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1971-12-22 第67回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月二十二日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長代理理事 高橋 英吉君   理事 小島 徹三君 理事 田中 伊三次君    理事 羽田野忠文君 理事 福永 健司君    理事 畑   和君 理事 沖本 泰幸君       石井  桂君    宇田 國榮君       大竹 太郎君    大村 襄治君       鍛冶 良作君    佐藤 守良君       中村 拓道君    中山 正暉君       羽田  孜君    林  義郎君       古川 丈吉君    森  喜朗君       日野 吉夫君    三宅 正一君       青柳 盛雄君  出席政府委員         法務政務次官  村山 達雄君         法務省民事局長 川島 一郎君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  加地 夏雄君         法務大臣官房訟         務部長     香川 保一君         法務省民事局第         一課長     住吉 君彦君         大蔵省主計局主         計官      海原 公輝君         会計検査院事務         総局第二局長  柴崎 敏郎君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月二十二日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     中村 拓道君   島村 一郎君     森  喜朗君   千葉 三郎君     佐藤 守良君   中村 梅吉君     中山 正暉君   中村庸一郎君     林  義郎君   永田 亮一君     古川 丈吉君   松本 十郎君     宇田 國榮君   村上  勇君     羽田  孜君   山手 滿男君     大村 襄治君 同日  辞任         補欠選任   宇田 國榮君     松本 十郎君   大村 襄治君     山手 滿男君   佐藤 守良君     千葉 三郎君   中村 拓道君     河本 敏夫君   中山 正暉君     中村 梅吉君   羽田  孜君     村上  勇君   林  義郎君     中村庸一郎君   古川 丈吉君     永田 亮一君   森  喜朗君     島村 一郎君     ――――――――――――― 十二月二十日  山形地方法務局谷地出張所の存続に関する陳情  書(第二  七七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  裁判所司法行政に関する件  法務行政に関する件      ――――◇―――――
  2. 高橋英吉

    高橋(英)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長所用のため、指名により私が委員長の職務を行ないます。  この際、申し上げます。  本委員会に付託になりました請願は四件であります。  各請願の取り扱いにつきましては、理事会において協議いたしましたが、いずれも採否の決定を保留することになりましたので、さよう御了承願います。     ―――――――――――――
  3. 高橋英吉

    高橋(英)委員長代理 なお、本委員会に参考送付されております陳情書は六件でありますが、お手元に配付しておきましたので、御了承願います。      ――――◇―――――
  4. 高橋英吉

    高橋(英)委員長代理 閉会審査に関する件についておはかりいたします。  裁判所司法行政に関する件、法務行政及び検察行政に関する件並びに国内治安及び人権擁護に関する件、以上の各件につきまして、議長に対し閉会審査申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 高橋英吉

    高橋(英)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  6. 高橋英吉

    高橋(英)委員長代理 裁判所司法行政に関する件及び法務行政に関する件について調査を進めます。  本日、最高裁判所矢口人事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 高橋英吉

    高橋(英)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  質疑の申し出がありますので、これを許します。畑和君。
  8. 畑和

    畑委員 私は、きょうは法務関係、特に法務局登記関係の問題について質問したい。  御承知のように、最近異常に登記事件が激増いたしております。三十四年以降この十年間における甲号事件、すなわち登記申請事件、それから乙号事件謄本、抄本の事件、これを合わせますと、両方とも非常に激増いたしておりまして、私の推定では、三倍から四倍に十年間でふえているというふうに思います。これは間違っていたらひとつ御指摘願いたいのですが、登記行政需要は御承知のように年々激増して、あちらへ鉄道ができる、あちらへ高速道路ができるというようなことももちろんありますし、非常にふえております。しかも緊急を要するということで、登記が済まなければ金の支払いができない、こういう関係がありますから、非常に急がれている。しかも件数が激増しておるという状況になっておることは、御承知だと思います。  ところで、一体職員数のほうはどうか。なるほど乙号事件等手書きでなくなってリコピー相当なりましたが、そらかといって、甲号事件などはそうリコピーでやるわけにはいかない。甲号事件はやはり手書きあるいはタイプということにならざるを得ない。その人員は十年間幾らふえているか、こう調べてみると、わずかに〇・一八、したがって十年前に比べて一・一八倍、こういうふうに私の調べた範囲ではなっております。当然登記所関係では登録税が入ってくるわけですから、相当金額にのぼると思います。一年間登記関係手数料収入印紙収入、これが一体どのくらいあるのか、どのくらいかせいでいるのかということと比較してみると、人員の増がきわめて少な過ぎる。もうかっているということばは使ってはおかしいけれども相当収入をあげていると私は思う。それで非常に少ない職員でこれだけの仕事をやり抜く。からだが悪くなるというような人もどんどんふえてくるという状況であるのに、最近行政管理庁が、御承知のように、ことしまでの三年間に五%ずつの定員削減、今度はまたさらに来年度から七%の定員削減をやる、こういうことでそれは忠実に守っておられる。守っておられるから、それはそれでいいとして、増員をもっともっとやらなければならない。  ところで、昭和四十六年には二百名の増員がこの関係で認められておるのですけれども定員削減が百二十二名、そうなると実質上はわずかに七十八名。ほかの官庁に比べたらよほどふえているほうだ、こうおっしゃるでありましょうけれども登記所件数の激増に比べたら、やはり登記所は一番ひどいんじゃないか。裁判所その他も、これからあとで述べますけれども、ひどいものです。それを、こうしたことで人間をあまりふやさないということになっておるのですが、この点の大蔵行管――行管はいま言った定員削減の問題、大蔵のほうは予算の問題、こういうことですが、ちょうどきょうは大蔵主計官もおいでになっている。予算編成で非常に忙しいところでありますけれども、わざわざ出てきてもらって、ほかのこともちょっと聞くことがあるのですが、大蔵のほうは急ぐようだから、なるべく早く解放してやりたいと思いますが、この点をどう見ておるかということについて、ひとつ大蔵行管に初め聞きたい。
  9. 海原公輝

    海原説明員 お答えいたします。  冒頭に、たいへんありがたいおことばをいただきまして、ありがとうございました。  法務局におきます登記事務が、先生が申されましたように逐年増加しておる、そして繁忙度を加えておるということは、私ども承知しているところでございます。そこで、あるいは不十分だという御批判もあろうかと思いますが、私どもとしては可能な限り増員措置を講じてきているつもりでございます。御存じのとおり、また先生御自身おっしゃられましたように、増員抑制というものは政府行政方針でございまして、増員だけで事務量増に対応するということは、現実問題といたしましてなかなか困難な状況にあろうかと思います。そこで、事務合理化なりあるいは機械化ということを十分推進していかなければならないわけでございます。この面につきましても、経費の面で私どもとしてはできる限りのことをしているわけでございます。  こういう合理化なりあるいは事務機械化というような大きな流れの一環といたしまして、一部の謄本作成事務というものを、実は民間業者に請け負わしてやっておるという状況でございます。  以上でございます。
  10. 加地夏雄

    加地説明員 登記所増員需要と申しますか、そういう需要の問題、さらに定員の増加の問題、これにつきましては、先生の御指摘もございましたし、またいま海原主計官からも御答弁申し上げましたように、私どもも全く同じように考えているわけでございます。  ただ、三百つけ加えさしていただきますと、御承知のように、非常にきびしい定員管理の中でございますが、約十年間を通じまして、削減分とそれから増員分との差し引きをいたしまして、千人を若干こえる増員をしてきておるわけでございまして、ここら辺が、私ども十分登記所実態というものを考えまして、年々配慮を加えてきたということでございます。  以上でございます。
  11. 畑和

    畑委員 いま両当局から答弁を聞きましたけれども、できる限りやっておるのだ、特にその実態はわかっているから、ほかのところに比べてできるだけやっておるのだ、特にそれを補らために、大蔵省のほうも下請予算を出しておる、こういうようなお話でございます。私がこれから問題にするのは、まさにその下請の問題です。下請関係で、一体それをやって効果をはたしてあげているかどらかという問題が一つはあるわけです。同時にまた、下請関係相当お金を払う。これからも、来年度も、査定はおそらくいままでの倍ぐらいにはなるのだろうと思いますが、だいぶふえてくると思う。  ところで、それは下請だからそれでいいんだということでは私はないと思う。かえって下請のほうが、賃金を払うのも相当多いように私は見ておるのです。今度、またあとで触れますけれども外郭団体財団法人登記協会というのができましたけれども、それがそうした下請関係仕事として派遣をする。各実施庁派遣職員の本俸は一体いま幾らかというと三万二千円、そのほか外勤手当が三千円、皆勤手当が二千円、都市手当が三千円、しかも交通費を全部負担しておるのです。したがって、手取りは四万円以上となっている。法務局下級職員手取り幾らかというと三万円ぐらいで、それを大きく上回っておる。しかも臨時職員などは一日一千五十円、一カ月二万五千円というようなことになりますと、それとの非常に権衡を失することはもちろんであります。  しかも、能率が非常にいいなら別だけれども、そうじゃなくて、四十過ぎたような、五十ぐらいになるような奥さんたちを使って、一定の時間でぴっちり帰ってしまう、こういうことで、あと始末はみんな正規職員がやるというようなことだそうであります。しかも、正規職員のいまの一番下のほうは三万円、それから臨時職員はさらにそれより低い二万五千円ぐらい、こういうことで、かえって登記協会派遣職員のほうがはるかにお金をとっている。それは、結局その謄写の一枚の手数料が七円だそうですけれども、それで優にカバーできるからこそこれは存続する見込みがあるわけなんで、そういうことからするとむしろ高い。そうした派遣職員を使って、しかも能率があがらない。そらして正規職員がしわ寄せされる。責任の分界がはっきりしない。事故があったって、一体だれが責任を負うかということになると、結局登記所認証係長あたり責任を負わざるを得ない、こういうことになるわけだと思うのです。非常にそのしわ寄せがくるということになるのですが、この辺の問題について、主計官はどう考えておられますか。かえって、私は下請予算を出すよりも、大蔵省としても人間予算をふやすというふうにする――法務省がそうじゃないと言うのなら別ですが、法務省はどう言っておるのか知らぬけれどもあとで聞きますが、私はむしろ正規職員をもっとふやす、そして下請をやらせないということが理想だ、こう思うのです。当分の間、この登記事務というのはますますふえるばかりだと思います。ちょっとふえてまたなくなっちゃうというようなときのことを考えると、なるほど正規職員はなるべく節約しておいて、一時臨時にそうした下請にやらせるほうが世話がなくてよろしいということはあるかもしらぬけれども、こういうように国土は狭いのですから、経済成長幾ら鈍るといったって、安定成長になるといったって、当分これは続くのだ。そういうことになれば、やはり正規定員をもっとふやすということに重点を置くべきではないか、こういうふうに考えるが、どうですか。かえって不経済じゃないかと思うのですが……。
  12. 海原公輝

    海原説明員 お答えいたします。  先生のおっしゃいますところは、そういった請負という形ではなくして、増員で対処するのがいいのではないかという御質問の御趣旨かと思いますが、増員につきましては、片や先ほど申し上げましたように、及ばずながら増員措置を講じてきております。基本的には、いま申し上げましたような、登記事務が逐年増大しておるということをどういうふうに吸収していくかという問題かと思います。増員措置と同時に、合理化あるいは機械化、あるいは場合によっては将来の方向としては、電算になり得るかどうかという問題も含めまして検討していただかなければならない問題かと思いますが、そういったいわば過渡期措置といたしまして、請負をするということが一つの現実的な解決方策であるという認識に立ちまして、法務省のほうから予算の御要求がございまして、これが認められましたのはたしか四十五年度からだと思いますが、そういう一つ方策として編み出されたものでございます。もちろん、運用面におきましていろいろ問題があることは私も若干ながら聞き知っておりますが、そういうことは、運用実態を改むべきものは改めていくということでやはり対処していかなければならないのではないかと、かように考えている次第でございます。
  13. 畑和

