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1971-12-17 第67回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月十七日(金曜日)    午前十時四十八分開会     —————————————    委員異動  十二月十六日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     加藤  進君  十二月十七日     辞任         補欠選任      竹内 藤男君     志村 愛子君      内田 善利君     藤原 房雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         長谷川 仁君     理 事                 鬼丸 勝之君                 楠  正俊君                 剱木 亨弘君                 丸茂 重貞君                 松井  誠君                 森中 守義君                 矢追 秀彦君                 高山 恒雄君                 岩間 正男君     委 員                 稲嶺 一郎君                 今泉 正二君                 長田 裕二君                 梶木 又三君                 片山 正英君                 亀井 善彰君                 古賀雷四郎君                 志村 愛子君                 柴立 芳文君                 鈴木 省吾君                 園田 清充君                 西村 尚治君                 初村瀧一郎君                 宮崎 正雄君                 山内 一郎君                 若林 正武君                 占部 秀男君                 大橋 和孝君                 川村 清一君                 田中寿美子君                 田中  一君                 宮之原貞光君                 村田 秀三君                 森  勝治君                 内田 善利君                 上林繁次郎君                 原田  立君                 藤原 房雄君                 栗林 卓司君                 加藤  進君                 喜屋武真榮君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外 務 大 臣  福田 赳夫君        大蔵大臣臨時代        理        通商産業大臣   田中 角榮君        文 部 大 臣  高見 三郎君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農林大臣臨時代        理        山中 貞則君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        郵 政 大 臣  廣瀬 正雄君        労 働 大 臣  原 健三郎君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  江崎 真澄君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  木内 四郎君        国 務 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣  中村 寅太君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局沖繩        法制参事官    系  光家君        内閣法制局第二        部長       林  信一君        内閣法制局第三        部長       茂串  俊君        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        管理局長     茨木  広君        総理府総務副長        官        砂田 重民君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛施設庁長官  島田  豊君        防衛施設庁総務        部調停官     銅崎 富司君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        沖繩北方対策        庁長官      岡部 秀一君        沖繩北方対策        庁総務部長    岡田 純夫君        沖繩北方対策        庁調整部長    田辺 博通君        法務省民事局長  川島 一郎君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省条約局長  井川 克一君        大蔵大臣官房審        議官       前田多良夫君        大蔵省主計局次        長        平井 廸郎君        大蔵省理財局次        長        小幡 琢也君        農林省蚕糸園芸        局長       荒勝  巖君        通商産業省公益        事業局長     三宅 幸夫君        運輸省海運局長  鈴木 珊吉君        運輸省航空局長  内村 信行君        郵政省電波監理        局長       藤木  栄君        建設省計画局長  高橋 弘篤君        建設省河川局長  川崎 精一君        建設省道路局長  高橋国一郎君        自治省行政局長  宮澤  弘君        自治省行政局公        務員部長     林  忠雄君        自治省財政局長  鎌田 要人君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局民事局長   瀬戸 正二君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君        常任委員会専門        員        鈴木  武君        常任委員会専門        員        渡辺  猛君        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君        常任委員会専門        員        中島  博君     —————————————   本日の会議に付した案件委員派遣承認要求に関する件 ○沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○沖繩振興開発特別措置法案内閣提出衆議院  送付) ○沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○国家公務員法第十三条第五項および地方自治法  第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の  地方事務所設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出衆議院送付) ○沖繩平和開発基本法案衆議院送付予備審  査) ○沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  (衆議院送付予備審査)     —————————————
  2. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会開会いたします。  まず、委員異動につきまして御報告いたします。  昨十六日、渡辺武君が委員辞任され、その補欠として加藤進君が選任されました。  また本日、竹内藤男君が委員辞任され、その補欠として志村愛子君が選任されました。     —————————————
  3. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 委員派遣承認要求に関する件についておはかりいたします。  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、沖繩平和開発基本法案沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  以上の各案件審査のため、委員派遣を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 御異議ないものと認めます。  つきましては、派遣委員派遣地派遣期間等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 次に、沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、沖繩平和開発基本法案沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  以上の各案件一括議題とし、これより質疑に入ります。  占部秀男君の質疑を行ないます。占部秀男君。(「大蔵通産要求しているのに、来ていない。」と呼ぶ者あり)——速記をとめてください。   〔速記中止
  7. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を始めて。
  8. 森中守義

    森中守義君 議事進行。  開会の冒頭から、参議院におけるこの委員会はまことに遺憾であります。元来、質疑者質問要求を受けていた大蔵大臣代理が、いかなる理由であるか知らないけれども、すでに三十分近く遅刻出席、ために委員会開会に至らなかった。しかも、入ってくるなり、何ですか、あなたは。欠席の届けを出しておったとか、許可があったとか、これは聞き捨てならない。そういう閣僚の一方的な見解委員会に迷惑をかける、このままの状態審議に入っていけません。一たん休憩して、いまの通産大臣がだれの許可を得たのか、どういう手順であったのか。みずからに非はない、こういうかっこうで入ってくる、そのことを黙視できません。一たん休憩し、理事会を開いてもらいたい。この真相を究明する。
  9. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 五分間休憩いたしまして、理事会に入ります。    午前十一時十三分休憩      ——————————    午前十一時二十分開会
  10. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。占部秀男君。
  11. 占部秀男

    占部秀男君 国内法質疑に入るわけですが、あとで、理事会でいまの問題は結着をつけるというので、それでもいいわけですけれども質問者の私にとりましては、門口に頭を出しかかったとたんにぽかんとやられたようなもので、気勢をそがれること、はなはだしいわけです。これが佐藤内閣常套戦術かもしれませんが、ひとつそういうことのないように今後はしていただきたいと思います。  そこで、私は、国内法の各法律案を通じて、主として沖繩県地方自治権の問題、県民人権保障の問題、さらに、これらの法律案についての憲法上の扱い方の問題にしぼってひとつお伺いをしたいと思います。あと時間がありましたならば、沖繩地域に施行される国の制度の問題の二、三の点についてお伺いをしたいと思います。  まず、山中総理府総務長官にお伺いをいたしますが、六百幾つという法律案にいずれも関係する、それをいま八つ国内法にいわばまとめたような形で出されているわけでありますが、この法律目的別にといいますか、内容別にといいますか、見ますと、私は、三つグループに分けることができるのじゃないかと思うのであります。一つは、沖繩の県や市町村制度、そして沖繩地域における国の制度本土と一体化するグループ、二つは、返ってきた沖繩社会経済開発をしようとするグループ三つは、軍事目的といいますか、防衛目的といいますか、ともかくそうした目的要請にこたえたグループ、こう三つに分けられると思うのでありますが、長官の御意見をお聞きしたいと思います。
  12. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 表現のしかたはいろいろあると思いますが、大体分ければそういう範疇に分かれるかと思います。しかしながら、復帰に伴う暫定特別措置法の中には、返還協定を受けて、それの国内法を改正する必要に迫られたためのたとえばVOA極東放送等に示されるような例等も入っておりますが、大別するところ、占部先生お話のとおり区分をしてよろしいと思います。
  13. 占部秀男

    占部秀男君 いま長官からそういう御答弁があったわけでありますが、いずれにしても、これらの法律案は、今度の沖繩返還協定に伴って必要となった国内法の制定あるいは改廃と、こういう問題でありますから、したがって、目的内容は幾らか違っても、この八つ法律案をいわば通じて流れている政府の基本的な方針というものがあるはずであります。一口に言えば、今度の国内法をつくるにあたって政府の基本的な姿勢とでもいえましょうか、そうした点について佐藤総理見解をお伺いいたしたいと思います。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えをいたします前に、ただいまの田中通産大臣大蔵大臣代理がこの会議におくれましたこと、そうして占部君にたいへん御迷惑をかけ、また、当委員会皆さん方の御審議に支障を来たしたことを、心からおわびを申し上げます。  これは議事進行で御注意もありましたから、将来は重ねてかようなことはないと思います。今回のことも、これはいずれ理事会事情が明らかになると、おそらく皆さんにも御了承願えるだろうと思います。どうか御了承のほどをお願いしておきます。  ところで、いまのお尋ねにお答えいたします。  沖繩県が戦時中、さらに戦後を通じて米軍支配下にあった、これは長期にわたる米軍支配であります。それが軍政あるいは民政というような形で特殊な施政権下に置かれたこの状態を、祖国に復帰するにあたりまして円滑な復帰を実現する、そういうような考慮を払わなければならない。かように申しますのは、申し上げるまでもない、長期にわたる事態でございますから、その間につくり出されたもの、これはなかなか簡単には乗り越し得ないものだ、かように思います。申すまでもないことですが、施政権下において生まれた子供も、もうすでに二十六歳になる。かようなことを考えると、これはたいへんな変化であり、そうしてアメリカ制度下において変わってきた、またアメリカ制度のもとで生活をしてきた、これを今度は本土に迎える。しかも、私どもは、どこまでも県民同胞の御労苦に報いたい、かような観点から、ただいまの復帰を実現したい、それが円滑でありたい。かように実は思っておりますので、そういう意味の移り変わりについても十分に意を払わなければならない、これはもう当然のことであります。したがいまして、新しい日本制度にいたしましても、そのままやれば現在よりも悪くなるような点、こういうものはできるだけすぐ日本制度に移行するということでなしに、ある程度のそこらに経過期間を設ける、あるいは税制上等においてもそういうくふうがされなければならないと、かように思います。そういうことを一言にして申せば、沖繩住民の意向を十分聞くということ、それが十分反映されるようにする、こういうことでなければならないと思います。  私は、今回もさような意味で諸法律、諸制度を立案したつもりでございますけれども、まだまだ県民の心を心としてというところにはほど遠いものがあるようであります。これは十分御審議をいただきまして、審議を通じてさらにそういう点も明確にしていただきたいと、かように思います。
  15. 占部秀男

    占部秀男君 いまの総理の御答弁は、一応この法律案をつくる場合のいわば技術的な態度としてはわかるわけであります。しかし、私は、もっと深く、もっとポイントを何と申しますか、政策的な考え方の重点ということに置いてお伺いをしたわけであります。  いま私の手元に沖繩琉球政府屋良主席が署名をした「復帰措置に関する建議書」があります。御案内のように、琉球政府は、昨年以来、国の復帰要綱、第一次、第二次、第三次に対して、それぞれ沖繩における県市あるいは県民、あるいは民主団体商工団体、こういうところのいろいろな意見を聞いて、それを総合して要請書を出しておるわけです。この建議書は、この十一月といいますから、今度の国会が始まって後に出された一番新しい建議書でありますが、この中で、百万の県民がどういう気持ちで、どういうわけで一日も早い復帰を望むのか、こういう点にポイントを合わせて書いておるわけであります。県民復帰を願った心情には、結局は国の平和憲法のもとで基本的人権保障を願望していたからにほかなりません。こういうような考え方を軸として、県民生活と権利を守る問題、沖繩地方自治を尊重してもらう問題、沖繩社会経済開発を進めてもらいたいという、いわば具体的な要求といいますか、要請を出しておるわけであります。  総理は、おそらくこれはお読みになっておると思いますが、こうした百万県民建議といいますか、声をどう受けとめておられるか、率直にひとつお考えをお聞かせいただきたいと思うわけであります。
  16. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この建議書屋良主席が持ってこられて、そして政府建議書を出そうというその際に、実は協定衆議院の段階で委員会が終わったと、こういうことになっておりまして、十分建議書の趣旨が採用されていないのじゃないか、こういうような御心配があるようでございます。ところが、この建議書なるもの、これはもういまおあげになった点は、「はじめに」という締めくくりの問題でございますが、この点について、過去におきましても、いろいろ琉球政府あるいは立法院等から建議書が出されております。したがいまして、ただいま総まとめの建議書、これも抽象的な原則としての地方自治を守れとか、その他云々は、これは十分生かしてございますけれども、しかし、具体的な数項目につきましては、その中のものでかつて話しをされたものと違っておるものもありますし、また、私どもから見ると、そのまま取り組めないが、しかし、やはり運用の面でそういう点をまかなうとか、あるいはさらに補足していこうと、こういうような考え方のものもあるわけであります。私は、大体において、この建議書に盛られておる項目、これらについては十分注意されていると、かように御了承願って差しつかえないのではないかと、かように思います。しかし、具体的問題については、政府のとっている諸施策とこの建議書ではずいぶん相違がある、こういうことも私は率直に認めます。  ただいま申し上げるような考え方で、建議書も受けておりますし、ことにこの建議書の——重ねて申しますが、最後のところで地方自治確立、反戦平和の理念を貫くという、こういう言い方しておられます。平和に徹することだと思っておりますが、その理念を貫く、基本的人権確立県民本位経済開発と、これを四項目としてあげておられるが、その方向でただいまの復帰要綱、さらにまた諸施策を進めている、かような状態でございます。
  17. 占部秀男

    占部秀男君 いま総理は、最後の点では具体的に総理が特に注意をし、特に意を払ったと、今度の法律案をつくるにあたって。そういう点についてのお話があったわけでありますが、総理の言われるように今度の法律案ができ上がっていれば、これはまあ問題はないと思うんですが、少なくとも、総理が言われた程度のことまでこの法律案の中に盛られておるかどうか、こういうことになると、相当基本的な問題で疑問の点があるんじゃないかと思うんです。  現に総理もお聞きになっていると思いますが、この協定あるいは協定に伴う国内法案については、現地では相当反対の声があり、不満の声があるわけであります。衆議院のほうで沖繩公聴会のあれをしようとしたときに、協定がああいう形で衆議院を通ったあとで、何をしに来るんだというような声も現地にはあったということを、私は聞いておるわけであります。総理の言われたようなことが基本的にこれらの法律案の中にはまっておれば、私は何も言わないんでありますが、ちょっと事情が違うんじゃないかと、かように思いますので、具体的に各法律案についてひとつ質問をいたしたいと思います。  その前に、この法律案の立て方について、私は、ちょっと総理に申し上げておきたいんですが、この制度を変える第一のグループでは、確かに形の上では国の制度あるいは地方自治制度は一応整えられるように見えるんでありますが、開発の問題の第二のグループあるいは軍事目的を持った第三のグループ法律案によって、相当地方自治の問題もめちゃくちゃになっておるし、憲法上の疑義のある問題もたくさん出ているわけです。  そこで、私は、第一のグループについてまずお伺いをしたいと思うのでありますが、渡海自治大臣にこれはお伺いをしたほうが、自治体の問題であるから、いいと思うのでありますけれども、この復帰に伴う特別措置法の中に、第三条で沖繩県地位について規定をしております。さらに第七条では、沖繩県下市町村地位について規定をしておるわけであります。第三条ではこう書いておるわけであります。「従前沖繩県は、当然に、地方自治法に定める県として存続するものとする。」、こう書いてあります。この一番上の「従前沖繩県」というのは、一体どういう沖繩県をさしているのか。平和条約の発効のとき以前なのか、あるいは行政分離のときなのか、それ以外のときなのか。この点をひとつ明確にしてもらいたいと思います。
  18. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 昭和二十二年に制定されました地方自治法第五条には、府県の地域従前地域によると、こう規定されておりまして、沖繩県従前の区域にそのまま沖繩県が存在すると、このように認めております。  なお、沖繩につきましては、行政分離の布告あるいは対日平和条約等によりまして行政権がなくなりましたが、潜在的には主権が存在し、沖繩県というものも潜在的には存在しておると、こういうふうに解釈いたしまして、「従前沖繩県」という規定にいたしておるような次第であります。
  19. 占部秀男

    占部秀男君 そうしますと、そのあとの「当然に、地方自治法に定める」という、この地方自治法適用のしかたなんでありますが、いま大臣の言われたようなことでありますと、アメリカ施政権で、及ばなかった、まあいわば一応中断されていた地方自治法適用が復活して、当然そのまま適用になったのだと、こういう解釈でこれはいいわけでありますか。
  20. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) ただいまもお答えしましたとおり、施政権がなくなりました関係行政は行なわれておりませんが、地方公共団体としての沖繩県というものは完全に消滅したものでないという解釈に立っておりますので、いま占部委員御指摘のように御解釈願ってかまわないと存じます。
  21. 占部秀男

    占部秀男君 これは、あとあとこの法律案あるいは関連する法律案審議するときに大事な点になりますので、しつこいようですが、念を入れておきますが、そうしますと、この最後の「存続するものとする。」と、こういう意味合いは、今度のこの沖繩復帰した時点で、地方自治法によって地方公共団体としての法人格を新しく与えられたというのではなくて、もと持っていた法人格が一応施政権で押さえられていたものが、ふたが取れたのでそのまま復活したのだ、こういう意味合いでよろしゅうございますね。
  22. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) そのとおりでございます。
  23. 占部秀男

    占部秀男君 そうしますと、この法律案の中には、沖繩県の問題あるいは市町村の問題では、いま言ったような考え方だと思いますけれども、発足にあたっての経過措置の点は二、三出ておりますが、地方団体が持つ区域あるいは事務事業、あるいは住民、議会、執行機関、財政、一番大事な国と地方団体、いわゆる沖繩県沖繩県下市町村、この関係、これらは、いずれも地方自治法規定がそのまま生きておると、こういうことで、ここには書かれてないんだと、かように解釈していいわけでございますか。
  24. 宮澤弘

    政府委員(宮澤弘君) ただいまの問題でございますが、ただいまの御指摘の規定法人格規定でございます。したがいまして、その沖繩県としての法人格に関する規定をいたしているのでございまして、沖繩県といたしまして、復帰後どういう組織権能のもとにどういう仕事を営むか、これは原則として地方自治法のもとに営むわけでございますけれども、経過的に幾つかの特例措置がきめられておるわけでございます。
  25. 占部秀男

    占部秀男君 私は、経過的な措置はあるということを前提として、一般的な意味で、地方自治法のこうした規定というものは、これは過用されるんだろうと、こういうことを聞いたわけです。
  26. 宮澤弘

    政府委員(宮澤弘君) ただいま申しましたように、三条は法人格に関する規定でございます。したがいまして、沖繩県法律上の地位に関する規定が第三条の規定でございまして、原則として地方自治法規定によって今後組織運営が行なわれる、こういうことでございます。
  27. 占部秀男

    占部秀男君 しつこいようだが、何か同じようなことじゃないかと思うんだけれども、どうも何かこだわっているようだな、私は伏線なんか何も言っているのじゃないですよ。これは大事な問題だから、すんなり言っているのですよ。法人格がそのまま復活すれば、地方自治法上の県あるいは市町村として、地方自治法上に定められた機関であるとか、あるいは住民の権利義務の問題であるとか、国と沖繩県沖繩市町村との間の関係であるとか、そういうものが法の規定のまますんなりと生きるんだろうと——それは経過規定はありますよ。あるけれども、生きるんだろうということを聞いたわけなんだ。ひっかける意味じゃないですからね。
  28. 宮澤弘

    政府委員(宮澤弘君) 私も、すんなりお答えをしたつもりでございますが、御趣旨のとおりだろうと私思います。
  29. 占部秀男

    占部秀男君 沖繩地域適用される国の制度的な問題については、これは一応あとでまたひとつお伺いするとして、そうしますと、沖繩の県あるいは県下の市町村制度というものは、これは一応本土の都道府県、市町村と同じ、総理がよく言われる本土並みになったと、かように考えていいわけでございますな。
  30. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) そのように解していただいてけっこうであろうと思います。ただ、沖繩には、国が行ないます事務と、県が行ないます事務と、琉球政府というもので一本になって行なっております。その国の行なっておりました制度が国のほうへ行きますが、県というものにつきましては、いま地方自治法で言われます県並びに市町村がそのまま行なわれると。なお、市町村は従来の施政権から離れておりましたときも市町村という姿で行ないましたので、法上も規定のし方を少し変えまして、いまの市町村がそのまま地方自治法でも市町村となるのだ、こういうふうに規定いたしておりますので、表現上ちょっと変えておりますのもその意味でございます。
  31. 占部秀男

    占部秀男君 大臣の御答弁のように、琉球政府の持っておる権限が、いわば本土並みでいえば、国の事務事業の問題と本来の地方団体の問題と両方ある。したがって、国のほうの点については分けるけれども、その本来のものは残すんだと、こういう御答弁であったと思うのですが、そうなれば、私の質問はもう要らなくなるのです。そうなってないから、私の質問が必要になってくるわけです。つまり第一のグループのこの二つの法律案では、地方自治制度を形式的には確かに整わせておると私は思いますけれども、実質的には、これは裏口へ回って相当百万県民の自治権というものは侵害をされておる。しかも、その侵害のしかたは、憲法違反の疑いがあるような手段までとっているんじゃないか、かように私は考えておるわけです。  そこで、第二のグループであります沖繩開発の問題についてちょっと伺いたいと思うのでありますが、この法律案の第三条二項によりますと、開発計画は、明四十七年度を初年度として十カ年を目途とすると、こういうことになっておるわけであります。そこで、この十カ年の目途の中で、どのくらいのおよそ規模で、どういうところに重点を置いて開発が行なわれようとしておるか、こうした構想について山中総務長官にお願いいたしたいと思います。
  32. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは法律に書いてあるとおり、十カ年の計画を立てる予定でございますが、しかしながら、この計画の原案作成は、沖繩県知事たるべき新しく選出された地方自治体の長の原案作成権を認めておりますので、われわれとしては、一応十カ年の長期展望に対する一年度ごとの予算を全部積み上げてはおりませんが、しかし、琉球政府の本年度を初年度といたしました振興開発長期計画等も念願に置きながら、そして、われわれは、また沖繩に対して、社会資本の整備なりあるいは教育、会社福祉、こういう非常におくれた面等に重点を置いて、沖繩の特殊事情を踏まえながら、さらに生々発展していく沖繩県の計画の初年度としてたえ得る来年度の予算であり、それがまたその計画の初年度に置きかえられてもだいじょうぶだというものでなければならないという心づもりでやっておりますが、具体的な計画で、来年度はその初年度に当たるということは間違いありませんが、しからば十カ年計画を策定しておるかといえば、それはやはり法律の命じておりますように、沖繩県知事の、正式に選出をされたその知事の原案作成をもとに、実質は本年度を初年度とした計画を策定していくということでございます。
  33. 占部秀男

    占部秀男君 そうしますと、この法によれば、知事が計画を作成するけれども内閣総理大臣が決定をすると、こういうにになっておるわけですが、そうすると、全部の構想、十カ年にわたる。もう大まかでもいいですが、その構想は、結局、琉球政府が例の開発の十カ年計画を出しておりますが、ああいうものを中心にして手直しをしてつくると、こういうふうに、一口に言えば、考えてもいいわけでありますか。その点はいかがですか。
  34. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私は、その作業に当たりました企画局の職員の諸君とも、それを机の上に置きながら、いろいろ議論しました。なかなかまじめに真剣に苦労してつくっております。ただ、私どもは、十年後に——本年度を初年度としておりますから九年後ですけれども沖繩においては基地は全くないものであるというふうな設定のしかた等について、理想はそうあってほしいのですが、はたしてそうなり得るかどうか。まあ思想はわれわれと違うとしても、本土にも基地のある安保条約の中において、われわれの政権がかわれば別でありますが、そういう前提がはたして可能かどうかの問題とか、あるいはまた初年度の時期が一年私どものほうは現実的におくれざるを得ない点、あるいは私どもは過疎の島にしたくないということを一生懸命考えて政策を練っておりますが、はたして琉政の現在考えておる長期計画の人口、今日の施政権の壁がもしとれて出入域というものが完全に本土の県になった場合に、ほかの類似の県の過疎状態等を見ますときに、われわれは過疎地域対策の緊急措置法をつくらなければならないところに追い込まれたということ等を念頭に置きますと、その人口の問題等もやはり問題点の一つであろうかと思いますが、しかし、これは施策をもってわれわれが流出しないような沖繩県づくりに励むこと、まずこれが第一だと思います。そこらの点、基本的に若干検討すべき条項が含まれておりますが、しかし、沖繩の未来を描く設計図としての価値は非常に大きなものを持っておると思いますので、十分念頭に置かしていただきたいと思います。
  35. 占部秀男

    占部秀男君 沖繩県民は、いま大臣が苦労して作業をされておるということを言われてるんですが、私、それもわかると思うんですけれども琉球政府に対しても、十カ年計画がどういう形になっていくだろうか、こういうような点に関連をして、いま十カ年計画の構想をやはりラフな構想でもいいから出してもらいたいが、それが出ない。こういうところで非常にいま不安な感じを持っておるわけです。特に、これは大臣も御存じのように、およそこの地方開発法であるとか、あるいは特別地域開発法であるとか、この開発法にはみんな初年度の——まあ初年度というんじゃなくて、毎年度の実施計画をつくるように法できめておるわけです。ところが、今度のこれは、どういうわけか、その実施計画というものをきめるということがないわけですから、したがって、沖繩の人たちは非常に不安に思っておる。これが実態だと思うんですが、なぜ毎年度の実施計画というものをつくるということをここでうたわなかったかということが一つ、それだけひとつ。
  36. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) この毎年度の事業実施計画というものは、当然振興開発計画の中でつくられていくわけでありますが、しかし、逆に私どもがここで、これは試算でございますがというような形であっても、われわれのほうでつくった案というものをかりに用意いたしますと、じゃ、なぜ法律に新しく選出された沖繩県知事の原案提出権を認め、そうして、これは衆議院審議の過程で修正されたわけでありますが、審議会がそれを最大限に尊重できるように、学識経験者も六名から十一名にふやして、沖繩県の代表と認められるような人たちが少なくとも各省庁の代表である十三名と劣らないようにしろという御要望等に沿わなければならぬのですが、それをつくっておりますと、それみろと、すでに作成権を認めながら政府のほうではつくっておるのではないかというようなこと等もございまして、いまここで、私どもとしては、十カ年計画そのものを——当然その準備は、経企庁においては、新全総の一ブロックに沖繩をどのように位置づけるかの作業も急いでいただいておりますし、また、社会経済発展計画の中に沖繩の持っておる付加価値というものも取り入れた新しい未来図も描かなければならぬと思っておりますから、その作業はしていただいておりますが、いまここで政府側はどう思うかということは、やはりこのような特殊な環境で返ってまいって、しかも、当初は行政主席の形で知事とみなされるわけでありますから、そこらのところは非常にことばづかいと行動を慎重にいたしておるということでございます。
  37. 占部秀男

    占部秀男君 これにあわせて田中大蔵大臣代理にお伺いしたいのですが、いずれにしても四十七年度から初年度に入らなくてはならない。政府はいま予算の組み立て中だと思うんですが、この中で、初年度の沖繩開発計画に伴う大蔵省としての何と申しますか、構想というか、あるいは構想に伴う資金その他の問題であるとか、いろいろな大ワクがほぼできているときじゃないかと思うんですけれども、そういう点はいかがでございますか。
  38. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 沖繩の予算は、現に総理府から要求を受けております。なお、返還後は自治省の予算として当然措置しなければならないわけでございます。しかし、長期的な計画がまだ定まっておりませんので、四十七年度単年度の予算につきましては、予算編成にあたりまして要求庁と十分意思の疎通をはかって、また、現地の四十七年度の希望も十分考えながら、事業執行に遺憾のないような予算を組み立てたい、基本的にそう考えております。
  39. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 午前中の質疑は、この程度にいたします。  午後は一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩      ——————————    午後一時九分開会
  40. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会を再会いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。占部秀男君。
  41. 占部秀男

    占部秀男君 午前中の質問で、沖繩の復興計画の全貌といいますか、ラフな形での全貌、あるいは初年度の内容の、ばく然とした御答弁があったわけですが、それはそのまま沖繩県民としては非常に不安に思っておるところですが、それよりも納得できないのは、今度のこの法律案の六条、七条、八条で、地方団体としていわば公共事業の中心であります道路、河川、港湾、こういった点を国の直轄にできるようにしようと、こういうようなことがうたわれておるわけでありまして、われわれはどうしてもこの点が納得できないんでありますが、私の知るところでは、道路の新設や改築等は道路管理者が当たることになっていると思うんでありますが、建設大臣にお伺いをいたしますが、国道以外の県道あるいは市町村道、この管理者は道路法ではどういう形になっておりますか、お答えを願いたいと思います。
  42. 西村英一

    国務大臣西村英一君) 内地では、県道は知事でございまして、それから市町村道はそれぞれの市町村の長でございます。国道は建設大臣が管理いたしております。
  43. 占部秀男

    占部秀男君 先ほど総理大臣や自治大臣からたびたび言われましたように、沖繩県と県下の市町村制度本土並みになるわけであります。そうなれば、いま建設大臣が言われたように、この復興計画の中でも、県道は沖繩県が実施の主体にならなくちゃならぬ。また、市町村道は市町村が実施の主体にならなくちゃならぬ。ところが、今度のこの法律では、一、二の条件はありますけれども、ともかく建設大臣が、「法十五条及び十六条の規定にかかわらず、建設大臣が行なうことができる。」、かようにうたわれておるわけです。これはもうだれの目で見ても、沖繩県及び沖繩の県下の市町村の自治権を侵害するものであると私は思うんですが、その点はいかがでございますか。
  44. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ただいまこれは道路だけでございませんで、港湾等もございますから、考え方を申し上げますと、この特例を、すなわち十分の十で国が直接行なってもいい場合は、必ず沖繩県知事あるいはまた市町村長それぞれの管理者等が申請をした場合にのみ行なうことができるということでありますから、申請しないものをこちらのほうで、国でやってやるからといって召し上げて、意思を無視してやるものではありません。そのことは法律にも明定いたしてございますので、むしろ補助率は、ほとんど本土では考えられない十分の十負担のものが大部でありますから、それを執行する際に、国のほうでやってくれという要請があったときにはじめて行なうものでありますので、自治権の問題は絶対に侵害はしない配慮をいたしておるつもりでございます。
  45. 占部秀男

    占部秀男君 いまの長官の御答弁は、私に言わせますと、言い方は悪いですけれども、非常に知能犯的な考え方じゃないかと、私は率直に言って思うんです。というのは、確かにこの法律の中には、自治権を侵害してはならない、歯どめをするというような御配慮でしょうが、申請という文字が使ってあります。申請をするためには、その前に話し合いが行なわれると、こういうようなことが段取りとしてあるように思うんですけれども、一体この申請というのは、その内容がどういうものであるかと、こういうことを従来地方団体と国との関係の中で行なわれておるいろいろな事情から考えますと、そうこのままの姿でとるわけにはわれわれはいかないんであります。というのは、この場合、道路の管理者は、県道は沖繩県、それから市町村道は沖繩県下市町村、この沖繩県市町村のこの団体が、政府復帰要綱に対して第二次、第三次の要請を出しておりますが、この要請を見ますと、軍の管理しておる道路は、これはまあ国道にしてもらいたい、同時に、それに関連するむずかしいような道路も、できれば国道にしてもらいたい、こういうことは確かに言っておりますけれども、やはり事務事業というものは大幅に移管をしてもらいたい、そして国の関与はできる限り排除してもらいたい、県の自主的な処理にまかしてもらいたい、こういう要請をしておるわけです。つまり国道に指定されるものはこれは国でやってもらってけっこうですと、しかし、県道なり市道なりに本来指定すべきものは、あくまでも県がやります、市町村がやります、こういう要請をしておるわけであります。総理は、先ほどからも、現地の声は十分にひとつ受け入れてやっていきたい、こういうふうに言われたわけでありますが、現地の該当する県なり市町村なりという地方団体が、そういう形でいわば反対しているものを、一片の法律でもって押し切ってそういうことをするということ自体が、私は地方の声を聞かないやり方ではないか、かように考えるのですが、その点は山中長官はどういうふうにお考えになっておられますか。
  46. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは固苦しい話じゃないんでしてね、要するに、国のほうで別表に補助負担率の何々以内ということが書いてありますが、さらにお手元の政令案要綱によって、おおむねそれぞれの公共事業についての負担率が示されておると思います。これについて、やはり国のほうでやってほしいところがあるという率直な要請があるわけです。典型的なものは水資源開発北部のダム、こういうものは多目的ダム法を適用して国で全部やってください、石川浄水場まで全額導水管もやってください、こういうこと等がありまして、そういう道をあけた。しかしながら、申請によるものとするでありますから、それを裏返せば、いやなものは申請しなければよろしいわけです。その工事が行なわれれば十分の十補助というものは定められてあるとおり国は補助をするわけでありますから、ちっとも自治権の侵害をするものではありませんので、よくこれはソフトに話し合った末きめたものでありますから、公式ではそういう御議論も成り立つかと思いますが、自治権侵害は決してないということは、御安心いただいてけっこうでございます。
  47. 占部秀男

