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1971-10-25 第67回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十月二十五日(月曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 佐々木義武君    理事 田中 龍夫君 理事 長谷川四郎君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 鈴切 康雄君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君    荒木萬壽夫君       植木庚子郎君    江藤 隆美君       小川 半次君   小此木彦三郎君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       中野 四郎君    灘尾 弘吉君       二階堂 進君    根本龍太郎君       野田 卯一君    橋本龍太郎君       浜田 幸一君    福田  一君       松浦周太郎君    松野 幸泰君       松野 頼三君    村田敬次郎君       森田重次郎君    上原 康助君       阪上安太郎君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    原   茂君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       田中 昭二君    林  孝矩君       正木 良明君    山田 太郎君       岡沢 完治君    佐々木良作君       谷口善太郎君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         (北海道開発庁         長官)     渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      平泉  渉君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 西村 直己君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部長      長坂  強君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省経済局長 平原  毅君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         大蔵省主計局長 相澤 英之君         大蔵省理財局長 橋口  收君         農林大臣官房長 中野 和仁君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農政局長 内村 良英君         食糧庁長官   亀長 友義君         通商産業省通商         局長      山下 英明君         通商産業省繊維         雑貨局長    佐々木 敏君         郵政省電波監理         局長      藤木  栄君         労働省労働基準         局長      岡部 實夫君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         自治大臣官房長 皆川 迪夫君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 十月二十五日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君    小此木彦三郎君   小沢 一郎君     松野 幸泰君   大平 正芳君     浜田 幸一君   笹山茂太郎君     江藤 隆美君   渡辺  肇君     村田敬次郎君   辻原 弘市君     上原 康助君   近江巳記夫君     正木 良明君   樋上 新一君     田中 昭二君 同日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     笹山茂太郎君  小此木彦三郎君     田村 良平君   村田敬次郎君     竹内 黎一君   上原 康助君     辻原 弘市君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  昭和四十六年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十六年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十六年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安井吉典君。
  3. 安井吉典

    安井委員 北海道はことしは大冷害で、ようやくできたお米も質が悪く、低い品位の米を何とか買い上げてくれという陳情電報がいま山のように来ています。ついこの間空知の農民が自殺しました。自民党政府農政行き詰まり冷害のダブルパンチで、これで二人目の犠牲者です。農村だけではありません。物価高、公害、交通事故交通難、世界第三位の国民総生産といいながら何一つ解決しないいまの政治、そこでくたばれGNP、こういうことばまで出ました。そこへニクソンのドル・ショックです。さあ財政欠陥公債発行補正予算といま大騒ぎです。もう資本主義は何か大きな行き詰まりに来たのではないかという感じさえします。私は、このような展望を失い次次に見通しの狂っていく佐藤内閣政治では困ると思います。  そこで総理に伺いたいのでありますが、経済政策でもここで思い切った発想転換が必要ではないか。いま政府が一生懸命に狂奔している円・ドル対策不況対策だけに終始するのではなしに、いまのこの時点を大きく政策転換をする好機としてとらえて、発想転換をしなければならぬと思います。対米依存外交貿易の姿から内需中心に移していく、資本中心から生活優先大幅減税社会保障社会資本充実方向に向けていく、こういう激動期における日本の進路をはっきりと私は見きわめていかなければならぬと思うのでありますが、どうでしょうか。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのわれわれが当面している経済自体をどういうふうにつかまえるか、あるいはどういうふうに把握しているか、こういう基本的な視点に立っての御意見だと思います。私も同じようなことを実は考えております。ただいま言われますように、従来と同じような発想だけでものを考えてはどうもいかないんだ、もっと根本的に発想転換をして、そうしていま押し寄せている経済界の諸問題について対処すべきそのときが来ているんだ、かように思っております。  まあ今回わずかなことではありますが、年度内において大幅減税を実施した、そのことなどは発想転換なくしては実はできないことであります。ただ従来の考え方だけでは、ただ単なるおそらく金融上の処置をとるという程度に終わるのではないかと思いますけれども、そうじゃなくて、やはりこの際われわれ、もっと基本的にものごと考えていく、こういうところで在来とは違った考え方に立ったつもりであります。  そこで、いま言われますように、それでは資本主義が行き詰まったのかというと、私は、現在当面していることで資本主義が行き詰まった、かように考えるのは、これはやや早過ぎると思います。ただ、われわれがいままでとってきたGNP第一主義あるいは生産第一主義あるいは輸出重点主義、こういうような考え方はこの際に改めるべきだろう、やはり内における経済を真に国民福祉につながるような方向で取り上げるべきではないか、ここに発想転換があるわけであります。いま財源不足のおりからにもかかわらず、この際に大幅減税をして、そして国民の努力に報いようとし、あるいは社会資本充実にこの際積極的に取り組もう、こういう姿勢、これなどは在来考え方になかったことであります。いまお尋ねになりましたような点に幾ぶんかでも沿い得るのではないか、私はかように考えております。
  5. 安井吉典

    安井委員 どうも基本的な点において私どもと大きなズレがあるように思うのですが、きょう私は主として沖繩の問題に重点をしぼりたいために、わが党のいろいろな考え方につきまして、あとからの質問者でさらに問題を詰めていくことにいたしたいと思うのですが、そこで、いま総理は新しい考え方で臨もうとの発言をなさったわけでありますけれども、最近の新聞世論調査は、残念ながら佐藤内閣支持率低下の一方であります。八月の二十七、八日に調べた朝日の調査では支持率三二%で不支持率四九%、九月三十日から四日間の毎日の調査では支持率二三%、不支持率四七%、十月の二日から三月間の読売の調査では支持率二三・三%、不支持率は実に五五・五%、七大都市については六三・%の人が佐藤内閣は困ります、こう言っているという数字があらわれています。佐藤首相新聞の囲みで、まだそんなに支持率があるかね、こう言ったというひやかし記事が出ておりましたけれども、私は、国民は全く佐藤内閣を見放しているのではないかと、この数字の中でみとることができるわけであります。自民党人たちでも、演説会で反佐藤をぶつと、わっとこう聴衆がわいてくるもんですから、盛んにそれをやっているという話も聞きます。私は、これはやはりだいぶ長くなり過ぎたということ、そして硬直化を示して発想転換がないということ、こういうことに非常に大きな原因があるのではないかと思います。この国会に入っても、佐藤さんのいろいろな答弁では、どうも私は、不支持率のほうを高めていく作用しかしていないような気がするわけです。沖繩が終わったらやめるということを佐藤さん言われたとか言われないとかいうわけでありますけれども、このような世論の情勢を考えて、もうそろそろ進退をお考えになってはどうか、どうもたいへん言いにくいことでありますけれども人間引きぎわが大切だといいますから、この際心境を伺っておきたいと思います。(「一番聞きたいところだ」と呼ぶ者あり)
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなか、一番聞きたいところという御意見も出ておるが、同時に言いにくいことをずばりとおっしゃった、かように私は思います。ただいまの世論に出ておる新聞の統計、これなどはもちろん私は謙虚に承りながら、またどういう点が十分理解を得ないのか、あるいはまた国民はどういうことを一番期待しているのか、こういうことなどをいろいろあれやこれやと反省をしておるような次第であります。もちろん、私万年の寿があるわけでもございませんし、また政治家としていつまでもその席にいるわけでもありません。しかしながら、将来を予想してどうこうするというよりも、現状において何ができるか、どういう御奉公を私は心得べきか、こういうことに実は徹するつもりでございまして、そういう意味で、いまお話しになりました、お尋ねになりましたそれらの事柄をも含めながら、謙虚にお話は伺っていくつもりでございますし、また、みずからももちろんそういう意味反省もいたし、そうして国民の輿望にこたえるようにいたしたいものだと努力しておるような次第であります。
  7. 安井吉典

    安井委員 ここでいつやめますとはお答えが出ないだろうと思いますから、これ以上詰めませんけれども、私は、これからの質問の中で、ぜひ佐藤内閣支持率が上がるようなお答えをしていただきたい。そのことを一つ申し上げて、まず繊維問題から入ります。  政府は、三年越しの日米繊維交渉でついにアメリカ政府の強引な圧力に屈して、去る十五日、田中通産大臣ケネディ特使との間の政府間協定の仮調印が行なわれたというわけであります。業界はすでに自主規制を始めており、したがって激しい反対をしているのに、日米関係の改善が国益だと称して、ついに繊維業界犠牲にしたものであります。ガット原則まで無視した米国の案ではないかと思うのでありますが、それをほぼうのみにしたもので、私は、政府間協定がなぜ国益なのか、繊維業者の人までを犠牲にしたものがなぜ国益なのか、それをまず伺いたいわけです。これは通産大臣
  8. 田中角榮

    田中国務大臣 日米間の経済交流は、戦後長い間を通じまして日本のためにも非常に大きなウエートを占めてまいったわけでございますし、また将来も日米間経済交流がいかに重大であるかは、私が指摘をするまでもないことでございます。  日米間における繊維問題につきましては、日本はすでに自主規制という処置に出ておるわけでございますし、七月の一日からでございますからまだ三カ月余しかたっておらないで、その実態も把握することができないというような状態でございましたから、政府としては自主規制が望ましいものであると、こう考えておったことは事実でございます。ところが、その後アメリカ側から期限づきの交渉案提案をせられまして、両国意見をまとめない限り、一方的規制によって日米繊維輸出問題はほとんど全面ストップになるようなおそれが数字の上ではあらわれてまいりました。そういう新しい事態を前提にして、両国間で過去の問題、現在の問題、将来を見通しての問題を考えましたときには、やはりお互いが話し合いによって解決をしていく以外にはない、こういうことでございます。この交渉に乗らなければどうなるかということになりますと、これは一方的規制を待つということになります。やはり両国はどこまででも話し合いを続ける、こういうことによって日本繊維輸出というものの基盤を確保することが大事である、こういう考え覚書に調印をいたしたわけでございます。
  9. 安井吉典

    安井委員 それで私は満足なる御答弁をいただけたものと思いません。  そこで総理に伺いたいわけでありますが、沖繩交渉などと佐藤総理取引をしたといういわゆる密約説が公然と行なわれております。しかし、政治経済とはこれは全く別ものです。これをからませたということになりますと、これはまさに言語道断だと思います。問題を複雑にした責任佐藤総理はお考えになっておられるかどうか。さらに前後四回にわたり国会繊維に関する決議をしております。それは、業界の意思を尊重し、政府間協定はしないようにとする内容であります。これを無視したことも、私は絶対に許せないやり方だと思います。その国会に対する背信行為総理はどうお考えか、この二点を伺います。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 第一段の沖繩返還交渉繊維交渉、これをからませた、あるいは交換した、こういう密約説がずいぶん一時飛びましたが、さようなことはございません。これはもうはっきり否定いたします。(「アメリカで言っているじゃないか」と呼ぶ者あり)アメリカで言おうとどこで言おうと、私はそういうことはございませんとはっきり申し上げます。  そこで、問題はただいまのアメリカとの経済政策全般の問題であります。これはいわゆる自主規制、私どももこれで話がまとまるならたいへんけっこうだ、こういうような政府声明も出しております。しかしながら、アメリカ政府は当初から政府間交渉——自主規制では不十分だ、こういう考え方を持っておりましたから、その上さらに最近の経済の変動、変化と申しますか、それに対応するためにはどうも貿易逆調を取り戻さなければならない、それには、いままで問題になっておるような事柄をさらに政府間で話をしたい。もし政府間でできないならば、自分たちのとっていたいままでの自由経済ではあるけれども、みずからの逆調を直すためには、背に腹はかえられないとでも申しますか、あらゆる政府独自の態度をとる、こういうところまで発展してまいりました。これは御承知のようにすでに一連政策輸入課徴金をかけるとか、あるいは金の兌換を停止するとか、あるいは国内においても賃金、物価の凍結令を出すとか、そういう一連の強力なる施策でもお考えがつくことだと思います。したがいまして、繊維の取り扱いについても在来からのようななまやさしいことではなくて、みずからが積極的にこれと取り組む、そういう姿勢をとった。これをどうもアメリカ側考え方だけにまかしておくと、アメリカはみずからの力で、自分たちに与えられたるものとして、みずからの保護のためにどういう政策をとるかわからない。われわれは、この際に政府間交渉に切りかえることが、これが国益を守るゆえんだ、かように思って、先ほど田中通産大臣が説明いたしましたように、実は覚書、行政取りきめに切りかえたのでございます。この政府間交渉についての是非については、いろいろ御議論がおありだと思います。またアメリカ自身が、いままで自由資本主義の国が、そういうようなガット原則を乱るとかあるいはIMF体制を乱る、こういうことをみずからやるのだ、そういうところに、アメリカが困難に当面しておるということにもわれわれは十分思いをいたさなければならない。そこで、いま言うような態度になった、かように御了承をいただきたいと思います。したがって、この日米交渉の問題は、沖繩問題との取引の問題ではないし、ただいま申し上げるような経済的な変化によって、それに対する対応策として、みずからを守る姿勢から申しまして私は当然のことだった、かように思います。
  11. 安井吉典

    安井委員 私がいまお聞きしたのは国会無視責任はどこにあるのかということ、それについてのお答えがないわけでありますが、私は、これほど不当に国民の権利を拘束する国と国の約束ごとを国会承認なしに結べるとは考えません。それはまるでファッショ政治みたいなものになる。民主政治の本来の筋として、あくまで国会にこの協定を提出して承認を求むべきではないか。どうですか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国会承認あるいは決議——ども国会決議無視したつもりではございません。これはできるだけ国内繊維業界の総体の意向を確かめてやれ、こういうことだと思っております。私はまた、必ず国会にかけて御了承を得なければならないいわゆる政府間協定あるいは条約的なものではない、かように思っております。政府自身に与えられた権限国会がもちろん政府自身に与えた権限でございますが、その行政の範囲内においてできたことだ、かように私は了解しております。
  13. 安井吉典

    安井委員 いまのような御答弁で私ども満足するわけにはまいりません。あとの時間の関係がありますから、これは明日田中委員が詳しくお尋ねをすることにして、中国問題に移ります。  沖繩中国は、同じ戦後外交の裏表になる問題ではないかと思います。日中国交回復国際緊張を緩和するためにも、またわが国の世論の高まりにこたえるためにも一日も早く実現をしなければならない七〇年代最大の課題だと思います。最近の報道でも明らかなように、全国の都道府県は一つ残らず国交回復決議をしております。それは大都市の議会にも及んでいます。佐藤首相は一体どういう道筋で国交回復をしようとしているのか、まずその態度、それから見通しについて伺います。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 隣の国、日中の国交現状のような状態であることは、これは確かに不自然であります。したがいまして、正常化をはかるべき第一の問題だと思います。しかし、これにはやはり過去の歴史があり、また将来の見通しを立てて、現状でいかに処理するか、そういうことを考えなければならないと思います。私は、その意味から申しまして、過去の大東亜戦争時代あるいはそれ以前の日支間の関係、さらにまた連合国と戦っている間に幾多の国際的な会合が連合国間に持たれた、そういう場合に中国を代表してその会議に出ておる、それが一体だれであるか、またさらにわれわれがサンフランシスコ条約で講和をもたらした、そのときに中国の代表は参加したかしなかったか、参加しなかったとしたらどういうわけで参加できなかったか、そういうことをも考えをいたして、そうしてその後、サンフランシスコ条約に引き続いてわれわれが戦争の停止、降伏をきめたその相手方は中華民国であった、そういう歴史的事実を思い起こしております。そうして、現在の状態から見ますと、その中華民国中国大陸に対しては施政権を及ぼしておらない、また、北京にある政府は台湾に対して施政権を及ぼしておらない、そういう現実もございます。しかしながら、ただいまは大きく世の中は変わってまいっておりまして、いわゆる北京にある中華人民共和国承認する各国、国際的な承認国の数はだんだんふえてまいっております。昨年の国連の当時から見ましても、さらにそれより以上にふえている。われわれ、やはり何と申しましても、この国際的な意向が志向しているところ、それは無視はできない、かように考えますから、今回のような国連に対する態度をとったわけでありまして、ただいまのように、私は、アルバニア案にいたしましてもわれわれの案にいたしましても、中華人民共和国国連に迎えられるという、そういう点については同一であります。でありますから、その点はわれわれの在来考え方をかたくなに守っているわけではなく、われわれはその点では大転換をした。これは国際世論に従っておる、かように御理解していただいてけっこうでございます。  ただ、今日まで国連に対して憲章でも忠実であり、また別に間違ったこともしておらない、その中華民国を簡単に追放するということは、私は、現状に重大なる変更を加えるもので、それこそはいろいろ問題を起こしやすいのだと思います。したがいまして、いまの基本的な、中華人民共和国国連に迎えること、同時にまたこれに安保理事会常任理事国を与えること、これを勧告するということについては同一でありますが、いままでの中華民国を追放するということには簡単には賛成できない、こういういきさつで、今回私どもアルバニア案とは違う提案をし、その共同提案国になっておる、これは御承知のとおりであります。  しかし、私は、いずれにしても中華人民共和国国連に迎えられることについては間違いはないのでございますから、どちらの案が成立いたしましても、そのことは必ず実現するだろう。また同時に、安保理事会常任理事国、これまたどちらの案にしてもそれは与えられる。さように考えると、その台湾を追放するか、台湾をそのまま残すか、ただそれだけの違いがあるだけであるように思っております。この点を十分に理解していただきたい、かように私は思います。  私は、それらの点がただいま審議され、そうしてここ一両日のうちにもその結論が出ようとしておる、こういう際でございますから、これについての見通しその他についてはとやかくは申しませんが、ただいま申し上げるように私は理解しておるのであります。そういう意味からも、北京にある中華人民共和国が、私ども考え方にやはりある通ずるものを見つけて、そうして国交正常化をはかるべきだ、かように私は思います。
  15. 安井吉典

    安井委員 ほんとうに日中の国交を回復するお気持ちがあるのかどうか、それを疑われるようないまの御答弁ではないかと思います。台湾の問題がただそれだけだと、こうおっしゃるが、それこそが最大の問題ではないですか。そういうものを明白にしない限り、これはなかなか問題の解決にはいかぬと思います。  佐藤首相は、一方では日中の国交を回復しなければならぬと言い、他方では死にもの狂いで国民政府国連につなぎとめるためのアメリカ案を通そうとする。これはもうおかしいじゃないですか。この二つは全くあべこべの考え方ですよ。この点を明らかにしない限り、私は問題がはっきりしないと思うわけであります。どうですか。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、問題の日華条約はどうだというお話がありますが、問題は日華条約——これはサンフランシスコ条約の後にわれわれが締結した日華条約でありまして、そのときにわれわれは中国の代表として国民政府を選んだ、問題はここから起こっておると思います。しかし、日華条約は国会においてもこれはりっぱに承認された、こういう事実がございますから、これは簡単に、この日華条約を無視するとか、無効にするとか、反対だとか、かようなわけにはいかない。私どもは、国会において承認されれば、当然国際的な権利義務がある。それはやはりわれわれはその権利義務を守る、それが必要だと思っております。
  17. 安井吉典

    安井委員 佐藤首相は、簡単に破るわけにはいかぬと言うけれども、ほかの問題では向こうのほうに簡単に破られているわけですよ。繊維についてもそうでしょう。ほかの問題ではたくさんありますよ。  そこで、それらの問題点はあと回しにいたしまして、アルバニア案が通るか通らぬかまだわかりませんけれども新聞の予想では、逆重要はだめだ、こういうふうに伝えられておりますが、もしもアルバニア案が通った場合、台湾並びに中国に対して総理はどう対応されるか。私は、いままで政府国連中心主義国連重点主義を唱えられてまいりましたそういう立場から、当然そういう線に沿った態度をおきめになると思うのですが、どうですか。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、国連の多数の意見は、われわれは尊重しなければならない。これには従うつもりであります。
  19. 安井吉典

    安井委員 そういたしますと、直ちに中国承認する、中国とのいろいろな問題の解決に直ちに当たる、アルバニア案可決の瞬間からそういうふうな活動が始まると理解してよろしいですか。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、両国間の関係は、ただ国連に加盟が許されたからというだけで、それで承認行為が終わったと、こういうような問題ではなくて、私は、日中間にはもっと積極的な両国間の取りきめが必要だ、かように思っておりますから、いまおっしゃるように、問題が、国連においていずれの案が通るにいたしましても、国連に迎えられることは、これはもう間違いないのですから、そういう意味で日中間の交渉を持つべきだ、かように思っております。  したがって、私は、いままでもうしばしば、いずれの場所でも、いつでも両国間の交渉には応ずる用意がある、こういうことを申してまいりました。したがって、そういう意味において、北京政府の賛成が得られるならば、またその意向が明らかになれば、そういう方向でわれわれが行動することは、これはあたりまえであります。
  21. 安井吉典

    安井委員 私がお聞きしているのは、アルバニア案が通れば直ちに中国承認するのかどうか、まずそれにしぼりましょう。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは簡単に申しまして、国連に加盟するということ自身、それが実現すれば、それは国際的な承認行為だ、こういう議論もあります。これは、かつてのモンゴルが、国連に加盟することによってモンゴルを承認したということにもなっておるといわれております。しかし、私が言いますのは、ただいま申し上げるように、その事実を基礎にして、そうして日中間においての国交正常化についての努力が払われるべきだ、これは当然だと、こういうことを申し上げておるのです。
  23. 安井吉典

    安井委員 では、すぐには承認はできないが、直ちに交渉を始める、こういうことですか。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 承認だけの問題は、いまのモンゴルの例でもおわかりだと思います。私は別に、これで承認行為をしたんだとかしないんだとか、そういう議論は必要がないと思います。しかし私は、日中間の問題ですから、ただその承認されたとか、それだけで終わりじゃないので、もっと積極的に日中間では交渉を持って正常化をはかるべきだ。当然のことです。そのことを申し上げておるのです。
  25. 安井吉典

    安井委員 私がお聞きしてもよくわからぬのですから、おそらくこれは記事になったってわかりませんよ、国民の皆さんは。私は、国民の皆さんが一番聞きたがっているのはそこじゃないかと思うのですね。アルバニア案がもし通る——これはまだ通るか通らぬかわからぬけれども、非常にそういうふうな方向に向いているということは確かですよ。それだけに国民は、その瞬間に日本政府はどう行動するかということですよ。承認をするということだけは明らかなんですね。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほどから申し上げておるように、国連の意思は尊重する。国連国連加盟を許すという、そういうことは、当然承認行為を前提としているんじゃないか、そういうことを申し上げているのです。ただその承認だけで終わるのじゃなくて、われわれは国交正常化をするためにさらに積極的な努力をしなければならない、こういうことを先ほどから申し上げておるのです。
  27. 安井吉典

    安井委員 私がお願いしたいのは、承認をするということをまず明確にお答えを願って、そのことをはっきりさせて、それから、そのためにはどういう行動をとるのか。それを、いまごまかすためか何か知りませんけれども、ごっちゃにしてお話しになるものですからよくわからぬわけですが、前提は、承認をされるのですね。それから、その後においてどういう行動をとるか、そういうふうに分けてお答えいただきたいと思います。   〔発言する者あり〕
  28. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 御静粛に願います。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、承認しなければ国交正常化ははかれません。また、国際的に承認しない限りこれが国連にも加入できない、そのことははっきりしている。私は、だからそういうことをお尋ねになるのが、実は私自身ふしぎに思うのです。だから、それだけはっきりしている問題を、次に何をお尋ねになろうか、何を引き出されるだろうかと実は思って、ただいまのようなお話をしたわけです。だから、私はいま申し上げますように、国連で加入を承認する、加入を歓迎する、こういう事態になれば、その状態を私は承認するのだ、認めているのだ。先ほどから国連意向は尊重しますと、かように申し上げておりますから、承認につながることは私がとやかく議論する余地のない問題だ、これははっきり申し上げておきます。
  30. 安井吉典

    安井委員 それでは、もう少し具体的にお尋ねをしたいと思います。  台湾の領有権の問題について、総理は、わが国は台湾の帰属に発言権はないとも言いました。さらに、いままでの答弁を調べてみますと、どちらの政府の主張も理解できるとも言いました。それからまた、長期展望に立って処理するとも言われているわけであります。今度アルバニア案通過というふうな、それは承認につながるというふうなお答えでありますけれども、その段階ではどうされますか、この問題。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 台湾との関係はどうかとおっしゃるのですね。これはいわゆる経過的な措置として、私は台湾も追放しない、こういうことを国連で要望しております。しかし、これが国連から追放された、こういう暁において、台湾を一体どういうように処遇するか、こういう問題になれば、これはまた別な問題であります。
  32. 安井吉典

    安井委員 いや、領有権の問題です。
  33. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 領有権の問題ですか。この領有権の問題は、私は、中国がいままで日本は権利権原を放棄した、かように申しますけれども、ただそれだけではなくて、その台湾を領有している蒋介石政権、国民政府と日中条約を締結したのですから、その領土が、そこを占拠しておる蒋介石そのものが中国は一つだと言っている、その状態から見れば、いまさらこの領有権の問題が議論になることがふしぎです。私はさように思っております。そうして、北京も台湾も同じように、中国は一つだといままで主張を変えないで言ってきておりますから、これが中国の領土であること、これははっきりしているのじゃないでしょうか。私はさように思います。  これは、どうもいままでも内輪でずいぶん議論されて、領有権はどうだ。しかし、日中条約を結んだ相手国が、相手が占拠しておるその土地、それが日本の領土でないと言っておる限りにおいて、その国のものであることははっきりしているのじゃないでしょうか。いかがでしょう。
  34. 安井吉典

    安井委員 私は、いままでの御答弁の中でまだ明確でない点もありますが、たくさん問題をかかえておりますので、この中国問題についての結論を急ぎたいと思います。そしてまたあと質問者がたくさんわが党でおりますので、それにまかせたいと思いますが、私はニクソンが訪中する前に、これはやはり日本総理大臣が向こうへ行って話をすべきだったと思います。もっとも、佐藤さんでは困ると向こうは言っているから、これはだめだったのかもしれませんけどね。それからまた、佐藤亜流政権でも困るというので、それはどなたのことをさしておるのか、私はまだわかりませんが、問題は、ほんとうに自民党政府国交の回復をどんどん進めようという気持ちなら、いままでの段階で幾度もチャンスはあったのではなかったかと、こう思うのです。  そこで私は、ニクソンのほうはすでに訪中をするということを約束をし、今度の国連総会におきましても、日本アメリカのしり馬に乗って一生懸命に走り回っているうちに、キッシンジャーはいま中国へ行って打ち合わせをしています。だから、アメリカの立場と日本の立場は違うと思うのですよ。つまり、アメリカは一方で中国のほうと裏のほうでそういうふうな動きを見せている。国連ではもちろん逆重要をやっておりますけれども、一方ではそれをやっているわけですよ。日本はどうでしょうか。中国のほうはあくまで敵視政策のまま、国連だけではアメリカ案を死にもの狂いになって、応援団まで送ってやっている。だから、もしもアルバニア案が通るというふうな事態が起きた場合に、アメリカのほうはちゃんと手を打っているわけですよ。日本のほうは何にもないわけです。私は、アメリカのほうはきわめて先を読んだ、ずるい、器用なやり方だと思うし、日本のほうはきわめてぶきっちょで、ちょうどピエロの役割りを日本アメリカのために演じさせられているのではないかと思うわけです。  いままでの本会議答弁で、日本政府は、アルバニア案が通ったって、逆重要が破れたって責任はありませんというふうな御答弁をされているが、これはアメリカの立場と日本の立場を比べてみれば、もうたいへんな差があるわけです。私は、日本をこのようなピエロの役割りに追い込んだいまの佐藤内閣責任、これは佐藤さんなり福田さんなり責任者がいるわけでありますが、それは私は重大だと思うのですが、どうですか。
  35. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまちょっと私、論旨のどういう点をつかむべきかと思っていろいろ苦心しているのですが、いろんな御意見が出ております。私は、アメリカアメリカの行き方があるし、日本には日本の行き方がある、かように考えております。いままで皆さんからごらんになると、日本は対米従属主義だ、こういう御批判がございますけれども、必ずしもそうではないので、こういうことがこの事柄でもおわかりじゃないかと実は思います。私は、別にピエロだとは思っておりません。私は、それこそ堂々とやはり国際信義を貫いている、そういう国である。だから、おそらく静かに考えてみると、やはり相手にするのは日本だと、こういう感じは持たれるかもわからない。これはまた相手の感じでございますから、それはもう少し日中正常化がはかられて、そして中国との間で話し合いが進めば、また変わってくるのではないだろうかと思います。  私はただ、いま言われたうちで非常に意外に思いますことは、日本人の中に、とかく北京意向日本の政権がきまるように考えている。これはとんでもないことだと思います。なぜそういうような考え方があるか。私はきらわれておれば、私自身幾ら会おうと言ってもそれは会えないでしょう。それはいいといたしましても、あるいは佐藤亜硫政権だというようなことばを使われる。それで、そういうことがもっともであるかのように日本国内で言われると、いつの間にか、かつては対米従属主義の国が今度は対中従属主義の国になろうとしているのか、(拍手)とんでもない国だ。私はそういう点で——まあ、拍手はやめてもらいたい。とにかく拍手はやめてもらいたいが、私はそういうことを考えながら、もっと必要なのは自主的な、自主性があるべきじゃないか。やはりその国に対して、内政干渉はとにかくお互いに避けようじゃないか、これでないと、私どもは、国交正常化にいたしましても、私どもが言っておるのは、相互の理解を深めそうして相互の立場を尊重する、そのことでなければ真の正常化はない、かように思いますが、どうも国内のほうから対中従属主義的な発言が出てくると、意外に私は実は思うのです。どうかそこらの点を十分お考えいただきたい。   〔発言する者あり〕
  36. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 静かに願います。
  37. 安井吉典

