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1971-08-26 第66回国会 参議院 公害対策特別委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年八月二十六日(木曜日)    午後二時四十五分開会     —————————————    委員の異動  七月二十四日     辞任         補欠選任      柳田桃太郎君     矢野  登君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         加藤シヅエ君     理 事                 金井 元彦君                 寺本 広作君                 杉原 一雄君                 内田 善利君     委 員                 原 文兵衛君                茜ケ久保重光君                 占部 秀男君                 小平 芳平君                 栗林 卓司君                 加藤  進君    国務大臣        国 務 大 臣  大石 武一君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁企画調整        局公害保健課長  山本 宜正君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        沖繩北方対策        庁総務部長    岡田 純夫君        厚生政務次官   登坂重次郎君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        通商産業省企業        局参事官     田中 芳秋君        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君        通商産業省公害        保安局鉱山課長 伊勢谷三樹郎君        通商産業省公害        保安局公害防止        指導課長     根岸 正男君        通商産業省化学        工業局長     山形 栄治君        運輸省船員局労        働基準課長    栗山 昌久君        建設省道路局地        方道課長     高木 澄清君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○公害対策樹立に関する調査  (公害対策樹立に関する件)     —————————————
  2. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) ただいまから公害対策特別委員会を開会いたします。  最初に、田口長治郎君から、文書をもって、都合により理事辞任したい旨の申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事金井元彦君を指名いたします。     —————————————
  5. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 公害対策樹立に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 寺本廣作

    寺本広作君 前回のこの委員会が開会されましたあと環境庁から、水俣病現地での認定に対して不服審査の請求があったのを環境庁調査の結果、現地認定を棄却してやり直すようにということでございました。  私どもも、その資料をいただきまして、拝見いたしましたが、現地審査委員会審査にあたっておられますのは、ほとんど全部が熊本大学の地元の先生方でありまして、この先生方、お医者さんばかりでありますが、水俣病を発見し、その原因を究明し、そしてその研究の結果を国際神経学会に発表されたという、世界的に水俣病権威者として認められておる方々でございます。その方々水俣病について一定の定義を設けて、今日までその基準認定してこられたわけであります。県が行政的な立場からこれに指導を加えるとか、影響を与えるとかいうことは全くございません。純粋に学問上の立場から水俣病認定してこられたわけでございます。  それに対して、このたび行政不服審査でもう少し認定を拡大するようにという、有機水銀がその症状原因になっていると認められる場合はもちろんのこと、そうでなくても原因の一部となっていることを否定し得ない場合においてもこれを認めて差しつかえないというふうに認定を拡大しておられる。つまり学問上の見地に今度は行政上の見地を加えて認定をやり直すようにという指示をされたわけだと思います。これは一に水俣病患者人たちを一人でも多く救ってやりたいという環境庁親心からだとは思いますけれども、そこいらの、行政不服審査を受けて現地学者先生方の意見を変えるようにという指示をされましたが、その環境庁のお気持ちを詳細にお聞かせいただきたいと思います。
  7. 大石武一

    国務大臣大石武一君) ただいま寺本先生からいろいろと御推察のお話がございましたが、基本的にはそのような考えであのような裁決をいたしたわけでございます。私どもは、水俣病認定審査会の御決定には何らの疑いを持つものでもなければ、異議を差しはさむものでもございません。りっぱな御審査であると考えております。医学的良心から、医学的なりっぱな御見地から審査をされ、あのように認定をされておることに対しては、何らわれわれは異議を差しはさむ余地はございません。  ただ、私どもとしましては、先ほど寺本先生お話にありましたように、やはりあの水俣病に対しましては、できるだけ広く救済をする方向でいきたい。できるならば、正確な診断はもちろん当然でございますが、疑わしい者につきましても、水俣病に多少でも関係があると思われるものはできるだけ拾ってはどうであろうかという考えを基本といたしまして、もう一度広い見地から、純粋な学問的の立場はもちろんでございますけれども水俣病につきまして、はっきりとこれは間違いない、水俣病だ、原因、結果とも水俣病だというものはもちろんでございますが、あの有機水銀にどうしてもこれは多少関連があると認められるものにつきましても拾ってほしいという考えから、もう一度の御再考をわずらわしたわけでございます。そういうことで、疑わしき者をできるだけ拾ってあげたいという気持ちからあのような判断をいたしたわけでございます。
  8. 寺本廣作

    寺本広作君 長官心持ち、一人でも多く救済してやるようにというお心持ちはよくわかりました。ありがたいことだと思っております。ただ、現地では非常に扱いに困っているようでございまして、水俣病審査会学者先生方学問上の水俣病行政上の水俣病と、こう二つできるんだろうかというような非常な疑念を持っておられるようでございますが、その点についてはどういうふうにお考えでございますか。
  9. 大石武一

    国務大臣大石武一君) これは医学的な問題になりますので、私は、どうも明確なお答えができにくいかもしれませんけれども、医学的な水俣病とあるいは行政上の水俣病と区別することはないではなかろうかと、いわゆる症状がはっきりそろいました、原因も間違いなく有機水銀が唯一の原因であるというふうにお考えになっているのがいままでのあの水俣病審査に対する認定基準ではなかったかと思います。私どもは、もちろんそのことはそうでございましょうけれども、基本的にはそうであろうと思いますが、やはりそのほかにも多少、たとえば純粋の水俣病以外にほかの症状があるような場合でありましても、いわゆる有機水銀を摂取しておった、あるいはその家族の一員としていろいろ長い間食べておったというような場合には、やはり有機水銀がその原因一つではないとは否定でき得ない場合もあると思います。そういう場合もひっくるめまして、広い判断からここに御判定を願いたいという考えでおるわけでございます。
  10. 寺本廣作

    寺本広作君 学問上の水俣病行政上の水俣病と二通りあるわけではない、有機水銀原因になっておると思われる場合には、ほかの病気を合併しておっても水俣病と認めてやるようにというお話でございます。そういうのは大体水俣病として拾い上げてありはせぬかと思いますけれども、まあ御指示気持ちがよく委員先生方に浸透しまして、もう一ぺん再検討されるようにということで、何人かが新たに認定されるようになってくれれば非常にありがたいと思います。  ただ、被害者の皆さんがこの水俣病認定を受けたいと申請されるのは、その結果として、補償を求めたいということだろうと思います。それが最大のねらいだろうと思います。ところが、今度の環境庁のこの決定と同時に出された次官通牒とか、談話とかいうのを見ますと、どうもその補償とは関係ないんだとは書いてありませんけれども、今度の基準水俣病認定を受けても直ちにこれに補償責任があることを確定するものではないということをわざわざ断わってあります。せっかく長官親心で、広い範囲水俣病を救い上げてやろうという、こういうことですけれども患者人たちが一番求めている、せっかく水俣病認定してもらっても、これで直ちに補償責任ができるわけではないぞということでは、どうも長官のお気持ちが、趣旨が通っておらぬのではなかろうかと思います。  いままでは、大体不十分ではございますけれども水俣病認定された者は見舞い金を受けられるということが昭和三十四年以来確定しております。特に厚生大臣が四十三年に公害病認定をされましてから、前の見舞い金契約を改めまして、厚生省仲裁——いわば仲裁でありますが、によって水俣病認定された者は当然この仲裁の効果を受け得るように機械的になっております。しかし今度の環境次官の通達なり、談話なりを見ておりますと、認定を受けても、当然にはそういう仲裁契約恩典にあずかれぬように書いてございます。せっかく長官患者認定をゆるめて、広く救い上げてやろうというお志は非常にありがたいわけですが、補償の点では一歩後退したという感じがあるように思われますが、この点についての環境庁の御見解を……。
  11. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 補償の問題につきましては、これはまた別の問題でございますと、私どもはそう考えております。私どもが、補償までしなければならぬとか、補償はどのくらいせいというような問題は、われわれの権限外であると考えております。われわれは、とりあえずそのような水俣病としていろいろな苦痛を受けている、あるいはいろいろな手当てを要する方々に対しては、やはりそれだけの手当てをしてあげたい、手当を上げたいという方面からだけ考えまして、あのような認定の幅を広げていただきたいという希望を申し上げたのでありますが、その補償の問題につきましては全然別個の問題でございますので、別の方面からひとつ補償の問題は考えてほしいと思うのでございます。  ただ、直ちに補償を意味するものではないというような内容があったかもしれませんが、なるほどいま寺本先生のおっしゃるようなお話をお聞きすると、多少よけいなことをつけ加えたなという感じがしないものでもございません。それはそういうことで、直ちにわれわれが補償という問題まで口を出すべきものではない、いままでと同じような方針であるということだけの意味でございます。そのようなもし一歩後退したような印象を与えましたならば、多少われわれの考え過ぎであったのではなかろうかといま考えている次第であります。
  12. 寺本廣作

    寺本広作君 長官は、一般の公害病と同じようなお考えでいらっしゃったのじゃないかと思います。水俣病熊本の分につきましては、いま申し上げましたように、昭和三十四年から水俣病認定された者が、全員見舞い金を受けるか、厚生省仲裁に基づく補償を受けているわけです。不満な者は裁判に持っていく、裁判に持っていくという限りでは、これは長官おっしゃるとおり、この行政認定裁判別個のものであっていいと思います。ところが今度の公害紛争処理法の中でも、調停委員会なり、あっせん委員会なりがあって、行政的に片づけるという道が残されております。まして厚生省では、四十三年に公害認定をされましてから処理委員会を、三好さんとか笠松さんとかああいう方々を委嘱してつくって、一つ補償の実際上の行為をやっておるわけです。これはおそらく新しい公害紛争処理法に基づく委員会と同じ扱いを受けていると思います。その限りでは水俣病認定認定だ、補償は全然別のものだとは言えないのじゃないか。いままで認定を受けた者が全員補償恩典にあずかってきた、その補償恩典に浴してきた。ところが、今度は認定は受けたが補償は別だと、こう切り離されると、いままで行政的に調停とか仲裁とかやってきたそれとの関係は、一体どうなるのか。非常にその点では後退ではないかという疑問が残るものですから、重ねて——これは事務当局からでけっこうでございますが、お尋ねいたします。
  13. 船後正道

    説明員(船後正道君) 制度のたてまえを私から簡単に御説明申し上げます。  熊本県で、この健康被害救済法もまた公害紛争処理法も制定される以前の段階におきまして、現地でこの水俣病患者方々医療のみならず、補償の問題につきましてもいろいろ御努力されてきましたことにつきましては、私ども、高く評価いたしておる次第でございます。  ただ、問題になっておりますのは、現在の法体系のもとに医療の問題なりあるいは補償の問題なりをどう処理すべきかということになりますと、まずこの健康被害救済法案因果関係の特定しがたい、したがいまして、民事といたしましてもなかなか時間のかかるそういった公害問題の特殊性に着目いたしまして、とりあえず緊急を要する医療面の給付というものをやろうという趣旨でございますので、したがいまして、この認定につきましては、先ほど長官も申し上げましたとおり、疑わしき者というものも広く救う必要があるというような考えで運営をいたしております。  それからまた、これが損害補償の問題といたしまして、民事裁判にかかる前の段階調停等のことがございますれば、これは公式には公害紛争処理法による手続によるべきでございますが、この場合には、当然補償金額確定等に伴いまして、あるいは症状等級をきめなくてはならぬという問題もあろうかと思います。しかし、そういった問題とこの健康被害救済法による水俣病患者医療面救済というものは、あくまでも別個に取り扱う必要がある、かように考えております。
  14. 寺本廣作

    寺本広作君 ただいま医療問題を中心にしてこの認定行政不服審査決定をしたというお話でございます。ごもっともでございます。しかし、今日、水俣病患者であれ、水俣病認定を受けておらぬ疑わしい患者であれ、医療関係では保険地域保険なりいろんな点でとにかく救済を受けておるわけです。それで一番その人たちが欲しておるのは補償だと思います。その補償で非常に後退したような談なり、通牒なりが出ておるということは、今後、この人たち調停委員会に持ち出すなり、裁判に持ち出した場合に非常に不利になりはせぬかと思います。その点についてのお考えはいかがですか。
  15. 船後正道

    説明員(船後正道君) 私どもは、この公害健康被害救済法による疾病認定は、どこまでもその病気大気汚染水質汚濁等影響による疾病であるかどうかという点だけでございまして、現にこの患者の方が治療を要する状況でありますれば、しかもその影響が認められるならば、認定していただきたいというだけでございます。  他方、損害賠償の問題といたしましては、これはやはり紛争処理法なり、民事裁判手続のほうによるべきでありまして、このほうの認定被害者救済法認定といったものは機能的に純化する必要がある。そういたしませんと、やはり疑わしき方々、こういった方々医療面のとりあえずの救済というものがおくれる結果になるのではないか。  なお、熊本県では、従来そういった損害賠償面もあるいは考慮されておられたのかとも思いますが、そういった面はそういった制度として、熊本県のほうから御相談がございますれば、総理府のほうとも相談いたしまして、どのような制度として持っていくか、これは今後検討いたしたい、かように存じます。
  16. 寺本廣作

    寺本広作君 患者健康保持見地からの水俣病認定だ、補償問題の対象としての水俣病認定は別だと、こういうお考えのようでございますが、先ほどから伺っておりますと、やはり学問上の水俣病とか、行政上の水俣病とか、補償上の水俣病とか、健康保持上の水俣病とか、水俣病認定定義というのが幾つにもなってきたように思います。これは非常にやはり問題の処理をむずかしくしたのじゃなかろうか。せめて今回の認定は、損害賠償といいますか、それとは全然別個のものだというようなことが言ってなければ、これは裁判した場合にも、水俣病行政認定を受けているということは相当裁判官に影響が出るだろうと思います。これは四十三年の厚生省公害認定が、イタイイタイ病の判決にもおそらく影響したのではなかろうかと思いますし、今度の場合でも、黙っておられれば、これはおそらく水俣病認定を受けているのだということで裁判にも影響してくるだろうと思いますが、これは、しかし賠償上の問題とは全然別の認定だぞとわざわざ断わってあれば、裁判所でもこの認定が有効な働きをすることはむずかしいのじゃなかろうか。そこに長官最初に言われたお心持ちがこの通牒の中でしり抜けになっておりはせぬかと私は思うわけです。今日、熊本学者先生方がどういうふうな認定やり直しをやられるか、どういうふうな決定現地で行なわれるかわかりませんけれども、せっかくのお心持ちがこの通牒なり、談話なりでしり抜けになっておりはせぬかと思うものですから、私は、与党質問で、はなはだこれは失礼でございますけれども、申し上げておこうと思ってお尋ねしたわけでございます。  どうぞそういうことで、今後、せっかく環境庁をつくられて、これからいい行政をやっていこうと張り切っておられる矢先でございまするので、そこいらのところを慎重におやりくださるようにお願いいたしまして私の質問を終わります。
  17. 杉原一雄

    杉原一雄君 きょうは大きく分けて二つの問題を質問をしようと思います。一つ沖縄公害行政について。いま一つは、昨年五月、全国的に柳町交差点の鉛公害と同時に大きく問題にされた日本鉱業三日市製錬所のその後の公害対策について。  そこで、第一点の問題でございますが、施政権はまだわれわれのところに返ってはおりませんのですが、しかし十月の国会でこの問題を議論する以前に、すでに公害がやはり沖縄にも大きく問題化され、拡大しようとしている現状を目のあたりに見ていて黙っておれないという一つ立場と、あわせて、とかくわれわれは本土並みということばをもってして、本土並みになることが九十四万沖縄県民のしあわせになるような誤った錯覚を起こさせるわけでありますが、沖縄県民は、戦中はもとより、戦後は大きな基地公害で非常に苦しめられつつあるというのが現状でありますが、加えて沖縄復帰の問題が政治課題としてなまなましい現実となってきた時点で、日本資本があるいはアメリカの資本がたくましい意欲を持って上陸作戦を始めているという現状の中で、いわゆる本土並み公害沖縄に起こりつつあるのではないか。そういう情報判断の上に立って、まずとりあえずお聞きしたいのは、沖縄公害現況はどうなっておるのだ、それを特に発生源中心に、どこに発生源があるのだという確認の上に立って現況をお聞きしたいと実は思うのであります。  はからずも、けさ起きてから新聞を見ましたところが、きょうから沖縄でまた給水の制限をするという情報が伝えられておるわけです。それはなぜ飲み水が足らないのか、使用する水が足らないのか、使用する水が沖縄では不足しているのか。あたかも日照りが続いているからというふうに原因をそういう形でとらえているわけですが、はたしてそうであるのかどうか。水一つをとりましても、これが不足するということは耐えがたい生活上の圧迫でありますし、公害一つにあげてもいいのではないか。だから、この問題一つとっても、原因の究明について報道はそのことを明らかにしてくれない。行政にタッチする者はこの問題に対してもう少し鋭いメスを入れて対策を考慮すべきだ。時あたかも同じ紙面で、江戸川と千葉の二つの市と一つの町が行政区を越えて地盤沈下の問題について今後の対策をきのう行なわれたという報道が実は出ておるのですけれども、だから沖縄給水の問題、水不足の問題、あわせ兼ねて地盤沈下問題等が現に起こっておるというのは、公害現象一つの大きな問題点であろうと思います。  これは単に私の知り得た一つ情報から得た推測でありますけれども、総括的に冒頭に申したように、沖縄公害現状は一体どうなっているか。特に発生源中心としてということで関係当局説明をひとつまずもってお願いしたいと思います。
  18. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) 沖縄公害は、これはまあ本土と比べまして非常に熾烈に起こっておるということは、全般としましてはないと思いますし、また、そうあってはならない、そうあらしてはならないわけでございます。ただ、しかし、部分的にはいろいろと注意をしなければならない現象が間々見られることは事実でございまして、発生源ということでございますので、私ども知り得た範囲において御報告申し上げたいと思います。  まあ、一番沖縄では現在注意しなければならないのは、ばい煙防止関係、それからまた海水の問題等であるかと思いますが、まず大気汚染の問題から申し上げますというと、あすこはキビの主産地でございますので、製糖工場からのばい煙等が気づかわれるわけであり、また住民のほうから指摘を受けたこともあるようでございます。そしからセメントが北部のほうで生産されまして、セメント工場からの紛じんといったようなことが考えられます。しかし、これらにつきましては、いずれも琉球政府指導等によって集じん装置を取りつけまして、したがいまして、ほぼ対策としては解決を見ておるという報告を受けております。その他米軍関係の提供といいますか、ベニヤ板の工場であるとか、そういうふうなもの、あるいはバガスといったようなキビの汁をしぼったあとのものを畜牛等の飼料に使うといったような工場がございます。しかし、そこら辺から出てくるところのばい煙とか、ばいじんとかいったようなものは、本土のいわゆる防止基準に照らしますと、ずっと下回っているという状態でございますが、今後の注意を要する問題であるかと思います。  それから水質汚濁、これはただいま水の問題で御指摘ございましたが、何せ沖縄は大河がございませんで、雨量は相当ありますけれども、どんどん流れてしまうというようなことから、水に非常に苦しんでおる。特に今回の干ばつによって苦しんでおるわけでありますけれども、こういう川々の中で比謝川とか、安波川とかいったような相当の都市の給水源の川、この辺が生活用水あるいは家畜舎から流れ出るところの水によりましてしばしば汚染されており、かつまた問題になっておる。これにつきましては、琉球政府も、厳重に沿岸の関係者等に対して勧告をいたしておるというところでございます。これらについても、今後、環境庁と十分御相談申し上げ、十分な注意をしていく必要があるのじゃないかというふうに考えております。  それから海岸汚染につきましては、これは沖縄ばかりではございませんけれども、黒潮に乗って船舶が投棄したのではないかと想像、推察されるオイルボール、まっ黒な油のかたまりが海岸に打ち上げられてくるというようなことで、これにつきましても、関係船舶協会なりあるいは海上保安庁等に対して琉球政府から要望いたしておるということを聞いておりますが、今後の問題かというふうに考えております。  概要、発生源につきまして、私どもの知り得ましたところをお答え申し上げました。
  19. 杉原一雄

