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1971-07-22 第66回国会 参議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年七月二十二日(木曜日)    午前十時十一分開会     —————————————   委員氏名     委員長         古池 信三君     理 事         小林 国司君     理 事         白井  勇君     理 事         林田悠紀夫君     理 事         森 八三一君     理 事         山崎 五郎君     理 事         竹田 四郎君     理 事         吉田忠三郎君     理 事         三木 忠雄君                 江藤  智君                 小山邦太郎君                 郡  祐一君                 斎藤  昇君                 塩見 俊二君                 杉原 荒太君                 中山 太郎君                 平島 敏夫君                 二木 謙吾君                 堀本 宜実君                 山木 利壽君                 上田  哲君                 小柳  勇君                 杉原 一雄君                 西村 関一君                 松本 賢一君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 萩原幽香子君                 向井 長年君                 岩間 正男君                 青島 幸男君  昭和四十六年七月二十日右の者は本委員辞任  した。     —————————————  七月二十日議長において本委員を左のとおり指  名した。                 植木 光教君                 小笠 公韶君                 長田 裕二君                 川上 為治君                 木村 睦男君                久次米健太郎君                 楠  正俊君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 古池 信三君                 塩見 俊二君                 白井  勇君                 世耕 政隆君                 土屋 義彦君                 内藤誉三郎君                 長屋  茂君                 西田 信一君                 初村瀧一郎君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君                 安田 隆明君                 山崎 竜男君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                 片岡 勝治君                 神沢  浄君                 沢田 政治君                 杉山善太郎君                 戸叶  武君                 野々山一三君                 羽生 三七君                 藤田  進君                 宮之原貞光君                 森 元治郎君                 安永 英雄君                 山崎  昇君                 塩出 啓典君                 多田 省吾君                 三木 忠雄君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 向井 長年君                 岩間 正男君                 河田 賢治君                 喜屋武眞榮君  同日議院において左の者を委員長選任した。                 古池 信三君     —————————————    委員の異動  七月二十二日     辞任         補欠選任      多田 省吾君     藤原 房雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         古池 信三君     理 事                 植木 光教君                 木村 睦男君                 白井  勇君                 安田 隆明君                 山崎 竜男君                 野々山一三君                 山崎  昇君                 三木 忠雄君                 向井 長年君     委 員                 小笠 公韶君                 長田 裕二君                久次米健太郎君                 熊谷太三郎君                 小山邦太郎君                 塩見 俊二君                 世耕 政隆君                 土屋 義彦君                 内藤誉三郎君                 長屋  茂君                 西田 信一君                 初村瀧一郎君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君                 山内 一郎君                 吉武 恵市君                 片岡 勝治君                 神沢  浄君                 沢田 政治君                 杉山善太郎君                 戸叶  武君                 羽生 三七君                 藤田  進君                 森 元治郎君                 塩出 啓典君                 藤原 房雄君                 矢追 秀彦君                 木島 則夫君                 岩間 正男君                 河田 賢治君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  前尾繁三郎君        外務大臣臨時代        理        木村 俊夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  高見 三郎君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   田中 角榮君        運 輸 大 臣  丹羽喬四郎君        郵 政 大 臣  廣瀬 正雄君        労 働 大 臣  原 健三郎君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  渡海元三郎君        国 務 大 臣  大石 武一君        国 務 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣  中村 寅太君        国 務 大 臣  平泉  渉君        国 務 大 臣  増原 恵吉君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        行政管理庁行政        監察局長     浅古  迪君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        運輸大臣官房長  高林 康一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事選任の件 ○調査承認要求に関する件 ○予算執行状況に関する調査     —————————————
  2. 古池信三

    委員長(古池信三君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  このたび、私は再度予算委員長選任せられました。まことに光栄に存じます。  もとより浅学微力の私でございますが、誠心誠意この重責を全ういたしたいと念願いたしております。何とぞ皆さまの一そうの御指導と御協力を賜わりまするようお願いを申し上げまして、就任のごあいさつといたします。(拍手)     —————————————
  3. 古池信三

    委員長(古池信三君) これより理事選任を行ないます。  本委員会理事の数は九名でございます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 古池信三

    委員長(古池信三君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事に、植木光教君、木村睦男君、白井勇君、安田隆明君、山崎竜男君、野々山一三君、山崎昇君、三木忠雄君、向井長年君を指名いたします。     —————————————
  5. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、調査承認要求に関する件につきまして、おはかりいたします。  今期国会におきましても、予算執行状況に関する調査を行なうこととし、、この旨の調査承認要求書議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 古池信三

    委員長(古池信三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 古池信三

    委員長(古池信三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、予算執行状況に関する調査を議題といたします。  本調査を行なうにつきましては、質疑は本日一日とし、総質疑時間は百六十五分、各会派への割り当ては、自由民主党及び日本社会党はそれぞれ六十分、公明党二十分、民社党及び日本共産党はそれぞれ十分、第二院クラブ五分。  質疑の順位は、日本社会党自由民主党日本社会党自由民主党公明党民社党日本共産党、第二院クラブ。  以上のように委員長は取り運びたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 古池信三

    委員長(古池信三君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それでは、これより質疑を行ないます。  森元治郎君。
  10. 森元治郎

    森元治郎君 初めに、総理国会における答弁がどうもわからないんです。伸縮自在というか、せっかく総理大臣が、きのうあたり中国を訪問してもよいというような大きな、はでな御答弁があったかと思うと、あとのほうから若い竹下官房長官記者クラブへあらわれて、総理の真意はこうだというような補足説明官房長官がやっているんですね。こういうことから見ると、一体、歴史的なこの事件をはさんで、政府ほんとう日中国交回復国連代表権の処理を完遂する政策と信念があるのかどうかということを疑うんです。  きのうの夕刊あたりを読んでみても、なかなかわからない。速記録を見ればわかるんでしょうが、さすがのベテラン新聞記者もとれないんですよ、ネガティブ、ネガティブ、ネガティブにこう引っからんできますから。  一つ私が伺いたいのは、しっかりしたものをお持ちなのかどうか、そして国民に知らせ、アメリカとも接触し、中国とも接触しておるのか、そのあたりを伺います。
  11. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも言っていることがわからないというおしかりでございますが、まあベテランである森さんのことですから、外交の問題はなかなか実態がつかめないという、そういう点については十分おわかりだろうと思いますし、また一々そう明確に発表できるものではないということも御承知だろうと思います。  そこで、基本的な態度は、私が国会の本会議で申し上げましたように、中国大陸もまた台湾にある国民政府も、いずれもわが国の隣国であり、これはたいへん重大な関心のある問題だと、これは何といたしましても、この関係を調整しないでわが国がアジアにあるということでは、その役割りが果たせるとは思いません。このことははっきりいままでも何度も申し上げたとおりであります。  ただ、私は、皆さん方に御理解をいただきたいのは、日本が前、戦争をいたしました。これが当時の蒋政権であり、また蒋政権のもとで私どもは破れた。連合国は、そういう関係もあるが、カイロ宣言その他の各種宣言で蒋総統をそのメンバーとし、戦後の時局収拾のために国連をつくった。その場合の基本的な一国として蒋政権が取り扱われた。それが安保理事会常任理事国にもなったゆえんだろうと私は思います。  そういうような事柄が行なわれ、そしてサンフランシスコ講和条約が締結された。その講和条約を締結した際に、中国大陸から代表者を出すべきか、あるいは蒋政権代表者としてサンフランシスコ会議に出すべきか、いろいろ連合国側で論議された。その歴史的事実は、御承知のとおりだと思います。そして、ついにいずれをも参加させないで、私どもが戦った中国との関係あと回しになった。そこで、われわれはサンフランシスコ講和条約を締結したのちに正統政府として選んだのが国民政府であったと、かように私は理解しております。  したがいまして、平和条約を締結した国民政府、これは何といっても、これによって戦争は終結し、私どもの権利もあるが、同時に国際的な義務がある。これにやはりわれわれは忠実に仕えるというか、奉仕しなければならない、そういう点を私ども国際的信義の問題だと、いままではっきりしてまいったのであります。  ところが、その国民政府台湾省にとどまっておる。そうして中国大陸には別な政権がある。そうしてそれがいわゆる正統政府、そのいずれもが中国正統政府を主張し、しかも一つ中国を主張しておる。まあここらに問題が出てきたわけであります。  私は、中国大陸と国府との関係、これは中国の問題だといって私どもがとやかく言う筋ではないと、こういう立場をとってきておりました。しかし、中国大陸との交流政府自身がとめるというようなことはいたさなかったはずであります。したがいまして、中国大陸との貿易量も昨年は八億二千万ドルになった。これはたいへんな貿易額になっております。また、民間交流はなかなか盛んに行なわれておる。かように考えますと、これらのことを一体どういうようにしたらいいのか。あるいは日本軍国主義化等がいろいろ心配されますけれども、私ども、新しい憲法のもとで今日発足しておる日本、その真の姿はぜひ中国大陸においても理解してほしいし、また過去のような中国大陸の民族に対して非常に戦禍を与えた、そういうことについては、これはぜひとも新生日本という立場日本を見ていただけば、過去は過去として線を引けるんじゃないだろうか、かように思っておるような次第であります。  したがいまして、われわれの同盟国であるアメリカ自身、これがやはり北京政府においては憎しみを持って見られておりましたのでありますけれども、しかし、そのアメリカ自身が、ニクソン大統領北京を訪問する、こういうことがアナウンスされておる。世界はそういう意味で非常に大きな転換をしつつある。こういう際でございますので、したがいまして、私どもは、いままでとってきたその態度だけを守るということでなしに、新しい道をみつけたいと、そういう意味の努力が払われておる、これだけはぜひとも御理解をいただきたいと思います。  申し上げている事柄は、過去の点についてそのいきさつを十分認識し、また進むべき方向はいずれの国とも仲よくする。そのためには、お互いお互い立場を十分認識して、その立場を尊重し合って、そしてお互いに干渉しないことで仲よくできるのではないだろうか、かように私は考えておる次第であります。  まあ、これらの点は、いままでの報道あるいは国会における本会議質疑衆議院予算委員会討議等を通じましても明らかになってきたのではないかと、かように私は思っておりますが、ただいまお尋ねがありましたので、重ねて私の考え方を申し上げた次第でございます。
  12. 森元治郎

    森元治郎君 とうとうと冒頭演説みたいなもので、この点は後ほど触れることにして、だんだんそちらに質疑がまいりますから、順序として次に伺っておきたいのは、牛場大使が十九日ロジャーズ長官に会った際に、アメリカに対して、今度のニクソン訪中に関して十分の事前のあたたかい御連絡のないことははなはだ遺憾であるという、抗議の気持ちを含めた表明があったようであります。これに反して、これは政府の訓令でいくんでしょうが、日本国会において佐藤総理は、新聞によれば、ぼくに話したってよそに秘密は漏らさないのにと言って苦笑をしたというようなことで終わっている。やはり外交問題は折り目筋目が大事でありますから、先方に遺憾であると言うときは、思い切ってこちらでも国会の場で遺憾であるということを言い、将来に対してくぎをさすことが親密な関係をさらに疑いなく前進させることになると思うんです。これがないことは、ほんとうにそれこそ遺憾だと思うが、私は、総理はこの予算委員会の席上で、おそくても遺憾だということはあってしかるべきだと思うのです。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 森君の御意見は御意見として承っておきますが、私は、ただいまの両国間の関係の問題を一つ一つ全部を公表する、こういうことはとらないほうの考え方でございます。  しかし、もうすでに明らかになっておりますように、この問題、突然のあの北京訪問の発表は、事前——わずかな事前とはいいながら、これは事前ではございません。ほとんどもう協議の余地のない通告だと、かように考えまして、私どもまことに残念に思う、こういうことは率直に述べさしたつもりでございます。それがただいままだまだ十分の懇談ができておらないという状態であります。と申しますのは、御承知のように、突然の訪中、これを発表したために、関係国に対してそれぞれアメリカとしても一応説明する必要があったようであります。したがって日本の場合もわずかな時間でありますから、そのもっとわれわれの知りたいこと、それについてはまだ触れることができなかったようであります。  それらの点も重ねてさらに明確にしたいと、かように思って、引き続いて会談を要求しておるような次第でございます。
  14. 森元治郎

    森元治郎君 いま総理の御答弁の中に、残念であるというようなおことばがありましたから、残念、遺憾、大体同意語と思って私は解釈します。よろしゅうございますね。  そこで、本論に入りますが、きのう楢崎君との衆議院のやりとりで、過去の経緯理解されたならば中国を訪問して、承認を前提とした日中関係正常化のために自分が訪問してもよろしいというような意味の、たいへんこう進んだお話がありました。時間もありませんから、その中で言われていることのおおよそ二点伺いたいのです。  一つは、答弁の中に、昔からいっている二つ政権が話し合って、一つ正統政府をきめてくれ、こういうことが一つあります。どういうことなのか、国交、国と国との関係は、相手国に複数の政権があったような場合、どれとつき合うかは私がきめるものだと思うのです。スペインの内乱のときにも、右翼、左翼の政権が相争ったが、きめるのは、好きだといってきめるのもあるだろう、国益にプラスになるというのもあるだろう、いろいろそれぞれの思惑でもってこちらがきめるのですよね。これは私は責任回避だと思うのです。北京自分から見て正しいと思えば北京と組み、よその国が何と言おうとやる。中国台湾と組むのなら中国台湾と組む、相手が何と言おうとこれでいくのだというのがほんとうだと思うのですが、どうも責任回避みたいな、二人会って話せ、話せっこない、これは。アメリカあたりでもよくそういうことを言う人がありますが、たいへん国際政治現実とかけ離れた夢みたいな話だと思うのですが、どうでしょうか。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろんただいまの言われ方、当方、こちらできめるべきことだ、かようにおっしゃることも一理ございます。しかし、先ほど私が申しましたような、もともとの起こり、歴史的事実を考えてくると、そう簡単にこの段階になって、われわれがいままでの考え方を変えると、こういうわけにはなかなかいかない。いま迷っているのはそこなんです。この点はおわかりいただけるんじゃないだろうかと思います。
  16. 森元治郎

    森元治郎君 迷う必要は……。何でいま迷うんですか。いい政府だと思ってこれと組んだ、どんなに悪くなってもまっすぐにいくのがほんとうだと思うのだが。私は迷う必要はないと思う。これは迷わざるを得ない原因がある。すなわち、振り返ってみれば、台湾蒋介石政府条約を結ぶに至る経過を見ればわかる。これは無理なんです。戦争の不幸な状態が生んだ日台平和条約であります。平和条約という字はくっついておりますが、日本としては当時平和などという字はつけたくない、限定承認でいきたいということであったが、台湾蒋介石側の強い突っぱりにやむを得ず引いていったという経緯もあり、当時もう蒋介石大陸から追われて台湾に来ておった。終戦のときには、なるほど極東委員会理事国でもあり、いろいろと力を持っておったが、これはりっぱな政府だと私は思うが、これを離れてこっちへ来たときには、もうすでに小さい、弱い亡命政権であったわけです、亡命政権であった。当時条約を結んだ日本としては、中国はちゃんと頭に入っていたと思う。吉田さんでも頭に入っていた。中国の存在を見て、選択は自由にやりたいと思ったが、占領下であり、選択の自由はない。向こうを見ながら、将来を見ながら、限定だよという、せめてもの限定の形の承認で、将来への選択余地を残しておった苦心の作だと思う。いまこそこれを現実の事態に合わして転換すべきときだと思うのです、転換すべきとき。ごらんなさい、現実を見れば、無理であったということ。すなわち中国の主人がだれであるかということは、何としてもこれは北京であり、国際的な評価、実力、すべての点から見て、北京政府中国の主人公であるということは、だれでも、総理だってそうおわかりだと思う。過去のいろいろややこしいいきさつがありますが、やはり現実政治に合わせていくことが国益にもなるのだろうと思うのです。  総理は、これまで中国代表権の問題を取り扱うときに、三つ原則ということをおっしゃっていました。国益にかなうかどうかということ、安全保障信義という、この三つを言ったが、この三原則の行くえはどうなっているか。この二点を伺いたい。  要するに、私の申し上げたいことは、当時は、心ならずも台湾と結ばざるを得なかった無理な条約である。いまはこれを解消しても、道義的にも、国際政治形式論からいっても、実質からいっても、悪くはない時期に際会したと思うので、勇敢に転換をすべきだと、決心すべきだと思うのです。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そこが一つの問題です。勇敢にと……。まあ普通の場合と、ただいまのような一つの国に二つ政権ができるという、そういう関係はない。そうしていずれかが消滅して一つ政権になっておる、これが普通の状態であります。この場合には、その二つ政権はやはり存続しておる。しかも小さいとはいえ、やっぱり国連常任理事国でもある、そういう関係が続いてきております。これを無視することがいわゆる国際信義を守ったと言われるかどうか。日本はどうも利益についたのじゃないか、こういうような言われ方をするのじゃないだろうかと思います。したがって、国際信義という観点に立てば、これはやはり守り抜かなければならない。もともと、これは戦時中においても、国共合作はしばしば行なわれた。こういうような経過もございますし、私は、本来同一民族ですから話し合いのできることではないだろうか、かように思う。しかしこれは聞き方によって何か干渉がましい話でもしているというように言われては困りますから、私は、それこそ中国国民の自主性に待つべきことだと、かように思っております。  問題は、やはりいままで、国連の創設者であり、国連に残っており、しかも国連憲章にも何ら違反せず忠実にこれを守ってきておる国をこの段階において排除が簡単にできるかどうか。それを勇断をもってやれと言われましても、それは無理な行き方じゃないかと思う。私は、やはり国際信義というものは、つらくてもこういうときにこそ信義を貫くことが国際信用のあるゆえんでもあるんではないだろうかと思います。しかし、中国大陸、これの持つ関係においては、すでに貿易額も八億二千万ドルになっておる。また人的交流も行なわれておる。ただ政治的な問題で、これがどうも中国一つなりという関係から二つ中国を認めるわけにいかないということ。私どもは、中国一つなりというその基本的原則にはこれは賛成でございますから、二つ中国だと、かようには考えておりません。したがって、ただいまのような中国大陸との交流はするが、ただいまさらにそれを進めて、この際に中華人民共和国と国民政府と取りかえろ、こういう説には賛成できない。これはやはり慎重にやらなければならない、かように私は思っておるのであります。
  18. 森元治郎

    森元治郎君 三原則
  19. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもう私が申し上げるまでもなく、日本は独自の立場から日本国益を守ることだし、また極東の安全なくしては日本の安全は確保できないことだ、これもまたすでにたびたび申し上げたとおりであります。また国際信義、そういう場合に国際社会の一員として貫くべきは国際信義だ、かように私は思っております。
  20. 森元治郎

    森元治郎君 中国の実態は、昔国連の創設に参加した、安保理事国であると言いますが、もう実態はセミの抜けがらのような形だと思うんです。私も人情としては十分わかります。人情としてはわかる。わかるが、現実政治としてはそれはもう抜けがらのような実態であるということ。  もう一つ、三原則について総理はさらりとかわされましたが、国益は、一体どっちと提携すればいいかということはこれはわかる。抜けがらか実態かといえば、実態である。緊張緩和に役立つかといえば、それはもちろん北京関係を持つことがいいことは、総理ニクソン訪中に対する判断でもおっしゃったとおり、緊張緩和に資する。残るは一点、信義信義というのは、条約を結んだからという一点だけなんですか。国会を通ったんだ、皆さんが国会承認をしそうして条約を結んだ、憲法では条約を大事にすると書いてある、だから何ともこれが動かないんだと、もしこれをあくまで突っぱねていくんなら何にも苦労することはないんじゃないですか。信義だと、そうしたら国民政府と心中する覚悟がなくちゃならぬ。いいところまでいって、もうこれ以上持てないからおっぱなしてしまう、これは信義じゃないと思うんです。一体、心中するまで信義を守るつもりなんですか、関係を。その判断をちょっと総理に……。
  21. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) なかなかむずかしいお話をなさいますが、私は、いまの国際信義を重んずるということは、条約一つでございますし、いままでのいろいろの親好もございます。いままで仲よくしていたその関係から手のひらを返すようにもう口もきかないというような状態にはなりたくないんです。また、ことに戦争の結果、暴に報いるにたいへん態度もやわらかく、戦後の処理等もたいへん順調にいった。そういうふうなことも、われわれ考えないではございません。  しかし、いまの国益ということ、それと矛盾したら一体どうなるのか、撞着はないのか、こういうようなお尋ねになりますと、それこそ私どもが選ぶべき道は、やはり最終的には何が一番日本の利益になるのか、また何が一番緊張緩和に資するのか、こういうことだと思います。私は、現状そのものが緊張を激化さしていると、かようには思っておりませんし、また現状においても、すでに中国大陸との交流は行なわれておる、かように考えると、何を心配してそこまでやらなきゃならないのか、こういう議論もあると思います。しかし、いずれにいたしましても、中国大陸に中華人民共和国のあることは、これは厳たる事実であります。したがって、中華人民共和国とももう政治的な折衝を持つべき段階にきているんではなかろうか。これが昨日来の議論の焦点でもあります。そういう際に、いままで友好親善であった私どもの友人、その間に誤解を残さないように、その間の理解のもとに、そういうような意味合いのものが進められる、こういうことが一番望ましいことではないだろうかと思います。いま言われるように、二者択一、そういう関係じゃなしに、二者両立するような道を選ぶという、そういう考え方はないだろうか。  たいへんむずかしい話のようですが、しかし、これはいまも、カナダの自由労働党と申しますか、民主労働党と申しますか、進歩保守党の党首とも会って、そうしてこの席に臨んだのですが、もうカナダは台湾問題をあまり触れないで、いわゆるカナダ方式、カナダ方式と言われるような方法で中共との、中国大陸との交渉を始めております。私は、カナダ方式、これはもうカナダのような国ならさようなこともできるかと思いますけれども、隣国である日本の場合は、中国大陸台湾二つともこれは大事だ、かように思いますので、そのいずれかを犠牲にしてというようなことはいかないように思っております。
  22. 森元治郎

    森元治郎君 どうも歯切れの悪い、調子のいい話で、どこまで北京と交際を持とうとするのか。二つ大事なんですからあまりこっちにいってもいけないんですよ、北京のほうにいってもいけない。だからいつまで……。何べん聞いても総理の話は、きのうの夕刊では、あしたにでも北京に行くようなことを言ったかと思うと、きょうはとても行ける話じゃないんですね。国民はわからないでしょうよ。  それから、総理の悪いくせは、中国と交際していることはアメリカ以上じゃないか、どんどん人も行っているじゃないかと、八億何千万ドルも商売しているじゃないかといばっておりますが、あなたがやっているんじゃなくて、みんなが、だめだというのを努力してやっているんですよ。横取りしちゃいけませんよ、それは。そころが少し調子が狂ってるんですよ。もう少し総理、これはお互いによく考えてください。  あなた及び自民党の方々及び年とった方々、ことに戦争に行った人、ことに国民政府汪兆銘の政府など、支那大陸におった人々などは、蒋介石というものと切れるつらい立場に行くのは気の毒だという強い人情論があるんですよ。それは台湾政権ではなくて蒋介石、何となく、おれが昔支那へ行ったときはこうやったなんという話、会ったこともあるという、そういう人情が年をとるとますます保守派の人は固くなるんですよ。これが案外政策に響いてきていると思うのです。これは大きな間違いですよ。若い者にはそういう方はないんですね、ドライですから。これはどうですか、蒋介石というもの個人、あるいは張群とか、死んだかどうかしりませんが何応欽とか、われわれの年輩にはなつかしい名前がある。これと国民政権というものをごっちゃにして考えて、何とか気の毒な目はさせたくないなという、こういう点がありはしないか、よくお考えを願いたいことが一つ。  ニクソンがラジオ放送で言ったことばに、中国との新しい関係を結ぶ場合に、古い友人を犠牲にはしないと言っております。もちろん、友人はオールド・フレンズと英語ではなっております。これは新聞は全部国民政府とあっさり翻訳しちゃったけれども、私は、これはやっぱり人が入っているという感じがするんです。はからずも、けさ新聞を見ると、マイヤー大使が東京青年会議所の会合で、台湾の人々にはみじめなまねはさせたくないということが前のほうに出てくるんです。一番談話のうしろのほうに議席は何とか守りたいと、つけたりです。人なんですよ、これは。だから台湾の処遇は、蒋介石日本のためによくやってくれたんだ、銅像でも立ててやれ、命ごいはしてやる、メンツの立つように、生活の立つように、これで私はよほど、この決心ができれば中国問題は前進すると思うのですが、どうですか。
  23. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま言われますように、私ども、人と政府、その関係はやはり区別して考えなければならない、これは御意見のとおりだと思います。したがいまして、それらの混淆はないと、かように御了承をいただきたいと思います。条約を結んだのは、別に個人と結んだわけじゃない、それは国としての結び方である。  また、ただいまのニクソン大統領の言に触れられて、オールド・フレンズ、それを犠牲にしてと、こういうようなことはないということ。これもそれなりに、ただいまの森君の御意見どおり私も理解してしかるべきだと思っております。とにかく、私ども、やっぱり過去において暴に報いるに徳をもってするというそのことばはやはり耳の底に残っておる。こういう点も、これは無視できないというか、やはり人間は感情の動物でもありますから、そういうこともございます。しかし、こればかりが先ほど来の議論を構成しておるもとでないこと、これはひとつ御理解いただきたいと思います。
  24. 森元治郎

    森元治郎君 これは案外無意識に中高年層を支配して、これがやはり政策形成の大きな力になるんですよ。これは知らない知らないと、無意識に。これはやっぱりはっきり区別すべきだと思うのです。  私は、総理に言いたいのは、そういう観点から中国五千年の興亡の歴史を見た人々はわかると思うのです。大義親を滅すという向こうのいいことばがあるじゃないですか。大義は親まで殺すような、親を滅す、この決断が私は日中問題解決の一つの大きな力になると思うのです。もう理論的に、十分国民政府は正統な代表でないという条件はそろって、北京政府が十分の条件を備えていることは、もうぺちゃぺちゃしゃべる必要はないくらいわかっている。それだけが私は大事だと思うのでありますけれども、関連があるそうだから、ちょっとやってください。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 関連でお尋ねしたいことは、昨日、衆議院で楢崎君にお答えになった、条件によっては訪中してもよいと、こう言われたのは、対中国に対する公式の呼びかけと理解してよろしいのかどうか、まずそれをお伺いいたします。
  26. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん、国会の場で私が話したことでございますから、このことが具体化されることが一つの公式の呼びかけだと、かようにとられてしかるべきだ、かように思います。  もちろん、私どもは、ただいま野田訪中団と申しますか、自民党からもそういうものを送りたいということで、いろいろアプローチしている最中でございます。こういう事柄をもあわせて、ただいまの私の発言を御理解いただきたいと思います。
  27. 森元治郎

