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1971-11-30 第67回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月三十日(火曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 齋藤 邦吉君    理事 宇野 宗佑君 理事 木野 晴夫君    理事 丹羽 久章君 理事 藤井 勝志君    理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君       上村千一郎君    木村武千代君       倉成  正君    地崎宇三郎君       中川 一郎君    中島源太郎君       坊  秀男君    松本 十郎君       三池  信君    村上信二郎君       森  美秀君    山口シヅエ君       吉田 重延君    吉田  実君       阿部 助哉君    佐藤 観樹君       堀  昌雄君    塚本 三郎君       津川 武一君  出席国務大臣         通商産業大臣         大蔵大臣臨時代         理       田中 角榮君  出席政府委員         大蔵政務次官  田中 六助君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君         通商産業省企業         局長      本田 早苗君         通商産業省繊維         雑貨局長    佐々木 敏君         中小企業庁次長 進   淳君  委員外出席者         国税庁直税部長 江口 健司君         通商産業省繊維         雑貨局雑貨第一         課長      和田  裕君         労働省職業安定         局雇用政策課長 岩田 照良君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員の異動 十一月三十日  辞任         補欠選任   伊藤卯四郎君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     伊藤卯四郎君     ————————————— 十一月十八日  国家公務員共済組合法等改正に関する請願(東  中光雄紹介)(第一五八六号)  同(東中光雄紹介)(第一七六一号)  元満鉄職員等共済年金通算に関する請願(山  下元利紹介)(第一六〇五号)  自動車損害賠償責任保険に関する請願外四件  (秋田大助紹介)(第一六〇六号)  同(坊秀男紹介)(第一六六二号)  同(田村良平紹介)(第一七二四号)  行政費の節約に関する請願河野密紹介)(第  一七六二号) 同月二十六日  食用塩としての自然塩確保に関する請願村上  信二郎紹介)(第二一五八号)  同(高橋英吉紹介)(第二二八一号)  自動車損害賠償責任保険料算定に関する請願  (斉藤滋与史君紹介)(第二一五九号)  自動車損害賠償責任保険に関する請願(秋田大  助君紹介)(第二一六〇号)  自動車損害賠償責任保険料算定方法改定等に  関する請願中尾栄一紹介)(第二一六一号) 同月二十九日  中小業者に対する政府金融機関融資拡大に関  する請願米原昶紹介)(第二四七六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣  提出第一〇号)      ————◇—————
  2. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 これより会議を開きます。  租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。広瀬秀吉君。
  3. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 今回、本委員会にかかっております租税特別措置法の一部を改正する法律案は、別に商工委員会にかかっております国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律案を受けたものであるわけでありますが、ここで私ども根本的な問題として、中小企業全体の問題として考えなければならない問題は、中小企業定義の問題です。今回の特別措置における認定中小法人、こういうものの前に、中小企業全般の問題として、中小企業基本法、あるいは中小企業近代化促進法とかいろいろあります、そういうところの定義と、税制上の定義といいますか、明確に定義を下しておるわけではないけれども取り扱い上そういう定義を前提にしたような措置税制上では行なわれている。そういう面で中小企業概念というものが二つあるというような状況に今日置かれておるわけです。それは、税制上では中小企業という場合に一億円以下ということでとらえておる、そしてそういう形で措置をしておる面があるわけなんです。あるというよりも、むしろそれがたてまえのように税制上はなっている。しかし、基本法なり近代化促進法なり、その他今回の臨時措置法におきましても、基本法を受けた体制になっている。もう中小企業基本法ができてから大体八年経過をした今日、日本の経済もきわめて高度成長をいたしておりまして、明治百年、百年かかって築き上げた経済規模、こういうようなものに、わずか五、六年でもう一つの同じくらいの規模がつけ加わるというような激動の時代を迎えているわけでありますが、そういうことを踏まえまして、中小企業概念というものをどういうところに押えていくかということが一番施策の整合性というか、そういうものにかなう道であるか、こういう点で若干の疑問なしとしないわけであります。そういう立場においてこの中小企業概念定義というものを、ごく荒らっぽい議論をすれば一億円以下なら一億円以下と、こういうようにしてもいいのではないか。これは製造工業などの面、あるいはサービス業の面、その他の面という実態的な状況というものはありまするけれども基本概念においてはそろそろそういうようなことで概念の統一というものをやっていいのではないか、こういうように思うのでありますが、その点について中小企業庁として、また通産省としてどういうようにお考えになっておられるのか、この点をまずお聞きいたしたい。
  4. 進淳

    ○進政府委員 まさに御質問の御趣旨のとおりでございまして、中小企業基本法が制定されましてから八年になっておりますので、その間に経済規模も拡大しておりますし、物価も上がっております。資本金も増大してまいっております。そういうことから中小企業範囲を拡大すべし、定義を拡大すべしという声が各方面から出てまいりました。確かに御指摘のように、特に資本金につきましては、当時の五千万円をいま単純に引き直しますと、三百人に対応しますのはほぼ一億円になっておりますが、これ以外にも商業につきましてもいろいろ問題がございます。実は、私どもはこの問題を前向きに考えるべきであるということで、先般、十二日でございますが、中小企業基本法に基づきます中小企業政策審議会というのがございます。この審議会中小企業のそういう基本法定義改定を含めまして、全般的な問題につきましていかにあるべきかということを御検討願うようにお願いをいたしまして、十二日に第一回の会合が開かれたわけでございます。ただ、当初私ども定義改正主眼を置いておったわけでありますが、その後このようなドルショックの問題でございますとか、いろいろ問題が起こっておりますので、中小企業政策全般についてもこの際御検討願いたいということで進めたいと思っております。
  5. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 これは大蔵省でも通産省でもいいのですが、資本金一億円超の法人数、それから以下の法人数、これを一番新しい統計でお知らせ願いたい。
  6. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ちょっと数字が古いのですが、昭和四十四年度の数字でございますが、欠損法人を除きまして、現に収益をあげている法人がその時点で五十八万九千ございます。そのうちで一億円をこえますものが四千法人、一億円以下の法人が五十八万五千法人という数字になっております。
  7. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 今回のこの臨時措置法に基づいて、税制措置すべき点は二つあるわけですが、四十六年あるいは四十七年、この間において生じたいわゆる純損失欠損金の繰り戻し、既納税還付という問題、さらに転廃業を余儀なくされた法人の、いわゆる俗なことばで加速償却を許す、こういう二つの内容になっておるわけでありますが、この取り扱いにおいて、いわゆる認定中小企業範囲は、いまの定義との関連においてどういうようになっておりますか。
  8. 進淳

    ○進政府委員 中小企業範囲につきましては、私どもではまず業種を選定いたしまして、業種といたしましては、輸出比率がおおむね二〇%以上の業種に属する企業であること、それからさらに二〇%以上でございませんでも、市町村単位にとりたいと思っておりますが、産地で二〇%以上の輸出比率を有します業種に属する中小企業あるいはその業種に属しなくても個別で二〇%以上輸出しております中小企業、それらの中小企業対象に取り上げまして、それらのうちで第二の基準といたしまして、輸出減でございますとかいろいろな理由で将来五%以上減産するであろう、あるいは出荷が減るであろうというような見込みのある企業というようなものを対象として取り上げたいと思っております。具体的には所在地の知事に認定の手続をお願い申し上げたいと存じておる次第でございます。
  9. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大蔵省、いまの二つ措置が今度行なわれるわけです。これはいずれも臨時措置法に基づく定義ではなくて、税制でございますから、一億円以下の法人ならば全部入る、資本金一億円以下のものは両方とも適用される、こういうようになるわけですね。
  10. 高木文雄

    高木(文)政府委員 法律に規定してございますように、国際経済上の調整措置に関するいわゆる臨時措置法の四条に規定する認定中小企業法人のほか、資本金一億円以下のもので認定中小法人に準ずるものとして政令で定めるものということになっておりますから、いま通産省からお答え申し上げましたように、輸出比率等を勘案いたしまして、関係主務大臣のほうできめられます基準に従って定められるところに従ってどのような企業が該当するかということは政令で定めることになっております。
  11. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 わかりました。  そこでちょっとお伺いしたいことは、端的に言ってしまえばドルショックということで今年の決算に、今年の八月、九月あるいは十月、これから先決算期がたくさん来るわけですが、そういう場合に純損失が見られた、いわゆる国際経済上の調整措置によってそういう新しい純損失企業の経理の中に出てくる、こういうことになった場合に、前一年だけがいままでは税の還付を行なうことができるということになっておったわけですが、今度はそれを過去三年にさかのぼらせて適用範囲を拡大していこう、こういうことであります。そこでこれは四十三年からということに具体的にはなりますが、四十三、四十四、四十五、決算年度がそういうことになる。たとえば認定中小法人の中で、四十三年においては五十万なら五十万の決算黒字が出たわけですが、さらに四十四年も五十万だ、四十五年度においても五十万、かりにそういうように過去三年に五十万ずつ黒字が出ておったという場合に、今度新しく百万円欠損が生じた、そういう場合には具体的にどのような税の還付が行なわれるのか。これはいわゆる軽減税率を適用される、二八%の税率を適用される法人、こういうように想定をして、どれだけそういう場合に税の還付が行なわれるのか、具体的に御説明をいただきたいと思う。
  12. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ただいまの事例について申しますと、四十三、四十四、四十五の各年分にかりに所得が同じであったといたしましても、税率等がいまのお話のように法人の場合にも軽減税率関係で若干の違いがあるということになりますので、どの年に納めたどの部分所得についてから繰り戻すかということによって、企業にとって有利、不利が出ます。  そこで今回の場合には、その最も有利なものを企業が選べるように、極端な場合には三つの年分の最も有利な、つまり上積み部分といいますか、税率の高い部分を戻してもらいたいということであれば、その部分を選べるようにということになっておるわけでございます。二年分から引いていただいてもよろしいし、三年分からといわれれば分けて引いていただいてもよろしいし、そこは税率に若干差がありますから、その選択は企業のほうでできるようになっております。
  13. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 私が伺っておるのは、いま具体的に数字をあげて、過去三年間の課税所得をあげたわけです。そういう場合に、ことし百万円欠損金が出たんだ、純損失が出たんだ、こういう場合に、それじゃ具体的に幾らその企業に対して税の還付が行なわれるのかということを、具体的な数字でひとつ示してくれ、こういうことなんです。
  14. 高木文雄

    高木(文)政府委員 配当軽課との関係がありますから多少あれでございますが、普通の中小法人に対する二八%の税率であるというふうに考えますと、四十六年に百万円の欠損が出たということで、四十四年の五十万と四十五年の五十万とから繰り戻すということになれば、その百万円に対応する税額二八%、つまり二十八万円が還付になるということでございます。
  15. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いまおっしゃったとおりだと思うのですが、百万円欠損が出たとして二十八万円が還付される。これはないよりはいいにきまっているわけで、その面では優遇ということになるわけだけれども、このことによって、ドルショックによって非常に経営が苦しくなり、大きな欠損を生むような会社に対してどれだけのメリットがあるだろうかということについては、必ずしも十分とはいえないけれども、まあまあそれはそれなりに理解できる線であるということなんですが、過去三年間とんとんだった、あるいはむしろ欠損会社であったというようなものに対しては、この措置というものは少なくとも税制の面では全く無力である、こういうことになるわけですね。そういうようなものこそがほんとうは一番つらい立場に立つといいますか、苦しい立場に立つわけなんですが、そういうものに対する措置というのは一体どういうように通産省としてお考えになっておられるのか、この点が非常に、一方においてはたまたま黒字が出ておったためにそれだけの還付を受られる、片方はとんとんで苦しい経営をしてきたというために何にもそういう税制上のメリットが受けられない、こういう不公平といいますか、そういうものを何らかの形で補うようなことは考えられないのかどうか、具体的にどういうようにその面を政策的にカバーするおつもりなのか、いままでやってきた措置があればこの際お示しいただきたい。
  16. 進淳

    ○進政府委員 今回お願いいたしました中小企業に対する臨時措置法でございますが、御指摘のように、いわゆるドルショックによります緊急措置でございまして、この税制もその一つでございますけれども中心となりますのはあくまでそういう急激な影響を受けます、特に輸出関連中小企業に対しまして当面の滞貨減産あるいは受注減等に対します特別の金融措置を講ずる、あるいは為替の安定化措置を講ずることによりまして当面の混乱を防止いたしたいということが主眼点でございまして、したがいまして緊急の臨時措置ということでお願いいたしておるわけでございます。  金融措置につきましては、すでに、法律上の措置を必要といたしませんので、特別措置実施いたしておりまして、年末措置とあわせまして特に金融上からの倒産ということは起こらないように配慮をしておるつもりでございます。
  17. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 金融措置の中身でありますが、金融をきめこまかくつけていくということでいろいろ措置が行なわれたことは私どもも承知をしておるわけでありますが、こういう金融措置もなかなか現実の問題としては過去に赤字決算であったというような会社などがこのドルショックにあってもういよいよ決定的になろうかというようなところに、おそらく金融機関融資を、このようないろいろの代理貸し範囲を拡大するとかあるいはワク全体も広げるとかあるいは保証協会の問題あるいは信用保険の問題などいろいろ措置はされておりますが、一つ一つの具体的な金融折衝の面でそういうような場合には何らの金融上の措置すら受けられない、こういうことにやはりなるだろうと思うのですね。そういう点について特別に、過去赤字決算であったような会社でもこういうショックを受けているというような場合には、いままでの金融常識といいますかそういうものを越えてやるんだというところまで御指導をなされておるんですか。そうでなければ、いままで黒字の出ておった、健全な経営をいままではやっておったというようなところにだけはその救済の手は金融面からもいくだろうけれども、そうでないいま申し上げたような場合には、金融措置滞貨なり減産なりというようなものに対してもやってやるんだといっても、現実にはその機能が動かない、働かない、こういうことにやはりなるじゃないんでしょうか。その辺どうお考えになって特別な措置をとられたのかどうか、この点……。
  18. 進淳

    ○進政府委員 御指摘のとおりでございまして、金融にも限界があろうかと思います。思いますが、私どもといたしましては、御指摘のように、今回の特に信用保険引き受けワクを倍にするということによりまして、零細いわゆる無担保、無保証の限度が八十万円になっておりますが、これを百六十万まで上積みいたしますが、これによりまして特に零細企業については無担保、無保証保険を活用していただきたい。そのために各現地に中小企業の三機関あるいは県等を含めました一つ相談のための協議会を設けるように指示いたしております。これは商工会議所商工会等指導員がおられますので、そういう指導員ができるだけ綿密な指導をいたしましてその相談所にはかりまして、できるだけ金融のぎりぎりのところまではめんどうを見ようということにいたしております。その辺が現在の緊急措置としての限界といえば限界になろうかと思います。
  19. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 まあそういうことだろうと思うのですが、商工会議所等指導員等に対しても指導をされて、実績のあがる、効果のあがるような措置をやっておられるということに対しては、これはきめこまかい配慮として評価するにやぶさかではないわけでありますが、やはり今度の措置全体を通じてそういう非常に限界のある問題だ、こういうように考えるわけであります。  そこで、例年いまごろになりますと、いつもこの委員会でも年末金融というものを一体どういうように考えておられるのかということを中心議論をし、いわゆる年末の金融の繁忙の時期、こういうものに対する、特に中小企業が年末を乗り切れぬというようなことのないように金融面でのしかるべき措置を要求し、またそのつど対年末対策という面での金融というものをやってきたわけなんですが、今回はいわゆるこの国際経済上の調整措置、いわゆるドルショックに伴う措置としては比較的早い時期から私どもこの委員会で、今度の問題はたいへんな事態であるという立場において、常にいままでの金融措置というようなものは後手後手に回っておった、だからこの問題についてはむしろ先手先手金融面でいくように、特に金融緩和の時期だといわれながら、中小零細企業等には非常にきびしい金融情勢もあるのだから、そのことをしっかり踏まえて先手先手をとるような金融措置をやれということも、八月の末あるいは九月段階において、九月の初旬ころの当委員会においても要請をいたし、まあその面では比較的よくいっていると思うのですが、もうこの時期になりますと、必ずしも状況の好転はそれだけ早目に手を打ってもなかなか右から左にぱっと効果のわかるようなそういうものにはなってない気がするわけであります。そうして年末を迎える、こういう状況でありますから、この年末対策、特に中小企業に対する金融措置としてどういうものを大蔵省要請をされておったか、この点についてまずお答えをいただきたい。
  20. 進淳

