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1971-10-28 第67回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十月二十八日(木曜日)     午後七時九分開議  出席委員    委員長 齋藤 邦吉君    理事 宇野 宗佑君 理事 木野 晴夫君    理事 丹羽 久章君 理事 藤井 勝志君    理事 山下 元利君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君 理事 竹本 孫一君       上村千一郎君    奧田 敬和君       木村武千代君    坂元 親男君       地崎宇三郎君    中川 一郎君       中島源太郎君    松本 十郎君       三池  信君    村上信二郎君       毛利 松平君    森  美秀君       山口シヅエ君    吉田 重延君       吉田  実君    阿部 助哉君       佐藤 観樹君    堀  昌雄君       貝沼 次郎君    伊藤卯四郎君       寒川 喜一君    小林 政子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         大蔵政務次官  田中 六助君         大蔵省主計局次         長       平井 廸郎君         大蔵省主計局次         長       吉瀬 維哉君         大蔵省主計局次         長       大倉 眞隆君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省理財局長 橋口  收君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         大蔵省国際金融         局長      稲村 光一君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 十月二十七日  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件      ————◇—————
  2. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制金融外国為替に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。丹羽久章君。
  3. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 委員長のお許しを得ましたので、一、二の問題点につきまして、大臣もたいへんお疲れのようでありますが、出席していただきましたので、お尋ねをいたしたいと思います。  最近の経済情勢推移等について、大蔵大臣は就任以来着々と政策を打ち出されてみえますが、米国輸入課徴金賦課とか円の為替変動幅制限暫定的停止等の思いもよらぬ問題が生じ、また一昨日はアルバニア決議案が可決され、中国国連入りに伴うわが国日中国交正常化の動きと関連して、台湾をはじめアジア地域経済援助の練り直しの問題等、たいへんだと御推察いたします。  わが国は、敗戦という現実を経てから二十六年の歳月は、苦しみも悲しみも喜びも幾多の思い出を胸に秘めてきょうを迎えました。この四分の一世紀の平和の間に、世界経済競争の激烈なさなかで、ほんとうに資源の乏しい日本世界の第三位の地位を築いたが、何か大きな変動があるのではないかと心ある人々心配しておったとき、世界の流動から封じ込められていた中華人民共和国が、国連という厳正な共通の場に、何びとにも干渉と妨害を受けずして世界平和のために加盟が正式に認められました。特にその指導的役割りを果たす理事国として大多数の国の賛成によって決定せられたことは、まことに喜ばしいことと私は思い、一昨日の緊急質問に対する総理答弁と同じ感を持つものであります。わが国において、日華条約関係から、また世界大戦の終末の関係から、逆重要事項指定決議案賛成、一方アルバニア案に反対という立場に立たざるを得ない、戦後の経済援助友好関係を結んできたアメリカと同調的の立場をとった外交手段は、私は理解できるものであります。しかし、国民の中には、なかなかこの間の事情を理解できない立場人々があり、国連における日本のとった態度も納得できない人々も多数あるということを認めなければなりません。国を預かり、国民指導者であるものは、常に時勢の推移と十分なる判断をもって責任を果たすことはもちろんでありますが、もしこの判断に間違いを生じたときには、国民は苦しみ、繁栄はなく、進歩はとまるでありましょう。大蔵大臣責任は、日本経済を見詰めて、大蔵行政だけではなくて、世界情勢を見詰めつつ調和ある経済発展を達成して、国民が納得する方針を立てるべきだと思いますが、この重要な時期に、長年にわたる政治生活によりつちかわれた豊かな知識と経験を持たれる大蔵大臣の、不安と心配の中の日本経済を、世界各国人々と十分な討議を重ねられまして解決を得ようとする御努力に対して、私は、与党議員として、心から御苦労さまと敬意を表するものであります。  ここで、関係東南アジアをはじめ、経済援助に対する大臣の御所見をひとつ承りたいと思います。  さて次に、今年度、四十六年度の租税及び印紙収入当初予算では、自然増収の額が一兆四千九百六十五億円と見込まれております。初年度に千三百八十七億円の減税を実施したが、最近における経済情勢にかんがみ、景気浮揚対策の一環として、当初の改正と同程度の規模の千六百五十億円の所得減税を年内に実施することにしていますが、右の追加減税経済活動停滞等による税の減収見込み額等を考慮したとき、租税印紙収入については差し引き四千七百五十七億円の減額補正を行なうことにしています。さらに日本銀行為替差損修正減少が六百九十八億円あるので、その他の雑収入増加見込み額を差し引いても、雑収入全体として六百九十六億円の減収となっております。一方、一般会計最終予算において、経済活動停滞米国輸入課徴金賦課、円の為替変動幅制限暫定的停止等の、当初予算作成後に生じた経済情勢の変化に対応するために、公共事業費中心とする公共投資追加だとか、中小企業対策拡充強化等、緊急に措置を要する追加財政の需要が生じて、二千四百四十七億円の歳出増加が予定されております。このために公債金収入を七千九百億円追加することにしておるようであります。  そこで大臣お尋ねいたしますが、いわゆるドルショックを受けた業界及び企業救済はこれで十分であるかどうか、たとえばこのよう左問題について、あなたのお考えを一応お聞きいたしたいと思います。
  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 一番最初お尋ねは、東南アジア諸国に対する援助についてどう思うかということでございましたが、もう開発途上国に対する援助は、日本のような先進工業国になった国の一つの義務である。ことに日本国際収支現状から見ましても、ここで経済援助責任を私どもは一そう果たしたいと思っております。また、国際間におきましても、御承知のように、GNPの一%を目標とした援助額の達成ということを申し合わせてあることでございますので、その点から見ましても、経常収支余裕の中でこの責任が果たせるだけの余裕というものを日本は確保しなければならぬということを私は考えておりますが、いま国際間でいろいろ平価調整の問題のときに出てきていることは、各国についてどれくらいの経常収支黒字各国が維持してそのほかの黒字を供出するかというようなときに、日本に対する見方が大体非常にきびしいように私ども考えています。そうなりますと、この各国への援助というものがむずかしくなるということを考えますので、そういう問題との関連において、私はいま国際間の交渉で慎重に、そういう問題に支障を来たさないような協調のしかたを日本はしたいということで、いま苦心しているところでございます。  その次の問題は、一連財政政策、いま政府のとっておる財政政策、特に今回補正予算において私どものとった措置が、このドルショックを受けた日本産業界にどれだけの影響を持つかということでございましたが、御承知のように、いままでいろいろやった景気対策で、大体六、七月ごろを底にして景気は立ち直るというところまできておったことは事実だろうと思います。そこに、この追い打ちをかけられて不況が長引くという事態になりましたので、財政政策金融政策も、やはりここでニクソン・ショック追い打ちに対してこちらも対策追い打ちをかける必要がございますので、御承知のような措置をとったわけでございますが、これと来年度の予算編成、この二つを合わせて、大体私どもはいまの不況に対する対策を遺憾なくする、そして国内経済の均衡というものをあと一年でやりたい。この不況状態が二年も続くというようなことだったら、なかなか問題がむずかしくなりますので、これはもう思い切って対策を集中して、ことしから来年一年にかけてもう勝負をきめてしまうというぐらいの覚悟をもってやらないと非常にぐあいが悪いというふうに考えまして、ことしの補正予算は、もう来年度の予算の一部というような構想をもって、国債の思い切った増額ということもいたしましたが、これにつながるものは、来年もっと大幅な国債増額発行ということになるのでございましょうし、ことしの今度の減税政策も、来年の減税とはやはり関係のある減税であるというふうに、私ども考えております。私は、大体ことし、来年の政府対策によって、この不況克服は何とかやってのけられるのじゃないかというふうに考えております。
  5. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 大臣が御苦労していただいて、その不況を一年で何とかして乗り切ってみたい、二年にもなったらたいへんだという、その気持ちはわかります。しかし、それがはたしていまの国際情勢から考えてみて、また日本ドルショックから、これがはたしてほんとうに乗り切れるかどうかというたいへんな問題ですが、その前に、東南アジア中心にして海外援助をする一%という問題点は、これはもう世界に発表したことであり、これを予測せずしてすでにそういうことを言ったのですけれども、この点について、私はある程度手直しをせなければならぬような段階に来ておるように考えられます。大臣はこれを実行していきたいというお考えのようでありますが、いける自信があるでしょうか、どうでしょうか。努力をすると言っていらっしゃいますが、やはりそのときになってみなければわからない。最初から、この金額というのはたいへんな金額だ、われわれは、それがはたしてできるだろうかと、こういう事態にならない前にすでに心配いたしておったのです。ところが、このような事態になってきたのですけれども、その点の見通しを、経験豊かなあなたですから、ひとつお話し承りたいと思うのです。
  6. 水田三喜男

    水田国務大臣 本年度すでに十八億ドル以上ということになりますると、目標に対する〇・九三%ぐらいの対外援助を実現しているということでございますので、一挙に一%というわけにはまいりませんが、しかし、一%ぐらいの目標に向かって努力することは可能でございますし、私は、来年度いま程度援助を若干強化するというようなことは、十分可能であると考えております。
  7. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 それでは、心配いたしておる問題、国際信義観に立つ日本が、一%というのは大臣は何とかしてその程度のことはできるとおっしゃるのですが、あまりそれを追及しようとは私は考えておりません。しかし、最初出発した当時から、非常にむずかしい問題だという懸念をいたしておりました。いま言ったように、景気は悪くなってくる、国民はこれに対して非常に心配をしておる、そこへ海外援助の一%という、いまおっしゃる十八億ドルですか、それだけの金が出るでしょうか。景気回復ができ得ないような事態には、困難のように思うのですがね。経験豊かな大臣が何とかなるだろうとおっしゃるならば、それを信用しておきましょう。  次に、時間がありませんので新幹線並みに聞きたいと思いますけれども、たとえば繊維輸出規制による損害の問題等で、それに対する融資ワクが相当額確保せられたようであります。まことにけっこうなことだと私は思っております。しかしながら、繊維業界に対する融資金利が、六分五厘であると聞いております。六分五厘のこれだけ高額な金利を支払うということは、業界では相当困難だと言っておるのです。しかも政府間の協定が締結された今日、このような融資金利に対して、政府はもっと安くお考えになっていただけないでしょうか。自主規制のときの金利が六分五厘、政府間協定が締結された今日の金利は、救済する意味において何とかもっと引き下げを考えてやってもいいと思うのですけれども、その点大蔵大臣お尋ねいたしたいと思います。
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 繊維につきましては、自主規制を実施するというときに、必要な金融対策は全部とったことは御承知のことと思います。今回為替制度にああいう措置をとったあと輸出関係のある中小企業に対する金融措置も、別個に閣議決定をもって九月二十三日にこれを決定いたしましたので、一応の対策はできておりますが、今回さらに繊維政府間協定によって云々という事態を迎えたことについて特別の措置をとるかということにつきましては、昨日政府の中に対策本部というものが設けられて、そこで従来の自主規制をやったときと比べてどういう援助強化をしなければならぬかとか、その幅とか質のよう左問題について、これから対策本部中心対策を立てるということでございますので、そこの結論をまってから私ども考えたいと思っております。
  9. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 わかりました。事業をやる者において、融資ということは一番たいへんな問題でありますし、それに対する支払い利子というのが高ければ高いだけ苦しむのです。六分五厘だと、そう恩恵をこうむった率にはなりませんし、きょうも、大臣お聞かれであったろうと思いますが、予算委員会で、総理ほんとうにこの繊維問題については前向きの姿勢でできるだけの援助とできるだけの救済の方法を考えようということを言明しておられます。そういう点から考えましても、ひとつできるだけ対策本部でこの問題を取り上げていただいて、そうして金利を引き下げるように御努力いただきたいと思います。その点は答弁要りませんから、ひとつお考えをいただきたいと思います。  今回の繊維の対米輸出停滞のあおりを食って転業あるいは倒産または営業不振のために立ち行かなくなった人々及び会社の繊維機械政府買い上げをするということを関係省である通産省考えているようでありますが、その金額は先ごろの通産大臣の数字からいっても膨大左ものになりますし、その資金的裏づけとしても、通産省大蔵省のほうは十分話し合い等考慮していただいているかどうか、この点もこの際お尋ねいたしておきたいと思いますが、どうでございましょうか。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 まだ通産当局にも、これに対する対策というものはできておりません。したがって、大蔵援助についての要望というような具体的なものも、できておりません。したがって、対策本部ができたのですから、ここでいろいろこういう問題がおそらく討議されるだろうと思っております。ですから、今回の補正予算には前に自主規制をやるのに必要だときめた措置をやっておりますが、本格的な対策は来年度の予算で間に合うということで、今度の補正予算の中に入っておりません。
  11. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 それでは、補正予算のほうではどういうふうにお考えいただいておりますか。現実はすぐにもそういう問題が起きておりますけれども、来年度予算でそれは考えてみよう、いまのところは考えておりませんということですか。
  12. 水田三喜男

