運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-10-29 第67回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十月二十九日(金曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 佐々木義武君    理事 田中 龍夫君 理事 長谷川四郎君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 鈴切 康雄君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君    荒木萬壽夫君       石井  一君    植木庚子郎君       小川 半次君    大村 襄治君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       佐藤 守良君    笹山茂太郎君       田村 良平君    中野 四郎君       灘尾 弘吉君    二階堂 進君       根本龍太郎君    野田 卯一君       羽田  孜君    橋本龍太郎君       浜田 幸一君    福田  一君       松浦周太郎君    松野 幸泰君       森田重次郎君    上原 康助君       大出  俊君    辻原 弘市君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       林  孝矩君    樋上 新一君       二見 伸明君    正木 良明君       宮井 泰良君    岡沢 完治君       和田 春生君    谷口善太郎君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         (北海道開発庁         長官)     渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      平泉  渉君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 西村 直己君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         行政管理庁行政         管理局長    河合 三良君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 黒部  穰君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部長      長坂  強君         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         経済企画庁総合         計画局長    矢野 智雄君         科学技術庁長官         官房長     井上  保君         科学技術庁研究         調整局長    石川 晃夫君         科学技術庁原子         力局長     成田 壽治君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省経済局長 平原  毅君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         社会保険庁医療         保険部長    穴山 徳夫君         農林大臣官房長 中野 和仁君         農林省農政局長 内村 良英君         食糧庁長官   亀長 友義君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省公害         保安局長    久良知章悟君         通商産業省重工         業局長     矢島 嗣郎君         運輸省鉄道監督         局長      山口 真弘君         運輸省航空局長 内村 信行君         海上保安庁長官 手塚 良成君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省住宅局長 多治見高雄君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      佐々木 直君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 十月二十九日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     石井  一君   松野 頼三君     羽田  孜君   阪上安太郎君     上原 康助君   原   茂君     大出  俊君   正木 良明君     宮井 泰良君   渡部 一郎君     樋上 新一君   西田 八郎君     和田 春生君 同日  辞任         補欠選任   石井  一君     奥野 誠亮君   上原 康助君     阪上安太郎君   大出  俊君     原   茂君   樋上 新一君     正木 良明君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。二見伸明君。
  3. 二見伸明

    二見委員 本日は、主として経済問題について、総理大臣及び関係大臣の御所見を承りたいと思います。  最初に、本日は日銀総裁においでをいただいておりますし、また総裁は、政策委員会でお忙しいとのことでございますので、冒頭に若干お尋ねをしたいと思います。  今回の補正予算で、七千九百億円の国債発行することになりました。昨日、田中委員質問に対して、市中消化見通しは明るい、こういうお話がございました。ただし、国債発行は、補正予算で七千九百億円発行するばかりではなくて、来年度予算においては一兆数千億、五千億円をこえる国債発行が現在見込まれております。しかも日銀総裁が、金融緩和しているので市中消化見通しは明るいと言われたことは、現時点においてはそのとおりかもしれませんけれども通貨調整が行なわれて円が切り上げになった場合に、現在の金融緩和という状態がそのまま継続できるかどうか。二十億ドルあるいは三十億ドルという外貨が流出をして、金融逼迫という事態も当然予想しなければならないだろうと思います。金融が逼迫してくる、そこに一兆五千億円以上の国債が来年度発行されるということになりますと、そういう状況で国債市中消化というものを強行すれば、デフレ効果を生むことはもう明らかであります。そういう場合に、日銀総裁はどういう手段をおとりになるのだろうか。私は、これには三つの手段が考えられます。  一つは、日銀引き受けをやるといういままでの原則をくずすことです。もう一つは、日銀のきのうの御答弁ですと、慣例ということでありますけれども、一年未満であっても買いオペはやるという、実質的に日銀引き受けに近いような形での対処のしかたがあると思います。もう一つは、日銀貸し出しをふやすことによって金融緩和をはかっていく、こうした方法もあるだろうと思います。  日銀総裁としては、そういう場合——これは当然予想されることでございますので、明確にお答え願いたいのですが、そういう場合にはどの方法をおとりになりますか。
  4. 佐々木直

    佐々木参考人 昨日、今年度の見通しを申し上げましたが、確かに御指摘がございましたように、今後、さらに来年度にわたりまして国債発行されます場合、来年度の金融情勢がどうであろうかという点については、いろいろ変化も考えられ得るわけであります。ただ、現在の情勢から申しますと、景気のいまの動きから申しまして、来年度日銀券発行高が急増するということもまだ考えられませんし、あるいはまた、その他の原因で財政揚げ超がふえるということもさほど考えられません。ただ問題は、ただいま御指摘がございましたように、国際収支が今後どう動くかという点でありますが、前のドイツの例その他を見ましても、やはりそう大きくいまのような外貨が減少するということも実例としてあまりございません。そういう意味からいいまして、大勢といたしましては、金融の基調は緩和状態で続くのではないかと思っております。  しかしながら・もちろん金融情勢は、いろいろな特別な事情によって変化が予想されます。それに対して、日本銀行といたしましては金融情勢の調節をいたさなければならないのでございます。その場合に、われわれといたしましては、いまお話がございましたような国債の売買と貸し出しの増減ということで調整をいたすわけでありますが、いまのところ貸し出しにつきましては、一般貸し出しがほとんどゼロになっております。したがって、今後貸し出しの増加による調整の幅というものは相当弾力的に考えられ得ると思います。  それからまた、いま市中にございます国債政保債、それで日本銀行がオペレーションの対象といたしておりますような金融機関が持っておりますものの中で、発行後一年を経過しておりますものが九月末ですでに一兆円をこしております。今後さらに時間がたつにつれてこの金額が増加してまいります。こういうふうに考えられます。したがいまして、この対象債券のオペとただいま申し上げました貸し出しの弾力的な調整十分金融情勢変化に対しては対処ができるもの、こう考えております。  したがいまして、いまお話がございましたような国債日銀引き受けでありますとか、あるいはそれに近いやり方というようなものは、たてまえとしても、インフレの歯どめという観点からも適当でございませんし、実際上からもそういう必要はまずないもの、こう考えておるのでございます。
  5. 二見伸明

    二見委員 総裁は、会議だそうですから御退場なさってけっこうです。  大蔵大臣にお尋ねいたしますけれども国債発行については何がゆえに特例法による措置をとらなかったかという議論が当委員会で再三にわたって行なわれました。大臣からの文書もここに提出されたわけであります。われわれがこうした特例法による国債発行をなぜしないかと言った背景の一つには、こうしたやり方国債発行の歯どめをなしくずし的にくずしていくんじゃないかという危険性があるからです。  ところで、大蔵大臣にお尋ねいたしますけれども財政法第五条では日銀引き受け原則として禁止しております。しかし、ただし書きの中に「特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額範囲内では、この限りでない。」こういう例外規定を設けております。いまの日銀総裁の御答弁は、来年の金融はそれほど逼迫しないだろうという御答弁でございましたけれども、これはそのときになってみなければわからぬ話です。それで、特別の事由がある場合に日銀引き受けができるというこの「特別の事由」というのは、大蔵大臣はどういう事態を想定されているわけですか。
  6. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは、財政法できめておる建設公債発行によってもなお対処できないような歳入欠陥歳出増というものが起こる事態、異常な事態でございますが、そういう問題が起こったというときにはやむを得ない、必要があるということに入るかもしれませんが、いま考えられる範囲では、そういう事態というものはあり得ないというふうに思っております。
  7. 二見伸明

    二見委員 私、ことばを返すようですけれども、いまの大蔵大臣答弁、ちょっとおかしいんじゃないでしょうか。いまの大臣の御答弁は、いわゆる大蔵省でいう赤字公債の場合にはこれに当てはまるという御解釈でしたね。しかし、それは第四条で禁止されているのです。これはむしろ市中金融が逼迫したときにはというふうに解釈するのじゃないですか。もう一度はっきりしてください。
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま公債の御質問だと思って、間違っておりました。そのとおりでございます。
  9. 二見伸明

    二見委員 私は、大臣にこの点ではっきりしておいてもらいたいのは、国債発行の歯どめの一つは、日銀引き受けを禁止しておることだ、常識的にそういわれております。しかし、これは財政法第五条では決して歯どめになっておらぬのだ。特別の事由がある場合には日銀引き受けをしてもかまわないというのが私は第五条の規定だろうと思います。来年度一兆数千億円の国債発行をする。金融情勢がどうなるかわかりませんけれども、どういう事態になっても、このただし書きだけは発動しないということをまずお約束をしていただきたいと思うのです。その点いかがでしょうか。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、一ぺん某新聞日銀引き受けということが必要ではないか、むしろそういう運営がいいんじゃないかという論説が出たことがございまして、それを中心にいろいろ議論が出てきたことを御承知と思いますが、それを中心に私どもも非常にこの問題は研究いたしまして、そのあとで銀行協会全国大会がございましたので、私は、やはりそういう議論が世の中に出ておる以上は、ここを明確にしたいと考えてこの問題の研究をいたしましたが、先ほど日銀総裁が答えられたとおりでございまして、もし平価調整というような問題が起こったという事態を予想してもこの原則はくずさずにいけるという私どもは自信を持ちましたので、銀行協会でこのことをはっきり、来年度国債発行を相当増額することはあっても、市中消化原則をくずさないということを、この間の大会で述べたことでございまして、この原則はあくまでくずさないつもりでございます。
  11. 二見伸明

    二見委員 ところで、今回特例法を設けなかった理由として、今回の公債建設公債だ、公共事業費ワク内であり、建設公債だから、特例法による発行はする必要ないのだ、これが大蔵大臣の終始一貫した御答弁でございましたが、じゃ、逆にいえば、今後特例法でやる場合というのはどういう場合でしょうか。
  12. 水田三喜男

    水田国務大臣 それがさっき間違って答弁しましたように、異常な事態のとき以外にはこういう公債発行ということは私どもは考えておりません。
  13. 二見伸明

    二見委員 私は、ここでなぜ特例法でやらなかったかという議論は、もう押し問答になりますのでやりませんけれども、どうしても二つの疑惑がある。疑惑というか、邪推といいますか、あるわけです。一つはどういうことかというと、今回特例法でやらなかった、建設公債ワク内だからかまわないのだ、こういう安易な考え方をこれからもとり続けるとしたならばどういうことが予想され得るか。私は水田さんがそういうことをやるとは全然思いませんけれども、また、やってもらっては困りますけれども、当初予算で税収を必要以上に見込んでおいて、年度途中で歳入欠陥があったから、これは公共事業費ワク内だから建設公債を出すのだ、こういうやり方だってやろうと思えばできるでしょう。あなたはおやりにならないと思いますけれども可能性の問題としてはこういうことはあり得るでしょう。いかがですか、その点は。
  14. 水田三喜男

    水田国務大臣 可能性の問題としてはあり得るかもしれませんが、今年度の場合は、御承知のような八月十五日のああいう異例な事態から惹起された問題に対する対処のしかたでございますので、今年度のような、当初予算で予定したものが、補正予算国債発行が約倍額になるというような事態は絶対ないことと思います。
  15. 二見伸明

    二見委員 今回はそうじゃないけれどもやる気になればできるということでしょう。やる気になればそういうこともできるという道を開いたと私は思うのですよ、今回特例法を出さなかったということは。もう一つ、あなたは先ほど、特例法を出すのは赤字公債の場合だ、今回特例法を出さなかったのは、こういう場合に特例法を出すと、赤字公債のときに出しにくくなるわけだ、特例法が。私は、むしろそういう伏線も、今回特例法を出したくない、特例法ではやりたくないというところに、あなたのほうにもそういう気持ちがあるんじゃないかと思うのです。四十年のときに、当時の福田大蔵大臣ことばによれば、赤字公債じゃなくて歳入補てん公債だそうですけれども、あのときには特例法でやったんだ。あのときのやり方は、私は非常に筋が通っておったと思う。同じ状態でありながら、今回は特例法という筋を通さなかった。このことについては、私は、むしろ特例法というのは赤字公債を出すときのための非常手段、切り札として取っておきたいという大蔵当局の強い気持ちが働いたんじゃないかなという気もしてくるのです。いかがですか、この点は。
  16. 水田三喜男

    水田国務大臣 それはむしろ逆だと私は思います。財政法の精神からいいましたら、やはり公債発行ということは歯どめのある方法によることが好ましい。健全財政立場からそういうことが好ましい。そういう趣旨から見ますというと、いま建設公債には財政法の上ではっきりとした歯どめがある。が、いわゆる赤字——赤字という字は悪いのですが、いわゆる赤字公債というものについては、これは歯どめのない問題でございますから、そのほうがむしろ問題であって、第四条で建設公債を出して公共事業をまかなうということのほうが、歯どめのある、心配のない健全財政主義だろうというふうに考えて、昭和四十年度のときもすでにこの議論政府部内にも出て、公聴会における公述人も、そういうことのほうが本筋な運営だという意見まで出ておったのでございますが、きのう申しましたように、ああいう特別な理由で特にこの特例法によったんだということで、四十年のときもやはり、私はいま考えて、この四条の一項ただし書き公債を出すことのほうが、財政政策としてはよかったんじゃないかというふうに考えております。
  17. 二見伸明

    二見委員 この議論をやりますとまた最初議論に戻りますので、私繰り返しませんけれども、ただ、総理大臣、私は、今回歳入欠陥があったから公債を出さなければならない——私は、公債を出すことを決して否定するわけじゃないのです。ただ、こういうやり方をやると、建設公債だからかまわないんだということになると、むしろ財政に対する節度といいますか、財政効率化というか、そういう面からも政府当局のきびしい自己反省というものが失われるおそれもあるのじゃないかということ、また、特例法を出すことによって、これこれこういう理由でもって歳入欠陥があったのですということを、国民に明らかにして協力を要請するという立場からも特例法というものは私はやっていくべきだろうと思うのです。と同時に、歳入欠陥が生じたということは、結論的にいえば、政府経済見通しに誤りがあった、その後の経済運営があまりうまくいかなかった、そういう政府にも一端の責任もあるはずなんです。そういう点も全部ひっくるめて、われわれは、政府当局としてはこういう点をこういうふうに反省するから国民にも協力をしていただきたい、こういう気持ちを明らかにするためにも、私は、特例法というものはやるべきだったと思います。いまここで特例法でやれと言ったって、いや、もうできないと言うにきまっておりますので、そんなことは申しませんけれども、今後ともこういう事態が起こった場合には、今回と同じようなやり方国債発行していくのか、今後は特例法という処置を将来は考えていくのか、この点、総理大臣の御見解を私は承りたいと思うのです。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 二見君と大蔵大臣とのやりとりについて、いろいろ私も伺っておりました。私は、前回の福田蔵相の際の特例法をなぜ採用しなかったか、その前例を踏まなかったか、これはそれなりに理由があると思います。当時は全然公債発行というものになじみが薄かった、したがってまた、基本的にもさようなことが考えられていなかった、中間において特別な処置をとらざるを得なかった、こういうことでございますから、特例法を設けて国民の特別な考え方を、理解を得るということ、これは当然のことだったろうと思います。しかし、今回とりました処置は、もうすでに公債発行についての政府の態度については、皆さん方からも、ある意味においては御理解をいただいておる。もちろん、野方図な、無制限な公債発行、これについてはきびしい批判があると思います。先ほど、当初から実現不可能なような歳入見積もりをして、そうして歳入欠陥があるから公債発行する、かようなことがあるだろうと、こういうような例まで引かれましたが、私は、よもやさような、財政当局がいわゆる過大な見積もりをした、こういうものを、与野党にいたしましても簡単に承認されるとは思いませんので、これは特例中の特例というか、特別な例を引かれたので、実はあまり当たらない案のように思いますけれども、私は、限度をもってこういうものに取り組むならば、これは十分御理解がいただけると思います。ことに、今回の処置は、財政収入、この収入源の不足もございますが、同時にまた、ドル・シッョク以来の非常な景気落ち込み、そういうものに対してわれわれは緊急対策を立てる、これがいわゆる国益を守るゆえんだと、かように実は考えておりますので、そういう意味積極性を持った公債発行に踏み切ったのであります。それらの点についてどうか十分の御理解をいただきたいと思います。しかして私は、必ずこういう処置を今後も続けてとる、こういうわけではございません。財政法第四条、これは、原則も、ただし書きについても、十分厳重にこれは理解すべき筋のものだ、これの適用にあたって、乱に流れるというようなことがあっては、皆さん方のお許しを得られるとは思いませんので、そういう点については厳に戒めてまいるつもりでございます。  以上、私の所感をお答えしておきます。
  19. 二見伸明

    二見委員 話は変わりますけれども総理大臣は、所信表明の中で、医療保険と食管制度の改善を検討している、こういうふうにお述べになりましたけれども、来年度でもいわゆる三K赤字というものには積極的に取り組んでいくという姿勢を明らかにしたというふうに理解してよろしいですか。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これらの点は、今回の臨時国会において補正予算として提案する筋のものじゃなくて、むしろ来年度予算において考慮すべき制度上の問題だ、かように実は考えております。しかし、急にそういう問題を提案いたしましても、それでは皆さんの御理解を得るのに困難だと、かように思いますので、前広に実は提案したような次第でございます。
  21. 二見伸明

    二見委員 農林大臣にお尋ねいたしますけれども、きょうの閣議で本年産の米の作況指数、四十六年産米の予想収穫量を閣議でもって発表されたそうでありますけれども、その数字をお述べいただきたいと思います。
  22. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 十月十五日の作況指数でありますが、九三になります。前には九五でありましたが、九三、こういうことになります。
  23. 二見伸明

    二見委員 きょう農林省が発表された数字によると、予想収穫量は水陸合わせて千八十五万トンです。ことし当初に生産調整をやるときに、政府が見込んだのは単年度需給は千百六十五万トンです。差し引きいたしますと、八十万トン今年産米は不足することになります。古米が余っているからなんということは理由にしてもらいたくないのですけれども、今年産米に限って八十万トンが不足しているということは、これは米の値段が上がるということを私は意味すると思うのですけれども、農林大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  24. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように、米の管理は国でやっていますが、自主流通米というものもございます。でございますので、この不作予想によって米の値段が上がるかもしれません。上がる予想のほうが強いかもしれません。しかし現在のところでは、こういう状況で米の値段が上がっているという——少し上がっています。少し上がっていますが、たいへん上がっているという状況ではございません。
  25. 二見伸明

    二見委員 まあ、ものの値段というのは需給関係できまるわけですから、千百六十五万トンのお米が必要なところに千八十五万トンきりなければ、お米の値段が上がるのは目に見えてあたりまえの話であります。  米の値段を私は二つに分けます。自主流通米は、これは別に米の値段にワクがはめてあるわけじゃありませんから、これはどんどん上がっていくことは当然予想されますね、いかがでしょうか。
  26. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御指摘のように、本年度の予想は七十九万トン昨年より減る予想でございます。でございますので、自主流通米については変動があると思います。上がる傾向があると思います。しかし先ほど申し上げましたように、現在の状況ではたいした上がりはない、こういう状況でございます。
  27. 二見伸明

    二見委員 では、配給米のほうでお尋ねいたしますけれども、現在これは食管の対象になっておりまして、政府は売り渡し価格をきめておりますけれども、来年度予算でもって、いわゆる消費者米価、政府売り渡し価格というものは農林省は引き上げることを考えていますか、それともこういう状況だから据え置くということをお考えになっていますか、いかがでしょうか。
  28. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどから食管会計の赤字の問題が出ています。赤字の問題の解消については、前々二見さんから御指摘のような三つの方法がある。その一つとして、消費者米価を上げるということも逆ざや解消の一つの手でございます。しかし、消費者米価の決定というものは、家計の安定をそこなわないように、こういう大きな柱がございます。でありますので、消費者米価の決定につきましては、米価審議会等の意見も聞いたりしてきめていかなくちゃなりませんから、いまどうとは言えませんが、望むらくは家計の安定を害さないように消費者米価を決定するという方向で私は進めていきたい、こう思います。
  29. 二見伸明

    二見委員 いまの御答弁非常にわかりにくいのですけれども、家計にあまり支障を来たさないように消費者米価をきめるということは、上げるということですか。上げるけれども上げ幅を小さくするということなのか、据え置くということなのか、それは予算編成前ではっきり言いたくないでしょうけれども、農林大臣としてのお考えを私は明らかにしてもらいたいのです。
  30. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は、私の答弁のニュアンスでおわかりだと思うのですが、上げたくないという方向で行きますが、しかし、いろいろな事情もございまするし、米価審議会で消費者米価を決定するのはことしじゃございませんから、また予算米価に消費者米価を決定するということではございませんで、予算米価と現実の米価は別でございまするから、先ほど申し上げましたように、いろんな事情を考えながら上げたくない方向で私は検討していますが、事情上来年になってみなければはっきりしたことは申し上げられない、こういうことを言っているわけであります。
  31. 二見伸明

    二見委員 その問題はあまりしつこくお尋ねするのをやめにいたしましょう。  ところで、ことしの秋にやる予定だった物統令適用廃止を、政府は来年四月まで延ばしたようでありますけれども、米の需給が非常に逼迫しているときに、理由のいかんを問わず、物統令の適用を廃止することは、そのまま米の値段の引き上げにつながるのじゃないですか、この点いかがでしょうか。
  32. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどからお話がありましたように、米の作況によって、米の生産事情が非常に悪いのでございまするから、これを引き延ばしたということは、むしろ物統令によって、値上がりというものに対しまして、てこといいますか、押えをきかせるというてことしてしばらくこれを持っておらなくちゃいかぬ、こういう意味でございます。でございまするから、物統令廃止によって米の値段を上げる、こういう意図ではございません。むしろやみ米などの上がるのを押えるというてこに必要だ、こういうことで物統令の廃止を延期したわけであります。
  33. 二見伸明

    二見委員 これから国民が深刻に考えなければならないのは、来年はあまり景気がよくないだろう、しかもその中で諸物価が上がっていくだろう、米の値段まで上がっていくのかということ、は、私は庶民にとってこんな痛手なことはない、つらいことはないだろうと思います。政治というのは、そういう場合にせめて米だけは何とか押えようというのが私は政治の力じゃないかと思うのです。四月までは物統令の適用をしているから、四月までは押えられるでしょう。では、四月以降はどうなるのだ。四月以降なら上がってもかまわないという理由はどこにもありませんし、また自主流通米、特に良質米の値上がりは、私は予想以上にこれから高くなっていくだろうと思います。そうしたものに対する値上げ抑制策というのは、政府はどういうふうに考えているのか、この点を明らかにしてもらわないと、国民としては不安といいますか、政府やり方に私は納得できないと思う。物価安定というのは佐藤内閣の大きな看板の一つですから、私はこの点は明らかにしていただきたいと思うのです。いかがでしょうか。
  34. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 米の需給状況につきましては、本年度は差しつかえないわけでございます。でございますが、この不調の状況もあり、来年、再来年ということもありますから、いまのところ来年の四月まで物統令の廃止を延期して、そうしてその状況等を見ていくということでございます。もちろん御指摘のとおり物価問題は一番重要な問題でありまするし、諸物価、ことに農林物資で言いまするならば野菜その他の不安定な値上がりもございます。こういうことでございまするから、その他の物価事情等を勘案していき、その中で米の問題も十分検討していかなくちゃなりませんから、四月まで物統令の廃止を延期した、こういうことでございます。その後の状況についてはどうだ。物統令だけで物価全体を押えるわけにはいきません。需要供給その他いろいろなバランスをとっていかなくちゃならぬことがありますから、とにもかくにも四月までは米の問題につきましては物統令の廃止を延期する、状況をまた勘案するということで延期をいたしたわけであります。
  35. 二見伸明

    二見委員 そうすると、来年の四月の状況を見ては、物統令の適用除外は延期することも考えるわけですね。
  36. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 事情によっては延期することも考えますが、事情によってはこれを廃止することも考えております。
  37. 二見伸明

    二見委員 じゃ、もう一点お尋ねいたしましょう。別のことです。政府は今回、ことしの予算で買い入れ制限を行ないました。二百三十万トンの生産調整、五百八十万トンの買い入れ調整、これは来年度も続けたいというふうにお考えですか。
  38. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 何としてもこの農林物資につきましては、需給の調整ということが根本の問題だと思います。そういう意味におきまして、米が本年度は不作でございますけれども、いままでの恒常的な例からいいまするならば、米が過剰であるということは、これは現在統計上からも明らかでございます。でございますので、やはり過剰のものは需給のバランスをとるということで生産調整をしておるわけでございます。でありますので、生産調整は五年間をめどとしてやっておりますので、この生産調整は続けていく、こういう方針に変わりはございません。
  39. 二見伸明

    二見委員 この問題はまたあらためて、農林省あるいは政府の見解がはっきりしたときにまたやることにいたしましょう。  ところで厚生大臣、医療保険の赤字の問題でございますけれども、お尋ねいたしますけれども、二十七日に支払い側は医療費の一〇%引き上げを、一〇%ならばよろしいというような見解を発表したそうです。診療側はたしか三二%ぐらいの引き上げ要求だと思いましたけれども、厚生大臣としては大体どの程度の引き上げ幅を見込んでいるのか、またその時期はいつごろなのか、厚生大臣としてはどういうふうに考えておられますか、これは。
  40. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 お尋ねのように、ただいま医療費の値上げの問題で審議を中医協でいたしております。そして支払い側は一〇%程度までならやむを得ないだろうかという意見を発表したと私も聞いておりますが、しかし診療側がそれで応じたという状態でもございません。いま中医協の中立委員の中でいろいろ審議をしておられるのでございます。したがいまして、その結論が煮詰まりましたような段階で、私もどの程度が適当であろうかということを判断いたしたいと思いますので、ただいま審議中でございますから、値上げ幅なりその時期につきましてはいましばらく猶予をいただきたい、かように思います。
  41. 二見伸明

    二見委員 じゃ厚生大臣、たとえば支払い側が言うように一〇%の値上げときまった場合でも、医療保険全体としての医療費の増加というのはこれはかなりな額になりますね。ことしの予算で計上されたのは政管健保に対しては二百七十五億円の国庫補助ですね。医療費の値上げが行なわれた場合に、私はこの程度の国庫負担の増加であったのでは、結局は国民立場から見れば保険料金を引き上げたのじゃないか、結局帰するところはおれたちを苦しめることになるじゃないかと、こういうことになりますね。厚生大臣は、来年度予算では国庫負担については相当思い切った手をお打ちになりますか。
  42. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 御承知のように、先般の国会で健保の改正法案が審議未了と相なりました。この法案が通っておった場合に単年度赤字がなくなるであろうということで提案をいたしたのでありますが、それが審議未了になりましたので、したがって、医療費の値上げがございませんでも、相当の単年度赤字を出すわけであります。そしてこの前の法案は、国は定率の五%を補助をする、そして標準報酬ももう少し上げるというような内容も盛っておりました。そこへ医療費の値上げということになりますると、単年度赤字も相当ふえることに相なります。したがいまして、これらは来年度予算におきまして、健保のいわゆる抜本改正の中におきまして解決を見たい。この場合にも相当国庫負担もお願いをしなければなるまいかと、かように考えております。
  43. 二見伸明

    二見委員 ところで厚生大臣、もう一点伺いますけれども、国庫負担を大幅に増額する意向をいまちょっとお述べになりましたけれども、その場合われわれ困るのは、老人福祉年金だとかそういう方面にしわ寄せが来てもらっちゃわれわれは困るのです。その点も、しわ寄せしないとお約束できますか。
  44. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 たいへん御同情いただきましてありがとうございます。来年度予算は、総理の先般の所信表明におきましても、福祉に関する予算——予算といいますか、今後福祉行政を大いに進展しなければならないという政治のあり方もお示しになってもらっておりまするし、私といたしましても、そういった健保の赤字が他の老人福祉あるいはその他の社会福祉の予算に影響を来たさないように最善の努力をいたしたい、大蔵大臣とも十分折衝いたしたい、かように考えております。
  45. 二見伸明

