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1971-12-11 第67回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十二月十一日(土曜日)     午前十時十三分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 金丸  信君 理事 國場 幸昌君    理事 二階堂 進君 理事 湊  徹郎君    理事 毛利 松平君 理事 久保 三郎君    理事 細谷 治嘉君 理事 中川 嘉美君    理事 門司  亮君       天野 光晴君    池田 清志君       石井  一君    宇田 國榮君       小渕 恵三君    大石 八治君       大野  明君    大村 襄治君       加藤 陽三君    佐藤 文生君       佐藤 守良君    正示啓次郎君       關谷 勝利君    田中伊三次君       田中 龍夫君    谷垣 專一君       谷川 和穗君    西銘 順治君       藤波 孝生君   三ツ林弥太郎君       箕輪  登君    村田敬次郎君       森  喜朗君    山下 徳夫君       豊  永光君    井上 普方君       石川 次夫君    上原 康助君       大原  亨君    川俣健二郎君       木島喜兵衞君    田邊  誠君       武部  文君    西宮  弘君       松浦 利尚君    美濃 政市君       山口 鶴男君    新井 彬之君       伊藤惣助丸君    桑名 義治君       斎藤  実君    二見 伸明君       正木 良明君    田畑 金光君       東中 光雄君    米原  昶君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 渡海元三郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (農林大臣臨時         代理)     山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         管理局長    茨木  広君         総理府総務副長         官       砂田 重民君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         経済企画庁国民         生活局長    宮崎  仁君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         法務省民事局長 川島 一郎君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       福間  威君         大蔵大臣官房審         議官      前田多良夫君         大蔵省理財局次         長       小幡 琢也君         食糧庁長官   亀長 友義君         通商産業省公益         事業局長    三宅 幸夫君         労働省職業安定         局長      住  榮作君  委員外出席者         日本専売公社総         裁       北島 武雄君         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月十日  辞任         補欠選任   武部  文君     安井 吉典君   伊藤惣助丸君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   正木 良明君     新井 彬之君 同日  辞任         補欠選任   安井 吉典君     武部  文君   新井 彬之君     伊藤惣助丸君 同月十一日  辞任         補欠選任   木野 晴夫君     西銘 順治君   武藤 嘉文君     村田敬次郎君   石川 次夫君     田邊  誠君   木島喜兵衞君     西宮  弘君   武部  文君     松浦 利尚君   伊藤惣助丸君     正木 良明君   桑名 義治君     新井 彬之君 同日  辞任         補欠選任   西宮  弘君     大原  亨君 同日  辞任         補欠選任   大原  亨君     上原 康助君 同日  辞任         補欠選任   西銘 順治君     木野 晴夫君   村田敬次郎君     武藤 嘉文君   上原 康助君     木島喜兵衞君   田邊  誠君     石川 次夫君   松浦 利尚君     武部  文君   新井 彬之君     桑名 義治君     ――――――――――――― 十二月九日  北方領土の早期返還に関する陳情書外二件  (第一八六  号)  沖繩通貨対策に関する陳情書外三十五件  (第一  八七号)  台風二十八号による沖繩災害対策に関する陳  情書(第一八  八  号)  沖繩の振興に関する陳情書  (第一九  〇号)  沖繩戦争被災者補償に関する陳情書  (第一九一号)  沖繩復帰に伴う対策確立に関する陳情書  (第一九二号)  沖繩核兵器即時撤去等に関する陳情書  (第一九三号)  沖繩教育較差是正に関する陳情書  (第一九四号)  沖繩における教育委員公選制存続に関する陳  情書外一件  (第一九五号)  同(第二六五  号)  自衛隊の沖繩配備反対等に関する陳情書外一件  (第一九六  号)  同(第二六四  号)  沖繩国際海洋開発博覧会開催に関する陳情書  (第一九七号)  沖繩海外引揚者特別交付金一括買上げに関  する陳情書外二件  (第一九八号)  沖繩住民請求権等法的救済に関する陳情書  (第一九九号)  沖繩復帰後の軍用地賃貸料改善に関する陳情書  (第二〇〇号)  沖繩電話架設料金に対する特別措置に関する  陳情書  (第二六一号)  八重山群島干害対策に関する陳情書  (第二六二号)  沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案反対に関する陳情書  (第二六三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案(内  閣提出第一号)  沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律  案(内閣提出第二号)  沖繩振興開発特別措置法案内閣提出第三号)  沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案(内閣提出第六号)  国家公務員法第十三条第五項および地方自治法  第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の  地方事務所設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出承認第一号)  沖繩平和開発基本法案細谷治嘉君外十六名提  出、衆法第一号)  沖繩における雇用促進に関する特別措置法案  (川俣健二郎君外十六名提出衆法第三号)      ――――◇―――――
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、細谷治嘉君外十六名提出にかかる沖繩平和開発基本法案、及び川俣健二郎君外十六名提出にかかる沖繩における雇用促進に関する特別措置法案、以上の各案件を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。田畑金光君。
  3. 田畑金光

    田畑委員 初めに総理お尋ねいたしますが、公用地等暫定使用法案については、さらに関連七法案の本委員会における審議を見てみますると、いろいろな曲折はあったわけでありますが、野党質問も、ほとんどきょうじゅうに質疑が終わるというところまできておるわけであります。十二月十日現在までに、延べ百三十二名、九十一時間の質疑時間、もちろんこれは委員会連合審査会公聴会等、あるいは沖繩現地公聴会における質疑の時間等入れてでございます。  ところで、沖繩返還協定審議の際には、参議院における自然成立をはかるため、会期から逆算をして無理な強行採決をやり、国会が混乱をきわめたことは御承知のとおりであります。そこで関係国内法案については、世論を顧慮しながら参議院対策も顧慮しながら慎重な審議を進めてきた。これに政府与党も今日までは協力されてきたわけであります。総理は、沖繩返還協定に見られたようなああいう強行採決議事運営ぶり、この委員会におけるような審議審議を重ねるようなあり方とは、いずれがベターであるとお考えになられるか。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 田畑君にお答えいたしますが、もちろん、国会におきましては十分審議を尽くしていただく、これが何よりも大事なことだと思います。私は、本委員会におきまして、与野党とも合同審査あるいは単独委員会等におきましてたいへん審議を尽くされたこと、また尽くされつつあること、これには心から敬意を表しておる次第でございます。  ただいま、このほうと強行採決したことについての反省はあるかというようなお尋ねでございましたが、私は、国会運営については、もちろん、与党総裁として、また同時に内閣の首班といたしまして、そういう点が十分尽くされることを心から願っておるものでありまして、ただいま申し上げますごとく、これが審議が尽くされること、これが国民に対するわれわれのつとめであろう、かように思っております。
  5. 田畑金光

    田畑委員 この沖特委は、十二月一、二日には沖繩現地公聴会を開き、八日には東京と大阪で公聴会を開き、また三日間にわたる連合審査を終わったわけであります。この間、この審議を通じ、いろいろ質疑が繰り返されたわけであります。法案審議過程において、古希を迎えられた総理が努力されておられることは、われわれも認めるところであり、沖繩返還政治生命をかけておられる執念のあらわれだな、こう拝見をしておるわけです。  さて、これらの審議を通じて述べられた意見については、私は、今後政府政策の上に、あるいはまた法案の中に当然取り上げられてしかるべきことだと、こう考えておりますが、総理の御所見を承ります。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、この委員会における審議を通じましても、しばしばわれわれの心得べきことについて触れたはずでございます。それは何か。申すまでもなく、戦中戦後を通じて沖繩同胞がなめてこられた苦難の道、それについてわれわれが十分理解を持って、沖繩同胞の心を心として復帰後の諸施策を充実していかなければならないこと、これは申すまでもないことだ、かように思っておることでございまして、皆さん方質疑も、そういう点において十分に——まだ十分でないとおっしゃるかもわかりませんが、いままでにないような熱心な御審議をいただいておる。このことは必ず沖繩同胞にも強い印象を与えておることだろうと思います。私は、今後政府はもちろんのこと、与野党とも沖繩が異民族の支配下においてずいぶんおくれておる、その点を取り戻し、そうして豊かな平和な沖繩県づくりに協力すること、これが何よりも大事なことだろうと思います。したがいまして、ただいま御指摘になりますような諸施策の充実、さらにまた法案整備等につきましても、いまの過渡的な問題はございますけ訳ども、できるだけ早めに本土一体化、そういうような実をあげるように、沖繩地方自治もそこまで成長さすことがわれわれのつとめでなければならない、かように考えております。
  7. 田畑金光

    田畑委員 十二月二日の沖繩現地で開かれた公聴会の際、現地与党第一党の社会大衆党は、返還協定強行採決したあとの公聴会は無意味だ、単に審議スケジュールを消化するための手続にすぎない、こういうわけで参加されなかったわけであります。このような発言というのは、現地公聴会でしばしばわれわれが耳にしたことばであるわけであり、またこの委員会における公聴会においても、この公聴会が単なる形式を満たすだけの公聴会であってはならない、この委員会で取り上げられた私たちの提案については今後の法案審議の中で十分生かしていただきたい、強い要望があったわけであります。  七法案審議を進めてまいりましたが、ことに問題のある法律案は、何と申しましても公用地等暫定使用法案であることは申し上げるまでもございません。本土の場合は地位協定に基づいて特別措置法により一時使用期間は六カ月以内といわれておるのに、今度の法律案は五年、しかもこれを暫定使用期間と呼んでおる。五年が一体暫定使用期間と呼ぶに値するのかどうかという問題もあるわけです。同時にまた、法的な手続についても今回の法律は至って簡略をきわめておるわけであります。このように見てまいりますると、私は公用地等暫定使用法案については、現地における公聴会を通ずる現地の声並びにこの委員会におけるいろいろな建設的な意見等は当然取り上げられて法案修正という形がなされなければ、結果においては単に慎重審議をしたが、それは円満な採決をやるための道具立てにすぎなかった、こういう批判は免れないと私は考えるわけであります。総理は、この委員会審議の中で、一度は公用地等暫定使用法案については修正に応ずるような御答弁もございましたが、その後このような答弁は後退しておるわけであります。野党が応じない修正ならば、防衛庁反対を押し切ってまであえて修正をする必要はないのじゃないか、こういう声が政府にも与党にも出ておると聞いておりまするが、私は、こういうようなことはまことに慎重審議の結果を取り入れようとする議会主義を守るための正しいあり方ではない、このように考えておりまするが、こういう点について総理見解を承っておきます。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのお尋ねは、ちょっと私つかみがねておりますが、国会修正するならば政府はどうするか、こういうふうな御意見でしょうか。私、お尋ねすることが、ちょっといまのお尋ねはどういう点だろうかと肥握しかねたものですから一応確かめるわけですが、お聞かせいただければ……。
  9. 田畑金光

    田畑委員 これだけの審議をやりました以上、また公用地暫定使用法案については公聴会等も通じいろいろ修正意見も出されておるわけだし、この法律を完全に頭から拒否するという、そこまで私は主張するわけじゃございませんが、この法案内容等について当然審議過程を通じ修正すべき点が私は幾つか出てきたと感ずるわけであります。こういう点については、修正しても野党反対するから修正提案はやめておいたがいいなんというような姿勢がもし与党にあるということなれば、何のために審議を尽くしたか、こういうことになろうと考えております。私は、そういう意味におきまして、総理もまたこの委員会審議の中で、あるときはこの法案等については当然修正すべきであるような御発言もございましたが、それがいつの間にか後退しておりますので、その点について総理所見を承るわけであります。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもはもちろん慎重な検討の上、原案作成しております。したがいまして、その作成の途上、あるいはまた提案することにおいて何らの粗漏があろうとは思いません。しかしながら、もちろんこれは政府サイドの考え方でございますから、皆さん方の御審議を経てこれが成立するのでございますので、これは協定の場合とは違いまして国内法案でもありますし、われわれは十分そういう点で皆さん方の御意向の存するところをそんたくすると申しますよりも、各党で話がまとまればそれを尊重するにやぶさかではございません。私はただいま申し上げますが、そうかたくなに原案作成上、手続上何ら粗漏はないから何でもかんでも原案どおりだ、かように申すわけではなくて、ただいま申し上げますように各党間の意見の合致するもの、それについては私は十分尊重する、それだけの用意のあることはこの際申し上げるまでもないことであります。これこそがいわゆる国会審議、さような問題ではなかろうか、かように私は思っております。
  11. 田畑金光

    田畑委員 法律案によっては、長い審議を尽くしても結局結論において与野党が交わらない場合もあろうかと思います。今回の公用地暫定使用法案については三野党一つ見解を示しておるわけで、われわれはこの法律について憲法に違反するという態度をとっておるわけであります。しかし同時にまた、この法律返還協定一体をなして復帰にとって大事な法律であることも理解しないでもないわけであります。この重要な法律案について、これだけ長い時間の審議をなしてきた、しかもこの法律政府提案された法律であります。したがいまして、私はいまのお話の中に、なるほど通常の法律のように与野党審議を通じ一致して修正できるという法律の性格であるならば幸いでございまするが、そうでないような場合については、私はやはり政府与党の責任において現地の声、国民の声を聞くことにこそ、慎重審議の有終の美を飾るあり方ではなかろうか、このように考えておりまするが、この点、いま一度総理所見を承ります。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまもお答えいたしますように、政府法案提案する以上、もちろんその道程において十分の検討を加え、また手続上も粗漏なきを期してただいま提案しておるわけでございます。ただいまお話しのごとく、公用地等暫定使用法案、これは憲法違反だ、かような御主張でございますが、私どもはさようには思っておりません。したがって、これはもう明らかに正面から衝突する問題でございます。そういう場合におきまして、これは私ども、いままでもずいぶん意を尽して十分の説明をいたしたと思いますけれども、不幸にして合致を見ることができない、こういう状態でございますから、その前提を十分御理解いただきまして、そういう際にどういうような処置をとることが民主的な決定であるか、そこらも御了承願いたいと思います。
  13. 田畑金光

    田畑委員 この点についてはどうかひとつ、長い時間をかけて関係法案審議をやってまいりましたが、政府においても十分国民の声あるいはなかんずくは沖繩現地人方の声を聞いて、法律等について修正すべきは進んで修正する。そのことがやはり議会主義に新しい先例を開くという意味において私は一つの成果であろうと考えております。  次に私は、総理が来年の一月の初めにアメリカにおいでになってニクソン会談をなさいまするが、この国会審議を通じわれわれが主張してまいりましたことは、しょせん突き詰めてみますと、それは沖繩返還をめぐるこれからの日米関係あり方はどうあるべきかという問題であったと見るわけであります。言うならば、来たるべき佐藤ニクソン会談においては、今後の日米関係あり方、こういう問題等について、私は当然この委員会の中で出てきた意見というものを取り上げて総理はこの会談に臨まれるものだと考えておりまするし、またそうであってこそ、この委員会審議をしたもろもろの問題がわが国の国政の中に、外交の中に、政治経済の面の中に生きてこようと考えているわけで、この点について総理所見を承ります。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 来年新春早々、私とニクソン大統領との会談につきましては、いずれあらためて他の場所において各党党首との会談を開催する心組みでおりますが、ただいま言われますごとく、両首脳の会談でやはり主題になるものは、アジアの平和、そういう関係が主になろうと思います。そういう際に、沖繩が祖国に復帰する、返還される、こういうことを考えると、当然各党からいろいろの御質問の形で御意見を述べられた、そういう点が取り上げられてしかるべきだ、またそういうことを踏まえて私がニクソン大統領会談を持つ、こういうことでなければならない、かように思っておりますので、その点では皆さん方の御意見を十分踏まえた上で会談を持つつもりでございます。
  15. 田畑金光

    田畑委員 沖繩返還協定は、突き詰めてみますと、結局、佐藤ニクソン共同声明の基礎の上につくられたもの、その意味共同声明協定化であったと私は見てよろしいと思うのです。しかしこの二年間にアジア情勢、世界の情勢もまた大きく変わっておるわけであります。前提とされた沖繩返還あり方、特に中国封じ込め前提とした沖繩返還あり方、また沖繩返還の代償という形で、いわゆる韓国、台湾条項というものができて、日米安保条約アジア安保に質的に変わった、こういう不安が国民の中に流れておるわけであります。しかし情勢はこの二年間で著しく変わってきた。米中和解の、実現、中華人民共和国の国連登場、こういうことを見ますと、沖繩返還前提条件が変わっただけに、沖繩返還をめぐる日米関係もまた新たな角度から見直すべきだと、こう考えております。私は、そういう意味で今度の日米会談佐藤総理は臨まれるものであると考えておりますが、御所見を承ります。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまの田畑君のお話が非常に固定的な観念で、一九六九年の私と大統領とのコミュニケ、かようにお読みになる。まあ、当時のアメリカ政策、そのもとにおいてとかようにいわれると、なかなか沖繩は返ってこない、私どもが心配するような状態であったと思います。しかし、その当時からやはり対立抗争ではなくて、その国際間の緊張緩和の努力はするという、そういう前提であったからこそ、共同コミュニケが今日支障なく両者の合意を得ることができて返還協定ができた、かように解釈すべきではないだろうかと思っております。私はもしも国際緊張従前どおりであり、あるいはそれより悪化しておれば、なかなか沖繩返還というものは実現しない、このことは火を見るよりも明らかではないだろうかと思います。それだけ緊張緩和の方向にアジア情勢が動いてきておる。それは見のがせないことであり、私どもも心からその点を喜ぶところであります。私がしばしば沖繩祖国復帰、そのことは必ず日中国交正常化にも役立つと、かように申しておりますのも、ただいまのような観点からでございます。私は、もしも対立激化あるいは緊張が熾烈になる、こういう状態ではなかなか返ってこない、だからただいま言われるように、一九六九年時代にあるいは中国封じ込め政策、さようなものを考えていた。あるいはベトナム戦争はなかなか熾烈である、そういうもとのことを考えると、一応は約束しているけれども、そのときに一体一九七一年時代にどういうことになるかわからない。だからこそ第四項のような、ベトナム戦争、そういうものが続いておればどういうように考えるか、こういうような条項まで念を入れたのであります。しかしながら幸いにして私ども沖繩を迎えることができるような、緊張は緩和しつつある、いわゆる平和の方向にアジアが大きく動いている、こういう状態でございますから、この点は私ども歓迎すべきことだ、かように思っております。ただ、ただいまも一つ心に残っておりますのは、いわゆるベトナム問題はずいぶんアメリカの撤兵計画が積極的に進んでおりますが、しかし新たなる戦争は東パキスタンにおいて行なわれておる、ここらにも私ども心配なものがございます。しかしただ相当離れておりますだけに、これがいまアジアの平和、その撹乱の一つの問題になるといまの状態では考えることはない。だが、これがもっとさらに長期化し、さらにまたこれが拡大する、ただパキスタンにおける戦闘ばかりじゃなく、三カ国の関係がもっとはっきり出てくるというようなことになると、インドとパキスタンだけの問題でなく、国際的な緊張激化の方向にいく、対立が浮き彫りにされるというようなことがあると、これはたいへんだと、かように心配はしておりますけれども、幸いにしてアジアの中ではございますが、やや離れた地域でございますから、ただいまのところそういう心配はなしと、かように考えていいんじゃなかろうか、かように私は思っております。
  17. 田畑金光

    田畑委員 関連法案等が会期内に成立を見れば、すでに沖繩返還協定については成立を見たと同然でありまするし、関連法案の成立がこの国会で実現すれば、私は、総理としてはトップ会談において来年の四月一日の返還を強く主張される、また国民もそれを期待しておる、こう考えておりまするが、総理のお考えを承ります。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま時期をはっきり申し上げることは、相手のあることですからできませんが、私はできるだけ早期に返還実現、それが出てくるように、この上とも努力する決意でございます。早ければ四月一日、これが私どものいま念願としている目標でございます。そういう意味で、これが実現することを心から願っておる次第でございます。
  19. 田畑金光

    田畑委員 沖繩の核撤去の確認の問題でございますが、非核三原則の大きな方針が国会の意思として決議をされた、こういう背景もあるわけであります。また、この国会審議を通じ、いかに日本国民が核というものに非常な嫌悪の情を持っておるか、恐怖の観念を持っているかということは、アメリカ当局もとくと理解しておることだと思います。  今般わが党の春日委員長等がアメリカに参りましてロジャーズ国務長官と会談したとき、沖繩返還時に核がないことは明らかだが、日本にとって沖繩の核抜きを言明することが必要であるなら、いつでも記者会見し、その旨明言する用意があるという話をしておるわけであります。私は、この際ひとつ来年のトップレベルの話し合いの中で、沖繩の核の撤去についてしかと国民の納得できる話し合いを何らかの形で取りつけてもらうべきだと思いますが、この点いま一度総理所見を承っておきます。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 民社党の党首が直接ロジャーズ長官と会って、そうして日本の本土並びに返還後の沖繩においての核のないこと、これを確認されたことについてはほんとうに心から敬意を表する一人でございます。同時にまた、それを確かめる方法として何かないかということで、もし必要ならばロジャーズ国務長官が声明してもよろしい、こういうことを言われた、それを確かめられたということ、これは私、いままでになかったことでありますので、野党の党首として、また日本の政党として、ただいまのような点に、非常に関心の深さ、これを直接示されたこと、これは政府といたしましてもしあわせに思うことでございまして、そういう意味からも、私ども来春早々の会談におきましては、こういうことについてもさらにくふうをすべきものがあればくふうをしたい、かように考えておる次第でございます。
  21. 田畑金光

    田畑委員 この際私は、協定第七条の資産買い受け三億二千万ドルの中で、核兵器の撤去として七千万ドルが計上されておりますが、いろいろ大蔵省その他等を当たってみても、この七千万ドルの内容なり積算の基礎なり、それを承知しておるのは外務省しかない、こういうことに突き当たったわけです。この際ひとつ七千万ドルの積算の根拠、これを外務大臣から承りたいと思うのです。
  22. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 この七千万ドルにつきましては、三億二千万ドルがきまりました経過を知っていただく必要があると思います。まず、その中で一億七千五百万ドル、これは資産承継に見合う分でございます。それから軍労務者の待遇改善、そのための七千五百万ドル、合計いたしますと、これが二億五千万ドルと相なるわけであります。ところが、アメリカにおきましてはその他に核の問題があります。また、これから米軍が沖繩から引き揚げていく、そういう際には米軍の施設を無償で置いていくわけであります。それが多額にのぼる、そういうようなことを考慮して多額な要求をする。私どもアメリカに払う金は国民の税でありまするから、これはなるべく少ないほうがいいというふうに考えたわけでありますが、核撤去のことを考えなければならぬ。また、アメリカのそういう軍が置いていくという資産のことも一理もある。こういうふうに考え、何とかこれは少なくしたい。しかし、何がしかの支払いはしなければならぬ、こういうふうに考えた次第でございますが、それらの状況を考慮いたしまして、アメリカ側との間で手を打った七千万ドルである、こういうことでありますので、この内訳につきましては、具体的にこれが幾ら幾らというような説明はいたしかねるということはしばしば申し上げておるとおりでございます。
  23. 田畑金光

    田畑委員 いつの答弁を承っても同じお答えでございますから、これまたかかわり合っておると時間がたちそうでありますが、そうしますと、核兵器の撤去というのはどのような手段で運搬するわけですか。船なのか飛行機なのか。また、このようなことで万一不慮の事態でも発生したような場合の予防措置などというのはどのように講じようとなさっておられるのか。政府返還時には核はないと言われておる。先ほど、アメリカのロジャーズ国務長官もそう言っておりますが、返還時期は来年の四月、かりに四月と仮定すればもう三カ月しかございません。七月としても半年です。この間に当然核は撤去されている、そして復帰の日を迎える、こういうことになるわけでありまするが、この辺の事情はどう進んでおるわけでありますか。
  24. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 返還時並びに返還時以降におきまして核が沖繩からはなくなる、これは本土はもとよりであります。これは大統領総理大臣の共同声明、また今回の協定第七条、これにおいて明らかなところでございまして、私はこれにつけ加える何ものも必要はない、こういうふうに思いますが、しかし国会において過日本会議の決議が行なわれた、こういうような事態もあります。つまり、そのような政府見解をさらに裏づけするような努力をいたすべし、こういうことであります。そういうことを踏んまえまして、先ほど総理大臣からお話がありましたように、サンクレメンテ会談におきましてもなお一そうのくふうをこらしてみたい、こういうふうに考えておりますが、いましからば沖繩島に核があるのかないのか、こういうことになりますと、正確にはアメリカは核のあるなしを言明しておりません。しかし、私が状況を総合判断いたしますると、核はあそこにある、こういうふうににらんでおるわけであります。この核の撤去というものがしたがって問題になるというので、七千万ドルという支払い、そういうものが出てくるわけでございますが、その核撤去の手段、方法ということにつきましては、核というものがアメリカの世界の政治に臨む最高の戦略手段である、こういうようなことを考えまするときに、アメリカはどうしてもこの核の問題につきましては深く触れんとしないのであります。私は、核はあると、こういうふうなにらみを持っておりまするけれども、こういう、存在すると私が考えておる核を、いかなる時期に、いかなる方法で返還日までに撤去するかという具体的な問題になりますると、アメリカを信頼をしてもらいたいと、こういうふうに言う——私は沖繩県民の心情もよくわかります。そこで、この核撤去につきましては、最大、細心の注意を払ってもらいたいということを重ね重ね米政府に要請をいたしておる次第でございますが、アメリカ側も、この撤去作業において、沖繩県民にいささかの障害も与えないということをはっきり言明いたしておりますので、この言明に信頼をいたしておるというのが現況でございます。
  25. 田畑金光

    田畑委員 外務大臣の御答弁の中で、日本政府としては、核があるであろう、そういう前提で話を進められ、また七千万ドルを払うことにした、しかし、その七千万ドルの支払いを受けるアメリカの側は、あるかないかはっきり言わない、これはアメリカの高度な戦略のことで、それ以上の追及はできない、信頼するらしかない、こういうことでございますが、これは乱暴なことじゃございませんか。七千万ドルを核の撤去費として払うからには、アメリカ沖繩に核があることを前提として日米領袖間の合意が成立したはずで、あるかないかわからぬ、そういうようなものに日本政府が七千万ドルを払わねばならぬということは、一体その支払いの性格は何か、こういうことになるわけです、どうしてアメリカがそれをはっきりしてくれないのか、この点を外務大臣からいま一度お答えをいただきたいと思うのです。
  26. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 核の問題になりますと、アメリカは非常に神経質です。私は、この神経質になる理由というものはわかる。つまり、これは何といってもアメリカの世界政策を行なっていく上においてのかなめをなす問題である。これを大事にするというアメリカの立場、これはわかるのです。しかし、アメリカは言うのです、返還時におきましてはきれいさっぱりと核はないようにいたします。また、その過程におきまして沖繩県民に対しましていささかの障害も与えないということもはっきり言明しておる。そういう状態でございますので、アメリカのそのような善意、これを期待するという態度をとること、私はそれはそう乱暴な態度とは思いません。これは核というものの性格、また軍事上の機密というような問題、そういうものを考えるときに、まあやむを得ざる処置ではあるまいか、そういうふうに考えておる次第でございます。
  27. 田畑金光

    田畑委員 外務大臣のように、アメリカの最高首脳としばしば会談されて、アメリカの実情をはだで、感触で受けておられる方は、それはアメリカを信用しようということでいいと思いますが、私はじめ多くの国民は、そうではないわけであります。やっぱり、アメリカ復帰時には沖繩から核を撤去するということならば、しかもそのために、外務大臣がしばしば口にされますように、国民の税金の中から七千万ドルの支払いをするというならば、核の撤去がなされたかどうかの確認ぐらいはせめてするんであろうな、これは素朴な国民の感情であると思うし、またそれにこたえる措置を講ずることは政府の政治責任だと、こう思うのです。アメリカ国内法のたてまえから核のあるなしははっきり言うことはできないんだ、こういうようなことをよくいわれます。マクマホン法という法律があって、これによって核については大統領の専権事項として、公表できないんだ、こういうようなことをよく耳にいたしますが、一体アメリカにマクマホン法という法律、実定法で核を公表してはならぬという法律があるのかないのか、この点明らかにしていただきたいと思います。
  28. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 法律のことは政府委員からお答えいたさせますが、私は、法律を問題にしているんじゃないのです。核というものはアメリカにおいては最高の戦略要具である、こういうふうに考えておるわけでありまして、またアメリカもそう考えておる。これを大事にするというアメリカの気持ち、これは理解を持たなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。これは大体において大統領の権限にこれを集中しておるという状態である、こういうことですが、それがいかなる法律だ、何だという、そういう問題じゃないんです。問題は、実態としてこの核というものが、大統領の手中にその運営を置くというくらい大事なものであるという、そのアメリカの考え方、またそれに対するわれわれの理解、そういうものが今回の協定の中ににじみ出ておる、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  29. 田畑金光

    田畑委員 いまの大臣の御答弁にありましたように、長い間政府はマクマホン法という法律アメリカは核の有無についてははっきりできないんだと、こういうようなことで国民に、事実に反することでそのつど答弁を避けてきましたが、アメリカ国内法に核兵器の所在を明らかにすることを禁止するような実定法がないということだけは明らかになったわけです。今度は、大統領の最高の権限として、この問題についてはとかく意見を述べることはできないようなことになっておるというようなことで、これまた逃げておられますが、そうすると沖繩の核撤去費の七千万ドルというのは、これは核の撤去の有無にかかわらず一括払いをなさるのか、あるいは前払いをなされるおつもりなのか。核の撤去の事実の確認をなされないままにこれは支払うという性格のものなのですか。この点をもう一度お答えをいただきたいと思う。
  30. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 それは、アメリカの核が沖繩に存在をしておる、こう日本側はにらんでおるという前提に立つものであります。
  31. 田畑金光

    田畑委員 外務大臣は、長い間大蔵大臣としてわが国の財政の責任をとってこられた方です。しかもこの沖繩返還協定を調印した時期は、大蔵大臣としておすわりになっていたわけです。近く外務大臣も、総理とともにアメリカにおいでになるやに聞いておりまするが、こういう問題については、当然外務大臣としても、沖繩の核撤去の有無等についてはその確認の方法等について、あるいは協定ができて七千万ドルの支払いを日本政府は義務を負うわけでありますが、この問題等について、私は、もっと具体的な話し合いをなさるものだと考えておりまするが、どうですか。
  32. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、この協定ができた当時大蔵大臣で、私は日本一のけちんぼうだ、こういうふうに称しておったのでありますが、そのけちんぼうと称する大蔵大臣が、この核撤去に必要な費用だけは、私は進んで賛成したのです。何となれば、核がなくなるかどうかということは、これは沖繩県民にとりまして重大な問題である。これは少しぐらいの金を払いましても核は撤去する、これをはっきりさせなければならぬ。そういうことで、私は積極的にこの支払いには賛成いたしまして、そうして協定第七条という書き方ができてきたわけなんです。そういう私でございますので、この核が返還時においてなくなる、これが国民にもはっきりされるというその方法論、それに対しましては春日委員長も御努力をされたということでございますが、私は私なりにさらにくふうをこらしてみたい。サンクレメンテの会談におきましてもこの問題を提起してみたい、そういうふうに考えております。
  33. 田畑金光

    田畑委員 案外六月十七日の時点のころ、もうすでに次は外務大臣だというようなことで七千万ドルも積極的にお出しになったんじゃございませんか。  次に、私は沖繩の基地の整理、縮小について、これは総理にまたお尋ねをいたしますが、基地の整理、縮小等についても国会の意思はもはや決議されておるわけであります。アメリカ沖繩基地の大幅な縮小については、ニクソン・ドクトリンの原則から見ましても、またアメリカのドル防衛というせっぱ詰まった国内事情から見ましても、私は、友人としてひとつ佐藤総理ニクソン大統領に忠告していただきたいと思うのです。  十一月の三日に、米上院の外交委員会は、上院に対して報告書を出しておる。その中で、「外交委員会沖繩にある米軍及び基地の現在の水準を無期限に維持することを承認しない。外交委員会は米中関係の発展及びアジアでの他の情勢の展開に照らして適切な範囲でこの地域での米軍の存在を一定期間にわたって削減するとの政策承認する。」私はこのようなアメリカ国内の事情等を見まするならば、あの巨大な沖繩の基地の縮小について直ちに話し合いに入るべきだと思いまするし、ことにあの特殊部隊などというものは、これもまた外務大臣から先般来いろいろ答弁はなされておりまするが、あの答弁では納得できないわけで、特殊部隊等は早期に撤去さすべきだ、こう考えておるわけであります。  私は、今回行なわれる佐藤ニクソン会談の中で沖繩の基地縮小については両国の外交ルートを通じ、直ちに話し合いに入るというような合意をぜひひとつ取りつけてもらいたいと考えておりまするが、この点について総理所見を承っておきます。
  34. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 基地の問題につきましては、私どもも重大な関心を持っておる次第でございます。この沖繩における基地の密度、これが非常に高い。これがこれから沖繩県を再建をしていく、復興をしていくという上において重大な支障になるということにつきましては、私ども深い理解を持っております。この基地の密度の中で、特に沖繩本島の中部地区、この密度についてまず第一に考慮を払う必要があるんじゃないか。また演習場等におきまして、いまの米軍の機能、またさらに返還後の米軍の機能、そういうものを考えて、その機能を越える土地の提供というものがあるかないか、これも検討しなければならぬ問題であろう。さらにレクリエーションというかそういうような諸施設について考慮、検討を加える問題はないか。そういうようなことをあれやこれやといま考えておりまして、この基地の問題につきましては、佐藤総理も非常に重大な関心を持っておられて、さきに渡米いたしましてニクソン大統領会談した岸元総理に対しましても——じきじきにこの問題を取り上げて大統領との間に話をいたしておるような次第でございます。また、先般日本に参りましたコナリー財務長官、またさらに国務省のジョンソン次官等に対しましても、この問題がいかに重大な日本の国内問題であるかということについての認識を深めるような議論を提起いたしておるわけでありまして、この問題もサンクレメンテにおきましては取り上げたい。この基地問題というのはアメリカの軍当局において非常に重大な関心を持っておりますので、そうやすやすと決着になるかどうか、それにつきましてははなはだ大きな困難があろうというふうには考えますが、われわれとしてはわれわれなりに最善を尽くしてみるという決意であることを申し上げておきます。
  35. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの外務大臣の答弁でおわかりだと思いますが、問題は何と申しましてもアメリカ国内においてただいまのような上院においての論議等もかわされておる、そういう際でありますから、この点は私どももたいへん取り組みやすい問題だ、かように思っております。ことにわが国においては、国内において本会議で決議があり、それに対する政府の声明まで、所感、所信まで実は披露しておりますし、しかもアメリカにおけるただいまのような審議等もこの問題には関連を持つわけであります。また私は先ほども申しましたように、アジアの平和がたいへん緊張緩和の方向にいっておる、こういうことをも踏まえて、ただいまの時期に各種の問題について、これは外交ルートで正式に話し合うことが望ましいのだ、かように思っております。事柄は相手がありますし、シビリアンコントロールとは申しましても軍部の意見ももちろん尊重しなければならない、そこらにもなかなか問題があろうと思いますけれども、しかしわれわれは本来の基本的な路線、それにふさわしい状況下にただいま置かれておる、かように思いますので、そういう方向で御注意もありましたからこれと取り組む、かように御了承いただきたいと思います。
  36. 田畑金光

    田畑委員 外務大臣からお答えをいただきたいのでございますが、VOAの問題であります。  私は電波法の特例措置を講じてまで放送の不偏不党、真実及び自立を保障することによって、放送による表現の自由を確保するというこの放送法のたてまえから見ても違反するVOAをこれから五年存続をさせる、存続を認める、しかも合意議事録によりますると、予見されない事情により代替施設が五年の期間に完成しないことが明らかになったときは、五年後も代替施設が完成するまでVOAの継続を許すというこの協定のVOAの問題、やはりこのVOAの性格なり内容等を見ますならば、今後の日中正常化の点から見ましても、私は大きなマイナスだと思うので、この点についても、私はひとつ国民の意思というものをアメリカ政府に伝えて、すみやかに撤去の話し合いをなさるべきだと思うのですが、外務大臣の御所見を承ります。
  37. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 VOAにつきましての交渉は、これは最後までこの返還交渉の過程におきましてもめたと申しますか、決着がつかない。それは田畑さんのおっしゃるように、外国の放送をわが国土において認める、これはわが国の電波統一行政の上の重大なる例外をなすわけであります。わが国としては、これは直ちに撤去してもらいたい、こういう要請だったわけであります。ところが、アメリカといたしますと、VOAは非常に平穏裏に運営をいたしておるわけでありまして、世界各地にこういう施設がありますが、これについて国際社会においてそうとがめられるような状態ではない。沖繩が日本に返るという、そういう際に臨みまして、返還と同時にこれが撤去されるというようなことはとうてい承諾し得ざるのみならず、そういう平和的な施設でありますので、これを長期にわたって沖繩に存置をいたしたい、こういう主張をいたしたわけであります。  しかし、一方において、沖繩返還、これは沖繩県民の待望の事業でありますし、また一億国民もこれをこいねがっておる、早くこれを妥結させなければならぬという要請もあります。そういうようなことを考えまして、とにかく五年という期限を限った。それから、そのVOAの運営におきましても、国際緊張を刺激する、こういうような方向にならないように、わが国もこの放送の運営につきまして関与し得るという仕組みを整えましてこれを許す。しかも、二年後には両国間におきましてこの運営をどうするかという協議をするということまで取りきめまして、これを臨時的、経過的な措置といたしまして許すということにいたしたわけでございますが、協定をまとめる上においてまことにやむを得ざる措置であった、こういうふうに考えておる次第でございます。
  38. 田畑金光

    田畑委員 事前協議の問題について、これは佐藤総理お尋ねをしたいのでございますが、一九六九年十一月二十一日の日米共同声明並びに同じ日のナショナル・プレスクラブにおける佐藤首相の演説で、国民に非常な疑惑を投げかけたのが事前協議の問題であるわけです。この声明を契機に、日米安保条約というものが、日本の平和のため、これが第一義的な使命であったはずでありますが、極東の平和と安全を確保する、これが日米安保条約の第一義的な任務に性格が変わったのではなかろうか、われわれはこういう不安を持つわけであります。  なるほど、共同声明の第八項では、これはいわゆる核兵器の持ち込みを拒否する条項といわれておるわけでありますが、その第八項には「日米安保条約の事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく、」こういうことばが入っておるわけであります。ことに私たちがナショナル・プレスクラブにおける佐藤総理の演説を聞いてみましてがく然としたのは、「特に韓国に対する武力攻撃が発生するようなことがあれば、これは、わが国の安全に重大な影響を及ぼすものであります。従って、万一韓国に対し武力攻撃が発生し、これに対処するため米軍が日本国内の施設・区域を戦闘作戦行動の発進基地として使用しなければならないような事態が生じた場合には、日本政府としては、このような認識に立って、事前協議に対し前向きにかつすみやかに態度を決定する方針であります。」台湾地域についても触れておるわけであります。  この事前協議の問題について、十一月十一日の沖繩返還協定特別委員会で、佐藤総理はわが党の曽祢質問に対し、「事前協議に対し前向きにかつすみやかに態度を決定する」ということばは、誤解を招き、不適当なことばであったということをお認めになっておるわけであります。きのうのこの委員会でも、わが国が危急存亡の非常のときには核兵器を持ち込むこともあり得るような総理発言というものが物議をかもし、野党質問となったわけであります。核兵器の持ち込みの場合は、すべて事前協議において総理は拒否するとお答えになったわけでありますが、これに変わりがないかどうか。拒否するということになりますならば、当然ナショナル・プレスクラブにおける総理の演説内容等については、今回の佐藤ニクソン会談等で、はっきりと誤解を解く機会を見出していただきたい、こう考えておりますが、ひとつ総理所見を承っておきます。
  39. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御要望の点は十分心得て出かけるつもりでございます。
  40. 田畑金光

    田畑委員 外務大臣にお尋ねしますが、沖繩復帰沖繩へのポラリス潜水艦の寄港申し入れがあったときには、どうなさるおつもりか。今日まで本土においては、ポラリス潜水艦は核兵器を搭載しておる、こういうようなことで、ポラリス潜水艦の寄港は事前協議の対象である。そしてまた、事前協議において政府はノー、こういうことを答えておりましたが、今度は沖繩にポラリス潜水艦が寄港する、こういうことになった場合にはどうされますか。
  41. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 本土同様、ノーでございます。
  42. 田畑金光

    田畑委員 そうしますと、日米共同声明第七項の、いわゆる沖繩の施政権の返還は米国が負っておる国際義務の効果的遂行を妨げるものではない、こういうことをはっきり共同声明で約束しておりますが、アメリカは、これに抵触する、こういうことをいってきた場合にはどうされますか。
  43. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いかなる場合におきましても、核兵器の持ち込みに対しましてはノーと言うことを、責任を持って申し上げます。
  44. 田畑金光

    田畑委員 日米安保条約等についても再検討期に入ってきたのではなかろうか、こう私は見ております。これまた春日委員長の訪米を持ち出しますが、安全保障問題についてパッカード国防次官や上下両院議員といろいろ話し合いをいたしましたが、国際情勢の変化に即応する安全保障体制の再検討を米国も真剣に考慮しておるようでありまして、日本国民が米軍の基地と駐留の排除を望むならば、米国としても日本の意思と主権を尊重しなければならないであろう、これは、いわゆるわが党の安保条約の改定に対する、すなわち、常時駐留をやめる、基地の原則的な撤廃を求める、こういうことに対する意見であると思いますが、このような責任ある国防次官が、国民が望むならば日米安保体制についても日本国民の意思と主権を十分尊重しなければならないであろう、このように述べておるわけでございますが、私は、いまのアジアの動きなどを見ますならば、日米安保等についても、その内容等については再検討期に入ったと考えておりますが、この点、総理の御所見を承ります。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 安保体制、いわゆる自動延長の方向に入った。こういうことでございますから、まあ在来の固定的な期間ではございませんが、私は、現状をもってすれば、日米安全保障条約、それはそのまま続けておくべきではないか、かように思っております。しかし、こういう事柄は絶えず検討を要する問題だ、さように思っておりますから、検討しないというわけじゃございません、絶えず検討をしながら、なお日米安保条約、これは必要だ、かように考えております。
  46. 田畑金光

    田畑委員 日米会談の主要議題は、何といっても中国問題だと私は推察いたしております。中国問題は、突き詰めてみますると、結局台湾問題に帰着してくるわけであります。ニクソンが来年二月に訪中する、そのことによって直ちに米華相互援助条約が短期的になくなるであろうということは、およそ考えられぬと思いますが、しかしながら、アジアの地域からの兵力を漸次撤退していくということは、ニクソン・ドクトリンから見ましても当然であり、台湾海峡からの米第七艦隊の引き揚げ、台湾からの地上軍撤退は、ニクソンの訪中後急速に進んでいくのではなかろうか。米中の対話が実現することによって、極東の安全保障体制というものもまた私は変わってくると見るわけであります。政府は、台湾は中国の領土の一部であるという立場をとるようになったわけでありますが、そうしますと、一九六九年の十一月の日米共同声明の中にある台湾条項——韓国条項もそうでありますが、台湾条項等については、私は、これは日米両国とも再検討するのが、利害が共通する場面に入ったのではなかろうか、このように見ておりまするが、この点、総理の御所見を承ります。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ニクソン大統領の訪中、まだ実現しておりませんが、出かけられた際に、これは国際緊張緩和には役立つ、アジア緊張緩和の方向に必ず向かう、こういうことを私どもは強く期待はいたしております。しかしながら、ただいまの情勢でどういう結果が生まれるか、まだ予測の範囲を出ませんから、私はとやかく申し上げることは差し控えさせていただきます。  ところで、ただいま中華人民共和国あり、また国民政府あり、こういう状態は続いておりますので、これが武力的にどうこうというようなことがあっては問題がありますから、ただいま言われるその条項について、私は、たびたび申し上げた、卑近な比喩で申したように、われわれが類焼にかからないように注意はしたい、かように思っております。
  48. 田畑金光

    田畑委員 日米安保条約のいわゆる極東条項についても、もちろん、極東の地域はどこだということになってくると、フィリピン以北だ、こういうお答えでございますが、特に韓国、台湾、これが極東範囲の中の一番大事な地位を占めておるわけでありまするが、この極東の範囲の問題等についても、台湾問題をめぐる動きというものは、従来のような政府の態度なり解釈では、日米安保条約の運用もいろいろ矛盾衝突を来たす場面が予測されると思いますが、この点、ひとつ外務大臣のお考えを承りたいと思う。
  49. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いままでの日米安保条約の対象地域は、フィリピン以北の地域で、台湾、韓国を含む、こういうふうになっておりますが、いま、私は、アジア緊張緩和の空気が出てきておると、非常に喜んでおります。そうしてこの空気に対しましては、これを助成し、かつ固定化する、そういうことになることを期待しておるわけであります。しかし、今日はなおムードの時代であって、あるいは空気の時代であって、固定化をしておらない。そういう現時点において、わが国にとりまして安全保障の立場というものの根底を変えるということはできない、こういうふうに思いますが、しかし、このムードが固定化し、空気が安定するというようなことになりまする際には、おのずからこの対象地域というようなものにつきましても変化が出てくる、これは当然のことである、かように考えます。
  50. 田畑金光

    田畑委員 外務大臣のお答えがどうもあまりにもムード的で、あまりにも空気的で、はっきりつかみどころがないのでございますが、ひとつ腹を据えて、私がいままで指摘した問題等について、日本の将来、国の利益を中心に十分配慮願いたい。これはもちろん総理に強く要望するわけであります。  そこで私、今度は題を変えまして、これはあまり法律的な面で質疑応答するということはどうかと思いますが、この公用地暫定使用法案ですね、これは、この法律が実施されることによって沖繩県民は非常な権利義務関係に影響を受けるわけであります。私は、こういう法律こそ、憲法九十五条にいう、この法律が適用されるならば当然住民投票にまつべき法律である。このように考えますが、法制局長官、御答弁をいただきます。
  51. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 何回となくお尋ねを受けた問題でございますが、いまおっしゃいますように、住民投票に付すべきであるというお気持ちがわからぬわけではございませんけれども、いままでのお尋ねについて申し上げていたことをここで繰り返して申し上げますと、法律は、御承知のとおりに、原則的には、両議院で可決したとき法律になるわけで、その例外的な地方特別法というものが、住民投票がないと成立をしないというのが憲法規定であるわけで、特別法を一般法として制定することが憲法違反であることも当然でありますが、同時に、普通の法律特別法の手続で成立をさせるということも、これはもしも中身を間違えますと憲法違反になるおそれがございます。そこで、わが国法の体系から申しますと、地方自治法規定に明らかでありますように、地方特別法であるかどうか、最終的には、最後の議決をした議長が内閣にそれを通告していわゆる地方特別法の手続が始まるわけでございますから、立法手続過程で最終的に判断をされるのは国会であろうと私は思っております。したがって、私の意見を皆さんにしいるつもりはむろんさらさらございませんが、しかし、九十五条を見てみますと、「一の地方公共団体のみに適用される特別法」となっておりますので、この実体がはたしてそういうものに該当するかどうか、つまり、地方特別法適用対象は地方公共団体そのものでございますので、今度の法律案がそのものに対する規定であると見るのは少し当たっていないのではないかと、実体関係でそう思いますのと、もう一つは、この法律沖繩復帰の前に実は成立することを必要としている法律案でございますが、その事前においては施政権の施行中でございまして、いわば憲法がいまだそこには適用されておらない。したがって、地方特別法という措置をとることもまた不能ではないかというような、手続面と実体面と両方からいいまして、たいへんな疑いを持っております。しかし、これは、最初に申し上げましたとおりに、私どもの疑いでございまして、最終的にこれを御判定なさるのは、もとより国会の側であろうと存じております。
  52. 田畑金光

    田畑委員 最終的には国会がおきめになることというお話でございますが、法制局長官の見解というものもまた、この種問題をどうするかという場合には、大事な一つの要件になってくるわけです。私は法制局長官のお話を聞きますと、地方公共団体の組織、運営、権限に関するもの、そういうものについて憲法九十五条は想定しているのだというお話でございまするが、一体地方自治とは何かということです。住民自治、団体自治とは一体何であるかということですね。それは、結局、住民のしあわせな生活の諸条件を確保するための手段であり方法だと私は思うのです。一体中央集権でいくのがいいのか、地方自治を中心としていくのがいいのか、そのよりよい方法として、地方自治が住民の福祉を増進することなんだ、こういうことだと思うのです。また同時に、憲法のいわゆる九十五条の解釈としてとっておる地方公共団体の組織、権限、運営という問題は、それはあくまでもその住民の幸福を増進するための組織、権限、運営であって、言うならば、それはうらはらの関係だと私は言いたいわけです。ことに、今回の公用地暫定使用法案のように、沖繩の住民にとって本土のそれに比べると著しく差別があるわけです。先ほどもちょっと触れましたが、地位協定に基づく特別措置法の場合は、暫定使用期間は六カ月、この法律案は五年、しかも、土地使用手続も、今回の法律は至って簡単であります。憲法十四条や憲法三十一条の精神から見ても著しくこれははずれていはしないか、こういう疑問を持つわけであります。そういうことを考えてみますと、このような至大な影響を及ぼすこの法律が、なぜ住民投票を待たないでもやれるのか。地方公共団体の組織、権限、運営に関する法律の場合が憲法九十五条の予定する事例だというお話国際観光温泉文化都市建設法とか、あるいは国際港都建設法であるとか、こういうような法律ですね。これは憲法九十五条によって住民投票を必要とするけれども、このようなほんとうにその地域に生活する住民の権利義務関係に至大な影響をもたらす法律を、憲法九十五条の住民投票の対象でないというのは、いかにもこれは形式的であり、観念的であり、法律が死んでおる、法律の解釈が生きていない、私はこう申し上げたいです。この点、ひとつ御所見を承りたい。  同時に、なるほど、法制局長官からお話がございましたように、現在の沖繩が、日本国憲法にいう地方公共団体、すなわち沖繩県でないのは当然であります。施政権がアメリカにある以上、あたりまえのことであると思います。だからこそ、本土復帰、日本国憲法への復帰がいま悲願として今日までこぎつけてまいったわけであります。沖繩本土復帰を前にして、沖繩県民に至大な影響を与える法案審議の際に、現在の沖繩沖繩県ではないから、住民投票は不要かつ不能だという考え方は、沖繩本土復帰というその本質を無視したものだ、私はこう思うのですね。憲法九十五条が住民投票を要求しておるのは、この法律が成立したということ、直ちに住民の権利義務に影響があるということではないと思うのです。この法律が成立をして適用された結果、他の地方公共団体の住民の権利義務と異なる影響を生ずるという点に私は着眼を置くべきだ、こう思うのですね。だから、憲法九十五条の考えておるこの対象時点というものは、法律が成立した時点——それはなるほど、現在成立すれば、沖繩には憲法も適用されない、日本国法も適用されていないことは当然でありますが、適用の時点、私はこういうことだと思うのですね。その適用の時点は、沖繩本土復帰のその日の時点でございまするから、復帰のときにこの法案は当然憲法上住民投票が必要とされる、こう見るのが、私は、憲法九十五条の正当な解釈ではなかろうか、こう考えるのです。この点、法制局長官の見解をいま一度承りたいと思う。
  53. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 御所見は、その趣旨においてよくわかるような気がいたします、一般論といたしまして。ただ、あるいは誤解がおありになるといけないと思いますので、九十五条の関係について一応憲法のたてまえを申しますと、この法律の成立自身が住民投票に実はかかっておるわけで、地方特別法というものは、国会で議決しただけでは成立をしないで、住民投票があったときに、その過半数の同意を得たときに初めて成立することになっておることは、たぶん御存じのことだと思いますが、そういう法律の成立手続としては、一般から比べれば非常に異例のものでございます。したがって、これについてはそうやすやすとお話を申し上げるわけにいかぬものですから、私も私の自説を押し通そうという気はさらさらございませんけれども、そういうことを、かなり重大な問題でございますので、私は所見を遠慮なく申し上げさせていただきたいのでありますが、いまおっしゃいましたような地方住民に対する配慮、これは何も地方特別法に限ったことではなくして、法律一般において考慮をしなければならぬ問題であることは、申すまでもないことでございます。そういう意味で、おっしゃることはよくわかるのでありますが、しかし、地方特別法は、そのうちでも、法律の適用対象がある特定の地方公共団体だけである、適用対象がすなわち地方公共団体であるもの。先ほどおあげになった例、これはすべて議員立法であったように思いますが、あるいは広島市、あるいは長崎市、あるいは別府市等の特定の公共団体を押えての法律でございますので、これは住民投票に付されたのは、私は適切なる措置であり、憲法の要求に従われたものであろうと思いますが、今度の公用地の取得の暫定措置法、これは実は沖繩県あるいは沖繩の市町村というものではなくして、沖繩の区域に関係するものであります。それはむろん、沖繩返還されるから沖繩の区域が問題になるわけでありますが、沖繩地方公共団体そのものを適用対象としておるものではございませんために、実体的に九十五条の要件には入らぬのではあるまいか。  それからもう一つは、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、この特別法というのは、住民投票があって後に初めて成立する法律でございますので、施政権返還前にそういう手続ができればいざ知らず、そうでなければ、そういう措置をとるすべもないであろう。これはむろん実体のほうが先立つ問題でございますが、あわせて手続面も申し上げれば、そういうことになる。率直に私の考えを申し述べさせていただいたわけであります。
  54. 田畑金光

    田畑委員 これも法制局長官にお尋ねいたしますが、公用地等使用法案第二条第二項の告示は、行政処分であり、行政事件訴訟の抗告訴訟の対象になるものと考えますが、それでよろしゅうございますか。
  55. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 これも前に御答弁した覚えがありますが、仰せのとおり、この二条二項の告示は、行政不服審査法、行政事件訴訟法の異議申し立てないしは抗告訴訟の対象になることは当然であろうと考えております。
  56. 田畑金光

    田畑委員 告示が行政処分であり、行政救済として抗告訴訟の対象になるということは正当な解釈だ、こう思うのです。ところで、行政事件訴訟法第十一条は、処分庁を被告とすることを定め、第十二条を見ますると、その処分庁所在地の裁判所に抗告訴訟すなわち取消訴訟を提起しなければならない、こういうことに規定しております。  そこで、この法律によれば、沖繩の地主の方が告示を受けてこれを不服として訴訟をする、こういうようなことになってきますと、この法案の告示権者は、防衛施設庁長官、厚生大臣、通産大臣、運輸大臣、海上保安庁長官、建設大臣、いずれも中央官庁ばかりで、東京なんですね。このことは、告示を不服として行政訴訟を起こそうとしても、それは三月以内に東京の地方裁判所へ訴えを提起するということになるわけです。ところで、アメリカの施政権下の沖繩の人々がわざわざ東京の地方裁判所まで訴訟を起こすためにやってこなければならない。一体それで法的な救済というのができるのか、できないのかということですね。これはできないと思うのです。これこそ、いまの沖繩人方には憲法国内法も適用されておりませんから、行政事件訴訟法でもって、告示に不服がある、これを行政訴訟で争おうとしても、実際上はできないのですね。形式的に見ると、確かに法的な救済手続もありますが、実体はないわけです。沖繩人方の権利義務というものを不当にこれは侵害しておる。この手続面の一事をとらえても、今回の公用地等暫定使用法案というものは、沖繩人方にとっては非常な権利の侵害である、こういうことですね。でありますから、私は、この法案については、総理にも御希望申し上げたが、修正をみずからはかることが大事であり、同時にまた、憲法九十五条の解釈などというものを、血の通わないような解釈のしかたでは済まされない、こう思うのですね。長官の見解を承っておきます。
  57. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいまのお尋ね、きわめてごもっともなお尋ねだと思います。行政事件訴訟法の十二条で、御指摘の条文でありますが、「行政庁の所在地の裁判所の管轄に属する。」したがって、当面、東京地方裁判所になりますが、これは、実は施政権の返還という特に異例の事象に関連することで、やむを得ない面があることもおわかりいただけると思いますが、しかし、返還になりますと、当然沖繩県には裁判所が設けられまして、十二条の二項によって、沖繩の裁判所にもまたこれは関係を持つ。もしも東京にあれしておれば、それが移送されるというような関係もございまして、現地住民の実際上の措置においても支障が生じないような運営は、むろんある程度できると考えておりますが、いま申し上げましたように、さしあたりは東京の地方裁判所ということになることは、仰せのとおりでございます。
  58. 田畑金光

    田畑委員 時間も来たようでありますから、私、この問題についてこれ以上深く触れませんが、私は、総理にとくと頭に置いていただきたいことは、公用地暫定使用法案については、手続を簡略にしておるという点から私はいまのような問題を提起いたしましたが、これは沖繩の住民にとってはいろいろ権利義務関係の面において大きな侵害を受けておるわけで、したがって、この法律の内容なり運用については十二分に配慮していただきたい、こう考えるわけであります。  それで、まだたくさん質問はございますが、山中総務長官に最後にお尋ねをしておきたいのです。これは大蔵大臣にも関係することでございますが、一括して申し上げます。  いま本土政府と琉球政府の間で、沖繩復帰対策費をめぐり、円建てにするか、ドル建てにするか、こういうことで論争しておるやに聞いております。本年七月から来年六月まで、一般会計で四百二十七億、財政投融資で百四十億にのぼっておりますが、琉球政府としては、一ドル三百六十円のレートで換算して予算を組んでおるわけであります。変動相場制に移行する前に琉球政府の受け取った一般会計予算は一七・二%で、あとの分は変動相場制以降、こういうことになって、ドル建てにするか、円建てにするかということで、沖繩の琉球政府としてもこれはたいへんな問題になっておるようであります。ドル・ショックで物価高、特に生活物資の値上がりを押えるため、こういうことで、生活物資価格安定資金として十億円、これを日本政府は補助金として出しておりますが、この十億では、四十四品目の生活物資を対象にする程度にすぎない。山中長官は、四百四十品目は必要であろう、こういうようなことをいつぞや申されておりましたが、そういうような状況にある琉球政府であるわけです。ことにまた、物価高というものは事業費のコスト高を招いておるわけで……
  59. 床次徳二

