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1971-11-11 第67回国会 衆議院 公害対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月十一日(木曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 小林 信一君    理事 始関 伊平君 理事 橋本龍太郎君    理事 藤波 孝生君 理事 山本 幸雄君    理事 島本 虎三君 理事 古寺  宏君    理事 寒川 喜一君       伊藤 正義君    久保田円次君       林  義郎君    松本 十郎君       阿部未喜男君    加藤 清二君       土井たか子君    岡本 富夫君       西田 八郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         中央公害審査委         員会事務局長  川村 皓章君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁大気保全         局長      山形 操六君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         水産庁次長   藤村 弘毅君         通商産業省公害         保安局長    久良知章悟君         通商産業省鉱山         石炭局長    莊   清君         運輸省港湾局長 栗栖 義明君         海上保安庁長官 手塚 良成君  委員外出席者         科学技術庁原子         力局放射能課長 菊地  通君         環境庁企画調整         局公害保健課長 山本 宜正君         通商産業省企業         局参事官    田中 芳秋君         運輸大臣官房参         事官      原田昇左右君         建設省河川局河         川計画課長   宮崎  明君         日本国有鉄道副         総裁      山田 明吉君         日本国有鉄道船         舶局長     田中 隆造君     ――――――――――――― 十月二十九日  環境保全基本法案細谷治嘉君外七名提出、第  六十五回国会衆法第二号)  公害に係る被害の救済に関する特別措置法案  (細谷治嘉君外八名提出、第六十五回国会衆法  第一二号)  公害紛争処理法案細谷治嘉君外八名提出、第  六十五回国会衆法第一三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月八日  自然の保護及び環境保全に関する陳情書外一  件(第七  七号)  光化学スモッグ対策に関する陳情書  (第一二六号)  PCB公害対策に関する陳情書  (第一二七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害対策に関する件(大気汚染及び水質汚濁対  策等)      ――――◇―――――
  2. 小林信一

    小林委員長 これより会議を開きます。  公害対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。始関伊平君。
  3. 始関伊平

    始関委員 去る十月十四日に小林委員長はじめ当公害対策委員会の一行六、七名が船橋市を中心とするいわゆる葛南地区地盤沈下状況を視察いたしました。これは船橋市の渡辺市長地盤沈下非常事態宣言というものを発表いたしまして、これが委員長の耳に入りましたことがきっかけになったのでございます。地盤沈下非常事態宣言の中のほんの一節だけを読み上げてみますと、「本市における地盤沈下現象実態は、特に昭和四十年以降その速度と地域拡大を早めており、臨海地域は至るところゼロメートル地帯と化し、各所に出水、滞水の災害をもたらす等一刻の猶予も一許さない緊急事態となっている。」こういうことでありまして、われわれも現地視察の結果、そのとおりであるということを大体確認してまいりました。これは全国至るところの問題でございまして、ここに地盤沈下対策都市協議会というのがございますが、新潟東京、名古屋、大阪、尼崎、あるいは川崎、西宮、川口というような各都市がこれに参加しているようであります。  そこで、一般的な問題といたしまして地盤沈下の問題を取り上げてみたいと思うのでありますが、公害としての地盤沈下は、主として地下水の過大なくみ上げによって生ずるものである、こう考えられておるようであります。地下水くみ上げ態様は、大体五つあると思うのであります。工業用水としてのくみ上げ、それから天然ガス採取に伴うくみ上げ、それからビル用水くみ上げ、さらに地下水水源とする上水道、また農業用水くみ上げ、大体この五つの態様があると思うのであります。一方、地下水脈は、地下において相当広範囲につながっておる。ある地点における地盤沈下という現象は、とんでもない遠くのほうでの地下水くみ上げ影響を受けているかもしれぬというようなこともありまして、少なくとも一関東でいえば関東平野一円を一つのユニットとして対策考えなければならぬという考え方も相当有力にあるように思います。したがいまして、地盤沈下は、地下水くみ上げ態様からいいましても、あるいは地域的な相関関係からいいましても、いわゆる複合公害の典型的なものである、こう申してよかろうと思います。  そこで環境庁長官お尋ねをいたしますが、その対策が現在のように各省ばらばらであっては困るわけでありまして、総合的な対策を、しかも広域的な視野から強力に推進しなきゃならぬ、まさにこれは環境庁役割りであり、責任であると思いますが、この点についての御見解を伺いたい。  そのことと関連をいたしまして、いま地下水くみ上げの形を五つ申し上げましたが、最初の三つにつきましてはそれぞれ法的な規制があるわけですけれども農業用水と、それから地下水水源とする上水道につきましては法的な規制が全くない、野放し状態でありますが、こういうことではどうもうまくまいらないのでありまして、農業用水あるいは上水道としての地下水くみ上げ規制の問題も含めまして、地盤沈下対策を広域的にかつ総合的な観点から行なうために、何か法制的にも不備があるんじゃないか。地盤沈下対策基本法というのが適当かどうか知りませんが、何か地盤沈下に対する対策法制面から進めてまいる必要があると思うのですが、その辺につきましてお考えがありましたらちょっとお伺いさせていただきたいと思います。
  4. 大石武一

    大石国務大臣 ただいま始関委員からいろいろな御意見あるいは御質問がございましたが、総合的に地盤沈下対策を講じなきゃならぬ、そうしてこれを広域的にやらなきゃならぬという御意見は全く賛成でございます。御承知のように、いま各地で地盤沈下が起こりまして、いろいろな問題をかもしておるわけでございます。その原因をいまいろいろ各方面から究明中でございますが、大体において地下水くみ過ぎが原因であろうということは大かた意見でございますけれども、さらにこの原因がそれだけであるのか、さらにほかの要因があるかないか、またお話しのように広域的なものであろうと考えられるが、その面積とかその地域関係はどのようなことになっているか、そういうものをさらに今後十分に究明しなければならない事態が差し迫っております。御承知のように、環境庁といたしましても、中央公害対策審議会にはかりまして地盤沈下部門を設けまして、ここにいま諮問をいたしまして鋭意原因の探求をいたしておるわけでございます。  ただ、御承知のように、地下水のいろいろな規制が問題になるわけでございますが、地下水くみ取る場合の規制というものはいま各省庁にわたっております。御承知のように、工業用水通産省環境庁との共管であるとか、あるいは上水道関係環境庁、あるいは天然ガス採取のための地下水くみ上げ通産省であるというように、いろいろと所管が入り組んでおるわけでございます。こういうこともやはり今後の行政には一つの障害になろうかと思います。できますならば、どの省でもけっこうでありますが、われわれの環境庁でも受け持ってけっこうでございますから、そういうものを所管一つにして、そうして十分な研究なり対策なりを立て得るような、そのような方向に行政を進めてまいりたいとわれわれは念願する次第でございます。  だがしかし、そのような地盤沈下を防ぐためには、いま言ったような原因究明の必要がございますが、大体地下水くみ上げさせないということが重大な問題でございます。御承知のように、工業用水あるいはビル用水につきましては法律的には規制の方法がございます。ただし、農業用水あるいは上水道については、確かに規制がございませんので、これをやはりおっしゃるように何か規制の対象にしなければ——いまの農業用水はあまり都市には近くないところであるというところからいままで野放しにされたのかもしれませんが、やはり広域的に考えれば地盤沈下影響はないとは考えられないわけでございます。そういう意味で、今後こういう問題にわたりましても行政面でお互いに相談いたしまして、一つの総合的な規制なり対策を立て得るような行政の一元化をはかってまいりたいと願う次第でございます。ただ、工業用水は確かにこれは規制しなきゃなりませんけれども、そのためには、いままで認めておりました企業に対する水の供給をしなければならないわけでございます。こういうことも十分に所管関係各省とも連絡いたしまして、できるだけ早くその工業用水が、あるいはビル用水が供給されるように、地下水からでなく上水道として供給されるような施設対策を急がなきゃならぬと思います。そういうことをしまして、それでもなお現在においてはそのような水道を使うことが非常に費用がかかるとか、いろいろな理由によりまして、ある程度その設備があるにもかかわらずその使用を怠って地下水くみ上げている個所も多少ございます。そういうことにつきましてはやはり厳重に規制をいたしまして、水道を使う使わないはかってであっても、施設があるところにおいては地下用水くみ上げることは絶対に禁止するというような行政に出なければならぬではないかといま考えておる次第でございます。いずれにしても、これはいずれば規制しなければなりません。全面的な規制が必要であると思いますが、それにはやはりできるだけの対策を講ずることが必要でございますから、できるだけ早くその対策を急がせるように努力してまいりたい、こう願っておる次第でございます。
  5. 始関伊平

    始関委員 いま御質問を申し上げたことと関係する問題でございますが、地盤沈下対策を広域的な見地から行なう必要があるというふうに普通考えられていると思うのでございますが、このためには地下水脈つながりぐあいといいますか、これをやはり広域的に、かつ正確に調査する必要があるわけでありまして、いまお話しのとおり、地盤沈下都会地に起こっておりますけれども、とんでもない山のほうでくみ上げても影響を受けるかもしれないというような問題もあるわけでありますが、こういう調査は今日までにある程度できておるのかどうか。それからまた、できておるとしても完全にはできていないと思いますが、将来の調査計画、特に来年度予算ではどうなっているかというような点を一点。  それから、地盤沈下対策を有効適切に行なうためには、まずその実態を把握しまして、また地盤沈下状況監視測定体制というもの、これはあらゆる公害に共通でありますけれども、これを整備することが特に重要であって、大気汚染とか水質汚濁とかいうものに比べますと、監視測定体制などというものもまだおくれているのではないかと思いますけれども、今後どうされるのか、特に来年度予算ではどうされるのかというような点を御説明いただきたい。
  6. 岡安誠

    岡安政府委員 お答えいたします。  最初に、地下水規制のためには、地下水くみ上げに伴います諸般のメカニズムを明らかにしなければならないというお話でございまして、全くそういうことでございますので、私ども地盤沈下対策を今後推進強化するために、従来のいろいろな蓄積と申しますか、調査蓄積等を検討いたしておりますけれどもお話しのとおり、必ずしも従来から全然やっていないわけではございませんけれども、まだ解明されなければならない点がたくさんあるわけでございます。私どもは、早急にそういうような問題を明らかにするという意味合いから、来年度さらにそういうメカニズムその他を明らかにするための特別の調査費を現在要求いたしまして、それらにつきましては中央公害対策審議会に設けられます地盤沈下の部会を中心といたしまして、専門委員方々もお願いいたしまして、早急にそれらの関係を明らかにいたしたい。それらの関係をまちまして、必要な立法措置も含めまして対策を講じたいというような段取りになっております。  それから監視体制整備でございますけれどもお話しのとおり、現在各個所地盤沈下地帯につきましては、それぞれの機関におきまして必要な監視のための井戸等が掘られておるようでありますけれども、これもやはり地盤沈下現状から見まして非常に少ないようでございます。未整備と言っていいような状態であると考えております。それにまた、国からの助成も、通産省農林省等はほとんどやっておりますけれども、全体的に、系統的にはまだやられておらないという点もございますので、私どもは来年度におきましては、できれば従来の監視網の薄いところにつきましては国から助成をいたしまして、観測井を掘りまして定期的な観測を今後とも行なうというような予算を現在要求中でございます。
  7. 始関伊平

    始関委員 地下水くみ上げの非常に大きなものの一つ工業用水であることはいま長官もおっしゃったとおりでありますが、工業用水くみ上げ規制の前提としては、やはり工業用水道設置を急がなければならぬ、これは普通の考え方だと思いますけれども、しかし、どうも実情を見ておりますと、地盤沈下が毎年十五センチも二十センチも進むということで、現地人たちは非常な不安がある、心配があるのに、工業用水道はいまから調査をして四年も五年もかかるということで、地盤沈下というもの——先ごろ船橋非常事態宣言というものを出したわけでございますが、いずれにしても緊急事態である場合が多いですね。どうもそういう場合に、工業用水道布設のほうがテンポが合わないという感じが私どもでもするので、これは現地地盤沈下地帯に住む人からいえば一そうそういう感じが強いだろうと思いますが、どこからお答えをいただいたらいいか、こういう点についてどう考えておるかという点が一つ。  それから、千葉県のあるところでは、せっかく工業用水道をつくったんだけれども取り入れ口が海岸に近いような関係がありまして、そこに塩水が入ってしまう。そこで工業用水としては完全な役割りを果たさないというか、そういう問題などが起こっておるのであって、これは何かのミスで、私はたいへん遺憾なことだと思っておりますが、その改善策というものは進んだのか、どういう見通しになるのかということを伺いたい。  それからもう一つは、いずれにいたしましても、地下の水のくみ上げ規制するわけでありますから、地表にある水、これを有効適切に使う、水資源開発あるいは水資源確保という問題が非常にたいへんな緊急な問題になるわけでありまして、工業用水道だけ引っぱりましても、そこに入れる水がなければ何にもならぬわけでありますが、ダムを建設して貯水池をつくるとか、要するに、日本国土に降った水を極力有効に使うという意味での水資源開発水資源対策というものがたいへん大事じゃないかと思いますが、これを考えませんと、結局地盤沈下対策は進まないわけだろうと思いますが、こういう点についてどのようにお考えか、以上三点についてお尋ねをいたします。
  8. 田中芳秋

    田中説明員 通産省といたしまして、工業用水道におきます対策状態につきまして、まずお答えをいたしたいと思います。  御指摘のとおり、工業用水道布設テンポ地盤沈下現状とやや見合わないという形になっておりますことは、はなはだ遺憾であるというふうに考えております。したがいまして、これが工事の進捗に全力をあげたいというふうに考えておるわけでございますが、御指摘のような地域に対します問題といたしまして、葛南地域におきましては、ことしの四月に全面給水をいたして、来年三月三十一日までに地下水から工業用水道への水源軽換を完了させることといたしておるわけでございます。しかし、これらの地域、特にあの周辺地域地盤沈下がなお進行しておるようでございますので、指定地域拡大、それからそれに伴います工業用地下水くみ上げ規制基準の強化を一そうはかってまいりたいというふうに考えております。これにはやはり代替水源が必要でございます。したがいまして、市川あるいは船橋内陸部、それから松戸、こういった地域給水地域といたしますいわゆる東葛工業用水道、これを四十七年度から新規着工をさせたいというふうに考えております。これが完成でございますが、可能な限り早期に完成をいたしますように、私どもとして全力をあげてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  御指摘の第二点の塩水化の問題でございますが、確かにそのようなおそれが非常にあるということから、私どもといたしまして、建設省十分相談をいたしまして、河口に近いところに水門を置きまして、これが塩水の逆流を防ぐという方策をとることといたしておるわけでございます。大体ことしの秋ごろと思いますが、この工事が進行いたしますと、そうしたおそれがないようにいたしたい、このように考えておるわけでございます。
  9. 始関伊平

