運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-12-17 第67回国会 衆議院 公害対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月十七日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 小林 信一君    理事 始関 伊平君 理事 橋本龍太郎君    理事 八田 貞義君 理事 山本 幸雄君    理事 島本 虎三君 理事 古寺  宏君       伊東 正義君    久保田円次君       中島源太郎君    浜田 幸一君       林  義郎君    加藤 清二君       西田 八郎君  出席政府委員         中央公害審査委         員会事務局長  川村 皓章君         環境政務次官  小澤 太郎君         環境庁長官官房         長       城戸 謙次君         環境庁長官官房         審議官     鷲巣 英策君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         厚生大臣官房審         議官      曾根田郁夫君         食糧庁次長   中村健次郎君         水産庁長官   太田 康二君         水産庁次長   藤村 弘毅君  委員外出席者         警察庁警備局参         事官      丸山  昂君         警察庁警備局警         備課長     鈴木 貞敏君         環境庁企画調整         局防止計画課長 冨崎 逸夫君         環境庁企画調整         局公害保健課長 山本 宜正君         環境庁水質保全         局企画課長   河野 義男君         環境庁水質保全         局水質規制課長 山中 正美君         環境庁水質保全         局土壌農薬課長 松山 良三君         農林省農政局参         事官      川田 則雄君         通商産業省公害         保安局参事官  森口 八郎君         運輸省海運局外         航課長     山地  進君         海上保安庁警備         救難部長    貞廣  豊君         建設省都市局下         水道部長    久保  赳君         建設省河川局水         政課長     伊藤 晴朗君     ————————————— 十二月十六日  公害発生源除去等に関する請願(小林政子君  紹介)(第三五二七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策に関する件(水質汚濁対策等)      ————◇—————
  2. 小林信一

    小林委員長 これより会議を開きます。  公害対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  3. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、去る六十五通常国会で、三月十六日、安中カドミウム事件につきまして、高瀬武平参考人小林純参考人をお呼びしまして、いろいろと議論したことのその後の状況につきまして、政府にお尋ねをしたいと思います。  当日は、三月十六日は、早朝から夕方おそくまで各党から非常に熱心な質問が続けられました。私としては、非常に大ざっぱな結論を出しますと、高瀬さんのお話小林さんのお話との間に、相当見解相違がある、特にカドミウムイタイイタイ病との間における関連において非常な見解相違があったように私は見受けましたし、これは出席をされ、また質問をされた各委員方々においても同様な感じを持たれたと思います。したがって、その当時は、三月十六日には、一日も早く学問的な結論を出してもらいたい、また公開の立場において結論を出してもらいたいという話が各方面から出ておった意見だったと思います。  ところで、その後の経過を見ますと、三井鉱山の神通川事件の一審の判決がありました。いま現在控訴審中でございますが、私は、この問題につきましては、裁判の問題でありますから、この立法府においてとやかくその裁判を批判したり、また結論につきましてどうだということは差し控えるべきだと思います。また同時に、行政当局においても、とかくいろいろと伝えられているところによりますと、裁判に干渉するのはどうかというような意見もあるようでございますが、私は、これは行政当局としての節度の問題だと考えます。したがって、憲法三十二条に「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」という規定があります。私は、基本的な人権でありますから、この権利というものは当然守ってやらなければいけない、こういったところにおきまして行政府の慎重な御態度を望みたいと思います。  ところで、私は、この裁判の問題はさておきまして、立法府として何を考えるべきかということをお話し申し上げたい。現在の問題は、鉱業法ないしは民法の関係に基づきますところの損害賠償事件でありますから、一体そういったものだけで、はたしてこの公害問題が解決されるかどうかということであります。  ところで、法律の問題でありますが、やはり法律というのは、論理一貫性というものを非常に必要とするものであります。その論理一貫性を論ずる場合におきまして、因果関係の問題というものをやはり私は取り上げていかなければならないと思います。その因果関係の問題を取り上げる場合におきまして、先ほど申しました三月十六日に議論された中で、非常に学問的な論争があるということでありますから、当時は、理論的な疫学的な調査班安中に派遣し、また別に学術的な調査班をつくって検討をするという話になったと思います。つきましては、その学術的研究班というのがどういうふうに行なわれたか。私が聞いておりますのは、八月に行なわれまして、カドミウム関係の多くの学者が集まっていろいろ討論された、しかも討論内容公開で行なわれたという話であります。そういった点につきまして、環境庁のほうから、概略、どういう話が行なわれたか、どういった方が参加されたかということにつきまして御説明いただきたいと思います。
  4. 山本宜正

    山本説明員 私からお答えさせていただきます。  先生御指摘の参考人を呼びましたあと進展につきまして概要をお話し申し上げ、かつ、特にカドミウム中毒に関する学術研究会内容につきまして若干御説明を加えたいと思います。  例の安中事件の後におきまして、カドミウム鑑別研究診断班というのが、当時の厚生省委託研究班として組織されております。この方々安中の現地も視察いたしましていろいろ検討したわけでございますが、当時研究班結論として発表があったわけであります。その後の進展でございますが、当時の当委員会におきます御要望等もありまして、その後のカドミウム研究につきまして、各方面専門家を広く集めて知識を交換し合うということで、当時計画いたしましたのが国立公衆衛生院疫学部長であられる重松逸造さん、この方はカドミウム研究の疫学的な専門家でございますので、この方を会長といたしまして、カドミウム専門方々数人集まりまして、どのような研究会にするか、数回にわたってディスカッションしておられたようでございますが、八月の二十八、二十九日の二日間にわたりまして、内容的には、第一部から第四部までに分かれておりますが、第一部におきましては、金沢大学教授でございます石崎有信さんが座長になりまして、「カドミウム環境汚染現状住民健康調査成績」ということで、数年前から行なっておりましたカドミウム汚染地域汚染状況あるいは住民検診成績状況、それからいろいろな試料のサンプリングとか、測定方法についての問題を四人ほどの演者によりましてディスカッションしたのが第一部であります。  第二部におきまして、当時いろいろカドミウム吸収排せつの問題が中心になっておりましたので、「カドミウム吸収、排泄及び蓄積」ということをテーマに掲げまして、慶応大学の衛生学教授である土屋健三郎さんが座長になりまして、分析方面といたしましては、岡山大学の農業生物研究所小林純教授、それからカドミウム吸収蓄積の問題に関しましては石崎有信さん、それから神戸大学の喜田村正次先生、それから「カドミウム臓器組織内濃度」につきましては関幸雄さん、それから「毒物の死体内消長」につきましては野田さん、こういった方のディスカッションがなされたわけでございます。  それから、第三部、二日目でございますが、「慢性カドミウム中毒発現機序」ということで、金沢大学武内重五郎教授座長になりまして、「カドミウム作業者についての長期観察結果」、それから「カドミウム中毒における腎障害について」、それから「尿蛋白の電気泳動所見」、これは例のカドミウム中毒鑑別のための一つ臨床検査として使っているわけでございますが、これらのいろいろの検討、それから「カドミウム精巣破壊作用機序」、例の睾丸の中の一組織でありますが、そこの破壊機序、それから「急性カドミウム中毒におよぼす金属の修飾作用」、こういったようなテーマによりまして、各演者から発表があり、ディスカッションがなされた。  第四部は「イタイイタイ病」ということで、金沢大学整形外科高瀬武平教授座長になりまして、「イタイイタイ病発見時の臨床所見」、「イタイイタイ病骨変化骨軟化症」、それから「イタイイタイ病臨床経過」、それから「イタイイタイ病病態生理」、「イタイイタイ病疫学的考察」ということで、富山県の婦中町の萩野病院の院長、それから東京の品川の河野臨床医学研究所の所長、それから富山県立中央病院村田医師、それから武内重五郎というような方々がいろいろディスカッションをされたわけであります。  私ここに手元に持っておりますのはその学術研究会講演要旨集でございまして、講演演者講演に先立ちまして各抄録を出したものを収録したものでございますが、その後、各演者報告内容につきましては、それぞれの原稿を提出いたしまして最終的に印刷に付すということを聞いておりますので、日本公衆衛生協会に問い合わせましたところ、まだ印刷が最終的にでき上がっていない、一月の末ごろまではかかるだろうという話でございました。  それぞれのディスカッション内容につきましては、いろいろ諸先生方の所説があったわけであります。人体吸収排せつ等につきましての若干の知見の進展はあったように私は受け取っているわけでございますが、その内容等につきましては、私しろうとでございますので、そういった内容テーマについてディスカッションがなされたということだけを御報告させていただきたいと思います。
  5. 林義郎

    ○林(義)委員 ただいま環境庁のほうからお答えいただきましたが、実はきょうは委員長にお願いをしてこの研究会会長である重松先生にお越しをいただこうと思っておったら、けさほど御連絡があって、重松先生が胃けいれんか何かでお出になれないということでありますので、私も非常に残念に思っております。ただ、いまお話のありましたような点でございますが、単に各人がかってにしゃべったということではないと思うのです。やはり各人かってにしゃべってそれで終わったのではしゃべりっぱなしということでございますので、やはりこういった学術研究会でありますから、カドミウム研究会を持つということになれば、カドミウム人体に入ってくる、それがイタイイタイ病関連をするという因果関係究明をしてもらうのが私は研究会の一番大きな目標だと思うのです。そのためには、統計のほうの専門家も必要であるし、病理学専門家も必要であるし、また臨床専門家も必要であるし、疫学的な先生も必要である。いろいろな方面先生が集まって話をするのがこの研究会だと私は認識しておるのです。私は、そういった場所における討論、いまお話がありましたのは各先生方報告でありますが、そのときに行なわれました討論があると思うのです。その討論についてもやはり資料にされるのかどうか、まずその辺をお尋ねしたいと思います。
  6. 山本宜正

    山本説明員 私その二日間にわたりましてほとんどの時間傍聴をさせていただいたわけでありますが、演者発表に引き続き討論がたいへん活発でございました。この討論につきましては、それぞれの討論者から原稿を提出いたしまして、それを最終的に掲載しようというような方針を会長が言っておられましたのを聞いておりますので、最終報告書が出た段階では、きっとその内容も登載されることであろうと存じております。
  7. 林義郎

    ○林(義)委員 いまお話のありました研究会のメンバーを見ますと、たとえば先般の三月十六日の当委員会参考人として出られた高瀬先生のように、カドミウム中毒イタイイタイ病の原因とは考えられない、非常に疑わしいという先生ももちろん入っておられます。萩野先生小林先生のように、それが非常に影響があるんだ、萩野先生は特にそういうふうに言っておられるようでありますが、そういった先生も入っておられる。私は二つの意見というものがディスカッションを通じて、また公開の場における討論を通じてはっきりするということが非常に必要なことだと思うのです。  そこで申し上げますが、三月十六日には、私が聞いたところでは、イタイイタイ病というものがありますが、カドミウムが口から、また鼻から人体に入ってくる、そうすると、まず入るところは胃でありますが、それがじん臓に入ってきて蓄積をする、じん臓障害を起こす、それが結果として骨に及ぶ、骨に及ぶことによってイタイイタイ病になるということでありますけれども、じん臓被害のところまでははっきりしている、しかし、それから先がわからないというようなことではなかったかと思いますが、こういった私の認識について間違いなかったかどうか、これは環境庁のほうからお答えできるかどうか知りませんが……。
  8. 山本宜正

    山本説明員 イタイイタイ病につきましては、厚生省から公式の見解発表がなされておるわけであります。たしか、その内容を私正確にいま持ちませんのですが、イタイイタイ病カドミウム中毒一つの結果であり、その骨軟化症を起こすにつきましては、いろいろ内分泌、そのほか誘因的なものも加わっている、そういうふうな要点であったかと記憶しているわけでございます。現在環境庁におきましても、当時の厚生省見解と何ら変わらないことでありまして、その見解につきましては、やはり今後の学術研究についてなおわからない点をさらに究明していただきまして、その最終的な結論学問的に出されるであろう、こういうぐあいに存じておるわけでございます。
  9. 林義郎

    ○林(義)委員 こういった学術研究会というものでいろいろと議論をされる。私は、ぜひこういった因果関係の問題でありますから、学問的な研究をできるだけ進めてもらいたい。その辺につきましては、環境庁なり、厚生省は、積極的にやはり取り組んでもらいたいと思うのです。私は、現段階におきまして、厚生省見解を変えろとかなんとかということを申し上げるつもりはありませんが、やはり厚生省なり環境庁としては、その学問的な研究が進んで、学問的な見解がはっきりしたならば、その見解政府見解とされることについて、これは当然のことだと思いますが、それにもかかわらず、いや、厚生省見解を通すんだ、こういうことではないと思いますが、この辺、念のために政務次官からお答えいただきたいと思います。
  10. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 林議員のおっしゃるとおりでございまして、この問題は、さらに学問的に、また臨床的にも究明されなければならない問題でございまして、政府といたしましても、そういう方向に努力いたしておる現状です。ただ、はっきり解明されない現状におきましては、先ほど担当課長から御答弁申し上げましたように、厚生省見解として、じん臓障害等カドミウムが健康に障害を与えるということは明らかであるけれども、イタイイタイ病についてはその他の誘因があってという見解をとらざるを得ないわけでございます。将来学問的な究明が進んで、因果関係等が明確になりまするならば、当然政府見解もそれに合わせることになるだろう、かように考えております。
  11. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、こういった、いわゆる公害病というものは新しい病気である、特にいろいろな方面研究をしていかなければならない、いろいろな角度の医者協調が必要だと思うのです。研究者学問間の専門家専門家同士協調というものをとっていかなければならないと思います。  それからまた、公正さを期すという意味におきまして、お互い研究をしたもの、あるいはお互い調査をしたもの、あるいは分析をしたものをお互い同士が確かめ合うというクロスチェック必要性というものが、私は非常に大切なことだと思うのです。こういったことは、口ではそう申しますが、この日本風土、社会の中におきましては、はっきり申してセクショナリズムというものが非常にある。おれの研究したものだから、おれの研究は絶対に間違いない、また、おれの調査したものだから、おれの調査は絶対間違いないという、とかく独善におちいりやすいのが、日本のこういった風土だと思います。こういったものを打開していくということが環境庁仕事ではないか。したがって、こういったことを環境庁としてはぜひ考えてやってもらいたい。学問的な協調体制お互い専門家を集めてやるときに、なかなか初めの話し合いというのがむずかしいと思う。こういった点をひとつ環境庁のほうとしてはやってもらいたい。政務次官にお願いしたいと思います。  これと同時に、一つ私気がついたのですが、実はカドミウム患者あるいはイタイイタイ病患者というものにつきまして、実際に診断するのは臨床医者であります。医者カルテというものを持っておられる。自分のところは出さない。何らかの関係で出さない。これは発表したらなんだからということで出さないというような問題もありはしないかと思うのです。こういった点につきましても、何らかの対策を考えなくちゃいかぬと思いますが、私も具体的にこういうふうにしたらどうだとかいうことは持っておりませんが、もし環境庁のほうで持っておられるならば、これについてお答えをいただきたい。
  12. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 環境庁に私参りましてやや驚いたことは、学問のいかに進歩していないか、ことに人間の健康に関連した問題につきましては、まだまだ研究の余地がたくさんある、その研究よりも現実のほうが先に進んでおります、こういうような状態であります。したがって、おっしゃるとおり、学問的なあるいは臨床的な研究をもっと進めていただくということについては、私どももその推進に全力をあげたいと思います。  ただし、御承知のように、われわれが一つテーマなり結論を持って学問の領域に介入するということは、これは厳に慎むべきことでございますから、学者がそれぞれ学者としての良心に従って研究を進めること、その雰囲気が、これは日本風土といえるかどうか、そのほうがむしろ願わしいことであろう、これは国際的にも、世界的にも思います。その中に何らかのものを求めるということが行政仕事でございます。中央公害対策審議会におきましては、こういうわれわれの諮問機関として機関がございます。こういう専門家のあるところを通じましてそのような気持ちは持っておるわけでございます。これを具体的にどのようにするかということについては、これは非常にむずかしい問題ですから、私はむしろ学者学者としての良心に従った研究を進めていただく、その間にいささかもおっしゃるような主観的なものがないように念願する、こういうことだと思います。  お医者カルテの問題につきましては、私のほうからとかく申し上げる筋でもございませんし、これが真に学問のために、あるいは人間健康のために役立つものとなれば、やはりこれまたお医者良心に従った措置があるべきだろう、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  13. 林義郎

    ○林(義)委員 この被告になっておりますカドミウムは、私に言わせれば非常に新しい物質だと思う。大体亜鉛鉱と一緒に出てくるということでありますが、現在調べてみますと、日本では昭和四十五年に千四百トンばかりの消費量があります。全世界で一万七千トンくらいの消費量です。量といたしましては私は非常に少ないと思いますが、その使われているところを見ますと、航空機のさびどめであるとか、精密機械部品のメッキとかいうふうな形に使われている。特に電子工業、エレクトロニクスの関係におきましては、相当に私は出てくると思う。したがいまして、私は、カドミウムというものは、物質そのものをとればきわめて有益な、また有用な物質だと思う。したがって、カドミウムを全世界から追放する、あるいは日本の国内からでも全部追放してしまおうということにはいかないと思う。私は、やはりこういった物質であるがゆえに、物質としては非常に価値の高いものを使っていかなければならないと思う。すなわち、一方におきましては、科学進歩なり、技術進歩というものがある。それがやはりカドミウムというものを要請するのだと思う。したがって、新しい技術進歩に伴って新しい効用というものが出てくる。それを人間の英知でもって使っていくということは非常に大切なことだと私は思うのです。同時に、一方においては人体に害を及ぼすかもしれないという問題があると思う。科学進歩技術進歩に伴って、これはカドミウムの問題だけではない、ほかのものにおきましても相当にたくさんこういったものが出てくると思うのです。  そこで私は、これからカドミウムだけではない、いろいろなものが出てくるのではないか、特に石油化学関係、その他の新しい物質が出てくるだろうと思う。そういったときに、カドミウムもそうでありますが、初めに出てきたときには、わけがわからない、人体に及ぼす影響がわからないということだったと思うのです。ところが、科学で使うほうが先になりまして、使ってみたあとで、いろいろ使っておるうちに人体に対する影響が出てくるのだろうと思うのです。そういった点を何か制度的に考える。技術発見をする、新しい物質を使うというときにおいて、将来害が出たならばどうするかという問題、これはやはり日本全体として考えていかなければならぬ問題だと思います。技術が非常に盛んに進んでいる。病気のほうはどちらかというとあとから追っかけていくということになると思いますが、そういったときの病気にならないような体制、また病気になったときにどうするかという体制を考えていく必要があるだろうと思います。テクノロジーアセスメント技術評価という制度がございます。アメリカで宇宙開発をやったときには、そういう制度を非常に使った。私は、これに似たような制度を何か日本の中に入れなければならぬと思いますが、環境庁次官、どうお考えか、御見解を承りたいと思います。
  14. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 まことに適切な御意見でございまして、十分に拝聴いたしておりました。  先ほど申し上げましたように、世の中の科学技術的な進歩は非常にスピードを上げる。ところが、人体に対する影響というものは非常におくれておる。いつもあと追いである。しかも、この結論を得るまでにはいわゆる蓄積の理論などもございまして、直ちに結論が出がたいものが多い、こういうことでございます。特に重金属などはそういう例が多いものですから、相当の期間、継続的な調査が必要でございます。本質的にそういうような関係になっておりますから、この関係をどこかで断ち切って、あと追いでなしに、むしろ先取りをするというようなことについての体制を考えたらどうかという御議論、まことにそのとおりでございます。これについても、これは非常にむずかしい専門的な問題がたくさんあると思いますが、かといって、そのために直ちに措置をするような事柄を一つ一つ取り上げて、具体的な措置がいまできるかというと、なかなかそうはできないということでございます。十分に検討する余地のある問題だ、このように理解いたしたいと思います。
  15. 林義郎

    ○林(義)委員 いまの問題でありますが、私はあとでも申し上げたいと思うのですが、何といったところで、われわれ人間が考える一番大切なことは、人間の生命であります。生命なくしては、いかに繁栄したものにしても無意味だと私は考える。そういった点を基本的な考え方にして、技術が非常に発達していく、その発達した技術が同時に人体影響を及ぼす、あるいは人類社会というものを滅ぼすようなことになってはたいへんなことになると私は思うのです。そういった点をやはり考え方からして新しい態度をつくっていかなければならぬ。どうも現代の社会におきましては、どうしても技術というものが先に行ってしまう。これは基本的な問題でありますから、私も一案ありますが、ここで申し上げませんけれども、ぜひ環境庁のほうにおかれまして、十分この点を考えていただきたい、これをお願いしておきます。  次に、観点を変えまして、もう一つの問題を私は取り上げたいと思うのです。政務次官も山口県の出身でありますから、よく御承知の問題であります。  八月の五日の夜から六日の日に、台風十九号が吹き荒れました。私も当日は地元におりまして、これはたいへんな被害だろうと思って、朝から心配をしておった。ところが、私が住んでおります近辺では、実はあまり被害もなかったようでありまして、私はほっとしておったのですが、実は続きます七日から十二日にかけて、山口県の西部海岸で赤潮が発生いたしました。被害は、直接の被害が二千八百万円、間接の被害が三千五百万円で、計六千三百万円という数字が一応出ております。被害の最大は、豊浦郡豊浦町黒井にありますところの養殖業であります。同漁協は、築堤式によるハマチの養殖を行なっておりますが、そのハマチがほとんど全部上がってしまった。約二千二百万円の損害があるということを同組合の理事長の升田市太郎さんが私のところに報告してこられました。  こういった事件がありましたので、県ではさっそくに原因調査をしなければならない、国のほうにおかれましても調査をするということで、国が百万円、それから県が百三十万円を支出して、目下それに当たっておるということを聞いておりますが、この原因調査はどのように進行し、また、いつごろこの結論が出るのか、御説明をいただきたい。
  16. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 ただいまお話の響灘におきます赤潮の被害につきましては、九月の下旬に、山口県と福岡県の両県から水産庁に対しまして、関係海域の汚染状況調査指導を依頼してまいりました。十月四日に、私どもは、南西海区水産研究所長に対しまして、調査と資料の整備に関し両県の水産試験場を指導するように指令いたしました。十月中旬から、両県と南西海区が協議をいたしまして、両県が共同して調査を行なっておりまして、現在まだ資料の補足調査中でございます。  以上が現在の調査中の経過でございます。
  17. 林義郎

    ○林(義)委員 いつごろ結論が出るのですか。
  18. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 現在これの原因の調査をしているわけでございますが、全体といたしましてまだ赤潮の発生する機構というのがわかっておりませんで、これの調査をいたしておりますのが現状でございまして、赤潮の機構を解明するということを、四十五年から特に南西海区水研が中心になりまして、東海区水研、水産大学校、広島大学並びに関係県を動員いたしましてやっておりますが、機構の解明というようなことはなかなか困難でございまして、この響灘で起きました赤潮がどういうものであって、どういう害を及ぼしたかというのは来年早々にでも結論が出ると思いますけれども、響灘になぜ赤潮が起きるのかという機構の解明につきましては、時間がかかるものかと考えております。
  19. 林義郎

    ○林(義)委員 ちょっと御説明がよくわからなかったのですが、赤潮の発生の機構については原因を究明中である、ただし、響灘においてこういったものがあって、これがここに赤潮の起こった原因であるということはわかる、こういうことでありますか。
  20. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 響灘で何の赤潮ができて、どういう被害を与えたかということはわかると思いますが、響灘の赤潮が、たとえば燐とかビタミンとか、そういうものが特にあらわれたとか、あるいは汚水がどこの汚水の原因によるということが早急にはなかなかわからないものだと考えております。
  21. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、調査はあれですか、どういった被害が起きたかということについての調査ですか。私が聞いておりますのは、こういった響灘の埋め立てでこういうふうな事件があったから、それが相当影響するのだということについての調査をしてもらわないと、どんなあれが起きてどんな虫が出たというような調査だけ  では、これはあまり意味がない調査ではないかと思うのです。と申しますのは、実は地元で非常に問題になっている。御承知だと思いますが、水産大学校の松井校長さんが新聞で発表されまして、福岡県のほうの響灘埋め立てが原因であるというふうなことを新聞で私も拝見したのです。そういったことの真偽はともかくといたしまして、やはりここでやってもらわなければいかぬのは、一体どこに原因があったかということをやるのが一番大切なことで、そのミドリ虫がどんな色をしておって、どの辺でどう発生したというようなことは、これは調査をやる意味がないと思うのです。たとえば、政務次官の地元ですけれども、徳山湾でやった調査でありますが、これはおそらくこうではないかというところまで大体結論が出ている。あの海流の中でPとNが非常に多い。これが海水に富栄養化して、そこでミドリ虫が赤潮の原因になってきているのではないかというところまで大体きておりますね。そうしますと、PとNですから、PとNを使ったのはどこかというところまではいけるだろうと思うのです。それを流すのはだれかということは考えればわかる。その辺の調査もやらないということなんですか、どうなんですか。
  22. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 赤潮の原因となりますのは、栄養が豊富になりまして、そこへただいま先生のおっしゃったように燐なりビタミンなりが起爆剤のようなものになりまして、それが原因で赤潮が異常に発生するということでございますが、起爆剤になった事態、それは何かというのは、いまのところなかなかわかりませんで、響灘でいまやっております調査は、そこが起爆剤の起きる前にどういうような海水、海の状態になっているかということを現在調査しておりまして、起爆剤になったものが何であったかという調査まではなかなかいかないものだと考えております。
  23. 林義郎

    ○林(義)委員 そうするとNが相当に富栄養化した。要するに、海の中に相当プランクトンが発生するような状態が起きてきたのは何であったかということはわかった。PとかNとか、そのほかのいろいろなものがあるでしょう。起爆剤になるようなものがあるでしょう。それが何であるかということはまた別に検討してみなければわからぬ、そういうことですか。
  24. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 そういうことであります。
  25. 林義郎