    森元治郎君 また、振り返って、過去の経緯理解されればというのは、総理がきのうお話しした腹の中は、国会、テレビ、ラジオを通じて中国の人も聞いてくれよというような意味で言っておられるのか、だれか人が行ってこういうことを言うのかということが一つと、過去の経緯理解されるということが、私どうしても理解できない。やむを得ず台湾とこういう平和条約を結んだという、その経過を話せば……。それからどう理解するのですか。単なるぐちになりはせぬですか、二十何年か前の。一九五二年。ぐち以外にないと思うのですよ。過去の経緯を御理解願えれば——やむを得ず台湾とこういう事情で結んだんだと、この、御理解願えればというのが、どうしても私わからないのです。新聞をいろいろ読んでみました。もう一ぺん経緯を御理解願えれば、経緯理解すれば……。向こうだってわかっているでしょう。十分知っている。ああそうですが、わかった、よしと、そういう経緯はわかったと。それじゃもうオーケーで、そうですが、わかってくださるならばあなたを唯一の合法政権承認しましょうと言うのですか。そこが私どうしてもわからぬのです。これ、お願いします。
  28. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、なかなかそう簡単なものではないと、かように思うのです。これは、両国の間にいままで交流がなかった。そういう結果、お互いに認識不足の点があると思います。そういう点を十分説明しなければならないと思う。これが基本的な立場で、まず同一の土俵に上がって話をすることが必要だと思います。過去のいきさつにおいて、おそらく、日本の軍国主義、軍国主義者の歩んできた道、これがずいぶん非難を受けるだろうと思いますけれども、それに対しては、やはり新生日本の姿を十分理解してもらいたいし、過去のことは過去のこととして、そこらで線が引けるかどうか。私どもは、当時の正統政府である国民政府講和条約を結んだと、かように考えておりますが、いまなお戦争状態は続いているんだと、かようにいわれておる。こういうような事柄理解してもらわないと十分できない、うまくいかない問題じゃないだろうかと、かように思います。
  29. 森元治郎

    森元治郎君 どうも私わからないのは、そのくらいのことは、向こうだって、意地悪でなければ、歴史の本を見ていれば、当然わかることでね。過去の経過は。ただ日本の実情はこうでございます、御理解くださいと言うだけの話では、それだけで終わってしまう。やはり中国と国の関係を正常化していくんだと、その腹の中には、唯一の合法政権だということを秘めてお互い関係を正常化しようというのでなければ、何ぼ過去のぐちを述べてみたところで、何ら進歩しないと思うのです。  そこで、こういうことで一番大事だと思うのは、台湾政府の説得ですよ、いまは。だれもやっていない。最近、台湾に対して世間は実に冷たい。商売人もなかなかこのごろは金も貸さないし、進出は抑制する。中国のほうに向かっては、もう一生懸命準備している。日華協力委員会では、何だか、オブザーバーは来ないでもいい、来ないでくれ、少人数でじっくりやるからと矢次君が会員に言ったとか、みんなそれぞれ、よそよそしくなって、寄りつかなくなるのですね。これが現状じゃないですか。アメリカも冷たい。冷たいらしい。向こうから来る情報はみんな冷たい。日本も、ここではなるほど日台関係を大いに、信義信義と言っていますけれども日本政府だって冷たい。台湾にとってはどう感じますか。うまいことばかり言っていると。国府の議席を守る、守らなければ流しちまう、これではいけないので、これは、日本が隣なんですから、アメリカとは違う。利害関係はずっと緊密。だれが行くか、どうやってしゃべるかは別として、天下の大勢を説いて、君には不利である、しかし、もともと中国一つという君にとって、弱い台湾が本土の治下に入り、りっぱな中国として伸びることはあなたの最終的念願にかなうのじゃないかという話を、これはもう声涙ともに語って、まず台湾を説得して、蒋介石の気持ちを静めてやり、時勢にじょうずに流し込んでいく、これが日本のとるべき態度ではないかと思うのです。いまのところは、頭の上のほうで、議席はどうやって守りましょうかとか、追い出されない手立てはないかといったような、本気でもないような動きはとるべきじゃない。これ、やるつもりはありませんか。
  30. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、ただいまの森君の御意見、全面的に賛成でございますし、また、そういう意味でも私どもほんとうにアジアの平和のために努力していかなきゃならないと、かように思っておりますし、また、そういうことをすることが、先ほどの、まあ暴に報いるに徳をもってする、同じような考え方じゃないだろうかと、かように思っておりますし、そういうような点で、さらに緊密なる連携をとる必要があると、かように思っております。私は、緊密なる連携をとるということをいままで申しました、関係国との。それは、申し上げるまでもなく、友好国との緊密なる連携、そのうちの一つだと、かように御理解いただきたいと思います。
  31. 森元治郎

    森元治郎君 これこそ、ほんとうに国際の信義だと思うのですね。いま総理がおっしゃられたから、私の気持ちは十分伝わったと思うので、これさえできれば、秋の国連総会などもお互いのメンツを立てながら、代表権問題なども、あるべき姿に方向づけられるのじゃないかと思うのです。  そこで、野田武夫君の訪中とか、あるいは北澤直吉君がアメリカへ行くとか、あなたのおにいさんの岸さんが行くとか、たいへんにぎやかになりましたが、野田さんが行くというのには総理はもちろん使命を託されたのだと思うのですが、あるいは総理関係なしに、党の政調会だといって行くのだといったようなことなのか、打診なのか接触なのか、ここらのその気がまえはどうなっているのか。党内には、塚原君じゃないが、百家争鳴だなんといって、三百二人が一人一人みんな意見が違うようなことを言っておりましたが、そうやって、確たる方針もないのに何をもって話をするのか。「過去の経緯を御理解願えれば」みたいな調子で行くのか。政府と党との間に差はないのか。その間をお聞きしたいと思う、
  32. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 野田君の訪中、これはだいぶん前に計画されました。そうして諸準備は進んでおりましたが、まだなかなかそのアプローチの方法等について十分の検討がついていなかったと、そういうことで、こちら側で用意はしておりましても、相手方に十分その意向が伝わっておらないと、こういう難点がありました。また、それが最近になってそれでは進んでおるかというと、私どもは、現段階におきましてもなおその点では十分の見通しが立っておるわけでもありません。しかし、私どもは、私の昨日の答弁等をも含めて、これが実現してくれるならたいへんけっこうだと、かように実は思っております。したがって、国会で申すことですから、アプローチは案外要らないかもわからない。このこと自身をそのまま評価してもらえば、また受け取ってもらえばいいことのようにも思えます。したがって、野田君が出かけるということになれば、両国の関係の深いいろいろの問題について忌憚のない意見の交換をされるだろう、またそのことを期待する、これが現在の私の考え方であります。
  33. 森元治郎

    森元治郎君 これは、本来なら、キャビネットミニスターというか、閣僚ですね。向こうからしてみても、話す相手がその政府の政策を拘束する責任のある人だとなれば、これ、本気になりますが、これは日本人の悪いくせで、つてを求めて、ほんとうのところはどうなんだといったような聞き方、これは中国あるいはソビエトというようなお国柄には通じない。紋つき・はかまでしゃべるようなものですから、私は、日本人と周恩来の話しておるところの姿を想像すれば、イギリス公使のパークスと、ちょんまげのさむらいがしゃべるように四角ばってやっているのだろうと思う。四角ばった話をするには、やはり責任ある閣僚、まあ総理が行くまで煮詰まっておらなければ外務大臣でもよろしい。だれでも適当な人が行って初めて向こうも話を聞く気になるのじゃないか。これは、成功することはないし、呼ばれることもないだろうと思うのです。いかがですか。
  34. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 野田君は実は党における長老であります。また、その方面の検討もいろいろいままでしていただいていた方でありますし、また、今後もさらに深入りされる方であります。したがいまして、私は、ただいまの閣僚もさることですが、野田君はそういう意味では十分使いするに値する方だと、かように評価してしかるべき方であります。私はこれを尊敬しておりますし、そういう意味では野田君の出かけることは適当な人だと、かように思っております。
  35. 森元治郎

    森元治郎君 なかなかそう簡単なものではなく、これは恥さらしにならねがよいがと心配をしております。  そこで、時間もありません、最後に中国代表権の問題ですが、国連総会では従来反対であった日本さえ、喜んで中共を迎え入れようと、こうなりましたから、中共の復帰は完全にできることだと思う。問題は国民政府のあり方ですが、アメリカは、あるいは日本政府も、国民政府の議席は何とか守りたいと言っております。一体どうやって守れるのか。私は守れないと思う。中国の合法的政府が安保理事国になり、そして、どこの国だかわからないような台湾が、また中国ですといって存在することはできない。これについて総理態度を明確にしないで、きのうの予算委員会では、国民政府の追放というのはどうかと思うと、非常にややこしい御答弁がありました。どうかと思うというのは、どうなんですか。これはもう、総理の話を外国語に翻訳しようと思ったら、できませんぞ、これは。あなたの通訳をやる人は、よほど、西山君のような名人ぐらいでなければできません。「どうかと思う」——いいようでもあるし、悪いようでもある。この点、ひとつ、はっきりしてください。
  36. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 簡単に追放に賛成しないということでございます。(「関連」と呼ぶ者あり)
  37. 森元治郎

    森元治郎君 そこで、進みますが、国連にとどめおく名案といったようなものが一体あるのかどうか。ただ置いておきますといって待っていてもしかたがない。私は一つのサゼッションをしますが、やはりこれは、中国の合法政権北京、あるいはその北京二つの議席を与えるようなことも便法であろうと思う。もちろん、台湾中国の領土であります。もちろん。しかし、多年の功績によるというか、何というか、すわっていてもいいというぐらいならば、これは、中国は内政の問題として、議席の一つふえることは悪いことでもないし、そこらの処遇がいいところじゃないかと思うのですね。ただ追い飛ばしてしまうばかりが能じゃないと思う。この点を伺って、関連に譲ります。
  38. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの御意見を私も参考にして結論を出したい、かように思っております。
  39. 藤田進

    藤田進君 関連。国連代表権に関することの直前までのことについて、お伺いいたしたいと思います。  昨日までの従来の総理の御主張を整理してみますと、中国一つだと。中国一つだと私もそう思っている。その「一つ」は、これは私ども総理一つという、その一つはどこかということを考えてみますときに、要するに、これは台湾政権である、日華条約が結ばれているという過去の事実を強調されている意味において、現時点においてもこれは台湾政権である、これが総理の「一つ中国」であるというふうに思います。間違いがあれば御指摘をいただきたい。しかも、二つ中国は、どちらも、一つだと言っているのだから、両者でひとつ話し合って円満に一つになってくれればいいということが言われ、過去における国共合作というような期待を持っておられるようにも思う。しかし、これはいずれも、近い将来に実現することのない、期待可能性のないものと私は思うわけであります。したがって、重要なアジアの平和、日本の平和を考え、国内の経済その他を考えるときに、佐藤さんが、はたしていわゆる中華人民共和国との間に国交を正常化する、こういうおつもりがあるのかどうかというところに、実は国民も大きな疑問を持っていると思います。何らの前進はない。それは、アメリカが頭越しに中華人民共和国との間に話し合いを、ニクソン中国を訪問するというこの状態に立ったときに、なおかつ非常にかたくなな外交方針を持っておられるように思うのであります。これでは私ども国民としては納得がいかない。日本をどこへ持っていこうとするのかという心配があります。そこで私は、いま羽生さんからの関連質問によって明らかになったことは、昨日の衆議院における中国訪問の一節は、これは公式な呼びかけであると、まあ言われておりますが、この可能性というものがあるかどうか。つまり、台湾という一つ政権をこれを確固たる信念としながら、一方、北京政府との間にそういった外交交渉が、国会を通じての呼びかけという姿において可能性があるかどうか、私は不可能だと言わざるを得ませんが、しかし、可能性のない呼びかけというものは一国の総理としてあり得ないと思うのであります。この可能性について具体的にその内容をお聞かせをいただきたい。そして、呼びかけに対する具体的な総理の持っている外交路線について、台湾一つ中国ということ以外に、何かここに打開の道がなければ、北京訪問もあるいはその糸口さえつかみ得ないのではないだろうか、こう思いますから、総理に、たってひとつ、ここのところはもっとわかりやすく、その可能性について御答弁をいただきたい。  外務大臣にお伺いいたしますが、公式な、総理国会を通じての呼びかけだと言われますが、これを受けて、外務大臣とされては、どういう具体的、潜在的、あるいは顕在的な外交交渉に移ろうとするのか、この方策についてお答えをいただきたいと思います。
  40. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 訪中の可能性云々をここで議論いたしましても、しかたのないことじゃないだろうか、かように私は思いますので、これは藤田君が可能性はないとおきめになればそれでけっこうです。私は私として、いろいろあれやこれやと考えておるのですから、それをまた一々申し上げることは、現段階において申し上げるということは、かえって紛淆を来たすだけです。国民は、もっと簡単な、素朴な表現のほうがわかりやすいのじゃないか、かように思っております。この点は御了承いただきたいと思います。
  41. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 御承知のとおり、今回キッシンジャー補佐官が訪中いたしまして、それによってニクソン大統領訪中の道が開かれた。たいへん日本アメリカの従来の政治的な接触の段階では根本的な格差があることはもう御承知のとおりであります。しかしながら、ただいま総理が申し述べましたように、ある時期に総理自身が訪中される、私は決して可能性のないこととは思いません。まあしかしながら、それまでにおける各種接触ということがきわめて必要であることは、もう御理解のとおりでございますので、あらゆる接触の場を通じてそういうことを実現したいと、こういう努力をいたしたいと思います。
  42. 藤田進

    藤田進君 まだ、こたえがないですからね。なるほど総理は、あれやこれや呼びかける以上は考えている、こういう御答弁でございます。国民はむしろそういうことを言わないほうがよくわかるんだと言われますが、昨日の発言以来のいろいろの論評を見ましても、単なるゼスチュアにすぎないのではないだろうかという酷評さえあります。したがって、そうでない総理の信念、基本的な考え方についての変化といいますか、呼びかけという大きな問題提起をされたわけですから、このように考えるということがあれやこれやあるとすれば、そのプリンシプルについては、ぜひひとつお聞かせいただきたいと思うんです。そうでなければ、単なるその場限りの、従来の台湾政府、これを一つなりと規定しながらニクソンもやることだし、何かこれをまねたような呼びかけをしたにすぎないという、こういう論評があってもやむを得ないと思うんです。幸いに、いまあれやこれや考えているということですから、その具体的考えの上に立った、非常に深い配慮のもとに言われた呼びかけだとすれば、参議院におけるこの委員会において、このように考え、呼びかけをしている、これにこたえてもらいたい、中国がですね、あるいは野田訪中についてはもっと早くこれが具体化されるようにという、一歩進めたここに説明がほしいと思いますので、ぜひお聞かせをいただきたい。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 藤田君は、もうそんな見込みはないときめつけておられたんじゃないですか。私に、なおその上お聞きになろうとするんですか。私は、先ほど、あなたのお見込みはお見込みでよろしいと、かように答えたばかりでしょう。
  44. 藤田進

    藤田進君 いま総理が言われた。
  45. 古池信三

    委員長(古池信三君) 藤田君に申し上げますが、これ、関連ですから、簡単に願いたいんですが。
  46. 藤田進

    藤田進君 台湾一つだとおっしゃるんでしょう。しかし、呼びかけは公式だと、いろいろ考えていると、いうことになれば、従来よりは変化がなければならぬと私は思うんです。台湾一つ政権なりということでは北京政府は受け付けないんです。従来の主張を見ますと、受け付けないんです。ですから、これに変化がなきゃならぬ。台湾が唯一の政権なりと規定してしまったならば、これは私は不可能だということを申し上げておるんです。しかし、そうではないという総理立場である以上、ここに何らかの変化がなければ北京政府との接触すらもむずかしいんじゃないでしょうか、どうでしょうか。
  47. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ関連質問ですから、それはもうお見込みどおりでけっこうだというので私は打ち切ったんですが、なお重ねてお尋ねだから申します。  いま、しかし、御承知のように、米国ニクソン大統領、これが訪中をする、北京を訪問する、そういう場合の条件は明確になっておりますか。なっておらないでしょう。そういうことを踏まえれば、話の都合によっては、ただいまのようなことも実現は可能ではないかと私は思うんです。私は、いまもう、中国自身が文化革命が終わって、そうして積極的にやはり国際社会の一員として活躍するという、そういう時代が来ていると思います。やっぱり隣の国同士がつき合う、話し合う、これは自然の道だと思います。私は、そういう意味で、中国の新しい路線がいま開けつつある、かように考えますので、藤田君と私とは基本的な認識が違う、そういうことを申し上げたいのです。
  48. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと一点だけ簡単に。  いま総理のお話がありましたように、ニクソン米大統領の訪中も、必ずしも一〇〇%すべて、あらゆる問題につき——たとえば台湾の問題、ベトナムの問題等、あらゆる問題について一〇〇%合意があっての訪中では必ずしもないので、おおよその方向はきまっておっても、最終的詰めはまだできていないと思う。そういう意味で、台湾問題についての日本政府考え方中国全体の問題についての考え方が一〇〇%いま転換しておる、また転換しての発言だとは私は思いません。それは、従来の方針は、いま藤田君が指摘されたように、かなり堅持されており、急に変えるとは思えない。しかし、それにもかかわらず、もし総理訪中呼びかけが公式のものであり、向こうも、かりに、もし受け入れて、その話し合いの過程の中で日本がいろいろ自分たちの考え方を言う中であるいは変化もあり得る、そういう意味では、真剣に中国が招請するなら自分は応ずるという、そういう、単なる思いつきではない、本質的な考え方理解してよろしゅうございますか。
  49. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま藤田君に答えた最後のくだりですが、隣国同士の国がいまのような状態、この不自然さは私どもは積極的になくしなければならない、これは、過去の戦争をした、また中国大陸国民にずいぶん迷惑を与えた、こういう立場に立てば、そういうことは当然だと思いますが、私は、おそらく中国自身も、今後国際社会に復帰してさらに活躍しようと、かように考えておるに違いないと思う。その意味においては、同じような気持ちで話し合いができるんではないかと思います。どうも私さっきのにこだわるのは、藤田君が全然見込みのないことと言われたから、そういう意味で私ははっきり申し上げるのでございます。いま羽生君の言われるとおり、私は、私どもが真剣にこの問題に取り組んでおるその姿は、十分中華人民共和国においても評価されてしかるべきだ、かように思います。
  50. 森元治郎

    森元治郎君 最後に。政治は、きょうのことばかり考えていてもだめなんで、やはりことしの秋にこの大問題が一応の決着がつくでしょう。国民政府の処遇はどうなるかは未確定としても、大きな方向はできる。日本はやはり当面のことばかりじゃなくて、北京が唯一の合法政府となったような事態をいまから予測して、あるいはニクソン北京との話し合いによって相当関係がやわらかく、密になるようなことがあれば、台湾海峡から引くこともあるだろうし、防衛の義務についても何らかの手が加えられるかもしれない。やわらかい雪解けムードが出るかもしれない。そうなるだろうと思う。そこで私は、こういう情勢を早くもみとって、総理大臣としては、二国間の集団防衛体制ということもいままでやってまいりましたが、より包括的な、アジアにおける安全保障の体制というようなものも、中国を入れ、アメリカ日本もみんな入りという、われわれがかねがね言っているような包括的な組織というものについても早くも勉強される必要があるんじゃないか。ただ入ってしまったらいいんだというだけでは、これはもう外交としては非常に足りないと思うんですが、どんなふうにお考えになりますか。
  51. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 森君の言われるとおり、広範にわたって私どもは用意しなければならない、かように思っております。まず第一、ニクソン大統領訪中がいつ行なわれるか、来年の五月以前ということでございますが、これは一体いつになるか、ことしじゅうにも、あるいは秋口にもそういうことが行なわれるという、うわさも立っております。またあるいは、積極的に承認の時期はいつか、こういうような話も出ておる。また、そういうことをも踏まえながら、いまの台湾問題、これが必ず解決の方向に向かうことだ、おそらく出かければそういう話になることは、これは当然であろうと思う。しかし、いまここで、国会で、台湾の帰属問題が云々されますが、これはお尋ねではございませんけれども台湾の帰属問題は、私どもが権利権原を放棄し、そうして国民政府がそこにいるのですから、いまさらどこに帰属するも何もないと、かように私は思っております。国民政府北京政府も同じように中国一つだと言っておる限りにおいては、これは中国のものだ、かように考えるべきだ。私どもは放棄したので何も申すことはございません。しかして、いまのこの日華防衛条約、これが一体どういうような扱い方を受けるか、これは一つの問題だと思います。おそらく私は、北京においても、日華——日華じゃない、米華。間違えましたが、米華防衛条約というものをどういうように扱うかという、これも一つ考えておかなければならぬと思います。しかし、その場合日本が肩がわりするんだということがしばしば言われますけれども、さようなことはございません。これはもう、日本の憲法から申しまして、日本自身への侵略に対して防衛こそすれ、専守防衛の立場、これをくずすようなことはございませんから、これは何らかの誤解を生じないように願っておきたいと思います。  私は、さらにまた、日本中国、その間で、いままで出かけられた方々から、不可侵条約を締結する用意ありというようなお話も聞いております。それなども、将来の緊張緩和、あるいは両国の安全確保、そういうような意味に役立つ一つの具体的な提案ではないだろうか、かように思っておりますが、あらゆるものを検討すべき段階に来ている、これは御指摘のとおりだと思います。  なお、私どもの考えの及ばないような点については、さらにいろいろ御注意もいただきたい、かように思います。
  52. 森元治郎

    森元治郎君 やはり、こういう機会をとらえて即応する体制が必要だと思う。よい方向ですから。アメリカが、ニクソンが、これから中国との関係がどうなりますか、ベトナム問題、台湾、韓国問題をはさんで、なかなかむずかしいとは思うが、平和への方向に苦労し始めたということは大きな点だと思う。これとわれわれのいわゆる日米安保条約というようなものも考えてみますと、とかく政府はこれにもたれかかって、太平洋を見ても中国沿岸から東のほうだけを心配して、西側はあまり好きでない共産圏だというようなことで、さっぱり気を使わなかったが、今度は東西が交流するようになり、東西を区別している線のようなものがなくなるわけですから、例の、問題になっている安保条約極東条項などが動き出さない情勢をつくることも大事です。これは、いま政府の考えている四次防なり何なり、そういうほうにも影響をして、平和への方向に向かえるように十分配慮をしていくことが大事です。初めが大事ですから、中国国連加盟ができた、そのままぽっとしているととんだことになりますから、目を東西によく見渡して、日本の安全が確保されるように、繁栄がもたらされるように配慮されることが政治家は一番大事だと思う。  私は、きょうはいささか献策するようなことのみが多かったようであります。これをもって私の質問を終わります。
  53. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろ建設的な、また、政府の足らない点を御注意くださいまして、ありがとういたしました。厚くお礼を申し上げます。
  54. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもちまして森君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  55. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、戸叶武君。
  56. 戸叶武

    戸叶武君 私は、日本社会党を代表し、森君の質問に引き続いて、いま問題になっている点から質問を行ないます。  ただいま、ワシントン二十一日発、毎日特派員から、米国の上院外交委員会は、二十一日、中国封じ込め政策の一つの根拠とされている一九五五年のいわゆる台湾決議を廃棄する上下両院共同決議案を全会一致で採択し、本会議に送った、との電報が入りました。  先ほど佐藤首相は、台湾問題に関して、きわめて慎重過ぎるような慎重な発言でございまして、しかも、その問題にも若干触れたのでありますが、日本は、現在米台との間に結ばれているこの決議というようなものに対してアメリカがこのような態度をとるときに、日華相互防衛条約があるが、今後それをどういうふうに取り扱っていくつもりか、まず第一に承りたいのであります。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日華防衛条約というものはございませんが、先ほども私ちょっとことばを間違えて、森君からむしろ注意されて、米華防衛条約と、かように申したのですが、これもやはり米華ではございませんか。日華ではございません。ありません。
  58. 戸叶武

    戸叶武君 米華防衛条約であります。どうぞそれについて御説明を願います。
  59. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、米華防衛条約もあるし、そういうものは一体どうするだろうか、こういうことも先ほど触れただけでございまして、これはもちろん私ども当事者ではございませんから。ただ、この米華防衛条約を肩がわりするような日本ではないのだ、そのことだけは、はっきり申し上げておきます。
  60. 戸叶武

    戸叶武君 私がいまお尋ねしたのは、アメリカが、毎日朝になるごとに考え方を急速に変えて、この激動変革の時代に対処しようと備えているときに、何か、日本の外交というものがアメリカ側の顔色だけを見て、それにどういうふうに順応しようかという動きしかしていないので、そういう点から、日本の外交の自主性を今日ほど国民全体から疑われているときはないと思うのであります。いまの米華相互防衛条約の変化が必ず起きると思いますが、佐藤首相は、台湾海峡のパトロールを中止している米第七艦隊の動きを今後どういうふうに見ておりますか。情報をどのようにキャッチしておりますか。
  61. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これからどういうように変わるかわかりませんが、ただいまの台湾海峡における緊張は緩和の方向に向かうだろう、そういうことをやっぱり前提に置くべきだ。そういたしますと、第七艦隊の台湾海峡におけるパトロール、これは非常に軽くなるといいますか、軽減される。これはまあ当然のことだろうと思いますが、そういう事柄が、これから先の問題ですね、これから、はたしてさようになるか。また、訪中を決定したが、どうも具体的には話が進まなくなる、こういうことも予想しなければならない。もしそういうことがあると、緊張緩和の方向ではなくて激化の方向ですから、私どももたいへんこれは心配せざるを得ない。せっかくの米大統領の訪中を決定したこの段階では、これが必ず実行されることをむしろ歓迎しているんだから、そういう方向でこの事態の推移を見守るべきだと、かように私は思っておるのでありまして、いわゆる緊張緩和、これこそはわれわれの望むところだ、激化の方向であっては困る、かように思っております。
  62. 戸叶武