    安井委員 私は、別に従属だとかなんだとか思ったことは一つもありません。いままで佐藤内閣政治姿勢というのは九九・九%までアメリカで、〇・一%中国だったのですからね。それまでいかないかもしれないという声もありますよ。だから私は、この際もう少し、従属だなんてことばの前にやることは一ぱいある、それを正しい方向に向け変えるべきだ、こういう角度から言っているわけです。  そこで、いままでの本会議答弁では、アルバニア決議案の勝敗についての責任政府じゃないのだ、あれは国連の中で多数決できまるのですからしかたないのです、これが御答弁の趣旨だったと思います。しかし、そんなことで私は国民は許さぬのではないかと思います。勝敗がきまるのは、これは票数の多いほうが勝ちます。それは総理のおっしゃるとおりであります。しかし、それまでの経過において私は問題があると思う。多くの国民が期待をし、野党も党首会談でお話し合いをしたのは、アメリカ案に対する賛成はやめなさい、せめて共同提案国にはなりなさんな、こういうことをいままで言ってきた。自民党の中にもずいぶん意見が分かれたじゃないですか。それで最後の調整をとって佐藤さんがおきめになった、こう伝えられておりますけれども、そういう経過に立って、提案国になったその決断をした責任者は、これはどなたなんですか。
  38. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それは私です。
  39. 安井吉典

    安井委員 きょうのところは、それだけひとつ伺っておきます。  そして沖繩の問題につきましては、総理は所信表明演説におきましても、長い間の県民の御労苦に報いるために、一日も早く円滑な復帰を実現し、明るく豊かな沖繩県を建設する、こういうことを言われました。そして復帰関係七法案につきましても、「これらはいずれも沖繩現地の要望をほぼ全面的に取り入れたもの」だというふうに述べられています。ところが十月十二日、七法案の閣議決定にあたって琉球政府の屋良主席は談話を発表して、これらの法案は県民の意思を十分に反映していないように思われると、こう明確に言っているわけであります。新聞で伝えられるところによりますと、琉球政府は次の五つの基本理念、すなわち、一、住民福祉の最優先、二、地方自治の尊重と確立、三、戦争否定による平和追求、四、基本的人権の確立、五、住民主体の経済開発、この五つの基本理念に立って、もう一度返還協定や復帰対策要綱、関連法案について再検討を加えることを中央に要望をする、こういうふうに書かれております。私は、総理はこの沖繩県民のいわば最後のお願いをもう一度受け入れて、諸対策を練り直すお気持ちはないか、まずそのことを伺っておきたいと思います。
  40. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、まあ結論から先に申すと、ただいまの段階ではもう一度練り直すという考え方は持っておりません。一日も早く祖国に復帰さして、そして復帰後において、私ども処置できる事柄を県民の要望にこたえる、こういうことをいたしたい、かように考えておりますので、結論から先に申しましたが、ただいま再検討する、こういう考え方はございません。
  41. 安井吉典

    安井委員 私、そのうちで特に取り上げておきたい点が、たくさんありますけれども、そのうち二つだけをお尋ねをしておきたいのでありますが、一つは、沖繩県の自治権の確立という問題です。政府はいろいろな補助率の引き上げ、十割補助だとかなんとかの措置を講じようということで法案の準備もされているわけでありますが、沖繩開発庁とそれから那覇に置かれる政府の出先機関である沖繩総合事務局は、総勢千八百人に及ぶ膨大な役所ができることになります。私は、そういうふうな国の役所ができて、国の財政力とそれから強力な国の権限、それを振り回されれば、自治体である沖繩県の県庁の存在というものは影が薄いものになってしまいはしないか。しかも十割補助ですから、それをかさに着て、当然そういうことになりはしないかということをおそれます。アメリカ直結からただ中央直結に切りかえでは、私は困ると思うわけです。二十六年間沖繩人たちは捨て子同然にされてまいりました。その補いのためにも、思い切った財政付与を当然これはすべきだと思います。たとえば、それもひもつきではなしに一定の交付金みたいなものでまとめてどっとやる。ひもつきでいま政府が予定されているそういう補助金も、全部ひもなしの交付金として沖繩にやる。そして知事の権限を極力強めて、ほかの県知事よりもずっと権限の強い知事に仕立て上げる。委任をすればいいわけですから。そういうことができれば、開発庁も出先はわずかな人員でもいいし、沖繩の県民の総意に立った開発というものができるのではないか。この点はどうお考えですか。
  42. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩県の自治権の拡大、かように言われるので、あるいは他の都道府県と別に沖繩だけ特別な自治権の確立をしろとでもおっしゃるのかと思いましたが、そうじゃなくて、むしろいまの中央直結が少し強過ぎやしないか、あるいは開発庁その他の役人も多過ぎて、これでは自治権が本土並みに行なえないのじゃないか、そのほうの御心配のようでした。私は、さようなことがあってはならない、かように思います。私は、いままで本土から離れていた沖繩、何かと本土の都道府県とはずいぶん隔絶している、その不均衡がございますから、そういうものをとにかくかけ足で本土並みにするということがこの際必要だ、かように思って十割補助その他の特別処置をとっておるわけであります。しかし、そのために自治権を侵害するというようなことがあってはならないと思いますので、その点は十分注意して、ただいまも安井君の御指摘のありましたように、その運用にあたっては十分注意してまいるつもりであります。
  43. 安井吉典

    安井委員 学者の中には、沖繩府をつくれとか、そういうような意見もありますよ。完全な自治州みたいな形にしろという意見もあります。私もそのとおりだと思います。そういう方向も検討すべきだと思いますが、しかし、ほかの県知事よりももっと強力な県知事にしなければ、今度の開発というものはできぬと思います。だから権限の委譲を徹底的にして、いま何んでもかんでも出先が行ってやろうとしているわけですから、それはみんな県に預けなさい、ほかの県知事と沖繩は違いますよ、そういう立場をつくるというくらいは、私は佐藤内閣でもできるのではないか、そう思うものですからそういう提案をしたわけです。これからの審議の段階でさらに具体的な考え方をわれわれは出していきますから、ぜひ検討していただきたいわけであります。  今度の国内法措置の中で一番問題になるのは、私は沖繩における公用地等の暫定使用に関する法律案ではないかと思います。私は一わたり読んでみますと、これほど国民の財産権侵害の乱暴な法律は見たことありません。私はこまかな問題はきょうは取り上げませんけれども、この法律の中で明確なことは、米軍が占領中どんな方法でもとにかく軍隊の用に供してさえいれば、その土地、工作物を最高五年まで国は米軍に引き続き提供するために、あるいはまた自衛隊で使うために、手続としては本人にただ通知するだけで強制使用ができるという内容で、しかもこれを水道や電気施設や道路にまで及ぼしているわけであります。財産権無視の実に乱暴きわまる立法だと私は思います。しかも、いままでの土地収用法やその他では公共の用地ということばを使っておりますが、今度の場合は公用地です。役所が使えば何でもいい、こういう考え方であります。このことからして私は問題があると思うのでありますが、特に自衛隊の用地は、本土ではいまだかつて土地収用法の対象とされたことはありません。当時の資料もございますけれども、たしか土地収用法の審議の際でしたか、なくなった河野建設大臣ははっきり、自衛隊はこの公共のためという概念の中には入りませんという答弁をされています。私はまずその点から、たくさん問題がありますけれども、ひとつ伺いましょう。
  44. 西村直己

    西村(直)国務大臣 公用地等の暫定使用に関する法律につきましてのその趣旨でありますが、日本の国は、御存じのとおり安保条約、また今回沖繩が復帰いたしますにつきましては、これが国土の一部と申しますか、本土の一部になります。そうしますと、日本の国といたしましても、これを自主的に防衛する責務と申しますか、これは当然生じてまいるわけであります。陸海空、いわゆる領空なりあるいは空、海につきまして生じてまいります。したがって、これをある程度配備するということは御了解いただけると思います。私どもはできるだけ、米軍の基地はもちろん、いわんや自衛隊の基地等におきましてできる限り話し合いを主体にしたい。したがって、今回の法案の第一条、たしか二項にもその趣旨を大いに明らかにはいたしております。あくまでもその所有者の御理解のもとにやってまいりたい、これが法案の趣旨ではありますが、しかし事柄が、復帰と同時にいわゆる各種の機能が引き続いて使用されていかなければなりません。これは安保条約上の義務の遂行、また国土の防衛上の防衛機能、また公用地としての、御存じのとおり日常生活に関連する道路その他、したがって、一括いたしましてこれらは引き続いて使用さしていただく。もちろんその前に、できる限りの地主、関係者との話し合いは続けます。しかし、復帰と同時にまだ話し合いのできない場合、その間話し合いを続けていくということを考えまして、私どもはある程度の期間を、幅を見まして、そうして経過措置をとる。どうしても穴があかざるを得ないような部分につきまして、しかも大事な場合におきましては、そこにその後の手続というものもとれるように考えて一つの期間を設定したわけであります。これらの点は、小笠原の返還におきましても、それから講和条約の際の使用におきましても、駐留軍につきましては、短い期間ではありますけれども、暫定使用権を設定した、こういう経過をたどっております。
  45. 安井吉典

    安井委員 少しも問題点の解明がないのでありますが、詳しい問題点の追及は別な機会に譲りまして、特に憲法九十五条の地方自治特別法との関係についてだけしぼって伺っておきたいと思います。  私どもいろいろ調べておる限りでは、この法律は、憲法二十九条の財産権尊重の規定、同じく第十四条の法のもとの平等権の規定、十三条の国民の権利の尊重の規定、三十一条の手続法定の規定、それらに違憲の疑いがあると思うわけでありますが、これらは別な機会にすることにいたしまして、特に九十五条の地方特別法の関係であります。つまり、一つの地方公共団体にのみ適用される特別法は、その住民の投票に付され、過半数の支持がなければ国会は制定できないという地方自治尊重の規定、これについてどのように検討されておりますか。
  46. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 純粋に法律問題としてのお尋ねでございますので、一応私がお答えさしていただきます。  いろいろ御指摘がありました点につきましても、むろん検討は済んでおりますが、ただいまの地方特別法に当たるのではないかというお話でございます。地方住民の投票に付すべきであるというお気持ちがわがらないわけではありませんが、事は法律問題でございますので、私どもも九十五条の法律論として申し上げるにとどめますが、九十五条をごらんになればわかりますように、「一の地方公共團體のみに適用される特別法」ということがありますことからおわかりのように、適用対象が地方公共団体であるという場合の九十五条の規定でございます。公用地等の暫定使用に関する法律は、別に地方公共団体を適用対象としているわけではございませんので、いままでの考え方に従って、これは地方特別法と実体的に見られるものではあるまいというのが一つ。それからもう一つは、沖繩の復帰に際してこの法律が施行されるわけですが、復帰前においては沖繩はいまだ憲法上の地方公共団体でございませんために、そういう意味の手続面での問題もございます。いずれにしましても、実体、形式からいいまして、九十五条の地方特別に当たらないというのがわれわれの考えでございます。
  47. 安井吉典

    安井委員 大体予想していたとおりの御答弁が戻ってきたわけですが、私はまずこの点で申し上げたいのは、沖繩が返還されれば、もともとの日本の領土であった沖繩が返ってくるのですから、日本政府はそれをしっかり受け取らなければいかぬと私は思う。主権というものの本質は、私はそうではないかと思います。そしてその土地の地主にとっても、自分の土地が返ってくるのですから、当然自分の所有権がそこではっきり確認されなければなりません。ところが今度のこの法律では、政府は領土の返還を確認もせず、右から左ヘアメリカが使っていたとおり使わせていく、そういう法案のやり方は、主権というものの本質を考えないやり方だと私は思います。暴力による占領の土地の状態を確認もせず、そのまま五年も認めていくというのは、これは主権国家として許しがたいことではないかと思うわけです。  そしてこの法律は、本土に現在ある土地収用法とか公共用地の取得に関する特別法、あるいは安保地位協定の実施に伴う米軍土地使用特別措置法、こういったような法律が本土にありますけれども、これの特別法という形に実質的にはなっているのではないかと思います。沖繩県だけに適用される特別法であります。本土の米軍特措法では、暫定期間は御承知のように六年以内。沖繩は五年まで、これに自衛隊や水道や電気や道路までが便乗をするわけであります。本土では現在ある法律で済んでいるわけです。それをなぜ沖繩の県民だけを差別し、沖繩の県民だけに平等な取り扱いをしないのですか。  自民党はいま、美しい沖繩の女性のポスターを、下にそこの選出の国会議員の名前を書いて、全国に張り回しつつあるようであります。選挙が近いんですかね。しかし、そこに書いてあるのは「沖繩をあたたかく迎えよう」と書いてあります。私は、あたたかく迎えるのはけっこうです。しかしながら、沖繩だけにこの差別をするような法律をつくって、何が「あたたかく」ですか。日本のほかの県民は普通の法律でいいわけです。沖繩県だけを差別する、そういうような法律はつくるべきではないと思う。しかし、たとえつくるにしても、県民の意思を問いもしないでやるということは、私は許すわけにはいかぬと思う。国内の特別の地方公共団体の住民を優遇する法律を国会はたくさんつくりました。私もそれをたくさん知っております。その一部を地方自治特別法として住民投票に付したことが十五回もあります。別府や京都だとか奈良を、観光都市だとか温泉都市だとか文化都市だとか、十五本も法律をつくっています。優遇する法律はつくっているが、一つの県の住民だけをいじめつけるという法律を国会がつくった例を私は知りません。そこのことを考えれば、こういう例こそほんとうの九十五条の適用をするべき問題ではないか。  あるいは那覇市は、総面積が三十六平方キロで、そのうち三分の一が軍用地です。人口密度はキロ当たり一万二千人というたいへんな過密都市です。基地があることによって都市計画なんかできないわけですよ。市の運営も、これらの軍用地によって非常にはばまれています。コザ市も総面積の六七%が軍用地、読谷村は約八〇%が軍用地。嘉手納村のごときは、総面積はもう十五平方キロ足らずの小さな村でありますが、そこへ東洋最大の軍用地をかかえて、実に八八%が軍用地です。残されたたった一二%の土地に一万五千人の村民が肩を寄せ合って暮らしているのが嘉手納村です。だから沖繩全体では、軍用地は陸地総面積の一二・五%、しかもそれはほとんど沖繩本島に集中しています。沖繩には、三百平方キロの軍用地が、今度の返還協定のC表を除いてもあるわけですよ。総理は全国にいま米軍基地が幾らあるか御存じですか。米軍基地は北海道から鹿児島まで二百平方キロですよ。二百平方キロしかない。沖繩という東京都か神奈川県ぐらいのところに、実に三百平方キロの基地が残るのですよ。現在で三百五十平方キロ、少し減っても三百平方キロは残るのですよ。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕 あの小さな沖繩に、日本全体の基地よりも五割増しの基地が残るのですよ。私は、沖繩にある米軍基地をそのまま存続させるというふうな法律は、本来、沖繩県あるいは沖繩の市町村の自治体の組織とは言いませんが、運営を根本的に破壊するものだと思う。そういう意味合いにおいて、これでも九十五条の適用がないと強弁されるのか、政府は。
  48. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどのは法律論でしたが、ただいまのは必ずしも法律論だとは思いません。私は、この九十五条の特別法云々のお話がありますが、先ほど来申すように、沖繩が祖国復帰する、その際に軍用地をできるだけ減らすという、そういう処置もとりましたが、いままでのかたい軍用基地でありますだけに、そう簡単にはまいりません。また軍用地として使用されておる旧所有者、現在も所有者でしょうが、それらの方の数は問題にならない、三万数千人だといわれております。これを事前にみんなさがして、そうしてそれと話し合う、そういうことは実際問題としてはできにくい。したがって、ただいま言われるように、基地が狭い沖繩に三百五十平方キロもあるんだ、このことはその所有者も非常に多い、それをどうして問題をおさめるかという、そういう問題になっておりますので、暫定的な立法措置をして、そうして一応問題を解決さす、その間にもなお所有者の了承を求めるという最大の努力ははかる、これがいま政府がとろうとしておる処置であります。私どもは、そういう考え方についてけしからぬと言われますが、ただいま早期に沖繩が祖国に復帰するためには、ただいま申し上げるような処置をとらざるを得ない、そういうことをただいま考えざるを得ないのでございます。そういう意味で皆さんの御審議をお願いしておるような次第であります。
  49. 安井吉典

    安井委員 手続論のことをさっき法制局長官言われました。手続の方法はないだろう、こう言われたが、私はほんとうにやる気ならあると思うのですよ。いま上原君もおりますけれども、国政参加の選挙、沖繩で選挙で選ばれた人を国会に迎えることに法制局はくだくだと最後まで反対したじゃないですか。そんなものはできぬと言ったでしょう、憲法の上で。しかし衆議院はあらゆる苦難を乗り越えて、知恵を出したらできたでしょう。沖繩で、それから本土で同時に立法することによって、それを結びつけるというみごとな方式ができたじゃないですか。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕 私は、今度の沖繩の人の気持ちをほんとうに確かめるという、こういう立法措置は、そういうふうな具体的な例があるのですから、できないわけはないと思います。やろうと思えばできる。問題はやるかやらないかです。私はこの九十五条の問題は、そういう違憲のおそれのある法案は撤回すべきである、このことをひとつはっきり申し上げます。  もしもどうしても撤回しないというのなら、九十五条の洗礼を受けるべきですよ。九十五条でやったらおそらく否決されるでしょう。否決されるからやらないというふうなことじゃ困るのですよ。いままで国会が十五回もやっている。国会決議をして、やろうと思えばできるのです。別府温泉文化都市でしたか、別府や奈良や京都、あれを特別法で付して、この沖繩の県民にあらゆる犠牲をしいる。沖繩ではもうこれは大反対ですよ。保守も革新もなく反対ですよ。そういうような問題を国会が一方的に押しつけるというふうな、そういうものを私は許すわけにいかぬ。どうですか。
  50. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 これまた法律問題についてのお尋ねでございましたししますので、先ほどの御答弁にも関連がありますので、お答えを申し上げます。  私が申し上げた手続面というのは、地方公共団体で現在あるのかないのかという観点から申し上げたのが一つと、もう一つは実体的観点から申し上げたわけでありますが、いままで例にあげられた地方住民の投票に付した先例は、ことごとく承知しております。これは先ほども申し上げましたが、地方公共団体の組織、運営、権能、つまり対象が地方公共団体であるからであったわけであって、今度のはそういうものとは必ずしも同一ではないだろうということを申し上げたわけであります。  それからもう一つ、ある法律が一般の普通法であるのか、特別法であるのか、これを最終的に判定されるのは、むろん国会であって内閣ではございません。ただ、意見を求められますから申し上げますのでありまして、その場合についてお考えにならなければならぬことは、法律というものは、一般に両議院が可決したときに法律となるというのが原則でございますので、そういうものを特別法の住民投票に付することも、これまた憲法上問題がございますので、その点をよく御留意の上十分に論点を御検討を願わしい、このことだけを申し上げておきます。
  51. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま言われるように、私は、法制局長官は、法律を守る、そういう立場から本来の議論をしておるから、それはあまりお責めにならないようにお願いしておきますが、とにかく政治問題としてこの問題を見ました際に、ただいま沖繩に強力なる軍事基地がある、この基地は一体どうなるのか。これはもちろん祖国復帰の暁は、米軍基地は安保の条約内に残るわけでありまして、そういう意味からわれわれは、安保の条約からは施設を提供する義務がございます。そういう意味で、それらのものをまるくおさめる方法、まあ暫定的措置はないのか。先ほど申しますように、三万数千人の地主と直接交渉ができる、実はかようには私は思いませんので、ただいま暫定的な措置として立法措置をし、その間にもそれらのものを片づけていく。同時にまた基地の整備も、いまのような状態がそのまま残るというようなことではないように、ある程度は返してはくれますけれども、それは先ほど安井君からも御指摘のとおり、きわめて小部分ですから、もっと大幅に返還されてしかるべきだ、かように思いますので、そういう点について政府は一そうの努力をする考えでございます。したがいまして、ただいま言われますように、この措置がいつまでも残る措置ではない、ただいま申し上げるようなその期間においてこれはぜひ御了承を賜わりたい、かように思います。
  52. 安井吉典

    安井委員 法制局長官のあれは、私は、悪いけれども三百代言的な発言だと思います。国会がやろうと思えばできるのですよ、やっている例があるのだから。しかもまた政治的に、この二十六年間苦労した沖繩を迎える態度があの法律の中であらわれているということ、これは私は許しがたいと思うのです。これはあとの段階でさらに徹底的に詰めてまいりたいと思います。  そこで、返還協定の基本的な問題点やその他をもう少し議論するつもりだったのですが、日中の問題の議論が少し長くなりまして時間がありませんので、今度の返還協定の中の最大の焦点になる核抜き本土並みの問題、この点だけをひとつ議論をしてみたいと思います。  政府は、核抜き本土並みが実現すると言われておりますが、核が残るかどうかというのが今度の最大の問題点であり、衆参両院の本会議でもしばしば取り上げられましたが、総理答弁はさっぱり要領を得ません。政府は、対米支払い三億二千万ドルのうち、共同声明第八項の「日本政府政策に背馳しないよう実施する」こと、これが核抜きだ、こう言うのでありますが、その費用は正確に幾らですか。
  53. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 正確に申し上げるわけにただいまいかない、こういうことですが、いわゆる七千万ドル程度という言い方をいままでしておりますが、その中に入っておる、かように前大蔵大臣は申しております。
  54. 安井吉典

    安井委員 およそ七千万ドルというのは前大蔵大臣の言うことで、いまの政府ははっきりしてないのですか。
  55. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その取りきめによって、ただいま問題を詰めておる段階でございます。
  56. 安井吉典

    安井委員 これは核撤去の費用だけですか。それとも毒ガスその他の特殊兵器の撤去費も含まれますか。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 七千万ドルというのは核に関係するという面が多いと思うのです。しかしその他に、とにかくきれいなものにして返すというために、アメリカで負担するところがかなりあるであろう、こういうふうに考えまして、とにかく総額三億二千万ドル、その中で一応さようないろんなものを考えて七千万ドルを支払いいたしましょう、こういうふうにいたしてあるわけであります。
  58. 安井吉典

    安井委員 いままで国会の本会議では、七千万ドルということばを総理は何回もお出しになったのですよ。それは全く根拠がないのですね。
  59. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 根拠がないことはございません。七千万ドル程度ということを申し上げたと、かように私は記憶しております。
  60. 安井吉典

    安井委員 撤去費用を出す以上は、沖繩に核があるということ、これだけははっきりしていますね。
  61. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現在、核があるかないかということは、私ども申し上げるような立場にはございません。私がいま言えることは、返ってきたときに、祖国復帰のその段階において核抜きであるということがわれわれとしては言えることでありますので、さように御了承いただきます。
  62. 安井吉典

    安井委員 そうすると政府は、沖繩にどんな核兵器があるのか、その種類は何か、どこにあるか、数量はどれくらいあるか、それはわかっていないわけですね。
  63. 福田赳夫

    福田国務大臣 それはアメリカの核戦略と申しますか、これはアメリカとすると最高の軍事機密に属する、こういうことで明らかにいたしておりません。しかし、メースBに見られるがごとく、かつてああいう核兵器というものがあった。同様のものがあるいはある可能性もあると、こういうふうに私ども考えておるわけであります。いずれにいたしましても、返還時においては、核については、ほんとうにきれいさっぱりとした状態に置いてもらいたい、こういうことを要望し、これを総理大臣とニクソン大統領との間において合意された、こういうことになっておるわけでありまして、私どもといたしましては、核は、この返還時においてはあり得ないということについて確信を持っておるということをはっきり申し上げます。
  64. 安井吉典

    安井委員 沖繩にある核を撤去するためには、一体、アメリカはどういうことをするのでしょうか。たとえば、核を取りはずす、運搬する、あるいは発射台の取りこわし、あるいは核倉庫の撤去。一体、核を撤去するためにアメリカはどういうことをするのでしょうか。
  65. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま申し上げましたように、核の問題は、これはもうアメリカ最高の軍事機密に属する問題であるということで、これに関する一切の解説をいたさないのです。しかし、はっきりいたしておりますることは、返還時におきまして核のない状態にいたしますこと、これを大統領と総理大臣との間において確約をいたしておるわけでありますから、この点をひとつよく御了知願いたい、かように存ずる次第でございます。  御質問の、一体核があるのか、その、ある核をいかなる手順で撤去するか、こういうことになりますると、ただいま申し上げましたとおりの状態でありまして、アメリカの行動に全幅の信頼を寄せるというほかはないのであります。
  66. 安井吉典

    安井委員 核はもうすでに取りはずし作業が始まっているのでしょうか。国会承認が行なわれたときから始まるのですか。それとも、批准書が交換されたときから始まるのでしょうか。  核の撤去のためには、これは私は専門家じゃないからよくわからぬが、相当な日数が要るんだと思います。いつから始めるんでしょうか。
  67. 福田赳夫

    福田国務大臣 いつからそういう作業が始まるか、こういう問題ですが、とにかく、そういうことをアメリカは明らかにすることをがえんじないのです。しかし、はっきりアメリカ態度を示しておる。それは、沖繩返還の時点におきましては核は一切ありませんということを、これを大統領、総理大臣との間において明らかにしておる。これに信頼をする。こういうほかはないのであります。
  68. 安井吉典

    安井委員 いままでの答弁を総合してみますと、政府は、沖繩にどんな核があるのかわからぬ。いつから撤去が始まるのかわからぬ。内訳もわからぬ。これもわからぬ、何もわからぬ。ただ、沖繩返還のときには核はきれいさっぱりなくなっていると言う。ミステリーですよ、これは。何があるのかわからない。しかし、最後はなくなっている。そして、一番確かなことは、七千万ドル——ドルの値段が下がったからといったって、これは二百三十億円ですよ。この二百三十億円の国民の税金を払うということだけが確かなんですよ。それ以外何もわかっていないじゃないですか。それでもいいのですか。
  69. 福田赳夫

    福田国務大臣 その辺がたいへん協定作成上苦心したところなんです。つまり、二年前の大統領、総理の共同声明におきまして問題ははっきりしておる。しかし、これを両国の条約というか、協定上もはっきりさせたい。しかし、そのはっきりさせ方というものがまことにまたこれがむずかしいのは、核があるということを是認するということがアメリカとしてむずかしいのだという点にあるのです。そういうようなことを考えまして、これをいかに協定上表現するか。わがほうの要求、これをアメリカもいろいろ考え、知恵を出しまして、この三億二千万ドル、その中にそういうような種類の問題も含めておる。つまり、返還が実現する、その時点におきましては、核の問題についてきれいさっぱりとなっておる、そういうことを実現するための経費もかかるのだ、そういうことを考慮いたしまして、まあ七千万ドル、そういうものをひとつ支払うことにいたしましょうということにしておるわけなんです。これは国会とすると非常に御不満であるかもしれませんけれども協定作成上、あるいは日米交渉上、核の性質というものを考えますると、これは最大限の努力をした結果である、こういうふうに御理解を願いたいのであります。
  70. 安井吉典

    安井委員 もう一つお伺いをいたしたいのでありますが、もしも、アメリカが、約束どおり核の撤去をしなかった場合、つまり、返還後核があるということを発見された場合にはお金を戻してもらうんですか。それはどうするのですか。
  71. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカが大統領、総理大臣の約束に反しました行動につきましては、これはもう非常なる背信行為である、背信行為としての断固たる措置をとる、これははっきり申し上げます。
  72. 安井吉典

    安井委員 私は、どうやらいままでのお話の中からおぼろげにわかってきたのは、何か、政府はここでフィクションをやろうとしているのだと思うのです。とにかく、核が撤去できたような形をするために、三億ドルぐらいで初めは何か手打ちになろうとしていたのが、三億二千万ドルにする。その段階において核抜きの七千万ドルなんか出たのは、あとのちょっとの交渉の中じゃないですか。前大蔵大臣なら御存じでしょう。初めから、核抜きをどうするのか、その金の問題が出ていたんですか。その経過をもしあれなら教えてください。新聞にはそんなこと書いてありませんでしたよ。私は、新聞が知らなかったのか、それともその言う経過が外に明白でなかったのか、それはよくわかりませんけれども、おそらく、そのあとの段階において、国民に対してさも核が抜けたような形を見せるために、七千万ドルというふうな一つの支払いのようなかっこうだけ見せて、内訳はわからぬのですから、国民はわからぬのですから、それでさもありそうに見せたフィクション、虚構を政府はここでおつくりになったのではないかと私は思うんですがどうですか。
  73. 福田赳夫

    福田国務大臣 核に類似なものの問題。とにかく、大統領と総理大臣の間には、返還時には核はない、こういうことを明らかにした。それに関連して何かの経費が要るかもしらぬ。それを盛り込み三億二千万ドル。これより大きかったんですが、その大きな要求の額の中に盛り込むべきかどうか。これは相当議論があったんです。私は、いろいろ考えまして、これは盛り込むべきだ、核がない、核抜きということは全国民の期待するところである、まして沖繩県民の非常に関心を持っている問題だ、これは積極的——これは金がかかっても、そういうことが明らかになるということであれば、それは入れようじゃないか、私自身が主張したんです。そういうことで、とにかく三億二千万ドルの中には、核が返還時においてないということが明らかになるという、その費用が盛られておる、こういうふうにいたしたわけであります。
  74. 安井吉典

    安井委員 私は、ますますそこで何かの虚構を政府はつくって、国民の目をごまかそうとしている、そういうような感じ、そういうような疑いを深めるわけでありますが、とにかく、沖繩には、政府が簡単におっしゃるように核が抜けるような情勢ではないのですよ。私ども幾度も調査団を派遣して現地を調べてきた。核の問題だけではなしに、あのA表の中では、七つの演習場の問題なんかたいへんな問題ですよ。これは協定をやり直していただかなければならぬような問題ではないかと私は思います。あるいはその他もっともっと重大な問題がたくさんあります。それらを、私どもは、この予算委員会あるいはこれから続く特別委員会の中で、はっきり資料を出して、明白な問題点を指摘してまいります。  上原君の関連がありますから、ちょっと……。
  75. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 上原康助君より関連質疑の申し出があります。安井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。上原康助君。
  76. 上原康助