    ○林(義)委員 実は私の地元ですが、綾羅木、吉見というところに海水浴場があります。この辺は、やはり大腸菌がたくさん出てきて海がよごれているので、海水浴ができない、禁止するということが昨年はありました。ことしはどうであるか。ことしは、いろいろ地元の人が手入れをしたおかげで、何とかやろうということでやりましたが、ことしは、先ほど申しましたようなたいへんな赤潮の被害が出てきているということであります。  それで、私が推察いたしますのに、これは原因としてはやはり響灘の埋め立てが一番大きな原因ではないか、こう思うのです。そのほかにもいろいろと原因はあるでしょう。たとえば、関門海峡から中の瀬戸内海のものが、海水が、非常に関門の落差があるから、そのときに流れ出る、あるいは洞海湾のきたないものが流れ出る、いろいろな原因はあるでしょうが、地元の連中は、響灘の埋め立て開発が始まってからそうした現象がふえてきたということを言っているのです。私は、そういった原因を追及していただくかどうかは別にいたしまして、やはり響灘の埋め立てが全然影響がなかったということは、はっきり申し上げて、言い切れないと思うのです。それはパーセンテージとしてどのくらいの異常があったかということはあるでしょう。しかし全然影響がない、こういうことは、私は言い切れないと思うのです。そういたしますと、この響灘の埋め立てというものをどうするかという問題があると思うのです。あの埋め立ても、やはり北九州の工業開発のためには非常に有益な開発だっただろうと思う、その当時考えて。だからこそ福岡県知事さんは免許をおろされたのだと思う。  ところで、法律的に見ますと、埋め立てをするときには、公有水面埋立法に基づきまして、漁業権者の同意を得た上で、知事が免許を与えることができるということになっております。漁業権というものは大体沿岸の漁業ですから知事さんが免許をする、こういうことになっております。ところが、これはなぜそういうことになるかというと、これはやはり所有権の保障という考え方になっておるのじゃないかと思うのです、公有水面埋立法の規制の考え方は。  ところで、やはりこの公有水面埋立法ができた大正十年の場合と、現在、昭和四十六年の年末の段階におきましては、私は、はるかに埋め立てというものが変わってきておる、埋め立て工事というものは、その当時に比べて飛躍的に巨大化していると思うのです。非常に大きな埋め立て工事があると私は思うのです。したがって、その埋め立て工事についての規制をやる、特に漁業権者との調整をこの法律だけでやるということについては、私は非常に足りない点があるのではないかと思う。他の公害でもそうでございますが、やはり公害の一つの大きな原因というものは、企業の生産なりいろいろな諸活動が巨大化する、大きくなってくる、また集中生産が行なわれるというところに公害の原因がある。亜硫酸ガスの問題にしてもしかりであります。カドミウムの問題にしてもしかりであります。すべて私は、そういった巨大化、集中化のもたらすところに公害という新しい問題が出てきておるのだ、こう思うのです。埋め立ての工事につきましても、その例外ではないと思うのです。  それで、そういった意味で、一体この公有水面埋立法というものを少し改正をする気はないのかどうか。特に漁業権者を保護するという意味からしますと、当然埋め立てをするところに属するところの漁業権者についての同意だけではなくて、その埋め立てが及ぼすようなところのものについてまで意見を聞くとか、あるいは同意を求めるとかいうふうなことも一つの方法だと思うのです。もちろんそれでやれというのではないのですよ。しかし一つの方法だと思うのです。したがって、そういった点を少し考えて、この公有水面埋立法というものを考えていかなければいかぬのじゃないか、こう思うのですが、何か公有水面埋立法というのは各省にまたがっている法律だそうであります。主管は建設省だと思いますが、建設省、これについてどういうふうにお考えになっておられるのか、お尋ねをしたいと思います。
  26. 伊藤晴朗

    ○伊藤説明員 公有水面埋立法につきましては、今年初めでございますか、私どもの根本建設大臣から、大正十年の古い法律でもございますし、国土計画、地方計画との適合関係とか、いま御指摘のような関係水面権者との調整の問題でございますとかいうようなことを中心に、やはり時代の要請に適応しなくなっておるのじゃないかと思うので改正いたしたいという趣旨の国会の答弁がございまして、その旨の指示をいただきまして、現在作業中でございます。また具体的な成案を得ておりませんし、関係省庁との協議が終わっておりませんので、御指摘の点につきまして具体的なお答えができる段階ではございませんけれども、水面権者との関係につきましては、御指摘のとおり現在の埋立法は、公有水面の施行区域内の水面権利者につきましては事前に同意をとるし、その後の埋め立て後の補償その他の調整規定というものがあるわけでございますが、今度法律改正をいたそうとします場合には、必ずしも埋め立ての施行区域内の漁業権者だけで、その保護的な措置だけで足りるとは思っておりませんので、御指摘のようなことを加味いたしまして検討させていただきたいと思っております。
  27. 林義郎

    ○林(義)委員 いまの話で検討中だということですが、こういった漁業権者の問題で、私、非常にはっきりしたことを申し上げる。  地図で大体皆さん御存じだと思いますが、山口県の下関、本州の一番西であります。九州がこうきている、その下関の沖合いに六連島というのがあります。それからもう一つ、その六連島から約五百メートルばかり離れたところに馬島という島があります。ところが、県域は六連島と馬島とのちょうど中間を走っております。馬島は福岡県にある、一方は山口県にある、こういうことになっています。実は馬島のほうは福岡県の漁業区域でありまして、福岡県の埋め立てのときに漁業補償をもらったという話であります。ところが、この六連島のほうは、海域が違うのでこれを全然もらっていない。しかし、これは実は馬島、六連島というのがこうありまして、一方は下関から船で行きまして約二十五分、一方もおそらく同じ距離で二十五分、それから小倉のほうから参りまして約四十分なんです。同じくらいのところに二つ島がある。受ける被害につきましては全く同一だと考えられる。どちらもワカメをとったりあるいはまわりの魚をつったりなんかしているのです。したがいまして、その二つの島で県域によって海流が変わるなんということはありませんから、これは全く同じであります。一方については漁業の被害の補償をいたします、一方については全然ありません、こういうことであります。私は、これは明らかな矛盾だと思うのです。いまの法律のやはり矛盾だと思う。この辺もぜひ考えていただきたいと思うのです。  それから特に現在考えなくてはいかぬのは、公共事業というのは、先ほど申し上げましたように、やはり一つの生活の向上のための事業だと私は思う。それでなかったら、国なり県なりがやるはずがないのであります。埋め立ての事業のようなものもそうであります。特に県知事の免許がかかっているということでありますから、そういったものが公益性を持たないようなものであるならば、私はあまり免許を与えるものではないと思うのです。そうした公共事業を今度やったときに、今度の法律の改正で考えてもらいたいのは、その及ぼす範囲ですね。埋め立て工事をするというときには、やはりどんなことがあっても自然環境を破壊することは間違いないのであります。全然破壊しないということは、それは埋め立てをするのですから、いままでの自然環境を破壊するのは間違いないのです。そうした自然環境の破壊というものをそのコストの中にやはり織り込むということを少し考えなくてはいかぬのじゃないか、単に行政的に都道府県知事または建設大臣あるいは環境庁長官かもしれないが、その人が判断していいとか悪いとかということではない、やはりそういった自然破壊をする——自然破壊をするということは、漁業の補償とかいう問題も含めまして、自然を破壊するものを埋め立てのコストの中に入れなくちゃいかぬのじゃないかという気が私はするのです。この辺は、私はぜひ考えていただきたい。  それから環境庁次官おられますが、次官、いまの考え方についてどういうふうに思っておられますか。
  28. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 先ほどちょっと御答弁申し上げようと思ったカドミウム関係の最後の御意見ですが、環境庁の姿勢に関する問題であります。  私どもは、人間の健康の保持、自然環境の保持ということを仕事といたしておりますから、すべてそのものさしで判断してまいりたい、これは強くそのような態度でおりますことを御了承いただきたいと思います。  それから、ただいまの公有水面の埋め立ての問題は、御指摘のとおり非常に古い法律でありまして、しかも、この考えの中には環境保全という考えがないのでありまして、また環境庁長官が関与する権能というものがきわめて不明確であり、むしろなきにひとしい。こういう観点から、私のほうからも、この改正については事務当局において関係当局と十分に連絡をとるように指図をいたしておるような次第でございまして、コストの中に入れるかどうかということはよくわかりませんけれども、私どもは、自然環境保全ということから公有水面埋立法あるいは都市計画法、さらに自然保護法というものを準備いたしております。でき得れば次の通常国会に提出いたしたいと思いますが、これもまたいまおっしゃった問題と関連の強い問題でございまして、そういうような地域の識別と申しますか、そういうこともあわせて行ないたい、こう考えております。
  29. 林義郎

    ○林(義)委員 もう一つ私は具体的な例をお話しします。  山口県に飛行場が一つあります。政務次官よく御存じのとおりであります。この飛行場を今度拡張する、埋め立てをいたすということになっております。国のほうから補助金も出てやるということになっておりますが、実は漁業補償の関係でなかなか話が進まないということであります。飛行場をつくるということは、いろいろな問題があるでしょうけれども、やはり一つの公共の利益に資する問題であります。それから同時に、やはり漁業者の問題というものも考えなくちゃいかぬし、自然の破壊という問題も考えていかなくちゃいかぬと思うのです。そのときにどういうふうな価値判断でやるかというのが、私は非常に大きな問題だと思うのです。一方においてもこういうことをやるならば非常に公共の利益になる、一方においてもやはり公共の利益というものがある、自然環境の破壊をしないという非常な利益がある、私はこの二つの利益をどう調整させるかということは非常にむずかしい問題だと思う。先ほど申し上げましたように、そういったときに、現実の問題として、自然環境の破壊をすれば、将来こうなったならばこうなるだろう、たとえば宇部で飛行場を埋め立てるならばこの辺の海水浴はできなくなるであろう、あるいは漁業がどうなるであろうかと、いろいろなことを全部調査した上でやらなくちゃいかぬ。そういったときに、もしも本来の自然環境の保全ができなかったならば、あったところの利益がなくなるわけですから、その利益をどういうふうな形でもって還元していくかということを考えていかなくちゃいかぬ。単に建設大臣と環境庁長官とで話し合いをしてぱしっと、そのときの大臣の力がどちらが強かったかによってきまるという問題ではないと思う。これはそのときの政府の問題ではない、日本国全体の問題であり、将来の問題であります。その点をやはり考え、一つの考え方を出さなくちゃいかぬと私は思うのです。この点について、建設省のほうでぜひ考えてもらいたい。おそらくこれは建設省だけではない、運輸省もそうでしょう、農林省も水産庁もそうでしょう、あるいは通産省もそうかもしれません。各省の役所が集まって英知を出して、ひとつそういった基準をつくってもらいたい。先ほどカドミウムのときにお話し申し上げましたけれども、この問題につきましても、やはりテクノロジカルアセスメントというような考え方、あるいはもう少し進んだ考え方を入れてもいいんじゃないか、こう考えておりますが、いま検討中ということでございますから、その辺についての個人的な見解でもけっこうでございますから、お話しをいただきたいと思います。
  30. 伊藤晴朗

    ○伊藤説明員 御指摘の点、ごもっともと思いますが、関係省庁とも十分相談していきたいと思います。御指摘のように、私、具体的な問題はあまりよく知りませんが、公有水面がやはり国民の共通の財産という視点に立脚いたしました運用が行なわれますような法律の整備を十分に考えたいと思います。公益と公益の調整の規定の具体的な基準を法律上どこまで書けますか、非常に疑問であると思いますけれども、その辺は十分相談さしていただきたいと思います。
  31. 林義郎

    ○林(義)委員 それから、これは瀬戸内海もそうでありますが、いまお話し申し上げたように、いろいろな調整の話をしなくちゃいかぬということと同時に、新しい方向でものごとを開発していくということが必要だと思う。宇部のお話をしましたが、宇部の飛行場は、やはり飛行機が着くことはいろいろな形での便益をもたらす、その一方において、現実問題としては海水浴ができない、あるいは漁民に影響が出てくるということでありますから、これにつきまして、たとえば、海水浴場かプールをつくってそちらに持っていくというのも一つの考えだと思う。それから、だんだんあの辺で赤潮が発生してくる。赤潮についていろいろ防除体制をとる。Pが出ない、Nが出ないということをいろいろやっていく必要があると思いますけれども、私は、ぜひ水産庁に考えてもらいたいことがある、というのは、出てくる赤潮と申しましても要因はプランクトンであります。言うならば、動物と植物との中間のようなものであります。しかも海が富栄養化してきている、非常に肥えているから、そういったプランクトンが発生しやすい状況になってきているということが大体いえるのじゃないかと思います。そういたしますと、いままでそれを食べておったような動物ではない、そういったものに合うような新しい動物というのが出てくるのじゃないか。  もう一つ申し上げましょう。瀬戸内海というのは昔からタイの産地でありました。ところが、だんだんタイが減ってきておる。逆にイワシというものが非常にふえてきておる。というのは、タイというのはわりとたくさんものを食べない魚であります。イワシというのは非常にものを食べる。何でもかんでもむしゃむしゃ食べるから、イワシが非常にふえてきているというわけであります。この赤潮の問題も、赤潮を防いでいくということと同時に、赤潮を積極的に利用して瀬戸内海の開発をやっていくというようなことも、ひとつ考えてみたらいいのじゃないか。これは新しい考え方かもしれませんけれども、環境はもちろんよくしてきれいにしていく。しかし、きれいにしたところで、はっきり申し上げて、いまから三十年も四十年も前のきれいさにならないと思うのです。それならば、それに合ったようないろいろなものをやっていく。たとえば、そこに合うような動物がいるならば、それに対して積極的な養殖事業をやっていくとかなんとかいうことをやっていかなくちゃならぬ。この辺につきましては、環境庁のほうの次官からでも、ひとつお話を聞かせていただきたいと思います。
  32. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 赤潮を逆に利用するという新アイデアをいま拝聴しました。いま私どもは何とかして赤潮を退治したい、こう思っているところであります。先ほどから水産庁次長からも御説明申し上げましたように、この赤潮ができる要因についてはいまいろいろ研究の過程でありまして、それができる条件として、窒素、燐等の栄養価のあるものがふえて富栄養化しておる、そういう状態になっておるというところまでは来ておるわけです。それから先引き金が何であるかということについてはいま検討中で、なかなか結論が出ない。いろいろ説をなすものがございますが、そこで私どもは、瀬戸内海の問題と取り組む一つとしまして、その第一のテーマとして赤潮を取り上げています。この発生の原因なりメカニズムをもっと究明していきたい。同時に、富栄養化ということが一つの状態であるということは明らかでございますから、その富栄養化の原因になるものをつぶしていきたい。それには工場の排水、それから生活排水及び下水、それから屎尿投棄、この問題を三つ取り上げまして、ほかにもあると思いますが、一応これをつぶす計画をいま進めておるわけです。なかなか容易ならぬ問題でございますけれども、少なくとも赤潮については三年くらいひとつ検討していきたい。それから屎尿投棄のごときは、これはやってやれぬことはありませんから、五十年にはやめさせるというようなことをやる。こういうようなことで、いま瀬戸内海の環境保全のための各省関係会議をつくっております。ここで検討をして、各省の協力を得ようとしておるような状態でございます。したがいまして、赤潮をいかにしてなくすかという努力をしているさなかでございますが、逆に赤潮を利用するということは、どういうアイデアになりますか、よくわかりません。水産動物につきましては、水産庁の専門家検討を待たなければならぬと思いますが、ただ、私も、タイその他の底魚が減少して、それからイワシその他の回遊魚がかなりことしはふえておるという事実は知っております。しかし、その回遊魚も、富栄養化のために、小イワシなどがだしにならないということもございます。そういうこともありまして、赤潮の被害を受けるものは流動性の少ない底に定着しておる魚ではなかろうか、こういうことを私なりに判断しておるわけです。  そこで養殖の問題につきましても、先般瀬戸内海を視察してまいりまして、広島県の阿多田島ではハマチの養殖をしておりますが、昨年でしたか、死んでしまった。こういうような場合に、これに対する対策としては、赤潮が入ってこないための堤防をつくるとか、こういうことも必要です。それから赤潮の予察ができますならば、それに応じて養殖そのものを移動させる、こういうような方途も考えられるわけであります。そういうことで、赤潮の被害を免れるための措置はいろいろとこれからも考えられ得ると思いますが、お話しのように、これを逆用するという点についてはもっと検討が要るのじゃないか、こう思っております。
  33. 林義郎

    ○林(義)委員 環境庁のほうのお立場はよくわかります。私も環境庁としてはそういうことだと思いますが、環境をきれいにすると同時に、やはり環境をいかに使うかというのは人間であります。また漁民であります。やはり漁民が瀬戸内海で安心して漁業ができるようにしなくてはならないと思うのです。そういったことから、赤潮を逆用すると政務次官おっしゃいましたけれども、富栄養化した実態があります。富栄養化した実態があるならば、その富栄養化した実態に合うような漁業というものを開発してやる必要がある、こういった技術開発というものをやってもらいたいということでありますので、水産庁のほうからお答えいただきたい。
  34. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 本年度から三カ年計画で環境庁から予算をいただきまして、赤潮の研究をいたしておりますが、その中の一つに、赤潮の被害防除、抑制の技術研究というのがございまして、そこでいま先生御指摘のような、赤潮を利用するというのではなくて、その前の段階の富栄養化しましたものを利用しまして、動物は考えておりませんが、何か適当な植物を増殖して、それによって栄養化を防いで赤潮を防除するということも研究の一課題としてこれから三年間やってまいりたい、こう考えております。
  35. 林義郎

    ○林(義)委員 いまのお話ですと、植物のほうはやるというお話でありますけれども、私は、動物のほうにも何かできるのではないかという気がするのです。しろうとですから、これは専門家のほうにやっていただかなければなりませんけれども、要するに、そういった点の状態が変わってきていますから、それに合うような技術開発、単に沿岸で何とかその辺は適当に調整してやってくれということではなくて、やはり水産庁のほうで積極的にそういう指導をやっていただきたい、これをお願いしておきます。  それから水産庁にお尋ねしますけれども、漁民を救済する方法ということで、私はもう一つの方法が考えられるのではないかと思うのです。漁業災害補償法というのがありまして、いろいろ考え七みたのですが、激甚災害とか災害対策基本法に基づいて——これはいまの赤潮の話ですよ。響灘のほうの赤潮の話ですが、これは激甚災害とかなんとかというのには私は当たらないと思うのです。そうすると、漁業災害補償法で書いておりますのは、「中小漁業者がその営む漁業につき異常の事象又は不慮の事故によつて受けることのある損失を補てんするため、」こう書いてあるが、この「異常の事象」ということばには当たるのではないだろうか。中小漁業者にとっては少なくとも異常な事象であります。  そこで、これでいろいろ見たのですが、実は漁業共済のほうで養殖共済とそのほかの共済とありますが、最初に申し上げました山口県豊浦郡黒井の漁業は築堤式の養殖漁業であります。ところが調べてみますと、法律では養殖共済の対象になり得るようであるが、その政令あるいは省令で制限をするということになっておりまして——政令でしたかな、施行令で、ハマチの養殖につきましては小割り式ハマチ養殖業しか入らなくて、築堤式の養殖については入らないということになっておる。これはなぜこういうふうになっておるのか。不慮の災害ということからすれば、築堤式であれ小割り式であれ同じことではないかというしろうと的な考え方が一つあるのです。この辺については、どういうふうに考えておられるか。それから、こういうふうなことになってきますと、やはり漁業災害を補償するというところに目的がある、したがって、中小漁業者の経営を安定させる、生産を安定させるということに目的があるわけですから、それが入れられないかどうか、この辺について水産庁、どう考えておられるか、お尋ねいたします。
  36. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 小割り養殖業につきましては、先生御指摘のように一年魚、二年魚ともに共済の対象になっておりまして、これは小割りの中に何匹入っておるのかということが非常に明確にわかっておりまして、死んだ場合も何匹死んだということが明確にわかっておるのが現状でございます。築堤式のように、あるいは網仕切りにいたしましても、大きなものになりますと何匹これに放魚したのか、何匹死んだのかということが非常に計算しにくいということ、網仕切りにしろ、築堤にしろ、そういう経営体数が非常に少のうございますから、保険技術上、計算しますと、もしそれをやるとすれば非常に高い額のものにならなければならないということがございまして、現在の程度の経営体数、放魚尾数のところでは困難ではないかというふうに考えております。
  37. 林義郎

    ○林(義)委員 そういたしますと、できないのはもっぱら保険技術上の問題だ、こういうことでありますか。
  38. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 そのとおりでございます。
  39. 林義郎

    ○林(義)委員 全く民間的な保険という形であるならば私もそうだと思いますが、やはりここで考えていただかなければいかぬのは、漁業共済というものを純粋な民間保険というような考え方でやったのでは、なかなか公害の問題には対処できない段階にきているのだろうと思います。瀬戸内海のほうでも同じことではないか。単にいままでの、いわゆる資本主義のメカニズムの中だけでやっておる、それを保険という形でカバーするという形になっておりますけれども、そういった考え方だけではどうもできないような気が私はする。やはりここで新しい考え方を入れていかないとこの辺の救済はできない。これを漁業災害補償法でやるかどうかは別にいたしましても、せっかく農林省のほうで指導してもらってやった養殖漁業であります。これがたまたま保険技術からしてできない、それでいいんだということでは、やはり私はいかぬと思うのですね。やはりそこは何か救済の措置というものを考えてやる必要がある。そうしますと、保険理論ではない別の理論を持ってきて考えてやる必要があると私は思いますが、水産庁、どうお考えになりますか。
  40. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 現在のところ、築堤式のハマチ養殖をやっておりますのは、経営体としますと全国で六経営体ございまして、これに対して保険ということは、先ほど申し上げましたように私どもちょっと困難でございますので、それにかわるべきものをいますぐ考えろ、こういうお話でございますけれども、いますぐ私どもとしてここで申し上げるような具体策というものはございませんので、御了解いただきたいと思います。
  41. 林義郎

    ○林(義)委員 いや、私の申し上げておるのは、いますぐ何か考えろというのじゃないのです。やはり一つには、漁業災害補償法というものでやっているところにも限界がある。要するに、問題が公害問題であるからいままでの考え方では救済できないということを申し上げておるのです。したがって、そういうものに対する補償というものをどういうふうにしてやっていくかということをやはり考えていかなくちゃいけない。現在の法律体系のたてまえから申しますと、民事裁判に持っていくより方法がない、あるいは公害紛争処理法に基づきまして公害紛争処理委員会に持っていくより方法がないと思うのです。そのほかに何か方法がありますかどうですか。水産庁のほうに何かあれば、教えていただきたいと思います。
  42. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 現在のところは、加害者不明ということより、原因がまだわからないのでございますので、天災のようなものでございまして、公害紛争処理委員会にも持ち出す性質のものでもないかと思います。現在のところ、私どもとしても、いかにして赤潮をなくすかということが考えられるだけでありまして、だれかを相手どって民事上の問題としてやるというわけにもまいらないというふうに考えております。
  43. 林義郎

    ○林(義)委員 水産庁というのは、やはり水産業の振興というのが一つの大きな目的であると思うのですね。何も方法がないから黙っているということではやはりいかぬのじゃないか。それはやはり中小漁業者にとってはたいへんなことだと私は思うのですよ。水産庁は、何も方法がないから、おれのところではどうにもならないのだ、しかも公害紛争処理委員会に持っていってもだめだろう、あるいは持っていけないということでは、やはり私はちょっといかぬのじゃないかと思います。やはり何か、公害が起きているところの影響を救済してやるとか、あるいはそれはこういうふうな道を開くのだということを早急に検討してもらわなくちゃいかぬ。はっきり申し上げて、そうでなかったら水産庁は一体だれの味方かということになりますから、この辺は、ちょっと水産庁のほうの答弁を訂正してもらわなければいかぬと思います。
  44. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 私は、何もしないと申し上げたのではなくて、赤潮の原因、メカニズムをなるだけ早く究明して、これを防除することを考えるのをまず先決にいたしたいというふうに考えております。加害者がわかるなり、あるいはこれをあらかじめ防ぐことができるというようなことがあれば、そういう措置は考えてまいりたい。それができないならばどうするか、もしそれが手間どるようなことがございますれば、いま先生御指摘のように考えていきたい、かように思います。
  45. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、はっきり申し上げて、実は原因究明というのはそんなに短期間でできるとは思わない。徳山湾の調査にいたしましてもずいぶんかかりましたからね。ところが、一方の漁民のほうは毎日毎日食っているわけです。しかも、たいへんな被害を受けておる。しかも、水産庁が何かをやるということでもない。加害者がわからなかったらそのときにどうしましょうかということでは、これは毎日毎日食っている零細漁民としてはたいへんなことですよ。これはもうわからぬから、おまえのところしようがないというようなことでやられるのじゃたいへんなことです。これはやはり早急に何か考えてもらいたい。考えないと、漁民たちは何をしていいか、はっきり申し上げますと、言うなれば、もう漁業をやめろという話につながるのじゃないか。この点は、やはり真剣になって考えていただきたいと私は思うのです。
  46. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 ただいまの御指摘の点は、十分検討いたしたいと思います。
  47. 林義郎

    ○林(義)委員 この問題は、くどいようですけれども申し上げますが、単に山口県とか一部落だけの問題ではない。私は全国の問題だと思うのです。至るところで大工場ができ、いろいろな被害が出てくる。漁民はどうするのだということです。私は、そこにやはりはっきりと漁業対策というものを出さなくちゃいかぬ。これがないから、漁民としてはもうどうにもならない。もう暴力をもってでも工場施設を排除していこう、埋め立てを排除していこうという話になるのです。こういうふうな方向でやったらいいのだという方向づけをしないことには、私は、国土開発というものは進まないと思う。そういった全体の立場から考えて、私はいま申し上げているのです。漁民に安心した生活を与えなければいけない。東京湾であれだけいろいろな汚染がある。また、この前の委員会でもありました、あの油が流れる、漁民はどこに持っていっていいかさっぱりわからないということでは、私は非常に困ると思うのですよ、はっきり申し上げて。生活権を奪われるということにひとしい。この辺は、十分に私は考えてもらいたいと思う。  そういったことで、公害紛争処理委員会のほうからどなたか来ておられると思いますが、お尋ねしますけれども、一つは、確認をしたいのです。  先ほど水産庁のほうから、こんなもの持っていったところで、公害紛争処理委員会でも受け付けないという話ですが、私は、ある程度まで原因が究明できれば、当然にこの公害紛争処理委員会の対象になるものだと思うのです。もちろんそれは、先ほどの南西海域の調査をやっておられるところの結果が出てからだろうと思いますが、そのときに、一つは、相手がおそらく福岡県なり北九州市になるだろうと思います、埋め立て工事をやっておりますから。そういった地方公共団体あるいは公的団体を相手とするようなものにおいても、公害紛争処理委員会は私は処理できると思いますが、この辺を確認をしておきたいのが一点。  それから、私、申し上げたいのは、言うならば、資本主義のメカニズムというものが非常に変わってきておる。先ほどのカドミウムの問題にしてもそうであります。資本主義だけのメカニズムではどうにもならない。漁業の問題にいたしましてもそうであります。いままでのような保険理論だけでは救済できないような問題になってきている。やはり新しいメカニズムというものをつくっていくことが必要だと思うのです。そのメカニズムをつくっていくのは、法律的に新しい方法を出すのも考え方かと思いますが、これは公害紛争処理法が先般改正されたときに、私は申し上げた。要するに、公害紛争処理法に基づいて調停をし、また和解の話し合いをさせるというときには、いわゆる民法原則のものだけでは私は足りないと思う。新しい一つのルールづくりというものをそこにしていかなければならない。そういったことをやっていくのが公害紛争処理委員会の役目だろうと思う。要するに、被害を受けた人を救済するためにアプローチの方法として、立法的に解決する方法と、その紛争処理委員会のようなところでもって、ケース・バイ・ケースでこの問題を取り上げていくことが私は必要だと思う。幸いにいたしまして、公害紛争処理委員会の判断は自由心証主義であります。この自由心証主義をぜひ生かしていただきたい。そうしないと、私は、ほんとうの公害問題を解決するきめ手にならないと思うのです。この辺につきまして、ひとつ公害紛争処理委員会——事務局でございますから、御答弁できるかどうか知りませんけれども、精一ぱいの御答弁をいただきたい。
  48. 川村皓章