    水田国務大臣 補正予算では百中一億ですか、織機買い上げとかということがきまっておりますので、これを全部やる。最後予備費の支出とかというようなものが——最初予備費を一部出しておりますが、今度は補正予算で残りのものを全部出すという措置がとられております。しかし、それから先の対策というものは、まだ予算要求となってあらわれておりませんので、これは来年度の予算編成のときにこういう要望を織り込めばいいのじゃないかと思っております。
  13. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 それじゃ大蔵大臣、私はこういうことを申し上げたいのです。  もうすでに政府間協定によって倒産するものもあろうし、どうしてもやめなければならぬ、転業していかなければならぬというのに百十億の金で来年度の予算までつないでいくことができればけっこうだが、なかなかそんな金ではつないでいくことができないと思うのです。だから、対策本部ができたとおっしゃるのですから、すみやかにその措置考えていただくようにひとつお願いいたしたいと思います。
  14. 水田三喜男

    水田国務大臣 対策は出てこない……。
  15. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 対策は出てこないかしらぬが、そういうことを言っておるのですから、そうおこらないように……。その点は政府部内の統一の問題ですから、私は質問するのですから、どうぞひとつよろしくお願いしたいと思うのです。だいぶんお疲れのようですから、言うことにとげがあるようだが、私はあなたに最初から言っておるように、どうもほめちぎっておるのではないかといって堀さんなんかからしかられておるほど、あなたの一生懸命おやりいただいておることを与党議員として感謝申し上げておりますと私は言っておるのですから、そういう意味も十分にくんで御答弁いただきたいと思います。  その次に、繊維機械買い上げが実施されたとしたならば、その買い上げ機械政府はどのように処分するつもりなのか。先日、これはお読みになったことかどうか知りませんが、日本経済新聞には、買い上げ機械を教材として学校、職業訓練所への配置が報道されておりましたが、この点はどうでしょうか。あなたにはそれも何にも連絡ありませんでしょうか、どうですか。
  16. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういうことは、まだ聞いておりません。
  17. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 聞いていない、これはどうも……。  それでは最後に、もう時間が来ましたから、お尋ねをいたしますが、陶磁器だとか玩具だとかいう輸出産業も相当、繊維ばかりじゃない、今度は打撃を受けております。これは大蔵大臣の耳にも入っておることだろうと思いますが、これらに対して、政府は何か金融上の優遇措置を検討しておっていただけるかどうでしょうか、この点ひとつお尋ねいたしたいと思います。
  18. 水田三喜男

    水田国務大臣 一般金融機関に対しましては、銀行局長からの通達で、地方の財務局長に管下の金融機関に対してこの問題の指導をするようにということで、中小企業金融上のめんどうをみることは十分遺漏のないようにということをやらせておりますし、一方民間の金融機関ではなくて、政府関係中小企業金融機関につきましては、融資ワクを千五百億円増大するとかいうようなことを、いろいろな一連措置政府関係機関にはとっております。したがって、それによって当分の問題はおそらく支障なくやっていけるのではないかと思っております。で、過般、この問題について大阪へ行きましたときにも、みな各団体と会っていろいろお聞きしましたが、こういう処置を早く政府がとったことは非常によかった、そうすれば、みなが安心して、大急ぎでみんながたくさんかけ込むということがないので、順々にこの申し込みが来るというようなことで、いまのところ、一カ月以上やったのですが、政府措置に対して実需というものがそうはっきりとあらわれてこないということでございますが、これは考え方によると、非常にいいことでございまして、早くとったから安心して来ないのだ。むしろ十一月ころからほんとう実需となってあらわれてくるのではないかと思うのですが、政府のとった措置に対してまだほんとう実需というものがあらわれてこないというような現状でございます。
  19. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 私は……。
  20. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 もう時間が切れましたので……。
  21. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 まだ三分ありますよ。
  22. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 時間は切れました。  佐藤観樹君。
  23. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いまちょうど丹羽先生のほうから繊維問題が出ましたので、私も党の繊維協定破棄繊維対策闘争本部事務局次長をやっておりますので、ちょっとお伺いしたいのですが、これはこういう短い時間では詰まりませんけれども、いま丹羽先生が言われたように、今度の政府間協定によって倒産がふえるだろう、あるいはその対策をしなければいかぬだろう、田中通産大臣によれば、その対策はおそらくまず一千億は要るだろうということを言われておるわけです。これだけ予算的措置が必要だといわれるものが、こういう協定というものが国会承認を経ないで、しかも一千億といわれるほど膨大な予算的措置を伴うものが、いま大蔵大臣も言われたように、まだ正直いってどのくらいになるかわからないわけですね、被害額は。わからないけれども、とにかく田中通産大臣は一千億織機買い上げが必要であると言っておる、こういうようなたいへん膨大な国民の負担のかかる協定国会承認を求めず、それでいて財政措置だけは国会のほうにしてもらいたい、これでは、やはり国民ツケだけは回されるけれども発言権は全然ない。おれはこんなに酒を飲んだはずはないのにツケだけはこちらに回ってくるのと同じことだと思うのですね。そういうことは、行政権の乱用ではないか、あるいは越権行為ではないかというふうに考えておるわけです。これはこんな短い時間では詰まりませんけれども大蔵大臣、やはりそこは金を出すほうとして、大蔵大臣ポケットマネーではございませんけれども、一応出すほうとして、いわゆる国会承認をしないこういうものにお金を出すということが、はたしてこれが民主主義的ルールとして許されることであろうか、この辺のところを少し——これはこのことについては一問だけで簡単にそう詰まる問題ではありませんから、ちょっと御意見をお伺いしたいと思うのです。
  24. 水田三喜男

    水田国務大臣 この協定は、まだ本協定が結ばれておりません。したがって、その内容も何もまだほんとうに確定はしていないということでございまして、きょうの予算委員会質疑応答を聞いておりましても、したがって、この被害程度も具体的ではないというようなことでございましたので、これからこの問題についての被害程度と、それに対してどういう援助措置をとったらいいかというようなものが、具体的になって出てくるものだろうと私のほうでは考えております。したがって、一千億とかなんとか言われたのは、これは別に根拠があって言われたのではないのだ、通産大臣もそのうちに自分のほうから具体的な案を出すと言っておりましたので、これは別に通産省として正式な要望とかいうようなものではございません。こういうものを政府間できめられるかとかいうような問題は、これも予算委員会で論議された問題でございますが、これは、政府側答弁によりますと、行政権の範囲でできることであるという答弁でございました。
  25. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これはたいへん左問題なんですけれども、実は私もきょうはそれをやるつもりじゃなかったのですから、これは私はあらためて別の機会にぜひやらさせていただきたいと思うのです。  私に与えられた時間は五十六分ということでございますので、簡単にひとつ詰めて私もお伺いをしたいのですが、どの新聞を見ましても、一昨日の中華人民共和国国連加盟問題について、水田大蔵大臣所見なり感想というものは出ていないわけです。これはある意味では当然かもしれませんけれども、これは私は、今後の中国貿易ということを当然考えなければいけない現在の日本でございますから、その面からいくと、財政当局としてこの中国国連加盟というのを、水田大蔵大臣は、外務大臣じゃございませんけれども、閣僚の一人としてどのようにお受け取りになっているか。さらに、輸出依存率アメリカに三十数%といわれるくらいの日本では、これはやはりアメリカがくしゃみをすると日本がかぜを引くという経済体質だと思うのです。これは、やはり今後とも中国あるいはソ連とも貿易をしていかなければいけないと思うのです。その辺、基本的な点、つまり中国国連参加についての大蔵大臣の御所見、それから今後の中国貿易のあり方、日本経済における位置、こういうものについて、どのような御所見をお持ちだか、お伺いしたいと思います。
  26. 水田三喜男

    水田国務大臣 中国問題については、いわゆる政府考え方にわれわれは従っているということでございますので、特別の考えはございません。
  27. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうもあまりよくわからないのですが、先ほど申しましたように、いわゆる日本経済というのは、現在三分の一以上がアメリカにたよっている。これで、今度のニクソンの新経済政策第八項目ということで、日本がたいへんガタがきているのです。その面では、今後の日本の伸びる道というものは、中国貿易ということを当然考えていかなければならない。あまりにも日本はおくれ過ぎていたと思うのです。その辺の御所見はいかがですか。
  28. 水田三喜男

    水田国務大臣 貿易は、もう各国とも伸ばさなければいけないと思っております。したがって、日中両国の国交が回復したというときには、それを契機に日中貿易がもっともっと拡大することは、当然われわれの希望するところでございます。
  29. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで私はお伺いしたいのですが、大臣御存じのように、わが国では、輸出入銀行がブラント輸出に対する延べ払いということを現状においては認めてないわけですね。今後やはり日本は日中貿易考えていく場合には、当然これは輸出入銀行による延べ払いを認めるという方向に進んでいかなければいけないと思うのですが、いかがですか。
  30. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは、いままで認めないということには絶対になっておりません。これはケース、ケースで審査して許可するものは許可するということになっておりますので、これは今後といえども同じだと思います。
  31. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それは実態的には、事実認めてないわけですね。  そこでお伺いしますけれども、三十九年のいわゆる吉田書簡、これは大臣の頭の中では現在どのように生きていますか。
  32. 水田三喜男

    水田国務大臣 私はそういう問題よくわかりませんが、いずれにしましても、吉田書簡などにかかわらず、輸銀の問題は決してこれを禁止していないということだけは事実でございます。私も、この前の委員会答弁の必要があってこの問題を調べましたが、特にこれを禁止しておるという事実はございませんで、こちらで許可したのでも先方で承認にならなくてやめた例もあるということでございまして、これはいままで言われているようなことじゃございません。
  33. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 輸銀で、あるいは日本側で認めたけれども、向こうが断わった例というのは、どういう例ですか。
  34. 水田三喜男

    水田国務大臣 どこか、そういうふうに私は報告を受けました。いま事例が必要なら、答弁します。
  35. 稲村光一

    ○稲村(光)政府委員 ただいまの大臣の申されました例でございますが、四十年の一月にニチボーのビニロンプラント、それから四十年の二月に日立造船の貨物船一隻、これにつきまして輸出承認を行ないました。輸出承認を行なったわけでございますが、結局あとで中共側のほうから、何と申しますか、契約の破棄を輸出社に対して通告してまいりました。結局実現をいたさなかったという例がございます。
  36. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうすると、稲村局長でけっこうなんですが、それはいわゆる輸銀の延べ払いを認めたケースですか。輸銀の延べ払いがくっついての案件ですか。
  37. 稲村光一

    ○稲村(光)政府委員 それは、輸出社のほうで輸銀の融資を申し込みを行なわないまま契約手続を進めました。それに対しまして輸出承認を行なったわけでございますが、輸出社のほうで輸銀融資の申し込みを行なわなかったということでございます。それで、あとで両件とも契約破棄というふうな通告があったということでございます。
  38. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうも話が違うのですが、私は、そもそも輸銀の話から始めたわけです。いまの局長のお話では、それはつまり輸銀をつけない。つまりこれだけ膨大な額になると、普通の銀行では延べ払いということは、ブラント輸出ということになりますとできないわけです。それで輸出入銀行というものがあるわけですね。ですから、いま局長の言われた件というのは、輸銀の延べ払いは認めたケースですか。そのこと以外だったら、この際は関係ないんですがね。
  39. 稲村光一