    占部秀男君 ところが安心はできないんです、率直な話が。というのは、昨年だったと思いますが、これは建設省関係から自治省関係かわかりませんが、いま道路の改修その他が非常におくれておる。そこで、やはり本土の中でも道路はいわば国のほうでそれを請負って、そしてやって、また県や市町村に返すと、こういうような形で国の直轄ができるようにしようというような議が相当論議されておるということをわれわれは聞いておるのです。この場合は沖繩の問題だけですけれども、この制度ができ上がりますと、これは本土そのものにも私は将来影響してくるんじゃないか。そのこと自体が地方自治権にとっては、今日の地方自治制度にとっては、根本的な問題になってくるのじゃないか、こういう点をおそれるので、私はまあそういうふうに言っておるわけですが、もう一つは、申請で話し合うといいますけれども、従来の国と地方団体との関係を見てみますと、必ずしもソフトな、フェアな形の申請、話し合いばかりではないわけであります。というのは、大臣も御存じのように、いま地方財政は非常にデッドロックに乗り上げようとしておる。全国的に見て一兆円近いところの落ち込みがあるということは、これは自治大臣も御存じのとおりです。おそらく沖繩も同じように県の財政は豊かではないと思うのでありますが、そこで、沖繩の最近の決算見通しといいますか、あるいは本年度の予算でもけっこうでありますが、立て方は幾らか違うと思いますけれども、この規模と、その中で占める自主財源の額と割合を、ひとつ自治大臣のほうで教えていただきたい。
  48. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ただいまの資料のことでございますので、市町村ごとのやつは、ちょっといま見ればありますが、手元にございませんが、要するに、琉球政府は非常に起債市場等も沖繩においてはないわけですね。したがって、四十六年度予算からやっと本土の県に細々ながら追随するような起債の道もあけたくらいでありますから、それまでの間の財政のやりくりは、ときに財投の金を一般会計から借りたり市中銀行から借りたり、非常に苦しいやりくりをしております。したがって、復帰時点において推測いたします累積赤字は、約六千五百万ドルぐらいに達するだろうという気持ちでおりますが、これについては国のほうで新生沖繩県の財政をきれいさっぱり身軽に出発していただくために、他の復帰後行なわれる財政措置と切り離して、累積赤字の処理という形で国がそれを全部帳消しをして、その返済については、その年度ごとに国の予算で支払っていきたいということで、予算措置も講じておるところでございます。
  49. 占部秀男

    占部秀男君 いまの御答弁でもわかりますように、沖繩県の財政というものは、やはり本土の府県並み、それ以上に困っておる。ここがやはり問題なんです。で、いま山中長官は十分の十以下の金を国が負担して、つまり全額国がある程度は負担してやってやるんだと、こういうふうに言われたんですが、法もそうなっておるわけでありますけれども、そうしますと、金のない県や市町村は、実は腹の中では直轄事業に取られるのはいやだと、こういうふうに考えていても、道路、河川あるいは港湾がそうした形でやってもらえば、これは相当金が浮くわけですよ。いま県民からは、たとえば保育所の問題であるとか、建設事業あるいは老人の医療を無料にしてもらいたいとか、社会保障の問題、そういういろいろの要求がたくさんきておる。そこで、その道路、港湾、河川に回せる使う金をそちらへ回すことができるわけですよ。そこで、沖繩の県や市町村は、反対はしていても、いざこの法律案が通れば、これはもう泣く泣く金のために賛成して申請をするようになってくるんです。それがいままでの国と地方団体との関係の実態であったじゃないですか。もし私はそういうように国がほんとうに県道なりあるいは河川あるいはまた港湾なりのめんどうを見ようというならば、金を出してやったらどうですか。金さえ出せば沖繩県であろうが県下の市町村であろうが、十分に復興計画の一環として政府の意図を実現していく能力はあるんです。そこへ本来はいくのが、総理のいわゆる地元の意向を通し、地方自治権を侵害しないんだというそのおことばにぴったり合うやり方になるんだと私は思うんですけれども、その点はいかがですか。
  50. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは私やはり理論的にはおっしゃるとおりだと思うんですね。しかし、現実には今日の沖繩県となるべき琉球政府並びに市町村というものの現状から見ますと、私どもは、いままでずっと一年半も相談をしておりますから、いろんなやりとりがありますが、そういうことまで全部御披露するわけにもいきませんけれども、また披露しないほうがいいと思いますけれども、先ほど琉球政府復帰対策要綱に対する要望についてもお読み上げになりましたが、やはりそれについても維持管理について可能な限り国が直接これを行なえということを言っておられるわけです。そのさらにもう一つ裏になりますと、やはり技術者がいまのところ自分たちは非常に少ないので、やはり国に頼んでやってもらいたい部分が多いとか、あるいは道路、港湾等の工事のそのための出先機関もぜひ設置してほしいというような、琉政等の要望がありまして、裏で要望をお聞きするための道をあけた。したがってこれを振りかざして召し上げるぞという法律には、どう見たって読めないようになっているはずでありますから、御趣旨は理論的には私も存在し得る御趣旨だと思いますが、この法律のたてまえ上、市町村がいやだと言っているものを国が直轄でやってやろうといって召し上げるというようなことは、万々あり得ない。また、いやだと言ったら、それを取り上げる方法は、この法律のどこを探してもないわけでありますから、定められた補助率をその定められた事業に従って国が交付する義務を負う、そのことにおいて県、市町村行政は阻害されるものではないと考えます。
  51. 占部秀男

    占部秀男君 確かに大臣の言われるように、いやだと言った場合に、それをからめとる指定は一つもない、それはそのとおりであります。しかしそうでない、先ほど言われたような、私が言ったような事実上の問題が必ず起きてくるから私は心配をしている。特にこの問題は沖繩地域だけに適用される特別法でありますけれども、その性格を見ますと、やっておることの性格を見ると、地方自治の根本の問題に触れておるから、私は大臣が幾ら理論的に存在し得るというふうに弁解されましても、この点は納得できないのです。  そこで、建設大臣にお伺いいたしますが、この法に規定しておる道路という字でありますが、これは道路法第二条の道路という字であって、いわゆる橋だとかトンネルだとかあるいはまたいわゆる渡船施設であるとか、あるいは道路の陸橋であるとか、そういうように付設している施設ですね、これはもちろんこのことばの中に入っていると思うのですが、どうですか。
  52. 西村英一

    国務大臣西村英一君) それは道路の途中の橋梁とかその他のトンネルがあれば、トンネルとかいうようなものも入っておる次第です。  なお、ちょっとこの際、大体、いまどちらかというと道路にしても河川にしても、格差が内地とあるから、何とかひとつ早めてやりたいといういわば親心でやって、これを召し上げて自治権を侵そうなんという考えは、私も絶対にないわけです。実はこれは道路法にはありませんが、河川法は北海道の特例をつくっておりまして、河川法の第九十六条で、北海道の区域内の河川については、「この法律規定にかかわらず、河川の管理に要する費用の負担、河川管理者の権限、流水占用料等の帰属その他の事項につき、政令で特別の定めをすることができる。」と申しまして、政令でやはり特別の定めをしておるわけでございまして、北海道の留萌川という川がございます、これは二級河川でございますが、北海道の知事と相談をして、建設大臣が全部やらないで指定区間だけは建設省がやるという例もあるわけでございまして、北海道の特例が河川についてあるわけでして、いま山中長官がるる説明しましたように、早く格差を縮めなさいという親心です、実際は。
  53. 占部秀男

    占部秀男君 どうもしつこいようですが、私は山中長官や建設大臣が親心であると言うそのお気持はわかるのです。わかるけれども、事は親心とか何だとかという問題ではなくて、地方自治の根本の問題ですから、どうしても私はこれはどうも納得がなかなかいかないわけです。そこで、一体この県道なり市町村道なりは、これはもう法できめているように、あるいはまた憲法が例の地方自治の項のところで、この自治の本旨に従って法律で事務事業の内容をきめられると、こういうふうにうたっておるように、これは本来、県や市町村の固有の事務、いわゆる地方公共事務ではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  54. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まさに原則はそのとおりであります。しかし、それでもなお申請があった場合には、国がかわってそれを行なうことができる、こういう気持ちであります。
  55. 占部秀男

    占部秀男君 まさに原則はそれでありますという率直なことばの下に、それでもやるんだという、そういうところが私にはわからないのです。それならば、固有事務というものの性格をよく御勘案をいただいて、固有事務は固有事務としてはっきりさせる、そういう道がほかにもあるわけですから、先ほど私が申しましたように、それだけの国に親心があるならば、金のめんどうを見てやる、人のめんどうを見てやる、それで県や市町村にやらせたってできるのですから、それをなぜやらないんですか。私はその点がどうしても納得できないのです。これはまあいまさら言うまでもないんですが、わが国の法律の中にも地方開発法律は相当あるわけですが、この地方開発法律の中でそんな扱い方をしている法律がありますか。十五か十六法律があると思うのですけれども、いずれも県道なり市町村道なり、あるいは県の固有事務については、それぞれ法に従って、それぞれの県、市町村が行なっていくと、こういう規定に私は全部が全部なっているんじゃないかと思うのですけれども、その点はいかがですか。
  56. 西村英一

    国務大臣西村英一君) いま言いましたように、河川法もそういう北海道については特例がある。道路法にもやはり特例がありまして、特に北海道は北海道長官と相談をして、河川につきますれば二級河川でも建設省でやってくれといえば、新設、修繕、維持ということをやる。道路もそういうふうな特例があるわけでございまして、結局金をやれば済むじゃないかと——まあこれも一つの方法ではあろうとは思いまするが、金ばかりではいかないような工事——やり方とか、あるいは非常に難工事とか、あるいは急がなければならぬとか、いろいろございますので、決して建設大臣がみずからきめるものではございませんから、あくまでも沖繩県知事の申請に基づいて、開発庁長官と相談をしてきめるのですから、自治権を侵すと、こういうことは絶対考えておらない次第でございます。
  57. 占部秀男

    占部秀男君 北海道の場合を建設大臣はいま例にとられたわけですが、おそらくそれは北海道開発庁と、それから現地にある北海道開発局の所管事業の問題であろうと思うのですが、あれは建設大臣も御存じのように、あの法律ができたときには、初めは北海道開発庁だけだったのです。しかも、北海道の開発の計画の調整、作成、そういうようなものを主眼として、実質的な仕事はなかったわけです。翌年の改正で北海道の現地開発局ができた。ところが開発局の所管の事業も、いま沖繩のこの法律できめておるのとは違って、御案内のように、運輸と建設と農林と、これの直轄事業について北海道開発局ができると、こういうような規定にしておいて、それにまあ一部関連のある開発事務ということで、一部の市町村の道路その他については、その点についての関連を持たせてありますけれども、基本的にはそういうことであります。今度のこの法律は、金は全額を出すから、県や市町村が申請してくれば国の直轄でやるんだと、こういうふうに真正面から言っているのであって、これは性格が非常に違うんじゃないかと私は思うんです。そこで、この申請にしても、先ほど私が言いましたように、結局は金の問題にからんで地方団体は自分がやりたいと思ってもやれなくなる。したがって、この法律の上ではそれは出ていませんよ。出てはいないけれども、この法律を施行したならば、必ずそういう問題が沖繩県下に起こるだろうと私は思うのですよ。それだからこそ、この問題をしつこく追及をしているのです。同時に私は、この際政府に、地方団体の固有事務というものは、ある一つの地域だけだというような形をとったとしても、そう簡単に一片の法律でその施行の主体を動かすような、そういう性格のものではないのじゃないかということを、私は特に自治大臣にも、これはもう根本の問題ですから、聞いておきたいと思うのです。
  58. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 地方自治の尊重ということは、これは最も基本的なものでございまして、これを尊重していかなければならぬ、占部委員の仰せのとおりでございます。これは国の事務と地方の事務との事務の配分あるいはそれに基づくところの財源配分ということにも触れてくるのじゃないかと、かように考えます。本来県道、市町村道がそれぞれ県の固有の事務であらねばならぬ、また市町村道が市町村の固有の事務であらねばならぬ、こういう姿でございますが、御承知のとおり、沖繩というところと本土の格差がございます。そのためにできるだけ早く格差を縮めたい。これは財源をもってやればよいじゃないかと、そういう見方もあろうと思いますが、また他面、地方自治の本来の姿というものが損ぜられぬ限りにおきましては、執行面の問題から財政面の問題から、これが国がかわって行ない得るということもまたあり得るのじゃなかろうかと、こういうふうに考えるものでございます。いま総務長官なり建設大臣がお答えになられましたのも、占部委員の仰せのような理論も成り立つかとも思うが決してこの法律の制定そのものが地方自治を侵害するというふうなものでなくして、むしろ本土との格差を一日も早くなくしたいと、そのためには各管理者の申請に基づいてやるのだと、この運営によって地方自治の侵害を来たすものでないという説明もありましたとおりでございまして、いまのような御懸念は十分考慮に入れて運営をしていただきますので、地方自治の侵害はなきものと考え、また現実に即しまして沖繩本土に一日も早く近づけるためには、申請に基づくところの直轄事業としての肩がわりの事業、もっぱら執行面、財政面の理由に基づきます肩がわりというものはあながち地方自治侵害に通ずるものでもないと、かような解釈もできるのじゃなかろうかと、かように考えておるような次第でございます。  なお、先ほど御質問がありまして考えることのできませんでした、沖繩の財政の規模は大体いままでどのようになっておるかという数字でございますが、資料を調べましたので御報告いたしますと、年度が違いますけれども、会計年度が違いますが、一九六九年の決算の額は、琉球政府で四百七十七億、これは円に換算してでございます。七〇年度で五百七十一億、七一年度の決算見込みが六百九十六億となっております。これは琉球政府の額でございまして、このうち県分に相当する額を見積もりますと、大体県分は六九年度で三百三十億、七〇年度で三百七十億、七一年度の決算見込みで四百四十六億になるのではなかろうかと考えております。また、市町村でございますが、沖繩には御承知のとおり教育区がございます。市町村の事務を教育区と市町村とによって分け合っておりますが、その合計額は六九年度分で二百四十二億、七〇年度で二百九十七億、七一年度で、これは見込み額でございますが、三百八十七億、大体その程度でございます。しかし、これは市町村と教育区との間で、これは単純なる合計でございますので、精算、通算いたしましたら、この額は少し減るものであると、かように御理解願いたいと思います。
  59. 占部秀男

    占部秀男君 いま数字を知らしていただいたので、この際、ついでと言っちゃ悪いのですが、市のほうはけっこうですけれども、県の決算及び決算見込み、この中で一般公共事業が占める額と割合がわかっていたら教えていただきたい。
  60. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 県分に相当する決算額で普通建設事業の割合は、六九年度で一七・二%、七〇年度で一八・二%、それから七一年度決算見込み額で二〇・五%、このように推定いたしております。
  61. 占部秀男

    占部秀男君 これはまた、あとで触れますが、いまの数字の中で示されておりますように、七一年度の見込みで二〇・五%という一般公共事業があるわけですが、この、いわゆる給与その他本来払わなければならぬ経費を引いたあとでの公共事業の二〇・五%の持っておるウエートというものは、相当沖繩県の規模の中では重いわけです。しかもその重い中の道路、河川、港湾というものは、おそらくこの二〇・五%の中の六、七割以上を私は占めておるんじゃないかと思うのです。これが県でできなくなるなんということになってくると、沖繩県のいわゆる仕事の空洞化が私は起きてくるんじゃないかと、そういうような心配も一つは率直に言ってありますので、先ほどのようにしつこくやっておるわけですが、そこで私は、どうしても納得できない一つとして、いま山中長官が言われましたように、やはり早く沖繩を復興さしてやりたい、充実さしてやりたい、こういうお気持ちだというならば、前に奄美あるいは小笠原、これはいずれも同じような条件で復帰してきたところですが、ここの扱いとこの沖繩の扱いとが違うんじゃないかということが、どうしても私には納得できないのです。これはまあ外務大臣にお聞きするまでもないんですが、奄美も小笠原も、沖繩と同じように、アメリカ施政権のもとにあって、日米の話し合いで返ってきた。これは全く条件は同じですが、たとえば、奄美における復興特別措置のときには、いま言ったような事業主体の問題は、これはどうなっておりましたか。
  62. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 御承知のように、奄美にしても、小笠原にしても——鹿児島県の大島郡であり、そして小笠原もまた東京都の一部であるということで、その間における県と郡との関係はありますけれども、今回のように県ぐるみ長い長い施政権の中から離れて返ってくる場合においては、これは当然変わった措置を国が直接してあげなければ——県を返してやるというように、もう県そのものが返ってくるわけでありますから、これはやはり違わざるを得ないだろうと思います。
  63. 占部秀男

    占部秀男君 県そのものが返ってくるんだから違わざるを得ないと、こう言われるのですが、奄美の復興のときなんかは、大臣も御存じのように、従来鹿児島県が持っていた仕事は、これは鹿児島県知事にやらした。その上、あの復興特別措置法には、たしかうしろに別表をつけて、国の事業までこれはこまかく、道路、河川、何とか、こうこう、こういう場合は全部鹿児島県知事に法律のいかんにかかわらずやらせるということで、奄美が返ってきたときには、むしろ鹿児島県の仕事というものは、今度の場合とは逆に、国の仕事まで鹿児島県がするようにして、そして奄美の人たちの意見をいれたそういう復興のしかたをしたわけです。今度はこの奄美の場合とはまるっきり違って、それは奄美と沖繩とは違うわけですけれども、違って、逆の立場をとっておる。これが私にはわからないんです。で、私が、先ほど、言われたように金をやればいいじゃないかと簡単に言ったんですが、それは一つの例ですけれども、本来ならば、奄美群島の復興のときに奄美の復興のために国がやったようなああした手厚い形の復興のやり方をなぜしなかったのか。おそらく沖繩百万の県民は、奄美や小笠原の場合はあんなことをやったが——小笠原はほとんど人がいなかったんですからこれはまあ別にしても、沖繩県だけこんな差別待遇をするのはひどいじゃないかということを、これは沖繩の人にとってみれば言うのはあたりまえじゃないかと私は思うのだが、この点は大臣いかがですか。
  64. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 沖繩の人たちもそう言っておられません。ということは、奄美の場合には鹿児島県という自治体が厳然として公益自治体として存在したわけでありますから、その鹿児島県が行なう郡の、郡内の奄美地区に対する手厚い措置というものをとれば、県がそれをやれたわけです。しかし今度は、沖繩県自体がそっくり返ってまいりますから、もちろん県知事、市町村長、本土におけると同様の権限は持っております。しかしながら、その申請というものがあった場合においては、国のほうで、技術的にあるいは事業進捗の度合い等から——今日までも、相当苦労して私予算もとりましても、なかなかそれが消化できないで繰り越して、対大蔵的に頭が痛いんですけれども、そういう現状等もありまして、この道をあけておくというだけであって、このあけたことが同時に、地方が行なう本来の固有の事務権限というものを押えるというものはどこにもありませんので、それは占部委員法律上は見当たらないとおっしゃっているわけです。しかし、執行のときに、そのような、国にやらせろ、やらせなければ予算つけぬぞというような——まあそこまではおっしゃってはおりませんが、そういうことをやるんじゃないかという、それは自治権の侵害だぞとおっしゃるのであるならば、そういうことはあり得ないんでありますから、したがって、私たちとしては、沖繩県のすみやかなる本土並みの社会資本の充実、基盤整備というものに国が全力を傾ける、申請があったならば国のほうが直接やりましょうということを請けておるというふうに、どうでしょうか、すなおに受け取ってもらえないでしょうか。
  65. 占部秀男

    占部秀男君 どう七、山中大臣にすなおに受け取ってくれと言われて実は弱っているんですが、私のあだ名は仏の秀さんというんで非常に仏のような人間なんですが、どうもそれでも、すなおに受け取れない。というのは、なぜ私はすなおに受け取れないかというと、一つは、固有事務に対する政府扱い方が、その地域、特殊な一定の地域にだけ適用させるところの特別の立法だからというような、軽い気持ちで国もやっていいんだというようなことを思われるかもしれぬけれども、これは地方制度の根本的な問題であって、しかも、私が先ほど申しましたように、憲法九十二条の定めに従って自治の本旨というものを法律で実現しているのがいわゆる地方事務の割り方であったわけです。道路法で、国道は国がやれ、県道は県がやれ、市町村道は市町村がやれということは、単に道路法がこれを定めたというだけでなくって、なぜ道路法がそういう定め方をしたかというと、これはもう私が言うまでもなく、憲法規定に従って地方自治の本旨の上からこれをやっておるわけです。そういう重い事務のあり方というものをそのときそのときに便宜的にやられたのではとうてい地方制度としては、たまらない、こういうような考え方が一つあるからですが、もう一つ、私は、これはまあ佐藤総理がいやがるかもしれませんが、あるいは勘ぐると言うかもしれませんけれども、こんなに私が口をすっぱくしてお願いもし、お話もしているのに、法律上はそうだ、理論上はそうだといいながら、沖繩のいまの現状を見てということで、あくまで国の直轄をやらせようと、こういうことには私はもう一つの目的があるんじゃないかと、こういうことを考える。というのは、これは福田外務大臣にお伺いをしたいのでありますが、今度の沖繩返還協定は、前の小笠原の協定あるいは奄美の協定——この協定とは、筋立てていいますと相当同じような条件で似ておるわけですが、二つだけこれはもう違うところがあると思うんです。これは言うまでもなく、前文で日米共同声明を基礎にしてという確認の上に立って今度の返還が行なわれていることと、もう一つは、アメリカの軍事基地の返還に伴うあり方というのですか、ともかく施設、区域のあのところが前の二つとは扱い方がちょっと違うんじゃないか、こういうふうに思うんですが、その点はいかがですか。
  66. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ沖繩は、これは太平洋のかなめ石ともいわれます。これはアメリカの極東における軍事配置、この上からいいますると、きわめて重要な基地になっておる。今度その基地をかかえた沖繩がわが国に施政権が返ってくる。こういうことになりますが、このアメリカの極東の軍事体制というものが返還とともに一挙にこれが解消すると、こういうわけじゃない。そこで、暫定的と申しますか、経過的にいろいろな問題が起こってくる、そういうことがあろうかと思うんです。もとより私どもは基地問題、これが非常に沖繩県民の関心の重大な対象になっておる、これはよく承知しております。それは、やっぱり極東の情勢というものを、緊張を緩和させなければならない。これが一番大きな問題だろうと、こういうふうに思います。そういうことを通じましてその問題にまあ一つ取り組みたいと、こういうふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、軍事上の立場ですね、アメリカの極東における軍事上の立場というものが奄美大島やあるいは小笠原、こういうものと、これはほんとうに違うものである。こういうことははっきり申し上げることができると思います。
  67. 占部秀男

    占部秀男君 いまの御答弁のように、アメリカの軍事上の立場がいわば太平洋のかなめ石という形で奄美や小笠原とは違う。そういうことを確認して、お互いに、何と申しますか、そういうことを誠実に守ろうと——守ろうというか、両方の政府でそれをお互いに確認して政府の行動の中にそれを入れようじゃないか、こういうことであの日米の共同声明ができ上がっていると思うんです。それを基礎にして今度の返還が行なわれたわけですから、したがって、軍事基地の問題、あるいは自衛隊の移駐といいますか、沖繩への移駐の問題これはもう当然でありますが、そのほか日本政府としてでき得るアメリカ軍に対する援助といいますか、協力というのはやはりしなければならぬ、こういう立場に立っておるわけでありましょう。そういうことだと思いますが。
  68. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは協定でも明らかにされておりますように、わが国は米軍に対しましてその必要な施設、区域を提供をする、こういうことになっておるのであります。
  69. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、日本政府の立場としては、軍事基地の問題だけでなく、自衛隊の問題だけじゃなく、やはりできることはしなくちゃならぬ、こういうことになるわけであります。たとえば海・空路あるいは道路、港湾、空港、こういうような交通施設、あるいはまた通信施設、こういうような重要な施設についても協力が必要になってくるんじゃないかと私は思うんです。そのことがやはりいま言った公共事業の扱い方の面にもあらわれてくるんじゃないかと私は思うんです。たとえば、いま道路の話をしておるんですが、道路一つをつくるにしても、これは米軍や自衛隊の機動力に資するようにやはりお互いこうやっていくためには、国の幹線道路だけではどうにもならないんであって、国の幹線道路につながるところの県道、市町村道、こういうところにもやはり関連をした機動力なら機動力に資する、対応したそういうやり方をしていかなければならぬ。そのためには、これは勘ぐるわけじゃないんですが、どうも屋良さんは、革新でそういう場合にやりにくいんじゃないか。今度のこの法律が通ればこれは知事の選挙が御存じのようにあるわけですが、どうも屋良主席は落ちそうもない。そこで、むしろいまのうちに屋良さんを仕事の上から締め出しておいたほうがいいんじゃないかと、そのためにはやはり国が直轄でできるような道を開いておく必要があるんじゃないか、こういうような考え方が私は政府の中にあるんじゃないかと思うんです。特に河川の場合などは、これは河川がどういうふうに使われるか、そのときによって条件は軍事的な目的で違いますけれども沖繩の場合は、御存じのように、一級河川はないわけですね。二級河川です。そうなると、国が手をつけるところのものはないわけですよ。港湾に至っては、これはもう軍事的目的からいえば重要なものである。こういうようなところから、この問題は私は基地を強化するための開発というような一面があるんじゃないか。というのは、御案内のように、いま言ったように道路の問題だけでなく、河川も港湾もと、こういうような形でやられておるその中に、どうもそういうような勘ぐりといいますか、感じがしてならないのであります。そこで、こういう点について総理大臣のはっきりしたひとつ見解を承りたい。もしそういう考え方がないならば、やる方法は幾らでもあるわけですから、ほかの地方開発法の場合、あるいは地域特別開発法の場合と同じようにやってくれるのが、私は政府として沖繩県民に対する親切なやり方ではないか、かように思うんですが、この点総理の御見解を承りたい。
  70. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、まあ仏の秀さんですが、しかし、地方行財政については鬼の秀さんであると私は思っているのですよ、非常に詳しいですから。まあ冗談は別にいたしまして、いまのようなことも、なるほどそういうふうに見られると、見ようもあるもんだなと私は思って、親切のために差し伸ばした手が、それがよこしまなる手であると思われているような気がしてならないわけです。  そこで、典型的なその例を一つあげますと、沖繩の干ばつ……(「北海道のはどうだ」と呼ぶ者あり)北海道のやつと実は違うんです、これは。沖繩において干ばつ、その他はたいへんな問題ですし、日常の生活用水等の問題がございますから、したがって北部の水系の乏しいダムの開発をしなければなりません。いまおっしゃいましたように、一級河川はございませんので、そこで、やはり国のほうでやる場合には県のほうからの話しがなければできないことになるわけですね。ところが、どうしても国のほうで、ダムももちろん、現在の福地ダムの完成、石川までの導水管、あるいはまたその後直ちに着工すべき安波川、普久川等の東部の同じく二級河川にかかる特定多目的ダム群、こういうものを全部国でやってくれという御要望を受けまして、しかしながら、つくりあげたあと沖繩県で維持・管理はしてくださいよと言っているのですけれども、その維持・管理も国でやってくれという要請が、実は率直なところ、あるぐらい、私たちはソフトに話し合っております。そうして、沖繩のためにやはり国の技術をもってして、全額国で、水の確保をしなければならぬだろうというふうなことを考えておりますので、ただいまの、そういう勘ぐりも出るぞとおっしゃると、私たちもいまさらながらそういう見方もあるだろうかというふうに思わせられはいたしますが、全くそういう気持ちはございませんので、そういうつもりで国内法をつくっておりますから、お許しいたきだたいと思います。
  71. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの山中君の考え方で十分占部君も御理解はいただいたと思います。私は静かにやりとりを伺っておりまして、どうも地方自治体と中央と対立させてものを考えていらっしゃるんじゃないだろうか、そこらに問題が一つあるように思います。これは、まあこれからも中央政府の政治が行なわれる、同時に自治体の政治も行なわれる。これが日本の場合におきましては、中央・地方が一体となって初めてりっぱな日本国ができるように私は考えておりますが、もしもこれが対立すると、そういう形であっては真の自治体もなかなかできてこないんじゃないか、かように思います。私は、この点は中央集権を戒められると同時に、地方自治体も中央と一体となるという、そういう考え方でものごとを判断していただくと、そこらの点は解消するんじゃないだろうかと……。  それからもう一つ、外務大臣についてのお尋ね、これはまたたいへん誤解を生む危険なもののようにも考えます。もちろん、私は安全確保ということは、これはもう基本的な問題で、いかなる場合においてもこれは考えなきゃならぬことだと思います。しかし、沖繩の場合におきましては、これは激戦が展開され、さらに軍政、またアメリカの民政、そういう時代を通じまして、この軍というものに対する考え方はたいへんまあ拒否反応とでも申しますか、自衛隊につきましても拒否反応がすでに出ておるようでございますが、そういうような関係のあるところ、そういうところに対して、何だか基地優先、基地第一主義に運営されると、こういうような誤解を受けるようなことがあったら、これはたいへんだと、実はいまのやりとりを聞きながら考えたのであります。私は、そこに矛盾は別にないのだ、これはやはり安全確保は絶対に必要だと、かように思っておりますが、何だか先ほどの質疑応答では、われわれのやっておることが基地優先、こういうような地域優先じゃなきゃならない、かように思うものが逆になっておると、こういうような印象を与えてはたいへんだと思います。その二点だけ、私の所信、これは同時に中央政府考え方でありますから、誤解のないようにお願いしておきます。
  72. 占部秀男

    占部秀男君 総理が私の質問を国と地方と対立さして考えているのじゃないかと、こういうようないまお話があったのですが、そういうような誤解をもし生んだとしたならば、私はそうじゃないと総理に率直に言いたいと思うのです。なぜ私がこうまで言うかというと、実はいま総理は中央集権化を戒めておるのだと言われました。ところがこの法律では、その中央集権化の典型的な一つのスタイルが沖繩開発総合事務局ですか、そういう名前でつくられようとしておるからであります。これはもっとも見方によってはいろいろ見方はあります。ありますけれども、これはわれわれの見方ですから、その点については、あと総理なり山中長官なりから御答弁をいただきたいと思うんですが、私がしつこくいまの事務事業のことを聞いたのも、実はあとにこの事務事業を推進させるための、つまり沖繩開発庁、そしてその出先機関であるところの沖繩総合事務局、こういうような新しい権力を集中した機関ができようとしておるから、なおさら私はこういうことを言うわけであります。  そこで、これは山中大臣にお聞きしたほうがいいと思うのでありますが、今度沖繩でできる沖繩開発庁の出先機関はどうも権力が少し膨大過ぎるんじゃないかという感じがあるわけです。第一に、開発庁設置法ですか、開発庁設置法の八条で地方支分部局として総合事務局を置くというのでありますから、この置かれた沖繩総合事務局は、沖繩県あるいは市町村に対する行政指導もできるし、許認可行政もできるだろうと思うのですが、この点はいかがですか。
  73. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはここにかかっていないわけですけれども、理論としては当然バランスの問題で議論しておかなければならない問題でありますから、確かにそういう見方もあり得ると思いますが、やはり地方支分部局、いわゆるブロック機関の持っている許認可、行政サービス等の機能を現地におろしてあげませんと、いま沖繩では琉球政府という形で、政府の事務等についても、本来の事務を県という自治体の形で行なっているわけですね。そうすると、それがあるときには熊本に、あるときには福岡にというふうに行かないと、許認可事務なり、行政サービス等の面で最終的に処理ができないというようなこと等が非常に心配されるわけであります。したがってその意味において、この出先についてもやはり打ち合わせも十分いたしておりますし、先ほどちょっと述べましたけれども、道路、港湾等については、ぜひ出先の中の機構に入れてほしいというような御要望等も実はあったわけです。またこれはそう議論しなくてもいいことですが、沖繩県の、沖繩の現在の琉球政府の職員を相当、数千名国家公務員に引き取らなければなりません。そのときに、やはりこれは無理からぬことと思いますが、沖繩で世帯を持ち、沖繩に定着しておられる公務員の方々が国家公務員になったからといって、本土に移ってもいいという方はほとんどいらっしゃらない。その点は琉球政府も非常な頭痛の種であります。そこで、この出先の機構には、それらのことも十分に勘案をいたしまして、現地におられて、現在の居住所のままで国家公務員として国の行政事務を引き続き担当していかれる方々がこの事務局の中に入ってこられる、こういうようなことはぜひとも認めてほしいという意見があるわけであります。まあこういうことを考えまして、しかし、出先機関に地方支分ブロック——通常の地方支分部局、通常のブロックの長の権限がおろしました場合に、それが自治権侵害になるというようなことは、これはもう厳にいましめなければならぬと考えております。
  74. 占部秀男

