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1971-12-07 第67回国会 衆議院 商工委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月七日(火曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長代理理事 進藤 一馬君   理事 浦野 幸男君 理事 小宮山重四郎君    理事 橋口  隆君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 岡本 富夫君       神田  博君    北澤 直吉君       坂本三十次君    塩崎  潤君       羽田野忠文君    増岡 博之君       松永  光君    山田 久就君       岡田 利春君    加藤 清二君       松平 忠久君    横山 利秋君       松尾 信人君    川端 文夫君  出席政府委員         外務省経済協力         局長      沢木 正男君         通商産業政務次         官      稻村佐近四郎君         通商産業省貿易         振興局長    外山  弘君         通商産業省重工         業局長     矢島 嗣郎君         通商産業省鉱山         石炭局長    莊   清君  委員外出席者         経済企画庁調整         局経済協力課長 真野  温君         通商産業省重工         業局産業機械課         長       杉山 和男君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 十二月七日  辞任         補欠選任   中谷 鉄也君     山本 幸一君 同日  辞任         補欠選任   山本 幸一君     中谷 鉄也君     ————————————— 十二月六日  山村開発次期対策早期実現に関する請願外九  件(塩崎潤紹介)(第二八六三号)  同外九件(長谷川峻紹介)(第二八六四号)  同外四件(久保田円次紹介)(第二九〇五号)  同外四件(藤井勝志紹介)(第二九〇六号)  同外八件(安倍晋太郎紹介)(第三〇三六号)  同外八件(野田卯一紹介)(第三〇三七号)  同外七件(藤田義光紹介)(第三〇三八号)  同外六件(保利茂紹介)(第三〇三九号)  同(武藤嘉文紹介)(第三〇四〇号)  中小業者の営業と生活擁護に関する請願(浅井  美幸君紹介)(第二九〇七号)  同(近江巳記夫紹介)(第二九〇八号)  同(岡本富夫紹介)(第二九〇九号)  同(松尾信人紹介)(第二九一〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  輸出保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一号)      ————◇—————
  2. 進藤一馬

    進藤委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長所用のため、その指定により私が委員長の職務を行ないます。  内閣提出輸出保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 輸出保険法の一部を改正する法律案、これについて質問をいたしたいと存じます。  まず最初に、きわめて素朴な質問から始めたいと思うのであります。この輸出保険というのでありますが、どうして貿易保険といわないのかということなのであります。日本の今日までの貿易なり産業の体制というものは、輸出中心主義にありました。しかし、今回のドルショック以来、輸入ということが非常に国の中心的な問題になってまいり、その輸出入のバランスの中に国際経済におけるわが国の分野をきめようという、こういう状況なのであります。それは考えてみれば、輸出におけるリスク輸入におけるリスクとは比較にならないかもしれません。しかしながら、輸入におきましても頭金とかあるいは一部最初支払いをするとかいうようなことがありますし、その輸入関連をする危険あるいはトラブルも存在をするわけでありますから、輸出保険といわないで、貿易保険的な性格に変えたらどうであろうか。イギリスにおきましては——このいただきましたあれによりますと、各国状況を見ますと輸出保険的なものと貿易保険的なものと両方やっぱり、私の庶民的な感覚で、あるようでありますが、そういう点について政府はどうお考えでありますか。まずそこから伺いたいと思います。
  4. 外山弘

    外山政府委員 世界各国におきましても、輸出というものをとらえまして保険制度が出発し、それが大部分の保険制度の内容になっておるという点は先生承知のとおりだろうと思います。おそらくは、先ほども指摘がありましたように、輸出というものに伴うリスクの負担ということにやはり重要性が置かれるわけでございまして、それは同時に、輸出というものが非常にその国にとって大事であるというふうな立場の国が多かったということも歴史的には原因があったかと思います。御承知のように輸出入はバランスしていかなければいけないというふうなことも確かでございます。私どもも、従来の保険取引現状から見ますと、何と申しましても内容的には輸出保険法であってもおかしくないと思いますし、またそういうふうな態度で運営してまいりました。ということは、各国輸入というものが逆にその反対の国の輸出保険で担保されるというふうなかっこうにもなるかと存じますが、しかし、だんだんと時勢の変化に応じまして、先生指摘のような立場新種保険考えなければいけないというふうなこともやがてくるのではないかというふうな感じもいたします。現在改正法案の一部として御提案申上げておりまする融資買鉱制度、これはいわば融資に伴いまして、鉱物の輸入ということに結局、間接的ではございますが、保険がかかるかっこうになるわけでございます。しかし、先生のおっしゃるような貿易保険的なものにはまだほど遠いということでございます。将来、先ほど申しましたような立場で、輸入に関する保険制度というものについても新種保険をどう考えていくかという立場に立ちまして、私どもも勉強してまいりたい、こう考える次第でございます。
  5. 横山利秋

    横山委員 すでに輸出保険性格から一歩出ておるというお話で、私の指摘した意味も含まれると思いますが、第二番目に伺いたいのは、どうしてこういう輸出保険政府が直接やらなければならないかという点であります。  いただきました資料によりますと、やはり各国とも、政府でやっておるものあるいは共同保険会社でやっておるもの、さまざまなようであります。イギリスにおきましては商務省輸出信用保証局フランスフランス貿易保険会社、西ドイツはヘルメス信用保険会社、やはり各国とも必ずしも政府がやっておるようなものではありません。私がこの間受けました説明によりますと、全国で百五十名内外の職員の諸君がこれを担当しておるそうでありますが、この判断輸出保険適用するかどうかの判断は、ある程度政治的なものであるにいたしましても、そのほかのことは必ずしも行政機関担当をしなければならないというようなことは私はないと思うのであります。逐次お伺いをしていきたいと思っておりますが、輸出保険会計現状その他から申しまして、かなり定着をしておるではないか。この仕事民間なり半官半民のフランス的なものにしろ、役所が輸出保険の業務をどうしてもやらなければならない積極的な理由がないのではないか、こう考えますが、いかがですか。
  6. 外山弘

    外山政府委員 輸出保険担当機関につきましては、ただいま先生指摘のように、ヨーロッパにおきましてもいろいろございます。先ほどのように、ドイツのようにヘルメスという民間会社政府が委託をしているもの、フランスのように半官半民的な公社でやっているもの、あるいはイギリスのように、日本と同様に政府自身がやっているものと、いろいろございます。しかし、いずれの機関につきましても政府が最終的に責任を負っておるという点は同じであろうか、こういうふうに考えるわけでございます。  ひるがえりまして、わが国の場合に先生の御指摘のような点を考えます場合、私どもとしては幾つかの問題点を当面頭に置くわけでございます。  一つは、先ほど、保険というものの運営が、判断が要るけれども、同時に定着しているではないかという御指摘がございましたけれども保険というものの運営の基本は、やはり対外取引変化対外取引の伸展に伴いまして、これを政策的にマッチするように運営していかなければならないわけでございます。そうしますと、やはりこの運営のために、いろいろな政策の諸調整という点で見ましても慎重な運営が要るわけでございまして、その辺政府機関のほうが便利ではないだろうか。あるいは海外の事情というものを的確につかまなければならないという点になりますと、在外公館情報という点がやはり正確なものになるわけでございますが、その点の把握につきましても政府機関のほうが便利ではないだろうか。あるいは個々の案件の処理にあたりまして、政府内の関係機関関係部局といろいろ打ち合わせをしながら運営をするわけでございます。したがいまして、もしも外の機関にそれをまかせますと、そういった保険以外の面からの保険に参与する政策面、そういったものを担当する部局を新たに加えなければいけない、そういう点になりますとさらに膨大な機構がプラスして要るのではないだろうか、こういう点が考えられます。それからさらには、保険の弾力的な運営のためにも、公社ということになりますと、あるいは独立会計の原則にとらわれ過ぎてしまって、そして運用がかたくなになるといいますか、そういった点も心配なきを得ない。先ほどのような諸点考えますと、当面、政府仕事としまして、現在のままでいるほうがいいのではないだろうか。現にほかの機関状況を見ましても、外国機関に比べますと、かなり能率的な運営をやっているという点も、私ども数字比較ではいえるわけでございまして、当面、先ほどのような諸点を頭に置いて、私どもとしては輸出保険特別会計現状のままでいきたい、こう考えておる次第でございます。
  7. 横山利秋

    横山委員 第三番目に、いま法律をちょっとさがしておるのですが、この法律によって保険関係適用しない、保険をさせないというのは何条のどういう規定がございますか。
  8. 外山弘

    外山政府委員 保険適用しないという場合は、法文の根拠で申しますと、第一条の六に保険事故事由を認定して保険関係適用しないケース法的根拠がございます。その点を御指摘ではないかと存じますが……。
  9. 横山利秋

    横山委員 一条の六を見ますと、「政府は、取引上の危険が大であるとき、その他この法律による政府保険事業の経営上必要があるときは、将来にわたって、輸出手形保険又は輸出金融保険保険契約に基く保険関係成立させないことができる。」ここにいう「取引上の危険が大であるとき」というのは、政令その他通達はどういう解釈をいたしておりますか。
  10. 外山弘

    外山政府委員 第一条の六に伴いまする政令は別にございません。ただ、約款でそれに関連しました表現がございます。対外取引の危険という点は具体的な判断にまかせられるわけでございますが、たとえば外国における外貨事情が非常に悪いというふうなことが長期にわたり予想される場合、あるいは特定の戦乱の発生等によりまして普通の取引が非常に問題であるというふうに認められる場合等々におきまして、具体的な判断をその法令に基づきまして行なっているというのが実情でございます。
  11. 横山利秋

    横山委員 在外公館情報ということは、在外公館がこの保険契約について、ここは保険適用すべきではないと考えられるというような意見を含めるのか、それがまた決定的な要因になるのか、それとも情報だけもらって通産大臣がその判断をするのか、どちらにウエートが強いのですか。
  12. 外山弘

    外山政府委員 いま御指摘の点でいえば後者の立場でおります。つまり、いろいろな事情の中の一つといたしまして、在外公館からの情報も私どもとしては参考としながら判断をしているというのが現状でございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 先般私が問題を提起しましたのに、いま繊維機械輸出に関するインドパキスタンとの引き合いと両方がございます。先般私が申し上げたように、パキスタン関係につきましては、もうすでに先方と日本商社筋の間に二十三、四億の繊維機械輸出商談成立をしておるけれども、残念ながら保険適用がされない、こういう状況にありました。そこでこの問題の善処をお願いしておったところ、今日のような現状になっているわけであります。こういうような今日の現状だけ考えますと、保険適用がやや困難ではなかろうかという気が私はしないではありません。しかし、先般来本委員会におきましてこのドルショック下日本経済、特に繊維、そして繊維の基礎となっております繊維機械というような高度の国内事情政治判断をいたしますと、パキスタン向け輸出保険についてはひとつ格段の考慮をすべきではないかということを考えるわけであります。  このことは、輸出保険の条文、いまいろいろとお伺いいたしますと、在外公館情報に基づいて通産大臣判断をするというお話でございますから、通産大臣繊維及び繊維機械のことについて非常に苦心をしてみえる、何とかできることがあるならばやってやりたいというような通産大臣の御趣旨を拝聴してみて、輸出保険政令なりあるいは規定通達の中で具体的な制限列挙条項でないとするならば、あなたも輸出保険責任者であると同時に貿易振興という意味において少しそこのところはお考えを願いたいところだと思うのです。いまあなたにどうだと言って聞けば、どうもあなたはうしろ向き返事をするような顔に見えるものだから、正直なところをいっていま返事をもらおうとは思わない。けれども、これは本法案及び高度な政治判断でどういうふうにしていただけるかという点を私は衷心期待をいたしたいのでありますから、ひとつ大臣によく相談を願って、お返事を後刻いただきたいと思うのです。  それからインドについても同じようなことであります。インドについてはあなたに直接お返事いただいてもいいのですが、インドに対しては約二千万ドルというのでありますから、七十億になんなんとする繊維機械輸出商談成立をしております。ところが話を聞いてみますと、あなたのほうは、インド銀行保証ではいけないから、ひとつ香港なりどこかの銀行保証をもらってもらいたい、そういう条件を付しておるようであります。考えてみますと、インドは申すまでもなく国有銀行であります。ガンジーになってから国有銀行になりました。インド国有銀行に、あなたの保証では信用ができないからどこか第三国銀行保証をもらってくれというのは、インド政府に対して信用ができないということと同じことになるわけでありまして、国有でなければまだしも、国有になってから引き続きもしそうだとすれば、あなたのようにそう言っておられるのはまことに理に合わないことだ、こう考えまして、インド関係輸出についてはここでお返事がいただけるもの——これは議事録に載りますから注意してものを言っていただきたいのですが、インド国有銀行では信用がならぬとあなたがここで議事録に残されますと、すぐインド大使館からインド政府にその議事録が行くことになるのでありまして、国辱としてインド政府がおこることは当然でありますから、ひとつ気をつけて御答弁を願いたいと思います。
  14. 外山弘

    外山政府委員 インドにつきましてはここ二、三年来、外貨事情の悪化、それから債務の累積というような点がございまして、そういった支払い面におきましては非常に不安の多いというような事情指摘されていた国の一つでございます。したがいまして、いろいろな援助をしながら少しでもインド外貨事情がよくなるようにと努力をしているわけでございまして、各国とも同じような立場インドに対してそういった考え方の援助をしているわけでございます。しかしながらなかなか思うような結果には必ずしもなっていない。したがいまして、日々起こる取引の問題について、そしてそれに付随する輸出保険の問題につきまして、私どもとしても何とかその中でも、少しでも条件の許すものは輸出を認めたいというふうな角度考えているわけでございます。したがいまして、たとえば決済の短いものであるとかあるいは支払いの面で不安のないものとか、そういうふうなものの判断を具体的にいたしまして、これを少しでも進めたいということでやっているわけでございます。そういった角度から見まして、私ども判断といたしましては、各国が長中期の輸出信用を与えます場合に、やはり第三国銀行等保証というものにウエートを置いた判断をしておるということも参考にいたしまして、そういったことも頭に置いて、支払いがまず不安がないというふうな判断を一次的にできるものから順次進めているというのが現状でございます。
  15. 横山利秋

    横山委員 政務次官、ちょっと聞いておいてもらわぬといかぬな。政務次官、よく聞いておいてもらわなければならぬ、ここのところは大事なところですから。  いま政務次官、どうも耳が向こうへいっておったから問題の焦点がわかってない。簡単に言いますと、インドに七十億円くらいの繊維機械輸出商談成立しているが、私が確かめたところ、インド銀行保証ではだめだ、なぜならばインド信用がないからだ、第三国銀行保証をもらってもらいたい。こういうことはインドに対して、インド国立銀行信用しない、インド政府信用しないことになるではないか。それについて局長に気をつけて答弁しなさいよと言ったのですが、局長の御答弁は何だかよくわからぬです。まあ正直なことを言うとよくわからぬ。なるべく前向きにと言っておるけれども、ずばり言って、国有銀行保証では信用ができない、第三国銀行保証ならば七十億の輸出商談について認めてもよろしいということのようです。それは私はいけませんよ、そういうことはいけませんよ。いま局長答弁らしいことを言いましたのは、インド融資をしておるけれどもなかなかその返済がうまくいっておらぬ、こういうことのようです。ところが、ここでも問題がありますのは、政府間の借款返済はうまくいっておらぬかもしらぬけれども民間貿易上の決済はきちんといっておるわけです。自分の借金を返してくれないから人の商売じゃまをしているわけです、政府は。それはいけませんよと、こういうのが私の言い分なんです。政務次官、おわかりになりましたか。御答弁をそれではお願いします。
  16. 稻村佐近四郎

    稻村(佐)政府委員 御質問の問題ですが、これはインド全体の状態をいろいろ検討してみまして、そして保険ですからやはり安全、ということばがいいのかどうかわかりませんが、保険を引き受けるという段階においては、それに適当と認められるようなものでなければ引き受けることはできないのではないかと思います。
  17. 横山利秋

    横山委員 これは保険じゃないんです。保険の問題じゃない。債権債務の、債権保証の問題なんですよ。債権保証の問題。もう一ぺん言いますと、つまるところは、貿易上こちらが繊維機械輸出する、向こうが支払うかどうかについて銀行保証を求めておるわけですね。銀行保証インド銀行保証ではいかぬぞと、こういうことを政府がいうておる、こういうわけなんですよ。香港でもいい、どこでもいい、第三国銀行保証をとってくれいと政府はいっておるわけです。ところが、インド銀行は全部国有化して、国有銀行になっておる。国有銀行保証信用がならぬということは理屈に合わないよ、こう言っておる。そして、しかも政府インド国有銀行信用ならぬといっておるのは、自分の貸した借款返済がうまくいっておらぬからということなんです。ところが、自分の貸した政府間の借款返済はうまくいってないけれども民間決済はうまくいっておるわけです。何もいま支障はないわけです。だから、私が悪口を言っておるのは、自分の貸した金を返してくれぬから人の商売じゃまをしておるというのがいまの政府立場だ、こういうわけですから——それは政務次官局長にそうお聞きにならぬでも、あなたの常識的な判断で、わかりました、この際私にまかしてください、こう言ってもらえば次に移りたいと思います。
  18. 外山弘

    外山政府委員 保険をつけます場合に、支払いが確実であろうというふうな判断は、私が先ほど申しましたようなことを念頭に置きまして、インドという国の具体的事情をつかみながらやらざるを得ないと思います。先生指摘の、民間では返済が続いておるとおっしゃいましたが、実は、インド事情もあるのかもしれませんが、ここ二、三年の民間ベース信用供与につきましても、これは見合わせられておるのが実情でございます。
  19. 横山利秋

    横山委員 こんなことを言ってはなんでございますが、本件につきましては私が代表質問しておるようなもので、いま向こうで雑談しておる浦野代議士、あそこの浦野代議士の選挙区は本件に非常に関係のあります豊田の織機、それから武藤君のところは繊維及び繊維機械の本場、私の名古屋もやはり繊維機械メーカー、それからお隣の加藤さんのところも同じようなものです。こういう問題は必ずしも与党、野党の問題ではありません。そして、先般来特に私が強く言っておりましたのは、繊維繊維といま繊維が大問題になっておるけれども繊維繊維機械とは密接不可分関係にある。そして雇用労働者繊維機械は実に多い。そしてもろに仕事が半分になっておるとかあるいは三分の一になっておるとか、そこで縮小をする、倒産をするということにいま運命が迫りつつある。しかもその繊維機械は、この間私が申し上げましたように、この間通りましたドルショック中小企業法案の五千万円以下、三百人以下というラインの少し上にみなおるわけなんです。少し上にみなおる。それは豊田とか豊和とかいうのは大きいですからずっと上ですけれども中堅メーカーはそのラインの少し上におる。だから、あれだけ議論をいたしました法案、私はたいした法案ではないといって悪口ばかり言っておるわけですが、その恩恵すらも受けられない企業生産をした繊維機械——繊維機械というのは見込み生産をしないものですから、注文生産ですからね。注文生産をしたやつがキャンセルだ、あるいはストップになっておるということによる打撃というのは実に甚大なものがあるわけです。ですから、どうですか政務次官、そこのところをよく考えて、この際ひとつ諸般の事情考えて高度の政治判断をしてやるべきだ。これは私どもこれほど言っておるのですから、そんないいかげんの、とは言いませんけれども、木で鼻をくくったような答弁では、この輸出保険改正法案を、ああそうですか、それではさっそく通しましょうというわけにまいらぬと私は考えておるのですよ。
  20. 稻村佐近四郎

    稻村(佐)政府委員 これは御指摘のとおり、繊維機械というのは自主規制あるいは政府間協定等々により、たいへんな被害があるということは私もよく承っております。これは私の県でも北陸機械津田駒、こういうところからいろいろ事情を聞いてみましたら、これは中小企業の域を脱しておる、たいへん困っておるという苦情を実は聞いておったわけです。そこで全国的に見まして大体三百五十社。三百社は、これは業種指定等を受けて、御承知のように輸出関連中小企業緊急融資制度、これの恩恵をこうむるわけですが、あと五千万以上の資本金等々の問題が大体五十社ぐらいある。これについてはこの指定を受けてはおりませんが、前向きに検討するように、また現在前向きに検討いたしておるわけであります。  そこで、契約をしてキャンセルをされたもの、繊維がこういう形になったという意味から、契約したけれどももう必要はなくなったといって実際キャンセルされたもの、あるいはまたキャンセルされたとしても、ただ契約だけでもって製品化されていないといういろいろなケースがあると思いますが、これは各業界に対して、一日も早くそういった具体的な報告をするように、こういうふうに指導いたしておりますので、全く短い期間にこういう御報告がされると思いますので、それを検討の上前向きにひとつ対処していきたい、こういうように考えております。
  21. 横山利秋

    横山委員 前向きを四回おっしゃったのですが、前向きの結論はいつごろ出るのですか。先ほどのパキスタン向けの問題を含めて、私がいま問題にしておりますパキスタン向け輸出保険について高度の政治判断をしろ。インドについては国有銀行だから、それを信用しないというばかなことは言うな、それが二つ目。それから三つ目は、いま言及をいたしました、これから質問に移るわけでありますが、そういう法律恩恵を受けない、いまあなたは五十社と言いましたが、そういう中堅企業に対する金融、それにあなたも言及されたようでありますが、その三つの前向きを、少なくともこの法律案が通過する前に御返事をいただかなければだめですよ。お約束願えますか。
  22. 稻村佐近四郎

    稻村(佐)政府委員 これは先生、いまは具体的にあれが出ていないのですよ。この繊維機械の問題ですが、具体的なものがまだ煮詰まって出ていないのです。
  23. 横山利秋

    横山委員 おかしいな。額は出ていないけれどもインドパキスタン向けの……。
  24. 稻村佐近四郎

    稻村(佐)政府委員 いや、その一つ一つ、さっきの繊維機械の問題については出てき次第、この法案とかかわり合いなく——この法案の前にとおっしゃいましたが、これは早急に通していただかなければなりませんので………。これはまだきまっておりませんが、きまり次第やはり解決しなければならぬ。  それからパキスタン等々の問題ですが、これはやはり引き受けは危険性があるというような意味合いから、一応引き受けは停止をいたしますが、できるならば一日も早く両国で円満裏に解決していただいて、そうしてやはり正常化と申しますか、その中で引き受けを正常化の方向に持っていくのが当然である、こういうふうに考えております。
  25. 横山利秋