    床次委員長 田畑君、簡潔にどうぞ。
  60. 田畑金光

    田畑委員 やはりこの際は琉球政府の言い分をお聞きになったほうがいいのじゃないか、こう思うのですね。ことに、私、昭和四十六会計年度における琉球諸島に対する援助金に関する覚書を見ますと、「援助金は日本国通貨をもって供与するものとす。」こうなっておるのですね。私は、この覚書ではっきりしているのではないか、こう思うのですね。大蔵大臣、ちょっと居眠りなさっておるようだが、この問題についてはやはり早く解決してあげたらどうか、こう思うのです。これが一つ。  それから第二の質問としては、これは、私、現地公聴会等を聞いて非常に痛感したわけでありまするが、沖繩開発の問題です。琉球政府復帰措置に関する建議書を見ますると、開発の基本理念として、第一には県民の福祉の向上、第二には自治権の尊重、第三には平和で豊かな県づくり、これをうたっております。したがって、沖繩開発三法の運用も、この理念の上に立って運用されるべきだと思うのです。あくまでも自治権の尊重、住民意思を尊重する、こういう立場から見ましたとき、沖繩振興開発特別措置法により、開発計画などは沖繩振興開発審議会の意見を聞く、こういうことになっておるわけでありまするが、この沖繩振興開発審議会の構成の問題等ですね。二十五名の委員の中で、十三名は関係役所の職員、沖繩から出る委員はわずか六名。これは一例でございまするが、やはり開発審議会の構成等を見ても現地の人は非常な不安を持つわけで、復帰したあとの沖繩の今後の開発、今後の経済再建等については住民の意思を尊重する、こういうことを強く期待し要望しておるわけです。そういう点から見ました場合に、いま申し上げた点等も含め、ひとつ十分現地の声に一そうこたえていただきたいと思いますが、総務長官の所見を伺って、私の質問を終わることにいたします。
  61. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ただいまの問題は、すでに話は片づきました。この問題がなぜ起こったかと申しますと、先般、十億、並びに学生の分の一億を含めて十一億の予備費を支出いたしました際に、それをさらに四百四十品目に、すなわち、生活関連物資すべてをカバーできる品目に広げること、並びにこれを復帰時点までずっと続けていくこと等がその後追加になったわけであります。そのことについて、もちろん、大蔵当局としてはいろいろ議論はありましたが、その方針を了承するにあたって、完全に貿易物資に対する差損を補てんしろと言われるならば、いわゆる円建てで送金いたしました場合の現地におけるドルでの発注、ドルの執行による事情から考えて、差益が生ずることは自明の理である。したがって、本土側が完全に復帰までめんどう見ろと言われるならば、本土のほうもこれをドル払いで、現実に必要な金として支払っていったらどうかという議論があったことは事実でありますし、私も、財政当局の意見として、一方においては数十億に達するであろう金を出さなければなりませんし、そうすると、やはり差益も四十億くらいになると思われますので、その意見が出てくることはあえて非難をするものではありません。しかしながら、ただいまの覚書にしても、あるいは日米琉三者の毎年度の予算の決定の会議におきましても、やはりドル、円両方の表示をしながら決定をいたしておるものであり、また復帰直前において、その他、目に見えない状態において、四百四十品目の措置を行なったからといって、あながち本土と同様の物資の調達状況にあるとは言えない沖繩状態にございます。したがって、この問題については、現金で送付するという今日までの形式をとることにいたしました。なお、それを送るについて、差益が生ずることは琉球政府も認めるわけであります。これを本土政府の了解なしに、一方的に自分たちの必要なと思われる金に自由に使いたいという御希望については、相談の結果、総理府とよく相談をして、必要なものであったら使おうではないかということになりました。したがって、すでに琉球政府の屋良主席とも電話等で連絡をいたしつつ、事務当局の間にも連絡をとりまして、本土政府と琉球政府とその問題は完全に合意し、したがって、結論としては、本土からの送金というものは、若干そのことで遅延をいたしておりましたけれども、先週末でありますが、千七百万ドル、さらに来週の初めに、要求されております二千八百万ドルとの差額約一千百万ドルを送るように話がついたところでございます。したがって、この問題でお騒がせをしたことは、たいへん私も申しわけないと思いますが、現実は円満な解決を見ておりますので、御安心を賜わりたいと思います。  それから琉球政府の建議書の、開発にあたってのいわゆる三原則ともいうべきものは、私どもも何ら異存はございません。また、沖繩の今後の、復帰後の県知事、市町村長というものが、この開発三法の施行されたことによって、本土の府県知事であり市町村長であるならば本来行使できる権能が、取り上げられたりあるいは押えられたりしておる例は一つもございません。すべて、国が直轄で行なう場合等であっても、それは県あるいは港湾管理者等、あるいは市町村長等が申請したときにのみ行なうわけでありますので、その点は私どもも十分配慮をしておるつもりであります。  なお、審議会の構成については、いままでの審議会に比べて政府委員の数が多うございます。これは、それだけ、十三名に達する各省庁に関係を持つ広範な、いわばほとんどの役所が、関係のない役所はないと言っていいほど関係を持っておる。もちろん、本土法令の全部が沖繩にかかるわけでありますから、極端に言うと全役所が関係を持つわけでありますけれども、それを十三人にせざるを得ませんでした。したがって、沖繩側から、本来は県知事と県議会議長とが出ればそれでいいのでありますが、さらに市町村長代表を二名、市町村議会議長の代表を二名出しておりまするし、また学識経験者六名の中にも、沖繩側から見てこの人が一番いいと思われるような人をなるべく多く任命してまいるつもりであります。したがって、今日の時点においては、私どもは十分に配慮をしてまいりましたが、しかしながら、関係する役所が多かったために、二十五名の定員の過半数を役人が占めることになるという点について、配慮はしておりますけれども、御批判の存在するところであろうとは思っております。
  62. 床次徳二

    床次委員長 門司亮君から関連質疑の申し出があります。この際、これを許します。門司亮君。
  63. 門司亮

    ○門司委員 いまの田畑委員と高辻法制局長官との質疑応答中の九十五条の解釈でちょっとはっきりしておきたい点と、それから法制局あるいは政府にも考えてもらいたい点がありますので、そのことだけひとつ申し上げておきたいと思います。  それは、高辻法制局長官の答弁は、憲法九十五条は、一(いつ)のと書いてあるのか、あるいはこれを(ひと)つと読むかということが非常に大きな問題であります。法制局長官は、これを固定した一(ひと)つの地域における特別法だというように解釈をされているようにいま聞こえております。これの解釈はおかしいのであって、これは二つあるのです。一(いつ)と解釈するか、一(ひと)つと解釈するかということで、この憲法の基本的の解釈に大きな食い違いが出てくる。ところが、いままでこの九十五条を適用した特別法の中には二つ体系があるのですね。一つは、いま長官が言った、たとえば佐世保なら佐世保というような——佐世保は別でありまするが、例の京都であるとか広島であるとかいうようなのには、みんな一つずつ名前がくっついているのですね。同じ国際港都といっても、神戸の国際港都、横浜の国際港都。国際観光といっても、京都のというように、頭にみんなくっついている。ところが、日本の中で一つくっついていないのがあるのですね。旧軍港市の転換法というのは、四つの旧軍港の都市がこれに含まれているということです。これはこの憲法の解釈上非常にややっこしいところでありまして、一(いつ)のと解釈すれば一(ひと)つずつだ、一(ひと)つのと解釈する、いわゆる法を一つに解釈するのか、地域を一つに解釈するのかということで、憲法九十五条の解釈は非常に違う。そうして、これはいまだにまだ学者の中で二つの説があってはっきりしていないという。ところが、国会では、いま申し上げましたように二つの解釈をとって、二様のことをいままでやってきているわけですね。これは田畑君の持っているこれにはっきりそうなっているのですね。  そうなりますと、この公用地法案というのが同時に地方の自治体の組織、運営にどれだけ影響するかということになりますと、御承知のように、嘉手納のようなところは約八割を占められて、それからコザにおいても七割を占められておるのですね。こういうところは、何といっても、このこと自体が非常に大きな、地方の自治体の組織、運営に障害があるということは事実であります。ところが、これも、おのおのの土地の使用というのを地主がある程度において承諾すればそれでいいじゃないかという議論も成り立とうと私は思う。しかし、その場合は、こうした法律によらざる個々の問題である。ところが、今度の場合は、この法律を頭からかぶせてしまって、七割あるいは八割というようなばかばかしい大きな面積を五年間もいやおうなしに使っていこうとする行き方は、法の内容の個人の権利をどうするかということを離れて、地方の自治体に及ぼす影響というのは、組織、運営については非常に大きな影響があるということである。そうすると、これがやはり憲法九十二条にいう、いわゆる組織、運営については、これを法律にまかせようという住民自治のたてまえからいくと、非常に大きな関連性を持った問題があろうかと私は思う。この辺の解釈を法制局はどうしているのですか。私はこれはその辺をもう少し明確にしておいてもらわぬとわからぬのです。
  64. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 地方自治制度、憲法を含めましてごたんのうな方からの御質疑で、勢い中身もこまかくなってまいりましたが、まず、最初に御質問の中の、「一の地方公共團體」という「一」とは一体何であるかということでございますが、これは御説のとおりに、いろいろ学者は論じているようでございます。しかし、私どもは私どもなりに、これは特定のというふうに解釈をいたしておりまして、その特定の地方公共団体は、単数であろうと複数であろうと、それは問わない。したがって、例におあげになりましたような佐世保にせよ、一つ一つ地方公共団体の名前を冠した法律もまた、その成立に地方住民の投票を要したという取り扱い、それから旧軍港市などは、まさに御指摘のとおりに幾つかの市が入っております。それは、やはりいま申したように、私どもはそれが適当だと考えておりますが、要するに、法律の中に、それは幾つあろうと、特定の地方公共団体を適用対象とするものであれば、やはり地方特別法と考えるべきであろうという考えを持っております。法制局はどういう考えを持っているかといえば、そのとおりでございます。  それからもう一つ、今回のいわゆる公用地暫定使用法案につきまして、確かに地方公共団体の運営に関係があるのではないか、こうおっしゃるわけでございまして、それもある程度わかるような気がいたしますが、およそ法律というものは、やはり地方公共団体ごとに幾らかその法律による事務の繁閑というものは出てくるものもある、これはそのとおりだと思いますが、今回の場合は、沖繩の施政権が返還されるものですから、その結果として大きな区域についての問題であることは間違いはございませんが、先ほど申し上げたことを繰り返すことになりますが、いわゆる地方特別法としての適用対象は地方公共団体そのものであると解しておりますので、今回の暫定使用法案を、沖繩県あるいは沖繩県の市町村、それが適用対象になっているものとはどうしても思えませんので、私が先ほど申し上げたようなことを申し上げたわけであります。その背景には、やはり法律は、国会の両議院が可決したとき法律となる、その例外として、地方住民の過半数の同意がなければ成立しないというようなものでありますために、やはりそこはかなり厳格に解すべきではなかろうかというような心理が働いていることも事実でありますが、しかし、先ほども申し上げましたように、これは最終的には、やはり国会が立法過程において最終的におきめになることであると思いますので、一応所見を申し述べさせていただくだけにとどめざるを得ない、それはもうそのとおりでございますが、一応以上で……。
  65. 門司亮

    ○門司委員 念のために私は言っておきますけれども、いまの法制局長官の答弁は少しおかしいのですよ。旧軍港の場合は、これはどういうことになっておるかというと、あれは国有地なんですね。これの処分について、いわゆる都市計画との関連がございますので、一応、広範な地域を軍港として処理しておったことのために、地方の自治体にその処理関係があるのでこれをまかせておるわけであります。そうすると、今度の場合も同じことなんですね。地域の七割、八割というものをこういう公用地として法律で取られてしまうということになりますと、そこからくる問題は一体どういうふうに地方の公共団体に影響するかということですね。これは旧軍港の処置とうらはらの問題なんですね。旧軍港のときは、たくさんの土地がそっちに返されてくる、これの処置については、旧軍港でよろしく処置をしなさいといわれ、みんな無償でやったわけじゃないのですからね。いわゆる都市計画との関係でただ処分関係だけを向こうにゆだねたのであって、所有権まで渡したわけではない。しかし、今度の場合はこれを取り上げるほうであって、片一方は渡したほうである。ただそこの違いだけであって、私は、やはり旧軍港の転換法にとった処置と同じ処置がとらるべきだという解釈でいいのではないか。同時に、憲法が適用されてない、法律が適用されてないから、そんなものをいまこしらえられないとあなたは言うかもしれないけれども、しかし、返ってきた瞬間から、その手続をする時間というものは二カ月もあればたくさんですね。投票するだけですから。それを五年もむちゃくちゃにだまって、住民の意思を問わないで、国が七割の土地を占有してしまおうなんというのは——まあ占有ということばはどうかと思いますけれども、占用してしまおうというような行き方については、やはり憲法の九十五条にいささか抵触することがあるということだけは私ははっきり申し上げておきますから……。
  66. 床次徳二

    床次委員長 午後一時から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五分休憩      ————◇—————    午後一時十六分開議
  67. 床次徳二

    床次委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、質疑者に申し上げます。本日は、質疑者多数でありますので、理事会の申し合わせにより、一人一時間半となっておりますので、時間は厳守されるようお願いいたします。また、補足質疑につきましては、常識的な時間でお願いいたします。  次に、政府側に申し上げますが、答弁はなるべく簡潔にお願いいたします。  それでは、質疑を続行いたします。川俣健二郎君。
  68. 川俣健二郎

    ○川俣委員 委員長が、冒頭、質問者に時間の励行等御注意ありましたが、委員会の運営上、政府のほうも少し約束の時間を守っていただきたい。その点を委員長委員会全体の運営を考えてひとつ運んでいただきたいと思います。  そこで、佐藤総理に早々お伺いする前に、現地公聴会も東京公聴会も終わって、たいがいの声という声を私たちはお互いに聞きました。そこで、この辺でもう一度、表面的に出てきた声というもの、つまり世論というものは、どういう考え方を沖繩の人が出しておるか、これをまず私もかみしめるため、この世論調査を見ました。というのは、この国会が始まる前の夏の沖繩での調査をちょっと抜粋して読んでみたいと思います。これは無作為二段抽出法で、かなりの人員からとっておりますから、沖繩百万県民のまあまあの統計数字と思っております。  そこで、第一番目に、「今度の日米間で調印された返還協定について印象はいかがですか」それに対して、「どちらかというと不満である」が四七・六%、「どちらかというと満足である」が九・四%。二番目に、「いま日本政府作成している復帰要綱についてあなたはどうお感じになっていますか」、「沖繩の要望が受け入れられている」一・二%、「受け入れられていない」「一方的に処理されておる」二つを足すと六〇%になっております。第三番目に、「日本復帰を控え何らかの不安を感ずるか」、「感じない」一六・四%、「感ずる」六四・八%。それから、私の登壇の前にかなり長い間いろいろと論議されてきた核兵器について、これは私の意見じゃなくて世論でございます。「核兵器は撤去されると思う」が二三・八%、「一たん撤去されても事あるときには持ち込まれるだろう」「撤去されないと思う」が六四%。これは沖繩の世論でございます。そこで、最後ですが、「復帰の日取りがまだきまっていないが、あなたはいつを希望しますか」、日取りをきめて答えたのが三四・六%、「日にちよりも復帰の内容だよ」これが三六・二%で、ここです、問題は。次に、「佐藤内閣を支持しますか、しませんか」、これはあまり質問関係ありませんから略します。  そこで、協定特別委員会、この当特別委員会等を通じて私が聞いておった中で、佐藤総理が名せりふをつくるのには私はいつも感心するわけですが、特に、あたたかく一日も早く迎えようではないかという答弁、これは非常に私は気に入りました。そこで、一体、百万県民をあたたかく迎えるということは、まさか単にニクソンから佐藤総理に施政権が移ることじゃないし、日本へ施政権が移ることだけで事足りないわけでございますから、問題は内容だよという、不安でかなわぬという圧倒的な世論調査の結果を考えますと、やはりおまんまをどうやって食べるのだろうかということに結びつくだろうと思います。  そこで、もう一度佐藤総理から、こういうような世論のこともあるし、あたたかく迎えるというお気持ちをまず披瀝していただきたいと思うのでございます。
  69. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 川俣君にお答えをいたします。  いままで、戦中戦後を通じての施政権が日本に返ろうとしている、この際いろいろの不安があるだろう、この点は私も率直に認めます。しかし、その不安が、復帰反対だ、そういう形であらわれるか、復帰は希望するが、もっとそういう点についてわれわれの思いやりをしてくれろ、こういう形でただいまのような世論調査の結果が出ているか、そこが問題だろうと私は思います。先ほどのお話を伺っておると、いかにも復帰反対であるかのように聞き取れる、そういうような数字のパーセンテージでございますが、私はそうではないだろうと思う。やはり復帰はしたい、だが、もっと本土はわれわれの立場について深い理解を持ってしかるべきではないか、かように言っているのではないだろうかと思います。私は、さように考えると、あたたかく迎えるということは、もっと沖繩同胞の心を心とするという、そういう気持ちにならないと、真のあたたかく迎えることにならない、かように思いますので、そういう意味で、皆さん方の御審議もそこに問題の焦点が合わされている、かように思っておる次第でございます。
  70. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、私を含めて、社会党はもちろんですが、復帰反対だという考え方は毛頭ないということをまず受けとめてほしいと思います。いまの世論調査は、一体復帰したあとはどうなるだろうかということの世論が注目する価値があるわけです。何も、沖繩復帰というのは、ちょうちん行列をやったり花火を上げたり、佐藤総理を歴史の一ページに残すということではないと思います。  そこで、総理大臣に伺いたいのは、いろいろと形が変わってまいります、日本の本土法に移すわけですから。そこで、大体の総理の、大まかな数字でよろしいわけですが、復帰することによって仕事が変わってまいります。変わらされる職場があります。そこで大きく取り上げられるのは軍関係の労働者だと思います。この軍関係の労働者はさておいて、それは全然除外して、一体、一般企業が、あるいはその他が、大体どのくらい復帰することによって失業するだろうか、端的に言うと、おまんまを食う職場がなくなるだろうかということを、総理に、これから担当大臣に伺う前に、大体の大まかな感じだけでけっこうですから、お知らせ願いたいと思います。
  71. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現状から判断し、また、復帰の際にどういうことになるか、そういうことをあわせて考えますと、非常な失業者がたくさん出ることは私ども避けなければならない。いま川俣君が言われるように、軍関係は別だと言われるけれども、ただいままでのところは軍基地に依存している経済だ、かような表現までされております。したがいまして、私は、第一種にしても第二種にしても、そういうような関係の業種が非常に多い、しかし、これはもう今日から切りかわりつつある、かように考うべきだろうと思いますし、また、非常な打撃を与えないためにも特別な退職金制度なども考えて、そうして路頭に迷うことのないような処置をとろうというので、まあ軍関係にいたしましても七千五百万ドルが特にそういう点に振り向けられる、こういうような一応の用意がされております。  また、その他の点においても、ずいぶん、いま、観光産業だ、こういうことがいわれておりますが、その方向に向けられるべきものも、この軍基地産業、そのうちにも多分にあるだろう、かように思いますので、私は、非常な大きなもの、かようには考えなくてよろしいのではないか。まだ私ども十分の用意はいたしておりませんし、また、ただいまのような点で私自身認識を欠いておる点がある、かようなおしかりを受けるかわかりませんが、私は、あまり変化を及ぼさないように、変化が最も起こるであろうというその部分についての対策は一応立てておる、かように御了承願います。
  72. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私は、決して総理大臣をおしかりなんということじゃないと思います。特にこの問題は、私も大体軍関係の労働者がかなり動きがあるだろう、失業も出るだろうというように考えていました。そこで、いま総理大臣がおっしゃるには、まだ十分に用意していない云々ということがあった。これだと思うのですよ。かなり政府当局はこれを急いでやろうとしておる。ところが、まだ用意されてないで、それぞれの職場で労使の中で交渉を進められてまだ全然らちがあかない、こういう段階で調印だ、施政権返還だというときには、たまったものじゃないのは労働者なんです。産業なんです。たいした大きな産業ございませんからね。  そこで、それじゃ軍関係以外の労働者が大体どのくらいいるだろうかということを、私も一緒に聞きたいと思います。労働大臣、どのくらいの失業労働者というものを考えて具体策を考えておられるのか。
  73. 原健三郎

    ○原国務大臣 ただいま総理大臣からお答えもありましたように、われわれとしては、沖繩振興開発法によって、できるだけ離職者が出ないように万般の手配をいま進めておるところであります。かし、基地の縮小その他法制上の変化等によりまして、若干の離職者がやむを得ず一時的に出るのではないかと思っております。それで、いろいろ見方もございますし、軍関係及びその他において離職者が何人出るかということをいま労働省で調べておりますが、なかなか的確に、どんぴしゃりの数字を出すところまでいっておりません。ただ、出ないようにやる、もし万一出たときには、職業紹介あるいは職業訓練その他において決して御迷惑を及ぼさないように万般の手配をやる、こういうようにいま準備を進めておるところでございます。
  74. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そういうことじゃ百万県民の人たちは満足できないと思うのですよ。不安だと思うのです。いいですか。復帰とか調印だとかは、これはむしろ政治的な問題なんです。復帰することによってなくなるという会社が出てくるわけでしょう。そういうものをまだ具体的に数字をつかんでないというような担当大臣のお話だったら——大体仕事を進めておるというお話であれば、大体どの程度進めておるか、もう少し披瀝してくださいよ。
  75. 原健三郎

    ○原国務大臣 大体となりますと、あまり大ざっぱではいけませんし、的確にというと、これがなかなか把握いたせない。政府委員から答弁させます。
  76. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはいろいろな角度からの見方があると思いますが、本土の法令等の適用によって、たとえば、典型的なものはたばこ製造業、これは六百一名とはっきりわかっておるわけでありますが、そのほかにも製塩、通関等が同じような制度でもって変わります。それによって約一千名近くの人たちが、一ぺんは形の上でやめなければならない。もちろん、専売公社等のほうは再雇用等について考えているようでありますけれども、しかし、全員をカバーできるところまではまだ計画は立っていないということでありますから、そういうようにつかめるものと、たとえば、基地がなくなる、あるいは米軍が引き揚げることによって、直接には軍労務者の一種、二種あるいは四種等に関係があるわけですけれども、間接的にその周辺で——典型的な例は、那覇の空港の飛行中隊がいなくなったときにランドリー業者の失業が出たというようなこと等が示しますように、その周辺の基地依存企業というものが——Aサインバー等も入るわけでありますが、そういうもの等がやはり非常なさびれ方をする、こういうようなこと等は間接的にやはり考えていかなければなりませんので、労働者対策としては、手帳を発給して各種の手当を支給すると同時に、転業等については、それらのあらゆる人たちが対象になるような配慮をして、振興開発金融公庫の融資対象にするというつもりでおるわけでございます。
  77. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ、いま具体的な例が出されたから、それをもう少し聞きたいのですけれども、たばこ産業の労働者ということになると、いま民間でやっているはずです。今度はそれこそ政府直轄で、財政専売の形でやるのだろうと思います。  では専売公社に伺いたいのですが、どういう構想で現地を行政指導しようとするのか、もう少し伺いたいと思います。
  78. 北島武雄

    ○北島説明員 先ほど総務長官からお答えがございましたように、現在たばこ製造三社に勤務している方々が六百一名ございます。この方々に対しましては、現在の製造業者が他に御事業も御計画のようにも承っております。その方面にいらっしゃる方もございましょうし、あるいはまた、この際に退職したいという方もおありかと存じますが、そういう方々のためには手厚い退職手当を用意するのは当然であろうか、こう考えまして、一応予算的には、現在実施しております塩田業者の廃止に伴う従業員に対する退職手当と同一の基準によってお手当てできるよう予算の要求をいたしております。それから、現在の職員の方々で、出先の専売公社の機関に御勤務なさりたいという方もありましょう。そのほうにはできるだけお引き受けいたしたい。それから現地の工場にどうしてもおつとめになりたい、こういう方もございましょうから、その方々のために、一応百五十人程度の工場が適当であろうかと想定いたしております。なお、本土に御就職希望の方々に対しましては、できるだけお引き受けする、こういうつもりでおるわけであります。
  79. 川俣健二郎

    ○川俣委員 一例をあげても六百何人いるということなんですが、総裁、退職手当を考えるとか、あるいは会社に対する補償金を考えるとかってなぜ考えるの。たばこ産業の生産の蓄積があるわけでしょう。技術の蓄積があるわけでしょう。それを何で専売公社の直轄でやろうという考え方を持たないの。大体それからふに落ちないよ。
  80. 北島武雄

    ○北島説明員 現在沖繩の島内におきますたばこの需要でございますが、三社の製品の分が約十四億本でございます。この程度のことは、かりに本土といたしますと十分供給の余力があるわけでございますが、従業員対策等考えまして、現地沖繩の方々のお吸いになるたばこの量程度のものは、少なくとも工場を置いたほうがいいのではないか、置かざるを得ないのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  81. 川俣健二郎

    ○川俣委員 総理大臣はじめ伺っていると思いますけれども沖繩の県民の消費量がこれだけだから、これだけの工場がいいのだという答弁ですよ。そんな話はあるかな。秋田は米をつくって東京はつくらないのですよ。そういう考え方で沖繩というものを行政していくという考え方ですか。いいですか。沖繩にたばこ工場があるのでしょう。葉たばこもいいのでしょう。労働者もいるのでしょう。蓄積があるのでしょう。しかもこれからたばこ産業をやっていきたいといっているのでしょう。そういう考え方を——これは総裁に伺うのはどうかと思いますが、大蔵大臣、いかがですか、この考え方は。閣議でどのように——要綱には出ておりますけれども、これからのたばこ産業を沖繩でどうするかという考え方は、どういう方向を出しておりますか。
  82. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 きのう総務長官からお答えになりましたように、現地のたばこ会社の希望もございまして、長い間かかって現地のたばこ会社の処理がきまったところでございますので、それに伴って今度は労務者の処置をどうするかという問題から来ますと一部は本土で希望者は収容すると同時に、いま公社の総裁お話しになりましたように、能力としては、沖繩に工場を置く必要は、本土の専売公社としては実際にはない。ないが、しかし、せっかくいままであったことでございますので、百五十人を収容する程度の工場は、能力の必要はないとはいうけれども現地に置くことが、職を与える対策の上からもきわめて適切であろう。しかし、大きい規模は、この際いろいろな角度から検討して適当でないということで、その程度の規模なら現地に置くことがいいというふうにきまった次第でございます。
  83. 川俣健二郎

    ○川俣委員 やはり総理はあたたかい気持ちで迎えてないんでしょう。いいですか。現地の会社はやめるという希望があった、こういうのですよ。おそらく何かを期待しているからやめるかもしれぬけれども、労働者はどうなるのよ。そうでしょう。これはあたたかく迎えるということにはならないと思いますよ。それから、百五十人ぐらいという目安ということはどこから出てきたの。六百人がほとんど希望しておるのでしょう。どこから出てきたのか。それから、いままでのような民間会社で、こう言っちゃ悪いけれども、家内工業の延長のようなたばこ産業だったと思います。琉煙にしろ、オリエンタルにしろ、沖繩煙草ですか、この三社だと思いますで、この三社とも大体似たり寄ったりの家内工業の延長のような民間企業だったと思います。しかし、二十何年間の技術の蓄積があります。労働者があのとおり若いわけでございます。生産の技術は十分蓄積されています。意欲もあるわけです。本土のほうの関係とかいうこともあるだろうから、じゃ一体大蔵省のほうであそこへいわゆる専売の直轄のたばこ工場を新築するという考え方はどうして出ないの。百五十人というのはどこから出てきたの。その辺をもう少し聞かせてくださいよ。
  84. 福間威

    ○福間政府委員 ただいま、大臣、専売公社総裁のほうから、現地に置く工場の規模として、百五十人程度の規模を考えているというふうに御答弁いたしました。百五十人程度という規模は、一応先ほど御説明がありました、現地のたばこの需要量等から一応算定いたした数字でございまして、実はまだ現地のたばこ製造三社の従業員の方々が実際にどういうふうにされるか、退職される希望を持っておられる方が何人ぐらいおいでになるか、それから公社のほうへ採用を希望される方が何人ぐらいになるか、公社のほうへ採用を希望される中で本土のほうへ来たいという方が何人ぐらいおありになるか、その辺はまだはっきりつかんでおりません。今後その辺の皆さん方の希望、動向を見きわめながらよく検討していきたいと思っている次第でございますので、御了承いただければと思います。
  85. 川俣健二郎

    ○川俣委員 専売公社に申し上げますけれども、この問題は、沖繩を迎えるという大きな歴史的な、政治的な話なんだから、専売公社の方から伺うとある程度のワクもあるわけですから、そういう答弁になるんだよ。だから、あんまり質問しないのを、出てこないでください。これは政治段階の話だと思いますよ。さっきもあなた言った。沖繩の消費量がこれぐらいだから、これだけの工場でいいんだということにどうしてなるの。そうじゃないんだよ。いいですか。沖繩特別委員会で具体的な話がそうまだ煮詰まっていませんが、どういう産業がいいだろうか、どういうような再建構想がいいだろうかということでみんなで考えているわけですから、それの一つに、たばこ産業はどうかという話から入っていこうかと思っていますよ。ですから私は、どう考えても、沖繩に専売公社の一工場をなぜ建てられないのかということ、新築できないのか、それとも、あまりにも日本の本土の需要が減って本土のほうを圧迫するとか、あるいはどうしても適さないというような欠陥でもあるのかということを伺いたいわけですよ。これは大蔵大臣ですか、お伺いします。
  86. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、専売公社の製造能力は、沖繩を含めて十分に供給能力がいまのところあるという実情でございます。
  87. 川俣健二郎

    ○川俣委員 通産大臣おられますか。——そこで、通産大臣、この前から大臣の構想を伺っておるし、プリントにも出ておりますが、たばこ産業なんかは沖繩のあの島にどうでしょうかね、産業として。特にいまは一次産業、二次産業、三次産業のあのかたわなひずみが出ておるわけですから、格好な産業だと思います。そういう意味において、たばこ産業はいかがなものでしょうか。私は適していると思いますが、御高説を承りたいと思います。
  88. 田中角榮

    田中国務大臣 沖繩にたばこ産業がいいのかどうかという問題、これはあなたのほうが十分研究しておられるようです。私は、いまの発言がございましたから、これから大蔵省の意見も聞きながら、産業の一つとしてどういう分野を占めるのかは研究してまいります。まいりますが、私が大ざっぱに申し上げますと、本土は、いま四十五年ベースで、人口比率から見ますと、一次産業比率が一七・四%であります。それから二次産業が三五・二%です。三次産業比率が四七・三%。やはりこの比率を中心にしてこれからの沖繩の産業を考えないとならないと思うのです。しかもこの本土の一七・四%というのは、六十年を待たずして一〇%以上減るというのであります。これはもう六十年を展望すればそういう数字になりますし、先進工業国が一次産業比率が五%ないし六%ということでありますので、一〇%以上減らなければならない。この一七・四%の一次産業比率で所得比率は一〇・五%、十分の一しか得ておらないわけであります。  ところが沖繩は、この本土の一七・四%に対応する数字が三八・九%です。そして所得比率は、人間の数では倍以上あって、所得比率は本土の一〇・五%にも満たない八・八%である。これは、いかに沖繩の一次産業の所得比率が低いかということは、本土の四〇%以下である。ですから、八重山地区などが非常に悲惨な状態であるということは、この数字で明らかであります。  ですから、本土が十年ちょっとぐらいで一〇%以上減るということになると、沖繩もたばことか、いろいろな、これから沖繩のかんがいその他をやれば野菜とかいろいろなものに転化できるでしょうが、やはり私は、考えようによっては、これは本土が一〇%減るときには最低限沖繩は二〇%ぐらい減らなければいけない。もっと減るだろうと思うのです。それを本土へ全部吸収するわけにはまいりません。ですから、沖繩に定着をさせなければならない。そうすると、もう好むと好まざるとにかかわらず、沖繩の県民所得を本土と平準化すためには、どうしても二次産業比率の一四・六というのを倍以上、三倍ぐらいに上げなければいけない、こう思うのです。その中でどういうものがいいのかということで、どういうものが進出をしても、必要なものは水であり、輸送であり、電力であり、いろいろなものでありますから、そういう基礎的な問題に対しては計画を立てておるわけであります。ですから、沖繩現地の企業を育てるということが一つでありますが、やはり本土からも進出をせしむるような政策を進めないと、これだけの人を吸収できない。吸収できなければ、沖繩の県民所得は、本土との格差は、絶対と言ってもいいくらい解消しないということですから、相当計画性を持った二次産業比率の向上ということが必要なんです。で、いまアルミとか、それから松下電器などが出ておりますが、結局、軽機械工業、こういうものは、電卓とか、これからそういうものの部品工場、家電の部品工場、そういうものを出すためにどうするかということで、これは積極的に私も検討をしておるわけでございます。これも沖繩の意向も聞きながら、水や電力や、そういうもの全部あわせながら——また、労賃が低いということで、本土並みにするには何年一体かかるのか。ですから、政策さえはっきりすれば、五カ年間電力料金を押えてくれればアルミは進出をいたします、こう言うのでありますから、そういう政策は、やはり長期的に安定をせしむるということによって計画的な本土からの進出企業、それから沖繩にある現地企業の育成というものをこまかくひとつ積み重ねて、いずれ御報告を申し上げたい、こう思います。
  89. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大体御高説を伺ったわけですけれども、これはどこかの評論家というか、講演会ならいいと思うのですよ。問題は、沖繩人方が待っているわけですよ。待っているわけです。復帰された次の日から問題になるわけですからね。そこで、大体御高説の中でも、まず、たばこ産業なんというのは決して悪いものではないということは私は聞き取った。  今度は、もう一つ、誘致する場合、あるいは産業をつくる場合、環境庁の長官に伺いたいと思いますが、一体、たばこというのは、葉たばこから、いわゆる耕作、製造、販売ということをずっと考えると、公害の面から見るといかがですか。おすすめ品だと私は思うのですが、どうでしょう。
  90. 大石八治

    大石国務大臣 どうもたばこのことにつきましてはあまりよく勉強しておりませんので、満足なお答えはできないと思いますが、環境保全の観点から申しますと、そう悪い産業ではないと思います。
  91. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私もそう思います。  それから、もう一つ、これは需給関係ですから専売公社に伺いますけれども、需給関係はどうなっておりますか。この前の決算委員会総裁の返事によると、大体の数字は出しておるようですが、一体いま需給はどうなっておるのか。特に消費の問題が、下がっているのか、上がっているのかという面も加えて、ひとつ報告してもらいたい。
  92. 北島武雄

    ○北島説明員 現在、島内三社で製造しておりまして、しかも島内で消費されておるたばこは大体十四億本、約の数字でございますが、そのほかに専売公社が約十億本のトリオを委託しております。これで二十四億本。これは、しかし、十億本は内地に持ってきております。主として九州方面で売っておりますが、そのほかに輸入品が約七千万本といわれておりますが、なおそのほかに、基地よりのおそらく脱税品が相当程度流れておるのではないか、こういうふうに一応推定はいたしておりますが、確かな数字はわかりません。
  93. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは、ついでですから、沖繩はいま伺いましたから、本土のほうの需給関係はどうなっていますか。
  94. 北島武雄

    ○北島説明員 本土におきまする昭和四十五年度のたばこの売り上げ量でございますが、私の記憶にありますところによりますれば、約二千二百三十億本でございます。
  95. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう少し教えてください。私は需給関係と言っていますからね。
  96. 北島武雄

    ○北島説明員 これはもちろん専売公社一社で製造いたしておりますので、消費に見合う製造をいたしております。
  97. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それで、それが大体年間の伸びはどのぐらいの数字ですか。
  98. 北島武雄

    ○北島説明員 ただいまのところ伸び率は多少減っておりますが、本年度におきましてたばこの伸び率が、数量にいたしまして、十月末でたしか五・五%くらい伸びております。沖繩関係が入りますと、沖繩関係では大体十四億本程度と一応推定されます。それだけがプラスになるであろうというふうに考えております。
  99. 川俣健二郎

    ○川俣委員 さっきからあなたは本数でお話ししているのだから、本数で私に教えてくださいよ、本土のほうも。  それじゃ、あなたが答弁したのをちょっと読んでみますよ。決算委員会で、「たばこ需要につきましては、御案内のように消費がおかげさまで毎年百億本程度ずつふえてまいっております。」いいですか。間違いありませんか。
  100. 北島武雄

    ○北島説明員 間違いございません。
  101. 川俣健二郎

    ○川俣委員 百億本ずつ毎年ふえているということから考えて、沖繩のほうで専売公社の直轄の新工場を建てさせる上において、特におたくのほうで常にお得意とする合理化工場というか、採算の、合う工場を建てるとすれば、何億本くらいの工場がそれに合うわけですか。
  102. 北島武雄

    ○北島説明員 現在、計画といたしまして毎年百億本程度の増加があるであろうという推定、想定のもとに工場の計画を立てております。一方、工場の合理化も極力進めておりまして、それに数量増加と見合うような合理化をいたしつつある、こういうことでございます。
  103. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうもあなたの答弁は少し親切じゃないですよ。大体公社で出ておるでしょう。合理化工場というのは、何億本年間でつくれる工場を採算が合う工場だとするというように、大体教科書に書いてあるでしょうが。
  104. 北島武雄

    ○北島説明員 ただいま計画いたしております合理化工場は、大体年間八十億本ということを基準にいたしまして考えております。もっとも、それよりも大きな工場がございますが、大体八十億本程度が一応の目安、こういうことでございます。
  105. 川俣健二郎

    ○川俣委員 このように、大蔵大臣も——大蔵大臣、いいですか、毎年百億本ずつ需要はふえていっているというのです。それで採算に合うという公社のほうのそろばんをはじいたところでも、八十億本の工場であればいいのだと、こういうことなんです。毎年百億ずつふえるのだから、八十億本の工場ならいいのだ、採算の合う工場なんだ、こう言っているでしょう。それから、さっき言っているように、製造の技術が二十何年間蓄積されておる、労働者はやろうとしておる。退職希望しているというようなことをだれかが言ったけれども、あまり無責任なことを言わないでくださいよ。退職を希望する人なんというのは私はいないと思いますよ。そんな無責任なことを言わないでくださいよ。アンケートもあるわけですから。だから、やはりたばこ製造でやっていきたい、公社にかわってもやっていきたいという話があったでしょう。それから通産大臣の話を聞いても、大体通産大臣の構想の中に入る産業だと思います。それから環境庁のお話だと、おすすめ品の一つだと思います。そうでしょう。それから本土のほうの需給関係を圧迫するかといったら、圧迫しないでしょう。こういうようなことを閣議で一体検討されたのですか。  大体私はこう思うのですよ。専売というのは財政専売で、歴史的に明治以降大蔵省の管轄なんだ。大体この辺から私はおかしいと思いますよ。どこの会社だって、帳面づけに現場を持たせるなんという会社はないわけですから。鉄道は運輸省を通して大蔵省にいくわけだし、電話、電報は郵政省を通していくわけだし、大蔵大臣は、締めるほうと生産するというほうと両方のあれを——それはしようがないと思いますが、一応閣議全体としては、こういうところに専売公社直轄のたばこ産業をやろうという閣議決定ぐらいはあったっていいのじゃないですか。あたたかく迎えると総理大臣は言っているのですから。どうですか、大蔵大臣。
  106. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから、さっきの話では、特に大規模の工場の必要はないだろうということで、一定の規模の工場建設をいま検討しておるということでございますが、これは現地に希望者が多いとか、あるいはたばこの需要が非常に多いのに、これに対して生産能力が間に合わないというような事情でもあるということでしたら、こういう問題にはまだ検討の余地が十分あると思います。これはまだ全部確定していることではございませんので、また専売公社と私どものほうは十分検討いたします。
  107. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それではだいぶ進展したと見ていいのですね、質疑の受け答えが。まだはっきりきまってないから、百五十人というのは一応の、向こうのほうからきた最初の声であるんだが、いろいろ聞いてみたら、六百人がほとんどつとめていきたいし、専売公社直轄になりたいし、そのようなことであれば、労使交渉の場で大体固まったところで閣議に出てきたら、それを受け入れて前向きの姿勢で進むという考え方でいいですね。
  108. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、とにかくこれまで、百五十人程度の規模の工場建設をいま検討しておるということだけしか聞いておりませんが、いまこの問題に詳しく取り組んでおるわけではございませんので、これはさらに検討の余地は十分あると思いますので、これから両者で十分相談して、実施のときまでにはもっと実情に応じた計画を立ててもいいというふうに私は思っております。
  109. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だいぶわかりました。  そこで、総理大臣に伺いたいと思いますが、たばこ産業の場合は、さっき話したように、公務員でもないし、民間から公務員になる——民間会社から公社になることであるだけに、また、積極的に吸い上げてくれる官庁が大蔵省であるために、なかなか閣議にフォローアップされないのだと思います。そこで、私がこのように訴えておるのを、大蔵大臣もああいう考え方になっておりますから、そういうようなことで現地と十分に交渉すれば、何か補償金を出してやるから三社ともやめるかねという交渉じゃなくて——いいですか。これは会社に対する交渉じゃないと思いますよ。問題は、六百何人、葉たばこが七百人、販売店が二万軒、この問題につながるわけですから、かなり大きいと思いますよ。そういう問題を前向きで検討するということをお約束できますね。
  110. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの話を私も静かに伺っておりましたが、だいぶん食い違いがあるようです。と申しますのは、ただいまの立地条件、こういうことが一体どうだろうか、これが一つの問題だろう。この点で、専売公社と川俣君の話では、やや見方が違っているかな、かように思ったわけであります。しかし、耕作は従前どおり、また販売も従前どおり、かように考えると、ただ製造工場を沖繩に置くことがはたして適切なりやいなや、また、それが十分効能を発揮するかどうか。これは別に沖繩だけをまかなう製造工場、こういうわけのものじゃございませんし、先ほども、八十億本程度が基本になる、かような話も出ておりますから、そうするとやはり相当九州の各県もまかなう、そういうようなことになるでしょう。そうすると、その工場はやはり立地条件を十分考える。原種、いわゆる沖繩産の葉たばこも、同時にまた、輸入葉たばこも一緒にしておそらくたばこはできるだろうと思いますので、そういうようなことなどもいろいろ考慮のうちにあるのだろう、そういうことを考えて先ほど来いろいろそれぞれが説明をいたした、かように思います。私は、現状をもっていいというわけじゃありませんし、また、六百数十名の方々が失業するというような、そういう状態を招来することは当然だというわけじゃありませんし、そういう点についても十分思いをいたさなければならないし、また、製造工場がなくなれば、おそらく葉たばこの産地のほうの生産に携わる方も減ることにもなりましょうから、私は、そういう意味からも、やはり製造工場を存置することが望ましいのじゃないだろうか、かようにも思います。したがって、先ほどのような話で将来閣議に問題が出てくれば、私ども反対するような立場じゃございませんし、また、成案を得ることを心から望んでおるその一人であること、これを御理解いただいて、ただいまいろいろの資料を持っていらっしゃるようですから、そういう点で、関係方面とも十分連絡をとっていただきたい、かように思います。
  111. 川俣健二郎

    ○川俣委員 あなた、ずいぶん冷たいことをおっしゃると私は思いますね。食い違いがあるというなら、もう少し——これは大体前向きの姿勢できまったと思って進めようと思いましたけれども、食い違いがあるというのはどういうことですか。
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 食い違いがあるというのは私が申したので、私自身が食い違っておるかもわからない。これはいま申し上げるように、立地条件の問題じゃないか。工場の立地条件の問題、そこらに十分の話し合いができれば、同じ立地条件なら、これは問題なしに工場ができるだろう、かように思います。
  113. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃもう少し聞きたいですよ。  百五十人云々というのは、どこから出てきたの。
  114. 北島武雄

    ○北島説明員 これは今後の需要を想定いたしまして、沖繩におきまして一応十五億本程度をつくる、こういうことを考えた場合に、沖繩の現在の製造設備の中で一番いいものをつかまえて考えた場合に、大体百五十人程度ということで十五億本まかなえる、こういう感じでございます。沖繩三社の生産性は本土に比べて非常に低いわけでございます。先ほどお話がありましたように、設備も劣悪で、家内工業式でございます。そういうものをそのまま専売公社に取り込むということはたいへん片ちんばなことになりまして、専売公社の全体の運営についても支障があるわけでございますので、この際、その三社の中でも一番進んだ設備もございましょうから、そういうものを取り入れて、そして島内需要をまかなえる程度のものということになりますと、百五十人程度ということになるわけでございます。
  115. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、総裁、ついでですから、大体八十億本という理想的な合理化工場、これを建てるとしたら、どのぐらいの人員数が要るのですか。
  116. 北島武雄

    ○北島説明員 現在本土で計画いたしております合理化工場、これは大体一億本つくりますのに三・数人で足りるわけです。それが大体のいまの目標でございます。もちろん、公社全体を通じますれば、まだ設備の生産をあげてない点もございます。人員も考えまして設備をかえてない点もございますから、全体を平均いたしますと、一億本当たり大体六人程度が現在の専売公社のあれと考えていただきたい。それに対しまして、今度の十五億本で百五十人と申しますと、一億本当たり十人程度の人員、こういうことになるわけでございます。
  117. 川俣健二郎

    ○川俣委員 全く合理化どころか、全然むだな工場だと私は思います、あなたの説明を聞いていると。そうでしょう。十五億本という島内消費だけを考えて、せいぜい百五十人ぐらいの工場でも建ててやろうかなんというおざなりなことでは、これは私はどうしても納得できないですね。そうでしょう。八十億本の工場を建てたっていいわけですから。圧迫しないわけですから。そうでしょう、伸びのことを考えると。しかも、大体百五十人というのは、じゃ間接部門から生産部門から全部入れてですか。百五十人というのは、いまの六百人の中から百五十人選ぶということなのか、十五億本の工場を百五十人で全部まかなえるということなのか。もちろん、こちらから行くんでしょう。専売公社のほうから職員が行くんでしょう。指導員が行くわけでしょう。そういうものを入れるとどういうことになりますか、その数字は。
  118. 北島武雄

    ○北島説明員 まず、こういう事情をひとつお考えいただきたいと存じます。現在専売公社で三十八の工場がございます。これにつきまして目下鋭意合理化を講じておるわけでございますが、全部合理化ができ上がっているわけではございません。たとえば、機械の能率でございますが、現在使っております機械におきましても、一分間千本しか巻けない機械もございます。それから千二百本というのもございます。それから最近二千本になりまして、さらに一分間二千五百本というのが現在の最新の機械でございまして、なお目下これを一分間に四千本に能率をあげるということにいたしております。しかし、これもやはり人員との関係も考えなければなりませんので、合理化につきましては、そういう点も見ながら慎重にいたしているわけでありまして、能力から申しますれば、現在の沖繩の十五億本程度のものは十分現在の本土の工場でまかなえる、これはもう申し上げて差しつかえないと存じます。ただ、もちろん、お説のように、沖繩がせっかく本土復帰いたします場合に、できるだけやはり従業員の方々のことも考えなければなりません。そういうことを考えますと、従業員対策の一環として、私どもといたしましても、沖繩で消費される程度のたばこのものは、沖繩でつくる程度の設備を置いたらいいんじゃないか、こういうふうなのが私どもの考えでございます。
  119. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは、その八十億本というやつを建てる場合の工場の建設費ですが、それは百億円ぐらいかかるものですか。
  120. 北島武雄

    ○北島説明員 これは沖繩の物価事情等もまだよくわかりませんが、かりに本土でつくりますと、これは土地を除きまして、八十億本程度の設備投資いたします場合には約六十億円を要するかと存じます。
  121. 川俣健二郎

    ○川俣委員 一工場六十億円。じゃ、その前に、いま本土で年間の収支じりというのはどのぐらいですか、大蔵省に納めておる収支じりは。
  122. 北島武雄

    ○北島説明員 専売公社の財政貢献度でございますが、これは地方たばこ消費税と専売納付金とあるわけでありますが、合わせまして昭和四十五年度におきまして五千百五十億円、これは専売納付金と地方たばこ消費税の合計でございます。
  123. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私は六十億円ぐらいの工場を建てて何ら差しつかえないと思います。どうです、総理大臣。どうです、いままでのことを一切考えて。そうでしょう。どうせ百五十人の直轄の工場を建てるというのですよ。そして十五億本のたばこしかつくらない工場を建てるわけです。総務長官、何か——総務長官でもいいですよ、お答えしていただいてけっこうです。総務長官でけっこうですから。いいですか。ずっと話を伺って、一工場新工場を建設して沖繩に無理がありますかね。どうでしょう。
  124. 山中貞則

    ○山中国務大臣 沖繩に新工場をつくるかどうかは、これは大蔵、専売の立場でございますから、私のほうからは見えないわけでありますけれども、しかしながら、現在の民営三社というものは、やはり沖繩が施政権下に置かれた中で自然発生的に生まれ出た。それぞれ先発後発いろいろありますけれども、今日の現状に立ち至っておるわけでありまして、そのうちの某社等はずっと赤字経営を続けておるような状態等もございます。したがって、沖繩に専売公社が八十億本単位の合理化工場を一つつくってくれる、これは私にとってはたいへんありがたいことでありますけれども、しかしながら、そのような方向にはなかなか——総理もちょっと言われましたように、沖繩において充足される原産地の生産される葉たばこの数量、質等から考えると、やはり本土から原材料を持っていかなければならぬでありましょうし、あるいはまた、それぞれの紙、フィルター等も運ばなければならぬでありましょうし、製品もまた同時に本土のほうに相当数は持って帰らなければならないであろうというようなことを考えますと、一応業界の方々と、もちろん組合の人たちの退職金等も含めての話でありますが、よかろうという話がいま妥結をいたしております。したがって、私にとっては、これらのあと、専売公社が直接雇用される者あるいは専売の出先機関として置かれるところにホワイトカラーの諸君が何人雇ってもらえるか、あるいは本土のほうでどれだけ受け入れてもらえるか、現地が希望されるか等の問題について全力をあげたいと思いますが、合理化工場一つ新しく沖繩に建ててくれということについては、専売公社、大蔵省がその方針をとられる限り、私にとって何ら反対するところはないわけであります。
  125. 川俣健二郎

    ○川俣委員 総括の窓口の大臣がそうおっしゃってくれるので、大蔵大臣、もう一度確認します。そういうような客観情勢があるわけです。それから、まだ具体的にコンクリートされてない案でございますから、これからさらに現地と折衝して、単に三社の——会社側だけじゃないですよ、労働者とか立地条件云々という総理大臣の話もありましたので、いまより前向きの姿勢で閣議でさらに検討するということを約束できますか。時間がないから、早く。
  126. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 問題はこうだと思います。沖繩だけに必要な工場ということでしたら、きわめて小規模でよろしいということになりますし、もしそうだとすれば、いまの百五十人としても、これは非常にコストの高い工場になる。したがって、建てる以上は、沖繩で必要なものという限定をする必要はなくて、それ以上の供給力を持った工場を建てるか建てないかというところにくると思いますので、これはひとつ検討させていただきます。
  127. 川俣健二郎

    ○川俣委員 じゃ進みます。  それから、退職者の——これはせっかく話がたばこ産業になりましたからこれだけにしぼって、人事院の問題ですか、この勤続年数なんですが、いよいよ六百人から、この機会にやめたいというのと、それからつとめたいというのとあると思います。大体私のところにくる話によると、八割ぐらいは、できれば専売公社に移りたいという意見のようでございます。そこで、その場合に、当然、過去の二十年間つとめた者の退職金の問題があります。この退職金の問題は、いま民間会社ですから人事院には全然関係ないと思います。ただ、いままでの二十年間のたばこ製造の技術が、過去二十年間労働者に蓄積されておると思います。その場合に、当然一般の民間会社でやっておるように、あるいは満州から引き揚げてきてこちらの会社につとめると通算されるように、沖繩でいままでつとめてきた者が公社の職員になった場合に、当然通算されるというように考えていいでしょうね。
  128. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私としては少々買いかぶられたような気持ちがいたしますけれども、いまのお尋ねの件は、私どもの完全に所管外でございますので、適当な大臣からお答えしていただきたいと思います。公務員の場合でありますれば、これも退職金の問題は総理府の所管になっておりますけれども、これは適当に引き継ぎを考えられておると思います。これもしかし私の所管ではございませんので、あしからず御了承願います。
  129. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、公社の場合はどこが取り扱いますか。
  130. 北島武雄

    ○北島説明員 まず二つに分けて考える必要があろうかと思います。専売公社にいわゆる新規採用になった場合の給与でございますが、これは前歴を換算して加算するということでございますから、過去の御経験がむだになることではございません。ただし、前歴通算ということではございません。新規採用する場合の前歴を換算して新しい給与になる、こういうことでございます。ただ、そのままおつとめになりまして最後に専売公社をおやめになるときに、退職手当の場合に、もと民営時代期間を通算するかということは、現在の退職手当法のたてまえで、できないことになっておると私は存じます。
  131. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これはやはり総裁じゃ答弁が無理だと思いますよ。現在の専売法、ないわけですよ。退職、そんなものはないですよ。沖繩返還なんて初めてあるわけですから。いいですか。満州で戦争中やってきてこっちへ移った者は、一般の企業も全部通算でしょうが。沖繩だってそうあるべきじゃないですか。しかも別の産業に移るのじゃないですよ。総裁がさっき言ったように、全部こちらへ民間のものをセットで公社に引き継ぐというのでしょう。そうしたら、労働者にただこ産業の技術が入っているんでしょう。そうでしょう。退職金まで全部引き継げと言っているんじゃないのですよ。無理がないでしょう。勤続年数ですよ。どうですか。この解釈ですよ。当然でしょう。
  132. 北島武雄

    ○北島説明員 これは法律問題でございますが、現在の法律では、民間時代の年数を公社の職員としての年数に通算することにはなっておりません。
  133. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だから総裁じゃ無理だと思います。ところで、ずっといままでめんどう見てこられた総務長官、どうですか、この解釈。大体柔軟性をもって検討する重要事項だと私は思います。いまやれと言っているんじゃないですよ。前向きでこれから検討するということですから。  もう一ぺん言いますよ。いままでつとめた者には、会社はお金として払うであろう。しかし、これからずっとつとめる人は、過去二十年間の勤続年数が入ると見ていいんだと私は思います。一般にやっているのですもの。そうでしょう。総務長官、どうです。あたたかく迎えてくださいよ。
  134. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはただいま説明がありましたように、法のたてまえからは、通算しないということがたてまえだと思うのです。しかしながら、その技術の蓄積ということは、通算しなくとも、実際上専売公社がもしかりに沖繩で工場を新しくつくるということができるとなりますれば、それに対して採用される場合において、前歴としての号俸その他を勘案をして採用するということになるだろうと思うのです。
  135. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だから、総理大臣、あたたかく迎えるというせりふを生かしてくださいよ。あたたかく迎えるというせりふが生きるところはここですよ。全然よその国の人が入ってくるのじゃないのですよ。しかも、いままでたばこ産業という製造に参画しておった労働者なんですよ。本来からいうならば、当然専売公社の労働者であったであろうという労働者なんです。これから続けて働くのだから。そういうのをどうしてもばっさりそこで切る、また一年目から始まるということ、こんなのは、あたたかく迎えるということにはならないと思いますよ。総理大臣、どうですか。
  136. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろの場合があるだろうと私は思います。と申しますのは、いま働いておるその会社は、いままでのところの退職金は一応清算される、かように思いますね。そうして今度新しく専売公社の職員になれば、その際に過去の経験を加味して賃金が決定されるということですから、過去は、一応経験者だということで、それはそれなりに評価される。その際に、過去の民間勤続年数を全部専売公社にあったがごとく計算をして、またもう一度退職金を支払うことがあるか、こういうことになるといろいろ問題が起こるだろうから、そこらは別な何かくふうがあってしかるべきだろう、しかし、あたたかく迎えるということは、失職の状態にならない、そういう人をやはり優先的に採用する、そうしてその過去の経験は十分賃金を決定する場合にそれを考慮に入れる、かようなことじゃないかと思っております。
  137. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それは、総理大臣、そうですよ。過去に払ったものをダブってはいけない。しかし、過去二十年間つとめたものを評価してやりたい、評価するといっても、評価しようがないじゃないですか。退職金を通算するということですよ。決してダブらないんですよ。しかし、それを全部機械的に二十年間つとめたということで同じ算定方式で計算するとダブるんですよ。だけれども、全然一年目からまたスタートするのだという解釈だったら、あまりにも冷たい政治的処断だよ。そこに何らかの考え方があっていいのだと思いますよ、沖繩復帰するのですから。どうですか、総理大臣。そこを前向きでもう少し含みのあることで検討していくという考え方はどうですか。
  138. 山中貞則

    ○山中国務大臣 大蔵大臣がただいまおられませんので、私から答弁をいたしますが、その言われる気持ちは私もよくわかります。しかしながら、沖繩においてもし専売法が施行されて戦前どおりであったと仮定したら、いまのたばこの三社というものが存在したかどうかという問題は、やはり三社の経営のあり方その他を見ますと、そうばかりも言えない点がございます。しかしながら、かといって、その工場につとめている者にとってはそれは関係ないことではないか、これは明らかに私も言えることだと思いますので、ただいまの御意見については、もし今後専売公社が現地につくるというようなこと、先ほどのやりとりで新しい事態ですから、そういうことがありますならば、私としてももう少し検討させていただきたいと思います。
  139. 川俣健二郎