    ○川村政府委員 お答えを申し上げます。  ただいまの御質問の第一点は、県や市町村がいわば紛争の当事者たり得るかというような御質問であったかと思いますが、この問題も、現に都道府県なり市町村が、いわば——たとえば先生のいまおっしゃった例で、埋め立て等をかりに行なって、そのために公害が発生し、被害を生じたというような場合に、その被害について損害賠償等のいわば民事上の請求をすることは可能でございます。したがって、その場合に、紛争処理法における当事者は当該都道府県なりあるいは市町村ということになりますので、それは公害紛争処理法上の紛争にのぼってまいります。それが第一点のお答えでございます。  それから第二点は、ただいま先生の、自由心証主義というようなことで、実際の審理の進め方に新しい一つの方向をつくっていくべきじゃなかろうかという御指摘につきましては、先生のまさに御卓見であろうかと思っております。これにつきましては、ただし、立法的な措置では実際にございませんで、あくまで個々のケース・バイ・ケースに、どういうものの見方をして事案を解決し、その実績を積み重ねていくかというところに、私どもの一つ置かれた使命もあろうかと思います。その点は、私は事務局でございますので、当然そのことを行なうのは委員会でございますから、お答えの限界はございますけれども、そのようなつもりで事に当たっていくというふうに常々伺っておりますので、そのようなことはおおむね将来にわたってできるのではなかろうかというふうに考えております。
  49. 林義郎

    ○林(義)委員 私は二つの例を申し上げました。カドミウムの問題、赤潮の問題を申し上げました。やはりこれからいろいろと解決をしていく、公害を排除していく、公害が出ないようにしていく、そのためにいろいろな行政的な規制でもってやっていく必要のあることはもちろんであります。昨年の臨時国会、公害国会といわれたあの国会において、たいへんたくさんの法律ができました。私は、そういった形で公害についていろいろな規制措置を加えていかなくちゃならぬことは当然だと思う。しかし、私はもう一つの問題があると思う。それは、やはり被害を受けた場合においては、それを救済する道というものを明らかにしていくことだと思う。現在公害の救済につきましては、指定はありますが、これは医療費だけであります。私は、医療費だけでもって足れりとしてはいけないので、はっきり申し上げて、そのほかの問題についてもほんとうに納得のいけるような全体のシステムをつくっていくことが必要だと思う。これはいま私、どういうシステムをつくったらいいかということは私自身もはっきりしたアイデアを持っておりませんけれども、少なくともそういった方向へ持っていかなければ、いたずらに日本の国内で紛争が起きるわけです。しかも、先ほどいみじくも水産庁のほうからお話がありましたように、これは解決できない問題であるというような問題になってきまして、ほんとうに困るのはその当事者であります。現地の住民であります。そういう点を考えて、やはり新しい法秩序というか、新しい体制というものをやっていかなくちゃならぬ。これが、私は、当公害対策特別委員会の一番大きな仕事だろう、こう考えております。  あと八田先生関連して御質問をされるそうでございますので、私は、いまの点を環境庁その他に申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  50. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 大事な問題でございますので、お答えさしていただきます。  私ども環境庁といたしましては、公害に対する救済の問題でございますが、一応のたてまえとしましては、公害を起こした場合に、その原因者が責任を持つというたてまえを貫きたいと思います。この問題は、賠償の問題になると思います。それだけでなしに、先ほど漁業関係で言われましたように、国としてあるいは自治体としては救済の問題として扱っていくべきじゃないか。原因者が責任を持つ。しかし、それで十分な措置がとり得ない点は国家として関与しなければならない。これは救済という措置でとっていくべきである、このような考えを貫いてまいりたいと思います。救済の措置は、負担の面、補助の面、それぞれの省庁にわたって現在の機構を十分に活用することによってそのことができると思います。そのけじめをはっきりさしていきたいというのが私どもの考え方であります。  それから公害病患者に対する救済の問題、これは原因者が負担すべき筋合いのものだが、とりあえず国がかわってこれを救済するというたてまえでございます。そういうような意味で一貫してまいりたい、こう考えております。
  51. 林義郎

    ○林(義)委員 私も基本的にはいまの次官のお話で非常にけっこうだと思うのです。やはり損害がどうなっているかということと、救済をどうするかということは、別問題として考えていきたい。その救済をどうするかということ、どうやってそういったシステムをつくっていくかということをぜひ考えてもらいたい。これをお願いいたしまして、八田先生質問をお譲りいたします。
  52. 八田貞義

    ○八田委員 いま林委員からカドミウムのことについていろいろ御質問がありましたので、関連して、環境庁のほうにお尋ねいたしたいと思いますが、カドミウムの中毒に関する学術研究会というものが、第一回は昭和四十四年五月に研究集会が持たれております。第二回は四十六年の八月二十八日でありますが、二年三カ月ぐらいの間がおかれているわけであります。この学術研究会意見を徴しましてわれわれが感ずることは、第一回の研究会におきましても、イタイイタイ病カドミウム慢性中毒の差異いかんという、いわゆる基本的な問題が今後の研究課題として保留されましたが、今回はさらに種々の疑問が具体的に提示されたほか、場合によっては、イタイイタイ病を原点に戻して再調査すべきではないかという発言すら一部に見られておるわけであります。たとえば、他の要観察地域の住民のカドミウム摂取量が神通川流域の住民と同じであれば、当然イタイイタイ病あるいはカドミウムの慢性中毒患者が出るべきではないか。また、イタイイタイ病患者の体内にはたして過量のカドミウムがあったのかどうか。あるいはまた、神通川の水がその当時ほんとうにカドミウムによって高濃度汚染があったのかどうか。イタイイタイ病患者はなぜ女性だけに多いのか。こういった点があげられておるのでありますが、厚生省見解に対しまして、非常に疑問符が投げられておるわけであります。そして、こういった厚生省見解をはたして環境庁は新しい時点に立って改正される御意思があるかどうか。そういう点をひとつ政務次官から御答弁をお願いいたしたいと思います。
  53. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 イタイイタイ病関連いたしまして、各種の研究が進められ、異なった意見学者の間に述べられつつあるということは御指摘のとおりでございます。ただし、これが定説として固まる現状ではございませんし、私どもは、固まることを非常に期待いたしておりますけれども、現状においては、そこまで到達していないということもこれまた事実でございます。したがいまして、現状におきましては、さきに出されました厚生省見解をとらざるを得ない。直ちにこれを変更することは考えておりません。ただし、御指摘のようなはっきりした結論学問的にも出てまいりますということになりますれば、政府部内におきましては、統一見解について検討を加えるということは当然のことだ、かように考えておる次第でございます。
  54. 八田貞義

    ○八田委員 いまの政務次官の御答弁の中で、これから大いに調査を重ねて、そして検討してまいりたいというような御答弁がございますが、そのためには、イタイイタイ病原因の究明のために、神通川流域住民と他の要観察住民との間に、カドミウムの摂取とか量などの差異を早急に究明する必要があるわけです。そういった点については、こういう問題がある。環境庁は、究明検討をしなければならぬということは申されておるのでありますが、はたして積極的にさような方向に進んでおられるかどうかということに対して非常に疑問を持つものですから、次の点について、具体的に御質問いたしたいと思います。  きのうの北日本新聞でございますが、イタイイタイ病発生地域外にイタイイタイ病類似患者の発生したことについて報道されております。すなわち、今日まで一名の患者発見されなかった非汚染地域イタイイタイ病患者類似者が出たというのであります。しかも、この患者の既往症はカドミウムと全く無関係であり、イタイイタイ病カドミウム関係について重大な問題を提起したというふうに考えられます。環境庁としてこの際この点を明らかにされる必要があると思うのでありますが、この点についての御答弁をお願い申し上げます。
  55. 山本宜正

    山本説明員 お答え申し上げます。  残念ながら、まだその報道内容を不勉強で存じておりませんので、さっそく勉強いたします。御指摘のように、その報道内容が出ましたいろいろな調査の根処があろうかと思いますが、その調査をされた方にも直接お聞きするというようなことをいたしまして、もしそのとおりでありますと非常に重大なことでございます。  それから、先生御指摘のように、基本的にイタイイタイ病の発生の機序につきましては、先般の学術研究会でも非常に議論が戦わされまして、結論が出なかった点が多々ございます。これにつきましては、十分問題点をディスカッションしたことによって、各研究者は、それを持ち帰って今後の研究の方向とするというようなことも皆さん方言っておられるようでございます。それの促進につきましては、私ども研究費等の支出等をいたしまして援助してまいりたい、かように存じます。
  56. 八田貞義

    ○八田委員 政務次官、公害保健課長から答弁がありましたように、北日本新聞に載せられたイタイイタイ病類似患者の詳細については、まだはっきりと調査ができていないということのようであります。さっそくこういう問題は、やはり前向きで調査するという御態度であるならば、積極的に現地に調査員を派遣され、十分な調査をされることを私は要望いたします。  もう一つ、今月の十日にイタイイタイ病患者井沢サトという人でございますが、この人が首をつって死んだという事件が発生いたしました。たいへん不幸な事件ではございますが、従来イタイイタイ病の原因の究明のおくれは医学界が積極的に剖検をしなかったところにあると考えられますので、遺族の方々をこういう際にはよく説得されまして、そうして剖検に踏み切るということは、当局として非常に必要ではないかと思うのであります。そういったことについて環境庁としては何もやっておらぬように聞いておるのでありますが、この点一体いかがでございましょうか。
  57. 山本宜正

    山本説明員 私ども医学的に結果を究明するためには死亡者の剖検ということがたいへん重要なことでございます。しかしながら、今日日本のいろいろな住民感情として、なかなか剖検に応じていただけないというような状況がございますが、私ども厚生省自体からも、たしか、大牟田の要観察地域内で死亡された、当時カドミウム関係の工場従業員の老齢の方の死亡の事例につきましても、私ども耳にいたしましたので、県を通じまして、家族を説得して剖検に応じていただきたいというようなことも働きかけたケースがございます。なお、安中地域につきましては、現在要観察地域内で昨年の中村登子さん事件の後に、要観察地域内で死亡したケースにつきましての五例の剖検事例がございます。これにつきましては、群馬大学の野見山教授から発表がなされておりまして、私どもその概要につきまして手元に持っております。その内容を見ますと、じん臓臓器内のカドミウムの濃度と必ずしも生前の症状等にパラレルな関係がないというような点もございますし、また逆のようなケースもあるということで、五例程度のものではしかとした結論が出ないような状況でありますが、今後ともこういったことはぜひ重ねて考えていくべきだと考えております。何かの機会をとらえまして、県にそういった事例についての剖検をなるべく家族の方を通じて勧奨するように取り計らいたいと考えております。
  58. 八田貞義

    ○八田委員 まあ首をつって死亡されたというような非常に不幸な事件でありますから、そういった遺体の剖検については、今後積極的に遺族の方を説得されてそして明らかにされるということが、非常に研究上あるいは行政の面から見ましても大切なことではないかと思います。いま課長から、群馬大学の医学部で安中住民を剖検した臓器中の重金属のカドミの濃度についての発表があったということをお触れになりましたが、クロスチェックをやったというふうに聞いておりますが、クロスチェックはどういうところに頼まれて、そして全部回答を受けたかどうか。ちょっとこまかいのでありますが、大切な点でありますから……。
  59. 山本宜正

    山本説明員 お答えいたします。  私がここに現在手元に持っておりますのは、四十六年十二月一日付群馬大学医学部衛生学教室野見山一生、「カドミウム暴露と人臓器中カドミウム量について第二報」こういうものでございます。実はこれは先般ある新聞に一部が出ておったわけでありますが、直接野見山教授から手に入れました内容についてちょっと読んでまいりますと、「群馬大学医学部衛生学教室で分析するだけでなく、当初より群馬県衛生研究所、三洋電機公害予防部、労働衛生サービスセンター、金沢大学医学部衛生学教室、岡山大学農業生物研究所クロスチェックをおこなってきた。金沢大学、岡山大学の分析成績は未着であるが、四分析機関の中央値についてとりまとめ、三症例のカドミウム暴露歴、臨床症状、検査成績、病理解剖所見との関連について考察を加えたので、ここに中間報告する。」こういう形で記載されております。
  60. 八田貞義

    ○八田委員 いまクロスチェックは六カ所依頼して、報告は四カ所ですね。四カ所で、あとの二カ所から成績報告が未着だ、こういうことですが、その未着の大学は聞き漏らしましたが、どことどこですか。その責任者、教授の名前をひとつ……。
  61. 山本宜正

    山本説明員 ここに記載してございますのはあくまでも野見山さんの記載でございまして、金沢大学につきましては医学部衛生学教室となっております。それから岡山大学は農業生物研究所となっておりますが、これはおそらく——おそらくということで、私の推定でございますが、岡山大学の農業生物研究所といたしましては小林純教授であろうと思います。金沢大学医学部の衛生学教室はあるいは石崎有信教授ではないかと思いますが、若干私の推定でございますので、しかとしたところはまた後ほど調べて申し上げます。
  62. 八田貞義

    ○八田委員 政務次官、いまお聞きのとおりですね。クロスチェックというものは非常に必要なんですよ。ところが、六カ所クロスチェックをやったところが、四カ所だけ報告があった。あとの二カ所は報告がない。その報告のないところは、いま御承知のように岡山大学、それから金沢大学。その主任教授は、一方の岡山大学は小林純教授で、一方は石崎有信教授だろうという推定でございますが、このお二人はともにカドミウム中毒説なんですよ。こういう教授からクロスチェックに応じないということは、ちょっと私には納得がいかないのです。私どもやはり国会へ出るまではそういった方面研究をやっておったのですが、学者の態度として非常におかしいような感じがするのです。ただ、報告を見て一つも疑問に思われないという行政当局の態度も不審にたえないのでありますが、こういう場合は、どうかひとつ政務次官、こういう問題は相当強く追及、調査されまして明らかにしていただきたいと思います。こういった点をおろそかにすることによって、前向きに検討するとおっしゃいましても、こういう問題がなおざりにされてはますます真相から遠ざかってくる。そして揣摩憶測が横行するというようなことで、世間の混乱、不安を助長するということになると思います。こういう点、ひとつ政務次官、御答弁をお願い申し上げます。
  63. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 実はこの問題については、林議員に私から考えを申し上げたのでございますが、要するに、学者良心に従った研究をし、またそういう実験等をやっていただくということをぜひ期待するわけでございます。遺憾ながら行政庁側から学者研究に指針を与え、方向を要求するというようなことはいたしがたいことでございます。  いまのクロスチェックの問題でも、それに応じない二つの大学がいろいろ批判を受ける立場に——受けるかどうかよくわかりませんが、問題とすれば考えられるような御意見でございますから、こういうことに進んで応じて発表していただくということを私はほんとうに期待をしておるわけでございます。また、国民の健康からいっても、あまりに学者が自分の私見だけにこだわるということでなしに、それこそ客観的事実の探究でございますから、学問の自由はそこを求められているわけでございますから、そういうふうに私どもは学問に大きな期待を寄せ、かつそのことを熱望するような次第でございます。
  64. 八田貞義

    ○八田委員 いまの御答弁のように、いろいろ新聞紙上に載るのはある一部だけ載せられる。こういったふうにクロスチェックに応じない教授なんかの学者としての態度は全然明るみに出ていない。出ればやはり学者の態度としては非常におかしいということは、国民の一般の方も了解されると私は思うのであります。ですから、やはり行政当局としては、こういう問題についても積極的にいろいろ指導と申しますか、意見を出されまして、明るみに出して、ほんとうにみな、官、民、学者一緒になってこの問題を究明するような体制をおつくりになることが一番必要であると思うのであります。それが前向きの姿勢で積極的にものを進めるでありましょうが、どうかひとつ政務次官、今後もこういう問題を取り上げまして、その究明には積極的に当たっていかれますように要望いたしまして、関連質問ですから、これで終わります。
  65. 小林信一

    小林委員長 西田八郎君。
  66. 西田八郎

    ○西田委員 私は主として水問題についてお伺いをしたいし、また対策についてどう考えておられるのか、それらの点を含めましてお伺いをしていきたいと思うのです。  実は私も居住いたしておりますが、滋賀県の大津市でございます。最近水道の水がかびくさくて非常に地域住民が迷惑をいたしておるわけであります。そうしたことのみならず、霞ヶ浦もさることながら、全国の河川がかなり汚濁をしてきておる、こういうような状況の中にあって、先ほども林委員から瀬戸内海の赤潮の問題を中心に御質問があったわけでありますけれども、一体政府で決定されております水の水質保全に関する環境基準というものがどの程度守られておるのか、まずその点からひとつお伺いをしたいと思います。
  67. 河野義男

    河野説明員 水の水質の汚濁につきまして、環境基準の設定を現在促進してまいっておるわけでございます。そのために、一方では排水規制を行なう。水質汚濁防止法による一律基準では環境基準が達成できない水域につきましては、各都道府県の条例によりまして、よりきびしい排水規制の条例を設定しておるわけでございます。そういたしまして環境基準の達成に努力してまいっておりますが、その環境基準を達成するためには、直ちに達成できる水域あるいは若干の期間を要するもの、あるいは下水道その他の対策を必要とするもの、そういう個々の水域につきまして、達成の期間あるいは達成の手段を定めておるわけでございまして、そういうことによりまして、環境基準の達成につとめてまいっておるわけでございます。
  68. 西田八郎

    ○西田委員 つとめておられること、努力しておられることはわかるのですが、要するに、きびしい基準を定めて、そして水質を保全したい、そのことはわかるのですが、それが守れない原因はどこにあるのかということですね。いま達成に努力しておるということは、言いかえれば、あげ足をとるようですけれども、達成されていないということですね。そうすると、その原因が一体何にあるのか。たとえば、もう少し具体的に聞くならば、工場排水ならば工場主が排出基準を守っていないからだ、あるいはその規制をされていない農業排水であるとか、家庭用排水、それらが一体もう無制限に流されておるからなのか、そういう点についてその原因がどこにあるのか、ひとつ……。
  69. 河野義男

    河野説明員 工場、事業場等から排出される排水につきましては、水質汚濁防止法によりまして、特定施設として政令で定めてその規制を行なっておりまして、その監視、取り締まりにつきましても、都道府県を指導して、強化いたしておるわけでございます。なお、未規制の汚濁源等につきましても、その実態を解明いたしまして、今後追加してまいっていきたい、かように考えておるわけでございます。
  70. 西田八郎

    ○西田委員 どうも答弁になっていないと思うのですが、原因がどこにあるのかということを聞いておるわけですね。未達成のものを達成するために努力しておられることは、これを否定しておるものじゃないのです。また都道府県におきまして上のせ、横のせにしておることについても、決してそれを否定しているわけでもないし、そういう努力というものに対して、これは認めているのですよ。それにもかかわらず、どうしてこれだけよごれるのかということなんですね。その原因をどうつかまえておられるのか、それをつかまえなければ、対策のしようがないと思うのです。したがって、その原因がどこにあるかということを聞いているのです。だから先ほども言うように、重ねてお尋ねするが、工場用排水というものが排出基準を守っていないからなのか、それともそのほかの要因があるのか、ほかの要因があるとすれば、それは何にあるのかと聞いている。農業用排水や家庭用排水もその原因の一つではないのかということを聞いている。
  71. 河野義男

    河野説明員 工場、事業場等からの排出につきましては、先ほど申しましたような排出規制、それにつきまして、さらに都道府県の条例等で、きびしい基準で規制いたしておるわけでございます。御指摘のように、家庭から出てくる排水、家庭下水等につきましては、一方では下水道の整備計画を進めまして、それに対して対処いたしておるわけでございますが、現状におきましては、下水道の整備の状況が立ちおくれておるわけでございます。今後それにつきましては強力に整備を進めていかなければならぬ、かように考えております。
  72. 西田八郎

    ○西田委員 私は、申されなかったから、多少私自身の感覚といいますか、ある程度の調査もしておるわけですが、それから申し上げますと、やはり汚濁の原因には農業用排水、これは農薬もさることながら、化学肥料が最近は相当使われるわけでありますが、その化学肥料が完全に植物に吸収され、もしくは土壌に吸収されておればよい、しかしそれ以上の用量を使われた場合には、やはり自然に土壌の中で水に溶解されて流れ出てくるということも考えられるのではないか、また、家庭用排水が最近の合成洗剤等の合成の方法によって、ぬぐい去れないような要素が含まれているのではないか。そこへ日本人の悪い癖ですけれども、かぜを引いたときも、かぜ薬を飲む場合に、二錠と書いてあれば必ず三錠飲むとか、三錠と書いてあれば四錠飲むとかいう、そのものさえたくさん使えばいいという感覚があるのではないか。ですから、家庭におきましても、洗剤をよけい入れればよけい落ちるのではないだろうかということで、やはりそういうものの使い過ぎというものもあると私は思うのですね。ですから、そういう点でよごれているということも考えられるのではないかというふうに思うわけでありますが、そういう農業用の農薬であるとかあるいは化学肥料を、たとえば製造する段階において厳重にその使用方法を明記せしめる——明記されておりますけれども、それ以上にきびしくするとか、あるいは製造過程において合成をする場合にいろいろの要因を考えてそれをチェックするとか、あるいは洗剤等についても同様のことがいえるのではないかと思うのですけれども、そういう点はやっておられるのかどうか。環境庁として、やはり農薬であれば農林省でしょうし、あるいは洗剤であればこれは通産になるのか厚生になるのか、おそらく厚生じゃなかろうかと思うのですけれども、そういうところと環境庁との間に何らかの連絡をとりつつ、そういう問題についての努力もしておられるのかどうか。
  73. 河野義男

    河野説明員 御指摘のように、農薬等による汚染も当然考えられるわけでございますが、農薬についての農地の汚染、それから公共水域に対する汚染、そういった農薬等による汚染の機構等につきまして、今後解明いたしまして、その結論をまって対処していきたい、かように考えておるわけでございます。
  74. 西田八郎

    ○西田委員 それは一体いつごろになるのですか。四十六年五月二十五日に「水質汚濁に係る環境基準について」閣議決定がされ、一部改正されて、第3「環境基準の達成期間等」1、2とあって、「人の健康の保護に関する環境基準」、それから「生活環境の保全に関する環境基準」、これは双方に、片一方は「設定後直ちに達成され、維持されるように」というふうにうたわれております。2のほうの生活環境保全については、「可及的速かに」こう書いてある。この「可及的速か」ということばは非常に都合のいいことばで、なるべく早くということですから、これは考えようによってはいろいろに考えられるわけでありますけれども、こういうふうにきめられておるわけであります。したがって、それに対する対策というものは早急になされなければならないんだが、この問題が出だしてからもうきのうやきょうの問題ではないのです。昨年の十一月に、公害国会と銘打っての六十四臨時国会があった。そこで法律改正がされておるわけですから、これは直ちに手をつけても一年あればかなりの研究期間があったはずだ。それを、まだこの段階で、そうしたことを研究が出ましたらというようなことでは、これはもうとてもじゃないが待ってはおられないということになるわけで、その辺のところをどのようにされておるのか。
  75. 松山良三

    ○松山説明員 肥料あるいは農薬等によりまして水質が汚濁する、そういったようないまの先生のお尋ねでございますが、御存じのように、農薬につきましては、作物残留性農薬と土壌残留性農薬につきましては指定いたしまして、使用基準を定めて規制いたしております。  問題は、先生御指摘の水質を汚濁する農薬であろうと思います。そういった農薬につきましては、現在五種類の農薬を水質汚濁性農薬と指定いたしまして、知事が、水産動植物の被害を防止する、あるいは公共用水域を汚濁しまして、それが最終的に人畜に被害を及ぼす、そういったことのないような見地から使用地域を指定いたしまして、その地域では知事の許可がなくては使用できない、そういったことを定めることができるようになっております。ただ、そういうことでございますけれども、農薬なり肥料の中の窒素、燐酸、そういったものが農用地にまかれまして、それがどういう経路をたどって、どのくらいの量が排水に流れるか、そういったことは実はまだやっておりません。問題は、そういう農用地にまかれました肥料中の窒素、燐酸あるいは農薬の成分、こういったものが植物体にどのくらい吸収され、あるいは土壌にどのくらい吸着され、あるいは土壌中に、地下に浸透するか、あるいは排水にどのくらい出るか、そういったことが問題でございますので、実はこういう調査をやるということで、四十七年度予算で予算を要求いたしております。この予算が通りますと、そういう意味で調査をやりまして、その結果によりまして先生御指摘のようなこともさらに検討してまいりたい、かように考えておる次第であります。
  76. 西田八郎

    ○西田委員 四十七年度ということですから来年度ということでありましょうけれども、非常におくれておるので残念でならないのです。遺憾と思いますが、しかし着手されれば、できるだけ早い機会にそれらの科学的な要素を加えて——もちろんこれは地方地方の土質なり地形なりによってかなりの差異が生じてこようと思いますけれども、まず総括的な基準を出して、そしてそれらの数値に見合って対策を立てられるように、これは質問じゃありませんが、特に要望しておきたいと思います。  ついでに、農林省の方がおられるので、場合によっては所管が違うかもわかりませんが、養豚場などから出される排水もかなりの汚濁の要因になっておるのではなかろうかと思うのですが、こういうものについての規制を——これは非常に小規模で行なわれておる場合は、その設備をするだけでも、とてもじゃないがたいへんだということになろうと思うのですが、食肉も国内で需要をだんだんとまかなっていこうという傾向のときに、こうした問題も放置しておくわけにいかないと思うのですけれども、そういう点はどうお考えになっておるか。もし答弁してもらえる人がおりましたら……。
  77. 山中正美

    ○山中説明員 お答えいたします。  現在畜舎排水等につきましては水質汚濁防止法の対象になっていないことは、先生御承知のとおりだと思います。ただ、現在農林省と折衝中でありまして、来年度早々に畜舎排水をいわゆる水質汚濁防止法の規制対象に加える方向で検討しております。ただ、先生御指摘のように、非常に零細な、たとえば一頭、二頭のような飼育の農家等につきましては、こういうふうな規制というのは非常にむずかしい段階にありますが、何頭以下というようなすそ切りの点で、現在農林省と鋭意検討を進めている段階でございます。
  78. 西田八郎

    ○西田委員 それでは、農業関係では大体御答弁いただいたわけですが、洗剤のほうはひとつ環境庁のほうから督励をしていただきまして——これは厚生省になるのですか。
  79. 山中正美

    ○山中説明員 洗剤につきましては、御承知のとおり、工場でいろいろ洗浄する場合には当然水質汚濁防止法の対象になりまして、今後これについてはどういうふうなかっこうで規制していったらいいかということについて現在検討しております。ただ、御承知のとおり、大部分が家庭の洗たく用のものでありまして、この問題につきましては、現在所管というのは明瞭でございません。一応製造元は通産省が所管いたしておりますし、一般的な家庭的な衛生的なものは厚生省というので、それが水質規制を及ぼす場合にはどういうふうになっていくか、非常に複雑な問題でございまして、それもあわせて検討段階でございます。
  80. 西田八郎

    ○西田委員 あわせて検討——四十七年度ということで非常に手ぬるいことを私ども全く遺憾に思うわけであります。  そこで、建設省の下水道部長がお見えになっておるのでお伺いしたいわけでありますが、これらの問題は、徹底的に水を自然に返すという意味で浄化するためには、われわれはどうしても下水道の完備以外に方法はないように思われるわけです。昨年下水道法の改正等もありまして、下水道に関する五カ年計画というようなものも立てられておるわけでありますが、現在その下水道事業というものがどの程度促進されておるものか、ひとつその実情について御説明をいただきたい。
  81. 久保赳