    杉原一雄君 いまの総務部長の説明によりますと、大したことはないのだ、しかも、それぞれ対策がとられて、お伺いした印象からすれば、そう心配はないというふうにも受け取れるようでありますが、しからば、いま申し上げられた大気汚染の問題にしても、砂糖キビ、製糖業との関係とか、あらまし問題がとらえられておると思います。しかし、深刻の度合いが、いまの総務部長の説明では、私、なかなか理解がしかねるわけですが、沖縄北方対策庁の掌握のしかたはその程度でありますか。もっときびしいものはないだろうかと思います。しかも、それがこれからもっときびしくなる。たとえば沖縄が返還されるという一つのプログラムに乗って日本資本がどんどん出かけていく。  なかんずく国内の——本土公害問題を論ずる場合に、よく私も農水の場でも論じたことがありますが、公害が山に登る、つまり大都市周辺で非常に問題になってくるし、住民の反対が激しいものだから、無抵抗のところに公害を持った工場が進出するということは、本土の中でも間々見られる。これは悲しむべき現象でありますが、逆に今度は沖縄が返還されると、このときとばかりに本土から三菱何とか工場とか、大資本がどんどん向こうへ入っていくというような、そうした動向と申しますか、現に入って腰を落ちつけて公害をまき散らしているというような事実等も全然ないのですか。いまおっしゃったのを見ると、もともと砂糖をつくっているので、それに伴っていろいろな大気汚染その他の現象が起こるというような程度の説明ですけれども、それいう軽い受けとめ方で沖縄公害に対処できるのかどうか。その点は、どうも総務部長の説明では私ぴんとこないわけですが、いいんですか、それで。
  20. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) 私の説明のしかたが悪かったのかと思いますが、決してさようなことはございません。発生源として一応申し上げたのでございます。  なお、最後に石油のことを御指摘になりましたが、たまたま東洋石油についてでありますが、琉球政府が操業開始前と操業開始後で亜硫酸ガスの測定をいたしました際においては、変わりがないということで、亜硫酸ガスについても、現段階では本土基準に照らして下回っているということでございます。  ただ、そこまでの経過的な説明でございまして、今後の問題といたしましては、私どもとしては、沖縄の今後の観光開発をはかるためには、いろいろな角度から考えなければなりませんけれども、自然保護、観光立県というふうな要素も大きく期待いたしております。またその角度からの施策を考えていかなければならぬというふうに思っておりまして、昨日も、琉球政府では、公害対策基本法を委員会で上げたそうでございますが、そういうふうな指導面と申しますか、施政面等についても十分相談にあずかってまいるとともに、現在、復帰対策に載っておりますけれども、振興開発計画、これは沖縄県知事から案がもたらされてくるわけでございますけれども、それを策定する大きな柱として公害対策というものを強く柱として取り上げております。また、そういうふうな振興開発計画の立案にあたりましては、土地利用計画と申しますか、そういう企業の立地のあり方等も含めまして十分な構想というものを織り込んだもので成立をしてまいりたい。  また、財政措置につきましても、種々の強い財政援助措置を来年度以降の沖縄県について考えたいと思っております。公害等につきましても、しかるべき措置については当然対象になろうかと思います。また、本年度も、財政援助と申しますか、本土からの復帰対策費として、騒音等も含めてかなりの額の助成をいたしており、強くそういう問題について関心を持つとともに、公害のない観光の沖縄県というものをもたらしたいというふうに考えて、強い施策を現在考えているところでございまして、決して心配ないというふうに考えているわけではございませんので御理解いただきたいと思います。
  21. 杉原一雄

    杉原一雄君 私の意図は、意地悪な気持ちで言っているのではなくて、戦争中非常に御苦労をかけたし、かつまたアメリカがでんとすわって基地公害でたいへん沖縄の人に迷惑をかけているし、今度は——いまもそうだけれども本土復帰の時点において、われわれがあやまちをおかした、過去のたとえば新全総——新全国総合開発計画によって、よい面と悪い面とあるのですけれども、特に悪い面としては、公害が全土をおおったという大きなわれわれはあやまちをおかしてきたわけですから、沖縄でも、新全総まがいの、いまおっしゃった開発計画が進んでいるわけですけれども、そういう中で、われわれがあやまちをおかした同じわだちを踏ませたくない。そのためには、もっと進んだ、積極的な前向きの施策が沖縄でもとられるべきだし、本土からも、そうした面ではいろいろな指導、助言なり、財政的な援助等もあってしかるべきだ、こういうことを頭の中に置きながらいま質問をしているわけですけれども、いま申し上げたような開発計画そのものの中にも、われわれがおかしているようなあやまちを屋良政府もおかしているのではないかという心配があるわけですね。しかし、これは人間のやることですから、本土でも、いまそうした環境浄化、生活環境をよくするためへの努力を大石国務大臣中心として政府がやっきになってやっていただいているわけですが、これはやればやれるということですから、そういう点を今後とも——まあ一つの経過でございますから、これから沖縄がこちらに返るまでの間においても、手心を加えて積極的に進めるべきだという意図をもってこの質問を実はしているわけです。  先ほど総務部長が、どこの船か知らぬけれども油をこぼしていると話をされたわけですが、これらも原因と結果ははっきり出ているじゃありませんか。なぜ沖縄の沿岸にそうした油が流されてくるか。沖縄海岸はきれいだと、観光資源として格別のものだということは、日本全土のわれわれが非常に期待しているところだし、せめても沖縄だけはという気持ちを持って見ているわけですが、いま申し上げたように、沖縄の沿岸の海水が非常に海水が非常に汚濁しているという事実等は的確に原因がわかっているのじゃありませんか。そのことを総務部長からもう一度はっきり——それをどこの船だということまでは言えなくても、少なくとも日本へ来る船、日本から帰っていくタンカーではないかということだけはおそらく断言できるだろうし、同時にまた、屋良政府の出しております開発計画の中で、西海岸における観光地帯というところは計画の中に非常に大きく位置づけられておりますけれども、せっかくのその海水、海の中の景観、そういうものまでも、いままた非常におかされているという情報が私らの乏しい情報の中に入ってきているわけですが、そういった問題につきましても、それはなぜかということについての資料はお手元にあると思いますがね。いま申し上げたことは、全く私の推定でしょうか。それとも、現実そうでないというなら、そうでないとおっしゃっていただきたいと思いますが、その辺のところをやはり発生源等も十分突き詰めていただいて、私たちが沖縄に持っているイメージをやはり生かさしていただきたいと思うのですが、いま申し上げたようなことなどで、総務部長のほうで、そうでないのだという確固たる確信があればお伺いしたいし、また事実こうなんだということがございますればお聞かせいただいて、私なりにまた検討を加えて、後ほど一つの意見として申し述べる機会をつくりたいと思います。
  22. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) 御承知のとおり、現在の沖縄県では、海水汚濁防止法、これが本土の現行法の前の旧法のスタイルの立法になっておりまして、今後、その問題もございますが、現行の沖縄の海水汚濁防止法では、海岸線から一定の距離までしか対象にしておらないというようなことから、的確な報告をもらっておりません。  しかしながら、その事実を調査することは、法の改正なり、復帰後の海洋汚染防止法の的確な適用ということは別の問題としても、必要であるというふうに考えております。それらにつきましては、環境庁その他関係省庁と十分連絡をとりまして、実態を把握して適切な措置をとりたいというふうに考える次第でございます。
  23. 杉原一雄

    杉原一雄君 私がその次の段階でお伺いしようと思っていたことに触れておられるわけですけれども、要するに、公害対策は現在までどうとられてきたか。しかも、それについては、先ほど総務部長の答えの中で、あるいは集じん装置の実施とか、若干部分的には触れておいでになるわけですけれども、まだまだ全面的には十分でないだろうと思います。これからの問題ですが、公害対策についてということで、いままで御説明のあった集じん装置の設置とか、いろいろあるわけですが、その他法的な問題で、いま法が不十分だと総務部長は認めておいでになるわけですが、現在、公害に対する法律は何と何とがあって、それが不十分である、不十分であるとするならば、われわれ日本のこちらのほうでは、昨年の臨時国会等を通じて十幾つかの法律を整備したわけですから、こういった整備をこの返還の時点でやはりどういうふうにころがしていくのか、そのころがしぐあいですかね、適用の状況、判断考え方をお伺いしたいと思いますが、どういう形で進めていくのか。
  24. 岡田純夫

    説明員岡田純夫君) まず現在の沖縄における公害立法といたしましては、ばい煙の排出の規制等に関する立法、一九六三年でございますね、昭和三十八年の制定ということになっております。この法律は、先ほどもちょっと触れましたように、本土の旧ばい煙規制法と内容が全く同一でございまして、現在、琉球政府において法律改正を作業中であるというふうに報告を受けております。  それからいま一つは、海水の問題でございまして、船舶の油による海水の汚濁の防止に関する立法でございまして、これは昨年、一九七〇年の立法ということでございますが、これは、本年、本土では海洋汚濁防止法でございますか、現行法ができますとともに廃止されましたところの旧法のスタイルになっておるわけでございます。一日も早く復帰とともに本土法が適用さるべきものかと思うのでありますが、この二つ、すなわちばい煙と海水に非常に重点を注いでおったということでありますが、先ほどちょっと申し上げましたように、全般を通ずる公害防止法として公害対策基本法を現在立法中であって、幸い、昨日、関係委員会では可決されたということを聞いております。  それ以外に、これはばい煙でございますが、ばい煙問題審議会というのが琉球政府の諮問機関としてございまして、ばい煙問題、たぶん自動車排気ガス等の問題も含まるかと思いますが、沖縄では、那覇等に人口集中あるいは自動車というものが集中いたしておりますために、これの排気ガスということは十分注意しなければならぬ問題でございまして、本土政府からの財政援助によりまして、公害測定器等を設置すべく予算を提案いたしておると聞いておりますが、そういうようなことも対象にして、ばい煙問題審議会、それから沖縄公害衛生研究所において総合的に対策なり、防止策なりを練っておるということでございます。これを受けまして十分相談に乗ってまいりたい。  ただ、いまだ施政権がわが国のもとにございませんので、そういう関係とも連絡しながら、十分相談に乗ってまいるべき問題であろうかと考えております。
  25. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは、大きな第二の問題に触れたいと思います。  昨年の五月に、日本鉱業三日市製錬所、富山に存在するわけですが、その工場から排出される水あるいは大気汚染その他で、特に汚染田の問題、カドミウム汚染によるお米の問題、これがその米の配給を受けた地点から大きく突き上げられ、大問題となった。あわせて新宿の柳町の交差点の鉛の問題が突き上げられまして、全国的に公害問題に対する激しい問題提起が行なわれた一つ問題点でもあるわけです。すでに一カ年以上の月日を経過いたしまして、まず現在は、通産当局の連絡によりますと、八月の四日からテストに入っている。テストの中身というのは、問題を起こしてから今日まで、言うならば六〇%の操業を認めながら、四〇%を押えてきた。つまり完全に防除施設を整えなければ動かしてはいかぬぞということで、通産行政がきびしい姿勢をもってかまえた。いわんや鉱山保安法によってこれを規制するというところまで通産省は大きく踏み切ってきたわけですが、ときたまたま八月四日から、あとの四〇%の操業について試運転段階に現在入っている。それで、きょうは二十六日ですから、二十二日間すでに経過をしているわけです。現在、通産当局において掌握されているつまりテストの経過、テストの推移等から今後の判断をして、いわゆるカドミが出るとか出ないとか、だいじょうぶだとか、そうした判断がもうすでにおおよそ固まりつつあるのじゃないかということで、その辺のぎりぎりのところ、きょう時点における判断をお聞かせいただければと実は思います。  そこで、私も通産省から連絡をいただいたものですから、ちょうどいなかに帰っておりましたので、十二日の日に工場を訪れて、約二時間半工場の内部をしろうとなりにずっと点検して回りました。信頼すべき面もたくさんございますが、残念ながら、しろうとですからなかなか適正な判断ができないわけであります。でありますから、指導行政をなさっている通産当局のいま申し上げた現在時点の判断、それをまずお聞かせいただきたいと思います。
  26. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 日本鉱業の三日市製錬所につきましては、ただいま先生からお話がありましたとおり、昨年の五月にカドミの汚染問題が大きく取り上げられたわけでございます。当時、富山県の県知事さんの御希望もありまして、従来、この製錬所は、いわゆる独立製錬所といたしまして鉱山保安法による公害防止の規制を受けていなかったわけでございますが、八月二十七日に省令を改正いたしまして、いわゆる鉱山保安法でいう付属製錬場というものにしたわけでございます。したがいまして、この鉱山保安法に基づく施設の認可を要することとなったわけでございます。製錬所からは一万トンの——これは月の製錬能力でございますが、能力として施設認可を出してきたわけでございます。当時、この施設につきましては、一万トンで検討の上認可をしたわけでございますが、操業につきましては、先ほど先生からお話のございましたように、四〇%カットいたしまして、毎月六千トンだけの操業を認めたわけでございます。  その際、私どものほうで検査をいたしまして、施設につきましては二十五項目にわたりまして公害防止施設の改善を指示をしたわけでございます。その後、製錬所につきましては、現在まで十回にわたって立ち入り検査をいたしておりまして、きびしい監督をいたしておるわけでございますが、検査結果では、国のきめました基準を満たしておるというふうに私ども考えておるわけでございます。先ほど先生おっしゃいましたように、施設の改善その他補償地域との協定というようなことも、当初の私どものきめました方針をほぼ満たされておりますので、八月四日の日に製錬所のほうから一万トンまでのスケールアップの申請がありましたので、所要の検査を行なうべく、検査のための運転というものを認めたわけでございます。八月四日から、ただいま先生おっしゃいましたように、約二十二日間運転をしておるわけでございますが、何ぶん大型の炉でございますので、検査をいたしますためには、予熱と申しますか、全面操業の準備といたしまして焙焼炉その他の準備を、火入れをいたしておるわけでございますが、現在のところ、大体四週間、二十八日くらいを準備に要するということでございますので、大体九月の三、四日ごろに正常のランニングの状態になるのではないかというふうに私ども見ておるわけでございます。一万トンでの検査は、そういう正規のランニングになりましたときに、富山県、それから黒部市からの応援も得まして、三十人近い検査員を動員いたしまして、適当な時期に抜き打ちでやりたい、そういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、現在では、一万トンに上げました段階での検査、その結果というものはまだ出ていないというところでございます。ただいま検査の準備中であるということでございます。
  27. 杉原一雄

    杉原一雄君 それで大体荒筋だけはわかったわけですけれども、私は、公害問題は国会に出てからずっと追及してきたわけですが、某企業のごときは非常に傲慢な姿勢をとっているわけです。この三日市の日本鉱業は、一年ばかりの問、非常に通産の指導もあってか、熱心に設備改善の努力をしていると思います、私の目で見た限りにおいては。  そこで、具体的にどこをどうしたというようなことなど、いろいろ聞いてみても始まらないと思いますが、二十五の改善を指摘なさった点は、それで私はいいと思いますが、そうしたところにも企業側の新しい努力といいますか、創意というものがそういった努力の中に見出せるものがあるのかどうか。それから経費等についても、通産省からも伺っているし、企業からも伺いましたが、八億円ばかり投入して設備改善をやったと言っているわけです。これは私たちにはわかるはずもないわけですから、そのデータを信用するほかないわけですが、そうした面を通じてみても、かなりの努力をしているというふうに思いますけれども、もう一つは、対市、対住民との関係ですね。対市あるいは関係住民、まあ非常に住民のほうから長い間にわたって工場に対しても、市に対しても、県に対してもきびしい要求を突きつけてきた経過等もあるわけです。そうした面に対する企業側の努力と申しますかね、そういうものがあるのではないだろうか。つまり通産指導行政立場から見る機械設備等の改善措置、これは一々おあげいただくこともたいへんですから、いまおっしゃったように、二十五あるわけですね。私が見たのでは、もう一つプラスになるわけですね、曝気装置をうけておりますから。曝気装置をつけて、結局、水を浄化して黒瀬川という川に落としているわけです。川にはまあ魚が泳いでいると、死の川が生きてきたというふうな報告を私ども受けてまいったわけですね。そういう技術的な面、設備の改善の面、それなりに努力はしておると思いますが、そうした面についての所見というものがもしあれば、また、この点、こういうところはまだ不十分だと思われる点があれば御指摘いただけばいいと思いますし、また、逆にこの面は非常な進歩だと、技術的に見ても。そういう点があれば遠慮なくお示ししていただければ、公害対策一つの大きな前進になるのではないかという面もあります。  だから、工場のさくの中の改善努力、それから工場外に与えた被害等に対する会社工場のとってきた対策といいますか、善処方と申しますかね、汚染土壌の問題なり、よごれた米の取り扱いの問題なり、それからイタイイタイ病等の問題に対するいろいろな措置等もあったと思いますが、こうした企業の努力をやはり私たちは是とするものは是としていきたいと思いますし、またその中に欠陥があればやはり私たちの立場から鋭く追及していきたいと思いますので、私なりのしろうとの判断というものはやはり適正ではないと思いますから、直接指導に当たられた通産当局の側から見たそうした点についての調べられたこと、その結果から得た判断、そうしたものがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  28. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 三日市製錬所の問題につきまして、事業体側でやりましたいろいろの措置につきましては、私どもも、高く評価をいたしております。こういう問題に対する一つのモデルではあるまいかというふうに考えておるわけでございますが、昨年、この事業所に対します規制を始めましたときに、私ども、四つの問題についてやはり解決を要するのではないかというふうに考えたわけでございます。  その一つは、ただいま先生もおっしゃいましたこの施設の問題でございます。公害防止の施設につきましては、相当余裕をもって完備をさせるということが第一でございます。それから第二は、過去に汚染をいたしました汚染米に対する補償を完全に解決をするということ。それから第三は、県、市、住民というふうなこの地域との完全な了解を得るということでございます。それから第四は、公害防止施設を完備いたしますと同時に、工場直近の近傍の土地につきましては、やはり念のために絶対に被害を生じないような措置をするというこの四つの点でございます。  施設の問題につきましては、先生御指摘なさいましたように、私ども、二十五項目について指示をしたわけでございますが、そのほかに、会社側といたしましては、この排水が黒瀬川に流れるわけでございますが、排水中の溶存酸素量が排水のPHを上げるために少なくなるという問題が出てまいりまして、千八百万円をかけまして曝気装置を本年の二月に完成をいたしております。そのほかの施設の改善の具体的な問題につきましては、あとで担当課長に簡単に説明をしてもらうことにしたいと思います。  それから二番目の補償の問題でございますが、これは汚染米の問題でございまして、四十五年の産米につきましては、補償といたしまして八千五百万円を支払っております。それからなお注目されるのは、四十六年以降の産米に対する事前補償をしたということでございまして、三年間、年々二千万円を支払うということで解決をしたわけでございます。そのほか、この補償につきましては、ただいまの二つに盛られない分に相当するものといたしまして、黒部市に一億円を付託をいたしております。私ども補償についても誠意をもって事業体は事に当たったというふうに考えておるわけでございます。  それから三番目の公害防止協定につきましては、これは四十六年の五月二十七日に、黒部市と日本鉱業との間で、富山県知事を立ち会い人といたしまして、公害防止につきましての国の基準を相当上回るきびしい線での公害防止協定を結んでおります。  四番目の工場の周辺部の土地の問題でございます。企業体が約三億円を投じまして七万坪の土地を買収いたしておりますが、その土地につきましては、地域住民の賛意を得まして、七月十日に農地からの転用許可を受けまして、その土地には公害防止設備をつくるか、またはグリーンベルトとするか、福利厚生施設をつくるというふうな設置計画を着々と進めておるようでございます。  以上御説明申し上げましたように、四点につきまして完全に解決をしたということを見きわめまして一万トンまでの能力拡充に踏み切らしたわけでございますが、御参考までに、六千トンの能力で一年足らずの間操業をしてきたわけでございますが、その間に監督部を通じまして抜き打ちで検査をいたしておるわけでございます。その結果は、国のきめました基準をかなり下回っておりまして、たとえば、ことしの七月にやりました検査では、硫黄酸化物につきましては、計値で申し上げまして、鉱山保安法では二〇・四、公害防止協定では一一・七というふうに、国の基準よりもかなりきびしくきめておるわけでございますが、実際の測定結果では〇・〇六から六・四というふうな数字でございます。  それから一番問題になりましたカドミウム、これは大気中のカドミウムでございますが、鉱山保安法によりますいわゆる国の基準が一立方メートルの空気中に〇・八八から二・九三マイクログラム。それから公害防止協定では、これをさらにきびしくいたしまして〇・四マイクログラムというふうにしておるわけでございますが、七月の測定結果では、これは〇・〇〇七から〇・一八二マイクログラムというふうにかなり低い数字になっております。それから、排水中のカドミウムにつきましても、やはりかなり下回った数字が出ておりますが、一万トンに上げました場合の結果については、いまのところまだ結果が出ていないわけでございます。  こういう数値から一万トンに上げても、国の基準ないしは公害防止協定できめました基準を上回ることはあるまいという考えのもとに能力アップに踏み切った次第でございます。
  29. 伊勢谷三樹郎