    ○川俣委員 お願いします。  それから、あたたかく迎える総理大臣に、これは一問一答でけっこうですから——あの沖繩の島をずっと見ると、日本の島と同じように細長いです。あそこのまん中にずっと鉄道を敷くというような考え方があるかどうか、ちょっと……。
  140. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういう希望があるように伺いますが、これは本島ですね。——そういう希望があるように伺いますけれども、ただいまは、はたして鉄道の時代かどうかよく考えないと、どうも——過去には那覇から東西を結んでおる鉄道があったのです。戦前ですね。けれども、それはもちろん戦争でなくなりましたが、いまさら鉄道ができるかな、それよりもっとりっぱな道路のほうがいいのかなとも考える。そこらにも比較考量の問題があろう、かように思います。
  141. 床次徳二

    床次委員長 川俣君に申し上げますが、関連質疑の申し出がありますので、時間を考えて……。
  142. 川俣健二郎

    ○川俣委員 午前中二時間やりましたから。
  143. 床次徳二

    床次委員長 いや、持ち時間の中において関連質疑を……。
  144. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だから、午前中の質問者が二時間やりましたから。
  145. 床次徳二

    床次委員長 いや、二時間ではありません。これはよく理事会でもって確認してありますので、御尊重願いたいと思います。
  146. 川俣健二郎

    ○川俣委員 了解。  それじゃ、いまの鉄道の問題ですが、小学校の質問に、鉄道のない県はどこですかということになったら、沖繩県ということになるわけです。そこで、国鉄の御出身の総理大臣でもありますから、どうかひとつ、これは地元の要望がかなり強うございます。それから産業のあれにかなり違うと思います。北部、中部、南部といっていますから、それだけに気候、風土、いろいろ違うわけです。流通経済のこともありますから、ぜひひとつ前向きで検討してほしいと思います。  それじゃ急ぎますが、労働省に伺います。  いま沖繩県の労働金庫の問題なんですが、沖繩の琉球政府の失業保険特別会計から労働金庫に預託されております。それで、これはああいう地域であるだけに、労働金庫の機能、預貸率等を考えますと、たいへんにいい制度だと思います、労働金庫に失業保険を預託するということは。しかも、もとは労働者の金だからという意味で言っているのじゃございません。労働金庫の育成強化ということも考え合わせると、これが本土復帰後もこのまま持続されるというように解釈してよろしいですね。
  147. 原健三郎

    ○原国務大臣 お尋ねのように、現在においては失業保険特別会計から七十五万ドルを労働金庫に預託いたしております。それが、今度復帰になりますと、日本の本土の失保特会に継承されることになります。そうすると、本土の失保会計では、この金が本土の資金運用部資金法に従って資金運用部へ移されることになります。預託金は、日本の本土の資金運用部資金に移されることになります。そういたしますと、いまお話のありましたように、労働金庫が非常に不便を感じますので、この問題については、経過的措置といたしまして、沖繩の失保会計からの預託額相当額七十五万ドルというものを、本土の資金運用部から沖繩県に同時に貸し付けます。沖繩県から沖繩の労働金庫に転貸しをする。結論的には、七十五万ドルは向こうへまた入っていくことになって、決して不足を来たしません。同じことになるのですが、法律のたてまえ上そういう手続をとらせていただきたい、こういうだけでございます。
  148. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで大蔵大臣に伺います。  やはり数ある金融機関の中で、労働金庫の機能というのは、沖繩においてはかなり大きいと思います。そこで、御存じだと思いますけれども、預貸率が九〇%以上になっております。七十五万ドル、二億以上のお金というものが、もしこれが吸い上げられると、はっきり言って労働金庫はつぶれます。金融機関が一つつぶれます。そういうことを考えますと、単なる経過的暫定措置でまた貸しするという考え方はいいとしても、経過的暫定措置ということでは片づけられないと思います。そこで、沖繩の場合は可及的に将来にまたがってこれをやるという考え方を前向きで検討してもらいたいと思います。労働大臣がそのように言っているだけに、どうですか。
  149. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 経過的な措置として、いまのように二億七千万円はまた貸しでやって、労働金庫の資金繰りが困らないようにするということだけは方針としてきめてありますので、そのとおり実行いたしますが、それをやったあとで、いつその経過措置を打ち切るかというようなことにつきましては、これを引き揚げる場合に資金繰りに困るというような事情が続きます限りは、これはまた困らないような措置を本措置としてとらなければならないことになるかもしれませんし、そこまではまだきめておりませんが、とりあえずは困らない経過措置をとることだけははっきりときめてございます。
  150. 川俣健二郎

    ○川俣委員 まだ時間がございますから、関連質問田邊さん……。
  151. 床次徳二

    床次委員長 田邊誠君から関連質疑の申し出があります。この際、これを許します。田邊誠君。
  152. 田邊誠

    田邊委員 先ほど専売問題に代表されるように、沖繩復帰によるいろいろな制度上あるいは企業の変動等によって起こるいわゆる失業者に対してどういうあたたかい措置を講ずるかということに対して、きわめて不明確な答弁が実はあったのであります。山中長官からお話のありましたとおり、もちろんこれはきわめて流動的でありまして、いま全体を捕捉することは非常に困難な状態であることは十分承知をいたしております。しかし、なおかつ、いわば今後に予想されるところの離職に対して一体どういうようなあたたかい手を講ずるかということは、生活の安定、雇用の安定を最も望んでおる沖繩県民にとっては最大の関心事であるはずであります。したがって、一応のやはり見通しを立てて、それに対するところの対策を講じなければならないことは当然だろうと思うのであります。  労働省がいま労働省として予測しているところの離職者の数は一体どのくらいですか。
  153. 原健三郎

    ○原国務大臣 さいぜんも申し上げましたが、この基地の縮小その他法律改廃等によって若干の離職者が出ることは予測されますが、目下のところ、的確にこれを把握することが非常に困難でありまして、非常に流動的でありますし、最小限度にこれを食いとめてやるべく、沖繩振興法等によって対策を講じておるところであるし、もし出ました場合においては、離職者対策等につき、あるいは職業訓練等によって万般の措置をやりたい、こう考えておるところであります。
  154. 田邊誠

    田邊委員 われわれは、現在予測して大体五万なり六万なり失業者が出やしないかと心配いたしておるのであります。労働省は、一応ある時点では、大体一万五、六千人ぐらいの離職が出るのではないかと予測したはずであります。この食い違いがかなり大きいのでありまするけれども、それはさておいて、それならば、この沖繩の失業者が出た場合において、あなた方は、まずもってこれに対する手当ての第一段目は、求職手帳を発給すること、一体四十七年度にこの求職手帳の発給はどのくらいとして大蔵当局に対してその人員を要求しておりますか。
  155. 住榮作

    ○住政府委員 振興開発特別措置法に基づきます手帳の発給者の数でございますが、大体五千程度で発給する予定であります。
  156. 田邊誠

    田邊委員 いまお話のありましたとおり、この求職手帳のいわば発給の予定はまず五千というのであります。総理大臣、お聞きのように、幾ら何でも、失業者の数が、一般は五万といい、六万といわれ、労働省の推定でもっても一万五、六千といわれている中で、この求職手帳の発給要求はわずか五千という、こういう状態であります。この程度の手帳の発給では、とうていこの失業者に対する手当てを講ずることにならぬ、こういうふうに思うわけでありまするから、私は、その要求自体も問題であると思いまするし、その予想自体も問題であると思います。現実にあまりにもそぐわないという形でありまするから、これはただ単にそういういわば要求があったということはある時点で認めるにいたしましても、その現実の失業者の数、その発生の状態とにらみ合わせて、そういった要求なり予算にとらわれることなく、これに対するところの手当ては万全を講ずるということは当然であろうと思いまするけれども、いかがですか。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん必要な処置をとるのは、これは当然でございます。
  158. 田邊誠

    田邊委員 もう一つだけお聞きしたいのは、いままで沖繩の労働者がいろいろな権利を保有しているのであります。ところが、これは、本土復帰によりまして、いわば本土並みという形でもって一律一体に処理がされようとしている。たとえば国民健康保険のように、昨日質問があったとおり、いわばなかなか本土並みにならぬところもあるわけであります。これをできるだけ引き上げようという形であります。しかし、沖繩の労働者が本来持っておるところの権利、戦ってきたところの権利、これは、本来的にいえば、そのまま保有させることが私はしごく当然の措置だろうと思うのです。しかし、日本の国内法によるところのいろいろないままでの経過もありまするから、これを本土並みにするという、そういう政府の考え方もうなずけるわけでありまするけれども、これはやはり個々の詮議によって、できるだけ沖繩の労働者の持ってきたところの権利は保有するという原則、たてまえ、これは私は当然確立されておらなければならない、こういうように思うわけでありますから、個々の事象についてここでお伺いいたしませんけれども、その原則は当然である、こういうように、労働大臣、お考えですか。
  159. 原健三郎

    ○原国務大臣 田邊さんのお説のとおり、原則はその方針でやる考えで処置をいたしつつあります。
  160. 床次徳二

    床次委員長 この際、美濃政市君、西宮弘君、新井彬之君、山口鶴男君から補足質疑の申し出がありますので、順次これを許します。美濃政市君。  補足質疑でありますので、簡潔にお願いいたします。
  161. 美濃政市

    ○美濃委員 きょうの質問は、そちらからじゃないですか。経過から見て、政府側からの説明を……。
  162. 床次徳二

    床次委員長 総務長官。
  163. 山中貞則

    ○山中国務大臣 九日の委員会における美濃委員の、一本の法律をまるまる沖繩に適用しないということを政令で定めるなどとは許せないという御趣旨の発言は正しく、そのとおりであります。私どもも、立法準備の段階で、そのようなことはすべて特措法に書き込むことを重要な一つの原則として準備いたしました。しかし、前に委員会に資料として提出しました政令案要綱の中には、検討が不十分のため内容の不備なものがありましたので、このような御指摘を受けた次第であります。  御指摘がありましたので、前にお配りしました政令案要綱について再点検をしましたところ、もう一点だけ、同様、表現、内容の適当でないものがありましたので、あわせて御説明申し上げ、御了承を得たいと思います。  ただいまお配りしました政令案要綱の改定のとおり、農産物検査法については、一定期間これをまるまる沖繩に適用しないというのではなく、適用しないのは、米の強制検査という一部の規定に限るという経過的措置であり、これは沖繩の現在の実態に混乱を生じないようにするためのもので、また、土砂運般大型自動車による交通事故防止法についても、一部規定について、本土での法施行の際と同様の経過措置を定めようとするものであります。ほかには、美濃委員御指摘にもとるような政令はありません。  政令案要綱に検討不十分なものがありましたことをおわびをし、その訂正をお許しいただきたいと存じます。
  164. 美濃政市

    ○美濃委員 ただいま総務長官から御説明を聞きました。一、二お伺いいたしたいと思いますが、総務長官は、たしか九日に、この検査法の部分でありますが、一カ月間の短い暫定措置だという趣旨の発言があったと思うのです。これは今回変えられましたが、そうすると、本法は適用されるわけです。この一カ月間という関連はどうなのか、お伺いいたします。
  165. 山中貞則

    ○山中国務大臣 その部分は削除いたしましたので、その前提がなくなるわけであります。
  166. 美濃政市

    ○美濃委員 本来からいけば、復帰とともに食管法が適用されるのがたてまえでありますけれども、趣旨については、前にも申し上げたように、いまの実勢から見て全然了解できないというふうには考えておりません。しかし、取り扱い方式、生産者米価等については、食管法に準じた措置をとってもらわなければならぬと思いますので、この際、食糧庁長官から、これに基づく方針を明確に説明をしていただきたいと思います。
  167. 亀長友義

    亀長政府委員 お答え申し上げます。  御承知のように、沖繩では農協が買い入れ、その差額を国が補てんするのでございますが、生産者には一定の価格で買うということを法律で保障しております。それで、政令で定める期間、これは私どもいまのところ五年ぐらいを考えておりますが、その間は、現在の沖繩では、稲作振興法の規定で現在の価格をきめております。この規定は、法律の文章としては、内地の食管法と同じ規定、条文でございますが、現在のところ、内地の大体五等あるいは等外上あたりの価格と同じ程度の価格まで沖繩の価格はきておるようであります。品質的にも内地の一−四等とはやや劣るということはいなめないと思いますので、そのような復帰時の沖繩の価格を基準にいたしまして漸次これを本土の価格に近づける、もちろん、これは消費者価格の動きとも関連をいたしまして考えてまいる、こういうようなことにいたしておる次第でございます。法律で、生産者価格の扱いに関しまして、百十一条で三段階に分けて、最初の政令で定める期間、その後本土にさや寄せする期間、その後の期間というふうに三段階の、現在の食管法の扱いと異なる規定を設けておりますが、その趣旨におきましては、復帰時の沖繩の価格を基準としながら漸次内地の価格と同じような価格に持っていく、また、内地の生産者価格に変動がある場合には、これと同額または同率で修正をしていくというような、かような考え方を生産者価格につきましてとっております。消費者価格につきましても、復帰時の沖繩の消費者価格を基準にしながら、生産者価格と同じような過程をたどりながらこれを内地の水準に近づけていく、かような考えでございます。
  168. 美濃政市

    ○美濃委員 時間を非常に急いでいるようでありますから、いろいろ取り扱い問題はあとでもやれるわけですから、本日は、ただいまの答弁を了承したということではないですが、時間の都合上別の機会でしたいと思います。とにかく食管に準じた扱いをするということだけはひとつ守っていただきたいと思います。  それから、最後に一言、総理にお伺いいたしたいのでありますが、本日から日米通商会議がハワイで持たれまして、総理も近くアメリカを訪問されるわけですが、最近の報道で、また農産物の自由化がちらほら出ておりますので、果樹農民なりあるいは畜産農民なり、これらの農民は、ほんとうにおそれおののいておるわけです。ここで、これらの農民が安心できるように、いつも総理が言われるはっきりした、農民が安心できる見解を一言お示し願いたいと思います。
  169. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 けさほどの一部の新聞に、コナリー財務長官から水田大蔵大臣のところに手紙がきた、その中には、果汁、牛肉その他の自由化品目、これが強く要請されておる、こういうような報道がございました。また、ただいまホノルルで関係省の次官が会議を持っておる、こういうことから、この記事とその会合と結びつけて、いろいろの憶測があるようでございます。  ところで、ホノルルで関係省庁の会議を持たれておる。これに当方から大蔵、通産、農林の事務次官が参加しておることは確かでございます。しかし、コナリー長官から大蔵大臣にきた書簡には、何ら具体的な中身はございません。したがって、これは新聞報道、あるいは一部で報道されておること、これとは全然無根な報道がなされておる、このことははっきり申し上げておきます。  しかし、アメリカ自身が当面しておる今日の経済状態は非常に困難な状態にございますから、いろいろ会議では広範な経済事情の立て直しに議論が出てくるだろう、こういう場合に、当方はどういうような応答をするか。もちろん当方は、いままでの国策を遂行する上において決定した路線、これがございますので、それを十分守って、そうして国民の支持を得ておる今日までの政策、これを遂行する、こういうことで、その話し合いに、その会議に臨む、こういうことでございます。これがいろいろ憶測を生み、いろいろの報道をかもし出している、こういうことでありますが、政府のとっている態度は、従前の政策を堅持する、こういうことでただいま会議に臨んでおりますから、誤解のないようにお願いしたいと思います。
  170. 床次徳二

    床次委員長 西宮弘君。
  171. 西宮弘

    西宮委員 先般若干お尋ねをしたのでありますが、ちょうどあいにく総理がお留守でございましたので、総理に簡単にお尋ねをしたいと思います。  五点だけお尋ねをしたいのでありますが、時間を極力節約するために私は文章にして書いてまいりましたので、これを朗読いたしますから、一つずつお聞き取りを願って御回答いただきたいと思います。お尋ねとお願いでございます。今度おいでになりますので、それについての心がまえみたいなことをお尋ねをしたいのであります。  一つニクソン大統領との会談の際、沖繩の基地縮小についていかなる姿勢で臨まれるか。すなわち、従来共同声明にしばしばうたわれた、沖繩にある米国の軍事施設が重要な役割りを果たしていることを認めた——沖繩にある米軍が重要な役割りを果たしていることを認めたというような立場からは、基地縮小の主張は容易に出てこない。したがって、まずこの点について、従来の共同声明に盛られた、いわば軍事優先の姿勢を完全に一てきすべきであると思うが、御所見はいかがですか。  さらに、この点について、福田外務大臣は、沖繩の基地密度は本土に比して濃密に過ぎることをしばしば指摘された。そこで総理は、内地の基地密度との対比において沖繩の基地をどの程度にすることを目標として折衝するつもりか。特に本土並み返還という以上は、沖繩の基地は量、質ともに本土並みとすべきは当然だが、端的に言って、このとおりの本土並みを目標として主張されるかどうか、お伺いいたします。
  172. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まず新春早々行なわれるニクソン大統領と私たちの会談におきましては、これは事前に、本年中に各党の党首会談を催しまして、そうしてしっかりと皆さま方の御要望もわきまえた上で、この会談に臨む考えでございます。したがいまして、お尋ねになります点もその中に含まれるかと思いますが、一般的にさような処置をとるという、そういう態度をまず基本的に御了承願いたいと思います。  そこで、ただいまの沖繩の基地の問題でありますが、ちょうど社会党の方はいらっしゃらなかったのですが、この前の返還協定の本会議におきまして、国会において初めて共同提案がなされ、そうして基地縮小についての問題、核持ち込み等についての決議がなされました、これに反対だということで。また、基地の整理、縮小と積極的に取り組めという、こういう決議がなされた。それに対して、政府は、これはぜひとも基地は縮小さるべき筋のものだ、こういうことで、これに積極的に取り組みますという政府の所信を厳粛に表明したわけでございます。したがいまして、ただいまお尋ねになりました諸点も、私は、このときの政府の所信表明でひとつ御了承いただきたいと思います。  ことに、沖繩返還される、こういう場合においては、これはたびたび申し上げますように、アジア緊張緩和に役立つ、こういうたてまえでございますから、こういう沖繩の軍基地、ここらに特殊部隊があるとか、あるいはいわゆる、いままで果たしていたような太平洋防衛のかなめ石的な役割りを果たす、こういうものではなくて、これは質、量ともに本土並みになるのだ、これはどのくらいの時間がかかるか別といたしまして、積極的に今度はここの軍基地は安全保障条約のワク内に行動が制約される、こういうたてまえでございますから、私は質、量ともに変わってくる、このことを期待するものでございます。  最近のここ二、三年におきましても、本土における基地の総点検をいたしまして、そうしてずいぶん縮小、整理された、こういうことを私どもは思い起こすのでございます。したがいまして、今日沖繩における、いままでのアメリカの施政権下にある、また自由に使用できる軍基地とは今回は性格が変わってまいりますので、ただいまのような点について、さらに私どもは積極的に交渉を持つべきだ、かように思いますので、ニクソン大統領と会います際には、もちろんそういう点についても話し合いをするつもりでございます。ただ、時間的にすぐ右から左、こういうことにはなかなかならないだろうと思いますが、そういう点についてはあらかじめ御了承おき願いたいと思います。
  173. 西宮弘

    西宮委員 私のお尋ねを端的に申し上げて、今回のニクソン大統領との会談において、いわゆる本土並み基地、質、量ともに本土並み基地ということを今度の会談のテーマとしてお話をされるかどうかということを伺ったわけでございます。もう一ぺんだけお尋ねいたします。
  174. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げたように、ニクソン大統領と十分話してみるつもりでございます。
  175. 西宮弘

    西宮委員 私があえてこのことを申し上げますのは、先般の主席の選挙の際に、これは沖繩の自民党がお出しになったのでありますが、選挙の公約は、復帰の際の米軍基地は本土並みを目標とする、こうあるわけであります。いわゆる復帰の際の米軍基地は本土並みにする、復帰のときから本土並みが始まるのだ、あるいは本土並みを獲得するのだ、こういうことを目標にしているわけであります。そうして、しかも選挙のあとで、本土自民党の幹事長の談話として発表されたのには、政府・自民党は、われわれの沖繩政策に対して県民が寄せた評価と期待に必ずこたえる、こういう談話を発表しておられるわけであります。そうすると、私は、この選挙公約として掲げた復帰に際しての本土並み基地、こういうことは、当然自民党としては守らなければならぬ公約だと考えるわけであります。もしそれがとうていできないということならば、この公約は、失礼ながら全くのインチキだといわざるを得ないのでありますが、それだけの責任をお感じになれないかどうか。もう一言だけ伺って、この問題を終わりにいたします。
  176. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはいま皆さん方から御審議をいただいておりますように、基地の密度は復帰の際には必ずしも本土並みではない。しかしながら、基地機能は本土並みである。このことは御了承ができている、かように思います。核抜きであること、またその他自由出撃のできないこと等は本土並みである、かように御了承いただきます。
  177. 床次徳二

    床次委員長 西宮君、補足質問ですから簡単にひとつ質疑をお願いいたします。
  178. 西宮弘

    西宮委員 はい。いまの点は先般の選挙公約から見まするとまことに残念だ、あるいは選挙公約はインチキだといわざるを得ないと思うので、たいへんに残念に思います。  それでは二番目を申し上げます。  米軍が沖繩に上陸以来膨大な基地建設を行なってきた。それは講和前は戦時国際法規ヘーグ条約の完全な違反であり、講和後は沖繩における憲法と称すべきアメリカ大統領行政命令にもみずから違反する行為である。なお次々公布された高等弁務官布令、布告もことごとく前述大統領行政命令第十二節にそむき、民主主義の大原則をまっこうから否定する内容のものである。しかも現実の土地接収にあたってはこの布令、布告さえも無視し、銃剣とブルドーザーによって農民の土地を強奪した事実は枚挙にいとまがない。したがって、今回提案された公用地等暫定使用法案は、この米軍の不法、不当なる行為を免罪する措置である。  右の理由によって、ニクソン大統領との会談にあたっては、この沖繩において果たしてきた米軍の不当不法な行動をきびしく糾弾するくらいの強い姿勢をもってこれに臨むべきである。もとよりわれわれも敗戦国民のこうむる不利益は十分承知をしておるので、敗戦後の米軍の占領はやむを得ないものとしても、それは、ポツダム宣言並びに日本の降服文書にうたわれた日本の軍国主義の解体と日本の民主主義の育成だけが占領軍の任務であったにもかかわらず、著しくこれを逸脱して国際法規を侵犯し、さらに講和後は、施政権者としてみずから定めた大統領行政命令をみずからじゅうりんしてきたのである。総理は、ぜひともそのいきさつを十二分に認識、理解して、これを腹におさめて柔よく剛を制する折衝をしていただきたい。これはお願いでございます。
  179. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの柔よく剛を制するかどうか、そういうような御期待に沿えるような交渉ができるか、たいへん私、任重くして、はたしてできるかとみずから疑っておりますが、しかし、できるだけのことはしたいと思います。  ただ、一言申し上げたいのは、公用地使用の暫定措置法案、これがいかにも強権を使うという強権発動の面が非常に強く表面に出ておりますが、しかし、大部分は基本的に話し合いがつく、これをまず第一にやっておる、これが原則でございますから、どうしても話がつかない場合にこの暫定法案が動く、こういうことでございます。これはもう法律をよくお読みくだされば、話し合いをするということが第一であるという、これはもうはっきりしておる。ただ、過去のいきさつが銃剣とブルドーザー、これによって軍基地が使用されておる、こういう状態を基本にしているということでありまして、それは私も十分その実情について瀬長君等からも、書かれた本をいただき、十分よく読んでおりますので、そこらには私なりに理解は持っておるつもりでございます。これはどうもまことに残念なことですが、戦争をそういう意味ではほんとうに憎む。戦争の結果勝敗がある、こういうことでございますから、負けたものがいまのような実力でほんとうに残念な状態になっておる。このことを考えると、祖国復帰、これをあたたかく迎えることがいわゆる沖繩の方々の戦中戦後を通じての御労苦に報いるゆえんだと思います。ことに土地の使用については、これが皆さま方の所有地、それはもう変形していてなかなか実情がわからない、つかみにくい点も多々あると思いますが、それらの点についても私は話し合いをまず第一の原則にする、こういうことで臨みたいと思います。そういう意味の県民の方々の御協力を切にお願いしておるような次第でございます。  ただいまおっしゃるように、今日まで米軍が沖繩同胞に対して与えた幾多の人権侵害その他の問題等につきましては、私は十分この際に認識を新たにしていただくよう、米政府当局にもよく話したいと思っております。
  180. 西宮弘

    西宮委員 そういう御認識のもとに米政府と折衝する。つまり沖繩で侵害された人権等について十分な認識を持ってアメリカ政府と折衝するというお話でありますから、これ以上申し上げませんが、つまり戦争後沖繩に進駐してまいりました占領した米軍の任務は、さっきも申し上げたようこ……。
  181. 床次徳二

    床次委員長 西宮君に申し上げますが、質疑を進めてください。
  182. 西宮弘

    西宮委員 このことは、自民党でお出しになった、しかもごく最近ですよ、四十六年の二月ですか、出された自民党の政策の中にもそのことはきわめて明瞭に、当時の米軍の任務が私が申し上げたとおりの任務だということを書かれておるわけです。ですから佐藤総理、これをひとつぜひとも、その現実は大きく逸脱をしておったという点について十分な御認識をいただきたいということを申し上げます。  それでは、その次三番目、沖繩県民は米軍人等の犯罪的行為ないしは事故の続発によって今日現在連日連夜その生活が脅かされている。これは単に施政権の移動によって解決される問題ではない。基地と部隊が撤収される以外に沖繩県民の生命、財産が保障される道はあり得ない。現在米軍の存在は、このように沖繩県民には重大なマイナスのみを与えているが、その反面、沖繩県民にプラスする面が何かあったであろうか。あるとすればそれは何か、総理の御認識を伺いたいと思うのであります。
  183. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われるように、基地がかもし出している幾多の弊害、事故等について、私ども沖繩住民を十分守る、こういう立場でなければならないと思っております。それが、この引き継ぎに際しましても、一応法制的にはかっこうは整っておりますが、さて実際にはたしてどういうようになるか、こういうことだと思っておりますので、一そうその点では努力するつもりでございます。
  184. 西宮弘

    西宮委員 この点について実はやはり……。
  185. 床次徳二

    床次委員長 ひとつ簡単にお願いします。
  186. 西宮弘

    西宮委員 自民党のお出しになりました文書でありますが、その中に、沖繩における米軍の存在が実はプラス面もあったかもしれないけれども、それ以上にマイナス面が多い、こういうことを書いておられるわけです。これは自民党が出された文書でございます。その中にさえそういうことがうたわれておりまするので、その点十分、あらためて御認識をいただきたいということを申し上げたわけであります。アメリカで発表されましたアメリカ側の報告書には、沖繩が米軍の存在で、その陰でドルが落ちてたいへんに繁盛したというようなことをたいへんに麗々しく書いておる文書があるわけでありますが、そういう認識では困るんだ、こういうことを申し上げたかったわけであります。よろしくお願いをいたします。  四番目は、前述のとおり、施政権分断の結果、不当不法な土地接収により沖繩県民の権利が極度に侵害されたのであるから、それを補償するにあたっては、施政権分断なかりせば受けたであろう補償、すなわち本土国民が受けたと全く同じ補償が与えらるべきは当然だと考えるが、念のためにお尋ねをいたします。
  187. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは今回の公用地等暫定使用法案、これの中で十分救済される、かように私どもは考えております。過去はたいへん気の毒な状態であったと思っております。
  188. 西宮弘

    西宮委員 それは総理のたいへんな御認識の違いで、あの暫定使用法の中で救われるなんという筋合いのものじゃ全くないわけですよ。私が申し上げたのは、施政権の分断なかりせば受けたであろうような補償、つまり本土国民が受けたと全く同じ補償をするのが当然だ、こういう考え、これはもとより当然だと思いますが、念のためにその一点だけ伺ったわけです。もう一度お答えいただきます。あの暫定使用法とは関係ありませんから……。
  189. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん施政権が別であるために、ずいぶん本土とは別な待遇、処遇を受けた、かように私は思います。お説のとおり思います。
  190. 床次徳二

    床次委員長 ひとつ簡潔にお願いします。
  191. 西宮弘

    西宮委員 御説のとおりというのは、分断なかりせば受けたであろう補償、つまり本土国民と同じような補償を受けるのが当然だ、こういうことですね。一言だけちょっと、それでよろしければそのとおりと……。
  192. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでよろしゅうございます。
  193. 西宮弘

    西宮委員 それでは、ありがとうございました。その点は感謝をいたします。つまり、日本本土においては駐留軍の用に供する土地等の際には非常に詳細な手続があるわけです。あるいは補償の規定があるわけです。つまりそれをやるというお話でありますから、これはそれを確認をいたしまして、最後の点だけお尋ねをいたします。  米軍の軍事占領中、沖繩県民のこうむった無数の損害に対する補償はサンフランシスコ条約によって放棄された。しかして、敗戦の責任を沖繩県民のみに負わしむることの不当さはもとより明らかではあるが、いまかりにこれが敗戦国民に負わされた不幸、悲惨な運命だったとしても、今回の返還時においては、サンフランシスコ条約締結当時のごとく、敗戦国の立場で協定締結をすべき理由はごうまつもなかった。しかるに政府は、県民一人一人の補償請求権をそれら権利者に何らの了解を得ることなく、いわんや何ら政府アメリカに代替して補償することもなく、全く一方的独断をもってこれが放棄されてしまった。これは被害を受けた沖繩県民は言うに及ばず、われわれも断じて承服し得ないところであるが、おそらくは沖繩返還を要求するにあたって、金で済むことならできるだけアメリカの気持ちを迎えようとする安易な態度で折衝に当たった結果ではないかと想像される。アメリカとの折衝にあたって、金で済むことならとの気持ちがわれわれにもわからないわけではないが、そもそもアメリカが施政権返還を決意した動機は、沖繩県民の抵抗、反撃によって基地機能の維持が困難になり、かつドル節約の必要上、日本に肩がわりをさせることがアメリカの国益に合致するとの判断が最も大きな理由であったことは疑う余地がない。したがって、いたずらにアメリカの温情にすがって返還を懇請した姿勢に根本的誤りがあったといわなければならない。ただしかしながら、来たるべきニクソン大統領との会談において、これを蒸し返すことは事実上不可能だと思わざるを得ないので、それならば、その人身並びに物質上の被害に対する補償は国内法を制定してこれを明らかにすべきであると考えるが、総理の御所見はいかがですか。  以上であります。
  194. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 詳細にいろいろ御注文をつけられましたが、ただいまの最後のは御注文だと思います。私は、いままでも政府は十分検討したと思いますけれども、なおさらにせっかくの御注文でございますから、十分検討してみることにいたします。
  195. 床次徳二

    床次委員長 西宮君、だいぶ時間が経過いたしましたので、終わっていただきたいと思います。
  196. 西宮弘

    西宮委員 先般も申し上げたが、今回アメリカ沖繩返還を決意した動機、これまた自民党の雑誌の中に、これはアメリカのジャーナリズムを紹介しておるわけです。それを見ますと、アメリカ沖繩返還して残念だというよりは、これでほっとした、こうアメリカのジャーナリズムは言っておる。これを長々と掲載しているわけです。ですから私は、この点はアメリカとしてはまさにさっき申し上げた二つの理由で決意をしたんだ、こういうことが少なくとも最大の動機であったことは疑いがないと思うのであります。どうかそういう点も十分踏まえて、しかも先刻来申し上げた点に完全に措置をしていただきたいということを重ねてお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  197. 床次徳二

    床次委員長 新井彬之君。
  198. 新井彬之

    新井委員 建設大臣にお伺いいたしますけれども、昨日私の質疑を保留いたしまして、この間の十二月六日の当委員会の議事録によりまして、建設大臣の答弁を詳細にわたり検討しました。さらに昨日の大臣の答弁検討いたしましたが、事が憲法問題でおりますので、十分明確にすべきであると考え、この問題について再度質疑をいたしたいと思います。この問題について、建設大臣の明快な答弁をお願いします。
  199. 西村英一

    ○西村国務大臣 私は、昨日もお答えいたしましたように、新井さんの御質問に対してことばが少し足らなかったと思い、誤解を招いた点ははなはだ遺憾に存ずる次第でございます。  私が十二月六日の新井さんの御質問に対して答えたことは、憲法が旧憲法から新憲法に変わった。その新憲法に基づいて新しい土地収用法が制定されたのだということを申し上げたのでございまして、質問の御趣旨とちょっとぴったり合わなかったような点は私も感じておる次第でございます。そういうことのために、またあるいは憲法あるいは法律というようなものが、その時代時代で解釈が変わるというように誤解を受けたかもしれませんが、決してそういうことではございません。憲法憲法として十分守り、法律法律として十分守っていくことは当然でございまして、私の真意はそういうところにあるのでございまして、皆さま方にたいへん御迷惑をかけたことはおわび申し上げる次第でございます。
  200. 新井彬之

    新井委員 いま大臣から答弁がございましたけれども憲法の問題で、そういうような憲法改正につながるような発言は非常に重大だと思います。そうしていまあなたが新憲法だ、あるいはまた旧憲法だ、そういうようなことを言っておりますけれども、そういういいかげんな正確性のない答弁、あるいはまた憲法改正を思わせるような疑惑を持たせたことについて、非常に重大な責任があるんじゃないかと思います。その点についてどのように考えていらっしゃるか、お答え願いたいと思います。
  201. 西村英一

    ○西村国務大臣 私の答弁でそういうふうに誤解を受けられたことは、はなはだ遺憾であると私は思っておりまして、その点はおわびを申し上げる、とこう言っておるわけでございます。
  202. 新井彬之

    新井委員 今後こういう問題については、慎重によく検討して発言をしていただきたい、このことを私は強く要求して、私の質問を終わっておきたいと思います。
  203. 床次徳二

    床次委員長 山口鶴男君。
  204. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 さきの委員会で私は、地方公務員の公平審理に関する件、小笠原における施設庁の告示問題、自衛隊の治安出動、治安警察の問題、三点について留保いたしておりますので、若干時間が、三つありますからかかりますことを、ひとつ委員長、御了承いただきたいと思います。
  205. 床次徳二

    床次委員長 簡潔にひとつ、すでに前の時間が相当使ってありますので……。
  206. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 それでは直ちにお尋ねいたします。  まず、自治大臣にお尋ねいたします。沖繩の市町村公務員の諸君は労働三権を持っているわけです。今回の法律によりますと、それが本土並みになる、きわめて危惧を持っています。しかも本土におきまして、たとえば一斉休暇の行動をとる。そういたしますと、地公法三十七条二項によって、公平審査を受ける権利はないんだ、審査請求があったら窓口で却下をせよ、こういうような指導が現に自治省においてなされている。実はここにその文書があるわけでありますが、聞きますと、この文書は地方公務員制度研究会というものが出している資料であります。で、この会員はだれかというと、地方六団体であります。地方六団体が会員ではありますが、自治省から委託費の名目で、この研究会に対して毎年多額の支出がなされています。昭和三十九年が百十九万円、昭和四十三年が五百十一万円、昭和四十四年から四十六年に至る間は毎年七百七十二万円支出をされています。  そこで、私はお尋ねをいたしたい。自治省のほうは地方公務員制度研究会だからこれは自主的にやっているんだというつもりかどうか知りませんが、少なくとも自治省が委託費を出している団体です。したがって、自治省としてこの地方公務員制度研究会をしてこういった——人事院総裁も受けつけてから状況を調べる、こう言っているわけです。政府の方針とも違うような不当な文書を出している。この資料、これを破棄することを、私は、少なくとも自治省は地方公務員制度研究会に対して要求すべきだと思います。そうでなければ、私は、自治省としてはこの委託費を打ち切ったらどうかと思うのです。政府の方針として二つに一つ、どっちか少なくともやらなきゃいかぬ。この点いかがですか。
  207. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 ただいま、六団体が行なっております地方公務員制度研究会の出した通牒であるということでございましたが、この前、山口委員お尋ねになりました分は、その通牒であるということは事実であります。いま冒頭に、人事院は調べて出す、ところが窓口で却下してしまえ、こういう方針でやっておるじゃないかというのでございましたが、私たちは三十七条第一項に該当しておるときは却下する、しかし、三十七条第一項に該当しておるかどうかということは、人事委員会なり公平委員会なりが慎重に調べて、その上で処分すべきであるというふうな指導をいたしておりますので、この点人事院の扱いと全然相違いたしておりません運営の方針をやらしております。なお、この点についても、御指摘がございますので、今後ともにそういうふうな指導をしていきたい、かように考えておりますので、御了承を賜わりたいと思います。  なお、現在の委託費の件でございますが、地方団体が行なっております研究会でございますが、私たちが委託費を出す以上、公正なる立場においての事業のみを委託する。もちろん自治省自身でも調査研究あるいは講習会等行なっておりますが、団体それぞれが自主的にもやっていただくほうが、かえって公正なる公務員の労使関係の運営が期せられるというふうな方法で委託をやっておりますので、いま御指摘のような点がないように、公正なる立場で委託事業が遂行されますように、今後とも検討を加えていきたいと思います。  なお、現在の通牒でございますが、私は読んだのでございますけれども、第一項におきましては、なるほど三十七条第一項に触れる場合は却下しなさいということが書いてございますが、はたして不服申し立ての行為が三十七条第一項に触れるかどうかということについては、公平委員会並びに人事委員会等が慎重に審査しろというふうに規定されておると思いますので、私は、研究会が出したものをそういうふうな姿ですれば、決して私たちの指導方針にもとるものでない、このように考えておりますので、御了承を賜わりたいと思います。
  208. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 少なくとも四・二最高裁判決、最近では都教組、これは地裁でありますが、行政罰に対しても判決が出ています。そういうふうに判例は次々に出ているんですね。そういう中で、大臣いろいろおっしゃいましたが、この文章はその冒頭において、「地方公務員法三十七条第二項により、地方公共団体に対し法令に基づいて保有する任命上又は雇用上の権利をもって対抗することができなくなるものであり、地方公務員法に基づく、公平審理を受ける権利を有しないものである。」ということを冒頭うたっているじゃないですか。やはりこれが原則になって、以下1、2と書いてあるわけですね。私はそういう意味では、この文章は少なくとも昔の特別権力関係、旧憲法下における公務員の身分扱いの思想でもって書かれているという点を問題にしているわけです。したがって、金も出していることだから、十分公平な資料を出すように指導するということでありますから、少なくとも最近における最高裁判例その他にたがえるような不当な指導を地方公務員制度研究会が今後絶対にやらぬように、これはひとつはっきりお約束をしていただきたいと思うのです。
  209. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 山口委員の御指摘の点、もっともでございますし、私たちはあくまでも公正なる立場において委託費を使い、また指導もしていかなければならないと思いますので、御趣旨のある点よく指導いたしまして、そのようなことが行なわれないように監督してまいりたいと存じます。
  210. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 不十分ですけれども、先ほど委員長の御趣旨もありますから、先へ進みます。  次は小笠原の問題であります。過般私は、今回の提案されております軍公用地暫定使用法案、それと同じものが小笠原暫定法の十二条にある。すでに小笠原においてその前例があるということを指摘をいたしました。特にこの小笠原の復興計画、沖繩の振興開発計画というものを策定する場合に、あくまでも東京都知事、沖繩県知事のいわば自治権というものを尊重しなければいかぬ、したがって、施設庁が告示等を行なう場合は、十分当該の府県知事と話し合いというか協議をしてからやるべきだ、そういう方向で進むかと言ったらそうやりますと言う。しかし、小笠原の場合は全くそうではないじゃないか、一方的な通告だったではないかということを指摘をいたしました。施設庁から資料をいただきました。これを見ますと、昭和四十三年六年二十二日に東京都知事にこの文書を出したとこういうんですね。告示の基準日は昭和四十三年六月二十六日です。  そこで、お尋ねいたします。この小笠原に対する施設庁の告示の手続をとったのは一体幾日ですか。そしてそれは当時何曜日であり、それからこの文書を出した昭和四十三年六月二十二日は何曜日であったか、お答えいただきたいと思うのです。
  211. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 御承知のとおりに、告示は四十三年の六月二十六日でございまして、東京都に当時の施設庁長官名で通知いたしましたのが六月の二十二日。これははっきりいたしませんが、たぶん土曜日ではなかったかと記憶しております。
  212. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 土曜日なんですね。そして発効日は六月二十六日ですが、この告示の手続をとったのは二十四日、月曜日だったわけですね。それで当時の大池説明員、防衛庁のお役人のようでありますが、この人が行っているでしょう。東京都にこの文書を出したのは二十二日、土曜日の午後三時だというのですよ。午後三時に東京都にこの文書を持っていった。そうして月曜日の二十四日に手続をとったというのですから、これで一体施設庁は東京都知事と話し合いをした、協議をしたなんということが言えるのですか。土曜日の午後三時に文書を持っていって月曜日に手続をしたんじゃないですか。こんなことでいいのですか。東京都知事と十分な話し合いをしたとそれでも言うのですか。
  213. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 当時の状況でございますが、小笠原の復帰に伴いまして硫黄島及び父島に自衛隊及び駐留軍の施設を設置するにあたりまして、事前に東京都とは——総理府に当時小笠原復帰対策準備室が設置されておりまして、その準備室を通じまして東京都には十分協議連絡いたしてございますし、その後直接に緊密な連絡をとって調整を行なっておるわけでございまして、その過程におきまして、父島における自衛隊使用予定地の一部を東京都の住宅予定地として変更した、こういう経緯もございまして、事前に十分東京都とは調整を行なっておるわけでございます。ただ、東京都知事に正式の文書を送り込みましたのがその直前であったということでございますが、実体的には十分調整は行なわれておりまして、このことは当時の東京都の首脳部も十分御承知のところでございます。
  214. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 それは施設庁と東京都の小笠原対策室の係員が話し合ったことはあるでしょう。しかし、東京都の意向は、父島に関する限り、自衛隊が使おうとした土地は一番住宅地域としていいんだ。したがって、これはあくまでもその振興開発計画による住宅地域にすべきだということを強く要請しておったでしょう。話し合いがまとまらぬままに、一部は譲ったかどうか知りませんけれども、土曜日の午後三時に文書を東京都へ持っていった。そうして月曜日にはもう手続をとった、こういう形なんですね。ですから、昭和四十四年の六月に地方行政委員会で美濃部東京都知事を参考人として呼んでお話を聞いたときには、美濃部知事は一切お話を聞きませんでした、きわめて不満ですということをおっしゃっておるわけであります。  そこで、私は総理並びに防衛庁長官お尋ねしたいのですが、小笠原ではこういうきわめて当該都道府県の知事の立場を無視するような形でやったわけなんです。こういうことを繰り返してはならぬと思うのです。総理は過般の委員会で、自治権は尊重する、原案作成者である知事の計画というものは尊重するのだ、こう言っているわけです。この小笠原のような事例があるわけです。だから、大臣がせっかくりっぱな御答弁されても、結局施設庁の役人はそういうことをやる。これをひとつ他山の石としてどうお考えであるか。ひとつ御所見を承りたいと思うのです。
  215. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘の点は、今後に非常に示唆に富む重要なことだと思うのです。私、実は先般もここで申し上げたのでありますが、私まだ就任して日は浅いわけですが、たまたま党で沖繩復帰対策と取り組んでおったものですから、そこで事務説明を聞いたときに、実は施設庁長官に、たとえばいま御指摘のような問題の起こらないように、その責任者との話し合いはもちろんですが、個々にわたって折衝をする第一線の要員の印象というものが非常に相手に影響する、特に沖繩県民感情というものを多少でも私知っておるだけに、その点は十分注意をしてくれ、そうしてこれは必ず特訓を施してやるくらいにしなければならぬだろう、このごろたとえば国鉄の新幹線の敷設のときなどは比較的トラブルを避けてうまくいった例のようにいわれておりますが、やはり第一線で話し合いをする者の態度、それから相手を尊重する度合い、こういったことには今後十分ひとつ細心の注意を払って進めるようにいたしたいと思います。
  216. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 さらにこれに関連してお尋ねしたいと思うのですが、父島並びに硫黄島に対して告示をいたしました期限は三年及び五年でございました。三年の場合はすでに本年の六月二十五日をもって切れております。また五年の場合は昭和四十八年の六月二十五日をもって切れるわけであります。その後の契約が一体どうなっているかということをお尋ねしましたら、きわめて円満にいっています、こういうお答えであり、資料要求をいたしましたら、ここにありますような資料を持ってまいりました。  そこで、お尋ねしたいのでありますが、父島においても、大沼さんという方はあくまでも契約を拒否されたわけですね。やむなく、したがって大沼さん所有の地域は今回防衛庁使用区域からはずしたわけです。その点は私はけっこうだと思う。ただ問題は硫黄島であります。硫黄島はあの島大部分が三年ないし五年の地域になっております。アメリカのロラン基地もございます。そこでこの契約はどうかといいますと、持ってきた文書は、三年分については賃貸借契約締結済み、五年分については使用同意書取りつけ済み、こう書いてあります。しかし、この相手は硫黄島産業株式会社及び土地所有者ですね。しかし私が先般指摘をいたしましたように、この硫黄島産業株式会社には、七十一名の方がカンショあるいはコカその他の作物を栽培いたしまして耕作をしておったという事実があるわけです。これについては当初大蔵財産だったそうです。これを個々の人に分けてしまうのでは問題が起きるかもしれない、したがって硫黄島産業株式会社というものを一応形式的につくって、本来ならば土地を分けて耕作させるものを、土地の所有だけは会社にして、そうしてそれぞれの方々が耕作をする、こういう形で出発をしたと、調査の上私はつかんでおります。当然耕作権があったわけでしょう。といたしますならば、単に地主の方とこの同意書を取りつけたというだけで済む問題でないでしょう。この耕作権を持っておりました七十一名の方々、五年間使用しておったわけでありますから、小笠原暫定法でも当然その間の補償はしなければならぬでしょう。この補償は一体どうしておりましたか。それからまた、同意書取りつけというのでありますが、この耕作権を持っておられる方々に対して一体同意は取りつけておるのでありますか、明らかにしてください。
  217. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 お答えします。  硫黄島産業の所有地につきましては、先般もお答えいたしましたとおり、三年間の暫定使用の分につきましては同意を得、契約をしまして使用料を支払い済みでございます。それから五年間の分につきましては、いまお話しのように、耕作権者がおりまして、これが小笠原の復帰に伴う暫定措置法の十三条による特例賃借権の申し入れをしておるという事実はございます。しかしながら、個個の所有者の申し出ておる土地が、具体的に一体場所がどこであるか、あるいは範囲がどうであるかというようなことが、公図が消失しておるというような事情からいまだ明確になっておらない。そこで、現在その申し出のある土地が具体的にはどこにあるのかというようなことを調査中でございます。  また、この防衛施設との関係につきましても、はたしてその申し出の土地が防衛施設として現在暫定使用しておるものの中に入っておるかどうか、これも必ずしも明確でない、こういう事情がございますが、目下鋭意調査中でございまして、これがはっきりしましたならば、もちろん防衛施設に含まれている分につきましては、この特別賃借権に相当する部分については補償をいたす、こういうことになろうかと存じます。
  218. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 農林大臣がお休みでありまして、山中総務長官が農林大臣を兼務しておられるようです。小笠原暫定法には、そういう意味では特別賃借権の設定ということで耕作権を持っておる方々を保護する条項をきちっと書いてあるわけです。そしてまた、賃借権を持っております方については、小笠原暫定法の十二条四項で損失を補償しなければいかぬということを明確にしてあるわけです。農林省は農地法に——まあこれは農地法ではありませんけれども、趣旨は農地法の耕作権を保護するという精神からこの条項は来ていると私は思うのですね。  そこで、お尋ねしたいのでありますが、三年なら三年たった、五年なら五年たった、今後契約をするという場合、当然耕作権を持っておる方々の同意を取りつける、それらの方々にどういう補償をしたらいいのかという話し合いを十分煮詰めて契約をかわすということが当然だと私は思うのです。この点、農林大臣としてのお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  219. 山中貞則

    ○山中国務大臣 農地法の趣旨からいっても耕作権は尊重されなければなりませんので、公図等の消失といっても、存在しておられる方々との間に当然耕作権に対する正当なる取りきめとそれに伴う補償というものをしてもらいたい。したがって、施設庁との間に農林省としても協議を始めたいと思います。
  220. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 それでははっきり約束してください。円満に進んでおると言ったのですが、いまのような農林大臣のお答えもあるわけです。したがって、昭和四十八年六月二十五日までには必ずこの特別賃借権の申し出をしております方々、これらの方々に対して補償の話し合いもし、同意の取りつけもする、そうでなければ円満な解決にならぬということをひとつはっきり確認をしてください。
  221. 鶴崎敏

    ○鶴崎政府委員 ただいま先生のお示しになった線に沿って、今後十分努力をいたす所存でございます。
  222. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 そういう重大な問題が残っておりながら、円満に進行しておるというような認識を上層部の方々が持っておるというところに問題があるということを、私は指摘をしておきたいのであります。
  223. 床次徳二

    床次委員長 山口君、簡潔に済ましてください。
  224. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 これで終わりますが、最後に治安出動の問題についてお尋ねをしたいと思うのです。警察の問題で私はひとつ外務大臣にお尋ねをしたいのです。  いま沖繩には道路交通法ができています。ところが、米軍や軍属、それから家族は、別に憲兵隊自動車交通取締規則というのがありまして、これはどういう規則かというと、歩行者優先ではなくて車両優先なんです。ですから、交通規制をしてないところで車と人とが衝突をすれば、人のほうが車の通交を妨害した、したがって、第一当事者は人間のほうだということになっておるのです。そして第二当事者、被害者のほうが車ということになるんです。こんなばかな規則というのは私は世の中にないと思います。もちろん、これは復帰すれば当然道交法が全部かぶるから問題は解決するでしょう。しかし、こういうばかげた規則というものが復帰以前においても堂々まかり通っておるというところに、いまの沖繩一つの悲劇があると私は思います。いま琉球政府並びに琉球警察本部におきましては、復帰前でも道交法が米軍の軍人軍属、家族についてもかぶるべきだということで交渉をやっておるそうでありますが、少なくともこういうことは復帰前にも実現をする。そしてスムーズに人間優先の道交法が施行されていくということになるべきだと思うのです。私は、そういった意味での今日までの交渉をやっておるかやってないか、またやってないとすれば非常に怠慢であり、残念だと思いますが、やらんとすれば今後は一体どうするか、お聞かせいただきたいと思います。
  225. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ランバー上局等弁務官のほうも、最近の頻発する交通事故並びに裁判制度の立証のしかたの違い等による県民等の不満、こういうもの等に心配をいたしたようでありまして、ぜひこの問題を解決したいということで、両者会合を今日までに二度ほど持ったようであります。しかしながら、琉球政府側としては、副主席が中心で当たっているようでありますが、当然取り締まり権もこちら側によこせ、琉警によこせという主張をしておるわけであります。そこらになりますと、これは円滑な交通安全に資するための話し合いの協議会にしたいという主張とやや食い違いまして、アメリカ側の立場としては裁判管轄権の問題にもなるというようなことで、基本的な議論に戻ってしまったようでありまして、この点はたいへん遺憾に思いますので、この話し合いが円滑に乗るように、さらに私のほうでもでき得る限り外務当局を通じたり、直接のまた琉政を通じたりの折衝に実りのあるようなものに復帰前にでもしたい、そしてトラブルを少しでも少なくしたいと考える次第であります。
  226. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 すみやかに交渉して実現する御熱意はございますか。
  227. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 すみやかに話し合ってみることにいたします。
  228. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 すみやかにすっくと立って明確な答弁をしてください。いまの立ち方ではどうもあまり十分な熱意を感じ取るわけにいきません。  最後に、私は治安警察の問題について触れました。資料の要求をいたしました。私の持っておりますものがこの防衛研修所がつくった資料として防衛庁にもある、こういう御確認をいただきましたのでお尋ねをしたいのですが、治安出動の場合についていろいろ書いております。「階級闘争が日共及び社会党(左派)を中心とする政治闘争として、総評を中核とした労働運動を中心とする」云々、さらには「農民運動、学生運動、婦人運動、青年運動等の大衆運動が、多かれ少かれ、階級闘争的性格を有している」「なお特殊な階級(身分)闘争としては部落解放運動がある。」というようなことを分析いたしまして、さらに社会党の綱領等についても分析をいたしております。そして特に治安出動の場合を想定いたしておるわけでありますが、わが国の治安立法に対して批判をいたしております。わが国においては平和憲法のもとであるので、戦前の治安維持法がない。さらに破壊活動防止法その他治安関係法規のことを書きまして、「非常事態法(戒厳令)、国家秘密保護法等」がないことは残念だということから、「破壊活動を未然に抑制することが困難で、軍事力が好むと好まざるとにかかわらず治安出動せしめられる機会が少くないばかりか、出動すれば必然に法の枠を越えざるを得ない危険性が多分に存在する。」さらにわが国の治安関係法案の問題点を具体的に指摘をいたしております。さらに労働運動に対する自衛隊の権限等についても分析をいたしております。  この防衛研修所所長は警察庁出身の方だそうであります。そして、所員には必ず警察庁から出向いたしました方が一名はおる。そういう方は、その後警察庁に戻りますと必ず警備関係の要職につくという形で、防衛研修所と警察庁とはきわめて人間的に緊密のようであります。  そういう中で、治安出動は、さきに私が指摘いたしましたように、警察官の方であれば警職法で武器の使用は制限がある。ところが、自衛隊の治安出動については武器はきわめて広範に使える。しかも、国内の政党あるいは大衆団体について分析をして、現在の治安立法の不備についても分析をして、そうして労働運動についてもどういう場合に治安出動ができるかというようなことを研究をしている。こういうことは現在の世の中としてはたしてふさわしいのか。  私は過般、特に総理が触れました沖繩の自衛隊配備の目的について、治安維持が目的だということを指摘をして、総理は一応それは訂正をされました。沖繩に対する自衛隊配備は治安出動を目的とするんではないということを言われたわけでありますが、本土の中における大衆運動、労働運動、しかも政党の綱領その他についていろいろ分析し、ただいまのような文書を作成しておるというところに私は問題があると思います。一体このような文書をどうするつもりですか、防衛庁長官お尋ねいたします。
  229. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 防衛研修所は、自衛隊の運営とか管理とか、そういう面をスムーズにならしめるためにいろいろ研究をするわけです。それからまた幹部教育と。したがいまして、ただ戦術的な面だけでなしに、国内の政治情勢とかいろいろな問題を研究するということは当然の任務でありまするが、いまお話にありましたように、特定の政党を対象にして議論をする、これはどうもはなはだよろしくないというふうに私考えます。  御質問のありました当時の経緯を私詳しく実は承知しておりませんので、足りませんところは防衛局長から補足させたいと思います。
  230. 高瀬忠雄

    ○高瀬政府委員 いま先生がおあげになり御指摘になりました文書は何であるか、私存じませんけれども、この前もここで御答弁申し上げましたように、防衛研修所は、先ほど大臣も言われましたように、政治と軍事、あるいは外交と軍事、あるいは科学技術と軍事というようなことで、そういう中において、軍事というもの、防衛というものはどういう地位を占めるかということを中心にして研究をしております。いろいろな研修資料などを出しております。「防衛論集」という本も出しております。そういう本の性格というものにつきましても、この間申し上げましたように、防衛庁または防衛研修所の公式の見解というものではなくて、これは各所員がそれぞれ研究をした結果を個人の責任で出しておる、そういう性質のものであります。いまのお話のような点につきましては、私は、この前資料の御請求がございまして、いろいろな書類を見ました。見ましたけれども、いま言われましたような点につきましては心当たりがございません。
  231. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 いまのはおかしいと思うのですね。「防衛論集」等はいただきました。私のところに持ってきたのは、フランスの七月危機の状況を分析したとか、あるいは西ドイツあるいはソビエト、そういった他の国々の状況を分析した資料です。私が指摘いたしましたのは「国内紛争と革命の一般的考察」というやつです。それからそのほかにつきましても、一九五八年の「暴動鎮圧研究の参考」というのも指摘をして要求をいたしました。ところが、これは一部しかないから持ってこられぬ、先生のところにお持ちならばそれでけっこうでしょう、こう言いますから、私は持っておりますものを指摘したわけです。資料を要求すれば、差しつかえない、国内のものを分析しない——外国の事情を分析するのは私はいいと思うのですよ。そういう差しつかえないものだけの資料を私のところに持ってきて、国内の状況を分析したものについては、これはしぶしぶしてさっぱり出さない、こういう態度が問題じゃないんですか。それは研究だと言いますけれども、少なくとも防衛庁の予算、そのワク内の防衛研修所、国費をもって国家公務員の諸君が研究しているんじゃないですか。そのことをわれわれは問題にしている。いかがですか。
  232. 高瀬忠雄

    ○高瀬政府委員 この前先生御指摘の「暴動鎮圧研究の参考」それから「国内紛争と革命の一般的考察」こういう御指摘がございまして、帰りまして心得があるかどうかを調べました。ところが、この「暴動鎮圧研究の参考」は昭和三十三年のものでございます。それから後者のものは三十五年の一月につくられたものでございまして、すでに研修所におきましては廃棄をしておりまして、これはございませんでした。したがいまして、私どもは、先ほど申しましたように、これの内容を見ようと思いましたけれども、見ることができなかった、かように先ほど申したわけでございます。  それで「防衛論集」も、これは研修所の費用でやっておりますけれども、研修所の先生方というのはやはりいろいろな研究をしなくちゃなりません。そして研究をした場合にはやはり発表しまして、いろいろな批判を受けるというような態度が必要じゃないかと思うのです。そういうようなことで、そういう機会をできるだけつくろうということで冊子を出しております。したがって、いま申しましたように、こういう発表のものは防衛庁なり防衛研修所の公式の見解ではない、これは論集のところにもそう断わってございます。間違ってはいけませんので、さような断わり書きをいたしまして、そうしてこれを出している次第でございます。御了承いただきたいと思います。
  233. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 「はしがき 国内紛争(治安)に関する基礎的事項について原旧所員(現神奈川県警察本部警備部長)が取りまとめられた労作に私が間接侵略の概念把握のため講義資料としたものの一部を加えて本資料とした。昭和三十五年一月十日谷村所員」とこう書いてありますね。調べましたら、この谷村所員という方は防衛研修所におられたようであります。  少なくとも防衛研修所は国費を使わないで研究しているわけじゃないでしょう。国費を使って、防衛庁の予算を使って研究している。また谷村さんという方は当然防衛庁の職員、国家公務員、こうして仕事をしておられるわけでしょう。それが少なくともわが社会党に対して、あるいはその他大衆団体に対して、これが治安出動の対象のごとき研究をしているということを私どもは許せぬと言っているのですよ。都合が悪くなると破棄したと言いますけれども、現にそういう資料があったことは認めるんでしょう。認めるでしょう。どうなんですか。
  234. 高瀬忠雄