    戸叶武君 佐藤首相は、日本の頭越しに北京との交渉を開始したニクソンの、外交的な事例によるときわめて非礼かと思われるような行為に対しても、それが緊張緩和のためにならば、世界平和を確立するためにならば、それもやむを得ないのじゃないかというような、非常な寛容な形でそれを理解しようとしてつとめておりますが、いまの緊張緩和の問題ですけれども、極東の緊張緩和において一番責任を持たなければならないのは、日本のあなたの言動だと思うのです。今日に至るまでの国会における論議の過程において佐藤さんがいま堅持しているような考え方で、北京であなた並びにあなたの使節を簡単に受付けると思うかどうか、これはあなたの考え方一つのテストケースですが、お答え願います。
  63. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どういう点がいま受け入れられないと、かようにお考えでしょうか、その点を御説明いただかないと私直ちに立ち上がってお答えもできないようでございます。
  64. 戸叶武

    戸叶武君 それでは具体的に申し上げます。  すでに公明党の方も、公明党の人たちが正式の使節を送って北京で打診した一つ考え方というものも、あなたにも国会で伝えているはずです。公明党だけではありません。けさの新聞を開いて、中国側の基本方針というものをあなたならきっとお読みになっていると思います。周恩来首相は北京訪問中の米大学代表団に対して、まっ先に解決されなければならないのはインドシナ問題であると指摘し、次いで米中関係の正常化のための障害として、台湾日本軍国主義、韓国の三つをあげておるのであります。台湾についての六項目の主張は、私がここで説明しなくても、新聞にありますからすでにあなたも御承知だと思います。御承知だとするならば、あなたの言うような言動では中国側は断固として受け入れないという態度を表明しているんじゃないですか。そういう態度を表明しているのにさからってあなたが今日のような言動をやる限りにおいては、極東の緩和に役立つための佐藤首相の言動とは中国側は受け取らないと、私はこう思うのですが、今日の新聞を見て、あなたは何を考え、何を決意したか、それを承りたいと思います。
  65. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 両国の交流がとだえていると、かくも事態の認識をお互いに欠くものか。これらの点は、やっぱり事実を事実として新しく再認識、認識を改めることが必要だと、かように基本的に考えます。そのことなくして話し合いはうまくできるわけではありません。ここらに非常な誤解のあること、その点をぜひとも理解していただきたいと思います。  私は、日本が軍国主義化していると頭からきめつけられることについて、非常な不満がございます。これをどうして解けばいいのか、その事実は、私どもが平和に徹しておるその姿をやはり行動の上であらわすべきではないかと思っております。発展途上国に対する援助などは、そういう意味において役立つものだと、かように思っておりますし、他国に脅威を与えない自衛隊の整備計画、これなどもその整備計画を十分理解していただきたいと思います。そういう点でずいぶん思い切った事柄をこれからもやっていかなければならないのだと、かように思っております。
  66. 戸叶武

    戸叶武君 私は、ただいま答弁に立っている佐藤さんのお顔をしばらくぶりで拝見し、やはり苦悩の限りを尽くしているなという感じをいたしました。私は、このことは、やはり政治的な立場を異にするけれども、そのあなたの苦悩をもっと意義あらしめてもらいたいと思うのです。それには国会において今日私たちが論議していることは世界に伝わっておるのであります。そこから日本の真意を、中国アメリカもくみ取ろうとしているのであります。台湾ももちろんそれに含まれております。あなたが中国に出かけて正常な状態、それは中国承認問題を含めて、両国間の話し合いをやってもよいということを表明しましたら、私は、その心境はりっぱだと思います。その決意に至るまでに、もっともっとあなたは寝られないほど苦しんだと思います。ほんとうにそれならば、とにかくお互いの誤解というけれども中国側ではいいかげんな発言でなく、中国側の考えを、たとえば公明党の人に対しても、あるいはアメリカの大学の代表者に対しても率直に述べておるのです。あのような発言がどういう形においても公的な形であなたから出ない以上は、私は野田君が行くにも行けないと思うのです。向こうでも呼びたくても呼べないと思います。やはりほんとうの真意が那辺にあるかというのは、相手側の態度を探る前に、みずからの心境を率直に披瀝してのみ相手を動かすのであって、すでに権謀術策的な外交はくずれているのです。古い外交の間違いをおかしてはいけない。コンサバティブの一点を守り抜いてきた外交は何の役にも立たない——音を立てて崩壊しているじゃありませんか。もっと平常な態度で、すなおな心で相手にぶつかっていってこそ、佐藤さん、あなたが団十郎呼ばわりされるのです。そうじゃなくて、ただ小手先の小細工をやっているという印象が強いところに、ことばの関係もありますが、あなたの誤解が生まれているのです。ニクソンとの会談における繊維問題もそうではないですか。アメリカ関係から生まれた不信を、あなたのおにいさんの岸さんが行ってみてもどうにもならない。やはり、あなたが率直にものを語り、イエス、ノーをはっきりし、間違いは間違いとして認め、自分は過去においてこういう発言をしたが、こういう考え方に変わった。いまのニクソンのやり方は無礼なところもあります。粗野です。しかしながら、まっすぐにぶつかろうという態度が、キッシンジャーを通じて中国側のとびらが開けたのじゃありませんか。あなたはいままでの言動によって、守りの一手を外交においてやっていたから、相手がやはりとびらを開かないのです。ぶち当たることです。突き破ることです。あなたはこのままの姿でいったら、弁慶の立ち往生よりも悲劇ですよ。総理大臣を何年やったなんていうのは何にもなりゃせぬ、つまらぬことです。そんなことを考えずに、あのとき恥をしのんで民族の憂いをになって、日中関係というものを正常化させなければならないために、佐藤榮作は恥も外聞も捨てて中国を訪れたというほうが、変な瀬踏みをしているよりもりっぱであり、相手の心を動かすと思うのであります。日本は、一度ほんとうに手をついて中国七億五千万の国民に対して、すまないことをやった。いまその悪いめぐり合わせであなたは総理大臣になっているのだが、だれか正式に国民に訴える人がなければ、毛沢東、周恩来がどうかじゃない、中国国民の心のとびらは開かれないと私は思うのです。そういうふうな形において、私は、佐藤榮作さんが顔形だけじゃなく、やはり心もなかなかいいという声があがるぐらいな、革命的な態度が、いまこそ必要だと思うのです。革命は何も古い形の暴力革命ではない、心の革命である、民族の真心をぶっつけることです。私が一九六〇年の安保条約阻止国民会議訪中代表団として、あの十三団体のカンパニアの代表として行ったときに、中国側が日本とのブリッジの役割りを果たす人はどのような人を模索しているかということを言ったときに、即座に村田省藏さんのような人はどうですかと言ったので、村田省藏さんのどういうところに感心したかと言ったら、あの人は信義を守る人です、がんこなナショナリストであるが、日本の利益を守るためにはがんこ過ぎるほどがんこな人であるが、一たび話し合ってまとまったことに対しては、責任を持ってそのことを行なうという人です。この日本のさむらいというか、昔の美しき心を持った時代のさむらい根性を持っていたから、村田省藏さんというものを高く評価しているのであります。ことばじゃないです。技術じゃないです。外交辞令じゃないんです。それを乗り越えていくような真心がいま示されなければ、私は、日中関係のこの凍りついたような関係をほぐすことはできないと思うんです。  あたな、やりなさい、いま。沖繩国会なんかをやってからじゃおそ過ぎます。沖繩批准の問題によってゆがめられた後における国会日本の体制を代表して行くのじゃおそ過ぎます。沖繩で戦争は終わったのではないです。日中関係の正常化が行なわれない限りは、アジアの平和はもたらされないのであります。沖繩を乗り越えて、アメリカを乗り越えて——アメリカだってニクソンが行くと言いながらも、ことしじゅうにはなかなか行けないでしょう。あるいは行くかもしれない。そんなことはどうでもいい。佐藤榮作は、今度はニクソンを乗り越えて、沖繩国会の前に中国を訪れる。このことは晴天へきれきのごとく世界の人々の心を打つ。原爆じゃない。人間の真心以外に平和を保障するものはない。このざんげの姿があなたの恥じゃない。民族を代表しての日本国民のざんげの姿が中国を動かす以外に動かすものはない。そういう決意で私はこの問題にぶつかってもらいたいと思う。  あなたの顔を見ていると、もみくちゃになって見ちゃおられない。ほんとうに私は苦悩の限りを尽くしていると思うから、そういう形における悶々の情によって属僚の雑念に支配されることなく、日本佐藤榮作という政治家があった。悪いこともやったが、いいことをうんとやったと言われるぐらいな、そういう土性骨を持ってもらわれんことを私はお願いし、それに対するあなたの御心境をお聞きしたいと思います。
  67. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの戸叶君のお話は、もう全部私は感激をもって聞いておりました。おそらく当委員会の各委員も、たいへん熱意のある政府鞭撻の声と、かように承ったと思います。私は何よりも、そのお話の中にありました、人間としてやるべき事柄、それに対して勇気を持てと、このことばにたいへん感激を覚えたのであります。私はただお礼を申し上げるだけでございます。ありがとうございました。
  68. 戸叶武

    戸叶武君 このことをもっと具体的に——あなたの気持ちはわかりましたが、やはり他の人にも、私は大体わかったような気がしますが、中国の人にも通ずるような、もっと具体的な発言がなされたときには、あるいは野田君の訪問というのに電光石火で答えがくると思うのです。とにかく、あなたが行くにしても、多少は、裸でやはり行くわけにもいかないでしょうし、やはり若干の瀬踏みは必要でしょう。少なくともキッシンジャー的な役割りを果たし得る者をだれかやはり中国に送って、いままでのような外交専門家の技術的な情報活動からくる収集じゃなくて、相手の心をキャッチできる使節を送ってもらいたい。そうじゃなければ、いつまでいったところで、ああでもない、こうでもないという情報が山積するだけであって、紙くず屋が困ってしまいます、これを整理するのに。そんな紙くず屋を困らせるような情報の収集じゃなくて、佐藤榮作はいろんなことを言っているが、実際今日において迷いに迷い抜いている面があるが、ねらいはとにかく日本中国との平和を結んで、正常な姿に持っていきたいというところで苦悩しているんだ。台湾のこともいままでのいきがかりがあるが、こうこうだというふうに、はっきり心を伝える人をやはりやらなければだめです。だけど、それには、心を知ってくれといって、やくざのように胸をたたいてみても相手には通じない。やっぱり一国の総理大臣として、この国会を通じて、もっと、いますぐにというわけにもいかないでしょうが、よく考えて、相手の心を打つような、私は、謙虚な形であなたはメッセージをやっぱり発すべきだと思います。そのときにはアメリカで、あるいは佐藤榮作は無礼なやつだという声が起きるかもしれないが、あなたがニクソンの声を寛容な気持ちをもって受けとめたように、佐藤榮作は苦悩して、やはりアメリカよりも前に日本がどろをかぶってでもこの問題を片づけなければならないといって取り組んだのだ。アメリカ人がやったのでは役立たないが、日本佐藤榮作がやったことによって、局面は展開してきたのだという理解を必ず持ってくれると思うのでありまして、立場は違っても、真心のない精神というものの中からは——ことばだけの寛容の精神の中からは真の寛容は生まれてこないのでありまして、そういうことがいまほど大切なことはない。  われわれがあなたに質問しようと思っても、毎日朝、新聞を見ると、原稿を書き直さなくちゃならない。あなただってそうだと思います。とんでもないこの激動の世界にあるんですから、この革命的な変化に対処するかまえがないと——漫然といままで五年か六年総理大臣をやってきたような考え方で、熟練工的な考え方政治をやったらどうにもならないと思います。  そこで、私は次の質問に入りますが、そういうわけでして、いろいろないまの問答を見て、国連において中国代表権をどうするとか、あるいは中国一つだとか、あるいは二つ置いてもよいのだという、愚にもつかないそういう雑論議はもうよしたほうがいいです。そういう意味において、佐藤さんがいよいよ北京に飛ぶというのだから、そこで死んでもいいというのだから、これだけの決意をすれば、やっぱりあっぱれな人物だと敵ながらもほめてやらなければならないのです。しかし、それは政府のほうの考え方だから、あなた一人で日本の運命をしょっていくのではないから、これにいくまでにはやはり日本国会が初めて国会そのものの権威を取り戻して、ある意味における英知は、超党派外交と言われるかしれないけれども、政党の立場を失うものではない。各自の主張の上に立って、どういうふうに日本のかまえができたらば中国との和平が可能であるか。日中国交正常化をめぐっての衆参両院議員において特別委員会なり、なんなり強力なものをつくって、国会国会独自の形においてあなたに進言するような、ここで問答を繰り返しているだけでなく、進言できるような、初めてそういう体制ができてもいいんじゃないか。これは私個人の発言にすぎませんけれども、やはりテーブルを囲んでざっくばらんに話し合って、譲るべきものは譲って、やはり日本みずからの体制ができなくて、よそに行ったら恥をかくのです。よそへ行って嫁さんをもらうのでも、むこさんをもらうのでも、うちのせがれは道楽者で困るのだ、こうこうだといって話せば、向こうさんもわかってくれて、道楽者だけれども、うちの娘はしっかりしているから、そのことはきっと受けとめて、いい亭主にしてあげますよというぐらいな返事は出るのです。それがそういうことを言わないで、やはりきれい事だけでやっていたのでは何にもならない。政府に対してわれわれ野党は不信感があります。やっぱり国会の場においてラウンドテーブルをめぐって、いわるゆ政府から任命されたような形でなく、国会みずからの自主的態度でもって、この日本の運命、アジアの運命を将来規定づけるような大きな問題と、国会が責任をもって、内閣だけにこれを許さず、取っ組んでいくのだという姿勢がつくられ、それにあなたが耳を傾け、そうして一国の代表として行く。間違った点は、気の毒だが、あなたが責任を負わなければならない。それだけのかまえをもって——しかし、国会といえども、あなたがそれだけ、自分はここで犬死にしても、祖国のために、アジアのために平和を念願しているんだというならば、立場は違っても、あなたを犬死にさせるのはやはり気の毒な気がする。そのときに使うのがほんとうの気の毒なんです。  しかし、そのときに犬死にしても私はやるんだというところに、佐藤榮作は男でござるという世界があるのです。そういうことを一度政治家としてはやはりやってみなくちゃわからないので、あれほどの伊藤博文でもハルピンで犬死にしてしまった。あなたもこのままでいけば、やはり伊藤博文の二の舞いを踏むので、それが心配だから私は国会に伊藤博文の銅像なんか立てるなということをさんざん忠告しているのでありますが、あの銅像を無理に立てたばかりに、重宗議長の首が吹っ飛んでしまった。国会の鬼門にあんなものをやたらに立てると、日本帝国主義のシンボルとして、ハルピンで安重根のためにいまから六十一年前に殺された悪夢を他民族は思い起こすだけです。そういう無感覚さというものが今日の日本政治体制の中にまだ消えないところから、日本の軍国主義の復活と言われるのも無理もないので、あえて私は、日本の軍国主義は復活しつつあると、これは周恩来も——戸叶武は社会党の一番の右派で、穏健派といわれていますが、事、反軍国主義運動に関しては命がけです。平和憲法をあなたが変えるというなら、私は命がけであなたと戦います。それだけの気魄がなければ、空洞化された今日の議会は守れない。そういう意味で、こういうことを一言佐藤榮作さんにたたきつけたいためにわれわれは国会に来たんだから、われわれの土根性をやはりくんだ上で、あなたも少しふんどしを締め直して、ゆるふんで外国に行くと笑われるから、どうぞそういう意味において、今回の中国問題に対してはほんとうに命がけの仕事で、後世に佐藤榮作が残るのは、一番長い期間へばりついて総理大臣をやったなんというんじゃ薄ぎたなくてどうにもならない。そうでなくて、すぱっとして、あれだけの身分にありながら、やはり佐藤榮作はちょっとおにいさんとは違った、兄貴はりこう過ぎたけれども佐藤榮作はばかさがあった、こういうほめ方が出てくるのだと私は思う。このことは大切なことですよ、そういう意味で。ひとつ御答弁をお願いします。
  69. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへん、御意見をまじえて、私おしかりを受けたものですから、どれに答えていいか、ずいぶん問題があったようでございます。その中で一つ、私に特に強く残っておりますのは、平和憲法を維持するということ、憲法改正ということを私どもの党は党の綱領のうちにのせております。これは、申すまでもなく、自主憲法を持ちたい、自主憲法と、こういう形で言っておるわけであります。これは別に平和憲法の第九条を改正しようというものではございません。したがって、この点では、私は、国民の力によって、また意思によって憲法は制定されるべきものだと思っております。したがって、ただいま言われた事柄と別に矛盾はしないかと思っております。  また、参議院のあり方についてもお触れになりました。私は、これはもう院のあり方でございますから、皆さん方のお考え、やはり各党の総意によってきまるものだと、かように思っておりまして、私も自民党の総裁として、そういう意味で関心を持っておる者ではございますけれども、この際は総理としての発言は差し控えさせていただきます。  また、伊藤博文公の銅像が鬼門に当たっているというような話がありましたが、これは私、あまりお答えしなくてもいいということでございますから、これはひとつただ例としてのことだそうですから、この程度にお答えいたします。  私、答えることがどうもちょっとつかめなかったので、いまの自主憲法あるいは参議院のあり方等についての考え方でいいかと思っております。
  70. 古池信三

    委員長(古池信三君) この際、申し上げます。  戸叶君の質疑の中途でございますが、午前はこの程度とし、午後は一時再開いたします。  それまで暫時休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      —————・—————    午後一時六分開会
  71. 古池信三

    委員長(古池信三君) ただいまより委員会を再開いたします。  午前に引き続き、戸叶君の質疑を行ないます。戸叶武君。
  72. 戸叶武

    戸叶武君 日本なくしてアジアの進歩なく、中国を除いてアジア問題の解決なしという信念のもとに、私はいままで中国問題と取り組んでまいりました。私も中国問題解決のためならば北京で死にたいとこう思っております。佐藤さんに私が激しく迫るのは、佐藤さんだけにきびしく言うのでなく、いま歴史の流れの中において、日本の世界史の上における歴史的な役割りというものを果たすために、やはり佐藤さんが日本民族を代表してりっぱな見識と出処進退をとってもらいたいという念願ですが、私は中国問題に首を少し突っ込み過ぎたので、時間を取り過ぎましたから、直ちに憲法改正の問題に入ります。  憲法改正の問題に関して、先ほど佐藤首相は憲法第九条には手を触れない、自主憲法を推進する立場をとるというお話ですが、これに対しても私たちは意見があるところでありますけれども、一体、自主憲法推進という真意はどこにあるのですか。どういう点を推進していきたいのですか。
  73. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 戸叶君が長く中国におられて、中国問題について熱意を込めて先ほど来御所見を御披瀝された、また、そういう意味政府を鞭撻されたことについては、私もたいへんありがたく、厚くお礼を申し上げます。これはひとえに中国を知っておられるという、そういう結果出てきたことばのように思っております。したがいまして、国会でいろいろの中国論争がいままでも行なわれておりますけれども、やっぱりさすがに戸叶君は違うというような感じがありましたので、これは一言よけいでございますが、厚くお礼を申し上げておきます。  ところで、いまの憲法の問題ですが、すでに憲法制定の当時の状態は御承知のとおりの経過で出てきております。私どもはやはり自主憲法という、今日の実情に合った憲法をつくるべきじゃないか、かように考えますので、そういう意味で自民党の綱領にはあるわけであります。私、このことは各党においてもそれぞれ憲法との取り組み方があるように実は考えております。皆さん方もいまの状態でいいところはいい、直すべきものは直すべきだ、かようにお考えだろうと思いますので、それがどこまでもやっぱり自主的であるということ、そういうところに評価を置くべきじゃないか、かように私は思っております。なおその詳細についてはあまり深入りしないで、この辺でとどめさせていただきます。
  74. 戸叶武

    戸叶武君 自主憲法というと、いまの現行憲法が自主的憲法でないように聞こえますが、それに対してはどういう御見解ですか。
  75. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 占領下において制定された憲法であるという、そういう意味で何かと私どもいろいろ拘束を受けたと、かように感じますので、もっと憲法という限りにおいては自由濶達な意見を述べて、その上で制定さるべきものだと、かように考えるわけです。
  76. 戸叶武

    戸叶武君 国の基本法をつくるときには、必ず内外の危機の中からの苦悩の産物で、私は日本の最古の憲法——聖徳太子の十七条憲法というものを日本では簡単に評価しておりますが、ちょうどいまと同じような極端な危機に直面して、海外派兵を阻止し、戦争の中に巻き込まれることなく、そうして文化交流、技術の導入、そういうことによって日本の平和と繁栄をもたらした憲法であって、これが平和憲法の源流であると考えているのであります。特にあの十七条を包む、深い、和の政治哲学を総理大臣はぜひ勉強してもらいたい。それより六百十一年も後にできたイギリスのマグナカルタは、はるかにこれより低調なものであります。苦悩の産物としての憲法を理解しないで、自主憲法などという形において明治憲法に近い、逆戻りをしたならば、日本は最大の不幸に入ります。そういう意味において、明治憲法は、自主性のないドイツのビスマルク憲法といわれ、カイザー・ウイルヘルム一世の影響のもとに、統帥権を挿入し、日本を今日の悲劇におとしいれたところのあれは根源です。そういう意味において、私は伊藤博文の銅像のようなものを国会の周辺に建てたりすることには反対なのです。歴史はめぐってきたので、過去をどうこう言うのではありませんが、再び明治憲法をつくったときのようなあやまちに戻ることによって、自主憲法の名によって平和憲法をゆがめるようなことは断じて許されない、このことだけを断言してこれは打ち切ります。  次に私は、参議院のあり方の論議を参議院の自主的態度と内閣との結びつきにおいて問題にしたいと思いましたが、それは省略して後日に譲ります。  そこで、第三の医療保険の抜本的改正について佐藤首相並びに斎藤厚生大臣から、国民を納得させるに足る具体的な答弁をお聞きしたいと思います。今日、国民は、政府は一体何をしているのか。お医者さんのほうも一体何をやっているのかというふうに、いかりに満ちておるのでありまして、この憤りを静めるだけの一つの見識ある答弁をお願いいたします。
  77. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 七月一日から始まりました保険医の辞退問題はまことに遺憾な事態だと、かように考えます。一日も早くこれを終束をいたしまして、そうして国民の方々がいままでどおり安心して医療の受けられるようにいたしたい、かように思うわけでございます。つきましては、まず保険医辞退の理由を的確に把握をすることが肝要であると、かように考えて、医師会側の保険医辞退に至った理由をただいま聞いているわけであります。それによりまして、政府といたしましても態度を決定いたしたい。もちろん、このよって来たるところは、長年にわたる日本の医療制度、保険制度の中に内在している医師側の不満の爆発であろうと、かように考えます。健康保険の制度を含めて、医療制度の抜本的改正の必要であるということは多年言われてまいりました。去る二年前の国会、いわゆる健保国会と称せられましたが、その国会におきましても、抜本改正をすみやかに行なうべしという御意見は与野党を通じてございました。二年以内には必らず抜本改正を行ないたいという言明も、総理大臣はじめ当時の担当大臣でありました私がいたしました。  そこで私は、とにかく国民医療の皆保険というこの現状からかんがみて、先般来より、七〇年代は人命尊重の時代である、これは与野党とも合意に達している一つ政治目標であると考えます。その政治目標に合うような医療制度、保険制度を抜本的に改正をする。そうして、その気持ちは必ず医師会も同様であろうと、かように考えまするから、最終点におきましては、そういう点において妥結のできるものと、かように信じておるわけでございます。(「中身がわからぬ」と呼ぶ者あり)
  78. 戸叶武

    戸叶武君 いま不規則な野次においても、中身がないからさっぱりわからぬ。これはだれにもわからないと思います。もっとわかるように具体的な答弁をお願いいたします。
  79. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 具体的の方針はいずれ国会において御審議を願うわけでありますが、その方針につきましては、まずこの保険医辞退問題を収拾いたし、また収拾する際にどういう態度でやるかということも皆さまに聞いていただけると思いますが、ただいま、こういう方針でということを申し上げるのには、若干時日をおかしいただきたいと、かように思います。
  80. 戸叶武

    戸叶武君 総理から手があがっておりますから。
  81. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま保険医の辞退問題、これはたいへん国民から、どうしてくれる、こういうことで、私どもも気をもんでおる刻下重要な問題でございます。申すまでもなく、国民健康の維持から申しまして、また、国民診療のためにも、保険医が辞退というような事態を起こしてくれてはならないと思っております。  ところで、この抜本改正ということが取り組まれておりますが、なかなかその抜本改正にいたしましても、審議をするに際して、それぞれの団体がそれぞれの立場は主張いたしますけれども、なかなか共通した結論を見出すことができない。どうも気に食わないから脱退するとか、こういうような事態が起きて、医療審議会でも三者構成が三者構成としての成果をあげておらない、こういうところに実は一つの困った問題があるわけです。いまの、政府は何をしておるかというおしかりも、また、これは当然受けることであります。そういう意味で、政府皆さん方の御鞭撻をありがたく受けて、そうして前向きでこれと取り組む姿勢でございます。しかし、やはり何と申しましても、この構成しておる三者それぞれの立場、その立場にこだわることなく、大事なのは、受診——診療を受ける国民だという、その国民だということを考えれば必ず一致するのではないだろうか。国民、これを中心にしてものごとを考えていく、そうして国民の健康を守るのだ、こういう立場に立てば必ず意見が一致するだろう。かように考えますから、過日の本会議においても、政府の姿勢はそれで申し上げたとおりでございます。今後とも、この姿勢をくずすつもりはございませんけれども、しかし、各界各層の方々の保険に対する御理解をそういう意味で積極的に望んでおる、こういうことでございます。
  82. 戸叶武