    上原委員 いま、総理並びに外務大臣の御答弁で、沖繩に核があるかないかわからない、しかし、復帰の時点においてはきれいさっぱりと核はなくなっているんだ——だが、こういう政府の御説明では、沖繩県民はもとより、国民は納得しないのであります。佐藤さんがオウム返しに核抜き本土並みと言っても、現実にある核がどう抜かれるかということ、しかも、七千万ドルの内訳というものは、国民の税金をお使いになるわけだから、明確にしないと国民は納得しないと思うのです。  そこで、関連でございますので、端的にお伺いをいたします。  まず、特殊兵器あるいは特殊武器のことなんですが、スペシャル・ウエポンズ、これは、私の調査によりますと、核兵器、化学武器及び生物化学兵器の総称であるというふうに明確になっております。アメリカの軍事用語事典においてもそのような解釈になっておりますが、それは事実かどうか、まず、防衛庁長官の見解だけを端的に賜わっておきたいと思います。
  77. 西村直己

    西村(直)国務大臣 核を中心にした装備等でいわれておるのは、たとえばメースB、それから同時に、航空機等においても、核弾頭をつけられるようなものがそれはあると思います。しかし、主として問題になりましたメースBは、私どものほうの一応聞いておるところでは、ランチャーまですっかり撤去しておる。  なお、関係のCBR等の化学兵器等につきましてはどういうふうになっておりますか、これは事務当局からお答えをさせてみたいと思います。
  78. 上原康助

    上原委員 私がお伺いをしているのは、いわゆるスペシャル・ウエポンズというのはどういうものかということなんです。返答は要りません。  そこで、総理にお伺いをいたしますが、いわゆる特殊兵器の中には、核、毒ガス、化学生物兵器が含まれるということが一般的な戦時用語になっております。毒ガスは沖繩からすべて撤去されたということを、これまで政府は再三談話なり発表をいたしましたが、毒ガスは完全に沖繩から撤去されたかどうか、総理の明確な御答弁を賜わっておきたいと思います。
  79. 西村直己

    西村(直)国務大臣 お答えいたします。  核弾頭をつけられるようなもの、あるいは、特にCBRというような、毒ガス等含めまして、それは特殊兵器というふうにいわれておりますが、内容は私ども確認いたしておりません。
  80. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 毒ガスは撤去されました。
  81. 上原康助

    上原委員 そうしますと、沖繩に現在あるという特殊兵器というものは、核兵器か、あるいは生物化学兵器ということになります。先ほど、防衛庁長官は、非常にごまかしの御答弁をなさっておりますが、自衛隊の教範の中にも、特殊武器は、核武器、化学武器及び生物武器の総称であるということを明確にされております。もう少しはっきりとした御答弁をやったらいかがですか。そこで、先ほど、核兵器があるかどうかわからない。七千万ドルの内訳というものが明確にされない。最高の秘密ということで逃げようとしておられますが、国民はそういうことでは納得しないわけなんです。私は、ここで、明らかに核兵器があるということを実証いたしたいと思います。それは、これまでもしばしば報道された辺野古弾薬庫のことなんです。  ここに一つサンプルがございますが、この中に一〇六〇という建物がございます。これがスペシャル・ウエポンズ・ショップということが明確にされておる。いわゆる特殊兵器点検所。さらに、ここには一〇九七の建物がございますが、これがポセイドンの核貯蔵庫であるということがほぼ明確になっております。しかも、これだけの核貯蔵庫というものは——四十の核貯蔵庫がありますが、かりに十の核爆弾が含まれているにしても四百個、六つとしても二百四十個ないし五十個あります。これだけの核兵器を、しかも戦略核弾道弾、これを撤去するに幾らをかけるのですか、また、復帰までにどう撤去なさるのか、ひとつ説明をしてください。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 かつて沖繩には、メースB、これは核兵器ですね、これがあった。これが事実としてはっきりとしておる。そういう類似なことがあるかもしれないというおそれを私どもは持っておるのであります。しかし、アメリカ当局は、核兵器の存在、これにつきましては、口をつぐんでこれを解明しようとしない。これは最高の戦略に関することである、こういうことなんです。しかし、そういう疑いを私どもは持っておりますから、この疑いを、沖繩県民のためにも、一億国民のためにも解明する必要がある、これを協定上解明する必要がある、こういうふうに考えたわけであります。それにはどうするかというと、やはり、それらのことが解明されるための費用が、三億二千万ドルという、その支払い額の中に入っておるということを明らかにすることが、これがよかろうじゃあるまいか。私どもの乏しき知恵をしぼった、そのしぼったあげくの結論がそういうふうになっておるのであります。
  83. 上原康助

    上原委員 私は、メースBのことをお伺いしているわけじゃありません。メースBそのものにもまだたくさん疑問はございます。きょうは関連ですから、一例として辺野古の弾薬庫の件をあげましたが、核が貯蔵されているのはその地域だけではありません。これは現実の問題です。これだけの核が現にあるということを事実をもって証明しても、政府はまだそういう三百代言で回答を濁すのですか。ほんとうに七千万ドルが核の撤去費であるとするならば、その中身というものを県民や国民の前に具体的に明らかにするのがあなたのやるべきお仕事じゃないですか。これでは納得できません。七千万ドルの中身と、現に私が提示をした資料に対して、政府の明確な答弁を賜わっておきたいと思います。
  84. 福田赳夫

    福田国務大臣 私の重大な任務は、核抜き本土並みで沖繩返還が七二年度中に実現される、こういうことなんです。その間の苦心、これもずいぶん想像に絶するものがあるわけなんであります。その苦心、これを公表して、この大目的が実現できないような場合もあるかもしれない。そういうふうなことも考えなければならぬ。私の最大の任務は何だといえば、円滑に三原則による返還を実現することである。そこなんです。ですから、まあ、これは非常にむずかしいことですから、多少のことはありましょう。ありましょうが、日米間のこの核をめぐる論議というものは、非常にデリケートな関係があるということもまたとくと御理解を願いたいのであります。
  85. 上原康助

    上原委員 きょうは関連ですのでこれ以上突っ込みませんが、そういう笑ってお答えになれるようなものじゃないわけです。ほんとうに、太平洋岸にどかっとすわった核貯蔵庫を前にして住んでいる県民の気持ち、こういうものがあるから、核抜きということに対して、協定の中においても明確にせよというのが要求じゃありませんか。総理、この件について総理の見解を賜わっておきたいと思います。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核は、申すまでもなく、私とニクソン大統領と、核抜きで沖繩は返還する、こういう協議を遂げたのであります。また、そのことは文書でもはっきりしております。両責任者がそういう点で話をした。持っているのはアメリカ側ですから、アメリカの最高責任者が、核抜きで沖繩を返す、かように申しておりますから、先ほど外務大臣がお答えしたように、それより以上に私どもこれをとやかく言うことはないんじゃないのか。現在あるかないか、それが問題ではなくて、返ってきたときにあるかないかということが問題なんです。私は、返ってきたときになければ、もう沖繩の方も安心されるんじゃないかと思います。私は、それこそほんとうの沖繩の祖国復帰じゃないかと思っております。私は、そのことを皆さん方にも申し上げて——現状においてのあるかないか、その議論、それをしても、これはもう非常にデリケートなもので、最高的な機密だ、こういうことでありますから、その点を追及されるよりも、返ってきたその段階にあるかないかということを言われることがより実益的な問題じゃないか、かように思います。その点をどうかはっきりさせていただきたい、かように思います。
  87. 安井吉典

    安井委員 いま上原君から一つの例が提示されましたけれども、ポセイドンがあるということになると、これはもうたいへんな問題です。サブロックでも、これは重大な問題でありますけれども、いまだそのポセイドンの所在を明確にされたことはないはずです。私は、これは重大な問題だと思います。さらに、メースBはなくなったと言うが、あるということも私どもは確証をとっています。毒ガスはほんとうになくなったのですか。ほんとうになくなったのですか。その他、私どもは、いろいろな資料で、核抜き本土並みというものにも全く縁の遠い、そういう実態はいろいろ調べれば調べるほど明確になってきます。そういう中で、七千万ドルを出す、払うから、それでいいじゃないか、あとアメリカとの信頼関係だ、こう言われるが、そのアメリカとの信頼関係も、頭越しにニクソンは訪中を発表したじゃないですか。頭越し。日本政府は三分前の連絡しか受けなかったじゃないですか。あるいは、繊維協定でも、あのアメリカ態度は何です。あれがパートナーシップを持っている日本へのアメリカ態度ですか。だから、信頼関係があるのだからいいだろう、大統領と総理大臣が話をしたのだからいいだろう、そんなことを言ったって、私どもも信頼できないし、沖繩の人も、国民も信用できないのです。だから、私どもは、ほんとうの核抜きの実態を国会の審議を通して明白にしろ、こう言っているわけです。七千万ドルあるとすれば、ほんとうにその数字があるのだとすれば、私は、積み上げた数字の内容をここで示していただきたいと思う。今度の予算の中には入っていませんけれども、一月から審議される予算の中には、その七千万ドルの一部も含めた一億ドルの予算が計上されるじゃないですか。いま、大蔵省は、来年の予算の編成の中にもう作業をやっていますよ。その中に七千万ドルの一部が入るのですよ。ここで明確にしてくれない限り、ここが予算委員会であるだけに、私どもはこれからの審議を進めるわけにはいきません。積算基礎があるのですか、ないのですか。政府は知らないのですか。それとも、知っているけれども出せないのですか、どちらですか。
  88. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、内容は抽象的には申し上げることができまするけれども、どういうものに幾らという中身はございませんです。
  89. 安井吉典

    安井委員 中身のない支払いをするのですか。これからあとそんな予算をお組みになるつもりなのですか。そんなことでは、税金を払っている国民は一体どうするのです。そんなことでは納得できませんよ。この委員会の中で明確にしてくれない場合、これは、これ以上質問をしても意味がないように私は思う。どうですか。   〔発言する者あり〕
  90. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 大原君から関連質疑がありますから、これを許します。大原君。
  91. 大原亨

    ○大原委員 ただいままでの質疑応答を聞いておりまして、われわれは、国民の立場から考えて全然納得できません。つまり、政府は、いままで、来年の四月一日には返る、こういうことを愛知さんがわざわざパリまで行って演出したことがあるのです。そして、それは本年度内のことでしょう。本年度内のことなんです。ですから、いままでの質疑応答を聞いておりまして、沖繩に核があることは、沖繩の県民は現実に確認しておるのです。これは事実だ。それから、大統領の権限云々ということはアメリカの側の主張である。そして、現に返還問題で私どもが、核抜きという、いままで政府が公約したことについて集中的に議論しているときに、三億二千万ドルの中の七千万ドルの積算の基礎、このことをも明確にしないで、現実には時間が迫っておるのに、返還時にはきれいになる、返還時にはきれいになる、こういう言明だけでわれわれはこの質疑応答を終わるわけにはいかぬわけですよ。そんなことは絶対できませんよ。委員長、このことが明確に政府のほうで答弁ができなければ、この補正予算のこの重要な政治問題は審議はできない。したがって、委員長においてそれを明確にするような措置をとってもらいたい。委員長に要求します。   〔発言する者あり〕
  92. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 この際、暫時休憩いたします。午後一時再開することにいたします。    午後、零時六分休憩      ————◇—————    午後一時五分開議
  93. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、午前の安井君の質疑に対し、政府より発言を求められております。これを許します。外務大臣。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 午前中の安井さんの御質問に補足してお答え申し上げますが、それには、私もこの昼休み中にいろいろ考えたのですが、いきさつを申し上げたほうがよかろう、こういうふうに思います。  実は、経過を申し上げますと、一億七千五百万ドルという資産承継に対する金額、これが大体合意を見たわけです。それからさらに米軍が返還後負担するという労務費七千五百万ドル、こういうものが大体合意された。ところが、その上にさらに多額のアメリカ側の要求があるのです。それはどういうことか、こういいますと、これから先、いずれは米軍は沖繩から逐次撤去するだろう、その際におきましては、米軍はたいへんな資産があるんだ、その資産を無償で残していくんだ。そういうことも含めまして、これは金額をはっきり申し上げるわけにもまいりませんけれども、多額の要請がありました。これは新聞なんかにも出ておりまして、一部はそういう情報もやや正確に伝わっておる面もあります。そういう間において、あとの額をどういうふうにするか、こういうことになったわけであります。そういういきさつもあり、また大統領、総理の核抜きの声明、これをぜひ私どもとしては協定に何らか引用したい、こういう気持ちもありました。また皆さんから、これからいわゆる特殊部隊、これの撤去の要請があると思います。私どももそういたしたい、こういうふうに思っております。それにも費用は若干はかかります。そういうものを含めまして、とにかく総額を三億二千万ドルとする。これは要請からいいますとたいへん小さなものになったわけでありますが、沖繩を核抜き本土並み七二年中返還、こういう形で返還させるために、この高度の政治判断をとることが必要である、こういうふうに考え、七千万ドルを上のせをした。かようにお答えを申し上げます。
  95. 安井吉典

    安井委員 ただいま外務大臣から御答弁がございましたけれども、それでは納得できません。いままで政府は、七千万ドルというものがあるんだから核抜きなんですよ——大統領との約束があるということが一つと、それからこの七千万ドル払うことになっているんだから、それで核抜きなんですよ。愛知外務大臣の書類を私は読んでもいいですよ。それを唯一の説明材料にして核抜きを立証しようとしているわけですよ。だとすれば、この七千万ドルの中身がはっきりしなければ、これはどうにもなりませんよ。いま外務大臣がおっしゃったようなそんな経過的なものではないわけですよ。そうじゃなしに、七千万ドルというものが核抜きのりっぱな証拠なんだ、こういう説明をされているから、私はお尋ねをしているわけです。これはやはり核と同居している沖繩県民の気持ちになってください。それからまた日本国民だって税金を払わなければいけないし、そういう沖繩を戻してくるのじゃ、われわれはたえられぬわけです。ですから、これはやはりはっきりしていただかなければいけないと思います。ただ、あと引き続いて公明の正木委員、民社の佐々木委員質問があるそうですから、それにぜひ触れていただきたいと思うし、私まだ質問時間が残っているようですから、残余の時間は保留をいたしまして、そういうことで次に譲ります。
  96. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 次に正木良明君。
  97. 正木良明

    正木委員 私は、公明党を代表して、現下非常に緊急な問題であります繊維問題、中国問題、沖繩問題、そのほか公害、物価、減税等の国内問題に、佐藤総理並びに関係閣僚の御答弁をいただきたいと思うわけであります。  実際考えてみますと、佐藤総理、ほんとうにある一面ではお気の毒でもあるというふうに考えております。先ほど安井委員も御指摘になりましたけれども、こう申し上げると失礼ですけれども、史上最低の内閣支持率なんというものが出てまいりまして、そういう中で、大体大勢としては佐藤内閣も終幕に近いということが一般的な考え方の中で、やはり何といってもやめるまでは総理大臣でございまして、何とか責任を全うしなきゃならぬというので、悲壮というふうな感じさえ受けるぐらい、いじらしいがんばり方をなさっているように私思うわけでございます。ただ、私が心配いたしますのは、そういうふうにがんばっていられるということは、一面人間的に考えてごりっぱなことであるかもわかりませんけれども、いまあなたががんばっていらっしゃることがことごとく——ことごとくというのは言い過ぎであるかもわかりませんが、そのほとんどが新しい情勢に対応できずに、同時にまた、それが日本の将来にとってマイナスになるようなことが非常に多いということ、ですから、この際総理の決意もさることながら、やはりおやめになることが一番国益にかなうのではないかというような感じを私は持つわけでございまして、そういう意味では私はいま総理に期待したいことは、晩節を全うするといいますか、そういう意味のためにも、やはり質問に対しては前向きの、やはり国民考え方というものを背景にして、そうして、答えをすれ違わさないようにお答えをしていただきたい。私ども、この二時間の質問時間をいただいておりますが、この二時間の時間をいただくのにはずいぶん苦労して二時間をいただいておるのでありまして、それを総理並びに関係閣僚のほうから答弁に時間をずいぶんとられますと、私の質問したいことの半分もできないというような現象が起こってまいります。そういう点、最初に総理としての責任を全うされる意味からも、できるだけ多くの問題を国民の前に明らかに論議したいという気持ちで私も質問をいたしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  さて、逆行するというそういう中で、私は、幾つかの問題ございますが、その一つはやはり何といっても今回行なわれた繊維政府間協定でございまして、この点について質問を進めていきたいと思います。  田中通産大臣政府間協定ができましたあとの記者会見で、新事態に対応してというおことばをお使いになっていらっしゃいますが、その新事態とは何かということをもう一度ここではっきりとお答えをいただきたい。
  98. 田中角榮

    田中国務大臣 日米繊維問題につきましては、いろいろな経緯はございましたけれども、今年七月一日から一年間自主規制を行なうということで一つの結末がついておるわけでございます。当時の状況からすれば、政府も与党たる自由民主党でも、あれ以外に道がないじゃないかということを考えたわけでございますが、その後、ニクソン新政策という新しいものが八月の十五日に発表せられました。それで課徴金制度という一方交通的な政策が実行せられたわけでございます。引き続いて日米経済閣僚会議の後でございますが、正式に米国政府側から提案がございまして、政府間交渉を始めたい、しかも繊維に関しては日米両国の間に政府間協定を行ないたい。これは日本だけではなく極東四国にも同じような趣旨の要請をしておるのでございまして、これらが行なわれない限り十月十五日付をもって一方的な規制に入らざるを得ません。こういうことでございます。一方的規制というのは政府間協定を行なうよりもはるかに分の悪い、言うなれば対米繊維輸出というものが一年間ぐらい全面ストップをするおそれが多分にある案でございます。ですから、これを回避するために政府間協定を行なうということによって全面的ストップよりもよくなる、こういうことを考えたわけでございまして、アメリカ側の新提案は事情を一変せしめたということでございます。
  99. 正木良明

    正木委員 大体この繊維問題、特に綿を抜きまして化繊とか毛、こういうものの繊維問題が一番最初に起こってまいりましたのは一九六八年八月のニクソンの選挙の公約からだというふうに聞いております。間違いありませんね。——通産大臣うなずいていらっしゃいますから、そのとおりでしょう。そこで、いま通産大臣おっしゃいましたように、こういう経過の中で業界自主規制をやった。そのときには、田中通産大臣は全面的にこれを御支持になっておったように考えております。ところが、アメリカの新経済政策によって非常にアメリカの強硬な態度がわかったので、政府間協定というアメリカ側の要請についてはこれをのまざるを得なかった。もしこれをのまないときには、十月十五日を限りとするところの全面ストップが行なわれる。いわゆる、ことばをかえて申しますと、アメリカの一方的規制が始まる、このように考え、その被害を考えると、とても政府間協定を避けることはできなかった、こういう御趣旨のいま御答弁であったですな。  そこで、これは総理にもお聞きしたい、通産大臣にもお聞きしたいのですが、アメリカは絶対一方的規制をやる気がまえがありましたか。それは確認できてますか。
  100. 田中角榮

    田中国務大臣 十月十五日までに政府間協定を行なわない限り一方的自主規制に入ったと、こう思います。それはこちらが反対をしておっても、課徴金一〇%というものをもうすでに実行済みでございますから、一つやったアメリカが二つ目はやらないなどとは考えられない、これはもう当然実行に移した、こういうことでございます。
  101. 正木良明

    正木委員 国会における四回にわたる委員会、本会議国会決議無視してまで政府間協定を結ぶということにつきましては、やはり相当な覚悟がなければできなかっただろうと思うのです。そこでアメリカの一方的な規制、これは必ずあるということを予想した。いわゆるそういう提案があった。それよりも政府間協定のほうがましだと思った。  そこで、政府間協定を結ぶ限り、一方的規制というものはどういうふうな形で、どういう根拠に基づいてアメリカがやるのだということが詰められていかなければ、この日本に大きな被害をもたらす政府間協定というものには踏み切れなかったはずなんです。それはこの政府間協定を締結するという交渉の中で、その問題が煮詰められていかなければなりません。したがって、ここでお聞きしたいことは、一方的規制というものについて、政府政府間協定交渉におけるところの詰めにおいて、アメリカはどのような国内法の適用によって一方的規制をやろうとしたのか、そのことをどこまで確かめられているかということを明らかにしていただきたい。
  102. 田中角榮

    田中国務大臣 十月十五日までに政府間協定に移行できない限り一方的規制を行ないます、規制案はこのとおりでございますと、こういう規制案は提示されておったわけでございます。規制案どおりに実行されると、もうすでにことしは輸出認証額等がきまっておりますし、協定の過程において経過的措置がとられない限り、ほとんど全面的ストップをするということでございます。糸を除外してもらえないかというようなことで交渉いたしましたが、糸も除外をしないということであると、糸は三年半分——三五一という数字が出ておりますから三年半、そのままならストップをするということになります。大ざっぱに申し上げるとこのようでございます。  ですから、そういう意味ではどうしてもストップをせざるを得ないということでございまして、ストップをするには法律をつくるのか、こう考えてみたのです。法律をつくるなら、もう絶対にアメリカ国会は通らないと思いましたから、そこが私としては相当強く出れた根拠でございますが、これだけの通報を友好国たる日本に行なう以上、十月十五日から自動的に行なえるように法律的根拠をちゃんと考えております、こういうことでございます。それではどういう法律でもってやるのかということをただしましたが、その法律的な根拠は、口では明確には法律の名前の返答はありませんでした。ありませんでしたが、当時もう、アメリカに行っておる人に、日本に届くようにうまくいろんな人々を通じて言ってきておったわけであります。それは法律家その他でございますが、アメリカが一方的規制は行なえないという考え方は誤りだ、それはできるんだというのが緊急銀行法、通商拡大法、農業法二百四条、対敵取引法——日本を敵とまさか考えないでしょうなという私の質問に対しても、下を向いて答えずということでございまして、私はこれを全部指摘をしたのです。指摘をしましたが、それでやりますとは言いませんでしたが、いずれにしても法律的根拠は明確でございます、こういうことでありますので、それ以上追及してもさだかな法律の名前をつかむことはできないという状態でございました。
  103. 正木良明

    正木委員 通産大臣、これほど重大な問題にどの国内法を適用するか——新法はつくらないとしても、いまあげられた四つの法律、これは対敵取引法と緊急銀行法というものは大体同質のものでありますから、私は三つに区分しているのですが、このどれを適用するかということも、いわゆる法律の根拠も明確にしないで、やるんだ、やるんだと言うのは、私は単なるどうかつにすぎぬと思うのです。少なくとも政府間協定を結ぶ限りには、アメリカ国内法ではどの法律を発動して、そうして日本に対して繊維製品の一方的規制をやるのだということが明確にならなければならない、私はこのように考えるのですが、どうですか。
  104. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘のとおり、友邦に向かって協力を求めるのでございますから、規制の内容ばかりではなく、根拠法の明示をされることが望ましい。私は、日本国民を納得せしむるためにも、また反米的な機運が醸成されることを未然に防ぐためにも、明かされることが望ましいということを何回も言いましたし、もうワシントン電、アメリカ電でもって、こうしてみんな入ってきておるのでございますから、明確にされたい、こういうことを何回も言ったのでございますが、一方的規制両国のために望ましいことではない、ですから、お互いが最後まで協定を結ぶということに全力をあぐべきである。私たちは、どうかつやそういう意味でこんなことを述べられるはずはありません。ですから、十月の十五日までに協定が行なわれない場合、アメリカとしては根拠法も明らかでございますし、それは規制をいたします、ですから、これを避けるためにお互いに最善の努力をいたしましょうということであって、まあ私も根拠法が示されることが望ましいと思いましたが、おおむね外電で入ったものは、対敵取引法でやろうということでございました。農業法二百四条に対しては、化繊は農業法製品じゃないじゃないかという問題に対しては、化繊以外の織物が農業法二百四条の適用ができて、化繊その他は別な法律を適用するというように、法律家は区別をいたしておるというところまでの発言でございまして、これを追及しないでやったことは、軽率のそしりを免れないと言われれば、私もわからなくはございませんが、向こうも言いたくないことでございますし、私はやはり十月十五日を避けるということ——日米間においてどうかつということではこの問題の解決にはならない、このように考えたわけであります。
  105. 正木良明

    正木委員 根拠法が明確にされない——これは朝からも議論がありました核の問題で、大統領の専管事項になっているから明確にできないとするなら、これまた理論の組み立て方はあるのですが、これは別に大統領の専管事項でも何でもないのでしょう。それにもかかわらずこの根拠法を明らかにしないということは、通産大臣アメリカは一方的規制なんてできないんですよ。実務的にも、法律的にもきわめて困難なんです。私はそういう見解に立つわけです。私は、田中通産大臣はほんとうに気の毒だとは思っているんですよ。あなたは、大体しりふきをする順番のそういう時期に通産大臣になって、こう申し上げてはなんだけれども佐藤総理のオーバーコミットメントのしりふきをしている。これは非常にお気の毒な立場だとは思うのだけれども、あなたが結んできたのだから、あなたを責めるよりしようがないのです。そこで、この根拠法の問題については、また後ほど出しますが、私は一応留保いたします。  そこで、あなたの答弁の中であったいわゆる一方的規制政府間協定との対比において、メリット、デメリットというものを一応ここでお話しになってください。柱だけでいいです。
  106. 田中角榮

    田中国務大臣 こまかい数字あとから申し上げますが、まず大きなポイントは、一方的規制になりました場合には、対前年度の基準数値にプラスをされる限度が三%以内でございます。この三%以内というのが五%という状態に移っております。  もう一つは、七月の一日からの施行でございますから、七月から十月まで移ったことによって、現実的に経過措置として救済をされたものが一カ月に一億平方ヤードとすれば、おおむね三億平方ヤードがプラスをされておるということが第二点でございます。  第三点は、牛場・フラニガン会談で非常に問題になり、ついに政府間交渉が妥結をしなかった一つの理由——一つの理由と言うより、最も大きな理由だと思いますが、シフトの問題がございますが、シフト・トリガーという問題がございますが、このシフト・トリガーの問題に対して、死にワクが活用せらるるように両国でもって話し合いをして、死にワクの活用をしようということでございます。これがこのまま一〇〇%活用されれば、自主規制そのものが政府間交渉に移行したということになりますが、なかなかそのように合理的にだけ運用せらるるとは思いませんが、これはお互いにコンサルテーションによって、両国が一カ月に一ぺんずつ会談を開いて協議をしようということになりました。  それからもう一つは、課徴金の撤廃ということが大きく実行されたわけでございます。  第五点としては、糸に対して、綿製品協定から五%のシフトでございましたが、これを一〇%にしたために、五千万平方ヤードというものがプラスをせられておる。でありますので、原案の九億五千万平方ヤードが、初年度において数字の上で十億平方ヤードに変更されておる等々、まだ申し上げればございますが、大ざっぱに申し上げて六、七点は、原案の一方規制よりも非常に柔軟になったということでございます。
  107. 正木良明

    正木委員 デメリットは……。
  108. 田中角榮

    田中国務大臣 デメリットは、国会でたいへんおしかりを受けておるということでございます。
  109. 正木良明

    正木委員 ものごとには、一〇〇%善であって悪がゼロ%なんという、そんな考え方はないのです。これはすべて価値判断でございまして、いいところもあるが悪いところもある。どちらがいいところが多いかということで判断をするのでありまして、いま通産大臣がおっしゃるように、政府間協定で一〇〇%メリットがあって、いいところがあって、悪いところは全くない、国会でいじめられるぐらいのものだなんて、そんな気楽なことを言ってもらっては困るのです、ほんとに。あるのです。私は、あなたはどうお考えになっているかわかりませんが、いまあなたがあげられたこのメリットというもの、これは全部砕けるのです。よ。それでデメリットの最高のもの、デメリットもたくさんありますが、最高のものは、政府間協定の場合には相当長期化するということです。あなたは三年できめたんだからだいじょうぶだと言いますが、あなた、この覚書の中を見てごらんなさいよ。ずいぶんアメリカの一方的な意思によって規制のできるという条項が、綿の協定よりもなおたくさん、しかもきびしく行なわれていますよ。  そこであなたは、最初おっしゃいましたのは、規制が三%伸びから五%伸びになった、そういうことですね。あなたは記者会見でも盛んにこのことをおっしゃる。実際に田中通産大臣は、繊維問題をほんとうに理解なさっているのかどうかということを疑問にさえ思うぐらいです。これは総括規制の中で五%伸びたのではないのですよ。個別規制でそれぞれに五%伸びているのですよ。そういうことは、繊維製品では流行が多いわけです。はやりすたりが多いのです。そういう中で、伸びるやつは前年に比べて倍も三倍もふえるのです。これを五%と押えられるのです。売れないものは前年の何分の一かに減ってしまうのです。そういうものは個別規制で五%の伸びといったって、総体では五%の伸びにはならないでむしろ減るということは、専門家であれば必ずわかるはずです。それを、あなたが得々として五%の伸びを確保したということを記者団に発表なさって、記者を通じて国民に発表なさって、鬼の首をとったように政府間協定をおっしゃいますが、これは決してそうではありません。そういう意味では、繊維の輸出は大幅に減少するということです。ですから、これは何にも手柄ではありませんよ。メリットではありません、デメリットです。そして七月の施行が十月になった。こんなことはたった三カ月のことで、しかもこれが、最初申し上げたように非常に長期的な含みを持つ。これは綿の協定からいったって当然考えられることであって、短いものが次から次へと延長されて非常に長い期間になるということは、政府間協定の場合あり得るのです。  なぜかならば、いわゆるガットの精神、いわゆる自由貿易の精神からいえば、こういう輸入規制だとか輸出規制だとかいうような問題は、当然追放されるべき考え方です。いまアメリカが、佐藤さんのことばをかりて言うならば、非常事態であるからこれをやむを得ないとしても、これがここ十年、二十年と続くわけが絶対ないです。一方的規制の場合には、これはきわめて短い期間に、いわゆる世界の国際世論に押されて撤廃されなければなりません。ところが、政府間協定の場合には二国間の協定でありますから、相変わらずアメリカに首根っこを押えられたままで続いていきますよ。これはもう完全に長期的に続きます。したがって、三カ月のことは自慢になりません。これから何十年先、長くこの政府間の協定によるところの規制が続くということを考えれば、これは決してメリットではありません。  それから、シフトの問題をおっしゃいました。シフトの問題が、一方的規制よりも政府間協定の規制のほうが楽だと言いますが、シフトというのは自由ですか。完全に自由ですか。そうじゃないでしょう。シフトというものはいわゆる緩和措置です。いわゆる融通できる姿です。これは二・五%ないし三%とか五%とかいうようなシフトしかないのですよ。こういう問題がどうしてメリットですか、こんなシフトがあったって。そのシフトが無制限であるならば、これはメリットの条件と数えていいかもわかりませんが、このシフトに制限がある限り、先ほど申し上げたように、大きく伸びる輸出品と大きく減っていく輸出品とのいわゆる伸びを考えたとき、幾らシフトをここではさんでも、結局は輸出は減ってくるのです。総体的には輸出が減るのですよ、政府間協定では。  そして課徴金の問題をお出しになりました。これはごもっともだと思うのです。これは一時的にはメリットであるかもわかりませんが、この課徴金という問題は、いわゆる国際的な平価調整というものができれば、これはもう世界的に非難を受けておる制度でありますから、これは絶対撤廃されなければなりません。これは、長い期間にわたって課徴金がこのまま続くという情勢は考えられません。そうなってくると、これは決して絶対的なメリット、いわゆるいいところというふうには考えられないわけです。  そういうふうに考えてまいりますと、根拠法も明らかにされずに、向こうが困っておるからというのであなたがお引き受けになった。そうしていわゆる針小棒大に、針のようなものを棒のように大きくメリットとしてやられておるけれども、そしてことばを全然触れられないところに、いわゆる短期に被害を受けてそして長期的にいい方向へ伸びていくという一方的規制と、そして短期的には非常に有利なように見えるかもわからないけれども、長期的には大きな損失をこうむるというような政府間協定、こういうものに踏み切られた。しかもここに重大なことは、国会決議を踏みにじってまでやったというところに、重大な問題があるのです。  したがって、この繊維規制という問題につきましては、これは田中さん、気の毒だけれども答えてください。これは絶対まずいですよ。絶対まずい。したがって、これをどういうふうにあなた方は改善していこうとしているのかということ、しかも私がいまあげました一つ一つの条件について、あなたに言い分があったらお聞きしましょう。
  110. 田中角榮