    ○久保説明員 下水道対策が水質保全に寄与することは先生御指摘のとおりでございまして、ほかのいろいろな規制と相まちましてこの下水道対策を進めるべく二兆六千億の閣議決定がことしの八月二十七日に行なわれました。それに対する進捗状況ということでございますが、当初予算におきましては、四十六年度予算は国費で六百六十五億、事業費にいたしますと二千五百億であったわけでございますので、五カ年計画に対する進捗割合は九%ということでございます。その後補正予算が組まれる、こういう段階になりまして、国費で補正予算が三百七億円、事業費にいたしますと総合計で三千七百億円になりますので、その五カ年計画に対する進捗の割合は一四・八%ということになるわけでございます。これは来年度の三月三十一日現在ということであります。それによりまして、下水道の普及を全国の市街地面積に対応して普及率ということであらわしておりますが、四十五年度末の普及率が二二・八%でございますのが来年三月三十一日現在には二四・九%、こういう普及率にまで進捗するというのが実情でございます。
  82. 西田八郎

    ○西田委員 先進諸国の中で下水道の普及率が低いということは、日本がきわめて低率であるということは定説のようになっておるわけでありますけれども、五カ年計画の中でその初年度がわずか二・一%しか上昇しないというようなことでは、はたして五カ年で達成ができるのかどうか、初年度のことでありますから無理からぬことであろうと思いますけれども、しかし、それは急を要さないと、現在の汚濁負荷量は増す一方なんですね。人口の集中度も、いろいろ対策は立てられておってもこれは排除することはできないし、といって、農村地域においても、あるいは村でなくても町のほうの、市に該当するような町も最近ふえてきておるような状況からいきまして、ますますその負荷量がふえているように思われるわけです。したがって、これは早急にその対策を立て直さなければならぬと思うのですが、やはり当初計画を立てられました、いま説明のあった二兆六千億というその予算ではたしていいのかどうか、もっとそれを大幅にふやす、そういうようなことも考えなければならないのではないかと思いますが、その点はどういうふうに考えておられるか。従前どおりでいかれるのか、あるいはもっとその見直しをされるのかですね。
  83. 久保赳

    ○久保説明員 五カ年計画、二兆六千億の閣議決定がされたわけでございますが、その総額が現在の水質汚濁対策等に対応するのに十分かどうかということにつきましては、昨年の公害国会の下水道法の一部改正並びにその後の下水道整備緊急措置法の制定時に、国会でもずいぶん議論になったところでございます。私どもこの二兆六千億の下水道整備計画を議論している最中には環境基準が実はきまってきたわけでございますが、現在きまっております環境基準は、八十二の水域に国がきめたものがきまっております。その八十二の水域に五年間で完全にその環境基準を達成をするというのに必要な下水道事業費は、実は四兆円弱かかるわけでございます。したがいまして、そういう意味合いからいいましても、八十二の水域が今後さらに環境基準がきまってくることを考えますと、四兆円をはるかに上回る投資をしなければ先生御指摘の環境基準を守れぬじゃないかということになるわけでございますが、下水道整備五カ年計画、二兆六千億では、これは十分ではないというふうに私どもも考えております。しかし、国全体の経済計画も閣議決定をされ、その中で、下水道投資がある範囲内にとどめられているというものを受けまして、二兆六千億がきまってきたわけでございますので、私どもといたしましては、ことし閣議決定されたばかりでもございますので、この中で特に水質環境基準を守る必要がある地域に重点を置いて整備を進めていきたい。しかし、それで十分でないことは明らかでございますので、これの計画の進行の過程で検討をしてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  84. 西田八郎

    ○西田委員 四兆円という数字、ここには、ことしの九月の現状を述べられておる中には三兆七千億という数字になっておるわけですけれども、これはさらに増高していく一方だというふうに思うわけなんです。その場合、国の負担される率が定められておるわけでありますが、少し低いのじゃないかと思うのです。ということは、私は先ほども申し上げましたように、滋賀県の大津に居住しておるわけですが、最近琵琶湖の水の汚染度、汚濁度というのは非常に激しくなってきておりまして、過去十三年の統計の中から、前十年の汚濁進行度とあと三年の汚濁進行度を透明度であらわしますならば、その十年間で低下した透明度が、三年間でその倍の低下になっておる、こういうふうにいわれておるわけでありまして、特に南湖といわれる大津、草津、守山等の所在する地域の上水道のいわゆる用水源、水源になっておる南湖は、もう全く手のつけられない状態になっておるわけです。これはそのまま宇治川から淀川へ流れて大阪の上水道にもなるわけでありますから、単に滋賀県だけの問題とはいえない。これは京都にも疎水を通じて水を送っております。そうしますと、尼崎もこの水を使っておるわけですが、京阪神一帯の上水道の供給源——もちろん大和川だとか神崎川等もありますけれども、その用水源になっておるわけですね。上水道源になっておるわけです。そうしますと、これはもう放置できない状態にある。しかし、下水道の国庫負担率が非常に低い。そこへ、あまり裕福な市ではないというようなことから、起債にも問題もあるし、受益者負担が非常にたくさん取られるとかいうようなことから、どの市においても、必要性を認めながらもなかなか実現ができないというような形になっておるわけです。これは単に滋賀県だけの問題じゃなしに、やはり近畿一円の問題として考えていかなければならぬので、ぜひともひとつその点について、建設省の特段の配慮が必要になるのではないかと私は思うのですが、そういう点についてどうお考えになっておるか。
  85. 久保赳

    ○久保説明員 下水道整備における財源の問題で、下水道整備費の中で国が占める割合が低過ぎるのじゃないか、こういう御指摘でございますが、実は五カ年計画の閣議決定をする前に、政府部内でもずいぶん議論がありましたし、さらに、下水道整備緊急措置法の国会審議の中でも、あるいは下水道法の一部改正の中でも、非常に大部分の議論がその財源問題にいったわけでございます。私どもも、現状の財源負担、これが適当であるかどうかということにつきましては、必ずしも適当であるとは思っておりませんが、ただ、下水道事業は、過去から非常に投資のストックが少ない中で急速に整備を要請されている、そういう中で事業実施主体であるところの公共団体側の御意見その他を全部集約いたしますと、まず総事業量をふやしてほしいという要請と、それから国の負担率を高めてくれ、こういう要請とございまして、それを一ぺんに両方とも達成することがなかなか困難な事情もございまして、まず第一に総事業費をできるだけふやしていこう、こういうところに重点を置きまして、その中で国の負担率も逐次高めていくということで、第二次の五カ年計画当時から比べますと、第三次では国の持ち分を若干ふやしたということでございます。一ぺんにはそういう形になりませんけれども、逐次そういうふうにふやしてきておるところでございます。  それからなお、私ども下水道整備費の財源は一体どういう経費で、どういうふうにまかなっていくべきかということについては、十分過去のやり方を反省する必要がある。それにいま先生まさしく御指摘の琵琶湖の問題を例にあげて御説明いただいたわけでございますが、琵琶湖の汚濁対策は、ただ単に滋賀県の問題だけではなくて、もう少し広域的な、むしろ下流の水利用ということに対応するための事業、その費用の負担という問題がございますので、私ども、やはり下水道事業に対する費用負担のあり方は、従来の地域住民の環境整備施設だという考えから少し逸脱する点があろうかと思いますので、その点は十分今後の問題として検討いたしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  86. 西田八郎

    ○西田委員 久保さん言われるとおり、それはことばだけでなしにぜひ実行に移してもらいたいと思うのですが、生活環境あるいは健康の環境というだけでなしに、この水の問題は人間が生きていく上においてなくてはならない問題ですし、文明度が高まれば高まるほどそれだけ水の使用量はふえるわけでありますから、水の使用量がふえるということはそれだけよごすことになる。そのよごれる水をやはりきれいにする。しかし、水がなくては生きていけない人間の生活だという点に重点を置かれて、国の事業としてぜひいまおっしゃるような点で転換をはかりつつ、その地域だけ環境がよくなったらいいというだけではなしに、その点にもっと重点を置いた方法で今後とも取り組んでもらいたいと思うわけですが、ただ、この話を聞いておりまして、五年あるいは場合によっては十年になるかもしれません、これらの進捗ぐあい等を見ました場合に。その場合に、この下水道が施設されるまでの間、先ほども言いましたように汚濁負荷量が非常にふえておる。しかも、一般家庭用排水等の影響も大きい、農業排水も大きいということになりますと、これはもうお手あげの状態ではないかと思うのです。したがって、公共用下水道なり流域下水道なりの施設がされるまでの間、一体どういう対策を考えておられるのか、もしもあったら、ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  87. 久保赳

    ○久保説明員 水質環境基準を達成するための施策というのが、実は先生御承知のように閣議決定になっております。あの閣議決定の中で、第一番は工場排水の水質規制、それから下水道等の公共施設による水質汚濁の防止施設の整備、それからさらには、湖についてはそういうことがなかなかできませんでしょうけれども、河川等については河川の流況の改善をする、それから工場等の立地等については適切なる処置をとる、こういういろいろな方法が、実は閣議決定できめられた施策の中にあるわけでございます。私どもは、その中で、主として下水道の整備によって水質環境基準を達成するという地域には重点を置いて下水道整備をするわけですが、それが時間がかかるから、その過渡的な措置いかんと言われますと、これは規制しかないと思います。個々の家庭下水等に対して規制をかけていくということはなかなかむずかしゅうございます。おそらくできないと思います。したがいまして、私は、そういう地域に対しましては、現在の下水道整備を一そう進めていくということ以外にはないのではないか、こう思います。  それからもう一つ、下水道整備を進めていく段階で考えられますことは、私ども現在そういうことを実行に移してきておるわけでございますが、まず処理場を整備いたしまして、それから下水道のパイプの本管をつくって、既存のたとえば小さなどぶみぞのたぐい、非常にきたないところの水、それを本管にいきなりつなげまして、これは完全な下水道整備ではございませんけれども、水質汚濁対策上一応暫定的なそういう措置をするということを実施いたしております。例をあげますと、東京都の多摩川でございますが、多摩川では、下流部に東京都の上水道の水源がございますが、その上流の三多摩地域の下水道整備が非常におくれておるわけでございます。したがいまして、私どもは、一つの方法としまして、流域下水道の本管をずっと延ばしていきまして、途中からその既存の悪水路の水が川に入らないように途中で受けとめまして、処理場のほうに導いていく、こういう措置をとっているわけでございますが、そういうことによって、暫定的に水質汚濁対策を進めていこうという措置をとる。これはどこにでもやれることではございませんけれども、そういうことがやれるところでは、そういう方法をもあわせて実施をしているというのが実情でございます。
  88. 西田八郎

    ○西田委員 たまたま私が申し上げようとしておったことの説明を受けたわけでありますが、その場合に、たとえば琵琶湖なら琵琶湖の場合、守山から大津まで、瀬田川の東の側まで流域下水道の本管だけ埋めて、それをずっと瀬田川の下のほうに持っていって処理するということになれば、これは私はきわめて簡単とは言いませんけれども、比較的少ない事業費で本管の埋設だけはできるのではないか。そうすれば、あといま指定されたような河川を指定をして、現在の各家の排水というものをそこへ導入することをすればいいわけですから、暗渠にするわけではないので簡単に——簡単というと語弊があるかもわかりませんが、比較的容易に導水ができるのではないだろうか、処理の方法というものが見つかるのではなかろうかというふうに思うわけでありますが、そうした点、ぜひひとつこの際強力に、まだ下水道を整備されていない地域に対する暫定措置として、私は、これはただ単に滋賀県の例をとっているだけの話で、各地域におきましてもそういう問題があろうと思うので、全国的にやはりそういう問題をひとつ考えていただきたい。  同時に、ここで考えられることは、いまうまい水を飲もうということで、どこかの会社によって開発された家庭用ろ過器というか浄水器というものができておるわけですが、排水をろ過、浄水するという方法も考えられるのではないかと思うのです。各家の下水の出口の最後のところに簡単な装置を取りつけて、水をある程度きれいにして流すということにすれば、私は全体に集積されてきたときにもかなり良質のというか、清浄化された、浄水された水を排水することができるのではないかと思うのですが、そういう点どうですか。費用がかかり過ぎてできませんか。あるいはそんなことはもうむだなことだということで研究もされていないのかどうか。
  89. 久保赳

    ○久保説明員 お答えいたします。  各家庭で上水道のろ過器に匹敵するようなもの、排水側の設備を検討したらどうかという、こういう御意見だと思いますが、これは非常に私はむずかしいと思います。おそらく各家庭で自分のところから出てくる排水をどこか一カ所に集めてそこに設備をする。浄化でございますから、これでやってやれないことはございませんが、小型のもので能率的に実施をするということになりますと、これは非常にコスト高にもなります。それの一つの、それそのものではございませんが、たとえば水洗便所にした場合に各家庭ごとに浄化槽をつくる、こういうようなことが水洗便所に対しては現にやられておりますが、そういう小さなものの投資は非常に高くつきまして、それを全部に強制してやらせるということになりますと、これはちょっとむずかしいのじゃないかというふうに私は思うわけでございます。
  90. 西田八郎

    ○西田委員 しかし、むずかしいむずかしいと言いながら、最近、いまお話の出ました水洗便所のろ過方式なんかは、非常に技術が開発されて簡単になってきておるのじゃないですか。一般の家庭でも、要するに、前は水槽を掘って浄化装置をつけなければならなかったのが、最近は小さなつぼの中で浄化するというような方法も考えられておるし、もっと端的に言えば、古いなかでは、きたない水をこすために木炭だのわらだのをほうり込んで浄化したこともあるのですよ。だから、各家庭ということになれば別ですけれども、まあ五軒か六軒——どこの都市にも町内会というのがあるし、その町内会がまた幾つかに分組というか、組に分かれておるわけですね。だからそれらで一つずつ共同で持つというような形にすれば、これは私はできぬことはないと思うのですよ。やろうという気がないからやれないのじゃないですか。昔だって、きたない水をそういうふうにして、飲み水を山の水を引いてきて、そしてそれを浄化して飲んでいたということもあるのですから、それよりももっとよごれてはおりますけれども、何らかの方法というものを考えれば考えられぬことはないんじゃないかと思うのです。そういうように単価が安く、そしてもっと軽便にというようなことを中心にして考えていけばと思うのですが、いかがでしょう。
  91. 久保赳

    ○久保説明員 御指摘のような方法を検討する必要は私はあると思いますけれども、ただ、やはり地域的に非常な密集地でそういうことをするということは、非常なむずかしさがあろうかと思います。したがいまして、密集地のようなところでは、かりにそういう町内会単位に暫定措置をいたしましても、下水道整備が進みますとそれがむだな投資になるという、二重投資的な性格もございますので、その経費が非常に安ければあるいは暫定措置としてけっこうかと思いますけれども、二重投資をなるべく避けて、住民の皆さんの負担も軽減するような方向で努力すべきだと思いますので、できるだけ早く下水道の整備をして、そういう二重投資を避けるというようなことで努力をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  92. 西田八郎

    ○西田委員 それは、言われることはわかりますよ。わかりますけれども、その下水道整備がそれではどうかというと、先ほど答弁があったような状態なんですよ。だから、それは何も特定の地域だけならあるいはもっと早く進むかもわかりませんが、しかし、いまちょっとした下水道を掘ろうとしても、土地の問題だ何だということでごたごたするのですよ。なかなか計画どおりに進んでいない。ところが、水の汚濁だけは、これはもう全国一様にものすごい速度で進行しているわけですよ。だから、そうしたものも防止するためには、何としてもやはり何らかの応急措置をしなければならぬわけですから、下水道だけにこだわらずに考えられたらどうだということを言っておるわけです。ですから、そういう方法を、さっきこの答弁の前段に言われた、一つのある河川を指定して、そしてその指定した河川に集中して水を集めて、その集まった水をどこかの処理場で処理するというような方法も一つだし、また、それさえも非常にむずかしいという場合には、いま言ったような家庭を中心にした簡単な装置というものも考えてしかるべきではないか。特にいま下水道の対象になっているのは、人口の集中しているいわゆる市街化区域でしょう。農業排水や家庭用排水というものは、全国至るところどこでも使われるわけです。そういうものを処理するために、人口五千や六千あるいは一万足らずのそんな町村で、それだけの設備はとてもできませんよ。だから、そういう点でどうしたらいいかということを考えてもらいたいということを言うておるわけです。そうしなければ、もうわれわれの飲み水でさえ保証されないような状態になってきておるのですから、だから急を要するということで申し上げておるわけです。  最後に、いま水質保全局長見えたようでありますけれども、水を守るということは非常に重大な問題ですが、特に、私、河川の改修のためにこの水の自然浄化の能力というものがかなり阻害されておるのではないかというふうに思うわけですが、そういう点、いま言うように下水道以外にないのか、何か河川改修をし、かつ、その改修の後において、その自然の浄化能力にひとしいような方法というものは考えられないのかどうか、ひとつお伺いしたいのです。
  93. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いまお話しのように、河川の流況、流量等によりまして水の作用というものは非常に変わってくるわけでございまして、私どもは、やはり河川の流況、流量に応じまして規制の強化ということをまず一つ考えたい。それでもなかなかうまくいかないという場合は、これは建設省その他にお願いすることになろうかと思いますけれども、それは新しくバイパスを設けるとかフラッシュウォーターをするとか、そういうこともあわせて御研究を願いまして、河川の流況、流量に応じました対策というものは今後とも考えてまいりたいというように考えております。
  94. 西田八郎

    ○西田委員 長官がお見えにならないので、政務次官お見えになっておるのですが、いま申し上げましたように、非常に水の汚濁という問題は社会的問題にまで発展をしてきておるわけであります。したがって、いま建設省あるいは環境庁、それぞれの政府委員から説明を聞きましたけれども、環境庁としても、この問題、水は人間の生活にも産業の発展にも切っても切れない重要な物質でありますから、それが汚濁されて、そのことのために人間の生活が破壊される、生命、健康にも害があるということであってはならないと思いますので、ぜひひとつ強力にこの水の対策を進めていただくようお願いをしたいと思いますが、もし御意見がありましたらお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  95. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 率直に申し上げまして、この水質の問題は技術的にも行政的にもおくれております。また、これから解明しなければならぬ点がたくさんございます。先生と同様に、私も、国民生活に非常に関連の深いものがこのような状態にあるのに対しましていら立たしさを感じておるわけでございます。このいら立たしさを環境行政の上でさらにそれにこたえ得るような措置を進めてまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。
  96. 西田八郎

    ○西田委員 終わります。
  97. 小林信一

    小林委員長 午後二時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時八分休憩      ————◇—————    午後二時七分開議
  98. 小林信一

    小林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  公害対策に関する件について調査を進めます。  質疑を続行いたします。島本虎三君。
  99. 島本虎三

    ○島本委員 きょうは政務次官に御出席願いまして、ほんとうに御苦労さんでございます。  きょうは、特に前回の委員会の引き継ぎ、ペンディングになっている点をここで解明したいと思いますので、大臣でなければほんとうはぐあいが悪いのです。しかし、私は、それにかわって出てまいりました次官でこれは十分検討してもらいたい、こう思うわけでありますので、一応その点お含みおき願いたいと思います。したがって、今度は次官にお伺いしますけれども、あなたが答弁する場合、これは大臣にかわるのであるから当然大臣と同じである、私はそういうふうに理解します。また、そうでなければならないと思います。その場合、ここであなたが約束されたことは、どういうふうなコース、ルートで実現しなさることになるのか、そのルートをひとつお聞かせ願いたい。それが一つ。  もう一つは、大臣と違って次官だけでやっている専門の職分をおきめになっておられるかどうか。きめておられるならば、その点もこの機会に明らかにしておきたい、こう思いますので、ひとつよろしく御解明願います。
  100. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 御質問の第一点は、十分に長官に私からお伝えをいたしまして、長官を通じて、また長官の指揮に従って処置をいたすつもりでございます。  それから、私は所管をきめておりません。いわゆる副大臣として、大臣とともどもに処理に当たっておるというわけでございます。
  101. 島本虎三

    ○島本委員 では、次官がここで答弁されることは大臣と共同責任である。したがって、閣議にかける場合には、当然次官から大臣を通して責任をもって閣議で解決をする、こういうようなことになろうかと思います。  最近環境庁では、いま一番大きい問題は大気汚染と水質汚濁、油の問題を含めて、海洋を含めての大きい問題になりつつあり、これは世界的な規模になっております。したがって、環境庁ではそれに対して、最近は、BODでもない、CODでもない、今度はTODというような一つの単位を発明されたのか、発見されたのか、これを実行しようとされておるようであります。一体環境庁演出のTOD、これはもう実験計画の中にどのように盛られているのか、その内容はどういうものであるのか、それができたあとBOD、CODとはどういう関係になるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  102. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 詳しくは担当の局長から説明申し上げますが、現在のBOD、CODが必ずしも総合的に汚染を把握するのに十分でないという観点と、もう一つは、これの監視・測定について、かなり複雑な、また時間を要する問題でございますので、この二点、さらにほかにもあるかと思いますが、これを解消いたしまして、監視・測定を迅速に行ない、常時監視を行なうということ、それから汚染を総合的に観察できる、こういうたてまえからその検討を進めておるという現状でございます。
  103. 島本虎三

    ○島本委員 当分これは検討段階であって、実行の段階ではないということですか。
  104. 河野義男

    河野説明員 現在の水質の測定につきましての指標は、BODあるいはCOD、海域につきましてはCODで測定しているわけでございますが、先ほど政務次官から御説明申し上げましたように、いろいろ問題があるわけでございます。そこで、TODという指標を採用いたしまして、今後、それを適用する上のいろいろな問題点を解明いたしまして、そういった問題を解決した段階におきまして切りかえを行ないたい、かように考えております。本格的な取り組みは、四十七年度からこの問題に取り組みまして、二年ないし三年の期間を見て、現在やっております監視・測定の体制を切りかえたい、かように考えております。
  105. 島本虎三

    ○島本委員 私も研究してありますから、あえて言います。BODの場合は五日ぐらいかからないとその数値が出てこない。またCODの場合は一時間。しかし、今度の場合には、分をもってこれを表示できるというような利点がおありになるように聞いておるのです。そういうようになります場合には、これはもう人手を要しなくて、短時間に簡単に測定ができるというような一つの有利な点があるのじゃなかろうかと思うのです。質問したら、そういうようなところを答えたらいいのです、こういうような利便がありますというような。言われないから、こっちで言ってやったのですがね。  なお、それとあわせて、今度はこれをやることによって、BOD、COD、TODというふうにして分離するような問題が生じ、あるいはまた、それを使うことによって、いまでもBOD、COD、この二つでもなかなか困るのに、もう一つTOD、これは便利だと称して三つ並列にすることによって複雑になりはしないかという心配があります。この点は、TODを使ったらBOD、CODは使わなくなるのか、また、並列して使うのか、この点はいかがなんです。
  106. 河野義男

    河野説明員 現在BOD、CODによりまして測定しておりますが、今後TODを採用することが可能になりました段階におきましては、TODによりまして汚濁の状況を把握したい、かように考えております。なお、切りかえにあたりましても、相当期間が必要となってまいりますので、先ほど申しましたように、こういった期間も見まして二年ないし三年というふうに考えております。
  107. 島本虎三

    ○島本委員 先般、大臣並びに官房長を含めまして、この公害対策基本法第十九条によりますところの公害防止計画の作成の問題で、だいぶわれわれとの間に意見が食い違ってしまいました。私は、その点だけはよく解明しておかないと今後のためにもよくないんじゃないか、こう思いますので、いまこの点についてひとつ解明さしてもらいたいと思うわけです。したがいまして、いままでの鹿島、水島——公害がないはずの鹿島コンビナート、こういうようなところで一体どういうふうな——いわゆる指定をされておりませんから公害といわないかもしれないが、どういうような公害関係病気が発生し、どういうような被害を受けた人がおりますか。これは環境庁でなければ通産省、でなければ厚生省のほうから発表願いたいと思います。
  108. 山本宜正

    山本説明員 お答えいたします。  四日市はすでに認定した地域でございますが、鹿島、水島につきましては、御承知のように被害者救済法に基づく認定地域ではございませんので、いわゆる救済法に基づく公害病患者というものは現在において出ていないわけであります。大気の汚染あるいは水質の汚濁によりましての影響患者の出現等につきましては県がいろいろな形で調査をしておられるわけでありまして、そういったような調査の結果で、その汚染の影響があるかどうかということを見きわめてまいりたいと思いますが、現在のところ、公害病といえるような患者さんが出ているというぐあいの報告は、実は受けていないのであります。
  109. 島本虎三

    ○島本委員 それならば、茨城県の鹿島臨海工業地帯建設事務所港湾部臨時職員の江波という四十八歳の女の方、これはこの九月の初めから重度のぜんそくにかかって、原因は工場の粉じんと公害によるものである。当然これは医療費の減免の申請をしてまいった事実があります。それはもう県当局によって却下されております。しかしこれは、理由としては公害地区の指定を受けておらない、生活保護法の適用には無理があるような生活状態である、このような事実によって、これはもうぜんそくであり、公害病でありながらも、それを受けておらないのであります。疑わしい患者を救済するのは公害救済の一つの精神である、こういうように長官も言っていたのでありますけれども、これは現に茨城県の鹿島臨海工業地帯、その建設事務所の港湾部に働いている臨時雇員である、こういうような人たちがもうすでに公害病と、はっきり医者が認定しておる。公害病と認定されても、これは指定地区でないからそれはもう認定にならないんだ、こういうようなことであります。しかし、これはもうちゃんと、かかりつけの病院の院長先生は、はっきり、肺にゴマ粒大の影があり、たんがどす黒い、大気汚染、粉じんの影響である、したがってこれは公害病そのものである、こういうようにして、これは若林三圭という院長ですが、はっきりこれを診断しているわけであります。医者が診断している。それでも、これは公害防止計画の作成された地ではない、したがってここは指定してない、指定していないがために、病気が出てもほったらかしになる、これは次官、矛盾じゃありませんか。行政上どこかに手落ちないですか。私は、これは十分考えなければならないんじゃないかと思うのです。これはどのようにお考えですか。こういう事実はございませんか。事実はないと言った人から答弁してください。
  110. 山本宜正

    山本説明員 すでに先生公害病、特に大気汚染による影響ということを十分御承知のことと存じますが、今日救済法に基づきまして、大気汚染の影響といたしましては、ぜんそく性気管支炎、気管支ぜんそくというような四つの症状及びその続発症を認めておるわけであります。御承知のように、大気汚染のない地域におきましてもそれと同様な症状を示す人が一・八%くらいいるというようなことがすでに知られておるわけでありまして、大気汚染の著しいところでは、それがさらにふえるということでございます。したがいまして、個別の患者さんにつきまして、それを一人のお医者さんによって、明らかにこれは公害病だということの認定につきましては、非常にむずかしさがあろうかと存じます。したがいまして、鹿島の地域におきましては、今日の開発がなされる前の時点であの地域の大気汚染の影響による疾病の調査をしておりますが、それが今日の時点ではたしてふえているかどうかということも県のほうが調査を進めるように聞いておりますので、そういったようなことを見計らいまして、指定の地域を考えていくという方式が考えられるわけであります。一人の先生の責任において公害病とおっしゃったことにつきまして、それがはたして公害病であるかどうかということを認めることはたいへんむずかしいのではないか、こういうふうに存ずるわけであります。
  111. 島本虎三

    ○島本委員 では、なぜ複数でやらせないのですか。そういう指導をなぜやらせないのですか。一人でだめだったら複数でやらせたらいいじゃないですか。
  112. 山本宜正

    山本説明員 その点につきましては、県の衛生部のほうにも、十分それを検討するような委員会を設けるという方向を考えているようでありますけれども、それでけっこうだというぐあいに指導をしているわけであります。
  113. 島本虎三