    占部秀男君 あとのことはまだ聞いてないんです。それでいわゆる琉球政府の職員の一部を国家公務員として引き継がなくちゃならぬ。これはもうそのとおりであると思う。ただ、その引き継ぎ方が、こういうような機関をつくって引き継ぐことがいいか悪いか、これは引き継ぎ方とは私は別じゃないかと思うんです。で、この法律によると、その次に九条の一項では、いわゆる中央の沖繩開発計画の作成、あるいは各省間の事務の調整ですか、そういうようないろいろな仕事を受けてやるということになっておるわけです。これは当然もう本来の仕事であると思うんですが、その二項で財務、地方農政、通商産業、海運、港湾建設、陸運、地方建設、さらに公正取引委員会事務局、ここまでこの出先機関を一括して置くようになっておるわけですよ。しかも一括して置いただけではなくて、この総合事務局のキャップといいますか、どういう形になるかわかりませんが、キャップはこれらの各省の出先機関の、いわば責任者を兼ねるようになるわけでしょう。そうなるとですよ、この事務局というものは、これはもう開発の事務事業はもちろんですけれども、各省が持っておる一般行政の事務までこれは担当すると、こういうことになるわけです。しかもこの法律では道路、河川、港湾、空港その他の建設事業もこれはまあ一応は国の直轄事業の問題でしょうが、実施できるようになっておる。その中へ、今度は、私が先ほど申しました県、市町村の固有事務の建設事業も組み込まれるようになっておる。これはもう非常に膨大な、まあ総理は中央集権化は厳にいましめると言われましたけれども、いましめるどころじゃない。これはもう非常に膨大な、一カ所にといいますか、集中した機関です。一体こんな権力を集中した出先機関というのは前例としてあるんですか、ないんですか。その点をお聞きしたいんです。
  75. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) もちろん前例はございませんが、しかしながらこれらの、それぞれ第九条第二項の各号に掲げてありますもの、これは分解しますと、単独では通常の支分部局の地位を持つには、その事業量なり、該当範囲なりが単独で存在し得ない機関というものがここにまとめてあるわけであります。したがって、単独で存在し得る機関というものは、別に第十一管区海上保安本部とか、あるいはまた行政監察事務所その他がございます。これはまた単独で、これに海上保安庁などというものは管区本部をつくってもいい広大な水域、海域を持っておるわけでありますから、これは当然のことでありますが、そうでないもの、これはここに一括してありますけれども、さらに、そのそれぞれの各省庁の長がその所管事項については指揮をするということになっておりますから、便宜上その事務局の長たる者が責任者でありますけれども、その指揮はそれぞれ道路なり、あるいはまた港湾なり、陸運なりというものの所管庁の本庁の長の指揮を受けるということでありますので、若干ややこしい形にはなりますが、そういう意味の出先の権限によって恣意に各省庁の権限を一方的に行使することはできないようにしてございます。
  76. 占部秀男

    占部秀男君 一方的にできないようにしてあるといいますけれども、この総合事務局が持っておる背景というものは、普通の出先機関の背景と違った背景を持っておるんじゃないか、そのことが総合事務局というものの権力を非常に強いものにするんじゃないかという感じを持つのです。というのは、この沖繩開発庁の設置法案によりますと、これはもう長官も御存じのように、開発庁は開発計画の作成や事業の推進をするだけでなくて、開発関係の各省の予算を一括計上することができるわけです。しかもその取った予算は各省に配分することができるわけです。この予算の一括計上と配分という過程の中で、開発庁の力というものは、これはもう長官御存じのように、非常に強いものになっている。その強いものを背景として、現地沖繩では開発行政のほかに、各省の一般行政を、いわば現地として、責任者として担当するものができてくる、こういうことになるわけでしょう。そういうような力を持ったものが沖繩県に対して、あるいは市町村に対してどういう形になるかということは、これはもう私が言うまでもないところなんです。先ほど長官の言われた申請、話し合い、この意味はわかるんですが、こういう大きな力を持って話し合いなり何なりがなされた場合に、金のない地方団体がどんなに弱いかということは、これは私が言うまでもなく、いままでの例でわかるわけじゃありませんか。私は、いま沖繩のほうの人たちは、これはもう政府沖繩代官所ができるんだというようなことを言っている人があるんです。案外、世の中のたとえ話なんというものには真理をうがった一面があるような気がしてならないんですが、そういうような意味で、どうしてこんな膨大な機関を持つ必要があるのか。沖繩琉球政府が出しておる建議書では、一口にいえば各省の出発機関は普通の都道府県と同じように置いてもらいたい、しかし、こういうような集中した形は、これはごめんこうむりたい、こういう建議書の中の意見が出ておるわけですが、これも一つには、やはり自分たちの自治行政というものは相当圧迫されてくる、場合によっては空洞化する心配もあるところからこういう建議が出ておると思いますけれども、これに対して中山大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  77. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 建議書の出るに至ったいきさつその他を私は解明いたしたくありません。しかしながら、私どもが一次、二次、三次の対策要綱を定めまする際においては、十分に意見を詰めてございます。また、出先機関のあり方等についても、たとえば財務局もばらばらにしろといっても、沖繩に単独の、たとえば一番近いところは熊本財務局になると思いますが、そこまで行かなければ片づかない問題を沖繩で片づけさせるには、これはあまりにも小さい規模の役所にその権限を付与することはなかなかむずかしい面もあります。これはほかのものも全部同じような理由であります。そこでまとめてやりますが、予算も公共事業中心に一括計上はいたしますけれども、それはそのままそっくり各省庁に移しかえるわけでありますから、開発庁が恣意に組むのでなくて、各省庁の見積りは開発庁と相談の上要求して、そして予算の形では一括しますが、それは各省庁にそのまま移りますので、それの執行等、それを指揮する権限というものは各省庁の長が持つ。ただし、その出先にはどうしてもブロック機関の長としての権限を与えとおかないと、現地限りの処理が不可能なものが多いだろうという意味で、これ全く良心的にサービス行政という意味現地にそういう機構を置こうとしておるわけでございます。
  78. 占部秀男

    占部秀男君 長官の御答弁としてはそうなくてはならぬと思うんですが、どうもわれわれにはそういう点が、ひねくれていると言われればそれまでですけれども、すなおに考えられない。そこで、なぜこんな大きな出先機関を持たなきゃならぬかというねらいの問題ですが、確かに熊本まで行かなければ、あるいはどこまで行かなければなんという不便も出てくるでありましょうし、地方で持つ場合の規模的な困難性もある程度あると思いますが、しかし、だからといってこんな権力を集中した、しかも実施機能を持ったところの機関を沖繩につくるということだけで、あの軍事基地の島といわれる沖繩県民はいろいろな形で、やはり勘ぐるのは当然ではないかと思います。先ほど、私は県や市町村の固有事務をつかむ、国が直轄してやろうという中には、いわゆる軍事目的に協力をするという一面があるのじゃないかということを言っておこられたわけでありますけれども、やはりこういう膨大な機関をつくるということの中にはそうした一面があるのじゃないかということを勘ぐらざるを得ない。御存じのように、沖繩開発というものは基地問題を抜かしては語れないわけであります。そうした開発計画の中に防衛施設の整備の拡充の問題や、基地を維持するためのいろいろな問題、そういう問題がだんだんとからまってきます。からまってくるときに、やはり国が一元的にそうした事業を握っておる、強大な機関を置いてそうした事業を握っておる、しかも力で県や市町村を押せる、こういうかまえをつくることが、やはり政府のほうとしては、私は大事になってくる。それで、こういうふうな膨大な前例のない機関をつくるんじゃないかというふうに、私どもは率直にいま考えておるわけですけれども、この点について、まあ総理がもしそうでなければそうでないように、私どもが安心できるようなひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  79. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、まさに米民政府がなくなった、そしたら一夜明けたら日本政府が君臨していたと、そういうことに絶対にこれはしちゃならぬわけですね。そういうことをしたら私たちは沖繩に償いどころか罪を重ねることになります。そういう意図も毛頭ありませんし、これはやはり建議書のたてまえといろいろの問題とは、これはまた私も答弁はいたしませんが、そういうことの、私も建議書の趣旨は十分にくみ取って、いまのような御懸念のないように、そしてまた沖繩県の自治について、何らどこでも本来本土の府県、市町村長ならば持っているべき権限を押えている、制限している、取り上げているという点はないということで御理解を賜われば幸いと思います。
  80. 占部秀男

    占部秀男君 山中大臣と私は本来は相性がいいと思ったんですが、どうもきょうの議論はかみ合わないのです。そこで、いま御理解を願いたいと言われるのですが、どうも願えない、御理解をいたしかねる問題があるんです。というのは、いま機関の問題を言ったんですが、今度は開発計画の内容の問題についてどうも理解ができない。というのは、この振興開発特別措置法の第三条には、振興開発計画の内容ということで十三項目にわたる、この対象をここに掲げておるわけです。この中で私は沖繩開発に、先ほども申しましたように、一番大事な点が抜けているんじゃないか。つまり、軍事基地を撤去したあと地をどういうふうに利用するのか、こういう点がこの事項の中には入っていないんであります。だから、私はどうも軍事基地の問題にはさわらないようにしているのじゃないかという考え方から、いままでのような議論が出てきたわけですが、なぜこれを取り上げなかったのか。こういう点をひとつお伺いをしたいと思います。
  81. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 軍事基地の、安保条約に基づき提供する施設・区域、これについては、外交当局の折衝に当たったところでありますが、衆議院等における整理縮小の決議もございましたし、総理も整備縮小の方向に向かなければ、沖繩のいわゆる平和で豊かという意味の、両方ともをやはり阻害する要因であるということをおっしゃっております。したがって、私どももそのつもりで進めますけれども、ここで計画をつくります具体的な事柄の中で衆議院においてさらに都市計画なんかのことについて一項入りましたから、これはさらに、そういうことも、たとえば那覇市の都市計画ではどこが障害になるかというと牧港地区にきまっているのですから、当然そういうことを受けて修正がされたわけでありますから、その趣旨はよくわかっております。しかし、計画を立てます場合に、琉球政府のほうから最近私も、どこそこの軍事基地はこういうグリーン地帯にするのだ、あるいは住宅地帯にするのだ、都市公園にするのだ、いろんな琉球政府の計画もいただきまして、いま興味深く参考資料として拝見いたしておりますが、こういうことはやはり積極的に取り組んで進めていくべき事柄であると私は思います。しかし、ここで計画の中で提供されておる基地を、それを開発計画の中でどう取り込んでいくんだということを計画で示せということになりますと、きわめて未知数なもの、それを既知数であるかのごとく計画を立てることがきわめて困難である、姿勢としてはおっしゃることのとおりに進まなければなりませんが、計画を定める柱には無理ではなかろうかというつもりでやったわけでございます。
  82. 占部秀男

    占部秀男君 いまの長官の御答弁関係法令改廃の法案の提案の説明の中に、やはりこの米軍の軍隊の縮小、基地の撤去、こういう問題がちょっと出ていたように思うのですが、したがって、未知の問題であるからここに書かなかった。こういうお話ですが、そうなれば基本的な考え方としては、この基地のあと地利用の問題を問題にのせずには、やはり沖繩開発というものはほんとうにでき上がらないのだ、こういう根本的な考え方は変わりはない、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  83. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは開発を担当し、設計する者としては画竜点睛ではなくて、竜の頭を欠くという感じすらいたします。しかし、沖繩のそれは悲しい現実であります。そしてそれとまた、ある程度いれなければ、沖繩を七二年に復帰させるということについてのアメリカ側の同意が得られないという外交折衝の側面もあったことは確実でありますので、私自身としてはこれを竜の頭をかき入れて、さらにまた将来は点睛をなすべき、沖繩のかつての平和な島であって、そして実際に経済をかつて想像もできなかった豊かにするための努力ということは、ことばの上では簡単でありますが、容易ならざる大事業であるという性根を据えた覚悟を定めている次第でございます。
  84. 占部秀男

    占部秀男君 いまの山中長官の御答弁で、これ以上この問題を追及しようとは思わないのですが、御案内のように、アメリカ上院の軍事委員会で、これは新聞の報道ですから、これはうそだといわれればそれまでなんですが、沖繩返還協定の聴聞会のときにウエストモーランド陸軍参謀総長は、沖繩の基地を無期限に将来とも保持する考えであると、こういう証言をしたというのですが、これはもちろん私も沖繩へ行ったときに、現地の人たちからいろいろと聞かれたのですけれども、そういうような事実があって、沖繩の基地はこれはもう半永久的に撤去されないんじゃないか。そこで、今度のこの開発の法案には、その対象としてあと地利用の問題が書かれてないんじゃないか、こういうような誤解といえば誤解かもしれませんが、この話が、これは相当県民の間では伝わっておるわけであります。これは決して政治をとる者としては無視できない事実であると私は思うのです。これは与党野党の問題じゃないんですから、これはそういうような意味合いから言って、私はこれはもう沖繩復帰した後の、たとえば実施計画、あるいはいろいろな何かもう少し計画を具体化するようなときに、やはりいま琉球政府が掲げているように、山中長官も言われましたように、市街地では何とかかんとかというようなこまかい点がここに出ておりますが、こういうような点をもっと明確にして、沖繩県民のそうした疑惑にこたえるような道を開く必要があるんじゃないか。かように私は思うのですが、この点はいかがでございますか。
  85. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) この分野は、私だけの答弁でできる分野から少しはずれている点もございます。しかしながら、自治の点からいえば、かつてある高等弁務官は、沖繩の自治は神話だといって、主席公選論等に対して暴言をはいた弁務官もかつては存在した。そのときにはそういうことを平然と言ってのける要素もあったと思うのです。しかし、やはりこれは私の分野と言えませんので、極東情勢、国際情勢その他の変化に従い、また私の見るところアメリカの財政事情その他から見て、アメリカが海外におけるドルの経済的な使用、あるいは節約、予算費の制約等から、逐次そういう面はあらわれつつありますから、したがって、われわれとしては、それによって転業を余儀なくする人、廃業する人、あるいは不幸にして失職する人、そういう人等については、振興開発法なり、金融公庫法なり、特別措置法なりというもので、いろいろと考えております。しかし、基地そのものを私が永久的にこれは残るだろうというような観測等については、私の立場を越える判断の問題でございますので、総理もしくは外務大臣からの御答弁にゆだねたいと思います。
  86. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) アメリカ上院のウェストモーランド大将の証言の話がありましたが、確かに証言をしておるのです。しかし、沖繩の基地は、これは日本語に訳すとなかなかむずかしいのですが、インデフィニットリィに保有することになろう、こういうふうに言っているのです。長くなるか短くなるか、期限をここで言えないという、こういう意味かと思います。それはそれといたしまして、私もこの沖繩における基地の密度、これにつきましては重大な関心を持っておるのです。これに対する沖繩県民の感触、よく承知しておるつもりです。また、これが沖繩開発許画を進めていく上に非常に障害になる、これもよく承知しておるつもりです。しかし、返還協定でとにかくA表に属するものは、これはアメリカの軍に提供する、こういう約束をしたわけです。しかしながら、それにいたしましても、返還後における基地の密度というものを考えますときに、沖繩本島の密度、特にその中央部、ここに人口が密集しております。これが非常に高い、私はこれに特に関心を示しているわけです。それから、もう一つは米軍の機能、米軍の軍事的機能をこえるような施設の提供、そういうものがありやしないかというものにつきましても関心を示しております。また、いわゆるレクリエーションというか慰安施設といいますか、そういうようなもの、これにつきまして米軍がもっと考慮してくれる余地がないか、これにも関心を示しておるわけなんです。でありまするから、返還協定はこれでとにかく約束したんだから、実行しなければならぬと思っておりますが、その返還協定の実現後におきましても、それらの点を踏んまえまして、もういまから話し合いをしておるわけです。しかし、長期的に展望しますときには、いま山中総務長官も触れましたが、二つ問題がある。  一つは極東の緊張緩和ということであります。わが国の外交の方針として、これは世界じゅうの緊張の緩和でありまするが、特にわが国を取り巻くところのアジアの緊張の緩和、これには最大の努力をしていきたい、こういうふうに思っておるわけです。その状況、これが緩和の方向が定着した、こういうことになりますると、沖繩米軍の軍事的価値評価、そういうものが非常に変わってくる、これは決定的な影響を持つであろう。  また、もう一つは、いまニクソン・ドクトリンというものがいわれておりますが、あの背景は何といってもアメリカの財政事情です。この財政事情というものが、どういう変化を示していきますか、またその財政事情適用が、各個の政策面における適用というものがどういうふうになってくるか、これも沖繩の基地の状態に影響してくるであろう。しかし、これはまだいまお話がありましたように、未必の問題でありますので、それをまだ年次的計画にいたしますとか、あるいは具体的な返還の取りきめをするとか、そういうような状態までまだとても進み得る状態じゃない。そこで開発計画、そういうものにおきましては、それらを前提となし得ないという事情があることを特にひとつ御了解願いたい、かように存じます。
  87. 占部秀男

    占部秀男君 私は、いままでのこれらの問題について、最後の御質問をしたいんですが、いま外務大臣からのお話山中長官からのお話、これは政府のやっておる仕事の中の過程の姿としてわからないわけじゃないんですが、先ほど申しましたように、現地の人たちは固有事務はとられる、さらに大きな中央機関の出先が出る、さらに計画の中には軍事基地のあと地の利用の問題が出ていない。こういうところでやはり軍事基地がこれは半永久化するんじゃないかという心配と不安を持っておって、それが今度の国内法の一つの不満になっておるように私は思うんです。  そこで、これは総理にお伺いをしたいんですが、今度の開発法を時限立法にする何か考え方はございませんか。よく地方開発法には、十年なら十年という時限立法にしているのがあったと思うんですが、そうすると、一つにはいま言った永久に基地化をされるんじゃないかという不安に対して、ある程度こたえるような部面も出てくると同時に、先ほど申しましたように県市町村の固有事務を国の直轄にできるという道を開いたことは、何といっても地方自治制度の足元をこわしたような形で、いわば二つの地方制度ができかかっているような感じを持つわけです。したがって、これが時限立法になれば、ある程度十年間なら十年間というふうにきまれば、これはまたこれでそのときの特別の措置として考えられる問題も出てくる。ところがそれがないと、これは永久にある地域における固有の事務は中央へとられるんじゃないか、こういうようなことになってくるんで、これは非常に政府として大事な問題だと思うんですが、これはまあここではすぐにきめられないと思うんですけれども、いずれにしても見解をお願いしたい。
  88. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 沖繩振興開発特別措置法案のほうは、附則の第三条、「この法律は、昭和五十七年三月三十一日限り、その効力を失う。」と、こういうことにして、一応年次計画としては十年ということになっておりますが、この十年はいま問題にしておられないんだろうと思うんですね。これは、できれば沖繩が完全に体力を回復して本土以上になっても、もう少しめんどう見ようやということに将来議論が出るだろうと思っている十年間なんです。そこでこの開発庁のほうのことだと思うんですけれども、これは時限という話も一応してみたんですが、やはり十カ年計画遂行はどうしてもやっぱり責任ある沖繩側から見ると、文句をつける相手が各省全部分散していますと、これはなかなか文句つけにくいですから、文句つける相手はどこだという相手もやっぱりなくちゃいかぬ。その意味で、まあ一応最低十年はこの開発のための計画等を遂行するために必要である。しかし、これを永久的なものと考えるか、これは沖繩県の自治が行財政、税制ともに充実をして、そして離れていても過疎県にもならず、あるいはもう貧乏県でもないという時代がきて、一人歩きが技術的にもできるようになる、能力的にも十分である、こういうときに必要かどうかは私もやはり議論しなければならない問題が残っておると思いますから、さしあたりはその程度の感触ということで申し上げておきたいと思うんです。
  89. 占部秀男

    占部秀男君 私は、次に公用地の暫定使用法律案について——あとで同僚の松井委員から、この問題を中心的に質疑をするようになると思いまするので、大ワク的な点だけ二、三お伺いをしたいと思います。その前に、私は総理に一言お伺いをしたいんですが、一昨日でしたか、本会議で共産党の渡辺議員だと思いましたが、この問題についての代表質問をいたしました。これは憲法十四条に規定しておる法のもとに国民は平等であるという、そのことに違反しているんじゃないかと、こういうような質問内容であったと思うんであります。これに対して総理は、「この法案は、沖繩地域における土地等に関する権利について特別の制約を行なおうとするものでありますが、人種、信条、性別、社会的身分または門地により差別扱いをしようとするものではなく、憲法違反の御批判は当たらないと思います。」と、かように答弁をされておるわけです。これは、ぼくはあのときの総理のことばの言い回しの問題ですから、そう悪意があって言ったわけではないと思うんですけれども、何か総理の言われたこのことばを見ますと、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、」と、差別をしてないんだから、あなたの言ったことは当たらないというふうに、憲法十四条の解釈を、ぼくには——狭く、この列挙してある文句を限定的に答弁をされたように思えるんですが、私は、これはいわば例示的に列挙したんであって、もしこれが限定的なものだということになると、これはもう相当あとあと問題になる点が出てくるんじゃないかと思うんです。決してこれは、総理に取り消してくれとかなんとか公式的に、ぼくは変なかみしも着て言いませんが、これははっきりしておかないとたいへんなことになりますから、その点について総理見解を承っておきたい。
  90. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、憲法十四条に違反してはいない、かように答えるつもりで答えたものでございますが、なお、法制局長官から補足説明をいたします。
  91. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 補足的に申し上げさしていただきます。  総理が本会議でおっしゃいましたのは、この十四条の規定は全くそのとおりに「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、」云々「差別されない。」と、こう書いてありますので、そこの字句を述べられたことは間違いないと思います。しかし、おっしゃいますように、はたしてこれが差別の事由として尽きているのかどうか、この点については確かに法文はそのとおりに申し上げたことは間違いがないとして、理論的にはいろいろ議論があるようでございます。しかし、いずれにいたしましても、国民個人の人間的条件に根ざす事由によりということであることは間違いない。だから、ときどき問題になりますのは、実際問題としては例の多選禁止の問題だとか、ああいうような、やっぱりその人の選挙とか、あるいは年齢——定年制とか、そういう人間のやはり年齢とか、そういうものに着目したものであることは間違いない。憲法には、しかも限定的にともかくもそう規定してありますが、法律論として、なおいろいろな議論がないかといえば、いま言ったような国民の個人的条件と、いずれにしてもそれに尽きるものであって、それいう点からいっても、この法案がそういう見地からする制約ではないということだけは間違いない。総理が言われたことは法文のとおりにおっしゃったことで、これがまた間違いだとは言えないと私も思っております。補足的に申し上げれば、いま申し上げたとおりであります。
  92. 占部秀男

    占部秀男君 この問題についての本質的な問題じゃないんですから、私もあんまり言いたくはないんですが、総理の言ったことにも間違いはないと、これはぼくは決して総理を間違えだと責めて、何かあやまらせようとかなんとかいう、そういうことじゃなくて、間違いないと……、と言って、あれは例示的な列挙をしたようなものだという学説もあるんだと、こういうところを、ちょっと、どっちがどっちなんだかわからなくなるんで、やはり政府のほうの解釈としては、今後ああした問題は限定的な形で狭く解釈するのではなくて、やはり例示的な形でより広く解釈してやることが憲法の本旨に合致するんじゃないかと私は思うんですが、その点だけひとつ高辻さん。
  93. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 仰せのとおりに、私ども立法にあたっては、解釈にあたりましても、やっぱり憲法の趣旨というものはできるだけこれをやはり狭くないようにいま持っていこうという態度は変わりはございません。たとえば三十一条という規定が、よくこの手続面の規定として問題になりますが、あれも条文としては刑事手続に関してあるようなふうに見える規定でありますが、行政手続にもそれが適用があるかどうかとかいうようなことについては、やはりその法意は尊重していこうとか、そういうことがございますが、どうも一生懸命弁護するわけではございませんけれども、法文の上にはさっき申し上げたとおりでありますので、それをお使いになったということでございます。しかし、御趣旨は、そういうふうな態度で臨むということは仰せのとおりであります。
  94. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、土地の、公用地の問題に移りますが、琉球政府のこの建議書の中には、この問題は非常に強く、こういうやり方をとってもらいたくないということで建議が行なわれておるんでありますが、おそらく、それは琉球における該当された地主の方々、それを取り巻く県民の方々の相当な問題になっているからであると私は思うわけです。これはもう防衛庁長官もこれはお読みになったと思うのですが、この土地の今度の暫定使用法、これはもう公有地の強制収用ということであって、「沖繩だけに本土と異る特別立法をして、県民の意志に反して五ケ年という長期にわたる土地の収用を強行する姿勢は、県民にとっては酷な措置であります。」——「酷な措置であります。再考を促すものであります。」と。これはもう向こうの沖繩——琉球政府としてはおそらく血を吐くような思いでこの建議書を私は書いたのじゃないかと、かように思うわけなんです。  そこで、暫定使用でなくて強制使用だと、こういうふうに言われるほど県民が問題にしておるこんな評判の悪い法律をなぜつくらなければならなかったのか。こういう点を、ひとつ、ざっくばらんに御説明をいただきたいと思います。
  95. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御指摘の点は、私どももいろいろ検討をいたしたわけでありまするが、これは、アメリカから施政権がある日日本に移ると、その間に空白を置くことができないわけであります。で、でき得べくんば、こういう法律を御審議をお願いいたしておりまするが、運用面においては、私どもは地主と個々に契約を結んでいくことを中心に考えております。  ところが、御承知のとおり、この地主は三万数千という非常な多数に及びまするので、持ち主の不明のものも中にはありましょう。あるいは持ち主が海外移住をしてしまったというような土地も当然これは考えられるわけであります。その他、どうしても話し合いがつかないというようなことになりましたのでは、一日も空白を置くことができませんし、いまお願いしておりまする目的等の特殊性から申しまして、遅滞なく取りきめをしなければならぬということで、まあこの法律を例外として制定しようというものであります。  したがいまして、冒頭申し上げたように、運用面でこれはよくよくひとつ、できるだけ懇切に、丁寧に、話し合いのつくものは極力話し合いをつける、こういう形でやってまいりたい、まあこんなふうに考えております。
  96. 占部秀男

    占部秀男君 空白を置くことができない。そこで、運用面で、まあやむを得ずというか、こういう形をとってきたのだと、そういうふうに言われてしまうと、もう、率直に言えば、ことばもなかなかないわけですが、しかし、それで済むのかという考え方が一方では出てくるわけです。今度の返還協定によりますと、これは外務大臣にお伺いをしたいのですが、米軍沖繩における基地を置ける法的な根拠というものは、平和条約三条から安保条約の六条にいわば移ったのではないかと、こういうふうに私は考えるんですが、その点はいかがでございますか。
  97. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そのとおりでございます。
  98. 占部秀男

    占部秀男君 とすれば、防衛庁長官、当然、安保による地位協定に伴って、米軍の土地使用に関する特別措置法があるわけです。で、これが適用になれば、それこそ、沖繩は、基地の問題にしても本土並みということにこれはなるんだろうと思うんですが、これでやってできないんですか、その点はいかがですか。
  99. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 御承知のとおり、国内の場合は、土地の持ち主が非常に多く、不明であるとか、どうも所在がわからないとか、そういうことはないわけでありまするが、先ほど御答弁しましたように、やはりそういう不明者、海外移住者、こういったことが予想されるものでございますから、やはりこれは特別立法をしなければならぬと考え至ったわけでございます。
  100. 占部秀男

    占部秀男君 時間の制約がありますから、私は、この問題も聞きたいことは二、三ありますが、これ以上深くは進みませんが、いずれにしても、同じ安保条約六条による基地を提供をしながら、沖繩県民は、本土の人たちとは——特に県民の中の地主の人たちがそうですが、差別的な扱いを受ける。これは何といっても、私は、この政府のやり方が間違いじゃないか。同じ法のもとにおいて平等であると、きのうは共産党の渡辺委員が言ったわけでありますけれども、あの点がやはりひっかかってくるのじゃないか。私は、こういうやり方をするのは憲法十四条の違反じゃないかと、どうしても考えざるを得ないんです。その点について、高辻さんでけっこうですから、ひとつ、わかりやすく説明をしてもらいたい。
  101. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 先ほどの防衛庁長官の御答弁をちょっと補足させていただきますが、講和発効のときにおきましては、御承知のとおりに、特別措置法というものがございましたが、その際にも、やはり地主との間に協議がととわないという場合に備えまして、附則二項におきまして、暫定使用期間を設けたわけでございます。そこで、ただいまの御質問の趣旨は、当時の講和発効のときには、暫定使用期間が六カ月でございました。今度は五年ということで、非常に長いじゃないか、そこに沖繩を特別扱いするじゃないかと、こういう御疑問かと思いますけれども、当時は、アメリカの統治下といいますか、にございましたけれども施政権はわが国にありましたし、国と地主との間には、その前からずうっと契約を行なっていたわけでございます。それで、講和発効のときに、さらに契約等を引き継ぐということで、まあ関係権利者、土地の所有者なり関係人というものは十分把握されておりました。それから、比較的地主の数も少なかった。今回の場合には、アメリカ施政権下にございますし、また、地主の数が三倍くらい、三万数千名ということでもございますので、その間、権利者との間に、復帰までの間に完全に合意に達するという保証がなかなか得られない。そこで、これは復帰後におきまして、われわれとしては、引き続き地主の方々との交渉に臨むわけでございますけれども、何ぶんにも地主の方が非常に多いということで、その間には相当なやはり長期間を要するであろう、中には、すでに当時の戦禍にまみれたということもございましょう、海外移住者の方もございますし、土地の所有者の住所不明ということもございまして、そういう方々をさがし出して契約をするということには、やはり相当な長期間を要する。さらに、地主の方々との契約交渉によりまして、どうしても応じてもらえないというふうな場合におきましては、先ほど御指摘のように、本来の手続である特別措置法というものを適用いたさなければなりませんが、これの手続が、やはり準備から始めまして、収用委員会の裁決まで持っていきますまでには相当な期間がかかるというようなことで、いろいろそういうことを総合勘案いたしまして、五年間のという期間を設定をいたしたわけでございます。現実には、政令でさらに土地の種類等に応じまして、これを短期間に短縮をするという余地も残されておるわけでございますので、そういういろんな総合的な事情を勘案いたしましての期間の設定でございますので、当時の六カ月というものが必ずしも私は基準にならない、かように考えておるわけでございます。
  102. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 御質疑にもございましたし、答弁の中にもございましたが、地位協定に伴う土地等の使用等に関する特別措置法でやればいいじゃないかということについては、これは実は確かにこれで手続が済めばよろしいんでございますが、ともかくも、施政権の返還前でございますので、この法律による手続を進めることが実は不能なわけで、したがって、この特別措置法にありました、その附則にございましたが、それまでに使っていたもので継続使用をしなければならぬものは、そういう手続によらずして一時的に使用できる、ちょうどそれに相当するのが今回の法律案であるわけであります。  そこで、また十四条との関係が気になるような旨のお話がございまして、これは、その法律要件に、法律の定めている要件に該当するものは確かに権利の制約がございますし、該当しないものは制約がないという意味では確かに区別があるわけでございますが、それは、先ほど申し上げましたような個人の尊厳ということに立脚しての人間の差別、それが十四条なもんでございますから、そういう十四条との関係におけるこの憲法上の問題としてどうかと言われれば、これは、先ほどお答えしましたとおりに、憲法十四条が対象としている問題ではあるまいということを先ほども申し上げましたが、やはりそのことで御理解を願うようにいたすほかはないと存じます。
  103. 占部秀男