    田中国務大臣 貿易は自由が望ましいことは、もう言うまでもありません。しかも、世界の大勢が南北問題に移行しつつある。そのためには、ケネディラウンドの推進が当面する世界の一番大きな課題である、このようにいわれておるのでございますから、一国の国際収支の逆調という特殊な事態があるにしても、輸入が制限されるようなことは望ましくないことは言うまでもありません。  私がアメリカでもって述べましたのは、右にケネディラウンド推進の旗を持ち、左に課徴金制度をやっていること自体、平仄の合わない姿勢ではないか、しかも指導的立場にあるアメリカ、特に一九四五年から四分の一世紀にわたって世界の平和維持に寄与してきたという原動力といわれるようなアメリカが、自国の困難な状態とはいいながら、そのような状態に踏み切ることによって、縮小均衡への道が避けがたくなるということになるおそれがあるのでおやめなさい、私はあえて自分の利益のためにのみ反対をしておるのではないのです、という理由を明らかにしておるわけでございます。しかし、アメリカが困難な状態になっておるということは事実なんで、それで私が述べたときに、過去五年の間にイギリスが二年間課徴金制度をとりました。それからカナダ・ドルの危機に際して、カナダは一年間の課徴金制度をとったわけです。世界のキーカレンシーであるドルはせいぜい半年だろうと言ったときに、アメリカは、もっとアメリカドルというものの価値維持ということはたいへんなんです、その意味ではやはり貿易の、正常な貿易確保のためにはどうしてもこれをやらざるを得ないのです、ですから、そんなオーソドックスな議論だけを展開しておると、これは日米間ではどうしても十月の十五日からやりますよ。私が、もしそのような事実に踏み込んだとしたら、それこそ日本の取り返しのつかない損失だと思う。  私は、メリット、デメリットという先ほどの御指摘に対して、原案と仮調印をされたものを比較をして数字的に述べたのですが、それは第二義的なものであろうと思います。言うなれば、この調印のメリットは、日米間のわだかまりを一掃して、日米間が同じ基盤に乗った、すべて話し合いができる、こういうことを確認をしたものが一番大きなメリットである。私は、これが一方的交通に入ったら、これだけでは済まぬという、そういう想定のもとに立っておったのです。私にはそれなりの理由がちゃんと理解できたのです。ですから、十月十五日に一方的にやるならやってごらんなさい、そんなことを国際的に見て長くやれるわけがない、そんなことを考えておると、それこそ取り返しのつかない日米間になるおそれがある。それはもう自動車、テレビその他いろいろなものが現に用意をされておる事実を知りながら、私は、十月十五日にやるならやってごらんなさいなどという態度をとることは、日本の真の利益を守ることではない、そう断じたわけでございまして、私は、この協定によるメリットの一番大きなものは、日米間の不正常なものが正常になった。私は、そういう不正常になるおそれが多分にあった、非常に危険なときであったにもかかわらず、それが一つの正常な段階に立ち戻ることができたので、これからは、自動車をやろうと言っても、それはだめですよ、お話をしましょう、私は、そういう話し合いの機運を確認することができたのが、戦後四分の一世紀の日米間の最も大きなメリットであった、こう申し上げればよかったわけでございまして、おそまきながら答弁申し上げます。
  111. 正木良明

    正木委員 いまの御答弁の中にも、幾つかの問題点があると私は思います。第一の問題点は、被害のないところに規制はないという、こういう問題についても、一方的規制をするぞ、アメリカは大きな被害を受けておるのだから、一方的な規制をするぞ、あなたは先ほどどうかつじゃないとおっしゃいましたが、あなたはこのどうかつじゃないという理由を一向にお述べになりませんけれども、私は、これは明らかにどうかつだと思いますよ。少なくともあなたがそれほど深刻に日米関係という問題について受け取られたということ、しかもその内容が、アメリカ業界を守るために、一方的に日本業界、またそれにつながる繊維業者の小さな零細企業に至るまでの大きな犠牲をしいて、そうしてこの政府間協定を結ばれた、これは、十月十五日にやりますぞというそのどうかつに、まさに適合するものだと私は思うのです。  そこで、ここで明らかにするために、田中さん、アメリカ繊維の消費量の中で、日本繊維製品の占めるシェアというのは何%か、一回お答えになってください。
  112. 田中角榮

    田中国務大臣 アメリカ国民の全消費量に対するシェアは、二%というふうに理解をいたしております。
  113. 正木良明

    正木委員 私の資料では一・九%になっているのですが、まあいいでしょう。アメリカ繊維の全消費量の中で、日本が大口の輸出国であるといわれながら、その占めるシェアは二%ですよ、あなたのことばで。私が言うと一・九%です。  そういうことで、大臣、アメリカ業界の受ける打撃というものは、私は、彼らは針小棒大に言っているだけで、実際上の大きな被害はありませんね。だから、彼らは立証できないのです。したがって、再三にわたってこの三年来、被害のないところには規制がないというガットの根本的な精神の上から、日本は何回ともなく、政府も御努力なさって、アメリカから被害立証を求めていらっしゃいますね。被害立証は完全になされましたか、どうですか。
  114. 田中角榮

    田中国務大臣 日米経済閣僚会議に出席のおりも、被害の実証をせられたいということで、私が数字を述べて被害の立証を求めたわけでございます。被害の立証ということに対しては、私は、日本の労働者全体に占める繊維の労働者の比率、日本の産業全体に対する繊維産業の比率、輸出の中に占める繊維の比率、対米問題等、十分数字をあげてアメリカと比較をして指摘したわけでございますが、アメリカ側から述べたのは、立証はもちろん必要でございますが、それは、日本から対米輸出がどの程度伸びておるのかの伸び率を見ていただけばわかることである、それだけではなく、アメリカの国際収支そのものが、七十年ぶりでもって初めて貿易収支が逆調になっておる、しかも、それは最低はじいておおむね二十億ドル日本の対米出超が二十億ドル日本が二十億ドルやめてくだされば、アメリカ貿易収支は、七十年の歴史を通じて逆調にならぬで済むのですということで、繊維による実体的な被害の立証よりも、まず貿易収支という当面する問題、その中で繊維はまず第一番のものであって、次にはこういうものがございますよという指摘が明確にあったわけでございまして、ただ、アメリカの消費や国際収支に占める繊維の被害だけというものに対しては、私が納得するというところまでの具体的な立証はなかったわけでございます。
  115. 正木良明

    正木委員 ですから、いわゆる向こうが被害の立証もできないような、いわゆる被害としてアメリカが受け取るようなことのできないような繊維が人身御供になったのです、いいですね、この人身御供になったという理由は何かというと、これはもう当然、ニクソンの選挙公約というところへ返ってくるのです。ニクソンの選挙公約によって、アメリカの南部におけるところの、いわゆる繊維業界の非常に多いところにおいて彼が票を確保するために、外国の繊維の輸入品を規制するという約束、これを実行するために、いわばニクソンの私的な理由です。私の理由によって、この繊維規制というものを矢面に立てて、いわゆるアメリカの国際収支逆調という背景のもとに、徹底的に日本に迫ってきたと見ていいわけです。それを、密約説というものを否定なさいますけれども、どう考えてもこの情況証拠は、佐藤さんが一九六九年にニクソンとお会いになったときの約束から始まっていると見なければならないと私は思うのです。これはまたあと総理答えてください。時間がありませんので、どんどん進めますから……。  そこで、さっきの法律的な根拠、これは法律的にはこの四つの法律、皆さん方は四つ、私は三つしかあげておりませんが、この四つの法律なんて、実際問題として適用できませんよ。あなたが最もおそれるところの日米関係、これは日本も大事に思っているかわからぬけれどもアメリカも大事に思っているでしょう。そのときに、対敵取引法なんていうものは適用できますか。非常事態宣言をしているから、これは敵国という扱いをつけないんだといったところで、かりにこれを適用したところで、日本に対敵取引法を適用して繊維の規制をしたということになると、日米関係はもう全くアメリカの側からくずしたということになるから、これはアメリカは発動はおそらくできないでしょう。  同時にまた、通商拡大法ですね、これも御存じのとおり、緊急計画局というところでこれを審議しなければならぬ。大統領がやるぞと言って、そのままやるのではないのです。この緊急計画局で、国防上の問題として輸入を規制すべきかどうかということを検討しなければなりません。いままで数十件この緊急計画局のほうに輸入規制の問題が、繊維以外のものもたくさん入っておりますが、そのほとんど全部却下されております。したがって、繊維の問題をこの緊急計画局が輸入制限を決定するということになれば、それに関連する微細な問題まで全部認可をしなければいけません。いまやっているのは原油だけですよ。原油が中心です。したがって、この通商拡大法というものも適用はできません。おそらく計画局は却下するでしょうから、これはできません。  農業法は、先ほどあなたがおっしゃったとおり、農業法ですから、農業法の二百四条を適用するということになると、綿製品は農産物というふうに解釈できるかわかりませんが、幾らひねくれたアメリカでも、化繊まで農産品というふうには考えられないでしょう。そうすると、これはできませんね。しかもこれは多国間協定で、他の国を含めて行なえるということにこの農業法はなっておるのであって、したがってこれも発動できません。  銀行法も、先ほどの対敵取引法と同じ性質の法律です。一つと見てもいいぐらいです。途中でルーズベルトが一九三三年につくったわけですから。  ですから、法律的根拠というのはきわめて希薄と見なければなりません。だから、一方的規制というものはアメリカとしてはできないんです。事実また、実際に何千とあるような商社、そういうものに対して割り当てをしていかなければならないような実務的なことが、アメリカでできるわけがありません。これは、完全にできないものを、やるぞ、やるぞと言ってきたのなら、これはどうかつと見るべきであると私は思うのです。それより判断するほかはありません。どうかつと見ないならば、佐藤さんのオーバーコミットメント、いわゆる佐藤さんとニクソンとの間の約束を履行しろという一点において追及せられて、やむを得ず政府間協定に進めたものであるとしか私どもは断じられませんし、国民もそのようにしか考えないと私は思います。それでは、とりあえずこれを聞きましょう。
  116. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘にありましたように、対敵法というのは、内容いかんにかかわらずそれはもう非常によろしくない法律であるということは、私も何回か述べました。これはスタンズ商務長官にも述べましたし、コナリー氏にも述べたし、いろいろな方に述べております。対敵というだけで、その内容いかんにかかわらずアメリカに対してプラスではない、こういうことは述べております。  農業法二百四条については、先ほども述べたとおり、一体化繊は農業製品なのかということで問題がある。いろいろな問題がございます。  最終的に彼らが考えたのは、緊急銀行法でございます。銀行法で繊維ができるのかということで私もちょっとびっくりしたんですが、総動員海時一代の総動員法は何でもできた、こういうことと同じようで、この緊急銀行法なるものの条文は、いま御指摘があったように、対敵取引法と内容は大同小異でございます。そういうことで、これを発動すべく準備をしておった、こういうのが実態のようでございます。
  117. 正木良明

    正木委員 そこで、壊滅的な打撃を受けるのは日本業界です。そこで、繊維の問題に関してはたいして被害を受けないアメリカとの間に、国益のためにこの政府間協定を結んだというふうに言われる。経済次元で考えたときに、国益のためにやろうとするならば、政府間協定は結ぶべきでなかったと思うのです。先ほど申し上げたように、五%の伸びというのは各品目別、個別に五%の伸びですから、流行がありますから、うんと伸びるものとうんと減るものがありますから、これは総体では五%確保できません。むしろいままでの既定のワクよりも減るでしょう。基準ワクよりもうんと減ると考えなければなりません。  そのほかに、日本政府間協定をするかどうかということでじっと見守っておったのが韓国と香港と台湾です。日本政府間協定に踏み切ったということで、韓国、台湾、香港はアメリカと同じく政府間協定を結びました。しかし、韓国、台湾、香港の繊維業界におけるところの製品の原料というものは、平均して約七〇%は日本から糸が行ったり生地が行ったりしているのですよ。したがって、向こうの政府間協定によるところの輸入規制も、日本業界はがっぽり受けるわけです。わかりますね。そうして日本国内においては市場の混乱が必ず起こります。いままで外に出ておったのが内らに来ようとします。同時にまたヨーロッパ、EC諸国は、アメリカへ輸出できなかった繊維製品がヨーロッパへ津波のようにやってこないかということを非常に心配して、政府間協定に反対です。したがいまして、ヨーロッパにおきましてもやはり日本に対して、政府間協定ないしは自主規制を求めてくるというような空気はきわめて濃厚だと見なければなりません。これは情勢からいってそうです。  そう考えてくると、二重、三重、間接、直接にわたって日本繊維業界が受ける、また繊維業界の下にずっとこまかく分布しておる中小企業、零細企業、家内工業に至るようなああいう繊維業者というものは、決定的な打撃を受けるのです。アメリカがたいして被害がないのに、日本が壊滅的な犠牲を受けるというようなこの繊維政府間協定というものは、全く反国民的といわなければならぬというふうに私は思うのです。その点を総理どうですか、お答えをいただきたいと思います。
  118. 田中角榮

    田中国務大臣 いまあなたが述べられた中に、繊維政府間交渉に移さなければならないというアメリカの事態が、いみじくも出ておる数字がございます。それは、日本もそういうことになる前に、やはり糸等を貿管令の対象品目にして、自主規制の五%の中に入れておくべきだったかもわかりません。いまになってみるといろいろな知恵が浮くわけでございますが、政府間交渉さえも避けられる、避けなければならないということを前提にしてまいりましたから、そんな知恵が出なかったわけでございますが、アメリカが求めてきた政府間交渉自体の数字の中にはそれがあるのです。日本だけじゃない、日本と韓国と台湾と香港との関連性、この数字を見たならば、これで一体正常と思いますかということです。確かに繊維製品は五%自主規制ということになっておりますが、そのワクの中に入っておらない糸に関しては、日本でもうすでに三五一、三年半分出ておるわけでございます。それだけではなく、香港が一五七、台湾は二三二五、韓国は二四二二・八、その他が一七八・六でございますから、ヨーロッパ諸国やその他の対米の糸の関係については、ほか全体で七八%しか伸びておらぬのに、日本はすでに三五一、台湾は二三二五、二十三年分も糸が出ておるわけであります。韓国においては二十四年分も実績に対して糸が出ておるということで、これはどうしても規制をせざるを得ない、こういう問題の一つの数字になっておるということで、われわれも政府間交渉が不可避であるということを閣議決定を求めたその時点において、糸も貿管令対象品目の中に入れて交渉したということでございまして、数字としてはこれだけではなく、自動車その他対比する数字を申し上げますと非常に大きな数字が出ております。しかし、自動車やテレビや電卓等は、まだ政府間交渉の要請さえもないのでございますから、私はこれの署名をするときに、今度テレビが来ても、田中角榮がここにすわっている以上、三年間はだめですよとこう言ったのです。私はそう言ったのです。はっきり言っております。ですから、この繊維に関しては少なくとも二年前からの歴史がちゃんとあるんだということ、ですから繊維以外は、いずれにしてもこれかり日米間では、正常なオーダリーマーケティングの問題を解決するためにも、お互いもう話し合いでいく以外にありませんよと、私は深刻にそう述べておるのでありまして、数字の問題については、私は政府間協定が大賛成でやったわけじゃないのです。私は自主規制が一番いいのだと思っておったのですが、もうやむにやまれずやったのでございますから、国益を守るためにやったのでございますから、そういう面から評価をすれば、何もアメリカが一方的どうかつ的であったというだけではなく、それなりの理由はちゃんとあるのだ、日本もその事実というものはやはり尊重せざるを得ない、こう思います。
  119. 正木良明

    正木委員 そこで、それは気の毒な立場というのはわかるのですよ。わかるのだけれども、しかし、あなたは責任者だからしようがないのです。それで、ほんとうにあなたが、いま言ったように、自動車、テレビ、電卓というような問題がいま日程に上がっておりますけれども、これを遮断できますか。私は、田中さんいい人なのだけれども、ただ惜しむらくは、あなたが、最初、政府間勘定をやると言った福田さんに対して、政府間協定はやらないということで、さんざん一生懸命——なかなか田中さんいいことを言うわと思っておったのです。ところが、いわゆる君子は豹変するというが、全くがらりと変わって、今度は政府間協定を、やむを得ないにしても結んで、そうしていま政府間協定の弁護を一生懸命なさっている。したがって、テレビだとか自動車だとか電卓だというような問題についても、いまあなたはやらぬと言っているけれども、どんなことでまた、くるりとやるようになるかわからぬという気持ちが非常に強いわけです。そういうことについてひとつ答えていただきたいということ。  それと、これは政府間協定でありますから、あくまでも政治的な問題ではありますけれども、しかしこれは経済問題です。ある程度政治的なものが加味されている、そう考えるべきだと思うのです。ところがこの問題はあまりにも政治的過ぎます。たとえば十月十五日なんて日付は、どういう考え方で十月十五日なんて日付が出てきたのですか。十月十六日から沖繩国会が始まるからその前日の十月十五日というふうに考えられたのじゃないですか。そういうことが巷間しきりに流布されております。  同時にまたその反証として、こういうものについては、全部向こうは面積ですね。それにTQ統計というのをやっているのです、アメリカで。TQ統計でこの面積を出しているのです。生地を何ヤールというふうに出しておるわけです。このTQ統計にのっとらなければ、基準も何も出てこないのです。このTQ統計というのは何日から始まるかというと、月初めから始まるのですよ。それをなぜわざわざ十五日なんて切ったんですか。これなんか明らかに、十月十六日から始まる沖繩国会の前に何とか——国会で突っ込まれて、政府間定というものができなければ困るから、それまでに、国会がお休みの間に何とかまとめてしまおうというような、きわめて強い政治的な意味があると私は思うのです。  なお、根本的に政治的な取引であったということについては、いまはあなたいみじくも、三年前からの懸案事項ですというのです。三年前の懸案事項というのは何かというと、先ほど申し上げたように、一九六八年のニクソンの選挙公約から始まって、ちょうど三年前の佐藤・ニクソン会談というものが一つの大きな中心点になり、そのときに約束をなさったことが、業界の反対で、簡単にいくと思った佐藤さんは、一向にいかないものだから、去年わざわざ国連へ出席するという形でアメリカへ行かれて、ニクソンと会って決定的な約束をなさった。そして今度はこちらへケネディ特使が来て、その約束をかさにかかって、あなたに要求をした。したがって、あなたとしても、いままでさんざん反対してきたけれども、どうしようもなくてこの政府間協定に仮調印した。しかし、これはもう国益をそこなうこと、これほどひどいものはない。むしろ日米関係というものは、こういう関係の一つ一つの積み上げによってますます悪化すると見なければならぬ、私はこう思うのです。  こういう総括した問題について、これは佐藤さんに関係した問題でありますから、ぜひ総理に御答弁をいただきたいと思います。
  120. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま静かに田中通産大臣正木君との質疑応答を聞いておりました。その一番相違点は、何が国益か、こういうことで、政府の認識と正木君の言われる認識がこうも違うかと実は驚いたのであります。私は、もしも政府間交渉でなしにアメリカ一存で規制をやったら、たいへん業界も強い規制を受けるだろうし、また同時に日米間の諸問題に悪影響があった、かように思います。私はその意味においては、これを政府間行政協定で話を片づけたことは、わが国の国益を守る上において大いに役立ったと思います。この点が不幸にして、正木君のごらんになるところと、政府のわれわれの考えるところと基本的に相違しております。私ども国益を守るためにこれは必要であった、かように思っておりますので、この点は御了承いただきたいと思います。  なおまた、この問題が三年越しの交渉案件であること、これは御指摘のとおりであります。これが三年越しの交渉ではありますが、ニクソンの公約、そういうものと私どもと別に関係はないことでありますし、私がニクソンと会っていろいろの話はいたしましたが、いわゆるこの問題についてオーバーコミットメントしたことはございません。したがって、これは約束ではございません。私は日米間の問題は、話し合えばそういう問題は片づく、かように思っております。ことに領土の返還問題というような重大問題でも、話し合いによって沖繩日本に返ってくる、こういう事態でありますし、その他の問題も、話し合いを重ねれば必ず理解がお互いにつくことだ、かように思っておるのでございまして、それらの点もあわせてお話を申し上げておきますが、この問題が、いわゆる私とニクソンとの約束、その始末をしたのだ、かような言い方は当たらないと思います。  なお、三年間の長い交渉案件であります。その最後におきましては、業界自主規制まで行なっていた、しかもその自主規制がようやく効果があらわれよう、これからどういうような結果を生ずるか、そういうとき、まだ自主規制に入ってわずか一カ月や二カ月、そういうような状態政府間交渉することは、いかにも時期が早いように言われますけれども、これまたアメリカ政府は、最初から民間協定には不満であります。その意を表明しております。アメリカがそうであろうと、私どもは、民間の自主規制がよろしい、かように思っておりますが、ただ、最近とりましたアメリカの非常事態に対する対処のしかた、これはちょっとわれわれの想像以上のものであります。いわゆる賃金・物価の凍結令を出したり、あるいはまた課徴金制度をつくったり、ドル・金交換、兌換停止をしたり、これはもう自由経済、それを守っておる最大の経済力を誇っていたアメリカにしては、ほんとうに恥も外聞もないような思い切った処置をとって、ただいま経済の立て直しと取り組んでおる。その姿から見ると、最近の繊維問題についてすでにある程度話もあったことではあるし、さらにそういう問題についての強い働きかけをしてくる。これはわれわれが、ただ単にどうかつというより以上にこの経済事態を考えると、アメリカのとる態度もたいへん心配になるのであります。  なおまた、十月十五日というその日——どうも最近は、十五日というのがいかにも問題を提起する日でありまして、何か特別十五日ということに関係があるのか。訪中問題を突然発表したのも十五日である。またその次の経済の立て直しについての発表も十五日である。十月十五日、今度は第三回目の十五日、そういうことで実は非常に心配をしていたのですが、どうも何だろうと言っておると、これは繊維の問題らしいという。だんだん話が煮詰まって、そして向こうで考えておる事柄も明確につかむことができた。これが通産大臣ケネディ特使との間のイニシアル、こういうような問題に発展したのであります。私はただこれを、平常時において考えることのできないアメリカ経済状態だ、そういう前提あるいは基礎を十分御理解いただいて、この処置をとったこと、これはやむを得なかったのだと御了承をお願いしたいと思います。
  121. 正木良明

    正木委員 佐藤総理、この仮調印した協定の内容というものは相当ひどいものであるということは御存じでしょうね。伝え聞くところによると、佐藤総理は、総括規制と個別規制の区別を逆におとりになっていたという話も伝わっているのです。これはまあうわさ話ですから、ここで詰めてもしょうがないでしょう。総括よりも個別のほうがよかったのだろうなどとおっしゃったそうですが、全く逆で、宮澤さんががく然としたという話が伝わっております。  それは別の問題としまして、いずれにしても、ニューヨーク・タイムズの社説でもこのことを非難しているのです。こういう強圧的な態度日本に臨むということについては、今後日米関係が悪化する。したがって、ニクソンはそういうことをしてはいかぬ。しかもこう言っています。その繊維に対する強力な通告というものは、国家的理解からなされたというものではなく、むしろニクソン氏の南部の方略、すなわち一握りの力を持つ南部の繊維関係圧力団体の経済的富を守ることからなされたものである。ミルズ歳入委員長日本の生産者との間に取り結ばれた自主規制をしようという協定がまさに実施されたやさきに、通告は日米関係全般にわたって悪影響をもたらすことになる。これはもうこのとおりだと思うのです。にもかかわらず、総理が、この問題についてきわめて楽観的な、しかも屈従的というべきようなこの協定を結ばれたということについては、私はこの政治責任というものはあくまでも総理は負っていただかなければならぬと思うのです。そういう意味で、この中には、たとえば覚書の第四項では、米側が「合衆国の市場での撹乱またはそのおそれに寄与していると決定するとき」と書いていますよ。これは全部アメリカの判断で、五%の伸びもくそもないのです。アメリカが、日本の製品がアメリカの市場を撹乱したと、そういうふうにきめさえすれば幾らでも規制ができる。こういう内容になっているのです。おそろしいまでの内容です。線協定よりももっときびしいものであるし、そういうことから考えると、今度の繊維政府間協定というものはきわめて悪質なものである。これをやすやすとのんだということについての政治責任というものは十二分に感じてもらわなければなりません。その点どうですか。
  122. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘になりましたが、これはもう行政協定でございます。行政協定もちろん政府責任、それははっきりしておりますから、その責任を回避するような考えはございません。
  123. 正木良明

    正木委員 したがって、この内容によって、米国の都合によってあらゆる無理がどんどん言われてくるだろうと思いますが、それについてもはっきりと拒否していくということを続けていけるか。そうして最終的に、三年の協定でございますが、これはどんどん延ばすことがちゃんとこの経過規定の中に書いてあるわけでありますが、三年でぴたっとやめるのだというその保証は総理大臣どうですか。総理大臣ないしは通産大臣やってください。約束はあとの内閣にも続きますよ。その点、念を押しておきますから……。
  124. 田中角榮

    田中国務大臣 協定は三年でございます。かかる協定ができるだけ早く廃止されることが望ましいことは言うまでもありません。その後、引き続いて一年ないし二年延長するかどうかという場合は、両国がその場合に四囲の情勢を見ながら相談をしてきめることでございます。これは韓国、台湾等は五年になっております。日本も五年が望ましいということでございましたが、日本は三年でも困るのです、この協定自体がいやなんだということをさんざん私から強く述べて、しかし両国の基本的な姿勢を直したり、お互いが話し合いの場をもう一ぺん確認するという大きなためにこの協定を結ぼうというのですから、三年にしましょう、五年マイナス三年のあとは、お互いにそのとき話せばいいじゃありませんか。こういうことですなおな協定になったわけでございますから、この間の事情をひとつ御了承いただきたいと思います。
  125. 正木良明

    正木委員 そこで政府間協定が、先ほども申し上げましたように、この国会決議無視して結ばれたのです。国会決議無視したという点においては、いわゆる国会の意思に反してこの政府間協定が結ばれた限り、この政府間協定というものは、国会の意思を問い直すという意味で、これは議決を経なければならぬ、批准を経なければならぬというふうに私は考えますが、どうですか。
  126. 田中角榮

    田中国務大臣 国会におきましては、衆参両院の商工委員会、それから衆議院の本会議決議がございますから、決議の趣旨に沿わなければならぬことは言うをまちません。最終段階において、国会決議があるにもかかわらず、新しい事態があとはありましたが、政府間協定に移らざるを得なくなったということに対しては、国会で本協定を——私が結んだものは覚書に対するイニシアルでございますから、これから外交ルートを通じて正式協定になるわけでございます。ございますが、まあ私がイニシアルをしたものが、おおむね大筋においては、字句の修正はあっても、これが協定案文に置きかえられるというものであります。でありますので、協定が行なわれるまでは、このようにして両院においてできるだけ事情を御説明申し上げ、御協力を得るということに対しては万全の措置を講ずべきだというふうに考えております。  それから、この際明らかにいたしておきたいと思いますが、一九六八年にニクソン大統領の化合繊維製品についての輸入規制を行なう旨の宣言があったわけです。それから六九年、ちょうど半年以上たちましたときに衆参の商工委員会の決議がございました。それから六九年の五月にはスタンズ商務長官の来訪があったわけですね。それから今度、そのスタンズさんが来たものだから、五月九日に、ストップをかける意味で衆議院の本会議決議があったということでございますが、その後ずうっと続きまして政府間交渉が行なわれておったのです。それで、まだやるのかというので、七〇年の三月に衆議院の商工委員会でもってまた決議が行なわれております。これを受けて、その後ずっとまた閣僚レベルでもって政府間交渉が行なわれ、七〇年の十一月には御承知の牛場・フラニガン会談が続いておったわけですが、そこで、まとまるのかまとまらないのかという段階まできたときに、シフトの問題、今度の協定七項の問題でもって決裂をして、それを受けて七一年三月に日本繊維連盟の自主規制というものになっておるのでありまして、この間三年、ばかりございます。ですから、もうすなおに申し上げれば、これは委員決議、本会議決議たるとを問わず決議がございますから、決議アメリカ政府政府間協定を結ばないように説得をするような趣旨のものでございます。もう一つは、参議院の商工委員会においては、業界の了解を得ぬまま政府間協定に入ってはならないという趣旨が明確になっております。ですから、結論的に私は申し上げれば、国会決議どおりにならなかったという結果に対しては、その間の事情を十分国会に説明をして御了解を得る努力をいたさなければならないという政府責任を感じます。ですからどんなことでも事実を申し上げます。申し上げて、なるほど、国会決議があったにもかかわらず、政府政府間協定を結ぶことによって国益を守ったのだという理解を得られるまで努力を続けてまいりたい、こう思うわけであります。
  127. 正木良明