    ○島本委員 県のほうでそれを検討する委員会ができているから、これはけっこうであるという考えは、入れものをつくったら中のものがわからぬでもけっこうだというのと同じなんです。法律をつくってやったからそれでいいのだという考え方と同じなんだ。法律を実施する場合には、政令、省令、規則をつくって実施をしていく。それが、委員会ができたらそれでいいんだという考え方は何たることですか。現にこの人は病気になっていると医者が診断しておる。その一人の医者で足りないんだったら、指定する医者の診断を受けさせたらいいじゃないか。そういうふうに勧告するのがあたりまえじゃありませんか。医師の明確な診断があっても、これは公害地区指定のない場所であるから救済されないのだと言うんでしょう。それは、ないのが問題なんじゃないんですか。どうもその辺はちょっとあいまいなんです。あいまいというよりも熱意がないんです。病気が発生したら直ちに救済される、これが健康第一番の政策なんです。どうもこの辺は、いろいろな点でまだまだ指導力が不足だと思いますけれども、そのほかに、なお、鹿島に至っては、県当局の態度について十分これは皆さんのほうで点検したことがございますか。どうです。ないならないでいいですよ。——では、次へ行きます。  とにかく県がやっているからいいと言いながら、県当局が調べたデータというものと、これじゃだめだという住民が自主組織をもって、今度公害対策町民協議会、それから日本学者会議、こういうような名前で、それぞれ自主的にこれは点検を始めているんですよ。それと数値ががらっと変わっているじゃありませんか。そして、いろいろな病気発見し、これはもうたれ流しであることを発見したのは県当局じゃないんですよ。これは全部この人たちが発見しておるのです。その県当局に対して、県当局がやっておるからいいんだという考え方は、一体環境庁の皆さんは何なんですか。ただ、えらいいすにすわっていればそれで仕事になる、こういうふうにお考えなんですか。念のために、あの辺で、鹿島コンビナートでさえも、もうこれはこの人たちのデータによって、八月の二十八日から四日間ですか、臨海工業地帯の泉川浜、それから国末浜、これらの工場の排水口の近くでいろいろと水質の調査をやったデータがあがってきているでしょう。見ておりますか。見ていなければこっちで発表します。
  114. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 先ほど県の態度ということで、内容がわからなかったから答弁しませんでしたが、いまのお話でややわかってまいりました。ただ、この問題は、鹿島に限らず各地で県の調査とそれから民間の有志の方々調査が必ずしも一致しないという事例がたくさんございます。それは調査の方法、器材の問題、いろいろそごをいたしておる原因があるかと思いますが、われわれ指導する立場におきましては、県の調査も、もちろんこれは自治体が責任を持ってやっておりますから、信頼をおく筋合いのものではございますけれども、これと違った調査ができておるという実態がありまするならば、これは県の段階においても両者をよく照合いたしましてさらにはっきりしたものをつくる、これが当然の態度か、このように考えております。
  115. 島本虎三

    ○島本委員 同じ八月二十八日から四日間の調査の中で、当然これは皆さんのほうで調べておかなければならぬ六価クロム、これは基準は〇・五PPM以下でなければならないはずのものを、鹿島の日本ステンレス、ここで〇・八PPM、これが検出された。信越化学、〇・七二検出された。鹿島電解、これも〇・七二検出された。県当局はあわを食って調べたところが、県当局の機械によっても〇・六五PPM——これは基準が〇・五PPMなのに、それを上回っておった。これはまさに県当局の態度はほったらかしではないですか。だから、点検を十分してパイプを通じておかなければならないというのはここなんです。こういうようなのを当然やらなければならない県が、サボタージュしたかのごとくに、公害対策町民協議会や日本学者会議、この人たちの善意によって行なったこの監視の網に引っかかって、それでようやく発動する、こういうばかな監視ってありますか。私は、こういうようなことは例としてまだまだあるのです。どうも県当局は、企業を擁護しておるような、こういうような態度がはっきり見えるのです。こういうようなところである以上、やはり指導を厳格にするか、特に点検、監視、こういうようなものについてこれを定期的に行なうか、こういうようなことにしないと、鹿島はいまにどういうようなことになるのか、とんでもないことになってしまうのじゃありませんか。だから、十分このやり方を検討してみているかというのはそこなんです。  それで、この鹿島工業地帯が発足したのはいつですか、通産省。
  116. 森口八郎

    ○森口説明員 お答え申し上げます。  昭和四十年から逐次工場が造設されつつあります。
  117. 島本虎三

    ○島本委員 そのときにどういうような趣旨、どういうようなキャッチフレーズでこれを運営、指導いたしましたか。
  118. 森口八郎

    ○森口説明員 鹿島臨海工業地帯は、全く新しい工業地帯であります。こういう新しい工業地帯は、当然工業を行なうにあたって公害を出さないということが至上命題でありますので、私どもといたしましては、公害のないコンビナートをつくられなければいけないという趣旨のもとに、県当局と協力をいたしまして、公害のないコンビナートをつくるように企業側を指導してまいったところでございます。
  119. 島本虎三

    ○島本委員 ある場合には、出漁中の漁師が、公害のないはずのこの出先の海、ここへ網がひっかかって、からだを水につかって作業をしたところが、もうからだにぶつぶつのような斑点ができたり、炎症を起こし、一種の皮膚病にかかった。それは住友金属の排出によるということははっきりしておる。そしていま私が申し述べた六価クロムも基準の〇・五以上の排出をそのまま認めておる。公害が出ないはずの指導、公害を出してはならないから公害防止計画をそこに当てはめないのだ。しかしここに出ているものに対してはどうするのですか。
  120. 森口八郎

    ○森口説明員 鹿島の工業地帯に関しましては、先生御指摘のようにいろいろ不測の事態が起こりまして、当初の予想を若干裏切られたというような感じを私どもは強く持っております。私ども現実に企業側の監督をいたしておるわけではないわけでございますけれども、先ほど先生おっしゃいました日本学者会議の新聞記事は拝見いたしました。こういう状態ではいけないということで、先ほど先生が引用されました住友金属工業あるいは日本ステンレス等を呼びまして、直ちに公害防止のための工事を行なうように指導をいたしたつもりでございます。したがいまして、八月の時点では確かに問題があったようでございますけれども、現在の時点では水に関しましては問題はないというのが私どもの現在得ておる情報でございます。
  121. 島本虎三

    ○島本委員 農工両全、無公害の臨海工業地帯、こういうキャッチフレーズで発足したのが四十年、それからいま四十六年、この間、指導は絶え間なく行なわれておったはずなんです。そしてこういうようなにしきの御旗で、おそらく鉄鋼、石油コンビナート、こういうのが発足されているのです。それから六年たっている。もう公害が出ただけじゃないじゃありませんか。人畜に被害を与えるような状態においてこれを排出しているじゃありませんか。こういう場合には公害犯罪処罰法というのがあるのですが、警察当局、こういうのは犯罪になりませんか。
  122. 丸山昂

    ○丸山説明員 突如の御質問でございますので、具体的に中身を検討いたしませんとはっきり申し上げられないわけでございますが、構成要件を具備する事実があれば、これはやはり適用になるというふうに考えられます。一般論でございます。
  123. 島本虎三

    ○島本委員 ここは全然公害を起こさない場所である、またここにそのような指導を的確に行なってきた場所である。そして発足してから六年目に当たっている。鉄鋼、石油コンビナートとして全然公害を起こしてはならないから、起こしたら救済するようなこういうような法律と計画をまだ政府も認めておらないわけです、起こしてはならない場所だから。そこに起きている。そこに今度ははっきり六価クロム、これを基準以上に出しておる。そしてそこで某漁業師は、もうすでに人畜に被害を受けておる。またここではっきりと、先ほど言ったようにもう特別に重度のぜんそくにかかっている人もある。何でもないところにこういう被害は起きない。火のないところに煙は立たないわけです。ところがこういうのをやっても防止計画がないから、当てはまらないから、当然そういうような施設もやらない、指導だけだ。それと同時にここにあるのは、そういう計画がないままに企業の善意に待っているわけです。企業がそれをいいことにしてもう基準外に排出したりそういう工事をした場合には処罰されるのです。両罰規定によってもうすでに法人も処罰されるようになっているはずです。こういうのが指摘されても結果がわからなければ動かないなんという県警があるとしたら、とんでもないことです。これは周知の事実なんです。機動隊ばかりあまり激励しないで、こういうのに機動隊を向けたらいいんですよ。農工両全、農業と工業という意味です。そして無公害の臨海工業地帯、りっぱなにしきの御旗です。いまこれが、行ってみますと、これは泉川浜、国末浜、粟生浜というのですか、約百八十戸のうちはそこに住めなくなって、通産省、もう移転の交渉を始めているでしょう。公害が起きないはずの場所にこういう人がなぜ移転しなければならないのですか。県当局もこれを認めるようになっているらしい。どうもこれはおかしいじゃありませんか。論理が合わない。もしこういうようなひどいところだったら、なぜ公害防止計画を実施させないのですか。まさにこれは、工業開発とは地元住民を切り捨てる政策に通ずるじゃありませんか。こういうことにならないために環境庁ができ、通産省にあなたがちゃんと参事官としているのでしょう。これは環境庁公害対策に対する対策をやるのが通産省の公害対策なんですか。そうじゃないはずだ。どうもこの点はわからない。こういうような事態に対して、警察はおわかりになりませんか。それからなお、こういうようなことに対してどういうように考えておりますか。百八十戸、いま移転の運動をしているでしょう。公害がないから移転するのですか、あるから移転するのですか。ある場所だったら百八十戸住めない。住めなければ、ここはなぜ住めるようにして公害防止計画を実施しないのですか。基本法にあるでしょう。環境庁、基本法をつかさどるのはあなたのほうですよ。全部の官庁が企業の前に怠慢じゃありませんか、警察を含めて。こんなばかな公害行政はあったものじゃありません。責任ある答弁を求めます。
  124. 船後正道

    ○船後政府委員 鹿島につきましては、開発当初の計画と現状がずれつつある、まことに遺憾な状況でございます。(島本委員「遺憾で済まないですよ」と呼ぶ)公害防止計画につきましては、十九条の二号に、今後公害が著しくなるおそれがある地域として、公害防止に関する施策を総合的に講じなければ公害の防止をはかることが困難、この地域といたしまして、鹿島の公害防止計画につきましてはすでに基本方針を指示いたしまして、県で目下作業中でございます。(島本委員「いつ指示した」と呼ぶ)鹿島につきましては、四十六年の九月の十七日に、第三次地域といたしまして、全体で五地域でございますが、その中の一地域として基本方針を指示いたしております。
  125. 島本虎三

    ○島本委員 一地域。全体ですか、それとも特定の地域だけですか。
  126. 船後正道

    ○船後政府委員 お答え申し上げます。  鹿島地域といたしましては、鹿島町を中心に、神栖町、波崎町、三町を地域に指示いたしております。
  127. 島本虎三

    ○島本委員 その辺で十全ですか。もう心配ありませんか。そのほかに及ぶおそれはありませんか。これは事務当局。
  128. 冨崎逸夫

    冨崎説明員 お答えいたします。  ただいま局長、答弁のとおり、本年の九月十七日をもちまして三町を地域といたします鹿島地域の公害防止計画の基本方針の指示をいたしました。この区域は鹿島工業整備の特別地域の中核区域でございまして、もとよりこの周辺に及ぼす影響等も当然この計画の中で考えるということでございます。
  129. 島本虎三

    ○島本委員 半径何キロですか。
  130. 冨崎逸夫

    冨崎説明員 ちょっと手元に資料を持ち合わせておりませんので、後ほど調べましてお答えいたします。
  131. 島本虎三

    ○島本委員 それを心配するのは、次官、こういうのです。高煙突広拡散がいま政府の指導方針になっているのです。いま病人が出たその辺だけ拾ってやってみても、広拡散によって、工場がだんだんできていくのに従って広い範囲——京葉工業地帯はいまようやく受ける段階、東京もいまようやく全地域が公害病認定地域になっている。それさえも最近ようやく決意したほどなんです。神奈川県がなっても千葉県がなっていない、東京までなっていない、六郷川を隔てて隣の大田区がなっていないという状態で、それがいまようやくこういうふうにして踏み切ったのでしょう。今度一地域であっても鹿島が——高煙突広拡散、こういうような工場が鉄鉱や石油コンビナートの誘致によってだんだんふえてくる。あとから追っかけていくようなこういう対策ではだめなんです。したがって、その計画に合わせてちゃんとマスタープランをつくって、それによってちゃんと指導するのが指導じゃないですか。できてから公害のあとを追っかけて歩いている、こういうのは決して対策ではないのです。せっかく環境庁ができたのですから、今度はそういうことがないように、いま環境保全の問題と公害対策の問題では一番権限のあるのはあなたの庁なんですから、そこが十分やらないとこれはとんでもないことになる、私はそれを心配するわけであります。
  132. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 島本さんの御指摘を待つまでもなく、われわれとしては、いわゆる開発計画と災害防止の計画とが時期的にも、タイミングも合わせて、実質的にもマッチするのが理想でありますし、そのようにいくべきものと考えております。ただし、いままでの現実は、先ほど鹿島で御指摘のあったように、あと追いになっているわけです。  これを振り返ってみますと、もっと早く環境庁ができ、政府の統一的な施策ができるということがあったとすれば、あのようなことにならなかったのではないか。このことをとうとい経験として、反省の具として、これから開発する地域につきましては、いわゆる開発計画の中に、しかもその中で、いまおっしゃったように各施設の立地の問題、そういう問題を強力に進めていく、これについて環境庁が強くタッチしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  133. 島本虎三

    ○島本委員 つい最近まで、九月にやったといいますけれども、環境庁ができて以来、この問題については数度にわたって委員会議論になっている問題であります。ただこれがおくれた原因は、あえて私から申し上げますと、これははっきり十九条第一項に重点を置いていたからでしょう。「現に公害が著しく、かつ、公害の防止に関する施策を総合的に講じなければ公害の防止を図ることが著しく困難であると認められる地域」だけをやっていたからです、これから心配されるところは二の次に考えて。つい最近まで、環境庁もそういう考えだったのです。この前の長官の答弁もそうだったのです。私は長官がおかしいと思っていたのですが、局長もそういう答弁だった。ですから、これだけは解明しておかなければならないというのがきょうの趣旨なんです。ところがきょうは初めから解明されてしまって、第二項適用であって今度は全面的にやるというのです。どうも当局はもっと研究したほうがいいですよ。だからこそこれをやるというのならいいのです。第二項もありますから、ぜひやってもらいたい。  次官、昭和四十六年十二月十四日、OECDの事務局から日本に対して中間報告日本における地域開発政策の特徴」ということで出されたのを御存じですか。
  134. 船後正道

    ○船後政府委員 実は私も新聞記事で承知しただけで、公文には接しておりませんが、やはり日本における地域開発の問題についてOECDのほうでも一つ意見といいますかコメントを加えた、このように了承いたしております。
  135. 島本虎三

    ○島本委員 この中で、「日本は生活水準を改善するために自然の保護や公害対策、住宅などの社会環境改善を密集地域のみならず、新産業地域においても進めなければならない」、これからやるところでも、こういう対策をはっきりやらなければならないということを指摘されているでしょう。いままでの、計画があるからこれはいいのだという考えではだめなのであって、対策を完全にやりなさいということをOECDから中間報告によってちゃんと指摘されている。これは環境庁、恥じゃありませんか。
  136. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 いま鹿島等特定の地域を御指摘になりまして、そこに対する災害防止計画ということで話題をお進めになっておりますから、それに対する答えとして、いかにも特定の地域だけの環境保全を考えておるかのごとき印象を先生にお与えしたということはまことに残念でございますが、OECDから指摘を受けるまでもなく、すでに環境庁におきましては、将来にわたっての日本列島全体を対象としたマスタープランをつくるということにいたしておりまして、これは中公審にもすでに諮問をいたしております。これが一番大事な作業だと存じておりますが、したがっていま御指摘の特定の地域だけでなしに、また新産業地域だけでなしに、日本列島全体を包括した考えで進めていく、こういう考えで進んでいるということを御理解いただきたいと思います。
  137. 島本虎三

    ○島本委員 日本列島のことを公害列島だと言っている。公害列島であるということは、環境保全だけしていても足りない、悪くなったのを直さなければならない時点になってしまっているのであります。この点等に対しては十分計画を進めて、まず予算の裏づけが必要ですから、次官も大いにがんばってやってください。具体的な問題をきょうは指摘するにとどめますから、この点についてははっきりしたマスタープランをつくってもらいたい。  それから、このOECDの勧告を資料として出してもらいたい、私の手元にも新聞の記事しかありませんから。しかしこれはなかなか重要な記事でありますから、こういうようなのは早く入手しておかなければならないはずですので、この点はよろしくお願いしたい。これは、委員長を通じまして資料として要求いたします。  それと同時に、せっかくいまおっしゃってくれたことは、青天のへきれきに値するようなりっぱな答弁です。日本全体の公害をなくするためにプランをつくる、これはいつまでにつくるお考えですか。
  138. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 中公審に諮問いたしておりますのは、一応昭和六十年を目途とする非常に複複な計画でございます。もう一つは、いま新全総の問題も改定の機運にあるようであります。あるいはまた新経済社会発展計画、これまた改定の時期にあります。こういうものとあわせまして、それにちょうどマッチするようなタイミングも考えながら、作業の進め方——これは非常にむずかしい問題でございまして、おそらく世界でもないプランだと思いますが、そういうように一応六十年を目標にするということで進めてまいりたい。気の長い話でございますけれどもそれでせい一ぱいだろう、こう私どもは考えておるわけでございます。
  139. 島本虎三

    ○島本委員 まだその成案はないのですね。もしできたならば、それを早く伺わしてもらいたい。  それともう一つ、そういうようにしてよくするための計画をやりながら、部分的に鹿島や水島のようにだんだん悪くする計画を放置することはできない。そのままにしておいたならば、これはまさに自己撞着ということになります。したがって、そうしないために鹿島、水島、この方面の公害に対する防除計画、現在はどうであってこれからどうするかというのを、これは資料として本年中に出してもらいたい。本年中ですから、一年ですからいいでしょう。通産省それから環境庁になると思いますが、この点を資料として出すようにお願いしておきたいと思います。それは次官いいですね。
  140. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 はい。
  141. 島本虎三

    ○島本委員 では次にお伺いします。  これも前回ちょっと議論がかみ合わなかった点ですけれども、今度、水島、鹿島に次いで北海道のほうへ行き、北海道の苫小牧臨海工業地帯も第一期を終わり、北海道総合開発計画第三期の中に組み入れられて東部地帯に広大な地帯を設定したわけです。これは通産省のほうの基礎調査はまだできておりません。しかしながらマスタープランは先にできてしまった。しかしそれによると、現在こういうような燃料をたくことによって遠く札幌あたりまで広拡散の影響を受けるであろうということをいわれておるわけであります。これは重要であるから、こういうようなことがないようにしなければならない。したがってこういうようなところには公害防止計画の地域指定をし、策定をさせるようにし、そして公害防止総合センターの設置に対するそれぞれの援助を行なってもらいたいということは強く要望されているのですが、前回はそういうことをする必要なしという答弁であった。しかし今回は違うと思います。これについては事務当局どう考えますか。
  142. 船後正道

    ○船後政府委員 苫小牧地域につきましては、これはもう先生のほうが詳しいのでございますが、いわゆる第一苫小牧と第二苫小牧が区別されるわけでございまして、第一苫小牧につきましてはすでに新産都市の中核として現に進出企業も決定し、建設中でございます。これに隣接いたしまして約一万ヘクタールの第二苫小牧が、先生ただいま御指摘のように現在ようやく用地買収等をやって開発計画中のところでございます。それで苫小牧地域全体といたしまして、特に第一のほうは、現在進出がきまっております工場がそれぞれ完全操業の状態に入りますと、かなりの汚染の進行というおそれがございますので、公害防止計画の策定につきましては、地元の御要望もございますし、私どもも地元と十分御相談の上検討を進めてまいりたいと思っております。  ただこの際に、第二苫小牧は実はこれからいろいろなアロケーションその他をおきめになる地域でございまして、いわば新規に開発する地域でございますが、この地域につきましては、先ほど来先生種々御指摘のように、あらかじめ開発計画を定める際に、住宅地域と工場地域を分離いたしますとか、あるいは緩衝地帯を設けますとか、あるいは気象条件等を勘案いたしまして工場の配置をきめるという、土地利用の適正化の問題、これが一番根本でございます。これは建設が始まってからはもう間に合わないわけでございますので、開発計画のマスタープランの際に十分織り込んでおく必要がある。こういう問題がございますので、これをどのように扱うか、関係省庁、地元とも十分検討いたしますし、また私ども現在の問題意識といたしましては、苫小牧以外にも新全総の考え方にのっとりまして、こういう新規開発を計画しておるいわゆる大規模工業開発地域があるわけでございます。こういうところの公害の未然防止のあり方というものにつきましては、現在中公審にも諮問いたしておるところでございます。
  143. 島本虎三

    ○島本委員 その旧苫小牧といわれる苫小牧市並びにその隣接工業都市、それと室蘭市、これらは大気汚染防止法による政令市の指定を受けておりますか、おりませんか。
  144. 小林信一

    小林委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  145. 小林信一

    小林委員長 速記を始めてください。
  146. 島本虎三

    ○島本委員 それはされていないのであります。ところがいまおっしゃったように旧苫小牧、ここにはもうすでに工業地帯として公害が発生しているんだ。それから新たに一万ヘクタールにわたるところの第二苫小牧、これが開発計画にのってやられるのであります。そこがまた全然指定されてないというのはおかしい。その隣は新日本製鉄、それと日本鉱業、こういうのがある室蘭市であります。あの鉄の町といわれる室蘭市も指定されていないのであります。こういうのは法実施上少しおかしいですから、十分検討し、もし指定されていないのであるならば善処するようにしてもらいたい、このことを強く要請しておきたいと思いますが、次官、よろしゅうございますか。
  147. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 いまお聞きしますと、指定されていないそうであります。あれは御承知のように道知事の権限を市長に移すわけでございますから、その必要性が十分にあるならば当然指定すべきだと思います。これはまた十分検討してみたいと思います。
  148. 島本虎三

    ○島本委員 では念のために申し上げますが、北海道のほうから指定してくれという請願が出ております。もう事務局の手元にいっているはずであります。ですから、これはそのままにしないで十分善処されるように、この点も強く要請しておきます。こればかりで時間をとるのは措しゅうございますから、次に移らしてもらいます。  これは裁判関係と警察関係、この二つについて、最近の事象からどうも理解できない点を解明してもらいたいと思います。私は最近ヒットだと思うのは、いわゆる第二回の裁判会議がつい先般、十一月四日でしたか、開かれたように私は承っております。前回の場合にはまさに暗中模索というような状態だったけれども、それでも一年後には公害罪処罰法、こういうものが去年できたり、そしてそれに基づいて公害裁判というものが意外にピッチを早めてきております。いわゆる神通川のイタイイタイ病、これは原告が勝訴し控訴されたままになっております。それと同時に、今度は新潟の阿賀野川の新水俣病、これは原告勝訴が確定しております。こういうふうになって、最近はこの裁判に関する限りにおいてはいろいろと望ましいような状態に進みつつあることを私はうれしく思います。まして新しい法理論、こういうようなものは実務上の問題点を十分検討されておるように承っております。そうして最近十一月四日に行なわれた裁判会議、これには複合公害の法律上の疑問点、このあたりを全部話し合って、これを十分まとめておられたという報告があります。それと同時に、新しい水俣病、この慰謝料に対するいろいろな要求に対する検討もなされておるという話であります。その他いろいろ新しい研究をされておるのです。そして石田最高裁判所長官は、この環境問題は先進諸国共通の問題で、これを解決し豊かな環境を取り戻すことは、全人類的課題である。根本的な解決までの間、被害者を適正、迅速に救済していくことは、民事司法の果たすべき重大な責務といわなければならない、こういうふうに訓辞してあるのであります。私はこれは現在の時点における、一つの与えられた指示としてはほんとうはりっぱだと思っているのです。おそらくこういうようなのは、環境庁ができた以後、またいろいろな関連やパイプをよく通ずることによって、こういうようなことも可能になることにもつながるのじゃないか、こうも思うのであります。私はこういうようにして裁判を早め、そしていま苦しんでおる人たちを早く救済してやるのは、裁判のほんとうのつとめであると思うし、そういうようなことに対して困らないような資料を提供してやって、十分それに対して対処させるのも環境庁の今後の新しい行き方なんじゃないか。環境保全も大事です。しかしながら現在汚染された、その汚染に泣く公害病患者救済のためには、やはりあらゆる手が必要なわけであります。こういうような点では次官はどういうようにお考えでしょうか。
  149. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 ただいまの最高裁長官の訓辞、まことにわが意を得たり、かように考えます。司法府しかり、またおかげさまで立法府も、環境については非常に熱心に推進していただいております。行政もまた環境庁が中心となりましてそれを進めてまいる、こういう決意をいたしておるわけでございます。そういうような関係もございまして、司法、立法、行政の三機関が手を携えて新しい人類の問題に取っ組むわけでございます。単に日本列島だけの問題ではなしに、いわゆるグローバルな地球の問題として取っ組む、その姿をわが日本において顕現したい、こういう考えで進んでおります。したがってその資料等につきましても、十分にお互いに活用し合うということは当然のことであります。われわれは、環境庁が得ました資料はすべて公開する原則をとっております。そういうふうにしてこれを進めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  150. 島本虎三

    ○島本委員 よくわかりました。根本的な解決までの間、被害者を適正かつ迅速に救済していくことは、民事司法の果たすべき重大な責務といわなければならない、まさに至言だと思います。  しかしここに、これと相反する事態が起こったということは、私はまことに残念であります。水俣の何の罪もない漁師、そしてその家族、生まれてくる子供まで、不治の業病にあわなければならないというこの運命、これはまさにその原因者を探求したならば企業である。その企業の責任を追及、告発するということで、こういうようなものを企業の中で目ざめさせるための活動として、こういうような一株株主の運動が始まっているのです。つい先般大阪でチッソの総会があった際に、会場へ右翼を先に入れた。そしてこれは会社側としてはやむを得ない措置だ、こういうように言ったという。また島田社長は数十名にわたる警官に守られながらその会場に入場した、そのためその方法としてそこにすわっている一株株主を機動隊がゴボウ抜きにしてしまった、こういうようなことが新聞に報ぜられたわけであります。一株株主であろうともこれは株主、総会に出てそれを発言することこれ当然であります。しかし、そういうようにしてすわっているこの一株株主の手を踏んだり足を踏みつけたり、そうしてゴボウ抜きにした中を警官に守られて社長がその会場へ入場していく。そして、その会場では、いわゆる訴訟派患者、新認定患者の補償の要求、これを発言したところが、右翼並びに総会屋から議事進行の名で葬り去られた。これを見る場合には、何のためにこの総会にまで、一株株主排除にまで機動隊を動員しなければならないのか。おそらくそれは、根本的な解決までの間被害者を適正迅速に救済していくことは民事司法の果たすべき重大な責務といわなければならないということと反対なことを警察官がやっているじゃありませんか。一体こういうような状況はどうだったのか。もう十分これは皆さんのほうへ通知が来ていると思うのです。あまりにもこれは、天と地ほどの違い、これを私は悲しく思います。警察当局から御答弁を求めます。
  151. 丸山昂

