運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-08-09 第66回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年八月九日(月曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 藤田 義光君    理事 熊谷 義雄君 理事 松野 幸泰君    理事 渡辺美智雄君 理事 千葉 七郎君    理事 小平  忠君       安倍晋太郎君    江藤 隆美君       小沢 辰男君    鹿野 彦吉君       中尾 栄一君    藤本 孝雄君       別川悠紀夫君    森下 元晴君       安田 貴六君    角屋堅次郎君       川村 継義君    田中 恒利君       松沢 俊昭君    美濃 政市君       瀬野栄次郎君    鶴岡  洋君       二見 伸明君    合沢  栄君       小宮 武喜君    津川 武一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  委員外出席者         環境庁自然保護         局長      首尾木 一君         環境庁水質保全         局水質規制課長 山中 正美君         外務省経済局長 平原  毅君         農林大臣官房長 中野 和仁君         農林大臣官房参         事官     大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      小暮 光美君         農林省農林経済         局企業流通部長 下浦 静平君         農林省農林経済         局統計調査部長 中沢 三郎君         農林省農地局長 三善 信二君         農林省畜産局長 増田  久君         農林省蚕糸園芸         局長      荒勝  巖君         農林省蚕糸園芸         局果樹課長   須賀  傳君         農林水産技術会         議事務局長   加賀山國雄君         食糧庁長官   亀長 友義君         食糧庁業務部需         給課長     増田 甚平君         林野庁長官   松本 守雄君         水産庁長官   太田 康二君         通商産業省通商         局次長     中村 俊夫君         通商産業省鉱山         石炭局石油業務         課長      斎藤  顕君         運輸省港湾局機         材課長     西村 俊之君         海上保安庁次長 上原  啓君         労働省労働基準         局安全衛生部計         画課長     倉橋 義定君         日本国有鉄道貨         物局長     泉  幸夫君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 七月二十四日  辞任         補欠選任   村田敬次郎君     小沢 辰男君 八月九日  辞任         補欠選任   長谷部七郎君     川村 継義君 同日  辞任         補欠選任   川村 継義君     長谷部七郎君   中澤 茂一君     芳賀  貢君     ————————————— 七月二十四日  一、土地改良法の一部を改正する法律案(内閣   提出、第六十五回国会閣法第一〇〇号)  二、農林水産業振興に関する件  三、農林水産物に関する件  四、農林水産業団体に関する件  五、農林水産金融に関する件  六、農林漁業災害補償制度に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件  農畜産物輸入自由化対策に関する件      ————◇—————
  2. 藤田義光

    藤田委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。美濃政市君。
  3. 美濃政市

    美濃委員 ただいまも北海道団体から陳情、要請があったわけですが、最近新聞その他で——さきにも、この前の委員会でも話が出ておりますが、グレープフルーツを抜き打ち自由化をして、さらに残存二十八品目について七品目ぐらいはどうしても九月の日米経済閣僚会議までに自由化方針を決定するというふうに新聞は報道しておるわけですが、この間のいきさつ、それから農林大臣としてなぜそれをどうしても強行しなければならぬのか、この理由を承りたいと思います。
  4. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 国際関係やあるいは国内のいろいろの要素から、残存品目自由化というものが迫られておるといいますか、きめるというような段階にきております。本来からいえば、それぞれ農業に重大な関係のあるものですから、相当国内体制が整ってからという気持ちは持っていますが、現在の段階におきましては、残存品目のうち、七つとはきまっておりませんが、その程度のものの自由化をせざるを得ない段階にきております。私といたしましても、影響——みんな影響ありますが、できるだけ影響の少ないものを検討して出してみたい、こういうことで、いま検討中でございます。
  5. 美濃政市

    美濃委員 いま七品目検討中というお話ですが、一番影響の少ない品目は何々と考えていますか、二十八品目中。これをちょっと……。これは事務当局でもけっこうです。農林省から見た場合、一番影響の少ない品目というものは何か、残っておる二十八品目のうち。
  6. 小暮光美

    小暮説明員 九月末に残すことを予定しております二十八品目は、それぞれにこれまで厳選されてきたという意味でのそれぞれの理由があるわけでございまして、影響の度合いにつきましては慎重に比較考量する必要があろうかと考えまして、現在検討中でございます。
  7. 美濃政市

    美濃委員 その九月における日米経済閣僚会議ですが、この中でいろいろ報道されておる、あるいは現実に起きておる内容からいうと、まずこの自由化ということは名目自由化であって、関税引き上げなりあるいは影響の起きない措置をとる方針であるのかどうか、また現実にとれるのかどうか。それからもう一つの問題は、日米間の貿易収支ですね。日本輸出超過でしょう、ことしはかなりの輸出超過になるというふうに私ども見ているわけです。これに対するアメリカ側ドル防衛なりあるいは貿易収支の観点から輸入制限あるいは円の切り上げ、もう一つ方法は、ガットシステムによる、日本輸出だけの代価に相当するものを買うという、こういう四つの、その他にも通常いわれております八項目という方法があるでしょうけれども、そういうことをするということになると、現実にこれは物が伴うわけですね。そうすると需給の上では、そういうものを買えば、結局国内需要を、国内生産と合わすと、上回ってしまうから、結局国内農業の破壊、放棄ということになるわけです。その点の調整をどうしていくのか。また現実にそういう問題が今後どう起きると農林大臣はお考えになっておるか。私ども新聞から流れてくる、あるいは情報から聞くところでは、でん粉雑豆トマト製品オレンジジュース牛肉、特に牛肉自由化については佐藤総理が執念的だという情報も聞いておるわけです。執念のように言っておる、こんなものは自由化していいのだと。この点のいきさつを、そう検討中、検討中といって、この委員会では全然何の返事も示さないで、そうして閣議抜き打ち決定するということは、あまりにも私は不親切じゃないか、こう思うのですが、いま申し上げた諸点に対する大体の方向なり、考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  8. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまお話しの点はそれぞれもっともな点が多いのでございます。そういう関係で、あるいは関税引き上げとか、その他の対策というものにつきまして、向こう側といいますか、アメリカ側でのむか、のまないか、こういうものは折衝の結果でございます。要するに日本といたしましては、日米経済会議に私をはじめ出ますが、日本立場日本農業の現在のあり方というものを強く主張して、そしてできるだけ、この自由化が避けられないものとすれば、影響度の少ないものというものを考えていまして、この間じゆうも事務当局の各局集まりまして、それぞれ対策、あるいは影響力というものを検討さして、一つの案は持っておるわけでございますが、どれもこれも実際自由化するのには日本農業立場から見て困難なものでございます。しかし対策その他についても講じていく方針は、二十八品目についてそれぞれ検討はいたしております。  なお御指摘牛肉あるいはオレンジ、こういうものはまことに影響力が大きいもののほうの部類の一番上のほうに私ども考えておるわけでございます。佐藤総理ども、これをぜひ自由化してくれというようなことは私には言っておりませんが、関心が深そうな様子は私も察知できます。しかし正式にまだ閣議においても、経済関係閣僚会議におきましても、どれとどれをというような話はまだ出ておりません。牛肉等につきましては、物価の関係もあるというようなにおいをにおわしておるような傾向もございます。しかしこれはこれとして、その方面の対策は、自由化によらずとも方法は講じられるものだと私も考えております。  なお、私の説明に足りなかったことがございまするならば、担当局長からも御説明申し上げたい、こう思います。
  9. 小暮光美

    小暮説明員 自由化の問題が日本貿易収支との関連あるいは円の価値をめぐる種々の議論との関連で近時取り上げられておることは事実でございますけれども、これは自由化のすべての問題をこの問題と結びつけて考えるわけではございませんで、自由化には自由化本来の政策的な意味があるわけでございます。したがいまして必ずしも農産物自由化日本の対米貿易収支に具体的に何億ドル影響しなければならない、そういう性格のものであるというふうには理解いたしておりません。日本農産物につきましての貿易姿勢と申しますか、そういう問題を問われておるというふうに私どもは理解しておるわけであります。
  10. 美濃政市