    正木委員 業界自主規制まで踏み切っているのです。自主規制まで踏み切っているのに、それを踏みにじって政府間協定を結んでいる。しかもそれは業界にとっては壊滅的な打撃を受けるような内容です。しかもそういう問題について、国会決議は確かに、アメリカ交渉しなさいというから交渉したんだから、決議のとおりやっているじゃないかというようなことを言外ににおわしてあなた言っておるけれども、そんなものと違いますよ。全部向こうの言いなりになっているのです。根拠法もわからない、できもしないような一方的規制というようなものをのんで、しかもその内容たるや、アメリカの思う存分のことを言い尽くした覚書協定している。そうして取ってきたメリットと称するものは、それこそ薄っぺらな、メリットとも言えないようなメリットしか取ってきていない。しかも業界はこの政府間協定に反対なんですよ。業界を納得させて結べ、納得させてからでないと、相談してからでないといかぬと国会決議は言っているのに、業界は反対なんですよ。業界はむしろ、一方的規制でもいい、甘んじて受ける、一時的な打撃ならそれを何とかやりくりできる、しかし長期的に受けるような打撃はかなわないといって反対しているのですよ。国会決議無視する、業界無視する、どこに国益があるのかと私は言いたいのであります。  そこで、この問題について、これはまた引き続いてわが党の議員がそれぞれの委員会でやりますので、きょうはこれでおきますが、救済策はどうしようと思っていますか。
  128. 田中角榮

    田中国務大臣 総理大臣の所信に関する演説でも明確に申し述べましたとおり、業界の一部で不安感を抱く者もございますから、これが不安の除去に全力をあげます。なお財政、金融、税制各般にわたって、当面する問題はもとより、長期的安定のための施策に万全を期するつもりでございます。
  129. 正木良明

    正木委員 相当大きな金を出す、金を出せば済むじゃないかということを言われたということですが、これはいいでしょう。金はどんどん出してやってもらいたいと思うのです。ところがこの金は、いまこの事態になれば、政府間協定を結ぶということになれば出さざるを得ないと思いますが、実際はこれは回り回ってニクソンの選挙資金みたいなものです、この救済資金というのは。ニクソンが選挙公約を果たすために日本が甘んじて政府間協定で打撃を受ける、その打撃に対して政府国民の税金でそれを救済してやろう。それは業界としては救済してもらわぬと困るから救済してやってください。しかし考えれば、ニクソンの選挙公約を果たすために大きな金を日本は使うということに、これは回り回ってなるのです。そんな深刻なことを考えると、私は、実際にこの問題について再思三考しなきゃならない、このように思うわけであります。  そこで業界は、先ほど申し上げましたように、あくまでも徹底的な抵抗をしたいというふうな意向のようであります。もしかりに行政訴訟を起こした場合には救済策をとらないというような、どうかつ的なやり方を政府がとるということもうわさに聞こえておりますが、そうではない、行政訴訟とは別に救済策には万全を期するのかどうか。行政訴訟をやるようなものには救済してやらぬのだというような考えでいくのか。総理、どうですか。
  130. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 同じように国民が困れば政府がめんどう見るのはあたりまえであります。どの産業でも私どもはひとしくめんどうを見る、その考え方でございますから、行政訴訟と救済問題と、これは別でございます。御安心なさい。
  131. 正木良明

    正木委員 私は大体三十分くらいで済まそうと思ったのですが、ずいぶん時間をとられてしまいました。この問題、手つかずでありましたのでいたし方ないと思います。  そこで中国問題に入りたいと思いますが、その中国問題の前に、総理の認識を聞いておきたいのです。  代表質問等のことを通じて総理の話を聞いておりますと、所信表明でおっしゃったことばとはちょっとニュアンスが変わってきている。所信表明では、「現在の国際秩序は、第二次大戦終結前後の国際情勢を反映したものでありますが、もはやこのような戦後体制のワクの中では処理しきれない国際間の諸問題が生じております。特に中国については、すでにサンフランシスコ講和会議において、いずれの政府中国の代表として招請するかについて連合国側の合意を見ることができなかった経緯があります。」云々ということで、この中国問題をめぐってアジアに対する情勢の変化というもの、これはもう大きく転換しつつあるのだという認識がここで読みとれるわけです。ところが、総理が小坂さんの質問かなにかにお答えになったのにも——まあ一連のそれぞれの質問者に対するお答えは、いわゆる戦後米ソ二大陣営によるところの力の均衡による冷戦構造、これはアジアにもサンフランシスコ体制、安保体制、日台条約というようなものを柱として厳然としてあったことは事実であります。これは私は大きく変わりつつあると見なければならぬし、変えなければならぬというふうに考えておるわけなんですが、しかし総理考え方は、あくまでもアジアのそういう二大陣営によるところの軍事的な冷戦構造といいますか、こういうものは一向に変わっていないというような認識のように受け取れるわけです。そういう意味において、いろいろ問題を討議するにあたって、総理のいまのアジア情勢の分析、同時にまた今後アジアをどうしていこうとお考えになっているのかということをお聞かせをいただきたいと思います。
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 米ソ二大軍事力、これは確かに二つが超軍事力を持っております。しかしいまや二極化ではなくて多極化の時代になっております。国際問題は米、ソ、中あるいはEC、日、こういう五極が中心になって、多極化された状態のもとで国際的な問題が動いていく、こういう事態ではないかと思っております。したがって、アジアにおいても、米ソだけではなく、いま申し上げたような五極、中、日、同時にまたEC、そういうものを考えないと動かない、こういうのが現実の問題じゃないかと思っております。私は、そういう意味で多極化している、その間に処していく日本のあり方、それが大事なことだ、こういうことを強く訴えたと思っております。ただいまお答えすることは以上です。
  133. 正木良明

    正木委員 総理現状の分析はわかりました。今後どうしていこうとしていますか。
  134. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 多極化された国際情勢においては、当然その多極化に対応するということになるのです。だから、一つだけで自分たち考え方をきめるというわけにはいかないだろうと思います。また、どんどん変化していく国際情勢に対応していかなければならないと思います。その一つの方法がいま問題になっておる国連でのあり方だ。また、それ以外にも各種各様の国際会議、同時にまた二国間の交渉、それなどが次々に起こっていく、こういうものに対処することも大事なことだと思います。いい例がニクソンの訪中、訪ソ、そういうことでどういうようにこれから変化してきますか、この問題にもわれわれは対処していかなければならぬと思います。しかしその前に、国連における一つの決定がきょうあすにも行なわれる、こういうことではないだろうかと思います。私は、わが国の行き方として、自主的な態度をもちろん堅持いたしますが、やはり国際的な多数意見、これは尊重しなければならない。国連中心主義ということも言ってまいっておりますから、そういう意味では、けさほどの御質問にもお答えしたように、私は国連で決定されたことについて異を唱えるような考え方はございません。それには従っていくということであります。
  135. 正木良明

    正木委員 私は本来的に言って、日中国交回復問題というものは、一つだけ抜き出して考えるという考え方よりも、やはりアジアの未来像というものをどうするかという中で日中国交回復問題というのをどう位置づけるかということで進めていかなければならない問題だと思うのです。それで、従来から政府のほうにも明確なアジア政策というのはございませんで、アジアをどうしていきたいかということについてはきわめて抽象的な言い方で、非常に個別の問題としてしか取り上げられていなかった。私は、これは非常に不幸なことでありまして、これは野党にも責任があると思いますが、いずれにいたしましても、日中国交回復がもうレールに乗ったと思います。これはスピードの問題だと思うのです。そのスピードのブレーキを踏むかアクセルを踏むかというのは佐藤さんの足にかかっているのだと私は思うわけなんですが、いずれにいたしましても、これはもう既定の事実になってくるでしょう。そういう中でそれじゃ日中国交回復後アジアをどうしていくのか、その中にある日本責任として安全保障をどういうふうに果たしていくのかということが非常に私は重要な問題だし、いま国民の前にこの論議というものを提起しなければならないときが、ちょっとおそ過ぎるぐらいだ。これが十分に国会の中でも論議されなければならないときが来ていると私は思うのです。従来からそういうアジアの未来像というものの考え方というものは、個人的にはいろいろお述べになった方がありますけれども、明確なものはなかった。もちろん外交というものは相手があることでございますから、こっちが敷いたレールの上をそのままずっと行けるかどうかわかりません。往々にしてハプニングが起こるだろうと思うのです。しかし未来像があって、それに近づこうとして努力していくという形と、それによって起こるハプニングに処する立場と、どこかの国がきめてくれるからその国のあとについていけばいい、その場その場の場当たり、思いつきで外交を進めたり情勢を分析していったりするということは、非常に問題が多いだろうと思うのです。そういう意味から言うと、この沖繩問題にしろ、中国問題にしろ、この大きなアジアに対する平和、繁栄、安定というようなビジョンのもとに考えていったときに——これはこまかく説明する時間がございません。また別な機会にやりますけれども、非常に抽象的な言い方で申しわけないが、そういうビジョンであるときに、そういうアジアの未来像を考えたときに、台湾を正統政府にしてその目的が達成されるか、中華人民共和国を事実上ないというような形で政策が進められて、アジアの平和な未来像というものは築けるかどうか、これは三歳の童子でも明らかなことだと私は思うのです。そういう意味から、日中国交回復もそういう大きな観点からとらまえなければなりません。同時にまた、日本がほんとうにアジアを平和なアジアにするためにほんとうに努力をしていくという大きな役割りをになっていこうとするならば、沖繩現状のようなままにしておいてはならないだろうと私は思うのです。そういうふうに沖繩の問題も中国の問題も、いま当面する問題としてきわめて大きい問題でありますが、しかしわれわれがその問題と同時に論議しなければならないのは、アジアの情勢をどう分析し、アジアをどう持っていこうかという日本の役割りというものについて、国民的合意を得なければならないときが来ている、私はこう思うのです。そういう大きな次元と言いますか、高い次元と言いますか、そういう次元において私はいま総理に御質問を申し上げたので、ニクソンの訪中というのは、一つの大きな要素であるには違いありませんけれども、それは一つの現象にすぎない。これは日本にとってはもしかりに未来像があったとしても、大きなハプニングであったかもわかりません。そういう意味においてもう一度、時間がありませんので簡単でけっこうですから、そういう考え方がおありになるのかどうか。それは考えているのだ、それはちゃんとした機会に明らかにするのだということであるならば、その点をお答えいただきたいと思います。
  136. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま具体的なお尋ねがありましたが、私ももちろん、この戦後で沖繩問題、これは日本の本来の領土、またそこにいる人は日本人です。日本国籍。それをやはりあるがままの姿、自然の姿にもとに返すことが何よりも大事なことだと思います。いま沖繩復帰問題を御審議願っているのも、そういう意味でこれは大事なことだと思います。それからアジアの国々と仲よくすること、これはもう当然でありますが、平和でどうしたら繁栄できるか。この地域に不幸にして世界に四つしかない分裂国家というものが三つもある。そういう状態のもとで平和を維持する、これはたいへんむずかしいことだ、かように思っております。私はあまりこれに重大なる変化を加えないことが平和であるゆえんではないだろうかと実は思っておる。これを動揺さすこと、そこに一つの変化が起こること、これ自身が緊張をかもし出すおそれがあるゆえんだ、かように実は思っております。でありますから、沖繩の問題は問題として、これば本来日本考え方、また日本民族これは一体であるべきものだ。これは一緒にされないで、いま申し上げるような問題とひとつ取り組む。  いままで申したことのない事柄、ことしになりまして重大なる変化政府考え方にも来たしております。これは何かと言えば、中華人民共和国、この中国にある政権をまず第一に尊重しよう、そういう態度であります。いままではとかく中国を代表するものは台湾政府国民政府だ、こういう態度で臨んでおりましたが、いまや国際的にも中華人民共和国承認している国のほうが多くなっている、そういう事態でありますから、これを国連に招請するし、また同時に安保の常任理事国に勧告する、こういうような態度に変わってきておる。ただしかし、これが皆さん賛成されないのでありますけれども、いままで存在しておる中華民国、これが国連の議席まで剥奪するということ、追放するということ、このアルバニア案には私は賛成しない。したがって、国府はそのまま議席を持つ、こういうこと、これがやはり変化を与えないで、両方の状態のもとにおいて推移ができるのだから、まあ国際緊張激化のおそれもなし、かように実は考えて、いま米英その他——英国は別ですが、アメリカその他と共同提案しておる、国連における複合二重方式といわれるものをただいま提案しているような次第でございます。
  137. 正木良明

    正木委員 その辺が前向きのようでうしろ向きなんですね。どういうふうにとっていいのか、前段の情勢分析の中でどういうふうにとっていいのかわからないのですが、できるだけ現状を変えたくない、現状に動揺を与えたくないというお考えをお述べになりました。いわゆる一口に言えば現状固定という考え方なんですね。事実、私はアメリカとソ連との二大陣営による冷戦構造というふうに、世界的な視野で申し上げたのですが、アジアにおきましてはやはりアメリカ中国というふうな考え方をしているのかわかりません。いずれにしましても、この日本の安保体制、サンフランシスコ体制、そういうものの中で組み込まれた冷戦構造というものは変えないほうがいい、そのままの状態のままでしばらくは進んだほうがいい、こういうふうにお考えになっているのですか。いわゆる主体的な努力というものはしないで、いわゆる情勢観望のまま続けられて、よそから変わってくるならばそれに対応しようという消極的なお考えなのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  138. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アジアのことだから日本にも発言権があるじゃないか、こういうような発言ともとれますけれども、私は中国の問題は中国の方々にまかしておけばいいんじゃないか。したがってただいま中国は一つだ、かように言っておりますし……(正木委員「もっと大きな意味で」と呼ぶ)でありますから、まず中国が問題だと思いますが、中国は一つだ、これは国府も中華人民共和国でもそう言っている。これはやはり中国人が解決すべき問題だ、私どもは内政干渉がましいことは言わないにこしたことはない、かように実は思っておるのであります。だから、あえてそれは発言しない、かように申しております。
  139. 正木良明

    正木委員 この前参議院選後の予算委員会で、このアジア情勢のことでお話ししたときにも、こういうふうな行き違いになってしまいました。それで佐藤さん、これは私は国民の前で堂々と議論をしなければならない重要な問題であり、かつその時期が来ておると思っておるのです。そういう意味で、この点については早急にやはり総理のお考えもまとめていただかなければならぬだろうと私は思います。その点、要請しておきます。よろしいですか。  そこで、このままいくと時間がずいぶんたってしまいますので申し上げます。そこで——ありますか。
  140. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現在固めるものは固めたつもりでございます。
  141. 正木良明

    正木委員 どういう意味かようわからぬのですが、固めるものというのはどういうことですか。もうちょっとそれじゃ、せっかく言われたんですから、どういうことですか、その固めるだけは固めたというのは。
  142. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中国問題についてです。私は中華人民共和国国連に招請すること、同時にまた安保常任理事国のその議席を与えること、同時にまた中国の一つである国府を国連に議席を残すこと、これが私のただいま持っておる結論でございます。
  143. 正木良明

    正木委員 それは総理、これは固めちゃいかぬです、そんな、現状固定に、あなたは一つの中国で、二つの政府だと言っていますね。こんなことを固めちゃいけませんよ。こんな考え方でアジア情勢を分析したり、今後のアジアにおける平和に貢献しようということはとんでもない話です。それは固まったのかもしれませんが、固めちゃいけない問題で、どんどん議論は進めなければならない問題です。  そこで、もっと具体的な問題について聞きましょう。いわゆる逆重要、それから複合二重代表制、二つの決議案をお出しになりました。この複合二重代表制では、いまあなたがおっしゃったように、現実として二つの政府があるということを認めて、そのまま国連の場に移そうとなさっている。私たちはこれを二つの中国論だと論難をいたしておりますが、あなたは固まったと、こうおっしゃる。そうすると、簡単に答えてください。いままで台湾は中国を第一に代表する正統政府であるという認識をお持ちになり、それを国会で何べんも御答弁なさっておりますが、いわゆる安保理事会常任理事国にまで中華人民共和国政府を復帰させようというお考えですから、同時にまた厳然として現実にあるというんですから、いままで台湾は中国を代表する正統政府であったという考え方はお捨てになりましたか。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 サンフランシスコ条約の後に締結された日華平和条約、これは中国を代表するものとして国民政府を選んだのであります。そういう歴史的事実は消しようがございません。したがって、その状態は今日もあると、かように御理解いただきたい。
  145. 正木良明

    正木委員 中国を代表する正統政府は台湾の国民政府であり、ところが、もう一つ中国には中華人民共和国政府というものがある。しかし、正統政府はあくまでも台湾政府だと、こういうお考えですか。もう一度念を押しておきます。
  146. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日華平和条約は国会においても承認されたものでございます。その当時としてはこれはりっぱに……(正木委員「いまの固まったという問題ですよ」と呼ぶ)その前を理解していただかないとだめです。だからその点がただいま申し上げるように、国会承認も経ている日華平和条約であります。私どもはその権利義務、それはやっぱり守らなければならないと思います。しかし、今日は、昨年とことしは変わっております。それはどこが変わっているかといえば、これはもう国際的にも中華人民共和国承認している国が多くなっておる、こういう状態でありますから、中華人民共和国国連に迎える。同時にまたこれを安保常任理事国にもするということであります。ただ台湾をアルバニア案と違って追放には私ども反対であります。しかし、一国で議席を一つだけしか持たないという、そういうような取りきめは必ずしも国連ではないようであります。ソ連は現に三つの議席を持っておる。そういうことを考えると、大中国は二つの議席があったってちっともふしぎはないんじゃないか、私はそういうことを考えると、ただいまのことは別に論弁でもなければ、現実あるがままの姿、その状態でこれはりっぱに理解できるんじゃないか、かように思っております。
  147. 正木良明

    正木委員 総理、ほんとうに時間がもったいないんです。いらいらしているのです。ですから、私は三つ言いますから、その何番目と言ってください。台湾は正統政府であり、中華人民共和国は正統政府ではない。この一組みです。台湾も中華人民共和国政府も同じく正統政府である。これが二番目です。三番目は、中華人民共和国は正統政府であり、台湾は単なる地方政権だ。地方政権と言うとあなたまたこだわるから、もう一つ別な政権だ、中国の中の一つの政権だ。三つのグループを言いましたね。どれですか。
  148. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもその三つにも入らないものが中国の実情ではないかと思います。これは正木君のちゃんとわざわざ自分のほうの考え方で三つ述べられた……(正木委員「じゃあ、四つ目は、どちらも正統政府ではない」と呼ぶ)私は正統政府ということを使いたくないのです。だから、正統政府だとか、唯一正統政府、こういうような言い方は、それは実際に合わないのじゃないか、かように思っております。
  149. 正木良明

    正木委員 承認をするということは、向こうにおまかせするということではありませんよ。承認するということは、他国が、第三国が決定すべきことなんです。向こうでかってにやってくださいなんというような承認のしかたなんてないのです。いいですか。国際法上そんなことは当然なことなんです。したがってそういう意味においてどちらもつかずで向こうだけきめてくださればよろしいなんという態度は一つの中国を主張しておる、一つの中国であり、一つの政府を相互に主張している場合からいうと、あえてあなたは内政干渉じゃないと言ったけれども、これこそ二つの政府があるじゃないか、内政干渉じゃないですか、私に言わせれば。  それともう一つは、ソ連が三つの議席を持っていると言いましたね。だから一国で幾つ議席があってもいいのだというふうなことになっていますが、そんなばかなことはありません。ソ連はもっとたくさん、いわゆる十七か十八ある共和国の票を全部ほしいからというので、国連へ問題を持ち出したのです。それに対抗して、アメリカは共和国がそうならば、うちは共和制なんだから、アメリカの各州全部それじゃ票をよこせなんということで争いが起こった。そういうことで、結果的に第二次世界大戦の戦場になった白ロシアとウクライナには、どうしようもないから、二票あげましょう、それとソ連とで三票だということになったのであって、これはソ連のほうからそう言っているのですよ。いいですか。中華人民共和国政府は、私のほうに二つの政府があるから、二票くださいと言いましたか。台湾は私のほうは二つの政府があるから二票くださいと言いましたか。だから、そういうごまかしの議論をしないでください。もっとほんとうに国民の聞きたがっている核心に触れた話をしてもらいたいと私は思うのです。そういう意味からいうと、両方とも正統政府でないなら正統政府でないと言いなさいよ。どういうことになるのですか。
  150. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 正木君も、いま北京政府があり、台北に政府があり、そのいずれもが中国は一つだと言っていること、この事実はお認めだろうと思います。(正木委員「それは認めていますよ」と呼ぶ)それを認められれば、私と同じような考え方に立たれると思う。私が申し上げているのはそこなんです。二つの政権のあること、これを認める。しかしてやはり何といいましても、中国大陸を支配しているものが中国の代表になることは、これは当然だろう、かように考えるがゆえに、国連においても安保常任理事国にしよう、かように勧告をしておるわけです。私は、それでいまある台湾を除くという、追放するという、これはどうも困るじゃないか。それでいままでの国連の規定を見ましても、国連憲章を守らないそういう政府でも追放というような場合には三分の二の投票議席がなければ追放されないという、そういう規定がある。ましてや台湾は国連に非常に忠実に今日までも憲章を守ってきている。そういうことを考えると、この追放はそう簡単にはできないじゃないか、かように申し上げる。
  151. 正木良明

    正木委員 どうも国民に対して誤解するように誤解するように説明なさっているような感じがします。追放なんて条項は国連憲章にはありません。除名です。これは国が除名されるのです。政府が除名されるのではありません。中国という国は国連に厳然として残ったままですよ。その中国という国連加盟国の席にだれがすわるかということがいま議論になっているのです。いいですね。あなたのお話を聞くと、いわゆる中国という国が国連から追い出される、いままで協力してきた中国を追い出すのは気の毒じゃないか。国連にいうところの中国というのは中華民国国民政府であったわけです。ですから、そういうことではないのです。それをはっきりしないものだから、その辺をうまくごまかすものだから、やはり追放されるのはかわいそうだ、かわいそうだなんて国民に思わせようとする意図が私はそこに感じられるわけです。そうじゃないのですよ。一国一政府というのは国際法におけるところの厳然たる原則です。そうして、国連においてはどちらも、二つ政府があるから二票くれなんて言ってないのです。したがって中国というのは追放されないのです。その中に中華人民共和国政府がすわるのが当然だ、こういうふうにわれわれが主張しているし、あなたはそれに同調しなければ、ほんとうの意味外交政策というのはとり得ないと私は思うのですが、あなたはそれをおやりになっていないというところに私は問題があると思うのですよ。  それで、先ほどの、どちらが正統政府か、どちらも正統政府ではないというような意向のようです。しかしいわゆる国連で占めるポストの重い軽いからいうならば、片方は安保理事会常任理事国まであなた方は招き入れようとなさっているわけですから、こっちのほうが重いと考えてよろしいね。
  152. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最後のところは同感であります。
  153. 正木良明

    正木委員 最後のところというのは重いというところですね。だからやはりこっちが正統ですよ。うなずいています。  そこで、もう一つ問題があるのは、あなたの経過的措置というやつ、これがまた、あなたはすぐ議論を呼び起こすようなことばを不用意にお使いになるのですが、この経過的措置をもう一度簡単でいいですから、どういうことか言ってください。
  154. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、中国は一つということを考えておりますから、いずれ北京と台北との間で話がつくだろう。その話がつくまでが経過的な措置であります。私どもは、どちらが正統だとか、どちらをやめろとか、かように申すことは、これは内政干渉だ、かように思っております。
  155. 正木良明

    正木委員 私は、台湾の平和的な解放ということから考えても、これはいわゆる国共合作、これはこういうことばが適当かどうかわかりませんが、平和的な話し合いがなければならぬだろうと思います。しかしあなたが、一応二つの政府があるということを厳然と認めておられて、そしてこの二つが話し合いして一つになってくれるときまで待つのが経過的な措置だというのです。これはあなたが発見した経過的措置ではひとつもありませんよ。私に言わせれば、日華平和条約を結ぶときにあなたのお師匠さんである吉田さんは、交換公文でいわゆる地域限定条約にしました。私はいろいろの吉田さんの著作を読んだりその側近の人たちの著作を読んだりしまして、そのときに吉田さんの頭の中には、ごく近い将来に大陸中国国交を開かなければならないときが来る、そのときに一番お荷物になるのは台湾の処理だ、ですからそのお荷物を、障害をできるだけ小さいものにしていこう、そして現状に合うようにしていこうというので、あの交換公文の地域限定条約にしたと思うのです。そういう意味からいうと、一九五二年四月二十八日のあの日華平和条約が結ばれたときからずっと経過的措置が続いているのです。あなたが何もここで事新しく経過的措置だと言っているのではありませんよ。そういう認識に立たないと、すぐあなたは大転換だとか大発展だとかいうようなオーバーな表現になってくるのだと思うのです。そういう意味からいってもう一つ非常に問題があるのは、この経過的措置が向こうの話し合いで一つになってくれるのを待つのだという非常に論理の矛盾点があるのは、ほんとうに客観的な第三者で、二つが一緒になるまで待ちましょうといっているのではないのです。すでにあなたは台湾との間に日華平和条約を結んでいるのです。片方の側に完全に寄っているのです。そうして二つが話し合いをしてください、こういうことはほんとうの意味の、白紙の状態における第三者、客観的な立場ではありません。二つが一緒になってくださいというのは、客観的な立場を保持しながらそのことをいうのです。にもかかわらず片方に寄ったままで二つで話してください、では一つになった——それなら日華平和条約をまず廃棄しなさいよ。そして白紙の状態になって、どうか二人で話してください。一つになったらそことあらためて条約を結びましょう、こういうことになるのではないですか。
  156. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 正木君も、必ずしも歴史的な過程というものを全然無視されようというわけじゃないだろうと思います。私は、やはり現在には過去の歴史がある、その歴史を基礎にして、そして現在をいかに処していくか。もちろんその場合には将来の見通しも立てて、そうして現在をいかに処すか、これがわれわれのあるべき姿だ、かように考えております。
  157. 正木良明

    正木委員 何を言おうとしたのかよくわかりません。全然了解はできません。ですから、あなたの経過的措置というのは、あくまでも非常にうしろ向きのことであると言うしかないと思います。ただ私は、今回の国会において、佐藤さんもここまで来たかというので内心うれしく思ったのは、台湾帰属未定論の問題でございまして、この点について小しくお尋ねをいたします。  あなたがおっしゃったように両方とも台湾は中国のものだと主張しているのだから、それが理解できるとおっしゃいましたね。理解できるということは、台湾は中国のもの、中国というのは中華人民共和国という意味じゃないでしょう。おそらくチャイナという意味でしょう。チャイナのものであるということは確認されたということ、これは午前中の答弁でもわかりました。これは間違いありませんね。ところがあなたは午前中の答弁のときに、占拠しているものは領土だなんというようなことをおっしゃいました。占拠しておるのは領土だと、朝言っていました。これは北方領土に重大な関係がありますから訂正してください。占拠していればその国の領土になってしまうなんということをもしあなたが考えていると、北方領土問題でたいへんなことになりますよ。ですからこの台湾帰属未定論でもう一度言ってください。
  158. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本は権利権原を放棄した、これが台湾、澎湖島。北方領土とは違います。北方領土はわれわれが権利権原を放棄したのではございません。われわれが放棄したその地域を占拠している蒋介石政権と日華平和条約を結んでいる。したがって領土のない政府というようなものはないのですから、国家というものは考えられませんから、これはここを日本が放棄した、そこがもう中国の領土だ、かように考えてちっとも差しつかえないのだ、私はかように思っております。
  159. 正木良明

    正木委員 けっこうでした。じゃ、帰属未定論はいまや消滅したことになって非常にうれしく思っております。  そこでもう一つ、これはちょっと重大ですので慎重に答えてください。私は、参議院選が終わったあとの予算委員会で、あなたにいろいろと国連問題について質問をいたしました。そのときにあなたは、私が、もはや中国国連復帰というような問題はもうそれこそ世界の大勢となっている、日本国内からもそういう声が多い、そういうときに、いわゆる逆重要事項指定方式だとか、また複合二重代表制なんというような形のもので、いわゆる台湾の議席を維持するというようなことに積極的な役割りを果たすのはいけない、これに賛成してはいけません、ましてや共同提案国になるというようなことは論外です、しかもその共同提案国になって多数派工作をやるなんということは絶対避けてもらいたい、こういうことを質問いたしました。当時、福田さんがお留守でございまして、木村さんが外相代理でございまして、木村さんは非常に正直に、積極的な役割りを果たして国府の議席擁護をいたします、多数派工作をしますなんということをおっしゃいました。そのときに総理が、私は総理に答えろと言ってないのに、やおら立ち上がって、そうして、私は多数派工作をしませんという意味のことを御答弁になっているのです。いいですか、こう言っているのですよ。「ただいま言われるように、わが国の立場で友好諸国の考え方を統一しようという、そういう積極的な意図があるわけじゃありません。」とか、また「私が、日本がこれは慎重であることは御理解をいただけるだろうと思います。私はそういう意味でありますが、日本が慎重だからといって、その国府追放には反対だからといって、すべての国にそのことを呼びかけるという、そうして国際世論をつくるとか、こういう働きまでするとは御理解なくてよろしいと思っております。」こういうふうにあなたは言っているのです。これは、多数派工作をしませんということを言っているのです。したがって、あのあなた方が多数派工作に狂奔されて、そうして加瀬さんと福永さんを重ねて派遣をなさろうとする前に、私どもは党の委員長の名前で総理大臣のあなたに、こういう約束があるのですから多数派工作をしないほうがよろしいということを申し入れているのです。にもかかわらず、それこそなりふりかまわず必死になって、アメリカよりももっと激しく多数派工作をあなたはおやりになっている。これが単に、多数派工作というもののつながる問題を考えたときに、ますます大きく日中国交回復のみぞを深めていっているのです。そのことを考えたときに私は暗然たる気持ちになるのです。一つは、この国会国民の代表である議員に対する答えが簡単に、それこそ舌の根もかわかないうちに踏みにじられたということ、しかも、そのやり方がほんとうに日本が向かっていかなければならない日中国交回復の大きなみぞとなっていること、私は、これはたいへんな総理責任だと思いますので、この点を明確に御答弁をいただきたいと思います。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 加瀬君も福永君も行って、日本の立場を誤解のないようによく説明しておることだと思います。これを、ただいま言われるように、多数派工作だと言われることは、私はたいへん心外に思います。その一言だけ申し上げておきます。
  161. 正木良明

