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1971-12-21 第67回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月二十一日(火曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 藤田 義光君    理事 仮谷 忠男君 理事 熊谷 義雄君   理事 松野 幸泰君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 千葉 七郎君 理事 斎藤  実君    理事 小平  忠君       安倍晋太郎君    江藤 隆美君       鹿野 彦吉君    佐々木秀世君       坂村 吉正君    田中 正巳君       中尾 栄一君    野原 正勝君       藤本 孝雄君    別川悠紀夫君       安田 貴六君    山崎平八郎君       渡辺  肇君    角屋堅次郎君       田中 恒利君    中澤 茂一君       松沢 俊昭君    美濃 政市君       相沢 武彦君    瀬野栄次郎君       鶴岡  洋君    合沢  栄君  出席政府委員         防衛施設庁施設         部長      薄田  浩君         農林政務次官  伊藤宗一郎君         農林大臣官房長 中野 和仁君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農政局長 内村 良英君         農林省農地局長 三善 信二君         農林省畜産局長 増田  久君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         林野庁長官   松本 守雄君         水産庁長官   太田 康二君  委員外出席者         環境庁自然保護         局鳥獣保護課長 仁賀 定三君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月二十一日  辞任         補欠選任   芳賀  貢君     中澤 茂一君     ――――――――――――― 十二月六日  農林年金制度改善に関する請願外三件(河野  密君紹介)(第二八六一号)  国産材需要安定対策等に関する請願外十件  (塩崎潤紹介)(第二八六二号)  同外四件(久保田円次紹介)(第二九〇二  号)  同外四件(藤井勝志紹介)(第二九〇三号)  同(三池信紹介)(第二九〇四号)  同外八件(安倍晋太郎紹介)(第三〇三一号)  同外十一件(大村襄治紹介)(第三〇三二号)  同外九件(野田卯一紹介)(第三〇三三号)  同外九件(藤田義光紹介)(第三〇三四号)  同(武藤嘉文紹介)(第三〇三五号)  中国食肉輸入禁止解除に関する請願近江巳  記夫君紹介)(第二九〇一号)  同(赤松勇紹介)(第二九五七号)  同(安宅常彦紹介)(第二九五八号)  同(井岡大治紹介)(第二九五九号)  同(井野正揮君紹介)(第二九六〇号)  同(上原康助紹介)(第二九六一号)  同(大原亨紹介)(第二九六二号)  同(近江巳記夫紹介)(第二九六三号)  同(角屋堅次郎紹介)(第二九六四号)  同(金丸徳重紹介)(第二九六五号)  同(木島喜兵衞紹介)(第二九六六号)  同(黒田寿男紹介)(第二九六七号)  同(小林進紹介)(第二九六八号)  同(佐藤観樹紹介)(第二九六九号)  同外一件(田中恒利紹介)(第二九七〇号)  同(千葉七郎紹介)(第二九七一号)  同(土井たか子紹介)(第二九七二号)  同(堂森芳夫紹介)(第二九七三号)  同(中澤茂一紹介)(第二九七四号)  同(長谷部七郎紹介)(第二九七五号)  同(藤田高敏紹介)(第二九七六号)  同(古川喜一紹介)(第二九七七号)  同(松沢俊昭紹介)(第二九七八号)  同(松浦利尚君紹介)(第二九七九号)  同(美濃政市紹介)(第二九八〇号)  同(横路孝弘紹介)(第二九八一号)  同(米田東吾紹介)(第二九八二号)  同(山本幸一紹介)(第二九八三号)  同(近江巳記夫紹介)(第三〇三〇号) 同月十日  国産材需要安定対策等に関する請願外一件  (江田三郎紹介)(第三〇八六号)  同外二件(大野明紹介)(第三〇八七号)  同外二十七件(奧野誠亮紹介)(第三〇八八号)  同外十五件(正示啓次郎紹介)(第三〇八九号)  同外三件(足立篤郎紹介)(第三一三六号)  同外百六件(中尾栄一紹介)(第三一三七号)  同外四件(久保田円次紹介)(第三二九八号)  同(塩崎潤紹介)(第三二九九号)  同外一件(武部文紹介)(第三三〇〇号) 同月十六日  国産材需要安定対策等に関する請願外二十件  (大村襄治紹介)(第三四二一号)  同外十九件(金子一平紹介)(第三四二二号)  同外二件(松野幸泰紹介)(第三四二三号)  同外一件(武藤嘉文紹介)(第三四二四号)  同外三件(大村襄治紹介)(第三五一四号)  同外二十件(瀬戸山三男紹介)(第三五一五  号)  同外一件(永山忠則紹介)(第三五一六号)  同外一件(野田卯一紹介)(第三五一七号)  同外八件(金子一平紹介)(第三五五五号) 同月十七日  国産材需要安定対策等に関する請願外百二十  三件(金丸信紹介)(第三七六九号)  同外一件(安田貴六君紹介)(第三七七〇号) 同月十八日  国産材需要安定対策等に関する請願外八十七  件(江藤隆美紹介)(第三八八六号)  同外四件(久保田円次紹介)(第三八八七  号)  同外四件(野原正勝紹介)(第三八八八号)  同外四十一件(古井喜實紹介)(第三八八九  号)  同外九件(渡辺栄一紹介)(第三八九〇号)  同外十三件(赤澤正道紹介)(第三九六九  号)  同外百六十六件(内田常雄紹介)(第三九七  〇号)  同外五件(田村元紹介)(第三九七一号)  同外六件(中川一郎紹介)(第三九七二号)  同外六件(足立篤郎紹介)(第四〇九〇号)  同外四件(久保田円次紹介)(第四〇九一  号)  同外十五件(松野頼三君紹介)(第四〇九二  号)  同外四件(徳安實藏紹介)(第四一二六号)  外材対策確立に関する請願外二件(瀬野栄次  郎君紹介)(第四〇八八号)  造林政策確立に関する請願外二件(瀬野栄次  郎君紹介)(第四〇八九号)  外国生糸輸入規制等に関する請願中井徳  次郎紹介)(第四一二七号)  中国食肉輸入禁止解除に関する請願外一件  (松沢俊昭紹介)(第四一二八号) 同月二十日  蚕糸対策に関する請願合沢栄紹介)(第四  二四一号)  同(塚本三郎紹介)(第四二四二号)  同(渡辺武三紹介)(第四二四三号)  同(小平忠紹介)(第四四七一号)  同(西田八郎紹介)(第四五五五号)  農林年金制度改善に関する請願津川武一君  紹介)(第四二四四号)  同(米田東吾紹介)(第四二四五号)  同(柳田秀一紹介)(第四二四六号)  同(佐野憲治紹介)(第四三四二号)  同(津川武一紹介)(第四三四三号)  同(堂森芳夫紹介)(第四三四四号)  同(西宮弘紹介)(第四三四五号)  同外四件(安倍晋太郎紹介)(第四四七七  号)  同(阿部助哉君紹介)(第四四七八号)  同外二十六件(大坪保雄紹介)(第四四七九  号)  同外四十五件(地崎宇三郎紹介)(第四四八  〇号)  同(寺前巖紹介)(第四四八一号)  同外三件(中川一郎紹介)(第四四八二号)  同外五件(葉梨信行紹介)(第四四八三号)  同外十九件(保利茂紹介)(第四四八四号)  同外一件(美濃政市紹介)(第四四八五号)  同外十一件(山下徳夫紹介)(第四四八六  号)  同外十七件(日野吉夫紹介)(第四五五三  号)  中国食肉輸入禁止解除に関する請願外三件  (松沢俊昭紹介)(第四二四七号)  外国生糸輸入規制等に関する請願角屋堅  次郎紹介)(第四二四八号)  同(川崎秀二紹介)(第四四七二号)  同(田村元紹介)(第四四七三号)  同(山手滿男紹介)(第四四七四号)  同(藤波孝生紹介)(第四四七五号)  同(山本幸雄紹介)(第四四七六号)  国産材需要安定対策等に関する請願外二十一  件(大村襄治紹介)(第四二四九号)  同外二件(關谷勝利紹介)(第四二五〇号)  同外四件(本名武紹介)(第四二五一号)  同外一件(菅太郎紹介)(第四三四六号)  同外二件(吉田之久君紹介)(第四三四七号)  同外二十一件(大野明紹介)(第四四八七  号)  同外二件(菅太郎紹介)(第四四八八号)  農林年金制度改善に関する請願原茂紹介)  (第四三四八号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第四四六八号)  同(林百郎君紹介)(第四四六九号)  同(三池信紹介)(第四四七〇号)  漁港の整備促進等に関する請願白浜仁吉君紹  介)(第四三四九号)  木曽木材産業経営不振対策に関する請願(林  百郎君紹介)(第四五二〇号)  農産物の貿易自由化抑制並びに食糧管理制度堅  持等に関する請願(林百郎君紹介)(第四五二  一号)  造林事業促進に関する請願(林百郎君紹介)  (第四五二二号)  かつお・まぐろ・かじき流しさし網漁業禁止  に関する請願伊能繁次郎紹介)(第四五五  四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月九日  消費者米価物価統制令適用除外反対に関する  陳情書外四件  (第一六〇号)  外国産果実の貿易自由化反対に関する陳情書外  三件  (第一六一号)  同  (第二三八号)  農畜産物貿易自由化反対に関する陳情書外七  件  (第一六二号)  食糧管理制度堅持等に関する陳情書  (第一六三号)  今年産米全量買上げ等に関する陳情書  (第一六四号)  国有林野に散布する除草剤使用取扱いに関す  る陳情書(第一六五号)  国営造林法早期制定に関する陳情書  (第一六六号)  果樹農業振興対策に関する陳情書外一件  (第一六七号)  米の買入れ制限撤回等に関する陳情書外二件  (第二三七号)  外材の無制限輸入阻止に関する陳情書  (第二三九号)  林業振興に関する陳情書  (第二四〇号)  土地改良国庫補助事業に対する補助率引上げ等  に関する陳情書  (第二四一号)  製材品正量取引に関する陳情書  (第二四二号) 同月二十日  オレンジ及び果汁の貿易自由化反対等に関する  陳情書  (第二九四号)  林業振興に関する陳情書  (第二九五号)  野菜価格安定補償制度確立等に関する陳情書  (第二九六号)  農業振興地域整備対策に関する陳情書  (第二九八  号)  宮川沿岸かんがい排水事業早期着工に関する  陳情書  (第二九九号)  国営かんがい排水事業早期完成等に関する陳  情書  (第三〇〇  号)  地方都市近郊農業振興対策等に関する陳情書  (第三〇一号)  茶業振興に関する陳情書  (第  三〇二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 藤田義光

    藤田委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。江藤隆美君。
  3. 江藤隆美

    江藤委員 きょうは漁業問題について若干の質疑を行なっておきたいと思います。     〔委員長退席三ツ林委員長代理着席〕  まず第一番に、大海区制をめぐる問題でありますが、太平洋の中で特に南部沿岸海域及び九州西部海域は、御存じのように、黒潮本流が流れておりますから、全国屈指のいい漁場だとされて、今日まで全国を八海区に分けた、そういう海区制限のもとに漁業資源涵養を行なってきたのでありますが、来年の夏から、この俗にいう大臣許可漁業、いわゆる指定漁業許可一斉更新にあたって、大・中型まき網漁業、また沖合い底引き漁業関連において大海区制がこの地域に行なわれるのではないか、こういうことが心配をされておるのでありますが、水産庁においてそういう検討が行なわれ、またそういう方針で進められておるのかどうか、端的に承りたいと思います。
  4. 太田康二

    太田(康)政府委員 ただいまお尋ねの海域につきましては、たいへんいい漁場であるということは御指摘のとおりでありますが、この地域につきましては、沖合い底びきあるいは大・中型まき網漁業操業をいたしておりますし、沿岸漁業操業をいたしておるわけでございまして、これらの調整の問題が大きな問題になっていることは御承知のとおりでございます。それは沿岸漁業とこれら指定漁業との調整の問題もございますし、指定漁業相互間の調整の問題もあるわけでございます。  そこで、大海区制をとるかどうかということにつきましての御質問でございますが、この点につきましては、いま申し上げたように、指定漁業相互間の調整問題あるいは沿岸漁業指定漁業との調整問題ということの問題があるわけでございますから、こういったことを念頭に置きまして、どういうふうにしたら資源有効利用という見地から最も望ましいかということで現在検討いたしておる段階でございまして、大海区制に踏み切ったということではないわけでございます。
  5. 江藤隆美

    江藤委員 検討中ということでありますが、大海区制に踏み切ったわけでもないし、踏み切らないというわけでもない、こういうふうに受けとってよろしいわけですか。
  6. 太田康二

    太田(康)政府委員 現段階におきましては、まだどちらともきめておらないわけでございます。
  7. 江藤隆美

    江藤委員 この指定漁業とあるいはそういう沿岸漁業との関連について長々と申し述べる時間がないのでありますが、この際ひとつ確認しておきたいことは、昭和四十三年八月二十日に、科学技術庁が行なう俗にいう種子島ロケット打ち上げに伴って、当時の科学技術庁長官鍋島長官灘尾文部大臣、それから防衛庁増田長官地元に対して覚え書きを交換しております。その中でも、第二条の第五項に、大海区制を実施する場合には知事了解を得る、こういう一条があるわけであります。先般、地元陳情をいたしましたときには、農林省という文字が書いてないから、水産庁としてはこのことは知らないんだという意味のことがあったやにも承りますが、いやしくもこの中には、政府地元要請に対して云々というだだし書きを受けて、前条を受けて第二条第五項というのがあるわけでありますから、私は、もちろん農林省もこの責任を負うものである、こう解釈するのであります。これは農林省が入っておろうと入っておるまいと、第二条第五項は農林省としても責任を負うものである、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  8. 太田康二