    美濃委員 そうするといまのお話を聞いておると、農産物自由化は必ずしも日米間の貿易収支から派生する問題だけではない、こういうことですが、あらかじめ私の質問した要点は大体そういう要素から来ておる。いずれにいたしましても、これが現実にいまの場合行なわれますと、特に日本肉類あたりいまのところ生産体制がまだ整っておりませんから、畜産物生産については、これは自由化した条件にもよりますけれども自由化条件が片や関税率引き下げなんかということを言っているわけですから、現在の条件でこれを抜き打ち自由化をやると、ほとんどのものが生産放棄につながるのではないか、こう思います。  そこでこのことは、ことばを返して言うならば、日本国際収支が非常に悪ければ、この問題の要素は私は変わると思うのです。反対に一年間二十億ドルも国際収支が赤字だということになれば、こういう問題は出てこない。そうするとこのことは日本の将来の、日本農産物消費者価格から見て高いものがあれば、これはこの前も申し上げましたが、消費者経済のためにいわゆる構造政策規模拡大なりあるいは流通改善なりで生産者消費価格を無視した価格形成ということは、これは言えないわけでもあるし、現実には消費価格の、全体国民生活のためによろしいことでないわけで、それはその面でやらなければならぬのであって、いまの国際価格には、余剰国のダンピング価格ありあるいは発展途上国から、いわゆる非常に低い生産費世界市場に出てくるものもあるわけですから、言うならば文化生活を無視した搾取価格、こういう表現が適当かどうか、そういう価格形成もあるわけですから、そういうものと競争するとかしないとかということそのものがおかしいのでありまして、そこでそういう原理を貫いていきませんと、工業製品が売れる限り、その代価で、一面国際収支もやかましく言われるわけですから、日本工業製品が売れる限り、日本農業は要らないんだ、その代償で輸入して食生活をまかない、食糧をまかなえばいいんでないか、この原理が出てくると思うのです。また一面、私は、今回の自由化というのは、たとえばガット協定によってするんであれば、他の国もやっておるわけでありますから、それぞれのいわゆる自由化によって影響のこうむらない措置というものが必要になってくると思います。その措置をすることも、いま大臣お話しのように、アメリカ了解がなければそういう措置は困難であろう、了解の結果によってという表現をされると、これは明らかに私は、日米間の貿易収支から派生してきておる問題も多い、関連が多い、それのみだとは言いませんが。そうなってくると、日本工業製品が順調に売れる限り、現実経済行為の上で、国内農業放棄していく、こうなると私は思うのです。この間の、やはり日本政府として、ほんとうにそうするんならそうするんだと国民の前に言い切ったらどうですか。国民を愚弄しないで、工業製品の売れる限りは日本農業放棄するんだぞ、食べるものは外国から買って食べるんだ、こうはっきり言ってしまえば、農民もそれぞれ腹がきまると思うのですよ。それをはっきり言わないで、ただこういうことを抜き打ち閣議で決定して、いま大臣お話を聞いておると、やはり七品目くらいはしなければならぬという基本線に立っておるようであります。この七品目は、巷間言われておるように、でん粉であるとかあるいは雑豆トマトジュース類オレンジジュース牛肉、とこう七品目がある。これらの品目でなければ——私は、二十八品目のうち、いずれも重要品目といっておりますけれども、いま言われておる品目は、やはりおそらく七品目、総合計いたしますと、日本国内生産で大体いま三千億ないし四千億円くらいの農産物価格になる。そうすると、いわゆる二十億ドルが日本黒字ということになると、これは七千億ですから、それは通産物資なりあるいは輸出規制なりで一部やるとしても、やはり農産物輸入量の増大ということをはっきり約束しなければ、アメリカ側了解しないんでないですか。そこのけじめがはっきりしないと、農民が非常に心配しておりますし、いたずらに農民を愚弄するんでないか、こう私は思うわけです。これはもう現実影響の起こらない措置等とらないで、いまの条件抜き打ち自由化をして、さらに大蔵大臣が言っておるように、関税率引き下げなんかをやるんだというんだったら、これはおそらく、特に北海道畑作農業あたりは崩壊してしまうと思うのです。そうすると、状態いかんによっては、雑草しかなくなって、原始林に返ってしまうと思うんですね。そういう危険性が高い。ですから、そこにはやはりおのずと、はっきり言うなら、日本の将来の経済構造をかけた問題だと私は思うのです。工業製品だけがどんどん売れていけば、農業放棄してしまうのか。しないと言ってみたって、現実に起きておる。日米経済会議はそれにぶつかっての会議なんですから、何ぼ虚言を弄しても、うまいことを言っても、結局はそこへぶつかって、それをどうするかということになっておると思うのです。ですから、春先からかなり日本繊維製品輸出制限なんかをやかましく言ってきておるわけですね。私は、輸出制限方法日米経済収支をコントロールということでも、アメリカ側はある程度了解するんでないかと思うのです。それをまずして、あとはもう名目自由化して、いま困るから、自由化ガットの原則でするとしても、いますぐ日本経済構造の体質から、これは自由化してしなければならぬということは、それは了解事項だと思うのです。それがガット了解つかぬのであれば、なぜECが、あれだけ高い域内支持価格輸入価格との差額相当分課徴金できちっとしておると思うのですよ。それはガットへ入っている国があれだけのことをやっておるわけです。主要農産物は、域内支持価格輸入価格との差額課徴金——関税はいってみるとゼロですね。関税はゼロで、いかなる格差があろうと、それは域内支持価格輸入価格との差額は全部課徴金調整しておるわけです。あんなことができないはずはないんですね。ECがやっておることを日本はやれないうということは私はないと思うのです、同じガットシステムなら。そこにECはいってみると、もう工業製品輸出は二義的ですね。域内農業共同を含めた均衡経済発展政策の重点に置いておりますから、輸出は二義的です。日本は、工業立国で、工業優先アメリカから指摘されておるように、財界政府の癒着、この問題から結局は、農業にしわ寄せしておる。経済成長政策の過度の行き過ぎ、膨大な生産力をする設備投資をして、それを海外に売る手段として農業犠牲にしてしまうんだ、こう言えると私は思うのですよ、現況は。この見解をはっきりしてもらいたいと思います。そうであるのかないのか。いまECの問題を一つ出しましたが、これはやれぬことはないと思うのです。他の国でやられておることが日本政策の中でやれないというんだったら、それはガットでないはずじゃないですか、同じ協定国の中できちっとやっておるところはやっておるわけですから。
  11. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いま広範にわたってのお話でございますが、結論的にいいますと、国際収支、特にアメリカとの関係からいって、日本工業国でいいのか、それで、農業というものは滅びていいのか、犠牲にしてもいいのか、こういうこともございますが、国際収支面から見て、農業というものが非常に不利な立場にあることは申し上げるまでもございませんが、日本自体姿勢として、工業がよくなれば、農業はもう滅びて、そして工業による輸出によって、農産物等はほかから買えばいいんじゃないか、こういう姿勢ではないかというようなお話でございますが、それは全然違います。やはり日本において、工業による輸出が多いから、生産物はみんな買えばいいんだという方針は、私は全然とるべきじゃないし、またとっていないと思います。やはり国内におきまして、国際競争力の弱い農業をいかにして強化して、そして農業というものを支持し、保持をしていくかということは、これは国の大きな方針でありまして、もしいまお話しのようなことで、日本食糧外国から抑げばいいんだ、日本における生産というものは必要ないんだ、こういうような方針を私は絶対にとるべきではないし、またそういう方針を国としてとるような考え方を持っている者はないと思います。ただ、いまお話しのように、財界等におきまして、そういうような意見を言う人もないわけではございません。安い農産物外国から買っていけばいいんじゃないか。しかし、これは一部の意見でございまして、私どものとらざる方針でございます。その点は申し上げておきたいと思います。  なお、ECの例がございましたが、EC各国が集まって、その各国の中においての調整をしておるのは御承知のとおりでございます。日本ECのようにアジア共同体の中でやっているという関係でもございません。でありますが、やはりECでやりておりますように、不足払い制度とか生産あるいは構造対策等につきましては、自由化のあるなしにかかわらず、ことに自由化が行なわれればなお一そうその点を強化して対策を講じていかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、そういうような対策等につきましても、あるいはそういう場合の予算の要求等につきましても、検討といいますか考えてやっていこう、こういうような態度を持っておるわけでございます。  以上、申し上げておきます。
  12. 美濃政市

    美濃委員 もう持ち時間がなくなりましたけれども、私は何ぼ大臣からそう言われても——話そのものはわかります。だけれども現実に起きてくるものは、自由化による輸入量国内生産量日本国内需要量を上回る。そこに日本農業に非常な混乱が起きる。何ぼそうじょうずに言われても、これははっきりしておると思うのです、現実自由化して、国際収支上からある程度のものを買うという行為が起きれば。いま日本農産物の中で、現時点において米は国内生産量だけで過剰であり、その他の農産物輸入量と合わせて、現行輸入量で不足というものはないわけですから、この上日本国際収支改善で、今度の日米経済閣僚会議である程度のものを自由化して買うという行為に出るとすれば、これは明らかに需給上の過剰という問題が起きるのじゃないですか、まず価格問題よりも先にですね。それを起こさないようにするということになったら、それは名目自由化であって、日本国際収支はあくまで黒字黒字で、現行輸出ができる限り続いていく、自由化によってそれを回避して、ガット条約に基づく国際収支均衡上、相手側の国が納得する措置をとるということになったら、現実にものを買わなければだめだということになる。そこで何ぼじょうずに言いましても、現実の問題が起きてくると私は思うのです。観念的な問題じゃなくて、具体的な問題が起きてくると思うのです。観念的にはいま大臣が言われるように、大臣考え政策をやろうと考えても、具体的な問題がそこには出てくるのじゃないですか。それをどうお考えになって、どう調整するのかということを聞いているわけです。あくまでも国内食糧需給政策というものは基本として考えておるのだ、輸出だけにうつつを抜かすのではないのだと大臣が言われるならば、そこの決着は、国民に対して安心ができるだけの措置をとらなければいかぬし、現実にそんなことをいって自由化をしても、現実の問題は言ったことと起きてくる現実が大きく違って、日本農業が荒廃に帰するという結果が出た場合に、私は日本国としての将来に対する重大な問題だと思うのです。この点再度承りまして、時間の関係ですから以上で終わりたいと思います。
  13. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 自由化のものにもよろうと思います。自由化によって日本国内需給度以上の輸入がふえる、こういう見解もお持ちのようですが、私はものによってはそういうことはないというふうな見方を持っています。それほどの影響力のないものに対しまして、品目を選び、そしてまたそれに対する対策というものを慎重に鋭意検討して、その対策を講じようとするいまの段階でございますから、私は、お見込みのとおりに、ものによりますが、自由化したら全部需給度をオーバーしてしまって日本農業というものがすぐなくなるというような見通しであれば、そういう措置は断固としてとりたくないと思います。しかしその影響力いかんによっては、それほど御心配のようなものがないようなものを選んで、それに対する対策はなお講じていきたい、こういうふうに思っています。  それから日米経済会議でございます。言い落としましたが、これは毎年やっているものでございます。特にことしは自由化の問題を中心として論議されるという見通しは御指摘のとおりでございます。日本農業を滅ぼさせるために特にことし日米経済会議を開くというわけではなくて、毎年やっているものの中で、ことしは問題がそこに相当集中するという見通しを私も持っております。それは御指摘のとおりでございます。
  14. 藤田義光