    横山委員 そんなことでは納得しませんよ。パキスタンの問題は輸出保険をつけるかつけないかということで、これは判断の問題ですね。その判断の中で、今日の国内情勢、繊維関係の情勢からいって、政府としても繊維にあれだけ、来年も財政投融資なり予算もたくさんつけられるのであるから、繊維機械についてもつけてやれ、そういう高度の政治判断判断しろ。インドは、国有銀行信用しないというばかなことを言うなというのですから、この二つとも即刻判断ができる。即刻判断ができるのだから、ひとつ大臣とも相談願って高度の政治判断をしてもらいたい。これは判断の問題ですからできます。だからこれは何も時間を要する必要はない。  それから三つ目、いまあなたが少し資料がまとまっておらぬとおっしゃるのだけれども、それは少し怠慢だと思うのです、金融の問題は。私がいろいろ調査をいたしました。いま何か繊維機械メーカーだけに議論が集中しておるようでありますが、一つの例として私はいろいろ問題提起をしておるのでありますが、繊維があれだけ打撃を受ければ、もう設備投資が縮小するのは当然なことで、繊維よりも繊維機械メーカーのほうにもっと大きな打撃が直接的にきているという認識があなたのほうにはまだ乏しいのではないか、こういうふうに私は考えています。  そこで局長に伺いたいのは、この間のお話によれば、一昨年の三月に打ち切りになった例、すなわち興銀、長期信用銀行の債券を政府が買い入れて、その生み出たお金を繊維機械メーカーにお貸しになったという実例があるというお話を聞きました。一昨年までそれをおやりになったならば、そういうことが必要性があったよりもさらにもっと深刻な必要性のある今日において、それができないはずはない。それを、この間の法律適用を受けないライン以上の中堅繊維機械メーカーにあらためてその制度を、何か方法を考えてやるべきであるということを私は主張をいたしたいし、いまこの産業界がほんとうに何よりもまず全般的に希望いたしておるのは融資の問題ですから、その融資について特段の措置をひとつとってもらいたいということですが、いかがですか。
  26. 外山弘

    外山政府委員 問題の性質上、私直接の担当ではございませんが、重工業局長がちょっと席をはずしておりますので、私の知る限りの事情を申し上げたいと思います。  先生いま御指摘の興長銀債の預金部引き受けという方法は、運転資金に道をつけるという点ではまことに現在やり得る唯一の方法ではないかというふうに私ども考えておりました。ただ最近の事情から見ますと、金融債に対する引き受けの事情がだいぶ違っておるというふうなこともございまして、その政策のメリットがどこまであるだろうかという点は現在議論をされているのだろうと思います。おそらく他の担当部局でそれについての結論をやがて出すだろうと思います。ただ機械工業の不況問題というのは、今回のような事態におきましては今後も非常に深刻なものになっていくのではないかという予想ができるのでございまして、現在重工業局を中心にいたしまして、諸般の対策をいろいろ勉強しているというのを私どもは聞いている次第でございます。  一応、担当ではございませんが、お答えさせていただきます。
  27. 横山利秋

    横山委員 この点も政務次官にひとつ十分認識をしていただかなければなりません。いま重工業局長がいないので、たぶんあそこでやっておるという局長答弁でした。繰り返し申すのを省略をいたしますが、この間の法律では適用されない、その五千万円、三百人の少し上のところなんですよ。私が先般の商工委員会で列挙をいたしました企業なんでありますが、それらのところの融資がいま一番必要であり、しかも一昨年までそれが行なわれておったのだから、それよりもさらに深刻な今日の状況であるから、その中堅中小企業融資について特段の具体的な措置をとってもらいたいということなんであります。ひとつ、重工業局を督励するももちろんでありますが、これも先ほどのパキスタンインドと並んで、法案通過以前にお答えをいただきたい問題です。いかがですか。
  28. 稻村佐近四郎

    稻村(佐)政府委員 全体の機械工業が落ち込んでおるわけでございますが、その中でも御指摘繊維機械工業というものはたいへん落ち込みが激しいと思います。そういう意味合いから、中小企業として中小企業法の定義以外のものの先ほど来からの御指摘のものについては、これは私自体も当然考えなければならぬと思っております。
  29. 横山利秋

    横山委員 それで、法案通過までにお答えができますか。
  30. 稻村佐近四郎

    稻村(佐)政府委員 これはできると思います。具体的なものさえまとまってくればできます。
  31. 横山利秋

    横山委員 わかりました。それでは、この法案がいつ通過するか知りませんけれども、そのお答えいかんによって、法案が早く通過するかそれともゆっくり通過するかということでありますから、ぜひひとつ委員長も三点について督励方をお願いをいたしたいと思います。  それから、労働省を実は呼んでありませんが、主管の、原因が出ておる通産省としてお伺いをいたします。  先般も、こういうような繊維及び繊維機械産業全体の繊維関係で、一番重点的に出てくる可能性のあるのは新規採用の停止及び労働者の縮小という問題であります。この間、私が調査団の一員として瀬戸・多治見地方の陶器を視察いたしました際にも、やはり同じような事態がもうすぐ来るということでありました。労働者が解雇されるということは容易なことではございませんので、経営者の意見を聞いてみますと、何とかして、かつてあったように一時帰休について失業保険適用してもらいたいという痛切な要望がありました。個々の事情を聞きますと、ある繊維機械メーカーはもうすでに土曜、日曜、月曜を三日休んでおる、こういう話であります。また超過勤務をほとんどやらないか、あるいはまた超過勤務を半分ないしは三分の一にして受注残の繰り延べをしておる。この受注残の繰り延べがいつまでもつか、まことに怪しいものであるから、その受注残がもうなくなった瞬間からどうしても解雇ないしは一時帰休の制度をとらざるを得ない、こういうわけであります。  そこで、通産省は厚生省と、あるいはまた労働省と、問題発生の省としてどういう交渉をなさっておられるであろうか。総評もこの間労働大臣に会いまして、幾つかの問題の中の重点項目として、一時帰休に対する失業保険適用を強く要望いたしておるそうでありますが、通産省の考えを承りたいと思います。
  32. 進藤一馬

    進藤委員長代理 その前に、政務次官から発言を求められております。稻村政務次官
  33. 稻村佐近四郎

    稻村(佐)政府委員 いま横山さんのおっしゃった、この法案が通る前という、こういう一つのかけ引きのようですが、この取引にされては私も困ると思います。私がいま申し上げたのは、繊維機械中堅企業に対する融資の問題については必ず近日中にめどをつけたい。この法案との取引にしていただくことは私らたいへん困ると思いますので、良心的に必ず解決する方向に持っていきたいと思います。
  34. 横山利秋

    横山委員 了解しない。この輸出保険にからまる諸般の情勢上その答弁を必要とするという判断でありますから、あなたが取引と思おうが思うまいが、それはかってであります。野党側としてはその答弁がほしいと言っているのに、その答弁はせずに法案を通してくれと言ったって、それはだめであります。わざわざあなたが立ち上がって、取引ならいやだと言うなら、こちら側も、ああそう、それなら私のほうの自由にさしていただきます。余分なことは言わないほうがよろしい。応じません。
  35. 杉山和男

    ○杉山説明員 繊維機械工業におきまする一時帰休の実態は先生指摘のとおりでございまして、従来のところは輸出比較的好調で推移いたしておりましたので、生産レベルも、十月までの数字を見ますと、大体昨年の生産レベルよりちょっと上回っているという程度でございますが、問題は今後にあるというふうに考えるわけでございます。一時帰休の場合、御承知のように労働基準法で、使用者の責に帰すべき理由によって一時帰休等の場合には六〇%までは支払わなくてはならない。で、業界では労使とも、その差額の部分といったような部分を労働省の失業保険特別会計のほうから、余剰金があるので、それから支払うようなことができないかという要望、要請が出ておりまして、私どもも労働省と連絡をとっておりますが、労働省は全般の雇用情勢を検討しておりまして、中央雇用対策協議会等で検討をしておるというふうな情報を得ておるわけであります。
  36. 横山利秋

    横山委員 その検討をしておるということは、よくわからないのですが、どういうことなんですか。適用をするという立場で検討しておるのですか、白紙で検討しておるのですか。いまあなたのおっしゃるように、失業保険は余剰金があるという話なのでありますが、こういうときにどうして一体それをやらないのか。大体この間の法案のときにも事情をお伺いいたしましたところ、中小企業庁としてもあるいは通産省としても、これをひとつやってもらいたいということを関係省と勝負をして、どうも通産省が負けたという印象を受けておるのですが、問題発生の省としてこれはどうしてもやらせなければならぬことだと思うのでありますが、どういう交渉の経緯になっておりますか。
  37. 杉山和男

    ○杉山説明員 一時帰休制が始まっておるわけでございますけれども、これから各業界、繊維機械は特にこれからの割合が多くなるだろうというふうに考えるわけでございますが、私どもその実態をいま見きわめているところでございます。いま検討しておると申しましたのは、労働省からの連絡によりますと、今後全体の労働力の需給バランスがどうなるかというふうな基本的な問題を検討し、そういう制度をとるとすれば法律改正が必要であるので、追って検討したいというふうな連絡を受けておるわけであります。
  38. 横山利秋

    横山委員 この前やりました一時帰休の失業保険適用法律改正をしなかったように、運用でやったように私は記憶しておるが、そうではないのですか。
  39. 杉山和男

    ○杉山説明員 私ども、労働省からの連絡では、法律改正も必要であるので、まず全般の各業種別の情勢等を十分検討した上でという御連絡を受けておるわけでございます。
  40. 横山利秋

    横山委員 正確に伺いたいのでありますが、政務次官本件、一時帰休に失業保険適用しろという、前例のあることについて、通産省の姿勢というものはどういうことなのでありますか。適用すべきであるという立場に立っておるのかおらないのか、労働省や厚生省の御意見を伺っておるということなのですか、どちらなんですか。
  41. 稻村佐近四郎

    稻村(佐)政府委員 労働省と現在いま話し合っているようでございますが、まあ失業保険適用していただけるということになれば通産省としてはたいへんベターということなんですが、いま目下その問題について話し合っているというのが現状でございます。
  42. 横山利秋

    横山委員 どうも姿勢がはっきりしないようですね。たいへん不満です。あなたのお話によれば、適用していただければたいへんけっこうでございますというような——適用すべきであるという立場に通産省がしっかり立たなければ、向こうは受けて立つほうなんですからね。こういう問題が発生した産業界の状況というものは通産省が一番知っており、そしてその必要性を痛感するのが通産省なんですから、すべきであるという立場で強硬な主張をしてどうしてやらないんだろうか、ふしぎに思うのですが、何か弱いしりでもあるのですか。
  43. 稻村佐近四郎

    稻村(佐)政府委員 これは私が考えても適用すべきであるというふうには考えます。しかしながら、いま事務的の段階として労働省のほうと話し合っておるというのが現状でございまして、もちろん事務当局としてはそうすべきであるという強い主張をしておるというのが実情であります。
  44. 横山利秋

    横山委員 ぜひそれは実現をしてもらいたいと強く要望をいたします。  次に、輸出保険会計でありますが、輸出保険会計現状をひとつ概括的に承りたいと思います。
  45. 外山弘

    外山政府委員 先生の御質問輸出保険の体系でございましょうか、会計でございましょうか。(横山委員会計です」と呼ぶ)  輸出保険につきましては、いま昭和二十五年以来当初のスタートは資本金が十億でございますが、非常に少ないスタートでございましたから、その後三十億、それから最近におきましては六十億の資本金で、現在その間の対外取引の急増——急増と申しますか、伸展に伴いまして、その扱い高も非常にふえてまいりました。現在のところ大体、昭和四十年、四十一年ころに大きな保険事故がございまして、一時たいへんな赤字を生じたわけでありますが、その後順調な回復を見せております。現在、昭和四十五年で申しますと、保険料収入あるいは回収金とプラスしまして、保険料収入と見合いまして保険支払いのほうが若干下回るというふうなことで、保険会計としては資本金と合わせまして約二百二十七億の支払い準備金を用意できるというふうな状態になっておるのが現状でございます。  なお、そういった時点におきまして、今後保険契約というものはどんどんふえてまいります。それから、やはり保険事故というものがいつ起こるかわからない。したがって保険財政の健全な運営ということを常に考えていかなければならない。両方見合いまして今後やはり資本金のようなものをいつの時点でどういうふうにふやしていくか。一方保険料収入というものと見合いまして、保険料というものをどういうふうに考えていくかというふうなことを将来にわたって考えてまいりたい、こういうのが現状でございます。
  46. 横山利秋

    横山委員 手元に来ておりますが、昭和二十五年十億の支払い準備金が四十五年には二百二十七億にまで発展をした。そして四十五年現在では、支払い準備とそれから支払い高と比べますときわめて堅実、きわめて充実したと御自慢のようであります。御自慢はけっこうでありますが、要するに、俗に申せばもうかってしようがないということになるようでありますね。保険というものはなるほど支払い準備が充実しておればけっこうなようなものでありますが、また不測の事態があるから支払い準備が充実しておることが好ましいことでありますが、少しこれはもうけ過ぎていはせぬか、そういう気がいたします。事故の起こらないように、先ほどのインドパキスタンのように、ちょっとでも問題があるならば保険をかけないということをすればもうかるにきまっていますね、ばかがやってもちょんがやっても。だから、もうかってしようがないなら少しはリスクをおかさなければならぬ。保険というものは一体どういうものだ。保険をかけなくたって貿易に何らの支障がない。しかし、保険をかけるということは、多少リスクがあるから保険をかけるのであって、そのリスクがあったら保険をかけないと言われたのではこれは話にならないと思うのであります。先ほどの第一条の六「取引上の危険が大であるとき」というのは、本来ならば著しく大であるときならいざ知らず、あなたのほうが、これは保険をかけてやらないよということを言えば言うほどもうかるわけなんですからね。ここで支払い準備が堅実、充実しておることをあまり御自慢にならないで、少し運用をゆるめたらどうであろうか。運用をゆるめる必要がなければ保険料を安くしたらどうであろうか。こういうことは民間保険会社でやっておるようなことであるならば、大蔵委員会で私は保険会社に対していろいろ糾弾したわけでありますが、少しもうけ過ぎているのではないか。もう少し保険をかける度合い、基準というものをゆるめたり、場合をふやしたり、保険料を安くしたり——少しお役所仕事でありませんか。サービスをしたらどうであろうか、こう思いますが……。
  47. 外山弘

    外山政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたが、現在におきましてはようやく二百二十七億の支払い準備金を持つようになりましたけれども、つい四十年度には七十五億、四十一年度には四十三億と大きな赤字を続けたこともございまして、その際資本金を追加して保険財政をまかなったというふうな事実がわりあい最近にございましたわけでございます。もちろん先生のおっしゃるように、保険財政が全く安定しておればそれは保険料の問題に関連して考えるべきでございますが、いまようやくその程度に達したということでございまして、現在保険責任残高という点も同時にふえておりますから、この程度の支払い準備金でも支払い準備率は必ずしも高くはございません。〇・三五というふうな数字になりますが、イギリス等におきましてはこれが二・九というふうなことも聞いております。ようやく、過年度の推移から見ますと四十年に比べて少しよくなってきたということでございまして、それ以前の支払い準備率に比べますとまだ低いというのが現状でございます。先生の御指摘のような問題につきましては今後もよく頭に入れていきたいと思いますけれども現状におきましてはそういうことで、ようやく息をついてきているというような実情でございまして、これからの情勢の変化の中で両方のファクター、つまり保険料をできるだけ下げるということと、それからもう一つ保険財政を堅実に運営するということの両方を十分かみ合わせてまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  48. 横山利秋

    横山委員 まだ問題が残っておるわけでありますが、多少の問題はまた後日にずらしまして、この機会にひとつ経済協力、この貿易あるいはその他に関連をいたします経済協力について伺いたいと思います。  この間、貿易振興局から、一九七一年度版の経済協力の現状について資料をいただきました。これを見て私がいろいろ感じたわけでありますが、これはまあ貿易振興局、通産省としての分析、現状の説明というただし書きつきでありますから、念のために質問する前に伺いたいのでありますが、経済企画庁と外務省が来ていらっしゃいます。  外務省にまず伺いますが、この貿易振興局の出しましたのをごらんになっていると思いますが、これについて格別、外務省としてはこう思う、ああ思うという意見のあることとか、この範疇でない外務省の御意見とかいうものはありますか。ちょっと伺います。
  49. 沢木正男

    ○沢木政府委員 全般的な問題の指摘としましては、問題点指摘においては通産省の出版されました経済協力白書の意見に大体われわれも同じ意見でございます。しかしながら種々の点、あるいは将来の発展構想その他については、いろいろわれわれのほうの意見もございます。
  50. 横山利秋

    横山委員 経企庁は同じようなことですか。
  51. 真野温

    ○真野説明員 企画庁といたしましても、本件の白書につきましては事務的にもいろいろ打ち合わせをいたしまして、私ども考え方も、基本的にはこの白書の考え方に賛意を表しているわけでございます。
  52. 横山利秋

    横山委員 私はちょっとふしぎに思うのですけれども、今後この経済協力の度合いが、現状はちょっと停とんしておるようでありますが、これから日本の経済政策としてはかなり経済協力に大きなウエートを占めなければならない。よきにつけあしきにつけ、またその実行のしかたにいろいろ批判があるにしろ、私どももまた野党として意見があるにしろ、経済協力の展望というものはかなり加速度を持つのではないかと思うのであります。その経済協力について、まず第一に、国民に経済協力の現状問題点として出されるべきものが、貿易振興局というそのタイトルでお出しになる。なぜ一体政府全体の共通の意思として、各省の問題点、経済協力のすべてについて、これが経済協力の現状問題点として政府としてお出しにならないのかという点をふしぎに思うのでありますが、この点はどなたに伺ったらいいのかわかりませんけれども……。
  53. 外山弘

    外山政府委員 現在の「経済協力の現状問題点」をまとめました私ども立場でお答えいたします。  御承知のように、この「経済協力の現状問題点」は、すでに今回で十四回目になるかと思います。つまり、毎年こういった角度現状問題点を私どものサイドでつかみまして、そして関係各省と御相談しながらそういった文書をまとめるということで、毎年、まあ資料を豊富に提供するというふうな点を中心に公表してまいったわけでございます。先生が御指摘のような政府の白書ということになりますと、これは確かに関係のところが全部寄りまして、そして同時に閣議決定をいたしまして、政府の白書として出すわけでございますが、そういうふうな扱いになっているものは現在のところごく限られたものでございますし、そのうちまた幾つかが国会に報告をされるということが法的にも義務づけられておる、そういったものについてだけ政府の白書というふうな扱いが行なわれているというふうに私ども承知しているわけでございます。私どもの「現状問題点」は、そういう意味から申しますと、通産省の立場で、関係各省の御意見も聞きながら現状問題点をまとめるということを毎年やってまいりましたその公表物でございまして、特に政府の白書というふうなものとは若干扱い方も違っている。そういう意味で通産省がこれを出している、こういうことでございます。
  54. 横山利秋

    横山委員 その事情はわかりました。事情はわかるんだけれども、私も申し上げておるように、これから経済協力というのは非常に大きなウエートを占めるのに、なぜそういう、いままでやってきたからこうなっているんだということから一歩踏み出て、通産省あるいは外務省、経済企画庁合同の「一九七一年版経済協力の現状問題点」というタイトルをどうしてつけないのかということなのであります。経済白書というような政府の白書になるといろいろ差しさわりはあるにしても、これだけの重要なこれからの問題点について、いま経済企画庁は何の意見もないようでありますが、外務省の沢木さんの話によりますと若干ニュアンスが違うような気がするんですね。外務省は外務省で、経済協力的なものについては外交白書の中でお出しになるのですか。その点はどうなりますか。
  55. 沢木正男

    ○沢木政府委員 外交白書の中では外交政策の一環として簡単に触れておりますが、先生の御指摘の点はまことにごもっともでございまして、われわれとしましても前にもそういうことを考えたことがあるのでございます。しかしながら、ああいうふうな白書を出すということはたいへんな作業量でございまして、現在の限られた予算と人員のもとではなかなか外務省としてはそれだけの人員をさけない状態にございますので、いままでそういう通産省の経済協力白書のようなものを発表していなかったのが現状でございます。
  56. 横山利秋

    横山委員 一体、経済協力の主管省はどこでありますか。
  57. 沢木正男

    ○沢木政府委員 主管省という呼び方でいたしますと、いろいろそのことばの意味にも問題があるかと思うのでございますが、現在外務省におきましては経済協力局というのがございまして私が局長をいたしておりますが、これが対外面についての折衝全般を担当すると同時に、外交政策的な見地から見ました経済協力について国内官庁と折衝いたしております。通産省は、現実の輸出入の許可あるいは投資の許可その他の面におきまして、その権限に基づきまして産業政策的な見地からいろいろ経済協力政策について主管しておられるわけであります。それから大蔵省は財政的な見地から、借款の量をどうするとか条件をどうするということになると、どうしても大蔵省の御意見が非常にいろいろ影響してくる。それから経済企画庁はまた経済協力基金というものを主管しており、かつ日本の経済全般の企画調整に当たっておられるという立場で、経済協力につきましても一課を現在設けていろいろ意見をやっておるというのが現状でございまして、先般の経済協力審議会の答申にも、経済協力機構が複雑過ぎる、これを単純化しろという提言がなされておりまして、われわれ関係各省におきましても、その答申を受けて、どうするかを現在検討しておるというのが現状でございます。
  58. 横山利秋

    横山委員 経済協力と称せられるものは年間に、たとえばまあ本年でも去年でもいいのでありますが、年間どのくらいの総額になっていますか。
  59. 沢木正男

    ○沢木政府委員 OECDの開発援助委員会に出しております統計で、一九七〇年度が十八億二千四百万ドルでございます。
  60. 横山利秋

    横山委員 十八億ドルというとざっと計算してみますと六千五百億くらいになりましょうか。この六千五百億になんなんとする膨大な経済協力が行なわれておる。それは何法によって運営されておるわけですか。
  61. 沢木正男

    ○沢木政府委員 経済協力全般に対する、これを規定する法律は現在のところございません。しかしながら、現実の物の出入りは通産省が主管であります。輸出入貿易管理令その他の手続がございますし、借款の供与その他につきましては経済協力基金の設置法、設立法と申しますか、それから輸出入銀行の設立の法律その他によって主管されるわけでありますし、為替のやりとりにつきましては為替管理令に基づきます大蔵省の省令その他がございます。
  62. 横山利秋