    畑委員 結局、その登記協会なんといったって外郭団体で、あとでいろいろ法務省関係にお聞きしますけれども法務局長をやられた古手の人たち理事になって、まあいい意味もあって、われわれが先頭を切ってやらなくちゃならないということでつくられたのかもしらぬ。いままでコピー会社か何かに下請をやらせていた、それが、どうもコピー会社のほうでかなわぬというようなこともあって、いろいろむずかしい問題なんかあって、それでひとつ一本にしてそういう公益法人をつくってやろう、こういう考えで、あるいは善意の点もあろうかと思いますけれども、そういうものをつくったが、結局そうすると、そこに職員をかかえているということになるので、それを派遣するということになろうと思うのです。それで場合によったら、それが居つかない職員でもあったら、ほんとうに派出婦か何かを派出するような形に現実にはなるおそれが非常に多いのじゃないかと思うのです。しかも相当金は食うということになる。相当定員をふやしていると言うけれども、それでも足りないから、結局やはり下請に出すということになるのだと思うので、これは法務省のほうの考えがきちっとしなければ主計官のほらも困るのかもしらぬが、法務省のほうでそういうのなら下請にということになって、では下請のほうの予算を出しましょう、こういうことになったのだろうと思う。まあ主計官のほうだけ責めても困るだろうけれども、ひとつ実情を認識してもらおうということで忙しいところを出てきてもらった、こういうことです。ここで水かけ論をやっていてもしかたがないから、ひとつ今後ともそうした実情大蔵省のほうでもよく御認識いただいて、そしていつも仕事の非常に多いところは多いところのように実情を洞察してもらって、それにはまだ法務省のPRが足りないかもしらぬけれども、大いにPRしてもらって、実情を認識してもらって人員をふやす、そうして職員が一生懸命まじめにやれるように、そういう雰囲気をつくってもらいたい、こう思う。  どうも、そういう関係で、いま法務局仕事の非常に繁忙なところは不満が非常に多いらしい。不満が多くては仕事能率があがらぬです。間違いの記入も非常に多かったりして、いまときどき問題があるようですよ。登記こそ非常に問題ですから、訴訟で争わなければならぬこともあるが、やるたびに法務省がこの関係では負けているようだ。これはやはりミスだからしかたがない。しかし、どうしても労働過重になるから、急がれるから結局ミスが多くなる、こういうことになると思う。そういうことを考えれば、やはり正規人間をふやすということに重点を置くことが絶対必要だと思う。それについて法務省民事局の意見をひとつ聞きたい。あなたは大蔵省のほうにどういうふうに言っているのか。片方は、定員をふやしてもらえないから、したがって、では下請にということで、安易に下請のほうだけ考えているのじゃなかろうか、こういうような感じがしてならない。その点を、ひとつ法務省民事局のほうから答弁願いたいと思う。
  14. 川島一郎

    川島(一)政府委員 登記所実情、たいへんよく御理解いただいた上での御質問で、その点私ども非常に感謝いたしておる次第でございます。  確かに、登記所事務は毎年ふえておりますし、現在におきましても、相当大きな事務の負担をしょっているという状態でございます。これに対しまして、私どもといたしましては、いつも申し上げておることでございますけれども事務合理化、足らざる分は増員ということで、そういう措置関係当局にお願いしてまいってきておる次第でございます。増員だけですべて事が済むということであれば非常に簡単でございますけれども、先ほど主計官のほうからお話もございましたように、定員増員抑制という強い要請が一方にございます。その情勢のもとでかなり毎年御配慮をいただいて、若干ずつ人間をふやしていただいておるということでございますが、そういった増員抑制の中でどうしても限度があるということになりますと、増員以外の方法も十分検討していかなければならない。その一つ方法として、先ほど来お話の、乙号事務の一部委託ということを考えておるわけでございます。  この乙号事務委託というのは、御承知のように、登記簿の謄抄本の請求がありました場合に、その登記簿から登記用紙を抜き出しましてそれを複写するというその複写作業、これは非常に機械的な作業でございますが、この複写作業部外委託してやらせるということでございまして、作業としては非常に機械的な仕事でございます。したがいまして、こういう仕事は、非常に忙しい登記所におきましては、量が非常に多くなると同時に、内容的には無味乾燥仕事でございまして、ただでさえ少ない要員の中から人員をさいてこういう仕事に当たらせるということは、現状においては、人員経済の上から言っても非常にもったいない。それからまた、これに当たる本人の士気にもいい影響を与えないというようなことがございます。それからさらに、忙しい登記所におきましては、司法書士補助者のようなものが、謄本作成事務を手伝っているというようなところもかなりございまして、こういうものも排除しなければならない。いろいろな事情がございまして、最近の傾向から申しますと、こういう機械的な作業はできる限り能率的に事を処理するという立場から申しまして、部外委託というのも一つの適当な方法ではなかろうかということで、これも事務合理化対策一環としてあわせて採用しているということでございまして、増員増員でまた別途に要求いたしておりますので、決して増員抑制して乙号事務委託によって事を済まそう、こういう考え方ではございません。その点ははっきり申し上げておきたいと思います。
  15. 畑和

    畑委員 そう答弁されますけれども、あなた方のかまえが、もうそういうときには部外下請してやるのだという気やすさというのがあるので、それで定員増についての熱意が足りないということによって、ますますそういった下請のほうが拡大していくということになると思う。それはそうじゃないとおっしゃるからなんですけれども、この辺をひとつ十分考えてもらって、主計官のほうにも大いに実情を認識してもらって、定員増にまず重点を置く、こういうことにしてもらいたいと思うのです。  主計官お忙しいようだから、もうこれでよろしゅうございます。ひとつその点十分実情をわかってもらいたいと思う。
  16. 高橋英吉

    高橋(英)委員長代理 主計官はこれでいいですが、いまの畑君の要求は与野党一致しておりますから、それを参考にひとつ……。
  17. 畑和

    畑委員 それでは続いて質問をいたします。  私の調べたところによりますと、いままでは増員が認められなかった、非常に少なかったというようなことで、登記所関係では年間に延べだと約五十六万人ぐらいの部外者応援、さっき言った司法書士手伝い人たちに便宜上謄写複写をやってもらったり――早くもらいたいから、それで手が間に合わないから、そうすると、司法書士のところの事務員が行ってそれをかわってやって、最後に読み合わせだけして、それで認証の判をもらう、こういうことがあったことは、私も弁護士だからいままでの経験で知っておるのです。そういうこととか、あるいは土地家屋調査士事務員だとか、それから県庁、市役所、こらいったところが実際そういう仕事をしてきた、その数が年間に五十六万ぐらいある、こういうふうなことをいわれておるのですが、これはどうでしょうか。大体そのぐらい部外者応援というのをもらっておった。これは決していいことではないので、これをやはり排除しなければならないということから、今度の下請というようなことになったと私は思う。定員がふえないというととでやむを得ず下請ということになったと思うのだけれども、まだそれだけで足りないで、また最近、十数年前になりますか、例の一人庁で、奥さんに少し、一月に千円か二千円かその辺の、とにかく非常に少ない金額お金を出して、奥さんたちに受付だとか電話当番だとか、そういうことをやってもらうというようなことでやっておるような話を聞いておる。それだけでも、その登記所の数が全国に五百もある、こういうような形で過ごしてきておる、こういう話を聞いておるのですが、その辺はいかがでしょうか。部外者応援は大体そのくらいだったということは、それでよろしいのですか、どうですか。それから、いま言った奥さんたちを使って、どのくらい金をやってやっておるか、私が調べたのと違っておるか、その辺をひとつ民事局のほらから答弁願いたい。
  18. 川島一郎

    川島(一)政府委員 部外応援の数は五十六万というふうに言われましたけれども、正確には把握できませんけれども、延べ人員にいたしますと、大体先生のおっしゃっておる五十万から六十万の聞くらいになろうというふうに思われます。  それから、一人庁の場合の奥さん手伝いということでございますが、これは御承知のように、一人しかいない登記所でも、所長が出張、実地調査などのために役所をあけなければならない、こういう場合が出てまいります。その場合に事務所の留守を預かって、そして申請人が来れば多少応対するとか、そういった仕事が出てまいりますので、そういう点を考えまして若干の手当と申しますか、そういう実質を伴うものを支給しております。金額はごくわずかでございまして、一年間に一万三千円程度のものではないかと思います。
  19. 畑和

    畑委員 そういうことで、だんだんそういった部外者を排除していく、そうして職員仕事の中で、できるだけ単純業務は解放する、こういうことがあなたのほうのたてまえですね。今度の下請制度で、乙号事務仕事を民間に下請させるという考えになったのは、そういうことだと思う。定員がふえないというような関係もあって、そういうことになったと思うのだが、この前この制度が導入された当時、私も質問をしたことがある記憶がございます。大体幾ら機械的な単純業務だとはいっても、これはやはりりっぱな公簿ですから、それの秘密等が漏れることはぐあいが悪いということ、したがって、外へ持っていって散逸したりすることは困るから、外は絶対だめだ、中へ人間が来てそれのコピーをやる、そしてとじたり照合したりなんかする、こういうことだと思う。  ところが、これはそういった国民の権利に関する、財産権に関する問題であるから、よほど注意しなければならぬわけであります。いまの法制上から、事務の形態から見まして、そういった民間人への委託ということは、私はやはり本来ぐあいが悪いのだと思う。本来やるべきものじゃないと思う。しかたないからやるということなのかもしれぬ。しかも単純業務だし、それでしかたないからやるということだと思う。本来登記所正規職員がこれはやるべきものだ。それでないと、万一間違いがあったとき非常に困ると思う。部外へ持っていくのじゃないからまだいいけれど、内部でやるからまだいいようなものの、やはりそうしたことが、要するに登記所職員でないから間違いが起きたときにどうするのか、責任の問題も出てくることだと思うのです。そういう意味で、この前も私は警告を与えておいたつもりであります。そういうことだから、登記行政ということを法務省のほうは軽視をしているのじゃないか。登記所の管理上の重大な問題があるのではないかと私は考える。この点はどうお考えになりますか。
  20. 川島一郎

    川島(一)政府委員 その前に、事務委託、いわゆる乙号事務の一部委託というものを、どの範囲でやっているかということを簡単に申し上げたいと思いますが、これは主として大都市にあります繁忙庁に限っておりまして、先ほどお話のございました一人庁などでは、こういうことはいたしておりません。ごくわずかの繁忙庁に限ってこれを実施しているわけでございます。  ところで、登記事務の一部であるから、秘密の点、それから事務責任の点などで問題がないだろうかというお尋ねでございますが、こういう点につきましては、十分注意をいたしておるつもりでございます。ことに、この仕事は機械的な部分だけに限っておりまして、たとえば乙号の申請書を受け付けるとか、あるいは登記簿を出すとか、あるいはでき上がったそのコピーに認証を付するとか、これを申請人に交付するとか、こういったことは一切登記所の本来の職員がやっております。委託をいたしておりますのは複写作業、これに伴うところの紙を二つ折りにして点綴する、こらいったごく機械的な部分だけに限っております。したがって、あくまで事務責任登記所職員が負うような仕組みで運営されておりますので、内容的に部外の者が関与したからといって、それによって事務が不適正に行なわれるというようなことはあり得ないことだと思います。また秘密などの点につきましては、これは機械的な作業でございますから、あまり心配ないと思いますけれども、契約書におきまして、十分その秘密は守って、職務上知り得た点については、部外に漏らしてはならぬというようなことも取りきめておりまして、十分配慮しているつもりでございます。
  21. 畑和

    畑委員 秘密を外へ漏らしてはいかぬと取りきめてあると言われても、もし事件が起きたらどうするのだということになると、やはり考えざるを得ないと思う。それと同時に、機械的な仕事であるから、最後の責任は、とにかくそれを見た上で、結局認証係長、そらした者が責任を負うのだと言うけれども、それは認証係長としては相当な負担ですね。これは正規職員であれば、係長あたりの責任もまだ軽い。またそこで分担するから、正規職員が。ところが身の軽い、無責任な、そしてよそから来た人、臨時に来た人、こういう人がやったことまで、全部が全部こまかいところまで目を通すことは、なかなか容易なことではない。そういうことから、やはり認証係長としては、むしろ正規職員を使ってもらったほうが気が楽だ。こういうことによって、かえって正規職員がしわ寄せされて非常に責任が重くなる、こういうことになるのではないかと思う。それを議論していてもしかたがないから、先に進みます。  その次にお聞きしたいのは、会計検査院の方は来ておりますね。――先ほど申し上げましたように、下請大蔵省が認めて、発足してことしで三年目ですか、来年が四年目か五年目ですが、その予算執行上、いままでいろいろ問題があったというふうに聞いておるのです。これはそういう問題があったので、今度新しく登記協会というのをつくったのかどらかわかりませんが、いままでは幾つかのコピー会社委託をしておったというようなことで、その辺の会計支出上、会計検査院が見た場合、不当支出の疑いがあるということで-金額的には大したことはないでしょう、予算面でも大したことはないのだからね。そういうことで指摘事項になっておるのがあるのではないかというふうに聞いておりますが、具体的にあったとすれば、どこの庁であってどういうことなのか、それをひとつ教えてもらいたい。
  22. 柴崎敏郎