    二見委員 大蔵大臣、この医療保険の問題について国民に負担をかけないということで、大蔵省としては前向きにこの問題に対処していただけますか。国庫負担の大幅の増額だとか、あるいはその結果他にしわ寄せをしないとか、この点で大蔵省としても前向きに検討し、そして対処していただけますか。
  46. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のとおり、もう累積赤字が二千億、ことしで三千億になろうとしているときでございますので、私どもとしましては、これを、赤字の処理をそのままにして、ただ国が、返済の当てもなく、またこの会計が改善される当てもなくこの累積赤字を増加させて、それをただ融資するという形でこれ以上続けることは、財政当局としても非常な無責任であり、私もこの問題は非常に頭を痛めている問題でございます。したがって、いままでの国が融資している赤字はもうきれいに国が負担する。これはなくするのならなくして、国が負担するかわりに、今後赤字を出さないような形の抜本対策をしてほしい。国が補助金として持つものは持つ。それから保険で負担すべきものを負担するということで、今後赤字を出さぬ対策をここでしてほしい。そうすれば、いままでのこの赤字をここできれいに清算するというようなことをやるのなら、非常に財政当局としても責任が軽くなるのですが、私はいま、いつ返すか当てもないし、改善されないこの会計に、ただ国民の金を黙って貸しておるということの責任を非常に重大だと思って、いっときも早くということでこの改正案を出しておったわけでございますが、この改正案も通らないということで、さらに今年度赤字をまた一千億ふやすというようなことは、私は政治としてこれは非常に大きい責任の問題ではないかと思っています。一刻も早くこれは抜本策を立てて、国民にこういうたれ流しの会計というようなものを長く放置すべき問題じゃないと私は思います。
  47. 二見伸明

    二見委員 この問題は非常に重要な問題です。食管にしても医療保険の問題にしても、やり方によっては、総理大臣、これは国民の負担、国民にじかにしわ寄せするような、改善ではなくて改悪の方向へもこれは当然歩み寄る危険もあるわけです。最近お米の問題で農林大臣と話をいたしましたけれども、お米の問題一つとっても、手を間違えれば、来年は国民は高い米を食わなければならないのですよ。この点、たとえば、米の問題にしても、来年の米の問題は値段の点については心配ない、それだけの対策をする、これだけの決意というものを私は総理大臣に示していただきたい、そのための具体策も示していただきたい。この点いかがでしょうか。
  48. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどの農林大臣二見君のやりとり、さらにまた、ただいまの保険に関する大蔵大臣や厚生大臣の所見を聞きながら、私もただいま感じておりましたが、物統令そのものについてはやや誤解がありはしないか。ただいま言われるように、物統令自身がはたして——高い米、高い米と言われるが、何が一体高いのか、こういうことはやはり考えてみなきゃならぬのじゃないか。私は、質相応に値段がついているならば、これはもう正しい米価のあり方だ、かように評価してしかるべきだと思う。物統令がある結果、不良米とは申しませんが、質の悪い米でもある程度の値段で良質米と一緒に売られておる、こういうような事実も認めざるを得ないんだと思います。自主流通米を片一方で設けましたのも、そういう点で消費者の評価を正しく反映さしたい、こういうことを実は考えたのであります。しかして、物統令については、これは廃止するということを一応きめました。しかしながら、どうも最近の作柄等から見まして、これを最初の予定どおり実施することは混乱を引き起こすおそれなしとしない、かように考えて、ただいまのように、廃止を延期する、こういうような事態になったわけであります。私は、国民の皆さんにお願いすることは、やはり生産者としての利益も消費者としての利益も私どもは確保するというか、そういうところに行政上の責任がある、政治の責任がある、かように考えますので、ただいま言われるように、自主流通米はおそらく高くなるだろう、かように言われますけれども、古米というものが、そう皆さんが古米なるがゆえに悪いんだときめ込まれる筋のものではないように思う。そこらにももっと理解があってしかるべきじゃないだろうかと思います。私は、ことしなどの作柄等から見まして、米の質からいえば、あるいはただいま残っておる古米というほうが新米よりももっとおいしいものであるかもわからない。そこらのものはもっと検討してしかるべきじゃないだろうか、かように思っております。いずれにいたしましても、国民の消費する量としてはただいま米については不足はしないのでございますから、その意味において国民皆さん方も安心してしかるべきだ、かように私思います。しかし、この問題は、何と申しましても、国民全体の食生活の基幹をなす問題でありますから、政府はこの問題と真剣に取り組まなければならない。したがって、先ほど来その扱い方をどうするか、値上げするのか値下げするのか、物統令を維持するのかどうかというようなお尋ねがございましたが、この問題ではわれわれも慎重にならざるを得ない。ことに来年度の予算編成にあたりましても、ただいまの景気情勢、これはなかなか予断を許さないような困難な状態にあると思います。そういう際に、政府主導型の物価値上げということは、これはよほど慎まなければならない、かように思いますので、この点については十分慎重に考究して、もし上げるようなことがあれば、国民の納得が得られるようなそういう方策をとらなければならないと私は考えておる次第でございます。  また、ただいまの医療保険の問題につきましても、ただいまいろいろ支払い側あるいは診療側、また同時に中立系の委員の諸君の案もまだきまらない段階でございますから、十分中央医療協議会等の御意見も伺った上で最終結論を出したいと思います。しかして、先ほど大蔵大臣が申しますように、この問題も簡単には実は——赤字の累積だけを残す、こういうことではならないように思います。と申しますのは、私どもさいふが別にあるわけではありません。ただ国民のさいふを預っていてただいまのような支払いをするわけでありますから、政府が赤字を残すということ、それは結局は国民の負担になるわけであります。そこらの点も十分考えていただいて、そうして国民大方の納得がいくという、そういう方向で負担すべきじゃないだろうかと思います。  その際に、二見君が御指摘になりましたように、老人あるいは生活保護を受けておるような方方に対する医療費が高くなるようなことは、これはわれわれは避けなければならない、かように思いますので、それらの点についての詳細については十分注意はいたしますけれども、全体といたしましては、国民の負担、いずれにしても国民の負担なんだ、それがやはり割り切られるような方法で処理されることを望むわけでございます。十分慎重に取り組むつもりであります。
  49. 二見伸明

    二見委員 総理大臣、物統令について、ことしの春に物統令適用廃止をきめたときは、需給の関係できまるんだ。しかし今度は、いま状況は違っておるのだということをまず私は承知をしておいてもらいたいと思うのです。と同時に、古米のほうが新米よりうまいということは、それは特異なケースでございまして、米はやはり新米のほうがうまいのです。そのことは私はよく知っておいていただきたいと思うのです。  総理大臣、物統令の問題は、ことしの春には、米が余っているのだから物統令の適用を除外してもだいじょうぶなんだというのが政府の見解でした。春といまとでは条件は全部変わっているのです。四月ではさらに状況は変わるだろうと思います。農林大臣は、廃止するかもしれない、廃止しないかもしれない。そんなことはあたりまえです。どちらかにきまっているのです。状況の変化を見て、総理大臣としてはどちらに御決断を下しますか。いかがですか。
  50. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま二見君の言われるように、物統令は廃止する、こういうことを一応決定した。しかしながら、今回、当分の間というような意味で四月まで廃止を延期する、こういうことにいたしたのであります。これはただいま言われるような点もひとつ考慮しなければならない。ただ、物統令を廃止することによって、最近の作柄から見て米の暴騰というようなことがあればこれはたいへんだ、かように思いますから、物統令は存続さす、こういう処置をとったわけであります。そうして、ただいま言われるように、四月になったらどうするのか、こういうことですが、それはそのときになってきめればよろしいことなので、ただいまからもう物統令廃止だとかなんとか申すことは、これは先ばしった議論のように思います。私は、需給状況を十分勘案してしかる上できめるべきだ、かように思っております。
  51. 二見伸明

    二見委員 四月の時点でもう一度検討はされるというふうに理解してよろしいですね。
  52. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりです。
  53. 二見伸明

    二見委員 総理大臣、もう一点別にお尋ねいたしますけれども、今回補正予算で景気浮揚策ということで減税をいたしましたですね。これは、総理大臣のおことばによると、発想の転換をされたということでありますけれども、私はこの実際の減税額を見まして、政府のやったこの減税というのは、不況対策に名をかりた高額所得者のための減税じゃないかと思うのです。  たとえば、一例をあげますと、夫婦子供二人の場合は、数字が違ったら御訂正いただきますけれども、年収百万円ではわずか年間二千七百四十円、百五十万円では五千百円、二百万円では八千七百円、ところが三百万円では二万八千二百五十八円、五百万円では八万八千三百四十七円。減税率は確かに年収の低いほうが高いようになっておりますけれども、減税額そのもので見れば、高額所得者のほうが多いですね。  なぜ高額所得者のほうが多かったか。税率の手直しをしたからこういう結果になった。税制調査会ですか、そのときにはむしろ課税最低限、控除額の引き上げをやって、低所得者のためにもつと減税をすべきだという意見もあったはずなんです。一体どうして今回こういう減税の内容をとられたのか。負担の公平をはかったなんという答弁は、私は毛頭聞きたいとは思いませんので、なぜこういう減税の内容にされたのか、大蔵大臣、これはいかがでしょうか。
  54. 水田三喜男

    水田国務大臣 減税が非常に少ないように言われますが、過去五、六年の減税のぐあいを見ましても、今回が最高の減税額でございまして、昭和四十一年度の不況対策のときの減税も、所得税の減税は千三百億ぐらいでございましたから、今度のほうが多いということでございますし、減税の幅としてはいままでで一番大きい減税であるということは間違いございません。  そこで、できるだけこの減税の恩典が広く及ぶようにということを今度は考えましたが、控除の引き上げのみでやろうといたしますというと、減税の効果が非常に片寄ってきますので、やはり率の調整をするということがどうしても必要で手友触れたわけでございますが、金額としまして大体半々で、控除による減税が八百三十五億、率の訂正によるものが八百十五億、金額も大体均衡をとったつもりでございます。  じゃ、それをどういうふうに減税率を調整したかということでございますが、これは、やはり税制である以上は前回との関連を考えなければなりませんし、今後の税制も考えなければいけない。長期的な考えを持ってこの法律をいじらないというと非常な不均衡ができますので、そこで、すでにことし、当初において同じような千六百六十何億という減税を本年度やっておりますので、その減税のときのやり方と、それから去年、おととしも同じようにやっていますが、そういうものとの均衡ということを考えますというと、いままではたとえば百五十万、二百万というような、それ以下に非常に重きを置いておったために、そこに各階層ごとの非常な不均衡というものができておった。今回の減税をやって、またさらに将来所得税の減税はやるんですから、その場合に、この各階層別の不均衡の差を大きくしてしまうということは、税制として問題でございますので、そういう点を考慮いたしますというと、ことしの当初予算のときの減税とあわせて考えてみていただいたら大体いいのじゃないかと思います。そういたしますというと、決して三百万、五百万を中心に優遇したという税率の是正にはなっておりません。  たとえば数字を申し上げますというと、百五十万の所得者は一四・五%の減税になっておる。三百万のところは二二・三%、五百万のところが一四・五%、それ以下はずっと下がってくる。その間に二百万が一一%という数字がはさまっておりますので、二百万のところが今度は非常に優遇されていないということでございますが、ここの付近は前回、前々回において非常に優遇されておりますので、当初予算のときの減税と比べますというと、もう二百万のところは一九%の税率の減ということになって、もう姿が違ってきます。昨年、一昨年ということで見ますと、全部なだらかに、上へいくほど低くなるし、下へいくほど厚いという減税率になってきますので、一ぺんやはりある程度の是正をやっておかないと、次にもう一度の減税措置というものがやりにくくなるということで、技術的には非常に苦しんだのが今度の減税でございまして、私は高額所得者中心の減税であるというふうには全然考えておりません。
  55. 二見伸明

    二見委員 その説明は、私、前に大蔵省から聞いておるのです。ただ総理も大蔵大臣も今回の減税は景気浮揚の一環としてやっておるのでしょう。景気浮揚策として減税をやったのでしょう。景気浮揚策としての減税ですよ。国債発行してまで減税をしようというのが今度の政府の減税対策でしょう。その場合に、減税で低所得者のほうに重い減税をしたのと今回の改正案みたいのとどっちが景気浮揚になるか、景気に対する波及効果を計算されてこれはやったのですか。波及効果を計算して同じだというなら、私、納得しましょう。
  56. 水田三喜男

    水田国務大臣 で、景気浮揚策という意味も持ちますので、今度の減税は、私はできるなら特別な措置による減税をやってみたいと考えました。ということは、いまの税法と無関係に何百万円以下の収入は何割、何百万以上は何割というような、そういう臨時減税で対処してみたらどうかということを考えて、この問題と取り組んで、非常に研究しましたが、やはり税制というものはそう中間に臨時的なものを入れるというと、次の本格的な減税に支障を来たす。臨時減税によって非常に減税された人でも、これを正規の税制によって次に処理しようというときには、増税になるという層が出てくるというようなこと、いろいろな矛盾が出ますので、やはり税制としてこれを考える以上は、体系的な事情を考慮して考えなければならぬというようなことから、目的が不況対策というようなことであっても、税の制度としてはそう簡単にいかないという事情で、今度のような、やはり来年度にも通ずる一つの減税——税制というようなものを考えた、こういうことでございます。
  57. 二見伸明

    二見委員 私は、いま景気浮揚策、景気刺激策——景気に及ぼす効果というものについては、今回の減税案と、もっと低いところに手当てをし場合の計算をしたかと聞いたのです。比較をしたかどうか聞いたのです。してやったわけじゃないでしょう。あなたは別の観点からおやりになったのであって、景気に対する効果というのは何ら計算しないでおやりになったのでしょう、今回は。
  58. 水田三喜男

    水田国務大臣 やはり減税の恩典というものが相当広範囲に及ぶということが、やはり税制をいじる以上は必要だという観点から、いろいろの計算をして、波及効果の問題も一応は考えましたが、臨時税制によらない税制という方針をきめた以上は、こういうことにならざるを得なかったという次第でございます。
  59. 二見伸明

    二見委員 もう一点お尋ねしましょう。じゃ、来年度は所得税の減税をやりますか。
  60. 水田三喜男

    水田国務大臣 ほんとうは、今年度は行ないましたので、来年度は来年度の減税をやるつもりでおりましたが、景気対策もございまして、それを年内に繰り上げたというようなことでございますので、一応この税制は来年度も考えた税制というふうに私どもは思っております。しかし、来年度の税制は税制として、いずれ税制調査会には諮問いたすつもりでございますので、それによって、来年度の減税がどういうふうになるか考えたいと思っております。
  61. 二見伸明

    二見委員 大蔵大臣としては、来年は所得税の減税はやりたくない。税調の答申を見てきめようという御判断だと思います。  ところで、総理大臣、今回総理大臣が学者から聞いて発想の転換をされて、こういう年内減税をやった。内容については私、不満なんですけれども、年内減税をやったという行為を私は評価していいと思うのです。税収の見込みが当初見込みよりも落ち込んでいるときにでも減税ができたということは、私はたいへんなことだと思うのです。逆に言えば、当初見込みよりも税収が伸びた場合には、年度内減税はできる、あるいは減税じゃなくて、年度内に社会福祉のほうに金を回すとか、そういう方面に還元することができるという、知は一つのこれは先例になると思うのですよ。私は年内減税という佐藤総理大臣のこの決断は、そういう面からは評価したいと思うのですけれども、どうですか総理大臣、年内減税をやったんだから、今後もこれを一つの例として、必要があれば、年内減税、年度内減税はやるということを確言していただけますか。
  62. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 年度内減税、これを二見君から評価されたことは、私、お礼を申し上げておきます。  私は、各方面の意見も聞き、財政当局の収入減のおりから減税をやるということ、それに同調を得るためには財政当局もずいぶん勇気が要ったと、かように思います。同時にまた、皆さん方からいろいろの非難があるにかかわらず、思い切って減税をやり、片一方で必要な公債発行するということによって所要の事業は完遂する、こういうことに実は踏み切ったこの財政当局処置については、やはり御理解をいただきたいと思います。  私は、もちろん、こういうことで何でも財政法四条を無軌道に運用する、こういうことを申すわけじゃございません。これはもう皆さんからおしかりを受けないような節度ある処置はとるつもりでございますけれども、必要あれば、政府は年度内といえども今回のような減税もやるし、あるいは公債発行も踏み切る、こういうことがあってしかるべきだ、やはり国民のために、また国のためにこういうことをやることが、政府の責任だろうと、かように思います。
  63. 二見伸明

    二見委員 これからは自然増収が当初よりも見込まれた場合には減税をすることも十分に考えられる、こういう前向きの御答弁だろうと思います。それは佐藤さんが総理大臣をおやめになっても、そのあとを引き継ぐ自民党内閣もこれは拘束する、こういうふうに考えてよろしいですね。
  64. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 こういう問題は、そのときどきの政府がみずからの判断できめるべき事柄だ、かように私は思います。私がかような答弁をしたからといって、将来それが引き合いに出されることは、これはもう次の人も承知はするでしょうが、しかし、財政問題はそのときの情勢によって判断される、かように御理解いただいてしかるべきだと思っております。  なお、先ほどお尋ねがありました来年度の減税案について、これは一応大蔵大臣からお答えいたしましたが、税制調査会における長期減税計画というものもございますし、税制調査会の意見も十分聞きまして、しかる上でこの問題と取り組む、かように御了承いただきたいと思います。
  65. 二見伸明

    二見委員 次に、やはりこれも当委員会で問題になりました国際通貨ですけれども最初大蔵大臣にちょっと見通しをお尋ねしますけれども、私はアメリカにはドルと金との交換を回復する意思がないというふうに考えているのですけれども大蔵大臣はどういうふうに見通しされておられますか。
  66. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は意思がないということはないのではないかと思いますが、事実上この交換を回復するということはむずかしいんじゃないかと思っております。
  67. 二見伸明

    二見委員 ドルはもうこれからアメリカとしても金との交換はできない、そうなりますと、政府は現在通貨調整に努力しておりますけれども、将来の問題として、SDR本位制だとか、あるいは国籍を持たない中立的な国際通貨体制というものをお考えになっているといたしましても、当面は固定相場に復帰したい、こういうところにねらいがあるわけですね。
  68. 水田三喜男

    水田国務大臣 いままでの各国の希望を総合いたしましても、過去二十何年というものはこの固定相場を中心として世界経済の円満な発達をしてきましたことから顧みましても、やはりこれは各国の協調によって平価の調整を行ない、早く固定相場に復帰したいというのが各国の希望のように私どもは思っております。
  69. 二見伸明

    二見委員 通貨調整をいたしますと、これはいろいろなやり方にもよるでしょうけれども、アメリカの国際収支というものは改善する見通しはございますか。
  70. 水田三喜男

    水田国務大臣 アメリカ自身の今回とったニクソン政策、あの国内政策はやはり国際収支の改善になる部分が相当多うございますので、これは有効な国内政策であると思っております。それに加える問題は、今度はいまアメリカがやっております二国間交渉によって、各国別にいろいろアメリカの赤字を消すための協力を求めておる、これが全体としてどの程度の効果をあげることになるかわかりませんが、これがうまくいき、そうして最後に国際協調によって、平価の調整ということでアメリカの赤字を解消することに協力するということが成功すれば、アメリカの国際収支というものは、私はやはり非常に大きく改善されるというふうに考えます。
  71. 二見伸明

    二見委員 私は、別に変動相場制がいいなんというふうには考えておりません。商売をやってみれば確かに変動相場制は困るだろうと思う。ところが、いまここで通貨調整をやりますね。一つの固定相場制ができると、この体制は、大蔵大臣、いままであったIMFにおける固定平価制とは私は本質的に違うと思うのです。いままでのIMFによる固定平価制というものは、とにもかくにも金というものがあった。今回は通貨調整がやられて一応固定相場に戻っても、裏づけの金というのはないのです。そうでしょう。そうすると、同じ固定相場であっても質はまるっきり違う。いままでは各国はIMFの規定に従って一生懸命固定平価を維持することに努力をしてきた。今後はそうではないのです。まるっきり違うでしょう。しかも、通貨調整というと聞こえはいいけれども、日本にとってみれば、たとえば円とドルとの関係では円は上がるだろう、輸出条件はいままでとはまるっきり違ってくるでしょう。そうですね。そうなった場合に、いままでみたいな経済運営ではいけない。これは商社にとってもきびしい条件になるだろう。変動幅もいままでみたいに上下一%というわけにいかなくて、三%くらいの事実上のワイダーバンドになるかもしれない。これから置かれる日本の経済環境というのは、いままでとはまるっきり違ったものになるのだ、この認識はこのとおりでよろしいですね。
  72. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは日本だけではなくて各国がそうなるために、この通貨制度を現状のままに放置しておけないということから、いまいろんな相談が始まっておるということでございます。
  73. 二見伸明

    二見委員 いままでのIMF体制でも、たとえばIMFでもって平価は守れということになっておる。一方ではガットがあって貿易の自由化をしなければならぬとこうなっておる。これはそれぞれ比べてみると非常にいいのですけれども、これをこのとおりやると、国の政策全部違いますから、場合によっては貿易の自由化をするためにしなければならぬということをそのとおりやれば、赤字がふえてくる。そのために固定相場を守ろうとすれば、今度は保護貿易に転換しなければならぬ。いろんな矛盾がいまここに爆発してきているわけです。それはIMF体制であってもそうだった。これからの国際通貨体制というのは、それよりももっとフロートするというか、変動の激しい通貨体制になるわけでしょう。その場合に、じゃ、わが国としては一体どういう経済政策をとるのか。ですから、総理大臣が二十五日の予算委員会で、「いままでとってきたGNP第一主義あるいは生産第一主義あるいは輸出重点主義、こういうような考え方はこの際に改めるべきだろう、やはり内における経済を真に国民福祉につながるような方向で取り上げるべきではないか、」こう述べられたこと自体、私は考えとしては全く正しいと思うのです。方向としては正しいのです。大事なのは通貨調整をした段階に、通貨調整をすれば、たとえば日本としては好むと好まざるとにかかわらず産業調整ということも起こってくるだろう、農業の置かれる環境も変わってくるだろう、いろんな条件が変わってくる。じゃ、通貨調整をした場合に、その時点で政府がどういう経済政策を明らかにするのかということなんです。ニクソンはドル防衛政策を発表したときに、投資控除であるとか所得税の減税を一年間繰り上げて実施するとかという、あるいは物価と賃金の九十日間凍結とかいう、そういう具体的な策を同時に発表されているのです。同じことを私が政府に望むとするならば、これから通貨調整がいつ——年内に行なわれるのか、来年行なわれるのかわかりませんけれども通貨調整が行なわれた一もうすでに新しい経済環境の中に入っておりますけれども通貨調整ということを一つの線にして、一つの区切りとして、その時点でもって、わが国は今後こういうふうに経済政策を転換してまいりますという、具体的な、だれが見てもわかるような方策を出すのかどうかですね。私はこれははっきりしていただきたいのです。これがなければ幾ら議論をしたって始まらない。円を何%切り上げるとか、切り下げるとかいう議論ももちろん大事だけれども通貨調整をやった場合に政府としてはどういう対策をとるのだ、福祉政策としてはどういうことをとるのだ——たとえば福祉政策一本とると、いま現在、総理大臣はこれから住宅をたくさんつくるというお話をされた。ところがいま日本には、現在は第二次住宅五カ年計画というのがある。あの内容を改定するということでもって、そこも考えているのか。あるいは下水道整備五カ年計画、たしか完成時が三八%だと思いましたけれども、これを四五%にする、五〇%にするということでもって、内容を改善するのだ、計画を改定するのだということまで明らかにするのか。産業調整の方向はこうするのだということを、通貨調整をした段階で佐藤内閣としては明らかにするのかどうかですね。それは通貨調整があしたとか、あさってとか、あまり早いうちにくれば、それは来年度の予算審議のおりでもけっこうですけれども、そうしたことを通貨調整を境としてその前後、現実的には通貨調整をやった時点で、私はその方策というものを明らかにしてもらいたいと思うのです。ここら辺についての、もう当然政府としても準備は  進めていると思いますけれども、その時点で具体  的なものは出していただけるのですか。
  74. 水田三喜男

    水田国務大臣 財政政策の転換をするというようなことは、政府はすでにきめておりますし、それは結局成長第一主義じゃなくて、いままでの国際収支のゆとりと成長の成果を今度は社会資本の充実に結びつけるという政策でございます。その政策を実際にやるためには国際収支のゆとりというものを持たなければこの政策はやれない。過去の日本がやれなかったのは、このゆとりがなかったために実際はできなかったという面がございますので、今度はこのゆとりを持たなければいかぬ。いまちょうど持っておるというときで、これはやろうとすれば可能であるということが一つと、もう一つは、やはりこれだけ経済大国になった以上は、外国に対する経済援助というものが一つの日本の義務になってきておりますので、この義務を果たすために必要な、やはり国際収支のゆとりというものを持たなければならない。この二つが可能になるゆとりを、私は国際収支の経常収支においてこれを確保したいという考えでございますので、いま各国との話し合いに入っておる私どもの重点は、平価の調整というものは経済に相当大きい影響を与える。で、与える場合に、日本は協力はするが、いまあなたのおっしゃられた財政転換と各国の経済援助という、この二つを可能にする幅だけ確保した協力をする。それが日本として最も必要な国益に関する問題だということで、そういう意味平価調整について日本がどういう態度をとり、どの程度で国際協調に応ずるかということは非常に大きい問題になっておるのでございまして、平価調整とは決して無関係ではなくて、そういう転換をするために平価調整の幅ということについて私どもはいま慎重に考えておるところでございます。
  75. 二見伸明

    二見委員 私はそういう福祉重点主義に移るということについては賛成なんですけれども、ただ、これは非常に危険なことがあるのですよ。と  いうのは国民は福祉に重点政策をやる、福祉に重点を移すということは、いわばコンセンサスが国内にでき上がっているのです。コンセンサスができ上がっておるところに佐藤内閣が経済の政策を転換します、今度は福祉に重点を置きますというと、国民は何となくああそうかとわかった感じがするのです。ところがよく見てみると、ではどういうふうにやるのかという具体策が何にも出てないのです。住宅はふやすという、ふやすということはいままでにもいってきたし、国民はそう思っている。ではどうやってふやしていくのか、バックになっていく住宅計画を改定するのか、そうしたいままでの既存のものを全部改め直して、計画は改定して、そうしてこうするのですというものがなかったならば、国民はすなおにこれは承認できなくなる。言うなれば、悪いことばで言えば看板の塗りかえじゃないか、単なる看板の塗りかえにすぎないじゃないかという批判も出てきて私は当然だろうと思います。この点は、佐藤さんにとっても、これはそういうふうに言われたんじゃはなはだ心外だろうと思いますので、私は具体的な内容一つ一つをいまここで出せとは申しませんけれども、次の通常国会、あるいは通貨調整が行なわれたその時点でもって、現在行なわれている計画一つ一つの総点検をして、改定するものは改定するということを明らかにしていただけるのかどうか、と同時に、今後の経済政策はこういうふうにやっていくのだということを明らかにわかるようにしていただけるのかどうか、その点をお尋ねをしたいのです。
  76. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 いまお尋ねの点でございますが、御承知のとおり、経済企画庁におきまして、新経済社会発展計画を、これは昭和四十五年から六年間の計画でもって策定しておりますが、これは平価調整が行なわれます大きな経済政策の転換期でもございますし、そういう機会にこの計画の見直し作業も根本的にやるという心組みで、いま作業を準備中でございます。したがいまして、いま御指摘になりました住宅あるいはその他社会福祉政策万般につきましては、その各部門において、それぞれその計画の一つの軌道修正が行なわれるだろう。これは当然でございます。それを通じて数字的に具体的にこれを明示していきたいと思っております。
  77. 二見伸明