  15. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 梅雨前線豪雨等による災害台風十九号による災害並びにその他の問題等について、農林大臣関係当局質問をいたします。  質問に先立ち、今次集中豪雨及び台風十九号によりましてとうとい生命をなくされました多くの方々に対し心からおくやみを申し上げると同時に、数多くの重軽傷を負われた国民の皆さん並びに罹災者の方に対して、心から厚くお見舞いを申し上げる次第でございます。  おもに六月上旬から、全国各地集中豪雨によって、大別しまして前期と後期に重点的に大災害をもたらしたのでありますが、本日十時から総理府において中央防災会議が持たれ、これら災害に対して、梅雨前線豪雨等による災害として一本化することについて審議されるやに聞いております。この点について、さらに今回の災害全般については、明後八月十一日の災害対策特別委員会の席で政府に対して見解をただす考えでございますので、本日は、当委員会において、特にその中の農林漁業関係についてお伺いをいたしたい、かように思うわけでございます。  農林省災害対策本部がまとめた梅雨前線豪雨等による災害の被害額は、農林漁業の施設関係で三百二億七千八十万九千円、農作物、水産物、畜産物等の被害が百四十億六千四百九十六万七千円、合計四百四十三億三千五百七十七万六千円というばく大な額になっております。もちろんこれは県報告による集計であろうかと思いますが、そこでまずお伺いいたしたいのは、このようなばく大な被害を受けました災害に対して、激甚災害の指定についてでございますけれども、熊本県等においては、七月十九日から二十五日に至る集中豪雨で百三十六億円の被害を受け、その対策が緊急を要するとされておるわけであります。言うまでもなく、地方財政の負担を緩和し、被災者等に対する特別助成の措置を講ずるために、激甚災害の指定を早急にすべきだ、政府もそういうことで検討されておるわけでありますが、まず最初に、政府の激甚災害指定についての対処方針をあらためて承りたいのであります。
  16. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お話しのように、まことに災害は残念でございました。それで、六月一日から七月二十七日までに、台風十三号を含んだ豪雨による農地、農業用地施設及び林道の災害、これにつきまして、たてまえからいって、その災害のときだけ、その日だけの災害をもつて激甚地の指定をするのはどうか、こういう意見が相当ありました。しかし、この前の委員会お話がありましたように、これを合併して一緒にして、そうして激甚災害地の指定にすべきではないかというような御意見もございました。私どももそういうふうに一緒にして激甚地災害の指定をすべく、関係機関と協議しておったのでございますが、いま報告によりますと、お話の防災会議が開かれておりまして、ただいま公共関係集中豪雨の一括した取り扱いが決定した、こういうことでございます。御意見のとおりに決定いたしたのを報告いたしておきます。
  17. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 大臣から、ただいま一括して激甚災害とすることが防災会議等でもいま審議が決定した、こういうような答弁ございましたが、当然激甚災害指定としてやるべきであり、また早急に各地とも対策を望んでおりますので、どうかひとつ国民が安心して災害復旧に従事でき、また農業生産にいそしめるよう、今後の早急なる対策を立てていただきたい、かように思っております。詳しくはまた十一日の災害対策特別委員会でもいろいろ検討することにいたします。  さらに次にお伺いしたいことは、災害復旧の緊急査定の措置でございますけれども、今回の梅雨前線豪雨等による災害は、御承知のように記録的な豪雨のため、農地、農業用水の施設の災害が特に多く、従来被害発生を見なかったところの里山地帯まで山地崩壊並びに林道等の被害が発生して、人家に被害を及ぼす危険性を有する個所が多い実情でございます。今回は特にこの果樹地帯等の被害が目立ってまた多い場所もあるわけでございまして、したがって早急に災害査定を完了して、緊急を要する災害復旧については年度内施行の措置をとっていただきたい、このことを強くお願いしたいのでありますが、この点の見解について大臣から御答弁をいただきたい。
  18. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 従来の災害におきましても、災害復旧の査定等がとかくおくれがちだというような指摘がございました。私は、農業における災害の査定は、建設関係なんかよりはなかなかむずかしい点もございますが、出先機関もあり本省からもその査定を早めるように、そして復旧を早めるように、厳に当局というか関係者を督励いたしたいと思います。なお、農地局長から、その点につきましての御答弁を申し上げます。
  19. 三善信二

    ○三善説明員 災害の査定につきましては、農地局としましてもできるだけ早く査定ができるように配慮いたしております。現に七月の上旬から八月にかけまして目下査定をやっております。非常に緊急を要する場合あるいは特に応急措置が必要なような場合、それは査定前でも一応簡単な工事であればびほう策的に工事を始めるというようなことをやりたいと思っております。また工事の期間につきましては、着工をできるだけ早くするように努力いたしますとともに、その工事期間についてもできるだけ短縮する。それは災害程度によりまして、そういうことを十分心がけてやりたいと思っております。
  20. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 大臣からも、査定についてはできるだけ早く進める、また復旧についても関係者を督励して早急にやっていきたいということでございますが、ぜひそうやっていただきたい。御承知のように台風二十号がまた沖繩方面に発生して、どちらに向かうかわかりませんけれども台風のシーズンに入っておりますし、災害にまた災害が重なりますとたいへんな激甚的な被害を受けるわけでございますので、ひとつ従来以上に早急な対策を講じていただきたい、かように思っております。  また局長から言われましたように、期間も早くして、工事期間を短縮するということでございますが、ぜひそういうことであってほしいし、特に地元では、査定前に緊急を要するところについては応急措置を早く講じていただきたいというところがたくさんございますので、そのようにひとつ対策を立てていただきたい、かように思っております。  次に、農地復旧の十アール当たりの限度額の緩和についての問題でありますが、四十四年度に改正して若干の限度額を引き上げたように記憶しておりますけれども、今回の災害は特に急傾斜地帯の果樹園の被害が多いというのが一つの特徴になっております。復旧面積に比べて傾斜であるがために工事費がかなりかさむ。したがって十アール当たりの限度額をこす場合が多いというのが現地の実情でございまして、私も現地をつまびらかに調査してまいりましたが、地元では十アール当たりの限度額を緩和して、十分復旧ができるよう補助額の増大をすべきである、こういうふうに強い要望が出されております。農林大臣の御所見を承りたいのでございます。
  21. 三善信二

    ○三善説明員 農地復旧につきまして十アール当たりの限度額の問題でございますけれども、御承知のようにこの限度額につきましては、現在、四十六年度でございますが、五十三万五千円ということできめております。これは毎年従来工事費のコストアップというようなことを含めてきめているわけでございまして、事業の内容としまして、農地の場合大体排土とかあるいは畦畔の復旧とかそういうのが主体でございますので、いままで私どもいろいろと詳しく調査をしてみましたところ、この限度額内でほとんど復旧ができておりますので、現在きめておりますこの限度額を特に変更するという必要はないかと存じております。
  22. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 いま局長から現在限度ワク内で復旧ができる、変更の必要はないかと思うというような話でございますが、今回の災害で、先ほども申し上げましたように、果樹地帯等の急傾斜地の災害等がかなりあります。こういったことからどうしても工事費がかさむという点がありますので、実情を調査していただいて、先ほど答弁がありましたように、毎年コストアップできめているというような答弁がございましたが、実情に応じて、そのような幅を持った施策をしていただきたい、このことを強く要望いたしておきます。  さらに小災害の取り扱いでございますけれども農林水産業施設の災害が、今回は、農林省災害対策本部の集計によっても、四百四十三億三千五百万というような巨額になっておりますが、この農林水産業施設の災害復旧について、国庫補助を、基準に該当しない三万円以上の小災害についても補助の対象としていただきたいという要望があるわけです。一説によると、この小災害はほとんど一般災害に含まれるので問題ないじゃないかという意見もありますが、こういった小災害に対しての考えをひとつこの機会に承っておきたいのであります。
  23. 三善信二

