港というものが整備されておりません。したがって、夕方帰ってくると、みんなでくり舟をかついで砂浜の上に揚げるという状態にありますので、どうしても沖繩の漁港整備ということは大前提になるわけであります。南北大東島あたりは全く切り立ったがけの上に立っている島でありまして、漁業に出て行くときも、クレーンでもって、ともと、へさきに綱をかけておろして、そして漁業が終わったら、またクレーンで高台につり上げてもらうしか接岸できないというような気の毒な状態でありますので、全島の漁港をすみやかに本土並みに五カ年計画でもって整備したい。しかも、本土においては、いろいろの漁港の一種、二種その他の仕分けによって、あるいはまた係留施設、外郭施設等によって補助率が違いますが、沖繩においては、それを全部十分の十の全額国の負担によって五カ年間の漁港整備を行ないたい。それに伴って船の近代化、大型化をしますならば、総理の言われましたとおり手近なところに、本土の漁民から見ればはるか南の洋上であるはずのいい漁場がすぐそばにあるわけでありますから、島内需給の急速な充実はもちろんのこと、本土に向かって高級魚類等の輸送というものについて相当大きなウエートを占めるものであると考えます。私は、したがって施策のよろしきを得るならば沖繩県の漁業の前途は洋々たるものであると、自信を持っておる次第であります。
  86. 宮崎正義

    宮崎正義君 まさしく私も同じ考えでございますがゆえに、水産関係のことを特に取り上げてまいりました。いま長官が答弁をされましたその漁港整備五カ年計画ということは、衆議院連合審査会におきましても御答弁がございます。したがいまして、いまの琉球政府が一九六九年度から一九七四年度までの六年間で、遠洋マグロの漁船を八十隻、千八百トン、あるいは遠洋カツオ漁船を三十隻、五千三百トンの建造計画を進めていると、こういわれておりますが、いま長官の言われた漁港整備の五カ年計画、この計画は琉球政府のいう計画、これらのことを考えられてのものなんであるかどうか、この点について。
  87. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは琉球政府の考えておりますもの以上の漁港整備計画であると私は考えております。琉球政府も五カ年計画で全額国庫補助でそういうことが行なわれるというところまでは考えておられなかった節もあるぐらいでございますが、しかしながら、問題は、いま言われたのは今度は許可漁業にかかる隻数の問題だと思いますが、これはやはり遠洋トロールあるいはカツオ、マグロ、それらのそれぞれの許可漁業については、沖繩県の海域のみで操業する船でありませんので、日本全体の許可隻数の中で沖繩の実績を認めているということで、この隻数についても琉球政府と合意を見ておりますので、その意味においては琉球政府の考えておりましたそのような考え方を前提として出発をするということでございます。
  88. 宮崎正義

    宮崎正義君 もう一つついでに聞いておきますが、本土の第四次計画、第五次計画、これとの関連性はどういうふうに見ておるわけですか。
  89. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは道路その他の五カ年計画も、沖繩においては特別なスピードと特別な補助率でいたしますので、それを計画づけました際には本土の既存の五カ年計画の改定を行なわざるを得ないだろうということで、関係各省意見が一致いたしております。
  90. 宮崎正義

    宮崎正義君 では、別にそういう強力な五カ年計画は立てていくと、こう承知してよろしいわけですね。
  91. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そのとおりです。
  92. 宮崎正義

    宮崎正義君 そこで、漁港が何より大事であると、先ほど具体的な例をお示しになりながらお話になりました。その漁港は、現在どのような形で指定漁港の現況がなっているか、この点について御説明願いたいと思います。
  93. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 事務当局でよろしいですか。
  94. 宮崎正義

    宮崎正義君 けっこうです。
  95. 太田康二

    政府委員(太田康二君) お答え申し上げます。  御承知のとおり、沖繩にも本土の漁港法と同じような沖繩の漁港法がございまして、主席が指定をすることになっておりますが、四十六年七月末現在で指定を受けておりますのは四十四港でございます。今後復帰までに約二十港の漁港が指定されるというふうに予定をされておりまして、したがいまして、復帰時点におきましては六十四港程度になるというふうに考えております。しかしながら、現状におきましては、先生の御指摘のとおり、たいへん漁港が不備でございまして、実際に使用可能になるだろうという漁港につきましては、糸満、池間、泊、久部良、この四港程度にすぎない、こういわれておりまして、今後におきますところの漁港の整備ということが急がれるわけでございます。
  96. 宮崎正義

    宮崎正義君 私は、指定港がどれだけあるかということ、総体的に四十港と、これから指定される二十港があるから六十四港になるだろうということじゃなくて、その内容ですね、第一、第二、第三種という、そういうふうな仕分けが必要ですが。
  97. 太田康二

    政府委員(太田康二君) 失礼いたしました。  現在の四十四港は、本土の第一種、第二種漁港に相当するものとしての沖繩漁港法による第一種漁港が三十九、本土の第二種、第三種に相当する第二種漁港が三、それから第三種漁港、本土の第四種漁港に相当する第三種漁港ですが、これが二、合わせて四十四、こういうことでございまして、私が先ほど本土復帰までに約二十港指定されるということを申し上げましたが、これにつきましては、まだわかっておりません。
  98. 宮崎正義

    宮崎正義君 先ほどからくり舟のことが言われておりますが、この漁港にいたしましても、いま説明がありましたように、大半が、ほとんどと言っていいほど、全部と言っていいほどこの一種漁港の形態であります。その上から考えていきまして、先ほど大臣が言われておりましたように、大型化していくということについては、これはたいへんな作業だと思うんです。私がいまさら申し上げるまでもなく、向こうの沖繩の方々はくり舟で出ていくという習性、そういう習慣性、そういう漁法の上から考えまして、非常に大型化していくという、いままで自分個人で漁業をやっていたものを一つの形態をつくっていきながらやっていくというようなことが、風俗習慣といいますか、そういう面で非常にむずかしいのじゃないか。こういうふうなことを踏んまえて、どのように具体的には計画をなさっていかれようとするのか、お伺いいたしたいと思います。
  99. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはやはり沖繩のいろいろな人の問題も、間柄と申しますか、そういうような風俗習慣等の問題もございますから、なかなか協業化を口には唱えてもそう簡単にはまいらないだろうと私も思います。したがって、やはり漁船を大型化するについても本土にない低利長期のもので融資をして、そしてそれが漁獲によって、農民の方々の過重な負担にならない返済ができるような条件設定ということをいたしておるわけでありますが、それによって少なくともこの八〇%をこえるくり舟というものが——今後はいろいろな安全施設等も整えませんと、台風常襲地帯等でもございますから、せめてやはり本土並みの小さい小型無線機あるいは陸上の基地等をつくりまして、そういう面も配慮しながら、生命の危険あるいは遭難等を予防する安全なる操業、そういうものを重点に置いて今後考えていかなければならない沖繩独特のものがあるということを考えております。
  100. 宮崎正義

    宮崎正義君 私は、申し上げるまでもなく、その一種漁港というものは、とっていが出ているだけでありまして、あとはもう砂浜の形態であるということ。そういう面から考えていきまして、これを二種なり三種なりに変えていくということは、これは技術的にも相当な問題点があると思います。したがいまして、大臣が言われるその五カ年計画という、これはもうプランが私はできていていいんじゃないかと思うわけなんですが、この点について、いまただ、こうしなければならない、ああしなければならないというお話だけで、こんなプランがあるのだという内容が知りたいわけなんですが。
  101. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは、最終決定はやはり振興開発計画等も非常に関係がありますので、漁港のあり方等も、新しい知事が出られてからのことに最終決定はなると思いますが、現在すでに琉球政府でそういう五カ年計画等も一応は持っておられます。しかし、遺憾ながら現状は、使用可能な漁港というのは数うるに足らない程度でございますので、それらの実情を踏まえながら、やはり沖繩についての五カ年計画というものは、一応私どもとして、来年度の予算というものが実質上五カ年計画の初年度の予算になるように予算要求なり、補助率なり等を設定しておるということでございまして、最終的決定は復帰後ということにならざるを得ないかと思います。
  102. 宮崎正義

    宮崎正義君 予算のお話が出ましたんですが、大体どれくらいのめどを置いておられるか、あるいはその補助率を、先ほどお話がありましたように、一〇〇%——十分の十、これらに対するものはどの程度のことをお考えになっておるか。
  103. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 本土においては、御承知のように、一、二種については十分の四の補助率でございますが、これも十分の十、三種については二分の一でございますが、十分の十、四種については外郭が四分の三でありますが、十分の十。係留施設等については、本土は十分の六でございますが、沖繩においては十分の十と、いずれも十分の十の補助率をもってやっておりますが、改良工事については、一応二分の一ということにいたしております。
  104. 宮崎正義