    二見委員 いまの答弁で了解いたしました。これは必ずそのとおりやっていただきたいと思います。  時間がありませんので、最後にまとめて御見解を承りたいと思います。  公害の問題です。景気刺激、景気刺激でもって、ともすれば公害対策というのはないがしろになりそうなものですから、私はあえてお尋ねするわけでありますが、具体的な例で申しますと、現在茨城県に鹿島に公害が起こっておりまして、地元では大問題になっております。私もこれは現地へ何回か行きましたし、調査も行ないましたけれども、実はこういう被害者がいるのです。  たとえばこれは岩井武夫さん、二十九歳ですけれども、十月五日の午後十一時に、担架に乗せられて銚子の島田病院にかつぎ込まれた。そのときの状況というのは、医者の診断では急性の気管支ぜんそくで、高度の呼吸困難で重症だという。酸素テントに三日間、並行して副じん皮質ホルモンによる加療をしたそうです。医者の話によると、これは通常のぜんそくでは用いないということです。こういう被害者がおります。この岩井さんの話によると、この人は、九月十四日から十月一日まで三陸沖に魚をとりに行っていた。一日に鹿島へ帰ってきて、鹿島の港近くになったときに気持ちが悪くなって、五日に入院をしたのです。  もう一人、江波戸成千さんという四十六歳の方がおりまして、八月二十八日にやはり同じ症状、高度の呼吸困難で地元の病院に入院をいたしました。やはり急性の重症の気管支、ぜん息で、三日間酸素吸入をしております。この人はいままでぜんそくにがかったことはありません。病院の話によると、六月の下旬にこの人は胸の間接撮影をやった。そのときには胸は非常にきれいだったけれども、入院してかつぎ込まれたときには胸は非常によごれていた。二カ月前には何の異常も見られなかったけれども、八月に入院したときにはたいへんな重症であった。  この二人のこうした例があるわけですけれども一つ共通しているのは、非常に症状が重症であるということと、病気が急激にきているということが私は一つの特徴じゃないかと考えます。  私は、この問題について、これは一つの例として取り上げたわけでありますけれども、まず第一点、これは環境庁長官にお願いいたしますけれども、この原因の究明を大至急やっていただきたいのです。現地では、シアンが出たという話もある。粉じんの中にシアンがあったという話もあります。シアンが原因しているのかどうか、これはわかりません。したがって、この原因究明を直ちにやっていただきたい。これを第一点、環境庁長官にお願いいたします。  それからもう一つ、これは鹿島が当てはまるかどうかわかりません。川崎でも公害でこの間死者が出ている。こうしたことを考えると、ただ単に、亜硫酸ガスだとか、シアンだとか、重金属だとか、こういうものが単独に作用しているというよりも、これからは、それがいわゆる複合したものが人体にものすごい影響を持ってきているのじゃないか。この複合汚染対策というものを、環境庁は光化学スモッグでもってやっていられるようですけれども、複合汚染対策というものを私は本腰を入れてやっていただきたい。  それから第三点は、これはやはり環境庁——むしろ通産省になりますかね。去年の公害国会でもって公害対策の権限は県に移りましたね。ところが、自治体というのは企業にあまり強くない例がかなりあるのです。自分の県がよくなるために企業を引っぱってきた。そのために県としてはあまり強く言えないというケースがかなり出てくるのではないか、これからの問題としても。鹿島も同じことが言えます。これは環境庁としても、こうした県に対する行政指導というのはこれからも厳重にやっていただきたいのです。  通産大臣、ここで通産省にお願いしたいのですけれども、たとえばこの鹿島の問題、これは今後行なわれるであろう拠点開発の一つの例として私は言うわけですけれども、開発はいま三分の一です。ところが、三分の一しか開発してない段階で、処理場の放流水の中に海水の五十倍もの重金属が入っているとか、粉じんの中にシアンが入っているとか、いろいろな問題が起こってきているのですね。こういう段階の中で、公害騒ぎをしているまつ最中に、鹿島では第二高炉の建設をやっているのです。これは住民の感情をさかなでするようなことだろうと思います。これに対して、私は、通産大臣に要求したいことは、建設に着工した第三高炉の公害対策という面から安全性を確認をしてもらいたい。そうして、安全性に不安があり、問題がある場合には、建設の中止もやっていただきたい。そこまでの強い決断を今後とるかどうか、これもお願いしたいと思います。  それから第四点は環境庁ですけれども、いままでの公害対策というのはPPMというやつですね。濃度規制です。しかし、重金属が大量に出てくるという時代になってくれば、濃度規制だけではもうこれからはいけないのじゃないか。公害対策というのは、これからは、希釈されて心配ないものはともかくとして、沈でんしていくような物質、そういうものについては、濃度規制ではなくて量規制ということをこれからはやらなければ、公害対策としてはもう片手落ちになるのではないか。この点についてはどういうふうに考えているか。これは環境庁の見解をお尋ねをしたい。  最後に総理大臣、こうしたことを一括して、今後の公害に対する基本的なお考えをお尋ねしたいのですけれども、私は、鹿島の問題は単なる一地域の問題として考えていただきたくないのです。いままで行なわれてきた開発の見直しもしなければならないと同時に、これからも全国各地で開発が行なわれていくでありましょう。その場合に、もう一度公害対策という面から新全総を検討してみる必要があるんじゃないだろうか。と同時に、工場の立地規制ということも今度はもう一度真剣に考え直してみる必要があるんじゃないだろうか。いままでもこれはだいぶ議論があったことです。この点について総理大臣の基本的な見解を最後にお伺いをしたいと思います。  以上、よろしくお願いいたします。
  78. 大石武一

    ○大石国務大臣 鹿島地区に公害と思われる事例が発生しましたことはまことに残念でございます。御承知のように、鹿島地区は第三次の公害防止計画の地区に入りまして、いまその計画を策定中でございます。来年からは事業にとりかかりまして、特にこの鹿島地区は、いままでの他の地区と違いまして、予防的な、公害の発生しない、ない地区としてつくろうという意味で計画を急いでおるわけでございますが、そのような場合にこのような事例が出ましたことは残念でございます。これは茨城県庁からも報告がございますので、われわれは鋭意その原因をいま究明いたしております。もう少し原因を究明いたしまして、できるだけの対策を講じてまいりたいと考えております。  それから複合汚染についてのお話でございますが、同感でございます。いま、われわれはいろいろな規制をいたしておりますが、その排出基準というものは、単一物質についてこれをきめて規制しておるわけでございますが、すべて排出される場合には、ことに大気汚染の場合には、単一物質だけのものでは規制はむずかしいと思います。したがいまして、そういういろいろな物質が相乗的、相関的な作用を行なうと思いますので、そのような複合的なものも十分に究明いたしまして、りっぱな規制をいたしてまいりたいと考えております。  三番目の監視体制でございますが、これは、監視はすべて県にその実権を移しましたが、やはり県において十分な監視をしてもらわなければなりません一そのためには、われわれも十分に協力いたしまして、相談をいたしまして、あるいは監視体制の強化ができるようないろいろな助成を行ないまして、りっぱな監視を行なうようにいたしたいと考えております。  それから、四番目の、量で規制するということでございます。そのとおりでございます。現在は、水は、残念ながら水質の程度だけで規制してございます。濃度だけでございます。総量にはまだ手が及びかねておりますが、やはりこれは近い将来総量の問題でこれを解決することが必要だろうと思います。  また、煙、大気汚染につきましては、硫黄化合物につきましては、やはり一応量で規制するような考えを取り入れておりますが、それだけでは不十分でございますから、さらに、窒素化合物であるとか、あるいはその他の浮遊粉じん、そういうものにつきましても、やはり量で規制するような方向でこれを進めてまいりたいと考えております。
  79. 田中角榮

    田中国務大臣 産業公害について抜本的な施策を推進しなければならぬことは御指摘のとおりでございます。すでに、四十年から、これらの問題については、産業公害総合事前調査なるものを行なっておるわけでございます。大気関係につきましては三十七地区、水質関係については二十四地区をずっとやっておるわけでございます。  大気関係で申し上げますと、茨城県の鹿島、岡山県の水島、大分県の鶴崎、千葉県の五井、君津、北海道の苫小牧等でございます。なお、水質関係としましては、茨城県の鹿島、岡山県の水島、千葉県の五井、君津、愛知県の東三河、青森県のむつ等を対象にして行なっております。  通産省は、現在のものだけではなく、将来の日本の産業立地の問題もあわせて産業公害の絶滅ということをいま総合的に検討いたしております。  また、御指摘の鹿島の問題につきましては、環境庁及び地元茨城県等と連絡をとりながら調査を進めてまいりたい、こう考えます。以上。
  80. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 環境庁長官並びに通産大臣からお答えいたしましたが、当予算委員会でも、先ほど特に瀬戸内海の汚染状況等を親しく御視察になった、かように伺っております。  最近の公害対策は、簡単な単純なものから、いま言われるように、複合汚染という、そういう形にまで発展しております。こういう段階になってくると、当然、われわれもこれに対する対策を立てなければならない。そういう意味で、新全総を見直せ、かような御要望は、これは当然のことだと思います。私どもも公害と真剣に取り組む、そういう立場に立ちまして、立地条件を含めて、さらに新全総についても適当なる軌道修正を行なうこと、これはあり得る、かように御了承をいただきたいと思います。
  81. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  次に楢崎弥之助君。
  82. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、まず冒頭に、対米、対中外交に対する佐藤総理の政治的な責任について問題点を明らかにしたいと思うわけであります。  そこで、外交権は政府に付随する専管あるいは専権事項である。このことが許されておるのは、行なわれた結果について責任を持つという裏づけがあって初めてそのことが許されるのだ、このように私は考えますが、いかがでしょうか。
  83. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外交権についてのただいまのようなお話、これは、私は、そういう議論はりっぱなものだと思っております。さらにまた、私自身が、ただ単に外交ばかりではなく最高責任者である。さような意味において、あらゆるものについて責任を問われる。これは当然のことだと思っております。
  84. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もし、行なわれた結果について全責任を負わない、そういうことであれば、何も、国会も、国民も、外交権が政府に属する専権事項であるなんということは認めないと思うのです。  そこで、そういう観点から私はお伺いをしたいわけですが、総理は、事あるごとに、外交問題を論ずる場合に、国益ということをおっしゃるわけであります。もちろん、国益が外交の中心になることは当然でありましょう。しかし、総理の言われる国益とは一体何なのか、そこが問題なのではないかと思うわけであります。それで、総理が言われるその国益というものが、はたしてどういう内容のものであるか、これについて私どもは大きな疑問を持っておるわけであります。その、われわれが疑問を持っておる一つの問題として、私は、政府の資料をもってそれを明らかにしてみたいと思うわけであります。  これは官房長官にお尋ねをいたしますが、防衛庁以外に、官庁文書の取り扱いについて、取り扱い区分が設けられておる省がありますか。
  85. 竹下登

    ○竹下国務大臣 さだかに存じませんが、あるはずでございます。
  86. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは明確にできませんか。
  87. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ただいまの御質問につきましては、その内容、背景がわかりませんので、私からここで、何省にどういう区分があるとかいうことを答える用意がございません。
  88. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私がお伺いをしておるのは、まだ具体的な問題を出していないわけです。ただ、各省にそれぞれ文書取り扱いの区分というものが設けられておるかどうか。官房長官が御存じないならば、ひとつ各大臣、一人一人お答えをいただきたい。
  89. 福田赳夫

    福田国務大臣 外務省におきましては、大臣官房文書課というものがあります。その文書課を中心といたしまして、文書の取り扱いをどうするか、これは厳秘であるとか、あるいはマル秘でありますとか、あるいは局長限りでありますとか、これは大臣限りでありますとか、厳重に区分をいたしまして、注意深く文書の取り扱いをいたしております。
  90. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その取り扱い区分の根拠と申しますか、何か、省令なりあるいは何かございますか。
  91. 福田赳夫

    福田国務大臣 職制につきましては、はっきりした名称につきましては、あるいは違ったところがあるかもしれませんが、外務省分課規程というようなものがありまして、その書類をだれが扱うかということはきめてあります。また、その扱いぶりにつきましては、これは公務員職務執行の当然のやり方といたしまして、もうおのずからきまってくる、こういう性格のものであります。
  92. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その種のものは、省内は拘束するかもしれませんが、もちろん国会や国民を拘束するものではありませんね。
  93. 福田赳夫

    福田国務大臣 もちろん、国会の承認は得ておりません。省内の規程である、かように御了承願います。
  94. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理は、過去四回訪米をされておりますですね、総理になられてから。違いますか。その交渉のための訪米をするに際して、訪米に関する資料というものを、そのつどあらかじめいろいろつくられるわけでしょう。どうでしょうか。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 頭の中にある問題もございますが、やはり、いろいろな勉強のための資料、そういうものはもちろん用意して出かけます。
  96. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは毎回そうでございますか。四回。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 毎回そういうようにしておる。これはまた、どこへ行きましても——アメリカばかりじゃございません。出かける際にそういうような用意はして参ります。
  98. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、これはおそらく第一回の訪米からずっとあると思いますけれども、まず、第一回目の訪米に対して、「昭和三十九年十二月十七日佐藤総理訪米資料」というものがありますか。
  99. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま記憶しておりませんけれども……。
  100. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 資料があるかどうか。官房長官、どうですか、すぐ確認ができますか。
  101. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私も記憶いたしておりません。   〔発言する者あり〕
  102. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ずいぶん昔というお声がうしろのほうからありますが、第一回目から順次新しいほうにやっていきますから、どうぞお待ちになっておっていただきたいと思うのです。  そこで、これはすぐひとつ確認をしていただきたいと思うのです。以下、私は、この資料から問題にしたいと思っておりますし、これは過去四回の佐藤総理の対米交渉について非常に重要な関係があるからであります。
  103. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そのつど破棄しておるかもしれませんので、その点については、わずかな時間をいただければお答えを明瞭にできると思います。
  104. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 実は、この国会で沖繩返還協定が審議される予定であります。この沖繩返還協定の内容は、実は、この一番最初に総理がその座に着かれて、第一回の訪米をされるときに、すでに今日の沖繩返還協定の大体の考え方が出されておるのです。たとえば、基地の機能を全然そこなわないで、基地の機能を維持するという条件のもとで、あるいは米軍の行動を拘束しないという条件のもとでこの沖繩問題を考えていくという総理の姿勢が、実はこの資料にすでにあらわれておるのですね。そうして、あなたは過去四回行かれておりますが、一貫してこの姿勢でやられておる。その証拠には、出てまいっております返還協定を見てみると、そのとおりなんです。  そこで、いろいろありますけれども、その中で特に私が非常に問題であると思いますのは、沖繩県民の自治権をだんだん拡大していく、そして返還協定にこぎつけられました。ところが、この沖繩県民の自治権の拡大の問題を、実は、総理は、党利党略という観点から取り扱っておられる。その一例をそれじゃ資料によって拾ってみましょう。  この自治権拡大、返還に至るまでの自治権拡大の一つの大きな問題は、例の公選問題であります。この主席公選制に関してどういうことがそこに書かれておるか、一つだけ拾ってみます。「この主席公選制に関し、与党体制の確立をはかりつつ、かつ、公選方法についても研究を加えて、これが実現を見るよう検討せられたい。」アメリカに対してですよ。何ですか、これは。「与党体制の確立をはかりつつ、」とは一体どういう意味なんです。何ですか。これは佐藤内閣の——与党というのは佐藤内閣の与党、自民党のことでありましょう。この佐藤内閣の与党である自民党を守ってください、そういう姿勢そのことが実は問題であるにもかかわらず、さらに、これを米国に対して、与党の体制を確立するようにひとつ公選制度を考えてください、こういうことをお願いするとは一体何ごとです。これを国辱と言わずして、何でありますか。こういう姿勢がその後ずっと続いておるじゃありませんか。たとえば、前回の総選挙を見てごらんなさい。沖繩返還協定が盛られておるということで、あの共同声明を最高に選挙に利用されましたね。ことしの六月十七日のあの返還協定調印、参議院のさなかにわざわざ持ってきてこれを利用しようとされた。繊維協定だってそうでしょう。この沖繩の返還ということをそういう観点からとらえておるから、ニクソンも引きかえに、じゃ、自分の選挙のために繊維協定を政府間協定にしろ——全くこれは、佐藤内閣の体制を維持する、一方においてはニクソンの選挙を有利にする、こういう観点からこの図式が明らかになっておるではありませんか。私は、これがはたして事実なのかどうか、ここで資料を出していただかぬと、こういう姿勢では、私はその先の質問が続けられませんよ。
  105. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまのような与党体制を維持するとか、さようなけちな考え方沖繩返還の問題と取り組んでおりません。ただいまのような資料があれば、その資料を出してください。政府のほうから要求いたします。お願いいたします。
  106. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この資料は重要であるから、極秘という判が押してあるではありませんか。では、私が出したものを、政府の資料と合っておると確認しますか。(発言する者あり)その資料はこれであります。これが一であります。これが二であります。「佐藤総理訪米資料」、これがはたしてそのとおりなのかどうか、政府確認してください。   〔発言する者多し〕
  107. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 静かにしなさい。
  108. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来申すように私の考え方は違っておりますから、そういう資料があるならば出してください。私はかようなもので交渉はいたしておりません。そのことだけはっきり申し上げておきます。ただいま言われるような交渉はしておりませんから、ただいまのような資料があれば出していただきたい。
  109. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたは本末転倒ではありませんか。私が要求しておるんです。私のほうが先に要求しておるんです。こういう資料がないというならば別ですよ。あるかないかも確かめないで何ですかそれは。いいですか。——じゃ確認してください。「三十九年十二月十七日佐藤総理訪米資料」一と二、あるかないか確かめてください。それからです。合っておるかどうか、私も突き合わせましょう。   〔発言する者あり〕
  110. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 楢崎君。
  111. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほど、過去四回の訪米にあたり、総理はそのつど、訪米するに際しての資料をつくらしておるし、また自分自身の頭の中に入れておるものもあるという御答弁をなさいました。そこで私が、この「三十九年十二月十七日佐藤総理訪米資料」というものを明らかにしたわけであります。そうすると、総理は、政府に出しなさいとおっしゃいました。しかし、ここで私は明確にしておかなければならないことは、われわれ国会議員は、国会法に基づいて政府に対し資料を請求する権利があります。しかし、政府のほうが、われわれ国会議員に資料の提出を求める権利はないのですよ。私は、私に対する資料の請求を、あんなにいたけだかになってなされる態度については非常な不満があります。しかし、問題が重大でありますから、総理の要望もこれあり、総理府のこれは資料でありますから、ひとつ私は総理の要望に沿ってこの資料を提出しますから、総理府のほうで確認するために、理事会でどのような取り扱いが行なわれるか知りませんが、この資料の確認をひとつお願いをしたい。そしてその確認された後に、私はこれに基づいての以下の質問をいたしたい、このように思います。
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま私の資料要求という、政府にはさような権限はないとか、こういうようなお話、私自身も実はいま読み上げられた資料について、そういう覚えがないものですからずいぶん意外に思った、そういう点でやや声が大きくなった、かように思いますし、あるいは政府自身が皆さん方に資料を要求したという、あるいはいかにも居直ったというような印象を与えたこと、この点はまことに残念に思います。ただ、私は、そういう資料をいままで見たことのないことだけ、これを申し上げておいて、ただいまのように、さらに詳細に精査する、こういう段階のようですから、それから後の扱い方は理事会においておきめいただきたい。私が問題を起こした当人でありますから、一応弁解しておきます。
  113. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 この際、理事会を開くため暫時休憩いたします。    午後零時二十三分休憩      ————◇—————    午後二時十八分開議
  114. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、午前の委員会において楢崎委員から発言されました資料提出の問題について、政府から発言を求められております。これを許します。竹下官房長官。
  115. 竹下登

    ○竹下国務大臣 お答えいたします。  楢崎委員がお持ちであろうと思われる文書が、政府にもございます。
  116. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が持っておる資料と、ただいま御報告のあった資料が同一のものであるかどうか照合いたしたいと思いますので、しばらくの時間をおかしいただくように、委員長でお取り計らいをお願いいたします。
  117. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 それでは、資料の突き合わせのために、楢崎君の残余の質疑は、上原君の質疑の終了後行なうことといたします。  この際、上原康助君の質疑を行ないます。上原君。
  118. 上原康助

    上原委員 本国会は一名沖繩国会と名づけられまして、すでに本会議あるいはまた本予算委員会でいろいろとわが国のかかえている重要政治、外交諸問題をはじめ沖繩問題も議論をされているわけでございますが、私は特に沖繩問題にしぼって、総理大臣の御所見なりあるいは各関係大臣沖繩問題に対してのあらためて御見解をお伺いいたしたいと思います。  確かにわが国は現在、中国問題をはじめ繊維問題、そして円平価の問題等、大きな激動期に立たされております。しかし、そのいずれをとりましても、沖繩と密接不可分の問題であることには変わりはございません。そういう重大な情勢の中で、沖繩百万県民も来年の復帰を目前にして、ほんとに二十六年間のアメリカの不法不当な軍事支配のもとでしいたげられてきた県民の私権の問題、人権回復の問題等、どうなっていくかということに大きな関心を寄せる中で、一面やり場のない気持ちでいま復帰というものを見守っている。特に、政府が今国会そして来年の通常国会において、ほんとに沖繩県民の長い間の要求に報い得るのか、県民の二十六年間の苦悩と苦痛というものがどう解決されるのか、これを見守っていると思います。  御承知のように、ドル・ショックの問題あるいは異常な長期干ばつによる被害、そして台風二十八号による八重山や宮古の離島の方々の甚大なる被害、これらの諸問題一つさえもまだ十分な解決を見ておりますせん。さらに労働者も、軍関係の労働者やあるいはたばこ産業の労働者、民間産業含めて、復帰をすることによって自分たちの生活がより破壊をされる、失業をするという状態がいま続いております。  そこで、私はまず最初に、こういう沖繩の現状認識に対して総理はどのようにとらえておられるのか。私は、総理がこれまで沖繩問題に取っ組んでこられたその苦労というものを全然否定はしません。あなたがおやりになっている政治姿勢に私は同意はいたしませんが、いろいろ沖繩問題を政治生命をかけてやろうとしたその立場というものは、全く否定をするというものではありません。そういうことを含めて、いま県民のかかえている諸問題にどういう御理解、どういう御認識の上で復帰というものをこれから進めていかれようとしているのか、まずその点をお伺いをいたしたいと思います。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 上原君から沖繩復帰問題に取り組む私の基本的な考え方についてお尋ねがありました。私は、過日の本会議における所信表明でも明らかにいたしましたように、古い時代のことはともかくとして、戦時中沖繩が焦土と化し、さらにまた多数の方々が生命を失われた、しかもその上戦後二十六年間アメリカの施政権下において、本土と切り離されたそういう状態において苦労を重ねてこられたことについて、これは私が心情的に、沖繩を訪問したその立場からも、ほんとに御苦労さまでした、かように申し上げる以外のことばを実は知らないような次第でございます。  私は、できるだけすみやかに復帰を実現させて、そうして沖繩県民にしあわせをもたらすように、真の平和で豊かな沖繩県づくりをする、これにぜひとも力をいたしたいと、かように実は考えておるのであります。  ただいま言われましたように、最近における大干ばつ、台風被害、これらのこと一つ一つを取り上げても、これはたいへんなことだと思います。そのうちでも過日のドル・ショック、これは沖繩県民の生活の基盤をゆるがしている、かような意味におきましてたいへんな問題だと思います。したがいまして、これらの問題についてそれぞれの対策はとってまいりましたが、いまのドル・ショックについて政府が格別な関心を示し、これと取り組んでおることは、上原君も御承知のことだと思います。  私は、ずいぶん理解しておるとかように申しましても、これはみずから本土にいてぬくぬくと育ってきたそういう立場でございますから、ほんとの心情にはなかなか触れないものがあるかもわかりません。しかし、少なくとも私自身で言えることは、私が沖繩を訪問したときに私の目に映じた県民の御苦労、いまなお続いておる県民の御苦労を、ほんとに心から御苦労さまでした、過日の本会議の所信表明で申したことをそのとおり私は感じておるのでありますが、以上のような所感のもとに今後の沖繩復帰に対して取り組んでいく。どうかそういう意味政府に対する御鞭撻も賜わりたいし、さらにまた、ほんとに沖繩県民のしあわせになるように進めていこうじゃありませんか。私はそのことをお願いをいたします。私の気持ちを率直に御披露をいたします。
  120. 上原康助

    上原委員 まあ総理のいまの真情を込めた御所見なりお話の内容というものは、これまでも所信表明なりあるいは本予算委員会、本会議等で答弁をなさっております。ことばの上では、沖繩の諸問題についてかなり意欲的にやっていかれようとしていることは理解しないわけでもございません。だが、残念ながらことばでそうおっしゃることとはうらはらに、実際に政府が進めてこられた沖繩の施政権返還に対して、特に一昨年の共同声明に基づいた、それを土台にした返還のあり方に県民は不満を示し、大きな疑惑を持っております。  そのことはこれから議論の中で進めていくことにいたしまして、私が冒頭お願いをしたいことは、確かにいろいろむずかしい面もあると思います。また沖繩立場だけを主張するわけにはいかないという点も、政治、外交の上ではあろうかと思うのです。しかしながら、ほんとに世界史上にもない、異民族の支配によって生命、財産、土地もろとも不当に支配をされてきた、そのことにはお触れになりたくないという総理の御心境もわかりますが、私たちの立場からすれば、日本の国益あるいは日本の戦後体制の立て直しということで、すべての犠牲を沖繩県民に余儀なくしてきた。そのことに対しては、やはり国民という立場でも、県民という立場でも、政府に主張すべき面はやるし、要求する立場にあると思います。  こういう意味で、私はこれからいろいろお尋ねもしたいわけですが、まず台風被害の問題について第一点。せんだっての沖特委で私はこの問題を取り上げましたが、山中総理府総務長官は、補正予算あるいは特別支出を考えて十全な対策をやるということを御答弁をいただきました。しかし今回の補正予算の中にそのことが全然入っていない。もちろん経緯については私もある程度理解をいたします。だが、長い間の干ばつ被害に加えて、八重山の方々は、ほんとに生活を再起をすることが困難だというところまでいま打ちひしがれております。琉球政府のやるべきこともあるでしょう。すべてが政府だけの責任とは私は申しません。だが、こういう緊急事態に対しては、やはり本土政府がもっと積極的な財政支出というものを早急にやるべきだと私は思うのです。そういうことをどうして補正予算の中に入れなかったのか、あるいはまた干ばつの問題を含めてどのように政府として対策をやっていかれるのか、それが一つ。  いま一つはドルの問題ですが、確かに、現金の交換ということで登録をするということで、一応の対策はとりました。何もやらなかったよりは、県民にとっても、ある意味ではドル・ショックからの一応の安堵というもの、そのことが得られたかもしれません。しかし県民の要求というのは、すみやかに円通貨に切りかえなさいということが全体の強い要望であります。それなくして、ドル・ショックや沖繩経済の立て直し、いろいろな面に影響している問題の解決というのはおぼつかない。政府は、この間の対策が最終的なことだというような総務長官の談話を発表しておりますが、いま一度、登録漏れになったもの、あるいは現に県民が受けている損失に対して、そしてまた円通貨への切りかえということをどうおやりになるのか、その点についての具体的な御所見なり御見解を賜わりたいと思います。
  121. 山中貞則