    説明員伊勢谷三樹郎君) 局長答弁に追加いたしまして、設備の問題につきまして簡単に御説明をいたします。  ここで今度やらせました設備につきましては、大きく分けまして二つ特徴がございます。  一つは、まず煙及び粉じんの処理につきましては、コットレルをダブルに使って、非常にぜいたくな方法をとらせたという点が第一点でございます。なお、さらに御承知のように、亜鉛の鉱石というのは粉末状でございますから、これを実際に使いますために、塊状にいたしますためには、現在まで焼結炉で焼いておりましたけれども、行く行くはこれをペレット化するという方法をとらせる、ころいうことによりまして鉱煙中のばいじん及び粉じんの飛散というものが非常に少なくなるということを期待いたしておるわけであります。これは、これから新しく設置、また先に設置させるという問題でございます。  それから水の問題につきましては、従来、カドミウムその他の重金属を落としますために、炭酸カルシウムというものを使って落とすわけですが、この場合には産業廃棄物が非常にふえるという難点がございます。そこで、これを苛性ソーダに切りかえまして、その結果として産業廃棄物が非常に減るということでございます。これを今度は最初の原料として循環使用するということで、産業廃棄物をほとんどゼロにするという方式をとっております。その結果として、先ほどからお話が出ておりますように、PHが上がってまいりまして、一つの問題としましては、溶存酸素量というものが問題となってまいります。そこで、先ほどからお話が出ておりますように、曝気装置というものをつけましてこれを防止するという措置を施しておるわけでございます。  以上が大体この製錬所に新しく設けました防じん設備の概要でございまして、おそらく今日の亜鉛製錬所の中では最も整った設備であるということが言えると思います。
  30. 杉原一雄

    杉原一雄君 では、結局九月三日ですね、それが大体一〇〇%操業へのめどになるわけですが、それについて今後抜き打ち検査をやって、最終的には太鼓判を押すかどうか、それはまた通産大臣の権限に所属すると思いますが、そういう結果になるということでありますから、ここで今後の問題点として、ひとつ通産省の行政努力に期待したいのでありますが、いままでの善後措置を見た場合に、しろうとなりに判断しても、かなり企業の努力もあったし通産の指導もあった、住民の皆さんの激しい要求、行動がそうした結果を生んだ大きな力にもなっておる。その側からも評価したいと思いますが、非常なほかの企業に見ることのできない前進面があるというふうに受け取っていいのでありますけれども、やはり問題は、資本でありますから、どこでどう手を抜くかわかりませんし、今後の常時観測体制の問題とか、そういう問題等につきましても十二分の配慮をされると思いますが、今後の問題でありますから、九月三日時点に、よろしい、オーケーだという答えが出るとしましょう。出たあとの問題として、やはり今後ともそうした企業に対する厳重な監督と、それを具体的にどうするかということをちょっと説明できるものかどうか私わかりません。常時観測体制をこのように市に指導してやらせることになるかどうか、その辺はわかりませんが、常時観測体制なりいろいろな方法で、あるいは抜き打ち検査等やって、今後ともそうしたことの起こらないような手だてを通産は講ずるというようなことなど、いまこの時点で御答弁をいただけるものなら答弁をしていただきたいし、問題の処理を大きな流れとして観測した場合に、複合公害ではないわけですから、きわめて発生源がはっきりしていたというところから、この問題を資本と住民という形の中で問題の本質をだんだんとえぐっていく中から解決のめどが出てきたというふうにもとられますので、他の企業に直ちに適用できるとは思いません。思いませんが、しかし、そういう中でもやはり企業の努力、住民の要求、市の努力というものが三者一体になり、こうした結果に現在進みつつあるという点だけは、私も非常に多とすべきではないかと思います。  工場を訪れたときにも漏らしておりましたが、通産の名古屋からおいでになるそうですが、いつ何どきおいでになったかわかりませんが、背広姿をいつか変えられて、こっそりと工場の外から——排水口のとこらあたりでしょう。いろいろ点検をしていかれたのにあとで気がついてびっくりしているなどと言っておりましたが、そこらあたりにも通産行政の並み並みならぬ御苦労のほども私は読み取れると思います。特に工場は人には見せないけれどもと言って私には見せてくれたのですが、曝気装置を通して流れた水を、小さな水槽ですが、そこに導入して、いろぶなが元気で育っている。労働組合の執行委員長もそこへ来ておりまして、この前から見ると肥えておるなあと言っておりましたが、そうした良心的な努力もしていることを私もまのあたり見てまいったわけですが、今後もございますので、通産のほうではやはり住民にこたえるという意味で、このような点で今後ともひとつ十分監督を怠りなくやっていくのだ、ことばじゃなくて具体的な施策の面をお伺いできたらよろしいと思いますが、時間がありませんので、簡単にひとつ……。
  31. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 仮定の問題でございますが、検査の結果、支障がないということになりますと、一万トンの能力で操業を続けることになるわけでございます。  で、その後はどうするかということでございますが、これは製錬所でございますので、私どもといたしましては、大体年に三回くらいの頻度で検査をするわけでございます。  この検査には、まあ三つ種類があるわけでございます。一つは、公害に関する一般検査と申しますか、この工場の中の公害のもとになる発生源としてのいろいろな施設があるわけでございますので、そういう施設、それから並びに公害防止施設が当初の設計どおりに動いておるかどうかという発生源に重点を置いて検査をするわけでございます。これはまあ一般検査でございます。それから、そのほかに広域精密検査というものを実施をいたします。これは工場の周辺におきまして、大気、それから排水中のいろいろな公害になる物質の濃度その他を調べるわけでございまして、先ほど先生のおっしゃいましたのは、その種類の検査であろうかと思うわけでございます。  この二つを随時やっていくというわけでございます。もし、その検査によりまして、不備な点がありました場合には、追跡検査を行ないまして、もちろん製練所にその改善を指示するわけでございます。その改善の指示が的確に行なわれているかどうかということで、完全に改善されるまでは追跡検査を行なっていくということでございます。そういう検査を的確に行ないまして、先生先ほど御指摘のありました地域住民その他の御期待に沿っていきたいと、そういうふうに考えておる次第でございます。
  32. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 環境庁長官にいろいろ聞きたいことがあるんですが、時間もありませんので、尾瀬の問題に限って少しお尋ねいたします。  先般、長官は尾瀬へ行かれまして、三泊されて現地を見てこられたようですが、尾瀬の自然と申しますか、特別な状態は、私から指摘するまでもなく、一般に知れわたっております。  最近の日本の自然の破壊は目をおおうものがあるわけでございますが、私ども、新聞やテレビ等の報道を聞くたびに自分のからだの一部がはぎ取られるような苦痛さえ感じる次第なんです。このまま放置しておきますとどうなりますのか、予断を許さぬという状態でございますが、そういうときに環境庁長官大石君がおつきになって、私も大石大臣をよく知っておりますので、期待をしておったわけなんです。その期待にたがわず、尾瀬の問題については、みずから現地に飛んで行かれまして、つぶさに視察をされた。視察をしただけではなくて、尾瀬の環境破壊に対する——これは、まあ県側に言わせればいろいろ問題がありますが、群馬県と福島県をつなぐ県道の建設に中止の要請をされた。こういった非常に行動的で、しかも自然を愛するという長官のお気持ちは、いま申しましたように、すぐに現地に飛ばれて実情を調査し、しかも調査しただけではなくて、尾瀬の自然を守るという立場から、かなり県側の強硬な態度にもかかわらず、ついに初心を貫くと申しましょうか、尾瀬の自然を守るという原点に立って処置されたということについては、私どもいろいろ問題はございますけれども、その点については無条件に敬意を表し、長官のとられた立場に一応賛意を表する次第であります。  しかし、その限りにおいてはそうでありますけれども、やはりまだ現地にいろいろな問題が残っております。私は、二、三日前に群馬県の知事とも懇談しましたが、知事だけでなくて、地元民の中にもかなり問題が残っている、こういうことであります。  そういう観点から最初にお尋ねしたいのは、長官現地を見られて、それに立脚してああいう措置をとられたのでありますが、今後、尾瀬に対して長官はどういった基本的な立場で対処されるのか、県道の開さくを中止したことで尾瀬の自然が保護されるとお考えかどうか。いろいろ問題があろうと思うのでありますが、端的に、長官は、尾瀬を基盤とした自然保護に対してどういう立場をおとりになるか、これをお聞きしたいと思います。
  33. 大石武一

    国務大臣大石武一君) この尾瀬を守ることにつきましては、あのすぐそばを通る観光道路を変更させるということで保護の第一歩を始めたわけでございますが、それだけではもちろん十分とは考えられません。これからもいろいろと努力をして、いろいろな保護の方法を考えながらそれを実施してまいりたいと思うものでございます。  私は、いろいろなことがありましょうが、いま考えております基本的なことは、この日本の自然公園法というものを次の通常国会において改正いたしたいと考えております。いまの自然公園、つまり国立公園、国定公園というのは、みそもくそも一緒にしたような、ただ公園という形でいろいろな姿のものが国立公園という形で指定されているものと思うのでございます。これをもう少しその国立公園のいろいろな内部の構造なり、機能なり、あるいは国民のこれに対する利用度なり、そういうものを考えまして、もう少し別な形につくり直してまいりたいと思います。たとえば尾瀬のような地区、ああいう地区は、われわれが一生懸命に保護しなければ、その自然を保つことは困難と思います。そのような地区で、しかも非常な国の、われわれの子孫に残すべき重大な自然というものは何とかして保護を加えて、できるだけ人為的なものをそこに入れない、自然を守らせるような保護を加えながら、これを保っていきたい。できるだけ手をつけないようにして保護していきたいというようなものにいたしたいと思うものでございます。  しかし、それだけでは自然の利用ということは行なわれませんから、その次の段階——いろいろこれは考えがございましょうが、一つ考え方でございますが、その次にはいろいろな自然に接して、自然に非常に親しみを覚える人たちのために、そのような利用のできる自然な公園にしたいと思います。たとえば遊歩道をたくさんつくるとか、あるいはりっぱなその人たちのいろいろな宿泊施設をつくるとか、そのような形で努力をして、自然に飛び込もうという人たちのために、それにこたえるような施設、そうして自然をこわさないような次の段階の国立公園もよかろうと思います。さらにその次には、日本はこれからいろいろと国民の経済がよくなります。ひまな時間が出てまいりますので、レジャーを楽しむ人も多くなります。そういった人のために自然を開放して、十分そこで楽しいレジャーを過ごすようにしなければならない。たとえばその中には自然をこわさずに遊歩道をつくる。いろいろなレジャーの設備も必要でしょう、ホテルも要るでしょう、そういったものをつくりながら、備えながら自然をこわさないような形で多くの人に自然を与えていくというような形のものにしたい。このようにいろいろな段階をつくっていきたいというように思うものでございます。  尾瀬は、当然、初めに申しましたが、第一の範疇に入れたいと思います。そういうことで、できるだけ保護する、人為的なものは加えないで保護していきたい、そうしたものに持っていきたいと思うのでございますが、どういうことが考えられますか、いま一つ考えられますことは、いずれは入場制限もしなければならないでありましょうが、そういうこともいろいろ考えてこれを保護してまいりたいと、いま考えておる次第でございます。
  34. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 いろいろとまだその点についてお聞きしたいのでありますが、時間がございませんから、後日にいたしまして、長官が行かれまして、その結果、せっかくいま群馬県側から福島県側へ通じる道路を建設中であるのに、これの中止方をかなり強く要請をされまして、最初は、群馬県知事はかなり中止については強硬に反対をしていたということでありますが、大石長官の熱意に負けたのか、あるいは中央官庁の一つの威力に屈服したのか、この点は私もよく存じませんが、とにかく群馬県知事が一応中止に同意したと、こういうことですね。これに対しましては、県内の関係者はいろいろ問題を持って、考えているようであります。  それはそれとして、厚生省——これは内田君の大臣時代でありますが、昭和四十五年八月二十五日に、厚生大臣がこの道路の建設に対して、自然公園法第十四条第二項の規定によって、条件はいろいろついておりますが、許可をしている、これは御承知のとおりであります。この件に対して、新しくできた環境庁長官が、中止命令とは私も考えておりませんけれども、しかし命令に近いような状態で中止を要請された。これについては何か法的な根拠があってなさったのか、あるいはただ単に環境庁長官として尾瀬の自然を守るためにやむにやまれぬ、いわゆる長官立場から要請をして、中止方を県に——まあ、お願いと言っちゃ語弊がありますが、そういった立場でされたのか。もし法的な根拠があってなされたのなら、その法的根拠についてお示し願いたいと思います。
  35. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 群馬県知事の神田坤六さんからまだ正式に御返事はいただいておりませんが、大体いままで許可をしました地域の工事は中止するという御意向にあるということを承りまして、非常にうれしく思っておる次第でございます。これは、神田さんほどの知事さんが決して中央官庁の威力に屈服したのでございませんで、長官気持ちがよくわかる、理解できるというお話もございましたから、十分にお考えくだすって、大きな見地から御賛成くだすったものだと感謝しておる次第でございます。  さきに、去年の五月に、前の内田厚生大臣が三平峠の下までの道路の工事をこれは許可いたしました。これは許可しました以上は、環境庁としても取り消すだけの権限はございません。しかし、どうしてもこの道路を実際見てまいりますと、これからの尾瀬を守るためには非常にたいへんなことだと考えましたので、あえて神田知事にお願いをいたしまして、今後、工事を進めないように、それからいまの工事をしておる三平峠の下までの道路も遊歩道にしてもらうように、そして自動車は一之瀬まででとめていただくようにということを私からお願いいたしまして御理解をいただいたものでございます。
  36. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 その点はわかりました。尾瀬については、これはほかに求め得ないまことに珍しい地帯であるわけでありますが、御承知のように、上越線からバスで二、三時間かかるし、さらにまた歩いてかなりの時間かけて行く場所でありますから、いまはやりの住宅とか、その他いろいろなそういった建設予定地には全然ならないわけですね。したがって、そういう障害は起こらぬのでありますが、これを機会にひとつ長官にお聞きしたいのは、たとえば奈良とか、鎌倉とか、京都、われわれ日本人の心のふるさとというような場所が、いまの時点で、私は、はっきりとこれはどうなっておるか指摘できませんが、かなりいままでに産業開発とか、観光開発というような名目に従って環境破壊が進んでいるような状態であります。これはだれしも日本人である以上は、まことに惜しいという気持ちがあるわけであります。しかし、今日まで新聞やその他がかなり取り上げてきましたけれども、実際にはやはりどんどん進行している状態になっておるのであります。尾瀬を守るために長官がみずから自分で行って、しかも忙しい中を散歩もされて、つぶさに調査されたその熱意と、自然保護に対する非常な情熱には私どもは敬服するわけですが、そういった状態の中で、いわゆるいま指摘しましたような日本人の心に非常に脈打って残っている、そういった場所に対する現在の状態、すでに相当進行しているようなところには、これに対して環境庁は、やはり尾瀬に示されたような熱意と、かなり強い態度で処置をして、日本全体の自然保護とか、また古跡とか、そういった歴史的な存在のものを完全に保護をしてやっていく御熱意をお持ちかどうか。お持ちと思うけれども、この際、長官からひとつ確固たる信念をお聞きしたい。
  37. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 私は、何としても日本の自然はよく守りまして、われわれの子孫に伝えてまいりたいと願っております。  ただ、御承知のように、いま日本ばかりでありません。世界中がいまいろいろな産業開発とか、開発開発ということでどんどん世の中が進んでいる状態でございます。この開発ということは、とうていわれわれの力でとめ得ないと思います。特に日本のような国は、今後さらにまだまだいわゆる経済的開発が続いてまいると思います。そのことは、一面、日本の国民の経済的向上になることでございますから、けっこうなことであると思います。しかし、そのことによって自然が破壊され、公害が起こってまいりますことは確かでございます。そういう意味で、何とかして公害を未然に防止して、自然ができるだけ破壊されないようにすることが私ども責任であると考えておるわけでございます。しかし、現在の立場から申しますと、いろいろと各省庁にお願いすることはできますけれども、われわれの力だけで、いまの現在の権限だけでは、とうてい日本の数多くの自然を守るだけの力はございません。いまわれわれが自分の力で守り得る——自分の力というのはおかしいのでありますけれども、権限で守り得る範囲は、わずか国立公園だけであります。これも日本の国土のごく一部であります。これではどうにもなりませんから、さらに考えまして、お話しのように、できるだけ日本の自然に対してわれわれが調和のある保護をすることができるように、そのような発言の権限とか、あるいは調整をする権限を持ちたいと願っておるわけでございます。  そういう考えから、一番大事なことは、この日本のどんどん進んでいく経済の開発をどの線で押えるべきかと、自然保護とどこに一線を画すべきかという、その押える、一線を画する基準をつくることが大事でないかと思います。いまの公害対策につきましては、いろいろな環境基準なり、排出基準をつくりまして一つ基準ができまして、それによってこの公害の防止の方向に進んでおるわけでございますが、自然保護につきましては何らの目安がございません。みんなが思い思いに、かってに破壊が進行している状態でございます。そこで、やはりここに一つの目安をつくりまして、一つ基準のようなものをつくりまして、そうして開発は開発するが、自然は保護するというようなことができれば、一つ日本の国の行き方が非常によくなるのではないか、自然保護に役立つのではないかと考えまして、そのような基準のようなものをつくりたいというのが私の考えでございます。  その基本としては、いま庁内でいろいろと苦労してその構想をまとめております。自然保護法というようなものでございますが、これを中心にして、そのようないろんな国の自然の保護あるいは利用、活用というものをいろんな段階に分けまして、そうして日本の地図をつくっていけば、おのずからそこに——急にはそうはっきりしたものができなくても、いずれはいま言ったような保護と開発との間に一線を画すような基準ができるのではなかろうかと、こういう考えでいま努力いたしまして、それを次の通常国会に提案をいたしまして、皆さまに御審議をいただきたいものと願っておる次第でございます。  なお、奈良とか、京都とか、あのような古都、いわゆる史跡、われわれの先祖が残してくれた遺産を大事に保存したいのは同じ気持ちでございますけれども日本は、御存じのように、いろいろな役所がございまして、いろいろな仕組みがございます。たとえば古都保存法とか、文化財保護法とか、いろいろな法律がございまして、それぞれの役所が担当いたしております。結局、われわれができますことは、自然保護ということが中心でございますので、そのような点からも、いま言ったような旧跡、遺跡というようなものをできるだけ残すような考えで、そういう役所とは御連絡いたしますけれども、それぞれ役所でやはり機能を十分発揮して、勇気を持ってひとつそのようなわれわれの先祖の残してくれた遺産を十分に守ってもらいたいものだと願っている次第でございます。
  38. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 自然保護法制定について、何か長官が新聞記者に発表されておるようですが、その内容は、大体いまおっしゃったようなことに含まれていると思うのでありますが、その自然保護法の中にいろんな——確かに古都保存法とか、まあ古墳等もございますが、そういった総合的ないわゆる日本の自然と、また歴史的な所産というか、それらの現存するそういったものを含めて、いわゆる日本の歴史的な所産なり、自然なり、こういったものも含めたそのことが自然の保護ということばの中に入るかどうかは別として、せっかく新しくそういった構想を持っておられるのでありますから、もちろん所管が違うとか、いろんなあれもありますけれども、これはそのときどきにつくったものであって総合性はないわけですね、日本のそういった行政には。この辺でやはり日本もひとつ総合的な観点というか、総合的な施策が必要だと思うのです。いい機会でありますから、いわゆるそういう観点に立った自然保護法というようなものの制定はお考えになっておられるかどうか。
  39. 大石武一