    ○高瀬政府委員 そのような件名の資料はあったようでございます。それは件名の名前と、それから書いた所員の名前が載っておりました。内容につきましては存じません。
  235. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 私は、そういう三百代言のお役人の人を相手にしてもしかたがありませんから、総理並びに防衛庁長官お尋ねしたいと思うのです。  かつて治安出動のことがしばしば国会で問題になり、かつて治安行動草案、これは廃棄の処分をとられました。それからその後指揮官心得というものをおつくりになりました。この指揮官心得についても国会で問題になり、これを破棄をいたしました。しかるに、先回私は当委員会で御指摘をしたのですが、東京周辺のある自衛隊の幕僚長に私が尋ねました。九月の末から十月にかけて大々的な治安出動訓練をやっておられる。一体何を根拠に訓練をやっておるのかと私が聞きましたら、指揮官心得でやっていますと私に明確にお答えになったのです。少なくとも長官が——当時中曽根長官でありましたが、指揮官心得は破棄をする、廃棄処分をすると明確に国会でお答えになった。しかるに、これが現に第一線では平然と生きているではないかということも実は指摘をいたしたのであります。このように国会で問題になり、治安出動草案、指揮官心得について破棄をいたしました。防衛研修所のこのような調査資料があったことは事実であります。このような不当な調査をやってこられた防衛研修所に対して、今後長官としてはどういう態度で対処なされますか、お考え方をお示しをいただきたいと思います。
  236. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘のような具体的な事実があったとすれば、私、不穏当だと思います。国内のいろいろな政治情勢を調査する、特に安全保障政策について各党間どういう考え方かというようなことを研究するということは、これはあると思うのですが、御指摘のようなことは、これはまことに行き過ぎですから、十分注意を喚起したいと思います。  それから、指揮官心得が前線で生きておるではないか、これは、治安出動というのは一応自衛隊の任務にあるわけであります。これは出動しないことをもって最良とするわけでありまするが、自衛官の心がけとして時に訓練をするということもあろうかと思いまするが、そういう場合に、おそらくその指揮官心得ということでなしに、指揮官が、これはいろいろなケースがありますので、そのケース、ケースに応じて適切な処置ができるように、何か心得というか、指揮の基本になるような心得をメモしたもの、そういうものはやはり必要じゃないだろうか。また、特に相手の形、いろいろな場面が違えば違うほど、これは非常にむずかしい微妙な点もあるだけに、そういうことが誤り伝えられたのじゃないかと思いますが、当然、中曽根長官が公の席で破棄すると言ったものが現存しておるとは、私思えません。
  237. 床次徳二

    床次委員長 山口鶴男君、時間を過ぎましたので簡潔にお願いします。
  238. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 この自衛隊法を読みましても、治安出動その他の権限は総理にございます。前回の委員会でも指摘をいたしました。また今回も指摘をいたしました。少なくとも自衛隊はシビリアンコントロールでなければいかぬ。しかるに、その一線の武官のほうが、廃棄したものが生きているかのごとき言明をするとか、あるいは防衛研修所が——防衛庁長官も、そのような指摘の点があればまことに不穏当なことだ——こういうような研究を現にやった事実がある。こういうことはひとつ総理、十分御認識をいただきたいと思うのです。その上に立って、その最高責任者たる総理のこれら遺憾な事態に対する所見と、今後に対する断固たる御決意というものを承っておきたいと思うのです。
  239. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる緊急出動というものはたいへんきびしい限定的なものでございますし、これがそう簡単に、出動はいつでも予定できる、こういうようなものでないことは、私もよくわかっております。したがいまして、ただいまのような問題を取り扱うにあたって、やや軽率な扱いをしているのじゃないか、これはもう一度総点検してみる要あり、かように私考えますので、そうしてその上でこれについての善処を打ち出す、これをお約束いたしておきます。
  240. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 これで終わりますが、総理は総点検されると約束されました。防衛庁長官、ひとつ総点検は厳重にやっていただきたいと思うのです。その上で、またその総点検の結果については国会に詳細ひとつ御報告をいただくように強く要求いたしまして、委員長からのしばしばの御注意がありますので、一応質問を終わっておきます。(拍手)
  241. 床次徳二

    床次委員長 斎藤実君。
  242. 斎藤実

    斎藤(実)委員 私は、返還協定に関連をいたしまして、なお国内法、これらの問題について順次御質問をいたしたいと存じます。  最初に私は、資産、資金引き継ぎ、三公社並びにその他の引き継ぎにつきまして、本委員会でたびたび論議がかわされておりまして、ある政府委員は買い取りかのような答弁もしておりますし、あるいは積み上げ方式だ、どうも私は納得しない面が多々ございますので、最初に三公社の資産の引き継ぎについて、若干御質問してまいります。  最初に、琉球電力公社は一九五四年布令百二十九号で設立をされた、そして今日まで多額の利潤をあげてきております。創立をしてから今日までどれくらい利潤をあげておられるのか、最初にお答えを願いたいと思います。
  243. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 年間売り上げ高利益率約二割前後が最近までの趨勢でございます。
  244. 斎藤実

    斎藤(実)委員 二割程度ではわかりません。年度別にお願いします。
  245. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 琉球電力公社の利益金でございますが、一九六〇年からでございますが、六〇年度が七十八万ドルでございます。六一年度が百一万ドル、それから一九六二年度が百二十二万ドル、一九六三年度が百六十七万ドル、一九六四年度が百五十四万ドル、一九六五年度が百五十二万ドル、一九六六年度が二百九十五万ドル、一九六七年度が二百八十九万ドル、一九六八年度が百六十二万ドル、一九六九年度が二百六十一万ドル、  一九七〇年度が三百四十六万ドルでございまして、公社創設以来、累計いたしまして一九七〇年度末現在で、利益剰余金が二千二百五十三万四千ドルでございます。
  246. 斎藤実

    斎藤(実)委員 ただいまの答弁で、創立以来余剰金が二千二百万ドル以上になっております。この中で、琉球に対して米国の経済援助資金のうちに、この電力公社から高等弁務官一般資金の運営収入額が相当入っているわけですね、高等弁務官資金として。これはどれくらい入っておりますか。
  247. 前田多良夫

    ○前田政府委員 お答えいたします。  琉球電力公社に対しましては、一般資金から四百九十三万七千ドル入っております。
  248. 斎藤実

    斎藤(実)委員 電力公社の利益の中からどれだけ高等弁務官資金としていったか、その金額を聞いている。
  249. 前田多良夫

    ○前田政府委員 原則といたしまして、これらの三公社からの利益金は全部一般資金に入りまして、それからまた翌年度新しく投資される、そういう仕組みになっておるようでございます。
  250. 斎藤実

    斎藤(実)委員 そういうことを聞いているのじゃないのです。琉球電力公社から——いま御答弁ありましたように、創立から二千二百万ドルの純利益があがっておるわけでしょう。その中からこの民政府に高等弁務官資金として、その二千二百万ドルの中から幾らいっているかと聞いている。
  251. 前田多良夫

    ○前田政府委員 その高等弁務官資金と申しますのがこの私が申している一般資金というものでございまして、一般資金の資産として、この三公社とか琉球銀行とかそういったもののところへの投資額が入っているわけでございまして、毎年毎年利益がこれらの三公社からあがりますと、それが高等弁務官資金に全部入りまして、それからまた翌年度の新しい計画として、またそれらの公社へ投資される、こういうことでございます。
  252. 斎藤実

    斎藤(実)委員 利益の全部が入るんですか。
  253. 前田多良夫

    ○前田政府委員 これは御承知のように米民政府の一般資金の資産なんでございます。この電力公社とかそのほかの三公社、そのほかにもいろいろございますけれども、主としてこの三公社は、一般資金という高等弁務官資金の資産の部に載っかっているわけでございます。それで、その高等弁務官資金を通じて、これが毎年毎年新しい投資も行なわれますし、それから利益があがればそこへも入ります、そういった勘定、そういうやり方をとっておるわけでございます。
  254. 斎藤実

    斎藤(実)委員 私の質問にまじめに答えてくださいよ。  じゃ私、申し上げますが、琉球電力公社の定款によりますと、琉球電力公社の利潤超過額は琉球列島米国民政府の一般基金に納入される。いいですか。利潤のうちで、施設もつくりいろんな経費も出して、理事会の承認を得られれば、それは高等弁務官資金として特別に、琉球電力公社の会計の中とは別に——いいですか。ちゃんと定款に書いてある。お持ちでしょう、定款。定款読んでごらんなさい。
  255. 前田多良夫

    ○前田政府委員 私の理解していますその定款の意味はでございますね、毎年毎年決算がございます、琉球電力公社でいきますれば、それぞれの決算が行なわれまして、そうしてその場合にあがりました利益金が承認されますれば——決算全体でございますが、したがって利益金もその中に入るわけでございますが、それが理事会で承認されますと、それは高等弁務官一般資金に繰り入れられている、こういうふうに考えているわけでございます。
  256. 斎藤実

    斎藤(実)委員 定款には雑収入として、こういう一項目あるわけですよ。いいですか。ですから、この琉球電力公社というのは、民政府の一機関です。そういうことは私も知っていますよ。いいですか。この利益の中から理事会で承認を得て、いろいろな経費を引いて、それを高等弁務官資金として別に民政府のほうに金が出ておるのです。そのことを私は先ほどから言っておるのです。
  257. 前田多良夫

    ○前田政府委員 仕組みについての考え方でございますけれども、私の理解しておるところによりますと、先ほど申しましたように、決算上認められた利益剰余金は全部一応高等弁務官の一般資金に入りまして、そうして翌年度それから幾ら投資するかということがきめられていく、こういうふうに理解しておるわけでございます。
  258. 斎藤実

    斎藤(実)委員 それでは、定款を読んでごらんなさい。会計の一項の中にありますから。定款の中に書いておるじゃないですか。
  259. 前田多良夫

    ○前田政府委員 会計に関する定款第四項というところには、「基金が公社の必要とする額を超過していると理事会が認めた場合には、公社の運営、発電所の改築および拡張並びに非常時に要する資金を考慮の上その超過額は雑収益として琉球列島米国民政府の一般基金に納入される。」このことでございますれば、この規定はまだ一度も発動されてない、こういうことでございます。ここに規定している超過額は一度も発動されてない、こういう状況です。
  260. 斎藤実

    斎藤(実)委員 それは間違いございませんか。いいんですか、それで。もう一ぺん確認の意味で私は申し上げます。
  261. 前田多良夫

    ○前田政府委員 私も一〇〇%そうであるというふうに確言はできませんけれども、そういうふうに理解しております。
  262. 斎藤実

    斎藤(実)委員 答弁する場合は、知らなければ知らないとはっきり答弁してもらわぬと困る。  それでは申し上げますけれども、民政府の発行しておるファクターブックによりますと、最近の数字で私が言いますと、一九六八年三十一万一千ドル、一九六九年三十九万九千四百ドル、七〇年には三十万ドルが、水道公社、電力公社、金融公社、この利潤から高等弁務官資金という名目でいっておるわけですよ。アメリカ政府で、ちゃんとこれは発表しておるじゃないですか。これはアメリカ沖繩統治の政策目標に使われておるということははっきりしておる。どうしてそれを知らないのですか。
  263. 前田多良夫

    ○前田政府委員 申しわけございませんが、そういう数字をつかんでおりません。
  264. 斎藤実

    斎藤(実)委員 私は、この資産の引き継ぎについては重大な関係があるから質問しておる。(「わかる人に聞いたらいい」と呼ぶ者あり)だれかわかる人おりますか。
  265. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私も、その年度別の数字ははっきり覚えておりませんが、そのような資金が弁務官資金として、離島の水のないところの貯水タンクとかあるいはまた飛行場建設の費用、そういうもの等に使われておることを承知しております。
  266. 斎藤実

    斎藤(実)委員 それじゃ長官御存じでしょう。——これがはっきりしませんと、私も質問のしようがない、ほんとうに。これは重大な意味を持っておるのです、これからの質問について。はっきり答弁してください。
  267. 前田多良夫

    ○前田政府委員 一般資金の収支状況表の支出の第三項目、経済援助というところに市町村交付金という欄がございますが、そこには御指摘のように一九六八年に三十一万一千ドル、一九六九年に三十九万九千ドル、一九七〇年に三十三万六千ドルというものが市町村に対して交付された、こういうことの表がございます。
  268. 斎藤実

    斎藤(実)委員 いまの内容は、もっと具体的に言っていただけませんか。
  269. 前田多良夫

    ○前田政府委員 いま申しましたのは、米国所有の一般資金の収支状況でございますので、非常に詳しくは私のほうも存じておりませんが、先ほど申しました収支状況表と申しますのは、おっしゃいますように年々公表されておるものでございますが、それの収入の欄と支出の欄が二つございまして、支出の欄には投資、それから油脂納付金、経済援助、こういう項目がございまして、その経済援助の中に市町村交付金、こういう欄が設けられておりまして、それが先ほど申しました数字でございます。  なお、これは電力公社の利益金がそのままいく、こういうものではないわけでございます。
  270. 斎藤実

    斎藤(実)委員 では、先ほどの答弁は間違いですね。
  271. 前田多良夫

    ○前田政府委員 御質問の御趣旨を取り違えまして、申しわけございません。
  272. 斎藤実

    斎藤(実)委員 私は、この問題を取り上げたのは、資産引き継ぎに対して政府が、三公社についてその積算内容を明らかにするために、そしてまたいろいろ今日まで論議もありましたし、とかくうわさのある高等弁務官については明確にする必要がある。ですから私は、この電力公社が利益の中から——使途はどうか知りませんよ。これは純然たる電力公社の資金です。そこから出ていった、その金額は非常に問題がある。ですから——電力公社の資産を四千四百九十万ドル評価をした、こういうふうに答弁がありましたし、発表もありました。まあ私の率直な、素朴な感じとしては、本来そういった金は、その設備の拡充であるとかいろいろな面で使わるべき性質のものだ。そうでしょう。それが電力公社と関係のないところへ金はいっているということ、国民感情としてこれは非常に問題だ、こういうふうに私は思っておる。それで、この高等弁務官資金については当然四千四百九十万ドルの中から差っ引くなり、あるいは返してもらいたい、こういう気持ちが私は十分ある。この点、どうですか。
  273. 前田多良夫

    ○前田政府委員 従来、この電力公社の毎年毎年あがっていますところの利益金は全部一般資金のほうの収入にあがりまして、それから翌年また投資の欄に計上されておるわけでございます。たとえて申しますと、電力公社には、一九六七年には三百七十三万六千ドル、一九六八年には四百六十二万一千ドル、一九六九年には三百六万七千ドルというぐあいに再投資をされておる、そういうふうに理解しておるわけでございまして、電力公社の利益金が先ほどの市町村交付金に回っているというふうには理解しておりません。
  274. 斎藤実

    斎藤(実)委員 いまの答弁は納得できません。先ほどの私の質問に対する答弁が、それではまた変わってきますよ。どうしてそういう答弁をされるのですか。
  275. 前田多良夫

    ○前田政府委員 もう一度全部申します。  高等弁務官の一般資金の収支状況表という表がございます。この表は何を示したものかと申しますと、高等弁務官の一般資金の毎年毎年の資金の出入りを一覧示表で年別にしたものでございます。そうして、先ほどの琉球電力公社を含めました三公社はこれらの資産ということになっております。つまりアメリカの資産。で、それらの琉球三公社の資産につきまして、年々利益があがりますと、先ほどの超過部分というようなものを除きまして、これはこちらのほうの支出の欄の投資の欄で——実際にこの項目を読んでみますと、(1)石油施設、(2)石油配給基金、(3)琉球開発金融公社、(4)琉球電力公社、(5)琉球水道公社、(6)その他と、こういうふうなものに対して幾ら投資したか、こういうふうに書いてあるわけでございまして、その琉球電力公社の欄を一九六七年以後、先ほどお答えしたわけでございます。そうしますと、それはちょうどその電力公社のあげました利益金というものに相当するわけでございまして、したがいまして、先ほど私が申しましたように、琉球電力公社の利益金は全部再投資されています、こういうことでございます。それが第一点でございます。  それから、先ほどお話のありました一九六八年以降の市町村に対する交付金の金額につきましては、私、最初存じませんものでたいへん失礼いたしましたが、この表によりますと、はっきり経済援助という欄に市町村交付金といたしまして、一九六八年、六九年、七〇年と、先ほど御指摘のような金額がずっと載っているわけでございまして、いずれもこの一般資金の収支状況表には載っているわけでございます。  ただ、私が申し上げたいことは、この市町村交付金がその電力公社の利益金から出されたということになるかならないか、こういう点でございまして、それはどうもこの数字を見る限りにおきましては、琉球電力公社の利益は琉球電力公社にまた再投資されておるというふうになっておるものですから、そのように申し上げたわけでございます。
  276. 斎藤実

    斎藤(実)委員 いいですか、今日まで二千二百万ドルの純利益があったとあなた言いましたね。その中から高等弁務官資金として、先ほど私が指摘しましたように、本来であれば電力公社にその資金が投資をされるべきものでしょう、いいですか、それが民政府にいって——いったことは事実でしょう。それからまた電力公社に返ってきたのじゃないでしょう。どうですか、その点。
  277. 前田多良夫

    ○前田政府委員 おっしゃいますように、金に色目がありませんから、その収入の——たとえて申しますと、一九六九年でそれでは一般資金の収入が幾らあったかと見ますと、一千六百三十一万一千ドルというものが収入としてあがっているわけでございます。で、その中には、いま申しましたような利益金も含まっているわけでございます。それに対して支出というものが、一千六が五十九万八千ドルというのがございまして、その中にいろいろと、先ほど申しました琉球電力公社に対する投資、それからそれと別に市町村交付金というものがそれぞれ行なわれているわけでございまして、いずれにしましても、その年の収入の一千六百三十一万一千ドルという全体の金の中から琉球電力公社へも、先ほど申しましたように回っておりますし、それから市町村の交付金にも回っているわけでございまして、どこの部分がどこへどういうふうに回ったかという表にはなっておりませんものですから、先ほど来申しましたように、矛盾はいたしませんわけでございます。つまり、金額で見合ったところを見ると、これは利益金がそのまま再投資されているなと、こういうふうに読むというわけでございまして、それは全体の資金の収支でございますから、どの部分がどこへ流れたか、こういう点ははっきりしないわけでございます。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  278. 斎藤実

    斎藤(実)委員 私の質問をよく聞いてくださいよ。時間がもったいない。  その高等弁務官へ行った金が、あなた、さっき認めたでしょう、その金が、いいですか、三分の一かどうか知りませんよ、半分かどうか知りません、また琉球電力公社に還元されたかと私は聞いているのです。そんな長ったらしい答弁は必要ないんですよ。幾ら幾らそれがどっかへ使われた、そのうちの幾らまた返ってきているのかと、そのことを聞いているのです、私は。わからなければわからないでいいですから。
  279. 前田多良夫

    ○前田政府委員 御質問意味を取り違えておればお許しいただきますが、はっきり申しますと、先ほど、二千二百五十三万四千ドルばかりが総計の、累積の利益剰余金である、電力公社があげた毎年毎年の利益剰余金を合計いたしますと二千二百五十三万四千ドルになりますと、こう申し上げておるわけでございますが、これはたとえば、琉球電力公社の一九七〇年年次報告書の二三ページの「比較損益及び剰余金計算書」の一番下の欄の「利益剰余金期末残高」という欄と一致しているわけでございますから、つまり、毎年毎年の利益というものはそのまま蓄積されて、一文も外へは流出していないと、こういうふうに見るべきであろうと思うのでございます。
  280. 斎藤実

    斎藤(実)委員 私は、その答弁、納得しません。  それではお尋ねしますけれども、いま、あなたは、一九六八年三十一万一千ドル、一九六九年三十九万九千四百ドル、七〇年三十万ドル、これが三公社の利益金だ、高等弁務官資金だと言いましたけれども、それじゃこの七〇年度の三十万ドルは、電力公社が幾らで水道公社が幾らで、金融公社が幾らか、その数字をひとつ明らかにしてもらいたい。
  281. 前田多良夫

    ○前田政府委員 これも御質問の趣旨を取り違えましたら申しわけございませんが、三十一万一千ドルあるいは三十九万九千ドル、三十三万六千ドルというのは、先ほども申しましたように、一般資金のそれぞれの年におきますところの市町村交付金という欄に計上されているわけでございます。  そこで、それの原資ですね、ではそれはどこから来た金なんだ、水道公社から幾ら来て、それから電力公社から幾ら来て、開発金融公社から幾ら来たのだ、もしこういう御質問でございますれば、そういう金に糸目はございませんものですから、先ほど申しましたように、一般資金のその年の収入総額からそれぞれ支出されてきている、こういうことでございます。
  282. 斎藤実

    斎藤(実)委員 私は、琉球電力公社に限っていま質問しているわけですね。ですから、このことについては、この資産の評価にいろいろ関係してくるわけですよ。あなたは先ほど、金に糸目はどうとかこうとか言っていましたけれどもアメリカの民政府ではっきりファクターブックで発表しているのですよ。先ほど申し上げましたような金額は、琉球電力公社あるいは水道公社、金融公社から入った金がこれこれだというふうに、民政府でちゃんとはっきり発表しているのです。あなたの資料はどういう資料か知らぬけれども、これは一番確実じゃないですか。
  283. 前田多良夫

    ○前田政府委員 収入は、私たちの資料によりますと、収入欄というのが、「事業収入」、「その他」と、こういうふうに分かれております。ですから、それらの事業収入の中に入っているということは確実でございます。その細部については承知しておりません。
  284. 斎藤実

    斎藤(実)委員 これは私は重大な問題だと思いますので、委員長、この資料の提出については、ひとつしかるべくお取り計らい願いたいと思います。これでは進まないですよ。
  285. 前田多良夫

    ○前田政府委員 私たちの持っている限りの資料は提出いたします。(「正確な答弁をしなさいよ」と呼ぶ者あり)  答弁の補足をいたします。  先ほどの御質問に対しまして、電力公社が幾ら収入があがったかわからないと、こういう答弁でありましたが、電力公社のその年の収入の全部が翌年に再投資されているということは事実でございます。
  286. 斎藤実

    斎藤(実)委員 先ほどの答弁と違いますね。どうしてそういうふうに、前の答弁とくるくる変わるのですか。わからなければわからないと——私は、こういったことを中心にきょうやろうと思って組み立ててきておるわけですよ。これでは何も質問できないじゃないですか。
  287. 前田多良夫

    ○前田政府委員 各年別に申し上げますと、一九六〇年の利益は七十八万七千四百八十二ドル、これがそのまま収入になっております。六一年、百一万四千百三十一ドル、六二年、百二十二万三千八百七十六ドル、それから六三年は百六十七万六千九百三十四ドル、六四年は百五十三万七千百五十六ドル、六五年は百五十二万三千四百八十五ドル、六六年が二百九十五万三千百二十三ドル、六七年が二百八十九万五千四百六十七ドル、六八年が百六十二万一千三百三十ドル、六九年が二百六十一万六千五百五ドル、七〇年が三百四十六万七千六百四十四ドル、合計いたしまして、二千二百五十三万四千三百六十八ドル、こういうことでございます。これが毎年毎年の収入にあがっております。
  288. 斎藤実

    斎藤(実)委員 これは三公社の合計でしょう。
  289. 前田多良夫

    ○前田政府委員 これは琉球電力公社でございます。
  290. 斎藤実

    斎藤(実)委員 先ほど私が申し上げましたように、電力公社中心に質問をしておるわけですね。その中で、先ほど申し上げましたように、高等弁務官資金として一九七〇年に三十万ドル、三公社分としていっておるわけです。それは民政府も認めておるわけでしょう。いいですか、よく聞いてくださいよ。三十万ドルが三公社からいっているわけですよ。その中で電力公社の分として、三十万ドルの中で幾らだと私は聞いているのです。おわかりですか。ちょっとよく聞いてくださいよ。民政府で発表しているわけですよ。七〇年は三十万ドル、三公社から高等弁務官資金として来ています。六九年には三十九万九千四百ドル来ておりますと、はっきり言っているわけでしょう。私はこれから質問するのは、琉球電力公社のことを質問するわけですから。じゃ七〇年に三十万ドル、三公社から集まった金の分で、その中で。琉球電力公社が高等弁務官資金として払った金が幾らか、これを聞いているんです。意味がおわかりですか。
  291. 前田多良夫

    ○前田政府委員 質問の御趣旨はわかりました。三十一万一千ドルというような市町村に対する交付金があるが、そのうち幾らが電力公社の収入から入ってきているか、こういう御質問だと思いますが、これは先ほど申しましたように、この収入というものが琉球電力公社の利益金ばかりではございませんので、いろいろな事業収入がございます。そういう関係で、その細分については存じておりません。
  292. 斎藤実

    斎藤(実)委員 そういうふうに一言でいいのです、わからないならわからないと。さっきから……。では、この件については、また後ほど質問します。  それから、電力公社に金武発電所というのがございます。それから新牧港。それで、政府のほうでは、この琉球電力公社の引き継ぎ資産評価は四千四百九十万ドルだ、こういうふうに言われておりますね。この四千四百九十万ドルの財産の評価はどういうふうにしたのですか。これをまずお聞きしましょう。
  293. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 琉球電力公社の資産の評価でございますが、まず、固定資産につきましては、一九七〇年六月三十日を評価時点といたしまして、その時点におきまする再調達価額を求めまして、それからわがほうの税法に採用しております減価償却の耐用年数を使いまして、その減価償却相当額を控除したものをもってその時点における資産評価額としたわけでございます。あとは流動資産、負債、これは帳簿価額によっているわけでございます。  このうち、御指摘のありました金武発電所、この評価額が一千八万二千ドルでございます。それから新牧港の発電所、これは一千百六十三万九千ドル。そのほかに、新牧港の発電所は現在建設中でございまして、建設仮勘定で九百五十一万八千ドルというのが計上されているわけでございます。
  294. 斎藤実

    斎藤(実)委員 そうしますと、金武発電所については、ガリオア資金のほかに融資を受けたというものはありますか。
  295. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 金武発電所につきましては、米国の財務省からの借り入れ金、これがその当時一千二十四万七千ドルでございまして、これは五年据え置き、二十五年償還ということで、負債の借り入れ金の部に計上いたしております。
  296. 斎藤実

    斎藤(実)委員 そうしますと、アメリカから一千二十四万ドル融資を受けておるわけですね。利子と償還年限は幾らになりますか。
  297. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 利子は四・一二五%でございまして、償還年限、これは五年据え置き、二十五年間の年賦でございます。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  298. 斎藤実

    斎藤(実)委員 五年据え置きで、四・一二五%の利子ですね。五年据え置きで、初年度に払う利子は、金額は幾らになりますか。
  299. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 実は初年度のは、ちょっと私、数字を持っておりませんが、この一年間の利子の支払い額でございますが、これが約三十七万ドル程度でございます。
  300. 斎藤実

    斎藤(実)委員 そうしますと、この一千二十四万ドルをアメリカ財務省から借りておる。じゃ、この借り入れ金は一体どうなるのですか。これはアメリカに払うのか、あるいは帳消しになるのか。その債務はどこが引き継ぐのですか。
  301. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 これは琉球電力公社の現在固定負債でございますので、これが復帰時点におきましてはその権利義務の関係、これを一たん日本国政府に移転いたしますが、これは御審議願っております法案にもございますように、新しくできます沖繩電力株式会社、ここに一切の権利義務が承継されますので、新しい電力公社の負債となるわけでございます。
  302. 斎藤実

    斎藤(実)委員 そうしますと、四千四百九十万ドルをアメリカに払う。そのほかにアメリカに一千万ドルを払うということになれば、これは一千万ドルプラスの勘定になりますよ。
  303. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 そういうことではございません。資産の評価にあたりましては、純資産が私ども言っております四千四百八十八万ドルでございまして、固定資産の合計六千九百四十六万八千ドルから、ただいまの米国からの借り入れ金を含めました負債、三千二百九十八万六千ドルを控除したものをもって評価の中に入れておりますので、ダブることはございません。
  304. 斎藤実

    斎藤(実)委員 国民は、三公社とその他を含めて一億七千五百万ドルで一応けりがついたんだ、こういうふうに思っておるわけですよ。こうなりますと、実際にアメリカにまた一千万ドルの支払いが残るということは私は納得できませんし、この問題については、後ほどまたあわせていろいろ質疑をしていきたいと思います。  それから、次は新牧港の発電所についてお尋ねをいたします。この建設費は幾らかかりましたか。
  305. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 現在まだ建設途上にございますが、先ほど申し上げましたように、そのうちの約二千万ドルくらいを現在——新牧港の発電所、実は五号と六号、それから七号とあるわけでございますが、一応五号、六号の二つができ上がりましたので、その分が千百六十三万九千ドルという評価でございます。
  306. 斎藤実

    斎藤(実)委員 二千万ドルか二千二百万ドルか、これはいずれがほんとうですか。
  307. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 実は、全部を入れますと二千万ドルから二千二百万ドルというように、私は承知しております。
  308. 斎藤実

    斎藤(実)委員 琉球電力公社ではっきり発表しているわけですね、二千二百万ドル。これはこれで——いま答弁がありましたように二千万ドルから二千二百万ドル、こういう答弁ですから、まあ二千二百万ドルで参ります。  そうしますると、これは自己資金でつくったのか、あるいはどこの銀行からか借りてやったのか、この辺はどうでしょうか。
  309. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 新牧港発電所の建設につきましては、その一部を民間からの借り入れ金に依存いたしております。その金額は一千五百五十万ドルでございます。
  310. 斎藤実

    斎藤(実)委員 民間から借りたと言いますが、どこの銀行でしょうか。
  311. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 実は、これは正確に申し上げますと建設工事未払い金という債務でございまして、三井物産がこの建設工事を請け負いまして、これが延べ払いということになっておりますので、そのうちの二〇%を払いまして、残りの八〇%を十年賦ということで、利子は五分五厘でございます。
  312. 斎藤実

    斎藤(実)委員 いま答弁がありましたけれども、一千五百五十万ドルは、先ほど民間から借りたと言っておりますけれども、この琉球電力公社の資料によりますと、日本輸出入銀行から低利、長期の融資をしたとはっきり書いてある。この点どうなんですか。
  313. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 御指摘のように、輸出入銀行の金を三井物産が使ったわけでございます。
  314. 斎藤実

    斎藤(実)委員 どこの銀行からと言ったら、銀行の名前を言ってもらわないと困りますよ。  それではお尋ねをします。この輸銀の債務の件ですが、これは一体どうなるのですか。この電力公社資産の評価の中には輸銀の名前は全然出てない。
  315. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 固定負債の中の建設工事未払い金という科目がございますが、この中に、ただいまの三井物産に対する未払い金があるわけでございます。
  316. 斎藤実

    斎藤(実)委員 この中には、輸出入銀行から低利、長期の未払いによる融資でまかなわれた、こうはっきりいっているじゃないですか。いかがですか。
  317. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 実質的にはおっしゃることかもしれませんが、あくまでも債権者の名義は三井物産、名前は建設工事未払い金という、こういう債務勘定でございます。
  318. 斎藤実

    斎藤(実)委員 そうしますと、輸銀から三井物産が借りて、債務はそれじゃどこが引き継ぐのですか。だれがこれを引き継ぐのですか。
  319. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 先ほど申し上げました米国財務省からの借り入れ金と同じように、新しくできます予定の沖繩電力株式会社がその債務を承継するとなるわけでございます。
  320. 斎藤実

    斎藤(実)委員 そうしますと、沖繩電力株式会社がこの債務を今度は引き継ぐわけですね。そうしますと、この資産の評価、新牧港一千百六十四万ドル、プラス一千五百五十万ドル、輸銀、そうしますと二千七百十四万ドルの資産の評価になるのじゃないですか。そうでしょう、資本を投下したのですから。ですから、この電力公社の資産の評価額は一千百六十四万トル、これにプラス——沖繩電力公社に負債を引き継ぐわけでしょう。そうすれば一千五百五十万ドルがプラスになって、この資産の評価額が二千七百十四万ドルにならなければおかしいんじゃないですか。
  321. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 私が先ほど申し上げましたように、この公社の評価は、資産マイナス負債でやっておりますから、この新牧港発電所について見ますと、二千万ドルを投資する、それが資産でございます。それから債務のほうに千五百万ドルがあるとすれば、二千万ドル・マイナス・千五百万ドル、そういう評価をしたわけでございます。あくまでも資産マイナス負債という純資産で評価したわけでございますので、そういうおっしゃるようなことにはならぬと思います。
  322. 斎藤実

    斎藤(実)委員 私はこの問題についてまたあとで論議をしますけれども、そうしますと、この一千五百五十万ドル、これの利子は年間幾らですか。
  323. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 年間の利子は五分五厘でございますので、約十七万ドル程度でございます。
  324. 斎藤実

    斎藤(実)委員 私はいまの答弁を聞きまして、金武発電所、これがアメリカの銀行に対する利子が年間三十七万ドル、それから輸銀の金利が十七万ドル、利子だけで五十四万ドルですね。こういう計算になりませんか。
  325. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 その二つに関しましてはおっしゃるとおりでございます。これは費用として落ちておるわけでございます。
  326. 斎藤実

    斎藤(実)委員 私はいまこの質疑を通して感ずることは、琉球電力公社の利潤というものは、現在でさえ年間百二、三十万ドルでしょう。そうすると、銀行の利子だけで五十四万ドル、そのほかに今度は元利が入ってくるわけでしょう。こういったことになりますと、私は、沖繩の電力事業というものははたしてこれで経営が成り立つかどうか、おそらく百万ドル以上になってしまうのじゃないか、これで何らかの措置を講じなければ沖繩の電力の問題は解決をしないと思うのですが、どうですか。
  327. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 お答えいたします。  復帰後の沖繩電力公社の経理については、まだ確定していない要素が二、三ございますので、正確な数字として申し上げることはできませんけれども、従来比較的安かった原油の値段がある程度上がるとか、あるいは土地の借り入れ料が上がるとか、あるいは今後新規投資をする資本負担の問題という点がございます。しかし、そういった点は配慮いたしまして、政府といたしましても、復帰の際に、原油の関税を五年間免除するとか、あるいは事業税、固定資産税について特別措置を講ずるとか、あるいはまた、来年度の予算要求におきましては、新規発電所の建設に必要な資金について、特に資本コストを薄めるために所要の優遇措置を要求しておる次第でございます。
  328. 斎藤実

    斎藤(実)委員 外務大臣にお尋ねしますけれども、三公社その他の資産の引き継ぎ時で一億七千五百万ドル、国民は、その金額で一応はもうこれでケリがついたんだ、こう受け取っておりますよ。ところが、輸銀に対しては一千五百五十万ドルの債務がまだ残っておるわけだ。アメリカに対しても一千二十四万ドルの債務をまた背負うことになる、引き継ぐわけですから。そうすると、それだけ国民アメリカに対して支払いがプラスになる。こういうことは私は非常に疑問だし、納得もできないし、多くの国民が疑惑を抱く原因になるのではないか、このように私は考えるのですが、いかがでしょうか。
  329. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 確かに、ただいま御指摘のように負債も引き継ぐのです。ですから、それに伴う元利の償還と、こういうことはあります。しかし、他方において資産も引き継ぐのでありまして、その資産が負債と比べますと非常に超過しておる。そうような状態でありますので、その資産の超過分に対しまして支払いをアメリカ政府に対して行なう、こういう措置をとったわけなんです。まあ企業体を引き継ぐわけです。ですから、その企業体には資産面も負債面もある、その負債に対してその企業がその支払いの責任に任ずる、これはあたりまえというか、当然のことであります。
  330. 斎藤実

    斎藤(実)委員 いま大臣の答弁もございましたけれども、私はこの件についてはいろいろ疑問もあります。納得いたしません。  時間も過ぎましたので、次の問題に移ります——大蔵大臣来ていますか。——通産大臣来ていますか。——いま電力公社について質疑をしてまいりましたけれども、先ほど申し上げましたように、沖繩の電力の事業というものは、非常に施設も古いし、また民間の需要もこれから伸びるであろう。政府のほうでも返還後の電力会社についてはいろいろ検討もされておるでしょうけれども、私はこの際一点だけお聞きをしておきたい。  この電力問題、電力料金についても非常に問題にしておりますし、安い安定した供給を望む声が沖繩県民に非常に強い。したがって、政府としてこの電力問題の解決についてどう対処されるのか、基本的な問題についてお答えをお願いします。
  331. 三宅幸夫

    ○三宅政府委員 御指摘のとおり、現在の沖繩の電力の企業形態は、本土と比べてやや複雑な姿になっております。理想論として、民営一貫、効率的な一貫体制が好ましいと考えられますけれども、とりあえずはわれわれは現在の琉球電力公社がやっております仕事を国の特殊法人として引き継ぎ、当分の間は経理の安定、料金の安定並びに保安施設の整備強化、こういったものについて当面の努力を集中してまいりたい、かように考えております。  将来のあり方につきましては、現在審議をいただいております法律にもありますとおり、別途の機会に十分慎重に検討したい、かように考えております。
  332. 斎藤実

    斎藤(実)委員 だいぶ最初に時間をとってまいりましたので、次に進みます。  では、これは外務省にお尋ねをします。  現在、沖繩の那覇を通って与儀、浦添、それから嘉手納と、それから天願を通って嘉手納に行っておるアメリカ軍の油送管の道路についてお尋ねしたいと思います。これは私も沖繩へ行って実際に見てまいりましたし、沖繩住民がこの問題について非常に関心も持ち、また不安を持っておりますので、この点についてお尋ねをしておきたいと思います。  なぜ私がこの道路の下を通っているアメリカ軍のパイプの問題を取り上げるかと申しますと、一九六七年あるいは一九六八年、これは嘉手納ですが、その基地のパイプが破損をして大量のジェット燃料が流れて、嘉手納の村が、一歩間違えば村全体が大火災になるという事件が起きました。私も現地を見てまいりましたけれども、こういった危険な事態がいつ起きるかもしれないという危険な状態にありますので、私はあえてこの問題について政府の考え方を繩いたいと思います。  具体的な問題から御質疑をしてまいります。  このアメリカ軍のパイプラインは、どこからどこまで通っておりますか。
  333. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 沖繩本島にあります米軍用のそういう施設は、大刷して二つに分かれておりますが、一つは、那覇港湾施設から浦添市、宜野湾市を通りまして嘉手納の飛行場へ至る系統、いま一つは、天願のブースター・ステーションから嘉手納飛行場に至る系統でございまして、このほかにホワイト・ビーチの地区に、那覇、嘉手納の関係とは関係のございません独立した貯油施設がございます。これらを結びます送油管の総延長は約六十四キロメートル、そのうちの約三十キロメートルが米軍の基地内に布設されておる、こういう状況でございます。
  334. 床次徳二

    床次委員長 斎藤君に申し上げますが、正木君から関連質疑の申し出がありますが、斎藤君の持ち時間の範囲内でお願いすることに申し合わせができておりますので、そのつもりで御質疑を続けていただきたいと思います。
  335. 斎藤実

    斎藤(実)委員 いま答弁がありましたけれども、基地と基地との間——基地がありますね、その基地の外を通っているパイプラインで、舗装されているところが何キロで、舗装されていないところは幾らですか。基地の中は要りません。
  336. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 米軍の基地の外に布設されておる送油管でございますが、これは一部は、公道、公の道路の下あるいは公の道路のわきに埋設されておりますが、大部分は、いま御質問のように、本来の道路以外の用地に布設されておる。それは事実上の道路といたしまして一般にも使用されておる。ただし、そこのところは、いまおっしゃるように、十分な舗装、あるいは道路の強度といいますか、そういうものが不十分でございますので、それを通ります車両等につきましては重量制限がございます。  そこで、いまのお尋ねの、その距離がどれくらいであるかということについて、ちょっと資料を持っておりませんけれども、その部分がむしろ非常に多い。公道の下あるいは公道のわきよりも、それ以外の送油管の用地を一応の道路として使用している、そういう部分が非常に多い、こういうふうに承知しております。
  337. 斎藤実

    斎藤(実)委員 施設庁長官、簡単に言ってくださいよ、もう時間もありませんですね。  那覇と与儀の間は舗装されていますね。それでは、与儀、浦添、宜野湾、コザ、嘉手納、ここまでは舗装されているのか、あるいは舗装されていないのか、この点どうですか。
  338. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 正確にはわかりませんが、舗装されていない部分が非常に多いというふうに承知しております。
  339. 斎藤実

    斎藤(実)委員 それじゃ、舗装されていないところに埋設をされている油送管はどういう状態か、御存じですか。——具体的に申しますと、いま埋まっているパイプは何年に埋まって、それは仮設工事なのか、あるいは本格的な永久構造物で埋まっているのか。それから、アメリカ軍が埋めたというその保安基準は、どこの法律で埋めたのか、アメリカ軍の保安基準で埋めたのか、アメリカ合衆国の本土の保安基準で埋めたのか、具体的に説明してもらいたい。
  340. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 送油管の本数につきましては、大体直径八インチのものが三本埋設されておりまして、これはかなり古いものが多いわけでございます。したがいまして、その深さにつきましても、深く埋設されているところもありますし、浅いところもございますので、それにつきましては、先ほど申しましたように車両の重量制限をやっておるわけでございます。  そこで、これの保安基準がどうなっているかということでございますが、それがどういう保安基準を使用しているかということは私どもはよくわかりませんが、米国におきましてはこういう保安については非常に長い経験を持っておりまして、むしろアメリカの保安基準が世界的な基準の指針となっておるということを承知しておりますので、それにつきましては十分科学的な検討を加えられていると思いますけれども、先ほど申しましたように、やはり浅いところ、深いところ、いろいろまちまちのようでございます。
  341. 斎藤実

    斎藤(実)委員 だいぶ確信のない御答弁で、実は私はこの間浦添に行ってまいりまして、実際に調べてまいりました。小さな川がありまして、五メートルくらいの橋がかかっているわけですよ。その下に、もう二十年以上たったような裸の管なんですね。しかも、実際に掘って調べてみましたら、その道路がみなでこぼこ道なんですが、一尺二寸から三寸——図面がありますけれども、そういうところに埋まっておるわけですよ。地域の住民の人はえらい問題にしておるわけですね。この間も、その町の道路のわきの民家が火事になった。ところが、あの水のないときにアメリカ軍がヘリコプターで水をかけたり、雨が降っているとどこかからにじみ出てくるような、油のようなものが浮いてくるというのですね。ですから、町自体としても、特別委員会をつくったり、民政府あるいは琉球政府アメリカ軍に交渉しているらしいのですよ。これは非常に問題がある。私は何とかしてこの問題について早急に——現在バスも通っているのです。このままにしておいたら、いつかまた大事故が起きるのじゃないか。昨年の大阪のガス爆発もそうですよ。車の振動によってガス管がひび割れをして爆発をしたというように結論が出ておるでしょう。この問題について早急に政府が対策を講じなければ、また二度と取り返しのつかないような問題になってくる。それを私は心配するのです。  外務大臣、総理、これは沖繩県民の生命、財産にかかわる問題です。本土並みあるいは沖繩の心と言ったところで、政治の手がそこまで伸びていかなければ、沖繩県民の不安というもの、生命、財産を守るという問題は解決ができない、このことを私は申し上げたいのです。これは佐藤総理と外務大臣から御答弁をいただきたいと思う。
  342. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 沖繩県民の生命、財産、これはもうできるだけ尊重しなければならぬと、そういうふうに考えますので、早急に調査をいたしまして、善処をいたすことにいたします。
  343. 斎藤実

    斎藤(実)委員 善処という、まあはっきりした御答弁がありませんけれども佐藤総理から、これはしかるべく内閣一つの方針として——これはおそらく二十万人ぐらいおりましょう。あの嘉手納から那覇までの間、ずうっと民家がもう密集しておるわけです。この問題についてどう処置されるのか、総理の御所見を伺っておきたいと思います。
  344. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現状についての御注意、たいへんありがとうございました。私も、先ほど外務大臣がお答えいたしましたように、地域住民の生命を守ることは政府として当然のことだと、かように思いますので、対策を十分立てるということにいたします。
  345. 斎藤実

    斎藤(実)委員 それでは、いままで油送管についていろいろお伺いいたしました。同じ道路に埋設をしております沖繩と台湾間の米軍の海底電線、これは御存じですね。で、これについて——よく聞いてくださいよ。沖繩のどこの基地からどの道路を通って海岸に出ているのか、これをお尋ねしたい。
  346. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 政府委員から答えます。
  347. 吉野文六

    ○吉野政府委員 お答たえいたします。  瑞慶覧基地から、一号線を通りまして、ハンビー飛行場から地先水域に入りまして、台湾のマコーレー基地まで行っております。
  348. 斎藤実

    斎藤(実)委員 いまアメリカ局長が瑞慶覧(ずけらん)とおっしゃいましたね。あなたが瑞慶覧(ずけらん)と言っていま思い出したわけです。了解覚書、お持ちですね。これのA表の四十五番、これは何と読みますか。
  349. 吉野文六

    ○吉野政府委員 いまの海底電線は、四十四番のキャンプ瑞慶覧(ずけらん)からでございます。四十五番は瑞慶覧(ずけらん)通信所でございます。
  350. 斎藤実

    斎藤(実)委員 これはアメリカ局長、ズケランというふうに間違いございませんか。——それではちょっとお尋ねをします。三十四番と三十五番、これは何と読むんですか。
  351. 吉野文六

    ○吉野政府委員 三十四は平良(たいら)川、アメリカではデラ川と呼んでおります。三十五は波平(なみひら)ですが、アメリカはハンザといっています。
  352. 斎藤実

    斎藤(実)委員 いまアメリカ局長は、四十五番は瑞慶覧(ずけらん)をスキラン——平良(たいら)川、波平(なみひら)、これは日本語ですね、それから、ローマ字ではデラ川、ハンザと読んだ。どうしてこういうふうに違うんですか。
  353. 吉野文六

    ○吉野政府委員 その辺の事情は各地名につきましてそれぞれ経緯があると思いますが、おそらく沖繩名前といいますか、そういうものをローマ字に直したときに、多少聞き間違いその他がありまして、それでズケランをスキランと書いてスキランといい、またローマ字で書いたために、またアメリカ人がその発音をアメリカ式に発音する、こういうようなことによって、起きたんじゃないかとわれわれは想像しております。
  354. 斎藤実

    斎藤(実)委員 この瑞慶覧(ずけらん)、これについては、北中城村の字瑞慶覧(ずけらん)というふうに、ずっと昔から呼び名がはっきりしておるわけです。それからデラ川については、具志川市平良(たいら)川というふうにちゃんとはっきり地名になっておるわけですよ。いやしくもこれは日米交換の公文書でしょう。ちゃんと日本語でいまあなたも読みましたように、タイラ川、ナミヒラ、ズケランと、こういうふうにずっと言ってきておるわけでしょう。それをアメリカが、たとえそれが呼びやすいからといって、デラ川とかハンザとかスキランというのはおかしいじゃないですか。そうでしょう。タライ川と呼ぶのであればタイラ川というふうにどうしてこれはローマ字で書かないのですか。
  355. 吉野文六

    ○吉野政府委員 われわれといたしましてはあくまでも日本語のテキストを正文として使っておりますから、少なくともわれわれに関する限りこれで不都合はないわけでございますが、アメリカ側は従来の呼び名が彼らとしてもやはり便利である、こういうことで彼らの呼び名に固執していたわけでございます。この点につきましては、名前及び基地を区分けしたり統合したりするときにいろいろディスカスいたしましたが、結局現状のような形になったわけでございます。
  356. 斎藤実

    斎藤(実)委員 いいですか。アメリカが何と読もうと、正式に——いままではいいですよ。これから正式に日本が提供するんじゃないですか。現行はどう読もうともいいですよ。そうでしょうが。これは正式な公文書じゃないですか。アメリカのマイヤー大使と日本の外務大臣が署名しているじゃないですか。もしこういうことになりますと、世界中の人がこれは平良(たいら)川をデラ川というふうに読みますよ。そうじゃないですか。アメリカがそう呼んでいるというからアメリカの言いなりになって、かってにアメリカの言いなりに変えられたらたまったもんじゃない。納得できない。
  357. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど御説明いたしましたように、たとえば平良(たいら)川をなぜデラ川と向こう側は呼んでおったかということから申し上げますと、やはりアメリカ人は、現地の方言というのか、その部落の人たちが使っていることばをそのまま耳でとりまして、そしてデラと書いたわけでございます。したがって正式にタイラと読む読み方もあるでしょうし、また現地の人たち、部落の人たちはデラと呼んでおりますから……   〔発言する者あり〕
  358. 床次徳二

    床次委員長 静粛にお願いします。
  359. 吉野文六

    ○吉野政府委員 したがって、この点についてはどちらが正しいかということは、なかなか言いがたいんじゃないかと考えております。
  360. 斎藤実

    斎藤(実)委員 これは、私も沖繩のこの町や村へ行ってきました。町や村でも、ずっと昔から地元の名前をこういうふうに呼んできているわけですよ。アメリカが何と呼んでいようが、正式な公文書じゃないですか。そうでしょう。いままでどうあろうとも、正式にアメリカに提供するのですから。現在はどうでもかまわない。日本でタイラガワ、ナミヒラ、ズケランというふうに呼んでおるのです。私もここへ地図を持ってきておりますけれども、あすこでも八種類私見てきました。全部ローマ字でタイラガワ、ナミヒラ、ズケランと書いておるわけですよ。そうでしょう。呼び名はどうあっても、昔からの地名なんですから、なぜローマ字でタイラガワ、ナミヒラ、ズケランと書かないのですか。
  361. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど御説明いたしましたように、われわれはあくまでも、タイラガワ、こういう名称で呼んでおりますし、日本側のテキストにもそのように書いてございます。したがって、これはあくまでもこういう呼び名でわれわれは通しております。ただし、アメリカ側はタイラガワではわかりませんから、したがって、三十四については、たとえばデラガワ、こういうように書いてある。そうしないと、向こうもとりあえずは混同を来たして不便である、こういうことでございます。
  362. 床次徳二

    床次委員長 斎藤君に申し上げますが、時間が近づきつつありますので、ひとつ簡潔にお進めをいただきたいと思います。
  363. 斎藤実

    斎藤(実)委員 これは重大な問題ですから、もう少し……。  このナミヒラとハンザなんというのは、実際これはなまりとかなんかじゃないですよ。そうでしょう。日本語でナミヒラと言うのです。ローマ字でハンザ、一体これはどう判断するのですか。ハンザということになりますと、沖繩の村の人はおこりますよ、これは。
  364. 吉野文六

    ○吉野政府委員 三十五の波平(なみひら)につきましては、沖繩ではハンジャと言っておるそうでございます。
  365. 斎藤実

    斎藤(実)委員 局長、デラガワとかハンザとかスキラン、こういう基地の名前はないのですよ、日本には。そういう呼び名の地区はないのですよ。あなたの考えでいくと私は納得しない。そういう地区はないのなら、基地は提供する必要はない、こうも言えるじゃないですか。
  366. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先生のおっしゃることもよくわかりますから——結局、お互いに地域ないしは施設について誤解のないように、こういうことで、便宜上日本側は日本側で呼ぶように書いた、先方は、当面先方の呼ぶように書いた、こういうことになっておりますが、いずれ正式に提供いたすときには、合同委員会でさらに先方と協議いたしまして、先生のおっしゃることもよく考慮いたしまして、お互いに誤解のないように定めていきたいと思っております。
  367. 斎藤実

    斎藤(実)委員 日米合同委員会で話し合うということは、あなたが間違いだということを認めることになるのですか。どうなんですか。
  368. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほどから御説明いたしておりますように、日本側の表はあくまでも日本語で書いたA表でございます。しかしながら、場合によっては将来沖繩で発音されているような呼び名によりまして統一するということも考えられるかと思っております。
  369. 斎藤実

    斎藤(実)委員 局長、あなたの答弁は、全く私は心外ですね。いいですか。沖繩における施設及び区域に関する了解覚書、これは日本の公文書でしょう。そうであれば、日本が基地を提供するのですから、日本古来の固有名詞をはっきり書かせるのがあたりまえじゃないですか。そうでしょう。同じにすべきではないですか。呼び名はどう呼んでもいいんだ、いままでは。呼び名は何と呼ぼうが、発音がどうだ、そんなことはかまわない。いままではいいのです。これから新しく基地としてアメリカに提供するのでしょう。アメリカがこういっているから、こう書いたから、それに同調したのだ、そんな弱腰ということはこっちはないじゃないですか。
  370. 吉野文六

    ○吉野政府委員 基地提供の了解覚書は、日本側と米国側の双方の公文書でございます。それで、日本側は正式の日本語の名称を使いました。先方は、先方に記載されておる正式の呼び名でA表をつくったわけでございます。したがいまして、その結果が今日の了解覚書でございます。しかしながら、将来これらの基地を実際に提供するにあたりまして、合同委員会で、もう一度、これらの呼び名につきまして日米両方の呼び名が統一して同じ名前で呼べるかどうか、こういうことについては検討協議いたしたいと考えております。
  371. 斎藤実

    斎藤(実)委員 局長、いいですか。沖繩の地名というのはなかなか呼び名がむずかしい。わからないでしょう。ですから、みんなこうやってローマ字を読むわけですよ。ところが、八十八カ所ありますね。むずかしい。ちゃんと日本に合わせて書いているのですよ、八十五カ所は。なぜこの三カ所だけ向こうに合わせなければならないのですか。なぜ正式に書かないのですか。八十八カ所のうち、八十五はちゃんと日本に合わせて書いているじゃないですか。なぜ三つだけそういうふうに変えるのか。だれが聞いたってこれは納得しませんよ、あなたの答弁では。私はこんなことやりたくないです。もう時間が先ほど委員長から——納得できる答弁してください。
  372. 吉野文六

    ○吉野政府委員 われわれといたしましては、現地、つまり沖繩の呼び名に従いましてなるべくそれに近い名称で統一いたしたい、こういうように考えております。
  373. 床次徳二

    床次委員長 斎藤君に申し上げますが、お約束時間が経過しておりますし、関連質問の申し出がありますので、ひとつよろしくお願いいたします。
  374. 斎藤実

    斎藤(実)委員 なるべく沖繩の地名に近いように変えたいと思うとは何事だ、一体。これを聞いたら沖繩の人はおこるよ。とんでもない。納得できない。
  375. 吉野文六

    ○吉野政府委員 本件につきましては、先ほど御説明いたしましたように、なるべく双方に誤解のないように、これらの地名について、将来よけいな境界その他につきまして争いが起きないように、アメリカ側の考えておる地域と、それからわれわれの考えておる地域、こういうものを双方で妥協し合って、示し合わして、そして今回の日本語のA表とローマ字のA表になったわけでございます。したがいまして、これを将来最終的にどういうようにきめるかという問題は、また今後もその機会がございますから、そのときまで検討さしていただきたい、こういうようにお願いいたします。
  376. 斎藤実

    斎藤(実)委員 局長、これは相談をして、あとできめたいとか、そういう問題じゃないのですよ。そうでしょう。これはもうだれが見たって納得しませんよ。八十八カ所のうち、どんなむずかしい日本の字でも、ちゃんとローマ字で書いているじゃないですか。なぜ三カ所だけアメリカの言いなりになって、アメリカのいいように書いているのです。あなたの答弁、全く納得できない。
  377. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これは日本語とローマ字で実体上の違いがあるんだということになると、これは大問題です。しかし、これはそういう実体上の違いはない。まあ、この協定におきましても、われわれは、われわれの国のことを「日本国」と言っています。アメリカでは「ジャパン」と言っています。この「日本国」と「ジャパン」に違いがあれば、これはたいへんなことです。ですから、いま御指摘の点は、もしこれが沖繩の皆さんに感情的に非常に問題があるとかいうようなことでありますれば、ローマ字名前を変えることは、これは私は努力してみたい、そういうふうに存じております。
  378. 斎藤実

    斎藤(実)委員 外務大臣、私はもう呼び名のことを言っているのじゃないのです。いままではいいんですよ、何と言おうと。これはもう沖繩施政権は向こうにあるのですから。今度新しく——いま何と言おうと、現行のことを私言っているのじゃないですよ。新しく協定と公文書としてこれから新しくアメリカに提供するわけでしょう。そのときに、呼び名はどうであろうとも、日本でずっと昔から呼びなれているその名前になぜしないのか。私は呼び方を言っているのじゃないのですよ。そうでしょう。八十八のうち八十五まではちゃんと日本のこういう、同じに書いてあるわけです。なぜ三カ所だけこういう——何か意味があるのですか。私は納得できないのです。全部が全部そうだというなら私はわかりますよ。答弁してください。
  379. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 それは「日本国」というのを「ジャパン」となぜ言うのかというのと私は同じような感じがするんです。しかしながら、沖繩県民の感情なんかを考慮しまして、これは統一したほうがいいという問題でありますれば、統一するのにやぶさかではない、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  380. 斎藤実