    横山委員 私も経済協力については十分な知識は持っていないのですけれども、先般来いろいろと話を伺ってつくづく痛感いたしましたのは、外務、大蔵、通産、経済企画庁等各省にわたっていること、そして金額もまた六千五百億にわたっておること、そしていまお話しのように法律的に見まして、貿易管理令にしてもあるいは輸出入銀行法にしてもあるいは基金法にしても、経済協力の基本法となるべきものがない。各省の基本体制ということで行なわれておる。しかもその経済協力の実態は、これから時間がありますればだんだん私も勉強して明らかにしていきたいと思うのでありますけれども、国民の目にあまり映じていない。ごく一部の海外で行なわれておりますために、国会審議の対象にもあまりなっていない。そしてその経済協力の実態というものが、必ずしも円滑に進んでいない。国民のこの国会の審議の場からも十分でないということは、基本的な責任を持つ省、それから運営の基礎となる法律、基本法というものがないからだ。これはきわめて重大な問題ではないかということを、概括的な私の意見ではありますけれども、痛感をいたしておるところであります。きょうは大臣がお見えになりませんから、政務次官にその点について御意見を伺いたいと思うのでありますが、どうお考えでありましょうか。あなたは通産省の政務次官であって、さらに政府全般の議論をなさる立場ではございませんけれども、少なくともいまの経済協力がこれから大きなウエートを占めていく段階で、基本的に考え直すべき条件下にあるのではないかと私はつくづく考えるのでありますが、いかがでございますか。
  63. 稻村佐近四郎

    稻村(佐)政府委員 最も適切な御意見だと思いますので、これは検討に値すると思います。
  64. 横山利秋

    横山委員 私の手元にはまだ貿易振興局の第一部総論をいただいただけでありますが、ひとつ経済協力がどんな角度でなされておるか、抽象論でなくて、具体的に現状——どういう条件、こういうふうに行なわれておるかというものについて御説明をいただくとすれば、何省が一番基本的に御説明をいただけることになりましょうか。
  65. 沢木正男

    ○沢木政府委員 日本の対外援助政策全般の統計につきましては、OECDの開発援助委員会に出しました統計をもって国内にも発表いたしておりますので、そういう点を主管しておるという意味におきまして、私のほうから概括的な御説明は差し上げられると思います。
  66. 横山利秋

    横山委員 それでは一回ひとつ適当な機会に説明に来てもらいたいと思う。  そこで、時間もございませんから、その基本理念と申しますか——基本法がないんですから、経済協力の基本理念が法律的にどういう立場運営されておるのか、私どもはそのよりどころというものを知らないのでありますが、この国際社会の中における経済協力、特に日本が行ないます経済協力というのは一体どういう原則に立って行なわれているかという点について御説明を願います。
  67. 沢木正男

    ○沢木政府委員 わが国の経済協力は、国際社会におきまして相手国の経済の発展を助けることによりまして、世界平和を実現するために貢献するという趣旨において概括して行なわれておるかと思います。従来、経済協力をすれば輸出市場の確保あるいは輸入原材料の確保につながるとか、あるいは日本の安全保障上の動機につながるとか、あるいは完全な慈善的な意味におきまして人道的な援助を行なうとか、いろいろの動機がいわれたわけでありますが、ひっくるめて申し上げるならば、ただいま私が申し上げましたようなことに大体の観念が集中できるのじゃないかというふうに考えております。  それで、経済援助と申しますか、協力の歴史は、戦後、南北問題ということで提起されまして以来国際的に広まった行為でございますけれども、その当初において米ソの冷戦ということから起こった問題でありまして、そう最初から思想と理想をきめて、それに基づいて各国が一斉にスタートしたというようなものではございませんわけでございます。そういうことから、日本もコロンボ計画に戦後加入しましたときから、経済援助を技術協力を中心として拡大し、それをさらに資金の面においても、国際収支のバランスを見ながら徐々に拡大してきたというのが今日の現状でございます。
  68. 横山利秋

    横山委員 経企庁に伺いますが、基金法の運用は現在どうなっておりますか、概括的に御説明を願います。
  69. 真野温

    ○真野説明員 現在、経済協力基金からは、ただいま先生からいろいろ御議論のございます開発途上国に対するいろいろな経済協力に対する資金の供与を行なっております。現在までのところ、基金の資金的な状況から申し上げますと、投融資残高にしまして今年の九月末までに総額千七百億円の資金供与をいたしております。このうち、概括して分けまして、相手国政府等に対する資金供与というかっこうで出ておりますのが千二百八十四億円、それからわが国企業が相手国といろいろ経済協力をいたします、それに対する資金供与というかっこうで行なわれておりますのが四百十九億円、大体以上が現在の基金の活動状況でございます。
  70. 横山利秋

    横山委員 時間がございません。同僚が待っておりますので、いまの御説明願いました経企庁のほうにお願いいたしますが、時間がございませんので、その基金の運営状況について一回別途御説明を願いたいと思います。  それでは、私の質問を終わります。
  71. 進藤一馬

    進藤委員長代理 午後一時再開することとし、暫時休憩いたします。    正午休憩      ————◇—————    午後一時二十四分開議
  72. 進藤一馬

    進藤委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡田利春君。
  73. 岡田利春

    ○岡田委員 輸出保険法質問に当初関連しまして、今回の法律案の提出理由の中にも融資買鉱に対する保険制度の拡充がうたわれておるわけです。非常に資源の少ないわが国として、経済の成長発展のためには安定的な資源の確保ということが近年特に強く叫ばれて、その長期的な対策を立てることが内外から強く要請されておるところであります。ところが、ベースメタルで見ますと、特に銅の場合にはトン六十一万円程度しておったものが、今日の国際価格では三十二、三万円まで大きく落ち込んでおるわけです。しかも、わが国はすでに変動相場制に移行いたしておりますし、加えて昨今の円・ドル問題の解決は、ドルの若干の切り下げ、円の大幅な引き上げ、どう見てもトータルにして二〇%を下ることはないのではないか。したがって、今日わが国の国内銅鉱山を中心にして非常に困難な事態に立ち至っているわけです。海外の資源開発は、この資源技術を温存する国内鉱山の一定量の確保ということが当然その前提となってこなければならないわけでありますから、最近の情勢から判断しますと、すみやかにこの対策を立てる必要がある、このように私は考えるわけです。したがって、業界からは関税一〇%の付加、こういう要望が出されておりますし、また、かつて昭和三十八年には、御承知のように銅価格安定帯制度を確立して臨時措置法を国会で制定をいたしたという経過もあるわけです。したがって、関税の引き上げ、あるいはまた価格安定帯の設定、あるいはまた、この価格について調整する基金制度の創設、いろいろなことが考えられるわけでありますが、いずれにしても、現時点では積極的な手を打たなければならないのではないか、政府はこれに対して、今日どういう検討を進め、その政策の方向をどのように定められているか、伺っておきたいと思います。
  74. 莊清

    ○莊政府委員 非鉄金属の現在の状況、御指摘のとおり、国内の不況に加えまして、為替変動の影響を非常に深刻に受けております。国際的な不況を背景に、LMEの建て値も、最近では異常なといえるほどの安値に落ち込んでおる状況でございます。そこで、通産省といたしましては、緊急の措置といたしまして、輸入いたしております銅、鉛、亜鉛の地金につきまして、現在実施いたしております関税を、次期通常国会において若干関税を強化する方向で、現在、案を練っております。これによりまして、輸入地金の価格を、現在の低落し過ぎておると思われるLME相場よりも関税分だけ高値にして、それによって国内における輸入鉱石を含めましたすべての地金の建て値というものに対して、合理的な範囲での底入れを行なって、これによりまして、同時にまた、国内の非鉄金属鉱山から製錬所に対します買鉱条件というものの改善をはかる。これによってLME相場の著しい低落に伴う不当な国内産銅業界に対する悪影響というものを是正いたしたいというふうに、緊急的な対策として考えておるわけでございます。  さらに、ただいま先生から御指摘のございました価格安定帯構想とかその他の基本的な抜本的な構想も、いろいろすでに関係業界等から提案されつつございますので、こういう基本問題につきましても、私どもといたしましては、関連する需要業界等多岐にもわたりますので、これらを総合的に勘案いたしまして、鉱業審議会の場でこういう基本問題につきましても今後鋭意御審議をいただきまして、こういう問題を含めた鉱業に関する政策というものを十分練り上げてまいりたいと考えておる次第でございます。
  75. 岡田利春

    ○岡田委員 現在、融資買鉱あるいは長期取引協定、あるいはまた自主的な協力的な開発を通じて、鉄の場合と違って銅、鉛、亜鉛は、その契約に基づいて着実に入荷しておる現状である、こう伺っておるわけです。現時点で滞貨動向はどうなっておりますか。
  76. 莊清

    ○莊政府委員 滞貨の状況でございますが、代表的な非鉄金属である銅について申し上げます。  今年度の国内の銅の需要は、地金で大体八十五万トン程度と見ておりますが、輸入鉱石というものはなかなか輸入がカットできないという事情もございまして、現在製錬所のメーカーの手元にあります地金の在庫が約七万トンないし八万トン程度の水準に達しております。正常在庫がせいぜい四、五万トン程度と考えますので、それの倍近い水準に徐々に来ておるというのが実情でございます。
  77. 岡田利春

    ○岡田委員 そういたしますと、政策を立てる場合に、いわば滞貨問題、これも含めて検討されなければならないのではないか。そしてまた、その前提になるのは、いわば七〇年代ならば七〇年代の銅の需給バランスは国際的にどうなっていくのか、そしてまた、価格の動向は一体どう推移をしていくのか、一応こういう見通しを立てなければならないのではないかと思うわけです。  そこで、特に価格の動向について、六十一万から三十二、三万の差があるわけでありますけれども、七〇年代大体コンスタントな国際相場はどういう推移が考えられるのか、非常にむずかしい問題かもしれませんけれども、一応現在検討を進めている前提となる条件について、特に価格問題についてお聞きいたしておきたいと思います。
  78. 莊清

    ○莊政府委員 世界の需給とか価格の動向は、非鉄金属が持っております国際商品として、あるいは各産業の基礎物資であるという特殊性から申しまして、専門の産業界におきましても見通しが非常にむずかしい、悩みの種になっておるわけでございますが、全体として世界の非鉄金属の需要というのは当然に今後も増加をたどることは、これはもう申し上げるまでもないわけでございます。それで一年ほど前までは戦乱等の特殊要因もございまして、国内の建て値もLME相場にスライドいたしまして、六十万とかいう高値でございましたですが、この夏円切り上げの問題が起こります前の比較的安定した時期では、ほぼ四十万くらいでことしの下期は推移するのではないか。大体四十万くらいの相場であれば、国内の鉱山も製錬業もそれをベースとして大体安定的にやっていけるのではないかという、一種の希望的な観測というものが行なわれておったのは事実でございます。現在はLME相場が四百ポンドで、為替の関係もございますけれども、CIF、それは三十二万程度にしかつかないということでございますから、予測というものを相当下回っておる。これは国際的にもそういつまでもは続かない、非常に極端な落ち込みではないか。このような状態が長期続きましたならば、そういうベースで鉱石を輸出しなければならない後進国の産銅業自身が、非常に打撃を受けるということも片や憂慮されつつあるほどの極端な事態でありますから、そういつまでも続かないであろうという見通しもございますけれども、まあここ一年くらいは、かつて予想したような、たとえば、銅で国内建てで四十万というふうな状態にはなかなかなりにくいのじゃないかという悲観論も、最近では関係業界では非常に多いのが実情でございます。
  79. 岡田利春

    ○岡田委員 産銅国、アメリカ、カナダを除けばいま局長が言われたように大体四十万程度、できれば高いほうがいいわけですけれども、そういう希望があるようであります。しかし、七〇年代の銅価格の推移というのは日本円に換算して大体三十八万円程度に落ちつくのではないか、こういう見方が大体CIPEC加盟国あたりのほとんど一致した見方のように私は受けとめたわけです。それと同時に、最近の開発は大型プロジェクトが多うございますから、一時的に、これは本格的な生産に移りますとだぶつく、その結果銅価格が極端に低落をする、こういう状態を繰り返していくということに注目しなければならないのではないかと思うわけです。そういたしますと、価格の動向に対応して一応調整をするということと、もう一つ、そういう生産の動向に合わして、資源輸入国であるわが国としてはこれを弾力的に受けとめるという措置が当然なければならないという結論に私は到達するだろうと思うわけです。政府はすでにジェトロを通じて、ロンドンにメタルセンターを設置をし、伸銅関係についてもこれにそれぞれの駐在員を送っているという情勢でありますから、ここまで来れば、やはり特に銅を中心とするベースメタルを中心としているこのストックについて、何らかの措置をすべきではないか。その場合、単に国内の対外的金融をするということではなくして、いわばメタルセンターを中心にして国際的にこれを受けとめていく、こういう措置が、もう七〇年代の場合には欠くことのできないことであり、将来にわたってもそのことは必要である、こういう判断に私は立つのでありますが、この点についての見解はいかがでしょうか。
  80. 莊清

    ○莊政府委員 国際商品である、しかも基礎物資である銅等のベースメタルについての先生のただいまの御意見というものは、私どもも非常に貴重な御意見であると思って拝聴したわけでございますが、わが国が今後融資買鉱でありますとか、あるいは長期契約による単純輸入であるとかいう形で鉱石の輸入を行なっていくわけでございますが、その場合にやはり仰せのとおり、これを景気の動向いかんにかかわらず、あまり大幅に変更することなく鉱石の受け入れを行なっていくということが、長期的に見て、わが国の不足しておる鉱石資源を海外において確保する上においても、やはり相手国側からも昨今強く要請される重要な政策課題になってきておるわけでございます。したがいまして、国内の需給なり価格の安定という政策との関連もございますので、何か地金について、あるいは鉱石について、わが国としても一種のストックパイルのようなものを設定すべき時期に到達しているのではないかという関係方面からの問題提起というのが最近非常に強くなってきておることは事実でございます。それと同時に、当面そういう本格的なストックパイル構想が実現するまでの間、先ほど申し上げましたようなやむを得ざる地金の滞貨の累増というふうなものに対しての何らかの緊急の金融上の支援措置というものを考えてもらいたいという意向もまた同時にきわめて強いわけでございます。後者の緊急滞貨融資の問題につきましては、私どもも行政ベースの当面の事項として、いろいろ急いで検討に入っているわけでございますが、長期構想でございますいわゆるストックパイルを含めたところの世界的な需給安定の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、鉱業審議会の場におきまして今後精力的な御検討をいただくべく、重要な事項の一つであると考えております。  なお、ロンドンのメタルセンター等をそういう場合に一つの場として使うという、非常にスケールの大きなお話もございましたが、こういう問題になりますと、国内のユーザーだけでなくて、またヨーロッパのような消費国というものとの関連等ももちろん出てまいりますし、あるいは供給国との関係も出てまいるかと思いますので、そういう点につきましても、今後十分の調査もした上で、鉱業審議会の場で、そういう構想につきましても検討させていただきたいと思っております。
  81. 岡田利春

    ○岡田委員 その場合、特にわが国の支配する最大のプロジェクトであるソジミコ・ムソシ鉱山の生産も、来年九月には六万トン規模に達するわけです。したがって、さらに最近はペルーからも経済開発協力として強い要請が出され、すでに、これにもほぼ通産大臣はオーダーを与えているというような現状でありますから、そういう態勢に入ってきたわが国として、いま局長答弁されたところの問題というのは避けて通ることができない問題ではないか、このように非常に強く感じます。もし、ソジミコが完全な生産体制に入れば、最終的に年産十一万トンになりますから、ほぼ、現在の閉山動向から見ますと、わが国の一年間の銅生産力に匹敵する産銅が一社で行なわれる、こうなってまいるわけでありますから、そういう意味でも、ひとつぜひ審議会の中でこの問題は十分討議をして結論を出していただきたい、このことを強く要請いたしておきたいと思います。  それと同時に、海外開発に対して、いままで自主的な開発あるいは協力的な開発あるいは技術援助による開発協力、あるいはまた資金を貸すことによって融資買鉱的な方法による資源の低廉、安定的確保ということがいまいわれてきているわけですが、しかし自主開発ということばは、そういうことばを使うこと自体にもう問題がある、そういう基本的な考え方自体に問題がある、こういう立場に実は私は立っているわけです。もちろん、一〇〇%の資本で中小鉱山を海外で開発している例もございますけれども、その場合といえども、鉱業権を取得して他国で行なうのでありますから、これを自主開発と称することにはもう問題があるのではないか。自主開発というのは、わが国の主権の及ぶ範囲あるいは大陸だな開発、これらは自主開発といってもよろしゅうございますけれども、資源のすべての海外開発というものは何らかの形の協力開発である、その協力開発の中に、わが国が過半数以上を支配するもの、あるいは過半数以下でありますけれども影響力のあるもの、あるいは技術協力を伴うもの、いわばいずれもがすべて経済協力開発である、こういう概念に統一すべきではないかというのが私の意見でありますが、最近いろいろな政府が出すのを見ましても、その点については気を使っておるような筆の運びがちらほら見え始めておりますけれども、この機会にその見解について承っておきたいと思います。
  82. 莊清

    ○莊政府委員 非鉄金属に限らず、石油、銅も含めまして地下資源全体に対するわが国の基本的な姿勢でございますが、最近、通産省といたしましては初めてのいわゆる資源白書というものを公表したわけでございますが、この中で私どもが最も力説したつもりの事項は、従来のとかく狭い意味に誤解されがちのいわゆる自主開発ではなくて、参加開発ということばであらわしておりますように、相手国の大部分は政府機関でございます。あるいは外国企業も加わる場合もございますが、そういう開発の事業に日本も積極的にパートナーとして参加をしていく、それによって資源を開発し、それによって相手国の国民所得の向上に寄与しつつ、わが国としても世界の資源の供給力をふやす、そういう形で、消費国であるわが国としては、世界の市場の中で地位を確立し、利益を上げていく、こういう姿勢でございます。これは決して口先だけではなくて、現に行なわれつつある開発プロジェクトが大部分そのような形に切りかわっておりますし、最近ひんぴんとわが国を訪れておりますそういう資源国のリーダーの方たちがわれわれに向かって直接言っておられることを聞きましても、今後における資源開発ということは完全にそのような形のみで行なわれるし、またそれが最も効率も高い方法である、かように考えておるわけでございます。
  83. 岡田利春

    ○岡田委員 今日、石油資源の場合には、テヘラン会談、トリポリ協定以後はOPECにおいては価格を決定するのに相当の力を持った、今後、重油の価格というものは、このOPECの動向によって支配される側面のほうが、ウエートが非常に高くなるというのはもう一般常識化したと思います。しかし一方、これに対するCIPECの場合には、いま四カ国が加盟いたしておりますけれども、このOPECとCIPECに対する見方について、OPECはいま申し上げましたようなそういう力をすでに持っている、いわゆるプライスリーダーとして原油価格について決定できる、左右する大きな力を持つに至ったが、CIPECの場合にはまだそこまでは来ていないわけです。私は、CIPECの場合にはOPECと違って、まず扱っている物、これは銅が中心でありますから、銅は国際的に、自由主義諸国で見れば、まだ発展途上国が圧側的なウエートを占めるまでには至っていないわけです。アメリカ、カナダのウエートが非常に高うございますから。そういう意味で、石油の需給動向から換算して考えますと、そこまでの力を持つに至っていないというのが第一の理由。  それから第二の理由は、石油と違ってイギリス、すなわちロンドン株式取引市場相場あるいはニューヨーク相場、このことによって国際価格が決定されるという一つの仕組み、これが石油の場合と違う。  第三の場合には、石油というのは燃やせばなくなってしまいますけれども、メタルの場合には回収が非常に可能であるという問題、あるいはまた、油と違ってメタルの場合には、開発に要する資金が非常に多くかかって、しかも、この運搬あるいは製錬と一連の関係が伴ってまいりますから、ただ単に、鉱石が容易に掘り出し得るという条件にもないので、ずいぶん違いがあるのではないかと思うわけです。そういう意味で、また七〇年代はいろいろな波がありますけれどもわが国として、この七〇年代のうちに最大の輸入国としての一定の方針というものを打ち立てることが一番大事ではないか。これが八〇年代に入っていきますと相当情勢が変わってくるのだろうと私は思います。したがって、この協力開発の場合についても、最も重点を注がなければならぬ期間である。これがずれると、資源確保に非常に支障を来たすというタイミングの問題が一番大事ではなかろうか、こう判断せざるを得ないのでありますが、これらの私の考え方に対して御所見を承っておきたいと思います。
  84. 莊清

    ○莊政府委員 ただいまOPECと比べた場合における原油問題と、それからベースメタル問題の立っておる基盤の違いについていろいろな角度から御指摘がございましたが、私どもも御指摘のとおりであるというふうに常々実は考えております。  ただ長期的に見ますると、最近の南米諸国等における動きのように、次第に国際資本の制約を脱して、それぞれの資源国がその地下資源である非鉄金属類を国の重要な地下資源として国の明確な管理化に置くという傾向がここ一、二年非常に顕著になってきておるということもまた事実でございます。それから非鉄金属であれ原油であれ、有利な条件で掘採し得る量というものは今後の開発努力によるわけでございますけれども、それぞれの時点においては地理的にも量的にも明確に制限されておって、人力をもってはそれを左右することができないという、供給者にとってはまさに非常に強みになるという本質があるという点においては、これは根本的に非鉄金属であれ原油であれ、およそ資源である以上はいいささかも変わるところがないと思います。したがいまして、OPECほどの強力な施策というものはいままだCIPECによって行なわれてはおりませんが、長期的に見た場合には、わが国が単に外貨を準備しておいて買えばいいという安直な姿勢では世界の資源の供給の増加にも貢献できないし、消費国であるわが国としてのナショナルインタレストというものも長期的には確保されないということがやはり基本的な問題だろうと思います。その点を腹に入れて、今後わが国としてはこの非鉄金属の問題を考えていく。外への政策考えるし、中の国内資源についての政策考えるということが私は基本であろうと思っております。
  85. 岡田利春