    国務大臣大石武一君) いまお話しのとおり、そのような自然ばかりではなく、いろいろなわれわれの先祖の残した遺産というものを大事に保護して、総合的にこれを子孫に残すことは非常にけっこうなことだと思います。願わくは、われわれもそのような日本の国の行政をしたいものと考えております。しかし、そういうことは将来に希望を託して臨んでまいりたいと思いますが、現在は、何と申しましても、環境庁というのは七月一日にようやくできたものでございまして、幸いに前の山中長官が一生懸命努力してこれだけの組織をつくってくれたわけなんです。これもずいぶん努力されたことと思います。御承知のように、日本行政現状というものは、やはりまだまだなわ張り主義が強いのでございまして、ここまで持ってくるにも相当の努力だったと思います。ですから、われわれも茜ヶ久保委員の御趣旨はよくわかりますので、将来は必ずそのようになると思いますけれども、いまのところは、まずまず各省のなわ張りを大事にいたしまして、連絡協調の調整をとって、そういうふうに持っていきたいと願っておる次第でございます。
  40. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 苦心のほどはわかりますが、そこで、自然保護法はたいへんけっこうだと思います。いませっかく庁内でおまとめのようですが、これはぜひ次の国会に提出をして成立をさして、そしてぜひ一日も早く法的な根拠のある自然保護の仕事をしてもらいたいと思いますが、いかがでしょう。それは、いま申しますように、いろいろな官庁との関係もありましょう。長官は、次の通常国会に出したいというお考えのようですが、これはいろいろ折衝の結果出せるという見通しがついておりますか。これからまた折衝してみなければわからぬ、折衝したが結局だめだったというのじゃ困るので、われわれとしても協力して、ぜひ自然保護法は——まあ内容にもよりますけれども、いまおっしゃるような自然保護ならわれわれも当然協力できると思いますし、また協力していきたいと思っておりますが、それにはやっぱりりっぱなものをつくってお出しになることが先決でありまして、その辺の見通しはいかがでありますか。
  41. 大石武一

    国務大臣大石武一君) これは非常にむずかしい御質問でございますが、いま構想を早くりっぱにまとめ上げまして、それを土台としてこれから各関係方面にいろいろな折衝をしてその協力を願う段階に入りつつあるわけでございます。何としても出したいと思っております。まあ少し思い上がった言い方かもしれませんが、このような考え方が通らないようでは環境庁としての魅力は私はないと考えておりますので、これは何としても一生懸命努力して提案いたしたいと思っておりますので、よろしく御協力をお願いする次第でございます。
  42. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 それで、長官は尾瀬にいらっしゃったのですから、いろいろな実情はわかっていると思うのですが、私も戦前に二回ほど、戦後も二、三回参りました。もちろん戦前と戦後とはだいぶ違っておりますけれども、大体尾瀬全体はそう破壊されてないと思います。ただ、最近一夏に数十万のハイカーが訪れますので、それだけでもだんだんかなり変わってまいりますが、道路の件については、一応群馬県側も、いわゆる一之瀬までの自動車道、さらにそれからの三平峠までの遊歩道、これまで大体正式なお返事はないようですが、私が知事と話しましたときにも、知事は大体そういうことを了承したように言っておりましたから、おそらく正式な返答はあろうかと思いますが、これはこれで非常にけっこうだと思います。しかし一之瀬まで車が上がりまして三平峠まで遊歩道ということになりますと、これはおそらくハイカーが格段の数を増してくると思う。まあハイカーにもたくさん種類がありまして、心ない人たちがかなりミズバショウなりニッコウキスゲにいろいろな問題を最近起こすようでありますが、いかがですか。  長官もあすこにいらっしゃって、おそらく当時もハイカーがかなりいたと思うのですが、尾瀬を訪れるハイカーというのは、普通の観光地やそういったところをたずねる人よりもかなり良心的で、モラルもりっぱだと言われるのでありますけれども、まあ地元の人たちから言うと問題がありますが、長官はあすこにおいでになって、尾瀬を訪れる人たちのそういったことについて何かお感じになったことがありますかどうか。また何かお感じになって、こういうことはどうも思わしくない、こういうふうにしたらいいのじゃないかというような御感想があったら、ひとつこの際お聞きしたいと思います。
  43. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 尾瀬には、近ごろ非常に訪れる者がふえまして、大体五十万近くのものが来るそうでございます。ことに六月上旬のミズバショウの咲くころには、土曜、日曜はほんとうに沼田駅がさばき切れないほどの人でたいへんで、行列以上の状態だということでございますが、大体私が三日間参りました感じでは、わりあいに他のいわゆる国立公園とか、名所地よりもやはり心がまえのいい方がおいでになるような感じがいたしております。私は、もう少しきたないのではなかろうかと予想して参りましたが、思ったよりは清潔でございました。しかも、あの中には清掃員が何人かおりまして、非常に山を愛する学生か何かがアルバイトに入りましていろいろと片づけられたり何かしておる点もございましょうけれども、わりあいに思ったより清潔なので安心してまいりました。おっしゃるとおり、尾瀬に来る人は大体女の人が六割くらいだそうでございまして、御婦人が多いようでございますが、御婦人のひとり歩きの方もだいぶんあるようでございます。そういう点で、ひとり歩きでも安心してできるという、あのような自然と申しますか、山は非常に好ましいものだと思います。そういう点で、尾瀬というのは、やはりほんとうに尾瀬を愛する、自然を愛する者が多く来るのではなかろうかという感じを持って参りました。しかし、まだまだやはりよごれるところもございます。そういうものは、もう少しいろいろな考え方によって、そのような一切紙くずを落としたり、ごみでよごれるようなものにしたくないように思います。
  44. 茜ケ久保重光

    ○茜ヶ久保重光君 尾瀬には、これはほかの国立公園もそうでございましょうが、環境庁の職員が駐在をして、いろいろな監視などをいたしておるわけでございます。いつも言われるごとく、尾瀬は、高い山ではございませんし、危険という点においては少しほかのところとは違うわけです。しかし、いまおっしゃったように、いわゆるほかのところでは、求め得ない貴重な高山植物なりあるいはいろいろなものがあるわけであります。いま私も申しますように、幸い尾瀬のハイカーはかなり良心的でございますから、荒らすということもないようでありますけれども、実際はかなりやはり荒らされておるのですね。  そこで、尾瀬における環境庁の職員の数があまりにも少な過ぎて容易じゃないということでございます。したがって、ひとつせっかくそういった熱意があるのでございますし、それは現在、職員の数を減らすという方向にある時点でありますから容易じゃないと思いますけれども、現在あそこにいらっしゃる職員の皆さん方が心身ともに非常に苦労なさっておる。これはやはり一つは保存するという意味、一つにおいては、先ほどの自然を保護するという観点から、職員の増員等については何かお考えになっているでございましょうか、いかがでしょうか。
  45. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 日本の自然を管理したり、監督したり指導する職員は、おっしゃるとおり、非常に少ないのでございます。そこで、尾瀬は日光のあそこの管理所が中心でございますが、これも非常に少ない人間でたいへんに努力をしてかけ回っておるのでございます。あそこの管理員なんというものは、冬と夏とが住所が違いまして、毎年引っ越して歩いて、夏は尾瀬に住んで、冬は日光のほうに帰ってくるというように、住宅が  一定しない人もありますので、いろいろと考えなければならないと思います。そういうことで、できるだけレンジャーと申しますか、そういう職員をふやしたいと願っております。われわれは定員が五百一名になっておりますので、多少今度定員の整理をしなければならぬという政府の方針もあるわけでございますが、何とかして定員の相当のものを確保いたしまして、あの職員の数をふやしたい、そういう方針で進んでおるわけでございます。さらにいろいろなことを考えまして、もっともっと清掃員とかあるいは指導員とか、そういうものをもっとたくさん数をふやしまして、日本全国のそういった自然を清潔に保つような方向に持っていきたいと、いまいろいろと考えておる最中でございます。
  46. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 長官の熱意で、何か群馬県知事も道路の延長を一応断念したようであります。大体長官の御期待のようなすでに結果が生まれたわけですね。しかし、地元としては、先ほど来申しますように、承服できない面が多分にあるわけでございます。知事は了承しましても、いわゆるせっかく長い間の懸案である群馬県と福島県の、どちらも辺境と申しましょうか、陸の孤島といわれた状態にありまして、過疎地帯である片品村の一部分、そうして福島県の会津の陸の孤島といわれた場所、これはまあ開通すると考えておったんですが、それが今度の長官のおことばで中止になった。これはやはり自然保護という点においてはまことに御同慶にたえないんですが、そういった地元のいわゆる過疎地帯の生活環境を考えるとまことに遺憾な点があるわけです。そこで、これはひとつ、何とかそういった期待をやはりかなえてやることが政治の責任だと私は思う。  そこで、これは全然長官のお仕事の中ではありませんけれども、せっかくあなたの御期待にこたえたのでありますから、何かいわゆる通るところは違っても、あの道路を迂回するなり、場所を変更して、福島県側とのいわゆる道路の接点を設けるということに対して長官は何かお考えがあるか、いかがでしょうか。
  47. 大石武一

    国務大臣大石武一君) それはお説のとおりであります。あの道路の一応広域観光に使うための尾瀬沼の近くを通る道路だけを中止をしてもらいましたけれども、やはり福島と群馬の片品村をつなぐような道路がほしいと思うことは私もわかります。そういうことで、お互いに皆さんが御相談なすって、技術的な検討をなすって、もう少し迂回するような、しかも通る以上はやはり観光道路というよりは生活道路がほしいのでございますから、そのような意味から、生活道路と申しますと、一年じゅう通ることのできるような、しかも危険の少ない、できるだけ迂回しない、まっすぐ行けるような道路が一番望ましいと思いますが、そのような道路を十分に御検討なすって、そのようないい案ができれば、われわれはこれを国立公園の中を通すことに何らこれはやぶさかではないのでございまして、そのような道路——いま日本の道路工事も非常に進んでおりますので、長いトンネルを掘るのも簡単にできると思いますから、そのような御希望があるならば、尾瀬を守るという、尾瀬を傷つけないという道路ができるならば、われわれは喜んで協力を申し上げたいと考えております。
  48. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 建設省お見えでございますね。——内田前厚生大臣がこの道路の建設に認可を与える前後に、建設省の道路局では何か相談を受けられたと思うのでありますが、相談を受けられた事実があるか、またあったらこれに対してどういうアドバイスをされたのか、ちょっとお伺いしたい。
  49. 高木澄清

    説明員(高木澄清君) お答えいたします。過去におきまして、昭和三十九年以来この道路につきまして、いろいろ下協議を重ねてまいりまして、昭和四十一年には尾瀬を守る計画の基本構想が樹立されましたので、さらに昭和四十二年の十一月に自然公園審議会に公園計画の変更を諮問いたしております。その結果、昭和四十二年の十一月十日、自然公園審議会が公園計画変更について答申いたしまして、十二月五日、公園計画の変更につきまして官報に告示されておるわけでございます。その後、柳沢から三平峠までの間につきましては、昭和四十五年の八月二十五日に厚生大臣の承認を得て、これは自然公園法の十四条の二項でございますが、着工という段階の過去において経過をたどっております。
  50. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 まあお聞きのとおり、環境庁長官のたっての要請で、この道路がいま申します一応中止をすることになったわけでございます。しかし、先ほどから指摘しますように、地元住民なり、群馬県にしても、何としても福島県との接点を設けたいというやむにやまれざる願望があるわけです。自然保護の見地から尾瀬の自然を害しない立場で、いま長官もおっしゃるように、このいわゆる接点の道路の計画を変更する、しかし、こうなりますとかなり迂回もしましょうし、私も、現地の道路の関係については調査をしておりませんから、ここで何とも言えませんけれども、困難が伴うかと思います。そうなりますと、どうしてもこれはいろんな名目がありましょうが、国のかなりの協力なくしてはできないんじゃないか、こう思うわけです。長官もおっしゃるように、できるだけの協力をするとおっしゃるんですが、残念ながら、環境庁では、財政面ではなかなか思うような協力ができないんじゃないかと思うわけです。やはり建設省当局のかなりの——いろんな法律がありますから、おいそれといくわけじゃありませんけれども、しかし、事柄が事柄ですから、まあひとつできるだけの対策を講じて、そういったいわゆる迂回路をつくるということに対する可能性が、あなたのいわゆる建設行政立場から見てどんなものか、ちょっとお聞きしたいと思うんです。
  51. 高木澄清

    説明員(高木澄清君) 御意見のように、本路線は主要地方道でございまして、生活道路的あるいは地域の開発に非常に重要な道路であることも申すまでもないわけでございますので、そういった代替道路的なものが可能かどうか、それらにつきまして、現在県当局で検討中でございます。やはり御案内のように、技術的にもまた地形的にもかなりな調査を重ねなければならない問題もございますので、これらの調査の結果を見まして、県当局とともに考えてまいりたいと思っております。  なお、補足でございますが、その間、調査の間でございますが、現在大清水から一之瀬までの三・二キロにつきましては、すでに用地を八メートル幅で買うております。現在四メートルまで暫定施工いたしておりますので、これらを仕上げるとか、現在荒作業をやっております。一之瀬から以北の二・七キロにつきましては石積み等を整備していくということを、もうとりあえずは当面の問題としては進めてまいりたいと思います。引き続き調査は現在県で検討中でございますので、この調査と相まって検討を加えてまいりたいと思います。
  52. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 それぞれまた該当県としては、どうしてもということで始めたことであるし、それについて中央にもそれぞれの立場で要請をし、協力を得て、まあいろんな交付金等も受けて仕事をしたわけですね。それが中途にして中止になるわけですから、中止の理由ははっきりしておりますけれども、またいわゆる日本の官庁というのは、なかなかなわ張りも激しいが、そういった所轄のものに対してそれが遂行されませんといろんな問題が起きてくるわけです。そういうことで、もしこの問題が、尾瀬の自然保護はできたけれども、群馬県民なり、福島県民なり、新潟県民がこのためにいろんな意味での不利益を受けるということがあっては相ならぬわけでありますから、したがいまして、せっかく関係知事も長官の意図を受けて了承して協力してきたのでありますから、今後いろいろな問題が起こらないように、たとえばこの点ではできるだけ地元の願望である福島県、群馬県の地方道による接点が生まれて、一日も早く過疎地帯の非常にへんぴな人たち生活環境が改善されるという方向へぜひ努力をしてもらいたいと思うのです。  したがいまして、これで私の質問を終わりますが、冒頭に申しましたように、大石長官のいわゆる自然保護に対する御熱意とその行動力に対しては満腔の敬意を表しますけれども、しかし、ただそれだけでは、私がいま言ったように、決して十分ではないので、それから起こるいろいろな問題に対しては、これまたひとつ自然保護に対する熱意と変わりない情熱を燃やしてやってもらいたい。そういう意味で、地方道の一日も早く接点ができるような状態に御努力と御協力を要請するし、建設省当局はそれを受けてひとつぜひこれが完成できるような状態に指導と御協力をお願いしたい。この点をひとつ御要望して、長官の決意のほどをお伺いして質問を終わります。
  53. 大石武一

    国務大臣大石武一君) いま先生の御意見はよく理解できます。われわれも、そのように努力して、住民に迷惑をかけないように、いい道路計画があるならば喜んでそれに協力してつとめるように計らってまいりたいと、こう思っております。
  54. 小平芳平

    ○小平芳平君 マグロの水銀につきまして、私が一月二十八日の本院の農林水産委員会質問をいたしました。そのときには、私たちが党として分析を依頼した結果しか持っておりませんでしたから、したがって、マグロが〇・五PPM以上のものはアメリカ、カナダ、西ドイツ等で食用禁止にしたという段階において、なおかつマグロが安全ならば安全宣言を出すべきだということを私は厚生省並びに農林省に強く主張いたしました。それには何といってもこの調査が第一でありまして、ただ何となく昔から食べているから安全だと、世界のほかの国がどう言おうと日本だけは安全だというようなばく然としたことではなくて、厚生省なり、環境庁なり、農林省なりではっきりした調査をすべきであるということを強調いたしておいたわけですが、そのときには、調査をいたしますという御答弁でありました。  で、いま私が手に持っておりますのは、マグロの水銀を分析したものが三十一例、それから特に極端にマグロをたくさん食べる漁船員の毛髪の水銀を分析したものが十一人、これだけの資料を私はいただいておりますが、このほかにももっとたくさん分析しているのじゃありませんか。第一、この一月二十八日から見ると、もうすでに七カ月もたっております。したがいまして、ただ漫然とこれを放置しておったとも考えられませんし、そこで、厚生省としては、マグロの肉は何で分析したか、検体は幾つ分析したか、そうしてまた漁船員の毛髪の水銀計算は何人の検査をなさったか、その点をまずお答え願いたい。
  55. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) マグロの水銀含有量の調査につきましては、厚生省といたしましては、国立衛生試験所の池田先生を中心としまして、東京歯科大学の上田先生、あるいは神戸大学の喜田村先生などにお願いいたしまして、私的調査を進めているところでございますが、また一方、水産庁のほうでマグロの中に含まれている水銀の含有量についての調査もいろいろとやっているように承っております。  私どものほうに参りましたいままでの調査結果並びに検体の数等でございますが、マグロそのものにつきましては、これは間接に水産庁のほうからいろいろと聞いておりますところでございますので、水産庁のほうから詳細にお答えがあろうかと思います。こちらにまいっておりますのでは、先生が御指摘のように三十一検体でございますが、人体の毛髪につきましては、上田先生のところで二十二例——二十二と十二でございますので三十四例の結果を、中間的でございますが、報告を受けております。それによりますと、総体の平均値で申し上げますと、それは……。
  56. 小平芳平

    ○小平芳平君 そんなこと聞いていない。何人やったか。
  57. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 三十四名でございます。  それから、なお、ただいますでに出漁中のマグロ漁船の乗り組み員につきましては、それぞれもよりの寄港先でいろいろと検診を受けるように指示してございますが、その例数についてはまだ報告を受けておりません。
  58. 小平芳平

