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1971-11-05 第67回国会 衆議院 運輸委員会交通安全対策特別委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月五日(金曜日)     午前十時六分開議  出席委員   運輸委員会    委員長 小峯 柳多君    理事 宇田 國榮君 理事 加藤 六月君    理事 徳安 實藏君 理事 古屋  亨君    理事 箕輪  登君 理事 斉藤 正男君    理事 田中 昭二君 理事 河村  勝君       石井  一君   小此木彦三郎君       關谷 勝利君    福井  勇君       細田 吉藏君    井岡 大治君       久保 三郎君    内藤 良平君       松本 忠助君    宮井 泰良君       和田 春生君   交通安全対策特別委員会    委員長 伊藤卯四郎君    理事 大竹 太郎君 理事 加藤 六月君    理事 佐藤 守良君 理事 丹羽 久章君    理事 後藤 俊男君 理事 宮井 泰良君    理事 和田 春生君      小此木彦三郎君    左藤  恵君       斉藤滋与史君    中村 弘海君       野中 英二君    古屋  亨君       久保 三郎君    柳田 秀一君       沖本 泰幸君    谷口善太郎君  出席政府委員         運輸政務次官  佐藤 孝行君         運輸省鉄道監督         局長      山口 真弘君  委員外出席者         参  考  人         (近畿日本鉄道         株式会社副社         長)      大槻 丈夫君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正巳君     ————————————— 本日の会議に付した案件  陸運に関する件(近畿日日本鉄道列車衝突事故  に関する問題)      ————◇—————   〔小峯運輸委員長委員長席に着く〕
  2. 小峯柳多

    小峯委員長 これより運輸委員会交通安全対策特別委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行ないます。  この際、去る十月二十五日の近畿日本鉄道事故で多数の死傷者を出しましたことは、まことに遺憾なことであります。おなくなりになられた方々に対し、ここに深く哀悼の意を表する次第であります。  これより陸運に関する件、近畿日本鉄道列車衝突事故に関する問題について調査を進めます。  本日は、参考人として近畿日本鉄道株式会社社長大槻丈夫君が御出席されております。  参考人には本日御多用中にもかかわらず御出席を賜わり、まことにありがとうございました。本問題について、率直かつ忌憚のない御意見を承りたいと存じます。  なお、議事の都合上、御意見質疑応答の形でお述べ願いたいと存じますので、御了承願います。  この際、各委員に申し上げます。  質疑時間等はただいま申し合わせましたとおりでありますので、何とぞ御協力願います。  なお、政府当局並びに参考人に申し上げますが、質疑の時間の関係上、答弁は簡潔にお願いいたしたいと存じます。  この際、今回の事故概要について佐藤運輸政務次官説明を求めます。佐藤運輸政務次官
  3. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 近畿日本鉄道列車衝突事故概要について委員会皆さまに御報告申し上げます。  去る十月二十五日十五時五十八分、近畿日本鉄道大阪線東垣内信号所におきまして、上本発名古屋行き特急列車賢島発難波行き特急列車がトンネル内で衝突事故を起こしました。死者は二十五名、負傷者は二百十八名を生ずる事故が発生したのであります。  ここに、死亡された方々に心からお悔やみ申し上げるとともに、負傷された方々の一日も早い御回復をお祈りする次第であります。  この事故原因につきましては、事故直後、名古屋陸運局長及び名古屋陸運局大阪陸運局担当官並びに本省の鉄道監督局事故調査官現地に派遣いたしまして、三重県警とともに協力の上、原因究明に当たらせ、私も現地を視察するとともに、なくなられた方々に対しお悔やみを申し上げ、けがされた方々のお見舞いをいたしてまいりました。  ただいま事故原因については調査中でありますが、ATS装置故障があったこと並びに事故車両供給空気だめ締め切りコック締め切り状態にあったことが確認されておりますが、総合的な原因については警察当局連絡をとり、目下究明中であります。  なお、今回の事故にかんがみ、十一月八日から十日まで、近畿日本鉄道に対し、特別保安監査を実施いたすことになりましたが、国鉄私鉄に対しましては十月三十日運輸大臣から、また十一月二日鉄道監督局長から通達を発し、運転事故の防止を促進しているところでございます。  以上、御報告申し上げます。
  4. 小峯柳多

    小峯委員長 以上で説明は終わりました。     —————————————
  5. 小峯柳多

    小峯委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。加藤六月君。
  6. 加藤六月

    加藤(六)委員 十月二十五日に起きましたところの近鉄特急正面衝突事故ということにつきましては、私たち国会にある者として御遺族の方には心から御冥福をお祈り申し上げ、お悔やみ申し上げ、また重傷、軽傷を負われた皆さま方の一日も早い御回復をお祈り申し上げるものでございますが、ただ、こういう悲惨なる事故を起こした原因がどこにあるかということを深く究明し、そして二度とこういった事故が起こらないように追及し、また姿勢を正し、あるいはまた政策を実施していくのが、われわれ国会議員任務ではないかと思います。そういう観点から、時間もございませんので、簡単に飛び飛び御質問申し上げたいと思います。  ただいま政務次官が、現地に行かれ、ATS並びにエアブレーキ故障があったということは御説明になったわけでございますが、政務次官新聞記者会見並び参議院運輸委員会においていろいろ説明をされておるようでございます。  そこで、そういったすでに新聞紙上あるいは参議院運輸委員会究明され、明らかになった点等も大部分を省略さしていただいて質問に入りたいと思いますけれども、十月末に新聞発表せられました三重県警が、近鉄本社当局事故原因を独断的に説明発表したのはけしからぬというような内容が出たわけでございますけれども、いま政務次官は、事故概要説明のときに、総合的事故原因については警察当局等とも相談してこれを発表いたしたい、こういう御説明がございましたが、こういった事故個々原因個々発表されてもよろしいと思いますが、こういう総合的事故原因究明及び発表というものは一体運輸省がやるのが正しいのか、あるいは近鉄当局がやるのが正しいのか、あるいは警察がやるのが正しいのか、どう御判断されておりますか。
  7. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 お答えいたします。  いま御指摘あったように、事故原因については運輸省としてはいまだ明らかな結論は出ておりません。現在調査中でございます。また、その統一した見解の発表という点でございますが、警察捜査権があり、独自の立場で警察捜査に基づいた結論というものを出すものと考えます。運輸省としては、現地調査官も派遣していることですし、また警察協力も得て現場の保持も行なっております。かような点から、当方が出す結論、結果というものは正しいもの、かような判断のもとに現在も調査続行中でございます。  なおまた、近鉄側発表した点については、これは近鉄さんの考え方で発表されたものと考えますが、私どもは、あの時点であの結論が出ることはいささか早計に走った感があると参議院委員会答弁したとおりでございます。
  8. 加藤六月

    加藤(六)委員 私は、この事故原因発表ということでいろいろ問題があったというのはたいへん残念に思うのです。事故原因は、事故原因を徹底的に究明して二度と起こさないようにするのが事故原因、そうしてまたこれとは別に、事故を起こした者に対する刑事的な責任追及という問題とはおのずから限界があるのではないか、このようにも思っておるわけでございますが、今回は、こういう事故原因発表ということで若干トラブルがあったということはたいへん残念に思うということだけを、意見としてつけ加えさしていただきます。  そこで、正面衝突のごとき不祥事が起こったのは、一つ過密ダイヤであるとかあるいは単線が問題であるとかあるいは安全側線の問題に大きな改良の余地が残されておるとかいろいろな議論が出てくるわけでございますが、これはちょっとあと回しにいたしまして、私、政府当局にお伺いしたいのは、ATSというものがありますね。新聞その他あるいは原因のところでも出てきたと思いますが、当日、上り線下り線であの現場付近においてはATS故障が五回くらいあった、こういうことも聞いておるのですが、私らはATSを備えつけ、設備さすことがオールマイティーとは思いませんけれどもATSそのものに対する信頼感というものはいままで相当強く持っております。ところがあの事故現場付近だけで五回、五本の列車ATS事故を起こしておったということで一つの奇異の念を持ったのですが、これは鉄監局長にお尋ねするのがいいと思いますが、いままで国鉄私鉄ATS事故というものはどういう事故があったろうか、これが一点。そしてATS事故というものは機械そのもの設備そのもの要因によって事故が起こったのか、それとも外的要因でそういう事故が起こったのか、資料があればひとつ御説明していただきたい。そうして当日現場付近で上り、下りが五本もATS事故が起こったのはどういう要因で起こったろうか、推定されるか、あるいはすでに究明されているのか、そこら辺もあわせて御説明いただきたい、こう思います。
  9. 山口真弘

    山口政府委員 まず、ATSの効果と申しますか機能でございますが、これは、従来は列車運転は、運転士信号を視認いたしまして、それによりまして制動機を操作してやっておったわけでございますが、ATSはそういったような運転士の視認の誤り、誤認をした場合にも、一定のところへ入りますとこれがすぐにブレーキがかかるというようなこと、あるいはたとえば、運転士が失神をしたというような場合でも、一定線路車両が進入いたしますとブレーキがかかるというような効力を持っております。特に、近鉄がつけておりますATSは、国鉄のと若干性格を異にいたしておりまして、一定の地域に入るとブレーキがかかるというのと同時に、速度照査をいたしまして、一定の区間を一定速度以上で通過する場合には自動的に減速をするということをつけ加えた多段階式速度照査つきATSでございます。  ATS故障でございますが、ただいま申しましたような、ある意味で非常に精度の高い機能を果たしておりますが、故障は絶対ないわけではございませんで、たとえば地上ATS装置故障というものもございます。また車上の故障というものもございます。非常に少ない率でございますが、若干の故障は起きております。それで故障原因等でございますが、やはり一番多いのは落雷等があってATSがこわれるとかあるいは機器の接触不良というような場合には故障が生ずるとかいうようなことがあろうかと思います。ただ、ATS故障の場合にはその故障の結果というのが安全サイドに働きまして、したがってATS故障した場合にはその故障によってむしろ進行すべき場合でも停止してしまう、安全サイドに働くという仕組みになっておりまして、その意味では機械的には非常に精度の高いものでございます。
  10. 加藤六月

    加藤(六)委員 いま局長答弁漏れがあるわけですが、私がお伺いしましたのはATS故障件数です。われわれはいままでATSというのは非常に万能に近いものだという気持ちを持っておったのが、こういう事故が起こったので、国鉄私鉄を通じてどの程度故障件数があったかということ。  それからその次は、当日の現場付近において上り、下りが五本もATS故障が起こったのだが、それは何かきょう現在までにおいて少しはその原因が解明できたかどうか。  もう一つ、私の質問に対して地上と車上の事故があるということで、私が質問した外的要因という中に、いま局長さんは、落雷とか接触不良という問題がある。しかし、故障を起こしても安全サイドに働く、こういう御説明があったのですが、答弁漏れが二点ありますので、ちょっと承りたいと思います。
  11. 山口真弘

    山口政府委員 ATS故障状況でございますが、私どもは四十五年度にATS特別監査をいたしました。これは実は、これを義務づけといいますか、指導で各社にATSを設置さしたわけでございますが、それが大体完成いたしましたので、特別監査を四十五年度にいたしました。その実施した四十五年度の十七社のATS特別監査の結果、一カ年間で地上装置が百七十八件、車上装置が三百四十六件の故障がございました。  なお、近鉄につきましてもATS監査をいたしました。それで四十四年度、八月以降一カ年間におきまして、地上装置十二件、車上装置二十四件となっております。  それから当日の現場におきまするATS故障状況につきましては、近鉄本社のほうで若干調査が進んでおりますので、近鉄のほうから説明させていただきます。
  12. 大槻丈夫

    大槻参考人 当日の故障は、上り電車につきまして二つのATSの操作の場所故障しまして、列車回数にして五回、約一時間の間であります。下りにつきまして、この事故列車の前に一つやっております。計六件ということになります。ちょうど現場信号工手がおりまして、さっそく地上子検査を進めたわけでございますが、どうにも原因がわかりませんで、それでさっそく本区である中川通信区というところに電話いたしまして、計測器その他をもって至急来るようにという連絡をとったあとであの事故が起きたわけでございます。その後、中川通信区から三名ばかり参りまして検査しました結果、電源ヒューズ端子締めつけナットがゆるんでおった。両方にこういうヒューズがあるわけでございますが、ナットが少しゆるんでおったものでございますから、それが接触したり離れたりしたというような状態でございまして、いま申しました五個列車が停止いたしましたが、そのほかにまたすっと通っておるのもあるのでありまして、結局ナットのゆるみで、いま申しましたように接触したり離れたりしたことによって、接触がちゃんとした場合には通った、離れた場合にはATSが働いた、こういうような状況でございまして、それを締めつけました後におきましてはスムーズに動いておりますので、それが原因であったと推定いたしております。
  13. 加藤六月