    ○柴崎会計検査院説明員 お答えいたします。  実は、当局のほうからも御説明がただいまございましたが、この複写を外注している局はすべての局ではございませんで、東京法務局、横浜地方法務局、浦和地方法務局、それから千葉地方法務局、それから仙台の法務局と名古屋の法務局、この六局で実施されております。  それで、私どものほうではことし、このすべてを悉皆的に検査することができませんでしたので、そのうちの東京、横浜、浦和、千葉の四局につきまして検査をいたしました。  検査の観点は、まず支払い額が高過ぎはしないかという観点が一つと、それから実際に業者が処理した件数に見合った支払いが行なわれているか、この二点を主眼点として検査したわけでございますが、その検査の結果について申し上げますと、これは先生が先ほどからおっしゃっておられますように、一枚七円ということで支払い単価をきめておるわけでございます。この業者のほらが派遣してまいります職員にいろいろとございまして、年齢的に見ましても、若い人もいれば相当年配の人もいる、こういうようなことで、この七円という金額がはたして高いのか安いのかということにつきましては、私どものほうといたしまして、これが高過ぎるというまでの実は結論が出せませんでございましたので、この点については触れておりません。  それから、支払いの金額が処理件数に見合っているかどうかという点でございますけれども、これにつきましては、やや具体的に述べさせていただきますと、東京法務局で、実は年間を通じて、四十五年度でございますけれども、十四万円ほどこれは支払い不足が出ております。これは配賦された予算関係ということでございます。実績に対して実はもっと払わなくちゃいけない。十四万円ほど支払い不足がある。それから、横浜の地方法務局におきましても同じようなことで、これは全額はわずかでございますけれども、五万八千円ほど支払い不足になっております。それから―失礼いたしました。ただいまのは田無の出張所でございます。それから杉並の出張所、これも東京法務局の管内でございますけれども、ここで十二万円ほどやはり支払い不足がございます。訂正いたしますが、横浜地方法務局では、処理いたしました見合いの金額がそのとおり支払われております。それから、浦和の地方法務局におきましても、全く処理いたしましたのに相当する金額が支払われております。ただ、千葉の地方法務局におきましては、これは東京法務局の場合と逆に、十六万円ほどでございますけれども、これは業者の実績のほらが、書類によりますと支払いの件数よりも少ないということで、十六万円ほどの過払い額が出ております。  個々に申し上げますとこういうことでございますが、総体検査いたしましたところを差し引きいたしますと、そのほかにも若干の要素がございますけれども、国といたしましては業者に対して七万円の支払い不足額が出ている、こういう結果でございます。  以上でございます。
  23. 畑和

    畑委員 まだ予算が多くはないし、始まったばかりだから、金額的にはそういった過誤が少ないと思うのですがね。ただ、よけい払い過ぎていると国の損になるし、予算が足りないからといって払わないというのは、これはまたけしからぬ話で、やはり会計検査院に指摘されないで済むように、ぴしっと一枚幾らということで、実績に合った金額、掛けた金額がちゃんと払われていなくちゃならぬというのが本来だ、こう思うのです。その点は、ではそれでわかりました。  それから、その後最近、そういうことや何かあったということかどうかわからぬけれども外郭団体として財団法人登記協会というものを設立して十月ころからか業務を開始した。そうして各実施庁等と契約を結んで、法務省民事局のほうでいろいろ指導して会議を開いて、そうして今度はいままでのような個々の業者にやらせるのでなくて、一本化したそうした登記協会なるものを発足させて、そこから職員を各繁忙庁に派遣して、各繁忙庁との間の契約ということになっておる模様だ、そういうふうに私は承知いたしておるのですが、設立のいきさつは、私が申したことと違うかどらか、どういういきさつでそうした登記協会を設立させるようないきさつになったのかということが一つ。  それから、登記協会の正式の設立の目的あるいは事業、それから役員、こういった点などもひとつ民事局のほうから明らかにしてもらいたいと思います。
  24. 川島一郎

    川島(一)政府委員 登記協会は本年の七月一日に設立許可を受けまして、七月二日に財団法人の登記をいたしております民法上の公益法人でございます。  その目的は、寄附行為の第四条に定められておりまして、「本会は、登記に関する調査研究および知識の普及その他登記制度の円滑な運営に寄与する活動を行ない、もって登記制度を利用する者の便益の増進をはかることを目的とする。」つまり登記制度の運営が円滑にいくような、それに寄与するような活動を行なうということが目的となっております。  それから、事業は寄附行為の第五条に定められておりまして、第一が、「登記に関する調査研究」二が、「登記制度に関する啓発宣伝」三が、「登記制度に関する図書、印刷物の印刷および刊行頒布」四が、「登記事務処理に関する能率機器の研究開発」五が、「登記制度の円滑な運営に寄与するためにする謄写・印刷等の業務の受託」これが先ほどの部外委託関係になってくるわけでございます。六が、「その他前条の目的を達成するために必要な事業」こういうことになっております。  それから役員でございますが、これは理事十名以内、監事二名となっておりますが、現実には理事が五名、監事が二名でその衝に当たっておるわけでございます。先ほどお話にもございましたように、理事、監事、そういう役員はかつて法務局につとめておった方々でございまして、かねてから登記制度には非常に関心を持っておられまして、何とかこの登記制度の運営がうまくいくようにできるだけの協力をしたい、こういう考えからこの法人がつくられたものである、このように承知いたしております。
  25. 畑和

    畑委員 目的とする事業ということで、事業が幾つかに分かれておる。幾つかの項目のものが、いま述べられたような点があるようです。その中に、先ほど来問題になっております謄写、印刷等の業務、つまり「登記制度の円滑な運営に寄与するためにする謄写・印刷等の業務の受託」こういうのがございますが、これがすなわちそれだと思う。これが一番の端緒なんですか。これをやるのが設立させよう、しようという動機なんですか。それともほかの図書や何かの出版だとか、登記制度の啓発宣伝、そういったものが主なんですか、どうなんでしょうか。
  26. 川島一郎

    川島(一)政府委員 どれがおもなる事業であるかという点につきましては、私、必ずしも詳しく承知しておらないわけでございますが、この「登記に関する調査研究」とかあるいは「啓発宣伝」こういったことにもかなり力を注ぎたいということのようでございますが、まだ七月に発足したばかりでございますので、現在若干の計画としては考えておるかと思いますけれども、実際にはそこまでは実行していないという段階でございまして、現在若干の印刷物などはつくっておるようでございますが、そのほかには、ごく最近になって、この「謄写・印刷等の業務の受託」これを行なっているという現状でございます。
  27. 畑和

    畑委員 これの設立の許可一これは法務大臣がやられたわけですね、法務省関係であるわけですから。それで設立の許可が七月の一日、そのあといろいろ、先ほど言ったようなことをまず第一の仕事としてやっておられる。図書の出版も、これからやっていくかやっている途中かその辺だと思うのです。そういうことだと思います。  ところでお聞きしたいのだが、との登記協会というのは現在どこに事務所があるのか。聞くところによると、現在東京の法務局の中にあるというふうに聞いておる。よく外郭団体等はそういうところに同居というような、部屋を借りるというようなことが往々にしてありますけれども、そういうふうに聞いておりますが、その辺どうでしょう。
  28. 川島一郎

    川島(一)政府委員 登記協会事務所は、寄附行為の上では、「東京都千代田区に置く。」ということになっておりまして、現在千代田区の丸の内二丁目に置かれております。東京法務局の中ではございません。東京法務局では、先ほど問題になりました業務の委託をやっておりますので、その関係登記協会職員が出入りいたしておりますし、そのためのたまり場と申しますか、そういうようなことに利用しているところがあろうかと思いますけれども事務所は別のところでございます。
  29. 畑和

    畑委員 そうすると、登記上の事務所は千代田区で、中央区築地というのは違うのですか。千代田区大手町一丁目三番三号、これが大手町の合同庁舎の番地だと思います。そうするとどこでしょうか、私はちょっといま聞き漏らしたのですが、いまの正式の事務所です。
  30. 川島一郎

    川島(一)政府委員 東京都千代田区丸の内二丁目一番二号でございます。
  31. 畑和

    畑委員 ところで、こういう登記協会の案内を各法務局長はじめ各地に出しておるらしい。これを見ますと、近く「大手町合同庁舎第3号館東京法務局内へ移転します。」と書いてあります。現実に、実際はそこだそうですよ。懇談室という部屋があって、そこへ実際上は行っているのだ。そうじゃないですか。そういうふうに私は聞いてますよ。それでしかも、机だとかいすだとかその他備品、事務用品すべてを東京法務局の会計課から支出されている。会計課でそういうものまで買ってやっている。帳簿上はそういうふうにはなってないかもしらぬ。正式には法務局の備品になっているかどうかわかりませんけれども、とにかく新しいものを買ってやって、懇談室という部屋、そういう名前のところ、そこを事実上の事務所にしているということなんだが、公益法人とはいったって一法人なんですね。その財産を国の予算で支出することはできないはずなんです。これは実際どうなっているのか、この辺明らかにしてもらいたい。
  32. 川島一郎

    川島(一)政府委員 先生がお持ちになっておられるパンフレットは、おそらく登記協会が発足した当時つくったものではなかろうかと思いますが、それに予定と書いてあるとのことでございますけれども、実際には先ほど申し上げたとおりでございまして、移転しておりませんし、やはり役所の中に事務所を置くということは好ましいことではないと考えております。何か机など買ってやっておるということでございますけれども、そのような事実はないだろうと思います。
  33. 畑和

    畑委員 それはひとつ徹底的に調べてもらいたいです。これは事実そこを事務所にしておりますよ。とにかく全法務の働く人たちがちゃんと調査した結果を私は聞いたのだから、現実は間違いないのだ。それをそんなかっこうをとっているだけなんです。しかもこのパンフレットだって、見なさい、この写真は合同庁舎の写真でしょう。こういうのはいかぬです。あたかもこれが登記協会のごときような印象を受けるでしょう。こういう宣伝をするのはいかぬです。こういう写真、こんな大きな建物、これが合同庁舎だと私は思うのですが、違いますか。これが事実上の事務所になっているというふうに聞いている。よくありますよ、形の上の事務所、形式上の事務所と実際に事務をとっているところと別のところが往々にしてあります。この登記協会のこれがこれに当たるのじゃないか。そうなっているんだとけしからぬと言うのです。これだと明らかに違法です。役所を使ってやっておる。もっとも役所出のえらい人たちがみんな理事に連なっていて、それでやるということでも、これは明らかにはっきり区別しなければいかぬ。あなたが調査が足りないか、あなたがとぼけているのかです。第一課長、どうなんですか。あなた、担当なんだからどう考えているのか聞きたい。いかがですか。はっきりしなければはっきりしないというので、今度調査してあと結果を報告してもらいたい。
  34. 住吉君彦

    ○住吉説明員 事務所の所在地につきましては、ただいま局長からお答え申し上げたとおりでございます。  それから什器、備品のたぐいを貸与しておるという点については、十分調査をいたしておりませんが、あるいは派遣職員のためのそういうものを――派遣職員といいますか、協会から複写事務を請け負って派遣される職員のためのそういう執務器具というようなものを貸与しておるというようなことは考えられると思いますが、その辺の実態は詳細調査いたしまして、後刻御報告いたします。
  35. 畑和

    畑委員 調査いたしまして御報告いたしますなんということはないでしょう。あなた方の東京法務局だもの、それの部屋がどうなっているか、あなた、民事局は知らないはずはないのだ。知らなくちゃ困るのだ。そういうことは結局使っているということなんですよ。派遣職員云々と言ったって、派遣職員はみんな現実には各実施庁で募集しているのだ。それが現実なんだ。募集しているのだよ。登記協会で全部募集してやっているんじゃなくて、実際には実施庁で、刑務所の職員奥さんとか何とかというのを頼むとか、あるいはいままでのコピー会社の者を引き受けるとか、そういう形にして、実際には実施庁でやらしているらしいが、それではいけませんわ。それだったら、登記協会にそんな部屋で事務をとらせる必要はないのですよ。そんな部屋を設ける必要はないのですよ。各実施庁でやっているのだから、ただ電話で連絡くらいのものだと私は思いますよ。だから、やはり実質的には、登記業務や何かのことまでも頭に入れた、私は実質上の事務室じゃないかと思うのです。この実質上の事務室を、とにかく法務省はただで貸して、しかもその備品がどこの名義になっているかわからぬ。買ってやったとすれば不当支出だし、これは問題になりますわ。どうですか、これが事実とすれば、法務政務次官どう考えますか。いけないと思いますか。
  36. 村山達雄