    ○稲村(光)政府委員 ここにございます私の記録によりますと、輸銀に対しまして輸出社のほうで申し込みをいたさせなかったということでございます。
  40. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いたさなかった、それはあとでお伺いするにしても、それは何年のことですか。
  41. 稲村光一

    ○稲村(光)政府委員 昭和四十年のことでございます。
  42. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それは、いたさなかったのではなくて、三十九年に吉田元首相が台湾に行って、蒋介石主席に、中共向けのプラント輸出に対して輸銀の延べ払いを認めることはいたしませんといういわゆる吉田書簡が生きているから、三十九年にそれができて、四十年にそういうものを出しても、実質的にはペーパーに申し込み書がなる前に、これはこわれている件だと思うのです。ですから、やはり今後問題になるのは、大蔵省として、あるいはこれは通産行政にも関係があるわけですけれども、現在、佐藤首相が本会議でも中華人民共和国が唯一の正統政府であるということを言われているこの時点において、吉田書簡というものははたしてどういうものなのか、どういうふうに生きているのか、あるいは具体的に死んでいるのか、その点はどうですか。
  43. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま別に吉田書簡が現実に生きているとは、私は思っておりません。  いまの問題は、もう一ぺん調査します。と申しますのは、私ははっきりと、説明を聞いたときに、輸銀のほうはいいといってもそれができなかった例もあるという、その例としてはっきり聞いた記憶がありますので、その間の事情をもう一ぺん調べて御返事します。
  44. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 では、きょうはその件については、先ほどの予算委員会でいくとテークノートですか、ノートしておくことにいたします。  私は、この際、いま言ったような新しい中国との関係を迎えて、やはりここでさらに前に進んで、この前の福田大蔵大臣のときには、輸銀の延べ払い輸出に対してはケース・バイ・ケースである、ものによって認めるけれども、ものによっては認めないのだ——一体どういう基準で認める認めないというのがあるのかということがよくわからないのですが、ケース・バイ・ケースということばを使われた。しかし、やはりこういう新しい時代を迎え、しかも対米依存率が非常に高い経済体質ではいかんというこの時代に、もっと前向きに中国貿易をささえるような、そういう輸銀の役割りというものは、当然必要になると思うのです。その点について、大臣の御所見はいかがですか。
  45. 水田三喜男

    水田国務大臣 ケース・バイ・ケースというのは、別に特別なことじゃなくて、全部どこの国の輸出においても同じことをやっているわけでございます。要するに、国によって差別しないということだろうと思います。当然そのために輸銀というものがあるのですから、国によって輸銀の差別というものはしないという方針でいけば、それでいいんじゃないかと思います。
  46. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 全部の国にそうだというふうに大臣おっしゃられますけれども、やはりそれは違うのであって、いわゆる経済ベースとして合わぬものは、これはまた別ですね。しかし、そうじゃなくて、経済ベースとしては合うんだけれども、相手が中国だからいかんのだ。いわゆるプラント輸出ということになりますと、相手の国力を増強させることになる。ですから、いかんのだということで拒否された例があるわけです。もう一つ問題は、吉田書簡という、いわゆる私的な文書が国の貿易の問題にからんでいるわけです。ですから私は、ケース・バイ・ケースというのは、先ほどから言っているように、どういう基準がケース・バイ・ケースなのかよくわからないようですけれども、この際やはりもう少し輸銀の延べ払い輸出に対して前向きの姿勢というのが、大蔵大臣としてはこの時期にあたって必要なのではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  47. 水田三喜男

    水田国務大臣 ですから、いま申しましたように、私はその間の事情がどうなっているのか、取り扱いを区別しているかということをあれしましたが、結局区別していないということでございましたので、ケース・バイ・ケースということは、結局申請されたときにそのケースを審査してきめるということで、輸銀のこの延べ払い輸出に適当なものであるかどうかというのは、全部どこの国に対する延べ払いでも審査しますから、それと全く同じで、特に中共に対する区別をしないということで、今後も区別しないでするつもりでございます。
  48. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうも残念ながらあまり前向きな答弁がないのですけれども、そうしますと、いわゆる相手が中華人民共和国であるからということによって差別は受けない。いわゆるコマーシャルベースに合わないものでしたら、私はかまわぬと思うのです。ただし、東南アジアに対するブラント輸出、それと同額のような、あるいは同じような条件のもとで、これが中国に対しては認められないということでは、これは私は輸銀のあり方に非常に問題があると思うのです。ですから、たとえば、これから私も例をさがしますけれども、そういうようにコマーシャルベースに合い、しかも他国に対しては認めているけれども、同じような条件下で中国に対しては認めないというようなことは、今後は起こらない、こう考えてよろしゅうございますか。
  49. 水田三喜男

    水田国務大臣 起こらないと思います。現にそうしているということでございます。
  50. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 現にそうしているかどうかは、先ほどの話に関連してくるわけなんですけれども、そこで、やはり中国との貿易を拡大するにあたって一つ問題なのは、これは直接大蔵大臣の所管ではないかもしれませんけれども、ココム、チンコムの制限品目があるわけです。この際に、それは私たちは軍需品に対して、これは友好国といわれる国であっても絶対にやってはいかぬといっていることですから、もちろん軍需品に対してはかまわぬのですが、プラント輸出その他の、いわゆる戦争に関係のないものに対して、ココム、チンコムというもののリストが非常に多くできているわけです。最近の報道によりますと、これが大幅に削減をされるというふうに政府は検討しているということでございますけれども、現在たしか十八日からパリでココムの会議をやっているはずでございますけれども、そんなことも含めて、まずこれからのココム、チンコムというもののあり方について、大蔵大臣はどのようにお考えですか。
  51. 水田三喜男

    水田国務大臣 中共が国連加盟するというような事実を通じて、こういう問題は当然各国の相談によって変更されていくものだろうと考えています。
  52. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうすると、この報道によりますと、現在百六十七品目あるわけですけれども政府としてはまずはとりあえず百品目ぐらいに下げたいというふうに報道されているわけですけれども、それはそのとおりだと受け取ってよろしいですか。
  53. 稲村光一

    ○稲村(光)政府委員 ココム、チンコムの問題につきましては、先ほど佐藤先生もおっしゃいましたように、大蔵省の所掌でございませんので、詳しいことは聞いておりません。たいへん申しわけございません。
  54. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 所管は通産省になると思うのですが、方向としてやはり国の経済を成り立たせていくことですから、これはやはり大蔵大臣関係があると思うのです。ですから、所管ではないが、一閣僚としてやはりそういう方向にいくべきだと私は考えますが、大蔵大臣の御所見をお伺いしたいわけなんです。
  55. 水田三喜男

    水田国務大臣 各国におけるチンコムのできた当時のことを見ますと、いわば一つの懲罰の措置でございますし、もしこれが解除されないようであるなら、国連に迎え入れられるということも当然にないでしょうし、国連加盟するというようなことは、いわゆる懲罰措置としてのこういうものについては当然変更があってしかるべきものだろうと思いますので、この問題は、やがて関係各国間において解決される問題だと私は思います。
  56. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 懲罰的ということについてはちょっと私引っかかるのですが、あまり時間もありませんので……。  これは大蔵省の所管になるわけですけれども、今日まで中国との正常な条約がなかったわけです。このために中国に対しては高い関税をかけられているものは、たとえば紅茶とか生糸とか緑茶とか、三十八品目にわたって他の国よりも高い関税がかけられている、こういうふうになっているわけですけれども、こういうことでは、私は、今後の日中貿易を進めるにあたって非常に障害になると思うのです。このあたりも、新しい日中関係に向かって、日中貿易のためにもこういうものを他国並みに下げていかなければならないと思うのです。その辺のところはいかがですか、そういう措置をこれからなされる意向がございますか。
  57. 水田三喜男

    水田国務大臣 関税は相互的な問題が非常に多いのでございますが、ただいま中共とこういう問題の相談ができないということですから、こちらは一方的な措置にしかなっておりませんが、各国間の関税の慣例によって、相互的な問題がたくさんございますので、国連に復帰する、したがってその後に日中国交が回復するというようなことも、当然これからの問題でございましょうし、その線に沿って関税問題もだんだんに解決されていくだろうと思います。
  58. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうもあまり前向きでないので非常に残念なんですけれども、もう一つお伺いしますが、さらに進んで中国から特恵を供与してくれ、こういうようなたとえば申し出があった場合、これは認めるというぐらいの前向きの考え方はございますか。
  59. 水田三喜男

    水田国務大臣 もしあれでしたら、あと答弁いたします。  それは、完全に言われたからすぐよろしいという措置はとれない問題がございます。その点あとから答弁いたします。
  60. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いや、私は局長の話じゃなくて、これはやはり新しい日中関係あるいは日中貿易が必要であるという新しい段階に向かって、いま申しましたように、ココム、チンコムのリストを減らす、あるいは先ほど申しましたような、特別に中国に対して高い関税になっているものを減らす、あるいは場合によっては特恵も供与する、こういうような姿勢が、新しい日中の時代になってやはり必要なんじゃないか。これは私は局長なんかの答弁じゃなくて、政治の姿勢の問題だと思うのですね。ですから、私はこまかいことはいいんですよ。たとえばそういう申し出があった場合に、認めるというところまで政府考えていらっしゃるのかどうか。政治姿勢の問題をお伺いしたいわけです。
  61. 水田三喜男

    水田国務大臣 政治姿勢はちっともかまいませんが、これをやるためには、中国側にもこっちから求めなければならぬ問題が当然出てきますので、こういう問題の折り合いがつかないというと無条件にやれないという問題が各国間にございますので、この問題についての詳しい点をあとから答弁いたします。
  62. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 最初に、水田大蔵大臣はいま姿勢は変わらぬと言われたのですが、それがどうも私は納得いかないわけです。一方では、新しい時代を迎えたから、いわゆる中華人民共和国中国の唯一の正統政府である、北京政府が唯一の正統政府であるという新しい時代に入ってきたわけですね。それに従って、いわゆる台湾に対する借款というのはこれから少し押えよう、いままで出し過ぎていたわけですけれども、押えようといったのは、やはり一つの変化だと思うのですね。転換だとは申しませんけれども、変化だと思うのですね。それはやはり新しい、水田大蔵大臣がたびたび言われるように、国連にあの圧倒的左多数で入れるような時代になり、正当に議席が回復されるような時代になっている。で、台湾の政府というのは、これは一政府ではない。私どもの見解としては、一政府ではないと思うのです。こういう時代に向かって、しかも日本経済がいま置かれている状態というのは、何かこれはアメリカ貿易——釈迦に説法かと思いますけれどもアメリカに三五%も輸出を依存しているということではいけないとわが党は言ってきたわけですね。こういうような経済体質を変えなければならぬ時期になっているわけですね。ですから、それを中国なりあるいはソ連なり、いままでやってないところに転換をする時期に来ているのではないか。しかも、それがちょうどいま二つ一致している時期だと思うのですね。そういう面で輸銀の使用の問題なり、関税の問題なり、あるいは場合によっては特恵の供与の問題なり、こういう問題について、もっと前向きに考えていかなければならない時期にあると思うのです。それで、水田大蔵大臣の政治姿勢をお伺いしているわけなんです。また最初の問題に戻ってしまいましたけれども、この辺は、そうすると、いかがですか、そういう認識には立てませんか。
  63. 水田三喜男