    加藤(六)委員 鉄監局長、いまの参考人の御意見というか説明を承りますと、電源ヒューズ端子ナットがゆるんでおったというような説明です。これはもちろん地上装置の問題だと思うのですが、そんなに簡単にATSのあそこの装置ナットがゆるんだりゆるまなかったりするというようなものなんですか。  そしてまた、これは大槻参考人にお伺いしておきたいと思いますが、そこの場所における端子ナットがゆるんでおったというところの検査は、いつごろおやりになったんでしょうか。
  14. 山口真弘

    山口政府委員 ATSに限りませず、設備の保守でございますが、これは定期的に線路工手あるいは電路工手等が点検をいたしまして、そしてナットのゆるみその他がないようにいたしておるわけでございます。そういうことで、そうしょっちゅうあることではないと私どもも実は考えておりますが、今回そういうような事故がゆるみで生じておったということは、まことに遺憾でございます。
  15. 大槻丈夫

    大槻参考人 この誤作動の起こりましたATSは、先ほど鉄監局長から御説明のありました速度制限用のほうのATSでございまして、取りつけたのが八月でございます。それで検査規程といたしましては、一カ月以内に一回検査をするという規定になっております。
  16. 加藤六月

    加藤(六)委員 いまの鉄監局長の表現のゆるんでおった、まさに検査もゆるんでおったのじゃないかという感じもいたします。事故というのは、ちょっとしたゆるみ、油断から起こるということはかねがねいわれておるのですけれども、こういう検査制度のしかたというものについて、いままで以上に用心しなくてはならないということがはっきり出てきたわけでございます。私はこのATSの問題をもう少し突っ込みたいと思いましたのですが、時間があまりございませんので、次に移らせていただきます。  次は近鉄というものの性格といいますか、近鉄特急というものの性格といいますか、近鉄大阪線名古屋線というものの性格といいますか、そういった問題についてちょっと究明していきたいと思います。といいますのは、世上いわれておるのは過密ダイヤである、単線である、安全側線であるということ等がいわれておるので、その根本的事故原因は、そういう三つにあるのじゃないかといわれておりますので、そういった辺の問題についてちょっと御質問いたしたいと思います。  上本町−名古屋間の近鉄特急所要時間は幾らであるか、それから料金幾らであるか、そうしてまたその間における停車駅はどこどこ何カ所であるかということと、国鉄新幹線名古屋大阪間の所要時間は幾らであるか、料金幾らであるか、この問題について鉄監局並びに大槻参考人にまずお伺いいたしたいと思います。  それから、大槻参考人にそのあとついでにお聞かせ願いたいと思いますのは、今回正面衝突した近鉄名古屋行き特急がございますが、この名古屋行き特急といいますか近鉄大阪線名古屋線の一年間の客車走行キロ数字があったらお教えいただきたい。そうしてまた、これに関連する従業員総数というものは幾らであるか、それから割り出して従業員一人当たりの走行キロはどのくらいになるか。並びにこの線における従業員人頭年間運賃収入といいますか、水揚げ料はどの程度になるか。参考人には事前のなにもないので、そういう資料がなかったらけっこうでございますけれども、もしおわかりならそういった点についてお聞かせ願いたいと思います。鉄監局のほうには国鉄やそういう問題についてはあると思いますが、あったら御説明願いたいと思います。
  17. 山口真弘

    山口政府委員 近鉄の名阪特急でございますが、始発駅は大体いま難波でございまして、あと上本町、鶴橋をとまりまして、あとノンストップ名古屋に参ります。大体二時間十六分くらいでございます。それからなおこのほかに名阪特急といたしまして、少しおそい二時間二十三分くらいのものがございまして、これはあと五、六駅くらい、列車によりまして停車駅が違いますが、とまっております。そうして運賃でございますが、運賃は七百六十円、料金が三百円でございまして、千六十円でございます。それから国鉄新幹線ひかりでございますが、ひかりの所要時間は一時間八分でございまして、運賃八百円、料金が九百円、合計千七百円でございます。それからこだまでございますが、こだまは一時間十九分ないし二十三分でございますが、運賃は八百円で料金が七百円でございまして、合計千五百円でございます。  一つ間違いがございました。名阪特急料金は四百円でございます。したがいまして、近鉄特急運賃料金合計したものは千百六十円でございます。訂正させていただきます。
  18. 大槻丈夫

    大槻参考人 名阪特急だけについての従業員数走行キロ数というのは、実はいまのところちょっと手元にありませんので、後ほど……。  ただ、特急全体につきましては、四十六年上期で千百九十万人、これは名阪だけでなくて、伊勢のほうに行っているのも含めてでございます。名阪だけで申しますと、直通のお客さんが一日平均約三千五百人でございます。特急お客さんとしましては、トータルのお客さんが四十五年度で、全体で六億八千万人でございまして、特急旅客は三・四%ということになっております。収入は、全体収入の約一〇%でございます。不足の点がございますと思いますが、一応お答えいたします。
  19. 加藤六月

    加藤(六)委員 私がこの問題を質問いたしましたのは、もうおわかりと思いますが、私鉄運賃国鉄運賃との問題、またこれからあと触れようと思います私鉄性格というか、任務という問題、そしてまた私鉄をどこまで強制的に、単線部門を複線にさすかという、あるいは安全施設をさすかという点で深く突っ込んでいきたいと思うのですが、時間がございませんから、この問題について意見だけをまず言っておきます。運輸省当局参考にしていただきたいと思うわけでございます。  東海道新幹線名古屋から京都を回って大阪へ行くようになった。近鉄は、いまいわれたように難波あるいは上本町という出発地点は違いますけれども、同じく南回りで名古屋を結んでおる。しかも、具体的にはその料金に差がある。もちろん所要時間と料金との問題並びに車内サービスその他一般のサービスの問題いろいろあるわけでございますけれども、実はいま大槻参考人に、この沿線の従業員人頭水揚げ料というものもお聞きしておきたかったというのは、そこら辺の数字が出そろいますと、いろいろ問題は展開していくわけでございますけれども、いま直ちにそのことについての議論の展開は差し控えますが、性格という点で大いに私鉄のあるべき姿というものを議論しなければならぬ。また私鉄国鉄との運賃差というものも議論しなくてはならない。これがひいては大きく事故原因の解消に通じていくのではないかという気持ちもあるわけでございます。いずれまたひまがございましたら当局に私の意見は申し上げたいと思います。  そこで、この名古屋特急という問題ですが、政務次官、われわれは、私鉄というものは大都市周辺において、都市対策というか、都市通勤通学対策というものに非常に大きな役割りを持っておると思うのです。これは東京中心に考えましても、大阪中心に考えましても、あるいは名古屋中心に考えても言えると思うのです。ところが、私鉄の中でこの名古屋特急は非常に特殊なる性格を持っておると思う。それは名阪神経済圏交通圏というものと中京圏交通圏を結ぶというもの、これはほかの私鉄にもあまり例がないものではないかと私は見ておるわけです。  そこで、こういう私鉄というもののあるべき姿というのが議論されなくてはならないわけです。しかしこれは今回の事故原因にはあまり直接関係がないわけで、今後の政策関係があるわけですから深く触れませんが、政務次官、この名古屋行き近鉄特急というものは、一体これは通勤通学線じゃないですね。観光線でもないと思うのですよ。この近鉄名古屋特急というものの性格を考えた場合、一体どういう線だとお考えになるでしょうか。
  20. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 私もそういう定義といいますか性格定義は、通学に利用する方もございますし、また通勤に利用する方もあるだろうし、また住宅地として利用する方もあるだろうし、一がいに定義はなかなか断定しにくいと存じます。  ただ、国鉄新幹線とそれからいまの近鉄とが競争したのじゃないだろうかというお話もあったようですが、時間的なスピードの差で、とうてい国鉄と現在の近鉄とは比較にならないと記憶しております。詳細は事務当局からお答えさせます。
  21. 山口真弘

    山口政府委員 近鉄大阪線名古屋線両方を使いまして近鉄特急があるわけでございます。それで大阪線なり名古屋線という線路自体は非常に多目的な使われ方をしておりまして、大阪あるいは名古屋の近傍におきましては、主としてむしろ通勤通学輸送、その他の大都市交通の用に供されております。それからさらに、大阪名古屋という大都市を連結することによりまして、近鉄大阪線名古屋線大都市都市間輸送という性格を持っておりまして、そういう使われ方をしておるわけでございます。  それで従来、大阪名古屋都市間輸送につきましては、国鉄東海道線国鉄関西線、それから近鉄大阪名古屋線、この三線が担当しておりまして、そしてそのウエート等大阪近鉄が相当大きかったわけでございますが、新幹線が三十九年にできましてから、やはり新幹線スピード等による原因がございまして、都市間輸送としてのウエートというものが近鉄よりも国鉄のほうに移ってまいっておりまして、新幹線近鉄線との競合という問題はわりあいに少ないように私ども考えております。むしろ関西線近鉄とはだいぶ性格が似ておるものですから、そういう使い方をしておるというわけでございます。
  22. 加藤六月

    加藤(六)委員 これは性格論争と、もう一つはダイヤというのは運輸省が監督許可するわけでしょう。そういう点で私は質問しておりますが、最後に、政務次官参議院運輸委員会等で、あるいはまた各マスコミでもよくいわれておりますが、複線化問題、引き込み線、安全側線の問題等いわれておりますが、私はここでお伺いしたいのは、事故現場すなわち三重県の一志郡自由町、あのあたりを複線化するについて一キロ工事費は大体どの程度かかるだろうか。これは近鉄参考人にお伺いしたほうがいいと思います。また近鉄大阪線近鉄名古屋線の全線を複線化する場合にはどの程度の工事経費が要るだろうかということ。  そして運輸省当局にお伺いしたいのは、たとえば、こういう地区に対しいままで国が補助する内容としましては、特定事業、開銀融資利子七%で五〇%ワク、一般事業、利子八・二%、ワクは三五%ということでやってきておりましたが、近鉄大阪線名古屋線でこのカテゴリーに在来の開銀融資の関係で入る地区あるいは場所はあるのかないのかということをお聞かせいただきたい、こう思うわけでございます。
  23. 大槻丈夫

    大槻参考人 大阪名古屋間の線で、単線区間で現在残っておるのは十五キロ八百、約十六キロでございます。それで、トンネル区間が非常に多うございまして、ことに青山トンネルというのは三キロ四百ばかりでございますが、岩盤が非常に固いトンネルでございまして、今後の地質調査その他によりまして、現在では幾らかかるかということはちょっとわかりかねる面がありますけれども、大体百億と見込んでおります。十六キロでございますから、一キロ当たり六億強と、一応こういう目安を立てております。
  24. 山口真弘

    山口政府委員 開発銀行の融資につきましては、大都市再開発流通近代化ワクと称するワクと、それから地方開発というワクがございまして、従来比較的問題になりましたのは、大都市再開発関係の開銀融資でございます。これにつきましては都心乗り入れとか、あるいは都心付近におきますところの地下鉄との直通あるいは複々線化、立体交差化というような問題を中心といたしましてやってまいったわけでございます。それで、この問題の地区につきましては、これは中部圏の大都市再開発区域の外でございます。また大阪圏からも外でございまして、したがって、ここでは大都市再開発ワクの適用は実はございません。それで地域開発ワクということになりまして、地域開発としてのワクのほうから開発銀行の融資を受ける対象になり得る、こういうことでございます。
  25. 加藤六月

    加藤(六)委員 時間が来たので、私の質問をやめますが、私が最後にこの質問をいたしました理由は、複線化し、あるいはまたいろいろな安全施設をやるについての資金の確保ということが、最近、私鉄の間では非常に因難であるといわれておる。したがって、政府も、来年度予算において大都市輸送施設整備事業団というものを考えて、こういう問題をやらなくてはならぬといって、目下努力していただいておる姿勢は見えてきておる。ところが、こういった事故が起こった。もちろん政府がこれを考え出したのは、ことしの春からだと私は思いますから、事故が起こったあととは思いません。思いませんけれども、いま大槻参考人から承ると、百億前後かかる。金利が普通の市中金利でいって一〇%とすると、金利負担だけでも十億かかる。そこで、私は、その前の質問に、水揚げ量や運賃収入という問題をもう少し突っ込んでいって、はたしてこういう完全に安全施設をする場合の私鉄運賃というものはどういう方向であるべきか、また、運賃をむちゃくちゃに上げさせない場合には、政府はどういう姿勢でこれに応援するかということが一つと、いま一つは、この大都市輸送施設整備事業団を早急に推進しなければならない。ところが、推進していっても、いま事故を起こしたような地区、地帯がこの対象にならない、事業範囲の対象にならないということになると、相変わらずこういった事故が発生すると思われるような要因をそのまま残したままになる。そうするとまた、これは運賃問題にからんでくるということで、非常に考えさせられる問題を含んでおるのが、今回の事故ではないか。二度と繰り返さしてはならない事故でございますが、これを二度と繰り返さないようにするための複線化あるいは側線、こういった問題についての要する費用、金というものを国がいままで以上にはっきりと応援する体制を打ち出さなくてはならない。ネジのゆるみが今回の大きな事故を許した。そういうゆるみはもちろん改めていかなければならぬわけですが、そういう正面衝突が起こるという問題を抜本的に阻止するための方法については、政府当局においても十分取っ組んでいただきたいということをお願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  26. 小峯柳多