    斎藤(実)委員 まあ「ジャパン」の例が出ましたけれども、先ほどから申し上げますように、私は、どう言うとかなんとか、そんなことじゃないですよ。あくまでも日本の名前に合わして、呼び方はどうあろうとも、それによってローマ字で書くべきじゃないかと私は言っているわけですよ。そのことを私は問題にしているのです。答弁してください、外務大臣。
  381. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 斎藤さんのおっしゃること、わからぬでもありません。まあ努力いたしましょう。
  382. 斎藤実

    斎藤(実)委員 外務大臣、努力というその答弁でございますけれども、いままでのやりとりを聞いていて、どうも私は、努力するという答弁に対してはすっきりしない。このことについては、非常に沖繩県民も憤慨しておるわけですよ。このことについてはどうも私納得できない。この八十八カ所に対して半分とかなんとかというのならいいんですけれども、三カ所だけ、私はこの問題については納得できません。しかし、検討したいということの意味は、これは間違いなのか、その点はいかがですか。
  383. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 実体について相互の理解が違うということであれば、間違いであり、非常にこれは重大な問題であります。しかし、実体が同じだ、こういうふうに確信をいたしております。ただ、沖繩の県民の感情なんかで、どういう扱いをしたほうがいいのか、こういう問題はあるいは残るかもしらぬ。その辺をよく調査いたしまして、そのほうがいい、こういうふうに判断いたしますれば、アメリカと談判いたします。
  384. 床次徳二

    床次委員長 斎藤君に申し上げますが、もう予定の時間がだいぶ過ぎておりますので、委員会の進行に御協力を願いたいと思います。
  385. 斎藤実

    斎藤(実)委員 私は、この問題についていろいろ質問いたしましたけれども、断固談判する、こういう前向きの答弁をいただきましたけれどもアメリカに対しては、ひとつ核の問題基地の縮小についても断固談判をするような意気込みで交渉願いたい。お願いしますよ。
  386. 床次徳二

    床次委員長 斎藤君に申し上げますが、ひとつ時間を厳守していただきたい。多数の方がまだ残っております。なお関連質疑も予想されておりますので、御協力をお願いします。
  387. 斎藤実

    斎藤(実)委員 次に、公用地の問題について私お尋ねをいたします。特に私は、告示あるいは通知、こういったことについて若干質問いたします。  本法によりますと、公用地等のための法案について、手続を経て国が使用することになっているのかどうか、私は、この手続問題について、最初に、どういうふうになっているか、お伺いをしたい。
  388. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 この法案の第二条第二項にございますように、「前項各号に掲げる土地となるべきものの区域又は同項第一号に掲げる工作物となるべきもの及び当該土地又は工作物の使用の方法」につきまして、これは復帰の前に告示をするということになっております。この告示の性質は、この使用権の対象になりますものが、自分の土地がその告示の中に含まれますところの区域の中に入っているかどうかということを容易に判断できるような形において告示をしなければならない、かように考えます。そしてこの告示で一応国の行政処分としての性質を持たしておりますので、それに対しますところの異議の申し立てなりあるいは行政事件訴訟法によりますところの抗告訴訟等はできる、そしてこの告示が効力を発生いたしますのは、現実に使用権が発生いたしますのは、もちろん、この法の施行の日でございます。そしてその後、法の施行後遅滞なく各人に対しましてそれぞれその土地の所在なりあるいは種類なりあるいは数量なりをその所有者あるいは関係人に通知をする、そしてその所有者の住所なり氏名が明らかでありません場合には公に公示をする、こういうふうな手続を踏むことになっておるわけでございます。
  389. 斎藤実

    斎藤(実)委員 私は問題にしたいのは、国が通常土地を使用する場合には、協議に基づいて了解の上で使用するというのが私は原則だと思う。この法律は、法律という国家権力によって土地を一方的に使用するというところに、これは本委員会でたびたび論議されたように、こういったところに私は問題がある。法律に基づいて国が使用する場合にも、事前に個人に通知をするということは原則だ。これは今日までもやられてまいりました。今回の公用地法案は、残念ながら事後通知です。こういったことから、沖繩の県民あるいは本土においても、この法案が非常に憲法違反の疑いもある。ですから私どもは、たびたび本委員会で数多くの委員が論議を重ねてまいりました。それでこの問題について若干質問いたしますけれども暫定使用期間は、この法律の施行の日から五年をこえない範囲で土地等の種類等を考慮して政令で定める、こうなっておりますね。ですから、この五年、ここに問題がある。私は、なぜ五年にしたのか、この点について簡単にお答え願いたいと思います。
  390. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 御指摘のように、この土地の使用権の取得につきましては、極力地元の土地の所有者あるいは関係人と交渉いたします。これはもう最後の日までこれを続けるつもりでございますけれども、一部それに応じない方が出てくるということが予想せられます。そこで、それ以外にも、たとえば海外に移住しておられる方、あるいは住所が不明な方という方がどうしてもおられます。現実にアメリカが収用しておる人たちの対象の中にもそういう方々がおられるわけでございますので、そういう方々をさがし出しましてこれと契約をするということにはやはり相当な日時がかかる。また、契約に最後まで応じてくれなかった人たちがどれぐらいの人数になるか、これはまだわかりません。これからの交渉によりまして、その範囲がおのずから明らかになってくると思いますけれども、現在のアメリカが施政権下におきまして収用しておる人たちの数等から判断しますと、やはりある程度の数、契約に応じない方が出てくるということが予想せられるわけでございます。そこで、この法律は、本来は、ここでも議論がなされておりますように、米軍の土地につきましては特別措置法、あるいは自衛隊の土地につきましては土地収用法、こういう本土にあります法令を適用して取得するというのが本来の姿であろうと思いますけれども、この手続を、アメリカの施政権下におきまして、つまり復帰前に手続をとるということができませんので、これは復帰後にそういう手続をとるということになりますれば、やはりこれも相当な期間が予想せられる、そういうことをいろいろ勘案いたしまして、この基地は、今後の米軍なりあるいは自衛隊の使用、あるいはその他各号に掲げておりますところの公社その他の運営に必要な土地の確保、こういう点を考えますと、やはり相当な期間というものを設定しておきませんと、その期間経過後なおかつ今度はその使用が正当な使用でないという状態が来ることが予想せられますので、相当ないろいろなそういう面を勘案しましてこの五年ということをきめたわけでございます。
  391. 斎藤実

    斎藤(実)委員 長官、あなたは、いま、外国に行っている地主がたくさんいるのでなかなかわからない、こういうふうに答弁がありましたけれども、琉球政府は現在地主と相当契約をしておるのでしょう。三万八千人いる地主の中で、外国に行っているのはほんのわずかじゃないですか。外国へ行っているという例は私は多くはないと思う。ですから、この地主についてはほとんどがわかっている、私はこう見てもいいと思うのですが、どうですか。
  392. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 現在琉球政府が地主の人たちと基本契約を結んでおるわけでございますので、もちろん、琉球政府におきましては、地主につきましては相当把握をいたしておるわけでございます。しかしながら、その中には一部海外移住者なり居所不明者という者がおることも事実でございます。そこで、これは私どもが最後までそういう地主の方々との交渉に臨むわけでございまして、この法律は、できればこれは一つの抜かざる法律といいますか、歯どめの法律といいますか、そういう形で終わることが最も望ましい。やはり最後まで私どもはそういう努力を続けていくつもりでございますけれども、やはりその中にそういう方々がどうしても出てくる。その場合に、これをあまり短期間にきめるということになりますれば、またその期間が終了いたしました時点におきまして同様の問題が起こるというようなことも考えられますので、やはりそこはある程度の余裕を持った期間というものを設定せざるを得ない、こういうことで五年というものをきめたわけでございます。
  393. 床次徳二

    床次委員長 斎藤君に申し上げますが、理事会の申し合わせの時間を非常に超過しておりますし、今後の運営に支障がございますので、すみやかに結論を出していただきたいと思います。十分注意して御発言願います。
  394. 斎藤実

    斎藤(実)委員 長官、土地の暫定使用期間は、琉球政府建議書もいっているように、もう五年という問題はこれは一時使用の域を越えるものだ。普通六カ月でしょう。講和発効の際の本土の米軍基地に関する一時使用期間は六カ月だ。あなたも御存じでしょう。ですから、本案では五年という長い期間である、これはまことに問題だ、こう建議書でもはっきりいっているわけでしょう。憲法二十九条の理念にこれは全く反する。この点について私は納得しがたい。いかがですか。
  395. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 講和発効のときに、御承知のとおりに、特別措置法の附則二項におきまして六カ月という期間を設定いたしましたが、これは、それ以前から施政権下におきましてわが国が土地の所有者との間に契約を継続してまいりまして、それが講和発効の事態に及んだわけでございますので、当然地主の方々は十分その実情を把握できた。それから、当時の地主の人数にいたしましても、今度の沖繩の場合は約三倍ぐらいの所有者の数になります。したがいまして、当時の六カ月ということで今度の場合を処理をしていくということには非常な問題があるわけでございまして、これは必ずしも私は前例にならないという感じがいたします。
  396. 斎藤実

    斎藤(実)委員 長官の答弁、全く納得できない。長官も御存じのように、行政処分の告知の方法は、通知と告示というのがあるでしょう。通知が原則で、告示は補足的な手段である。これは長官も御存じでしょう。ところが、本法では一方的に告示によって国が強制使用する。ここに問題がある。ですから私は、国民の土地を強制使用できるという考え方が問題なんだ。こういった考え方、わが国の土地法の歴史の中にも、この問題は、いままではなかなか見られなかったですから、適正な手続ということは、憲法上非常な大きな問題として国民を保護しているわけでしょう。これを政府みずから踏みにじっているというふうに私は指摘をしたいのですが、いかがですか。
  397. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 一定の法律関係なり、あるいは事実行為を一般の人たちに周知をする方法としては、御指摘のように、通知あるいはその他の方法がございますが、実は今度今回の法案で告示を事前に行ないまして、それにこの法律使用権に関する効力というものをかかわらしめましたのは、先ほど、地主その他の関係人につきまして琉球政府自体は相当把握していると申しましたけれども、これは必ずしも十分ではございません。したがいまして、各人に対する通知というものをこの使用権設定の効力にかかわらしめるということになりますれば、そこにやはり問題があります。むしろ、これは画一的に、しかも確実に周知をする方法としては公示が適当であろうということで、事前に公示をすることにいたしたわけでございます。そして、これは国の処分でございますので、やはりそれに対する不服申し立てなり、あるいは訴訟を提起できる、こういうことを可能ならしめまして、地主の方々の権利保障を十分にしよう、こういうことでございます。また、この使用権の取得をいたしました土地等につきましては、当然それに必要な、通常生ずべき損失を補償するということにもなっておりますし、その損失の補償の額につきましては、両者間で十分協議をいたしていく、こういうことでございますので、この法律沖繩復帰という非常に特殊な事態に対処するための一つのやむを得ざる措置として考えますれば、そういう手続面においては、やはりこの程度のものでやむを得ないのではなかろうか、かように感じておるわけでございます。
  398. 斎藤実

    斎藤(実)委員 いまの答弁で、使用もできます、あるいは通知もいたします、公示については不服の申し立てもできます、あなたはいまこういう答弁をされました。なるほど、この告示については、沖繩で告示をするのじゃないでしょう。もう一つは、通知といっても、使用開始後の事後通知じゃないですか。それから、不服の申し立てもできますとあなたは言いましたけれども復帰以前では、沖繩現地ではどうするのですか、不服の申し立てができますか。こういう使用手続に私は問題があるといま言っているのです。こういうことについては私は納得できません。総理、いかがですか。
  399. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいままでの御説明にも出ておりますが、一般的な場合に、つまり新規に人の土地を取りまして、そしてそれを公用、公共用に供しようという場合については、いま御指摘のようないろいろな手段が要るわけでありまして、土地収用法等は実はその手続を定めておるわけであり、それにしましても、土地収用法には、やはり公共的な緊急必要性がある場合にはそういう手続を省く道も現に土地収用法には出ておりますが、それはともかくといたしまして、この法律案のねらいは、いま申したような一般的な場合とはまるで違う場合でありまして、復帰時に公用、公共用の目的に供されている土地が、復帰後引き続き同様の目的に供されないことになると、公共の利益に著しい支障を及ぼすおそれがあることになるので、何とかしてこれらの土地などを復帰時以降も復帰前と同様の用途に供されるようにしまして、公共の利益に著しい支障を及ぼすおそれがないようにしようというのが前提にあるわけです。それには、むろん、布令二十号等による使用権限はこの新たな復帰ということによってなくなりますので、使用者がその土地等の使用について、正当な権限を取得する必要があることになるのは当然であります。したがって、それにつきましては、本土における場合と全く同様に、手段を尽くして所有者等と極力折衝を重ね、使用権限を取得するようにしなければならないのでありますが、先ほど来説明がありましたような事情によって、その権限を取得するまでの間に万一復帰の事期が到来することになりますと、さっき申し上げた土地等が供用されてきた公用、公共用の目的に供されることができなくなる。となると、公共の利益に著しい支障を及ぼすおそれがあることになりますので、やむなく暫定的な期間を限りましてこれを使用することができることにしておこうというものであります。したがって、一般的な場合について言われますことと、この場合についてはまたこの場合に相応するお考えをいただかなければならぬというふうに考えるわけであります。
  400. 斎藤実

    斎藤(実)委員 時間も参りましたので、最後に総理お尋ねをいたします。  総理も御存じのように、沖繩復帰については、総理も、沖繩県民の立場に立ってこれからの作業を進めていくという答弁がたびたびございました。今回のこの公用地法案については、沖繩県民あるいは関係者、学者等、多くの疑惑と疑問を持っておるわけです。ですから、この強制収用法案に対しては、この際、政府においても撤回されるべきではないか、このように私どもは考えておるわけです。これについて佐藤総理の御所見を承っておきたいと思います。
  401. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 公用地暫定使用法案は、ずいぶん長く論議されました。そうしてこれがいわゆる強権発動の法案、それを目的にしておるものではなくて、どこまでも話し合いで公用地を借地権を設定する、こういうことを本体としているのだ、そしてやむを得ない場合があるからという、いわゆる最後のとりでにこの法案が活用されるのだ、かように私は理解いたしております。したがいまして、ただいままでの論議で、皆さま方にもよくわれわれの考えておるその趣旨は徹底しておる、かように私は考えますので、これがいかにも強権発動、それだけなんだ、かようにきめ込まないで、ただいま申し上げるように、本来が話し合いできめることが主である、その点を十分御理解いただけば、御理解も納得もいくのではないだろうか、そうどこまでも反対、こう言わないで、そこらも御考慮願いたい、よろしくお願いいたします。
  402. 斎藤実

    斎藤(実)委員 総理も御存じのように、沖繩は、この基地問題がどこから見てもこれは大きな問題です。ですから、私も先日沖繩公聴会に行ってまいりましたし、八日の東京、大阪の公聴会の話を伺って、沖繩県民にとっては、基地というものは重大な関心を持っておる。本委員会でもたびたび、基地の縮小については、外務当局にどうするか検討を命じているという総理答弁がございました。国会での決議もございましたし、この基地の縮小について前向きに努力をするという佐藤総理の決意は、私はわかります。ですけれども、じゃ具体的にどういう縮小、具体的にどこへ縮小の目標を置くのか、そういったプラン、目標というものが設定されなければ、それは何にもならない。一体どういう縮小するための目標を総理は置いておられるのか、この点について総理の御所見を承りたいと思います。
  403. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これもいろいろいままですでに話されたところでございます。いわゆる特殊部隊という、そういう名前のついている部隊、それが今後も引き続いて存置する、そういう状態があるのかどうか、さらにまた、いろいろの特殊な演習地帯、さようなものも考えられておる、こういうものも整理されるべき筋のものではないか、あるいはまた、具体的に申しまして、レクリエーションの場、それなども相当ある、これなどももっと整理されてしかるべきではないか。つい二、三年前に本土におきましても基地の総点検をやられた、そうしてその総点検が実を結んで、ついせんだって横浜地区なども整理された、こういうような経験もございますので、私は、これらの本土における経験も生かして、これからいわゆる沖繩の基地の整理統合等とも積極的に取り組むべきだ、かように思います。ことに本会議におきましてもこれについての決議がある。この決議の趣旨を尊重すること、これは私も厳粛に政府の所信をお答えしたばかりでありますから、ただいま申し上げる点について、これから粗漏がない、また違背のないように努力するつもりでございます。
  404. 斎藤実

    斎藤(実)委員 以上で終わります。
  405. 床次徳二

    床次委員長 関連質疑の申し出があります。これを許します。正木良明君。  関連質疑でありますので、簡潔にお願いいたします。
  406. 正木良明

    正木委員 非常に自由濶達に斎藤君がやってくれましたので、私は非常に取り急いでやらせていただきますが、いまのA表の読み名ですね。これは外務大臣が、アメリカじゃ日本のことをジャパンと言うし、日本ではニホンと言っているのだという例を引かれたわけですが、これは私は全く違う話だと思うのです。ジャパンということは、これはもう国際的に認め合った公称でありまして、やはり英語で書かれた地図の中にはジャパンと書かれているのです。しかし、ローマ字で書かれた地図の中に、この波平(なみひら)をハンザと書いたり、平良(たいら)川をデラ川だと書いたり、瑞慶覧(ずけらん)をスケランなんて書いてないのです。ちゃんと正確にナミヒラ、タイラ川、ズケランというふうにローマ字が書かれているのです。したがって、これは固有名詞として認め合われたものであって、明らかに私はこれは外務省が、この覚書を署名いたしますときに確認をしなかったのであろうというふうに思うわけです。なぜかならば、もしこのことに十分気がついておって、そこでアメリカ側の注意を喚起して、どうして統一した固有名詞にできないのかということを話し合ったのならば、ああいう答弁は出てこないわけです。今後日米合同委員会において強力に交渉をして、外務大臣のおことばで言うと、強力に談判をしてできるだけ統一するようにしますというような答えは出てこないわけであって、それは何にもしてなかったということ、これは大きなミスであると思うのです。これに答弁をいただいておりますと、私は話がなかなかまた尽きないことになってしまうであろうと思います。実は私は、このこと一つだったって、やはりやり直したほうがいいとは思っておるわけでありますけれども、この点については、日米合同委員会において強力に談判をするという外務大臣のおことばでありますから、まあこれはあなたの署名ではなくて、前の愛知大臣の署名ではありますけれども、このことは、公文書でありますから、統一すべきものであると私は確信をいたしておりますので、そのことは強く要請をいたしておきます。  そこで、ずっとこの審議を通じていろいろやりとりを聞いておりますと、やはり何といっても一番根本的な問題は、沖繩が今後、将来アジア緊張緩和に役立っていく沖繩になっていくのか、従来どおり、きわめて強い、またきわめて高いアメリカの極東戦略の軍事的価値を認めた沖繩であるのかということなんですね。ことばの上では、佐藤総理は、もう何べんも何べんも繰り返して、特殊部隊や核がなくなるのだから、緊張緩和に役に立つのだというふうにおっしゃっておりますけれども、しかし、アメリカの考えておる沖繩の軍事的価値というものは決してそこなわれるものではないし、それは日米共同声明の中に、いわゆる一九六九年の佐藤ニクソン共同声明の中にも明らかに述べられ合っておりますし、同時にまた、その背景説明等におきましても、またサイミントン委員会におけるところの証言によっても、これは明らかなことであります。そこで、やはり何といっても私はこの沖繩の軍事的価値を減じていく、そうしてアジア緊張緩和に大きく役立たせていくように将来持っていこうとするならば、あの中でやはり一番大きな問題になっておる朝鮮条項と台湾条項というものに対して深い考慮をなされていかなければならぬだろうと思うのです。したがって、沖繩自体の問題はもちろん大事な問題でありますけれども、それに対応する朝鮮の問題、台湾の問題というものもきわめて重要な意味を持ってくるというふうに考えておるわけです。  そういう意味において、特に沖繩返還協定の基礎にこの佐藤ニクソン共同声明がなっております。総理のプレスクラブの説明の中にも、そのことが、朝鮮の安全は日本の安全と密接不可分だ、緊要であるというふうな表現で強く述べられておる。したがいまして、この朝鮮問題というものをこの沖繩問題と切り離して考えるわけにはいかない、どうしても、この沖繩問題を討議していく上にあたっては、この朝鮮問題というものも審議をしていかなければならぬというので、朝鮮問題について二、三お聞きします。一つ一つ区切ってお聞きいたしますとずいぶん時間がかかりますので、できるだけかためて質問をいたします。  これは総理と外務大臣にお尋ねしたいわけでありますが、去る六日に、韓国の朴大統領は、中国の国連復帰による国際情勢の急変、北朝鮮の韓国侵略の準備など、こういうものを理由に国家非常事態を宣言いたしておりますが、この総理の朝鮮問題に対する共同声明の考え方から、いわゆる認識からいっても、私はこの問題は非常に重要な問題として考えていかなければならぬのではないかというふうに考えます。そういう意味において、韓国朴大統領が宣言をいたしました国家非常事態というものについて、この宣言についてどのような情報を入手なさっておるのか、また、それについてどういうお考えでいらっしゃるのか、はたまた、それとは逆に、全く総理や外務大臣の分析では、そういう非常事態宣言が行なわれるような事態ではないと思っていらっしゃるのか、この点についてまずお聞きしたいと思います。
  407. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、実はこの非常事態宣言が韓国において発せられたという情報を聞きましてびっくりしたのです。非常事態宣言といえば、非常に国際間の緊張状態の際に使われる。ところが、金山大使をして韓国政府にその趣旨を確かめさした。そうしますと、中国の国連加盟、それを背景といたしまして、北朝鮮、これはだいぶ気勢が上がってきておる、これが一つ。それに対して、韓国内におきまする国民緊張感、これが非常に不足しておる。つまり、話を総合しますと、国民の精神動員的な意味を持っておる、こういうことであります。したがいまして、この非常事態宣言によって、憲法の制約、これは行なわれない。また、国会の機能を抑制する、こういうようなこともしない。ただ考えられるのは、これは防諜上、諜報防止、そういうふうなことから、国家機密保護、さようないろいろな施策が必要になってくるようにも思う、こういうようなことでありまして、非常に異例なことでありまするけれども国際関係緊張ということが主たる前提ではないのでありまして、国内精神総動員的な性格を持っておる、そういう理解をいたしたのです。私はまた、別に、南北朝鮮間において緊張が高まっておるという認識も、ただいまの段階では持っておりませんでございます。
  408. 正木良明

    正木委員 きょうは特に私の意見を申し上げるということは差し控えて、政府の認識をお聞きしたわけです。したがって、その認識から予想せられることは、おそらく佐藤ニクソン共同声明の中でいわれた朝鮮条項、こういう問題で予想された事態では全くないというふうに総理はお考えになっていらっしゃいますか。
  409. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりです。
  410. 正木良明

    正木委員 けっこうです。したがって、私は、特に韓国は他国でございますので、その政策についてどうこう言うということは内政干渉になりますので、わが国に影響のあるという面でだけしか考えてはいかぬだろうと思います。したがって、その論評は差し控えますけれども、しかし、いずれにしても、韓国における、いわゆる朝鮮半島における緊張状態というものが、わが国の安全というものにきわめて重要な影響力を持っておるという認識を政府はお持ちになっていらっしゃるわけでございますから、やはりこの朝鮮半島におけるような、こういう非常事態宣言をしなければならないというような事態、これは国内的な精神総動員的なものであろうとなかろうと、しかし、そういうものが実施できるような環境というものがつくられつつあるのか、また、つくりつつあるのか、あるということ、これに対して、やはりわが国にとっては、わが国の自衛力を行使したり、ないしは在日米軍の出動について事前協議において何らかの態度を示さなければならぬという事態が起こらないことが一番いいことであると私は思います。そういう意味からいって、やはり南北朝鮮が統一されて、平和国家として生き抜いていってもらうということが、やはり民族の悲願でありましょうし、また、隣国のわれわれの前向きな考え方でなければならぬと思います。しかし、これは直接手を下すというわけにはまいりませんので、どうしてもこれは国連に問題を移さなければならないのではないかというふうに考えます。  この間の参議院協定特別委員会における福田外務大臣の答弁なんかを聞いておりますと、やはり来年の国連総会においては、朝鮮問題はきわめて重要な問題として取り上げられるであろうというふうにおっしゃったように私は聞いておりましたが、その御認識には変わりはございませんか。外務大臣、お願いします。
  411. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 変わりはございません。
  412. 正木良明

    正木委員 したがって、そうであるならば、この朝鮮問題は、かつて国連においてしばしば議論がされておりますし、具体的な決議等も行なわれておるわけであります。特に中華人民共和国政府が中国の唯一の代表として国連に復帰をいたしました。ここにおいて中国代表の演説の中にも、この朝鮮問題がきわめて重要な問題として取り上げられております。そこで、朝鮮問題でいままで国連が議してまいりました幾つかの決議についてお尋ねをしたいわけです。  まず第一に、一九四八年十二月十二日の第三回国連総会における国連の百九十五号決議、これは、内容は、主として朝鮮半島におけるところの合法政府は韓国政府であるということを認めた決議でありますが、この決議は今日もなお有効であるというふうに政府はお考えでありますか。
  413. 井川克一

    ○井川政府委員 一九四八年十二月十二日の第三回総会決議、百九十五号でございます。はい、有効でございます。
  414. 正木良明

    正木委員 この有効の論拠はどこにございますか。もう少し具体的に申し上げますと、国連の決議というものは、一たん決議されれば、その決議が取り消されるまで有効というふうに取り扱われるものでありますか、それとも、一年ごとに、総会ごとに効力がなくなる、こういうふうにおとりになっていらっしゃいますか。おそらく、有効であるというならば、取り消し決議がなされるまでこの決議は有効であるというふうな御解釈ではないかと思いますが、その点お答えになっていただきたいと思います。
  415. 井川克一

    ○井川政府委員 その点についてはいろいろのあれがあるようでございまして、私、国連総会の決議は、あまり自信があってお答えできるわけではございませんが、私の知っておる限り、毎年の総会決議によりまして、おそらく孫引きでこの決議がずっと引用されているのではないかと思いますが、この点は調べさせていただきます。
  416. 正木良明

    正木委員 国連局長は来ていらっしゃいませんか。国連局長に聞いても同じですか。
  417. 井川克一

    ○井川政府委員 国連局長のほうが私よりずっと知っております。
  418. 正木良明

    正木委員 それでは、これは調べて答えてください。  そこで、こうなりますと、この間、十一月十一日の沖繩協定委員会で、福田外務大臣が、一九五一年二月一日の国連総会で、中華人民共和国を侵略者であるという決議がなされたものについて、この決議は事実上消滅したものと考えてよろしいというふうにおっしゃったわけです。これは、中国が国連に復帰をしたから消滅をしたというふうにお考えになったのか、それともまた、ある一定期間が置かれると自然に消滅するというふうにお考えになって、この効力がなくなったというふうに解釈をなさったのか、その根拠をおっしゃっていただきたいと思います。
  419. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 国連は平和愛好国家の集団でございます。その国連に中国が参加をする、こういうことになります以上、中国が侵略者であるというふうにきめた国連の決議は、中国に関する限りにおきましては、もうこれは死滅したも同然である、こういうふうに考えられる。時間がたったから死滅したんだ、こういうのじゃありません。
  420. 床次徳二

    床次委員長 正木君に申し上げます。  理事の協議による関連質疑でありますから、簡単にお願いいたします。結論を急いでください。
  421. 正木良明

    正木委員 すみません。できるだけ急ぎます。  それで、そうなりますと、朝鮮に対する侵略者決議というのもあるのですね。先ほど私が質問いたしましたように、来年おそらく朝鮮問題が大きく国連で取り上げられるであろう。私は、朝鮮の緊張というものを緩和するためには、やはり国連でこの問題が討議される、そして平和的に解決されるということが望ましい、このことは先ほども申し上げたとおりです。そうすると、おそらく来年の国連総会に朝鮮問題が討議されるというときに、いわゆる南北朝鮮それぞれオブザーバーとして代表が招請されるということも考えられないことはないのです。もし南北朝鮮それぞれに国連が招請をして、この朝鮮の統一、平和的統一のために国連の場において議論をするというときに、日本は賛成しますか。
  422. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 南北朝鮮問題が国連で来年の秋は論議の対象になる、そういうふうに私は考えます。しかし、その論議に臨みましてわが国がどういう態度をとるか、これはまあわが国は韓国との間に日韓条約を結んでおる、そういう関係もありまして、これは慎重に検討しなければならぬ問題だろうと思います。したがって、まだ間がある、まあ一年近くの間がありまするから、その間に、こういうケースああいうケース、そういうケース、ケースに対してどういうふうに対処するか、これは十分検討してみたい、そういうふうに考えておりますので、ただいまケース・バイ・ケースのそういう問題についてお答えをすることは差し控えさしていただきたい、かように存じます。
  423. 正木良明

    正木委員 私はきわめて具体的な問題を取り上げてあなたに御質問申し上げたわけなんですが、もしかりに朝鮮問題が、しかも南北朝鮮の平和的統一という問題が国連の議題となって、そうしてそのために、もちろん、これは加盟国ではございませんので、オブザーバーとして南北朝鮮のそれぞれの代表を国連に招請するというときに、韓国だけは呼んでもよろしいが、北朝鮮のほうは呼ばないほうがよろしいなんというような態度を日本がおとりになるということは、私はきわめてこれは問題があろうと思うのです。これはもう、慎重な態度をおとりになるというよりも、私は、そういう意味においては、それを朝鮮の安全のために、朝鮮半島の平和のために、また日本の周辺の緊張緩和のために、むしろ積極的に推進するぐらいの気持ちがなければならないのではないかと思うのですが、それでもやはり慎重に、むしろその方向で慎重にお考えになるわけでございますか。
  424. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私のいま頭の中にあることは、緊張の緩和ということです。緊張の緩和ということを基本といたしまして、ケース・バイ・ケースに対応する姿勢をきめていきたい。それを十分時間をかけてひとつ固めたい、こういうことを申し上げておるわけです。
  425. 正木良明

    正木委員 またこれを問答しておりますとずいぶん長くなりますが、きわめて抽象的な質問をして、具体的な問題が出てきたときにはケース・バイ・ケースで考えますということは、論理としては成り立つかもわかりませんが、私はきわめて具体的な問題を提起しておるのに、それをケース・バイ・ケースで考えます——私はケースを提供したわけでありますから、それは考えてもらわなければならぬと私は思うのです。ただ、それは即答できないというのならばいたしかたありません。これはまた次へ議論を移さなければならぬと思いますが、さて私はどう考えましても、韓国との間に条約があるから、韓国だけをオブザーバーとして呼ぶという従来の方式のみにこだわって、そうして北朝鮮の代表をオブザーバーとして呼んでそうして南北の平和的統一のために話し合うというチャンスを逸してしまう。また今度の中国の国連復帰のときのように手おくれになるような、また世界にぶざまな姿を示すような外交を示されるということは、私はつとめて避けていっていただかなければならぬと思います。そういう意味からいって、おそらくそういう方向に進んでいかれるでありましょう。そのときには、佐藤総理総理でいらっしゃるかどうかはわかりませんけれども、いずれにいたしましても、その政府の方針というものは踏襲されていくでありましょうし、そのときにあたって、私は南北朝鮮のそれぞれがオブザーバーとして招請されることは必至の勢いであろうと思うのです。そうなってまいりますと、この侵略者決議、ないしは先ほど条約局長が答えました一九四八年十二月十二日の第三回国連総会における、いわゆる韓国を正統政府と認めるというような決議も、これは自然消滅をせざるを得ないのではないかというふうに考えるわけです。これはあくまでも仮定の問題になりますけれども、かりに南北朝鮮それぞれにオブザーバーとして国連に招請されるという場合が起こったときに、これらの決議はどうなるか、この点も、一応われわれが将来を見通すという意味でお答えをいただきたいと思います。
  426. 井川克一

    ○井川政府委員 総会の決議というものは、それが何らかの措置がとられない限り、一回できたものは有効であるというのが国際連合の通念だそうでございますが、私、ただいまちょっと調べてみましたところによりますと、ことしは総会決議は朝鮮問題ではなかったわけでございます。去年、七〇年ので六九年の決議を引用して、六九年で六八年、六八年で六七年、六七年で六六年、六六年で六五年の決議を再確認しております。そして六五年までさかのぼりますると、一九四八年十二月十二日の総会決議百九十五号、その他一ぱい決議が書いてはありますが、それを再確認しと書いてございますので、まず国際連合ではこの百九十五号は一ぺんも取り消されたり何かしておりません上に、毎年毎年総会決議をもって再確認して、そのつながりが、もとにまいりまするとはっきりいたしておりますのが六五年の総会決議でございます。
  427. 正木良明

    正木委員 それで、累年その決議をいたしておりますが、その決議に日本は共同提案国になっていますね。
  428. 井川克一

    ○井川政府委員 私の記憶が違いませんでしたらば、一九六六年から共同提案国になっていると思います。
  429. 正木良明

    正木委員 これも避けるべきだと思いますね。外務大臣、どうでしょうか、今後もしそういうことがあり得るとするならば。
  430. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 要するに、朝鮮半島における問題の処理につきましては、これから時間をかけて検討したい、こういうふうに考えておるのです。その際の基本方針は、朝鮮半島における緊張緩和というところに主たる眼点を置いて対処していきたい、こういうことでございます。
  431. 正木良明

    正木委員 なぜ私がそういうことを申し上げるかといいますと、この朝鮮の独立問題ということについて、朝鮮委員会というものをつくっていますね。朝鮮委員会というのをこの決議の中でつくるのです。このメンバーの中に、オーストラリア、中国、エルサルバドル、フランス、インド、フィリピン、シリア、後にシリアがかわりましてトルコにかわったり何かいたしますが、いずれにしても一貫して中国が入っています、この朝鮮委員会の中に。当時の中国というのは中華民国です。ところが、本年中華民国は国連から追放されまして、中華人民共和国が中国の唯一の正統政府として国連に復帰をいたしましたね。そうすると、この朝鮮委員会の構成メンバーの中国というものは、中華人民共和国にかわらざるを得ないです。このときに中華人民共和国が韓国を正統政府と認めるような、朝鮮における正統政府というのは韓国だというような国連の決議を認め、同時にまたそれを執行していく朝鮮委員会のメンバーになると思いますか。
  432. 井川克一

    ○井川政府委員 朝鮮委員会、確かに、四八年の十二月十二日、先ほどの御引用の百九十五号にございます。それで、オーストラリア、中華民国、エルサルバドル、フランス、インド、フィリピン及びシリアで構成する朝鮮委員会というものがございます。ただ、朝鮮事変が起こりましてからは、UNCURK、国際連合朝鮮統一復興委員会というものができまして、おもにこれのほうが仕事をしていると私は記憶をいたしております。
  433. 正木良明

    正木委員 そのメンバーは……。
  434. 井川克一

    ○井川政府委員 UNCURKのほうは、豪州、チリ、オランダ、パキスタン、フィリピン、タイ及びトルコでございます。
  435. 正木良明

    正木委員 いずれにいたしましても、中国が安全保障理事会の常任理事国として非常に重要な地位を占めておるわけであって、そういうことから考えてまいりますと、朝鮮問題というのは当然議題になるし、また、朝鮮問題の方向というものは、日本が考えているような方向にいくかどうかわかりません。むしろ、外務大臣がおっしゃったように、朝鮮半島における緊張緩和という方向に従って、やはりこれを前向きに考えていかなければならぬときがもう来ておるというふうに考えます。これを、まだ来年の秋のことだから、ゆっくりやっていきましょうという考え方ではなしに、これはやはり真剣に討議をされていかなければなりません。そうすると、当然片方だけを、しかも、民族自決の原則というものを無視して、いわゆる米ソ二大国が政治的に分割してしまった朝鮮半島の二つの国、これをどちらを正統政府と認めるかということも、きわめて重要な課題になってくるでありましょう。そうすると、この決議というものも、おそらく取り消し決議ないしは自然消滅というような——自然消滅はぼくは考えられないと思いますけれども、取り消し決議あたりが行なわれるか、また全く新しい決議が行なわれて、これが自然消滅の形をとらざるを得ないのではないかというふうに考えられるわけです。そういう答えを聞きたいわけですけれども、それを聞いていると時間がたちますので、申し上げてしまいますが、もしかりにこの決議が廃棄される、また自然消滅の形をとるということになってまいりますと、日韓条約にも大きな影響が出てくるわけです。日韓条約の前文にはこのことが書かれておるわけでありまして、この決議が廃棄されるというようなことになりますと、日韓条約のよって立つところの基礎というものもくずれてまいります。  これは念のために読んでみます。日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約、これは四十年十二月十八日に締結されました。この中の前文の中でこういうふうに言っています。「千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約の関係規定及び千九百四十八年十二月十二日に国際連合総会で採択された決議第百九十五号(III)を想起し、この基本関係に関する条約を締結することに決定し、」云々ということばが入っております。したがって、この決議がもし廃棄される、また私は廃棄されることが必至の情勢であるし、そういうふうにならざるを得ないと思うのでありますが、そうなると、この日韓基本条約の前提というものもある程度くずれてくるのではないかというふうに考えますが、これは専門家として、どうなりますか。
  436. 井川克一

    ○井川政府委員 答弁が一歩ずつおくれておりまして、申しわけございません。  先ほどの国際連合朝鮮委員会は、私が申し上げました国際連合朝鮮統一復興委員会ができましたときに、それが五〇年十月七日の決議でできたわけでございますけれども、その中に、先ほど申し上げましたように、オーストラリア、チリ、オランダ、パキスタン、フィリピン、タイ国、トルコで構成し、国際連合朝鮮統一復興委員会と称する委員会を設置し、現国際連合朝鮮委員会が従来から行なってきた任務を引き継ぎと書いてございますので、いわゆる朝鮮委員会はこれでなくなっておるわけで、現在はUNCURKしかないわけでございます。  次に、日本国と大韓民国との基本関係に関する条約でございます。仰せのとおりに、このようなものである。大韓民国政府がこの決議を想起して、この基本条約を締結すると書いてございます。まさしくこの当時におきまして、日本国と大韓民国との間に条約を結びますときに、われわれといたしましては、その当時においてこのようなものである、国祭連合がそのようなものとして認めたという認識のもとにこの条約をつくったわけでございます。そしてこの条約は、これによりまして外交関係が設立されるとか、協定の効力がどうなるとか、そういうふうに書いてあるわけでございまして、その当時の認識のもとに、その当時の条件のもとにこの条約をつくったわけでございまして、そのことが、この決議がかりに万一その後取り消されるとかいうことがございましても、この条約の効力云々というものには全く関係がないものと考えるわけでございます。
  437. 床次徳二

    床次委員長 正木君に申し上げますが、関連質疑でありますので、簡潔に。
  438. 正木良明

    正木委員 これで最後にいたします。  申し上げたいことはたくさんあるわけですが、何べんも委員長からお声がかかっておりますので、私これでやめますが、いずれにしましても、先ほど外務大臣がおっしゃった朝鮮の緊張緩和のために、それはいわゆるわが国の安全と平和ということに重大な影響があるがゆえに、このことについて前向きに考えていきたいし、対処していきたいというおことばを再確認し、同時にまた、総理大臣からそのことについてのお考えを重ねてお聞きをして終わりたいと思います。
  439. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 これから朝鮮半島をめぐるいろいろな法律関係、なかなかうるさい議論と、非常に重要な段階に入ってくる、こういうふうに思います。そのきっかけはまあ来年の国際連合の総会と、こういうふうに見ておるのです。その際までに十分わが国の姿勢というものを検討しておきたい、かように考えますが、重ねて申し上げますが、わが国がこれに臨む態度、これはあくまでも緊張緩和ということであるということでございます。
  440. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの外務大垣と同じ意見でございます。
  441. 床次徳二

    床次委員長 次に、大原亨君、松浦利尚君、上原康助君から補足質疑の申し出があります。順次これを許します。大原亨君。
  442. 大原亨

    大原委員 昨日の社会労働委員会との連合審査におきまして、沖繩の内政問題の中では一番おくれておる部面である社会保障、社会福祉、特に国民健康保険や、あるいは被用者を対象とする健康保険等の移行措置につきまして質問をいたしておったのであります。私が取り上げました点は、沖繩復帰に伴う特別措置法に関する法律案の第百五十六条に関係いたしまして、政令に委任をいたしました法律があるわけでありますが、この百五十六条は、これは法律をもって政令に委任をするところの限界を越えておる違法かつ違憲の疑いのある措置である、こういう点を結論的に指摘をいたしまして論議を重ねました。昨日の論点を政府側で整理をいたしまして、今朝の理事会において、問題点につきまして示されたわけであります。  私どもは基本的な問題については論議を進めます。その論議を通じて、時間をかけたとか、あるいは多数決であるとか、そういうような形式上の問題ではなしに、論戦を通じて真実を明らかにする、主権者の選択を可能ならしめる、私が申し上げるような法律論の問題についてはともかくとして、政策上の問題については一致点を追求する、こういう措置を重ねることは、われわれの審議においてきわめて大切な点であると思います。したがって、今朝の理事会の決定に基づきまして、私はあらためて、問題となる点について、関係各省との間において論点を整理いたしまして、ここに集約的な質問をいたすわけであります。この議論を通じまして、もちろん一致点も若干出てまいりましたが、基本的な問題、申し上げたような問題については、不一致点が歴然としてあるわけであります。  そこで、私は逐次質問をいたしてまいりますが、第一番は、国民健康保険の暫定措置に関する特別措置に関する問題であります。沖繩の国保について、この問題に対して総務長官は一体どういうお考えをまとめられたか、ひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  443. 山中貞則

    ○山中国務大臣 沖繩の国保については、行政府の首脳からも立法院の人たちからも相談があり、意見を求められたことがあるので、これに対しては、琉球政府営と市町村営のいずれを原則とするかはともかくとして、国保が実施できる市町村は市町村営で、実施できない市町村住民については政府営、復帰後は県営で行なうこととしたらどうかとの助言を与えております。  去る九月末日、立法院で修正可決された法案は、主席の署名拒否により廃案となったが、現在なお現地関係者は努力を続け、現地の実情に即した制度が考えられつつあるようであります。政府としては、こうした努力が実り、現地の実情に即した制度が復帰前にできた場合には、将来は本土並みの市町村営に移行するという基本的態度は堅持しつつも、それに至る経過的、過渡的期間は、沖繩の制度を尊重してまいりたいと考えている次第でありますが、法案作成時においても、また現在においても、いまだ現地の制度ができておりませんので、やむを得ずそのような過渡的な特例措置を、特別措置法案第百五十六条の政令で措置することにしようとするものであります。
  444. 大原亨

    大原委員 ただいま具体的に、私のことばで言わせれば、いわゆる山中試案によるあっせんというものが提示をされて、関係者で論議をされておるようであります。この中身を見てみますと、私は二つの点で問題があると思うのです。これは昨日来私が申し上げているように、百五十六条による法律事項を政令に委任をする措置は、あまりにも包括的であり抽象的である。本土国民健康保険法は、その経営責任を、第一線の自治体であるところの市町村に持たしておいて、県は指導的な立場にあるわけであります。監督的な立場にあるわけであります。それを、経過措置、暫定措置といたしまして、沖繩には市町村は五十四ありますが、実際には、国民健康保険を経営する財的その他の力がない。今日まで、本土は皆保険ですけれども沖繩では国民健康保険がない状況が放置されておったわけですから、医療機関が整備されてないという点等をもあわせ考えて、当然のことです。いま本土のとおりに実施をするならば、二、三件しか国民健康保険が実施されない。したがって、県が握ってやろうということになります。  そういたしますと、暫定措置で国民健康保険法という本法を変えるのでありますから、法律の特例をつくる際には、法律をもって改正をしなければならぬ、特例措置をつくらなければならぬ、例外措置をつくる。であるのに、政令をもって特例措置をするというふうなことは、しかも、百五十六条は、資料として提示を受けておりますが、非常にたくさんの政令の問題を一括的に規定をいたしておって、非常に抽象的で包括的である。このことは、明らかに国会の立法権——国会は、憲法四十一条にいうところの最高の、唯一の立法機関である。そういう精神からいっても、立法権を侵害する行政措置である。そのことは、学者の通説として一般化しておる主張であるにもかかわらず、きわめてずさんな法律がここへ出ておるという点については、依然として疑義が残るわけです。  もう一つの問題点は、実態的な問題ですが、昨日来申し上げているように、なぜ沖繩において市町村長と主席が意見が一致しないか、立法院があんなに大混乱状況におちいっておるか、こういうことの一番の中心は、国民健康保険を市町村が経営する際に、交付金や調整交付金等を出していって特別の措置をとる、あるいは一般的な財政措置をとるにいたしましても、事務費を負担するにいたしましても、たとえば、保険料は払うけれども医者がいないではないか。お医者さんを雇おうといたしますと、琉球のいまの中央病院の院長にいたしましても、主席と同じような本俸を給与しながら、その倍の特別手当を出してもなお来ないという状況である。沖繩は、本土全体からいうならば僻地の中のさらに僻地であって、長い間基地の犠牲において差別を受けたところですから、そういうことが累積をいたしておるわけです。ですから、お医者さんを一人雇おうとすると、市町村単位の診療機関であれば、ここに赴任をいたしますと固定しなければならぬ、そういうことで、一カ月五十万円出しても六十万円出しても医師は得られない。一カ年で数百万円の金を、医師を入れるためには、独自の財政を負担しなければならぬ。こういうこと等で、国民健康保険を経営すれば医療機関の不足を追及されるから、みな能力がないから逃げる。こういうことが私は一つは大きな原因であると思う。したがって、法律論の問題は一応これは主張点として最後に回すとして、実態論といたしましても、皆保険の需要の制度に見合うような、供給の制度を改善する措置をこの復帰に伴うてとらなければ、これは絵にかかれたもちであるだけでなしに、保険料だけを負担して医療のサービスがないというふうな、そういう二重の差別を強制することになる。  そこで、昨日来も議論をし、けさほどからも政府側と議論をいたしましたが、具体的な問題を先に私はお尋ねをしながら、結論的な問題を議論をいたしたいと思います。  したがって、第二問は、沖繩は、これは具体的な問題ですが、いままでの医療保険、被用者の保険は、一本にしておりました。大体四割余りの人が保険の対象でしたが、この医療保険の余裕金が約八十億円あるわけであります。これは国に引き継ぐつもりであるかどうか。これはあとの実態論に関係が深いからこの点について端的なお答えをいただきたいと思います。
  445. 山中貞則

    ○山中国務大臣 実際上に八十八億三千九百万円ほどあると思います。この理由は、ただいま大原委員の指摘されるような理由が重なっておるわけでありますし、さらに、現行制度が精算払いであるというようなこと等からも、こういう医療を求めているにもかかわらず、余裕金という形で、一見奇妙でありますけれどもそういう黒字が出ておるということについて、沖繩の医療機関の半面の実態を物語るものであると考えます。したがって、この金は本土のほうに引き継ぐべきものでなくて、琉球政府の要望どおり、国には引き継がないで、沖繩の意思によって医療機関の整備その他被保険者等の福祉の向上に活用できるように措置したいと考えます。
  446. 大原亨

    大原委員 第三間ですが、いまの御答弁にはなお足りない点があるわけであります。というのは、お話しのような点も一部あり、あるいは本人が七割給付で、家族が七割の給付であった、こういう問題や保険料の問題、保険料は千分の三十ですから、本土の千分の七十に比較いたしまして約半分です。そういう事情もありましたが、医療機関がない、そういうこと等もございまして、療養費払い等の問題もあって黒字が出ております。この積み立て金は、私の知るところによりますと、保険で出た余裕金を琉球政府の資金運用部へ投入いたしまして、一般財源へ出しておるわけであります。一般財源へ使っておるわけであります。そういたしますと、ここに復帰に伴う措置といたしまして、八十億円の余裕金という現金がないわけですから、一般財政で使っておるわけですから、そこで、大蔵省が予算を査定する状況いかんによりましては、この八十億円は金額としては残っている、けれども実際には使われない、焦げついておる、その瞬間で切ってまいりますと、勘定は合うけれども現金はないということになって、あなたの御答弁は実行できないことになります。  この点に対しましては、一般予算編成との関係、全体であなたは二百三十六億円ほど、不足財源、赤字、そういう問題として予算を要求されておりますが、この八十億円は、医療の施設の改善その他医療の問題に還元をして沖繩の県において自主的に活用できる、こういう措置が保証され得るのかどうか、この点についてさらに御答弁をいただきます。
  447. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これも琉球政府と私との間で約束ごとでありますから、そのように措置するようにいたしたいと考えます。
  448. 大原亨

    大原委員 これに関連をいたしまして、大蔵大臣、いままで基地その他長い間異民族の支配の犠牲で非常なやりくり算段をした。県の行政以外に国の行政も負担する、一つ政府のような仕事をやっておる、役人もたくさんいる、そういうことで赤字がやりくり算段で累積するのは当然である。特に、この八十億円は税金ではないのです。保険料ですから、これを一般財源に使うというふうな、復帰にあたってそういう措置をとるならば、税の二重課税になるわけです。これは非常に不当な措置であります、結果といたしまして。その点を踏まえてあなたは、赤字の解消についてはどういう考え方で——もう予算査定の原案はできておるはずですが、どのような考え方でおられるか、所信を明らかにしてもらいたい。
  449. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 琉球政府の債務、借り入れ金というようなものは、その性質によって、沖繩県に引き継がれるものと国に引き継がれるものと二つがございますので、これはこの性質によって、予算の編成過程において適当に処理するつもりでございます。  それと、いまの八十億円、これは別でございまして、沖繩の資金運用部はそのまま債権債務が本土の資金運用部に継承されるということになりますので、そうしますと、いまは少ない資金のうちから琉球政府に融資しておりますので、その金は使えなくてなくなっておりますが、本土の資金運用部にこれが引き継がれましたら、こちらのほうには十分金がありますので、この積み立て金を医療施設に使おうということでしたら、この委託を解除すればその金はいつでも使えるということで、その心配は一切ないことと思います。
  450. 大原亨

    大原委員 第四問ですが、昨日来議論をいたしておりますように、問題は、いままでは被用者の保険が医療保険という名前においてあっただけである。国民健康保険を今回実施しようと思って非常に困難に直面しておる。そこで問題は、沖繩の医療保険の前提条件である医療供給体制がきわめて劣悪である点は、医療供給機関が半分以下である。医者が三分の一。あるいは結核とか精神病とかハンセン氏病とか、それが非常に多い。ハンセン氏病などは二十倍もある。風土病等もある。精神病もある。これは基地の影響だろう。そういうこと等を考えてみると、きわめて悪い条件であるわけですが、医師の養成や供給面全般にわたって具体的にどのような措置をとろうといたしておるのか。抽象的な振興開発法でなしに、具体的な問題点を明らかにして政府の方針を示してもらいたいと思います。
  451. 山中貞則

    ○山中国務大臣 沖繩の医師確保等については、次の施策をとることにしております。  すでに日本政府の援助によって発足した保健学部及び建設中の新那覇病院を国立大学の付属病院として整備を進める。  第二には、琉球大学医学部の設置に対し、明年度予算に調査費を要求いたしております。  第三には、琉球政府立病院のうち四つを国立療養所に移管し整備する予定であります。  第四には、沖繩地域に勤務する医師に対し特別手当の支給の道を開くための特別措置法案に所要の措置をとっております。  五番目に、振興開発計画に基づいて、無医地区に関し診療所の設置、患者輸送車、これは船も含んでおります、その整備、定期的な巡回診療、保健婦の配置、公的医療機関の協力体制の整備等の事業を推進してまいります。  第六に、従来に引き続いて専門医を派遣するとともに、僻地に勤務する本土医師の人件費について補助をいたしてまいりたいと思います。  第七に、県立病院の施設、設備の整備等を推進してまいりたいと考えます。  第八には、振興開発金融公庫からの融資を行なうことにいたしております。  以上です。
  452. 大原亨

    大原委員 いまのは、一わたりのいままでの主張というものを整理されて発表をされたのでありますが、しかし、これは実施にあたりましてはたくさんの問題があることを私は承知をいたしておりますし、議論をいたしました。  そこで、私の見解を第四問として発表いたしますから、これに対して、これは是正する見解ですが、政府の考え方を明らかにしてもらいたい。  私どもは従来から、琉球大学に医学部をつくる、そのことをたび重ねて主張いたしましたが、文部省のほうは非常に消極的であり、大蔵省はさらに消極的でありました。なぜかというと、琉大が大学としての条件を整えてない、こういう形式論であります。それともう一つは、文部省がきわめて医学部の問題について認識が足りないという点です。医療行政全体において医師の供給に対する考え方が足りないという点です。これは、自治大臣もおられますけれども国内でたくさんの論議をやっております。きょうは防衛大臣については質問いたしませんが、防衛庁に医者を養成する専門機関を置くなどということは、これは海外派兵するんじゃないんだから、現地の医者で体制ができればいいわけです、防衛庁は。そんなに急ぐ必要はないわけだ。この琉球大学に医学部をつくるということは、非常に急ぐ問題である。そのときに頭を変えなければならぬ、予算上も現実的な要請であると思うから申し上げるわけですが、医大をつくる際には、一番大きな荷物になるのは付属病院なんです。しかし、この付属病院は、長所も短所もあるが、医学部の封建性をささえておったところの一つの条件でもあるわけです。ですから、私どもは、この際、そういう問題についてはほかの一部にあるけれども、国立大学や県立病院や、あるいは結核や精神病の療養所や、ハンセン氏病の療養所、これらを教育病院に指定をいたしまして、付属病院はつくらないで、教育病院としてこの内容を充実させていく、そしてそこのスタッフは医大の教授もなれるようにする、助教授もなれるようにする、そういう措置をとる。そうすれば、その医大の卒業生や研修生等を中心といたしまして医者のたまりができる。その琉球大学の医者の養成につきましては、育英資金以外の特別の奨学制度、給費制度を設けて、一定の契約のもとに一定の期間沖繩の医療に従事するような、そういう措置をとる。国立病院や県立病院やそういう教育病院、基幹病院に対しましては独立採算制をやめていく。そして定員をふやしていく。そのふやした定員が市町村の診療所に半年とか一年とか巡回的に勤務をする、あるいは巡回班に参加いたしまして僻地の医療を担当する。そういう裏づけをすることが、私は、本土の抜本改正の論議からいっても、実現可能な措置であるというふうに思うわけです。ですから、ずらずら並べられたそういうふうな方針も、実際には僻地の医療をどうするかということになると、本土以上に困難な場面に逢着するだろう。したがって、医学部の設置のしかたや、教育病院のあり方や基幹的なそういう病院のあり方についての考え方というものを変えて、こうあるべきだという点を沖繩県において実施をするという考え方でこの問題について取り組むべきであると私は思うけれども、私の意見に対して、どういう考え方で臨もうとするか、見解をひとつ明らかにしてもらいたい。
  453. 山中貞則

    ○山中国務大臣 どうもこれは文部、厚生両省にまたがるたいへん広範な卓説であって、私もいろいろ医療問題というものは本土においても考えることがありますが、沖繩においては、まさに本土がこうだからということで沖繩を律することはできない立地条件にあることは、たびたび申してまいりました。いま言われた御意見というものは、私自身も非常に傾聴に値すると思っておりますので、今後研究さしてもらいます。
  454. 大原亨

    大原委員 傾聴に値するから研究するというだけでは、もう少し前向きでない、積極的でない。あなたのいままでの答弁等から推しまして、非常に消極的である。あなたが普通の大臣であったらそれでいいけれども、あなたがそんなことを言えば、あとで申し上げるけれども、これは前向きの議論を通じて政策の一致を求めるということから言うと、非常に足りない。いかがですか、もう少し積極的な御意見を出したらどうですか。
  455. 山中貞則

    ○山中国務大臣 沖繩にはいまのあなたの御意見のような仕組みも一部あるわけですね。たとえば、本土ではちょっと考えられないのですけれども、中部病院でハワイ大学の先生が来て、そこでインターンをやっておりますね。そういうことなんか、向こうの事情が許せば、復帰後も、月に千ドルという給料でございますけれども、こういうものは沖繩においてはやはり考えていかなければならぬ制度ではないかという気持ちもしております。したがって、あなたの言われたことのうちの幾つかは、いま沖繩において試行錯誤——と言ってはおかしいのですけれども、現実やむを得ず迫られて行なわれておることであるし、医学部がないのに国立大学の付属病院が完成しようとしておる。しかたがないから、保健学部の付属病院ということで、実際上は地域医療の中心にもなるような性格を与えようとしておる。こういうような現実がありますから、そこで、沖繩については硬直した考え方でない医療行政というものを展開していかなくちゃならぬなということで、感心して聞いていたということにいたします。
  456. 床次徳二

    床次委員長 大原君に申し上げますが、だいぶ時間が経過いたしましたので、簡潔に結論を……。
  457. 大原亨

    大原委員 これは、しかし、私はまとめてやっておるのだから、あなた、そんなこと言っちゃいかぬ。
  458. 床次徳二

    床次委員長 これは元来申し合わせの補足質疑でありますので……。
  459. 大原亨

    大原委員 委員長には刃向かわぬことにいたします。  保健学部が琉大にあるというのは、非常にいい制度です。これは沖繩の実情から強化していかなければならぬ。私が申し上げたことに対しまして答弁がありましたが、これは厚生大臣が専門ですから、厚生大臣、それから自治大臣、文部大臣も簡単にひとつ御見解を……。
  460. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまの大原委員の御意見は、私も全く同意見で、私のかねての持論でございます。したがいまして、大学の医学部設置につきましては、そういう方向で文部大臣とも話を進めつつあるわけでございます。御了承いただきたいと思います。
  461. 高見三郎