    始関委員 長官水資源確保対策経済企画庁だそうですが、きょう来ておりませんから、国務大臣の立場で御見解をひとつ聞かしていただきたい。
  10. 大石武一

    大石国務大臣 いま水はきわめて大事な資源でございます。その水をわれわれ極力利用して、われわれのすべての生活の基本にいたしておるわけでございますが、今後その水が非常に少なくなる、将来の日本のすべての発展に対応して水が近い将来に少なくなるだろうという見通しがあるわけでございます。いまのうちから水の活用と申しますか、利用というものを十分考えてまいらなければならぬ時期が参っております。ことに、地下水に関しましては、御承知のように、地下水は年年くみ上げが多くなります、また地下に浸透する水が少なくなっておると思うのです。御承知のように、地下水は結局は天から降ってきた雨がもとでございますけれども、その雨を地面の中にしみ込ませないようなことが、もっぱらいま、ことに日本の国では行なわれておる感じがいたします。道路が舗装されてしまう、山の木を切って、水を保有する面積が少なくなる、そういうことで、地下水を取り入れる部面が非常に少なくなってきておると思うのです。いま日本で一番地下水を取り入れている大きな取り入れ口水田だと思います。三百万町歩以上の水田、これが日本地下水を取り入れる大きな採取口だと思うのです。そのたんぼでさえ近ごろではだんだん減反されて——減反はいいのですが、たんぼそのものが減らされるような傾向でありますので、これはゆゆしき問題だと思います。  先日も瀬戸内海を見てまいりまして、ヘリコプターで空を飛んでまいりましたが、その節あらためて発見しましたのは、たんぼがすばらしいことに気がつきました。たんぼは米を生産するところである、もう一つはわれわれの環境の上に非常にゆとりを与えるあるいは酸素を与えておるところでありますと同時に、三番目には、日本の大きな地下水取水口ではなかろうかという感じを強くいたしてまいりました。  こういうことで、われわれは、日本国土のあり方を再認識する必要があろうというふうに思うのでございます。このように水の利用活用考えなければなりませんが、われわれは、一度使った水を再生して、その水をできるだけ利用するということが今後重大な問題ではなかろうかと思います。そういう意味で、工業用水は、われわれは、地下水をできるだけやめさせまして、できるだけ水道によって供給しなければならぬでしょうけれども、その供給した水をさらに再生して——再生と申しますか、再利用することが必要ではなかろうか、そのような研究もわれわれはしていかなければならぬじゃなかろうかというようなことを考える次第でございます。
  11. 始関伊平

    始関委員 地下水くみ上げのもう一つの大きなソースは、天然ガス採取に伴うものだと思いますけれども、この問題につきまして、地盤沈下原因が、さっき申し上げたように複合——原因が競合しておりますから、あるところの地盤沈下原因天然ガス採取によるものかどうかをやはりはっきりさしたほうがいいわけでありますが、これは観測井によって測定しようということでありますが、従来、私の記憶では、経済企画庁の中にある調整費を一部転用するというようなことでやっておったようでありますが、やはり天然ガスというものが地盤沈下の非常に大きな犯人ではないかということで方々で目をつけられておりますから、あらかじめこれはやっぱり予算観測井設置の補助、こういうものをとっておかなければいかぬと思いますけれども通産省はこの点どう措置しておるかということをひとつ伺いたい。  それからもう一つは、たとえばこれは経済企画庁調整費をもらってやったわけでありますが、船橋では五百メートル、千メートル、二千メートルという三本の観測井が並んでいるわけですね。すでに六月ごろにはこれは完成して観測を始めたというふうに聞いておるのですけれども、結果はさっぱり出てない。しかも、結論としてはたいへんけっこうなことですが、東京通産局が間に立って天然ガス観測による自主規制というものをどんどん始めた。年内にも全面規制をやろうかというふうなことになっているようでありますが、それはそれでいいのですけれども、そうなりますとせっかく観測井を掘って観測をするといっても役に立たぬというようなことになると思うのですけれども、これはいつごろから観測の結果が出るのかという疑問に対して答えていただきたい。これが第二点。  それから、いままでのところでは、新潟でも船橋でも当局の勧告によって自主規制ということで話が済んでいるようでありますが、業者側がどうしても言うことを聞かないような場合には、一体法律的には当局は何らかの権限を持つのかということ。  それに関連しまして、鉱業権者に対する補償というようなものが起こってまいりますが、時間がありませんから、以上の四点につきまして、簡単に御説明を願いたいと思うわけであります。
  12. 莊清

    莊政府委員 まず観測井整備予算要求についてでございますが、従来経済企画庁調整費船橋整備いたしておりましたが、明年度におきましては千葉市の周辺で二本、約六千万円、それから茂原、九十九里につきましても同じく二本、約四千八百万円、合計いたしまして一億八百万円の予算要求を現在提出してございます。観測井というのは、事前予防のためにも、それから実際の強い規制を加えるためにも不可欠の投資でございますので、この予算要求はぜひ獲得をしたいと考えております。  次に、船橋地区におきます観測井利用の問題でございますが、地盤沈下の進行に対して観測井整備というものが不幸にして少し時期をおくれたということが、私、正直いってあるんじゃないかと思います。そういうこともございまして実際には規制のほうが、行政指導による自主生産制限という形でございますが、それのほうが結果的に先行するような形に事実なっております。この観測井をつくりましてもそう急に結果が、すぐに全貌が明らかになるというわけでございませんで、逐次科学的なデータが出てくるということでもございます。いまは規制のほうが事実上先行しておるような形になっておるかと思います。やはり船橋地区につきましても今後の全面禁止というふうな問題も実はございますが、そのためのやはりくみ上げと沈下との科学的な相関関係というものをはっきりとつかむためには、この観測井というのは依然としてやはり重要性は当然あるわけでございます。そういう意味で、観測井整備がおくれたことは残念でございますが、今後データの収集を極力急ぐわけでございます。データが大体つかまりますには、もう少しお時間をいただきたい。  それから法的措置についてどう考えるかという御質問が補償の問題とからめてございましたですが、現在の進め方は、申し上げましたとおり行政指導による企業自主生産制限という形でございまして、企業のほうが自主的に鉱業法に基づきます施業案の変更を行ないまして、変更の認可申請を出していただくということになりますれば、これは一つの解決でございまして、新潟の場合は実はそれで問題を解決しております。船橋の場合には、実は全面的に採取を禁止する地域をとりあえず一キロ四方でございますがつくりまして、そういう関係もございまして、これは仰せのとおり全面的に事業ができなくなるというふうなことから、県当局においてもいま補償の問題について考え方をいろいろ御検討になっておるというふうな点もございまして、そういうこととのからみもございまして少しおくれておりますが、結局、最後の国としての担保の手段があるかという点につきましては、これは明確にございます。鉱山保安法に基づきまして、公害防止のために特に必要があるという場合には施業案の変更命令という制度がございまして、命令に違反した場合には鉱業法の基本に戻りまして、鉱業権そのものの取り消しというふうな非常に強い制度が現在でもすでにございます。ただ現実の問題といたしまして、中小企業等の採取というような点もございましょうし、全面禁止ということも今後さらに強化するというような場合も考えまして、補償の問題についても別途検討し、対策をとりながら、今後企業のほうが自主的にどうしても動けないという場合には法的な措置も実施していきたいということが私ども基本的な考え方であります。
  13. 始関伊平

    始関委員 いままでいろいろ申し上げましたのは、地盤沈下実態把握の問題と地盤沈下の進行する原因を除去するというサイドからの問題の取り上げ方をしたのでありますが、地盤沈下が実際に起こっておる地域につきましては、特にそれが海岸に近い地域でございますと、高潮なんかを防ぐという問題、あるいは河川の水の入ってくるのを防ぐという問題、それから自然のままにうっちゃっておきますと中の水が流れませんから内水排除といいますか、そういう問題等がありまして、これは非常に重要な問題でありますが、この問題につきまして、きょう建設省と運輸省からお見えをいただいております。港湾の地域については運輸省、それ以外の地域については建設省という担当区分だと思いますけれども建設省に対しましては四十七年度の要求予算において一、高潮対策事業費、二、排水事業、それからどうしてもこれは下水道がからむので、下水道予算がつかないとどうしてもぐあいが悪いから、排水事業、下水道、内水排除施設等の施設整備のための補助予算ですね、こういうような関係がどうなっておるのかということを伺いたい。これを伺います意味は、われわれも予算の獲得に協力したいし、環境庁長官にはぜひ地盤沈下対策の総元締めとして御協力をいただきたいという意味であります。それを伺いたい。  なお時間がありませんから、ついでに運輸省のほうは高潮防潮堤、水門、排水事業など、建設省とほぼ同じような事業の内容を地域だけかえてやっておると思いますが、これにつきましても予算要求の内容につきまして大体の御説明をしていただきたい、こうお願いいたします。
  14. 宮崎明

    ○宮崎説明員 お答えいたします。  おっしゃられましたとおり、地盤沈下地域は非常に過密な地域で、一度高潮等の災害がありますとたいへん悲惨な被害を生じますので、高潮堤防につきましては一生懸命やっているわけでございます。それに伴って、地盤沈下で内水がはけないということがあちこち非常な苦情といいますか、非常に困った状態が出た。現在私どもとしましては来年度百二十七億という地盤沈下等、それから高潮対策も含めまして予算要求しておりますが、それとあわせて、あわせてといいますか、海岸事業としても、たとえば浦安地区等において非常に内水のひどいところ、排水ポンプ等を実施するように二億五千万ほど予定しております。何とかこれを確保しまして、できるだけ事業の促進をはかりたいと考えております。
  15. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 御指摘のように、港湾の区域の中の高潮あるいは海岸決壊、そういうものにつきましては海岸の予算で実施してございます。現在建設省それから運輸省、農林省、三省の共同の五カ年計画でもって進めてございます。特に御指摘ございました地盤沈下の激しい地域と申しますのは、東京とかあるいは千葉、あるいは大阪湾の大阪とか西宮の付近というふうに人口の密集地帯でございますので、東京、大阪等につきましてもこの五カ年間で特に外郭の部分で緊急を要するもの、これは全部完成いたしたいということで鋭意進めております。  なお、船橋につきましては、東京、大阪に比べますとつい最近といいますか、比較的近い、短い期間に急に起こってきたということもございまして、住民の方も非常に御心配であろうかと思います。現在計画しております七〇%程度は四十六年度中に終えまして、できれば来年、再来年で船橋地区の計画は全部完成いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  16. 始関伊平

    始関委員 長官、実はここにあなたのほうの水質保全局の企画課ですか、地盤沈下関係予算の取りまとめてもらった表がございますが、これをごらんいただきまして、地盤沈下というのは、考えようによりますと自分の住んでいる場所が沈下するわけですから非常に深刻なのですね。各省督励して予算の確保にぜひ大臣の政治力を発揮していただきますようにお願いいたします。  なお、環境庁自体の予算の中にはたいへんおもしろいのがありまして、全国の地盤沈下のおそれのある地域ですね、まだ地盤沈下は始まっていないけれども、そういう心配のある地域の分布と危険度についての調査をしようということでありまして、公害対策が後手後手に回っておるのを先手でいこうということでありまして、これはたいへんけっこうな予算だと思いますが、こういうふうな公害地盤沈下対策全体を見渡しての大臣の今後の決意と申しますか、それを簡単に伺いまして、私の質問を終わらしていただきます。
  17. 大石武一

    大石国務大臣 環境庁の仕事は、やはり公害関係のすべての行政の各省庁間の調整とかあるいは予算の一括的な計上とか、そういうことがわれわれのおもな仕事でございますが、いま国民の重大な関心事となっておる地盤沈下につきましても、やはりできるだけの努力をいたさなければならぬと決意をしております。  ただ私は少しふしぎに思うのですが、もちろん応急の対策としては、どこからその費用が出ようと国が中心となりまして、あるいは県あるいは市町村でもけっこうでございます。そういうところが中心となりまして、できるだけの、早い応急の対策が立てられなければならぬと決意いたしておりますが、こういうものは将来どのようにして考えたらいいかということをいま疑問に思っております。実は原因をはっきりとわれわれは究明することに努力いたしておりますが、原因がわかればそのような地盤沈下原因を起こさせた企業側に責任があるのではなかろうか。その場合にそのすべての対策なり復旧の費用まで全部国や県で持つということは不合理ではなかろうか。当然企業の責任においてこういうものは果たすべきではなかろうかという考えを持っております。ですがそれはいますぐできません。そんな理屈をこねても実際は国民が困ることですから、いまは国としてもあるいは環境庁としてもできるだけの力を入れまして、その対策にいそしんで励んでまいりますけれども、近い将来そのようなものの考え方をもう少し整理いたしまして、原因究明とともにその責任のあり方、それからその費用の出し方も明確にしてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  18. 始関伊平

    始関委員 ありがとうございました。
  19. 小林信一

    小林委員長 島本虎三君。
  20. 島本虎三

    ○島本委員 大臣も見えておりますが、まだ十分そろっておらぬようです。私のほうで聞きたいのは、ことに環境庁中心にしてひとつ所信を承りたいのです。  アムチトカ島で、広島に投下された原爆の二百五十倍もあるような、五メガトンの地下爆弾の実験をした。これは何と言っても大ショックであります。世界じゅうほとんどの人が反対している。その中でアムチトカ島の実験が強行された。しかし、気が違ったのじゃないか、または特定の国が、それも一握りの人たちがかってにこんなことをやっていいのか、地球を汚していいのか、こういうような声さえも出ておったようであります。私どももこういうような憤りがだんだん広がってきている。たとえそれが地震や津波の誘発がなかったとしても、環境への重大な悪影響はこれは許されないと思うのです。それで地球が破壊されてしまって、日本だけ環境庁環境保全を叫んでも、これは何にもならないので、こういうような点は環境保全の立場から大臣としては外務省に対して強力に発言すべきじゃなかったのか。もうすでに行なわれてしまいました。しかしこれは環境破壊という意味ではもう国境を問わず重大な問題であります。大臣としてこの問題に対して、日本は被災国としてはっきりした強力な態度をとるべきだった、こう思うのです。まあ大臣は強力だと思うのですけれども、外務省に対してこういうような点ではっきり意思表示ができなかったのかどうか。そして環境保全という立場でどういう態度をおとりになったか。考えとあわせてひとつお知らせ願いたいと思います。
  21. 大石武一

    大石国務大臣 アムチトカ島のあの水爆実験につきましてはまことに遺憾だと思います。私もあのようなことはやってはならないことだと考えておりますが、国の利己的な考えのもとにあのような実験が強行されましたことは、まことに残念でございます。幸いに、心配されました津波とかその他の事故も起こりませんでしたし、また報道によればいろいろな大気汚染がそう起こっておらないということでございますから、結果的にはそれほど心配することはなかったと思いますけれども、あのようなものの考え方、あのような行動というものは国際的にやはり今後許すべからざるものだと考えます。環境庁としましては、もちろん環境保全の観点からあのようなことは断じて賛成できないことでございます。われわれとしては声を大にして世間に向かってそれを叫びたい気持ちがございます。しかし幸いにというか、当然のことでございますが、日本の国の政府といたしましても、外務省を通じて三回も厳重にその中止方を要望いたしました。われわれは政府の一員でございますから、やはり自分だけの主張にこだわらないで、国全体、政府が一本になってそのような行動をとることが正しいと信じましたので、あえてわれわれは環境庁としての所見を別に世間に発表するようなことはいたしませんでしたが、閣内におきましても十分に外務大臣にも要望いたしました。閣議の方向もそのような方向に向いて、外務大臣にいま交渉を委任いたしておりますので、そのような方向でわれわれの意思はアメリカに対して強、硬に申し述べたと考えておりますけれども、あのような結果になりましたことは、力足らず残念だと考えております。
  22. 島本虎三