    小峯委員長 井岡大治君。
  27. 井岡大治

    ○井岡委員 今回の事故で二十五名のなくなられた方、二百十八名の負傷なさった方に対して御冥福を祈ると同時に、一日も早く御全快なさることをお祈りして、私の質問に入りたいと思います。  私は、今回の事故は、最近の電鉄経営の様相と申しますか、姿をそのままにあらわしたものだ、こういうように考えるわけです。たとえば近鉄の場合、不動産事業をおやりになっている、観光事業をやっている、あるいはバス、タクシー、百貨店、あらゆる事業をおやりになっているわけです。したがって、これらが近鉄事業としておやりになっておいでになるのか、あるいは別の部門としておやりになっているのか、これらの点について鉄監局長にお尋ねしたいと思う。
  28. 山口真弘

    山口政府委員 近鉄だけでございませんが、いま各地方鉄道業者の経営の態度でございますが、やはり鉄道事業を中心といたしまして、これに関連いたしまする自動車運送事業等をやっております。さらに、その鉄道事業、自動車運送事業のほかに、不動産事業だとかその他の百貨店業とかいうような関連事業をやりまして、経営をいたしておるというのが大体の姿でございます。しかしながら、いずれにいたしましても、鉄道事業が根幹でございます。
  29. 井岡大治

    ○井岡委員 私の聞いているのは、そのことがいまの私鉄の経営の様相を全く端的にあらわしている、こういうことを申し上げているのです。ですから、私はこれらのどれとどれが近鉄の事業で、それから傍系事業になっているのか、このことをお尋ねしたかったわけですが、時間がないようですから、次に移ります。  ある新聞が、今度の事故でこれらの問題を明らかにしておりました。電鉄事業が去年一年で百二十億の黒字、それから関連事業が二百億の黒字、こういうようにあらわしておったわけです。したがって、かなりの黒字を出しておいでになるわけです。  そこで、こういう事業について運輸省監査をなさっておいでになるのかどうか。たとえばいまお答えになった電鉄事業が根幹であるとするならば、あまりにもほかのほうが多く出ている、そこに問題があるのじゃないかということで、十分指導なさるのかどうか、この点をお尋ねしたい。
  30. 山口真弘

    山口政府委員 ただいまおっしゃいました数字でございますが、近鉄にとってみますと、鉄道事業の四十五年度の営業利益が三十七億、自動車業三億、その他事業が八十四億という黒字を出しておりまして、その他事業のほうでよけいの利益を出しておる。これはもちろん営業損益でございますから、その他営業外収支等があるわけでございまして、そういう営業外収支で特に利子負担というようなものが鉄道事業には非常に多いわけでございます。そういう意味で、営業外費用を含めたところの鉄道業の収支というのは非常に悪うございまして、これは赤字でございます。その鉄道業の赤字を、兼業等の黒字で埋めて事業を経営しておるというのが近鉄の実態でございます。したがいまして、近鉄といたしましては、事業の根幹としては鉄道業で、従業員その他あるいは投下固定資産も非常に多いわけでございますが、収益のほうは兼業のほうで見ているというのが実態でございます。  ただ、この兼業に対しまする監査でございますが、これはいまの地方鉄道法によりますと、鉄道業についてだけは監査をなし得ることになっておりまして、兼業自体には直接監査をする道が実はございません。したがいまして、兼業それ自身には監査をしておりませんが、ただ会社全体としての経営を鉄道業の面から把握をいたしておりますから、その限りにおいて兼業の状態も把握をしておる、こういうことでございます。
  31. 井岡大治

    ○井岡委員 私はいまのお答えがほんとうだろうと思うのです。専業をおやりになっておりますと、専業だけではいまの電鉄経営というものは成り立たない、これはわかるのです。したがって、兼業と申しますか、事業外事業と申しますか、こういうものをおやりになる。このことはよくわかるわけです。わかりますが、そのために専業のほうがおろそかになっておりはしないかという心配を持つわけですから、この点について何らかの方法で指導なさるなにはないのですか、この点お尋ねします。
  32. 山口真弘

    山口政府委員 兼業自体の指導といいますか、監督につきまして、ただいまのように法的な規制がないわけでございますが、鉄道業自体につきましては、運輸省といたしましてこれに対する規制をいたし、監督もいたしておるわけでございます。したがって、兼業のために鉄道業がおろそかになるというようなことがあっては、これは先生お説のとおりいかぬわけでございまして、そのためには鉄道業に必要な設備投資を十分にさせるということが必要でございますし、また鉄道業の運営のための、たとえば車両、施設等の検査の体制、従業員の研修の体制、そういったようなものにつきましては十分監督をして、おろそかにならないような措置を講じているということでございます。
  33. 井岡大治

    ○井岡委員 先に進みます。  それじゃ、さきの運賃改定のときの条件の一つで、保安対策の強化をあげておいでになるわけです。近鉄はこの運賃改定後、保安対策にどのぐらいのお金をお使いになったか、この点お尋ねをしたいと思います。
  34. 山口真弘

    山口政府委員 昨年の秋に近鉄運賃改定をいたしました。その際に、運輸省から重要な工事につきまして、これはぜひやってもらわなければ困るということで具体的な工事を指定し、なお四十五年度、六年度等において行なうべき工事の内容を指示いたしました。その具体的な項目は非常に詳しくなりますから別といたしまして、保安、輸送全体といたしまして四十五年度、六年度合わせまして二百七十五億の工事をぜひやってもらいたいということを指示いたしまして、そして近鉄もいまそれの計画をつくりまして着々実施中でございます。私ども、四十六年度終わりまでにはこの計画は一〇〇%以上完成されるものと考えております。
  35. 井岡大治

    ○井岡委員 二百七十五億の保安対策をしなさい、こういう指示をした。これはどれだけできているのです。
  36. 山口真弘

    山口政府委員 四十五年度中に約百十九億、それから四十六年度、現在実施中でございますが、大体具体的な計画をつくりましてやっておりますのは百五十六億でございます。
  37. 井岡大治

    ○井岡委員 そうすると、いまのトンネルの個所については保安対策として指示をされなかったわけですね。
  38. 山口真弘

    山口政府委員 複線化工事でございますが、これにつきましては非常に個所がございますので、具体的な工事名を指示しておりますけれども、この問題になりましたトンネルの部分につきましては複線化の指示をいたしておりません。
  39. 井岡大治

    ○井岡委員 いまお伺いしたところによると、加藤君の御質問に対してお答えなったのは百億ということでした。少なくとも二年間に二百八十億近くのお金を使う、その中に保安対策としてトンネル部分を指示をしないというのはどういうことなんです。  そこでお聞きしますが、あの事故当時のダイヤはどのぐらいあるのです。私はここで見せてもらいました。四分間に一台通っているわけですね。これは往復でしょう。それを運輸省はなぜしなかったのです。
  40. 山口真弘

    山口政府委員 この輸送力増強、運転保安工事につきましては、具体的な件名を述べましてやっておりまして、この線区は入ってないわけでございますが、運転保安工事といたしましては、たとえば高架化にするとか地下化をやるとか、あるいは踏切道の立体交差化をするとか、車両の保安工事をやるとか、あるいは線路の防災工事、保安工事を行なう、そういうふうな各種の運転保安工事をいたしておるわけであります。  それから輸送力増強工事につきましても、同様に都心乗り入れのための工事だとかあるいは複線化のような工事、停車場の改良をするとか、車両の新造、改造というようなことを積み上げまして、近鉄として最も緊急を要するものということで、保安、輸送全体で約二百七十五億というものを、工事を指示したわけでございます。  当該線区につきましては、名古屋大阪間の非常に列車回数の多いところでございますが、この名古屋大阪線につきましても、指示工事といたしまして複線化を指示いたしたところがございます。ただ全体の重点というようなものでこの線は指示をいたしておらない、こういうことでございます。  なお、回数は片道八回で十六本でございます。
  41. 井岡大治

    ○井岡委員 輸送力増強について指示をしたけれども、いわゆる人間の安全——輸送の大目的であり大原則である人間を安全に送るということについて考えなかった、こういうように解釈していいのですか。
  42. 山口真弘

    山口政府委員 その点は輸送力増強の工事と、それから運転の保安工事、安全の面の工事と両方ございます。これは実はいずれも関連をいたしておりますが、一応私ども、輸送の安全というのが第一目的でございます。輸送力増強工事といえども、たとえば非常にお客がふえて、そうして運びきれない、それはやはり安全の確保という点に問題が生ずるという面がございまして、輸送力増強の工事あるいは保安工事、いずれも関連をいたしております。そういうことでございまして、輸送力増強というのはし安全を無視して行なうという意味ではございません、むしろ安全が根本でございます。
  43. 井岡大治

    ○井岡委員 鉄監局長ですから安全が根本だということはおわかりだろうと思うのです。ですから、私はトンネル部分についてなぜ指示をされなかったかと、こう言うのですよ。聞くところによると、いま大槻副社長は百億だ、こうおっしゃっている。一ぺんに百億要るわけじゃないわけですよ。しかも事故直後、これは新聞ですから私は正確だとは思いません、もっとおっしゃっただろうと思うのです。けれども佐伯社長は単線でも安全だ、こういうことばを言っておいでになるわけです。こういうところに鉄監としての手落ちがあったのじゃないですか。安全だと言っている。ダイヤを見たら十六本だ。これを見てごらんなさいよ、このダイヤ。こんなダイヤがどこにありますか、単線で。とてもおそろしくて、これをみんな見たらよう乗らないでしょう。鉄監、これは見ておいでになったんですか。それだったら、なぜそれらに指導されなかったんです。
  44. 山口真弘

    山口政府委員 列車のダイヤと申しますのは、私どもいろんな面から検討をいたしております。一つは、各駅の設備線路設備、それから、そこを通過する列車の種類、スピード、それから制動の機能、能力、そういうような各方面を検討いたしまして、そしていわゆる運転曲線というものを私どもつくりまして、その運転曲線に従って列車がどのような姿で運転をするか、制動をかけた場合にそれが安全かどうかというものを全部考えまして、列車のダイヤというものをきめておるわけでございます。これは会社がきめまして、陸運局長に審査をさせまして、そしてそれをきめておるわけでございます。したがって、私ども現在きめておりまするダイヤは、単線だからといって危険であるということは決して考えておりません。単線でも安全でございます。ただ名阪間というのは、御存じのとおり幹線でございまして、しかも、この間の輸送というものが相当多いし、しかも複線を着々進めておりまするために、複線部分とそれから単線部分がかなり入りまじっているというような状況がございますので、やはり今後の輸送力増強の見地、輸送の実情の見地ということを考えて、複線にすることは望ましいということは、これは否定できないところでございまして、そういう意味で、私ども複線化を指導していく、こういうことでございます。
  45. 井岡大治

    ○井岡委員 あなたの話を聞いていると、今度の事故は全く人災になってしまいますよ。単線だから決して危険だとは考えない、こういうことでしょう。それだったらお尋ねします。これは大槻さんにお尋ねしますが、先ほどもお答えになっておいでになりましたが、六回故障を起こした、こういうことですね、ATSが。その場合、直ちに係官を派遣して——まあおいでになったということですが、そのつどこのATS故障だからということを運転士に告げるんですか、告げないんですか。
  46. 大槻丈夫

    大槻参考人 前の故障が起きましたときには、それから運転指令というほうに通知いたしまして、それから間に合う場合にはその前の駅の運転士に告げるというあれをとっております。
  47. 井岡大治

    ○井岡委員 今度の場合はどれにも指示をされておいでになりませんね。
  48. 大槻丈夫

    大槻参考人 運転指令のほうから、電力のほうに故障のあったことを通知して要請していると思っておりますが、現実に、私はっきり確認いたしておりますのは、先ほど申しましたように、現地におった通信工手から中川電力区に要請をした、こういうことになっております。
  49. 井岡大治

    ○井岡委員 電力区に、いわゆる通信ですか、そのほうに通知はしたけれども運転士には通知をしておいでになりませんね。運転をするのは運転士です。
  50. 大槻丈夫

    大槻参考人 ちゃんと復帰スイッチを押して通った場合と、すなおに通った場合と、とまらないで通った場合とありましたので、地元に、現場におりました通信工手の検査のほうが先に回りまして、通知はおくれておったようでございます。
  51. 井岡大治