    ○高見国務大臣 大原先生のいまの御提案、私も同じ気持ちでおるのであります。ただいま厚生大臣が御答弁なさいましたが、私は、医科大学の付属病院で教育病院としての基礎病院というものはやはり必要だろうと思います。けれども、その他の臨床はなるべく幅広くやるという意味におきまして、公的な病院を関連病院として使っていくという考え方が——これは沖繩だけの問題じゃございません。本土におきましても、これからの医学教育の一つの行き方ではないだろうか。いまその問題を真剣に考えておるところでございます。
  462. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 沖繩で医師不足をはじめ医療機関が非常に少ないということは、大原委員御指摘のとおりでございます。それを解消する方途としていま具体的な問題を提起されましたが、その問題の提起については、主管大臣である文部大臣並びに厚生大臣から述べられましたが、それらの事業を行なうにつきまして必要とする地方自治体の負担金につきましては、十分配慮をしていきたいと思っております。
  463. 大原亨

    大原委員 大蔵大臣、来年度に調査費を計上しておるわけです。そうすると四十八年度からやることになるわけです。しかし、四十八年度からでも確実に予算措置をしてやりますと、医学部の周辺には、教授とか専門家とか、あるいは医者の卵とか、そういうものが集まりやすいわけです。ですから、この問題は、私ども現地を調査し、政府にいろいろ聞いてみますと、非常にむずかしい、条件の整わぬ問題でしたが、条件を整えればできるのですから、予算上の措置もそういう積極的にあなたはおやりになってもらいたいと思うのです。一つの例を申し上げましたが、全体をひっくるめて、あなたはどういうお考えを持っておられるか、お尋ねいたします。
  464. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 医学部の問題だけでなくて、全体ですか。
  465. 大原亨

    大原委員 それも含めて……。
  466. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 全体は、御承知のとおり、各省庁の概算要求、これを省ごとに説明を聞いて査定作業がいま進んでおるところでございますので、いま国会で御審議を願っておる法案に関した必要な経費と、それから本土に円満に復帰できるためのいろいろな措置に伴う経費、これは支障ないような予算の措置をとりたいという査定方針でいま進んでおるところであります。
  467. 大原亨

    大原委員 一歩足りないけれども、大体において決意の表明があったわけですから、先へまいりますが、漸次終わりのほうに行きますから、あまり心配顔しないで聞いてください。  第六問は、これは国民健康保険をちょっと離れて、医療保険という被用者保険の問題です。現地には現実に被用者保険があるわけです。これは七割、七割で、本人七割、家族七割です。しかし、療養費払いその他の特別な制度があるわけです。診療報酬の点数の問題その他議論したい問題はあるが、これは省いて、保険料が千分の三十、これは総報酬ですから、標準報酬に直すと千分の四十、本土の政管健保にふれられますと——全部がそうじゃないが、中小企業が多いから、ふれられると、千分の七十になるわけです。医療機関がない、そういうふうなこと等を考えて、一ぺんに千分の四十を千分の七十にするということは、これは本土並みというそういう精神からいっても、公平の原則からいっても、法律は上げないけれども、段階的な保険料の値上げの措置をとるべきではないか、私はこういうことを考えておるわけですが、これについてはどういう見解をお持ちですか。これは、総務長官、あなたは何でも知っているから、総務長官。
  468. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先日もお答えを申し上げましたように、一応非常な保険料率のアップのように見えますが、同時に保険給付も本土並みに相なりまして、この保険料率と保険給付は大体見合うことになる、かように考えております。しかしながら、御指摘の点もございますから、なお十分現地について調査をいたしまして、そうしてこの特例が非常に不利になるようなことのないように措置をいたしたいということを申し添えておきたいと存じます。
  469. 大原亨

    大原委員 いよいよ最後の二問になりますが、第七問は、これはいままで議論いたしました問題です。国民健康保険の経営主体について特例措置、県ができるようにする特例措置を講ずることは、これは政令に委任できるというこの限界を越える違法かつ違憲の疑いのある問題は、最初申し上げたように、依然として解明をされない。こまかな議論は省きますが、少なくとも本土国民健康保険法を改正をして、そして市町村だけでなしに、場合によったら経営を県に委譲もできるんだという法律をつくることが一つです。百五十六条によって政令に委任をする場合は、これはその具体的な条章を示して、あるいは事案の内容を示してそうして委任をしなければならぬ。暫定措置だといっても、いまの答弁のように、医療供給機関を整備するためには十年計画でもまだできないかもしれない。しかし、これを追及しなければならぬ。それができない限りは、市町村長は本土並みに経営主体になることはできない、それは拒否する、こういう事態は続くだろう。だから、暫定措置だといっても、これは半永久的な措置であるということであるならば、国民健康保険法の本法を暫定措置、特例法で変える際に、具体的な委任事項をやらないで、そして包括的にこのような抽象的な法律案をもって委任するということは、違法、違憲の疑義が解明されない。したがって、私が申し上げましたことについて、政府見解を聞かせてもらいたい。
  470. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これが健康保険の沖繩の特例をずっとやっていくんだということでありますと、これはやはり憲法九十五条の住民投票等の問題も必要とされる一の地方公共団体のみに施行される制度になると思うのです。しかし、沖繩の現状を、実際に各島嶼から成り立つ五十四の町村というものを見ますと、出発できる市町村はごくわずかであるということを考えますと、やはり沖繩の人たちに、今日まで健康保険が施行できないために苦しんでおられる方々に、早く医療保険の恩典を享受せしめてあげなければいけない、これが願いでございますから、いまこれをどう書くかという問題で、琉球政府のほうで——立法の府で案が一つできた、しかし署名拒否をしてつぶれたというようなことで、全然これが復帰までなされないとするならば、これは本土法そのものがかぶらざるを得ません。しかし、復帰までにいまのところは立法院並びに行政府において一致点を見出すべく努力をしておられるようであります。この努力に沿って私たちが政令で手当てをすることは、これは沖繩の保険者、住民からいえば好ましいことであって、決して悪いことではない。ただ、法理論的に、これを永続的だと見れば、問題があると私も思います。しかし、やはり本土政府の責任は、沖繩の市町村がすみやかに国保が開設できるようにあらゆる面で努力をすべきことにまずあると思いますので、それらの努力の展開というものをわれわれの責任として受けとめて、したがって、ある程度の期間が過ぎたならば本土並みになってもらうんだということで、いまのところほかに手の打ちようがないということだけは御理解を賜わりたいと思います。
  471. 大原亨

    大原委員 いまの山中長官の御答弁は、これは悪くとると、悪意を持ってとると、目的を達成するためには手段は選ばぬ、こういう考え方にも通ずるわけです。方法がないかといえば、国民健康保険の本法を変えなさい、できなかったら特別法律をつくりなさい、こういう措置はあるではないか。百五十六条にこういう問題点を事項を具体的に列挙しなさい、この事項については政令に委任するというふうにしなさい。こういうことの方法があるにもかかわらず、私は昨日来これを調べてみますと、とんでもない、百五十六条というものがここへ入っている。これはいままで自衛隊の設置法の改正その他たくさんの議論をする中で、最近行政府国会における審議を免れようとする、そのために政令の委任事項をやたらにふやす。日本の憲法法律中心主義である、国会は唯一の立法機関である、こういう規定がある。その権限を侵して行政権が独走しようとしている。この医療保険の問題は、昨日来幸いにして機会があって議論をしたけれども、もし強行採決でもしたらこの議論はないから、かってなことをあんたらはやる。議論をしたけれども、そういう議論を通じて中身がやや具体的になった点については私は若干の前進を認めるけれども、しかしながら、だからといって、法律の原則を変えるわけにはいかぬ。総理府から、この特別措置法の第百五十六条による政令で措置される事項について、未定稿ではあるけれども、わが党の理事からの要求に基づいてここに資料をいただきました。百五十六条で政令に委任される事項については、美濃委員もここで欠陥を指摘して、けさほど是正をしたところです。これを見てみますと、これはあくまでも例示的なものです。例としてあげてあるのです。この政令委任は抽象的一般的な委任であってはならぬ。立法権の侵害である。国会の軽視である。そこで具体的個別的に委任をしなければならぬ。そういうことは昨日来論議をしておるし、この問題について、私は、法制局長官といえども一点の疑義はないと思っている。これを見ると、そういう例示的であって、その他というふうなことが残されておって、何が出てくるかわからぬ。こういう政令に対する委任のしかたの百五十六条は、やはり違法であり、違憲の疑義がある。百歩譲っても、少なくとも委任事項を具体的に列挙する、ずっと百五十六条に列挙する。左の事項については政令に委任することができるというふうに少なくともすべき道もあるはずである。きわめてこれはずさんな法律であって、国会において十分議論をするにたえない問題であると私は思っておる。この問題についてはさらに余す時間もあることですが、この点は昨日来若干の一致点を見出すこともできたけれども、基本的に国会と行政府あり方の、あるいは憲法の、政治の基本的な姿勢に関する問題として、これは私は簡単に納得できない問題である。もしこの問題についてはっきりした政府側が納得できる見解を持っておるものがあるとするならば、私は、この際、だれでもよろしいから、堂々と出てきて答弁してもらいたい。
  472. 山中貞則

    ○山中国務大臣 堂々とではありませんが、やはり政令に委任するものは、けさほど訂正いたしましたように、私どもとしては、調整にあたって原則としてそういうことをしてはならぬということを言ってあったのでありますけれども、やはり調査漏れがございまして、二本ほど訂正をいたしました。このことをおわびもいたしました。法律をまるごと政令の中で処理するようなことがあってはならぬという原則は、私も美濃君も同じであるし、また、議会軽視であるということも、当然その非難を受けなければならぬと思います。一部手落ちがあったことは認めますが、しかしながら、今回のその他の問題については、やはりこの沖繩復帰に伴います特殊事情というものから考えて、軽微なもの等についてそのような措置をしたことについては御理解を賜わりたいものと考える次第であります。
  473. 大原亨

    大原委員 これは大切な問題ですが、私が集約的に質問いたしました点に答えていないわけです。私は方法も示したのです。国民健康保険法の本法を変えなさい。法律の特例を設けるのを政令でやるというようなことは違憲措置である。法定事項は特別法をつくりなさい。百歩譲っても、具体的な事項を列挙して政令に委任をしなさい。この百五十六条は、ずさんきわまる、違法、違憲の立法である。こうして私は指摘をいたしました。私の質問に対しましては、遺憾ながら明快な答弁がなかった。こういう点を、これは論議を通じて明確になった点ですから、私はいささかも納得をしていない。これはわがほうの理事にも話しをいたしまして措置をしてもらうことにいたしまして、委員長には預けません。委員長がちょっと非常に迷惑そうな顔をしておるから、預けない。  山中長官、最後、あなたはたくさんこの国会においてはべらべら約束をされました。この会においても約束をされました。昨日私はあなたのもみあげの問題を言ったけれども、少し長過ぎるというようなことを言ったわけでもないが、こういうことが、国会の議論が実現できなかったら、あなたはこのもみあげを切りますか、いかがですか。
  474. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いやしくもこの国会の場において沖繩県民のために答えを出した問題が実現できないということであれば、もみあげどころじゃありません、私は大臣の席にとどまる資格はないと思います。
  475. 大原亨

    大原委員 いずれしかし佐藤内閣も終わりですから、あなたも一緒になくなるか、あるいは留任されるかわからぬ、こういうことですから、最後のほうは私はあまり信用いたしませんが、もみあげのほうはひとつそういう答弁があったことを留意をいたしておきます。  総理大臣、沖繩の医療保険の問題についてるる申し上げましたが、あなたも途中中座されたが、裏で聞いておられたはずだ。そういう点について最終的にあなたの決意を明らかにしていただきたいと思います。
  476. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩の医療制度、これはたいへん本土の他の地域とも比べましておくれておるところだと思います。これは沖繩が島々から形成されておる、それが一番の原因だと思っておりますが、ことに医者が非常に少ないとか、また、全く特殊な病気があるとか、こういうようなこともただいまの御指摘のうちにあると思います。今日祖国に復帰して一番先にやはり考えなければならないことは生命の保護だ、かように私ども考えておりますので、どうしても保険制度、この整備をはかる、同時にまた医療制度について万全を期す、こういう方向でものごとを進めていかなければならぬと思っております。琉球大学に医学部を設置する、これなども、そういう意味一つ法案でございます。私は、どうも、本島では比較的うまくできておるが、先島等においてはたいへん心配にたえないような状態だろう、かように思いますので、いろいろ御議論をなさいました点、御意見を開陳された点、それなどを十分含みまして万全を期するように一そうの努力をしたい、かように思います。
  477. 床次徳二

  478. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大臣で私が答弁を要求しなかった方は、連絡ございましたので、離席して用を足していただいてけっこうでありますから、どうぞ。  きょうは、私は補充質問三度目でありますから、決着をつけたいと思います。しかし、つかない場合は、ぜひ明確に再度お答えをいただくという意味で保留する場合もあるかもしれませんから、その点を前もって委員長に申し上げておきたいと存じます。   〔委員長退席、金丸(信)委員長代理着席〕  最初に、きょう経済企画庁長官がやはり御病気で御欠席でありますし、この前来ておられなかった国民生活局長もかぜを押して出席のようでありますから、生活局長のほうから質問をさしていただきたいと思うのです。  この前私がここで御質問いたしましたのは、沖繩の物価問題であります。御承知のように、総理からも答弁がありましたが、いまドル・ショックその他の問題をめぐって異常に沖繩の物価が値上がりをしてきております。同時に、復帰と同時に国内法の適用を受けるということから、かけ込みの値上げ、特に価格協定あるいは不当景品競争等によるシェアの拡大、こういったことがどんどんと行なわれておるわけでありますが、こうした沖繩県民に対する物価対策、特にこれに対する予算措置、こういったものが、物価担当であります経済企画庁で把握をされておるのかどうか、これが第一点であります。  それから第二点は、これは総務長官とも議論をしたのでありますが、沖繩県は非常に流通機構が短いのであります。本土においては、物価対策、物価問題として流通機構が複雑なためにいつもいろいろと議論をされるのでありますが、沖繩の場合は非常に短い簡単な流通機構になっておるわけであります。そういった意味で、この沖繩の流通機構というものを試行的な意味本土にも適用させる、将来の流通機構のあり方として逆に沖繩を見習っていく、そういった意味で、沖繩の流通機構に対する予算措置、こういったものについて具体的に政府のほうで把握をされて予算措置をしようとしておられるのかどうか。もししておらなければ、そういった方向で沖繩の物価対策というものを考えて、経済企画庁あたりで流通機構あるいは物価対策等の予算措置を各省にわたって指導すべきではないか、こういうことについて先般質問したわけでありますが、御不在だったために保留されておるわけであります。前もって通告してありますから、お答えをいただきたいと存じます。
  479. 宮崎仁

    ○宮崎(仁)政府委員 お答えを申し上げます。  沖繩の物価問題につきましては、私どもも、この復帰問題が問題になりまして以来、いろいろの面から勉強いたしました。特に復帰要綱におきまして各種の税制その他の措置がとられるにあたりまして、沖繩の物価という面から見て住民に不利にならないように、できるだけ有利になるようにということで、総理府のほうにもいろいろと御要請をいたしまして、すでに御説明があったと思いますが、今回の措置において税制その他各般の措置がとられておるわけでございます。  現在沖繩における物価水準が東京その他に比べてどうであるかということは、御承知のとおり、いろいろ計算のしかたがございますが、大体沖繩の那覇ウエートで見れば若干安いというような形ではないかと思います。しかし、これが内容について見ますと、ただいま申しましたように、現地の事情でいろいろ違いがございますので、これに対してやはり物価対策上いろいろの措置を講じなければならない、こういうふうに考えております。現実に沖繩に対する物価関係予算という形での集計は、実はこれは予算がある程度内容がまとまりました段階でやることに例年なっておりますので、私どもとして正確な集計は行なっておりませんけれども、大体内地の場合に問題になりますような低生産性部門の流通改善であるとか、あるいは輸送関係の問題でありますとか、その他、労働力の流動化の問題でありますとか、競争条件の整備でありますとか、それぞれの項目ごとにそれぞれ所管の省において要求を出していただいておる、こういうふうに承知をいたしております。  また、特に流通関係についての御指摘がございましたが、この面につきましては、確かに御指摘のように、本土の場合に比較しまして、沖繩の流通機構というものは比較的短絡的にできておる。そういう意味では、中間マージン等も少なくて済んでおるという面もいろいろあるようでございますので、こういったよい点はぜひ残していきたい。また、もちろん、それが本土のほうの流通機構に適用できるようなものであればぜひ導入したい、こう考えております。  なお、これに対する予算的な措置等につきましては、先ほど申しましたようなことで詳細にはまだわかっておりませんが、大体内容は財政投融資になる分が多いと思いますので、財政投融資につきましては、個所別にこまかく要求するというかっこうではなくて、大体ワクで要求をされますので、そういった中におきまして、各種の市場でありますとか、流通機構等の整備についてできるだけひとつ重点的に考えていただくように、私どもとしても配慮してまいりたい、こう考えております。
  480. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いま経済企画庁長官がおられませんので、生活局長から答弁がありましたが、総理、この前御答弁をいただいたわけですけれども、この沖繩の物価対策についてのいまの経済企画庁の考え方を、予算の中で来年度から具体的に予算措置をしていただける、そういった方向で沖繩に対しては善処をする、同時に、本土に対しても、物価対策上の流通機構として、一つの試行として、あるいは参考として、そういったものを計画をしてみる、そういったものの予算措置はしてみる、こういうことについての総理のお考え方を簡単にひとつ述べていただきたいと思うのです。
  481. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 実はたいへん申しわけのないことですが、生活局長のお答えを十分聞いていなかったのです。しかし、この前からお話がありましたが、本土に依存しておる沖繩の物価、その状態においては、私ども国際通貨の問題が一つからんておりますが、そのほうの点で特に物価が高くならないように、これは中央政府でその差損と申しますか、あるいはその点を埋めるような、いまもうすでにその措置をとっております。これはおそらく、国際通貨の問題がどの辺で落ちつきますか、もうそのうちに落ちつく、かように考えますので、ただいまの状態ではないかと思っております。  そうして、この前もいろいろお話がありましたが、沖繩の、何といいますか、消費経済の面では、あまり中間的な、卸だとかいうようなものはなくて、直売方式が行なわれている。これは消費者にとってもたいへんしあわせなことだ、かように指摘されました。この点では、ただいま言われるように、むしろ本土沖繩を見習うべきそういう問題だ、かように心得ております。最近は、産地直売という式があったり、あるいは製造工場直売というようなスーパーマーケットもどんどんできておる、そういう事柄をやはり進めていくべきではないだろうか、かように私も思っております。
  482. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ことばではなくて、やはり具体的に予算の裏づけというものがなければ物価というものは安定をいたしませんので、ぜひ経済企画庁のほうでも勇気を持ってひとつ、総理もああ言っておられるわけですから、政府部内で、ぜひそういった面についての予算の裏づけというものをしていただきたい、かように思います。  局長、かぜを引いておられますから、どうぞ離席してください。どうぞ。御苦労さんでした。  それでは続いて、実は問題でありました水道公社の問題について議論をしたいと存じます。これは主として外務大臣にお聞きをいたします。前大蔵大臣でもありますから。現在の大蔵大臣にもお尋ねをいたしますが、前の大蔵大臣として御答弁をいただきたいと存じます。  総理も何だかお疲れのようですから、それではしばらくの間お休みください。  それでは、琉球水道公社の問題についてお尋ねをしたいと思うのですが、どうしても数字が合わなかったのです。それで、大蔵省の理財局次長さん以下六人ぐらいの方に来ていただきまして、資料を私の資料といろいろと突き合わせしたわけであります。しかし、最終的には、合わないということがはっきりしたわけであります。なぜ合わないかといいますと、非常に詳細にわたって琉球水道公社の固定資産についての再調達原価を計算をいたしております。みごとに計算をされております。道路なども非常に詳しく計算がされておるわけであります。こうした再調達原価で計算をいたしますと——私たちは、少なくとも琉球水道公社が発表いたしました貸借対照表なりこの決算諸表によって、琉球水道公社の資産というものをチェックをしたわけであります。ところが、政府のほうは逆に、琉球水道公社のこの内容を中心にするということよりも、要するに、琉球水道公社の固定資産を再調達する原価で計算をなさっておるわけであります。そうするとこれは幾らやったってかみ合いません。ですから、再調達原価で計算をし画して、日本の減価償却を当てはめて各固定資産ことに再評価しておりますから、わからないわけであります。この琉球水道公社のこの決算でいきますと、この再調達原価による政府の資産表との間に二百五万の差がありますね。ちょうど、その二百五万の差というのは、こちらのほうでは減価償却の引き当て金ですね、その部分がちょうど。ところが、この政府の再調達原価でいきますと、減価償却前価格にちょうど偶然に一致するのですね。たまたま計算をしたら償却前資産になったわけです、こちらのほうは。そうしますと、琉球水道公社は二百万近く逆にもうかった。彼らのこの水道公社の評価でいくよりも、日本政府は二百万だけ多額で買ってくれた、こういう結果がくしくも出てきたわけです。そういう計算をしてまいりますと、外務大臣がいつも私にこの前から言っておられるように、水道公社その他三公社の一億七千五百万ドル、これは承継である、あくまでもこれは資産の承継である、こう言っておられますが、具体的に出てきた数字そのものは買い取りだ、こういう結果になっておるわけですね。ですから、いままで国民に対して、国会に対して、これは承継である、承継である、こう外務大臣は言ってこられましたが、内容的には、承継ではなくて買い取りだ。そのことが、この数字によって具体的に出てきたわけなんです。外務大臣、こういう数字が出ても、なおかつこれは承継である、買い取りではない、承継である、こういうことが言えますか。どうでしょう。
  483. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 考え方といたしましては、あくまでも資産を承継をする。それに対しまして、政府としては、承継資産もあります、また労務者の問題もある、また核などの問題もある、そういうことを考慮いたしまして、三億二千万ドルを支払います、こういうことでありまして、買い取りというと、非常にこれは、私は、何か感じもよくありません。やはり承継というふうに観念し、それに対して適正なる支払いを行なう、こういうふうに理解するのがすなおである、かように考えます。
  484. 松浦利尚

    松浦(利)委員 そこが重要な問題なんです。すなおに考えたら買い取りじゃないですか。承継であるならこの簿価でいくべきですよ。簿価でいくなら承継ですよね。簿価ではなくて、現実に再調達原価で計算をして、そしてこの簿価よりも二百万ドル多額で支払っておるわけでしょう。この琉球水道公社の資産を日本が承継することによって、アメリカは明らかに二百万ドルもうかっているわけですよ。これはどう考えても買い取りじゃありませんか。承継でなくて買い取りじゃないですか。それは、ことばのごろとしては、財産の承継であるといったほうがいいかもしれませんね。しかし、出てきた具体的な数字は買い取りじゃありませんか。なぜ買い取りじゃないのですか。ここに明確に——この三公社一億七千五百万ドルについては、買い取りである。道路につきましても非常に詳しく調べておられます。委員の皆さま方にお配りをしたこの表よりさらに——これをこの表に到達するためのさらに細分化した表があるのですね、理財局に。小さなところまでずっと計算をしてきて再調達原価を出し、それを評価しておるわけであります。そして日本政府が一億七千五百万ドル払っておるわけですね、すべてのものについて。私はたまたま道路とこの琉球水道公社だけしか調べなかったから。しかし、先ほどの斎藤委員お話でわかるように、琉球電力公社だって同じであります。これがなぜ承継でありますか。これはもう常識的に言って、国民は買い取りということしかとれないですよ。承継という買い取りですな、それでは。どうです。
  485. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 三公社等の資産を評価しますと一億七千八百万ドルになるんです。そういう事実もある。それから軍労務者の待遇を内地並みにする、こういう問題もある。それから核等の問題もある。それらを含めましてとにかく三億二千万ドル支払う、こういうふうにいたしたわけでありまして、その中で、まず第一に、経過的に言いますと、大体私ども見当をつけましたのは、この三公社などの資産の承継の問題なんです。これは一億七千八百万ドルと出てきたわけです。これが買い取りならば、一億七千八百万ドルとならなければならぬわけなんです。そうはしておりませんです。大体それを一億七千五百万ドル見当、それからまた、労務者の関係を七千五百万ドル、これは大体その辺に出てきます。それで二億五千万ドルになる。そのあといろいろな関係、つまり、従来何回も説明いたしておりますので申し上げませんけれども、七千万ドルを上乗せをした。そこで三億二千万ドルとなるわけでありまして、そこで私どもは、資産は承継である、買い取りじゃありません、こう言っておるわけなんです。
  486. 松浦利尚

    松浦(利)委員 愛知前外務大臣が、この水道公社についてはもうすでに四千七百三十万ドル、こういう発表をされまして、それで実際的にこれはそういった再調達原価でずっと計算をしていって、最終的に四千七百三十三万ドルになっておるのです。そして端数の三万ドルを切り捨てて四千七百三十万ドル、こういうふうに計算してある。これは明らかに政治的な何もないじゃないですか。具体的に出された数字、しかも、その数字は、理財局のほうで、ちゃんと基礎になる原価方式、鑑定評価の方式という一定の書式に従った基準に従ってこの再調達原価というものを出しておられる。しかも、日本の減価償却によって償却をして、そのトータルが四千七百三十三万ドルなんですよ。それを三万ドル削っておるんですよ。明らかに具体的な数字の積み乗せが、合計額が四千七百三十万ドルだとするなら、一億七千五百万ドルに関する限り、これは明らかに数字が動かせかい、この再調達原価を中心にした評価額からきた積み上げの数字であるということじゃないですか。それでは買い取りであるということ、現実にこの水道公社の資産表から二百万ドルよけいに銭を払う、こういうことなんですよ、この水道公社に関しては。向こうのほうは二百万ドルもうかっておるんですよ。日本のほうが多額で買ってやったんですよ。承継じゃないじゃないですか。どう考えても承継ということばがわから過ぎますよ。買い取りと承継とどう違うんですかな、それでは。
  487. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 資産を引き受けましてそれに対して支払いがあるのですから、あるいは買い取りと見られなくもない面はあるかもしれません。しかし、私どもはあくまでも承継と観念をしたい。つまり、米軍が資産を置いていく、それをわが国は引き受ける、しかし、この資産は、沖繩県民にとりましてきわめて有効なる働きをなす資産である、まあそれをただでお受けいたしましょうというのもいかがであろう、これに対して支払いをするのが当然じゃあるまいか、そういうふうに考えたわけです。ですから、評価からいいますれば一億七千八百万ドルになるのです。売り買いでありますれば、それで買わなければならぬということになりますが、一億七千八百万ドルにはいたしません。一億七千五百万ドルと一応見当をつけ、その他の支払いと合計いたしまして三億二千万ドル、こういうふうに言っているんですね。これは実態の面から見て、売り買いだということが言えないとも私は見ませんけれども、しかし、私どもは、そういう売り買いの観念じゃないのだ、やはりこれは資産を米軍が置いていく、それはすなおに引きうけましょう。しかしまた、これは有効な資産だから、他の要因等とも含めまして三億二千万ドル支払いましょう、こういうふうに理解したい、こういう私どもの気持ちを表明しているわけであります。
  488. 松浦利尚

    松浦(利)委員 気持ちを承継という形で表明しておるのだ、こういうことですね、気持ちとしては。しかし、実際は買い取りだ。しかし、気持ちでは承継だ、こういうことですね、それでは。
  489. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 その気持ちを表明しまして、法的に資産は承継いたします、また、それに関連をいたしまして支払いをいたします、こういう法律構成になるわけであります。
  490. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大蔵大臣、この再調達原価その他は、大蔵省が自信を持ってやった数字ですか。それとも、そうじゃない、自信がない、要するにいいかげんな数字ですか、これはどっちですか。
  491. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、自信を持ってやったと聞いております。
  492. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ですから、外務大臣が幾ら強弁なさっても、大蔵省という非常にきびしいところで自信を持って査定をして、米軍の水道施設評価については、米軍はこんなのは減価償却はないんだから七百万ドルで買えといってこうして要求してきたのを、いや、それはいかぬというので再調達価格に振りかえて、これを四百八十万ドルに押えた。ですから、当初の米軍のほうの要求額というのは、米軍の施設がわがほうの言う正確な再調達原価よりも多かったのですよ。米軍施設についての日本に対する買い取り要求が高かったのですよ。減価償却がないからといって、こういう貸借対照表も何にもないのですからね。それで、こうしてやってきたものに対して、大蔵省が、きびしく琉球水道公社の施設と同じように再調達原価を出して評価を出したから、さっき大臣が言ったように、初めこうだったけれども、いまはこうなりましたという少ない数字というものが出てきたのですよ。   〔金丸(信)委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、実際的には先ほど言ったように二百万ドル高く買った、そのことだけは数字的に絶対に動かせない数字ですね。ですから、先ほど大臣がいみじくも言われたけれども、こういう買い取りという数字だけれども、気持ちの上では承継であるというのが福田外務大臣の本音でしょう。もうここまできて、これだけ資料が出て明らかになってきておるのですから、なおかつこれは承継であると強弁をなさるのは、私はどうも外務大臣のことばとしては解せないのですがね。これは政府の資料ですからね。
  493. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いま青表紙の会社の考課表を持ちまして、それと政府の資料とを比較されておりますが、これは根本的に違うのです。会社は会社でいろいろな角度で財産の評価をしております。しかし、政府のほうは、この評価はいろいろ学説はあります。これをどういうふうに評価するのがいいかという説はありまするけれども、資産を再現をするという方式をとるのが妥当であろうという考えのもとにその場合計算をいたしたわけでありまして、それが青表紙と符合するというわけのものではないのです。ですから、いま大蔵大臣も申し上げましたとおり、私どもの資料は資料として、それとはまた別の見地で適正に評価しておる、そういうふうに考えております。
  494. 松浦利尚

    松浦(利)委員 この青表紙は米国のあれですからね。民政府の琉球水道公社ですからね。ですから、日本政府が正しく再調達原価で評価をして買い取った、こういうことですね、これを相手にせずに。そのことはわかっておるのです。だから、それは承継ではなくて買い取りではないか、こう言っておるのです。
  495. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま申し上げました方式等厳正なる評価によりまして、三公社等の財産を総計しますと一億七千八百万ドルになるのです。ですから、売り買いならば一億七千八百万ドル、こういうことになるのですが、そうなっていない。一応一億七千五百万ドルと評価しておる、こういうことでありまして、その点からも、純粋な買い取り、そういうふうに理解するのは妥当でない。また、私ども国民感情といたしましても、また、アメリカ側の感情といたしましても、アメリカが財産を置いていきます、それに対して、これは非常に有効な財産だから、何がしかの支払いをいたしましょう、こういう考え方をとることは必ずしも不当ではない、そういうふうに私は考えております。
  496. 松浦利尚

    松浦(利)委員 数字をいま一億七千八百万ドルを一億七千五百万ドルにしたのだ、こう言われますけれども、先ほど言ったように、米軍から移転される水道の施設は、千当初米軍の要求は七百万ドル以上だったのです。おれのところは減価償却などないんだから、七百万ドルちょっとで買え、いや、それはいかぬというので、大蔵省がきびしく再調達原価を出して四百八十万ドルということにしたのです。だから、その差が、いま大臣が言われた総額の差として出てきておるだけなんです。だから、そういうことを考えたら、日本政府は、大蔵省のきびしい再調達原価からくる減価償却その他は日本に適合した評価額で買い取った、これがほんとうの真相なんです。外務大臣が知らぬだけではないですか。
  497. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私が詳細に一々検討した、こういうことじゃございませんけれども、米軍の考課表の上に出てくる数字、これと、わが国が三公社等の資産を評価する、それは貸借両方あります。つまり、資産の面もありますれば、負債の面もある。その資産の面を、これは価格復元法というか、そういう学説もありまするけれども、再現価格という評価方式というものをとりまして計算をした結果、そういう数字が出てきた、こういうことでありまして、米軍の評価とわが国の評価、これは当然違いが出てくる、そういう性格のものです。
  498. 床次徳二

    床次委員長 松浦君に申し上げますが、だいぶ時間も経過いたしましたので、結論にお入りいただきたいと思います。
  499. 松浦利尚

    松浦(利)委員 米軍のことを私は言っているんじゃないのです。日本の大蔵省か、日本の手続に従って再調達原価をはじき出す、そして正当な評価額で数字をはじき出した、このことを言っておるのです。しかし、そのことは、数字は、この水道公社の貸借対照表よりも二百万ドル多かった、こういうことなんですよ。だから私は、大蔵省がはじき出した再調達原価からくる正当な評価額で買い取った、これが事実じゃありませんか、こう聞いておるのです。
  500. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 大蔵省が適正なる評価をいたしておりまして、その適正なる評価に疑いがありますれば、幾らでも御説明申し上げます。
  501. 松浦利尚

    松浦(利)委員 適正な価格に疑いがあるとは言っておりません。適正な価格で買い取ったというのが真相じゃないですか、こう聞いておるのです。わからぬですか。そうでしょう。
  502. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 アメリカの三公社の財産を引き受けました。どのくらい引き受けたんだろうということを適正に評価いたしますると、一億七千八百万ドルに相なる次第でございます。
  503. 松浦利尚

    松浦(利)委員 米軍資産の買い取りについての評価額は三百万ドルの相違があるだけで、米軍のほうは、先ほど言ったように、これは減価償却はないんだ、こう言っておるのですから、いや、それではだめだということで交渉して、大蔵省が四百八十万ドルということで評価をしたわけですよ。だから、その差が当初の要求額より三百万ドル低くなったのです。これは事実です。それは大蔵大臣の言うことを認めますよ。しかし、そのことで議論しておりますと時間がなくなりますからね。いずれにしても、買い取りという名の承継ですね。適正価格による買い取りという承継ですね。そのことは、この数字から見れば疑いない事実ですからね。そうでしょう。
  504. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 その評価の数字がたまたま水道公社につきまして近似したというゆえんをもって買い取り、こういうふうに御観念なさる、これは私は当たらないと思います。と申しますのは、私どもは、米軍から三公社などの資産を引き継ぎます、その他いろんな要因があります、そういうものを考慮いたしまして、三億二千万ドル支払いをいたします、こういうことなんです。その三億二千万ドルという中には、もちろん、資産承継、これを評価いたしております。そういう実態も考慮しておる、それからまた、軍労務者の関係も考慮いたしておる、核等の問題も考慮しておる、そこで三億二千万ドルの支払いを行ないます、こういうのでありまして、資産を買いました、それに対する代金をお支払いいたします、そういう観念はとっておりませんということを申し上げておるわけであります。
  505. 松浦利尚

    松浦(利)委員 どうも外務大臣と食い違いますが、私がさっきから言っておるのは、大蔵省が再調達原価できびしく査定をして、しかも耐用年数をそれから差し引いた額で買い取ったということです。米車の言いなりに買い取ったということでなくて、日本の大蔵省の再調達原価の額で、それから減価償却を日本に合わせてやって、そして買い取ったという数字です。だから私は、積み上げ方式による買い取りじゃないか、こう言う。これはおたくの資料ですよ。外務大臣のところへ資料がいっていますか。これを見られたら、そういう結果になるんじゃないか、こう申し上げておるんです。——もういいんです。答えは変わらないんでしょう。変わらないのに幾ら言ったってしょうがないですからね。  それで、実はこの前、理財局次長さんたちといろいろ議論をしたんです。数字が合わないんです。一つだけ——いま言ったところはずっとそれでいいんですが、ただ一番問題になりますのは、福地ダム建設工事費の内訳ですね、これがどうしても数字が合わないのです。これは琉球水道公社のほうに照会をして調べてみましたところが、現在まで琉球水道公社で発注をし、実際に工事にかかっておる数字というのは七百十三万三千ドルなんですね。現実に七百十三万三千ドルが、七〇年七月一日以降今日まで工事費に注がれておる額なんです。ところが、御承知のように、この福地ダムというのは、地すべりその他によって、現実的には工事がおくれておる、竣工がおくれておるんです。それで、いろいろと計算をしてまいりましたら、最終的に合意をいたしましたのが百六十八万ドルだけ合わないということが出てきたわけです。極端な言い方をすると、百六十八万ドルだけよけいに日本政府が払うんじゃないかという形が出てきたんですよ。理財局次長おられますか。——この百六十八万ドルというのは一体どこにあるのですか。
  506. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 福地ダムの建設工事につきましては、お手元に資料としてお配りしましたものの七ページにございますが、全体で千二百十四万八千ドル、そのうち、七〇年までの割り当て、七一年度の割り当てを差し引きまして、割り当て残額が五百八十二万八百八十三ドルでございますが、先生が合わないとおっしゃっておられるのは、現在までに琉球政府のほうに割り当て済みの額が、この残額のまだ一部にしかなっていない。したがいまして、残りが追加割り当てされればこの金額にぴたりとおさまる、こういうことでございます。
  507. 松浦利尚

    松浦(利)委員 理財局次長、御承知のように、福地ダムの第二期工事は、現地に行った者はわかりますように、二回の地すべり等によって、佐藤総理なり、いまの政府が言われるように、四月一日までにあるいは五月一日までに終わるという見通しは、なかなか立っておらないですね。そうした場合には、この百六十八万ドルというのは、米民政府が琉球水道公社に発注しないまま終わってしまうという可能性もあるんですよ。そうすると、百六十八万ドルまるまる、日本政府は、固定資産の評価のない架空なものに金を払うという結果が生まれてくるのですが、その点はどうなるんですか。
  508. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 この問題につきましては、かりに復帰日までに工事が完了しない場合におきましても、この資金割り当て額総額、これはアメリカ側は公社に現金出資する、こういう約束になっておりますので、その御心配はございません。
  509. 松浦利尚

    松浦(利)委員 外務大臣、いま理財局次長が答弁なさったとおりです。差額の百六十八万ドルですね、いま琉球水道公社に当然民政府が出さなければならない資金が、復帰時点までに工事が竣工せずに、第二期工事が終わらずに発注できなかった場合には、資金がこないですよ、百六十八万ドル。しかも、外務大臣、実際は福地ダムの発注金額がないのだけれども、それでは困るというので、固定資産ではなくて、その分の現金を百六十八万ドルだけ琉球水道公社に金を出す、こういうんですね。これは固定資産じゃないですよ。そうすると、百六十八万ドル、復帰時点で民政府が現金で支払わなければならない、水道公社に現金で支払わなければならないというその金は、逆に言うと、米国に支払うべき三億二千万ドルの中からこの百六十八万ドルは当然差し引いてもいいわけじゃないですか。百六十八万ドル、アメリカから、できておりませんでしたからというので、琉球水道公社に銭を出して、そしてその金を今度は日本政府がもらって、アメリカに対して三億二千万ドル払う。アメリカが金を出して、日本政府がその金をもらって、またアメリカに払う、そして工事は日本政府がやる、これは承継でないでしょう。こういったことは、当然三億二千万ドルの中から百六十八万ドルというのは削減されるべきですよ。そうして引き継ぎを受けた時点で、日本政府がかわって建設をすべきでしょう。当然そうすべきだと思うんですがね。なぜそういうことをしなければならぬのですか。
  510. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 アメリカ政府は、そのダムを建設をいたす計画である、こういうことを言っておるわけなんです。しかし、いま御指摘のように、万一それが間に合わぬということがあるかもしらぬ、そういう際には、その間に合わなかった分のお金は新しくできまするところの公社に置いてまいります、こういうことなんです。ですから、三億二千万ドルの支払い、これはこれとして、それを減額をする、こういう性格のものじゃない。三億二千万ドルは支払います、しかし、万一そういう建設がおくれるというようなこれがありますれば、その金は置いていきます、まことに常識的な措置である、こういうふうに思います。
  511. 松浦利尚

    松浦(利)委員 常識的だと言われるのは、どうも私は解せないんですがね。承継でしょう。しかも、福地ダムというのは完成をしておらないんですね。それじゃ、日本政府が百六十八万ドルもらって、そして今度はその百六十八万ドルを建設省なら建設省がもらって、百六十八万ドルで工事ができますか。現実的に百六十八万ドル以上の命を出さなければいかぬことになるでしょう。それは人件費も上がる、あるいはその他の資材費も上がりますよ。当然値上がりをしてくるんですよ。資産の承継ではなくて、百六十八万ドルという金を米軍からわざわざ現金を出させて、第三期工事分の百六十八万ドルの金を水道公社にやって、それを日本政府がもらって、その金をまたアメリカに払う、そんなまどろっこいことを何でする必要があるんですか。資産の承継であるならば、その時点で明確にすべきです。ですから、三億二千万ドルというのは、要するに、資産の承継として三億二千万ドル払っておるでしょう。ところが、資産の承継でなくて、架空のものがあったんですよ。福地ダムという建設過程の架空のものがあった。しかも、架空のものも建設予算というもので一応でき上がるという想定をして、そうして三億二千万ドルを払うという約束をなさった。ところが、実際にはうまくいくはずの福地ダムの工事が、二回も地すべりその他が起こって、結果的には第三期工事がおくれておる、復帰時点までには完成の見込みがない、しかも水道公社は第三期工事の発注ができない、その場合には、百六十八万ドルだけ銭を置いていきましょう、そういうことで一体——国民に向かって、三億二千万ドルの承継という、先ほどから、積み上げ方式できびしくやられた、こういった内容というものが、この段階に来たら急にあやふやになってしまっておるのです。これは私は非常に大きな問題だと思う。現実にそうでしょう。三億二千万という数字の出し方に基本的に無理があったんじゃないですか。私は、百六十八万ドルという金は米軍から出させるとかなんとかじゃなくて、この際三億二千万ドルという額にこだわらずに、この額については、アメリカ側と、復帰の時点で実際にどうなっておるかという、資産の承継という立場があるのですから、チェックをして、その分についてその段階で支払いをすべきですよ。私はそう思います。
  512. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 返還協定締結の当時、アメリカに福地ダムを建設する計画があって、その計画に要する費用、こういうものがあるわけです。その前提のもとに返還時における資産の評価をする、そういう前提のもとに一億七千八百万ドル、こういう合計額が出てきておるわけなんです。ところが、万一いま返還時までにその工事ができない場合があるかもしらぬ、これはぜひできるようにしたいと思いますが、あるかもしらぬ、その際には、その残った工事に相当する金額をアメリカ政府が置いていきます、こういうのです。そうすると、それだけの資産はその後において、少しおくれまするけれども、形成されるわけでありまして、それをあらかじめ見通しましてこの評価を行なう、これは私は通常行なわれることである、かように考えます。
  513. 松浦利尚

    松浦(利)委員 この問題は非常に重要な問題ですから、この際、お約束した総理の二十分の休憩がもうとれましたので、総理の御着席をお願いしたいと思うのです。
  514. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 ちょっと誤解があると困りますので……。
  515. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いや、理財局次長、出なくていいですよ。
  516. 床次徳二

    床次委員長 政府答弁ですから、お聞きいただきたいと思います。
  517. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 誤解があるといけませんので、ちょっと補足させていただきます。  公社の財産といいますものはいろいろございまして、現金もありますれば、固定設備もあるし、いろいろあるわけでございます。いまの問題は、福地ダムは完成するものとして一応評価しておりますが、かりにもし万一復帰までに完成しない場合におきましても、その価額には変わりない。つまり、米国から出資される額が、これは物になっているか金になっているかの違いでございまして、協定に基づきまして復帰時において公社の資産になっているわけでございますから、それを引き継ぐわけでございます。したがいまして、三億二千万ドルの中身につきましてはごうも変わっておりません。金が現金出資されて公社の資産になるわけです。
  518. 床次徳二

    床次委員長 松浦利尚君、簡潔にお願いいたします。
  519. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私は政府関係大臣の休憩も認めましたし、どうぞ休んでくださいと申し上げました。できるだけの協力はしておるつもりです。ですから、委員長も、質問の時間がどうだこうだでなくて、中身の問題が詰まっておりませんので……。
  520. 床次徳二

    床次委員長 時間もだいぶ延びておりますから、中身の問題でなしに、理事会では時間でもってお約束をしておりますので、委員会の進行上御協力をいただきたいと思います。
  521. 松浦利尚

    松浦(利)委員 委員長の御注意よくわかりました。協力をいたします。  総理に、いま総理休憩中、お隣で聞いておられたと思うのですが、聞こえませんでしたですか。——それじゃもう一ぺんやり直しましょうか。  実は外務大臣とずっといまやりとりしたのです。ところが、この福地ダムの建設工事ですね、これが当初の予定よりも大幅におくれまして、いま琉球水道公社が発注しておる工事は第二期工事で、それが総理が言われる四月一日あるいは五月一日までに第二期工事すら終わるかどうかわからないといういま状況なんです。そうすると、第三期工事を発注するための百六十八万ドルというのは宙に浮いてしまっておるのです。それはどうするのかという質問に対しまして、理財局、大蔵省のほうは、その場合には百六十八万ドルというお金は現金で琉球水道公社に置いていきます、こう言うのです。出資じゃないのです。置いていく、こう言っている。それで、百六十八万ドルを置いていくから、できたものとして置いていくから、こういうふうに言っておられる。ところが、実際には、その百六十八万ドルについては、現金だけしか、形がないのです。しかし、日本政府は、すでに三億二千万ドルを払います、こう言っておられる。琉球水道公社なりその他の資産を承継するという形で、すでに三億二千万ドル払いますといって約束をしておられる。ところが、復帰の時点で百六十八万ドルという工事ができておらない、そうなれば、その百六十八万ドルというのは、当然三億二千万ドルから削除されるべきではないか。三億二千万ドルは、逆に言うと、三億一千八百三十二万ドルに修正されるべきではないか、これが当然のあり方ではないかという質問をしておるのです。それで、いろいろ外務大臣その他からお話は聞きました。このことについて、総理は、この三億二千万ドルというものについての百六十八万ドルの扱い、これについてどのように理解をしておられるのか、その点を総理として明確にしていただきたい、こういうことです。
  522. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 総理にかわって私がお答え申し上げます。  私はいま松浦さんのお話を承って、御質問の趣旨がやっとわかった。つまり、施設ができないで金だというから、これは資産の承継と言えないじゃないか、こういうお尋ねかと思うのです。しかし、そうじゃないのです。これは資産と申しますのは、積極資産と消極資産、つまり財産面と負債面、これを総合差し引きいたしまして残ったものをわれわれは資産と言っているのです。ですから、それが現金の形であろうが、あるいは施設の形であろうが、そこは問題じゃないのです。問題は、百六十八万になりますかどうか、これからの問題でありますが、それはちゃんと置いていく、こう言っておるのですから、この資産の承継の正味が、これが合計して一億七千八百万ドルになる、これにはいささかの狂いもないわけであります。
  523. 松浦利尚

    松浦(利)委員 総理、いま外務大臣が言われて、なるほどわかったような感じがします。しかし、わが国が三億二千万ドル米政府に支払いますということだけははっきりしておるのですね。それじゃ、いま言ったように、工事が未完成の場合に、百六十八万ドルは琉球水道公社に払いますという合意議事録か約束事がどこかにあるのですか。その点はどうなんですか。それは、外務大臣、どうです。
  524. 井川克一

    ○井川政府委員 私、福地ダムの話はよく存じないのでございますけれども、第六条をつくりましたときの第六条の解釈……
  525. 松浦利尚

    松浦(利)委員 知らないとは何だ。
  526. 床次徳二

    床次委員長 政府委員答弁だけお聞きください。
  527. 松浦利尚

    松浦(利)委員 知らぬ人が答弁したってしょうがないじゃないか。知らぬとは何だ。知っておる人が答えてください。
  528. 床次徳二

    床次委員長 松浦君に申し上げますが、政府委員答弁でありますから、一応お聞きください。
  529. 松浦利尚

    松浦(利)委員 知らないと言っているじゃないですか。知らない人が答弁したってしょうがないじゃないですか。それを言っておるんです。
  530. 床次徳二

    床次委員長 解釈についての答弁です。
  531. 井川克一

    ○井川政府委員 第六条の解釈について申し上げます。  第六条を合意いたしましたときに、私どもは意識して、この第六条一項の財産は、積極財産及び消極財産の双方を含む概念として用いられており、したがって、これには有体、無体の財産のほか債権債務も含まれるという気持ちで、そういう解釈のもとにこの第六条一項をつくったものでございます。
  532. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いまの条約局長の話は話でそれでいいです。問題は福地ダムに限定をして私はものを言っておるのです。  総理大臣、復帰時点でこの福地ダムが完成をしておらない、しかも、先ほど言ったように、第三期工事の発注はもう復帰までに無理なんです。沖繩復帰が四月一日から十月一日復帰とかあるいは十一月一日復帰に延びればこれは別ですよ。いま佐藤総理の目標は四月一日でしょう。四月一日に第三期工事が発注できないことはもうはっきりしておるのですよ。しかもその総額が百六十八万ドルということも、きのう詰めてみたら、金額はわかっておるのです。それでは、それを米民政府が琉球水道公社に復帰の前に置いていきますというそういった合意議事録か何か具体的にあるのか、こう聞いておるのですよ。条約局長じゃないですよ、どうです、外務大臣。
  533. 前田多良夫

    ○前田政府委員 私がその面の交渉を担当いたしましたので、私からお答えいたします。  いまの点につきましては、合意議事録とか、そういう書いたものにはございません。そういうふうに約束をしていると、こういうことでございます。
  534. 松浦利尚

    松浦(利)委員 外務大臣、口約束だけですよ。口約束だけで、具体的なものがなくて政府間の交渉というのが存在するのですか。どうです、この点は。
  535. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 アメリカ当局と大蔵省が約束をしたことでありますから、万間違いはないと思いまするけれども、御心配がありますれば、約束の書類をとります。
  536. 松浦利尚

    松浦(利)委員 私はここで問題をこうして引き延ばしたりなんかするという意味でものを言っておるのじゃないのです。何べんも何べんも資料をいただいて、三度目に詳しい資料が出て、やっとそのことがわかったのです。それで、いまアメリカと明確な文書をかわしますと、こう言っておられるのですが、それが具体的にならなければ、具体的に審議できないじゃないですか。その点どうなんです。
  537. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 大蔵省が約束をしておるというのですから、私どもはそれを全幅的に信用します。しかし、松浦さんは、私は、松浦さんの御研究からみて、よく松浦さん御自身おわかりだと思うが、しかし、もしそれほど御心配ならば、私どもが約束を取りつけます、こう申し上げているのです。
  538. 小幡琢也

    ○小幡政府委員 先ほど申し上げましたように、千二百万ドルというのは米国側がオーソライズした金でございまして、私ども当初は福地ダムが完成するということで評価したわけでございますが、できるだけ完成するように努力いたしますが、がけくずれその他でおくれておりますので、もし万一復帰までに完成しない場合におきましても、すでにオーソライズされておりますので、その金は間違いなくアメリカからこちらに入る、こういう原則的な了解があるわけでございまして、もし万一復帰までにできない場合には、そのときに向こうと覚書なりそういうものをかわすということも、向こうは原則的に了解しております。
  539. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大蔵省じゃなくて、外務大臣が、そういうふうに心配なら、アメリカ政府ときちっとする、こう言っておられるのですから、そういう点のきちっとなるのをまずならしてください。なるまで待たしてください。
  540. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 原則として、この工事が復帰のときまでに完成するということを土台にしておりますので、できるだけ完成してもらうということになっておりますが、がけくずれその他で工事がおくれておるということは事実でございますので、万一の場合は、それに残工事分の現金を必ず置いていくという約束になっておることは、いままで答弁したとおりでございますが、いま理財局次長から、万一そういう場合にはこれは約束を文書の形で取りつけるということでございましたが、万一ではなくて、いまこれは事前に約束は文書の形で取りつけることにいたします。
  541. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いまの答弁は変わっております。いまの理事の連絡と全然変わっております。
  542. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは簡単だと思いますが、あさってごろまでにはとれると思いますが、きちんとこれからこの交渉はいたしますが、十三日までに間に合うと思います。
  543. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、私の質問は、十三日までに資料をとる、こういうことですから、そのことは間違いありませんね。その点で間違いありませんか、もう一ぺん念を押します。十三日までにとりますか。——大蔵大臣の御答弁が少し理解しにくかったのですが……。
  544. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 あしたが日曜でございますので、あさってまでと言いましたが、せめて日曜をはずして一、二日のひまをいただければ、これは必ずとれると思います。これはもう話はついておるから、きわめて簡単で、時間の問題だと思いますが、ただ明日は日曜でございますので、あさってと言ったのを、できるだけ、とにかく月曜中でもしますが、一日くらい延びるのはお許し願いたいと思います。(発言する者あり)それじゃ十三日中に間に合わせます。
  545. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いま大蔵大臣の御答弁がありましたので、そのときまで私のこの質問は保留させていただきます。
  546. 床次徳二

  547. 上原康助

    上原委員 私の補充質問は毒ガスの件なんですが、それに入る前に四、五点ばかりお伺いをしておきたいと思うのです。  まず最初に、琉球政府に対しての援助費の差損金についてでございますが、御承知のように、現在円建てで琉政援助がなされております。変動為替相場制への移行等によって、この問題で琉政に相当財政的なワクをはめているという事態が起きております。特に年度末を控えて琉政の財政状況というのが非常に逼迫をしている。一体この件について政府はどういう考え方をお持ちなのか、また、どう対処していこうとしておられるのか、最初に山中長官のお考えをまず聞かしていただきたいと思います。
  548. 山中貞則

    ○山中国務大臣 午前中も詳しく御説明をいたしたのでありますが、その問題はすでに解決をいたしました。  その経過について申し上げますと、琉球政府に対して、変動相場制に移行したために、円物資に依存する沖繩の人たちが、ドル圏において生活諸物価等の高騰に事実上なるということに対して、先般、十億円並びに一億円の生活物資並びに学生についての措置をいたしましたが、それはやはり現地で公共事業その他の執行状況を見てもどうしても四百四十品目必要であということで、そのための品目、並びにそれの所要資金等を復帰まで続けていかなければならないということで、近くその十億円の第二次分を出すつもりでおります。  それについて、大蔵側としては、完全に復帰までの間その差損を埋め続けるということであるならば、それならば、本土から送られる金は円であるので、ドル建てにしてもらいたいという意向があったことは事実であります。また、その前提として、円で送られることによって、琉球政府がドル圏の中で工事を行ない、その他諸行政を行なう上に差益が理論上生ずることも事実であります。しかしながら、このことはやはり日米琉の合意に立った金額の問題であり、また覚書に基づいた円建ての問題でもありますから、これは沖繩側の引き続き円建てで送ってもらいたいという要望を私どもとしてはやはり第一義的に採択したいと考えまして、その点は了解をいたしたわけであります。さらに、琉球政府の責任者としても、現地において差益が生ずること、そのことについては認めておられます。しかし、そのことについて、その差益の分については、今後の使い道について、琉球政府が必要と認める場合は、総理府とよく協議をして使っていこうということになって、一応落着をいたしました。そのために今日まで復帰対策費の支払いが遅延いたしておりまして、十日に公務員のボーナスが払えるかどうかも心配だという状態でありましたので、非常に急いで大蔵側と折衝いたしました結果、幸いにして十日のボーナスの支払いもできましたし、琉球政府が二千八百万ドル送ってくれという要求でありましたものも、基本的な話し合いが解決をいたしましたので、この際、要求額以上でありますけれども、本来払ってもいいものについて三千五百万ドル送付することに決定をいたしまして、大体月曜ないし火曜には三千五百万ドルが琉球政府の手元に届いて、年末の生活保護費その他支障なくやりくりができるということで、私は午前中には二千八百万ドルと答えたのでありますが、その後大蔵側のほうから、三千五百万ドルこの際全部送りましょう、要請額以上でありますけれどもということで返事がありましたので、その旨先ほど昼食時間に電話で副主席に連絡をしておいたところでございます。
  549. 上原康助

    上原委員 私がお伺いをしている点は、差損金の問題じゃなくして差益の問題なんです。いま大臣は、けさ解決をしたということなんですが、私が調査をしたところによりますと、十二月八日付で対策庁はやはり六十一億円、約千七百万ドルしか支出をしておりません。この金額というのは、いま説明もあったわけですが、請求額二千八百十三万五千ドルのおよそ半分にしか満たない。その理由として、差益分については、琉政と政府の覚書ですか、四項目にわたる覚書があるわけですが、その中で、日本政府は差益分を吸収する態度を堅持している、あるいはまた、差益分についてはあくまで協議の上で支出を認めるという条件を付しているというようなこと等で、琉政側としても、事のいきさつについては理解しない面もないではないが、こうワクをはめられては困るという強い要求があるわけです。そうしますと、いま大臣の御答弁によりますと、差益分を吸収する態度というもの、あるいはその使途についてワクをはめるという政府のこれまでの方針というものを変える、変えたというふうに受け取ってよろしいですか。
  550. 山中貞則

    ○山中国務大臣 その基本方針については、一昨昨日屋良主席と直接電話で話しまして完全に合意に達し、主席も非常に喜んでおられた次第であります。
  551. 上原康助

    上原委員 大蔵大臣にこの件と関連いたしましてお伺いしておきますが、いま総務長官から答弁ありました、大蔵と協議の上ですでに三千五百万ドル支出をする準備がなされたということですが、ただいまの総務長官の御答弁のように、大蔵としても、琉政に対する援助金の差益分については、琉球政府の立場というものを尊重して使用できるような方針なりあるいはまた対策をとるというお考えですか。
  552. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま総務長官のお答えになったとおりでございます。ただ、その場合、対策庁と琉球政府が十分相談してやってくれということだけでございます。
  553. 上原康助

    上原委員 こういう問題は、やはり沖繩がドル圏に置かれていること、あるいは政府の円の変動相場制移行によって生じた、ある意味じゃ沖繩側の犠牲ということにもなりますから、嫁いびりをするような態度じゃなくして、ぜひ政府の積極的な対策を講じていただきたいということを強く要求をしておきたいと思うのです。——大蔵大臣、もういいですから。関連ありますが、もし……。  二点目にお伺いをしたいことは、返還協定の第六条との関連で、いわゆる合意議事録のほうです。二項の(3)、いわゆる軍用道路について、復帰時点または復帰後、この道路というものは買い上げるのか、あるいは従来のように賃貸借契約でいくのか、そういう面に対しての政府の方針をお伺いをしておきたいと思うのです。
  554. 山中貞則