    ○小平芳平君 平均値ということは全然意味ないと思うのですよ、水銀の場合。つまりそれは毛髪だったら、大体長年船に乗っていない人、あまりマグロを食べていない人を入れればそれは平均は落ちるわけです。したがって、最高値を問題にするのが病気の事前防止には一番肝心だと私は考えます。  そこで、そうしますと、それは局長の持っていらっしゃる資料も同じだと思いますが、メカジキでトータル水銀が一・四三PPM、メチル水銀が一・〇四PPM、これが珊瑚海のメカジキ、そういうのございますか、第二十五番目です。それから毛髪の場合は、私のところに持っておりますのは十一人だけですが、総水銀で六九・〇PPM、メチル水銀で六七・〇PPM、こういう最高値の人がいる。これ以上の人はおりませんか。
  59. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) いままでのところは見つかっておりません。
  60. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、毛髪のほうは全部資料として出していただきたい。
  61. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) それでは、後刻提出いたします。
  62. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで、私は、厚生省から発行されている資料と、それからこの出版物について勉強いたしましたわけですが、メチル水銀が一・〇四PPMということは、かりにメチル水銀一PPMといたしますと、この厚生省の方の書かれた「水銀と公害」、これによりますと、総水銀として毎日一ミリグラム以上、メチル水銀として〇・五ミリグラム以上だと何人かは発病する可能性があるというふうになっているわけです。したがって、メチル水銀一・〇四、かりにメチル水銀一PPMのマグロを毎日食べている方は五百グラムで〇・五ミリグラムになるわけでしょう。そうしますと、五百グラム常時食べている人はすでにこの発病する可能性が出てきちゃっているということを書いているのですが、この点いかがですか。
  63. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 可能性としては、人間は非常にまあ人によりまして個人差が大きゅうございますので、可能性としてはあるいはあるかもしれませんが、少なくとも現在までマグロ漁船の乗り組み員につきましてかなり毛髪水銀の高い濃度が検出されているわけでありますが、いままでのところは、いわゆる水銀中毒という症状は発現、発見されておりません。
  64. 小平芳平

    ○小平芳平君 私たちが静岡県清水港で聞いた範囲では、大体漁船員の人は二百グラムから六百グラムのマグロを食べるということ、それから肉だけのみならず、内臓まで塩辛にして食べるということ、そういう点からしまして、このままほうっておいていいものかどうか。それは局長さん、発病する可能性としてはあるのだが、現在のところ発病していないというだけで安心できないわけですよ。そういうことだけじゃ何ら安心する根拠にならないわけです。いかがですか。
  65. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) その発病すると申しましても、発生率あるいはその症状段階といういろいろな要素の組み合わせがございますので、外部からいわゆる病気として把握できる、また実際にその方がいろいろと症状を訴えるといったような、そういった意味での可能性ということは一・〇PPM、一日量五百グラム召し上がるということを前提といたしましても、かなり特殊な場合に限られて、それもごく軽微な変化が起こる可能性があるかどうかという程度であろうかと思います。  また乗り組み員の方々は、確かにほかの方々に比べましてマグロの摂取量も多いわけでございます。したがいまして、これらの方々につきましては、ただ漫然と毛髪中の水銀含有量を調べるとかいうことだけではございませんで、たとえば視野の狭窄の状況とかあるいはじん臓の機能、そういったようなこと、いわゆる医学的な検診をいたしまして健康の状態をずっと調査追跡しているのでございまして、その結果、いまのところ異常がない。なお、しかし今後ともこの健康管理というものは続けていく必要があるというふうに厚生省としては考えている次第でございます。
  66. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、漁船員の健康診査、健康調査はやっているわけですね。何人ぐらいやりましたか、あるいはどこで担当していますか。
  67. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) この問題は、実は労働衛生の問題といたしまして、労働管理という観点から担当の運輸省のほうへ私どものほうからこれを必要があるということで管理をしていただくようにお願いしているところでございますので、運輸省のほうからお答えがあると思います。
  68. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生省の水銀による環境汚染の暫定対策要領について、昭和四十三年八月十四日、これによりますと、川や海の魚の場合は、一PPMをこえる魚が全体の二〇%をこすと毛髪検費や汚染源の調査をやるとなっておりますね。そうしますと、いま私の指摘するこの厚生省で分析を依頼したこのメカジキの場合は、二〇%よりももっとたくさん一PPMをこえているわけですよね。そうすると、この暫定対策を変更するのか、それともこの暫定対策に従って、一PPM以上のものが三〇%をこしているということと、   〔委員長退席、理事杉原一雄君着席〕 もう一つは、この毛髪検査の結果二〇PPM以上の者は精密検査を行なう、また五〇ないし一〇〇PPMの水銀が検出された場合は水銀中毒のおそれありとして対策を立てるということで、その中には漁獲制限、喫食禁止、住民検診、そういうことを暫定対策でうたっているわけですが、そうしますと、先ほど申しますように、マグロそのものの実態からいうと、メカジキの場合は一PPMをこえているものがはるかに多いこと。それから毛髪は——これはもっと厚生省が隠さないで、全部資料出してくれなくちゃわかりませんが、いま私の持っている資料だけで見ましても、総水銀で六〇をこしている人が二人、五〇台の人が二人、それ以下といっても、全部四〇台ですがね、PPMが。そうしますと、厚生省の暫定対策要領によれば、この毛髪検査の結果からして五〇PPMをこして、五〇ないし一〇〇の者は水銀中毒のおそれありとして対策を立てよう、漁獲制限、喫食禁止、そういうことになるんじゃありませんか、これはどうなんですか。
  69. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) 水銀が体内に摂取されましていろいろと障害が起こるという機構については、なかなか複雑なものがございまして、したがいまして、それを知る一つのよすがといたしまして、一応の目安といたしまして、環境の汚染の場合にはどうだと、それから、人体の中に入った場合には、毛髪の水銀の量がどうだといったような一つの目安を立てているわけでございまして、これと水銀中毒が起こるということは、また別の一つのステップ、別の現象が、この間に一つの鎖があるわけでございます。したがいまして、私どもは、健康管理と申しますか、そういった一つの目安といたしまして、毛髪中の水銀が二〇PPM以上、あるいは一〇〇PPM以上、こういったような一つの数字をあげまして精密検診なりその他のいろいろな手当てをしていこうということをやっているわけでございます。  また、本来マグロの中に含まれております水銀も、これは実は発生源から申しますと、なかなか不明の点も多うございますけれども、いわば天然資源に含まれているということで、陸上の汚染によって生じておりますものとはいささか違うのではないかといったような点もございまして、やはり最後のきめ手は、精密に人体に与えている、いろいろな組織に与えている影響をチェックしていくということによっていろいろと考えていくものではないかというふうに考えております。
  70. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう少し要領よく私の質問に答えていただきたいんですが、厚生省の水銀汚染の暫定対策要領によれば、一PPM以上のものが二〇%以上あればということがあるわけでしょう、この暫定対策要領に。それを都道府県知事に通知を出しただけで厚生省が動かないというのはおかしいでしょう、都道府県知事に暫定対策要領を指示しておきながら。そしてまた、もう一つは、毛髪が何PPMで発病するかということは、確かに毛髪が決定的な尺度にはならないということをいま長々と説明されましたが、それはそう思いますけれどもね。二〇PPM以上は精密検査を行なえと、暫定対策で出しているわけですよ、おたくのほうで。あるいは五〇ないし一〇〇PPMをこえたら水銀中毒のおそれありとして対策を立てろと指示しているわけですよ。指示はしっぱなしで自分のほうはやらないのですか、いかがですか。
  71. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) そういうこともございまして、わかりましたマグロ漁船員のデータにつきましては、今後、精密に検診も進めるし、健康管理をしていくという対策がとられているわけでございます。
  72. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、毛髪に蓄積されている水銀量なんていうものは、日本人は外国人に比べて高いといわれておりますが、ほんの一ないし二PPMとか、主ないし五PPMという程度のわけでしょう、いかがですか。それが漁船員の方々が六九とか六〇・一とかいうことは十倍、十五倍という蓄積が発見されているわけですね。したがって、いまの健康管理を十分しているということは当然だと思うんですが、それで現在の段階では、したがって、私が最初申しますように、マグロは安全だと、だいじょうぶ安全だから、マグロの安全宣言を出すというふうになっているんですか、なっていないんですか。それはどうですか。
  73. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) いままでの専門学者の意見、あるいはこの調査結果によりますと、マグロは、一PPM程度の水銀に汚染されておっても人体に影響はないというふうに考えておりますが、現にマグロ漁船員の方でこのように高い毛髪水銀量を示しておられる方もおりますので、その点少し時間をかけて追跡して、安全宣言を出すとすれば、確信をもってその辺のところを追跡した上でやるべきであるということで、現在まだ追跡中でございます。
  74. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほどの局長の答弁だと、安全宣言どころじゃなくて、水俣病の水銀中毒の発病の可能性ありなどと言われたんじゃ、安全どころじゃないですよ。いかがですか。
  75. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) たとえば阿賀野川などの例を見ましても、正常の人の中でも毛髪中の水銀含有量がかなり高い例が見られております。したがいまして、これと同一に論ずることはできないかもしれませんけれども、先ほど申しましたように、毛髪中の水銀量というのはあくまでも目安でございまして、これらにつきまして現在まで精密に調べましたところ、何ら異常が認められていないわけでございますし、また、それ以前の問題として、先ほど可能性の問題を申しましたけれども、実際上の問題といたしまして、マグロの水銀と申しますのは、いわば天然資源に含まれているということでございますので、従来から、これは人体には影響はない。その他いろいろと生物の中には無機あるいは重金属類も含まれておりますので、そういう例からも集約いたしまして、私どもは、マグロの水銀につきましては、現在の含有量程度では人体には無害であるというふうに考えておりますが、先ほど申しましたように、なお念には念を入れて、最もたくさんマグロを日ごろ摂取しているであろうと思われる方々についての精密な検査を進めている、こういうことでございます。
  76. 小平芳平

    ○小平芳平君 大体、漁船員の方に対する船員法施行規則という、これにも問題がありますね。この船員法施行規則、四十三年十二月六日の通達、魚介類は一人百八十グラム——一日に直しまして。それから獣鳥肉類は八十グラム、卵類は三十グラム。こうしておきながら、この施行規則では、獣鳥肉と卵類は半分は魚でよいとなっているわけです。ですから、この施行規則どおりに半分を魚にしますと、漁船員の方は二百三十五グラム——先ほど私が指摘した五百グラムのもう半分近いですね——二百三十五グラムは、船員法施行規則で、食べて何ら差しつかえないことになっているわけです。まあ個人差もありましょうけれども、平均しまして。船主としては、獣鳥肉や卵をたくさん積んでいくと金がかかるから、そこでもってとれたマグロを食べさせるということになると、獣鳥肉や卵を減らして、そしてマグロをふやしているわけですよ。問題ありませんか、こういう点。
  77. 栗山昌久

    説明員(栗山昌久君) 漁船船員の食料につきましては、船員法でもって、一応全部食料を支給するという義務を課しまして、航海日数が相当長期間に及ぶ船に対しては、これは運輸大臣が別に、食料のそれぞれの栄養配分を考えまして食料表をつくって、それによって支給するという形をとっております。カツオ、マグロの漁船乗り組み員については、一応、先ほど先生から御指摘のありましたとおり、一日の摂取量百八十グラム、それから獣鳥肉類の半分を魚介類にかえることができるというふうな形になっております。ただ、最近、漁船船員の毛髪の中に含まれる水銀量が非常に多いということ、そういうことから、関係業界とも話し合いしまして、漁船船員が帰ってきたときには、通常船員法できめられた定期健康検査を受けるわけですけれども、その際に、従前の検査とそれから今回の検査で、視力、聴力、それからからだのしびれ、その他水銀関係の発病の前兆となるような疾状がある者については精密検査をするというようなことを取りきめまして、なおかつ一方、カツオ、マグロ漁船についてはこれを置きかえるということはやめるように行政指導をしております。
  78. 小平芳平

    ○小平芳平君 やめる……。
  79. 栗山昌久

    説明員(栗山昌久君) はい。
  80. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、やめるってはっきり運輸省令を変えればいいじゃないですか。
  81. 栗山昌久

    説明員(栗山昌久君) これはカツオ、マグロ漁船以外の漁船についても同じようにかえられるということで、とりあえず、現段階ではカツオ、マグロだけの問題として、行政指導関係業界と——特に最近漁船船員も、マグロばかりでなく、食生活の変化ということの希望も強いということから、大体ここにきめられた量をあらかじめ船に積んで出航しているという実態にもなっておるというふうに聞いております。
  82. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから次は、これもずいぶん前のニュースですが、五月にアメリカのニューヨーク州衛生局研究部長が国会で証言をした。四十四歳の女性がメカジキを毎日三百グラムぐらい食べていた。一年半ほどして頭痛や、視力障害や、手のふるえ、運動失調などが起きた。毛髪中の水銀は四二PPMだったということが出ておりますけれども、これはいかがですか。
  83. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) ことしの五月にニューヨーク州の衛生部の研究開発部長が、米国の上院でこの旨証言されたということは私どもも承知いたしております。その後、この情報の詳細を入手するように、現在照会中でございます。と申しますのは、その当時の新聞紙上の報道等の内容から察しまするところ、毛髪中の水銀の量あるいはその他、いろいろとからだに症状を訴えている旨の記事でございますけれども、何と申しますか、いわゆる臨床的にこれを見た場合に、ごく軽症である、あるいはその後これがだんだんと快方に向かっておるといったようなことでございまして、私どもは、この点についての情報をその段階では確認をする必要はないのじゃないか、もう少し時期がたってこの点がはっきりしてから照会したほうがよかろうということで、過日照会したところでございます。
  84. 小平芳平

    ○小平芳平君 照会したんですか。
  85. 浦田純一

    説明員(浦田純一君) はい。
  86. 小平芳平

    ○小平芳平君 それなら照会したと言えばいいじゃないですか。  政務次官、私もう時間がありませんので、長々とやっておれないんですが、危険なものは危険だと言うのが正しいですね 安全なものは安全だと言うのが正しいですね。ですから、そう隠したりする必要はないんじゃないですか。分析値などはむしろ公開して、そうしてこれだけだと、こういうふうに危険だと、あるいはこうすれば安全だということを国民によく知らせる、それが行政の役目ではありませんか。これは朝日新聞に出た記事ですが、マグロの漁船員の問題で、結局、責任をなすりつけ合って、厚生省では、別に隠していたわけではない、より正確なデータが出るのを待っているところだというようなことを言っているわけです。環境庁では、その問題は公害というより職業病だから、労働省か水産庁でやるべきだと、こう言っている。水産庁では、厚生省の専門家が分析することで、こっちはわからないんだと言う。労働省では、労働衛生と言っても、それは船員は運輸省が担当だと、こう言っている。そういうようなことを言ってないで、むしろ危険なものは危険だと。実際問題としてマグロを五百グラム食べる人はおりませんからね、財政的な理由で。したがいまして、そんなに危険がないものならば、そうひた隠しになんかする必要はない。異常な多食をやめるとか、あるいはカジキは週に一、二回にするとかというようなことを教えてあげるのが正しいんじゃありませんか、いかがですか。
  87. 登坂重次郎

    説明員登坂重次郎君) ただいま先生からるる御注意をちょうだいいたしまして、われわれは行政責任上もそうあるべきだと存じます。ただ、ただいまお述べになった御意見の中で、マグロというのは日本の水産業の大事な部門でありますし、また、漁船員みずからもそれによって生計を得ているというようこともございますし、また、その方々が遠洋漁業中、だいぶ長年月がかかりまするから、そのマグロをお食べになるか、その他の魚を食べられるか、これはそのときによっていろいろ食生活も変わると思うのでありまするが、この水銀問題がにわかに科学的に分析され始めてまだそう長い歴史を持っていないと思いますので、そういう事実が今度科学的に検出された以上、われわれとしては十分その方面に関心を持つようにします。かつまた、そういう漁船員の方々の健康維持のためには、保健所もございますし、私のほうの医療機関を通しまして、また市の衛生担当の方々とも連絡をとりまして、行政的にも、ひとつお帰りになったら健康診断を願うように、また体質の異常がありましたら特にまた手当てをするように、そういうふうな措置をとりたいと思います。
  88. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、奈良県の芳野川という川ですが、この奈良県の芳野川では、魚はほとんど一PPMを上回っているということ、水銀が。トータル水銀で二十二検体中二十検体が一PPMを上回っている。メチル水銀でも二十二検体中十二検体が一PPMを上回っているという、こういうことがもうすでに四十四年に発表されているわけですね。ですから、先ほどの厚生省の暫定対策要領によれば、当然毛髪検査なり健康調査が行なわれてしかるべきと思いますが、これは環境庁に……。
  89. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 奈良県の芳野川は、水銀地帯がございますので、だいぶ水銀が溶けておるのではないかという御心配があるようでございます。そこで、厚生省でも、お話のように、四十四年度にはいろいろな調査をいたしまして、魚につきましては、確かにおっしゃるとおり、一PPM以上のものが八〇%以上あるということで、魚をたくさん食べないようにという注意を、警告を発しておるのでございますが、その後、健康調査厚生省でいたしておるようでございます。四十四年度までにはまだそのような健康被害者は幸い見つかっておりませんので、今後とも、われわれのほうとしましても、これを引き継ぎまして、このような多少危険のある地帯でございますので、できるだけそのような患者が一人でも出ないように十分な検診と注意を払ってまいりたいと思います。
  90. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、環境庁はこの芳野川流域の人たちに対する毛髪検査をやると、健康調査をやるということでよろしいですね。
  91. 大石武一

    国務大臣大石武一君) どうも私は医者でございますけれども、あまり水銀中毒についての経験はありませんので、どういう検査をしていいがわかりませんが、毛髪検査だけでいいのか、とにかく一番妥当な、医学界で妥当と認められる方法で検査して進めてまいりたいと思います。
  92. 小平芳平

    ○小平芳平君 水銀汚染ということを厚生省が発表しますと、すぐ——これなどは山口県ですけれども、要するに徳山水域の、徳山海域の魚は水銀が含まれているので大量喫食しないようにということを厚生省が発表したわけですね。とたんに徳山の海からとれる魚は全然売れなくなっちゃった。そこで、今度は山口県の衛生部長のこの魚介類は水銀調査の結果食べても差しつかえないものと認めますという、これは魚屋にみんな張ってある。ですから、そういう点早く手を打って、あいまいでおくのが一番よくないと思うのですね、早く手を打ってほしいということ。それから次に、同じく奈良県芳野川の、これは宇陀川という川と合流したところへダムを建設している。それをいま建設して上水道の用水を取ろうとしている。しかも奈良市、天理市、郡山市、桜井市、それから生駒町、この辺の粟原という部落などは「粟原かったい」という何かわけのわからない業病があったと言われているわけです。それが水銀とどんな関係があるかないか、現在わかりませんが、そういう流れてくる水をわざわざダムにせきとめて人間が飲もうと。要するに魚は一PPM上回るから食べちゃだめだと言って、魚にだめな水を今度は水道にして人間に飲ませよう、いかがですか、ちょっとおかしいと思いませんか。  この点については、福井県の武生市の水道もそうです。日野川という川で最高四・〇四PPMの魚が発見されたということを一方で厚生省が発表しておきながら、そこの川の水を平気で——平気でかどうか、とにかく一般市民が飲んでいる結果になるわけです。いかがですか、これで。
  93. 大石武一

    国務大臣大石武一君) お話の宇陀川と日野川ですね。これは確かに水銀地帯の地下を通っておるようでございまして、非常に危険な心配を持たれることは当然でございます。ただ、宇陀川は、いままで水道に使うというのでたびたび水質検査をいたしておりますが、幸いなことに水銀は検出されておりません。奈良県は非常に水の少ないところでございまして、いろいろな水源に悩んでおりますので、そのような事情はやむを得ずあると思いますけれども、それにつきましてもやはり大事な上水道でございますから、そのような十分な注意はしなければなりませんが、いまのところ検出されておらないということだそうでございます。  それから日野川でございますが、これは流域にいわゆるビニール工場ですか、がありまして、何らかの水銀を使う工法で初めやったそうでございますが、その後一切やめまして、新しい別な工法を採用いたしましたので、水銀はいま全然流れておらないそうでございます。それで、日野川につきましても、水に水銀は含まれておらないということでございます。魚につきましては、以前水銀を使うという工法を用いておりましたときには確かにその工場付近の魚に水銀が非常に多かったそうでございますが、最近はそのようなことはなくなったという報告でございます。
  94. 小平芳平