    ○進政府委員 年末対策でございますが、御指摘のように、毎年年末に越年資金等に対します金融措置をいたしております。本年は十一月十六日付ですでに実施いたしておりまして、いわゆる中小機関に対しまして総額で融資規模千八百八十億円、財政投融資で九百九十億円という措置をすでに決定し、実施いたしております。その以前にドルショック対策といたしまして千五百億円いたしておりますので、これもいわば年末が一番のねらいでございますが、それとあわせまして千八百八十億追加いたしまして、御指摘のように民間の中小企業向け金融も相当にゆるんでまいっておりますので、全体の規模といたしましては私はほぼこれで十分ではなかろうかと存じております。
  21. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 比較的早目に年末対策も手を打っておられる、こういうことでありますから、その点はけっこうだと思います。  そこで、これは大臣が来てからにしたほうがいいかと思いますが、一体中小企業庁は、国際経済上の調整措置ドルショック問題で、今日特に産地産業地場産業、こういうようなところで、この法案対象となっている、おそらく認定中小企業とされるようなところに非常にその不況しわ寄せというものが強く出ておるわけなんですが、その中で、これらの救済措置にもかかわらず倒産せざるを得ない、あるいは転廃業をせざるを得ない、こういうようなものはどのくらい出てくるだろうか、こういうような点について見通しを持っておられると思いますが、どのようにその点お考えなんでしょうか。
  22. 進淳

    ○進政府委員 実は倒産状況は毎月最も関心を持って見てまいっておりますが、現在のところでは、幸いにして対前年を下回っております。しかし、いま十二月から来年にかけましてどういうふうになりますのか、その点、私ども一番気にいたしております。しかし、業種別にどのようになるか、どの程度経営が成り立たなくなるのか、個別にまだそこまで数字的に全部詰めておりませんので、はっきりここで具体的にどの程度というのはちょっと申し上げかねるのでございますが、それを原局とも相談をいたしまして、今後やはり倒産発生状況が一番大きな問題であろうかと思います。で、御指摘のように、業種によりましては今後業種転換と申しますか、転廃業、特に転業を余儀なくされるものが出てこようかと思います。これにつきましては、今回の臨時措置法にも、転業対策といたしまして、転業に対する低利資金の供給であるとか税制措置を講じてはおりますけれども、私どもといたしましては、できますならば、現在業種別にいろいろな構造改善計画を進めているのがございます。これらにつきましても、問題業種につきましては再検討していきたいと思っております。これらは今後の問題として私ども進めてまいりたいと思っております。
  23. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 私の質問は大体以上で終わります。  いずれにいたしましても、このドルショックに伴う不況段階を迎えて、そのしわ寄せ中小企業にやはり一番強く、しかも産地産業、たとえば代表的にいわれる燕のいわゆる洋食器産業地帯であるとか、こういうようなところなどは集中的な打撃を受けるわけでありますから、これについての対策に万全を期して、きめのこまかい配慮というものを一そう強化していただいて、次々に倒産をし、その中から新しい失業者がどんどん出てくるというようなことのないように、そしてまた、どうしてもどうにもならないというような場合におきましても、そういう人たちに対する救済措置、また特にやめていかざるを得ない従業員立場というようなものに対する万全の対策というものを、やはりそういうところまでしっかり対策を樹立して対処していただくように要望をいたしまして、私の質問を終わります。
  24. 齋藤邦吉

  25. 津川武一

    津川委員 提案されている法案で、国際経済上の調整措置実施に伴い事業活動に支障を生じている輸出関連中小企業者に対し、その経営の安定を図るため、純損失または欠損金の繰り戻しによる還付特例を設けるとともに、その事業転換を円滑にするため施設の償却特例を認めようとしておること、これ自身は私たちもよろしいかと思うんです。しかし、よく考えてみると、この中にはかなり片手落ちのものがある、かなり矛盾もありますので、その点を中心にして若干質問をしてみたいと思うんです。  私たちも調べたし、たとえば皆さんの側でこういうふうな「調査月報」としての国民金融公庫調査部の調査などあわせて考えてみますと、今度のいわゆるドルショックで輸出が減るなどして非常に経営に支障を来たしてくるのは、むしろ、いま広瀬委員が話したように、鉄製の洋食器をつくっておる燕などという地方型の地場産業がかなり影響を受けると、こういうふうに皆さんの調査もそう言っているし、私たちもそう思っているのです。そこで、この地方型地場産業一つの代表例である新潟の燕の金属製洋食器を少し問題にしてみたいと思うんです。  人口四万二千人の中に製造事業所二千九百九十、従業員が一万八千六百二十九のうち、この輸出にたよっておる洋食器の事業所が千八百二十五、従業員の数にして九千四百八十人という圧倒的な製造業でその地域をささえておる。そしてまた、これらのうち燕が出しておる洋食器は、国内の洋食器の中で九五%も占めておる。燕の中で八〇%が輸出。その輸出のうちで対米輸出が五〇%、こうなっておりますし、生産額においても二百五十一億二千万何がし、こういうふうなことで、非帯に大きな期待を持たれている事業なんですが、ニクソン声明以来、輸出量と輸出金額でどのくらい減っておりましょうか。
  26. 進淳

    ○進政府委員 雑貨一課長が参っておりますので、繊維雑貨局のほうから御説明さしていただきたいと思います。
  27. 和田裕

    ○和田説明員 ニクソン・ショック以来、輸出の実施状況につきましては、変動相場制移行の問題もございまして、例年に比べまして約八〇%強程度に落ちているというふうに承知しております。ただ、具体的な輸出の統計につきましては、ドルショックが八月十五日以来でございまして、まだ最近の統計の上でははっきりとした減少というのは出ておらないという状況でございます。
  28. 津川武一

    津川委員 いま説明があったように、二〇%減っている。われわれが燕市について直接数えてみますと、輸出量では二〇%減、価額では三〇%までいっているんじゃないか、こういうふうな実態なんでございます。  ところで、この燕の洋食器産業は、大正の前半から地元の資本家、地元の経営者、銀行などあらゆる人たちの努力で育成された地場産業であり、生活の根拠となっておるんであって、これを守ることに、私たち、国の大事な役割りがあると思うんです。  そこで元請と下請の関係でございます。われわれ調べたところでは、日本洋食器工業組合加盟企業中、元請が五十社、下請が百五十社、こういう組合に入れない小さな中小零細企業が千六百社。そこで元請は下請に注文を減らしている、元請は下請の工賃を切り下げてきておる、こういう事実があるのですが、それはどのくらいになっておりましょうか。
  29. 進淳

    ○進政府委員 下請の、特に御指摘零細の、みがき屋でございますが、それに対する工賃の切り下げにつきましては、これは親企業によってまちまちでございますが、三%であるとか五%であるとか、一番多いところで一〇%というような例もあるようでございますが、全般的にどういうふうになっているかは承知いたしておりませんけれども、具体的にはそういう例があることを承っております。
  30. 津川武一

    津川委員 ドルショックで、輸出八〇%、しかも対米輸出が五〇%、ここにまとまった一つの日本の国民産業としてあるこの燕の洋食器産業が受けている影響、中小企業庁つかまえてないのですか。それをつかまえないでどう指導するのか。いまの話だと私とても納得できないのですが、燕から聞いていると、八月から一方的に、高いところでは一五%工賃の切り下げをしているのですよ。この点をもう一度、どの程度握っておるのか、これを握らないで中小企業対策は立たないと思うのですが、再答弁をお願いします。
  31. 進淳

    ○進政府委員 私は全体的にくまなく調べたわけではないのでございますが、具体的に特に問題のあったところには私のほうの下請課のほうから調査を実施いたしまして、現実の仕事は通産局がやっておりますけれども、東京通産局のほうを指導いたしまして調査はいたしております。その結果特に問題のあるようなところにつきましては部分的には調査いたしておりまして、ただいま申し上げましたように一〇%から三%くらいの工賃の値下げの実例があがっております。
  32. 津川武一

    津川委員 私は燕をなぜ問題にするかというと、日本の今度の影響を受ける一番典型なんです。これに対して具体的な実情を握っていなくて、具体的な指導方針なくして、二つのさっき話したようなことだけで、転換した者に対して事業転換計画期間中に償却を認めるなどということでは私はひどいと思うのですよ。  そこで重ねてもう一回聞きますが、下請業者に注文しておるものが減ってないか、単価を、工賃を下げてないか、これはわからないか。もう一つ、親元から下請代金の支払いがおくれておりませんか、この点はどうでございますか。
  33. 進淳

    ○進政府委員 代金の支払い条件のほうはあまり変わっていないようでございます。
  34. 津川武一

    津川委員 下請代金支払遅延等防止法という法律がありますね、これの適用を強く要求してきているのですが、この実態を覚えていますか。あなたはいま下請代金の支払いはおくれてないと言う。おくれてなかったらなぜ下請代金支払遅延等防止法の適用を皆さんが要求しているかということです。
  35. 進淳

    ○進政府委員 これは主として値引きの問題につきまして、まあ親企業もつらいと思いますけれども、できるだけしわ寄せをしないようにという意味でいろいろ話が参っております。私どもといたしましては、その辺につきましては現地でも親企業に対しても指導してまいっております。特に親企業の連合会に対して強く要請いたしまして、まあ全般が苦しいときでございますから、いろいろ問題がございましょうが、できるだけしわを寄せないように要請はいたしております。しかし、これは今後契約の問題がいろいろございますので、私どもとしては現実によく現地で相談をしてやってもらいたいということでございまして、全般的には通牒はドルショック以来十月二十七日に出しておりますけれども、具体的に燕のその問題につきましては特別にそういう指導をいたしております。
  36. 津川武一

    津川委員 実態を知って対策を立てることが必要で、もう一度実態に対してお伺いします。  下請企業では、行き詰まりがきて破産に追い込まれるような状態で従業員の賃下げをやっておる。従業員の首を切って整理をしておる。こういう事実は燕のほうでどのくらいつかんでおりますか。
  37. 進淳

    ○進政府委員 十月の下旬に二企業倒産いたしまして三十三名離職いたしております。そのほかに倒産によってどれだけ解雇されたかということはいまちょっとわかりかねますが、二企業倒産ということでございます。十一月上旬には現在のところ倒産はゼロということになっております。
  38. 津川武一

    津川委員 十一月十八日に諸要求貫徹全国中小企業者総決起大会を開いて中小企業庁長官に要望書を出しております。私もその控えをもらってあるのですが、この中で下請の制限、下請代金の払いのおくれること、下請工賃を下げないように、そして下請企業者の労働組合の、労働者の賃金を守るような要求が出されておりますが、長官これは御存じですか。見ておりますか。それに対してどんな返事をしてあげましたか。
  39. 進淳

    ○進政府委員 実は長官がその席でどういうふうに返事をしたか、私は出席しておりませんでしたので具体的に明確に承知いたしておりませんが、総決起大会でそういう要望があったことは承知いたしております。
  40. 津川武一

    津川委員 そこで、燕のことを存じているのかわかりませんけれども、私に対する答弁ではあまりよく調べてないようでございますので、この際ひとつ早急に燕の実態を、いままで話した親会社と下請会社関係、それは注文を減らしてないか、工賃を下げてないか、工賃の支払いを延期してないか、これが一つ。そのために地元の零細企業は行き詰まって労働者の賃金が切り下げられていないか、首切りが行なわれていないか。いま皆さんは破産した分だけ、解雇した分だけ言っておりますけれども、破産する前に賃下げをし首切りをしておる。この実態を知ることなしには対策は立たないと思う。これをぜひ、私も持っておりますけれども中小企業庁として早急に調べて意見を一致させて対策を進めていただきたいと思うのです。これはひとつ要求しておきたいと思うのです。  そこで、地元では五十社くらいある親会社の一部分ですが、燕の企業の三〇%ぐらいつぶれてくれると、課徴金と差損益を合わせてその額が二〇%までやってきても企業は守ってやっていける、竹やぶを大きくするためには竹の間引きが必要だ、力のないものはつぶれるのが当然だ、この際少しつぶしてみたらどうか、こういう声まで聞こえているんですが、この声を中小企業庁はよもや承認しまいが、こういうことに対する考え方、指導方針を聞かせていただきたい。
  41. 進淳

    ○進政府委員 そういうことはまともな声だとは私は思いませんけれども、しかし、いずれにいたしましても、燕の洋食器に限らず、今回の一連の国際経済情勢の急変と申しますかによりまして、今後の、特に雑貨産業の産業構造というものがかなり変わってくるであろうということは、想像がつくわけでございます。そういう事態に対処してどのような指導なりどのような対策をとるかというのが、今後の問題であることは御指摘のとおりでございます。したがいまして、燕につきましても、できますならば、私ども産地協議会のようなものをこしらえていただきまして、燕のいままでの技術を生かして、たとえばほかの機械関係の部品のみがきといいますか、いろいろな工程がございますから、現にそういうことを考え、あるいは実施している企業もあるように承っております。全般的に今後の、特に雑貨産業のあり方について検討をすべきだと存じております。
  42. 津川武一

    津川委員 それは先ほど広瀬委員に答弁しておるように、構造改善事業でやるというわけですか。
  43. 進淳

    ○進政府委員 基本的にはやはり構造改善事業中心にいたしまして、個別の企業指導をしていくということであろうかと思っております。
  44. 津川武一

    津川委員 そこで、これは国民金融公庫調査部の調査月報の十一月号ですが、実は調査部長と調査課長で座談会をやっているわけです。その中の六八ページにこう言っているのです。上から四行日あたりを読んでみます。「しかし問題は、ふるい落したものに対して、転換策とか、労働対策とかを用意せずに、あくまで産業政策としてカバーしようとする点にある。」いまここが解決されないために犠牲を大きくする。これは皆さんの仲間が言っておるんです。  もう一つ、同じページの「必要な地域開発の観点」、ここには「産地が深刻な状態になり、その地域全体としてどうにかしなければならないという事態になったときに、地域開発の観点で対策が発想されるでしょう。個々の地域の実状にあった開発政策をとらざるをえないと思います。」「画一的なものではなく地域に下したものでなければならない。産業関連よりは生活関連の社会資本を投資して、それと地場産業の需要と結びつけるような施策の可能性を考える必要がある。」この意味において地方財源の充実が必要になってきます、こう言っておる。  この間、十一月十八日に集まった中小企業人たちが皆さんに対して出した要望書の中で、こう言っておるのです。公共事業財政投融資事業を、地域住民の生活をよくするために、住宅、保育所、文化教育施設、文化教育備品などを、中小企業がやっていけるよう中小企業に振り向ける必要がある。これは皆さんが考えておるような構造改善事業ではなくして、この立場で問題を解決しなきゃならぬ、こう言っておるわけです。  さらにもう一つの問題は、官公庁の受注、これを地元の中小企業に優先的に振り向けていく施策を考えなければならぬ、こう言っておるわけなんですが、こういう立場で、産業ベースでなく、いま次長がはしなくも言った構造改善事業というふうな方向、これもあるところは必要であると思いますが、この立場が何よりもいま必要だといわれているのですが、こういう立場でやってみませんか。
  45. 進淳