    ○三善説明員 農林水産業施設の小災害の問題でございますが、御承知のように、三万円以上十万円未満のものを小災害と申しているわけでございます。これは激甚災害に指定されますと、特にその小災害に要しました経費については、市町村で地方債の起債の対象になっておりますし、またその地方債の起債が認められますと、その元利補給につきましては交付金等で十分見るというようなことになっております。大体この三万円以上十万円という小災害の額につきましては、二十七年ごろと思いますが、だいぶ前にきまった額でございますので、現在物価上昇等相当加味しますと、この額を別に変更するということはいかがかと存じております。そういうことで小災害につきましては、従来から起債の対象あるいは土地改良区がやりますような場合には、公庫の融資とかそういうことで対処しておりますので、そういうふうに今後ともやっていきたいと思っております。
  24. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 局長から小災害については地方債の起債の対象として利子補給等についても交付金等で見るというような答弁がございましたので、一応了として、該当はかなりあると言われますけれども、実際は報告よりも少ないんじゃないかと思いますけれども、ぜひこういったことについてもあたたかい対策を講じていただきますようにお願いする次第です。  次に、この災害に伴う農業金融対策のことについて見解を承っておきたいのでありますが、天災融資法の発動を早急にしていただきたいということであります。統計調査部の集計がたしか十日ごろには終わるやに聞いております。十一日ごろには正確な発表がされるとも聞いておりますが、査定をすみやかに行なって、発動していただきたい。この点の見通し等、ひとつ明確に御答弁をいただきたいのであります。
  25. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほど、一括して激甚地の指定をすると同じように、いまお話のこれらの災害に対する天災融資法の発動につきましては、これを一括して取り扱う方向で前向きで対処していくという交渉をいま続けておりますので、たぶんお話のような結論になると私は思っております。
  26. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 大臣から答弁がありましたが、一括して前向きに対処するということでありますので、今後大蔵省ともそのように交渉されまして、ぜひよろしくお願いしたい、かように思います。  さらに自作農維持資金、災害復旧資金のワクの大幅拡大の件でありますが、天災融資法発動と並行してこれも早急に融資していただきたい、このように思うのですが、この点よろしく御答弁いただきたいと思います。
  27. 三善信二

    ○三善説明員 自創資金の災害ワクにつきましては、被害の状況がはっきりしますし、また被災農家の資金需要というのがわかりますれば、その必要額については災害ワクを設定するということにいたしたいと思っておりますし、目下検討しております。
  28. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 なお局長にお尋ねしたいのですが、自作農維持資金また災害復旧資金の限度ワクの引き上げと利率の引き下げ及びすでに借り入れられた金の償還延期措置等が強く要望されておりますけれども、これらの限度ワクの引き上げとか利率の引き下げ、既借り入れ金の償還延期の措置、こういったことについて貸し付け条件の緩和をはかっていただきたいわけでありますが、この点はどう考えておられますか。
  29. 三善信二

    ○三善説明員 自創資金の災害貸し付けの限度ワクというのは、御承知のように一応五十万円となっておりますが、これにつきましては、私ども従来から連年災を受けて非常な激甚な被害をこうむった地区については、一定の条件に基づいてそれを引き上げるようなことをやったこともございます。ただ一般的に、この限度額のワクということでワク内でおさまっておりますし、特に今回の場合はそういう必要はなかろうというふうに感じております。また償還条件等につきましては、特に災害の場合は、従来からわりあい緩和した条件をつけているわけでございますから、この点も特段新しいそういう条件を緩和するということなしにやっていけると思っております。
  30. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 時間の制約がありますので、次に林野庁長官に一言お伺いしたいのでありますが、今次梅雨前線豪雨等による災害で、農林省災害対策本部でまとめた被害総括表によりますと治山施設が熊本、鹿児島、島根ほか十四県で七十九カ所、被害金額が三億三千三百八十万円、林道がやはり熊本、長崎、鹿児島、山形、島根ほか二十七県で千四百四十五カ所、八億六千万円、荒廃林地が熊本、鹿児島、長崎、北海道、島根、山形、兵庫ほか十九県で二千百九十八カ所で七十七億八千七百万円、そのほか国有林等を入れまして、合計百億六千八百万円相当の被害が起きております。ばく大な被害であります。林野庁はこれらの林野災害に対しいかなる対策検討し具体的に対処されるのか、その方針をひとつ簡潔に承りたい。
  31. 松本守雄

    ○松本説明員 いま林業関係の被害額は先生おっしゃられましたが、その後逐次追加の報告も出ておりまして、相当大きな被害になる見通しでございます。そういったものに対しまして、林野庁といたしましては、いま治山五カ年計画の改定作業などを進めておりますが、そういった作業を通じまして今後は予防治山というものに重点を置いていきたいということを考えております。  一方すでに今回のように起こってしまった災害でございますが、そういうものにつきましては極力査定を早くいたしまして県の受け入れ体制ができ次第ひとつ関係官を現地に派遣をする。同時に、急を要するものにつきましては年度内に復旧を終わるということ、さらに応急工事なども県に対しましてすでに必要とされるものは実施をするように指示をいたしております。こういうことを通じまして災害の予防をはかると同時に、起きた災害は早急に復旧をするという点に重点を置いて今後とも進めてまいる所存でございます。
  32. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 長官からいまいろいろ御答弁がございましたが、起きた災害につきましては今後早急に査定をして、また応急復旧並びに復旧に力を入れていくということでございますが、今回は林地の災害が、荒廃林地をはじめ林道あるいは施設は相当被害を受けておりますので、ひとつ係官の派遣等を早く行なって、いつもおそいということがよく言われますから早急なる対策を立てていただきたい、かように思います。  特に今回、治山施設についてはいろいろ緊急を要する治山工事が多いわけですが、近く会議を開き、さらにヒヤリングをして決定をするやに聞いておりますけれども、この点はどのようなスケジュールになっておりますか、一言あわせて御答弁いただきたいと思います。
  33. 松本守雄

    ○松本説明員 緊急治山の事業費につきまして四十六年度の予算額が十六億ございますが、そのうちに前回配分が済んでおりますのが二億八千万、今回配分をいたしますのが二億五千六百万でございます。その後決定を見次第、関係省庁とも連絡をいたしまして、なるべく早くそれを配賦いたしまして、復旧の一日も早いことを念願する次第でございます。
  34. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 時間の関係で、最後にもう一点大臣をはじめ関係当局にお尋ねいたしますが、台風十九号が御承知のように四日より五日にかけて九州、中国地方に強い風をもたらし、鹿児島で死者が四十五人、行くえ不明二人、熊本、宮崎などでも一死者十五人、行くえ不明八人を出し、家屋倒壊、浸水、山くずれ、堤防決壊、山林被害等が続出したわけです。被害額は、現在各県から続々報告が来ているというように聞いておりまして、私も先日来報告を受けておりますが、先ごろで農林省関係の被害だけでもすでに二百億を突破しているということでございます。被害の大きかった熊本、鹿児島等いま被害地には行けない場所もありまして、逐次この額はふえてくると思いますが、熊本の例でも八月六日の二十時現在七十九億の被害が出ておりまして、これまた大被害をもたらしたわけです。特に九州、中国にもたらした今回の十九号台風についての被害につきましていま集計をしておられるところだと思いますが、これまた先ほども申し上げました梅雨前線豪雨等によるところの災害とともに、一部は災害が重なっておりまして、これは緊急にまた対策を立てなければならない問題であろうかと思います。これらの被害について農林省は現在どのように掌握をしておられるか。これも先ほどからるる質問しましたように、災害のいわゆる各対策を立てていただくことになるわけですけれども、これらの今後のスケジュール、また対策等をどのように検討しておられるか、これについて大臣並びに関係当局から御答弁をいただきたい、かように思うわけです。
  35. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 被害状況等につきましては関係者から御報告申し上げますが、被害の状況の実態把握ということは非常に大事でございますので、実は本日から十一日まで農林省調査団を現地に派遣しております。そうして被害の結果の判明を待ちまして、早急に各種の対策を講ずることになっております。  被害状況等につきましては、現在までのことを関係者から御報告申し上げます。
  36. 大河原太一郎

    ○大河原説明員 被害の状況につきましては、ただいま先生の御質問中にもございましたように、現在最も被害を受けた地域の現状がなかなか把握困難という点がございまして、一報ごとにふえている状況でございますが、熊本、鹿児島、宮崎を中心といたしまして、農作物で約百四十九億、施設関係で約五十四億、二百億をこえるということに相なっておりますが、今後なおふえる見込みでございまして、早急にその状況を把握いたしまして、ただいま大臣の御答弁のとおりの対策を進めてまいりたいというように考えております。
  37. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 では時間が参りましたので、以上で質問を終わりますが、今回の災害はまたばく大な被害をもたらしておりますし、農林省調査団も本日より派遣する、さらに被害額も一報ごとにふえているということでございます。どうかひとつ早急なる調査と、また今後の対策を強く要望する次第です。来たる十一日災害対策特別委員会でまたこれらについての質問をいたすことにいたしまして、本日はこれで終わります。
  38. 藤田義光