    ○小平芳平君 その奈良の場合に特に問題なのは、鉱業所がありまして、鉱石を掘り製錬をしておりますが、それより上流の魚も一PPMをこえているわけです。要するにその鉱業所の泥質といいますか、ヘドロといいますか、どろもこれは相当な汚染がありますが、したがって鉱業所下流へ行けばなおさら水銀汚染がひどくなっております。その鉱業所よりもはるか上流でも魚には水銀が検出されているということ、このことは、もうこの辺一帯が水銀鉱脈で、宇陀川というところにその鉱業所があるわけですが、その宇陀川が芳野川に合流するもっと上流においてすでに汚染されておるわけです。したがって、その辺一帯の水がそういう水銀汚染のおそれがありゃしないかということを私は感ずるので、特に注意してほしいということを申し上げておるわけです。
  95. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 地図で申しますと、芳野川よりも宇陀川のほうが上流で、その下流で合流しておるようでございます。この芳野川の上流に確かに大和水銀鉱山という鉱山がございまして採掘をいたしておるそうでございます。製錬はいたしておらないそうでございます。
  96. 小平芳平

    ○小平芳平君 していますよ。
  97. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 製錬はやっておらないので——やっているのですか。報告では、しておらないというのです。それで水銀は流すまいと思っておりました。それじゃ、よく調査をいたしまして十分に警告を発したいと思います。
  98. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、ちょっと時間もありませんので別の問題でありますが、カドミウムによる土壌汚染、たんぼや畑のカドミウムにより土壌汚染された場合、これを知事が地域指定をし、そうして計画を立案し、今度は環境庁長官へ報告をするようになっているというのですが、これは事務当局の人から伺ったところ、全然進んでいないということですが、どこかの県で知事が地域指定し計画立案をしておりますか、いかがでございますか。
  99. 大石武一

    国務大臣大石武一君) カドミウム汚染による土壌の場合、客土なんかしてこれを変えたところは、まだないそうでございます。
  100. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで、ただ、ないじゃ困るので、やはり環境庁としましては、一番県として困るのはどこを指定するかが第一の問題ですが、それとともに、今度は指定して客土するといっても、それをどこへ持っていくか、持って行き先がないわけです。したがって、そういう点、総合的な土地利用計画を立てるとか、あるいは広域的な処理とか、さしあたってはそういうことと、それからもう一つは、早く技術開発をして、現在カドミウムをあっさり分解させるという方法がないわけですが、そういう方法をとるとか、要するにカドミウムによる土壌汚染は、もう現に困っているわけですから、そういうところをかかえてもう困り切っている県に対して、環境庁として技術開発なり土地総合利用なり、そういうことを進めていただきたいと思いますが、いかがですか。
  101. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 私も御意見のとおりだと思います。われわれとしましても、その土地にはわれわれが食べる食べものをつくらないで木を植えるとか、あるいは場所によっては宅地に変更するとか何かして、そして技術開発——それが一番いいわけでございますが、それまでの間、そのような段階で努力させるように指導をしてまいりたいと思います。
  102. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう一問、これで終わりますから。  それから次にイタイイタイ病につきまして、イタイイタイ病判決が出たわけですが、そしてまた厚生省はイタイイタイ病は公害病と四十三年五月八日に認定しているわけですが、これに対してなおかつ、長官も御承知のように、お医者さんの間で、学者の間でいろんな論争があるわけですね、いまでも。それで、特にいまさしあたって八月二十八日、二十九日には医学の研究会が持たれる。これは公衆衛生協会がやるわけですが、まあ厚生省の委託を受けて研究会をやるというわけでず。その研究会となりますと、イタイイタイ病の判決を支持する学者も、イタイイタイ病の判決とは逆の意見を言う学者もいらっしゃるそうです。ところが、なぜこれは一般の報道関係とか、傍聴の人を入れないかということです。
  103. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 傍聴ですか。
  104. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうです。
  105. 大石武一

    国務大臣大石武一君) これは、私のほうの山本課長がその会議に出席することになっておりますので、ひとつその課長から事情をお聞き取り願いたいと思います。
  106. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) カドミウムの研究につきましては、厚生省当時から、各種の研究班に研究費を出しておるわけでございますが、たしか二年ほど前に、総合的にシンポジウムのような研究集会を開いたわけでございまして、それの二年後ということで、今回は公衆衛生院の重松疫学部長を会長といたしまして、数人の先生方によりまして、全国的にカドミウムの研究をしている方々を招待をいたしまして、その研究発表会を行なう、こういうことでございます。  私は、カドミウムの環境汚染の過去における国内のデータを発表するということでございまして、公衆衛生協会が事務局として行なうわけであります。  その公開、非公開のことにつきましては、これは会長をはじめ、この計画をされた先生方の間できめられたことでございまして、先生方が自由活発な討議を行なうために、かつまた会場が狭いのでそういう形をとりたい、まあこういうお話に私は伺っております。
  107. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは先生方がそうやる分にはけっこうですが、厚生省の委託を受けているわけですよ。しかも、公衆衛生協会がやるわけですよ。そういう国の機関がやる会合に報道関係はお断わり、報道関係を紹介されることもお断わりというような注意書きをなぜわざわざするか、そういうことです。
  108. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) ただいま申し上げましたように、先生方がおきめになりまして、狭いということと、それから自分たちの自由な討議をしたいからということでございまして、ただし、そのかわり両日とも会の終了後にそれぞれ座長なり、会長から討議をなされたことが記者発表される、こういうことを聞いています。かつまたその討議の内容につきましては、後日、各演者が論文にいたしまして、それを印刷発行すると、こういうぐあいに私了解しているわけでございます。
  109. 内田善利

    ○内田善利君 先日の本委員会で隠れ水俣病のことについていろいろお聞きしたわけですが、長官の前向きの答弁もあり、また今回の裁決もありまして、たいへん現地では評価しているわけですが、今回の裁決で公害病患者をできるだけ広くとらえて救済しようという長官の姿勢、これは非常に高く評価するわけですが、私も、その後また水俣に行ってまいりまして、いろいろそういった観点から調査をしてまいりました。裁判も進行中でありまして、微妙な関係もあると思いますが、まだたくさん未認定患者が残されておる。特に天草方面に例の毛髪中の水銀量が多かった方がたくさんいるということと、現在の認定患者の家族の中の調査をしたところ、その九〇%は水俣病に似た症状を持っていらっしゃるというようなことをお聞きしまして、水俣におきましては、その因果関係の究明にあまりにも奔走されたがためにこの被害者救済という面がおろそかにされておったんじゃないかと、このように強く感じて帰ってきたわけでございます。したがいまして、先日の質問も最後の質問は御回答を得ておりませんし、これは通産省関係ですけれども、それとあわせて再度きょう質問していきたいと、このように思います。  第一点は、こういった事態が水俣に起こってきておるということについてどのように長官はお考えになっているか。まずこの点からお聞きしたいと思いますが、もうすでに公害病として認定されて三年にもなります。しかし、このような事態が起こっておるということについてどのようにお考えになるのか。
  110. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 恐縮ですが、ちょっと御質問がわかりかねますので、もう一回ひとつお話し願いたいと思います。
  111. 内田善利

    ○内田善利君 公害病として認定されて三年にもなっておりますが、まだことしも十三人、前年は五人というように認定患者認定されているわけですね。水俣にあるいは天草方面にそのような疑似のといいますか、水俣病に似た患者が出てきているというようなことがある。すでに認定された患者の家族にもそういった方がたくさんいらっしゃる。そういったことに対してどのようにお考えになっているか。
  112. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 認定された方は、それぞれの医療なり、医療手当なり、介護手当をお受けになっているものと私考えておりますが、それが何かそのようなまだ処置がなされておられないのかどうか、もう一ぺん調べたいと思います。  なお、疑わしい患者があるそうでございますが、それは先日の皆さまの御意見でも十分承っております。それで、さっそく熊本県のほうに連絡をいたしまして、できるだけ範囲を広げまして、疑わしい患者についても一斉検診をするように指示をいたしました。現在、熊本県では一斉検診が始まっているそうでございます。したがいまして、いろいろと疑わしい患者につきましても十分な検診が行なわれまして、患者であるものはやっぱり的確に今度は拾い上げられるものと、そして認定をされるものと考えておる次第でございます。
  113. 内田善利

    ○内田善利君 確かに、私たち参りましたときにも、一斉検診が御所浦町の嵐口小学校で行なわれておりました。これは熊本県衛生部が三百六十万円の資金でやっておるように聞いておりますが、国では、環境庁としては、もう少し大幅な、広域な一斉検診をやる計画はおありにならないかどうか。私は、こういった際、一日も早く一斉検診を国の力で、補助金を出してでもやっていただきたいと、このように思いますが、この点はどのようにお考えでしょうか。
  114. 大石武一

    国務大臣大石武一君) できるだけ早く、広く行なわれることをわれわれも希望いたします。  ただ、御承知のように、環境庁が一斉検診をやると申しましても、これは県でおやりになることが一番いいのであって、われわれは、そのような患者を診断する技術も何も持っておりません。やはり一番その道の権威者がおり、そうして技術もすぐれておる、能力のある熊本県でやっていただくのが一番いいと思います。熊本県に、そのようにできるだけ早く、広くやっていただくことを希望いたしたいと思います。  なお、そのことにつきましては、環境庁といたしましても、できる限りの援助はいたしたいと考えております。
  115. 内田善利

    ○内田善利君 私は、環境庁が出向いて行っておやりになってはいかがかと言っているのではないのです。やはり熊本県としても、あり余るお金があるわけではございません。三百六十万円の金でやるとなれば、ああいった程度しかできないじゃないかと私は思うわけです。したがって、環境庁としては、補助金を出してでもやるお考えはないかどうか、お聞きしているわけです。
  116. 大石武一

    国務大臣大石武一君) よくわかりました。  それでは、その点は局長から答弁させます。
  117. 船後正道

    説明員(船後正道君) 先生御指摘の現在熊本県で実施いたしておりますのは、県の費用で熊本大学が担当いたしまして、一部地域につきまして実施しているものでございますが、それ以外に、県では、現在、水俣湾沿岸住民の一斉検診を行なうことを計画いたしておりまして、これにつきましては、国といたしましても、県と十分協議いたしました上、財政的な補助につきましても検討してまいりたい、前向きに検討してまいりたい、かように考えております。
  118. 内田善利

    ○内田善利君 もう少し具体的な計画はありませんか。
  119. 船後正道

    説明員(船後正道君) 現在、県でどのような範囲で、どのような手順でやるかということを計画中でございますので、事務的にはまだ詳細な固まった計画の報告を受けておりませんけれども、できますれば、私どものほうでもできる限りの財政援助をしてまいりたい、かように考えております。
  120. 内田善利

    ○内田善利君 目安をいつごろにおいてやられますか。
  121. 船後正道

    説明員(船後正道君) 十月以降ごろ実施の運びになる、そのように聞いております。
  122. 内田善利

    ○内田善利君 先般の委員会でお尋ねしました天草に二人水俣病に似た患者がいる。これは天草の上島南岸潜在水俣病調査医師会というのが二名の水俣病によく似た患者を発見しているわけですけれども、この二名に対する調査は行なわれましたかどうか、お聞きしたいと思います。
  123. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) その二名につきまして行なったかどうか、私、県から通知を受けておりませんが、県が目下計画中でございまして、近日中に私どもと一斉検診についての打ち合わせをいたしまして、それに基づきまして、先ほど局長からお答えしましたような国からの援助も考えてみたいと、こう思っているわけでございます。その中で、そういった患者さんの検診までも行なわれるよう助言をしてまいりたいと、そのように考えております。
  124. 内田善利

    ○内田善利君 ぜひそうしていただきたいと思いますが、時間の関係で次へ移りますけれども、この間九人の行政不服申請者に対しまして、県に対して処分の取り消し裁決を下されたわけですが、向こうに行って聞きましたところでは、新たに六人の患者が一この方々は九人の方とは違いまして、昨年の四月からことしの三月までの間に、熊本県に対して公害病ではないかと認定申請をしているわけですね。この人たちが全然何もないままに放置されておった。公害救済法違反ではないかといって環境庁に訴えられていると思いますが、この人たちの実情についてお聞きしたいと思います。
  125. 船後正道

    説明員(船後正道君) 御指摘のように、熊本県から現在六名の方が不作為に対する審査請求を提起されております。これは県に対しすみやかに処分することを求める請求でございますが、環境庁といたしましては、行政不服審査法の規定によりまして、県に対し弁明書の提出を求める等の手続を進めておりますけれども、これまで県は認定審査に必要な医学的な検査その他を実施して、近く審査会を開くと、このように申しておるようでございます。しかし、問題はすみやかに認定等の処分を行なうことでございまして、この点につきましては、先般の九人の方々の裁決並びに同時に出しました事務次官通知でもすみやかに処分を行なうようにいたしておりますので、熊本県もこの方針に従って近く審査会を開き、すみやかに決定するという運びとなっておりますから、当然この不服審査は自然消滅になると、われわれはさようになることを期待いたしております。
  126. 内田善利

    ○内田善利君 私は、このことを聞きまして非常に憤慨したわけですが、救済法の精神に完全に違反していると思うのですね。緊急にかつ敏速、かつ確実な救済をするというのが目的でありながら、一年間一体何をしていたのだろう。そんなに認定というのは時間のかかるものだろうかと、どういうことが、どういう手続が必要なためにこんなに一年半の間放置されておったのか。昨年の六月、五人の方々認定になったわけですが、そのときは三十二人申請になっているわけですね。そして十六人が保留で、十一人が棄却。この十一人の棄却の中の九人が勇気をふるい起こして厚生省のほうに行政不服申請をしたわけです。十六人の保留の方々もいらっしゃるわけです。それと、いま申しました六人の方々病気でありながら、また自分の家族が水俣病でなくなっていった。そういう家族でありながら、あるいは三十五年、三十六年、三十七年の毛髪中の水銀は相当量あった。あの九人の中でも、四人はこのときの調査の毛髪中の水銀の量が一五PPMから八七PPMと、定説の一〇PPM以上の方々がおるわけです。あの水銀は発表されていない。こういったことなどを考えてきますと、私が一番最初環境庁長官に御質問したのは、一体どういうことで水俣はこんなに患者なり被害者救済がおくれておったのか、こういうことに対して私は環境庁長官の御意見を求めたわけですけれども、的確な御返事が最初にいただけませんでしたが、このようにどうして一年半も放置されておったのか、この点をお聞かせを願いたいと思うのです。
  127. 大石武一

    国務大臣大石武一君) どうしておくれていたのか、いま残念ながら私もよく存じません。これはいろいろ県のほうでも事情があったことと私も思います。やはり御承知のように、的確な診断、的確な認定というものをいままでは前提として患者を検査して認定したようでございますので、そのようなやはり厳密さを要するために時間がかかったのかもしれませんが、事情はよくわかりません。もう少し聞いてみまして、それが促進されるようにいたしたいと思いますが、今回、先ほど申しましたように、九名の申請やり直しを裁決いたしましたので、そういうものも引っくるめて、ごく近いうちに必ずまた審査が行なわれると思いますので、その六名の方々も必ずこれに入ることと思います。またそうようになることをこちらは県のほうにも御連絡をいたしたいと、こう思います。
  128. 内田善利

    ○内田善利君 あとで申しますけれども、アセチレン法による塩化ビニールの製造法がエチレン方法に変わったときに、特定施設として工場排水規制法によって届け出をしなければならないわけですね。このときの状況は、チッソ工場から、参考までに申し上げますが、二月三日届け出があったわけです。そうして二月の四日に、あくる日に立ち入り検査をしておるわけです。そうして二月五日には県知事さんが受理されておる。これなんかは届け出と受理と立ち入り検査と、もう全く間髪を入れず行なわれている。こういう事実があるわけです。ところが被害者のそういった認定については一年半放置されておって、どういう理由で放置されておったのかわからない。こういう私は行政当局の姿勢を不可解に思うわけです。一方はそのように三日間で立ち入り検査までいって受理しておる。ところが被害者についてはそのように放置されておる。私は、あえてそう言いたいのですけれども、こういう姿勢は人間性優先、人間主義といいながら、全くどこにそれがなされておるのか、全く残念に思うわけです。こういったことについて、長官、どのようにお考えでしょうか。
  129. 大石武一

    国務大臣大石武一君) この患者審査して認定するのは県の権限でございます。そういうことで、われわれといたしましても、厚生省以来、ずっと早く審査をするように、早く検査をするようにということをたびたび申し入れておるわけでございますが、これはやはりそのように申し入ればいたしておりますが、県の仕事でございますので、それ以上いろいろのことに関与することもいかがかと思って、いままでこう延びたのかと思いますけれども、今後はそのようなことのないように一生懸命督励いたしたいと、こう思います。
  130. 内田善利

    ○内田善利君 ひとつよろしくお願いしたいと思います。  それと水俣病は八年説といって、昭和二十八年から昭和三十五年までだと、昨年も当公害委員会から熊本をたずねられましたときも、三十六年からはもう患者はゼロですという御報告をいただいたわけですが、昨年の六月の五人の認定、また、ことしの四月の十三人の認定、こういったことが起こってまいりますと、その認定患者の中には、昭和二十一年に発生した患者あるいは昭和三十六年に発生した患者などがおられるわけですが、この点をどのようにお考えでしょうか。三十五年以降は患者はなかったと、このように考えられるのか、どのように考えておられるかをひとつお聞きしたいと思うのです。
  131. 大石武一

    国務大臣大石武一君) この毛髪検査というものは、大体三十五年から行なわれておるわけでございます。したがいまして、それ以前の患者、ことに三十四年とか、二十八年とかいう患者につきましては、患者そのものではなくて、やはりこれは患者を診察した医師のカルテを中心としてこれは検査を行なったものと思います。ですから、カルテを見まして、おそらくカルテのあるもののうち、昭和二十七年が一番古いのではないかと私は思うわけであります。しかし、その後また検査されなかった、あるいはまた残っていたカルテがあって、そしてそれ以前の患者がもしあるとするならば、それも当然患者として認定されてもしかるべきだと思いますけれども、二十八年というのはカルテを見た結果がそういうものではなかったかと思うのでございます。三十六年度以降につきましては、どういうことかわかりませんが、三十五年から二十八年までの間に限るという認定をわれわれはとっておりませんので、いろいろな患者が出てくれば、それは当然認定しなければならないものと思っております。
  132. 内田善利

    ○内田善利君 これは通産省かどうか知りませんが、チッソ工場では、水銀を使用した期間は一体いつからいつまでか。水銀を原料としてあるいは副原料として使用しておった期間、それと海水中に水銀が認められなかったのはいつからいつまでか、この点をお聞きしたいと思います。
  133. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) お答え申し上げます。原料として水銀を使用しておりました期間は、昭和七年から昭和三十五年八月まででございます。
  134. 内田善利

    ○内田善利君 的確な答弁をしていただきたいと思いますが、それじゃ答弁になりません。そういうことを言われるから、病人はいなかったかどうなのかと、こういう質問になってくるわけです。
  135. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) ちょっと私間違えましてまことに恐縮でございます。  水銀を使っておりましたのは、昭和七年から昭和四十六年三月まででございます。先ほど申し上げました三十五年八月といいますのは、その八月に水銀を含みます排水を製造工程の外に放出することなく、これを循環的に再使用する循環方式にこれを切りかえたのが三十五年八月でございます。原料として使っておりましたのは、もう一回申し上げますと四十六年三月まで使っておったわけでございます。
  136. 内田善利