    水田国務大臣 台湾が国連から追放されて中共が国連加盟するということによって起こるいろいろなことは、解決すべき問題はこれからもう山積しております。たとえば、IMFというような国連の他の機関との関係がどうなるか、中共が新しく参加するのか、あるいは台湾政府の地位を継承するのか、そうすれば債権、債務をみな引き継ぐのかとか、いろいろ問題がたくさんありますので、一連の問題は、こういう新しい事実が発生したということを中心にして、日本におきましても、貿易の問題にしろいろいろな問題を全面的に考えるべき問題がたくさんございますので、要するにその一つということになろうと思いますが、これはやはり全体として総合的に政策考えなければならぬ問題でございまして、ここでいま急に、この事態で一つ二つを取り上げてこう、ああと言っても、なかなか、断片的な回答になるだけでございますので、これは私どもとして、中共というものが国連に入った、この事実を前にして、これから日本はどういう政策を中共に対してとるべきかということは、もっとじっくり政府側として時間をおいて検討すべき問題だと私は思います。
  64. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうも私は、政府としては対応策がおそ過ぎるのではないかと思うのです。たとえばことしアルバニア決議案が通らなかったとしても、おそらく来年は通ったでしょう。それは、時間というのはわずか一年間のことです。正式に入ろうと入るまいと、やはりこの日本の持っている対米依存率の高い経済体質、これは変えなければいけない。これは現にいわゆるニクソン新経済政策八項目によって日本がいまどんな混乱を起こしているかということは、水田大蔵大臣も非常によく御存じだと思うのです。ですから、そういうことからいうと、いま国連中国が迎えられた、ですから、今後のことはこれからやっと考えるのですということでは、これは私はあまりにも対応がおそ過ぎるのではないかと思うのです。佐藤首相が、きょうの予算委員会ですか、新聞が中国中国と書き過ぎると言いますけれども、私たちは何も中国一辺倒で言っているわけではないのです。アメリカとけんかしろなんて言っているわけじゃないのです。三五%という対米依存率というものは、あまりにも高過ぎるではないか。これは前々から言ってきたことです。高いから、向こうが今度のように新経済政策八項目をやると、たいへん日本は困るということになるわけですね。これは西ドイツなりフランスなりのように、一〇%から九%の対米依存率であるならば、ここまで深く日本経済が深刻になることは私はなかったと思うのです。そういう意味において、やはり新しい貿易の相手国というものを求めなければいけない。それが中国国連の参加ということにたまたま一致しただけであって、初めてここで、正式に中国国連に入ったから今後のことはこれからじっくりと総合的に慎重に検討しますというのでは、私は、なかなか日本経済は立ち直らぬし、今後の日中貿易なりの促進ということにはならぬと思うのです。どうもその辺が、私は転換と言うのが——何も私は時代に迎合しろと言っているのではないのです。ただ、日本経済というのはそういう体質を持っているし、それをまた当然しなければいけないし、それが一つの日中の友好にもつながってくると私は思うのです。その辺がどうも大蔵大臣からはあまり前向きな意見が聞かれないように思うのですが、私の考え方は間違っていますか、どうですか。
  65. 水田三喜男

    水田国務大臣 ちっとも間違っていないと思います。ただ、一日前に入ったからといって、あしたからどうだどうだ、そう言ったって、貿易が大きくふえるというわけではございませんし、そういう方向がきまったら、きまったことに沿って、今後貿易政策においてもじっくりと考えるべき問題だ。それによっていろいろな変化が起こると思いますが、こういう事実があったからといって、きょうからすぐに大きい変化をするものじゃございませんで、貿易を伸ばさなければならぬということは当然のことでございますので、そのやり方についても、これからじっくりやる問題であろうということを述べたまででございます。
  66. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 この問題は非常に大きな問題ですので、私はさらにまた別の機会に、今度は具体的な例で輸銀の問題をまた質問いたしますし、それから今後の政府中国に対する具体的な姿勢というものについて問うていきたいと思っておりま  す。  もう一つの問題は、これは予算とも関連をしてくるのですけれども、先ほど私は冒頭に丹羽委員の質問と関連して、どうも政府というのは自分の都合のいいほうばかりに法律を解釈して、そうして国会を無視しているのではないか。これは先ほど申しましたように、あるいは先ほど予算委員会でも民社党の方が質問なさっておりましたように、三年なら国会承認は要らないのだ、五年だったら要るのだというような、かってな論理をつくってきて、たいへん予算措置の必要なものまでそれを政府行政権の範囲であるとやっておるわけですけれども、ひとつ私がお伺いしたいのは、この公債の発行の問題ですね。これはもう新聞等で、あるいは予算委員会で、ある程度論議があったところですけれども、この問題にしても、私は、少し政府は自分の都合のいいほうばかりに解釈し過ぎているのではないか、こう思うのです。で、政府予算委員会の提出資料として「本年度の補正予算における公債発行の追加について特例法によらない理由」というのを四項目にわたってあげられているわけですけれども、どうも私は、これも手前みそで、あまり法律的裏づけもない、こう思うのです。  そこでお伺いをしたいのですけれども、もちろん水田大蔵大臣も中身については御存じかと思いますけれども、本年度の国債発行額、これが追加額が七千九百億円です。しかし、このうちの公共投資追加が二千三百二十億円、残り五千五百億円というのは、これはいわゆる税収や日銀納付金の歳入の見込みが狂ったことによる、いわゆる赤字国債に私はなっていると思うのです。そこで、もう釈迦に説法でございますけれども、財政法第四条の第一項には、政府が公債を発行するときには、公共投資あるいは貸し付け金等以外のものには使ってはいかぬというふうに書いてあるわけですね。そこで、特例法によらない理由の第一項目にあげていることが、こういうことですね。簡単に申しますと、当初予算と本年度の補正予算と合わせれば、公債の発行額というのは公共事業費のワクの中に入っているから、ですから、これは財政法第四条第一項のただし書きによるところの発行であるのだというふうに、まず特例法を出さない理由を述べていらっしゃるわけです。しかし、私は財政法第四条第一項のただし書きというのは、基本的には公債というものは出しちゃいかぬ。ただし、出す場合には、ただし書きに書いてあるように、公共投資あるいは貸し付け金、こういうもの以外には出しちゃいけませんよというふうに書いてあるのだと思う。財政を扱う場合には、きわめてシビアに、公債を発行しちゃいかぬのだ、こういう精神が、私はまず第四条の第一項には書いてあると思うのです。私たちが座談会でまた公債を発行すると言うと、年寄りの人一は、年をとった方々は、たいへんいやな顔をするのです。なぜならば、戦争のときの国債ですね、これを思い出しますから、国債と言うとくすくすと笑うくらい非常に信用がないわけですね。ですから、あの戦前の例を踏んじゃいけないということで、私は財政法第四条第一項というのはあると思うんです。  それからもう一つは、この第一項目に、当初予算と今度の補正予算を合わして公共事業費の中でおさまっているからいいじゃないか、こういうふうにいわれておりますけれども、まだ、これは内閣改造があったとはいえ、首相は佐藤首相であるのですから、昭和四十年のいわゆる特例法をつくったときの福田大蔵大臣のことばというのは、私は生きていると思うのです。福田大蔵大臣は、四十一年の二月七日の予算委員会では、こういうふうに述べているんですね。「年度途中で税収が落ち込んだ」のに国債を出す、これを四十年度予算に「建設費があるからといって、それの見合いである」、いわゆる建設国債のことですが、「という考え方をしてはならぬ。そういうこじつけ的なやり方をしてはいかぬ、これは率直に歳入補てんの公債であるという理論をとるべきである、」こういうことを言われて、そうして特例法を国会に提出されたわけですね。私は、このことばというのはまだ生きているし、そのくらい、やはり財政支出の場合には当然インフレがからむわけですから、非常にシビアにやらなければいけない。シビアにやるということは、財政法第四条第一項の精神をやはり踏まえてやらなければいけないと思うのです。その面では、今度の、先ほど数字をあけましたように、公債発行額というものは、公共投資追加よりも倍以上、いわば私たちが言うところの赤字国債というものがあるわけですね。これは私は、予算をつくる場合に、あるいは国会に提出する場合に、法律が一つ少ないとそれだけスムーズに国会が通るから、こういう政府国会対策のうちの一つだと思っているのです。特例法を出せば、やはりそれだけ審議がかかるから。私はそう思うのです。そういう面で、まず大蔵省が出されたこの資料の第一項目には、総ワクが公共投資の中だからいいのだというふうに書いてあるけれども、私はそうであってはならぬ。これは福田大蔵大臣のことばも、答弁もございますし、あるいは財政法第四条第一項の精神からいっても、しかもこのインフレの時期において、公債発行については非常にシビアにやらなければいけないのじゃないか、こう思うのですが、いかがでございますか。
  67. 水田三喜男

    水田国務大臣 何か七千九百億円の建設公債、この発行によって得た収入金を赤字の穴埋めに使うようなお話ですが、これは間違いであって、七千九百億円というものは建設公債ですから、公共事業にこれは使う金なんで、赤字に使う金ではございません。したがって、じゃそういう建設公債をどの限度まで発行できるかということを財政法ではきめてあって、この対象経費のワク内であればいいということでございますので、そのために、今度発行する公債というものはそのワク内にあるのだ、だから財政法違反ではないということをただそこで述べただけでございまして、赤字の穴埋めに使うというのじゃなくて、建設事業にその金を充当する。そうすれば、当初予算において一般歳入で公共事業費をまかなおうと予定しておったものが、この減収によって非常に困難になった。その一般歳入に余裕ができるために、その余裕がいろいろ、たとえば公務員のベースアップの費用をまかなったり、そのほかの費用をまかない、その減収分をまかなっていけるということでありまして、赤字公債というわけでは全然ございません。福田前大蔵大臣答弁したのはいま言ったようなことでございますが、その当時において、ここにさっきまでおられました藤井政務次官、それから岩尾主計局次長がやはりここの席で答弁しておりますが、そこでもはっきり言っておりますとおり、当時においても建設公債を出してまかなえばよかったのだ。出してもいいという議論が政府の中にあったのだ。また公聴会に来た公述人も、これはむしろ財政法の精神からいったら財政法四条による建設公債を出すほうがいいのだという公述人もあったくらいで、ほんとうはそれで当然法律上はやれたのだと思うのですが、なぜやらなかったかという理由をそこに書いてありますので、一つは、やってもよかったのだが、この公共事業の範囲というものを、これははっきり国会の議決を総則において得ておかなければならない。もし当初予算のときに建設公債というものを出すことを予定しておったら、当然国会の議決をもらってあったから追加でやれるんだが、それをやってなかったので、歳入に欠陥が出たというときに出す公債として、それもまだ国会承認もとっていない公共事業費の範囲というものを大急ぎで確定して、そして年末へ来て初めて当初予算にもなかった建設公債を出すということがいいか悪いかということが議論になって、結局、建設公債は財政法ができて初めて出す公債であるから、慎重に、四十一年に出すときに範囲ももっとはっきりさせて、そして国会の承諾をとって出したほうがいい。要するに、それと今回は区別して、混同しないほうがいいということを述べた文句でありまして、そういう意味で、いまのときにおける公債の発行のしかたと違うのだということをそこで書いたわけでございまして、財政法で許された範囲内の建設公債を出しても、なおかつ一般会計はまかなえないというようなときに出すものなら、これはほんとうの赤字を補てんする公債というようなことになるでしょうが、それと今度出す公債というものははっきり違うので、りっぱな建設公債だと思っております。
  68. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 時間もないので、もう一問だけお聞きしますけれども大蔵大臣が言われたように、四十年の場合には、これは財政法ができたときから初めてやるので、ですからいわゆる特例法によったんだと言われますけれども、初めてだからとか初めてじゃないからというのは、私はあまり意味がないと思うのです。四十年のときというのは、いわゆる赤字公債なわけですね。ですから、これは財政法第四条によるところの発行と違うから、特に認めるのだ。私はこの前、議事録をずっと読んでみましたけれども佐藤首相も堀委員の質問に答えて、もう二度とこのようなことはやりません、絶対にあってはならないことですというような意味のことを述べられているわけですね。そういうようにこの状態を説明しているとたいへん長くなりますけれども、問題なのは——大蔵大臣がいま言われているのは、四十六年度当初予算と今度出されている補正予算とを合わせてみれば、ここに数字が書いてありますけれども、公債発行額というのは確かに公共投資のワク内であることは、私は認めるわけです。発行がいい悪いはまた別の次元でしょう。ただし、この予算がいつ成立するかわかりませんけれども、すでにいまは四月から七カ月たっているわけですね。七カ月たってまた建設公債を、私たちが言う赤字公債を合わせて七千九百億円発行するわけですね。ペーパーの上で当初とあれとを合わせれば確かにそのワク内かもしれないけれども、前のときに使ってなかった公債のワクをこちらで使うといっても、経済はもう七カ月過ぎちゃっているんですから、それは財政法第四条によるところの、基本的には公債によるべきではないというこの精神、しかも財政支出に対しては、インフレになるから非常にシビアにしなければいかぬという精神を入れて、この二千三百億近くの公共投資の分は建設公債としても、あと残りの分に対してはいわゆる特例法を出すべきじゃないか、こういうふうに考えるわけなんですが、いかがですか。
  69. 水田三喜男