    占部秀男君 せっかくの御答弁ですが、どうも納得できない。しかし、これは、先ほども申しましたように、あとで松井委員のほうから相当深くこれを突っ込む予定ですから、私は一応この問題はこれで切り上げておきたいと思うんです。  最後に、一つだけ聞いておきたいことは、いま施設局長さんですか、の説明の中で、地主との話し合いが非常ににむずかしい、こういうようなことを言われましたが、ぼくは、今度の沖繩の返還で、そういうように地主との話し合いなどもむずかしいということをつくり出したのは、むしろ政府の政策ではないかというふうに、その中に大きな原因が一つあるんじゃないかというふうに思うんです。というのは、今度のこの特別措置法によって、暫定措置法によって、前の米軍の土地使用の特別法に規定してある中の、非常に現地にとっては重大な問題が排除されておるわけです。一つは、今度の特別法では、前の米軍の土地使用についての法律の中にあった、あっせんその他に対する知事の権限が、これはもう排除されておる。また、土地収用法の中の第四章「収用又は使用の手続」等は、これは米軍の土地使用に関する特別措置法には生きておるわけでありますが、今度の法律にはこれがなくなっておる。そのために、これらの問題に関連して世話役活動をしていた知事や市町村長の権限というものは一切この法律の中では排除されておる。その他いろいろ、二、三ありますが、こういうような点が、逆に、ぼくは現地で地主との話し合いを困難なものにさしておるんじゃないかと思うんです。つまり、軍用地の収用やその他の場合には、相当その土地の地方団体の長あるいは機関が、いろいろなあっせんで、その中へ入って、まとめておる例は、これはもう江崎長官も御存じのとおり。そういうことを今度は一切この新しい法律で排除してしまったのですから、したがって、地主さんがなかなか話し合いに乗らない場合が出てきても、これはもう政府自体の政策の中から生み出したものであるというふうに私どもは考えざるを得ないのですが、最後にこの点だけ防衛庁長官にお尋ねをしておきたいと思います。
  104. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 先ほど施設庁長官が、地主との話し合いがたいへん骨が折れる、困難ということばを使いましたかどうか知りませんが、と申したのは、要するに、海外移住者であるとか、不明者であるとか、そういう人が非常に多数あるのでということを言ったのであって、はっきりわかっておる地主の大部分の方とは、これは話し合いで十分決着がつくものというふうに私どもは思っておるわけであります。それから、自治体の協力ということは、これは当然仰がなければなりませんので、事を運んでまいりまする運用面においては、少しも変わりはないものというふうに理解いたしております。
  105. 占部秀男

    占部秀男君 持ち時間がもう少なくなりましたから、最後の問題に入りたいと思うのですが、いまここで審議しておりますこれらの国内法案憲法上の取り扱いの問題、具体的に言えば、憲法九十五条ですか、この扱い方の問題について二、三質問をしておきたいと思うのであります。  そこで、私が言うまでもなく、この憲法九十五条では、「一の地方公共團體のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共團體の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、國會は、これを制定することができない。」、かようにまあ規定しておるわけであります。この公用地の暫定使用に関する法律案、あるいは沖繩の振興開発についての法律案、これはいずれも一の地方団体のみに適用される法律であるとわれわれは考えておるんですが、政府のほうは、これはあれですか、県民投票の必要がないと、かように全部考えておられるんですかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  106. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 各般の法律案にわたって九十五条の関係を御質疑になっているものとして私からお答えを申し上げますが、憲法九十五条は、まさに、おっしゃいますように、あれは五十九条一項でございますが、法律案は国会の両議院が可決したとき法律となる、これが原則でありますが、いま御指摘のように、「一の地方公共團體のみに適用される特別法」については、国会の両議院の可決だけでは成立しないで、その地域の住民の過半数の同意がなければ制定できないということになっております。  そこで、これは一般原則に対する例外でございますので、その点についての考慮も踏まえながら率直に申し上げて、そういう考慮も入って申し上げることは事実でございますし、もう一つ、また、ある法律がはたして国会の両院の議決だけで成立するものか、あるいは住民投票を要するものか、要するに地方特別法であるかどうかというのを、やはり立法過程で権威を持っておきめになるのは、やっぱり本来は内閣というより国会ではないかと思いますので、その辺のこともございますけれども、私どもがこれについてどう考えるかということを申し上げさしていただきますならば、まず憲法九十五条の規定から直ちにわかりますように、その特別法というのは、その適用対象が地方公共団体そのものであるわけでありますために、言いかえれば、その地域における一つの施策を実現するためというようなものが必ずしも地方特別法にはならない、やはり地方公共団体そのものを適用対象とするものでないと、地方特別法にならないという意味で、いろんな法律案についていろんな規定がございますから、それらについて一々御質問の議に応じて御答弁申し上げなきゃならぬと思いますが、一括して、そういう考慮から、この地方特別法というのは困難ではないかというのが一点でございます。もう一つは、けちなことといえばけちなことでありますが、施政権の返還前でございますし、この法律案は、そもそも特別措置法なんかをごらんになればわかりますように、施政権の返還と同時に施行されるべき法律案である。ということは、その前に制定されなければならぬ法律案である。とすると、施行前においては、九十五条を含んだ憲法規定はそこに施行されておりませんために、手続面からの制約もあるではないか、そういうような実体、手続両面にわたる考慮を加えまして、先ほど大前提で申し上げたことも多少そこに影響はいたしておりますけれども、私どもとしては、これを地方特別法として取り扱うのは無理ではないかという気がしておるわけであります。これはもう率直な見解でございます。(「へ理屈だよ、それは」と呼ぶ者あり)
  107. 占部秀男

    占部秀男君 いま川村委員から飛び出したんですが、私もそれを言おうと思ったところを言われちゃったんですが、あなたの言われる地方団体そのものではない、そのものをあそこはさしているんだと、あるいは返還前に、同時に前に成立しておかなきゃならぬ法律であるから、いわば憲法適用の問題にも関連してくるんだからと、こういうお話でありましたが、私は、それでは土地の問題はいずれにしてもおくとしても、あとで松井委員からその点については追及があると思いますが、私のいま取り扱っておった沖繩振興開発法ね、これはやはりもうあなたのおっしゃったそうした規定をぶっつけても、一の地方公共団体が扱うというのみに適用されるという法律になるんじゃないかと、かように私は考えるわけですが、その前に、あなたはいま国会できめるということを言われましたね。国会できめることは、まあきめることはそれで差しつかえないことですが、しかし、いままでの十五本ばかり御案内のように県民投票しておるこの法律をずっと調べてみると、十五本のうちの十三本までは附則つきです。附則に、この法律県民投票にかけなきゃならぬのだということを書いてあるわけなんです。あの当時の政府は書いたわけですよ。そうでしょう、見てください。書いてあると思うんです。議員立法だけじゃないと思うんですよ。したがって、何も国会で云々ということだけを言う必要は私はないんじゃないかと思うんですが、いかがですか。もし私の言うことが間違いなら間違いでもけっこうです。
  108. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 私が国会できめると言ったのは、責任のがれとか、そういうことじゃなしに、非常に謙虚な気持ちで実は申し上げたつもりでございます。私どもがかってにそう言っても、これはいかぬのではないかという気がいたしましたもんですから、そういうことでもあるけれども、私ども意見を言わしていただければこうであるということを申し上げたつもりでございますが、確かに十数本の法律がございました。私も、そういう規定があったもの、なかったもの、いずれも承知をしておりますが、私の記憶では、たしかこれは議員立法であったと思います。それはともかくとして、おっしゃいますように、これ地方特別法であるかどうかということは、最後の手続において後議の議長がその手続をなさるわけでありますが、これは地方自治法規定がございますが、そういうことを明確にするために、その規定の中にそういう趣旨の規定を入れるのが私もたいへんけっこうであると思って賛成をいたすものでありますが、しかし、内閣の意見はどうかということでありまするので、内閣としてはどうもこれを、たとえば地方特別法でないものを普通法でやるのもあれでありますが、普通法の制定手続を地方特別法の制定手続でやることもこれも憲法違反になりますので、その辺、私どもの良心に従って、こうであろうと、信ずるところに従ってこの案を提出したわけであり、また仰せのような規定のあるなしにかかわらず、実体で地方特別法であるかどうかは判断すべきものでございますから、あえてそれを規定をいたさなかったわけであります。  それからもう一つきわめて大事な点でありますが、先ほどの、振興開発についてはどうかというお話がございました。これはまあ施行を返還と同時にしなくてもいいじゃないかという気があるいはおありになるのかもしれません。そうだとすると、手続面はなるほど返還後でありますからよさそうでありますが、やはり実体面におきまして、確かに振興開発法というのは沖繩という地域を区域としまして、まあそこに着目しまして、その地域の振興開発を国と公共団体とが手を取り合って実施しようとするものであって、やはりわれわれの目から見ますと、これは地方公共団体そのものに対する規定だというふうには思えないわけであります。むろんこういう協力関係というものは、地方自治法で定めた、憲法のもとで定めた地方公共団体の組織運営に関する現行規定に基づいてこれらをやるわけでございますので、それが基本的に、それに何といいますか、特例を加えたというふうに考えないものですから、いま御指摘の法律案については、むしろ実体面でもうこれは慎重にお考えいただかなければいかぬのじゃないかという気がいたします。
  109. 占部秀男

    占部秀男君 時間がありませんから私は結論的にまあ質問しますが、土地の問題は、公用地の問題はひとつ置いておいて、いま言った沖繩開発法の問題について私は言っておるわけです。  そこで、あなたの答弁では、手続上の問題はまあまあいろいろのことがあるからこれはいいだろう、これは一応合格であると、ただ「一の地方公共団体」そのものであるかどうかということについては、実体面からいってどうもそう思えないと、こういうおっしゃり方、その実体面は何かといえば、国と地方と両方がこうやるからだということが中心になっておると思うのですが、これはぼくはへ理屈じゃないかと思うのですよ。こんなことはちょっと法制局長官としてもぼくはへ理屈じゃないかというふうに考えるんです。それはこの法律の中で、確かに国のいろいろな部面も入っていますけれども、先ほど私が一番ここで山中長官とやり合った地方自治団体の固有事務の問題などは、これは地方自治団体そのものの問題であって、しかも沖繩県という一つの地方自治団体そのものの問題でしょう。これは自治法二条できめておる、地方自治団体の組織と運営、この運営にからまる問題でしょう。機能の問題でしょう、機能の問題をその当該地方公共団体から切り離すことはできないでしょう、これは法律論からいっても。そうでしょう。これが沖繩以外の一般的な問題なら別ですよ。沖繩県以外のところではそういうことはないんです。沖繩県だけが固有事務をある場合には国が直轄しようということなんだ。しかも、この地方特別法の問題について県民投票をさせようと、こういうようなことを考えた理由は、私が言うまでもないと思うんですが、国会で最後の可決があった場合に、その地方公共団体の住民の投票によってきめるということは、何だかその「一の地方公共團體のみに適用される」法律が通れば、当該自治体に不利益になる、あるいは当該自治体の機能を制約するようになる、そういうことを国会の法律だけできめてしまったのでは、それがはねっかえるところの県民、市民、住民の不利益になるんだから、したがって、その住民の賛成か、賛成じゃないかという投票をさせようというのがこの法律の趣旨でしょう。それならば、今度のこの振興法というものが「一の地方公共團體のみ」の法律でないと言えるという理由がどこにありますか。この点明確にしてもらいたい。(「総理答弁だと呼ぶ者あり)
  110. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まあ、総理でも法制局長官でもどっちでもよろしいんですが、これは沖繩県という地方自治体について、ほかの自治体、ほかの県と違った性格の県にしてしまうものでなく、そしてまた、そういういまはあなたはおそれがあるとおっしゃるんですが、私たちは地方自治を侵害するおそれというものは全くない法律だと思っておりますから、そういうものによって、沖繩県地方自治体としての権能が、県も市町村も阻害されるところはないと考えますので、憲法九十五条の住民投票の必要を要しないものであるという判断に立っております。
  111. 占部秀男

    占部秀男君 それが大事なことなんだ。政府がおそれがないという考え方で、「一の地方公共團體のみに適用される」法律をつくっていいというならば、こんな県民投票をさせるという法律はできないんですよ、憲法規定は。そのおそれがあるかどうかということは、その法律によって影響を受ける県民によって批判をさせようというのがこの法律の趣旨じゃありませんか。それは山中さんがこれをきめることじゃなくて、政府がこれを考えることでなくて、そういう点については当該の県民の意思にまかせようというのが憲法九十五条の立法の精神でしょう。だから、あなたの言っていることは答弁にはなりませんよ。
  112. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ともかくも、九十五条で一番大事なことは、特定の地方公共団体に特別の法的拘束を加えるというものであることは、法律問題でございますので、そうなるわけでございますが、この点についてはいままでも中身について関係大臣から御説明がありましたように、一方的に法的拘束を加えるんではなくて、やはり地元の、といいますか、たとえば港湾でいえば、港湾管理者の申請に基づいて協議が整ったときにやるというぐあいに、一方的に法律そのものが法的抱束を加えているんではなくて——その点がまあ一つ。それからもう一つは、やはりこれは、いま山中大臣が言われましたが、県という地方自治体、あるいは県の市町村でもよろしゅうございますが、そういう性格を変えるものではないと——先ほど私は、組織運営に関する現行制度を前提としてやっておるんだと、その点は変わりがないんだということを、山中大臣は性格を変えるものではないという表現をなさいましたが、そういうものでありまして、この法律そのものが法的拘束を直ちに加えるという種類のものではないということが、やはり先ほども入れたつもりではございますが、いまの御質疑に対して強調したいのは、その点であるのと、もう一つは、これはほかの前例をあげるようで恐縮でございますが、北海道開発のためにする港湾工事に関する法律というのがよく似た規定でございますが、これは実は地方特別法として住民投票にかけるようなことをしていないという事実もございます。それはいま申し上げたような考慮に出たものと思いますが、それと同じ考慮のもとに——私ども質疑者と論争するつもりはさらさらございませんが、私どもの気持ちを率直に申し上げると、そういうことでございます。
  113. 占部秀男

    占部秀男君 もう三分しか私の持ち時間はないんで、この質問は、私は、きわめて重要な問題で、三分や五分じゃ解決のできない問題ですから、きょうは留保をしておきたいと思うのです。  ただ、いまの高辻さんの答弁では私は承服はできない。というのは、あなたはいま、一つには、山中さんが言われたように、地方公共団体そのものの性格を変えるものじゃないんだ、こう言われましたね。憲法の九十五条は「一の地方公共團體のみに適用される特別法」と書いてあって、性格を変える特別法とは書いてないじゃないですか。その前の九十二条、九十三条はそれ写れ、「地方公共團體の組織及び運営」、地方公共団体の議事機関・議会の設置、地方公共団体の議員あるいは吏員は住民が直接これを選挙するというように、あるいはまた九十四条は財産の管理というふうにきちっとしている。この九十五条は「一の地方公共團體のみに適用される」ということだけ書いてあって、性格を変えるとは書いてない。私たちから言わせれば、この「一の地方公共團體のみ」ということばは、地方公共団体そのものというのではなくて、地方公共団体そのものも入っておるけれども、その地方公共団体の区域内にあるところの住民の権利義務の問題もここに入っていると思う。ところが、あなた方は、それをもう非常に、何というか、圧縮して解釈をされておるように私は思うので、いまの点は留保をひとつしておきたいと思います。  さらにまた、法が一方的に特別な法的な拘束を加えているのではないと、こうあなたは言われたわけですね、この法律は。一方的に加えるか加えないか、これは見方によって違うのですよ。ただ特別な法的な拘束を加えているのですよ、これは。そうでしょう。沖繩県だけ加えているのでしょう。ほかの県には加えていないのでしょう。一方的に加えたか加えないかは、投票してみなければわからぬじゃないですか。県民が一方的にこれを加えたんでないといえば、これは投票してもこの法律には賛成するという、ところが、一方的に加えてけしからぬといえば、県民がこれに対して反対投票をする。そのためにこの規定ができているんじゃないですか。そういうようなことは、地方自治の本旨に従ってもっと進歩的に前向きに地方自治を伸ばそうという考え方政府がやらなければ、今後日本地方自治はなくなりますよ。私は、そういう根本的な問題があるんで、三時間もしつっこくあなた方に聞いておるわけですが、もう時間がこれで切れますから、これらの問題については保留をして私の質問を終えたいと思いますが、最後にいままでの憲法上の取り扱いの議論について総理の率直な見解をお聞きして私の質問を終えたいと思います。
  114. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えをいたしますが、私もどうも憲法論はたいへん弱いのです。どうも違っておるところは、双方に言い分があるなと、かような感じがいたします。私法律を制定したその当初から、こういう問題についてこれは違憲ではない、私どもはかような態度をとっておりますので、そのことだけを申し上げておきます。     —————————————
  115. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、内田善利君が委員辞任され、その補欠として藤原房雄君が選任されました。  この際、十分間休憩いたします。    午後三時三十一分休憩      ——————————    午後三時四十五分開会
  116. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) ただいまから本委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。柴立芳文君。
  117. 柴立芳文

    柴立芳文君 まだ閣僚の中には御承知ない方があるかと思いますが、私はさきの選挙で鹿児島県の地方区から出てまいりました柴立芳文でございます。  初めに私が質問する立場について申し上げておきたいと思いますが、私は鹿児島県の出身でありますので、歴史的、地理的に沖繩県とは非常に近い関係、また関係のある立場をとっておりまして、隣県であります。また、御承知のとおり、十六年前に奄美大島が同じようなケースで祖国に復帰いたしまして、鹿児島県の一部になって、特別な法律によって振興計画を実施中であります。これらの関係から、私自身も非常に関心を持っておったのでありますが、また、そのために、沖繩本島をはじめ、各離島にも足を伸ばしまして視察をいたしたところでありまして、沖繩県と鹿児島との政治的、行政的、経済的な深い関係のもとに、沖繩の祖国復帰がいかなる形でなされるかに、かねがね強い期待と深い関心を持って今日に至ったのであります。したがいまして、そういう観点から、総理はじめ関係の閣僚に質問を申し上げますが、非常に時間を制限されましたので、簡便にひとつ要領よくお答えくださいますようにお願いを申し上げます。  佐藤総理の執念とも言える使命感を持ってこの歴史的返還がなされようとしているのでありますが、私は、総理が非常に使命感に徹せられて真摯な態度でこの国会に臨まれているということを感じまして、感銘を受けている一人であります。  戦争で失った領土を平和裏に話し合いで回復するという、これまでの歴史にない好ましい解決に対し、深い感動すら覚えるとともに、かつて、昭和四十年でしたか、沖繩を訪問された総理が、沖繩が祖国に返らなければ日本の戦後は終わらないという名言を言われたのでありますが、みずらかの手で解決されようとしている御熱意に対し、感銘をいたしているのであります。  今回の返還協定の骨子は、核抜き本土並みということでございます。したがって、協定の問題や、あるいは当委員会に付託されましたたくさんの重要な議案がありますけれども、私は、今後の沖繩の復興対策につきまして、所信表明の中からも、その感想を述べた上でただしていきたいと考えます。  総理が、沖繩につきましては、ことばに尽くしがたい辛酸をなめてこられたのだ、したがって沖繩県民に対しては全国民とともにほんとうに御苦労をかけたというふうに言われたのでありますが、この労苦に報いるためにも一日も早い円滑な復帰を実施していきたい、そしてその中に明るく豊かで平和な沖繩県を建設する、こういうふうにすることが課せられた使命であると、こう言われておるのであります。私はこの所信表明を聞きながら——当時、私は鹿児島におったのでありますが、太平洋戦争の終結前に、県下の飛行場から、前途有望な若者たちが生きて帰らないことを承知しながら私の県から沖繩に向かって飛び立っていったことや、戦艦「大和」が沖繩に向かってわが奄美大島の沖合いで撃沈を受けた、その爆音を私はつぶさにこの耳で聞いていたことを思い出していたのであります。その後、沖繩では米軍の上陸が行なわれ、軍人、県民合わせて二十余万人の犠牲者を出し、いまでも健児の塔やひめゆりの塔にしのばれますように、戦争がいかに人類にとって悲惨なものであるか、またそのあと始末がいかに長く苦労してかかるものであるかということを、今回の返還協定によって思わずにはいられないのであります。このことは歴史に長く残るでありましょう。そして二十数年たちまして、いまこれらの悲惨な歴史が、国民の願望として、歴代の内閣でいろいろなことがあったわけでありますけれども、今回佐藤総理の手によって二国間協定という形で解決されようとしていることに対しまして感慨深いものがありますが、またこの沖繩を今後どうするかという問題について、山中担当大臣が、その所信表明の中で、国民の責任で、また政府沖繩県民に対し償いの心で今後の復興に当たられたいと言っておられるのであります。これは当然であろうと私は思うのであります。  そこで、質問の第一点は、総理の言われる明るくということはどういう意味なのか。豊かということはどういう意味なのか。そして、平和な日本を——平和な沖繩をということを三つあげられて沖繩県を建設したいと言われる根本的理念の具体的な意味の御解明をお願いを申し上げたい。  第二点は、国民の中には、今回の返還協定及び関連法等に対して反対の意見が、すでに衆議院の中でも院の内外にあるわけであります。特に沖繩の地元の方々に反対の意見すらあるということは、これは不安があるということを示しているものであろうと思うのでありますが、このような不安を今後どのような具体的な施策で解明されようとされるものであろうかということについて、総理の御見解伺いたいのであります。  なお、ここで山中担当大臣に対して一点だけお伺いをいたします。総理が所信表明の中で、早く沖繩県民の社会的・経済的地位本土並みにしたいと言われていることに対し、今回の沖繩振興開発特別措置法案がその達成のための福祉法案であろうと私は考えるのでありますが、この法律がいかなる形で、またいつごろどの程度に進むものであろうか、その達成の具体的めど、つまり、この十年間で沖繩の経済構造がどのように変化し、その所得をどの程度達成するめどを持っておられるのかどうか、この点について御解明を願いたいと存じます。
  118. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 柴立君の私に対するお尋ねは、明るく豊かな平和な沖繩県づくりというようなたいへん抽象的なお尋ねでございます。私は、沖繩県の同胞が、戦中戦後を通じて、米軍のあるいは軍政、あるいは民生、さようなもとで異国の支配下にあった、たいへんな苦労を積み重ねられた、そういう意味から何かグルーミーな感情を持たれるんじゃないかとかように思って、これをやはり非常に私は心配しております。しかし、私が毎年会いますいわゆる豆記者の諸君、これは主として中学校の生徒が新聞記者としての本土への旅行でございますが、それらの諸君に会ってみて、だんだん最初のその暗い感じはなくなりました。そうして明るさを取り戻している。本土とわれわれも変わりはないんだという胸を張ったその気持ち、これが私は何よりも必要なことだと思うのであります。この民族の誇りを取り返すことがやはり明るくなるゆえんだと思っております。私は、異民族の支配が長く続いただけに、そこらにも本土のわれわれとは違った感情がやっぱり流れていたと、かように思いますが、それらのことがだんだん解消されておること、これを非常にうれしく思います。また同時に、豊かな沖繩、これはもういろんな数字で説明されるように、本土との間に非常に格差がある。これは米軍支配下において特殊な施設等も行なわれたが、依然としてその豊かな自治、そういう県ではございません。私は、その点を、ぜひとも今後復帰の後におきましては、同胞百万、同時にわれわれ一億国民一体となって、そうして本土との格差を解消する、これがまあいわゆる豊かな県づくりと、こういうことにつながると思います。これにはいろいろの条件がございますから、まずその基盤を、産業基盤もつくらなければならない。一番困っておられるのは水の不足だろうと思います。水がない。エネルギーがない。あるいは港湾の施設も十分なものがない。こういうような近代産業としての基礎条件を欠いておる。そこらのものを整備することが、これが私どものつとめではないだろうかと、かように思うのであります。  そうして、第三番目の平和な島、これはもちろん本土がいまあるその状況は、平和憲法のもとで、いわゆる自衛隊はおりますが、これこそ平和な国づくりをしておるわけであります。沖繩におきましてただいまのような米軍基地が存続する、そういう事態だと、平和な島といってもいかにも縁遠いような感じを持たれる。ここにやはり、さような感じを持たれないような将来への期待、希望をぜひとも持っていただきたいと思います。  私は、過般の衆議院において、軍基地を整理しろと、縮小しろと、あるいはまた核のないものを、核抜き、これに力をいたしたいと。すでに毒ガスは撤去されました。しかし核は、外務大臣の話ではございませんが、どうもあるのではないかと、かように言われるし、しかし返還後においては核抜きであること、これはニクソン大統領も私に約束したところであります。  それから、後のことを考えると、核の持ち込み、これは絶対に許さない。事前協議におきましても、さような点についてはわれわれはノーと、はっきり答えると、こういうようなことでですよ、基地の縮小が直ちに実現しなくとも、少なくともただいまのような諸点がなくなる。そうして、それが県民の理解を得れば、いわゆる平和な県づくりと、こういうことにも意気込みがわいてくるんじゃないかと、かように私は思うので、それらの点を沖繩県づくりの目標にして三つをあげたわけであります。多くは申しません。以上のような点でおわかりをいただきたいと思います。  ところで、この返還協定について反対があると、かようなお話でありますが、私は各党の諸君といろいろ話をしてみると、基本的に祖国復帰に反対される方はないようであります。その点は、私も安心をいたしました。  ただ、返還の協定その他のものがどうも不備であり、不満であり、なお不安が残ると、そういうところに非常にきびしい批判が加わっている。それが、ともするとどうも復帰そのものに反対ではないかとすら実は聞けるような大きな声が私どもの耳に届いておるのであります。私は、この点は、政府といたしましても、今日いろいろ整備しておる協定をはじめその他の諸法案にしても、もっと国民の皆さんに理解していただくように、もっとわれわれのねらいを十分理解してもらって、同時にその協力を得るように努力しなければならぬと思います。これには、何と申しましても、われわれが、祖国復帰、それを実現して、そうして期待されるような明るく豊かな平和な島、沖繩県づくり、これをつくることの見通しを立てることが、何よりもの説明であり、そこらに期待が持てるんではないだろうかと思います。そういう意味で、われわれの足りない点は野党の諸君からも鞭撻を受けて、そうして真に望ましい沖繩県づくりに邁進したいと、かように思う次第でございます。
  119. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 沖繩が返りました年には、地方財政については直ちに本土以上の手当てをできるように、いま配慮しております。その他の総理もちょっと触れられました社会資本の整備、これが非常に立ちおくれておりますから、道路、港湾、あるいは漁港、住宅、上水道、そういうような施設について五年間で本土並みに持っていきたい。さらに、社会福祉、教育の施設整備、環境、そういうものが著しくおくれておりますから、これらもすべて五年間の間に本土並みにしたいという一応の目算を持っております。  なお、県民所得、現在の沖繩の国民所得の本土対比については、六〇%以内の状態にとどまっておりますから、これは奄美大島が復興したとき四五%、鹿児島県本土に対比してきわめて低い状態でありましたけれども、その意味において沖繩は、県民所得においてはそうきわめて悪いという状態復帰ではありませんが、しかし、その経済の前提が、いろいろと環境の違う、基地依存経済その他の、三次産業の収益が七〇%以上に達するというような環境がありますから、したがって、これらのものを逐次平和経済に切りかえていきつつ、十年後にどのような状態になるか、これは直ちに県民所得の国民所得の平均に対比する数字をいまここで述べることはきわめて困難でありますけれども、この所得においても格差のある点を埋めていく、このための各般の広範な施策を講じてまいりたいと考えます。
  120. 柴立芳文

    柴立芳文君 いま佐藤総理三つの柱についての御答弁をいただいたのであります。私は、明るくということは全く精神面であろう、そしてその精神面も異民族の支配から脱却するということにおいて相当明るくなると信じておるのであります。しかし、いま三番目の平和というふうなこととのからみでなかなかむずかしい点があるわけでありますが、そういう点については、やはり何としても理解をしていただくんだというふうな形で総理の今後の推進を進めていただきたいと、かように考えます。私は、豊かでというのは、もちろん経済の振興でありましょう。平和ということは、日本の平和とともに沖繩も一体的であるということが基本ではなかろうかと考えます。したがって、この点の解明についての今後の具体的な施策をお願いをいたしたいと、こう思っております。沖繩県民の心というふうなものを十分把握して、この三点にしぼって納得のゆくように、たとえば基地の問題がありますが、基地を縮小する計画を具体的に、早急にできるだけ立てていくというふうなこと等は、そういう基本的な姿勢につながるのではないか。さらにまた、今後の経済開発についても、現在の計画にかたくなにこだわることなく、改廃するものがあればそれを改廃していくという態度、これは沖繩県民とよく相談をされていけば、私は納得がいくものだ、こういうふうに考えるのであります。したがって、やはり深い愛情というふうなことが沖繩県皆さん方の心をゆり動かす問題であろう、こういうふうに考えますので、いまの総理答弁を非常に私は高く評価いたします。したがいまして、その点については実行をさらに推進していただきたい、かように考えます。  今回の私どものこの委員会に付託されましたいろいろな重要案件がたくさんあるわけでありますけれども、与えられた時間が非常に少のうございますので、また、特に大臣に一問一答するつもりでおりましたけれども、それも不可能でございますから、質問を一緒にいたしますので、ひとつお答え願いたいと、かように考えます。  沖繩の人々の強く望んでいる点は、さっきも申し上げましたように、いわゆる基地依存型の経済から脱却していくと、公害のない、平和な経済開発を望んでいると、こういうふうに考えます。基地収入が県民所得の約三〇%になっておりますから、いま山中大臣から、いろいろ今後の問題について非常にむずかしい段階も承知をいたします。ただ、今日、本土と同じように、それ以上に沖繩の全本島と離島との間の人口の移動が行なわれている。この点につきましては、早急なる対策が必要ではないか。また、沖繩全体におきましても、いろいろな手を打たれているのでありますけれども、特に予算の集中化、公共事業の大型化を実施して、そしてそれらの人口の移動に対して防止をするような形をとっていくことが必要ではないか、こういうふうに私は考えるのであります。  今回の沖繩の経済の問題は、沖繩振興開発特別措置法案がその骨子でございますけれども、これにつきましては私も一通りいろいろ検討してみました。また、山中長官がたびたび沖繩においでになりまして、また離島をほとんどお回りになって、住民の意思を聞いてこられたと聞いておりますが、そういうふうなこともあって、いわゆる今回の振興開発措置法案はきめこまかに私はできていると思っております。したがって、このきめこまかにできているものをいかにして沖繩県民が消化をしてもらえるかどうかと、いわゆる消化不良にならないように配慮が必要ではないかと、こういうふうに考えます。  特に、初めて沖繩に新たに自由貿易地域が設定されることになりました。このことは、非常に私は特質であろうと思います。したがって、沖繩が今後、これらの法案、あるいはその他の法案によりまして、徐々に、またある面におきましては急速に、その構造を変化さしていくというふうなことも可能でありましょう。土地利用の面、あるいは水利用の面、特に私は、この振興開発による事業をするために、基地が障害になる点については、総理はじめ、万難を排して政府の力で排除されるように最大の努力を払っていただきたいということを、ここで申し上げておきたいと思います。  したがいまして、そういうことによりまして、非常にむずかしい仕事ではあるけれども日本国民あるいは日本政府の責任において、本土との社会的・経済的格差を縮小するんだということを実行していただくことが明るくなっていく要素ではなかろうか、こういうふうに考えておるのであります。海洋博、あるいは公共事業、そういうふうなものを——海洋博もあることになっておりまするが、そういう面についても非常に大きな事業として行なっていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。  沖繩の経済は本土の成長率を上回っているという報告がなされておりますが、これは、いわゆる基地収入というふうなものと、日米両政府の財政援助、これが私は大きなものであったろうと、かように考えます。したがいまして、こういうふうなものとの関連において今後の復興計画を立てていただくように、特にお願いを申し上げておきたいと思います。  次に、私は特に運輸大臣にお尋ねをいたしたいと思います。いろいろ私も見ておりまして、沖繩の今後の問題については、運輸行政が一番おくれているのではないかという感じを受けたのであります。と申しますのは、沖繩日本に返ってくる。私は、日本のいまの運輸行政というのは、新幹線、あるいは高速道路、相当整備されてきていると見ておるのであります。さらに、北海道におけるトンネルでつなぐのだという問題、そして九州もそうでありますが、四国も四県の間には計画がなされておる。いかなることがあっても、当分沖繩はそういう陸のつなぎはできないと思っておるのであります。そうしますと、飛行機かあるいは船かということになるわけでありますが、その沖繩の復興計画に運輸事業は積み残されているんじゃないかという気さえいたしているのであります。なぜならば、沖繩は海の中にある島である。そしてその島は、その島内だけ、県内だけの復興計画は完備に近いものによって計画されておる。しかし、孤独な離れ島でありますから、これからどういう形で運輸交通の問題を解決するかという原点に返りますと、海の新幹線というものを考える時期であろうと私は考えます。そのことがどういう形でなされているかということについては、私は不満を持っておるのであります。したがって、この運輸行政の充実が非常に必要である。国営でやるとかあるいは民営でやろうというふうな原点に立って審議をされたことがあるかどうかということ。それから、航空問題に入っていきますけれども、現在は国際線であることも承知をいたしております。しかし、外国の航空会社が四社あります。これは基地のためにできた私は国際線だろうと見るのであります。しかし、だんだんと基地が縮小されていくというふうなことにおいて、今後、日本航空や全日本空輸も営業いたしておりますが、このような国際線から国内線にかわっていくということにおいて、航空事業をどういうふうにお考えになっているのかという点が二点目であります。  それから、航空運賃の問題でありますが、現在大体片道三万円だと聞いております。したがって、こういうふうなものは復帰の形において国際線と国内線になった場合に何もメリットがないのかどうかということは検討されないかどうかということであります。これは航空事業だけに限らない、船にも関係があるんでありますけれども、通称カボタージュといわれている、外国の会社の国内営業を禁止するということが、復帰と同時に私は起こると思うんでありますが、このカボタージュの問題が適用されますというと、むしろ交通問題はダウンするんじゃないか。要するに、現在のものよりもダウンする、メリットがなくなる、かえってマイナスになるという現象を考えているのでありますが、こういう点についてどういうふうに大臣はお考えになっているかということであります。  海運の問題について申し上げます。要するに、旅客は現在、琉球海運、関西汽船、大島運輸が、過当競争を防ぐために運賃同盟カルテルにより営業いたしております。去る十二月の一日に一五%アップされました。これは会社同士の話によってアップされているのであります。日本に返ってまいりますと、海上運送法によりまして認可制になろうかと思っておりますが、認可制になれば政府の規制がなされるのでありますから、もう少しそういう面においても海運の問題を考えていく必要はないかということであります。現在、阪神−那覇間が二等で六千五百三十円、鹿児島−那覇間が四千七百円という運賃であります。私は、復帰と同時に国内運送法に該当するのでありますから、それらのメリットを運輸行政の中で生かしてもらいたい。そのことは置き忘れているんじゃないかという理論になるわけであります。なお、貨物輸送につきましても、現在は外国航路でありますから、たくさんの船があるわけであります。これが認可制になると、現在とどういうふうにお考えになっているのか。特に、小笠原とは全然違いますけれども、小笠原は復興資材その他については多少のめんどうを東京都や自治省で見ておられるように聞いておりますが、これとは比較になりませんけれども沖繩の復興に対する運輸行政は非常に大きなウエートを持っているということを運輸大臣はどういうふうにお考えになって対策をお立てになるつもりであるかということについてお伺いをいたすのであります。  以上、運輸大臣にお願いをいたします。
  121. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいま柴立委員から御質問のとおり、沖繩は、御承知のとおり、無人島を除きましても四十数島の島嶼からなっておりまして、本土から本島も遠く離れておりまして、これの交通の確保のために、あるいは海運、または航空路というような基幹交通路を確保することが、沖繩の、先ほど総理が申し述べましたように、本土との格差を是正し、沖繩住民の福祉を増進する上に絶対に必要だと私どもも考えておる次第でございまして、沖繩本土復帰ができましたならば、そういう方面におきまして、海運の方面でも、また航空の方面でも、十分の配慮をいたすというつもりで、着々いまそれらの検討をしている次第でございます。  第一問の御質問にございました、国営でやるか民営でやるかという根本でございます。原則として全部民営でやりまして、そしてあらゆる民営につきまして補助であるとか、あるいはまた融資であるとか、その他の点は、本土以上の方策をとりまして、そして沖繩県民総理の御指示どおりあたたかく迎え入れたい、こういうふうに思って、せっかく準備をしている次第でございます。  第一点の航空運賃の問題でございます。航空運賃の問題は、御承知のとおり、いま国際線になっておる次第でございます。でございますから、これが国内線になってまいりますると運賃は低下をする次第でございますが、しかし、これはまた税金の問題がございますから、それらも勘案いたしまして、できるだけ低く、運賃がいまよりも安くなるように指導してまいる、こういうつもりでせっかくやっておる次第でございます。  それから、カボタージュの問題でございます。御承知のとおり、いま沖繩を起点といたしまして、あるいは本土と結ぶ、要するに、アメリカの航空会社が四つございます。それからまた、中華航空が一社ございます。これらは当然、本土復帰してまいりますと、カボタージュ禁止になるわけでございますので、沖繩は、便数にいたしますと、約四分の三くらいはちょっと便数が減ってくるのではないか、こういうふうに思われている次第でございますので、それらは沖繩の国内線の補強によりまして、需要を勘案いたしまして、不便をかけないように指導をしてまいりたい、こういうふうに思っている次第でございます。  また、海運の問題は、御承知のとおり、六カ月後には向こうの申請によりまして海上運送法の適用を受ける次第でございまして、その方面で十分指導することができる次第でございますから、沖繩の住民の生活の安定のために、それらの点につきましても、運賃の方面でも十分指導してまいりたい、こういうふうに思っている次第でございます。  その他諸施策につきまして、海運または航空路、空港の整備あるいはまた港湾の整備、これは本土以上に大体におきましてその整備につきましては全額国で大体補助をいたしてまいりまして、そして沖繩の施設の整備を十分進めていく、こういう方向で進んでいる次第でございます。
  122. 柴立芳文