    ○進政府委員 まさに御指摘のとおりでございまして、私が先ほども御答弁申し上げました産地協議会と申しますのは、構造改善事業もその一つでございまして、たとえば燕の洋食器産業としては今後いかにあるべきかということは構造改善事業として、やはり産業政策として、経済ベースに乗った独立し得る企業の育成という見地から施策を考えなければならないと思います。もちろんこれは自力だけではなくて、われわれも国、県一体となって協力し、応援するということも考えなければならないと思いますけれども、それとともに産地協議会、前に農林省でも農村工業化ということを主張し、いろいろ協議を進めておりますけれども、そういう意味で産地ぐるみで今後の生きる道を考えていただくということは確かに必要であると存じております。私どももこれにつきましてはできるだけ協力してまいりたいと思います。
  46. 津川武一

    津川委員 もう一つは、海のかなたのアメリカがいわば一方的にやったことを、向こうさまには何にも言わないで日本の企業だけに責任を押しつける態度、どうもこっちにばかりぶつかってくる、そこの点はどうなんです。アメリカ側に要求しているものがあるのですか。
  47. 進淳

    ○進政府委員 この点は中小企業庁としては直接折衝の窓口ではございませんので、通産省としては通商局がいろいろと話し合いをしておるわけでございます。私どもとしましては、今後の施策として、与えられた全体の中でどうするかということを考えておるわけでございます。いまの御説明につきましては十分な御答弁ができませんことを御了承願いたいと思います。
  48. 津川武一

    津川委員 私たち、何か民主的な、ある外国に一辺倒しない、そして農業と中小企業と大企業のつり合いのとれた発展性経済というのを考えているわけです。その立場からいくと、燕の場合もう一つ出てきたのは、ソ連などを中心とした社会主義国、これと渡り合いをつけて、いままでアメリカ一辺倒であったからこんな目にあった、ここで日本の産業構造を変えてみなければいけない、輸出するならそこらを要求したい、こういう考え方が燕の方たちから強く出ているのですが、この点はどうですか。
  49. 進淳

    ○進政府委員 御指摘のように、沿岸貿易と申しますか、ソ連貿易あるいは最近は特に対中国貿易につきまして非常に関心が高まっております。しかし現在のところ、御承知のようにソ連にしても中国にいたしましても、雑貨関係はいわば消費財関係が多うございますので、そういう点がはたしてどれだけ進むであろうかという懸念を持っておる向きもあるようでございます。いずれにいたしましても、今後の輸出先といたしまして関心は非常に持っております。
  50. 津川武一

    津川委員 日本の大資本が、アジアの反共諸国、これが主になっているのをやめて、沿岸貿易ということばの中にあらわれておる社会主義諸国を具体的に検討していただきたい。ソ連はかなりナイフ、フォークを使っているのです。人口からいってもアメリカより多い。ここのところをずばりともたもたしないで売ってみてくれないか、こういうのが具体的な地元の要求であるわけです。ひとつ検討してみていただきたいと思うのです。  時間を約束しましたのでなるべく詰めたいと思いますが、そこでもう一つは、今度は片手落ちの一つとして、大企業に対しては、九月二十一日の企業会計審議会の意見、十月二十一日の国税庁長官の通達で、差益は保留し、差損は少なくなるように手厚い処置を講じている。中小企業に対しては、いまの法案みたいに、不十分ではあるが何か手を打っておりますが、今度のショックで一番大きなショックを受けておるのは出かせぎ者なんです。弱電メーカーも首を切っている。繊維産業も主婦が入らなくなっちゃっている。そこで職場が減らされ、賃金が上がらないか切り下げられる。労働災害が多くなる。私も二、三日前に飯場に行って見てきたのですが、前の飯場に比べて待遇がひどくなってきた。こういう労働者がやはり一番困っているわけです。  そこで、先ほどのこの皆さんの月報に載っているところもこう書いてあるのですよ。以前は不況になると農業に帰ればいいということがありましたが、今度の場合はそれはどうなるでしょうか。農業に帰る可能性は原則的にないと思います。土地の一部を売った金で零細企業を起こし、家族一緒に暮らせる、家族一緒に働けるというメリットから企業を維持してきた。ですから、もはや農業に帰れない。かといって、大都市に行って労働者になっても平均的な賃金が得られない、そういう年齢に達している。底辺部分の労働問題が解決しなければならない。ここのところに問題があるわけであります。この点、今度のドルショックによる出かせぎ者に対する影響を労働省はどのくらいつかんでおりますか。
  51. 岩田照良

    ○岩田説明員 お答えいたします。  ドルショックの影響を受けまして、出かせぎの関係数字にも若干の変化があることはいなめないと思います。ことしの八、九月におきます冬向けの出かせぎの状況でございますが、これは大体前年同期に比べまして約二割の減少を示しております。
  52. 津川武一

    津川委員 時間もないので、出かせぎ者の労働対策については別な機会にお伺いするとして、きょうは大蔵省に……。  そこで、出かせぎ者に対する減税措置がないから、私は、この法案はいいところもあるけれども、大企業にはほんとうに有利にして、中小企業に対しては不十分ながら手落ちがあってもやる。出かせぎ者のこういうドルショックによる、農業外収入に対する税について何らかの考え方があるのでございましょうか、大蔵省ひとつ……。
  53. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ただいま御審議願っておりますのは、いわゆるドルショックによります中小企業対策としてお願いをしておるわけでございまして、御指摘の点につきましては、つい先般当委員会に御審議願いました所得税の減税が、やはり一つには最近におきますところのもろもろの事情の変化ということを考慮に置いて、あの御審議の際に御答弁申し上げましたように、一面においては景気浮揚ということではございますけれども、一面においてはやはり負担の公平をはかるという趣旨でございまして、出かせぎの方々がはたしてどの程度所得税の納税者として該当しておられるかどうかということは一つの問題ではございますけれども、従来の税制上の所得税の納税者である方につきましては、先般の所得税の減税、それから先ほど来申しましたように、この春の減税ということでわずかながらそれぞれ減税分が及ぶものと考えております。
  54. 津川武一

    津川委員 大蔵省では出かせぎ収入を農業外収入と考えているのか勤労所得考えているのか、これはどうです。私は当然勤労所得考えるべきだと思うのです。いままで地方自治体においては勤労所得考えておるところもあるし農業外所得考えておるところもあるわけでありますが、勤労所得考えるのが当然だと思うのです。農業外所得考えるから問題がややこしくなる。この点はどうでございますか。
  55. 江口健司

    ○江口説明員 実体関係でございますので国税庁から御説明申し上げたいと思います。  従来も御指摘のような問題があったわけでございますが、農外所得といいましても、大部分は日雇いその他いわゆる給与所得と同等のものの方たちが大部分でございますが、一部例外として——最近では例外という言い方が正しいかと思いますが、いわば受託耕作をしておるといったようなものがございますが、この場合には事業所得に当たるということでございます。
  56. 津川武一

    津川委員 東北や北海道から東京や愛知、大阪、あちらに出かせぎに行く所得は間違いなく勤労所得ですね。そう考えていい一わけですか。
  57. 江口健司

    ○江口説明員 御指摘のとおり、大部分は給与所得になると思います。
  58. 津川武一

    津川委員 ところが地方自治体では、これは農業外所得と見たり給与所得と見たりして課税がちゃらんぽらんです。そこで大蔵省は何か通達を出してこれを指導しますか。
  59. 江口健司

    ○江口説明員 地方税の関係はちょっと私、承知しておりませんが、国税の場合は所得の区分がはっきりしておりますので、そういう間違いは万々ないだろうと私たちは思っておりますが、特に新たに通達をする必要性はないものと判断しております。
  60. 津川武一

    津川委員 地方税にそういう解釈の違いが出ている。これは大蔵省指導してあげなければならないのではないですか。ほったらかしておいていいのですか。
  61. 江口健司

    ○江口説明員 ただいまの点は地方自治法の関係でございますので、自治省の税務局のほうからそういう指導をされる筋合いになろうかと思います。
  62. 津川武一

    津川委員 そこで大蔵省は、出かせぎ者を給与所得と見た場合に、この基礎控除の中に出かせぎのための経費を加えますか。それが当然だと思うのですが、どうです。
  63. 高木文雄

    高木(文)政府委員 給与所得につきましては、御存じのとおり、個別に必要経費を算定するという方式をとっておらないわけでございます。事業所得につきましては個別に必要経費を算定する。そのかわり概算控除方式である給与所得控除のような形式はとらない、こういう二つの区別になっておるわけであります。  そこで、給与所得であるという考え方をとりました場合には、個別に出かせぎのためのもろもろの経費を算定をして個別に引くということはしないで、いわゆる概算控除ということで給与所得控除制度で概算的に算定するという方式でございます。出かせぎに限りませず、いろいろの給与所得について場合によって何らかの経費を引くべきではないかという御要望がいろいろあることは承知をいたしておりますが、ただいまのところ、給与所得につきましては給与所得控除制度一本でいくほうがいろいろの面でよろしいのではないかと考えておりますので、ただいま御質問の点につきましても、残念ながら、いま出かせぎの経費を個別に引くということは考えておらないわけでございます。
  64. 津川武一

    津川委員 そうすると、大蔵省では、たとえば大蔵省の本省につとめておるサラリーマンの場合と、出かせぎに出てくるために地下たびを買って、ものを支度して、汽車で往復して、生計を二つに分けて不自由な生活をしておるこの人たちと同じような控除を引く、こういう考え方でございますか。
  65. 高木文雄

    高木(文)政府委員 給与所得者には実にいろいろな形式、雇用形態、また給与の形態、いろいろなものがございます。それを、何ぶん非常に大ぜいな納税者のことでございますから、どういうふうにしてその経費を引いたらよろしいかということは、いろいろ御議論のあるところでございます。現在までのところでは、個別に、個別事情に即応して経費を引くという形式でなしに、所得の金額に応じて一定額もしくは一定率で引くという給与所得控除制度のほうがうまくいくであろうという考え方をとっているわけでございまして、ただいま御指摘の出かせぎの方の場合に限らず、業種、業態、また所得の高に応じていろいろ問題があることはよく承知をいたしておりますが、現在のところは、現在のような一定基準による一本の方式がよろしいのではないかと考えております。
  66. 津川武一

    津川委員 農林関係のいろいろな団体の方が、農林省が、この点大蔵省相談なさっているはずですが、たとえばこういう資料も出ていると思うのです。一例を申し上げますと、一日千六百円で百五十日間かせいだ出かせぎ労働者は、二十四万円。これを農業外収入と見ると、十六万八千円の課税額。給与所得にすると十一万二千円。出かせぎ者のための経費を二割と見ると、八万九千円になるのだ。ここらあたりの検討詰めていませんか。これは農林関係者も、農林省も、大蔵省と詰めたとも言っているし、詰めるとも言っている。どうでございます。
  67. 高木文雄

    高木(文)政府委員 来年度の税制改正の問題は、現在各省からいろいろと御要求をいただいております。そこで、ただいま御指摘の点につきましても、農林省から、こまかい資料を添えて、何か考えて見てほしいという話は承っております。しかし、またそのほかにも給与所得控除制度についてはいろいろ話を承っておりますけれども、実は私どもは、お話を承りますれば承りますほど、給与所得者についてはいろいろ、個別に経費の事情が複雑であるということをますます痛感する次第でございまして、実は、内々は農林省の御要求もわからぬではないが、私ども考え方からするならば、そういう給与所得控除制度を分解をするということにつながるような個別の経費控除はなかなかむずかしいのではないかというようなことで、実は来年度の税制改正に関するいろいろ判断をいたします時期も迫っておりますので、農林省との間では、農林省は積極的、大蔵省は消極的ということで議論中でございます。
  68. 津川武一

    津川委員 これで終りますが、中小企業者に対しては、貿易の関係で二〇%影響があれば、こういう税制をやっているのですよ。いま労働省から聞けば、ちょうど二割、こういう犠牲を払っているのですね。こういう方に対して税制上で報いてあげるということについては、ちっとも考えていない、大蔵省はにべもない返事だ、こう解釈してよろしいですか。
  69. 高木文雄

    高木(文)政府委員 一般的に、ショックがあるというときにいろいろ税制上の措置をとるということについては、私どももできる限りのことはしなければならぬ。別に企業だからどうだ、個人所得だからどうだということではないわけでございます。ただ、いま御指摘のような、税制についてはいろいろ、御存じのように、ある措置をとれば、また次に波及する、また次に波及する、そしてそれがはたして公平が保てるかどうかという問題もございますものですから、給与所得者についての個別経費の控除ということについては、実は私どもとしてはにわかには賛成いたしかねるということでございまして、そのことと、一般的に、現在の非常にやっかいな事態になっておる、また非常に大ぜいの方が困っておられるときについての対策は全然とらないのかということと直接結びつけられますと、多少私どもとしては、必ずしもそういうわけではないのでありまして、必要経費についてはなかなかむずかしい問題があるということだけはぜひ御理解を賜わりたいと思います。
  70. 津川武一

    津川委員 出かせぎ者の課税のことはこれで終りますが、今度の措置法の改正案で恩典を与えるのを青色申告だけに限ったという、これは公明党の貝沼委員からも質問されたんですが、これはほんとうの理由は何でございますか。白色こそ苦しんだから、私は、やらなければならぬと思うのですが。
  71. 高木文雄

    高木(文)政府委員 御存じのように青色申告者は帳簿を持っておられて、その帳簿に基づいて計算をされ、そして申告をしておられるわけでありまして、過去においてその計算に基づいてこれだけ申告しまして、今度はこれだけ赤が出ました、したがって、前に納めてあるものですからそれは戻してください、というのが繰り戻しの制度でございます。したがって、今回に限りませず、繰り戻しの制度というのは、およそ青色のように帳簿が完全にそろっておるということが前提として考えられる制度でございますので、帳簿がないということを前提にして繰り戻しということは、本来制度としてむずかしいのではないかと思います。
  72. 津川武一

    津川委員 青色申告できない人たちの理由、根拠。帳簿がないからこれはいけない。あったほうがよろしい。私もそう思う。それを備えることのできないような状態は何であるか、この点ひとつ説明願いたいと同時に、農民が青色申告やっているかどうか。ほとんど全部は白色じゃないかと思う。この点を明らかにしていただきたい。白と青では、大企業中小企業、特に零細企業ではどちらがどんなふうになっているか、ひとつ説明していただきたい。
  73. 高木文雄

    高木(文)政府委員 白色申告者の中で、なかなか企業の性格上青色になりにくいという方がたくさんおられることは私どももよく承知はいたしております。そこで従来からいろいろ青色の前提となる帳簿制度の簡素化をはかったりいろいろしてまいりました。しかし、なかなかうまくいかないというのも事実でございます。また、ごく一部の方ではございますが、農業所得者の中でも青色申告制度をとっておられる方もあるわけでございますが、そこでこの辺を、青色申告制度もかなりもう、二十何年過ぎてまいりましたのでかなり定着をしてまいったことでございますから、今後これをどういうふうに考えたらいいのか、まさに津川委員のおっしゃいますように、今後の問題としては十分考えなければならない点であろうかと私自身も思っておりますが、おっしゃるように、かなり経営として、あるいはその他の面から見て力が十分ではないという方が白に残っていることは事実でございますから、したがって、それをどう考えたらいいのか。しかしながらまた、あくまで青という制度は、あってこそいろいろな税法上の諸制度が成り立ち得ることもまた事実でございます。このギャップをどういうふうに埋めていったらいいのか、これはかなり現在の税法の仕組みとの関係、ものの考え方との関係基本的な問題であろうかと思います。私どもも、実は絶えず何かいい方法はないかと思いながら解決がつかないまま今日まで来ているわけでございまして、これからも努力してまいりたいと考えます。
  74. 津川武一