    太田(康)政府委員 御指摘のとおり、確かに科学技術庁長官からそういった文書が出ていることはわれわれもよく承知いたしておりますし、科学技術庁としても、こういった文書を出すことにつきまして私どもにもお話があったようであります。  なお、先ほども申しましたように、大海区制の実施につきましては、沿岸漁業との調整問題というのが最も大きな問題でございますし、われわれといたしましても、地元関係知事との話し合いをしなければやはり話のつくものではないという認識でございますから、当然こういった文書をいただきましたときに、そういう趣旨を申し述べまして了承いたしておるわけでございます。
  9. 江藤隆美

    江藤委員 そうしますと、地元知事了解がないことには大海区制の採用は行なわない、こう了解してよろしゅうございますか。
  10. 太田康二

    太田(康)政府委員 もちろん、私どもといたしましては、たとえば大海区制に踏み切ったというような場合には地元知事も説得しなければならぬわけでございますけれども、いずれにいたしましても、地元との話し合いがつかないのにやるというようなことは実際上はできないだろう、こういう意味におきまして、御趣旨了解をいたしておる、こういうことでございます。
  11. 江藤隆美

    江藤委員 それはたいへん困るんで、踏み切った場合においては地元を説得しなきゃならないから、地元が賛成しなきゃやれないというのではおかしいのであって、これは歴史的な過程を経て全国の八海区というものが、それぞれ漁場資源を守るために、それこそいわゆる装備規制あるいは漁法の規制あるいはその資源涵養ということを行なってきた特異の事情があるわけです。ですから、水産庁が一方的に大海区制に踏み切って、あとから地元を説得するということではなくて、少なくとも、そういう方針を立てたならば地元協議をして、その上で方針をきめる、こういうふうにしてもらいたいと思うのですが、よろしゅうございますか。
  12. 太田康二

    太田(康)政府委員 私の答弁が不正確で、再度質問を受けたわけでございますけれども、いま先生のおっしゃったとおりに進めたいと考えております。
  13. 江藤隆美

    江藤委員 来年、四十七年の夏から秋にかけて、こういう大臣許可漁業というものの更新が行なわれるのですが、この九州南部海域、こういうところはもう有名な海賊船の横行するところであります。その実態は水産庁御存じのとおりです。ですから、これらの漁場においては非常に、いままでも長い間取り締まりを行ないましたけれども違反操業が絶えない。この事実は御存じであるか、お認めになるかどうか。  それからもう一つは、せっかくのこういう許可更新のときでありますから、違反操業を常時というか、しょっちゅう行なっておる者についてはこの許可の取り消しを行なうといろぐらいの一つ方針があってよろしいと私は思います。それについてはどうお考えか。  それからもう一つは、次第に漁船大型化してくる、装備が近代化してくる、あるいは漁具が非常に発達をしてくる、こういうことになると、勢いどうしても違反操業というものを承知しながら規制海域の中に入って操業せざるを得なくなってくる、こういうことになるわけでありますから、この更新の機会に、この海区の実情に沿った減船計画をする、減船を進める。それからもう一つは、そういう漁具漁船、それらの装備についてある程度の規制をすべきではないか、こう考えますが、その点についてはどう検討されておりますか。
  14. 太田康二

    太田(康)政府委員 第一点の、次期の一斉更新にあたりまして違反船についての許可の取り扱いの問題でございますが、御承知のとおり、漁業法の五十七条に「漁業に関する法令を遵守する精神を著しく欠く者」は「指定漁業許可又は起業認可について適格性を有」しないということに規定されております。したがいまして、次期の一斉更新にあたりましては、違反操業を重ねて行なった者につきましては、一定基準に従いまして許可を認めないというような場合も当然考えておるわけでございます。  それから、私どもの一斉更新にあたっての態度でございますが、もちろん、昭和四十二年でございましたが、前回の一斉更新以後の漁業をめぐる内外の情勢というものの変化を十分に検討いたしますとともに、その間にいろいろ出てまいりました問題点というものの把握につとめておるわけでございまして、こういったものを踏まえて今度の一斉更新に対処してまいりたいと思っております。特に近年、先生指摘のように、漁業経営を取り巻く諸条件について見ますと、漁業資源動向変化ということが顕著でございますし、こういったことも十分勘案してまいる。あるいは、これも御指摘があったわけでございますけれども漁労技術の発展あるいは漁獲努力動向あるいは労働需給の逼迫、国際規制の強化というような、漁業を取り巻く事情のさまざまな変化がございますので、こういったものも十分踏まえまして、今後の漁業生産の構造は、これらの現状あるいは将来の展望の上に立って対処すべきものであろうというふうに考えるわけでございます。  それから、技術の進歩に伴いまして、乱獲をするおそれがあるような船の大型化の問題、あるいは漁具等網目規制の問題でありますが、船の大型化の問題につきましては、補充代船制度をとっておりますので、これはこれなりに継続をしてまいりたいと考えております。  網目規制等につきましては、御指摘のような問題があることをわれわれも承知いたしておりますので、十分検討をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  15. 江藤隆美

    江藤委員 違反操業はどうですか。
  16. 太田康二

    太田(康)政府委員 違反操業の事実があることをわれわれも十分承知いたしておりますので、先ほどお答え申し上げましたように、法令の規定に従いまして、今回の一斉更新許可あるいは起業認可の場合には一定基準に従いまして措置したい、かように考えております。
  17. 江藤隆美

    江藤委員 時間がありましたらまたあとでお尋ねいたしますが、俗にいわれるリマ水域、この問題についてひとつ触れてみたいと思います。  いわゆる足摺岬沖合いに設定されておる米軍演習地指定の俗にいうリマ水域でありますが、昨年の安保条約改定の時期に地元から、この水域はカツオ、マグロ、アジ、サバの優秀な漁場であるのでこの指定解除を願いたい、こういう陳情があって、今日に至っておるものであります。  これは防衛施設庁にお尋ねいたしますが、沖繩も返ってくる、あるいは極東における米軍も次第に撤退をしていく、こういう情勢の中でありますから、このリマ水域解除については積極的に取り組んでみる必要があるのではないか、こう思うのでありますが、施設庁としてはどういう考え方か、撤去考え方はないかどうか。二番目に、撤去考え方がないとするならば、この海域縮小についてどういう検討が行なわれておるか、あわせて承っておきたいと思います。
  18. 太田康二

    太田(康)政府委員 リマ水域の問題につきましては、先ほどの科学技術庁長官の回答にもございますように、撤廃は困難でありますが、今後も引き続き制限緩和努力をするということをお約束いたしておるわけであります。  そこで、われわれといたしましても、できる限り関係省庁とも協議いたしまして、提供水域返還を含めまして、使用条件変更等についてのお願いをいたしておるのでございますが、御承知のとおり、一部については実現を見ておりますが、まだ全面的な返還ということにはなっておりません。そこで、昭和三十六年に制限区域縮小がございまして、その後は昭和四十二年に、制限縮小ということで、いままでは月曜から土曜ということになっておりましたが、月曜から金曜ということで、一日演習の期間が減ったというような意味での縮小がなされておることは御承知のとおりだろうと思いますが、われわれといたしましては、なお引き続き防衛施設庁等とも協議をいたしまして、できる限り区域縮小等につきましての要求を続けてまいりたい、かように考えております。
  19. 江藤隆美

    江藤委員 防衛庁のほうにお尋ねしますけれども、これは昭和二十七年に、いわゆる日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づき日本国にあるアメリカ合衆国の軍隊の水面の使用に伴う漁船操業制限等に関する法律、これによって当初米軍使用してきたものであります。ところで、その後、いつでありますか、これを自衛隊使用するということになってきたわけでありまして、いま米軍自衛隊と双方がこれを使用しておる、こういうことになるわけであります。私は、察するに、最近では米軍使用するよりか自衛隊使用する日数のほうがかえって多くなっているのじゃないかという感じがするのでありますが、その点はいかがですか。あわせて、最初長官がお答えいたしましたけれども、このリマ水域撤去ということは地元の非常な要請でもありますが、これにおこたえになる意思はないのかどうか、この二つをお尋ねしておきます。
  20. 薄田浩

    薄田政府委員 お答えいたします。まず前段の、水産庁長官からも御答弁がございましたが、解除のいわゆる対米折衝の問題を申し上げます。  御承知のように、米軍演習場、特に海上演習場につきましては、このリマ水域の場合は公海上になっておるわけでございますが、こういうものを制限するということ、それからその後米軍側の演習実績等と照らし合わせまして、かつまた地元のたび重なる御熱意のある解除要請等ございまして、われわれ施設庁といたしましては、それを踏まえまして過去数へん交渉してまいりました。先ほど水産庁長官がおっしゃいましたように、三十六年に一部は返りましたが、その後現状のままで推移しております。ただし、先生の御指摘のように、米軍自体のいろいろな変動、あるいは先生のおっしゃいました沖繩の問題等も間接的にいろいろ考慮していかなければならぬ。こういうことでわれわれといたしましては、合同委員会の下部機構として海上演習部会というのがございまして、その席上絶えずこの水域については米側に検討を申し入れております。幸い十一月末に土佐湾、デルタ、マイク、ノベンバー、佐世保湾等の解除が一応きまったわけでございまして、米側は依然このリマ水域の必要性は強調しておりますが、われわれといたしましては、今後とも積極的に対米折衝を、これは大体解除の方向で折衝いたしたい、こういうふうに思っております。  それから自衛隊の問題でございますが、これは公海上でございますので、一応自衛隊は、根拠といたしましては、防衛庁告示をもちまして演習ができるようになっております。それで、その場合の補償は自衛隊法百五条に基づくわけでございますが、使い始めましたのは、私の記憶では二十九年ごろからではなかったかと思っておりますが、現在は米軍に一これは提供ということでございませんで、指定しておる区域でダブって使わしていただいておる、こういう形になっておるわけでございます。
  21. 江藤隆美

    江藤委員 解除の方向で努力をしたい、こういうことでありますが、そういうふうに確認をしておいてよろしゅうございますね。  それからもう一つ問題は、いままでリマ水域の補償というのが実は行なわれてきたわけであります。これは昭和二十七年以降行なわれまして、現在まで約十九年間で二億五千七百七十万一千五百三十八円、約二億五千万円、昭和四十四年でわずかに千九百万円、一隻当たり七万九千円ですから、これは一カ月の一人分の月給だと思えば、その程度のものであります。非常に豊かな漁場というものがわずかな補償をもって今日までなされてきておる。しかるに、これは私の地元の宮崎県から出ました四十五年の申請でありますが、一億四千七百九十万の補償要求に対して防衛庁が示したのは五百三十三万であります。約三分の一ならいいのですが三十分の一近く、インドネシア賠償みたいに、まるでとんでもない開きが実はあるわけであります。  そこで、私がこの際お尋ねしておきたいのは、一体この算定の基礎というものはどうなっておるのか。これは公海上であるから規制してもかまわないという考え方もあるでしょうが、漁民にとっては、公海上であるがゆえにだれでもとっていい漁場である、こういうことも言い得るわけであります。ですから、その漁場が開放されておったならば、当然漁獲があがるべきその補償を行なうというのが少なくとも本筋でなければならないのに、予算の都合でもってこの補償が行なわれておるやに私は聞き及んでおるのでありますが、一体この算定の基礎の補償基準というものはどういうところから来ておるのか、これを承っておきたいと思います。
  22. 薄田浩

    薄田政府委員 お答えいたします。  先生おっしゃいましたように、四十四年度までに大体リマ水域では二億五千万円でございます。それから四十五年度につきましてちょっと御説明さしていただきたいと思いますが一その前に根拠を申し上げますと、駐留軍関係につきましては、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づき日本国にあるアメリカ合衆国の軍隊の水面の使用に伴う漁船操業制限等に関する法律、これが法律の根拠でございます。それから、それに基づきまして政令、総理府令等がございますが、これは単なる様式をきめておるものでございまして、いろいろの補償基準をきめておりますものは、駐留軍の用に供する漁業補償処理要領というようなもの、あるいは総理府の訓令等がございます。自衛隊につきましては、先ほど申し上げました自衛隊法の百五条が基礎になりまして、その他の諸手続等につきましては総理府令がございまして、施行規則等できめております。それで具体的な計算方法等は実施規則、やはりこういうものがございまして、これは米軍あるいは自衛隊の場合、大体同じような考え方をとっております。  それから、確かに四十五年につきましては、先生指摘のように、いろいろ地元の御要望とわれわれのほうの決定額がたいへん開いておるわけでございまして、これは漁業の実態をわれわれ把握につとめておりますが、まあ地元のおっしゃるのとわれわれのあれとが多少違うというところもございます。  一方、法律上の規定で、従来適法に操業しておるというような一つ制限がございますものですから、その関係で昨年度は二千三百八十二万円払っております。それから四十五年度から、われわれといたしましても、先生おっしゃいますように、公海上でだれでも漁業ができるところでございますので、その後われわれのことばでは増統とかあるいは次三男とか漁業従事者の独立とか、あるいは他地域の船がまた新たにその海面に入ってくるというような問題、これはちょっと現行規定では法律でカバーできませんので、見舞い金という予算措置でやっております。これは御指摘のとおり、予算に制約されておりまして、今後いろいろ検討をしなければならぬ問題があろうと思います。これが千六百万円払っております。合わせまして四千万円というふうにわれわれは了解しております。そのほか漁業制限されることに伴います損失を補てんするという意味で、ほかの面でできないかということで、いろいろ漁業振興に資するため指導船とか魚礁をつくったり、あるいは製氷、貯氷施設、これは冶凍でございますが、そういうものに一億二千万円くらい出しておりますが、これは直接個々人の方に還元されない、補償とは違いますが、一応そういうものもやらせていただいておるということを御説明いたしたいと思います。
  23. 江藤隆美

