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1971-12-01 第67回国会 衆議院 文教委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月一日(水曜日)     午前十時五十分開議  出席委員    委員長 丹羽 兵助君    理事 久野 忠治君 理事 久保田円次君    理事 河野 洋平君 理事 西岡 武夫君    理事 山中 吾郎君 理事 山田 太郎君    理事 鈴木  一君       有田 喜一君    稻葉  修君       小沢 一郎君    塩崎  潤君       川村 継義君    三木 喜夫君       有島 重武君    多田 時子君  出席国務大臣         文 部 大 臣 高見 三郎君  出席政府委員         文部政務次官  渡辺 栄一君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部省大学学術         局審議官    安養寺重夫君         文部省体育局長 澁谷 敬三君         文部省管理局長 安嶋  彌君  委員外出席者         文教委員会調査         室長      石田 幸男君     ————————————— 委員の異動 十二月一日  辞任         補欠選任   堀田 政孝君     小沢 一郎君 同日  辞任         補欠選任   小沢 一郎君     堀田 政孝君     ————————————— 十一月十五日  社会教育施設に対する国庫補助増額に関する請  願(樋上新一紹介)(第一五八一号)  少年自然の家の整備事業費増額に関する請願  (樋上新一紹介)(第一五八二号) 同月十八日  養護教諭全校必置に関する請願東中光雄君  紹介)(第一六〇七号)  教育委員公選制復活に関する請願山中吾郎君  紹介)(第一六七五号)  学級編制基準適正化に関する請願山中吾郎  君紹介)(第一六九九号)  教育予算増額等に関する請願坂井弘一紹介)  (第一七二五号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第一七二六号) 同月二十二日  教育予算増額等に関する請願井岡大治紹介)  (第一八一二号)  同(石橋政嗣君紹介)(第一八一三号)  私立学校に対する公費助成大幅増額等に関す  る請願小林信一紹介)(第一八八四号) 同月二十六日  教育予算増額等に関する請願林孝矩紹介)  (第二一六二号)  同(林孝矩紹介)(第二二八二号)  中央教育審議会最終答申による教育政策反対等  に関する請願青柳盛雄紹介)(第二一六三号)  同(浦井洋紹介)(第二一六四号)  同(小林政子紹介)(第二一六五号)  同(田代文久紹介)(第二一六六号)  同(谷口善太郎紹介)(第二一六七号)  同(津川武一紹介)(第二一六八号)  同(寺前巖紹介)(第二一六九号)  同(土橋一吉紹介)(第二一七〇号)  同(林百郎君紹介)(第二一七一号)  同(東中光雄紹介)(第二一七二号)  同(不破哲三紹介)(第二一七三号)  同(松本善明紹介)(第二一七四号)  同(山原健二郎紹介)(第二一七五号)  同(米原昶紹介)(第二一七六号)  同(青柳盛雄紹介)(第二二九一号)  同(浦井洋紹介)(第二二九二号)  同(津川武一紹介)(第二二九三号)  同(寺前巖紹介)(第二二九四号)  同(林百郎君紹介)(第二二九五号)  同(東中光雄紹介)(第二二九六号)  同(不破哲三紹介)(第二二九七号)  同(松本善明紹介)(第二二九八号)  同(山原健二郎紹介)(第二二九九号)  同(米原昶紹介)(第二三〇〇号)  私立学校に対する公費助成大幅増額等に関す  る請願寺前巖紹介)(第二二八三号) 同月二十九日  中央教育審議会最終答申による教育政策反対等  に関する請願外十一件(土井たか子紹介)(第  二四五九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  文教行政基本施策に関する件(大学授業料  に関する問題及び財団法人日本相撲協会に関す  る問題)      ————◇—————
  2. 丹羽兵助

    丹羽委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。鈴木一君。
  3. 鈴木一

    鈴木(一)委員 最初大臣にお伺いしたいのですが、御承知のように、最近私立大学が軒並みに授業料を上げようというふうな動きを示しておるわけでございますが、文部省としてはこの状態をどういうふうに把握されておるのか。その原因は、単に物価高ということだとは思いますけれども経営上やむを得ないものなのか。また、上げることによって何にその財源が充当されるのか。そういうふうな実態把握文部省としてどういうふうにつかんでおられるのか、お伺いしたいと思います。
  4. 高見三郎

    高見国務大臣 私立大学授業料の問題は、昨年も同じような問題がありましたが、昨年見送っておりました大学は、今度はどうしても上げざるを得ないということであります。私どもといたしましては、授業料はなるべく上げてもらいたくないという気持ちを持っておるのでございます。これは文部大臣が現在の法制上、上げちゃならぬというわけにはまいりません。それから、調べてみますと、やっぱり私立大学経費は六一%ぐらいまで学生納付金によってまかなっております。私立大学財源と申しますのは、大体私立学校をつくりますときに法人をつくります、その法人基本財産法定果実、それと学生納付金というものでやっておるのでありまして、実は私立大学で歴史の古い大学ほど、基本財産というものが、その後の貨幣価値変動によりまして、私立大学をつくりました当時はこれで十分やっていけるという状態であったものが、貨幣価値の異常な変動によりましてやっていけないという状態になっておるのが実態でなかろうか、かように私は考えております。  そこで、本来私立大学建学精神というものは、国家公共団体のごやっかいにはならなくて、自分たちの自主的、創造的な教育をやるというのが本来のねらいであったかとも思いますけれども、しかし教育の大きな部面を占めておる私立大学について、国がこれを知らぬ顔をしていていいというものではないところから、ずいぶん私学助成の問題については努力をしてまいりました。しかし、それがどれだけウエートを占めておるかと申しますと、実は私学経営費の大体三%という程度にすぎないのであります。  そこで、来年度の予算要求ではこれを倍以上のものにし、また私学振興財団の資金の融資ワク等も思い切って伸ばしていこう、できることなら、私立大学授業料を上げてもらいたくないという気持ちを私ども切実に持っておるのであります。  現状把握をどう持っておるかという御質問でありますので、いま申し上げたようなことをお答えとして申し上げます。
  5. 鈴木一