    柴立芳文君 いま運輸大臣から御答弁をいただいたわけでありますが、ほかにも質問をしたいわけでありますが、非常に時間もせかれておりますので要望だけ申しておきますが、一つ、沖繩の復興あるいはまた沖繩県民の喜ばれること、これは本土沖繩との交通の利便、そして運賃の低減、そして小さい島と本島との間の交通、これはどうしても、海があるわけでありますから、運輸大臣がいま全面的に言われましたけれども、もう少し考え方を変えていってもらいたい点もあるのです。ほかの産業に対する振興開発計画に合うような思想の形でやっていただきたい。特に私は、沖繩は船と飛行機しかない、特に船は非常に重要なものだろうと思っておりますが、その点については県民のメリットがある形でお考え願いたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。
  123. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) いま御質問になりましたとおりの方向で、考えで私ども進んでいるつもりでございます。復帰になりましたらば、本土と、それから本島との間の航空路につきましても、あるいはカーフェリーを、地元で御要望がございましたら、それに対する特別の融資その他も考えている次第でございます。  また、航空の問題で離島間の点につきましても、離島の七つの空港がございますが、それらの整備につきましても、これは全額国庫補助でやっていくというようなことを考えております。また、滑走路が短小でございまして普通一般の飛行機が使えないところはSTOL機を使う。それに対して経営が困難な場合におきましては、補助までも考えてやっていくということで、それらの点におきまして、全面的にひとつ沖繩の復興に力を尽くしていきたいと、こういうふうに考えている次第でございますので、御了解願いたいと思います。
  124. 柴立芳文

    柴立芳文君 次に、電力の問題についてお尋ねをいたしますが、ひとつ、通産省並びに総理府のほうでお答えになればけっこうだと私は思うのでありますが、特に電力の問題は、非常に基地依存による問題になっておると思うのであります。いわゆるいままで軍需の関係が四四%、こういうふうになっておりまして、非常に安く電灯はなっております。しかし、工業用の電力につきましては非常に高いのであります。したがって、いまこの振興開発の計画による工業立県、こういうふうなことについては、電力は基幹の問題でありますから、この料金の問題については、いま非常に老朽していると聞いております発電施設、そういうふうなものが、今後この軍需の面から内需に切りかわっていく場合におきましては、工業用の電力の発電というふうなことが計画されるものと考えておりますが、そういう面の電力の今後の発電と消費の移り変わりについて、御計画になっておれば簡単にお教え願いたいと思うのであります。  ここで申し上げますが、私は沖繩の電力は非常に早いテンポで進んでおるものと考えますけれども、今後が問題であろう、かように考えます。特に、ここで申し上げるのはどうかと思うのでありますけれども、お許し願いまして、自治大臣にお願いをいたします。いま、電灯の場合におきまして、沖繩五配電総合が九円八十三銭キロワット時、九州電力が十二円七十四銭キロワット時、本土九電力の総合が十一円八十五銭のキロワット時になっております。ところが、さきに十八年前に復帰しました奄美大島は、二十五円八十銭というのが現時点の電灯料金になっております。十八年前に同じようなケースで返ってきたものと電力がこのように違っては、何もできないのであります。このことは、私は怠慢とは申し上げませんけれども、こういうように、沖繩がずっと前から安くできておるのです。これは軍需の関係で、よくわかっておりますけれども、返ってくれば、要するに同じでありますから、その場合に九円八十三銭と二十五円八十銭とでは、子供と親の関係でありましょう。あまりにひどい仕打ちである、私はかように考えているのであります。これは、私のほうから申し上げるのはどうかと思いますけれども、自治大臣の責任においてこの問題は解決を願いたい、要望を申し上げます。  電灯の問題についての計画について、通産省のほうにお願いをいたします。
  125. 三宅幸夫

    政府委員(三宅幸夫君) 電力の需給の点の御質問にお答え申し上げます。  現在、沖繩の電力の能力は約四十二万キロございます。この夏のピークの予備力が一四%くらいでございます。このまま推移いたしますと、四十八年には問題ができますので、現在、電力公社のほうで、四十八年の夏を控えまして、八万五千キロの新牧港第三号機を導入する計画を進めております。さらに、四十九年に対応いたしまして、一応いまのところは十二万五千キロの新鋭火力を入れたい、かように考えております。  それから、電力の施設が非常に老朽しているというのは御指摘のとおりの感じがいたしますが、来年復帰いたしましたら、沖繩の新しい特殊法人並びに五配電会社に対しまして、発送配電について金融的に特別の措置を講じたいと、かように考えております。
  126. 渡海元三郎

    国務大臣渡海元三郎君) 沖繩の電力問題と比較されまして、十八年前に返ってまいりました奄美大島の電力事情の御要望がございました。御指摘のとおり、奄美大島、非常に高い電力料金になっております。これには、狭域経営であるという問題と、もう一つは、電力施設の質の問題があろうと思います。現在、奄美大島では、喜界町が公営電力、その他は全部大島電力になっておりますが、来年初めには大島電力に喜界町も合併することになっております。質の面は、振興計画でできるだけよくしていきたいと思っておりますが、狭域経営の面は九州電力と合併するのが一番の策だと思い、鹿児島県等もおいおいその話を進めていただいておりますが、幸いにいたしまして、来年  の下半期において、これが実現する運びに至ったと聞いておりますので、私たちも、円滑にこのようなことが実現し、しかも九州電力の料金が奄美大島へ施行されますよう、今後ともに努力をしてまいりたい、このように考えております。
  127. 柴立芳文

    柴立芳文君 いま非常に御親切な御説明をいただいたんでありますが、自治大臣、もしできなければ、沖繩のほうに入れてもらってけっこうなんでありますから、ひとつお願いをいたしたいと思うのです。  そこで、一つだけ農林大臣にお伺いをいたします。いま、沖繩の砂糖の買い入れの問題についていろいろな問題があると聞いておりますが、沖繩の砂糖は、ほんとうに日本の国の米であります。一番大きい特別なウエートを占めております。したがって、このことは、奄美の実績からいいまして、いまの糖価安定法の適用を受けてやられますと、非常にむずかしい状態ではないかと私は見ておるのであります。奄美の島の実績は、六社で十五億ぐらいの赤字になっております。加工場も、そうして生産の皆さん方も、努力が足りない点もあろうと思いますけれども、魅力がない。したがって、私は、糖価安定法の一部改正または全面改正をお願いしなければ、この問題は解決しないと考えておるのであります。国内産糖合理化目標価格というものがございますが、その運用面につきましても非常に窮屈であります。この点について、農林大臣はそういう実情は承知の上だと思いますので、御所見を承りたいと思います。
  128. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 沖繩においてキビ並びにパインを欠いた農業の振興計画は書けません。したがって、沖繩では、現在、産糖買い入れについては、特別に沖繩産糖買い入れに関する臨時特例措置法によって手当てはされておりますものの、この復帰を機会に、北のほうは種子島から南は波照間島に至る非常に長い緯度にわたっての気候の差もあり、あるいはまた土質の差もあり、工場規模の差もあり、また、現在の糖価安定法では対象にされていない含みつ糖しかつくれない島もあり、——含みつ糖については復帰後も沖繩県が行なうことを前提として国が予算措置を講ずることにしておりますけれども、少なくとも分みつ糖については、現在の一本価格による買い入れというものについては多分に問題があります。今日でもすでに問題の存しておるところでありますから、沖繩が返ります機会に、今年度の価格においては現在の一本価格でしか決定できませんが、来年度の価格の決定にあたっては、それらの条件の非常に顕著に違う工場規模あるいはまた緯度等についていろんなことを考えておりますが、そういうものを勘案して、適正なる規模の買い上げ価格が設定できるように、すなわち、複数以上の適正なる価格設定ができるような配慮を事務当局に検討を命じております。
  129. 柴立芳文

    柴立芳文君 まだ二、三お伺いしたいわけなんですけれども、理事さんのほうからもう早くやめろ、こういうことでございます。したがって、私も新参でありますので、心臓が弱うございますからこの辺でやめたいと思いますけれども、さっきから申し上げますように、佐藤総理最後にお願いをいたすことは、沖繩県民の心をつかんでくださいということなんであります。これは経済の面もあります。しかし、あたたかい気持ちということは天に通ずると私は思っておるのです。総理が言われましたとおり、反対の皆さん方も祖国に復帰することには反対でないと私も見ておる。しかし、不満な点があるでしょう。その点を総理は総力をあげて解明をしていくという態度を貫いてほしいということを最後に要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  130. 森勝治

    ○森勝治君 議事進行。  ただいまの質問者の冒頭発言中に、選挙区、氏名、経歴等をるる述べられた模様であります。かかることは過去になかったと、私は記憶いたしております。すなわち、先例にないことだと考えられますから、すみやかに理事会等を開きまして処置をしていただきたい。
  131. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記をとめてください。   〔速記中止
  132. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こしてください。     —————————————
  133. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 次に、松井誠君の質疑を行ないます。松井誠君。
  134. 松井誠

    ○松井誠君 私は与えられた時間を、一つは公用地等の継続使用の法律案、もう一つは請求権の補償、この二つの問題にしぼってお伺いをいたしたいと思います。私がこの二つの問題を選びましたのは、別に私のかってな恣意からではございません。先ほど同僚の占部議員が主として沖繩開発、それに関係をする自治権の問題、このことを中心に質問をされました。この三つのテーマというのは、並べてみればおわかりだと思いますけれども、実は、これがいわゆる今度の返還問題の大きな柱だと思うからであります。  いま質問された委員沖繩県民の心ということを言われた。問題は、しかし、何が沖繩県民の心なのかという、そのことが実は問題であります。何か、この沖繩県民の心、復帰を願う沖繩県民の心というものを、異民族の支配から脱したいという、いってみれば、民族主義的な感情だけに、いわば矮小化をして、返りさえすればいいじゃないか、そういうように、えてして考えられておることについて、実は沖繩県の人たちが一番不満を持っておるわけであります。この自然発生的に起きてきた復帰の運動というのがだんだんいわば定着をしてまいりました。沖繩の心というのは一体何なのか、復帰にかける沖繩の心というのは一体何なのか、こういうことがだんだんいわば定着をし始めてまいりました。一つは反戦、平和。この反戦、平和にまっ正面からいわば挑戦をするのが、この公用地の継続使用の法律案なのであります。もう一つは、人権の回復ということであります。私が請求権の補償という問題を取り上げるのは、何もそろばん片手の経済主義の問題として取り上げるのではございません。経済的な物取り主義ということで取り上げるのじゃ決してない。これはあとで詳しく申し上げますけれども琉球政府が繰り返して言っておることは、請求権の問題というのは、いわば沖繩返還の基本的な性格にかかわる問題なんです。われわれは人権の回復を願ってきた。この失われた人権の回復を、請求権を主張するという、そのことで回復をしたい、こういうことを繰り返し言っていることはもう御承知のとおりです。そして、もう一つは自治権の問題であります。開発における沖繩県民の自主性を尊重するという問題であります。  こういう意味で、私は二つの問題を、以下取り上げていきたいと思うのであります。  最初に公用地の継続使用の問題についてお伺いをいたしますが、最初に総理に実はお尋ねをいたしたい。  総理は、今度の国会の冒頭の施政方針の演説の中で、軍用地等の継続使用は沖繩返還の前提だ、こういうように申されたのであります。私は、ずいぶん思い切ったことを言われたと思っている。これについては、外務大臣衆議院でいろいろと御答弁をされておるようでありますけれども、言われた総理自身に私はお尋ねをしたい。この前提というものは一体どういう意味なのか。何か論理的な意味が一体あるのか。端的に言えば、この公用地の法律案が通らなければ返還協定は批准をしない、そういう趣旨を含めて言われておるのかどうか。端的にひとつお尋ねをいたしたいと思います。
  135. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 公用地の法案が沖繩返還の前提である、これは、そのとおり総理は所信表明において申したわけであります。まさにそのとおりだと考えます。つまり、この協定におきましてアメリカに対して基地を提供する、そういうことになったんです。その基地の提供が、これはどうしても話し合いで地主との間に決着をつけたいというふうに思っておりますが、もし決着がつかなかった場合にどうするか。返還、基地提供ができないことになる、これは協定が実現できない、こういうことになるんです。したがいまして、この法律案は返還の前提である、こういうことを申し上げておるわけであります。
  136. 森中守義

    森中守義君 議事進行。  質問者が指名をして閣僚の答弁を求めるというのに、困りますよ、そういうことでは。先ほどもそういうことが二、三回ありましたがね。総理、外務あるいは防衛というように指名をされた閣僚によって答弁を間違いなくしてもらいたい。そういう原則を破ってもらっちゃ困ります。
  137. 佐藤榮作

  138. 森中守義

    森中守義君 あなた、まだ、総理大臣、早過ぎる。
  139. 松井誠

    ○松井誠君 私も、いままでの印刷をされた衆議院の議事録というものを読みました。その中で同じような質問が何度か出ておる。そのたびに必ず外務大臣が立っておられる。一体どういうわけなんです。言われた御本人は総理なんです。どうして外務大臣がわざわざ答弁を買って出られるのか。私はそれで特に指定をしたわけです。  そこでお尋ねをしたいのですが、いまの答弁で私は不満です。私が具体的に聞いたのは、これがつぶれれば返還協定は批准をしないという、そういう論理的なつながりを持っているのかどうかということです。
  140. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私どもは、この一連の法案を出して、それがやはり返還協定の中身をなすものだと、かように考えております。この点は、お尋ねの松井君御自身も御承知のことだと思っております。置かれておる沖繩の現状等から見まして、最も必要な法律案、これらに関連する中身のある法律案を提案しているのですから、これはやはり返還の条件であると、かように私どもが申すのもおわかりがいただけるのじゃないかと、かように思っております。
  141. 松井誠

    ○松井誠君 そういう趣旨の答弁では外務大臣答弁と同じなんです。しかし、外務大臣は、わざわざ国内関連諸法案というように広げて、ぼやかしておる。しかし、総理が言われたのはそうではないのです。軍用地等の継続使用の問題は沖繩返還の前提だと、これは国内関連諸法案全部をさしているのじゃないことはわかり切っておるでしょう。それが批准と一体どういう関係にあるのかということを端的に聞いているのです。政治的に非常に密接なつながりがある、そういうことは、もちろん私はわかります。それを聞いているのじゃない。批准との関係を聞いている。
  142. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま沖繩米軍基地のあることは、これは御承知のとおりであります。これを全部返還する際になくすると、こういうことはできないことでございます。それがやっぱり、ただいま申し上げますように、基地を残すとすれば、やはり基地提供の義務が日本政府にある。したがって、ただいまの公用地等暫定使用法案、これは絶対に必要な法案だと、かように論理的にもおわかりがいくだろうと思います。
  143. 松井誠

    ○松井誠君 私は、批准ということばを何度も使っているんですよ。どうしてそのことを端的にお答えいただけないのですか。これは、むだな時間の浪費ですから、外務大臣じゃなくて、総理にお尋ねをしたい。
  144. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお答えいたしましたように、これは批准の前提でございます。
  145. 松井誠

    ○松井誠君 まあ、批准の前提という意味は、つづめれば、批准をしないという意味にならざるを得ない、そのように理解をいたします。そして、そのことはいかに重大な意味を持っておるかということを、私はいずれまた申し上げたいと思うのでありますが、で、この公用地の法律というのは、名前は公用地という、一見平和的な名称を持っておりますけれども、その実体というのは決してそうではなくて、まさに血なまぐさい軍用地の強制使用の法律案なんです。で、これを、よく、希代の悪法だという評価が、もうわれわれの間じゃ常識になっておる。それは、先ほどからも憲法とのつながりがいろいろ出ましたけれども、自衛隊の関係憲法九条の問題がある。沖繩の人たちを不当に差別をするという意味憲法十四条の問題がある。あるいは個人の尊重という問題を頭から押しつぶしてしまっておるじゃないかという意味憲法十三条を引かれる方もおる。あるいは、先ほど占部さんが言われたような九十五条の問題もある。あるいは、不当に出訴を制限をしておるのではないか、争う道を閉ざしておるのではないかという意味で、憲法三十二条の問題もある。しかし、一番私がこの憲法とのかかわり合いで重要な問題だと思うのは、一つは、やはり憲法三十一条の問題。一つは憲法二十九条三項の問題。このことは順次お尋ねをいたしますが、そのように、憲法の観点から見て、まさに傷だらけの法律案。そればかりではございません。この法律案というのは、いままで、いわば沖繩の人たちが最も苦しめられてきておったあの布令二十号という、土地の取り上げの布令、これは、およそその近代的な法制からいえば、実に乱暴きわまる軍用地の取り上げの布令であります。そういう経過で取り上げられた土地を、その現状をいわば合法化する、それだけではないわけです。一体この沖繩返還というのは、どういう経過で、どういうことが原動力になって日の目を見たのか、いろいろの説がございましょう。しかし、とにもかくにも、日本政府がこの返還というものをきっかけにして、いわば、それをてこにして自衛隊進出の口実をつくろう、そういう意味で、政府自身の、言ってみれば、積極的な意図があったことは私はおおうべくもないと思う。で、沖繩米軍が、少なくとも日本における、本土における米軍の機能と著しく違う、明かに攻撃的な性格を持っている。そうして、それとまさに合体をして、日米の緊密な共同作戦を公然と今度は組んでいける、沖繩に自衛隊が出て。これをわれわれは、いわば第三次の軍事同盟、こういうことを言っている。これがまさに沖繩返還というものの本質なんです。そのことを実現をしようとする、いわば典型的な象徴が、この公用地の法律案であるというように私たちは位置づけをしておる。このことについての総理の御見解伺いたいと思います。
  146. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 簡単に第三次の軍事同盟だと言われますが、第三次の軍事同盟とはどういうことを言っているのか、条文のない、条約のない第三次の軍事同盟などありません。さようなことはたいへんな誤解だと思っております。私は、その点で、まずお尋ねではございますが、さようなものまで、ないことで、お答えするわけにまいりません。
  147. 森中守義

    森中守義君 関連。  ちょっと、これは関連で少しお尋ねをしますが、けさの朝日新聞に、横須賀にアメリカの母港を設定したい、航空母艦のですね。こういう記事が出て、またまたこの委員会審議の途中に一つの問題が提起された。これは、記事によりますと、七月国防長官が見えたときに、すでに防衛庁幹部にこのことの意向打診がしてある、こういうことの事実がぴたり出ている。しかも、政府筋においては、母艦一隻だから、置くか置かないかは別として、まあ、そうたいしたことはなかろう、まあ、いわば、そういったような談話等も出ておるようであります。一体総理は、このことをお聞きになっているのですか、おりませんか。しかも、この中では、アメリカはすでに機動部隊の再編成にかかっている、こう言っているのですよ。ヨーロッパにおいても、この種のものができると思います。むろん、アメリカの国内事情と、一つには日本海の戦略上の目的がある、こういうことが言われている。一体どういうことなんです。
  148. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 松井君の質問にも関連いたしますが、日米間に日米安全保障条約があり、その自動延長にいま入っておる。そういうことはありますけれども、それ以外の第三の軍事同盟、さようなものはございません。また、ただいまお読みになりました記事、私はその中身も知りませんから、もちろん知りませんが、私は新聞記事について全部の責任はとれません、それは記事ですからね。
  149. 森中守義

    森中守義君 いま総理のそういうことでは納得できない。いやしくも天下の朝日新聞、これを読まなかったということはないじゃないですか。よろしいですか。しかも、政府筋においては、ひょっとすると総理の訪米にあたって正式に申し出があるかもわからない、こういうことが言われている。これが外務省あるいは防衛庁の段階にとどまっておるのか、総理がそこまで聞いておられないのか、その辺のことは聞いておらぬ、こういうことですが、あなた方はどうなんですか。
  150. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 去る七月レアード国防長官が訪日いたしました。その際、当時の中曾根防衛庁長官に対しまして、航空母艦の家族を横須賀に置きたい、こういうような希望のあることをそれとなく話した、こういう事実があります。それはどういう意味か、私がこれを解釈しますと、いまアメリカは財政が非常に窮屈です。そこで、第七艦隊でありますとか、いろいろな海外派遣部隊があります。その乗り組み員、その方々を本国の家族のところへしばしば帰す、これはたいへんな金がかかる。そこで、近傍、たとえば第七艦隊でいいますれば、日本あたりへその家族を置きたい、そうすると金が安く済む、こういうようなことであろうかと私は思うんです。しかし、まだ正式なお話には接しておりませんし、はっきり申し上げますが、総理には何ら御報告申し上げておりませんです。
  151. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) いま外務大臣から答えられたとおりでありまして、正式の窓口は外務省でございますから、正式なものであれば、まず外務省に話があるわけです。したがって、私どもも正式には聞いておりません。ただ、中曾根元防衛庁長官が、当時レアード国防長官訪日のときに個人的な立場でいろいろな話をしておりまするので、そういうときに話をした話題として出ておるかどうか、これは私は確かめておりませんので確答の限りではありませんが、あるいは出ておったかもしれない。しかし、正式には外務省を通じて要請がある、こういうことになりまするから、現段階では正式な要請はございません。
  152. 森中守義

    森中守義君 関連ですから、あまり時間をいただけませんが、まあ、おおむねこの種のものについては、当然戦術的な核兵器が装備されている、これは一般的な常識だと思います。そういうことになれば、当然、まずは事前協議の対象になるでありましょう。さらには非核三原則に抵触する。ですから、アメリカの国内事情がどうであろうと、当然非核三原則並びに事前協議の対象事項であるということであれば、おそらく外務省、防衛庁、その段階だけでは決定しかねる問題ですね、少なくとも。私はそう思う。そうなれば、総理、どう思いますか。今度アメリカにおいでになる際に表向きにこの話があったという場合、どういう処理をされますか。少なくともこの委員会の、日米関係が非常に重要な段階に来ている。これを議論している最中のことですが、少なくともこういうことは断わってもらいたい、こう思うんですけれども、もしもサンクレメンテでこういう話があった場合、お断わりになるのかどうなのか、そのことだけ聞かしていただいて、あと機会があれば、もう少しこの問題に触れさせてもらいたい。
  153. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この非核三原則、これはもう、はっきりしておりますし、また、核の持ち込みについて事前協議があれば、あらゆる場合にノーという、これはもうはっきりいたしております。だから、したがって、その点では誤解はないと思っております。また、私がニクソン大統領と会った場合に、沖繩日本復帰後において核のないことも、これは確認をする一つの問題でありますし、また、その後の持ち込みについても、私が当然確認をしておく必要があることでございます。これは別に困った問題でもございません。これは当然のことですから。これはいまおっしゃるようにいたします。ただ、私が先ほど申しましたように、新聞は私も読まないことがあります。幾ら天下の朝日でも、これは私も読まないことがある。それを読まないとか、天下の朝日にこう出ておるのだ、こう言われても、それは私責任を持てませんから、それだけはひとつ、これからもやめていただきたいと思います。
  154. 森中守義

    森中守義君 それは記事を中心にしての話で、そういうお答えも無理からぬと思いますが、要は、断わるということがはっきりしたわけだから、それで私はいいです。
  155. 松井誠

    ○松井誠君 先ほど総理は、第三次軍事同盟だということについて、それは条文も何もない、条約も何もないといって、むきになられましたけれども、条約という名前のウェートがあるかないかどうか、実は問題なのではない。あなたがニクソンと結ばれたとき一緒に発表されたあの共同声明、そして久保・カーチス取りきめ、この二つを合わして見れば、まさにわれわれが第三次軍事同盟と呼ぶものが何であるか、おわかりだと思う。しかし、このことは、私がいまここでこれ以上申し上げるつもりはございません。法律案の具体的な内容について、主として、あるいはもっぱらかもしれませんが、法律的な観点からお尋ねをいたしたいと思うのです。  最初に、この法律が書いておりまする告示というものの性格であります。御承知のように、この法律が全部が施行されるのは施政権が返ってきてから。しかし、施政権が返ってくる前に、この告示をするという部分だけが先に施行をされる。この告示は何かといえば、施政権が返還をされたときに引き続いて使用をしていこうとする土地の区域やその他について官報で掲載をして告示をするという、そのことを先に行なうということ。これからの私の議論は、非常に細い針の穴をくぐっていくような、たいへん微妙な問題でありますけれども、そういう意味では総理にはしばらく御用はございません。ただ、しかし、私がこれを聞きますのは、憲法三十一条との関係で実はこれが最大の焦点だからです。そういう意味で、しばらくお聞きを、実は、いただきたいと思います。  私は、最初に、この告示の性質について、衆議院で中谷鉄也議員が質問主意書を出した、それに対して、総理の名前で答弁書が出ている、それを手がかりにお尋ねをしたいと思う。私も、その後の衆議院における審議の経過は承知をしてきております。したがって、そう、くどい御答弁は要りません。ただ、この告示の性格について、われわれが常識的に読めば、これが何か、施政権返還というものを条件にした処分、告示そのものが、というように読むよりほかにない答弁がございました。しかし、それがその後訂正をされたというか、あるいはどういう表現をしていいのか、よくわからないような形で議論が進んでおりますので、一体、この告示というものの法律的な性格は何なのか、そのことを端的にひとつお答えをいただきたい。
  156. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) もうすでに、衆議院の論議で申し上げたことでありますが、告示というものだけを取り上げまして、抽象的に取り上げて法律的性質は何かといえば、これは表示行為であって、その基盤たる法の関係では、いろいろ、一般処分とか行政立法の性質を有するとか、準法律行政行為とか、いろいろ言われることは御存じのとおりでありますが、この場合に当てはめて言えば、準法律為的行政行為であろうということを申しました。ただし、この問題について、訴訟との関係、救済手続との関係がわれわれに頭にあったもんですから、それを行政庁の処分というほうにくっつけてお話をいたしましたので、多少まぎらわしいことがあったと思います。しかし、いまのお尋ねは、告示というものを純粋に法律的性質はどうかというお尋ねであると思いますので、前段のお答えにとどめておきたいと思います。
  157. 松井誠

    ○松井誠君 この点、それほど深入りするつもりはございませんけれども、ただ一言申し上げれば、何か、この告示——告示一般ではございません。この告示の一般的な性格は、準法律行為的行政行為。しかし、それを出訴ができるかどうかという、そういう観点から見れば、これは処分というような御答弁そのものが、実は私は珍妙だと思うんです。一つのものを、見方によって、何か法律的な性格が変わるかのような答弁自身がおかしいんです。しかし、そのことはもう済んだことですから私は申し上げません。問題は、準法律行為的行政行為というのは、具体的には、その法律行為というのは、権力なら権力が意思表示をする、その意思表示に従って法律的な効果が生ずるというのが、いわば法律行為的な行政行為。しかし、そうではなくて、権力がAということを、いわば表示をした。法律効果としてはBという形になって出てくる。しかし、そのBという形になって出てくるのは、Aという、いわば準法律行為をやったからなんだ、そういう意味で、準法律行為というのは準法律行為である限りにおいては法律効果がなければいけないわけですね。その法律効果が、いわば、告示をする人の表示とどういうつながりがあるかは別として、何かの法律効果がなければいけない。その法律効果というのは、この告示の法律効果というのは、一体何ですか。
  158. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) これも実は衆議院で何べんも出たわけでありますが、告示がなされますと、法律の構成上、法律を離れては申せませんが、その後に沖繩の返還という事実を到来しましたときに、告示された範囲内の土地等について、告示された使用の方法により使用することができる権限が国等に与えられるという、そういう法律効果が、法の規定に従って発生するということでございます。
  159. 松井誠

    ○松井誠君 施政権が返ってくれば、いま言ったような法律効果が生ずる、これは当然です。問題は、告示を出したときの、その現在の法律効果は一体何だと、施政権が返還をされる前の告示がなされることによって生ずる法律効果というのは一体何なのか、そのことをお尋ねしているんです。
  160. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 一言にして言えば、告示は表示行為でございますから、ですから、通知行為の性質を有する告示である、あるいは表示行為であると言ってもいいかもしれません。あるいは、お尋ねにそれで正当に答えたことになるかどうか知りませんが、告示自身の性格と言えば、知らせることである。簡単に言えば、そういうことです。
  161. 松井誠

    ○松井誠君 法律効果。
  162. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 法律効果としては、これは、もう何べんも言っておりますように、準法律行為的行政行為であるので、法律効果としては、法の基盤たる法の規定と一体となって、ある時期に法律効果を発生する……。
  163. 松井誠