    江藤委員 水産庁の長官に念のために承りたいのでありますが、この補償の算定について水産庁防衛庁から御相談があったことがあるか、あるいはまた補償の基準をきめていくのに水産庁として意見を具申され、また進んでそういうものをひとつやってやろうということで今日まで取り組んでおられることがあるのか、そのことをちょっと念のために聞いておきます。
  24. 太田康二

    太田(康)政府委員 この点につきましてはただいま防衛施設庁の部長から御答弁がございましたように、一応の支払いの根拠につきましては法令に根拠がございまして、算定等につきましても一応法令の規定に即しまして実施をいたしておるのでございまして、われわれといたしましては、その運用にあたりまして当然防衛施設庁とも協議をいたしまして、漁業の実情に即して補償が適切に行なわれるようにつとめておるというふうに考えていただいてけっこうかと思います。
  25. 江藤隆美

    江藤委員 そうしますと、この七千平方キロに及ぶカツオ、マグロ、アジ、サバの漁場において、四十四年が千九百万、四十五年が二千三百万、そのほかに見舞い金が千六百万、締めまして、四十五年までで約二億八、九千万、三億くらいでしょうか。十九年間で三億。これだけの豊かな漁場、その補償が、長官としては適正だという感じがしますか。
  26. 太田康二

    太田(康)政府委員 一応従来の補償等につきましては先ほど申し上げたようなことで実施をいたしておるのでございまして、まあ法令の根拠に即して実施をいたしておるわけでございますが、なお、いま御指摘のような問題があるということも念頭に置きまして、われわれといたしましては、今後防衛施設庁とも協議をいたします場合に、さらに漁業の実態等の把握につとめまして十分協議を進めてまいりたい、かように考えます。
  27. 江藤隆美

    江藤委員 根拠法令というのは何ですか。さっきの自衛隊法と、米軍とのあれのことですか。それに基準が書いてあるのですか。
  28. 太田康二

    太田(康)政府委員 一応平年度の漁獲と、これは推定でございますが、制限された漁獲との差の八割というものを補てんするのだということが規則に書いてありまして、それに即して実施をいたしておるということでございます。
  29. 江藤隆美

    江藤委員 ここで水産庁がこの補償額が適正かどうかということを答えるのはたいへんむずかしい。また適正でありませんと言うと、片方が困りますからそういうことは言えないわけでありますから、そんなやぼなことは言いませんが、もう一つ聞いておきましよう。  それはさっきの日米間のいわゆる操業制限等に関する法律の中で第二条、自衛隊法では百五条の第二項、これによって、従業適法に漁業を行なっておった者、こういう規制があるわけですね。従来やっておった者ということは、昭和二十七年に操業しておった者、それしか補償の対象にならない。それから出てきた者しか四十四年からのいわゆる見舞い金の支払いの対象にもならない、こういうことであります。しかしながら、その後たとえば独立をした者あるいは新たに漁業を始めた者というのは、これは無数におるわけであります。ですから、公海の漁場であるというたてまえからするならば、私はこの両法律の、第二条あるいは百五条「従来適法に漁業を営んでいた者が漁業経営上こうむった損失を補償する。」云々というこの法律の改正を行なって、そして現在その漁場が開放されておれば、当然その漁場に乗り込んで漁獲をあげることができるのであるという人々に対しては、公平の原則に従って当然補償を行なうべきではないか、こう思うのでありますが、その考え方、それから法律を改正すべきである。これは簡単な条文でありますから、なるべく早い機会に改正すべきである、こう思うのでありますが、この二つの点をお答えいただきたいと思います。
  30. 薄田浩

    薄田政府委員 先生おっしゃいましたように、根拠法は米軍については漁船操業制限等に関する法律の第二条でございます。自衛隊法は御指摘の百五条の第二項で、これは両条とも大体同じでございまして、「当該区域において従来適法に漁業を営んでいた者が漁業経営上こうむった損失を補償する。」「前項の規定により補償する損失は、通常生ずべき損失」こういうことでございまして、確かに「従来適法」ということで御指摘の実態は先生のおっしゃるとおりでございます。  第二点は、いわゆるこの法律の改正をすればいいということは、われわれの立場であまり批判はできませんが、これも先生のおっしゃるとおりでございます。     〔三ツ林委員長代理退席、松野(幸)委員長代     理着席〕
  31. 江藤隆美

    江藤委員 そこで、これは水産庁防衛施設庁と両方にお尋ねしておきたいと思いますが、一つの県の補償の要求が約一億四千八百万。それに対して約三十分の一の五百三十三万というのではあまりにも開き過ぎておる。これはちょっとどちらが常識を失なっておるのか、私はいささか判断に苦しむのでありますけれども、とにかく非常な開きがあるということは、これはやはり制度一つの誤りがある、法律に一つの誤りがある。誤りではありませんが、法律が現状に即してないということが一つ。それから地元要請を、どの基準に従っておるか知りませんけれども、いわゆる防衛施設庁という、たいへん失札でありますが、言うならば漁業にしろうとの方々がこれを一方的に予算の都合でもって、これだけですよと言ってやっておるところに私は無理がある、こう思っております。したがって、いよいよ来年からでありますが、いままでのことは問いませんし、私はこの水城が必要ないということも言っておるのではないので、やはり補償すべきものは適法な中で適正な補償がなされないと、それは補償とは言い得ない。ですから、来年からの算定にあたっては防衛施設庁水産庁と、そして漁業団体と三者でこの補償額についての協議会を開いて、お互い共通の場所において一定の方向を見出して、予算要求を行ない補償していくということが私は正しいあり方でなければならないと思うのでありますが、これは防衛施設庁としては来年からはそういうふうなことをひとつ試みてみよう、こういうお考えがあるかどうか、また水産庁の長官としては、当然漁業者の代表として、監督官庁でありますから、そういうことが必要である、われわれからもそれは進んでそういうことの機会を設けてもらうように要請をし、場所をつくる努力をしていきたい、こういうふうなお考えがあるかどうか、双方のお考えをひとつこの際に聞かしておいていただきたいと思います。
  32. 薄田浩

    薄田政府委員 お答えいたします。  これはわれわれの立場で明確にお答えするのもなかなかむずかしい問題でございますが、われわれといたしましては、見舞い金制度、「従来適法」以外のその後の新しい方々に対しては、予算的な制約を受けて、先ほど申し上げましたような、必ずしも満足すべきものとは思ってはおりませんが、一応「従来適法」の方々につきましては、補償の基準等でやっておりまして、都道府県知事を経由したりしていろいろ御意見を伺ってはおるわけでございますが、確かに先生おっしゃいますように、どちらが正しいのかというような議論にもなろうかと思いますので、水産庁の御専門の方の御意見等も伺いつつ、さっそく相談に入りたいと思います。
  33. 江藤隆美

    江藤委員 漁業者団体は。
  34. 薄田浩

    薄田政府委員 漁業者団体は、当然のことでございますが、そういうように考えております。
  35. 太田康二

    太田(康)政府委員 ただいまの御提案でございますが、きわめて具体的な提案でございまして、お気持ちはよくわかりますので、防衛施設庁の関係もございましょうから、私どもといたしましてはよく防衛施設庁とも話し合いまして、できる限り御趣旨に沿うような方向に持ってまいりたい、このように考えております。
  36. 江藤隆美

    江藤委員 時間が来ましたから、確認だけして質問を終わりますが、これは部長としてきょう即答することがたいへんむずかしい点もお察しができますから、ひとつそれは防衛施設庁水産庁とそれから生産者団体と共通の場所をつくって将来この問題に取り組んでいく、その時期は早急である、早急にそういう場所をつくるべく努力をする、こういう方向でひとつ検討してもらうということできょうはおさめてよろしゅうございますか。それでよろしければ答弁は要りません。——それじゃ、そういうふうに了解をいたしまして終わります。
  37. 松野幸泰

    松野(幸)委員長代理 田中恒利君。
  38. 田中恒利

    田中(恒)委員 時間があまりありませんから、しぼって御質問いたします。質問の焦点は、いま問題になっております貿易の自由化、特にオレンジ、果汁、牛肉の自由化につきましての政府考え方をこの際お聞きをいたしたいと思います。  その第一点は、ワシントンで開催されました十カ国蔵相会議におきまして、たいへん問題でありました通貨調整が、一六・八八%という円の切り上げが明らかになりまして、政府は一昨日来声明、談話を発表しておるわけでありますが、この円の切り上げの問題がこれからの日本の農業にどういう影響を与えるか、そういう点が明らかにされておりませんので、この際政府当局のほうから、私は中小企業と農業にとってきわめて重大な問題を出してくると思うわけでありますが、具体的にこれに対する影響、それに対してどういう対策をお考えになっておるか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  39. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまお尋ねの、今回の通貨調整によります農業に対する影響とそれに対する対策でございますが、今回の通貨調整によりまして、農林漁業について農林省といたしましてもかなりの影響があるというふうに思っておりますが、農林水産物の国際的な需給の事情なりあるいは品目ごとによりまして非常に状況が違います。  そこで、いろいろ個々の品目について若干あとで触れたいと思いますが、一般的には自由化されておる農林水産物についての輸入が増加をする。それからまた、円の切り上げがあったわけでございますから、一般的には輸入価格が低下をする、したがって内外の価格差が開く、こういうことになるわけでございます。この開くところからいろいろ問題が出てくるわけでございます。  それは若干あとで触れるといたしまして、第二番目には、輸出農林水産物の輸出が減るのではないかという心配がございます。  それから三番目といたしましては、これは一般の経済、今後の日本経済がどうなるかということに非常に関連をするわけでございますが、当面不況といいましょうか、景気が停滞をするということがいわれております。そうなりますと、御承知のように、日本の農業は八五%まで兼業農家であるというようなことでございますので、出かせぎも含めまして兼業所得へ影響があるのではないかというふうに見ておるわけでございます。  一般的にはそういうことでございますが、若干詳しく申し上げますと、ただいま申し上げました輸入の増加あるいは輸入価格の低下等、農林物資についての影響がありますけれども、幸い日本のただいままでの価格安定制度が日本の生産額の七割程度を占めております。直接それは内外の価格差が遮断されておるものですから、当面影響がないということは考えられるわけでございます。そのほかにもそれぞれ関税措置がございますので、直接の影響がないわけでございます。  ただ、自由化されているような品目、先ほど申し上げましたようなものについて自由化されておるような品目につきましては、かなり影響のあるものがあります。たとえば生糸、それから液卵、グレープフルーツ、木材あるいは合板等、これは輸入価格が下がるものですから、国内のそういう生産農家に影響があるのではないかというふうに考えられます。  一方、輸入価格が下がる中で、たとえばコウリャン、トウモロコシというようなえさについてはかなり下がりますものですから、国内の畜産農家については飼料費が下がるという問題も他面あるわけでございます。  それから輸出の面につきましては、水産かん詰めあるいはミカンのかん詰め、合板、冷凍マグロ等の輸出の減退が懸念されるわけでございますが、これにつきましては、すでに関連中小企業に対しまして緊急の立法ができましたし、農林省といたしましても、その緊急の立法でやれないものにつきましては、農林中金を通じて滞貨融資をすでにもう実施しております。  それから三番目の兼業農家の問題につきましては、これは先ほども触れましたが、一般景気の動向にもよりますけれども政府といたしましては、来年度予算で大幅な景気回復策を講ずるということになっております。その帰趨いかんにもよるかと思いますが、農林省といたしましても、出かせぎ者が安定的な就労ができるような、たとえば相談活動をやるとかいうような予算要求もいま大蔵省と折衝しているところでございます。  当面そういうことが考えられるわけでございますが、最初に触れましたように、内外価格差が非常に広がるということは、日本の農業の体質改善をよりいままで以上に急がなければならないというふうに考えております。そういうことをいたしませんと、農業所得の確保あるいは農家生活が不安になるということがございますので、われわれといたしましては、この新しい通貨体制のもとでの農林水産業の施策を来年度予算に十分反映させたいと考えておるところでございます。
  40. 田中恒利

    田中(恒)委員 いま官房長から言われたような総論ですね、そこにも私は一つ一つ詰めればたくさん問題があると思います。その議論をする時間的余裕を与えられておりませんが、ただ、一般的に、円の切り上げの問題は輸出が減って輸入がふえる、こういうことが結論的にはいわれております。その場合に、日本の農業のいまの貿易構造からいいますと、輸出は非常に少ないのであってたぶん十分の一程度、輸入がほとんどであってしかもそれが急速に大きくなろうとしておる段階で円の切り上げという問題が迫ってきたわけでありますから、私は自由化の問題というものがこれからの日本の農業にとっては非常に大きな問題にますますなってくる情勢になったと思うのです。したがって、自由化に対する日本の農業を守るという立場に立って一体何をなすべきか、一ぺん総洗いをしてみる必要があると思うのです。  今日まで確かに価格政策等で仕組まれておりますけれども、私どもはこの段階で、それは一方では、アメリカが言っておるように、貿易障害を除け、こういう主張が来ておりますけれども、これをやられたら日本の農業はたまったものじゃないと思うのですね。ですから、どうしてもやはり国内的に、価格条件にいたしましても流通問題にいたしましても、相当思い切った政策をこの際打ち立てる段階に来た。もっと私どもの立場から言わしていただければ、この際少なくとも外国農産物との競合関係につきましては、こういう防衛的効果を持つ仕組みをますます強化しなければだめだ。日本の農業はこのままにしておったらつぶれますよ。そういう姿勢で農林省当局は臨んでいくのか。一面マスコミあるいは外国の要求というものはこれとは違った形でありますけれども、これらの大前提で一ぺん腹をきめてかかってもらわなければこれはたいへんな事態になる、こういうことを心配いたしております。こういう点につきまして、大臣はおりませんので、政務次官でけっこうですが、ひとつ農林省としての腹ぎめをこの際明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  41. 伊藤宗一郎