    津川委員 まさに答えてくれたとおりの状態なんですね。私たちもそう思いますよ。青色申告したくにも人手が足りない、労働時間が長い、やろうと思っても疲れてしまう。企業の性格からいって弱いものだからやれないものがたくさんある。そこで、青色申告者に対して一つの税の措置をしたことは私ども反対じゃないのです。ところが一番苦しい白色の人に何にもしないから、この法案に対する態度を考えちゃうのです。そこで、いま非常に苦しい口調で話してくれましたが、何か今度のドルショックで一番大きな影響を受けるこの青色申告できない人たちに対する税制上の恩典は考えられなかったのですか。何かありませんか。
  75. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ただいまのところ、ドルショックの場合に限りませず、農業につきましては豊作、不作というようなことで、毎年農業経営者の責任に帰すべからざる事由によって所得に変動があるわけでございますから、本来ならば年度を通じて、赤、黒を通算できる青の制度は、農業のような変動の多い場合には望ましいはずなのでございまして、にもかかわらず農業にまだ青がなかなか普及していかないというところに、何か両方からさらに研究し合わなければならぬ問題が残っておると思っております。これはもう従来からの長い長い、何も今回のショックということに限りませず、農業災害のような場合にいつも起こる問題でございまして、私どももこれまでもいろいろ考えてきたのでございますが、どうも名案がないまま今日に至っております。その辺を、私どもも努力をいたしますが、私どもの努力もおくみ取り願いたいと思う次第でございます。
  76. 津川武一

    津川委員 そこで、この際であるから白色申告者の課税最低限度を引き上げてみませんか。そうすると恩恵がいくわけです。あなたはないと言っているけれども、あると思うのですが、どうです。
  77. 高木文雄

    高木(文)政府委員 御指摘のように、課税最低限を一般的に引き上げれば青、白を問わず効果が及ぶことはもちろんでございます。ただその趣旨で、実は通常でございますと毎年春の国会で御審議願いまして、基礎控除あるいは配偶者控除あるいは扶養控除の引き上げということについて、課税最低限の引き上げが行なわれるわけでございますが、今回は、来年度四十七年度の税制改正を頭に置きながら、これを年内に繰り上げて実施する。基礎控除、配偶者控除、扶養控除、それぞれ一万円の引き上げを行なわれましたのもその意味も含めてのことでございます。それでは不十分だとおっしゃるかもしれませんが、先般のいわゆる年内減税の際の基礎控除の引き上げには、その意味も含まれておるということは言えるのではないかと思うのでございます。
  78. 津川武一

    津川委員 そこで、課税最低限をきめるときの一つの基礎になっております仮定生計費、あの中で仮定生計費の計算のしかたが成年男子の必要栄養量をとることができる質素な食糧による献立とあるのですよ。いま日本人が何といったってたん白質をとるのがまだ二百万トンも足りない。この表現を、これを実質にかえると、いまのままでも課税最低限はもっといくと思うのですが、これをひとつ改めてみませんか。
  79. 高木文雄

    高木(文)政府委員 ただいま御指摘がありましたような考え方をとっていわゆるマーケットバスケット方式によって算定しました生計費をにらみながら、課税最低限をきめてきておったわけでございますが、昭和三十九年をもってその考え方はやめまして、それ以来必ずしもこのような考え方をとってない。言いかえますると、四十年以降は課税最低限がかなり大幅に引き上がってきたわけでございます。大体、いま手元からすぐ数字が出ませんけれども、その当時まで考えておりました仮定生計費、かりに計算しました仮定生計費をベースにしました引き上げ幅、年々の引き上げ率に比べますと、四十年以降の課税最低限の引き上げ幅はたいへん大きくなっているのは、そのためでございます。まあ考えようでございますが、まだまだ不十分だというお考えはしばしば当委員会でも御指摘を受けておりますが、ただいまお話ありました最低生活維持という思想からは現在は離れているということはいえるのでございます。
  80. 津川武一

    津川委員 昭和四十年の仮定生計費に対前年の物価上昇率を乗じて算定しておる、こういう仮定生計費というものを大蔵省はまだ持っていませんか。全然税制上から廃棄してしまったのですか。そうでなければ、なぜ、昭和四十年の仮定生計費に対前年の物価上昇率を乗じたものを仮定生計費とするという考え方を大蔵省が持っておるのですか。これは全然捨ててしまったのか。
  81. 高木文雄

    高木(文)政府委員 私どもが各控除をどのくらいにすべきかということを考えるときには、全く考えておりません。ただ従来から、あるいは予算委員会におきましてあるいは当委員会におきまして、いつも、昔考えておった仮定生計費の計算で、物価指数で延ばしたらどういう数字になるかということで資料を出せという御要求がございますから、その御要求に応じて資料を出しております。しかし、資料は出しておりますが、それは毎年のいわゆる課税最低限をどのくらいにすべきかという判断には使っておりません。
  82. 津川武一

    津川委員 そこでもう一つは、出かせぎ者の今度は労働対策ですが、いま二割ほど減ったというふうな報告をいただいたのですが、その算定はどこからどうして得られたのか、これを教えていただきたい。
  83. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 労働省は退席しました。
  84. 津川武一

    津川委員 そこで、次長が先ほどばく然と話してくれたのですが、非常に大きな問題として、今度のドルショックから、転業させるという考え方、これはどうしてもしようがない場合の転業はやむを得ない、私もこういうふうに思うのですが、いまこうして改正案を出すに至ってどのくらいの転業を見込んでおるか。転業者に対して、転業の計画書の中にある間は償却を認めるというふうなこういう形で出てきているのですが、どのくらい転業考えているのでしょうか。
  85. 進淳

    ○進政府委員 はなはだ恐縮でございますが、具体的にどの程度転業するか、その原因として業種別にどうなるかというところまではまだ詰めておりません。まことに申しわけございません。
  86. 津川武一

    津川委員 転業者に対して援助することは私たちも賛成です。しかし、長いこと父祖伝来の地域の皆さんとともに築いてきた一つの営業から他に転業するというのはかなり困難があるし、先ほど話した年齢の問題も出てきますので、なるべくならば転業させない、こういう点での指導、援助をする、こういう方針に通産省中小企業庁も立つべきであると思うのですが、こういう考え方は持っているのですか。
  87. 進淳

    ○進政府委員 御質問の御趣旨のとおりでございまして、私どもが産業の業種別に構造改善事業を進めますのは、その業種としての将来のいき方、できるならばその業種として今後の国際経済の中で発展途上国なりあるいはアメリカをはじめとする先進諸国との調和を保ちながら、適正な存在といいますか、そういう場を求めるためにどのようなあり方が望ましいかということを検討しておるわけでございまして、そのために、どういうような施策をとるかということであろうかと思っております。
  88. 津川武一

    津川委員 そこで、転業とも関連して、この輸出の減少、課徴金のかけられること、それから、ドル安で円高になるということで影響を受ける場合、全国的な地域にまたがっておるのはケミカルシューズだとかああいう大都市型の中小企業、これと地方都市型の中小企業、これが受ける影響はどちらが強いわけでございますか。
  89. 進淳

    ○進政府委員 やはり一般的にいいますと、地方都市型のほうが影響は強いだろうと思います。
  90. 津川武一

    津川委員 とすれば、施策のかなりな部分が地方都市型のものに及ばなきゃならぬ。これで、先ほど燕のことを問題にしたごとく、この中に出てきているように保育所をどうするとか、地方産業をどうするとか、地方自治体の財政をどうするかという問題になってきますと、対策は新全総と相反しませんかということです。したがって、新全総をこの面で一つ修正をしなきゃならぬ問題が出てきませんか。これはどうです。
  91. 進淳

    ○進政府委員 実は、私どももそこまではまだ関連づけて検討しておりませんでしたので、今後の問題として検討さしていただきたいと思います。
  92. 津川武一

    津川委員 この点で、地方自治体と具体的に何か対策考えていく必要がある。もしくは地方の中小企業者の団体、地方の商工会議所、それから地方のいろいろな金属団地だとか木材木工の団地などが企業としてありますが、ここらあたりと相談されて、対策を打つことが具体的に必要になっておりますし、この間の中小企業の皆さんもそれを求めておるし、皆さんの調査月報の中の座談会の中にもそんなふうなことが出ております。こういう点での施策というものは打つべきだと思うし、いま打っているでしょうか。
  93. 進淳

    ○進政府委員 御質問のとおりでございまして、現在では、緊急融資についての協議会ができておりまして、できるだけ綿密な指導をするということをいたしておりますが、産地の産業のあり方につきましては、先ほども申し上げましたように、特に問題のある産地についての協議会と申しますか、特にその県、市、商工会議所、それから業界を含めました、できればそういうような協議会のようなものができまして、今後のあり方を検討していただくのが望ましいと思っております。
  94. 津川武一

    津川委員 そういう地方で協議会を開いていく、上からの一本だけじゃなくしていくということは非常に望ましいことですが、いま具体的にはどこどこで考えていますか。
  95. 進淳

    ○進政府委員 現在まだ具体的にどこと——緊急対策のほうに追われておりまして、今後の将来のあり方について、どこに設けるかというところまでは具体的にはまだ進んでおりません。
  96. 津川武一

    津川委員 今度の改正案の中で、影響を受けて欠損が出た場合、損が出た場合、繰り戻しの制度があって、前年、前々年度、三年前にさかのぼって黒字があるところはそれに戻せる、私たちはこれ自身に対しては賛成なんです。ところが、黒字のない企業に対して、しかも何か立ち上がれるような望みのある企業に対してのあれがないので片手落ちだ、こういうわけですが、こういう黒字を持っていないところに、いま欠損を出している、こういうものに対する措置が、これこそ必要だと思うのですが、これはございましょうか。考えていましょうか。
  97. 進淳

    ○進政府委員 今後将来に向かって黒字が出るかどうか。現在赤字であっても将来立ち直る見込みがあるかどうか。その辺についても、指導員あるいは組合等で指導をやってみる、あるいは共同化事業もございましょうし、いろいろな対策も打ち立ててあるのでございますが多い数でございますから、その中に御指摘のように、非常にむずかしい点もあろうかと思いますが、私どもはあくまで自主的に自立し得る体制を進めるための施策を進めておりますので、その辺どうしても万策尽きたというような場合にどういうようにするかということになりますと、はなはだむずかしい問題であろうかと思っております。
  98. 津川武一

    津川委員 あげ足をとったり意地悪を言うつもりは毛頭ないですが、今度の改正案を出したときにそういう人たちのことをどうしようかということは庁議の中で問題になりましたか。
  99. 進淳

    ○進政府委員 これは転業対策といいますか、不十分ではございますが、今回の臨時措置法の中に転業対策というものは含めて入れてあるわけでございます。したがいまして、特に雑貨関係業種につきましては、先ほど申し上げましたように今後のあり方というのを業界ぐるみで御検討を願うほかはないと思っております。その中で一般的に見ますと、皆さんの御指摘になるのは製品の高級化であるとか、輸出の仕向け地を分散するとかいろいろなことが指摘されておりますが、これらを全体的にどうするか、今後、先ほど申し上げましたような中小企業のあり方についての基本的な施策と申しますか、考え方を検討してもらいたいということで、中小企業政策審議会を発足させて御検討をお願いしたわけでございます。
  100. 津川武一

    津川委員 今度提案された国際経済上の調整措置実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律案の中の、いま話された九条職業のあっせん、これは法律として皆さんが出したからには、本気におやりになるのがあたりまえ、そう私も信じます。そこで、ここで高年齢の人、繊維から締め出されていく主婦の職業、こういう点では格別な配慮があるでしょうかどうか。現在出かせぎについてみても四十五以上の人は締め出されておる。いままでは七十まで行っておった。こういう点で法律を出したからにはその態度もあると思うのですが、ここの中にも中高年齢層と、もう一つ考えていただきたいのは繊維方面から吐き出されていく女子、それも農村の主婦、季節労務者、こういうものに対する対策中小企業庁としてはお考えがあるでしょうか。
  101. 進淳

    ○進政府委員 離職者の対策につきましては、私ども指摘のように今回特に高年層まで離職者手帳の給付対象を広げるということで、労働省とも相談いたしまして、そのような構想でこの法律に基づきまして実施していただくようにいたしております。  それから、雑貨関係から他産業に転職するということになりますと、どうしても一般的には機械関係とか高度の工業になりますので、その技術の習得という意味で、訓練期間につきましても、従来の六カ月を一年に延ばすというようなことをお願いいたしておりまして、大体そういうふうにするように話を進めております。  さらに、繊維関係につきましては、御指摘のように、特に離職者が多発することが予想されますので、これは目下繊維雑貨局と労働省とのほうで話し合いを進めておりますが、基本の具体的な施策そのものを詰めておる段階でございますので、まだ最終的に結論を得ていないと思いますけれども、現在話し中でございます。
  102. 津川武一

    津川委員 男子の季節労務者ですと、狭められながらもどこか広げられる可能性があるのですが、女子の季節労務者は繊維から締め出されるとかなり困難を来たす。ほかにこれを埋めていくような、起こしていくような産業なんというのは考えているのでございましょうか。
  103. 進淳

    ○進政府委員 これはまさに農村工業化の構想がそういう構想でございまして、たとえば繊維につきましても、従来縫製品なんかは大企業ではなくて山間部に四、五十人ずつの小さな工場をつくるとかそういうようなことをしておったのですが、今後、縫製品も問題がございますけれども、やはり農村工業化ということでどうしても在村、そのまま家から通わなければならない者に対する工業化施策というもののあり方も検討する必要があろうと思います。
  104. 津川武一

    津川委員 農村における工業の問題で、もう一つの女子の就職は弱電機なんです。非常に喜ばれる。ところが今度のドルショックでかなりがらがらいっているのですが、これは実態はどうなっていましょうか、農村に進出した弱電機、特に下請、また下請というのにこういう点がありましたら、ひとつ……。
  105. 進淳

    ○進政府委員 恐縮でございますが、ただいま手元に資料を持ち合わせておりませんので、後ほど説明させていただきたいと思います。
  106. 津川武一

    津川委員 最後に、先ほどちょっと話しましたが、燕の人たちのたっての要求、対ソ貿易、社会主義諸国との貿易という点で、いままでどちらかというとアメリカ向き、われわれのことばでいうとアメリカ一辺倒でやってきたとさえ言いたいところなのです。中小企業庁として、対社会主義諸国に対する貿易、こういう技術援助、技術交流は、具体的に何を考えていましょうか。
  107. 進淳

    ○進政府委員 私どもも先ほど御指摘がございましたように、対ソ、対中国貿易につきまして雑貨関係についても入れていただくことが望ましいとは思っております。しかし、御承知のように対ソでは品目ごとに日ソ貿易協定がございまして、その際になかなか入れてもらえないのが現状でございます。それから中国貿易につきましても、どちらかといいますと生産財関係が多うございますものですから、今後そういう燕の洋食器のような雑貨関係を伸ばすのは相当な努力が必要であろうかと思っております。
  108. 津川武一