    戸叶武君 タイム・イズ・マネーということばがあるが、これは人間の命に関係のある問題です。人間尊重の中で一番大切な問題を二年間もかかって、いま総理大臣答弁だと、受診者——国民を中心にものを考えれば必ずまとまると言うが、二年間も考えてもまとまらないような無能な厚生大臣をいままで総理大臣がやたらに選んだ責任がありますよ。時間を聞きたいのです。時間的にもう急を要するのです。もう病人が死んでしまうか、死んでしまわないかという急を要するのに、厚生大臣あなたは守りはなかなかかたいが、守りじゃなくて、進んでこの問題をどういうふうに時間的に片づけるか、それを明確に答えてください。
  83. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) まず保険医の辞退の問題を早急に片づけて、そうして国民の命を守り、健康を増進し、また医療に不安のないという国民立場からの抜本改正を次の国会には何らかの形でぜひ提案をいたしたい、かように考えております。
  84. 戸叶武

    戸叶武君 「早急」というのには時間的な感覚が一つも具体的に含まれていない。もうこうなったら、いつまでにということを明確に答えてください。
  85. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) これは一方的にきめるわけにはまいりません。先ほど申し上げましたように、十分保険医辞退の理由を聞き、それによって政府考え方を明示し、そうして妥結をはかりたいというわけでございますので、何月幾日までという期限を切るわけにはまいらないと思いますが、しかしながら、できるだけ早急という意味は、これからそう一月も二月もかかるのではないというように御理解をいただきたいと思います。
  86. 戸叶武

    戸叶武君 もういつまでもコンニャク問答をやっていられませんから、次に、最後に農政の問題で赤城農林大臣から、この自民党の参議院の敗北も、一つ中国問題に対して無定見、もう一つは、憲法改正にひとしいような自主憲法なんかをとんでもないときに打ち出したりすること、もう一つは、農政において百姓をだまし過ぎたから、もうがまんならぬという抵抗が自民党を敗北に導いたのです。赤城さん、自民党の救いの神だそうだが、農政改革の基本的な構想を具体的に述べてもらいたい。
  87. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私から申し上げるまでもありませんが、日本の農政というか、農業も他産業との関係が非常に交錯しているという現状でありまするし、また、世界的に見ましても、日本の農業がやっぱり世界の農業と交錯しておる、こういうような日本の農業の立場というものを考えてみますときに、大きな目標といたしましては、やはり農業者が世界の農業に対して、抵抗力といいますか、対抗力といいますか、対抗力を持てるような体質改善をしていく、こういうことが基本的に最も必要だと思います。それにつきましては、生産性が低いのでございまするから、生産性が高まるような農業構造の改善もしなくちゃなりません。技術面においても相当進んでおりますが、そういう基盤を——土地改良ばかりじゃございません——基盤をつくって、そしてほんとうに国際農業の中における、あるいは他産業との中におきまして農業が立っていけるような、農民がまた安定してやっていけるような、そういう方向へ農業政策を進めていきたい、こういうふうに考えておる次第です。
  88. 戸叶武

    戸叶武君 自民党の農業基本法の誤りから今日農民は苦労しているんだというふうな考え方に農民はなっておりますが、農業基本法の運営が問題であったので、今日の米の過剰生産というのは、安上がり農政、すなわち農畜産物の価格の安定を目ざしての価格支持政策を断行しなきゃならないときに、米のみにしぼって問題を展開したというところに一つの問題点があるんだと思いますが、農林大臣はどういうふうに考えておりますか。
  89. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 米は、最近ばかりでなく、日本の伝統的な民族食糧ともいうようなものでありまして、終戦後当時等におきましては米が非常に不足したような状態もございました。そういう状態から米の生産ということに力を入れましたが、しかし、現在におきましては食生活も変わってきております。こういうような構造が変わっておりますることに対応して、生産一本やりではなく、一つの需給——需要供給の調整というような課題をひっさげまして、それに対応していかなくちゃならないと思います。でありますので、米におきましてはすでに自給率は一一七%ぐらいになっておりますので、これは需給の調整をとっていく、こういう観点でございまするし、いまお話しのような果樹、畜産と、こういうような成長面、これは需要、消費等にも応じまして、これに対して強力に推進していかなくちゃならぬと思います。  価格支持政策等につきましても、米におきましてはほとんど万全的な価格支持政策をとっておりましたが、その他の農業生産粗生産物の七割には価格支持政策をとっております。しかし、価格支持政策だけでは、私はこの需給の調整とか現状の農業というものを打開していけない。その他の政策とともに価格支持政策の重点を変える面もございますが、価格支持政策を行ないながらも他の方面に強力に推し進めていかなければならぬと、こういうふうに考えている次第でございます。
  90. 戸叶武

    戸叶武君 最後に佐藤首相にお願いいたします。衣食足って礼節を知るというのが東洋の政治哲学であります。やはり日常生活に密着した衣食住の問題、こういう問題から物価の問題にも関連しますが、安定させなきゃならないのに、高度経済成長政策にのみ気を奪われて、そういう愛情が足りなかった。人間尊重ということばは空転しておるが、人間の生活に密着した政治がなかった。これが今日の政治に対する不満の根源をなしておるのでありますから、どうぞ農政の問題には特に力を入れてもらいたいし、それから農政の中においても、やはり生産から消費に至るまでの間の流通機構の問題、この問題は通産にも関係があることでありますが、日本のように市場制度の立ちおくれているところはないし、それから共同出荷の体制というものがもっと強化されなければ生産者も消費者も保護されない。こういう問題を、農林省、通産省、そういうものも、割拠主義でなくて、お互いに腹を割って、問題は国民のために、消費者のために、生産者のためになるような政治的施策を行なうように、十分総理大臣が監督してもらいたい。  また、結論ですから、中国問題に戻りますが、やはり真心と愛情以外に人を動かすものはない。これが東洋の政治哲学の根底であります。そういう意味において、権謀術策の政治は、左も右ももう破産です。光明に背面なし。光の中にはほんとうは陰もできるでしょうが、光明に背面なし。これを雲巌寺の植木義雄老師と、妙心寺の古川大航老師に書いてもらって、一九六〇年の安保のときの使いとして私は中国に行きました。マキアベリズムの外交から、ほんとうに光を浴びるような平和を求むる外交が展開されなけりゃならないときに、イデオロギーは違っても、日本中国は責任を持たなければ、アジアにおいてどこが責任を持つことができるか。この決意の上に立って、東洋に対して再び西洋諸国からの眼が向けられておるのでありますから、そういう点において、どうぞ心してこの中国問題とは取り組んでもらいたい。アメリカの顔を見るのでなく、アメリカ日本中国の顔をのぞき込むような姿勢をつくっていただかれんことを私は要望し、総理大臣の決意を促す次第であります。これはどうも私は総理大臣の決意ばかり促しているので、味方しているように見えますが、このままでいくと、あなたは沖繩国会で沈没ですよ。もうみにくい残骸をさらすのよりも、ここで私ははね返って、ようし、ここで名誉回復——それはあなたの名誉回復だけじゃなく、日本民族の名誉回復のために平和と取っ組もうと、こういう決意をぜひともやってもらいたいことを私はお願いする次第でありますが、どうぞ決意並びに答弁をお願いします。
  91. 山崎昇

    山崎昇君 ちょっと関連して……。
  92. 古池信三

    委員長(古池信三君) もうすでに時間が過ぎておりますから——じゃ、きわめて簡単に。
  93. 山崎昇

    山崎昇君 農政について農林大臣に関連してちょっとお聞きをしておきたいのは、いま気象庁で長期予報だとかいろいろ出しておりますが、ことしはどうも日本の気象は異常天候のようです。したがって、いま北海道でもかなり冷害の様相を帯びてきておるし、この間茨城県その他でもかなり農産物に被害が生じています。したがって私は、農林省は、この基本農政の問題も重要ですが、とりあえず、いま気象条件がたいへん不安なんだが、こういう気象条件下における農政についても、いまから十分ひとつ対策を練っておかないと、やはり農民だけが困ってくる。こういうことになるので、この気象条件における北海道の冷害の様相だとか、あるいはいま起きておる茨城県その他のひょうその他による被害だとか、こういうものに対する対策についてあわせて農林大臣からひとつお答えいただきたい。このことだけお聞きをしておきたい。
  94. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 戸叶さんからのお話に対して先にお答えいたします。  お話しのとおり、生産面だけでは農業というものはやっていけません。やっぱり農民も消費者であり、また、生産者も農民の立場に立たなければならぬと思います。でありますので、私どもは、生産から流通から消費面、これを一体として、さらには、お話しのように、農林省だけの仕事ではございませんで、やはり一つの生活面を担当している農林漁業関係ですから、この生活面というものの立場に立って、広く農業政策を進めていきたいと思います。  また、気象条件によりまして冷害とかその他の災害が生じておることはまことに遺憾でございます。こういうことに対しまして、実は農林省としても少し情報活動といいますか、そういう状況をキャッチしたり、また実際に行なっていることに対して農民にほんとう理解してもらうと、こういう情報活動が少し足らないんじゃないかと私も感じております。でありますので、お話しのような方向を十分進めていきたいと、こう考えております。
  95. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来戸叶君からいろいろ政治哲学を述べられました。私も共感しておるところも多々あるのでございます。それぞれ立場は違っておりましても、望むところのものは平和であり、お互いの繁栄であると、かように考えますので、そういうところで共通点を見出し得るだろう、かように私思いますから、必ずしもむずかしい、むずかしいと言って心配する必要もないだろう、かように思っておる次第でございます。  先ほどの診療の問題、国民保険の問題にいたしましても、社会党においても、もうすでに具体的な提案をなされております。現状を凍結してその間に抜本策をつくれ、これは大体凍結二カ月間というような具体的な案でございます。私は、先ほど厚生大臣が申しますように、できるだけ早くと言っている。私は社会党のこの御提案もさることながら、私どもはさようなことも出ておるというそういうことを高く評価いたしておりますので、できるだけ早く正常な状態にまず返して、そうして抜本改正と取り組む、前進する、こういうことに持っていきたいと思っておるのであります。  また、物価の問題、同時に生産者保護の問題、これはとかく消費者と生産者が相反する立場のようにしばしば見受けるのでございますけれども、私は、いま農林大臣が答えましたように、生産者もまた消費者だ、かように考えると、農業と他産業との比較はいたしますけれども、消費者と生産者を、相対立する、そういう見方はしないで、農業と他産業との間の調整をはかるということには努力はいたしますが、お互いに対立抗争する仲ではないんだ、かように思いますから、これまた生産者本位というような非難を受けない、やっぱり最終消費者、消費者本位ということが何といっても力が入れられる問題ではないだろうかと思います。  そうして、先ほど来お話しになりました中国問題、これは何といいましても、戸叶君が長い間の体験から出てきた中国観またアジア観、そういうものに基づいての御意見だと思っております。私はお話を聞きながら、たいへん私どもの考えていること——したがって、アメリカなどに遠慮しないで、これは極東にある国々の問題だ、まず、みずからが処断すべきだ、かように言ってわれわれの決意を促されたことについて、ありがたく御意見を拝聴する次第でございます。私はこれからもどんどん変わっていくと思います。ただいま一番論議されておりますのは、ニクソン大統領訪中はきまったといわれておりますが、一体いつの時期にどういうことを話するだろうか、これは一つの問題だと思いますので、それらのことも考えながらこれから変転していく国際情勢に対処する。そういう場合に東洋人、アジア人としての考え方一つあると思いますから、そういうような、みずからの足元をしっかり見ながら、間違いのないようにしていきたい。その際には、先ほど述べられたことが大きな私どもに対する力であり柱でもある、つえでもある、かように考える次第でございまして、私の所感を一言ありのまま感じたとおりを申し上げてお答えといたします。ありがとうございました。
  96. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもちまして戸叶君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  97. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、三木忠雄君の質疑を行ないます。三木忠雄君。
  98. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は与えられた時間が二十分でありますので、特に現在問題になっております参議院のあり方の問題、あるいは沖繩、中国の問題等に関して若干の御質問をしたいと、こう思うわけであります。  特に、まず最初に、今回の参議院選挙におきまして、やはり参議院のあり方について特に論議が集中しております。その中で、今回の選挙で高級公務員が立候補し、悪質な選挙違反が続出をいたしております。このことがまあ非常に国民のひんしゅくを買っておるということはもうすでに総理も御存じのことではないかと思うのです。ひいてはこれが政治不信を強め、私たちは非常に残念なことだと思うんです。まあ、こういう問題の根源といわれますこの公益法人あるいは業界の癒着の問題について私は論点をしぼりまして、きょうは総理並びに関係大臣に御質問を申し上げたいと思うわけであります。  特に、総理に公益法人のあり方について御質問申し上げますが、総理は、かつて五月十七日ですか、わが党の委員が食糧庁関係の公益法人の実態を示して質問をしたのに対して、総理はこういうふうに答弁をされているわけです。「いずれにしても公益法人だという形だけで簡単に設立されることは、私非常な弊害を伴うものだ、私もひとつ十分検討して、しかる上でその実績をひとつごらん願う、私のほうも十分取り調べるつもりでおります。」、こう答えているわけであります。この「非常な弊害」という総理のことばに対して私は非常に賛同するわけでありますが、この問題に対してどういうふうに総理は処置をとられたのか、この点についてまず御質問申し上げます。
  99. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあこういう問題は、本来、行政管理庁で検討する所管事項でございます。ただいま行管においてこの問題と取り組んでおる最中でございます。
  100. 三木忠雄

    三木忠雄君 これがあってから翌日、総理は閣僚会議を開いていろいろ指示をされたと、こう私は聞いているわけですが、この点はどうですか。
  101. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりでございます。
  102. 三木忠雄

    三木忠雄君 この問題について行政管理庁長官に質問しますが、現在二カ月もたっておりますけれども、この掌握の状況、あるいは結果はどういうようになっておりますか。
  103. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 公益法人自体の設立の目的に沿った公益事業活動を実施しているかどうかというようなこと、あるいは公益法人に対する所管省庁の監督が十分にできておるであろうかというような点を焦点といたしまして監察をいたしておるわけでございます。なお、事業活動がほとんど行なわれておらないような公益法人に対しましては、その存在の意義の認められないような法人を明らかにして、これについては各省庁の積極的な整理措置を推進するようにいたしております。なお、業務運営が不活発あるいは適正でない法人の役員の中に、俗にいわれております天下りというような公務員が入っておるような場合は、その人がその法人の中で十分に機能を発揮する働きをしておるかどうかというような点を検討しておる実情でございます。なお、法人設立の許可の基準につきましては、各省庁の実情を明らかにしまして、基本的に統一基準の設定について検討することといたしております。
  104. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは総理からいろいろ閣僚に話があって、どういうふうな提出状況になりましたか。
  105. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 総理から委員会質疑があったのに答えをされましたあと、担当大臣にいま言いますような方向で検討するようにということを命じられまして、それぞれの担当者に行管長官が指図をいたしまして、いま言いますような方向で検討を進めておるということでございます。
  106. 三木忠雄

    三木忠雄君 具体的に総理から指示があり、行管が指示をして各省庁からいつ提出されましたか、この公益法人の調査の結果を。
  107. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私からお答えいたしますが、行管庁長官も新しく任命されたばかりでございますので、まだ十分この事態についての対策が立っておるとは思いません。また各省庁もこれについて、ただいま御質問になるような事柄について十分まだ掘り下げができておるとは思いません。これも総理である私の責任だ、かように思いますので、さらにいまの具体的にどうなっているか、こうなっているかというよりも、基本的な姿勢はお尋ねのとおり私から指示しておりますし、またこの機会に各省庁ともあらためてこの問題と取り組んでくれる、かように私も思いますので、さように御了承をお願いいたします。
  108. 三木忠雄

    三木忠雄君 総理がそう言われるわけでありますけれども現実に提出された——期限までには各省では全部出してないわけですね。実際にこの公益法人の整理にかかるという関心は全然ない、こう私は受けとめていいんじゃないかと思うのです。したがって、これがいろいろな悪の根源を生み出しているということを総理も一、二御存じな点があるわけですね。こういう点はやはりもう少し明快に、各大臣にこの問題を締めつけしないと、行管庁の長官の指示だけでは各省庁は動かないと思うのです。この点はいかがですか。
  109. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そういうこともあろうかと思って、私がただいま申し上げたばかりでございます。しかし、今回の三木君の御質問でそれらの点は明確になり、各大臣とも控えて聞いておりますから、それぞれが必ず具体的な処置をとることだ、かように思います。過去において、いままで予定された期間に御要求になりました資料がそろわなかった、そういう点については私まことに遺憾に思いますので、遺憾の意を表しておきます。
  110. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは総理の威厳が通らなくなったのじゃないか、こういう感じがするわけですよ。行管庁長官は、集まった資料で、今後この公益法人の整理に向かって、あなたは具体的に国民の期待にこたえられるような公益法人の整理をどういうふうにされようとするのか、どういう観点を中心にしてこの公益法人の整理にかかろうとしておりますか。
  111. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 先ほど私が申し上げましたように、総理の指示によっていろいろ担当者でやっておりますが、三木委員の質問がきめのこまかい御質問にわたっておるようでございますから、担当局長からお答えさせたいと思います。
  112. 浅古迪

    説明員(浅古迪君) お答え申し上げます。  私どもといたしましては、まず最初に、概況調べという調書を各省から出していただきます。これは実際に提出いたしました時期を申し上げますと、総理府が六月二十一日に受け取っております。警察庁は六月十八日に出しております。行政管理庁が六月二十一日でございます。北海道開発庁が六月十四日に出しております。防衛庁が六月十八日に出しております。経済企画庁が六月二十五日に出しております。科学技術庁が六月二十二日に提出しております。法務省が六月十九日、外務省六月二十五日、大蔵省六月二十三日、文部省七月十日、文部省はこれは数が非常にたくさんございますので、特別に猶予いたしておったわけでございます。厚生省が六月二十八日、農林省六月二十五日、通商産業省六月三十日、運輸省六月二十六日、郵政省六月二十五日、労働省七月三日、建設省六月二十一日、自治省が六月二十三日、以上が提出期日でございます。
  113. 三木忠雄

    三木忠雄君 この問題について、私は別な機会にこまかく質問しますけれども、実際にいま総理のお聞き及びのとおり、実際に威令が達しないと、こういう状態であります。こういう結果として今回の参議院選挙においても、いま問題にしているところの公益法人が高級官僚出身の候補者の選挙運動の推進母体になっていると、こういう具体的なものが出てきまして、世のひんしゅくを買い、あるいは買収、選挙違反等を起こしている点は、私は総理が言われた非常に憂うる弊害の一つではないかと、こう私は思うんですけれども、この点はいかがでありますか。
  114. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御指摘のとおり、さようなことがあってはならないと、こういう意味もありますし、また綱紀の粛正、そういう意味からもこの公益法人は公明党から御指摘になり、もっと厳重にそれらの設立についても考えるべきじゃないかと、かように御意見を述べられたと記憶いたしております。
  115. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは私は、今回の選挙問題を通して、特に運輸省の自動車局関係の公益法人の問題を通して、具体的に選挙違反の実態を通し御質問申し上げたいと思うんです。  その前に行政管理庁長官に伺いすまが、運輸省の自動車局関係の公益法人がどのくらいあるのか、あるいは役員数、あるいは職員数、あるいはその役員の中に占める役人の天下りの数ですね、この点について行管から御答弁願いたいと思う。
  116. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 参議院議員の選挙の違反の問題でございますが、警察といたしましては、違反取り締まりを通じまして選挙の公正を確保することに寄与するというたてまえで厳正に……
  117. 三木忠雄

    三木忠雄君 いやいやちょっと待ってください、警察の問題じゃないよ。運輸省自動車局の公益法人の数をぼくは聞いているんだよ。あんた読み間違っているんじゃない、それは原稿が違うよ。質問してないよ、そんな問題は。
  118. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 黒住派の逮捕者の数ま……。
  119. 三木忠雄

    三木忠雄君 逮捕者はその次に出るんだよ。問題が違っているよ。
  120. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) いやいや、いま捜査中でございますので、その逮捕者の数は……
  121. 三木忠雄

    三木忠雄君 委員長、質問が違うよ。
  122. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 大体逮捕者の数はいま五十名でございます。黒住派の……
  123. 三木忠雄

    三木忠雄君 原稿が違うよ。
  124. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 公益法人の数は、本省自動車局所管のものが二十一法人、陸運局所管のものが三百十五法人。役員数とそのうち公務員出身者数は、本省自動車局所管のものが一千三十八人、うち公務員出身者は十七人、陸運局所管のものが八千五百六十人、うち公務員出身者六百十九人。職員数は、本省自動車局所管のもの一千四百十一人、陸運局所管のものが五千九百七十八人。それから公務員出身の役員のいる法人数は、本省自動車局所管のものが十一法人、陸運局所管のものが百七十法人でございます。
  125. 三木忠雄

    三木忠雄君 あんまりはっきりしないもので、私が実際調査した自動車局関係、陸運局関係調査によりますと、役員数が八千四百九十五名、その中に役人出身者が五百二十人、職員数は四千三百七十四人です。職員数よりも役員のほうが倍ですね。それから公益法人数が全国に二百九十三、これは全国組織を持った法人だけです。それに本省関係直轄のを入れますと約三百三十六の公益法人が自動車局関係だけにあるというんです。これを総理どうお考えになりますか。
  126. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) やや多いようですが、しかし、職種、業種、また全国にまたがる、こういうことを考えると必ずしも多いとも言えないだろうと、かように私は思います。
  127. 三木忠雄

    三木忠雄君 どうもわからないあれですけれども、職種がいろいろある。これが許認可の原因になり、あるいはいろいろな悪の根源になっているわけです。運輸大臣、この数はどうですか、間違いないですか。
  128. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) ただいまの三木委員からの御質問でございますが、運輸省で調べました数とちょっと違っておるようでございまして……
  129. 三木忠雄

    三木忠雄君 もっと多いんでしょう。ふえるんでしょう。
  130. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) いえ、そう多くないんです。自動車局関係の公益法人は、全国的規模が二十一、それからまた、この全国法人の役員数は千三十四人でございまして、うち有給者は二十九名でございます。このうち元公務員は十五名、そのうち十一名が運輸省出身者でございます。また、地方陸運局長権限の地方法人が三百二十三のうち、役員は八千六百六十四名でございまして、元公務員は五百八十五名で、有給者は約二百名でございます。
  131. 三木忠雄

    三木忠雄君 私が調べた調査よりもう少し多いわけですね、運輸大臣のいまの答弁は。確かに多いはずです。まだまだこれは公益法人を認可しないで、実際にこういうふうな働きをしている団体がだいぶあるはずです、このほかに。こういう点から考えますと、この自動車局関係の公益法人というのは各省から比べても非常に多いというわけですね。たとえば警察庁は六つか七つしかない、こういう実態から比べて、運輸省は確かに許認可の関係とか、いろいろな点はあるかもしれませんけれども、その点に対しては非常に不明朗な公益法人が多いということについては、私は一つ一つ指摘をしてまいりたいと思うのですけれども、その前に今回の選挙違反の問題ですが、国家公安委員長、この黒住候補の今回捜査を受けた、あるいは今回の選挙違反の実態について、何かこの間衆議院でも発表されたそうでありますが、この実態について教えていただきたいと思う。さっきの分です。
  132. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 参議院議員選挙の違反の実態は、警察は厳正公平に取り締まりに当たっておりますが、現に違反の摘発を継続中でありますが、取り締まりの状況を七月二十日現在で申し上げますと、検挙したものは三千百八十九件でございます。それから人員で四千九百二十七人、それから前回同期に比べますと、前の件数は五千二百八十七件でございます。人員は八千百三十二人、こういうふうになっておりまして、前回の同期に比べますと、件数で三九・七%、人員で三八・五%の減少となっております。警告したものは二万五千八百二十一人となっておりまして、前回に比べまして一二・五%の増となっておりますが、特に文書関係の警告人員が四〇・九%の増で今回二万四千四百五十一人、前回は一万七千三百五十二人でございますので、目立って警告はふえて、違反件数は減っておるというような実情でございます。この中に公益法人の人がどれだけ入っているかということはいまだはっきりいたしておりません。
  133. 三木忠雄

    三木忠雄君 どうも調査が不十分だね。肝心なところはなかなか言わないようになっている。  それでは具体的に私は申し上げたいと思うのですけれども、これは非常に具体的な問題になってまいりますので、私も資料をそろえたので総理に一ぺんこれを見ていただいて、この問題を具体的になにします。  それでは運輸大臣に伺いますが、この黒住氏が自動車局長時代に公益法人をつくったのは、大体どういうものがありますか。
  134. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) お答え申し上げます。  黒住忠行氏が自動車局長をしておりましたのは、昭和四十三年六月から四十五年六月までの二年の間でございましたが、その間に許可になりました公益法人は、大臣権限にかかる全国法人は、該当するものはございません。陸運局長権限の地方法人が二十一法人が許可になっております。なお、このうち新設法人は七法人でございます。残りの十四は、従前任意団体としてすでに存在していたものを公益法人に直したもの、また、数個の社団法人を統合合併したもの、こういうことになっております。
  135. 三木忠雄

    三木忠雄君 そこで、二十一法人がまあ局長時代に認可になっているわけでありますけれども、ここで私は具体的に、この法人に補助金を国から出している団体は、まあこの時代だけではなしに、運輸省が公益法人に補助金を出している団体は、どこどこですか。
  136. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 補助金を出しておりますのは、自賠責特別会計によりまして、四十五年度において補助金を交付する公益法人は十六でございます。総額が三億七千万円。うち、運輸省関係法人はそのうちの十一でございます。
  137. 三木忠雄

    三木忠雄君 もう少し、どういう業種の法人に出しているかということを説明してください。
  138. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 業種別につきましては、官房長から説明させます。
  139. 高林康一

    説明員(高林康一君) お答え申し上げます。  現在、運輸省関係の法人でございまして自賠責特会から補助金を出しておりますのは、交通事故相談センター、それから東京、大阪、名古屋、福岡、広島、仙台、北海道、新潟、高松等の自動車運行管理指導センター、それから全国自家用自動車協会、東京及び大阪のタクシー近代化センターでございます。
  140. 三木忠雄