    宮崎正義君 時間があれば私もう少しこまかくお伺いをするわけですが、飛ばしてまいりまして残念ですけれども、次には漁業権問題も念入りにお伺いしたいと思っているのですが、これもまた、この問題から時間割りしてみますと、どうしてもできない勘定になっているので、残念ながらこれも飛ばさなければならないんですが……。  そこで、沖繩の水産業振興についてでございますが、漁業権問題も、本土においては買い上げ補償を行なったりあるいは——沖繩においては当時の特殊事情によりまして、これははっきりしておりません。そこで、沖繩の漁民の方から、こういうふうにぜひともその希望をかなえてもらいたいという、その希望もあるわけです。これをちょっと読んでみますと、御存じのように、「旧漁業法による漁業権の措置について」は、「本土においては、御承知のとおり、昭和二十四年十二月十五日(一九四九年)公布の新しい漁業法によって、漁業制度が改革されましたが、その際、漁業法施行法という特別立法で、国は旧漁業法に基づく漁業権の買上げ補償を行い、その補償費として百八十一億円を漁業協同組合に交付され、組合はその一〇%を組合員に配付し、残額九〇%は組合基金として経営基盤の整備拡充に利用し、又系統金融機関に預けて漁業金融の強化に努めるなどして、漁業振興の原動力として一大効果をあげた、」ということは、これはもう申し上げるまでもないわけでありますが、「沖繩の場合は、本土と全く同じ旧漁業法に基づく漁業権が五十四件もあったのにかかわらず、本土政府からは本件処理に関する何等の呼びかけもなく、二十有余年にもなる今日まで放置されてきました。一方、琉球政府は一九五二年十月に琉球漁業法を公布しましたが、それは基本的には本土法と同趣旨でありましたが、同法には、旧漁業法に基づく漁業権に対して何等補償の規定がないばかりか、反面、その附則第三項で(漁業法施行後二ケ月以内に漁業権の申請をしなければ、漁業権は消滅したものとみなす。)と規定してあります。これは、法体系の異なる二法を併用できぬための、已むをえない措置であったのでありました。」ということから考えまして、復帰後において本土政府みずからの沖繩制度改革を行なう必要がなくなってきている、こういうことで、この問題は、沖繩地域旧漁業権に対する補償処置というものは、これはずっと残ってくるだろうと思うんです。  そこで、この処置をどのように——沖繩の漁業者もこのことについて再三陳情をしているわけでありますが、政府は、法的にはこれはどうも処理済みなんだ、これはもう済んでいることだからだめだと。しかしながら、別な方法もひとつ考えて善処してやろうと、こんなふうに言われているということなんですが、この別な方法というのはどういうことなんでしょうか。
  105. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは漁業権の補償という形を沖繩にとることは、当時の漁獲高その他等の根拠がはっきりいたしませんし、したがって、きわめて法制上も困難でありますが、他方、北方領土においては、漁業権等の補償のことも念頭に置きつつ——全部がそうじゃありませんが、十億の国債ということで本年度一挙に償還がされました。したがって、沖繩においても、本土においては補償され、北方領土においては漁業権とはいわないけれども、その中に漁業権に準ずるものとしての措置がなされたということ等を考慮いたしまして、琉球漁業協同組合の中央会漁信連が、先般、発足をいたしましたが、それと水産庁が十分に実績その他のとり方等について相談をいたしまして、結局、十一億五千万円を沖繩漁信連のファンドとなるように、無利子の金というものが積まれるように、琉球政府を経由して支出するべく来年度予算で要求をいたしました。完全に沖繩側と合意をみている次第でございます。
  106. 宮崎正義

    宮崎正義君 沖繩産業の振興対策としてそういう処置をしてくださるのは非常にけっこうです。非常によろしいと思うのです。北方地域における、いまお話がありましたようなこの点につきましても、非常に樺太の引き揚げ者というものは助かっております。しかも、一親等にはわたらなかったというのも、今回の処置でその子供にも及ぶようになったと、こういう考え方をそのまま沖繩にも持続するというふうにいまの答弁の中から私は受け取ったわけですが、それでよろしゅうございますか。——そうしますと、今度は、この方々は、水産協同組合の内容なんかを見てみますと、三十組合、大体、私の見た中では、組合が——組合の形態等をお伺いすればよろしいんですけれども、時間の関係で私の調べたものを申し上げてみたいと思うのですが、正組合員は一組合平均百五十九人で、組合員二百人未満が二十組合、その半数の十組合が百人未満であります。また常勤職員のいない名前だけの組合が十組合、信用事業を兼営している組合が三十組合のうち九組合しかない、他の二十一組合は経験もない組合である。今後沖繩漁業の振興のために組合の果たす役割りというものは、これはもう申し上げるまでもないことでありますが、このような零細な組合にどうしてその処置の方法を講じて育成してやるか。こういう問題について伺っておきたいと思います。
  107. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 一つは、ただいま申し上げました沖繩漁信連のファンドとして積まれる十一億五千万円の活用があります。一つは、漁業協同組合合併促進法というものを本土復帰沖繩については特別にこれを適用いたしまして、そして助成措置を講じますとともに、復帰前において合併いたしました漁協もその対象として、やはり漁協の大型化、あるいはまた漁協自体の体質の的善ということをはからなければなりませんので、そこらの合併助成法を通じて沖繩の新しい漁業協同組合の単協のあり方というものにも直接的な援助をしてまいる所存でございます。
  108. 宮崎正義

    宮崎正義君 私の心配しているのは、その常勤の人たちもいない組合、それがほとんどというわけですが、そういう力のない組合、しかも、それは一人一人のくり舟を持っている人も、先ほど申し上げましたように、一カ月の間に十日操業できればいいかどうかというぐらいの立場であります。そういう人方が中心になっての組合をつくっていくわけですから、これはもうたいへんなことだと思うんです。それで、申し上げるまでもなく、韓国あたりでも、一番最初にこぞって職業の中に入っていったのは沿岸漁業の中に、一番取っつきやすいから、その作業に入っていったということで、その沿岸が荒らされていくということ、そうなってきますと、今度は漁業権という問題も触れてこなければならないようになってくるわけですが、こういう形態の中でどんなふうにして育成していくかということが最大の課題になってくると思うんです。こういう点につきまして、信用事業を営んでいない、経験のない組合に対してどうするかという点でございますが……。
  109. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは沖繩漁信連も発足早々でありますし、その実体たるやまことにお寒い単協の集合でございますので、私もその点あとの運営を危惧いたしております。そこで、農中——農林中金ともよく相談をしておるところでありますが、もし復帰沖繩の漁信連が独立してそのような信用事業等が営めない場合は、本土には熊本が一例しかございませんが、沖繩を農中の直接のいわゆる傘下と申しますか、直接農中がめんどうを見て差し上げる、県信連という形で農中直結の地域にしようかということも考えておりますが、これはまだ沖繩側の希望がありませんと、押しつけるわけにまいりませんので、ちょっとその点は最初から押しつけるわけにまいらなくて、今後出発をしてみて、やはり農中が直接お手伝いをしたほうがよろしい、そうでなければやっていけないような事情がありましたら、よく中に立って相談をするつもりでございます。
  110. 宮崎正義

    宮崎正義君 非常にむずかしい問題だと思います。したがいまして、私は、これは念を押していたわけですが、この点につきましては十二分に指導配慮というものが必要だと思うわけでございます。その点十二分な配慮をしていただきたいという希望も申し添えたいと思うのでございます。  次には、対米請求権の問題についてお伺いいたしたいと思います。  漁場においても、米軍の演習等によってさまざまな損失の問題が起きております。そして、これらの問題は土地の裁判所等によって裁決、判決をされるようになっております。一九六六年から一九七〇年七月の二十日までに、私の承知しているのでは、十七件の訴願が提出されているということでございます。その全体の請求額を見てみますと、約二千二百七十万二千ドル、三百六十円にしますと八十七億、円の切り上げで七十億ということになるわけでありますが、この中で読谷という漁協の件は、一九七〇年十二月の十四日に請求が却下されております。そして、いま米国防長官に対して、さらに上訴中だということでございますが、この土地裁判所における却下された理由というもの、この理由がおわかりでございましたら教えてもらいたいと思います。
  111. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 読谷漁業協同組合の漁業補償請求訴願に対しまして、土地裁判所の昨年の十二月十四日付裁決において、旧漁業権の期間満了に伴う再付与が行なわれ得なかったことにつき米側に法的責任はなく、かりにあったとしても平和条約十九条により請求権は放棄されており、また、問題の水域は、一九四七年以降の時期においては非漁業目的に使用されていたので、琉球政府は漁業権を付与する権原を有せず、したがって、漁業権の侵害もなかったとして本件訴願を却下いたしております。これに対しまして読谷漁業協同組合は、右裁決を不満とし、琉球列島米国土地裁判所訴訟手続規則第四十二条の規定に従い本年一月十三月付にて本件を米国防長官に対して上訴いたしております。
  112. 宮崎正義

    宮崎正義君 その理由は、私は、この現場を知りませんから、何とも申し上げられませんけれどもあと十七件もございますが、この十七件が同じような立場で却下されるような不安があるんじゃないか。これは一つ一つの請求事情によって違ってくるとは思いますけれども、心配されるのは、もしいまの読谷の漁協の問題は、これがまたさらに棄却された場合、今度はこの復帰後における取り扱いというものに対してどんなふうに考えられておりますか。こういう点について防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
  113. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 復帰までのアメリカとの関係におきましては、これは外務省がやっておるわけでありまするが、復帰後に持ち越します分につきましては、これは当委員会でもしばしば申し上げておりまするように、まあいろいろなケースがあるわけでございます。いまの御指摘は、演習その他で漁業被害を受けた補償の問題でございますね。したがいまして、こういう問題は十分ひとつ調査をいたしまして、そして、いわゆる本土並みの補償ができるような形で今後調べてまいりたいということを思っております。きめこまかに対処の予定でおります。
  114. 宮崎正義