    ○岡田委員 国際的な需給動向あるいは価格動向に対処するという問題については鉱業審議会でもこれから議論されるわけでありますが、一方において国内鉱山の存続をはかっていく、安定的な体制を築いていくという場合において、いま政府がせっかく金属鉱物探鉱事業団をつくり、そして広域調査を行ない、探鉱を積極的に進めてまいりましたけれども、今日の段階ではこの制度に根本的にメスを加える必要があるのではないか、このように私は考えておるわけです。たとえば、現段階の広域調査、探鉱活動は三段階方式で行なわれておるわけです。しかし、地質調査を行ない、構造ボーリングを打ち、精密ボーリングを打つ、こういう段階を経ておりますけれども、この精密ボーリングの間隔は一キロ以上離れた地点ということでありますから、ことばで言えば非常に精密のように聞こえますけれども、実際の面ではこれは精密ではないわけです。私は、こういうことをやっていったのでは、わが国の地質調査——地図をつくることはできても、現実にそぐわなくなってきている面があるのではないか、そういう意味で、これはむしろ四段階方式に改めるべきではないか、こういう感じを持っておるわけです。従来の三段階方式は続けるとしても、直接開発に結びつく、そういう意味の精密ボーリングを制度の中に入れるべきではないのか、この面にもう少し現実の問題としては力を入れるべきではないのかというのが私の意見なわけです。また、現実に全国どこを歩いてみてもそういう要望が強いわけです。結局そういう調査をしているうちに、基本のそれぞれの単位鉱山が閉山をしてしまわざるを得ないということになってしまったのでは、これはゆゆしき問題であるわけです。そういう意味で、この面についてはぜひ再検討をすべきではないのか。それと同時に、一応国際相場できまる価格動向に対処する方向はこれから検討されてまいりますけれども、同時に従来の国内鉱山に対する対策を強化すべきではないのか、こう思うのでありますが、来年度予算を控えて、この点については政府としてはどのように考えておられるか承っておきたいと思います。
  86. 莊清

    ○莊政府委員 国内鉱山政策の問題でございますが、国内資源の調査に関します現在のいわゆる三段階調査のやり方でございますけれども、発足当初は、ことばは熟しませんが、ある程度わが国の地下資源の状況を客観的に明らかにすると申しますか、そういう学究的な目的からの調査というものがある程度はやはりあったかと思いますが、その後われわれ通産省といたしましては、実際の運用面におきましては、ただいま御指摘のございました実際の企業ベースの開発に結びつくようなものに重点をしぼって行なうという方向へ徐々に実は切りかえる努力をしてまいったわけでございます。制度としては、来年度予算要求ももうすでに行なっておりますが、とりあえず三段階方式ということで予算の積み上げを実は行なっておる次第でございますが、私どもとしましては、実際の運営面におきましては、ただいま御指摘もございましたような点を十分に考慮して従来もやってまいりましたが、運営面での弾力化ということを来年度もさらに行ないたいと思います。また、それ以降の予算要求につきましては、私どもそれに間に合うようなテンポで、三段階にするか、四段階にするか、さらにもっといい方法があるか、こういう問題についてもよく検討をさせていただきたいと思っております。  そのほか補助率の引き上げ問題等もすでに予算で要求し、現在財政当局と鋭意折衝しているところであります。
  87. 岡田利春

    ○岡田委員 補助率の場合に、われわれが調査したところによりますと、たとえば五割補助、五〇%補助というのが、実質補助単価から見ると、これを直しますとまあ二〇%程度のもの、率としては非常に高いのでありますけれども、実際の単価の面でキャップがございますから、実質は二〇%あるいは二二、三%ということになってしまうわけです。この点について率を上げることがいいのか、単価を是正するのがいいのか、両方やることが一番いいわけでありますけれども、最近の大蔵省は率よりも実勢単価にむしろ是正をする、こういう意見のほうが一般的に強いように私は受けとめておるわけでありますが、この点については従来の単価で、率でいくのか、単価を上げて率を上げるという意味なのか、この点はいかがですか。
  88. 莊清

    ○莊政府委員 現在までの大蔵当局との事務折衝の段階では、この際単価の引き上げということを重点に来年度は考えたいというのが実情でございますが、単なる単価の引き上げだけではなくて、私どもは今後やはり補助率も上げる、そのかわり運営面においてもいわゆる総花式というふうなことではなくて、実際の国内の資源開発になるべく効率よく結びつくような形での補助制度の運用ということも含めて進めたいと思っております。
  89. 岡田利春

    ○岡田委員 この際、総合S源対策について伺いたいと思うのです。  当委員会でかねてS源対策の決議案も上程されたわけです。しかし、当時の状況としては、回収硫黄に対する単体硫黄の問題として、いわば単体硫黄サイドだけのS源対策にしぼられてきたわけです。しかしもう単体硫黄鉱山としては白根鉱山一つになって、すべての整理が一応終わったような段階に入ってまいりました。しかし年率十万トンずつ回収硫黄がふえてまいるわけでありますから、そういう意味では総合S源対策というものが緊急を要する課題になってきておると受けとめなければなりません。特に、最近の経済動向で、肥料生産等の操短という問題をめぐり、非常にだぶつきぎみのような状態にございます。しかし、それを無視して、回収硫黄は年率十万トン以上伸びてまいるわけでありますから、そういたしますと、結局これはわが国の銅鉱山の特殊事情である随伴硫化鉱、もちろん一部においては単体硫化鉱、こういう問題とも直接競合関係に入ってくるわけです。従来政府は単体硫黄からこれを硫酸化するという点については行政指導できびしく取り締まってまいりましたけれども、今日の回収硫黄の状況から判断をしますと、もはやそれは行政指導だけでは規制することができない段階に入りつつあるのではないか、私はこう判断せざるを得ないわけです。しかし、これはそのまま推移いたしますと、結局、製錬から回収されてくる硫酸あるいはまた単純硫化鉱から回収される硫酸化の道というものが閉ざされてしまう。そのことによって、大なり小なり随伴硫化鉱を産出いたしておるわけでありますから、わが国の鉱山は先ほどの問題の上にさらに相当大きな打撃を受ける、こういうことになるわけです。いわばダブルパンチと申し上げなければならないわけです。私は、そういう意味において、総合S源対策というものをぴしっと立てなければ、部分的な政策をしても、その面から非常に大きな社会問題に発展するおそれなしとしないと思います。したがって、政府は総合S源対策に対してどう考えられ、どう対処しているのか、こういった点について承っておきたいと思います。
  90. 莊清

    ○莊政府委員 総合S源対策につきましては、ここ一年ほどの間におきます需給構造のあまりにも急激な変化及び今後の見通しにかんがみまして、あらためてここで長期の施策を練り直す必要があるというふうに通産省といたしましては判断したわけでございます。それでこの十一月に鉱業審議会の中に総合S源対策分科会というものを新たに設けまして、供給者である鉱山側、それから石油精製業界、それからユーザーの各業界、そのほかに商社あるいは学識経験者の方等に全部総合的に御参加いただきまして、ここで来年の春までの間に真の意味の総合対策を検討するということにいたしたわけでございます。硫黄問題の基本は、私ども判断ではやはり供給構造の変化でございます。従来は製錬所から出る硫酸とか、あるいは国内の硫黄山とか、硫化鉱山から出るものが硫黄の供給源になっておったわけでございますが、新しいきわめて低廉な供給源が構造的に出てまいって、これは途中でやめるとか廃止するとかいうことはできない、きわめて必然的な供給構造の変化であったというほかございません。したがいまして、対策の方向といたしましては、従来の供給源に対してのうしろ向き的な対策というものももちろん必要になりますが、同時に、わが国としてやはり過剰とはいいながらも、貴重なS源であり地下資源でございますから、これは国内においても、技術開発によって新しい用途に相当まだ開発できる余地があるはずでございます。また海外では、わが国と違いまして、硫黄を必要としながら国内に持たないという国も東南アジア等に相当あるようでございますから、そういう方面への輸出というような前向き対策、うしろ向き対策、両方を含めまして、この審議会で総合的に御検討をいただいて、来年度から所要の措置をひとつぜひ講じたい、かように考えておるわけでございます。
  91. 岡田利春

    ○岡田委員 私はそういう環境から考えれば、わが国の鉱山を一体どう位置づけるのか、結局そこにくるのではないかと思うわけです。単に一つの問題を解決すればそれで終わりというものではなくして、いろいろ客観的な条件が多様に組み合わさっておるわけですから、そういう中におけるわが国の鉱山をどう位置づけするのかという視点が明確になってこなければならないのではないか。いわば国内の資源開発は高くつくから、安い海外資源のみに依存するという姿勢で、はたして国際社会の常識として通るだろうか、私は通らないと思うわけです。また、国際信義の面からいっても、当然先進工業国家である日本が、それだけの力を持ちながら、高いから国内資源についてはこれを放棄して、海外資源のみに依存する、こういう安易な態度というものは国際信義上またとるべきものでもないのではないかと思うわけです。そういう意味で、今日まさしくわが国の国内鉱山というものを資源政策の中にどう位置づけするのか。従来位置づけされていないという意味ではありませんけれども、質、量伴ってどう位置づけするのか、調査も完了いたしておるわけですし、地質学上の常識を破ったいろいろな鉱床帯の発見等もございますけれども、可能な範囲においてもう一度見直しをして明確に位置づけをはかる、こういう姿勢がなければなりませんし、これに伴って、たとえば鉱石輸入に伴う国内の製錬、これを一体どう位置づけていくのか。さらにまた、それに伴って単に鉱石を買う、地金を輸入するというだけではなくて、海外協力開発、その国の経済発展に寄与する、付加価値を高めるという意味で、海外における選鉱、製錬という面にまで考えを及ぼしていかなければならないのではないか。そういう点について資源白書等も出ております。これは一応さっと読んでみましたけれども、まだまだそういう点について確信のあるものは提示されていない、こう思うのでありまして、これらについて総合的にこの計画を、五カ年計画なり十カ年計画というものを明確に定める、こういう姿勢が大切かと思いますので、これらについてどのように受けとめて評価されていくつもりか、考え方を承っておきたいと思います。
  92. 莊清

    ○莊政府委員 国内資源の問題、特に国際商品であります非鉄金属の問題は、現状において輸入で相当量ないし大部分をまかなうような状態になってきております。これは主として私の考えでございますが、消費の増大に伴いまして国内の生産はほぼ横ばい、そして主として輸入によって増大してきた国内の消費をまかなってきたということかと思います。したがいまして、長期的な国内資源に対する私どもの取り組み方としては、御指摘のありましたとおり、貴重な国内資源でありますし、またいずれの国でもやはりセキュリティーの問題というものを念頭に置いた地下資源政策は、事実現にとっておるわけでございますから、私どもとしてはそういう点に対する配慮は当然今後とも続けなければならないわけでございますけれども、同時に、増大していく非鉄金属の需要に対して、安定かつ低廉な価格での供給を極力確保するということをやはり同時に考えまして、先ほど御答弁申し上げましたような世界の資源の供給力の増加にわが国としても積極的に協力する姿勢で参画をしていくということがきわめて必要になっておると思います。資源の開発と国内資源の正しい意味での保護ということは、決して相矛盾するものの二者択一ということではなく、いずれの国においても国の政策の中で、それぞれの国の事情に応じて、斉合性を保ちながらそれぞれ行なわれておるというのが実態だと私どもは感じております。したがいまして、そういう基本姿勢に立ちまして、いわゆる国内資源の位置づけ、あるいは逆に海外資源に対するわれわれの姿勢あるいは評価あるいは期待というものも、鉱業審議会の場で総合的に御検討いただく際の基本前提として私どもは取り組みたいと思っております。
  93. 岡田利春

    ○岡田委員 この際、金へん鉱害の問題について伺っておきたいと思うのですが、公害、石へんの石炭礦害はそれぞれ事業団を持っておるわけです。もちろん金へん鉱害についても、公害の中でこれらの対策を進められているわけです。もちろん公害問題は、しばしば問題になっておりますように、その負担というものは企業がこれを負うということはきわめて基本的な原則であろうかと思います。しかし、わが国の鉱山の歴史、いまから四百年も以前からやっておるわけでありますから、そういう意味で、莊局長が保安局長時代には一応無資力の坑口閉鎖といいますか、こういう面について初めて予算化されて、今年増額要求されておるようでありますけれども、これだけで一体解決するだろうか。特にいま深刻な鉱害問題というのは、これは金属、重金属物質による鉱害問題というのが非常にきびしくなってきておることは御承知のとおりであります。石炭や硫黄石と同じように、ある戦争経済の中では、とにもかくにも国策に協力して掘り出す、したがって、その残滓処理その他についても十分にいかなかった。こういう長い歴史性があるわけです。ですから、私は基本原則は正しいと思いますし、それを変える必要はないのでありますけれども、鉱害関係についてはこの歴史的な経過にかんがみて、政府自体も積極的に協力をする必要があるのではないか。ちょっとほかの装置産業の公害とは違うと思うわけです。この点について、われわれはしばしば、金へん鉱害についても鉱害事業団制度を持ち、事業団構想を打ち立てるべきでないのか、こう指摘をしてまいっておるのでありますが、この面がなかなか具体化していないわけです。しかし、最近の最も深刻な鉱害問題等を考える場合に、この点についてもし単独の事業団ができないとするならば、それにかわるもの、こういうものをやはり考えていくべきではないか、いずれにしても、やはり金へん関係の鉱害問題については、もう一歩政策を前進をさせる必要があるのではないのか、このように考えるわけです。したがって、この面についての考え方を聞きたいと思います。  従来、Aという経営者が経営をしておった、これがやめてBに移った、それがさらにCに移った。別に残滓まで、資産評価に含まれて引き継がれたわけではないと思いますけれども、そういう長い歴史がありますから、この点は一歩を進めるべきだ。しかし、今年の予算では、先ほどの予算以外に、もちろん公害の事業団の予算の中に含まれてもおりますけれども、もうちょっとこれらに対処する前進した政策を立てるべきだというのが私の意見でありますけれども、この点についてどう考えられておるか、見解を承っておきたいと思います。
  94. 莊清

    ○莊政府委員 鉱山のいわゆる金へん鉱害でございますが、一般の製造事業場と違いまして、操業中に鉱害を起こしてはならないということは事業者として当然かと思いますが、事業をやめましたあとに、場合によっては操業中よりもひどい鉱害が多年にわたって発生してくるというのが地下資源産業である鉱山の場合のたいへんな特色であり、かつ解決のむずかしい点かと思います。  そこで、お話のございましたように、今年度から通産省では休廃止鉱山に対します鉱害防止のための補助金制度を創設し、来年度相当大幅な増額要求を実はいたしておるわけでございますが、これと並行いたしまして、鉱山を営んでおります企業の自主的な努力によりまして、金属鉱業鉱害基金という積み立て金制度でございますが、これを社団法人の形で実はことしの秋から発足させたわけでございます。それで、生産量に応じまして積み立てをいたしまして、大体業界の自主的な基金として十億円ほどを目標に四、五年でやろうということで、全企業がこれに加わりましていま発足したところでございます。  それで、企業が公害については一次的な責任を負うべきであるという点については、これは非鉄金属であれ一般の製造業であれ私は変わるところがないと思いますが、鉱山の場合には、発生する鉱害の激しさが往々にして一般の製造業と比較にならないほど大きいし、しかも鉱山が経営されておるかいなかにかかわらず長期にわたるという、そういう特殊事情があることもまた争えない事実でございますから、私、これは現在私が担当局長をはずれておりますので、御答弁としては穏当を欠くかと思いますが、長期的な一つの構想として、せっかくこれだけの民間の基金ができるのであれば、何らか国もこれに対して指導だけではなくて、強化、助成の方法というものがないかというふうに個人的に実は思う次第でございます。
  95. 岡田利春

    ○岡田委員 石炭鉱山の場合には、政策の中で、これはもちろん経営者負担で炭礦労働者年金、厚生年金プラスアルファ年金が設定されておるわけです。同じ地下労働者であり、厚生年金上も同じ取り扱いを受けておるのでありますから、当然メタルの場合においても鉱業労働者年金というものが付加されてしかるべきではないか。それは、質のいい労働力の安定的な確保という問題からいっても必要であろうかと思うわけです。一般的な政策としては、通産省自体がこれらに対する認識を持つということが出発でなければならないと思うわけです。制度的には所管は厚生省でありますけれども、通産省としてこれらの問題について検討したことがあるかどうか。また、いま私が提起した問題については、検討したしないを問わず、その見解があればこの機会に承っておきたいと思います。
  96. 莊清

    ○莊政府委員 非鉄金属の鉱山におきましては、現在最低賃金制度というものは普及をいたしておるわけでございますが、いま先生指摘のありましたような前向きの点につきましては、まだ特別の措置は何ら行なわれておらないわけでございます。通産省といたしまして、正直に申し上げますが、特にこの問題について掘り下げて調査をしたということは、現在までのところございません。ただ、こういう問題につきましても、やはり地下資源産業における労働条件の維持、改善ということは、生産を続けていく上において、これは石炭山だけでなくて、非鉄金属関係におきましても、これだけの高度成長が続いていきます過程で次第に大きな問題になりつつあるということはまぎれもない事実だと実は判断しております。したがいまして、所管省は多岐にわたるわけでありますが、通産省といたしましても、こういう問題について今後十分に勉強もし、調査もし、考えも通産省なりにやってみたい、勉強もしたい。それから、どういう方策をとるべきかということを生産官庁の立場としても十分に勉強し、検討したいと考えております。
  97. 岡田利春

    ○岡田委員 現在の石油開発公団は、その設立、定款の本旨からいって、その活動は違反とは申しませんけれども、最近ははみ出しているのではなかろうか。法律違反とは申しませんけれども、たとえばイランの石油利権協定、あるいは今回も新しくプロジェクトが設定をされて、その活動ぶりを見ると、広範囲に、積極的に活動しているのだといえばそれまでかもしれませんけれども、もはやわが国の石油開発公団法では処理できない段階に来ていることだけは認められるのではないかと思うわけであります。したがって、政府は石油特別会計、そして石油開発公団法の改正、こういうことを検討し、次期通常国会に提案されると承っておりますけれども、これは次期通常国会に提案をされるのか。その場合、石油業法の改定が同時に出されるかどうか、この機会に承っておきたいのであります。
  98. 莊清

    ○莊政府委員 石油業法の問題は、エネルギー供給上きわめて重要な役割りをになっております石油精製産業に対する基本法でありますだけに、私どもとしては十分慎重な審議を加えるべき事項だろうというふうに基本的に考えております。それで、総合エネルギー調査会の石油部会に、ことしの夏以来、石油業法の問題等も含めまして、今後の石油政策に関する各種の基本問題、いろいろ御審議いただきまして、昨今中間報告がまとまりかけておるわけでございますが、とりあえず、開発関係のことに重点を置いた中間答申ということになるわけでございますが、石油業法等の問題につきましても、海外立地の問題その他いろいろな情勢変化も予想されますので、来春を目標に、引き続き慎重な御検討をいただくことにいたしております。
  99. 岡田利春

    ○岡田委員 その場合、私は一、二の意見を申し上げておきたいと思うのですが、石油開発公団法の改正にあたっては、単に開発だけではなくして原油の輸入権を与えるべきだ、もうこれは国際常識になってきている。最大の石油消費国のわが国にとって、開発だけにその任務を付与するのではなくして、当然、原油購入についての権限も付与すべきだ。この問題が、どうも論議が不十分である。この点についてもう少し掘り下げた多面的な議論をし、そして結論を出し、公団法の改正を出すべきだ。特にEC諸国の場合を見ても、この点に触れないで公団法の改正をするということは、非常に問題があるということをまず指摘をしておきたいと思います。  それから第二の問題は、石油業法の改正は当然行なうべきだというのが私の意見であります。もちろん、石油精製設備の調整、そういう重要な基本的な役割りを果たしておるわけですが、最近審議会で議論している内容等を仄聞いたしますと、今度は従来の考え方を変えて、備蓄は六十日分ということをめどとして備蓄をする、こういう方向に意見が一致しているが、いざ、その備蓄の方法については、きわめて従来の惰性的な方向しかとっていないというところに注目を払わなければならぬと思うわけです。私はタイミングとしては、まさしく今度の通常国会にこの法案は出すべき時期だ。円・ドルの問題が解決をされる。その結果、OPECの動きもございますけれども、安い原油が入ってくる。しかし、安い原油が入ってきて、その結果消費者に安くなるかというと、そうはうまくまいらないわけです。なかなかそれは問題がある。こういう総合的な面から判断すると、むしろ円・ドル問題の解決をきっかけにする今日の情勢の中で、その備蓄の義務は、明確に法律事項として義務づけるべきである。また、これは国際常識です。そういう意味で石油業法は当然改正されなければならない。わが国の場合には、大型タンカー船の輸送があるから、船舶の保有量からいって、ヨーロッパが七五年までに九十日の備蓄をするならば、まあそういう判断で六十日でよろしいというのが試算の内容であるようでありますが、もちろん六十日にすることも非常にたいへんなことです。これを単に従来のように、財政、金融、税制の面で政府は従来どおりの惰性で援助をはかって、そして別に法律的な義務づけもしないということは、もうエネルギー政策の根幹に触れる問題になってきている。むしろこういう時期には、当然そういうタイミングを考えて、これを法律事項として義務づけるべきものである。ある程度は消費者が、その場合はみ出せば負担をしなければならない。むしろそういう資金があるならば、もう少し前向きの方向にその資金を使うべきではないのか、もしそういう資金があるならば、公団自体が原油の備蓄を持ってはどうなのか。たとえば、ドイツのデミネックス——デミネックスではありませんけれども、西ドイツは連邦政府自体として一千万キロリットルの備蓄をみずから持つ。これは絶対に動かさない。緊急な場合に動かす。動かせば金がかかるから動かさないのだ。こういう政策をとっているわけです。ドイツは、御承知のようにわが国のエネルギー構造とは違って、石炭においても一億一千万トン程度の石炭を確保しておりますし、石油の消費量からいっても少のうございます。そういう中でもこういう有効な政策をとっているわけですから、政策立案者としてそのタイミングをはずしては、この問題を七〇年代前半において解決する時期はないのではないか、こういう積極的な意見を私は持っておりますし、今後そういう議論をしてまいりたい、こう思っているわけです。私は、どうもそういう情勢変化を洞察して政策を立てるという能力に審議会は欠けておるのではないか、こういう気さえするわけです。この点を強く要望するとともに、政府、特に事務当局に、立案者としてこの二点についての若干の見解があれば承っておきたいと思います。
  100. 莊清