    ○伊藤政府委員 たいへん力が足りないような御叱吃を受けておりますけれども農林省としても、先生指摘の大方針に沿うように、当面は来年度の予算を通じ、また長期的な需要供給計画なども見合わせまして、先生の御叱咤、御激励にお報いする方向で努力をしてまいりたいと思います。
  42. 田中恒利

    田中(恒)委員 どうも抽象的であれですが、あまり議論はできませんが、やはり一ぺんこういう問題は、非常に大きな政策目標でありますから、私どもはこの委員会でも十分今後議論をしなければいけないと思います。しかし、一般論になりますと非常に抽象論になりますから、若干具体的に問題をしぼって御質問をいたします。  いま中野官房長が言われたように、農産物については国際的な需給の事情、価格動向が非常に激しいわけでありますから、一がいにこうだということは言いにくいわけでありますが、いま問題になっておりますオレンジ、果汁、牛肉、これらをめぐる国際環境というものは、牛肉については国際的に不足ぎみ、果汁、オレンジについては国際的にこれは最も大きな過剰化の動向が示されてきている。     〔松野(幸)委員長代理退席、三ツ林委員長代理着席〕 その過剰化の中心はアメリカでありまして、アメリカが一番多い。二番目が日本、スペイン、こういうようにいわれておるわけですね。したがって、この需給事情という観点からいくと、果樹とか果汁についてはこれはだぶつきぎみである。これはもう国際的に明らかであります。その果樹、果汁あるいは不足であるといわれておるけれども牛肉、これは日本の農業の大きな柱でありますが、これらの自由化の問題は一体どこできめるのか、最終的にきめるのはだれなのか、この点をまずお聞きをいたしたい。
  43. 小暮光美

    ○小暮政府委員 政策の決定は、最終的には政府の最高首脳部がきめることであると思いますけれども、少なくとも事農産物に関します限り、農林大臣がこの決定に最も大きく参画するというように私どもは確信いたしております。
  44. 田中恒利

    田中(恒)委員 これらの品目あるいはその他の農産物の自由化をめぐって、農林省の意向というものが顧みられないというようなことはございませんか。
  45. 小暮光美

    ○小暮政府委員 これまでも主張すべきことは主張してまいっております。今後もそのように貫くつもりでございます。
  46. 田中恒利

    田中(恒)委員 果汁とオレンジ、牛肉の自由化については、ことしの九月の日米経済合同会議におきまして、赤城農林大臣が先頭に立って日本農業の実情を明らかにし、絶対しないと、これをアメリカ側にも言明をし、お帰りになって当委員会にもたいへん詳細にわたる御報告をいただいたわけであります。しかもこの問題については、今後アメリカは日本についてそうむちゃくちゃなことはもう言わなくなるだろう、こういう解釈もなされたわけでありますが、最近の事情は必ずしもその方向ではない。関係農民は自由化必至、どうするのだということで、これはたいへんな状態が起きようとしておるわけでありますが、自由化はしないという農林省方針に間違いはないかどうか、この方針を今後依然として貫くについて実現の可能性があるのかどうか、この辺で明らかにしていただきたい。
  47. 小暮光美

    ○小暮政府委員 赤城大臣のアメリカ御出張には私も随行いたしまして、つぶさに先方とのやりとりは承知いたしております。御承知のように、日本がアメリカの農産物を非常に膨大な数量輸入いたしておるという事実も強く指摘いたしました。日米の農業はえさを中心とした穀物の取引あるいは麦類の取引というものを通じてきわめて密接な円満な関係があるのであって、本来敵対関係にあるべきものではないという趣旨については、先方の少なくとも農政担当者は十分理解しておるというふうに私も感じております。ただ、御理解いただけますように、通貨の問題あるいはその他あらゆる経済問題を総合してのいろいろな協議がここ数カ月続いておったわけでございまして、したがいまして、たとえば残存輸入制限というようなことがガットの規定上常に追及されるべき性格をいわば条約上持っておるわけでございます。相手方がこれらのものにつきまして繰り返し要求するのは、相手方の立場としてはまた一つあり得ることだろう。しかし、私どもといたしましては、日本農業の実情並びに日米間の農産物貿易の現実から見て、われわれの主張は決して間違っていないと思いますし、その方向で今後とも強く主張するつもりでございます。
  48. 田中恒利

    田中(恒)委員 主張するだけでは困るわけでありますが、赤城農林大臣はきょうはお見えになっておりませんけれども、赤城農林大臣は、この問題については絶対しないということを明確にせられておるわけであります。当委員会においてもこの問題についての決議がなされておるわけであります。ところが、どうも事態はそういうふうに動いておるようにはわれわれには思えない。それはアメリカの動きだけと理解していいのか。日本の国内の各省間においてもこの問題について、意見の対立とまではいかなくても、見解の統一がなされていないのではないか、こういう感じもするわけでありますが、一体この自由化というものを、当面これらの三品目がいま焦点になっているわけでありますが、やるのかやらないのか、あぶないのか、一体どうなっていくのか、その辺の見通し、お考えをいま一度お聞きしておきたいと思うのです。
  49. 小暮光美

    ○小暮政府委員 新聞報道その他でさまざまな観測がなされることはございます。私どもも見聞いたしておるわけでございます。ただ、具体的な例で申し上げますれば、先般のホノルル会談には関係経済官庁の事務次官が四名全員そろって参ったわけでございます。わずか一日間の会議でございますけれども、この会議を通じまして、オレンジ、果汁、牛肉について自由化をいたさないという農林省の主張につきまして、四次官は何の異議もございませんでしたということを念のため申し添えます。
  50. 田中恒利

    田中(恒)委員 政府は、十七日の閣議が終わったあとで、水田蔵相の通貨調整の十カ国蔵相会議と並行して行なわれました通商会議に臨む日本の態度をきめた、こういう報道がなされておるわけですね。それを見ると、生きた子牛の輸入は関税割り当て制にする、ホテル用の高級牛肉は特別に輸入ワクを広げる、オレンジ、果汁の輸入ワクも広げる、その他関税を引き下げる、こういうようなことが報道されておるわけであります。これは自由化するということではないですけれども、輸入のワクをふやすという形で臨む、こういう報道がなされております。閣議決定後関係閣僚の間でそういうことがきめられて、農林省から関係者がこの通商会議に参加をする、こういうことになっているわけでありますが、ところが、きのう、おとといの新聞を見ると、この通商交渉もなかなか話がむずかしくて一時中断した、アメリカはオレンジ、果汁、牛肉の自由化の時期を明示せよ、こういうように迫っておる、こういうことが報道されておるわけであります。こういう事態が現在進行しておるのかどうか、この点をお聞きをしておきたいと思うのです。
  51. 小暮光美

    ○小暮政府委員 十カ国蔵相会議と並行いたしまして日米間の通商上の当面の問題についても協議をしたいという先方の申し入れを政府といたしましてはこれを受けまして、ただいま御質問の中にもございましたように、担当の、私どものほうでいえば、国際部長がワシントンに参りまして、十八日に会議が始まりましたけれども、約三時間の会議の後に、通貨のほうの話がまとまったということがその会議の席に入ってまいりまして、一応会議を中断して、日曜をはさんで月曜日にもう一ぺん会おうということで中断いたしたわけでございますが、その後、通貨の決着を見ましたこととも関連いたしまして、月曜日の会議はこれをとりやめまして、ただいま担当者は東京に向かって帰国の途についておるような形でございます。
  52. 田中恒利

    田中(恒)委員 それで、いま局長も言われましたが、通貨との関連が絶えず外交交渉ですからあると思うのですね、これまであったと思うのです。日本の政府は、できるだけこの円の切り上げの幅を押えるということのために、農産物の自由化等についてアメリカが強く要求をしておるものについては、まあできるだけこたえていくというような姿勢を示しておった。ところが、実際やってみたら、政府は総理以下それほど驚くことではないと言っておるけれども、これはいま国民一般、関係者一般がこの一六・八八%という円の切り上げは非常に大きな上がり幅だ、こういうように理解をしておると思うのですよ。これはこの二、三日来の新聞が明らかにしておるところであります。したがって、何かえさをもってそれで何とか交渉を上手にやろうといったって、どうもわれわれがそばから見ておる範囲では、なかなかできるような状態ではないと思うのですね。だから、やはり日本の政府はもっとき然とした姿勢で臨んでもらわなければいけないと思うのです。これは私は農林省相手だけではいけぬ問題だと思うのです。農林省はなるほどある程度内容は知っておるようですけれども、あるいはがんばっておるかもしれませんけれども、しかしどうもあぶない。大体グレープフルーツの自由化をやったときに、一般の農民諸君は、何とかオレンジはとまったけれども、これはここで終わっておるのではないという疑問を持っておったと思うのですよ。ところが、これは一ぺんに出てきた、一月の六日、七日のサンクレメンテの佐藤総理・ニクソン会談でこれはやるのじゃないかという心配をしておるわけです。これに対して、どうもいま局長答弁を聞く範囲においては非常に不明確であります。少なくともグレープフルーツの自由化直後あるいは日米経済閣僚会議が終わった直後の農林省当局が言っておったこととはだいぶ後退をしておる感じがしてならないわけでありますが、これは政務次官、どうですか。この三つの重要品目、これが従来課題になっていたわけでありますが、これについての農林省としての考え、それからその考えをやはり政府に貫いてもらわなければいけぬと思うのですが、その見通しについて。
  53. 伊藤宗一郎

    ○伊藤政府委員 この三品目についての農林省考え方は一歩も後退をしておりません。それはぜひ御理解と御信頼をいただきたいと思います。さらに、なお一そうの御確認をいただいたわけでありますが、当委員会趣旨も体し、赤城農林大臣も間もなく復帰をされることになっておりますので、政務次官として委員会の御趣旨を大臣にしかと伝え、なお一そう大臣に御健闘をしていただくように私からもお伝えをいたしたいと思います。
  54. 田中恒利

    田中(恒)委員 私はこの際、日本のいまのアメリカ一辺倒貿易の構造というものを思い切って切りかえていくという積極的な姿勢をやはり政策としては持つべきだと思うのですね。日本の貿易の、特に農産物関係は輸出入ともほとんど大半はアメリカとの関係で組み立てられておるわけでありますが、この構造をこの際思い切って転換をさしていく。アメリカもこのことをある意味では最もおそれておると思うのです。アメリカが最もおそれておるところを私どもは最も強く押していく、この姿勢をとらないと、アメリカの大きなねらいの影に添うがごとく進んでいくということでは、私は農産物の自由化問題、このことによって日本の農業の興廃というものは非常にきびしくなっていくと思うのです。こういう点についてひとつ御検討をしていただきたい、この点を御要望申し上げておきたいと思います。  さらに、この国内農業に対する圧迫が非常に大きくなるということは当然想定をされるわけですが、この際、価格政策であるとか、不足払いであるとかあるいは輸入窓口の一本化等の問題について、農林省は自由化にあたって農林省の考えを資料として出されておりますね、残存輸入制限の品目を撤廃する際の、あそこに出されておったような考えをもって臨んでいただくと思っておりますが、これらの線は、ここでいま一ぺん再確認をしておきますが、国内の農業に対する対策として、不足払いの問題とかあるいは輸入の一元化問題についての何らかの方策をお考えになっていくようなことが検討されておるかどうか、この点もお聞きをしておきたいと思うのです。
  55. 中野和仁

    ○中野政府委員 ただいまの自由化に対します農林省の態度でございますが、八月にたしかわれわれといたしましては方針をきめまして、現在及び将来の基幹的な作物は、体質改善がなりますまでは自由化はしないという基本的な方針を立てております。あのときは、それ以外のものにつきまして自由化する場合も、突然今後やるのではなくて、それに対応する予算措置あるいは関税措置その他の措置を講じようということを申し上げたわけであります。その方針はただいまも変わっておりません。ただいま来年度の予算要求を大詰めで大蔵省といろいろ折衝をしておりますけれども、御指摘の価格安定制度につきましては、従来の価格安定制度の強化のほかに、肉用牛あるいは加工果実、またはトマト等の価格安定制度を新しく発足させたいということで、せっかくいま大蔵省と折衝をしているところでございます。  それから輸入窓口を一元化しろというお話でございます。これはいま直ちにそうするということを申し上げられないいろいろなむずかしい事情があるようでございます。これは今後検討をさしていただきたいと思います。
  56. 田中恒利

    田中(恒)委員 いま一つちょっとお聞きをしておきたいことは、私は三つの品目にしぼるとなかなか口を割りにくい面があると思いますが、残存輸入制限品目のワクの拡大ということをちらほら聞かされるわけです。一体このワクの拡大というものはどのような基準に基づいて考えられてくるのか。この点は経済局長だと思いますが、お聞きをしておきたいと思います。
  57. 小暮光美

    ○小暮政府委員 残存輸入制限品目の輸入ワクの拡大につきましては、この夏に、対外経済政策、俗に八項目ということで閣僚方が御相談になった考え方の第1の(2)ということで明示されております。当然国内の輸入制限によって保護されております産業分野の立場、それから消費者と申しますか、その立場、貿易上の配慮、三つを考えなければならぬことだと思いますけれども、しかし、必要があって輸入制限をいたしておるわけでありますので、ワクの拡大にあたりましても、当然当該物資の需給事情について十分情勢を把握いたしまして、これに基づいてワクを判断するということが筋であるというように考えております。
  58. 田中恒利