    津川委員 終わります。
  109. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      ————◇—————    午後零時五十七分開議
  110. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。広瀬秀吉君。
  111. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 田中通産大臣、目下のところ同時に臨時蔵相代理ということでございますので、その立場で若干質問をいたしたいと思います。ちょうどいま商工委員会委員会の採決が行なわれましたドルショックに伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律案、こういうことで、いまそれを受けて租税特別措置法の審議を本委員会でもいたしておるわけでありますが、そこで大臣にお伺いしたいことは、今日ドルショック以来輸出成約の減少というようなことを通じて、また対米輸出依存度が全輸出の三一%を占めるという世界に類を見ない対米依存度の高い輸出構造を持っている日本では、全体的に景気の落ち込みがきわめて予想以上に深刻なものがあり、直接輸出関連産業以外にも、いわゆる関連した不況の波というものがかなり深刻に浸透してまいっておるわけであります。関連企業にかける減産滞貨というようなことだけではなしに、全般的な投資意欲の完全な落ち込み、冷え込みというようなこともあって、非常に深刻な不況段階にあることは御承知のとおりであります。  そこでまず大臣にお伺いしたいことは、九月一日、大蔵委員会で堀委員から御質問がありましたが、その際アメリカの輸入課徴金一〇%、これはものによって若干、自動車の六・五%であるとかオートバイの四%というような例外もあるわけでありますが、この輸入課徴金、まあそう長くは続かぬだろう、半年ぐらいじゃなかろうかというのでありますが、四カ月過ぎてきておるわけでありますが、つい最近米上院で、大統領に一五%までの課徴金賦課の権限を与える、こういうような事態などもありまして、これはどういう意向かよくわかりませんけれども、そういう状態もあるというようなことで、輸入課徴金を撤廃をするという問題、あるいはまた通貨調整を基準レートなら基準レートで行なうというような段階を迎えないと、なかなかこの課徴金の撤廃ということもむずかしいだろうというようなことで、その通貨調整も、目下十カ国蔵相会議も開かれているけれども、ここではたしてきまるかどうかということもかなりむずかしいし、来年一月の佐藤総理とニクソン大統領の会談というようなことも予想されて、そこでの議題としてこれが持ち越されるかもしれぬ、こういうような状況であります。  そうしますと、大体通産大臣として、また蔵相代理として、この輸入課徴金撤廃という問題国際通貨調整の問題がどの時点で解決ができるだろうか。これはやはり景気の問題、さらに今日の不況の克服の問題とからんで非常に大きい問題になっているわけでありますが、その辺のところの見通しをまず大臣から伺いたいと思います。
  112. 田中角榮

    田中国務大臣 たいへんむずかしい御質問でございます。  この輸入課徴金というのは、本来ならばケネディラウンドの推進というアメリカの大きな旗と全く別なこと、逆行する政策の中の顕著なものでございます。ですから、アメリカがこんなことをやることは第一かっこうの悪いことである。いままで拡大基調の旗振りであったものが、縮小均衡の旗振りになるのじゃないかとさえいわれるものでございますから、かかるものは長く置かれるべきものではないということが一つでございます。  もう一つは、過去にイギリスのポンド不安に際して行なわれたものが課徴金二年でございました。これはガットの勧告を最終的に受ける寸前に、二年目にこれをやめたわけでございます。第二番目は、カナダドルの不安に対して一年間課徴金が行なわれました。ですから、普通から考えると、イギリスポンドで二年、カナダドルで一年だから、キーカレンシーとしてのドルは少なくとも半年が限度だ、こう私は述べたわけでございます。  ところが、アメリカは、コナリー氏などは私と会ったときには、あなたの考え方は、イギリスで二年、カナダで一年、アメリカで半年というのは逆で、カナダでさえも一年、それからイギリスでさえも二年ですから、キーカレンシーであるドルは三年になるかもしれぬと、こういうことでございまして、そんなかっこうの悪いことを続けられればどうぞというような冗談を言っておきましたが、アメリカが数十年ぶりで貿易収支が赤字になったということでございますから、それを解決するにはなかなか一つの政策ではだめだ、 ワンパッケージでもってやるんだ、こういう強いことを内外に宣言をして始めた、承知をして始めた課徴金でございますから、これはとれるかとれないか、私としても定かな見通しはありません。ありませんが、私が率直に申し述べるのは、この間来たときと日米経済閣僚会議のときとはちょっと調子が変わっておったのです。日米経済閣僚会議のときには、日本のマスコミは平価調整の問題を非常に大きく取り上げておるにもかかわらず、向こうは、アメリカ側は、アメリカの国際収支と失業問題とインフレ傾向が全部おさまるまでは、ワンパッケージでございますから政策は強行するのです、こういうことでございまして、それには貿易収支のバランスをとることが前提であるということで、われわれが考えておったことよりも平価調整が第二である、こういうことが非常に明確だったのです。  ところが、この間から見ておりますと、どうもやっぱりかっこうの悪い課徴金をいつまでもやっていけないということ。アメリカ自体は、課徴金を一〇%ばかりではなく、一五%にしておいて、日本との繊維交渉のように、一つずつ片づいたものに対してこれを一つずつ解除してやろう、話がつかぬものは一五%やろう、こういうような考え方だったようですが、今度来たときには、やはり平価調整が不可避であるならば、両方片づくのじゃないかなと私は思います。ですから、それでEECがいまの非常にむずかしい二つの問題を出しておったわけです。一つは課徴金を撤廃すること、もう一つは、金価格を引き上げるか、もし金価格を引き上げられないとしてもSDRのドル交換率を引き下げる等の措置を行なえば、われわれも平価調整に乗りますというふうに前向きになりましたので、この一、二週間の報ずるところを見ておりますと、案外平価調整もすなおに片づくのかなという感じでございます。だから、水田大蔵大臣が参りますときには、とてもそんな簡単には片づくものではないということでございましたが、その後外電の報ずるところによりますと、年末までにも片づくかもしれぬというようなことでございますので、これは報道を見て私がそれに反応してお答えをしておるにすぎないことであって、これが十二月に片づくのか一月に片づくのかわかりませんが、いずれにしても、平価調整が行なわれれば、その時点で課徴金問題に対してはケリがつくだろう、そういう感じでございます。これは全く感じの域を出ないということであります。
  113. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 観測ではなくて、日本の政府の態度としてどういう態度をとるべきなのか。通貨調整が十カ国蔵相会議でまとまるかもわからない、あるいはまとまらぬ公算のほうがむしろ大きいかもしれない。しかし、いずれにしても通貨調整が、それぞれ円の切り上げなりマルクの切り上げなりというような形で、あるいはドルの若干の切り下げというようなこともあるいはあるかもしれぬという、そういうものを踏まえて、通貨調整ができた段階には必ず課徴金はなくさせるのだという、そういう態度は日本政府としてはしっかり持っておるわけですね。
  114. 田中角榮

    田中国務大臣 これはもう課徴金というものは絶対に排除をすべきである。日本は、対米貿易だけではなく、課徴金というようなものがそういう制度が各国でもってとられて、ガット体制を基本的に否認するような、こわすような体制は困るのだ、日本は貿易立国でございますから制限をされることは全く困る、こういう感じで、課徴金に対しては日本が一番強いのじゃないかとさえいわれております、現実問題としては。課徴金に対して一番弱いのはヨーロッパや、それよりも弱いものはメキシコでありカナダである、第二に強いのはEECである、一番強いのは日本である、こう言う人もありますが、強いとか弱いとかではなく、課徴金制度には体質的に日本は合わないのだ、こういうことで、私たちは八月十五日以降、課徴金は絶対にこれを排除するのだ、こういう前提でございますから、もし平価調整が行なわれるとするなら課徴金問題は同時に片づく、また片づけなければならぬ、こういう感じでございます。
  115. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 その点はきわめて明快にお答えになったわけですが、日本の対米輸出依存度というものは、これはもう諸外国、特にEC諸国、西ドイツとかあるいはフランス、イギリス、イタリア、こういうようなところと比較いたしましても、対米輸出依存度というものの大きいウエートの開きというものはきわめて顕著なんで、アメリカが輸入課徴金を課するということに対して日本が最大の関心を払うということ、そしてまたそれだけに強硬であるべきだということも当然のことであって、その点いまはっきりおっしゃったように、通貨調整ができる段階には必ずこれは取り払わせるという強い決意で今後もしっかり臨んでいただきたい、こういうように考えるわけであります。  ただ、私ども心配なのは、いわゆるニクソン・ドル防衛の目標というのは、失業を減らしていくのだということ、それからインフレを克服していくのだということ、国際収支を改善させるのだということなんですが、その中で、これは十月でございますか、八億二千数百万ドルというたいへんな貿易赤字が出ておる、こういうようなことでアメリカの国際収支の改善というものがほとんど進んでいない。むしろそういう空前の赤字が出るという、これはもう何十年も、あるいはアメリカの歴史にはないくらいの大きい赤字が出ているという、こういう問題があります。インフレの問題も、例の賃金、物価の九十日の凍結をやって、十一月からまた第二ラウンドに入ったようでありますけれども、さしてこれも効果があがっていない、失業も指数は減っていない、失業者数もほとんど減っていない、こういう状況にあるということになりますと、これは三つの目標に向かってニクソンの八大政策が出されたわけだけれども、その辺のところはなかなかむずかしいのではないか。アメリカのニクソンのこのドル防衛の目標と政策が効果をあげていないということになりますと、アメリカ側の態度というものもなかなかきびしいものがあるのじゃないか、こういうように思われるのですが、大臣としてはアメリカのこのインフレ、失業、国際収支、こういう問題についてまだまだやはりアメリカ自身の今日までの経済政策あるいは対外政策、広く対外、軍事、外交、すべてを含んだ政策というものが今日のドルの弱化ということを招いている大きな原因になっていると思うのですが、そういう点での、根本的な点での改革というものがやはり触れられていない。対外援助を思い切って削減しようと思っても、なかなか議会筋から強い抵抗があって二十数億ドルの対外援助を残さなければならなかったという、こういうような状況があるわけですね。そういうようなことになってまいりますと、これはなかなかアメリカの態度というものはシビアじゃないかということが予想されるわけなんですね。これに対してアメリカの三大目標、ドル防衛措置のねらいとする目標を達成できる条件というものに対して、日本政府としてはどのような分析をされておるのか、この点お願いしたい。
  116. 田中角榮

    田中国務大臣 アメリカがとりましたことは、貿易収支が八十四年ぶりで赤字になった。これはもう二十億ドルも赤字である、こういうことであります。失業は六%をこした、五百万人をこしたということでございます。インフレ傾向にある。これは私たちは必然的な状態だと思っておったわけです。これはいますぐこんな問題が出てきたのではなくて、日本が十四条国から八条国に移る当時、三十九年だったと思う。三十八年に当時のアメリカのケネディ大統領がケネディラウンドの推進をいいながらドル防衛政策ということを発表したわけでございます。キーカレンシーとしてのドルの価値の維持ができなくなると、これはアメリカだけの問題ではなく自由世界の拡大基調が縮小均衡に移るおそれがある。これはお互いの協力によってこれらの問題は未然に防止をすべきである。これは理論としては正しいことでございます。そういうことから始まって、三十九年の東京総会には新通貨をつくるかもしくはドルをささえるかというアメリカの提案に対して十カ国蔵相会議は結論を出して、新しい通貨としてのSDRの制度に踏み切ったわけでございます。もう一つは世銀債を主要工業国の市場で発行して世銀の資金を拡大をしたという二つで約七、八年間参ったわけでございます。その後シップアメリカン、バイアメリカン政策が進められて、対外援助も削減基調をずっと続けながら今日になって、ついに八十数年ぶりで二十億ドル余の赤字が出るということでございます。ここに数字がございますが、六六年二十二億、六七年が十一億、六八年に持ち直して二十五億、六九年三十六億、七〇年に三十九億という黒字基調が一ぺんに二十数億ドルというのでありますから、六、七十億ドルも赤字が年間ふえるということであって何らかの処置をとらなければならぬことは当然であると思う、こういうことでございます。  あなたがいま御指摘になったように、八月十五日にワンパッケージ政策を出したわけでございます。これは課徴金、対外援助の一〇%削減及び物価、賃金の凍結令という非常にドライな政策に踏み切ったわけでございますが、その後確かに十月は八億二千百万ドルという大きな赤字が出ております。これはずっと四月、五月、六月、七月、八月まで悪いのです。八月十五日によくあの新政策を出したなあということは数字を見るとよくわかります。四月二億三千万ドル、五月二億ドル、六月三億六千万ドル、七月三億ドル、八月二億五千九百万ドル、これ全部赤字なんです。そして一カ月飛んで十月に八億二千百万ドルというほんとうに例のないほどの大きな赤字が出ておりますから、これはもうどうにもならないということでございますが、私は必ずしもそうは思わない。そこがアメリカと日本とのこれからする交渉になっているわけです。  こういう数字は当然出るんだ、これは二十五年間の帳じりとして出てくるのであって、新政策をやってもすぐきくわけがないじゃないか、当分の間はこれはこれで前進をするという数字は避けがたいことであって、この事実をもって日本に攻めてきてもだめだという話が日米経済閣僚会議の主要議題になったわけでございます。またこの間コナリー氏が来たときも、私もそのようなことを言ったわけでございまして、まあ十月、十一月、十二月まではアメリカの国際収支そのものは、私はいままでの状態だと同じだと思います。思いますが、新年度の始まる六月まで見ますと、平価調整が行なわれたりいろいろなことが行なわれれば、実際的にアメリカが当初考えた二十五億ドルを歳入として見込んだ程度の国際収支の改善は、私は可能だと思います。しかし失業とインフレの問題はちょっと片づく問題ではないと思う。これはとにかく膨大な海外投資をしているわけでございますから、とても私は片づく問題ではない。だから日米経済閣僚会議の議題としては、この三つの中で三つとも全部片づけようと思うのはむずかしい問題であって、まず貿易収支だろうということを述べておるわけでございます。  日本はいま、八月十五日からたいへんだ、たいへんだと言いながら、実質的には数字的にはたいへんな数字は出ておらぬのです。八月、九月、十月、十一月を見ましても、対前年度比三〇%ないし四〇%も倒産件数も何か減っております。減っておりますが、これは全くいままでの状態における数字であって、ほんとうにこれからの数字というものは、私はこれから来年の一月から六月にかけてはアメリカは多少上向きになる、日本は横ばい、もしくは下がってまいる、こういうところが数字の見通し。実勢に対する見通しが違うわけでございますが、そういう意味でアメリカはいま大きな赤字が出ておりますけれども、新政策をとった効果は出ると思います。日本は、いまの数字はいままでの状態でもって慣性の理屈でずっと前進を続けている数字でございますが、これはどうしても下降線をたどるだろうということでございまして、アメリカ自体はそういう見通しがつけば、一月大統領会談が行なわれるとすれば、それまでには少しでもいままでのような数字では日米間が非常に困るのであって、多少でも新しい数字がアメリカの経済経済指標としてあらわれてくるだろうと思います。そういう意味では十一月末よりもできるだけ先のほうがお互い話をするにはぐあいがいい、こういうふうにいま考えているわけでございます。
  117. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大臣のお話を聞いていると、そう不況も深刻化する感じではないのだという(田中国務大臣「こっちは深刻ですよ」と呼ぶ)気持ちにもなりかねないけれども、それにはやはり前提があるだろうと思うのです。変動相場制でもうすでに日本の円も実質的に一〇・〇二五くらいですか高くなってきている。いまのアメリカの景気が来年に入れば少しずつ上向きになっていくだろう、一−六月も新年度に入るとかなり顕著になってくるだろうということなんですが、そういう場合のあなたの想定は、この通貨調整というものが大体おそくも一月の日米両首脳の会談、その前、来月の下旬ですか、フランスの大統領との会談、こういうような一連の各国首脳とのニクソン大統領の会談というようなことで、十カ国蔵相会議できまらぬにしても、おそくも一月段階では通貨調整は何らかの多国間調整ということにおいて結論が出るものだ、こういう前提があってそういう見通しだろうと思うのでありますが、その点はいかがですか。
  118. 田中角榮

