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1971-10-28 第67回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十月二十八日(木曜日)     午前十一時十八分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 佐々木義武君    理事 田中 龍夫君 理事 長谷川四郎君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 鈴切 康雄君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君    荒木萬壽夫君       植木庚子郎君    江藤 隆美君       小川 半次君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    佐藤 守良君       笹山茂太郎君    田村 良平君       中野 四郎君    灘尾 弘吉君       二階堂 進君    根本龍太郎君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       浜田 幸一君    福田  一君       松浦周太郎君    松野 幸泰君       松野 頼三君    森田重次郎君       阪上安太郎君    辻原 弘市君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       原   茂君    細谷 治嘉君       安井 吉典君    林  孝矩君       二見 伸明君    正木 良明君       渡部 一郎君    岡沢 完治君       西田 八郎君    谷口善太郎君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         (北海道開発庁         長官)     渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      平泉  渉君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 西村 直己君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 黒部  穰君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部長      長坂  強君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省経済局長 平原  毅君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省社会局長 加藤 威二君         厚生省保険局長 戸澤 政方君         厚生省年金局長 北川 力夫君         農林大臣官房長 中野 和仁君         農林省農地局長 三善 信二君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省貿易         振興局長    外山  強君         通商産業省繊維         雑貨局長    佐々木 敏君         労働省労働基準         局長      岡部 實夫君         建設大臣官房長 大津留 温君         建設省計画局長 高橋 弘篤君         建設省住宅局長 多治見高雄君  委員外出席者         日本輸出入銀行         総裁      石田  正君         参  考  人         (日本銀行総裁佐々木 直君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 十月二十八日  辞任         補欠選任   川崎 秀二君     江藤 隆美君   竹内 黎一君     佐藤 守良君   沖本 泰幸君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     川崎 秀二君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  田中武夫質疑の際、日本銀行総裁佐々木直君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  4. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 質疑を続行いたします。田中武夫君。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 三日おくれのたよりでなくて、二日おくれの質問をいまから行ないたいと思います。  まず、最初に、総理は、二十五日のわが党安井委員質問に対する御答弁で、今度は対中従属主義の国になろうとしているが、とんでもない、あるいは、対中従属主義的な発言が出てくることは意外である、こういうような発言をしておられます。野党が政府外交方針あるいは政策に対して批判するのは当然であります。それに対して、あたかも社会党が対中従属主義であるかのごとき御発言。さらに、多数の人たち日中国交回復促進努力をしております。また、御承知のように、地方議会の多くが日中国交回復促進決議しております。総理のこの発言は、これらの人たちに対しても侮辱になろうと思うので、この際総理考え直されたほうがいいのではないか。対中従属主義であるというならば、その理由を明らかにしていただきたい。そうでなければ御訂正を願いたいと思います。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま田中君からお尋ねの点、私はこう思います。社会党がとか、あるいはだれがとか、こういう意味ではございません。しかし、最近の傾向そのものから見ますと、新聞その他の世論等も対中一辺倒の記事が非常に多い。こういうような見方が一部でされておる。そういうことを実は率直に私は申し上げたつもりです。これは、よく十分考えてみないと、やはり間違ってくるのではないだろうか、かように私は思います。これはマスコミ云々——不規則発言に一一答えるわけでもございませんけれども、とにかく、私はそういう意味感じを受けますから、そういう点では、これはいかぬ、やはりわれわれは、どこまでも、自主的な、本来あるべきその姿で主張すべきだ、かように思っております。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、アメリカであれ、中国であれ、どこに対しても従属というようなことはあってはならない、日本外交その他はやはり自主中立でなくてはならないと考えております。   〔発言する者あり〕
  8. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御静粛に願います。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 ということで、自主中立社会党外交の一枚看板であります。それに、わが党の安井委員に対する御答弁でそれを言われると、われわれも黙っておるわけにいかない。そこであえて申し上げたわけであります。はっきりと、社会党に言ったのではないということを御確認願いたいと思います。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、社会党に対する非難をしたつもりではございません。最近の新聞紙その他の一般的な傾向を、私が感じたとおりを率直に申し上げたのでございます。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、あくまでも、自主中立外交方針、これを堅持していきたい、このように考えております。不満足でありますが、次に入ります。  国連において、アルバニア決議案が絶対多数で採択せられたことは御承知のとおりであります。このことは、世界政治の運営が、今日までのいわゆる大国主導型時代が終わって、新しい世界秩序、いわば一時代の幕がおりて、新しい時代幕明けである、このように思うのであります。二十六日の本会議における緊急質問に対する総理外務大臣の御答弁を伺っておりますと、何だか開き直った、そういう感じもいたします。そこで総理は、このアルバニア決議案が三分の二以上の絶対多数で通ったということ、さらに、常に国連中心外交を基調とすると言っておられた佐藤総理、この事実をどのように受けとめ、これからはどのようにせねばならないか、この決意をもう一度あらためてお伺いいたします。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、今回は昨年のような国連状態ではないのだ、かように思いますから、アルバニア案に積極的な賛成こそいたしませんでしたが、御承知のように、中華人民共和国国連に迎え入れる、さらに安保常任理事国議席を勧告するとか、こういうことをいたしましたが、ただ、アルバニア案と違っておるのは、いままでの経過から見まして、国府を簡単に追放するというわけにはいかない、こういうのが私のほうの主張でございました。したがって、昨年までとってきた政策から見るとよほど変わった考え方をしておった、これはひとつ認めていただきたいと思います。しかし、その経過を云々いたすよりも、もうすでにアルバニア決議案が成立した今日において、この事実をそのまま認め、そうして、国連加盟の多数国とともに国際秩序を維持していく、そうして平和を守る、お互いが繁栄する、そういう方向へ努力するのは当然でございます。国連の一員である以上当然のことだと思います。そこを考えてみますると、中華人民共和国政府間の交渉を持たない日本政府、これは一日も早く政府間交渉を持って、そうして国交正常化をはかる、それに努力をする、このことがただいまの状態から申しまして最も大事なことだ、かように考えております。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 ことばの先でなくて、私は、やはり、新しい時代が来たのだということを、総理外務大臣も、そして全閣僚を含める与党の方々もよく考えていただかねばならないと思います。いわゆる片面講和以来の保守党の外交に対する総決算のときが来たのではないか、私はこういう感じをいたします。総理は、中華人民共和国国連に迎え入れられることを心から歓迎せられますか。これは、国連意思がきまった以上当然そうだと思うわけであります。そうであるならば、中国が、国連の、しかも安保理事国の甘貝として迎え入れられるということを真に意義あらしめるためには、まず、アジアにおけるいろいろな紛争、たとえばベトナム戦争の早期な終結とか、中国国連とのいままでの不幸な関係の原因となった朝鮮戦争、その結果である南北朝鮮分断の悲劇、このようなことをまず解決することに日本努力をせねばならないと思います。先日来当委員会等でいろいろと論議がなされましたけれども総理がわれわれの再三にわたる要望、警告にかかわらず、アメリカとともに二つの決議案提案国になり、そうして、多数派工作ではない、了解工作だと言っておりますが、いずれにいたしましても、ともかく、当然、提案をすれば、それが多数になるような動きをするのもあたりまえだろうと思いますが、なりふりかまわずにやった結果がこれであります。ちまたの声を聞いても、これは各放送局が録音をいたしておりますが、あるいは新聞の論調を見ても、やはり、佐藤総理責任を追及するというか、総理の政治的、外交的な責任は重いというのが、自民党の一部を除いて、国民大多数の感じであり、意見であります。こういうものをどう総理は受けとめ、今後どのように改めていこうとお考えになっておりますか、あわせてお伺いをいたします。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお尋ね、これは、私は、いろいろの見方があり、考え方があると思います。私が共同提案国になりましたのをいまさら申し上げましても、もうすでにアルバニア案が採択された後でありますから、意味をなさないようにお考えかもわかりませんが、ただ、ものの経緯から申しまして、共同提案国になったその事柄は一体どういうことか、過去の歴史、それを考え、それを見返り、そうして将来を見通して、現時点でいかにあるべきか、かような考え方から、現時点でとるべき処置をきめたのであります。したがって、これは現時点だけできまるような問題ではない。二十数年の過去の例、あるいはもっとそれ以前からの過去の例、その歴史的な事柄に基づいて今日がありますが、しかし、今日はそのままではいかないんだ。すでに先ほども申しましたように、昨年とことしではよほど変わっている。そうして、中国の将来のあり方というものも考えながら、また、アジアの平和、世界の繁栄というものはどういうようにあるべきかということを考えてあの結論を実は下したのであります。しかし、私ども主張は通らなかった。今日になりますと、それなりに批判を受ける。これは私どもも謙虚に反省材料にしなければならない、かように思っております。ただいまきびしい批判の渦中に立っている。そのことは私自身もよく知っておりますから、同時にそのことは私の反省材料だと、かように思っております。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 きのうの与党の、福田外務大臣に対する不信任決議案に対する反対討論の中でもおっしゃっておりましたが、私は、やはりアメリカ日本は立場が違う、歴史的に地理的に。ところが、アメリカはすでに第二の手を打っておるわけですね。その点が私はだいぶん違うんじゃないかと思う。そういうことも含めて私は考えてもらわねばならない。そこで、アルバニア決議案が採択せられた。その上に立って、この決議案——今日では決議でしょうが、内容は、中国代表する唯一の合法的政府中華人民共和国であること、台湾中国領土の一部であり、これ自体内政問題であること、国府台湾政府は、国際的にその存在を否定せられる、このように思いますが、いかがでしょう。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いまお尋ねにすぐ答えればいいですけれども前段にありました、アメリカは第二の手を打っておる、日本はそれと違う、こういうことで日本が非常に立ちおくれておるとか、あるいは全然別の道を歩んでおるとか、こういうような御指摘でありましたが、そうではないので、日本には日本の行き方があります。アメリカは、なるほどニクソン訪中というような、そういう事態を起こしておりますけれども民間交流は、レストンその他が出かけておりましても、そう進んでおるとはなかなか言えない状況であります。また、みずからが新聞記者諸君の交換を提案しておりましても、それはできないとか、あるいはまた、貿易について見ると、これはもう格段の相違であります。日本は非常に立ちおくれたとおっしゃいますが、政府がいままで政経分離の形で、中国大陸とは通商、これをやっておるし、人の交流もやっておるし、それらのことを考えますと、やっぱり民間で行なわれておる事柄、これは政府関係ではないと言われるかわかりませんが、政府自身政経分離の形においてその接触はあったものだ、私はかように御理解をいただきたいと思います。  そこで、ただいまのアルバニア決議案そのものについてどういうように考えるか。この前段については、私もそのとおりでございますから、これは別に意見を言うべきことはない。ただ、それがただいま現存する国民政府にどういうような影響を与えるか。この国民政府取り扱い方について、われわれは慎重にならざるを得ない。  そのことは、申し上げますが、直ちに、アルバニア案のように、これを追放というところにまではただいままだ決しかねております。いままでの経過その他もございますから、それらについては慎重に対策を立てていく。おそらく、日中国交正常化、その過程において、そういう事柄についてもさらに話が煮詰まるのではないか、かように私は期待しております。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 総理アルバニア決議内容は、御承知のように、蒋介石代表を、国連及びそのすべての国連機関において非合法に占めておる議席から即時追放することを決定するとなっておりますね。そうして総理は、国連中心外交方針、これを公約しておられます。ならば、国連意思は尊重する。国連の決定はいま言ったようなことであります。したがって、率直に国連意思を受けとめ、その上に立って今後おやりになることが当然ではないか。そうでないとおっしゃるならば、国府蒋介石政府のこれからの国際的な存在はどのようなかっこうになるのか、国際法上どういう地位を占めるのか、ひとつお伺いいたします。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これがいま問題になって、どういうように扱うかというお尋ねに発展しておると思います。いま存在する政府、しかもその国府、これとわれわれは過去においての歴史的なつながりを持っておりますから——ただいまの状態国府自身が消えてしまえば、これはまた別です。われわれはどうしても国府存在させようと、かように努力するわけじゃありません。しかし、もともと中国一つだ、こういう観点に立ってこの事柄を見ると、これは中国国内の問題だ、その中において解決さるべき筋のものだ、かように思っておりますが、ただいま北京政府があり、同時に国民政府があって、これは厳然たる実際問題、事実上の問題でありますから、それが中国の問題として解決されることを心から願う次第でございます。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 この国連意思、すなわち蒋介石政府は非合法であるということをこれは言っておりますね。それじゃ、国際的地位、これはどういうことになりますか。法制局長官、どうです。
  20. 高辻正巳

    高辻政府委員 ただいままで、国々によって、中華人民共和国政府中国代表すると言う国もあったわけでありますし、国によっては、中華民国政府中国代表政府であると考えてきた国もあったわけであります。そういう事実が存在しながら、国連においては、いままでは、台湾中華民国政府中国代表するものとして取り扱われてきた。その取り扱われてきたことが、今度は、逆に、中華人民共和国政府代表政府として国連では取り扱われることになってきたというだけのことではございませんか。つまり、いわゆる中華人民共和国政府と、それからいままでの中華民国政府と、この取り扱い方国連において変わったということではないか。これはあたりまえみたいなことでありますが、それぞれの国のいままでの見る目が国連という場を通じて変わってきたということであって、国際的にそれでは片方が抹殺されたとかいうようなことには相ならないと考えるわけであります。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 高辻法制局長官は、国際法にはあまり強くないようですね。——まあよろしい。  そこで総理、この台湾問題は、中国内政問題であるということはお認めになったのですね。そういたしますと、日華条約——日台と言うとおこられますが、日華条約は一体どうなるのか。すでに、その権威も、あるいは国際的効力も失われたのではないか。また、このことを——というのは日華条約ですが、存続させて、その上に立っていままでのような態度をとることは内政に立ち入るということになります。内政不干渉は国際的な常識であり、国際法一般的解釈であり、国連憲章第二条七項、これにも明確に定められているところであります。したがって、日華条約をそのままな存在にしておくことは内政干渉になる。私は、これは別に直ちに破棄の手続をとらなくても、効力はなくなっておると解釈いたします。  さらに、御承知のように、国際条約は、国連憲章に基づいて国連事務局登録することになっております。しかし、国連から追放せられた台湾政府相手日華条約は、これは登録を抹消せられるんじゃないですか。したがって、国際条約としての存在価値を失っておる、こう思いますが、いかがですか。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなか法律論は私にわからない点もありますが、私は、すなおに、この日華平和条約、これが締結された、そのときは、これまた国会でも承認されたように、これを否定する考え方はなかったと思っております。だから、日華平和条約はりっぱに今日まで続いてきた、かように思います。しかし、アルバニア決議案が通過した今日、中国代表する政府としてわれわれは中華人民共和国を認めるんだ、そういう形において、いままであった日華平和条約がどういうように取り扱われるか、そういう問題じゃないだろうかと思います。したがって、私は、中華人民共和国政府国交正常化をはかる、その段階において、これらの問題もいかにあるべきかということをきめればいいことであり、ただいまの状況において、直ちに無効になったとか、とやかく言うことはできないのじゃないだろうか、かように思っております。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 総理国府国連から追放にきまった。そして、国際的条約国連憲章の規定に基づいて事務局登録することになっている。それを相手方とした条約は、追放せられたものが相手方ですから、これは登録自体が抹消せられるのじゃないか、こう思うのです。  それからもう一つは、国連がそのように決議した。国連意思を尊重する日本外交としては、その意思の上に立ってやらねばならない。すなわち、今後、日華条約に基づいて台湾政府相手に行なうところのもろもろの交渉その他は、これは中国内政に干渉することになる、このように私は理解するのです。少なくとも、台湾存在が直ちに消えるかどうかには意見相違があるとしても、台湾問題が中国内政問題であるということが国連できまった以上、その上に立って日本は行動すべきである。いかがでしょうか。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、先ほどから私が申し上げましたとおり、ただいまのアルバニア決議案が成立した、こういうことで過去の状態が全部消えるか、抹消されるかどうか、そこらの手続上の問題はあろうと思いますが、私はそう簡単なものではないように思っております。ただ、われわれが国交正常化中華人民共和国とはかった、その暁において、いままでの取りきめをどういうように扱うか、こういうような問題がその際に出てくるのだ、かように私は思いますので、ただいまのような点も、本来のアルバニア決議案が指示しておるように、中国代表をする中華人民共和国、これと国交正常化をはかることが何よりも大事なことだ、かように思いますから、その際にただいま言われるようなもろもろの事件がどういう方向に解決されるか、これもひとつ見守っていただきたい。私は、国連決議、これは尊重すべきものだ、かように思っておりますから、そこらに矛盾は来たさないように思いますけれども、現存する条約を、決議案が通ったからといって直ちに破棄する、これには論理的飛躍もありますし、実際問題としても、やや私どもの納得のしかねるものがあります。と申しますのは、国連における処置と両国間の関係、これはまた別な問題ではないかと思います。国連でただいま方向はきまったのだ、だから国連には迎えられた。しかし、国連に迎えられたけれども、やはりその関係国交正常化をはからないような状態が続いては困りますから、これは早く国交正常化をはかっていく。その際に、ただいまのような日華関係、これをどういうように帰一すべきか、そういうようなもろもろの問題、条約をも含めて一切を解決すべきだ、かように思います。そういう際に大事なことは、何と申しましても、内政的な問題にわれわれがタッチしないようにすることが必要だろうと思います。ただ、私があえて主張したいのは、いままでの歴史的な経過があるのだから、そういう立場に立って、われわれもわれわれの主張がありますから、そういうこともよく聞いていただきたい、かようにお願いをするだけであります。
  25. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、あと、清算事務ということは別として、正式に国連から追放せられた、中国内政問題である、これははっきりしておると思う。そうならば、国連登録せられておる日華条約、これは国際的な権威をなくした。この二国間で何か残るというようなことは議論があるでしょう、そういうように思います。しかし、この問題ばかりをやっておるわけにいきませんので、その点だけを指摘し、少なくとも台湾問題は中国内政問題であるという以上、いままでと違った観念をもって進んでもらわねばならない、そういうことだけを強く申し上げておきます。  そうして次に、総理は先日の本会議で、国府追放せられるならばアジアの緊張を激化さす、こういうようにおっしゃったと思います。どうしてでしょうか。さらに私は、国連追放せられた国府交渉を持つこと自体が、今後アジアの緊張を激化さすことになるのではなかろうかと思うのです。いかがでしょう。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ現状をどういうように判断するか、いわゆるアルバニア決議案が通過する前の状態、それをどういうように考えるか、その見方によってただいまのような結論が相違してくるように私は思います。私は、アルバニア案決議が出てこないその状態、これは国際的なバランスがとれていて緊張はおさまっている、安定している、かように実は考えております。そういう状態に変更を加えること、それはやはり緊張を激化するおそれあり、かように言わざるを得ない、これが私の見方でございます。したがいまして、ただいまのように、いままで静かにものごとが進んでいたのが、変化を与えればそこに一つの緊張激化のおそれある、これは当然じゃないかと私は思います。  そこで、新しい秩序ができたんだから、今度はその秩序を守ることがこれからの緊張激化、そういうことのないようにするゆえんだ、こういうお気持ち、これまた私の理解でもございますから、先ほど来申し上げておりますように、私ども中華人民共和国国交正常化をはかっていく、その過程においてただいまの台湾問題も解決さるべきものだ、かように私は思っております。したがって、ただいまの問題のやはり緊張を激化するかしないか、とにかくいままでが、その状態に変更を加えないで進んでいたのが、今度は変更があるというそういうことについていろいろの見方をするわけです。私はどちらかと申せば保守的な立場ですから、どうも変更がないほうが問題を起こさないんじゃないか、かように思ったのでただいまのような本会議における説明をした、かように御了承いただきます。  それからまた、国連登録された条約が無効になるんじゃないかと言われるけれども、私は、これはもう過去の問題で歴史的な事実ですから、それが無効になるとか取り消されるとかどうこうというような問題じゃないんだ、かように思っております。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 見解を異にいたしますけれども、また総理の御発言になった、しかも本会議でこれを取り消してもらいたいと言ったって、それは一国の宰相ですからそうはいかない、こう思いますので、次に入ります。  それでは具体的な点について一、二お伺いいたします。  国連から追放せられた台湾政府の国際機関における、たとえばIMF、世銀、アジア開発銀行などにおける地位はどういうことになるのか。それが一点。  そうして、日本があるいはいままで台湾に対する経済協力を続けてきたが、今後この経済協力のあり方をどう考えておるのか。一九六五年の第一次借款で一億五千万ドル、本年八月の第二次借款として二千二百万ドルの円借款供与を約束しておられますが、これらの円供与はどうするのか。そうして、これは外務省かあるいはどこになるのか知りませんが、外務大臣にお答えを願いたいのですが、現在台湾に対する日本の債権はどのくらいありますか。それをどのように清算をするのか。これは大蔵大臣でもけっこうです。それが第二点。  時間の関係でもう続けて申します。  ココムリスト——このごろチンコムなどとあまり言わないですが、ココム、チンコムは、これはやめるべきである。また中国貿易に関する輸銀からの締め出し、これをやめて当然門戸を開放すべきである。この点は大蔵及び輸銀総裁。時間の関係でだいぶん多く申し上げましたが、端的に要領よくお答え願います。
  28. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの、国連追放された、これは台湾から申せば追放ではない、自分は脱退した、かように言うだろうと思います。そのことばはいずれにいたしましても、とにかく除籍されたことは事実でございます。そこで、その他の国際機関では一体どうなるのか。この問題はいろいろそれぞれの国際機関で扱い方をきめておりますが、ただいまのところ世銀等から追放というような処置はない、かように聞いております。また、いままでも東西両陣営では必ずしも国際機関に対して同じような態度をとっておりませんから、これはそれぞれの行き方があるのではないだろうか、かように思っております。  また、第二の問題といたしまして輸銀使用その他の問題はその他に譲るといたしましても、国府に対する借款、これについては、過日も申し上げましたように慎重に取り組んでいかざるを得ない。このことは私からも重ねて申し上げておきます。  また、輸銀の使用について、これは在来からケース・バイ・ケースということを申しておりますが、このケース・バイ・ケースがとかく否定的な意味において理解されておる。(「運用されておる」と呼ぶ者あり)皆さん方のほうではそういうようにとっておられるが、そうではなくて、やはりケース・バイ・ケースでこれは運用、積極的な運用、前向きの方向でケース・バイ・ケースできめていく。(田中(武)委員「態度は変わるのでしょう、これからは」と呼ぶ)態度は変わらない。ただ、その取り扱い方が、ケース・バイ・ケースといいながら、それがいかにも否定的な方向であった、かように皆さん方がおとりになっていたら、その点は変わってくる、かように御了承いただきたい。  その他の問題はそれぞれの大臣からお答えいたします。
  29. 福田赳夫

    福田国務大臣 国連でああいう決議がありましたが、これが直ちに国際社会において二国間の関係に影響を及ぼすものではない。これはひとつはっきりさしておいていただきたいと思います。  それから国際機関はどうなるか、こういうことになりますと、国際機関でも国連と非常に関係の深いものがあります。また非常に関連の薄いものもある。そこで態様がまちまちになると思うのでありますが、いずれにいたしましても、この国際機関そのものの中において国府の立場をどうするかという相談が行なわれるであろう。その相談の中においてこの問題は解決される、そういうふうに考えております。  それから、ココム、チンコムのお話でございますが、チンコムはもう廃棄されておりますから、これは問題ございません。ココムにつきましては、これはもうヨーロッパの中国を承認いたしておる国々も多数参加しておる制度であります。ですから、わが日本が依然としてココム体制に参加しておる、これが日中関係今後の打開の支障になる、そういうふうには思いませんけれども、ココムというような制度の適用範囲、これは国連のこういう事態も踏んまえまして、さらにこれを縮小するという方向で考えていきたい、かように考えております。
  30. 石田正

    ○石田説明員 政府機関といたしまして、日本輸出入銀行としましては、政府の方針に即しまして、そうして個々のケースごとに緊密な連絡をとりながら業務運営をやってまいった次第でございます。今後もそういうことに相なると思います。  先ほど先生から御質問がございました台湾にどのくらい出しておるかという問題でございますが、輸出入銀行の数字を申し上げます。  ことしの九月末におきまして、台湾向けの輸出入銀行の貸し出し残高は七百五十二億に相なっております。円でございます。その内訳は、輸出関係が五百十四億円でございまして、投資関係が三十八億円、それから直接借款が百九十九億円ということに相なっております。この百九十九億円というのは、先ほど先生からお話がございましたところの五百四十億円、基金と輸銀と両方でやるという部分の輸銀の融資した部分でございます。これはほとんど終わりに近づいておりますが、多少まだ残高が出ますけれども、大体完了したというような事情でございます。その後の問題につきまして、一億五千万ドルとお話しになりましたけれども、われわれのほうで円で五百四十億と考えておりますが、その五百四十億円をさらにふやすという問題、長年にわたってやるということにつきましては、政府間のお話し合いがございまして、そういうような一括的なことは、今後はしないということでケース・バイ・ケースということに相なったわけでございます。  先ほど二千万ドルのお話がございましたけれども、これは、われわれのほうといたしましてはそういうふうにケース・バイ・ケースでございまするから、そのケースを受け取りまして目下検討をいたしております。電信電話施設であるとか、あるいはボイラーの改修設備であるとか、サトウキビのかすの運搬設備でありまするとか、あるいは製塩設備とかいうようなことをやっておりますが、まだこれはケース・バイ・ケースでやるということになっておりまして、台湾政府との間にまだ契約はできておりません。したがって、まだ支出に至っておりません。これだけ申し上げます。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 国連における意思が決定したという上に立っての自後の問題については、当初総理のおっしゃったのとだいぶん感じが違うと思うのです。なるほど福田さん、国連から追放になったからといって二国間の関係は残る、そう思います。しかしながら、日本外交国連中心主義でしょう。したがって、国連意思の上に立って今後処していくことが必要だと思うのです。  それからもう一つは、チンコムはなくなった、私も知っております。しかし、ココム運営の中で、リストの中でチンコムがあるような運営をしてきたことも事実です。これについてもケース・バイ・ケース、この考え方がわれわれの受け取っておるのと違うんだ、こういうことですが、もうこういう結果が出た以上ははっきりとすべきではなかろうかと思うのですが、これはひとつ総理からはっきりと言ってください。  それから、先ほど輸銀のほうからの数字が出ましたが、そのほかに政府間のやつがあるのかないのか、輸銀のやつも含めて今後の清算をどう考えておるのか。私は、かりに台湾との間に何らかの交渉が残るとすれば、こういった債権の取り立ての問題だと思うのです。どのようにするのか、それをもう一度、これは総理から政治的な責任ある御答弁をお願いいたします。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 輸銀の使用あるいはココムの運用等についてもっと前向きで積極的に取り組め、かようにおっしゃること、これはよくわかっておりますから、私は先ほどはそういうような意味のお答えをしたつもりであります。しかし、重ねてもっと明確にしておけと言われますけれども、この輸銀の使用は何と申しましてもケース・バイ・ケースであること、これには間違いございませんし、またココムリスト、これもだんだん変わってきておりますから、あまりむずかしい問題にならないように、そのリストもだんだん減らしていくというそういう努力をすべきだろう、かように思います。そういう点は、実際問題として取り組むその処置が前向きと後向きではたいへんな相違ですから、そこらの誤解のないようにいたしたいものだと思います。(「誤解してないよ」と呼ぶ者あり)皆さんじゃないのですよ。
  33. 田中武夫

    田中(武)委員 どうもまだはっきりしませんけれども、私はこの問題の締めくくりとして——この問題のですよ、若干の提案をいたしたいと思います。これは自民党総裁である佐藤さんをも含めまして申し上げます。  国連意思を尊重する、そういうことであるならば、アルバニア決議、この中に盛られておる、すなわち中国代表する政府中華人民共和国である、台湾中華人民共和国の領土の一部である、したがってこのことは内政の問題である、日華平和条約は廃棄すべきである、そのことを内容とする日中議連の決議案、これを国会の決議とするように総裁として努力をしてもらいたい。それが一点であります。  さらに、国連意思を尊重する以上は、ああいう決議が出た以上直ちに中華人民共和国を承認するという宣言をしてもらいたい。それもいわゆる過去の問題、戦争等の経過等も含めて、反省の上に立っての宣言、これをやってもらいたい。  もう一つは、沖繩返還協定は、その当時の事情からいって、いわゆるアメリカの冷戦戦略構想の上に立っての返還協定の内容ではなかったか。ところがニクソンが中国を訪問する、あるいは中国を正式な国連のメンバーとして、しかも安保理事国としてこれを迎え入れる。事情が変わりました。したがって、アメリカの冷戦体制の中で、中国封じ込めというような考えの上できめられた沖繩返還交渉内容もおのずから変わるべきである。したがって、沖繩返還協定はあらためて再交渉をし直す。この三つを私は御提案申し上げたい。総理いかがでしょうか。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 第一案の国会の決議、これはわが党も一案考えております。また、各党で協力して決議はつくるべきことだろう、かように思いますから、そういう意味で、この国会の決議はひとつ各党で虚心たんかいに、長い将来の日中間の国交正常化、こういうことに役立つように、ひとつ思い切って相談をしていただきたいと思います。  第二の問題について、この承認の問題ですが、これは一方的にどうこうということよりも、とにかく早く中国国交正常化をはかるべきじゃないか、かように私は思っておりますので、こういう機会の到来することを心から願っております。同時にまた、野党の諸君も同様だろうと思いますので、そういう意味政府を御鞭撻賜わりますよう、この上ともよろしくお願いします。  第三の沖繩の問題でありますが、沖繩の返還協定をいたしました際も、もうすでにニクソンの訪中は決定しております。だからそういうことを考えながらも、この問題はそういう事態を踏んまえての返還協定でございますから、ただいまのようにやり直す考え方はございません。それよりも、これを早くやることによって、いわゆる日米安保条約のその範囲におさまること、そのほうがより日中間の関係に役立つのではないか、かように私は思います。  御承知のように、日本は外国を攻めるとかあるいは外国に脅威を与えるような軍備は持たない、またそういう平和に徹する、その考え方で日米安保条約を締結しておりますから、この沖繩自身が安保の範囲に返ってくること、それが一番大事なことではないだろうかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  35. 田中武夫

    田中(武)委員 まだいろいろと伺いたい点、あるいはだいぶんすれ違った点もあるので詰めたいのですが、この問題ばかりをやっておるわけに永いきませんので、あとは野党の各質問者にゆだねるといたしまして、次へ入りたてと思います。  大蔵大臣、二十三日の当委員会において、大原、鈴切両理事が、そして私が発言を求めました国債の追加発行と財政法四条一項との関係、これについて大蔵省からの御回答をいただきましたが、これはわれわれの要求した答えになっていないと私は思うのです。なるほど政策面においては若干の説明がなされておることは認めます。しかし、法律的に何がゆえに四条一項でいけるのか、特別法をつくらなくてもできるのかということについては、説明は一向になされていないのです。これは四十年のときには、そこにおられる外務大臣福田さんが大蔵大臣として、当委員会において明確に発言をしておられるその議事録を持っております。時間の関係で読み上げませんが、これはすっきりとしたいのだということがその発言の趣旨だったと思います。私がいま考えておりますことは、言わんとしておることは四十年といまとどう違うのか、同じじゃないのか、福田さんのときにはすっきりさすためにということで特別措置法を出した、水田さんならなぜ出さないのか、その点をはっきりしてください。そもそも今度の国債の発行の追加は何が原因なのです、何の目的なのです、お伺いいたします。
  36. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 四十年のときの大蔵大臣のお答えは私も見ました。同時に、四十年のとき、政府委員からの答弁の中にもございましたし、また公聴会における公述人の陳述の中にもこの問題について触れておられますが、当時においても、これはやはり政府部内でも公述人のほうにも問題があって、財政法第四条一項のただし書きの公債を出していいのではないか、それでいいのだという議論もあったのですが、それに対してやはり大蔵大臣がすっきりした形でいこうという——すっきりしたという意味は、ここに資料で申し上げましたように、まだ財政法始まって以来初めての公債の発行である、したがって、対象経費としてきめられている公共事業費、出資金、貸し付け金、この三つのうちの公共事業費についての範囲というものが予算総則で国会の議決を経ていないという事情がございますので、こういう緊急な補正予算を組むという場合に、あらためて範囲もきまっていない建設公債を出すことがどうかというところで問題になって、これは四十一年に建設公債を出すことにする、そのときにはっきりと範囲をきめて国会の議決をとることがいい、年度末の補正予算においてこういう問題をきめるということはまあ適当でないだろう、しかもいままで財政法でやっておったことのない初めてのことをするのを補正予算でやることは適当でない、こういうのが当時のもっぱらの理由で、この第四条によらない公債の発行に踏み切ったというのが実際における当時のいきさつでございますので、その点で私は、今回の場合とは全くもう事情が違っておるというふうに考えます。今回の場合は、もう当初においてこの範囲も予算総則で国会の御承認を願っておることでございますし、この追加で発行できる。しかも財政法できめられた範囲内の国債発行でございますので、その権限が付与されております以上、別個の法律による必要はないということでございますので、私は四十年のときとは事情が全く違うというふうに考えます。
  37. 田中武夫