    田中(恒)委員 そこで、その需給事情というのは具体的にどういうものが要素になって出てくるわけですか。たとえば価格が上がったとか下がったとか、あるいは生産が少ないとか多いとか、こういう問題が出てきますね。そこでそういう需給事情というものをさらに分解をいたしまして、こういう状態、こういう状態といったような、基準とまでいかなくても、考え方は整理されてしかるべきだと思うのですが、この点をお聞きしておきたい。
  59. 小暮光美

    ○小暮政府委員 それぞれの物資について事情がやはり異なりますので、画一の基準というものは打ち立てがたいと思いますけれども、需給事情を判断いたしますには、価格の状況というものが一つの大きな要素であろうかと思います。
  60. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は価格の問題もそうだと思いますが、やはり生産の状況、こういう要素を非常に大きく見る必要がある。これは価格でいきますと、よく豚肉等で出るわけですけれども、安くなったから緊急輸入ということでワクを出してやったら、買い付け等で期間が要って、三カ月なり半年なりかかって、入ってくるときには高くなって逆な結果になる、こういう事態がしばしば出て、消費者のほうからもいろいろ文句をつけられるわけですね。豚肉等のような回転の早いものはあれですけれども、たとえばオレンジとか果汁といったようなものは永年作物であって、農林省当局も生産の想定が立つわけだから、それに従って当然消費の動向というものも出ておるわけですから、こういう品目については生産の事情といったようなものが大きな指標になって、当然輸入のワクといったようなものの量がきめられてくると私は思うのです。今日、どうなんですか、上期とか下期とかいってオレンジにいたしましてもワクが設定されておりますけれども、そういうものの中にはそういう点は配慮されておるのかどうか。よくいわれるつかみ量が、あるいは既存の商社の実績といったようなものが前提になってプラスアルファがついておる、こういうことになっておるのじゃないか。この輸入商社の問題もいろいろ問題があると思うのですが、その辺特に果樹についての輸入ワクの設定にあたっての考え方をお尋ねをしてみたいと思うのです。
  61. 荒勝巖

    荒勝政府委員 従来から果樹の割り当て輸入に際しましては、日本の果樹農業に与えます影響を十分考慮しながら割り当ててきた次第でございます。したがいまして、その割り当て量につきましても、大体国民生活の需要の高度化ということを多少考慮に入れながら、たとえばオレンジ等につきましても年々多少要望も強くなっておりますので、わずかではありますけれども、従来から割り当てを少しずつふやしてきておる、こういう形でございます。したがいまして、今後、また最近問題になっております輸入割り当て量の増加ということにつきましても、十分過去の輸入実績というものを前提といたしながら、なお国民の需要の動向等を考慮しながら割り当てをいたしていきたい、こういうように思っております。
  62. 田中恒利

    田中(恒)委員 そうすると、果樹の輸入ワクの問題については、従来の傾向を見ながら設定をしてきたのであって、これからもそういう考えで進んでいくというふうに理解してよろしいですね。
  63. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま農林省として考えております割り当て方法といたしましては、先ほど申し上げましたように、おおむね過去の実績というものを念頭に置きながら、国民の消費の需要の動向というものをあくまで考慮に入れながらふやしていくというふうに御理解願いたいと思います。
  64. 田中恒利

    田中(恒)委員 園芸局長にお尋ねをいたしますが、果樹の振興基本方針というものが中間年次に入って修正をするということでありますが、全体としては果樹の振興の速度が多少早まっておるけれども、これは多少であって、品目ごとにアンバランスがあるからそれを直すというふうに私どもは聞いておるのですが、全体の目標を変えていくのか、あるいはこの中の品目でナツミカン等といったようなものが中心になって修正をされていくのか、基本方針の中間検討期に入って、何か多少予定どおりいかない面があるので変えるということだそうですが、これはどういう点を直そうとされておるわけですか。
  65. 荒勝巖

    荒勝政府委員 果樹農業の基本方針の改定は本年度中に行なうことといたしておりますが、最近の果樹農業をめぐる内外の諸情勢が非常にいろいろ変わってきておりますので、それらの要因を十分念頭に置きながら、全体としての果樹農業の基本方針の改定をいたしたい、こういうように思っております。  なお、改定に際しまして、個々の種類ごとにつきましても、現在におきまして、いま御指摘になりましたように、一部のかんきつ、たとえばナツミカンでございますが、そういったものの将来の需要の動向というものは、やはりこの際ある程度抑制するのが適当ではなかろうか。なお、植栽が非常におくれておりますブドウとかモモとか、こういったものの需要が非常に強いような状況でございますので、そういったものはむしろ今後大いに推進していくというふうな考え方に立ちまして、ただいま検討をいたしておる次第でございます。
  66. 田中恒利

    田中(恒)委員 ミカンはどういうふうに理解しておりますか。ミカンとリンゴが一番大きな品目になるわけですけれども
  67. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ミカンにつきましても、前々からお話し申し上げておりますように、植栽が私たち当初考えておりましたよりも多少進み過ぎのような感じがいたしておりますので、計画の改定に際しましては、その辺を念頭に置きながら、従来のようなテンポの形での植栽はある程度再検討する必要があるのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  68. 田中恒利

    田中(恒)委員 専門ですから、私が言うまでもないわけですが、ミカン等については、全体として伸びるのを多少、押えていくというと語弊がありますけれども、ブレーキをかけていく、こういうお考えのようですが、そういう考え方も、いまの状況ではそうかとは思うんですけれども、しかし、そういう条件の中で、ミカンと競合するオレンジの輸入のワクがふえた、まかり間違えば自由化。あるいは加工品である果汁が自由化をされていく。しかも、これは局長は一番御承知だけれども、全体的に非常に過剰化して、一位、二位の日本とアメリカがドッキングしてけんかをしていくというようなやり方は、国際的に、理論的に見て、筋が通っていないわけですね、アメリカの言い方はどう考えたって。だから、農林省は、もちろんやっておることはわかっておりますけれども、これはよっぽど腹をかまえてかかってもらわないと、端的にいえばだまし討ちですよ。これは第二の繊維だというふうに理解し始めておるわけですね。われわれも、グレープフルーツで若干だまし討ち的な挙に出られたと思いますが、このオレンジと果汁と牛乳の三品を今度またああいう状態にしましたら、これはもう日本の意思というものは、少なくともアメリカに関しては何もあらわれない、こういうことになると思うのですよ。十分御承知だと思いますけれども、よっぽど腰をかまえて取り組んでいただきたい、こういうふうに思います。  それから、ナツカンの改植の問題がやかましくなって、政府は、改植資金を三分程度のものを出す、こういう決定をなされた。五億六千三百万円の支出がきめられたわけですが、これは現在どうもまだ進んでいない。どうなっていくということはわかるんでしょうか。全然これはどういうふうになるのかさっぱりわからない。どういう要領でどういうふうに実施されていくのか、それもきまっていないということですが、これは何か県と農林省との間にいろいろ行き違いがあったというようにも聞いているのですが、現状はどうなって、どうしていくのか、すぐやれるのか、この点だけ……。
  69. 荒勝巖

    荒勝政府委員 この夏グレープフルーツを自由化したことに伴いまして、ナツミカンについては重大な悪影響を及ぼすのではなかろうかということになりまして、政府といたしまして、去る十月の八日の閣議で、本年度につきまして五億六千三百万円の利子軽減のための支出をすることにした次第でございます。全体計画につきましては、御存じのように、総額約八十億円ぐらいの融資総額を考えまして、大体貸し付け金利は年三分ということで、四十六年度につきましては約一千ヘクタールのナツカンの改植を考えておる次第でございます。これにつきましておおむね細目もできまして、あとは都道府県別にどういうふうに配分するかということを予定しておりまして、その作業を急いでいる次第でございますが、なお多少県との間にそれぞれの改植計画等の食い違いもあり、また都道府県の段階で、今年の経済が多少悪くなったということで、財政負担の問題等につきましてただいま県の財務当局との間に県内で調整がされておるやに聞いておりますので、それらの問題が解決し次第すみやかに実行できるのではなかろうか、こういうように考えております。
  70. 田中恒利

    田中(恒)委員 これはもうすぐにでもできるというふうに聞いておったんですけれどもね。しかし、だいぶごたごたして、私なんかも、細目ができたら知らしてほしいと何べんか頼むけれども、さっぱりわからぬ。聞いてみると、農林省と自治省の間にも問題があるし、県と農林省の間にもいろいろあとの三五%の負担の問題ですっきりしないというようなことのようですが、事情は大体大まかにわかりましたけれども、できるだけ早く、もう今年度は終わろうとする、間近になってくるわけですから、ひとつ処理していただきたいと思います。  それから水産庁にお尋ねをいたしますが、やはりこれはアメリカ関係で、マグロかん詰めの返品の問題がことしの秋以来問題になっておるのですが、これも全然解決しない。それから温州ミカンの輸入解禁州の問題もさっぱりどうなっておるのかわからない。こういう状態でありますが、このマグロかん詰めの返品の問題について、いまどういうふうに処置をしようとしておるのか、この問題の見通しはどうなのか、お尋ねをしておきたいと思うのです。
  71. 太田康二

    太田(康)政府委員 御指摘のとおり、マグロかん詰めにつきましては、本年の四月以降、いわゆるデコンポジションといっておりますが、これを理由としまして、アメリカの通関拒否というものが相次いだわけでございます。さらに、御承知のとおり、通貨不安あるいは輸入課徴金制度の設定等が影響いたしまして、マグロかん詰め産業が大きな打撃をこうむったことは御承知のとおりでございます。そこで、このデコンポジションの問題につきましては、この問題が起こると同時に、外交ルートを通じてアメリカの善処方を要望いたしましたほか、本年九月の日米貿易経済合同委員会におきましても農林大臣からアメリカ側に善処方の申し入れをいたしておりますし、先般さらに水産庁の担当課長を、業界の方々とともにアメリカに派遣いたしまして、問題の解決につとめてまいっておるわけでございます。その際、いろいろアメリカ側との話し合いをいたしたわけでございますけれども、品質的に見ますと、アメリカと日本品とにほとんど全く差がないということが明らかになりまして、日本におきましてアメリカ品を取り寄せまして私どもの遠洋水研の担当部長が実際に分析をいたしました結果も持っていったわけでございまして、これらの科学的な分析の結果もアメリカ側との折衝の際に十分話をいたしまして、向こう側にこれを非常に高く評価をしてもらったわけでございます。そういった話し合いの結果、明年の一月に、アメリカの検査専門官が日本に参りまして、双方の検査体制の調整につきまして話し合いをすることになっております。この問題が、一部には政治的な背景があるんではないかということがいわれましたが、今回のアメリカ側との話し合いによりましても、全く技術上の問題であるということが明らかになったわけでございまして、そういう意味で、早くアメリカ側の検査官の来日を求めまして検査体制の調整についての話し合いをするということで問題の解決を早めたいと思っております。  なお、すでに緊急対策の一環といたしまして、去る九月末には、これも御承知だろうと思いますが、マグロかん詰めを含みますところの農水産加工業の共販組織に対しまして、六十億円のワクで特別融資を行なうということになっておりまして、現在その円滑な融資につとめておるところでございます。なお、内販の拡大を含みますところの国内市場の開拓あるいはアメリカ以外の他地域への輸出ということにもつとめているところでございます。いましばらく事態の推移を見守りまして、必要に応じまして、事態に即応した適切な対策を講じたいということでございます。  いずれにいたしましても、今回の課長以下の訪米の成果ということをわれわれは期待をいたしまして、一日もすみやかにこの問題が解決することを期待をいたしておるということでございます。
  72. 田中恒利

    田中(恒)委員 時間が参りましたので、貿易の自由化の問題はたいへん大きな問題でありますので、なかなか簡単に議論が煮詰まるというわけにもいかない点があるわけですけれども、しかし、私は、やっぱり農業が日本の工業の対外進出のためにたいへん利用されておるような感じが最近してなりません。そういうことは、これはもうほんとうに果樹とか畜産とか米とかということだけじゃなくて、正直言って、いま農民は何をしたらいいのか、何やってもだめだ、こういう状態になっておるのですよ。ですから、そう事態は甘くないですよ。その一本の柱にやっぱり外国農産物との競争と、経済的には国内で太刀打ちのできる状態をつくればいいじゃないかという単純な理屈が出るわけですけれども、そういうわけにはいかぬですから、ひとつこの自由化の問題についての今後取り組む日本の基本姿勢、それに対する国内対策、どうしていくのか。具体的に来年度の予算の中に一部盛り込まれるというお話もございましたけれども、一部じゃなくて、これだけ大きな円の切り上げの処置が出された今日の段階では、私は、農業に対しては思い切った生産基盤の確立を中心とした保護政策を打ち立てられ、価格政策についても考えられるべきだと思うし、特に農産物の輸入の取り扱いについて、これについてはまあ生糸の問題がいま一番大きな問題になってきておりますが、これらの点も勘案しながら、グレープフルーツの自由化で、当初たいしたことはないといっておりましたが、いまどうですか、たいへんな量が入ってきておる、値段はたいへんな暴落であります。港湾ストの関係だといいますけれども、おそらく来年のグレープフルーツの影響というものは日本のナツカンに対して相当大きな影響を与えると思うのです。その辺これはよほど慎重に取り組んで、それこそ日本の国益を守るという立場で取り組んでいただきたいということを最後に申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  73. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林委員長代理 瀬野栄次郎
  74. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 本年も予算編成時期にあたりまして、いよいよ忙しい毎日でございますが、当面の予算編成に関して、問題がたくさんございますので、時間の制約もございますし、またこの機会に政府の対大蔵との予算折衝のための激励もしておきたいし、また重点施策についていろいろと予算獲得に努力もしていただきたい、かように思いまして、若干総花的になりますが、質問者がわが党一人に限定されております関係から、諸般の問題について今後の御見解また決意のほども承りたい、かように思って質問を申し上げます。  まず最初に、昭和四十七年度農林漁業関係の予算概算要求の中で農業、林業、水産、特に今回の対大蔵との予算折衝について、基本的な方針並びにどのような点に重点を置いて来年度は施策を遂行していくというふうなことで、それぞれひとつ各当局の考え方をまず冒頭に簡潔に承りたい、かように思います。
  75. 中野和仁