    鈴木(一)委員 大臣の、できることならば上げてもらいたくないという、そういう希望はよくわかるわけでございますが、しかしそうした大臣希望、あるいはわれわれの希望とは関係なく、他の要因からして物価はどんどん上がっていく、同時にまた、大学に入りたいという進学希望者もますますふえていくというような状態でありますから、そういうふうな状況に対処するには、やはりここで私学としては授業料を上げるか、あるいはもし上げないとするならば——最初は官学に対抗して権力と関係のない教育をやっていこうということで始めたのが私学建学精神だと思いますけれども、しかし、あまりにもそうした状況の変化が激しいためにそれを貫くことができなくなってきておると思うのです。国の世話にならずに大学を維持するということができなくなっている。それなら国のほうでもっとそれこそ抜本的な助成をする。もちろん助成はするけれども経営内容に対しては干渉しないというふうな、大学の自治を守る立場からもっと積極的な助成をするということでなければならぬ。ただ大臣が上げてもらいたくないということをここで申されても、逆に今度は、おそらく授業料値上げというものは大学騒動のいい材料になると思うのです。ただでさえ騒ぎたがっておる人もおるわけですから、大臣でさえも上げてもらいたくないと言っておるではないか、なぜおまえら上げるのだ、こういうふうな形で学校騒動を一そう大きくする要因にもなりはしないかというふうにも私は考えるわけでありますけれども、上げてもらいたくないというならばそれなりの措置を、いますぐ抜本的に全部するというわけじゃありませんが、五年なら五年の計画を立てて、こういうふうな方向に行くんだということをここではっきり明示する必要がありはしないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  6. 高見三郎

    高見国務大臣 お話しのとおりだと思います。そこで一昨年から始めました私立大学補助制度を、これは人件費につきまして少なくとも私立学校に対して五カ年計画によって私立学校教官経費の五割までを国が持とうという計画でいっておったのでありますけれども、実は私立学校教官経費の五割だけを持ったのではたし解決するかということになりますと、やはりこれは解決しないという問題になります。そこで今年はこれじゃどうにもならぬと言っておるから、思い切って昨年の倍以上の要求をいたしまして、当面困っておる問題をまず片づけてやろう、それから、鈴木先生御指摘のように、私も文部省が金を出すからといって私学建学精神を傷つけるようなことはやるべきものじゃない。したがって、金は出すが口は出さないというたてまえだけは貫きたいと考えておるのであります。ここでは私はいま進行中の人件費補助五割は、ちょうど来年度は三年目になるのでありますが、これをできるだけ早く進めていって、それだけでは解決せぬ問題でありますから、もっと大幅に伸ばしていく、抜本的な問題を考えてみなければならぬ、かように考えておるわけであります。
  7. 鈴木一

    鈴木(一)委員 それじゃ、さしあたり、多いところは約八割くらいアップされる、もちろんそれは授業料というかっこうじゃなく、授業料はそのままにしておくけれども、入学に必要な経費その他も含めて多いところでは八割ぐらい、少ないところでも五割ぐらい値上げされるというふうな報道が新聞等に出ておるわけでありますけれども、それに対してはもう全然文部省としてはなすすべがない、それはもう上げるならばやむを得ない、こういうことになりますか。
  8. 高見三郎

    高見国務大臣 上げちゃならぬという権限文部大臣にはございませんから、個々にお目にかかって、何とかこの辺はもう一年見送ることができぬか——実はもう一年もう一年と言っておりましたのが、まあ特定名前をあげることはいかがかと思いますけれども、有名な都内の名門大学ですが、どうしてもことしは上げざるを得ないという決意をしておられるようであります。これは私の権限でもって上げちゃならぬという法制上の根拠はございませんが、まあ私のほうでも、今度は思い切った補助金予算が、とれるかどうかは別として、それを考えているのだから、ひとつ上げ幅を減らすとか、できることなら一年ぐらい見送ってくれるわけにはいかぬかということは、個々には話し合いをしておるというのが実情でございます。
  9. 鈴木一

    鈴木(一)委員 各大学それぞれ多い少ないの幅はあると思いますけれども、ここで堂々と値上げに踏み切った。それを世間に公表している。しかも、大学騒動なんというものは、一応三年前の大騒動後たいした騒ぎにはなっていないけれども、その後大学の改革なんか何一つできていないのですね。ですから、こういう授業料値上げが再び大学騒動に発展しないとは私言えないと思うのですよ。そういうむずかしい状況がここにあるにもかかわらず、あえて値上げに踏み切ったというのは、まあいろいろ私学助成政府考えておるけれども、そんなものはもう頼むに足らないんだといういわばあきらめの立場から、ここで堂々と値上げに踏み切ったのではないかというふうにも感ずるわけでございます。  しかし、この値上げをすることによって考えられるさまざまな紛争なり問題を考えた場合、やはり政府としては、誠意を示し、それではもう一年間見送ってくれ、上げるならもっと少なくしてくれというのならば、それを納得させるだけの今後の援助措置とか、そういうものを示さなければ、私立大学のほうだってそう簡単には承服しないと私は思うのですね。そういう点では何か欠くるものが文部省側にあるんじゃないか、こういうふうな感じがするわけでございますが、重ねてその点お伺いしたいと思うのです。
  10. 高見三郎

    高見国務大臣 予算が成立してみなければ何とも言えませんけれども私立大学経営の中で一番大きなウエートを占めているものはやはり教官費なんです。その教官費を少なくとも五割は見てやる。この時点に、来年度でこの問題を片づけるということができますならば、あとは今度は研究費の面、あるいはまた、人件費を五割じゃいかぬから七割五分ぐらいまで国が見るというような体制を、ひとつ政治の姿勢として示すということも必要じゃないかと私は思うのです。極端に申しますと、人件費だけぐらいは国が見てやる、あとのことは学生納付金でやってくれというところまでいければまことにけっこうなことだと思いますが、その辺のところは、これからの私ども努力の問題で、私ども誠心誠意今度は私立大学に対して、私立学校に対して思い切った助成の道を講じたいという意味での予算要求をやっておるということは、私立大学方面にも十分理解をしてもらっております。またそれは大いに感謝もいたしております。が、それだけでも片づかないというのが実情であるということだけは御了承願いたいと存じます。
  11. 鈴木一