    田中(武)委員 私はここにいろいろと数字も持ってきております。しかし、それを一々やっておりますと時間がないので、もうそういうこまかいことはやめますけれども、一体七千九百億円の公債は何に使うのか、建設事業に使います、だからかまいませんではいけないと思うのです。少なくとも財政法第四条本文は原則をうたっておるわけですね。ただし書き以降はそれに対する一ただし書きは必ずしも例外の規定であるかどうかということについても三百代言の解釈はあるようですが、少なくとも原則に対する例外規定であることは、これは常識だと思うのです。例外規定は厳格に解する、これが法のたてまえであります。したがって、私は四十年における福田大蔵大臣の措置がほんとうであって、いまの水田さんの答弁は、どう言われようとも私は納得できません。しかし、これは財政法四条一項の解釈の問題であって、私はこの厳格にということは、出資金あるいは公共事業、貸し付け金とこう言うが、そういうことだけでなく、もっと内容を明確にする、そのことが必要である。これは法律のたてまえはそうであろうと、ただ単に出資金とだけではいかないと思うのです。何々に対する出資金幾ら、あるいは何々の事業、たとえば本州・四国の架橋の費用とかなんとかといったような、少なくともその目的を明示したものでなくてはいけない、ただばく然としてではいけないのだというのが私の解釈なんです。ここでこればかりやっておってもこれは行き違いになります。そこで、これはちょっとおいておきましょう。  せっかく来ていただいた佐々木日銀総裁にお伺いいたしますが、今回の七千九百億円の国債発行増について、日銀の立場からどうお考えか。市中消化の見通しがあるのかどうか。それから、発行後一カ年間は日銀が公債を持ってはいけないということになっておった。今度大蔵省はそれを改めて、一年たたなくても持ってもいいようにやらそうとしておる。これについての御所見、さらに、日銀が現在国債を幾らかかえておるのか、過去の全発行国債の何%に当たるものが日銀へ返ってきたというか、日銀が持っておるのか、こういう点についてお伺いをいたします。
  38. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいまお尋ねの、今度発行されます七千九百億円の国債、これは現在日本の経済が直面しております状態から考えますと、この発行は適当である、こう考えております。  その理由は、最近の日本の経済が停滞色を強めておりますことは、民間の投資が非常に落ちてきたことにあります。それは設備投資並びに在庫投資両方にわたっておりまして、これは日本の経済の先行きについて、見通しが非常に困難であるということからまいっております。こういう状態に対処いたしますためには、他に需要を喚起するということが必要でありまして、そのためには、財政需要をもってするということが適当であると思います。ことに、最近の情勢では、社会資本の充実を促進するのに、環境としては非常に適当な時期でもございますので、今回のように、公共投資を中心とする財政需要が出てくるということは、適当であるというふうに考えた次第でございます。  それから、この大きな国債の発行につきまして、その消化がどうなるかということでございますが、先般来、御承知のように外貨が多量に流入しておりまして、それが外国為替特別会計によって買い入れられまして、その代金が政府から民間に散布されております。そのために、金融市場における資金需給は非常に緩和しておりまして、金融機関が余裕資金の投資運用にむしろ苦しんでおるというような実情でございます。したがいまして、ただいまのような金額の国債が発行されましても、市中において順便に消化され得るものと考えております。  それから、一年未満の国債を日本銀行が買わないいままでの慣例は、これは別に法律とか規定できまっておるものではございません。ただ、政府が発行した国債を、あまり日がたたないうちにすぐ日本銀行が買うということになりますと、いかにも日本銀行がまっすぐ引き受けたような感じになってまいりますので、そういうようなことを避けますために、少なくとも一年はたったものを買い入れるというような運用にいたしておるのでございまして、これを変えるというような話は、私は全く聞いておりません。  それから最後に、国債の日本銀行における所有高でございますが、最近は、いま申し上げましたように金融市場の資金需給が緩和しております。そういう実情を映しまして、現在日本銀行が所有しております国債は、三千四百二十億円になっております。この中に、短期国債が約四百億円ございますので、長期国債は約三千億円、こういうことに相なっております。
  39. 田中武夫

    田中(武)委員 全体の、いままで発行したものの何%か、それはわかりませんか。
  40. 佐々木直

    佐々木参考人 それはいまさっそく調べます。
  41. 田中武夫

    田中(武)委員 今度の補正の中で、もう一つ交付税関係の問題も疑問があるわけなんです。しかし、それも含めまして、結局私は、景気の落ち込みあるいは減税、まあ地方交付税においても同じことになると思うのですが、そういうために補正をしよう、いわゆる歳出が歳入を上回るといいますか、だからやるんだということであるならば、交付金の問題にいたしましてもこれは一般会計でやるべきであって、この交付税特別会計の借金でやるというようなことにも、私はこれについても、何か法律の附則で出しておるようですが、もうこまかい議論はやめまして、私たちは大きな疑問を持っております。これから先になりますと法律論になるのです。あまりそういうことで時間も使いたくないのですが、いまの大蔵大臣の御答弁では解明はできたとは思いません。  そこで、どうするかということですがね、委員長。そういう訴訟ができるかできないかは検討をする必要もあると思うのですが、あなたは裁判官ですから。国債発行差しとめの仮処分というようなものが出せるのか出せないのか。あるいは立法府が法律の解釈で対立があるので、裁判所にその解釈を求める。これは法の最高解釈は最高裁だと思うのです。ところが、そういうことも権威のないことだと思う。だからこれはこの程度で私はおきますが、これは理事会においてもっと検討していただきたい。もっと明確な答弁がなければ、福田さんのときにはすっきりさすのだということで出されたことが、なぜ水田さんではできないのか。私は国債の追加発行に必ずしも反対するものではありません。しかし、手続はちゃんとやりなさいということなんです。大体このごろ、まああとにも出してまいりますけれども、何かというと理屈をつけて、法できめるべきものを令とか何かで逃げ込む、国会の承認を当然得べきものに対しても、それを避けて通るという風潮が、ことに佐藤内閣になってからひどいことを遺憾に思います。  そこで、これはひとつ委員長に善処方を要望します。それでなかったら別な機会を与えていただいて、財政法四条一項の解釈についての、そのほうの権威ある専門家を招いて意見を聞き、あらためて大蔵大臣等とそういうことについての論争をしてもよろしいです。私が要望したいのは、この補正予算の採決までに、財政法の解釈における、あるいは法のただし書きの存在といいますか、ただし書きがいかなる性格なのかというようなことについて、専門的な権威者の意見が聞きたい。そうでなくては、私は高辻さんの説明では了承できません。したがって、そういうことも含めてひとつ委員長、御検討をしていただきたい。私の要望は、法律の権威者を招いて、その意見を聞いた上で処理したい、こう考えます。
  42. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 田中委員に申し上げます。  この問題は意見の異なるところでありますが、予算の問題について、予算委員会においては検討する小委員会がありますので、どう扱うかは、後刻理事会で検討することにいたします。
  43. 田中武夫

    田中(武)委員 私はいま言いましたように、法の権威者、しかも財政法の権威者、一般法のいわゆるただし書きがいかなる性格を持つのかということについての権威者の意見を聞いて、私が納得するまでは、この採決に応ぜられないというのが私の気持ちなんです。それをも含めてこの件は保留いたします。よろしいですね。
  44. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 その問題も含めて理事会で検討することにいたします。
  45. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ次へまいります。  ドル問題についてお伺いいたします。  八月十五日に、いわゆるニクソン声明が出されました。そうしてヨーロッパにおいては為替市場が一斉に閉鎖されたのです。ところが日本だけが市場を閉じなかった。これはどういうわけです。
  46. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはもう私がしばしば申し上げましたとおりでございまして、日本は西欧諸国と違って、日本の対外取引のほとんど大部分がドル建てになっておりますので、したがって、為替市場を締めるということは対外取引に大きい支障を来たす。その支障がいろいろ波及して経済の混乱を起こす可能性も、当時私は見られたというふうに判断いたしました。同時に、もしこれを続行した場合に大きい障害が起こるか、たとえば投機的な短資が流入して為替市場を混乱させるというような問題が起こるかということも一応考えましたが、しかし、日本の為替管理の現状から見ましたらそういう心配もないという判断から、国内経済を閉鎖によって混乱させるよりも、やはり引き続き市場を開いておくことがいいという判断で閉鎖しなかったということでございます。
  47. 田中武夫

    田中(武)委員 それで、ああいうように為替市場をあけておれば、ドル売りが殺到するということはわかりきっておるわけなんです。そのために四十六億ドルといったような平衡買いをやっておる。しかもその四十六億の内容が、一体どこの銀行、どこの商社が幾らかえたのか、これが一向にはっきりしておりません。十二日間でしたか、この間に交換せられたというか、売り買いせられたドルの金額とその内訳、どこが幾ら売ってどうしたのかということをはっきりとしてください。
  48. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは企業の秘密の問題がございますので、私のほうでは、どこの会社という名前を出すことだけはひとつあれしていただくことにしまして、A、B、Cというようなことで、私は、やはり国会からもたびたびそういう御要求がございましたので一応調査しましたから、銀行についても商社についてもA、B、Cということで……(「なぜ悪いのだ」と呼ぶ者あり)悪いことじゃございませんので、一応その数字はお出ししようと思います。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 あとで論議をいたしますけれども、結局はこのドル売りにおいて、伝えられるところによると、かりに五%差ができたとしても二千億円以上だということですよ。結局は国民の金なんでしょう。そうしておりながらはっきりできないなどということは了承できませんよ。なぜしてはいけないのか。企業の秘密、冗談じゃないですよ。国民の肩に二千億、五%でですよ。もっと幅を見ればそれ以上になるでしょう。しかもそのために、日銀の後期納付金の約七百億円ははずすとか、あるいは外為会計で二千億円限度を上げるとか、いまやっているこの補正予算に直接関係を与える。しかも、それは結局は国民の肩にかかってくるものなんですよ。企業の秘密と国民にそのような大損を与えたこととはどっちが重要なんです。はっきりしてください。はっきりしてくれるまでは審議は続けられませんよ。
  50. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま申しましたように、何社という名前は抜くことにしまして、A、B、Cでそれは全部お出しいたします。
  51. 田中武夫

    田中(武)委員 なぜ具体的な名前がいけないのです。なぜ秘密にしておかなければいけないのです。結局は外為会計でこれを負担するのでしょう。じゃ国民の金じゃないですか。そのために、補正予算の中にも二カ所少なくとも補正が出てきているのでしょう。なぜはっきりしてはいけないのか。そんなことで国民は納得できますか。その理由は企業の秘密、冗談ではないですよ。国会でそれが言えないということがありますか。じゃ秘密会なら言えるのですか。これをはっきりしてもらわなくては予算審議の意味をなさない。五%としても二千億以上なんですよ。しかも、その中には一社で七百億円ももうけたというか、あるいはその人たちは損をするのが助かったとでもいいますか、ともかく七百億円もうけた会社もあるというのですよ。そんなことで、A、B、Cでごまかそうなんて、それはだめです。国会軽視もはなはだしい。これは直接補正予算に関係がある問題です。はっきりしてもらわなければ予算審議は続けられません。
  52. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は別にこだわるわけじゃございませんが、何か政府側からそれを発表するということは問題があるというので、実は各社別に、各社から通産省で数字を出していただくというような形でそれを国会にお出ししようかというようなことも考えましたが、それはむしろ正確を欠く、だろう、こちらではっきりしているものを出すほうがいいと思いましたので、私は出すようにということで、この数字を全部調べてございますが、ただ、いろいろそういう問題がございましたので、名前だけは書かないということにきまったということでございます。これはまた……(「名前を隠したのでは何もならぬ」と呼ぶ者あり)いや、それは別に悪いことを隠すという意味じゃございませんで、政府としては相当立ち入り検査までしたいろいろな問題でございますので、そういうものの発表の限度というものがありますので、名前をこの際は伏せようかということをきめて発表するということでございますが、これはまたあとで御相談してもけっこうでございます。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 八月二十五、二十六日の二日間に円転換規制を緩和して、二十六日には為替銀行に対して三億ドルの金を出しておるんでしょう。外貨の預託をしておるのでしょう。しかも、いわゆる変動為替制度に移行する前日は、わざわざ市場を二十分延ばしたんでしょう。そうしてその間に二つの銀行から二億八千万ドルですかの金が、三時で締めておればいいものを二十分程度延ばした、その間にドルを売りに来ておるのでしょう。しかも、その中にはから売りをしたといううわさもある。あるいは輸出前受け金をかき集めてした。まず売っておいて何とか手配しようということで、ロンドンの相場が変わるというくらい日本からは買いが殺到したといわれておる。少なくともこの問題については、政府と商社、さらに為銀、為替銀行とがなれ合いでやったと国民は見ている。そうして国民に、差が五%としても二千何百億円という負担を押しつけている。それがはっきりできないというようなことだったら、国会の予算審議は意味をなしません。はっきりしてください。
  54. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それじゃ、私のほうはあれですから、取り扱い方委員会の理事会で御相談いただけませんか。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 大蔵大臣がああ言っていますが、委員長どうですか。
  56. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 ただいまの問題については、後刻理事会で協議をいたします。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ委員長の取り扱い、いま大蔵大臣は、私のほうはかまいません、こう言うておるのです。かまいませんのならなぜここで言えないのかということになるんですが、そこまでいやなことはやめておきましょう。しかし、これははっきりさせるということだけの公約はしてください。約束してください。それじゃなかったらだめですよ。
  58. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私どもが見たところでは、輸出代金を売ったことにしろあるいは前受け金にしろ、結局実需に基づいているものであって、その間に特別投機的な短資の流入というものは、大体今回の場合は避け得ているというふうに私は思います。  ただ、この調べたときに、記載のしかたに若干不正確なものがあったということで調査しましたが、その後判明したところによると、そういう慣習に基づいておったという問題もありますので、特にそういういま言われた、から売りというようなものがあったというふうに私どもはいま見ておりません。したがって、これを不正があったから隠すというようなことではございませんで、さっき申しましたように、こういう個々の企業の商売の問題について、一々政府がどこの会社はどうしたという、商売の内容に触れる問題を発表することがいいか悪いかというやはり一つの大きい問題があると思いますので、これがこういう形で、それならというふうにまた処理されるなら、私はそれでいいと思いますが、ただ、言われたからといって今後各会社の企業の内容、いろいろしている事業活動を、ここでみんな発表しろと国会に言われたときに、政府はすぐにそれを調べて発表するというようなことがいいのか悪いのか、いろいろなそういう問題にも関係いたしますので、皆さんが御相談でやってくれるならけっこうだと思います。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 だいぶ違うのですよ。
  60. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 委員長から申し上げますが……。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと待ってください。何を幾ら売ってその金をどうしたと聞いておるのではないのですよ。総括的にどこの銀行が、どこの商社が幾ら売ったか、これを聞いておるのですよ。だからこの扱いは委員長に、いまの大蔵大臣の発言を踏まえてやっていただきたい。そうでなかったら、これはもう日銀、あるいは政府といいますか、それと為銀と、さらに商社がぐるになってやったんだという、それがやがて何らかの形で政府に戻ってくるのではないか、そういうような見方をしておるのですから、名誉のためにもこれははっきりさすべきです。あえてぼくは佐藤内閣のために発表すべきであるということを申し上げます。では次に移りますが、これは保留いたしておきます。  このいわゆるドルの買いささえというのは、これは日銀の責任でやったのか、政府責任でやったのか、どちらなんです。日本銀行というのは、本来の事業体としての日銀の活動があります。この日銀の、日銀法からいってもドルは買えるわけです。為替の売り買いはできるわけです。したがって、日銀本来の業務として行なったのか、それとも政府がやったのか。結局はその損失その他は——もうこまかいことは時間の関係でやめます。相当ここに持っておるのですがね。これは日銀の損失になるのか。今度の補正で後期分の七百億円の納付金を免除するということは、そういうことをも含めておるのじゃないかとも思えますし、一面、外為会計の限度を二千億円上げたということ、こういうこととにらみ合わせて、一体どっちの責任でやったのか、これがはっきりいたしません。同時に、日銀と外為との関係等も伏せられたままなんです。外貨準備がいま幾らあるのか。そのうち日銀が幾ら持っており、外為でどうなっておるのか。あるいは何回となしに私はこの委員会において、外貨準備内における金保有の問題を取り上げました。総理みずからも三分の一くらいが必要である、こうおっしゃったのですが、いまでは外貨準備高の五%に満たないわけなんです。どうせドルは金との関係において引き下げられるべき運命にあります。大きな損をする、これは一体だれが責任を持つのか、これも国民がかぶるのです。こう言ってくると、もろもろのいろいろな問題があります。しかし、あとに質問する予定の事項もございますから、あまりこまかく言いませんが、どちらの責任でやったのか。いま外貨準備はどのようになっておるのか、日銀と外為との関係はどうなっておるのか、それらの点につきまして、大蔵大臣と日銀総裁からお伺いいたします。
  62. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 日本銀行と政府とは絶えず密接な連絡をとってやっておりますが、日本銀行はいま外為会計の政府の代理人として、直接為替市場における外貨の売買に当たってもらっておるわけでございますが、その場合、日本銀行自身においても外貨を保有することではできるということは御指摘のとおりでございまして、どういうふうに日本銀行が持つかというようなことは、そのときの外貨事情、国内の金融事情と、いろいろなことによって十分連絡の上でやっておることでございますが、従来は大体日銀と政府は半々程度に持っておったのが普通でございますが、今回の場合はこういう異常なときで、特に前受け金がたくさん売りに出られるというようなときでございますので、これは日銀のほうがこれを買うというようなことでやってまいりましたので、この比率は日銀保有のほうがはるかに額が多い、大体八月以後ふえたものを大部分が日銀が持っておるというような形でございますので、百十何億ドルというものを日銀のほうで持ち、こちらの外為会計のほうが十四、五億ドル持つというくらいの率になっております。
  63. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいま大蔵大臣が大筋は御説明になりました。大体そのとおりでございますが、お話がありましたように、為替市場における売買は日本銀行本来の為替の売買業務としては現在までやっておりません。すべて外国為替資金特別会計の代理人としての売買でございまして、一たんその資金特別会計に入りました外貨をその後のいろいろな事情を勘案いたしまして、外為会計から日本銀行が買い取る、こういう段取りになっております。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、お聞きのとおりで、どっちの責任で買ったのかということになると、私はやっぱり政府が日銀に要請したんだ、日銀は積極的にあれだけのものを買いささえるということの気持ちが私はあったとは思わぬ、政府から押しつけられたんだ、ヨーロッパにおいては直ちに閉鎖したのに、日本は市場をオープンのままきたということ、そのために外為会計に大穴があく、すなわち国民に大きな損失を与える。しかも、その中においていろんなことが憶測せられておる。これはひとつ最高責任者としての総理もやはりもっと考えてもらわなければいけないわけなんです。  もう一つは、もうこの論議はやめますけれども、何回か私は金の保有高の問題に触れましたし、総理も現に三分の一は必要であると、こう言われた。ところが、いまそんなものではない。こう考えてくると、ドルの買いささえ、平衡買い、あるいはあり余るドルをかかえておって、金を持たなかった、こういう一連のことはやはりアメリカさんに遠慮してござった、こう言わざるを得ないと思います。そのためにドルが金との関係において低下した場合には、日本は大きな損失をする。あげて政治責任だと思うのです。これはドルのかさといわれておりますけれども、やはりアメリカに対して遠慮せられた、ドルと金との交換も思うように言わなかった、買いささえを無理にやった。その結果が国民に大きな損失を与えたことは事実。反省を含めまして総理の御所見を伺います。たくさん私はこまかい数字を持っていますが、時間の関係もありますので、ひとつ総理の御感想、御所懐をお伺いします。
  65. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、金の免換停止その他一連の新経済政策アメリカが発表しておる。その際にわが国がこれにいかに対処するか、こういうことでございまして、私ども実は非常にたよりにしたのは日本の為替管理が行き届いておる、同時にまた日本貿易は外貨建てが主たるものだ、大部分がそうだ、こういうことを考えながら、どうも市場閉鎖という挙に出ないほうがよろしいのじゃないか、かように思って実は市場閉鎖しなかった。数日の間は私どもが予想したとおりに経過しておりまして、これは大体われわれの想像が当たった、為替管理が十分役立っておる、かように実は思いましたが、閉鎖いたしまして変動制に切りかえるその前日、これは異常な実は売りが出てきた。そうしてわれわれもこれに対して在来の態度だけでは維持はできない、こういうことでわれわれが思い切って変更したのであります。その程度が、その期間が長かったというこのおしかりは私はもう当然さような批判があるだろうと思います。しかしあのときに直ちに閉鎖して貿易市場に非常な大混乱を来たしたら一体どうなっているか。そこらのことも考えながら、私はややおくれたということは、これはやむを得なかった、その批判は受けなければならない、かように実は思っております。私は、ヨーロッパの話が出ておりますが、ヨーロッパは御承知のように、日本のような為替管理はしておりません。そこに特異生があるのでありますが、やはり日本の特異性はそれなりに評価していただきたいと思います
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 私は必ずしも総理の御答弁を了承したわけじゃございません。しかし、総理反省を込めて御答弁をされたので、次に参りたいと思います。  先日の本委員会の質問で民社の佐々木書記長も触れられましたけれども、岸元総理がいまアメリカへ行ってニクソンさんに会ったりして何かやっておられる。政府はこれは関知せず、こうおっしゃっております。しかし、どうも私はすっきりしないのです。総理のにいさんだからというわけではなくてね。元総理の吉田さんの書簡がうろちょろしてみたり、あるいは元総理の岸さんがこの時点でアメリカへ行って、新聞の伝えるところによると、一二・五%の円切り上げではどうかとか、八億ドルの武器を買い入れるからとかなんとか、こういうことをやっておられる。政府は関知せず、こうおっしゃる。しかし私はどうもインセイだと思うのです。そのインはいわゆる上皇ですか、法皇の院政、衆議院の院の字にとられてもけっこうです。あるいは陰陽の陰ととられてもいいのですが、どうもインセイの感じがするが、どうなんでしょう。
  67. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が岸の弟であるためにただいまのような誤解を受け、これは院政ではないか、こう言われるのは、それは当たってはおりません。これははっきり私が否定いたします。弟ではありますが、私が責任をもって国政を掌理しておりますので、いわゆる過去にありましたような、日本の歴史にあったような院政など、そういうものではございません。実は岸がアメリカに行きたい、かように申しておりましたのは、もっと早い時期に出かけるような話でありました。その際は、とかくの誤解を招きやすい、実はかように思いましたので、私は実は賛成しないでいたのでございます。しかし御承知のように、繊維協定も済んだその際でありますから、その辺で、弟が総理だからといって兄貴の行動を規制するというのもどうかと思って、私はその辺ならいいだろう、かように思っていたのでございます。ところが、この国会中でありますし、さらにまた、ただいまの繊維協定どころか、もっと大事な問題があった。そこでいろいろなうわさが出ておる。そしてまた、なかなか腕ききの記者諸君もアメリカにはたくさん行っているとみえて、いろいろ引き出しておるようです。兄貴はなかなか口がかたいと思っておりましたが、どうもそれらの点が私の期待に沿わない点があったようで、何かといろいろ問題を引き起こしておる、かようでございます。私は率直に申しまして、これは政府関係のないこと、これだけはひとつはっきり御了承いただきたい。弟が総理であるために兄が思うとおりな活動ができない、むしろそのほうに同情をひとつしてやっていただきたい。たいへん気の毒な状態にあるのであります。また弟自身が兄貴から、いわゆる院政の形でいま政治をしている、さようなことはございませんから、どうか誤解のないように願います。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、総理が公私を混同せられるような人でないことを信じたいと思っております。  そこで私一つ提案をいたしたいと思います。それは、アメリカの得意の何とか特使というのがまた円の問題でも来るようなことが伝えられております。あるいはいまの岸元総理の行動の云々は別といたしまして、日本は円の切り上げ、これはいま幾らだとかいつだとかいったって、そんなことは言えるものでない。それを聞くほど私もやぼじゃございません。しかし理屈は別として、何らかの措置をせにゃいけないことだけは確かでありましょう。  そこで、その円の切り上げをやられる前に、アメリカに対して次の諸点を御提案していただきたい。  その第一点は、ドル危機を招いた原因であるところのアメリカの冷戦戦略体制、たとえばベトナム等に対する軍事介入、これはおやめなさい。でなければ協力できません。さらに沖繩の非軍事基地化をやめてくれ……(「逆だ」と呼ぶ者あり)いや失礼、非軍事基地化をやれ——弘法も筆の誤りといいますからね。軍事基地化はやめるべきである、軍事基地化をやめるべきである、これを提案すること。ドルの交換制を復活させること。一オンス三十五ドルというこれは改めなくてはならない。私はやはり何といっても……(佐藤内閣総理大臣「兌換開始」と呼ぶ)そうそう、交換性回復です。これはやはりドル自体がみずから考えるべきであって、そうして金との関係において、やはりこれは金値上げにつながって日本は損しますけれども、これはやむを得ぬ、何とかせにゃいけないと思います。それからIMF機構を改善する。いまやIMF機構はもう本来の目的といいますか、機能を十分に発揮できない状態になっておる。それはドルが弱くなったため等々もあります。そこで、IMFのいわゆる今日では株式会社方式、出資金に応じて権利を持つということを国連方式、一国が一票持つというような機構に変えるべきではないか。さらに、私は金本位制を主張するものではありませんけれども、当分はやはり金に準拠せにゃならない。このことを含めてSDRの引き出し権についてももっと検討を加えて、出資金に応じて分配する制度を改むべきではないか、そういうことをやった後に多数国間で平価の調整をやろうではないか、こういう点をまず提案すべきではないか。  あらためて訂正をいたしますが、沖繩につきましては軍事基地を置くなということなんです。はっきりしておきましょう。以上。
  69. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど田中さんの御質問に対して、総理が、岸がしゃべり過ぎた、こういうふうなお答えがありましたが、しゃべり過ぎということはありませんです。岸元総理新聞記者に対する発言は、これはほんとうに節度というか、を持った妥当な発言であります。特に、あなたが通貨問題に関連してそういうお尋ねでありますので私が申し上げるのですが、政府といたしましては、岸元総理に対しまして、通貨問題について何らのお願いもしておりませんし、また大統領との会談におきましても、この話は一切出ておりませんし、また岸元総理新聞記者との会談におきまして、この通貨問題につきましてはいささかも触れておりませんですから、よくひとっこれは誤解のないようにお願いをいたしておきたいと思います。
  70. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの田中さんのは、要求というように聞いたのですが、これは答える……(田中(武)委員提案をしてもらいたいというのです、アメリカに」と呼ぶ)提案ですか。これは十分御意見については伺っておきます。かように答えればいいものか、あるいは一つ一つ、みんな私の感じを申すほうがいいのか、そこらの、時間的な関係もございますので、いかがいたしたほうがよろしいですか。——私は、簡単に申しますと、第一の問題、ドル危機を招いた原因はいろいろ探究されておる、その中の一つはやはり軍事介入という問題もあると思います。しかし、これはアメリカ自身が十分承知しておることだと思います。  次に、沖繩の問題について、沖繩だけを切り離して非軍事化しろ、こう言われることは、私は本土の一部である沖繩、かように考えますので、これは簡単には賛成できません。  第三点、IMF機構というものがすでに再検討さるべきときになっている、ブレトン・ウッズ協定というものがいま意味をなさないようになってきた、こういうことはすでにいわれておりますし、またSDRの使い方も、これからやはり国際通貨としての考え方でこれは重きをなすだろうということはいまから言えますが、どうも国連方式で一国一票を持つような形でものごとをきめろといわれる、それにはちょっと賛成しかねる、かように思います。  最後の問題は、金の兌換をとにかく早く始めるようにしろ、こういうお話でございますが、いまのSDRと金の兌換とどういうような関係になりますか、そこらの点がただいま検討されておる、十カ国蔵相会議でもいろいろ議論されておる、そういう点は御承知のとおりであります。ただいま言われました提案そのものをそのまま出すことについてはまだもっと検討を要する、私はかように思っております。しかし御意見は御意見として十分拝聴したつもりであります。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 総理沖繩で口がすべったことは別として、私の言っていることはいい提案でしょう。  そこで、これも佐々木民社党書記長も若干触れた問題と関連しますが、いまドル・ショック、ドル・ショックといって大騒ぎをしております。しかし考え方によっては、政府政策転換の一つのチャンスではなかろうかと思うのです。俗に円は外に対しては猛獣のごとく、内に対しては弱い、何とかのごとしというけれども、このごろはそれも強いようですからやめにいたしますが、ともかく外に対しては強く、内に対しては弱い、これは物価の状態を見てもわかるのです。そこで、いままでの政府のとられました経済政策、いろいろあります。たとえば公害たれ流しの産業優先政策を、国民生活を優先、福祉型に転換するとか、あるいは輸出増大型政策を内需型に考え直して物価を引き下げる方向に持っていくとか、あるいはいままで国民生活を犠牲にして大企業に回した資金を思い切って社会保障とか地方公共団体とかあるいは中小企業に回すとか、あるいは海外援助のあり方を、これが一方的でなくて、社会主義国も含めよとかいうことも含めて、海外経済援助のあり方を再検討する、あるいはアメリカの今日の保護主義から考えて、アメリカ依存型の貿易構造を改めて、そういう時期でもありますから、経済界も中国に対してだいぶ働きかけているようですから、その中国貿易等々含めて、もっと社会主義国との貿易、いわゆる貿易の質的転換をはかるとか、いろいろあります。  時間があれば、一つ一つで御意見を伺って、私の考え方も申し上げたいのですが、いま申しましたような点で、これは単にドル危機、ドル危機といって騒ぐだけではなくて、こういうことに転換する一つのいい時期ではないか。もう三年も五年も佐藤さんが総理をやられるとは、だれも思っていません。(「わからぬぞ」と呼ぶ者あり)そうですか。内政干渉になるから、やめておきましょう。がしかし、少なくとも佐藤内閣、これだけの閣僚がおるのですから、せめて最後の善政としてこのくらいの政策転換は考えていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  72. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一々は答えませんが、また程度の差こそあれ、あるいはまた力点の置き方が政府のほうが食い違っている、田中さんの御指摘とは必ずしも力点が一致しない、こういうことはあろうかと思いますが、しかしいまあげられたような諸点、そういう方向に大きくわれわれの経済政策を転換すべき最もいい時期だ、かように思っております。この点はすでに施政方針演説でも明らかにしたとおりでございます。
  73. 田中武夫

    田中(武)委員 実は最初の予定では繊維に重点を置くという——田中さん、こっち向きなさいよ——予定であったのです。ところが、きのうああいうことで、これは三百議席がある以上、しようがないと思う。がしかし、それによってあなたの繊維協定等においてとられた責任が免責せられたとは、私は言い切れないと思います。  そこで、時間の関係等もありますが、国益上やむを得なかったという、その国益とは、一体どんなことなのか。もう続けて言いますよ。第二点、ケネディ特使は一体どんな資格で来られたのか。軍用機に乗っておいでになった。アメリカ国を代表しておったのかどうか。それなら、信任状を持っておったのかどうか。パスポートはどうなっておったのか、そういうことも伺いたい。  さらに、外交ルートにおける交渉であるならば、外務省で、あるいは外務大臣を通じてやらねばならぬ問題もあろうと思います。また、否定せられておったけれども田中さんとケネディさんとの間に文書の交換があったことも明らかになった。これは発表した。三年とか五年とかいわれておりますが、持っています。ケネディさんから五年ということが出てきたのに対して、オーケーをあなたは与えておる、書面で。ありますよ。こういうことは全部除きましょう。  そのような点について、ケネディ特使の資格、国益、それからこの問題について別に次期総裁候補をかち合わす意味じゃございませんけれども、通産大臣と外務大臣との権限の問題、これらをひとつお伺いいたします。
  74. 田中角榮

    ○田中国務大臣 日米間の経済交流が正常な姿で発展をしなければならないことは申すまでもありません。またそういう状態であったからこそ、戦後の日本の経済復興もなし遂げられたのでございます。  今度の繊維問題につきましては、両国間において政府間協定ができない場合、真にやむを得ない処置としてアメリカが一方的な規制をしなければならないということをいっておるわけでございます。そのようにもしなると、これは国益を害することになることは、私が申すまでもないことである。両国の間が不正常な状態になって国益が守れると、よもや田中さんも考えておられない、こういうことでありますから、国益論は、しごく明瞭であります。  それから、ケネディ氏の資格は、これは書簡に大統領の繊維に関する交渉特使という正式な資格が書いてございました。また、アメリカの在日公館の言明でも、繊維に関する交渉権は大統領特使としてケネディ氏のみが有するという、公式の答弁が確認をせられておりますので、大統領特使であるということでございます。  第三点、私が行ないましたイニシアルは、御承知の近く正式な外交ルートで行なわれる日米間の正式な繊維協定交渉の原案をつくったわけでございまして、正式な協定は外交当局において近く行なわれる、こういうことでございます。  ケネディ氏がパスポートを持っておったかどうか、入国手続等の問題に対しては、私の所管でありませんので承知いたしません。
  75. 福田赳夫

    福田国務大臣 ケネディ特使の立場はアンバサダー・アットラージというのです。日本語に訳しますと、これは大使であります。  入国の手続は、これは成規の手続を踏んでおるというふうに聞いております。  それからわがほうの権限の問題についてお尋ねがありましたが、覚書を作成するまでの権限は通産大臣に一任をするという閣議の決定があることをひとつ御承知願いたい。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 大使の場合は信任状を持ってきてそれを天皇に見せるのと違うのですか。もうそんなことしてないんですか。
  77. 福田赳夫