    正木委員 それじゃ、各国を説得して、重要事項指定決議を成立させるために日本は積極的な努力をしていないと、これは、単に日本国内だけではなくて、全世界にも伝わるでしょうから、明確に言ってください。多数派工作は一切いたしておりませんなら、いたしておりませんと。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げるように、日本の主張を明確に、誤解のないようにする努力はいたしております。
  163. 正木良明

    正木委員 主張を明確にするのは、愛知さんが国連で演説したことで十分ではありませんか。それを、一つ一つの国に向かって、中立国であるとか、まだ態度のきまってない国だとかに積極的な働きをしている。これをあなたは、厚顔無恥にも、多数派工作ではない、説得工作ではないと言い切れるんですか。
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまお答えしたとおりでありまして、私は、別に、多数派工作ということで非難されるようなことはいたしておりません。
  165. 正木良明

    正木委員 日本が慎重だからといって、その国府追放には反対だからといって、すべての国にそのことを呼びかけるという、そういう国際世論をつくるという、こういう働きはいたしませんと言っているんです。何のために説得しているんですか。多数派工作という言い方が気に入らなければ、私は別に多数派工作にこだわりませんから、どんな言い方をしてもいいですけれども、重要事項指定方式の共同提案国になって、重要事項指定方式を成立させるために積極的な動きをしていることは事実でしょう。
  166. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 責任のある当然の行ないはいたしております。
  167. 正木良明

    正木委員 問題じゃないですか。事実やっていることを、国会の中であなたは堂々とそのことを言えないんですか。そういうふうに逃げなければいけないんですか。多数派工作ではないなんというような言い方が通ると思うんですか。あなたが提案した重要事項指定方式提案国になるのはやむを得ないとしても、そういう積極的な動きはいたしませんとあなたは言っているではありませんか。これははっきりしなければ、私はもう質問を続けられませんよ。現実に国連で多数派工作をやりながら、それは多数派工作ではないのですなんて、そんな国民をばかにした言い方をしないでください。   〔発言する者あり〕
  168. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本提案国になりました。提案国になった以上、自分たちの主張を通すように自分が努力し、また、誤解のないようにするのはあたりまえだと、私はかように思っております。
  169. 正木良明

    正木委員 私たちが、党首会談でも、また、あらゆる機会を通じてあなた方に申し上げていることは、共同提案国になるなということだけではないのですよ。そういう案を出してはいけないし、よその国が出したとしても賛成しないようにしたほうがいい。ましてや、共同提案国になるということはよくない。そのことを私たちはあなたに希望しているわけです。しかも、その上に、自分の国が態度をきめるというのではなくて、積極的に日本の案を、共同提案したあの二つの決議案を支持してほしいということを——いいですか、支持してほしいとあなたが言わないというなら言わないでもいいですよ。しかし、こういう趣旨で出したのですといって、積極的に賛成してくださいということを説いて回ったら、これは多数派工作というのです。あなたの概念では何というのですか。われわれは多数派工作というのです。
  170. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は先ほど来のような考え方でございますが、多数派工作だときめつけるというような筋のものじゃないと私は思っておりますけれども、その意味では、皆さん方がこれは多数派工作そのものだと、かように言われることとは、私と正木君とでは、考え方というか、所見を異にしております。
  171. 正木良明

    正木委員 これを多数派工作じゃない——いわゆる今度の国連総会においては、外務省から相当数の人員を増派したり、また、特使みたような形で加瀬さんや福永さんを出したりして、そうしてあなたが、自分の国の、いわゆる日本の二つの決議案の共同提案についての内容というものを説明して回っているのだ。それが多数派工作でないというなら、あなたのいう多数派工作というのはどういうことをいうのですか。
  172. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、多数派工作というのを、いま言われることが多数派工作だと言われるなら、あなたの考え方と私の考え方は違う、こういうことを申したのです。これは所見を異にするので、多数派工作でないと言ったからといって、それは皆さん方が多数派工作だと言われれば、これまた意見の相違じゃないですか。それをまたどうしても意見の相違まで埋めなければならないと、かように私は思わないのです。私は、ただいま申し上げるように、日本共同提案国になったのだから、その意味において誤解を受けないように説明している、こういう状態でございます。だから、それより以上に、それが多数派工作、かように言われても、これは意見の相違ですから、これはどうも違います。
  173. 正木良明

    正木委員 委員長、注意してくださいよ。そういう言い方で実際この政界が通るなんて、そんなばかな話はありません。政治家の常識ではありませんか。  じゃ、これはどういう意味か、答えてください。「わが国の立場で友好諸国の考え方を統一しようという、そういう積極的な意図があるわけじゃありません。」これはどういうことですか。あなたのことばですよ。
  174. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それはこの前の答弁でしょう。
  175. 正木良明

    正木委員 そうです。
  176. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それは、そのときにそういうような考え方を申したのです、率直に。(発言する者あり)
  177. 正木良明

    正木委員 これは、このままじゃ質問を続けられないよ。そんな、前の答弁から考え方が変わったなんて——約束じゃないですか。そんなばかな話があるか。質問を続けられませんよ。前から考え方が変わったなんというようなことでは私は質問を続けられません。(発言する者あり)
  178. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の発言でだいぶ問題が紛糾しているようですが、ただいま言われるように、私自身も前の国会でお話ししたことはございます。いま福永君や加瀬君をやっていることがそれと違反していると、かように思うと、こういうようなお話なら、それは御所見ですから、もうそのまま受け取ってもいいのです。これをあえて私がとやかく異論を唱える筋のものでもないように思います。じゃ、もうそれでいいんだろう、かように思っております。(発言する者あり)
  179. 正木良明

    正木委員 そんなばかなことはない。それを説明しなさいと言っているのだ。
  180. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、私どもいま努力しているのは、提案した案件、これをいろいろ説明し、誤解のないようにと努力をしております。しかし、それを多数派工作だと言われるなら、私は、それは何をか言わんで、それはもう御自由だろうと思います。
  181. 正木良明

    正木委員 それでは、それをだれに向かってやっているのですか。だれに向かってやっているのですか。(福田国務大臣「私でよろしいですか。」と呼ぶ)総理ですよ。総理のこの前の答弁の問題ですから……。
  182. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外務大臣からもお答えしたいと言っておりますから、外務大臣の発言をひとつ聞いてください。
  183. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま総理からお答えがありましたが、実は、私自身が、正木さんと総理との間に前国会でそういう応酬のあることを、まことに不勉強で申しわけなかったのですが、承知してないのであります。そこで、総理からのお話のように、私の部下は、わが国の提案、これの趣旨を徹底させるための最大限の努力をいたしております。それはもう率直に申し上げます。その辺、総理との間に連絡がどうも不十分でありましたことを私ほんとうに遺憾に存じますが、どうも、そういう運動が多数派工作だといっておしかりを受けるならば、これは私の連絡不十分の結果である、こういうふうにおわびを申し上げます。
  184. 正木良明

    正木委員 これはあまりにも問題が大き過ぎます。もしかりに、総理が多数派工作をやらないという意思であったが、連絡不十分で私はそれを知らなかったからこれをやっているのですということになれば、これはもう閣内不統一でたいへんな問題です。そういう意味で、私は、こういう閣内で意見が不統一であるということについては承諾できません。意見をまとめてちゃんとしてください。それまで質問できない。(発言する者あり)——委員長、扱ってください。   〔鈴切委員「議事進行」と呼ぶ〕
  185. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 鈴切君の発言を許します。
  186. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほどの総理答弁を聞いておっても、全く納得がいかない答弁をしているわけですよ。これでは、常に、総理答弁をしたことは責任が持てないような状態では、審議を先に続けるということはできません。だからこの問題は、委員長、留保をさせてもらいたい。   〔発言する者あり〕
  187. 正木良明

    正木委員 いま、福田外務大臣の御答弁によると、多数派工作をやっておるということをお認めになったように私は感じます。総理との連絡不十分によってそのことを知らなくて間違いを起こしたというふうな言い方でありました。これはもう、総理が予算委員会で議員に約束をしたということは重大なことでありまして、そういう意味での答弁が食い違っておる。これは非常に重要な問題でありますし、これが明らかにならない限り質問を続けられませんので、一応留保したいと思います。
  188. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 正木君の質問時間は経過いたしておりますが、後刻理事会で相談することにいたします。  佐々木良作君。
  189. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 私は、民社党を代表いたしまして、若干の問題について質問を申し上げるわけでありますが、野党としての三番バッターでございまするが、きょう、いままでのところ、論議はほとんど経済問題に入る状態でなく、むしろ、政府側の答弁の不誠意のままに、ほんとうは質問者が入ろうと思って入れなかった問題が多々あり過ぎると思います。したがいまして、私は、野党の三番バッターの立場から、むしろ経済問題から入っていきたいと思いますが、ひょっとすると、大事な沖繩中国等が時間がどれだけとれるかわかりませんので、まず最初に、経済問題に入る前にちょっとだけお伺いをいたします。  先ほどの社会党の安井君の質問に対しまして、沖繩問題について、福田外務大臣の答弁は、核抜き本土並みという問題についての御質問に対しまして、返還時には核がなくなるということをアメリカ当局ははっきりと言明しているというお話がございました。いつ、どこで、だれが言明したのか、明確にしていただきたいと思います。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕
  190. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう趣旨のことを申し上げましたが、言明したという人はアメリカの高官じゃございません。ニクソン大統領・佐藤総理共同声明第八項において言明されておる、こういうことであります。
  191. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 先ほど、言明されたと明確に言われましたが、あなたが聞かれた、その意味で言明されたという意味じゃないということですか。取り消されますか。
  192. 福田赳夫

    福田国務大臣 私の申し上げたその言明というのが、佐々木さんのおっしゃるような意味であるとすれば、そうじゃないのです。共同声明の意味であります。
  193. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 それはニクソン大統領と総理との二人の間の話で、そのことに対して国民はもう少し心証を得たいと願っておるわけです。あなたが、アメリカ当局が言明したと言われる、その根拠はないわけだ。もし、あなたが直接に聞かれたのであるならば、いつ、どこで、だれがおっしゃったか。しかも、いまあなたは高官ではないと言われた。先ほどの安井君に対する御答弁、取り消されますか。言明されたとあなたはおっしゃいました。
  194. 福田赳夫

    福田国務大臣 共同声明にそう言明してある、こういうことでありまして、大統領、総理以外の他の人が言っておるという趣旨じゃありません。もし、そういう趣旨におとりであるとすれば、それはひとつ修正さしていただきます。
  195. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 それならば、安井君に対する答弁で、返還時に核がはっきりとなくなっておりますということをアメリカは言明しておりますということばは取り消されますね。もう一ぺんはっきり……。
  196. 福田赳夫

    福田国務大臣 そう申しておらないのですから、取り消すも取り消さないもありませんけれども、要するに、共同声明でそう言明されておりますということを申し上げたので、そのことは別に取り消す必要も何もないことである、かように考えております。
  197. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 それならば、明確な答弁があるまで暫時私は質問を控えます。だって、そうじゃないか。言わないと言うじゃないか。それじゃ調べてもらいましょう。委員長、調べてくれますか。
  198. 田中龍夫

    田中(龍)委員長代理 それでは佐々木君にお答えいたしますが、速記録は直ちに調べましてお答えいたしますが、その間どうぞ質問を続行していただきます。
  199. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 委員長の御指示に従いますが、重ねて申し上げます。  民社党は、核抜きであることをアメリカ責任ある人から言明をもらいなさいと要求し続けておるわけです。何も、いま協定をやり直せということをまだ言っておるわけじゃありません。返還協定は返還協定のままだけれども、ほんとうに核抜きかどうかわからない。それに対して、せめて、でき得ればアメリカの大統領、できなくても責任ある人から、ほんとうにはっきりと核抜きでありますという言明をとりなさい、客観的な言明を明らかにしなさいということを要求しておるのです。にもかかわらず、政府側は、それに対する明確なる答弁なし、しかも、その言明がとれないままになっておる。しかも、きょう、重ねて言いますけれども安井君の答弁に、あなたははっきりと、アメリカ当局はそのように言明しておるとおっしゃった。これはあとで調べていただきたいと思います。  それでは、ドル問題の質問に入りますが、まず最初に、福田外務大臣、しょっぱなから当たって恐縮ですけれども、一月の総理の所信表明演説、総理の施政方針演説に対しまして、私は、民社党を代表する立場で、はっきりと、ことしはたぶん夏ごろには外圧、よその圧力によって円切り上げに追い込まれる危険性がある、しかも、その外圧はたぶんアメリカだ、だから、これはなかなか避けることができまいと思うが、その辺に対する準備、腹がまえがあるか、こういう質問をいたしましたのに対しまして、総理答弁はあなたに留保されましたけれども、あなたは、はっきりと、私の頭の片すみにも円の切り上げということは全然ございませんと言明されました。当時ほんとうに全然なかったのですか。
  200. 福田赳夫

    福田国務大臣 佐々木さんの正月の御質問演説、私は、これはほんとうに傾聴いたしたのです。ですから、私も、それに対しましては、私の考え方を率直に申し上げたわけです。私の当時の見方といたしましては、これは佐々木さんもおっしゃっておったが、国際情勢はなかなか緊迫化するであろう、アメリカ経済もなかなか容易なものじゃない事態に追い込まれつつある、こういう趣旨のことを申し上げたように記憶しておりますが、しかしながら、その当時の状態といたしましては、円の切り上げ、こういうものについては頭の片すみにも考えておりません、こういうふうに御答弁をいたしたわけであります。しかし、円の切り上げの問題は、大蔵大臣にいまお尋ねになられましても、非常にこれは答弁はむずかしいのじゃないかと思いますが、それは、前広に円を切り上げますよというような答弁ができる性格のものじゃございません。これは、大蔵大臣は、通貨の問題につきましては率直にものを言えない立場にあるということは国際的に認められておる。また、そういう立場をとることは大蔵大臣の権利であるともいわれるくらいでありますが、その辺はひとつ御高察をお願い申し上げます。
  201. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 あらかじめお願い申しておきますけれども、時間の関係がありますので、答弁はきちっと簡単に率直にお答えをお願いいたします。  私が総理質問の形で申し上げましたことは、必ずしも答弁を要求したものではないことは、これも速記録を読んでください。私は、はっきりと忠告をし、そして準備をされることを要望したわけであります。私のかねがねの心配でございましたから、だぶんことしの夏ごろはその一番の中心にくるぞ、こう思いまして、準備をされることを要望したわけだ。それに対するあなたの答弁は——私がいつ幾日に円の切り上げを何ぼやるというような答弁を要求しているとお考えになるならば、それこそ政治家としての私の考え方も少々は理解していただきたいと思う。そんな答弁を要求するものじゃありません。そうではなくて、おそらくこういうことになる危険性があるから注意しなさいということに対して、もっと心を込めて準備体制を率直に語る用意が必要であったと私は思います。茶化すような答弁は決していいことではございません。あなたのためにも気をつけられたほうがいいと思います。  大蔵大臣にお伺いいたします。  いまのようなことでございますが、今回のドル問題というものの本質、意味するものを何とお考えになりますか。率直にお答えいただきたいと思います。
  202. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今回のドル問題の意味するものといいますと、結局、現行の国際通貨制度の持っておった内外的な矛盾というものが一挙に表面化したものである。それはなぜかと申しますと、結局基軸通貨であるドルが非常に弱くなったということから国際通貨の不安が起こった。これに対する解決策をどうするかということが国際間の問題になったのだ、こういうふうに理解しております。
  203. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 いろいろの問題がありますが、今回の問題の基本は、やはりIMF及びガット、この二つを柱としておりましたところの従来の戦後の世界経済体制が、言うならば本格的にくずれかけてきておるということを私は意味すると思いますが、違いますか。
  204. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 くずれかけておるというよりも、IMF体制の基本となっておるドルと金の交換というこのものがくずれたのですから、ほんとうはIMF体制というものはもう崩壊していると見てもいいのじゃないかと思います。結局、基軸通貨がいま言ったような形をとったために起こった現象だというふうに思います。
  205. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 私も全然同感です。そういうドル体制崩壊の最大の原因になっておるものはアメリカの国際収支の悪化だと、こうお考えになりますか。
  206. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国際収支の悪化でございます。
  207. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 アメリカの国際収支の悪化の最大の原因、おもなる原因はどんなものだと思いますか。
  208. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま、その原因はたくさんいわれておりますが、一つは、やはりアメリカがベトナム戦争によって非常な出費をしているということがアメリカの国際収支の赤字の大きい一つの原因になっていることは事実でございますし、またアメリカの産業がここに来て、輸出力と申しますか、他国の産業に対して競争力が非常に弱まったという原因はいろいろいわれておりますが、学者によりますと、宇宙科学に対する研究というものが跛行的に進んで、全般のアメリカの産業技術に不均衡ができた、そのために一般産業においておくれておったということが大きい原因をなしておるということを言う者もございますし、またアメリカ国内のいろいろな事情から海外に資本を流出させて、海外で工場をつくり、品物をつくって、そしてこれを自国に輸入してくる、同時に他国への輸出をする、いわゆる多国籍産業への進出ということがアメリカの国際収支を悪化させているこれも大きい原因の一つになっていることは明らかだろうと思います。
  209. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 大方の見るところは、アメリカの国際収支の悪化の原因は大体三つ、軍事費の増大と、いま言われましたように多国籍企業の問題と、そしてアメリカ自身経済の、だんだんとおかしくなってきたコストインフレの問題、大体三つが基本だと思っております。いまの大蔵大臣の考えも似たようなことでございますから、その考え方を一応そのままにして先に進みますが、いま通貨問題に対するいろいろな意味での調整作業が行なわれております。この問題に対しまして、私はどうも政府態度が一貫性を欠くような気がいたします。特に九月初めの日米貿易経済合同委員会当時の姿勢が、どうも最近おかしくなっているような気がしないでもないわけです。当時の福田外務大臣の冒頭演説の趣旨は、アメリカ国内政策を十分にやった後に、アメリカがずいぶんやらなければならないことをやった後に、どうしてもしょうがない問題になればわれわれも協力せざるを得まいということであったと思います。それから水田大蔵大臣や田中通産大臣もまた、いわれのない日本へのしわ寄せによる大幅な円の切り上げは、断固として拒否するという態度をとっておられました。この姿勢に変わりはございませんか。
  210. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 アメリカとの委員会で私どもがいろいろの主張をしました。そのときの姿勢と、現在全く変わっておりません。その線を貫いていま国際交渉を私どもは続けておるということでございます。
  211. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 最近、コナリー財務長官アメリカから来る。なおそれと関連して高官が次々にやってくるという報道が伝えられております。これらをめぐっての日本政府態度新聞にいろいろ伝えられておりますが、最近のこの問題についての新聞報道は、大蔵大臣として、あるいは日本政府として新聞に発表されたものでございますか。
  212. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 全然発表したものではございませんし、また私ども政府自身がみんな知らない記事ということでございまして、こういう報道については、やはり少し自粛していただけないかということを私から注文しておるというようなことでございまして、いま日本が切り上げの幅についての交渉を具体的に二国間あるいは三国間にしておるという、そこまでの段階ではございませんし、またアメリカからいろいろ人が来るといわれておりますが、たとえばコナリー長官にしましても、いつ、どういうふうにという、まだ正式なことが決定しておるわけではないと聞いておりますし、またいわれるところによりますと、東南アジアの各国に寄って日本へも表敬するというのですが、今回はそういう交渉をするということは一切しないというようなこともはっきりして日本へ来られるというような話も、私ども伝わっておりますし、したがって、政府がどういう交渉をするとかなんとかいうことをきめておるわけではございませんし、いまいわれておる報道は、全く私ども自身も知らないことが多いということでございます。
  213. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 総理にお伺いいたします。  岸元総理アメリカで、この問題等を含めて大統領などと会談をされておるというニュース、うわさが盛んに流れておりますが、真相を承りたいと思います。
  214. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 きょうだいだから、弟が兄貴の行動を大体知っておるだろう、かように考えられるのももっともですけれども、実は私は、弟ではありますが、兄の岸の行動、これについてはわきまえてない事柄が多うございます。出かけて、だれに会い、またどういうような目的でやっておるか、こういう事柄は十分知りません。これだけははっきり申し上げておきます。(「知らぬことになっておる」と呼ぶ者あり)知らぬことになっておるのではなくて、出かける前に私のところに、いついつ出かけるということは電話はございましたけれども、それより以上には私にはわからない状況であります。
  215. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 最近の報道は全然関知しないと言われますけれども、もしそのような報道されておるような状態が今後事実となってあらわれた場合には、それは責任問題は起こりませんか。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 おっしゃることがどういうようなことかわからぬのですが、私は、いま申し上げるように事前に打ち合わせをした事柄ではございませんから、そういうような事柄がどういうように発展するのか、私にも見当がつかない状態であります。
  217. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 変動相場制に移ったあの時期におきましても、いろいろなうわさが出たことは事実であります。しかしながら、このうわさは決して大々的に内容まで新聞に報道されたものではございません。しかし、今度の場合は、ほんとうに一社か二社かのスクープ的なものではなくて、日にちは違いましてもほとんど各社の記事が内容を一にして報道をされております。この問題に対しまして、大蔵大臣全然知らないとおっしゃいますか。
  218. 福田赳夫

    福田国務大臣 岸・ニクソン会談と申しますか、それにつきましては私が状況の報告を受けていますから申し上げますが、岸元総理には、通貨、経済の問題につきましては何事も私どものほうからはお願いをしておりません。したがって、この問題は両巨頭の間におきまして話に出ておりません。ただ私が岸元総理にお願いいたしましたのは、それはいま沖繩における基地の扱いの問題です。これは今度の協定によりますると、まだまだ沖繩県民から、また国会等におきましてたいへん不満がある、この状態は何とか改善をいたしたいと希望しておりますと——まあ私はこの協定の付属表自体を改善する、修正するということを意味しているわけじゃございませんけれども、何とか事実上この問題を改善をいたしたい、こういう強い希望を持っておりますので、この旨はぜひ大統領に機会があったらお伝え願いたい、こういうことを申し上げておった。それを私の要請、お願いどおり岸さんは大統領に申し上げたんです。そうしますと、大統領はしばし考えてと、こういうふうに言っておりましたが、それらの問題は、近くコーナリー財務長官日本に行くことになる予定である、まだはっきりはきめておらぬが予定である、このコナリー長官には日本との間のいろいろな調整について話し合いをさせるということにしてよろしい、ただし、その最終的な決定は私がいたします、ただ話し合いがあるということ、これにつきましては私はそうさせたいと思う、まあそういうことで、いま御指摘の問題もコナリー長官が行くからそのときよく話をしてみてくれ、こういう話があった、こういう報告を受けておる。通貨問題につきましては一切触れておりませんから、これはそのとおり御承知を願います。
  219. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 やがて来ると伝えられておるコナリー米財務長官、それから来月の終わりごろに予定されておる十カ国蔵相会議、どういう態度で臨まれるのか日本政府は相談をされておりますか、大蔵大臣。
  220. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 もう御承知だと思いますが、OECDの作業において、一応のこの調整さるべきアメリカの赤字幅というようなものについての作業の結論が出ましたが、これについて各国の意見は、これは全部まとまりませんでした。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、今後はもう少し上の段階で政治的に話し合ってもらわなければいけないというような空気のもとに散会ということになっていることから見まして、いずれ十カ国の蔵相会議が開かれることとは思いますが、しかし、これは御承知のとおり、非常にこの問題は各国の経済に影響を与えることでございますから、各国それぞれみな自分の国益の問題として別個の意見を持っておりますので、なかなかこれが話し合いによる妥結ということを見ることはむずかしいんじゃないかと思います。特に私がむずかしいと思っておりますことは、基軸通貨の金との交換というものがなくなってしまいましたから、各国の平価の基準というものがなくなっている。もとの基準は動かないものでございましたが、今度はその基準自身が動くものでございますから、したがって各国通貨が何%切り上げられるとか切り下げられるといっても、基準が動く以上はそう簡単に率の問題がどうこうと云々されるわけにはまいりません。したがって私は、よく新聞日本が何%の切り上げをどうしたというようなことが出ますが、一切そういうような形の交渉のしかたとかなんとかということをこれから考えておるわけではございませんで、やはりいまいろいろ日本として必要な国際経常収支の黒字というものを確保した協力のしかたというものに限定しないというとこれは相当大きい問題になると考えて、私はいまこの問題に慎重な考慮をしているときでございますので、そういう国際会議が開かれるまでにはきめるつもりでございますが、いま日本だけできめられる問題じゃない、各国の主張を全部やはり一応分析して、もって日本態度をきめなければなりませんので、一国だけの考えをいま固められる段階でもないと思って、私はいま慎重に考えておるところでございます。
  221. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 コナリー財務長官がたぶん来るであろうということを前提にして、これに対する、言うならば交渉窓口も大蔵大臣にしぼりながら、政府は、言うならばそこに総意、知恵を集中してこれに対処しようというふうに新聞は伝えておりますが、そのようなことはないのですか。
  222. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだ政府の部内で、財務長官とどういう形で折衝するとかいうようなこと、むろん現在きめておることはございません。
  223. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 それでは先ほどお話しになりましたOECDの第三作業部会、特にそれにはアメリカの基礎的不均衡の内容の、言うならばつつき合いが行なわれた。これに対して日本側は、大体どれぐらいでどういう状態だという見方をされたのでしょうか。
  224. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 アメリカが百三十億ドルの赤字について協力してほしいという数字を出したということだけは代理会議で次長が発表した数字でございまして、そのほかの問題、各国の主張及び数字に関する問題は、一切これは外部に出さないという厳重な約束をもって解散したものでございますので、アメリカの要求が百三十億ドルであったということだけしかここで申し上げることはできません。
  225. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 それでは重ねてお伺いいたしますが、先ほどアメリカの国際収支のおもなる原因は三つ、大体そうだろうというように御賛同いただいたと思います。大蔵大臣は、この三つの原因はやはりアメリカの努力によって解消さるべきものとお考えになりますか、それとも日本をはじめとして各国が分担しなければならない内容のものを含んでおるとお考えになりますか。
  226. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 このアメリカの赤字は大体三つに分けて考えられると思います。一つは、アメリカ国内政策自身によって解決さるべき赤字と、一つは、平価調整によらない他の方法によって各国が協力すべき赤字、たとえばアメリカ貿易障害になっておるものとか、あるいは西欧におけるNATOの軍事費の負担とか、こういうようなアメリカ国内政策でもないし、平価調整による協力でもないものによる協力によって一部のアメリカの赤字解消に協力するということ、その二つを除いてなおかつアメリカの赤字として残るものについては、各国が平価の調整をもって協力しよう、こういうのが大体いままでの意見の一致しているところでございますので、あの赤字全部について各国が負担をするというものではなくて、平価調整によって負担すべき幅というものがいまやはり各国間で問題になっている、こういうことでございます。
  227. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 アメリカの国際収支の赤字の一つの大きな原因になっておる、アメリカの多国籍企業のそのための資本流出の分は、これはアメリカ自身で補うものと考えてよろしいか。
  228. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはアメリカ自身で解決さるべきものという範疇の中に入っております。
  229. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 アメリカのコストインフレのためにだんだんと経費がふえてきて、そのために赤字が累積してきておるとするならば、その分もアメリカの努力によるべきものだとはお考えになりませんか。
  230. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはもう各国からもそういう希望が出ておりますので、したがってニクソンのああいう政策になり、また第二次の政策になって、アメリカ自身は相当思い切った国内政策をとるという体制をすでに示しだしてきておるというのが実情でございます。
  231. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 百三十億ドルの基礎的不均衡の中には、われわれが見ましても、そのような内容のものを含まなければ、私はそのような数字には達しないと思います。したがって、当然にそれは差し引かれなければならないものだと思います。  それから重ねて、いま最初にお触れになりました最大の赤字の原因は軍事費の増大でありますが、特にアメリカ逆調状態をずっと見ますと、たぶん一九五八年ごろを契機としてぐっとふくらんでおります。その大きなものが軍事費の増大でありますが、このアメリカの軍事費の増大については、日本その他の各国が分担すべきものか、しからざるものか、お答えいただきたい。
  232. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま、百三十億の赤字というものが非常にこれでは過大であるというのが大体各国の考え方で、今後これを中心にした話が続行されるということになろうと思いますが、したがって、これを過大であるという中にはいろいろな要素が入っておるものでありますので、各国がこれだけはお互いの責任として協力しようという数字が、やはりそのうちに何らかの形で確定して、この問題の結末にだんだんに近づいていくのではないかというふうに私は期待しております。
  233. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 合同委員会等の場を中心にいたしまして、アメリカから日本側にも防衛分担金の肩がわりを要求されているというお話でございます。事実がございますか。断わられますか。
  234. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 日本に対して防衛分担金の要望というものは、現在アメリカからは出ておりません。
  235. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 出たらお断わりになりますか。
  236. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は出ないと思います。
  237. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 それでは、そのときと話はつじつまが合うような、関連を持つような形で、アメリカの武器の相当な日本側への輸出、つまり日本側の武器購入を相当強く要望されているというふうに承り、先ほどちらついております新聞報道にもほとんど決定的のごとく述べておりますが、その事実はございますか。
  238. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 日米閣僚会議のときには、あるいはそういう要望がと思ったこともございましたが、あの会議においてはついにこの問題も、別に米国の提案として出てはおりません。
  239. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 防衛庁長官にお伺いいたします。このお話は、具体的にいま話が進みつつありますか。
  240. 西村直己