    宮崎正義君 これは法的な規定というものがつくられるかどうですか、その点伺っておきたいと思います。
  115. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) やはり調査をしませんと何とも申し上げられませんが、必要に応じて立法措置をしなければならぬ場合は、立法措置をしようという基本方針は持っております。ケースが千差万別でございまするので、念入りな調査をしてみたいと考えております。
  116. 宮崎正義

    宮崎正義君 大体いま請求の出ているものはそう大差がないわけです。ですから、主たるものの考えのもとに、私は、法の判定ということは推し進めていかなければならないと思います。いろいろ長くなりますので具体的なお話をしたいと思っておりましたのですが、これは省略いたしますが、読谷ばかりじゃなくて必ず出す方は何だかんだと言って出さないようにするのが考えの筋だと、こう思うわけです。それはいいかどうかわかりません。そういう面からいきまして、特に今度は日本復帰してしまったということになれば、向こうの考えも相当違ってくるように思うわけです。同時に、復帰前のいまの係争中の問題についても、これは外務大臣はどんなふうに交渉をされていかれようとしているのか、この点についても外務大臣からもお伺いしておきたいと思います。
  117. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま御指摘の係争中の案件につきましては、これはもうずっとまた返還後も係争が続いていくんですが、アメリカが協定第四条二項によりまして責任を負う、こういうものでございます。しかし、不幸にしてアメリカが補償をしなかった、こういう際に、わが日本の国内的配慮が出動する。こういうふうになるわけでありまして、それからは、いま防衛庁長官がお話ししたような処置をいたします。
  118. 宮崎正義

    宮崎正義君 この漁業組合に関係している人たち、この十七件の人たちというものは、千八百五十五人もございます。この人たちがどんな思いで、今後のあり方について、政府の打ち出していくことを希望を持って待っているか、こういうふうに思うわけですけれども、こういう観点から考えましても、私どもは、こういう事態をすっかり片づけてしまってから、そして復帰をはっきりさせる。これが私は当然だと思うんですが、どうなんでしょうか。
  119. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは、まさに協定第四条第二項に該当するケースなんです。そこで、いまアメリカの土地裁判所関係の訴訟が行なわれている。これで片づくことを期待しておりますが、もし片づかない、そういう際におきましては、実態をわが国において調査しまして、適正な処置を講ずる、そういう基本的な考え方を持っております。それで適正な処置が行なわれたと、こういうことになると思います。
  120. 宮崎正義

    宮崎正義君 適正な処置というお話なんですが、その適正な処置というものは、まだはっきりは言えないでありましょうけれども、このことをやりとりしておりますと、きめられた時間がぐいぐい迫ってくるので、また次へ変わらなきゃならないんですが、そこで専管水域の問題について外務大臣にお伺いをしておきたいと思うんですが、いまの沖繩でも、本土においてもそうでありますが、国外への出漁船というものが拿捕事件で災害を非常に受けている、あるいは安全操業ができなくて非常な困窮を来たしておる、これはもう全く深刻な問題だと思います。そこで、わが国の漁船が、やはり外国の専管水域や領海の管理がだんだんだんだんきびしくなってきますし、しますから、こういう問題も起きてくるということです。御存じのように、インドネシアの専管水域の設定や、米国の太平洋信託統治地域の付近におけるところのパラオ諸島の領海管理、これらの問題を見ますと、一九六八年にもこれは九件も発生いたしております。これは本土の北方のことを考えますとまた別でございますけれども、たいへんなことだと思うんです。そこで、専管水域、漁業専管水域というものを日本ではどんなふうに考えているのか。  私は、四十一年の予算委員会のときに、当時は椎名外相、それから、さらには四十二年だったか、三木外相等に、この領海と専管水域の問題については質問をいたしました。それから、公海の自由ということにつきましても、国際海洋法の問題に触れまして質問をしたことがございました。公海の自由についても、その時分は、自分たちは批准国にならないと言っておられましたけれども、今日ではなっております。  こういう面から取り上げていきましても、わが国の専管水域というものは十二海里をとっていく考え方をはっきりして、そして沖繩の漁業というものを守っていくという、こういう考え方をお持ちになりませんかどうか。
  121. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 専管水域というやっかいな問題が事実問題として出てきているわけです。わが国は、これは海洋国家でありまするから、なるべくこれは専管水域というか、いま領海のことに触れられましたが、領海は狭いがいいと、こういうので三海里説をとっているわけです。ところが諸外国はだんだんだんだんそれが長くなってまいりまして、極端な国もあります。そして、その極端なものの一つに専管水域というようなものも出てきておる。そこで、私ども日本としては、専管水域という考え方は認めておりませんが、しかし、実際問題とすると、それではたいへんなトラブルがいろいろ起こるんです。ことに、いま御指摘のように、インドネシアの専管水域におきまして沖繩の船がたいへん迷惑をこうむる。そこで、これはもういままで三海里を固執してまいりましたが、もうここへくると日本も思い切るべきじゃないか。いま国連の海洋法会議でいろいろ議論をしておるんですが、七三年に結論を出したいという見通しを海洋法会議は持っておる。もしそこでまとまれば、わが国もいままでのような三海里説に固執しないで、いま多く採用されておる十二海里説、これを採用したらどうだろうと、これはみんなの意見がまとまればという話ですが、そういうふうにいたしたらどうだろうかと思っておるんです。しかし、十二海里がまとまりましても、まだ専管水域というような問題もありますから、こういう問題につきましてはどこまでもこれを否定する、その反面において、そういう考え方を推し進めるべきじゃあるまいか、そういうふうに考えておるわけです。いま過渡的な時期におきまして、インドネシア等におきまして沖繩の船が迷惑をこうむる。そういう事態に対しましては、これはアメリカ政府が第一義的には責任を負うわけでありますが、わが国も側面から沖繩の漁船の救済、これに何とか努力をしたい、こういうので努力をいたしておるというのが現状でございます。
  122. 宮崎正義

    宮崎正義君 いま大臣は漁業専管水域というのはきめてないと言うんですが、韓国の地域にはきめたと思うんです。あれはたしか韓国の面だけは私はきめたように思っているんです。  それからもう一つは、国際常識として、領海六海里、専管水域六海里、十二海里というこの説は常識論みたいになっている。したがいまして、当然、この説は、いま大臣が言われている七三年には結論が出る、この前に批准国になっていくというこの考え方はどうなんですか。国際海洋法の批准国といいますか、そういう立場に日本がなるかどうかということですね。
  123. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) この領海の問題につきましては、いま申し上げましたとおり、三海里説をとっておって、そしてそれにもかかわらず十二海里というのでみんなが合意をするということになれば、もとよりわが日本もこれに参加したほうがいいと思うんです。その他海洋法の適用の問題、いろいろありますが、わが国の利益に適合するものであるということでありますれば、もちろんこれは批准もし、参加をする。こういうことでよろしかろうと考えております。
  124. 宮崎正義

    宮崎正義君 これは沖繩ばかりじゃありませんし、ソ連の船が母船まで連れて、三陸沖のところまできて、サンマなんかみんな吸い上げポンプで持っていっているような状態もございますし、さらには北海道の白糠のほうにも来て盛んにやっております。こういうことから考えていきましても、すみやかに処置をすべきだと私は思います。時間がないということをいま知らせがまいりましたので、まことに悲しい次第でございますが、これからやろうと思ったのですが、そうしますと一つだけお伺いしてやめたいと思います。  この漁船乗り組み員の保険制度というものは、本土に比べますと、相当考えてやらなければならぬというふうに思うわけですが、申し上げるまでもなく、台風の常襲地帯ということから考えても、義務加入制というもの、またその再保険制度というものも当然設けていかなければならぬ。危険度というものは本土よりもはるかに大きいということから考えまして、こういう点に関する考え方を——もう一つは、そのリーフ島、こう埋め立てた地域でございますし、これで石油ターミナルだとか、あるいは工業基地化が盛んに進められてきますと、これはまた本土と同じように、沿岸漁業というものも、またそれらの公害で自然も破壊されてくるような形態にもなってくるでありましょうし、先ほどもお話がありました海洋博等のことも考えあわせながら、これらに対する公害の問題と再保険制度の考え方、この二点をお伺いをいたしまして私の質問を終わりたいと思います。
  125. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 漁船保険については、本土と同じように再保険も含めて直ちに適用したいと思っております。  それから、ただいまの漁業者の問題は、平安座島、宮城島等に至る一連のCTS並びに石油精製、こういうもの等の、あるいは海中道路等の影響が、やはり微妙なプランクトンの移動、水産動植物等への影響というものになって、やはり金武湾、中城湾等に影響が出ると思うんです。先般はシーバースによる油漏れが少しございました。これは明らかにもう漁業そのものに影響が出ました。今後はこれらの点は、漁業者にとって、沿岸漁業にとってはきわめて重大な問題であることは、さきの新潟沖の問題をとるまでもなく明白な理でありますので、沖繩におけるそのような漁業者を保護する上において、自然景観その他とは別な意味の新しい漁業者の脅威とならざるように、環境庁ともよく相談をいたしながら、きびしい規制をかぶしていくべきであると考えております。
  126. 宮崎正義