    ○莊政府委員 石油の備蓄についての考え方でございますけれども、今回のエネルギー調査会の御答申では、現在四十五日分程度のものを三十年間で五日分ずつふやして六十日の線に早急に持っていくべきである、そのために政府は石油特別会計の資金を使いまして、原油の購入代金に対する長期の融資、それから別途、開発銀行を通じまして増加を要するタンクの建設資金の供給をはかるべきだ、こういう趣旨での御答申になっておるわけでございます。  この場合、石油の備蓄水準が大体何日ぐらいあればよいかということは、これは非常に国情にもよりましょうし、地理的な条件にもよりましょうし、なかなか一律にこれという線があるわけではございませんけれどもわが国の場合には、こういろ石油の現物を国内に備蓄していくということとあわせまして、やはり、幸いにして四面海に囲まれた国でもありますから、石油特別会計の資金を有効に使いまして、今後は日本近海の大陸だなにおける開発というふうなものを積極的に進めていくという努力もまた、備蓄というもののセキュリティーの確保を目標にするものでありますから、きわめて重要であると考えておりますし、また油田の開発、あるいは融資買油その他の形での輸入というものを行ないます場合にも、その相手方の選び方あるいはその地点の選び方等で極力分散をはかることによりまして、局地的な供給の混乱というものが、わが国の供給全体にあまり大きな影響を与えないようにあらかじめ分散のくふうをしていく、こういう取り組み方もまた、ある意味で備蓄の強化、セキュリティーの確保に資するものであろうというふうに考えておるわけでございます。  それで、法律的な義務づけを業者なりに行なうべきではないかという御意見でございますが、たとえば、ドイツでは法律がございまして強制をしておるそうでございます。備蓄はまだドイツでは六十日ぐらいの水準でございますが、わが国といたしましては、従来、命令ではございませんけれども、石油業法に基づいて、産業の所管大臣としての通産大臣が、当該産業について、もしくは当該物質について必要な指導を行なうべき立場に、これは法律上明確にあるわけでございますから、そういう指導の形で今日までも行なってきておりますし、また、あと十五日分程度の備蓄の強化というものは、しいてこの際に、あえて法律を必ずしもつくらなくても、これに伴う負担増の問題を合理的に解決していく、それが消費者価格にはね返る、あるいは企業の過度の負担になるということを避けるという実をとることによりまして、とにかく早急に十五日ほどの積み増しをするということが私どもとしては可能ではないか、かように考えております。  なお、ドイツにおきましても、裁判等もあったようでございますけれども、備蓄を強制した場合における、それの損失が発生した場合における責任の問題等を通じまして、ドイツでも結局裁判上、そういう命令が憲法の趣旨に合わないというふうな判決があったやにも聞いておりまするし、こういう点も含めまして、私ども今後引き続き検討するつもりでございますけれども、当面、今回の石油の備蓄につきましては、従来の指導をさらに強化していく。そして指導だけでなくて、実際に石油産業もそれで協力できるし、消費者も安心できるという形での助成を伴いつつ、円滑に行なわれるように努力をいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  101. 岡田利春

    ○岡田委員 ただ、ヨーロッパの場合と日本の場合は、また事情を大きく異にすることに注意をしなければならぬのではないかと思うのであります。もしペルシャ湾で大型タンカー船が事故を起こしたらどうなるか。戦争というような、紛争というようなことがなくても、そういう事態を考えただけで身の毛がよだつ。そして、このペルシャ湾重点の供給は解消できないものであるということは、だれが見ても明らかではないのか。そういうような面から考えてみても、あるいはまたマラッカ海峡等の条件等をも考えてみても、ヨーロッパ、EC諸国の場合とはずいぶん異にするわけで、わが国の経済の安定のために、民生の安定のために、これは必要欠くべからざるエネルギーでありますから、そういう意味で明確な方向というものを規定づけていくという積極的な姿勢がなければならないのではないかと私は思うのです。そういう点、特に深く検討することをこの機会に強く要望しておきたいと思います。  それと同時に、いまOPECが七%の値上げを要求いたしておりますが、この七%というのは、いわば先進諸国から発展途上国に輸出する工業製品の値上がり分がすでに七%になっている。こういう試算に基づいて、最近のドルの低下、こういう問題等をも含めて、緊急にとりあえず要請されてきたものであると理解されなければならぬと思います。もちろんメージャーに対する資本参加の問題もございますし、この円・ドル問題が解決をされれば、これに伴って再びOPECの引き取り価格の是正という問題について当然意思表示が行なわれることは、もう常識化されておるのではなかろうか、実はこう考えざるを得ないわけです。ですから、そういうあらゆる面から考えても、七〇年代から八〇年代にかけては石油が大宗を占めていくわけでありますから、そういう意味において、わが国の石油業法あるいは石油開発公団法の改正に基づく確固たる政策を、ひとつ十分立てられるように要請をいたしたいと思いますし、審議会ベースじゃなくして、むしろ政治ベースとしてものごとを考えていくということも大事ではないか。きょうは大臣が出ておりませんが、ここらについてこの機会に次官の見解を承っておきたいと思います。
  102. 稻村佐近四郎

    稻村(佐)政府委員 総合的に考えまして、前向きに検討しなければならぬと思っております。
  103. 岡田利春

    ○岡田委員 外務省のほうにお尋ねいたしたいと思うのですが、すなわち、六〇年代の国連開発十カ年計画、これに伴ってわが国も海外経済協力を進めてまいったわけです。しかし、新たに第二次の国連援助の十カ年計画がこれから進められてまいるわけですが、私は、六〇年代のわが国の海外援助に対する戦略構想基本方針と、七〇年代第二次の国連開発十カ年に対処する戦略構想基本方針というものは、当然違わなければならないと思うわけです。この点について、わが国の六〇年代の第一次の国連の十カ年計画に対処する海外援助の戦略構想と、第二次に出発する今後の十カ年の海外援助に対する戦略構想基本方針について違いがあると思いますが、一体どう違うのか。この点についてひとつお示し願いたいと思います。
  104. 沢木正男

    ○沢木政府委員 一九七〇年代の後進国に対する援助につきましては、ただいま御指摘のとおり、「第二次国連開発の十年」という宣言が昨年度採択されたわけでございますが、第一の国連開発の十年というのは、先進国が後進国の経済発展の度合いを年率五%以上に維持しようという、きわめて簡単な、抽象的なものであったわけであります。ところが、第二の国連開発の十年につきましては、基本的に後進国の状態が変わっておる。その変わっておる一番重要な点は、六〇年代に先進国から受けた援助返済債務が非常に累積しておる。そういう状態の上に、さらに援助をやって経済発展をはからなければ、先進国と後進国との間のギャップが埋まらないという事態を踏まえまして、ピアソン報告あるいはティンバーゲン報告というようなものに基づきまして、国連開発の第二の十年が昨年度決定されたわけでございます。  その間日本も、一九六〇年代は国際収支の不安というものに常に悩まされておったわけでございますが、日本の経済力自身の面からもまた国際収支上の不安というものが幸いにしてなくなってくる、こういう事態を踏まえまして、一九七〇年代の日本の対外援助というものは、当然第二次国連開発の十年の戦略というものを踏まえて、できるだけそれにのっとって、むしろ従来のような受動的な政策から積極的な政策に転換していかなければならないということで、GNPの一%目標、それから政府開発援助目標、それから援助条件目標、そういう面につきましても、本年の六月でございますか、閣議で八項目の一環として経済協力を推進するということの中身は、そういう点の目標達成を意図的に考えたものであったわけであります。ところが、八月十五日のニクソン・ショックがございまして、それ以後円の切り上げがどういうふうに行なわれるのかという点が現在きまっておりません。したがいまして、これがきまった段階においてあらためて政府も経済計画全般をレビューすることになると思いますし、その一環として対外経済協力政策全般についても、またレビューを行ないまして、いかにしてそういう目標をいかなる段階で達成するか、あらためて、政策のレビューが行なわれるというふうに了解しておる次第でございます。
  105. 岡田利春

    ○岡田委員 私は、第一次国連開発十年に対処する日本の実績等についても承知をいたしておるわけですが、私の聞きたいのは、六〇年代は国連でそういったからといっても、わが国わが国として、海外経済協力援助の戦略構想というものは当然あると思うのです。どういう方針でやってこられたのか、そうして七〇年代の第二次開発十年に対処して、わが国はどういう戦略構想で臨まんとしているのか、その点がぴしっとされないと、反省点も、また総括も、またこれからの前進する姿勢も確立されないと思うのです。その点についてはどう受けとめられておるのか。これは、そういう方針はもうあるわけでしょう。なかったのですか。
  106. 沢木正男

    ○沢木政府委員 六〇年代は、いわば後進国援助の当初の段階でございまして、いろいろ錯誤あるいは誤解もあったわけでございます。ところが、七〇年代の援助につきましては、従来から国際的にいろいろ、日本援助につきましても年次審査その他を受けまして、わが国援助の改正すべき問題点について指摘されております。わが国自身といたしましても、世界平和を達成する上において、アジアの平和をまず達成するという意味からして、アジアの諸国を中心にしまして援助的な構想と戦略、というには少しどうかと思いますが、そういう考え方でもって、国際的な日本に対するいろいろな批判、そういうものも謙虚に聞きながら、こちらの政策を立てるというかっこうになっております。  その第一は、国際的にも約束いたしましたGNP一%目標の達成でございます。  それからさらに、その中で現在政府開発援助というものが、日本の場合援助総額の中の二五%以下になっておりますが、これを早急に三〇%程度にまで上げるように努力したいということでございます。
  107. 岡田利春

    ○岡田委員 私は国連の方針に基づいて、わが国はもちろんたてまえとしては、資源に乏しい日本が経済的な安定と繁栄をはかるためには、平和が続いて、世界じゅうと自由な通商が阻害されないという原則をやはり立てて、そうしてわが国の高度経済成長政策という国内経済政策の基本方針に基づいて、これを達成していくために、結局輸出重点の戦略的な構想、こういう方向でやはり六〇年代は進められてきた、こういわざるを得ないのではないかと思うのですね。そうであったのではないかと思うのです。その結果として、結局七〇年の場合には、先ほども答弁されたように、十八億二千四百万ドルですか、に達した。しかしながら、実際民間サイドの面が非常に強くて、政府援助はこの〇・九%に対してわずか〇・二、三%であるということに七〇年になったのではないかと認識をしておるのですが、この認識は間違いですか。
  108. 沢木正男

    ○沢木政府委員 数字の分析その他については、まさにお説のとおりでございます。ただ、日本援助輸出振興ということを意識して、それのみの考慮でなされたかという点につきましては、私は必ずしもそうではないとお答え申し上げたいと存じます。ということは、当初経済協力を始める段階におきまして、われわれがそういうふうなものにお金を使うことも、結局はわれわれにはね返ってくるのだという点のPR効果をねらいまして、結果として輸出振興につながるという点を強調したことは事実でございます。しかしながら、与えられました援助そのものが、単にその動機からだけ与えられたものではなくて、それ以外の考慮で与えられた援助も多々あったわけでございます。ただ、一般にそういうふうな解釈をされる、あるいは批判を受けるという点につきましては、われわれも大いに反省すべきことであると存じております。
  109. 岡田利春

    ○岡田委員 わが国の経済成長政策そのものがやはり基本ベースになっておるわけですから、これに対応してまいらなければならないということで、言うなれば経済成長をはかっていく、そうしてまた、外貨事情も大いに改善をしていくという面で、佐渡おけさではございませんけれども輸出のためには草木もなびく政策をとってきたといわざるを得ないし、その結果、今日円・ドル問題で非常に悩んでいるということに姿はなっているのじゃないかと私は思うのです。  ですから、海外の経済援助というものは、日本から援助を出すのだから、日本のサイドから見るということももちろん主体的な立場で必要なんですが、逆に、一体発展途上国が日本をどう見ているかという見方を十分にし、それを把握し、軌道修正をはかり、そして行なう援助が、よりほんとうにその目的に合致して効果を発揮するものでなければならないと思うわけです。そういう見方が非常に足りないのではないか。まして外務省やジェトロあるいはまた海外経済協力基金、アジア経済研究所ですか、いろいろ情報機関はありますけれども、諸外国から見れば、これは貧弱なものだといわざるを得ないと思いますし、ましてこれから新たに伸びていくアフリカや中南米、こういう広範な面を考えれば、まだまだそういう点については体制は非常に弱い、こういわざるを得ないのではないかと思うのです。  このことが、そういう総括が、これから国連の第二次十年に対処する方針となってあらわれてこなければならないような気がするわけです。いや、国連でもう原則がきまっているんだから、そういう方向なんです、そう言っても、現実にひもつき援助ばかり行なっておったのでは受ける側が承知しないでしょうし、また、GNP世界第二位になった日本に対する期待は、年々高まる一方なのですから——これはどこへ行っても高まる一方ですよ、そういう面もやはり十分検討してこれからの十年を考えなければならぬのではないのか。まして今回の第二次の国連開発の十年に対しては、アメリカはこれは反対をしているわけでしょう。あるいは日本条件については態度を保留したわけでしょう。各国これに対してばらばらですよ、一本にまとまっているわけではないわけですから。そうすると、日本日本としてどういう基本構想のもとに、また戦略構想のもとに進めていくかということが、七〇年代のわが国の経済の繁栄の上に、また諸国間との協力と平和のために、資源のないわが国が、資源の安定供給できる体制を築くために、すべてそういうものがぴしっと視点が位置づけされなければならぬのではないか。こういうのをどこでやるのでしょう。閣議決定でやるのでしょうか。先ほどの質問にも、アメリカであれば対外援助法というのがありまして、ちゃんと局があって、大体そこが中心になってやっているわけですけれども、どうも日本の場合には経済企画庁だ、外務省だ、通産省だ、——もうここまでくればGNPはさらに伸びていくわけですし、一%は年々伸びてまいるわけですから、そういう意味では法律的にも体制的にもこれを推進する、そしてまた、そういう視点を総合的にぴしっと定めていくことはより必要ではないのか。そして常に分析、総括をし、またそういう体制の中から情報収集体制もぴしっとしなければならないのではないか。それで初めてできるのではないか。ここをまずやらないで、第二次国連開発の十年に対処していくというのは、あまりにも芸がなさ過ぎるのではないか。十カ年間経験したのでありますから、今度はまず腰を固めて、精神を入れかえるということばは適当じゃないかもしれませんけれども、総括をして、そして臨まなければならない段階にきている、私はこう認識をするのですが、いかがでしょうか。
  110. 沢木正男

    ○沢木政府委員 まことに先生の申されるとおりでありまして、私、政府部内において、まさにそういうことを一生懸命叫んでおる最中でございます。ただ、政府の経済協力政策の最高の決定機関は、経済協力閣僚懇談会というのがございまして、これで重要な問題の決定をしていただいております。先ほども申し上げましたように、円の問題がきまりますれば、いずれ経済協力政策全般についても、そういう場でいろいろ重要な施策を決定していただく場面がくると思いますので、そういう際には、ただいま先生のおっしゃったような点を十分考慮いたしましてわが政策も立案したいと考えております。ただ、現在すでに展開されております施策の中にも、われわれが技術協力の中でインフラストラクチュア、特に教育とか医療の面が少ない。何でも製造すること、生産することに関連しておるから、日本援助というのはエコノミックアニマルだ、何だかんだというような点も出てくるというような批判につきましては、予算の中でそういう点の援助をふやすべく、ささやかながら努力をいたしておりますし、方向としては、問題意識の把握においては、いままさに先生がおっしゃるような点をわれわれ意識して、施策を展開していきたいと考えておる次第でございます。
  111. 岡田利春

    ○岡田委員 端的にお聞きしますけれども、この十年に対処するわが国の方針として、二国間援助方式というものを基本にするのか、それとも、多国間の経済援助方式というものに転換をはかっていくのか、あるいはまた、アジア開銀とか世銀を通じて、間接的な面にむしろ大きなウエートを置いて考えていくという戦略に立つのか、こういう点についてはどういう考え方を持っておるのでしょうか。問題は、やはりある意味では即効的な効果もあげなければならぬし、ある意味では長期戦略の上に立って徐々に効果をあげていく。社会主義国などは相当長期な展望に立って効果をあげていくという傾向が強いと思うのです。いずれにしても、わが国の場合は資源輸入国でありますから、そして加工貿易産業構造でありますから、そういう絶対的な条件に立てば、やはり相当多面的な方式を戦略構想として打ち立てなければならぬのではないかというのが私の意見でありますけれども、そういう点について深く考慮されておるのかどうか。そういう立案は事務レベルではどういう体制で行なわれるのか。この点について承っておきたいと思います。
  112. 沢木正男

    ○沢木政府委員 二国間援助を主体にするか、多国間援助を主体にするかという議論は、アメリカではきわめて活発でございます。アメリカでは、結局、多数国間援助というのをできるだけ多くふやしていくという傾向にあるようでありますが、わが国の場合、多数国間援助は総体の援助の中の一七%近くに及んでおりまして、DAC諸国の平均一三%より相当多い関係にあります。事実、アジア開銀におきましても大体アメリカと同じだけ出しておりますし、それからIMFあるいは世銀というところにも、わが国の経済力が上がるにつれまして非常にふえておる次第でございます。  わが国援助が、ただいま御指摘のように、いろいろその国と直接の関係でもって与えられる援助が多いわけでございますので、われわれの考え方といたしましては、多数国間援助、二国間援助、いずれに特に重点を置くということではなく、むしろ量からいえば重点的には二国間援助に置かざるを得ないのが日本現状ではないかというふうに考えております。  それで、そういう点の事務的な打ち合わせにつきましては、常時通産省あるいは大蔵省、経済企画庁と、局長レベルで毎週一回ずつ会合がございますので、そういう場でそういう政策論議もいたして、事務の調整をはかっておる次第でございます。
  113. 岡田利春

    ○岡田委員 この際、次官にちょっと承っておきたいのですが、これは私は答弁を求めるというよりも、稻村次官も新進気鋭の次官でありますから、期待を込めて申し上げるのですが、いま私が議論してまいりましたわが国の海外援助というのは、資源がなくて、それを持ってきて、これを加工して売らなければ成り立たない、こういう仕組みになっておるわけでありますから、そういう点から考えると、わが国独自の海外経済援助の体制と方針というものを急速に整備しなければならぬと思うのです。私は、そういう意味においては基本法的な、アメリカ法でいえば対外援助法というような法律をつくるべきではないのか。それに伴って、それは行政機構上どうなるのか、本部になるのか、これを受けとめる体制というものもやはりつくらなければいかぬじゃないか。そこで、常に外交サイドあるいはまたわが国の通産行政のいろいろな面、こういうものを総合的に含めてやはり戦略構想をきめていく、問題があれば修正をしていく。ここにぴしっと視点を据えていかなければ、七〇年代の見通しはそう明るくはないわけでありますから、非常に大きな禍根を残すことになるのじゃないのか。そういう意味で、この問題に真剣に取り組んでいただいて、ぜひひとつあなたの任期中に、少なくともこれらの構想をぴしっとまとめてもらいたいものだ、大臣はこれは忙し過ぎますからね。むしろやはり次官あたりが中心になって、この点をぜひ問題にして、そういう体制を整備しなければいけないのじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  114. 稻村佐近四郎

    稻村(佐)政府委員 御指摘のとおり、外務省はじめ各省にいろいろまたがっておるわけですが、海外経済協力基本とでも申しますか、こういった問題がやはり必要に感じられるわけでございますので、そういったものについて、これは私は時期的に当然ではなかろうかと思いますので、その方向にひとつ検討してみたいと思います。
  115. 岡田利春

    ○岡田委員 外務省にお尋ねしますけれども、資源の長期安定確保は、相手国に対する総合的な経済振興開発に対する協力の度合いに応じてその資源は公平に長期安定的に供給される、やはりこのような考え方が基本でしかるべきではないか。資源の長期安定確保は、相手国に対する総合的な経済振興開発に対する協力の度合い、こういうものに応じて初めて長期安定的な資源の供給がなされるのではないのか、こういう考え方がまず基本になって、それはもちろんいろいろあるでしょうけれども、それが基本でなければならぬのではないかという意見を持っておるのですが、この意見に対してはどうか。  それと同時に、わが国は加工貿易産業でありますから、市場の開拓も当然意識をしなければならぬわけです。この市場の安定的な確保あるいは開拓というのは、相手国に対する経済、教育、文化、総合的な協力を強力に進める。そういう体制の中にわが国の市場の開拓も安定し、そういうことによって保障されていくのではないのか、こういう意見を私は持っておるわけです。いわばわれわれにはいい手本があるわけです。アメリカという手本があるわけです。このアメリカの二の舞いをしてはならないわけですよ。そして今日アメリカが中南米あたりにおいて、中南米諸国から非常に排除されておる、非常にそういうあれが強まっておる。従来いろいろな動向を見ると、これが非常にいい手本じゃないかと思う。手本がないのではなく、手本があるわけですから。私はそのように考えるのですけれども、この私の考え方に対して御意見を承っておきたいと思うのです。
  116. 沢木正男

    ○沢木政府委員 まさにそういう考え方でわれわれも対処しておるわけでございまして、特に最近やかましくなりました天然資源の開発問題については、天然資源のある国に経済協力をやるべきだというような意見が相当たくさん出てきたわけでありますが、前国会におきましてもわれわれが御答弁申し上げましたのは、まさにそういう考え方を排除いたしまして、あらゆる国と経済協力関係がいい関係にある、そこへ持ってきて天然資源が発見されれば、それを日本が買うについても、いろいろいい雰囲気のもとでそれが処理されるというのが理想でありまして、天然資源獲得のために経済協力をやるということになりますと、貿易市場確保のために経済協力を日本はやっておるのでないかという非難を受けるのとまさに同じ意味において、また非難を受けることになります。  したがいまして、われわれの理想といたしましては、そういう国について経済協力も十分行なわれ、かついい関係にあることを目ざしておるわけでありまして、そのためにアジアのみに限定されておりました円借款というものを中近東、アフリカ、中南米、あらゆる国にだんだん拡大する努力を行なっております。本年度においては、アジア以外の地域の国につきましても、円借款成立をいたしておりますが、それはそういう意図の一つのあらわれでございます。
  117. 岡田利春