    ○松井誠君 それは先ほどお伺いをしました。私が聞いておるのは、施政権が返還をされる前に告示そのものの法律効果があるのかということを聞いている。将来返ってくれば、それは使用権を設定される、その土地の区域が確定をされる、それのいわば前提がこの告示なんだ、それはわかります。そうじゃなくて、この施政権が返ってくる前に一体法律効果があるのか。そのことを聞いているんです。
  164. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 告示の内容は御承知のとおりでありますが、それが、その確定といいますか、そういう効果があるといえばある。——あるといえばあるというのは心細い言い方でありますが、要するに、意味のないものではない、その告示の中身が確定する、そうして法の基盤と一緒になってそれが施行されるときにその確定したものについて効果が発生すると、こういうことでございます。ただ、その御質問の点でございますが、告示として何か直ちに法律効果が発生するかとかいえば、これはノーでございます。
  165. 松井誠

    ○松井誠君 そうすると、法律効果が発生をするのは施政権が返還になってから。施政権返還までは法律効果というものはない。法律効果がなければ準法律行為的行政行為にならぬじゃないですか。単なる事実上の行為じゃないですか。つまり、単に予告をする、将来あなたの土地は取り上げられるかもしれませんよ、そういう予告をする、そういう事実上の行為しか実は政府はできないんです、政府は。沖繩施政権アメリカにあるから。それを、何か、事実行為ではなくて、法律行為であるかのような粉飾をこらそうとするから、やっかい、ややこしい説明が出てくる。そうじゃないでしょう。つまり、あくまでも法律効果が生ずるのは施政権返還後、現在の法律効果はゼロ、したがって、事実行為でしょう。
  166. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 何べんも申し上げておりますことでありますが、おっしゃることもよくわかります。よくわかりますが、返還のときに告示の法律効果が発生するという意味で、私どもはやっぱり、救済との関係がどうしても離れないものですから、潜在的と言っていいかどうかはわかりませんが、とにかく、そういう効果をやがて持つものとしての効果を持っているということであることは間違いはない。したがって、それが訴訟上の救済の対象になったりなんかするであろう、こういう考えを持っているわけです。
  167. 松井誠

    ○松井誠君 現在法律効果がなくて、返還をされたときに法律効果が生ずるとすれば、これがもし処分であるとすれば、前の説明である停止条件付処分という、あの説明のほうがむしろよかった。しかし、それを維持できなくなった理由を私は知っております。しかし、それはここじゃ言いませんが、それを維持できなくなった。そこで、何かしかし法律行為らしいものを求めなきゃならぬということで、準法律行為的ということばを使った。しかし、実際法律効果が出ていない。御存じのように、あの土地収用のときに、収用すべき土地の細目というものを公告をする。しかし、これは明らかに法律効果を伴うんです。つまり、公告をすることによって、その土地に対する変更が制限をされる。したがって、それは将来収用されるときに初めて効力が生ずるのではない。告示をされたときに、その土地はもう動かすなよ、形を変えるなよ、そういう制限が伴う。まさにこれは法律効果です。それが、あなたに説明するのも変ですけれども、準法律行為的行政行為というものでしょう。しかし、これはそうではないじゃないですか。そのことを、はっきりさしてください。
  168. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 非常に学理上の、アカデミックな議論を、衆議院の段階で私は少なくも予想しておりませんでした。そうして告示の法律的性格というのも、実はその日に提起をされた問題でありましたが、そのときに、準法律行為的行政行為、それはもちろん、返還時の効果、これと結びつけて申したことは言うまでもございません。そうして、訴訟上の対象としての行政庁の処分として理解されるべきであろうし、また、それで訴訟が提起されるであろうというふうに申し上げたつもりでございます。条件付処分——処分ということを言わなかったのは、まさに、言わなかったというよりも、最初申しておりましたのは、条件付処分になぞらえて説明をしたという時期が実はございます。ございますが、告示としての、何といいますか、行政法学上の議論としては、返還時の効果も踏まえまして申し上げたわけであります。
  169. 松井誠

    ○松井誠君 まあ、なぞらえてなどというのは、どだい法律用語ですよね。しかし、これはもう申し上げません。  私は、総理に聞いていただきたいのは、実際、現在の、法律効果を生じていない、単なる事実行為にしかすぎないのに、法律効果を持たせようとして無理な説明をするのは一体何か。これは、そうなりますと、憲法三十一条からいって、おかしいじゃないですか。そういうことを言われることを避けようとして無理をしておられるのですよ。憲法三十一条というのは、三十一条そのものというよりも、むしろ、いわゆる適法手続というか、適正手続というか、そういう憲法の精神、そういうものに、単なる事実行為の通知でしかないということになると、違反をするじゃないか、そういう非難を実はおそれておるからなんです。何が一体適正手続か。憲法の三十一条には、御承知のように、法律できめなければ命を奪ったり自由を奪ったり刑罰を科したりすることはできませんよということが書いてある。しかし、それだけではなくて、財産を奪うときにも、やはりかってにはできませんよ、それはそれなりの事前の手続が要りますよというのが憲法三十一条の精神だというのは、いまは憲法学者のむしろ多数説です。いままでは、財産権が公権力によって侵害をされる、そういうときに裁判をやる道があればいいじゃないかというように思われておった。しかし、それではだめなんです。事前にやはりチェックをするというチャンスを国民に与えるべきではないか、そういう意味で適正手続というものが必要なんだというように変わってきて、それがいまやわが国の憲法解釈でも多数説になっておる。これは、事前にそういうチャンスを与えるというのは一体何かといえば、そういう財産権を侵害しようとするときには少なくとも事前に通知をしなさいよ、そして弁解の機会を必ず与えなさい、そういうものがなくて財産権を侵害をするのは憲法三十一条に違反をしますよ——これはもう最高裁の判例も出ておるわけです。いわゆる第三者没収という、関税法の規定やなにかによって、ある人が処罰をされる、たまたまその人が処罰をされたその品物というのが第三者の品物だった、そのときに、裁判でこの第三者の品物を没収しますよという判決をする、没収された第三者は全く寝耳に水で何にもわからない。したがって、この関税法の規定というものは憲法違反なんだという最高裁の判例が出た。それだけではなくて、もう総理もずっと衆議院におったから、お聞きになって覚えられたかもしれませんけれども、ついこの間、松山の地方裁判所で、あの松山空港をつくるとき、埋め立てをしなければならない、埋め立てをすると漁業権者が損害を受ける、そこで、その埋め立てちょっと待った、という手続が行なわれた。そのときに、松山の地方裁判所はどういう判決をしたか、どういう決定をしたかというと、これは肝心な漁業権者に何も知らしていないじゃないか、その人たちが弁解するチャンスを少しも与えていないじゃないか、ですから、そういう公有水面埋立法のこの規定というものはおかしい、だからこの埋め立てはちょっと待てといって、埋め立てをとめた。総理大臣は、よくあのデモの規制のときに、異議の申し立てというのをやりますね。あれをこのときはやらなかった。そのまま確定をしたのです。  つまり、そういうように、憲法三十一条の精神というのは、現に具体的に動いて、生きた法律になってきておる。それにこの公用地法というものはまっ正面から違反をするじゃありませんか。事実上それは通知をするでしょう。しかし、法律的な効果を持つ通知というものはあり得ない。沖繩に、なるほど一人一人の人に手紙をやるということはできるでしょう。しかし、その手紙が、その通知が、日本政府の、日本本土法律による効果を生ずることを沖繩ではできない。沖繩施政権というものはアメリカが持っておる。したがって、通知はできても、事実上の行為としての通知はできても、施政権が返ってくるまでは、日本本土上の法律効果を生ずるような、そういう通知はできない。できないから、何かないかと思って考え出したのが、あの告示という方法なんです。しかし、これだって同じことなんです。沖繩には効力がないんです。  そこで、いままでもちょっと問題になっておる点を申し上げますけれども、盛んに政府は、この告示というのはあらかじめ関係者に知らせることなんだ、そういうことを提案理由でもちゃんと言っておりますし、答弁書にもそのように書いてある。なるほど沖繩の人たちは、事実上それを知る機会があるかもしれない。しかし、法律的にそれを知らなければならないという立場にはない。日本政府が強制的にそれを知らせるという方法もできない。事実上知り得るかどうかは実は問題ではないんですね、それは、関係者に知らせるといったって、つまり法律上の仕組みとして知らせるという方法は一体あるのかということです。異法地域という——法律の異なる、そういう地域日本政府の通知が法律的な効果を生ずるような、そういう行為は、どだいできないでしょう。それは、所有者は、テレビを見たり、あるいは事実上琉球政府が縦覧をさせる図面を見たりして、自分の土地がこれは収用されそうだというようなことはわかるかもしれない。しかし、それは答弁書自身が認めているように、そういう縦覧というのは本土法上の効果はないわけでしょう。  それじゃ一体沖繩の人たちは、たとえば返還協定なら返還協定に覚え書きがあって、ABCというリストがある。それを彼らは、いやでも知らなきゃならぬような法律の仕組みになっておるかというと、そうでもない。この返還協定は、いわば沖繩の人たちは頭越しにきめられたわけです。琉球政府が介入しているわけでも何でもありませんから。したがって、それを彼らは法律的な仕組みとして知り得るという立場にはないわけです。事実上知り得るかどうかは別ですよ。そういう意味で、この告示というのは、そういう意味で事前の通知という効力を持ち得ない。だとすれば、いま私が二つの判決を申し上げましたような、そういう考え方からいけば、明らかにこれは憲法に違反をする。それは、事実上知り得るチャンスが多いから違憲性というものは薄いかもしれませんよ。率直に言って、薄いかもしれませんけれども、しかし、違憲でないということには私はできないと思う。いかがですか。
  170. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 二つの判例をおあげになりまして、一つは付加刑だったと思いますが、それについて三十一条の規定適用関係が十分でないというやつと、もう一つは、あれはどこですか、四国、地方裁判所の判決ですね。これは、一般の行政手続にもこの三十一条が適用になるんではないかという前提の規定であったと思います。いずれもその点については私は実は質疑者と異論はないのでありまして、三十一条というのは、刑罰に関する規定のように形成上は見えるけれども、この法意というものは、やはり行政手続にも、類推というか、法意を尊重するというか、その言い方はいろいろありましょうが、やはり同じように考えてしかるべきであろうということもわかります。わかりますが、とにかく前提として、全然無視をしておいでになるんではないかと思うのが、やはり施政権の返還ということであります。要するに、現在沖繩は、不幸にしてアメリカ施政権のもとにあり、これからこれによって返還を求めようということ。したがって、たとえばこの告示の問題だけを取り上げられて議論をされますが、実は法律についてもすべてそうでありまして、法律の公布というのは、沖繩の住民がこれから日本国民として受けるであろう法律というものは、現地において公布されたということがないものもある。いわば、現にいま審議をいただいておる法律もそのとおりでございますが、それはなぜかと申しますと、施政権日本施政権のもとにないという一点からであります。  もう一つ、公共用地の取得に関する法律は、一つのやはり認識に立っておりまして、これが公共の目的に供されておる、この公共の目的に供されているには、やはりその土地の使用権原を取得する必要がある、その使用権原を取得するために、あらゆる手を尽くして、本土と同じような手を尽くしてその権限を取得するけれども、万やむを得ない場合には、これを暫定的に使用するということが、また公共の利益のために必要であるという認識に立っておるわけであります。根本的には、施政権日本にない、アメリカにある、そういうことからいって、そこに差が生じるのは全くやむを得ないことである。これは法律の公布を考えてみれば全く同じではないか。こういうふうに考えております。
  171. 松井誠

    ○松井誠君 どうも法律の専門家である長官が、はなはだ法律的な御答弁じゃないわけですね。もし、いま言われたことが、こういういわば特殊な場合なんだから、だからこれは事前の通知がなくっても憲法三十一条には違反をしないんだというように解釈するべきだという趣旨なら、それはそれで一つの見識でしょう。しかし、いま言われたのは明らかにそうじゃない。もっと問題は——時間がありませんから先へ急ぎますけれども、この同じ答弁書の中で、その前には停止条件付の処分だと言っておるすぐそのあとで、この告示というのは、その所有者が沖繩に住んでおろうと何であろうと、いわば直ちに施行のときから効力を生ずる、こういう一項目がありますね。この効力を生ずるというのは一体どういうことか。
  172. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 御答弁申し上げます。  中谷議員からこの点についての実は再質問主意書が出ておりまして、それについてお答えをすべく目下準備中でありますが、ここで申しました告示の効力というのは、告示としての、告示そのものの、要するに表示行為としての効力、それを申しておるつもりでございます。
  173. 松井誠

    ○松井誠君 表示行為としての効力。先ほど申し上げましたように、法律効果は現在ないと言ったのですから、表示行為の効力というものがあり得るわけがないでしょう。
  174. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 先ほども申し上げたことでありますが、対象土地の確定、それから使用方法というもの、これが現実に取得、使用の効果を発生するのは、先ほども申し上げましたとおりに、返還が到来をしてこの法律が効力を発生したときでありますが、その対象たる土地の区域とか、あるいはその使用方法とか、そういうものについて、この表示としての中身、これが、効力を生ずるということばは、あるいは不適確だったかもしれませんが、実はそういう意味で申しているつもりでございます。告示の効力というのは、その中身を踏まえて、そういうものが相手との間に関係を生ずる、こういう意味でございます。
  175. 松井誠

    ○松井誠君 おそらく、言われている御本人も、私は、よく意味がわからないのじゃないかと思いますね。たいへん失礼な言い方ですけれども。これは、先ほども言いましたように、範囲の確定をするというその法律効果は、返還をしたときでなければ生じない。だとすれば、これは法律効果はないではないか。とすれば、準法律行為的なものではないではないかということを申し上げたわけです。ところが、その効力というのは、表示の効力がまた生ずるというと、また話がもとへ戻る。しかし、いま長官がちょっと言われた、一番最後に言われた、いわば人との関係でというふうなことを言われたでしょう。私も、中谷君が十三日のあの最終の日に質問をしたときの、いわば傍聴してもらった人のメモを持っております。その人——長官ではありませんでしたけれども、となたかが、何かそういうことを再三言っている。それは、沖繩という地域には効力は及ばぬけれども、しかし、沖繩にいるその所有権者との関係では効力は及ぶんです、属人的に及ぶんです、その人との関係では確定をするんですよ、こういう説明をしておるんですよ。それは、あなたじゃありませんが。そういう趣旨ですか、いまあなたが言われたのは。
  176. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 告示は、要するに、告示そのものを抽出して言えば、表示行為であることは間違いありませんし、それが、法律が効力を発生したとき、つまり返還のとき、このときにその中身に従って、告示された中身に従って使用権が発生するということも、先ほど申し上げたとおりであります。これを俗に、先ほど、そういう意味で潜在的なものがあるではないかということを申し上げもしましたが、その告示の中身に従って効力を発生するという、それを何と申し上げていいか、ちょっと一言では言えませんが、そういう潜在的なもの、そういうものが、やはり告示の中身できまっておるということを——そうでなきゃ告示は全然意味をなしませんが。告示は、土地の区域、使用の方法、これを定めまして、その定めたところに従って、返還時において法律上の使用権の取得という効果が発生する。したがって、告示されたところに従って、定めたところに従ってというのは、実は告示のときにきまっておる、こういうことは申し上げられると思います。
  177. 松井誠

    ○松井誠君 潜在的などということばは、どだい法律用語にはないでしょう。潜在主権などということばはありますけれども、潜在的というのは一体何かと言えば、いわば予告だということですよ。現在は事実行為だということです。それを意味ありげに言えば潜在的ということになるだけの話であります。もう、そういうことを私は聞いてるんじゃないんです。ですから、効力があるというのは、あなたの言われるように、やっぱり、現在は、せいぜいあって、潜在的と言うよりほかには言いようのない、事実上の予告の効果しかないわけです。そういうことになりはしませんか。つまり、これは、だれか、さっき、苦しい答弁だという不規則発言がありましたけれども、まさにこれはその矛盾の象徴みたいなもの、苦悶の象徴みたいなものですね。なぜ一体こういうことになるのか。これはまさに、いままで沖繩アメリカがやっておったこと、そのことを何のチェックもしないで、そのまま引き継ごうという、そこから来る、実は、これは矛盾なんです。そうお考えできませんか、総理
  178. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも、私自身が法律に弱いものですから、ちょっとわかりかねております。ことに、たいへんデリケートなお話のようでございますので、私がどうも法律的には、これに答えることはできません。
  179. 松井誠

    ○松井誠君 総理も、あなた、法学部の御卒業なんですから、私の先輩ですからね、全然わからぬわけはないでしょう。まあしかし、それはいいですが……。  しかし、もう一つ問題なのは、先ほどちょっと言いましたように、二十九条三項違反ではないかという、そういう問題であります、これはもう、主として自衛隊の用地ということから来るわけでありますけれども、もちろん、それだけではない。このことについて、最初に実はお尋ねしたいのは、防衛庁長官、この間の本会議で、どなたかの質問に対して、沖繩の人たちは特殊な感情を持っておるというようなことばを使われた。先ほど総理は拒絶反応……。
  180. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 拒否反応。
  181. 松井誠

    ○松井誠君 拒否反応というようなことを言われましたね。それならまだわかる。しかし、特殊な感情というのは一体何か。むしろ、われわれから言わせれば、沖繩の人たちの感情のほうが正常なんですよ。麻痺をしておるわれわれのほうが、むしろ特殊なんです。特殊というと、何か異常な、一種のアレルギー、病的なアレルギー、そういう響きを与える。まさか、そういう意味で言われたのじゃないでしょう。
  182. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 自衛隊に対して深い理解がない、そういう表現が、表現としては正しかったかもしれないと思います。やはり、あの終戦の時点の日本軍隊に対する暗いイメージ、あそこで勝敗が事実上きまったような最後の場面ですから、やはり、軍隊でない、ほんとうに専守防衛というか、自衛力に徹するといっても、それはやはりなかなか右から左へそのように理解を深めることはむずかしいことだと思います。まあ、そういうような心境を指して表現をしたわけであります。
  183. 松井誠

    ○松井誠君 そのいわゆる長官の特殊な感情というものを沖繩の人たちは持っておる。これはまさに正常な健康な感情ですよ。この健康な感情から、沖繩の人たちは自衛隊が来るのを拒否をしておる。それを、しゃにむに土地を奪って、出ていこうという。これを、自衛隊の進駐ということばで呼んでおることは御承知のとおり。  そこで、この問題について、なぜ一体二十九条違反になるかという問題をお尋ねをしたい。  一体、この自衛隊というものが「公共の」ということになるのかならないのかということについて、いままでずいぶん議論が出ておる。そして、昭和三十九年の五月の衆議院の建設委員会の議事録で、その当時の河野建設大臣が、この、自衛隊というのは「公共の」の概念には入らない、「公共の」という条件——これは土地収用法の問題ではなくて、土地収用法のいわば特別法である公共用地の取得に関する特別措置法ですね、あれの審議のときに、河野建設大臣が、「公共の」という条件がこの法律にはついておる、「軍施設を「公共の」の範囲に入れるということは適当でない、これはもう社会通念じゃなかろうか」、こういうことを言っておるわけですね。それに対して、いままで政府が言っておるのは、西村建設大臣も言っておるわけでありますけれども、これは土地収用法の「公共」ということを言っているんじゃないんだ、土地収用法の「公共」というものには当たらないということを言っておるんじゃないんだ、そうじゃなくて、あの特別措置法の中における「公共の」という、それに当たらないんだ、あの成田の空港をしゃにむにつくったときのような、ああいう、いわば公共事業というものにはなりませんよということを言っておるだけなんだ——したがって、土地収用法における「公共」というものは否定をされていないんです。そして、自衛隊は土地収用法におけるいわゆる公共の事業の中に入るんだ、こういうことで、いとも簡単に答弁をされておりますね。それでいいんですか。
  184. 西村英一

    国務大臣西村英一君) この公共用地の取得に関する法律そのものは、公共事業がたくさんあるけれども、特にそのいわゆる公共事業というものに対して特別なものを定めようという法の精神であったわけでございます。それで、そのたくさん条項があがってまいっておったのですが、その改正のおりに、まだその他たくさんここへ入れなきゃならぬものもありますから、この第八号を設けまして、その第八号のいろいろなものの中で政令で定めようといったときにそういうことを申したのでありますが、私たちは、まあ河野先生がなくなっておるから聞くすべもありませんけれども、やはり、いわゆる「公共事業」というのには適当でないじゃないかということで、この法律の中に入れなかったんでありまして、土地収用法が自衛隊云々、自衛隊の関係を言ったものではないと私たちは解釈いたしておるのでございます。したがって、政令でも定めておりません。
  185. 松井誠

    ○松井誠君 河野さんがなくなっておられるわけですから、その発言の趣旨を聞くわけにはまいりません。だとすれば、この議事録を読んで判断をするよりほかにないでしょう。その議事録で一体河野さんは何と言っているか。いま言ったように「「公共の」の範囲に入れるということは適当でない」と、こう言っておるのですよ。この「公共の」ということばは、土地収用法に書いてある「公共」であろうと、特別措置法に書いてある「公共」であろうと、「公共」ということばには二つあるわけはないでしょう。つまり、河野さんが言っておるのは、自衛隊というのは公共という概念には入らないんだ——これは当然土地収用法にもかかりますよ。そう解釈する以外にないでしょう、これをすなおに読めば。それを何か、土地収用法のほうの「公共」までを否定したんじゃない、この特別措置法の「公共」のだけを否定したんだ、そんなに読めるわけないじゃないですか、これ。
  186. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 公共用地の取得に関する特別措置法、この八号でしたか七号でしたかに、「政令で定める」というのがあって、そこに「公共の」ということばが使ってある。その「公共の」ということばの意味内容に照らして河野大臣が説明されたことは確かだと思います。その限り、河野大臣のお答えは正しいと思いますが、それがそうだからといって、逆に今度は、土地収用法の対象にならないとまで結論づけるのはやはり早過ぎるのではないか。もっとも、別の議論があれば別でございますが、そのことだけからそう判断するのは早過ぎないか、率直に申して、そういう感じがいたします。
  187. 松井誠

    ○松井誠君 この特別措置法に書いある事業は、いわば、公共の中で、たくさんある、その中で特に公共の利害に関係深いもの、緊急性のあるもの、これは特別措置法で処置をしましょうということで、公共に二つあるんじゃない。その一つの、公共の中で特に急ぐもの、特に重大なものは緊急措置をとりましょう、こういうことで、公共という概念そのものを二つに分けておるのじゃないのですよ。そんなこと、できるわけはないじゃないですか。
  188. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 私の答弁がまずいのか、公共ということばを二つあると言っているわけではありませんで、暫定措置法における「公共の」、その「公共の」という、あそこには入らぬだろう。つまり、全くその答えは正しいと思いますが、特別措置法における政令の対象としてそういうものは入らないというのは、これはもう全く正しい解釈だと思いますが、それ以上に、そこから発展をして、ほかにまで及ぶというのには、何か、おそらくお示しになる論拠があるんではないか。もし論拠があれば、そのほうをおっしゃっていただきたいと、こういうことです。
  189. 松井誠

    ○松井誠君 あなたは河野さんの発言をかってに解釈していますけれども、何べんも読むように、「軍施設を「公共の」の範囲に入れるということは適当でない」、こういうことを言っているのであって、つまり、公共の中の重大性がないとか、公共の中の緊急性がないとかという問題と言っているのではないのです。「公共」ということばだけを取り出して、その「公共」というものと自衛隊というものは縁がない、こう言っておることは、これをすなおに読めばわかるでしょう。そうじゃないですか。もうあんまり押し問答をしませんが、ひとつ簡単に願います。
  190. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 公共の中の緊急性があるものに入るとか入らぬとかということを私は申しているのではなくて、特別措置法における「特定公共事業」という定義がございますが、いわゆる公共事業として列挙されてずっとありまして、その「公共」には入らない、こういうことを言っているわけです。そのほかのことは何も言っておりません。
  191. 松井誠

    ○松井誠君 あなた、この議事録をお読みになったのですか。読めばそんな答えは出ませんよ。  しかしまあ——それはむしろ、この二十九条違反という最大の問題は公共というところにあるんじゃなくて、もう別なところにあると思う。二十九条三項というのは、御承知のように、財産権を侵害をするときに、目的としては公共のために使うということでなければならぬ。しかし、それだけではなくて、これは答弁書自身が認めておるように、そのために収用をするときには、公用で収用をするときには適正かつ合理的だという基準がなければならぬ。これは答弁書でも言っておりますから、確かめる必要もありませんけれども、間違いないですね。
  192. 林信一

    政府委員(林信一君) お答えいたします。  土地収用の場合に、土地をその用に供することが適正かつ合理的でなければならないということは、土地収用法あるいは地位協定に伴う土地等の使用等に関する特別措置法にも規定しているところでございます。
  193. 松井誠

    ○松井誠君 そのとおりなんですよ。土地収用法にも、適正かつ合理的でなければならぬということを書いてある。いま問題になっておる特定公共事業の中にも、適正かつ合理的でなければならぬということが書いてある。そして地位協定によってアメリカ軍のために基地を特別に使う特別の措置法にも、やっぱり適正かつ合理的でなければならぬということが書いてある。そこで、沖繩における米軍の基地、それをそのまま認めることが適正かつ合理的だという判断の基準に一体合うのかという問題が当然出てきますね。それについて、時間の節約のために私のほうから申し上げますけれども答弁書の中では、ずいぶんまわりくどい表現をしてありますけれども、こういうことを言っているのですね。いままでアメリカ軍が使っておったのは、いわば公用か公共用か知りませんけれども、そういうことで使ってきた、それを引き続き使うということ、これは適正かつ類型的に見ればということばを使ってある、類型的に見れば適正かつ合理的なんだ——これは一体どういう意味ですか。
  194. 林信一

    政府委員(林信一君) お答えいたします。  適正かつ合理的とはいかなる意味かというのは非常にむずかしいと存じますが、究極のところは、やはり公共の福祉と私権との調和と申しますか、均衡と申しますか、そのバランスのとれたところがどこにあるかという問題であると思います。この場合につきまして申し上げますと、ただいま御指摘がありましたように、従前公用または公共に供されている土地、その土地を復帰の際引き続き同様の公用、公共用に供するということでございます。この点は、実は使用期間——使用にとどめておるわけでございますが、使用期間の長短、収用までいくかどうかといったような強制の程度とのかね合いその他勘案いたしまして、この法律規定いたしました要件、これに該当いたしますものは一応適正かつ合理的というふうに考えてよろしいのではないかということでございます。
  195. 松井誠

    ○松井誠君 つまり、手っとり早く言えば、いままでアメリカ軍の——とりあえず、自衛隊のやつは別にします、アメリカ軍の基地として使われておった、それを返還後何がしかの期限をつけて、同じ——アメリカ軍の場合には同一ですね、同一の用途のために使う、これはもう適正かつ合理的だと、ひとつ答弁は簡単に願いたいのですが、そういう趣旨でしょう、手っとり早く言えば。
  196. 林信一

    政府委員(林信一君) 用途が同じであるということのほかに、暫定使用期間等も勘案いたします。さらに、だれがそれを強制使用するかという点も、もちろん勘案いたします。
  197. 松井誠

    ○松井誠君 そのアメリカ軍の基地をそのまま引き継ぐのが、この公用収用の場合の、土地を公用的に収用する場合の、どうしてもなくてはならない基準である、適正かつ合理的というものに合うという考え方自体が、およそわれわれには理解ができないのですよ。何か、高辻さんは沖繩へ行かれたことがないそうですけれども沖繩へ一度行って、あの基地の状態というものを見てごらんなさいよ。日本人が入ることのできない海水浴場というのは幾つもある。実に広大な、整備をされた大きなゴルフ場がある。ところが、一方では、ほんとうに役場ごと全部いい土地を取られたために、谷間のようなところに引っ込んで暮らさなければならぬという部落や村がある。追っ払われて離島のほうへ行って、今度の災害でまたたいへんな目にあっている人たちがおる。そういう中で、あのゴルフ場や海水浴場が適正かつ合理的だという基準に合うと考えることがおかしいじゃないですか。私は、あまりでかい声を出すのは好きじゃないのですが、しかし、これは腹が立ちますよ、こういう考え方は、現に、総理、これはもう二十九年、古い話ですけれども、講和後間もなくで、まだ進駐軍のいわば威力が強かったころ、東宝という映画会社が、あれは場所はどこでしたか、自分の映画劇場をアメリカ軍に接収された。それは適正かつ合理的じゃないじゃないか、返してくれという裁判を起こした。裁判所は、そのとおりだ、兵隊の娯楽施設などというものは、適正かつ合理的じゃない、そういう判決があるんですよ。そういうものを引き継いできて——そんなものと比べられませんよね、ゴルフ場なんというものは、海水浴場なんというものは。そういうものを引き継いできて、これが依然として適正かつ合理的であります、そういう法律解釈が、法学士である佐藤首相にお尋ねしたいのですけれども、あり得るでしょうか、一体。
  198. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ずいぶん無理をした軍基地、この軍の土地だと、かようなことは、私も読んだり、また聞かされたりして、さようには思います。しかし、とにかく、いまの状況を急激に変化を与えるわけにいかない。こういうような条件もございますから、そういう意味で一応引き継ぎ、さらにまた衆議院の決議等もあり、これらの基地の整理と積極的に取り組めと、こういうことでございまして、私は、現状そのものが全部適正な処置あるいは適法、まあ言われるような状況で取得されたものとばかりはなかなか言いかねる、こういうものが実際にはあるんではないか、かように思います。
  199. 松井誠

    ○松井誠君 それはやっぱり率直にお認めになるべきですよ。そうしなければ、これからあとの返還交渉の土台ができないじゃないですか。これはみんな適正かつ合理的でありますなどといっておって、一体返してくれと言えますか。ですから、やはり明らかに適正でないものがある、その前提に立たなければ交渉はできないでしょう。問題は、しかし、このアメリカ軍の基地よりももっと問題は、自衛隊の問題にある。自衛隊が引き継ぐのが一体なぜ適正かつ合理的なのか。これは、この答弁書では、同一の用途でなくて同種の用途、似たような種類の、同じような種類の用途に使うということで、アメリカ軍と違うけれども同種だから、言ってみれば適正かつ合理的だという基準には当てはまるのだという答弁なんですね。同種とは何ですか。これは、やめた西村さんが言っておるのですけれども、つまり、機能としては同じだ、日本を防衛するという機能として同じなんだ、アメリカ軍も日本軍も同じなんです、だから同種だ、だから、アメリカ軍が使ってきたのを自衛隊がそのまま使えば依然として適正かつ合理的という、それも引き継ぐのだという説明をしておるわけですね。しかし、問題は、このアメリカ軍と自衛隊が機能が同じかどうか、このことにも大いに議論があります。しかし、それは申しませんけれども、それよりも、機能が問題じゃないのです、使用する根拠は一体何なんだ。われわれ反対ですけれども、とにもかくにも、アメリカ軍があれを使用するという背後には、確かに安保条約というものがあります。安保条約があって、基地を提供しなければならぬという日本政府の義務がある。しかし、自衛隊の場合には、提供しなければならぬ義務は日本政府にはないわけです。アメリカの場合には、あるいはやむを得ないという考え方があるかもしれない。そういう意味で、適正かつ合理的だというその基準に何がしかの変更があり得るかもしれない。しかし、そういう義務が何にもない、そういう自衛隊とアメリカ軍と一緒に考えて、アメリカ軍に使わせていたものはやっぱり自衛隊にも使わせるべきだ、そんな一体論理がありますか。同種というのは、一体そういうように解釈して簡単に変えられるものですか。これは借家の話ですが、人に家を貸していますね、Aという人間が入っていた、それが出て行って、今度はBという人間が入る、同じ月給取りかもしれません。しかし、家主として見れば、AとBとは違うのだからBには貸せませんよ、当然そういうことを言う権利はあるでしょう。同じことですよ。アメリカ軍と自衛隊とが同じような機能、価値をしておるかどうか、言ってみれば、お上の都合です。取り上げられておる県民の側から言えば、今度日本復帰したら帰ってくるのではないかという期待があったところが、借家人が変わってきた、借家人というよりも、主人公ですね。そういう人たちの感情を考えるときに、これは同種だから、だから適正かつ合理的で依然としてありますよ、そんな理屈が一体、それこそ沖繩の心に通ずると思いますか。総理大臣、ひとつ常識的にお答えをいただきたいと思います。
  200. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、まあ、自衛隊、これが米軍とは違う、米軍が使っておったのを自衛隊が使用する、こういう場合に、沖繩の方でも、外国の兵隊には貸さないけれども、うちのほうの自衛隊ならこれはもう迎えますと、こういうような方もあるんじゃないですか。いま首を横に振られるけれども、そうじゃなくて、まだ、さっきの例が、AがBにかわった、同じ月給取りだと、こう言われるが、私は、そうじゃなくてやっぱり異国の軍隊というか、それにはたいへんな強い反応があると、かように思いますが、沖繩が祖国に復帰するその際に自衛隊の防衛区域になる、これはやっぱり、県民の方も、その理解はアメリカの兵隊と同じようには考えない、私はさように思いますがね。これは同様じゃないんでしょう。
  201. 松井誠