    ○山中国務大臣 干害の対策についてはすでに、緊急な支出を必要とすると思われましたので、御一承知のように調整費から支出をいたしておりますし、また来年を待たずとも、あるいは補正予算に組んでこのような審議をいたす期間ももったいのうございますから、それまでにできるような処理として、石垣の轟川の貯水、用水施設、あるいは宮古の袖山地区等々を中心といたしました二十一カ所の貯水タンクその他も緊急に予算処理をいたしまして、すでに決定、発表したところでありますが、なお、恒久的な長年月を要する宮良川のダムの建設その他の問題等については、あるいはすでに調査をいたしております西表から新城と黒島へ、あるいはその他の拠点等から、水のある島から離島へ海底送水いたします問題、あるいは福地ダムから南の人口密集地帯に送る送水管の問題、こういう問題は、これは単年度ではとても片づきませんので、来年度予算で具体的な予算処理をしたいと考えておりますが、台風の被害については、今月の十五日付の文書でもって手元に十八日に受理いたしました琉球政府からの被害に対する日本政府の対策に対する要請がございますが、おおむね約九億五千万ぐらいの積算をもって要求をいただきましたので、ただいま私の手元でそれを検討いたしておりますと同時に、それらについて、実地に台風の被害の査定官もやはり行く必要があります。これは、本土法によって激甚あるいは局地激甚等適用をいたすについても、実態というものをつかまないといけませんので、調査調査でけしからぬという意見もありますが、台風の調査について本土政府からはまだ責任者が参っておりませんので、近くその責任者も参りますと同時に、私のほうでは、その予算のすみやかな執行について、たとえば予備費を支出できる条項等について、閣議決定で、国会の開会中は原則としてできないことになっておりますけれども、もしこれらの問題が調整費で不足するということに実態がなりますれば、当然その御要望を満たすために、閣議に相談をして大蔵省の了解をとらなければならないということもいま研究しておる最中であります。  なお、ドルと円の交換の問題は、これは大蔵大臣の専管事項でございますから、大蔵大臣から足らないところは説明をしていただきますが、少なくとも沖繩の県民の方々に対しまして、先般ドルのチェック措置をとりました。これはその処理について、ある時点において瞬間的に処理をしたわけでございますから、法人の預金、債権債務等については除外した等のことも伴うし、あるいは私人間の問題等も残りますから、これが完全な措置とは言えませんでしたが、少なくとも不安動揺を続けておられる、しかもまた、沖繩のみの問題では国際的に納得を得られない国際通貨の問題として、日本政府もどのような苦境に立つかもわかりませんし、その前にすみやかに、少なくとも十月八日時点において押えた金額について、個人の通貨性資産については、復帰の際に三百六十円との差額について交付金を支給するという措置をとったのでありまして、最善の策とは申せませんが、次善の策であったと思います。しからば最善の策とは、復帰の前に円とドルとを完全に交換するということになるのでありましょうが、これは御承知のとおり布令第十四号において、沖繩地区における、いわゆる施政権下における地域において通用する唯一の通貨は米国ドルということが明示してありますから、少なくとも十四号の改廃について米国側と協議に入らなければなりません。この外交ルートを通りますと、これは直ちに、現在の沖繩においては、少なくともアメリカについてだけでも、投機ドルその他についてのチェックの手段が見つかりませんし、またその交渉をするにあたってもきわめて困難である事態が予想されますので、現在の時点においては、復帰前にさらに一ドル三百六十円の交換の行為を行なうということは、私としては非常に困難であると考えておりますが、もちろん大蔵大臣ともいろいろと御相談をしておることではあります。
  122. 上原康助

    上原委員 さらに、大蔵大臣の御所見も後ほど賜わりたいわけですが、台風被害や干ばつ被害についての予算の支出の問題でございます。確かに調整費というのは十億組まれているかと思います。しかしすでに干ばつ被害に対して三億円余り支出されている。そしていま私の手元の資料によりますと、八重山の台風被害というものが約一千万ドル、三十六億円ぐらいになろうかと思うのです。一〇〇%の補助なり財政支出というものはともかくといたしましても、琉政が九億余りの要請を出したという御答弁でございましたが、いずれにいたしましても、調整費、いま長官の御答弁なさるワク内ではおさまらない問題、解決できない問題だと私は理解をいたします。  私がお尋ねをしているのは、本来ならばこういうのは、やはり補正予算を組んでおられるのだから、その中で沖繩の緊急支出に対しても考慮をすべきでなかったのかという点が一つだったと思うのですが、あらためてその点と、どうしても私はやはり、干ばつ被害の問題、台風被害の当面の緊急措置に対しては、もっと積極的に県民の要求にこたえていく。特に離島農村の方々の生活の苦しみというものは筆舌に尽くしがたいものが現在ございます。これに対して、いま少し長官としての御見解と、その面に対しては琉球政府とも打ち合わせの上で十分な対策をとるということを、総理並びに、また予算要求が出された場合に大蔵省としても、まあいろいろ困難な問題——いま財政逼迫の問題があるでしょうが、最善の配慮をなさるということを含めて御答弁をいただきたいと思います。
  123. 山中貞則

    ○山中国務大臣 補正予算を組まなかった理由は、干害対策についてはなるべくすみやかに着手したい、執行したいということで、補正予算では、いまこのように審議をして、また参議院もあるわけでありますから、一日も早い執行、着手が必要だと思ってやったわけでありますが、そのためには、結局物理的に十億しかないワク調整費は、御指摘のとおり、琉球政府の要請額であっても、九億五千万の要望が本土政府に出されておる事実から見て、足らないことは明らかでありますから、これらは、国会の開会中において予備費の支出はできないということも、閣議決定のただし書きで、天災地変等の場合においてはこれはやってもいいというふうになっておりますから、これは与野党ともそのことを御了承願いますし、政府の部内等においても相談の上、足らざるところは予備費等支出等の行為を行なってでも、すみやかにこの窮状に対し、しかも打ち続く干ばつの上にさらに台風の追い打ちでありますから、その地区の人々の生活の実情は私も直接現地にうかがって知っておりますし、またそれらの人々は、ことしの所得が皆無であるばかりでなくて、来年まで所得がないという実情であり、短期間のうちに三千名も出かせぎに出ておるという実情から見て、これを処理しなければならないことは十分考えておりますので、大蔵大臣総理大臣等の御理解のもとに、すみやかに現地の方々の期待にこたえる措置をとりたいと思います。
  124. 上原康助

    上原委員 大蔵大臣に一点お伺いいたしておきますが、復帰前の円通貨とドル通貨の問題です。私が質問をしても、答えられる問題じゃないということをまたお答えになると思うんですが、県民が望んでいるのは、すみやかに円に切りかえなさいということなんです。復帰の時点で三百六十円で登録した分はかえるという処置はとったにいたしましても、日常の物価の問題あるいは本土との商取引の問題等において、労働者はじめ県民は大きな損失を現に受けつつございます。これまでとられた措置では決して十分な対策ではございません。あらためて沖繩の通貨の問題に対してどういう方向でやっていかれるのか。もうこれで打ち切り、復帰の時点で円通貨にするというお立場にいまあるのか、もっと県民の要望に沿えるような何らかの対策というものがとられているのかどうか、その点について御所見を賜わっておきたいと思います。
  125. 水田三喜男

    水田国務大臣 県民の要望も十分わかりますし、いろいろ研究いたしましたが、先ほど総務長官からお答えのとおりに、いかなる通貨を流通させるかということは施政権者のきめるところでございまして、これは沖繩が復帰前に円貨を通用させるということは、自分は非常にむずかしい問題だと考えております。したがって、最初に、県民の期待に沿うように、給付金というものをもって次善策をとるよりほかしかたがないというふうに、いまのところは考えております。
  126. 上原康助

    上原委員 どうもいまの大臣の御答弁は納得しかねる面がございます。前に、私たち沖繩選出の七名の国会議員も大臣にお会いをして、県民の要求というものをいろいろと御要請いたしました。また、琉球政府、立法院、そうして行政主席も、この件でいろいろと政府に折衝なさったと思います。その際に、通貨切りかえの問題は施政権とは別なんだ、日本政府の政策なんだということをあなたの口から答えておられます。いまの御答弁は、施政権の壁がある、あるいは先ほどの布令十四号があるのだ。やはり施政権が壁になって通貨の切りかえというのは困難だったという御答弁ですか。
  127. 水田三喜男

    水田国務大臣 いまのお話は、復帰前にすでにドルと円の交換をするということは、沖繩に円貨を流通させるということだろうと思いましたので答弁いたしましたが、そうでなくて、一時的の交換ということになりますと、これは御承知のようなむずかしい問題が起きますので、したがって、ある一定の時点をとらえて、そのときに持っておった債権債務の関係を整理したものを復帰のときに三百六十円の比率で交換するということを保証するために、差額の給付金を支給するという措置をとったのでございますから、実質的には、一定時点における所有ドルを円に換算して交換してもらったという効果を発揮することでございますので、その点においては、沖繩の県民の期待に沿わないという措置では私はないだろうと考えます。
  128. 上原康助

    上原委員 まだこの点についての御答弁に満足できるものではございませんが、少なくとも県民の強い要求である、また現にドル通貨によって——これは何も沖繩自体が招いたことじゃないわけですね。御承知のように、ニクソン大統領の新経済政策、そして日本政府が変動相場制に移行したという、いわゆる外圧によって沖繩がまた損失をこうむっている。このことを十分踏まえての上で、沖繩の通貨の問題、ドル問題というものを考えていただきたい。すみやかに復帰前でも円通貨にするということをぜひ政府としてやるように、強く要求をいたしておきたいと思います。  そこで、次の質問に入りたいわけですが、本予算委員会でもいろいろ出ておりますように、政府沖繩の本土復帰に対する基本姿勢として、核抜き本土並み、七二年返還ということが非常に強調されました、共同声明発表、あるいはまた去る六月十七日の返還協定調印以降は。そうして多くの議論が出ているわけですが、やはり総理の御答弁なり、政府のいろいろの御答弁、政策の中で、まだまだ百万県民を含む国民を十分納得させる点というのは出ておりません。見解の相違とか、そういうことではなくして、ほんとうに核抜き本土並みということについて県民の疑惑を解いていく。それがまた、ことばの上だけではなくして、基地の実態そのものが核抜きであり本土並みになるということ、この件に対してのこれからの議論を進めていく上で重要な点でございますので、総理がおっしゃる核抜き本土並みとは一体どういうものなのか、あらためて御説明をいただきたいと思います。
  129. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核抜き本土並み、これはただいま読み上げられた字句そのもののとおりであります。本土には核はございません。これはやはり沖繩もそういう状態にするということであります。私は、いろいろ疑えば際限がない、かようなものだと思いますが、とにかく最高責任者大統領と、また日本では私が相談したもの、約束をしたこと。アメリカのだれがどう言ったとかいうようなことでなしに、最高責任者大統領が日本の総理に約束したこと、これはそのとおり実現される、かように私はかたく信じております。したがって、ただいま、いまさらながら核抜き本土並みであるということについて疑問の余地はないものだ、私はかように考えております。またそうなくちゃならないのだ、これが最高責任者の声明でもあり約束事でもある、かように御理解をいただきたいと思います。
  130. 上原康助

    上原委員 総理はこれまで、沖繩に核兵器があるかないかはわからない、あるいはその存在、貯蔵の有無を言わないことが核の抑止力だというような見解で濁してまいりました。だが、せんだっての委員会でも私が提示をいたしましたように、沖繩に核が貯蔵されているということはもう公然の事実であります。またこれまで核については、なるほど共同声明の第八項に核ということは書いてはございませんが、それらしきにおいのするといいますか、たいへん失礼ですが、どうにも受け取れるような条項があるということは私もわかります。返還協定の第七条においても、あいまいな表現で濁していらっしゃる。しかし現実の問題は、日本の総理大臣と米国大統領が最高責任者の間で約束をしたのだから信じろと言ってみましても、現実問題としてそういかない面がある。総理が、核はあるかないかわからないと、これまで濁してこられたにもかかわらず、さらに、核については大統領の専管事項だと、アメリカ自体、また総理もそういう御答弁をなさってきた。だが現に、アメリカの上院外交委員会でロジャーズ国務長官は、沖繩に核があるということ、そして口裏を合わせたように、核撤去ということについては触れているではありませんか。総理は、沖繩に核があるということ、あるいはあったということをお認めになりますか。
  131. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、メースBの基地があったことは、これはもうはっきりしておりますから、そういう意味で、核そのものが全然否定はされないだろうと思います。しかし私は、いまあるかないかということが、これも論争のある問題でございますが、それよりも、返還時においてどういう状態にあるか、そのことが最も大事なことじゃないだろうか、かように私は思うのですよ。過日もこの席で申しましたが、とにかく、いまあるとかないとか、そういう議論をするよりも、返還時においてどういう状態で返ってくるか、それが最もわれわれの関心のあることじゃないか、さように思うのでございまして、ただいまの上原君の質問を、私はそらしたようにおとりになるとたいへん残念でございますが、そうじゃなくて、われわれは、きれいな沖繩として祖国に迎える、こういうことでいままでの話を詰めてきている、さように御理解をいただきます。
  132. 上原康助

    上原委員 核があるかないかよりも、返る時点でなくなるということが最も大事なんだ、確かにそのとおりになればけっこうなことかもしれません。それじゃお伺いいたしますが、現にアメリカさえ核の存在というのは認めているわけですね。核を撤去したという確認の方法というものはどうなさいますか。具体的に国民、県民が納得する、ことばの上でやりとりするということよりも、政府として、核が撤去されたという確認の方法というのは、どういう立場をおとりになるのですか。ぜひ具体的にお示しをいただきたいと思います。
  133. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょうど同じ時期に、ただいま私どもここで議論いたしておりますが、アメリカの国会でもいろいろこの問題について議論されております。ロジャーズ国務長官の国会におけ る応答ぶり等はひとつ外務大臣からお聞き取りをいただきたいと思いますが、そういうことによりまして、将来の核についての取り扱い方、それがどうなっているか、こういうようなことも一つの判断の材料になろうかと思いますので、まず外務大臣からお聞き取りをいただきたい。
  134. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま総理からお答え申し上げましたように、とにかく両国の最高首脳者が話し合って約束をしておる、これで御信頼願えるのじゃないか、こういうふうに私は信じておりますが、しかし、上原さんがおっしゃるように、まだそれでも心配だ、こういう話がありますので、私はアメリカ当局に対しまして、なお説得力のある説明 一方法はないものであろうかという相談をしてきたわけであります。それに対しましていろいろ考え、おられると思いますが、一つのあらわれが、きのうのアメリカの上院外交委員会におけるロジャーる国務長官、またパッカード国防次官、この言明であろうと思います。アメリカも、皆さんの御心削のところは非常によく了解をしておるようでありまするから、事に触れ、その疑問というか、あるいは御心配というか、これの解明には努力していくであろう、こういうふうに思っております。
  135. 上原康助

    上原委員 相変わらず非常に中身の理解しにくい御答弁でございますが、私はやはりこの際に、せひ総理あるいは外務大臣、そうして政府理解していただく一おそらくわかってはいらっしゃると思うのですが、核の問題についてアメリカがどうするこうするの問題じゃないわけですよ。日本政府として核を——現にわれわれあると思う。ある核を撤去したという確認をどうなさるのか。声明を出せばいい、あるいは国務長官が議会で証言をすればいい、そういうことだけでは納得できぬ問題があるわけですよ。沖繩の基地の実態というものをほんとに御理解をいただいているならば、そういう答弁は出てこないと思うのです。アメリカがなぜあれだけ巨大な軍事基地を沖繩に持ったか。その根本原因は何ですか。アメリカの気ままに使える軍事基地、極東防衛のかなめ石としてつくったわけでしょう。私がお尋ねをいたしておりますのは、日本政府として核が撤去されたという確認の方法はどうなさるのかということが一つ。これまで前防衛庁長官は、核の総点検をやるということもたびたび国会で答弁をしております。しかし、その後だんだん政府の統一見解的なものが出されて、核についてはマクマホン法があるとか、あるいは大統領の専管事項、そういうようなことで後退しておる。ほんとうに核を撤去したという基地点検、確認を日本政府みずからやるという御意思があるのかどうか、その点、総理のほうからお答えをいただきたいと思います。
  136. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、わが国は非核三原則、つくらず、持たず、持ち込みも許さない、こういう三原則を堅持しております。これは政府の基本方針でもあります。そのことばがそのとおり表現はされておりませんけれども、日本政府の意向に反した処置はとらない、これが約束であります。二人の、大統領と私との間では、もっと率直に、表現は表現だが、話し合いでは核は非核三原則が日本政府にはあるんだ、われわれはその方法でやっているんだ、そのとおりならなくちゃ困るんだ、そういう話で十分話を詰めております。私はこれが最高の責任者としての約束だと、かように思いますので、どうも佐藤は信用ならない、あるいはニクソン大統領は信用ならない、かようにおっしゃるかもわかりませんけれども、私はこれが一番確かな、最高責任者の約束事でありまして、これを信用しないというのでは、何をか言わんやでございます。私はその点を強く御了承願うように御要望しておきます。
  137. 上原康助

    上原委員 了承してくれということですが、了承する中身のある御答弁なら了承いたしましょう。非核三原則ということも確かにあるでしょう。非核三原則はもともと本土の基地に適用された原則でしょう。現に沖繩に核があるということの事実の上に立って、撤去された確認はどうするかというのが私の質問なんですよ。はぐらかさないでくださいよ。何で私の頭で理解できるのに、総理大一臣の頭で理解できないのですか。知花弾薬庫、辺野古、さらに南部、核兵器があるというのは公然の事実。この撤去の方法はどうやるのか。アメリカのことを聞いているものではありません。私は日本の国会議員なんですよ。そして沖繩の県民の声をいま言っているんだ。実際にある核というものをどう撤去するか、その方法というものをお示しになれば、やはり総理大臣のおっしゃることも信用できる面もあるというふうになるかもしれません。具体的な撤去の方法、そうして撤去されたという確認はどうなさいますか。あらためてお尋ねいたします。
  138. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今日まで沖繩がアメリカの施政権下にある。したがって、本土と沖繩状態一が違っておる、こういうことは私も認めざるを得ない。これは事実でございます。しかし、沖繩が日本に復帰する、こういうことになるのは、申すまでもなく本土に施行されておる日米安保条約、それがそのまま沖繩にも適用になるということであります。沖繩と本土との間に別に区別さるべきものはないのであります。本土にないものが沖繩にあろうはずはございません。また、取りきめ条項その他も沖繩にそのまま実施されるのでございますから、ここに本土並みになるということであります。  私は、返還前の状態、これはアメリカの施政権下にある沖繩、この状態を本土並みにしたい。そこに住んでおられる皆さん方はみんな日本人じゃないか、日本本来の固有の領土じゃないか、かように思うからこそ、返還問題に熱意を込めて取り組んでおるわけであります。  祖国に復帰した後において沖繩が本土と切り離される、あるいは特別な別の扱い方を受けるとか、さような状態があってはこれは祖国復帰ではございません。さようなことは私は考えておりません。沖繩が祖国に復帰するということは、本土と同じような処遇を受けるということであります。ただ単に経済的な問題だけではありません。軍基地としても米軍自身のあり方も、われわれが施設提供をしておるのは、安保条約の範囲でございます。したがいまして、今後沖繩が祖国に復帰すれば、沖繩駐留軍は本土の駐留軍と同じように安保条約のその範囲において施設、区域の提供を受けるのでありまして、それ以外の何ものでもない。この点をよく考えていただきたい。私がしばしば申し上げておるのに、沖繩が祖国に復帰すれば、これは米軍はいてもその米軍の性格が変わりますよというのは、その点でございます。しかしどうも皆さん方のほうから見ると、そうじゃない、本土が沖繩化するんだ、こういうような言い方をされますけれども、そうじゃなくて、沖繩自身が本土と一体になるのだ、だから特別な扱い方を受けるはずはございません。また受けることを、特別に扱われることを私どもは許すものではない、これだけははっきり申し上げておきます。
  139. 上原康助

    上原委員 どうも私がお尋ねをしていることにはお答えをなさらないで、総理相変わらずの心情論でお答えをしておりますが、納得いきません。私が申し上げているのは、核が撤去される確認はどうするかということをお尋ねをしているのでありまして、もしいま総理がおっしゃるように、安保条約並びに関連取りきめが適用されることが本土並みになるんだ、沖繩の軍事基地の実態というものを、たいへん失礼ですが、わかっていらっしゃってそういうことをおっしゃるならばこれは言語道断、県民や国民に対する背信行為ともいえます。もし一国の総理として、沖繩に戦後二十六年間どういうようにアメリカの軍事基地が構築をされてきたか、その中身をお知りにならないで日米交渉を進めて、ことばの上だけで本土並みという形容詞をつけたとするならば、これまた重大な責任問題だと私は思うのです。そのどちらですか。
  140. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカが施政権を持つて、そうしてみずからの軍事基地、それを強化している。これは、今日まではそういう状態であった。しかし復帰したら、その瞬間に変わってくるんだ、こういうことを実は申し上げているのです。だから私は、現在までの状態、先ほど来指摘される知花だのあるいは辺野古だの、それはたいへんな施設をしている、そういうことにも私、全然無知識ではございません。私が参りました際も、私はヘリコプターで米軍基地の上を飛んだのでございます。したがいまして、その実情を知らない、こういうわけじゃありません。あるいはヘリコプターじゃわからない、地上でもっと詳しく見ろ、こういうような御指摘があるかもわかりませんが、とにかくいままでにない施設であること、これは私どもの驚異でもあった。まあこういう点が、また上原君にしかられるかわかりませんが、私の心情としても、ずいぶん苦労が多かった、かように私は思うのであります。こういう状態をなくすることが私どもの仕事じゃないのか。祖国復帰を実現しようというのはこの点なんです。そのままの状態でよろしいというなら、これは祖国復帰は何を意味するか、私はナンセンスだと思う。さように私はとっておるのでございまして、私の認識が不足かもわからないけれども、私の考えるものはそういうものでございます。御了承いただきます。
  141. 上原康助

    上原委員 さらに後ほどお尋ねいたしますとしまして、それじゃ具体的な面でお伺いをいたしますが、返還協定を調印をなさるまで、どういう話し合いが持たれたのか。いわゆる調印されている基地提供の問題、さらにアメリカの現在沖繩にある陸海空マリーンの機能、そういうものもやはりお調べの上で、いろいろ資料なり調査をした上で本土並みということになったと思います。どういう資料に基づいて、また陸海空マリーンの四軍はどういう機構になっているのか、そういう面に対しての説明を賜わりたいと思います。  さらに、いま総理は、本土にないものが沖繩にあろうはずがない、こういう御答弁になりました。私はことばじりをとらえようとは思いません。しかしVOAも現にあるんじゃないですか。そうして、特殊部隊の問題がなぜ返還協定の過程で議論にならなかったのか。すべての特殊部隊を残した形で、はたして本土並みの基地といえるのかどうか。そういう面に対しての御答弁を賜わりたいと思います。
  142. 福田赳夫

    福田国務大臣 返還協定を締結するにあたりましては、在沖繩の米軍の状況につきましても詳細に話を聞きまして、正しい認識を得た上で、その認識の上にこの協定をいたしております。  いま特殊部隊のお話でありますが、九つ特殊部隊といわれておるものがあることも承知をしております。これらにつきましては、いま施政権者はアメリカでありますので、今日この状況では、これはアメリカの施政権の特色というか、また立場、そういうものを承認しなければならない、そういうふうに思います。したがって、われわれから見て不満とするところもあります。しかし、復帰前といえどもその不満とするところを解消してもらいたい、こういう交渉をしております。しかし、いやしくも復帰時点が到来したという際にはそういう不満は一切なくなる、こういうふうな保証を取りつけておるわけであります。そういうことでありますので、今日この時点でいろいろ申されると、いろいろの問題がありましょう。しかし、復帰時点になれば御安心いただけるような事態になる、かように御承知願いたいのであります。
  143. 上原康助

    上原委員 いま、九つの特殊部隊があるのだ、復帰時点においてはすべてなくなるのだということでしたが、特殊部隊は復帰時点においてすべてなくなるのですか。どういうものがあって、どういうものがなくなるのか、説明をいただきたいと思います。
  144. 福田赳夫

    福田国務大臣 すべてがなくなるということを申し上げておるわけじゃないのです。その名前が同じでありましても、その持つ機能、働き方は内地並みになる、こういうことを申し上げておるわけであります。
  145. 上原康助

    上原委員 それじゃお尋ねをいたします。協定を結ぶにあたっては沖繩の基地の実態というものを詳細にお調べの上で結んだんだ、という御答弁でした。では陸軍はどういう機構を持っているのか、主要部隊だけ説明をしてください。そして、提供する基地のA、B、Cのリストを含めて皆さんがお使いになった資料も提示をしていただきたいと思います。
  146. 西村直己

    西村(直)国務大臣 現在アメリカの施政権下にあり、アメリカのいわゆるハワイその他の指揮系統にあるものもございまして、直接日本自体の関係ではございません。それから、その中にただいまお話のありましたような特殊部隊といわれるようなもの、これは一応私から申し上げますと、第三海兵水陸両用部隊、第七心理作戦部隊、アジア特殊行動部隊、陸軍混成サービス群、SR71型の偵察機の群、それから楚辺にある統合情報処理センター、FBIS、これも通信関係の機関だと思います。太平洋陸軍情報学校、こういうものもございます。ただいま私らがキャッチしたのでは太平洋の陸軍情報学校、これらは復帰のときに大体撤廃されるという話を聞いております。  先ほど外務大臣からもお話がありましたように、沖繩のいわゆる一つの置かれたるアジアの戦争抑止力としての機能、こういうものからこういうものもあると思います。しかし、同時に、これはアジアが緊張緩和するに従ってそういう抑止力もあるいは逓減させられていく場合もありましょうし、同時に、これ自体が、ただいま外務大臣から話がありましたように、安保条約の適用下における米軍というふうに変質をするわけであります。したがってその機能はやはりその制約を受けていく、こういうことになります。
  147. 上原康助

    上原委員 どうも私ら理解力がないのか、おっしゃることがみんな異語同義で、一体安保条約をかぶせるということで沖繩の軍事基地が本土並みになるのだ、そもそもその認識自体が問題だと思うのですね。私が外務大臣にお尋ねをしているのは、返還協定の本文に了解覚書、基地リストの問題を含めて、アメリカに提供する施設、区域としてきめたのは何に基づいてそういうふうにおきめになったのか。先ほど詳細に軍事基地をお調べになってきめたのだということですから、陸海空マリーンの現在の沖繩基地の実態というものはどうなっているのか、説明をいただきたいということなんであります。そういうものを具体的に説明なさらないと本土並みということは出てこないわけなのですよ。資料を含めて提示を求めます。
  148. 西村直己

    西村(直)国務大臣 陸海空等のいわゆる指揮系統なり、それからそれにおける傘下のいろいろな機能部隊ですね、それについては大まかなものは私どもがわかっておりますから、必要がありますればそれは差し上げてもけっこうであります。
  149. 上原康助

    上原委員 協定調印の段階まで、経過を含めて、特殊部隊の問題は全然話し合いはなさらなかったわけですか。
  150. 福田赳夫

    福田国務大臣 特殊部隊につきましても十分話し合いをいたしております。ですから、特殊部隊の実態というものにつきましては当方も承知をいたしております。それに対しまして、アメリカ側ではたとえば情報学校、こういうものはなるべく早く撤去いたしたいというようなことを申しております。あるいはベレー部隊、ベレー機関と申しますか、これが第三国の者の教育、訓練をしておる、こういうような問題があるのでありますが、これにつきましてはこれも協定調印前にこれを停止しようというようなことも申しております。いずれにいたしましても、今日この時点では他にいろいろ問題があることは承知をしております。しかし、沖繩返還時になりますればこれはもう安保条約の制約を受ける、こういうことになりますので、内地並みの体制下に移る、こういうふうに御承知を願いたいのであります。
  151. 上原康助