    ○村山政府委員 ただいま民事局長並びに第一課長がお答えしておりますので、その点は至急調査いたしまして御報告申し上げます。もし非違の点があったら、是正させたいと思っておるわけでございます。
  37. 高橋英吉

    高橋(英)委員長代理 これはなんですね、いま畑君の質問しているような事実があるとすれば、それは合理性があるなら堂々と合理性を主張されて、そういうふうな理由のもとでこういうようにしているのだと言われるもよし、事実があるのを隠蔽するような、隠しているようなことがあるとぐあいが悪いのだがね。だから、そこらの点をはっきりさせるように…。
  38. 村山達雄

    ○村山政府委員 いまお答え申し上げたとおりでございますが、国費で備品を買って、それを協会にただでやるというようなことは、もうあり得ないことだと常識上思うわけでございまして、ただ、国の備品をそこへ派出している職員が事実上使っている、役所の備品をそこの職場で使うということは、これはあり得ることだと思うわけでございます。しかし、先生の御指摘でございますので、慎重を期すためによく調査をいたしまして、後刻御報告申し上げたい、こう思います。
  39. 畑和

    畑委員 では、ひとつそういうふうにやっていただきたいと思います。  それから、登記協会の目的あるいは事業から見まして、登記所のいま言ったような下請、これをやることになっている。それから、ここには書いてありませんけれども登記の記入、窓口相談、それから印紙の売りさばき、こういった事業に拡大しようというようなことを考えておるようなふうに聞いておるのです。それは相当人間を集めなければならぬということになる。この人間を集めて法務局の注文に応じて派遣する、こういろシステムだとすれば、これは一種の職業安定法の制限に触れるのではないか。四十四条と四十五条、これに触れるおそれはないかということ。これは人的供給契約ということが実質のようです。契約書では、結局一枚幾ら下請仕事の請け負い契約のような形をとっているらしいが、実質的にはそうした人的供給契約をするというような、大体皆さんの間の、各実施庁登記協会との打ち合わせの文書を私は入手しておりますが、それによりますとそういうふうに書いてある。人的供給契約だ、実際そうだと思う。実際にそうだとすると、職業安定法に触ればしないかと思うのです。口入れ稼業みたいなものだ。これはどこに需要があるからというと、それでは四人ほどそこに回しましょうということで、いまは、先ほど言ったように手がないものだから、各登記所の所長がやむを得ずやらせているらしい。これは登記協会理事たち、おえら方はみなかっての上司だから、何でもうまく使われてしまうということになっていはせぬかという疑いが非常に強い。窓口相談云々なんて言っているけれども、窓口相談なんてやられたら問題だし、これは司法書士の連中が大体これに反対いたしております。そうなると司法書士の職域を害するということで、司法書士の連中が反対運動を起こしておることは御承知でしょう。全法務の労働者の連中も反対しておる。この件について、どういうふうに将来のことも考えておられるのか承りたい。
  40. 川島一郎

    川島(一)政府委員 まず、登記協会がその職員なり作業員の募集を行なっている、これは発足当初のことでございますから、そういうことがあっても当然だと思います。ただ、その人員を募集するにあたって、役所の機関を利用しているというようなお話がございましたけれども、これは私はあり得ないことであると考えております。御承知のように、いまお話にもございましたように、登記協会の事業のやり方につきましては、司法書士会それから組合あたりからもいろいろ関心をもって見られておるところでございますが、それだけに、登記協会といたしましては、そういう誤解を生ずることのないように十分注意して運営しておるということでございますので、私、その職員の募集について疑惑を招くようなことは、これは実際にはあり得ないことだと思っております。いろいろな風評が飛んでおるようでございますけれども、しかし実態は、聞いたところによりますと、そういうことはやっていないということははっきり申しておりました。それから、職業安定法との関係でございますが、これは私、特に問題はないのではないかというふうに考えております。職業安定法は労働者供給事業というようなものを取り締まりの対象にしておるわけでございますが、これはおそらく中間搾取といったようなものを排除させようという趣旨であろうと思いますけれども、この登記協会の場合には、業務の受託にいたしましても協会の責任において事務を請け負って、そこの職員がその事務をやっているわけでございますので、これが職業安定法に抵触するとか、そういうような問題はあり得ないことだと思います。実際に、たとえば官庁や会社の建物の清掃を清掃会社に請け負わせるというようなこともあり得るわけでございまして、それと同じような事柄であるというふうに考えております。  さらにまた、司法書士法との関係でございますが、司法書士の業務は法律で定められておりまして、司法書士でない者が司法書士の業務を扱ってはならないということになっておりますので、登記協会がそのような違法な行為を行なうことはあり得ない、このように考えております。
  41. 畑和

    畑委員 これは登記協会ではないのだけれども、ある実施庁などは印紙の売りさばき、これを職員でやっているようです。幹部の職員が資金を出し合って、何とかやらという法人ではない組織ですね、互助会とか何とかいう名前の法人ではない組織をつくって、それで印紙とか郵券とかそういう郵政関係のものを売る許可をもらってやっておる。それで結局もうけは交際費、おえら方が来たときの交際費、キャバレーなんかに行くかどうかは知らぬけれども、そういう交際費に充てる。かつて刑務所で、私が問題にした例の豚を飼って、その金でえらい人が来たときにごちそうをする金にするということがよく刑務所で問題になっているのです。実際にあるのです。それと同じようなことが登記関係にもあるようです。それが今度は、ちょっと法人じゃないからぐあいが悪いということでだめになってしまう。そして今度は登記協会、これは法人だから登記協会にそれをやらす。登記協会一つの事業として登記協会の名前でやる、名前だけ貸すというような計画が進んでおるような事実があるようであります。この場所ははっきり申しませんが、そろいうことだと登記協会がうまく利用されるんだな。法人だものだから、おえら方の一番そのトップクラスでつくっておるものだから、そういうことで、これからいろいろな仕事が多くなる可能性がある。まだできたばかりだからわからぬけれども、結局高級官僚の天下りでそれを固められる。そういうことだから、理事がおえら方だから、下のほうの法務局長は言うことを聞かざるを得ない、そういうことになる可能性が非常に強い。どうしても無理をする。  たとえば、いま現に浦和の地方法務局登記協会が覚書を取りかわしてやっております。その中に、「派遣職員の出勤簿は、認証係長が保管、管理する」ということになっておりますね。これはだれもほかにしないのだから、認証係長が全然違う団体の職員の出勤簿の管理などもやるということになっておる。これなんか、やはり私は不当じゃないかと思うのですな。これはやるべきことじゃない。それを押しつけられてやる、そういうように覚書に署名する、こういうことがあるようです。それから、「法務局において健康診断、予防注射を行なうときは、派遣職員についても併せて行なうものとする。ただし、これに要する経費は登記協会が負担するものとする。」こう書いてはあるけれども、実際には結局はただでやってしまう。局としても伝染病がはやっては困りますから、それでやってしまうという可能性がないかというようなことがやはり心配になる。それから、「局長は、委託作業実施庁の長をして登記協会との事務連絡に当たらせるものとする。」局長のほうで、登記協会とのあれに当たらせるというわけですよ。こっちから連絡させるということですか。「右の長は、登記協会派遣職員との間の事務連絡及び事務の統括に当たるものとする。」こういうふうになっておるから、なかなか責任が重いんだな。登記協会登記所で世話になるから、人間を供給してもらうからということもあるかもしれないけれども、これはやはりさい然と区別をしなければいかぬが、外郭団体はおえら方が理事になっているから、どうしても言うことを聞かざるを得ないことになるのじゃないか。この点はどうですか。
  42. 高橋英吉

    高橋(英)委員長代理 畑君、二時間近くになって、一時間半以上になるから、答弁も簡単にしてもらって、それで研究もしてもらって、通常国会でらんと張り切ってやってもらうことにして、あとは青柳君もいるし、十二時までに済ませなければならぬから、これで済ませてくださいよ。
  43. 畑和

    畑委員 肝心なところだから…。
  44. 川島一郎

    川島(一)政府委員 印紙売りさばきなど、将来の問題につきましては、私もまだ何とお答えしていいかわかりませんので、その点は別にいたしまして、請負契約を法務局登記協会で結んでおります以上、法務局のほうでは何もしなくてもいいというわけにもまいらないので、やはり契約上のいろいろな事務につきまして双方で仕事をし、協議をしなければならぬ場合もいろいろあろうと思います。その場合の責任者をきめておくということは、別にどうということはないんじゃないかと思いますし、出勤簿の件にいたしましても、その程度のことを役所の職員がやる、これは契約の当事者としての立場で、相手方の契約の履行状況を調べるという意味もあろうかと思いますので、その程度のことであれば、別にどうということはないかと思います。  また、登記協会法務局職員であった者によって構成されているために、法務局がいろいろよけいな負担を負っているという点につきましては、私、そのような事実はないと思いますし、ただいま御指摘のような点につきましては、これは契約の当事者として当然やるべきことであるというふうに考えますので、それほど先生のおっしゃるような問題は感じていないわけでございますが、いかがでございましょうか。
  45. 畑和

    畑委員 それから、事業目的の中に登記制度の啓発宣伝、それから図書、印刷物の刊行頒布、こういう項目がある。これは主官庁であるところの法務省民事局、これが本来は企画してやるのが筋だと思う。今度の場合なども、例の新しい根抵当権ですか、ああいう問題がだいぶ変わってきた。それから、例の面積換算の図表なども、みんなどこも必要とすることのようであります。そういう点は民事局のほうで、啓蒙宣伝のために本来はやるべきものだと思う。ところが、登記協会がこれをやるというふうなもののようですね。結局お役所がやると、なかなかその本の売れ行きの結果の利益や何かの関係で処理しにくい、登記協会のほらならそれが比較的処理しやすいというようなことで、どうしても登記協会あたりがこれをどんどんやるようになる。あなた方お役所の人たちが原稿を書いて、そうしてそういうところでやらせるというようなことは、往々にしてどこでもよくやっていますな。そういうようなことがありがちなんじゃないか。したがって、こういった業務に多くの予算を流してやることはどうか。むだづかいになる可能性はないか。まだ出発したばかりですから、そうあまり言うわけにはいかぬけれども、私はそういう可能性を相当秘めて持っていると思うんです。だから、そこで私は警告をしているんです。これが絶対悪いとかなんとか言うわけではありませんけれども、しかし、これは要すればやめてもらいたいのが最後の結論ですけれども、そういう危険性を持っているというふうに思うのであります。  結局、いまこの協会をつくっている理事人たち相当先輩である。名前は、私も承知していますが言いません。りっぱな人たちです。その人たちは、おもに公証人として相当収入もあげておりますから、これによってどうしようということじゃ私はないと思います。そういうふうな勘ぐりは私はしておりませんけれども、ただ、公証人も員数が相当多くなって、なかなか前の人がやめないというようなことで、そのための一つの、高級官僚というか、そういう人たちの受け入れの場所にするというつもりがあるんじゃないか。これはよく行管庁や何かから指摘されているところであります。天下り人事というようなことで外郭団体をつくってそういうふうなことをする。ほかのりっぱな、金のたくさんあるところと違って、これはあわれなところで、そう問題にする必要はないかもしれぬ。ほかの大蔵省その他の堂々たるところで、えらい予算を持った外郭団体、あれとは違うとは思いますけれども、しかし、そういうふうに見られるおそれがあるというふうに思うのであります。その辺のことについてはどうお考えになりますか、ひとつ承りたい。
  46. 川島一郎

    川島(一)政府委員 天下りの場所をつくる、そういう意味でつくったものではございませんし、人事の面でそういった非難や弊害を生ずるようなことはないように、これは法務大臣の監督に服する法人でございますから、私どもといたしましても、その運用につきましては注意をしてまいりたい、このように考えております。
  47. 畑和

    畑委員 先ほど申し上げましたように、法務局の協力団体、こういうことに言われておりますけれども、そういう意味で天下りの権力によって、法務局職員に人集めからあるいは辞令の交付辞令の交付までさしているらしいですね。そういう登記協会職員の事故は、全部法務局職員に負わせているというようなこと、これは本来の下請制度の趣旨に合っていないんじゃないかというふうに思います。これは発足したばかりですから、そういうかわってやったり何かするようなことになっておるのかもしれません。しかし、これはやっぱりはっきり、さい然と区別してもらわなければ、誤解を招くと私は思うのです。下級職員が、やはりそういった点に非常に不満を持つという可能性が大いにあると思うのです。その辺は、ひとつ十分に警戒してやる必要があると思うのですが、その点いかがですか。
  48. 川島一郎