    ○島本委員 それは一人でできることとできないこととあるでしょう。しかし私は姿勢として環境庁長官が外務省を動かし、内閣を動かし、そしてせめてあなたの良心を国会の決議にまではっきり実を結ばせたかった、こういうふうに思っているのです。そこまでやれなかったことは−今後の環境庁のあり方として、こういう環境保全の問題に対しては国境を問わず重大な発言をすべきである、こういうふうに思っております。いままでの点、やむを得なかったといいますけれども弱腰です。そんな弱腰じゃいままでのあなたの人気は半分ぐらい下がる。今後も十分こういうような点を注意しないといけないと思います。ことにいま被害がないということで安心だといわれる、これは重大な間違いです。被害がいまなくても発生するおそれがあるのです。もうすでにアメリカからそういう資料さえ出ているのです。重大な環境汚染です。それにも増していま心配しておるのは、北海道への影響なのです。かつてはチリ地震津波、それと十勝沖の地震、こういうようなことで何度も苦い思いをしているわけです。今度、特に釧路方面、向こうのほうでは、北洋漁業並びに北方の漁場を生産の場所としているわけです。そういうようなところでは当日午前九時にもうだいじょうぶだといってシシャモのけた網漁業にさえも一斉に出漁しているのです。その乗り組員たちのふんまんやる方ない声はもう長官も聞いてほしいと思うのです。それはわれわれも胸を打たれることばがあります。公海の通行も制限されたり、また操業中の漁船が危険水域から避難を命ぜられたり、まさに大騒ぎだったのです。その中で漁場が一度汚染されて被害が出てから騒いでも、海はもと通りにならないのだ、こういうようなのが漁民の声なのです。環境庁長官もこういうようなところは十分考えておいて、今後の対策等についても万全の措置をしておいてもらいたい、こういうふうに思います。いま、被害がない、こういうようなことで言っておりますが、被害がいまはない、これからないということの断言はできないと思います。それで、政府は被害が起きた場合には補償を要求する権利を留保されたようです。したがって、放射能の発生、それから漁業資源の破壊、こういうようなことは人道上、環境保全上からもどうしても認められません。これを留保したということは、今後十分これに対処してもらいたいと思うのです。こういうようなことは国民生活への挑戦ですからね。これはいけないと思うのです。  それで、政府としてはどの程度これの追跡調査をしておるのか、それから本州の地震計にどれほど影響したのか、これについて、もうおそらく追跡調査しているに相違ありませんので、科学技術庁のほうからひとつ発表願いたいと思います。
  23. 菊地通

    ○菊地説明員 お答えいたします。  核爆発によります放射能対策にかかわります諸問題につきましては、関係官庁相互の連絡を緊密にするために、内閣に放射能対策本部というのが設けられてございます。放射能対策本部は、本部の下にさらに幹事会というのが設けられております。  今回のアムチトカの実験の報道が伝わりましたことによりまして、私どもといたしましては放射能対策本部の幹事会を招集いたしまして、その対策を四十六年の六月五日と十一月の二日の二回にわたり検討いたしました。すでに日本本土付近の放射能監視につきましては、平時から連続してやっております。もちろん各省の御協力によってやっているわけでございます。これを放射能対策本部は統括しているわけでございます。今度のアムテトカ島実験につきましてどういう影響があるかということで検討いたしたわけでございますが、一応核爆発実験であるので現在監視体制を続け、かつそれによって何か変動があるというきざしが見えたときには緊急時体制をとろうということをきめまして監視を続けたわけでございます。幸いにしまして、いまのところ日本環境に関しまして放射能の影響が出ているということはございません。  それからもう一つ、先ほどのことでございますが、アムチトカ島、その環境につきましては、まずこれはアメリカ、カナダ、それからソビエトに環境放射能測定のデータがあればすぐ日本に送るようにということは外務省を通じましてすでにお願いしてあるところでございます。私どもといたしまして、これらのデータによりまして、放射能の影響が何らかわが国に及ぶというおそれがある場合には、直ちに放射能対策本部幹事会、場合によりましては本部会を招集いたしまして、その対策をいたすということにしております。
  24. 島本虎三

    ○島本委員 アムチトカ島にもし亀裂が生じたりまたは死の灰が海に流れ出す、こういうような場合は十分考えられるわけです。汚染も考えられるわけですが、日本の主たる生産の場としている漁場、すなわち日本近海及び北洋漁場、こういうようなところに対しては、潮の流れに沿うて死の灰に汚染されるおそれもあるのじゃないか。そうなると、政府としても当然毎日何回かずつ何カ所かできちんとデータをとっておくべきじゃないだろうか。他のほうに頼んであるから、そっちのほうから来るまでは被害がないんだというような考えはまことに科学的じゃない、前向きじゃない、こういうように思うわけなんですが、毎日何回かずつ何カ所かできちんとデータをとっているのかどうか、この点をひとつお伺いしておきます。
  25. 菊地通

    ○菊地説明員 平常の対策といたしましても、雨が降った場合の分析、それから土壌中の放射性物質の量、それから魚介類の中の放射性物質の量、食肉中の量、野菜、米麦中の量、これらは年にサンプルの数をきめまして定期的にやっております。
  26. 島本虎三

    ○島本委員 年にといっても、いまこういうような事態に対しては、国民にまた環境汚染上に重大な影響があるとするならば、おそらく年に何回かその他の国に頼んでおいてデータをちょうだいするなんというようななまやさしい考えでは、また後手になるのじゃありませんか。これはもう何回かずつ、何カ所かで毎日きちんとデータをとっていなければならないと思うのです。それを聞いているのです。その基本的な内容を聞いているのじゃないのです。
  27. 菊地通

    ○菊地説明員 これが空中核爆発実験でございますと、すぐに上から降ってくるということがございますので、先生のおっしゃるとおりだと思います。今度の場合は地下核爆発実験でございますので、急激に空に舞い上がって雨のように降ってくるという可能性はいまのところ非常に少ない。と申しますと、一応できました放射性物質が地下の大きな穴の中に閉じ込められているというのが現状でございます。これが外に出てくる形。それからわが国に対する影響といたしましては、これが徐々にしみ出してくるであろうというところが学者先生方のもっぱらの推測でございます。これには非常に仮定がたくさんございますので、はっきり何年ぐらいかというデータはないようでございますが、先生方によりますと、数年とおっしゃる先生から、あるいはかなり出る可能性があるのは千何百年ぐらいと言う先生もおります。私どものほうといたしましては、守っていてそれでよい、それからデータを待っていればそれでよいというのではございませんで、ただその出てくる場所はきまっておるのでございますから、その付近のものに関しましては、米国あるいはカナダあたりのデータをよく見ておりまして、それで分析し、かつそれが海を伝わって日本に来るわけでございますから、時間的には十分あるかと思いますので、それを見て対策を講じたい、こういうことでございます。
  28. 島本虎三

    ○島本委員 どうも私間違ったことを聞いているのかと思うほど何か食い違うのですね。少しやり方がマンマンデーじゃないかということなんです。あなたはこれでいいというなら、これじゃ困るという例証があるのです。いま何回かずつ何カ所かできちっとしたデータをとっておらないということですね。  もう一つ、これは大気中の放射能の測定もこれはやらなければならないのです。これは水だけじゃないのです。過去の例がそれを示しているのです。あなた、何年かかってと言われておりましたけれども、ストロンチウム九〇の場合は、それが半分ぐらいに希薄になるのに二十八年もかかるそうです。またセシウム一三七の場合は、これは三十年もかかる。またプルトニウムの場合には二万四千年たってようやくこれは半分になる。まさに猛毒じゃありませんか。こういうのが発生してからじゃどうにもならぬのですよ。そういう状態だからもっとも一つとこういうものに対しては相手に抗議する。または請求権を留保してある、こういうようなことまでしているのですから、それならばそれに対して何回かずつ何カ所かできちっとしたデータをとる必要があるのです。環境庁長官、科学技術庁のほうではなかなかなまぬるいようですが、こんなことで環境保全なんかということは、もう困るのです。もしそういうようなことでだめだとするならば、これは一体どういうことなんですか。  アメリカ本土でネバダの実験場でいままで決行された地下実験、これはもう環境汚染が問題にされましたね、アメリカ自身で。四十五年の十二月十八日、二十キロトン以下の小規模の地下実験で、放射能を含むほこりが二千六百メートルの高空にふき上がったでしょう。もうすでに地下でやっても空にふき上がったでしょう。そして実験作業場に働いていた六百名の人が避難して、うち三百名の人が放射能の汚染を受けたでしょう。そして放射能はそのまま西部の十三州やカナダにまで降下した。そしてその辺の牛乳を汚染した事実がある。これが三週間から四週間日にわかったのです。ですから、これはもう発見されてからではおそいから、ちゃんと前もって何カ所かデータをとるようにして調べる必要があるというのです。あなたの場合はまさに他国まかせじゃありませんか。ほかの国にこれを依存しておるようでありますけれども、こんな体制じゃなかなか弱い。  それだけじゃない。これは四十五年十一月三日に、アメリカの原子力委員会のほうの発表によると、この爆発の引き金に使われるいわゆる猛毒性の、いま言ったようなものすごい猛毒性のあるプルトニウムですか、これがネバダ実験場から五十六キロ離れたところで発見されたというのです。それは、岩石の割れ目を伝わって、少量のガス漏れもひんぱんであった。爆発でできた空洞が何日か後に陥没してしまった。そしてまた突如としてガスがふき出ることがあった。そしてそこに全部噴出した放射能が、発見されたものだけでも二百キュリーから百万キュリー、こういうようなデータが載っているようです。これだけのものだったら、広島の原爆に相当するぐらいの、こういうようなものがもう出ているじゃありませんか。大気圏内の爆発だ、こういっても成層圏に吹き上げられるのですが、この地下核実験の場合には、漏出は地表に近いような局地的なひどい汚染を今度はもたらすのです。したがって、そういうようなことが十分わかっているから、ネバダをやめて今度はアムチトカ島を選んできた大きな理由です。そうした場合には、大気とともに水も汚染されている。今後どうなるかわからない。まして島でしょう。こうなった場合には、逆に今度は北海道のほうに一番近い個所であるわけです。北海道だって日本です。そして漁場もそういうようにして汚染されるおそれがある。それだのにまだはっきりした対策や、これも何回かずつでも何カ所かできちんとしたデータをとっておらないということは、私は行政的な怠慢だ、こう言わざるを得ないのです。いままで三週間日か四週間日にわかってきているのですよ。なぜやらないのですか。環境庁長官、これはやらせるべきです。閣議にはかって、これは強力にあなたが申し入れて、こういうような一つのデータだけはきちっととっておかなければならないと思います。どっちのほうでもいいから答弁してください。
  29. 大石武一

    大石国務大臣 御心配の御趣旨はよくわかります。ただこのような実験は、今後二度とやらしてはならないとわれわれは覚悟しております。そのような方向で世界じゅうの政治の方向を持っていくべきだ、そういうように努力しなければならぬと思っております。  アメリカがあえてこのような世論を無視して利己的な核実験を行なったわけでございますが、そのよしあしは別として、アメリカがこのような核実験をやるからには、やはりそれ相当の準備と覚悟をしてやったと思います。したがいまして、私はそのアメリカに対する科学的なものの考え方、技術というものはある程度信頼しなければならぬと思います。アメリカほどの国が、それほど他国に迷惑をかけるほどいろいろな被害を無視してまでやるはずがないと思います。そういうことで、やはり日本としては、もちろんおっしゃるように十分な警戒体制をとる必要はございますけれども、アメリカと十分連絡をいたしまして、その連絡のもとにやはりしかるべき、いま島本委員がおっしゃるような警戒体制日本はとるべきではなかろうか。日本がかってに、何も事情がわからないで、いいかげんにやっても何も効果があがりませんから、やはり科学技術庁が中心となりまして十分な連絡のもとに、そのような警戒体制をとるべきであろう、こう考える次第であります。
  30. 菊地通

    ○菊地説明員 先ほどちょっと私申し上げませんでしたが、空間線量については連続して測定しております。これは日本で数十カ所ございます。しかし今回の場合は、気体となって来る可能性は非常に少のうございます。もちろんこれは来ればすぐに検出できるようになっております。  それから海産生物についてのことでございますけれども、これも今回の核爆発の影響によって何らかのそのきざしが見えるということをつかむのには、いまの体制でよかろうということでやっておるのでございます。もしこれが何らかのきざしがありますれば、すぐに緊急時体制に移りまして、その影響がわが国に及ばないよう、すぐに万全の対策をとるつもりでございます。  それからもう一つでございますけれども、先ほどここまで来るのにかなり時間があると申し上げましたけれども、このきざしすらいまのところないようでございます。もちろんしかしこのあとこれで万全だということではございませんので、十分注意してそのきざしがあるかどうかということについての監視は続けていく所存でございます。
  31. 島本虎三

    ○島本委員 去年の十一月三日のアメリカの原子力委員会の発表、並びにこの十二月十八日のこういうようないろいろな発表を見ましても、これは大臣、向こうだって十分準備しないとこんなことはやれないと言うが、十分準備してやって、なおかつこういうような被害が出たし、本国内ではだめだから離れたこのアムチトカへ来てやっているのだから、そこでは十分なことをしただろうというようなことは、これはアメリカの大臣ならそれでいいけれども日本の大臣としてはそれはもっともっと厳密に日本国民のために疑って考えなければだめです。ネバダでいいんです。何のためにこっちに移したんですか。ネバダでやって失敗したからです。当然被害が出たからです。したがって、こういうような点はどうもアメリカまかせのようであります。環境保全のほうはなかなかいいですけれども、その姿勢はアメリカ寄りです。アメリカを信用するのはけっこうです。しかしながら、国民の命にかかわるこういうようなことには、念には念を入れてひとつ行政を施すべきです。そういうような点からして、どうもアメリカまかせのようないまの考え方は、環境庁長官としては、いままでの答弁のうちで一番残念な答弁だ、こういうように私は思うわけです。まして日本国民が被害をこうむった場合に、日本政府としては補償を請求する権利を留保したということがあるのですから、留保したなら、なおさらこれを綿密に調べておかなければならないはずでしょう。そういうようなことから大気中の放射能の測定も十分やらなければならない。これは水にせよ大気にしろ、重大な影響が来ますから、この点どうしても十分にやっておかなければならない。やっているとしたならば、その数字を公表してありますか。もし調べてないとするならば、これは国民に対してはやはり政府のはっきりした責任をとったということは言えないと思うのですよ。
  32. 菊地通

    ○菊地説明員 公表しております。
  33. 島本虎三

    ○島本委員 その数値を発表してください。
  34. 菊地通

    ○菊地説明員 私、覚えておりませんけれども、平常の状態からの変化があったという報告は受けておりません。
  35. 島本虎三

    ○島本委員 では、数値にあらわれない、全然ない、こういうようなことですか。
  36. 菊地通

    ○菊地説明員 いまのところ影響は認められないということでございます。
  37. 島本虎三

    ○島本委員 水、大気ともにそういうようなことだということですね。念のためにそれだけやって、次に移ります。
  38. 菊地通

    ○菊地説明員 そのとおりでございます。
  39. 島本虎三

    ○島本委員 なお環境庁長官、これはやはり大事な環境破壊につながりますが、前からの例が何度も私言ったとおりですから、この点は念には念を入れて、少なくとも国民にこういうような被害がかかることのないように十分配慮して、科学技術庁とともに、環境保全はもちろんのこと、少なくとも漁場を荒らされたり、今後に悔いを残すような発生をそのままにしておかないように十分注意して、閣議にはかるなり何なりして対処するようにしてもらいたい。ことに私が強力に念を入れて申し上げておきたいのは、何回かずつ何カ所かでちゃんとデータをとらないとわからないのだ、大気はやっているけれども水はやってない、あとは中国でもソ連でも、そっちのほうへ——アメリカにも頼んで、もしそういうデータがあれば送ってもらう程度では心細いですね。そういう点に十分対処されるように要請しておきたいと思いますが、どうでしょうか。
  40. 大石武一

    大石国務大臣 御趣旨はよくわかります。ごもっともでございます。そのようにアメリカとも十分な連携のもとに、国民に不安のないような調査をいたしたいと思います。
  41. 島本虎三