    上原委員 復帰の時点では瞬間的にすぐ本土並みになるのだ、そういうことだけで納得できるあるいは一そう簡単な基地でないところに沖繩の軍事基地の根の深さがあるわけですよ。  では、角度を変えてお尋ねをいたしますが、復帰、復帰ということだけをおっしゃるのですが、一体施設及び区域の提供をやる順序としては、本土ではどういうふうになっておるのですか。
  152. 西村直己

    西村(直)国務大臣 本土におきましては、平和条約が発効しますと同時に約六カ月間の期間を置きましてこれを引き継いでいくという期間はありましたが、しかしその間に話し合いをずっと本土でございますから続けておりましたから、そのまま円滑に引き継がれたわけでございます。  それから小笠原の場合におきましては、御存じのようなああいう暫定使用権を立てる立法をいたしたわけでございます。
  153. 上原康助

    上原委員 それも私がお尋ねしている答弁とはだいぶ違いますが、時間がもったいないです。私のほうから申し上げましょう。  いわゆる本土においては、皆さん御案内のように、米軍が新たにまたは従来のものに追加して施設及び区域を必要とする場合や施設及び区域の使用条件の変更を必要とする場合は、米側は施設分科委員会を通じてその所在地、必要とする土地等の面積、使用目的及び使用条件等の要求事項を日本側に提出をする、こういう順序をとっているわけでしょう。だから、皆さんが返還協定を結ぶ場合においても、アメリカ側が使用する目的や図面、その使用条件等を一応提示をして結ぶべきじゃありませんか。そこいらの点はどうなったのかということを私はお尋ねをしているわけなんです。何に基づいて皆さんはあの返還協定をおつくりになったわけですか。図面も必要です。アメリカの各部隊の機構図なり現在の基地の実態というものをほんとうに調べた上で協定というものが結ばれているのかどうか。そうであるならばいまさらくどく申し上げる必要もないと思う。A、B、Cのリストは一体何ですか。私がお尋ねしているのは、本土においてはこういうルートが一応確立をされておる。その点どうなっているんですか。外務大臣にお尋ねいたします。
  154. 福田赳夫

    福田国務大臣 基地の実態につきましては、これはよく調べましてA、B、Cの区分をしたわけです。それを今度は、たとえばAにつきまして米軍に提供するその手続は、これは安保条約またそれに基づく地位協定そういう諸取りきめに従って日の間に一挙にやつちゃうと、こういうことに相なります。
  155. 上原康助

    上原委員 そんな手品みたいなことをおっしゃっては困りますよ。外務大臣、いまの発言は重大ですよ。沖繩の基地の実態を一体おわかりですか、ほんとうに。一日に一挙にできるようなしろものですか。   〔発言する者あり〕
  156. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 お静かに願います。
  157. 吉野文六

    ○吉野政府委員 いまの外務大臣答弁をふえんして御説明申し上げます。  もちろん御存じのとおり、沖繩返還にあたりましては、基地の返還ということがわれわれにとっても最も大きな問題であったわけでございます。沖繩の基地は、現在もそうでございますが、米軍が布令二十号その他によりまして、みずから提供させて使っておるわけでございます。そして、交渉の経緯におきましては、米側は、これらの基地はほとんどすべて返還後も引き続き使用したい、そうでないと基地の機能が落ちる、こういう立場を維持したわけでございます。それに対してわれわれは、ともかく沖繩には基地が多過ぎる、そして沖繩住民の民生安定あるいは経済の発展のために必要な基地は返してほしい、こういうように何回も何回も強く主張いたしまして、そして結局最後にまとまりましたのはA表、B表であるわけでございます。中には基地の実態を呈していない軍用地ももちろんございました。こういうものは基地としないで日本側に開放されることになったわけでございます。そしてこのA表につきましては、ここにもA表に関する覚書にも書いてあるように、今後さらに境界を日米両国間で確認いたしまして、そして返還の日までにわがほうから提供すると、こういうことになっておるわけでございます。(発言する者あり)
  158. 上原康助

    上原委員 まあ、政府沖繩の軍事基地に対する御認識がどの程度のものか、いみじくも外務大臣の、一日にして一挙にやるのだ——三百五十六平方キロメートル、さらに百七十余りある軍事基地を一日一挙にできるわけですか。そういう外交姿勢で沖繩というものをやったということが今日の沖繩県民の不満ということにつながっているという点を、外務大臣はもう少しお考えになっていただきたいと思うのです。そういうしろものじゃありません。  じゃ、答弁には答えていただけないわけですが、(「答弁答弁」と呼ぶ者あり)基地のリストの問題ですね、A、B、Cというものは今後変更もあり得るのですか。まだこれは合意に達したということではないわけですか。
  159. 福田赳夫

    福田国務大臣 合意に達したということはもちろんなんです。ただ、これは、いまその合意に基づいて協定の付属文書として御承認を願っておると、こういうことなんです。  いま一日でということを申し上げましたが、手続をというお話でありまするから、これは返還時、それまでは米軍の基地になっておる、施政権下における米軍の基地になっておる、そのうちA表に掲げるものがその返還時には今度はわが国から提供される基地としてかわるのです。それにはそれ相応の手続がある、これは一日のうちにやっちゃいますと、こういうことを申し上げたわけであります。
  160. 上原康助

    上原委員 あらためてお尋ねをしておきますが、いわゆる返還協定をおつくりになる場合に地位協定に基づく一もちろん現在は地位協定なり安保は適用外ですからその点はわかりますが、いわゆる施設、区域を提供する場合は、その所在地、必要とする土地等の面積、使用目的及び使用条件等の要求事項をアメリカ側が日本側に提出をしなければいかないわけですね、本土においては。そのほかいろいろございます。時間がありませんから申し上げられませんが、そのルートは踏んでこの協定というのはできたということですか。
  161. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そういう手続を踏んでわれわれはアメリカ側に提供することになります。  なお、A表をつくる道程におきましては、できるだけ詳しい資料を先方から提出させまして、そして各地域につきまして詳細に条件その他の状況を聞いております。しかしながら交渉の段階においてはまだはっきりしない境界線、所有者関係、その他の点もございましたが、これは提供する前までには必ずはっきりさした上でわがほうが先方に提供すると、こういうことになるわけでございます。
  162. 上原康助

    上原委員 これから提供させるということですか。私がお尋ねをしているのは、そういうルートを踏んで返還協定の中身はきめたのかというお尋ねなんです。
  163. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そのような資料につきましては、先方からできるだけ提供させておりますし、わがほうとしても、現地の機関を通じまして、詳細にあとう限り調査した次第でございます。
  164. 上原康助

    上原委員 じゃ、アメリカ側が提示をした資料、また皆さんがお使いになった資料というものは提示できますか。
  165. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これらの内容は、まだ協定自身が発効しておりませんから、交渉の経緯に関する書類はお互いに提出しない、こういうことになっておりますから、公表することはできません。
  166. 上原康助

    上原委員 いまの御答弁は納得できません。協定はすでにきまっているわけでしょう。アメリカに提供する施設、区域。合同委員会の問題じゃないのですよ。返還協定をすでに結んでいるわけでしょう。いまから調査の上できめるということなら話はわかります。すでにきまったことをあなたはいまからやるなんて言って、その資料は提示できますか。全部やってください。どういう地図に基づいてやったのか。
  167. 吉野文六

    ○吉野政府委員 御存じのとおり、すでにA表の注にも書いてありますように、基地に接続する水域その他の点につきましては、まだ先方と交渉している部分もございますし、そしてまた、各基地の境界線その他につきましては、分明していないところが多々ございます。そういう意味で、今後もさらに折衝いたしまして、わがほうが先方に基地を提供するまでには、必ずはっきりさせたものを基礎として提供するわけでございます。
  168. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまアメリカ局長から御答弁がありましたが、つまりこういうことなんです。返還時になって、初めてわが国から、わが国の施政権を持った領土を米軍に提供する、こういうことになる。それまではわが国はまだ施政権を持っておらぬ、そういう状態です。そこで、先ほど申し上げましたとおり、その手続は一日にばばっとやっちゃう、こういうことになりますが、しかし、それができるためには、これは事前の準備を必要とする、こういうことなんです。いまアメリカ局長が申し上げましたA表、B表、C表とある。これは大体A表の何といえば何だ、こういうことはわかっておるのです。ですから、その解明はいたします。いたしますが、水域だとか、そういうようなところで多少まだ話のつかないところがあるので、こういうことをアメリカ局長が申しておるのでありますから、概略の御説明はいつなりとも申し上げることにいたしたいと存じます。
  169. 上原康助

    上原委員 あなたは、先ほどの御答弁で、きまったリストというものは変更はできないとおっしゃった。しかし、また、現在の段階は、日本の施政権下にはないので非常にむずかしい面があるのだ。だが、返還協定はすでにきまっているわけでしょう。調印したのでしょう。私がなぜこの点をお尋ねしているかというと、もうくどくど言うまでもなく、A表にしても、実際は百二十四カ所。実にインチキをうまくやったものだと思いますよ。あなたの外務大臣のころじゃないんだが、中国問題で走り回っている前大臣のことかもしれませんが、なぜそこまでごまかして一あたかも基地を返したと、あるいはまたアメリカに提供する施設は少ないんだと言う。そこまでごまかさなくてもいいんじゃないですか。そういういろいろの問題が、これから沖繩特別委員会でもやりますが、あるから、どういう資料に基づいて交渉なさったのか、図面も皆さんがおきめになった最終的なもの、それをあらためて提示できますか。
  170. 福田赳夫

    福田国務大臣 概略なものは提示できます。
  171. 上原康助

    上原委員 早急に提示をしていただきたいと思います。概略だけではなくして、できるだけこまかいものを。  それではさらに——先ほど、各部隊の性格なりいろいろお調べになったということですが、納得いく答弁は得られませんでした。最初にお尋ねをした核問題との関係において、現在の沖繩のアメリカ軍の機能というもの、能力というものがどういうものかということを、皆さんはわかっていらっしゃるのか、わかっておられないか知らないんだが、私のほうには、ここに米軍に基づいた資料があります。あまり一度に出すと、佐藤さんもなかなかがんじょうにがんばっていらっしゃいますので、これからじわりじわり出していきますが、本土並みでないということを私はここできょうの一つの区切りとして、その点については今後具体的に詰めてまいります。  皆さんはほんとうに沖繩の基地が——それは、あなたがおっしゃるように、夜が明けてみたら変わっておったというしろものじゃないんですよ。法律というものをそうかってに解釈しては困りますよ。陸軍の問題にしても、第二兵たん部隊というのはおわかりでしょう。アジア全域にわたる補給部隊、さらに第百九十六兵器大隊のもとに五つの弾薬中隊があって、これがやはり陸軍の核取り扱い部隊なんです。こういうものは、核抜きとおっしゃるのですが、なくなるのですか。さらに、アジア特殊部隊というもの、第七心理作戦部隊、第三十砲兵旅団、これもやはり核装備、ナイキ八一キュリーズ、ホーク、——現在も皆さんはナイキはないとおっしゃるのですが、現に使っている面も三カ所ある。ホークサイトも四カ所使っておる。これが自衛隊に移行されようとしておる。メースBも取り除いたと言っているんだが、基地は現に残っているじゃありませんか。発射台の下には弾薬が現にあるんじゃないですか。そういうのは点検なさったのですか。返る時点でどうなるかということなんです。さらに、海軍の場合も、第七艦隊というのはアメリカ最強の核戦略艦隊なんだ。これとの密接な連携で、第七十二機動部隊というものも核装備をされている。世界最大の空軍基地、第十八戦略戦闘連隊、F105、RF4C、これも核搭載機なんだ。さらに、第四百弾薬整備大隊、これも西太平洋全域にわたる空軍の弾薬補給部隊なんだ。現に核装備をされている。この資料に基づいて、こういうものが幾らもあるのです。海兵隊のほうはどうなんですか。先ほど第三海兵水陸両用部隊ということがありましたが、実に、ベトナムから昨年引き揚げてきたもの——今年の四月に第三海兵水陸両用部隊というものができておる。核装備をしている。これらの部隊というものは、皆さんがおっしゃるように、復帰の時点でほんとうに核も取り払って、あるいは撤退をするのですか。そういう面の話し合いは一体どうなっているのですか。そこを納得のいくようにお話がない限り、核抜き本土並みというのはごまかしで、これはうそなんです。
  172. 福田赳夫

    福田国務大臣 総理からしばしばお答えがありましたように、わが国では非核三原則というものをとっております。この非核三原則は、返還の時点におきましては、沖繩にそのまま厳格に適用されるわけであります。いま一々お話がありましたけれども核は、いつになりますか、返還時その時点におきましては一切なくなる、また、内地と同じ状態に置かれる、こういうことだけははっきりとお答え申し上げます。
  173. 上原康助

    上原委員 納得いきませんが、私がお尋ねしているのは、返還の時点にどうなる——核抜き本土並みということは、七二年に核抜きになるということでしょう。これだけ大量の部隊の機能の変更、能力の変更というものは、あなたがおっしゃるように一日にばっとやるような問題じゃないですよ。これは、現時点から進めていかない限りできっこない問題なんです。そのプロセス、プロシージュアをわれわれはお尋ねしているんです。そこを明らかにせずして、ことばの上だけで議論をしても、沖繩問題というのは議論できません。それじゃ逆にお尋ねいたしますが、いまは施政権が別だからなかなかむずかしいのだ、返還時にはそうなるのだ、安保も地位協定も——「日本国による沖繩局地防衛責務の引受けに関する取極」というのは、現在は適用できないはずの日米安保協議委員会をやってつくってあるんじゃないですか。これはどうしてつくったんですか。この久保・カーチス取りきめですよ。
  174. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、安保条約の運営につきまして、わが国とアメリカはしばしば会談をいたしております。その会談の結果を取りまとめるということがあることは、これは当然なんです。久保・カーチス協定のお話かと思いますが、この両者の間で、今度沖繩が日本に復帰する、その時点で日本はどういう配備を沖繩に対して行なうか——そういうことについてアメリカが関心を持つことは当然であります。また、アメリカが、その時点におきまして沖繩でどういう配備を持つか、これを知ることもまたわが国として必要なことであります。そういう話し合いをする。その話し合いの結果を取りまとめるということで、何らふしぎなことはないように私は考えております。
  175. 上原康助

    上原委員 どうも、外務大臣のおっしゃるのは、私には非常に理解しにくい面だけが多いわけですが、沖繩の県民が望んでいないことについては現在でもどんどん押しつけていく、しかし、県民の生活や財産にかかわりのあるものについては、その要望に沿ってはやらない、そのことが県民不在、国民無視の返還協定といわれているわけなんです。私たちが返還協定に鋭く異議を唱えていることは、それなら返還しないでもいいのかという単純な気持ちでとらえているわけですが、二十六年間の沖繩県民の今日までの基地あるがゆえにほんとうにどんな被害を受けてきたのか。今度、自衛隊を配備をされることによって、なお軍靴で踏みつけられないとも限らない。そのことを理解せずして、沖繩問題というのは、私は、ほんとうに解決できないと思うのです。  自衛隊の問題なり、この久保・カーチス協定、あるいは公用地等の問題は後日また議論をいたしますが、総理の所信表明演説の中で心情的な意見がありましたが、「おとなも子供も、男も女も、全島あげて祖国防衛の第一線に殉じ、戦後は二十余年の長きにわたって外国の施政権下に置かれてきたこれら同胞の方々に対し、ほんとうに御苦労をおかけいたしました、と申し上げる以外のことばを知らないのであります。」総理、もしこのことばがほんとうであるとするならば、そうして六五年に総理が沖繩をたずねて、ひめゆりの塔の前で流した涙が、人間佐藤として、政治家として、一国の総理としてほんとうの涙であったとするならば、基地の問題や核の問題について、自衛隊配備のことについて、公用地取り上げの問題について再検討するのが、ほんとうに沖繩県民の心からの要望であり、また、国民の願望にも沿うものだと私は思うのです。そういう意味で、私たちはこれから——協定問題の中で、特にA表の問題はいろいろ問題あります。C表にしても、返ってくる基地じゃない。B表の問題等、洗いざらいにしていきますが、政府沖繩返還問題に対しての政治姿勢というものをいま一度再検討する御意思があるのかどうか。いろいろ問題はあると思います。県民の納得のいく、国民の要求を入れた形での沖繩返還というものを、何らかの形で国民的合意というものを得るように——日中国交の問題や、米中接近の問題等を含めて、共同声明が発表された時点と現時点とは大きな変動なんです。転換なんです。このことを踏まえるならば、総理のお気持ちいかんによってはできないこともないと私は思うのですが、御見解を賜わっておきたいと思うのです。
  176. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの上原君のお尋ねは、率直に申して、政府にこの協定をやり直せ、かように言われるのなら、私はそれに反対でございます。なお、沖繩県民の心情をもっと理解して、そうして復帰後の万全を期せとおっしゃるなら、私はあらゆる努力をするつもりでございます。このことをはっきり申し上げまして、ただいまのお尋ねのお答えといたします。
  177. 上原康助

    上原委員 返還協定をやり直せということについては反対なんだ、これまでもいろいろそういう御答弁は賜わってまいりました。しかし、総理、ぜひ御理解いただきたいことは、私たちは何でも反対を言うわけじゃありません。協力できる面はやりたい。また、沖繩の県民も、アメリカの軍事支配下においても、協力できる面はやってまいりました。だが、これ以上日米の戦争政策によって沖繩が犠牲になるということには同意できないんです。ことばの上だけじゃなくして、今日日本の置かれている立場というものを大所高所の立場から考えた場合には、その新たな情勢に即応した形での沖繩返還というものが生まれてしかるべきだと思う。  それではお尋ねいたしますが、県民の要求に沿って軍事基地の問題を解決をしていく、あるいは返還後は本土並みになるということでしたが、具体的に、たとえば沖繩の市町村が返してほしいという軍用地というものは返せるという、また返すという前提でやるのかどうか。これまでも相当出されておるが、一つも返されていない。みんな端々だけ、使いものにならないところだけ、石ころだらけのところだけしか返っていない。そういう具体的な政策の中でのあらわれというのがない限り、総理のおっしゃることは信頼するわけにはまいりません。あらためて、返還協定の問題については、私たちも、具体的に交渉のやり直しをやれという場合の提示も沖繩委員会の中ではしたいと思います。ただ突っぱねるのではなくして、もっと沖繩県民の理解国民の合意を得るという立場での解決の方法がありはしないかと私は思うんです。その点についてのあらためての御見解と、今後の基地の解放と平和転用というものに対して具体的にどう進めていこうとしておるのか、総理と外務大臣の御見解をお伺いをしたいと思うんです。
  178. 福田赳夫

    福田国務大臣 沖繩返還問題につきまする私の心情は、総理がお述べになったと全く同じであります。この心情を背景といたしまして、いまこの返還協定の審議に取り組んでおるわけでございます。私の見解といたしまして、上原さんのおっしゃること、これはよくわかります。わかりますが、もうこれまで積み上げてきたこの返還協定、またその付属文書、これを変更するということは、私がアメリカ当局と接触しておるその責任者でありますが、その責任者たる私の感想といたしましては、これは非常に時間がまた先に行くか、あるいはこの問題が一応白紙に戻るか、そういうようなことにまで発展してくるのじゃないか。私の気持ちといたしましては、とにかく一刻も早く日本の施政権下に返りたい、こういうふうに沖繩の県民は願っておると思うのです。その過程におきまして、いろいろの条件なり、あるいは要請なり、御期待というものがある、それは知っております。しかし、その問題につきましては、いま今日この協定に盛られておる内容、これが今日この時点においては精一ぱいのものである。一九七二年中返還ということになっておりますが、それを実現するそのタイミングを考えまするときに、これはもうほんとうに精一ばいのものである、こういうふうに思いますので、ぜひともこの協定に御賛成を願いたい。協定が成立したその上におきまして、さらに皆さんの御希望を十分そしゃくいたしまして努力はいたす、そういう決意であるということをはっきり申し上げます。
  179. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま外務大臣がお答えをいたしましたから、私から重ねて申し上げる必要はないように思います。先ほど私が答弁をいたしまして、これはたいへん簡単でございます。簡単な答弁をいたしましたので、あるいは誤解があると困る、かように思います。  上原君は、別に返還協定をやり直せ、ここまでも言われたのではないだろうと思う。私は、やはり早く返ってくることが何よりも大事なことだ、そうしてわれわれがこの沖繩問題と取り組めるゆえんだ、かように実は思っておりますので、アメリカの施政権下から、日本のほんとうのわれわれと同じ県、また県民、こういう形でありたい、かように思いますから、できるだけ早急に実は実現したい。そういう意味から申しましても、やり直すということは、これはただ時間をとるだけだ。また、その結果必ずしもいい方向に行くとは思いません。私は、そういうことを考えながら、再調整はいたしませんということを申しましたが、しかし、これは私が答弁のうちでも答えたように、県民の意向にできるだけ沿いたい、こういうあらわれだと御理解をいただきたいと思います。  ただいまの軍用地等の問題につきましても、そういう意味で、あるいは借地料や、あるいはその返還要望、それらについても十分話し合いができるように、所有者との話し合いができて、そうしてそのもとでやるということが、本来の基本的な態度でなければならぬ、こういうようなことは、よく私も承知しておるつもりであります。とにかく、県民の御理解ある御協力がなければ返還協定は実現ができない、この協定が実現できなければ、祖国復帰は実現しない、こういうことでもありますので、ただいまの状態をひとつ御理解いただきたいと思います。  また、特殊部隊その他のものもあることも、これは先ほど来外務大臣からもお話しいたしましたように、政府は知らぬわけではございません。しかし、われわれのよりどころは、今度沖繩が祖国復帰すれば、本土と同様に、安全保障条約、同これに関する取りきめ、それがそのまま沖繩に適用されるのだ、そういう意味から申せば、米軍の機能がその意味においては変わってくるのじゃないのか、かように思っております。したがって、いまのようなドル防衛その他等の関係等も考えれば、基地はさらに縮小されてしかるべきだと思うし、これは日米双方の共通の利益じゃないか、かように私は思いますので、さらに今後の問題として、ただいまA表、B表というのができておりましても、これがいつまでも変わらない状態だ、かように考える必要はないように思っております。  以上、補足して申し上げておきます。
  180. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 上原君に申し上げますが、もう時間は終了しておりますので簡単に願います。
  181. 上原康助

    上原委員 これで質問を終えたいと思いますが、きょうはある程度心情論になった面もございますが、幾らでも、本土並みでないという材料はございますので、これからまだやっていきたいと思うのです。  ただ、最後に申し上げたいことは、ことばの上だけでおっしゃるのでなくして、実態とつながった形での返還というものをやらなければいかない。そのことを私たちはどうしてもやり遂げなければいかないという立場で、いま、協定のやり直しというものを、ことばそのものはあまり的確でないかもしれませんが、少なくともこのような中身ではだめなんだということを申し上げて質問を終えたいと思います。
  182. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  楢崎君の残余の質疑を許します。楢崎弥之助君。
  183. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長から、理事会の結果をまず御報告いただきたいと思います。
  184. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 お答えいたします。  理事会におきましては、政府側のほうで、楢崎君が要求された資料だと思われるものがあるから、それを提示したい、こういうことで、楢崎君所持の資料と突き合わせてみる、それによって再開をする、こういうことでありました。
  185. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、政府のほうから照合の結果を御報告いただきたい。
  186. 山中貞則

    ○山中国務大臣 楢崎委員の先ほど指摘された文書はこれでございますが、これは政府側の文書です。同一のものであることを確認いたします。  この文書は、当時の南方同胞援護会の関係者が、意見書として、当時の特連局に提出したものであります。総理府としては、受付簿、発送簿もございませんし、決裁ももちろんいたしておりません。したがって、民間の意見書としてそれを受理し、そのまま総理府限りで預かっておる文書である、そのまま措置したということでございます。
  187. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま御報告を承りますと、総理府限りで措置したものと思われます。つまり、これは確証がないということでありましょう。  そこで、南方関係機関とは一体どういう団体で、政府との関係はどうなっておりますか。
  188. 山中貞則

    ○山中国務大臣 南方同胞援護会は特殊法人でございますが、いわゆる施政権下の沖繩に対するここ一両年のごとく、直接政府の全面的な救助の手が差し伸べられなかった時代において、間接的に民間の公的な団体として活動をして補足してもらった団体でありまして、本年度の予算でいいますと、一億三千五百万円国も補助をいたしておりますが、その他にも、お年玉はがきや、あるいはその他の自転車振興会等の補助金等をもらいまして、それで合計四十二カ所、本土において五カ所、現地沖繩において三十七カ所の施設を持って、沖繩の人々の間接的な援護業務に従事しておるものでございまして、会長は大浜信泉氏でございます。
  189. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま御報告のとおり、これは政府の補助機関であり、政府と一体のものであるとわれわれは思わざるを得ません。そこで、この文書は総理府が印刷されて、総理府の用紙が使われております。しかも、現在総理府にこの文書は保管をされておる。したがって、総理府の資料であることは間違いありません。ところが、この資料に極秘という印がなぜ押されておるのです。また、だれの責任でこの極秘という印が押されておるのですか。
  190. 山中貞則

    ○山中国務大臣 どうも私は役人上がりでありませんで、日本の役所の極秘とか永久秘とかいう扱いについてはふだんでも疑問を持っておるものでありますが、この問題は私の時期の問題ではございませんで、たしか当時臼井総務長官であったかと時代的に思われますが、長官のところで、そのような極秘扱いとして、総理府限りでそれは保存しておけという指令があってなされたものかどうか等も現時点ではつまびらかになりませんが、この程度の文書——あるいは内容についてはいいことが一ぱいありますが、先ほどの不穏当だと言われた部門等も含んでおる意見書等について、それが極秘である、また内容を読んでみて、その当時の環境が対米的に日本の立場がどうであったかにしても、極秘であるような内容のものでもあると思いませんし、私であったならばこのような文書を極秘文書扱いとはしなかったであろうと思いますが、現実に極秘となっておりますので、その点は役所のその取り扱い方については、私自身は不必要な扱いをしたものであると考えております。
  191. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 お聞き及びのとおりです。非常にあいまいであります。しかも総理府の別の極秘文書と、どのような区別の取り扱いを一体しておったのでしょうか。われわれが見る限りは、同じ扱いをしておったに違いないと思うのです。したがって、私が午前中この文書を見て、しかも「佐藤総理訪米資料」となっておるのですね。したがって、私はあのような内容で、総理がこれを参考にしてアメリカと交渉されたと思うのも、もちろん十分根拠があると思わざるを得ません。しかもあのような「与党体制の確立をはかりつつ、」なんということばがある以上、私が指摘したような、一体総理は外交交渉にあたって国益というものをどのように考えておられるのであろうか、疑問を持つのは当然でありましょう。だから私は、この外交交渉の最も重要な基本的な姿勢としてこれを取り上げたのであります。総理の御見解をひとつ明確に承っておきたいと思います。
  192. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が全然関知しない文書でございます。先ほど私も大きな声をいたしましたことを、ほんとうにおとなげない状態だったと思います。それらの点についてはお許しを得たいと思いますが、これは全然私は関知しない、存知しない書類でございます。  また、アメリカとの沖繩返還交渉に際しての私の考え方、これはしばしば機会あるごとに述べておりますし、また、きょうあたりも上原君に先ほど述べたばかりでありますし、私が、先ほど言われるような党利党略からこの問題と取り組んだ、さようなけちな考え方ではございませんから、その点はぜひ御理解をいただいて、私どものとっておる今日の立場、これはいまの政権が保守党ではございますが、革新政党に移りましてもおそらく沖繩返還交渉は続けられるだろう、かように私は思っております。そういうことを考えながら、ただいまの問題については私も氷解いたしますから、私の関知しなかったこと、これだけはひとつぜひ御了承いただきたいと思います。  なお、この文書の扱い方について私自身も非常に疑問に思います。極秘扱いにされているという、極秘資料あるいはまた私の携行資料とかあるいは対米交渉資料とかいうようになっておることについては、これは私、ずいぶん意外に思います。どうも問題の筋から見ると、書類の取り扱い方について、こういう点では私どももっと下僚を取り締まらなければならない、指図しなければならない、かように思う次第でございまして、それらの点についてはなお今後の問題として十分注意するつもりでございますが、ただいま申し上げますように、この問題で沖繩問題と取り組んでおるわけではない、これだけは御了承いただきたいと思います。
  193. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 当然そうであろうと思います。しかし、このような資料が総理府の極秘資料として保管されておる。われわれが総理の外交姿勢に対して疑いを持つのは当然だし、私はいまも疑いは消えません。しかし、これは国民が判断をするところでありましょう。私は、以下、そういう疑問をはさみつつ質問を続行してまいりたいと思います。  疑問がなお消えない点は、特殊法人あるいは補助団体と申しますか、そのような団体がもし言われるとおりであるならば、「与党体制の確立をはかりつつ、」なんという、大体そういう意見書を提出するのが間違いであるし、そういう団体に補助金を出すなんということはもってのほかであろうと思うのです。この点はどうでございましょうか。
  194. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは南方同胞援護会が作成したいわゆる公文書として来たものではなくて、南方同胞援護会の関係者の一部の人々が、総理の沖繩交渉という画期的なものについてあるグループで意見書をつくったということであります。したがって、同胞援護会の本来の活動としての行動を行なった文書ではありません。
  195. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それを、いま長言のおことばを立証するものは何もないのです。そうすると、客観的にこれを判断せざるを得ません。私は、この種の団体、こういうことを意見具申するような団体は補助機関としてどのような処置をとるか、ひとつ明確にしていただきたい、このように思います。総理の御見解を承りたい。
  196. 山中貞則