    田中国務大臣 通貨というものは二国間ではとてもきまる問題ではございません。四五年、第二次大戦後に、一体どうするのかということで、人類の英知をふりしぼって考えられたのがいまの国連の下部機構であるIMFであり、世銀であり、第二世銀であり、OECDであり、DACであり、アジア開発銀行になり、いろいろなものになってきておるわけであります。それはやはり貿易量がだんだんと拡大をしてまいる。貿易量が拡大をしてまいれば、年間の産金量がきまっておる金をその決済の材料に使うことはできない。そうすれば結局新しい何らかの決済制度を考えなければいかぬということがIMFになったわけでございます。そういうことでドルをキーカレンシーとして四分の一世紀平和な状態が続いたわけであります。日本自体は、一かけらの金も持たなかった日本が管理通貨という立場の中で今日、十二月一ぱいになると百五十億ドルをこすと思いますが、そういう状態までなったわけでございます。ですから、やはりドルをキーカレンシーとしてささえられないとしても、少なくとも国際流動性の確保と世界の通貨の安定ということはどうしても確保しなければならないわけです。そうすると、どうしても輸出を中心にしてものを考えるか、金を中心にして考えるか、新しい基軸通貨を考えるかということになりますので、これは対米の問題だけでなく、お互いの問題でございます。  ですから、そういう意味で私は一日でも早いほうがいいという感じはみんな腹の中に持っておる。早いほどいいのですが、この平価調整をする過程において、相手よりも一%でも、厘毛でも切り上げることが少なければ少ないほうがいいという利害がお互いにいまふくそうしているところに問題の解決がむずかしいわけでございます。そこへ持ってきてアメリカが金価格を引き上げない、一オンス三十五ドルを絶対に変えない、こんな無理なことをやっている。キーカレンシーとしてのドルをそのまま維持するような姿勢をアメリカがとっているというところになかなか調整がうまくいかぬわけであります。アメリカ自身が課徴金という制度をやっておる。しかも五%上積みする権限を与えられておりますから、こんな状態が一年も二年ももし続くと仮定すれば、それなりに政策効果、ちゃんとメリットがあるわけであります。ですから、それで困るのは日本が困り、ほかの国がみんな困るので、とにかく私はここで急速にアメリカも何とかしなければいかぬという感じ、ほかの国も、ヨーロッパも日本だけに文句を言っておりましたが、日本だけに難くせをつけることによって局面の打開ははかれないということになってきたようでありますので、いつ片づくかは私はわかりません、全然わかりませんが、水田大蔵大臣、とにかく決意を持って外国出張をしておりますので、うまい結論を早く出してくださるように臨時代理は大いに期待をしておる、こういうことでございまして、これ以上通貨問題でどうも具体的に申し上げられるものではないということでひとつ御理解いただきたいと思います。
  119. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 時間がないものですから、答弁が長くなるものですから……。  そこで、いま国民が非常に心配していることは、基準レートあるいはピボットレートとかセンターレートとかいうようなことで金と切り離されたまま為替相場がきまる、固定相場がそういう形で、前とは違った形でできる、こういうことで通貨調整ができたそのあとで、少なくとも一年以内くらいの間にあるいは半年先かどうかわからぬけれども、そういう調整ができたあとでアメリカ自身が今度はドルの切り下げをやる、その段階ではやらないでおってあとでやるということで、目一ぱいにこちらの切り上げ幅をそこできめておって、あと六カ月なり一年以内なりにドルの切り下げ、金価格引き上げということをやるのではないか。そういうことになったらもう予想外の問題としてたいへんな深刻な事態にもなりかねない、そういうようなことはちゃんと織り込み済みで交渉する、またそういうものに対してぴしっと歯どめをかけてそういう事態はないんだという態度というものを、そういう国民の危惧に対してそういうことはないんだという態度をしっかりとられることが必要だと思うのですが、そのことが一つ。  それからついでに聞いておきたいのですが、通産大臣、評判の悪い政府間協定を繊維においてやられたということで、通貨調整だけの問題ではない、いろいろな問題もあるということなんですが、防衛分担金の問題あるいは兵器購入、こういうようなものについて具体的にそういう要求がアメリカから突きつけられておるのかどうか、このことを一つ伺いたいことと、それから、先ほどの繊維協定と関連してカメラだとかあるいは家電関係であるとか、その他あるのですが、自動車、そういうようなものについて政府間協定で輸出の制限をしていく、こういうようなことは全く考えていないかどうか、この点はっきりお聞きしておきたいと思います。簡単にひとつ……。
  120. 田中角榮

    田中国務大臣 第一は円だけ大幅に切り上げられて、ドルはそのまま、円が切り上がったらある時期にドルを切り下げてその幅を大きくする、こういう心配はありません。そういうものにわが水田大蔵大臣は賛成をするはずはございませんし、そういう請訓もこないであろうし、請訓がきてもそんなことはやりませんから、その心配は全くない。特にECがきまらなければどうにもならないわけでありますが、ECの中では西ドイツとフランスが対立しておる。フランスがドルの切り下げを伴わない調整には応じない、こう言っておるのでございまして、それがニクソン・ポンピドー会議になるわけでございますので、そういうことはもう全然考えられない。これは、多国間調整というのは、お互いが不満足ながらすべてが納得するものでなければならないということで、第一の問題は全然心配はありません。  第二の問題は、防衛分担金とか兵器購入とかいう問題、防衛分担金はありません。これはあるとすれば、イギリスとか西ドイツにあるので、ヨーロッパとアメリカの制度の中では防衛分担金を増そうということはありますが、日本は制度が違うのでございまして、防衛分担金を増してくれというときにはそれだけ駐留軍が削減をされるということになるのか、駐留軍がふえてきてもアメリカの負担でございまして、これはフィフティ・フィフティでアメリカとその国が分担をしておるという制度でありませんので、これは日本に駐留するアメリカ軍隊がふえるような状態にもないし、そういうことは全くないということだけ申し上げておきます。  兵器は、これは飛行機を買ってくれないかという話はあります。それは飛行機は——繊維のときにコンピューターをお互いに分担しないかという話があった。これは冗談でございましたけれども、コンピューターをアメリカにまかすから繊維は全部日本にまかさぬかと言ったら黙して語らずということでございましたが、そういうような程度の話はございますし、それは日本でつくるよりもなお安いというもので、日本が財政的に考えられるものがあればという話でございまして、これは取っかえ引っかえの話では絶対ありません。日米間の友好の話だけであるということでございます。  それから、繊維の政府間交渉をやったから、その他のものはやらないか、自動車やテレビや電卓やということでございます。これは繊維をやったわけでございまして、繊維をやってもこのくらいたいへんなのでございますから、その他のものは話を出してもだめだぞという話はしてございます。とにかく繊維を持ってきても三年かかったのだから、新しく出しても三年くらいかかるだろうと言ったら渋い顔をしておりましたから、そういう意味で、確かにこれは八月から九月現在でございますが、鉄鋼が前年三〇%増し、自動車が大きいのは二二三・四ですから、去年よりも倍以上出ておるわけです。二輪自動車が六一・二%プラステレビが四五・六、卓上電子計算機が二七・六、これは合成繊維も全部ひっくるめて六品目五七・七という数字ですから、大きいことは大きいんです。これは実際大きいんですが、これはアメリカの港湾ストとか、日本の景気が悪くアメリカが景気が上向きであったときに、三十七年、四十年と同じパターンで、アメリカからの輸入が減ってアメリカ向けの輸出がふえているという特殊な要因に基づくものである。来年の一月、二月、三月になれば、この数字はがらっと変わる、こういうことを私は強調しておりますので、繊維のごとき二国間協定というようなものを要求してくるような状態にはないと思います。
  121. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 終わります。
  122. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 松尾正吉君。
  123. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 田中通産大臣大蔵大臣臨時代理という立場でお伺いをします。  まず一つは、いまも質疑の中に出ておりましたように、非常に長い間国民全体、それから特に繊維企業では重大な懸案でありました繊維問題がいよいよ糸口を見ようというときに、官僚ではということではないのですけれども、党人である田中通産大臣には、私も個人的に、また国民全体が大きな期待をしておったわけであります。ところが、いま大臣の口から出たように、繊維交渉のごときという、こういう結果が生まれてしまった。内容は、時間がありませんから省きますけれども、九百万をこえる従業員並びに家族、これらの補償については当然責任を持たなければならないお立場にあるこれらの責任と、政府交渉をやった結果二〇%の増産は確保できるんだ、こういうことを大臣から答弁があったようなことを伺っておるんですが、これらについて、ひとつきょうの審議の前提になりますので、私、時間が二十分ですから、簡潔にお答え願いたい。
  124. 田中角榮

    田中国務大臣 なかなか簡潔に答えられないほどの大問題でございますが、しかし申し上げます。  私も繊維の二国間交渉というものが望ましいものであるとは考えておりませんでした。ですから、日米経済閣僚会議では強硬に反対をいたしたわけでございます。ところが、その後二国間協定に踏み切らざるを得ないような状態が起こったということでございます。それが守られなければ国益が侵されるということでございます。それはなぜかというと、先ほど御質問もございましたが、軒並みに規制を行なうという明確な意思表示がございました。それは繊維に対しても四月一日から規制を行ないます。それはもう五%ではなく三%でやります。三%でそのまま引き直してやりますと、三年分も出ておる糸などを含めて考えると、オール一年間対米繊維輸出は完全にストップをするという状態でございます。それだけではなく、次々とこういうものも来ておりますということでございまして、これをいまワンパッケージ政策として八月十五日にニクソン政策が発表せられた結果、とてもやるならやってごらんなさいというような状態でこの問題に対処するようなことはできない状態でございました。そういう意味で、日本の国内繊維産業が受ける影響については、政府との間にいろいろな交渉をし、また手段を講じなければならないことでございますが、少なくとも日米両国間の正常な状態というものは保持しなければならない。六十億ドルから七十億ドルに及ぶこの対米輸出というものが変になった場合日本の経済がどうなるか、それはもう私が申し上げなくともそれこそ恐慌状態につながるということでございまして、そんなことはできない。やらしてみればいいじゃないかというようなことをいえば、それは第二の真珠湾として受けて立ちます、こういうことなんですから、その状態で両国間が話し合いをしないということは、団体交渉を全く初めから拒否するに似たるものでございまして、これはどうにもならない状態において、私は真にやむを得ない状態における両国の政府間交渉に踏み切った、こういう感じでございます。そうでなければ私も国会の議決のあるものを、こんなことをして不信任案を出されたり、問責決議案、それはやむを得ないにしても、そういうことをやるはずはありません。ですから、それは両国間の問題であって、これはもう言うなれば開戦を避けたというくらいな、ほんとうに私は深刻な気持ちで対処したわけでございます。これは後世の判断にまかすということでございます。  ただ、日本の国内を見てみますと、繊維は日米だけではなく、繊維自体がたいへんな状態にあることは事実であります。これは繊維だけではない。私は率直に申しますと、日本の産業がほとんど米の減反政策を必要とするような状態にあるということは事実です。それは三十七年、四十年に比べて最盛期の半分以下に下がっておる。鉄鋼を見ればよくおわかりでございます。鉄鋼は不況カルテルの申請をしております。石油化学もそのとおりでございます。これは繊維だけではない。ほとんどが設備過剰である。繊維は自主規制を行なうときに五%増しまで限度を下げたわけであります。それに対して業界の意見も聞きながら、七百五十一億円の救済融資をいたしたわけでございます。今度は年間五%ずつ下がるようなことは絶対にありません。これはいま二〇%増しと言われましたが、そうじゃないのです。自主規制が五%でありますから、それに近づけて綿製品協定のようにがくんと減らないように最善の努力をいたします、私はこう言っているのですが、そのような状態であるにもかかわらず、すでに繊維業界から織機の買い入れ、織機の例だけをとりますと、七十万台のうちの三十五万台以上を買い上げてほしいというのであります。二分の一以上買い上げてほしいというのは、これは日米繊維交渉のいかんにかかわらず、繊維産業に対しては政策を必要とする段階であったということだけは間違いない。これはアメリカに関する年間の輸出量は六億ドル程度でございますから約二千億円であります。一年間まるまるの該当金額が二千億である。これは正常な輸出をやるのは三カ月でありますから、二百億の三カ月は六百億、六百億ないし七百五十億というものが変動していく過程におけるものでなければならないのですが、七百五十一億の政策を行ない、その上端的に私が大蔵省の意向を聞きながら、さしあたり織機十万台を買い上げの対象にいたします。十万台というと、十五万三千台になったのです。ところがその上三十万台以上どうしても買ってくれというのでございますから、政策を必要とする状態であったことは事実でございます。これは、それだけではない、一切のもの、いろんなものがございます。ございますが、繊維産業に対しては、言うなればそういう状態にあったとしても、やはり政府間交渉を行なったという政府の責任というのは、これは当然あるわけでございますので、繊維企業、繊維産業というものに対しては、石炭と同じような気持ちで私はいまいろんな政策を出しておるわけでございます。私自身も取り組んでおります。  百年間、日本の輸出のほんとうの先行産業として、戦後はほんとうに国際収支というようなものを日本に築いてきたものはやっぱり繊維でございますから、百年間にわたる繊維の功績はたいへんなものであります。功績に対してどうしようというのじゃありませんが、いまあなたが申されたような三百万から九百万も関係者がおるということは、適切な政策を行なわないと日本の産業、日本の社会的な問題にも影響がありますので、政府としては、広い立場で万全の対策考えております。
  125. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 簡潔なのが、非常に一人でしゃべられてしまいまして、長くなっちゃったのですが、実はこの問題で詰めたいけれども、これに対して万全な政策をという一環として、金融面あるいは税制面でいろいろな措置がとられ、きょう審議するのも、この一環の税制の問題であります。  そこで一つは、午前中から実は大臣に聞いてもらいたかったのですけれども、このたびの金融措置、非常にこまかく手が届いているようにも私にも見受けられます。この措置に対して評価を惜しむものではないのですけれども、しかし、その金融面の手の届かない分野があるわけです。企業をやっておって、一例をあげれば、中金、国金等から金を借りて、いよいよ支払い期限になってきた。ところが金を借りなければ、少しの期間つながなければどうしようもないという企業零細企業、相当広範にあります。さらにまた、税制面の今度の措置で、三年間の前納分を繰り戻してやろう、五年間見てやろう、こういう措置ですけれども、いままで三年間どうやら利益をあげてきた分はいいです、税金を納めた分は。ところがぎりぎり一ぱいで、いままで赤字でやってきた、あるいはごく小部分しか納税していなかったという人に対しては、この税制の非常にきめこまかな恩典が何にもあたたかくない。こういう層がどのくらいおるのかということを、事務当局から一応伺いたいと思います。これに対する手がほとんど皆無だ。これは大臣には無理でしょうから、事務当局から……。
  126. 田中角榮