    ○岡田委員 私も、徐々に気づき始めて、軌道の修正は行なわれてないというんじゃなくして、行なわれつつあるということは認めているわけです。たとえば、アフリカのザンビアであれば、銅資源は三井、三菱が融資買鉱で金を出して、そして貿易は結局七対一で、向こうのほうがわが国に対して輸出超過になっている。これは融資買鉱でいっても、貿易収支からいってもいいでしょう。あるいはベルギー支配にあった今日のザイール、キンシャサ・コンゴですね、ザイールの場合は、ベルギーがかつて取得しておった権利を、独立によってわが国がこれを取得した。こういう経過からかんがみると、この開発に協力すると同時に、これに対する輸送手段とか、この面についての協力を考えていく。これは一つの典型的な例になっています。昨今ようやく重い腰を上げて調査団が派遣されたようでありますけれども、しかし、それも聞くところによると四千万ドルの頭打ちだということでは、初めからワクをかけておるんだという情報すらあるわけで心配しているわけですが、一方、ケニアの場合は資源がございませんし、農産物の場合は、これはなかなかわが国に受け入れるような農産物はない。そうすると、結局貿易収支は十二対一、たいへんな状態にあるわけですよ。それでもいま日本製品を輸入しているといって、目新しい援助はないわけです。四百万ドルですか、もう来年あたりで終わるはずですが、前にそういう援助があるだけ。いろいろな構想が出されるけれども、どうも日本が乗っていかない。そうすると結局、こういうところには農業プロジェクト、北海道あたりでやっているようなパイロット方式といいますか、圧倒的に農業人口が高いわけでありますから、やはりそういろ援助をするとか、当然何か考えられてこなければならぬのではないか。私はそういう意味で、もう大体実績はできているわけですから、一応いま言われた方向に合っている例を三つ出してみたのですけれども、そういう点でぴしっとした構想というものをぜひ確立をしてもらいたい。  それと同時に、アメリカは文化センターなんかつくっていますけれども、文化的にはやはり日本の国のほうが、伝統が、歴史が長いわけでありますから、そういう点で特に、教育、文化——教育の中にはもちろん医療も入るわけですね、こういう面などがもう少し積極的に取り上げられていかなければならぬのではないか。国内でも医師が足りないのだから、とても医療なんというのは手が回らないということもあるでしょうけれども、なかなかこれは「わかもと」を飲んでいるようなもので、即効的にはいかないように見えますけれども、結局日本を知らない、日本の高官は知っておっても、日本もまた知らないという非常に歴史の浅い最近の独立国家がどんどん誕生して、これが国連でもう半数に近い勢力を持っているという面から考えても、金がたくさんなければ、あまり金がかからないようなことも考えていく。もちろん、それは体制を整備しなければできないことでありますけれども、どうも外務省あたりを見ていると、日本人の居留民や、あるいは移住している中庸米なんかの場合は、日本人がおるから文化的な面が進んで、傾斜しているようでありますけれども、それは悪いことではない。積極的に詰めなければならぬことでありますけれども、いずれにしてもそういう点をもう少しぴしっとして、先ほどの質問じゃありませんけれども、少なくともそういう構想が提示され、こういうあれでいくんだというものが示されるような体制、方向をきめるべきではないのか。やはりこれだけの援助総額になってきておるわけでありますから、そういう意味でこれはぴしっと——これはわれわれ国会議員の問題で、いずれまた別途に議論を申し上げなければならぬ問題でありますが、対外経済協力白書というようなものまでぴしっと出す体制にならなければならない。これは十年後のわが国のGNPを考えたらたいへんな額ですよ。一九八〇年の経済協力を一%と考えたら、たいへんなことになるわけでしょう。もし倍にしたって、四千億をこえるわけでありますから、その一%ですから、たいへんなことになるわけです。そういう点で、特にこの点の勉強を心からお願いをしておきたいと思います。  それと同時に、経済協力開発は、これから大型化してまいります。この大型化していくものにどう対処していくか。広域化して範囲が世界にまたがるということと同時に、大型化するものにどう対処するかというもう一つ——これに関して、輸出プラントの大型化というか、保険法の改正が今回出されておるんでしょうけれども、たとえば資源開発等によりましても、現在われわれが考えている考えを上回る大型化になっていく、こう私は動向を見ておるわけです。先ほど言いましたように、たとえば目玉商品であるムソシ開発の場合はキンセンタが開発されれば、銅量に換算して十一万トンですね。日本では一年間で全部で十二万トン程度だ。一つの鉱山が日本の一年間分を産出するわけですから、そういう下敷きはさらに大きくなっていく。たとえばオーストラリアなどを見ますと、いまはあまり金を投じないで鉄鉱山を開発して、西オーストラリアあたりから鉄鉱石を輸入しておる。しかし、アメリカがやっておるのは、鉱山を開発すると、道路は、舗装整備される、働く人たちの住宅も同時に建てなければならない、港湾設備も同時にしなければならない、こういうプロジェクトがどんどん開発されていかなければならない段階に入りつつあると思うわけです。ですから、われわれの従来の大型プロジェクトといってもいろいろありますから、超大型プロジェクトといいますか、そういう構想に特に七〇年代の後半にはいやでもおうでも入っていかなければならない状態になる。そうすると、貧弱な日本の一企業ではもはやできない段階になる。それを受けとめるナショナルセンターの構想をどうするかということは、当然考えられなければならない問題なんです。せっかく海外鉱物資源開発株式会社というセンターがあっても、いま資本がかってにやって全部食いちぎってしまって、ここは何もやることがないから、行管のほうから、こんな会社はやめてしまえという指摘を受けてしまう状態なんです。そうではなくて、各企業が協力し合って、そして日本として一つのプロジェクトに取り組んでいく、これくらいの姿勢が要求されてくるわけです。石油資源開発についてもまさしくそうでしょう。そういう点で発想の転換をはからなければならない。広域ということ、範囲が広いということは案外あれですけれども、大型化の展望というか、一体どうなっていくのかという意味では、相当発想の転換をしなければならぬ段階に入っている、私はこう思うのですけれども、この点について見解を承っておきたいと思います。
  118. 外山弘

    外山政府委員 経済協力の内容につきまして、非常にしさいに、深い御発言でございます。私どもも、先ほどから先生のおっしゃっておるような日本のポジション、それから世界経済の流れ、発展途上国の持っている問題点等から見まして、一つ二つ私どももこれから考えていかなければならない幾つかの問題を指摘しておられると思います。  ただいまおっしゃいました大型化の問題、私もこれは確かにそういう傾向に進んでいると思います。先ほども指摘がございましたように、プラント輸出一つとりましても、やはりそういった方向に資するものとして、今回バイヤーズクレジットのようなものも改正を御提案申し上げているわけでございますが、そういったことに限らず、もっと地域的な大きな開発計画というものがその国の経済の発展のために必要であるという点が多々ございます。そういうものにつきまして、その国の発展にほんとうに役立つような計画は何であるかということについて、日本立場からもう少しこれに参加する、つまり知恵をもっと提供するということ、こういった組織を、先般も国際経済センター、工業開発センターというかっこうでひとつ設けておりますが、まだ規模は小そうございます。こういったものを充実いたしまして、知恵の提供、その知恵をつくる人、知恵を出す人を養うということ、そういった点にも大いに努力をしていきたいと思いますし、かつは、そういった発掘された計画というものを推進する体制につきましても、はたして現在のやり方で十分であるかどうか。この点については、たとえば金融的な機能を持つ機関である場合にはとかく受け身になりがちでございます。さりとて、政府が積極的に乗り出すという場合には、誤解を起こす場合もあり得ると思います。そうした間におきまして、たとえばイギリスやドイツが設けておりますような開発公社というふうな構想もございます。私どもはそういった時代の要請の中で、日本の経済協力を真に相手国の経済発展に役立たせるような方向はどうあるべきかということを、もう一度ここで、新しい段階で考えてみたい、こういうふうな段階にあるということを申し上げておきたいと思います。
  119. 岡田利春

    ○岡田委員 先憂後楽ということばがありますけれども、私は、わが国の立国の条件からいって、まさしく海外経済協力は先憂後楽でなければならぬと思う。そしてその時期は、タイミングとしては七〇年代である。私はそういう八〇年代、九〇年代、二〇〇〇年代を展望して、七〇年代というのは非常に大事だ、こう思っております。したがって、経済上いろいろ問題はありますけれども、百年の大計で考えるならば、先憂後楽という、そういうもとの考え方で対処しなければならないと思っています。そういう意味で、今後また議論することもあろうと思いますので、ぜひひとつそういう方向でこれからいろいろ検討を進められることを期待をいたしておきたいと思います。  若干、保険の問題に入りますが、その前段として、きのう、印パ戦争の結果、政府は東パキスタンに対する保険保証を行なう態度を明らかにし、今後東パキスタン向け輸出商品に対しては、輸出保険法に基づく事故認定を行なうが、戦争を原因とする事故に対しては輸出保険支払いをしないということを通達をしておりますね。そこで、そうなりますと、大体これはどのくらいになるのか、これは概算でけっこうです。  それから同時に、西パキスタン及び——いまは東パキスタン、西パキスタン、同じ国でありますけれども、西パキスタンインドの場合にはどうなっているのか、大体どのくらいの保険をかけているのか。これは国際収支がそれでなくてもよくないのでありますから、これも当然保険にかかってくるのではないかと思うわけです。来年度予算ですから、これはしっかりしたことはわからないですが、保険会計上からいっても、当然これは想定をしてかかっておかなければならない問題だと思うわけであります。したがって、インド及び西パキスタンに対する——きのうやったのは東パキスタンだけでしょう、インド及び西パキスタンに対してはまだ情勢を静観するという考え方なのか。国連の審議の動向から見てもちょっと情勢は簡単にはいかぬという状況でありますから、これに対してどう対処するのか。数字はなければあとから届けてもらってけっこうですから、その考え方について承っておきたいと思います。
  120. 外山弘

    外山政府委員 先ほどのような事情が発生いたしましたものですから、十二月六日付で東パキスタンについて保険事故事由の認定をいたしました。引き続きまして、その後の情勢がさらに悪化したということの情報がはっきりいたしましたので、インドから西パキスタンも同様の認定をすぐ翌日いたしました。  現在インドパキスタン向け保険残高でございますが、インドにつきましては三百六十七億円、それからパキスタン向けにつきましては二百四億円でございます。
  121. 岡田利春

    ○岡田委員 先ほど同僚委員から、繊維機械輸出の問題がインドの話で出ておったのですが、聞いておって、たいへんなことじゃないかと実は思っておったわけです。そこで、これは当然来年度——今年度になるかもしれませんが、六カ月ですから、ことしから来年にかけて出てきますね。したがって、いま大蔵省に対してこの法案改正に伴って予算要求が当然されておると思うのです。こういう不時の事態の予算を当然追加しなければならない。いわゆる範囲の拡大というようなことは、保険内容が実質的に拡充され、金額がふえていくというわけでありますから、そういう点を含めて、来年度はこの法案改正でどの程度の予算拡大を考えておられるのか。またいまの問題は緊急事項として追加されて、予算を要求されるものか、とりあえずこの面についての考え方を承っておきたいと思います。
  122. 外山弘

    外山政府委員 先ほど申し上げました金額は、現在の保険残高でございますから、かりに一年度、初年度にくるとすれば、大まかに申しまして五分の一くらいの金額であろうと思います。したがいまして、その程度の金額で、別に予想をしていたわけではございませんけれども、現在の保険収支の状況から見ますと、とりあえず来年度は何とかできるのではないだろうかと思っております。  現在のインドパキスタン保険事故を予想したわけではございませんが、ある程度の保険事故というものを予想しながら収支を組むわけでございますが、来年度の予算につきましては、とりあえず、保険のテンポにはほとんどはまらないと思いますが、一千万円の増加要求をしておりますけれども、これはそうした大きなものに対応する金額としては十分ではないと思います。しかし一方、現在すぐ収支が影響を受けるというふうなところにはならないというふうに判断しております。
  123. 岡田利春

    ○岡田委員 予算の仕組みは、これは引き受け限度額というものがあるから、それで当てはめればいいのだからそうなるけれども、問題はやはり積極的な姿勢をとる場合と、従来の一応の方針と経過、こういうものの中で処理をするという場合には、いま局長が言われたように、一千万円ぐらい上げればいいということになるのであって、そうしますと、保険法に該当するもので、輸出をしてぜひ保険に入りたい、その保険に入りたいというのと、通産省が定めておる引き受け限度額におさめているものとの差というのがあるはずですね。全部が入るわけじゃないでしょう。相手バイヤーの信用調査の結果、だめだというものがあるわけですから、極端なものは別にして、大体昨年あたりの傾向はどういう傾向にあるのですか。概略でいいですから……。
  124. 外山弘

    外山政府委員 御指摘のように、契約限度額というのを予算総則で一々うたっておるわけでございますが、これはわりあい多目にうたっております。もちろん、個々の案件の審査にあたりましては、御指摘のようにケース・バイ・ケースで十分慎重な審議はしておりますけれども、まあそういった審議の過程において予算総則の引き受け限度額を上回るというふうな事態は、ここ最近はございません。過去におきましては、補正予算で変更をしたというふうなこともございます。今回は、大体輸出の伸び率というものをごく概略頭に置きまして、そして前年度の保険契約限度額がどの程度消化されているかということを参考にいたしまして金額を計上しているわけでございます。  四十六年度の引き受け限度額といたしましては、普通輸出保険が二兆五千億円、輸出代金保険が一兆八千億円等、合計五兆四千六百二十億円、これはおもなものだけ申し上げましたが、それで五兆四千六百二十億円となっておるわけでございます。
  125. 岡田利春

    ○岡田委員 今度改正になりますバイヤーズクレジットの場合、これはやはり対象品目というものは当然政令基準できめられてくるだろうと思いますし、また許可の場合にあたっても、当然政令できめられるのではないかと思うのですが、この政令の案はできておりますか。できておればあとからもらえばいいから、特にいまの点についての重要な問題について説明願いたいと思います。
  126. 外山弘

    外山政府委員 今回のバイヤーズクレジットは、サプライヤーズクレジットと同じものを対象にしております。したがいまして、輸出代金保険の改正でやるわけでございまして、プラント輸出等が中心になるわけでございます。
  127. 岡田利春

    ○岡田委員 そういたしますと、サプライヤーズクレジットとバイヤーズクレジットの場合、大体いままでの動向から見て、来年度どういう比率になるとお考えですか。
  128. 外山弘

    外山政府委員 バイヤーズクレジットのいままでのいろいろ要請状況というふうなことを頭に置きまして、それからもう一つは、中南米の特にこのバイヤーズクレジットに対する商慣行というふうな点、それから、その地域への伸び方がどうであるかというふうな点を考えまして、私どもといたしましては、従来のサプライヤーズクレジットの二割ぐらいの金額がバイヤーズクレジットとして初年度は出てくるのではないだろうかというふうな想定をしております。しかし、これは全く想定でございまして、現実にふたをあけてみましてどんなことになりますか、これはまた十分フォローしたいと思いますが、大体いまそんな想定をしておるところでございます。
  129. 岡田利春

    ○岡田委員 わが国の場合、相手国との関係考えますと、まあ初年度は初めての出発でありますから二割でもけっこうですが、しかし二、三年のうちにフィフティー・フィフティーぐらいになると考えるのが常識かと思いますが、いかがですか。
  130. 外山弘

    外山政府委員 諸外国の例を見ますと、大部分の先進国におきましては、バイヤーズクレジットのほうが多いという国が大部分でございます。一部の国はもちろんサプライヤーズクレジットのほうがまだ多いということでございます。日本の場合は、そういった商慣行の多い中南米等の比率がどの程度を占めるかということによりまして、かなり影響を受けると思います。したがいまして、同じような割合になるとは思いませんが、かなりのテンポで伸びるのではないだろうか、こういうふうに思います。
  131. 岡田利春

    ○岡田委員 バイヤーズクレジットの場合には、外国為替管理令によって大蔵大臣の認可が要るわけでしょう。そうしますと、そういう形で大体近いうちに均衡をしてくるようになるだろうと思うのですが、一方において従来の場合は、通産大臣が認可をすればできるわけですね。一方においては今度は大蔵大臣の認可なんですが、この関係は、これは法律事項としては私の読んだ範囲には出ていないわけですけれども政令か何かできめられるのだと思いますが、この間の調整を何か考えられておるのか。たとえば、大蔵大臣から一定の引き受け限度額がきまれば委任するのか、これはどういう立て方になるのかお聞きしておきたいと思います。
  132. 外山弘

    外山政府委員 法律的に申しますと、現在のサプライヤーズクレジットも、まず輸出承認がございまして、そしてその上で今度は保険のほうの引き受けを受けるということでございます。それから海外投資につきましても同じように、従来は海外投資の許可を受けまして、そしてそれから保険の引き受けを始める。それから今度のバイヤーズクレジットにつきましても、これは外国為替管理令になりますから、いま御指摘のように、大蔵大臣の許可がまず前提になりまして、そしてその許可を受けたものについて保険を引き受けるということになるのが、これが法的なたてまえでございます。  しかし、現在海外投資保険につきましても、あるいはサプライヤーズクレジットにつきましても、実際の輸出承認をするにあたって、保険のほうがどういう判断をするかということを、行政関係当局間で十分打ち合わせをしてやっております。したがいまして、今回のバイヤーズクレジットにつきましても全く同様の趣旨でやらなければならない。すでにこれは、大蔵当局とも十分打ち合わせしておりまして、申請の段階で双方の意見を十分交換して進めたい、こういうふうに思っておりますから、従来サプライヤーズクレジット等について問題がなかったとすれば、今後も問題のないような運用ができるというふうに確信している次第でございます。
  133. 岡田利春

    ○岡田委員 そうしますと、いまの局長答弁では、もう保険にこれは付保する、あとは認可だけだという段階をとるわけだから、結局いずれにしても、従来の制度も今度の改正制度も、事務手続上は同じである、しかも、引き受け限度額がきまっておるわけですから。そういう理解でよろしゅうございますか。
  134. 外山弘

    外山政府委員 保険の引き受け限度額の範囲内で通産省が保険の引き受けを決定するにあたりましては、それなりに独自の判断をするわけでございますが、同時に、いまのサプライヤーズクレジットの場合におきますように、そちらのほうのサイドの意見というもの、これを十分聞きながら保険の引き受けに当たりたいということでございますから、別に特に従来と変わったような運用にはならないだろう、こう思っておるわけでございます。
  135. 岡田利春

    ○岡田委員 その保険に付保する場合に、信用調査ということが問題になって、通産省は通産省でバイヤーの信用状況というものを六万か、相当な数を公表している。しかし、大型化になれば、また違った角度で外務省の大使館あたりからいろいろ入ってくる。サイドは一つではないと思うのですね。いろいろ多様だと思うわけです。ジェトロの場合もあるし、いろいろあると思うのですが、これらの関係については、特にこれから大型な、しかも、エンジニアリングを含めて完成引き渡しというところまでいくわけでありますから、なおそういう点の事前の情報なり調査というものは、重要な課題になってくると思うのですね。こういう面については、この法改正にあたってさらに強化するとかいう面については前提があるのかないのか、この点も意見を承っておきたいと思います。
  136. 外山弘

    外山政府委員 もちろん、件数がふえてくる過程において、輸入業者の信用の調査というのは非常に大事でございますが、今回のように、バイヤーズクレジットというものを加えますと、さらにその問題はあるわけでございます。しかしながら、逆にバイヤーズクレジットの場合は、向こう側に信用機関が入るというふうなこともあるかと思います。しかし、いずれにしましても、信用調査というのは非常に保険法の運用上大事なことでございまして、すでに先生も御承知かと思いますが、輸入業者約六万数千につきましてリストアップをいたしまして、これを地域によっては年一回、地域によっては年二回の調査をいたしまして、そして格づけをしたり、それから、そこに入っていないものについては事前の調査をもう一度やるとか、いろいろやっておるわけでございます。その辺の回数をもっと充実するという意味におきましても、来年度は予算をもっとふやしてほしいということを現在要求しているところでございます。
  137. 岡田利春

    ○岡田委員 わが国輸出保険制度としては、これができてから改正は十回目ぐらいですね。それで八種類になって、今度は七種類、そして内容がさらに拡大されたということなんですが、これは最後の改正だとお思いになりますか。わが国輸出保険制度としてはこの改正は最後——まあ内容の字句なんかは別ですよ。保険制度の立て方として、少なくとも最後の改正と思われますか。
  138. 外山弘

    外山政府委員 現在の法律が、輸出保険というふうな範囲で申し上げている限り、私はほとんどどうも最後の改正ではないかと考えております。ただ、けさも横山委員から御指摘がございまして、輸入保険のようなものをもっと考えられないかというふうなお話がございました。私は、そういった新種保険につきましても、事態の推移に応じて勉強してみたいということを申し上げたわけでございますので、これが最後であるというふうに申し上げますことと矛盾しない範囲で、私は先ほどのような感じを持っているわけでございます。したがいまして、今回の融資買鉱は輸入関連する保険でありますが、まだ本格的な輸入保険とはいえないと思いますが、そういった方向で何か新しい方向を打ち出せば別でございますが、輸出保険という考え方では、今回のような物の動きに対応したバンクローンまで輸出保険にするということでありますと、ほとんど最後ではないだろうか、こういうふうに考える次第でございます。
  139. 岡田利春

    ○岡田委員 企業というのは、大体制度に合わせてつくられるものだから、ややこしいものができるわけなんですけれども、現地法人をつくって、それをわが国の資本が支配する、しかし金が——今度の場合だってそうでしょう。改正しても、直接外国銀行から借りても、これは相手の国が保険制度があればいざ知らず、そういうものに適合しない場合は、これはわが国が支配する場合でも対象にならないわけですよ。そうすると国内に一つの会社をつくって、無理苦理を通してやらなければならぬということになるわけですよ。そういう意味では、外国金融機関及び企業が、わが国の支配する企業融資をするという場合の保険制度というものも、なかなかその段階ではないといえばそれまでかもしらぬけれども、検討されていかなければならないのではなかろうか。あるいは昨今のように、IMF体制が崩壊している、しかも、国際通貨基軸自体が切り下げの段階に入ってきて、経済が激動するということになると、国際経済の動きがさらに激しくなると、為替差損という問題が出てくるのではないのか。そういう意味で、これに対するところの保険考える、あるいはいま局長が言われたようなものを、いずれも非常にむずかしい内容ですよ。これはいずれもむずかしい内容であるが、そういう意味では、わが国輸出保険制度、保険制度というけれども、この保険に合わせていくという面があるわけですから、広く考えてみると、これをわが国保険制度にも当てはめるとするならば、まだあるという感じが私はするわけです。いずれにしても、やはり先ほどからの、これからの経済協力なりのテンポによってこれに対応しなければならぬのではなかろうかという気がいたします。  それと同時に、もう一つだけ伺って終わりたいと思うのですが、融資買鉱方式をとる。御承知のように現在金属鉱物探鉱促進事業団は債務保証を行なっているわけです。今度は債務保証も行なわれる。それから保険にも付保されるということになってくる。付保された保険の証券というものは担保価値を持ってくる。一方において債務保証の場合には相手先が倒産した場合に債務保証をするということで、運用面からいって一体どれだけの差があるんだろうか。しかし、あるものだからなくする必要がないといえばそれまでですけれども、どれだけの差があるんだろうか。二つ立つわけですからあるわけです。その点についてはどういう見解をお持ちになっておりますか。
  140. 外山弘