    鈴木(一)委員 何か先ほど大臣、あまり健康がすぐれてないようなお話聞いていましたの、で、あんまりしつこくやって健康をそこねられても困ると思うのです。  重ねて、しつこいようですが、お伺いしますけれども、いまここで値上げをするということを各大学ともはっきり公表してきておるわけですね。ですから、個々にでもけっこうだし、あるいは私立大学協会とかそういう団体等でもけっこうでございますが、いま大臣が言われた、人件費を半分は持つ、あるいは場合によっては全部を持つ、研究費は七割ぐらいを持つのだというのも、それはいつまでに実現するから今回の値上げは思いとどまってくれとか、あるいはもっと幅を小さくしてくれとかいうふうな積極的な交渉がここで行なわれなければならないと思うのですね。どうも文部省は、日教組の問題になると一生懸命やるけれども、こうした問題については、投げやりというか——決して投げやりじゃないと思いますけれども、本気になってやっているという姿がわれわれに見えないのですね。それは金を持たずにただ、ああせい、こうせいと言っても説得力がないからかもしれませんけれども、そこまで大臣人件費あるいは研究費補助考えているならば、もっと具体的な数字を示して、私立学校当局といろいろな形でもっと強い折衝をしてみる必要があるんじゃないと私思うのです。その点いかがですか。
  12. 高見三郎

    高見国務大臣 まあ、そういう気持ちがありますので、いままでは、来年度が五カ年計画の三年目になるわけでありますが、五カ年計画人件費の半分は持ち、それから設備等につきましてそれぞれの補助をいたしております。それでことしは、昭和四十六年度の百九十八億円に対しまして四百十五億余の概算要求をいたしております。これに加えましてさらに医学部について別途三十何億という要求をいたしておるというわけで、文部省としては私学助成私学振興という問題につきましては、非常に積極的に取り組んでおるつもりでおるのであります。  ただ、お話しのように、大学自主性というものを、ことに私立大学につきましては私は建学精神というものをできるだけ生かしてあげることが必要であるという意味で、何度も申しますけれども、金は出すが口は出さないというたてまえでやってきております。ただ、口は出さないと申しましても、今度の場合は、何とか考えてくれぬかということは個々には折衝いたしておるというのが実態である。しかしこれは権限があってやっておる仕事ではありません。私どもでは、これだけの計画をいたしております、ついてはということで申し上げておるわけなんであります。その辺のところは事情を御了承いただきたいと思います。
  13. 鈴木一

    鈴木(一)委員 百九十八億とか四百十五億とかいう金は金額とすれば大きいかもしれません。しかし、私学全体に割り振りしてみれば、これは私は非常に少ないものになってくると思うんですね。薄められてしまって、人件費の一割ぐらいにしか該当しない、あるいは二割ぐらいにしか該当しないという金額だと私思うんですね。だから、気持ちの上では一生懸命やっておるんだというふうな気持ちはわかりますけれども、実際の面では、私学としてはこれにたよっていけば将来財政も好転するんだという安心感をそう持てないから、いまここでこんな事情を乗り切っても上げようという決意をしているのだろうと思うのですね。ですから、権限がないんだといえばそれまでですけれども、私はやはり、権限がないから、金がないから、どうにもならないんだということではなくて、先ほども申し上げましたような形で、今後この程度のことは何年か後に必ず実行するんだから今回はひとつ見送ってくれというふうな、もう少し迫力、説得力のある材料を整え、条件を整えて、積極的な説得というか交渉をしなければ、とても授業料値上げを抑止するということはできないと思うのですね。何か私はそこに、文部省態度というのはへっぴり腰だというか消極的過ぎやしないかと思うのですよ。せっかく高見さんが、われわれと同じ野人味のある方が大臣になられて、そういう面を大いに期待しておったわけでありますけれども、なってみれば、何となくいままでの惰性に巻き込まれてしまって、権限もないし、やってはいるんだけれどもというふうなことでは、まことにこれは期待はずれだと思うのです。もう少し積極的な態度でこれを抑制する、抑制するからにはそれだけの材料を整えて抑制に当たるというふうなことでなければならないと思うのですが、どうも大臣、あなた従来われわれをしかり飛ばしておったような意気込みがちっともないんじゃないですか。
  14. 高見三郎

    高見国務大臣 おしかりを受けましたけれども、私としては今度は私立大学私立学校補助助成というものは、少なくとも予算要求の非常な大きな柱といたしておるのであります。しかし基本的には、中教審の答申にもありますように、私立大学助成あり方というものについて早急に基本方針を立てなければならぬ、こういうように考えております。その線に沿って、将来の私学振興というものを今度はほんとうに国が積極的にめんどうを見るのがあたりまえだという一つの行き方にしなければならぬという考え方でおるのであります。その辺については、鈴木さんと私との間に考えの違いは毛頭ない、私はこう考えておるのであります。  文部省のいままでのやり方というものにつきましても、文部省もずいぶん私学振興については努力をしてまいっております。私も文部省へ入ってみて、いかに文部省の連中がこの問題で苦労しておるかということがよくわかるのであります。その辺のところは、いますぐつかみ金でこれだけやるから授業料を上げることを待ってくれというわけにはまいりません。基本的な問題については、これから検討に入ります。そして、あなたのおっしゃる年次計画を立てて、私学経営が健全化するだけの国の負担分というのははっきり打ち出さなければならぬ、こういうように考えておるわけであります。
  15. 鈴木一

    鈴木(一)委員 端的にお伺いいたしますが、今回の授業料値上げについては抑止する、押えるということについては自信がないということですね。
  16. 高見三郎

    高見国務大臣 予算が成立してみなければわかりませんが、私は、この要求しておる予算が全部通るということになりますとある程度抑制はできるということを考えておるのでありますけれども、御承知のような経済情勢で、財政状況から申しますと実はこの予算を獲得することは容易なことじゃありません。これは文教関係の与野党の議員の皆さま方に全部お力添えをいただいて、この予算だけは何とか成立させたいというのが私の偽らざる願いなのでありまして、ひとつよろしくお願いを申し上げます。
  17. 鈴木一