    宮崎正義君 これで質問を終わります。時間が少ないのがまことに残念でございます。     —————————————
  127. 楠正俊

    委員長代理(楠正俊君) 中沢伊登子君。
  128. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私のほうは時間がたいへん短うございますので、どんどん質問を進めてまいりますので、お願いいたします。  初めに、自治大臣に御質問いたしますが、沖繩の県市町村に対する地方財政措置についてお尋ねをいたします。今度の沖繩臨時特例交付金の創設によって沖繩県民の税負担はどの程度軽減をされますか。そして、その結果本土県民の負担と同じになりますかどうですか。その辺を伺いたいと思います。
  129. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 本土の税法の臨時措置法によりまして、大体沖繩におきましてはまだ的確な数字の算定はむずかしい段階でございますけれども、県並びに市町村を合わせまして四十億ないし五十億の減税になると考えております。大体現在の税制規模が、本土の税をそのまま用いますと、百四十億ないし五十億の税収になると思いますので、特例措置を引きましたら、本土と比べまして大体七割ないし三分の二程度の負担におさまるだろう、かように考えております。
  130. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは、沖繩では民有地を借りている面が非常に多いと伺っておりますが、公共用地の確保のために土地財源は皆無にひとしいと思います。先行取得の財源にはかなり疑問があるように思いますけれども、交付金の十六億円を見込んでおられるようですが、そのうちの六億円は農業試験場とか、警察庁舎のための予定済みでございますね。そうすると、残るところは十億円しかないのです。これでは沖繩の土地対策ができないのではないかと思いますが、その辺はどうお考えになっていらっしゃいますか。
  131. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 特例交付金の算定基礎の中に土地取得として十六億円を見積もっておることは、御指摘のとおりでございます。そのうちの六億円は、大体現在借地として使用いたしておるものを買い上げるための費用に使われるだろう、残りの十億は土地基金として利用されるであろうと、このように考えております。なお、地方債におきましても三億程度のものを見積もっております。その他義務教育費とか、事業債の中にも土地取得の分が入ってまいりますから、四十七年度におきましては、それらでまかなえるものでないかと、かように考えておりますが、四十八年度につきましては、また次の状況をながめまして、適宜流用して処置いたしてまいりたいと、かように考えております。
  132. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 その六億の中で警察庁は一体何カ所建てられるのですか。警察庁庁舎は何カ所建てられるつもりですか。
  133. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) その点は、私まだ承知いたしておりませんのです。
  134. 鎌田要人

    政府委員(鎌田要人君) お答え申し上げます。六億の中で、警察署は宜野湾市の普天間警察署、石川市の石川警察署、この二カ所でございます。
  135. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 すると、この六億の中で、それを建てるのは十分でございますか。
  136. 鎌田要人

