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公述人(仲田昌繁君)
公述人の仲田でございます。
沖繩返還協定を最大の焦点といたしまする第六十七臨時
国会の開催中におきまして、
沖繩返還協定並びに
沖繩の
復帰に伴なう
関係七
議案に対し、現地
沖繩県民の意思を聞かれるために開催されました
沖繩公聴会、並びに、遠路はるばるお見えになりました安井
団長以下
参議院の諸先生方並びに事務当局の
方々、
ほんとうに御苦労さんでございます。
一、二点
意見を申し述べてみたいというふうに考えます。
日本が近代社会への歩みを進めてきた歴史の中で、
沖繩の歴史は
祖国復帰への
戦いの歴史でございました。いまようやくその実現を見ようとするときにあたって、
本土国民世論や
沖繩県民の多数がこの
協定の
内容に不平不満、疑惑があることをまず申し述べておきたいというふうに考えます。
まずその第一は、
返還協定の
内容がきわめてあいまいであると同時に、
基地返還の実態は、われわれ
沖繩県民の熾烈な要求にもかかわらず極小であり、
基地の
機能は七二年の
返還によっていささかも減退するものではないということがきわめて明白でありますし、主要
基地がほとんど残るということ、さらに全く
沖繩住民の意思が無視された形のものではないかというふうに申し上げておきたいと考えます。
第二に、明確にしてもらわなければならないと考えますることは核の問題でございます。
国会における論議で、
政府は、
沖繩の核が
撤去されるのは共同声明八項と
返還協定第七条によって明らかである、というふうに言明していますが、われわれ
沖繩県民は、
沖繩にある核がいついかなる方法で
撤去され、さらにその確認方法を今期
国会において明確にしてもらいたいというふうに主張し続けてまいりました。しかしながら、
国会におけるこれまでの
政府説明は前述の域を出ないものでございますし、
県民の不満、疑惑を解消するに至っていないということをまことに遺憾に思うものでございます。
第三に、
協定第八条によりますと、
沖繩にある
アメリカの極東諸国向けの放送——VOAの五年間存続を認め、二年後にその将来の運営を協議することになっていますが、電波法第五条は、
日本の国籍を有しない者、外国
政府またはその代表者には無線局の免許を与えないとなっております。このように国の
法律に反してまで米国の軍事
関係の施設の存続を認めており、「
本土並み」とはとうていわれわれは容認しがたいものでございます。
その他、
返還協定は米国の
施政権下で生じた
日本国民の対
米請求権の放棄、
米国資産の引き継ぎなど、多くの不満と疑惑がございます。
次に、
沖繩の
復帰に伴う
特別措置に関する
法律の第七章−
通貨の交換等−第四十九条第一項に関連して若干
意見を申し上げたいというふうに考えます。第四十九条第一項は、
沖繩県の区域内にある居住者は、政令で定めるところにより、当該区域において保有する
アメリカ合衆国
通貨を、この
法律の施行の日前における外国為替の売買相場の動向を勘案をいたしまして、内閣の
承認を得て大蔵大臣が定める交換比率により、同日から政令で定める日までの間に本邦
通貨、すなわち
日本円と交換しなければならない、このようになっております。この条文から見ますと、
沖繩のこの
法律の施行は、おそらく
施政権の
返還時であろうというふうにわれわれは理解をいたします。さらに、内閣の
承認を得て大蔵大臣が定める交換比率がどうなるのか、はたして一
ドル対三百八円なのか、あるいは一
ドル対三百六十円なのか、この条項に対してきわめてわれわれは不満と不安を抱いております。われわれ
沖繩県民は、
ニクソン大統領の
ドル防衛政策の発表、円の変動相場制への移行等、一連の国際
通貨危機の渦の中で、
県民の血のにじむような努力と忍耐によってささえられてきた
沖繩経済と
県民生活に大きな損失を今日まで受けてまいりました。私どもはその中にあって、このような
通貨危機より
県民の生活と
財産を守るには、一
ドル対三百六十円の交換レートによる円への即時切りかえ以外には救える方法はないといたしまして、