    水田国務大臣 それはそうではありません。七カ月過ぎたからとかどうとかじゃなくて、当初予算のときにおいてもし建設公債を出そうとしたら、一兆二千億出せたのです。一兆二千億出せたのを四千三百億しか出さないで、あと一般歳入を充当するということだったのです。ところが、御承知のように、八月以降、ニクソン政策によってこういうことになったので、不況対策として公共事業はさらにもっとふやそうというような政策の問題が起こってきましたので、そうなれば、当初予最では少ない予想をしたのですが、ここで、補正予算を入れますと一兆六千億も余裕があるときですから、一兆二千億ぐらいは建設公債によって公共事業をまかなおうという予算の補正をするというのが、今度の補正予算でございますので、七カ月過ぎてあとから出すのはおかしいとかなんとかじゃない。そういう事情の変化があったから、もし当初予算を編成するときに、ことしは減収があるということを相当予想しておって、あのときにすでに一兆二千億なら一兆二千億の公債発行によるということをきめてあったら、公債は発行できる、当初予算なら国債発行できるが補正予算では国債が発行できないなんて、そんな不合理なことはございませんし、当初はそういう予想はしなかったから、わりあいに少ない公債の発行で切り抜けようとしたのですが、こういう経済事情の変化が起こったので、公債を増発しようということでございまして、少しも財政法上おかしいことはない。
  70. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうもこの問題はそう簡単に私は引き下がるわけにいかぬわけですが、一兆二千億当初予算にはワクはあったのだけれども、それは使わなかったのだ、そのワクを今度はまた生かしてきたのだという論理ですね。私は、これは非常な財政の便宜主義だと思うのです。こういう精神を財政法第四条というのは認めてないと私は思うのです。大臣が言われるように、九月以降、当初やらなければいかぬものが、歳入欠陥が出てきた、これはわかります。出てきたから、その分だけ当初予算にあるワクの中から公債を発行する。これは、歳入欠陥があったことは間違いないわけですね、税収やら日銀の納付金が減っているわけですから。ですから、これはそういう面では赤字公債であることには間違いないと思う。大臣まだ何か言いたいでしょうけれども、また言っていると、私のきめられた時間があるそうですから、これはまた別の機会に、延長してさらに徹底的に私も論議をしたいと思うのです。
  71. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 広瀬秀吉君。
  72. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 一問だけ。持ち時間があと五分ぐらいしかないので簡単にお答えいただきたいのですが、国際通貨調整の問題で、コナリー米財務長官が十一月五日に来日される、こういうことになっているわけです。この円の切り上げ問題、これはもういずれは切り上げざるを得ない。今日までの大臣答弁では、これは多国間調整という形でやるのだ、こういうことが終始一貫言われてきたわけですね。そこで、すでに西ドイツのシラー経済相とは、IMF総会のときにコナリー長官が会って、米・西独間においては、大体通貨調整の問題で二国間の話し合いは大よそ煮詰まったということがいわれておるわけです。一部その内容まで報道されているわけですけれども、今度コナリー長官が来られるというようなことになりますと、通貨調整が米日間でかなり実質的には詰めが行なわれる、こういうことになるのじゃないかと思うのです。この問題と多国間調整という問題とどういうことになるのか、これ一問だけ、きょうは質問しておきます。
  73. 水田三喜男

    水田国務大臣 この前米国でコナリー長官と会ったときの話では、コナリー長官のほうははっきりしておりまして、ほかの問題は二国間で相談のできる問題だ、この平価調整以外は二国間で相談しなければきまらない問題であるが、平価だけは、これは多国間できめなければいけないので、二国間ではきめられないという態度を、これは米国もはっきり持っておりますし、やはり私どももそういうふうに考えております。  いま言われたシラーとコナリー氏との会見は、私どもよりもちょっと前で、どういう話をしたかもわれわれみな知っておりますが、そこでも、二国間での平価についての取引なんというものは全然ありません。  ですから、今度の場合も、最初どものところへ流れてきた話は、今度は表敬だ。したがって財務省の役人も随員も一人もない。一行相当多いのですが、全部国務省ですから、その問題には大体触れないつもりだというようなことが流れてきておりますが、いい機会でございますので、私どもとすれば、一体いろいろな全体の調整をどうするかとかなんとか、そういうような問題については、あるいは私どもはむしろいい機会だから触れたいとも考えておりますが、全般的ないろいろな話し合いをしても、二国間でレートの取引とかなんとかいうことには、これは全然ならぬと思います。その点は、今度来ても、それを相談する場じゃないということは、はっきりしておると思っております。
  74. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 松尾正吉君。
  75. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 時間がありませんので、端的にお伺いします。  大蔵大臣は、先ほどの丹羽委員の質問のときに、とにかくこの不況を力一ぱいあらゆる手を投じて来年一年くらいで何とかしたい、こういう非常に積極的な努力をするお話がありました。今回の不況というものが、単にドルショックのみでなく、昨年来からの引き続きで、やっと上昇に向かったところへこのドル問題が起きてきたということで、たいへんなことはよくわかるわけでありますけれども、しかし、結局この事態は、政府国民を犠牲にして、公害のたれ流し、輸出至上あるいは企業優先、こういう産業第一主義の結果であるということは、これはもう大臣も認められると思うのです。そして大臣は、財政演説のときに、いまこそ国民福祉優先の経済政策転換のときだ、こういうことを述べられましたけれども、私どもも、まさしくいまそのチャンスだ、こう思うわけです。  そこで、問題は財政支出の内容の問題、考え方にあると思うのですが、昭和四十年の不況に対する対策、いわゆる大型国債を発行したときに、その論議の中心は、放漫財政は絶対にいけない、こういう問題が一つと、それからもう一つは、国債公共投資の財源とするのであったならば、どこまでもこれは国民福祉に第一義に振り向けるべきである、こういうことがずっと論議された、記録等を読んでみますと、これに対して、今日までの経過を見てみますと、どうもその言明と現実があまりにも大きな隔たりがある。佐藤総理総理大臣に就任したときに、やはり高度成長を批判して、私は国民生活第一の安定経済を保っていきたい、こういう所信表明をされたのですけれども、それ以後七年たっているのですが、経過はその表明したことと大きな隔たりがある、こういう結果なのですが、大臣は、この点についてはどうお考えになりますか、まずそれを伺いたい。要するに、国民福祉優先の政策に転換をしたい、こう言ったことが、今日実現されていない、こういう点です。
  76. 水田三喜男

    水田国務大臣 昭和四十一年の不況のときの関係を見ますと、国民総支出に対して民間の設備投資の比率が大体二八・五%くらい、構成比が一六%ちょっとくらい。それに対して政府の固定資本形成費を見ますと、いままで一番高い九・三という比率でございますので、昭和四十一年度のときは、そういう声明どおりに国民の福祉優先の公共投資ということを相当きつくやったということは、実績ではっきりあらわれていると思います。問題は、それがずっと続いたかと申しますと、四十二、三年は、御承知のとおり、経済がよくなったかわりに、不況が回復したかわりに、国際収支の壁にぶつかったというために、引き締め政策をやることになりました。したがって、国際収支のために公共投資が押えられたということで、この比率が相当落ちておるということは、数字を見ればおわかりだと思います。そこで、それがずっと続いてきて、昨年あたりは、民間設備投資が二〇%をこえておるというのに、公共投資のほうが八%ちょっとになっておるというようなことで、明らかに、あのときの方針がそのとおりにいっていないということは事実でございます。  じゃ、こういうものをどうして是正するかといいましたら、私が思いますのには、結局社会資本の充実とおうようなことは、財政主導型の政策でなければやれない。しかもそれをやるためには、国際収支のほうがいいときでないとやはりやれないということになります。そういう点から見ますと、いま民間の設備投資が少し沈滞しておるということで、したがって、輸出が非常に好調だ、そのために外為会計を通じて金融がどんどんゆるんでおる、こういう状態でございます。そこで、財政主導型の経済政策を実施するのには最もいい機会であって、政府が公債を出して資金の活用をはかって、それで社会資本投資を思い切ってやるということになりますと、いままでの産業成長主義というものが初めて是正されていく。これをいまやらないと、もうこれをやる時期がないというふうに考えますので、そういう意味で、公債政策をこの際思い切って活用するのがいいと私は思うのです。それはそういう意味を持つと同時に、これが不況対策にもなっておることは事実でございます。  さて、そうだとすれば、そういう公債政策というものをいつまで続けるかといいますと、やはりそこに問題があって、これが放漫に流れるということになったら、次に来るものはインフレでございますので、これを避ける用意を私どもはしなければならぬ。そのためには、私は来年もう一年は思い切って公債政策を活用しますが、もう再来年は公債の依存率をまた相当縮めるというくらいの覚悟で、あと一年くらいで勝負したいというのは、こういう公債政策の思い切った活用なんというものは長くやりたくない、またやるべきでないという考えがあるからそう言っておるのでございまして、これはやはり短期政策として活用して、不況も回復してしまうがいいし、その期間にいままでおくれた公共投資の立ちおくれというものを取り戻すというような、一石二鳥のことをここでやるためにはちょうど条件に恵まれたいい時期だというふうに思いますので、そういう方向の財政政策に転換したいと思っております。
  77. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 聞いておると、ことばどおりにいけば、非常に理想的です。けれども大臣はこの前の不況のときにああいう形で公債をやったけれども、そのあとが続かなかった。こういう結果、いまのような結果が出たわけですね。ところが、今度の場合も、公共投資に重点を置いてやればいい公債政策をとったけれども、これは長続きしない。ということは、この前の不況回復の状態とちょうど同じことを繰り返していくという意味なんですか。そうしか聞こえないのです。
  78. 水田三喜男

    水田国務大臣 そのあとが続かなかった責任者がまた私なんで、私はそこを反省しているわけですが、やりたくてもやれなかったということは、いま国際収支の壁にぶつかってこれを直さなければならぬということから、この過熱を避けるというためには、公共事業をもしあそこでやろうとしたり公債を発行しようとしたりしたら、民間資金を圧迫するというような問題が起こって、経済をかえって過熱させるというようなことになりますので、どうしても国が仕事をするということは、あの好況時には引っ込めなければいけない。引っ込まなくて済むような国際収支のあれじゃないということで、私どもはやりたくてもあの昭和四十二、三年はやれなかったうらみをいま持っておりますので、今度思っておったことをやるチャンスに恵まれたと思っているわけでございまして、あのときやれなかった責任者がこっちでございますので、今度はやりたいと思っているわけでございます。
  79. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 大臣はいつまで大蔵大臣をやっているかわかりませんけれども……。(「長いことない」と呼ぶ者あり)長いことないという声が聞こえますけれども、そういうことで、どうも……。
  80. 水田三喜男