    西村(直)国務大臣 武器購入については、具体的にこの問題に関連してはございません。
  241. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 約八億ドルという内容まで示されて新聞報道がございまするのに、全然日本側は関知しないと、こういうことでございますか。総理大臣にお伺いいたしたいと思います。
  242. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ちょうどわれわれがアメリカへ行っていろいろ会談をしているときに、ある新聞では、九億ドルの防衛負担金を要望されたと、ワシントン発という電報まで打たれて内地で大々的に報道されまして、私どもは、どこから出たかずいぶんその出所をさがしましたが、ついに出所がわからない。全然そういう事実もなかった。こういうことが最近非常に多いことから考えてみましても、私どもの知らないことの報道が少し多過ぎるような気がいたします。
  243. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 防衛分担金を断わるかわりと称して、一つは武器の購入、一つは東南アジア等に対する海外援助の肩がわりという問題があります。両方とも否定されますか、大蔵大臣。
  244. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 武器の購入というものは、今度起こる問題ではなくて前から、第三次防のときでも必要な武器は購入しているというようなことで、新しいことではございませんし、それはいままでと同じような形をとると思いますが、特別にこれをどうこうという要望も別に出ておりませんし、この種類の要望は、日米会談の内容にはいま全然なっておりません。  海外援助も、これは米国の要望ではなくて、国際的な場面で日本がやはりGNPの一%は責任を持つということにはなっておりますが、そのうちで政府援助の額をもう少しふやせという各国の要望というようなものは日本にございますが、特にアメリカから、アメリカの肩がわりをする援助というようなものの要望は現在ございません。
  245. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 西村防衛庁長官、いま大蔵大臣は三次防のときでも武器の一部は購入しておった、こういうお話でございますが、前の防衛庁長官中曽根さんのときに、むしろ国産方針を今後の方針として決定されたと思います。その国産方針が今後の方針として決定されて、具体的にそのような注文や交渉が行なわれているはずであります。この方針は変更されませんか。
  246. 西村直己

    西村(直)国務大臣 三次防、ことしで終わる三次防でありますが、この中でもある程度アメリカの武器は買っております。しかし四次防、これもまだ防衛庁の原案の過程で、いかなる形でこれがまとまるかは別といたしまして、その際に武器の国産化という一応の原則は立っております。したがって、われわれとしてはこの基本だけは守ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  247. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 わかりませんが、従来の方針を変えられるのか、従来購入したような幅とは相当大幅に武器の購入を考えられておられるのか、いずれか。
  248. 西村直己

    西村(直)国務大臣 国産化としての方針はできるだけ守ってまいりたい。したがって、四次防自体がどういう形でなるかは別でありますが、購入が四次防はどうせ三次防よりはやや大きくなるという前提からしますれば、購入幅も多少はふえるでありましょうが、その基本の国産化の原則というものはわれわれは守ってまいりたい、こういう考えであります。
  249. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 時間さえかせげばいいということで、全然具体的な答弁が出ないのはたいへん残念です。しかし、私は同じような立場から通産大臣にお伺いいたします。  あらためて輸出税の新設という問題が出ておるように新聞は報じております。さらにまた、自動車とかテレビとかあるいは電卓その他についての格別な輸出規制を要望されるということについて、自主規制をという方針で臨まれようとしておるうわさが出ております。いかがでございますか。
  250. 田中角榮

    田中国務大臣 輸出税の問題につきましては、事務当局に一つの問題として勉強だけはさせておきましたが、結論は、輸出税新設の方向はむずかしいということでございます。それは、課徴金というものが相当長引くものであるならば、一〇%というものを外国に納める必要はない。こちらでもって輸出税ということで、証紙でも張って財源を得、しかも立地政策などの特定財源に使うとすれば、体質改善に非常に役立つことであっていいことだ、ということで研究はしましたが、これはアメリカだけの輸出品に対してかけるといっても、ほかの国との均衡上むずかしいし、実現の上にはなかなかめんどうな問題があるというところまで研究いたしました。  それから、自動車その他の問題につきましては、これは政府間交渉というものにする気持ちはありません。ありませんが、輸出秩序の確立という問題は、対米だけの問題ではなく全世界的な問題でもございますので、これが対前年度比三〇〇%、二〇〇%というようになることを、そのままじんぜんかまわぬでおくわけにはまいりませんから、通産省と業界との間に、これは日本の中における自主的な状態において、輸出秩序の確立政策の一環として話し合いを続けてまいろうということでございます。
  251. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 アメリカは、多国間調整の会議の場ではなかなか話が進みそうにもないということで、新聞の報道ではありますが、日本その他ドイツ等を中心にして、言うならば実質的な二国間の交渉をうんとやって、そこで事実上話を持っていきたいという根回し交渉が行なわれておる。そしてまた、そういう方針はアメリカとして当然とるだろうと私は思います。そのような観点に立って今度の財務長官の訪日を迎えよう、こういう感じに立つときに、アメリカ側がそのような考え方のもとに、むしろこの際国際収支の不均衡を一挙に解消をしようというたてまえのもとに、円の大幅切り上げ、それから輸出急増品の抑制、さらに輸入の自由化及び低開発国に対する援助の肩がわり、さらにいま申し上げましたような防衛関係の費用の肩がわりと、一挙に包括的に話を進めようという想定を立てるのは当然だと私は思いますが、そのような方針に対して臨もうという基本姿勢は、日本政府にはございませんか。総理大臣。
  252. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 コナリー財務長官は、ベトナムのチュー大統領の就任式に出かけるのが用向きの第一、そうしてその帰途日本に立ち寄る。日本には初めての訪問のようですから、そういう意味でニクソン大統領も、少し日にちをとって、時間をとって日本を十分見てこい、こういうような話をしているやに実は聞いております。しかし、外務省といたしましても、まだ国務省筋からはっきりした連絡があっての問題ではございません。しかし、どうもチュー大統領の就任式には出てくるようであります。その際に日本へ立ち寄るだろう。そういう際にどういうようなスケジュールになるか、まだそこらのところもはっきりいたしておりません。私は、いままでの考え方から見まして、いま佐々木君が言われるように、一挙にこの際に解決をしよう、こういうようなことは、どうもなかなかできることじゃないのじゃないか、かように思っております。  いずれにしても、チュー大統領の就任式が近く行なわれるのですから、そのうちに出かけてくるだろうと思いますが、日本政府側としては、ただいまのような問題で迎える用意はまだいたしておりません。そのことだけはっきり申し上げておきます。
  253. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 私は重ねて、迎える用意を十分に早くされんことを要望いたします。ニクソンのやり方は、これまでの数回のやり方でも、私は当然あり得ると思うからであります。しかも、そのような私の発言は、議員として十分に私は言い得る資格があると思うからであります。どうかひとつ十分な態勢をとられんことを要望いたします。  その際に、総理にお伺いいたしますが、たぶん総理は、生命保険協会の総会か何かだったと思いますが、平価の多国間調整の問題について、日本は指導的立場をとりたいという意味のことをほのめかされたと思います。どういう意味でございますか。
  254. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろなうわさが立っておりますが、私は、したがって、この平価の問題は、切り上げるにしても切り下げるにしても、いずれもなるべく触れないようにしておるので、ただいま言われるような積極的発言をしたようにはどうも思わないのですが……。多国間の状態、その間の状態を十分把握して、そして善処するというような程度は話をしたかと思いますが、いま言われるように積極的な姿勢を持つ、そこまで言ったはずはないように思います。御了承いただきます。
  255. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 私は、言われた、言われないということばを追及してみても、先ほどの正木さんとの話みたいになって、全然意味をなさぬと思いますから、私の希望を申し上げます。  たぶん指導的立場をとりたいと言われたと私は記憶しておりますが、その場合、指導的立場ということに対して、むしろ国民が期待を持ちましたのは、われわれは多国間協議の場で、日本が黒字国の中心的立場にあることを十分に心得て、赤字国が負担すべきものを差っ引いて、適正に黒字国が分担すべき部分を引っぱり出してきて、これに相応する円の切り上げ幅をみずから明らかにするような方法で、多国間調整を可能にする突破口を開こうとする意味のものだ、こういう感じで、私はひそかでありましたけれども、ある意味の期待を持っておったわけであります。  しかしながら、最近の情報、最近の動きに対して、私ははなはだ疑問を持っております。申し上げましたように、コナリー長官の訪日を迎えようとするいまの時点におきましての私の心配は、そしてまた、あとで問題が出ますけれども、最近のアメリカの理不尽な動きから見まして、どうもアメリカのこのような強圧に屈してアメリカの一方的な要求をのみ、言うならばその手先みたいな感じになって多国間にくずれ込もうとするような危険性を感ずるからであります。もしそれがそうでありまするならば、それは決して指導的な立場というものではなくて、むしろ、私は多国間調整というものについての、ことばは悪いけれども日本が裏切り行為をやった、そういう結果になり、欧州その他の各国からの批判を日本は一身に浴びることになるだろうと思います。そのようなことがないように、特に私は総理並びに関係者の自重を要望するわけであります。むしろ一番中心は、これこそ国益でございますから、国益をはっきりと守るという立場に立って、本格的な意味での多国間調整をやられんことを特に私は希望いたします。  そしてこの際に、一つ私は提案があります。こんなような問題こそ、いま私は基本的な政策を異にいたしておりますけれども、だれがこのあと総理大臣になろうと、どの政党が政権を担当しようと、この問題がいま何かできまったあとでは、その問題についての大きな影響を受けることは当然であります。したがいまして、むしろ私は政府が独善的な立場をとられることよりは、自分の考えていることが正しいと思われれば思われるほど、逆向きに国会の中の、あるいは特定の委員会を秘密会にして開いてやることも方法でありましょうし、あるいはまた各党の代表に会われて事情を端的に説明をされ、各党の代表の意見もはっきりとくみ入れられまして、そして私は本格的に国益を守るためのその措置をとられんことを要望いたします。そのような秘密会なり、あるいはそのような会合、あるいはそのような話し合いの場を設けられるべきだと思うわけであります。特に私は希望を申し上げるわけでございますが、総理の御所見を承りましょう。
  256. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、佐々木君からたいへん建設的な御意見を拝聴いたしました。しかし、どうも円価の問題、こういうことになりますと、これは投機的な動きを誘う危険も多分にございます。したがいまして、これは先ほど大蔵大臣からも、円の問題については、それを言わないことが大蔵大臣の特権だ、こういうような話まで出たような次第で、この点については、佐々木君も十分御承解がいただけるんだと思います。私にいたしましても、一国の総理が、円の価格について軽率な言動はできませんし、また、ただいま申し上げるように、皆さんからの御意見を聞くことについてやぶさかではございませんが、しかし、それかと申しまして、それを聞き出す、もう近いんだ、こういうことだけでもたいへんな動揺ではないだろうか、かように思いますので、この問題に関する限り、非常に各党各派の御意見も伺いたいが、その態度はよほど慎重でなければならないんだ、かように私、思っていることを率直に申し上げまして、ただいませっかくの御提案ですが、いかんとも御返事のしようがないというのが実情でありますから、御了承いただきたいと思います。
  257. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 すぐ御返事をもらわなくてもけっこうでございます。ただ、私は重ねて申し上げます。水田大蔵大臣が、黙っておることが私の権限だと言われましても、現実に新聞で出ておる内容、この新聞に出ておる状態が、どれだけ多くの国民に対して不安と混乱を巻き起こしつつあるか、その責任は、水田さん、とられますか。
  258. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私もそういうことを心配しまして、十カ国蔵相会議から帰った九月十八日に、むしろずいぶん長かったのですが、この際こういうことだということで国民に発表することをいたして、しばらく片づかない、持久態勢をとって落ちついてもらいたいということを発表いたしましたが、あれ以後まだそう多い進展はしておりませんので、これが進展してきて、やはり国民の皆さまに御了解を得なければならぬというときには、率直な御了解を得るというようなことはいたそうと思います。その間におきましては、第三作業部会の作業にいたしましても何にしても、まだ一々これを発表したりなんかするような段階ではございませんし、その間に、いろんな御想像によっていろんな記事になるということは、これはどうもやはり避けがたいことではあろうと思います。私としても非常に遺憾に思っておりますが、そうかといって、こうであるということをまだ言える段階ではございません。これは率直に申してそういうことでございますので、御了承願いたいと思います。
  259. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 政府部内から漏れなければ、新聞が書くわけはございません。私は、総理に押し問答はしませんけれども、はっきりと申し上げておきます。あなたの率いておられる政府部内から情報が出ておらなければ、出るところがありません。それほど情報が出ておるのにかかわらず、むしろ国権の最高の機関である国会に対しては、御承知のように全然だんまりでものを言われない。これで民主的な政治がやれるとお考えになりますか。少なくともアメリカの議会におきましては、御承知のような証言は相当具体的に行なわれようとしておる。私はそのような感じに対しまして、むしろはなはだ遺憾の意を表するとともに、われわれ自身も気をつけるけれども、お互いの議員に対する信頼感がないところに議会政治というものは成り立たないわけだ。私は総理に、その意味においての十分なる反省を要求して、先に進みましょう。
  260. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまのお話でございますが、ごもっともでございますが、政府部内から漏れるというお話で、ほんとうのことが出るようでしたら、どこからか漏れたというようなことで、私どもも気をつけますが、全然衝に当たっている私自身も考えてもいないし、知らないということばかりが漏れるということですから、私、いまのところどうも漏れるところは政府部内ではないような気がいたしておりますが、なおよくこういう点は厳重に、真実でないことが漏れないように十分気をつけたいと思います。したがって、国会にだけうそを言ってほかへは漏らしている、こういうような事実は絶対にございませんので、これは御了承願いたいと思います。
  261. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 三百二十円になって、十二・五%になって、しかも変動幅は三%となるというような結果が、もし出たらどうされます。
  262. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 全然私どもいま考えていないことでございますので……。
  263. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 まあ押し問答はやめておきましょう。ただし総理、これは笑いごとで済まされる問題じゃないと思う。この最近の情報は、現実に日本関係業者や人々にどんな不安と動揺とを与えておるか。同時に、これからまだ詰めていきますけれども繊維協定をのんだ佐藤内閣だ、どうせやられてしまうんじゃあるまいかという心配は、ひしひしと国民の一般からもわれわれ感じるわけだ。このことに対して私は、謙虚なる姿勢をとられなければ、たいへん失礼だけれども、政権を担当する資格はないと思います。総理の御所見を承りましょう。
  264. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま最も大事な問題、国民にとりましてその生活に直結している最も大事な問題、これにお触れになりました。またそれについて私どもが慎重であることは、ただいままでの態度でも、また先ほど来大蔵大臣の発言からもおくみ取りだと思います。また私自身も佐々木君からのお話、これは謙虚に承っておきますし、また正すべきは正したい、かように思っております。どうかそういう意味で御了承いただきたいと思います。
  265. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 大蔵大臣に伺います。  ドル問題と関連しながら日本の内政、格別経済政策転換という問題が具体的な俎上にのぼっております。外には野獣のように強く、内には病人のごとくに弱い円ということばがあります。どういう意味のことか御説明いただきましょう。
  266. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国際収支が、とにかく異常な黒字になっておるということでございますから、円は外に対しては確かに強いと思います。内に対して弱いということは、どういうことかわかりませんが、不況であることは間違いございませんし、不況によって卸売り物価は下がっておりますが、消費者物価がなかなか下がらぬというようなことから、円が国内で弱いということを言っているんじゃないかと思います。そうだとすれば、確かにいまいわゆる不況の物価高という現象が明らかにございますので、そういうことも言えるだろうと思います。
  267. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 私は、こういう意味の円の評価は通説になっておると思う。御承知のような生産第一主義、輸出第一主義で、まあ言うならばドルをため込んで逆向きに米国の国際収支をむしろ追い込んでいった、その意味日本の黒字基調のもたらしたところの強い円、それから物価高と公害、それから低賃金と社会保障のおくれ、社会資本充実のおくれなどによって著しい国民経済の不均衡をもたらしており、国の中においては、物価高にあおられて銭の値打ちがだんだんなくなってきておるその円、この二つの性格を私は如実に言ったものだと思います。いま内政、経済政策転換が行なわれるとするならば、この二つの円の性格をむしろ解消して一つにするところに、基本的な目標がなければならぬと思います。  あわせて大蔵大臣、日本経済の二重構造ということばはずいぶん前から使いならされておりますが、意味は御承知のことだと思いますが、ひとつ御指摘いただきましょうか。日本経済の二重構造という意味は何か。
  268. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 非常に生産性の進んでおる大工業と、まだ生産性のおくれている中小企業というようなものが、国内に併存しておるということだろうと思います。
  269. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 だんだんとことばが鈍ってまいりましたので、もう少し具体的にそれじゃ入っていくことにいたしましょう。  私はこのような円の二重性格、それから日本経済の二重構造、こういうものの解消に向かわなければならぬところに、本格的な日本経済転換の必要が叫ばれ、そして、総理の所信表明演説の中でも、経済の成長のあり方を改めて、活力に満ちた福祉社会の建設に向かうべきだという基本的な姿勢を示されたのは、このことを意味すると思いますが、違いますか。総理
  270. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの御指摘のとおりであります。
  271. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 総理に重ねてお伺いいたしましょう。  安定成長ということば、これは総理が公約されておる路線でありますけれども佐藤総理の公約の安定成長というこの路線は、池田内閣当時のいわゆる所得倍増路線の反省から、経済成長が生み出した社会のゆがみ、ひずみを是正することを目標にして設定された路線だったと私は思いますが、違いますか。
  272. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういうように私は考えていままでは努力してまいりましたが、なかなかそのとおりにはまいっておらない、少し先ばしって申し上げればそのとおりであります。
  273. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 先ばしられても重ねてお伺いをいたします。  安定成長路線を目がけて佐藤内閣は出発されました。そして今日ただいまあらためて活力に満ちた福祉社会の建設に向かわれよう、経済政策転換をいわれようといたしております。これは目標は全然同じことですか、違うことですか。
  274. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 表現のしかたも違いますが、やや内容的にも違っておると思っております。どうもいままでの問題は、やはり安定成長、それに必要な生産の増強、そういうところに重点が置かれていたように思います。しかし、今日になるとその点を修正していかなければいかぬ、かように考えておりますので、いわゆる安定成長の中にあってもものの考え方GNPあるいは輸出第一主義、生産第一主義、そういうものにやはり修正を加える、これが今日呼びかけた施政方針の考え方であります。
  275. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 そのような方針を実施するために、地価対策以下三、四点を具体的に今度所信表明で述べられました。そのような具体的な方法は、これまでの七年間の佐藤内閣の中で懸命に努力されてもできなかった難問ばかりだと思いますが、今後できますか。
  276. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなかむずかしい問題です。そういう意味国民の協力を積極的に呼びかけている、そういう問題であります。
  277. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 逃げられてはなりません。あなたは池田総理に対して要望されて、池田総理を批判されたことばを覚えておられると思います。池田総理に対しまして、総理に聞きたかったのは、経済成長の繁栄の結果起きている諸矛盾をどうして解決するかだ、この一点である、これが国民の最も聞きたい点であり、この解決策が出ておらないのははなはだ残念だ。あなたの池田内閣に取ってかわろうという姿勢をとられたときのことばです。いま同じことを、あなたの姿勢に対して要望しておる向きは少なくないと思いますが、御所見を承りましょう。
  278. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話、私は努力してもなかなかむずかしいことだ、容易なことではない、しかし、それをやはりやらないことにはほんとうのしあわせはもたらされない、そういうことを痛感するような次第であります。そういう意味で、いままでの行き方が全部間違っていたとは私、思いませんけれども、しかし、もっとわれわれが力を入れるべき点、力点を置く点を明確にすべきだ、かように思っております。
  279. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 やる自信がおありになって所信表明をなされたと思いますが、そのような転換を現実にやる御自信がおありになりますか。
  280. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはやはりやらなければならない、かように思っておりますから、私も内閣の各閣僚にも、いろいろ積極的な協力を求めておるような次第であります。
  281. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 重ねて、総理、たいへん失礼ですけれども昭和三十九年六月三十日の、池田総理が三回目の総裁立候補宣言ともいわれる所信表明をされたときに対するあなた御自身の、みずから求めての記者会見での発言というものは、いま私どもやあるいは国民の大部分が、あなたに対して言おうとしているものとほとんど同じことばが使われております。池田総理の立候補宣言も、文章としてはりっぱであるが、抽象的な文句ばかりで、有言不実行といわれてもしかたがない。池田さんの所信表明に対して、あなた自身のことばでございます。有言不実行ということばは、むしろこの委員会におきましても、国民の多くがあなたに奉っておることばでございますが、今度の経済政策転換、ほんとうに御自信があって御努力されますか。
  282. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの御意見も、私、謙虚に承って、一そう努力しなければならない、かように決意しております。
  283. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 何べんでもお伺いいたします。それならば具体的にお伺いいたします。  円の外づらと内づらとを一番おかしくしておる最大の問題が、物価問題だということはお気づきだと思います。この物価問題の解消こそはまさに国民の悲願であり、いまお話しの国民福祉優先政策の立場の一番先にやらなければならないことでございます。私に対してではなくて、国民のすべてに対して、あなたが物価問題に対してこうこうこういう方針で断固と取り組むという姿勢を、ここで表明されたいと思いますが、いかがでございますか。
  284. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過日の施政方針でも、その点に触れたはずでありますが、私は、ただいま物価問題と取り組むことは、国民多数の方々に、最もその悩みに触れる問題ではないかと実は思っております。これがいわゆる生産者の立場と消費者の立場、とかく相衝突するようにものを考えますけれども、生産者また消費者なりという、私は最終消費、その消費者のところに利益がいくような物価体系、そういうものを考えなければならない、かように考えております。生産者ももちろんかくすることによって保護される、そういうような流通機構の整備が実は必要のように思います。  過日、一日内閣を宮崎で実施いたしました。その際も、私はわざわざ宮崎と東京の間、カーフェリーで実は宮崎の細島港に参りました。ただいま宮崎県から蔬菜類等が、園芸蔬菜が主ですが、わざわざ東京にまで運ばれておる。そのことを考えて実は見てきたのであります。そうしてつぶさに現地で生産状況を見ますと、同じ園芸蔬菜をつくるにいたしましても、やはり団地をつくって団地栽培をやっておる。日本の場合は小農だという、そういうところに非常に問題がありがちなんですが、この団地栽培をやることによって、小農、いわゆる協業化によってそういうものは克服できるようであります。私はこういう事柄が新しい改革として必要なんではないだろうか。そうしてそれが流通機構としても、はるばる宮崎で栽培されたものが直ちに東京の市場に来る、こういうようなことを考えると、新しい行き方がここにあるんだということを実は痛感したような次第であります。私はやはり何と申しましても、流通機構の整備をしなければならない。いま一つの例をあげて申したのです。しかし、そのためには、いまの倉庫なぞも、もっと積極的にその倉庫を整備しないと、発地、生産地また消費地、その双方に適正な倉庫ができておらないと十分の効果をあげることができないように思っております。私は蔬菜類についてもそういうことを感じますが、さらにまた輸入の場合に、輸入品がいろいろ関税をかけられておる。関税は何のためにかけておるのか。これはやはり国内生産を保護するという立場かもわかりませんけれども、どうもその必要のないのに関税がかけられている、そのために消費物価が高くなっている、こういうことではせっかく輸入しても制度が生きてこない、こういう点も改善すべきじゃないだろうか、かように思います。  一、二の例をとりましても、ただいま申し上げますように、幾多これから改善を要するものがある。このことを私は声を大にし、また声ばかりじゃなく、それと積極的に取り組んできたと、かように実は思っておるような次第であります。新しい農業、そのあり方も、畜産や果実や園芸、蔬菜等に重点が置かれるわけですが、同時にまた基盤の弱い中小企業、先ほども意見を述べられました二重構造から見まして、いわゆる生産性の非常に低いものについても、その強化についても指導的な立場でなければならない。とにかく一口には物価と、かように申しますが、それと取り組む事柄、その取り組み方にもいろいろの方法があると思っております。  また、公共料金等がいつも問題になりますけれども、これなども、経営自体、いろいろの積極的な企業の合理化をはかりますけれども、また従業員もこれに協力する、こういうようなことでないと十分に効果があがってこないんじゃないだろうか。  どうも物価の問題になりますと、こまかな話になりましてまことに恐縮でございますが、ただいまのように幾多考えがありますから、また皆さま方からもこれについて積極的な御意見を聞かしていただいて、政府を鞭撻賜わりたいとお願いしておきます。
  285. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 国民は、上がる理由を聞かされたり、下がらない説明を聞こうとしておるんではありません。総理、具体的に下げるという約束あるいは上げないという約束を要求しておるわけであります。三十九年の十一月十日、佐藤総理が最初の組閣に成功されたときに、第一回目の記者会見を通じて国民に約束されたことば。国民の悩みは台所からだ、台所が脅かされてはほんとうの政治にはならない、こう言明されております。そうして、消費物価を安定または下げる心組みが必要なので、そこにこそ人間尊重の気持ちが出てくる、そうすれば、物価政策も変わってくるものだと思う。記者団の具体的な質問に対しまして、ただいま総理になったばかりだ、もう少し時間をかしてほしいと言っておられます。七年間時間をかしました。台所の主婦に向かって、国民の悩みは台所からだ、これを解消することを公約された総理に、もう一ぺん、生鮮野菜は下げるのか、ほっておくのか、どのようにして下げるのか、お答えいただきたいと思います。
  286. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 生鮮野菜については、ただいまその片りんに触れましたが、私はこれは価格を安定さすことが何よりも大事なことだ、かように思っております。私は積極的に下げるとは申しませんが、やはり安定することが必要である、かように思っております。高く安定するものじゃございません。できるだけ安いところへ安定さす、これが生産者にも消費者にも双方に利益のあるものだ、かように私は考えております。
  287. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 最近の毎日の新聞の社会欄は、御承知のように、たとえばタマネギの、あるいはキャベツの、あるいは白菜の買い占めブローカーの暗躍記事ををもって埋められております。この状態を放置されますか。適当なる措置を急速にでもおとりになりますか、御所見を承りたい。
  288. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も新聞記事を見まして、これはたいへんな状態が起こりつつある、これをほうっておくわけにいかない、かように思っております。
  289. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 どういう措置をおとりになりますか。
  290. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 市場を通じ、あるいは業者を通じまして、そういうことをしないように厳重に警告し、また監視をしております。
  291. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 これまでそのような勧告や注意はされなかったのですか。もう一ぺん……。
  292. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 従来もやっておりましたけれども、今度のような場合には厳重にやっておるわけでございます。
  293. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 これまでもやっておっても効果がなかったことをもう一ぺんやられるということですか。
  294. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これまでやって効果がないということではございません。効果を相当出しています。しかし、効果がなかった面は、先ほど総理が言いましたように、野菜等の需給の調整が十分にいかなかったという面で、買い占めとか、そういうことが出てきたのでございます。でありますので、厳重警告等を発しまして、買い占めとかそういうことがないように、あるいはまた不足しているものにつきまして、どうしても国内で供給ができない場合には、タマネギのようなものの輸入等もいたします。でありますので、厳重な警告のみでなく、ほかの需給の調整がとれない面で、いままで実効がもたらせなかった面がございまするから、そういう面はそういう面で需給の調整がとれるように対策を講じていく、こういうことでございます。
  295. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 木村長官、担当だと思います。いまの御答弁で、台所を預かっている国民の主婦たちは、ああ、ありがたいことだ、これで下がる、あるいは安定すると思うとお考えになりますか。
  296. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 私もいろいろ最近流通機構を分析いたしまして、いままでの流通行政というものは非常に不十分であったということをみずから痛感しております。そこで最近、農林省におきましても、この問題に、もちろん従来からでございますが、真剣に取り組んでおりますが、どうもやはり二階から目薬的な間接の指導行政ではもうとても間尺に合わない、こういうことを私、最近痛感しております。どうも野菜行政の部面におきましても、主食のごとくではございませんが、ある程度やはり直接現物操作、市場介入が必要な時期ではなかろうか、こう思います。  いずれにいたしましても、経済政策の一環としての物価問題でございますから、いままでのような経済政策ではとてももう追いつきません。したがって、経済政策転換、先ほど総理からもお話がありましたとおり、やはり経済政策の中で物価政策というものを非常に大きく傾斜的に重点を置く、すなわち資源配分の面におきましても、ひとつ思い切った政策をとるということでなければ解決しないという感じがいたします。
  297. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 どういう思い切った政策をとられるのですか。
  298. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 これは実施面は農林省にお願いするわけですが、結論的に申し上げて、いま申し上げましたような生産地対策、消費地対策、それを個々に実行いたしまして、ただ、それに対する間接的な指導行政——これはもちろん中央政府だけではできません。地方公共団体、たとえば最近の事例を見ましても、九月の物価は、東京都区部では五・九%の上昇でございますが、物価行政に非常に熱心な大阪府では三・七%、こういうことも考えまして、やはり中央政府と地方行政が一体になってこの問題に取り組まなければならぬということもその一環でございます。
  299. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 流通機構の改革というのは、十年間も七年間もあなた言い続けておられる。今度はどこをどう直されるのですか、総理
  300. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 そこで、先ほど申し上げましたとおり、やはりいままでのような間接的な指導行政ではだめだということから、来年度の予算で相当大幅な経費を計上いたしまして、流通行政そのものにメスを入れてもっと具体的な流通行政をやるということでございます。
  301. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 来年度の予算の実施はいつごろからだと思いますか。いま国民の要求しているのは、いまこの冬の対策を一番要求している。それに対しては対策がないのですか。
  302. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 私が申しましたのは、もちろんことしの予算には、昨年度の予算の二倍にわたる大きな経費を計上いたしましてやっておりますけれども、それではまだ足りない。したがって、季節とかあるいは気象情報に左右されるような野菜行政であってはならぬというところの反省に基づきまして、来年度には大幅な野菜行政費を計上するというところでございます。この冬野菜に対しましては、もうすでに大きな手を打っております。これは農林省から具体面についてお聞き取り願いたいと思います。
  303. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 具体的な手を打っておりまして、物価、野菜は特に安定するということを断言できますか、農林大臣。
  304. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 断言はできませんが、断言できるような方向で進めています。
  305. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 総理私はこの物価問題に対してこっちが幾ら言うてものれんに腕押し、そのような関係なものだから、やっぱり総理は本気になって取り組もうとする姿勢がないのだ、こういうふうに思わざるを得ないのです。国民の大部分はそう思っておると思いますよ。必ず総理が物価問題に本気に取り組んでくれると国民は思っておるとお考えになりますか。国民に対してどういうふうに言いわけされますか。
  306. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来関係大臣からもお答えをいたしましたし、私も実地について、カーフェリーの問題にまで触れてこまかな話までいたしました。しかして私自身が、どうも考えたことについて十分効果があがってないとみずから考えながら、さらにもっと精を出さなきゃいかぬとただいま申し上げたとおりであります。そういう意味から申しまして、国民の皆さん方、ずいぶんじれったい。じれったいより以上に、何しているのだ、こういうような批判もあるだろうと思います。ただいま佐々木君が先ほど来お話しになることも、国民にかわっての政府のおしかりだろう、かように思いますが、しかし問題は、やはりこれまで取引されていたその問題を解決しようというのでございますから、そう簡単な状態のものではありません。神田市場の一つをとってみましても、これらの改革がそう簡単なものでないことはおわかりだろうと思いますし、また最近の都市の急激な膨張、これに対処する、そういうこともなかなかおくれがちであります。どうも施策のほうはいつもおくれている、こういうことでありますから、これはもっともっと力を入れてふんばらないと、とても国民の要望にはこたえられないのだ、かように思っております。  ただいまおしかりを受けたこと、これはもちろん私自身が責任をもって解決すべき問題だ、かようにみずから考えておりますから、そのおしかりはおしかりとして十分謙虚に伺っていきますが、これらの問題についての、まあ先ほども申し上げましたように、積極的に何か名案があればひとつ教えてくださいと言ったのも、実はそういう意味の御協力を願ったわけであります。私自身が全然こういう問題に目をつぶっているという状況でないことだけはひとつ御理解いただきたいと思います。また、口先だけでこういう問題と申しましても、そうはいかない、かように思っております。御了承いただきたいと思います。
  307. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 中村行管長官、格別に聞こうとするのじゃありませんが、あなたの委員会でありましたか、何かの報告の中に、むしろ役所が介入するもののほうが料金や価格を引き上げる結果になりつつあるという報告があったと思います。御記憶ございませんか、たとえば運輸省関係のもの、あるいはまた厚生省関係のもの、要するに、直接の認許可でなくても、価格形成に役人が介入しなければならないものほどむしろ値上げ傾向は強い、こういう御報告があったと思います。そして、それでありまするならば、公共料金が、言うならば物価値上げの一番中心の牽引車的な役割りを演じておると見ざるを得ないと思いますが、行管長官、お考えございますか。
  308. 中村寅太