    ○松井誠君 総理の言われるのは、実は逆なんですね。つまり、アメリカ軍には泣く泣くとられた、しかし、わが国の場合になったら言いたいことも言えるんじゃないか、それが心情ですよ。アメリカ軍には貸したけれども自衛隊には貸せないなどということを、いまのような異民族というようなことばを使って何か民族感情をくすぐって、それで沖繩の心が満足するようなものじゃないですよ。ですから、本来ならば、これはもう、返ってきたときに、まさに適正かつ合理的であるかどうかという判断をして、そして自衛隊との関係を出発をさせるべきなんです。そういうチェックの機会というものは一つもないでしょう。一つもなくて、ますます適正かつ合理的という基準がなくなってしまう。そんなばかなことはないでしょう。何のために一体日本に返ったのかという感情がやっぱり出てくるのはあたりまえですよ。ですから、そういう意味で考えれば、自衛隊はもちろんのこと、これは、アメリカ軍の基地も、いまのこの公用地の暫定使用という、継続使用という形で引き続いていくことは、一つには「公共の」という問題がある。しかし、もっと大きく言えば、適正かつ合理的という基準がない。つまり、そういう意味では、この公共のために使うときの二十九条三項の、言ってみれば近代的な基本原則ですね、そういうものを踏み破っておるわけです。明らかにこれは二十九条三項違反だと言わなきゃならぬ。そうじゃないですか。
  202. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、先ほど非常に素朴な意味でお答えをしたのですが、さらにまた、実際問題としては、自衛隊の場合にはどこまでも話し合いを主にやるわけですよ。そうして、これまた実情上、沖繩の特殊事情からいたしまして、移民その他でどうしても話のできないところがある、そういうときにこの法案が、法律適用されると、こういうことでございますから、よほど実情は変わってくるんじゃないかと、かように思いますので、その点は、まず、話し合いがどこまで沖繩同胞に理解していただけるか、そういうところにあるんじゃないでしょうか。
  203. 松井誠

    ○松井誠君 私はいま法律論をやっておるので、運営によってよろしきを得ますよということでは、実は答えにはならない。この法律の仕組みそのものが一体どういうものかとういことを議論をしておるのであって、したがって、憲法違反の仕組みなんだから、これはやっぱりおやめなさいよと言わざるを得ない。  そこで、公用地の問題について、もう一つ憲法の問題とのつながりで申し上げたいと思うんです。それは九十五条の問題です。これは簡単にいたします。  先ほど同僚の占部議員から、松井がやるんだというその予告がありましたものですから、これはどうしてもやっぱりやらざるを得ないわけでありますけれども、この九十五条を、つまり、自治体の組織や運営に関する特別な法律の場合を言うんだという考え方が、確かにいまの日本憲法学者で多数だということは私も認めます。しかし、全部がそうでないことは、もう長官も御存じのとおり。なぜ、そうではなくて、何も必ずしも自治体の組織や運営に関する特別法だけでなしに、その地域だけに適用されるその法律でも、この九十五条によって住民投票が要るんだという考え方になるかと言えば、これはまさに、母法であるアメリカ制度の問題ですね。  で、これは簡単に申し上げますけれども、一体、こういう法律ができたモデルであるといわれておる——これは一九四八年ですか、アメリカの都市連盟というのがつくったモデルの州憲法です。それによると、一地域の特別の法律をつくるときには住民投票をしなさいよという規定を入れた、これがアメリカのこの特別法の歴史の中で、いわば、いまたどりついておる一つの結論です。この特別法というのは決して組織や運営だけに限定をされておるわけじゃない。このモデルの州憲法というものを、いわば土台にして日本憲法というものができ上がった。これはもう歴史的な沿革が示しておるとおりです。アメリカのこの解釈というのは、長官が言われるように、その自治体の組織、運営につながるようなものでなければ住民投票はする必要はないと言うんではない。なぜ一体こういうような考え方が出てきたかと言えば、これは、実は中央と地方とのいわば戦いというか、トラブルというか、そういうものが生んだ産物なんですね。先ほど総理は、何か、占部議員の質問に対して、中央と地方が対立をするような考え方が基礎にあるからいかぬというようなことを言われましたけれども、しかし……。
  204. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 言わぬ。
  205. 松井誠

    ○松井誠君 言われましたね。
  206. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そうは言わぬ。
  207. 松井誠

    ○松井誠君 言われましたけれども、残念ながら、この日本の中央集権の歴史というのは、確かにそういう歴史はない。しかし、それは決してほめたことじゃないんです。まさに、この地方分権というものが発達をして地方自治というものが発達をすれば、中央と地方とのトラブルが起きるのはあたりまえなんです。そのときに、中央の政府がその地方政府というものをねじ伏せようとして、かってにその地方政府を押えつけるような、その地方の不利益になるような、そういう法律をどんどんつくって困る、そこで地方の住民は、それに対する抵抗として、こういう憲法をつくることによってわれわれはひとつ身を守ろうじゃないか、そういうことになったのがこの歴史でしょう。ですから、そういう歴史から考えると、これは非常に大事にしなきゃならぬ実は規定なんですね。  そこで先ほどちょっと占部議員との間のやりとりで問題になりましたけれども、これは、九十五条という、まさに沖繩に特別につくられるこの法律、これは実質的には私はやっぱり憲法十四条の差別の問題があると思うんです。しかし、その差別をいわば治癒をさせるためには、その傷をなおすためには、この九十五条で住民投票をやる。そのことでどうなるかわかりません。わかりませんが、それをやるということがなければ——総理は先ほどから言っている、沖繩の心を問うのだと言います。しかし現実には沖繩の心を問わないでこういう法律をつくってしまった言ってみれば、その罪滅ぼしに、これはやっぱり住民投票をやるべきですよ。そのときに、形式的な議論から言えば、いまのこの九十五条というのは日本憲法沖繩はまだ日本の領域じゃないんだから、九十五条をいきなり沖繩に持っていくわけにはいきません、そういう形式論が出るでしょう。これはどうなんです、政府はやっぱり主張されるつもりですか。
  208. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 九十五条の問題はしばしば出ておりまして、また、しばしば申し上げておるわけでありますが、ともかくも法律の制定手続に関連するものでありますために、私どもは、何といいますか、お尋ねに従って御答弁申し上げるのは当然でございますが、そのお尋に対して御答弁申し上げておりますのは、いままでは、やはり実体的関係と手続的関係、これはもう実質と形式と申してもよろしゅうございますが、そういう観点から実はお答えしております。実体面から言えば、まさにおっしゃいますように、学説もいろいろございますし、また立法の経緯もございます。母法たるアメリカにおける取り扱いの問題もございます。しかし、私どもはやはり一般——一般といっては語弊があるかもしれませんが、まあ通説的な見地に立っておりまして、そういう見地から言うと、これはそれに当たるとは言えないんではないか。それから手続面については、これも政府が主張するかというお話でございますが、私の意見として申し上げれば、やはり手続面ではなかなか困難な問題があるのではないか。こういうふうに思っております。
  209. 松井誠

    ○松井誠君 私は、九十五条のいわば抽象的な一般論を聞いている。この法律が九十五条に合うかどうかというのは、あなたの言われるように、やっぱり国会が判断すべきものかもしれません。私は、やっぱりその考え方のほうがいいと思う。しかし、私が聞いているのはそういうことじゃなくて、この九十五条一般の性格として、憲法がいま沖繩に施行されてない、そういう段階で九十五条を初めから使えませんよという考え方なのかどうかということを聞いている。簡単に願います。
  210. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 九十五条の住民投票、住民投票をやるすべも、これは、とにかく、あれだけ法律の定めるところに従った手続きを要するわけでございますから、その法律の定めた手続きが法律の定めるところに従って行なえるという担保がないではないかというのが申し上げたいところであります。
  211. 松井誠

    ○松井誠君 九十五条と沖繩施政権が及ばないという関係で、そういう議論が出てくるであろうということは当然予想をされる。しかし、問題は、そういうことであぐらをかいておって一体いいのかということですね。先ほども言いましたけれども、この法律ができた沿革というのは、その地方に特に不利益なような、そういうものを中央がひとつ守ろうという、そういうところから出てきた。ところが、この憲法規定はあるけれども、いままで日本ではほとんど使われなかったのは、いわば、その地域的な振興開発法みたいなものが一ぱいふえて、それはまさに、その地域のために有利ではないか、何も住民投票する必要はないじゃないかということで、この九十五条は使われないという歴史がずっと積み重ねられてきた。しかし、今度のこの少なくとも公用地法案というのは違うでしょう。これはまさに、沖繩の人たちがほんとうに心の底から腹を立てて反対をしている法律案、だとすれば、やはりこの制度が持っておる歴史的な沿革に照らして、まさにこういうときこそ住民投票をやらなきゃならない。もし、かりにですね——私はいろいろ方法もあり得ると思う。そういうことを提言している学者もおります。かりに、しかし、そういうことが正式なこの九十五条の住民投票という形式でできなくっても、何かの形で全員の世論調査をやるということはできるでしょう。そういうことをやって、もし結論がイエスと出れば、まさに政府は免罪をされることになるでしょう。そうなれば、これはつぶさなければならぬということになるでしょう。そういうことは、これは国会の問題ではなしに、まさに政府です。総理は一体おやりになる意思はございませんか。
  212. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府は、いま提案している法案の、ぜひ皆さま方の御了承を得たいと、これのみを念願しておりまして、新しく改正したり、また変更したり、また新しい方法、それなどは考えておりません。
  213. 松井誠

    ○松井誠君 この法律を世論調査にかけるということはいかがですかということです。法律論ではございません。
  214. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、国会で御審議をいただくことが、一番の国民の意向を代表している皆さんじゃないかと、かように思っております。
  215. 松井誠

    ○松井誠君 われわれが問題にしておるのは、日本国民全体という、そういう抽象的なものではなくて、具体的に沖繩の人たちが、この法律についてどう考えておるかということを、少なくとも憲法九十五条の精神から尊重をしなきゃならぬじゃないか、そして、それを聞かないでやってきた政府の、いわば罪滅ぼしとしても、あらためて意見を聞かなきゃならぬじゃないか。それがもし憲法の壁があるとすれば、世論調査という形式でもいろいろやれるでしょう。そのことをやることができないのかということを聞いているんです。修正とかなんとかということじゃありません。
  216. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、別に、いまやっていることがいいように思っておりますので、ほかのことはやりません。
  217. 松井誠

    ○松井誠君 これで公用地の問題は一応終わりますけれども、私は特に委員長にお願いをしておきたいと思うのです。それは、衆議院では十三日まで審議が続けられる。しかし、議事録ができておるのは六日か七日ごろまでの議事録しかできていない。そして、この法律案が集中的に審議をされたのは十一日と十三日。私は、その議事録がなければ、ほんとうにその質問ができない。そこで、先ほども言いましたけれども、傍聴をしてもらってメモを取ってもらいました。メモといっても、これはこんなでかいメモですがね。とてもじゃない。しかし、これは正式な議事録じゃありませんから、私はこれを基礎にするわけにはまいりません。そこで、このいわば議事録ができた段階で、きょう言われた答弁の中にも、この議事録ともまた矛盾をするところが幾つかある。そういうことを聞きたい。ぜひそれを聞かなければ、私は、参議院の良識を疑われる、そういう意味で、これからあと、この公用地の問題は、そういうことで質問の機会を与えていただくことをお願いをして、次の問題に移りたいと思います。
  218. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) ちょっと委員長。  先ほど来の議論の中で、何だか自衛隊が公共性がないみたいなふうに聞き取れる意見がありましたので、私、一言申し上げたいんですが、自衛隊というのはですね、これはもう局地防衛をするその任務から言っても、また、自衛隊の特質である民生協力の面から見ても、特に災害救助活動等々、きわめて公共性の高いものであります。このことは、念のために私から申し上げておきたいと思います。  それから、私も法律の議論は弱いのでありますが、昭和二十八年の十二月十八日、すでに河野発言の前に、これは同じ自民党の内閣で、法制局と建設省とで、保安庁が保安隊の訓練のために設置する演習場は、土地収用法第三条第三十一号に言う国が設置する直接その事務の用に供する施設に該当すると、こういう調整もいたしておるわけであります。したがいまして、河野発言の前に、すでに同じ自民党の政府において、こういう調整があるということも、念のために申し上げておきたいと思います。
  219. 松井誠

    ○松井誠君 まあ、林修三さんが出したその回答というのは、その後河野発言で私は訂正されたと思っているんですよ。それで、公共という意味を河野さんがどういう意味で使われたか、ひとつ、河野さんのお墓の前にでも行って、やってもらうよりこれはない。  そこで、私は、先ほど申し上げておりましたような請求権の補償の問題についてお伺いをしたいと思います。  結論を先に言えば、私は、政府というのは、この失われた沖繩の人たちの請求権、それを単に恩恵的にではなくて、沖繩県の一つの権利として補償をするという総合的な特別な立法というものがどうしても必要だ、そういうことを考える。そのことに、いわば、たどりつくために最初にやはりお聞きをしておかなければならないのは、一体なぜ請求権を放棄をしたのかという問題。私は、この請求権を放棄をしたという、この協定に二つの意味で大きな不満があるわけです。それは、法規そのものではなしに、この請求権の放棄にまつわる問題として二つの問題がある。一つは、放棄をしたこと自体に対する不満、もう一つは、それを何か権利として認めるのではなくて、恩恵的な措置で処置しようという、そういう姿勢に対する不満、言ってみれば、その二つがあるわけです。  そこで、一体なぜ放棄をしたのかということについて、時間の節約のために、総理大臣ではない、外務大臣がいままで言っておられることは、つまり、放棄をしないで、沖繩の人たちの請求権をそのまま認めて返還をすると、沖繩の人たちは、その請求権を実現するためには、アメリカに行って裁判しなきゃならぬだろう。それはとってもたいへんだ、だから沖繩の人たちに対する親切の意味で請求権を放棄をして、あと政府がめんどうを見てあげましょう、これがかえっていいことだ、こういう答弁をいままで繰り返しされておりますね。これは、いまでもそのとおりでございますか。
  220. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は二つのことを言ってるんです。つまり、沖繩日本に返ってくる、その時点におきまして日本アメリカとの間にまつわる法的関係を明快にしたい、これが一つ。それからもう一つは、そういう措置は、敗戦処理、つまり平和条約、講和条約、そういうようなときにおいては通例使われております。それから、今回は施政権の返還でありまして、そういう講和条約や平和条約じゃありません。ありませんけれども、あるいは奄美返還におきましても、あるいは小笠原返還におきましても同様の措置をしておる。で、その結果一体どういう問題が起こってくるかと、こういいますると、この個人の請求権を放棄する、それは、政府の持っておるところの外交保護権を放棄するということでございますが、その影響を受けまして個人が困る。個人は、訴えを行ないましても、そこで請求権、実際上はなかなか行使し得ない請求権になっちゃう、国家も保護を与えてくれない、こういうふうになってくる。そこでですね、政府といたしましては、国内的にこれは適正な措置をとりましょうと、こういうことを、まあ言っているわけであります。  で、いま、この間協特でも申し上げたんですが、どういう方法が一体いいんだろうと、こういうことを考える。そういう際に、個人の請求権というものが、保護権もついて生きておる、そういう状態下において一体個人の請求権がほんとうにこれが実効をあげられるか、こういうと、私はそうは考えない。まあ、アメリカまで行って裁判しなきゃならぬので、訴訟費用がかかります、あるいは弁護士を選定しなきゃならぬ、言語上の問題もある、そういうようなことで、実際上それは非常にむずかしいんじゃないか。ですから私は、放棄と、この国際慣例上使われておりまするところの外交権の放棄ということをする、そうして、あとで国内的にこの問題を適正に処理する、こういう行き方、これが妥当じゃあるまいか、そういうふうに申し上げておるわけであります。
  221. 松井誠

    ○松井誠君 この間、協定特別委員会で、佐々木静子委員がこの問題について、なぜ一体放棄をしたのかという質問をされた。それに対して、いま私が言ったように、沖繩県民に対して親切でありますよ、そういう表現を使われた。さすがに、この間の本会議では、私は待ちかまえておったんですけれども、さすがにそのことは言われなかった。もしそれを本気で考えておるとしたら、これはたいへんなことです。私が、請求権の問題というのは単なる経済次元の問題じゃない、そういうことを冒頭に言ったのは、金をもらえるんなら、アメリカからであろうと日本からであろうと、どっちでもいいですよというようなことを考えてるんじゃないんですよ。沖繩の人たちが人権を侵害をされた、その当の相手はアメリカじゃないですか。そのアメリカから取るということで彼らは人権の回復ができると考えるんです。どっからでも金がさいふの中に入ってくればいいというんじゃない。そういう点で考えると、何か、いまもちょっと外交保護権の話も出ました。私も実はそのことをお尋ねしようと思っておった。日本政府は、沖繩県民を外交的にアメリカに対して保護しなきゃならぬ、権利であると同時に義務を持っておるはずです。かりに施政権の返還と同時に請求権を放棄をしないで、そうして日本復帰をする、請求権は残る、その請求権を、日本政府が外交保護権を使ってどうして実現ができないんですか。そういうものの考えを頭に置かないものだから、個人個人がアメリカに行って裁判するのはたいへんでしょうなどと、まるで、どっかの国民みたいなことを言っている。あなたが保護しなきゃならぬ沖繩県民ですよ。そういうものが請求権の実現が困難であるときに、まさに外交保護権を使って一括折衝をやってアメリカから取るという、そういう姿勢が一体どうしてできないのですか。
  222. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 外交保護権の行使、これは観念上は考えられる。しかしながら、これをやっておると、こう言いますると、数え切れないくらいな多数の、無数のいわゆる請求権という問題、これが一体どういうふうな片づき方をするのか。これは、日米間においてこの問題をめぐって、幾ら外交保護権をわれわれが行使し、努力をいたしましても、なかなか決着はつくまいと思う。これは沖繩返還の場合ばかりじゃありません。どこの敗戦処理というようなことを見ましても、大体もう、債権債務の関係は、その講和条約、平和条約の時点において打ち切る。あるいは今回は平和条約、講和条約じゃございませんけれども、この施政権日本に返ってくる、そういうような問題でありまして、小笠原の際におきましても、奄美の際におきましても、外交保護権はこれを放棄するということになり、大体これは国際伊慣例として定着しているというくらいに考えてい  いと思うのです。佐々木さんに対しまして、私は——このあとのほうの問題です。しからばどうするのだと言うから、適正なる措置をする、それによって、放棄したこの請求権、これが生きてくるじゃありませんか、こういうことを何回も申し上げたわけでありまして、その適正なる措置をとるということに重点を置いたこの間の答弁であったと、これは御理解願えると思うのでありますが、要するに、外交保護権を放棄する、これはもう、こういう、施政権が返ってきます、あるいは領土は失われます、あるいは講和条約も結びます、そういう際の国際的な慣例みたいになっておるのでありまして、平和が到来いたしました、あるいは施政権が返ってきました、それにもかかわらずアメリカ日本の間に法律問題でごたごたが続くという状態を清算をいたしたい、そういう趣旨であります。
  223. 松井誠

    ○松井誠君 いつも出るのは敗戦処理——これは敗戦処理ではないがと言いながら、すぐ敗戦処理ということが出てくる。それは、敗戦処理と施政権の返還とは本質的に違う。そうでしょう。敗戦処理という、あの平和条約というのは、つまり、戦勝者と戦敗者が平等でない立場でやむを得ず結ぶわけですよ。したがって、外国にある自分の国の国民の在外資産というものを賠償の引き当てにしなければならない、放棄をしなくてもいい請求権も放棄をせざるを得ない。いわば賠償の引き当てですよ。そういう平等でない関係などというのは、もし政府の言うごとくであれば、日本アメリカにはないわけでしょう。施政権返還というのは、まさに対等の立場でしょう。そういう意味で、放棄せざるを得なかったあの平和条約の放棄と、今度の場合の放棄とは質的に違うというのは、そういう意味です。だから、われわれから見れば、放棄をする必要がない請求権を放棄して、沖繩を買ったなどと言われるゆえんですよ。そういう非難のあることを御承知でしょう。そういう非難のあることを知っておりながら、かえって沖繩県民の便利になりますよなどということをぬけぬけと言うから、私は、請求権放棄というものの本質がちっともわかってないんじゃないか、そういうものを恨んでおる沖繩の心というものがちっともわかってないんじゃないか、ということを実は言いたいのです。総理、そうじゃありませんか。
  224. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私も、今回の施政権の返還が敗戦処理である、あるいは終戦処理だとか、あるいは平和条約、講和条約だとは考えておらないのですよ。これは施政権が返ってくるのだ、それだからこそ私も小笠原のことを申し上げ、また奄美のことを申し上げておるわけなんです。その辺はもうあなたと間違いない同じ認識に立っておるのでありまするから、そういう認識があればこそ、私どもは、この外交保護権の喪失に伴うところの個人、その損害に対しまして適正な措置をとる、そういうことを申し上げておるわけです。
  225. 松井誠

    ○松井誠君 私が補償の問題に入る前にこの放棄の不当性ということを言うのは、どういう姿勢で補償しなければならぬかという、そのことといわば不可分の関係にあるからです。で、ちょっと一つ気になりますので確かめておきたいのでありますけれども、先ほどもちょっと大臣が言われた、この請求権の放棄というのは、つまり外交保護権を放棄したという意味であります、そして個人の請求権は実体的には依然として残っておるのであります、これが従来の政府答弁ですね。しかし、これは今度の国会でもやっぱり言っておりますけれども、外交保護権の放棄であるけれども、しかし、実質的な請求権の放棄につながるという表現で、この外交保護権を放棄をすることによって、そういう沖繩県民の請求権の実現が放棄をされたにひとしいような、そういう困難に陥るということは認めざるを得ない。これは間違いないですね。
  226. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私が申し上げておるのは、法律上のことを申し上げておるわけでありまして、実態上のことは、おっしゃるとおりでございます。
  227. 松井誠

    ○松井誠君 だとすれば、この請求権の放棄というのは、外交保護権の放棄——私、これは間違いだと思いますけれども、それはどっちでもいいです。外交保護権の放棄と考えようと、個人の請求権を実体的に放棄をしたのだと考えようと、ともかく政府の行為で沖繩県県民の持っておる請求権がなくなってしまった、これは間違いない。そこで、これを補償をしなきゃならぬじゃないか。外務大臣は盛んに、適正な補償、適正な補償ということを言われる。総理にお伺いをしたいのですが、私は冒頭に申し上げましたように、この補償をするときの基本的な姿勢として、決して恩恵ではなくて、沖繩県民の権利にこたえるという、そういう基本的な姿勢が必要ではないか、これはいかがですか。
  228. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) おっしゃるとおりです。見舞金ということばは使っておりますが、その実体は、ただいま松井君が指摘されるとおりであります。
  229. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま松井さんが、私が適正な補償をするとしばしば言っておるようなことを申されておりますが、私はそう言っておりません。適正な措置をとると、こういうふうに申しております。念のために申し上げておきます。
  230. 松井誠

    ○松井誠君 適正な措置をすると言っておられたというように訂正をいたしましょう。  それで、私は、これはやっぱり国家の義務として補償すべき責任があると実は思う。これは理屈はいろいろあります。ありますが、総理がそういうように答えられましたから、私はもうくどいことは申しません。しかし、先ほど外交保護権のことを申し上げましたときに、いわば、放棄をしなくてもいい請求権を放棄をしたのは、国民に対して外交的に保護しなければならぬという権利であると同時にその義務、これに、いわば違反をしたのではないのか。あるいは、放棄をされるという請求権そのものが、単にその取引の経過から出てきた請求権などというものではなしに、いわば犯罪、あいは犯罪的な行為、そういうものから出てきた請求権がほとんど全部ですね。そういうものを一体放棄をしていいのかという問題がある。いろいろなこともありますけれども、ともかく、そういう意味で、政府はまさに不当に、あるいは不法に請求権を放棄をしている。だとすれば、それを償わなければならぬ。これはいろいろ議論があるでしょう。しかし、かりにそういう意味で、政府が悪いことをしたから償えと言うのは無理であるとすれば、政府はなるほど悪いことはしなかったかもしれない、しかし、少なくとも政府の行為で県民は損害を受けたことは間違いがない、その場合に、先ほどの憲法二十九条三項の話じゃありませんけれども、かりに政府の行為が正しかったとしても、その行為によって国民が損害を受けた、その政府の行為というのは、請求権を放棄をする、あるいは外交保護権を放棄をする、放棄をすることによって県民は損害を受けた。一体何のために請求権を放棄したかといえば、外務大臣がしょっちゅう言うように、両方の国の関係を円滑にするために、あるいはもっと大きく言えば、沖繩返還というものを実現するためと言ってもいいでしょう。そういう、いわば公共の目的のために請求権というものがなくなった。請求権は、言ってみれば、収用をされた。ですから、憲法二十九条三項によって、まさに政府は補償をしなければならない、正当な補償をしなければならないということが出てこざるを得ない。先ほど外務大臣は、適正な補償ということばにこだわっておられましたけれども、それで、わざわざ措置ということばに直されましたけれども……。
  231. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 直しませんよ。前から言っている。
  232. 松井誠

    ○松井誠君 いや、訂正を求められましたけれども、しかし、これはほんとうにその法律上の請求権と、あなたがたびたび言われるような、そうでない、いわゆる請求権、法律上の権利ではないけれどもしかし黙ってはおけないという、そういうもの、そういうものを含めるから、何か補償ということばにこだわっておるのでしょう。——うなずいておられますから、そういう意味だと思う。しかし、私が言っているのは、権利でないものを補償をする義務があると言っているのではないのです。権利があるかないか、もちろん調べてみないとわからぬでしょう。しかし、権利であるということがわかれば、当然補償をする義務が生ずる。そういう意味で補償ということを私は言っておる。それなら……。
  233. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは、平和条約を締結いたしましたあの際におきましても、同様の問題があったわけでありますが、これは外交保護権をまさに放棄いたしたわけです。その結果、請求権を日本政府に対し、あるいは他の国に対し持っておる人、これが迷惑をこうむるという結果になった。その際、いろいろな形で給付金というものを出しました。まあ一番大きなものは、在外財産の補償と言われている問題であります。これは補償という字は使いませんが、給付金という字になりましたが、給付金を出すようにした。まあ、法的にはいろいろな問題があります。ありますが、外交保護権を放棄する結果、これはほんとうに権利としてアメリカ政府に対して要求できる立場にある人、こういう方は非常に私は実態的に御迷惑をこうむると、こういうふうに思うのです。ですから、その実態に応じた措置は日本政府がとらなければならぬと、こういうことを申し上げておるのでありまして、私の気持ちから言いますれば、沖繩の二十六年間の御労苦、こういうものを考えてみると、平和条約、あの措置なんかと比べまして、これはもうずいぶん意を用いなければならぬのじゃないかというふうに思うのです。その措置は、法的な性格を持たないというようなことで、予算措置で片づく、そういう性格のものもありましょう。しかし、いまあなたが御指摘になっておる法的性格のもの、アメリカに対する法的性格のものに連なるというようなものでありまして、立法措置を国内においてとらなければならぬというような問題も出てくるかもしれない。しかし、いずれにいたしましても、日本国内においてこの問題は適正に処置いたします。また、その適正に処置するという気持ちにつきましては、ただいま申し上げたような気持ちである、こういうふうに御了解願います。
  234. 松井誠

    ○松井誠君 まあ、たいへん懇切丁寧で、ありがたいのですけれども、時間の制限がございまして、あまり懇切丁寧ですと、いんぎん無礼みたいになってしまう。ですから、ひとつ簡潔にお願いをいたしたいと思うのです。  大体の御意向もわかりましたから、私もこの補償の基本的な姿勢について、くどいことは申しませんけれども、わざわざ最高裁からおいでいただいておりますので、ちょっとお尋ねをしたいのですが、平和条約の際の在外資産の放棄あるいは請求権の放棄、そういうものに関連をして何度か最高裁の判例が出ている。しかし、そのときに理由になっておるのは、これはもう戦争損害なんだ、憲法が予想していないような戦争損害なんだ、だからこれを賠償しろということは無理ですというのが、おそらくは最大の最高裁のいわば理由なんです。しかし、その最大の理由がこの返還協定の場合にはないわけですから、これを国家の補償義務ありと、かりに解することについて何ら差しつかえない、私はそう思うのですけれども、いかがでしょう。
  235. 瀬戸正二

    最高裁判所長官代理者(瀬戸正二君) お答えいたします。  在外資産の点につきましては、昭和四十三年に大法廷の判決がございまして、在外資産を没収された者は、その後平和条約において権利を放棄させられても、憲法二十九条三項による補償の請求はできない、という事件がございます。なお、四十四年に第二小法廷の判決がございまして、それは、いま問題になっております請求権につきまして、同様に、平和条約で放棄された場合、請求権を喪失しても、憲法二十九条三項による補償の請求はできない、という判決がございます。その判決理由は、御指摘のとおり、戦争災害と全く同様であるというのが理由の根本になっております。  以上でございます。
  236. 松井誠

    ○松井誠君 ですから、その戦争災害だという最高裁の最大の理由が、返還協定の場合にはないということです。それからもう一つ言っておるのは、条約に補償の義務ということを書いてないじゃないか、だから補償するつもりがなかったんだということを理由の一つにあげておりますけれども、しかし、これだっておかしいのです。これはもうイタリアやドイツが条約を結ぶときには、補償義務というものをちゃんと認めて書いてある、条約の中に。もし補償義務というものを政府が認めたのだとすれば、なぜ一体この返還協定のときに国家の補償義務というものを書かなかったのですか。書かなかったというのは、きわめて異例なんです。
  237. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) この協定は、日本政府アメリカ政府との間の関係規定するのであるからであります。
  238. 松井誠

    ○松井誠君 それは、条約というものはそうであるに違いない。しかし、それであるにもかかわらず、西ドイツやイタリアが、条約の中で、自分の国民に対する補償というものを明記をしておるでしょう。私はそのことを言っておるのですよ。そのことを書くと書かないとで、沖繩県民の心にどれだけ響くかということを一体お考えになったことがあるのか。この条約で補償の義務が生ずるわけではありません、条約にどう書いてあろうとなかろうと、補償の義務というものは生ずる。しかし、あの敗戦国であるドイツやイタリアの平和条約でさえも、いわば、やむを得ず放棄する、その国でさえも補償義務というものをちゃんと明記をしておるでしょう。そういう配慮がないということは、一体どういうことなんでしょう。
  239. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ、よその国にはよその国の行き方があると思います。わが国は、この条約というものは、あくまでも日本政府アメリカ政府との間の権利義務の関係規定したものだという見解に立ちまして、国内の問題には触れない。そのかわり、触れなかった結果、いろいろ問題が起こってきておることは、あなたも御指摘のとおりでありますから、それに対しましては適正なる措置をいたします、こういうふうに申し上げておるわけです。
  240. 松井誠

    ○松井誠君 まあ、ついでに申し上げておきますと、憲法二十九条の補償をすべしという、国に対するいわば命令みたいなものが、普通よく憲法の基本的な人権のときに問題になるように、これはいわばプログラム規定で、ここからすぐに国の義務が出てくるんじゃないのだという議論がしょっちゅうありますけれども、しかし、そうではなくて、これはまさにこの規定から国が補償すべき義務が直接生ずるのだという、そういう判決があったことも御承知のとおりです。そういうことを踏まえて私はお聞きをしたいのですけれども、それでは、適正な措置、適正な措置というようなことを言っておられるが、山中さんにお尋ねをしたい。その補償をするという補償というのは、一体どういう構想でやるべきだとお考えなのか、山中さんが管轄大臣でないということを私も知っております。にもかかわらず、お聞きをするのです。
  241. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 管轄とおっしゃるのですが、この沖繩の請求権には、たとえば建議書に書いてありますが、それ以外にもあるわけですね。ということは、旧日本軍の——国家総動員法に根拠があったといっても、接収した土地、そこが結局アメリカの基地になって、そして西原飛行場等が典型的なものですけれどもアメリカは復元補償はやる、しかし、旧日本軍の飛行場だった敷地については、われわれと戦うためにつくったのだから見ないというようなものも残っておりますし、また、嘉手納等には、地主さんであって賃貸料をもらうべき人が、出征その他その当時いなかったがためにいまだに賃貸料をもらえない人等もおりますし、基地公害等もあります。こういうものを考えますと、やはり、原則的にはよく調査をして——琉球政府も、入会権とか、いろいろとわからない点が一ぱいあるわけですが、県の協力も得て、国も援助をして、一体となって調査をして、そして沖繩県民の置かれた立場から見て、この点は国が祖国の義務としてやらなければならないもの、そして、場合によっては法律が必要であるもの等に仕分けをしてもらって、やはりきちんと整理をした、国家として、祖国としての責務を果たしてもらいたいという気持ちでおります。
  242. 松井誠