    外山政府委員 ただいまの債務保証の問題と、今回の融資買鉱保険の問題につきましては、たとえば金融の円滑化というふうな点をとりますと、やはり機能的にはダブる面もあると思います。しかし、同時にカバーする範囲も違うという点もございます。しかし理論的に申しますと、債務保証と申しますのは結局回収未済の場合に働くわけでございます。それから保険の場合は損失をてん補するというところに働くわけでございます。したがいまして、たとえば前者の場合には、回収未済の場合ですから結局求償権も働くと思いますが、保険の場合はそういったものはない。逆に回収義務だけが残る、こういうことでございまして、法律的にも違う点が出てくると思います。いずれにしましても、ダブる面もございますが、機能の違った面もございますし、それぞれのケースに応じて両方がじょうずに使われるならばいいのではないか、こう考えている次第でございます。
  141. 岡田利春

    ○岡田委員 いずれにしても、先ほど来からいろいろ背景等についても質問してまいったわけですが、専門的な問題は別にして、大体さらっと当たったところは、本保険法審議にあたって当然意見として付与されなければならない問題だろうと思います。もちろんこれが附帯決議としてなるのか、基本的には、やはり輸出保険というそれだけじゃなくして、わが国の海外経済協力援助の体制、こういう問題から始まって四、五点質問したことは、当然本法案——これは大体われわれ賛成でありますけれども、まとめとしてこれは当然付加されなければならない問題である、こう考えています。  そういう点で、また時間があれば若干質問させていただくことにしまして、きょうは約束の時間ですから、以上で終わりたいと思います。
  142. 進藤一馬

    進藤委員長代理 松尾信人君。
  143. 松尾信人

    松尾(信)委員 最初に海外経済協力関係でお尋ねしますが、いま岡田議員の質問でだいぶん出ましたので、重複することを省きまして質疑を重ねたいと思います。  いまこの経済協力関係でいろいろの問題点がありますが、政府のやり方は足らない、非常に実績からいうて少ないのじゃないかといわれておる問題に問題をしぼって質疑をしたいと思います。  それで問題は、結局政府の開発援助の点であります。この開発援助の点につきましては、まず六九年と七〇年は、いまこのような実績というものをいただいておるわけでありますけれども、総計でいえば四十五年は四億三千五百万ドル、四十六年が四億五千八百万ドル、このように出ておりますね。七〇年の構成比として、これは政府の開発援助が二五%である、前年比の伸び率は五・一%だ、このような実績が出ておるわけでありますけれども、これは非常に少ない。どうしてこのようなわずかな、五%というような年率の伸び方の数字にとどまっておるのであろうかということから聞いていきたいと思うのですが、その点はどうでしょう。
  144. 外山弘

    外山政府委員 御指摘のとおり、政府開発援助は先ほど来お話がございましたように、GNP比率〇・二三、それからいま御指摘の数字にありますように前年比五%増という程度にとどまっておるわけであります。この理由として私どもの理解する限りでは、一つは社会資本の蓄積が乏しいというふうな立場から見まして、財政力等の面で経済協力に向け得る資金量が制約されておる。これは毎年毎年の予算の際にいつも努力をしているわけでございますが、日本側の財政力の面からの制約が一つあるだろう。もう一つは、わが国政府援助というのは、何と申しましても主要先進国に比べますとスタートがおくれておるというふうなことが理由ではないだろうかと思います。現在こういった事情に照らしまして、できるだけ政府開発援助の額をふやしていこうというのが当面の最大の課題の一つになっておるわけでございますが、これから、これの目標については漸次上げていかなければならない、こう考えておる次第であります。
  145. 松尾信人

    松尾(信)委員 そうすると、このDAC加盟国の目標がありますね、その目標。それから日本の国民総生産に対する目標でありますけれども、その中で日本が現在わずかに〇・二三%である。DACの加盟国の目標は〇・七%ではないか、このように理解しておるのでありますけれども、この点間違いないですか。
  146. 沢木正男

    ○沢木政府委員 政府開発援助につきましては、国連の「第二次国連開発の十年」というところでそういう目標が設定されたわけでございまして、DAC自身としてはそういう決定を尊重して、それに到達すべく努力するということで、DAC自身として特に目標を掲げておるわけではございません。現在日本はGNPの〇・二三%でありますが、DAC全体の平均は〇・三四%であります。実は政府開発援助だけで申しますと、おととしの六九年の実績がDAC平均で〇・三七%でございまして、DAC全体としても、〇・三七から〇・三四に下がっておるという事実があるわけでございます。
  147. 松尾信人

    松尾(信)委員 先ほどのお答えでは、日本の財政的な力がまだまだそこまで——まだ弱いんだ、まだ経験的に言っても日本は新しいんだというようなお答えも出ましたけれども、どうしてもこれは円対策の八項目の関係ですね。しっかりやっていこう。また、いろいろいまから申し上げますけれども、東南アジアを中心にした場合には、やはり日本がDAC加盟国の中心となって推進していかなくちゃできないというような立場もありますので、来年は一体どのようなことになっていくのか、それにはやはり、いま外務省なり通産省なり、または企画庁なりがそれぞれ局長同士よく話し合って、そしてこの〇・二三というようなことを上げていかなくちゃできない、大蔵省のほうに強く折衝を重ねていかなくちゃできないわけでありますけれども、それじゃ来年はどういうふうな構想でひとつ予算を積極的に取っていこう、このようなお考えがありますか。
  148. 沢木正男

    ○沢木政府委員 六月の閣議決定で八項目推進ということがございまして、その後、時間的には八月十五日のニクソン・ショック、それのあと八月三十日に閣議が開かれまして、それから日米閣僚会議に閣僚が出発されたわけでございます。その八月三十日の閣議におきまして、八項目の一環として経済協力を推進するということの内容の中に、政府開発援助につきましては早急にDACの平均のレベル、すなわちGNPの〇・三四でございますが、そのレベルにまで引き上げ、自後、国際的な動向と日本の財政力を勘案しつつ、できるだけ国際的な目的にまで早期到達するように努力するという趣旨の閣議決定がございます。したがいまして、われわれの、各省から大蔵省に対していたします予算要求につきましても、おおむねその線に乗ってそれぞれ改善を要求しておるのが現状でございます。  それで、政府開発援助をふやすには、政府開発援助を構成する各品目について増加が期待されるわけでございますが、一番大きな柱としましては、一つは賠償の支払いというものが、フィリピンに対する支払いを残すだけでございまして、漸次これが減っております。したがいまして、外務省といたしましては、賠償支払いにかわるような無償の経済協力をふやすということで、来年度も五十一億円にのぼる予算要求をしておるわけでございます。このような無償の援助は、先ほど来この委員会でも御議論になっております教育面あるいは医療面というものを中心にして考えております。先日、起工式をいたしましたサイゴンのチョウライ病院なんかはその一例でございますが、来年度の予算におきましても、インドシナ三国に対する難民の救済だとか、あるいはタイの技術工科大学に対する援助、そういうふうな医療、教育面の援助を主として無償協力でやろうということを考えております。  それから政府開発援助のもう一つの項目として技術協力がございます。技術協力は予算も各省にわたっておりますが……(松尾(信)委員「技術協力はあとからぼくが質問するから……」と呼ぶ)  それから、さらに円借款を増加するということでございまして、これは今年度コミットを非常に急いで行なっております結果、各国にコミットしたのが上半期で三億七千万ドル程度に達しております。過去のコミットの最高が一九六六年の四億ドル程度でございますが、半年間で従来の最高と大体同じくらいの額に近づいておるということから、年間の総額のコミットは非常に多くなると思います。そういたしますと、それが支払いベースであらわれてくるのが二、三年後ということでございますし、国際機関に対する拠出金につきましても、依然として日本は高い水準を保っておりますので、DAC平均以上の国際的な機関に対するコミットメントを今年も続けることができておるのじゃないかというふうに考えております。
  149. 松尾信人

    松尾(信)委員 対GNP〇・二三%ですね。DAC加盟国で〇・三%に満たないというのはわずか三カ国である。これは事実でしょう。その中で〇・二三%というのは、日本は参加国の中でもうんと下、わずか三カ国というような中に入っているということですね。こういうことを見過ごしてはいかぬのじゃないかというわけです。  それで、いまお答えのとおりに、これをうんとふやしていきたい、先ほどの岡田議員の質問に対する答えの中でも、相手のあらゆる産業または経済の基盤をうんとよくしていくための無償のものを大いにやっていきたい、このようにおっしゃいましたけれども、このような七〇年の実績というものを反省した、そしていまおっしゃいましたけれども、全体的な国別の無償の分の計画というものは、来年の分についてできておりますか。
  150. 沢木正男

    ○沢木政府委員 無償の来年度の計画につきましてはもちろんできておるわけでございますが、予算の項目といたしましては一括して出していただいております。ということは、予算審議でどういうものをどういう国に対してやっておるということが相手国に知れますと、それ以外の国からも要求を誘発するという面で非常に困難がございますので、そういう面から、ただいま申し上げましたように、五十一億円の内容は、もちろん全部国別かつプロジェクト別にきまっておりますが、予算審議の段階におきましては、それを公開しないで御審議をいただいておる次第でございます。
  151. 松尾信人

    松尾(信)委員 来年の国際収支の問題、またGNPの今後の実績の関係になりますけれども、そのような来年の計画で、この政府の開発援助というものがどのくらいのパーセントになっていくかということはいかがでしょう。
  152. 沢木正男

    ○沢木政府委員 これは、政府が発表いたしております統計、かつDACに報告いたしております統計は支払いベースでございます。ただいま、円借款が今年度コミットメントが上がったと申しますのは、今年約束した分が上がったわけでございます。したがいまして、そういうものが支払いベースでどれほど出てくるかという点は、来年度につきましては、まだ今年度コミットした分が直ちに円借款については支払いにあらわれてくるわけではございません。大体円借款をコミットしまして、二年目、三年目が支払いのピークになるのが通常でございます。それ以外の無償経済協力あるいは技術協力、あるいは国際機関に対する払い込みというものは、その年度の予算がそのままこれは上がってくるわけでございますので、そういう面でわれわれ、GNPに対する比率は何とか上げ得るのではないかというふうに考えておりますが、今年度の支払い自身もまだ集計が上がっておらない状況でございまして、ただいまのところ、予測申し上げることはちょっと困難かと存じます。
  153. 松尾信人

    松尾(信)委員 その点はわかります。  では、来年度、再来年度に出てきますこのような経済協力の実績、やがて実績として出てくるわけでありますけれども、それは昨年、一昨年あたりのコミットした額がだんだん上がってくる。三年前の分が上がってくる、二年前の分が今度は支払いベースとしてここに上がってくる、こういうことにずれてなってくるわけでありますけれども、では、そのような過去のそういうコミットしたものを考えて、来年あたりどのくらいになるか。また、ことしはそのような予算、計画を立てて前向きになったけれども、去年はどうだ、一昨年はどうだというと、そうでなかったとすれば、またこのような表が出てきて期待を裏切るようなことが一年、二年と今後続くのじゃないか、こんな感じを持つわけですけれども、いかがですか。
  154. 沢木正男

    ○沢木政府委員 円借款のコミットメントだけから申しますと、確かに先生がただいま御発言のような心配があるわけでございます。したがいまして、われわれとしましては、できるだけ足の早い借款というような点も十分考慮に入れまして、先方からそういう要求が出ました場合には、そういうものもできるだけ要求にミートするような考え方で対処しておる次第でございます。
  155. 松尾信人

    松尾(信)委員 DACの加盟国の中でも非常におくれておる、そして経済大国であるというような関係は一日も早く是正されなくてはいけない、いまおっしゃったとおりですね。どうぞひとつ、これは外務省、通産省、企画庁、しっかり計画を練って、りっぱな成果をあげていただきたいということをまず要望しておきます。  先ほどお答えになりかかったのでありますけれども、次は政府開発援助の中の技術協力でありますけれども、これはいかにも残念だと思うのです。数字を申し上げますけれども、六九年が一千九百万ドル、七〇年が二千百六十万ドル、こういうことでありまして、これは、DACの加盟国の平均はどのくらいであるか、わが国のこのような昨年の実績がどのようなパーセンテージになるか、この点はどうでしょう。
  156. 沢木正男

    ○沢木政府委員 DAC主要国の平均は、一九七〇年の実績では開発援助の中で占める比率が二一%であるのに対して、わが国は四・七%でございます。
  157. 松尾信人

    松尾(信)委員 次官は四時までですから、次官に最後に一言。  どうしてこのように日本の技術協力というものが低いのか。その原因を、こういうところに思わしくいかない点があるというお気づきの点を率直におっしゃってください。
  158. 沢木正男

    ○沢木政府委員 一番の問題は、日本は技術協力が戦後無から出発したということでございます。欧米先進諸国におきましては、従前その植民地でありましたものが独立国となったわけでありまして、その段階ですでにその国に残しておいた学校の教師あるいは公共事業施設に対する人の援助というものが、資金援助とともに今度は独立国に対する援助というかっこうで、主として技術協力の形で残ったわけであります。したがいまして、日本はスタートにおいてすでにおくれておったということが一つ言えるかと思います。  ところが、その後日本が技術協力を発展させる上におきまして、ゼロからスタートしたものでございますから、いろいろ予算上の制約がありまして、たとえば派遣されておる専門家の待遇も、国際機関が雇用いたします待遇の約六割でございます。昨年度、これの海外基本給の値上げを折衝いたしましたが、実現いたしておりません。  それからもう一つ日本が終身雇用制度である。したがいまして、ある一定の業務についた方を二、三年間海外に出ていただく、あるいは海外協力に従事してもらうということになりますと、どうしてもその本流からはずれるということがございまして、これまたその人がいろいろ待遇上の不利をこうむるというようなことがありまして、官吏と地方公務員につきましては、おととし法律改正をお願いいたしまして、そういう身分法上の不利を取り除いたわけでございますが、民間から協力を得る点においては、依然として終身雇用制度というものが変わらない限り、多少の不便はある。それが待遇も非常にいいのであれば、これはまた別でございますが、待遇も芳しくない、身分法上も不利を受けるということでは、なかなか海外に出ていただける人もないわけでございます。そこで、そういうふうな点に加えまして、日本の経済の発達によりまして人不足という問題が全面的に生じてきたということが相重なりまして技術協力が伸び悩んでおるのが現状でございます。  それから、やはり日本全体が外国語に弱いということも、受け入れ、派遣ともに両方において障害になっておる一つの事項でございます。  大体そういうふうな点がわが国の技術協力がいろいろ伸び悩んでおるという点の理由でございます。
  159. 松尾信人

    松尾(信)委員 次官、いままで海外経済協力の関係で特に問題点の多い政府開発援助について質疑したわけでありますけれども、結局は、財政力とおっしゃった、そういう日本の力がまだないのだというようなお答えがあったと感じるんですよ。一つは、予算がまだ非常に取りにくい。予算が思わしく取れない。特にこの技術協力なんかは思い切って日本がいまからやっていかなくちゃいけないのでありますけれども、語学力の問題、これもやはり研修で予算をもっと取るべきだと思うのであります。待遇の問題、これもやはり予算的な問題が大きくものをいうんじゃないか、こう思います。実績を見てみますと、いかにも残念な実績であって、この実績は来年もあまり大きく変わらぬのじゃないかというような疑いを持っております。でありますから、この際次官が中心になって、特に技術協力は予算によって答えが出るわけでありますから、しっかり取ってもらいたい。そして東南アジアの中心としての日本にふさわしい海外経済協力にもっていくということが必要ではないかと思うのですけれども、いかがですか。
  160. 稻村佐近四郎

    稻村(佐)政府委員 御質問の点については両局長がこまやかに答弁をいたしておるわけでございますが、問題は第一番目の海外経済援助の問題ですが、これは量的にも質的にも拡充強化をはかってまいらなければならぬ。また、技術援助にいたしましても同様であろうと思います。ただ、先ほど来から聞いておるわけでございますが、来年度は三六%増しで要求をいたしておるわけでございますから、御指摘のたいへん伸び悩みのようではないかという御質問でございますが、三六%増しで要求しておるわけでございます。
  161. 松尾信人

    松尾(信)委員 では、あなたは時間がありませんのでけっこうでありますけれども、非常に少ない七〇年の実績であります。それの三十何%と言っておっても、これはまた国際的ないろいろのこの成果の発表があるわけでありますけれども、われわれはこのような日本の分の実績をもらうわけでありますけれども、三六%の技術協力の増なんかでは、これは問題にならぬということなんですよ。率から言えばいかにも多そうでありますけれども、ほんとうに思い切った、これは日本政府が腹をきめてかからなくちゃいけない問題である。しっかりがんばってください。では次官は時間がありませんからこれでけっこうです。  いま外務省のほうから、経済技術協力でなぜ現在のように低い水準であるかということを聞いたわけでありますけれども、いまお答えがありました。まことにそのとおりだと思いますけれども、これをここらあたりで従来のとおりというものを相当変えていかなければならぬと思うのです。どのようにしてこの低い技術協力というものを上げていくか、どのような方法でこれを上げていったらいいか、これについてのあなたの考えをひとつ聞かせてもらいたい。
  162. 沢木正男

    ○沢木政府委員 ただいま通産省の政務次官から三六%増の予算を要求しておるという御答弁がございましたが、先ほど申し上げましたように、海外に対する技術協力の予算は各省にまたがっております。そのうちで大体七〇%か七五%くらいが外務省だと思うわけでありますが、外務省の予算要求は技術協力につきましては約四三・二%増でございます。その中で一番力を入れておりますのが研修員の受け入れと専門家の派遣でございまして、これはおのおの大体五〇%増くらいになっておるわけでございます。  先ほど申し上げましたように、研修員の受け入れにつきましては、現在国内に研修センターというものを三カ所設けておりますが、これだけではとても受け入れの幅が拡大できないということで、来年度研修センターの増を郵政の電気通信関係、それから研修者の研修宿舎としましては兵庫県にございます宿舎の買収、そういうふうなものを考えますと同時に、県単位で直接地方自治体で受け入れていただきたいということで、今年から三つの県に対して補助を開始いたしましたが、来年度はそれをさらに十県あるいはそれ以上に伸ばしたいということを考えております。  専門家派遣につきましては、何と申しましても待遇の問題でございます。昨年度と今年度の予算、二回の予算で専門家の待遇を、大体国際機関から雇われます専門家と同じ待遇に増額しようとしたわけでありますが、基本給の値上げということは予算ではばまれまして、いろいろの手当がつけられたわけでございますが、この手当の取り扱いに非常に苦慮いたしておりますので、今年度は何としても在外基本給を上げていただきたいというふうに考えております。  それから、投資前基礎調査も、インドネシアその他の国におきまして、日本の経済協力が拡大するに従いまして非常にふえております。したがいまして、これは昨年度の倍額要求をしておるわけであります。  それから海外の訓練センター、これもいろいろ現在までに相手国に引き渡し済みのものも含めますと大体三十以上になるわけでございますが、これも、年間日本が海外においてオペレートできる訓練センターの数が大体幾らくらいあればいいかという観点から、年間の平準度を出しました予算に変えていきたいということを考えております。  それから新しいタイプの予算といたしまして、教育に関する援助、それから人口問題、その他医療に関する援助というのをふやしたい考え方でございますが、それにつきましては、現在器材を供与いたしますのは、人に伴ってその人が持っていったりあるいは日本で訓練を受けた人が帰りまして使う器材しか許されておりません。しかしながら、人口問題に取り組みますと、避妊の用具を国民全般に配るとか、あるいは教育に関連いたしまして教科書を無料で印刷してやるとか、そういうふうに人の行き来と関係ない器材供与というものがぜひとも必要なわけでございまして、これに対しまして、初めてでございますので額は小そうございますが、新しいタイプの予算を要求いたしております。  それから、先ほど申し上げました無償の援助につきましても、やはり数年度にわたる建設計画その他のもののコミットを容易にするために、多年度に債務負担行為を付した予算要求というのを継続的に出す予定にいたしておりますので、そういう点についても御支持を得れば幸いであると存じます。
  163. 松尾信人

    松尾(信)委員 大体考え方はわかりました。いまおっしゃったように、しっかりこれは推進してください。しっかりがんばってください。  それと、日本におけるこの技術の協力機関、これはどういう機関があって、どのようなことをそれぞれの機関がやっておるんですか、これは簡単でいいですけれども
  164. 沢木正男

    ○沢木政府委員 技術協力につきましては、海外技術協力事業団というのが外務省の付属機関として設立されております。それから、それの中に青年協力隊事務局というものがございまして、これが海外に対する青年協力隊の派遣をいたしております。そのほかに、通産省の所管としましては、海外技術者研修協会ということで、企業単位で研修員を受け入れることについていろいろやっておられますし、それから海外農業開発財団だとか、オイスカとか、いろいろこういう海外と協力する財団法人あるいは協会というようなものは相当多数にのぼっております。そのほかに、アジア生産性機構、エーシアン・プロダクティビティー・オーガニゼーションと申しますか、これが事務局を日本に置いておりまして、これも海外から研修員を受け入れたり、セミナーをしたりすることをやっておりまして、これの事業予算は通産省、それから事務費なんかは外務省で負担しておるというようなことをやっておる次第でございます。
  165. 松尾信人

    松尾(信)委員 いまお答えのとおりに、この機関としましてもいろいろある。それから、各省がそれぞれ所管のものについてめんどうを見ておるということでありますけれども、では、通産と大蔵とのそのような別々の機関がありますが、総合的な計画等についてはどのようにやっていらっしゃるんですか。これは自分の分ではこのくらいやる。おまえの分ではこうだ、それで総体的にこのようにレベルアップしていこうじゃないかとか、そういう話し合いとか、お互いのこの機関の弱点というか欠陥、おまえのほうの待遇はどうだ、こちらはどうだ、全部を上げていく、そういうようなもののかねがねのお互いの横の連絡協調、総体的な計画の立案、こういうことはどうなんですか。
  166. 沢木正男

    ○沢木政府委員 これにつきましては先ほども答弁申し上げましたように、毎週関係各省の局長の寄り合いがございまして、そういうところで調整が行なわれますほか、予算面におきまして、待遇その他の面は大蔵省の主計局がコントロールいたしまして調整をとっておるようでございます。
  167. 松尾信人

    松尾(信)委員 まあ毎週の分でどのような技術協力についてお話がなされておるか、これは大いに期待していますから、今後ともにしっかりやっていただきたいと思うのであります。  それから数字をいろいろながめて、わかったようなわからぬようなのがありますね。今度これをいただきましたが、貿振の、これの一三ページに「最近三カ年のわが国の技術協力実績」というのがございますが、その中で留学生及び研修生受け入れの数が三千六百七十五と出ておりますね。これはほかの資料にもそのように載っております。これはどういう数なんですか。
  168. 外山弘