    政府委員(鎌田要人君) ただいまの六億と申しておりますのは、現在民有地を琉球政府が借りておる土地の、その土地の買い上げ分でございます。上物はもうすでにあるわけでございます。
  137. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは、次にまいりますが、沖繩にも都市計画法と同様のものがあるようですけれども本土と根本的に違うのは、都市計画を立てるにも、米軍基地が最もよい場所を占拠している。政府が言うように本土と同じようにいくはずがないと思います。どうしても基地を撤去してもらわなければなりませんが、全国土にわたって都市計画を推進する責任を持つ建設大臣及び自治大臣は、どのような方針で今後臨まれますか、お伺いします。
  138. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 従来の沖繩における都市計画は、従来の都市計画法によって八カ所ほど、那覇、それからコザ、そういうところ八カ所ほどやっております。しかし、ことしの六月に本土と同じ都市計画法が準用されることになりましたので、いま那覇の市圏あるいはこのコザ市の圏内というところに、新しい法に基づいて、都市化するところと都市化しないところの筋を引いておるわけでございます。仰せのとおり、基地が都市のまん中にありますので、非常に都市計画としてはやりにくいことは確かです。しかし、復帰のときは、やはりそれを前提にして都市計画を進めていかなければならないと思っておりますが、まあ、政府基地の返還に一生懸命取り組んでおりますから、もし基地が返ってきますれば、またその時点でひとつ都市計画の修正をする。こういう前提を踏まえていま都市計画をやっておる最中でございます。
  139. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 都市計画その他地域計画につきましては、住民の意思が十分反映されなければならないことは、これは当然のことでございます。基地その他国策の面との調和を十分考えなければならないと思います。本土復帰後におきましては、都市計画その他地域計画の推進にあたりまして、国策と調整をはかりながら十分沖繩の意思が盛れるように今後とも努力してまいりたい、かように考えております。
  140. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 本土でも、いまごろ都市計画をまたやり直して、どんどん道幅を広げたり、立ちのきをしてもらったり、いろいろなそういうたびにトラブルが起こるわけですね。政府のほうでやる方針は「そこのけ、そこのけお馬が通る」式だということで、しょっちゅう、のかされる人たちに不満が絶えないわけです。いま沖繩では、そういうふうに一番いいところを基地が占拠しておりますから、今後もし都市計画を立てられても、そういう問題を勘案しなければ、また将来おかしなことになるのではないかということをたいへん心配いたします。それですから、その辺はおそらく建設大臣も自治大臣もぬかりはないでしょうと思いますけれども、その辺を十分勘案をしていただいて、住民とのトラブルが起こらないように、その辺を配慮していただきたい。このように思うわけです。  そこで、自治大臣にもう一つお伺いしますけれども沖繩の市町村は九市七町三十九村ありますね、その九市の中で、自治法上の五万人以上の要件を備えているものは那覇市とコザ市だけで、残りの七市は要件未満の市でございます。町村に至っては、渡嘉敷村のように、人口わずか七百十二人というようなところがあったり、あるいは七百六十四人とかいうような村もありましたりして、小さい村が八割に及ぶと聞いております。これでは自治体の機能は果たせないのではないか。また、自治体としての形成されるような規模を持つものが比較的に少ないので、健全な自治を望むべくもありませんが、今後どう措置するのか。市町村の規模を適正なものにするために町村合併促進法をどう適用されるか、その辺をお伺いをしてみたいと思います。
  141. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 沖繩におきましても市町村合併促進法をつくられまして、鋭意適正な規模になるように努力してきたところでございますが、現在、御指摘のありましたように、まだ必ずしも十全にいってないという姿は御指摘のとおりでございます。四十五年の国勢調査によりましても、市町村の平均、本土でございましたら三万一千人余り、ところが沖繩では一万七千人程度、約五割になっております。面積におきましても、本土でしたら百十三平方キロ、沖繩でございましたら四十一平方キロという姿で、三割七分程度になっております。そのような姿でございますので、今後復帰しましても、なお市町村合併を進めてまいりたいと思います。そのときに、現在沖繩で立てておられます市町村合併計画に基づきまして推進をやっていってまいりたい。また、新市町村計画の町づくりの基本となりますその計画等につきましても、沖繩県の意向を十分しんしゃくしながらやっていきたい。これの合併に対する財政援助等は、本土の合併に対する援助等ございますので、その法律に大体見合うような援助を行なってまいりたいと、かように考えております。ただいま御指摘のありました渡嘉敷あるいは北大東村等、七百名近くの村は離島でございますので、また特別の配慮をしてまいらなければならないのではないかと考えております。
  142. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そこで、今度は過疎対策について伺いたいのですが、本島の南部のほうは比較的いいのですけれども、北部に行ったり、あるいは離島のほうに参りますと、過疎の問題が起こってまいります。そこで、沖繩には過疎法を適用しないで若干の特別交付金を出せばいいと考えているのではないでしょうかと思います。過疎法というのは、地方財政を含めた全住民にかかわる問題であると考えますが、特別交付金をあげたからといってそれでいいというものではないと思います。この点についてどうお考えになりますか。本土並み以上の特別な措置を講ずるように配慮すべきではないのかと思いますが、いかがですか。
  143. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 過疎法を排除いたしましたのは、国庫補助、負担金等におきまして、現在規定されております本土過疎法以上の負担金、補助金等を予定いたしておりますので、これを適用しなかったのでございます。なお、特別交付金の中で、これらの過疎法がその残額を措置し、あるいは単独事業を起こす場合におきましても十分措置できるように、一般財源として与えるように、特別交付金を交付いたしたいと、かように考えております。そのために本土にありますような過疎債といったようなもの、それがなくても本土過疎地以上に上回る措置をぜひともしていきたいと、このように考えております。
  144. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 総理大臣にひとつ御答弁をいただきたいと思いますが、いま、わずかな質問でございましたけれども、やりとりをいたしました中で、過疎の問題が出てきたり、あるいは都市計画法の問題が出てきたり、税の負担の問題が出てきたりしたわけですけれども総理は、いつでも、沖繩の未来像について、本土格差のない、明るくて平和な、豊かな沖繩の建設をしたい、こういうふうに口ぐせのように申しておられるわけですが、基地が最もよいところを占拠しているので、このような総理のお考えになるような沖繩ということは、なかなかつくるのにむずかしいと思います。そこで、いま自治大臣も予算のことにいろいろ触れられたわけですけれども沖繩ほんとうに返ってきたときに、沖繩人たちが、よかったと思えるように、そして総理の考えていらっしゃるような、ほんとうに豊かな沖繩になるように、ひとつ予算の面も、そして沖繩の人の心をも十分しんしゃくして、りっぱな沖繩をつくっていただくようにお願いをしたいのですが、総理の御意見をひとつ伺わしていただきたいと思います。
  145. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのお尋ねのことは、私は、明るい豊かな平和な沖繩県づくり、こういう標語めいた表現をしておりますが、先ほどもだいぶん詳しく説明をいたしました。しかし、ただいま中沢君が御指摘のように、本島の一番いいところを、しかも都市地域、そこまで基地がある、これが基地の中に沖繩があるといわれておるゆえんでもあろうかと思います。そういうことが沖繩の発展を阻害するだろう、これはたいへんな問題だ、かように思います。ことに土地取得の方法、これは戦時中また戦後、軍政、民政下等において、まあ力によって取り上げられた、こういう感じはどうしてもぬぐい去られない。そういう印象でございますから、県民がひとしく持つのは、ほんとうに暗い気持ちだと思います。これが本土に返ってきたら何とかなるかと思ったけど、依然として基地はそのままじゃないか、おそらくこれが一番明るさを取り戻すことのできない一つの理由になっているのだろうと思います。私どもがあたたかく同胞を迎える、かように申しましても、リップサービスだと、かような表現までされるようでは、とても沖繩の方々にほんとうの気持ちはわかっていただけないだろう。私は、まことにそれを残念に思います。しかし、ただいまの状況では、米軍基地、これの思い切っての縮小、これはなかなかできない。しかし、今後は安保条約の範囲内に米軍基地は狭まる、また軍の行動も制限を受ける、かように考えますと、基地の整理などもこれは期待できるだろう。現在の状態ではそのまま引き継ぎますが、直ちに右から左に縮小できませんが、これは必ず、しばらく時間をかしていただければできるだろうと思いますし、私が新春早々ニクソン大統領と会って、沖繩の問題で、やはり協定のできたことについては感謝もいたしますが、同時に、この基地のあり方については、これはもう県民ばかりじゃなく、日本国民のすべての方の気持ちを率直に伝えて、そして米側の理解を深めたい、かように思っております。こういうことがなければなかなか明るさも取り返せないし、また豊かな沖繩県づくりにもならない、かように思うのであります。ただいまの一番の問題はやはり基地の問題です。これのあり方いかんによって、開発、これも非常に可能にもなるでしょうし、またその制限も撤廃されるだろう、かように思います。先ほどずっとここでお話しを聞いていると、やはり基地の中に耕作黙認の土地もある、それも相当の面積のようでございます。話し合いによれば、こういうような事柄も解決できる一つのいい材料にもなるんじゃないか。しばしば言われておりますレクリエーションの場にいたしましても、ゴルフ場だとか、さらには海水浴場、ビーチなどの使い方もずいぶん県民格差があるというか、差別をしている。そういう事柄も、これからの発展上どうしてもこれは取り除かなきゃならぬ。そういうところに県民の明るさを取り返すもとがあるんじゃないだろうか、かように私思いますので、これはどうしても、長い間、戦中、戦後を通じて今日まで御苦労であった沖繩の方々のためにも、これだけはひとつ思い切ってニクソン大統領と話し合ってみたいと、かように私は思っておる次第でございます。  この問題が片づき、同時にまた、ただいまいろいろの産業振興の方策も立てられておる。農業について、あるいは漁業について、先ほど来いろいろ話がありましたが、こういう事柄によって、近代的な漁業、そういうものもできる、漁港も整備され、もっと企業自体も大きくなる、そういうようなことになると、見違えるような状態ではないだろうか。私どもも、そういう豊かな沖繩県をつくる、このことが大体もとだと思っております。取り上げる問題には、さらにまた学校の問題もありますし、教職員の方々が民政下においてよく戦ってこられて、りっぱな日本人をつくるという、そういう教育に全力を注がれたのですが、しかし、設備としてはいかにも不十分だ。これは、本土に返って設備がよくなるかと——まだまだ大学から小学校に至るまでこの設備は何一つ自慢のできるものはない。これあたりは、われわれがもっともっと力を入れなきゃならない問題だと思います。  また、先ほど来、自治大臣からの話を聞きましても、税源に恵まれない沖繩で福祉社会をつくると言いましても、制度的にも、また設備上もずいぶん不足がちであります。医者の足らないということが何にも増して不便だろうと思うし、ことに島は多数の離島からできている。先島のほうになると、これはほんとに離島という感じがいたします。そしてこの沖繩県そのものが豊かにならない限り、過疎現象は起こるだろうと思うし、沖繩県の中でも中部地区に人が集まると、こういう状態ではいけませんし、また本土と比べてみて、若い働き盛りの者がみんな本土に来ると、こういうようなことでは沖繩の繁栄などとてもできることじゃないと、かように思いますので、 これらの点、幾多問題点のあることを承知しながら、なおこのむずかしい問題と取り組んでおると、こういう状態でありますから、皆さん方ともどもひとつ沖繩県の過去の御労苦、御苦労をひとつ考え、思い起こして、県民に一そう力づけるように、元気をひとつ出されるように御協力を願いたいものだと思います。
  146. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私もいままでに三べんほど沖繩へ参りまして、現地の人ともいろいろ話もしてきましたし、実際にもいろんな場面を見てまいりましたので、総理大臣は沖繩にいま生命をかけておられるようですから、いろいろ今度の問題については、私どもにも不満がありますし、まだまだやっていただかなければならない問題がたくさんございますが、ニクソン大統領と来春どういうお話しになられるかしりませんけれども沖繩がほんとにりっぱな姿で返れますように、この上ともの御努力をひとつぜひともお願いをしたいと思います。  そこで、山中総務長官にお尋ねをいたしますが、開発三法というのがございますね。その中の沖繩振興開発特別措置法というのは、これは十年の時限立法です。これはまあよろしいと思います。ところが、沖繩開発庁設置法は恒久的なものですね。沖繩のような小さな地域に大きな国の機関が設置されますと、地方公共団体の自治に大きな影響を及ぼすおそれがありますので、沖繩総合事務局の権限や組織は必要最小限にとどめて、運用面でも留意してほしいと思います。特にこの開発庁設置法は、開発のためには必要ですけれども、恒久的にしたのはなぜなのでしょうか。沖繩自治の侵害になるのではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。  それから、時間がありませんから、もう一つ続けて御質問いたしますと、もう一つの沖繩振興開発金融公庫、これも恒久的なものでございますね。この三つはセットになったものではないとは思いますけれども、もしも沖繩振興開発特別措置法が完了したとき、そのときにあと二つの開発庁設置法あるいは開発金融公庫、この二つも自然消滅になるのか、やっぱりこれはいつまででも残されるのか、なぜこのあとの二つは時限立法にしなかったのか、そこら辺を一括して御答弁をいただきたいと思います。
  147. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは一応開発立法については、きわめて異例の補助、負担率等を定めておるものでありますので、一応時限のついた十年といたしております。しかし、昭和二十八年に返ってまいりましたときの奄美振興法、いまは振興法ですが、その当時復興法で出発をいたしましたが、二十年実はやっておるわけなんです。やはり沖繩は二十七年も取り残されていたわけでありますから、場合によってはやはり十年後も必要になるのではないかと思いつつ、しかしやはりこういう特例は一応年限を切らなければなりませんので、十年としてございます。  さて、半面、開発庁並びに振興開発金融公庫、この公庫のほうは、振興開発法の裏をなすものでございますから、それと相似たものでございますが、開発庁のほうは、沖繩県が他の府県と同じような財源的にも、行政的にも自立するという事態がくれば、これは当然一定の時期においてもう不要のものということで、正常になる県の状態——特別なものは置かなければならぬと思いますが、そういうことになるだろうと思います。しかしながら、十年後はだいじょうぶだということがなかなか言い切れない点もございますし、それに、一つは出先の今度は機構と人間の問題でございますが、現在琉球政府の職員の方々で、国家公務員に八千名引き取ってほしいという要望がございます。しかしながら、それらの人々が国家公務員になることは、いままで国政事務相当のことをしていたから職務上快よく移る方が多いのですけれども、しかしながら、本土に勤務することはいやです、沖繩は離れたくないという、その背面の事情もございまして、私どもは、そうよけいな人間本土から送り込むという意味の膨大なる機構にするつもりはございませんが、そこらはよく琉球政府、ことに職員の方々の御意向というものをよく尊重しなければならない特殊な背景がございますので、ここらのところはよく自治権侵害等のことが起こらないようなことを念頭に置きつつ御注意を守ってまいります。
  148. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 運輸大臣に一つお尋ねをいたします。公共輸送機関としての国鉄のない県は、沖繩県だけですね。そこで、国鉄にかわるような公共輸送機関の恩恵を沖繩県民にも与えるべきであると思います。それでなければ、国家事業の恩恵について不公平になると考えます。  そこでお伺いしたい第一点は、沖繩本島を縦横に結ぶ基幹バス路線を国鉄などの公共的なバス路線にすべきではないか。第二点は、離島と本島間及び離島と離島間の海上輸送については、安全かつ低廉な料金で輸送する機関を公共施設として設けるべきではないかと、こう思いますが、その点のお考えを伺いたいと思います。
  149. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいまの御質問でございますが、沖繩の陸上運送の多量運送につきましては、お話のとおりバス事業、バスで運行している次第でございます。このバスも十七社ございます。本島だけで五社ございまして、路線も非常に競合しておりまして、これらの基盤を強化いたしますのには、ただいま琉球政府でも勧奨しているようでございますが、引き続き整理統合いたしまして強化していかなければならない次第でございまして、民間の事業をむしろ育成をしていくことがいま望ましいのではないか。で、御承知のとおり、沖繩の車両等におきましては、もう平均車両が八年以上になっております。老朽車両も多いわけでございますので、御希望がございましたらば、今度は、少なくとも四十七年度には、平均十三年に及ぶ車両が二百もございますから、それをとりあえず全部かえる。それがためには、国の補助と、そうして財投、半分ずつで、それですっかりかえてまいるというようなことで援助をしてまいりたい。それからまた、実際問題といたしまして、赤字が出ました場合には、国のほうでめんどうをみる、こういうことをやってまいりたい。それで強化をしてまいりまして、ただいまは運賃も非常に内地よりは安うございますけれども、いまの一般の沖繩の人の便利を考えまして、運賃のほうはそれほど上げないで、そういったような補助でもって強化をしてまいりたい、こういうふうなことを考えている次第でございます。  また、御承知の海上運送でございますが、これは本土沖繩間におきましては、三社ございます。それから貨物のほうは六社ございます。これもまあ非常に多い。それからまた離島間は、これは公共団体で輸送しているものと民間事業と、ともにやっておりますが、これが全部合わせますと五十三社もございまして、非常に多い次第でございます。これをやはり整理統合していかなければならない。それゆえに、私のほうといたしましては、御希望がございましたならば、たとえば船腹の点につきましては、長期低利の財政融資を行ないまして強化をしてまいりまして、そして輸送の便をはかっていく。御希望がございましたならば、すでに四十七年から大型のカーフェリーも二隻、ひとつ融資をしようというような懸案がございます。あるいはまた石垣、それから西表周辺につきましては、ホーバークラフトもひとつ融資をいたしまして設備をしまして、島民の皆さまの御便利をはかりたい。こういうような施設をする。また、離島間の航路につきましては、財政援助もいたしまして基盤の強化をはかっていく。まず第一番に、民間のそういったような輸送機関の強化をはかることによりまして島民の利便をはかっていきたい、こういうように思っている次第でございます。
  150. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 もう私の持ち時間が来たということですけれども、最後に一つ、農林関係で御質問を続けさしていただきたいと思います。わざわざ前尾法務大臣にもお出ましをいただきましたので、ぜひこれはひとつ続けさしていただきたい。  沖繩復帰特別措置法の関係で、法案の百五条では、農業委員会に対する公選法の適用が本土と同様に定められておりますね。百五条の一項の一号、二号、三号でいうところの「沖繩法令」とは、琉球政府のみの法令なのか、それとも米民政府法令、米軍法令に違反したものまで含まれるのか、これが第一点でございます。  第二番目に、もし民政府の法令を含むとすれば、その場合、本土法の運用目的と、アメリカの占領行政目的法と一緒くたに運用して農業委員会法にまで及ぼすのはどういうことなんですか。これは政府の方針なのかどうなのですか。これをお伺いしたいと思います。  時間がありませんから、もう一つ続いてお伺いをさしていただきます。それは裁判権の承継そのものに問題があると考えます。これは私たちが強く反論する理由の一つでありますけれども、それにしても、農業のような民生的な経済面にまで機械的に適用させようとする必要は全くないと思います。これは明らかに本土の法体系を混乱させるものであり、このような法文自体が沖繩及び全日本の屈辱であります。これについてアメリカ政府と交渉し、何らかの措置をとるべきであると思いますが、法務大臣のお考えを伺いたいと思います。同時に直接農林担当の農林大臣のお考えはいかがか、お伺いをしたいと思います。
  151. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいま御質問の「沖繩法令」は、第二条に申しておりますように、布告も布令も全部含むわけであります。したがって、すでに判決を受けた者は一応及ぶわけでありますが、これは率直に申しまして、政令によりまして引き継がないものもあるわけです。そういうものにつきましては、その後恩赦法によって免訴する、あるいは減刑する、あるいは復権をすると、こういうことになるわけであります。それで私は何ら差しつかえがないと、かように考えております。
  152. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 確かに農業委員会の委員の選挙権等に関する経過措置の百五条で、農業委員会の選挙までそういうことを引っ張ってこなくてもいいではないかという気持ちは私もよくわかります。しかしながら、やはり返還協定を受けた刑法の引き継ぎの中に、布令違反等のものも、すでに行なわれたもの等について排除しておりませんので、したがって、別途また公職選挙法のほうもそれを受けておりますから、ここでだけはずすということも、また法律のバランス上おかしなことになりますので、その意味においては、別段農業委員会だけをここで抽出して、別途特異な性格の失格法を適用するというようなことはしていないつもりでありますが、しかし、農業委員会ぐらいはというお気持ちもわからぬではございませんが、現在沖繩にはそういうものはございませんし、新しい選挙法の適用を受けるわけでございますので、一応はきちんと並べてあるということでございます。
  153. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 法務大臣にもう一つだけお尋ねします。いま別段問題はないとおっしゃっていらっしゃいますけれども、いまの農林大臣の御答弁のようにですね、農業委員会だけこれを取り出して適用除外にするのもどうかと、こういうふうに言っておられるのですが、ひょっとしたら教育委員会の委員の選挙、こういうものにも適用除外があるのではないかと思いますが、その辺はどうなっておるのですか。
  154. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 公職選挙法の関係だけのようであります。また、先ほど申しましたように、われわれが不適当と考えられるものは、おそらくそれは先ほど申しましたように、恩赦で救済される、かように考えております。
  155. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 ありがとうございました。この問題はもう少し掘り下げたいんですけれども、時間が過ぎてしまいましたから、またいずれかの機会に譲らせていただきます。どうもありがとうございました。
  156. 楠正俊