日本政府に今日まで強力に訴えてまいりました。このような運動の過程におきまして、十月九日、
通貨及び
通貨性資産の確認に関する緊急臨時措置法に基づきまして、個人の現金、金融預貯金が一
ドル対三百六十円で補償されることになり、佐藤総理も、
県民の不安が解消されることを望む、というふうに申し述べられておりましたが、確かに不安が解消される面もありますが、
労働者の賃金債権、
県民間の債権債務、その他多くの問題をかかえておりまして、十月九日のこの措置によっては、
通貨の根本解決にはなっておりません。
去る十七日からワシントンで開催されました十カ国の蔵相
会議の結果、円の大幅切り上げを余儀なくされ、一
ドル対三百八円に決定されております。八月の十五日のニクソン経済政策発表以来、もろにその影響をこうむってまいりましたわれわれ
沖繩県民にとって、さらに今回のこの円の大幅切り上げは、七二年
復帰に向けて多くの問題をかかえ、
復帰不安に苦悩している
県民生活並びに経済を根底からいまゆさぶっております。さらに不安と困難のどん底にいまおとしいれようとしておるのでございます。
本土政府は、国際
通貨の多角的調整に対する
政府声甲の中で
沖繩の
通貨問題について触れておりますが、この声明では、去る十月九日の
ドル・チェックの措置の域を出ておるものではございませんで、目新しいものではございません。そういうことによりまして、われわれ
沖繩県民はいまきわめて不安定、困難の
状態に置かれておるわけでございます。したがって、「円と
ドルの谷間」で
県民生活を守り、経済危機を乗り切り、そして円滑な豊かな
復帰を築くのには、このような禍根、混乱、不安を早期に排除いたしまして、
ほんとうに安心して九十五万
県民が一致団結して建設の力を発揮できる、そのことをわれわれは切に要望しているわけでございます。特に七一年のこの暮れにあたりまして、このように円と
ドルの谷間にございまして、そして
復帰に向けて自分
たちの生活が、経済が一体どうなっていくのか。このような形の中で、いま
沖繩県民は非常に苦悩の段階にございます。したがいまして、
参議院の諸先生方におかれましても、
沖繩のこの実態を十分御理解していただきまして、円の
ドルからの危機を取り除き、そしてそのことは即一
ドル対三百六十円の交換レートの保証による円
通貨への切りかえ以外にない。このことは
沖繩九十五万
県民の私は総意であろうと考えます。
さらに公用地の
暫定使用に関する
法律につきまして、端的に申し上げまして、この
法律は
米軍基地の維持存続と自衛隊の
沖繩配備を目的としたものではなかろうかと私は考えます。われわれ
沖繩県民は、あの第二次大戦において戦争の悲惨と残酷さを身をもって体験してまいりました。さらに四分の一世紀にわたり、
基地あるがゆえに派生する公害、
人権問題等、その中にあって血のにじむような苦難の道を歩んでまいりました。したがって、
祖国復帰ということは、異民族支配からの脱却と同時に、このような軍事的重圧から一日でも早く脱したいということであり、これは
県民のすべての感情ではなかろうかというふうに考えます。でありますから、
県民として
沖繩の
米軍基地の整理縮小、将来的には
撤去を求めて、物心ともに豊かな
沖繩県の建設を希求するのは当然のことかと考えます。このような
県民の気持ちを無視して、
本土と比較にならないような
基地の
機能、密度のある
沖繩の
米軍基地に、しかも、
本土との対比におきまして二十数倍といわれる六千八百余の自衛隊を派遣するということは、どう考えてみましても納得ができませんし、戦争への危惧はぬぐい去ることはできません。
次に、きわめて現実的なものといたしまして、われわれはかねがね、将来的に
沖繩県民の豊かな生活を確保する意味におきまして産業政策を展開をしてまいりました。
海運
関係について、この
復帰を目前にいたしまして、若干大きな問題が出てまいっております。そのことを申し上げますと、第二次大戦後廃墟と化した
沖繩で、海運業はその先端を切って復興への道を歩み始めてまいりました。一九四六年、