    田中国務大臣 そういう統計をとっておらないから、事務当局でも無理なんです。これはそういう結果が出てこないとなかなかつかめない段階でございます。ですから、出てきた場合に受けられるような政策を用意しておこうということでございます。  いまあなたが言われたのは、今度の税制改正でもそうでございますが、中だるみになっておる中堅層の減税をやると、もうすでに課税最低限に入っておって税を納めておらない人にどうするかということの議論と同じでありますが、これはやはり金融でまかなうものと一般会計でまかなうものと、いろいろ段階がございます。ですから誘導政策を行なったり、またいろいろな政策を行なうものでも、その政策に入らない人があります。それは別な政策で救済すべきものだと思います。  そういう意味で、あなたの言われることよくわかりますが、今度は相当きめこまかく政策を用意したつもりでございますし、また出てくる現象に対しては、相当スピーディーにやろう。私が通産省に参りましたときに、これは私だけではなく、大蔵省の事務当局もきっとそんな考えがあったからこそ、私はあうんの呼吸でしゃべったわけですが、対外経済調整法という、海外にあって起こる問題に対して、日本が受けざらを持ってうまくやろう、こういう考えを持ったのは、いまのようなことを予測をしておったわけでございます。ですから、いま繊維企業とか中小企業零細企業は、一体どの程度この金融ではみ出すのかということ。これは、この法律が施行されまして、いろいろな要請が業界から出てまいらないとつかみにくいわけであります。そのときに出てくるこの法律救済されないものがよけいあれば、別な制度を必ず考えます。これもそういうことでございますから、それで御理解いただきたい。
  127. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 いま中小企業金融対策、これで相当きめこまかな面に配慮した手を打たれていることは私も理解するのです。ところがいま申し上げましたように、この手の及ばない範囲、これの推計なんですけれども通産省の推計でも、この中小企業金融公庫月報ですか、これらによりますと、比較的輸出率の高い業種あるいは地域別の産地等では、これから集中豪雨的な被害が予想される、こういうことがもう各機関の調査等にもあらわれておるわけです。この集中豪雨的な被害というのは何をさすかというと、結局一番甚大な被害はいま言った金融の手の届かない面、それから税制でせっかくの恩典を政府が投げ出したにもかかわらずこれで手の届かない分、これらが相当多いことを意味するわけですよ。また、いま大蔵大臣は、この金融税制面と社会保障というのは別個だというふうに言われましたけれども、ところがいま政府でとった措置、繊維に例をとれば功績もあった、したがってこれは万全の策を講じたい。この万全の策には、単に社会保障だから別だというのじゃ私は万全な対策とはいえない。したがって、今後起きてきた場合にこれらに即応する措置をとるということは、この補償的意味を含んでおられるのかどうか、その点を伺いたい。
  128. 田中角榮

    田中国務大臣 補償はあまねく行なわれていなければいけない。また政策は公平でなければならない、これは当然なことでございます。ただ、なかなか想定できない、つかみにくい、捕捉しがたい状態に対しては、現に捕捉できる状態を前提として政策を立案することはやむを得ないことだと思います。しかし、そういう新しい政策というものが、この政策を行なうにあたって、考えておったように実効をあげない面がたくさんあったならば、それは補完すべく新しい制度を付加しなければならぬことは当然でございます。そういう意味では、これはどのくらい——われわれが考えておるのは、日米繊維交渉で政府間交渉でもって減る部面よりもはるかに大きな政策をやっておるつもりなんです。ところがさっき言ったように、この繊維交渉だけでなく、必然的に起こり得る状態ということが付加されておりますから、そういう意味で全部が全部救済されるかどうかわかりませんので、真に必要があればそういう状態に対しては対応策を考究いたします。こういうことでありますので、これは皆さんに御理解をしていただきたいと思います。
  129. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 田中通産大臣らしくない歯切れの悪い答弁なんですけれども、そうしか受けられない。というのは、補償的な措置でなければ救済されない分が相当あるということなんですよ。たとえば、これは先般の委員会で出た資料なんですけれども、個人の営業所得、一人当たりの所得金額及び所得税額、四十三年、四十四年、四十五年、こういう見込みを、これは平均値で出す以外になかったのですけれども、これを見ると、個人の営業所得の一人当たりの納税額というと、四十三年には七万二千円です。四十四年だと八万二千円、四十五年だと九万一千円、これだけ全部合計して繰り戻されたところで、いまさしあたり不況が続いた、さらにこのドルショックを受けた、こういうものを免れることがはたして可能かどうかというと、こんなものはどうにもならないという声しか出ないわけですね。これらに対して、もうあとは金融面が手を届かなければ機械の買い取りなりなんなりという補償的な措置以外にない、これは当然考えられます。  それからもう一つは、転業資金二千万円、こういうことなんですけれども大臣も御承知でしょうが、長い間蓄積してお得意を取ってきた関係企業というのは成り立つわけですね。ところが、ここで転業するのに資金を二千万円出して転業しなさいということは、はたして二千万円のお金で転業できるかといえばこれはだれが考えても不可能だ。自分でやってきたことをこれから新しく別な土地へ行って始めるというのならいざ知らず、全然別個なものをこれからやりなさい、もうあなたの仕事はこれ以上だめなんだ、二千万円お金をやるから何とかしなさいと言って二千万円出してやっても、それじゃ二千万円もらってよそへ行ってはたしてその場で転業できるか、これは、あたたかい措置とは言えるのですけれども、実質的にはきわめて冷酷な措置だと言う以外にないわけです。したがって、ここできめた転業資金等を、転業する者には出してやりますよ、いままでにかつてない手は打ちましたよと言っているのですけれども、内容的にそういった転業資金をもらってももう実際に再起できないという人に対してはどういう手を打つというのか、あるいは税金、それから金融面で手の届かない分に対してはどういう手を打つのか、この点についてさっきのは歯切れが悪いのです。それに対応するように万全の手を打つという大臣の歯切れのいい答弁を例の調子で聞かしていただきたい。
  130. 田中角榮

    田中国務大臣 政府としては非常に前向きで積極的な施策をとっているつもりでございます。しかし国民的立場で、より高い手厚い措置をすべきであるというお立場で、国民の利益を守る御発言になることはこれは十分理解をいたします。また政府が政府間交渉というものを前提にしておりますから、そういうことに対して万全の対策考えることもまた当然でございます。しかし、いろいろな権衡ということもございますし、政府が出す施策というものは政府が固有に持っている財産をどうするというのではなく、国民にかわっての立場でやっておるわけでございますから、やっぱり一般的な権衡論も必要であるし、それはやはりその時点における最大の努力と誠意というものが前提だと思うのです。そういう意味では、いまこの法律だけで見ますと、これはまあ税をどうするかという問題だけでございますが、商工委員会にはそうではなく中小企業認定法がかかっているわけです。これは知事がみんな認定をして、認定をすればこういう特典を与える、こういう救済をいたしますというのもあります。在来も中小企業の一般法において中小企業基本法もあり、その他三機関もありますし、それに対しては今度信用補完の制度を拡大するためにどうしましょう、財源を確保するためには一般会計から投入いたしておりますという、いろんな制度が全部考えられて、こういう処置をやっておりますということで政府も出ておるのであって、歯切れがいいといったらとにかく全部収容してあげますということになるのですが、そこまでは私が言うのはやはりむずかしいことであって、いよいよいろんな問題が、予測せざる問題が起こって、それが社会問題につながり、いろいろなことであれば政府もちゃんとまた考えます、こういうことを言っておるのですから、いまのところとにかく政府は誠意をもってやっておるということで理解をいただきたい、こう思います。
  131. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 積極的にそれをひとつ要望しておきます。  それから、投資税額控除制度を新しくつくりたい、こういう考えですが、これについてはいかがですか。
  132. 田中角榮

    田中国務大臣 通産大臣といたしましては、投資税額制度を採用すべしという考えでございます。大蔵大臣臨時代理といたしましては、慎重に考慮を要するということでございます。これはそのとおりでございます。これは立場によってやはり国民の利益を代表する、国益を伸長しなければならないといっても方法はいろいろございます。お互いに富士山に登ろうといっても、吉田口から登る人もあるしよそから登る人もあるのでありますから、これは閣内不統一ではないわけでございます。これは当然立場として私はそういう要求を大蔵省に出しておりますから、臨時大蔵大臣代理としては要求を受けておるわけでございますから、なかなか簡単にはまいらないと思います。  ただ、例から申し上げますと、制度論だけでこの問題に終止符を打てるかどうかというのは問題がある。それは戦後二十六年間かつて迎えたことのないような、昭和の初年のような長期的不況がもし起こるとしたならば、国際的に縮小均衡の状態になるとしたならば、それはそれを排除するためにはあらゆる状態で考えなければならない。四十年不況のためにいまの法人税を二%引き下げたわけでございます。これは私が当時責任者としてここで言明をしたわけでございますが、同時に主税の減収に見合う分として交付税率を二%引き上げましたらいままで問題になっております。なっておりますが、アメリカの例を見ても、不況のときの景気浮揚策として税を使うというときには、どうしてもこのような税が使われるということは過去にも例がございます。税法のたてまえ上からいいますとなかなか主税局がうんと言うものでもないと思うのです。まあしかし財政でもって、一体財政が主体になって税制が補完をするようなことでやれるのかどうか。税と財政は二本の柱にならなければいかぬのが、もっと高度の社会構造になりますと税が主体になって財政というものは社会保障とか、どうしても国がやらなければならないものに局限さるべきかというのは、これからの日本の財政の仕組みに関する問題でございますので、にわかに私は申し上げられない。これがほんとうだと思います。これは四十七年度予算編成が終わるまでにはどっちか結論を出します。結論を出しますが、これはまあひとつ十分政府部内で意思の統一をしまして、そして来年度の景気見通しということに対しての見通しもさだかでないときに踏み切れないという問題もありますので、これこそ歯切れの悪い答弁でございますが、これはひとつ事の性質上御了解を頂きたい。
  133. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 時間が参りましたので、私は意見だけ申し上げて、景気浮揚と公害防止ということを重点にしておる内容のようでありますけれども、公害防止については税関係でさらに突っ込んで検討すべき問題だろうと思うし、それから景気浮揚という点からいってはたしてこれがほんとうに真価があるかどうか、長期、短期というこれを考えましたときに、そういう面からむしろこれは既得権を企業が再び持つような制度であって、やるべきではない、こういう意見を申し上げて質問を終わります。
  134. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 藤井勝志君。
  135. 藤井勝志

    ○藤井委員 私は与党でございますから、本来ならばこういう委員会で開き直った質問は常識的には差し控えなければならぬということも考えましたけれども、特に繊維協定の問題につきましては、経緯が党の考え方からいっても一応やむを得ない事情であったようでございますけれども、党自体も見切り発車をされたというようなこういういきさつになっておることは通産大臣百も御承知のとおりでございます。  ところで、この十月十五日ケネディ特使と通産大臣がいろいろ苦心惨たん交渉された結果、大臣としてはあのとき米側も当初案より内容上幾つかの重要な点についてかなり大幅な譲歩を示したというようなことがいわれておりますが、これは一体どのような譲歩であったか、これをひとつ大臣から——お願いしますけれども、二十分で大臣も沖特に行かれるようですから、繊維交渉のようにイエス、ノーではっきり要点だけを御答弁願いたい。次は次々にやりますから。
  136. 田中角榮

    田中国務大臣 どういう譲歩をしたのかといえば譲歩は七点申し上げなければならない。七点一分ずつといえば七分かかるわけでございまして……。
  137. 藤井勝志

    ○藤井委員 それでは、大体私の承っているところでは弾力条項ということが中心じゃないかというふうに思うのですが、これをどのように弾力条項の実効を確保するかという問題について、すでに党から正式に申し入れがありますね。三項目にわたって申し入れをしております。「仮調印した覚書は内容において左の如き不満、不明確な点がある。よって本協定を結ぶにあたっては、これらを是正、明確にするよう慎重」にひとつ努力してほしい。こういったことで、「通産大臣の努力によって挿入された、いわゆる弾力条項は、その実効をあげるため未達分の活用シフト率の変更又はトリガー方式の弾力的運用等を認めることを明らかに」してほしいという——たまたま先週、事務当局が一応交渉してまいりましたね。そういうこともこれあり、またきょうは、自民党の中ですが、繊維対策特別委員会と商工部会で業界の現状の報告があったのです。非常に心配をしております。そういうことも踏まえ、私はもう政府間協定の本質論について議論しようとは思いません、そういう現状を踏まえて、大臣として御答弁願いたい。
  138. 田中角榮

    田中国務大臣 第一には、この協定が綿製品協定のように十年間で四〇%、五〇%漸減するようなことを目途として締結せられる協定ではないということを確認をしております。その前文をもととして第七項の弾力条項は活用せられるべきであるということであります。ですから、国会でも相当指摘を受けましたが、それを受けて、日米間であのまま、もうイニシャルが行なわれたら一週間以内くらいでさっと日米両国の協定がコナリー氏とこちら側の牛場大使の間で行なわれると向こうは予定しておったわけでございますが、今度はこちらが行って、私とケネディ特使との間に詰めたものを再確認をする。できれば書簡でももらえないか、この条文に対して確認ができないかというところまでやっておりますので、もうすでに十一月半ばを過ぎ、あすは十二月でございますから、すでに一カ月余の歳月を経たわけでございます。まだこれを一つずつ詰めようということで、それが十二月の初めになり、十二月の半ばになり、この間の通産省側から出張せしめた諸君の話では、最終的には十二月一ぱいかかるかもしれません。しかし、これは両国の代表の間で、非常に誠意をもってお互いにやっておるということでありますので、向こうもそんなにぱあっとあっという間にきめてしまえというような強引な態度はとっておらないということは、私は、国会で述べたような実があがるように日本側の交渉団は交渉しておるというふうに思います。
  139. 藤井勝志

    ○藤井委員 このワク、シフト率ですね、こういったことについて、これを変更するということは考えられるかどうかですね。シフト率、これはどうですか。それから、トリガーを発動する、こういうことも含まれて初めて弾力条項の実効が確保できるわけですが、こういう問題について大臣としてはどういう認識ですか。
  140. 田中角榮

    田中国務大臣 伝えられるような数字、それは綿製品ののシフトは一〇%であるとか、五%であるとか、それから毛は一%であるとかいう数字はもう動きません。もうこれは動かないというのは、牛場・フラニガン会談でも幾らやっても動かなかったことであり、田中・ケネディ会談においても動かなかったことでありますから、これは動かない。動かないが、牛場・フラニガンのときは動かないままで実行に移すということでございましたが、田中・ケネディの間では、こういう数字になっておるが、死にワク活用で総ワク五%の範囲内であるならば、日米友好の実をあげるためには弾力的運用をしよう。こういう運用をすべく両国が誠意をもってやろう。そのためには毎月専門家会談をやろう。今度は協定が行なわれておらぬうちに専門家会談の第一弾が行なわれておるわけでございますから、その限りではいままでとは全く状態が違うということだけは言えると思います。
  141. 藤井勝志

    ○藤井委員 いまのようなことは、そういうふうに期待をされておるわけですか。具体的に言いますと、死にワクができた場合、繊維製品は御案内のとおり流行ですから、過去の実績からずっとしぼんでくるやつと、ぐっと伸びるやつとある。しかし、そこにしぼんでくるやつとの間に余裕ができますね。これを活用するということについて、これは日本側がアメリカさんにお願いするというかまえなのか。アメリカは当然そういうことがあったらやるという義務づけが行なわれておるかどうか、この点どうですか。
  142. 田中角榮

    田中国務大臣 協定とは二者が合意に達することでございますので、この協定の精神は、両方ともフィフティー・フィフティーに責任を有する、こういうことでございます。
  143. 藤井勝志