    福田国務大臣 いわゆる大使館を代表する大使、この場合は信任状の必要があります。しかし、そうじゃなくて、その他のいろいろな意味合いにおいての大使というのがありますが、その場合は信任状の手続は必要といたしません。いま通産大臣からお話がありましたように、ケネディ特使の場合は大統領の書簡をもって、ケネディ特使に繊維交渉の権限が一任をしてあるということが明らかにされております。
  78. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 田中委員に申し上げますが、予定の時間を経過しておりますので簡単に願います。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 じゃもうまとめて。国益というのが、それが経済的な面なのか、政治的な面を含んでおるのかどうか。それからあなたの署名せられたところの了解事項覚書、いわゆる仮調印なるものの法的の資格というか、地位といいますか、どういう法的な根拠を持っておるのか。正式調印はいつごろ、どのようにして結ばれようとしておるのか。それから、そのことを実施するために貿管令を変える、あるいは外国為替管理法、あるいはそれに基づく貿管令、それを動かすとかいわれておりますが、これはココム論争で明らかになったように、これはあくまで政治的な要素でなくて、三つの条件があがっていますね、あれは経済的な要素でなくちゃいけない。それから行政協定ではできない、やはり国会の承認を受くべきである。この辺が私の見せ場だったのですが、時間がなくなって残念です。当然私は、行政協定として許されるのは、暫定的であること、それが行政権の範囲内であること、したがって法律その他において行政に委任せられた範囲であること、しかもそのことは、そのことから直接予算、財政支出に基づかない、必要としないこと等の制約があるはずです。そういう点も実はいろいろとやりたかった。ところが、まあきのうのあれであなたの顔色も変ってきて厳になった。そういう点も含めてひとつ総括的にお願いします。正式調印はいつごろ、どうやるのか。それは国会の承認を要するものである。私は別の機会にこれをもっと論理的というか、法律的にやりたい。これは私は自信があります。法制局長官とやっても自信があります。これはココム論争で明らかになった点です。何とおっしゃってもこれが政治的背景であった、ニクソンの、政治じゃありません、選挙の応援的なものである、あるいは選挙にこれを利用しようというのはアメリカ自体でも認めておるわけですね。そういうものとの、いわゆる外為法及び貿管令との関係等々をやれば見せ場があったわけなんですが、これはまことに残念です。  そういう点を含めて御答弁願います。
  80. 田中角榮

    ○田中国務大臣 国益の問題につきましては、経済上の問題でございます。また政治上の問題とすれば日米両国の友好的な立場の保持ということでありますから、大きな意味では政治的な面からプラスを求め得るものだと考えております。とにかく一方的な輸入規制というものが行なわれるということは、両国の友好維持のためにもよろしくない状態であるということはもう論のないところでございます。また、そのような状態になった場合、またそれを起点として次々に日米間が不正常な状態を積み重ねるということになると、対米輸出の混乱ということばかりではなく、国内における経済そのものの混乱の基をなすものでございます。この及ぼす影響を考えると、いかにしてもそのような破局的な状態といいますか、不正常に不正常を重ねるような状態を避けなければならない、それが日本の経済上の国益を守るためであるということに結論づけられることは、私が申さなくても御理解いただけると思うわけでございます。  それから、私がイニシアルをしました文章は、これは両国で近く正式に協定等になるものの概要をお互いが確認をし、そうして私とケネディ特使の間に結ばれたものが原案となって、字句の修正はあるとしても、おおむねこの趣旨に沿い、この案文の意味するものが成文化される、こう理解していただきたいと思います。  それから、外交ルートでもっていつごろ、どのような形でということでございますが、いま外務省にお願いをしておるのでございまして、東京でやるかワシントンでやるかということでありますが、向こう側も急いでおったものでございますし、もうイニシアルができたものでありますから、できるだけすみやかに行なわるべきだと思います。いまちょっと外務大臣とお話をしたわけですが、十一月一ぱいぐらいになるのではないか、十一月一ぱいぐらいというよりも、十一月中には正式協定文が交換をされるだろうという見通しのようでございます。まだ外務大臣とコナリー氏の間でやるのか、出先が行なうのかというものに対してはさだかに決定をいたしておらないようでございます。  それから、協定が国会承認案件として提出をせらるべきだという御意見は、先般も佐々木民社党書記長の御意見もございましたが、私は現行法の解釈に対しては専門家ではありません。ありませんが、外務省の条約局及び法制局長官等の意見を徴すれば、これは政府に与えられた、授権された範囲内のものでありまして、国会の承認案件ではないということを聞いております。ですから、現時点において私がイニシアルをしたものを骨子とした協定がつくられた場合、国会の承認案件として提出、御審議を願うことはまずないのではないか、こう考えられます。  それから、貿管令及び外為法等につきましては、これはもう議論は十分なされておるものでございますし、あなたがココム問題で御発言をなさったものに対しても勉強いたしております。おりますが、これは日本の正常な、秩序ある輸出及び経済発展を確保するために政府に授権された法律を忠実に実行するという範疇のものでございまして、今度の協定というものが国会で議決をせられない限り貿管令等の発動ができないというものではない、このように理解をいたしております。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 時間が参りましたので、二つお預けした点を保留して終わりたいと思います。  最後に申し上げたいのですが、総理、行政の法の原則ということですね。行政は法に基づかなくてはならないということは十分考えてもらいたいのです。私は、このことも、繊維協定も国会の承認を要する問題である、そのことを最後に強調いたしまして、一応終わります。(拍手)
  82. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  問題の点については、理事会で御相談をいたすことにいたします。  午後は二時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時三十一分休憩      ————◇—————    午後二時九分開議
  83. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、午前の田中委員発言の問題について、理事会の結果を御報告し、御了承を求めたいと思います。  財政法第四条の解釈、運用については、意見が分かれておりますが、この問題については、国会のほうにおいても今後検討をいたします。政府側においても慎重に検討せられるように申し入れておきます。  なお、ドルの売買の問題につきましては、資料のでき次第、すみやかな機会に、適当な方法で政府から提出をさせることにいたします。御了承願いたいと思います。  質疑を続行いたします。  この際、政府より発言を求められております。これを許します。総理大臣。
  84. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先日の正木君のお尋ねに対する私の答弁につきまして、不十分な点がありましたので重ねてお答えをいたします。  正木君に対する私の答弁は、速記録に明らかなとおり、政府は友邦諸国の考え方を十分聞き、その上で日本は自主的に日本の行く道をきめるということを申し述べたのであります。ここで申しているように、政府は、友邦諸国の意見を十分聞き、その上で自主的にわが国の態度をきめる、この考え方を推進するため共同提案国になったのであります。したがって、提案国一つとして、国連の場において、二決議案の趣旨、すなわちその意図するところを誤解のないよう各国代表に対してよく説明して、その理解を得るようつとめました。このことは、国連においてある決議案を共同提案する場合当然のことであって、かかる説明によって、その趣旨に賛同する国は賛成するであろうし、そうでない国は反対しまたは留保を表明するでありましょう。これを多数派工作と言われるならばやむを得ませんが、このようなことは国連の場において通常行なわれることであります。  表現が不十分な点があったかもしれませんが、前国会の答弁政府の態度決定までの心がまえを申し述べたものであることを御理解いただきたいと思います。
  85. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 去る二十五日の正木良明君の保留分の質疑を許します。正木良明君。
  86. 正木良明

    ○正木委員 いまの総理の御説明によりますと、問題点が二つあるだろうと思います。いわゆる友好国の意思を統一するために積極的な働きをしないと言ったのは、共同提案国になるかならないかということの意思を決定するために積極的な動きをしないと、これが第一点。それから第二点は、したがって、前国会におけるところの佐藤総理発言というものは何ら食言の問題ではない、国連において共同提案国となった限りには、賛成される国に対して積極的な動きをするのは当然だという、この二つの論点に分かれているように私は思います。  私は、何べんもこの議事録を読み返してみましたし、私自身発言でもありますのでよく承知をいたしておりますし、また、その前国会の質疑の、また応答の内容を報道されたマスコミの記事におきましても、政府においては、中華人民共和国政府国連に復帰させて台湾追放するという——その中で迎え入れはするけれども台湾議席を維持をするということについては積極的な動きをしないということについては、多数派工作をしないという答弁をしたという報道が行なわれている。これから見ましても、私の言い方、私の考えというものは決して独善的なものではなくて、一般の国民もそのように受け取ったのではないかというふうに私は考えます。  まあ、いずれにいたしましても、私は、アルバニア決議案が、政府の必死の積極的な働きかけ——私はこれを多数派工作と称しますが、にもかかわらず、圧倒的な多数で可決をされたという事実を見て、もはや私が最も心配することは、あとに残されたものは何かといえば、いわゆる中華人民共和国政府国連における唯一の代表権を回復されなければならぬという世界的な趨勢に対して、日本政府は積極的にそれを阻害する役割りをつとめていったということ、しかも、そのために多数派工作まで行なったということ、これの事実が非常にマイナスの面として残るということを私は非常に憂慮するわけであります。積極的に行なったか行なわなかったかということは、これはまあ世間がよく知っておることでありますし、国際的にも非常に有名なことになっております。現に、わが国の代表である愛知代表は、何べんかの現地における記者会見で、積極的な多数派工作のことを言明しているわけでありまして、たとえば十月の二十日に愛知さんは記者会見でこういうことを言っています。「この一両日で日米側にとって情勢はかなりよくなっている。日本代表部としては、どちらにいくかわからない国や、こちらに傾きかけている国の説得に全力をあげ、賛成票だけでなく反対を棄権にもっていくなど、同調者をふやすことに全力をあげている。」こういうふうに記者会見で発表しているわけです。これを多数派工作と言われるならおっしゃってください、私たちはそうは思いませんというふうな言い方は、私は、決して佐藤さんの将来のためによくないのではないかというふうに考えるわけです。もはやこの論議を繰り返してもきりがございません。  最後に、佐藤総理答弁を求めたいことは、いま一番大事なことは、こういうふうな冷厳な事実に直面して、今後、日中国交回復というような重要な課題に、佐藤総理が、ほんとうに、いわゆる口先だけではなくて、態度の上からも、そのためには絶対必要な原則というものを認めるということから始まっていかなければなりませんが、そのためにどのような積極的な姿勢をおとりになるか、これがやはり一番大事なことであろうと思いますので、その点を重ねてお聞きをしておきたいと思います。
  87. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま正木君が述べられたように、いわゆるアルバニア型決議案は成立したのであります。国連における中国問題にこれで終止符を打った、こういう状態であります。したがいまして、今後、国連におけるこの決議、その線に沿ってわれわれが国連中心外交を進めていくという場合には、当然その線でなければならないと思っております。私は、国連におけるその中華人民共和国を招請するということや、安保理の常任理事国になるということ、この勧告だけではなく、日中両国の国交正常化について積極的に取り組むことがこの際は必要だと、かように考えております。私は、そういう意味においての努力をいたしたい、かように思っておりますから、誤解のないように、また、この上とも政府を御叱正、同時に御鞭撻賜わりますようお願いいたします。
  88. 正木良明

    ○正木委員 このあと、私のほうの渡部一郎君が質問を続行することになっておりますので、すべてそのほうに譲りますが、一点だけ。  先ほど田中武夫委員質問に対して、これはおそらく総理はお間違いになったんだろうと思いますが、沖繩返還協定を調印するときにニクソン訪中承知しておったというふうにおっしゃったわけです。(「おかしいな」と呼ぶ者あり)これは断然おかしいのでありまして、ニクソン訪中をあなたがお知りになったのは、おそらく七月の十六日、三時間前ぐらいじゃないでしょうか。そういうふうに考えますと、六月の十七日に締結された沖繩返還協定の時点において、その一カ月後のニクソン訪中をすでに承知しておられたとするならば、これまたわれわれの考え方も十分に変えていかなければならぬ情勢が起こってくるわけであります。その点、これだけお聞きいたしておきます。
  89. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が知っていたというのは、これは間違いでございます。その点は取り消しますが、アメリカ側においては、この協定をすることについて、ニクソンが出かけることは十分心得ていた、かように私は理解しておるのです。そのことを申し上げた、かように御了承いただきたいと思います。
  90. 正木良明

    ○正木委員 これも詰めれば幾らでも詰まります。これはあと渡部一郎さんにお譲りしたいと思います。ありがとうございました。
  91. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部一郎君。
  92. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、中国問題及び沖繩問題につきまして、総理並びに関係閣僚に御質問したいと存じます。  申すまでもなく、日本は、中国問題に関して、今日までの外交姿勢の大幅な再検討を余儀なくされておる時期だと存ずるわけでありまして、私は、国連総会における決議云々をもって佐藤内閣を追い詰め、打倒するというような立場よりも、むしろ、この際、佐藤総理と、中国問題に関して日本の将来を懇談する立場でじっくりお話を詰めてみたい、こう考えているわけであります。  国連におけるアルバニア決議案の圧倒的な可決によって、中華人民共和国国連に対する議席が復活したということは、国連憲章の精神に基づいてまことに喜ぶべきことであったのではないかとまず思うわけであります。ところが、総理大臣も、外務大臣も、これに対してかなり不穏当な発言が続いておった。たとえば、福田外務大臣の場合ですと、国連において一生懸命やったのだけれども、不幸にして敗れたと、この間言われたのです。その、不幸にして敗れたというような姿勢でありますと、また国連外交において次の大きなエラーを招かないとは限らない、私はこう思っておるわけであります。少なくとも、国連に七億五千万以上八千万といわれるようなたくさんの加盟人口を得て、国連が普遍的な組織に変わったということは、世界の平和にとってまことに慶賀すべきことではないか。これを、むしろいままでの行きがかりを捨てて喜ぶほうの立場に立っていくことがまず大事ではないか。むしろ基本的な精神の問題でありますが、これについて総理外務大臣にお答えいただきたいと思います。
  93. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も、ただいま言われるように、長い懸案であった中国問題に、アルバニア案が可決されることによって終止符を打たれた、そうして国連中華人民共和国が迎えられる、このことを心から歓迎するものであります。ただ、私は、昨日も申しましたように、経過的な私ども考え方を重ねて申し上げておきたいと思います。  昨年とことしでは、もうすでに、中華人民共和国、これを国連に迎えるということについては私どもも賛成であります。また、これが安保理の常任理事国になることも、これもまた当然だ、かように考えております。ただ、アルバニア型と私どもとの相違は、いままで親交を重ねていた国府追放、これだけは、私どもは、どうもそこには賛成できなかった、かような状態でございます。したがって、中華人民共和国国連加入、これには問題はないはずであります。ただ、台湾取り扱い方について不満を持っておる、こういうように御理解いただきたいと思います。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 私が、本会議で、わが国が共同提案国となった両決議案が不幸にも否決をされた、こういうふうに申し上げた、その不幸にというところだけをとりましていまお話でございますが、全体を聞いていただきたいのです。そのあとで、私は、しかし、国連のこの事態を踏んまえまして、かねて申し上げているとおり、この日中国交の打開、これは歴史の流れである、私は真っ正面からこれに取り組む、この決議を踏んまえましてさらに努力をいたしたいというような趣旨のことを申し上げておるわけでありまして、決して不幸というだけにとらわれておるわけじゃありませんです。
  95. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いろいろな言い方をなさる外務大臣でいらっしゃるから、その程度の弁解は私はあまり詰めたくはありませんけれども、私は、日本政府の対中国外交というのは、一つずつサイクルがはずれておったのじゃないかと率直に言って思うわけでございます。たとえて言いますと、いま総理が、アルバニア決議案とほんの一カ所だけちょっと違っておっただけだというニュアンスを非常に強調なさっているわけであります。去年とはうんと変わったのだとおっしゃっているわけであります。しかし、総理がおっしゃっているよりも世界の歩みはもうちょっと早かったわけであります。したがって、総理が、何でも仕事をするときに後手後手になるというのがありますけれども一つずつ、イスカのくちばしといいますか、何かかけ違っている感じがする。たとえて言いますと、洋服でいうなら、制服を、上からボタンを一つずつかけ違って、ずっとはずれてきたという感じがしてならない。それがどうしてそういうことが起こるのか、これはわれわれが考えなければならぬことだと思います。  私は、ボタンの最初の一つ目がかけ違ったのは、サンフランシスコ平和条約の際からかけ違ったのだ、こう思っているわけであります。そうして、それ以来、代々の保守党内閣のボタンのかけ違いは、一貫してかけ違われておるのである、常に世界の大勢からちょっとずつずれておったのではないか、こう考えておるわけであります。つまり、サンフランシスコ平和条約の際に、ダレスさんから吉田全権に対する強圧に起因して、日本政府としては吉田書簡を出さざるを得なかった。むしろ、得なかったと私はおおらかに言うべきであろうかと思うわけであります。それは、そのために中国代表としては国府政権を選ばざるを得なかった。そうして日台条約を結ばなければならなかった。佐藤さんが強調されたところによりますと、日華平和条約という名前があるわけでありますが、こういうものを結ばざるを得なかった。そうして今度は、佐藤・ニクソン共同コミュニケにおいて、台湾における平和と安全の維持も日本の安全にとって重要な要素であるとまで言わなければならなくなって、台湾との安全保障の問題に関してコミットせざるを得ない。そうして、今回は、国連総会において、中華人民共和国の復帰に対して、逆重要事項指定方式あるいは複合二重代表制を取り続けた。この姿勢というものは、ダレスさんと吉田さんとの書簡以来ずっと同じ線である。そうして、佐藤さんはいまうんと変わったようなお気持ちでいらっしゃるのかもしれないけれども、気持ちということと外交における実際とははなはだしく違っておった。そうして、世界の大勢の中では一貫して食い違っておった。こう言えるのじゃないかと思う。  したがって、私は、日本外交中国政策というものは、ここで小さな手直しをすることが大事なのじゃなくて、このダレス、吉田さん以来の強烈な大きな失敗というものに対して、または、失敗と認めたくないならば、そういう方向に対して、いまここであらためて総洗いをして、洗い直す必要がある、まさに総点検をして、方向性をもう一回全部御破算にして考え直す必要があるのじゃないか、そういう視点に立って考えるのでなかったら、この中国問題に対する方向性というものは生まれてこないのじゃないか、こう思っているわけであります。これについて総理のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  96. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いまのボタンのかけ違え論、これもわからないではございません。しかし、日華平和条約を結んだその当時、このときのことを考えますと、国際的な世論というか、支持と申しますか、その国際的な支持は中華民国にあった。中華人民共和国を承認している国の数は少なかった、当時は国民政府を承認している数のほうが多かった、かように思いますので、国際世論に従うという立場から申せば、この日華平和条約を結んだその相手方、これを取り違えたということは当たらないんだ、かように思っております。吉田さんが国民政府と戦争終結の日華平和条約を結んだこと、これは間違いなかった。ただ、その際でも吉田さんは、中華民国が大陸に対して施政権が及んでおらないこと、この事実はちゃんと承認しておりますから、この中華民国が現に支配している範囲内において日華平和条約が有効だ、こういうような条件のついていること、ここで一応歯どめはあったと、かように思います。その後われわれは、一貫してただいま申し上げるような態度をとってまいりました。しかし、カナダが中華人民共和国を承認して以来、相当の数が中華人民共和国を承認するようになりました。したがって、ことしの国連総会においては、昨年のような国連総会に対する態度ではこれは通用しない、かように考えましたので、ことしは中華人民共和国国連に招請する、また、そのほうに安保理の常任理事国、その席をも勧告する、こういうように態度を改めたのであります。  ただ問題は、国府存在、これを追放ということに反対をした、このほうがいかにも力点が置かれているかのような渡部君の印象でございますけれども、問題はそれではなくて、その最初の大問題、中華人民共和国を積極的に国連に招請する、このほうに重点があったこと、このことをお考えいただくならば、われわれのとった態度が昨年とことしでは非常な変化があった、こういうことの御理解はいただけるのではないか。  ただ、もう一つつけ加えさせていただくならば、中国はいずれにしても一つだ、この点については原則として一致している。これは幸いにして、毛沢東主席にしても蒋総統にしても、中国一つだ、かように申しておるのでありますから、これらの点から申して、この台湾問題というものは中国の国内問題だ、こういうことも、これまた私どもも了承しているところで、これらについて異があるわけはございません。したがって、昨年までの日本の態度とことしの態度は、これは非常な変化だ、そのことは率直にお認めをいただきたいと思います。
  97. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理は立て続けにいろんな間違いを述べられましたので、私はもう一つずつ申し上げなければなりませんから、これは区切って一つずつやりたいと思います。  まず、国府反対のところに重点があったように思われては迷惑だというようなお話がありました。私は、総理国府追放追放と言うのは一つのテクニックだと思います。なぜかというと、この追放とかなんとかということは国際連合憲章の中にあるかどうか、まずお考えいただきたい。うそだと思われたら、そこに局長がおりますし、高辻さんがうしろでにらんでおりますから、御返答は何ぼでも出てくるはずですが、国連憲章の中には、国家を追放するということは存在しておりませんのは御承知のとおり。そして、国家を追放するというのではなくて、その国が一体どの政府によって代表されるかが今回は問題になったわけであります。だから中国の座席はなくなったわけではない。それを取りかえるというのでもない。ただ、中国全体、中国大陸と、そうして台湾と膨湖諸島、金門、馬祖全部ひっくるめて、その全部を代表するのはおれだというのが二カ所あった。それを国際連合では判定せざるを得なくなったということが今度の代表権の問題でございましょう。そうするとどういうことになるか。追放追放ということをとりたてて言って、国民政府を追い出すということはかわいそうじゃないかというような浪花節的な言い方は、それはわからない人には通用したとしても、総理の言われることばとしては、私ははなはだうなずけないことではないかなと、こう思っているわけであります。したがって、追放追放と、追放するのは妥当でないとか追放はどうとかとおっしゃいますけれども一つの大きな中国中国全体を追い出したのではない。今度出てくる中華人民共和国政府の国際連合における座席は、これは何を意味するかといったら、台湾中国大陸全部を代表するものとして、いままでは中華民国というまがいものがあって、今回は中華人民共和国政府というものがいよいよ登場したんだと、こういう認識に立たなければならないと私は思うのですけれども、いかがですか。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国連中国の加盟を許さないと、こういうような形ではございません。中国の加盟は、これはもう最初からきまっている。ただ、それを代表するものが一体どちらなんだ、こういうことだと かように思いますから、渡部君の言われるとおり私も考えております。
  99. 渡部一郎

    渡部(一)委員 じゃ、そこまで今度は言われたのですから、その問題はあんまりしつこく申し上げるまでもないと私は思いますから、じゃ次に参りまして、中華民国との間に日本政府が結んだところのいわゆる日華平和条約というものに対して、いま総理が言われたことは、ひょいとまた総理は大転換されましたが、私ちょっとここで指摘しておきたいと思いますが、この条約の中で、ここであらためて申し上げるまでもなく、これには地域について限定が述べられております。そしてこの条約の範囲内について総理はいまさっとおっしゃいましたけれども、この条約というものはどこに及ぶかということに関して、要するに、いま台湾とかその他の地域というものに対して現に支配しているところについて有効であると、はっきり言われました。私は、佐藤総理がもうここのところ中国問題に対して目ざましく態度が前進されるので、戸惑っておる一人でありますけれども、いままでの間は、吉田全権当時は日本政府は確かにそういうお考えでございました。しかし途中において、この政府考え方はそれと全く方向は逆転して、日華平和条約というものによって全中国との平和条約は終結したという態度をおとりになりました。また、ある評判の悪い条約局長については、これはもう連呼なさいました。ところが、いま総理はまたさっとお変わりになったように私は見える。ですから、その問題についてもう一回総理にお伺いしなければならぬわけでありますが、この日華平和条約については総理は、現に支配している地域のみについて有効だという立場をいまもおとりになっているのですか。
  100. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど日華平和条約を結んだそのときの国際的な環境は一通り説明をいたしましたから、また重ねて申し上げることは必要ないと思いますが、その当時は、中国代表するものとして国民政府を承認している国が四十数カ国あったと思います。また中華人民共和国を承認している国は二十二、三ではないでしょうか。さような状態であったと思います。そういう際に日華平和条約を結んだ。これが戦争終結を目的としての日華平和条約であります。しかし、戦争のような問題になりますと、地域を限るわけのものではありませんから、これは中国代表する政府としての責任において戦争終結の効果はあがると思います。しかし、当時といえども中華民国が支配している地域は限られておりますから、条約そのものがその範囲にとどまると言われる、このことは、その当時からわが党の主張でもあり、当時の政府の一貫した説明でもございます。これは私になりまして急に変わるわけじゃございません。その当時から変わらない説明でございます。
  101. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これまた総理、妙なところへ話がますますいきます。いいですか、こんな答弁で。これはもうえらいことになりますよ、こんなことをおっしゃっていると。総理、これは言い方逆なんです。地域を限定して平和条約を結んだものは平和条約ではございません。領土に関して全部話し合いがつかなかったら平和条約じゃないのです。そんなだったら、山賊と結んだ平和条約と同じことになってしまう。じゃ、中国の何とか省と条約を結んだ、何とか省と条約を結んだ、何とか省と条約を結んだと、こんなのは平和条約と言いません。こんなのは前代未聞です。ですから、平和条約でありながら地域を限定しておるから終結に効果があるといま言われたのは逆であって、地域を限定しているような平和条約であるから戦争終結に能力がないというのが、これは国際法からいったらあたりまえの言い方になりますよ。そうじゃありませんか。
  102. 高辻正巳

    高辻政府委員 先ほど総理大臣お答えになりましたのを幾らか補足させていただくだけでございますが、理論的にいえばまさに仰せのとおりに、日華平和条約というものは中国代表する政府中華民国政府であるという立場に立ってやったというほかはないのでございまして、したがって、仰せのとおりに、一国の正統政府であるというものを相手にして戦争を終結させるということになれば、それが代表している国との間に戦争は終結をしたと見るのはあたりまえでございます。したがって、それは地域的な限定には何らの影響を受けない。しかしながら、ものによっては、地域的な統治の実際というものがものをいうものも、規定の中にはないではございません。そういうものについては、現に施政が行なわれているその場面においてしかものが言えないのは、それは実際の反映でございます。しかしながら、基本的に日華平和条約を結んだその国との関係は、やはりその政府が一国を代表するものとして結んだことに変わりはないわけでございます。
  103. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それはもうむちゃくちゃな議論でして、それはちょっと勉強不足じゃありませんか、長官長官の言われたことは、当時の日本政府の立場は、中国代表するのは、平和条約を結んだんだから中華民国というしかない、そこまで言われた。それは正しい。けっこうです。なるほど法制局長官であると私は伺った。ところがその次はまずいのです。平和条約であるから地域限定を受けないのだと言われた。そうではない。地域限定を受けている代表権を持っている国家なんというのは存在しない。そうでしょう。負けた国が勝った国に向かって、おまえのところはこれとこれだけしかないのだ、あとは知らんぞなんという平和条約はない、こうなるんじゃありませんか。ですから、あとあなたがお述べになったことは全部うそということになりますよ。だから、こういういいかげんなことばかり言っておられたから、あと収拾つかなくなった。総理でさえお答えになれないような形になってしまった。そして、あなたが出てこなければならないその心境は、私はわかるよ、ほんとうに。ところが、これが戦後二十数年続いた虚構であり、でたらめだった。こんなことをいつまでもいつまでも続ける必要はない。私はもういま議論を続けようと思わない。あなたに聞いても、あなたはますます苦しがって新理論を開発するばかりである。それは、われわれが聞いているのはまだいいけれども新聞がいる、テレビがいる、そして世界が聞いている。もうみっともなくて私は聞くにたえない。それはもうやめられたほうがいい。それよりも全然根本に戻って、話をもとに戻されたらいいんじゃないか。ほんとうの中国代表するのは何かという話をされなければいかぬと思う。じゃ中国代表するのは何なのか、私はもう一ぺん問い直さなければいけない。だから非常に話が変な方向に、変な方向にいきますけれども中国代表するのはどこの国か。今度の国連においては、明らかに中国代表するものは、総理がもう御自分で指摘されたとおり、中華人民共和国であったわけです。口にするのもおいやかもしれないけれども、私はそう思う。また総理はそれをお認めになった。さて、日本政府はどうなさるのですかということです。中国代表権を持っているものは、日本政府としては——今度は国連ではない。総理がこの間非常にまぎらわしい発言をされて、国連での態度を支持なさるような言い方もなさったし、日本政府中国代表権として中華人民共和国を認めるような言い方もなさったし、非常に微妙な佐藤さん独特の発言をなさる。私は奇怪しごくでありますから、これについて、総理代表権問題についてどう思われるか、ひとつ言っていただきたい。
  104. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国連中国代表権問題は、先ほど来言われるようにアルバニア型決議案で決定した。これから先日本はどうするか。もちろん日本は、中国代表する中華人民共和国国交正常化をはからなければならない。また国交正常化をはかる間に、ただいま問題になりますような国民政府のあり方なども解決されなければならない。またその間において、両者の間に幾つもの問題がございますから、そういう事柄についてもこれが解決をはかっていく、こういう努力をしなければならないと思っております。私は重ねて申しますが、アルバニア決議案が成立し、その以前から申しておることではありますが、中国一つだというその立場に立って、あらゆる懸案を解決をして国交正常化をはかる、これが私どもの当然のつとめだと思います。
  105. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いま総理のおことばを聞いていますと、まことに正しい原則に急にお立ちになったように見える。もう一回重ねて伺いますが、中国代表権を持つものは中華人民共和国である、こういうことは間違いございませんね。——総理がいまうなずいておられますから、それを記録していただいておいて、じゃ次へいきたいと思うのです。  そうしたら今度は、日華条約に判こを押した当時、国連における国府支持の国家のほうがはるかに多かった、その国際世論に従ったのだというような先ほどお話をされました。今度は逆になっておるわけであります。そうすると、国家に対する支持は国際世論に従いながら変えていくのだと、非常にあなたまかせの言い方をなさったわけです。私はそれもやむを得なてと思う、いまの段階で。総理はほかの弁解のしようがない。ダレスさんからやられてすごい目にあったなどということをここで放言すること自体佐藤総理としてはぐあいが悪かろうと私お察ししております。しかしそうすると、この間総理は、国連における多数決を尊重することは国際民主主義であるという新語を発明されました。私は非常におもしろい言い方だと思ってメモしておいたのでありますが、じゃ、ここで国連における中国代表権の問題と同じ形を日本においてもとるということをいま明らかにされたわけでありますから、総理の言わんとされることは私もようやく了解したわけなんです。ここまで了解しました。今度はいよいよ中国一つという有名な議論に取りかかりたい、こう思っておるわけであります。  中国一つ蒋介石さんも毛沢東さんも言っておると言われたことは、私はそのとおりであると思います。それと同時に、今度は国家と政府ということを分けて考えてみますと、両者の考え方がもう一つあるのであります。それは、中国一つと両方が言っておりますのは、国家も一つだが代表する政府一つだと両方で述べておったわけであります。つまり中国一つだと両者は言っておる。総理のいつもの論法は、中国一つだと述べておる、それは賛成である、しかし政府が二つ現にあることは、これは歴史的事実であるとか、やむを得ないことだとか、いろいろ総理おっしゃいました。しかし、この政府一つであることを両方が主張したことが、国際連合における両方の衝突であったと私は思います。この点、国連において認められたことは、中華人民共和国政府が適切な代表であるということが認められたわけであって、要するに、国家の問題と政府の問題をごちゃごちゃにしちゃって、二つの政府があるというような言い方では話がつかないと思う。つまり国連で認められたのは、中国一つであって、それを代表する正統な政府中華人民共和国である、こういうふうに認めたことになっているわけであります。日本政府においてもそれをお認めになるかどうかを伺っておきたいと思います。
  106. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国連に関する限り、ただいま渡部君の言われるとおりであります。
  107. 渡部一郎