    ○井岡委員 ここで大槻さんを責めようと思いませんからなにですが、私は、こういうところに、いま鉄監局長はああいう答弁をすると思うのです。少しでも故障があれば、やはり運転士に、この個所のどこで故障があるから注意をしなさい、こういうことを指示をしてあげることが、私は人の命を預かっておる事業としては一番大事なことじゃなかろうか、こう思うのです。この点、鉄監局長、どう思います。
  52. 山口真弘

    山口政府委員 ATS等が故障した場合には、当然その乗務員に対しましてその故障の旨を告げまして、そうしてそれに対する適切な措置をとるということにいたしております。本件も、乗務員に対しまして助役等から通知をしておることと報告を受けております。
  53. 井岡大治

    ○井岡委員 局長、いま副社長がしてないと言っているのを、していると大きなことを言いなさんなよ、あなた。それは、最後のときにはおやりになったですよ。前に五回故障を起こしているんですよ。私は一生懸命これを調べました。一生懸命調べたけれども、そういうことがこれのどこにも書いてないんですよ。これは近鉄さんのですから。そういうところに監督の指導が足らなかったのじゃないですか、次官、どう思います。
  54. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 御指摘のとおりだろうと思います。ATS事故があった場合、当然添乗員を乗せることになっております。同時にまた、次から来る列車運転士連絡するのが理の当然だろうと思います。
  55. 大槻丈夫

    大槻参考人 今回の場合、上り列車で二度、二つの地上子にひっかかったものがありまして、その場合には列車故障と判断をしまして、車上子の故障と判断しまして、助役が乗って次の駅まで行くという規程になっておりまして、現実にその列車には東青山駅の助役が乗って、次の上津という駅まで行って折り返しております。助役が乗りますときには、運転指令にその旨報告していく、それはやっておりますが、ただ片方の特急列車はすでに発車したあとでもありまして、特急列車運転士に対しましてはその通知は行っておりませんと思います。
  56. 井岡大治

    ○井岡委員 私は、深くこれを追及しようとは思いませんよ。思いませんけれども、少なくとも人の命を預かっておいでになるわけですから、たとえば列車故障にしても、その列車故障というのであれば、当然その列車は待避線にのけて、そうして乗ったお客さんを積みかえるわけでしょう。乗りかえていただくわけでしょう。しかしその列車はやはり行っているでしょう、大阪まで。そうだとすると、列車故障かあるいはその他の故障かということになってくるわけですね。そうだとすると、この個所においてどうも違った状態が起こっている、ですから徐行しなさいとか、あるいは最大の注意を払いなさい、そういうふうに注意をしてやるのが私は責任じゃなかろうかと、こう思うのです。それを単に列車故障だと考えて、そうしておやりになった。ここに問題があるわけです。私はその責任を追及しようという意味じゃありませんよ。ありませんけれども、少なくともすなおにものを考えて、平たにものを考えてそうでしょう。そうでないと、こんな事故は起こりませんよ。しかも前に五回も六回もそこでとまっているのです、異状が生じているわけですから。たった二回じゃないですね、それから後も起こってるわけです。助役さんを乗せられたという、私は行って聞きましたよ、あくる日行きましたから一日や少し視察をしました。しかしその助役さんは技術の助役さんじゃないでしょう、営業の助役さんでしょう、どうですかその点。
  57. 大槻丈夫

    大槻参考人 助役は純技術屋さんではありませんが運転経歴を持っておる助役でございます。  それから先ほどちょっとことばが足りませんでしたが、二度地上子にひっかかった場合には車上子の故障と見て助役が乗って、次に開放できるところまで持っていくというのが原則になっておりますが、助役が乗っていきまして、ほかのところではATSが働いたんで、これはもう車上子の故障じゃないと判定いたしましてそのまま続行して行っております。  それからお話の、そういった対向列車その他に対して通知を早くしろ、ごもっともなあれでございまして、私たちのほうもその体制が徹底するようにつとめていきたいと思います。  根本的と申しますか、今後の対策の一つといたしまして列車無線装置をつけることを計画しておりまして、これをやりますとお互いの列車相互間の連絡それから駅との連絡、そういったことが非常にとりやすくなりますので、それをつけましたらそういった点の徹底は一そう期し得ると思いますが、当面おっしゃるような趣旨の徹底の方法をはかりたい、かように考えます。
  58. 井岡大治

    ○井岡委員 そこで大槻さんにお願いをしておきます。  私は大阪ですから、あそこはよく乗せていただきます。ですからあそこは何年前からどんな状態だったということはみんな知っています。そこであれだけふくそうした交通量を持っているわけですから、ダイヤを持っているわけですから、どうかあそこに技術、そういうものにたんのうな職員を配置をしてもらいたい、そうでないと——営業の助役さん、わかりますよ、運転経歴を持っている、私も運転手の経歴を持っていますよ。しかしこれはすっと覚えるだけですからね。専門的になってきちゃわかりませんよ。ですからそういう専門的な技術員を派遣をしてもらいたい、詰め所を置いてもらいたい、このことをお願いします。どうですか。
  59. 大槻丈夫

    大槻参考人 検討いたします。
  60. 井岡大治

    ○井岡委員 鉄監局長、検討すると言うけれども、あなたはどうします。
  61. 山口真弘

    山口政府委員 ATS装置自体は、先生も御承知のように、いわば閉塞装置とあわせて補助的にこれを助成をするというための装置でございます。それで、いま近鉄でやっておりまするのは、そういう装置ATS故障をした場合に、それの取り扱いをどうするかということで、車上子が故障をした場合にはどうするか、地上子故障をした場合にはどうするかということでやっておりまして、そしてとりあえずその装置をやりまして、そして安全なところへ持っていくというのが考え方の基本でございます。それで先生御指摘のように、その場合に技術の非常に専門家がなるべく各地に散在するということによりまして、事故が起こった場合に早急にこれの復旧なり回復をはかることができることが望ましいことでございまして、そういったようなことにつきまして十分に指導してまいりたいと思います。
  62. 井岡大治

    ○井岡委員 あの区間に八つですかトンネルがあるわけです。私は全部置けと言っているんじゃないんです。八つトンネルがあって、八つとも単線なんですよ、あそこは。ですからその個所には置いていただきたい、こう言っているんですよ。やはりそれぐらいな責任と申しますか考え方と申しますか、そういうものがないと、将来再びこのような事故が起こったときに世間にどう鉄監は説明をしますか。ですからぜひそういうようにしてもらいたい、このことを要望しておきます。  いずれにしても、もう時間が参りました、こういうことですから、もっといろいろ尋ねたかったわけですが、次官、このような状態でございますから、私は、単に兼業に重点を置く、こういうような弊風を改めるように指導してもらいたい、このことを要望して私の質問を終わりたいと思います。
  63. 小峯柳多

    小峯委員長 沖本泰幸君。
  64. 沖本泰幸

    ○沖本委員 井岡先生も翌日現場のほうへお越しになったというお話ですが、私は予算委員会でも申し上げましたとおり、事故当日、その晩に現場へ行きました。まだ救出作業をやっている中を実際に見てきたわけです。そういう観点に立ちましていろいろと御質問してみたいと思います。   〔小峯運輸委員長退席、伊藤交通安全対策特     別委員長着席〕  まず政府側になるわけですが、いままでに新聞紙上でも過去の鉄道事故について相当詳細に報道されております。そういう中から運輸大臣にも申し上げたのですけれども、鉄道事故に対して立ち入り検査をやるとかいろんな特別検査をやっていくとかという御発表があるわけですけれども、そういう内容について、時間がありませんから一々は要りませんが、特に大きな事故に対して、事故を点検された結果こういう問題点が残っておったという内容を指摘されるわけです、その内容についてどういうふうに改善されたか、こういう点が——新聞紙上では改善命令を出すとかあるいはいろいろな指示を与えるとかということは出るわけです、しかし結果的にどうなったかというのは国民は全然わからないわけです。一体そのとおりやってくださったのか、なってなかったのか、こういう点になるわけです。  そこで問題点をしぼりまして、四十四年に中川で事故がありました。脱線、転覆がけ下へ落ちたという事故近鉄であったわけですが、これの事故原因と、そのときに点検されたはずです、政府のほうがですね、その結果どういう点を指摘されて、その点についてどこが改善されたか、この点についてお答え願いたいと思います。
  65. 山口真弘

    山口政府委員 中川の事故に関しまして、運輸省それから警察近鉄、各方面からいろいろと調査をいたしたのでございますが、その事故原因がまだ完全には究明されておりません。一応は各種の原因によりまするところの競合脱線が原因であろうということでございまして、そのために当該事故に関連いたします近鉄特別監査という形での監査はやっておりません。ただ各事業者に対しまする保安上の監査をいたしておりまして、そして近鉄につきましても同様の監査をいたし、必要な改善通告をいたしております。  その後でございますが、一つの問題といたしまして分岐器における脱線ということがございましたので、分岐器改良ということをいたさせました。さらに速度照査つきATS、これは一定速度にある列車がある区間に入りますと自動的に速度照査機構が働きまして、そして速度一定以下にするというような速度照査機構でございますが、その多段階式のものをつけるということをいたさせたわけでございます。
  66. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ATSの問題をいまお話しになりましたけれどもATSが一番やかましくなったのは南海電車の天下茶屋の事故からじゃないのですか。その辺から各私鉄にやかましくなり、国会でもそれが問題になったと思うのです。  それから近鉄さんにお伺いいたしますが、名古屋線で中川と久居の間が単線だったはずです。これはこの四十四年の事故で直されましたか。それから近鉄大阪線から名古屋線に切りかえるとき、中川を通らないで直通で行けるように湾曲に線路をおつくりになりましたけれども、これもこの四十四年の事故から改善されたわけですか。
  67. 大槻丈夫

    大槻参考人 単線で回っていく線はそのままでございます。あれは複線の区間から片方はカーブして直通に行きまして、片方は中川に入る、あそこは単線に分かれているところでございまして、事故を起こしましたのはこちらの中川のほうに行くところなのでございまして、その分岐器を、先ほど鉄監局長がお話しのように八番分岐器を十二番分岐器にいたしましてカーブを大きくした、こういうことでございますが、単線のほうはそれとは関係ありませんでしたのでこれはいま手を入れておりませんが、目下雲出川の橋梁、河川の改修工事が行なわれておりますので、それとあわせまして複線化する計画で進んでおります。
  68. 沖本泰幸

    ○沖本委員 四十四年の事故のときに十分な点検をされなかったというお答えだったのですが、そうすると事故率からいくと、今度よりも四十四年のほうが事故数は多かったと思います。そういう点から具体的な近鉄の内容あるいはトンネルの問題あるいは単線の問題、こういう点についていろいろと検討はされなかったわけですか。どうなんでしょうか。
  69. 山口真弘

    山口政府委員 近鉄大阪線名古屋線につきましては、これは大阪名古屋間を結ぶ幹線でもございますし、それから近郊の通勤輸送を担当する通勤輸送線でもございまして非常に重要な線でございまして、私ども保安監査の重点にいたしておりまして、昨年度保安監査をいたしました。係員をかなり派遣いたしまして保安監査をいたしまして、そして必要な勧告をいたしまして、その改善の措置をとってまいったところでございます。
  70. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、四十五年に監査をなさったわけですね。四十四年にはなさらなかった。四十四年に検査をなさったときに何らかの答えは出てこなかったのですか。
  71. 山口真弘

    山口政府委員 四十四年度のときは事故に関連いたしまする事故原因調査ということでございまして、先ほど申しましたように事故原因につきましては完全にはわからなかった。県警あるいは私ども鉄道技術研究所の応援も得てやったわけでございますが、完全にはわからないで、結局競合脱線であろうということでございました。したがって、それに基づくものではございませんが、それに関連いたしまして、先ほど申し上げましたように転轍機等の改良、それからATSの改善と申しますか、要するに信号機と連動いたしましたところのATSというようなものの改善につとめさせた、こういうことでございます。監査といたしましては、いま申しましたように四十五年に保安監査大阪線名古屋線にいたしたということでございます。
  72. 沖本泰幸

    ○沖本委員 一斉に特別に監査するということは橋本前運輸大臣も述べられているわけです。その前の中曽根大臣もおっしゃっていたと思うのです。各時々の運輸大臣は、必ず事故に関してはすべて点検をする、厳重なあれをやっていくということをたびたびおっしゃっているわけです。ですから、答えが出て何らかの形で改善が行なわれてなければおかしいと思うのですけれどもね。そうしますと、今度のこの事故に関しましても、各紙が一番指摘したのは、なぜ私鉄近鉄線で単線運転だ、こういう点が一番指摘された状態の中にあるわけです。ですから、部外者が一番そういう問題を気にしておる。それで一番当事者であるところの運輸省のほうではその単線運転の危険性とかそういうものは検討なさらなかったのかということになるわけです。   〔伊藤交通安全対策特別委員長退席、小峯運     輸委員長着席〕  さらに、近鉄だけでなくて南海の高野線も単線運転で観光路線になっているはずです。こういうような私鉄でこういう区間を走っておるところで、これまた南海も急勾配です。こういう内容を見ていきますと、一体どれくらい、危険度のある単線運転をやっている私鉄があるのか、この点についてお答えください。
  73. 山口真弘