    ○丸山説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御質問の件は、十一月二十九日に大阪の大手前の国民会館でチッソの定時株主総会が開かれましたときの件であると思います。  この日は、会社側の要請もございまして、また事前に不穏な情勢もあるということでございましたので、当日、制服が二百、私服が百の、三百人の体制をつくりまして、会場の内外の警備に当たっております。この間、事前の検問で、木刀、警棒、ナイフなどを所持しておりました大日本菊水会の会員、これはまあ右翼でございますが、これを凶器準備集合で逮捕しております。それから、社長が入場する際に警察官に対しましてトラメガでなぐりかかった学生一人、これを公務執行妨害の現行犯で検挙しております。それから、これは会場周辺でございますが、この周辺でそれぞれ公務執行妨害で六人の検挙者が出ておる、こういう状況でございます。
  152. 島本虎三

    ○島本委員 どうもわかりません。菊水会やそういう右翼の人がいる、事前に不穏な動きがあるから行った。しかし、それに対して、何の抵抗もしないで一株株主がすわり込んでいる、そこへ機動隊が行って排除しなければならない、こういうようなことは何の理由ですか。被害者ですよ。一株株主ですよ。その人たちをゴボウ抜きにして、手足を踏みつけて、わざわざ、社長を中に入れるのを機動隊が行なった。これが公正妥当なやり方なんですか。これが公害行政に対して被害者を適正に迅速にこれを救済しようという精神に通ずるのですか。菊水会や右翼がいるならば右翼だけをやったらいいじゃないですか。それを名目にして社長の要請にこたえて大阪府警はおそらく行動したに違いありません。大阪府警が、これも私の知ったところによりますと、会社側からすわり込みを排除の出動要請があったからだ、そして一株株主と会社側との小ぜり合いが起きたのを阻止しようという自主判断によるものである、一株株主と会社側との間にこぜり合いがある、これは自分の判断で社長を中に入れてやった。これがまともなやり方でしょうか。何のためにその株主の中にまで入っていって、総会にまで行って、そして社長派を護衛しなければならないのか。そして何のために、そのために株主を排除し、けがまで負わせなければならないのか。もしけがをした場合には、だれが責任を負うのですか。
  153. 丸山昂

    ○丸山説明員 お答え申し上げます。  警察といたしましては、株主総会の運営に対して何ら発言権があるわけではございませんし、運営自体については全くノータッチでございます。(島本委員「では何のためにすわり込んでいた人を排除する」と呼ぶ)私ども結局先ほど申し上げましたように、不穏な情勢があるということで、人の生命、身体、財産に重大な危害が及ぶことを未然に防止するという趣旨で出ておるということでございまして、もちろん会場の中には制服部隊は一切入れておりません。私服だけを入れておるわけでございまして、株主の引き抜きというようなことは現実には実施をしておりません。
  154. 島本虎三

    ○島本委員 そうしたら、一株株主を何人逮捕しましたか。
  155. 丸山昂

    ○丸山説明員 お答え申し上げます。  株主であるかどうかについては私どものほうは明瞭にしておりませんが、ただいま申し上げましたように七人逮捕しておるわけでございます。
  156. 島本虎三

    ○島本委員 どういう理由で逮捕したのですか。
  157. 丸山昂

    ○丸山説明員 先ほども御説明いたしましたように、兇器準備集合で三名を検挙しております。それから、公務執行妨害で四名でございます。
  158. 島本虎三

    ○島本委員 その凶器を不法所持しているのは、それは一株株主ですか、菊水会ですか。
  159. 丸山昂

    ○丸山説明員 菊水会でございます。
  160. 島本虎三

    ○島本委員 菊水会のほうをやるのに、なぜ一株株主、すわっている人、そういうような人まで排除しなければならない、なぜ逮捕しなければならないのですか。この理由ははっきりしているでしょう。機動隊が排除しに来たために卵をぶつけた、それでもって検挙。そして逮捕活動の妨害をした、それによって検挙。——七名ですよ。こんな公害行政に対する警察ありますか。最高裁の長官のこの公害に対する心がまえをよく読んでおきなさい。何ですか、こんなことは。けがした人に対して、その場合にはだれが賠償するのですか。
  161. 丸山昂

    ○丸山説明員 ただいま申し上げましたのは、警職法に基づきまして、犯罪を防止する、いわゆる警告、制止の措置をとりました警察官の執行に対して、暴行、脅迫でこれを妨害した、こういう仕組みでございます。
  162. 島本虎三

    ○島本委員 その仕組みはわかっている。それはすわっている人を排除しようとしたから、あった卵を投げた人が一人、排除されるから、当然排除されまいとしてやったら、これは当然公務執行妨害、こういうようなことで逮捕しているのです。どうも次官、おかしいですな、こんなことは。おそらく最高裁の精神を逆に警察のほうで踏みにじるような、こういうような行為が平気で行なわれている。その人がもしけがをした場合には、それは責任はだれが負うのですかということを聞いているのだけれども、三回言わせるのですよ、私に。けがをした場合にはそれはだれが原則として責任を負うのですか。
  163. 丸山昂

    ○丸山説明員 ただいま申し上げましたように、逮捕行為が正当行為でございます場合には、逮捕行為に伴う行為になりますので、違法性が阻却されるというふうに考えております。
  164. 島本虎三

    ○島本委員 それだったらけがは自分持ちということで、結局けがをしたのは損だということで、いかに暴行してもけがさせてもそれは差しつかえない、こういうようなことになるのですか。
  165. 丸山昂

    ○丸山説明員 ただいまのけがをしたということにつきましては、実は私どもその報告を受けておりませんので、まあかりにもし逮捕に伴ってけがをするということであれば、これは私先ほど申し上げましたように逮捕行為に伴う問題として解決すべき問題である……(島本委員「どういうふうに解決する」と呼ぶ)いや、違法性が阻却される……(島本委員「違法性を阻却されるということは、けがさせても責任ないということですか」と呼ぶ)格闘してつかまえる場合には当然そういうことが出てくる場合が多いわけです。
  166. 島本虎三

    ○島本委員 格闘しているのではない。引き抜くためですよ。引き抜くためにやって、足を踏みつけ、手を踏みつけたために当然けがをするでしょう。それも阻却されるのですか。だれも抵抗してないのですよ。
  167. 丸山昂

    ○丸山説明員 ただいまの警職法に基づく制止行為等によります場合には、けがその他が出ないように……(島本委員「出ているじゃないか」と呼ぶ)いや、私どもは出ているということを承っておらないわけですが、もし出ているとすれば、その点についてはよく事情を検討してみる必要があると思います。
  168. 島本虎三

    ○島本委員 責任はどっちなんだ。その場合でもやはり責任はまあ被害者というか逮捕された人であって、機動隊には責任はないのだ、阻却されるのだ、こういうふうなことになるのですか。
  169. 丸山昂

    ○丸山説明員 逮捕行為に基づくものは阻却されるというふうに考えております。
  170. 島本虎三

    ○島本委員 どうもこれは残念なことでありまして、私はこういうようにして、片や最高裁のほうでは最近の公害情勢、これを十分おもんぱかって、最高裁の石田長官もこういうように世界的な規模、哲学的な意味を含めてりっぱな訓示をされている。それが今度警察のほうになると、これまたそのために抗議をしてくる、これも労働運動や何かではない、株主総会、それも社長の要請によって行って、被害者に逆にけがを与える、傷害を与えるようなことをしてやった。まさに反対じゃないか。最高裁の長官のこの訓示を、あなたよく読んでみなさい。これでは後藤田長官も泣くでしょう。知っているのですか後藤田長官は。  念のために聞きますが、あの十二月七日にいろいろデモがあったのです。あのときに衆議院議員の千葉七郎さんという人の秘書の菊地君が機動隊に服をはがれ、服を破られちゃったのです。これは現認者がいるのです。これも服を破りっぱなしで、破られるやつが悪いのだ、こういうことになるのですか、念のために聞かせてください。
  171. 鈴木貞敏

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  いま先生の御質疑の、菊地さんの服を破られたという件でございますけれども、これは御承知のとおり当日、集団示威行進から請願、すなわち集団行進への切りかえ地点における場面での状況でございまして、その際菊地さんの服が破れたということも、私もお伺いしました。当日それぞれ切りかえ地点ではいろいろのトラブルといいますか、ものがございまして、警視庁といたしましても平穏に請願が行なわれるように、いろいろ苦慮して手だてを尽くしてきているわけでありますが、いろいろその過程で、デモの形態のまま国会のほうに向かうというふうなことで、その切りかえ地点での——溜池周辺でございますが、いろいろトラブル、その過程で菊地さんの服が破れたんだろう、こういうふうに聞いております。これにつきましては、だれがどういうかっこうで、どうしたあれで破れたのか、その辺のあれはつまびらかでございませんけれども、いろいろ警察としても現在調査をしておる段階でございます。
  172. 島本虎三

    ○島本委員 自分で自分の服を破る人はいない。もうすでに、機動隊が引っぱってそうして破ったということを現認している人たちがいる。これに対する措置というのは、やはり結局——どういうようにして調べるのですか。だれが破ったかさがすのですか。それなら永久にわからなくなる。ちょうどチッソのこれと同じようなことになってしまう。機動隊はやり得であって、服を裂かれても、着るにたえられないようにまつ二つに破れちまっても——自分で自分の服を裂く人がいますか。機動隊にやられたということを現認している人もいる。それだのに、やはり機動隊のほうでは、だれがやったか調べるまで手をつけない。一方、チッソのほうでは、会社側の要請に基づいてして、そうしてけがまでさせながらゴボウ抜きにして、社長方のほうに有利にこれを指導している。こんなばかな機動隊がありますか。まあ、これはこのままにしておきます。まことに私はこれは残念なんですが……。  ここに石田最高裁長官の「環境問題は先進諸国に共通の難問であり、これを解決し、豊かな環境をとりもどすことは、全人類的な課題である。根本的な解決までの間、被害者を適正、じん速に救済していくことは、民事司法の果すべき重大な職責といわねばならない」。私はりっぱだと思います。それに対して、ああいうふうにして現に警察当局が行なっている。これはまことに遺憾だと思います。  最後に、環境を所管し、そしてこれらをはっきりとして、まあ主宰しておりますところの環境庁の御意見を承っておきたいと思います。
  173. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 さすがに石田長官はりっぱな訓辞をされておるということ、先ほど申したとおりであります。したがいまして、先ほど申し上げたように、われわれ行政府といたしましても同様に、あるいはむしろそれ以上に、これは直接の国民の生命、財産に対する責任あるところでございますから、それ以上の決心で進めてまいるということは先ほど申し上げたとおりでございます。  事警察の問題は、ちょっと私からも申し上げかねますけれども、端的に申しますならば、私は警察の経験もございますが、事治安の問題とか国民の財産や生命を守るというたてまえから、いろいろ複雑な問題が現場におきましても現実にあると思うのです。そこで、それをいかようにして警察任務を被害を与えずに有効に執行するかということに非常な苦心があるところだと思います。それがたまたま、よそから見れば行き過ぎのような批判を受けることもあると思いますが、警察の対象としましては、これはちょっと私個人として、政治家の一人として申し上げるのですけれども、相手方の対象の職業とか身分とか、日本には階級はございませんけれども、信条、立場、そういうものにとらわれずに、現に警察の行動に対する阻害をする者とか、あるいは現実にそこにおる住民の生命や身体に障害があるというものに対して、これを排除するというのがたてまえでございまして、その際、遺憾ながら、公害の被害者であるかないかというその判定は、それよりも先に公平にやらなければならぬというその原則が作用する、かように考えておるわけでございます。  これは私個人の意見でございますから、環境庁政務次官として申し上げるわけではないということを御理解、御了承いただきたいと思うのです。
  174. 小林信一

    小林委員長 古寺宏君。
  175. 古寺宏

    ○古寺委員 環境庁にお尋ねいたしますが、日本列島環境保全の長期ビジョンは、現在その策定の準備にかかっているようでございますが、これは大体いつごろまでにできる予定でございますか。
  176. 船後正道

    ○船後政府委員 お答えいたします。  環境保全の長期ビジョンにつきましては、去る十月二十一日に中央公害審議会の企画部会に諮問いたしまして、直ちに作業に入っておるところでございますが、何せ、先ほど政務次官がお答えいたしましたように、世界でもその例のない作業になりまして、しかも、単なる作文ではなくて、いろいろなことを量的に表現したい、このような考えを持っておりますので、目下のところは四十七年度一ぱいじゅうに何とかまとめたい、このような計画で進めております。
  177. 古寺宏

    ○古寺委員 そういたしますと、新全総のいわゆる公害部門に対する洗い直しでございますが、これはこの長期ビジョンができ上がってから、新全総のほうも手をつけるわけでございますか。
  178. 船後正道

    ○船後政府委員 御承知のとおり、新全総そのものがやはり長期の計画でございまして、現在私ども事務的には、経済企画庁のほうで具体的にこの改定問題に取り組むというような連絡は受けておりません。  ただ、新全総の策定以来種々客観条件の変化もございますので、経済企画庁におきましては毎年度その実施過程におきまして、たとえば公害に対する配慮といったようなことをきめておられるわけでございます。したがいまして、新全総の次の改定とこれとは、ちょうど時期的にうまくできるかどうか、その辺現在のところ見当はつきかねまするけれども、いずれにいたしましても、長期ビジョンの考え方と環境保全の考え方というものは強く、今後の新全総にあるいは経済社会発展計画に取り込んでいただくように、また取り込めるような内容のものにしたい、かように考えております。
  179. 古寺宏

    ○古寺委員 そういたしますと、現在の新全総では、地域住民のために公害のない開発を進めるというふうにいいながら、鹿島のようにどんどん公害が出ているわけでございます。したがいまして、この新全総を洗い直さないうちは公害のない工業開発というものはできません。したがいまして、環境庁長官は前にも新全総は洗い直す必要があるということをおっしゃっておりますけれども、経企庁のほうから指示がないうちは、この新全総の公害に対する洗い直しというものは環境庁は行なわないわけでございますか。これは政務次官にお願いします。
  180. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 政府は一体でございますから、したがって、経企庁だけが独走する、あるいは環境庁だけがこれと関係なしに進めるというわけではございません。幸いにして、大体タイミングも合いながら進めていくような構想を持っておりますので、政府一体の形でこの間の問題を処理してまいる、こういうつもりでございます。
  181. 古寺宏

    ○古寺委員 現在この新全総に基づきまして、青森県のむつ小川原で大規模な工業開発を進めております。土地の先行取得とかいろいろなことをやっておりますが、いわゆるこの事前調査には環境庁が入っておらなかったわけです。そのことを申し上げましたところが、環境庁長官は、それは私のうかつであった、今後十分に環境保全のためにも調査をするというお話があったのでございますが、この点については現在どういうような調査をお進めになっておりますか。
  182. 船後正道

    ○船後政府委員 むつ小川原の大規模工業基地の開発計画につきましては、現在経済企画庁が中心になりまして関係省庁間で会議を持ちまして、それが中央におきましていろいろな計画を考えていこう、こういう仕組みになっておりますが、この中央段階における関係各省庁会議環境庁も加わることといたしまして、諸般のマスタープランづくりその他につきまして、十分環境保全が反映されるようにこれを織り込んだものでなければならないと考えます。また先ほど来島本先生の御質問にもお答えいたしておりましたように、今後の開発計画はあらかじめ公害が起きないようなそういった立地計画、これが組み込まれたものでなければならないと考えておりますから、十分そういうことを通じまして環境保全に遺憾のないように進めてまいりたいと考えております。
  183. 古寺宏

    ○古寺委員 そこでひとつお伺いしておきたいのですが、この公害の出ない大規模工業基地開発というものが、この数年間に日本の現在の水準をもってして可能かどうかということが非常に大きな問題になっておりますが、その点について環境庁としてはこの新全総による大規模工業開発が、かりに昭和五十五年なり六十年をめどにして進めておりますが、公害のない開発というものができるというふうにお考えでしょうか。
  184. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 非常にむずかしい問題だと思います。全然公害と考えられる——これは被害の程度によると思いますけれども、公害の可能性のある排出物を排出しない工業というのがあり得るか、成り立つかという問題でございます。非常にむずかしい問題だと思います。しかし、現在公害防止のためのいろいろな研究開発が進められております。排出物につきましては、いわゆるクローズドシステム、中で全部消化してしまう、外へ出さないという方向についてもかなり進んでおるような状況でございますから、業種によっていろいろ違うと思いますけれども、将来、人間の英知がここまで産業開発に傾けてまいったその努力を、さらに公害排除ということに傾けてまいりますならば、私はその可能性が絶無とは考えておりません。またそれとこの自然のいわゆる恵みである浄化能力、これをいわゆる生態学的に強化していく施策とあわせて、これは広い立場で進めていくということによりまして、私はやはり将来にわたって技術的にそのことの可能性を否定するわけにはまいらない、そこにわれわれの努力の目標がある、このように感じておる次第でございます。
  185. 古寺宏

    ○古寺委員 現時点においてそういうような公害のない大規模工業開発を進めるための具体的ないわゆる施策としては、環境庁はどういうことをお進めになっておりますか。
  186. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 これまた環境庁がやっております仕事そのままずばりがこの目的に対応する現在の施策でございます。詳しくは先生よく御承知のことだと思います。
  187. 古寺宏

    ○古寺委員 そういうことになれば、当然この新全総の洗い直しの作業というものは急がなければならないわけでございます。したがいまして、政府間において各省庁の調整をはかりまして、この新全総の公害に対する作業というものを早急に進める必要があると思いますが、いかがでございますか。
  188. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 現在の新全総にうたってある文句には環境保全ということが非常に強くうたってあります。しかし、その実際の具体的な計画につきましては必ずしもそのことが十分に取り入れられていないというのが事実のようであります。したがいまして、現在の新全総におきましても環境保全、国民の健康を守るということは大きな柱として取り上げておりますので、その基本方針に従ってその内容が具体化されるということは当然のことだと思います。そこにわれわれ環境庁からも、先ほど申しました長期ビジョンも持ちながら、また現実に毎日の作業を通じながらその具体的内容に触れてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  189. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは次に、新潟のタンカー事故による漁業補償の問題についてお尋ねしたいと思いますが、最初に農林省にお尋ねをいたしますが、六億九千万円の融資が決定しているようでございますが、これは年末の漁民の方々の必要な融資に間に合うのでございますか。
  190. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 先日の十四日の閣議で山中臨時代理大臣から御報告申し上げましたのは、一応今回の新潟のジュリアナ号の災害につきましては、異常な事態でもある、しかも漁場が回復するまでには相当長期を要するというようなことがございましたので、先般もたしかこの委員会で申し上げたと思いますが、天災融資法という制度がございまして、これは法律に基づく制度でございますし、今回のような場合には実はそういう制度がございませんので、天災融資法に準じた措置を講じたいということで、県のほうから具体的な御要望として六億九千万ということをとりあえず越年資金の何と申しますか限度額として要請がございました。これを受けましてわれわれも大蔵省との話し合いをいたしまして、一応六億九千万を限度として末端の金利が三分になりますように利子補給をいたしますということの話し合いがつきまして閣議の報告になったということでございますけれども、当面県として考えておりますのは、一億円を至急貸し出すということで金融機関とも話し合いを進めておるようでございますので、すみやかにそういった貸し出しが行なわれますよう、県自体が非常にその促進方をはかっておられるようでございますので、年末までには当然貸し付けが行なわれるものというふうに考えております。
  191. 古寺宏

    ○古寺委員 今回の六億九千万円というのは、現地の漁業協同組合の方々がお集まりになって二日間で一応これくらいだろうという概算をはじき出したわけです。そして七日に六億九千万というものを一応県なり水産庁のほうに申し上げているわけですね。ですからこの六億九千万円ではたして十二分に足りるかどうかということがまず一つ大きな問題でございます。それから、これは二月までの必要な経費でございますので、十二月、一月、二月と三カ月でございますね。そうしますと、平均してならしてもこの十二月には二億以上のお金が必要になると私は思うわけでございます。そういう点について水産庁はどういうふうな見通しに基づいてお考えになっておるのか、承りたいと思います。
  192. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 越年資金と申しますか、当座の緊急な資金ということでございまして、六億九千万につきましては、私どももそれほど確たる積算の上に——もちろん一応の積算の上に立っておりますが、実際に漁民の方がこれだけ見てもらいたいというような要望もございました。もちろんその裏に積算の基礎もあるわけでございますけれども、これを勘案の上で六億九千万が一応限度であろうということにきめたわけでございます。それで、御承知のとおり私どもの措置といたしましては十二、一、二、三と四カ月間の資金ということで四カ月間の利子補給というふうに考えております。  それから、一体それで間に合うかねというふうなお話でございますが、この点につきましては漁民の方々の中にも非常に、中には北洋の独航船に加わった方もあるようでございますし、個々の事情それぞれ違いましょうが、全部が全部お借りになるかどうかということもございますし、したがいまして、当面これで間に合うのではないかというふうに思っております。ただ御承知のとおりこの制度は、県が利子補給をいたした場合に国がこれを補助するということでございまして、あくまで県が主体になっております。  なお資金等につきましては、私ども当然農林中央金庫あるいは信漁連等を督励いたしまして、その程度の金額であれば金額の手当てがつかないというようなものではないというふうに考えております。
  193. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほど、末端において三分の利子というお話がございましたが、この前、次長がお話しになった場合には、国と県が利子補給をいたしまして利子を払わなくてもいいというような御答弁があったのですがね、一昨日は。長官のおっしゃるのとどうも違うようでございますけれども、その点はいかがですか。
  194. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 これはあくまで末端の金利三分、天災融資法によりますところの特別被害地域の特別被害農林漁業者の金利が三分ということになっておりまして、現在これよりも有利な制度はないわけでございます。まあ実は天災融資法みたいな法律に基づく制度でないにもかかわらず、今回は先ほど申し上げたような特別な事情がございますからああいった措置を講ずるということになったわけでございまして、次長は決してそういったことを申し上げたとは私は思いません。あくまで末端の金利を三分ということで国と県で利子補給する、こういうことでございます。
  195. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、このジュリアナ号のいわゆる補償の問題でございますが、これはどういうふうになっているんでしょうか。これは海運局でございますか。
  196. 山地進

    ○山地説明員 お答えいたします。  かかるタンカーの事故の場合の補償につきましては、一般的に申し上げますと三つのステップがございまして、一つは船主責任相互保険組合というのがございます。これはPIというものでございまして、これが過失責任に基づきまして千四百四十万ドルを限度としてその損失を補てんするということになっております。  それからもう一つは、タンカー事業者が相互に契約を結びまして、タンカー事故によります清掃費用、政府の清掃費用というものがあるわけでございますが、これの補償をし合うということで、これは総トン当たり百ドル、最高限度が一千万ドルということになっております。  それでなおかつ被害がそれをこえる場合というのがあるわけでございますが、それをカバーするために石油業界、これは石油の製油業者の集まりでございますけれども、これも世界的に契約を結びまして、油濁に基づく損失を補てんする暫定措置というような名前の契約、これをCRISTALと呼ぶわけでございますけれども、これが最高限度額三千万ドルまで補償するという、この三つの段階に分かれているわけでございます。  第一のPI保険は船主が保険にかかっておりまして、被害額については船主を通して被害者に払われる。補償される。清掃費用につきましては、TOVAROPを通して払われる。さらにそれをこえて第三者に清掃費用がかかった場合には、CRISTALというところがこれを補償する、こういうことになっておるわけでございます。
  197. 古寺宏

    ○古寺委員 いまお聞きしているのは、ジュリアナ号の場合はどういうような保険に入ってどういう補償が成り立つのかということをいまお聞きしているわけです。
  198. 山地進

    ○山地説明員 ジュリアナ号の場合には、船主がPI保険並びにTOVAROP保険に入っております。  それから荷主でございますシェル興産はCRISTAL協定に入っております。したがって、このような機関を通して損害は補償されるということになっております。
  199. 古寺宏

    ○古寺委員 現在補償の請求は始まっているわけでございますか。
  200. 山地進

    ○山地説明員 この場合の船主はトルーマリナーズという会社でございますが、すでにPIにも折衝しておりまして、PIからも現地にすでに調査に来ております。それからTOVAROPのほうもニューヨークに専門家が控えておりまして、CRISTALのほうは会長がすでに新潟に来て調査しているという段階でございます。それからシェルが行なっております清掃についても、トルーマリナーズとの間で、トルーマリナーズの代理人としてこれを執行するということになって、手続はすでに入っている。ただし損害の確定並びに請求の手続というものに具体的に入っているかということになりますと、額の確定その他から申し上げまして、実際の手続行為には入っていないのではないか、かように考えます。
  201. 古寺宏

    ○古寺委員 そこでお伺いしたいのですが、PI保険の場合はこれは過失保険でございますね。今回の場合は、これは過失になりますか。
  202. 山地進

    ○山地説明員 過失かどうかの決定は、海難審判その他の手続の確定を待たなければ不明な点もありまして、そういった訴訟手続を完結しなければわからないわけでございますが、かりに過失であればPIから出る。かりに過失でなければPIからは出ないけれども、CRISTALというところは無過失でございますので、一部免責の規定はございますが、無過失の場合でもCRISTALはカバーするということでございますが、したがって、それらのどちらかの経路を経て補償が出るというふうに考えます。
  203. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、PI保険のいわゆる支払いの対象になるのは、どういうものが対象になるわけですか。
  204. 山地進

    ○山地説明員 PIの対象になりますのは、第三者損害というものを包括的にカバーするというのがPIの対象でございます。ただし第三者損害があった、どこまでいけば第三者損害であるかというのはなかなか具体的にはむずかしい問題かと考えます。しかし一般的に申しますと、第三者損害、したがって、漁業等に与えた損害というのはカバーされる、かように思います。
  205. 古寺宏

    ○古寺委員 その場合に、処理剤による第二次公害、こういうものは保険の対象になりますか。
  206. 山地進

    ○山地説明員 一昨日、保安庁長官の答弁にありましたように、船主の責任であるというのは、海洋汚染防止法等から考えて、船主の責任であろうかと思いますが、保険の約款並びに保険の契約の内容いかんによってそれらがどこまでが第三者損害になるかというのは、法律上たいへんむずかしい問題じゃないか。ただし、いままでは処理剤によるものが第二次公害として、第三者損害としてカバーされるかどうかということについて先例がないという点から、それらをどう解釈するかということが非常にむずかしいのではないかと私は考えております。
  207. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで海上保安庁にお尋ねしたいんですが、今回のこの事故は過失でしょうか無過失でしょうか。
  208. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 お答えいたします。  この事件につきましては、すでに検事のほうに送致いたしておりまするが、どの程度の過失があるか、その度合いについてはわかりませんが、過失があることと思われます。
  209. 古寺宏

    ○古寺委員 そういたしますと、かりに船主なりあるいは船長がこれは過失でないという立証をいたした場合は、PI保険の対象にはならぬわけです。その場合に漁民の方々は天災融資法に準ずる融資を受けているわけでございますが、今度はその船主なりあるいは船長のほうから保険金が出ない、こういうような結論になった場合に、たいへんな問題がここに起きてくるわけでございます。そういう事態が生じた場合には、水産庁はどういうふうにお考えになっておりますか。
  210. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 仮定の問題でございますから、何ともお答えようがないわけですけれども、私どもあくまで過失ということで、今回の事件の場合には当然いまの保険の対象にもなり得るというふうにも聞いておりますし、これを期待いたしておるわけでございます。
  211. 古寺宏

    ○古寺委員 次に運輸省にお尋ねしたいんですが、CRISTALの補償の場合には、保険の対象はどういうものでございますか。
  212. 山地進

    ○山地説明員 CRISTALの補償の対象といたしましては、タンカーが当該船舶から石油を流出し、沿岸国に引き起こした油濁損害で、事故発生後損害の防止、軽減のためとられた処置を含む。というふうにわれわれは解しておりますので、したがって第三者損害並びに清掃費用すべてを含むというふうに考えます。
  213. 古寺宏

