○門司亮君 私は、
民社党を代表いたしまして、ただいま
議題となっております
琉球諸島及び
大東諸島に関する
日本国と
アメリカ合衆国との間の
協定の
締結について
承認を求めるの件に対して、心から怒りを込めて
反対の
討論をするものでございます。(
拍手)
沖繩が二十六年の間、いな、大東亜
戦争において、
わが国最大の犠牲となった今日、この問題の解決にあたって、ただいま
自民党を代表した福永君の御演説がございましたが、その中に、憲法の手続を経て、という
ことばがある。一体、憲法の手続をどこで経られたのか。
日本国憲法は両院制を認めておりましょう。予算と外交という、いわゆる
政府の
行政権に属するものを一義的に認めておるということは、憲法のしからしむるところであります。しかしながら、この憲法のもとに、衆議院議決後三十日間において参議院が議決しなかった場合においては、衆議院の議決が有効であるというこの規定を悪用して、参議院に真の
審議を与える
日程を完全に与えたでございましょうか。三十日前にこれを議決するということは、参議院の議決、参議院の
審議を認めないということでございましょう。どうしてこれが憲法を尊重しておるか。憲法を尊重しているというならば、憲法の二院制をなぜはっきり認めないのか。私は、二院制を認めない、一人よがりの、自分に都合のいい憲法解釈に対しては、真に
政府・与党ともに反省をしてもらいたい。(
拍手)
少なくとも、本
協定は、
わが国にとって空前絶後、いままでにもなかった、また今日以後にもあってはならないものであります。
国会において慎重に
審議をし、衆議院において十分なる
審査を遂げ、参議院においても十分なる
審査をするという二院制のたてまえを貫くべきであった。しかるに、本日これを決定するならば、参議院が議決しようとすまいと、衆議院の議決が優先し、これが決定されることは事実でありましょう。そうするならば、一体、参議院は何のために
審議するのか。しかも、外交権は
政府にあるのである。われわれは、こうした
日本の今日までの憲法のたてまえの上において、きわめて本日のこの
会議は遺憾とするものであります。もう少し
諸君の反省を私は促したい。
同時に、私は、本
協定に対して最も遺憾とするところは、
沖繩の声を聞くことができなかったということである。十七日から今日まで幾日あるか、数えてごらんなさい。一週間あるのである。この間にどうして一体
沖繩の声が聞けないという理屈がございますか。少なくとも本
協定に対しては、先ほど福永君も申し上げましたように、その苦痛を知り、その
実態を知る者は
沖繩の
諸君でなければなりません。
沖繩の
諸君の国政参加を認めたものはどこにあったのか。今日に備えることのために
沖繩の十分なる
意見を
国会に反映させ、そのもとにおいて
日本国会はこれを決定すべき
責任と義務があったはずである。にもかかわらず、
沖繩選出議員の、しかも安里君にいたしましても、瀬長君にいたしましても、占領以来二十六年の間、住民の先頭に立って
復帰を叫んできた、
沖繩における最も
復帰に熱心な
諸君の一言の
意見も聞かなかったという事実は、一体何を物語るか。(
拍手)このことについては、私は、いかに
自民党の
諸君が抗弁をされるといえども、本
協定の決定にあたっては最大の欠陥であり、いまこれを認むべきではないというきわめて大きな理屈であろうかと考える次第でございます。私は、こういう理論、批判に対して、
自民党の
諸君にもし反論があるならば聞かしていただきたい。おそらく何らの抗弁もでき得ないでございましょう。
われわれは、単に、
沖繩の今日ある問題を、これを
党利党略に使ってはならないということである。私はこれらの問題を考えていただきたい。なるほど、
自民党としては早く通したいかもしれない。しかしながら、
沖繩の気持ちは十分聞くべきである。それを聞かずして、参議院で
自然成立をする、今日これを決定しようとするいき方は、いかにも
党利党略以外の何ものでもないというそしりを受けることを免れないでございましょう。
私は、これらの問題を前段にいたしまして、この
協定に対する背景について、少しく皆さんの反省を促したいと思うのでございます。
この
協定の背景には一体何があるのか。一九六九年の十一月の
佐藤・ニクソン会談、いわゆる
共同声明の
内容は何が書いてあるか。その一つは、韓国及び台湾の危機は
わが国の危険であるということが書いてある。これは一体何を物語るか。
わが国は
戦争をしないという憲法を持っておる。同時に、韓国との同盟国でもなければ、軍事同盟というようなものも結んではおらない。台湾との間にもそういう
協定は結んではおらない。ここに軍事
協定を結んでおるものは