    ○山中国務大臣 南方同胞援護会は、ずいぶんいままで、沖繩のためにいいことをたくさんしてくれておるわけです。したがって、この文書の扱いということに関して南方同胞援護会の関係者が意見書を提出した、その中に不穏当な個所が一部あるという点については私も遺憾に存じます。しかしながら、南方同胞援護会そのものは今日も非常に沖繩のために努力をしてくれておりますし、しかしながら来年復帰いたしますと、清算期間を除いて一年後には解散させるということにいたしておる次第でございます。
  197. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はいまのような御答弁を聞きましても納得するわけにいきません、現にこういう事実があるのですから。私は、これはやはり何らかの私どもの納得いく措置をしていただきたい、この点はひとつ保留しておきます。  それで次の質問に移りたいと思いますが、昨日、アメリカ上院のフルブライト委員会で、 ロジャーズ長官が、返還時に沖繩の核はないのだという意味答弁があったことを新聞は報道いたしております。しかし、これはすでに昨年の上院の、いわゆるサイミントン委員会でもジョンソン次官が言っておることと同じなんでありまして、また総理が言っておられることとも同じなんであります。   〔委員長退席、長谷川(四)委員長代理着席〕 別にこのことによって核を完全に抜くという保証にはならないわけであります。したがって、われわれが要求しております、安井委員も保留をしております七千万ドルという撤去費の積算基礎は一体どうであるか、あるいはまた撤去の具体的な確認の方法は一体どうなのか、そしてまた返還後の再持ち込みは絶対しないという保証があるかどうか、これが依然としてわれわれは疑問として残っておるし、国民も、これはおそらく明らかにしてほしいという気持ちがあろうと思いますので、 ロジャーズの証言が出たからといって決してわれわれは納得していない、これを申し上げておきたいと思うのです。  なお、わが党の機関紙の社会新報の特派員としてアメリカに参っております上田哲参議院議員が、昨日、上院にロジャーズ長官が出られた後、面会をしたそうであります。そして長官に対して、一体あなたは、この核抜きということをあなたが機会を設けて声明をされるようなお考えがあるのかどうか確かめたそうでありますが、ロジャーズ長官のお答えは、そういう声明を出す考えは全然いま持っていないという答えがあったそうでありますから、念のためこれは申し添えておきます。  そこで、私はこの核抜きの問題について非常に心配な事実を見出したわけであります。アメリカに対して核は持ち込ませない、そして日本自身も持たない、また持ち込ませない、この非核三原則が共同声明とも関係がありますが、したがって返還協定とも関係のあるところでありますが、実はそれ自体が非常に危うくなっておる。その非核三原則を疑わしく思わざるを得ない事実があります。  そこでまずお伺いをいたしますが、七月四日にレアード長官が訪日されました。国防次官補代理のフリードハイム氏が一緒に参りました。そして外人記者との会見をやったわけであります。そのときフリードハイム氏は三つのことを言いました。一つは、第七艦隊の一部肩がわりを自衛隊に要望しておるということ、二番目に、日本は八〇年代に核武装をするであろうということ、しかもそれは海上のほう、つまり海上自衛隊が弾道弾迎撃兵器を持つであろう、つまり海上ABMであります。そして、しかし核の有無については言っては.いけない、こういう話をしたわけであります。新聞に報道されて驚いた在日アメリカ大使館あるいはレアード長官自身は、そのことを否定をいたしました。しかし、フリードハイム氏がそういう話をしたことはこれまた事実であります。で、はたしてこれが、レアード長官は打ち消したし、在日大使館は打ち消したが、この八〇年代日本の核武装というものは、そのように全然そういう構想がないのであろうか、ここが重大なんであります。で、まずお伺いをいたしますが、原子力潜水艦は、これを海上自衛隊が保有するということは、原子力基本法との関係はどうなっておりましょうか。科学技術庁長官にお願いをいたします。科学技術庁長官は原子力委員会委員長でもありますから。
  198. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 原子力の平和利用、こういうことが基本でございます。原子力潜水艦、これは現在のところ推進装置としての原子力であります。その意味で現在のところ特に問題、関係はないんじゃないか、こう思っております。
  199. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの答弁は、原子力潜水艦を自衛隊が保有しても原子力基本法には触れないという意味ですか。私は原子力委員に聞いておるのです。
  200. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 推進力としての原子力の利用である、軍事的利用とは関係がない、こう考えておりますが、しかし、現在の原子力潜水艦はこれは軍事用に使われる、そういう点では関係がある、われわれとしましては、原子力潜水艦というものは、潜水艦自身といたもましてはこれは軍事用のものである、こういう考えであります。
  201. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 答弁になっておりませんね。明確に一言でおっしゃればいいじゃありませんか。触れるなら触れる、触れないなら触れない、どうなんですか。
  202. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 現在の段階において平和的利用のものとは思われておらない、こういうことであります。——現在の段階において、つまり従来からわれわれのとっております態度は、推進力としてこれが一般的なものである、こういうことになるかどうかということであります。その意味において現在は一般的なものとは認められておらない。そういう意味においてこれは平和的な利用のものとは現在の段階で考えておらない、これが現在の立場でございます。
  203. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 現在のところはというのは実にあいまいですね。そこに非常に意味があると思うのです。しかし私は、いまの答弁で非常に問題があると思うのは——いいですか、あなたは原子力委員会委員長でしょう。原子力委員会設置法はどういうことをうたっておりますか。ちょっと続み上げておきます。大事な個所だ。これは総理府に置かれるものである。第二条「次の各号に掲げる事項について企画し、審議し、及び決定する。」二条の一号「原子力利用に関する政策に関すること。」二条四号「核燃料物質及び原子炉に関する規制に関すること。」二条の十号、その他原子力利用に関する重要事項に関すること。三条「内閣総理大臣は、前条の決定について委員会から報告を受けたときは、これを尊重しなければならない。」八条「委員は、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」われわれの同意を得て総理大臣が任命する。その原子力委員の有澤先生が参考人として国会に来られました。これは昭和四十三年五月二十三日であります。衆議院科学技術振興対策特別委員会。このとき、わが党の石川委員質問をいたしております。どういう質問をしておるかというと、「御承知のように、原子力潜水艦は明らかに軍艦です。軍用目的であることは、これは否定されないでしょう。軍用目的に原子力を使うということが認められるということは、明らかに原子力基本法の違反ではないか。これはどう考えますか。」これに対して有澤廣巳原子力委員会委員は、「日本において原子力軍艦をつくれば、これは基本法に反すると思います。」実に明確に答えられておるのであります。したがって、あなたは原子力委員長としてこの有澤委員の見解と違いますが、その点、どう思われますか。
  204. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 全く同意見でございます。
  205. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたはさっき何か条件づきで言われましたですね。一般化すればとかなんとか言われたですね。全然いまの答弁と違うんじゃありませんか。
  206. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 軍艦というのが有澤委員ことばの中にあると思うのです。潜水艦というのは軍用に現在もっぱら用いられております。そういう意味において、先ほど推進力としてもっぱら用いられておるのは軍用潜水艦である、したがって現在認められておらない、こういうことを申し上げたのでございます。
  207. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この重要な予算審議の段階で、原子力潜水艦がいまは軍艦であるがというような、そんな答弁が通ると思いますか、あなた。そういう答弁をしてはいけませんですよ。  そこで、私はこの際、原子力委員会委員長である科学技術庁長官に、ひとつ原子力委員会におはかりの上、この原子力潜水艦を保有することが原子力基本法に触れるかどうかの原子力委員会としての権威ある統一見解を、この国会にお出しをしていただきたいと思いますが、どうですか。
  208. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ちょっと……。
  209. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は何もこの人に言ってないのですよ。委員長、待ってくださいよ。ちょっと待ってください。
  210. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員長代理 待ちません。高辻君を許可いたしました。
  211. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 いままでの御質問は、ただいままでのいろいろな経緯がございますので、その経緯について申し上げます。(楢崎委員「ちょっと待ってください。それで時間をとられたら困るのですよ。質問者の言うとおりにしてくださいよ」と呼ぶ。)簡単に申し上げます。  御承知でございましょうが、四十年の四月十四日に、この御質疑の点についての政府の見解は提出をいたしております。表明をいたしております。その表明は、ただいま申し上げますが、原子力が殺傷力ないし破壊力としてではなく、自衛艦の推進力として使用されることも、船舶の推進力としての原子力利用が一般化していない現状においては、同じく認められないということをはっきりと申し上げておりますので、その点を、もし誤りがあるといけませんので申し上げておきます。
  212. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ああいうことをされるんだったら、私はきめられた時間を守りませんよ。何も政府の見解を聞いておるのじゃないのです。私は原子力委員会の見解を聞いておるのです。
  213. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員長代理 楢崎君、時間がかかりますからどんどんやってください。時間をむだにしないで、どんどん進んでください。
  214. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 防衛庁長官、オメガ・システムとは一体何ですか。   〔発言する者あり〕
  215. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員長代理 委員長の権限でやっておりますから……。
  216. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 オメガ・システムとは何で、その性能はどういうものであるか、御説明をいただきたい。
  217. 西村直己

    西村(直)国務大臣 ちょっと存じません。内容は知りません。
  218. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 防衛庁、御存じの方はございますか。
  219. 久保卓也

    ○久保政府委員 実はわかりませんが、うちの担当者に聞きますと、航法関係のシステムではないか、ナビゲーションの関係ではないか、ロラン関係と同じようなものではないかと申しております。
  220. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 知りませんが聞くところによるとというような答弁は、私はこれは受け入れることはできません。したがって、これは後刻明確な資料をひとつ出してください。ないならば、アメリカは世界でこれを七つ置くことになっている。そのうちの一つが日本に置かれる。その場所は私の故郷の福岡なんです。これはひとつ明確にしておいていただきたい。この点は、資料が出てくるまで保留をいたします。  そこでお伺いをいたしますが、昭和四十四年十月十五日、日米軍事外交事務レベル会議が開かれております。この会同に出席された日米代表は以下のとおりであると思いますが、間違いありませんか。日本側、外務省から牛場外務次官、法眼審議官、東郷アメリカ局長、防衛庁から小幡事務次官、板谷統幕議長、宍戸防衛局長、六人であります。アメリカ側から、マイヤー駐日大使、ナッター国防次官補、マギー在日米軍司令官、フィン国務省日本部長、以上の十名で開かれた。間違いありませんか。
  221. 久保卓也

    ○久保政府委員 間違いありません。
  222. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この軍事会同の中で、日本の原子力潜水艦保有の問題が議論されておる。間違いないですか。
  223. 久保卓也

    ○久保政府委員 間違っております。(笑声)
  224. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまのような答弁で大いに喜んでおっていただきたいと思うのですが、ここでは原子力潜水艦の保有が問題になっております。七五年ごろには日本でも原子力商船が一般化する、生産能力を持つことができる。したがって、そのころは当然原子力潜水艦保有を検討しなければならなくなる。防衛庁としては、原子力潜水艦を保有する必要があるとの考え方を強めておる。できれば四次防の後半年度には実現したいという意向が示されております。これは必要であれば、先ほどと同じように私が資料をお見せしてもよろしゅうございます。  四次防の技術研究開発計画に、燃料電池の開発計画がありますか。
  225. 黒部穰

    ○黒部政府委員 燃料電池の開発研究をいたしております。
  226. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がありませんから、私のほうから逐次指摘してまいります。  この燃料電池は川崎重工業が開発中であります。この燃料電池はアポロ宇宙船において使用された動力源であります。つまり、密閉でございますから、ちょうど潜水艦にそのままふさわしいわけであります。在来型の推進力だと、完全潜航して一日ないし二日。しかし、この燃料電池が成功すれば一週間以上の完全潜航ができる。つまり、在来型と原潜型の中間的な存在だ、このように位置づけしていいと思いますが、間違いありませんね。
  227. 黒部穰

    ○黒部政府委員 燃料電池の開発研究は四十二年度から着手いたしておりますが、ただいま先生の御指摘になりましたような潜航時間というところまで研究がまだ進んでおりませんで、もっぱら原理的な点をやっております。
  228. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたが御存じないだけなんですね。あとでまた資料をお願いしますから、先にいきましょう。  四次防、同じく技術研究開発計画の中で現在保有の潜水艦は十隻、うち五隻がティアドロップ型。四次防で九隻を持つようになる。これは全部ティアドロップ型。その四次防の潜水艦の艦型をさらに研究するために、引き続いて涙滴型、ティアドロップ型及びまる型、円型の関係の研究開発をされておる。そしてこのティアドロップ型潜水艦の魚雷発射管はサブロックと同性能の水中・空中・水中ミサイル魚雷を発射できるように開発研究されつつある。どうですか。
  229. 黒部穰

    ○黒部政府委員 現在建造中の潜水艦には、サブロックのような装置はございません。SUM、艦から潜水艦に対する攻撃兵器といたしましては、潜水艦ではなく、護衛艦のほうにつけてございます。
  230. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまつけておられるSUMはアスロックであることは百も承知しております。そんなことを聞いておるのじゃないのです。四次防の技術研究開発計画の中でこのような目標のもとに研究を進められておるではありませんか、これを言っておるのです。
  231. 黒部穰

    ○黒部政府委員 四次防計画では、さような計画は全然ございません。
  232. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 よろしいでしょう。あとでまた、これも資料をお願いします。  いま向こうから言われましたSUMですね、これの開発目標は、三次防技術研究開発計画によれば、ホーミング魚雷を弾頭とする射程約五十キロメートルの艦艇攻撃用SUMである。七一年までに試作完了、七二年は技術試験、七三年は第二次の試作、これには十二億七千万円ついております。いま申し上げたのは全部予算がついておりますが、いまの第二次試作の分だけ金額が多いから、ちょっとつけ加えておきます。七四年技術試験、七五年実用試験、そして四次防末の実用配備計画になっておるようでありますが、間違いありませんね。
  233. 黒部穰

    ○黒部政府委員 ただいま先生御指摘の案件は、三次防原案作成当時にさような案が一部ございましたけれども、三次防計画においては採用いたしませんでございます。かつまた、四次防の当庁原案にもございません。
  234. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それがあるんですね。あるんです。  そこで、いま保有されておるSUM、アスロックの性能は、射程だけあげれば一キロメートルないし九キロメートル、これは防衛年鑑に載っておる。ところが核魚雷、サブロックの射程はどうなっておるか、三十六キロないし五十四キロメートルであります。これも防衛年鑑であります。とすれば、この日本が開発計画の中でねらっておるSUMは、射程五十キロメートルを目標にしておるのですから、まさにサブロック級であるということを指摘せざるを得ません。そこで、先ほど御指摘のとおり、これは艦対水中あるいは地対水中、こうなります。しかし、これを水中発射に改良するのは非常に簡単であります。これも私は説明してもよろしゅうございます。  海上自衛隊の第一術科学校では、アメリカの陸軍幕僚大学校発行の「核兵器の用法」という本を、教練、いわゆる訓練学習の参考資料にしておりますね。間違いありませんね。
  235. 高瀬忠雄

    ○高瀬政府委員 海上自衛隊の第一術科学校におきまして、アメリカの、ただいま申し上げましたような教範を使いまして教育訓練はいたしておりません。
  236. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 参考資料として使われておるかと聞いておるのです。使われております。  したがって、以上のいろいろな事実から考えて、総理も聞いておっていただきたいと思いますが、いま、一つのある兵器を考察する場合に、それだけ取り上げて考察することはしないのです。システムとしてこれを見なくちゃなりません。よろしゅうございますか、四次防技術研究開発計画の中にSSXの開発が含まれておる。一体SSXのXとは何か。これはこの四次防の技術研究開発計画を出すに至った技術研究本部の第一研究所の第四部の議事録があります。その中に明らかに原潜を保有するという想定のもとに研究を進めるということが文書として存在いたしております。しかも、四次防の技術研究開発計画の中にSSXの開発が含まれておる。とすれば、そのXとは何−か。それはNであります。つまりSSNであります。御案内のとおりこれは潜水艦の記号である。SSBNが例のポラリス潜水艦あるいはポセイドン潜水艦、そしてSSNは攻撃型原子力潜水艦、サブロックを全部積んでおるのであります。もし原子力潜水艦を持つ場合に、原子力潜水艦だけ持っても意味がないのです。つまり核魚雷を持たなくては意味がないのです。したがって、サブロック級のいわゆるSUMを一方においては開発しながら、そして原子力潜水艦の艦型を研究しながら、そして普通型の推進力と原潜推進力の中間に位する、位置づけされる燃料電池を研究しながら、四次防の中でSSXを開発していく。まさに原子力潜水艦の開発計画に入っておると私は思わざるを得ません。したがって私は、以下の資料を御提出をいただきたい。  四次防の技術研究開発計画案、先ほど申し上げた技研本部の第一研究所第一回連絡会と表題がなっておるその議事録、それから、先ほど申し上げた「核兵器の用法」以上を資料として御提出をいただきたいわけであります。いかがでしょう。
  237. 西村直己

    西村(直)国務大臣 ずっとお話を、専門的な知識の御披露で、伺っておりました。しかし、私どもといたしましては、四次防の技術開発の研究の中に、核あるいは原子力潜水艦、こういうものを入れるという考えはないのであります。  御存じのとおり、わが国の防衛は自衛力でありまして、しかも非核三原則というものは、私どもはこれを堅持していくという政策のもとに四次防というものも考えてまいりたい。しかも、四次防自体がまだ防衛庁の一つの原案でありまして、関係省庁でこれを詰めていかなければならぬ段階であります。ただいまそういうような部分部分の御資料等も御要求ありましたが、私どもとしては、ものによっては出せるものは出してみたい、こういう考えであります。
  238. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 原案が固まってしまえば、もう過去の経験からおわかりのとおり、なかなか訂正がしにくい、われわれがいかに審議しても。四次防はいまの計画でいけば来年度から始まるわけです。当然次の通常国会の予算に出てくる問題であります。したがって、原案の段階でわれわれは大いに審議をしたいし、われわれの意見も聞いていただきたい。したがって、資料をぜひお願いをしたいと思います。この点はひとつ理事会でおはかりをいただきたい、このように思います。そこで、その点はひとつ委員長、どう取り計らいになるのでしょうか。
  239. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員長代理 あなたに提出できる範囲内のものは、御提出申し上げるとのおことばでありますから、そのように取り計らいをいたします。
  240. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ明確に、私が申し上げたどの資料が出せないでどの資料は出せる、それ、明確にできますか。
  241. 西村直己

    西村(直)国務大臣 その中で、たとえば核兵器関係のもので何か個人のものがあるそうです。個人というのは民間のものでしょう。そういうようなものは、もちろんこれはわれわれの関係すべきことでなし。それから議事録等があるのかないのか、そこいらも確認した上でないと私どもは御返事はできないし、おそらくしかし、私どもが基本的に核政策をとらない、非核政策であるという基本に基づいてのもの、いろいろな議事検討がかりにあったにしても、そういうふうに私どもは受け取っております。   〔長谷川(四)委員長代理退席、委員長着席〕
  242. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、それがまことにごまかしに満ちておると思うから事実を申し上げておるのであって、そういう演設をなさってもだめなんですね。  そこで、私はちょっと総理にお伺いしておきますが、どうしてこれが重要かというと、総理、この原子力潜水艦を保有するということは、総理の言っておられる非核三原則との関係はどうなりますか。
  243. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、現段階では原子力潜水艦、推進にしても持つべきではない、かように考えております。
  244. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 非常に明確であります。非核三原則の政策上からもこれは背反するものである。ところが、その背反する原子力潜水艦を保有しようとしている。もしそうでないと言い張られるならば、資料を出してください。資料を出してください。どの資料が出せるかちょっといま明確でないようですが、もう一ぺんこれは明確にしてください。そうしたら、私はその取り扱いを理事会にまかして、先に質問を続けてもよろしゅうございます。
  245. 西村直己

    西村(直)国務大臣 まあ御議論の進め方にもよるかもしれませんが、私どもといたしましては日本の自衛力として、特に原子力潜水艦というものはいま考えておらない。原子力が一般の推進力となった時代においては、その時代の国民は考えるでありましょう。一般に商船が原子力にすべてかわるとか、そういう時代には。少なくとも現在の原子力基本法のもとにおいて、これをすぐに推進力として原潜をつくる、こういう考えはない。したがって、これに関する研究と申しますか、開発計画というようなものはあり得ないのであります。  そこで、ただ非常に御熱心な御質問でありますから、私どものほうで手元で調べまして、出し得る資料はひとつ国会の皆さまにもそれはお目にかけてもいい、そういうふうに御理解を願いたい。
  246. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 出し得る資料があればでは私は困るのですね、そういう御答弁では。もう一ぺん明確に私のほうが要求した資料を言います。四次防技術研究開発計画案、特に海上自衛隊関係をこの際はお願いをしておきます。それから技研本部の第一回の四連絡会の議事録、三番目に「核兵器の用法」これは先ほど申し上げたとおり、アメリカ陸軍の幕僚大学校の発行のものであります。一九五八年、古うございますけれども、それが今日に生きておる。以上三つであります。それと、先ほど保留にしておりましたオメガ・システムの問題です。
  247. 西村直己

    西村(直)国務大臣 四次防の原案の中の技術開発計画のその部分、それはお目にかけても私どもは別にどうということはありません。それから議事録は、これは調べてみませんと、その中にそれがなければ、これはもう無意味なものであります。それから第三の、核の何か利用の本、論文というのは、これは個人の持ちものだそうでございますから、これははたして、われわれかってに出せるかどうか、個人の所用物だそうでございますから、その点を一応申し上げておきます。それから、最後のオメガ・システムですか、これは航法、ロランや何かに関係する航法でありますから、これはむしろ運輸省所管の問題になって、われわれのほうとしては、一応直接関係ございません。
  248. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、運輸省のほうは、オメガ・システムの資料を出せますか。
  249. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいま御質問ございましたオメガ.システムにつきましては、私も科学的なことはあまり詳しくございませんが、ロランAシステムが大体世界に七十ございます。その七十で大体全世界の一五%北半球だけでもって三〇%をおおっておるそうでございますが、このオメガ・システムは非常に性能が、超長波でございますか、非常にいいので、八局でもって全世界をそれと同じだけのことができる。それでアメリカとイギリスとノルウェーとが協力いたしまして全世界をそれでもってやろうということができまして、ただいま四カ所できておりまして、あと残り四カ所をつくる。その一つを日本の、先生のあそこが一番いいということで、それで条件が非常にいいということで、昨年四十五年に四億円、四十六年で五億円の予算を取っておりまし工すでにそのつくる土地や何かを買収その他工作の実施にかかっている次第でございます。  それは、実は航海それから漁業、航空等の情報に、いままでの実験によりますと、非常にこれは有効であるということで、最もこれは有効な平和的のあれであるということで、ただいまやっておると聞いておる次第でございます。
  250. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 仰せのとおり、これはロランCにかわるものであります。そして世界に八カ所置くのじゃなしに、グアムが本拠なんです。そしてあとの七つを世界に置くわけであります。これはオメガ社が開発したものをアメリカの海軍が制度化したものであります、海軍が。いいですか、なぜ海軍が制度化したか、それは原子力潜水艦と関係があるからであります。ちょっと念のために聞いておきますが、福岡のどの場所ですか。
  251. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 福岡の上対馬町の舟志湾地区を建設予定地としております。
  252. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 突然のことでございますから、より詳しい資料を、オメガ・システムの性能その他資料としてひとつ御提出をいただきたい。
  253. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ちょっと訂正をいたします。いまの上対馬というのは長崎県だそうでございます。
  254. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 実情を言いましょう。福岡の雁ノ巣に置くか対馬に置くか、ペンディングになっておったのであります。いまお聞きしますと、上対馬ということがきまったようであります。それはそれでよろしゅうございます。  それで委員長、資料を出された段階でこの質問を続行したいと思うわけですが、理事会のほうでひとつこの進め方についてお取り計らいを願います。
  255. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 楢崎君の持ち時間の余裕がありましたら許します。
  256. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、私の持ち時間だけ残しまして、これで質問を保留さしていただきます。
  257. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 それでは、楢崎君の持ち時間を残しまして次に移ります。  次に松本善明君。
  258. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、沖繩問題、中国問題についておもにお聞きしたいのでありますが、まず最初に、中国問題からお聞きしたいと思います。   〔発言する者あり〕
  259. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 会議場は静かに願います。
  260. 松本善明

    ○松本(善)委員 二十六日の国連総会で、中華人民共和国の国連議席、安保理事会の常任理事国の議席回復、蒋介石政権追放の決議の成立は、土十二年前に中国人民から追放されました蒋介石かいらい政権が、中国を代表しているというきわめてばかばかしい虚構がくずれ去って、中国を代表する唯一の正統政府は中華人民共和国であるという、当然の真実が全世界の前に明らかになったものであります。これ以後、本会議や本委員会におきましていろいろの論議がかわされましたが、私は、その論議の上に立って総理に少し伺いたいと思います。  総理は、中華人民共和国と国交正常化をはからなければならない、その過程において日華条約の問題を解決するという趣旨の答弁をされました。私が伺いたいのは、日華平和条約なるものは、蒋介石政権を全中国を代表する政権と認めて結んだ条約であります。中華人民共和国を中国を代表する政権として条約を結ぶときには、その場合、二つの条約は矛盾をするものであります。双方が有効だということはあり得ないというふうに考えられます。その点についての総理の御見解を伺いたいと思います。
  261. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはたいへんむずかしい問題ですから、矛盾しないように、撞着を起こさないように慎重に取り扱う、かような答弁をいたしておるわけであります。
  262. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういたしますと、総理が中華人民共和国と国交正常化をはかりたいと言われましても、この日華平和条約なるものを残して矛盾のないようにしてやりたい、こういう話でございますか。
  263. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 松本君も御承知のように、中華人民共和国が中国を代表する政府として国連に迎えられたのでありますから、私は、国連の状態を基礎にしてこれから国交を正常化しよう、かように努力するのでございますから、それらの点について、どんな交渉になりますか、相手方の意向もございますから、そこらは十分双方の話を突き合わせていく、そうして結論を得たい、かように考えておるわけです。
  264. 松本善明