    鈴木(一)委員 予算が通らなければ何とも言えない、もしこの要求している予算が通るならば押えることができるということのように、いま大臣の答弁を聞いたわけでございますが、私立大学授業料値上げの問題は国家としても大問題だと思うのですよ。ほかのことはともかくとして、四百億ぐらいの予算は必ず獲得するという前提に立って、予算が通れば何とかなるかもしれぬが、通らなければだめじゃなくて、必ずやるんだ、通すんだ、そのために私らに協力しろというならどんな協力でもしますよ。しかし、そういう前提に立って交渉してもらわなければ、予算が通れば何とかなるかもしれぬけれども、通らなければむずかしいというようなことでは、私はあまりに見識がないと思うのです。大臣、あなたこのぐらいの予算は必ず取ってみせるんだ、だから鈴木、あまりとやかく質問するな、おれは必ず押えてみせるんだ、そのくらいのことは言い切らなければだめだと思うのですよ。どうですか、もう一回ひとつ。
  18. 高見三郎

    高見国務大臣 御激励として受け取っておきます。私は全力をあげてこの予算を取る努力をいたします。また、実は予算で解決する問題じゃないのであります。少なくとも私立大学等につきましては、四百十五億程度で満足じゃない、その倍でもなお十分とは言えません。しかし、少なくとも私どもがいま要求しておりますものは、従来の文部省がやっております私立大学助成についての割合から申しますと画期的な要求であるという考え方をいたしております。したがって、個々大学につきましては事情を十分伺っております。伺っておりますが、特定名前をあげて申し上げることもいかがかと思いますけれども事情はいろいろ聞いております。また、こちらの立場からする考え方も申し上げておるわけであります。それ以上のことを、上げることはまかりならぬというわけには実はまいらないのが、現行制度上の私の立場であるということは御理解をいただきたいと思います。
  19. 鈴木一

    鈴木(一)委員 押し問答みたいになるのですが、いまの四百十五億というものが画期的だ。それは文部省にとっては画期的かもしれませんけれども世間一般常識からすれば、いままで何もしていなかったのであって、たった四百十五億が取れるか取れぬかでびくびくしているような大臣では困るじゃないかというのが世間常識だと思うのですよ。どうかひとつ、これ以上しつこくは言いませんけれども、今回の値上げについては、基本方針としては押える、待ってもらう、しかしそれでも上げるようなものについてはその幅をうんと狭くしてもらうということについては、大臣がこれから大いに努力をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
  20. 山中吾郎

    山中(吾)委員 鈴木委員授業料問題についての質問に関連してお伺いしたいと思いますが、この問題は、物価問題、それから私学運営費経常費の問題と、それに応ずる授業料という三者が悪循環で歯どめのない姿では解決できないと思う。そこで根本的に、授業料というのは一体どういう性格なのか、大学というのは一体どういうものなのかということを検討しないと、大蔵省に対する説得力もないし、それから文部省が主張するにしても、何か自主性のないような感じがするので、根本的に私はお聞きしておきたいと思う。  まず第一に、国立授業料私学授業料が格差があるので、そこで国立は上げていいんだというふうに、公平の問題と授業料あり方をすりかえてはならない。私学のほうは非常に授業料が高いから、国立は安過ぎるから上げるという思想は、何らそこによりどころがないので、その考えは私は間違いである。もしそうならば、基本的な原理を私は述べなければならない。したがって、国立と私立の授業料の問題にすりかえてはならぬと思う。その点は大臣どう考えておられますか。
  21. 高見三郎