    ○島本委員 次に、少しぐっと下がりまして、公害病の認定の問題で、私自身この際提案と一緒にちょっと伺っておきたいことがあります。  それは、いつでしたか、茨城県の鹿島臨海工業地帯——どうもあそこは事故が多いところです。要注意個所のようです。鹿島、水島ともに何かそういう傾向があるので、これは十分注意しないといけませんし、計画は綿密に進めなければならないと思います。そしてあそこでは、どなたか一人ぜんそくにかかって、原因は工場の粉じん等によるところの病気であるから、これはもう当然公害病であるというような医者からの診断があったそうです。しかし、これは却下されたのだそうです。この理由としては、公害地区の指定を受けておらないということ、それで、それをひとつまげて本人の生活やその他を救済しようとする生活保護法の適用、これにも無理があったということで、これは救済も全然受けられない、こういうようなことであります。しかし、依然として病んだまま自分で金を払いながら病院にかかっているようであります。これによりますと、肺に米粒大の影があって、たんがどす黒い。大気汚染、粉じんの影響によることは歴然としておるということを何か院長さんがはっきり証明しておられるようです。医師の明確な診断があってもなぜ公害病としての認定が受けられないのか、また、それに障害になるような状態があったならば、これを除去するような考え方を当然持つべきではないか、こういうように思うのです。この人は四十八歳になる女の人ですが、受けられなかったという。ことに、これは茨城県の鹿島臨海工業地帯の建設事務所の港湾部に臨時職員として勤務されている女性の方です。こういうようなことがあっては困ると思いますが、これは聞いておりますか。どうしてこれが公害病の認定を受けられないのですか。これをお伺いしたいと思います。これは大臣が無理ならば、事務的な……。
  42. 船後正道

    ○船後政府委員 先生も御承知のとおり、いわゆる公害病につきましては、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法に基づきまして救済措置を講じておりますが、この法律によりますれば、相当範囲にわたる著しい大気汚染または水質の汚濁が生じたために、その影響による疾病が多発してきた場合において、地域を指定いたしまして救済措置をしておるわけであります。  御指摘の鹿島の場合につきましては、現在の客観的なデータでは、大気の汚染の程度が、いわゆる指定地域になっておる地域に比較いたしますればさほどのことではない、かように聞いておりますし、また、そのような影響による疾病の多発という傾向も見られませんので、これを指定地域にいたしますかどうかは、今後の推移あるいは県当局のいろいろな調査等をまちまして検討いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  43. 島本虎三

    ○島本委員 疑わしくても救済するというのが、救済する際の大石大臣の考え方じゃなかったかと思うのです。あなたも環境庁ですか。どうも環境庁でありながら農林省や、どこかほかの方のような考え方で答弁なすっておるが、一体どうなんですか。医者の明確な診断があっても、鹿島臨海工業地帯はいわゆる公害病の指定地区に編入できないという理由はあるのですか。なぜ編入しないのですか。もうすでに操業していてこういうような事故さえ起きている、医者もはっきり証明している、それなのに救済する立場の人が、それはもうしなくてもいいような考え方じゃ、ほんとうは困るんですがね。一体、あそこは指定しなくてもいい個所ですか。あなた、もう一回……。
  44. 船後正道

    ○船後政府委員 先ほど申し上げましたように、地域指定につきましては、客観的な大気の汚染の状態、それから疾病の多発の状況等を勘案いたしまして、県知事の意見を聞いた上で指定いたしておるわけでございます。  御指摘の鹿島につきましては、当然、これは公害の発生しないような開発地帯にいたしたいという計画のもとに発足したのでございますが、現状は、遺憾ながら御指摘のようにいろいろな問題が生じておるようでございます。私どもは、当然、この鹿島地区が汚染されておる地域にならないように、今後企業側のあらゆる努力を要請いたしたい、われわれも厳重なる取り締まりをいたしたいと考えますけれども、不幸にして、かりに鹿島が、すでに指定されておる地域と同じような状況になりますれば、これは当然救済法によるところの指定め対象として検討する必要がある、かように考えております。現段階においては、これは指定地域には該当しない、かようなことでございます。
  45. 島本虎三

    ○島本委員 そういうような人はやめてもらわぬとだめだね。鹿島にいままでどういうような被害が起きたか、あなた言ってごらんなさい。わかっておるだけ言ってごらんなさい。指定しなくてもいいなんて……。それじゃ、そのために措置をしていけば、そういうような被害が起きても、あくまでもこれはもう発生させないような努力をしている個所であるから、発生してもそれは指定しなくてもらい、こういうような考えですか。冗談じゃないですよ。(「そういう答弁ではないよ」と呼ぶ者あり)そういう答弁だから憤慨しておる。
  46. 船後正道

    ○船後政府委員 私は、鹿島につきましては、当然公害防除というものが徹底した開発地域にならねばならない、かように考えております。他方、鹿島につきまして、指定地域にするかどうかという問題につきましては、当然既指定地域にいろんな状況がありますので、客観的な大気の汚染状況あるいは指定疾病の多発状況、そういった点を勘案いたしまして、今後の検討問題であり、県当局におきましても十分御調査を願いたい、こういうように指導しておるところでございます。
  47. 島本虎三

    ○島本委員 県当局当局と言って、いままで水質汚濁の点、またシアンの流出の問題でも、これを発見し、こういうようなものに対して指弾したのは全部学者グループですよ、県当局ではないんだよ。あとから県当局がそうであると言って、そのことの立証機関みたいになってやっておる。県当局にもっと積極的にやらさなければならないはずじゃありませんか。なぜ後手後手に回させるのか。そして、あそこは発生させてはならない個所だと言っている。ならない個所でどうしてそういう事故が起きるのですか。指導の怠慢だから、完全にやっておればそんなことは起きるわけはないでしょう。いままではこれだけじゃない、何回か起きている。こういうような問題があっても、内部に対しての姿勢はまだまだ弱い。いままであそこでいろいろ発見しているのは全部学者グループまたは住民のグループ。そして、それが発見されてわかったときにようやく県当局が行って、それの裏づけになるような資料をつくり上げるということだけでしょう。後手後手に回っているのは県当局だ。なぜそのままにしておいて指導しないかというのです。これは人命に関する問題である。そうなった場合には、これは事故を起こしてはならない個所だから、そういうことがあってはならない個所だからそれは指定しないのだ、また起こしてはならないのだ、こういうように言う。指定はされていない、しかし現に起きている。笑いごとじゃないぞ、冗談じゃないのだ。そういうような場合には、一人といえどもほったらかしておいてはいけません。指定地域に指定されていない。医者がはっきりこれを診断して、それにはっきり公害病、いわゆるぜんそくだ、こういうような認定をした場合には、やはり何か救済の方法を立てておかなければなりません。そのままにしておいていいということにはならないと思います。大臣、この問題に対して何か考えがありますか。
  48. 大石武一

    大石国務大臣 島本委員の公害に対する激しい情熱につきましては、心から敬意を表します。ただ、局長からいろいろ答弁がありましたが、これは表現のしかたが少しへただったために、少し考え方が曲げられたような感じがいたしますので、私からあらためて申し上げます。  鹿島地区は、御承知のように、これから非常に公害の発生が多くなるだろうと予想される地区でございます。そういう意味で、われわれは新しく今後このような日本の経済開発の方向を描いていくためには、鹿島地区のようなところはできるだけ公害のないいわゆる工業地域として進めていきたいという念願から、先月でありましたか先々月でありましたか、御承知のように公害防止計画の策定地域にいたして、来年度から五年間に公害防止事業を行ないまして、公害のない地域として発展させるような方針で進めておるわけでございます。このように希望を持っておるわけでございます。いままでの公害防止計画地域は、全部いままで公害が発生してどうにもならないので、そのあと始末をするための政策でございましたが、この地域と大分地域だけは予防地域といたしたいという念願を持って、そういう情熱を持ってそういう方向に進んでいるわけでございます。でありますから、今後とも公害のない工業地域にするんだというのが局長の願いでございます。御承知のようにわれわれは患者が一人でもあれば、できるだけその患者を一人でも救済いたしたいと思います。ただ、これはすべて法律に準拠して救済が行なわれねばならない。現在の健康被害者救済法は、御承知のようにいろいろな条件がございます。大気汚染状況であるとか、いろいろなそういった客観的な公害地域としての資格——資格というとおかしいのでありますが、一応条件を備えた地域をわれわれは選んで調査をして、調査の段階を経て地域指定するという手続、それが法律の手続になっております。これらの手続は時間のかかるめんどうなものと思いますけれども、現在ではそのような形になっております。そのような形式を踏んでいかなければ、やはりここは、すぐ直ちにいわゆる公害指定地域としての指定をすることはまだ困難でございます。そういう意味で、いまの局長はそのような困難のある旨を言ったのだと思います。患者が一人医師によって診断されたという報告が県からございました。もう一人は、そこで働いている女の人が公害病らしい形になったという報告、二つございます。われわれはそのような医者の——これは認定でございません、医者の診断でございますが、その診断を疑おうとは思いませんけれども、現段階ではまだ公害指定地域に急に指定するわけにまいりません。ですから、それが公害指定地域にならないことがわれわれの願いでありますけれども、指定されるまでの間は、やはり県当局ででき得る限りのめんどうを見てもらいたい、こう考えております。そういうことで、われわれは県に対してもその後のいろいろな調査の報告を要請して、その報告によってそのような救済手段をわれわれは要請しようと考えておりますが、やはり県としても、そのような県としての要保護患者と申しますか、要認定患者と申しますか、そのようなある手段をもって、ただ一人の開業医だけにすべての責任を持たせることは危険であり、医者にとっても過酷でありますから、やはり県としても、しかるべき認定し得る、認定に近いようなものをし得る認定委員会のようなものをつくりまして、そこでやはりそれらの疑わしき患者をよく検査して、とりあえず県の認定のもとにいろいろなめんどうを見てもらいたい、そういうことにして今後の行政を進めてまいりたい、情勢を見ながら行政を進めてまいりたいと考えております。
  49. 島本虎三

    ○島本委員 この問題ではやはり県当局が前向きになっていることだと思います。しかしいままでの事例からして、後手後手の事例だけがあがってきているのは遺憾であります。ましてこういう患者が出た場合には、積極的に今後救済してやるようにするのが公害対策に当たる者の責務だと思います。大臣も幸いにしてお医者さんです。お医者さんの場合には十分これはわかると思います。そういうような場合は、原因はどこにあってどうなったのか。あの辺の噴煙のために、その辺に働いている人が住居をわざわざ変更したという報告さえも受けております。そういうようなところに公害がなるべくないことをわれわれは願っているのであるが、いかにそれは願望しても、現実に出ているものに対しては被害が起きます。それは被害をなくするにこしたことはない。しかし被害を受けた者は救済しなければならない。そうして大臣として、特に指定されておらない地域、こういうようなところはどこであっても、法によっての救済は直接道はなくても、いろいろ行政的には手段を講じて、たとえばアドバイスなりあるいは大臣からの直接の何らかの的確な方法によって、示唆によって、それを救済するようにすべきである。法になくても、その法の精神にのっとって、一人でも漏らさぬように救済してやるというのがたてまえじゃないか、こういうように思うわけです。そういうような点は十分考慮の上で善処しておいてもらいたい、こういうように思うわけです。  しかし、実際あの地区に対しては私ども遺憾な点が多いのであります。わざわざ視察に行きましたら、そのいわゆる公害発生企業というのは操業停止をしてわれわれに見せてくれなかったというような例もある。そしてあとから被害が発生したというような例も聞いておる。こういうふうにしてみますと、やはり努力すると言いながら、もっともっと監視は厳重にして、行政指導ももっともっと的確にしなければならないはずなんです。いまのようにして、やはり救済する何らかの方法を講ずべきだ、こう思いますが、大臣、どうですか。
  50. 大石武一

    大石国務大臣 御趣旨はごもっともでございます。われわれは国の法律で直接これが救済できないとしても、何らかの手段を講じまして県等に十分に指導いたしまして、それらの救済の措置を講じたいと考えております。ただそれと別でありますが、鹿島地区は、実はわれわれも公害のない地区にとひたすら願っておるわけであります。そういう目的がいろいろ問題がありますので、先日も事務次官を派遣いたしましていろいろ調査をいたさせました。その結果は、やはり当時のあのような立地計画でありますか、条件その他計画にやはり多少問題がございまして、移転すべきある何軒かの住宅を移転させずにあったり、いろいろな問題を残しているようでございます。こういうものも今後十分再検討いたさせまして、そしてほんとうに公害のない、発生しないような地域に進めてまいりたい、こう行政を進める方針でございます。
  51. 島本虎三

    ○島本委員 いろいろ公害に関しましては、次からもっといろいろ聞いてまいりますが、いかに法律ができて、いかにそれに準拠して制度が改正されて、いかに大臣が熱心にやっても残念ながら公害はだんだん、減ってはいないのです。これはまことに残念なんです。そのうちでもやはり緊急だと思うのは、何の罪もなくて被害を受けている患者です。こういうような人は罪があってそれをやっているのじゃないのです。そこに住まなければならない。住むがためにそういうような病気になってしまう。何の罪もない人が、結婚してしあわせな生活を営むために営々と働いていて、その地域が婦中町であり、そして子供を四人も五人も生めば、その水を飲むがためにイタイイタイ病になる、カドミウム中毒にもなる。あまりにも痛々しいじゃないですか。そのような点から、今後救済そのものに対してもう一度、医療のみにとどまっていいのかどうか、もう一回検討すべき時期じゃないかと思います。すなわち金額もそうでしょう。同時に法律そのものが法できめられている範囲そのものでいいのか。もう少し生活の点まで見てやるべきか、この点も合わせて救済法の改正も十分考えたほうがいい時期じゃなかろうかと思います。ひとつ大臣、この点どう思いますか。
  52. 大石武一

    大石国務大臣 現在の考え方では、法律の状態とかいまの国の行政状態では健康の救済、医療の手当てだけに限られているのでございますが、近い将来にはやはりおっしゃるとおりいろいろな面で、生活の面あるいは将来の、生活の面ばかりではないいろいろな家庭の面、そういうことも考えまして、そのようなこともどのような方向でいくか、それはいろいろな考え方がございます。そういうものはありますけれども、そのようないわゆる生活の保障の面まで考えていくのが当然である、そう考えております。
  53. 島本虎三

    ○島本委員 紛争処理についてもこれは公害上大きな問題です。幸いにしてだいぶ裁判がはかどっているようであります。しかしあの裁判ででも数年要しております。そういうような点からして、世論の高まりとともに専門的なそれに当たる人、こういうような人たちの当を得たこういうような状態が裁判の決定を促進さしたものだ、こうも考えられます。しかし依然としてやはり公害全体から見ると、まだまだ、裁判そのものだけではなくて的確にそれに対処する機関がなければならないと思うのです。  総理府来ておりますか。
  54. 小林信一

    小林委員長 来ております。
  55. 島本虎三

    ○島本委員 紛争処理については、かねがね日弁連でもこれは三権分立を基本的に主張しておるのでありますけれども、この公害行政に関してはやはり準司法性を持った、司法的権限を持った国家行政組織法第三条機関にするのが実情に合う、他の機関はたとえ八条にはずしても、公害関係の処理に関しては三条機関が望ましい、こういうふうにいっております。私どももそういうような主張からしてやはり裁判の状態の長期化を防ぐためにも裁定権を具備した国家行政組織法、この考え方の上に立って今後運営するのが妥当じゃないかと思っております。この点についての考え方を聞かしていただきます。
  56. 川村皓章

    ○川村政府委員 お答え申し上げます。  公害紛争処理制度につきましては、第六十三国会における公害紛争処理法成立の際の附帯決議の線に沿いまして鋭意検討を続けてまいりましたが、公害紛争処理法を改正をいたしまして、中央公害審査委員会を第三条機関に移行するとともに、現行の和解の仲介、調停、仲裁に加えて裁定を行なうこととすべく目下鋭意検討中でございまして、成案を得て次の通常国会にお願いをいたしたいと考えております。また来年度予算につきましてもその線に沿いましてお願いを申し上げているところでございます。
  57. 島本虎三