    ○松本(善)委員 私が総理に伺いたいのは、国民も最も聞きたいと思っておると思うのでありますが、その中国との国交正常化と言われるその交渉の中で、総理の頭の中にあるのは、日華条約なるものを残していくという方向で考えるのか、それとも、これは将来はなくなら、ざるを得ない、そういうこともあり得る、そういうことを考えてやるのか、これはたいへんな政治姿勢の違いであります。その点についての総理のお考えを私はお聞きしたいのであります。
  265. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだ交渉を始めてないうちから、ただいまのようなお話について私が答えることは、いかがかと思います。と申しますのは、日華平和条約、これはその当時としては、中国を代表するものとしてわれわれが選んだことには間違いはなかった。また、当時の国際情勢もさような状態であった。この点については、過日もこの席でお答えしたとおりであります。中華人民共和国を承認している国と、中華民国を承認している国、その国際的な数は、当時は圧倒的に中華民国のほうが多かった。そういう状態でありますから、そのもとにおいて条約を結んだのでありまして、その条約が今日まで続いてきている。われわれ、やはり国際的な権利もあるが、同時に義務もあります。そこに信義を貫くというような問題もございます。でありますから、そういう点についてよく話し合わないと、先ほど言われるように、お互いに矛盾撞着を来たさないように、かようにしなければならない、かように思っておるわけです。
  266. 松本善明

    ○松本(善)委員 交渉をしていないから話ができないという態度では、私はこれは進まないと思います。というのは、日華条約は、言うまでもなく蒋介石政権を全中国を代表するものとして結んだ条約だから、それも残す、そして交渉もしたい、これでは私は一歩も進まないと思う。佐藤内閣の続く限り、その考えが変わらない限り、これは国交正常化などということ自身がおかしな話だ、こう思います。蒋介石政権を選んだことが当時間違いでなかったと言われますけれども、これは歴史の発展の中でこれが誤りであったということが明確になった。あの当時私どもは、中華人民共和国が中国を代表しておるのだということを主張しておった。その主張の正しさがいまはっきりと証明をされた。全世界的に歴史の流れの中で証明をされたのです。それが国連総会に反映をしておるわけです。その真実をはっきり認識をして事を進めない限りは、これは私は、日本の外交は誤った方向へ行っている、ますます誤った方向へ行っている、これは明らかではないかと思います。  ちなみに伺っておきたいのですが、総理は、いま蒋介石政権は一体どこの人民を、国民を代表しておると思っておられますか、現在。
  267. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 蒋介石政権は、ただいま台湾、膨湖島、馬祖、金門、そこらに領土として施政を行なっておる、かように私は思います。
  268. 松本善明

    ○松本(善)委員 先日の委員会で法制局長官は、平和条約としてはこれは全中国を代表しているものとして結んだものだ——これは違うとおっしゃるのですか。
  269. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 日華平和条約というものが結ばれておる、その平和条約の解釈問題としてどうなるかといえば、理論的にとわざわざ申し上げたと思いますが、そういうことになる。しかし、いまおっしゃることは、実は私ども立場からいえば、解釈論ではなくて立法論をおやりになっておるようなものではないかと思います。それと解釈論をごちゃごちゃにして議論をなさると、たいへん答弁するほうも実は困るわけでございます。将来いかにすべきかということについては、いまの日華平和条約と一緒にお考えになるとその辺が明確を欠いてくるのではないかと思いますので、あえて再びその点についてお答えすることを一応控えたいと思います。
  270. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、あなたが出てこられるといつも審議がごちゃごちゃになる、審議の妨害になると思います。聞かれたときに出てきていただきたいと思います。私は、総理の政治姿勢として、現在、法制局長官の答弁もあったから、全中国を代表するものとして蒋介石政権を考えなくていいんですかと、こう聞いているのです。総理のお考えを伺いたいと思います。
  271. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど私がお答えしたのは、蒋介石政権はどこを領有しているか、こういうお尋ねだったから、そのとおりお答えしたのです。それで何か間違いがありますか。
  272. 松本善明

    ○松本(善)委員 それではもう一度お聞きいたしましょう。平和条約としては、これは中国全体を代表しているというふうに考えなければ、現在は中華人民共和国の支配をしておる中国大陸、こことは戦争状態がそのままだということに法的にはなるわけです。あなたの考え方はそれでよろしいんですか。中華人民共和国とは法的戦争状態は続いておるんだ、あなたの考え方でいけばそうなりますけれども、よろしいですかということをお聞きしておるのです。
  273. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもは、日華平和条約を結んだときの中華民国、これは中国を代表するものとして結んだのであります。したがって、戦争状態はこれで終結した、かようになっておるわけです。ただ、中華人民共和国が、これは虚構だ、無効である、それは認めない、かように申しておることも日本政府承知しております。しかし、ただいま申し上げるように、われわれが平和条約を結んだその相手方は中華民国である。これは厳然たる事実であります。
  274. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理の答弁を聞いておりますと、国連尊重ということをことばでは言われますが、国連できまった意思は、中華人民共和国が唯一の中国を代表する正統政府である、蒋介石政権はそうとは認めないということ。私は、その立場からいくならば、中華民国と称しておる蒋介石政権を全中国を代表したものとして結んだこの日華平和条約なるものは、これは当然に中国との国交を回復する場合にはなくならざるを得ない。日華条約の廃棄ということが、中国との国交回復の場合にどうしても条件になる。これは、中国側から言っておるから条件になるのではなくて、日本政府の態度として、どこの政府が、どの国が中国を代表しておるかということについて、明確な態度をとらなければならないからであります。私は、いまの総理の答弁をお聞きしておりますと、佐藤内閣のもとではとうてい中国との国交回復というものは不可能である、口で言うだけのことだ、総理が退陣をされるということが国交回復のための第一歩であると確信をするものであります。しかし、ここで総理と押し問答をいたしましても、とても実りのある討論はできないと思いますので、次に移りたいと思います。  私のお聞きしたい次の問題は沖繩の問題でありますが、二十七日のアメリカの上院外交委員会で、御存じのように、ロジャーズ国務長官が、沖繩に核はないとか、あるいは核は沖繩の返還のときにはなくなっているという趣旨の答弁をしたということが報道をされております。この点について政府が得ておる情報をお話しいただきたいと思います。
  275. 福田赳夫

    福田国務大臣 昨日のアメリカの上院外交委員会でロジャーズ国務長官は、沖繩には返還時には核はない、またその後におきましては、日本政府の承諾がなければ核を持ち込まない、この二つのことをはっきりさせております。
  276. 松本善明

    ○松本(善)委員 いまロジャーズ国務長官がそのようなことをアメリカの国会で発言をされるのであるならば、当然にこの沖繩協定に核撤去ということが明記をされなければならない。それが国際間の信義というものではないか。もし総理がこの協定について国民に責任を負われるならば、あらためて交渉をし直して、この協定に核抜きを明記する。御存じのように、核抜きは少しも明記をされておりません。核ということばさえもありません。そういうふうにすべきであるとはお考えになりませんか。
  277. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現在の協定で十分だ、かように考えております。
  278. 松本善明

    ○松本(善)委員 私はまことに遺憾だと思います。政府答弁では、核の撤去についての点検もしないということであります。この点については、私どもの党では、沖繩には核兵器が存在をする、しかも沖繩にあるアメリカの主力部隊が核部隊なんだ、それらの部隊が存在をする限り核抜きの保証はないと考えております。それらの点については、いずれ米軍自身が作成した資料に基づいて不破書記局長が十分に総理に質問をすると思います。きょうはこの問題についてはこの程度にしたいと思います。  もう一つこの問題に関係しながらお聞きしたいのは、ロジャーズ国務長官は協定の条文解釈に関する了解事項があるということを証言をされたというふうに報道をされております。この点については、こういう条文解釈に関する了解事項があるのかどうか。アメリカの国会で国務長官が証言をされることでありますから、当然あると思います。日本政府にあるかどうか伺いたいと思います。
  279. 福田赳夫

    福田国務大臣 協定付属諸文書のことをさしておるものと思います。
  280. 松本善明

    ○松本(善)委員 私はアメリカの国会の議事録を直接見ておるわけではありませんから、その点について詳しく言うことはできませんけれども、しかし報道されておる範囲では、そういうものではない、こういう文書は決して秘密にさるべきではない。議会制民主主義を尊重するというならば、当然に国会に提出をしなければならない。そうして協定の真実について全国民の前に明らかにしなければならないと思う。この問題については、さらに審議の進む中で、私どもはさらに真実を調べ、要求をしていきたいと思います。
  281. 福田赳夫

    福田国務大臣 お答えをしておかないと、何か秘密文書があるような印象を国民に与えますので一言申し上げますが、この協定並びに付属文書以外に一切の秘密なものはございませんから、これはしかと御了承のほどをお願い申し上げます。
  282. 松本善明

    ○松本(善)委員 私はそれでは次の問題に移ります。  沖繩にいわゆる特殊部隊というのがあります。私ども、この特殊部隊とか、あるいは特務機関の問題をここでお聞きしたいのですが、これは本土にはないきわめて広範な謀略活動を行なっております。私どもは核も基地もないという沖繩の返還を要求するわけでありますが、本土にいままでなかったような謀略基地の存在を容認するということは、これは当然に安保が変質をするということになろうと思います。  幾つかの特務機関の問題についてお聞きしたいわけでありますが、先ほどの外務大臣お話では、これらについても詳細に知り尽くして協定を結ばれたということでありますのでお聞きいたしますが、CSG、これは一体どういう機関と考えておるのか、政府の見解をお聞きしたいと思います。
  283. 福田赳夫

    福田国務大臣 CSGは、これは実は非常にその内容を捕捉しにくかったんです。その他は大体まあ捕捉したつもりなんですが。しかし、私どもとアメリカ側といろいろ話し合ったその結果であろうと思いますが、本日午後五時、米政府当局は、これを一九七二年、つまり来年の七月一日をもって撤去する、こういうふうに発表いたしましたので、御了承願います。
  284. 松本善明

    ○松本(善)委員 それではお聞きいたしますが、きょうそういうことがアメリカ政府から言われたということでありますが、いままで政府は、これはどういうものだというふうに考えておりましたか。
  285. 福田赳夫

    福田国務大臣 大体、補給の任務に当たっておるというふうにアメリカから説明され、そう理解をいたしておったんですが、どうも補給以外の何かやっているらしいという疑問も実は持っておったんです。しかしこれは来年の七月一日には撤去する、こういうことになりましたので、まあ、よかった、かように思っております。
  286. 松本善明

    ○松本(善)委員 補給部隊を撤去するということでよかったというのも、ちょっとなかなかよくわからないのですけれども、一体どういう部隊だという説明があって撤去という話になったのですか。
  287. 福田赳夫

    福田国務大臣 補給部隊であるという説明を受けておったんです。しかし、私どもとすると、どうも補給だけの活動じゃないようだと思っておったんですが、実態がつかめなかった、そういう性格のものなんです。しかしこれは、アメリカ政府が進んで撤去をいたします、こういうことになりまして、たいへん欣快の至りである、かように考えておるわけです。
  288. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうするとお聞きしておきますが、現在までの間に、アメリカ政府からこの部隊について受けた説明というものは、補給部隊であるということ以外にはありませんか。
  289. 福田赳夫

    福田国務大臣 実は、私がその種類のことを直接アメリカ政府から説明を受けているわけじゃないんです、これは。私のほうは、私の部下の者から説明を受けるわけですが、部下からの説明ではそういうふうになっております。なお、アメリカから直接説明を受けたその部下から説明が必要であるということでありますれば、説明いたさせます。いかがしますか。
  290. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  ニューヨーク・タイムズの記事によりますと、これは東南アジアにおける非通常戦闘支援を目的とする部隊であるということでございます。いろいろ先方から資料の提出、−ないしはわれわれ自身が現地に参りまして調査いたしましたが、先ほど大臣答弁されるとおり、兵たんないしは補給をやっておるということ以上にはつかみ得なかったわけでございます。  なお、この部隊の数は現在は十九人、沖繩現地の雇用員が五百八十一名、こういうことになっております。
  291. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは私は、アメリカが日本に対して真実を言っておるかどうかということについての非常に大事な問題だと思いますので、私たちの調査に基づいてお話をしておこうと思います。  これは沖繩本島南部の丘陵地帯に約五十五万坪を占める基地でありまして、ほかの軍事基地では見られないような厳重な警備体制がしかれております。日本人ガードで狙撃銃を持たされているのもこの施設だけだというふうにいわれております。アメリカの高等弁務官もこの施設に対しては何の権限も持たない。それほど厳重な体制下にありながらも基地のそばへ行って見えるものは、きれいな広々とした芝生としょうしゃな住宅と、わずかな建物だけなんです。これが全景の写真であります。非常にきれいな場所です。補給部隊なんてないです。何もないです。ごく一部に、わずかのところに最近中古車両を入れました。補給部隊のための、そういうことの擬装です。この施設の中心部の小高い山の谷間、この写真で言いますれば、この山がありますが、この山のこんもりしているところのまん中辺、ここに二重金網の約一千平方メートルほどの特別な地域があって、秘密工作員の強制訓練所が設けられております。ここは外からだけかぎがかけられるようになっており、そうして、拉致されてきましたべトナム人、中国人などアジア人や、ときにはアメリカ人までが、しばしば目隠しされて連れてこられる。そうして相当期間ここに監禁をされています。CSGはこの地域をZエリアと呼んでいます。天然の地形を利用して、CSGの施設の外からはもちろん、CSGの内部からも見通せないようになっておる。一般の職員すら近づけないようにしておる。CSG正門ゲートに近い本部ビルには、このZエリアに監禁中の人間の私語や、ここを訪問した米人保安部職員などの会話をも、細大漏らさず盗聴する装置があります。こうして外界から完全に隔離をして、ここでスパイになることを人々に強要したり、特殊な謀略訓練をさしておる。かつて十五年間もこのZエリアに閉じ込められていた中国人がおりました。日本では有名な事件でありますが、鹿地事件。作家の鹿地亘さんが監禁をされていた場所もこの場所であるということは、私どもの調査と、それから鹿地さんからお聞きしたことによってほぼ確実なことである。  私はこのことを御紹介申し上げ、いまアメリカ局長はニューヨーク・タイムズのことを言いましたけれども、このニューヨーク・タイムズでは、これがCIAだということをはっきり言っています。これは、アメリカの統合参謀本部ゲリラ戦専門家のエドワード・G・ランズデール准将が一九六一年にケネディ大統領軍事顧問のマックスウェール・Dテーラー大将に出した覚書で、「東南アジアにおける非通常戦争のための資源」なる文書の中にあるのです。解説ではなくて報告書ですよ。その中にはっきりと、これはCIAの沖繩ステーションだとなっております。私が、総理にこの事実を明らかにした上でお聞きしたいのは、CIAに一体安保条約に基づいて基地を貸すことができるのかどうかということであります。
  292. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは日米安保条約上はできません。
  293. 松本善明

    ○松本(善)委員 それはなぜでありますか。
  294. 井川克一

    ○井川政府委員 安全保障条約第六条に、「アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」と書いてあるからでございます。
  295. 松本善明

    ○松本(善)委員 要するに、軍でないからCIAに基地を提供することはできないという御答弁であったと思います。  それで私は、次にもう一つ基地のことをお聞きしたい。FBIS、これはどういう機関で何をしておるのか、政府の調査の結果をお聞きしたいと思います。
  296. 吉野文六

    ○吉野政府委員 FBISは外国の通常放送の聴取を任務としております。
  297. 松本善明

    ○松本(善)委員 ところが、これもまた軍ではありません、私どもの調査団が明らかにいたしました、アメリカ太平洋地域陸軍工兵隊作製の一九七〇年現在の米軍基地一覧表、この地図があります。これは沖繩北方対策庁の出先機関にもあるのです。私ども確認してきた。これによりますと、このFBISなるものは四軍の中には入っておりません。アザーズというところに入っている。そして、FBISや米民政府、カルテックス、琉球水道公社、琉球電力公社、それから問題のVOAもアザーズです。政府はこれを軍だと思っていますか。
  298. 福田赳夫

    福田国務大臣 私どもが知っている限りにおきましては、かつてはこれは独立の機関であったというふうになっておりますが、今日は軍の一部であるというふうに承知しております。
  299. 松本善明

    ○松本(善)委員 この地図には、いま軍でないとおっしゃったCSGさえも、これは擬装でありますが、軍の中に入っているのです。CSGは軍の中に入っています。それは軍でないと置けないということになったからでしょう。これは米軍の地図でさえも軍以外のところに入れておるのです。それを外務大臣は、アメリカの言うことをうのみにして、これは軍だと思っていらっしゃいますか。
  300. 福田赳夫

    福田国務大臣 軍の一部と承知しております。
  301. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、日本の外務省が詳細に調べたということがそんなものか、この協定交渉が、どんなに国民立場に立たないで無責任にやられておるかということを、いま聞いたような気がします。  幾つかの資料をさらに申し上げましょう。ここには米軍の組織一覧図があります。ヘッドクォターズ・USアーミー・リューキュー・アイランズ、このディレクトリー・チャート、この一覧表にはCSGは、司令官などの肩書きはみなミスターになっておる。軍でないからそうなって出ています。ところがこのFBISはこれにさえ載ってないのです。軍じゃないですよ。軍として絶対扱ってない。  もっと申し上げましょうか。簡単な調査をしたってわかりますよ。これはFBISの正門の前の写真です。今度の調査で——ごく最近です。ことしになってからです。ここにはUSガバメントFBISとある。政府機関なんです。これを否定されますか。こんなことも外務省は調査してないのですか。
  302. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答えいたします。  FBISの機構は各地にございまして、あるものは軍の機関となり、あるものは独立の機関として活動しているわけでございます。そして沖繩のFBISにつきましては、先ほど大臣の御答弁のとおり、かつては独立の機関でございましたが、すでに在琉米陸軍の一部になっております。なお、これは実際的には返還前までになればいいわけでございますが、すでになっておるはずでございます。なお、先ほど看板のことを申しましたが、この看板も近く変わることになっております。
  303. 松本善明

    ○松本(善)委員 看板が変わったからといって、実体が変わるものじゃないのですよ。あなた、変わっているというなら、一体いつからこれは軍になったか、これを明確にしてもらいましょう。アメリカ軍は何と言っているか。
  304. 吉野文六

    ○吉野政府委員 いま、いつから変わったかということにつきましては、調査してお答え申し上げます。
  305. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、先ほど言った、これは軍になったというのは、答弁は間違いだった、取り消すということですか。
  306. 福田赳夫

    福田国務大臣 そうじゃないんです。軍の一部にはなりましたが、いつなったのか、こういう御質問でありますので、そのいつなったかということにつきましては、私どもははっきり承知しておりませんので、取り調べてお答え申し上げます、こういうことでございます。
  307. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣、あまり無責任な答弁をされますと、私はたいへん困ると思います。ほかのこともあげますが、これは米軍の電話帳でも全部ミスターになっております。全部ミスターなんです。CSGももちろんそうです。ミスターです。階級はなしなんです。それから、アメリカの政府発行した、だれでも見れるものを調べましてもわかるのですよ。これは実はCIAなんです。外務大臣、知っていましたか。
  308. 福田赳夫

    福田国務大臣 承知しておりませんです。
  309. 松本善明

    ○松本(善)委員 それではお話しいたしましょう。これはアメリカの公文書保管所のFBIS記録の予備目録というもののマイクロプリントであります。これはルーペで見るものなんです。これと、それから米国政府の組織要覧、これを調べますと、これはCIAだということがはっきり出ておるのです。これを御説明いたしますと、FBISとはフォーリン・ブロードキャスト・インフォメーション・サービスの略でありまして、一九四一年二月に設立をされました。設立当初はフォーリン・ブロードキャスト・インテリジェンス・サービスといい、大統領行政府の連邦通信委員会、ECCに所属をしておりました。その後若干の変遷を経て、FBISは第二次世界大戦後の一九四六年八月に国家情報局の中央情報グルーブ、すなわちCIGのもとに移管をされました。そうして翌一九四七年に中央情報局、つまりCIAが設立をされた際に、中央情報グループ、CIGの他の機関とともにCIAに吸収され、今日に至っておるのです。これ軍だと言えますか。
  310. 福田赳夫

    福田国務大臣 その資料がいつの資料か存じませんが、とにかく最近軍に編入された、そういうふうに承知しておるのです。どうも松本さんのおっしゃること、過去のこととしては、あるいはそういうことであったかもしれないと思います。しかし今日はそういう状態じゃない。
  311. 松本善明

    ○松本(善)委員 残念ながら、ごく最近にFBISの出したパンフレットがあります。これは三十周年記念、ことしなんですよ。外務省はこういうことを調べて米軍に聞いてないのですか。外務大臣、お聞きしましょう。
  312. 福田赳夫

    福田国務大臣 ですから、私は、かつてはこれは政府の機関の一部である、こう申し上げているんじゃありませんか。今日ではそれが軍に吸収されておる、こういうことなんです。
  313. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣、それはそういうことで逃げられるものではありません。これはやっておる仕事、何をやっているか、仕事の内容を言えば、これは軍にしようという擬装をしようとしまいと、CIAのやっている仕事なんです。  私どもの調査団が沖繩で入手しましたFBIS沖繩ステーションの外国語放送無線通信の受信記録があります。これはそのコピーであります。これによりますと、この一部を紹介いたしますと、この中には朝鮮民主主義人民共和国、中華人民共和国、ベトナム民主共和国あるいは南ベトナム共和臨時革命政府などの対外放送や国内放送あるいはテレタイプ通信の詳細な傍受記録があります。たとえば本年九月十四日、グリニッジ標準時十四時五十六分、日本時間二十三時五十六分に、沖繩のFBISステーションは、南ベトナム解放通信地下放送の東欧並びに極東向けの英語テレタイプ通信で、南ベトナムのズイスエン周辺における解放武装勢力の戦果が送信されているのをキャッチをいたしました。そしてFBIS沖繩ステーションは、この全内容を二時間足らずのうちにサイゴンのアメリカ・ベトナム軍事援助司令官、ハワイのアメリカ太平洋米軍司令官、太平洋艦隊司令官、タイにある軍事援助司令部の諜報部、アメリカ空軍諜報部、——諜報部ですよ、OSIの第五十一地区事務所、沖繩の米陸軍第七心理作戦部隊、ワシントンのFBISなどに直ちに送ったのであります。九月十三日の中国の福建省省営放送の中国語放送の傍受記録は、アメリカ軍の台湾防衛司令部、アメリカ国家安全保障局台湾代表部や香港の米領事館にも送られているのです。はっきり中国に対する敵対的な活動をやっておるのです。さらに注目すべきことは、FBIS沖繩ステーションは、わが国の電波の監視もしておる。たとえば一昨年十一月十二日の傍受記録によりますと、FBIS沖繩ステーションは、東京の民主的国際通信社、ジャパン・プレス・サービスの英文テレタイプ通信を傍受をし、自由民主党が沖繩返還の成果を誇示して、年内に総選挙を強行しようとしているということの内容を事こまかにとらえ、府中の在日米軍司令部諜報部、沖繩のCSG、第七心理作戦部隊などにその内容を送っておるのです。こういう活動を任務としておる部隊ですよ。これを置くんですか。総理大臣でも外務大臣でもお聞きしたいと思います。
  314. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういうような特殊な任務をしておる部隊が若干あるんです。しかしいまアメリカに施政権がある、こういう状態でわが国の安保条約体制下にはないわけですね。したがって、安保体制を逸脱するという状態は今日ある、こういうふうに思います。しかし、これは返還日、このときにはこれは安保体制下に入るんですから、これはその制約下に置かれる、こういうことです。いま今日アメリカ施政権下の問題を見ますと、いろいろな問題がある。これらを安保体制下に整然と移そう、こういうのが今度の協定なんです。いつになるかわかりませんけれども、返還日、その時点にどうなるか、こういう問題として御理解を願いたいのであります。
  315. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、現在のこのFBISの活動は、安保条約のワク外になるというお考えでありますか。
  316. 福田赳夫

    福田国務大臣 沖繩にある米軍は安保条約並びにその関連法令の制約を受けておりませんものですから、そのワク外にある、かように考えてよろしゅうございます。
  317. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは伺いますが、東京にFBISがあります。これは一体どこにありますか。
  318. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど申し上げましたとおりFBISは各国各地におりまして、それぞれ通常の放送を傍受しております。その意味で、あるときは軍の指令下に入り、あるときは在外公館の中にある、こういうような形でおります。東京にもございます。(松本(善)委員「どこにある」と呼ぶ)アメリカ大使館の中にございます。
  319. 松本善明

    ○松本(善)委員 本土におきましては、このFBISには施設、区域の提供をしていないのであります。アメリカ大使館の、旧満鉄ビルのほうにある。これは沖繩のFBISに対しては安保条約に基づいて基地の提供をされるのですか。
  320. 福田赳夫

    福田国務大臣 これがもし軍の機関でなく政府の機関であるということであれば、基地は提供いたしませんです。
  321. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうですか。  もう一つ申し上げましょう。今月の十五日のモーニング・スターズ、これは沖繩発行されている新聞です。この切り抜きを持ってきました。これにはロサンゼルスタイムズの記事が転載をされております。FBISはアジアで盗み聞きをするCIAだ、そういう見出しで報道されているのです。明白なCIAであります。外務大臣、これだけ言っても、これはCIAでないというふうに思われますか。
  322. 福田赳夫

    福田国務大臣 新聞の報道がどう言っておるか、私も初めて伺うわけでありますが、いままでこの機関はCIAの系統のものであったというふうに聞いております。しかし軍の系統に移された、こういうこともまた伺っておるわけでありまして、いつ移されたかということにつきましては、調査の上御報告申し上げます。
  323. 松本善明

    ○松本(善)委員 もしそうだとするならば、これは協定の発効後も軍の名のもとに基地を使おうという擬装工作以外の何ものでもありません。このCSGがそういう擬装工作をしていたのです。これは軍だということで地図にも載っているのです。それをいまCIAだということをお認めになった。非軍の機関だということをお認めになった米軍がそういうような擬装工作をしているということはこの委員会において明らかになった。いまもし軍だということを日本政府に言ってきているとするならば、日本政府をだますための、日本の国民をだますためのやり方であります。外務大臣、そう思いませんか。
  324. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカ当局が日本をだます意図であるかどうか私にはわかりませんけれども、事実はそうなんですから、そのとおり御了解願いたいと思います。
  325. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、そういうものが幾つもあるということをいま申し上げておきましょう。  基地リストのA表二一の一部、基地リストに出されておる名称でいえばボロー・ポイント陸軍補助施設、アメリカ当局の現行名称でいえばいま申しましたFBISがそれであります。これは読谷村にあります。  次がA二二の一部、基地リストには陸軍混成サービス群弾薬庫——CSGそのものではありません。弾薬庫です。CSGの弾薬庫です。アメリカ当局はCSG付属弾薬庫とかCAS地域と呼んでおります。これも読谷村にあります。基地リストA三七の一部、陸軍住宅地区として基地リストに出ている区域で、アメリカ当局は従来FBIS住宅地区と呼んできております。これは北谷村に属します。次はA表の七〇の全部、基地リストには新里通信所として出てくるところで、大里村にあります。次はA七一の全部、基地リストで知念補給地区という新しい名前を冠しました。これがCSGであります。コンポジット・サービス・グループ、混成サービス・グループの名前で呼んでいる、玉城村にあります。これは全部非軍のものであります。これは全部撤去させますか。
  326. 福田赳夫

    福田国務大臣 それらはA表に掲げてあるのでありまして、米軍に提供します。しかし、その機能ですね、その置かれておる米軍の機能につきましては安保体制下に移るのでありまして、これを逸脱させるというようなことはいたしません。
  327. 松本善明