    委員長代理(楠正俊君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  157. 楠正俊

    委員長代理(楠正俊君) 速記を起こして。     —————————————
  158. 楠正俊

    委員長代理(楠正俊君) 塚田大願君。
  159. 塚田大願

    塚田大願君 私は、沖繩における国有林の問題について質疑をしたいと思うのでありますが、その前に、最初にこの沖繩の復興の基本姿勢について総理にお伺いしたいと思うのであります。総理は、ただいまも繰り返し、明るい豊かで平和な沖繩の建設を考えておると、沖繩の心を心としてと、こうおっしゃいますが、しかし、総理、いま必要なのは、そういう美しいことばだけではないと思うんです、沖繩の復興にとって必要なことは。そうではなくて、やはり沖繩の復興にとって一番重要なことは、まず第一には、アメリカの基地をなくして沖繩を真に全面返還させる、これがまず復興の第一前提条件ではないか。第二には、やはり二十六年間もアメリカの軍事占領下に置かれた沖繩には、もうもろもろの残りかす、遺物、不正常、こういう状態がございます。これをほんとうにきちんと片づけるということ、このことがあって初めて沖繩の復興、新しい県づくりの出発というものが考えられるのではないか。そういう意味で、まず総理から一言でよろしゅうございますから、その辺の考え方をお聞きしたいと思うのであります。
  160. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろの表現のしかたがあると思いますが、私は、アメリカの施政権から脱して日本施政権下に返る、これが何よりもまず第一基本的な問題だと思います。そのことなくしては、いまあげられたようなこともできないのでございますし、このアメリカから離れて日本施政権下に返る、そうして、私が言うような一つの明るい、豊かな沖繩県づくりをしよう、それでひとつ邁進したいと思います。
  161. 塚田大願

    塚田大願君 まあ、この問題につきましては、いままでもしばしば討論の中心問題でございましたから、いまこれ以上触れる必要はないと思いますので、私は、端的に問題を進めたいと思うのであります。  そこで、国有林の問題でお聞きするわけでございますが、沖繩には資源的にも、あるいは自然保護の関連から見ましても、非常に重要な森林、国有林が存在しております。この国有林につきまして、まずその面積、所在及び現在どのように使われているのか、これを要点だけでよろしゅうございますから示していただきたい。  また、こうした重要な国有林を今後沖繩の復興のためにどのようにして生かしていくかという点で案がございましたならば、簡潔に示していただきたいと思うのであります。
  162. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 国有林の面積は、沖繩本島においては北部に一万三千ヘクタール、西表島に二万五千ヘクタール、合計三万八千ヘクタールでございます。本島北部のほうは貸し付け地が約四百ヘクタールでございまして、一番大きい軍用地が約七千九百ヘクタール、それから借地県有林が約四千五百ヘクタール、普通林地が約二百ヘクタール、そういうふうに一応なっておりますが、西表のほうは、部分林契約が八重山開発株式会社との間に、当初一万八千ヘクタールがいま一万三千ヘクタールということで契約が結ばれておりますが、琉球政府のほうでは、六千七百ヘクタール程度にこれを減らしたいという審議会の答申と、基本方針を作成しておるようでございます。
  163. 塚田大願