    ○山中国務大臣 軍道は、おおむね本島においては国道に編入されることになると思いますが、これについて政府は、予算措置でこれを逐次買い上げて、将来は完全に本土と同じように、道路の敷地が借地であるというような異様な現象はなくしたいということでおりますし、その間は、まだ買収の地域に達しない人たちについては引き続き借地料を支払っていくという方針でございます。
  555. 上原康助

    上原委員 将来買い上げの方針でいくということですが、合意議事録の第六条二項の(3)、それに規定されているだけの道路を対象にしているのか、これ以外もあるのか、その点、説明をいただきたいと思います。
  556. 山中貞則

    ○山中国務大臣 大体この道路は全部入ると思いますが、これはしかし、かりにこれが沖繩県の県道になる部分がありましても、やはりそれは財源措置を講じながら同じように買い上げ、買い上げに達するまでの間は賃借料を払うという方式をとっていかなければならぬと思いますし、そのような予算措置をいたしております。
  557. 上原康助

    上原委員 この点について、琉政あるいは地主、関係者との話し合いはどうなっているんですか。
  558. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 賃借料の問題でございますが、現在地主会連合会のほうで要求されておる中に、一般の公共用道路の賃借料も含まれておりますので、これは建設省あるいは沖繩県の問題になるかと思いますけれども、それに対しては建設省なり沖繩県のほうで賃借料の予算を組まれて当然その手続をされる、かように存じます。
  559. 上原康助

    上原委員 きょうは基本的な点だけお伺いをして、また後ほど関係委員会でもやりますが、これもやはりこの公用地等法案との関連が出てくるわけですね。地主が応じない場合は、やはりこういうものについても公用地等を適用するという前提でこの法案はつくられている、そういう態度で臨むんですか。
  560. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 これは二条一項の第七号でございまして、「この法律の施行の際沖繩において一般交通の用に供されているアメリカ合衆国の軍隊の築造に係る道の敷地である土地で、引き続き道路法による道路を構成する敷地となるもの」これにつきましても、もちろん、これは一条の第二項にございますように、極力、復帰前及び復帰後におきまして、地主との合意を達成するための努力が払われるわけでございますけれども、どうしてもその合意が成立しないという場合には、この法律に基づきまして暫定使用の対象になる、こういうことでございます。
  561. 上原康助

    上原委員 問題は、現在軍用道路となっている、もちろん沖繩県民も共用しておりますから、いわゆる公用地、公共用地というようなたてまえになるかもしれませんが、依然としてこういう軍用道路はアメリカが優先的に使用する道路になっているわけですね。やはりこの法律前提というものは、すべてが軍事を優先するという形で作成されている、立法化されているところに大きな問題があるわけなんです。道路用地までこういう形の法律で押しつけなければいかないということ、これはまさしく沖繩に対する新たな差別だとわれわれは見ているわけです。きょう一例をあげたわけですが、いかにこの公用地等法律が矛盾するものであるかということを、もう一度強く指摘をしておきたいと思うのです。  次に、先ほど来三億二千万ドルの件がいろいろ問題になって、政府の御答弁というのがますます納得のいかない面があるわけですが、三億二千万ドルのうちの七千五百万ドルは、いわゆる基地労務者の退職手当に割り当てる資金だというふうにこれまで説明をしてきております。なぜ七千五百万ドルを復帰時点において軍雇用員の退職手当に割り当てるということでアメリカに支払わなければいかないのか、その理由、あるいはその内訳はどういうふうになっているのか。この件については、おそらく具体的な説明なりその積算根拠というものが明らかにできると思うのですが、ぜひこの際明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  562. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まず趣旨について御説明しますが、もしこれをほうっておきますると、沖繩の軍労務者が内地の軍労務者に対して不当に安い待遇を受ける、こういうことになる。これをなからしめるために、財源をアメリカ政府に与えて、公正、均衡をとりたい、こういう趣旨であります。  それから七千五百万ドルという金額、これを積算したその内容いかん、これは政府委員のほうから御説明いたさせます。
  563. 前田多良夫

    ○前田政府委員 お答えいたします。  御承知のように、現在の沖繩におきます軍労の退職金の算式につきましては、本土の算式と算定方法が違っておりまして、その結果、同じ勤続年数でございましても本土の退職金のほうが高い、こういうことになっております。それからもう一つは、復帰日をまん中にはさみまして、復帰前から継続して雇用をされることになるのか、つまり勤続期間が通算になるのか、それとも、そこで新しく切りかわる、つまり返還日から本土制度に変わるというようなことになるのか、こういう問題が二点ございまして、これは合意議事録にもございますように、昭和二十七年四月三十日以降で復帰までの雇用期間を通算する、まず第一に通算した上、そうしまして——つまり、復帰前の期間は、本土雇用されたと同じように見る、雇用期間の通算でございますが、そうした上で、本土の基本労務契約等の算定方式に従いまして米側が支払う、こういうことがこの合意議事録ではっきりしておるわけでございます。そういたしますと、米側といたしますと、これがもし復帰なかりせば米側が支払ったであろうその金額よりも相当程度上回る、そういうことになるわけでございます。つまり、ずっと沖繩の退職金の支払い制度で継続した場合と、ずっと最初から本土の制度で計算した場合との差額が相当に大きくなる。その相当に大きくなるというのは一体幾ら大きくなるのかと、こういう計算をいたしまして、それが約七千五百万ドル程度というふうに結論がなったわけでございます。  そこで、お尋ねの、それではどういう計算方式をとったのか、こういうことでございますが、これは種々非常に大部なものでございますが、要約いたしますと、まず、復帰時において軍労務者を何人と見るかというのは、約二万人でございます。そうしまして、平均、切りかえ前に十年勤続しておった、それから復帰日後十五年間に毎年平均して約二万人の方々がやめていかれる、こういう前提をとったわけでございます。これは十五年間というのは、大体本土におきますところの在籍者につきましての実績で、十五年たちますと大体全部やめていっているというのが現在の実績であるために、この十五年間というのをとったわけでございます。つまり、基本線は、復帰前十年、復帰後十五年間に平均してやめていく、それから人員は約二万人。それから、その場合に、退職金も、御承知のように、整理退職、それから自己都合の場合、あるいは定年退職といって、これは計算方法が違いますが、これも最近十年間の実績によってそれぞれパーセントを出しまして、そうして乗じたわけでございます。それから給与。問題は、返還日後やはり毎年毎年給与がアップしていくわけでございますが、これも書近の実績等を勘案しまして、一〇%ずつ毎年給与が上がっていく、そういう前提をとって計算したわけでございます。  以上が基本的なファクターでございまして、算術計算をいたしまして出したわけでございます。
  564. 床次徳二

    床次委員長 上原君に申し上げます。  理事会の協議に基づく補足質疑でありますので、この点御了承の上、その範囲内で簡潔に質疑を進められるよう御協力をお願いいたします。
  565. 上原康助

    上原委員 来週も審議は続くと思うのですが、少しは質問させるようにひとつ御配慮を願いたいと思います。
  566. 床次徳二

    床次委員長 いや、これは理事会できめてありますので、常識の範囲内でおとどめをいただきます。
  567. 上原康助

    上原委員 外務大臣にお伺いいたしますが、いま大臣の御答弁なりいろいろありましたが、端的に申し上げて、この金はアメリカがやはり負担すべきものだとお考えですか。
  568. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ほうっておきますると、アメリカアメリカ方式でいままでの給与体系でいくだろう、こういうふうに想像されますので、そこで特に日本側は資金を提供いたしまして、内地並みの待遇をしてもらいたい、こういうふうにいたした次第でございます。
  569. 上原康助

    上原委員 資金の要求については、米側が要求したわけですか、それとも日本側が申し入れたわけですか。
  570. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 アメリカ政府に対しましては、内地並みの待遇をしてもらいたいという要求をしたわけです。しかし、それをアメリカががえんじない。そこでわれわれは、日本側より資金を提供するということにしたわけでありまして、資金の提供自体は、わが国がそういう申し出をしたわけであります。
  571. 上原康助

    上原委員 どうもこの点も納得がいかない面があるわけです。私は、軍雇用員のそういった待遇改善をすることに異議を申し上げているわけじゃありません。しかし、この七千五百万ドルという金は、復帰の時点において雇用員個々人にいく金じゃないわけですね。やはりアメリカ側に一括してつかみ金としてあげる。同じく日本政府が補てんするのであれば、現在だって日本政府が格差は埋めているわけなんだ。アメリカ側にやらずに日本政府ができない相談じゃないのですがね。なぜ七千五百万ドルというのは、わざわざアメリカにやって、アメリカがまた計算をするというようなまだるっこしい方針をとったのか。ここに何か不純なものを感ぜざるを得ない。その点どうなんですか。
  572. 前田多良夫

    ○前田政府委員 お答えいたします。  現在、本土における退職金の支払い方法というのは、これは御承知のように、労務基本契約に基づいて米側が払うことになっておるわけでございます。したがいまして、これはどういう給与制度、退職金制度にしましても、そういう米側が払う、こういう現在の本土の制度へ乗っけまして、そしてそれによって余分の経費がかかる分をアメリカ側に支払う、こういった考え方でございます。
  573. 上原康助

    上原委員 委員長の注意もありますので、この件については十分な資料をひとつ提示をしていただきたいと思います。よろしいですか。
  574. 前田多良夫

    ○前田政府委員 承知いたしました。
  575. 上原康助

    上原委員 一点だけ通産大臣にお尋ねをしておきたいと思います。  海洋万博の問題が非常にいま大きくクローズアップされております。本委員会でもその議論はありましたが、敷地の選定については琉政側にまかすという立場をとっておられるのか、端的にその点を説明して、もう一つは、海洋博の問題については、基本的にはわれわれも賛成いたしますが、しかし、あくまでも沖繩の将来の経済開発につながるということ、そしてあと地利用というものも、一部の特権階級の権利擁護、利益擁護というようなことではなくして、沖繩の立地条件、地理的条件というものを将来においても生かしていくという立場での十分なプランでなければならないと思うのです。この二点について、基本的な考え方だけを明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  576. 田中角榮

    田中国務大臣 沖繩海洋博の候補地については、二、三申し込みがあります。ありますが、いま御指摘がございましたように、将来の活用もございますし、投資メリットを十分考えなければならないことでございますので、現地の事情も十分調査をしなければならないと考えます。もちろん、沖繩県民の意思を最大に尊重することは当然のことでございますが、最終的な場所の決定は、政府を中心にした懇談会等がいま会議を続けておりますので、沖繩の意思を尊重しながら最終的には政府がきめる、こういうことになると思います。
  577. 上原康助

    上原委員 ひとつ、あくまでも沖繩経済開発全体という大局的な立場で考えていただきたいし、自民党の派閥で候補地をきめることのないように、特に念を押しておきたいと思います。  次、基地問題だけ聞きますとあれなんで、一点だけ総務長官にお尋ねをしておきますが、いわゆる復帰に伴う琉球政府公務員の身分引継ぎに関する官公労と琉球政府との協定というものが、昭和四十六年八月二十六日に文書で結ばれております。この中には、身分引き継ぎについて、あるいは任用について、給与切りかえについて等、詳細に規定をされている。もちろん、琉政と官公労の取りきめであるにいたしましても、中身はみんな復帰との関係において取りきめられております。そういう意味で、これを十分尊重した形で今後公務員の身分引き継ぎの問題なり給与の是正というものをやっていくというお考えに立っておられるのか、あるいはまた、この中身について御案内だと思いますので、どういうふうに受け取っておられるのか、一応明らかにしておいていただきたいと思います。
  578. 山中貞則

    ○山中国務大臣 大体尊重する意思を持っておりますが、しかし、復帰後も年次休暇の買い上げ等の措置等がもし入っておれば、その点は困難である旨、繰り返し申し上げているとおりでございます。
  579. 上原康助

    上原委員 この件につきましては、内閣委員会等でまた中身について触れていきますから、十分尊重するようにひとつ御配慮をいただきたいと思います。  そこで、毒ガス問題に入る前に、総理にここで一首だけお伺いをしておきたいわけですが、あと二、三日しんぼうしてすわっておられれば沖繩問題はすべて片づくのだというお気持ち、あるいはお顔のように見えるわけですが、私は、ここであらためて強く総理見解を求めたいことが一つあります。  予算問題を含めて、新年度の予算問題というのは非常にシビアな面が出てくると思います。ドルの問題あるいは円の切り上げ問題等、そういう意味で、総理がこれまで強調してこられたように、ほんとに豊かな沖繩、明るい沖繩というものを建設していこうということであるならば、新年度の予算においては、沖繩協定あるいは関連法案が片づいたからというようなことでなくして、ほんとに積極的に具体的な施策を進めていく予算の裏づけというものをやらなければ、全然前進をしないと思うのです。そういう意味で、総体的な予算において十分配慮をするということを、ぜひ総理見解というものを明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  580. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総務長官から、沖繩県の予算等については要求書が出ております。まだ、私の手元に来ておる、こういう段階ではございません。しかし、ただいま言われるように、格差のあることはもうしばしば指摘したとおりでありますし、ずいぶん御苦労の多かった事柄を考えると、できるだけ早い目に本土並みの地位まで引き上げるようにしなければならない、かように考えておりますので、仰せになるまでもなく、私自身も予算の編成についてはもちろん重点的に考える、このことをはっきり申し上げておきます。  なお、私は、二、三日で片づくというような顔をしているか知りませんが、これはとんでもない話で、衆議院の段階は終わるかもわかりませんが、参議院があるのでございますよ。でありますから、これはそういうような感じで私はつとめておるのじゃないのでございますから、それだけはもう少し御同情を賜わってしかるべきではないか、かように私は思います。
  581. 床次徳二

    床次委員長 先ほども申し上げたのですが、どうぞ結論をお急ぎください。
  582. 上原康助

    上原委員 いろいろ御熱心にやっていらっしゃるということは認めるにやぶさかでありません。まあ雑音もだいぶ出てきたのですが、私が申し上げたいのは、返還協定というものがああいうふうなかっこうで片づけられて、関係法案だけ慎重に審議をしたのだ、それはあくまでも県民向け、国民向けのポーズでしかあり得ない。私たちが最も重要視しておった返還協定というものがもっと掘り下げられねばならなかったということを、私は強調しておきたいわけです。基地問題を含めて、まだまだ疑惑が相当あるじゃありませんか。そういう点をぜひ総理御自身も十分反省をしていただく面は反省をしていただいて、先ほど申し上げた面については特段の御配慮をいただきたいと思うのです。  そこで最後に、この間の委員会で毒ガス問題についてお尋ねをいたしました、また昨日、私が疑問点と思われる点について五点ほどあげてございますが、これについてどういうふうに調査あるいはまた米側との交渉をなさったか、まずその説明をお伺いをしてみたいと思います。
  583. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 毒ガス問題につきましては、去る九月十日に完了いたしました、こういう旨が米軍から通告されたわけであります。しかし、上原さんからも御指摘の点もあり、また新聞等にも報ぜられるところがありましたので、さらに米国政府に対しまして確認をいたしました。確認を求めましたところ、米国政府は、毒ガスはもとより、化学兵器、生物兵器、一切もうあり得ないということを正確に回答してまいっております。  なお、詳細につきましては、必要がありますれば政府委員からお答えをいたさせます。
  584. 上原康助

    上原委員 どういうルートを通してその回答を得たわけですか。
  585. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 アメリカ大使館に要請をいたしまして、その確認を得たわけであります。  詳細必要でありますれば、政府委員からお答え申し上げます。
  586. 上原康助

    上原委員 私が特に疑問点としてあげました、いわゆる従来毒ガスが貯蔵されておった地域、レッド・ハット・エリア、そこについては再点検をなさったわけですか。あるいは、もしいまの御答弁からすると、ほんとうに毒ガスがないということであるならば、知花弾薬庫の貯蔵庫一帯を再調査、再点検をしてもいいという合意まで取りつけたわけですか。
  587. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 再点検はいたしておりません。また、再点検をするという合意もしておりません。しかし、アメリカ政府の回答、また軍当局の説明、こういうものから総合いたしまして、私どもアメリカの回答を信頼をする、こういうことであります。
  588. 上原康助

    上原委員 点検にはアメリカ側は応ずるということですか、それとも応じないのですか。(「施政権が違う」と呼ぶ者あり)
  589. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 点検の話はしておりませんです。
  590. 上原康助

    上原委員 施政権が異なるから困るのです。点検をしないで私が指摘をした疑問点が解消するというわけにはまいりません。現に、私はここに地図を持っております。現に二六七部隊がおった地域には二八七、一七五の武器中隊というものが配置がえされておるじゃありませんか。だから私たちは、レッド・ハット・エリアだけじゃなくして、その周辺の貯蔵庫に至るまで点検をしない限り、毒ガスというものが完全に抜かれたという確証にはならないということを当初から強く指摘をしてまいりました。アメリカ側は、九月の十日の調査においても、周囲の貯蔵庫の点検というものを拒否しておりますよ。ほんとうに自信をもってアメリカ側がないという確証を与えるというならば、なぜ点検ができないのですか。そこに大きな疑惑が隠されている。外務大臣はそういうふうにはお考えにならないのですか。
  591. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 アメリカ政府の回答並びに米軍当局の説明で、その説明なり回答がこれは真正である、そういう心証を得たがゆえに、点検の必要は認めませんです。
  592. 上原康助

    上原委員 いまのおことばは重大ですよ。日本政府としては点検の必要は認めないということですか。アメリカ側が認めないと言っているのですか。
  593. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 日本政府が要請をしなかった、こういうことであります。
  594. 上原康助

    上原委員 防衛庁長官お尋ねをしたいと思います。  これまでも、核問題を含めて基地の総点検問題あるいは調査というものがやりとりされてまいりました。中曽根元防衛庁長官も、核問題を含めて基地の総点検をやるということを国会答弁もなさいましたが、その後、いろいろ野党の追及なり事情の変化等によって後退をしてきておられる。私は、少なくともこれだけの事実をあげて、毒ガスがまだ残っているんじゃなかろうかということを提起をしているわけです。担当大臣として、そういうような形で、ただアメリカがないと言うからないんだと、子供の使いでもあるまいし、ほんとに基地を具体的に点検をして、県民の不安というもの、国民の疑惑というものを晴らす、そういう姿勢というのはお持ちじゃないのですか。私はいまの外務大臣のお答えは非常に重大だと思うのです。
  595. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 お話ですが、私、外務大臣のいまお答えした意味がわかるような気がするのです。それは、御指摘もあり、大使館筋を通じて、毒ガスという問題ですから、これは厳重に調査を依頼し、一体あるのかないのかということを聞いたのに対して、いろいろな事例をあげて、ありませんと——われわれが仄聞しておりましても、すでにジョンストン島に移動をしたもとの部隊はもう帰休したものもある、帰ったものもあるというふうな報告もあるやに聞いておりまするが、これはどうぞ詳しくは事務当局からもお聞き取りを願いたいのですが、向こうが信頼関係に立って、いまとにかく返すと言っておる段階で、われわれのほうからもきびしくこれを追及して、絶対ありません、こういう回答があれば、これは一応やはりこの段階で信用をする。信頼感の上に立って戻ってくるわけでありまするから、この点はひとつ上原委員にも御理解を願いたいものだと思います。
  596. 床次徳二

    床次委員長 上原君に申し上げますが、だいぶ時間が過ぎて、なお質問者が残っておりますから、その点を御考慮いただきまして御協力をいただきます。
  597. 上原康助

    上原委員 事務当局の答弁も求めたいわけですが、じゃ、私がこの疑問点の中で、三点目に、十月の二十一日に天願桟橋からジョンストン島へ毒ガス兵器が運ばれた疑いがある、これについてはどういう調査をなさったのですか。
  598. 吉野文六

    ○吉野政府委員 実はわれわれとしては、すでに去る九月十日をもってすべて沖繩地区の毒ガス兵器が撤去されたという九月二十日付のランパート高等弁務官の屋良主席あての書簡で十分でありますと思っておりましたのですが、先般、一部の新聞に、まだ相当量の毒ガスが貯蔵されておる、あるいは本国会でも問題になっておる、こういうことでありましたから、念のためにさらに米側に確認を求めましたところ、米側は、毒ガス兵器を含む生物、化学兵器はむろんのこと、枯れ葉剤も一切存在しないということを明言してきた次第でございます。  なお、先生御指摘の一七五武器中隊及び一三七武器中隊でございますが、いずれも通常の兵器を取り扱う中隊でありまして、それから二六七化学中隊につきましては、先般の毒ガス撤去作業が終わりました九月二十七日に解団式を行ないまして、当時の現員百三十名のうち八十五名はすでにジョンストン島へ移駐して、残余は一般の兵たん支援及び保安業務に要員として配属されております。なお、一部はすでに除隊されて帰っております。  なお、シー・リフト号につきましては、いまは毒ガスの撤去作業ではなくて、一般の普通の輸送業務をやっております。  レッド・ハット・エリアにつきましては、毒ガス用の貯蔵庫が新設されておるとか、あるいは補強されておるという事実は、これも米側は、全くない、その毒ガス兵器の輸送されたあとの貯蔵庫は、これまで野積みにされていた通常の兵器の貯蔵庫として利用されておる、こういうことになっております。なお……
  599. 上原康助

    上原委員 その説明はわかるのです。それは要らないのです。
  600. 床次徳二

    床次委員長 政府答弁はお聞きを願うことになっております。
  601. 吉野文六

    ○吉野政府委員 なお、これは御存じであろうと思いますが……
  602. 床次徳二

    床次委員長 簡潔に答弁をお願いいたします。
  603. 吉野文六

    ○吉野政府委員 九月十日、毒ガスの倉庫、六十一カ所のイーグルを、ランパート高等弁務官と高瀬準備委員会代表と屋良主席代表が代表して総点検を行なっております。これは御存じのことだと思います。
  604. 上原康助

    上原委員 私がお聞きしているのは、十月二十一日に天願桟橋からジョンストン島へ毒ガス兵器が運ばれた疑いがある。ここにアメリカの出荷表があるわけですよ。この中にちゃんと入っておる。それを皆さんがどういうふうに調査したかということを聞いておる。そんな長ったらしい説明は要らぬですよ。それくらいのことは私だってわかっておる。
  605. 吉野文六

    ○吉野政府委員 先ほど申し上げましたとおり、九月九日をもって撤去作業は終わりました。その後はシー・リフト号は普通の通常の輸送業務を行なっております。
  606. 上原康助

    上原委員 その十月二十一日付で出荷されたものがどういうものか、あらためて調査を願いたいと思います。これは保留しておきます。  あと一点だけお伺いをいたしますが、皆さんは、現在レッド・ハット・エリアに酸化エチレン貯蔵施設があるということはお認めになるのですか。
  607. 吉野文六

    ○吉野政府委員 レッド・ハット・エリアは、先ほど申しましたように、通常の兵器の貯蔵庫としていま利用されております。  そこで、御指摘の酸化エチレンガスが入っておるかどうかということは、先方は確言しておりませんが、これは御存じのとおり、通常の原料物資でございまして、プラスチックの製造その他に通常使われておるものでございまして、これは毒ガスではございません。
  608. 上原康助

    上原委員 防衛局長いらっしゃいますか。——コンタミネーテッド・エリアというのは、どういうふうに軍事用語上とっていらっしゃいますか。
  609. 久保卓也

    久保政府委員 承知いたしておりません。
  610. 上原康助

    上原委員 じゃ、この件も調べてください。コンタミネーテッド・エリア、知っておってそういう御答弁なら、ちょっと困りますよ。  そこで、私が指摘をしておることは、皆さんは、酸化エチレン貯蔵施設があるかないかわからない、あるいは通常兵器だというようなことでお逃げになっているわけですが、現にこの地図にもそういうものはあるのです。現在もある。そして、このことはどういうことかと言いますと、これは外務省が出しておる本なんですね、「化学・細菌(生物)兵器とその使用の影響」というのは。ウ・タント国連事務総長の報告書の中にこういうことが書かれております。「マスタードガスや窒素マスタードガスは、酸化エチレンから比較的簡単な過程で生産できる。二十五万トンの酸化エチレンから約五十万トンのマスタードガスが生産されるだろう。」ということがこの本でも明らかになっているのです。だから、アメリカがこの酸化エチレン貯蔵施設というものを現に保有しているということは、いつでも緊急の場合は毒ガス弾をつくることができる。その施設はアメリカは依然として留保をしているわけなんですよ。こういうもののあるということ自体が、毒ガスが全然ないという保証にならない。その点、どう思うのですか、外務大臣。ちゃんとこの本にも書いてある。
  611. 久保卓也

    久保政府委員 私どもは、酸化エチレンガスがそこにあるということは承知いたしておりません。
  612. 上原康助

    上原委員 じゃ、いま酸化エチレンから比較的にマスタードガスが生産できる、そのことはお認めになりますか。
  613. 久保卓也

    久保政府委員 化学方程式からいうとちょっと違うように思うのですけれども、マスタードはH系統でありますし、酸化エチレンガスは、ここに化学方程式がありませんけれども、別のものではないかというように思いますが、この点は確認をいたします。
  614. 床次徳二

    床次委員長 上原君、どうぞ簡潔にお願いします。
  615. 上原康助

    上原委員 それもぜひ調べていただきたいと思うのです。これはただきょうで済むということじゃありません。そのほかにもいろいろ資料がございますけれども委員長の再三の注意もありますので、これだけにしておきたいわけですが、これとの関連で山中大臣にお伺いしておきたいのですが、第一次、第二次の毒ガス移送の休業補償についてはまだ十分になされていない。十分というより、ほとんどなされていないわけですね。もちろん、その経緯については私はある程度知っております。ですから、こまかい点はお伺いいたしませんが、やはり年内にこの休業補償の問題について私は解決をすべきだと思うのです。つまみ金で七千万ドルをアメリカにやるならば、三十五日間、四十日近くも毒ガス移送に苦しめられた県民の休業補償なり生活補償というものが、軽く考えられてはならないと思うのですよ。琉政側の立場というものもあるとは思うのですが、これについて、ぜひ本土政府としても年内解決をめどに積極的にやっていくという方針がおありなのかどうか、お聞きをしておきたいと思うのです。
  616. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私のほうは、毒ガス撤去に関する経費を本土側から支出いたします場合に、撤去が確実に終わった後において、休業補償については、琉球政府のほうから資料を持ってこられたら、本土政府のほうで予算処理をいたしますということを約束いたしてありますし、先般主席が来られました際にも、局長も同席の上で、お出しくださればいつでも支出をいたしますということを申し上げておるわけであります。
  617. 上原康助

    上原委員 琉政から出ていないということですか。
  618. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そのとおりです。
  619. 上原康助

    上原委員 少なくとも出されていると私は理解をしますが、いま大臣の答弁でありますので、出された段階においてはすみやかに善処するように、あらためて要求しておきたいと思います。  そこで、私は、十月二十一日、天願桟橋からジョンストン島へ毒ガス兵器に類似したものが運ばれたということを申し上げました。ここにその一部の資料がありますから、これを資料として提起をしておきたいと思います。  それと、先ほどの御答弁ですが、酸化エチレンはマスタードとは違うということでしたが、その御答弁になりますと、この本そのものを否定することになります。もう一度念を押しておきますが、全然違うのですか。
  620. 久保卓也

    久保政府委員 私の手元の資料だとちょっと違うように思いますけれども、自信がありませんので、この点は調べ直してお答えをいたします。
  621. 上原康助

    上原委員 そういう自信のない答弁で、人の調べた資料を全部否定するような御答弁はどうかと思うのです。いずれにいたしましても、きょうは時間が来ましたのでこの程度にいたしますが、先ほど申し上げたコンタミネーテッド・エリアというもの、あるいはいまの私が提示をした資料、さらに酸化エチレンからのマスタード生産の過程等について、政府の資料を提供していただきたいと思います。  そこで、最後にお伺いをいたしますが、こういう議論というのは、えてして、われわれがいろいろの困難を乗り越えて調査をし、問題を提示しても、アメリカにお伺いを立てたが、ありませんでしたという通り一ぺんのことで、核問題を含めてこれまですれ違いになっているわけなんです。それはなぜかというと、やはりアメリカの基地を点検できないというところに問題がある。そういう意味で、どうしても毒ガスの問題とか核兵器の問題については基地の点検というものをやらなければ、県民や国民の疑惑というものは晴らすことにはならない。その点、あらためて、外務大臣なりあるいは防衛庁長官、できれば総理に——今後こういう問題というのはたくさん出てくると思うのですが、政府としては、いまのように、アメリカに伺いを立てたが、聞いてみたら、ありませんです、それを信じなさいということで、現在も、復帰後もやっていくおつもりなのかどうか、この点についてあらためてお伺いをして、私の質問を終えたいと思うのです。
  622. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 点検ということは、これは基地の性格上非常にむずかしいことじゃないかと思います。しかし、国民の間に不安がある、疑いがある、それに対しましては、これを解明する義務が政府にあると思います。そのための、そのときどきに対しまして適正なる処置をとります。
  623. 上原康助

    上原委員 あと三点保留になっておりますが、またいずれかの機会にやりたいと思うのです。  総理のこの問題に対する御見解は別にありませんか。
  624. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま外務大臣が答えたとおりでありますが、私は、党の立場が違っておる、それが一つの問題じゃないかと、かように思います。と申しますのは、米軍がいなくなれば、それはもう何にも心配なものはなくなるわけであります。私どもは、日米安全保障条約、これを結んでわが国の安全を確保しておる、こういう立場であります。皆さん方のほうは、安保体制は否定しておられる。そこでただいまのような問題についても食い違いが生ずるのであります。私どもは、安全保障条約を締結しておる、その関係におきましてアメリカとの深い信頼関係に立っております。したがって、先ほど来申し上げますように、いろいろ外交的な折衝をしてそうして確言を得れば、それでわれわれの心証はでき上がるのであります。信頼のないところに安全保障条約などはあろうはずはございません。したがって、その立場が非常な変化を来たしておる。どうも立場の相違ではないかと、かように思っております。
  625. 上原康助

    上原委員 もうやめようかと思ったのですが、そういうふうにおっしゃられると困る。
  626. 床次徳二

    床次委員長 時間が来ておりますから、簡潔にお願いします。
  627. 上原康助

    上原委員 じゃ、安保条約は毒ガスも核兵器も置いてもいいということなんですか。そういうことじゃないんでしょう。いまの総理のおことばはそういうふうにもとれますよ。私はいま安保条約の問題については話していません。毒ガスや核兵器があるであろうということを指摘をしているわけなんですね。それを見解の相違として片づける、そこにやはり沖繩に対する総理の理解の足りなさ、毒ガスや核兵器も容認するという総理の姿勢というのが出ているのじゃありませんか。
  628. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核兵器や毒ガスがあっていいと、かように私は申してはおりません。私どもは、国会においても非核三原則をちゃんと確認しております。また、核の持ち込みについても、あらゆる場合においてノーと言う、これはもうはっきり過日の委員会において答弁したばかりでございます。したがいまして、ただいまのようなお話は困ります。私が申し上げるのは、相互信頼があって初めて日米安全保障条約、これができ上がっているんだ、したがって、アメリカ側が、われわれが相談をしたら、そういうものはありませんと言えば、そうして、なるほど、ないなあというような状況下にあれば、われわれは、ないというそれを信頼する、こういうことであります。沖繩の毒ガスにいたしましても、すでに撤去する前にいろいろの相談をいたしまして、あらゆる施設をして、そうして避難までさして、そしてこれで完了いたしました、かように言ってきたら、われわれがそれを信頼するのは、これは当然であります。私はそのことを申し上げているのです。
  629. 床次徳二

    床次委員長 次に米原和君。
  630. 米原昶

    ○米原委員 ただいま上原議員の質問に対して、総理は、安保体制を肯定する立場に立っているから、アメリカを信頼する立場に立っているから、違いが出てくるんだとおっしゃいました。あるいはそうかもしれぬ。先日、私は連合審査会におきまして、いわゆる愛知書簡、外国人及び外国企業の権利を復帰後も認めることになっている愛知外相書簡、これを中心にしてお尋ねをしました。あの書簡によると、「適法に取得された私有地及び家屋の所有権及び賃借権を含め、本土における外国人及び外国企業の私有財産の場合と同様に、日本国の法令の下で尊重される。」、実はいま総理がおっしゃいましたが、私、この問題の解釈も、先日の質問では、占領下で、アメリカの施政権下で適法に取得された財産とか所有権、賃借権が問題になっておるわけですが、この「適法に」というのが、先日の外務大臣の御答弁でも——このアメリカの施政権下における布令ですね。あの布令——実態的にいいますと、布令は、実際上はアメリカ国内法とはずいぶん違うと思うのです。実際上はアメリカ軍が軍事占領下に置いていた実態なんです。その中で出された布令というものは、普通の常識からいえば、人権を無視したりした面がたくさんあると思うのです。しかし、さっきもいみじくも総理がおっしゃいました、この布令にしましても、講和条約第三条が合法的だと認める立場に立たれますと、当然このもとで施政権を渡しておるわけですから、そうすると、その施政権のもとで出された布令というものも合法的であるということになると思うのですよ。おそらくそうだろうと思う。そういう点で、確かに私たちとの間にはかなり評価について違いがあります。しかし、実際にはこの布令のもとでとうてい常識では考えられないような不当なことが行なわれているわけです。たとえこの布令を適法と認めるにしても問題があるということで、この前、マネング社の問題というのを私は話しました。あのマネング社なんかの問題は、特別この布令自身にも違反している疑いが多分にある例をあげたのです、一番極端な例として。しかし、一応は布令に沿ったものにしましても、実はこの問題についてはたくさんの問題があるし、これをそのまま認めるということになると、いろんな問題を引き起こす。そういう観点から、さらに別の問題を私はきょうまず聞きたいと思うのです。  それは、たとえば例のガルフの問題です。石油会社ガルフ。御存じのように、ガルフが一九六七年、琉球政府の外資導入の認可を受けて、そうして金武湾の平安座島に四十万坪の土地を手に入れ、さらにその一年後には、石油精製の施設をつくるために二十万坪の土地を手に入れております。合計六十万坪ですね。私、この夏、平安座島に行きまして、そうしてこの土地を取られた人たちに会っていろいろ話を聞いたんですが、驚いたことには、六十年間の地上権設定の契約を結んでおるわけですね。そうしてその貸借賃は一坪が二十セントだとこの契約書に書いてあります。二十セントですから、ドルがだいぶ下がってきたから、一坪が六十円ちょっとですね。そういうひどい値段で、借りたというても、実際上は強引に取られたような形になっております。と申しますのは、なぜそういう安い値段かということを、私聞いてまた調べてみたのです。そうすると、やはり布令に基づいておるのですね。軍事基地の布令があります。軍事基地の地料をきめた借賃安定法、これに基づいて地代のワクがきまっておるわけです。それでは一坪二十セントというのはむしろ最高のワクになっておる。そういう契約が結ばれておるわけですね。これをたとえば適法に取得されたものだ、こういうことになりますと、この愛知書簡によってこの契約も適法なものだということになるでしょう。そういうことが認められるということになる。軍事基地の問題については、この前からこの委員会でもいろいろ問題になりまして、軍事基地の地料は復帰後は六倍か七倍に上げるという話し合いも一方では進められていると聞いているのですね。ところが、こういうふうにガルフという大資本に一坪二十セントで六十年間の地上権設定ですよ。単なる貸借権じゃないのです。地上権の設定までやっておる。こういうことで、それが一坪二十セントというようなものですね。これは常識で考えて、日本の国内でこれが行なえることはあり得ないと思うほど不当なものですね。  実は土地だけではないのです。このガルフが行きまして、例のシーバース、海中桟橋ですね、これをつくったために、そのあたりの漁業ができなくなって漁業補償をやっておるのですが、これのほうを調べてみましたところが、大体軍事基地並みでやるんだということでしょうね。そのために、日本の調達庁の、アメリカの海軍なんかが演習した場合の損害補償、あれの基準に基づいて請求しろという示唆があった。ところが、それでやって、漁業協同組合——二つの漁業協同組合ですが、これが請求したのが百十四万八千六百ドルというのです。四億一千万円くらいですね。これを請求した。大体その程度のものを日本の漁協はアメリカが海軍演習なんかした場合の補償として取っているらしいです。その基準で提起したところが、会社がどう言ったかというと、金がないからというので十分の一に値切っているんですよ。漁業補償も実際は五千万円しかもらっていない、こういうような全くひどい状態に置かれているんだということを知りました。  つまり、沖繩の場合、単に軍事基地で重要なところが全部取り上げられているだけでなくて、そこに入ってきたアメリカの大資本なんというものがみんなこれに便乗して、軍事基地並みのやり方で土地を押え、そうして進出しているわけですね。そういうものを今度の愛知・マイヤー書簡というものは合法的なものとしてそれを認めることになるんじゃないかという点について非常に疑問を感ずるわけです。その点について福田外務大臣の見解を聞きたいと思います。
  631. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いわゆる愛知書簡は、外国人及び外国企業の復帰後の私有財産、これは「適法に取得された私有地及び家屋の所有権及び賃借権を含め、本土における外国人及び外国企業の私有財産の場合と同様に、日本国の法令の下で尊重される。」こういうことであります。  米原さんが御指摘になったガルフの問題、そういう問題は、これは米軍駐留中に、返還前に適法に取得されなければ保護をされないのです。しかも保護されるその法令は、これは布令だとか、そういうアメリカ施政権中の法制じゃありません。わが国の法令によって保護される、こういうことになるわけであります。適法に返還前において取得された、それが適法であるかないか、これは法的判断にまつほかありませんけれども、いやしくも適法に取得されたものにつきましては、これはわが国の法令によって保護される。返還前の米軍の布令、これで保護されるというわけじゃないんです。
  632. 米原昶

    ○米原委員 もちろん、返還後に布令で保護されるということはあり得ないです。布令そのものがなくなるわけですから。それはよくわかっていますよ。そして返還後は日本の法令のもとに置かれるのだということもわかりますよ。しかし、この布令に基づいてこれは取得されているわけですね、個々の財産とか所有権とか賃借権とかは。まあこの書簡には地上権ということは書いてないけれども、一方で所有権、それから一方で賃借権ということを書いてありますから、地上権はその中間ぐらいのところですから当然含まれると、常識的には理解できるんですがね。しかし、それは結局施政権下で適法に取得されたものだということに、布令に基づいているわけですから、当然だということになるんじゃありませんか。そうしてこれは返還後に日本の法令のもとで保護される、こういう解釈になるんじゃないかと思うのです。それはどうなんでしょう。
  633. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 いま御指摘のガルフ会社の地主との関係は、これは地上権設定契約のようです。この地上権設定契約は、これは土地借賃安定法、これによって結ばれておる、こういうふうに理解できるのであります。その限りにおいては、これは私は適法にできておる、こういうふうに見ております。
  634. 米原昶

    ○米原委員 その中で、じゃ、この契約そのものは一応有効なものとして引き継がれることになりますか、問題は。
  635. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私も、その具体的なケースのことについて詳しい知識を持っておりませんから、よくそのケースについて法的なことは申されませんけれども、かりに借賃安定法に基づいてこの地上権契約が結ばれておるというのでありますれば、それは私は適正である、こういうふうに考えます。
  636. 米原昶

    ○米原委員 そこで問題は、借賃安定法に基づいて書かれているんですがね。もう一つ問題があるのです。借賃安定法に基づいての最高借賃ですね。これが地料の基準になっているわけです。ところが、返還されますともうそのときには日本の法令が適用されるので、これは民立法らしいですが、借賃安定法というものはもう存在しなくなるわけですね。その場合に、この値段の項目は——契約は一応有効としても、この地料の値段をきめたのがいまの向こうの法律ですからね、これは適用されないというふうに理解すべきです。そう思いますが、どうですか。
  637. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 沖繩返還後におきましては、これは日本の法令によってその契約は保護される、こういうことになりますので、布令は一切その時点で失効をするということになるわけです。その先一体それじゃどういうふうに調整するのだという問題になりますると、これは法務省なりあるいは私のほうの条約局長なり、適当に御説明申し上げます。
  638. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 お示しの地上権設定契約でございますが、この契約は、沖繩の法令、つまり沖繩で施行されております民法に基づく契約であるというふうに考えられます。したがいまして、この契約が具体的にどういう事情によって締結されたかということによりて、はたして適法なものであるかどうかという点が判断されるわけでございますが、一応この文面からだけ判断いたしますと、形式的には形の整った地上権設定契約がなされておるわけでございざいますから、復帰後におきましては、この地上権はそのまま存続するのが普通の解釈であろうかと思います。問題の第五項でございますが、ここにございます「地代の改定は、現行土地借賃安定法」云々という規定がございますが、この現行土地借賃安定法というのは沖繩の立法でございまして、沖繩が日本に復帰いたしますと効力を失いますので、このただし書きの条項は、その部分だけが失効する、このように考えております。
  639. 米原昶

    ○米原委員 では、さらに問題を進めましょう。  実は私が行ったときにすでに出したあとだったんですが、ここの島の土地を取られた人たちが、とにかくこういう地上権設定というような契約を結んだけれども、経過を聞いてみますと、あまり内容を知らないで、あとでびっくりしているんですね。そうしてガルフ本社に対して照会状を出しているんです。相当長いものですから簡単に言いますと、契約を見たところが、ガルフ側だけが一方的な契約解除権を持っていて、平等な立場になっていない。それから契約の中に、地下水の優先権は住民にあるということが書いてある。ところが、御存じのようにことしはたいへんな干ばつで水がない。ところが、ガルフのほうはボーリングやって水を揚げたらしいんですがね。その調査の結果も、契約の中では優先権は住民にあると書いてあるのに、会社のほうがやっている。それから、私たちがガルフの本社を見に行ったときも、これは会社の支配人が私たちに説明したのですが、世界一の公害防止施設ができている、こういって自慢しておりました。私全く笑ったのですが、御存じのように、このガルフのところで十月一日と十月十五日にたいへんな公害問題を引き起こしたわけです。今度の新潟におけると同じような事件です。金武湾を全くよごしてしまったのですね。そして、ガルフ用地の売買は、地主に買い受け人選択の自由があると思うが、どうか、それから地代の改定をしてくれ、こういうような要望書を出している状態なんです。当然この問題は今後の問題として大きな問題になってくると思うので、ひとつ総務長官のほうでも、全くひどい契約ですから、この問題を正当に解決するようにやっていただきたいという要望を申し上げます。ただ問題は、こういう形でアメリカ資本が進出、島を一つ取ってしまうというような形で進出した。ところが、まるでこれに右にならえですね、そこに日本の大資本がずっと入ってきつつあるということです。これは新聞や雑誌でもかなり報道されておりますが、ここの島を持っている与那城村当局との間に三菱開発が覚書をかわしておるわけですが、それによってこの平安座島とその向こうにある宮城島、この間を六十万坪、これを埋め立てる。埋め立ては簡単なんです、御存じのように、サンゴ礁が一ぱいありますからね。埋め立てるのは、内地でああいう臨海工業地帯をつくるのと比べたらはるかに簡単にできるわけですね。六十万坪の埋め立て地をつくる、そして手に入れる。埋め立てる場合は、そういう会社が金を出して埋め立てましても、その土地は大体そこの村のものにするのが普通ですわ。ところが、この場合はもう土地そのものが三菱のものになるのですね。そういう覚書をかわしているわけです。そうして三菱開発のほうは、わずかな村道とか公共施設を若干つくるということで六十万坪の土地をごっそり手に入れるわけです。そういう覚書を交換しています。そうして、埋め立てるわけですから、当然漁業補償の問題が起こりますが、漁業補償の責任も村のほうが負う。補償の金は会社から出すらしいけれども、いざこざ、そういうもめごとをおさめるのは対のほうの責任だ、こういう驚くべき覚書を交換しているのです。この三菱の計画が一方で進む中で、これも報道されておりますが、アラビア石油、これもことし八月に外資導入の申請をやって、この先の、埋め立てるまた先の宮城島、そこに五十万坪の土地をとる。さらに二十万坪。七十万坪ですね。五十万坪は貯油施設です。そして二十万坪の精油所、こういう計画を進めている。これはいろいろな新聞や雑誌にも報道されております。  そういう中でさらにいろいろな石油会社が乗り出してきて、結局、通産省のほうでは、ガルフ、アラビア、三菱、共同石油、丸善石油、五社でここに世界最大の一千万トンの貯油施設をつくるような計画を考えられておるようであります。というのは、来年度の計画を見ましても、どうもそういうことを考えられておるようであります。  こういう点で、何かあの一帯にさらにアルミ工業も進出しようという話がこの前からも新聞に出ておりまして、通産大臣は、そのほうでも何か沖繩アルミのほうにも行かれてこの前話をされたということが新聞に載っておりましたね。  この石油企業、それからアルミ企業、こういうものは、本土ではいま一番の公害企業だと一般にいわれておりますよ。それで公害を方々で起こしておる。行きますと、十分な施設をやりますからと、どこの会社でも言いますが、あとは必ず大公害を起こしておりますね。鹿島臨海工業地帯なんか典型的な例です。それからアルミ、これも公害を起こすというふうにきらわれている企業ですね。どっちかというと公害企業と一般的にいわれている。まるでそういうのがそろっていま言いました金武湾の一帯に進出しようとしているようですが、これに対して通産省はどういうお考えか、大臣の見解を聞きたいのです。
  640. 田中角榮

    田中国務大臣 金武湾開発の一つといたしまして、アルミ工場を四十五年十二月に設立をいたしまして、四十九年に製品を出すという計画でございました。この計画は、アルミ二十万トンの計画でございます。しかし、その後アルミの市況が非常に悪くなっておるということもございます。そういう意味で、いま琉球政府と話し合いをいたして、少し計画を延ばすということでございます。  なお、アルミは二万円くらいのコスト高になるという見積もりでございますので、このために二万円相当分のコストダウンの処置をいろいろな政策でいま考えておるわけでございます。いま御指摘になったように、これは沖繩住民も琉球政府もこれが進出を望んでおるわけでございます。また、そういう意味で、大型の発電所もつくって特に低廉な電力を長期安定的に供給しようという大がかりなものでございますので、ぜひ実現をしたいと思っております。しかし、公害の面に対しては、これはもう理想的な、公害のない工場ということでほめられるようなものをつくらなければならないということで、通産省も大いに熱意を持っておるわけであります。  なお、石油の問題はまだ埋め立ても終わっておりませんし、計画はございますが、これらの問題についても、公害のないように通産省は格段の指導をしてまいりたい、こういう考えでございます。
  641. 米原昶

    ○米原委員 まだ埋め立てができていないというのは事実ですけれども、通産省、非常に積極的ですね。来年度の概算要求を見ましても、この一帯における貯油施設の調査費用として五千百十五万円、予算に計上されていますね。非常に積極的です。  そこで、今度の法案のことを聞きたい。この沖繩振興開発特別措置法、この法案によるところの工業開発地区というのがあります。つまり、特別にこの地区に指定されると税金をまけてもらって優遇されるわけです。いろいろな条件がついているわけです。地区が指定される。いまお話しになったアルミのほうは、いますぐでなく、少し延びるらしいけれども、石油企業、こういうものがこういうところに入っていく。大体この法案でいわれておる工業開発地区というのは、いま言いました金武湾のあたりなんかが事実そういうところになるように思えるのです、いまの動きからしますと。それから通産省自身が予算を要求して、こういうところの貯油施設をつくるための調査費まで予算の概算要求に出ておる。こういうところを見ますと、沖繩振興開発特別措置法の中の工業開発地区というのは、大体こういうあたりなんだ。金武湾のあたり、あるいは中城湾、大浦湾あたりなんでしょうが、これは通産省の文書にも出ております。あるいは、この法案の中にいう特定事業所ですね。特定事業所というのが沖繩振興開発特別措置法の中にあります。つまり、特定事業所を指定して、これは工業開発地区全体が減税とかいろいろな措置で優遇されるとともに、指定された特定事業所がさらに優遇されるわけですね。そういうふうになっている。こういう、この法案でいう工業開発地区とか特定事業所というのは、いま大体構想されているような、こういう精油施設とか貯油施設、それからアルミ工業、こういうのが集中的にこのいわば沖繩本島の東部海岸、あの一帯に出ようとしておりますが、大体こういう構想をさして言っているのかどうかという点を聞きたいわけです。
  642. 山中貞則

    ○山中国務大臣 沖繩振興開発特別措置法案の第三章「産業振興のための特別措置」で、「工業開発地区の指定」並びに「特定事業所の認定等」それらに関する一連の租税その他の恩典について記載してございますが、通産大臣からもたびたび本土との対比のパーセントを引いてお話しになっておりますように、沖繩県のこれからの未来については、やはり第二次産業というものを重点に考えなければなるまい。ことに、沖繩本島において、制度、あるいは米軍の撤退その他によって、離職したり、転業したり、そういうような人たちや、新しく卒業する若い連中の本土流出を現地雇用で吸収するために、どうしてもやはり沖繩本島においてそういう工業開発地域というものが考えられなければならないだろうということにおいては、私どもはその姿勢を持って臨むわけでありますが、これらは、沖繩県知事が申請したことを起点として、その申請に基づいて審議会の議を経てきめるわけでございますので、現地の意向というものを十分に尊重するわけであります。したがって、その地域に対して定められた条件に合致する企業が進出をいたしますると、特定事業所の認定が行なわれて、それに対する税法その他の特典措置が行なわれるという、計画だけを申し述べますならば、そういうことでございます。ただ、場所等については、先ほど申された中城湾、金武湾、それから大浦湾、大体その一帯になるであろうと考えるわけでありますが、将来の北部の水系からの工業用水等の取水を考えますと、琉球政府のほうと話をしなければ、最終的にはまだその意向も確かめておりませんが、やはり東海岸だけということもどうであろうかというようなことも考えておりますが、西海岸の中、北部のほうは琉球政府立公園になっておりますので、そこらの自然保護との関係を慎重に運んでいかなければならぬと考えます。
  643. 米原昶

    ○米原委員 そういう一般的な意味ならわかるわけですが、問題は、実際には、第一にガルフがすでに進出して相当問題になった公害を起こしていますね。それから、実際に行きそうなのは、まず石油企業です。これもかなり具体的な話し合いが進んでいるし、それから、すでに琉球政府に対する申請も出ているところがかなりありますし、許可のおりたのもありますし、そうしますと、実際には一番公害を起こしやすい工業として典型的なものがこの一帯に集中的に移ってくるんじゃないか。これは現地でも非常に心配している。もちろん、いま長官は、現地の意向を尊重してとおっしゃいましたけれども現地の意向は、ある意味では、琉球政府復帰措置に関する建議書にもこの問題が出ているのです。つまり、「臨海型装置産業」——石油とかアルミのことを言っているように思いますが、「臨海型装置産業の場合、雇用吸収効果ならびに自治体財政への寄与も少ない反面、逆にその誘致には、産業基盤整備のための財政支出が大きく、しかも公害発生の危険は避けられないのであり、誘致企業の選定にあたっては、慎重な配慮が必要であります。」琉球政府の意思としても、公害企業をこんなところにあまり持ってきてもらっちゃ困るという、これがすでに出ているわけであります。ところが、一方ではどんどん進められているでしょう。そこで私は心配して聞いているのです。ガルフの問題が現地の新聞には大問題になっておりますから、それを考えましても、いまのところでは、どうも石油産業あるいはアルミ——アルミは、確かに、いま通産大臣がおっしゃったように、最近のドル・ショック以後の景気の状況などから、ちょっと渋っているということは、新聞でも見ました。ところが、通産大臣は、何とか行ってくれないかという話に行かれたですね。沖繩アルミのほうにこの前行かれたというのがちゃんと新聞に出ておりますがね。ところが、今度のこの特別措置法に書いてあるのでも、当然、入っていけば、工業開発地区、特定事業所に指定されるのが、一つ沖繩アルミだと思うのですがね。たいへんな優遇措置だと思うのですよ。ところが、沖繩アルミのほうは、もっと優遇してくれなければいけないんだということをどうも言っているらしいんですがね。田中さんはそこに行って、とにかく何とか考えようというようなことを話されたらしいけれども、その実際はどうなんですか。新聞にはそういうふうに出ております。
  644. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたように、アルミは二十万トン計画で計画を進めておりますが、その後の市況の変化等で計画が繰り延べられておるということは事実でございます。そしてこのアルミの進出がやめたのじゃないかということで現地で心配をしておったようでございますので、また、国会においてもそのような質問がございましたので、日本軽金属側等にその意思を確かめたり、現地情勢を調査をいたしましたりしましたら、いま申し述べたように、計画が繰り延べられておるというだけでございます。ただ前提条件として、電力を非常に大きく使いますので、安定的な長期良質な電力の供給ということが確保されなければならない、そのためには、現地沖繩電力公社と折半で両方で大型発電会社をつくって、そうして長期的な確保をしようということが進んでおります。  それからもう一つは、先ほども申し上げましたように、二万円ばかりのどうしてもコストダウンをしなければならないということで、長期低利金融、税制その他いろいろな問題、あとから必要があればこまかく申し上げますが、二万円に見合うような助成措置を積み重ねておるというのが実情でございます。ですから、これは現地でも基幹産業的なものがどうしても必要である。まあ沖繩は、いままでも、日本全体を考えてみても、重化学工業中心であったものから知識集約産業的なものに移っていかなければならない、特に、公害のないものといえば、軽工業的なものを沖繩に拡大をしていくことが望ましいことでございますが、それかといって、いまの軽金属や石油工場そのものも全然取り除いて沖繩を考えるというわけにもまいらないと思いますので、これからの状態としては、公害除去のために万全の対策を講ずる。いまもこういう質問もあるわけでございますし、沖繩はきれいな海、きれいな空、きれいな空気ということでございますので、特に公害防除の施設に対しては万全を期さなければならない。これからの日本の内地における新しい企業投資の一つのモデルのようなものとして考えなければならないということは、企業者側にも十分意思を通じてございますし、そのためには通産省も努力を傾けておるというのが実情でございます。
  645. 米原昶

    ○米原委員 通産大臣の話を聞いたら、全くこれは大企業の進出を第一に考えられているような印象がますますはっきりしてきました。実は、沖繩対策について通商産業省で出されておるこれを見ましても、昭和四十七年度の沖繩振興開発金融公庫貸し付け要求という中に、沖繩アルミだけは五十億円出すことがもうすでにちゃんときまっています。中小企業全体が百三十六億円というときに、沖繩アルミ一社だけで五十億円出す、こういうようなやり方で、全く大企業本位のやり方、六〇年代に日本に公害をまき散らしたあのやり方をどうも沖繩に持っていこうとされているのじゃないか。ですから、琉球政府から先ほど読みましたような陳情書が出てきているのじゃないかと思うのです。私は、何としてもこの問題は、二十六年間アメリカの軍政のもとで苦労してきた沖繩の住民の生活を守る、豊かにするということが何より第一でなくちゃならぬと思うのです。実際は、先ほど申しましたガルフにしましても、そんなべらぼうな、一坪二十セントぐらいの値段でああいう契約を結ばされるというのは、やはり貧しいせいです。私は先島のほうにも行きまして、石垣島に行ったところが、復帰を前にして内地の資本が入り込んできて土地の買い占めをやっています。それで、そのところは一坪が十セントなんというのがあるんですよ。そういうのでどんどん入っていく。ただ、内地の資本が入っていくとすぐ目につきますから、そして違反になりますから、そこで現地の人を買収してやっている。島の人がみんな、どこに行っても、ここにはどういう資本が来てこの土地を買っていったなんという話ばかりなんですね。竹富島なんか一島買われてしまっているじゃないかといううわさも現地で聞きました。それは貧しいからですね。そういう意味では、やはり農民とか住民の生活、それをまず第一に保障する、守るということを第一にしないと、大資本が入らなければ第二次産業はだめだということだけ考えていると、私は大失敗をやるのじゃないかと思う。いまやり方ですと、どうしても——沖繩の意向を尊重するとおっしゃいましても、この前からもこの委員会でも問題になっているように、確かに原案を提起する権利は知事にありますけれども、最終決定権は総理大臣になっているでしょう。しかも審議会の構成を見ますと、行政機関の職員が過半数を占めている、こういうような構成になっておりますね。これでは、いままで六〇年代にやられたような、中央で考えた大資本本位のやり方を押しつけていくのが実にかってにできるような仕組みになっているじゃないかと思う。沖繩の復興は、やはり沖繩の人自身——もちろん、政府のほうが財政的な援助を特別にたくさん出さなくちゃならぬと思うのです。しかし、計画そのものは、とにかく、沖繩の人の意思を尊重して、沖繩の自治に基づいてやるということでなくちゃだめだと思うのです。そういう点で、私は、審議会の構成にしても、非常にこれは非民主的なものだと考えるわけでありますが、山中長官の御意見を聞きたいのです。
  646. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、別段非民主的なつもりでその構成を考えたのではありませんが、結果的には、二十五人中十三名が関係省庁の代表者であるということで、そういう御意見が出るかと思います。今回の沖繩振興開発については非常に関係する役所が多うございますために、たまたま十三名という、他の奄美とかあるいは北海道なんかに見られない、そういう異例なことになったのでありますが、しかし、沖繩側では、知事、県会議長だけで足りるものを、市町村長代表を一名でなく二名、議会議長の代表を二名ということにいたしまして、なお学識経験者の六名についても、沖繩側の出身者あたりを中心に考えながら選考することによって、中央といってもそれは役所でございますので、別段沖繩に押しつけることにはならないのではないかと、いまの時点では考えておりますけれども、そのような御批判をいただくような結果になったことについては、私も少し配慮が足りなかったということは考えております。
  647. 田中角榮