    ○松本(善)委員 本土に、軍以外のものを安保条約によって基地提供しておるところがありますか。
  328. 吉野文六

    ○吉野政府委員 そういうものはございません。
  329. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣、軍だと称してアメリカ軍がそう言ってくるならば、軍でない施設CIAにもどんどん基地を貸すということですか。いまのお話であれば、これは提供するということですか。いままで本土では軍以外には貸さなかった、CIAにも貸さなかった。いまCIAが使っておるということがはっきりしておるところが沖繩にあります。それは基地として提供するというのです。軍だと言いさえすれば提供するというんです。それであるならばこの沖繩協定を利用して、私どもがいわゆる本土の沖繩化だ、あるいは安保条約の改悪だと言っていることは明白じゃないですか。いままでは軍以外には貸さなかった、CIAには貸さなかった。それが今度からは貸すようになる。沖繩と本土とを別扱いをするわけにはいかぬということならば、本土でもこれからCIAに貸す、アメリカが軍だと言ってきさえするならば、CIAに基地を貸すということになる。これは安保条約の変質でなくてなんでしょうか。これが本土の沖繩化ですよ。総理大臣、どう思います、これ。
  330. 福田赳夫

    福田国務大臣 軍であれば何でも基地は貸します、こういうふうには考えておりません。軍にして、安保体制、つまり安保条約並びにその関連法令に適合するものでなければならぬ、さように考えておるのでありまして、いま本土の沖繩化というようなお話がありましたが、さようなことは事実といたしましても考え方といたしましても、全然私には了解できません。
  331. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣、あなたがいま、これは基地リストに基づいて提供すると言ったA七一がCSGなんですよ。これは撤去をすると言うのでしょう、アメリカ軍は。きょうそのことを通知してきたと言うのでしょう。基地リストは変わるのでしょう。
  332. 福田赳夫

    福田国務大臣 撤去はしますが、他の目的に使いたいということを申し添えてきております。
  333. 松本善明

    ○松本(善)委員 ほかの部隊はそのまま残す、こういうお話ですか。
  334. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま承ったばかりで詳細のことは存じませんが、とにかく七月一日にはこの部隊は撤去します。しかし撤去したあとのそのあと地は、これは他の目的に使用させていただきたい、かように言ってきておるのであります。
  335. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは確かめておきましょう。FBIS、それから陸軍混成サービス群弾薬庫、それからFBIS住宅地区、新里通信所、基地リストでいけば二一、二二、三七、七〇、これは変わりなくあるのですか。残るんですね。
  336. 福田赳夫

    福田国務大臣 名前が変わるかどうか、これはまだ詰めておりませんけれども、まあ松本さんの御心配されておるのは、安保条約を逸脱する、こういうようなことになるおそれがあるんじゃないか、こういうことかと思いますが、さようなことはいたしませんから、これは御安心を願いたい、かように申し上げておるわけであります。
  337. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務省が先ほど——さっきですよ、さっきこの委員会で、協定を結ぶについては基地は詳細を知り尽くして協定を結んだ、特殊部隊についてもよく調査をしてやった。うそじゃないですか。いま私の言ったことは何も知らぬじゃないですか。一事が万事ということがあります。一体こういう態度で協定を結ばれたのですか。私は日本国民立場に立って、沖繩県民の立場に立っても、こういう協定交渉は絶対に認められない。私人である私たちでもわかることですよ。それを知らないで協定の交渉、協定を締結をしている。許されると思いますか。総理大臣、これはどうですか、こういう交渉でいいんですか。
  338. 福田赳夫

    福田国務大臣 詳細に調べましてこれ以上のことはできない、こういうことで締結をいたしたわけであります。
  339. 松本善明

    ○松本(善)委員 CSGの話ですね、もうちょっとお聞きしておきたいと思います。どういうふうにして撤去をするのですか。
  340. 吉野文六

    ○吉野政府委員 撤去の手続その他につきましては、まだわれわれは何ら承知しておりませんが、ともかく七月一日前に部隊としては撤退する、そういうことでございます。
  341. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると地域は残るが部隊はなくなる、こういう意味ですか。
  342. 吉野文六

    ○吉野政府委員 さようでございます。
  343. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、次の問題を伺おうと思います。  沖繩協定の基地に関する了解覚書A表の(注1)には、キャンプ瑞慶覧に接続する海底電線というものが記載をされております。これは一体どういうものでありますか。
  344. 吉野文六

    ○吉野政府委員 ここには、この基地と台湾との間に海底電線が結ばれております。
  345. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、台湾との間の海底ケーブルだけで、ほかにはありませんか。
  346. 吉野文六

    ○吉野政府委員 キャンプ瑞慶覧に、ほかに何かあるかということでございますか。陸軍司令部がございます。
  347. 松本善明

    ○松本(善)委員 いや、海底電線、台湾以外にあるかということです。
  348. 吉野文六

    ○吉野政府委員 台湾以外にはございません。台湾と瑞慶覧を結ぶ海底電線しかございません。
  349. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、この(注1)では台湾ということが書いてないわけです。台湾と沖繩を結ぶということが書いてない。これは今後何本でも海底電線を布設することが可能だというような意味でありましょうか。
  350. 吉野文六

    ○吉野政府委員 地位協定によりまして、アメリカの基地と基地を結ぶ海底電線その他の通信施設はこれを構築することができる、こういうことになっておりますから、その範囲においては、理論的には可能でございます。
  351. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、アメリカ軍が、この瑞慶覧に接続をする限り、どこからでも海底電線を引けるということが一応この協定ではさまっておる、こういうことでありましょうか。
  352. 吉野文六

    ○吉野政府委員 返還後は、安保条約及び地位協定の範囲内においてそういうことが可能かどうかということは一応われわれも審査いたしまして、これを許すかどうかということをきめることになるだろうと思います。
  353. 松本善明

    ○松本(善)委員 私が聞いておりますのは、この協定自身は、台湾−沖繩間のケーブルだけを意味しているのか、そのほかのものも意味しておるのかということを聞いておる。
  354. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この協定のA表の注についております注書き、ただし書きは、この台湾、キャンプ・マコーレーと瑞慶覧との間の海底ケーブルだけを考えております。
  355. 松本善明

    ○松本(善)委員 このケーブルをアメリカ軍が施設をするときに、事前に日本政府の了解を求めたのでありましょうか、この点をお聞きしたいと思います。
  356. 吉野文六

    ○吉野政府委員 事前にわがほうの了解を求めてきたことはございません。
  357. 松本善明

    ○松本(善)委員 この軍用海底ケーブルについて、アメリカと台湾の間ではどういう取りきめが行なわれておるか、お答えいただきたいと思います。
  358. 吉野文六

    ○吉野政府委員 これは発信地は——発信地というのか受信地というのか、この海底電線の片方の末端は、アメリカの台湾における基地内でございまして、台湾とアメリカとの間の基地協定によりまして規制されております。
  359. 松本善明

    ○松本(善)委員 私お聞きしておきたいのですが、外務大臣総理大臣はこういうことは御存じないのですか。
  360. 福田赳夫

    福田国務大臣 ケーブルのあることは承知しております。
  361. 松本善明

    ○松本(善)委員 この海底ケーブルの布設というのは主権に関する問題だ。大臣が直接こういう問題について知らないということは、まことに遺憾だと私は思います。  それでさらにお聞きしていこうと思いますが、この軍事ケ−ブルはどういう根拠で存続をすることになるのでしょうか。
  362. 吉野文六

    ○吉野政府委員 本土に復帰した場合には、地位協定の三条の合意議事録によります。(松本(善)委員「全部ですか」と呼ぶ)領海及び基地に接続する部分に関する限りは、すなわちわが国の主権下に入る限りは、そういうことになるわけでございます。
  363. 松本善明

    ○松本(善)委員 じゃ聞きましょう。三条だけですか、根拠は。
  364. 吉野文六

    ○吉野政府委員 三条の五項でございます。
  365. 松本善明

    ○松本(善)委員 三条に五項がありますか。
  366. 吉野文六

    ○吉野政府委員 ただいま失言いたしましたが、三条に関する合意議事録の第五項であります。
  367. 松本善明

    ○松本(善)委員 もうちょっとしっかりしてもらわないと困りますよ。地位協定の合意議事録の三条の五項です。地位協定そのものに五項なんてないですよ。そういう無責任な、私はこの問題はアメリカ局長という当面する責任者がこんなことを間違えるような、話にならないと思いますよ。これはしかし外務大臣だけの責任じゃない。総理大臣も責任がありますよ。  それで私はさらに質問を進めたいと思いますが、基地リストA表の(注1)で、地位協定に従って必要な措置をとるということが書いてありますが、これは一体どういうことをやるのですか。
  368. 吉野文六

    ○吉野政府委員 わが国の領海内の部分については所要の措置をとる。すなわちこの保護のために何かしらの保護水域とかそういうものを設ける、そういうことが必要になるのじゃないかとわれわれ考えております。
  369. 松本善明

    ○松本(善)委員 現在本土で地位協定の合意議事録第三条五項でいっております海底電線として扱われているものはどういうものがあるかお答えをいただきたい。
  370. 吉野文六

    ○吉野政府委員 横須賀と吾妻島を結ぶ海底電線がその一つでございます。
  371. 松本善明

    ○松本(善)委員 それだけですか。
  372. 吉野文六

    ○吉野政府委員 それだけでございます。
  373. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは私どもの調査でもほかにもあります。まことに外務省というのは何にも調べてない。岩国にあります。  それはともかくとして、ここのいまの話では、これは日本の中の問題であります。日本の中の基地を結ぶ海底電線です。この合意議事録の第三条五項でいう海底電線というのは、これは当然日本の国内の基地を結ぶ海底電線であるというふうに解すべきではないかと思いますが、その点はいかがでありましょうか。
  374. 吉野文六

    ○吉野政府委員 外国とを結ぶ海底電線も排除されていないと解されております。
  375. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、この地位協定に基づく権利で、米軍は必要とあれば日本からどこへでも海底電線を引くことができるというのが外務省の条約解釈ですね。
  376. 吉野文六

    ○吉野政府委員 われわれの合意する限り、そういうことになると思います。
  377. 松本善明

    ○松本(善)委員 そこで総理大臣に伺いたい。  いまの話であれば、海底電線をアメリカ軍は日本の基地から他の外国のどこへでも引けるというのです。これは総理大臣認められますか。外務省の解釈はそういう解釈です。それを認められるかどうかお聞きしたいと思います。
  378. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう解釈でありますが、しかしこれは事前に協議があります。この協議がありますので、その際さようなことをわが国が認めるというはずがありませんです。私どもその点については御心配は御無用、かように存じます。
  379. 松本善明

    ○松本(善)委員 その事前協議というのは一体何ですか。どこに根拠のあるものなんですか。
  380. 吉野文六

    ○吉野政府委員 われわれは、米軍に施設を提供する前に、先方と、施設の性質、内容、境界、それからそれに接続する諸種の施設、こういうものにつきまして合意して、初めて先方に提供する、こういうことになるわけでございます。
  381. 松本善明

    ○松本(善)委員 地位協定三条による権利というのは、これは権利としては、米軍が一方的に引けるという権利ではありませんか。
  382. 吉野文六

    ○吉野政府委員 施設内に関する限りはそういうことになると思います。
  383. 松本善明

    ○松本(善)委員 それはどういうことですか。施設内についてはそういうことになるといったら、施設外に出るときには——全部海底電線というのは施設の外に出るでしょう。そうすると、あなたの言うことをそのまま言うならば、海底電線を引く場合には、全部施設のそこまで引ける、それだけがかってにできるけれども、ほかは全部日本の政府の同意を得なくちゃならぬ、こういうことですか。あなたのさっき言ったのとはだいぶ違いますよ。
  384. 吉野文六

    ○吉野政府委員 施設内におきましては、その中で彼らがいかなる通信網を引くかということは、われわれとしては関知するところでないわけでございますが、施設から外に出る場合には、やはり軍の広い意味の施設と、こういうことでわれわれと協議し、そして、わがほうがそれに対して、地位協定に基づきこれを譲許する、こういうことになるわけであります。
  385. 松本善明

    ○松本(善)委員 先ほど私がお聞きしたのは、地位協定の三条、それから合意議事録の三条五項。この海底電線の中に含まれているということならば、これは国内の基地を結ぶものであろうと、海外の基地を結ぶものであろうと同じだということが先ほどの答弁です。いままで、日本の基地の間を結ぶ海底電線をつくるについて、日本に同意を求めてきましたか。
  386. 吉野文六

    ○吉野政府委員 地位協定の第三条によりますと、「合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で前記の目的のため必要な措置を執る」こういうことになっております。したがって、基地外におきましてはそうせざるを得ない、こういうことになるわけでございます。
  387. 松本善明

    ○松本(善)委員 しかし、基本的には、米軍が海底電線を引くことができるという権利がそこで認められているということではありませんか。それは、基地外に出る場合には必ず日本の許可を得なければならないという根拠にいまの条文がなりますか。
  388. 吉野文六

    ○吉野政府委員 米側としては、先ほど申し上げましたとおり、合意議事録の三条五項の規定によりまして、彼らが海底電線その他を構築することができる、こういうことになっておりますが、これらは、地位協定自体の第三条の規定によりまして、あくまでも合同委員会を通ずる両政府間の協議の上でこういうことができる、こういうことになるわけでございますから、したがって、先ほど問題になりました基地外に引く、こういう場合にはわれわれと協議した上でそういうことになるわけでございます。
  389. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは大事な問題であるから、総理大臣もよく聞いておいてもらいたい。この合同委員会というのは、これを全部読みますと、「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。日本国政府は、施設及び区域の支持、警護及び管理のための合衆国軍隊の施設及び区域への出入の便を図るため、合衆国軍隊の要請があつたときは、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で、それらの施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地、領水及び空間において、関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする。」となっている。これは一方的に合衆国が措置をとって、それに対する協力の協議の内容ということが少なくもいままでの外務省の考え方。そして、この地位協定の三条の二項では、この合衆国がとれる必要な措置を、日本の領域内の航海、航空、通信、陸上交通を不必要に妨げるような方法によってやってはならぬということが書いてあるだけが制限だ。これがいままでのものであります。  それが証拠に、私が聞きたいのは、それじゃいままでアメリカ軍は、海底電線を布設をする場合に、全部日本に断わってきたのかどうか。断わってきたならば、外務省には、日本にあるこの海底電線の施設は全部わかっていなくちゃならぬはずだ。いままでの例はどうかということをお聞きしたいと思う。
  390. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど申し上げましたのがわれわれの解釈でございます。  なお、現実には、施設庁が直接米側と当たっておるわけでございますから、現実にいかなる合意ができたかということは、われわれは調査してお答え申し上げます。
  391. 松本善明

    ○松本(善)委員 ちょっと、何べんも聞きますが、よくわからぬ。  あなた方外務省は、この海底電線を布設する場合に、その根拠になっている三条の一項の合衆国がとる必要なすべての措置、この措置をとる場合に、日本政府の同意を得なければならないという根拠があるならば、これを明確に言ってもらいたい。それは何をやる場合でもかぶりますよ。海底電線だけではなくて、アメリカ合衆国が必要な措置をとる場合には、全部日本政府の同意を得なければならぬということになるのかどうか。それならそれでもけっこうです。
  392. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど申し上げましたとおり、第三条の一項の末尾に「合衆国も、また、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で前記の目的のため必要な措置を執ることができる。」すなわち、協議がととのわなかったならば、彼らはこの措置をとることができないわけでございます。
  393. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、これは外務大臣にお聞きしておきますが、米軍が基地内でとる設定、運営、警護、管理のための措置は、全部日本政府と相談をし、そして日本政府の同意のもとにやられておるということになるのかどうか。
  394. 井川克一

    ○井川政府委員 第三条一項は二つの部分に分かれております。基地内の権利の問題と、基地の外に関する部分でございます。最初のほうが、先生も先ほどお読み上げになりましたとおりに、「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。」これは、われわれが第三条に基づくアメリカ合衆国の管理権と申しておるものでございます。  第二文はそうではございませんので、この外に、そういう施設、区域の近傍におきまして、その外に問題が起こるときでございます。これは、旧行政協定におきましては、この外の部分もほとんど中の部分と同じように書いてあったわけでございます。それを、一九六〇年にこれを書き直しまして、外の部分はここに書いてありまするとおりに、「合衆国軍隊の要請があったときは、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で、それらの施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地、領水及び空間において、関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする。」ちょっと一番先を読み落としましたが、「日本国政府は」とあって、こういうふうに日本国政府は外においてするというふうに地位協定で改めたわけでございます。そして、そのあとに続きまして「合衆国も、また、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で前記の目的のため必要な措置を執ることができる。」と書いてございまして、これは後段にかかるわけでございます。日本国政府原則としてするのでございますけれども、話し合いによりまして、また、事情によりまして——私、具体的なことは知りませんけれども、具体的な事情によりまして、これは合衆国政府がやったほうが便利であるとか、そういう事情の場合には日本政府が行なわないで、しかしながら、合同委員会を通ずる両国政府間の協議の上でアメリカ合衆国が行なうことになっているわけでございます。  そして、第三条に関します合意議事録の一番初めにも、「第三条1の規定に基づいて合衆国が執ることのできる措置は、この協定の目的を遂行するのに必要な限度において、特に、次のことを含む。」と書いてございまして、この一条に書いてございますことがずっと書いてございますけれども、その内容は、また三条に戻りまして、三条の区分に従って行なわれる、こういうわけでございます。
  395. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは、とてもこの場所ではわかりにくいと思います。わかりにくいと思いますが、非常に大事な問題で、地位協定、合意議事録の三条によりましても、この三条の一項に基づく合衆国のできることの措置、その中に海底電線の問題が含まれているという趣旨に読めるわけです。いま一項と二項と分けて話をされましたけれども、私は、条約局長お話は必ずしも十分説明を尽くされているものとは思いませんけれども、ここで条約局長とやりますのはたいへん時間がむだでありますので、これはやめることにいたしますが、非常に大事な問題であって、この問題に関してひとつさらに総理大臣に伺いたい。  それは、この海底ケーブルが台湾と接続をしているという問題であります。しかも、それをこの協定では認めたという問題であります。この台湾との関係で、布設をするについてこの軍事ケーブルが一体どういうことに使われるものだというふうに総理は思っておられるのか、この点を私は伺いたいと思います。
  396. 福田赳夫

    福田国務大臣 台湾には一番に近い米軍がおるわけでありますから、それとの間にいろいろ連絡をすることが沖繩在留の米軍としてはあるわけです。その連絡のために使われる、かように承知をしております。
  397. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは当然に中華人民共和国に対する敵対的な軍事行動だ。封鎖作戦だ。蒋介石政権は大陸反攻を叫んでいた政府ですから、ここの台湾政府が一番軍事的な衝突を考えているのは中華人民共和国との関係でしょう。ここと軍事ケーブルを結ぶ。それを認めるということですよ。これが中国に敵対する行動を承認するということにはなりませんか。総理大臣、この点についてはどのように考えるか。協定の審議を国会に求められる以上は、この点について何らかのお考えがあったはずだ。一体どういうお考えでこの問題を考えられたか、お聞きしたいと思います。
  398. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、いままでは、沖繩がアメリカの施政権下にありました。そういう関係で、アメリカは、自分の施政権下にある沖繩の軍基地、同時に台湾における米軍基地、これを連係する必要があった、かように思いますから、そういう意味で、中華民国との了承のもとにこのケーブルをつくった、かように理解すべきだ、かように私は思っております。そうして、今日沖繩が返還されるに際しまして、私どもは、現状においてはこれをそのまま認めることはやむを得ないんだ、かように思って協定を結んだ、こういう状況でございます。
  399. 松本善明

    ○松本(善)委員 中華民国、蒋介石政権が了承をしたということは、米軍から聞かれたかどうか、この点についての台湾政府、蒋介石政権と米軍との取りきめがどうなっているか、この点について伺いたいと思います。
  400. 吉野文六

    ○吉野政府委員 この海底ケーブルに関してでございますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、中華民国と米国との間にある基地協定によって合意された、こういうようにわれわれは聞いております。
  401. 松本善明

    ○松本(善)委員 このケーブル布設について、この米軍のケーブルを、総理大臣は、現状ではやむを得ないと認めるということであります。このことは、やむを得ないということよりも、台湾の蒋介石政権と軍事的につながるということを日本の政府の意思として表明をすることですよ。先ほどの話によれば、条約局長あるいはアメリカ局長は、日本の同意なしにはこういうことはできないと言った。この協定の承認ということは、台湾ケーブルの布設を承認するかどうかという問題なんです。中国との国交正常化をしようと何度も言われました。きのうは、中国に対する侵略戦争を反省するとまで言われた。それを、中華人民共和国に対して敵対することが明白な軍事ケーブルの布設をこの段階で承認するというのは一体どういうことでありますか。総理の明確な答弁を伺いたいと思います。
  402. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、いわゆるアメリカがやったことですね。アメリカが中華人民共和国に対する敵対行動をとったのかどうか、これは一つの問題だと思います。ただいま、ニクソン大統領の北京来訪を歓迎する、こうまで言われている。私は、それらのことはおそらく理解される、話し合えば理解されると思います。私のほうは、ただいまのような状態を、今日、沖繩が返る、こういう関係において、現在ある姿を実はそのまま承認している。しかし、私が冒頭に申し上げましたように、沖繩にある米軍基地は日米安保の範囲内において拘束される、こういうことをはっきり申し上げました。そのことを理解していただきたい。ただいまのように、台湾と沖繩が海底でつながっているから、これは敵対行動だと直ちに判断されるのは、やや松本君も結論を急いでおられるのじゃないかと思います。私が申し上げますように、これはそういうようなものではありません。私どもは、どこまでも、米軍基地そのものは、沖繩が祖国に復帰したら、その暁は、日米安保の範囲内にとどまるのですから、したがって、ただいま言われるような拡張して解釈される筋のものはないように思います。ここらに私とあなたとの間に非常な開きがある。この点はぜひ訂正していただきたい、かように思います。
  403. 松本善明

    ○松本(善)委員 これは拡張して解釈するとかしないとかいう問題じゃないのですよ。軍事ケーブルなんですね。それで、本土の場合には、先ほどは非常に回りくどい外務省当局の話があったのですけれども、日本政府が了承しなければ引けないと言った。今度の協定の承認はそれと同じことでしょう。もっぱら日本政府が断わるか断わらないかという選択を持てる。この国会においてもそうですよ。中国との国交回復をするのに、この軍事ケーブルを認めている協定を承認するのがいいのかどうかという問題が国会で問題になるのですよ。各国会議員はそのことを判断するのですよ。総理大臣に私が聞いているのはこのことであります。拡張解釈も何もない。あなたはなぜこれは断われなかったのか。軍事ケーブルですよ。普通のケーブルじゃないです。沖繩−台湾間の軍事ケーブルが、これは中国に対する敵対行動では全然ないのだなんてことは通じない話です。この点についての何らの配慮もなかったのですか。
  404. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が特に強調したいのは、このケーブルがあるからといって、沖繩にいる米軍がかってな軍事行動はできないということ、これが申し上げたいのです。頭のいい松本君だから、その点はすでに御了承だと思います。したがって、このケーブルはあっても、これはなるほど台湾にいる米軍と沖繩にいる米軍との間の連係用には使うでしょうが、しかし、沖繩にいる米軍が軍事活動、軍事行動に出るという場合には事前協議の対象になる。そういう意味でチェックされる。さように考えれば、ただいまのケーブルがあるということは、どうも強い反撃をされるほどのものじゃないように私は思います。
  405. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 松本君に申し上げますが、予定の時間が経過いたしましたから、早く結論を出してもらいます。
  406. 松本善明

    ○松本(善)委員 この軍事ケーブルが布設をされましたあと、台湾の通信基地が三つ閉鎖をされた。それから、八重岳−台湾間の極超短波通信が、事実上使わずに、予備ということになりました。これは明らかに、沖繩と台湾の通信基地が強化をされた、軍事ケーブルによって無線のほうはもう要らなくなった、そういうことなんです。強化になっていると思いませんか。これは、軍事ケーブルというのは非常に通信上は有利なんです、無線と比べものにならないほど有利なんです。これは基地強化になっていると思いませんか。
  407. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われるように、一般ケーブルあるいは一般通信というものではなくて、これは軍事用のものだ。非常に用途が限られますね。したがって、その範囲において米軍同士の連絡用に使われるということです。そうして、そのことは、沖繩にいる米軍の行動を自由にしているわけじゃないのです。そういうことを考えると、ただいまのような議論は全然無意味とは申しませんが、しかし、私は、非常に強い反共あるいは反中国大陸の姿勢だというように評価される筋のものじゃないように思います。
  408. 松本善明

    ○松本(善)委員 この問題は、中国の領土主権の問題であります。その点を最後に詰めておきたいというふうに思うのでありますが、当然のことでありましょうが、中華人民共和国との協議は一切なしにこれは布設をされたものです。台湾は中国の領土であるということを中華人民共和国政府が主張しておるのは、台湾には中華人民共和国の主権が及んでおるのだという主張をしておるのだというふうにはお考えになりませんか。
  409. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中華人民共和国が、台湾にも施政権が及んでいる、かように主張されるかわかりませんが、現実には、台湾には台湾の支配している別の政権がある。これはやはり無視できない現実じゃないでしょうか。これはやはり現実を無視するというわけにはいかないように私は思います。
  410. 松本善明

    ○松本(善)委員 蒋介石政権は、米軍の庇護がなければこれは成立し得ない政権です。台湾は中国の領土である、これは両方ともの政権が認めているということは総理がいろいろ答えられたところであります。この領土の中に、外国の軍事力によってしか成立し得ないような政権がある。そのために軍事力を使っておる。これを内政干渉だと申します。一つの国の領土の中に外国が軍事力を行使をして、その国を代表する政府に敵対をする政権を軍事的に援助をする、これを内政干渉だと私どもも言いますし、中国も言っています。こういうことは内政干渉だというふうには思われませんか。
  411. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも、中国の問題を私どもがとやかく言うことはいかがかと思っています。私は、それはあえて差し控えたいと、かように思います。いずれ、ただいまのような点は、ニクソン大統領が訪中すれば話し合いの議題になるんじゃないでしょうか。私はそういう気持ちがいたします。日本の場合は、中華人民共和国と正常化をはかりたい、かように思っております。そういう際に、台湾における国民政府のあり方、これも話し合える、かように考えておる次第であります。ただいま言われるように、いまの状態でとやかく言うことは、私どもが言うべきじゃなくて、これは中国にまかしていいことじゃないか、かように思います。
  412. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 松本君に申し上げますが、結論を早く出していただきます。
  413. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理にお聞きしたいと思いますけれども、中華人民共和国のほうは一これから国交正常化をしたいと言っておられるけれども、この軍事ケーブルをいまの時点で日本政府が認めたということは、中華人民共和国は、自分たちの国の主権の侵害だというふうに主張すると思いませんか。
  414. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあいろいろの批判が出ているだけ、またいろいろの意見が出るだろうと思います。
  415. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、総理の答弁にきわめて不服である。といいますよりは、そういう態度では中国との国交回復というものはとうていできないと私は思います。そうして、私どもが主張をしておりましたように、この台湾ケーブルといいますものは、米・日・韓・台多角的軍事同盟の一端を証明したものであります。沖繩協定を利用しながら、日本は、アメリカのみならず、台湾や韓国の安全を日本の安全と同視をするということで多角的軍事同盟の中に入っていくのだ、これは非常に危険であるということを私ども指摘をしてまいりました。これはそのことを証明をしているものではありませんか。総理の見解を聞きたいと思います。
  416. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 共産党の主張はよく聞きました。ありがとうございました。
  417. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて松本君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三十日午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十九分散会