    ○藤井委員 先ほど、五%くらい年実質的に輸出が伸びることを確保できるという趣旨じゃなかったですか。それはともかく、大臣は、どの程度実質的には輸出がある程度伸びることが確保できるというか、どの程度の目安でそこら辺どういう話し合いをつけられて、これからその結果を確保しようとされるのか、お伺いします。
  144. 田中角榮

    田中国務大臣 自主規制という七百五十一億を出した前段があるのです。それは対前年度比五%増しでありますから、五%増しは、これはもう日米間できまっておるのです。しかも、日本は一方的に自主規制を宣言したのですから、宣言したことを破るわけにはまいりません。対前年度比五%といえば、五億数千万ドルに対して五%の五千万ドルないし六千万ドルを加えた分だけは確保しましょう。その中でもって、あまりトリガーやシフト率が非常にこまかく割れていると、綿製品協定と同じように十年たつと半分に減りますから、減らないようにしましょうということでございますから、五%全部確保されれば、これは田中をいじめたけれども、結局はなったなということで、言うことどおりで自主規制と同じ形だということになるのですから、これは国内的に救済政策をやっただけ、国内産業に対しては手厚いことをやったということになると思うのです。しかし、いまのトリガーやシフトをこまかく割っていくと、あのまま条文どおりやられると、結局は、それは綿製品協定と同じくなるおそれがあるから、綿製品協定と同じくなってはいけません。ですから、現実的には自主規制五%増しというものを政府間協定に置きかえたような精神で、日米間は弾力的に運用しましょう、異議ありませんな、こう言っておるのですが、それは五%全部とれれば、これは自主規制をそのまま政府間交渉に移したということになりますから、必ずしも私は五%増し絶対ということは申し上げません。申し上げませんが、黙っていて対米繊維の総ワクがどんどん減っていくというようなことは絶対に私はしないように全力を傾ける、そういう協定を行ない、そういうふうなお互いの申し合わせで弾力条項が運用せられるべきものだ。そのためには大臣交渉もしましょう。毎月一回ずつ技術屋間の交流もやりましょう。  だから、まずこれから十月一日から来年の九月三十日までずっと見まして、日本からアメリカに対する繊維全体の中でもって、それは毛製品のように一%のものもありますけれども、そういう数字にあったようなものからぐんと減っておる、六億ドルから五億五千万ドル、五億ドルになってくるということなら、この問題は、私は努力したけれども、アメリカが私と協定したようにこれを運用しなかったためにそうなったということで責任はただされると思います、現実的に。しかし、これだけの政策を、十万台も買い上げて、とにかく千数百億も考えておって、これだけの政策をしながら、日米間の貿易は、一〇%も二〇%も二五%もそれは伸びない。もう五%で頭打ちということは第一回できまっているのですから、それに近い、激変をしない状態、綿製品協定のように全然どうにもならないような条文の運用でなかったならば、やはり日米間で協力体制をつくるために真にやむを得なかった協定だ、こう見ていただかなければならぬ問題だと私は思います。
  145. 藤井勝志

    ○藤井委員 それじゃ大臣は実質的な輸出の伸びを確保するというのはどの程度の——これはやってみなければわからぬ、相手のある話ですから。自主規制の場合は御案内のように一〇五%ですね。大臣はどの程度の目安をもって実質的な輸出の伸びと考えておられるか。もし、それがうまく達せられない場合はどういうふうな交渉をしようというふうに考えておられるか、そこをひとつ。
  146. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、理想的なものは自主規制をできるだけ政府間協定にしたいということでありましたから、総ワクの伸びが五%に達するようになれば、四・九九ぐらいになれば、これはまあ政治家として、とつおいつ考えたけれどもやってよかったなということになると思います。思いますが、四十六年度の実績としては——これは四十六年度は四十五年度になるわけですが、四十五年度の実績よりもはるかに少なかったということになれば、それはたいへんなことであり、それはもう日米間においてももっと、この条文はかかる運用でやるんじゃないじゃないかということでもって交渉も続けられるし、当然それはやらなければならぬ。私はそのときには、なに通産大臣でなくてもアメリカに押しかけていくつもりです。だが、そんなことにはならぬと思います。ですから、自主規制が五%増し、それから対前年度比というのは対前年度並みですから、この間どのぐらいになるかですね。そういう問題というのをどうしても確保したい。  もう一つは、これから世界の情勢の変わり方によって二国間でどういう協定が起こってくるか。日米間においても、繊維だけで済んでいるけれども、この間どういう問題が起こってくるのかというものも加味されるべきでございますが、いまは新しい問題というものを全然抜きにして、いまの状態における、繊維交渉を締結した時点における状態としては、私がいま申し上げておるような状態をどうしても確保したい、こういう考えです。
  147. 藤井勝志

    ○藤井委員 大臣大臣をやめても事と次第によっては乗り込むと言う。しかし、仮調印をされていずれ遠からず本調印というふうに入るわけですが、この仮調印の条項の中にもある程度修正できると、第六項ですか、出ておりますね。だから事前に——まあ、ああいうふうに十月十五日と期限を切っていわゆるイエスかノーかという、こういうせとぎわに立たされた大臣としてはやむを得ずああいった線で結論が出た。私は決して責めるばかりの気持ちじゃないのです。しかし、その後業界の実情をいろいろ大臣も聞かれ、いわゆるこれはもう非常に複雑多岐な計算になっていますわね。だからそういった場合、実質的に輸出の伸びを確保できそうにないというふうな判断がはっきり本調印までに確認できたならば、大臣はみずからアメリカにケネディ特使をたずね、あるいはまた関係者をたずねて交渉するということがこれは当然あってしかるべきだと思う。やめてもやろうというわけですから。まだ本調印に入る前の現職の大臣として、私はその程度のことは当然お考えになっていると思いますが、念のために質問いたします。
  148. 田中角榮

    田中国務大臣 この仮調印は、田中角榮個人がやったのではありません。佐藤内閣全体として国会にその責めを連帯して負っておるのであります。ですから、イニシャルを行なったことも内閣の全責任において行なわれたものであり、それからこの正式なイニシャルが行なわれたものを土台として正式調印を行なうということも、これは外務省の正式ルートで行なうということにきまっております。しかもその外務省で行なう場合には、通産省の役人も出張せしめて十分詰めることは詰めさせるので外務省はよろしく了解をせられたいという公式な決定をちゃんとしておるわけでございます。そのために、あのまますんなりきまる予定であったものが十五日も二十日も一カ月も、一カ月余もかけておるというのでございますから、まあやれることに対しては全力をあげておるということでございます。しかもそれだけではなく、党の要求とかそれから業界の要求に対しては、私だけではなく総理大臣も官房長官も外務大臣も承知をいたしております。そしていまあなたが述べられたような党側の要求に対しては、外務大臣は正式な外交ルートにおいて調印をする場合にあたってしんしゃくせられたいということを正式に述べてあります。  ですから、私が行くことも出ておる大使が、コナリー氏と調印をするのも、これは佐藤内閣を代表して行なうことでございまして、それは私自身が外務省ルートにもう全然委任をしてしまって、もう外務省の本筋ルートに返してしまったものに私が行くということはないと思います。思いますが、あなたがいま言ったようなことを私は通産省から行っている諸君にちゃんと言ってあり、それから牛場大使にも伝えてありますから、それ以上に、どうもアメリカは不信用だからわしが行ってもう一ぺんやるんだということを私がやらなくとも、日米間で了解ができ得る体制で調印ができると思います。それは、党が要求したものに対して何らか文書にせられたいということさえも求めておるのでございますから、まあ可能な限り最善の努力をいたしておる、こういうふうに理解をしていただきたい。
  149. 藤井勝志

    ○藤井委員 私は、ここが一番肝心な一つのかまえだと思うのです。御承知のように、極東三国をはじめ西欧諸国、特に極東三国の場合には十一月初旬に決着がつくだろうというのがあの当時、十月の中旬ごろの状況だったですね。ところが依然として極東三国は話し合いの決着がまだついてないというのが私の情報なんです。これが具体的に進んでおるかどうか、そこら辺があればその話と、したがいまして大臣、私は、仮調印をしておれがやったから——私が先ほど申し上げたのは、いろいろ詰めてみた。ところが弾力条項というのは単なる口頭禅であって、中身は実効が確保できないということが事前にわかったならば、仮調印をした通産大臣の責任において、やめても出て行こうというふうなかまえであるなら、当然権限のある立場において腹をきめられるべきじゃないか。私はこれが一番大切な、この問題に対する基本的なかまえだと思うのですがね。これはどうなんですか。
  150. 田中角榮

    田中国務大臣 いま私が出張をする意思はありません。
  151. 藤井勝志

    ○藤井委員 そういう木で鼻をくくったような答弁では何だけれども、どうなんです。それじゃこれはもうきまってしもうたということで、弾力条項云々とかいったって、これはも——私には仮定があるんですよ。そういうことについてあなたも追い詰められて、十五日、イエスかノーかということになってどうにもしようがなかったということで一応やられた。その最後のあなたの努力として、弾力条項を挿入することによってある程度輸出の実質的な伸びの確保もできる、こういう前提でであの仮調印をされた。ところが中身をいろいろ詰めてみると、シフトの問題あるいはトリガーの問題入り乱れ、実際的には——結果的にすでにこういうことが本調印までに事前にはっきり確認ができるならば、私は大臣として一応もう一ぺん検討をしてもらいたい。おれの責任上、立場上困る、こういったことは当然あってしかるべきだと思うんだけれども、その点、どうしてもおれは行くつもりがない、こういう何は、どうしてそういうふうに言われるのか。私は、仮定ですよ、全文挿入されたという実効を確保するためにどうしてもそれができないということが事前にわかるならば、六項ですか、修正し得るという内容も仮調印の覚書の中に入っているわけですね。だからスタートの前にそれについて話を詰められるのが、私は事務当局ではなかなか詰まないと思うですね。それを心配するから、ひとつあなたに真剣にこの問題と取っ組んでもらう必要があるんじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  152. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げたように、本来ならばこの仕事は外交ルートで行なうべきものなんです。だからやったのです。牛場・コナリー会談というものをやったじゃありませんか。今度新しい事態が起こったのは、日米経済閣僚会議に私が出席しておった。そして本問題点に対しても日米経済閣僚会議でも議論が戦わされた。私は日米間の両国の政府間協定を行なう意思は全くない、こういって議論をしてきたわけであります。それで帰ってきたら政府間交渉の正式な要請をもう一ぺんぶつけられたということでありまして、政府の意思としてこれは通産大臣が窓口になって交渉に当たるべきであるということから私が交渉の任に当たったのです。任に当たって、そして閣議の決定を求めて、そしてイニシアルを行ない、あとは外交技術上の問題になって正式な外交ルートに戻したものを、それは内閣が、総理大臣がおまえ行ってやってこいというのなら別ですが、そうでなければ、私が出て言いますというようなことをいやしくも言えるような立場にないことは、これはもうあなたでもおわかりのとおりなんです。そのためにこそ各省大臣があるのです。ですから、それは外務大臣が——私ができることを外務省のルートでできないはずは絶対にありません。ですから、通産省の役人も出ておりますし、それだけではない、党側から要求されたようなもの、いろいろなものに対しては、外交ルートではむずかしいかもしれぬが文書で確認を求めてさえおるのでございますから、その上になお私がアメリカへ出ていって調印をする、そんなことは考えておりません。そんなことは、佐藤内閣でもってだれがやってもできます。それは佐藤内閣は連帯をして責任を負っているのであって、個人の力でもってできるものではありません。そんなことは、ちゃんと外交ルートに通したものは外交ルートで最終的段階は結論を出すということでなければ、いつまでたってもものはきまらないと私は思います。
  153. 藤井勝志

    ○藤井委員 ちょっとこの辺話が食い合わないので、時間が都合よく参りましたのでというと何だけれども、皮肉に聞こえますが、ともかく私は事と次第によっては大臣がやめたあとでもおれは行くのだ、そういうかまえがあるのなら、あなた、正式ルートは外務省がやるでしょう。実質的なこの協定の内容について不明な点があり、事務当局で解決のできないという場合は、仮調印をしたあなたがあなたの責任において処理するのが当然じゃないですか。これがわからないのだ、あなたの言われることは。
  154. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、私が国会で述べてきたとおりの協定ができると思っておるのだ。あなたのように、私とケネディ特使とイニシアルをしたようなものと全然違う協定ができるとは思っておりません。
  155. 藤井勝志

    ○藤井委員 重ねて言いますが、それじゃ大臣、あなたが仮調印をされた直後に大臣談話を発表されましたね、あの線に必ずいくと確認をされておるわけですね。抽象的なことばですけれども、輸出は実質的にはある程度伸びる、こういうようなことで、ある程度弾力条項の活用によって確保できる。私はいろいろな内容を、専門家といいますか、そういう関係者から聞いて非常に心配なんですよ。だから初めのうち、たとえば今度の場合の品目、分類、こういうものもアメリカ側の線でものをきめるわけですね。英語と日本語の違いもありましょうし、いろいろ取り扱いが違いますが、そういうことを詰めてないわけです。これは事務的に詰めようと思えば事務当局で詰まるのですが、一番大事な弾力条項の実効を確保するという点においては、大臣がもう一ぺんひとつ真剣に取り組まれる必要があるのではないかという心配があるからこういう発言をするのです。いきなり、おれがサインしておるのではしようがない、本調印をしにくいというのはどうも……。条約文書をオーソライズするのが外務省ですよ。中身について初めから懸念があるようなことだったら、これはやはり大臣のほうでしかるべく配慮されなければいかぬ、こう思うから私は言っておるわけなんです。  最後に、もういいです、答弁は。党の、申し入れしましたね、三項目。これは大臣しかと心得ておられますね。
  156. 田中角榮

    田中国務大臣 協定締結の責任者である福田外務大臣に渡してあります。私ももちろんいただいております。
  157. 藤井勝志

    ○藤井委員 それじゃ大臣、私が言わんとしたところを御理解いただけましたか。あなたが一応協定の仮調印にサインした立場で、それはなかなかいまさらおめおめ行きにくいというお立場もわかりますよ、子供でないから。しかし問題が、あなたが受け取られた解釈のしかたと相手の解釈のしかたが違った場合、それに対して事務的にこれは処理ができない場合は、あなたはその問題についてやはりきちんとしたけじめをつける。これは何もアメリカへ行くだけではないのです。日本でもけっこうです。そういう責任があるのではないかということを、最後に重ねて御質問と私の意見を申し上げますが、大臣どう思いますか。
  158. 田中角榮

    田中国務大臣 イニシアルを行なうことも、私個人ではない、内閣である。協定を行なうことも内閣である。自民党内閣が一体で国会に責任を負うべきものである、こう思います。
  159. 藤井勝志

    ○藤井委員 ちょっと待ってください。自民党という話がありましたけれども、これはあと、結果を報告になっただけですよ。
  160. 田中角榮

    田中国務大臣 だから、私の発言を正確に聞いたらどうですか。自民党内閣はとこう言っています。速記録を見てください。
  161. 藤井勝志

    ○藤井委員 ひとつこれはこの程度でやめましょう。えらい、なにじゃないですか、どうなんですか。そこら辺の、私が最後にお尋ねをした点に対してお答えを願いたいのですがね。
  162. 田中角榮

    田中国務大臣 閣僚として行なった職務は、内閣全体が国会に責任を負っておるものでありまして、内閣の責任において行なったものであるということだけ明確にいたしておきます。
  163. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  次回は、明十二月一日水曜日、午後三時三十分理事会、午後四時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後二時二十七分散会