    山口政府委員 事故の起こりました場合に、前の大臣あるいは中曽根大臣からいろいろ申し上げましたのは、特に各全事業者につきまして部内的な監査あるいは検査というものを十分にやりまして、いわば設備の総点検をいたしまして、そして事故防止につとめるということをやらしておりまして、役所の側から監査に行くということとやや性格を異にいたしております。役所の中の監査につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。  それから、単線区間でございますが、先生御承知のとおり、まだ全国的に単線区間は非常に多うございます。特に、国鉄のほうがむしろ多いぐらいでございますが、単線区間が多いわけでございまして、私鉄につきましてもまだ単線区間が相当ございます。ただ、私ども単線区間と複線区間というものの保安を考えます場合に、問題は幾つもあると思いますが、単線区間の安全という面で何が一番こわいかということになりますと、やはり一つの区間に二つの列車が入り込むということによりまして衝突をする危険があるということでございまして、これを防止するというのがいわゆる閉塞の考え方でございます。閉塞の考え方というのはある区間を閉塞区間にいたしますと、その区間には二つの列車が入らないようにする。これは両方から入るということもございますし、あるいは追突という形で入るということもございますが、いずれにしても両方から入らないようにするという考え方が閉塞の考え方でございます。これは単線も複線も同様でございまして、その閉塞の考え方によりまして、そして衝突の事故を防止するということでございます。その意味では単線も複線も全く同じでございます。  それから、さらに私ども事故を防止するために、この閉塞と信号というものと結びつけて考える。そして閉塞をやったにもかかわらず信号機の取り扱いを間違うというようなことがあってはいけないということで、閉塞と信号機を連動させまして、片一方を青の形にすれば信号も当然青の形になるということにするというのが第二点。  それから、さらに今度は信号機と転轍、ポイントとを閉塞といいますか、連動させるということによりまして、ポイントは右のほうへ開いているにもかかわらず信号は左のほうに行けといっているというようなことをなくするということによりまして安全をはかるということでございます。ATSはさらにこれに付加をいたしまして、先ほど申しましたように、乗務員がそれを間違った、その信号を間違ったといってもだいじょうぶなようにし、あるいは失心をした場合にもだいじょうぶなようにするというような補助的な手段がATSでございます。  私どもそういう点で考えてみますと、単線区間であろうと複線区間であろうと安全の基本には変わりないのでありまして、単線だから危険だ、複線だから安全だということではないと考えております。ただ、非常に列車回数が多くなってまいるというような区間におきましては、複線区間は非常に能率も高いわけでございますから、その意味ではゆとりのある列車運転というものができるわけでございまして、そういう意味で私ども複線の区間のほうが何といっても鉄道としては望ましいわけでございますから、そういう方面に指導してまいる、こういうことでございます。
  74. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この事故があった当時、一番先に知らした方は、負傷なさった方が山をおりて、それで下の自由町に知らした。それから一斉に救援活動が始まった、こういうことになるわけです。もっとも、東青山トンネル、あの区間は全然人里離れた山の中ですからということですけれども新聞によりますと、近鉄さんのほうの側は、いわゆる電話とかそういうふうな通信の回線が全部切れてわからなかった、こういうふうなことが記事に載っておりました。しかし、それは列車事故の及ぼす範囲内のところにだけそういうふうな通信線が延びておったのですか。あるいはそういう山の中で事故が起きるということをおもんぱかって、そのほかの連絡方法なり何なりがとれるようなものはなかったのですか。高速道路なんかの場合は、各所に電話ができるような装置がしてあります。あるいは電車が、突発的な事故が起きて、予定どおり時間どおり来ない場合には、次のもよりの駅なり何なりが緊急発信するなり何なりの方法がとれるとかなんとか、そこですぐわかるような方法はなかったのですか。大体負傷者が山をおりる——私はあの山を自由町から上がってみましたけれども、登るので三十分かかります。そうすると、けがをなさった方が道をわからないのをたどりたどりおりたとしたら、相当時間がかかっておるはずなんです。その時間の間に近鉄のほうの側で事故がわからなかったか、その点に私疑問を持っておるのですけれども、その点はいかがですか。
  75. 大槻丈夫

    大槻参考人 今回の場合には、榊原温泉口駅、それから垣内の信号所、東青山駅、こういうぐあいに区間区間の有線の電話回線を持っておりまして、それが切れたのでございますが、東青山以西、それから榊原温泉口以東、これはマイクロ等で整備しておりますので、通じておるわけでございますが、区間区間の有線回線——結局、東垣内と榊原温泉口の間があの事故によって切れましたので、そこのところの通話ができなくなったということでございます。  それで、まず一番最初に異常であることを感じましたのが西垣内の信号所のポイントマンでございまして、これがポイントのところの監視に立っておるわけでございますが、トンネルからの風圧、それから音響、そういったものが非常にいつもと異常だったものですから、通過直後に駅に電話をかけようとしたわけでございますが、通話途中で切れてしまった。事故が発生して切れてしまった。その次に今度は、東垣内ポイントのポイント係がこの脱線の現状を見まして、それから生き残っておりました車掌がすぐおりてきたので、二人で打ち合わせて、車掌は現地に残り、ポイント係が山道をかけおりまして、そして一番近くの部落に行きまして、そこには公衆電話はなかったようでございまして、村の有線放送、これをお願いいたしまして、その有線放送の交換手から榊原温泉口駅に通報してもらった。同時にそれだけでは念が足りないということで、公衆電話のあるところまでさらに行きまして、それから通報したのが第一報でございます。
  76. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そういう事故について——私もその後乗ってみました。賢島線に乗って賢島まで行きましたけれども、千分の三十という急勾配は、こういう鉄道の中では一番激しい勾配じゃないか、こういうことです。なるほど乗ってみて、前からも何度も乗りましたけれども、そういう急勾配の感じは十分あるわけです。おまけに過密ダイヤであるという内容は、ほかの普通車との入れかえの場合でも、普通車がほかの線に入ってきてとまらない間に片方はもう発進しているというのが現実です。これは私見てきました。そういう内容はその辺にやはり危険度というものが十分ある、こう考えられるわけです、具体的な運行の内容の中に。で、当時あそこの会社のほうの、あれは土方さんですか、常務さんに現場で会いました。その人のお話では、もう少しスピードがゆるければポイントから上の待避線のほうへ列車が入っている、こういう御説明があったわけです。そういうことのために逆勾配をつくった待避線というものが各所にあるのを見てきました。しかし、たとえば賢島から上本町へ行く特急車両の編成は、難波へ行くのが四両と京都へ向かうのが四両、八両を一つにつないで八木で切りかえている。こういう長さとあの待避線の長さと比べてみたら、全然お話になりませんですね。あるいは十分それで目的を果たせるだけの装置だったんでしょうか。
  77. 大槻丈夫

    大槻参考人 単線区間におきましては、下り勾配のところは八十五キロの速度制限を置いておりますし、それに対するATSを整備しておりますし、先ほど鉄監局長から話がありましたように、単線自動区間でありまして、信号が赤の場合、青の場合、その一閉塞区間には一個列車しか入れないように装置してあるわけでございます。  それで今回の安全側線の問題につきましては、大体九十キロ程度までの速度なれば安全側線に導入するというような形になっておりまして、今回の場合でも、おそらくスピードは、またこれからのいろいろの運輸省監査等を経なければいけませんが、大体百四、五十キロ程度出ていたんじゃなかろうかと推定しているわけでございます。それでも一時安全側線のほうに入りかけまして、そして途中で脱線したというような痕跡が残っているような次第でございます。  安全につきましては、いままでのところでは十分だというふうに考えておったわけでございますが、今回予想外の状態でああいう惨事を引き起こしてまことに申しわけないと思っております。  それから、ただいまおっしゃいました八両編成とあそこの複線の問題でございますが、複線の区間の長さは千二百メートル以上ありまして、八両編成で、あれは一両二十メートルでございますから百六、七十メートルということで十分の余裕はあるはずでございます。
  78. 沖本泰幸

    ○沖本委員 私、申し上げているのは、一たん脱線しかけたのが横へ入るような形跡があったとおっしゃっているわけですが、その線のことなんですよ。上に向いて勾配がついて、まかり間違えば横の線に入って向かい側の列車事故を与えない、こういう装置をおつけになっていましたでしょう。それがやはり行ってみると古ぼけております。まあ使わないから古ぼけるはずですけれども、そういうふうなのはあのトンネルをつくった初期のときにそういう方法をお考えになったわけなんでしょう。そうすると、八両編成とあれのとまるところのあるところまでの長さ、惰力もあるわけですし、そこまで入っていく間と列車の長さというものが実際にかみ合うのかどうかという点は、私疑問を持ったわけです。ですから、そういうことはただ事故がないという考えのもとにそういう装置をしてあるだけだということではないかと思うのです。たとえば、火事の検査をうまくのがれるためにどうにか消火器だけ置いておく、こういうふうな考え方を一般に持っておる人もおるわけです。そういうふうに事故のまさかのための言いわけということはないでしょうけれども、最初につくったものが、はたして現在お使いになっている特急列車の長さを十分そこへ待避させるだけの設備になっておったかどうかという点も、いまから考えれば疑問点が出てくる、こういうことになってまいります。  そこで、賢島線をおつくりになって難波へ乗り入れをおやりになった。これは大阪の場合は都心部へ各私鉄が乗り入れをやってきたので、その競争に乗りおくれまいとしておやりになった、こういうこともいえますし、補助金の点もあるでしょうし、交通緩和の対策のためという名目があると思います。同時にお考えになった問題は、万博に間に合わして海外からの観光客なり日本全土からお集まりになる方に十分志摩半島なりなんなりを見てもらおう、こういう意向のもとに賢島線を急いでおつくりになったと、こう考えられるわけですけれども、もし外人が乗ってあの事故を起こしておったらたいへんだということです。そういう点をお考えになってみて、それでこの特急をおつくりになるときに、単線ということは、会社のほうでは念頭にありましたか、なかったですか。
  79. 大槻丈夫

    大槻参考人 難波のほうに新線の地下乗り入れしましたのは、これは全く通勤輸送対策でございまして、御承知のように、それまでは鶴橋で乗りかえて国鉄の環状線から市内に分散していく、あるいは上本町からバス並びに市電によりまして行くということで、乗りかえのラッシュの混雑と、それから通勤時間のかかるということで非常に不便でありまして、これを都心まで入れるということは、むしろ営業的に見ますれば、これはもう非常に大きな資本負担で、かえって収支の上からは悪化するわけでございますが、乗り入れしたわけでございます。それで地下鉄の二号線それから六号線、一号線、三号線と、みんな連絡するようになりまして、これは通勤輸送の面では非常に効果をあげておるというふうに考えておるわけでございます。  難波から今度は鳥羽のほうに特急を入れる場合にどう考えたかというお話でございますが、結局、先ほども申しましたように、単線区間には単線区間としての安全装置を十分につくっておりますので、長距離、鳥羽ままで入れるからそこをどう改良するかということを考える必要は私たち、なかったと思うのでありますが、ただ、列車回数をふやすかふやさぬかという問題で考えなければならぬということでございます。それは過密というお話もありますが、実際の運行上、安全サイドから見てまだ多少の余裕は残っているというぐらいな運転回数でございますので、そういった点については特に鳥羽の方面に開通する場合に考慮を払っておりませんでした。
  80. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そこで運輸省のほうも、賢島線をつくるということについては認可をしたはずですね。認可する場合に、いま言ったようなことをお考えになったり、あるいは近鉄全線についての乗客の輸送安全度、こういうものの点からいろいろ注意はしてあったと、こうおっしゃっておりますけれども、そういう点についての注文なり考えなりなんなりはなかったのですか。
  81. 山口真弘

    山口政府委員 賢島線の建設によりまして、従来の線から新しい線になりまして、大阪あるいは名古屋から特急の、しかも直行の列車運転するようになったわけでございます。したがいまして、名阪間の名古屋線大阪線というもののウエートというものは、従来の名古屋大阪間の都市間交通というものにさらにつけ加えて都市間輸送ウエートがふえてまいりまして、列車のダイヤというものもそれだけ稠密になってくるわけでございます。ただこれにつきましては、具体的に各線区につきまして、ランカーブと私ども言っておりますが、運行曲線を引きます。これはいろいろな条件を勘案いたしまして、安全の面からここまではだいじょうぶだというようなランカーブを引きまして、そのランカーブを基礎にいたしまして具体的なダイヤの設定をいたしておるわけでございまして、その意味で、安全の面では支障がない、少なくともダイヤ上の支障はないということを確認をいたしまして、そういうダイヤを組ましたわけでございます。
  82. 沖本泰幸