    渡部(一)委員 国連のことを伺ったんじゃなくて、日本政府のことを伺っている。ぼくは佐藤総理に伺ったのであって、佐藤国連代表に伺ったのではございませんですが、総理ひとつお答えください、日本政府の立場をもう一回。
  108. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は先ほど国交正常化をはかると言ったのは、ただいまのような基本的な原則を踏んまえて、そうして国交正常化をはかるべきだ、かように主張しておるわけであります。
  109. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでもうお話は大体済んできたわけでありまして、中国一つである、それを代表する政府中華人民共和国であると日本政府は認める、こういうことでございますね。
  110. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま申し上げますように、国連できまったこと、これをわれわれは踏んまえて国交正常化をはかる。その場合に、現実にある政権の処置、これはその場できめていくことだ、そういう問題でございます。いま直ちに国民政府、これを無視はできない。これも現実に存在するのでございますから、その点を十分に話し合っていくということを申しておけわけです。これは逆に申しまして、いわゆる中国代表するという中華人民共和国、この施政権は台湾には及んでおりません。また、台湾中国代表するものだと申しましても、中国大陸には足がかりも持っておらない、こういう現実ですね。これは双方とも、大なり小なりの差はございますが、そこにフィクションのあることは、これは認めざるを得ないのです。
  111. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は大体いまの御答弁でけっこうじゃないかと思います。総理があまりここのところを——国連における現下の情勢を踏んまえてやろうという基本的精神に立っておられる。ということは、私がさっき質問したような精神でいきたい、ただし現実いろいろごたごたしたくされ縁があるからそれを解決したい、大体こんな意味だろうと思いますし、いま総理、うなずいておられるから、そういうことだろうと了承して、表現がだいぶ両者の間で違いますから、この辺で次へいきたいと思っております。  私は、次にここのところで、総理の注意をあらためて喚起しておきたい。それは、政府を承認する行為は明らかに、内乱あるいは革命によって政権交代が行なわれる場合は、どちらが正統政府かを判断するのは外国政府であって、当政府の問題ではないということであります。総理は前に、二つの政府があって、どちらが代表するかはそちらの政府の問題だというに近い発言をされました。しかしそうじゃなくて、中国はどっちが正統な政府かを承認するのは日本政府の問題であります。そしていまそれを考える場合に、領土と人民について、どちらが有効かつ圧倒的に政治権力を行使しているかとなったら、面積で言うわけじゃないけれども、面積で言ったら家に三百対一、人口にしたら五十対一というような巨大な差がある。めちゃくちゃな差がある。ところが、その一のほうにこだわっていたのがいままでであって、それはむしろいままでの外交的な承認の問題は、政府承認の問題論としては、非常に妙な作為の上に築かれておった。それに対する責任を問われて、不幸にもきのうは福田外務大臣責任を追及されたわけでありまして、外務大臣になりたてにこんな目にあうというそのうき目に対して、私は深くお悔やみを申し上げたいとは思いますけれども、三百対一と五十対一の虚構の上にでっち上げた中国政策なんというのは、もうぱんとこの際軽々と御破算をしなければならない時期が来ておるんだ。その件については、おそらく、総理についても外務大臣についても、御意見は同じだろうと思います。  そうしたら今度は、次の問題は何かというと、台湾における政府の問題になると思います。台湾をどうするか。台湾における政権をどう見るか。確かに一つの政権が誕生しておる。総理はいろいろ言われておるわけであります。そうすると、もしそういう言い方をとって考えるとするならば、これは亡命政権なのか、それとも革命が起こっている途中でつぶれそうになっている残存政権なのか、あるいはこれは地方政権なのか、これはどういうふうに見るべきなのか。私は、これは総理、お考えいただきたいと思うのです。そうしないと、この交渉がまたこじれてくる。私はこれについて質疑応答を繰り返して何か言うつもりはないけれども、この際に総理に注意を喚起しておきたいことは、この政権は、一九五〇年六月二十七日に台湾海峡へ第七艦隊が出動することによって中国本土側からの進撃をかろうじて食いとめ、一九五四年の米華相互防衛条約というものによって維持されているところの政権です、もし政権と言えるならば。そうして、しかもこの米華相互防衛条約は、日華条約よりもさらに徹底的に台湾と膨湖諸島に限って条約が結ばれた。しかも軍事力の行使の場合は、アメリカ政府国民政府との合意によってのみしか軍隊を動かさないということを限定されておる。特定されている。それこそ、領土についても限定があり、そうして武力行使というような国家権力の重大な行使についても制限がある。これはもう明らかに中国代表する政権というようなものではなくて、地域も限定された、権力も限定された、そういったものでなければならぬ。そう見るしかない。また、これは亡命政権だというならば、中国でないところに行って亡命政権となるわけですから、そのときは、台湾というのは中国じゃないことになってしまって、佐藤さんの所論に反するから、おそらくは総理は、亡命政権などという変な御議論は吐かれないだろうと思いますから、この議論は省きますけれども、こういうふうな状況になっている台湾政権というものを中国本土の政権と一緒に並べてしまう。そうして二つの政権があると、大小も、みそもくそも一緒にしてしまって、数だけ二つという、こういうようなことは、時と場合によっては、日本の姿勢をほんとうに間違ったものに受け取られてしまう可能性がある。私はこの辺は十分おわかりであろうと思いますけれども、お気をつけをいただきたい、こう思っておるのですが、いかがですか。
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最近の国際情勢の変化、アルバニア型決議案が通過した今日、台湾にある蒋政権、国民政府とあえて申しますが、国民政府政権、この処遇はたいへんむずかしくなっております。ただいま渡部君から詳細に分析されて、この場合はどうだ、この場合はどうだ、たいへんむずかしい問題だと、こういうような意味のお話がありました。まさしくそのとおりであります。私どもも、いままで交渉を持っていただけに、これからどういうようにこれと取り組むべきか、これは慎重に取り組まなければならない、かような問題でございます。この際にどうするんだ、すぐ返事しろと言われましても、まだもっと十分私ども検討したい。しかる上で私ども考え方を明確にしたいと、かように思っております。ただいまは、私おぼろげに考えておりますことは、これは一日も早く北京にある中華人民共和国国交正常化をはかることだ、そうしてその際に国府のあり方等について十分話し合うこと、これが必要なことではないかと、かように思っております。
  113. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、総理は私の次の議題にもう入られましたので、私もそっちへ入りたいと思うのです。  これからどうするかという問題について、それこそ私は総理にこれはお考えをいただきたい。外務大臣もお考えいただきたいと私は思っております。  私は、この間の公明党の中国に対する訪中団の一人として、竹入委員長などの一行の一員といたしまして訪中させていただきました。たくさんの日本の国民の中国問題に対する解決をしてもらいたいという大きな希望を私はひしひしと感じておりましたし、中国へ参りまして、向こう側にもその大きな熱意があることは、私はおぼろげながらわかった一人でございます。そのときに私は向こうで、公明党と中日友好協会との間にいわゆる共同コミュニケというものをつくり上げたわけでありますが、その交渉にあたって私はひどく痛感したことが一つあります。それは向こう側とこちらの側に一つの暗黙の前提になっているものが、きわめて重大な前提があるということであります。  それは何かというと、話をする、あの声明の文の上にあらわれていない二大前提があります。その二大前提は何かというと、一中国は二度と日本と戦争をしたくないと思っており、そして日本軍に絶対攻めてきてもらいたくないと、もう腹の底から思っております。そしてもう一つは、日本がこの前の戦争についてやったことでありますが、その戦争についてやったことに対して反省しているのかどうか、それはもう鋭い目で、恐怖に近い目でこれを鋭く観察しているのであります。言うてみるならば、こちら側から見れば、中国民衆に対してあらためて出兵するとかなんとかいう気持ちを私たちは持っていないし、もしそんなことになるならばわれわれとしては命がけでやる気持ちです。しかし、中国のほうから見れば、ともかくあの中国領内に一つの国家をつくってしまった、かいらい政権のすさまじいものをつくってしまって、それが長期間存在したという事実、そして向こうの発表によれば、数もよくわからないのですけれども、一千万人というたいへんな人が殺されて、五千万とか六千万とか、とんでもないけた違いのすごい人数がけがをさせられたという事実がある。南京一つをとってみても、南京大虐殺のときに実に三十数万人という人が行くえ不明になっている、今日。五十万人虐殺されただろうといわれておる。また最近の朝日新聞の連載によれば、あの当時中国に進出していた日本の会社が万人坑というのをこしらえて、中国人を次から次へと虐殺しては、くたびれた者、栄養失調になった者、なぐり殺した者を全部ほうり込んで、それが大きな大きなほら穴になって死骸が積み上げられておる。その遺骨の前に大きな宣伝スローガン、それが掲載されているという記事が載っております。このような記録というものは無数にいま出るようになりました。それに対して、まず日本国民と日本政府は何を考えているのかということが向こうの最大の眼目であります。ところが戦後二十数年たちまして、そして日本政府としては、少なくとも中国大陸の民衆に対して、わかることばでそれに対して悪かったという意思表示も謝罪の意思も言及していないということが中国の民衆をどれだけおこらせているかわからないのであります。日本軍国主義に対する猛烈な敵がい心と警戒心というものも、日本国民の平均的な方ならばおそらく驚かれるほどのことを向こうが言いますのも、それに対して一言の表明もここで行なわれていないという致命傷によるものだと私は実感したわけであります。これはいかぬと私はそのときほんとうに思いました。そしてこれは、日華平和条約があるから中国大陸のほうもいろいろ済んだんだというような、そういうようなおそるべき言い方で少なくとも済む問題ではない。  そしてもう一つ考えられなければならぬことは、日本が再び侵略しようなどと思っていない、二度と攻め込んでいきませんという意思、その二つだけは日本政府として明らかにしなければならないと私は思います。これに対しての姿勢を総理が明らかにされませんと、中華人民共和国政府との間に国交正常化しようとどういう善意を持ってお考えになりましても、それは通じることではない。一千万人の人が血だらけになって死に、そして惨たんたる被害を受けて倒れておるという実感を持った中国民衆に聞こえることばにはならない。私は、このいやな思い出は私たちの世代のあたりで片づけなければどうしようもないと思います。戦争を知っている世代はもう私のところで終わりです。私より年の若い青年たちはそれを知りません。少なくとも総理の世代と私たちの世代の間に解決しなかったら、日本の若い青年は中国の民衆との間に深い憎悪感を抱くばかりでしょうし、また増幅された、それこそ拡大されたいろんな物語は、最後には日中両国民の間にさらに不安の種を巻き起こすと私は思っております。したがって私はここで総理に何を質問し、何を言おうとしているかという心情はおわかりいただけると思いますが、これからの日中間の平和と友好を推進するためには、総理が、破格のことではありますが、この場からその問題に対する日本国民を代表してのことばを吐いていただきたい、私はそう思うのでありますが、いかがでしょうか。(拍手)
  114. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 渡部君がみずから北京を訪問されて、そうして受け取られた実感、それに基づいてのただいまの二つの大前提、これは私が行かなくても私にもわからないではございません。また軍国主義に対する非難、これはどうも日本のやり方が今日まで平和に徹したと、かようには言っても、どうして軍国主義についての非難があるのか、そういうことを私自身もつぶさに考えてみました。おそらく過去の軍閥が残したつめあとがたいへん大きなものであって、これをいやし得ないものである。そういう意味から、日本が経済的に強大になればなるだけにまた軍国主義化するのではないか、おそるべき過去のつめあとを思い起こさずにはおられなかった、かように私も反省もしておるわけでございます。  ただいま言われるように、両国は隣同士の国だ、これが二度と戦争をしてはならないと思います。これは共存、そういう立場で、イデオロギーは違おうが、国境はあろうが、そういうことはかまいなしに共存する、お互いに繁栄の道をたどるという、そういう決意でわれわれもほんとに決心しなければならないと思います。そして、ただいま言われました過去の軍閥が残したつめあと、これについて反省をする、それが大事なことではないだろうか。私は北京を訪問したわけではございませんけれども、ただいま渡部君が、私は聞いていて声涙ともに下るような感想を述べられましたが、ほんとに私もそういうことが両国の国交正常化には絶対に必要だ、そういう意味で深い理解がなければならない、かように思う次第でございます。  私は、それにつけましても、わが国が戦後歩んできた今日までの経済繁栄、これが間違った方向へ行かないことをこの機会に皆さん方に申し上げ、同時にまた、それが隣の国、中国にもぜひ理解していただきたいと思うし、それこそはお互いがしあわせへの道だ、かように思っておりますので、これらの点については、まだまだ私どもとして認識の不十分な点があるだろうと思いますが、そういうことについてはみずからも反省もし、同時にまた御叱声も賜わりたい。とにかくお互いが隣同士、これは何をも越えて友好親善でなければならない関係にあるのでございますから、そういう意味でお互いに深い反省の上に立って、そうして平和を築きたい、かように私は思っております。簡単ですが……。
  115. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ただいまの総理のお話を伺いまして、私は、総理が率直に中国民衆の大きな犠牲に対して謝罪する旨の意思表示をなさることが、今後においての交渉の第一前提であると、もう一回繰り返して申し上げたいと存じます。  この間から福田外務大臣は、自分でも北京に行きたい、こう申しておられました。私は今度は福田外務大臣に、この問題について外務大臣はどうお考えになっておられるか、この場で述べていただきたいと存じます。
  116. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、いま渡部さんのお話、非常に傾聴いたしておったわけです。特に中国におきまして日本と再び戦争をしまいと、かたく念願をしておるという話を伺いまして、ほんとうに欣快にたえません。同時に、わがほうは一体どうなのだ、こういう問題でございますが、日華事変が起きた、あの当時のわが国の置かれておる立場、つまりABCDラインに包囲されて、どこにわが日本の行くえを求むべきかというせつない立場、これも私は理解をしておりますが、だからといって大軍を大陸に進め、その結果大陸の大衆にたいへんな御迷惑をかけた、これは私は率直に相すまなかったというふうに考えます。また、おそらく全国民もそういうふうに考えている、こういうふうに思います。  問題は、これからの問題だろうと思う。これから一体どうするか、こういうことだと思いますが、中国がそういうお考えでありますれば、わが国もこれに対応する姿勢をとらなければならぬ。現にわが国も厳粛にそういう態度を打ち出しておるのです。経済大国にはなりました。しかし、経済大国になりましたこの経済の力を軍備のほうに持っていっちゃいかぬと私は常々申しておるのです。この力をどこに使うかと言えば、内は福祉日本の建設だ、外は平和日本外交路線の推進だ、こういうふうに言っているわけですが、軍備は持たない、こういうことを決意した日本でありますが、しかし余裕が出る。その力、これは軍備以上に平和に貢献するという力のある経済の協力、これをもちまして世界の国々の民生の安定に貢献をする。これは私は日本の今後の行くべき大きな方向であり、わが佐藤政権はそういう決意をいたしておる、そういうことであります。ほんとうにそういうことが理解し合えますれば、私は、日中の国交、その礎石、スタートになるところの土台ができ上がるんじゃないか、そういうふうに考えております。
  117. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、そのいまのおことばの大ワクの意味を私は信ずることにいたしまして、あと私は、いままでに述べられたことで恐縮でありますけれども外務大臣に一言申し上げておきたいことがございます。それは、外務大臣は今回のアルバニア案決議が終わったあと、衆参両院で懲罰的な対象にされたときに、その反発でもありましょうけれども、国際信義を守り抜いたことについてはむしろ誇りに思っているという発言をなさいました。単独で聞けば、私はこれはそのとおりであろうかと思いますし、政治家として信念を貫いてそれが敗れたのですから、それについて問われるべき問題はないと存じます。しかし、外務大臣として発言なさいますと、これは中国という国が聞いており、世界が聞いているわけであって、必ずしも穏当な発言ではなかったかと私は存じます。外務大臣としての使命は、ここで私が申し上げるのもおかしいのでありますが、守った、協定した条約というものを大なり小なり、よきにつけあしきにつけ、それ昇るという一面と同時に、不当な条約、不平等な条約、わが国の国益に反するようなものについては、それを改めようとする強烈な改革性がなければならないわけであります。すでに日本は明治初年度において、日米修好通商条約のごとき幾つかの不平等条約を結ばざるを得なかった。そのときにそれを守った人たちが、国際信義を守るについてよかったなどと国内で発言したかどうか、私は考えていただきたいと思うのであります。国民あげてこの問題を何とかしょう、何とかこの不当性を除去しようとしてがんばっておったんだと私は思います。むしろ国際信義の上からいうならば、当時のアメリカの情勢、あるいは世界において国府が多かったというような状況がいろいろあったかもしれませんけれども、一九四九年の十月に国家が形成されていた中華人民共和国を無視して、三年後にこの日台条約のような条約を結ばざるを得なかったという状況について、御賢察をいただきたいとかなんとか言われるならば、私は含みのある答弁としてまだ将来何とか言えたのではないか、こう思うわけであります。それをこういう言い方で突っ走られるということは、今後お気をつけにならなければ、大きな仕事ができなくなってしまうのではないか。私は、むしろ大臣の将来のためにも、この辺はお考え直しをいただくのが妥当ではないか、こう思って質問するわけであります。
  118. 福田赳夫

    福田国務大臣 御親切な御勧告については、ありがたく拝聴いたします。ただ、私が申し上げましたのは、とにかく中華民国国民政府、これとの間には日華平和条約もある、また終戦当時蒋介石総統にはたいへんお世話になったといういきさつもある、また長い間善隣友好のよしみを通じてきたということもある、この日台両国の関係を弊履のごとく捨て去るということは、これはどんなものでしょうか。私は本会議でも申し上げているとおり、中華人民共和国政府との間の関係、これを正常化する、これは歴史の流れとまでも言っておるんです。しかし、一面そういう関係、いきさつ、国府との経緯、これを、もうどうも中国のほうが威勢がよくなってきたから、こういうので一顧もしないという立場は一体どんなものだろうかという考えを私は持っておったわけです。さればこそ、この二つの決議案国連でも出す、こういうことにしたのですが、しかし不幸にして、先ほどおしかりは受けましたが、これは敗れ去った。しかし、国連でも断が下ったんだから、またこの断が下ったという事実を踏んまえまして、日中の国交正常化には積極的に一そう努力をする、こういう決意でございます。それにしても、とにかく私は、国際信義は守り抜いたんだとみずから慰めていると言いましたのは、私のほんとうに率直な気持ちなんです。これを取り消せとかなんとか言われても、それは取り消すというような気持ちにはなりませんけれども、まあ御忠告は御忠告としてありがたく拝聴いたします。
  119. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いま台湾との間の問題でありますが、私もまた、台湾との間のいろいろな行きがかりというものを切り捨ててしまって、まるでお菓子でも切るようにぱんと切ってしまって、切り捨てろというようなことを述べているのではありません。国際外交がいかに非情であるからといって、問題が残ることは当然であります。私が言っておるのは、中国一つであり、代表する政府はいずれにせよ一つになろうとしている現在、こういう問題を隣国であるわれわれが扱うためには、国連憲章を持ち出すまでもなく、その二条七項にうたわれておりますが、内政不干渉という原則に戻らなければいけないと申し上げているのです。外務大臣である福田さんに、私がこんなことをお教えするのはよくないことだと私は思います。しかし、この原則をわからないで発言するとどうなるか、どこかの国で革命が起こるたびに、われわれはあたふたとああだと言い、こうだと言い、権益を守り右往左往しなければならない。ですから、内政不干渉の原則は国際法の原則でありますけれども、人類の英知といってもよい。この原則にもう一回戻らなければならない。だから台湾の問題についていろいろお世話になった、善隣があった、いまおっしゃいました、そうだと思います。また大陸のほうともお世話になった事実があり、長いおつき合いがあります。むしろ時間的な長さをいったら、大陸のほうがうんとうんと長い時間があります。数千年の友好善隣の歴史がある。二十数年間の歴史とは違う。むしろ逆にいうと、台湾日本が五十年間占領して、向こうの人々に御迷惑をかけた事実もあります。ですから、こっちにこれだけお世話になったとか、あっちにこれだけお世話になったなどといって、争っている両方に介入することはうまくない。だからその場合は、内政不干渉の原則にもう一回戻ることが、これからのやり方としては一番賢明なやり方である。率直なお気持ちがあるといま言われました。外交官は率直では困ります、もっと複雑でなければ。この複雑な日本をかついでいくのに、率直なんかにものをしゃべられてたまりますか。計算して言ってもらわなければ困る。そうでなかったら資格がない。私はむしろそれは心に秘めて、今後は御発言を慎んでいただきたい。そうした上で慎重にこの問題を——総理の言い方じゃないけれども、私もまた同じことを言わなければならない。慎重にひとつ扱いつつ、一歩ずつ漸進的な、前向きな方向でやっていただきたい。よろしくお願いしたい。どうぞお願いします。
  120. 福田赳夫

    福田国務大臣 問題が二つある、それを分けて考えたほうがこの問題の本質がはっきりするのじゃないか、そういうふうに思います。つまりいま中国に二つの政府がある、これは現実なんです。これをどういうふうにするかということに介入をする、これは私は内政干渉だと思います。わが日本はこの問題に介入してはならない、そういうふうに思います。渡部さんと全くその点については意見の一致であります。ただ、わが国はわが国として行動し得る問題がある。何かというと、国民政府との間に日華平和条約を結んでおる、これは国民政府日本関係でありますから、わが日本の行動いかんによってこの条約の運命というものはきまっていく、こういう性格のものです。この条約の問題を一体どうするか、こういう問題があるのですが、これには不干渉でいるわけにはいかないのでありまして、この問題は総理から常常申し上げておりまするとおり、いまわが国は中国大陸北京政府との間に国交正常化の話し合いを始めようとしておる。その話し合いの過程においてこの問題の結論を出す。これが妥当なことじゃあるまいか、さように考えております。
  121. 渡部一郎

    渡部(一)委員 外務大臣はだいぶ御意見がまとまってこられましたので、今後総理ともゆっくりお話しされた上で、慎重にひとつやっていただくようにお願いをいたしまして、次の問題に移りたいと思います。  私たちが今度中国で結んだ公明党のいわゆる五項目であります。これは、このたぐいのものの中では総理は多少批判をお持ちかもしれませんけれども、野党ベースでかってなことを言ってきたというような御批判は当たらないかと思います。というのは、この中には初めて、日本政府がこの五項目の主張を受け入れたら日中両国の戦争状態を終結し、日中国交を回復し、平和条約を結ぶことができると明示し、その上に中日不可侵条約を結ぶ可能性を中国側は意思表示をいたしました。ですから、ここに書いてあることは、今後の外交交渉においてうまく扱えば何とでもうまくなると私は思っております。その中で五原則がありますけれども国連の問題が第五番目にありまして、これは片づきました。もう何も言うことはございません。だから四原則に——あと残るのは四つであります。中国一つであるという第一原則でありますが、これもほぼ総理はこれに近いことを先ほどから述べられました。また台湾の問題について、私は中国内政問題であるという主張をいたしましたが、ただいま外務大臣も大体御了解のようであります。そうすると問題は何かというと、この中で第三原則と第四原則だけになってしまうわけであります。この第三原則は、日台条約は不法であり、破棄されなければならないという原則がしるされているわけであります。この日台条約について破棄されなければならないということは、あらかじめ破棄してこいとか、あとから破棄すればいいのだとか、いろいろさま、ざまに世の中でいま言われているわけでありますが、私どもの結んだときには、これについてとやかく何も言っているわけではございません。ともかく日台条約については将来何とかしなければいかぬのだという、基本的な姿勢に立つか立たぬかを中国側は聞いておるわけであります。つまりいろいろなやり口が現実論として出てくるのは当然でありますが、日台条約はあくまでも堅持するという立場でいったら中国とはお話はできません。これはもう明確であります。ただ日台条約について、総理の言われる日華平和条約について言うならば、これは将来破棄するのか、無効とするのか、補充協定を結ぶのか、付属協定をつくるのか、また自然消滅でいくのか、これは外務大臣が記者に言われたというふうに報道されておりますけれども、いろいろな手が無数に残っているわけであります。ともかく日台条約はこのままでは——日本中華人民共和国との間の国交正常化の道程において何かしなければならぬ、そういう認識をお持ちかどうか、これはまさに慎重に御答弁をいただきたいと私は思っております。お願いいたします。
  122. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来話をいたしましたように、日華平和条約のでき上がりの歴史的なことは、これはもう申しましたから重ねては触れませんが、しかし、今日われわれが必要なのは中華人民共和国国交正常化をはかる、そのことが何よりも大事なことであります。その過程において必ず日華平和条約は問題になる、かように私は思います。したがって、そういう際にいままでの経過経過として、また今後のあり方等についてもわれわれが慎重に善処すべき問題だ、かように思います。
  123. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま総理からお答え申し上げたとおりなんですが、いずれわがほうといたしましては、中国との間に正式な国交正常化の話し合いを進めたい、かように考えているわけであります。この正常化の過程においてこの条約をどういうふうにするかということをきめたい、かように考えます。
  124. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまの総理のお話は、例によってまたたいへん含みがあり過ぎましてあれでありますけれども日中国交正常化の道程において日華条約は問題になるというふうにおっしゃいました。私は、この御発言の方向は正しかろうと思います。この方向がさらに拡大されていくならば、中国とのいろいろなやり方もまた可能であろうと、私は将来をむしろ期待する立場で、あえて、あまり突っ込みますとまた変なことになりそうですから、私はこれは退却してやめておきたいと思います。  さて、今度はもう一つだけ念を押しておきたいことがあるわけであります。それはこれから台湾政府に対して変なことをするとたいへんこじれる状態になろうかと思って、私が心配をしていることが幾つかございます。その一つは、さしあたりの台湾との間の借款の問題であります。二度目の借款、これに対してどうしなければならないか。私はこの借款の扱いというのはよほど慎重にすべきだと思いますし、総理も十分お考えだろうと思います。  それからもう一つ台湾を今度は、中華民国じゃなくて台湾国とかなんとかいう形で新規国連加盟をさせようじゃないかという話が外務省の中でつぶやかれていると私はほのかに聞いております。もしもこんなことがほんとうだとしたら、それこそ世界の笑いものになるのじゃないかと思いますし、えらいことになるだろうと私は思います。  それからもう一つは、台湾独立論を唱えられる方があります。この独立論にコメントするなりお金を払ったりするということを、少なくとも政府はやるべきではなかろうと私は思います。また、こうしたことについて日本政府が、少なくともこれは妙なやり方をするとまずいので、ここでそれに対する網を大きくかぶせて、はっきりとお述べになっておいていただきたいと思います。
  125. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままで約束した事柄は、これは別といたしまして、新規借款については、慎重な上にも慎重に扱う、これは当然なことであります。  またその他の二つの問題については、いま私はさような点を耳にもしておりませんが、国連加盟だとか……。これがどういうような国になりますか、やはり新しい二つの中国論につながるような事柄については、これは厳に戒める、中国一つという大原則、これは貫く、そういうことで取り組んでまいります。  ことに一番心配なのは、最後の独立運動ではないかと思います。これなどは最も警戒を要する問題だろう、かように私も思います。
  126. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ただいまの総理の御発言、はなはだ明確であって、私もうれしく存じております。これは今後の内閣の方針として確定しておいていただきたいと思っております。  それから、もう時間が少なくなってまいりましたので、どうしても沖繩の問題に多少触れたいと私は存じますので、中国の問題はこの辺にしたいと存じます。  結局、沖繩返還の問題に移るにあたりまして、沖繩中国というこの二つの問題の接点があると存じます。それは何かといいますと、日中間の国交正常化中華人民共和国との間の正常化を進めていくという立場に政府がお立ちになるのでありますならば、沖繩の軍事的な意義ということは、これは当然再検討されなければならない段階になろうかと存じます。歴史の、今日の時点に立って過去を批判するというのは、小説家か歴史家がやることかもしれませんけれども、私たちとして見るならば、台湾について、その安全保障の問題を共同声明の中でやったということ、そして沖繩返還協定というものをかなり軍事基地協定というものにせざるを得なかったというようなこと、してしまったということ、これはもう世界の今日の情勢からいうと、かなりさかさの方向ではなかったか、要するにこういう時代の対応のしかたという点から考えますと、これは全く違う方向ではなかったかと心配している一人であります。したがって、私たちは今回の沖繩返還、沖繩の施政権が真実に日本の手に戻ってくるというのであるならば、これはもうあげて歓迎せざるを得ないのであります。しかし、その返還協定の内容において、あまりにも多くの犠牲が払われるのだとしたら、この協定の内容を私たちは批判せざるを得ないわけであります。したがって、私の立場は、この返還協定における、実際上ほんとうに返還になったと言いにくいほど膨大なる米軍基地の存在、あるいは協定文にあるさまざまな問題点について、今国会を通していろいろな場所で私たちとしてはお話を詰めていきたい、こう思っておるわけであります。ただ、ここではあまり時間がありませんので、私は簡略に数点について述べたいと存じます。  その一つは、沖繩返還というものは、少なくとも佐藤さんとニクソンさんの共同コミュニケ及び佐藤さんのナショナル・プレスクラブの演説においては、沖繩米軍のアジア極東の安全に果たしている役割りを高く評価されておる。そして、沖繩返還によって米軍の効果的な役割りがそこなわれないように確認している。そして、台湾、韓国において戦争が起きたときには、日本は事前協議で、米軍の本土、沖繩出撃に対しては足かせをするようなことをしない、逆にいえば、好意的に回答するということを示唆する、こうしたようなニュアンスが濃厚に浮かび上がっておる。これは基本的な構造として、今日から見ると少しオーバーな規定ではなかったか、まず概略的にそう思っておるわけでありますが、総理の御所見を承りたいと存じます。
  127. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩の米軍基地がたいへん密度が高いとかどうとかいうこと、これは批判として当然あることですが、いまアジアの平和が維持されておる、そういうことに対して、いわゆる米軍のプレゼンスというものは十分その目的を果たしている、これなければ、やはり戦争抑止力としての効果をあげてないのだ、かようにいまなお考えております。しかし、適当な数、量、質、そういうことについては私どもももちろん議論がございますが、全然米軍がいなくなるということではやはり戦争抑止力、こういうようなことは果たせない、かように思っております。その意味で、この基地の態様等についてはいろいろの議論があり、またそういうことはもう少し時間をかしていただくというか、それによってよほど変化もするのじゃないか。あの狭い地域に対して、今日の米軍はいかにも量としてもまた質としてもわれわれの納得のいかないようなものがある、こういうことは言えると思います。  今回の返還協定に際して、わずかではありますがそれが縮小される、こういうこと、あるいは今日までに毒ガスが撤去されたということ、さらに核兵器、これについての撤去も約束しているということ、これなどはそれぞれに評価さるべき筋のものだろう、かように思います。
  128. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私が申し上げておりますことは、米軍の存在の質、量というものについて、いま総理は質、量ともに納得できないし、これについては今後まあ何とかというような意味合いのことを言われましたが、それは確かだと思います。それについては私は意見が同じであります。しかし、私が述べたことはそうではなくて、米軍の存在日本の安全あるいはアジアの安全というのではなくて、アメリカの肩がわりをした日本軍が極東の安全のために使われ、日本全体が巻き込まれていくという大きな危険性があるということについては、これはもう何とかしなければならない問題であり、ここに協定の最大の問題点があろうかと思います。  それからもう一つは、質、量ともに納得できないというお話をされているのですから、私があらためてここでもう一回申し述べることもないかと思います。ぼくの質問を先にしゃべられると困るのでありますが……。ところが、質、量ともになんと言っておられない問題があります。それは核であります。福田外務大臣はこの間——また外務大臣に当たるようで恐縮でありますけれども、この間ここの席上での応答のときに、もし核があったら、米軍が返還した時点において核があったら、背任行為として断固たる措置をとると声を張り上げて力説されました。これはちょっとすごいことばでありますので、当委員会における発言でありますが、もう一回福田さんに私は確認しておきたいと存じます。
  129. 福田赳夫

    福田国務大臣 この間お答えしたとおりでありまして、これを反復する必要もないくらいに私は考えております。  ちょうどついででありますので、御質問にありませんが、きのうアメリカの上院の外交委員会でその聴聞会が始まりました。その席でアメリカの国務長官に対しフルブライト委員長より、返還協定は沖繩からの核兵器の撤去を想定していると思うが、そうであるかとの質問があり、ロジャーズ長官は、委員長、そのとおりであります、そういうふうに答えております。そのことをつけ加えます。
  130. 渡部一郎

    渡部(一)委員 どういうわけだか、私の質問をお察ししていただいたようで、次の分はもうすでにお答えがありましたので、せっかくのお話でありますから、そちらのほうに話を進めたいと存じます。  この間佐藤総理は、佐藤・ニクソン会談のときのお二人の話し合いのときに核抜き返還をきめたんだ、だからいまあるかどうかは問題でないし、返ったときになければいいのだとい名言を吐かれました。まさにこういうのは名言の部類だろうと私は思います。またそれを遠くのアメリカから援護射撃をするように、ロジャーズ長官が核は抜くんだという意思表示をされたということについては、非常に形がうまくいっておられるようであります。日米協議もまさにここまで来たのかという感を私は抱いているわけであります。  ところが、私がこの核の問題についてどう考えてもおかしなことが幾つも幾つもあるわけであります。これはまことに恐縮なんでありますけれども、私はもうこうなったら、現物でひとつ総理にちゃんと申し上げざるを得ないことがある。この間私たちは沖繩を訪問いたしまして、だいぶいろいろ調査してまいりました。その際にいろいろわかってきたわけでありますが、核をそう簡単には撤去することができないのじゃないかという不安であります。  その証拠の一つは、この間の私たちの代表質問の中でも一人述べておるわけでありますが、核弾頭を破裂させるためのHEという炸薬があるわけであります。この炸薬は非常に高性能爆薬で、移動する際に破裂いたしますと非常に危険である。三百フィートの間では人家がこわれ、人が殺傷される。したがって安全を考えると、片側は千フィート、約三百メートル、片側に千フィート、三百メートルというものを、ぱあんとあけなければいけない。これは厳重に守れということをアメリカの軍の工兵隊の文書の中で述べているわけであります。そうすると、いま核弾頭のあるところから運び出さなければならない。ところが、運び出さなければならないにもかかわらず、いままで、あるのかないのかわからないとか、どうしたらいいかわからないとか、お金出したからうまくやってくれるでしょうとか、いろいろなお話が出たわけです。ところが、お金を出したってこれはぐあいが悪いわけであって、この沿道を通るときに約千フィートでカバーいたすとしまして、たとえば知花弾薬庫というのから出すといたします。それから例の辺野古というように、社会党の同僚議員がお述べになりました分は勘定しないで、南部にある弾薬庫からこれまた桟橋に出すといたします。この両方の二つの経路、辺野古の分を含まないで、この千フィートの分で約二万名の人々がこの危険地域に入るわけであります。毒ガスのときには人を退去させて運んだ。核兵器のときには人を退去させない。いつ爆発するかわからないで退去させない。こんなばかなことがあっていいのでしょうか。これは何が何でも納得できない。しかも、弾頭というのは必ず運び出すときに事故が起こっておる。この核弾頭というもの、あるいは核爆弾というものもいろいろなものがあるらしいけれども、核弾頭というものを運び出すときにいろいろ事故が起こっておることは、いままで十数回も世界で事故が起こっておる。ところが、運び込んだのはいつ運び込んだかわからないけれども、今度は出す段になって地元住民に何にも知らせないで、ただ七千万ドルのお金を出したから核は安全に運び出されるでしょうとは、私は言えないと思うのです。これは一体どうなさるおつもりなのか。私は、これはちゃんと御答弁を承っておきたい、こう思っております。どなたでもひとつお願いします。
  131. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、核についてのそういう技術的な知識をまだ持っていないのです。ですから、ただいまの渡部さんの御質問に的確にお答えするわけにいかないのでありますが、まあ非常に大まかに言いますと、弾頭とその弾頭に起爆現象を起こさせる兵器、こういう二つの種類のものがある。それでそれは別々になっておるわけでございまして、そう一緒になっておる場合のような危険はなかろうじゃないかというふうに私は説明を受けているんです。しかし、なお私もそういう問題につきましては勉強してみます。
  132. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ちょっと申しわけないですけれども、少し答弁が荒っぽ過ぎるし、これはもう話にならぬと思いますな、私は。資料を出していただくか、明確な答弁をいただくかでなかったら、これは話にならぬじゃないですか。
  133. 西村直己