アメリカでございましょう。こうした中において、どうして韓国並びに台湾の危機が直接
わが国の危機につながるのか。同時にまた、これを裏返しするものは一体何であるか。そのことのために、
沖繩における
基地の態様は、その機能、規模において何らの損傷を与えないものであるということを明確に書いているでございましょう。われわれの要求するものは、この
沖繩の軍事
基地の
撤去でなければならない。しかるに、彼らの機能とその規模を
縮小するものでない、機能が失われるものでないということは、一体何を物語るか。明らかに
アメリカの
アジアにおける軍事戦略
行動に対するその規模と機能を失わせない範囲においての
協定であると申し上げてもちっとも差しつかえがないでございましょう。
沖繩島民はもとより、
日本の
国民全体がいま心配をしておるのはこの点である。
アメリカの
アジアにおける軍事戦略のための
沖繩の
基地が
返還後も十分にその機能を持ち、かつ、その機能を発揮することができるという
事態になってまいりまするならば、一体
日本の憲法はどうなるのか。
御承知のように、
戦争によるあの大きな被害を受けてきた
沖繩の
諸君は、
戦争に対しては、もはや
本土の私どもが考えておる、皆さんが想像されておりまする以上の嫌悪の感を持っておることは言うにやぶさかではございません。と同時に、そのとおりである。その
沖繩返還に際して、
沖繩島民の要求は、少なくとも
米軍基地の全面
撤去を要求したことは御承知のとおりである。この
沖繩住民の気持ちにこたえることなくして、
基地の機能と規模をそのまま残すというようなべらぼうな会談がこの条約の背景にあるということを知らなければなりません。したがいまして、この条約の背景は、
アメリカ軍の規模とその機能を
縮小することなくして、かりにA、B、Cという三つのあのランクの中に
返還されることであり、さらには十二の
基地において
日本の自衛隊と彼らが同居することにこの規定はなっておりまするが、これらの問題は一体何を物語るか。ここに自衛隊を派遣するということは、明らかに
アメリカの軍事
協定に対して
日本がその肩がわりの行為を行なうものであるということを言わなければなりません。
アメリカのこの
沖繩返還に対して、
アメリカの戦略に対する
日本の肩がわりは、
日本国民ひとしくこれをいれないところでございましょう。だれひとりとして、
アメリカの
アジア侵略に対する軍略的その行為に対して、
日本の
国民のくみするものがあり得るでございましょうか。私は、与党の
諸君にこのことをひとつよく考えてもらいたい。
われわれはかく考えてまいりまするときに、今日のこの
協定の中で最も私どもが強く要求いたしてまいりました核の問題に対して、これまた福永君は何と言ったか。核のないことは当然であり、核のないことは証明されておると言うが、どこに核のないことが証明されておりますか。
佐藤総理とニクソンとの
共同声明の中に、
日本の立場を了承するからということが書いてある。同時に、ロジャーズ国務長官が、
アメリカの上院外交
委員会において、
返還時においては核はなくなるであろうというような証言をしたということもわれわれは知っておる。しかしながら、
諸君、考えてください。核に対する今日までの考え方、今日までの厳然とした事実は一体何であるか。核に対しては、どこにあるとか、これをどこに動かすとか、どうするかということは、
アメリカ大統領の専権事項であるということを言われておるでございましょう。一国防長官がかりにそういうことを言ったからといって、それが
核撤去の証拠にどこになるか。もし、
核撤去が事実であるとするならば、核は置かない、持ち込まない、核はないということ、いつ
撤去するということを具体的にニクソン大統領に声明をさせることこそが、
政府の
責任ではなかったかということである。(
拍手)そうしてこそ初めて核の問題は考える余地があるであろうということを私は考える。にもかかわらず、
アメリカの役人の、片言隻句とまでは私は申し上げませんが、
ことばを信用して、そうしてそういうことであるから核はないのであるというようなことを、おこがましくもこの壇上から申し上げるということについては、きわめて大きな不満を持つことを
表明するものでございます。
同時に、この核問題についても、いかにして今後これが
撤去をせられるかということは、この
協定の
審議の中においては明確になっておらない。この点は最も
国民の不満とし、かつ、
沖繩住民の最も遺憾とするところでございましょう。同時に、
日本国憲法に対してきわめて大きくその
威信を侵害するものである。
日本国憲法は、御承知のように、
戦争をしないという、
世界に比類のない憲法を持っておる。その