    ○島本委員 裁定権とともに、三条機関の線で進めておる、こういうふうに了解してもいいですか、もう一回はっきり。
  58. 川村皓章

    ○川村政府委員 いまそのような線で進めております。
  59. 島本虎三

    ○島本委員 保安庁いらっしゃいますか。——これは各港に共通する問題ですから、具体的な例をあげてひとつ聞いてみたいと思います。  北海道に室蘭という市があります。国際貿易港。十一月の八日から十二日までの間の五日間、室蘭の海水の汚濁状態を市として初めて分析をした。以前にはこれは運輸省と開発局がこれを実施したわけです、ちょうど一年前同じような状態で。これを再び汚染の状態を見るために調査しました。それと合わして漁業の資源であるところの、いわば漁業権のある利水地点も七点加味して調査されたようであります。そしてこの測定項目、これは生活にかかる環境基準としてのPH、COD、それからDO、それから健康にかかる基準としてのシアン、カドミウム、総クロム、鉛、砒素、総水銀、有機燐、アルキル水銀、その他の油分、それから水温、塩分、透明度、こういうような十五項目にわたる調査を実施するようであります。  その結果どういうような点が出たかというと、運輸省と開発局の調査によると、去年室蘭港のよごれが、シアン、そういうようなものが新日鉄の埠頭で〇・一PPM、これは検出されてはならないということになっているのに検出された。それでことしまた調査する、こういうようなことになっているようです。そうしてそこで鉛も〇・一PPM、基準ではそれより下が望ましいのですけれども、ちょうどぴたっとした〇・一PPM、これが検出された。いま調査の結果を期待されているのです。これは漁業の問題と合わして重大な問題にも浸るからであります。これは北海道では苫小牧その他の港でこういうような点を十分指導をやっておられますかどうか、この現況についてちょっと報告願います。
  60. 手塚良成

    ○手塚政府委員 海上保安庁は海洋汚染防止法あるいは港則法等一海洋におきます汚染につきましてその監視、取り締まりということの任務を負っておるわけでございます。そこでそういった法令違反的なものについての端緒をつかみ、あるいはその立証をするという意味におきます調査、測定あるいは分析等をいたしますが、常時のそういった調査、測定につきましては、これはむしろ当該公共団体等との関連におきまして、そういったお役所にお願いをするということにいたしております。  そこで、ただいま御指摘の室蘭等におきましてやはり一般的な調査を当時やったわけでございまして、それによる問題ということでいまのような点が出ました。これは法令違反等につながってくる場合には今後強力に監視を続けていく、継続した測定をやりながら追及する、こういうような体制で今後臨みたい。ほかの各地におきます港湾におきましても大体基本的にはそういったような姿で調査と取り締まりに当たっております。
  61. 島本虎三

    ○島本委員 もう一点、これは長官でなければできないことを聞きますけれども、取り締まる場合に、汚水を流すのは昼は流さない、たいがい夜やみにまぎれて暗いところに黒い水を流すとわからない、こういうようにして流すおそれがあるということが前から指摘されておる。東京湾ではそういう傾向がずいぶん指摘されております。そうすると、夜暗くても見えるものは科学的ないろいろな機械ではないかと思うのです。こういうようなものを具備して、それを十分使用し得るような人材を擁していろいろ活動をこれからしなければならないはずです。こういうような点は十分やっておりますか。あるいは赤外線、柴外線、こういうようなものを使ってまでやる施設さえあると聞いておりますが、十分それを利用してびしびしやっておりますか。
  62. 手塚良成

    ○手塚政府委員 毎々、島本先生からも夜間の取り締まりについていまのような御指摘、御激励を受けておるわけです。事実私どものほうが一番力を入れておりますところの船舶からの油のたれ流しの取り締まりにつきまして現在相当強化してやっております関係上、昼間におきますところの結果についてはなかなか巧妙といいますか、検挙に至るまでのものが比較的少ない傾向を示しつつある。その実態をよく調査いたしますと、やはり夜にまぎれるような傾向がしばしば見受けられてきております。ただいまわれわれのそういった夜間における取り締まり、これは工場等の排水溝等からも同様でございますが、これらのものについては非常に難渋をしておることは事実でございます。これにはやはり新しい機器の開発、いまお話の出ましたような赤外線等の利用によるものをやはり何としてでも開発をして活用すること等のことを考えませんと、なかなか現状の取り締まりが十分にやれないという実情でございます。そのために実は赤外線を利用してのそういった機器を何とか開発をしたいということで、昨年来関係向きの専門家のところにそういった開発を委託をいたしました。また、一部にはすでにそういうものが別な使用目的で使われておるものもありまして、それらのものを取りまとめて私のところでいま委員会を作成して検討いたしております。また、現実にそういったものの実験等もいま重ねておりまして、今年度中には何らかのめどをつけ、来年度予算においてそのテスト的な機器の設備をやりたいということで、実は来年度予算にもお願いをしておるというような実情でございます。
  63. 島本虎三

    ○島本委員 海洋汚染の防止、これはすでに世界的な一つの命題になっております。日本もその犯人の一部だ、こういうように思われているような点はまことに遺憾なんです。この点は十分皆さんのほうで今後の活躍を私は心から期待してやみません。予算不足である、定員を削除する、こうなれば運輸省ではすぐ外局である保安庁のほうに持っていくのだそうでありますけれども、こういうような公害の場所だけは一切定員の減なんかに応じてはならないし、その点だけは自分がやめても部下の首は一人も切らない、こういうような基本的な姿勢で大いにがんばってやってほしい。それとあわせて、この機器は十分使って、たれ流しはほんとうに少しも許さない、こういうようなきびしい態度で今後臨んでもらいたい、これは心から要望しておきます。  それと同時に、最近愛媛県の北条市の沖合い八百メートルで、これまた百三十六トンですか、タンカーが座礁した、こういうような例があったようであります。それによりますと、これまた何かアセトン・シアン・ヒドリンですか、こういうような劇薬で、これが相当流れた傾向があるようです。このタンカーその他の運航、今後はもう三十万トン、五十万トンともっともっと大きくなる傾向がありますから、これは偶然百三十六トンしかないわけですけれども、今後船体が大型化してくる場合にはこういう被害が一回あった場合は取り返しがつかなくなる。今回の場合でもタイやメバル、こういうものの被害は相当のもので、もし少しでもあの魚を食べたら生命に危険を及ぼすんだ、こういうようなことで漁業協同組合や市が注意を喚起しておるようであります。一たんこういうような被害が起きた場合にはとんでもないことになりますので、この点は十分考えておかないとだめだ、こういうように思います。五十万トン、百万トンになるかもしれない。こういう大きなタンカーが来た場合には事故を全然なくするような方法、こういうものは考えられておりますかどうか。そして水産庁もなんですけれども、この放射能の問題も、北洋漁業の問題を含めてですが、ことにこういうようなタンカーのいろいろな事故、こういうようなことで被害を受けるのは漁民です。こういうような漁民に対して水産庁のほうでももっともっと積極的に環境庁長官と同様に摘発すべきであるし、強力に世論を喚起すべきであるし、そして強力に皆さんのほうが発言すべきだと思うのです。水産庁はおとめのようにやさしくてどこにいるかわからない場合も再々ありますから、今後水産庁ここにあり、右に環境庁、左に水産庁、これくらいにして堂々と今後漁民、漁業を守るためにも大いにがんばらないとだめだと思うのです。いまのようなアムチトカ島の地下爆発の実験、こういうようなものに対しても、漁民があれほど騒いでおるのですから、その被害や、また漁民に対するほんとうに被害がないのだという説得、こういうようなものに対しては一番よく知っておらなければならないはずなんです。私どもそれを期待していたのですけれども、こういうような被害を受けるのは漁民であるというような点からして、もっともっと水産庁のほうではこの問題に留意すべきだ、こういうように思います。  タンカーが大きくなってまいります。また小さくてもアセトン・シアン・ヒドリン、こういうものはもちろん劇薬ですが、こういうものも海上に流れ出ておるわけです。ほんの一部流れ出てもその辺の魚は食べられない、こういうようなことになってしまいますから、安全を主にしてでももっともっとこういうような対策は練っておくべきだと思うのです。前のほうからずっと聞いておられたと思いますけれども、水産庁の長官、ひとつこの際御高見を拝聴しておきたいと思います。
  64. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 前々から御指摘いただいておりますが、水産庁といたしましても、このたびのアムチトカの実験による放射能の被害につきましても十分配慮いたしまして、外務省を通じまして十分な抗議を申し込んでいただいていることと考えております。それからまた今後につきましても、再びこのようなことのないように十分声を大にしてやっていきたいと思っておりますし、タンカーその他のこのたびの愛媛県沖の被害につきましても、漁民に対して県を通じまして十分注意いたしましたし、今後再び起こらないような措置を講じていきたいというふうに考えております。
  65. 島本虎三

    ○島本委員 環境庁のほうに聞きますが、公害病認定患者は現在何名ぐらいございますか。
  66. 船後正道

    ○船後政府委員 手元に大気関係の認定患者の資料がございますので、とりあえず大気関係の認定状況を申し上げますと、大気系統は全国総数四千八百三名でございます。それから水質汚濁系統は二百五十五名。なお、これは十月現在でございます。
  67. 島本虎三

    ○島本委員 五千五十八名ぐらいになるはずですが、このうちことしに入ってから何人死んでいますか。
  68. 船後正道

    ○船後政府委員 法施行以後現在までの死亡数を申し上げますと、水質系統が十一名、大気系統が六十六名、計七十七名でございます。
  69. 島本虎三

    ○島本委員 これは簡単でいいのですが、去年とことしと比べて同じ時点で数は減っていますか、ふえていますか。
  70. 山本宜正

    山本説明員 私からお答えさせていただきます。  ただいま大気系の死亡につきまして、県から集めまして集計いたしましたのは、四十四年の十二月から四十六年の十月までの約二年弱のものでございまして……(島本委員「いや去年とことしの比較でいいよ。だんだん減っているか、ふえているか」と呼ぶ)地域によりまして必ずしも同一でございませんが、去年に比べてふえたところもありますし、減ったところもあるということで、(島本委員「総計は」と呼ぶ)正確な数字につきましては、後ほど出させていただきたいと思います。
  71. 島本虎三

    ○島本委員 あとから資料として出してください。  なお、川崎の資料はございますか。
  72. 山本宜正

    山本説明員 ございます。
  73. 島本虎三

    ○島本委員 川崎の大気で去年との比較はどうなっていますか。
  74. 山本宜正

    山本説明員 お答えいたします。  川崎の二年間の認定患者の中からの死亡が二十名ございます。その中で、年次に分けましたのは後ほど提出させていただきます。
  75. 島本虎三

    ○島本委員 はっきりきょう調べてみたかったのは、大臣、法施行しても死ぬ人が年々ふえてきているのですよ。これはどうもおかしいのです。公害対策基本法を変えて、産業優先を削ってしまって、憲法二十五条を精神にして、関係立法も全面的に変わったのです。変わって、それを実施して、だんだん公害患者が、死ぬ人がふえてきている。どうもこれだけは私は解明できないんだ。それで聞いてみたのですが、はっきりしないようです。これは川崎だけでも去年よりも死ぬ人がふえているのです。そうすると、実際行なっていながらも行政の面で効果があがっていない。環境保全公害対策、これは車の両輪でございまして、これだけはどうしても片一方のほう、これこれというわけにまいりませんので、大臣、十分この点も留意しておいてもらいたいし、ことに去年の十二月以降公害を排出している場合には、公害そのものは犯罪になることになりますから、したがって、そういうようなことは緩慢な殺人というか、間接的な殺人にもなるわけですから、こういうような点に対して受忍限度をはるかに越えているところがまだまだ多くなっている。これはもっともっと考えないとだめだ、こういうように思っているわけです。  そして光化学スモッグ、こういうようなのも東京や神奈川、埼玉、千葉、こういうようなところかと思っていたら、今度われわれの調査の結果、名古屋でも陳情を受けているのです。大阪にも発生したといっているのです。そうしてみると、光化学スモッグでさえも——この被害者についてはっきりした数字を握っているかどうか。これはだんだんふえてくるのです。念のために、光化学スモッグの被害者の総数をつかんでありますか。
  76. 大石武一

    大石国務大臣 順序が逆になりますが、光化学スモッグは、残念ながらいまおそらくその正確な被害者の数はわからないと思います。と申しますのは、一体どのような症状が光化学スモッグのためによるものか、それさえまだはっきりいたしませんし、また医師がそのいろいろな患者のすべてをはっきりと正確に認識しているわけでもございません。発生しましても、医者が行きましたときはその症状がなくなっておったり、いろいろなことがございます。そういうことで残念ながら光化学スモッグについての正確な数字は、私ないと思います。  これにつきましては、いま言ったように大阪とか尼崎とか、いろいろな方面でも発生がございますので、御承知のようにわれわれ環境庁としましては、光化学スモッグの本体を究明すべくいまいろいろ努力いたしておりますが、それは環境庁だけではなかなか行き届きませんので、各県にも協力していただき、その総合的な研究をいまやることにいたしておりまして、先日も御承知のように美濃部知事と話しました結果、東京、埼玉、千葉、神奈川のほかに、さらに愛知県、大阪府、兵庫県、それから福岡県、それだけの県の代表者がみな集まりまして、総合的にお互いに研究をやるということに申し合わせ、会合いたしておるわけでありまして、それらの方向で一日も早くその根底を究明してまいりたいと思います。
  77. 島本虎三

    ○島本委員 硫黄酸化物に対しては、ここ三年間くらいどういうような傾向になっておりますか。
  78. 山形操六

    ○山形(操)政府委員 お答えいたします。  全国特設の測定網を持っておりまして、それらの報告を得ておるわけでありますが、御承知のとおりこれは国できめました環境基準に合格しているところ、合格してないところ、これらを毎年私どもあほうで集計して、それを年次別に押えております。したがって、全般的なことを先に申し上げますと、四十五年度は三百三測定点、これのうち二百十三測定点、七〇%が適合いたしました。それから九十測定点、三〇%が不適合でございました。四十四年度、一年前でございますが、それと共通の測定点が二百四測定点ございますので、それについて見ますと、四十四年度は七十九測定点、三九%が不適合、四十五年度は七十八測定点、三八%が不適合でありますので、それだけで申しますと、ほぼ横ばいの傾向でございます。なお、三年連続環境基準不適合の測定点を有する都市は、東京、大阪等なお二十一都市ございます。
  79. 島本虎三

    ○島本委員 二十一都市も連続三年基準を上回るような状態であるということになりますと、これはなかなか問題も大きいということになります。公害基本法を制定して五年になってもこういうような状態だ。また、こういうようなことを防ぐためにも、権限を地方に委譲して、そうして条例も強化される、こういうようなことになったのですが、どうもこの点は私は遺憾だと思います。それで日増しに公害感覚は住民のほうが強くなってきます。それと反対なのは業者と行政機関じゃないか、こういうふうにも私は思うわけなんです。  それで、徳山湾の赤潮の調査、これを科学技術庁でした結果、有名な会社の数社が、その工場からの工場排水だ、こういうようなことがほぼわかっていたのに、三年間資料の提出を拒んだ、こういうようなことが報道機関によって報道されておりますが、これはどういうわけであるか、環境庁——どうもこれで、委員長も含めて長官も聞いてもらいたいのですが、こういうふうにして、資料の公開と言いながら、まだ正々堂々とこれを拒否している点があるわけです。それもちゃんと新聞にまで出されるようじゃ困る。それもある大会社の工場排水がその主たる原因になるということがわかっていても、それを三年間発表しなかった。これはちょっと私どものほうでは、いまの姿勢としてどうかと思うのです。  それと同時に、厚生省でもそうですけれども、これは中央官庁と自治体とで公害のデータを隠していた、こういうことなんです。これも一つの例だけれども、茨城県の公害総点検をした際に、タングステン鉱山から水銀が検出されて川やたんぼを汚染した。一年近くもそのデータが発表されなかった。こういうようなことも報道されているのです。こういうような点、私はまことに残念です。姿勢がまだこういうような状態であるならば、法律ができてもきっぱりその効果はあがらないんではないか、こういうように思うわけです。企業そのものでも、やはり公害対策費を全部企業に負わせると、利潤は減少するし、それにまた競争力も低下を招くんだ、こういうようなことでそれぞれの会合で政府に強くこういうような点を要望するというふうにきめているようです。企業自身も、もっともっと考えないといけないと思うのです。それから公害防止事業団、特にこれはもう環境庁所管になっておりますけれども、中小企業のためにあらゆる便宜をはかってやるはずのこの公害防止事業団に、中小企業が工場地帯に緑地帯をつくるのに融資をお願いしたらはねられるのです。公害防止のための緑地帯の造成が、公害防止事業団がなぜ融資できないのですか。そういう一面があるのです。この点なんかだって、すぐ改正しないとだめなんです。一体どういうようなことなんですか。
  80. 船後正道