    西村(直)国務大臣 HEが高性能の爆薬であることは、これはおっしゃるとおり。問題は、核弾頭というものがどういう形であるか、これはなかなかわれわれ自体が確認はできない問題でありますが、核物質そのものがいろいろ、飛行機の墜落、スペインであった事故等、これ自体が爆発をしたという例はまだない。問題は、しかし起爆をどういう形でやるか、ときにHEなどを使うということは想定される。その性能についていろいろだだいま、相当な距離に非常に被害を与えるというような御説明がありましたが、これはやや専門的なことでありますので、私どものほうで一応調査しておるHEに関する所見を、専門職から述べさしたいと思います。
  134. 久保卓也

    ○久保政府委員 米側の資料によりますると、核爆弾を移送、貯蔵する場合に、その危険性というものはほとんどないか、きわめて少ないということを申しております。きわめて少ないということでありますから、皆無ということではないかもしれません。それから核爆発そのものは、これはいたさないようであります。これはいろいろな、たとえば火災の中に核爆弾が包まれたこともありますが、この場合には爆発しておりません。核爆発というものはしておりません。  ところが、御指摘のようにHEというものは非常に危険なもののようであります。しかしながら、それが爆発をした場合に、いまおっしゃったようないろいろな危険の度合いというものは出てまいります。ただし、これは言うまでもなくHEの量によって、どの程度の範囲が爆発した場合に危険であるかということが変わってまいります。そこで一般的には申せないわけでありますが、特に核爆弾についてHEがどの程度入っているかということがわからないという意味で、その運搬もしくはHEが火災に包まれて何十分か後に爆発いたしますけれども、その際に、どれぐらいの危険距離をとればよろしいかということは、これは核爆弾の中のHEの量がわからないので見当がつかない。したがって、これは極端な例でありまするけれども、核爆弾を輸送中に火災にあって、何十分かした場合にHEが発火するということでありますから、そういうような情勢がほとんど絶無の場合であるかどうか、あるいはまた現地に核がもしあるとしました場合に、その核の担当者がどういうふうに輸送するか、どういうふうに安全措置をとるかという問題と関連してくるであろうと思います。
  135. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまの御答弁は、人命の一番大事な問題にかかわるし、私は核のことを聞いている。核の、まあHEを聞いているんですから、これは返事のできないわけはない。しかも、いまの方は明らかにアメリカの資料によればとおっしゃった。私はその資料を、HEに関する資料を提出されることをここに委員長にお願いしたいと思います。そうでなかったら、これは話が進みませんですよ、こんなんじゃ。そうして、しかもそれが平然と持ち出されて、何千人、何万人の人がけがさせられたらどうしようもない。これはどうしようもないと思います。
  136. 西村直己

    西村(直)国務大臣 HEに関しまする資料は、手元にありますものはお目にかけてみたいと思います。
  137. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これについては資料として委員会に提出されるように、ひとつお願いいたします。よろしゅうございますか。  それじゃもう一つ、最後にどうしてもすごいことを少し言わなければならないのです。
  138. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 渡部君に申し上げます。  時間がもう一、二分でありますから、そのつもりでお願いいたします。
  139. 渡部一郎

    渡部(一)委員 じゃ最後に一つだけ、私はちょっと総理に、これはちゃんと申し上げておかなければいけない。というのは、核というもの、核兵器というものはちゃんと運び出されると総理は期待を述べておられます。いままで何回も述べられました。私たちもそれを半分信じかかっているわけであります。ところが、どうもおかしなことがあるわけでありまして、最近におきまして私たちが米軍のいろんな資料について接触するチャンスがありました。そうしましたら、とんでもないことが一つありました。佐藤さんが共同声明をおつくりになっていたころ、この沖繩の核抜き返還をほとんど合意したころに建設に着工した核倉庫と思われる資料がございます。これは設計図であります。この設計図は何枚かからなっておりますが、詳細なものでありますので、専門家に見ていただければあとでわかるだろうと思います。明らかに普通の倉庫、普通の弾薬庫ではございません。これはCBRに関するものであると思われます。そして、しかもその着工は、毒ガス撤去の問題が起こったときに着工されておりまして、したがって、毒ガスのものともちょっと思われない点があります。それとも、もしこれが毒ガス倉庫であるとしたら、それこそはなはだしい背信行為である。とんでもないことである。しかも、この作業に従事した人が何人かおられるわけでありまして、当時、普通の工事ではあり得ないほどの武装した米軍兵が警戒に当たっており、三人の仕事をしている方に一人ずつ武装した米兵がついておる。こういう状況があるわけであります。これらにつきまして、ともかくこれは知花弾薬庫のどまん中に、いままで何にもなかったところにつくられているわけでありまして、ここに四区画になっております。この四区画になっておりまするところに、大体ナンバーが幾つかついておりまして、このナンバーによりますと、明らかにこの地域においてこのような奇怪なものが建設を進められておるということが明らかであります。ここにあります写真は、いま二、三枚持ってきたわけでありますが、十九枚ございまして、そのうちこの写真では、通常弾薬庫と違う新型強化コンクリートバリケード、電流線、洗浄装置その他がついておりまして、マガジンナンバー一二からマガジンナンバー二〇までの九カ所を新設しているわけであります。  私は、核兵器がさっさと抜かれてしまうという保証を得たいのでありますけれども、これでは抜かれるのかどうかわかりはしない。そしてまた、これは知花弾薬庫の地図でありますが、このちょうど中央のあたりになっておりまして、あとで見ていただきますが、大きな地域がございます。その地域につくられたものであります。そうしてこのようなものがつくられておって、われわれとしてはもうはなはだ不愉快である。いまごろ、撤去するというときにこういうものをつくっておる。私は、この内容については説明を要求するのが妥当だと思います。アメリカ側の説明を要求し、ほんとうに核倉庫だったらこれは問題だし、毒ガス倉庫だったら問題なんです。そんなことはないという確約を向こうから取りつけていただきたい。そしてまた、そう簡単に向こうさんの言うことは信用できぬということであります。そして私は、きょうは論証することは避けますが、核はまだ現にアメリカ軍の沖繩の倉庫の中にありますし、証人から材料から、全部用意してあります。しかしそれは、これから先どうなるかわかりませんけれども、その問題についても、私はいまなお撤去されていない核、そういったものについて、これから先われわれとしては十分な判断が必要かと思う。総理の御所見を承っておきたいと思います。
  140. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの状態の、何か特別な倉庫を建設しているという、そういう情報は私ども全然知らないことですが、しかしただいま提示された以上、その実態についても十分連携をとりまして調査する、しかる上でそれに対する対策をとると、このことを申し上げておきます。
  141. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この問題については、もうこれで時間もありませんので、私は発言をやめますけれども、ともかく核倉庫の中を総点検さえしなければ何とかなるという考えが向こうにあれば、私はたいへんだと思う。それですから、総点検に準ずるやり方で、何らかの立場でこちら側の、日本側の立場で、核がほんとうに撤去されたということが確証されなければならない。このことを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  142. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて渡部君の質疑は終了いたしました。  次に阪上安太郎君。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕
  143. 阪上安太郎

    ○阪上委員 一昨日、御案内のように、中国が祝福されまして国連に迎えられました。実質上その一阻止につとめた日米などいわゆる国府擁護派が惨敗したわけでありますが、そこで、この間の本会議以来、佐藤総理責任追及の論議が戦わされる、こういうわけなんであります。しかし私は、負けたから責任をとるというような単純なものでなかろう。私もいろいろスポーツをやっておりますが、勝ったり負けたりするわけであります。問題は、やはり佐藤内閣が最近のこの歴史の流れにさからって、実質的に中国阻止というようなものに狂奔したが、もっと大事なことは、そういった中でわれわれが感じられるのは、うしろ向きの対中国政策であったということでなかろうかと思うのであって、ここが責任のよりどころだろう、私はこういうふうに考えるわけなんであります。もちろん君子は豹変するということがありますので、最近ではアルバニア案に対する逆重要事項提案というもので少し変わっておりますが、そこで私がきょう言いたいのは、そこじゃなくして、それと同じようなことが国内政治の場面でも言えるのじゃないだろうか、こういうことなんであります。  佐藤内閣はやはり歴史の流れにさからったといいますか、わが国の経済社会発展の流れの中で、やはり人間軽視の新しい、これはソシアルダンピングといいますか、そういった型の高度成長政策に狂奔してきた。そこで社会資本の充実を怠り、一国民生活を非常な危機に追い込んだ、こういうことでなかろうかと私は思います。ここにやはり佐藤内閣が国内的にも責任を問われるところでなかろうか、こう思うのであります。  そこで、私はここで、きょうは責任を問うわけではありません、お伺いしたいと思っておりますが、この間うちからの佐藤総理の所信表明演説、この中でこういうことを次々と言っておられるわけであります。景気の落ち込みを防ぎ、そのすみやかな回復をはかるため、財政金融面から積極的な景気浮揚策を展開する。あわせて社会資本、社会保障を充実するんだ。さらに国民福祉と経済成長の調和のとれた新たな繁栄への条件をつくり出していく、そういう所存だ。さらにまた、今後公共投資の大幅な増加をやるんだ、財政投融資の拡大をやるんだ、公債の増発をやるんだ、さらに年内大幅減税を実施するなど、広範な景気対策を推進する。こういうような所信を表明されております。さらに、しかもこの景気対策は、単なる高度成長政策への復帰を意図するものではなく——なかなかいいことばだと私は思います——福祉社会の建設に向かうことが基本的な課題である。こういうふうに述べられておるわけであります。  こういったものを考えてまいりますときに、先ほど言いましたように、やはり国内政治の面において責任を問われなきゃならぬ問題に対し、佐藤総理の切々たる反省というものがここに出ておるんじゃなかろうかと私は思うのであります。このことは私はいいと思います。ぜひここでこういった方向への転換をされることがもうきわめて必要だ。先ほど田中委員質問にお答えになりまして、はっきりと、大転換の時期であるということは私にもわかる、こうおっしゃっているわけでありまして、これは非常にけっこうなことだと私は思いますが、しかし、このようなことは、総理、毎国会ごとに目標を出されておるわけなんであります。それが一向実現に移ってこないというところに、私は問題があるんじゃないかと思うのであります。ほんとうにそういう反省をなさって、ここで新しい繁栄の道を見出していくんだ、在来のような高度成長の姿に戻るのではないんだ、こういうことをおっしゃるならば、やはりその政策実現の手段というものをここで明らかにされなきゃいけない。言いっぱなしではこれは何の意味もないんだ。結局いままでどおりの、転換どころか、同じような方向をたどっていくんじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでありまして、ぜひひとつここで大きな転換をするために、いま申されたような目標がさらに検討されて、正しい目標であるということになりますれば、それとあわせて、同時にその政策実現の手段というものをここで示されなきゃいけないと思います。これをここで申しておきませんと、結局予算委員会で論議をしたという程度にとどまってしまうのであります。それをわれわれ何年間か繰り返してきた。こういうふうに私は記憶いたしております。ことに、同じ演説の中で、社会資本充実のための公共投資の重要性がますます増大する。そこでいろいろなことを言っておられますが、強力な地価対策並びに土地利用の合理化をはかる必要があるんだということを切々と訴えられておるのでありますが、総理、これはあなたも御存じのとおりだと思うのですが、このことについてはわれわれは何回かここでやっているのであります。一向実らないのであります。これはやはり先ほど言いましたように、目標はきまったけれども、その計画の中においてその実現の手段というものが一向明確になってこないから、こういうことになって今日まで続いているのだ。同じことを総理は繰り返されております。  そこで計画ということになりますると、こういった経済計画はやはりわが国におきましては経済企画庁がやるのでありましょう。しかしながら、この経済企画庁は実際は計画だけやりまして、あとは知らぬ顔しているわけなんであります。やはりこういったところに問題があろうと思います。一体、総理は目標を示されたのでありますから、しかも、その目標は私はおおむね正しいと思いますので、どういうふうにしてそれを実現していくか、制度の面もありましょうし、いろいろな面もありましょうが、そういったところをひとつこの場合お聞かせ願っておきたいと思います。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 方向は御賛成をいただいたようですが、その具体化についてもっと積極的なやり方を示せ、こういうお尋ねでございます。もちろんそれぞれがもうすでに長期計画を立てております。道路にしても、下水道にしても、あるいは住宅にしても、それらの長期計画についてもやはり改定を要する問題が起きております。さらにまた、全国総合開発計画、新全総といわれるものも、これは三年たつと中身を変えていくというようなことになっておりますから、そういうような基本的な問題をとにかく取り上げていかなきゃならないと思っております。これらの事柄を各方面の英知を集めまして、そして政府がこれを実施する、こういうことでございます。まだ私は、過去において、十分の意見を聞きながらも実施の面で非常におくれておることがあると思っておりますから、そういう点の行政担当者をやはり鞭撻することも絶対に必要だと思います。ものによりましては、計画はうまくできているがその実行を担当しているほうでおくれておるというものもあって、なかなか目的を達することができない。今回の補正予算にいたしましても、これを年度内できるだけ早い時期に消化する、そのことは実は並みたいていではございません。すでに本年度の予算、それの具現化、同時にまたそれに対する補正予算の、追加予算の具現化でございますから、行政担当者としては非常な忙しい思いをするのではないかと思っております。また、それをチェックするような会計検査などの制度もありまして、事務当局が、行政官庁が積極的な意向を持ちましてもなかなかそういうことができない、こういう心配もあります。そこらのかじをとること、これが私どもに課せられた責任ではないだろうか、かように思っております。  要は、いま御審議をいただいておる公債の大幅増発、減税、そういうようなものが実効があがるようにすることが必要でございますから、計画倒れにならないように実際に処理していく、これはあなた御自身がかつて地方自治体の長でもあられた、そういうところで御経験済みのことでありますから、私は政府もそういう意味の御鞭撻を賜わりたいと思います。  詳細については、なお計画の変更等については、あるいは増補等については、企画庁長官からも説明さして差しつかえございません。
  145. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 いま御指摘の点の中で、経済企画庁が長期計画を立てて、あと全然事後の追跡調査をしていないというおことばがございました。いままでわが国の経済体質で一番おくれておりますのは社会資本の相対的不足でございます。その点を、われわれ昨年つくりました新経済社会発展一計画の中でこれを軌道修正するという目的で計画を作成しておりますが、先ほど総理が三年間と、新全総の問題で申しました。実はこれは新経済社会発展計画の見直しを三年後にやるということでございます。したがいまして、私どもはたとえば昭和四十四年に国民総生産の中における政府資本というものを大体八・四に見込んでおりました。昭和四十五年度の実績調査の結果、それが八・一に落ちております点なんかを、さらにこれを修正いたしまして、新しくいま準備作業を進めておりますが、その中では、これを昭和五十年におきましたは九・五に高めるというような軌道修正をいましておる最中でございます。  その他、いろいろ社会資本の立ちおくれに対しまして、今後補正予算その他で十分これを再検討していく方針に変わりはございません。
  146. 阪上安太郎

    ○阪上委員 いま総理からお答えいただいたのでありますが、私はそういった新しい情勢に対応する大転換をやる場合に、さらに目標を定めるとともに、正しく選択するとともに、その実現の手段というものを真剣に考えなければいかぬということを申して、先ほど答弁をいただいたわけであります。  そこで、まず総理からの御答弁の中に、衆知を集めて一ぺん公共事業の長期計画なり経済社会発展計画なり、あるいは国土総合開発計画なりを練り直してみる必要がある、こうおっしゃいました。けっこうだと私は思います。そうしてもらわなければいけないと思うのであります。  そこでまず、そういったことをやるための制度でありますが、政府にはそういったことに参画するところの、いろんな審議会であるとかその他の諮問機関があるわけであります。これは私先ほど資料をいただいたのでありますが、審議会等の各省別の数というものは非常に大きな数が出ております。二百三十七の審議会等があるわけなのであります。そして、その中から拾ってまいりますると、いま申したような、経済あるいは開発というようなものに関連して三十に近いそういう審議会等があるわけなのであります。こういうような形でこの大転換に対応していこうということになりますれば、こんな制度のばらばらなことで、はたしてやれるかどうか、こういう問題があろうと思うのであります。これを何とかまとめられて、斉合性のあるものに総合していかないと、こう各省ばらばらでもって、日本の国土計画を立てたり、経済社会発展計画を立てたりしたって、そんなものは斉合性もなければ何にもない。だから、一そこに田中さんおられますけれども、前は都市問題等についていろいろといい案を出されておりましたけれども、これが各省におりていきますと、一向にこれを取り上げてやろうとしないのであります。それは社会資本の形成、政府固定資本等、あるいは国民総生産との関係とか、いろんな問題が出てまいりますけれども、そういうことを、かりにその比率をどうするという問題が出ましても、それだけでもっていままでの社会資本の立ちおくれを何とか直していくんだ、こう言ってみたとしたって、こんな制度でもってものをやっておって、それで衆知を集めたって、これは役に立たぬ。そこで総理、これはどうなさいますか。これは前々から問題になっている問題なのでありますが、この点ひとつお答え願いたいと思います。
  147. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 各省ばらばらで委員会を開いてみたって、これはいま言われるとおり、ただ自分たちのなわ張りだけで会議を開いておる。それより以上に進まない。これは官僚機構の強さでもあるが、最も悪いところだと思います。新しい方向転換をする、そういう場合においては、各省庁の考え方を一致さすこと。その場合には、やっぱり何と申しましても総理自身が音頭をとる。そうしてその音頭をとる手助けを願う。これはいままでのところ総務長官にやってもらっておる、手助けを願っておる。そうして、各省庁間の権限争いをひとつ大所高所から判断して、これをきめていく。最近の例で申せば、環境庁ができた。その環境庁ができる前に、各省の意見をそこへ一致さす。そうして一本にしぼる。こういうようなことには、政府政府なりに努力してまいったのであります。ただ、国民の側から見ますると、それぞれ世話になっている役所がございますので、やっぱり国民のほうから見ると、自分たちの担当官庁、それを大事にする。そこらでもっと発言がないのか、こういうような気持ちがするのではないだろうかと思いますけれども、どうも私は、一本にまとめる、そういうことが最も大事なことだ、かように思います。そういう方向で努力するつもりでございます。
  148. 阪上安太郎

    ○阪上委員 たいていの場合はこの辺で私引き下がるわけなのでありますけれども、そういう答えを毎年いただくというようなことで、いつまでたっても直らないのですから、いま少しお話を申し上げてみたいと思いますが、たとえば総理府で、国土総合開発審議会がございますね。それから、同時に、地方産業開発審議会がある。水資源開発審議会がある。離島振興とか、あるいは山村振興の審議会がある。そこへもってきて国土開発幹線自動車道建設審議会がある。さらに国土開発の面でやはり海洋開発審議会がある。港湾調整審議会がある。歴史的風土審議会、これも最近できたのでありましょうが。そこへ首都圏であるとかあるいは近畿圏であるとかあるいは中部圏であるとか、こういったものがある。一方経済審議会があり国民生活審議会があり、こういうふうにいたしまして、総理府だけ見ても、私は、一体何をやっているんだろうという気がするのです。もう少し斉合性のある、総合性のあるものにまとまらないのか、こんなもの。何がためにこういうことをやっておるのか私にはわからない。だから、船頭多くして船はもう山に登ってしまうのではないか、こういう気がするわけであります。それから、たとえば最近環境庁ができまして——そのほか建設省関係でも住宅宅地審議会であるとか中央建設業——これは関係ありませんですけれども、公共用地審議会であるとか、いろいろなものが開発関係なり経済計画なりに、もうがちゃくちゃになっている。これはもう御答弁要りませんよ。よくお考えいただいて、もういいかげんにこんなものを何とかしなさいよ、これは。こんなことをやっておってはもうほんとにだめですよ。
  149. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 答弁は求めないということですが、最近の情勢では、よほど高度の専門的な知識を必要とする、そういう面も見落としてはならないと思います。したがって私は、やはり細分化する方向にもある、それをやはり大所から見まして、その細分化された審議会同士がお互いに矛盾するようなことになっておるか、衝突するような結論になるか、もしそういうものがあれば、それはけしからぬと、こういっておしかりを受けてもけっこうです。ただ、最近とにかく専門的になりつつあるから、それぞれの専門的な部門が必要だ、これは御了承いただきたいと思います。そうして私どもが、やはり国として、政府としてそれらを総合的に見ていく、こういうことが必要ではないか、かように思いますので、ただいまの御注意は十分注意してまいるつもりであります。
  150. 阪上安太郎

    ○阪上委員 この際ひとつさらにこの問題について、私、提案というわけでもありませんけれども意見一つ申し述べたいと思いますが、たとえば国土総合開発計画審議会というものがある。これにつきましては地域におけるところの各審議会がついているわけなのでありますが、その他のものについては地域とは全く別々に中央にあって、独断的にものごとを計画、策定していく、こういうふうな形になっておるわけであります。私からいまここで総理にことさらに申し上げる必要もないと思いますけれども、最近の民主政治というものは、一九七〇年代の考えられる民主政治というものは、いままでのような政治のあり方じゃなくして、国民なり住民なりが参加する政治、そういった民主政治というものが大いに期待されておる、こういうことなのであります。この場合、したがって地域の意見を吸い取るような、そういう審議会と中央の審議会とが密接なつながりを持つような体系に持っていく。これをやりませんと、中央で幾らものごとをきめたって、地方ではいろいろな住民の反対にあいまして、何でもかんでも支障を来たしていくということになるわけなのであります。英国あたりでは、これらの問題につきましてはとっくにそういう体系を持っておりまして、縦割り・横割り、中央・地方、こういったものが一体となった総合的な一つの体系を持っておる。こういうことなのであります。私が先ほどから言っておるのも、そういったものを含めて一ぺんこれを洗い直してみるということが必要じゃないか、こういうことを実は申し上げておるわけなのであります。これは意見として申し上げておきます。いずれ御検討いただきたいと思います。  そこで、目標がきまり、そして実現の手段としてまず第一番にそういった制度をひとつ洗い直してみる、そこで一体どういう方向が出てくるか、こういうことなんであります。この間からこの予算委員会は日中問題でたいへんな激論が戦わされ、熱が出ているわけなんです。しかしこの予算委員会にはやはり大事な補正予算も実は出ているわけなんであります。私は実はきょうここで質問に立つのはあまり喜んでいないのでありまして、せっかくここまで大きな問題が展開されているときに、予算の問題と取り組んでいること自体がどうかと思いますけれども、そのこともきわめて大事であるということで申し上げるわけでありますが、一体総理、それじゃそういう形ができたとしても、わが国のこの予算なりあるいは財政投融資なり、こういったものがいままでのような民間の主導型であっていいのかどうか、ここらのところをひとつ転換する必要があるのではないかと思いますが、いかがでありましょうか。
  151. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの、あるいは私のとり方が違うのか、財投その他のあり方が民間主導型、こういうお話をされました。先ほどは、もっと審議会等においても地域住民の参加するような方法を考えろ、住民参加ということを強く要望されておる。ちょっと私その間に結ばれつきがどういうようになっているんだろうか。これは私の率直な考え方でございますから、皮肉でもなければ何でもないので、その辺も御了承いただいて、ただいまの点をもう一度明確にお尋ねくださると、私たいへんしあわせに思うんです。  ただ、私のほうの考え方を申せば、最近は各種審議会等が、地域住民の住民参加ということがしばしばいわれております。これも一つの新しい行き方ですが、住民参加というものが、いまの議会制度のもとにおいては、われわれはまあ直接ではなくて、やはり議員を経て参加している、かように実は考えておるので、与野党の差こそあれ、やっぱり政党は地域住民の利益を十分反映して、そのもとに立って政治活動をしている、そういうことを私ども——ひとり国会だけで申すのじゃございません。地方議会等においてもそういうことでないと十分の職責を果たせない、かように思います。また、したがってこういう制度がある上にさらに住民参加というような方法がどういうように考えられるだろうか。これは実は首をひねらざるを得ないのであります。ある政党によっては特に住民参加という強い言い方をしておりますけれども、これなどはいままでどうも無制限な住民参加ということではないだろう、かように思いますので、やはり代表制、二重でもけっこうだが、そういう制度で住民が参加するということだろうと思います。  また、財投その他が民間主導型と申しますか、政府の財投、政府主導型、民間主導型、いわゆる消費の傾向から見まして、政府消費あるいは企業消費、一般の消費、そういうものに分けてみると、前の政府あるいは企業の設備投資などが合わせて五〇%、残りの五〇%はやっぱり大衆消費だ、かように見ても差しつかえないんじゃないかと思いますので、いまの民間主導型はどういうように私が理解すればいいのか、もうちょっと明確にお尋ねをいただきたい、こういうことでただいまのような疑問を投げかけたわけでございます。
  152. 阪上安太郎

    ○阪上委員 住民のあるいは国民の直接参加ということばを使ったのは、これは前々から言っておりますように、地方公共団体というものは議会制民主主義じゃないんです。国は、中央政治は、あるいは国会は、これはやはり明確な議会制民主主義を憲法は打ち出しているわけなんです。地方公共団体は地方議会議員が絶対的なその地方団体の最高の機関でも何でもないわけです。首長がおるのですから。むしろプレジデンシャルシステムだといわれておる。そこで、ことに地方団体の場合には住民が直接に参加することが必要だということを私は言っただけなんであります。それから民間主導型というのは、主として私は公共投資なりあるいは予算面においてそういうことが言えるんじゃないかということを言ったのであって、たとえば社会資本ストックの相対的な不足というような問題をとらまえてみても、そこにやはりはっきりと、たとえば民間設備投資に対する公共投資の比率なんというものを考えてみましても、これは総理も御案内のように、昭和三十年代ではそれが六八・四%を占めておった。公共投資がですよ。それが昭和四十五年には三五・六%に落ちておる。ここらのところを言っているんですよ。ましていまやドル・ショックでいろんな問題がわが国経済に波が押し寄せているわけなんでありましょう。民間設備投資なんかどうすればいいかというようなことは大体お考えだと思うのであります。それからいままでの社会資本が不足した大きな原因は、やっぱりこういうところにあると私は言っておるわけなんです。それから民間企業も、それはすべてがすべて道徳心のない連中ばかりおっておるとは私言いません。しかし大きな資金の流れがそこに寄ってしまって、わが国の高度経済成長がそういったものに主導されて動いていることは事実でしょうが、総理。だからそれを変える必要があるんじゃないかということ、そうしなければ社会資本の充実なんといったって、そんなことは充実できやしませんよ。ましてや国民の生活に直接関係のあるそういった国民生活基盤というものを、あるいは生活の環境というものをよくしていくような方向へのそういった転換にはならぬじゃありませんか。そこのところを言っておるわけなんです。おわかりになったでしょう。
  153. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最近の経済政策の転換、それはいままでのような行き方でなしに、いわゆる企業設備投資というそういう形でなしに、もっと公共資本の充実、そういう方向であるべきだというのが第一の大前提であります。そういう意味から何がどうなるのか、どこに一番力を入れるか。まあ住宅や下水道やあるいは道路や港湾施設や航空等々いろいろありますが、そのうちでも社会資本の最も欠如しておるもの、そして国民の必要としておるもの、おそらくそれはただいまの段階では下水整備あるいは住宅の不足に対処する、こういうことがその重点をなすんじゃないかと思いますが、そういうような意味でただいま取り組んでおるわけであります。もちろん住宅というだけで、これは住居を提供するばかりじゃありません。同時にそれが学校や病院やあるいは老人ホーム等にまで考えが及ぶことは、これは当然でございます。そういうように御了承いただきたいと思います。
  154. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それではやはり総理が、一つの転換期に入っておって、何らかの転換をしなければならぬという方向は、これは手段としてはいろいろありますけれども先ほど言ったような制度の問題もやらなければならぬが、やはり何といっても、とかくいままでそういった民間主導型というか、そういう形で進んできてやってきたけれども、今度はやはり公共投資主導型の方向へ持っていくんだ、こういうふうな転換の方向というものを持っておられるんだ、こう解釈してよろしゅうございますか。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現段階では、少なくとも民間の企業の設備投資、このほうは意欲も鈍っておりますが、こういう際にこそわれわれは社会資本を充実する、そういう方向に力を入れるべきだ、かように申しておるわけであります。
  156. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで経済企画庁長官にお伺いしますが、いま総理はああおっしゃったのでありますが、一体この公共投資率というものをどこまで高めていくおつもりでありますか、いまおっしゃったような総理のお考えに基づいて。先ほどちょっと伺ったように思うのでありますけれども、たとえば公共投資と経済成長との割合、これをどの辺まで持っていくつもりか。あるいは、政府固定資本形成と民間の固定資本形成と、この比率もどこまで一体持っていくべきか。ことに、社会発展計画で昭和五十五年でありますか、一体どこまで持っていくか。先ほど何か九・何%とかおっしゃいましたが、私ちょっと聞き漏らしたのでありますけれども、そんなちょろっこいことでいいのですか。
  157. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 社会資本の相対的不足、先ほどから問題になっておりますが、従来も、政府といたしましては、極力社会資本の充実に心がけて努力をしてまいりましたが、何にせよ、いままでの財政事情と申しますか、むしろ国際収支の天井というものがございまして、国際収支の壁にさえぎられてそれが果たせなかったというのが従来の状況でございますが、幸いにして、あるいは幸か不幸か、たいへん国際収支の面でゆとりができましたので、そのゆとりを、いま申し上げました社会資本の充実、特に生活関連施設への資本、そういうものへの結びつけで今後はこれを極力高めていきたい、こう考えております。  数字的なお尋ねでございますが、いまやっております新経済社会発展計画におきましては、昭和四十四年度八・一としております。八・四という計画でございましたが、実績は八・一ということになっております。それを現在の計画では、これを昭和五十年に九・五に持っていく、これは国民総生産における割合でございます。それではとても間尺に合わないので、来年から始めます経済社会発展計画の見直し作業におきましては、いろいろ今後の流動的な要素もございますので、これを一〇とか、あるいは一五とか、そういう数字はまだ今後の問題でございますので、これを極力高めていきたい、そういう方針で作業をいたしております。
  158. 阪上安太郎

    ○阪上委員 たいへん力強いお話を聞いたのでありますが、いまおっしゃるように、五十年ないし五十五年ぐらいまでに少なくとも国民生産の約一五か一六ぐらいのところまで持っていかぬと、あなた自身がおつくりになった経済社会発展計画それ自体がおそらく実現しないんじゃないでしょうか。それをそこまで持っていくためには一体どうすればいいとお考えになっておるのですか。
  159. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 当然これは資源配分という問題にぶつかります。したがって、いままでのような資源配分のパターンは、これを大いに転換する。このためには、当然財政当局の考え方を改めてもらわなければならぬということもございますが、そういう意味におきまして大きな意味政策の転換でございますから、そういう意味で、いま申し上げたような資源配分のパターンを変えていくということにほかならぬと思います。
  160. 阪上安太郎