    川島(一)政府委員 御指摘のような点はないように気をつけているつもりでございますけれども、何ぶんにも法人でございますので、そういうことのないように、われわれといたしましても気をつけて監督してまいりたい、このように思っております。
  49. 畑和

    畑委員 先ほども言ったように、事務所の使用なんかもどうもまだはっきりしない。事実そうだとすれば、やはりそういうことが安易にやられるおそれがあると思うのですよ。同じ仲間意識というか、そういうかっこうで便宜を計らい過ぎるというようなことで。そうすると、下級職員あたりは非常に不満が出てくる、こういう危険がありますから、その点は十分気をつけてもらいたいと思います。  そこで、それに関連しますけれども、先ほどもちょっと申しましたけれども登記協会職員ですね。これの本俸がさっきも言ったとおり三万二千円、その他外勤手当が三千円、皆勤手当が二千円、都市手当が三千円、交通費は全部負担してやる、こういうことなんです。一般の職員交通費ども全額は出ませんね。場所によると出ません。そういうことになっている。ところが、これは全額負担ということになっている。それで、先ほど言ったような本俸その他の手当がついて四万円になる。そうすると、普通の職員の一番下級の者は三万円くらいだと思うのですが、それをはるかに上回っている。仕事はというと、もう四十から五十の人がいる。若い人もたまにはいますけれども、みんなアルバイトの人で、子供はどうやらこうやらものになった、学校に通わせているというようなことで、昼間の間だけ働こうということでやっておられる方々、奥さんたちがほとんど多いように聞いております。刑務所の職員奥さんなんかが集まってやっている、そんなふうに聞いておりますが、それで時間が来るとびしっと帰る。これは、超過勤務はさせないでくれということがありますから、そのあと始末は結局はやはり正規職員がやらざるを得ない。そのために、帰っちゃってからあとの整理をする。それからまた、朝も、彼らが出勤する前に早く出てきて準備をするということを押しつけられているような話を聞いています。これじゃ不満が出ますね。仕事も、非常に極端な話だが、そうだかどうかわかりませんが、三分の一しか能率があがらない、こういう見解すらあるのですよ。女の人で、いいかげんな年配の人でもそれだけもらう。ところが正規の人は給料は安い。それで、これから先どれだけ――まだ発足したばかりでわかりませんけれども、それでも事務費その他も加わるから、それ以上経費がかかるでしょう。そうすると、一枚七円で、先ほど会計検査院は、基準がわからぬから、それに対してはイエスともノーとも返事はできないということだけれども、一枚七円と考えると、すっとやってそれで七円。機械も何も全部法務局が持っておる。ただ人間が刷るだけだ。もっともそれだけではなくて、とじたり照合したりする、そういう仕事はあるでしょう。あるでしょうけれども、とにかく、すっとこうやって一枚七円ということになると、だから四万円も払えるんじゃないかと思う、そうした能率が悪い者に。私はこれは矛盾していると思うのです。  それよりも、正規職員をもっとふやして、それほど楽して給料をもらえるようなそんな出かせぎの下請人たちはやめにして、それで本来の職員をどんどん定員をふやす。それをしないでこういうことだから能率があがらないのですよ。だから、したがってこの下請制度はやめにします、そして正規職員をもっとふやしてください、それでなければわれわれ仕事ができません、そう言って大蔵省にあなた方法務省は突っぱるべきだ。私はそういうふうに思っておるのです。そういう点で、下級職員などの正規職員に非常に不満がある。その人たちはなかなか言わぬものですよ。こういうところでなければ言えないから、私はその人たちにかわって代弁してあなた方に申し上げる。もやもやしたものがあってはいけません。そういうために、同じ法務局に働く職員たちがしわ寄せを受けて、しかも給料は安い。片方はのうのうとして相当の給料をもらって、さっと時間になれば帰ってしまう。これではあまり大事にし過ぎる。それを派遣して、ある程度のプロフィットをあげるということになれば、これほどいいことはないですよ。それは私は、結局国費の乱費につながるのじゃないか、同時にまた、正規職員に対して不満を起こさせるもとになるのじゃないか、こういうふうに思う。私は、その点で根本的に再検討を要する問題じゃないかと思う。おもに高齢なんですね、働く人たちは。だから能率面では、先ほど言ったように三分の一ぐらいしかあがらない。これは少し極端な比喩かもしれませんけれども、そう言っておりますね。  だから、したがってこういうような手段で下請制度をこういう財団法人にやらすことは、再検討の必要があるというふうに私は思うのです。結論的にどうお考えになりますか。そう簡単にあなたたちも、すぐやめるとか再検討するとか言えないかもしれないけれども、非常に根本的にもう一度考え直してみる必要があるんじゃないか。人事管理の面からも、予算の、国費の乱費がないかというような点からも、それをやってみる必要がある。定員はなかなかふやしてくれぬから、下請なら、一時のことだからというので大蔵省も出してくれるだろうという安易な考えに立ってはいけないんじゃないか、こう思うのですが、その点いかがでしょうか。
  50. 高橋英吉

    高橋(英)委員長代理 ちょっと私から申しますと、現状を肯定したような防御的な答弁ばかりでなしに、与野党一致して定員の壁をぶち破ってくれ、そして正規定員のうちに入れてくれというふうなことだから、その定員の厚い壁をぶち破るべく努力する、前向きで努力するからというぐらいに、簡単に片づけると言うと語弊があるけれども、ひとつ簡単に。
  51. 村山達雄

    ○村山政府委員 登記所事務を十分御理解の上に立っての御質問、だんだんありがとうございました。  問題はやはり、登記事務が非常にふえておるにもかかわらず、人員大蔵省行管、せっかく御理解いただいておるわけではございますけれども、なお不足しておるところに根本の問題があるわけでございまして、われわれといたしましては、この登記事務の利用者のためにも、この人員を最大限の努力をいたしまして確保してまいりたいと思うのでございます。  いまの登記協会の話は、実はその人員不足の解消策としてとられました一つのやむを得ざることであったかと思うのでございますが、先生の御指摘になった点十分に注意して、間違いのないようにいたしたいと思うのでございます。  ただ、そこの人件費が高いかどうかという問題は、実はこれはあまり問題がないのであって、問題は、一枚七円というものが市価に比べて不当に高いのかどうか、そこにあるわけだろうと思うのでございます。会社にいたしましても協会にいたしましても、人件費を幾らで雇うか、これはそこの協会とか会社の問題であろうと思うのでございます。その七円というものが、でき上がった仕事に対して高いのか安いのか、そこに最大の問題があり、人件費は、要するにその原価の一部をなすにすぎないのじゃないか。ポイントは、先ほど会計検査院の言いました七円がどうか、もっと安くなるのじゃないか、あるいは市価に比べてほんとうに高いのじゃないかというところが、問題のポイントであろうかと思うわけでございます。しかし、先生からだんだんおっしゃっていただきましたことを十分心いたしまして、いやしくも誤解がないように監督してまいりたい、かように思うわけでございます。
  52. 畑和

    畑委員 それじゃ時間が長くなりますので、この問題についてはこれだけにいたします。したがって、いままで出てきていただいた方々は、これでよろしゅうございます、この問題に関する限りは。それと、登記所の例の統廃合の問題ですけれども、これもこまかく質問しようと思ったのですが、どうもその時間がございませんから、それはいずれこの次の再開後の法務委員会質問さしていただくことにいたしまして、法務省関係はこれで終わります。  そこで、最高裁来ておられますか。――私、きょうは質問できないかと思っていたのですが、いま予算編成期でもありますし、来国会になるとちょっとぐあいが悪いから、青柳君の質問があるのですが、私、ついでに先にちょっと簡単に質問いたします。これはあるいは人事局長だけでなく、総務局長関係にもなるかと思いますけれども職員の待遇の問題等について質問して、ひとつ善処してもらいたいと思う。  いまの法務省関係でのあれと同じような意味もあるのですけれども、御承知のように、職員に書記官とか速記官とか調査官とかいろいろございます。ところで、裁判所の一番中心になって、裁判官の補助者と言っちゃおかしいが、一つの独立した職種でありますけれども、俗にいう補助者ですね、こういう仕事をしているのは書記官です。いままでも書記官というのは、一番その中でも、裁判官を除くとそれだけの評価をされておったと思うのです。  ところが、最近どらも書記官に対する待遇がよくなくなっているのじゃないかというふうに思う。またそういう声が非常に強いのです。私のところへいろいろ陳情に参りました。まじめな意味の陳情でありますけれども、その人たちが申しますのには、東京あたりの地方裁判所あるいは高等裁判所、家庭裁判所、こういったところの書記官たちの数人の人が、私のところに参りまして言われたのでありますけれども裁判所の書記官は、いま大体裁判所の方針もあって、人事管理という点もあって、ほかの官庁に比べて管理職が非常に多過ぎる。これは私もちょっと前に指摘しました。その割合が、三人のうち一人が主任書記官というふうになっておるようです。そういう役所はあまりないと思うのですね。これは何もそんなに管理職にする必要はないのだけれども、やはりあなたのほうの人事管理の面からそのほうが都合がいいから、管理職にどんどんみんなしてしまうという根本方針があると思うのです。これもひとつ再検討してもらわなければ困ると思うのです。そういうことになるから、したがって、一般の平書記官の数が案外に割合が少ないのですね。しかも、その人たちは昇格等の問題についてどらも割りを食ってしまう、こういうことになっておるようでございまして、主任書記官になれば大体等級が違ってくる。ところが、主任書記官になれない人たちは五等級どまりで頭打ちになっておる。相当の年齢になっておりましても頭打ちになっております。等級が上がればそれだけいろいろな諸手当がふえてくるが、一年間の定期昇給ですか、それの関係だって、相当の年齢の人たちが年に二千円かそこらしか上がらないというのじゃ、私はかわいそうだと思うのです。それが四等級、三等級への道を開くことができれば、非常にいままでの問題は改善される、こういうふうに思っておる。  これは、裁判官に次ぐ職種でありますし、一種の専門家としての公証官でもありますから、それにふさわしい待遇をしてもらいたいというのが偽らざる裁判所の一般の書記官の声です。ようやく最近、今度の場合でも、在京の書記官六百名おるそうですが、そのうち四等級になった人が四名しか発令されておらない、こういうことで、六百名のうち四名しか四等級になっていない。五等級だとこれは相当の不利益になる、こういうことであるようです。どうしても事務局が優位になってくる。最近人事行政優位ですから、人事局長ここにおられますが、どうも人事局優位だ。人事局優位過ぎる。ほんとうの裁判所のあり方じゃないと思う。どうしても人事のほうがいばっちゃうのだ。裁判所関係でも、どうしても裁判所事務局あたりが、何でも日当たりのいいところにいてうまいことをやっているらしい。そういうことはひとつ全部捨ててもらいたいのです。  それで、あるいは調査官、速記官に比べて非常に待遇が低い。書記官のかなりの部分が五等級、二けた、こういうことのようでありますね。この辺をひとつ何とか昇格の道を講じてもらいたい。法律改正しなくてもできるのだろうと私は思うのだ。現にこうして六百名のうち四名発令されておるのだから、この数を何とかふやさなければいかぬ。そしてその点についてその実情を訴えて、やはり大蔵省に大いに強力に交渉するということが必要だ。場合によったら二重予算でも何でもやるくらいな決意がなければ、いつも法務省関係、特に最高裁関係予算面で割りを食っておる。与野党あげて、実はわれわれも歯ぎしりしているが、どうもわれわれは野党だものだからなかなか声が届かない。こういうことがあるので、これは最高裁だけを前に置かないで、もちろんもっと早いときに、主計官を目の前に置いてやるべきだったのですが、いまになってしまったのでその辺残念ですが、何とかあなたのほうもこの辺を改善することを考えておられるか、どんな決意か伺いたい。そうでなければ沈滞してしまってかわいそうだ、そう思うが、いかがですか。
  53. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 いつものことながら、非常に御理解あるおことばをいただいて恐縮でございします。  私どもといたしましても、書記官のいわゆる四等級の定数の獲得ということにつきましては、人事行政上の問題として最重点項目として取り扱っておるわけでございます。今後もこの点については最大の努力をいたしていきたい考えでおります。裁判所における書記職というものは非常に重要な職種でございまして、一般職員の中の中心をなすものであることは、まことに御指摘のとおりでございます。そういう観点から努力をいたしていきたいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、おことばはございましたが、現在のところ確かに主任になりますと四等級になれますが、主任になれない、ごく少数の者を除いては四等級になれないという状況にあることは事実でございます。しかし、この五等級の書記官の平均年齢等を他省庁と比べてみましても、決して見劣りはいたしておりませんで、三歳から四歳ぐらいこちらのほうが有利になっておるという状況にあるわけでございます。二けた号俸はございますけれども、御承知のように、全書記官には一六%の号俸調整がございます。これを具体的な号俸に直してみますと、三号から四号ぐらいの上積みになっておるわけでございます。そういった観点から申しましても、決して書記官の収入というものを低く見ておる、また現実に低いということはないわけでございます。  それから、書記官は主任から全部を合わせまして、その平均年齢は四十、五十とおっしゃいましたけれども、実は四十一・六歳という比較的若い者でございまして、これはどの省庁とお比べいただきましてもひけをとらないものであるというふうに考えております。しかし、にもかかわらず、私ども、先ほども申しましたように中心的な官職であるということで、最大限のこれに対する努力は、今後もいたしていきたい、現在もいたしているということでございます。  なお、人事優位というふうにおっしゃいましたけれども、決してそういうふうには考えておりませんで、裁判部門における一線の裁判官及びこれと同じ目的に奉仕しております書記官という者には、常に重点的に優位に、むしろこちらのほうを優位に考えておるということを申し上げておきたいと思います。
  54. 畑和