    ○沖本委員 時間もあまりありませんが、いままでのを総合していきますと、四十四年の事故当時にも十分点検をしてないというので鉄監局長のお答えです。これは、切りかえのポイントのあれなり路線なりはいろいろ考えたということだけれども、全部についてのあれはやらなかったということになります。またこの事故を通じまして、それで現場に行ったり、あるいは津の町でいろいろな関係した人たちの話を聞きました。ところが一番指摘しているのは、単線なんです。単線特急を走らせているのはどうだというのが、しろうと考えで一番ぴんとくる問題なんです。そういう問題、いままで問題にならなかったのは、運輸省のほうが全然こういうことについてはだめなんだというのが全体の意見です。またいろいろな方に聞きましても、地方の陸運局長さんの権限ではとうていこういう問題が改善されそうもないという、全く運輸省不評判ですよ。そういう点を十分考えてやっていただかないと、事故のあるときときに対して、こういうことです、ああいうことですと言いわけしているようであってはならないわけです。それからまた、いろいろな事故について私も現場によく行きましたけれども、南海の場合もそうですし、近鉄さんの場合もそうなんです。事故が起きた当時に会社がなぜ全力をあげて事故現場にみな来なかったかということなんです。国民の安全をはかる交通機関なんですから、また国民を乗せて営利をはかっていらっしゃる会社なんですから、事故が起きたということになったら、もう何もかもほって会社がこれに対処しなければならないのが第一番の姿勢じゃないかと私、考えるわけです。それが人命尊重であり、何であるということになるわけです。私、行っていたときに、二人だけですよ。榊原温泉口に一人いらっしゃいました。現場に一人いらっしゃいました。それでまず名古屋に着いたとき、名古屋で伺ったら、全然わかりません、聞いておりません、というわけです。私は名古屋に着いたのが九時ごろです。名古屋の駅長さんに聞きましたら、事故に関しては一切わかりません。籍口令です。そういう状態ではならないと思うのです。私が出るときに、けがした人たちの第一番の方が名古屋に入ってきたわけです。そういうときに、一日一ときでも早く事故の内容をこうこうこういうことでまことに遺憾と思うけれども、全力をあげておりますという詳細な報告が至るところで聞けるようにするのが、交通機関に携わる人たちの誠意じゃないでしょうか。そういう点は、やはり自己保身に一心になられるあまりかどうかわかりませんが、こういう点に対していずれの会社も対策に乏しい。初動的な対策に乏しいというのが、いままでの私が実際に経験した内容から言えるわけです。南海電車の場合は、その場に私はいました。そういうことですから、これに対して、次官どうなんですか。
  83. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 御指摘の安全側線の問題、それから事故対策の善後策あるいは単線か複線かの問題並びに事故原因、御指摘になっている点、私ももっともだろうと思います。したがいまして、運輸省としても、八日から三日間保安監査を実施いたします。今後の私鉄に対する監督官庁としての姿勢も正して、事故防止に最善を尽くす考えでございます。
  84. 沖本泰幸

    ○沖本委員 もう少し時間をいただきたいと思います。  それから聞き忘れたのですが、近鉄さんのほうは、この補償に対してどうなさいますか。これは一番の問題ですし、いま指摘しました点について何らかの形でこの場で国民におわびするのが当然だと私は思います。  それともう一つは、最後ですから、鉄監局長に。いままである程度新聞に出ておりますが、人身事故を起こした私鉄あるいは国鉄事故に関しての立ち入り検査なり、いろんなことをおやりになりました、その検査内容と、原因究明と、それからその後どう改善されたかという一切についての内容を、私、いただきたいと思います。
  85. 大槻丈夫

    大槻参考人 いままでのなくなられた方に対する御弔問それからおけがをされた方々に対する御慰謝、そういったことにつきましては時間もないようでございますから申し上げませんが、今後の補償と申しますか、そういった点につきましては、最近のいろいろの事故等の例も十分に参酌いたしまして、御遺族の方々の御納得のいく話し合いをしてきめていきたいと、かように考えております。
  86. 山口真弘

    山口政府委員 先ほどの御質問の中で一つ答弁漏れがございましたが、事故の場合の当座の処置と申しますか、救急体制と申しますか、そういったようなものにつきまして、今回の事故の際におきましてかなり手間どった点がございまして、この点はまことに申しわけないと存じておるところでございまして、事故の場合の発見並びに連絡の万全それから救急体制を今後とも完備をさせていくというようなことにはつとめてまいりたいと思います。  それから従来の事故の起きた場合の保安監査、特に特別保安監査等いたしておるわけでございますが、それにつきまして具体的な改善の措置を命じまして、その改善の措置が実際上行なわれているかどうかということにつきまして追跡調査をいたしまして、そして改善の措置の万全を期しております。  具体的内容につきましては、別途資料で提出をさせていただきますか、それとも御報告いたしますか。
  87. 沖本泰幸

    ○沖本委員 資料でお願いします。
  88. 山口真弘

    山口政府委員 では、資料で提出をさせていただきます。
  89. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それからもう一つだけこれは次官に申し上げますが、行ったときに、あそこの地元の町の方は、町をあげて救出に何もかもほってやっていらっしゃいました、小さい町が。これは運輸省のほうなりなんなり、それぞれのところから、何らかの形でお礼をするなり表彰をしてあげるなり、そういう依頼があって当然だと私は思います。この点だけお願いいたしまして、質問を終わります。
  90. 小峯柳多

  91. 和田春生

    和田(春)委員 できるだけ重複を避けまして、端的にお伺いをいたしたいと思いますが、まず最初に、基礎的なことについて参考人にお伺いをいたしたいと思います。  きょう運輸省から配付されましたプリントによりますと、「下り場内信号機に接近したところATSが動作したので、」と、こういうふうに書いてありますけれども、これは申すまでもなく信号が青であったのにATSが作動してブレーキがかかったと、こういうことでございましょうね。
  92. 大槻丈夫

    大槻参考人 信号は青であったとまだ確信は持てないのでございますけれども、その手前に先ほど申しました八十五キロの速度制限用ATSがありまして、それにかかってとまったものと、かように思っております。
  93. 和田春生

    和田(春)委員 もし信号が赤であったなら、ATSが動作してあたりまえのことですね、ATS故障か何かということはないわけですから。青であるのにかかわらずATSが動作した、だからおかしいということになったんじゃないのですか。
  94. 大槻丈夫

    大槻参考人 そのとおりでございまして、これがATS地上子故障であるか、あるいは車上子の誤作動であるか、あるいはそれ以外のものであるか、その点、運転士が現在県警のほうで取り調べ中でございますし、それから添乗しました助役は死亡いたしましたので、まだ私のほうとしては原因はつかめてないわけなんです。そのときに運転士がおりまして各車両の下部装置を点検した、こういう事実は、これは車掌も証明しておりますし、それから県警のほうでも調査過程として発表しておるようでございます。
  95. 和田春生

    和田(春)委員 そこで、原因が何によるかは別といたしまして、これはおかしいと気がついたことになるわけですが、そこで一たん停止後、同駅の助役を運転室に添乗させて進行したわけですけれども、このATSが動作して一たんとまってから、助役を乗せて出発をするまでの時間は、何分間あったわけですか。
  96. 大槻丈夫

    大槻参考人 そのトンネル内の場内信号機手前で停車したときに、約五分おくれで入ってきておった。それからそこで車両の点検その他のいろいろの作業をやりましたのが十一分で、十六分延で青山駅を通過しております。
  97. 和田春生

    和田(春)委員 その間に私はこの事故の発生したポイントがあると思うのです。ATSが動作して、助役が乗って出発をするというまでの間に、もちろん運転士は点検をしたと思いますけれども近鉄として、その間、事故が起こるかもわからない、あるいは事故回避のためにどういう措置をとられたのでしょうか。列車に乗っておった乗務員だけではなしに、会社自体、そういう措置のために、いろんな関係者がおるわけですよね、一体その時間内にどういう措置をとられたのか、何にもしなかったのか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  98. 大槻丈夫

    大槻参考人 今回のような、そういった運転途中でおくれを見たというようなことは、事後の報告としては受けますけれども、その場の現地の手配を、十分、十五分の運転のおくれによって本社としてどうするかという段階にはないわけでございますが、事情によりましては、駅の助役から運転指令のほうに連絡いたしまして、ダイヤを整理していかなければなりませんから、そういう作業は運転指令のほうと現地のほうでとるという段階がございます。
  99. 和田春生

    和田(春)委員 全部人力によって運転をしている、こういう場合と、ATSというようないろいろな機械装置が入ってきた場合、しかもそれがいろいろな信号機あるいはポイント、電車、それぞれ連動をして安全を保つように次第になってきたわけですけれども、その間にはやはり機械ですから故障ということもあり得るわけで、機械にあまり依存をし過ぎるということは問題なわけです。いま、運転指令がおくれ過ぎた場合にはダイヤを調整しなければならないのでいろいろ措置をすることがあるというお答えであったわけですけれども、この場合は運転指令には何も連絡をされずに、現場だけで乗務員とこの助役で処理をして発進したということになるわけでありますか。
  100. 大槻丈夫

    大槻参考人 今回の場合は現場の処置であると思っております。  それから先ほどちょっと言い忘れましたが、ここの単線軌道の照明盤は榊原温泉口にありまして、そして東青山駅の出発とそれから榊原温泉口の出発と、これをしょちゅうにらんでおりまして、片方が十六分延で青山を通過したときには、すぐこちらの軌道照明盤にその照明が出るわけでございまして、それにこちらの出発を合わせまして、そしてあそこの一キロ二百ばかりの線路で行き違いができる。こちらで出した場合には、そちらの、安全側線のところ、本線のほうは必ず赤にする、こういうようなのを自動的に一人の人間が両方にらみながら操作いたしまして、片方を通過にした場合にはもう一方は必ず赤になるという連動になっておりまして、そういった意味では両方の出発を一人の人がにらんでポイント操作をやっていくというような安全策をとっております。
  101. 和田春生

    和田(春)委員 しかし現実に事故が起きているわけです。衝突事故を起こしているわけですね。そういたしますと、そのあと、この報告書に書かれてある、「東垣内信号所の出発信号機の停止信号を冒進して転てつ器付近で脱線」これは事実を述べていると思うのですけれども、おそらくここでは停止信号が赤になっておったわけですから、ポイントは待避線のほうに向いておった、これは間違いないですか。
  102. 大槻丈夫

    大槻参考人 そのポイントの実際を見ましたところ、ポイントそのものには全然きずがついておりません。そして入りかけましてからこういうぐあいに入るここの本線との、リードレールと言っておりますが、そこでそれがすっかりはね飛ばされているというような形、それから電線の折れているぐあい、それから見まして、一度安全側線のほうに入りかけてから脱線した、こういうぐあいに考えていいんじゃないかと思っております。
  103. 和田春生

    和田(春)委員 そうしますと、ここで間違いが起こった原因は、電車のスピードが出過ぎておったということが一つの理由ですか。
  104. 大槻丈夫

    大槻参考人 その安全側線に入るポイントは大体九十キロから百キロまでは耐えられるようにできておるというように聞いておりますので、非常なスピードがそれ以上にあったということだと思います。それでちょっとカーブしておりますので遠心力がある程度働いて、それぞれ脱線せざるを得なかった。速度が早かったから遠心力も強かったということになりますが、それで途中から脱線したのだと推定しております。
  105. 和田春生

    和田(春)委員 そういう安全限度をこえたスピードが出た場合にそれを制御する、そういう仕組みにはなっていないわけですか。
  106. 大槻丈夫

    大槻参考人 いまのところ百四十、百五十というような超スピードになる、そういったことを予想しての安全策というものはまだとられておりませんし、またそれに対応するだけのことを考えていくということは、これからの運輸省監査その他技術の問題もございますけれども、検討は進めなければいかぬと思いますが、なかなかむずかしい問題じゃなかろうかと思います。
  107. 和田春生

    和田(春)委員 まだ事故原因については厳重調査中であるということでありますからいろいろ不明な要素もあると思いますけれども、いままでの質問を通じて私が感ずることは、結局ATSが誤作動か正作動かは別といたしまして、ともかく作動した、とまった。そのときには信号が青であった。そして助役が出て発進をした。しかもそれがたいへんなスピード事故現場のところで待避線に入らずに本線のほうに突入していった。結局、そういう点を考え合わせてみますと、先ほども触れましたけれどもATSが動作をしてそれから出発をするまでの間、その間の措置に手抜かりがなければこの事故は防げたのではないか、理由はどこにあるかわかりませんけれども。結局その間に手抜かりがあった、連絡がうまくいっていない、あるいは電車の運転方法において、いろいろな操作において。そういう点が決定的な問題である。そういたしますと、こういうような非常に過密ダイヤで、しかも下り勾配のところでスピードが出やすいところに単線運転をしている、そういう場合には、従業員並びに関係者、管理者を含めまして、よほど徹底した安全教育、それからそのための現場における安全に対する注意といいますか、そういうものが念にも念を入れて行なわれなくてはならないのではないか。どうもそこにポイントがある。単に機械の故障であるとかそういう問題ではなくて、そういう場合に備えた安全教育、従業員の訓練、緊張、そういうものに欠けるところがあったし、会社自体が、これは従業員に責めを負わせるというよりも、やはりできるだけ電車をたくさん走らせて大いにかせごうという、そういうもうけ主義あるいは営利第一主義というようなものが、安全に対する弛緩を生んでおったという原因に考えられうるのですけれども、その点についての御反省はなされておりますか。またその後、こういう事故が二度と起こらないようにするということを表明されておるわけでありますけれども、その二度と起こらないようにするためにどういう具体的な措置をおとりになっておりますか。そのことをお伺いしたいと思うのです。
  108. 大槻丈夫