    藤田委員長 田中恒利君。
  39. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 大臣においでをいただいておりますので、問題になっております貿易自由化の問題で、重ねて二、三大臣の所信をお尋ねをしておきたいと思うのです。  近くアメリカへ行かれて、いま問題になっております主要農産物自由化の問題について話し合いをせられることになっておるわけですが、私どもは、貿易自由化というものはアメリカのドル危機、アメリカ貿易収支の赤字、この問題から端を発しておる、こういう理解をいたしておりますが、アメリカ貿易収支の赤字は、いろいろ調べてみると貿易外収支の赤字であって、貿易そのものは必ずしも赤字ではない。ことしは赤字になるんじゃないかといわれておるようでありますが、貿易外収支の赤字の原因は、ベトナム戦費調達と後進国開発等であって、アメリカ貿易そのものは必ずしも今日赤字だとはいえない状態である、こういうように聞いております。特に問題はアメリカ貿易構造を検討してみると、その内容は工業製品が赤字であって、アメリカ農産物部門は非常に黒字である、こういうことになっておるわけです。  そこで、これを日本と組み合わせて考えてみると、アメリカ工業製品貿易構造が赤字だというのは、主として日本と西ドイツの重化学工業製品アメリカに入ってくることによってもたらしている、こういうことでありますので、日本工業製品輸出の増大ということによって、アメリカ貿易工業部門が赤字である。逆に農業部門をとらえれば、日本農産物アメリカに毎年のように輸入の増加がきておるということになっているわけですね。こういうような形の中で、貿易自由化が今日日本農業農民に対して迫ってきている、こういう認識を私はしておるわけでありますが、農林大臣日米経済閣僚会議に臨まれるにあたって、こういうような理解の上に立って進められて問題に処せられるかどうか、まずお尋ねをしておきたい。
  40. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 貿易収支の数字的な関係は私いま資料を持っておりませんが、私見ておりますのには、アメリカ国内情勢というものが、端的にいえばベトナム戦争における非常な失敗といいますか、兵力はアジアから削減して撤兵しなければならぬという面が一つ出ておりまするし、ベトナム戦争に軍費が相当かかりまして、そのためにアメリカ国内の景気上昇ができなくて、端的にいえば不景気の状況にある。こういうことがアメリカ国内の事情として一つあると思います。一方、日本においては経済は相当成長しておる。この経済成長も、いま御承知のように工業品の輸出ということで、外貨状況が非常によろしいし、それに対しまして、日本に対しても自由化を急速に進めてほしい、こういう要望があるというような状況だと私は思います。それで自由化におきましても、お話のように工業品の自由化というものが自由化の目的に非常に沿う品目だと私も考えています。ただ、いままでのいきさつからいいまして、ガット関係や何かから日本の非自由化品目が相当残っておる。その残っておる中でも農産物、この品目が多く残っておるというような関係で、勢い農業製品といいますか、農産物にしわ寄せといいますか、波及しておるというのが現状だと思います。でありますので、自由化の目的をお互いに達成するための自由化、こういう観点から日米経済会議におきましても強く主張していきたい、私はこういうように思っております。
  41. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 半分わかったようなわからないような気がするわけでありますが、私どもは、大臣自由化品目についてはウエートを大いに考えたい、こういうことについては非常に期待をする角度でものを見ておるわけです。これはどうせアメリカ貿易の勘定の状況ははっきりわかるわけですから、ごらんになればわかるわけです。ともかくアメリカについては、農産物輸入アメリカ黒字というものを求めたいという形で、日本国内に対する輸出を強く求めてきておる、こういうととがあるのです、ところが国内では、そのきっかけをつくったのが日本工業製品ということもはっきりしておる、だから一つは、日本政府日本工業製品アメリカ輸出したかわりに農産物輸入をやらなければならぬ、こういう状態になっておるわけですから、農林大臣はこの問題については、佐藤内閣の閣僚として、佐藤内閣のこの問題に取り組む姿勢について内部的にシャンとしてもらわなければいけないと思うのです。アメリカに対しては、そのことによって日本農産物が壊滅的な打撃を受ける、ひとつこの点を明快に今度の日米経済閣僚会議で言ってもらいたい。私は国会でこういう議論があったということで、この際大臣に御要望しておきたいのです。時間があればいろいろ議論いたしたいと思うわけですが、限られておりますから次に移ります。  いま何の品目自由化するのかせぬのかといったって、おそらく大臣もまだはっきり決意を持っておられるかわからないと思うし、どなたも、これをということを言いますと、たいへんなことになるので、なかなか結論は出てきてないと思います。ただ不足払いであるとか課徴金制度であるとか、こういう案をお考えになっておるようでありますけれども現実に今日の農産物輸入の問題をめぐって今日の状態にも幾つかの抜け穴といったような問題があると思うのです。この点をぜひ大臣に申し上げておきたいし、御見解を承りたいして思うのです。  たとえば酪農の問題でありますが、この酪農の最近の傾向を見てみますと、政府は今日まで市乳の促進、こういうことを主張してまいりましたし、多少それに対応する処置はとられておるようですが、昭和四十年から四十五年の市乳は、四十年を一〇〇といたしますと四十五年は、これは畜産局に聞けばいいのですけれども、時間がありませんから私のほうから申し上げますが、一二七・九%であります。ところが学校給食というのが政策需要で需要が増大しておりますので、これが三六六・一%、したがって飲用乳は四十年を一〇〇とすると四十五年は一四四・二%であります。ところが加工乳はどうかというと、四十年を一〇〇とすると四十五年は一五六・二%であります。加工乳の伸びのほうが非常に大きい。特に問題になっておる学校給食を除く市乳の伸びというのは非常ににぶいのです。これは一体どういうことが原因かということでありますが、これはよくいわれておりますいわゆる色もの牛乳、にせもの牛乳であります。きのうの毎日新聞を見ますと、一面のトップににせもの牛乳まかり通るという見出しでこの記事が載っておりますね。ヤシ油、魚油が検出をされた、これは国立衛生試験所で検出をされたものであります。私は、この問題はいずれ国会で大きな問題にしなければいけないと思いますが、こういうものが現実にあるわけであります。特に私はこの際お聞きをしておきますが、カゼインと乳糖というものがいまの色もの牛乳の中に入っておる、一般的にこういうふうにいわれておるわけでありますが、このカゼインと乳糖というものは、これは工業用品と医療用品という形で自由化をされておるものであります。しかもカゼインは牛乳に使ってはいけないという政府の通達が出されておるはずであります。いま農林省はこのカゼインや乳糖についてどの程度承知をし、これに対してどういうような規制措置を進められておるのか、まずこの点をお聞きをしておきたい。
  42. 増田久

    増田説明員 現在カゼインは四十五年で二万五千トン、乳糖は四万四千トンということで、これも逐年ふえていることは御指摘のとおりでございます。われわれがいま押えております乳糖の使用の関係を申し上げますと、乳製品関係で乳糖のうち七六%が使われております。そのうちの大部分のものは育粉の原料、それからクリープ等の原料として使用されております。それからその他の食品、油脂関係、たとえばチョコレート、菓子パンに使われている。それから薬用が一七・六%というふうに乳糖では承知をいたしております。カゼインにつきましては、工業用が七五%、食品関係でハム、ソーセージ、アイスクリームというようなことでその他の二四%になっているとわれわれは承知をいたしておるわけでございます。ただ、御指摘がありましたとおり、乳糖とカゼインを特別の割合でまぜますと、これがまさに粉乳まがいになってしまうということで、現に代用粉乳という形で市販されているというような事実もあるわけでございます。そういうことで、それが加工乳に使われるというようなことになりますと、いわゆるインチキ食品ということで、純正食品であるべき牛乳の信用を落とすということに相なりますので、昭和四十四年六月に厚生省環境衛生局長通達と畜産局長通達を出しまして、乳糖、カゼインはこれを使ってはならないということを強く指導してまいったわけでございます。その間県その他でいろいろと検査をしてまいりました。現に先生御指摘のとおり一部から異種油脂を混合したものが発見されておるわけでございまして、これははなはだ遺憾に存じておるわけでございますが、乳糖、カゼインにつきましては現段階で自粛を通達し、監督を重視しておりますけれども現実の問題といたしまして乳糖もカゼインも本来牛乳から抽出した物質でございますので、それをどうまぜたかということにつきましての検査方法というものに非常に問題点があるわけでございます。そういうことで、基本的にどれだけまぜているかということについては、われわれとしてはその事実はなかなか把握しにくいという実態があるわけでございます。  しかしながら、そういいましても、そういうことが巷間のうわさとして流れておると、その牛乳の信用、したがって牛乳の消費ということに響く問題でございますので、最近業界と協議いたしまして、飲用牛乳公正取引協議会という会を組織いたしまして、みずからの手でそういう問題を摘発する、こういうことでその自粛方を強く要請をいたしておるわけでございます。われわれも検査方法をつとめて、どういう検査方法をやればできるのか、その点をさらに検討を深めたいと思っておりますが、それと並行して、業界の自粛ないし自主的な規制というものを期待している現段階でございます。
  43. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私は業界の自主規制はだめだと思うのですよ。検査の方法がむずかしくてなかなかわからないのだということでありますが、私どもが聞いた範囲では、やればできるということも聞いておるのです。この乳糖、カゼインの問題だって、私は国立試験場で本格的にやらせればやれると思うのです。これはぜひやってもらいたいと思うのです。やらないと、これは相当の量——きょうはこまかく数字持ってきておりますけれども、議論ができませんけれども、乳糖、カゼインの輸入量もどんどんふえてきております。その分が一体どこへ流れておるのか、この実態は握ってないと思うのです。私なんかもある輸入業者のところへ行ってこまかくいろんな話を聞いておりますが、ひとつこれはできないとか自主的にまかせようとかいうことではなくて、この辺がこれから日本の酪農をどう伸ばしていくかという場合の焦点になるのですから、やはり国家管理貿易というか、事業団の中で四品目を、ちゃんと乳製品の管理をやっておるわけですから、事業団の中でぴしゃっとこの辺の調整ができるような処置をやってもらいたいと思うのです。  このほかに問題になっておりますココア調製品、約一万トンくらいいま入っているはずですが、これなんかも実際は九五%が脱粉でしょう。ココアはわずか五%です。脱粉とココアを分離していくという方法も簡単にできておる。コンパウンドバター、これもバターが大半でマーガリンはわずかです。こういうことが今日の技術革新の時代ではできるわけであります。そういうものの輸入、これが自由化されたわけですから、こういうものをちゃんと規制しないと、これから入ってくる問題も同じわけですから、私はやっぱりこの辺の処理も自由化対策の重要な側面としてぜひ農林省において御検討いただきたいと思っておるわけであります。  特にこの際、いま一つだけ問題を指摘しておきますが、ホエイチーズですな。これは現在ナチュラルチーズと同じ取り扱いになっているわけでありますが、二千八百トンくらい入っておるのじゃないかということになっておりますが、これは本来ホエイパウダーは事業団の管理になっておりますね。それから、もう時間がないから一括して私のほうから申し上げますけれども、ブラッセルの関税分類協定に基づいてこれらの品目の取り扱いがなされておるわけなんですね。ブラッセルの関税分類表によると、ホエイというのはやっぱりナチュラルチーズとは別な形になっているわけですね。そこのところが、なぜ日本の場合ホエイパウダーを別にしておるのか、この点を明らかにしてもらいたいし、これは本来事業団の管理の中に入れるべきだと思うのですが、どうでしょう。
  44. 増田久