    ○阪上委員 企画庁長官、どういう資源の配分をおよそ考えておられますか、再配分を。
  161. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 いま申し上げたような、特に、国民生活に関連する社会資本の充実ということを重点にすべきであろう、こう考えます。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕
  162. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私は、ここでちょっと意見を申し上げておきたいのですが、わかりやすく言えば、道路交通の混雑をほぼ解消してしまうというようなところまで持っていく。それから、市街地のほぼ全域に下水道が完備する、こういうようなところまで持っていく。それから、これはもう言うまでもなく、欧米の都市並みに公園、緑地が整備される、確保される、そういうようなところまで持っていく。それから、所得水準の向上に見合うような災害安全向上、これをはかっていく。最近では、江東地区その他でたいへん問題になっておりますが、そこまで持っていく。こういったような資源の配分、いろいろな数多くのことは申しませんけれども、このくらいのことは実際やる気があるのですか。どうでしょう。
  163. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 私は、資源配分の点だけ申し上げましたが、要するに、そのもとになるのはやはり財源でございますから、その財源については一体どういう考えで今後いくかということ、これは財政当局の問題になってまいります。そこにおける社会的あるいはいろいろな問題、経済的、政治的な問題が発生いたします。そういうことを総合的に判断いたしまして、国益のおもむくところによって、いま申し上げたような資源配分を変える、社会資本の充実に持っていく、こういう考え方が基本になるべきではないか、こう考えます。
  164. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これはたしか企画庁あたりの計算によるものだと私は思うのでありますが、そういったところへ公共投資をぶち込んでいくということになりますると、社会経済発展の計画によりましても、少なくとも二百六十兆円ぐらいの金が要るのではないでしょうか。そのくらいの、前後の累積政府固定資本というものが形成されていくということになると思うのでありますが、この財源をどうして生み出していくのですか。いま、やるとおっしゃるから伺うのですが、どうしてその財源を生み出していくか。これは財政当局のお考えだということでありますが、大蔵大臣、どうですか。
  165. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 公共事業をするというためには、財政主導型の財政方針をとらなければ実際はできない。財政主導型の財政政策ということはどういうことかと申しますと、民間の設備投資よりも政府の固定資本形成を一定時期重んずるということでありますので、そのためには、税制の活用と公債政策の活用と二つしかございませんが、しかし、実際問題としては、公債政策の活用によってこの問題を解決する以外には方法がない、財源調達もこれを中心とした計画を立てるよりしかたないんじゃないかというふうに私は考えています。
  166. 阪上安太郎

    ○阪上委員 その場合、大蔵大臣、この間うちからも公債発行限度額といったものが問題になっております。これはもちろん、あなたがおっしゃるのは、無制限にそんなものを増発するんじゃないということでありますけれども、相当思い切ってやるということだと思うのであります。そこで、私は、そのことは非常にけっこうだと思います。思い切っておやりになればいいのですが、そこで問題になってくるのは歯どめの問題なんであります。財政法による四条、五条の歯どめ、そんなことは当然のことでありまして、おやりにならなければいけないと思うのでありますが、それ以外に、大きな歯どめとして、法律にないところの行き方が出てくるのではないかと思うのであります。それは資金の流れを変えることではないのであります。したがって、現在のワクをそう大きく——民間と公共投資の総額が入れ違いになるだけであって、そこのところで公共投資の額をふやしても、民間の設備投資その他の投資を押えることによって、巷間いわれているようなインフレの方向をたどらなくても済むのだろうし、あるいは不況を未然に防止することもできるのだろう、こういうように思うのでありますが、そういうことをお考えになっておりますか。
  167. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 先ほど企画庁長官が言われましたが、従来、国際収支が悪いときには、そういう財政主導型の経済というものを実行するのが非常にむずかしかったということでございます。たとえば、いままでやった政策のうちで、私どもがこれはもう少し考えればよかったと思われることは、好況のときに少し民間投資を押えることをすればよかった。ところが、民間投資の資金を圧迫して、そこに公債政策を入れ込んだら、資金需要が重なって経済を過熱に持ってくるというようなこと、これは、国際収支の悪いときにはやはりそういうことは避けなければならぬということから、民間の資金を圧迫しないという方針をとってきました。したがって、公共事業費の投資の比重というものは、民間に比べて非常におくれたというような事情がございましたが、そのときにでも、この財政主導型の方針をとろうとするなら、若干の非難があっても、公債が有利に消化できるものを、思い切ってそういう条件を変えてやったら、公債のほうに資金が集まる。それで政府が仕事をするということをすれば、おのずからそこに民間の設備投資との調整がとれたのではないかと思いましたが、国際収支の悪いときにはそれがとれなかった。いまこそ国際収支のゆとりが出ているときですから、こういうことを相当思い切ってやれる。しかも、やることによって、経済の過熱を起こしたり、物価問題インフレ問題につながるというような心配がないというときでございますから、そういう点から、まず、財政法で許された範囲内ではたしてその目的が達せられるかどうかということをいま私どもはやっております。たとえば、来年度の予算におきましても、財政法の範囲内の公債政策の活用ではとても間に合わないというような情勢になるのか、その範囲なら大体間に合うであろうということになるか、それによって、さっきおっしゃられたような別の方法があるかどうかということは考えてもいいと思いますが、私は、いまのところ、一応いまの財政法の中の運用として大体対処できるのじゃないかというような気持ちがしております。
  168. 阪上安太郎

    ○阪上委員 お答えいただいた限りではそれでいいのでありますけれども、私が申し上げておるのは、やはり、きのうあたりから問題になっている公債発行限度額の問題について、公共事業の総額のワク内であるならば、そこまで持っていったって別に差しつかえないんだという考え方があなたのほうで出ているわけでしょう。だから私は申し上げているわけなんであります。しかし、そんなちょろっこいことでこの社会経済発展の計画というものが達成できるとは思いませんよ。  そうなりますときに、公共投資の率がまた再びここで入れかわってくるのじゃないか。ドル・ショックによる円の切り上げ、これは現にやっておることでありますし、それが一五・二%になるか、どこへ持っていくかという大きな問題もあります。しかし、考え方によれば、これはたいして問題はないと私は思うのでありまして、やはり大切なことは、日本が新しいソシアルダンピングのようなことをやって、労働賃金は押えるわ、あるいはまたいろいろな生活環境の公共投資は手控えをするわというようなことによって、円が強くなったということで、世界から非難を受けているということなんでありますから、そういったものとも見合って、そこのところをもっともっと考えていかなければならぬと思うのであります。したがって、公債発行というものは、いままでのような考え方でなくして、相当思い切ったことをやっていく。そのためには、民間の投資というものについて、非難があろうがなかろうが、これは押えていくという考え方を持たないとどうにもこうにもいかないような羽目に入ってしまうのじゃないか、こういうふうにぼくは考えているわけであります。だから、それをおやりになる必要があると私は思うのでありますが、そのためにはどうすればいいんですか。いわゆるフィスカルポリシーを導入してやっていくということはわかりますから、その点じゃなくして、そのためにはどうしたらいいかということなんであります。はっきり言いますと、財政投融資の資金の配分の姿というものを変える必要があるんじゃないでしょうか。これを思い切っておやりになる考え方はおありでしょうかどうか、大蔵大臣に伺っておきます。
  169. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 財政資金の配分は、当然、比重に応じて配分を変えるということは必要だと思います。また、公債発行によって得た収入の使い方においても、当然配分のことを考えなければなりません。  いま民間資金を押えると言いましたが、いまは特別に押えなくても、非常に停滞しておるときで心配ございませんが、いま不況対策をやっておりますから、民間の資金需要がいまのままではしようがない。やがて資金需要が相当出てくるというようなことが望ましいのでございますから、そういうときに、それを調整するというためには、やはりある程度公債の優遇で、公債が優先的に消化されるような状態をつくるということもこの調節の手段でございますので、私は、来年の一月から、国債の十年ものを出すとか、条件を少しよくするとか、こういうようなことによって民間設備投資との均衡をとるというようなことをやりたいと思っております。
  170. 阪上安太郎

    ○阪上委員 いまだから民間投資は押えることができる。それはそのとおりだと思います。けれども、社会経済発展という長期計画を持っている限りにおいて、おそらくここ一、二年でこの計画ができるわけじゃないのですから、十年以上の計画を持っているのですから、そのためにも、将来を考えたときに、また再び民間の資金需要が拡大してくるからというだけでそこへまた戻していくというような考え方ではどうかということを私は申し上げておるのです。だから、やはり相当長期の政策としてこれを考えておかなければならないのではないかということを実は申し上げておるわけなんです。どうでしょうか。
  171. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それはそのとおりだと思います。
  172. 阪上安太郎

    ○阪上委員 公債の話が出ましたので、ここで一つお伺いしておきたい。  それは、先ほど田中委員から日本銀行総裁質問がありまして、発行国債の保有状況について質問がありましたときに、私は聞いておったのでありますが、日銀総裁は、日本銀行の——これは長期の国債だと思いますが——保有高がたしか三千四百億程度だということを言っておりましたが、これは間違いじゃありませんでしょうか。大蔵省、どう思いますか。
  173. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 あとで数字を言ってもよろしゅうございます。間違いないんじゃないかと思います。日本銀行はいまほとんど公債を持っていないということであります。
  174. 橋口收

    ○橋口政府委員 本年三月末の国債の保有状況は、日本銀行が大体一兆円でございます。資金運用部が約一兆円持っておりまして、残りが民間の保有でございますが、日銀総裁がお答えになりましたのは、おそらく最近時点の状況だろうと思いますが、現在は日本銀行は非常に少ない額の国債を持っているだけでございます。
  175. 阪上安太郎

    ○阪上委員 いや、わかりました。私の、これは現在高のとらまえ方の時点が間違っておったということであります。日本銀行の総裁ともあろうものがまさかそんなことを間違えるだろうとは思いませんけれども、一応疑問になったものですから。  そこで、次にお伺いいたしたいのは、公共投資の拡大。財源措置としても公債の増発という形が出てきたわけでありますが、このことについて、やはり・一番困るのは地方自治体じゃなかろうか、こういうふうに思うわけであります。ことに、最近では、公共投資の内容というものが相当変わらなければならぬ。いままでのような形からさらに一歩前進して、生活環境の整備というような方向へ入っていかなければならぬ。そういうことになりますと、最も身近な国民の政治をやっております地方公共団体、そういったものがこのあおりを受けてしまう。多くの公共投資は入ってくるわ、お金はたくさんもらうわ、一方において税金はだんだんと減収になっていくわ、しかも、補助率が大体平均して二分の一しかない。こういうことになってまいりますと、その継ぎ足し財源も出てこないというようなことで、金はぶつけられても仕事はできないというような状態に入るのじゃなかろうかと思うのですが、この点について、自治大臣はどういうふうにこれを考え、そして、どういう対策が必要だとお考えになっておりますか。
  176. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 公共投資の拡大、ことに、住民生活に関連ある諸施策に重点を置いてこれを拡充すべきである、こういうただいままでの阪上委員の御指摘、まことにごもっともであろうと思います。しかも、このような事業は地方自治体において行なわれるのが大部分でございます。この点について、積極的に財源の充実をはかっていかなければならないことは当然でございまして、これらの事業が積極的に自治体において行なわれるよう、いままでも努力いたしておりますが、今後とも努力いたしたいと存じております。  このたびの補正予算におきましても、公共投資の拡大をやりました。実際において、現在の地方財政におきまして、これを行なうだけの継ぎ足し財源というものもございませんでしたので、補正予算を組んでやってみまして、これが完全に実行できるよう地方債計画等も充実していただきまして、この予算が実行できるようにいたしたような次第でございます。  なお、これらの事業を行なうのに、単に補助事業だけでなくして、単独事業もあわせ行なうことによって、ほんとうに住民の希望するような事業ができるんじゃないか、単独事業を実行できる財源も充実させなければならないと私は思っております。いま問題になっておりますところの人口急増過密地帯に対する問題、あるいは過疎地域、あるいは交通対策等の問題につきましても、この点から、本年度の地方財政計画におきましては、人口急増地域で、単独計画で千二百億、また過疎地域に対しましても九百二十億、なお交通安全施設に対しましても三百五十億ほどを組ましていただきました。この数字はまだ十分とは申せませんが、昨年度と比べまして相当大幅に増額さしていただいて組ましていただいたのもその意味でございまして、今後ともこれらの問題につきましては積極的に努力いたしてまいりたい、かように考えております。
  177. 阪上安太郎

    ○阪上委員 この地方財政でありますが、補正予算対策としては、これはもうわれわれもわかっておるのでありますけれども、たとえば、地方交付税の減に対する対策、これにいたしましても、千二百七十三億円、これが減額するわけでありますが、これに対して、五百二十八億円を一般会計から繰り入れておる。これはいいのでありますが、その残額の七百四十五億円というのは、これは資金運用部資金よりの借り入れによるというような措置がとられておる。それから、公共事業費等の増加に伴う所要地方財源の対策として、負担額の全額について起債が一千五百二十二億円、しかも、その起債は、どうしたことか、これはいままでの例によるのでありましょうけれども、八割、約千二百億円というものは政府資金を充当する。それから、地方公務員の給与改定財源対策等にいたしましても、この中には節約が四十一億円というふうなものが含まれております。そして、なお、資金運用部資金借り入れ五百五十億円というような形をとってきておる。  こういうことを考えてみますと、昭和四十六年度はこれでいけるでありましょうけれども昭和四十七年度以降一体この地方財政はどうするのか。しかも、依然としてやはり公共投資の額はふえ、そのふえた大部分というものは地方公共団体がこれをこなしていかなければならぬ。こういうときに、こういうやり方でもって将来ともやっていくということになれば、これはたいへんな落ち込みが出てくる。こういうふうに思うわけでありますが、一体、この点について、自治大臣、あなたは心配しないでいいのですか。どうすればいいとあなたはお考えになっておりますか、この問題について。
  178. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 来年度の経済見通しにつきましては、まだ確実なる見通しなるものが困難な状態でございますが、しかしながら、いま阪上さん御指摘のように、来年度は、おそらく地方税も大きな伸びは期待できないであろう。また地方交付税も伸び悩みであろう。このように、従来に比べまして地方の一般財源が減少する。しかも、いま御指摘のように、公共事業の拡大、あるいは給与費によるところの費用の増大、さらに、沖繩が復帰してまいりましたら、これにも相当の地方財源を必要とするのじゃないか。こういう点から、私は、地方財政には一兆円以上の財源不足が生じるのではなかろうか、このように考えております。これは、今後私たち十分検討しなければならぬと思いますが、国庫財政との関係もございますので、国、地方のあるべき姿等を入れまして、少なくとも地方財源に支障を来たさないように、総合的な判断のもとに検討してまいりたい、このように考えております。
  179. 阪上安太郎

    ○阪上委員 いま、自治大臣は、一兆円ぐらい落ち込むだろうということを言っておられますが、あるいはそうかもしれません。国はどんどん公債を発行して、財源を補てんしていく。しかも、税は、一方において国税三税はもとより伸びない。だから、そうなりますと、そのままでいけば、当然、一兆円どころか、もっともっと大きな落ち込みが出てくるのじゃないか、こういうふうに私は思うのであります。そして、税の伸びがとまりますと、そしていまのような、四十六年度の補正に見られるように、そこのところは考えないで、ただ単に公債発行だけでもって大部分をまかなっていくということになりますと、税の伸びとのギャップが出てくるわけであって、これはとてもじゃないが地方財政はもたないだろう、こういうふうに考えるわけであります。  そこで、これらの問題について、実は、この補正の段階においてやってもらいたかったと思うのでありますが、そういう行き方もなかなかできなかったろうと私は思うのでありまして、少なくとも、国の一般財源からの借り入れというようなものにつきまして、補助率を引き上げるというような考え方が出てこないだろうか、こういうふうに思うのであります。いままでも、この問題については、補助率を引き上げろという声は地方団体からもう毎年毎年出ておるわけなんであります。実態に即さないからということでありますが、そういったことによって、いま言ったような将来の落ち込みを押えていくという考え方が出てこないだろうか。  それからいま一つは、これもなかなか限度があってたいへんだということを言っておりますけれども、もうこれ以上の交付税率の引き上げというものは不可能なんだろうかどうか、この問題が一つ。  それから、この地方債の増額等につきまして考えてやらなければいけないのは、はっきり言いまして、一般の不良債がいまはずいぶん発行されておる。それは、政府資金の占める割合が少ないからそういうことになってくるのでありますが、こういったものについていま許可制になっておることは事実でありますけれども、これを直ちにはずすということも困難でありましょうが、しかし、もう少し政府資金によるところの増額という考え方を持つわけにいかないだろうかどうだろうか。こういった点で、むしろこれは大蔵大臣に伺ったほうがいいかもしれない。大蔵大臣から伺っておきたいと思います。
  180. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今度不況対策をするときに、自治省と私どものほうでいろいろ相談をしたときにこういう問題が出たわけでございますが、私のほうから考えますと、日本で、好況対策にしろ、不況対策にしても、なかなかその効果がすぐ出てこない、財政政策からくる効果というものが非常におくれる、わりあいに効果が薄いという原因は何かという問題ですが、これはもう御承知のとおり、国の財政と地方財政、これが公経済の中に占めるシェアは、比較しますと二対一で、中央財政のほうが一であって地方財政のほうが二という比重をいま持っているのが実情でございます。中央のほうは、税を取っても、すぐに二兆円以上の補助金を出すし、二兆円以上の交付税を出して、四兆以上を地方財政に渡してしまうのですから、残ったあとの国固有の財政というものは相当少ない。そうなりますと、国だけで不況対策を打つということをやっても、倍の力、シェアを持っている地方財政がこれについてこなかったら、財政政策による対策の効果というものはすぐ出てこない。これがいまの非常な一つの大きい欠陥だろうと思います。これを是正するためには、国の方針に常にやはり地方も一緒に追随してもらうという体制をいかにしてつくるかということがこれからの財政政策一つの問題で、今回もそういう線に沿って地方財政の御協力を願ったわけでございます。  それにつきましては、国が財源がなくなって、歳入欠陥が出てきて、公債発行によって対処するというときには、それに呼応して地方財政もやはり不足分は地方債によって対処してほしい。これは一緒に同じ歩調でいきたいというのが私ども考えでございましたが、なかなかそううまくいきませんで、国が減税するというようなことのはね返りを地方が受けることは非常につらい。減税するのなら国がかってに減税してもいいが、そのはね返り分の地方財政の減収分は国が出せというようなことで、いろいろございましたが、今回は、全部それは五百二十何億を国が負担するということで今度の補正予算は話はまとまったわけでございますが、そういう意味におきまして、今後この問題を来年度以降においてどうするかという問題はなかなかむずかしい問題で、今後国が政策をいろいろとるときに、それによって地方へ響く分はまた国が全部持たなければならないというようなことをやったら、国の財政政策というものはなかなか立たないことになりますし、最後は、一番むずかしいいわゆる中央、地方の財源配分問題とか、事務の配分問題とか、いろいろなものへ来るとは思いますが、しかし私は、補助金については、もう下水道をはじめとして相当いろいろ国会の御審議も願って、あらゆるものについての補助率が全部一律ではございませんが、ここまでは補助する必要があるというものは、もう補助率を高めてやっておるのがいまの現状でございますので、これ以上補助率を増すということによって地方財政に余裕を与えるという余地が中央財政にはない。むしろ国が不足財源を公債によって補うというときには、地方もそれに伴ってやはり公債によって対処してもらうという、中央、地方が同じ歩調でいって財政運営をやるというのがやはり一番いいんじゃないか。それ以上の余裕が年とともにもう中央財政の中にはなくなってきているというのが現状だろうと思います。
  181. 阪上安太郎

    ○阪上委員 大蔵大臣に聞けばああいう答弁になるだろうと私は思っておったのです。ここで、自治大臣はどう思うかと、こう聞いていいですか、あなた。——それじゃやってください。
  182. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 ただいま阪上委員から、補助率の引き上げ等考えるべきじゃないか、こういう御指摘もございました。いま大蔵大臣からお答えがあって、それらはなかなかむずかしいということでございました。これは国庫財政と地方財政との見方もございますので、そういうふうなお答えになろうと思いますが、私は長期的な観点に立つときには、社会資本の中でも、とりわけ住民に関係のある福祉施設等の拡充、これらの公共事業について十分の配慮をしていただかなければならない、このように考えております。一例をあげましたなれば、屎尿処理施設、ごみ施設。補助金という制度はございますが、何と申しますか、つまみ金にすぎないといったような程度の補助になっておりますが、今後のことを考えましたなれば、これらの施設に対する補助の拡充ということはばかっていただかなければならないし、主管省においてもそのような予算要求もしておる。このように聞いておるような次第でございます。  ただ一点申し上げたいのは、補助率はございますが、補助単価あるいは事業実施の補助対象等によりまして、相当厳格な査定がございまして、絶えず超過負担に悩まされておるのが実態でございまして、これらの解消につきましては、補助率を上げるのと同様の効果もございますので、今後とも努力してまいりたい、かように考えております。  なお、地方債に対する御意見、実際において政府資金が少ないために各地方団体困っておるのじゃないかという御意見、ごもっともでございまして、この点、国の預金部資金にも限度がございまして、そう多くは期待できないと思いますが、ただいまあります公営企業金融公庫等に政府保証債の拡充をしていただきまして、できるだけ国のほうで統一して民間資金も活用できるような制度をはかってまいり、地方自治体に負担をかけないようにして、これらの仕事の推進をはかってまいりたい、かように考えております。
  183. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そういうことで、大蔵大臣と自治大臣、これは歴史的な問題であります。しかし私、この間うちから総理の演説を聞いておりまして、地方自治というような問題について、ことしこそは一席やってもらいたかったと私は思っておるのです。財政上の問題でありますから、財政演説にはそれは入っておりますけれども、ことしほど地方自治ということを重大視しなければならぬ時期はないだろう。ことし以降ですね。これに対して、とかく地方自治に対する中央の認識が十分でないと私は思っておるのです。ことに、新しい一九七〇年代の政治に取り組んでいくときに一番大きな役割りをするのは、住民参加というような新しい方向を見出してそれを実現していくのは、やはり地方自治の中にあるというようなことを考えたり、それから、いま一番問題になっている社会資本充実の中で一番大事なのは公共投資だが、その公共投資の中でも大事なのは、いままでのようなあり方でなくして、もっともっと生活環境改善というような方向へぶつけていかなければならぬということになれば、これまた地方自治の大きな分野になってくる。  そういうことを考えたときに、いままでのような古色蒼然たる地方自治に対する考え方でなくして、もう少しこれをもっと重大視した方向への転換が行なわれるべきだ。これもやはり、経済政策の転換であり、経済社会発展計画の転換だろうと私は思うのであります。そういう意味で、昔からこの問題は因縁のある問題でありますけれども、この辺で総理が中へ入られて、大蔵大臣と自治大臣の中をとって、うまいこと調整してもらう必要があるのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。どうですか、ちょっと一言言ってくれませんか。
  184. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 阪上君は、平素から地方自治についてたいへんな理解者であり、またそのほうの強化について、権限並びに財源についても格別に政府の注意を喚起してこられました。このことは私もよく伺っておりますが、ただいま伺っておると、大蔵大臣と自治大臣二人にけんかさせようという、そういう悪だくみが出てまいりました。この点ではどうもいただけないのです。ただ私は、ただいまのような冗談を交えてお答えをいたしますけれども、ただいまの点は十分これまた考えていかなければならない、かように思っております。  行財政の配分、これには在来から適正なる配分方法を考えております。また、言われた事柄について交付金をさらに上げろというような点は、これはむずかしいことでございます。しかしその他の面で、特に大蔵省も、地方自治体の負担が軽くなるように、同じ借り入れにしても特別な財政融資を考えるとかいうようなくふうもしておりますし、また、いままでの地方財政から借りた分も、今回のような、中央において減税する、地方においてそれの穴埋め、これに特殊な処置をとるとか、こういうふうなことで、やはり財政の強化には特別に理解を払っておりますから、この点もやはり評価していただき、私が中をとりまして、その間十分かじをとるつもりでございます。どうかこの上とも監視を願いたいと思います。
  185. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで、先ほどから申し上げておりますように、今後は公共投資主導型に——少なくとも、永久とはおっしゃいませんけれども、当分持っていかなければいけないのだとはっきり出ておるわけなんであります。そうなりますと、この公共投資のうち特に大きな幅を占めておる公共事業、これが遂行されていかなきゃなりませんが、その場合一番大きな隘路になるのは土地問題じゃなかろうか。この土地問題につきましては、もう毎国会ごとにわれわれやかましく政府を督励してきたわけなんであります。たとえば、土地利用の公共性を確立しなさいというようなこととか、公共優先の土地利用をやらなきゃいけないとか、あるいはまた、民間の私的な土地利用についてもやはりある程度公共の管理をしていかなきゃならぬとか、いろんなことをわれわれ言ってきて、その間には、土地税制の問題であるとか、あるいは開発賦課金の問題であるとか、いろんな問題を実は取り上げてきたわけなんでありますが、その中でたった一つ実現されたのは公示価格だけだったと私は思うのであります。これなどかなりな効果はあるだろうと思っておりますが、最近はまたその効果が薄れてきておる、こういうことなんであります。  そこで、これは総理も何回も約束なさったことでありますが、この土地利用、特にその中で大きな問題になっておるのは、地価の抑制と公共用地の取得の問題なんです。これについてどう対処していくか。これはもう、将来ひとつ勉強いたしましてとか、寄り寄り協議をいたしましてとかいうようなことを言っている段階ではないと私は思うのです。せっかく公共投資をいろいろな観点から拡大されましても、景気回復の面もありましょうし、あるいはまた社会資本としての公共投資の果たす役割りというものの点から考えてもこれを拡大されたのでありますから、そのときに一番隘路になる土地問題を解決しなければこれはどうにもならない。この点につきまして、この際、応急にこれは処置しなければならぬ問題だと思います。来年度に持ち越すなどというようなことを言っておる段階ではないと私は思うのでありますが、この点について、総理、どういうふうに対処されますか、お伺いいたします。
  186. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この土地問題、これは実は非常に問題がむずかしいというか、いままでいろいろ言いながらも、御指摘のとおり十分効果をあげておりません。しかも、今回特に積極的にこのほうに手が入らないのは、いまさら土地を取得してどうこうでは、いわゆる景気浮揚に直接影響というか、そういうことに響きかねる、かように思いますので、今回は、土地取得をいまからやってというようなことでなしに、景気浮揚というほうに重点を置いて諸施策を進めたわけであります。(「それが主客転倒じゃないか」と呼ぶ者あり)しかしいま、これは不規則発言に答えるわけでもございませんけれども、やはりその土地問題と積極的に取り組まないとこれは限度がある、こういうことでございますので、土地の問題はもっと深刻に考えざるを得ない。いままでやってきたものが土地の公示制度、その点はやりました。あるいはまた、土地の取得についての税の課税問題、これなどもすでに問題になっておりますけれども、その他にも、もっと先行取得ができるような方法、そういうものがこの際考えられないか、こういうことを、いろいろ御指摘もあるから政府考えるというわけでございませんが、積極的に取り組まなければならないのですが、どうもこれも法制上なかなかむずかしい問題でございまして、私、いままでのところまだ十分の見通しを立てておるわけではありません。  阪上君が御指摘になりますように、この土地問題、それ一つ解決できないじゃないか、こういうようなおしかり。ことに、非常に投機的な性格を持ちやすい土地でございますために、一部の土地ブローカーに壟断される、こういうようなことがあって、値上がりがそれらの手中にある、こういうことは厳に取り締まらなければならない、かように思っております。いろいろの開発計画を進める際に、特殊な数人の土地ブローカーのほうが先行する、そういうことで大事な公共団体の先行取得のほうが立ちおくれる。こういうようなことで思うにまかせない状況であります。ここらの点をさらにメスを入れていく、これがわれわれのつとめじゃないだろうか、かように思っております。これらの点についていろいろ苦心しておるのが建設大臣でございますから、そのほうからもなお私の説明についての補足をさせたいと思います。
  187. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 ただいま総理から御答弁もございましたが、私からも補足して答弁さしていただきたいと思います。  公共用地の取得難のために公共施設が非常におくれておる、これは阪上委員が御指摘になられたとおりでございます。従来も、阪上委員承知のとおり、あるいは土地開発基金の積み立てを行ないましたり、あるいは先行取得債等を設けまして努力をしてまいったのでございますが、まだまだ十分でないということは事実でございますので、いま総理のお話の中にも抽象的にはございましたが、私たち、次のような構想によりまして、何とかこの問題を解決に導いていく道をはかりたいと目下検討いたしております。  その第一点といたしましては、市街地区域などで高度な土地利用を必要とするときにおきましては、その中にある農地、山林あるいは空閑地等に、用途が確定いたします以前におきましても、地方公共団体が先行してこれらの土地が取得できますように、先買権を持つような制度が何とかしてできないかということを検討いたしてみたいと思っております。  第二点といたしましては、現在、地方自治体におきましても、地方団体だけでは土地取得は困難でございますので、民間資金も借り入れる意味におきまして開発公社をつくっておりますが、その数すでに八百に達しております。しかしこれらはいずれも民事上の法人でございます。このたび、これを公法人に切りかえることによりまして、責任の分野を明らかにするとともに、あるいは税の面において、あるいは地方公共団体の職員との交流の上において積極的にこれを活用するといったような仕組みを考えてはどうか、このように考えております。  なお、第三点といたしまして、資金の活用にいたしましても、財政投融資にも限度があろうと思いますので、現在各地方自治体において行なっております民間資金の活用等も、積極的に土地開発のための金融公庫等をつくるといったような方法によりまして、この拡充をやることによって公有地の拡大をはかってまいりたい。  このような三点について検討さしていただいておるのでございます。
  188. 西村英一

    西村(英)国務大臣 総理からも自治大臣からもお話がございましたが、結局、公共事業を進めるには土地の問題が一番大事であることは、もう言うまでもないわけでございます。しかし、第一、この土地が騰貴する原因はやはり需要供給の関係です。それからもう一つ総理もおっしゃいましたが、売り惜しみをするとか、あるいは投機の対象になるということが一番原因でございまするから、その方法を防ぐことが一番大事です。したがいまして、土地の利用、宅地を大量に供給するためには、市街地におきましては、いまも話がありましたいろいろな市街地区域あるいは調整区域を定めておるわけでございます。さらに、それを先行取得するとかいう場合は、やはりある開発すべき特定の地域を定めて、これは建築基準法の改正によってある程度考えておるところでございます。  それからもう一つ、この投機的な問題を防ぐためには、昨年、個人の短期の土地の譲与につきましては措置をいたしました。早く売らないとだんだん税金が取られるよということ、これを法人まで及ぼしたいというような考えを持っておるわけでございます。  それから土地の公示制度、これも大部分できましたが、いま完了はいたしておりません。これが完了すれば、せっかく土地の公正な評価を示したわけですから、この表示価格を活用するという方法もこれから考えていかなければならぬと思っておる次第でございます。  お尋ねはございませんでしたが、ついでに申しますと、この補正予算等につきまする土地、この問題も十分考えております。補正予算にも用地費は組んでありますけれども、用地費を組んでもすぐそれが使えるとは限りませんから、四十六年度における土地の保有の量、あるいは四十六年度における一般予算、補正予算に使う土地の量、そういうようなものを計算して一応はやっておりまするから、補正予算に関しても土地の心配はないと思います。しかし、これからさらに公共事業を進めるということになれば、阪上さんも言われるように、さらに強力な手を打ちたい、かように考えておる次第でございます。
  189. 阪上安太郎