    水田国務大臣 いや、短いほうがいいんです。
  81. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 大臣、それは冗談としても不謹慎だと思うのですよ、短いほうがいいなんということは。冗談じゃないですよ。それは考えておいてもらいたいと思う。  とにかくいま一回四十年、四十一年の不況を切り抜けて、そうして何とか国民生活、社会環境というものを向上したい、こういうことで大臣考えてきたんだし、われわれも一生懸命考えてきた。ところが、結果は逆な結果が出たでしょう。いまこそ転換のチャンスだ。そして単に目先の対策ばかりでなしに、長期的にもここで考えなければいけない、こういうことを大臣も言っているわけです。そのほんとうの腹はどうかというと、私は短期でやめたいんだというのは、そういう不謹慎な考えだったら、私は質問するのはやめようかと思う。
  82. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは、いまのをそうとられれば失言でございますから、取り消します。そうじゃなくて、こういう仕事は短期に解決しようということで、長くやらされたらかなわないということです。
  83. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 あなたの言ったのは、大臣はいつまでやりますかと言ったら、短期がいいと言った。短期に不況を乗り越えるというのなら、これはけっこう。もう一回おっしゃってください。
  84. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういう意味で、これを長くかかってやらされたらかなわないという意味でございまして、短期にやります。
  85. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 わかりました。時間が限られていますので、この問題はもう一回あれしますが、とにかくいま国際比等を見ましても、ある程度公共投資国際比というものは高くなっています。しかし、民間投資に比べると、確かに相当低い。こういう形にあるものを、今度思い切って公共投資をして、何とかこの施設を伸ばしたい、こういうお考え、よくわかるんですが、現状大臣もよく御承知と思うのです。とにかく生活関連の国際比率等は、もう問題にならないですね。住宅を見ましても、一人当たりの室数は、アメリカ、イギリスが一・五、フランス、西ドイツが一、それに対して〇・九。それから下水道の場合なんかは、アメリカが六八、イギリスが九〇、こういった関係なのに、日本は二〇だ。さらに公園の場合なんかもう問題になりませんし、道路の舗装率を見ましても、イギリス等は一〇〇%であるのに比べて、日本は八二%。しかもこの八二%というのは、ほとんどが幹線道路あるいは産業道路等で、市町村道等においては、通学道路あるいは生活道路、こういうものは一〇%に満たっていないわけです。こういったことを見れば、明らかにこれは国民を犠牲にして、単に企業に片寄った考え方の結果だということは、大臣、否定できないでしょう。したがって、こういう状態にある点を考えたときに、これは短期的に解決したい——短期に解決できれば理想ですけれども、これはたいへんな問題です。そこで、こういう状態のときに、これをどういうふうに改めるかという長期的な計画、考えというものが、新産業経済計画なりあります。あるいは住宅その他五カ年計画がありますが、こんな点をどこまでいつやるかという面が、あそこでは文字ではあらわれているけれども、これはもう全部改定しなければならないような状態にきているわけです。そういった事態に直面しておりますので、だから具体的に当面ここで公共投資に大きな金をぶち込んだ。そうして当面はどの程度大体——これを一応欧米並みの水準にするには何年くらいの計画で追いつかなければならないかという、これはもちろんいろいろな計画を総合してでないと結論は出ませんけれども大臣が、こういう不況は早く解決したい、そうして国民福祉生活に大転換をしたい、こういう方針で就任している大蔵大臣ですから、その大まかな腹、見通しというものはあると思うのです。その点を聞かしていただきたい。
  86. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま言われましたように、外国はもうすでに社会的な蓄積が非常に多いところですから、予算に占める社会資本の比率というものも、わりあいに少なくて済んでいる。国民総支出に対する支出も非常に率が少ないということですから、外国は参考になりませんので、日本日本としてどれくらいが適当かというようなことを考えなければなりませんが、これは非常にむずかしくて、別に基準があるわけではございません。過去五年くらいのところを見ますと、平均してGNPに占めるシェアは、民間の設備投資のほうが大体一九%、それから公共投資が大体八・六とか、そこの辺が大体平均のあれになっていまして、その中でも五年間で好況と不況を見ますと、五六対一〇〇とか、と思うと、最近は四〇対一〇〇というふうな比率になっていますので、好況と不況でこの率が非常に変わってくるということでございます。そこで、これから私ども財政政策として考えるべきことは、やはり一定率でしばらくの間公共投資のほうをふやしていこうということを考えますと、財政主導型の財政政策をとらざるを得ない。財政主導型の政策をとるというためには、やはり私は、国債なら国債の発行において、いままで私どもがやってきたように、民間の資金を圧迫したらいかぬといって国債のほうが遠慮して引っ込んだということのために、やはり民間の設備を不当に伸ばしているということもありますので、この比率を変えていくためには、過去において度胸が少しなかったと思うのですが、やはり国債を優遇して、国債を市中に出したらそっちのほうにある程度金がきて消化が早いといったような国債の条件というようなものを、やはりそのときどきの経済情勢に応じて考えることがよかったのじゃないかと思います。それを考えますので、私は利回りがよくなる十年債というようなものも来年から考えるということを思っていますが、かりに経済が少しよくなって民間資金が活発になってきたというときにも、そういうことによって公債優遇ということをやることによって公共投資の一定の比率を保てるということができると思いますので、今後の運営のしかたでは、その辺にくふうが要るのじゃないかというふうに思っております。
  87. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 もう時間がなくなっちゃってとうてい詰められませんが、今度の財政演説の中に、公共投資については、国民生活の向上と社会資本の整備を一そう推進するためにこうこうと、こういうことがありまして、今度当面四十六年度の補正に大きな金がぶち込まれたわけでありますが、この内容を見ますと、いわゆる産業基盤——同じ公共投資による公共事業を推進する内容ですが、産業基盤関係の整備のための費用、それから生活環境施設を整備するための費用、この関係を見ますと、今度は国民福祉重点に切りかえたいという、そういう考えを発表されたのですけれども、結果はほとんど前の四十六年当初の額に比例してばらまいた、こういう感じにしかとれないのです。私は、この前のときに、いままで公共投資という名目で非常に大きな金が使われてきたけれども、しかし、内容を見ると、生活環境を整備をする内容というものはきわめて少ない、一挙にできませんけれども、この比率をひっくり返すくらいの、そういう気持ちで取り組んでもらいたいということをこの場で大臣に質問したわけでありますが、これに対してひとつ……。
  88. 水田三喜男

    水田国務大臣 お説のとおりだと思います。それで今度の場合も、補正予算ではその比重をつけましたし、前年度に比較しまして、たとえば下水道の伸びなんというものは二〇〇%でございますから、これはもうほかの公共事業と比べて伸び率が問題なく大きい。それから住宅についても、一般の公共事業の伸び率よりも住宅の伸び率のほうが大きいというふうに、生活に関連したものの事業はほかよりも相当比重が今度の補正予算でついていることは、はっきりしていると思います。
  89. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 非常に詰められないのが残念ですけれども、こう数字を見てみると、確かに比率は多くなっております。けれども、道路関係なんかを見ますと、非常に大きな額が投入されているわけですね。これだけでは道路がはたしてどういう面かというのはわかりませんけれども、ここにあらわれている数字では、ほとんど幹線道路が重点だろうと思います。  そこで、まず政策当局、大臣考え方をお考えどおり、ここで国民に約束されたとおりにひとつ実行してもらいたいと思うのですけれども、生活環境を整備する、こういうためには、どうしてもじかに生活に密接しているのは地方自治体、地方団体。ところが、この地方対策を見ますと、この四十一年のときにもある程度手は打ちましたが、きわめて不十分だった。ここで公共投資というものを幾ら国でやろうと思っても、やはりそこには片寄りがありますし、土建その他にどうしても片寄っていく。結局、地方財源を十分に与えないと、これは完全な考えの実現はできない、こう思うのですが、これは詰められませんから……。来年度について、交付税率の引き上げあるいは臨時特別交付金あるいは特別事業債の発行等は思い切ってやって、いまも地方自治体では来年度の不足はおそらく一兆円をこすだろうといっておるわけです。これらに対して十分な手当てをして、国と地方と一緒になってこの実現をはかっていくという決意、考え方を大臣は持っておられるかどうか、その点だけひとつ伺っておきたい。
  90. 水田三喜男

    水田国務大臣 非常にむずかしい問題でございまして、これは昔からいわれておる中央・地方の財源配分とかいうような問題で、根本的な解決をしなければこれは簡単にはいかない問題だと思います。しかし、いま御承知のように、国と地方の財政が公企業の中に占める比率というようなものは二対一で、国が一、地方が二というくらいのことになっておりまして、国は一応いろいろな租税を取りますが、特に三税のうちから二兆円、地方財政にやってしまう。同時に、各種の補助金も二兆円地方財政に渡すということになりますと、九兆の歳入といっても、そのうち四兆は地方財政に渡すということになりますから、国固有の財政というものは非常に狭いもので、地方財政に比べたらはるかに狭いということになっておって、その中央財政の中で歳入が非常に窮屈になってきて大きい公債を発行するというような事態でございますので、したがって、地方の公共事業につきましても、やはり地方の財政力に応じた地方起債の活用によってある程度対処してもらわなければならぬというのが、やはり当分これからの方向ではないか。それについてできるだけ地方財政を圧迫しない形のことは、今回の場合も、起債においても、ほとんど政府資金によるものを自治省のいうとおりの額で政府資金を充当するというようなことを、いろいろなくふうをいたしましたが、いまの中央・地方の財源配分という形からいきましたら、これ以上中央財源を地方に渡す余地というものはおそらくないのじゃないか。そうなれば、根本的に税制そのほかを考え直さなければいけないというところに追い込まれているのじゃないかというような気がいたします。
  91. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 もう時間があと三分になっちゃいましたので、一つだけ税に対しては——大臣にこにこしているのですけれども、年度内減税については、これは姿勢はまことにけっこうなことなんですが、規模と内容について相当問題があろうと思う。これを少し詰めたかったのですけれども、要するに二百万円以下の減税については、これは非常にスズメの涙のようなもので、五百万円あたりが中心になって減税が行なわれている、中心になって行なわれている、こういう形ではたして刺激浮揚、もう一つは国民に報いるという大臣考えなんですけれども、その効果があがらないと思うのです。というのは、最近の貯蓄の世論調査考えてみても、やはり貯蓄は必要だ、こう言う者が大部分です。レジャー等に使ったほうがいいのだというのは、ごく一%足らずです。しかも所得比率に応じて、貯蓄率あるいは貯蓄保有率というものは高くなっている。こういったことを考えたと巷に、この高額所得者に対する大幅な——まあ大幅とは言えません、そちらを中心にした減税は、これは景気浮揚効果にはならない、こう思うのですけれども、この点一点だけお答えいただいて、はみ出せば大臣責任です。お答えいただきたいと思います。ていねいに答弁してください。
  92. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはいずれ今度の所得税の法律の御審議をお願いするときにこまかく申し上げたいと思いますが……。
  93. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 では、あらためてそのときに大臣……。
  94. 水田三喜男

    水田国務大臣 そのときお答えいたすことにします。  問題は、やはり税制はそのときどきではいけないので、もう少し長期的に見ていただかなければいけないということを、まずとりあえずことしの当初予算のときの減税と、今度の年内減税二つあわせて見ますと、それがどの階層に最も有利な減税になっているかというようなことがはっきりと出てきますが、前に一方へ偏したことをずっと過去やっておりましたので、いつかそれを少し訂正しないと、次の所得税の減税がやれないというような非常に不公平な減税になる技術的な問題にぶつかって非常に苦心したのが今度の減税でございますので、これはこまかくまたゆっくり御説明いたします。
  95. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 来年度に引っかかるのですかということだけ……。今度の内容が来年度の減税に影響があるのですか、これだけ……。
  96. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは所得税でございますので、来年と無関係に今度きめるというわけにはまいりません。したがって、来年度と関係のある法律でございますが、国会のことでございますので、来年になったら来年でまた少し直されることがあるかもしれませんが、一応ことしだけを考えている税制ではございません。
  97. 松尾正吉

    ○松尾(正)委員 終わります。
  98. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 竹本孫一君。
  99. 竹本孫一

    ○竹本委員 簡単にお尋ねをいたしますから、御答弁も簡潔にお願いをいたしておきます。  第一は、沖繩の援助の問題でございますけれども変動相場制をとったために、物価が上がって国民生活がひどく破壊されておる。沖繩政府予算も、大きな影響を受けて、事業費の落ち込みが相当大きい。いろいろ沖繩が最近の情勢で困っておるようですけれども、それに対して今度はまたわが国の財政事情から、大蔵省のほうにおいては対沖繩の援助をいままでの円建てからドル建てに変更しようというようなお考えがあるということもうわさをされておるのですけれども、はたしてそうであるか。私は、沖繩援助が全体でどのくらいであって、残りがどのくらいであるかというようなことをあわせて聞きたいと思いますけれども、それらを考えて、そういう切りかえをやる意思がなければ問題はないわけですが、あるとしても、幾らも節約にはならぬだろうと思うのですけれども、そういう方針なりお考えなりがあるのかないのか、その点だけはっきり御答弁を願いたいと思います。
  100. 水田三喜男