    増田説明員 ホエイチーズと申しますのは、おそらく先生御存じだと思いますけれども、チーズは、牛乳をホエイとカードに分けまして、カードからつくったのがチーズだといわれている。ちょうどとうふとおからみたいな関係になるだろうと思いますが、そのホエイを粉にしたのがホエイパウダー、こういうわけでございます。このホエイパウダー、おからをさらにたとえば油脂をまぜてチーズ状にしたものが、いわゆるホエイチーズといわれているものでございます。  それで、ホエイチーズということで国際的にはチーズの一種として通っているものでございますが、ただし、確かにおっしゃいますとおり、成分的にはホエイパウダーに非常に近いものでございまして、これをはたしてナチュラルチーズとして取り扱うべきかどうかということにつきましては、各方面で一部に異論のあるところでございます。そういうことでございますので、ココア調製品の問題も含めましてこれは関税当局等と協議して、できるだけ前向きでこの問題に対処していきたい、かように考えておるわけであります。
  45. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 いまの局長の話を聞くと、ナチュラルチーズとホエイチーズというふうにチーズを分類したというのですけれども、成分的にはさっき言われたようにカードとホエイで、固めたのと薄めたののような相違ですから、本来はホエイパウダーのほうに入れて事業団の管理にすべきだと思うのですよ。ここのところがあとから出てきたものですから、ホエイパウダーが出て、あとからいろいろ新しい製品として出てきたものですから農林省のほうでは忘れておって、分類をやるときに私は間違ったのだと思うのですが、これを直す必要があると思うのです。  こういう問題が現実にあるわけでありますので、これは農林大臣に所信をお尋ねしておきますが、今日の畜産事業団のやっておる事業運営方式の中には、自由化の問題とからませてそこが抜けておる。だから自由化したってしなくても、結局なしくずし的に自由化というものはどんどん今日まで拡大してきておるのです。こういうものをちゃんと規制をしていく処置をこの際本格的にお考えになっていただきたいと思うのですが、大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  46. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御趣旨の点は十分検討いたしていきたいと思います。
  47. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 それから次に移りますが、学校給食であります。学校給食事業が日本の畜産の拡大に、特に政策需要の上に非常に大きな役割りを果たしたことは御承知のとおりでありまして、多少目標どおりいってないようですけれども、ほぼ目標に基づいて需要が拡大をしております。仄聞するところによると、昭和四十七年度より学校給食事業を文部省に移管する、こういう覚え書きが農林省と文部省の間に取りかわされているというふうに聞いておるわけでありますが、事実かどうか、一体どういう内容になっておるのか、この際明らかにしていただきたい。
  48. 増田久

    増田説明員 簡単に経緯を申し上げますと、学校給食会の存続の問題とからみまして、学校給食の所管をどちらに持っていくかということがいろいろと論議されたわけでございますが、前大臣と剱木文相との間におきまして、四十七年度からこれを文部省に移管し、学校給食会で学校給食を扱っていくということについて了解ができていることは事実でございます。  その際の農林省考え方といたしまして、もう先生十分御承知のとおり、来年度はすでに三百五十万石の量を学校給食としてやるということになるわけでございまして、これはおそらく現段階では満度に近い量だと思います。したがいまして、これからの学校給食というものを拡充するということになりますと、たとえば辺地への輸送費をどうするかとか、あるいは給食施設をどう整備するかとか、こういうような、むしろ農林省マターというよりも文部省マターの問題が多くなってくるということと、同時に予算をどちらに計上するかということは、私は率直に申し上げて一つの技術的問題であって、それは現在でも学校給食というものは事実上文部省と協議してやっておるわけでございまして、将来は当然文部省と農林省が協議してやっていくということでありますれば、たとえば文部省に移ればフレッシュじゃなしに加工に移るんではないかといろいろ言われるわけでございますけれども、そういう点については十分のチェックはできる、ただやり方だけの問題ではないかというように考えているわけでございます。
  49. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 やり方だけの問題ではないと思うのですがね。やはり文部省の給食ベース、特に学校給食会はいろいろ問題を持っておる、私どもが現地で調べておる範囲では。やはり給食ベースに乗せるという側面もあるでしょう。あるいは学校給食の立場から、体位の向上という側面もあるでしょう。しかし、そもそも学校給食制度の発足したゆえんのものは、日本の酪農振興という観点から酪振法の意図の中にこれが織り込まれたのですね。だから、農林大臣が文部大臣と協議してきめるということになっている。今度文部省に移管したら、文部大臣農林大臣と協議をしてきめるということになるのでしょうけれども、これは酪振法の趣旨にも沿わないことになると私は思います。今日、日本の酪農が非常に安定して、学校給食制度の目標がお役人がお考えになった線に近づいているかもしれませんよ。しかし、日本の酪農全体は決して安心できるような状態じゃないでしょう。これは局長が一番御存じですね。伸び率だって低下しているでしょう。そういう状態の中で、私は酪振法の改正で、せっかくやったものを何を好んで——文部省の局長段階で覚え書きをかわしてやるなんということは問題があると思うのです。この問題は、いずれなお問題として取り上げていきたいと思っておりますので、大臣も十分に御承知をしておいていただきたいと思います。  それから、時間がありませんので、園芸局長がお見えになっておりますが、たいへん御苦労でした。アメリカにお行きになりまして、問題になっておりますグレープフルーツの自由化の問題についてアメリカ側の意向打診、特に温州ミカンのワクの解禁について折衝せられたようでありますが、この際、アメリカの意向、特に温州ミカンの対米輸出のワクの拡大についての何らかの話し合いの糸口ができたのかどうか。あるいは、オレンジ、果汁、こういう今度の自由化品目の目玉といわれているものについてのアメリカ側の意向はどうなのか。この際、国会を通して明らかにしていただきたいと思います。
  50. 荒勝巖

    荒勝説明員 お答えいたします。  このたび私がアメリカへ参りましたのは、温州ミカンの輸入解禁州の拡大の問題について参ったのでありますが、その際農政局から、このかんきつかいよう病についての権威者であります安尾部長と一緒に参りまして、向こう側と折衝した次第でございます。アメリカ側がかねてから心配しておりましたように、日本の温州ミカンについてのかんきつかいよう病の存在について非常に懸念をもって見ておりましたので、その問題の解明をはかることがまず第一段階に必要なことだと思いまして、今回日本側が現在とっております輸出ミカンについてのかいよう病に対する検疫制度並びに具体的な輸出についての検疫のあり方、こういうものを非常に時間をかけてアメリカ側説明した次第でございます。本件につきましては、いわゆる植物防疫部長がアメリカ側の担当になりまして説明をしたわけでございますが、アメリカ側の反応といたしましては、日本側が現在とっておるかんきつかいよう病についての検疫体制については非常に十分であるという理解を得たのではなかろうか、こういうふうに判断した次第でございまして、今後輸入解禁州の拡大の問題について非常にいい影響を与えるのでなかろうか、こういうふうに思った次第でございます。したがいまして解禁州拡大の問題について、直ちに今回の折衝におきまして州の名前があがるとか、あるいは州の数を具体的に向こうが表明するとかいうことはございませんでしたが、今後の検討事項として、われわれといたしましてはある程度明るい見通しを得て帰ってきた、こういうかっこうでございます。  そのほかの、今後の防疫の問題につきましては、私の今回の訪米の大きな仕事になっておりませんので、その問題については何ら話し合う時間的余裕がございませんでしたので、そういう形で帰ってきておる次第でございます。
  51. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私はあまりいまの御報告、一々あれはいたしませんが、検疫制度の問題はむしろきびし過ぎるくらいだと私どもは思っておる。特にアメリカ側がわざわざ日本まで来て調べると、旅費までこちらで負担して来さしてやっておるようなこういうやり方はむしろ変えるべきだ、こういうように思っておるわけであります。しかし、いずれにせよ大きな問題でありますので、引き続いて大臣が渡米をせられてこの問題を取り扱われるわけであります。この際、いつも問題になりますが、果樹、オレンジ牛肉、その他農産物諸般の問題があるわけでありますが、ぜひ大臣として日本農民、国益を守る、こういう形で処理していただきたいと思います。  最後に鶏の問題で一点だけ、意見と御質問を申し上げておきますが、養鶏はわが国の畜産の中では、御承知のように最も国際競争に耐え得るような経済状態になっておるといっておるわけであります。確かにそういう側面がありますけれども、しかしこれは百羽養鶏——当初は十羽、二十羽養鶏が五十羽、百羽、五百羽、千羽、だんだん大きくなりまして最近は一万、二万、こういう多頭飼育の方向へ向いていったということであります。しかし多頭飼育に向いたということは、これは養鶏農家間の自己淘汰作用によって弱い者は落ちて強い者は残っていく、こういう形で維持されてきたのでありまして、養鶏を守る環境というものは全然整備をされておりませんね。最も代表的なものは卵価でありまして、卵価に至ってはこの十五、六年来、二十年近くほとんど上がっていない。こういうべらぼうなことはないと思うんですよ。これほどえさが上がり、これほど人件費が上がっておるのに、卵の値段は十年以上もほとんど上がっていない。十年前の統計を見ると最近は逆に下がっておる、こういう条件整備の中で日本の養鶏というものは大きくなったというんですから、これは私は政策の誘導でりっぱになったとかいうべきことじゃないと思うんです。弱い者は落ちて強い者だけ残っていく、この経済法則の中で養鶏というものは比較的国際的な波の中に耐え得るようになってきておりますが、しかし今日では養鶏農家はたまらない、借金かかえてどうにもならないと言っておる。えさはどんどん上がる、これに対して私はやはり思い切った政策を立てるべき時期に今日入ってきていると思います。  いろいろな問題が取り扱われておるようですが、一点だけ非常に大きな問題ですから大臣にお尋ねしておきます。これは養鶏だけじゃありませんが、えさの問題であります。えさの問題は、御承知のようにアメリカからほとんど入れてきております。あちらの事情がすぐこちらに響いてきておるわけでありますが、今後えさの多国間貿易という形態をどうしてもとらなければいけないと思います。このことについて、特にいま問題になっております中国の問題——中国との問題は非常に大きな政治問題になっております。この中国からえさを入れてくる、こういう問題について私はもっと前向きに姿勢を示してもよろしいと思いますが、赤城農林大臣はこの点についてどのようなお考えを持っておるか。なお養鶏諸般の問題については、今後とも議論をいたしたいと思いますが、ぜひ今日の卵価の低迷の時期を背景にして十分な対策を立てていただきたい、このことを要請いたしまして、大臣のお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  52. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御指摘のように、えさの輸入が一方的といいますか、ある国にあまりに重点があり過ぎるということは避けて、多国化といいますか、各方面から輸入するようにいたしたいと考えております。  中国につきましても、いま五万トンほど輸入しておりますが、これは拡大する方向へ私は持っていくべきだ、こういうふうに思っております。  なお養鶏農家、卵価の問題、御指摘のとおりにいまなっておると思いますので、これに対しましても対策を十分講じていくべく、さらに検討を続けていきたい、こう思っております。
  53. 藤田義光