沖繩船員による米国軍用船の運航がスタートして以来、見るべき国家の助成もないままに着実に船腹の増強の努力を重ねまして、現在
沖繩の企業が保有する内・外航船は百トン総トン以上の鋼船で約五万五千トンに及んでおります。この船腹量は
本土のそれと比べ問題にならないほど小規模なものでございますが、
沖繩における外貨収支の面から見ますと、全産業中第四位にございまして、
沖繩経済に果たしている役割りはきわめて大きいものがございます。
本土の海運産業がその船腹量において実質
世界第一の高度成長を遂げまして、大型化、専用化など急テンポの輸送革命を遂げている中で、
沖繩の海運業は、その保有する船腹量のみならず船質、企業の体質面において、
本土に十数年の立ちおくれをいたしております。同時に、
沖繩海運業は、
本土−
沖繩間の外航海運活動を主体にいたしまして歴史的成長を遂げてまいりました。現在本航路に占める
沖繩籍船の就航船腹量、これは
沖繩−
本土間でございますが、延べ約百九十万重量トン、全体の約四五%と推定されております。この数字から見られるごとく、これだけ依存度の高い
本土−
沖繩間の基幹航路が
復帰時点で内航海運として位置づけをされた場合に、ここに
本土のふくそうしております船舶がどっと押し寄せてまいりますと、
沖繩の固有の海運業に重大なる打撃を与えるのは火を見るより明らかでございます。現在宮古−八重山航路、あるいは
本土と
沖繩間の航路につきましては、それぞれ運賃同盟というのがございまして、かなり強いカルテル
行為によって航路の秩序維持をはかってきたため、そのシェアの中で
沖繩海運業は曲がりなりにも海運活動を維持してこられたということが言えます。四面を海に囲まれた海洋県のわれわれにとって、見るべき保護もないままに今日まで成長してまいりました
沖繩固有の海運業に対する愛情は、
本土のそれとは比較にならないほど強く、
復帰とともに内航海運業として位置づけられることにより、比較にならないほど競争力の強い
本土海運資本に既得航路をじゅうりんされることを非常におそれているわけでございます。
沖繩県民が
本土の企業及び行政に抱いている不安をそのまま残しておくならば、円滑な
復帰及び将来の一体化に大きな妨げとなるということは火を見るより明らかではないかというふうに考えます。したがって、
沖繩県の海運企業が
本土の海運業に伍してその活動を維持し発展していくためには、内外航路の秩序の母体となっておる運賃同盟の基準を維持するとともに、地元海運業に相当量の船腹を保有させることが必要ではないかというふうに考えます。
このような観点に立ちまして、
復帰に向けて諸準備をしてまいりました
沖繩の
県民会議におきましても、この問題を提起をいたしまして、そこで
意見の集約をいたしまして、
本土政府にこの
案件を、言うなれば、
沖繩−
本土間の航路秩序維持の問題を訴えまして、その中で、
復帰対策第二次要綱の中で、貨物船につきましては航路秩序の維持をはかるということが出されました。しかし、旅客船につきましてはこれからはずされておりまして、そのことは
復帰をいたしますと、
本土の内航海運業法にこれら旅客船が含まれまして、必然的に免許制になるわけでございます。そういうことにおいて
復帰対策第二次要綱の中からこれをはずしておりますが、最近
沖繩−
本土間の航路に対しまして、言うなれば
本土海運業者がかけ込み的なやはり旅客船の配船の強硬手段を考えておるようでございます。そういう点におきまして、
ほんとうにわれわれが円滑な豊かな
復帰を実現するためには、このようにいまこそ
県民が総意を結集するこの重要な時期に、地元海運業に対して、さらにそこに働く
労働者に対して大きな不安を残すようなことに対しましては、
本土政府の強い行政指導によって、措置によって、この混乱と不安を除去していただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
ちょうど予定の時間になりましたので、御
質問等ございますれば、その中で具体的に御説明申し上げたいというように考えます。
どうもありがとうございました。(拍手)