    畑委員 速記官は初めから四等級ですか。速記官などはぐっといいのでしょう、最初から。その点を……。
  55. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 速記官は、官補の間は別でございますが、速記官になると六等級になるわけでございます。決してすぐ四等級というようなものではございません。
  56. 畑和

    畑委員 ほかの官庁に比べて、年齢その他の経験からして決して低くはないと言われるけれども、主任書記官になる人がわりあいに多いから、結局そのほうはもっといいことになりますね。そうすると、やはりそれに比べて普通の平の書記官がなかなか上がれないものだから、希望を失うということになるのじゃないか。ほかの役所とあまり比べないで、主任書記官になれればいいけれども、なれればどんどん上がっていくけれども、それが頭打ちでなかなか四等級になれないということに対する不満がやはりあるのじゃないか、こう思うのですけれども、これは何とかひとつあなた方も努力して数をふやすようにしてもらいたい。どうですか。
  57. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 四等級官職と申しますのは、行政官庁で申しますと中央官庁の課長補佐で、地方の官庁の課長でございます。したがって、非常に高い官職でございます。主任書記官がそれに当たるということは当然でございますが、畑委員がおっしゃった平の書記官というものを四等級にするということは、これはいろいろな意味で非常にたいへんなことでございます。しかし、御承知のように書記職というものは、それ自体やはり裁判官の仕事とある意味で似たところがございまして、独立して仕事をしておるという面がございますので、そういう点を強調いたしまして、書記職、普通の書記官についても四等級を獲得していくということが最大重点項目であるということでございます。
  58. 畑和

    畑委員 では、その点ひとつ最大の努力をしてもらうということで、どうも私もあまり詳しいこともわからぬものだから、あなたとあまり太刀打ちしてやるわけにはいかぬけれども、ひとつぜひそういうことで大蔵省当局に、予算期でもあるからやってもらいたい。  それから、もう一つの事項は人員問題ですね。最近非常に裁判所が忙しい。これは健康の問題にも関係するわけです。特に、裁判官などはぽっくり死ぬ人が非常に多いのです。これは頭を使うせいですよ。頭を使って運動不足になる。それで普通の人とあまり交わらない。これは神さまみたいなものだから、なるべく神さまに近くなろうと思って、いろいろ批判もあるものだからどうしてもほかとの交際がない。ストレス解消の道がない。ゴルフをやるとうるさいというようなこともあって、じっと縮こまる可能性もある。それで頭を使って、仕事が非常に繁忙で、判決書きをしなければならない、証人尋問などもあって、ずいぶん長いとと両方の言うことを聞いて聞き耳を立てなければならない。こういうことは、普通の筋肉労働と違ってえらい負担だと私は思う。それで書記官も同じように、その言うことをいろいろ頭を使って書かなければならない。最近速記が多くなったから、速記を採用している分にはまだいいかもしれぬけれども、そうでない要点筆記なんというのはなかなかむずかしいもので、頭のいい者と悪い者の区別がそこでできてしまうというようなことで、相当疲れることが多いと私も思うのですね。  それで、最近学生事件あるいは公害などの事件、損害賠償の事件ですね、そういうようなものが非常に激増しておるということで人手が足りない。   〔高橋(英)委員長代理退席、青柳委員長代理着席〕 それでまあこれは一つの例なんですけれども、東京地裁の刑事関係の十一月のオーバーワークの、各部のあれをずっととってみたのが私の手元に来ているのです。それから見ますと、部がたくさんございますけれども、その中で臨時開廷が二十回ある。それで六十七時間三十五分だというのですね。それから五時以降の審理、それが七十回、二十六時間五十分。それから昼休みを使って裁判する、それが百二十二回、三十八時間。総合計ですから、部はたくさんありますからあれですけれども。さらにまた土曜の午後、普通なら土曜の午後は休みですな。ところが、裁判所は例の一日交代で開廷する関係もあって土曜日の午後も使うのですけれども、これが四十五回、九十九時間二十分というようなことになっておるようでありまして、きわめて繁忙。浦和の裁判所あたりも非常に事件が多くて、最近次の開廷日を指定されるのがずいぶん先になる。こういうことで、集中審理もくそもないというような状態であるようです。あっぷあっぷしておる。裁判官も忙しい。同時にまた書記官もきわめて忙しい。こういうことで、記記官は相当優遇してやらなくちゃならぬ。最初の昇格の問題にも結びつきますが、それをひとつぜひやっていただきたい。そのために、ひとつ大蔵当局にも大いに最高裁のほうから声を大にしてそれを叫んでもらいたいと思うのであります。  したがって、先ほど言ったように人間が少ない、仕事が繁忙なものだから、やむを得ず録音機を使うというようなことです。最近私のむすこが、これはおとうさんいいネタがあるんだと言うので、何だと言ったら、裁判所で民事事件で、そういう関係で人手が足りなかったり何かするものだから、録音機を使って録音して、それを謄写して、謄写したやつを両方の当事者に負担をさせてやっておるというのがあるんだということです。これは実際上問題だと思う。   〔青柳委員長代理退席、高橋(英)委員長代理着席〕 しかし、忙しいものだから背に腹はかえられないから、そういうことをやるようなことになるのではないかと思うのです。  そういう点で、最近裁判官もそうですが、相当な年齢になって、いいかげんな年齢になって、ぽっくり死ぬ人がたくさんある。私の知っている裁判官でも、浦和地裁あたりでもずいぶん突然、何人もなくなっていますね。法廷で突然倒れてなくなられた方もある。去年か一昨年ありました。それからさらに、裁判長クラスで急に死ぬ人が多い。先ほど言ったような仕事関係からというか、関係があると思うのですが、それと同時に書記官たちも最近非常に多くなってきている。私の管轄の、浦和地裁の越谷支部でも、この間ぽっくり死にました。これが四十代です。東京近辺でことしは、私どもの聞いたところによると四人、東京地裁の民事部、千葉地裁、それから東京家裁ですか、それと浦和地裁の越谷支部、それで四名、四十代の人の死亡者がことし出ております。昨年が二名、東京地裁の民事部、それから東京高裁、おのおの一人ずつ。一昨年が二人、東京地裁の民事部と刑事部でおのおの一人ずつ、こういうことです。全司法の組合でいろいろアンケートをとった結果、六割が異常を訴えている。七割が仕事が原因だというふうにアンケートで出している、こういうようなことを聞いておるのです。非常に健康にも関係するほどの人員不足、これを何とかして解決しなければならぬというふうに思うのです。いつも増員をあなたのほらでは相当要求はしておるのだろうけれども、それがなかなか通らない。したがって、だんだんと増員要求も数が少なくなってくる。どうせ通らないんじゃということで、そういうようになる可能性もあるのですが、その辺をひとつ考えてもらいたいのです。その所見を伺いたい。
  59. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 職員の健康管理ということについては、これは非常に力を入れてやっておるわけでございます。現在のところ、不幸にして在職中になくなる方もないわけではもちろんございません。あまり他省庁との比較ということ自体意味がないのかもしれませんが、比較してみますと、むしろ私どものほうが少ないような数字が出ておるわけでございまして、それほどに健康管理にも力を入れておるということを御理解いただきたいと思います。  増員の問題でいま一番困難なところは、実は裁判官にいたしましても書記官にいたしましても、それ自体資格要件の非常に高い官職でございますので、おいそれと簡単に補充ができないという面もございますが、今後十分力を入れていたしていきたいというふうに考えております。  それから、開廷が非常に時間外にわたるというような御指摘がございましたけれども、そういった点は、十分今後とも検討して、そういうことのないようにはいたしたいと思います。土曜日の午後の開廷の問題は、土曜日の午後開廷するときは、振りかえて、普通の日に午後は休みというふうにいたしておりますので、一般的に、土曜日の午後というふうにお考えいただかないようにお願いしたいと思います。
  60. 畑和

    畑委員 以上で終わります。
  61. 高橋英吉

    高橋(英)委員長代理 ちょっとお尋ねしますが、こういう問題について、比較的影響力の強い与党のほうに陳情せずに、野党のほうに陳情するのはどういうわけか。何か思い当たることはありませんか。
  62. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 別に思い当たるところはございません。
  63. 高橋英吉

    高橋(英)委員長代理 青柳君。
  64. 青柳盛雄

    ○青柳委員 最高裁判所にお尋ねいたします。  十三期の宮本裁判官が再任されなかった問題、二十三期の司法修習生が裁判官に新任されなかった問題は、ことしの三月ごろに非常に大きな関心を呼ぶことになりまして、もうすでに九カ月たちましたけれども、依然としてこの問題は片づいているわけではございません。現に宮本裁判官はしばしば最高裁に対して、ぜひ再任してもらいたいという要望を出しているようでございますが、今月の一日に最高裁判所がまた同じように――というのは、前と同じようにという趣旨ですが、再任は断わるという決定をしたそうでございます。それの理由が依然として示されていないようでございますが、この理由はぜひ明らかにしてもらいたいというのが本人の希望でもある。本人の希望というのは、もし採用しない場合にはという前提があるわけですが、本人の希望はあくまでも採用してもらいたい。しかし採用できないというならば、理由は本人に示してもらいたい。それから、同僚の裁判官と申しましても決して少ない数ではない、五百名近い方、そういう方々も、宮本裁判官を再任するのが至当ではないかということ、少なくとも断わるなら断わる理由は、本人が希望しているのだから明らかにしたほうがいいのではないか、そういう意見を最高裁あてに出しているようでございます。したがいまして、採用しないことについての理由だけは、もう世論のおもむくところ、示す必要があるのではないかというふうに考えるのですが、最高裁判所としては、やはり示すべきではないあるいは必要がない、そういう見解を貫いておられるのですか、その点をお尋ねしたいと思います。
  65. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 私どもといたしましては、現在のところ、これまでの考えを変えてはいないわけでございます。
  66. 青柳盛雄

    ○青柳委員 その点につきまして、だめ押しのようにもなりましょうが、実はことしの十月二日に東京で開かれた裁判官懇話会、仮称でございますけれども、その席上発言があったということを、森田宗一という判事が「判例時報」六百四十五号に寄稿をいたしております。その中の発言といたしまして、ある裁判官が、「再任と新任が同じだというのも、事務総局の意見であって、最高裁の裁判官の一致した意見ではないと思う。その意見を聞きたいと思う。また事務総局がこんど再任と新任は同じだと弁明したが、今後の運用はやはり原則通り再任するということになるのではないか。も少し将来を見なければわからない」という意見を述べた人があるそうです。この人の見解では、明らかに、再任というのは単純な新任の場合と同じような自由裁量ではないのではないか、それは違うのではないか、最高裁の裁判官の一致した意見ではないのではないか、同じだというのは、事務総局の単なる意見ではないかと思うということですが、この点はいかがでしょう。
  67. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 その記事を現在持ち合わせておりませんので、どういうふうに述べておられますか、正確に記憶がないわけでございますが、結論といたしまして、再任というものについて特殊な権利、再任請求権といったような、あるいは期待権といったような、そういったものではないという見解は、私どもだけの、事務当局だけの見解ではございません。そのことははっきり申し上げられるかと思います。
  68. 青柳盛雄