    水田国務大臣 通貨の建て方を変えた事実はございません。何か新聞報道があったというようなことですが、それに関しては……。
  101. 平井廸郎

    ○平井政府委員 竹本委員御指摘の点は、たぶん先日沖繩の新聞にそういう趣旨の報道がされたためではないかと存じますが、御承知のように、わが国政府の琉球政府に対する援助につきましては、本年度二百九十九億円を予定いたしておるのでございますが、これは一部は本土におきまして、たとえば沖繩から本土へ参って療養する方のための経費に充てるとか、そういう形で円で使われているものもございます。ただ、そのほとんど全部は琉球政府に渡されまして、琉球政府ドル経済のもとにある琉球においてお使いになるものでございます。したがいまして、そういう金額につきましては、日本政府といたしまして琉球政府日本外国為替銀行における自由円勘定に円で振り込みまして、それを琉球政府ドルで引き出しているという形をとっているわけでございます。  ところで、本年度の琉球政府に対する財政援助は、琉球政府予算の成立がかなりおくれたこともございまして、具体的な事業計画の成立はかなり遅延いたしております。最近、ようやくその第一回分の支払い請求なりあるいは財政投融資の要求が出てまいっております。これはもちろん琉球政府の現地での事業に充てる金でございますので、ドル建てで要求をいたしてまいっております。したがいまして、その必要な資金を円で払い込みます際に、どのようなレートで払い込むかという問題が新しく起こっていることは、事実でございます。御承知のように、現在は変動為替相場制でございますので、そのような事業が琉球政府で大過なく遂行できますように、向こうの御要求のあったドル建てに必要な資金は、こちらから振り込んでお送りしなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  102. 竹本孫一

    ○竹本委員 もう一度、結論だけですが、要するに為替差損というか、こちらから言えば差益ですね、差益をかせぐために、向こうの要求ではなくても、こちらのほうから財政上の都合でドル建てにするということはないと了解していいわけですか。
  103. 水田三喜男

    水田国務大臣 そのとおりでございます。
  104. 竹本孫一

    ○竹本委員 ぜひそういうふうにお願いしたいと思います。  第二番目は、最近ドルの問題あるいは円のレートの切り上げの問題と関連して、われわれが地方に参りますと、デノミネーションの問題が非常にうわさされておる。私は、結論からいえば、デノミはやるべきかやるべきでないかといわれれば、やったほうがいいだろうと思います。しかし、いまのように三年続きの不況である、あるいはドルショックがある、また円のレートの切り上げの問題がある、繊維産業も大きな打撃を受ける、日本の産業人あるいは国民の頭が、いわゆるドルショックその他の問題で非常に混乱をしておる、あるいは社会不安、経済不安が起きておるといったような過程において、さらにデノミをやれば二重、三重に混乱を大きくする、そういう意味で、やれもしないが、やるべきでない。しかるに地方へ行ってみると、これは証券会社あたりが、今度は円レートの切り上げとあわせてデノミをやるのだといって宣伝したような資料をいろいろ出しておるといった面もありますし、また一部では、いろいろ札を刷ったりコインをつくったりしておるのが、その率が非常に増加率が大きいものだから、これは新しいデノミの金をつくっておるのだといううわさがまた飛んでいるような面もあるように聞いておるのですけれども、いずれにしてもいまやるべきではないし、またやれもしない。むしろこの際、そういうことは大蔵大臣立場においてはっきり否定してもらったほうがいいのではないかと思うのですけれども、この点に関する大蔵大臣のデノミをやるのかやらないのか、やれるのかやれないのか、その辺についてはっきりした御答弁をいただきたい。
  105. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、デノミはあるいはもっと早くやってよかったのじゃないかと思っていますが、けっこう世間に対してはデノミは通貨の価値を変更するものじゃないという説明がもう相当広く行なわれているときでございますので、今度のように円の切り下げとか切り上げというようなものが問題になっておるときに、このデノミとこれを一緒に混同させるというと、いろいろな問題を起こさないとも限りませんので、やはりはっきり分けたほうがいい。こういうときにデノミをやることは、また不測の混乱を起こさないとも限りませんので……。いずれにしても相当啓蒙と申しますか、これは十分前もって国民に了解させておく必要がありますから、やるにしたって、実施は一年置くとか二年置くとかいうようなことになろうと思いますので、いまきめても、いますぐの問題ではありませんが、しかし、こういう為替問題が起こっているときに一緒にしないほうが私はいいと思いますので、これはいまのところ、やっていいことだとは思いますが、このデノミのほうはやらない、とにかくやらないということにしたほうがいいと思います。
  106. 竹本孫一

    ○竹本委員 要するに、いまやるべきではないというふうに理解していいですね。そうでしょう。
  107. 水田三喜男

    水田国務大臣 いまやるつもりはありません。
  108. 竹本孫一

    ○竹本委員 これで私は終わるわけですが、三番目は、先ほど広瀬さんからも御質問が出た問題で、コナリーが来て、円の切り上げの問題、二国間でやるということはない、通貨の調整は、当然に事柄の性質上からいっても多国間調整でなければ話にならない、コナリーもそう言っておるというような御答弁がございました。私も、最終的には、日本だけ切り上げてみても、ドイツがどう出るか、ドルがどうなるのか、そういう問題がわからなければ、切り上げることもできないし、切り上げられないと思います。いま国民心配しておる問題は、私は、形式的には二国間の調整というものはあり得ないと思いますけれども、実質的には、コナリーが来て、そこで一つ多国間調整の大きな背骨というか、バックボーン、軸ができる、そういう形で、最終調整は多国間調整にまたなければなりませんけれども、その中心になる、軸になる円の問題だけを、まあ大体田中さんが繊維でやられたような形で、話し合いとはいうけれども、譲歩譲歩で押し切られてしまう、そういうことがありはしないか。その点をわれわれは心配するわけなんです。問題は、大臣はいろいろ御苦労されている点は大いに敬意を払うのですが、年内に問題を片づけるということはむずかしい、来年にわたるだろうというようなことを、新聞で見るとたびたび言っておられるようでございますが、私はそういうことはないと思うのです。あり得ないと思うのです。きょうは時間がありませんから説明は長くしませんけれども日本経済の実情から見ても、この社会経済不安をいつまでもこのままにしておくということは事実上できない。それからアメリカも、九十日の賃金や諸物価のストップをかけておいて、それが期限が来たときに、この次またどういう態度に出るかは別として、その際に次の段階に対する展望を全然持たないで労働者にどういう説得ができるかということを考えると、アメリカとしても結論は出さざるを得ない。今度はまた利子や配当についても制限をしようということになれば、経営者に対してもやはり一つの青写真を持たなければ話はできない。したがって、アメリカ経済の実情からいっても、もうこの辺で結論を出さざるを得ないところに来ておるとぼくは思っておるのです、これはまあ大臣と見方が違うかもしれませんが。それからヨーロッパの経済も、私が見て感じておるところでは、そういつまでもこの不安をこのままにしておくということは、ぼくは事実上困難だと思うのです。イギリスの経済なんかも、ひとつも安定してはいない。フランスだって、やっと安定しているという程度で、そんなに強い基盤の上に立ってはいない。その二つがふらふらしてくれば、今度はマルクに対する思惑が出てくる。そういうことも含めて、ECはいよいよということになれば、域内だけでは一つの固定相場にして、対ドル関係だけはフロートするというようなこともいま考えておるようですけれども、そういうことを考えざるを得ないようなヨーロッパ経済の実情にある、こう思うのです。そういうことからいって、ヨーロッパの経済の実情から見ても、アメリカの政治的な立場、事情からいっても、日本経済事情からいっても、私はやはりこの次、来月の末に大臣も出られるでしょうが、蔵相会議をやるといったようなときには、おそらくこれは最後の場になると思うのです。その最後の場に臨む前の多国間調整の一つの原案というものを、今度コナリーがまとめ上げに来るのだ。この間のケネディが来たと同じように、今度はコナリーが来る。その場合に、いまわれわれが一番心配しているのは、ワンパッケージで、円の大幅切り上げも、あるいは輸入の規制の問題も、あるいは武器の購入の問題も、あるいは軍事費の肩がわりの問題も、一まとめにして、日本の国情から見て忍び得ないような重荷をコナリーさんが持ってくるのではないか。そしてまたそれに日本は、話し合いという、形だけは話し合いかもしらぬけれども、へたをすると無条件降伏みたような形になるのではないか、その点を非常に心配しておりますから、きょうは詳しいことはやめますけれども、ぜひそういうことのないように、アメリカにもアメリカの大きな経済のいろいろ矛盾もあるわけですから、やはり交渉は交渉として、堂々と、独立国の大蔵大臣という立場で、日本の財政あるいは経済を、繊維産業の破壊をした今回の苦い経験のようなことのないように、自信と確信とを持ってひとつ当たってもらいたい。その点についての大臣のお考えを承って、伊藤さんにかわります。
  109. 水田三喜男

    水田国務大臣 多国間調整といいましても、多国間調整を実現するためには、やはりその背後では各国別のいろいろな相談が行なわれていいんであって、またそれが多国間調整を最終的にまとめることになるだろうと思います。したがって、欧州の諸国においても、もうきょう現在、各国別にいろいろな相談がなされていると思います。したがって、日米間におきましても、当然いろいろな相談はこれはしなければならないことでございます。そのする方法はたくさんございますが、問題は、そうかといって、今度来るコナリー長官がそういう折衝のために来るか来ないかということは別問題であって、私は、今度来るコナリー長官が、この問題の解決に来るんではないというふうに思っています。しかし、それなら日米間の交渉はしないかというと、そうじゃございません。いろいろな形でやはり日米間の二国間交渉も当然行ないますし、そうして最終的に、なるたけ早くこれを妥結させるように各国ともみな実際は急いでおるのでございますから、私どももむろん急ぐつもりでおります。御承知のように、欧州だけでも、この間の会合でああいうことでなかなか各国間が一致するということはむずかしいので、時間がどのくらいかかるか、たとえば十一月の半ばごろにはGテンの会合があるだろうと予想しておりましたが、とてもそういう情勢ではない。もう少しおくれるということははっきりしておりますし、できるだけ努力はいたしますが、いつという見通しは、いまのところまだございません。
  110. 齋藤邦吉

  111. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 十分ほど時間があるそうでございますから、二、三点お伺いします。  西欧のほうでは、ドル紙幣に非常に不安を感じて、アメリカの持っておる金貨との交換を相当やっておるようですが、日本では、私どもの知る範囲では、大体百二十億ドル以上の紙幣がある。ところが金貨と交換したのは六億ドル程度だと聞いていますが、これは一体うっかりして後手になったんですか、アメリカに気がねをして金貨との交換をやらなかった、どっちでしょうか。
  112. 水田三喜男

    水田国務大臣 何か準備資産をドルで持つか金で持つかということでございましたが、わが国では昔から、金を持っていないでドルを準備資産として持ってこれを運用しておったというのが、昔からの方針でずっと今日まで来ておるということでございます。で、これは一、二年前から、もうアメリカの持つ金とそれからドルを交換するということは、あまりやらない、自粛するという相談も各国間に行なわれておりましたので、これはうまくやって、アメリカの金を交換したという国は別にございません。じゃ、もっと早くから金を持てばよかったのじゃないかという御意見もあろうと思いますが、御承知のとおり、日本国際収支は、よくなったのはつい最近のことで、それまでは表面は二十億ドル前後といわれておりましても、実際の短期資金の資産と負債の計算をしますと、実質的なものはそれだけ多い準備資産でありませんでしたので、したがって金を持つ余裕が実際においてはなかったということと、もう一つは、経済成長過程にあるときには、金を保有するよりもドルを保有して運用するほうが、これは日本経済成長には非常に役立った。これはいろいろ担保的な役割りもありますし、国の信用にもなることでございますし、同時にこれは金と違って利子を生むことでございますので、いまたとえばドルの値打ちが下がったとかいいましても、過去何年間かの間ドルを持って運用しておった利子などを計算しますと、やはり金を持っておったときよりは損失は軽いというようなことにもなりますし、これはいろいろございますので、私は、成長期の日本が金を持たないでドルを持って運用をしておったという政策は、悪くなかったというふうに私自身は考えております。
  113. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 どうも大臣のお考えは、現状にぴしっといっていないような気がするのです。というのは、アメリカドル紙幣は世界に大体五百億ドル以上出ておって、五百億ドルからの金貨を持っていたけれども、ほとんど西欧諸国が金貨と交換をしてしまったので、もうアメリカの金の保有は百億ドルくらいしかない。そこで、アメリカドル紙幣と金貨との交換を禁止をしたわけですね、御存じのように。そこで、金はいま二割以上相場が上がってきておるということは、これはもう認めなければならぬ。そういたしますと、いま大臣のおっしゃったようなことではなくて、もっとドル紙幣に対して非常な不安等があるわけです。しかも金貨と交換したのは、金が二割以上も上がっておりますから、金貨と取りかえた国は相当もうけておる。日本は切りかえていないから、非常に損をしておるということもいえるわけです。こういう点においては、大臣はどのようにお考えになっておりますか。  それからさらに、日銀が一体ドル紙幣をいまどのくらい持っていますか。これもあわせて伺いたい。
  114. 水田三喜男