    三木忠雄君 そういう、国家から補助金を出し、あるいはまた役人が天下って、特にこの局長時代に承認した公益法人等の問題については、私は、悪例を残さないためにもいろいろ指摘をしたいと思うんですけれども、特に今回のこの選挙に対して黒住派が使った金は約八千万円と、こういうふうに言われているわけです。それが、バス協会あるいはまた陸運業界からの政治献金が相当流れているという、こういうふうに私の手元の資料にあるわけです。こういうふうな点を考えますと、その金はどこから実際に出てきているのだろうか、非常に私は、国民は不審になると思うんです。それは業界からそういうふうに拠出されていると、こうなると、確かに賦課金、その問題が、国民の一人一人の物価のつり上げ、あるいは自動車料金の値上げの問題、トラック運賃の値上げの問題、こういう点が必ず私はつきまとってくると思うんです。そういう点で、私は、この法人が具体的に動いているかどうか、この点に焦点をしぼって、まず第一点、お聞きしたいわけでありますけれども、この役員と職員の一つの比較をしてみますと、自動車の無線協会の松山、あるいは福岡、あるいは乗用自動車協会で、役員と職員の構成はどういうふうな実態になっておるか、運輸大臣、説明してください。
  141. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) お答え申し上げます。  四国の自動車無線協会は、役員が二十二名でございます。会長一人、副会長一人、専務理事一人、理事十七、監事二、それから職員が二名でございます。それから九州無線協会は、役員が三十四名でございます。職員が三名でございます。それから、福島県乗用自動車協会は、役員が三十三名、職員は五名でございます。東京乗用旅客自動車協会は、役員が百六十名、職員が三十一名、こういうことでございます。
  142. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは、一例を私は言ってもらったんですが、これはもう調べたのがいっぱいあるんです。総理大臣、こういうふうに役員が二十二人で、これは松山はいま一人ふえておりますけれども、私の調査では職員が一人ですよね。こういう公益法人が何の公益のための仕事をするかというと、私は非常に疑問だと思うんですね。運輸大臣、ふしぎに——まあ、総理大臣、どうですか、こういう点、ふしぎに思いませんかね。
  143. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も、かつて自動車局長をした経験から申しまして、ただいまのように、ずいぶん、先ほど最初にお答えしたように、全国にわたるとは申しましたが、また、業種が多様だとは申しましたけれども、今日たいへんな公益法人の設立だと、これには驚かざるを得ません。また、弁護するわけじゃありませんけれども、先ほど答えたので御了承だと思いますが、いわゆる有給役員と無給役員、その区別はあるようでありますから、さように考えると、その種の公益法人の設立の必要があったかどうか、それなぞは疑問にならざるを得ない、かようにも思います。また、実際の仕事はどういうことをやっておるのか、そういう点についてもっと検討する必要があるんじゃないか、かように思います。私は、まあ過去の私自身が、ずいぶん昔の話ですが、自動車局長をやっておった。これは戦争の末期時分ですが、そういうことを考えながら、ただいまのような感じを申し上げておきます。
  144. 三木忠雄

    三木忠雄君 自動車局長の名前をあまり総理が強く言われるもんで、私も非常にふしぎに思っているんです。これは黒住さんとね、「運輸省自動車局長初代と十六代の握手」というのがあるんですよね。これで国民にね、集めているわけですよ。これ、御存じですか、総理。こういうふうにして、総理まで利用して——まあ総裁ですから、当然会うと思うんですけれどもね。こういうように、初代と握手して、さも総理が全部肩がわりしているみたいな、これはちょっと行き過ぎじゃないかと思うんですけれどもね。どうですか、総理
  145. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 黒住君が自民党の公認候補であることは、これは間違いございませんし、また、そういう意味で私も握手をしたことは記憶に残っております。しかし、ただいま言われるように、初代と十何代か、その辺が握手していると、こういう表現は、やや私も利用されたという感じがいたします。
  146. 三木忠雄

    三木忠雄君 その問題はあとで詰めたいと思っておりますけれどもね。あとで詰めますけれども、この二十二人と一人の法人が、具体的に動いてないんです。私も相当数調べましたけれども、ほとんど動いていない。机あるいは電話一本で、ほとんどもうふだん冬眠状態の公益法人です。これはもう四十二年にも調査されております。ところが、現実に、まあ総理は役員が多いからこうだ、ああだといろいろ言われましたけれども、人件費と事業費の比率を調べますとね、非常にアンバランスなんですね。事業はしないで、もう人件費ばかりなんです。これは役人の天下りを養うための事業運営になっているわけです。それが選挙になったら、ワーッとこう出てくるような、ふだんは冬眠しているというふうな感じの公益法人が非常に多いということ非常に私は残念だと思う。  これは運輸大臣に伺いますが、人件費と事業費との比率が特にいろいろな点があると思いますが、この黒住さんが許可した運行管理指導センター、あるいは自動車標板協会、あるいはトラック協会ですね、人件費と事業費の割合はどうなっておりますか。
  147. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) いまお尋ねの協会でございますが、東京自動車運行管理指導センター、これが、総支出が二千三百五十一万……
  148. 三木忠雄

    三木忠雄君 こまかな金額はいいです。大体何倍ぐらいになっているか。
  149. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 大体、二六%、三三%、二六%、二一%でございます。  それからちょっと、先ほど総理からの御答弁がございましたが、私も、実は役員数が多くて事務員が非常に少ないので非常にけげんに思いまして、直ちに尋ねて調査をした次第でございますが、実は、先ほど総理からもお答えがございましたとおり、業種別、地域別、また規模別によりまして、各種のからやはり役員のほうをたくさん出すというふうな仕組みになっている協会が多いようでございました。そういう意味で、できるだけ人件費も切り詰めるということで、有給職員あるいは事務員の数は極端に減らしていると、こういうふうな実態と見ております。
  150. 三木忠雄

    三木忠雄君 運輸大臣、あなたが見て調べた実態じゃないんだよ。役人がつくった原稿そのまま読んでいるから、実際に何が何だかさっぱりわからないんだよ。実際に私が調べた行管に出された書類、あるいはいろんな点の、報告された状況からしましても、事業費と人件費の割合が、運行管理センターでは人事費が事業費の二・五倍ですよ、人件費が。標板協会は二倍ですよ。トラック協会に至っては五倍ですよ、人件費のほうが、事業費よりも。こういう実態がずうっと全部あるんです。一つ一つ説明すると時間がありませんから、あとで終わって説明しますけれども、あまりにもそういう実態を皆さん方御存じなしに、ただつくられた原稿を読んでいるだけでは、ほんとう国民感情として私は許せないんじゃないかと思うんです。運輸大臣、これは確認しましたか。
  151. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 実際に——私まだ就任早々でございますから、協会に行ってみたり、それから協会の者から一々聞いたわけじゃございません。一応、精通しておる事務局員から聞いた次第でございます。
  152. 三木忠雄

    三木忠雄君 こればかりあんまりやっていると時間がありませんけれども、もう一つ、運輸大臣、聞きますけれども、この逮捕されている協会の資金の徴収方法ですよ、賦課金の徴収方法について私は伺いたいと思うんです。バス協会、あるいはトラック協会、整備振興会、標板協会、無線協会について、どういうふうな方法で協会に金が納入されているか、これについて説明してください。
  153. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) いまお尋ねの公益法人の中には、一部、事業収入によりまして財源をまかなっているものもあるようでございますが、大体は、会員の会費によって財源を調達しているのがほとんどでございます。会費の賦課方法は、たとえば、自家用自動車協会等では一台月百円程度、整備振興会等では、月二百円程度の平等割り、法人数に応ずる差別割り、または整備一台について二百円程度の方法で賦課していると聞いております。また、運行管理指導センターでは、会員である各団体から年間二十万円ないし四十万円程度の会費を徴収している、こういうことでございます。
  154. 三木忠雄

    三木忠雄君 このように、総理国民の自動車を車検整備する、車検料は、運輸省に検定料を納める、そのほかに賦課金として国民から一台二百円の金を取るんです。あるいはバス一台について幾ら、トラック一台について幾らと、全部会費を徴収して、その公益法人に全部吸い上げてしまっているというんですね。これは実際に、選挙を終わったあとの六月二十九日にはトラックの運賃が一五%値上げ、あるいは無線自動車は二割と、そういうふうな実態に出てきているわけです。こういう点は、この賦課金方式をとっているというやり方は、この負担は国民に全部肩がわりされているというわけですね。こういう点について運輸大臣どう思いますか。
  155. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 賦課金のものが国民に肩がわりされている、たとえばオーナードライバーの協会の百円なんというのはそうでございましょうが、しかし、これも自発的につくられたと聞いておる次第でございまして、各業種団体も、自発的に、どうしても事業の健全なる遂行のために協会をつくったがいいという、自発的な意思でもってつくってきた。それを運輸省のほうでは十分の慎重な調査をいたしまして、そうしてそれを設立を許可する、こういうことが——これは理の当然でございまして、やっておると思うのでございまして、将来とも私どもは、役所がこれを押しつけてそういうものをつくらせる、こういうようなことは断じてあっちゃいかぬ、もうそういうことはあるべきはずでないと、こういうふうに思っておる次第でございますし、また、各そういった団体が出しまして、そういった負担があるいは国民の運賃にはね返るとか、そういうようなことがあるようなことでございましたら、これまた、非常に不合理でございますので、私どもはそれらのものはやはり業界がほんとうの自主的運用、そうして健全なる発展をするためにどうしても必要である——必要なものであるかどうかということは、十分、これからも運輸省といたしましては、運輸大臣といたしましては、十分審査をいたしまして設立許可はきめてまいりたいと、こう思っておる次第でございます。
  156. 三木忠雄

    三木忠雄君 これはもうそれで議論すれば切りがないんですよ。運輸大臣何にも知らないから私はあれですけれども、たとえば国民の車一台の、整備する協力費、あるいはバス、これは各県によって、各協会によって全部違うんですよ。運輸省の検定料は一緒でしょう。——各地域によって徴収料、賦課金は全部、各協会単位で違うんですよ。これは必要だとは認められませんよ。こういう問題が数多く、十九、全国組織を持っている各団体に一つ一つあるわけですね。こういう点をもう少し明確にしなければ、確かに、一億円の金が協会から寄付されたと、業界から流れたという、こういうふうな問題ということは、これは国民が疑惑を持つのも無理もない話だと思うのです。この点について、もう一歩立ち入ってどうですか、運輸大臣。
  157. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) 三木委員の御質問の御趣旨はもう当然のことだと私も思っている次第でございます。その御趣旨に沿ったような行政をしていかなくちゃならぬ。できるだけ国民の負担はかけさせないような方法でもって指導していかなくちゃいかぬということを私も痛感しておりますので、御了承の趣旨のような方法でもってこれからの運輸行政を運営してまいりたいと、こう思っておる次第でございます。
  158. 三木忠雄

    三木忠雄君 いまの答弁は納得できないんですよ。国民の必要のないものはとるとか言うけれども現実にこれは必要ないんですよ。一つ一つ調べれば、ネームプレート一枚渡すのに一枚一円二十銭取らなくていいんですよ、こんなもの。協会をつくるから、結局は国民がそのためにわざわざ足を運ばなくちゃならないんです。その協会に許認可もらうために、官庁とのつながりがあるために、わざわざもらいに行かなければいけないんですよ。総理、こういう点、どうお考えになりますかね。
  159. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま運輸大臣も申しておりましたが、これはやっぱり実態を十分把握しないことには、やはり進まないと思いますので、一度、運輸大臣自身がこれらの協会の実態について確信のある認識を立てて、しかる上で対策を立てたいと、かように申しておりますから、御了承いただきたいと思います。
  160. 三木忠雄

    三木忠雄君 時間が限られておりますので、私ももっともっと詰めたいんですけども、ほんとにこういうふうな、もう切りがないほど、調べれば調べるほど、ほんとうに矛盾に満ちた、国民にこのように肩がわりさしている実態というものは、これは憤りを覚えるわけです。この問題について、これ以上立ち入りませんけれども、この黒住派の選挙違反で実際に逮捕されている人間の中に役人がどのくらいおりますか。運輸大臣、掌握しておりますか、もと役人。
  161. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) これはちょっと私のほうでわかりませんので、公安委員長からお答えいたします。
  162. 中村寅太

    国務大臣(中村寅太君) 現職の役人が逮捕されておるというのはありません。元役人の方々がどういう状態で逮捕されておるかということはいまちょっとわかりませんが、あとで調べてお答え申し上げます。
  163. 三木忠雄

    三木忠雄君 運輸大臣、資料もらっているのだから、そのとおり答えればいいのだよ、すなおに。
  164. 丹羽喬四郎

    国務大臣丹羽喬四郎君) その点は私どものほうのあれじゃございませんけれども新聞その他で私ども知り得てあれいたしました者は五十人と承知しております。これはそのうち当省に、運輸省に在職した者で昭和三十六年以降に退職をして、そうして自動車関係法人に再就職した者はそのうち十八人でございます。
  165. 三木忠雄

    三木忠雄君 こういう十八人、いま現実にあがっている人は十八人ですけれども、このほかにいろいろ各省の——これは運輸省関係だけですからね。そのほかに各省もいろいろあるのでしょうけれども、こういう人たちが実際にその選挙の推進母体なり、あるいは公益法人の有給者で入って——公益法人はふだんは仕事というか、まじめにやっている公益法人も私はあると思うのですね。全部が全部だめじゃないと思うのです。しかしながらそういういいかげんな公益法人から実際にこの選挙に対しては違反者が非常にあがっておる。特にバス協会等においては、元運輸省の観光部長ですね、こういう人たちが。また自動車業務部長です、自動車局の。黒住さんとほんとうに一緒にやっておった人です。こういうふうな人たちが、実際にその選挙の推進母体なり公益法人を動かしておる、こういうふうな問題については、あるいは局長時代に設立したこの法人の中にもやはり五、六人の人がこの中心になって現在逮捕されているわけですね。これはあくまでも、考えてみれば、この黒住氏の選挙のために公益法人を認可したのじゃないか、こういうふうに私たちは受け取られるわけですね。こういうふうな問題について、総理が先ほど申されたように、大きな弊害のある事実じゃないかと私は思うのですけれども総理いかがなものですか。
  166. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来いろいろな論議をされております。しかして運輸大臣からも、実情を十分把握して、しかる上で結論を出したい、かように申しておりますから、いま直ちに、これをもって選挙違反をやる、選挙運動をやるための公益法人を認可したのではないか、かような結論はいましばらく出さないように、もう少し時間をかしていただきたい、かようにお願いいたします。
  167. 三木忠雄

    三木忠雄君 総理は、私は何も黒住氏の刑事責任を総理に問うているのじゃないのです。行政の責任者として、この行政の私物化、あるいはこうした紊乱した行政のあり方というものについて、綱紀のこのあり方についてやはり総理の行政上の責任を私は明確にすべきじゃないかと思うのですね。刑事上の責任を問うているわけじゃない。こういうふうに行政上のこういうふうな問題が非常にはびこってきて——これは時間がありませんから問いませんけれども、大蔵にしても、農林にしても、建設にしても同様な問題があるわけです。現実に逮捕者が数十人ずつ全部つかまっているのですよ。こういうふうな問題について、総理は行政の私物化という問題について、私益法人——公益法人じゃなしに私益法人ですよ。こういう問題について総理は行政上の責任をどう考えられるかということです。
  168. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 冒頭に述べましたように、直ちに行管庁長官に命令いたしまして、私ども重大なる関心のある事柄でありますので、早急に実態を調査しろと、こういうことで、先ほど行管庁長官が読み上げたように、それぞれの官庁から報告はとっております。また、それぞれの官庁も、その観点に立って、ただいま御指摘になりますような、ただ単に選挙だけではございません、あるいは無用な長物みたいなものをつくるというようなこと、これは厳に戒めなければなりませんから、そういう意味で十分点検する、総点検を必要とする、かように私は思っております。これはもう先ほど冒頭にお答えしたとおりでございますが、なおその後引き続いての事態でも一そう問題が明白になっておりますから、問題の所在が明らかになればなるだけにそういう点で疑念のないように処断すべきが行政官庁の当然の責務と、かように思いますので、私自身も十分監視をする決意でございます。
  169. 三木忠雄

    三木忠雄君 この委員会答弁は非常に、やる、前向きの姿勢に考えられるが、終わってみれば何にもやらないのですね、これでは国民は、私は納得できないと思うのです。思い切って私は勇断をふるってもらいたいと思うのです。  それから、自民党総裁として、ひとつ私は伺いたいのですけれども、黒住氏は当選後運輸委員会に入っているというのは、これはちょっと私は納得できないと思うのですよ、これはどうですか。これはもうあまりにも業界との癒着というか、これは自民党総裁として公認したのですか、認めたのですか、これはどう思いますか。
  170. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 院の中でどういう仕事をするか、私は全然関知しておりません。しかし、ただいま言われるような誤解を招くような事柄については、これは直ちに善処すべき問題だろうと、かように私は思います。
  171. 三木忠雄

    三木忠雄君 先ほどお見せしたように、初代と十六代の局長の握手ですね。あるいはこういうふうな問題等を通しまして、あるいはこういうように公益法人から数多くのいろいろな問題が出てきているということに対して、私は、国民がこれだけこの参議院の問題に対していろいろ不信を抱いている、政治不信を抱いているという問題に対して、議員の行動について、やはり総裁として、もっと私は明確な責任をとるべきじゃないかと、こう思うのですけれども、いかがでございますか。
  172. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、まあ党籍を離脱さすべきじゃないかとか、あるいは当選を辞退すべきじゃないか等々のいろいろの議論のあることは私の耳に入っております。しかし、私、考えますのに、そういう事柄は、ただいまの段階で総裁として処断する、その段階ではなさそうだ。本人自身がいかに処断するか、これは国会議員でございますから、みずからの処置をつけることについては十分の見識もあろうと思いますし、そういう点では私は干渉すべき問題ではなさそうに思うと、かように考えて、ただいままで事態の推移を見送っておる、これが現状でございます。私は、こういう事柄こそ議員自身がみずから決すべき事柄だろう、かように思っております。
  173. 三木忠雄

    三木忠雄君 自民党公認候補としましてね、実際、事態の推移というが、どこまでいってこの事態の推移の判断をされるのですか。その点について。
  174. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま捜査の段階ですから、これが一段落つき、さらにやっぱり判決があるまでは現在の憲法では白だというのがたてえまだと、かように私は理解します。やっぱりそこまでは私どもが先に手を打つということはいかがでしょうか、さように私は考えております。
  175. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ、この問題、幾ら論議しましても、総理がもうこうだこうだということで、なかなか監督が不行き届きで、実際に一人一人の党員のあれですね、問題等についても、もっとやはり国民が納得できるような筋でこの問題を私は解決すべきじゃないかと思うのです。特に、これほど行政の私物化をし、そして国民にこれだけの賦課金等も考えてみましても、国民に肩がわりをさせるようなやり方をし、これが政治活動に使われているというような問題について、私は非常に納得のいきがたい問題だと思うのです。こういう点については、総理の、私は国民に対するこの政治不信をぬぐい去る意味においてもこの問題は解決してもらいたいと思います。  さらに、高級公務員の立候補制限の問題については、憲法上何だかんだ言って、いろいろ言っているわけですけれども、実際に選挙制度審議会においてもこの問題については高級公務員の業界、業種ですね、あるいは全国区とか、こういうふうに規定すれば問題がないという、こういうふうな見解も出ているわけでありますから、この高級公務員の立候補の制限については、総理はどうお考えになりますか。
  176. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは慎重に取り組む態度でございます。
  177. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ。慎重、慎重でけっこうですけれども、あまりにも慎重になり過ぎて、何もやらない、中国問題みたいに何も手を打たないで国民から反感を買うような状態ではならないと思います。  それからもう一つ私は念を押しておきたい。それは、国民の道義上としまして、公益法人が政治献金をするということは、これは私は納得できないと思うんですね。こういう点については、総理、どう思いますか。
  178. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政治献金の問題は、これはもう公益法人の献金も含めて、もちろん各方面から十分これについての意見もまとめなきゃならないと、かように思っております。いわゆる公職選挙法関係の審議会等でも、この問題を取り上げておると、かように私は承知しておりますが、そういうような意味合いにおきまして、政界の浄化、そういう意味からもたいへん重大な問題だ。献金者、ただ単に公益法人——まあ比較的公益法人の場合は問題がなさそうに思いますけれど、それすら問題になるということですから、政治資金そのものについて、やはりメスが下される、そういう段階ではないだろうかと、かように思っております。また、選挙費用そのものについても、これは選挙区制との関係もありますので、そういう点も十分考えなきゃならないと思います。まあいろいろ申しましても、議論を生むだけですけれども、全国区というような制度になれば、これはなかなか実態がつかみにくいのじゃないかと私は思います。三木君御自身がやはり全国区から当選なすったんですが、これはやはり全国区で、どこではどんな動きをしているか、一々把握しておられるかどうか、私はなかなか困難なことではないだろうかと、かように思っておるような次第でございます。
  179. 三木忠雄

    三木忠雄君 もう時間がありませんので、防衛庁長官に私はまとめて質問をしたいと思うんですけれども、沖繩の自衛隊の配備の問題で、現在、自衛隊員の沖繩での募集はどういうふうなやり方をやっておるのか。聞くところによると、各高校長にいろいろ文書通達を出して、協力してもらいたいという、こういうような問題があります。この問題についてはどういうふうな対策を講じておるのか、これが第一点。  それから六千八百人のこの自衛隊派遣の積算の基礎はどういう点か。  それから基地の再契約問題についてですが、返還まで、あるいは返還後の基地の再契約の問題はどういうふうなスケジュールで取り組む予定になっておるのか。この点について御答弁をまとめてお願いしたいと思うんです。
  180. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) お答えをいたします。  一番最初の御質問の沖繩における募集のやり方、これはあとで防衛局長から御説明をいたします。  沖繩における自衛隊の配備計画は、返還されましてから二、三カ月までの間という一応の目標で配備を考えておりまするものは約三千二百名でございまして、陸上自衛隊については、民生協力のための普通科、施設科からなる部隊、局地航空輸送のためのヘリコプター部隊、募集並びに広報に当たる地方連絡部等約一千百名。海上自衛隊は、沿岸哨戒のための対潜哨戒機部隊、これはP2J六機、港湾防備及び離島輸送のための小型艦艇部隊並びにこれらの支援に当たる基地部隊等約七百人。航空自衛隊は、領空侵犯対処のための要撃戦闘部隊及びレーダーサイト連絡員等約千四百人。
  181. 三木忠雄

    三木忠雄君 そういうのはいいです。
  182. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 以上三千二百人。  そのあと四次防期間中に、さらにナイキ、ホークの部隊及び警戒管制部隊を配置をする予定で、大体、防衛庁の一応の計画としては六千八百人見当になる。
  183. 三木忠雄

    三木忠雄君 それはどういうことが基礎になっておるか、何の根拠か。
  184. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) これは沖繩がわがほうに返還をされますると、沖繩の自衛、防衛の第一義的責任は自衛隊に負わされることになりまするので、陸海空それぞれにわたる本土防衛と同様の標準見地に立ちましての自衛の措置の部隊ということであります。  第三の質問の、返還されましたあとの米軍に提供します施設その他の土地及び自衛隊が使用しまする土地は、これは使用権を地主と契約をいたしまして使用提供をしなければならぬわけであります。これはあくまでも地主との円満な話し合いによる賃貸契約を締結をしてまいりたい。いろいろ現地における事情等、相当微妙あるいは困難な事態もあるわけでございまするが、円満な話し合いによる賃貸借契約によって賃借権を取得をしたいと考えておるわけであります。ただその場合、地主のほうで契約にどうしても応じないという場合、どうしても提供をすることが必要であり、適切であるというふうに考えられる土地について承諾を得られない場合には、何らかの立法措置によって使用権を取得するということも考えざるを得ないのではないか、その問題についていま検討をいたしておりまするが、まだ具体的な結論には到達をしておらぬ状況でございます。
  185. 久保卓也

    説明員(久保卓也君) 募集の関係でありますが、現在、沖繩においての募集は行なっておりません。ただし、本土におきまする縁故者などを通じまして個々別々に募集に応ずる者がありますけれども、それは本土において応募しておるということであります。  なお、返還後におきましては、地方連絡部を現地に置く予定になっておりますので、その地方連絡部を通じての正式の募集が始まるだろうと思います。したがって、本年度におきまして行なわれることは、自衛隊の実態の理解を深めるというような広報活動以外には行なわれない見込みであります。
  186. 三木忠雄

    三木忠雄君 時間がありませんので、私言いませんが、教育上の問題からも非常に問題な点が現地に起こっているわけですね。高等学校長あてにいろいろなこういう推薦依頼の文書を出したり、あるいは自衛隊が学校の表口から公然と校長や教頭に頼み込みに行っているという、こういう姿すら見受けられるわけです。こういう点はやはり沖繩の県民の感情からいっても、あるいは教育上の問題からも、私は好ましくない問題ではないかと思うのです。ひどいところになりますと、隊員が校内の入口で何か説得工作をやっている姿すら見受けられるというふうな、こういう姿で自衛隊をPRをし、あるいはいろいろな費用をかけて自衛隊をPRをし、沖繩の県民に納得をさせようという、そして将来の募集計画に連ねていこうというようなやり方は、私は高校生に対してそういうことは行き過ぎじゃないかと、こういうふうに思うんですけれども総理、この問題についてどうお考えになりますか。
  187. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまはアメリカの施政権下にありますから、私は積極的にさような事態が現在行なわれているとは思わなかったんですが、そういう点で、もうすでに御指摘がありますから、こういう点も実情を十分把握いたしまして、しかる上で私は返還前の状態において、さようなことをやることはいかがかと、かように思いますから、この辺を十分防衛庁とも連絡をとりまして、いろんな不信や誤解を招かないように、また、疑惑を生じないようにつとめたいと思います。
  188. 三木忠雄

    三木忠雄君 時間の関係で、要求した大臣に質問を申し上げませんでしたが……。
  189. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもちまして、三木君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  190. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、木島則夫君の質疑を行ないます。木島則夫君。
  191. 木島則夫