    ○古寺委員 いわゆるCRISTAL補償というものがなされるということはお調べになってございますね。
  214. 山地進

    ○山地説明員 CRISTAL協定の内容等につきましては、すでに現在ブラッセルで条約の締結交渉がされております油濁に基づく損害の補償基金条約というのがございますが、それとほぼ内容をひとしくし、若干それを上回る点もあるというふうにわれわれは解釈しております。
  215. 古寺宏

    ○古寺委員 そこでトリー・キャニヨン号事件の場合には、政府が実際に補償を要求するためにシンガポールで一隻でございますか、オランダのアムステルダムで姉妹船を一隻差し押えをいたしまして、そして示談によってこの補償問題の解決を見たわけでございますが、現在の時点におきまして、日本政府は、補償を県や漁民と一体になって求償するというような方向に進んでおりますか。
  216. 山地進

    ○山地説明員 トリー・キャニヨン号事件のときは、先生御承知のとおり政府の清掃費用というのがばく大な額にのぼった、債権者の中でも最も多い債権者であったという点が、今回と若干様相を異にしておりますのと、それからTOVALOPという制度ができましたのはトリー・キャニヨン号事件あとでございます。ましてCRISTALという協定ができましたのは本年の四月でございます。それらから考えまして、今回の場合はトリー・キャニヨン号事件とかなりそれを取り巻く環境に相違があるということが、われわれとしては前と違うと考えております。したがって、すべてのものが、こういった民間の機構によって払い得るというふうに予想しているわけでございます。  それからもう一つトリー・キャニヨン号事件と違いますのは、船主のトルーマリナーズというのが、きわめて複雑な国際的な機構を持っている会社でございまして、そのほかの船というものもないかと思いますので、そういったトリー・キャニヨン号事件と同じような差し押え等のことが不可能ではないだろうか、かように考えております。
  217. 古寺宏

    ○古寺委員 そういたしますと、非常に順調にいった場合に、保険金が実際に支払われるまでには大体どのくらい期間を見ておられますか。
  218. 山地進

    ○山地説明員 トリー・キャニヨン号事件が六七年で、実際に解決を見ましたのが七〇年の四月かと思いますが、約三年の歳月を経ているわけでございます。今回の事件に補償を出すPIはともかくといたしまして、TOVALOP並びにCRISTALということは、その機関が設立されて初めてのケースでございますので、時間的にはかなりかかるのではないだろうかということを危惧しております。
  219. 古寺宏

    ○古寺委員 かりにPI保険の問題で過失か無過失かという裁判が何年間か続きますね。そうしますと、いまお話しになりましたTOVALOPにしましてもあるいはCRISTALにしましても、それが終わってからでなければこれは補償されないわけでございましょう。
  220. 山地進

    ○山地説明員 まずCRISTALのほうはその条件といたしまして、すべての権利を行使した後に支払うということがうたわれておりますので、当然のこととしてPI保険等の過失の問題が解決しない間は、金銭的な授受ということは行なわれ得ないだろうと思います。TOVALOPのほうは清掃費用だけでございますので、これは政府の清掃費用を切り離して請求するということは可能かと思います。
  221. 古寺宏

    ○古寺委員 そういたしますと、現在海上保安庁は清掃費について請求をいたしておりますか。
  222. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 お答えします。  海上保安庁が今度の場合使いました品物に対する費用の請求でございますが、これは海洋汚染防止法の四十一条ではっきりと明定されておりまして、いままだ作業中でございますので、補償手続はとっておりませんが、補償する時期になりましたならば、海上保安庁が持っておりました中和剤、オイルフェンス、こういったものは、その費用を船主に要求することとなります。その手続等につきましても省令できめられておりまして、どうしても払わないというときは国税滞納処分の令によって差し押えるということもきめられております。
  223. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで海上保安庁が今度はかりに船主に請求をいたしますね。その場合に船主のほうでは支払いの能力がない、差し押えをするようなそういうものもないというような場合にはどうしますか。
  224. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 そのことにつきましてはまだはっきりとここで申し上げませんけれども、私どもが清掃しておりますことにつきましてはシェルと包括的に約束事ができておりますから、船主が払わなくてもシェルのほうで責任を持って処理するように聞いております。しかしながらわずかな金で船主が払えないということはなかろうと思います。
  225. 古寺宏

    ○古寺委員 保安庁にお尋ねいたしますが、その場合に処理剤の二次公害による被害についても保安庁は請求するわけでございますか。
  226. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 海洋汚染防止法は、このような場合まず船長、次に船主、それからまたこれらに対して、これらが十分な措置をとっていないときに、海上保安庁が緊急の場合としてみずからこれを行なうというふうに法律できめられております。なお船長、船主が十分措置をとることについて、荷主がまたこれを援助するというふうにもきめられておりまして、海上保安庁はそういう公共的な意味において緊急措置として油の処理をいたしております。
  227. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、海上保安庁は処理剤による二次公害の補償については、責任を持って漁民の方々に補償してあげるようないろいろな措置を講ずるというお考えをお持ちでございますね。
  228. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 もともと油を流したのは船長、船主でありまして、これを緊急やむを得ずとして処理剤を——これが緊急の場合に放任したならば、より大きな災害が起こるかもしれないというふうな場合、たとえば火災だとか、それがべったりと海岸についてどうにもならないというふうな場合、これを使用しておるのでありまして、そういったことについては特に考えておりません。
  229. 古寺宏

    ○古寺委員 あなたがお考えにならなくても、実際に二次公害によって操業ができなくて、どうやってこれから生計を営んでいったらいいかと漁民が非常に困っておるわけです。火災の危険があるという判断に基づいて処理剤をお使いになったかもわかりません。しかしそれによって起きた二次公害については、これはもうやむを得ないのだからそこまでは考えていない、こういうようなお話に受け取れたのでございますが、PI保険のほうからも二次公害に対する補償が出ない前だ。海上保安庁のほうも補償しない。そうしますと、だれが一体これを補償してくださるのですか。
  230. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 先ほども申し上げましたように、海上保安庁は海洋汚染防止法に基づいてしたことでございまするが、そういう補償等についてはそれぞれの省庁において考慮されるのがたてまえではないかと思います。
  231. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは水産庁はこれに対してどういうふうにお考えですか。
  232. 山地進

    ○山地説明員 二次公害につきましてTOVALOPあるいはCRISTALその他が払えるかどうかということを先ほど私はお答え申し上げましたのは、当然に払うということにはなっていないかもしれない。これはどこまで因果関係が追及されるかというのは非常に法律的にむずかしい問題があるということも申し上げましたので、絶対に払わないというふうに御解釈いただいているかに考えまして、ちょっとお答えしておきます。
  233. 古寺宏

    ○古寺委員 運輸省はそういう無責任な調査のしかたではいかぬと思うのですよ。二十一漁業協同組合の人が、これからどうしようか、毎日この冬空を見ながら、雪の降る中でどうやってお正月を越そうかと考えているときに、よく調べもしないでいいかげんな答弁をされては困ります。なぜこの二次公害の問題についてもっと真剣にあなたお調べにならないのですか。  そこで水産庁は、一応今回六億九千万を天災融資法に準じて融資をすることになりました。しかしながらいまお話があったように、補償が解決するまでには、保険金の問題が解決するまでには相当の時間がかかるということは、これはもうはっきりわかるわけでございます。それを今後どういうふうに漁民を救済していくお考えか承りたいと思うのです。
  234. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 私どもといたしましては、もちろん県あるいは漁業者団体等を指導いたしまして、なお海上保安庁等にもお願いいたしまして、保険金のすみやかなる支払いということを要請申し上げることが第一だと思っておりますが、そういうことでいまお尋ねのように簡単に片づかないということも予想されるわけであります。  そこで当面の越年資金といたしまして、先ほど申し上げましたような金融上の措置をとりまして、これに対して利子補給をするというととも決定いたしたわけでございますけれども、一応予算は単年度主義というようなこともございまして、来年の三月までの措置になっておるわけでございますし、三月までの措置で、その間どういったことになりますかということにつきましては、実は私のほう先般次長を現地にやりまして、今後の漁場の環境の調査あるいは魚価の低落等に伴う調査の設計をいたしてまいりまして、これに基づきまして十四日から県あるいは私どもの水産研究所等あるいは水産試験場、これが相協力していま調査に当たっております。漁場がどういう時期に回復するかということの問題はなかなか簡単に結論は出ないかと思いますが、これらの推移を見てまいりまして、その推移に応じて今後の対策検討しなければならないというふうに考えておりますが、いま少し時間をかしていただきまして、漁場の回復等の状況を見た上で次の手を打ってまいりたい、かように考えております。
  235. 古寺宏

    ○古寺委員 農林政務次官が現地で、政府とそれから県と漁民が一体になりまして原告団をつくって補償問題を解決するんだ、こういう記者会見をして発表しているわけです。あれは先ほどの運輸省のお話からしますとうそなんですか。
  236. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 先生からそういうお尋ねがあるというので、私、政務次官お話を伺ってまいったのでございますが、政務次官が先般の十二日に——十一日に現地へお帰りになったのですが、十二日現地で記者会見をなさったそうでございます。ある東京の新聞の報道にたしかいまおっしゃったようなことが書かれましたが、その際立ち会っておられました稻葉修先生があれをおっしゃったので、自分が言ったのではない、こう言っておられます。何もそれで云々するわけじゃございませんけれども、私どもの気持ちといたしましては、今回の事故はたいへん画期的な事故でもございますし、これも前々から申し上げておったわけですけれども、こういった被害の問題につきましての損害賠償の請求というような問題になりますと、これはなかなか漁民団体だけでできるものでもございません。さっそく県にも連絡をいたしまして、県がしかるべき弁護士を立てて具体的に被害の範囲としてどこまでが被害と見られるかというような法律上の問題の検討にも当たってもらって指導をしてもらいたい。私どもは、もちろん私どもで、政府部内でいろいろ検討いたしまして、県を御指導申し上げなければならぬと思っておりますが、そういった措置は実はとっておるわけでございまして、いまの政務次官のその点についての発言は稻葉先生の発言だということでございますので、御了承いただきたいと思います。
  237. 古寺宏

    ○古寺委員 トリー・キャニヨン号事件のときにはイギリスやフランスの政府が主体になって補償問題を解決してくだすっているわけです。それに対して、いま水産庁が一番陳情を受けておられると思う。実際にまた困っている漁民の立場というものも十分におわかりであると思います。そして、新聞には政務次官の談話として政府や県や漁民が一体になって原告団をつくるんだ、こういう発表をして漁民には安心感を与えておきながら、実際にお聞きしてみますと、全然そういう発言はしていらっしゃらない。稻葉先生がそういうことをおっしゃったんだ、これだけの御答弁しかない。こういう原告団をつくって、実際に県や漁業協同組合の力ではとうていこれはできませんので、国が、政府が主体的になってこの補償問題の解決というものに当たらなければいけないと思う。そういうことについて水産庁長官はどういうことを政府部内で働きかけをしておるわけですか。
  238. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 結局私のほうに被害があったかどうかというような問題で、たとえば利子補給補助を六百六十一万三千円きめたわけでありますけれども、あれが被害かどうかという問題が実はあるわけです。これはあくまで利子補給の助成でございますから、助成なんだから被害と見なくたっていいじゃないかとかなんとかいろいろな議論がございます。したがって国自体が被害者の一人として訴訟に参加するというようなことがはたして起こり得るのか起こり得ないのか。先ほどの中和剤の散布につきまして、これはTOVALOPかなんかで当然取れるんだというような保安庁のお話もございました。あるいはこれも場合によっては、私わかりませんけれども、訴訟の対象になるというようなことも話し合いがつかなければあり得るかと思います。そういった意味で、国がやはり漁業者と一体となって損害賠償の請求の場に出るというような場面も考えられるわけでございますけれども、一応現段階におきましてはそういったことはなかろうという前提で、国としても被害調査等につきましては、十分協力をして被害額というものを算定して、被害者のほうから具体的な請求はしていただく、もちろんその間におきまして、国といたしまして、私どもそれから運輸省、通産省等も含めまして、私のほうもいろいろ、たとえば一時見舞い金の支払い等もお願いしたり、場合によりましては保険金の内渡し、これはなかなかむずかしいようでございますけれども、大蔵省サイドでもそんなこともひとつ研究してみたらどうかといわれておりますから、そういったことにつきましては、十分私どももお手伝いをしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  239. 古寺宏

    ○古寺委員 いま水産庁長官は、国が関係あるかどうかわからぬというお話をなさいましたが、実際に特に処理剤を使っていますので、海底の底質がいろいろ汚濁をしているとかあるいは汚染されているとか、それから沿岸のノリであるとかワカメであるとか海草がいろいろ被害を受けている。そうしますと、そういうものは国の損害にはならぬのですか。
  240. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 その点は先ほど運輸省の方から御答弁があったわけでございますけれども、そういった中和剤を使ったこと、なおそれに伴う二次公害が保険の対象になるかどうかということについては争いがあるのだけれども、おそらく、従来の海上保安庁の方のお話を伺っておりますと、あるいはこれは私の勘違いかもわかりませんけれども、大体保険でとれるのだということを言っておられるわけでございます。だから国がそういったことで解決すれば国の損害にはならないという意味で、その限りにおいてはお尋ねのことはないのではないか、こう申し上げておるわけです。  もちろん、先般もこの委員会で申し上げたわけでございますけれども、沈降性の中和剤を使いますと当然海底の形質を悪くするとか、あるいはそこに生息いたしておりますところの魚を死滅させるというようなことがあります。これに伴う被害もあるわけでございますから、これらがいま申し上げた中和剤の投棄というようなことに伴う二次公害でございますけれども、そういうものまで含めて請求できるのだ——その辺が非常にむずかしい問題でございますけれども、いままで私はそういうふうに聞いております。そこで、いま先生のおっしゃったようなことはなかろう、こう申し上げておるわけでございます。
  241. 古寺宏

    ○古寺委員 国民の損失は日本の国の損失でございますよ。先ほどから長官のお話を承っておりますと、実に無責任な御答弁でございます。国民の損失というのは日本の国の損失なのです。それをなぜ水産庁がもっと積極的に——これからいろいろな問題を考えた場合に、これはもう早急に手を打たなければならない問題でございます。それを、県とか漁民だけの損失のようなお話ばっかりしていらっしゃるわけですね。そうでなくて、先ほども申し上げましたようにイギリスやフランスでは政府が主体的になってその損害の補償、そういう問題にぶつかって解決をしているわけですから、日本の国でも、政務次官が新聞に、これはうその発表でございましょうが、発表したようなことをなぜおやりにならないのかということをお聞きしているのです。
  242. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 法律論を申し上げるわけではございませんが、損害賠償の請求をいたす者は当然損害を受けた方々ということになるわけでございます。そういった意味で、はたして国に損害があるかどうか。先生のおっしゃるような意味におきまして、国民の受けた損害は国の損害ではないかということ、わからぬわけではございませんが、法律論として損害賠償を論ずる場合に、やはり被害者という意味では第一次的にはあくまで漁民である。そういう意味で私申し上げているわけでございまして、国が何もしないということはちっとも申し上げているわけではございません。現に国といたしましては、先ほど申し上げたように現地におもむいて被害の状況調査のための設計、あるいは今後漁場環境を回復するためにはどうしたらいいかというような設計を県と一体となってやっておるわけでございまして、今後もなお損害が確定いたした上におきましては、これの請求等につきまして十分バックアップをして一体となってやってまいる、こう考えておるわけでございまして、決して国が何もしない、無責任じゃないかというようなことはなかろう、私はこう考えております。
  243. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほどからいろいろこの問題について申し上げてきたのでございますが、政務次官のお立場として——実際にいま漁民の方々が困っていらっしゃる、しかもこの補償問題というものは非常に時間がかかります。こういう場合に、やはり政府としてめんどうを見てあげなければ、これはなかなか思うように進まないと思うわけです。こういう点についてひとつ政務次官のほうから、お考えになっていることを承りたいと思います。
  244. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 先ほどから質疑応答を静かに拝聴いたしておりました。いろいろと私も考えてまいったわけであります。いささか私見にわたるかと思いますので、なおこれは環境庁の幹部ともよく話し合った上でないといかがかと思いますけれども、一応私見として申し上げたいと思います。  まず第一点は、二次公害の問題で、この責任をだれが負うかという問題です。原則として原因者が公害に対しては賠償の責任を負うというたてまえでございます。ところが中和剤等処理剤の散布によりまして二次公害が起こった場合に、その二次公害に対してだれが責任を負うかという問題が、先生の御提起になった質問の中心だと思うのであります。そこで、この場合、だれが原因者であるかということを考えなければならぬと思います。もとより第一次公害を起こしたのは船舶でございます。第二次公害の場合は、海上保安庁等からも説明がありましたように、そのまま放置いたしておきまするならば、火災その他非常に大きな災害を起こすおそれが多分にあるために中和剤等をやむを得ず散布したのでありまして、これは私の乏しい法理論からいたしまするならば、いわゆる一種の緊急避難的な措置だと思うのです。したがいまして、中和剤をまいたからといって、まいた者が責任を負うというわけではなしに、さかのぼって原因者である第一公害を起こした者が責任者であるという推定と申しますか、これは究極においては裁判所においてきまることでございますけれども、私はそういう理論でもって漁民の受けた被害、これは第二次公害がどの程度になるかというようなことはなかなか算定はむずかしいと思いますけれども、かりにできまするとするならば、それを込めて漁業者の受けた損害として当然賠償を要求する筋合いのものだ、かように考えます。  もう一つ先ほどから議論を伺っておりますると、支払い側の問題が保険の対象になるかならぬかということをいっております。保険の問題は、支払いする側の危険分散の問題であります。かりに対象にならなくても加害者という者は、これは自己の負担においてでも支払わなければならぬという義務がある、このように考えます。この保険の対象になるかならぬか。なればなおさら支払い能力が十分でありますからいいと思いますが、かりにならなくともこれは当然要求してしかるべきものである。  そしてこれに対する政府の全般的関与の問題でございますが、これはやはり何と申しましても国民の生活を保障しこのために手を尽くすのが行政府の責任でございますから、そのような意味において、形はどういう形をとるにいたしましても、これにあたたかい手を伸べてともども漁民の損害をなくすという措置を講ずべきが政府として当然なすべき態度だ、このように私考えますので、以上、御答弁申し上げます。
  245. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、外務省にお尋ねしたいのですが、外務省としては現在どういうふうな交渉をしてくだすっているんでしょうか。
  246. 西堀正弘

    ○西堀政府委員 この事件日本の領海で起きた事件でございますので、第一義的には日本の法令に従いまして、民事上の損害賠償責任の問題として取り扱うということはいままでの海上保安庁なり運輸省のほうからの御説明のとおりでございます。しかしながら、相手の船主が、これは外国でございますし、しかもその損害が非常に大きうございますので、外務省といたしましても、重大な関心を持ちまして事件の成り行きを観察いたしております。外務省といたしまして、何かお役に立つことがありましたならば、喜んであとう限りの側面的な援助はいたしたいと考えております。ただ第一義的には民事上の事件でございますから、いま直ちに外務省が出向きまして相手国と云々ということは、事件の円満な解決に資する方途ではなかろうとわれわれ考えておりますので、重大な関心があってながめているという段階でございます。
  247. 古寺宏

    ○古寺委員 外務省もながめていらっしゃるようでございますが、いままでこういうタンカーの事故で支払い能力がないために実際に補償されていない例がたくさんあるわけでございますね。そこでアメリカの水質改善法においては、油濁事故を起こした場合に、支払い能力のないタンカーは入港させないことになっているのですね。こういう措置もわが国では必要じゃないかと思うのです。そういう点については、環境庁のほうはどうお考えになっているかどうかわかりませんが、環境庁としても当然これは公害と関連のあることでございますので、今後支払い能力のないようなタンカーは入港させないというようなタンカー法と申しますか、アメリカのような法律を考えるべきじゃないかと思うのでございますが、どうでしょうか。
  248. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 そういう点も一応検討の課題とすべきだと思います。それもあわせましてタンカー、ことに巨大なタンカーの問題については、私どもも公害防止のたてまえから前にもこの委員会で私どもの長官が御答弁申し上げたと思いますが、ああいう精神に沿いましてもっと掘り下げてまいりたい、かように考えております。  それから先ほどお答えいたしましたが、私の考えがいいか悪いかわかりませんけれども、支払い能力は一応保険に加入しておることによって担保されております。そうなると保険に参加していない者を締め出すことになり得るのでございましょうが、そういう面についてももっと検討したいと思います。私先ほど申し上げたのは、支払い能力を担保する意味での保険の活用は十分やらなければなりませんけれども、単に支払い能力を担保する保険だけの対象になるならぬでもってこの責任を追及する限度をきめるということはいささか問題である、このように考えております。したがいまして、いまおっしゃったように、支払い能力のない者についてはなおさら保険等の対象になるのではないか、こう思っております。  なお今回の措置につきまして、そういうことはないと思いますけれども、かりに保険の対象にならないので船会社自身が支払わなければならぬという場合に相なります可能性が濃厚なときには、政府といたしましては、その会社に対する支払いを担保せしむるための措置をイギリス等がやりましたようなこともあわせて考えるべきじゃないか、こう考えておるわけであります。
  249. 古寺宏

    ○古寺委員 油の被害というものは非常に多いわけでございますけれども、昨年全国で油濁の問題が起きて泣き寝入りをしている事件が百七十件あるそうでございます。これに対しては全然補償する原因者がいないわけでございます。どこの船が原因なのか、だれが流したのか全然わからぬわけです。したがいまして、これに対しては全然補償がないわけでございますが、こういう点については水産庁はどういうふうにお考えですか。
  250. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 私のほうに実は漁業共済の制度がございまして、漁獲共済、養殖共済等あるわけでございますけれども、養殖共済の場合には、実は油濁による被害はてん補の責任を負わないという免責事由になっております。これは立法当時の思想を調べてみますと、やはり油の被害につきましては原則として加害者がわかるという前提に立って、特に養殖等の場合は沿岸部分での被害でございますから、そういう前提に立って立案されたようでございます。しかし今日、いま先生御指摘のように油による被害、これは工場、事業場から排出されるものあるいは船舶から出されるもの、さらにはいわゆる原因のわからない漂泊のものというようなことでいろいろ出ております。そこで原因者のわからないものにつきましては、実際に泣き寝入りということになるわけでございますので、私ども沿岸漁民を守る立場にある役所といたしまして、何らかの制度を打ち出さざるを得ない。たとえば養殖なんかもそれでは保険事故の対象にしようというようなことで保険設計を立てますこと自体非常にむずかしゅうございますし、かりに立ったといたしましてもそれは漁民の保険料のアップという形で漁民の負担においての解決になるわけでございますので、問題の根本的解決にはならないだろう。そこで私のほうといたしまして、運輸省あるいは海上保安庁あたりに呼びかけまして、何らかの補償基金的なものをつくっていただきまして、そこからとにかくはっきりしない場合には、立てかえ払いしてもらって、原因者の追及は別途行なうわけでございますけれども、そういった制度を考えられないか。  そこで財源の問題になるわけでございますけれども、どういった形で財源をとったらいいかということも、技術的な問題になりますと、これはむしろ私どもの問題というよりも、海上保安庁なり運輸省の問題になるわけでございまして、実は、私もそういったことが考えられないかということで、前々から海上保安庁長官あたりにはお願いをいたしておるような次第でございまして、やはりそういったことを考えないと問題の根本的解決にはならないだろう、もちろん海洋汚染防止法とか水質汚濁防止法等の厳正な運用といいましても、やはり限界があるわけでございますので、そういったことを考えざるを得ない段階に今日来ているというふうに考えておる次第でございます。
  251. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで海上保安庁は、一年間に百七十件もこういった泣き寝入りの事件があるのに、一体これはどうしているわけでございますか。
  252. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 海上保安庁といたしましては、海洋汚染防止法施行以前の油濁の法律に基づきまして、できるだけのことは全力をあげて取り締まる操作をいたしておるわけでございます。しかしながら、先生がいま言われましたように、何件かのものがあることも事実でございます。海の上というのは、なかなか捕捉が困難でございます。困難ではあるが、全力をあげて取り締まっていきたい、かように考えております。
  253. 古寺宏

    ○古寺委員 処理剤を使わなくてもいいようなときに大量の処理剤をお使いになって、そしてその二次公害については私のほうは関係ないというお話をなさるし、また百七十件も大量の油の油濁によって泣き寝入りしている漁民もいらっしゃるのに、それには私のほうには力がないから、一生懸命やっているのだからしかたがないという御答弁をなさいますし、これでは泣き寝入りをしている漁民は、いつまでたっても救済されないわけです。水産庁は、何か救済制度を考えたいというお話はございましたけれども、現実にそういう被害を受けた方が一銭も補償されないで生活に困っているのが実態なのです。  そこで海上保安庁にお尋ねしますけれども、海上保安庁では、大型タンカー事故対策連絡協議会というものを昭和四十二年からおつくりになって、いろいろタンカーの油の問題について協議をしてきたようでございますが、これは全国にどのくらいあって、どういうような協議をし、どういう結論が出ているのか承りたいと思います。
  254. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 一たび大型タンカーが事故を起こしますと、その影響が大きいということ、これは疑いのないところでございます。これに対してあらゆる官民力を合わして全力をあげ、システム的に対処していかなければならぬ、こういうことで、海上保安庁が音頭をとって、関係機関、たとえば消防庁、地方公共団体、民間の関係先、こういうものが一体となって即応体制を確立して、積極的な連絡協力のもとにこれに対処しようとするものでございます。石油コンビナートの所在地など、石油類を大量に扱っているようなところはもちろんのこと、そういう危険性のあるところにおいては、いま先生が申されましたような協議会をつくりまして、事故対策の計画をつくって、必要な機材器具を整備する、実際事故が起こったときにはどのようにするというふうなことを関係者間でよく協議いたし、計画を立てまして、いざ起きたときのそれぞれの持ち分を明定いたしまして、実際に事故があったときにおくれをとらないようにしようというものでございます。いま全国に幾つあるかということでございますが、こういったものに対処しているものが四十三ございます。
  255. 古寺宏

    ○古寺委員 いままでにこの対策協議会でつくられたいわゆる災害防止計画でございますね、この防止対策というものが今回の新潟のタンカーの事故によって全く役に立たぬものであるということが十二分にわかってきたと思うわけでございます。そういう点についてはどういうふうにお考えでございますか。今後新しいそういうような油の流出を防止するような防災計画と申しますか、防災対策と申しますか、そういうものを考え直す必要があると思いますが、いかがですか。
  256. 貞廣豊

    ○貞廣説明員 これらのものはそれぞれの地域の実情に応じまして関係者が協議し、やっておることでございまして、地域、地域でこうするのが一番いいという要領でやっております。ただ大型タンカーだけを対象としないいわゆる海難防止団体は、海上保安庁では、現地の部署を指導して、関係官民で各港、地域の海難の防止についての協議をするために団体を結成させておりますけれども、それらがそれぞれの目的に応じ、その地域の実情に応じて、いろいろな目的のために、たとえば八戸等では三つくらいそういうものがあるというような実情でございます。それでその後港の構造とか港の勢力の変化とか、出入りする船の変化というようなことから、いろいろ海難防止の対象が変わってくるわけであります。それらを幾つかまとめまして、がっちりしたものを総合的にこれをまとめまして、たとえばいままでやっておったものはそのうちの分科会にするというふうなことの動きも、そうしたほうがいいというところもありますので、そういった場合には統合させていくというふうに指導はいたしておりますけれども、いずれにいたしましても、こういう海難防止団体はそれぞれの立場においてお互いに協議し、協力していくものでございます。  なお災害対策基本法に基づく防災会議にこれらのものを入れるように海上保安庁は指導いたしておりまして、かなりの数が地域の防災計画に取り入れられております。
  257. 古寺宏