日本において、最も大量殺戮機能を持っておりまするこの
核兵器があるということになってまいりますならば、それこそ全くまっこうから憲法を否定するものであるということを言わなければなりません。私は、この核問題については、ことさらにこの問題に対する
政府の今日までの態度に不満を持つものでございます。
同時に、
基地の問題にいたしましても同じことである。A、B、Cと三つに分けておりまするが、一体これはどうなるのか。Aで返されるほうは一体どれだけ返されるのか。全部の
基地の中の何分の一、〇・二あるいは〇・三ぐらいの機能しか持ってはおらない。B項で返される十二は一体何であるか。これは自衛隊がそこに入って、そのまま使うというのでございましょう。ただ、返るという名前だけであって、実際は返らないのである。
私はこういうことを考えてまいりますと、ニクソンと
佐藤さんとの間に
協定されたいわゆる声明書の、
沖繩の
基地の機能とその性格については何らこれを阻害するものではないということを明確にこの
協定が裏書きしておるものであると申し上げてもちっとも差しつかえはない。こういう点をほんとうにひとつ
諸君は考えてもらいたい。
われわれは、次に主張する。VOAの問題は一体どうなっておるか。今度の
審議に際して、VOAがどれだけ議論されたか。VOAは、御承知のように、わが党の曽祢君の
質問に対して、
政府は、一九六六年二月七日の
アメリカの下院の軍事
委員会において、その
報告書の
内容に、
沖繩の
基地がきわめて重要である、その他
沖繩には戦略的にきわめて重要な
施設がある、たとえばその一つとしてVOAの
施設のごときはと、明確に書いてある、このことを外務省の
アメリカ局長吉野君は認めたではありませんか。そうだとするならば、このVOAは、
アメリカの声というようななまやさしいものではない、明らかに
アメリカの戦略的構想であると申し上げても、これまたちっとも差しつかえがないでございましょう。これらの問題が、国内法を改正してまでもどうして認めなければならないのか。
私は、今日、
沖繩と
本土が全く同じだという想定のもとにいろいろ議論はされておりまするが、
自民党の
諸君に考えてもらいたいことは、この一つだけでも、完全に
沖繩と
本土が同じでございましょうか。私は、電波法あるいは放送法による
日本国法律の改正をしなければならないというこの事実とともに、このVOAに対する、
本土と全く異なった
アメリカの戦略
基地を容認するということが言い得るでございましょうか。これで一体
本土並みと言い得るかどうか。
われわれはこういうことを考えますと同時に、具体的に申し上げてまいりまする一、二の
事件を言うならば、すなわち、先ほどもお話のございました
財産の損失、人命の損失等に対しまする
請求権の問題である。ことに、この
請求権は二つに分かれておる。一つは、一九四五年の八月十五日以降、一九五二年のサンフランシスコ
会議までの間におけるいわゆる彼らの占領当時における被害と、講和条約
締結後における被害と、二つの問題を一体どこで解決をしておるのか明確でないでございましょう。一九五二年までの間の、彼らの占領中にあった間の理不尽なる行為、全く人間を人間として認めない彼らの、人的被害、さらに物的被害を一体どうしようというのか。これらの問題の
請求権をどうして放棄されるのか。陸戦法規に照らして見てまいりましても、この占領中の被害その他については、当然占領国がこれを補償すべきであるということである。にもかかわらず、これらの問題が放棄されておるという事実は、一体何を物語るか。さらに、一九五二年サンフランシスコ
会議以後における
沖繩住民のこうむってまいりました損害を一体どこで補償しようというのか。私は、
日本の
政府が真に今日の
沖繩の
復帰を考えるならば、この点について、十分に
政府の要求する腰がまえがなければならなかったはずである。にもかかわらず、
沖繩住民の
意見を全く無視して、全くそれらの当然あるべき姿、当然要求しなければならないすべてのものを放棄してまでも、どうして一体こういう
協定を結ばなければならなかったのか。その点が今回のこの
国会の中において明確にされたでございましょうか。これらの
審議はほとんどなされていないと申し上げてもちっとも差しつかえはない。
次には
裁判権である。御承知のように、
沖繩には、
立法院における裁判所と、民
政府の裁判所、さらに軍の裁判所、三つの裁判所がある。この裁判所によって、これを取り上げてまいりました判決、あるいはこれに対しまする科罪あるいは量刑というようなものは、おのおの違うのでありまして、琉球
政府における刑法は
日本の刑法と全く同じと言っていいほど似ておりまするが、民