    ○船後政府委員 公害防止事業団では、緩衝緑地帯公害防止事業として取り上げておりますけれども、これにつきましては、都市計画において緑地帯として取り上げるという分のものを採択する、こういうことになっておりますので、都市計画によらない分につきましては、遺憾ながら事業団のほうでは採択しかねる、こういうことでございます。
  81. 島本虎三

    ○島本委員 そんなところがあるから、これは改正すべきだというんですよ。どうものんびりしていますね。それは公園地帯にしたり、そして自治体がこういう地帯にしたら金を出してやる。工場のまっただ中に公園地帯なんかつくれますか。目的がはっきりしていた場合には、これは出してやるべきだ。長官、これはやはり考えないといけませんよ。だめです。
  82. 大石武一

    大石国務大臣 公害防止事業団は、おっしゃるとおりその公害防止のためにあらゆる努力をしなければならぬのでございます。ただ御承知のように、いままで公害防止事業団の監督につきましては、多数の省の共管であったりしまして、なかなか監督も十分できてない点もございました。またいままでその自覚も足りなかったと思います。そういうことで、幸いに環境庁所管が移りましたので、今後は十分な監督、指導もできます。そういう方針で、今後はわれわれは実際ほんとうにその目的を十分に果たしますように監督も指導もいたします。またいろいろな、できたばかりでございますから、必ずしも内部の規定なりあるいはその法律的なものはまだ足りない面があるかと思いますが、そういうものもできたら早く十分に検討いたしまして、ほんとうに目的を遂行できるようにこれを改善してまいりたいと考えております。  それからもう一つ、先ほど私ちょっと間違ったようでございますが、光化学スモッグの被害でございますが、これは各県から一応届け出はあるそうでございます。それを見ますと、昭和四十四年度には一万一千六百十二人でございますが、四十五年には四万六千五百七十三人と、四倍にふえておるわけでございます。ただ、これは県からの報告だけでございまして、これが実態がはたしてすべて臨床的にそうであるかどうかということは、私としては確認いたしかねますが、そういう報告でございます。
  83. 島本虎三

    ○島本委員 時間だからやめれということがずいぶんきておりますから、まだあるけれどもやめます。残念だけれどもやめるけれども一つだけ長官にこの点を念を押してやめます。それは、いままでのようにPPMを中心にしての規制強化一本やりでは、どうも抜けるようです。法律をつくり、そしてもう行政官庁もつくり、そして増員してやっても、次から次へとふえてきて、死ぬ人さえもふえてきている。何か欠陥がある。これは大臣が先頭に立って解決しなければならない。その一つとして、PPM強化一本でいったといういままでのやり方は、もう少し考えるべきじゃなかろうか。自然の浄化力、こういうようなものを基準にしたところの環境許容量、いわゆる目標値、そういうようなものをはっきりつくって、これからのいわゆる新全総なりそれから新経済社会発展計画なり、この中にはっきりこれを植えつけさせないとだめなんじゃないか、そういうように思うのです。それと同時に、中小企業の方面に対しては、もっともっと低利融資をしてでもいいから、この公害防止のために十分任を果たせるような機関をつくり上げていかぬといけません。この点くれぐれも要請しておきたいと思うのです。それで、企業努力ということよりも、企業のいわゆる交際費それから政府献金、こういうようなのはやらなくてもらいから、公害防止のために全面的にやるように大臣は指導すべきだ、こういうふうに思うのです。所感を承って、私終わります。
  84. 大石武一

    大石国務大臣 前段のいろいろな御要望、まことにそのとおりでございます。時間がありませんので、一々くどいことは申しませんが、そのとおりだと思います。そのような方針で努力いたします。  最後の政治献金その他の問題につきましては、一政治家としてそのようなことを十分に私も考えて努力いたしたいと思います。ただ、残念ながら、必ずしも全面的な影響を与えるだけの政治力がないのを遺憾に思う次第でございますが、努力いたす決意でございます。
  85. 島本虎三

    ○島本委員 終わります。
  86. 小林信一

    小林委員長 古寺宏君。
  87. 古寺宏

    ○古寺委員 最初に、国鉄当局にお伺いしたいのですが、連絡船の廃棄物、ごみ、あるいはビルジ、こういうものの廃棄物についてはどういうふうに措置していらっしゃるのか承りたいと思います。
  88. 山田明吉

    ○山田説明員 連絡船は、国鉄で宇高航路、宮島航路、大島航路、仁堀航路、それから青函航路とございますが、いずれも船の中で出ますごみにつきましては、くずかごで整理をしまして、それで法律の規定によりまして、従来、宇高、宮島、大島、仁堀、これにつきましては航路が非常に短うございますので、これは陸上で焼却をいたしております。ただ、青函航路につきましては、これは航路も長うございますので、上り便、下り便、これは海峡の途中で投棄をいたしておったのが従来の経過でございます。
  89. 古寺宏

    ○古寺委員 青函連絡船の場合ですが、連絡船から投棄するごみが下北の国定公園あるいは夏泊半島の県立公園、それから陸奥湾内の沿岸に漂着をいたしまして、非常に漁業被害あるいは美観をそこねる環境破壊等が起きているわけです。こういう点について、今後国鉄としては、海洋汚染防止法も公布になっておるわけですし、どういうふうに対処していくお考えですか。
  90. 山田明吉

    ○山田説明員 実は、青函航路につきまして、航路の途中で投棄しておりますのは、海流の関係で太平洋に流れていくと大体いままで想定しておりましたが、最近じんかい処理の問題がやかましくなりましたので、従来から研究をいたしておりまして、この十二月一日から海中投棄をやめまして、いずれも函館——これが基地でございますので、そこへ持ち帰りまして、函館市にお願いをいたしまして、そこで処理をするように計画をたまたまやっておるところでございますので、今月中で海中の投棄は中止になるはずでございます。
  91. 古寺宏

    ○古寺委員 これは、国鉄に対しまして何回もこの問題については現地から要望があったと思うのです。これに対して国鉄は、いままで海峡のちょうどまん中で投棄しているので、絶対にそういうような被害はない、こういうふうに言い張っておったわけなんですが、実際は弘済会のマークの入ったものが漂着しているわけです。さらに、ビニール等は陸奥湾内に相当に沈んでおります。こういうようないままで被害を与えたものにつきまして、国鉄は、これを回収するなりあるいはその被害の実態調査して補償するというようなお考えをお持ちですか。
  92. 山田明吉

    ○山田説明員 私、具体的にいままでどの程度の例があったか、本日調べてまいっておりませんけれども、非常に大きな問題を起こしたようなものはそのつど処理しているようには聞いておりました。それから今後、いま申しましたような方法で基地へ持ち帰ってやればもう問題が起こらないだろうという確信を持っております。
  93. 古寺宏

    ○古寺委員 現在も連絡船の中の回収は業者に委託をさしてやっているわけですね。ですから、これは海洋投棄をしなくても、あすからでも、やろうとする気があれば、陸上に揚げて焼却なりいろいろな処置ができるわけです。そういう問題を全然副総裁が知らぬということは大体これはおかしいので、それでは、一体青函連絡船の乗客の数は一日何人でございますか。
  94. 山田明吉

    ○山田説明員 青函連絡船は大体一日平均して千人でございます。
  95. 古寺宏

    ○古寺委員 そういうことでは国鉄の再建はできぬと思うのですよ。私は、総体の人員を聞いているのですよ。何名でございますか。
  96. 山田明吉

    ○山田説明員 私、いま一隻の平均を申し上げましたのですが、一日大体いま十五便ございまして、一万五千人くらいかと思います。
  97. 古寺宏

    ○古寺委員 往復で大体三万人でございます。この三万人の人から出るごみの量が、片道で大体平均十八立米です。これを三百六十五日、毎日津軽海峡に捨てている。ですから、これは明日からでも、副総裁のほうからお話をして、さっそく陸上で処置をするようにしていただきたいと思いますが、どうですか。
  98. 山田明吉

    ○山田説明員 お話の趣旨でやっているわけでございますが、陸上の処理につきまして、これは函館市にお願いするわけでございまして、おそらく埋めるか焼却することになろうかと思います。それから船内のごみを集める容器、それからそのごみを陸上に集積いたしますその場所の手配等で、今月一ぱい時間がほしいというのが現地局の話の模様でございます。
  99. 古寺宏

    ○古寺委員 それから屎尿は一体どうするのですか。
  100. 山田明吉

    ○山田説明員 屎尿は、現在、大体法律でも認められているようでございますから、海中に投棄しているはずでございます。
  101. 古寺宏

    ○古寺委員 環境庁お尋ねしたいのですが、屎尿はどこでも幾らでも海上に捨ててかまわぬわけですか。
  102. 岡安誠

    岡安政府委員 現在実は厚生省が所管をいたしまして、清掃法によりましてその規制をやっているわけでございますが、原則として距岸一万メートルより以遠というような規定が一般的にあるようでございますが、それは場所場所によりまして指定がありまして、その指定の範囲内ではいかぬというように清掃法で規制されておるように私聞いております。
  103. 古寺宏

    ○古寺委員 いまの答弁よくわからぬのですが、規制してあるのですか。
  104. 岡安誠

    岡安政府委員 清掃法によりまして、場所によりまして距岸一万メートルという規定がございますが、全部の距岸ということではないようでございます。したがって清掃法によりまして特定の海岸につきましては距岸一万メートル以内では投棄を禁止しているということになっております。
  105. 古寺宏

    ○古寺委員 それじゃ青函連絡船の場合はどうですか。
  106. 原田昇左右

    ○原田説明員 お答え申し上げます。  船舶からの日常廃棄物、つまりごみ、屎尿等の廃棄物の排出に関しましては、現在のところ港則法に定められてあります港内で「みだりに、」「捨ててはならない。」という規制があるだけでございます。ただ、先般の国会で海洋汚染防止法が通りまして、来年の六月から船舶の日常廃棄物についての規制がかかることになります。それによりますと、その十条の第二項でございますが、「当該船舶内にある船員その他の者の日常生活に件い生ずるごみ、ふん尿若しくは汚水又はこれらに類する廃棄物の排出」につきましては政令に定められる海域、方法に従って排出を行なわなければならないということになっておりまして、現在その政令を準備中でございます。
  107. 古寺宏

    ○古寺委員 海上保安庁にお聞きしますが、港則法からいって、青函連絡船の場合はどこで屎尿を海上に捨ててもいいわけでございますか。
  108. 手塚良成

    ○手塚政府委員 ただいまそういった取り締まりの法規といたしましては、港則法というのとそれからいまの清掃法ということになります。  で、ごみ等の港則法の適用でいい悪いというところは港則法の適用港という港の中になります。屎尿の場合になりますと清掃法で、いま言われましたような清掃法の禁止区域はいけませんので、それ以外のところならよろしい。青函の場合でございますと、いまやっておることは違法にはならないと考えます。
  109. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、港の中であっても、港則法で指定している区域であっても、これは違法にならないわけですか。
  110. 手塚良成

    ○手塚政府委員 現行法のもとにおきましては港則法の適用で処理するわけでございますが、港則法の適用上は、その二十四条によりまして「みだりに、」そういうものを「捨ててはならない。」こういうことになっております。「みだりに、」の解釈いかんという問題はございますけれども現状はそういうことは原則的にはいけないという方向で私どもは指導をいたしております。
  111. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで環境庁お尋ねしたいのですが、一日に三万人の人が乗客として乗っております。この方々が、すべてではございやせんが、当然屎尿が出るわけです。ところが青函航路はほとんどが港則法にひっかかる航路になっている。「みだりに、」というその条項は三万人の場合は適用されるのかされないのかということを、ひとつ環境庁見解を承りたいと思います。
  112. 岡安誠

    岡安政府委員 どうも港則法の適用につきまして私どもが権威あるといいますか、責任ある御答弁はいたしかねるわけでございますが、ちょっと別のお答えで恐縮でございますけれども、先ほど運輸省のほうからお答えございましたとおり、現在、海洋汚染防止法が公布になりまして来年の施行を控えておるわけでございます。その中で、船舶の中から生じますふん尿等につきまして、いまお話しのように非常に搭載人員が大きいというような場合につきましては、それが投棄し得る海域等につきましては海洋汚染防止法の政令によりまして規制をするということで、運輸省のほうで現在準備中でございます。したがって、人員いかんによりましては、海の汚染を防止するということで、将来やはり何らかの規制があるべきであるというふうに私ども考えているわけでございます。
  113. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで国鉄にもう一回お尋ねしますが、ビルジの問題ですね。これが各連絡船から排出をされております。これに対しては今後どういうふうに対処されますか。
  114. 山田明吉

    ○山田説明員 実は私しろうとでございますので、もし専門的なことでしたら、船舶局長が参っておりますので補足させていただきたいと思いますが、現在ビルジに含まれる油分——重油をたいている船と軽油をたいている船と両方ございますが、これは先生すでに御承知のように重油をたいている船につきましては、政府の型式承認を得ました油と水とを分解する機械をつけまして、そのうちの水は海洋に捨てております。  それから軽油につきましては現在法律に特に規定がないようでございますけれども、来年の六月に新しい法律が施行されるという状況でございますので、同じように来年の法律施行までには、現在軽油をたいている船が青函で九隻ございますが、そのうち一隻はすでにこの分離機がついておりますので、八隻につきましては来年の六月までに取りつける計画を進めておる状況でございます。
  115. 田中芳秋

    田中説明員 少し補足させていただきます。  重油を燃料とする船につきましては青函連絡船で三隻、宇高の連絡船で二隻、これは油水分離機を取りつけてすでに使用しております。さらに海洋汚染防止法が施行されます六月までを目途に、いま私のほうの副総裁が申しましたけれども、隻数を訂正させていただきますが、青函連絡船では客貨船が七隻と貨物船二隻、さらにもう一隻軽油だきの連絡船がございますが、これは新造のときにすでに油水分離機を取りつけておりますので、残る九隻についていま取りつけの工事を急いでおります。それから宇高につきましては、これも客貨船三隻を六月に間に合わせるように取りつけ工事を施行中でございます。
  116. 古寺宏

    ○古寺委員 分離した油はどこへ捨てているわけですか。
  117. 田中芳秋

    田中説明員 分離いたしました油はずっと持っておりまして、ドック入りしたときにそれを陸上で処理するということで、航行中は水だけでございます。
  118. 古寺宏

    ○古寺委員 それは、あなたはそういうふうにおっしゃいますけれども、船から自動的に出るようになっていますよ。一日一隻から油が三トンずつ出るのですよ。これをいままで国鉄はたれ流しをしてきた。函館へ行ったってそういう廃油の処理場がございません。どこまで持っていってそれを一年分全部まとめて造船所へ行ったときに処理するわけですか。
  119. 田中芳秋

    田中説明員 現在まで使用しておりましたのが、重油だきの三隻、青函は三隻でありますが、その分につきましては油水分離をしたあとの油は持ち帰って取り出しております。
  120. 古寺宏