    ○中村国務大臣 役所関係がタッチしておる物価がどうも高くなっておるというようなふうに考えておるのではございませんが、それは一番やはり目につきやすいということが一つでございますが、私のところでいろいろ検討しましたのは、先ほどから佐々木委員もおっしゃいますように、諸物価の中で生鮮食料品というものが国民生活に非常に大きな比重を占めておる。特に、台風というようなものが来ればすぐ価格が上がるというような現象が目の前に見えておるのに対しても、いろいろの手の打ち方が弱過ぎる。そういうことを考えまして、まず消費の実態をつかむことと、消費に見合う生産を確保すること、そういうことで生産者の価格を保障しながら消費者の価格をできるだけ安うしていくというような、一つの一貫した流通機構というものが考えられないだろうか、こういうことを検討してまいったのでございます。
  309. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 何ぼやっても時間がございませんから、先に行かざるを得ないわけであります。  野菜等の生鮮食料品みたいなものの値上がりの一番中心は投機であります。買い占めを中心とした投機だ。したがって、市場をうんとつくりさえすれば、まず私は最初の方針が立つと思う。公設市場等をうんとつくることだ、一挙にでも。それに対して、既存の言うならば既得権益者がじゃまするのだ。このじゃまに、悪いけれども乗っかっておられるものだから、改革したくてもできない。私はそれを排除されることを特に要望する。  それからもう一つは管理価格的なもの、御承知のとおりだ。私は春の代表質問においてもちゃんと指摘をしました。社会党の代表者からも指摘をした。あなたはそいつをもう一ぺん検討するというふうに言われたままで、この独禁法の検討もそのままになっております。まだ御返事をいただいておりません。そのような管理価格の問題がもう一つです。  それからもう一つは、悪いけれども業界と特定な役所との妙な癒着関係だ。むしろ官僚の腐敗が最大の原因になって、役所が介入するような価格を引き上げておる。その一番中心は公共料金だ。私は、これらの問題について本気に取り組まれんことを要望いたします。  総理、御承知のように、現在の情勢は、いま大蔵大臣がたいへん困っておられますけれども、現在のドル問題を中心として円の切り上げ問題、そしてそれが引き起こす不況のさなか、いまこそ物価問題に取り組み得る最大のチャンスだと私は思います。このときに本気に取り組まないのならば、私はもう完全に物価問題を投げた佐藤総理佐藤内閣というふうに考えざるを得ません。  いい知恵があったら教えてくれと言われました。私は、具体的な方法を端的に申し上げましょう。あなた自身が最大の施策の中心を物価対策に置くことを決定されて、そして、何べんでもつくられたけれども、もう一ぺん臨時の物価対策本部をつくって、あなた自身が本部長になりなさい。全部権限を持てばよろしい。そして端的に言うならば、新聞記者諸君たくさんおられる。一番先端におられるところの社会部の記者、経済部の記者、ここは非常に具体的な問題をうんと拾っております。その辺のスタッフを集められることだ。そして必要がありますれば超党派的に呼びかけていただきたい。われわれも参加いたします。そしてほんとうに官民一体となって、役所まかせでないところの、一つ一つできるものからやっていくということだ。きょうあそこでタマネギの買い占めがあった、すっ飛んでいってそれを処分できないか、できないならば新しい法律をつくる、一ぺんでやったらいいじゃないですか。流通機構、ここがおかしい、やろうじゃないか。ここに貯蔵庫をつくったほうがいい、すぐつくろうじゃないですか。私はいろいろなむずかしいことがあることは十分承知です。しかし、総理自身は七年間の総理のキャリアを持って、総理自身が最大の権力者です。あなたができないことをほかにできる者がありますか。野党がじゃまするとかしないとか、三百二議席という大勢力を持っておられるじゃありませんか。何でも思うとおりに議会のことは全部あなたはきめられる。しかも行政権を完全に把握しておられる。予算編成権もすべてだ。あなた自身が本気になってやろうとすれば、できないことはない。もしそれができないとおっしゃるならば、悪いけれども総理政治責任はどこにあるのか。本気に私は考えなければならぬ問題だと思います。  時間がなくて私のかってな演説になってしまって恐縮でありますけれども、政権交代という理論があります。政権交代を可能にするところの、政権交代が必要な理由、政権が交代されなければならぬ必要な理由、私は一つずつ聞いて詰めようかと思ったのですけれども、意地が悪くなりますからやめましょう。私は原則的には二つだと思う。本格的な政策転換するときだ。そして、同じことをやるのでも、新しい人によって、新しい内閣によって政治が、政策転換されるときにこそ、やはり本格的な政策転換ができ得る。新しい酒は新しいふくべに入れるべきものだ。その意味政策転換をするとき。もう一つは、御承知のように人心がうんだとき。総理、たいへん失礼でありますけれども、先ほどのことばを引っぱり出せば、七年前、池田総理に迫られたあなたのおことばが、まさにそのことでありましたよ。人心一新こそはいま必要なのだ、池田さんのやっておられること、これはしょせんは独善だ、独善を排さなければならぬ、人心一新こそは必要だ、人心一新のためには総理がかわることだと断言されておられます。いまこの物価問題について国民の多くが耳を傾けて聞いておって、納得をしたかしなかったか。もし納得をせず、これではどうもと思っておる状態であるならば、私はほんとうは、私ども自身も政治を預かる立場から大きな責任を痛感しながら、いまのような問題も考えざるを得ない。特に私は総理に対しまして、このときこそ、政治という基本、政権交代の基本理念、政治責任というものをひとつ強く反省していただきたいことを申し上げる次第であります。  時間がございませんので、次に移ります。  同じ意味で、経済外交転換ということが基本的に問題になっておると思います。これまで対米関係というワク組みの中でしか国際経済を見ることができなかったわが国の戦後の経済外交路線の再吟味ということだと思います。従来の戦後の感覚で処理できなくなったという総理の御感覚も、私はここから来ていると思います。そういう立場に立って、経済政策経済外交自身も転換されなければならぬ。その立場の一番中心は、これまでと同じ日米関係であっていいかということだと思います。たいへんことばは悪いのですけれどもアメリカの言いなりになっておりさえすれば、大体ドルのかさの中でぬくぬくと太ることができたというこれまでの状態反省して、新しい姿勢をとるということだと私は思うわけであります。そういうふうに考えて、新しい経済政策経済外交転換考える場合の基本的な理念は、日本貿易立国でございますから、自由貿易の立場に立って国際経済の拡大をはかることこそわが国の経済外交の基本姿勢でなければならぬ、こう思いますが、総理の御所見を承りましょう。
  310. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 新しい経済外交を展開しろ、こういうお話、それについて、いままでの米国経済にたよっていることはやめたらどうか、新しい道を開いたらどうか、こういうような御意見のように実はいまのお説を承ったのですが、私はやはり何と申しましても、日米間、これを主軸にして、そして私ども経済外交を展開すべきだ、かように実は思っておりますので、ただいまの主軸を変えろ、こういうようなお考えには、私、簡単には賛成はいたしません。  しかして、どういうような考え方なのかということになると、この貿易立国という考え方は、もうやや現在においてはこれを変えるべきじゃないだろうか、かように実は思っております。私はその意味で、過日の施政方針演説にも触れたはずでありますが、輸出第一主義あるいは貿易立国、こういうものはやや考え方を変えざるを得ないんじゃないだろうか。私は、もっと富は直接国民に還元する、こういうような方法で考えるべきじゃないだろうか、かように思いますから、いままで不足がちであった社会資本充実や、また国民に豊富な生活を招来するようにあらゆる施策をめぐらしたい、かように思っております。  また、開発途上国に対する援助こそ、これはわれわれ先進国としての当然のつとめだろう、かように思いますので、これは、いままでもきまっておりますように、やはりGNPの一%、それには、もう大体そこまで近くなっておりますから、いま一息のように思いますので、これだけは進めていきたい、かように思っておりますが、ただいまのように、在来考え方、これはやはりこの際に見直していくべきじゃないだろうか、かように思います。あえて私の意見を述べて、御意見と違っている点をいま率直に申し上げた次第であります。
  311. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 その論戦をやっておりますと時間をたいへんむだにせざるを得ませんから、急ぎましょう。  ただ、私がいま申し上げましたのは、経済外交転換を要求した、こういう意味であります。御承知のように、いまニクソン外交の、言うならば勧進元になっておりますキッシンジャーという人がおりますが、キッシンジャー自身が、日本はいま、明治維新あるいは昭和二十年八月十五日の終戦のときと同様な大きな転換期に差しかかっておる、こう指摘をしておるわけであります。私は、どうもいまの総理のお話によりますと、政府は必ずしもこの転換期を正当に評価していないという感じを持つのでありますが、この論戦はまたの機会に譲りましょう。  ただ、通産大臣田中さんにお伺いいたしますが、いずれにいたしましても日本は、言うならば貿易立国のたてまえであります。したがいまして、今後日本経済のあるいは日本経済外交の基本は貿易を拡大するという意味で、あくまでも国際経済の拡大こそはわれわれのねらいでありまするから、自由貿易のたてまえをぐんぐんと推し進めることだ、これが基本の姿勢だと思いますが、いかがでございましょうか。
  312. 田中角榮

    田中国務大臣 貿易立国の日本としては、自由貿易の拡大が最も大切なことであることば申すまでもございません。また第二次大戦後、世界の平和の維持のためにも、縮小均衡から拡大均衡へ移行しなければならない。そのために国際的経済機構もつくられ、日本もみずからその主力として参加をいたしておるわけでございます。そういう意味で、アメリカに対する貿易のウエートは非常に大きいのでございますが、やはり毎年対前年度比三〇%も四〇%も拡大していくというようなことは可能なわけではありません。ですから私は、正常な状態、一〇%拡大ということであるならば、輸出の多様化ということをはかっていかなければならないということはもう当然だと思います。国民総生産の一%を後進国援助に回すということ自体がもう日本の役目ではなく、日本貿易拡大としてはどうしてもなさなければならない条件であるということが考えられますので、ケネディラウンドの推進、自由貿易の拡大という施策のためには全力を傾注すべきだと思います。
  313. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 その基本的な姿勢から見ますときに、せんだっての御努力をされて苦労された繊維協定はまさに逆行であるとお考えになりませんか。
  314. 田中角榮

    田中国務大臣 ミクロ的な視野で見た場合には逆行的なことであるとも断じられるわけでございますが、しかし、そうしなければキーカレンシーとしてのドルの価値の維持もできない。できないとしたならば、IMFや世銀やガットの機構も維持できないということになれば縮小均衡への道を歩むわけでございますから、そういうところに、マクロ的に見た場合、日本が協力をしなければならない。これは円平価の切り上げ問題に対しても、いみじくもあなたが先ほど述べられたように、アメリカ責任で解決すべき問題を除いて、お互いが自由貿易拡大のために負わなければならない責任に対しては責任を果たすべきだという立場から見ると、日米間がやはり話し合いベースというものを守るということでなければならないし、また現在急転換をしなければならないとしても、対米貿易貿易の三〇%以上を占めておる、言うなれば、日本の輸出の大宗をなしておるという現実に徴すると、やはり話し合い、正常なる対米貿易の確保ということを避けるわけにはまいらない。ですから、その意味においては私は相反するもののように見られがちでございますが、大きな目的を達成するという面から考えると、違う問題ではない、こう理解しております。
  315. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 田中さんの御意見は、たいへん論理の飛躍があります。一番最初念を押しておきましたように、アメリカの国でなすべきことをなした後に協力というものがあること、しかも繊維問題においては、もう皆さんが次々に述べられましたように、現実に被害は起きていない。アメリカ国民国益に合致するとほんとうにお考えになりますか。それから日本国民国益に合致するとお考えになりますか。日本国益に合致するとお考えになりますか。
  316. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから述べておりますように、対米貿易というものは、正常な状態で発展をしなければならないということは一つでございます。また繊維問題に対しては、日本業界がきめた自主規制が最も望ましいものであるということも間違いはありません。しかし、その後新しくできた事態、それはアメリカの国際収支の逆調その他が問題ではございますが、いずれにしても期限づきで日米両国間の政府間交渉を求めてきておることは事実でございます。この求めておるものに対して、では自然の成り行きにまかせればいいじゃないかということになりますと、全く話し合いの場を失うわけでございますし、無協約状態になるわけでございます。ですから、そういう問題から考えると、いま現に対米貿易日本の輸出の三〇%を占めているという現実は理想的な姿でない。だからこれを一〇%にして、あとの二〇%分を多様化してほかのところへ持っていくようにしなければならないということは事実であっても、現在は三〇%を対米貿易で占めておるという事実の上に立って考えるときに、いま日米間を混乱の状態、無協約状態、一方交通でもって規制が行なわれるような状態は避けなければならない。それを避けるための万やむを得ない措置である、こう理解しておるのであります。
  317. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 国民の代表である国権の最高機関が決定したことが、私は国益のやはり向かう中心であると思います。この国会決議という最高の国益方向無視されて、そしていま話し合いをするのが国益だと言うことは、むしろ国益の立証責任があなたの側にある。逆に私は、独断だというそしりは免れないと思います。どうして国益に合致するのか。同時に、私はもっと大きい視野に立つならば、アメリカ国民自身も、いい品物が安く入るということは国民自身の利益だ。ひょっとすると、政治家の特定な者の利害は、利益は共通なものがあるかもしれないが、私はこの政府間協定というものが日本国益にも合致しておらないし、アメリカ国民の全体にも合致しておらない。さらにまた、自由貿易拡大という方向から見て、国際政治、国際経済の場でも、そのような方向が逆行だ、この批判は免れないと思います。幾ら強弁されても、もしそのような事情が、特殊の事情があればあるほど、それを強弁されればされるほど、むしろそれは独善のそしりを免れないと思います。あわせて伺いましょう。
  318. 田中角榮

    田中国務大臣 佐々木さんの御発言はよく理解できます。あなたの立場における御発言としてもよく理解できます。私自身も、自由民主党の幹事長の立場であったときには、私自身が七月一日から発足をする自主規制が最良のものである、現時点においてこれ以上の措置はないだろうということで賛成の党声明を出しておるのでございます。しかし、私が七月五日に通産大臣という職についてから新しい事態が起こってきておるのであります。それはアメリカ側から、十月の十五日までに政府間協定を結んで、長期的な日米間の経済交流の安定化のための協定を結ぶことができないということになれば、アメリカは課徴金制度をとらなければならなかったと同じような状態で対日輸出規制をとらざるを得ません……(「どうかつじゃないか」と呼ぶ者あり)それはどうかつであろうが何だろうが、これは事実であります。この事実に対してどう対処しなければならぬかというのは行政の責任であります。私はその意味は、労使の間において、労使のいずれかから一つの提案がなされた、こんなことはできるものかということで無協約状態になるところにほんとうの正常な労使関係が生まれるはずがない。同じことが——この問題は、それに置きかえればだれでもが理解することであります。二十五年の戦後の日米間の歴史の上に立って、今日困難な状態になっておるアメリカ状態、それも無縁なものではない。日本アメリカというものはよきパートナーとして、アメリカ貿易というものが非常に危険になった場合、日本自体も損害を受けるのだという事実を前提として私は対処すべきだと考えたのであります。それでその上になおテレビの問題があり、自動車の問題があり、電卓の問題があり、たくさんの問題をかかえておるときに、私は、五十九億ドルの大きな対米輸出、それが二〇%増しになれば七十億ドルというものになるわけでございます。そういう問題を全然考えないで結んだわけではないので、万やむを得ない手段として結んだものであって、これがメリットに対してはひとつ理解をいただきたい。
  319. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 メリット、デメリットの判断はあなた一人がやれば独断になるのです。そのために国会があるのです。なぜそれほど自信を持っておられるものを国会承認を得るという手続を省略されるのか、私は重要であればあるほど——これまでのお二人の御意見を聞いておりました。正木さんが切々として言われる問題の具体的の提起も聞いておりました。それに対するあなたのお答えも聞いておりました。議論は分かれるところだ。分かれれば分かれるほど、国会の審議の場を通じて国民の理解を得て実施することこそほんとうの筋ではありませんか。それを形式的に五年のやつを三年に縮めたみたいなことだけで国会審議を回避されようとする、ここにあなたの最もうしろ暗さを私は感ぜざるを得ないわけだ。御所見承りましょう。
  320. 田中角榮

    田中国務大臣 国会の議決を経べきであるという議論は、私は存在すると思います。ですから、あなたがあなたのお立場で国会の議決案件として提出をすべきものであるという御発言はそれなりの理由がある、こう考えます。しかし、私だけの考えでこのような処理を行なっておるのではありません。これは憲法が定める三権の一つである行政権として行なえる独立権限の中の行政協定であるという法律的な見解に従っておるまででございまして、私自身が国会の審議を回避するためにこれを出さないようにいろいろな知恵をしぼろうというようなものでは絶対にないということだけは、すなおに御理解賜わりたい。
  321. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 お引き合いに出しました日本憲法の大原則は、新たに国民の権利を制限し、あるいは義務を課す場合には国会承認を得るという形で国民の同意を得なければならぬ。税金を課する場合も法律の場合も、すべて国民に対して権利と義務を新たに設定しあるいは制限する場合は、国民の代表としての国会の議を経なければならぬというのが大原則です。この大原則に照らしてみたときに、この新協定は、明らかに政府の行為によって関係業者の営業権の制限はもちろんのこと、関係労働者の就業のチャンスを奪うなど、国民の権利の制限になることはこれは事実であります。したがいまして、あなたの言われる法理論をもってしても、三百代言的な形式論ならいざ知らず、日本国憲法を本気になって読んだ場合には、当然に私は国会承認を経べきものだと思いまするが、なお強弁されますか。
  322. 田中角榮

    田中国務大臣 高度な政治論としては理解はできますということを私も申し上げておるわけであります。違法性がなくとも、妥当性という立場から国会の議決案件としなければならないという範疇のものでなくとも、あえて国会の議決案件として国会の審議を求めるということは、それは一つの方法かもわかりません。それに対しては、私はあなたの政治論としては理解ができます。ただ、私は立法府の議員ではございますが、それほど法律の解釈の専門家ではないわけでございます。私自身がイニシアルをした覚え書きを前提とする——これから正式な外交ルートでもって正文が書かれるわけでございますが、その限りにおいては行政権の範疇で行なえるものであって、法律による国会の議決案件とはならないと、こう外務省当局及び法制当局が言っておるのでございますから、私はそれを考えるだけでございます。でございますから、これは議決案件になる、ならないにかかわらず、こうして御審議をお願いをしているわけでございますから、まあこれから最終的に正文を得て調印をする場合、その時点において議決を要するものとなれば、これは当然国会に出すわけでございますが、いままで私が知る限りにおいて、政府部内で法律的見解をまとめた限りにおいては、国会の案件ではない、こういうことでございますので、私も閣員の一人としてそのような方向了承しておるわけであります。
  323. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 政治論議という立場だと、私の発言をそれだけにしぼって、法律論でいえばそうではないんだというふうに強弁されようとしておる。時間がないからもう時間をそろばんに入れての御答弁だと思う。私は正直言って——法制局長官そこにおられます。従来私は何べんでも法制局長官と法律論争もやっております。法律論争をやってもこれは決して負けません。少なくとも相打ちです。少なくとも相打ちだ。それを、法律論争ならば絶対だという立場をとられるところに独断があるわけだ。むしろこの見解は、ほんとうは通産省も逃げられたはずだ。おそらく法制局も相談にあずかればぐあいが悪いから逃げたのでしょう。むしろ外務省だけが理屈をつけさせられただけだ。どのように強弁されても、この協定自身によって国民の権利を制限することだけは間違いないじゃありませんか。アメリカに対してだけ有効であって、国民に対してはこれは全然権利も侵害しないし義務も設定しないということにはならない。たぶん、そうだというと、その中に法律が入っておる、あるいは貿管令が入っていると言われる。それはだめだ。その議論をすればするほど、むしろ田中さんが言われた理由であればあるほど、直接的な経済取引関係ないという意味で、例の東京地裁の判決から類推してもむしろおかしいことになってくる。私は、そのような五分五分の議論があるものを、なぜ国会承認を経るという本格的な論議の場を避けられるのか。むしろこれのほうが重大だと思う。私は、先ほど来田中さんが言われることがほんとうに切々たる愛国の至情から出て国益を守られる立場からであるとするならば、一そうこの場を通じて、逆向きにアメリカの横車に対して国際的な批判を巻き起こし、そしてまた無理な横車でものまなければならぬというならば、国民の結束をむしろ求めることこそ政治家としてのやるべき道ではないかと思う。それをよけて通ろうとされるところに一そう私どもは、総理悪いけれども、これは正直な堂々たる議論をし得ない事情が裏にあって、しかたないよけて通らなければならないのだと、多くの人人はほんとうはそう見ておりますよ。総理自身がまともにやられるとぐあい悪いから、まあひとつ田中さんやってくれ、もう一つのほうは福田さんが引き受けてやりよるわ、どっちもとんとんだ、やってくれと、こういう感じにしか受け取れないわけだ。私は、重ねて、今後の措置でありましても、どう理解をしても国会承認を避けられる意味がわからない。国会に堂々とかけられて論議をされ、本協定、本調印の前にそのような手続をとられることを、むしろ民主的な国会の権威において要求するものであります。重ねて御所見を承りましょう。
  324. 田中角榮

    田中国務大臣 国会の議決案件であるにもかかわらず、これを理屈をつけて国会の議決案件にしないというならば、いろんな問題が起こることはもう当然でございます。しかし、先ほども述べましたとおり、三権、固有な権限は与えられておるわけでございます。特に外国との外交交渉権というものに対しては明確な規定がございます。そういう意味で、今度私がイニシアルをした案件は、覚え書きにかかる日米両国間の協定政府固有の権限で行なえる行政協定の範疇に属するものであって、国会の議決案件ではないという明確な法解釈があって、政府そのものが国会に対する議決案件としないということであるのでありますから、私はやはりそれはそのように理解をしていただくべきだと思います。そうしてなお議決案件としなければ国会で議論ができないのではなくて、こうして国会でもって議論をしていただいておるのでございます。おるのでございますから、私はそういう問題を——私はそうでないと三権の中の司法の問題でも何でも全部国会にかけることが万全であるというようなことになって、固有の権限そのものが私は侵されることにもなると思いますし、私自身が法律の専門家でありませんので、これは国会に連帯をして責任を負っておる内閣自体が法律的解釈をして、国会の議決案件ではないという決定をすれば、私は当然それを支持せざるを得ない、こういうことでございますから、法律的な解釈が必要であれば法制局長官をして法律解釈をしてもらいます。
  325. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 佐々木君に申し上げますが、予定の時間を過ぎております。過ぎておりますが、外務大臣、退席した時間がありましたから、しばらく、あと五分程度にお願いいたします。
  326. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 いま田中大臣はこう議論ができるからいいではないか、これはいけませんな。私はこの問題をやらなければならぬがために、一番肝心な沖繩の問題も中国の問題も論戦する時間的余裕がないではありませんか。現実に具体的に提案されればそれをめぐって本格的な論議ができるわけだ。だから提案せずしてできるではないかという議論は慎まれたほうがよろしい。  それからもう一つ、行政権をわれわれは侵そうとしておるものではない。これを国会承認にかけるならば司法でも何でも全部かけなければならぬ、それは暴論だ。隣の法制局長官に聞いてください、そんなものは暴論だ。私はそんなことを言っているんじゃない。少なくともこれによって多くの関係者を直接に権利を制限し、義務を課すではないか。憲法の大原則は、国民に新しい権利を、新しい義務を課し、権利を制限するときには国会承認を経ろという、そういう方針になっておるわけだ。だから、行政権もへったくれもない。憲法の基本姿勢がそれだ。だから、私どもはあくまでもその方針をとられるべきだ、こういう方針をとっておるわけであります。  私は、時間がないようでありますから、もうそれならやめますけれども総理に最後に一つ要望いたしましょう。  この協定ほど、御承知のように国際的な経済方向を何とか自由貿易、拡大貿易に持っていこうという多くの識者がそれをねらっておる。一方において保護主義的な方向あと戻りしようといういまの方向がある。へたをするとニクソンの何とかのそでに隠れて日本がそっち向きに引っぱっていかれるのではないかという心配を多くの国際人はしておる。日本国民もまたそのようなことを非常に心配をしているわけだ。そのまっ正面にまさに何だかよくわからないところの、こういう、言うならばしめった形のこの協定を結ばれたこと、しかもそれを国会承認案件として国会で審議されることを避けようとされること、これは決していいことではない。私はいまからでもおそくないと思うのです。独立の案件としてはっきりと国会の論議をされることがいまの疑いを解き、密約説の疑いも晴れるでしょう。それから国際的に多くの批判を浴びることに対して、その国際的批判をはっきりとアメリカに向ける、こういう感じを巻き起こすこともできるでしょう。あるいは業界を中心とする関係の人々に対して相当程度の納得も得て、あるいは協力体制がとれるかもしれない。私はこのチャンスを封じられることは決していいことではないと思う。ひとつ重ねて私は再考を要望するわけでございます。御所見を承りましょう。
  327. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 行政協定、これはいままでも過去において国会承認案件ではなしに行政協定をやっておる。そういうものでございますから、今回のものが初めてではない。その先例もあることで、それを踏んだだけでございますから、これを特に国会承認を避けるために行政協定をやった、こういうように悪くとられないで、ただ政府は過去の先例にたよった、かように御理解をいただきたいと思います。  また先ほどは物価の問題について具体的に二、三点あげられました。私はたいへんこれはお礼を申し上げなければならないのにおくれて、発言の機会がなかったので、この機会に具体的な対策等の委員会設置等にまでお話が及びましたので、これは厚くお礼を申し上げます。  いま申し上げますように、繊維協定、これは綿製品協定の場合も同様でありますが、ただいまも言うように、行政協定の先例を踏んだ、かように御理解をいただきたいと思います。
  328. 佐々木良作

    佐々木(良)委員 これでやめます。  前例にあるということばが、総理、私はほんとうは気に入りません。これを行政協定だということばをつけられたのが内閣、行政府なんです。われわれはこれを行政協定という範疇でとらえてはいけないという議論をしておる。それを行政協定だととらえておきながら、行政協定だから国会にかけなくてもいいという、そのような形式論議を総理たるものがやられてはいけません。私は、むしろ、ここでも重ねて、綿製品協定とは話が違います。その辺の論議はまた別な機会にわれわれの仲間からも十分にいたします。この問題につきましては、十分ひとつ政治的な責任をお感じになりながら対処されんことを重ねて要望いたしまして、質問を終わります。(拍手)
  329. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  なお、午前の外務大臣の発言に対する速記録につきましては、調査の上、後刻理事会で協議いたします。      ————◇—————
  330. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  明二十六日、田中武夫君の質疑の際、日本銀行総裁佐々木直君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ふ者あり〕
  331. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  次回は明二十六日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十六分散会