    藤田委員長 合沢栄君。
  54. 合沢栄

    ○合沢委員 私は、国民食料の自給率と貿易自由化関連しての質問をしたいと思うわけでございますが、近年国民食料の嗜好の変化ということが非常に著しくなってまいっておるわけでございますが、それに対応するような、食用農産物生産というものが十分その成果をあげていないというように考えられるわけでございます。そして国民食料の自給率は低下の傾向にあるというように思われるわけでございますが、少なくとも国民食料を国内で自給するということはきわめて重要でないか。特に一億の国民が狭い領土におるわけでございます。この一億の国民に安定的に食用農産物国内で供給していくということは、私は国の施政の中でも最も基本的な問題ではなかろうかというように思うわけでございます。ところが、四十四年の数字をとってみますと、約八〇%というような食用農産物の自給率になっておるわけでございます。これはしかし、米を一一七%あるいはくだもの八五%、肉類八三%、牛乳等の乳製品が九一%といったようなことで、約八〇%という数字になっておる。ところが、米を一〇〇%と見た場合にはその自給率は七七・五%であるということのようでございます。  さらに内容を見てみると、先ほどもちょっと田中委員からも御質問になっておりました畜産関係ですが、畜産関係では肉類が八三%あるいは乳製品が九一%ということでございますが、この中を見ると、その飼料というのがほとんど海外飼料に依存している。あるいはまた鶏のごときは八〇%が外国系であるということなんです。飼料というのが安定的な輸入の状態にない、供給の状態にもないということなんです。はたしてこの八三%あるいは九一%という畜産物の自給率というものをそのまま見ていいのかどうか。今日、飼料の輸入は千五百万トンといわれている。さらに五年もすれば二千万トンを上回ろうというような予測も立てられている。しかもその内容はアメリカがほとんどであるということなんです。まことに不安定な状態である。アメリカの港湾ストがあれば直ちに飼料が値上がりする。あるいは船舶が少し逼迫すると船賃が上がって飼料が値上がりする。そういうような中において日本の畜産は行なわれているわけです。はたしてこのような畜産の状態において、肉類あるいは乳製品の九一%というふうな数字をこのまま認めていいかどうかというように私は考えるわけでございます。おそらく今日の日本の飼料の自給率というのは、まあ簡単に言って養鶏あるいは養豚というものはほとんど一〇〇%が購入飼料、輸入飼料になっているだろうと思う。あるいは乳牛あるいは肉牛といったものは約五〇%が購入飼料ではないかと思うのです。そうした場合には約三〇%程度しか国内の飼料の自給率はないんじゃないか。おそらく七〇%あるいはそれを上回るものが海外飼料を輸入していると言ってもいいのじゃないかと思うのです。そういうふうに見ると、肉類とかあるいは牛乳・乳製品等の自給率というものは、実際にはこれの三〇%を掛けたものしか自給率はないと言っても私はいいと思う。特に今日の飼料輸入の状態というものはまことに不安定であるというような面から見ても、そう見ていいんじゃないかと思う。さらに、今後どんどん国民食料の嗜好の変化、特に畜産物に対する国民食料の需要が非常に旺盛なんですが、この傾向はますます強くなってくるというように考えていいと思うのです。しかも米がだんだん減っていく傾向にあるということなんです。かりに一〇〇%と見ましても、政府の出しておる五十二年の米の一人当たりの需要は四十四年の九六・九キロが五十二年は八〇・三キロに減る。約一八%の減少だというような数字を政府は出しているわけなんです。かりにこの米を一〇〇%自給しても、麦は一四%の自給率から一二%になるというようにいっておるわけなんです。したがって、この国民食料の中に占めるでん粉食糧というものは非常に減っていく。そこで畜産とか果樹といったようなものがふえていく。その中で畜産物というものはこういった状態にある。さらにまたくだもの等は、グレープフルーツをはじめとして貿易自由化ということでますます海外のくだものが入ってくる、あるいは加工品が入ってくるという状況にあるわけです。はたしてこのような状態の中において、今後、国民食料を安定的に供給し得るのかいなか、非常な心配を持つわけでございます。  特にひとつ数字を、これはきょうはおそらくできないと思うので、後ほど出していただきたいと思っておるのですが、この四十四年度の米を一〇〇%とした場合に食用農産物の自給率は七七・五%といっているが、肉類の八三%あるいは牛乳・乳製品等の九一%を三〇%としたときには、この畜産物の自給率というのはおそらく三〇%に満たない数字になるわけです。二〇数%になるのです。そういった畜産物を二〇数%と見た場合に、この七七・五%の国民食料の自給率は一体幾らになるのか、この数字をぜひ出していただきたい。きょうはけっこうです。おそらく出てないと思う。出ておれば後ほどお示し願いたいと思う。出ていないならば、後日この数字を出していただきたいと思うのです。  さらに、先ほど申し上げました五十二年の目標を、政府は食用農産物の自給率を七六%という程度にはじいておるようでございますが、はたしてそのようなことが可能なのかどうなのか。特に飼料の問題については、国内飼料の開発あるいは先ほども出ましたが、中国をはじめとして東南アジア等の飼料の開発といったようなものも、何ら具体的なものがないというように現在考えられるわけなんです。そういうような中で、はたして国民食料の自給ができるのかどうなのか、七六%といっているが可能なのかどうなのか。私は、このことは日本農業にとってもきわめて重要である。一億の国民の食料を安定的に供給するということはきわめて大事だと思う。特に今日、工業は非常に進んできた。そこで日本は、この工業製品輸出によって外貨もずいぶんだまってきている。しかし、今日、四十五年度の食用農産物等輸入は三十二億四千八百万ドルですか、というような数字になっておるわけなんです。いま手持ち外貨の半分程度のものは、これは食用農産物輸入になっているということなんです。しかもこれは今後、貿易自由化ということで非常にふえていくというようになってくると、たいへんなことになるのじゃないか。工業輸出が今日のようにいつまでも順調であり得るとは考えられないと思うのです。アメリカだってそのとおりなんです。工業製品がどんどん輸出されることによって、アメリカはきわめて経済が好調であった。今日ではそれが反対に工業製品輸出が思わしくないという現状になっておるわけなんです。日本工業も資源が乏しいわけなんです。資源の乏しい日本工業が、今後、今日のようにどんどん順調に海外に輸出されるということは考えられないと思う。資源を持った後進国その他がどんどん工業発展していくならば、日本の将来の輸出は決して今日のような順調であり得ない。そのような場合に、日本の食料が三十億ドルをこすあるいは将来四十億ドルにもなるというようなことで、国民食料がほんとうに自給できないような状態になるということは、私は国の将来にかかわるきわめて重大な問題だと考えるわけです。こういう点について、私から申し上げるまでもなく大臣は十分御承知だろうと思うのでございますが、このような問題について大臣はどのように考えておられるのか。はたして五十二年の国民食料の七六%はどうして期待できるのか、その辺のことについて大臣のひとつ所信をお伺いしたいと思うわけであります。
  55. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 五十二年度の自給度まで確保できるかできないかということは別といたしまして、確保すべくあらゆる政策を進めております。ぜひ確保するようにやっていきたい、こう思っています。  ことに飼料の問題等につきましてあるいは畜産等におきましても、自給飼料といいますか、牛などにつきましては草地の造成なども相当進めておりまするし、あるいはまたえさの輸入先ということも一国というようなことでなくて、東南アジア等につきましても開発輸入というようなことも考えておりまするし、中国の問題なども検討してみたい。そういうことは一つの例でございますが、各方面から日本の食料が、戦争なんてものを考えてのことじゃございません、やはり日本国民のよって立つところの基礎である農産物農業の、食料の自給体制というものは一〇〇%ということはとうていできませんが、七〇%、七六%という線で、あらゆる農業政策をそういう線を目標として進めていくということは一つの重大な関心事であるし、政策であると思いますので、その線に沿うで進めていきたいと思っています。
  56. 合沢栄