    ○内田善利君 それでは、チッソ工場は四十六年の三月までアセチレン法の塩化ビニールの製造をやっておったのですから、このときまでは水銀を使っておったのですね、工場内で。ところが、いまおっしゃった三十五年の十二月ですか、サイクレーターができた期間、完成したときから水銀を出していないと、このようにおっしゃっていると私は思います。入鹿山教授のお話によりますと、サイクレーターは無機水銀については若干効果があったけれども有機水銀については全然効果がなかった。これは実験の結果そのようにおっしゃっています。実験の結果、サイクレーターは全然効果がなかったと、無機水銀は若干効果があるが、有機水銀は全然効果がなかったと、それとプールは——あそこに行ってごらんになるとおわかりと思いますが、水俣チッソ工場は、ほとんど沈澱池のほうが、プールのほうが工場の敷地よりも広い、そういう感じのする工場です。現在の工場の敷地よりは何倍もの沈澱池が、プールができておる。しかもそのプールから漏水しておった。これは入鹿山先生が現に排水をとって実験された結果データが出ているわけです。  こういったことを考えますと、サイクレーターが効果がなかったということと、漏水——実際、このプールは横のほうはコンクリートできちっとさくがしてありますが、下はもぬけのからなんです。これはもう工場側でも認められております。そういったことになりますと、入鹿山先生の説も私はうなづける、そのように思うのですが、その点はどのように通産当局はお考えになっておりますか。
  137. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) お答え申し上げます。循環式につきましては、先生御指摘のように、循環器で大体だいじょうぶだったわけでございますけれども、微量の水銀がなお体系外に出される可能性もありましたので、三十五年の一月に排泥プールを設置いたしまして、ここに排水を加えるようにいたしたわけでございます。  で、プールにつきましては、お話のような構造に相なっておると思いますけれども、投入される排泥量に比較しまして非常に大きなプールでございまして、大雨等の天然異変に対しましても、われわれのほうの情報でございますと、現在まで漏水の事実はなかったと、こういうふうに聞いている次第でございます。
  138. 内田善利

    ○内田善利君 どこから聞いておられるのですか。
  139. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) チッソ株式会社から聞いておる次第でございます。
  140. 内田善利

    ○内田善利君 チッソ株式会社がそう言うのは当然のことだと私は思うのです。通産省としては、その排水あるいは泥土の中の調査はしておられるのか、お聞きしたいと思います。
  141. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) しておりません。
  142. 内田善利

    ○内田善利君 この水俣地域は、水質保全に基づいて水銀の水域指定が四十四年二月三日になされておるわけですね。水域指定をする場合には、どこの場合もそうですが、一年ないし二年前から予備調査をやって、現地水質審議会を設けて、排水口の排水の状況その他を調査した上水域指定がなされるわけですが、そういったことはなされたのかどうか。また、なされておれば、そのデータをお示しいただきたいと思います。
  143. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 水俣湾関係水質調査でございますが、経済企画庁がやったわけでございます。  まず最初にやりましたのは、三十五年に水質基準調査を実施いたしておりますが、その調査は、主として生活環境項目について調査が行なわれたわけでございまして、水銀につきましては一部の底水につきまして行なっただけだというふうに聞いております。それから二回目の調査昭和四十一年に、経済企画庁から日本分析化学研究所に委託をいたしまして、特殊問題調査の一環としてなされたわけでございまして、このときには、水銀の状況につきまして実態調査が行なわれております。それから四十四年に、お話のとおり、旧水質保全法によりまして基準が出されたわけでございますが、四十四年度以降につきましては、水俣湾水域につきましてアフタケア調査といたして実施いたしております。  以上が従来経済企画庁がやってまいりました調査でございます。
  144. 内田善利

    ○内田善利君 それでは、四十一年の水銀のデータをお示し願いたいと思います。
  145. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 現在ここにございますのは、四十五年にやりました調査でございますけれども、これは排水口において調査をいたしたのでございますけれども……。
  146. 内田善利

    ○内田善利君 私は、四十一年の調査のときのデータをお聞きしている。四十五年といったら指定になったあとの話です。
  147. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 四十一年の調査は、先ほど申し上げましたとおり、委託をいたしてやった調査でございまして、現在企画庁に資料がございます。これは引き継いでおりますけれども、現在、詳細なデータは手持ちいたしておりません。
  148. 内田善利

    ○内田善利君 通産省はどうなんですか、あるいは厚生省
  149. 久良知章悟

    説明員(久良地章悟君) 通産省では、そのデータを持っておりません。
  150. 内田善利

    ○内田善利君 この四十一年は七月から十月にかけて厚生省、経企庁、通産省、水産庁で共同調査をしておるわけですね。そしてそのときのデータが全然わからない、そして予備調査もされないまま四十四年二月三日に水域指定が行なわれておるわけです。何があぶなくて水域指定がなされたのか。普通の場合は洞海湾の予備調査をして、そして現地水質審議会で、こんなあぶない状態ではいけないからということで水域指定がなされてきたわけですね。そして工排法が適用されてきた。ところが、この場合には予備調査もされていない。そういう状況で水銀の水域指定がなされたわけですけれども、それまでは水銀は全然出ておりませんと先ほどは通産省から報告があったわけです。三十五年十二月以降は全然排水口からは水銀が出ておりませんと、完全循環式になって出ておりませんと言いながら、何でわざわざ四十四年二月三日に水銀の水域指定をしなければならなかったか、どういうデータに基づいてされたかの、その点をいまお聞きしたわけですけれども、それでは何もなされないままこの水域指定はなされたわけですね。
  151. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 水俣につきましては、先ほど申し上げましたとおり、数回の調査をいたしまして、それぞれの状況を把握いたしておるわけでございまして、それらの分析等につきましては、水質審議会に置かれました水銀関係の特別の部会というところでも検討がなされておるわけでございます。  いまの特別の予備調査等をなぜしなかったかというお話でございますけれども、水銀につきましては、基準におきましても、検出されないことというような、最低の基準を設けるというようなことでもって諮問がなされ、審議がなされた関係から、従来のデータを基礎といたしまして、特別の個々のデータを必ずしも必要としないということから、四十四年の二月に結論が出されまして基準が制定されたということでございます。
  152. 内田善利

    ○内田善利君 くどいようですけれども、それでけっこうです。だけれども、四十一年にやられたデータも全然お示し願えない、そうして四十五年のデータを示されようとしましたが、これは水域指定になってからのデータですから、これは私は要求はしません。それよりは四十一年、四十二年、四十三年、この間おそらくなされているだろう、そうしたら水銀が出ておったか出ていなかったかわかるだろうと、私は、焦点は水俣病の現在の認定患者以外に患者はいないかということを焦点にしていまずっと質問しているわけです。だから、この間水銀が出なかったのか、出ていなければ患者はいない、そう判断したいのです。ところが、全然そういう調査もなされないまま水域指定が行なわれておる。しかも三十五年、三十六年、三十七年と毛髪中の水銀量の調査をして、非常にたくさんの方が毛髪中に水銀が多かったということから、これがほんとうに参考になるならば、私は、当然向こう側の島である天草方面の不知火海の水域指定をなされるべきじゃなかったかと、どうしてこの天草方面がこのときに水域指定にならなかったのか、この点もふしぎに思うのですが、この点はいかがでしょう。
  153. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) まあ、私、当時の事情必ずしも詳しいわけではないのでございますけれども、やはり問題になりましたのが水俣湾中心の地帯ということで、その地帯を中心にいたしまして、特に工場排水によります汚染のおそれがはなはだしい地帯ということを前提といたしまして当時指定をなされたというふうに聞いております。
  154. 内田善利

    ○内田善利君 そう簡単に言われますけれども、魚介類、特に貝類などは水俣湾から相当量の水銀が、メチル水銀が出ているわけです。たとえばアサリ貝で申しますと、水俣湾で昭和三十七年に四三PPMのアサリ貝、平均です。三十八年が四〇PPM、四十一年が八一PPM、四十二年が六〇PPM、四十三年になって三〇PPM、このようになっておりますが、こういった間にも魚介類が汚染されておる、こういう実情です。  また、先に進みますけれども熊本大学の医学部の神経科の原田講師は、先ほども申しましたが、現在、水俣病について、水俣市の水俣病認定患者の家族百人を検診したうち九十人は末梢神経の知覚麻痺など、水俣病と同じような症状を呈し、六十人は日常生活に支障が出ると言っている、こういう状態ですと、このように言っておられるわけですが、天草の現状といい、こういったことといい、あるいは諸般の事情といい、非常に私は現在の認定患者以外にたくさんの未認定患者がいらっしゃるんじゃないか、このように思うわけですけれども、この点、長官はどのようにお考えでしょうか。
  155. 船後正道

    説明員(船後正道君) 水俣病患者の発病の時期につきまして、先生から初めお尋ねがございました。従来、これにつきましては、二十八年から三十五年までだというようなことが言われておったわけでございます。二十八年という時点につきましては、先ほど長官も申しましたとおり、当時のカルテの関係その他でもって確認ができなかったということでございます。  なお、三十六年以降という問題につきましては、これは現在の救済法によるところの認定は、メチル水銀の影響による疾病であるかどうかという認定でございますので、発病の時期につきましては、特に確認することはいたしておりませんけれども、確かにことしの春でございますか、十三名の方々が新たに認定されましたけれども、その中には三十六年ごろの発病であるという方もあるようでございます。そういう次第でございますので、発病の時期、またその地域につきましてもさらに調査を進めるということになりますれば、範囲も拡大する可能性は多分にあるわけでございまして、そういったことも踏まえまして、先ほど申し上げましたとおり、水俣湾沿岸地域につきましての一斉健康診断というものを県当局と現在協議中でございます。
  156. 内田善利

    ○内田善利君 長官、いかがですか。
  157. 大石武一

    国務大臣大石武一君) いまの局長からお答えしたと同じでございます。
  158. 内田善利

    ○内田善利君 それと今度は少し話が変わってきますが、チッソ工場は、いままで水銀を使用しているカーバイド、アセチレンを原料とする塩化ビニールの製造を、先ほどお話がありましたように、四十六年の三月停止しておるわけですね。そうして石油エチレンを原料とするオキシクロネーション法というエチレンを原料とするモノマー工場を新設したわけですが、これは三十億円ということでございますが、このことは御存じですね。このことが問題なんです。このオキシクロ法によるこの工場の新設については、今度は不法届け出工場を建設していたわけですね。——通産省、そうですね。その経過を説明していただきたいと思います。
  159. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 特定の施設の届け出につきましては、前の工場排水規制法によりまして届け出の義務が課せられておるわけでございます。で、その届け出施設につきましては、これは政令できめられておるわけでございます。当時の政令によりますと、アセチレン法によります塩化ビニールモノマーの製造の場合には、アセチレンガス発生施設が特定施設に指定をされております。これはおもに触媒として水銀を使うわけでございます。それから、この石油化学法によりますエチレン法の場合には、この塩化ビニールモノマーの製造施設は特定施設に指定をされておりませんで、コポリマーろ過施設が特定施設に指定をされておるわけでございます。昭和四十五年十一月にこの特定施設はアセチレンを原料とするプロセスでございますので、塩ビモノマーだけが指定をされていただけでございます。これにつきましては……。
  160. 内田善利

    ○内田善利君 あなたがおっしゃっているのは、特定施設のことをおっしゃっているんですね。私が言っているのは、いままでアセチレン法で塩化ビニールをつくっていた。これは水銀を使っていたわけです。ところが、今度は水銀を使わないエチレン法の工場を設置しようとしたわけです。その工場立地の調査等に関する法律に違反しているんじゃないかと聞いているんです。
  161. 田中芳秋

    説明員(田中芳秋君) ただいま御指摘の点でございますが、塩化ビニールモノマー工場、これは昭和四十五年二月一日に着工という届け出が来ておるわけでございます。先生の御指摘の点、これに対しまして、工場立地の調査等に関する法律に基づきます特定工場設置の届け出、これは敷地、建屋面積で三千平米以上、または敷地面積で三万平米以上のものがこの届け出の義務を課せられているわけでございますが、この届け出は昭和四十五年十一月二十四日になされております。ところで、この法律によります届け出は、工事着工の九十日前までに行なうべきものとされております。したがいまして、着工が昭和四十五年二月一日、そしてただいま申し上げましたように、設置の届け出が四十五年十一月二十四日ということになっておりますので、法律の所定の期限までに届け出が行なわれなかったわけでございます。これは私どもといたしまして、まことに遺憾なことと考えておるわけでございます。この設備が同社の工作工場を利用されて、それのスクラップ・アンド・ビルドという形で建設されたという事情もございまして、私どもの出先担当局でこれを事前に把握できなかったわけでございますが、その後、着工の事実が明らかになりましたために、会社に警告をいたしまして、直ちに届け出をさせたものでございます。  ただ、いま申し上げましたように、届け出が著しく遅延いたしておりましたので、工場責任者に警告をいたしますと同時に、社長名をもちまして始末書を提出させておるわけでございます。始末書では、届け出の提出が遅延したことを深くおわびいたします、今後このようなことのないように注意いたしますという趣旨のものでございますが、当省としても、問題を起こしました工場でもございますが、今後、このようなことの生じないように企業に対する指導監督、また出先のこういったことに対します行政指導、内部指導に十分留意をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  162. 内田善利

    ○内田善利君 この点について二、三質問したいと思いますが、この始末書の内容の中に、法律の規定を知らずというわび文があるわけですね。大工場工場立地についての届け出をする場合に、法律の規定を知らなかったというのは無責任きわまりない。しかも公害によって国民の皆さまに迷惑をかけている工場なんですから、こういったことについては特に神経過敏であってしかるべきじゃないか、このように思うわけですが、その点はどうなんでしょうか。こういった法律を知らなかったということを……。
  163. 田中芳秋

    説明員(田中芳秋君) 先ほど申し上げましたように、既存の敷地内、さらに既存の工場のスクラップ・アンド・ビルドという形もございましたために、この当該法律についてやや欠けたと、このように考えられるわけでございます。しかし、先生がおっしゃいますように、こうしたことは、はなはだ大工場にはあるまじきことではないかというふうに考え、厳重に警告を発した次第でございます。
  164. 内田善利

    ○内田善利君 スクラップ・アンド・ビルドで発見ができなかったということですけれども、これは法律上勧告に値しませんか。
  165. 田中芳秋

    説明員(田中芳秋君) 勧告の要件といたしましては、法第九条に二つの要件が掲げられておるわけでございます。すなわち、第一の要件といたしましては、当該工場の設置によって、その周辺一帯におきます工場または事業場の立地条件が著しく悪化するおそれがあると認められるとき、第二の要件といたしましては、その工場を設置しようとする地域の自然条件または立地条件から見まして、当該事業場を他の業種の製造業等の用に供したほうが国民経済上きわめて適切なものであると認められるときと、この二つの要件が掲げられておるわけでございます。  したがいまして、ただいまのような行為につきましては、この勧告の対象ではない、このように考えております。
  166. 内田善利

    ○内田善利君 このエチレン法によるモノマーの製造によって廃棄物が出るわけですね。その廃液は有毒な有機塩素化合物ということで、第十管区海上保安本部に海洋投棄を申し入れているわけですね。ところが、第十管区海上保安本部から拒否といいますか、されているわけですが、廃棄物の処理施設をつくるまでということで海洋投棄の申請がされているようですけれども、この点はどうなんでしょうか。
  167. 山形栄治

    説明員(山形栄治君) お答え申し上げます。エチレン法で塩化ビニールモノマーの製造をいたします際は、ジクロルエタンとか、トリクロルエタン、クロロホルム、四塩化炭素等々の有機塩素化合物が排出されますことは確かでございます。これらのうちにはクロロホルムのように毒性の強いものもあるわけでございまして、その処理につきましては、現在、これらの方法で塩ビモノマーをつくっております全国二十工場のうち、大部分は焼却、回収、貯蔵等で、これを海洋に投棄するようなことはしておらないわけで、このチッソにつきましては、県の指導によりまして完全な焼却の形をとっております。いま申し上げましたことに関連いたしまして、海洋投棄を行なっております五工場につきましても、現在、焼却の方法にこれを切りかえるように準備いたしておりまして、所要の施設の建設にいま入っておる段階であります。
  168. 内田善利

    ○内田善利君 この水俣チッソ工場がこの廃棄物の処理工場をいまつくって、八月からスタートしているわけですけれども、この届け出がことしの二月五日にされているわけです。そして受理されたのが二月の十二日。そして八月の十日にスタートしているわけですけれども、この工場設立にあたって届け出は四十五年の十一月二十四日にしているわけですが、工事着工は二月一日にしている。しかも、一年たったあと処理工場のことを考えている。いま説明されたとおりに、その廃液の中には相当な有毒な塩素有機化合物があって、五つの工場が海洋投棄しているということですが、こういった廃液の処理工場を一番最初につくって、そして工場立地をすべきであると、私はこう思うのですけれども、まず工場を届けなしにつくって、そのあと法律に違反するような届け出をして、しかも一年たったあと廃液の処理工場を届け出てつくった。こういう感覚がどうしても私にはわからないのですが、これ一体どういうことなんでしょうかね。
  169. 根岸正男

    説明員(根岸正男君) お答え申し上げます。ただいま先生が御指摘になりました件でございますが、これは工場立地調査法の手続の問題は別といたしまして、先ほどちょっと局長が御説明いたしましたように、エチレン法に基づきましてこの製造をいたしますときには、コポリマーのろ過器が特定施設になるわけでございまして、この頭のほうになります塩ビモノマーの製造施設は特定施設にならないわけでございます。そういうわけで、これとその塩ビモノマーの製造施設と、ろ過施設をつなぎます……。
  170. 内田善利

    ○内田善利君 特定施設のことは私は何にも聞いてないのですよ、廃棄物、廃液の処理について。
  171. 根岸正男

    説明員(根岸正男君) はい。そういうことで、手続的には二月三日に届け出が出まして、二月五日に受理がされまして……。
  172. 内田善利

    ○内田善利君 それとは違う。
  173. 根岸正男

    説明員(根岸正男君) はい、それから申し上げますから……。それで六十日たちました四月六日付で使用開始届けが出ているわけでございます。  それで、その去年の十一月に海上保安庁に海洋投棄について相談いたしましたのは、四月につけるときに、もしこの八月の燃焼装置——要するに燃焼装置が動き出すまでのタイミングで間に合わないときには一時的に捨てたいということで相談に参ったわけですが、県の指導でそれはできる可能性が非常に強いから、出てきたものはためておいて、それで燃焼装置にかければいいじゃないかという指導がありまして、燃焼装置に回すということで海洋投棄をしないことにしたわけでございます。ですから手続的には、またタイミングの問題としましても、あまりおかしい状態ではないというふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  174. 内田善利

    ○内田善利君 毒物を処理するほうを先に考えないで工場立地のほうだけ先にやったというのは、私は、おかしいと思うのですね。長官、どうでしょうか。廃棄物のほうを考えないで、タンクがあるからタンクにためろとかあるいは海洋投棄をするとかしないとか、そういうことは別として、廃棄物の処理工場を先に考え工場立地の届けを出すべきだと、このように思うのです。そういうことはあと回しにしておるということをふしぎに思わない感覚は、どうも解せないのですね。
  175. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 私もこれは考えまして、やはり少なくともこれからのものの考え方は、どのような工場をつくり、どのような操業をされて、どのように利潤をあげられましても、それはけっこうでございますが、そのために廃棄物をどこに捨ててもいいという考えは許されないと思います。そういうことで、やはり少なくともこれからはまず廃棄物の処理ということを十分に考えた上での工場の稼働でなければならないと私は考えております。
  176. 内田善利