    ○青柳委員 裁判官の中にも、こういうふうな希望と申しましょうか、一部の事務総局人たちは新任と再任は全く同じだ、だからそこに差別があるなどということはあり得ないのだと言うのに対して、そうじゃないのだ、もうすでに判事補としてあるいは第一回目の判事として採用された者は、十年ごとに再任されるというのが原則じゃないのか、決して自由裁量なんというものではないのではないのか、それはいままでの実績が示しているのだ、だからあまり心配することはないのだといった希望的な見解がうかがえるような気がするのです。だから、ここをはっきりさせていただきたいのですが、そんな希望的なものを持つことは、すでに任命されている裁判官にはあってはならないのだ、任期が来た場合には、採用されるかされないかということは、全く一にかかって最高裁判所の決定によるのだ、要するに、任命する名簿に記載することによって初めて再任されるわけですが、大したことがない限りは必ず再任されるのだ、そういうことは、法的には何ら保障されていないのだということでよろしゅうございますか。
  69. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 法律論といたしましては、再任名簿に登載するかどうかということは、全くの自由裁量である。しかし、運用の問題といたしましては、それは、もちろんこれまでの実績が示しておりますように、ほとんどの方が再任されておるということでございます。
  70. 青柳盛雄

    ○青柳委員 そこで、十四期の方々がまた心配を始めたわけです。当然のことだと思いますけれども、青年法律家協会の機関紙「青年法律家」という、これは弁護士学者合同部会が出しておるもののようでありますが、それの十二月五日号によりますと、十四期の弁護士約二百名、これは二百十八名の同期弁護士の九二%に当たる数だそうですが、その方々が最高裁に、十二月一日付で要望書を出されたという記事がございます。その要旨は、「私達は、このたび最高裁判所が宮本康昭裁判官について、内閣に提出すべき名簿に登載しないことによって同裁判官の再任の途をとざし、且つその理由を一切明らかにしない、かたくなな態度をとり続けていることを極めて遺憾とするものであります。私達は、最高裁判所が司法の独立を守り、真に憲法の番人として国民の負託にこたえるために今回の宮本裁判官に対する処置を再検討するとともに、来年再任期を迎える私達の同期裁判官に対し今回と同様な「再任拒否」の処置がとられることの、絶対にないように強く要望するものであります。」という趣旨のものでございます。その趣旨は、十四期の裁判官で再任を希望する人に対して、宮本裁判官と同じように、何の理由も示さずに断わるというようなことはしてもらいたくない。その裏には、青法協の会員が差別的に、宮本さんと同じようなことをされるのじゃないかという心配があると考えられるわけです。  このことに対して私はお尋ねをするのですが、十四期の裁判官の中に、青法協会員に踏みとどまっている人は何名おられるかということを、お調べになっておられますか。
  71. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 青法協会員として何名踏みとどまっておられるかということにつきまして、各人につきまして照会したことはございません。
  72. 青柳盛雄

    ○青柳委員 本人について、依然として青法協の会員であるかどうかまで確認しないにしても、たとえば、やはり同じ青法協の先ほどの「青年法律家」という機関紙によりますと、「来春再任期をむかえる14期裁判官(現在全国に六四名)のうち、かつて青法協会員であったものは三〇名前後にのぼっていたが、退官、自然退会等で、昭和四四年秋ごろは二〇名ぐらいとなっていた。ところが、ここ二年間の激しい脱会工作によって、現在の会員は五名となっている。」こういうふうに書いてあるのですが、この点は、最高裁の調査と大体一致しておりますか。
  73. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 青法協の機関紙のようでございますが、もしそういうことであるならば、五名の方がおられるのではないかと思いますが、私どもとして、先ほど申しましたように、個々に調査いたしておりませんので、正確な数字は申し上げることができません。
  74. 青柳盛雄

    ○青柳委員 この機関紙によりますと、さらに引き続いて、この五名中四名の会員が、今年度名古屋高裁管内に配属された、二名は管外から配属されているが、これは単なる偶然だろうかというわけですね。たった五名しかないうち四名までが名古屋高裁へ集中された。前から名古屋にいたわけではなくて、四名のらち二名は管外から来ておる。この点は、あとでまたお尋ねしたいと思います。  もう一点は、ことしの「四月一四日に政府は、」というのは、最高裁判所はというふうに読んでいただいてもいいと思うのですが、「右の四名を含む14期裁判官三一名を簡裁判事兼判事補から判事補兼簡裁判事へといっせいに任命替えを行なった。」これは四月十五日の官報に載っておる、こういうことですが、この点はいかがでしょうか。
  75. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 数字がちょっと違っておるかと思いますが、十四期の方だけに限りますと、御指摘の日付で、二十八名の切りかえを行なっております。
  76. 青柳盛雄

    ○青柳委員 二十八名切りかえをした結果としては、いまの判事補が兼任でない人の数が何名で、兼任が何名というふうになるわけですか。簡裁が主にならない方が何名で、それから判事補が主であるというそのトータルはどうなりますか。
  77. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 その結果、判事補兼簡易判事、いわゆる判事補が本務の方が五十名、それから簡易判事兼判事補という簡易判事本務の方が十四名ということになったわけであります。
  78. 青柳盛雄

    ○青柳委員 このような任命がえを急速行なわれた理由は、どういうことでしょうか。
  79. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 判事補が三年たちますと簡易裁判所判事の資格ができますので、ごれについては当然兼務をつけるわけでございます。したがいまして、判事補の間は必ずと言っていいくらいに、ほとんど例外なく、判事補と簡易裁判所判事という二つの任命が行なわれるわけでございます。通常、判事補を充足いたしますと――判事補の人数は、御承知のように五百何名ということが定員でございますので、それを十で割っていただきますれば、一年に割り当てられる人数がどれくらいになるかということはおわかりいただけるわけでございます。判事補の希望者をできるだけ多く裁判所に迎えたいということで、簡易裁判所判事を本務にいたしまして、判事補の席をあけまして、希望者をできるだけ多く裁判所に来てもらうという措置をとっておるわけでございます。今度は逆に、そういたしますと簡易裁判所判事の定員が窮屈になりまして、簡易裁判所判事の採用ということがむずかしくなってまいりますので、これは非常に技術的なことでございますが、判事補を採用いたします日時と、判事補が十年過ぎまして判事になっていく日時に、現実に一週間ほどの開ぎがあるわけでございます。そこで、その開きを回避するために、最初判事補の方を簡易裁判所判事の本務に直して、そこをあけまして、そして新規に判事補の方を定員一ぱい一ぱい採用する。そうしてそれから一週間たちますと、判事補の中で一つの期に相当する分が判事資格を取得しますので判事に任命される。その分だけ判事補の欠員ができてまいる。そこで、簡易裁判所判事の本務になっておる方から判事補本務に戻しまして、今度は簡易裁判所判事を採用するということをやるわけでありまして、そういったごく事務的な操作として問題が行なわれたということになるわけでございます。
  80. 青柳盛雄

    ○青柳委員 これは、いまの御説明ですと、いつもそういう形をとっておられるのか、それとも今度の宮本裁判官の場合に、たまたま判事補を本務にしておかなかったために簡易裁判所のほうが残ってしまったとか、あるいはその逆でございますかよくわかりませんけれども、いずれにしても本務を判事補にしておいて、任期満了の際に簡裁の判事という資格も喪失するという何か取りきめがあるようで、そういうことで切りかえたのではないか。要するに十四期から、宮本裁判官と同じように再任しない、そのときに簡裁の判事としての任期がまだ残っておるということのないようにという用意周到な考え方から、そういう措置が今年に限って、従来とは違った形で大量に行なわれたのではないか、こういうことなんですが、その点はいかがですか。
  81. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 そういうようなことでやったものではございませんで、今回の措置も、宮本裁判官の再任云々の問題が生じます前に、そういう手続を事務的には私どもとったわけでございまして、宮本裁判官がたまたま判事の再任名簿に載らなかった、しかし簡易裁判所判事が本務であって、そのまま残りの任期がつとめられることになるといったようなこととは、いま御指摘の措置というものは、全然関係はございません。
  82. 青柳盛雄

    ○青柳委員 さて、先ほどの質問に戻るわけですけれども、名古屋の高裁管内に五名中四名配属されておる。これはどういうことが原因でそういうところに集中したのかよくわかりませんが、名古屋ではこの前、公安調査庁の役人が裁判官に情報収集をやったというようなことも問題になりましたけれども、何か名古屋高裁管内の裁判官をねらい撃ちにするというか、たまたまそこに青法協会員を集めたというところにねらいがあるんじゃないかということが言われているわけであります。具体的に、一人は福井だとか、一人は岐阜だとか、一人は三重県の津ですか、それから名古屋、こういうふうに各裁判所別に青法協の会員が分かれているようでありますけれども、いずれも再任を拒否するおそれがあるのだというふうに言われているのですが、現在、そういうところまで最高裁のほうでは作業が進んでいるのかどうか、それをお尋ねしたいと思います。
  83. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 まず、十四期の裁判官の配置でございますが、何か特に特定の意図をもって名古屋管内に配置したのではないかというような御指摘がございましたが、そのようなことは全然ございません。もしそういう結果になっておるとすれば、それは結果的に偶然そういうふうになったというだけのことでございます。全く他意はないわけでございます。  それから、十四期の方が来春十年の任期終了を迎えられるわけでございますが、それに対します作業というものにつきましては、私ども具体的に、引き続き裁判所仕事をされる御希望があるかどうかというような点の、いわば予備的な調査はいたしましたけれども、それ以上には何らの作業はいたしておりません。
  84. 青柳盛雄

    ○青柳委員 一三期の場合の前例で言うと、当該裁判官の直属の上司といいますか、上司というのかどらか私もその辺のところよくわかりませんけれども、少なくとも先輩に当たる人が、再任を希望するのならば青法協に入っておったんではぐあいが悪い、だから青法協から脱会するような手続をとって、その上で再任希望を出されたほうがよかろうという、そういう工作が相当猛烈に行なわれたようであり、また、それが功を奏して再任されたという例もあるようでございます。ですから、そういうようなことをさして私は工作と言ったわけなのですが、そういうことをやっているかいないかということですね。それを、引き続き十三期の場合と同じように、十四期についてもやっているのではないかというおそれを感ずるものですからお尋ねしたわけですが、その点いかがでしょう。
  85. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 政治的色彩の強い団体に裁判官が入ることは好ましくない、これはモラルの問題として申しておるわけでございまして、そういうことは、私は、裁判所におけるごく少数の方を除く大体一致した見解であると思っております。したがいまして、先輩の裁判官たちがそういったモラルの問題について後輩と話し合われるということは、これは一般的に当然のことでございます。しかし、十四期云々ということで、特にその点再任問題とからめまして問題にするというようなことは、私ども聞いておりません。
  86. 青柳盛雄

    ○青柳委員 単純な、先輩、後輩の私的な話し合いというようなことで私は問題にしておるわけじゃありませんので、やはり所長あるいはその所長の次にある方とか、場合によると総括裁判官のような人とかいった、司法行政について、そうしてまた人事について、言うならば上級、下級のような関係にある、結局はその人の意見というようなものが、再任の名簿に載せるか載せないかについて一定の力を持っているというような人が、当該裁判官に対して、青法協に踏みとどまるということは、再任を期待する場合に障害になるのだというようなことを言って、間接的に脱会を強制する。それにがえんじなければ、宮本のでんになるのだぞというようなことをやっていないかということですね。その点はいかがでしょう。
  87. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 モラルの問題として好ましくないということを、明確に打ち出しておるわけでございますが、それにかかわらずなお青法協に残っておる方は、それなりのお考えがおありのことだと思います。この方につきまして、そこのところを好ましくないということを申し上げましても、それは一定の限界があろうというふうには思っております。したがいまして、そういうことから考えてみましても、特に十四期の方に対して、俗にいう上司に当たる方々から、しつこく脱会を勧告するといったようなことは、私は聞いておりません。
  88. 青柳盛雄