    ○古寺委員 青森の場合でございますが、十日に安全対策協議会というものが発足しましたですね。海上保安部が音頭をとりまして、中心になりまして、これをつくりました。そして本年度内に秋田とか岩手とかいろいろな特定港に安全協議会を発足させて、そして防災体制をつくろう、こういう協議会が新潟のタンカーの事故が起きてから発足をしたわけでございます。いままで海上保安庁はそういうことを何にもやっておらなかった。またタンカーの連絡協議会というものをつくって、いままでおつくりになったいわゆる防災体制というものは——オイルフェンスを見てもそうです。アメリカでは相当に高い波が来てもオイルフェンスが役に立つのに、一メートルの波が来ると全然使いものにならないようなオイルフェンスをわざわざこっちのほうから持っていったわけでございましょう。こういうふうな現実の災害に合わないような防災体制というものはここでもう一ぺん練り直して、今後どういうような大きな事故が再び起こるかもわからないわけでございますので、そういうような防災体制というものをどうかひとつ今後は真剣に、今度の経験を生かしておつくりになっていただきたい、こういうふうに御要望を申し上げておきます。  次に、水産庁にお尋ねしたいのですが、また先ほどの補償の問題になりますが、裁判が非常に長引いてPI保険もなかなか支払われない、また過失か無過失かという問題もございます。こういうふうな問題で非常に長引いた場合に漁民は非常に困るわけです。ですから国が、この事件が解決するまでの間一括して立てかえ払いで補償をしてあげる、こういう方法もあると思うのでございますが、そういう点についてはどうでございましょうか。
  258. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 今後どういう推移をたどりますか、よくまださだかでないわけでございますけれども、いま御指摘のとおりの事態が起こり得る可能性が非常に強いというようなこともよくわかります。しかし漁場の復旧の問題がどうなるかということもございまして、いま実はどういうふうに申し上げてよろしいか、明確にいたすことができないわけでございますけれども、まあ資金の問題でございますれば、御承知のとおり漁業の系統金融があるわけでございまして、これは本来漁民のための資金として活用すべきものでもございますし、ただ金利が高いというようなことで、災害を受けたような場合には、これに利子補給の補助をするというような制度もあるわけでございますから、資金的に何かえらい困っていて何ら手が打てないという実態ではなかろうと思います。しかしいましばらく推移を見させていただきまして、必要なときにはまたその段階で考えてまいりたい、かように現段階におきましては考えておる次第でございます。
  259. 古寺宏

    ○古寺委員 今後の漁場の復旧対策でございますが、五年も十年も漁場が復旧できないというような場合には、別な漁業に転換するとかいろいろな方法を考えなければならぬわけでございますが、そういう場合の措置をお考えになっておられますか。
  260. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 御承知のとおり、私のほうで許可漁業としての指定漁業が十何種あるわけでございますけれども、それ以外は自由漁業あるいは知事の承認漁業等もあるわけですけれども、どこも何と申しますか、ある意味においては過剰就業というようなことでございます。先生の御承知のとおり、ことしの日ソ交渉の結果、抱卵ニシンについてはとらないということで政府が補償をいたしたことは記憶に新たなところであるわけでございますけれども、これらにつきましても新漁場への転換というような要望が出たわけでございますけれども、現在の国際的な規制の状況あるいは資源状況から見て、いま申し上げたような指定漁業としての漁業につきましての転換を認める状態にないわけでございます。したがいまして、そういったことがございますれば資金のあっせん等も行ないましてやることも可能であるわけですけれども、現実はそこまでいっていないということでございます。  そこで、漁場の回復をどうするかということにもなるわけでございますけれども、これにつきましては、最近水産の土木事業もだいぶ発達をいたしまして、客土をいたしましたりあるいはしゅんせつをいたしましたりあるいは、みおをつくったりすることによりまして、いたんだ漁場の回復というような事業も、現に国が補助をして実施をいたしております。今回のように、私どもは加害者が明らかだ、こう思っておりますから、そういった場合には国が補助をしてやるというわけにもまいりませんから、補助をいたしましても、いずれその分につきましては加害者から取る形にもなろうかと思います。これらにつきましても、漁場の環境がどうなっているかというようなことを見た上で、漁場復旧をぜひ急いでやる必要があるというような場合には、いま申し上げたようなことでやってまいりたい。漁業転換といいましても、自由漁業でございますればどこでやっていただいてもけっこうなんでございますけれども、特定の十六の指定業種につきましては、なかなか転換先をお世話するということは困難である、こういう実情でございます。
  261. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、いままでのお話を承っていますと、実際に困っている漁民の方は利子を三分ずつ取られますね。また補償がいつ出るかわかりません。またいつ操業できるようになるかわかりません。こういうような不安な生活というものを毎日送らなければならないわけです。普通であればサケもたくさんとれて楽しいお正月も送れる。それが、とって市場へ出したものが返還されてきて、くさくなっているというので乾燥しておりますですね。こういうような現実の問題をかかえて漁民の方々はいま困っているわけです。  ですから、先ほどから何べんも申し上げますように、三分の利子を——これは加害者が払うことになっているのですから、利子補給してあげて、漁民の方々の負担を軽くしてあげるとか、あるいは補償については一括して国がめんどうを見てあげて、あとでPI保険にしましてもいろいろ補償が出た場合にそれでもってこれを補うというふうにできないものか。またさらに今後操業するにしましても、どういう地域へ行って操業したらば安全なのかという問題についても、やはり水産庁が早く調査をしてきめてあげなければいけないと思うのです。そういうような具体的なあたたかい施策というものを、措置というものを漁民の方々は期待しているわけでございますので、その点についてもう一ぺん御答弁願いたいと思います。
  262. 太田康二

    ○太田(康)政府委員 まず第一点の融資の問題でございますが、当面の緊急対策、越年資金ということで農林中央金庫の金を信漁連等を通じて流す。とりあえず県は一億を当面おやりになったわけですけれども、私どもといたしましては六億九千万までは資金の手当てをいたしまして、これについての利子補給もいたしますということを世の中に明らかにいたしたわけでございます。しかも全然制度がないところに天災融資法に準じて三分という非常に低利の資金が借りられるような措置を講じたわけでございまして、よく災害を受けた場合に金利のつく金を貸すのはおかしいじゃないかという議論もございますけれども、これはいままでの本院におきます災害の議論におきましても、三分ぐらいの金利を取ることはやむを得ないということで、天災融資法をこの間改正いたしましたけれども、やはり特別被害農林漁業者に対する金利として三分というのが天災の場合でも現段階におきまして最も有利な資金でもございますので、これに準じた措置をとったということは、たいへん口幅ったい言い方でございますが、かなりあたたかい措置がとれたのではないかというふうに考えております。  それから漁業の実態でございますけれども、先般次長が行きまして、たとえば底びきを引いてみたのですが、その場合に全然、まあ引いた個所にもよるのでございましょうけれども、魚臭もしないし、普通のものと変わらないというような(「それは場所はどこですか」と呼ぶ者あり)被害を受けた場所でございますけれども、それがなぜそうなっているかというのはなかなかわからないようでございますけれども、そういったこともあるようでございます。したがいまして今後私のほうで、先ほど来申し上げました次長の設計してまいりました調査の計画に従いましてそういったことも随時調査もいたしまして、そういったことがほんとうになっておりますれば操業の再開ということもできるわけです。しかし、これは何もいますぐそういう状況にあるから再開できるということを申し上げるわけじゃございませんけれども、そういったことで、もうちょっと推移を見させていただきたい、こう思うわけでございます。  それから漁業の転換の問題につきましては、指定漁業につきましてはなかなか全般が過剰の状況にございますので、国際規制の問題、あるいは資源の状況等から見まして、なかなか困難でございますというお答えを先ほど申し上げたわけですけれども、それ以外の漁種に転換するという、そのためにたとえば金がかかるというような場合には、私のほうにもやはり利子補給の制度でございますが、漁業近代化資金というような制度もございまして、これによって安い金利の資金のめんどうも見ることができるわけでございますから、これらによって対処することも可能ではないか。いましばらく推移をひとつ見させていただきまして、当面はいま言った資金でしのいでいただくという、まだほんの序の口の対策といえばそれまででございますけれども、一応それによって当面はしのいでいただく、なおいま申し上げたそれ以外の点につきましては、推移を見まして対処していきたい、こう考えておる次第でございます。
  263. 古寺宏

    ○古寺委員 どうぞひとつ生活にも困るような状態になってきておるわけですから、水産庁も漁民を守る立場で積極的にあたたかい施策というものをどんどん行なっていただきたいと思います。  時間でございますので、次に秋田県の西仙北町の小杉沢鉱山の問題についてお尋ねしたいと思います。  最初に、通産省の公害保安局にお尋ねをしたいのでございますが、この西仙北町の杉沢というところから全国で最高の二・七五PPMのカドミウムが検出されたわけでございますが、この鉱山に対する保安監督はどういうふうになっているか、承りたいと思います。
  264. 森口八郎

    ○森口説明員 お答え申し上げます。  当鉱山鉱業権者が実は四十五年の一月に変わっております。実は四十五年の一月に変わりました前後にカドミウムの全国の排出についての一斉調査を実施いたしたわけでございます。そのときに、当鉱山から流れ出ます廃水が基準を若干オーバーしておりましたので、当鉱山には特に四十五年一月以降厳重な監督検査を実施することといたしまして、現在までに八回監督検査を実施いたしております。八回監督検査を実施いたしますに至った経緯が、カドミウムの排出基準が若干オーバーをしておるということでございますので、当然監督検査をいたしましたときには、すでに石灰投入施設が当鉱山にはございますので、石灰投入を的確にやれという指示をいたしますとともに、その石灰投入施設にいろいろな水が的確に流れ込みますように水路の整理、あるいは堆積場の浸透水を防止しろというような指示をいたしてまいったわけでございます。八回の検査のつど水質検査をいたしておるわけでございますけれども、その結果、環境基準はもちろん、鉱廃水の排出基準に照らしても、著しく現在改善されております。現在カドミウムの濃度は十分国の基準を満足させておる、排出基準を満足させておるというような状況でございますけれども、今後ともなお十分監督指導を続けてまいりたいというように考えております。
  265. 古寺宏

    ○古寺委員 こういう場合に非常に土壌も汚染をされているわけでございますが、公害保安局がいままで十分に、鉱山保安局時代に指導監督をしなかったために、今回こういう問題が起きてきたと思うのでございますが、今後通産省としてはどういう対策をお考えですか。
  266. 森口八郎

    ○森口説明員 実は先ほども御答弁のときに申し上げたわけでございますが、この種の鉱山は大体原則として年に一回程度の巡回検査を実施いたしております。四十三年、四十四年当時は、巡回いたしましてはかりました水質は必ずしも悪くなかったわけでございます。現鉱業権者になりまして早々、先ほど申し上げました一斉調査をやりますと、若干悪い値が出たというようなことで、先ほど申し上げましたような厳重な監督検査を実施したということであります。通産省といたしましては現在カドミウム問題が非常にやかましくなっておりますおりから、全国の鉱山のカドミウム排出につきましては、当然厳重な検査を実施をしておるところでございます。ただ、若干申しわけ的になるわけでございますが、何分にも鉱山の数、監督官の数を対比いたしますと、排出量の多い鉱山は年に数回当然見れるわけでございますけれども、非常に小さい鉱山につきましては、年に一回程度というような検査の状況になっておるわけでございまして、そういうような点でやはり若干の手落ちが起こる点もなきにしもあらずというような気もいたしますけれども、監督の際にできるだけ密度を濃くすることによって、問題のないようにいたしたいというように考えております。
  267. 古寺宏

    ○古寺委員 環境庁は、この秋田県の小杉沢鉱山による汚染米の件につきまして御承知でしょうか。
  268. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 承知いたしております。
  269. 古寺宏

    ○古寺委員 環境庁としてはどういう対策をお考えでしょうか。
  270. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 先ほど通産省のほうから御答弁がありましたように、過去において米の中に含まれているカドミウム、これを一斉に調査いたしました結果、非常に高い数値が出ております。それに従って健康調査も行なっております。幸いにして現在までのところそのために患者が出ておるという結果は出ておりませんが、今年度また米の収穫の時期であります。調査いたしました結果、〇・四PPMを上回る数値が出ております。またさらに健康診断を県においてやるように指導いたしておるような次第でございます。
  271. 古寺宏

    ○古寺委員 いままで行ないました健康診断というのは非常に簡単な、一般的な健康診断だけを行なっているようでございますが、やはり相当高いカドミウムが含まれておるわけでございますので、精密な健康診断をやる必要があると思いますが、その点について承りたいと思います。
  272. 山本宜正

    山本説明員 お答えいたします。  健康診断につきまして、昨年は杉沢、柳沢地域の住民九十五名の健康診断をしております。その中から尿たん白陽性者も数名出ておりましたようでございます。本年につきましては、先ほどお話しがございましたような十五検体の中から五検体一PPMをこえる結果が出ておりますので、従来の検査よりもさらにこまかい住民の健康診断をするように県のほうを指導してまいりたい、かように存じます。
  273. 古寺宏

    ○古寺委員 次は食糧庁にお尋ねしたいのですが、汚染米はどういうふうになっているのでございましょうか。
  274. 中村健次郎

    ○中村(健)政府委員 ただいま御指摘のございました杉沢並びに柳沢部落におきましては、米が大体約二百トン程度生産をされております。その中で、今回の調査で〇・四PPM以上のものあるいは一PPM以上の米が、検体から出ましたので、食糧庁といたしましては、この地域で買い上げました米を現在保留いたしておりまして、県とも相談いたしまして、このうちどの部分を配給に回さない、いわゆる準汚染米として保留するか、その点につきまして、現在打ち合わせ中でございます。
  275. 古寺宏

    ○古寺委員 こういう汚染米が出たために、自主流通米のルートに乗せることができなくなったわけでございますが、こういう問題の損失というものは、これはどこで補償してもらえばいいわけですか。
  276. 中村健次郎

    ○中村(健)政府委員 この問題は、この二地区につきましては、昨年の自主流通米が約二トンでございまして、非常にわずかな数量しか自主流通米になっておりませんけれども、本年産のものにつきましては、いまのような事情もございますので、自主流通米には出さないようにいたしておりますが、いずれにいたしましても、非常に自主流通米になる数量の少ない地域でございますので、自主流通米と政府買い入れ米との価格の差、おおむね一俵当たり百二十円程度と聞いておりますが、非常に少ない金額でございます。これにつきましては、県、市町村、協同組合等でそれの補償をしようかというふうな、農家に相談をしたやに聞いておりますけれども、本来だれが補償するかという問題は、こういったことを引き起こした原因によって判断すべきものだ、かように考えております。
  277. 古寺宏

    ○古寺委員 いま自主流通米がわずか二トンしかないというようなお話をなさったようでございますが、四千俵だそうでございますよ。四千俵というと何トンでございますか。
  278. 中村健次郎

    ○中村(健)政府委員 ただいま二トンと申しましたが、これは一つの部落でございまして、二つ合わせますと四トンでございますので訂正いたします。
  279. 古寺宏

    ○古寺委員 四千俵ですよ。
  280. 中村健次郎

    ○中村(健)政府委員 四千俵と申しますのは、自主流通米に去年回った数量は私のほうでは四トンと思っております。四トンと申しますと、約六十四、五俵になるかと思います。
  281. 古寺宏

    ○古寺委員 現地では四千俵自主流通米として出ている、こう私が現地へ行って聞いてきたわけなんです。
  282. 中村健次郎

    ○中村(健)政府委員 四十五年産米で自主流通に出しましたものは、先ほど申しました、正確に申しますと六十四俵でございます。今年産の米につきましては、これは自主流通には一俵も出しておりません。
  283. 古寺宏

    ○古寺委員 それは私が現地へ行って、現地の方々から聞いてきた数字とはもう全く天地の差がございますので、もう一度御調査になっていただきたいと思うのです。  そこで損害の問題については、原因者である鉱山がこれを補償すべきであるというようなお話がございました。私もその現地へ行ってまいりましたが、この鉱山は現在八人しか労働者の方がいらっしゃらないわけでございます。非常に倒産寸前の鉱山であるというようなお話がございましたが、こういうような無資力の鉱山によって鉱害が起きて、土壌汚染あるいはこういう汚染米ができた場合には、それではどういうような方法でこの現地の農家の方々を救済してくれるのでしょうか。これは政務次官からひとつお伺いしたいと思います。——そこの鉱山は慶長年間からの鉱山でございます。慶長小判をつくった鉱山だそうでございます。かつては何千人かの労働者の方々がおられて非常に盛業だった鉱山のあとを現在掘っているわけなんですが、現実には八人しかいまいらっしゃいません。しかも倒産寸前であるというふうにいわれております。ところがいまお話がございましたように、汚染米に対する損害の問題あるいは土壌改良する場合等の補償については、原因者である鉱山がするべきものであるという御答弁がいまあったわけです。ところが原因者である鉱山が無資力でしかも倒産寸前なんですから、こういう場合には一体だれがこれを補償してあげるのかということをいまお尋ねしているわけです。
  284. 森口八郎

    ○森口説明員 鉱山でいろいろな鉱害を起こしました場合に、第一次的に賠償の責任を負うのはもちろん鉱山でございます。私のほうといたしましても、カドミウム米が出ました場合には、先生御存じのとおり一PPM以上のカドミウム米はこれは有害食品でございますので、鉱山がこれを補償するという方針でずっと指導してまいったところでございます。  ただ本件の場合について申しますと、先生がおっしゃいましたように、この山は実は数百年前から開鉱されておりまして、江戸時代にももう金山としてある程度幕府直轄で稼業しておった鉱山でございます。戦争中は休鉱しておりまして、戦後銅、金、銀が出るということで、細々と採掘を続けておる中小鉱山でございます。したがいまして、一PPM以上の米の補償については現在の資力でもこれは十分できるというように考えるわけですが、やはり基本的にはそこの土壌改良をしなければいけないというような問題になるわけでございますけれども、そうした場合に、御存じのとおり、土壌に沈着しましたカドミウムが現在の鉱業権者ないしはその前の鉱業権者ないしは鉱業法施行以来の鉱業権者の稼業によって積み重なったカドミウムであるのか、あるいはそれ以前の幕府ないしは当時の朝廷ですか、そういう時代の古いカドミウムが沈着したものであるのか、これはまた非常にむずかしい問題であるわけでございます。しかしいずれにしましても、当地区におきましては、土地改良事業をやりませんと、終局的には問題は解決しない。土地改良をやるといたしましても、この事業者自体が、先生御指摘のように、資力の非常に乏しい鉱山であるというような特殊事情がございますので、その辺は関係各省とよく相談をいたしまして、何かいい対案はないかということで環境庁ともよく御相談をして、救済方法、対案などを練り上げていきたいというふうに考えております。
  285. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 ただいまの御質問の原因者が賠償能力がないという場合にどうするかということでございます。これは公害防止事業費事業者負担法の中に、たとえば中小企業に対する配慮を行なえというような条項もありますし、また地方公共団体や国がその中小企業に対しまして税法上あるいは金融上の必要な措置を講ずるようにつとめてもらいたい、こういうような規定があるわけでございます。この規定がありますが、現実にどのような措置をとるかということについて遺憾ながら、まだ十分な各省庁間の決定が見られないわけであります。環境庁が中心となりまして、いま通産省から御答弁がありましたように、この具体的方法をいかにするかということについて、せっかくいま検討中で、まことに申しわけない次第ですが、そういうような次第でございます。  まあ一案を考えまするならば、こういう支払い能力の少ない事業者に対しまして、これに適当な融資等を行なって、これが損害の賠償を期する。それに対して、長期にわたってその融資額を返還していくというような措置なども考えられるのじゃないか、まあ原因者が大企業なら問題ありませんけれども、御指摘のような場合に適正な配慮をするようにいたしたいと思います。
  286. 古寺宏

    ○古寺委員 今回の場合も発表になったのが十一月の末でございます。昨年も民間でやはり調査をして相当高いカドミウム分析値が出ておるようでございますが、発表はするけれども、それについては何らその対策を示してもらえない。お米のほうはそういうふうにこれは汚染米だというので、自主流通米にはもう乗せられない、非常に住民は不安な生活を送っているわけでございます。しかも、その鉱山そのものが零細鉱山であって、全然補償する力がございません。ですから、こういう場合にやはり環境庁が二・七五PPMという今年度産米では日本一の高いカドミウム分析値だと思うのですが、こういう発表と同時にやはり対策というものを環境庁が考えてあげませんというと、発表はしたけれども住民は毎日不安な生活を送らなければならない、こういうことでは非常に困るわけでございますので、今後こういう場合には各省庁また地方自治体等とも連携をとりまして、住民に安心のいくような対策というものを示していただきたい、こういうふうに強く御要望を申し上げておきます。  さらにまた、いま融資のお話がございましたけれども、おそらくこの鉱山はそういうような融資をしてあげても、これは倒産すると思うのです。私、行ってみてそういうふうに感じましたし、また実際にその鉱山を現在おやりになっている方もそういうお話でございました。こういう場合に、それじゃ一体どうするか、これは今後の大きな問題だと思うのですが、環境庁長官としては、そういうような場合には、どういうふうにしたらいいとお考えか、もう一度承りたいと思います。
  287. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 先ほど申し上げました各省庁との協議はすでにたびたびやっております。できるだけ早く結論を得たいと思っております。  ただいまの問題は、支払い能力がゼロで、すでに倒産というようなことになると思いますが、これは一面、これもまた私の試案でありますけれども、先ほどどなたかに答弁いたしましたように、公害の問題は原因者がその損害を補償する、それにかてて加えまして国としては救済措置を考えるということでございますから、そういう面でさらに農林省と大蔵省等とも協議をいたしまして、救済ができ得るように努力をいたしたい、早急に進めたい、かように考えております。
  288. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、農林省にお尋ねしたいと思うのですが、二・七五PPMですから、相当に土壌も汚染されていると思いますが、農林省としてはどういう調査をし、どういう対策をお考えになっていらっしゃるか、承りたいと思います。
  289. 川田則雄

    ○川田説明員 お答えいたします。  いまの小杉沢鉱山の周辺の問題につきましては、先ほど環境庁からお話がございましたような結果が出ております。これにつきまして、いま調査が終わりましたのは稲だけの調査でございます。土壌汚染防止法が通りまして、そうして調査方法は、分析方法も含めて省令できちんときめまして、どういう密度でどういうぐあいな調査をし、どういうようなサンプルのとり方をするかというようなことまできちんときめて、この調査をやっておるわけです。といいますのは、あとで県が対策地域を指定するとか、あるいはそれに基づいて対策計画を立てるという場合に、必要な調査が現実的に完了しておるようにというようなことで、こういう仕組みの調査をやっておりますが、現在結果が出ておりますのは、米だけの結果でございまして、米をとったと同一地点の土壌の分析を現在秋田県で実施中でございます。将来対策計画その他を立てるときには、どうしても土壌の分析が基本になりますので、その分析を早急に急がせまして、その結果が出ましたら検討し、環境庁ともよく打ち合わせし、県にもよく連絡をとり、将来必要な対策を順次とっていくようなことをいたしたいと考えております。
  290. 古寺宏

    ○古寺委員 この土壌汚染防止法によりまして、対策指定地域というものをきめることになっておりますですね、この作業はどういうふうになっておりますか。
  291. 松山良三

    ○松山説明員 お答えをいたします。  現在米の分析が終わったわけでございますが、米のほうは食糧庁の買い上げ等もございまして、非常に県は早くやったわけでございますが、土壌のほうが実はまだできておりません。これは各県ともことし細密調査七千五百町歩ばかりやっておりますが、土壌の分析のすでに終わった県は非常に少のうございます。いま県で試験場で分析中でございます。したがいまして、対策地域を指定いたします場合には、米のカドミウムの濃度と、これが一PPM以上出た地域並びにその隣接したところで土壌条件等から見まして、今後一PPM以上の米が生産されるおそれが著しいと認められる地域を指定をするということになっておりまするので、やはり土壌条件、土壌のカドミウム濃度等も出てまいりませんと、指定要件がなかなか判断できないということでございますので、いま急いでおりまする土壌の分析結果もあわせまして、あるいはまた過去のそれぞれの調査資料等もあわせて検討いたしまして、地域指定の要件に合致しているところはそれで地域を指定するということで、同時に、地域指定をされましたならば、今後の土地利用の基本的な方針なりあるいは対策事業なりそういったものを織り込みました対策計画を立てて、それに基づきまして今後の事業等を行なっていく、それにつきましては農林省とも十分相談をしながら県を指導してまいりたい、かように考えております。
  292. 古寺宏

    ○古寺委員 この一PPM以上の危険のある米の産出される地域の土壌中のカドミウムは大体何PPM以上でございますか。
  293. 松山良三

    ○松山説明員 実は土壌中のカドミウム濃度が米にどういうふうに吸われるか、そういった因果関係はなかなかはっきりと現在のところ把握しておりません。と申しますのは、地域的に非常に気象やあるいは土壌やらそういった条件に左右されておりますので、そういう因果関係がなかなかはっきりいたしておらぬということで、当面地域指定の要件は米のカドミウム濃度できめておるわけでございます。ただ、そのことにつきましてはやはりこれは土壌汚染防止でございますので、土壌の濃度からこの地域指定の要件なり今後の対策事業を進めていくというのが本来でございますので、今後ともこの米の濃度と土壌中の濃度との相関につきまして十分検討いたしまして、その因果関係が明らかになった時点で、指定要件も米じゃございませんで土壌中の濃度で指定をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  294. 古寺宏

    ○古寺委員 もうだいぶ期間が過ぎているわけですが、まだ明らかになっていないわけでございますか。
  295. 松山良三

    ○松山説明員 いまの指定要件はことしの六月に定められたのでございますが、それは昨年までのいろいろなデータを使ってそういうふうに現在の基準が定められたわけでございます。したがいまして、その後それまでのところでは因果関係がなかなか究明できなかったわけでございますので、やはりことしのデータを使いまして、これはいま分析中でございますので、それでもう一度検討して、あるいはまたその他いろいろな試算等ももし必要であればやりまして、はっきりした究明ができてからそのような方向で土壌の基準にいたしたい、かように考えております。
  296. 古寺宏

    ○古寺委員 それからこの土壌汚染防止法はカドミウムだけが現在は対象になっているわけですね。銅や亜鉛についても対象にするということを何回もいままでおっしゃってきたわけですが、いまだに加えられていないのですが、これはどうでございますか。
  297. 松山良三

    ○松山説明員 当面緊急を要しまするカドミウム及びその化合物を特定有害物質に指定をいたしております。できるだけ早い機会に銅及び亜鉛についても特定有害物質に指定したいと考えております。特に銅につきましては、今年度末か来年度早早を目途に指定をいたしたいということで、目下検討を進めておる次第であります。
  298. 古寺宏

    ○古寺委員 それじゃ時間ですから、これで終わります。
  299. 小林信一

    小林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十四分散会