    木島則夫君 私は、政治の姿勢、政治のあり方につきまして、マスコミの取材者の立場として、いろんな方々に接してまいりました。で、そういう方々と、はだで感じて、はだで話し合ってきた、そういう事例をもとに、先ほど申し上げた姿勢、あり方について、基本的なことを、私は、総理をはじめ関係各大臣にお伺いをしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  その前に、参議院選挙というものが投票率が非常に低かったです。低調な結果に終わったんですけれど、私は、これは政治不信に対する国民の率直な批判であるというふうに受け取っております。そこで、総理にちょっとお聞きいただきたい。「佐藤さんの施政方針演説をひとことで要約すると、こういうことになる。中国問題は慎重に対処する。消費者物価の安定は当面もっとも重要な課題である。経済成長を安定基調に乗せる。実は、これは昭和四十年一月の、佐藤さんが首相におなりになって最初の施政方針演説を要約したものだ。六年後の今年の施政方針演説でも、そっくり同じ言葉が出てくる。中国問題は慎重に。物価は安定。経済も安定成長を。六年前の新聞と並べてみると、気味が悪いくらい、よく似ている」、これは、実は、この前の施政方針演説のあと新聞のコラム欄に載った感想の一部でございます。  さて、私は、せんだっての本会議場での演説をお伺いをいたしました。物価の問題については総合的な見地から物価の安定につとめる、経済については安定成長をはかっていきたい、中国問題については慎重に両国間の関係の改善をはかる——四十年一月の初めての総理の施政方針演説と何か気味が悪いくらいニュアンスが似ているんでございます。これはいろいろに解釈できると私は思いますけれども、同じ政治課題が、七年間たってもまだ解決ができない、それほどにむずかしい問題なんであるよという解釈もできるでしょうし、あるいは逆に、日中関係にいたしましても、物価の上昇も年々事態が悪化しているんだ、これは佐藤さんが何もしないできた証拠であると、まあいろいろ解釈はあると思いますが、佐藤総理御自身は、いま私が二つ並べたどちらに該当するとお思いでございましょうか。
  192. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) よほど皮肉な言い方のようですが、私は、しかし、おそらく木島君御自身も、中国問題がいかに日本にとって大切であり、また、それは慎重に取り組まなきゃならない問題であるか、これは御議論のないところだろうと思います。私ども、申すまでもなく、北京政府と、また台湾にある国府と、両方の関係を持っておりますし、いままでの選択が私は間違ったとは思いませんが、とにかく国民政府と日華平和条約を結んだ、そういう歴史的な事実はあるのでございますから、これを無視して、国連憲章も忠実にそれを守っておる、義務も果たしておる、そういう国を抹殺するような行き方には軽率には賛成できない。これは当然のことじゃないだろうかと思います。これは事実、戦後、今日まで続いておる日本態度であり、日本の行き方のように私は思います。ちっとも変わらないんじゃないかと言われるが、事態はさように重大であり、深刻な問題だと思います。  また、もう一つの経済の問題にいたしましても、表現こそ同様かしれませんが、その間において経済の成長はそれは目ざましいものがありました。これは、私が就任したときと今日を比べれば、それはたいへんな相違だと思います。しかし、やっぱり、かもし出されておる弊害の面については、私どもも、従前と同様に、やっぱり対処していかなければならない。これは、私、むしろ正直な表現であり、さような意味で評価していただきたいと思います。これはやっぱり今日の状態がよほど変わっておる。変わっていてもまだ回しことを考えておる。それじゃけしからぬじゃないか、何をしているんだとおしかりを受けることは、これはけっこうですよ。しかし、そうではなくて、実情は変わってはおりますけれども、かもし出している物価その他のことを考えますと、それらに対して、やっぱり安定成長でなきゃならぬのだ、こういう考え方は今も昔も変わりはないんだと、かように私は思いますので、あえて私の所信をこの機会にも明らかにしておきます。御理解をいただきたいと思います。
  193. 木島則夫

    木島則夫君 このことについて、とやかく私、議論をしておりますと、ほんとうに与えられた時間がなくなりますので、先に進めさしていただきたいと思います。当事者としての御苦労は私もよくわきまえた上で御質問をしているつもりでございます。  私は初めて議場に入りまして、新しい議員として本会議でのやりとりを伺ったんです。率直に申し上げまして、あまりにも何か、野党の質問もそうであるというふうに思えますし、これに対する政府答弁も、聞いておりますと、形式的過ぎるような感じを私は持ったんです。これは私自身の感じでございます。  特に政府答弁の中で、佐藤総理のお使いになります「慎重に検討をする」、「慎重に考慮をする」、これはもちろん使っていけないと言っているんではございませんけれど、何かこういうことばがあまり連発して出されますと、政治に対する形骸、むなしさというものを私どもがいやが上にも感じてしまうんです。お立場上はわかる。しかし私は、もう一つ政治が動いていかなければならないという国民の要望に対して、どうでしょうか。人心を一新するために、私はもうそういうことばはあまり使っていただきたくない。死語となってしまった「慎重に検討する」というそういうおことばを、佐藤語録の中からおはずしになる気はございましょうか。
  194. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの御批判は、私、謙虚に承っておきます。どうも口ぐせのようになって、とかくどうも慎重、慎重ということばを使う。これは少し改めたらどうか。これはそのとおり、私どうも少し口ぐせもあるようでございます。その辺は、事柄の問題によりまして慎重に考えるものもありますし、また、これもことばを使ってはどうも誤解を受けるなと、こういうようなこともやっぱり反省していかなきゃならぬ、かように思いますので、ただいまの御注意は十分心して伺っておきます。
  195. 木島則夫

    木島則夫君 私は、ただことばの問題として現象的にとらえているんではございません。やはり、そういうやりとりがあまりにも長く多く行なわれると、国民政治に対する不信感というか、むなしさというものを助長していく、そういう意味で、私が感じているそのことを、率直にいま申し上げさしていただいわけでございます。  さて、いま一番大きな社会問題になっております医療問題について、私はここでお伺いをしたいと思います。保険医の総辞退というものは、これはもうだれが考えても大きな社会問題だと私は思うんでありますけれども、人間尊重を一番重点とされる佐藤総理は、この現象を、この事態を、どういうふうにお受け取りになっておいででしょうか。
  196. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も木島君と同じように、これはたいへんな事態だと、かように受け取っております。
  197. 向井長年

    向井長年君 関連して。  いま総理が簡単にお答えになりましたけれども、これについては国民は非常にただいま不安を持っている。したがって、関連でございますけれども、私は四点にわたって総理並びに厚生大臣にお聞きいたしたいと思っております。  まず、一つは、昭和三十六年に国民皆保険が達成された後、各方面から医療制度に対する矛盾や、あるいはまた諸種の提案がたびたびなされてきておると思います。にもかかわらず、この抜本改正の努力を怠って今日に至っておる。したがって、この累積というものがただいまの事態を招いておると、こう私は思うわけであります。そういう点から考えますならば、一にかかって政府は重大な責任を負わなければならぬと思うのであります。この点まずどう考えられるか、これが第一点。  第二点は、今回の保険医辞退の問題は、医師会が審議会から委員を引き上げ、五項目にわたる要求を掲げております。保険医辞退をただいま実施していることは国民にとってまことに重大な問題であると言わなければなりません。政府国民世論とともに、一日も早く医師会に対して撤回をさす必要があるのではないか、こう思いますが、政府のこれに対する基本的な態度はどうであるか、これが第二点であります。  第三点は、今日保険医辞退によって国民の多くは甚大な被害をただいま受けております。受診の混乱、あるいは医療費の直接の支払い増加、国民の負担が、ますます拡大されております。今次問題の発生に全く責任のない国民のみが不利益をこうむっておる、このことは、この精神からいっても、あるいは社会的見地から考えても黙過することができないのであります。これに対して私たちは国民立場に立って、これら被害者の不利益を最小限度防止する措置を講じなければならぬ、こう考えますが、政府はどう考えられますか。  なお四点は、政府は保険医辞退により被保険者にかかる経済的負担がただいま増加いたしておりますが、緊急の救済措置をどう講じようとしておるのか、当然講じなければならぬと思いますが、この四点について明快に具体的に説明を願いたいと思います。  以上です。
  198. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えをいたしますが、お尋ねは簡単でありましたが、私が答えたのも、先ほど木島君に対してはまことに簡単に答えたわけであります。さっき言われますように、健康保険の制度について、国保制度について、やはり抜本改正が行なわれなかったこと、こういうことにやはり問題のガンがあるように思います。その抜本改正ができなかった事柄について弁解がましいことは私は申しません。これは、ぜひともやらなければならないことだと思っております。今回、斎藤君にも特にこの点では大役を負わしておる、かように御理解をいただきたいと思います。  また抜本改正につきましては、各党も超党派的にひとつ知恵を出していただいて、一番困っておるのは国民だと、かように考えますから、国民に迷惑のかからないようにしたいものだと、かように思っております。  第二点の、医師会が各種審議会から脱退したことは、もともと三者構成と言われるこの審議会にもその構成にやっぱりいろんな論議がありますことはこれは当然であります。そういう際にいわゆる各派で、その三者がそれぞれの立場自分たちの利益のみを主張する、自分たちの意見のみを主張する、そういうことでなかなか基本的な結論が出てこない、もうそういう意味で三者構成のこの審議会等は要をなさないという非常に気短に実は結論を出されて、これから辞退されたんだと思いますけれども、私はやはりこの医療制度は国民のためにあるんだと、こういうことに思いをいたされて、医師会も早くもとに帰られることを実は心から願っておる次第であります。私はそういう意味では、けさほどもお答えいたしましたように、社会党の具体的提案などもやはり参考になる問題だと、かように思っておりますので、これはもう各党と言わず、おそらく三者構成というような利害の衝突する審議会でありますから、なかなか問題はむずかしいことでありますけれども、やはりお互い国民のためにということであって、お互いに譲り合えるものは譲り合うという、そういう態度をとってもらえば結論も出てくるのじゃないかと、かように私は思うのでありまして、今回の騒ぎからも一そうただいまのような点を強く取り上げてみたいと思います。ことに私は国民の側から申せば、それぞれがどういうような要求をしているか、なかなかわかりかねているんじゃないか、しかし、少なくとも医師会の方々が三者構成から脱退されたというその事実だけは医師会の方も責任を問われるんじゃないだろうか、そういう意味でやっぱりもとへ帰られて、そうして審議が進むことが何よりも望ましい方向ではないだろうかと、かように思います。  第三は、いろんな問題で、すでに生じておる負担増加の問題、これなどについては絶えず、ただいまの状況でどういうように診療が行なわれるか、その受診のむずかしさ、いわゆる現金払いを先にする、そうして治療を受ける、その現金がなかったらどうなるのか、こういうようなことで、これは特別なこまかな注意でございますけれども、厚生省にも特にそれらの点では今日の騒ぎの結果といいますか、今日の医師会との対立の結果、診療を受ける国民に迷惑にならないようなそういう方法はないのか、また、そういう意味で十分これを監視してもらいたいということを実は申しておるわけであります。そういうような点を、具体的には厚生大臣から説明をお聞き取りいただきたいと思います。  また、いまのような状態が、もうすでに今月に入りましてから行なわれておるのでありまして、これが長期化しては困りますが、ただいまの状態でも緊急対策をとらなければならないような問題がもうすでに出ているんではないか、かように思いますから、緊急対策、抜本対策、これは並行して考えていく、こういうことでこの問題と取り組む、こういう姿勢であること、これを御了解願いたいと思います。  なお厚生大臣から私の説明の足らない部分を補足させます。
  199. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 総理から基本的な御答弁がございましたので、私から繰り返しません。ことに第一点、第二点は総理の御答弁で十分であろうと、かように考えます。  第三、第四の点は、これも総理から基本的な厚生省のとっております考え方をお述べいただきましたが、もう少し具体的に申し上げますると、保険医辞退によって患者の人たちができるだけ不便を感じないように、まず第一に、国、それから公立病院等ができるだけ——できるだけじゃない、門戸を開放して、そこに患者が参っても十分受け入れ態勢のできるように指示をいたしております。また組合関係、あるいは保険者団体等の経営している病院も門戸を開放して、そうして患者の受け入れのできるようにという態勢をとっております。また、現金がなければ診療が受けられない。これは後に償還方式で償還をするようにいたしておりますが、たちまち困るという場合も多いわけでありまするので、まあ多くは医者に代理請求をしてもらう、現金を持っていかなくても医者がかわって請求をするという形をとっております。この手段によって治療を受けている数がいま非常に圧倒的に多いと、かように考えております。また、どうしても現金が要る、そしてないという場合には、あるいは保険者団体において融資をする、事業主から融資をしてもらう、また市町村の世帯更生資金から貸し付けるというようなやり方をやりまして、できるだけ不便のないようにいたしたいと配慮をいたしておるわけでございます。何を申しましてもこういった異常な事態を一日も早く解消することが急務でございますので、それに全力を注いでまいりたいと、かように思ってるわけでございます。
  200. 木島則夫

    木島則夫君 いま、総理、それから厚生大臣からお話がございました。で、厚生大臣が最後におっしゃった、異常な緊急事態をどうやって乗り切るか、緊急対策というものがあったら私は伺いたいのです。
  201. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 緊急時における患者に対する対策でございます。先ほど私が申し上げましたように、まず保険医でなくなったわけでありますから、いままでの保険での保険証を持っていったら見てもらえるという事態でないわけでありますが、もちろんこれは国保には全然関係をいたしておりません、政管とそれから組合健保に入っている人たちでありますが、自分はどの保険に入っているかということがわからないで、もう保険では見てもらえないのではないだろうか、極端に言うと、医者は見てくれないのではないかという誤解を起こしている面が非常に多いと思います。これは、そうではない、自分が入っておる保険は何であるかということを見きわめて、そして診療に事欠かないようにしてもらいたい。ことにいまかかりつけている医者のところに行って、どうなっておるのかということを聞くのが一番よかろうという指導をいたしておるわけであります。  それで、辞退をした保険医に対しましては、辞退をしてもできるだけ、現金がなくても代理で保険者からあとで金を請求するような道を講じてもらいたい。この道をとっておるのが非常に多うございます。また、医者によりましてはどうしても現金を持ってこなければ見ない、その医者にどうしてもかからなければならないという場合には、事業主なりあるいは市町村等からその金を一時貸し付ける。そしてあとで保険機関から金をそちらに——これは療養費払いということになりまするから、これだけ療養費がかかりましたということを保険者のところに持ってまいりますと、保険者がその金を払うわけであります。これには一日、二日、あるいは日がかかるということもありましょうし、また保険者のところへ行く必要があるというので不便なこともございますが、これらについてはできるだけ親切に保険者は取り扱うように、そしてまずその方法を徹底するようにということを指示をいたしておる次第でございます。
  202. 木島則夫

    木島則夫君 厚生大臣に伺います。市町村から一時的に金を貸し付けるというふうにいまおっしゃいましたけれども、それは一時間や二時間で私はできないと思います。そういう緊急を要する人たちに対してどうなのかということを、やはりもうちょっと私は血の通ったお答えをちょうだいしたい。
  203. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) ただいまのところ、先ほどから御説明申し上げました以外にいい考えは考えつかぬのでございます。いい考えございましたらお知らせをいただきたい。
  204. 木島則夫

    木島則夫君 たとえば企業内病院を開放するとか、自衛隊は医者が少ないと言っておりますけれど、自衛隊が外に出てそういうときにこそ医療に役立ったらいいんじゃないか、そういう声も私は聞くのです。また私もそうあっていいと思うのですけれど、これは総理に伺います。
  205. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん、そういうような緊急事態があれば、ただいま言われたような事柄を働かせてしかるべきだと思います。これはもう、すでに事故が発生した際に、あるいは自衛隊の医者と申すよりも、自衛隊自身が出かける、こういうこともございます。だから、そういう緊急といいますか、緊急性あるいは多発、そういうような場合が一つの問題だろうと思います。また、お医者さんは辞退したとは申しましても、基本的には、まあ昔から言われている医は仁術ですから、そういう意味で、あとの問題で解決できる、こういうこともございますし、いま言われるような、直ちに対立抗争の状態になっていると、かようにまで考えることはないように私は思います。むしろ、いろいろ予測しない事態、そういう場合には病院を開放するとか、あるいは自衛隊の医者が出ていくとか、こういうようなことはいかにも医者の立場について無理解な方法だと、かような非難も片一方であろうかと思います。私は、要は具体的にいまのような事態が起こらないような、おそらく幅広い措置をお医者さん自身もとられることだろうと思いますし、私どもはそういうことを見守って、不都合のないようにしたいものだと、かように考えております。
  206. 向井長年

    向井長年君 関連。  私が質問した四点の中で、特に緊急措置としていま厚生大臣も答弁されましたけれども、現在、医師会がみずから医療費の価額をきめて、そして診療に当たっておる、こういうことでしょう。そうすれば、一応金がなければ貸し付けるか立てかえるか、こう言っておりますけれども、この差額は、医療費を引き上げたら増額になりますから、この差額の負担というものは患者がやらなければならぬのか、あるいは政府が補償するのか。国民は何ら責任ないのですよ、これは。今日まで抜本改正もできていないし、あるいはまた五項目を要求いたしておりますけれども、これを要約するならば、一つは医療費の値上げであり、一つは抜本改正だと、こう医師会は主張しておるのですよ。いま暫定にいたしましても、医療費の値上げをしようと、みずから価格をきめて国民にこれを要求しておるのでしょう。そうすれば、これに対する差額の経済負担というものは国民が持たなければならぬのか、あるいはこれは政府が負担しなければならぬのか、どういう救済措置をとろうとするのか。私はこの点四点で質問したのですが、答弁がない。
  207. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 医師会がその一定の料金をきめているとおっしゃいますが、これは医師会が一応基準を示しているのでありまして、各それぞれの医者は自分の良識に従ってやっているわけでございます。ことに政府管掌のものについては、これは大体いままでの点数表に基づいたものを請求をするということになっておりますから、付加されるものはほとんどないと思います。また組合健保については、付加されるものはあるかもわかりません。しかし、これも医者によって違うわけであります。そこで、組合健保においては、これは付加給付として認められるものか認められないものか。認められるものについては付加給付として処理をしてもらいたいというように話し合いをいたしております。また保険の付加給付として認められないというものは、その事業主の、あるいは厚生施設といいますか、厚生資金としてやれるものはやってほしいというようにいま相談をいたしておりますが、しかし、その結果がどんな、最後終わってみて集計上どういう形になるかというものを見た上で、何か政府が手を打たなければならぬというような事態であれば、それはそのときに考えたいと、かように考えております。
  208. 向井長年

    向井長年君 厚生大臣ね、あなたがこの問題が生じてからたびたび医師会の代表と会っておられますね。会って、どういうことを話されておるんですか。まず第一は、抜本改正の問題とかあるでしょうけれども、緊急の医療、診療に対して、政府としては少なくともこうしてもらいたいということを強く要求すべきだと、そういう点について具体的にどういう進展をただいま見ておるのか。私は当初三点にわたって言いましたが、そういう点を明確に答弁していただきたい。こういう立場から質問したんです。どういう現況ですか。
  209. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 医師会に対しましては、この辞退のために診療を受けることができないというようなことのないように、その点は十分配慮をしてもらいたい。かように言っております。
  210. 木島則夫

    木島則夫君 とにかく事は命に関係することですから、あまりとやかく議論をしないで、とにかく緊急事態、いま発生しようとしている——しているかもしれないそういうものに対応することが私は政治だと思います。私も新しい人間ですから、詳しい、ここでかけ引きをしたり、熟練工的なやりとりをすることは私はいやです。ただ一点、それだけを強調をさしていただきたいと思います。  総理がおいでになりませんので、また厚生大臣にお伺いすることになると思います。  先日、私はこういろ訴えを聞きました。ちょうど選挙中でございました。松葉づえをついた中年の男性が私のところに参りまして、自分は交通事故にあってさんざんな目にあったんだという話をされました。そして、医療費がかさんで、期間があまり長くなるので、奥さんと協議離婚をして、子供さんとも別れてしまったということです。そして、いまひたすら医療に専念をしているんだけれど、あまりベッドの上に寝過ぎていると、からだが麻痺をするから、どうしても一日、二、三時間散歩をしなければいけない。その散歩をするために、はきものがずいぶんいたむと言うんです。これを見てほしいと言って指をさしたのが真新しいサンダルなんです。いまそこの店で買ってきたんだけれど、それが三百八十円した。三百八十円の金を私が出すことはたいへんな負担なんだ。この三百八十円の出費によって、何よりも私が楽しみにしている甘いものも、きょうから三日間食べられない。これがいま私どもが置かれている、何の罪のない人間が置かれている、日本の中での私どもが生きるすべなんだろうかという訴えを私は聞いたんです。この事実をどういうふうに厚生大臣はおとりになりますか。
  211. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) まことに深刻な事実だと考えます。ところで、その方が生活をしていんのにも事欠かれるように伺います。ただいま伺いますと、三百八十円のサンダルを買えば三日も甘いものは食べられないというのは、ほとんど所得のない方であろうかと、かように考えます。そういう方に対しましては生活扶助という道がございます。ことに医療につきましても、生活扶助の中で、医療扶助というものもございます。したがって、生活扶助を受けていただければその程度のことはまかなっていけるんじゃないだろうかと、かように考えます。
  212. 木島則夫

    木島則夫君 まかなってその人がいけないということです。いまここで憲法二十五条をあえて出す必要もないと思います。それが実態です。こういう人をどういうふうに救済をしていったらいいんでしょうか。たとえば、生活保護は受けていることは当然ですけれど、物価の値上がりによって、そういうものがスライドしていかないと生活は圧迫されるだけです。こういう点はどういうふうにおとりになりますか。
  213. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) ただいまの方は生活扶助を受けておられないのじゃないかと私は思うんでございます。
  214. 木島則夫

    木島則夫君 受けております。
  215. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 受けておられるんですか。生活扶助は、毎年国民の生活水準が向上してまいります、日本の経済の発展によりまして。したがって、生活水準が向上してまいりますると、生活扶助の限度もまた引き上げてまいらなければならない、物価の上昇によってそれも補わなければならない。その両方を勘案をいたしまして、最近年々一三%、一四%と生活扶助の率を上げております。物価の向上よりもずっと高い率で生活扶助を上げてまいっておる次第でございます。
  216. 木島則夫

    木島則夫君 それは確かに頭の中で考えればそういう計算が成り立つと思いますけれども、実態に即したスライドの方法だとお考えでしょうか。
  217. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 物価の上昇率よりも生活扶助の上昇率のほうが高いのでございまして、その点は必要があれば数字によってお示しをいたします。
  218. 木島則夫

    木島則夫君 要するに、ここで議論をしていても私の持ち時間がございません。  事故は医療保障の対象にならないと私は聞いております。そこで、加害者が医療負担できない場合、国家が医療負担をする、そこまで幅が広げられないものかどうか、この点についてもお伺いをしたい。私がお伺いをしたいということは、その方が、私が国会に出たら佐藤さんにぜひ聞いてほしいということでした。いま佐藤総理はトイレかどこかに立たれたのかもしれませんけれども、おいでになりませんでしたので、かわって厚生大臣に伺っておるわけです。
  219. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 交通事故でけがをされました場合に医者のところへかけ込む、あるいは連れ込む。そうして、そこに要する費用は、これは加害者が負担をする。したがって、患者が負担しなくてもよろしい。こういうのがたてまえでございます。そこで、加害者との間になかなか話ができないというような場合には、これは保険のほうで払っておきまして、そうして後刻、加害者に対して保険者が請求をする、こういう仕組みになっております。
  220. 木島則夫

    木島則夫君 いま実態に即してお話をすると、私が幾ら質問をしても、もう持ち時間あと一分の中ではこれはとてもだめだと思います。したがって、私が申し上げたいことは、事故にあって、からだが不自由になった、つまり生産性のない人間というものに対して、政治がいまあまりにも私は冷た過ぎるということ、それを言いたいのです。佐藤総理はその点についてどういうふうにお考えでございましょうか。冷たくあってはいけないと、私は思います。実態はしかし非常に冷たい。その点について佐藤総理の率直な私は感想をちょうだいしたい。
  221. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 重要な御質問の間に私先ほど席を立ちまして……。これは一応断わって出たつもりでございます。  ところで、ただいまの問題、これは申すまでもなく、われわれは冷たい政治というようなことは考えられない。政治は一体だれのものか、そういうことを考えれば非常にわかりきったことなんです。これは国民のためなんです。そういうことを考えれば、こういう事態についてどういうような処置をとるべきか。そうして、あたたかい救いの手は差し伸べられておるかどうか、絶えず反省もしてみなければならないと思います。ただ単にどういう効果があがったとか、効果があがらないとかというばかりでなく、納得のいく処置がとられるということが何よりも大事なことではないだろうか。国民のために、国民とともに歩む政治でなければならない、かように思います。冒頭にお話のありました、いかにも投票率が下がった。これなどは政治に対して無関心だとか、あるいは脱政党化だとか、いろいろな表現がされておりますけれども、そういうこともありましょうが、私はやはり政治の実態について、政治に携わるものが、先ほど来、木島君が御指摘のような点について十分思いをいたさないと、国民の支持を、また理解を得にくいのではないかと思います。ただ、少し長くなりますが、御承知のように、地方選挙に引き続いての参議院選挙、かような際は、過去の例におきましても投票率はわりに低いものでございます。私ども国民としても、地方選挙の済んだ後の参議院選挙であったという、まあそういう不利な点も差し引かなきゃならない、かように思いますが、それにしても、あまりにも最近の状態は民主主義といいながらも十分国民の参画を得られていないんじゃないかと、そういう点は政治家の責任だろうと、かように思いますので、ことに政局を担当しておる者としても、十分こういう点について自戒自慎して、十分慎んでいかなきゃならぬことだ、また注意していかなきゃならぬことだと、かように思います。
  222. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 事務的な点で申し上げておきたいと存じますが、われわれ制度の上ではこういう仕組みになって、大体うまくいっているだろうと、かように思いましても、その制度の運営が必ずしもうまく末端ではいっていないとか、あるいは国民のすべての人がそういう制度を知らないとかいうことによりまして、ただいまおっしゃるような訴えが相当あるように思います。私らのほうにもございます。そこで、できるだけ地元の近くにある福祉事務所とか、あるいは民生委員とかいう人に聞いてもらえば、それならこうしたらよかろう、ああしたらよかろうという指示もしてくれると思うのです。ところが、民生委員がどこにいるやらわからぬというようなことなんかもありますから、そういう意味で生活相談をやっております区役所だとか、あるいは福祉事務所へ行って聞いていただければ非常にわかりやすい、そういう御指導をひとつお願いをし、苦情をお受けになりましたときには、していただきたい。私もずいぶんいろいろな苦情を聞きます。それじゃ具体的にこういうようにされたらどうですかというと、おかげでよくわかりました、生活扶助も受けるようになりましたという例が相当多いわけでございます。
  223. 木島則夫