    塚田大願君 いまお答えいただきましたが、おっしゃいますように、沖繩の国有林の場合には、本島北部におきましては六八%、非常に広大な国有林でございます。   〔委員長代理楠正俊君退席、委員長着席〕 八重山におきましては五二%、これも非常に重要な……いや失礼いたしました。大体そういうことですね。  そこで、まず本島北部の国有林の問題についてお伺いするわけでが、この北部の国有林は、いま米軍のマリーンが演習しております演習地になっております。このマリーンの演習は、一体、どういう演習をやっておられるのか、そしてまた復帰後はこの広大な演習地はどうなるのか、その点について簡単にお答え願いたいと思います。
  164. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいま米軍は、これを密林地内における軍事行動の演習にいたしたいと、こういうふうに言っております。しかし、非常に広大なものでありますので、私どもとしては、何とかこれを返還の機会に返してもらえないかという話をしましたが、一部は返還になりましたが、ただいま申し上げましまような目的のために今後も使いたいというので、北部訓練場といたしましてこれ提供するということにいたしております。
  165. 塚田大願

    塚田大願君 いま簡単なお答えでございますけれども、ここの演習地、演習というのは、いまおっしゃいましたように、ベトナム侵略のための演習でございまして、北部のこの非常に美林が——まあここに写真ございますけれども、ベトナムの部落をつくって、これを攻撃する訓練をする、こういういわゆる特殊訓練地域というのが約八つございます。それから、そのほかにヘリポート基地といって、夜間降下訓練をやって、その辺のいわばベトナムの森林を伐採するようなそういう訓練、ですからどんどんどんどん北部の森林が伐採される。こういうヘリポート基地が約十九、これは私の計算でございますが、十九。その他いろいろ機銃掃射隊とか、いろんなものがございまして、北部にはノグチゲラという世界的な珍鳥もおるのでございますが、それがいまだんだん危険な状態になってきておる。こういうことで、地元の国頭村では、村長はじめ村会議員がみんな反対決議をしておる。こういう実情は、おそらく政府も御存じだろうと思うのでありますけれども、とにかくこうして国民の重要な財産である国有林がどんどんこういうふうにして破壊されていっているという状態、こういう状態は、とにかく一刻も早くやめなければいけない。何といっても、この資源は国民のものでございます。これが国民のために活用されるようにならなければならないと思います。  また、この北部の森林は、御承知のとおり、沖繩における重要な水源地でございます。今年は干ばつでございましたけれども、あの水源地の中で、日本が自由に調査もできない、水源調査もできないという状態が生まれておる。さらには、ただいま申しました世界的珍鳥であるノグチゲラなどが破壊される。したがって、北部の国有林というものは、今日非常にみじめな状態になってきているので、これをほんとう沖繩の復興のために活用するためには、いまのあの演習というものをとにかくやめさして、この基地をやはり日本にまず返させる、これが私は必要だと思ってるわけです。この点について外務大臣からもお答えをいただきたいのでございますけれども、時間がございませんから、この問題についてはいずれまた機会をあらためまして存分に問答してみたいと思います。  次いで、私は、西表のほうにいってみたいと思うのであります。西表の場合は、いまも山中総務長官からお答えがございましたが、とにかく二万七千ヘクタールのうち一万三千ヘクタールが部分林になっておる、この問題でございます。この島は、沖繩でも、沖繩本島に次ぎまして大きな二番目の島でありまして、御承知のとおり、亜熱帯原生林の自然豊庫と言われるところです。あの広大なマングローブの林、それから世界にただ一つのイリオモテヤマネコ、あるいはサンゴ礁、もうこういう非常に世界的な自然豊庫でございます西表でございますから、あのスイスの第九回国際自然保護連盟では勧告をいたしました。こういう重要な島で、その大部分が天然資源、天然森林、しかもそれが国有林、しかもそれが、その国有林の半分以上が部分林になってるわけです。総理、ここに地図がございます。西表の全体のうち、この赤い線を塗ってあるところが部分林契約、いかにこのほとんどが部分林契約になっておるかということは、これで一目でわかるわけであります。大半がそうなっておる。  そこで、私はこの問題についてお聞きしたいのでありますけれども、この部分林契約が一体どういうふうな経過で結ばれたのか。つまり具体的にはいついかなる理由でだれとこの契約を結ばれたのか。そしてまた相手方の会社の資本構成あるいはおもな事業、これをまず私は、お聞きしたいと思うのであります。
  166. 松本守雄

    政府委員(松本守雄君) お答えいたします。  最初の契約は昭和二十八年でございます。一万八千ヘクタールを契約をしております。その後、逐次減少いたしまして、現在では一万三千ヘクタール。その相手は八重山開発株式会社でございます。その後、その会社の株はほとんど八五%ぐらいを十条製紙が肩がわりをいたしております。契約期間は五十年でありますので、昭和七十八年まででございます。分収歩合は一官九民でございます。九が造林者の手取りということになっております。事業内容は、そこにはえております原生木をその部分林権者に売却をして、そのあと造林をさせるというのがこの契約の主たる内容でございます。
  167. 塚田大願

    塚田大願君 その資本構成についてもう少し具体的に言ってください十条製紙以外の主要な株主について。
  168. 松本守雄

    政府委員(松本守雄君) 十条製紙が七万四千株持っております。岩崎与八郎という人が三千株。それから琉球国際観光株式会社、これは八千五百株でございます。その他國場幸太郎さんほか二名で千五百株……。
  169. 塚田大願

    塚田大願君 その名前も言ってください。
  170. 松本守雄

    政府委員(松本守雄君) 國場幸太郎さんが五百株、國場幸吉さんが五百株、國場幸昌さんが五百株、以上八万七千株でございます。
  171. 塚田大願

    塚田大願君 わかりました。そこでですね、この契約が行なわれたのは、ただいま昭和二十八年と言われました。この時期というものがどんな時代であったかということをわれわれは考えてみる必要があるんだと思うんです。御承知のとおり、現在もそうでありますけれども、当時は、まさに米軍万能の時代であります。有無を言わさなかった時代であります。ですから、この契約のある関係者が、私ども沖繩に調査に参りましたとき、こういうふうに漏らしておりました。こんなでたらめな契約はない、しかし軍の指示は当時絶対であったし、いまでもそうだ、したがって指示どおりやらなければ首が飛んだ時代だからしかたがなかったんだと、こういうふうに気持ちを述べております。しかも、この契約は、いまも発表されましたように、軍事占領下のもとで、当時から米軍と非常に関係の深かったいわゆる國場グループと言われる方々、ただいま國場幸昌衆議院議員の名前もあがりましたけれども、こういう間に結ばれた契約であります。ところがこの契約は、一九五四年の一月に会社は設立しましたけれども、その後六年間全く事業はしてなかったところであります。そして一九六〇年に十条製紙に肩がわりをしてこの子会社になった、こういう経過なのでございます。  そこで、私は、お伺いしたいのです。十条製紙の子会社である八重山開発は、この部分林契約によって確保した材木を、いわば自分の工場に運んでいるわけでございますけれども、一体こういう営利を目的とする企業と部分林契約を結んだという例が本土の国有林の場合にあるのかないのか。もしなかったとするならば、それは一体なぜなかったのか、たまたまなかったのか、それとも法令上それが好ましくないからそういうことができなかったのか、その辺をさらにお伺いしたいと思います。
  172. 松本守雄

    政府委員(松本守雄君) 本土の場合には、そういった大企業に対しまして部分林契約をしておる例はきわめてまれでございます。原則は地元住民の福祉の向上、林業構造の改善のために契約をしておる、そのきわめてまれな例でございます。一つは、北海道におきまして戦後石炭増産というのに関連して、食糧増産をした時代がございます。そのために国有地を貸し付けをした。そのあと食糧増産の緩和とともに部分林に切りかえたというのが一つの例でございます。  それからもう一つは、日立鉱業所におきまして、煙害地に造林をした。その鉱業所がオオシマザクラとか、そういった煙害に強い木を造林した例がございます。
  173. 塚田大願

    塚田大願君 いまのお答えは必ずしも私はあまり正確ではないと思うのです。というのは、この北海道の雄別の場合にも、本州製紙との部分林契約はたった九十八ヘクタールであります。いま問題になっているのは一万三千ヘクタールです。これは法令上百ヘクタール以内はこれは認められておりますし、公共用に供する場合にはこれはいいということになっておりますから、これは決して例外的なものではないだろう。それから茨城県の日立の日立鉱業との契約は、これは四百八十四ヘクタールでありますが、これはいわば工場の煙害の防除林ということでこれは認められたと思うのでありますが、私がいま申しましたのは、この完全な営利を目的とする十条製紙、その用材のための部分林契約というものは全くいままで例がなかったというふうに考えているわけで、そういう意味で、いまのお答えもやはり私の考えを確かめたにすぎないと思うのであります。そこで私は、こういう国民の財産である国有林の管理運営の原則的なあり方として、一企業の営利のために部分林契約は好ましくないと考えて、その点で、政府の、総理または総務長官の見解をお聞きしたいと思います。
  174. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 当初の計画の契約のいきさつはよくわかりませんが、ただいま地図で示されたように、一万八千ヘクタールといっても、ほとんど西表の山の面積の大部分をカバーしたぐらいのものであります。現在一万三千ヘクタールでありますが、それでも、琉球政府としては、官有林経営方針で六千七百町歩ぐらいまで縮めるということを一応きめておりますので、これはやはり琉球政府のほうでも、自然保護という観点に立って縮めたものだろうと思いますが、しからば、なぜ解約しないのかということでありますけれども、そのことは私も現地に行きまして白浜、祖納等の西海岸の部落の人たちに、このような貴重な——マラリア蚊がおったせいもありまして、人間の伐採その他の手が延びていない貴重な亜熱帯原生林の形態がそのまま残っているところは、これはもう特別保護地域にして、国立公園に指定すべきであるというふうな話をしましたところ、現地の人たちは山にのみ生活を依存しているということで、まあ大げさに申しますと、非常な激しい非難と憤りとをぶっつけられました。私も一晩泊りましてそういうことがわかりましたので、今後の方針としては、その契約は、一応やはり琉球政府との間で正式にかわされた——違法なものではございませんので、そのまま引き継ぎますが、しかしながら、その琉球政府の官有林経営方針の面積というものを十分念頭に置いて、自然保護と、また地元の西表で生活する人たちの山に依存する生活に対しても、ある程度の配慮をしなければならない事実上の事態もあるだろうということを考えております。
  175. 塚田大願