政府の裁判所が一体どういう法律によってこれを展開しておるか、軍裁判はどういう法律によってこれを展開しておるか、私は、これらの問題を総合いたしてまいりまするならば、このときこそ真に
沖繩百万のそうした、誤ったという
ことばを使うか、間違たった裁判のもとに呻吟いたしておりまする
同胞を救い出さなければならないということは、当然
本土政府の
責任でなければならない。しかるにもかかわらず、この
裁判権の問題はきわめてあいまいなうちに置かれておるという今回のこの
協定の
内容、しかもそれらの問題が十分に
審議し得なかった
実態に対して、一体
政府の
責任はこれをどうされようとするのか。
私は、最後に、今日
日本の置かれておりまする地位は、いかなる国際的地位にあるのかということを互いに考えたい。
ニクソン大統領が中共を訪問し、あるいはソ連に飛び、
アジアの平和と
世界の平和の中に十分にその働きをしようとするときに、したがって、
アジアにおける
わが国の置かれておる国際的地位というものは、これらの国々との間に対するでき得るだけの平和と共存のたてまえの上にその外交の方針は立てられなければならない。しかるに、今回のこの
協定の背景をなすものは、先ほど事実を二、三申し上げましたが、もう一つの大きな問題は一体何であるか。
一つは、
アメリカの
アジアにおける平和のムードをかき立てることのために、
沖繩から表面的に撤退するという口実のもとに、
アジアにおけるいろいろな国々に対する
アメリカの脅威をある程度やわらげようとする
アメリカの意図は明確であるということである。このことのために、
アメリカがもし考えておるとするならば、その肩がわりとして
日本の自衛隊があそこに進出してまいるということになってまいりまするならば、この
アメリカの意図の
反対の立場に立って
日本が、これから
アジアの緊張の緩和のためでなく、
アジアの緊張激化の一役を買うという結果になりはしないでございましょうか。
同時に、
アメリカが
沖繩を放棄するというその一つの裏には何があるか。いわゆる彼らのドル
防衛である。理不尽なる
アジアにおける
アメリカの軍事
行動は、今日までどれだけ
アメリカの
財産を浪費したか。ベトナムの
戦争を中心とする毎年毎年のあのおびただしい
費用というものは一体どうしたのか。さらに、
沖繩を持っておることによって、
沖繩の
施政権に対する、きわめて少額ではあると思いまするが、
アメリカから援助をしなければならない。これを
日本に肩がわりすることによってどれだけ
アメリカの経済が助かるか。今回の
沖繩協定の内部にひそむ
アメリカの意図はここにあるということを知らなければならない。
アメリカのドル
防衛の一環であると申し上げてもちっとも差しつかえはない。
私は、これらの問題を十分に
審議し、十分に検討し、
日本国の国益の上に立って
討論をし、検討し、
政府またそれに耳を傾けて、よりよい結果を見ることに
努力すべきであると考えるのでございます。これらの問題が忘れられてはいなかったか。私は、今回のこの
返還協定に対し、これらの問題を十分に
審議し、
日本の真意を十分にお互いが心を固め合って、そうしてこういう世紀の大事業といわれておるようなものであるとするならば、
日本の
国会においても、
与野党が全く一致の姿において、
日本の国益のために、民族の発展のために
努力すべきだったということである。(
拍手)このことが忘れられて、一党独裁の
党利党略のもとに、しかも先ほど申し上げましたように、憲法の二院制度をじゅうりんしてまでもこれを通そうとする
自民党の意図に対しては、私は、
沖繩島民の怒りはもとより、
日本国民全体の怒りであると申し上げてもちっとも差しつかえない。
その上に、先ほど申し上げましたように、せっかく屋良主席が本
協定に対する
沖繩の意図を十分に伝えるべく携帯してまいりましたいわゆる建議書が日の目を見なかったという事実は、一体何を物語るか。これは
政府にわからなかったはずはない。屋良主席はちゃんと出る前に、総務長官であるとか、総理大臣であるとか、要路の
諸君には、このことあることのために面会を申し込んでおったことは事実でございましょう。したがって
政府・与党はそれを知っておったはずである。それを知りながら、この屋良君の建議書を退けたという事実は、どう
自民党の
諸君が抗弁をいたしましても、
沖繩の
意見は全く聞かないで本問題を
強行採決したというそしりを言われましても、これに抗弁する余地は私はないと考える。
以上のことは、きわめて簡単でございまするが、私ども
民社党がこの
協定に
反対する
理由の一端を申し上げて、
自民党各位に最大の反省を促すとともに、われわれの態度を明確にする次第でございます。(
拍手)