    木島則夫君 最後に結びを私申し上げさしていただきます。  いま政治はだれのものかとおっしゃったそのおことばを、私は総理の胸の中で何回も何回も反すうをしていただきたいということです。  さて、七月に入りまして非常に目立ちますことは、やたらに事故が多いということです。災害が多い。飛行機の事故をはじめとして、炭鉱の事故、土砂くずれ、道路の決壊、そこで貴重な人命が失われております。私はこれは避け得ない天災だとばかりは受け取れないと思います。政治のゆるみからくる私は人災である部分もたいへん多いと思うのです。そういう意味で、これからは台風もやってくるでしょう。きょうはもう九州のほうで集中豪雨も心配をされている。地震がいつ襲ってくるかもわかりません。人命尊重の政治を叫ぶ佐藤総理に、最後に私お願いを申し上げたいことは、各省に督励をいたしまして、ほんとうにきめのこまかな、手を抜かない政治というものが行なわれますように督励をしていただきたい。ただ督励だけでは、から証文に私は終わる心配がございますから、必ずそこに予算の裏づけがある、そういう御指示を私はお願いしたいと思っております。ほんとう佐藤さんが人間尊重の政治を行なおうとなさるならば、私がいま言った点をもう一度、政治はだれのものであるかという、そのおことばとともに反すうをしていただきたいと思います。  私、きょう初めてこの場に立ちまして、あるいは失礼なことばがあったと思います。お許しをいただきたいと思います。ありがとうございました。
  224. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもって木島君の質疑は終了いたしました。(「答弁答弁」と呼ぶ者あり)
  225. 木島則夫

    木島則夫君 それではお願いいたします。
  226. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、ただいま最後の結びとして、胸のうちで反すうしろと、何度も何度も考えてみろと、かように言われること、まあそのとおりを実施したいものだと思っております。ただ、まあ来年度予算編成の問題に直ちに取り組むその姿勢についてもいろいろの御注文がございます。また、来年度予算を待たないでも、今日の状態においても補正あるいは予備費等の支出について十分きめこまかな行政のあり方を要望されました。これらのことも、私ばかりじゃない、各大臣とも伺っておりますから、これらの点を私は総理として各省を十分督励していくつもりでございます。ありがとうございました。
  227. 木島則夫

    木島則夫君 ありがとうございました。
  228. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもって木島君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  229. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、岩間正男君の質疑を行ないます。岩間正男君。
  230. 岩間正男

    岩間正男君 沖繩協定をめぐる若干の問題について質問いたしたいと思います。  過日、日米安保協議委員会で結ばれました沖繩の直接防衛に関する取りきめによりまして、自衛隊の沖繩配備計画がなされるわけです。その計画についてまずお聞きしたいと思います。  その中で、いつまでそれをやるのか。第二には、人員が幾らなのか。陸海空に分けてお示しを願いたい。第三には、装備の点でありますが、これはどうなっておるか。その三点をまず先にお伺いします。
  231. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 返還当初における配備計画は、人員におきましては、陸上自衛隊約千百人、海上自衛隊約七百人、航空自衛隊約千四百人、計三千二百人。主要な装備は、陸上自衛隊は輸送用ヘリコプター五機、施設車両若干、海上自衛隊は対潜哨戒機P2J六機、掃海艇二隻、その他若干の艦船、航空自衛隊はF104J二十五機。予算の所要量は、現在検討をしておる段階でありまするが、第四次防衛力整備計画において防衛庁がいま見積もっておるものは約千百億円になります。以上でございます。
  232. 岩間正男

    岩間正男君 いつまでですか。
  233. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) いまの三千二百人は返還後約二、三カ月の間に配備をしたいということでございます。
  234. 岩間正男

    岩間正男君 いつまでですか、六千八百人は。
  235. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 返還後二、三カ月の間であります。
  236. 岩間正男

    岩間正男君 これは全部あとで——間違っていると思うのですがね。
  237. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 訂正をいたします。  三千二百人は返還後六カ月以内であり、なおその後、一応四十八年七月までにこれは防衛庁の計画として計六千八百名、三千二百名を引く人数がそのあとに追加せられるわけでございます。そういう計画を持っておるわけでございます。
  238. 岩間正男

    岩間正男君 次に、陸海空の自衛隊はどこに駐とんするのか、それから防衛任務はどうなのか、この点お聞きします。
  239. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 陸海空自衛隊の参りまする場所は、陸上自衛隊は那覇のホイール地区、海上自衛隊はホワイトビーチ及び那覇港、航空自衛隊は那覇空港でございます。  防衛の任務は、陸上自衛隊は陸上警備、海上自衛隊は沿岸哨戒、港湾防備及び離島輸送、航空自衛隊は防空でありまして、その他防衛庁設置法及び自衛隊法にありまするような災害派遣等の民生協力をも行なうことになっております。
  240. 岩間正男

    岩間正男君 これらの総予算は幾らですか。
  241. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) いま策定中の第四次防衛力整備計画と申しますか、新防衛力整備計画期間中における防衛庁におけるいま積算の概算が約千百億円でございます。
  242. 岩間正男

    岩間正男君 千百億といいますと、これは、琉球政府の七〇年度の予算が六百億ですね、約その二倍になりますね。それから、四次防の年率で考えてみるというと、一年まあ一兆二千億ということにするというと、大体その一〇%、こう考えてようございますか。
  243. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) ただいま申し上げた金額は、四次防五カ年間の計画でございます。一年ではございません。
  244. 岩間正男

    岩間正男君 佐藤総理にお伺いしますが、なぜ本土では前例のないこういう特別取りきめをつくる必要があったんですか。
  245. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 本来防衛、これはもう自主的にきめるべきものでございます。しかし、ただいまアメリカの施政権下にあり、米軍が駐留しております。そうしてそれらのものをできるだけ早く撤退してもらいたいし、本土並みの状態にしたいというのがわれわれ日本国民の念願でもあります。おそらく沖繩県民も、基地の中に沖繩があるというような表現にはほんとうに満足されないだろうと思っております。私はまあそういうことを考えながら、米軍の機能に順次かわり得るものはかえていきたい、また特殊部隊等、安保の関係から見ましてもさようなもののあることは必要でないというようなものについては、やはり撤退してもらいたいと、かように思いますが、それらのことは別として、とにかく最小限、私どもの自主防衛のその観点に立って必要なものが先ほど来説明されたものだと、かように御理解をいただきたいと思います。
  246. 岩間正男

    岩間正男君 本土並みと言ってるが、本土並みじゃないじゃないですか。本土ではこういう取りきめでやった例はいままでないでしょう。沖繩県は返れば日本の一県ですね。日本の施政権下に組み込まれる。この軍隊の派遣を自分できめられなかった、アメリカと相談しなきゃならなかった、こういうことは非常にこの沖繩の軍隊、これの性格を決定づけると思うんですが、いかがでしょうか。
  247. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はまあアメリカの施政権下にある現在の段階においては、ただいまのような計画を立てるということは、これはもう自然の形じゃないかと思っております。これから後いつもかような方法できめるということじゃないと思っておりますから、もしさようなことがあって、実質的に自衛隊の配置等について他国の拘束を受けるというようなことがあったらこれはたいへんな問題だと、かように思っておりますので、そういうことのないようにいたします。この点は今後の推移をごらん置き願いたいと思います。
  248. 岩間正男

    岩間正男君 とにかくまあアメリカと相談しなけりゃその配備がきまらない、それを取りきめできめる、こういうことはなかなか問題があると思います。  次に聞きますけれども、六千八百人は最初の突破口でしょう、必要によっては幾らでも増強されるんじゃないか、それとも何か歯どめがございますか。
  249. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) ただいま申し上げました装備、部隊は、想定されまする第四次防、四十七年から五年間におけるものを想定をいたしておるわけでございます。御承知のように、わが国の自衛隊、防衛力というものは専守防衛でございます。沖繩が復帰をされて、本土と同じになりました場合の方針はもとより専守防衛でございます。したがいまして、そういう意味における歯どめは、抽象的なことばのようでありまするが、しっかりついておるわけであります。どんどんこれが増加をしていくという性質のものでは絶対ございません。
  250. 岩間正男

    岩間正男君 次には、自衛隊の守備範囲はこれは広がると思うのですね。ことに海空自衛隊の場合はそう思うのですが、どうでしょうか。
  251. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 御承知のように、ただいまは沖繩は日本の施政権下にありません。米国の施政権下にありまして、米軍がこの防衛に当たってくれておるということでございます。施政権が返還をされまして、わが自衛隊が配備をされることは、わが自衛隊が本土と同様に沖繩地区における防衛を担当するということでございまするから、その意味における防衛の区域が広がることは当然でございます。
  252. 岩間正男

    岩間正男君 中曾根前防衛庁長官は、自衛隊の公海公空の出撃ということをたびたび昨年あたりから申されました。現に五月三十一日の経団連との懇談会では、今後わが国の守備範囲は、具体的には東は南鳥島から西は尖閣列島を結ぶ東京を中心にした半径一千海里の範囲に広がる、こういうことを言っているわけですね。先ほど専守防衛ということを言われたんですが、これは宮守防衛とか、専守防衛などの領域をはるかに越えるものだというふうに考えられるわけですが、この点、総理はいかに考えておられますか。
  253. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はいま岩間君の御意見がどういう点で疑問にしておられるか、中曾根前長官の指摘したその範囲には、わが国の基本的な、古来から変わらない領土があると、かように考えておりますが、領土のないところへ防衛をするという、そういうような考え方ではございませんから、これは御安心なすっていいんじゃないでしょうか、専守防衛……。
  254. 岩間正男

    岩間正男君 とにかく膨大な領域にこれは出動することになる、そうして沖繩がその突破口になる。ですからこれは日本の防衛体制というのは、沖繩の自衛隊配備でもう根本から変わる、そういう性格を持っているんですね。  次にお聞きしたいのですが、この自衛隊は安保第五条発動の場合はどうなるのか、ことに沖繩におる自衛隊の場合は非常に私は性格が変わってくると思うのですが、当然これは米軍との関係が非常に緊密になるわけですが、この点、外務大臣代理にお聞きしたいと思います。
  255. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 沖繩返還と同時に日米安保条約の関連取りきめが沖繩にも当然実施されると、安保条約及びこれに関連する取りきめのワク内ですべての憲法上あるいは国防上の問題が律せられるのでありますから、そういう範囲において本土と同様の動きをするわけであります。
  256. 岩間正男

    岩間正男君 私聞いているのは、当然第五条発動をすれば、そういう答弁では間に合わないのじゃないですか、どうですか、共同作戦体制に入るのじゃないですか。
  257. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 本土に相当の陸海空の米軍がおりました時分に、そういう問題について話し合いができておるのでございます。そういう場合、今度は沖繩には米軍がなお残るわけでございます。そういう場合の第五条に対する場合にはそれぞれ連絡、調整をいたしまするが、指揮系統は明確に米軍と自衛隊と別々でございます。共同の指揮系統をつくるというようなことをいたすわけではございません。従来、日本本土において行なっておりましたことと同様の形において、別々な指揮系統で連絡、調整をとって行動をする、こういうことでございます。
  258. 岩間正男

    岩間正男君 そんなことを言ってますが、緊密な連絡をやらなきゃこれは作戦体制がとれない、当然これは米軍の指揮下に入る、そういう事態に追い込まれますよ。さらに本土並みと言ってますが、防衛密度を考えるというと、本土の人口一億に対して現在は自衛隊が二十八万、それに対して沖繩の場合は、百万の人口に対して六千八百人です。そうすると、これは密度は三倍近くなるんですね。米軍との関係が非常に緊密になってくる。何せアジア最大のキーストーンでしょう。そこに行く自衛隊です。これとの関係は非常にこれは本土では考えられない、こういう事態を総理どうお思いになりますか。
  259. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、岩間君の考え方とどうも合わないんですが、御承知のように米軍の性格は変わりますよ。また、日本の自衛隊の考え方は、本土と沖繩に派遣されるものとこれは同一でございます、全然変わりません。しかし、米軍自身が安保の体制下に置かれる、その拘束を受けるという、そういう現実、その意味では米軍自体のほうが変質する、かように考えるのが当然ではないでしょうか。
  260. 岩間正男

    岩間正男君 これは基地との関係、そういうものから言って——時間の関係で詳細やりませんけれども、そういう形式的な話では話にならぬからね。どうしてもこの沖繩、そうして自衛隊の配備、このことが非常に日本の防衛戦略構想にも大きな変化をもたらしてくる。安保の変質の問題がここに出てくるわけです。これは沖繩の直接防衛を口実として米軍に従属して、いわゆる日米軍事複合の共同作戦体制の中に組み込まれる軍隊としての性格を持ってくるんじゃないか。アメリカは第七艦隊、それから空では第五空軍、海空をになう、日本はその補完をやる。さらに、地上軍隊をまかなう、こういう構想じゃないんですか、いかがですか。
  261. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 日本における自衛隊の任務は、特に、この第五条等の場合におけるものは、日米安保条約に基づいてやるわけでございます。あくまでも日本防衛のための専守防衛の部隊組織を持ち、その装備を持ち、訓練を行なうということに徹しておるわけでございます。米軍は安保条約に基づいて日本におりまする場合に、極東の安全という立場においても行動をし得る場合があるということでございます。日本はあくまでも専守防衛、わが国を防衛するというものであります。そういう意味において、米軍が空海等の力を相当に持っておる。陸は自衛隊がこれを受け持つというふうな関係は絶対にございません。わが自衛隊は、あくまでも国土を防衛をするというたてまえに徹しておるわけでございます。
  262. 岩間正男

    岩間正男君 そう言ってますが、レアード国防長官は何しに来たんですか。現役の国防長官がやって来たということも異例です。一週間以上滞在した。それで、これは総理と新旧の両長官と話し合ったわけですが、これはどういうことを話し合ったんでしょうか。
  263. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) レアード国防長官は、中曾根前長官が訪米したその際に、ぜひ、日本の実情についても見てほしいと、もちろん日米間に安保条約があることを前提にして来てくれないかと、こういうような話で、レアード長官は参ったのであります。そうして、各地の当方の自衛隊を見たと、こういうことでありまして、私は陸上自衛隊についての所感、感じ方を、レアード長官から聞きました。その他の海空部隊についての所感は聞くことはできなかった。一言にして申しますならば、なかなか武器、兵器等の手入れはよくできておる、大事にしている。しかし、もうすでに相当時期おくれのものがあるじゃないか、こういうような指摘がありました。もういわゆる戦争抑止力、それはやはり核よりも通常兵器にあるんだ。そういうことを考えてほしいと、こういうような話をされました。私は率直にその話はそれなりに受け取ってしかるべきだと、かように考えておるような次第であります。その他の問題については、私多くは申しませんが、特に、この際に御披露しておきたいのは、ただいまのような点でございます。
  264. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) レアード長官と私との話し合いは、国際情勢及び防衛政策についての説明、意見交換というふうなことを最初の話として、日米両国の、一そう今後パートナーシップを推進をするというふうな話をしたわけでございます。その中で、北海道の部隊を視察していただいて、たいへんに士気その他訓練等りっぱであるということと、装備の手入れ、この運行等がたいへんりっぱであるとほめたあとで、しかし、装備は残念ながら古いものが多い、これはそのとおりでございまして、昭和二十七、八年、九年、三十年ごろにもらったものが、日本人独特のすぐれた保持能力でいまもあるわけでございます。そういう話が出、装備を質的に改善をされることがいいように思うと、そういう話がありました。私どもでも装備が古くなっており、相当の部分、国産による更新を考えて、いま努力をしているところであるというふうな話をしたわけでございます。
  265. 岩間正男

    岩間正男君 まさか物見遊山に来たんじゃないでしょうね。御承知のように、レアードはペンタゴンにおける総合戦力構想の立案者であり、推進者ですよ。だから来日の目的は、はっきりアメリカの戦略構想に日本を組み入れる、そういうためのものだということは考えられる。だからどういう話をしたか、これは私たちニュースの伝えるところを総合したのですが、自衛隊の増強と防衛費の大幅増額、第二には装備の近代化、さっきから中古中古、古い兵器の話が出ました、その近代化、それから第七艦隊などの一部肩がわり、核のかさの再確認、そうして、だから核については論議をするな、さらに東南アジアへの軍事援助、こういう点について話をしたんでしょう。沖繩の自衛隊配備を空破口として、本土を含めて自衛隊の本格的な体制をつくり出す。極東防衛における日本の肩がわりを計画しておるのが実はアメリカのいまの構想じゃないですか。この一環のあらわれとして、はっきりこれはレアードはやって来たということは、国民も考えておりますよ、いかがですか。
  266. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) この問題は、すでにいままで参議院においても、衆議院においても御質問があり、総理からお答えをいたしておるところでありますが、レアード国防長官は中曾根前防衛庁長官の招待によって参りました。わが国における談合の形は、いま総理からもお話しがあり、私からも申し上げたようなことでございまして、第七艦隊の肩がわりであるとか、あるいは陸の防衛力の日本における増強による米軍の肩がわりなどというお話は少しもいたしておりません。いたす筋合いではございませんで、そういうことをレアード長官も少しも期待をし、あるいは話題にしたことはございません。
  267. 岩間正男

    岩間正男君 まあ新任のあまり実力のない防衛庁長官相手ではそういうことになったかもしれないね、残念ながら。しかし、相当なことやっていることはこれはもうわかっているのですよね。もう見ててごらんなさい。この点をいまの日本に進めている——横須賀一つ見たってわかるのですよ。そんなごまかしの答弁では、あなたつとまりますか、防衛庁長官、だめですよ。私は当然こういう体制の中で、自衛隊の海外派兵の問題がこれは起こってくる。憲法改正の問題とこれは切り離しがたく結んでいると思うのですが、この点いかがでしょうか。
  268. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) わが国の自衛隊は憲法、防衛庁設置法、自衛隊法等に基づいて設置をされ、運用をされるものでございまして、たびたびの機会に総理から明確に申しておりまするように、憲法上、海外派兵を行なうことはできないのでございます。海外派兵をする意思はございません。沖繩が返ってきたということによりまして、海外派兵の危険、あるいはそういう事情が生まれるというふうなことは、先ほど申し上げたようにございません。
  269. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私からもお答えをいたしますが、もう共産党の方はなかなかすなおに私どもの言っていることをお聞き取りではないだろうと思う。なかなか御了承なさらなくて、レアード長官がどうこうしたと、もっと発展して、海外派兵まで約束したんだと、かような聞き取り方のできるお尋ねでございますが、私はまあ大事な、国民に対して、レアード長官とどういう話をしたか、これを率直に話したいと思います。先ほど私がお答えしたのも、国民に対してお答えしたのでございまして、共産党がなかなか私の答弁を納得がいかないとされても、国民皆さん方は実在をお聞き取りだと思っております。また、憲法改正の問題につきましていろいろの御議論がございますが、私は、これはもう何度も申し上げておることで、一番問題になるのは第九条、第九条の精神を変えると、かようなことは考えておらない。しかし、私どもは自主憲法は持ちたい、かように申しておるわけでありまして、この辺には国民も納得し、誤解はないように思っております。ただいまレアード長官が来たことによって、岩間君はずいぶん議論を発展させられました。そうして憲法改正とつながりがあり、あるいは海外派兵まで日本はやるんじゃないかと、こういうようなお話でありましたが、さような御心配は全然ないと、私どもまたレアード長官とさような点を、日本の憲法の問題をレアード国防長官と話しするはずはございませんから、御安心をいただいて、さようなことはないように。これだけは少なくとも私の言うことを御信用願いたいと思います。
  270. 岩間正男

    岩間正男君 まあ信用したいけれども、中曾根前防衛庁長官は、昨年、海外派兵のために自衛隊法の改正を考えておると、こういうこともちゃんと当委員会で私の質問に答弁しましたね。それからどうです、まああなたが選挙中にそういうこと言いましたね。九条は改正する意向はない、何を改正するか、自主憲法だと、そういうこと言っていますが、まあ私は古い証文出すわけじゃありませんが、田中通産相にお聞きしたい。一九六二年にロバート・ケネディ法務長官が日本にやって来た。そのとき中曾根、愛知、宮澤氏ら自民党議員が十二名連盟で意見書をケネディに提出しました。その中にこういうこと言っている。「沖繩返還を強調するとともに、その前提条件として、アメリカ日本に憲法改正と再軍備をする」、こういうことを提言して物議をかもしたことがありましたね。この間の事情どうなっておりますか、いまもそう考えておられますかお聞きしたい。
  271. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) だいぶ古いことでございますが、衆議院予算委員会がストップしたこともございますので、そういう事件でございましたので覚えております。私はロバート・ケネディ氏が参りましたときに、自民党の三役として当時政調会長の職にありましたので、短い間会ったわけでございますが、そのときの発言が物議をかもしたわけでございます。しかし私が申し上げたのは、いまもあなたあまり最後のほう、語尾をはっきりお読みになりませんでしたが、沖繩返還の促進ということが議題でございます。そして、その中にまあ不用意な発言だと思いますし、また舌足らずの発言であり、真意を伝えるものではなかったと思いますが、日本は沖繩の返還を求めている。アメリカは沖繩というような百万に近い異民族統治ができると考えることは間違いである。これは一日も早くお返しあってしかるべきである。そのときに、言いにくいことであるといって言わないのかもしれませんが、まあそこからが言わずもがなだったと思いますが、憲法改正がその条件である。再軍備とは言わなかったと思いますが、言ったかもしれません。そういうことが条件であるならば、条件ははっきり出して、両国間には、沖繩は日本に返還するのだ、しかし、このような議論が存在するということを、両国国民に明らかにして、沖繩返還の促進をはかることが日米両国の利益である、こう述べたことでございます。しかし、それが憲法改正にウエートを置いたのではなく、私がいま申し上げたとおり、あなたがいまその当時の記録をお読みになって語尾が明らかでないように、後段のほうは語尾が明らかでないことにウエートを置いてあるのでございます。それから十年余も歳月を経ましたし、私も慎重にもなりましたし、幾ばくかの勉強をいたしましたので、憲法に対してそんな気持ちを持っておらないことはその後十年間の私の行動でひとつ御承知をいただきたいと思います。以上。
  272. 岩間正男

    岩間正男君 まあ成長もあったろうけれども、なかなか苦しい答弁ですよね。まあはっきり沖繩返還と憲法改正というのはこういうふうに結びついているのです。今度出てきたわけです。これは古い証文ではなはだすまないが。こういうやり方で実際自民党首脳というのは党是に従って憲法改正というのはこれはやる。憲法草案も出されようとしているのでしょう。私はこれと関連してやはりいま進められている一連の反動的な体制、たとえればいろいろな選挙制度の改悪あるいは司法の反動化、中教審による反動的な教育の再編成、ことにもまあ中教審答申は財界の強い要望とも結合して差別、選別の教育を強化し、さらに低廉で従順な労働力を育成するとともに、愛国心、国を守る気概などのかけ声で、再び青少年をアジアの先兵として仕立て上げ、アメリカの核戦略に奉仕させようとするもので、そういう危険が十分にある。青年に再び銃をとらせない、こういう誓いをしたわけですから、こういうものをほんとうに貫くとはっきりこの議場を通じてこれは総理は言えるのかどうか、この点をお聞きしたいと思う。  ついでに教育権はどこにあるのか、これも答えてほしい。
  273. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまなお憲法論争がまだ続いているようですが、これはもう先ほど来の私の答弁で御了承いただきたいと思います。また、言うまでもなく憲法改正には、ちゃんと憲法改正の手続がございます。その手続を踏んでやるのでございますから、私はある党のごとき、憲法の改正の手続を踏まないでも改正をやろうという、そういうのとは違いますから、その辺は誤解のないようにお願いいたします。  それから、ただいまの教育の問題ですが、四年にわたっての中教審、その研究の結果がようやく答申されました。私はこれをただいまもらっていて、その中身をいま研究中でございます。これは、申すまでもなく、幼児教育から高等教育までの中身についての充実をはかると同時に、生涯教育という新しい取り組み方をいたしております。そのためには、何といっても教育費の父兄の負担を軽くする。あるいはまた、私立と国公立との間に差がありますが、私立がずいぶん大きな役割りを果たしておる、そういうことを考えると、やっぱり私立振興についてももっと積極的な考え方で取り組まなければならない。私立と国公立との間に、これはただ単に負担の問題だけではなく、その差がないようにすること。さらにまた、過密過疎等の関係から、校舎そのものもずいぶん不均衡を来たしておるし、またプレハブ等の校舎で済ましておるものも各所に見受けられますが、こういうものが積極的に整備されなければならないと、公共投資の積極的なことを指摘しております。さらにまた、何よりも大事なことは、教師の資質の向上だと思います。また、そういう点で、その待遇、処遇の改善について積極的に取り組めという、幾多の実は問題を提供しております。簡単に反対だと言われないで、また簡単に、これこそリバイバルブームで、愛国心を強調し、また国民に銃をとらすというか、そういう方向に走るんだと、かようならく印を押されないように、実態を十分検討してほしいと思います。  私どもはこの教育改革については真剣に取り組みたいと思っております。これが特にむつかしいのは、教育改革というものは、とかく変動期、そういう際にとり行なかれることはわりにやさしいことでありますが、すべてが平和なうちに順調に進展しておる、そういう際の教育改革はなかなか困難だと思います。したがいまして、早急の改革でなしに、ある程度の期間を置いてそうして万全を期せよと、こういうのが中教審の答申でもありますので、その点を十分考えまして取り組んでいくつもりであります。何だかこの教育改革が、産学一体だとか、あるいは産軍一体だとか、かような御指摘のようでありますが、しかし、日本の憲法は厳然として平和憲法、その精神は厳としてあるわけですし、またこれを改正するという私どもにいたしましても、憲法第九条のその精神を踏みにじるようなことはしないと、かように誓っておるのでありますし、またその上に、改正するならばその手続は踏んでやるんだと、かように申しておりますので、これは国民の前に明らかにされるところであります。したがいまして、いろいろ御懸念されるような点は全然ないと、そういうことをこの機会にはっきり申し上げまして、そうして、むつかしい問題がはありますが、教育問題とひとつ取り組もうじゃありませんか。私はほんとう皆さん方に呼びかけて、どうも、幼児教育、これの才能を伸ばすための教育改革だと、あるいは教育ママがまたできてこれはたいへんだとか、そういう心配のほうに云々されますが、そういうことでなしに、やっぱりわれわれは、適当なそれぞれの才能が伸ばされるような、また社会人として、また世界人として、これがりっぱな状態に成長するような、そういう方向でほんとうに教育そのものがあってほしいと思いますし、またそれがねらいでもありますから、平和を愛好する国際人としての、また日本人としての育成、このために教育改革をすると、こういう一つの理想を持っておりますので、どうか片寄った見方をしないで御批判を願いたいと思います。どうかよろしくお願いをいたします。
  274. 岩間正男