    ○古寺委員 運輸省にお尋ねしますが、青森にも函館にも現在その処理場がございません。そのために東北、北海道も最近は油による海洋汚染が非常に進行しているわけです。これに対して運輸省はどういうふうに考えておるのですか。
  121. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 御指摘のように現在青森にも函館にも廃油処理場がございませんで、函館にことしから処理場を着工いたしまして、来年四十七年度に完成するということで、総額二億六千万円程度の事業費でございますけれども、取りつけ中でございます。ただ申しわけございませんけれども、早くやりたいということを考えておったわけでございますが、場所の選定その他でおくれておることははなはだ残念なことでございます。これは管理者が函館市でございますが、函館市に早急に繰り上げて早くできるようにということで進めさせておるところでございます。
  122. 古寺宏

    ○古寺委員 それじゃ青森にはどうしてつくらぬのですか。
  123. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 青森港は青森県が管理者でございますけれども、全国おもな港で管理者の意見を聞きまして相談したわけでございますけれども、これは青森港の管理者と函館港の管理者とでいろいろ相談してもらいまして、どちらか一カ所に廃油処理施設があればよろしい。青森につきましては、御承知のようにいまの青函連絡船が一番大きな量でございますけれども、一般に入ってくる船は普通貨物船でございまして、どちらかと申しますとビルジでございますので、ビルジを普通の船で出しますとそう大きな量にならない。両方で兼ねて処理しようというふうなことで函館に集中したという経緯がございます。
  124. 古寺宏

    ○古寺委員 全国に処理場のあるところとないところがありますが、たとえば静岡県の清水港で申し上げますと、入港数が昨年の十二月発足したときには一カ月二百九十隻、そのうち処理場を利用したのは一隻だけです。本年の八月は一隻もない。開店休業と同じなんです。必要なところに処理場をつくらぬで必要でないところに処理場をつくっているのと同じでしょう。きのう運輸省にお尋ねしたときには、青森港は重要港になっていないからだ、こういうお話でした。きょうは、いまそういう答弁をしたようにいろいろ考えていらっしゃったんでしょうけれども、こういう廃油処理場が全国に今後増設されていっても実際にこれを利用しなかったならば海洋汚染を防止することはできないわけです。いま一年間に日本の船舶が海に捨てている油の量は六十万トンといわれております。これが十年たったらどうなるか、もう日本中の近海の魚はもちろんのこと、全部異臭魚に変わってしまう。しかも油が魚の体内あるいは水中、海水、水産物の中に蓄積をされて、それがわれわれの人体に被害を及ぼすようになってくる。こういうふうにいろいろな問題を含んでいるにもかかわらず、処理場の計画というものが非常にずさんなように私は思うのでございますが、どうでございましょう。
  125. 栗栖義明

    ○栗栖政府委員 現在の海洋汚染防止法の前身でございます油濁防止法が施行されまして廃油処理施設整備にかかったのでございますが、御指摘のように正直に申し上げまして、どの程度各港の廃油量が出るかということと、御承知かと思いますけれども、廃油は大きく分けまして三種類ございまして、ビルジとタンククリーニング水、それからもう一つはバラスト水でございますが、このおのおのの扱い方がいずれも違いますし、発生する港も非常に差がございますので、一番発生量の多い港を重点的に手をつけてまいったわけでございます。  で、清水の廃油処理場のお話もございましたが、全国各地いずれも廃油処理場をつくりましてもPRも不足と存じまして、私ども大いにやらなければいかぬと思っておりますけれども、まあPR不足もございましてなかなか思うように使っていただけないという状況でございます。いずれにしても、全面禁止になればとにかく受けざらがなければどうにもならないというのは御指摘のとおりでございます。おもなタンククリーニング水あるいはバラスト水の出るところは全部処理してしまう、それからビルジにつきましては、量の少ないものは簡単にいうとドラムかん数本で済むようなものもございますし、あるいはまとめて集めて廃油処理場に持っていかなければいかぬというのもございます。そういう点を勘案して鋭意計画を進めているというのが実情でございます。
  126. 古寺宏

    ○古寺委員 時間がないので前に進みますけれども、運輸省は海洋汚染防止法の第十条の二項についてどういうふうにこれから政令をきめるお考えですか。
  127. 原田昇左右

    ○原田説明員 お答えいたします。  第十条の二項につきまして、大ざっぱに申し上げまして二つございます。一つは船舶内に生じます繊維その他の日常生活に伴って生ずる廃棄物でございます。これにつきましては運輸省の担当部でございます。それから、いわゆる陸上から生じます廃棄物を船舶によって海洋投棄をする、これに関します政令については環境庁の所掌ということになっております。  そこで、前段のほうについて私どもからお答え申し上げますと、目下検討中でございまして、年内に政令を公布したいと考えております。  そのおおよその考え方は、搭載人員につきましては約三百人程度以上のものをまず対象にする。それから、排出海域につきましては瀬戸内とか伊勢湾、東京湾、そのほか、もちろん港則法で定められております港湾区域ですね。これを対象海域にしよう。  それから、排出の方法につきましては、廃棄物処理法ですでに公布されました政令がございますので、これを参酌いたしまして、それと船という特殊事情を考慮いたしまして、海洋汚染の防止に役立つような形を、目下鋭意検討いたしておる次第でございます。
  128. 古寺宏

    ○古寺委員 三百人で海上汚染の防止ができるということは、とうていこれは考えられないのです。しかも、日常生活で三百人乗り組んでいる船というのは、そんなにないでしょう。そうしますと、日本の船のほとんどは、三百人以上の旅客船というものはないわけですから、ほとんど規制にかからない。これではもう海洋汚染防止はできないわけです。  時間になってしまったのでございますが、廃油による異臭魚あるいはノリの被害、これは非常に大きくなっております。特に青森県の八戸では、中ばイワシが油によって汚染されて、異臭魚が出たために非常に価格が暴落をした、こういう問題が発生いたしております。  これについて海上保安部にいったところが、いまの制度ではどうも取り締まりができない、こういうような答弁しかなかったというふうにいわれております。こういう異臭魚あるいは油による被害等について、一体だれが補償するのか。これは水産庁にお伺いしたい。
  129. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 一般に漁業被害が出ました場合に、その油を出した原因者にこれを補償させるという原則がございます。その当事者で話し合いがつかないときは、民事上の問題としてそれぞれ和解の仲介、調停の制度等を活用いたしますとともに、どうしてもできない場合は訴訟ということになりますが、原因者が不明なような場合がございます場合には、現在のところ補償ができませんので、ノリ、魚等につきましてはそういうことが起きないように、私どもといたしましてはオイルフェンスあるいは初動調査によりまして油を分解いたしまして、漁業に被害が起きないような措置を講じている次第でございます。
  130. 古寺宏

    ○古寺委員 時間になったので、これで終わらなければいけないのですが、廃油処理場、これも不十分でございます。また、海上保安庁も、青森の例を申し上げますと、巡視艇が二隻しかない。それで海難救助その他で青森を出港いたしましても、管轄区域の遠いところは七時間もかかるのです。密漁等が行なわれても、海上保安部に連絡しても、海上保安庁から巡視艇が行った場合には、もう密漁船がいなくなっている。現地人たちは、海上保安部がこの密漁者と結託をしてやっているのじゃないか、こういうようなことまで言っているわけです。こういうふうに海上保安庁も不十分であり、あるいは運輸省のいろいろな処理施設、そういうものも非常におくれております。  さらにまた、この油による汚染というものは今後非常に増大するわけなのです。先日も沖繩へ行きましたときに、油の汚染がありまして、そのときに住民が騒ぎまして中和剤を使った、処理剤を使った。ところが、タコであるとかいろいろな水産物がみんな死んで浮いてきた、こういうような事件等もございました。  こういうように海洋汚染の問題にはいろいろな問題があるわけです。そういうものに対してまだ十分に対策が講じられないままに、来年から施行になるわけでございますけれども、その場合に、こういうような問題について、環境庁長官としてはどういうふうな決意で今後臨まれるお考えか、それを承って、質問を終わりたいと思います。
  131. 大石武一

    大石国務大臣 海洋汚染は何としても防ぎたいと考えておりますが、現在の人間の道徳的なものの考え方では、とうていこれを自覚的に防ぐことは不可能でございます。そこで、何とかして法律その他の規制によりましてこれを防ぐよりないといま考えております。そのことにつきましては、おっしゃるような、いろいろなむずかしい問題がございますので、どうしたら一番効果がある方法が考えられるかということで、いま、環境庁の政務次官を中心といたしまして、運輸省の海上保安庁と水産庁と、この三者が相集まりまして、お互いに協議をしていい案を出すように努力いたしております。私としては、いろいろな問題があると思いますが、できるものからやったらいいと思う。  これは所管が違いますけれども、たとえば廃油処理場というものは、どんなことがあっても、船の出入りする港湾には必ずつくらせること、そうしてそれを利用させること、それには、そこで廃油処理をしないものは一切出港させない、廃油処理を強制的にさして、それをしたものには証明を与えて出港させるというようなことをすれば、私は必ずある程度海洋汚染は防げると思うのです。それは一例でございますが、私はやはりき然たる、断固たる行政が必要だ、そう考えて、そのような方向で進めてまいりたいと願っております。
  132. 古寺宏

    ○古寺委員 その中和剤が非常に毒性を持っているわけです。これが一年間に三千トンも日本では使われているわけでございます。これを放置しておくということは非常に重大な問題だと思うのですが、この問題について、環境庁にもう一回お尋ねしておきます。
  133. 大石武一

    大石国務大臣 私は、その中和剤のことは、いままで知りませんでした。きょう初めて聞きましたが、そのような毒性のあるものを使わせることが間違いだと思います。よく調査いたしまして、どこにありますか、そのあり方をすっかり究明して、直せるようにいたしたいと思います。
  134. 小林信一

    小林委員長 岡本富夫君。
  135. 岡本富夫

    ○岡本委員 最初に、委員長にお願いがございます。  いま、公害というものは、もうすでに犯罪である、それから後代の人たちの生命、そういうことを考えますと、これは相当力を入れなければならない時期に入っておると思うのです。昨年十四の法律ができたから、これでおしまいだというような考えではならないと思うのです。きょうは時間制限で非常にあれですが、今後もどしどし、この公害については委員会を開いていただいて、政府の姿勢を聞き、あるいは私どもも提案をして、公害を除去し、ひいては環境保全をしなければならぬ、こういうように思いますので、その点よろしくお願いをいたしたいと思います。
  136. 小林信一

    小林委員長 御意思を尊重いたします。   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
  137. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、私どもは、公害の総点検をやりまして、東京湾、大阪湾あるいはまた伊勢湾、瀬戸内海、こういうところを調査いたしました。しかし、伊勢湾の調査をいたしますと、ヘドロが一ぱいたまっている、あるいはまたヘドロを食べた魚、これを割りますとガンのようになっている。あるいはまた遠海でとってきたところの魚をその中に、生かしたやつを入れますと、五分ぐらいで死んでしまう。こういうのはどこにその原因があるのだろうということで、いろいろと伊勢湾の付近の工場を調査しました。そうしますと、新日本製鉄、これはもう企業のトップクラスであります。公害にも力を入れているという。また当委員会で新日鉄に調査に行きましたが、排水処理はきちっとやっておりますというように説明を受けて、まあこんな大きな会社だから間違いないのだろうというような調子で帰ったわけでありますが、その後私どものほうで調査いたしましたところが、無届けの隠したところの排水設備がある。この問題はちょうど、愛知県のニチボーの犬山工場というのがある。これもやはり同じように、昨年でございましたか、私ども調査しますと、正規の排水口のほかにもう一つ隠しパイプがあって、そこへ有毒物質を、今度は都市水道に流し  ておる。こんなことで、これは非常に問題であると思うのです。  そこで、いま長官は一生懸命に自然保護といいますか、環境保全に力を入れてくださっているのはわかるのですけれども、幾ら一生懸命に環境保全に力を入れても、うしろからしり抜けでこんなことをやっておる。しかも、世界でも有数な会社、日本ではトップクラスだ。こういうことが行なわれてはならないと私は思うのです。  そこで、この工場は昭和三十三年九月に発足しております。したがって、旧工排法、工場排水法の適用になるわけでありますが、その適用事項からいきますと、通産省、通産局が直接の担当になる部分の水も入っているわけです。安水といいまして、コークスを処理した水ですけれども通産省はそれまで新日鉄に対して立ち入り検査し、あるいはまたいろいろ報告を求めて調査をしたことがあるのかどうか、まずこれを伺いたいのです。通産省局長来ておるのでしょう。
  138. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 お答えいたします。  新日鉄の東海製鉄所は先生御指摘のようにいろいろ問題があったわけでございますが、通産省所管をいたしておりましたこの工場排水規制法によりまして、付近の地域はことしの四月十九日に指定を受けたわけでございます。したがいまして、この工排法に基づく届け出をそのときになされたわけでございます。御承知のように六月の二十四日から水質汚濁防止法に切りかわりましたのと、それからすでに昨年の十一月から県が水質規制については実際の監督規制を行なっておりましたので、四月十九日から工排法が生きておりました六月二十四日の間に立ち入り検査をしたかどうかということを私いまのところつまびらかにいたしておりません。もし必要があれば後刻調査をしてお答え申し上げたいと思います。
  139. 岡本富夫

    ○岡本委員 この会社は三十三年の九月に発足しまして、工排法は三十三年に法律ができて、三十四年の十二月に施行令まで出ているのですよ。その施行令の第五条にコークス洗浄、そういう装置、またそういった排水の装置についてはこれは通産大臣あるいはその下の通産局長、これが担当になっているのですよ。この工場はあなたいま言うように、本年の四月に初めて工排法の適用になったのですか。私はちょっとおかしい答弁をすると思うのだよ。だからこの無届けの施設以外の施設についてはすでに立ち入り検査をしたり、あるいは調査をしたことがあるかどうか、まずこれをお聞きしたい。
  140. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 六月二十四日以前におきましては、工場排水規制法と水質保全法の二法で水質関係規制を行なってきておったわけでございますが、工排法に基づく届け出の義務は水質保全法による指定水域としての指定があったときに初めて生ずるわけでございまして、当該製鉄所につきましては四月二十九日に指定があったわけでございますので、そのときに届け出の義務が出るということになるわけでございます。
  141. 岡本富夫

    ○岡本委員 どこから指定したのですか、それは。ちょっとあなた、指定水域というのは、それは海域とかそういうところであって、工場自体については私はこんな一々——これはおそらく経企庁だと思うのですが、経企庁あたりから指定しなければ、あなたのほうが工場の中の排水の調査をしない、そんなことはおかしいと思うのだよ。そう言って一生懸命逃げているけれども。これは新日鉄から提出したところの古い図面なんです。この中にそういった隠し排水設備というものが出てないのです。これは私ども調べて出した。したがって旧工場排水法においても、あなたのほうはおそらくいろいろな設備なんかちゃんと検査をやっていると思うんです。(橋本(龍)委員「やってなかったらやってないほうが問題だ」と呼ぶ)やってなかったらおかしいのじゃないですか。もとの厚生省の政務次官までおかしいぞと言っている。だからそれはそれとして、さればあなたの言うところの、ことしの四月から六月の間に立ち入り検査をしたかと言われたら、これはもう一ぺん調べて返事します、そんな局長があるわけはないです。この新日鉄について私は質問すると、ここにちゃんとぼくは通達してある。しかも問題になっているわけですから。はっきり怠慢であったら怠慢であったと認めたほうがいいよ、どうですか。
  142. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 四月十九日以降につきまして、通産省としては検査はいたしてないわけでございますが、昨年の十一月から規制につきましては県に移管をいたしておりますので、県が調査をしたかどうか、検査をしたかどうかということについて、いまのところ私のほうに的確なデータがない、そういうふうに申し上げたのでございます。
  143. 岡本富夫