    水田国務大臣 ドルの保有が急激に増加したのはほとんどことしの一月以来のことでございまして、そう昔からたくさん持っておったわけではございません。いま日銀の持っているドルは、大体九月末くらいですか、百十八、九億ドルだと思います。
  115. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 時間だそうですが、いま一点だけ。このドル問題、円問題とで相当不安が起こっております。それでこの不安を、やはりドルと円との価格の調整というものを当然やらなければならぬわけです。しかし、これは日本大蔵大臣だけでやることじゃありません。ですけれども、そのために一体どうなるのだろうかという不安がありますから、これは私は、極力早い機会にドルと円との調整というものを政府はやはりやって、安心を与えるということが大事だろうと思います。  さらに私はお伺いしたいのは、アメリカがかなり輸入制限をしてきますから、したがって、特に日本アメリカ向け輸出企業というのは、相当不安を持つわけです。そこで、この年末金融ということについては、相当真剣に考えなければならぬ問題であります。相当倒産も起こってくるのじゃないか。そういう点もありますから、特にアメリカ向け輸出企業、特に中小企業、こういうものに対する救済措置というか、金融措置倒産防止の措置をどういうように金融的にお考えになっているか、これをひとつお伺いいたします。
  116. 水田三喜男

    水田国務大臣 金融措置は、御承知のように、九月二十三日に輸出関連の中小企業対策として、政府関係中小企業金融機関のこの措置というものをきめました。それから全般の中小企業対策金融措置というものは、これは別個に銀行局の指導によって市中銀行そのほかの金融機関に対して指導しておりますので、この点も、私は非常に対策が行き届いておるというふうにいま考えております。それで、そういう問題でもし中小企業が非常に困っていろいろな問題が起こっているというようなことが日本のどこででも起こったら、それはすぐにみんな日本銀行日本銀行の本店へ、大蔵省の末端の機関は全部本省へ、通報だけはすみやかにしてもらいたいということを再三徹底してございますので、現地からそういう問題は中央へすぐに響く体制をいまとっておりますが、いまのところ、わりあいにこれは順調にいっているんだというふうに私は思っております。
  117. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 小林政子君。
  118. 小林政子

    ○小林(政)委員 国債の大量発行がインフレと現在の物価高騰を一そう促進する結果を招くと考えます。私は、この点について若干質問をいたしたいと思います。  消費者物価の値上がりで苦しんでおります国民にとっては、大型国債の発行によってインフレが進み、物価が一そう上がるかどうかということは、大問題であります。赤字国債の増発により財政が膨張することは、インフレの要因を大きくはらむものであります。今回補正予算で七千九百億円の国債の増発、これは当初予算の四千三百億円を合わせて一兆二千二百億円、これまでの最高の膨大な発行規模であります。さらに本年六月、第一次から第四次までの公共事業費としての財投追加は、その支出規模で六千五百十三億円に到達し、引き続き四十七年度においても一兆五千億円から七千億円の国債の発行が予定されておりますが、四十年度、四十一年度に発行された国債の元利償還は、四十七年度、四十八年度とその償還期限が迫っております。結局今後引き続いて赤字国債に依存した財政の膨張を続けていくということはインフレを促進するものと私は断ぜざるを得ませんけれども、この点についての政府の見解を伺いたいと思います。  さらにまた、大臣は先ほどの答弁の中でも、赤字国債に依存する政策というものは、長期にとるべきではない、短期の勝負であるということを言われました。聞くところによりますと、財源確保のために付加価値税の創設について、これを早めるということがいわれておりますけれども、このことについてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、この点についてもお伺いをいたしたいと思います。
  119. 水田三喜男

    水田国務大臣 公債と物価の関係でございますが、御承知のように、いままで輸出が非常に好調であって、外為会計ドルを買って、それだけ円が国内に流出しておるということでございますから、非常に金融が緩慢になっておるというのが、いまの状態でございます。したがって、そういう金融事情のところに政府は公債を発行しても、これが民間の資金を圧迫して経済を過熱させる、そういう心配というものはいまのところ全然ないという状態でございますので、こういうデフレギャップが非常に多いときでございますので、この程度国債の発行は物価には響かない。現に卸売り物価はいま上がってはおりませんで、むしろ下がっておるときでございますので、したがってこの程度国債の発行が卸売り物価を上げるという事態にいくとは思いません。おそらくこれは、物価問題から見たら心配なことはないだろうというふうに考えます。  付加価値税は、この前もここで申しましたが、なかなかむずかしい税金でございますし、いままで欧州みたいに売り上げ税とかいうものがある国は比較的こういう一般消費税的な税をとりやすいのでありますが、日本にそれがございませんので、したがって、日本でこれを実施しようとするためには、いま欧州でやっているような、ああいう形のものでは実施できない。やはり日本としてもっと国民全般がなじみいいものに直さなければならぬというものもございますし、これは相当研究を要するし、またこういう方向でやるときまっても、それについて国民の理解を得る期間というものは相当長い期間置かないとむずかしい税金ということがはっきりしておりますので、したがって、いまの不況対策とかいうようなものに対して急いでとる税制ではございません。したがって、将来の税制として、長期税制としてゆっくり検討すべきものだということで、税制調査会においてもそういう観点からいま検討を始めておるということでございますので、早急にこれを実施するということはむずかしいと思います。
  120. 小林政子

    ○小林(政)委員 物価は下がっているということですけれども、消費者物価は非常に高騰を続けているのも大臣は御存じだと思いますが、私は四十年度以降発行の国債残高、これを調べてみますと、四十六年度現在で三兆二千四百十九億円に達しております。このうち、四十五年度末の日銀の買い取りは一兆八千四百五十一億円で、四十五年度国債残高に対する日銀の買いオペの割合は六五・六%になっております。日銀が国債を買い取れば、それだけ日銀券の発行高がふえ、インフレを促進するものでありますし、従来も日銀の直接引き受けは行なわないという方針であったけれども、結局この事実は事実上日銀引き受けと同じ結果を招いているのではないかと考えます。今後大量の国債発行は、日銀の買い取りによって銀行券の発行高をふやし、インフレを促進することは明らかだと考えます。今後日銀の国債買いオペを禁止することがインフレを押えることになると私は考えますけれども、これを実施するお考えがあるかどうか。さらにまた、四十七年度の国債発行額に対しては、一部日銀に引き受けをさせるというようなことも検討中であるというふうに聞いておりますけれども、そのようなことが検討されているのかどうか、この点についてお伺いをいたします。  さらに国債の増発というものが物価の一そうの引き上げを招いておりますけれども、物価問題は、私は現在の政治の最大の課題だと思います。東京の九月の物価は一気に五・九%も上がって、去年の九月に比べて一〇・三%高騰いたしておりますけれども、二十二年ぶりの記録を出したと新聞にも報道されております。円の値打ちは外では高いけれども、国内では年々下がる一方であります。特に政府は公共料金の値上げを押えるということを約束しながら、電話や郵便料金の値上げを行ない、さらにことしの秋は値上げの秋であるということがいわれております。タクシー料金や地下鉄、国鉄運賃の値上げの申請などがいまメジロ押しに出ておるといわれておりますけれども不況下の中で物価の見通しを大臣はどう見ておられるのか、国民心配しておる大量の国債発行で物価が上がらないという保障があるのかどうなのか、この点について、明確な御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  121. 水田三喜男

    水田国務大臣 日銀引き受けの公債を出すということは、全然考えておりません。やはり市中消化を原則とする、この方針に変わりございません。日銀がこの国債を買うというようなことは、これは必要通貨の供給手段でございまして、それと日銀に国債を引き受けさせるということとは全然別のことでございますが、いまのところ、日銀引き受けということは全然考えていません。  物価との問題は、さっき申しましたように、こういう金融緩慢なときにおける公債発行、しかもその公債は赤字公債というのではなくて、現実にこれは公共事業となって国民の財産として残る仕事への資金でございますので、これが市中で消化する限りにおいては、これは不健全なものではございませんで、したがってこの公債発行によって物価高を促進させるというような懸念だけは、いまの日本経済事情の中にはないというふうに思います。
  122. 齋藤邦吉

  123. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 委員長の許しを得ましたので……。先ほど私の質問中委員長から発言を打ち切られましたけれども、私の時計と委員長の時計との相違で打ち切られたようでございます。したがって、私の時計が少し時間を急いでおったのか、委員長の時計が時間が狂っておったのか別にいたしまして、いま許しを得ましたので、もう何事も申し上げることはございませんが、やはり質問をするということにおきましては、国民がひとしくこの質問に対する大臣答弁というものに対してたいへんな関心を持っておりますので、いま一度大臣から、私が海外援助の問題、繊維の問題、あるいは融資の問題、それに対する金利問題等々につきまして、今後何度も申し上げますが、もうすでに大蔵大臣三度目をおつとめいただく経験豊かなあなたのことであります。しかしながら、こういう事態に直面せられたことは初めてであろうと思いますから、ひとつこの際あなたがほんとうにお考えいただいて、国民のしあわせのために、先ほどから言っていらっしゃるように景気浮揚をどのようにしていくか、景気挽回をどのように進めていくか、これは日本だけの問題で解決することでなくて、海外各国のそれぞれの人々と話し合っていただいて、一つの基本的なものが出てくることであろうと思います。  そういう意味におきまして、大臣の決意は先ほどから聞いてはおりますけれども、どうかひとつあなたに期待する国民の、いまこれからの日本はどうなっていくかという非常に心配をいたしておる点を十分考慮に入れて、しっかりひとつやっていただきたいということを、私は与党議員とし、大蔵委員として心からお願いいたしますので、その点の決意を明らかにしていただいてけっこうだと思います。どうぞひとつよろしくお願いいたします。
  124. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま非常に世界経済の動乱期でございまして、その中に処した日本経済、おそらくいままで初めてぶつかるむずかしい時期だというふうに思いますので、非常に私も責任の重大さを感じております。先ほど竹本さんからも激励されましたが、ここで安易な考えを持たずに、やはり円の切り上げの問題、平価の調整の問題にしましても、日本経済の影響、今後の問題、そういうものを考えて、私はこの問題だけは慎重にやりたい。そしてこの事態を切り抜けたら、問題はいまの日本経済あとの対外均衡の回復ということが急務でございますので、この点に全力投球をする。そうして先ほどから申しましたように、いま国民の様子を見ますというと、これが早く解決されそうだということになると、また元気が出て、民間の活動というものも活発になってくるのですが、なかなかこれはすぐに解決しそうもないというようなことになりますと、この沈滞さをさらにまたうしろへ延ばすということにもなりますので、やはり政府の決心その他から案外早くこれは解決するかもしれぬという一つの安心さを国民に与えることが、私はこの際必要だと思いますので、平時の財政理論ではどうかと思われるようなことでも、この際少し大胆なことをやって、国民に安心していただくという措置をとる必要があると思いますので、慎重を期してやりたいと思いますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
  125. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 どうもお疲れのところ、ありがとうございました。その意気でひとつよろしくお願いしたいと思います。
  126. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 次回は、明二十九日金曜日、正午理事会、午後零時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後九時四十四分散会