    高見国務大臣 前回の山田さんの質問に対して、私は私個人としての感じから言うと、バランスの面から見るならば、国立は安過ぎるという感じがいたしますということを申し上げたのであります。しかし、国立の場合における授業料というものは、法律的な言い方をするならばこれは営造物使用料金だということなんですね。授業料というものの性格は。とするならば、国立が低過ぎて私立が高過ぎるから、国立と私立のバランスをとるという議論は、議論として成り立たないということは、山中先生いま御指摘のとおりであります。私もそう思っております。これはいろいろな観点に立っていろいろな見方があるわけなんです。私立においては月四千円も取っているじゃないか、国立学生は月千円でいいのはあまりにバランスの面からいったら失しておるのじゃないかという議論は、感情論としてもあるし、また確かにそういう面もあると思うのです。けれども、それならまた逆な言い方もできるわけでありまして、国立でやるからにはいっそ授業料などというものは取らなくていいじゃないかという議論もできるわけだろうと思うのであります。私立の場合におきましては、これは私は日本古来の授業料というものの本来の姿は、教わる学校に対するお礼というのは非常にことばが陳腐なことばになりまするけれども、謝礼という意味が、日本にずっと伝わっておる思想の根底には私はあると思う。けれども、これも私立の場合を法律的に考えてみますと、やはり受益者負担ということなんですね。そういうふうに理解しなければならぬだろうと思うのであります。  もともと私立が成立いたしました当時、たとえば新島先生の同志社大学、福沢先生の慶応大学あるいは大隈先生の早稲田大学というふうなものは、それぞれの建学精神がある。国家権力の支配を受けないという建学精神があり、またそれぞれの基本的の財産をお持ちになっておった。ところが、御承知のように、慶応に例をとってみましても、学舎は今度の戦災で全部焼けたわけなんですね。しかもその当時相当の金があったのであります。その当時の金から言うと相当の基本財産があったのですけれども貨幣価値が非常な変動をしておる。これはほんとうにお話にならぬほど基本財産の価値が下がってきておるということを考えますと、その建学精神を生かしながら国が早く援助の手を差し伸べなければならなかったはずなんであります。わずかながら私学振興についての助成はやっておりましたけれども。今度はひとつ本格的に国がやってみようということであります。山中先生のおっしゃるように、私は私学国立とバランス論から議論をしようという気持ちはいまのところは持っておりません。
  22. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大学界に対して根本的に文部大臣はさらに掘り下げて識見を持っていただきたいと思うのです。まだ営造物という観念をお持ちになっておると思うのですが、この営造物という観念は文部省は伝統的に固執しておるようでありますけれども、これは事実に合わぬのじゃないか。図書館、博物館のように一時間か二時間図書を閲覧するとか、あるいはそこの中のものを見るお客さんとして使用料を取る、そういう図書館、博物館という営造物の観念と、四年、五年その大学にあって、そしてそこで自分の生活の大部分を持っておる学生と教授とによって構成されておる大学を同じ営造物と考えるから、授業料も使用料というふうな考えで、かってに上げてもいいのだとか、経営に応じてというふうな考えが出るのじゃないか。その大学の中で学術を研究するということで数年在籍しておる学生、教授、職員というのはやはり学術を研究するところの者なんだ、そういう考え方で、同じものを、たとえば住民税のように構成員から負担をするということで論議をするならまだいいけれども、そんな古くさい時代錯誤の、営造物——図書館、博物館と同じように学校を考えるような考えは捨ててもらいたい。そこから授業料を持ってくるから少しも説得力がないのですよ。違うと思うのですね、ヨーロッパの考え方にしても。そういう意味において授業料というものを検討すべきなんですね。憲法の二十六条に基づいて国民が教育を受ける機会が人権として保障されて、義務教育は無償だが、そうでなくても、その思想からいけば機会を国が与える責任があって、生徒に負担をかけないのが理想だということだけは憲法の思想にあると思うのですね。そういうことも含んで、やはり授業料というものを根本的に検討さるべき段階に来ておるんじゃないか。それをここで論議はいたしませんが、そういうことを解決しないと、授業料はただ悪循環で、上げるにしても歯どめがないのです。押えるにしても、ただ便宜上言うだけの話になってしまっているので、これは根本的に検討すべきじゃないか。  そこで、設置者として国立の場合、学校法人の場合に差別をするのはおかしいじゃないか。教育基本法で、法律で定めた学校というのは一元主義なんです。そういう意味において私は、いまの文部大臣の第六感的な御答弁は何の説得力もない。上げるにしても下げるにしても、もっと根本的に検討願いたい。私は関連質問ですから要望だけしておきます。ここで論議をしても、何かからだのぐあいがお悪いようだから次の機会にします。  その次に、私学を中心にして授業料大臣にさらに検討していただきたいので、私は鈴木委員質問に関連して申し上げますけれども私立大学において一体授業料をどこまで上げればいいのかというふうな基準が——少しも文部省において指導的な基準、識見を持っておられない。私立大学において学生に負担をかけるのはどのぐらいがいいのだ、あるいは国からどれだけ負担すべきである、あるいは寄付その他においてどれだけだという、少なくとも国から経常費全額の三分の一を負担する、あるいは寄付その他によって三分の一を捻出する、学生生徒から三分の一を負担させるのが妥当であるとか、そういうものがあって、現在の授業料はどうあるべきかという論議ならば、私は大蔵省に対しても国民に対しても学生に対しても一つの説得力があると思うのです。その基準なしに押えていくとか上げることを黙認するとかいうところからは、何の意味も私はないと思うのですね。一体、私学において国は経常費のどれだけを持つのが妥当と考え、それから学生からどれぐらいの負担をかけるのが妥当と考えるか、その基準があって、あと現実の財政問題でどうだということが出れば、私はわかると思うのですよ。経常費の三分の一は学生授業料で負担すべきが正しいというならば、いまの授業料は非常に少ないのだ、高いのだという論も出るでしょう。それは別だ。しかし、少なくとも妥当な基準というものを文部大臣が識見をもって出していかなければ、上げるにも下げるにも歯どめのない、何の説得力もないものになる、そういうことを考えるべきだと思うが、いかがですか。
  23. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 私は、山中先生のお話、まことにごもっともだと思いますが、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、私学助成の基本的なあり方につきましては、中教審もいろいろな提案を行なっているわけでございます。ABCDといったような助成方式を大学に選択させるというようなことも申しておりますし、標準教育費の一定の割合を国が助成金として交付する。その前提には、山中先生おっしゃいましたように、標準教育費という考え方があって、そして国がどの程度を負担し、受益者としてどの程度を負担するか、そういうことを明確にして国公私立——まあ私立だけの問題じゃなくて、国立も通じた今後の一つの考え方を設定すべきであるということを申しておるわけでございます。  私ども基本的にはこういう方向に従って検討いたしているわけでございますが、答申後時間も十分なかったものでございますから、まだ結論を得ておりませんが、答申を受けました際に、坂田前大臣からも中教審で申しましたように、四十八年度を目途にして新しい私学助成の方式を検討してまいりたいというふうに考えております。現在は、御承知のとおり人件費並びに経常的な教育研究費の二分の一がめどでございますが、これを補助するということで、先ほど来大臣からお話を申し上げておりますような予算要求をいたしておるわけでございます。  しかし、かりにこれが予定の計画どおり遂行されたといたしましても、おそらく私立学校の全支出の二割五分ないし三割程度カバーするということにしかならないと思います。そういたしますと、それで私学授業料の上げ下げに影響を与え得るかといいますと、これまたなかなかむずかしい課題だと思います。したがいまして、山中先生おっしゃるように、私学全体の経費あり方というものと、それに対して国がどういう負担をする、あるいは受益者がどういう負担をするというようなところ、それから基本的に検討していかなければならぬかと思います。四十八年度予算の編成を目標にいたしまして検討をいたしたいというように考えております。
  24. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そういう基準によれば、授業料は高過ぎて困る結果が出ると思うのですね。いまの、国がどのくらい私学経常費を持つべきかということ——ほとんど授業料に負担をかけている。あるいは学生納付金、入学金その他を含んでいわゆる学生に負担をほとんどかけることによって経営しているのだ。国が私学にどれだけ持つという基準が出れば、上げることを奨励する根拠は一つもない。そういう基準があって初めて大蔵省に四百何ぼ要求したものも説得力がある文部省要求になるので、そういう基準を持たないで、ぺこぺこ頭を下げて、なるだけ多く頼むから野党も頼むなんて、そんなところから説得力は出ませんよ。私学において国が幾ら経常費を持つべきである、学生にはこれ以上負担をかけるべきではない、何分の一だけはという——少なくとも人権として教育を受ける権利を保障された憲法下において、学生に負担をかける面は最大これぐらいというのがあって初めてその足らぬものは国が出すべきだという説得力ある予算要求になるでしょう。四十八年度なんて言っているから——こんなものはとうにできてなければならぬ。そして、いまごろ授業料で騒然たる姿を出させておるのは文部省の責任ですよ。これは怠慢だ。やるべきことを少しもやっていない。速急にそういう識見のある原則を出していただきたい。  それから、私は受益者ということばは反対である。教育を受ける権利を保障された国民が大学に入ったときに、受益者とは何ですか、受益者とは。国の発展のために有用な人材を養成するという意味からいっても、憲法上の国民の立場からいっても、受益者ということはおかしい。国というのは、受益者ばかりいて、みずから加害者の場合には何も加害者という概念が出てきていない。そういうことばは使うべきではないと思う。ただそのあとに、公平の原則で、貧富の差があるときには、授業料についても減免制度をもっと徹底的にやるのだ、同じ教育を受ける者の中において経済的差があるならば、希望者は一定の基準によって入学を認めた者については学習の権利を保障して、経済的に負担があるならば減免制度、育英制度を徹底するということも含んで授業料を検討すべきで、伝統的な受益者概念で始末するということは識見がない。局長のことばはよろしくない。私はこれで質問は終わりますが、そういうことを含んで、根本的に大学間の問題、それから授業料と憲法二十六条の理想の上に立ってどうあるべきかということ、設置者いかんにかかわらず、教育において同じなんだから、国立大学であろうが私立の大学であろうが、大学教育というものに対して国が責任を持つのであって、現在の制度は設置者によって差別すべきじゃないのだから、設置者負担主義というふうなものは間違いなんです。私は、そういう意味において一方に法改正を要求しておるわけでありますけれども、そういう理念のもとに、根本的に文部大臣の高い識見をまず発表して、そしてこの授業料についての説得力がある結論をお出し願うことを特に要望いたします。  鈴木委員のいま出された問題は、非常に重大な日本の教育制度の基本に触れるものなんです。だから、この常任委員会でこういう問題を真剣に取り上げなければ、国会における文教委員会の権威が低下すると思うのですが、このとおりほとんどいない。何かもっと次元の低い問題のときだけ集まって、一番大事なこういう問題のときに集まらぬのはまことに遺憾だと思うので、これは委員長に、今後も文教委員会の権威を高めることについてひとつ御検討願い、文部大臣の識見をこの機会に、授業料問題という場に出してもらいたい。大臣の所見を聞いて私、質問を終わります。
  25. 高見三郎