    塚田大願君 私は、いま御質問申し上げたのは、そういう契約が国として適当であるかないかということをお聞きしたのであって、あの沖繩の部分林契約を継承するかどうかという問題はあとでまたお聞きしたいと思うのであります。  いまいろいろな討議の中で一つ明らかになりましたのは、とにかく一万三千ヘクタールという膨大な土地、これは本土には例がないということであります。また法令上これはできないということは、この法令を見れば明らかだと思うのであります。  そこで、さらに質問をいたしたいのでありますが、先ほど長官もちょっと言われましたが、一九七〇年十月十六日、昨年でございます。昨年、琉球政府は告示三百七十四号によりまして、この部分林の面積を一万三千ヘクタールから六千七百ヘクタールに縮小していきたいという意向を発表いたしました。琉球政府としては、とにかくこういう契約の改正というのは高等弁務官の指令にまたなければならないという制約がございますから、琉球政府としては、精一ぱいの努力をしているんだと思うのでございます。ところが、この八重山開発は、七〇年の四月一日付で屋良主席あてに要望書を出しました。その要望書の写しは、山中長官にも行っておると思うのであります。山中長官あてになっておりますから、この写しは。この八重山開発の要望書を見ますと、とにかくいままでの一万三千ヘクタールを六千七百ヘクタールに減らしたいという琉球政府のそういう方針に反対、そしてむしろ契約期間を二十年間延長してもらいたい、二〇二二年まででありますか、それまで二十年間延長してもらいたいというのがこの要望書です。一体こういう琉球政府を無視した、こういう八重山開発のやり方というものは一体どうなのか。私は、非常にこれは不誠実な態度だと思います。これについて長官はどういうふうにお考えになっておるか、あなたに対しても文書がきているのでありますから、お答え願いたい。
  176. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まず、期限の延長ということはちょっと考えられないと思います。ただ、六千七百ヘクタールで八重山開発会社として現地で——地元民は要望しておられますから、それに対してこたえるその部分林の契約を実行していけるのかどうか、そこらのところはやはり林野庁のほうで専門的に検討してもらうべきものが残っているだろうと思いますが、先ほど申しましたとおり、琉球政府のそういう官有林経営方針を尊重することは、先ほど申したとおりございます。
  177. 塚田大願

    塚田大願君 時間が非常に少ないのでもっと詰めることができないのは非常に残念でございますけれども、しかし、一応いままでのこの状態をお話しし、またお答えを願った範囲において考えてみましても、少なくともこの部分林契約は、当時のこの米軍占領下のもとで行なわれた非常に不正常なものであるということ、そしてしかも、本土ではとうてい認められないような営利事業のためにこの部分林契約は結ばれたということ、さらには本土に例を見ない一万三千ヘクタールというふうな面積を使っておるということ、そしてまた、その事業の達成率も、きょうは詳しく申し上げる時間がございませんけれども、非常に低いと、これは琉球政府がそう言っておりました。たとえば植林なんか、とにかく二四、五%しかやっていない。これでは全く部分林契約の契約違反であります。したがって、どう見ましても、この部分林契約というものは非常に不当なものと思うのでございます。  そこで、私は、政府にお伺いしたいのは、こういう部分林契約、不正な不当な部分林契約を、政府はこのたびの「沖繩復帰対策要綱(第二次分)」におきまして、これをとにかく継承するといっておられます。いろいろ文句はついております。「沖繩の森林法に基づき締結されている部分林契約は、自然保護、森林経営のあり方、関係住民の生活等を勘案しつつ、所要の調整を図ったうえ、承継することとする。」、「所要の調整を図ったうえ、承継する」といっておられますけれども、しかし、とにかく継承するということははっきりうたっておられる。もしこのような状態のまま継承したとするならば、これは本土の法令を変えていかなければならないということになると思うのであります。この国有林野法あるいはその施行法、あるいはその管理規程、明らかにこれにはもう該当しないのでありますから、全くけたはずれのものでありますから、これを変えていかなければならないということになるわけであります。しかも、同時に、こういうことを一度すれば、それでは本土でも大企業のためのそういう部分林契約もできるではないかという論理的な問題も起きてくると思うのでございまして、非常に私は危険だと思います。これはまさに沖繩協定の審議の過程で問題になりましたように、軍事上の本土沖繩化ということが問題になりました。しかし、この場合には、まさに経済的に本土沖繩化ということになるのではないかというふうに心配をいたします。私どもはそういう心配をしておるのでありますが、それでも、なおかつ政府はこの契約を承継する決意でおられるのか、その点だけはっきりお答え願いたい。先ほど中山長官はいろいろおっしゃいました。これは衆議院でもお答えになったので、議事録などで私どもよく知っております。ですから、そういう具体的な考え方でなくて、この契約をとにかく継承するかどうかというだけでけっこうでございますから、その辺はっきりさしていただきたい。
  178. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 一言で申せば継承するわけでありますが、しかし、琉球政府も、やはり六千七百町歩はやらなければ、島の人たち生活ということを考えて板ばさみの心境だったろうと思います。したがって、琉球政府も、契約を白紙に戻してくれというような御意向もありませんし、やはり現地に行ってみまして、私としては、琉球政府の意向どおりせざるを得ないだろうと考えております。
  179. 塚田大願

    塚田大願君 時間もなくなりましたから、もう結論だけを出します。  いま長官もお答えになりましたし、ここに衆議院の議事録もございますから、あえてくどくど申し上げませんが、要するに、地域住民の生活の問題が一つある、この契約は適法なものである、そうして同時に経営の立場も考えなければいかない、企業の立場も考えなければならないと。しかし、私は、これは一言で言うならば、政府の無能無策を暴露するにすぎないのではないかと思うのです。なぜならば、国際的にもこんなに重要な資源ですね、そうして同時に、その資源を地域住民の生活の基盤としていくということになりますと、これは、いままでどおりのやり方では片づかない。つまりいままでどおり一企業にまかしておけば沖繩の復興ができます、地域住民の生活がよくなりますなんということは、どう考えたって言えない。むしろ国あるいは県の全責任においてこの問題はやらなければならないのではないか。そのために、私は提案したいんです。  そのためには、こういうむちゃくちゃな契約をまず第一に解除するということ、これが第一要件だと思います。  第二には、ほんとうにこの西表島の開発、復興、産業振興を考えるならば、単なる無為無策でいままでどおりに一企業にまかしておくというんではなくて、——一企業にまかしておいたら本土では一体どういうことになったか。とにかく自然が破壊され公害がどんどん出てくるというこの状態の中で、やはり西表の場合にも非常にそういう危険性がある。したがって、私は、振興計画あるいは開発政策は、こういう一企業にまかせるのではなくて、現地の住民あるいは県、自治体、市町村、あるいは学者、専門家、研究団体、その他の関係団体によりまして調査立案の機関を設ける。そしてその機関を通じて、ほんとうに西表島あるいは沖繩の民主的な総合的な開発政策を打ち立てる。こうしてこそ初めて国の責任というものがとにかくはっきりするんではないかと思うのです。この点で総理の御見解を承りたいと思うわけであります。
  180. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど山中総務長官がお答えしたとおり政府は考えておりますが、ただいま塚田君からたいへん建設的な御意見も出ております。しかし、これはどうも、あの契約を直ちに破棄すると、こういうわけにもいかないようです。しかし、いまの半分にいたしましてもまだまだこれはたいへんなことだと思いますし、また事業の完成率もたいへん低いというようなことでありますから、それらの点も十分よく調べまして、そうして地域住民の利益にもなり、同時に自然も守れると、こういうような形でわれわれ取り組んでいきたいと思っております。
  181. 塚田大願

    塚田大願君 もうこれで終わりますから。  いまの総理お答えについてはいろいろまだ申し上げたいことがありますが、もう時間がなくなったそうでありますから、最後に一言申し上げたいのは、この特別措置法ですね、これに百五十六条の政令委任条項というのが一カ条ございますけれども、これですべて沖繩のこういう問題が片づけられては、私は、重大な問題になるんではないかというふうに考えます。  それからもう一つ。沖繩振興開発法でございますけれども、いろいろりっぱなことが書いてあります。しかし、いまお聞きしましたように、国有林の問題一つ解決しないのです、これでは。したがって、私はこの関連法案の問題点——いま申し上げましたような問題点を指摘して、今後政府の真剣な御検討を強く求めて私の発言を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  182. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) それでは、以上をもちまして本連合審査会を終了いたします。  これにて沖繩及び北方問題に関する特別委員会地方行政委員会農林水産委員会連合審査会は散会いたします。    午後十一時五分散会