    ○青柳委員 宮本問題というのは、理由は示されないけれども、もう何といいますか、公然の秘密というか常識というか、これは青法協の会員にとどまっているということが根本的な再任拒否の理由である。それ以外にはほとんど考えられない。よく何かあらをさがせば、人間ですから欠陥はないわけじゃありませんけれども、そういうような面では、ほとんど宮本裁判官についてはもっともらしい理由がない。きずといえば、青法協の会員であること、結局そこに帰着するようでございます。ところが、裁判所のほらでは、青法協の会員であることは理由の中には入っておらぬみたいにも言われる。理由は示さないけれども、そうじゃないんだと言っておられる。ここにすれ違いがあると思うのですが、今度十四期でまた同じようなことが起こるんじゃないか。これは、十三期でもだんだん日がたてば片づいてしまうという問題じゃなくて、毎年毎年起こってくる事案のように感じられるわけですが、この点裁判所部内では、こういうことが何べんも繰り返されるということに対して非常な不安を持たれているわけですね。また一般世論でも、それは許されないことだということになっている。だから裁判官の間では、青法協の会員だということを理由に首切りなどということはあり得ないんだということを明確にしてもらえないかどうかということを、別な角度で言っているように思えるのですよ。それは十月二日の裁判官懇話会の中での意見なども、先ほど申しました「判例時報」に載っているのを全体的に読んでみましても、やはり再任基準といいますか、拒否するには拒否するだけのもっともらしい根拠が示されなければいけないんじゃないか、だから基準と手続の面、これだけはぜひ希望するんだ、こう言っているのですけれども、この点については、最高裁とすれば、何とかこのような世論にこたえるという措置考えておりますかどうですか。依然としてことしと同じような態度を貫く、要するに幾ら何と言われても言わないんだ、これは救済の措置などというものも考えられないんだ、この一点ばりで貫く予定なんですか、そこをお尋ねしたいと思うのです。
  89. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 しばしば申し上げておりますように、裁判官の採用という問題は全人格的な評価において、その裁判官たるにふさわしい方を採用されるということでございまして、それ以上には申し上げようがないわけでございます。いろいろの御意見があるということはよくわかっております。事が裁判の独立とも直接関係をいたしておりまする重要な裁判官の人事の問題でございますので、慎重な上にも慎重に手続を進めていただくということの決意はさらにかたいものがございますが、それ以上には特に申し上げることはございません。
  90. 青柳盛雄

    ○青柳委員 少なくとも弁明といいますか、再任を希望しているのですから抜き打ちでなしに、せっかくだけれども、ひとつこういう点で私のほらは応じかねるということなら、それについて何か弁解とか、自分の考え方とかを述べる機会を与えてやれないか。これは厳格な異議申し立ての手続なんてそういうことでなしに、大体常識的な話なんでございますけれども、いま私が申し上げましたように、再任しないという方向で最高裁の当局考えている場合、その場合は、おそらく裁判官会議にかけてからの段階ではなくて、かける前の事務総局あたりでいろいろと案を練っている、またそして最高裁の長官が、それを大体裁判官会議にかける案としてつくりかけているときの段階じゃないかとも思うのですけれども、本人の意見弁解の機会を与えるべきではないか。そしてその案を修正することができるかできないか、できるならばそうする、そういうふうなことは全然考えておられないかどうか、それをお尋ねしたいのです。
  91. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 繰り返し申し上げますように、慎重な上にも慎重にやりたいということは念願いたしておりますが、具体的に一つの案を最高裁長官が裁判官会議にお出しいただきます前に、その案に関連いたします関係者の直接の陳述を聞くとかどうこうするというようなことは、これは考えられないことでございまして、もしそういう点を御指摘でございますれば、いまのところ、そういう考えはないと申し上げるよりほかないのではないかと思っておる次第でございます。
  92. 青柳盛雄

    ○青柳委員 それでは、裁判官会議で審議をする場合に、当事者の意見を裁判官会議が聴取する、直接かあるいはだれかを任命して聴取させるとか、そういうようなこともやるべきではないかということ、それも話題になっておりませんですか。
  93. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官会議がどういうふうにお考えいただきますかということは、これは裁判官会議がおきめいただくことでございまして、私どもから、いまどういうふうなことであるかということについて、その内容につきましては申し上げることができないわけでございます。
  94. 青柳盛雄

    ○青柳委員 じゃ一つだけ最後にお尋ねいたしますけれども、宮本裁判官の問題に関連して先ほどもちょっと触れましたが、全国の五百名近くの裁判官から、個人としていろいろの要請書、意見書が出ているようです。同時に、裁判官会議の決議というようなものも幾つかあるようでございますが、そういうものについて、個人的な要請、意見だから問題にしないとか、あるいは裁判官会議の決議であっても、そんなものは下級機関のやることだから、別にたいして考慮するに値しないとかいらのかどうかですね。これは司法行政上のあり方の問題ですけれども、いわゆる民主主義は下のほろの意見というものを十分くみ上げるというところにあると思うのですが、それはもう相手にしないという態度であるのかどうか、そこをお尋ねしたいのです。
  95. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 春の一連の事件に関連いたしまして、全国相当数の裁判官からいろいろな要望が出ておることは事実でございます。しかし、裁判官会議としてそういう要望を出されたということはございません。  それはそれといたしまして、慎重にやってほしいといったような要望があることは十分承知いたしておりまして、裁判官会議を構成していただきます十五人の裁判官の方々も、そういった要望のあるということを現実に踏まえて、慎重の上にも慎重に事を進めていただくというふうに私ども考えておるわけでございます。
  96. 青柳盛雄

    ○青柳委員 制度的に、裁判官会議の議題にするものの原案をつくるというのが、事務総局あたりの仕事の中に入っているんじゃないかというふうに――私は専門家じゃありませんからわかりませんけれども、裁判官会議の議題にする以前に、一定の準備が事務的に行なわれるであろうということは、常識的に考えられるのですが、そういうところで、こういう意見とかあるいは決議とかいうものについて、どういうふうに裁判官会議が扱うかということを整理する、そういう作業はやっておりますか。
  97. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 そういう御要望等が出ました場合は、もちろん私どもも拝見させていただきます。どういう方法で裁判官会議にお伝えするかといったようなことにつきましては、それは事の中身のいかんによりましていろいろと検討させていただいております。
  98. 青柳盛雄

    ○青柳委員 この問題はあとで、次回にもまた引き続きやりたいと思いますが、もう時間がありませんから、別な問題に移ります。  これは法務大臣の官房の訟務部にかかわることですけれども、そこで「訟務月報」というものを、すでに十七年くらい前から毎月出しているようです。それを一般に配付しておりますのを最近やめにしたということになって、これはどうなんだといろ質問が私どもへ参ったわけです。「訟務月報」というのは、国なりあるいは官庁が当事者になる民事事件あるいは行政事件、また行政事件の中でも税務関係事件というのを分けて、その判決とかあるいは訴状、答弁書、あるいはこういうことに関係する会同の資料などを、毎月印刷にして出すもののようでございます。これはこういう長い実績を持っており、一般にもこれを配付して参考に利用されておったのを、急に取りやめになったということが、ちょっとふに落ちないのでお尋ねをするのですが、いままでどのくらい出しておったのか、そしてこれはどういうふうな形で一般、役所以外の人たちに配付されておったのか、それをお尋ねしたいと思います。
  99. 香川保一

    ○香川説明員 「訟務月報」は毎月出しておるものでございますが、月に約千八百部くらい印刷配付しております。これは、もっぱら訟務部内の執務参考資料ということで作成いたしておるものでございますので、一般には配付する性質のものではない、かように考えておるわけでございます。  ただ、従来、国ないし行政庁を当事者にする訴訟の関係でのそういった資料が外部にあまりありませんでしたので、各行政官庁あるいは大学等の関係筋から、配付してもらいたいという要望が非常に強かったようでございまして、さような要望もごもっともでございますので、サービス的な意味と申しますか、さような意味で、国以外の機関に若干実費で分譲するというふうな措置をとってきたものでありますけれども一つには、国の部内の資料を国以外の関係筋にしろ実費で分譲するということは、性質上いかがなものであろうかというふうなこと、それから、最近私どもの訟務部門といたしまして、地方法務局にも訟務の仕事の範囲を広げておりまして、さような方面に配付する部数がふえてまいり、かてて加えまして人手不足から本来の仕事が非常に多忙になっておりまして、外部にサービスとはいえ、さような実費分譲というふうな形を続けていくことが、非常に内部的な仕事のしわ寄せにもなりますので、さようないろいろのことを検討いたしまして、実費分譲ということで外部に配付することはやめにしようというふうに、ごく二カ月くらい前でございますがさようなことにいたしたわけでございます。
  100. 青柳盛雄

    ○青柳委員 中身を見ますと非常に参考になるので、実務家の人たちはぜひこういうものを一般に見せてもらいたい、そういう希望は持っていると思うのです。だからこそいまお話のありましたように、それが十七年も十八年も続いてきたわけなんで、これが急に廃止されるということになれば、結局は何か秘密文書みたいな形になって、一般の方は容易に見にくいということで、国会のほうでも、何か図書館のほらへ配付されるとか聞きましたけれども、議員だってなかなか簡単に見られないというようなことにもなるので、引き続いてこれを希望者に配付するということを検討してみる必要はないのでしょうか。現在どのくらい実費で販売といいますか、配付しているのか、それはおわかりになりますか。
  101. 香川保一

    ○香川説明員 実費分譲分は、これは正確にはちょっと数字がはっきりいたしませんが、約五百部から六百部くらいの間だろうと思います。
  102. 青柳盛雄

    ○青柳委員 実はこの断わられた人たちが、いわゆる税経新人会という民主的な方々の自主的な団体なんですけれども、おもに税金などがあまりにも過大に課せられたときに、税金の処分を取り消してもらいたいという行政訴訟など起こすときの重要な協力者、当事者が異議を申し立てたり訴訟を起こしたりするときに、弁護士じゃありませんから代理人にはなりませんけれども、税経新人会所属の方々が援助してくれるのだろうと思うのですが、そういう人たちのところだけぽきっと切ったというところに、言ってみれば、何か反税闘争にこんなものが利用されるのでは、敵に塩をやるようなものだというのでやめにしたのではないか。差別待遇じゃないだろうかというふうに考えられるので、私どものほうに、これは国会で明らかにしてもらいたいという要望が出てくるわけですけれども、そう言われてみれば、ほかのほうには五、六百やっておきながら、この人たちだけにはやめましたというのはふに落ちない、木に竹をついだような感じがするのですけれども、この点はどうでしょう。
  103. 香川保一

    ○香川説明員 ことばが足りなかったかもしれませんが、従来五百部ないし六百部を実費分譲しておったのでございます。それを全部やめにしようということにきめたわけでございまして、御指摘のように、税務訴訟の利用ということであるいはさような方に分譲しておったのかもしれませんが、これは中身を見ていただきますとわかりますように、税金の面で考えますれば、裁判所の税金訴訟についての判決をいろいろ集めてあるものでございまして、さような資料は最高裁判所の発行しておられます、これは一般に法曹会から市販されていると思いますが、判例集にも全部載っておるわけでございますし、一般の法律雑誌にもおもなものは掲載されておるわけでございます。決してさような道をとざすというような意図的なことでやったわけでもございませんし、まして、全部についてやめようということでございまして、特定のそういう方だけにやめにしたということでは決してございません。
  104. 青柳盛雄

    ○青柳委員 先ほどの質問に対する答えは、まだ完全に出ておりませんが、要するに前向きな話ではなくて、何かうしろ向きのような感じがするのですよ。別に弊害がないのにやめてしまうというのは、ちょっとうなずけない。だから、先ほどの説明では、何かほかの役所のほうに、下級の役所のほうにも配付しなければならぬからという、そういうことが一つの理由のように聞こえたのですけれども、五百や千くらいのものを申し込んだ人に郵送するということがわずらわしいというのは、ちょっと私どもには積極的な廃止の理由として、しかもこれが十何年も続いてきたことを、いま断固としてやめなければならないほど支障があるのかどらか、この点をお尋ねしたいのです。
  105. 香川保一

    ○香川説明員 率直に申し上げますと、役所の部内の執務の参考資料ということで作成しておる印刷物を、国以外の一般に実費にしろ分譲するということは、会計法上は若干問題があるわけでございまして、むしろ私どもとしては、厳密に言えばそれはできないことじゃないか、そういうような疑義を持っておるわけでございます。これを一般の方にも判例集と同じような意味で利用してもらうと申しますか、さような方法をとるといたしますと、先ほど申しました最高裁判所の判例集が法曹会を通じて市販されている、つまり法曹会が売っておるというふうなのと同じような形をとればできないことはないのでございますけれども、ただいま申しましたように、国を当事者にする訴訟の判決集のようなものでございますので、とても一般に、企業的にと申しますか、法曹会あたりでも五百や千部くらいのものは、一般市販用として印刷配付するというようなことはとてもできないことでございます。さらに十七年間とおっしゃいますけれども、実際これを必要の部分に配付するようにいたしましたのは昭和四十一年のことからのようでございまして、ただ「訟務月報」の関係の、みみっちい話でございますけれども予算も非常に窮屈になってまいりまして、さようないろいろの点から、今回やめにしようというふうにきめた次第であります。
  106. 青柳盛雄

    ○青柳委員 終わりにいたします。
  107. 高橋英吉

    高橋(英)委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後一時十三分散会