    ○阪上委員 時間がもう迫ってまいりましたのでこれで終わりたいと思いますが、総理もいまおっしゃったように、これは緊急の問題であるけれども、なかなかいい策が出てこないのだ。それからいまお二人から聞きましたけれども、あまりいい知恵をお持ちのようでもないように思います。しかし私は、これこそいろいろな意味において、この激動する中における公共投資、これをほんとうに、景気対策の面からも、国民生活の面からもやり遂げるということになるなら、この土地の問題を解決しなければだめですよ、こんなことをやっておっては。そこで、たとえば土地に対して思い切って公共団体が買い上げるというような方法があるじゃありませんか。これは諸外国でもやっていることでしょう。だから、公的な土地の保有というものをこの際思い切って断行する、こういうことでなければ、あとからあとから地価との間で追いかけごっこをやっているようなことをして、ますます土地の取得が困難になってくる。こんなことをやっておってはこれはだめです、総理。たとえば思い切って毎年二兆円くらいの金を土地取得のためにぶつけていく。この金は再びきわめて早い期間に市中に還元してくるのですよ。だからインフレだとかなんとかというようなことをおそれる必要は毛頭ない。思い切ってそこまで行ってしまう。そして公的用地あるいは公用地というものをもうどんどん買い占めていく。そのためにも、いままでのように、単に使途が確定したものでなければ先買い権を発動することができないというような制度であってはいけないのでありまして、未確定な用地でありましても、おおよそ見当がついておるならば、これはもう買い上げる。そのことによって、民間の投機的な土地業者が——やはりどんどん公共用地を買い上げていく。しかもばく大な資金を投じて買い上げていくという形になりますれば、おそらく地価というものは、これはもう抑制することができる。地価を抑制してしかも土地を取得するることができる。取得した土地につきましては、欲をいえば、民間にも計画に合うようなものでありますれば、そういったものは開発を許可してやって分配してやってもいいと私は思う。持ち家をほしい人にも分配してやってもいいと思う。とにもかくにも、ここでもう公共団体が思い切った土地の公有をやっていくという方向へ持っていかない限り、考えましてとか、何だかんだとぐずぐず言っておるようなことではだめでありますから、そういった意味において、ひとつ思い切った措置をとってもらいたい。そのためには、できればこの補正予算中にもぜひひとつ応急の土地取得の対策というものを思い切って出していただきたい、私はこう思うわけであります。毎予算ごとに、承りおくというようなことでありましては、ほんとうに取り組む姿勢ではないと私は思うのです。この点につきまして、ひとつ最後に総理の御答弁をいただきたいと思うのです。
  190. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話、公共団体が買い、あるいは国が買い、そういう公的な機関が買うならば弊害はないはずだ、こういうお話でございますが、私どももさようにありたいと思っております。しかし、ただいま必要なる施設をつくる場合でも、なかなか地域住民の了解を得ることができなくて、そうしてその土地の取得に非常に困っておる。公用地収用の制度はございましても、その実行することにおいても、代執行その他等で地域混乱を引き起こしておる、こういうような事態もございます。いずれにいたしましても、ただいまのような先取り権あるいは先行して土地を取得するということについては、相当の問題のあることは私どもも覚悟しなければならないと思います。ただいま阪上君の言われること、私はたいへん同感であり、また皆さん方の御協力を得なければならないと思いますから、これを断行するのには非常な力が要る、そのこともお含み願って、そうして特殊な機関を設けるかどうか、そこに一つの問題があると思います。ただ私、あるいは問題をずらすわけではありませんが、せっかくの公有の土地あるいは国有の土地、そういうものの払い下げについては少なくともこれは慎重でなければならないぞということを注意してまいっておりますが、いまのような、積極的に民間の土地を公共団体が買い取る、こういうことになって、あるいは直接の使用目的がはっきりしない、こういう場合に、一応買うだけは買っておけ、そうしてそれを今度は代替地に使う。こういうような事柄が、はたして国民の理解を得るかどうか、やや現状においては心配なきを得ないと私は思います。しかし、いまのような状態で特殊なブローカーだけに土地を壟断さすということ、これに対する対策はどうしても考えなきゃいかぬ、かように思いますので、先ほど来の御議論は、私が返事を遷延するわけではございませんが、十分伺っておきましてこれに対する対策を立てたい、かように思います。
  191. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これで終わりますが、総理、ほんとうに思い切って、地方公共団体がただ単に公営住宅を建てるとか、あるいは日本住宅公団が住宅を建てるとかいうようなテクニックじゃなくして、地方公共団体が思い切って宅地等——宅地といえば工場用地と居住地がありますが、思い切ってこの造成をやることなんですよ。思い切ってやることなんです。そのことによっていままで悪循環をたどっておった地価の問題とか取得難の問題は解決するのです。いろいろ心配の向きもあるようでありますが、いまどきこういう案を政府が思い切って打ち出すことによって、国民感情がどうのこうのという問題はない。なぜそれをやってくれないのかというのが、いまや国民のすべての考え方だと思っております。でありますので、保留地の問題もありまして、未確定用地については問題があるといいますけれども、しかし、オランダにしてもどこにしてもこういうことをどんどんやっておるというような状態でありますし、日本は特にこういう狭い土地にありますので、よけいにこのことの必要性が叫ばれるわけなんであります。でありますので、そこへもってきて、それじゃなぜいまの地方公共団体がどんどんどんどん市民の需要にも応じて宅地なり何なりを造成してやらないか。金がないからですよ、はっきり言いまして。だから、そういう資金の手当ても考えて、この際思い切って画期的な手を打ってもらいたい、こう思います。ぜひひとつ、このことを、できればこの国会中にそういった方針を打ち出してもらいたい、このことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  192. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて阪上君の質疑は終了いたしました。  次に西田八郎君。
  193. 西田八郎

    ○西田委員 私は、去る十月十五日に米国との間で仮調印されました繊維の輸出に関する政府間協定についてお伺いをいたしたいと思います。  この問題につきましては、昨日、通産大臣の不信任案を私ども野党三党で提出いたしましたけれども、多数の前にこれは敗れ去りました。しかし、この問題は、私は終わったとは考えておりません。なるほど本会議における不信任案の否決ということは、政治的責任を一応免れたかに見えます。しかし、私は決してそうではないと思うのでありまして、ここにはやはり政府の行政的ないろいろな責任が残されてきていると思うわけであります。特にこの協定の締結に当たられました田中通産大臣の発言されました、いろいろと発表されております内容と、実際に協定そのものを検討いたします場合に、大きなそごがあることを指摘せざるを得ないのであります。したがいまして、私はこの機会にそうした国民の疑惑というものを取り除き、そしてほんとうに政府が好景気に向かって進んでいるかどうかということをただしたいと思うわけであります。  その前に、予算委員会におきまして何回か議論をされました沖繩の核の問題でありますけれども、首相の答弁外務大臣答弁も、あるのかないのかわからない、こういうことで非常にあいまいでございます。しかし、けさほどの報道によりまして、沖繩にある核は返還時までには引き揚げるということをアメリカの国務長官のロジャーズ氏が言明をしたといわれておるわけでありますが、いままたここに新しい、本日の読売新聞の夕刊ですが、沖繩に核はない、すでに撤去したということをロジャーズ国務長官外交委員会において言明をしたといわれておるわけでありますし、これは一体どちらがほんとうなのか、ほんとうに政府は核があるかないか知らないのかどうか、この点をまずお答えをいただきたいと思います。
  194. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほども申し上げたとおり、ロジャーズ国務長官は、核は撤去する方針である、それからなおつけ加えますが、そのあとで、核は今後も日本政府の同意がなければ持ち込みません、こう言っております。  そこでお尋ねでございますが、わがほうといたしましては、まだ正式に核があるかどうかをアメリカから知らされておらなかったのです。ただメースBですね、これがあった。これは事実です。それらから想像いたしまして私どもは核はあるのだろう、こういう判断をいたしておった次第でございます。
  195. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと、ここに一つの疑惑がわいてくるわけでありまして、政府もメースBがあることによって核があるだろうと想像をしておった、しかし、すでに撤去したといわれることになりますと、この沖繩返還協定によってアメリカ側に支払うべき金が予算において組み込まれております。核撤去その他を含めまして七千万ドルという費用が日本側からアメリカ側に支払われるようになっておるわけでありますが、もし核がないということになれば、私はこの撤去費用というものは必要ないのではないかというふうに考えられるわけでありますけれども、そういたしますと、やはり協定をやり直さなければならぬということになるわけですが、この点について外務大臣いかがですか。
  196. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ電報が入ったばかりで、英文なので私にもはっきりわかりませんが、フルブライト委員長質問は、核を撤去するのか、こういうのに対して長官は、そのとおり一これを見ますと、ザット・イズ・コレクト、こういうふうに答弁をしておるのです。そういうところから見ますと、これから撤去するものである、つまり返還時には必ず撤去されておる状態である、こういうことを言っておるものと思われます。
  197. 西田八郎

    ○西田委員 この問題をここで、いや撤去したのだ、しないのだと言うことは、お互いに、これはまあ確たるものを持っていないわけですから、水かけ論になると思うのです。しかし、少なくともアメリカの国務長官ともあろう人が、しかも上院の外交委員会において、沖繩に核はない、すでに撤去をしてあるんだ、こういうような発言をするに至るということは、私は非常に重要な問題であると思うのです。しかもそれを日本政府としては、いやそれはまだ聞いてないとか、あるいはこういうような外電しか入ってないというようなことで、はたしてほんとうに沖繩の返還協定について国民が安心しておられるのかどうか、私はこの点で大きな疑惑を国民の皆さんに持たしたことになると思うわけであります。しかも同委員会におきましてロジャーズ国務長官は、条文解釈に関して両国間に若干の了解事項がある、このように言明をしたといわれておるし、外務省ではそういう了解事項は全然ない、こう言うし、一体これはどちらがほんとうなのか、私どもは理解に苦しむわけであります。  本年の二月の通常国会のときにおきます私の質問で、繊維問題に関連いたしまして、フラニガン大統領補佐官が日本とは約束があると言ったということに対して首相とずいぶんやりとりをしたわけでありますけれども、結果的にはお互いに知らぬということですが、今度のような事態になってまいりました。そうなりますと、私どもは、どうもやはり政府の言われることのほうに何かものごとをきれいごとで済ませよう、国民を欺瞞した中でものごとを進めていこうという態度が見られてならない。したがって、この点ははっきりと、ひとつ両国間のどういう形になっておるのだということを明確にしていただきたいと思うわけであります。
  198. 福田赳夫

    福田国務大臣 西田さんおっしゃるのは、秘密の何か取りきめでもあるのじゃないか、こういうことかと思いますが、さようなものは断じてありませんから御安心願いたいと思います。
  199. 西田八郎

    ○西田委員 御安心をされろと言われても、安心できないのがいままでの政府の態度なんです。したがって、私どもは、ほんとうにもう政府を信用するということを、きわめて残念ながらできないのですよ。ですから、ほんとうにそういう約束はないならないということを一これはもう断言をされる、その裏からまたそれをくつがえすようなものが出てくるわけですよ。だから、そういうことであるなら、ここにおける答弁というものはほんとうに責任をもってやっていただきたいと思うのです。  この問題は、あまり議論をしておりましてもまだ外務省も情報をつかんでないということでありますから、私は、この問題についてはひとつ外務当局にこの事実を明らかにしていただくように要求をいたしておきまして、次の質問に移りたいと思います。  そこで、まず、今回の日米の政府間で協定をされました繊維問題でありますけれども、これは一九六二年にガットの一部として承認をされました国際綿製品協定、いわゆるLTAの第一条にははっきりと明文化されております。すなわち、この綿製品以外の品目についてはこれを及ぼさないことを確認するというところまで条文がなされておるわけでありますけれども、一体これとの関係、どういうことからこんなことになったのか、その点をひとつ明らかにしていただきたい。
  200. 田中角榮

    ○田中国務大臣 綿製品協定のようなものが他の繊維等に及ばないことが望ましいことは申すまでもありません。また、そういうつもりで協定書に明文化しておったわけでございますが、その後アメリカの事情によりまして、繊維に関して同じような趣旨の二国間協定をなさなければならなかったということは遺憾でございます。私はその意味では、皆さんと同じように自主規制というものが最もいい姿であるということを考えておりましたが、日米間の状態でどうしても国際収支問題その他がございまして、綿製品協定にはあのような明文があったけれども、今度例外的にどうしても政府間協定が必要である、しかも日米間だけではなく、米韓それから米台、米・香港、極東四国の間に同趣旨のものを結びたい、これを結んだその上はヨーロッパ諸国——対米繊維の輸出国全部と結ぶという特殊な事情のもとにこのような事態になったことでございまして、遺憾でございますといわざるを得ないということでございます。
  201. 西田八郎

    ○西田委員 通産大臣、遺憾であったとこうおっしゃるけれども世界の繊維産業の大勢は、いわゆるコットンから合成繊維に転換をしているわけですよ。わが国の繊維産業政策としても、政府のとられた方針が、その政策転換の中でいろいろと構造改善を進めるということを、特繊法あるいはその前の繊維特別措置法、こういうものによって措置をしてこられたわけです。しかし、その中では綿その他の二次製品あるいは完成品に対してであって、いわゆる化合繊についてはむしろ租税特別措置法等によって優遇されて、化合繊の発展というものをむしろ政府が奨励をされてきたわけです。その化合繊が今日こういう事態になったということは、これは明らかに政府の繊維産業政策の失敗ということがいえるんじゃないですか。その点、大臣どうお考えですか。
  202. 田中角榮

    ○田中国務大臣 端的に失敗であると申すわけにもまいりませんと思いますが、しかし、結果的に見まして規制を受けなければならないように日本の繊維産業の生産性がうんと上がっておる、ある意味においては上がり過ぎた面もあるという面からいえば、調整が事前にもっと行なわるべきであったという指摘は当然生まれると思います。日本は原材料を持たない国でございます。原材料を海外から輸入をしながら、日本人の英知の集積が国際競争力というふうになるわけでございます。これは日本の宿命でもあります。そういう意味で、輸出力を培養しなければならない、国際競争力を増大させなければならないということもまた日本政策目的であるわけでございます。しかしその結果、急速な対米輸出という状態になってあらわれてまいった。それがアメリカ側から規制を受けるということでございますから、もう少し事前に調整が可能でなかったのかと御指摘をされれば、私は、その部分に対してはすなおに事実を認めるのが至当だと思います。
  203. 西田八郎

    ○西田委員 いまも通産大臣は率直にお認めになったわけでありますけれども、しかし、それを認めるからといって、私はこの問題が解決をする問題ではないと思うのです。もともと日本が原材料を持たないということは、繊維に限ったことじゃないのです。鉄鋼からすべてに至るまで——現在余っているのは米だけですよ。余っていると言われた水だって、最近は水資源の不足でどこでもみな往生しているのです。ですから、こういう資源の不足なところで——資源が不足している国であるからこそ、貿易立国ということでその輸出に力を入れていかなければならないわけでしょう。そうだとすれば、当然世界各国の動きというものは十分把握しておかなければならないはずなんです。それが、ここへ来てから誤っておったということで、これはあとで申し上げますけれども、ここで被害を受ける人たちにどうするかという問題が出てくるわけであります。同時に、そのことは国内の問題だけではなしに、やはり台湾にしても香港にしても韓国にしましても、非常な迷惑をこうむっておるわけですよ。せめて日本だけはがんばってくれるだろうということで大きな期待をしておったところが、その日本があっさりとかぶとを脱いでしまった、一体日本人は極東三国、われわれの仲間なのかどうなのかということに大きな疑問を持っておるわけです。これは、私はただ推量で申し上げておるわけじゃなしに、この協定が締結された後に韓国、台湾あるいはインド等の労働組合の代表と話をして、その話の中に出てきたことばなんです。これに対して通産大臣、もう一回答弁してください。
  204. 田中角榮

    ○田中国務大臣 戦前も同じような問題があったことは歴史上明らかでございます。その当時の繊維製品は、安かろう悪かろうと端的に評価をされたわけでございますが、今度は安かろうよかろうということでございますから、世界の市場では、日本製品の脅威を感ずるということも一つの事実として認めざるを得ません。普通ならば、日本としてはたいへん喜ばなければならないことでございますが、戦後二十五、六年の間、一番最後の四、五年というもの、三十九年の十四条国から八条国に移行した当時は、日本の外貨手持ち高二十億ドル——十七億ドルまで減ったこともあるのでございますし、また金融恐慌を未然に防ぐために日銀法二十五条を発動しなければならないような状態、それはわずか五年前であります。今日のような国際競争力や輸出のいんしんをだれが一体予想したか。このくらいにスピードが上がったわけであります。その中で一番大きなものが繊維製品である。しかし、アメリカの市場から見ると、繊維製品だけではなく、昨年の実績に比べて二二三という大きな数字を出しておる自動車産業、その次にはテレビ受像機の問題がございます。電卓もございます。そういうようなものが指摘をせられておるわけでございますが、こういう国際競争力というものは急速にこの四、五年間うなりを生じた、こういう状態でございまして、考えついたときには、規制をしなくとも、現在繊維の実態はあなたもよく御存じだと思いますが、七十六、七万台の織機を持つわけでございますが、これがフル稼働をすれば、いまの輸出量の倍ぐらいつくれるわけでございます。ですから、そういうところまでなぜしたのかということにはいろいろな問題がございます。問題はございますが、輸出力というよりも生産力が非常に大きくなったというところにも問題がございまして、やはり国際的に見て、長い安定的な経済交流を続けていくためには、オーダリーマーケット、秩序ある輸出体制の確立ということはどうしてもやはり守っていかなければならないということでございます。ですから、外国の間は十分調整をしながら、国内産業に対する問題は、減少に対しても長期安定化に対しても適正な施策をスピーディーに行なうということ以外に、対する施策はないと思います。
  205. 西田八郎

    ○西田委員 みずからもその非を認めておられるわけでありますが、それでは一体これからの政策をどうされるおつもりなんですか。
  206. 田中角榮

    ○田中国務大臣 まず第一番目には、日米間の協定が成立をするわけでございますから、この協定によって日米間の対米輸出が減るようなことがないように、綿製品のようにシフトやトリガーの問題でだんだんだんだんと死にワクが活用せられないために十年間で四〇%も減るという事実、このような方向にならないように、五%増しという自主規制がそのまま政府間協定に移行されることが望ましい、これは理想的な姿でございます。そういうことに近づけるために最善の努力を行なうということであります。しかし、五%増しにしても、いまの輸出量の倍もつくるだけの能力を持っておるものであります。率直に申し上げて、七十六、七万台というその織機だけを対象に考えてみますと——織機だけじゃなく、いろいろな機械があるわけでございます。ございますが、まあそのうち自主規制の対象として五万三千台の織機の買い上げをやりましたが、これはもう実態とはほど遠い数字であることは御承知だと思います。  そういう意味で、当面する問題の第一は、対米輸出の安定的な状態を確保することが一つでございます。第二には、日本の繊維の輸出と国内消費というものに対して、少なくとも長期的見通しを立てて、それに合うような業界をつくらなければならない。その業界対策は当面する対策、それから恒久的な安定対策というものに分けてまいらなければならない。そのためには、現状を全部是認をして、これをすべて維持するというわけにはまいらないと思います。ある意味におけるスクラップ・アンド・ビルド政策というものを相当的確に、年次的に進めてまいる必要がある、こう思います。
  207. 西田八郎

    ○西田委員 伺っておりますと、結果的には、もうアメリカの言われるとおりに、とにかく国内でこれは処置しなければしようがない問題である、こういうことを前提にお考えになっておると思うのですね。しかし、繊維産業というものは、まだほかにも伸びる道はあるわけですよ。アフリカも南米も、まあインドに行きましても昔裸でおった人が最近は着物を着るようになってきたわけですから、その消費量もばく大なものがあります。さらには、まだ生活水準の低い多くの国々が世界にはあるわけで、やはり衣食足って礼節を知るということばがあります。衣は食と同じように、人間の形の中で、その人格を形成する一つのものになっておるわけなんです。したがって、これからの文化の水準向上、文明の発展というものは、やはり繊維というものと切り離すことのできない問題だと思う。そういうものに対して、新しい市場の開発であるとかあるいは輸出の、アメリカがこうならあるいはもっとほかにというような道が考えられてしかるべきじゃないのか。いま通産大臣の話を聞いておると、とにかくものをつぶすことしか考えていない。そういうことでは、私は、ほんとうに通産大臣ではなしに、これはもうつぶし大臣だということになってしまいやしないか、その辺のところをどうお考えになっておるのか、もう一回聞かしていただきたい。
  208. 田中角榮

    ○田中国務大臣 あなたにそう言われないように申し上げたつもりでございます。まず、アメリカに輸出をする安定的な数量の長期的な見通しを立てる。アメリカ以外の市場に対しても、どのくらい出せるのかというようなものに対して的確な長期的見通しを立てなければならない。しかし、現実問題としてはいまの輸出量の倍以上の能力のあるものということを考えますと、やはりそれを全部そのまま産業体制を維持していくことはできないと思います。だから、そういう意味でスクラップ・アンド・ビルドというものも勇敢に取り上げていくことが繊維産業自体の求める道でもある、こう述べたつもりでございましたが、少し舌足らずだったかもわかりません。私はもうすでにその意味で、まず応急的には商品援助という道も大蔵省に考えてもらおう、そういうことも言っておりますし、それから場合によれば、あなたがいま述べられたような、いますぐは代金回収ができないとしても、やはり人類のレベルアップの過程においては、消費財というものは一番——衣食住でございますから、食うものの次は着るものであるということになれば、三十五億の人類が対象になるわけであります。そういう面から見れば、まだまだこれから延べ払いとかいろいろなものを加味していく必要があるということでございます。私自身も、原材料の輸入源の多様化をはかると同時に、輸出先の多様化をはかっていかなければならないと、こう言っておりますが、その中で最も急を要するものは、まず余っておる繊維というものを、つぶすことが目標でありません。通産大臣はつくることが本職である、もちろんそう考えております。そういう意味で、つくっても、これはただつくるだけじゃだめなんです。これをやはり国外に売り出さなければならない。そうすることによって日本のシェアを広げるということが長期的に見た日本の国力を伸ばすことでもあり、国の利益をもたらすゆえんでもございます。そういう意味で、いままでとは非常に違った広い視野で皆さんの御意見を十分借りながらひとつ考えております。
  209. 西田八郎

    ○西田委員 安定的成長であるのか、あるいは数量の面等についてはたしてそれが妥当な取りきめであったのかどうかは、後ほど協定内容の問題で私、多少触れたいと思います。  問題は、今度の強圧的なアメリカの態度ですよ。一九一七年のいわゆる対敵国といいますか、日本は日米関係というものは親善の、親善のということで、常に総理も口を開けば言ってこられたわけでありますけれども、今回この問題に関しては敵国扱いをして、そうして、それで言うことをきかなければこれだぞというような強圧的な交渉態度で臨んできたわけであります。それに対してわが国は、それでは一体どんな抵抗の手段があったのか。私は、国際間の話し合いである限りは向こうがそれだけ強圧的に出てくるなら、日本もそういう態度で臨むべきではなかったか。やるならやってみろ、やらしてみなさい、おそらくアメリカはようやらなんだでしょう。日本一国を相手にしてやったことが、全世界相手にしてけんかするようなことになるようなことをはたしてやったかどうか。私は、その辺の見通しは非常に政府は甘かったと思うのです。どうしてそれをやられなかったか。もっと強く臨むべきではなかったか。ほかに何か理由があったんですか。
  210. 田中角榮

    ○田中国務大臣 日米間だけではなく、やはり世界の平和を維持していくためには、言うまでもなく、話し合いを続けるということが前提でなくて平和の維持ができるものではないと思います。やるならやってごらんなさいと言えばそれは戦争でございますから、そういうことは日本はやらない。これはもう大前提であります。話し合いをするということでございます。ですから、日米間の繊維問題はこれはまる二年かかっておるのでございます。その間閣僚ベースでもって向こうへ行ったりこっちへ来たり、この種の交渉としては珍しいほど複数でも単数でもいろんなことをやっております。沖繩返還というような大きな歴史的事実を解決するにしても、この繊維問題ほど往復を激しくやっておらないのであります。ですからそういう問題に対しては、私は抵抗をしたとは申し上げませんが、いずれにしても日米間で繊維問題に対して二年間の歳月を経た。しかもその間に、もうほんとうに交渉妥結するんじゃないかというぎりぎりのところまでいきながらまたとにかくこわれる。あの最終段階においては、閣僚が二人もアメリカへ出かけて複数同士でやったのです。こんな例ありません。そういうことまでやって、しかる後に牛場・フラニガン会談に切りかえ、それでもだめで自主規制というものになったわけですから、私は、日本主張ということを実現するために最善の努力をした一つの実績はそこにあると思います。  それからもう一つは、私が日米経済閣僚会議に出ましたときに、私自身も代議士になってから、戦後新憲法下第一回に議席を得ましたからまあ二十五年になるわけでありますが、その間、日米間が非常に協力をしながら今日があることもよく理解をいたしております。また、私自身が大蔵大臣在職中も、十四条国から八条国になるころ、非常に困難な日本状態のときに、アメリカでわずか二千万ドルの日本電電債を出してもらうために、歌さえ歌ったこともあるのです。   〔委員長退席、長谷川(四)委員長代理着席〕  私は、そういう意味で日米間の事情を非常に承知をしておるつもりでありますが、その私が、今度は非常に強く日本の事情を数字をあげて説明をいたしました。ある意味では、世話になっておったアメリカが初めて日本にお願いをしますというときに、日本としてはもう少し考えようがあったのじゃないかとさえ指摘をせられながら、私は国益を守るためには言うべきことは言うべきである、また、お互いが真実を述べられないところに真の友好はない、こういう考え方で、少し言い過ぎるぐらい私は言ったつもりであります。だから、アメリカにおける私の評判は悪いということでございます。そこまで言っておるのでございますから、私は、日米間の交渉が簡単に単純なものであったということは間違いだと思います。しかし、その上になお要求されるのでありますから、やはりそこらの事情はすなおに評価をしていただきたい。(「了解」と呼ぶ者あり)
  211. 西田八郎

    ○西田委員 了解という声もありますが、私は了解できませんよ。先ほど長くかかったということをおっしゃいましたが、長くかかった理由は、やはりアメリカ側に、被害を立証するというガットの精神に基づいてのその証拠が集められなかったからじゃないですか。被害のなきところに規制なしというのはガットの精神の大前提ですよ。それを向こうはどうしても証明することはできなかった。この問題が出たときに政府は高橋ミッションをアメリカに派遣されておるはずなんです。そうして調査をしてきておられるのです。それでも被害はないという結論を出して帰っておられる。ですから、アメリカとしてはうしろ暗いところがあるんです。うしろめたいところがあるから強硬に押せなかった。だから、今度は伝家の宝刀を抜いてとにかく強圧的に出てきたんですよ。これに対して話し合いというようなことを——ほんとうにそれは話し合いで解決することが私は基本でなければならぬと思うのです。しかし、少なくとも国家の一つの産業の大きな変革期にあたって、こういうような被害を受けるという事態の中にあっては、私は国益を守る国務大臣なら、それに対して対抗手段を当然考えられてあたりまえではなかったか。その点に対して、大臣のとられた態度に対してはきわめて不満であります。  そこで、私は協定内容に入るわけでありますが、先ほど数字の問題を言われました。しかし、この九億五千万平方ヤードという総ワクは、一体日本でもそれだけ輸出しているということを確認しておられるのかどうか、その点からお伺いしたい。
  212. 田中角榮

    ○田中国務大臣 アメリカ側は、昨年の四月一日からことしの三月三十一日までの実績というものを基準にいたしまして九億五千万平方ヤードということでございます。これは実質的に計算をすると、こちらのベースで計算をする場合では、事実は九億平方ヤードと言いたいのでございますが、実際その後糸も出ておりますし、まあそういう意味で九億五千万にしたのであって、これは両国間で納得できる数字ですということでございます。私自身は専門家でもありませんし、数字を長く持っておるわけじゃありませんから、基準とする数字九億五千万平方ヤードというものはどうなるのか、まあ日本側の通産省は、これでいいんですなどと言うわけはございません。ございませんが、九億五千万平方ヤードというものの上にどれだけ積み重ねられるのか、またその積み重ねられた数字はただ数字であって、死にワクの活用ができないということで、だんだん漸減的な輸出状態になることを避けるためにどうするのかというような具体的な問題を詰めたわけでございまして、実質的な実績が九億五千万平方ヤードなのかどうかさだかに私自身は確認はしておりませんが、もし必要であれば、繊維局長来ておりますから、答弁をさせます。
  213. 西田八郎

    ○西田委員 じゃ繊維局長答弁してください。
  214. 佐々木敏

    佐々木(敏)政府委員 お答えいたします。  アメリカ側のTQ統計によりまして、正確にいいますと九億四千二百万という数字になっております。当方、TQ統計との厳密なる数字の調整はまだできませんけれども、当方の数字からいたしましても、九億五千万は若干多い数字になっております。
  215. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると、まだ日本の輸出実績の中で、いわゆる確認された数字でないということが一つですね。いわゆるおおよその見通し、こういうことであるわけなんです。アメリカにできることがどうして日本にできぬのか、その辺私は非常に疑問を持つわけでありますけれども、それはあるいは事務能力の差であるかもしれません。そういう点については非常に疑問を持つわけでありますけれども、ここで私お尋ねしたいことは、もしも日本の輸出承認実績というものが、この九億五千万平方ヤードを上回った場合は——いまそういうことだということですから、そういうこと以外のことも起こり得るということを想定しなければならぬわけですが、九億五千万平方ヤードを上回った場合は、これは大臣どうなるのです。
  216. 田中角榮

    ○田中国務大臣 協定の基準になる数字として九億五千万平方ヤードというのが基準になって、そこからスタートをいたしておるわけであります。これで二国間が協定ができなければ、その三%以内で押えよう。今度協定ができましたから、協定は五%というワクにしよう、こういうことにしたわけでございますから、ですからその九億五千万平方ヤードというものは、これはその後日米両国間で詰めて、去年の四月一日からことしの三月三十一日までの十二カ月間の実際の数字が出た場合、それに移しかえるというものではないわけです。これはいま申し上げたように、日米間でもきちっと合わす数字というよりも、九億五千万平方ヤードという数字は非常に近似値である、そのものずばりでなくとも同相当額であるということは間違いないわけですから、だから両国が確認できるような、ラウンドの数字九億四千何百万平方ヤードと言わないで、九億五千万平方ヤードというものを基準にして、五%の範囲内ということによってこの協定を進めましょう、こう言ったわけです。ところが、その後の協定の過程におきまして、シフト率五%を一〇%にしたようなことによって五千万平方ヤードが基準数字として乗っかったようなものもございますので、現実問題としては、九億五千万平方ヤードが十億平方ヤードからスタートできるというようなものも、その後七月一日が十月一日になったために数字が変わっておるのであって、必ずしも九億五千万平方ヤードと一年間の実績数字というものを議論する必要はない、こう思います。
  217. 西田八郎

    ○西田委員 その議論する必要はないというのはおかしいのじゃないですか。これはアメリカから出された資料によって確認された数字なんですよ。大臣も大体その程度だということで事務当局に聞かれてオーケーされた。しかし、これは疑えばきりがないわけです。実際はわがほうでどれだけの輸出承認をしたかということを、やはり日本の国務大臣としては確認した上に立って、それとのもし差額が出てきたときはどうするか。少ないときはいいでしょう、こっちは多く輸出できるのですから。多い場合にどうするかということを聞いているのです。
  218. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いまも申し上げましたように、スタートになる基準数字を九億五千万平方ヤードといたして協定を結びましょう、こう言ったのでございまして、その数字の根拠は、去年の四月一日からことしの三月三十一日までのおおよそ実績数字に相当するものでございます。こういうことで両国が合意をしようということでございましてあとから実績が出たら、それによって精算をしようということではないわけです。精算をすると、多くなったときだけはこちらが要求するのじゃなくて、少なくなったときもまたしなければなりませんから、そこはそれ日米間でございますから、九億五千万でスタートしよう、こういうことでございます。
  219. 西田八郎

    ○西田委員 そこがそれ日米間でございますからなんて、そんなおかしなことはありませんよ。輸出規制をしてくれと言うてきたのは向こう側なんですよ。それが九億五千万平方ヤードは認めましょうと、こう言うておるわけですよ。それをこっちが今度は多かったら、それは実績があるぞということで開き直らなければならぬところじゃないのですか。どうなんです、通産大臣。
  220. 田中角榮

    ○田中国務大臣 スタートの数字が、基準になる数字が多いにしくはありません。ですから、私もこの数字が過酷な数字であるならば一矢報いたいと思いまして、この問題に対しては事務当局に数字の確認を求めました。求めましたが、正確な数字をいますぐ申し上げるわけにはまいりませんが、基準年次を昨年の四月一日からことしの三月三十一日までの年次としますと、九億五千万平方ヤードにはなりません。これは上の数字を切り捨てたのではなく、やはり向こうから申し出をしているだけに、誠意をもってやっているのだということを前提にするために、下の数字を切り上げてまるくしておりますから、この基準数字というものに対して議論を進めるよりも、この基準の上積みを幾らにするかということに議論を、焦点を合わすべきですと通産省の専門家がそう言うのでございますから、私も、そういう面から九億五千万平方ヤードというものを基礎とすることでスタートしたわけでございます。
  221. 西田八郎

    ○西田委員 私は、大臣、この問題にこだわるのはなぜかといいますと、五%というげたをはめられたのですよ。そうしますと、これが一千万ヤード違ったらどうなります。ここに大きな差が出てくるわけですよ。それは五%以上になるわけですよね。ですから、そこのところを聞いておるわけなんです。だから、ほんとうに確信をもって九億五千万平方ヤード以内にとどめられるのかどうか、その点を確認しておきたい。そうでないと、これからの対米輸出というものを考える場合に非常に重要な問題になってくる。次に私がお伺いするトリガー方式と弾力条項との関連も出てくるから申し上げておるのです。
  222. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いま御発言になられましたシフトとトリガーの問題の御質問をいただいてから、一括してお答えしたほうがいいかもわかりませんが、前提になる九億五千万平方ヤードという数字が、実質数字よりもうんと離れたものでないということであるならば、それを前提としてスタートすることにはこちらとしてはあまり損はない。というのは、九億五千万ヤードよりも、その上に重ねられる五%というところに問題がございます。五%全部出れば、それは現に行なっておる自主規制をそのまま政府間協定にしたことだけでございますから、この問題は非常に小さくなるわけですが、いわゆるシフト・トリガーの問題があるので、死にワクの活用が五%で押えられ、一〇%で押えられる場合には、五%プラスにならないで四%か三%、場合によっては九億五千万平方ヤードを割るおそれがあるというところに問題があるわけでありますから、その条項には今度弾力条項を活用することになりましたので、毎月毎月やって、事務ベースでもって片づかない場合には閣僚ベースの折衝も引き続いて行なう、こういうことによって自主規制のワクに近づけるということが目的でございまして、九億五千万ヤードに対しては、これはスタート、ベースの数字でございますので、それはベースは大きいにしくはありません。実質の数字が、両国で合意した数字というもの、九億五千万平方ヤードを上回った場合には、それに置きかえるという協定ができればいいのですが、これは応急の施策であって、なかなかそこまでこまかいことがこの協定の目的ではないようでございますので、問題は、次の段階における弾力条項の活用ということのほうにウエートを置いたわけであります。
  223. 西田八郎

    ○西田委員 ところが、シフトが認められて弾力条項があるように見受けられながら、アメリカの製品に対して——これは輸出品そのもの、輸出繊維というものを考えていかなければならぬのですけれども、とにかく繊維製品というものは、一つのファッションなんです。流行なんですよ。だから、去年ニットのズボンがはやったから、ことし同じようにニットのズボンというわけにいかぬのです。パンタロンになったり、あるいはミニスカートになったりして、非常に変化をしていくわけなんです。そういう変化に対応せしめようということで向こうが出てきたわけですよ。ですから、一つの現在伸びつつあるものをぐんと押えておる。そしてほとんどもう輸出がずっと停滞しておるものについてはほってあるわけです。ですから、その額を認めてやるといわれても、その現在指定された品目がアメリカの市場を撹乱するおそれがあると思うときには、合衆国は日本政府に対して協議を申し入れることができるとなっておるのです。そして協議が申し入れられてきて、協議ととのうまでの間は五%で押えられるわけでしょう。そうすれば、何もこの弾力条項というものはここでは生かされてこないわけです。これを通産大臣、どういうようにお考えになっているのですか。
  224. 田中角榮