    岩間正男君 文部大臣、教育権について話してくださいね。家永裁判との関係で、教育権は国民にあると、こう言っております。それをあなたたちはどう考えるか。
  275. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答えいたします。教科書裁判によりまして、教育権は国民にあるという判示がなされました。これはまだ係争中の問題でございます。問題は、教育はだれのために教育をするんだということになりますると、わが国における教育というものは、子供一人一人のために教育をするのであります。したがいまして、教育権は、国民全体、教育者であれ、あるいは被教育者であろうと、あるいは行政当局であろうと、それぞれ責任を負わなければならぬと思うのであります。ただ、少なくとも、公教育におきまする教育の場におきましては、教育基本法が示しておりまするように……。
  276. 岩間正男

    岩間正男君 教育権について聞いているのですよ。教育権はどこにあるか。一体だれのものか。
  277. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) 国民全体のものであるということは、それは申すまでもないことでありまするが、ひとり片寄って、教師のものであるとか、あるいは行政当局のものであるとかいうものではございません。したがって、イデオロギーによってきめられるものでもないのであります。
  278. 岩間正男

    岩間正男君 それなら、なぜ控訴したんですか。
  279. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) そこで、今回の中教審の答申は、「教育は、人間の豊かな個性を伸ばし、望ましい目標に向かって個人の可能性を最高度に発揮させると同時に、教育基本法にも明示されているように、平和的な国家・社会の形成者の育成をめざすものである。」としておるのであります。これまでの教育が、ともすれば画一的になりましたり、またあるいは社会全般に功利的な側面だけからの教育というものが行なわれておるやの風潮もあったことを反省いたしまして、ほんとうに自主的であり自律的に生きる力を身につけた人間を育てるよう、人間一人一人を大切にする教育の必要性を中教審は一貫して説いておるのであります。  また答申は、「日本国憲法のめざす国家理想の実現のために国民の教育として不可欠なものを共通に確保するとともに、」「教育に対する社会各層の正当な要請にこたえる措置をとることも政府の重要な任務である。」と指摘をいたしております。まさにそのとおりであると思います。公教育につきましては、国が当然その責任を果たさなければならないと存じます。さような意味におきまして、教育権というものは国民全体のものである、だれが権利を持っておるというものでもない、かようにお答えを申し上げます。
  280. 岩間正男

    岩間正男君 大体おかしいですよ。教育権が国民にあるなら、当然、家永裁判、教科書裁判を認めて、上訴なんかしなければよかったんでしょう。なぜ上訴したんです。でたらめ言っちゃいけませんよ。
  281. 高見三郎

    国務大臣(高見三郎君) お答えいたします。教科書裁判は目下係争中でございます。公教育に関しまする限りは、私は内的外的の設備の充実は国が当然やるべきであると思います。したがって、教育の課程におきまする国民共通の問題につきましては、少なくとも公教育として、一定の基礎、一定の水準において行なうというのは当然のことであろう。そういう意味から申しますると、先生いまおっしゃっておりまする家永裁判の控訴をなぜするかと——私どもは、これは、当然、この内容について疑義があるから控訴をいたしておるんでありまして、私ども考え方から申しまするというと、公教育というものは、少なくともある程度国家が関与すべきものである、国家の責任において行なうべきものであるという観念に立っておるのであります。
  282. 古池信三

    委員長(古池信三君) 岩間君に申し上げますが、もうあなたの時間が尽きております。
  283. 岩間正男

    岩間正男君 まあ二、三分超過したところもありますから……。
  284. 古池信三

    委員長(古池信三君) 超過は認めることはできません。
  285. 岩間正男

    岩間正男君 まあ一、二問あとつけ加えて……。それじゃ時間がないので、教育論をやり出したら限りありませんからこれでとめますけれども、教育基本法ということを言いましたが、第十条というのはどういうものだか、これひとつあなた御存じかもしれないが、県の教育長で知らないのがたくさんあった、私は全国歩いていて。十条知らないで教育行政やれるかどうか。これが日本のいまの姿です。口ではうまいこと言っているけれども、口先だけではどうにもならぬ。これが一つ。  第二は、沖繩県民は自衛隊の配備に心から反対している。とにかくお墓を最後の段階では防空ごうに使おうとしたら、日本軍隊はどけどけ、これは軍隊が使うんだ、おまえたち出ろと言ってここから追い出した。これは沖繩全部これはいま県民が遺憾に思っておる。こういうところでこういうものを配備すべきじゃないということ。  もう一つ最後に、アメリカ国防総省のベトナム秘密文書は、いまさらながらアメリカ帝国主義者の戦争犯罪の実態を、余すところなく世界の前にさらけ出したものだと思います。そして、歴代の自民党政府は、この犯罪的侵略行為を支持し協力してきた、この責任をどうするのか。そうして、その最大の基地は沖繩であったということを、われわれは今日反省しなきゃならないですよ。いま沖繩協定という施政権返還を口実にして嘉手納あるいは海兵隊の基地をはじめSR71偵察機、スパイ機、第七心理作戦部隊、グリーンベレー、さてはVOAまでこれは存続される。基地の機能はむしろ強化し、そうしてこのような戦争犯罪を継続さしていいのかどうか。これに対して世論は非常にきびしくこれを批判しているのです。私はこういう点から考えますと、時間は足りませんけれども、沖繩協定を廃棄して私はこの交渉をやり直すべき段階にあるというふうに考えるわけですが、以上の点について、はっきり反省をまじえて佐藤総理の御答弁を承りたいと思うのであります。
  286. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は結論から申します。沖繩返還協定を破棄して出直せと、こういうことですが、私はさようには思いません。一日も早く祖国に復帰すること、大多数の県民はそれを希望している、心から願っている、かように思いますので、いま……直せとおっしゃることについては、私は従うわけにはまいりません。これだけをはっきり申し上げまして、また最後の——もうすでに時間も経過しておりますし、どうか御了承をいただきたい。
  287. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもって岩間君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  288. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、喜屋武眞榮君の質疑を行ないます。喜屋武眞榮君。
  289. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、最後になっておりますが、お尋ねしたいことは一ぱいございます。しかし時間がたったわずか五分しか与えられておりませんので、特に沖繩の問題、さらにその数多い沖繩の問題の中でも、さらにはしょって幾つかの問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず佐藤総理に質問いたします。佐藤総理は、第六十六回の国会所信表明の中で、「沖繩は、昭和四十七年に、核抜き本土並みで祖国に復帰する」と、こうおっしゃっておられます。そのことについて衆参両院を通じて幾たびかこれは論議の的になったわけでありますが、いまここであらためて四十七年のいつ復帰するか、さらに核抜き本土並みの内容につきまして、明確に御答弁をお願いいたしたい。
  290. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 昭和四十七年、また核抜き本土並み沖繩の返還、祖国復帰、その協定をいたしたわけであります。まあ先ほど岩間君、共産党のほうからは出直せ、どうだと、こういうようなお話ですが、私は、沖繩県民は祖国復帰を願っておられると、かように考えますから、できるだけ早い時期にその協定が効力を発生するようにと、かように念願しております。ただいまのところ協定の調印はできましたが、これからの段取りとして、その協定が両国の立法府の承認を経て、そうして批准書の交換、批准書の交換から二カ月たって効力を発生すると、かように段取りがきまっております。したがいまして、昭和四十七年のできるだけ早い時期と、かように考えておりますが、まあいろんな言われ方がいたしております。ただいまのところは、四月一日というようなことを、各方面からも進言されておるようなことでございまして、これは私まじめにそうなれば県民の方々の御意向にも沿うのではないだろうか、かようにも考えており、諸準備を進める。申すまでもなくこの返還協定そのものは皆さん方の御審議を受けますが、またその際に同時に審議を受ける各種の法案がございますので、それらの準備をするためにも、特別にそのための批准国会を開かざるを得ないんじゃないか、開くべきじゃないかと かように考えておりますので、ただいまのような段取りの進むことにこの上とも御協力を願いたいと、かように思います。
  291. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それじゃ次に質問を移します。  さらに所信表明の中で、「明るく豊かで平和な沖繩県の建設に邁進」すると、こう述べておられますが、その「明るく豊かで平和な沖繩」という内容は、どのような構想を持っておられますか。
  292. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいままでのところ、私が申すまでもなく、沖繩県の県民生活の程度というものは、内地の水準から五、六年おくれておるということが指摘されるように思います。したがいまして、ただいま復帰不安があると、かようにうかがいますが、私どもは祖国に復帰する、そのことによりましてもっと積極的に生活内容を高める、同時に充実さすと、そういう問題と取り組まなければならないと思います。そのためにも豊かな明るいまた平和な沖繩県を、県づくりをしなきゃならないと、かように実は考えておるのでありまして、最近の基地公害、ことに軍基地の公害、先ほどもちょっと触れたのですが、沖繩はどこにあるのか、基地の中にあるというような話までされておる。その基地公害のない平和な沖繩県であってほしいと、かように思いますし、また産業公害もないような、その地理的な状況にもマッチした産業の育成強化、そういうこともはかるべきではないだろうかと、まあいろいろ考えられることがございますが、そういうものを考えながら、また皆さん方の御意見も聞きながら、モットーとしておるものを具体化する、具現化する、そういう方向につとめたいと、かように思っております。
  293. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いま述べておられる、この構想に基づいた沖繩の建設というのは、いわゆる経済開発と都市建設、この二つの面から考えましても、軍事基地の開放というものがそれに裏付けられなければ、これば絵にかいたもちにしかならないと、こう信じておりますが、いかがでありましょうか。
  294. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま触れましたように、アメリカの施政権下にあり、また、アメリカの防衛体制のキーストーンだと言われている沖繩、したがいまして、現状においては、基地の中に沖繩があるというような表現もあたろうかと思います。しかし、返還、祖国に返った、その暁においては、さような状態はできるだけ早く解消さるべきものだと、かように私は考えておる次第であります。
  295. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 その基地の開放につきまして、どのような計画を持っておられますか。
  296. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 沖繩が復帰時におきまする基地の返還は、大約申しまして、現在ありまする基地の七分の一程度が減少をするという程度でございます。これは、私どもとしても、もっと多くの基地が開放されることが、たいへん願わしいというふうに考えます。しこうして、現在の返還協定に基づく打ち合わせ、了解事項は、相当努力、折衝の結果まとまったものでございまするので、この際、直ちに返還地域を増大することは、なかなか困難なように思いまするが、本土におきましても、占領が終わりました時期の基地から申しまするならば、現在たいへんな減少を見ておるわけでございます。返還後におきましても、絶えずその点については具体的な厳密な検討と折衝を続けまして、基地の縮小、返還ということに努力をしてまいりたいと、かように考える次第でございます。
  297. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 聞くところによりますと、いまのお話の中にも、御説明の中にもございましたが、返還までに返されるもの、返還後漸次返されるもの、それから返還後、半永久に残るもの、こういうA、B、Cの三段階にあると聞いておりますが、いかがですか。
  298. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 一応、そういうふうな区分けになっておるようでございます。
  299. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは、そのAの中に、いわゆる返還後も半永久的に使用されるそのA類の中に、ゴルフ場がその中に入っているというのです。これについて、交渉の過程において、日本政府はどのようにこれは検討されたでありましょうか。
  300. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 交渉の過程において具体的にどういうことであったか、実は前任者からよく具体的には承っておりません。  ただ、米軍におきましては、良好な勤務状態を保持するためという、福利厚生施設を、われわれ日本における旧軍など考え及ばないような程度に、福利厚生施設を持っておるわけでございます。日本本土と申しまするか、本土におきましても、ゴルフ場というものを相当、使用区域、地域として持っているわけでございます。そういう関係で、沖繩におきましても、ゴルフ場というものが軍用地域の、彼らの慣習に基づいて重要な部分として保持されようとしているということであるわけでございます。この点は、前段申しましたように、自後さらに交渉を続け、検討を続けまして、必要度の少ないものという見地から返還を求めていくというふうに、鋭意努力をいたしたい、かように考えます。
  301. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 一例を申し上げますと、そのゴルフ場に関する施設でありますが、北中城村の比嘉区の区民が、敷地を全耕地十三万二千坪をゴルフ場に接収されて、いまだに自分の郷里に帰れない。そうしてわれわれとしては、不要不急の土地だ、レジャー施設にしかすぎない。ところが、そこの区民は、高い土地を他に求めて、しかも年間地代二十二セント、十倍以上の地代を払って住まっているわけです。しかも、その運営が、営利を目的とするような運営、外人が一日一ドル五十セント、沖繩の人が遊ぶと五ドル、一月の月ぎめ会費が三十ドル、アメリカは五ドル、こういう形でそれが運営されている。全くこれは承知ならない、憤激に耐えない。こういう状態でありますので、これをひとつ、A群から再検討していただいて、再折衝していただいて、取り戻ししていただく、開放していただく、こういう意思があられるかどうか、お伺いしたい。
  302. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) ただいまのお話、承りました。具体的な問題として十分検討、折衝をいたしたいと思います。
  303. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 その件、よろしくお願いいたします。  次に、総理の所信表明の中で「国民各位におかれても、沖繩同胞の心情に思いをいたし、新しい沖繩県の発展と繁栄のために、一段の御協力を切望する」このように心あたたまる呼びかけをしておられます。私は申し上げたい。国民にこのあたたかい愛情を沖繩県民に寄せるという呼びかけの前に、政府閣僚が佐藤総理の心を心として、ほんとうに沖繩に向けてひたむきな愛情を持つことが最も大事である、優先すべきである、こう思いますが、総理、いかがでありましょうか。
  304. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 喜屋武君はえんきょくに、いわゆる根本発言というものを引き合いに出しての私に対するお尋ねかと思いますが、私は、私自身を初め閣僚ももちろん、私どもの気持ちを真に理解して、皆さん方と心から一体となって、そうしてかたい団結ができるという、そういうことにまで持ち上げていかなければならないように思っております。  ことに、戦前、戦時中、戦後、いままでなめられた沖繩県民の辛酸を、御労苦を思うとき、ただいまのことは本土においても同じようなことがあったじゃないかという人がないでもありませんけれども、私はもっと、御苦労は本土に住んだ私どもにはなかなかわからない。私は沖繩に、ずいぶん戦後たってから出かけて、そうして皆さん方にお目にかかったのですが、そのときに、私の胸を強く打ったのは、ただいまのような状態であります。ただいま、観光地として沖繩に出かける人が非常に多うございますけれども、私は、いまのような状態、それを考えながら、また、沖繩県民が戦時中に払われた犠牲などを考えると、どうも、各地をそれぞれ平静に巡歴できる、こういう感じにどうしてもなれないのであります。ただいま申し上げるような気持ちを、国民全般が理解することが何よりも必要だと、かように私は思います。また、それに対しては、県民の方々も積極的にこういうことについてのおしかりもさることだが、あたたかいほうにやはり思いをいたされたいと心から願うものでございます。
  305. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 時間もまいりましたので、一括いたしまして二、三お尋ねいたしますので、まとめてお答えをお願いいたします。  一つは、本土でも最近いろいろな形での災害が一ぱいあるわけでございますが、特に沖繩におきまして最近、例の毒ガスの問題も基地公害の一つでありまするが、干ばつが長期にわたりまして続きまして、これはもう本土ではいわゆる洪水災害というものがあるわけですが、それにまさる、干ばつ災害というものは洪水災害以上にこれはおそろしいものでございます。そのために草も枯れ果て、サトウキビも枯れ、家畜までももう死に、倒れておると、こういう実情を先日、日本政府調査にいらしたと思いますが、その実態は十分把握してこられたと思いますが、それに対する緊急対策、それから恒久対策、そのことについてひとつ基本的な対策、いま考えておられるそのことについてお伺いいたしたい。  第二点は、自衛隊の沖繩配備につきましては、日本政府としては決定的な事実ということになっておりますが、このことは最近における沖繩県民の世論調査の結果からも、復帰が近づくにつれてだんだんこれに対する拒否反応が非常に高まりつつあります。そういう中で、国際情勢のまた変化、台湾問題の帰結や、あるいはベトナム戦争の終結の問題、あるいは日中平和条約の問題、さらにニクソン大統領中国訪問の問題、こういったゆれつつある国際情勢をにらみ合わせて、この沖繩への自衛隊の配備について再検討する、あるいは時期についても考慮する。もちろん県民は、私も含めてこれは反対をいたします。これは、反対の理由はいろいろきょうは申し上げられませんが、いずれ別の機会に述べたいと思うのですが、そういう情勢の中で再検討をされる意思はないかどうか、これが第二点。  次に、米国の資産買い取りにつきまして、琉球電力公社あるいは水道公社、琉球開発金融公社、これは無償で琉球政府に譲渡すべきだと、こういうふうに私たちは一貫して主張してまいったのでありますが、日米返還協定第七条によれば、日本は米国に対して総額三億二千万ドルを支払う、となっております。その支払いの方法につきましては、具体化、明文化されておりますが、その三億二千万ドルの中身が、内容がどのようになっておるか、そのことについてはよく明らかにされておりません。そのことについてお尋ねをいたしたい。  次に、最近沖繩の近海が汚染をされる。沖繩では従来基地公害ということを強調して、沖繩の自然の美しさ、空も海も陸も非常に——沖繩の自然が汚染したらもう沖繩はおしまいでありますが、その美しい自然が、海が、急激に汚染されつつある。これについても、新聞情報によりましてはいろいろまあ原因があげられておるようでありますが、それに対して日本政府としてどういう態度をとっておられるか、あるいは具体的なその調査の計画とか意図、こういうものがありますかどうか。これは一刻も早く手を打っていただかないというとたいへんなことになるわけでございますので、ひとつその点お尋ねをいたしまして、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  306. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) まず第一点の、沖繩の現在まだ進行しつつある干ばつの問題でございますが、これはたいへん心痛いたしておりまして、ことに宮古、石垣、さらにそれらの周辺の先島離島等の新垣島、新城島あるいは黒島、竹富島等の惨状は、御指摘のとおりすでに牛などは死につつあるという現状であります。このようなことから考えまして、先般、琉球政府と協議をいたしまして、一応、琉球政府は六月三十日付の調査として、三億二千九百万円余りの本土政府の援助を求められたわけであります。ところが、それはその後も——本日、本土政府から派遣いたしました調査団は帰ってまいりまして、おおむね詳細が報告されると思いますが、被害総額で申しますと、一千万ドルを上回るであろう、こういうことをいま電話で連絡してきておるようであります。このようなことから考えますと、現在、琉球政府の行なおうとしておられる政策そのものはおやりになってください、すなわち給水あるいは導水あるいはその他の救農事業あるいはサトウキビの苗を持っていって植える費用とか、あるいは換金収入としてのバレイショの苗あるいは落花生、こういうような仕事は全部やってください、それについて本土政府のほうで予算のほうはあとで相談には乗りますから、とりあえず緊急措置をおやりくださいということで、二億二千九百万円に限るという話でない話で緊急対策をやっていただくように、琉球のほうにも予備費がございますから、そういうもの等で一応どんどんやってくださいということを申し上げて、お返ししたわけでありますが、その後さらに進捗いたしまして、現在の見通しでは、もういま雨が降っても、おそらくキビあるいはウリ類等についてはもう再び息を吹き返すことはないだろう、もう枯死してしまったというような報告もあります。パイナップルの減収もおそらく取り戻せないかもしれません。それらのことも考えまして、一応、宮古島においては伏流水があることは明確になっておりまして、ことしの予算で一応全額、国の費用によるパイロット事業を開始いたしておりますが、琉球政府の要請では、約十一カ所にボーリングいたした井戸がある、それを使ってウォーターガンと思いますか、そういうようなスプリンクラーの大型のものを設置すれば、まあ二カ月かかるというんでありますから、現在すぐには間に合わないわけでありますけれども、そういうものの対策があるということ、さらに石垣島等においては表流水をダムによってせきとめるために大体五カ所の候補地がある、これは工事は約半年を要するであろうということでありますから、これまた緊急の間には合いませんが、少なくとも本年度の予算の中でそれらの実施調査等に早急に取りかかるということ等において相談を一応終わっておるわけでございます。  現在台風十八号が沖繩に来る可能性ありということで、ふだんは台風は敬遠するのでありますけれども、ここまでまいりますと台風も一つのそら頼みのうちに入れて祈るような気持ちでおるわけでありますが、今後の長期的な展望としては、ただいま申しましたような石垣、宮古等のような基礎的な表流水、伏流水を、干ばつの事態が起こらないような作業を、すみやかに事業を終わることと、それからもうどうしてもレインガンでやっても掘っても水の出ない新城とか黒島とかというところは、幸い西表に表流水が豊富でありますから、技術的な困難等があるようでありますが、西表から新城島を経て黒島に至る水道を引っぱる仕事を来年度予算でできるかどうか、そういうことも一応いま考えておるところでございます。  まあこのようなことを考えまして、本島においても、断水時間が給水時間の二倍という異常な事態でありますから、このようなことも考えて、本島のほうの、現在、福地ダムの完成しつつありますその水を引きまする導水管の費用が、米軍の援助が打ち切られましたために、現在すぐに役に立つような見通しが立っておりませんから、これらのすみやかなる予算化等を通じまして、今後はこのような事態を繰り返さないように、そういうつもりでおるわけでございます。したがって、現在の緊急対策については本日帰ってまいります調査団というものが、各農林省あるいは厚生省の水道課等の専門家が行っておりますので、これらの意見を十分聞きまして、それから処理をしてまいりたいと思います。  なお、ほかの問題については、それぞれの関係の所管のほうからお答えを願いたいと思います。
  307. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 協定第七条、三億二千万ドルの内訳のお尋ねでございます。協定の上では細目の内訳はございませんが、交渉の結果合意した金額でございます。その主たるものは協定第七条に記載してございますとおり、資産引き継ぎ一億七千五百万ドル、退職金負担で七千五百万ドル、核撤去費七千万ドル、こういうことになっております。いずれこれは次の国会で御審議を願うことになっております。
  308. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 沖繩における皆さまが自衛隊の配備についてたいへん複雑で、また反対の意向を持っておいでの方が多いという事情を承って、承知をいたしております。しかし、沖繩が返還をされまして本土と全く一体となる行政を行なうということになりまする以上は、やはり本土と同じたてまえにおける自衛、防衛の措置を沖繩にとることはどうしてもこれは当然であり、やらなければならぬことでございまして、もしこれやりませんで、反対に、なぜそういうことをやらぬかと言われると全くお答えに窮するということでもあるわけでございます。したがいまして、沖繩の方々が戦前、特に戦争中、末期あるいは戦後における非常な御苦難と申しますか、難渋をされたことに対するただいま総理のおことばもございました、そういう点は十分われわれもよく了解、了承をいたしまして、十分に事情を理解をしていただくことにあくまでも努力をいたしまして、自衛隊の配備はこれをさせていただきたい。いろいろ事情の変化によってこれを再検討をするべきではないかという御意見でございまするが、現在起こっておりまする諸情勢の進行を考えまして、現在考えておりまする自衛隊の配備は、わが国の自衛、防衛、沖繩の自衛、防衛という点におけるほんとうに最小限度のものを考えておるわけでございまして、この点については、現在の計画のものを配備をするよう、沖繩の方々にも十分の御理解を賜わりたい、かように考える次第でございます。
  309. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 環境庁長官はまだ沖繩の公害の実態までは勉強しておられないということでありますし、また、その時間も当然なかったと思いますので、初代環境庁長官でございました私から答弁をさせていただきます。  沖繩の海岸に、主として犯人はタンカーであろうと思われる——つい最近も巡視船でつかまえたところが、外国の船でどうにもならなかったという事例が沖繩にあったようでありますが、そのような廃油を処理しました油のボールのようになったものが海岸に流れついて、水産、動植物の被害ももちろんのことでありますが、海水浴等にも差しつかえるというような状態が出てきておることを承知いたしております。これは単に沖繩のみならず、太平洋に面しております大島、種子島あるいはまた小笠原列島等においても、そのような現象が見られて、非常に心痛いたしておるところでありますが、このような点は、これは日本の船ばかりでもありませんが、おおよそは日本の船の往復するところが数が多いわけでございましょうし、先般の国会で、海洋汚染防止法というものを制定をし、条約の加盟も、批准もいたしましたので、われわれとしては、これから海上保安庁その他とも密接な連携をとりつつ、そのような廃油ボール等が沿岸一帯に広範に黒潮に乗ってくるのでありますが、それは直接航路から押し寄せてくるのでありますか、それらの原因等も追及をしながら、これらの事態を防いでいかなければならぬと思っております。沖繩の場合には、ことに海が美しい海でありますだけに、ところによっては、人口の稠密地帯によってやはり生活のためのし尿、その他の汚染等も一部にあるようでございますし、また、貴重な資源であるサンゴ等に対するヒトデの被害等もやはり一種の、ある意味の公害という現象でもありますので、こういう問題は私のほうが所管大臣として適時把握しながら、環境庁と相談をして、予算上は私のほうを通して処理していきたいと考えておる次第でございます。
  310. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもちまして、喜屋武君の質疑は終了いたしました。  以上をもって質疑通告者の発言は全部終了いたしました。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時四十七分散会