    ○岡本委員 地方自治体にこういった権限を移譲したのは、これは昨年の公害国会において私どももいろいろ要望してやったわけでありますけれども、その以前において排水設備というものはできている。これは全部、写真もとっておるのですよ。要するに企業がおそろしくて調査できなかった。これはあなたの前の局長時代だと思いますけれども、十三年間も放置しておったということは、何といいますか、通産省公害保安局ができ、あるいはまた公害課ができ、公害部もできたりした、しかし何にもやってなかったといわれてもこれはいたしかたがないんじゃないか、こういうふうに私は思うのですが、そっちのほうの答弁はどうですか。
  144. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 排水の規制の問題について、もちろん先生がおっしゃられますように、通産省といたしましても規制についての指導の義務はあるわけでございまして、公害総合事前調査その他の調査のときに、製鉄所並びにその近傍について調査をしたこともあろうかと思うわけであります。そういう点の指導のやり方、それから指定水域の時期が、これは経済企画庁のほうでおやりになるわけでございますけれども、おそきに失したという点については若干の問題があろうかと、反省はいたしております。
  145. 岡本富夫

    ○岡本委員 経企庁に問題があるんでなくて、工場排水法は、工場の中の取り締まりあるいはまた工場から出てくるところの排水を明らかに規定しているわけです。したがって、これはいままで通産省がここまで立ち入ってやらなかったのか、あるいはまた、やったかもわからぬけれども、虚偽の届け出であったためにわからなかったのか、これはどっちですか。やらなかったのか、あるいはまた、やったけれども虚偽の届け出でそこまでわからなかったのか、ひとつはっきりしてもらいたい。
  146. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 法律に基づきます届け出は規制が始まってからの問題でございますが、その以前に通産省としては何回か調査をしておるわけでございますので、そのときに、先生の御指摘のありましたような事実について発見し得なかったという点についての問題はあろうかと、反省しておるわけでございます。
  147. 岡本富夫

    ○岡本委員 結局、通産省の怠慢ですよ。法の不備もありますけれども通産省の怠慢である。  そこで、あなたは最近になってから現地に行ったことはありますか。これだけやかましくいわれるようになってから行ったことがありますか。
  148. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 本年の十月初頭に、衆議院の公害特の現地調査に随行いたしまして現地を見たわけでございますが、その後には参っておりません。
  149. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなた方通産省として十三年間も放置しておった。今度私ども調査によって県にやかましく言って、県から調査しておる。これは事は重大なんですよ。前のニチボーの犬山工場にしても、結局はあなたのほうから、さっと飛んで行って、いろいろと不備な点を指導もしあるいはまた意見も聞いてやるのが通産省公害保安局じゃないですか。そうでしょう。いまはもういろいろな公害問題は環境庁に移ってしまったから、要らぬじゃないか。あるいは都道府県に全部権限を移したからということになれば、もう必要ないじゃないですか。その点あとでとってきた写真、場所、全部あなたに見せてあげるから、直接何人か連れていってやらなければほんとうの公害対策はできない、こういうふうに思うんですがね。なぜかといいますと、地方自治体では力に限りがあるんです。また予算もない。だからひとつ通産省として——いままで石原産業当時もそうだった。企業べったりだ。これを早く解消しなければならないと私は思うのです。どうですか、一ぺんさっそく行って調査もしあるいはいろいろと指導もしますか。そこをはっきりしなさい。
  150. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 最近の制度の変革によりまして取り締まり官庁ではないわけでございますが、先生おっしゃいますように、実際面においての影響力と申しますか指導力というものは、私ども先生にかなり買いかぶられておるのではないかという気もするわけでございますが、それだけのものを持っておる面もあるわけでございますので、指導的な意味におきまして、企業その他にこういう問題についての善後策その他については、なお万全の措置をとっていきたい、そういうふうに考えております。
  151. 岡本富夫

    ○岡本委員 いままで長らく立ち入りもせずに、また調査もせずに、あるいはごまかされておった、こういうことに対してあなたも怒りを覚えて、直ちに飛んでいっていろいろと——いま工場排水等の処理施設等の改善について会社から県に出ておりますが、これも一々よく調べてみると全部おざなり。書類の上だけですよ。たとえば排水の量を見ても、いまこの会社が全部使っているあるいはそこに流していると思われる量と比べると全然違う。こういうこまかいことを私はきょう詰めようとは考えておりませんけれども、事は重大である。そして日本で一番の会社ですよ。そういうところにいいかげんなことをやれば、ほかの会社も企業もいいかげんになってしまう。そういった面を考えたときに、あなたもさっそく行って指導もし、あるいは調査もし、いままでの不備に対しては、あなたも国民にわびなければいけない。その点もう一ぺんはっきりしなさいよ。何か買いかぶられた、私らはそういう権限もない、公害に対するところの除去の権限もないのだというなら、もう通産省公害保安局は要らないですよ。そう言いたくなる。だからもう一ぺん態度をはっきりしなさいよ。
  152. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 この問題につきましては、現在におきましては環境庁それから県とのいろいろの問題もあるわけでございますが、私どもといたしましては出先の通産局もあるわけでございますし、先生おっしゃいますようにその後の措置その他を研究いたしまして、もし必要があれば私か参事官現地に参りまして善処したいと考えております。
  153. 岡本富夫

    ○岡本委員 もし必要があれば——必要があるから言っているんですよ。私たちは現地をちゃんと見ておるのですよ。隠しパイプあるいはまた隠し施設を全部見て調査しているのですよ。そして試験データもとっているのですよ。県も、私どもからやかましく言ったときに、県でもさっそく調査しております。しかし、これも不十分だと私は思うのです。なぜかならば、非常に潮の高低が多いのです。干潮のときには水位が五メートルも下がる。そのときは、その隠し排水施設といいますか、そこから約三十センチか四十センチくらいのパイプから汚水がざあっと出てくるのです。満潮のときは、はかったってわからないのです。だから、そういうような点もあなたにこっちから聞いて、必要があれば——必要があるから私は言っているのじゃないですか。あなた、われわれの声を聞けないのですか。その点もう一ぺんはっきりしなさい。
  154. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 先ほど申し上げました、現在におきましては、やほり規制は県がやるわけでございますので、先生もおっしゃいましたように、私どもとしてやることは県のお手伝いとして指導をするということになりますので、私どもが表に出てどの程度までやるかというふうなことにつきましては、取り締まりの衝に当たっておられます環境庁それから県とも相談をいたしまして、その上で、指導的な意味で私どもが表に出てやるべきであるということであれば、もちろん私ども名古屋の現地に参りまして指導することにやぶさかでないわけでございます。
  155. 岡本富夫

    ○岡本委員 なかなか抵抗するね、あなた。いま写真を持ってきておりますけれども、これは無届けのクロム酸の排水処理のおけだ。おけというのはおかしいけれども……。それから排水をやかましくいわれたとたんに、四日の夜になってあわててつくった施設、こういうようなのを現実にあなたが見てこなくて、通産省公害保安局というのは何をするためにあるのですか。こういうのをよく見ておいて、今後次々の企業に対して、こういうところがないかどうか、あるいはこういうところは気をつけていただかなければいかぬというような指導にならなければならない。それが公害保安局の仕事じゃないですか。県やあるいはまた環境庁から様子を聞いて、そして必要があれば——そんななまぬるい、〈つの裏から足をかくようなことでは、絶対に現在の公害はなくならない。見てみなさい。長官は、各閣僚からもやいやいいわれながらも、何とかして日本の国の将来の環境を守らなければならないと一生懸命がんばっていらっしゃるじゃないですか。それなのに通産省は何だ。ひとつあなた、早くここへ行って、ぴしっと調査もすれば、あるいは今後の参考にもなる。十何年間もほうってあったその罪滅ぼしくらいやったらどうですか。その点もう一ぺんはっきりしなさい。
  156. 久良知章悟

    ○久良知政府委員 せっかく先生のお申し出でもありますので、先生の御意向に沿うようにいたしたいと思います。
  157. 岡本富夫

    ○岡本委員 それを早く言えばいいのだ。  次はこの問題につきまして長官にひとつ御意見を承りたいのですが、この事件から通じまして考えられますことは、私どもがこういった調査をして初めてわかる無届けなものが各所に出てきたということになりますと、この立ち入り権限というものは犯罪捜査のために認められるものと解釈してはならないというのが水質汚濁防止法の二十二条の三項にあるのですけれども、このあたりをここらでひとつ改正するか、あるいはまたときによってはそういった犯罪捜査のようなやり方をしなければならぬじゃないか、こういうようにも考えられるのですが、これについての御意見を承りたい。
  158. 大石武一

    大石国務大臣 現在いろいろな基準を、あるいは規制をどれほど守っておるかということを監視することは各地方自治体の権限であり、また責任でもございます。しかしこの場合に、やはり私はどうしても原則的には犯罪捜査であってはならないと思います。正しい公害防止を実行しているかどうかということを十分監視する、私はそういう仕事であってほしいと思います。ただ御承知のように、この監視という仕事もわりあいに新しい行政ですから、行政が新しいうちは必ずしも十分に目的を達成し得るとは考えられません。できるだけ早く各地方自治体が正しい認識に立って、もうひとつ決断を持って、旧来の陋習をほんとうに破りまして、新しいそのような監視体制を確立することをわれわれは心から希望いたしますし、われわれもできるだけの助言なり協力なり指導をいたしたいと考えております。
  159. 岡本富夫

    ○岡本委員 ただ公害行政の上から、要するに、私先ほど見せましたような図面をもって会社の排水の順序といいますか、これをずつ追っていってどうなっておるかということは、これに載っていないものは捜査できないのですよ。こういう事例がまだまだたくさんあるのですよ。ですから、あなたが一生懸命に海水の汚濁を防止しなければ、あるいは瀬戸内海をちゃんとしなければならぬとかいうようなことを考えておりましても、大企業は隠してどんどんやっている。この前の昭和電工でもそうでした。海の一番奥のところにパイプを出して、そして相当離れたところから水を出している。一生懸命、上でだいじょうぶ、だいじょうぶといってみたって、陰でやっているやつはわからない。私どもはこうして、犯罪捜査ではありませんけれども、一生懸命に環境庁のお手伝いをしているみたいなものです。ですから、ときによってはこういった犯罪捜査のような捜査もしなければならぬというような特殊な例もあると思いますけれども、そういう特殊なところに対しては、地方自治体に対してこういった権限を付与しなければならぬのじゃないか、そういうときがきたのではないか、こういうふうに私は思うのですが、長官、もう一ぺん……。私の言うことはわかってくれるでしょう。
  160. 大石武一

    大石国務大臣 あなたの言うことはよくわかります。そのようなものの考え方は私はやっぱり妥当だと思うのです。妥当だと思いますけれども行政というのは、一歩誤りますと、これは非常に大きな間違いを起こすこともございます。権限というものは、使い方が非常に大事でございますので、それらを考えていきたいと思うのです。ですから、役所にあまり大きな権限を持たせますと、かえって産業の萎縮とかあるいはいろいろな弊害を起こす可能性もあると思います。そういう意味で、御趣旨はよくわかりますが、これは慎重にいきたいと思います。  ただいまの体制は、先ほど申しましたように、日本の政治の考え方行政考え方が急に変わったわけですから、変わって二、三年ですから、急にすべてのものがついていけないのはやむを得ないと思いますが、ここは隠忍自重して早く全部が行政のあり方についていけるように、われわれが協力して指導することが大事だと思います。  私は環境庁長官になってみまして、あまりにも公害が多過ぎて、あまりにも自然破壊が多過ぎて、どう手をつけていいかわからないような気持ちでございますけれども、それを幾らあせりましても、やはりある年限をたたなければ、それからすべての国内の体制が整わなければこれは急には解決できないということで、できるだけ早くできるように順序を立ててやりたいと思いますので、がまんしていただきたいと考えております。幸いに、いまの一般の行政上の監視体制の不足を、国民のいろいろな監視の目が光っておりまして、国民がこれに対して非常な熱意を持って国民自体が自主的に監視をしておりますから、私はこれが行政に非常に大きなプラスがあると思うのです。国民の非常な情熱ですね、監視状態、これは非常にいいと思うのです。恐縮ですが、こういうことにもう少し国民に協力してもらいまして、はたして監視が正しくいくかどうか、これを十分にさらに厳重に監督し、指導する。機構が必要ならば、近い将来にそういうものを別に考えたい、別な組織として考えたい、機構として考えたい、私は現在こう思っているのでございます。
  161. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官、これは中小企業や小さな企業のほうは案外県から何か言われたらたいへんなんですよ。ところが大企業、これだけはもう県が何と言ったって平気なんです。だから、その点をあなたのほうでもう一度考えて、いままあ別な方法で考えるというところまで進歩されたわけですから、もう一歩進めるか、あるいはまたもう一度実情を長官のほうでもよく知ってもらって、いまなかなか公害というものはなくならないのだ、いろいろなことでむずかしいのだ、しかしこんな明らかな、どっちかというと犯罪行為です。これを是正するためには、やはりそこからやらなければ企業というものはなかなか態度が変わらないのです。要するに法律にないのだからかまわない、こういう考え方。前の宮澤通産大臣もそうでした。法律にないのだから何をしたってかまわないじゃないか、こういう考え方。だから、そういった通産行政考え方をここであなたが歯どめをつけていかなければならぬわけですから、ひとつ相当な決意をもってやっていただきたい。  そこで、あまり時間がありませんから……。
  162. 島本虎三

    ○島本委員長代理 ちょっと岡本君に御注意申し上げます。  前にいろいろなことがございましても、予定の時間からもう七分過ぎているのは事実でありますから、その点ははっきり認識した上で、もうそろそろ結論を急いでいただきます。
  163. 岡本富夫

    ○岡本委員 結論を急ぎましょう。  三十二条の罰則、ここに「虚偽の届出をした者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金」——まあ五万円くらいたいしたことはありませんけれども、こういうように出ておるのです。これは明らかに虚偽の届け出だと断定せざるを得ないと思うのですが、長官はこの点について、水質汚濁防止法の担当の官庁でありますから、この点だけ最後にお聞きしたい。
  164. 大石武一

    大石国務大臣 これは当然罰しなければならない場合には当然罰すべきものであると思います。そのことにつきましては、監督官庁である愛知県庁において十分に判断しまして、正しい方向をとるべきであると思います。ただ単に罰するだけが能でありませんで、何としても今後公害を出さないということ、十分にそれを、改心というとおかしいですが、考え方を変えまして、公害を出さないという方向に全面的に協力するというならば、その考え方中心として処分法もやはり判断したらよかろう、こう思いまして、それは愛知県庁自体の良識あるいは決断にまかせたいと考えております。
  165. 島本虎三

    ○島本委員長代理 結論を急いでいただきます。岡本君。
  166. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官、そういう愛知県の判断にまかせるというよりも、どうしても公害をなくしたい、そして環境を守りたい、こういうあなたのいまおっしゃった姿勢なんです。したがって、県庁にもこの点については話もし、また取り締まり官庁であるあなたのほうでひとつ、罰するばかりが能ではございませんけれども、せっかくこうしてわれわれが審議して罰則までつけてあるのに、こうした明らかな虚偽であるのにこれも適用できないというような情ない姿では、当委員会で何ぼ私どもが口をすっぱくしたり、あるいほいろいろな住民の運動があっても、ほんとうにこれはどうしようもないと私は思うのです。法律をしっかりしようとしないのですから。だから、その点についてひとつ県にもあなたのほうから十分に申し入れる、そういう決意でやっていただきたいと思うのですが、この点はっきり……。
  167. 大石武一

    大石国務大臣 お説のように愛知県知事に連絡をいたしまして、しかるべく指導いたしたいと思います。
  168. 岡本富夫

    ○岡本委員 終わります。
  169. 島本虎三

    ○島本委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることにし、本日は、これで散会いたします。    午後一時二十五分散会