    高見国務大臣 山中先生のいまのお話、私は、私立大学というものが、建学当初の理想とは社会情勢が変わってきた。したがって、あなたのおっしゃるように、私は国が積極的に援助の手を差し伸べなければならぬという考え方をとっておるわけであります。ただ、とは申しましても、それを来年からすぐやれるかということになりますると、これは国の財政上の問題もありますし、なかなか容易なことではないのでありますけれども、今回要求しております予算というものは、少なくとも私立学校全体の運営についての六・九%ぐらいにはなると思いまするし、それから私学振興財団財政投融資等を考えますると、相当大きな寄与をする面がある。それで私学について私どもは干渉する気持ちは毛頭ありませんから、それは私学建学精神にのっとっておやりになればいいことであるという基本的な考え方は終始貫いてまいりたいと思っております。  そこで、先生いろいろ御指摘の国立の問題について、これは国民の心情的な問題も私はあり得ると思うのであります。何で私立だけがあんなに高くて国立はあんなに安くていいのだという心情的な問題は私は確かにあると思う。あると思うのでありますけれども、これは先生御指摘のとおりの、どうも私は行政法上の単なる営造物使用料という観念で大学授業料というものを考えるべきものじゃないという感じは全く同感なんであります。ただ、非常に困る問題は、ようやく学校も一応正常の姿になった際に、こういう問題でまた一騒ぎ起こるということは、私としては実は耐えがたいつらいところなんであります。その辺のことはひとつ私も悩みを同じくしている者であるという御理解をいただきたいものだ、かように考えます。
  26. 鈴木一