    大槻参考人 先ほど申しましたように、まだ原因につきましては不明な点が多々ございまして、これはまあ警察のほうなり運輸省特別監査なりその他で究明されることと思っておりますが、だから全体的なこの事故に対する対策というのはまだ今後の問題として検討していかなければならぬ問題でありますが、当面の緊急の対策といたしまして、ATSそれから車両の制動装置、これの一斉点検を行なっております。ATSは、きょうが五日でございますから、本日で全部総点検を完了するはずでございます。車両の制動装置につきましてはもう少し時間がかかりますが、各車両検査を目下進めているところでございます。  それから乗務員の訓練、教育と申しますか、この点につきまして、今回のような異常時の場合の処置というものと申しますか、普通の原則的、恒常的な訓練、教育ではなくて、こういった異常時の場合の措置が反射的にでもできると申しますか、そういったような異常時対策としての修練を中心とした訓練を進めていきたい、かように考えております。  それから施設面の対策といたしましては、安全側線の問題を検討していきたいということが一点。それから、列車無線装置をつけまして一そうの安全と申しますか、列車相互間、列車と駅、列車運転指令、そういったところの無線を完備いたしまして、事故防止対策、これは相当大きな効果をあげるのではないかと思うのでありますが、それを進めていきたい。実は五カ年計画を組んで今年からかかっておるわけでございますけれども、これを三カ年、さらにもう少し縮まればと思っていま検討しておるところでございますが、できるだけ繰り上げて実施していきたい。  それから、先ほど申しましたように単線区間の複線化。単線区間が危険だというものではないと私も思っておりますし、また過密という点につきましても、先ほど申しましたように安全をゆるがせにしておるものではないと思いますが、よりすぐれたと申しますか、より安全サイドをとるということを念頭に置きまして、複線化の計画を進めていきたい。従来から持ってはおったわけでございますが、と申しますのは、この区間の単線区間が四十一キロほどありましたのを、先ほど申しましたように現在では十六キロになっておりまして、だんだんに縮めてきているということは事実でございますけれども、残った十六キロに対しまして至急に複線化の計画を進めていきたい、かように考えております。
  109. 和田春生

    和田(春)委員 私は、そういういまの大槻参考人のお話をそれはそれでけっこうだと思うのですが、もう少し具体的にお伺いをしたいと思うのです。  今度こういう悲惨な事故が起きた、その原因については調査をしなくてはわからない。原因調査した結果わかったとしても、それは起きた事故についての原因なんですね。そこで、いま緊急にやらなくてはいけないのは、今日でも電車は走っておるわけです。ですから、私は具体的にお伺いいたしますけれども、もしいまの時点で、ここの事故が起きたときと同様の条件がこの前段において発生したときに、運転者あるいは指令、駅の助役、管理者、どういう措置をとれというふうに指示をされておりますか。その場合の安全を守る、事故防止のための手はどういう手を打てというふうにされておりますか。非常に具体的にお伺いしたいと思うのです。それは事故原因がわからなくてもできることだと思うのですね。たとえば、ここで下り信号機に接近したところ、ATSが動作して一たん停止した。助役を乗せて発進したわけですね。いまもしこれと同じ条件が起きたときに同じことをやらせられるのですか。どういうふうに変えられましたか、その辺の運転なり操作なりについて。
  110. 大槻丈夫

    大槻参考人 これは、ATSにかかって一一四という列車がとまりまして、とまってから後に運転士がどういう操作をしたか、それから助役はどういう協力をしたかという点が全然不明でございまして、いままで運転士が知っておる運心、規程なりATSの取り扱いなり、そういったことが守られてさえおれば、ああいった暴走ということは起こらなかったと思われるわけでございます。だから、いまああいった場合が起きてとおっしゃられましても、ちょっと私たち、対策と申しますか、対応のしかたがいまの段階ではないわけでございます。
  111. 和田春生

    和田(春)委員 それはぼくはおかしいと思うのですね。いまなくなった運転士の方と助役ですか、がどうやったかわからないと言いますけれども、要は運転士と助役で処理をしてこの事故を起こしたわけでしょう。しかも、ATSが作動して一たん停止してから発進するまでの時間がある、その間運転指令は先ほどのお答えでは何もしていない。大幅にダイヤを調整するような場合にそれをやることがある。したがって、安全というものは念には念を入れなくてはいけないのですけれども、この場合には運転士と助役だけで処置をしておって、どうなったのかは今後調べてみなくてはわからぬというのですけれども、それ以外に、会社としてこういう場合に対応するために、安全を確認し、あるいは事故を防止するための措置というものが考えられなくてはいけないのじゃないでしょうか。それは事故原因の追及をまたなくても、会社として真剣に考えて、この事故が起きた発生直前のケースと同じことが起きた場合には、やはり念には念を入れて、こういうことをやれということがなくてはいけないのじゃないでしょうか。それをおやりになっていますかと聞いているわけです。
  112. 大槻丈夫

    大槻参考人 それは各列車区長に命じまして、その乗務員に対してATS故障の場合の処置は成規どおりやるように、そして、各運転士が乗務するときに一々点呼の際にも、さらに十分念を押しまして注意をさすようにしております。
  113. 和田春生

    和田(春)委員 いまの御答弁お伺いいたしますと、そうすると、この列車の場合の運転士は、ATS故障の場合にとれといって会社側から常々指示してある措置をとらなかったわけですか。
  114. 大槻丈夫

    大槻参考人 その点がわかっておらぬわけでございます。同時に助役と二人であったわけでございますから、そこのところの関係が全然つかめないので、その点をいま警察で十分にたんねんに調べておるわけでございます。たとえば空気制動がはずれるようになると歯どめのハンドスコッチがはずれないようになるとか、ハンドスコッチがもとからはずれておればどうなるとかいうことを、現在、一昨々晩でございましたか、四両編成のあの同種の車両を使いまして、警察なり私らのほうの技術も協力して、そういったような実情を把握しようと努力しておるわけでございますが、あの場合には実に不明な点が多いのでございます。
  115. 和田春生

    和田(春)委員 列車運転士と助役に問題を持っていってはいけませんよ。それは調査をしなければわからぬでしょうとこう言っているのですよ。しかし問題は、助役と事故を起こした列車運転士現場処理において、この事故が発生したわけでしょう。ですから同様の間違いが、原因はわからぬけれども起こるかもわからない。そうすると二重、三重に安全にするためには、先ほども井岡委員質問にもありましたけれども、一体そういう場合に助役だけが行っていいのか、その助役についてはどういう——最近のいろいろな運転系統なり、そういう制御装置、いろいろなものについて詳しい者が現場にすぐにかけつけるとか、あるいはもっと徹底した連絡をとって、まかり間違っても事故が起こらないようにするとか、何らかの措置が必要なんじゃないでしょうか。いまのお答えを聞いておりますと、この列車運転手と助役に何か全部責任がいって、そこのところを調べないと安全対策はわからぬと言って、会社側はその圏外に立っているような感じがしてしまうのですけれどもね。単線、複線の問題はまたあとでお伺いしますけれども、二度と事故を起こさないようにするということをおっしゃっているわけなんだから、一体現場のそれだけでなしに、そこをさらに安全を確保するために何かをおやりにならなければならないでしょう。どういう措置をとったか、それをお伺いしているのです。とっていないならとってないとおっしゃったらいいと思う。事故を調べなければわからないということを聞いているのではないのですよ。——では鉄監局長
  116. 山口真弘

    山口政府委員 ATSの取り扱いに関しましては、近鉄の内部的な規程で列車非常停止装置の取り扱いの手続というものをきめてございまして、その場合に、たとえば車上のATS故障が生じたというようなことを運転士が発見した場合にはこういうふうな措置をとれとか、地上の場合にはこういうふうな措置をとれというふうにきめてございます。それでまず問題は、そのようなきめられた規程どおりの措置がとられていたかどうかという点につきましては、いま先生御摘指のように若干疑問の点がございます。しかし、とりあえずそういうようなことで安全の確保ができるということを考えておりますので、まず第一段にはそれを励行させる、とにかく励行させるということが必要であろうかと思いますし、第二に、ただいまそれだけではやはり今度のような事故が起きたとすれば、そのATSの取り扱いの手続自体について、やはり会社として考えるべき点がないかどうかという点を、やはりもう一ぺん再検討しまして、万全の上にさらに万全を期すというような態度が必要であろうと思いまして、そういうふうな指導を私どもとしてはいたしたいと思います。
  117. 和田春生

    和田(春)委員 問題はそこだと思うのですね。ちゃんと操作についていろいろと教えてある、規程がある。規程どおりやれば事故が起こらなかったはずであるということがお答えの中の前提になっていると思うのですけれども、人間ですから間違いを起こすことがありますよ。だから現場の、この場合には助役と運転士ですね、万が一規程どおりのことをやらなかった場合に、そしたらまた事故が発生するということになる。それをとめるためにはいままでの安全規程なり、あるいは連絡の方法なり、いろいろな会社側の運行のやり方についてほんとうに検討して、念には念を入れるという措置をとらなくてはならぬはずなんです。それが二度と事故を起こさないための対策だと思う。ところがいま大槻参考人のお話によりますと、そういう点はおとりになっていないようです。鉄監局長はそういう点で指導するということをいま答えられたわけです。私は、どうも時間の関係もありますから、これはこれ以上参考人にお伺いすることはやめますけれども、ひとつ鉄監局長のほうで責任をもってそういう点を、万が一事故を起こさないように十分全部再点検をして措置をすみやかにとってもらいたい。これは時間をかける必要のない問題、もうどれだけ急いでも急ぎ過ぎるということはありませんから、急いで徹底的にやってもらいたいということを希望しておきます。  ところで、もう一つの問題の単線と複線の問題ですが、複線にしておけば今度の事故は発生しなかっただろうということはいえると思うのですが、先ほど来やりとりが行なわれておりますように、単線だから危険だ、複線だから安全だというふうにはいえないと思います。それは単線でも安全を確保する方法はたくさんあるわけですけれども、問題点の一つは、同一の列車が走る区間の中に単線区域と複線区域がまじっているというところにやはり大きな問題点が一つあるのではないか。そして、複線区間をだんだん広げていって単線区間が短くなってくる、そうすると、運行をしている人たちも、会社側、これは全体を含めて複線感覚、こういうものがだんだんしみ渡っていって、全部が単線であるのなら、その列車運転なりいろいろな面について単線的なものの考え方で処理をするけれども、複線的なものの考え方がある、そこに単線が部分的にはさまっているというところに問題点があるわけだと思えますね。この場合でも、そういうときの事故を避けるために待避線をつくっているわけですけれども、待避線のほうに入らずに本線に突っ込んじゃったわけですね。一体そういう場合に複線的な考え方、複線感覚というものが無意識のうちに働いている、そういう危険性はあるのかないのかという問題があると思うのです。大槻さん、えらい首を振っていらっしゃいますけれども、人間というのはやはり習慣の動物なんですから、単線だから絶対危険だといえない、しかし単線、複線が同一列車が走るところにまざっている、そういう場合に事故が起こりやすいということは、今度のことで証明されているわけです、現に起こったんですから。そうすると、こういう場合には、何よりも優先的に安全を確保するためには単線地域を複線化をするということが必要だというのは一つ結論だと思うのです。しかし、複線化をするためには百億円の金がかかるということをおっしゃったわけですね。そうすると、かりにこれを複線化をして、ダイヤが多少また増発をすることができるようになると思いますが、その場合、百億投資をして償却をするのにどれくらいかかりますか、大槻さん。
  118. 大槻丈夫

    大槻参考人 大体金利、償却を含めて一五%から一七%程度ではなかろうかと思います。
  119. 和田春生

    和田(春)委員 もちろん運賃との兼ね合いがありますけれども、私がお伺いしたのは、百億の投資をしてそれを償却をして回収するのに何年くらいかかりますかというのですね。どういうふうに見込まれますか、経営者として。
  120. 大槻丈夫