    ○中野政府委員 来年度の予算要求、ただいま大蔵省といろいろ折衝しているところでございますが、先ほどからの御質問にもありましたように、最近におきます農林漁業をめぐります情勢は非常にきびしいということでございます。それに対処しまして、何としましても基本的な考え方としましては、農林漁業の体質を改善する、そして生産性を上げて、近代的な農林漁業確立をはかるということと、そういう農林漁業が営まれる農山漁村の場を健全なものにしていくというところに基本的な考え方を持っております。  そこで、お尋ねの重点事項でございますが、いま申し上げましたまず農業から申し上げますと、農業の体質改善、これは国際競争力を強化するということでございますので、従来からやっております構造政策を推進するというほかに、新しく農業団地の形成ということをはかりたいと考えております。詳しく申し上げますと、非常に時間がたちますので、要点だけ申し上げたいと思いますが、それが第一でございます。  第二は、そういう農業団地の形成は、地域あるいは作目によりまして非常に違いますし、御承知のような米の事情がございますので、農業の再編成ということを考えなければなりません。その場合に、米の生産調整が第二年目になります。初年目を経ましたあといろいろ問題がございます。それをめぐりまして、米の生産調整を稲作転換に重点を置きまして軌道に乗せるということでございます。そういうことになりますと、今後米の転作をはかりながら需要の伸びる畜産あるいは園芸、畑作についての生産振興をはかるというのが第二番目でございます。  それから、その場合には、昨今秋冬野菜を中心に特に問題になっております野菜対策に非常に重点を置きたいということで、追加要求もいたしまして折衝をいたしております。  それから、そういう農業の再編成、農業団地の形成という前提といたしまして、農業基盤整備の拡充ということはもう当然のことでございますが、その中でも特に圃場整備、畑作地帯の総合整備、農道、それから草地開発というものに重点を置きたいということを考えております。  それからなお、最初に基本方針で申し上げましたように、生産の行なわれる場の農村をりっぱにするということから、農山漁村の生活環境もあわせて取り入れた新しい基盤整備事業はできないかということで、それの事業化をはかりたいということを考えております。  それから四番目の柱は、農産物の価格政策の強化であります。先ほども御議論がありましたように、自由化の問題等今後も引き続き起こってくる、これに対処しまして、やはり価格安定政策を強化する必要があると考えております。そこで、野菜あるいは肉用牛あるいは工業用の果実等につきまして価格安定制度をあるものは拡充し、あるものは新規にそういう制度をつくりたいと考えておるわけでございます。  それから五番目は、消費者対策の充実ということを考えております。とかく農林省の場合は、生産者に片寄りがちだということがいわれておりましたが、そういうことがもはや許されない事態になっておりますので、農林省といたしましても、消費者対策として、先ほど申し上げました野菜の問題、その他生鮮食料品の問題につきまして両面から取り組みたいというような考え方で予算要求をしているわけでございます。  以上が農業関係でございますが、林業関係につきましては、林業の生産基盤の整備あるいは林業構造の改善、これは第二次構造改善事業を発足させたいということで予算要求をしているわけでございます。そのほか木材流通の合理化、外材の圧迫等ございますので、そういう点に留意をいたしたい。それからなお、森林の公益的機能の増進をはかるための諸施策の拡充ということで、治山事業について国有林でやります治山事業を一般会計で持つようにということで、ただいま大蔵省と折衝をしておるところでございます。  それから、水産業につきましても、海洋水産資源の開発あるいは沿岸漁業の生産基盤の整備、沿岸漁業構造改善の計画的な推進ということのほかに、やはり水産物につきましても、昨今問題がありますように、流通加工段階でのいろいろな改善を要します。その点に重点を置いて予算要求をしているわけでございます。  それからその次は、農林水を含めまして、農林漁業金融の改善の問題でございます。単に補助政策だけでなくて、やはり金融政策が一方の柱にならなければなりません。そこで、農林漁業金融公庫のワクの拡大、それから農業近代化資金の充実、その他農業改良資金制度につきましてもいろいろな改善をいたしたい、ワクの拡大をはかりたいということで要求をしているわけでございます。  詳しく申し上げれば、非常に長くなるわけでございますが、当面といいましょうか、ただいま大蔵省と折衝をしておる重点事項は以上のとおりでございます。
  76. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 概括的に基本方針並びに重点事項について御説明いただきましたが、全部触れますとかなり時間もかかりますので、その中から幾つかにしぼって、若干お尋ねをしてまいりたいと思います。  まず、農業基盤整備事業の促進ということであります。すなわち、土地改良のことでございますが、これについては、先般土地改良推進全国大会でも、全国各地から強い要請がございました。御承知のように、農業の近代化をはかるというために、昭和四十七年度農業基盤整備事業について、圃場整備あるいは農道の整備とか水利施設の合理化、畑作振興、農用地の保全、公害対策、こういったことで土地改良推進のほうでは約三千億、すなわち二千九百四十八億の予算を要求して、前年対比二二二%をぜひ確保していただきたいということで、強い要請があるわけでございます。これをわが国の農業の自給という問題から、ぜひ実現をして確保していただきたい、こう強くお願いをするわけであります。さらに土地改良事業に対する補助率の引き上げ及び制度金融の金利の引き下げ貸し付け条件の緩和、こういったことについても特にお願いをしたいし、さらに米の転作によりまして、水利施設あるい用途変更が必至でございます。こういった過剰施設あるいは無効投資となったものの地元の残存負担金というものについて全額補てんをしていただきたいというのが、全回土地改良団体の強い要請でございますが、これに対して政府の予算折衝並びに来年度事業を遂行するにあたりましての考え方、また御見解を承りたいのでございます。
  77. 三善信二

    ○三善政府委員 来年度の予算要求につきましては、ただいま先生が申されましたように、農業基盤整備事業の拡充強化ということで、基盤整備事業としては約二二二%の前年増で予算を要求して、現在努力いたしておる段階でございます。特にその中でも、官房長も言われましたし、またただいま先生も強調されました土地改良の中で、圃場整備あるいは農道の整備、畑作の振興とか、草地開発とか、そういった点に特に重点を置いて予算の伸びを確保したいと思っております。  それからお尋ねのございました補助率のアップ、公庫融資の償還、制度金融の金利の引き下げ等の貸し付け条件の緩和の問題でございますが、この問題につきましては、御承知のように、やはり土地改良事業の補助率あるいは公庫の貸し付けのそれぞれの条件でございますが、それにつきましては、それぞれ土地改良事業の性格と申しますか、非常に金のかかるような事業あるいは農民の負担を軽減しなければならないような事業、そういった性格あるいは農業者の負担の能力と申しますか、そういういろいろな条件を加味して現在できているわけでございます。したがいまして、補助率のアップ、こういった貸し付け条件の緩和についても、従来からできるだけ改善はしてまいりましたけれども、今後ともその必要はやはり農業の事情その他農民の負担の態力、そういう面を考慮しながら考えていかなければならないと思っておりますが、現段階では、先ほど申しましたように、土地改良事業の性格やらそういった問題から組織的にこういう補助率、金融条件等はつくられておりますものですから、なかなか容易に補助率を引き上げていくとか、あるいは極度に貸し付け条件を緩和していくということはむずかしいような状態にあろうかと思います。ただし、今後農業情勢の推移に応じまして、こういった問題もできるだけ検討して、改善の方向に考えていきたいと思っております。  特に生産調整等によりまして、過剰施設になったり、過剰投資になったり、そういった問題につきまして御質問がございましたが、私どもが現在考えておりますところでは、調整の面積でございますが、その面積の中で、こういった永久転換をしなければならない、またするように予想される面積というものはおそらく非常にわずかではないか、現在のところ約七%くらいじゃないかという考え方を持っております。そういった永久転換をしますようなところにつきまして、御案内のように、過剰投資になったり、水利施設の変更をしたりするようなところが出てくるわけでございますが、そういうところにつきまして、一カ所にかたまってそういうのが出てきているというのはほとんどないように感じております。したがいまして、もしこういう問題が起きますれば、私どもは、たとえば国営の土地改良事業等でそういう転換をしなければならないというような場合には、水田を今度畑地かんがいとか、そういった面で過剰水を利用するというようなことを、計画変更しながら考えていきたいと思っておりますので、特に過剰施設になったようなところが非常に多くなるとか、非常に集中してあるというようなことは現在ないようでございますし、そのために特段に農民の負担金といいますか、そういうのを軽減する、あるいはその負担金等を全然たな上げにするというようなことまでの必要性はなかろうかというふうに考えております。
  78. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、いまの件ですが、水利施設の用途変更あるいは過剰投資、無効投資で永転をしなければならないのは七%くらいというお話でございました。あまり必要がないような答弁でありますけれども、団体の意見を聞きますと、かなりこの必要を認めておるわけでございますが、そのようなことが起きた場合に、補てんをするということについては十分お考えでございますか、その点さらにもう一度お伺いいたしておきます。
  79. 三善信二

    ○三善政府委員 先ほど申し上げましたように、全般的にそういう事態ではなかろうというふうに判断をしております。またもしそういう必要性が出てきましたような場合には、これも先ほど申し上げたかと思いますけれども、その事業の変更というようなことで、水田に向けていた水を畑地かんがい用に使うとか、また都市用水に農業用水を振り向けていくとか、そういうように事業計画等を変更しながら進めてまいりたいと思っておりますので、お尋ねのように、そういう必要性がもし出てきたらそれをどうするかというお尋ねにつきましては、私ども段階ではそこまでやる必要はないだろうということを考えております。
  80. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、広域農業総合開発のことで、もう一点触れておきたいと思います。  日本経済の高度成長の影響を受けまして、現在きびしい変貌を遂げてわが国の農業が推移しておることは御承知のとおりでございます。四十四年でしたか、閣議決定をされて、新全国総合開発計画において、わが国の食糧供給基地として位置づけられて、農林省の広域農業総合開発地域指定をされてきているわけであります。これは私も何回か質問をして、この促進をはかってまいってきたわけですが、九州においても阿蘇、菊池、上益城の都市に通じる高原地帯で、新全総の計画に基づきまして昭和四十五年二月二十五日、農林省の広域農業総合開発地域指定されております。地元はいろいろこの対策の推進についてたいへん将来に期待をかけておるのですけれども、なかなか具体化されないということで必配をいたしております。来年度予算編成時にあたりまして、来年度はどういうふうにこれを進めるお考えであるか。ぜひひとつ国の強力な施策によって事業を実施してもらいたいし、また国の組織というものを早急に確立していただきたいし、それからこれに基づいて広域農業総合開発に対する新特別法なんというものを創設せねばならぬと思うのですが、これらの問題について政府の見解をひとつ承っておきたいのであります。
  81. 三善信二