    鈴木(一)委員 どうも文部省のやり方は、いまここで火が燃えておるのだ、消さなければならないというときにさっぱり消そうとしない、いずれ中教審あたりの答申を待ってというふうなまことに手ぬるい態度でいままできていると思うのです。私が大臣にきょう要望したことは、いま山中君から言われた基本的な姿勢もさることながら、とりあえず、とにかく値上げ抑制する、できなければその幅を狭めるという努力をしてもらいたい、まず火事を消してもらいたい、こういうことで要望しているわけでございますが、どうかひとつそういう私たちの線に沿うて積極的な努力をしていただきたいということを強く要望しておく次第でございます。あまりやっていると健康にお悪いですからこの辺にしておきます。  なお、約束の時間は一時間でございましたが、大体一時間近くなりましたので、簡単にもう一つの問題をお伺いしておきます。これは文部省としても十分調査もしてないでしょうから、答弁のしにくい点も多々あろうかと思いますけれども、いずれあらためて別の機会に本格的な質問をしてみたいと思うのでありますが、きょうはその前段というかそういう意味で申し上げますので、わかることはわかる、わからぬことはわからぬでけっこうですから、お答え願いたいと思います。  最近、新聞やテレビをにぎわしておる日本相撲協会の暴力団との関係とか、あるいは弟子入りしている子供の教育の問題なんかが報道されているわけでございますが、こんなことを委員会で聞かれると、あるいは文部省迷惑かもしれませんが、幸か不幸か財団法人日本相撲協会の監督官庁は文部省なんですね。そうですね。そういうふうな関連がありますので、お伺いしてみたいと思うわけであります。  たしかいまから十年くらい前だと思いますが、同僚議員の辻原君が日本相撲協会あり方について相当突っ込んだ質問をされて、それに沿うてかなりの改革が行なわれ、大きな成果があがったと私は思うわけでございますが、相撲協会が今日まで命を長らえ、また一面繁栄しているのは、そうした時代の要請を入れ、また本委員会の要請を入れて改革を断行したことにあると思うわけでありますが、どうもあの協会は封鎖された社会のようでありますので、中からはなかなか改革がしにくいだろうと思うのです。ですから、やはりはたから窓を開いて、新風を吹き込んで、そうして改善改革の方向に向けていかなければならない面が多々あるのじゃないかというので、きょう御迷惑でしょうけれどもお尋ねをするわけでございます。  最初にお伺いしたいことは、現在相撲協会のやっている相撲というふうなものは一体健全なスポーツなのか、私は非常に疑問を持つわけなんです。というのは、力士の健康状態考えてみますと、たとえば横綱をやった人の平均寿命というものは五十五、六歳だ。非常に早死にしているわけです。健康上そこに相当の無理があるのじゃないか、そういうふうな感じがするわけでございます。元相撲診療所の所長をやった岩崎さんの談話が雑誌に出ておりましたが、その中には、二百八十四人の力士の心電図をとったところが、健全な者はたった三十六人しかなかったというのですね。そうすると、心電図をとってみますと、不健全な、病人に近いような人たちがああいう相撲をとっておる、激突しておるというふうなことは、これはもう健康を害するのはあたりまえであって、はたしてこれが健全なスポーツであるかどうかということを、私は非常に疑いを持たざるを得ないわけでございます。しかも日常の食生活は、普通の人の摂取する必要カロリーの倍以上のカロリーをとって、一日に三十分ぐらいけいこをして、あとはぶらぶらしておるというふうな状態だという。順天堂大学のスポーツ医学の北村和夫博士の話によりますと、確かにプロスポーツというものは片寄ったからだをつくってしまう。これはやむを得ないものかもしれませんけれども、特に相撲の場合は、短時間に瞬間的な爆発的な力を要請されるために、とにかく食え食えと腹一ぱい食って皮下脂肪をうんとたくわえ、それでばんとぶつかって勝負を決するというふうなことでありますけれども、これは医学的に見て、多量の皮下脂肪を体内に蓄積するなんということは健康とは全く逆な方向だと思うのですね。こういうふうな健康管理のもとでありますから、いろいろな病人が出てくる。それに場所も六場所制だ。そうすると、一場所十五日でしたか、年間九十日間本場所がある。その間また地方の巡業があるというふうなことで、したがって興行の収入をあげるためにはみんなが無理しなければならない。特に看板力士、たとえばこの間なくなった玉の海のような、気の毒な目にあっておるわけでありますけれども、盲腸だということがわかっておっても治療するいとまもない。しかも皮下脂肪をたくさんだくわえていますから、ほとんどほかの人には考えられないような、肺血栓なんという病気で突如なくならざるを得ないというふうなことでございますが、一体、こういうふうな力士の健康状態をこのままにしておいて、健全なスポーツであり、はたして国技に該当するものかどうかという点について非常に疑問を抱かざるを得ないわけでございます。  私も日本人でありますから、またわが郷里からはいろいろと名力士が出ておりますので、また相撲が始まったのかとそのときはそう思うのでありますけれども、やはりだんだん地元の相撲が勝ったりなんかして関心を持ち、大体六場所大かたはテレビなんかを見ておるわけでありますが、そうした相撲に対しては、私もファンの一人だと思っておりますが、いまの状態では行く先が非常に心配なんで、こういう点についてひとつ監督官庁である文部省のほうとしては、簡単にどうこうしろ、ふとるのはやめてやせろとか、めしを食うなというわけにはまいらないかと思いますけれども協会のしかるべき責任者を呼んで、暴力団との関係もさることながら、こういうふうな面についても相当の注意を喚起しておく必要がありはしないかというふうにも思うわけでございます。  それから、あとで一括して答弁をいただきたいと思うわけでありますが、暴力団との関係でございますが、事実については申し上げません。ただ、同じプロスポーツでもプロ野球なんかの場合は、暴力団と関係があった、疑わしかったというだけでも出場停止の処分を受けている者もあるわけですね。あるいは暴力団との関係がはっきりし、しかも八百長をやったということがはっきりした場合は、永久追放というふうな重い制裁を受けておるわけでございますが、相撲協会の場合は、特殊な社会かどうか知りませんけれども、あやまればいいんだというふうなことで簡単に見過ごされておるわけでございます。しかし暴力団との関係というものはこの種の興行にはつきものであろうと思います。その度合いの強さ薄さは別といたしまして、つきものだと思うわけでございます。ただ特定の力士二、三人の者が悪かったというだけじゃなくて、協会そのものが、特にまた協会をリードしておる俗にいう親方、幹部連中がやはり長いそういうふうなもののつき合いの中にあって、世間から言われてみて、ああそれは悪いのかという程度のものであって、実際は身にしみてこれは悪いんだという気は私はないのじゃないかというふうにも思うわけでございます。しかし、それはそれとして、こうした相撲協会に対して、国技であるということで、大正十四年以来天皇賜杯とかあるいは最近では総理大臣杯まで贈られておるわけでありますが、こういう点がはっきりしない限り暫時賜杯は取り上げるというくらいのきびしい態度も、こうした姿勢をただすためには必要じゃないかというふうにも考えるわけでございます。  まずこの二つについてお伺いしたいと思います。
  27. 高見三郎