    ○松井誠君 私は、もっと大きなふろしきを広げて、景気のいいことを言ってくれると思ったのですよ。それでお尋ねをしたのですけれども、いささかがっかりいたしました。  それで、外務大臣にお尋ねをしたいのですが、いまもちょっとお話がありましたが、立法措置をとるべきものと、そうでない、予算措置で済ませられるもの——この間の本会議では、重要なものについては予算措置、立法措置をとるというような表現をされたと思うが、立法措置と予算措置の区別というのは一体どういうことなのか、私は、この重大な問題をあえて防衛庁長官に聞かないのは、こういうものを防衛庁長官が管轄するというのはおかしいですよ。いかがでしょう。
  243. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そういう問題を防衛庁長官が所管するのはおかしいというお話ですが、それを外務大臣が所管するというのも、また非常におかしいのであります。しかし、御指名でありますからお答え申し上げますが、これはたいへんないろいろな種類のものがあります。それを整理いたしまして、これは法律を制定する重みのある案件であるというものにつきましては立法いたすべきである、かように考えます。
  244. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 防衛庁の所管でありまするのは、御承知のとおりに、施設庁がわれわれのほうの管轄下でありまして、日米安全保障条約に基づいて、特に米軍の施設その他に応ずる機関があるわけなんでございますので、詳しくは、施設庁長官から御答弁をさせることにいたします。
  245. 松井誠

    ○松井誠君 大体の構想ですね。具体的なこまかいことをお聞きするのじゃなく、いわば、どういう構想でこの補償の立法というものをやられようとするのか。さて、これはどこにお聞きしたらいいかわかりませんが、総理、何かお考えございましょうか、構想がございましょうか。
  246. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 御承知のとおりに、講和前の人身被害補償漏れの分につきましては、別途提案いたしております防衛庁関係法律適用特別措置法第三条に、これに対する措置の規定をいたしておるわけでございますが、御承知のとおりに、いわゆる請求につきましては、非常に多種多様でございまして、その実態は必ずしもいまのところ琉球政府自体におきましても把握されておらないということがございます。そこで、今回の法律化いたしましたのは、これは一つは人道上の見地ということもございますが、被害者の数が比較的わかっておる、それから請求額もわかっておるということで、そこの法律を判定する合理性が十分にあると見られましたので、今回立法化したわけでございますが、その他の請求額につきましては、これはきわめて膨大でございますけれども、その一つ一つについて、どういう被害があり、どういう請求額になっておるかということについては、これはやはり今後十分手数をかけまして調査をいたさなければならぬと思います。そして、その中におきまして、ある程度行政措置ということでまかない得られるものがあればそういたしますし、それから、これは非常に問題が大きくて、やはり立法事項になるというふうに考えられるものは、立法措置を講じなければならないと思いますけれども、これはやはり、その実態を十分把握した上でございませんと、なかなかここで、どういうケースが立法事項であるということは申し上げられないことでございまして、今後、復帰後におきまして、われわれのほうで十分そういう実態の把握につとめたいと、かように考えておるわけでございます。
  247. 松井誠

    ○松井誠君 私が最初に申し上げましたように、この補償というのは、こういう今度のこの防衛庁関係特別措置法のような形で、こま切れに、一つ一つ出すというのじゃなくて、総合的な補償の特別立法が要るではないか、そういうことを冒頭に申し上げたわけです。それで、そういう場合に一体どういうことを考えてやるべきかという、いわば参考にもという意味で、沖繩の人たちが持っておる請求権というものは一体どういうものなのか、不当にも放棄をされたその請求権というものは一体どういうものなのかということを二、三申し上げてみたいと思う。  これはもう、いまさら言うまでもありませんけれども、例の講和前に沖繩の人たちが持っておった請求権、それは、日本アメリカ政府の言い分によれば、平和条約で放棄をされたというが、しかし、この放棄をされたと言われるその請求権にずいぶん漏れがあった。そこで、けしからぬじゃないかという激しい運動が起こった。そこで、アメリカは、布令六十号というのを出して、講和前の請求権の処理をせざるを得なくなった。しかし、それでもまだまだ漏れがある。この漏れというのは、いろいろな理由で、いろいろな事情で漏れざるを得なかったわけです。たとえば、この布令六十号で書いてある請求権というのは、一九六一年六月末までに請求したものしか払いませんよという制限が初めからついている。額もちゃんと全体で二千二百万ドル。その中から日本政府の十億円を引いたり、あるいは市町村にやった金を引いたりして、これも相当削られる。初めから額が、こう頭打ちになっておる。そういう中でありますから、補償漏れが起きるのは当然。その補償漏れを今度この防衛庁の特別措置法で見ようということで、見舞い金を出すという形にした。これに対して、琉球政府建議書がどう言っておるか、御存じですか。総理、御存じですか。
  248. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 総理は主席から直接建議書を手渡されて目を通しておられますが、いまここには総理は持っておられないようでありますから。(「総理に見せたらいいじゃないか」と呼ぶ者あり)私のほうから総理にお見せいたしますが、読んでも同じです。「目的」は、「この法律は、対日平和条約の発効前及び同条約の発効後、施政権の返還までの間、アメリカ合衆国の施政権下において、日本国民の蒙ったすべての損害について、国の責任において補償するための必要な特別措置を講ずること。」ということで、仮称の特別措置に関する法律というものを要請しておられます。
  249. 松井誠

    ○松井誠君 私が聞いたのは、そうではなくて、この見舞い金という形で、特別に防衛庁関係特別措置の中で書いてあるこの措置について、琉球政府が一体何と言っておるか。この建議書の三五ページを見てくださいよ。これは「見舞い金の交付」という規定をしておるけれども、「琉球政府は、憲法上の国民の権利としての要請」をいたしております。そういう意味で基本的な不満を持っておるわけです。ですから、金をやりさえすればいいというのではなしに、政府がどういう姿勢で金を出すのかという、そのことを問題にしているのです。そのことがどうしてもわかってもらわなければ、この補償をするというところの基本的な姿勢というものが、何かやはり抜けてくる。で、そういうことで、布令六十号の補償漏れというのが、一応の措置はされておりますけれども、これに基本的な問題があるということですね。しかも、これは見舞い金であって、不服の申し立ての道も何にもない。ありがたくお受けをしろよといって、うやうやしくもらうだけの金なんです。それは一種の侮辱ですよ、これは。そう思いませんか。ですから、この六十号で補償したから、それでもう講和前の請求権は放棄したんだから、おまえにはやらないぞ、そういう考え方ではとうてい処理ができないということが一つです。  で、もう一つは、講和後の問題として一番大きなこの請求権の問題というのは、言うまでもなく、この復元補償というやつでございますね。アメリカ軍に接収をされる、きれいな田畑がいつの間にか滑走路になってしまう、返されてきたけれども、とてもそれは使いものにならない、それをもとへ戻すためにはずいぶん金が要る、こういう、もとへ戻すための補償金、これが、琉球政府自体が出しておる資料によりますと、すでにいままでに、これはことしの七月現在だったかと思いますが、解放されたものが、つまりアメリカ軍から返してもらったものが四百七十七万坪、それに対して、いわゆる復元補償として県民が請求をしておる金額が一千二十万ドル。この一千二十万ドルのうちで、支払い額は五%か一五%ぐらい、一人当たり。五%の場合もあれば一五%の場合もある。こういう復元補償という問題が非常に大きな問題として残されておるわけです。そして、返還協定の四条の三項、請求権放棄の項の三項の中で、このうちの一部分はアメリカ政府が引き続いて払うという形になっておる。しかし、それでいいというものでは決してないことを実は申し上げたい。それは、この復元をするために、いまも言ったように、ほんとうにこの一メートルもあるようなコンクリートを流して、それをもとへ戻すには、とてもたいへんな金が要る。そういうもののために、金をくれなければそれをもとへ戻すわけにいかないから、金をくれるのを待っている。なかなか金がおりない。そのために、その土地を使うわけにはいかない。使えばこれだけの収益があがるのを、みすみす遊ばしておかなければならぬ。そういうための一体補償をどうしてくれるのかという問題がある。そういうのに、たとえば日本本土の、アメリカ軍から返してもらった場合のいわゆる復元補償の中には、管理費用というのが三カ月分見てありますね。これは、施設庁長官、わかりますね。しかし、アメリカの場合には、そんな三カ月などという短い期間でとても簡単に金はくれない。簡単に復元はできない。したがって、復元が実際にできるまでの間、返してはもらったけれども、遊ばしておかなければならぬその期間の補償は一体どうしてくれるのかという問題がある。あるいは、これも本土の場合の地位協定に基づく復元補償の中に、残地補償だとか、それから、いろいろな意味で実際に起きた損害を、満足ではありませんけれども、いろいろな項目で見るという施策が、とにもかくにもできておる。しかし、そういうものをアメリカは復元補償という形式ではとても認めてくれていない。そういうものを一体どうするかという問題がある。しかし、一番大きな問題は、いままではまだ返ってきていないけれども、しかし、返還されたあとで返ってくる基地、これは、政府の言うとおりであれば、なるべく早く基地は縮小するというのでありますから、したがって、われわれはできるだけ早い機会にたくさんの土地が返ってくることを期待をする。この復元の費用というのは一体どこが出すのですか。
  250. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 復帰後、米軍の施設が返還になりました場合の復元補償でございますが、今回の暫定使用法案にも復元補償に関する規定がございますが、これは、この法律によりまして使用権を取得した以降における問題でございますので、いわゆるその原状というものが、この法律施行の日の時点における原状ということになるわけでございますが、これにつきましては、今回の返還協定の三条二項でございますか、これは地位協定の四条にかかわる問題でございますけれども、これにつきましては、日本政府が、さらにこれは地位協定の二十四条に関係いたしますけれども、米側に対する請求権を放棄した形になっておりますので、日本政府で処理すべきものとなる。そこで、今後、復帰までの間に地主の方々と契約をいたします。賃貸借契約いたしますが、契約に応じてくださる方々には、その賃貸借契約の中にこの復元補償に関する条項を織り込みたい。その場合の原状というものは、復帰時点における原状ではございませんで、アメリカが当初に使用を開始したときの原状と、こういうことを賃貸借契約の中に織り込みたいと考えておるわけでございます。また、今回の暫定使用法案によりまして使用権を取得した分につきましての復元補償につきましては、これはあの法案にございますように、遅滞なく、通知をいたす段階におきましてそのお話し合いをする、そして現実にその土地が返還になりました場合に、これに対する補償契約を締結をすると、こういうことで処理をいたしていきたいと、かように考えておるわけでございます。
  251. 松井誠

    ○松井誠君 そういう復元補償の金というのを、日本政府が負担をするということが一体おかしいんですね。ほんとうはアメリカがやったことなんですから。したがって、それをあらかじめ、なにがしか見込んで金を取るとか、あるいはそのときの——これはまあ地位協定特別措置法に書いてありますから、しかたがありませんけれども日本政府がもし見るとすれば、まさにアメリカから前金でももらわなければだめでしょう。ところが、そうじゃなくて、例のあの四百万ドルで大騒ぎになったように、その金は日本政府が出す。アメリカ政府が出すような顔はするけれども、これは返還後じゃありませんね、顔はするけれども、しかし、その金は、四百万ドルという形で日本国民の税金から向こうへやった、形の上ではアメリカが補償するような顔をして、というような問題さえ出てきているわけです。  このいまの復帰後の復元の問題ではなくて、もう一度もとへ戻りますと、この協定の四条の三項、これは一体どういう意味ですか。四条三項は、「一九五〇年七月一日前に損害を受け」——七月一日前に損害を受けたこの復元補償は、アメリカが引き続いてやりましょうよと。損害を受けたというのは一体どういうことですか。
  252. 井川克一

    政府委員(井川克一君) それが返還をされましたときに原状回復となるような損害を与えたと、つまり原状を変更を加えたと、こういう意味でございます。
  253. 松井誠

    ○松井誠君 土地の原状を変更を加えた、それが損害だという考え方が私はよくわからない。それが損害になるかどうかは、返ってきてみてからでなければ、ほんとうはわからないわけです。返ってきたときに、もとの農地に返っておるとすれば何も損害はないわけです、地主は。それを、つまり復元をしないで返してくれば損害を生ずる。しかし、返してくれる段階で現状が変更になっておるか、復元をされておるかということはわからぬわけですから、損害というものは実はありようがないんです。しかし、アメリカは、これを一つたてにとって、いままで復元補償というものは拒み続けてきた。それが今度入ったからといって、これで何かアメリカ政府が恩恵的に、放棄をしたあとの請求権というものをここで認めたというように考えられたら私は困ると思う。首をひねっておられますけれども、そういうことでしょう。つまり、この一九五〇年七月一日前の原状変更というのは、もう平和条約で放棄をした請求権の中に入っているんだと、講和前の請求権だといってアメリカは拒み続けてきたわけでしょう。それを、この協定で認めたのは、何か恩恵的に認めたというように考えられては私は困る。つまり、農地なら農地をつぶして滑走路をつくった。そのときに地主は損害を生じているわけではない。滑走路のままで返してこられたときに初めて損害を生ずる。返してこられたときに、もとの農地になっていれば損害は生じない。だから、損害が生ずるかどうかは、返還の時点、つまり、農地を、土地を解放されたその時点で損害があるかないかがきまる。損害があるかないかがわからぬものを、大体請求権の放棄ができるわけがないでしょう、平和条約で。ですから、言ってみれば、アメリカとしては当然の義務をここへ書いたにすぎないので、放棄をした請求権をここであらためて復活をして、恩恵的に認めましたという形ではない。そのことを私は聞いている。簡単に願います。
  254. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 二つの点につきましてお答えしなければならないと思います。  三項の、一九六一年六月三十日という日付、この問題でございます。これが、もともとアメリカがやるべきものをアメリカがやらなかったと、したがって、それを恩恵的と考えてはいけないという点でございますけれども、私ども、まさしく、この一九六一年六月三十日という日がまことに恣意的な日である、何ら根拠がない日である、七月一日と六月三十日とどう違うのかということを強く主張いたしまして、このような規定になったわけでございます。  第二点の、いわゆる請求権発生の日でございまするけれども、これは、先日も、外務委員会でございましたか、去年も松井先生の御質問がありまして、私の答弁で全く御納得を得なかったわけでございまするけれども、これは、私どもの考えておりますのは、国と国との条約の関係でございます。私、国内法に弱いものでございますので、あるいは民法的に申しますると、その損害が現実に起こった、発生した、その使用権が解除されたときに発生するという松井先生の御意見は、国内法的に正しいかと思いまするけれども、国家間の関係におきまして、たとえば平和条約におきまして、両国間が請求権を放棄するという場合には、その請求権の起こし得る原因が、戦争中、占領中にあったすべてのものを含むわけでございます。それでなければ平和条約などというものは成り立ちません。十九条で放棄しているのもまさしくそれでございますし、あるいは十四条(b)項で連合国側が日本側に放棄しているのも、まさしく全部を含んでいるものでございます。それによって、平和条約におきましては戦争から起因するすべての行為に終止符を打つ、これが平和条約における請求権放棄の特質でございます。
  255. 松井誠

    ○松井誠君 その議論は前にも聞きました。で、これはもう並行線ですから繰り返しませんけれども、ちょっと協定の中で私もふに落ちないところがもう一カ所ある。これは条約局長ということになるんでしょうが、現地当局に対する請求権の放棄という項目がありますね。この「現地当局」ということばは小笠原返還協定のときにも出てくることばでありますけれども、この現地当局に対する請求権という、現地当局というのは一体何ですか。
  256. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 四条一項の「アメリカ合衆国の軍隊若しくは当局」という場合の当局は、米民政府でございます。それから「これらの諸島に影響を及ぼしたアメリカ合衆国の軍隊若しくは当局」という場合の当局は、沖繩外における米側関係当局で、沖繩施政権につき権原を有しておる者であり、米本国政府等がこれに当たります。「現地当局」は、施政権者たる米国の沖繩における統治行為に、現地側から参画しておる限りにおいての琉球政府等の機関でございます。この琉球政府は、二つの性格を持っておると思います。つまり、あそこにおける地方公共団体としての、コミュニティとしての性格と、それからアメリカ政府のエージェントとしての性格、この二つのものを持っていると思います。その後者のほうでございます。
  257. 松井誠

    ○松井誠君 そのアメリカ政府のエージェントとしての琉球政府に対する請求権、これが生ずるという意味が私によくわからない。つまり、行為をした者は、アメリカ合衆国の軍隊あるいは当局、あるいは何とかに影響を及ぼすアメリカ合衆国の軍隊、当局。そういう者が起こした行為によって請求権を生ずる相手方はだれかというと、アメリカ合衆国、アメリカ国民、これはわかりますね。そのほかに、今度は現地当局というのが、言ってみれば債務者になって、被告になって、請求権を請求される側に出てくるというのは、一体どういうことなんですか。琉球政府沖繩県民は請求権を持っておったんですか。琉球政府アメリカの言うとおりにやったんですよ。そういう場合のこれは規定でしょう。つまり、琉球政府が自分の権限の中でやったものではなしに、アメリカに言われてやったこと、そういうものに対して、琉球政府に対する請求権があるというのでしょ。そういう意味でしょう。一体、そういうことがあるんですか。
  258. 井川克一

    政府委員(井川克一君) さようでございます。アメリカ政府の命令のもとに、アメリカ政府のエージェントとして行動したもの、そのものにつきましては、一番適切な例は、出入国管理の問題などにつきましては、琉球政府アメリカ政府の、何と申しますか、エージェントとして行動している、こういうことになっております。
  259. 松井誠

    ○松井誠君 そのときに琉球政府に対する請求権が生ずるというのは、私はおかしいじゃないかと言うのですよ。よく問題になるのは、例の毒ガスですわね。毒ガスを撤去した。そのときに、撤去そのものはアメリカ軍の行為、しかし、そのときに、琉球政府は、いわば住民を保護するために避難をさせる。それは一体どっちが持つべきものなんですか。琉球政府が持つべきものなのですか、一体。これはまさに、アメリカがそういうことをやるものだから、琉球政府はせざるを得なくなって、そういうことをさせるわけでしょう。そういう意味では、琉球政府に対する請求権が生ずるわけはない。アメリカに対する請求権として生ずるわけですよ。そういうことじゃないかと聞いているんです。
  260. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 御指摘の毒ガスの場合は、まさしく琉球政府がいわゆるコミュニティとしての行為でございまして、それは、もし責任が生ずるとすれば、琉球政府ではございませんで、アメリカ政府になるわけでございます。
  261. 松井誠

    ○松井誠君 そういう議論が出るだろうと思って、実は私もお尋ねをしたのです。しかし、これは、アメリカがそういうことをやらなければ、どだい初めから払う必要のなかった金なんです。かりに補償するとすればね、避難に対して補償するとすれば。その原因をつくったのはアメリカじゃないかということを言っている。なぜそれを琉球政府が、その避難のための損害というものを補償しなければならぬのかということを言っているのです。つまり、アメリカ軍の行為によって生じた——直接ではないかもしれません、間接であろうと、しかし、れっきとした因果関係がある。そういうアメリカ軍の行為によって琉球政府は支出をせざるを得ないという、避難をさせざるを得ないという、そういうときに、琉球政府が請求をされる立場に立つというのはおかしいじゃないかということを言っている。それはやはりアメリカが払うべきものじゃないかということを言っている。この質問はこれでやめますから、簡単にひとつ答弁してください。
  262. 井川克一

    政府委員(井川克一君) 申しわけございませんが、私、理解いたしかねます。この四条一項に書いてありますのは、つまり、日本国とアメリカ国との関係における琉球政府の特殊な地位が書いてあるわけです。その請求権の放棄は。いまのお話と私どう関連が出てくるのか、まことに申しわけございませんけれども、理解できません。
  263. 松井誠

    ○松井誠君 いや、いいですよ、もう。つまり、現地当局に対する沖繩国民の請求権を放棄するということになるわけでしょう。だから、現地当局に対する請求権というものが生ずると考えることがおかしいじゃないか。原因をつくったのは、ここに書いてあるように、アメリカ合衆国の軍隊あるいはその当局、そういうものが行動をした。で、行動をしない琉球政府、あるいはアメリカの意を受けて行動した琉球政府、そういうものに今度は請求権がいくということは、おかしいじゃないかということを言っている。理解できなければいいですよ。  それで、この復元補償の問題からちょっと横道に入ってしまったのですが、いままでの復元補償が非常に不満足なものだということを理解してもらいたい。これは布令二十号というのでやっているのですけれども、先ほど言いましたように、その補償の率というものは非常に低い。そして、それは土地裁判所などという、しかつめらしい名前のものがあって、何か権利の保護のためにやっているように見えるけれども、しかし、土地裁判所に訴えることができるのは、収用されたことがけしからぬということを訴えることができない、補償の額が少ない、賃貸料が少ない、多いか少ないかということしか訴えられない。きわめて制限をされたお願いしかできないのです。こういうところで処理をされた復元補償ですから、だから、きわめて不十分で、もうこれで終わったからいいというものではないということを理解をしてもらいたいということです。  もう一つ、この人身損害で問題になるのは、御承知のように、外国人賠償法という法律がある。その外国人賠償法で、いわば高額の沖繩の人たちの人身損害というものは補償されるという形になっておる。しかし、これも、賠償法自体に書いてあるように、きわめて恩恵的なものなんだ。一万五千ドル以上は、本国の議会がうんといわなければ出せないというような仕組みになっている。これをもらうときには、これで一切文句は言いませんよという一札を必ず入れなければならないことになっている。この賠償というのは、最終的かつ決定的ということばがあって、そして、これをもらったらもうあとは一切文句は言いませんよという、いわば念書と引きかえでなければ金はくれない。そういう状態の中で、一体十分な金がもらえるわけはないでしょう。ですから、外国人賠償法で人身損害の補償があったというようなことを言って、日本政府があぐらをかいているわけにはいかないということを私は言いたいのです。  そこで、だんだん時間が迫りますので、こういう現実を踏まえて、一体、補償の方針というのはどうすべきものなのかということを、あらためて考えなければならぬと思うのです。外務大臣は、よく、請求権を放棄したけれども、しかし、この協定の二項と三項ではちゃんと留保するものはしていますよということを言っている。しかし、この二項と三項でアメリカが払うという金、これから払おうとする金、これは、いま言ったように、きわめて制限をされている。法律自体にもあからさまに書てあるような、恩恵的な性格なんだ。そもそも私法的に救済するという、そういうものではない。本来ならば、裁判所に訴えて、腕づくでもとれるという、そういう権利であるのに、泣く泣くも、そういう仕組みになっているから、それで泣き寝入りをする。そういう問題がずいぶん多い。こういう中で一体どうしたらいいかということ。この建議書をごらんになったでしょうけれども、この建議書では、補償を要求をする項目を十幾つかに分けて書いてある。これは全く沖繩の人たちのそういう苦しみがにじみ出ているわけですよ。繰り返しますけれども、それは金を出せばいいというものではない。そういうものを踏まえて、一体どういう構想でこの補償の特別立法をやるべきかという、そのことをお尋ねをしたいんです。  建議書の八十一ページに、こういう構想で請求権を補償をする仕組みをつくってもらいたい、特別立法をしてもらいたい、そういうことを書いてある。建議書に書いてあるのは、ずいぶん簡略にされたものが書いてある。これとは別に、もっと詳しい要望というものがある。これはご存じでしょう。ご存じですね。その中に、この補償をするべき請求権というのを、たとえば平和条約発効前の人身損害、これは先ほどの例の見舞金で済まそうとするやつ、平和条約発効後の人身損害、平和条約発効前の財産損害、これは布令六十号で処理をされておるとは言っても、まだまだ補償漏れがあるし、不満足です。平和条約発効後の財産損害、これは中心は復元補償でありますけれども、もちろんそれには限らない。軍用地の形質変更による損害。米軍による入会権制限に伴う通常損害。軍用地接収に伴う通常損害、そして残地補償、隣接財産の補償、離作補償、水利権補償、こういうものをアメリカが全然補償しようとしないのです。しかし、これは、日本政府地位協定に基づいてつくっておる、アメリカ軍に土地を提供したために補償するという補償要綱、私は持っておりますけれども、それには、とにもかくにもこういう項目が並んでおるわけです。しかし、それはアメリカは出さないわけです。こういうものはやはり補償をしてくれと、こういうことですね。それから軍用地料の増額、滅失地の損害、漁業の操業制限または禁止による損害、原潜の入港による漁業収益損害、解放地の境界設定費、それから一番最後に、先ほど申し上げましたような協定の四条二項、三項等々によってアメリカが処理をすることになっておる、それに不服の部分、つまり足りない部分、こういうものを補償をしてくれという要求が並んでおる。これは、一種の沖繩の人たちの恨みつらみがこういう文字になって出ていると思うのですよ、二十六年の恨みつらみが。そこで、そういうものを踏まえて、一体どういう構想でおやりになるのか。大体、建議書のおよその構想はおわかりでしょう。私はここでもう一ぺん申し上げますけれども建議書は、——先ほど、総理でしたね。見舞金だけれども、しかしそれは権利としての、権利者としての沖繩県民に対するものだというように言われた。しかし、単に気持ちだけで、これは見舞金だけれども、しかし義務としてやるんですよと言うだけでは、実はだめなんです。そうじゃなくて、不服があればひとつ裁判所に出てもいいんだと、そういう私法的な救済がなければほんとうの権利にはならないわけです。もうこれでおしまいだということでは、この補償を請求しておる沖繩の心に通わない。そういうことを含めて、この補償の基本ですね、大まかな構想でけっこうです。総理からひとつ、何か示唆があったら承わりたい。
  264. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) これは、御指摘のように、金を払えばいいという性格のものでは全くないと思います。そこで、外務大臣からもしばしばお答えいたしましたように、非常にこれだけでも多岐にわたるわけでありまするが、何といっても、いまは施政権がないということが、こういうものを調査するのにも隔靴掻痒の感があるわけですね。したがいまして、施政権が戻り次第、これは詳細に調査をいたしまして、もし立法措置をしなければ処置のできないものは、今後立法措置をしてでも対策を立てていく、そういうつもりで誠意を持って善処をしてまいりたいと思っております。
  265. 松井誠

    ○松井誠君 どうも、調査をしなきゃならぬ、しなきゃならぬというのが唯一の理由のように、ずっと言ってこられたのですが、私が言っているのは、具体的にどういう損失をどれだけ補償しろということを言っておるのではないのです。そういうことを言っておるのではないことは、この建議書の、琉球政府自身がつくったこの法律案の要綱を見ればわかるわけです。権利であるかないかの調査も含めて、まず法律をつくるべきだ、そうして、権利であるというものがわかれば当然補償するべきだという姿勢で、この総合的な損害補償あるいは損失補償の特別立法をしてくれということを書いてあるわけです。ですから、そのときに、一つ一つこま切れに出すのではなくて、総合的な補償の法律、そうして、それはまさに権利のある者に対しては義務として支払うという姿勢を持った法律、そういうものをやりましょうというくらいの、ほんとうのマスタープランみたいなものがないですか。
  266. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 先ほどお答えしたように、これはやはり調査を十分しませんと、ただ腰だめで、こういうふうにしようというわけにはまいらぬと思います。(「法律をつくってから調べてもいいじゃないか」と呼ぶ者あり)
  267. 松井誠

    ○松井誠君 そうですよ。法律をつくってから調べたっていいんじゃないですか。そして、ここに書いてある損害、これが全部権利であるかどうか、それはもちろんわかりません。それは調査をして、権利であるものは払う、権利でないものはどうするということを総合的に書いておけばいい。権利でないものは見舞い金として払いましょう、給付金として払いましょう、これに対しては不服は言えませんよ、そう書くことだってできるでしょう。つまり、そういう基本的な原則を踏まえた立法というものがいまだに基本的な構想がないというのが私はおかしいと言うんですよ。総理、どうなんです。総理頼みます。——あなたはいいです、さっき聞きましたから。
  268. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) いや、先にお答えして、あとからまた総理に答えていただくことにしたいと思いますが、松井さんのおっしゃることと、そうたいへん違うように思わないのです。松井さんは、とりあえず立法をして、調査をし、対策をしろと、こうおっしゃるわけですし、私どものほうは、施政権が戻ってきてから十分調査をして、そして立法の必要があれば立法をいたしますと、そういうわけでございますから、結論的にはそんなに大きな食い違いにはならぬように思います。
  269. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 建議書を出された琉球政府、琉球自身でも、いろいろ調査をしておられるように聞いております。しかし、なかなかどうも、確信の持てる調査までには到達していないと、こういうことで、ただいまのような建議になっている。この建議に出ているものがそのまま法律にはちょっとなりかねると、かように私は思いますので、しばらくどうも時期をかしていただかないと、これは先ほど来、防衛庁長官が答えているとおしかりを受けておりますが、ちょっと無理じゃないだろうかと、かように思います。
  270. 森中守義

    森中守義君 議事進行。  これは、先ほどからずっといろいろお答えを聞いておりますと、たとえば法制局長官の答弁にしても、ほとんどかみ合わないという感じが多い。しかし、そのことは見解の相違ということで引き下がるわけにはいきませんよ。それと、いま防衛庁長官の言われる、調査してみなければということも、その余の関係の法案等については、ほとんど実態的調査が進んでいるんですね。事請求権、一連の問題等について調査が進んでいない、こういうばかなことはありませんよ。だから、この状態で松井質問をずっと続継しても意味がない。少なくとも、私どもは、もうすでに防衛庁であれ、外務省であれ、大蔵省であれ、一定のものはつかんでおいでになるべきだと、こう思うのです。つかまずにそのまま放置しているのか、持っていながら逃げ切ろうというのか、その辺のことが政府見解から明らかになりませんから、一たんきょうはこれで打ち切って、そうして、あしたでも、もう少しまともなものを出してもらいたい。それでないと、だめですよ。意味がない、全く。慎重審議をやろうというのに、そういう姿勢でここに出られては困ります。
  271. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 松井君、質問を続けてください。議事進行
  272. 松井誠

    ○松井誠君 いま森中理事からお話がありましたように、私は、この問題を、琉球政府自身が言っておるように、最初に申し上げましたけれども、返還の基本的性格にかかわるものだとさえ、あの人たちは言っておるのです。それに対する答えとして、一体何ですか、これは。私は具体的に、これにこれだけの損害があります、これにこれだけの損害があります、そういう数字を出して、これは権利ではない、これはいわゆる請求権的なものだというようなことを、区分けをして数字を出せなどということを言っているのじゃないのです。そうじゃなくて、まず総合的な、総括的な法律をつくったらどうか。あとで出ますけれども、戦敗国であるイタリアやドイツでさえも、もっとりっぱな法律をつくっていますよ。そうして膨大な財政支出をやっています。そのこととの対比で、一体日本政府の姿勢は何かということを私は言いたいのです。もう少し、これからひとつ、はっきりさしてください。そのことをひとつ、あとであらためて資料をいただいて追及をするということで、きょうはやめたいと思います。
  273. 森中守義

    森中守義君 総理、よろしいですね。あしたの朝までに、もう少しまとまったものを出してもらいたい。このままじゃだめだ。
  274. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 松井君、質問は終わりましたか。——ちょっと速記とめて。   〔速記中止
  275. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 速記を起こして。島田施設庁長官
  276. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 先ほども申しましたように、現在私どもが把握しております資料は、琉球政府で取りまとめられた資料でございまして、それにつきまして、その一つ一つについて、まだ具体的な調査をやるだけの私どもには態勢がございません。したがいまして、復帰後の段階におきまして、これはやはり十分実態を把握する、これがまず私は先決問題ではなかろうか、かように考えているわけでございます。
  277. 長谷川仁

    委員長長谷川仁君) 松井君の質問は留保されておりますので、これを踏まえまして、理事会でまた打ち合わせいたします。  以上で松井誠君の本日の質疑は終了いたしました。  本日の質疑はこの程度にいたします。明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて——本日はこれにて終了いたしました。明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十九分散会      ——————————