    ○三善政府委員 広域農業開発の問題につきましては、御承知のように、全国四カ所を現在調査いたしております。北海道においては根室中部地域、それから東北においては北上北岩手地域あるいは八溝地域、九州におきましては御承知のように阿蘇の広大な地域について開発をしていきたい。このねらいは、基本的には、需要が伸びておりますし、また今後経営の近代化等をしていくために畜産の大規模基地を建設したいということで調査をしているわけでございます。四十六年度までの経過としまして、北海道の根室中部地域は大体四十六年度で調査が終わる予定にしております。それからその他の地域、特に阿蘇地域は四十七年度まで調査がかかることになっております。その他は四十八年度。今年度調査を一応終わる予定になっております根室中部地域につきましては、来年度まだ一部調査が残るかもしれませんが、できるだけ実施設計と申しますか、全体設計をやって、一応の計画の基本をつくっていきたいというふうに考えて予算も要求いたしているわけでございます。この推進につきましては、関係の知事等から非常に強力な御要望もございますし、私どもとしましてもできるだけこの事業の実現をはかっていきたいと思っておりますが、何ぶんにもまだ調査段階で、しかも非常に広大な地域について開発をするということでございますので、十分な調査をしないと、はたしてこの事業を実施します場合にほんとうにやれるかどうか、そういう見きわめも相当こまかい調査に基づいてやっていかなければいけませんので、そういう点特に注意しながら積極的に進めてまいりたいと思っているわけです。ただ、もし実現することになりますれば、ただいまお話しのように、もっと強力な組織ないし強力な事業推進の機関、そういうのを考えてやっていくべきではなかろうかという御意見でございますが、私どももそのとおり考えております。ただ、もう少し事業実施の見通しがつきますまで、そういう組織等の問題につきましても目下検討を重ねながら進めてまいっておるという段階でございます。
  82. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この広域農業総合開発については全国四カ所で、根室からいま逐次やっておられるようですが、ぜひひとつ予定どおり調査を終えて、早く実施計画ができるように格段の努力をして、来年度予算編成にあたってもひとつ努力をさらにお願いいたしたい、かように思います。  次に、オレンジと果汁の問題について、私も政府の見解をただしておきたい、こう思います。同僚議員からもいろいろ質問がございましたので、私ははしょって質問を申し上げたい。問題によっては若干ダブるところもあるかと思いますが、九月の日米貿易経済合同委員会後に、私たちはこのオレンジ、果汁については何となく後退の印象を受けたわけであります。オレンジ、果汁、牛肉等の輸入の自由化に対する米国の要求というものが依然として強い。むしろ通貨問題をからめたいわゆる通商問題では、これら農産物の自由化に最大のウエートを置いているように、われわれも報道または関係筋から聞いております。  理由は皆さん御存じだと思いますが、要するに、来年のニクソンの大統領選挙というのが行なわれる関係で、かなり苦戦であるということが新聞で報道されまして、そのニクソンの選挙地盤がオハイオ州などのいわゆる中西部の農業地帯や、またカリフォルニアとかテキサス州の果樹、畜産地帯を持っておる関係から、これらに対する対策として、かなり強く日本にこのことを迫ってくるということはわれわれ大体考えておるところでございます。そこでこれも会議に行かれて若干お話がございましたが、貿易収支のドル箱であるところの農産物の輸出が何といっても日本で伸び悩んでいるという例もありますし、また日本の農産物の輸入先でありますところのいわゆる米国一辺倒ということから、日本自体が多国化していくというために、アメリカはかなり牽制をしてくる。いわゆる飼料問題その他もからんで牽制してくる。このようなことをいろいろ考えると、かなり強い要求で迫ってくるのではないか、こういうことで農家は心配をしておるし、もしこれが自由化されるとなれば、農家は壊滅的な打撃を受けることは御承知のとおりであります。  そこで、十二月十七日の政府の七者会談のおりにも、対米譲歩案を決定されて、いろいろ話しておられる。その中で関税率の引き下げでは、米側から特に子牛について強い要望が出ているために、一頭三百キログラム以下の生きた子牛に対しては関税を軽減し、特に一定水準以下の重さの子牛に対しては関税率をゼロとするほか、七面鳥その他米側の関心品目に対する関税率も引き下げるというようなことも議題になったし、それから輸入の割当ワクの拡大としてオレンジ、果汁、牛肉、雑豆などを中心に現行ワクを大幅に引き上げるというようなことが、七者会談でいろいろ論議されております。  またそのあとの記者会見でも、山中農相臨時代理は、米国が要求しておるオレンジ、果汁、牛肉の三品目の自由化は考えられない、しかしさきに自由化したグレープフルーツの見返りとして米国がわが国の温州ミカンの解禁州の拡大により具体的に約束を実行するならば、オレンジ、果汁の輸入ワク拡大などを考えてもよい、要するに米国が約束を守るかいなかにあり、米国にげたを預けたかっこうになっております。  こういったことをずっと私も見てきましたときに、ワクの拡大という方向へ進んでいる。そしてオレンジ、果汁というものが先般のグレープフルーツと同じように、だんだんなしくずし的にこれがまたアメリカの強い要求によってなされんとする。こういうふうなことでたいへんな心配をしておるし、十二月二十四日に全国農業協同組合中央会等の主催の全国大会を開いて猛反対をするということが計画されておるわけでありますが、あらためてこのオレンジ、果汁等の自由化に対して政府の今後の確固たる決意、方針を私は具体的に承りたいのです。
  83. 小暮光美

    ○小暮政府委員 これまでもしばしばこの席から農林大臣、政務次官が言明されましたように、果汁、オレンジ、牛肉について、農林省としては自由化の要求に応ずる考えはございません。
  84. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 かたい決意が表明されましたので、一応了といたしますが、グレープフルーツの場合においても、そういうようなことで決議もしたにもかかわらず、ついに輸入自由化がなされたわけでございます。いまの農林経済局長の決意は、私は十分受けとめますが、このオレンジ、果汁の自由化について、さきに山中農相臨時代理が記者会見の中で、いわゆる果汁の輸入ワク拡大などを考えてもよい、要するに米国が約束を守るかいなかにあるということで、温州ミカンの解禁州のことに触れておりますが、私はもうここまでくれば、グレープフルーツの約束として温州ミカンの解禁州をふやしてみたところで、アメリカはたいしたことはできないので、そのことよりも約束をたがえたということで、もう再びオレンジ、果汁を自由化しないというふうな歯どめをしてやるべきである、かようにも実は思っております。ひとつそういったこともあわせ考えて、しっかりこのことについても農家のためにやっていただきたい、こういうように思うわけでございます。  そこで、さっき若干の質問がありましたので、補足的な問題をお尋ねしますが、輸入ワクの拡大の問題であります。九月にも少々行なわれて、その後どのようなふえ方をするか、われわれは注目しておるわけであります。もちろん、これらのオレンジの輸入がされますと、国内のいわゆるナツカンあるいは温州ミカン、そういったものと競合して、これがどうしても大きな痛手を受けることは当然でございまするが、消費者にしても、一時的に輸入しても、年間ずっとこれが続いてこなければ消費者自身も困るわけであります。そういった面から一時的にワクを拡大して輸入するというようなことについては、これは実に消費者も困るし、またわれわれとしてもそういったことは困るわけですが、そういったことについて、もう一度明確にオレンジ、果汁の輸入のワクの問題について見解を明らかにしていただきたい、かように思います。
  85. 荒勝巖

    荒勝政府委員 オレンジ並びに果汁の輸入につきましては、従来からその商品の日本農業に与えます影響度を十分考慮しながら割り当ててきた次第でございます。したがいまして、割り当て量につきましても、国民の消費生活の高度化に伴いまして、年々多少ずつでありますけれども輸入ワクは拡大してきておる次第でございます。今後の輸入割り当ての増ワクにつきましても、十分その辺の過去の経緯というものを念頭に置きながら、また消費者の所得の向上に伴う需要の増大ということに見合いまして、われわれとしては輸入割り当てを多少ずつふやしていく考え方でございます。
  86. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう一点この問題ではっきり見解をただしておきたいと思いますが、先日の一六・八八%の円の予想以上の切り上げによりまして輸入農産物の増大、輸出農産物の今度は減少という問題が起きますし、不況の深刻化による事業所得の減少ということが考えられます。こういったことはかなりの規模で影響を受けることは必至でございます。そこで、通商問題では不満の大きいところの米国が、明年一月アメリカ案についてサンクレメンテで日米首脳会談を頂点にいろいろ会議を持つことになっておりますが、この中でオレンジ、果汁、牛肉など農産物貿易自由化問題で日本の決断を迫るということをすでに通告しておるし、この結果によっては日本農業は将来希望を失う、また壊滅的打撃を受けるということは十分考えられる。それで来年のニクソン・佐藤会談、すなわちサンクレメンテの会議においてこれが重要議題になる、こういうことはだれが考えてもうなずけるところでございます。これらについては断固として、先ほどの決意表明がありましたように、自由化に対して反対の態度をとっていただきたい、また農家を守ってもらいたい、こう思うのですが、これについてのいわゆる対処方針、またどのように政府は考えておられるか。それともサンクレメンテではこういったことは全然議題にのぼらないと言われるのか、その点を明らかにしていただきたい。
  87. 小暮光美

    ○小暮政府委員 一月の初めにサンクレメンテで日米の首脳の会談が予定されておるということは私どもも聞かされておりますけれども、この会談の具体的な内容、どのようなことを議題とするかということにつきましては、私どもとしてはまだ何も知らされておりません。したがいまして、その問題について農林省の立場から申し上げることは差し控えたいと思いますが、いずれどのようなことがございましても、農林省といたしましては果汁、オレンジ、牛肉の自由化を当面行なうということにつきましては絶対反対でございまして、これまで大臣、政務次官が申し上げた御方針に何の変わりもないというふうに御理解いただきたいと思います。
  88. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 経済局長にいま再びかたい決意を聞いたので安心しかけたのだけれども、その答弁の中で、いずれどのようなことがあっても当面自由化を行なうことは絶対反対である、こういうふうに言われた。その当面というのがものすごく気になってきたのですが、その当面というのはどのくらいをさして当面とおっしゃるのですか。
  89. 小暮光美

    ○小暮政府委員 そういう御心配がございますれば、当面というのはほんとうに撤回してもけっこうでございます。ただ、先ほども他の委員の御指摘にお答えいたしましたように、残存輸入制限というものがガット上の一つの議論の種になっておるものでございますから、考え方として、全体として自由化を促進するという日本政府の基本的な態度の表明がございました。そういうものとの関連で、未来永却ということではないという趣旨でそういうふうに申し上げることもあるのでございますけれども、いまの御指摘のような点でもし御心配がございますれば、ただいまの答弁での当面は不必要なことばであったと思いますから、撤回いたします。
  90. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 了解しました。  それでは、時間の制約もあることですから次の問題に入っていきます。次は、蚕糸業の振興並びに輸入秩序確立という問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  わが国の蚕糸業は、農業のみならず、国民経済上も重要な地位を占めておることは御承知のとおりでございます。最近の内需の増大傾向に即応して、長期的見地から繭及び生糸の生産の安定的増大をはかることが最も重要であることは当然でございます。しかしながら、最近の外国生糸の輸入増大等によりまして蚕糸業は重大なる影響を受けております。先日も全国大会を日大講堂で開いたわけでありますが、言うまでもなく、米の生産調整との関連においても繭を転作作物としてやっておりまして、諸施策が講ぜられなければならぬということは明らかに御承知のとおりでございます。熊本においても全国第七位の養蚕をやっておるわけでございます、また生産県でございますが、連日これに対する心配の陳情、電報等も参っておる現況でございます。政府は蚕糸業の健全なる発展をはかるために国際競争力を飛躍的に強める、また総合的な対策を打ち出す、こういったことで外国生糸に対する輸入抑制という対策を十分考えていただかないと、蚕糸業関係はたいへんな問題になってくるという現段階でございます。そういったことからまずいわゆる輸入秩序の確立、こういった問題について、いま生産農家は一番心配しておりますが、それに対する基本的な方向を承りたい、かように思います。
  91. 荒勝巖

    荒勝政府委員 生糸につきましては、国内における重要産業であるという認識の上に立ちまして、従来から繭糸価格安定法を制定いたしまして、毎年三月末に生糸の値段あるいは繭の基準繭価というものを設けまして価格の安定に資してきた次第でございます。それに対しまして過去数年の間非常に順調に生糸の価格は推移し、ときによりましてはむしろ高値に過ぎるのではないかという感触を得ておった次第でございますが、ことしの春以来外国生糸が相当多数輸入されまして、その結果、日本の生糸の価格の相当な低落を来たした次第でございます。その結果、蚕糸事業団におきまして、この六月以来約一万九千俵の生糸の買い入れを続けておる次第でございますが、その買い入れにもかかわりませず、依然として生糸の価格は十分な糸価の回復を見ていないというのが実情でございます。このまま放置すれば、日本の蚕糸業の立場としてはなはだ将来に対する不安が懸念されておりますので、われわれといたしましては、何らかの形でこの生糸の価格安定といいますか、糸価の回復についていろいろな形を検討している次第でございますが、御承知のように、生糸につきましては、国際的にすでにガットの場所におきましても自由化を約束しておるといういきさつもありまして、政府としていま直ちにこの輸入の禁止をするとかあるいは輸入を制限するというようなことを実行することは何らかの形で困難ではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。したがいまして、われわれといたしましては、そのほかのいろいろな措置によりまして、生糸の糸価が回復するよう努力してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。     〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕  なお、日本の生糸いわゆる蚕糸業といいますのは、御存じのように、われわれの見ている限りにおきまして、比較的国際的には競争力のある産業ではなかろうか。ほかの農産物に比べますと、おおむね国際競争力があるというふうに考えておるわけでございまして、なお国内の蚕糸業の生産の合理化、あるいはコストの切り下げということにつきましては、今後ともさらに一そうの努力を尽くしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  92. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の制約があるものですから、こまかく一々申し上げませんが、海外生糸の輸入数量は、この表を見ましても、中国、韓国その他とありますが、おもに中国です。三十九年はゼロだったのが四十年には八千三百二十四俵、四十五年ではすでに三万一千七百十九俵と約四倍近いものになっています。かといって、現在貿易商社が輸入するにしても、なかなかこれをチェックする方法がないのは御承知のとおりでございまして、いろいろ不安であります。事業団としてはキロ六千九百円で買いささえをするということでいろいろやっているが、やはり生糸の価格というものは買いささえをしても価格が下回っている。なかなか思うようにいかない。この立法化についていまいろいろ検討を進めておるという段階でありますけれども、いずれにしても何かの方法で秩序ある輸入をする、はっきりと目標を幾らなら幾ら、三万俵なら三万俵、こうきめてやれば生産者も安定するであろうし、そして国内養蚕農家を守るというようなことで目標も立っていく、こういうふうに私は思うのですが、それらのことが一番不安でございます。そこでやはり前年度並みの水準ということで、秩序ある生糸の輸入ということが第一である。そして日本の蚕糸事業団の一元輸入というようなことをはっきりしていただきたい。  それと、中国、韓国からの生糸輸入の動向生糸の国内需給及び価格に及ぼす影響がきわめて大きいことから、すみやかに関係国との間において生糸の輸入に関し政府間または民間ベースででも協定の締結、こういったことに努力せねばならぬじゃないかということが、先日の大会でもまたわれわれの間でも論議をしておるところでございます。こういったことについてさらにひとつ政府の見解をお聞かせいただきたい、かように思います。
  93. 荒勝巖