    大槻参考人 これは投資には違いないのですが、そういった経営採算という面を第二にいたしまして、ともかくやろうと決心しておりますので、まだそこまで収支の問題については検討をいたしておりませんし、計画そのものもこれからかかるわけでございます。ちょっとお答えいたしかねる段階でございます。
  121. 和田春生

    和田(春)委員 そういう経営上の採算を度外視して安全のためにやるというのなら、もう一つやり方がありますね、過密ダイヤを修正をして列車を間引くとか、スピードの点においてもっと安全な方法を考えるとか。輸送量は落ちるでしょう、それはおそらく会社の減収に結びつくと思います。しかし、ここで経営上の採算を度外視して百億も投じてやるというのなら、現状においてもそういうより安全な運転方法をとるということで、輸送量をダウンさせても安全を守るという方法があろうかと思いますし、またこの問題は国鉄私鉄との任務の分担という面においても、何が何でも全部複線化をしゃにむに進めて超スピードの電車を走らせる必要があるのかないのか。それはまた複線工事をするというためにはかなりの時間がかかるわけです。そういう意味において、現在ダイヤ並びに運行状況について根本的に再検討しておやりになる考え方は会社側にあるかないか。そういう点について鉄監局として政府は監督をして、そこまで指導するという考えがあるかないか。両方にお伺いをいたしたいと思います。これは最後の質問です。
  122. 大槻丈夫

    大槻参考人 現実に一日三千五百人ばかりのお客さんもありますし、そういったことに対して不便をおかけするということになりますし、私たちといたしましては安全という点について遺憾な点がない、単線運転であっても安全は確保される。今回の事故がありましたので絶対だと言い切れない面は残念でございますが、その点についてさらに一そうの検討、措置をいたしましてやっていきたい、かように考えております。
  123. 佐藤孝行

    佐藤(孝)政府委員 御承知のとおり、近鉄は民鉄以外に多角経営されております。先ほどの御質問にもあったように、多角経営のためにややもするとそちらにウエートが多くかかってあるいは私鉄経営がなおざりにならないかという御指摘もあったように思いますが、私は多角経営が即私鉄経営にマイナスになるとは考えませんけれども、同じ経営者としても百貨店経営と私鉄経営とはおずから本質的に異なるものと思います。人命安全第一が私鉄の使命でございます。運輸省としてもそういう感覚に立って、これから行政指導していくつもりでございます。
  124. 和田春生

    和田(春)委員 これは要望ですけれども、やっぱり安全のためには——事故が起こったんですから、いままでの仕組みのどこかにまずいところがあったに違いないのですよ。したがって、複線化をするということもそれは安全を守る一つの手段なんですけれども、現在やっていることについて、ダイヤの組み方なり列車の運行方法なり、そういう点においてやはり改めるところがなければ、二度と事故を起こしませんと言ってまた起きたら何にもならぬのです。そういう点について運輸省として、会社が多少減収になっても、採算を度外視してでも、百億投下して複線化をやろうと言うのですから、それくらいなら収入が少しくらい減ったってかまわぬわけですから、収入のことを考えずに安全をやるように、ダイヤなり何なりそういう面まで十分監督指導をしてもらいたい。そのことを強く希望いたしまして、私の質問を終わります。
  125. 小峯柳多

  126. 谷口善太郎

    ○谷口委員 いまお話お聞きのとおりに、与えられた時間が十分であります。だから用意してきた質問はもう断念いたしまして、簡単に一、二点だけ伺いたいと思うのです。  実は先ほどから皆さんのお話を伺っていてちょっとびっくりしているところなんです。政府の側も企業の側も、いまの施設その他何も手落ちがないので、単線であっても、複線とまざっていても、あるいは非常に過密ダイヤであっても、ちっとも心配は要らぬのだというお話でありまして、それなら何もこういう事故が起こらぬわけであります。しかし国民はそうは思ってないのであります。やっぱり原因があったからこういう大きな事故が起こったということであります。それらについてかなり詳しくお尋ねするつもりで来たのですが、いま申しましたような状況ですから、ほんとうに簡単に、特に政府にお尋ねしたいと思うのです。  去年——おととしですか、私、物価委員会でこの私鉄問題を取り上げましたときにいただいた資料の中で、四十一年度から始まる私鉄の輸送力増強、安全施設の改善というような五カ年計画があります。その中で近鉄が計画書を出していらっしゃる。その中で、この大阪名古屋線、ここで三カ所複線にする。これはきょう資料をいただきましたところによりますと、大体四十二年度に計画を完成されたようであります。しかし、これはトンネルの部分ではなかったようです。トンネルの部分はこういうぐあいに避けて、その他の部分をおやりになったようでありますが、なぜこの計画を出されたときに、政府としては、トンネル部分も含めて全体ですね、あそこの輸送状況から見て複線にすべきだというような国民の世論でありますが、そういう点からチェックされて、ぜひトンネル部分も含めて全線複線にするように御指導なさらなかったか、この点を最初に伺っておきたいと思います。
  127. 山口真弘

    山口政府委員 私鉄の輸送力増強計画を、先生御指摘のように、第三次五カ年計画としてやっておるわけでございます。その中身は、先ほどからいろいろ申しましたように、私鉄のやっておりまする輸送力増強工事といたしまして、たとえば複線化をいたしますとか、あるいは都心乗り入れの工事をするとか、地下鉄直通の工事をするとか、あるいは車両の増強、あるいは線路の増強、ホームの延伸、そういったような各般の工事をいたしますと同時に、たとえば踏切の立体交差化をやるとか、それから線路の改良あるいは築堤の改良というようなことをやっておりまして、そういう全体の中で、どの工事をやらなければいかぬか、その重要性に応じて工事を指定をいたしましてやっておるわけでございます。それで、複線化工事というのは、もちろん安全にも関係ないとは私申し上げませんが、基本的にはやはり輸送力増強のための工事でございまして、その輸送力増強の工事といたしましては、逼迫の度合いに応じましてやっていくということでございます。したがって、当時の段階におきましては、逼迫の度合いで近鉄線の複線化というものを進めておりますが、全線複線化することまでにはまだ順位が下であるということで、その他の保安工事等を先にいたしまして、その部分は除いてある、こういうことでございます。
  128. 谷口善太郎

    ○谷口委員 これ、ほんとうに論ずるなら、あなた方の言っていることは全く企業べたぼれですよね。企業の主張だけを聞いている。ほんとうに運輸行政の一番大きな点である安全という問題、それがいかになおざりにされているかという政府の態度の問題は、これは資料をあげてやります。あなたはそういう言い方をしておることは、国民の納得できないことで、やりますが、時間がありませんから、きょうはしようがないです。ただ、そういう言い方で、近鉄が、山があってトンネル掘ることはたいへんだということでよけている工事をほっておくから、こういう大きな事故につながるということも、これは一つの大きな原因だということを国民はみな知っています。だから、そこらはそういうふうなおっしゃり方できょうは論議できませんけれども、やっている限りは、これはいつまでたっても解決しないだろうということが一つ言えると思うのです。  次に移ります。ダイヤ改正も、これも四十五年の十二月の十日に近鉄のダイヤ改正を許可されています。この前に、これもいろいろの問題がございますけれども一つだけお伺いします。近鉄は2W運動と称しまして、従業員——乗務員の数を減らしています。これは御存じだと思います。運転士二人、車掌一人、これを乗せておったのを、運転士を二人にしまして、車掌をなくしまして、一人の運転士が車掌も兼ねますから、全く労働強化になって、従業員諸君は非常な困難におちいっている、これは当然、ある場合故障にも関係します。したがって、大事故に関連するということになると思うのですが、こういう2W運動などと称する労働強化の問題が先になされている、人減らしをやっている。そういう中でダイヤ改正をやって、さっきあなたでしたか、何か十何本かだけだというようなことをおっしゃっていましたけれども、けさ、私ども近鉄地図について調べたところによりますと、そんなどこじゃないですよ、実にばく大な輸送量を確保するためにたくさんの列車を走らしておる。これはちょっと一つだけ言いますが、四十四年に中川事故が起こった当時は、特急が九十五本、上り四十八、下り四十七。ところが、この改正にあたりまして特急が百二本にふえている。そして往復つまり五十一本ずつ、そういうダイヤ改正をやっている、その前に人員整理をやっておる。こういうことをチェックして、しかもこれでもなお安全だということでこのダイヤ改正をお許しになったのかどうか、その点を伺いたい。
  129. 山口真弘

    山口政府委員 一人乗務問題と二人乗務問題、いわゆる運転士席における一人乗務問題、二人乗務問題と、おのずからこれはダイヤの問題とは別問題だと思います。この点につきましては、一人乗務におきましても、保安上支障がないというようなことをいたしまして、一人乗務問題は決定をしていくということでございます。  それからダイヤの問題につきましては、これは先ほど申しましたように、各運転する駅間につきまして全部ランカーブを引きます。そのランカーブを引くポイントは、要するにその両地区におけるところの線路並びに駅の設備、それから列車スピードあるいは列車の性能、制動の性能というようなものを考えまして、そしてランカーブを引きまして、そのランカーブによって、運転をする場合には危険がないということを確認をした上でダイヤを設定いたします。したがいまして、ダイヤ面上は私ども危険はない、このように考えております。
  130. 谷口善太郎

    ○谷口委員 これも論じますと、そういうでたらめなことを言っているから労働強化になって、そして、きょうの論議の中にも出ましたが、すべて従業員のミスというような言い方を会社はされてくる、従業員の側には言い分があるのです。確かにそれはダイヤ改正の問題と乗務員の数の問題あるいは労働条件の問題とは別だ、これは別ですよ。別だけれども、これが一つになってきているところに大きな問題が起こるということを私どもは主張しているわけです。しかし、そういう政府の考え方は、これは前からきまっておりまして、運輸省がそういう態度であるからこういう事故が起こってくるということになると思うのであります。  実は私、この間予算委員会で緊急質問をこの問題でやったわけでありますが、そのときの総理の答弁聞いて実はびっくりしました。私は、近鉄料金値上げをやる、相当増収していて、これが傍系会社や何かへ投資したり金を貸したり、あるいは売るための土地を買ったりしていることを指摘した、そして安全装置その他は全くなおざりにしているというところを言った。そうしたら総理はこう言ったのですよ。そんなことやったら近鉄は乗客から信用されなくなって、もうからなくなるだろうから、そういうことはいたさないだろうということを言っている。もうけるために安全装置ということが問題になるのであって、安全装置それ自体が目的じゃないようなことを総理は言っている。人間軽視ということは全くあのことばで出ていると思いますが、そういう立場に立っているからこうなるんですよ。  そこで私は最後に伺いますが、今度八日から何か運輸省が緊急検査か何かに入られるようです。この場合に、従業員に対する教育訓練という項目がありますが、あれはどういう教育訓練をするつもりですか、それらはどういうところを調査するということですか。
  131. 山口真弘

    山口政府委員 近鉄につきまして特別監査をいたします。運輸省本省から課長以下相当の人数を出します。さらに名古屋大阪陸運局からも人を出しまして、そうして各般にわたっての監査をいたします。その内容といたしまして、従業員の訓練の状況というようなもの、あるいは教習の状況というようなものを、実際上あるいは書類に当たりまして調べまして、そしてその状況について指摘すべきものがあればこれは改善の指摘をする、こういうつもりでございます。
  132. 谷口善太郎

    ○谷口委員 業務上また技術上いろいろやはり従業員諸君に訓練されたり教育されるような、それがどうなっているかを御調査なさる、これは非常に大事だと思います。しかし、それ以上に大事なことは、乗務員が全く正常な肉体状況で乗務、仕事ができているかどうかという労働条件の問題が非常に大事だと思うのです。この前の予算のときに、私は労働大臣に伺ったら、その点については今度は厳重に調査もし、労働条件の改善を確保するような方向でやりたいと言いましたが、今度の緊急調査の中でも——きょうは労働省見えていないと思いますが、やはり運輸省としてもその点を重視していただきたい、こういうふうに思います。  それからこれはつけ加えますが、さっき政務次官、何か施設資本の中で、交通事業があまりうまくいっていないので、他の事業でもうけてそれをつぎ込むというようなやり方もやむを得ないというようにおっしゃいましたが、あれは私はこの前やはり同じような、物価委員会ですかできれいに明らかにしましたとおり、それはそうじゃないのです。あれは全体の借り入れ金なんかやって利子がたくさんある、これを帳簿の操作でもって鉄道部門にたくさん配賦するというようなやり方で、そしてその赤字が出るというようなことをやるとか、あるいはもう不当な引き当て金だとか保有金をつくりましてやっているということ、これを明らかにしている。これは政府部内の諸君でもその資料発表しているのです。あのとき政府は返事ができなかった。だから、これはそんな言い方で甘い目で見ておったら、独占的な大資本ですから、あなた方はねじられますよ。そこをきちんとやっていく必要があるということを強調しておきたいのです。  どうもありがとうございました。
  133. 小峯柳多

    小峯委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。  これにて散会いたします。    午後零時四十一分散会