    田中国務大臣 共産党の考え方、端的に、大企業中心、自民党の悪い政策をそのまま押しつけているという断定に立っての御発言でございますから、この際明確にしておきたい、こう思います。  それは、政府も非常に努力をしておるのですし、沖繩返還を契機にして二十五年間の穴を埋めようということで、通産省も最大の努力を傾けておる、この誠意が沖繩県民百万に伝わらないということになると、これはたいへんでありますし、あなたのいま御発言になったような気持ちに解されることは遺憾でございますから、申し上げるわけでございます。  これは来年度の貸し付け規模を見ても、六百六億の要求でございますが、この中に中小企業と大企業と分けられるものを簡単に数字で申し上げると、大企業に類するもの百三億円であり、中小企業の大ワクは百三十六億円、数字で言うわけではございませんが、こういうものである、これは数字上非常にはっきりしたことでございます。  もう一つは、沖繩でいま一番問題になっておりますのは、基地も縮小しなければならない、基地経済から脱却しなければならない、まさに敗戦経済から自立経済へ、そして国際経済へと、三段飛びした内地の二十年前と同じような感情に立っておるのが沖繩の県民皆さんだと思います。それはしかし、現実的に基地経済から離れて自立経済というものになるには、働く場所を提供しなければならないわけであります。働く場所を提供しないで、青い空、きれいな水といっておっても、沖繩の県民所得はレベルアップしないのであります。ですから、そういう意味で、万全な公害対策を行ないながら、どういうふうにして働く場所を提供するかということが一番の問題なのでございます。私が間々申し上げておりますように、沖繩の問題は、三次産業比率は、本土の四七・三に比べて四六・五であり、もうこれは限度一ぱいでございます。しかも、本土が所得比率で五一・六なのが、沖繩はほぼ人口比率は同等でありながら、所得比率は七三・三という高い比率をあらわしておるのでございますから、三次産業としての所得を上げることは、もう限界一ぱいでございます。そうすると、一体沖繩の所得を上げ、沖繩の労働力を沖繩でもってほんとうに定着をさせるにはどうするのかということを、数字を基礎として具体的政策を立てなければだめなんです。そうすれば、本土の三五・一%に比べて一四・六という低い二次産業比率を本土並みに上げる以外にはないじゃありませんか。そうすれば、その中で一体どうするのか、付加価値の大きいような投資を進めなければならない。そのために、特例法等で沖繩の小業を倍加するような政策を進めておるわけでありますが、沖繩の企業だけでもってこれを全部まかなうわけにはまいりません。そうすれば、少なくとも沖繩で吸うたばこだけではなくて、沖繩でつくって本土の別なところに送るたばこ工場もつくるべきである、産炭地に対する施策と同じことを要求されたじゃありませんか。そうすれば、平均する基幹産業や基礎産業も沖繩に投資をせざるを得ないのであります。その中の一つ沖繩アルミ工場であり、沖繩に対する松下の進出でございます。ですから、この沖繩アルミの総投資額は九百三十一億円ということを予定しておるのであって、千億、二千億というような投資が沖繩にやられなければ、先ほど申し上げたように一〇・七という非常に低い二次産業の所得水準を本土並みにはできないのです。まだ、日本は高い高いといっておりますが、西ドイツの人口内における一次、二次産業比率の率を比較すれば、二次産業比率は西ドイツははるかに高いという事実もございます。  私は、そういう意味で、この沖繩アルミというようなものを持っていくから、自民党の、大企業そのままの、本土の公害企業を持っていくのだというようなことでは、沖繩の県民所得を増大をして本土との格差を埋めるということにはならないわけでありますから、こういうものも持っていきますし、知識集約産業も持っていきます。そのためには、松下にも早く具体的な計画を立てるようにと慫慂をいたしておるわけでございます。そういう事実を十分理解をいただいて、政府沖繩に公害を持っていくのだなどというようなことではなく、本土で重化学工業ということが中心だったために公害が多過ぎた、こういう現状に徴して、沖繩は理想的な産業青写真をかいてこれを実行しよう、そのための具体的な制度改革をお願いしているのだということで、通産省が何も考えておらない、それはもう本土のものそのまま引き延ばすのだというような、イージーな沖繩の産業政策を考えているものではないということだけ明確にしておきたい、こう思います。
  648. 米原昶

    ○米原委員 通産大臣はそうおっしゃいますし、いままでみな言ってきているのです。しかし、公害のない開発とか、私は衆議院の公害対策委員をやっていて方々を回ったですが、どこでももう公害を絶対起こしませんというのが、一ぱい起こしているのがいままでの実情なんですよ。  そうして、今度の沖繩の問題でいいますと、たとえば財界の日本経済調査協議会ですが、ここではっきり「沖繩経済開発の基本方向」こういう文書を発表しております。沖繩には「公害に対する天然の防禦が存在しており、」などと述べて、「沖繩の自然的・地理的条件を利用して、石油精製基地・アルミ精錬工業などを立地し、」「日本における工業用地不足・公害問題の軽減に役立たせ、かつ労働力の点からいっても、沖繩の労働力を有効に利用することによって、本土の労働力不足の一助とすることものぞまれよう。」われわれは、沖繩住民が「公害の発生に対してあまりに過敏であったり、あるいは、既得権擁護を主張して、経済的な一体化が遅れるようなことがあれば、沖繩の産業開発はそれだけ遅れ、本土との経済格差が狭められず、過疎現象がいっそうすすむことが避けられなくなることをおそれるのである。」こういうふうに財界の文書はいっているのですよ。沖繩に公害に対するそういう自然防御の条件があるのだ、だから、本土で公害で批判を受けている企業はまっ先に沖繩に行ったらいいということをはっきりとこの文書の中でいっているわけですよ。こういう大資本の意図がある。それをあなたたちが推奨されるような措置を出されているから私は言っているのですよ。現に、通産省自身の通産省企業局立地公害部の調査報告書に、「沖繩の工業立地条件と工場適地」という文書がありますが、金武湾、このあたりのことですよ。この中には、「勝連半島沖は、政府立与勝海上公園に指定されているが、経済振興のために、この指定はいずれ解除される模様である。」公害が起こって政府立公園指定がやめになるだろう、こういうことをまるで予想した文書を通産省の立地公害部がちゃんと発表しております。これはちゃんと通産省の文書に出ております。まるで公害を予定している。この金武湾一帯は政府立公園、つまり、いま国立公園ですが、この国立公園の指定を解除してもここにそういう産業を持っていくべきだ、こういうことを言っているのです。だから私は質問している。この点についてひとつ環境庁長官見解を聞きたいのです。いままであるこういう国立公園、その自然保護さえ無視してこういう企業を持っていくことがはたして適当であるかどうか、こういう通産省の考え方は適当と思われるかどうか、その点を環境庁長官の立場として御説明願いたい。
  649. 大石八治

    大石国務大臣 できるだけりっぱな自然を残したいのは当然でございます。しかし、いろいろな、正しいバランスのとれた経済の開発を考えます場合には、ある程度やむを得ないことはあると思います。そういう点で、いま沖繩政府はこの与勝政府立海上公園を解除するような方針にあるように聞いておりますが、自然を愛する情においては忍びないものがございますけれども、いろいろな経済の発展を考えますと、十分な公害の防止を根底として、りっぱな開発をはかるならば、ある程度やむを得ないものと考えます。
  650. 米原昶

    ○米原委員 環境庁長官は、自然保護のために先頭に立っておるというようなポーズをいままでとってこられましたが、いまの発言で、公害地帯になってもやむを得ないという考えだということがはっきりしました。まことに遺憾であります。  問題は、こういう問題が琉球政府の意向を無視してでもどんどんできるような仕組みになっていると言いましたが、これは審議会の構成が、たとえば奄美の審議会にしましても、北海道の審議会にしましても、行政官庁の職員は一人も入っていないわけですよ。ところが、沖繩の場合にだけ審議会の委員の過半数を行政官庁の役人が占めているというのは、全くこれはやり方としておかしいと思う。私は、こういう点からも、この点をもっと改めていかなくちゃいかぬ、こう考えます。  もう一つの問題は、先ほど福地ダムの問題が出ました。ところが、実はガルフがこの福地ダムの水を取ろうとしているので大問題が起こっております。実際は沖繩は非常な水不足で困っておりますね。ところが、これだけの工業用地をつくれば当然工業用水は必要だ。そこで問題の福地ダムの水を取るというので、沖繩で大問題がいま起こっておりますね。ところが、今度の沖繩の開発の法律によると、こういうダムなんかの水の問題も、知事じゃなくて、建設大臣が握ることになりますね。取り上げてますよ、二級河川とかね。ダムの水を渡す権利は全部県知事から取り上げて大臣が握ることになる、こういうことになっています。これでは全く自治権を無視している。住民の死活にかかわる水の問題です。いまおっしゃったような見解で、沖繩にも第二次産業を発展させなければならぬ——もちろん私も第二次産業を発展させることは賛成ですよ。しかし、いま言いました公害を起こすことで有名な、そんな大企業をまず持っていくというこの考え方ですよ、自然を破壊するような。そういうところへまた水まで取られるということになると、全くけしからぬ話だと私は考えます。こういう点でもっと知事に本来の権限を与えるべきだ。開発についても実際の権限を知事に持たせるようにすべきだ。どこの県の開発だって、知事が決定権を持っていますよ。持ってないのは北海道だけ、そして今度これで沖繩がそうなる。なぜ知事に決定権を持たせることができないのか。これは実に遺憾な話だと私考えます。総務長官の見解を聞きたい。
  651. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはだいぶ誤解をしていらっしゃるようですが、水資源の開発は沖繩のために急務であるということで、琉球政府の強い要請のもとに、福地ダムあるいはその他の安波川、晋久川、石川浄水場までの工事は国でぜひやってくれ、こういうことの要請を受けて私たちはつくったものであります。  さらに、今後国が直轄でやれる場合が規定してありますが、それはいずれも、その管理者である知事あるいは港湾等の管理者、あるいはまた、二級河川等の市町村長、そういうものの申請があった場合に初めて国が直轄で行ない得る道を開いておるのでありまして、これは決していやだというものを取り上げて国がやるというものはないわけであります。その点はいきさつもございまして、おわかりにならない点もあったかもしれませんので、説明はいたしますが、法の趣旨もそのようになっておりますので、そこのところは御理解を賜わりたいと思います。
  652. 米原昶

    ○米原委員 それでは、先ほど田中通産大臣が言われたので、いかにも中小企業にも相当のことをやろうとしているんだというような話をされましたから、ちょっと中小企業の問題を聞くのです。  沖繩ではとにかく中小企業の方にも会ってみて、一番困っているのは金融の問題です。そして沖繩では市中金利が八割から九割というのですから、非常に要望を持っているのは、今度金融公庫が沖繩にできて、そしていままでこの市中金利で借りている金を制度金融に肩がわりしてほしい、こういう要求が非常に強いわけです。今度の開発金融公庫ができ、そして開発金融公庫ではこの肩がわり資金を——この法律の附則第五条二項で触れられているようですが、実際には大体幾らくらいこの肩がわり融資の準備をされているのか、この点について聞きたいのです。これは大蔵省のほうじゃないとわかりませんか。
  653. 田中角榮

    田中国務大臣 金融公庫の問題は、先ほど申し上げたように、百三十六億要求しております。それから商工組合中央金庫の分として十億円、このように要求しておりまして、これは現在復帰前の十一億八千万円とか、一億一千万円とかという金額に比べると、非常に大幅な拡大をしておるということでございます。
  654. 床次徳二

    床次委員長 米原君に申し上げますが、東中君からの関連質疑もありますので、それを含んでひとつ時間の調整をしていただきたいと思います。
  655. 米原昶

    ○米原委員 一応、金融公庫の貸し付け要求として、中小企業百二十六億円要求されていることは、これに出ていますから、知っていますがね。その中で、いま言いました肩がわりですね、いままで市中金融機関から借りていたものの肩がわり、この要求が非常に強いわけですよ。この問題についてはどのくらい準備されていますか、この百三十六億円のうちで。
  656. 山中貞則

    ○山中国務大臣 全部の企業の負債を肩がわりというわけにはまいりません。しかしながら、輸入規制等が本土に返ることによって撤廃をされた関係の企業とか、あるいは物品税等保護措置の撤廃に伴う企業とか、そういうものを中心に肩がわり融資を一応四十五億円予定いたしております。
  657. 米原昶

    ○米原委員 私は琉球工業連合会の専務理事にも会ったのですが、その人も言っていました。とにかく要求として四千五百万ドル、百六十二億円の肩がわり要求を出している。ところが、わずか四十五億円。ところが、さっきお話があった琉球アルミ一社だけで五十億円出ることになっている。ところが、いま言いました中小企業のほうは、肩がわりだけで百六十二億円要求しているのに、四十五億円くらいしか出ない。これじゃ、私が言うとおり大資本本位ですよ。中小企業は実際上無視されている、こう言っていいと思う。私は、遺憾ながら、大企業本位であり、公害企業本位の開発方式だと思うのです。同時に、一方ではアメリカ資本の既得権を認めているような、そういう開発方式だと思うのです。これでは、総理が幾ら豊かな沖繩の復興とおっしゃいましても、ほんとうに豊かなものにはならないのじゃないか。もちろん、それ以上に重要なのは、沖繩自身が一番重要なところが全部軍事基地になっているということだと思うのです。この問題も実に重要だと思うのです。しかし、それと同時に、その軍事基地以外のところでも大企業本位、何というか、大企業の中でもことに本土で評判の悪い公害企業がまず第一にねらってあそこに行くという、こういう状態ですね。これでは、沖繩の人はいままでアメリカの軍事基地のもとで苦しんできたけれども、さらに大きな苦しみを味わうことになる、私はそういう開発方式だと思う。  さらに、軍事基地の問題はもっと重要だと思うのです。いよいよ、市町村別の、どの程度軍事基地が占められているかというのは、いままでいろいろな数字が出ておりますが、農耕地ですね、一つの村の農耕地、その中で軍事基地にどれだけとられているかという統計を見ますと、たとえば嘉手納の場合は、全耕地の九五%が軍事基地でとられている、読谷の場合は七〇%、北谷の場合は九〇%が軍事基地でとられていますね。そういう中で、実を言うと、経済建設といったって、全く一番重要なところを押えられているわけです。基地の縮小と言われましても、こういうことを解決していくこともできないようじゃ、これはことばだけに終わると思うのです。農村だけでなく、都市計画、中部の宜野湾市では、たとえば町の中心が百三十四万坪、普天間飛行場にとられております。この飛行場のために、かつての松並木で有名だった宜野湾街道の沿線、宜野湾、神山、新城、中原、大山の各部落は、飛行場の外に押し出されてしまって、部落と部落の間が飛行場の外を大きく回らなければ連絡もできない、また、そのために市内の道路は制約されて、幹線道路の交通量は激増のまま手を打つこともできないようになっております。この中でもう一つの問題は、飛行場の排水がすべて住民地域に向けられてどんどん流れ込んでくる。第二小学校付近からは、排出する基地の汚水のために畑が水びたしになっている、こういうような状態も起こっております。こういう中で、宜野湾市では、市長が先頭に立って、市会全会一致で、軍用地の全面開放、こういう要求をする陳情書防衛庁あてにことしの七月二日に出ているはずであります。ところが、そういうところに対して、防衛庁のほうでは、逆にその宜野湾に自衛隊を置いてくれという要請書を送っておられる。これで宜野湾では、もう絶対にこの政府の態度はけしからぬというので、大騒ぎが起こっております。せっかく、軍事基地をこの際一部は開放してもらおうというので、市会で満場一致できめるような状態のところに、そこに自衛隊を持ってきたい、全く頭がどうかしていると思うのです。沖繩住民の考え方を聞こうとしない態度がはっきり出ておると思うのです。この点について、ひとつ総理大臣のこういう問題に対する姿勢を私は聞きたい。
  658. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いま御指摘の点については、山中総務長官もよく知っておると言っておりますが、もしそういう場面があれば、これは基地周辺整備法によって——いままでアメリカの施政権下では比較的薄かったわけですが、本土並みにするということは、何も日米安全保障条約の適用だけではないわけですから、基地周辺整備法に基づいて十分そういった問題を解決していく。これも復帰が待たれる大きな理由であります。  それから、自衛隊が、開放されようとする基地を使用さしてもらいたい、これは米原さん御理解願いたいのですが、あなたが御指摘のように、米軍の基地というものは非常な比率でまだある、これは施政権が戻ってくれば、われわれはだんだん縮小の方向で努力をいたしますが、基地の島といわれるようなこの島において、自衛隊が配備するにあたって、また別なところに新たに土地を求める、こんなことをすれば、ますますあなたが言われるようにこれは土地が狭くなってしまう、だから、とにもかくにもこの段階は、いままでアメリカ軍が使用しておったもので戻ってくる地点で利用できるものは、自衛隊が、少々不自由であってもそれを利用していく、これはやはり土地問題を切実にわれわれが考えておるからそうしておるんだ、この一方の議論も御理解を賜わりたいのであります。
  659. 床次徳二

    床次委員長 東中光雄君から関連質疑の申し出があります。この際、これを許します。東中光雄君。
  660. 東中光雄

    ○東中委員 いま自衛隊の配備の問題、そのための自衛隊基地の取り上げ、これは住民の意思を無視して強制的に一方的に取り上げる、そのためにこの土地強制使用法というのはつくられているわけであります。話し合いでやるんだったら、話し合いでやることを原則にして、それが実際にやれるのだったら、この強制使用法は要らぬわけですから、これは明らかに一方的に取り上げるということをねらってやっているのが、この公用地暫定使用法という名前の軍用地強制取り上げ法ということになると思うのですが、自衛隊の基地のための土地取り上げ、強制的取り上げは、従来いままで防衛庁はやったことはない。国内で実際にやったことはない。このことについて建設大臣にお聞きしたいのですが、昭和三十九年の五月二十二日に、当時の建設大臣河野さんが、公共用地の取得に関する特別措置法の一部改正に際して、特定公共事業の中に自衛隊の敷地は入らないということを国会答弁されています。それは「「公共の」という条件がついております。軍施設を「公共の」の範囲に入れるということは適当でない、これはもう社会通念じゃなかろうかと私は思います。そういったことに反したものについてこれをやることは適当でない、」こういうように当時の建設大臣は言っているわけです。自衛隊用地の収用、強制使用に公共用地の取得に関する特別措置法は適用しない、こう言っているのですが、この政府見解はいまも維持されているわけですね。
  661. 西村英一

    ○西村国務大臣 公共用地の取得に関する特別措置法ですが、これは三十六年にできまして、三十九年に改正をしたわけであります。つまり、公共事業でございますが、そのうちでも特に緊急に急がなければならぬという公共事業があるからということで、前の法律を改正してやったときのことばでございます。河野さんの言うことは、そう申しましたけれども、その意味は、この特定の公共事業にする必要はないのじゃないか、こう言ったのでございまして、この土地収用の問題が自衛隊の用地に対して云々というようなことを言った趣旨ではないのでございまして、かように私は考えておりますが、今日も私はそのように思っております。
  662. 東中光雄

    ○東中委員 時間がおそくなっていますから、建設大臣、聞いたことに答えていただきたいのです。  私が聞いているのは、公共用地の特別措置法ですね、この法律には、自衛隊の敷地の収用はこの法律ではできないということを河野建設大臣が言うて、その理由を述べているわけですが、この見解はいまもこの法律について支持されているのかどうかと聞いているのですよ。
  663. 西村英一

    ○西村国務大臣 そのとおり支持されております。
  664. 東中光雄

    ○東中委員 河野建設大臣が当時言っているのは、この法律で特定公共事業として自衛隊敷地は認定されないと言っている根拠は、「公共の」という条件が入っているからだ、こう言っているのです。そうでございますね。はっきりとそう議事録に書いています。ここでいう、「公共の」という条件が入っておると言っておるそれは、この特別措置法のどこにそういう条件が入っているのか、建設大臣御承知ですか。
  665. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 建設大臣がお答えのとおりに、当時の公共用地の取得に関する特別措置法の改正案の審議に際して河野大臣が申し上げたことは、いまでも政府は同じ考えを持っております。それで、その理由は何かと言われれば、公共用地の取得に関する特別措置法案、ここにおける特定公共用地、その公共の中には入りませんということでありまして、いまでもその考えに変わりはございません。
  666. 東中光雄

    ○東中委員 質問に答えてほしいのです。河野大臣はわざわざ、この会議録によると、カッコしてある。「公共の」という、そういうカッコづきの「公共の」という条件がついているから、だからこれは自衛隊には適用できないのだ、こう言っているのです。その「公共の」という条件がついていると河野大臣が言っているのは、一体どこに条件がついているのかと聞いているのです。
  667. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 河野大臣の答弁は、先ほど申し上げました法律の第二条の第八号、「前各号に掲げるもののほか、前各号に掲げるものと同程度に公共の利害に重大な関係があり、かつ、その整備の緊急性があるもので政令で定めるもの」この「公共の利害に重大な関係があり、かつ、その整備の緊急性があるもので政令で定める」という政令で、自衛隊の施設を書くか、つもりがあるかということに対して、それはございませんと、この法律を通覧すればごらんになりますように、きわめて当然な御答弁だと思います。
  668. 東中光雄

    ○東中委員 まさにそうなんです。法律規定に、この法律を適用できる土地というのは公共のものでなければいけないというふうに、いま言われた八号にもあるし、一条の目的にもあります。それがあるから、自衛隊は「公共の」という概念の中へ入らないのだから、だからだめだ、こう言っているのです。土地収用法も、一条も二条も三条も全部「公共の」ということでくくっているじゃないですか。この特別措置法とその点は全く一緒ではないですか。土地収用法の一条、二条、三条に、収用すべき対象になる土地を全部「公共の」と河野さんがわざわざカッコづきで引用している分が、そのまま入っているじゃないですか。だから、いま建設大臣が言われたように、この特別措置法で自衛隊の敷地の収用はできない、そういう見解はいまも維持しているということであれば、それについての河野建設大臣の見解はそのまま土地収用法に、同じ「公共の」ということでくくっているんだから、及んでいくのがあたりまえじゃないですか。そういう意味では、土地収用法による収用は自衛隊の敷地についてはできない。もしそうでないというんだったら、この河野大臣の見解を、当時公式に発表した政府見解を、いまこのときになって変更されたというふうにいわざるを得ないのですが、どうでしょう
  669. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 法律家でいらっしゃるわけですから、むろん、それだけのことで、そういう論理で直ちに土地収用法の規定のほうに飛躍する——と言うと失礼でございますが、何かきわめて単純にお考えになっているんじゃないかという気がいたします。この土地収用法をごらんになればわかりますように、「公共の利益となる事業」と、たしか書いてあったと思いますが、その一号から各号ずっとごらんになりますと、いわゆる公共用といわれるものと、いわゆる公用といわれるものと、ごらんになればすぐわかるように、いろいろそこには入っております。したがって、この土地取得の特別措置法の「公共」に入らないからといって、土地収用法の規定に入らないという結論にはならないのが当然でございまして、土地収用法を一つ一つ各号をごらんになっていけば、いまの論理では、特別措置法の「公共」に入らないものも出てくる、そうすると、土地収用法は一体何を規定しているのかということをもう一ぺん考え直さなければならぬぐらいのことでありまして、いまの土地収用法の規定前提にすれば、河野大臣の答弁からいわゆる公用といわれるものが当然に入ってこないということにはならない。何となれば、現に各号に掲げられているから、こういうことです。
  670. 東中光雄

    ○東中委員 あなたは、私が法律家だからということで言われましたけれども、あなたも法律を解釈するのが専門家だったら、もっと論理的に解釈しなさい。全く三百じゃないですか。土地収用法の三条には一体どう書いてありますか。各号はありますけれども、その各号を全部くくっているのは、公共の事業ということでくくっているじゃないですか。公共の事業でくくってあるその内容は、三十一号もあれば、三十二号もある。しかし、それは全部「公共の」でくくっている。いまの特別措置法の場合だって、全部「公共の」ということでくくっている。しかし、各号の中に「公共の」ということを一々書いているわけではない。しかし、それは全部適用しないと、こう言っているんじゃないの。論理的に言えば、論理の飛躍しているのはあなたじゃないですか。このときになってごまかしているんじゃないですか。どこが私、論理が飛躍しているんですか。しかも、私の言っているのは、私の論理を言っているんじゃないのですよ。河野建設大臣が当時政府見解として言った論理をそのまま言うているんですよ。どうですか。
  671. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 法律論でございますから、つとめて冷静にやらなければほんとうにいけないと思っております。  そこでもう一ぺん、繰り返しになって恐縮でございますが、先ほどの特別措置法上の特定公共事業というのがございまして、それが特別措置法の対象になるわけで、その対象になる特定公共事業は、むろんしぼってございます。そのしぼっているものの最後に「前各号に掲げるものと同程度に公共の利害に重大な関係があり、かつ、その整備の緊急性があるもので政令で定めるもの」、その公共の云々というものには入らない、これはきわめて自然な解釈だと私は思っておりますが、それだからといって、今度もっと広い分野を押えている土地収用法に入らないというのは、これはちょっとすぐにはまいらぬのではないか、こういうことを申し上げているわけであります。もし必要があれば土地収用法上の根拠をお話し申し上げますが、御注文に応じてお答えしたいと思います。
  672. 東中光雄

    ○東中委員 あなたの言われておるのは、論理的には全く成立しないことを言っています。これは学界だって検討するでしょう。法制局長官というのはいかに非論理的なことを平気で言っておるかということを示しておると思うのです。というのは、土地収用法で収用の対象にしている三条の各号、そのうちで特別措置法でやっておるのは、重大な関係があり、緊急の問題という点で取り上げておるだけなんですよ。この特別措置法の特徴というのは、重大な関係とか、要するに重大性とか、あるいは緊急性ということで特別措置法というものはつくられておるのです。「公共の」ということでくくっておる点では、土地収用法だってこの特別措置法だって全く同じじゃないですか。どこが違うのですか。いま法制局長官が言われておることは、当時三十九年の政府見解として主務大臣であった河野さんが言うたことを、いま明らかに詭弁をもって変えておるだけじゃないですか。土地収用法のほうが範囲が広いから、そのうちの一部だから——なぜ一部に特別措置法はなったのか、それは緊急性と重大性ということだけじゃないですか。一条にちゃんとそう書いておるでしょう。
  673. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 それでは、土地収用法の問題についてちょっとお話をさせていただきたいと思いますが、土地収用法の例の三条三十一号に、国が設置する庁舎その他直接その事務の用に供する施設に関する事業、これが、土地収用法の規定を見ればわかりますように、「公共の利益となる事業」ということになっております。それは、この柱と、それから各号とをあわせてごらんになれば、非常によくおわかりになるはずであります。いまの規定の中に、防衛庁は、何度も言っておることでありますが、防衛庁設置法四条一項に明らかなように、一定の所掌事務を持ち、その「所掌事務の遂行に直接必要な庁舎、営舎、演習場等の施設を設置し、及び管理する」権限を有する、これが、国の機関である防衛庁がその権限に基づいて設置する庁舎等の施設が直接にその事務の用に供する施設に関する事業になることは、これは論理上当然に出てくるわけでありまして、したがって、三条三十一号の要件に該当し、したがって「公共の利益となる事業」になることは、これはもうまことに三段論法で出てこざるを得ないことだと思います。このことは実は初めて私が申すわけじゃなくて、これもしばしば御勉強の結果として引用されておりますが、十八年前に出した見解と全く同じでございます。
  674. 東中光雄

    ○東中委員 この法律は、土地収用法が制定されたときに、はっきりと日本国憲法二十九条の三項で「公共の」、やはり同じことばを使っておる、そういう関係で、そうして憲法の基本的な理念からいって、軍施設、軍用には使えないというのが政府の立法時の説明であった。いま言われているのは、そのあとで、自衛隊がまだできていない段階での法制局次長の回答でした、政府内部での。そして国会に対して正式に言われたのは、それよりずっとあとの三十九年、自衛隊ができてからこういう見解を発表しておるのじゃないですか。そういう点では、自衛隊敷地の強制収用をやる、そういうことを詭弁を弄して言っておられるにすぎないというふうにいわざるを得ぬわけです。私は、これは裁判問題になれば、はっきりとそういう結論になるものだ——現に自衛隊はいままで一回も適用したことがないじゃないですか。滑走路を曲げなければいけないような状態になっても、収用してないじゃないですか。できないからやってなかったのでしょう。その点をはっきりさせて、今度の土地強制使用法はそれを一挙に乗り越えちゃうという点で、きわめて重大な違憲性を持っているということを指摘しておきたいわけであります。  次の問題に移りたいのですが、山中総務長官にお聞きしたいのですけれども沖繩では土地調査法がつくられました。それによって調査が進められておるということを言われましたけれども、全体のパーセンテージはもうすでに言われておりますが、聞きたいのは、軍用地について土地調査法による土地の地籍調査はどの程度やられておるのか、実際にやられた結果をお聞きしたいのです。
  675. 山中貞則

    ○山中国務大臣 軍用地の中は、ほとんどそういう地籍調査を行なわれていないと見ていいと思います。
  676. 東中光雄

    ○東中委員 この土地調査がやられた理由は、一体なぜなんでしょうか。なぜこの土地調査法をわざわざつくって再調査をやらなければいかぬようになったんでしょうか。
  677. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは昭和三十六年に時効に関する特例等が、いわゆる時効停止の例等が、宮古、八重山群島を除いてその他の地区で停止されておるということを見ましてもわかるとおり、やはり米軍の上陸いたしました周辺の島嶼並びに本島中南部というものが、そういう公簿、公図を一ぺんつくってみたけれども、しかし、それを最終的に善意によって取得したものとしての時効の成立する十年間でその本人のものであると断定するのにはどうしてもやはりそこに問題が多過ぎるということで、さらに、いまお話しのような軍用地の実際上の調査ができないこと等も中南部にはあって、時効の進行を特例で停止しておるというようなことがそこで明確に裏づけされていると思うわけであります。
  678. 東中光雄

    ○東中委員 いま総務長官のお話によりますと、要するに、いわゆる公簿、公図、これが作成されておるけれども、それは全く不正確で、このままでは正当な権利を持っている人が大きな損害をこうむる、そういう不正義な状態が起こってくる、だから再調査が必要なんだ、こういうふうに言われたと思うのですが、実際軍用地の中においては土地の原形は滅失されておりますし、黙認耕作地は別ですが、それ以外は立ち入り禁止になっているし、公簿、公図に表示されていないものもあるし、真実に反する地籍の表示をなされておって、所有者が裁判所の救済を求められないような状態になっているのもある、自己の所有地を確定することができないという人もある、だから土地調査が必要なんだ、こういうことでやられて、権利者である人の土地が他人の名義になっている公簿、公図になっているというようなことがあり得るから、そうすると、正当な権利者が他人にこういう軍用地のままで置かれておって、米軍がブルドーザーで取り上げた、収容所へ入れて、取り上げた、こういう土地の状態では、土地所有者がこの不正確な公簿によってその権利が民法の百六十二条によってなくなってしまうということがあっていかぬからということで、取得時効の特例に関する立法というのが六一年四月七日に制定された、こう思うのですが、法務大臣、そうじゃございませんか。
  679. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 さように考えております。
  680. 東中光雄

    ○東中委員 その土地取得時効の特例に関する立法が制定されたときと、いまと、事情は変わっておるでしょうか。
  681. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 だんだん明確に——というより、自分の土地を持っておるか、持っていないかということはわかってきつつあると思います。
  682. 床次徳二

    床次委員長 東中君に申し上げますが、時間がだいぶ経過してまいりましたので、簡潔にお願いいたします。
  683. 東中光雄

    ○東中委員 簡潔にお聞きしたいんですが、総務長官は、軍用地の中は、調査はやらなければいかぬけれども、調査ができないのだ、こう言っているのでしょう。だから、一つも事態は変わっていないじゃないですか。だんだんよくなってきたというのは、総務長官の言っていることとまるきり違いますね。
  684. 山中貞則

    ○山中国務大臣 誤解があるといけませんから申し上げておきますが、公簿、公図は一応あるわけです。しかしながら、実際に測量その他の確定ができない。その証拠には、非細分土地なんというものがあって、市町村に対して交付金が地代として非細分土地分が市町村単位で出されておることでわかりますとおり、そのことは否定しがたい事実であると思います。
  685. 東中光雄

    ○東中委員 私はそんなことを聞いてないです。法務大臣にお聞きしているんですが、非細分地があることも、そんなことみなわかっているのです。そんなことで時間をとりたくないのです。言いたいのは、実際と公簿、公図が違うから、だから取得時効の問題が起こってきて、そしてどうにもならなくなるから取得時効の進行は停止させる、一方では調査を進める、こういうことになったんじゃないですか。しかし、軍用地についてはその後も今日に至るまでほとんど調査がやられていない、こう総務長官は言われているんです。法務大臣、そうじゃないですか。
  686. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 ただいま山中君の言われたとおり、その実面積とか、いろいろなことはわからぬかもわかりません。しかし、自分の所有地を持っておるかどうかということは本人にはわかっておるんではないかと思います。
  687. 東中光雄

    ○東中委員 沖繩では、先ほど言いましたように、土地所有権の取得時効の特例に関する立法で、民法百六十二条二項の取得時効の進行は当分の間停止する、こうはっきりきめています。それは「土地調査の不備、公簿等の誤謬欠陥により不利益を受け又は受けるおそれのある土地所有者を保護するため」と、法律の中にそう書いてます。この法律復帰までは効力を有しておるから取得時効は進ません。しかし、復帰すればこの法律一体どうなるんですか。いま提案されておる特別措置法じゃ、経過規定はわずかに六カ月しか置かれてないじゃないですか。どうなんでしょう。
  688. 前尾繁三郎

    ○前尾国務大臣 六カ月でありますが、その六カ月の間に時効を中断することだけは可能である、かように考えております。
  689. 東中光雄

    ○東中委員 六カ月だけしか及ばない。いま、これ、十年余り続いてきているんです。進行をとめているわけです。それを、今度六カ月たったら事態は変わるんですか。六カ月以内に土地調査が軍用地の中でできるとおっしゃるんですか。何にも事態は変わらぬじゃないですか。変わりますか。
  690. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 沖繩におきまして、土地所有権の取得時効の特例に関する立法、これが制定されました理由は、おおむね先生のおっしゃるとおりでありますが、軍用地に限らず、この立法がなされました当時におきましては、沖繩の島全体の土地が公簿に欠陥があったということが大きな理由であろうと思います。問題は、このたび沖繩本土復帰いたしました場合に、この取得時効の特例の立法が失効して、その結果、取得時効の完成する土地が出てくるのではないか、そのために土地所有者の不利益が生ずるのではないか、こういう点でございますが、まず、基地外の土地につきましては、先ほどお話もございましたように、土地調査が進行しておりますし、それから二十年も経過しているという事情によって、この立法を維持する必要というものはほとんどなくなっておるというふうに思われるわけでございます。問題の軍用地内の土地でございますが、軍用地内にあってその土地の特定がはっきりしていない、こういう土地につきまして、はたして民法百六十二条の取得時効が進行するかどうかという点が、一つ法律上の解釈として問題があるわけでございまして、この点につきましては、本土の学者などもいろいろ意見を述べておるわけでございますが、それによりますと、土地の特定ができないような軍用地内にある土地、これにつきましては、取得時効の基礎となる間接占有が成立しない。したがって、そういう状態にある土地につきましては取得時効は当然には適用がない、こういう考え方が支配的でございます。そういう考え方をとりますれば、この立法が廃止されましても、失効いたしましても、それによって直ちに取得時効が完成して土地の所有者が不利益をこうむることはない、このように考えられるわけでございます。
  691. 東中光雄

    ○東中委員 民事局長は、いま、そういう見解をとれば完成しない、こう言いました。政府はそういう見解をとっているのですか。取得時効は完成しない、軍用地の中は。どこまでがだれの土地か正確にわからない、そういう状態では、取得時効は進行しないのだ、沖繩県の立法はあまり必要ないのだという見解をとっておられるわけですか。
  692. 川島一郎

    ○川島(一)政府委員 政府もそのような——法務省といたしましてはそのような考えをとっておるわけでございます。
  693. 東中光雄

    ○東中委員 政府見解は明らかになりました。しかし、政府は、軍用地の中の土地については不正確で、しかも米軍が立ち入りもとめておるという状態になっているのだ、だから、だれの土地はどこまでか、公簿、公図ではその形状なり特定はできない、軍用地である限り、という見解に立って、取得時効は、立法しなくても進行しないのだ、こういう見解をとっているというのです。  防衛庁長官にお聞きしたいのですが、そういう、どうなっているのかわからない——政府がそういう見解をとっているのです。そういう、どうなっているのかわからないような、しかも公簿、公図はきわめて不正確だということは認めている。そのままで、この公用地の暫定使用法というのは、法律で一方的に土地を取り上げてしまうのです。取られるほうはどうなっているのかわからない、取得時効は進行しないぐらいのそういう混乱した状態、これは米軍が土地を取り上げたときの不当な取り上げの継続だからそうなっているわけです。それをわずかこの五カ条の法律で、第二条の一項の規定だけで一方的に取り上げてしまう、こういうことをやるというのは所有権の重大なる侵害になる、こう思うのですが、長官、いかがでしょう。
  694. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 現在も話し合いによって賃貸料をもらってずっと継続しているわけでございます。法律はもちろんできまするが、しばしばこの席で申し上げておりまするように、施設庁が個別の問題をきめこまかに話し合いをしまして、なるべくこの法の適用をしないで事を処していきたい、これは途中の処理方法の段階で十分注意をしながら処理をしていくつもりでおります。
  695. 東中光雄

    ○東中委員 話し合いでできるのだったら、この法律は要らぬわけですよ。話し合いでできぬ場合にそういうふうにやっちゃうということが問題になっているのです。話し合いができぬときにこの法律で一方的に強権的に取り上げるということが問題になっているのです。それをやるためにこの法律をつくっているのでしょう。そうしたら、話し合いでやりますじゃ、回答にならぬじゃないですか。
  696. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私はあくまで話し合いでいきたいという一つの方向を言っておるので、どうしてもいけない場合は、これはもうやはり適用せざるを得ぬわけですが、それは米軍の施政権がこちらに移ってくる、現に米軍が土地所有者と契約をして賃貸料も払って今日に至っておるという既得権もある、そういうようなことなどもありまするので、この法律を用意するわけでありまするが、しかし、あくまでわれわれの姿勢としては話し合いでいきたい、こういうことを申し上げておるわけです。
  697. 東中光雄

    ○東中委員 防衛庁長官は全然質問に答えていないわけですね。そうやりたいという方針なんかいま聞いていないのです。いま法案審議をしているのでしょう。その法律規定は、強制的に取り上げることを規定しているのでしょう。話し合いなんというのは、努力すると書いているだけじゃないですか。何もそれで効果は出てこないですよ。この法律は、強制的に取り上げるための法律なんでしょう。ただ、初めからこれを全部適用していくというのじゃなくて、話し合いできるものは話し合いをすると書いてあるだけじゃないですか。強制的に取り上げるときには、何かわからぬままで取り上げてしまうというようなことは、これは財産権に対する侵害になるのじゃないか、こう言っているのに、話し合いをしますじゃ、全然答弁にならぬじゃないですか。
  698. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 先ほど来話が出ておりますように、ことに沖繩の軍用地の中における土地所有関係が非常にむずかしい問題であることは、御承知のとおりでございます。そこで、占領治下から講和発効後にかけまして、土地の問題は非常に——要しまするに、それぞれの土地の所有者が自分の所有地から離れまして、そこが軍用地になったということで、非常に所有関係が不明確になっておりますので、米軍におきましては、二十一年から二十五、六年にかけまして土地の所有権の確認作業をやりまして、それで一応公簿、公図ができ、地番もできておるわけでございます。そしてそれが一つの法秩序と申しますか、そういう形で今日までまいりまして、布令二十号によりまして賃貸借契約を結び、それによって借料も受領しておるという状態が今日まで続いておりますので、一応われわれとしましては、やはりその公簿、公図というものをもとにして今後のいろいろな処理をしたい、かように考えております。確かに、その公簿、公図が全く真実を表現するものであるかということにつきましては、いろいろ問題があろうかと思いますけれども、これの一つ一つにつきまして今後真実に合わしていくということは、これは今後の土地調査の事業として行なわれるべき問題で、今日の時点におきましては、やはり現在の公簿、公図をもとにしていろいろな問題を処理していかざるを得ない、かように考えておるわけでございます。
  699. 東中光雄

    ○東中委員 公簿、公図はこのままではどうにもならないのだということを政府も認めて調査をやっているのじゃないのですか、わざわざ法律をつくって。それで本土政府も国土調査という形でこれをやっているのじゃないのですか。不正確きわまるということを認めておるのです。総務長官は、現に軍用地だけでなしに中南部もほとんどやられていないと言っているのです。それは何も個人的な現状認識でなくて、国がそういう認識をして立法までし援助してやっているのです。そういう状態にある。だれのものか、どこかようわからぬ、きわめて不正確だと、立法にそう書いているじゃないですか。あなたがいま言われたような、米軍の調査というのは、それが不十分だった、そうして不正確だったということを、この取得時効に関する立法でははっきりと条文の中に書いているのです。そういう混乱した状態で、そのままとにかく、わからぬけれども取り上げる。これは憲法二十九条——そもそも収用すべき財産を特定しないでとにかく取り上げたことにしてしまう、こういうことは、憲法上絶対に許されない。同時に、これは土地収用法でも、米軍のあの土地取り上げに対する特別措置法でも、全部手続をやっているじゃないですか、特定する手続を。何を取り上げるのかわからぬけれども、取り上げてしまう、こんなことができないということは、いままでの立法で全部そうなっているじゃないですか。そういう点で、これは明らかに憲法三十一条に違反する、こう思うわけです。  それと、もう一つこの手続面で重要な問題になるのは、いわゆる事前の告示であります。  法制局長官にお聞きしたいのですが、法律家として答えていただきたいのですけれども、この告示というのは行政庁の処分だ、こう言われております。私もそのとおりだと思うのです。しかし、これは意思表示ではない。したがって、法律行為ではない。観念または判断の表示か、あるいは希望または意見の表示。いわゆる意思表示ではない。法律行為ではない。これは効果意思を表示する行政行為ではなくて、一種の不特定人に対する通知を——一般的通知行為ですね。そういう性格のものだと思うのですが、この見解間違っているところがあったら訂正してください。よけいなことは言ってもらいたくないのです、時間がないですから。
  700. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 大体前段のほうはそのままでいいんじゃないかと思います。要するに、行政庁が一定の事項を一般に知らせるための行為でありますから、その一般的性質は何かといえば、公示される事項の内容に従って、先ほどおっしゃいましたように、判断の表示であり、認識の表示であり、観念の表示であるというわけでありますが、しかし、告示がよって立つ法的基盤のいかんによって、これも法律家としてよく御存じだと思いますが、行政立法の性質を具有することにもなるし、あるいは、ときには準法律行為的行政行為たる性質を具有することにもなるということだと思っております。
  701. 東中光雄

    ○東中委員 いわゆる準法律行為的行政行為ということであって、法律行為ではない、法律行為的行政処分ではないということをいま言われたと思うのですが、その点では見解が初めて一致するんです。  ところが、施設庁長官にお聞きしたいのですけれども、この間、十一月三十日の当委員会における審議で、あなたはこういうふうに言われているのです。「沖繩返還、施政権の復帰ということをいわば停止条件としたところの一つ法律行為の効力、こういうものを私どもは考えておるわけでございまして、この効力はもちろん施政権が返還になりました時点において発生し、したがいまして土地の使用権が設定をせられるものでございます」こういうふうに言われているのですが、ここでは法律行為の効果、しかもそれは停止条件つき法律行為だ、こう言われているのですが、この告示がなされるときに、復帰ということは停止条件なのかどうか、条件なのかどうか。確定しない、復帰するかしないかわからぬ、そういう状態の中で告示をするということを言われているのか。停止条件というのは明らかに法律上のことば、あなた使っておるわけです。しかも、これは法律行為だと言われている。法制局長官は、法律行為だとは言っていない。これは明らかに違うわけですが、この説明は一体どういうことなんですか。明らかにしていただきたい。
  702. 床次徳二

    床次委員長 法制局長官。
  703. 東中光雄

    ○東中委員 いやいや……。
  704. 床次徳二

    床次委員長 まあひとつ、これは政府答弁を……。
  705. 東中光雄

    ○東中委員 言われたことを施設庁長官に聞いておるのに、ほかから言うことはないじゃないか。
  706. 床次徳二

    床次委員長 これは一応政府答弁をお聞きいただいてからお願いします。
  707. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 一応申し上げたいと思います。  この法律解釈の問題については、法制局が政府部内では一応責任を持った——権威あるとはあえて申しませんが、責任を持った当局でございますので、私が申し上げます。  それは、法律行為と言いましたのは不正確でございます。しかし、先ほど申し上げましたように、告示のよって立つ基盤によって、その告示が行政立法たる性質を有することがあったり、準法律行為的行政行為たる性質を持つことがあると申し上げましたが、その基盤が、つまり、使用権の設定というものがいわば施政権の返還という条件にかかっておるという意味で施設庁長官は言ったのだと私は推測をいたしますが、この政府当局の答えとしては、どうかひとつ私の答えを御了承願いたいと思います。
  708. 東中光雄

    ○東中委員 施設庁長官の言うておったことは不正確だと——あのときは、法律用語を使ってきわめて明快に言っておる、これは中谷委員に対する答弁ですけれども。違うじゃないですか。  それからもう一つある。いま法制局長官も、施政権返還は条件だと言われましたね。条件ですか。告示をされる時点において条件ですか。条件というのは、あした雨が降るか降らないか、これは条件であります。これはもう法律学の常識ですわね。初歩の初歩ですよ。あした起こるか起こらないかわからぬものを条件というのでしょう。復帰はもう告示の時点では期限できまっているのじゃないですか。しかもこれは確定期限になっているのじゃないですか。いま法制局長官、停止条件なんて言われた。中谷委員質問主意書に対するこの政府答弁書にもそう書いてある。いまなおそう思っていらっしゃるんですか。要するに、復帰するかしないか、返還があるかどうかはわからない、もし返還することになったら効力が発生する、こういう説明を、政府は、施設庁長官もやっておるし、いまも言われたし、ここにもそう書いてある。そうですか。
  709. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 あるいは停止条件と申したか、停止条件とまで申し上げたかどうか知りませんが……(「言ったじゃないか」と呼ぶ者あり)あるいは申したのかもしれません。その意味は、施政権が返還することによって使用権が設定をされる、そのときに設定をされる、そういう意味に御了承願いたいと思います。そういうつもりで申し上げているわけで、確かに、返ってくるのは、期限そのものと申してもいいぐらいでございます。
  710. 床次徳二

    床次委員長 東中君に申し上げますが、時間が非常に過ぎておりますので、すみやかに結論をお出し願います。
  711. 東中光雄

    ○東中委員 答えてほしいんですよ。「停止条件」だと、ここにはっきり書いてありますよ。いま言われたことは間違いない。そうして文章にも書いている、政府見解として。条件だということになったら、まるっきり違うじゃないですか。(「うその答弁になる」と呼ぶ者あり)全くいいかげんな答弁をしておるということになる。これが第一点。  それから、返還のときに効力が発生するというのは、そんなものは告示と関係なしに、二条の二項の告示じゃなくて、二条の一項の規定で出てくるんじゃないですか。それは告示と関係なしに、二条一項の規定で出てくるのじゃないですか。その点どうですか。
  712. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 いま御指摘になったのは答弁書のことでございますね。答弁書はまたいずれ中谷さんから御質疑があるかと思いますが、これは実は政府では八日の日にいただきまして、国会法では一週間、七日間猶予があるわけでありますが、実はいろいろお察ししたこともありまして、非常に急いだ関係もございます。したがって、あるいは多少表現にまずいところがあるかもしれません。あるかもしれませんが、いま申しておりますことは、暫定使用法の二条二項の告示が具体的な問題ですね。先ほどは告示一般についての御質問だったと思いますが、ただいまの御質問は、二条二項の告示についてのお話のようであります。これは、まさに同条一項の基盤、その規定を受けまして、沖繩復帰の際に使用権が発生する土地等の範囲と、それから法律にも書いてありますが、使用方法を確定して外部に表示する行為であり、これによってその基盤たる同条一項の使用法律効果を生ずるものでありますから、この告示特有の法律的性質としては、先ほど申し上げたような準法律行為的行政行為たる性質を有するものであろうと思っております。条件、停止条件という表現、これはあるいはまずかったかもしれません。ことばが足りなかったと思います。しかし、その趣旨は、いま申し上げたとおりに、二条一項の規定による効果として告示がいま申し上げたような性質を具有する、こういうことであります。
  713. 東中光雄

    ○東中委員 答弁書に「条件付き」と書いてある。施設庁長官は三十日にそう言うている。あなたもここでさっき条件つきと言われた。表現がまずかったというような問題じゃなしに、一貫してそう言うてきたのじゃないですか。それをいま訂正されるのだったら訂正されたらいいですよ。いいかげんなことでごまかしておいたらいかぬということを私は言っておるわけです。そういう前提に立って、二条の二項による告示は、いま法制局長官は、外部に表示する準法律行為的行政行為だと言われた。それは外部に表示をするんですね。しかし、沖繩の土地関係者に知らせるということが目的の告示だと思うのです。当然そうですね。——まあ、うなずいておられるから、そうなんでしょう。そうだとすれば、この告示は官報によってやるのだということを言われておる。沖繩県民に知らすのに日本の官報で表示をする。しかし、この官報は沖繩へはいかない。いかないから効力はないんだということは、民事局長がこの前答弁しています。そうしたら、外部に公示する、土地の利害関係人に知らせるための表示行為が、関係者である沖繩県民には届かないものを公示するだけだ。ナンセンスじゃないですか。沖繩県民に通じぬ、効力を持ちようがない、表示しようがない。これは民事局長がはっきりこの前そういうように答弁しておりますよ。だから、民事局長は、あとの通知がいかなければ出訴期間の起算というものは進まないと言っているじゃないですか。そうしたら、この告示行為というのは、何か手続をとっているようなかっこうをしているだけであって、二条の二項の告示は、外部に知らせると言っているが、知らされる人には通用しないもの、こんなものは全くごまかしの規定じゃないですか。事前に何にもやらないで、結局、先ほど言われたように、二条の一項だけ、法律によって土地を取り上げてしまう。何の手続もしていない。こういう立法というのは、それこそどこにもないのです。こんなひどいのは——それこそ、形だけは、なるほど告示という形で出されております。しかし、それは官報に告示したって、官報は通用しないのだから、意味がない。日本国民が知ったって、沖繩県にいる県民がたまたま日本へ来ているときは、それは何人かは関係があるかもしれない。しかし、土地所有者及び関係人を入れたら何万という人間になります。所有者だけでも三万八千人、四万人近くいるというのですから、関係人を入れたら、うんとある。そこには全然通用しないじゃないですか。まさにこれはごまかしだ。そういう点でこれは憲法三十一条違反だと言っているのです。あなた方は、それをごまかすために、法律行為だと言ってみたり、あるいは停止条件つきと言ってみたり、何かもっともらしいことを、知らぬ人が聞いたらほんとうかと思うようなことを言っている。しかし、全く違うじゃないですか。こういうごまかしの答弁をやって、効果のないものを規定することで憲法違反の事実をごまかしていこうとしている。これがこの土地法の一つの本質だと思うのです。  総理、こういう法律を、なお総動員法のときよりはいいと思うと言われましたけれども、総動員法はこんなことはしていないのです。ちゃんと手続をしています。
  714. 床次徳二

    床次委員長 すみやかに結論をお願いいたします。
  715. 東中光雄

    ○東中委員 どうでございましょう。総理見解をお聞きして質問を終わります。
  716. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 告示の方法は、これは一般に知らせることでありますから、官報に掲載するということのほかに、いろいろ手段を尽くして知らせるということは、むろん別個にしなければならぬと思っております。しかし、それはまたどうして御指摘のような問題が出るかというと、これは施政権の返還という特異な場合についての問題であるからであります。たとえば法律を今度制定をされるといたしまして、その制定は、その公布について考えてみれば実は同じことであります。それも同時に公布についても同じような関係が生じますが、それについてもけしからぬではないかという御指摘があるかもしれませんが、これまた、施政権の返還というめったにない特殊の事例の場合の問題でありますために、通常の場合とは異なった事態がそこに生ずることは、ある程度やむを得ないということは御了承願いたいと思います。
  717. 東中光雄

    ○東中委員 もう一点だけ。いま変なことを言われたから、どうしても言っておかなければいかぬです。法制局長官は、官報による掲示以外のいろいろな処置をとるんだ、こんなことをいま言われたけれども政府答弁書には、官報の掲載によってやると書いてあるじゃないですか。またごまかしているじゃないですか。そうして、施政権の返還という特殊な条件だから、こうするよりほかに方法がなかったのだ、こうあなたはいま言われた。小笠原のときにはそうしていないじゃないですか。小笠原のときには事前にこんな告示なんかやっていないですよ。事後に通知をして、それが効力発生要件になっているじゃないですか。小笠原のときには施政権返還じゃなかったのですか。あなたがいま言っているのは、いままでとってきた政府の態度と全く違うことを言っているじゃないですか。そういうまさに詭弁、ごまかしをやってはいかぬと思うのです。そういうごまかしをやらなければ説明ができないような、そういう法律なんですよ、これは。そういう違憲の法律なんですよ。そういう差別立法なんです。最後に総理の御見解をお聞きして終わります。
  718. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 官報の掲示のほかに、先ほどの答弁書にたぶん書いてあったと思いますが、図面の閲覧、縦覧とか、そういう方法をやはりあわせてやるべきであるし、やるつもりでおります。(発言する者あり)
  719. 東中光雄

    ○東中委員 質問をやめようと思ったけれども、やめられませんよ。発言を求めます。  官報に掲載する内容と、そして関係図書を縦覧に供するというのとは、内容が違うでしょうが。官報に図書なんか書きますか。政府答弁であなたのいま言ったようなことを言ってないじゃないですか。ごまかしばかり言ってはいかぬですよ。神聖な国会で何ですか、あなたは。国民の前でこんなことを言っていいのですか。書いてないことを書いてあると言ってみたり、施政権がない段階ではこれよりほかに方法がないんだと言った。しかし、小笠原返還のときにはちゃんとやっているじゃないですか。それについては答弁しないじゃないですか。そういうごまかしをやってはいかぬと思うのです。総理所見を聞いて私は終わります。
  720. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、法案といたしましては、憲法違反なぞはないように、かように十分検討さして、そして提案しておるのでございまして、ただいまのところは、どうも、両者のお話を聞いていると、見解の相違、そういうように私は感じております。
  721. 床次徳二

    床次委員長 もういいでしょう。
  722. 東中光雄

    ○東中委員 終わります。終わりますけれども見解の相違じゃないですよ。法制局長官自身が訂正をし、変えて言っているじゃないですか。十分検討してつくった法案で、十分検討した結果を十一月三十日にここで回答し、こうしておいて、そしてなおいま変更しておる。答弁書とも違うことを言っておる。もう時間が、きょうが終わりそうですから、これは質問を保留させていただきたいと思います。
  723. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 告示の方法は、答弁書にもございますように、官報告示ということでやりますが、その官報の告示の際に、図面等につきましては、これを関係者に縦覧をするということを告示にうたう、そういうことによりましてこれが告示と一体化するものだと思います。それから、これはやはり琉球政府その他の団体を通じましてこの問題の周知をはかるということと、それから、これは復帰前におきまして今日までずっと契約できておりましたその地主、その範囲内で引き続き契約をするということでもございますし、そのための交渉をやるわけでございますし、したがいまして、個々人につきましては、自分の土地が、自分が契約に応じない場合にはその使用権の対象になるのだということを当然知り得る、そういう意味で土地の特定ということも考えられる、こういうことで、いろいろなそういう実際上の措置を含めましてこの周知をはかり、そして本人がいつでもそれに対応する措置をとられるようなことを考えていきたい、そういう措置をしたい、かように考えておるわけでございます。
  724. 床次徳二

    床次委員長 もう時間が過ぎたですから……。
  725. 東中光雄

    ○東中委員 質疑を全くもとへ戻しただけじゃないですか。さっきから質疑をやってきて、そして法制局長官が見解を変え、違うことを言い、政府答弁として発表している、文書にしていることと違うことを言い、そういう状態になって、また、一番初めに、審議の初めごろに言うたようなことをまた繰り返している、これは全くごまかしじゃないですか。だから、これはひとつ、時間がないから、質問を続いて保留させてくださいよ。それよりほかに方法ないじゃないですか。時間がもうないですから……。
  726. 床次徳二

    床次委員長 委員長より申し上げます。  ただいまの東中君の質疑に対する答弁は保留いたしまして、本日は、これでもって終わりたいと思いますが、次回は、来たる十三日、午前九時三十分理事会、午前十時から委員会を……。  ちょっと待ってください。  米原君の質疑は残っていますか。済んだんでしょう。   〔発言する者あり〕
  727. 米原昶

    ○米原委員 もう時間がありませんから、もう繰り返しません。時間がありませんから、最後の締めくくりです。  ただいまの東中君の質疑の状況を見ましても、アメリカ軍用地と自衛隊基地の強制使用をねらった公用地暫定使用法案は、憲法にまっこうから違反し、わが国の土地法体系に重大な変更をもたらす、そういう性格を持っております。この一点だけとってみても、この沖繩関連法案の徹底的審議をさらに続ける必要がある、そういう立場で……(発言する者あり)そういう立場で、私は委員長に対して、沖繩関連法案の徹底的審議についての要求書をこれに書いてあります、これをあとで提出しますが、要するに、この状態審議をいいかげんに終わるならば、今後国民に重大な疑惑を生じさせることになると思います。そういう意味では、沖繩法案審議はまだ序の口に入ったばかりである、こういう認識に立って徹底的な審議を続けられることを要望して、私の質疑を、私の分を終わります。東中君のは保留になっております。
  728. 床次徳二

    床次委員長 次回は、来たる十三日、午前九時三十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後十一時五十五分散会