    荒勝政府委員 生糸の輸入につきまして何らかの形でのいわゆる計画的な輸入のあり方あるいは秩序ある輸入のあり方ということにつきましては、私どもといたしましても関係方面とただいま十分協議いたしまして検討をいたしておる次第でございます。一方日本に入っております生糸は大体ことしで九万俵前後になるのではなかろうかというふうに考えまして、国内産の生糸が約三十三万俵、こういわれておる段階で多少多過ぎるのではなかろうかというふうな考え方を持っております。  これに対しまして、先ほど御指摘のありました各国間と話し合いをしたらどうかというお話でございますが、輸入先の大きな国であります韓国及び中国、この二カ国との関係でございますが、韓国との間におきましては、政府間におきましてもあるいは民間同士の間でもある程度話し合いができる余地ができ上がっておりまして、また韓国の生糸につきましては現在底といいますか、輸出余力というものの限界がおおむねわかっておりますので、この辺の話し合いの余地は今後もある程度スムーズにいくのではなかろうか、こう思っております。ただ、中国との間におきましては、御存じのように、まだ日中間におきまして国交の回復ができておりませんので、政府みずからが中国側と接触するということがなかなか困難な事態でございますので、これにつきましては、関係方面の方々にお願い申し上げまして、できますれば何らかの形で中国との間に話し合いの道が開かれるようわれわれとしては今後とも努力してまいりたいと思っております。
  94. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 本件につきましては、また各党でいろいろ協議もすることで、いろいろ話を進めておるときでもありますし、それだけ見解をただしまして、時間の制約もありますので、次の問題に入ります。  次は、これまたことし年末になるといつも問題になるわけですが、市街化区域内の宅地並みの課税の問題について御見解を承っておきたいのであります。  都市農政の確立の上からもこの農地の宅地並み課税の問題は、農家もいま深刻な問題となっております。昨年の十二月もたいへん問題になってまいったわけでありますが、御承知のように、市街化区域内の農地の固定資産税に対する宅地並み課税はいよいよ来年一月一日からスタートをして、まずA農地から実施に移されようとしておるわけです。これにはいろいろ不服審査請求その他もあるわけでございますが、宅地並みの課税がかけられますと、私の調査によりますと、A農地の場合、大阪の吹田市あたりの例をとりますと、坪二万一千円の評価額のところが現行八百五十円の税であるにもかかわらず、五十年には五万一千八百円、五十三年には十万円、七年後は十万円になる。しかもB農地については五十三年には十万円、C農地は五十五年に十万円、こういうようなことになるし、大都市の評価額に対する倍率を見ましても、A農地は二百五十六倍、B農地が百六十九倍、Cが八十倍、町村においてもAが八十八倍、Bが八十八倍、Cが二十倍、こういうような評価額になってまいります。こういったことで、反当収益は、生産調整によってやっても、農家はとても税金に追っつかないということで、そうなったら何も農家の責任じゃない、こう言っておるわけです。だが一方都市のほうから見ますと、やはり都市には緑地帯もほしいし、さらに野菜、果樹あるいは植木、こういったものの生産、あるいは公害防止だとか、いろいろな酸素補給というような面からも当然必要なこともうなずけるわけです。双方いろいろ理由はございますが、いずれにしてもいよいよ来年一月からということで、地方自治体では、条例阻止ということでいま運動を展開していて、たいへん悩んでおるところでございます。まさに社会問題になって、またぞろ十二月たいへんな深刻な問題になってきております。こういったことから、この農地の宅地並み課税については、都市農業を確立するためにも、市街化区域内にあっても現に生産の用に供されている農地については、転用、改廃の届け出がなされるかまたは農業生産以外の用に供されるに至らない限りは、固定資産税、都市計画税の課税にあたり宅地並み課税は行なうべきでない、こういうような私は見解を持っております。要するに、現在も水道、下水あるいは電化工事が行なわれて、当然農業もやめておるし、宅地として認められているところについては、これは宅地並み課税をするということはわれわれも認めるにやぶさかではありませんが、現に農業の生産に寄与し、農用地としてやっているところについては当然考えてやるべきだ。そうすることが、日本の農業を守り、いままで苦労してきた農家に対して、また生産調整でたいへん苦しんでいる農家に対して守ってやることである。こういった意味からも、農林省としては大いに努力してもらいたい、こう思うのですが、法がこういうように制定され、いよいよ一月一日実施、いま市町村段階で条例問題でいろいろと各都市こもごも折衝を続けておるところでありますが、農林省のあたたかい農家を思う気持ちから、農家に対する御見解、考え方、今後の方針等について、あらためてもう一度ひとつあたたかい見解を承りたい、かように思うわけです。
  95. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 お答え申し上げます。  市街化区域内の農地の固定資産税及び都市計画税につきましては、御承知のとおり、昭和四十六年度の地方税法の改正により税負担の激変を緩和するため調整措置を講じつつ、課税の適正化をはかるということになったわけでございますが、ただいま先生から御指摘がございましたように、若干の都市近郊地域において、この課税について問題が起こっていることは農林省といたしましても十分承知しております。  そこで、この問題についてどういうふうに対処したらいいかということでございますが、この地方税法の改正は四十六年の税制改革の一環として行なわれたものでございますので、すぐこれを改正するというようなわけにもまたまいらない点があるわけでございます。そこで、農林省といたしましては、この制度の実施に伴い、市街化区域内の一定規模以上の集団農地で、長期にわたり農地のまま保存される農地の市街化調整区域への編入、また施設緑地の指定等による税負担の据え置き措置及び市街化の見通しのない一定地域の農地であって、市街化調整区域に編入することが不適当な農地の固定資産税及び都市計画税の減免に関する自治大臣の助言等の措置を講ずるよう、ただいま自治省に話しているところでございます。これは地方税法附則の二十九条のほうでそのような助言ができるということになっておりますので、実情から見てあまり無理があるところはそのように措置をしてほしいということを話しております。
  96. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま、自治大臣にも助言をしていろいろ検討を進めてもらうということですが、そういった無理なところがたくさんあるわけでございますので、これはぜひひとつそのようなあたたかい助言をできますように、これもお願いしておきます。  いろいろほかにも申し上げたいことがあるのですが、いずれにしても地方自治体のほうでも、条例制定にあたってたいへんないま運動を展開しているときでありますが、さらにひとつ農林省の農家に対するあたたかい手を伸べていただきますようにお願いしておきます。この問題は短時間ではとても論議できませんので、またあらためて機会を見ていろいろ質問することにしまして、もう一点お伺いしておきます。  農林年金制度のことでお伺いをしておきます。これまた今年度予算編成にあたりまして、必要な国庫補助の助成の問題を各地から要求され、おそらく各先生方にも電報が毎日何十通と来ているのではないかと思いますが、この農林年金制の健全な運用をはかるために、二点について政府の見解を明らかにしていただきたいと思うのです。  まず一点は、給付費に対する国庫補助率を当面二〇%にしていただきたいということと、もう一点は、財源調整費補助を当面五%を定率化していただきたい、こういうことで強い要請がもう出ておるわけです。各地の要請にこたえて、もう理由は一々申し上げませんが、政府の見解を明らかにしていただきます。
  97. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 農林年金の四十七年度予算要求につきましては、ただいま先生から御指摘のございました国庫負担率の引き上げ、すなわち給付額に対する国庫負担率が現行法では一六%でございますが、これを二〇%に引き上げること、それから財源調整費の増額、できれば給付額に対し五%程度の財源調整費を出してほしいということで、農林省といたしましては予算要求中でございます。
  98. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 強い要望でありますし、要求しております職員もまたそういうことにたいへん期待をかけておりますので、皆さん方のひとつ真剣な対大蔵折衝並びに獲得について努力していただきますように要望を申し上げておきます。  時間が詰まってきましたので、次に林野庁関係にお尋ねをいたします。  いろいろ準備してありますが、まず第一点としてお伺いしたいことは、ことしは御存じのように台風十三号から二十九号に至る間、また梅雨前線、秋雨前線、集中豪雨等、全国各地にたいへんな災害がございまして、私は治山治水という問題でたいへん深刻なものを感じております。災害対策特別委員会からもまた当委員会からも、各地の視察、調査等をいたしたおりにも、こういった問題に対して強い要求がなされてまいりました。中小河川のはんらん、その根本に治山事業の重大な問題があることはもう言うにも及びません。そういったことで私たちは各地で与野党をあげて治山治水事業五カ年計画の改定をぜひやるべきである。また当局もぜひ四十七年度からこれを強力にやっていきたいということで強力に進めていただいておったわけですが、どうやら今回は予算編成にあたってこれを一年延期する、もちろんこれにはいろいろ理由もあるが、財源難その他の理由によって延期をするというようなことがいわれて、たいへん心配もしておるし、今年のようにあのような異常的な災害が多かった年にあたって、国民に全く申しわけない感じでおりますが、これの推進にあたってどのような決意で、どのような見通しであるか、またどのように対処していかれるか、これを冒頭承りたいのであります。
  99. 松本守雄

    ○松本(守)政府委員 林野庁としましては、四十七年度からの実施を目途にいたしまして、治山五カ年計画の策定、これを検討いたしております。目下関係省庁とも連絡をいたしまして折衝を進めておるところでございます。
  100. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ひとつ林野庁長官、どうか国民の要望にこたえていただきますように努力をお願いしたい、こう思います。  さらに長官にお尋ねをいたしますが、時間の関係で要点だけ申し上げます。第二次林業構造改善事業、これは先ほど官房長からもぜひ来年度から発足させたいということでありますが、これについてぜひそのように取り計らってもらいたいと思いますが、これは必ず推進できるという確約があるかどうか。この内容については四十七年度からの発足をぜひしてもらいたいし、また大型事業の実現もはかってもらいたいし、事業費規模一地域二億五千万、さらに地域総数千三百市町村、こうなっておりますが、これに対してはどのように推進されるか、その決意のほどを承っておきたいのでございます。
  101. 松本守雄

    ○松本(守)政府委員 第一次林業構造改善は四十六年度をもちましてその指定を全部終了いたします。したがって四十七年度から新しい林業構造改善に着手をしたいということで、いま鋭意検討を進めておるところでございますが、最近の林業情勢、また森林に対する各方面からの要請というものも出ておりますので、第一次林業構造改善に比べまして内容をさらに充実いたしまして、その実現についてその最大の努力をいま傾注をしておるところでございます。何とか四十七年度から着手をしたいということで検討中でございます。
  102. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が迫ってきましたので、ただいまの第二次林業構造改善についてはぜひ四十七年度から推進できますように強力にお願いしたい。  長官に質問通告いたしておりました中で、全部できませんが、大規模林業圏の問題、先般私も九州地方開発審議会でもこれをいろいろ論議したわけですが、これについてもぜひ昭和六十年度を目標にプロジェクトをつくって、いままでの林業一本だけの改善でなく、総合的にこれをやっていこうというのでありますが、全国地域についてこれがいろいろ検討されております。ぜひこの大規模林業圏の推進をはかっていただきたい、また予定を進めてもらいたいと思います。これについても御見解を承りたい。  それともう一つは、共同施業計画によるところの造林推進、これは再造林の問題、拡大造林の問題、いろいろありますが、中でも公社造林、受託造林に対する助成を強力にやってくれというのがいま末端林業家の強い要望でもあります。これらについての御見解を承りたいのであります。  さらに、時間の範囲内でけっこうですから、環境庁のほうにぜひお聞きしたいと思っておりましたが、鳥獣保護議員連盟からも強い要求を出しておりますし、また団体からも要請があっております鳥獣保護対策の中で日米渡り鳥等保護条約の問題、野鳥の森の造成費、鳥獣保護行政対策費を、ぜひともひとつ必要な額を獲得していただきたいという要請が先般皆さんのほうへ出してあるのですが、これらについての今後の対処方針、御見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  103. 松本守雄

    ○松本(守)政府委員 お答えをいたします。  大規模林業圏開発計画でございますが、四十五年度から調査、四十六年度には開発規模の計画の策定ということをいたしておりまして、全国で三カ所、三カ所を、一年ずつその調査計画はずれておりますが、いまやっておるところであります。この地帯は薪炭林の生産が主体でございまして、非常におくれておる、しかも大規模だということでございまして、平均的な林政ではそのおくれを取り返すことが非常に困難であるというふうに考えまして、来年度からは、これは林道が中心になりますが、その開発のための実施計画の策定ということにつきましていま検討中でございます。  それから第二点の共同施業計画による造林についての助成ということでございますが、この共同施業計画というのは、いま林業がかかえております過疎問題、労働力の不足問題ということもございまして、将来的には共同化をしていかなければいかぬということもございますので、共同施業計画によって造林を進めるという場合には、いまも幾つかの恩典、助成制度がございますが、そのほかにもさらに内容を拡充したところの助成を目下検討中でございます。  それから第三点の、公社造林とか森林組合の受託造林でございますが、これもいま申し上げました造林共同化という方向に照らしまして、公社とか森林組合が持つところの役割りというものがいよいよ重かつ大になりますから、そういうものが行なう造林については、その必要経費の実態にかんがみまして補助内容の充実ということをこれも検討中でございまして、何とか実現をしたい、このように考えております。
  104. 仁賀定三

    ○仁賀説明員 鳥獣保護行政は、わが国におきます自然保護行政の重要な柱でございますとともに、国際的にも相互に提携し、積極的にその保護をはかっていこうとする機運が非常に高まっておるおりでもございますし、行政組織といたしましては、本年初めて独立した課としてスタートをし、明年度予算につきましても、これらの諸情勢に対処いたしまして予算を編成し、目下大蔵省と折衝中でございます。今後とも行政上必要な予算が計上されますよう鋭意努力してまいりたいと考えております。
  105. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間がまいりましたので、以上で終わります。
  106. 藤田義光

    藤田委員長 次回は、明後二十三日、木曜日、開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時十九分散会