    外山政府委員 留学生の資料は文部省からちょうだいした資料でございます。研修生の資料は、先ほども沢木局長が申し上げましたように、研修機関がいろいろございます。技術協力事業団もございますし、海外技術者研修協会もございます。いろいろな機関の研修生をトータルして出した数字でございます。
  169. 松尾信人

    松尾(信)委員 それでトータルして出されまして、三千六百七十五というのは、現在これだけの者が日本におるという数であるかどうか、毎年どのくらいの人が来るのかというのはこれじゃわからぬわけですね。
  170. 外山弘

    外山政府委員 確かに御指摘のように、三千六百七十五名は四十五年五月の在籍数でございます。各年にどれだけ来ているかと申しますと、これは研修生の数でございますが、四十五年におきましては四千四百四十五名、四十四年は三千三百九十一名、四十三年が三千百七十七名と漸次毎年ふえているわけでございまして、三十九年には二千十九名しか受け入れておりません。したがいまして、三十九年から四十五年を見ますと、約二倍半くらい毎年度の受け入れ数がふえているというふうな数字になっております。
  171. 松尾信人

    松尾(信)委員 在籍数が出ていて、昨年の在籍数をことしの在籍数から引けば大体ふえたというのが出てくるわけですね。  これは外務省に聞きますけれども、専門家及び協力隊員の派遣、これがその下に出ておるわけですが、二千六百二十九名、これはどんな数なんですか。
  172. 沢木正男

    ○沢木政府委員 ちょっとその資料について、私こまかく準備しておりませんのでお答え申しかねますが、派遣しておる頭数の予算上の定員は、大体年間千五百名から千七百名ぐらいでございます。
  173. 松尾信人

    松尾(信)委員 では、それはけっこうです。われわれが見まして、どんな数字だろうかとわからないわけですよ。  そのようにしましていろいろこちらから派遣したり向こうから留学生、研修生を受け入れているわけでありますけれども、留学生または研修生が帰る、帰ったあとのいろいろの掌握の問題、そういう人々がどのようにして自分の国に帰ってどのような活動をしておるか。それからみんながその後日本と当該国との間の友好関係のくさびになっておるかどうか。就職関係はどういうふうにいっているのか。それから勉強した日本と帰られた国との友好関係を、そういう人を通じてどのようにやっておるのか。これはやはりいろいろ民間外交的な意味合いが相当出てくるのじゃないか。単に受け入れた、また派遣した、それでもう卒業して帰ったということでは相ならぬ。やはりあくまでもこれは両国の友好関係を緊密にし、よくするための一つの大きなものとして活用していかなければならない、こう思うのでありますけれども、研修生等が帰ったあとのいろいろの問題をよくおわかりかどうか。そうしてそういうところにどのような問題点があるのか。その問題点はどのようにしていったら解決できるのか。そして外務省は外務省なりに、民間外交的にそういう人々を有効に両国のために役立てていこうとされるのか、こういうことはどうでしょうか。
  174. 沢木正男

    ○沢木政府委員 政府の技術協力を通じまして日本に受け入け入れました研修生については、帰国後も必ず連絡をとっております。新しい技術が開発された場合に、その技術について日本から参考資料を送るとか、それから在外公館では年に一回程度でございますが、日本に来ました研修者の同窓会のようなことを大使が集めてやっておりますと同時に、一部タイ、インドネシアでは在日留学生の同窓会のような会が組織されております。したがいまして、われわれとしても現在ほとんどカード式に整理が完成しつつありますが、日本に来ました研修員が帰りましてからどういう状況にあるということを常時把握する体制になっております。事実、これらの人々が日本のいろいろな問題について、座談会あるいは新聞、日本からミッションが行きましたとき、その他にいろいろ活躍の表面に出てきております。それからすでに上層部におきましては、たとえばアフガニスタンなんかは閣僚レベルに日本に来ました留学生がおるというような国もございまして、人事交流の面では確かに非常に役に立ってきておるのではないかというふうにわれわれ考えております。その面につきましては、来年度予算でも研修生のアフターケアということで新しく予算要求いたしておりますし、民間でおやりになりました海外技術者研修協会につきましては、通産省所管でありますが、同様十分のフォローアップをされておるように聞いておる次第でございます。
  175. 松尾信人

    松尾(信)委員 アフターケアの予算を要求する、これは必要だと思うのですけれども、今度はそういう卒業生ですね、そして国に帰っているそういう人々がいろいろ海外技術協力の当該国の推進力になる、そのために何か予算的な措置をとりまして在外公館のほうにやってもいいし、そうして在外公館でこれはもっともだというようなそのような研修生、留学生等の帰ったあとの、今度はこの技術協力に大いに役立つような面における予算的な配慮、こういうものもしっかりしませんと、掌握するというのはことばが悪うございますけれども、どのように就職していらっしゃるか、その就職先がどうかというような、いまアフターケアと一言でおっしゃいましたけれども、私は、呼んだ、勉強さして帰した、それに予算使ったというだけではいけないので、力をうんとこういうところに注いだらいいんじゃないか、こう思うわけですが、どうですか。
  176. 沢木正男

    ○沢木政府委員 お説のとおりでございまして、そういうことを把握して将来の日本とその国との友好関係に役立てようということでわれわれもフォローアップの作業をしておるわけでございます。ただ、国によりましては、日本である技術を習得したこと自身が、たとえばアメリカとかイギリスというような国で習得をしたのと比較されまして、日本の価値がまだ十分でない。したがって帰ってからの就職の際にイギリスへ行った研修者のほうが日本へ来た研修者よりも社会的に重く見られるというような傾向が従来存在しておったわけでございますが、その傾向は最近の日本の経済の発達によりまして、早急に解消しつつあるのが現状でございます。
  177. 外山弘

    外山政府委員 沢木局長のお答えに若干補足して、当省の所管しておりまする海外技術者研修協会のその後の状況につきましてちょっと申し上げますと、この協会の研修生総数は、四十五年度末で五千七百八十七名でございます。本年五月に実はそうした方々のアンケート調査を行ないまして、先ほど先生が御指摘のような問題点についての回答が若干ございますので、お答えしたいと思います。  回答者が千六百十名中、八六%の人が日本における研修が帰国後の活動に役立っているというふうに答えております。また帰国後の勤務状況につきましては、本研修の性格上研修後も同じ会社で働いている者、これが七四・五%という数字が出ております。それから地位が向上したといっているのが五三・八%というふうな数字に達しております。先ほど沢木局長からも同窓会的な組織を通じてアフターケアをしているというお話でございますが、私どものほうでも実は昨年度予算をちょうだいいたしまして、日タイ経済協力センターというものをつくりまして、そこで主として海外技術者研修協会の卒業生が中心となって、同窓会的な組織になるかと思いますが、タイと日本との間の一種の交流をはかるための、言ってみればアフターケアをはかるための組織としてつくりたいということで、現在創立の準備中でございます。来年早々には発足すると思いますが、そういったことも、先ほど先生が御指摘のような問題点の解明に役立つのではないだろうか、こういうふうに考える次第でございます。
  178. 松尾信人

    松尾(信)委員 次にお尋ねしたいのは、わが国の円借款の国別残高ですね。特に東南アジアにおきましては日本との貿易で相当片貿易である。年々多額の入超を続けておりまするし、またこのようにして円借款というものはだんだん、だんだん積もり積もって相当の金額になっておりますが、この円借款の残高に対して支払いの困難な国がそろそろ出てくるのじゃないか。債権の繰り延べとか再融資とかいうような項目も出ておるような実態でありまするから、黙って向こうが払うのを取るというわけにいかない。何かこちらは考えていかなければいけない問題があるのじゃないですか。条件の緩和だとか、また繰り延べだとか、それ以外にどうとかしていかぬといかぬのじゃないか、このような感じを持つわけでありますけれども、どうですか。
  179. 沢木正男

    ○沢木政府委員 すでに円借款を供与いたしました国で債権の繰り延べを要請されておる国がございます。東南アジアにおきましてもインドネシアそれからインド等がそのカテゴリーに入るわけでございまして、パキスタンはことしの五月一日から一方的に日本に対する返済を中止しておるような状況でございます。したがいまして、これらの困難に立ち至った国に対しましては、日本のみでなく大部分の大きな債権国が同調するならば、日本もその繰り延べに応ずるということで、昨年度は国会の審議をお願いいたしましてインドネシアの債権繰り延べを行なった次第でございます。したがいまして、今後そういうふうな債務の累積しておる国に対する円借款につきましては、できるだけ緩和された条件の円借款を与えて経済発展をはかるというのが大体先進諸国の一致した考え方でございます。
  180. 松尾信人

    松尾(信)委員 特に東南アジアは貿易関係からいっても非常に片貿易でありまするし、トータルで十何億、約二十億ドルの入超を示していますが、それを国々でいえば多少は出入りがありましても、総体的にそのようなことが言えます。ですから先進諸国の話し合いとかなんとかいうことでなくて、わが国自体でこれはしっかり考えておきませんと、抜きも差しもならないような状態になる、ひいては貿易上の阻害要因になりかねないと思うのですね。ですから、これは考え方をうんと変えて、貸したものは取るんだというような借款の基本を変えていかなくちゃいかぬのじゃないか。ですからやはりこれは無償のほうの、いろいろの向こうの教育だとか医療だとか道路だとか港湾だとか、そういう面に思い切ってどのぐらい日本としてやっていけるのかということもしていきませんと、借款というのはどんどん出てくるわ、それを何やかんや言いながらも認めていくわ、旧債はたまってきているわ、もう一方的に支払いを中止している国も出ている。外交関係までそこに出てくるというようなことになっておるのが実情と思いますので、何かこれはしっかりした考えがないといかぬのじゃないか。特にこれは貿易関係でいえば、東南アジアのこの片貿易の問題をこのような海外経済協力とからみ合わしてどうとかして変えていかぬといかぬのじゃないか。開発輸入の問題がありましょう。それは農業関係、水産物関係等の開発輸入をはかるとか、そういうところに思い切った借款を与えていくとか、そういうものに対してうんと長期のものにしていくとか、いろいろこれは構想をまとめておきませんと、このままでは必ず行き詰まるであろうし、これは大きに貿易上の阻害要因に必ずなる、こう私は思いますけれども、それぞれ御両所の見解を聞いておきたいと思います。
  181. 沢木正男

    ○沢木政府委員 日本の海外に与えております対外援助の中の政府援助のうちの無償の供与額は、その三九%でございます。この三九%という数字自身がやはりDAC諸国の平均よりも低いわけでございまして、したがいまして、先ほど申し上げましたように、賠償支払いが減少するにつれて無償の協力をふやしたいというのが、基本方針としてわれわれ持っておるところでございます。しかしながら、無償の援助、ただくれてやって返済義務がない援助というものは無制限に拡大できるかと申しますと、やはり国内における国民感情その他もございまして、私は無制限にこれを拡大することは現在の日本現状においてはどうかという感じがございますので、できるだけ各国並みには拡大したいと思いますが、やはりこれには一定の限度がなければならない問題ではないかというふうに考えております。ただ円借款につきましては、日本援助条件がほかの国よりも相当きつい段階にございますので、これの条件緩和をはかるということはぜひとも実現したいということで努力しておる次第でございます。
  182. 外山弘

    外山政府委員 先ほどの問題点の解決の方向として、ただいまのような条件の緩和、無償の供与といった問題のほかに、もう一つは片貿易の是正の問題があると思います。この点につきましては先ほども指摘のように、特に東南アジアにつきまして片貿易が著しいわけでございますが、私どもといたしましても、その是正のためにいろいろ輸入の促進策を講じなければいけない、こう考えているわけでございます。本年八月、まず一般特恵制度を実施したということも一つの役割りがあると思いますし、それから御承知だと思いますが、アジア開発貿易協会という協会が発足しまして、これがインフラストラクチュア部門の充実、もう一つは一次産品の開発輸入のために必要な事業を行なっておりますが、この開発融資によりまして一次産品の輸入が促進されるという点もいえるかと思います。  それから第三には、ジェトロによります展示事業を逐次実施しておりまして、東南アジア、アフリカ等の各国の品物を展示しまして宣伝を行なっている、つまり輸入面にも努力をしているという点が予算上もはっきりしておりますし、現在実施がされているわけでございます。  それから、予算をちょうだいしまして一次産品買い付け促進の調査団の派遣ということを私どもとしてはやっておるわけでございます。これも毎年幾つかのチームが派遣されまして、その国の一次産品の開発事情を調査いたしまして、そうしてその後の経済協力事業に結びつける、開発輸入に結びつけるというようなことをやっておるわけでございます。  さらに明年……(松尾(信)委員「具体的な計画はありますか」と呼ぶ)毎年具体的な計画を持って幾つかのチームが当該国に出かけているわけでございます。  それから五番目には、明年早々に、先般の東南アジア開発閣僚会議の決定に基づきまして、これは外務省と協力いたしまして東南アジア貿易投資観光センターというものを東京に設けるわけでございますが、東南アジア八カ国の産品の輸入の促進事業を、投資だけじゃございませんが、輸入促進の事業もこれで行う、そういったことでできるだけの努力もしているわけでございますが、これらの施策がさらに太くなるといいますか、強化されること、こういう点にも今後も努力してまいりたい、こう考えるわけでございます。
  183. 松尾信人

    松尾(信)委員 海外へのいろいろ技術協力はまあまあといたしましても、いろいろ日本企業が進出しております。この日本人の現地における生活態度の問題でありますけれども、この前もフィリピンであのような日本の商社の代表の方が事件に巻き込まれたというようなことが出ておりますし、やはり相手の国に日本人がとけ込む、いばらない、ほんとうに仲よくやっていくというようなものに対する、フィリピンの事件を一つの基本的な反省の資料として外務省はどのように、また通産省も出先機関——日本人としてのあり方、そういうものをきちっとしていきませんといろいろ問題が出てくるんじゃないか。投資がふえればふえるほどいろいろの問題が出てくる。そこでまた態度が悪ければ、経済協力を一生懸命やりながらもかえって恨まれるというような逆効果も出ては、これは大いに相ならぬと思うわけでありますけれども、ひとつ現地における日本人のそういう生活態度というものに対してどのように考えていらっしゃるか、また在外公館等にどのように指示していくかということでありますが、いかがですか。
  184. 沢木正男

    ○沢木政府委員 これはまことにお説のとおりでございまして、外務省としては、あらゆる階層の日本人がこれだけ海外に出ていきまして、日本の国益に反するような言動あるいは相手国の人からひんしゅくを買うような言動をできるだけ慎むように機会あるごとに注意いたしておりますし、在外公館に対しましても、在留邦人の指導その他については万遺漏なきを期するように指令を発しておりますけれども、何ぶんにも全部の方にわれわれが面接できるわけではございませんので、そういう面でいまだ不行き届きの面もあるかと存じます。しかしながら外務省としては、機会あるごとに、来られました方にも、かつまたパスポートを取りに来られます方、そういう方々に申し上げておる次第でございます。
  185. 松尾信人

    松尾(信)委員 海外経済協力関係は以上で終わりますけれども、行く人のこともでございますけれども、やはり日本の商社自体がそのような反省の基本的なものを持って、それが内部で徹底して、出る人もそれを受けて出るというふうにおやりになっていかなくちゃいけないんじゃないか、こう思いますので、今後ともしっかりしていただきたい。  以上で、外務省もうけっこうでございます。  では、保険関係に入りますけれども最初に、バイヤーズクレジットの制度を今回つくる、こういうことでありますけれども、いままでこのような制度がなかったためにどのように制度を要請されたか、そのような一応いきさつ、ほんとうに要請があったのかどうか、そのような希望があるのか、また現実にそのような必要性があるのかどうかということについてまず聞いておきたいと思います。
  186. 外山弘

    外山政府委員 私どもの調査によりますと、四十三年から四十五年の三カ年間に、わが国銀行、商社に寄せられましたバイヤーズクレジットへの要請が八十九件、二十億五千万ドルございました。しかしながら、保険の対象となっていないというようなことから実際に供与した例は少なくて、これは、他の世界銀行等との共同でやったわずかな件数が残っているだけでございます。ほとんど実行されてない。  こうした要請を今度は地域別に分類してみますと、やはり先ほども申し上げましたように中南米からのものが最も多うございます。これが件数にして約五一%を占めております。それからアジアが三〇%、ヨーロッパ九%、北米六%、アフリカ五%というふうな数字になっておりますが、大部分はいま申しましたように発展途上国からのものでございます。またこれを金額の面で見ますと、平均金額が二千四百万ドル、サプライヤーズクレジットの平均金額に比べまして十六倍くらいの規模になるかと思います。  これは平均してでございますが、さらに品目別に見ますと、石油プラントとか化学プラントあるいは火力発電プラント等のプラント類が約半分を占めておりまして、機械類とかあるいはインフラストラクチュアのプロジェクト等となっておるわけでございます。今後やはりこういった情勢から見まして、プラント類を中心としましてわが国輸出の高度化の傾向ということに加えまして、今回の法改正が実現いたしますれば、こういった要請もあることでございますから、かなり増加するのではないだろうか、こういうふうに承知しているわけでございます。
  187. 松尾信人

    松尾(信)委員 その点はよくわかりました。  次に海外投資保険でございますけれども、七〇年の民間投資額、そういったものに対しまして投資保険にかかったのは大体どのくらいあるのでしょうか。見当はつきますか。
  188. 外山弘

    外山政府委員 昭和四十五年度について申し上げます。これはその前は、御承知のように法律の改正をこの国会におはかりしまして、海外投資保険の改正をしたのでございますが、それ以前は非常に少のうございます。これは制度が改正されてから非常にふえてまいったわけでありますが、それでも御指摘のようにそう高くないというふうなことでございますので、四十五年度の数字について申し上げたいと思います。四十五年度の海外投資の許可総額が、これは円でございますが、三千二百八十八億四千万円、このうち証券、債券及び不動産等の取得のための投資が三千二百六十五億七千万円でございまして、一方、昭和四十五年度中の海外投資保険の申し込み総額、これが五百十九億円でございます。証券投資等の許可額が三千二百六十五億円でございますから、比率としては約一六%ということになるかと思います。しかし株式投資だけをとってみますと、投資許可額は一千七十六億円、そのうち発展途上国向けは約半分の五百二億円ございます。これに対し、株式の海外投資保険申し込み額は二百四十二億二千万円ございますから、発展途上国向けの株式投資許可額に対する海外投資の保険の付保率は四八%ということになるかと思います。
  189. 松尾信人

    松尾(信)委員 そうしますと、全体的に一六%とおっしゃいましたね。残りは保険にかからぬわけですね。保険にかからないということは、付保対象でないというのが一番大きな理由であるかどうか。現在保険で付保対象があるでしょう。たとえば経営支配の問題だとか経常参加の問題だとか、危険自体でも政治危険だとかというようないろいろ制限があるものですから、要するにそういうものに該当しない海外投資があったのかどうかということと、該当するのだけれどもかからない分もあるのかということなんですが、そこはどうでしょうか。
  190. 外山弘

    外山政府委員 先般の本委員会における御審議によりまして改正されました海外投資保険から見ますると、いま御指摘のような該当しないというものではなくて、該当するにもかかわらず付保率がまだそこまでいってないということでございます。先ほどの数字が低いではないかという御指摘だろうと思いますが、保険をかけようと思えばかけられるにかかわらず付保率が低いということなんで、この辺はいろいろの理由があると思います。一つは、制度の改正をしてから間もないということから、一般に対する認識がもう少し徹底すればふえるというものもございましょう。あるいは、投資でございますから投資先の国の安全度というものを投資する側は非常によく見るわけでございます。これは投資保険をかけることないじゃないかというふうな判断を国の問題としてするかもしれません。あるいは自分企業がいろいろ投資の補てんのための準備金と申しますか、蓄積と申しますか、そういったものを用意しておるから、わざわざ投資保険までかけなくても済むだけの企業の力を持っておるというふうな場合もあるかもしれません。それは投資の規模にもよると思いますけれども、そういうふうな要素もあるかもしれません。それから、あるいは投資保険制度そのものに対する関心と申しますか、これは御承知のように非常危険という点を担保しているわけでございますが、そういうものに対する関心そのものが、普通の輸出保険に比べるとそれほど高くない、こういうふうな点も影響しているかもしれません。いろいろな点があるかと思いますが、なお、ほかの国の投資保険についてみましても、私どもが予想したよりはやはり付保率は低うございます。アメリカあたりでも七百億ドルの投資残高があることは御承知だろうと思いますが、保険のついているのは非常に低く、二割ぐらいのような数字を聞いているわけでございまして、一般に、海外投資をすれば全部保険にかかるというふうなことではないようでございます。
  191. 松尾信人

    松尾(信)委員 発展途上国で約四八%とおっしゃいましたね、これはいかにも低いと思うのですよ。自分自体がそのような事故保険といいますか、自分で覚悟の前でやるというのがあるかもしれませんけれども、やはり危険の多いそういうところには、これはあなたのほうでPRが足らぬのじゃないかという感じが非常に濃厚でありますし、また教えてやることによってこの制度が生きてきますし、これは東南アジア等、発展途上国は思い切って——事故保険といっても、やられた場合は全部ごっそりいくわけですから、これはひとつ積極的にそういうふうに宣伝して、そうしてせっかくの法改正を生かしていただきたい、これが一つであります。  それから最後の一点は、この為替管理の関係でありますけれども、現在この為替管理でそれぞれ投資というものが許可を受けて、そしてまた保険に入る、これは為替の問題も通産でやっているのでしょう。そういう点でうまくいくのじゃないか、こう感ずるのですけれども、そういう点どうでしょうか、これが最後の質問です。
  192. 外山弘

    外山政府委員 御承知のように、海外投資につきましては大蔵省の所管でございますが、ことしの七月一日に自動認可に切りかえまして、日本銀行が自動的に認可をしているというわけでございます。その認可をされた投資が私どものほうの輸出保険に申し込みをしてくる、こういうかっこうになるわけでございます。  それから先ほど御指摘の海外投資保険の付保率が、特に後進国向けについても必ずしも高くないという点は、私どももさらに勉強してみたいと思いますが、御指摘のように、まだ法改正の内容について十分のPRができてないために付保率が低い点もあるかと存じます。これは私どももこの機会に周知徹底させるようなことにしたい。海外投資が自由化された段階でそういうことは当然私どもとしてやらなければならない問題かと思っております。
  193. 松尾信人

    松尾(信)委員 以上で終わります。
  194. 進藤一馬

    進藤委員長代理 次回は明八日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十八分散会