    ○内田善利君 そのとおりだと私も思います。  それでもう一つ聞いておきたいことは、同じくこのようなモノマーを製造する工場日本で五工場あるわけですね。それで海洋投棄しておるわけですが、現在、三井東圧の名古屋、泉北工場、それから信越化学の直江津工場、あるいは東亜合成の徳島工場、旭ペンケミカルの千葉工場、山陽モノマーの水島工場、日産石油化学の千葉工場等は海洋投棄しておるわけですが、これはどこに海洋投棄しておるのか、おわかりでしょうか。また、こういう毒物を海洋汚染防止法ができるまでほおっておいていいのかどうか、この点お聞きしたいと思うのです。  きのうは、毒物ではないという通産省のお話を聞きましたけれども、この中にはクロロホルムとか、四塩化炭素とか、ベンゼンとかあるいは塩ビモノマーとか、あるいはジクロロエチレンあるいはジクロロエタン、あるいはクロロピレン、メタアリルクローライドあるいは二塩化エタン、三塩化エタンあるいは四塩化エタンというような、一つ一つとってみれば、みんな有害な物質ばかりなんですね。こういうものを来年の海洋汚染防止法が施行になるまでほおっといていいのかどうか、また一体これをだれが許可したのか。第十管区海上保安本部は、これは拒否したわけですけれども、現在海洋投棄されているところはだれが許可したのか。こういった事実について長官どのようにお考えか、最後に質問しておきたいと思います。
  177. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 前の五工場、私も、五工場が海洋に投棄したということは知りませんでしたから申しわけありませんが、このように海洋に何でもかんでも捨てることは、はなはだよろしくありませんので、近く廃棄物の海洋投入処分の基準を、ごく近くこれを決定することにわれわれいたしております。その際に十分調べまして、たとえば有機塩素系の物質であるならば有害でございますから、こういうものの海洋投入は認めない方針にいたしたいと考えております。
  178. 内田善利

    ○内田善利君 海上保安庁あるいは水産庁に来ていただいて、漁具に対する被害、障害、あるいは人体などにも影響はないのかどうか、あるいはどの辺に海洋投棄しているのか、そういったこともお聞きしたがったんですけれども、時間がありませんのでこれで終わりますが、こういった毒物がいつの間にかやはり海洋投棄されている現実をひとつ長官よく調査いただきまして、今後対策をとっていただきますようお願いして、長くなりましたが私の質問を終わります。
  179. 加藤進

    加藤進君 二、三点簡潔にお尋ねしたいと思います。最初に無過失賠償責任制の問題ですが、これは長官がすでに国会におきましてもしばしば言明されておるところでございますから、あえて確認だけしたいわけでございますけれども、これは来たる臨時国会に提出される用意があるかどうか。
  180. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 来たる臨時国会は沖縄問題が中心でございますので、これはわれわれ提案はいたしませんで、次の通常国会において御審議を願いたいと考えております。
  181. 加藤進

    加藤進君 それでは、次の通常国会にという含みで二点だけお尋ねしたいと思います。  第一に、公害による被害、その加害者である企業がその賠償責任を負う、これはもう当然の道義だと思います。そこで、この公害による被害の補償でございますけれども、これは内容としてはどのような内容になるのか。私は、それは健康に関する限りのものである、生活上の保障あるいは営業上の保障等々はその限りにあらずなどとは、よもや考えておられないと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  182. 大石武一

    国務大臣大石武一君) われわれが初めて出す法律案でございます。そうして、ことにこれは民事訴訟の例外の問題でもございますので、慎重に考えまして、これを間違いのないものにいたしたいと考えております。そういう点で少し控え目かもしれませんけれども、まず健康に関する被害の問題を中心としてこの法律案を進めてまいりたいと考えております。
  183. 加藤進

    加藤進君 それでは、その公害による被害についても、その補償なるものは全面的ではなく一部である、あとの損害については、これは被害者である国民が負うべきだ、こういうことが実は最初から含みとして法案の中に盛り込まれると解釈せざるを得ないわけだと思います。  第二の質問は、それでは公害を引き起こすいわゆる有害物質、この有害物質の中でも硫黄酸化物あるいは硫黄酸化物を含む複合の公害等々について、その賠償責任ははっきりしておられるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  184. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 最初の御質問で、健康の被害以外の財産の問題かと思いますけれども、これはやはりいずれはそういうことに必ず及んでまいらなければならないと思います。ただ、われわれとしては、まだ準備が十分でございませんし、その意味でいろいろ慎重を期しまして、とりあえず人間の健康に関する点を中心といたしております。いずれは近い将来にはそのような方向に、財産についてもやはりそのような考えをいれる必要があると考えております。  それから硫黄酸化物ですか、こういうものはぜひその対象に取り入れる考えでおります。
  185. 加藤進

    加藤進君 わかりました。私は、実は、長官が四日市に来られたときに、四日市でそういう言明を明確にされたので、この点を確かめたかったわけでございますけれども、どうぞひとつ硫黄酸化物は絶対に見のがすことなく法案の中に含めていただきたい。心からまずお願いを申し上げます。  続いて、公害被害者救済制度の問題についてひとつお尋ねしたいと思います。これはすでに長官も川崎市に実地調査に行かれました。川崎の大気汚染がきわめて深刻なものであることは、さらにあらためて御認識いただいたと思います。これと関連いたしまして、新たにこの救済制度の地域指定を拡大する、こういうことが新聞その他を通じて私たちにも入っておるわけでございますけれども、これについてはどのようなお考えを持っておられましょうか。
  186. 大石武一

    国務大臣大石武一君) この健康被害者救済法ですか、この法律の趣旨によりまして、われわれはそのような実態のありますことは、たとえば非常に大気汚染されまして、ことに気管支ぜんそくだとか、あるいは慢性気管支炎のような患者の多く出ております地区につきましては、十分に調査をいたしまして、そのような該当する地域を早く指定いたしまして、その患者救済に当たりたいと考えております。これはできるだけ多く、そういう地域があるならば、できるだけ早くそのような対策を講じてまいりたいと考えております。
  187. 加藤進

    加藤進君 この救済制度の適用につきましては、とにかく認定が非常にきびし過ぎる、こういう非難が非常に強くあるのです。同時に、地域指定について非常に不公平だ。たとえば川一つ隔てた向こうは指定されておらない、あるいは道路一本で違うなどというような問題が出てきておるわけでございますが、その点につきましては、いまの長官の言明のように、できるだけ公害の被害を救済する、こういう人道的な観点からその適用のワクを大いに広げたい、これは非常に私はけっこうだと思う。  そこで、これは新聞等々の情報でございますけれども、特に環境庁は横浜市の鶴見地区、川崎の中央地区、それから富士市の臨海地区の三地区をとりあえず救済地域として指定するように報道しています。この点は事実でしょうか。
  188. 大石武一

    国務大臣大石武一君) おっしゃるとおり、そのとおりでございます。
  189. 加藤進

    加藤進君 と申しますと、それ以外のところは今回に限っては適用外にしていると、こういう御意見でございましょうか。
  190. 大石武一

    国務大臣大石武一君) これはいろいろな予算的な問題もございますし、もう一つは、いろいろ調査をしなければなりません。そのようなことから、ことしは、大体来年の三月までは一応この三地区が対象になったようなわけでございますが、明年度も数多くのいろいろな調査を早く実施いたしまして、調査をする場合には、基礎的な調査を各自治体でやっていただきまして、環境庁から最後的な調査をするような補助金を出すことになっていますが、そういうことで、できるだけ実態に合うような調査と指定をいたしたいと考えております。
  191. 加藤進

    加藤進君 公害の問題は、私からあえてあらためて言うまでもなく、人命に関する重大問題です。その問題について、地域を指定するのに予算がないから、とりあえず来年まで——来年まで待てる人はけっこうです。待てないようなたくさんの公害患者が現にあるということをこれはもう一度あらためてお考え願いたいと思うのです。  そこで、私は、名古屋市についてでありますけれども、この公害白書の中でも名古屋市南部の汚染は四日市並みであること、高度かつ複雑な汚染が深刻化している地域、こういうふうに認めていますね。それから愛知県、名古屋市当局も測定をいたしまして、この測定の結果は、南区白水小学校、港区港保健所の両観測地点でも年平均で亜硫酸ガスは国の基準をこえ、また、県の実験では、この汚染は二年後にはさらに名古屋全市に拡大するであろう、こう予測しております。  それからもう一つ資料を出しますと、これは名古屋市の医師会が調査した結果でございますけれども、外来患者約一万七千人を対象とした健康調査についてアンケートを求めたわけです。その結果がことしの二月に出されました。調査によると、三人に一人の患者公害による健康上の障害を訴えている。三人に一人です。特に市の西半分がひどい。最も重視されている慢性気管支炎症状として、三カ月にわたってせき、たんを訴える者が南区、港区に特に多い。これがことしの初めの調査の結果です。これは医師会の調査でございます。これには市の公害対策局も、これまで市のほうで調べた調査と一致する点が多い、役に立つデータだと、こういうことを言明しています。私は、こういう事実だけを見ても、名古屋市が今度の地域指定から除外されたというのについては、それなりの環境庁としての所見があるのではないかと私は考えるわけでございます。  なお、もう一つつけ加えるなら、この名古屋の公害はもう人命を失わせております。これは鏡味鉄一さんという方がことしの二月になくなられました。これは名古屋大学を中心とした公害研究会、また解剖結果の検討会でも、はっきりこれは公害によるものであるというふうに言われています。そうして、その病気にかかり、なくなられた時期は、自動測定器によっても、硫黄酸化物の測定の結果は四日市の磯津地区よりも高いということが明確に出されているわけでございます。  こういう事実を御承知の上で、なおかつ名古屋市は、たとえば横浜の鶴見区や、あるいは富士市の臨海地区、また川崎の中央区とは違って、一年ぐらいは延ばしてもいいなどというような御判断環境庁にはあるのでございましょうか、ちょっとお尋ねしたい。
  192. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 名古屋の南部地区が対象になるという見当はついております、こちらでは。そのようなことで、いま内々名古屋市とも連絡をいたしまして調査をいたしている次第でございます。ただ残念ながら、どういうことか、おそらくはいろいろな比較された結果だと私思いますけれども、来年度に入るようでございます、南部地区は。そのことにつきましては、名古屋の市会議員の方々も今月初めお見えになりまして、いろいろ陳情を承りましたが、そういうひどい状況ならば、何としてもそのような地区に早くしてあげたいと考えておるわけでございます。そういうわけで、御希望よりも一年おくれまして、はなはだ申しわけないと思いますけれども、来年は指定できるように早く調査を進めて、できるならば——その条件に合わないほうが一番いいんですけれども、合う場合にはぜひ指定していきたいと、こう考えております。  しかし、御承知のように、この公害に対する官費救済の法なんというものは最近できたものでございまして、なかなか全国一ぺんに救済できるような方向にまだいかない事情にございます。国だけでもそれはなかなか及びませんので、やはりこういう問題は、国なり、地方自治体なり、みんなが協力をしてお互いの責任の協力によって、こういうものをできるだけ救済してまいることが必要かと思います。当然名古屋市でもこのような措置はしてくださっておることと思いますけれども、できるだけ早く国のほうでもこれをカバーいたしたいと考えておる次第でございます。
  193. 加藤進

    加藤進君 名古屋だけを例にとりましたけれども、決してこれは名古屋だけの問題でないことは御理解いただけると思います。したがって、公害患者の皆さんが健康をおかされ、あるいは生活上、また人間としての苦しみを味わっておられる。この点から見るなら、一刻の猶予もできない事態だということを環境庁も重々御認識いただきまして、早急に予算措置を含めた、さらに地域指定の拡大をぜひお願いしたいし、その中には、当然のことながら、名古屋市も組み込んでいただきたいことをまず心からお願いしておきます。よろしゅうございますね。  では、続きまして、次にもう一つの問題は、先ほども茜ケ久保さんから御指摘がありましたような自然環境の保全の問題でございます。これは尾瀬だけがある一応解決のめどがついたからといって、すべてが終わる問題でないことは言うまでもありません。全国に尾瀬に多かれ少なかれ比べられるような危険な自然破壊の事態が進行していることは御承知のとおりだと思います。  特に私があげたいのは、尾瀬と非常にいわば状況が似ておるあの霧ケ峰の湿原地帯七島八島、この湿原地帯の問題は、この夏に私も現地調査いたしました。あそこは御承知のように、もと御射山の祭祀競技場の遺跡がございます。それからこれはギリシャのオリンピアードのコロシアムにも匹敵されるような広大な地域の旧競技場ですね、これがございます。ところが、無残にも旧競技場の横っ腹を削り取って、大きな自動車道路が貫通されておる。これがビーナスラインというのでございまして、地元の人は、ビーナスではない、美なしラインだと、こう表現しておるほど、まことに美景を損することはなはだしいものであります。それからまた、この七島八島の湿原地帯の状態は、これは、おそらく尾瀬よりも危険な事態がきておるのではなかろうか。それはすぐ近くまで自動車が入り、すぐもう目の前に湿原地帯が展開する。しかも、これは一万二千年をもこえるような、世界の植物学界においても非常に貴重な学術的な湿原資源である。こういう点から見て、これに対する環境庁のぜひとも早急な手を心から希望したい。  と同時に、一つお尋ねしたいのは、そのあとの問題でございますけれども、ビーナスラインは、霧ケ峰を通り、七島八島を通り、そうして和田峠で終わっておる。しかし、いま長野県で計画しておられるのは、この和田峠からさらに自動車高速道路を貫通さして美が原の頂上まで持っていく、こういう計画ですね。これについて今日非常な大きな反対の声があがっておることは、環境庁長官も御存じのとおりです。これは街頭署名までやられて、十万の署名を集めると言っております。十六団体が決起いたしまして、その中には長野県山岳会等々の諸君も入っております。一体、何がゆえにあそこに高速道路をつくらなくてはならぬ理由があるのか、何がゆえにかってな破壊を許すのか、こういう声があがっております。私も現地を見ましたが、そのとおりでございます。あそこは松本市からも登れる自動車道路があります。それから小諸からも、また上田からも登っていける自動車道路があるんです。そうしてそういう三つの幹線道路に合わせて登山路ができています。もし、このような登山路を、先ほどの長官の言われるように整備して、そうしてりっぱな遊歩道にするなどというような計画が進行するならば、これは日本でも屈指のりっぱな自然を守る措置と施設ができるのではないか。これが地元民の強い要求でございます。こういう要求に対して、これを踏みにじるかのごとく、長野県当局は、この九月の初めからその工事に着工したい、こういう非常に差し迫った段階にあるわけでございまして、この点につきましても、環境庁長官は、あの尾瀬沼に注がれた愛情をもって、ぜひともこの美が原のりっぱな高原を守る、こういう決意を持って、ひとつぜひとも長野県のいま取りかかろうとしている九月からの工事を、とりあえず中止するように強く訴えていただきたい、長野県に申し入れていただきたい、このことを私はお願いするわけですけれども、これは無理なお願いでしょうか。
  194. 大石武一

    国務大臣大石武一君) いま、いろいろと自然を守るあたたかいお気持ちを拝聴いたしまして、非常にうれしく思います。私も、この霧ケ峰−美が原の自動車道の件については、いろいろと聞いておりまして、心を痛めておりました。また、地元の山岳会の人あるいは会長さんがお見えになりまして、ぜひともとめてほしいといういろいろな陳情も承りました。聞いてみますと、もうずいぶん自動車道路がつくられまして、あっちこっちからのめちゃくちゃなきずあとがあるように地図では見受けました。また霧ケ峰の湿地帯もだいぶだめになって、おしまいじゃないかという話も聞いて非常に心を痛めておったわけです。何としてもこれは——私、実地は知りません。知りませんけれども、すばらしい土地であると思います。これはそのような道路はなるべくつくらなくてもいいんじゃないかということで、実は三日ほど前に長野県知事に電話をいたしました。ことに、御承知のように、長野県知事は自然保護条例もつくった、自然に対する理解のある人であります。先月の二十八日の全国知事会議のありました夜にも座談会がございまして、長野県知事、石川県知事、岐阜県知事等と自然保護についてのお話し合いをしたことがございますけれども、非常にいわゆるりっぱなアイデアと愛情を持った方のように私は見受けてまいりました。  そこで、向こうへ参るひまもありませんので、電話で、ぜひこれは無理をしないようにということを懇請いたしました。ところが、なかなかいい返事は得られませんでした。その次の日、ぜひ私の腹心をやって説明をさせますから話を聞いてくださいということで、おとといでしたか、何とかという室長さんがお見えになりました。いろいろとお話しを承りました。結局は、どうしてもつくりたいという御意向のようでございます。それで、そのかわりいろいろと自然のそのあとをよく守る、こういう心がまえでやるのだ、遊歩道はこのようにつくるんだと、自動車道とできるだけ合わないようにと、いろいろな、なるほどいい心がまえはお聞きしましたが、結局、やめるという御意思はないようであります。もし私に権限があるならば、蛮勇をふるってもとめたいと思っておりますけれども、御承知のように、あそこは国定公園でございます。国定公園というのは、大体、県知事に管理をまかしておるのでございまして、私がそれをとめる権限はいまございません。しかも、それは全部許可を与えておる道路でございますので、私があえて蛮勇をふるう余地はないのでございます。しかし、何としてもとめたいという気持ちには変わりはございません。できるだけ今後も県知事によく考えるようにというような話をするつもりでございます。  ただ、これにはやはりなかなかむずかしい問題がございますので、県知事がたとえそのように思いましても、それを突き上げる、あるいは強行させるようないろいろな力もありましょうし、いろいろな事態があると思うのであります。こういうものをやはり押えて、われわれがやはり自然を守るような希望を実現するためには、いろいろな総合的な力が要ると思います。私が尾瀬の問題につきまして、尾瀬を守り得ましたのは、私に職務上の権限がありましたから、そればかりではなく、大きな国民全体の支持があったからこれができたのです。霧ケ峰につきましても、ぜひそのような支持がほしいのでありますし、また、ことに多くの方々がこれに反対するように立ち上がられまして、大いに世論を喚起することが大事ではなかろうか、こう考えております。今後とも一生懸命に努力をいたしたいと思います。
  195. 加藤進

    加藤進君 最後に、自然保護法をつくるという、きわめてりっぱな構想を持っておられるわけで、われわれも、それに対しては支持するにやぶさかでございません。しかし、同時に、これを実際法律として生かして真の自然環境を美しく守っていくのにはきわめてさまざまな困難な障害物がある。この点についても、環境庁長官は重々認識しておられると思います。  たとえば、戸隠バードラインというりっぱな名前の自動車道路がございます。バードラインですから、小鳥がさえずるであろうと思って行ってみたら、そのバードラインが貫通したために周辺の小鳥は全部逃げてしまった、こういう笑えない事態も起こってしまった。それから、南アルプスのスーパー林道も、御承知のとおり、林野庁の管轄にある。かってに林道をつくり、それをスーパーにする、そして観光道路に変える、こういうことが平気で政府の片方の庁でやられている。こういうような事態に対しても、これは環境庁としては、どうしても節を屈せずに守り抜いていただきたい。こういう事態がありますので、ひとつ国民もその気になって自然を守る運動を全国的に展開をいたしますけれども、そういう背景があるという立場に立ってひとつ勇断をもって今後とも前進していただきたいということを心からお願いを申し上げます。  特に自然保護法がざる法であるという点で、いろいろ難点を持っております。その一つは、予算の裏づけが全然ない、こういう問題も御存じのとおりでございます。予算の裏づけを十分に持った自然保護法の制定、こういうところにひとつはっきりと着目して努力をたまわりたいと思います。  それから、もう一つは、国民の大きなバックが必要だという適切な御指摘ですけれども、そのためには、やはり地域地域においてほんとうに自然を愛し、自然を守っていこう、こういう立場に立つ学者、文化人は言うまでもなく、地域の人たち、組織の人たちの協力を積極的に環境庁としても求められて、一体となってこういう行政を進行されるように心から期待をいたしまして、時間がまいりましたので、これで質問を終わります。
  196. 大石武一

    国務大臣大石武一君) どうもいろいろな御助言ありがとうございます。よく心してまいります。
  197. 杉原一雄

    理事杉原一雄君) 本日の調査は、この程度にとどめます。  次回の委員会は、九月十七日午前十時から開会いたします。  これにて散会いたします。   午後六時五十九分散会