    ○田中国務大臣 繊維の協定が非常に世界的にむずかしいものであるというのは何か。平和を守るための一つの手段は、いま確認をしたように話し合い以外にない。話し合いというものは、最後には足して二で割っても絶対に結論を出すべきなんです。出ないということは何か。この協定の内容は非常に複雑であり、むずかしいということであります。ですから二年間も日米間でやって、まとまらないことなどは一つもない日米間であっても、繊維に関しては最後のどたんばでまとまらなかった。これはなぜかというと、今度の協定第七項、シフトとトリガーであります。先ほども申し上げたとおり、綿製品協定が十年間で四〇%減ったというのは、結局いまのように流行に合った新しい品物、場合によればことしは一万ヤードしか出ないものが来年には百倍出るものもあります。いま現に日本からアメリカに出ておるものでもって、対前年度比一万倍というものはあるのです。一万倍、二万倍というものもあるのです。それはもう実績はないから、二年目になれば一万倍、二万倍になるわけであります。そういうものは五%増しで押えて、そしてもう流行おくれでもって、去年は一万ヤード出たが、ことしは五千ヤードしか出ないものはそのまま死にワクになるから、十年間で四%減るわけであります。ですから、この品目間のシフト率を、総ワクの五%の範囲であるならば自動的にやるべきであるということを、向こうは個別に非常にこまかく割ってしまって、シフトが現実的に動かないようにしようというところに、牛場・フラニガン会談が、最終的には自主規制に移さざるを得なかったポイントはそこにあります。  ですから、今度は向こうも確かにトリガーというような制度、引き金ということだそうでございますから、対敵条項を発動し、引き金が自動的に作用するということは、これは戦争を意味するということで、これはだめです、こういうことで、私はそういうものなら調印しませんと非常に強くやった。日米間にこんなものを、記事になるだけでもよくない、私はそういう意味で非常に強く主張して、弾力条項というものが最終段階において出たわけであります。向こうも五%をこす場合には市場撹乱の場合にはこちらに話し合う、話し合ってまとまるまでは五%で押えよう、こららも一カ月に一ぺんずつもコンサルテーションをやろう、そしてそれは局長会議、次官会議ということにこだわらないで、閣僚ベースでもだれでもやれるということでありますから、向こうからだけ要求されたらのまなくちゃいかぬというのでなく、こちらも死にワクが出たならば、私ども必ず出ていこうと思っているのです。そういうことでございますので、日米間で話がまとまらない、話が出てきたのは向こうから出てくる、今度もまたアメリカに押しまくられる、そんなことはないです。あってはならない。そういうことでひとつ死にワクの活用をやろう、こういうことであります。
  225. 西田八郎

    ○西田委員 非常に自信を持ってそんなことはないとおっしゃったけれども、これははたしてそういうことになるかどうか、これは実施に移されてからでないとわからないのですけれども、少なくとも繊維でめしを食っている関係の方々が具体的にこれを検討し、さらに二十五日に大臣と会われましたね。そのときにもこれは了承されてないはずなんです。ですから、そう断言されていいのかどうか、私はこれは非常に大きな疑問を持つわけです。
  226. 田中角榮

    ○田中国務大臣 絶対にだいじょうぶですと断言しておるのじゃございませんから。これはほんとうに世界的にむずかしいのはその一点である。日米間で二年間かかってもできなかったのはその一点である。それを私が全部オーケー、そんなことは全然考えてません。なかなかたいへんである、ですから私の誠意は認めてほしい、こうは業界にも言ってあります。業界の言うことは十分理解しておる、業界の言うような状態だから国際的にも協定にならないし、二国間協定ができなかったんだから、それはもうあなた方の言うことを、専門家の言うことを事実として認めなければならない。ただ、原案には何にもなかった弾力条項をとにかく規定をしたんだ。どうしても政府間交渉ではできなかったものを入れたことだけは事実なんだ。日米間が話し合いをすれば、沖繩返還交渉さえできる両国なんだから、これから全然押しまくられると考えるのは誤りである、こういうことを私は述べたのであって、これが全部が全部、業界の心配が全部避けられるものであるならば、それは私はいばって、こんな協定に反対をする人の顔が見たいとさえ言えるのですが、そんなことはない。やはりこれが実施官庁である商務省の役人の手に移ったときにはなかなかめんどうだと思います。私自身が言っているのですから。それにはこの協定に前文をつけて、そしてこれは私とケネディ氏、コナリー氏、それからニクソン大統領も、日本でもって非常にこの条項が不利になってきたときに、反米感情につながるような場合には、この条文をなぜ挿入したかを、協定の責任者であるあなたとぼくは、この問題の解決に当たらなければなりませんよと私は念を押してあります。ちゃんとそれを本国の大統領まで通告をしてください、そうでなかったらイニシアルはしませんというところまで私は言っておるのですから。二国間の政府間協定のイニシアルでそれ以上のことを述べられる立場じゃない。  私はそういう意味では、そんなに万全の体制であって、絶対だいじょうぶです、五%の自主規制をそのまま政府間交渉にしたんです、そんなことは述べません。そんな自信はないのです。だから産業の対策もぜひやってもらいたいというので、内閣に本部をつくっていただいたわけでございますから、そこをひとつよくお考えをいただきたい。
  227. 西田八郎

    ○西田委員 この議論もどうやら、条文の解釈でありますから、これは実績を見てみなければわからぬということになると思うのです。これはほんとうにそういう態度にアメリカが出てこないという保証は何もないわけです。しかもアメリカというところは、一押し、二押し、三押しなんです。綿製品協定を結んだときにも、ほかの繊維には波及しないと約束していながら、今度は合成繊維、毛織物に手を加えてきたわけです。しかも、この条文を読んでみますと、チーフ・バリューということばが使われておるわけです。これは毛、合繊すべて、とにかく混合されたものにまで、いわゆる混合の主体をなすものに重点を置いた規制が行なわれる、そこまできておるわけです。   〔長谷川(四)委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、いまおっしゃるように、確かにシフトは認められておる、弾力条項はあるというものの、この三条ですか三項というものが、いわゆるトリガー方式で押えつけてくるということになりますと、それを断わることができない条文にやはりなっておると思うのです。だから、私はこの点はどうも納得することができません。どう説明を聞きましても、やはりその点は、アメリカの態度がほんとうにそういうことになるかどうか、これは私はそうはいかないと思うのです。  次に、協定期間の問題なんです。これは三年という協定を結ばれておる。そしてその次に二年というものをその時点で三年後に協議をするという条項があるわけでありますけれども、しかしこれに対して、大臣、ケネディさんから、大使から手紙をもらっておられますね。どうでしょう。
  228. 田中角榮

    ○田中国務大臣 原案は五年でございます。五年でありまして、米韓、米台、米・香港等は五年でイニシアルが行なわれておりますが、こちらは五年などというよりも、三年でも困るのです、二年でも、だんだん短いほどいいのですということで、そうでなければ私もイニシアルできません、こういうことで三年になったわけでございますので、原案は五年だったと思います。
  229. 西田八郎

    ○西田委員 私は原案を聞いておるのではないのですよ。会談が終わったあとのその手紙の話を聞いておるわけです。
  230. 田中角榮

    ○田中国務大臣 それは、多国間協定に移行することが望ましいという向こうの希望がございます。その中に五年が望ましいという意思を表示をしてきておるということでございます。
  231. 西田八郎

    ○西田委員 それは意思の表示ですか。「取極の期間は、一九七一年十月一日から五年間とし、」となっておるのですよ。そして、「その後は、加盟国の合意があれば、更に広範な国際取極に代りうること。」というのが第一項になっておるわけです。どうなんですか、これ。
  232. 田中角榮

    ○田中国務大臣 十月十五日付でケネディ特使から、「米国政府と協力することを希望する旨申し述べました。」ということだけでございます。それに対して私から書簡が出ておりまして、そういうことのあったことをテークノートするということだけでございます。
  233. 西田八郎

    ○西田委員 それをテークノートというだけで済まされるのですか。
  234. 田中角榮

    ○田中国務大臣 テークノートというのは記録したということでございますし、例のカナダと中国との、台湾中国の領土であるという問題で二十一カ月もやったのですが、それは、ということをテークノートしたということであって、それは認めたことにもならぬし、否認をしたことにもならないわけでありまして、私自身もそういう申し出があったことを記録した、テークノートしたということでありますから、私は英文学者じゃございませんからあんまりよくわかりませんが、しかし、それは私自身がそれを承諾をすることを前提としたものではないということを申し上げておきます。
  235. 西田八郎

    ○西田委員 簡単にカナダの例を引き出したり何かしておられますが、通常われわれが言うテークノートという理解のしかたというものと——私も横文字に弱いのです。横文字に弱いからあまりはっきりしたことを蓄えないのですが、ここに、原文はトーク・デュ・ノートとなっているわけですね。そうしますと、やはり確認しますとか承認いたしましたとかいうような意味にとられるのではないか。これは私は非常に大きな問題だと思うのです。向こうから五カ年としという文書が来ておるわけです。それに対して通産大臣の返答は、「私は、一九七一年十月十五日付の毛及び化合繊繊維品の国際取極に関する閣下の手紙を受領しました。この点に関し、私は同書簡に述べられた閣下の希望を、テークノートしたことをお知らせします。」ということになっておるわけです。そうすると向こうからおっしゃることを私の腹におさめましたということですよ。五年間というものは約束しましたということになるのじゃないですか。
  236. 田中角榮

    ○田中国務大臣 手紙を出した私が約束をしておらぬのであります。
  237. 西田八郎

    ○西田委員 そんな答弁がありますか。だからこれを聞いておるわけですよ。
  238. 田中角榮

    ○田中国務大臣 この文書は事務当局というよりも通産省及び外務省が相談をしながら書いたものでございます。ございますが、私自身は五年間という申し出に対して反対をいたしたのです。これはもう二年、短いほどいい。できるならば協定ということよりも私自身は書簡にしてもらいたいというくらいな腹があるのですから、私自身は現に自主規制が一番望ましいのだということを述べておるのです。そういうことですが、しかし、その後の日米間の状態で、これは協定もやむを得ないというところまで追い込まれておるのでございますから、全部が全部などを私はのめませんよということで、前文をつけ、そして弾力条項をつけ、約七点にわたって修正をいたしたと思います。そういうことを言っておるのでございますから、それは全文を、向こうからの要請文をそのまま全部オーケーということは絶対考えておりませんし、こういうような文章が外交慣例上向こうから来ておるものに出ておるといっても、それは承認を意味したものでは絶対にないということだけは事実でございます。私もまた、コンサルテーションに出ていることでございますから絶対ありませんよということは幾らでも申し上げます。
  239. 西田八郎

    ○西田委員 それでは大臣は、ここではもう絶対にそういうことはない、したがって、かりに三年後にこの問題を日本側から持ち出して破棄するという、そういうこともあり得るということを確約できますか。
  240. 田中角榮

    ○田中国務大臣 この問題のこの協定は三年間でございますから、三年間たてば両国が合意をし、また諸外国のこの種の問題に対する状態が変わらない限り三年間で消滅をする、こう理解をいたしております。
  241. 西田八郎

    ○西田委員 これは非常にあぶないものであって、今後どうなるのか、はたしておっしゃったとおりになるのかどうか、まあその当時通産大臣でないかもわからない、だからわかりませんけれども、私はだれにかわろうと政府責任政府責任で持ってもらいたい。ここへ首相もおられる、この論議を聞いておられるわけですから、はっきりとひとつ胸におさめておいてもらいたいと思うのです。  次にお伺いしたいことは、課徴金の問題です。課徴金をはずすということが一このトリガー方式をはねのけて弾力条項を入れるということと、そして期間と、そしてもう一つ数量と課徴金というのは、これは今度の協定の四つの大きな山であったと私は思うのです。ところがこの課徴金について、せっかく政府の宣伝にもかかわらずアメリカのほうでは十八日にピーターソンが、これは課徴金というものは初めからはずすつもりだったというようなことを言っておるわけなんですね。しかも六二年通商拡大法によりますと、二百五十五条のb項で、こういう問題、かりに協定が成立したときには大統領はその権限を行使することができる、一切及ぼさないようにできるというふうになっておるわけですね。これを通産大臣知ってやられたのかどうか。
  242. 田中角榮

    ○田中国務大臣 課徴金という制度が、やむにやまれない状態から生まれたものであっても、望ましいものでないということは申すまでもありません。ですから私は日米経済閣僚会議のときには、右手にケネディラウンドを推進し、左手に課徴金を取って実施をしておる姿というものはどう表現するのだとさえ述べたわけでございます。しかし結論的には、日米の繊維協定の原案に対してイニシアルが行なわれたことによって、課徴金という望ましくない状態はくずれたわけでございます。またきょうあたりの新聞では、課徴金を全部やめるというのではない、これは前の対敵取引法と同じ法律である銀行法で行なわれた利子平衡税法でございました、このときも日本とカナダだけは除外したわけでありまして、それと同じように個別に除外をしていくということが、またきょう報道されております。ですからやっぱり条件なしでは絶対にはずさないということを、日米閣僚会議のときも非公式に述べておりましたから、私はいま国際的に見たらあのような制度は一日も早く問題なくはずされることが望ましいことだと思っておりますが、やはり日本が先べんをつけた、そのために課徴金制度というような制度がくずれ去るきっかけであるとするならば、それはまあよかったことだ、それなりに意義がある、鬼の首でも取ったようなものとは見ませんが、しかし日本はいいことをやったということではあろうと思います。
  243. 西田八郎

    ○西田委員 何をどういうふうに言うておられるのか私はさっぱりわからぬ、頭が悪いのかもしれぬが。課徴金というものがこういう協定によってはずされるという、通商拡大法があってその条項が適用されるということを予測したのか、しなかったのかということを聞いておるのですよ。
  244. 田中角榮

    ○田中国務大臣 課徴金を撤廃しないようであれば調印はできませんよということでございましたから、当然、協定をすればはずされるものだ、こういう考え交渉を進めたわけです。
  245. 西田八郎

    ○西田委員 全く何と言いますか、的をはずして、答弁だけすればいいというような答弁で、私はほんとうに残念なんです。私の聞いておるのは、六二年拡大通商法がある、その第二百五十五条のb項によって、この辺においてこういう対処がとられたら、ということは、日米繊維交渉政府間協定というものができた場合には、大統領はその該当するその課徴金を課せる輸出品に対してこれを全廃するということである、この規定を免責するというふうになっているわけです。それを知っておられたのかどうかということを聞いておるわけです。
  246. 田中角榮

    ○田中国務大臣 課徴金という新しい制度ができたことしか理解しておらないのでございまして、その前段にある問題は理解しておりませんでした。
  247. 西田八郎

    ○西田委員 理解しておりませんでしたって、この重要な二国間の政府交渉をしようというのに、相手方がどういう法律を根拠にしてやってくるか、わがほうはどういう法律を根拠にして戦うか、これが私は国と国との間の交渉の姿勢でなければならぬと思うのです。もちろん、それは何も武器を持ってやるという意味ではなしに、やはり話し合いなんですけれども、しかしその前には十分な資料を整えてやるべきでなかったか。それをあなた、知らぬとおっしゃるから——知らぬので、私は課徴金に重点を置いたのだと言われるかもわからぬけれども相手方では課徴金なんというのはもともとこうなるようになっていたんだというようなことを発表されていたのでは、ほんとうに国民は——通産大臣が、私は一生懸命になってやったとおっしゃる。それはその努力を私も多としたいと思うけれども、しかしそれは骨折り損のくたびれもうけということではないかというふうに考えるから、そこを聞いておるわけですよ。
  248. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私は、課徴金の適用除外を誇る気持ちはごうもありません。ごうもありませんが、少なくとも日米間繊維交渉というものの過程においてこれが適用除外という端緒をつかんだということは、それなりに意義あることだと考えております。
  249. 西田八郎

    ○西田委員 全く質問に対しての答えになっておらぬので何ですけれども、時間の関係があって、私は肝心なことを聞かなければならぬので、その点は預けておきますよ。いずれ大臣、どうです、何回もこれから会うこともあるでしょうし、商工委員会もあるから、そこでもう一回議論をやり直したいと思います。  そこで、私は、お伺いしたいことは、このことによって、先ほど織機十万台買い上げということも言われましたが、わが国の受けるこのための被害というものはどの程度になると踏んでおられるかをお聞きしたい。
  250. 田中角榮

    ○田中国務大臣 非常にむずかしいところでございます。自主規制が五%増しでございます。でございますから、五%増しというところまでトリガーの条項が弾力的に運用されて、そして九億五千万平方ヤードプラス五%というワク内でおさまれば、それはおさまるように全力をあげなきゃいかぬ。そのためには、これから毎月の日米間の交渉には、事務当局だけにまかさないで、これはもう私自身も出かけていかなきゃならないとさえ考えて、責任感じております。しかし業界では、そんなことを言ってもこれはなかなか減りますよ、中には特殊な業者は七五%も減ると言っておりますし、私に関しては五〇%減ると思います、三〇%は減ると思います、ですから三年間の協定期間には半分近くなるおそれがある、こう言う人もございます。しかし、私はそうならないために交渉を非常に苦労してまとめたんだし、前文もつけ、弾力条項も挿入をしたのである。毎月これをやろうというのであって、日米間はかたき同士であるわけじゃありませんから、そういう意味で、具体的な事例をテーブルの上にのせてこれを活用しなければ五%にはならないじゃありませんか。こんなことなら日米間においては経済的な協定も何も全然できませんよ。お互いがそういう問題に対して、両国が納得できるような状態にならなきゃなりませんよというこれからの誠意のある交渉によって、業界が心配しておるような漸減協定にならないように全力を傾ける、こういうこと以外にはないと思います。
  251. 西田八郎

    ○西田委員 ないと考えるということでなしに、私の聞いておるのは、通産省で把握しておるこのために起こってくる被害というものは、どの程度掌握しているかということを聞いておるわけです。
  252. 田中角榮

    ○田中国務大臣 通産事務当局と私の間にもそれだけの数字が出ないのです。実際において、中にはことしの実績に対して来年はゼロになるものもあるだろうし、それから何万倍にふえるものもあるのであって、これを全部突き合わせるには半年ぐらいかかるだろうということです。アメリカワクとこちらのワクとの突き合わせをやって、半年間ぐらいたって実績を見てみないと、とてもいま言うのはみんな立場立場による数字であって、どうもこれが通産省の最終的な数字でございますと述べられるものはありません。
  253. 西田八郎

    ○西田委員 そんなに国内の情勢も把握できない、その実態もわからぬというようなものをなぜ簡単に二日や三日の交渉で、十月十五日、その調印の日から発効するというような仮調印をされたのですか。それならもっと仮調印そのものに弾力的な条項を残しておいて、事務当局と十分突き合わした上で本調印で発効させるということであっても決しておそくなかったのじゃないですか。その点どうですか。
  254. 田中角榮

    ○田中国務大臣 アメリカ側の希望は七月一日からこれを行なおうというのでございます。それを十月一日まで三カ月間延ばしたわけであります。なお、十月一日までに政府間交渉をまとめるという意思の表示をしない限り、十月十五日付で七月一日からスタートをする、さかのぼった一方的規制をいたします、こう言ったらもう全面的ストップになるのです。ストップにできるものか、やるならやらしてみろという話はこれはありましたが、この道は私はとりません。これは絶対にとらないということでありますから、そこがもう分かれ目でございます。しかし両国でもって互譲の精神で何とか協定を結ぼうということになりますと、おのずからやはり際限があったということでございます。批判の存するところであります。批判の存するところであることはわかりますが、そこで全部ものを詰めるにはあまりにもめんどうな問題である。それよりもまず最悪の事態を回避をしながら日米間は話し合いで片づけられるのだ、また片づけるお互いでなければいかぬのだ。そういうことで弾力条項が入り、毎月一回ずつ専門家会議を開いて死にワクの問題もテーブルの上へあげて、お互いが納得するように協力をしましょうという正式な協定案文の中にそういう事項が挿入をされた限りにおいて、まだ一カ月、二カ月見通しがつくまで引っぱりましょうということは私にはできなかったということでございます。
  255. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと、この問題については、あまり使いたくないことばでありますけれども日本側の完全敗北ということですか。自分のところでどんな被害が起こるかわからぬ。アメリカの被害についても、これはもう私は商工委員会で確認をしたことでありますから繰り返しませんが、アメリカは被害が出てないのです。それはもちろん失業者も出ているけれども、全産業に比べた場合、繊維の失業者の率は低いのです。なるほど六一年から六三、四年ごろまでにかけては、これは北部から南部へ移動することによって、南部へ行くのはいやだということで北部でとどまった労働者がいます。したがって、それらの人が失業ということで数はふえていますけれども、その後は非常にいい定着率を示しているのです。雇用率も上昇しているのです。賃金も上がっておるのです。そういうような状況の中におきまして、アメリカの被害というものは立証されなかったわけです。今度はこちらが受ける、日本が一方的に被害を受けるのです。その被害を受けるということについて具体的にどうなるかということの見当も持たずに、対案も持たずにこの問題に臨んだ通産大臣、あなたは一体日本の通産大臣なのかと私は聞きたい。  日本の繊維産業が明治維新以来、日本の工業化のためにほんとうにいろいろな苦難の道を歩んでまいりました。もちろんそれはそれぞれの企業が利潤を追求するためにやってきたかもわかりませんが、大臣も御承知だろうと思いますけれども、工哀史といわれて何百万という女子労働者が汗とあぶらにまみれて今日の日本の繊維産業を守ってきたんじゃありませんか。その繊維産業をいまやこのことによって大きく転換しなければならぬ。そのために犠牲者が出るということに対して具体的な資料も持たずに相手方に臨むとは何事ですか。そんなことは私は断じて許せません。その点、いままでの私と通産大臣とのやりとりを聞いておられて総理どうお考えになりましたか、お伺いをしておきたい。
  256. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、繊維問題は三年越しの問題だ、かようにいわれますが、ただ三年越しというだけではなくて、最近のアメリカの新経済政策、この展開、これによりまして、実は長い期間だが、同時にその質的な変化があった、これを見落としてはならないように思います。私はそういう意味で、古い問題だが古く新しい問題だ、かように考うべきではないかと思います。そうして、先ほど来申しますように、通産大臣はこの問題に対処して、そうして自分で万全の策をとったと思います。と申しますのは、もしも話が片づかないで一方的にアメリカの規制にまかせたら、わが国の業界に与える被害は甚大なものだ、かように思っております。したがいまして、ただ、いままでの自主規制、それでやりたい、かように言われましても、相手がそれでは納得しないのです。アメリカ自身が規制をする、そういう形よりもただいまのような政府間協定、そのほうが望ましい姿ではないか、この道を選んだのが通産大臣でございまして、私はわが国の産業に対して十分考慮を払ったと思っております。そうして、もしも万一非常な甚大なる損害が発生する、こういうことならば、これに対して財政、金融、税制、あらゆる面で万全の救済対策をとる、これがただいまの現状でございます。そのうちにはもちろん品物の性質にもよりますが、さらに新しい市場を開発するというような点についても、先ほど来言われておるように、これにも努力しようというし、また繊維製品について延べ払いなどはいままで考えたことはございませんが、それなども考慮していこう、こういうようなことで、生産を落とさないように努力する、こういうことを努力しておるわけでございまして、私は通産大臣の努力がもっとそのまま率直に皆さん方にも評価していただきたいと、かように思う次第でございまして、以上私の所感を率直に申し上げておきます。
  257. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いま、日米政府間協定に移行することにおいてどのくらい減るのかという被害の状態というものをさだかにつかまないで、なぜ交渉に臨んだかということでございますが、私は、被害というものに対しては立場によってみな違うのです。それは、中には、もうことしは非常によく出ましたが、来年はゼロになるという業者から見ると、三分の二も私の分は減りますよという人もあります。それから五〇%減るという毛の業者もございます。また五%増しぐらいではどうにもならない、半年間で三年分も出した糸はどうしてくれるのだという人もございます。そういうことで、業界の内容によってみんな違うのです。それで結論的に業界が言うのは、綿製品協定の例を見てもわかるとおり、これは減りますよということでございます。綿製品協定は十年間で幾ら減ったかというと、四〇%減っているわけでございます。十年間で四〇%減っておる。ですから、通産省の事務当局でも、このままの原案でやれば年率一〇%近く減ると見なければなりませんという試案もございました。五%減るかもわかりませんという案もありました。ですから、それをとにかくふえるというような案が出ないので、とにかく減らさないようにするにはどうするのか。そのためには死にワクの活用するような弾力条項を入れなければならないし、この協定をすることによってだれが適用をするような役人になっても、これがアメリカの商務省が窓口になろうが財務省がなろうが、だれがなろうが、これは綿製品協定のようにして漸減するのではない。五%のワクまでは確保することによって、日米間の正常な貿易の発展のためにという前文が引用されるように、前文を入れよう、そういうことにして、毎月毎月お互いが話し合うことによって、もう三カ月も五カ月も実績が出なければわかりませんというのではなく、もう輸出認証するときには窓口ですべて伝票整理が行なえるようにして、そのために電子計算機もあるんじゃないかと、そういうことで毎月毎月のコンサルテーションにおいて、ものを片づけていくことによって、いまの九億五千万平方ヤードを減らせるというようなことではなく、五%増しまでは何とか確保するように全力をあげましょう、こういうことでスタートしたのでございまして、これは何%減るかを全然計算しないでスタートしたんじゃありません。減らさないように全力をあげようということが前提で条文整理を行なったというふうに理解をお願いいたします。
  258. 西田八郎

    ○西田委員 それは減らさないように、減らさないようにと盛んに力説をせられますけれども、それが減らないのならこれだけ業界が大騒ぎせないのですよ。いいですか。この問題について専門的に調べている労働組合もあるのです。それらの組合においてでも、この問題はたいへんだということになってきておるわけですよ。しかも、先日開かれた世界繊維被服労働組合の会議においてでも、アメリカ側ではこの問題については日本政府をほめておるのですよ、いままでけなしてきたのが。そういう実情からいきましても、私は、どうしてもこれは日本が被害を受けざるを得ない、こういう結果が出ておると言うのです。しかも、この輸出する品目は向こうのTQナンバーに基づいて全部受けられるわけですよ。こちらから出す輸出承認のナンバーと違うのです。分類が違うのです。ですから、いつ何どき、そのことに該当させて持ってくるやらわからぬのですよ。いいですか。ですから、あなたが減らない減らないと言われたって、現実に減るのだし、またそのために、この際将来ということで涙をのんで転業しよう、あるいは工場閉鎖をしようという事業場がもうすでに千四百出てきておるじゃありませんか。これをあなたはどういうふうにお考えになるのですか。
  259. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私は減らさないように全力をあげなければならないというのが第一の目標。第二は、減った場合、犠牲を最小限にしなければならない。どん詰まりまで追い込んでどうにもならないような状態になってから救済をしても、それはもう間に合わないと思うのです。だから、ちゃんとして国内対策も行なうということの二本立てでいかなければならないと考えたのです。私自身がわずか三カ月の短い時間でございましたが、私は比較的繊維を知っておるつもりなのです。なぜかといいますと、今度の日米間で一番被害を受ける三つの拠点は、福井と石川と新潟県であります。これは事実そうであります。ですから、私は、そういう問題は比較的に実態を把握しておるつもりなのです。これは三年前、二年前、ことしということを考えてみまして、実際において日米繊維交渉をまとめないでもって今日まできましたが、その間に、あなたは専門であればよくおわかりだと思いますが、三年間に日本の繊維産業の実態がどのくらい大きくなったかということをほぼおわかりだと思うのです。ですから、自主規制に移っただけで七百五十一億円という救済対策を行なっておるはずであります。その中には、五万三千台の織機の買い上げをやっております。五万三千台の織機の買い上げというのは、ある面から考えると、専門的には五%の自主規制というものに対応する数字であるはずであります。現実はそんなものじゃないじゃありませんか。現実はそんなものじゃありません。七十七万台の織機なら織機だけを対象にできませんよ。これはより糸機やいろいろなものがあります。より糸機などでも、三分の一はもう全然つぶさなければならない状態にあります。ですから、いまの繊維の輸出が倍ぐらいになっても、いまの機械設備がフル稼働すればできるのです。現実的には七十七万台のうち半分押えなければ、正常な状態にはならないというぐらいに製造能力は大きくなっております。ですから私は、このままの五%自主規制というもの、それで日米間において繊維の政府間交渉をやることによって仮定数字として五%ずつ年間減るということを前提にしても、それよりももっともっと大きな国内繊維産業対策というものを実行しない限りにおいては、繊維の対策というものは完ぺきにはできないと思うのです。そういう意味で、私自身アメリカとの貿易量を確保することも一つの目標でありますが、それと同時に、繊維界自体が相当大幅なスクラップ・アンド・ビルドを実行しなければならないような状態。私は石炭でも、もう少し早目にもう少し積極的な施策をすれば、どん詰まりまでいって正規な退職金さえ受けられないというような事態は避けられたと思うのです。そういう同じ問題に対して、ただ日米間だけを五%の自主規制でいくのですということは、必ずしも政府が行なう最善の政策だとは思っておらなかった。私は、そういう意味で、あくまで冷笑は受けると思いました。しかし、これをきっかけにして国内の繊維対策に万全を期すことができるとすれば、私はそれなりの評価というものはあってしかるべしだ。私自身が評価を受けるなんて考えておりません。政府が当然行なわなければならない繊維対策であっても、お互いが理解をしながらそうする一つのきっかけである、こう考えたのでございまして、ただ、じゃほんとうにこのまま自主規制、五%の自主規制でいって繊維産業対策をやらないで済んだかどうかといったら、私は、もう十二月までにもたない状態がたくさんあると思うのです。そういう実態を十分考えながら、日米間の五%の増も確保しよう。それで繊維業界が必然的に転換しなければならないものに対しては別な政策をやろう。そのためには、当面する政策と恒久的安定対策をやります、しかも一部に存在する不安の除去に全力を傾けます、こう言っておるのですから、私はそれなりに評価してくださいとは言いませんが、理解をして御協力をいただきたい、そう思います。(拍手)
  260. 西田八郎

    ○西田委員 私は、いま手をたたかれた人の気持ちがわからない。政府は理解せいとおっしゃるけれども、私どもは理解してきているのです。昭和四十二年に特繊法ができまして、産業構造審議会ができて、その中でちゃんと体制小委員会というものをつくられて、ちゃんとこれからの展望すべき繊維産業のあり方ということについて、いろいろな問題が出されてきておるのです。それが今日まで延びておるのではないですか。これは政府が入ってやった施策であり、そしてきめられた法律なんですよ。そのもとにおいてやらなければならないことができていないために、今日のような、あなたのおっしゃるようなことになってきておるわけですよ。だからわれわれは、必ずこういうところへ転換するであろうことを予測して、労働組合といえどもそういう問題を考えなければならぬということで理解を持ち、業界に呼びかけてやってきておるのですよ。それをほんとうに積極的に取り組まなかったのは政府じゃありませんか。そんな、いまのような開き直ったものの言い方がありますか。  もう時間もありませんから、私は最後に総理にお伺いしますが、一体いま田中通産大臣のおっしゃったこれからの政策について、ほんとうに前向きで取り組むつもりがあるのかどうか、これを総理からお伺いしたいと思います。
  261. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来担当大臣からるる説明いたしました。私は、国民がひとしく繁栄への道を歩むこと、これを心から願っております。したがいまして、ひとり繊維業界ばかりではございません。繊維業界がまず困るといえば、これに対して救いの手を差し延べる、これはもうもちろんでございます。そういう意味で、責任官庁である通産省を中心にして十分の対策は立てたい、かように思っております。
  262. 西田八郎

    ○西田委員 これで終わりますが、最後に、きょうはずいぶん声を荒くしましてこの議場をなんでありますけれども、お伺いしたいのです。プライベートで申しわけないのですが、いま首相のお召しになっているスーツは、それは国産品ですか。
  263. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはどうも私にもわかりませんけれども、国内で買ったことは確かでございます。
  264. 西田八郎

    ○西田委員 まあ国内でお買いになったといっても、私はおそらくお見かけするところ、外国製品ではなかろうかと思うのです。こういう時期でありますから、首相、ひとつ率先して国産品を着てくださいよ。日本の繊維は、最近非常に質がよくなってきておるのであります。先ほども通産大臣が、悪かろう安かろうからよかろうになってきたのだ、こういうふうに言っておられます。私はやはりそういう小さな——これは決して茶化して言おうと思うのじゃないのです。そういう小さな首相以下閣僚の配慮が、ほんとうに国民の政治につながるということを申し上げたいのです。どうかひとつ今後とも国産品を愛用していただきたいということを要望いたしまして、終わります。(拍手)
  265. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて西田君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  266. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  明二十九日、二見伸明君の質疑の際、日本銀行総裁佐々木直君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  267. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  次回は、明二十九日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時四分散会