    高見国務大臣 今度の不祥事件につきましては、体育局長が相撲協会理事長を呼びまして厳重に指示をいたしました。相撲協会といたしましても、まことに相すまぬという意味で、早急に改善策を講ずるということを申された。私は、鈴木先生おっしゃるように、相撲というのは——相撲だけの問題じゃありません、いわゆる体育における選手というものは片寄った世界になっておるという感じがするのですが、そのうちでも相撲については特にそういう感じがするのであります。しかし、相撲界の実態というものは、歴史的に考えてみまして、非常に伝統が古いだけに宿弊も依然として残っておるというのが、今度の事件の一つの端的なあらわれであろう、私はこう考えております。  そこで、何年前でありますか、社会党の辻原委員から相当突っ込んだあれがありまして、その機会にずいぶん改革をされました。改革をされましたが、依然として残っております茶屋の制度というようなものは、一般大衆にとっては縁遠い存在になっておるということも事実であります。それらの問題を含めまして相撲協会の猛省を促しておるわけであります。  確かにお話のように、健康管理の上から申しましてもまことに不健康なことをあえてやらしておるというのが相撲の世界じゃないかということは御指摘のとおりであります。これでお相撲さんがみんなやせた人間ばっかりで相撲をとったら相撲協会というものは成り立たないだろう。しかしこれは、日本人自体にとりましても、その辺の調和の問題は非常にむずかしい問題であろうと思うのでありますが、相撲協会がせっかく自律的に、私のほうで改革をいたします、もし今後かような問題が起こりましたならば出場停止をいたします、改革につきましても積極的に努力をするということを誠意をもって理事長が申し出ておりますので、しばらく相撲協会の動きを見守ってやっていただきたいと思うわけであります。
  28. 鈴木一

    鈴木(一)委員 暴力団との関係なんかも、該当している力士の話を——これも私また聞きでございますが、世話になった暴力団が留置場へ入っておる、それを見舞いに行ったとかいう話ですが、親方が行けと言うから親方の許可をもらって行ったんだ、こう言っているんですね。だから、それだけやはり相撲協会全体がそういうこととの関連が深いし、そういうものからも賞金なんかもらっていた、騒ぎが大きくなったからやめたというふうなことでございますから、相撲協会自体が改革するということは、先ほど申し上げましたようになかなか困難だと思いますので、やはり外からそういうふうなものの改革ができるような導きをしてやる必要がありはしないかというふうに思うわけでございます。  それからまた、勝負そのものの内容につきましても、われわれしろうとが見ても明らかにこれは八百長ではないかと思われるようなものもあるわけです。これは義理人情に厚いから、ここで負けると番付が下がるからというんで貸したということかもしれませんけれども、現在相撲協会に対して第三者的に見ておる力士の方から、これも私また聞きでございますが、昔はのっぴきならないようなそういう義理にかられて負けてやったこともある、しかし金銭は全然伴っていなかったというんですね。   〔委員長退席、河野(洋)委員長代理着席〕 しかし、最近ではもう公然と金銭を代償に八百長が行なわれておる。多い場合は五十万とか、少なくても二十万くらいの金銭が動いておる。その金は本人同士の貸し借りではなくて後援者のほうから出ているというふうなこともいわれておるわけでございます。天皇賜杯、総理大臣杯まで出ている、しかも国技として財団法人として一応保護されておる相撲協会の、しかもテレビその他において世間に公開されておるそれが、白昼堂々とそういう八百長が行なわれているなんということは、これはとんでもないことだと思うんですね。何かこれ特殊社会だからしようがないんだというふうなことであってはならないと私は思う。やはり相撲協会も日本の現在の法律、道徳の中に生きているわけでございますから、そういう点についてかすに時間はいたします、決して角をためて牛を殺すなんというふうなばかな考えは私たちも持っておりません。長い伝統の中には悪い面も私はたくさんあると思うのです。ただ、連中にだけまかしておかれない問題がたくさんあると思いますので、文部省としても、荷やっかいなことかもしれませんけれども、監督官庁としてそういう点を善導するように積極的な指示をすべきじゃないかというふうにも考えておるわけでございます。  なお、文部省のほうからいただきました日本相撲協会寄附行為というこの規約を見ますと、この中に、第八章第三十九条に「運営審議会は、七名以上十五名以内の運営審議委員をもつて組織する。運営審議委員は、学識経験者のうちから、理事会の議決を経て、理事長が委嘱する。」これがいろいろ協会の運営について意見を具申するようになっておりますが、現在こういう運営審議会というものが設置されておるのか、しかもそれが正当に任務を果たしておるのかどうか、その点をお伺いしたいと思いますが、ただ、学識経験者というと、相撲の学識経験者というのはちょっとそういないですね。おそらくこれは第三者で相撲に対して非常に知識と関心を持っている人という意味だと思います。そうじゃなくて、相撲をやった力士経験者だけでは、こうした審議会の十分な運営はできないと思うわけでありますが、もし相撲協会を今後いい方向へ持っていくとすれば、この規約からしましても、この運営審議会あたりが改組されて——現在まで眠っておるとすればこれを改組してここから新風を吹き込むのも一つの方法だと思いますので、その点をお伺いしたいと思います。
  29. 澁谷敬三

    ○澁谷政府委員 現在委員になっておられます方は、いわゆる相撲の専門家ではなく一般社会の、たとえて申しますと、富士銀行の会長さんであるとか、東京ガスの社長さんであるとか、そういった相撲に非常に理解をお持ちの民間の社会人、全部そういう方でございます。  毎年定例の審議会を年三回やっております。一月、五月、九月のそれぞれ本場所中に定例会を三回やっております。そのほかに臨時会を必要に応じてやるということで、今度の先ほど御指摘のあったような問題につきましても、いろいろさらに改善をはかっていきたいということを理事長は言っておりますので、その場合もこの運営審議会にはかりまして、具体案をいずれ文部省にまた報告したい、そういうふうに言っております。
  30. 鈴木一

    鈴木(一)委員 きょうは問題を提起しただけでとどめたいと思いますが、いずれ協会の責任者に本委員会に参考人として来ていただいて、よく協会側の事情も聞いた上で、われわれも積極的に意見を述べて、再びこうしたあやまちを繰り返すことのないように、しかも国技としてりっぱな方向に相撲協会が進むように、私たちも積極的に努力したいと思いますが、きょうは問題を提起しただけにとどめておきます。      ————◇—————
  31. 河野洋平

    ○河野(洋)委員長代理 この際、連合審査会開会申し入れの件についておはかりいたします。  沖繩及び北方問題に関する特別委員会において審査中の案件につきまして、同委員会に対し連合審査会の開会を申し入れることといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 河野洋平

    ○河野(洋)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、連合審査会の開会日時につきましては、委員長間において協議いたしますが、来たる四日午前十時より開会の予定でありますから、御了承願います。  次回は来たる三日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二分散会