    ○合沢委員 その線に沿って進めていくということでございますが、そうなると、今日の貿易自由化、特に肉類の自由化というものは今日の日本の畜産、えさの問題等見ても、これはとうてい海外の畜産物に競争し得るはずがないわけなんであります。そこで肉類の自由化といったようなことは、これはもうどうにもならない、日本の畜産が完全に壊滅するというようなことに私はなろうかと思うのです。大臣が少なくとも七〇%あるいは七六%の国民食料の自給率を確保しようとするならば、私はここ当分の間、ほんとうにそういうさっき言ったような畜産が海外の畜産に対応し得るまでは自由化すべきでないと思う。いかなる方法をもってしても自由化すべきでない。これを自由化するならば、とうてい七〇%とかあるいは七六%というような国民食料の自給率の達成は不可能だというように私は考えるわけですが、どうなんでしょうか。
  57. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御指摘の点は、十分私も考え自由化に対処していく、こういうつもりでおりますから、いまやるともやらないとも断言できませんが、御趣旨の点は十分頭に置いて対処していくつもりでございます。
  58. 合沢栄

    ○合沢委員 十分ひとつそういう点を勘案されて、特に肉類の自由化については慎重な配慮をお願いしたい。  次に、グレープフルーツの問題で果樹業界は非常に混乱しておるわけでございますが、心配されておるのは、これに追い打ちかけるようなオレンジあるいは果汁の自由化の問題なんです。これまた畜産と同じように、今日オレンジ自由化というようなこと、あるいは果汁の自由化ということになれば、日本の果樹農家は壊滅するだろうと私は思うのです。農林省では十分数字わかっておると思うのです。ここであえて質問しませんが、今日の日本の果樹の原価、コストとアメリカをはじめとするところの海外の果樹のコストというのは問題にならない、しかもそれが一九七五年には世界的にオレンジの過剰というものが起こってくる。四百万トンは世界的に過剰になるというようにいわれておるわけなんです。たいへんなことだと思うのです。その中で果汁あるいはオレンジ自由化ということは、日本の果樹産業を壊滅させる、こう考えていいと思うのです。今日オレンジあるいは果汁が自由化されるのじゃないかといって農家の方は非常に心配しておるわけなんです。これについてもやはり肉類と同じように、乳製品と同じように、慎重な配慮というか、ここ当分の間は、果樹農家が海外の果樹農家に対応できるまでは絶対自由化しないというようなことに、ここでひとつ大臣から明言をいただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  59. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほど牛肉等につきまして申し上げたように、私も合沢さんの御意見あるいは農民立場というものを十分承知しておりますから、それに対しまして十分慎重といいますか、検討して対処していきたい、こういうことを申し上げておきます。
  60. 合沢栄

    ○合沢委員 肉類とか乳製品あるいはオレンジ、果汁だけがいけないというのではないので、残されておる二十八品目農産物自由化ということはいずれも日本のそれぞれの農業に対して大きな打撃になることはわかり切っておるわけなんです。しかもそれが、さっきの大臣お話によりますと、七品目程度はというようなお話のようでございます。グレープフルーツの自由化抜き打ち的にやったということで農政に対する農民の信頼は一そう不信を高めているというのが現状だと思うんです。そこで大臣は所信表明でも、最も大事なことは農民の信頼をつなぐことだということを強調しておられると思う。そこでこの自由化の七品目をやる場合、これはほんとうに極力局限するようなことにぜひお願いしたいと思うのでございますが、どうしてもやらざるを得ないという品目が一品目でも二品目でも出るならば、その際には、前回グレープフルーツでやったような抜き打ち的なことはぜひ避けていただきたいというように考えるのです。工業関係では、たとえば電算機のごとく、所管大臣が業界と十分話し合って、そしてそれらの対応策等もしながら自由化の方向に向かって努力していると思うんです。ところが農産物については、従来ほとんど、そういったことが国会においてももちろん関係の業界との相談もなしに抜き打ち的に自由化が実施されているということなんです。このことはますます農政への不信を高めていくゆえんであると思うのです。今回、一品目でも自由化がされなければならぬというような場合には、ぜひひとつそういった品目について該当の関係団体等と十分協議して、その上で安心して自由化できる対応策が十分だという上に立って自由化するというようなことにぜひ願いたいと思うんですが、大臣そういったお気持ちはございますか。
  61. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農産物、ことにグレープフルーツなどは抜き打ち的というようなことでございますが、従来その他のものも抜き打ち的だったのではないかと私も思います。今般の残存品目につきまして、電算機などにつきましてはそれぞれ業者との話し合いも済まして進めるような傾向であると思います。農産物につきましても、これは実際腹を割って申し上げますと、どれもこれもやりたくないのですが、ある程度やらざるを得ないということになろうと思いますが、そういう場合には農業団体関係者等の意見も十分に聞いて、また対策も講じつつ進めていきたい、こういうふうに思っています。
  62. 合沢栄

    ○合沢委員 私は、大事なことは、国民食料の自給という問題についてやはり消費国民というか一般の国民の合意を得ることが大事だと思うんです。農産物が高いから、だから一般の消費者から、安くせよ、そのために安い海外の農畜産物等を輸入せよというような声が上がってこようかと思うんです。この貿易自由化の問題についても、農民は必死になって抵抗している、一般の消費国民は反対だというようなことでは、これは農林大臣としても非常に苦労されるだろうと思うんです。海外の圧力は別にして、やはり消費国民からも合意を得るということは非常に大事だと思うんです。そういう点についてはやはり、何も貿易自由化農産物自由化はひとり農民だけのものじゃない、大事なお互いの、消費国民の食料を国内で確保するということが何よりも大事じゃないかということを一般の国民にわかってもらえるようなPRが必要じゃないかと私は思うんです。今日例をあげていうと、レモンが自由化された、そして一時的には消費価格がきわめて下がった。しかしそのことによって国内のレモン農家は壊滅してしまった。そして今日日本のレモンの価格は海外の価格によって完全に左右されておるわけなんです。先般船の関係でレモンがとまった。直ちにレモンの消費価格は二倍、三倍にはね上がっているというようなことなんです。そういった貿易自由化によって日本農業が壊滅してしまうと、すべての国民食料というものを海外の豊凶なり輸送事情なりによって完全に掌握されてしまうわけです。このことは国民にとっては、特に消費国民にとってはきわめて重要な問題だと思う。何だか今日一般消費国民農業を敵対視するというとおかしいけれども、しかし農業についてきわめて理解が薄いと思うのです。さっき大臣も言っておられましたが、一部には国際分業論的な、安いもののとこから買えばいいじゃないか、そうして工業をどんどん輸出すればいいじゃないかという考え方がございますが、そういった考え方が一般の国民の中にもあるように考えられるわけなんです。この際、農業を守るという意味だけではなくして、やはり国民食料をほんとうに自給していくんだ、そのことが将来の国民経済というか日本の経済の成長、発展のためにもきわめて重要なんだ、最も大事なんだ、国民の食料を確保することが絶対大事だ。この農業の中で、国民食料を確保するということは、防衛計画なんかよりもっともっと重要なことだと思うのです。そのことなくしては私は日本の平和も安全もあり得ないと思う。  基本的には、国民食料を確保するということは、国内で自給するということこそ私は最も大事だと思うのです。このことについて政府はもっと国民に声を大きくして、そうして農業に対して理解を深めるべきではないか。消費者の税金は農業をよくするために、そうして農産物が、いいものがより安く国民に供給できるために、そうして国民の税金を使って生産性の高いところの国土をつくってくれ、つくってもいい、そういうようなことに一般の合意を取りつけるべきじゃないかというように私は考えるのです。そうでなくては今日の日本農業はどうにもならないというふうに考えるのですが、こういう点について、今後大臣閣議はもちろんですが、政府として、一般の国民に対してそういったPRをすべきだと思うのですが、どうですか。
  63. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御指摘のように、経済成長下において何かしら農業不要論的な言論あるいは風潮もないわけではなかったと思います。しかしいまお話しのように、消費者におきましても何も外国から入れた安いものを消費するということよりも、日本農業に対して生産性が上がって、そうして安いものが供給されて安定していくことが私は消費者にとってもほんとうは望ましいことだと思います。でありますので、生産者、消費者——生産者だって国民でありますし、税金も負担しているんでございますから、国民全体として日本の消費生活がよくいくように、そしてまた安定した供給ができるように、これは国民全体の問題だと思います。でありますので、私はあらゆる機会をとらえて、いま御指摘のような、また私も考えておりますようなことをPRして国民の理解を得たいと思っております。
  64. 合沢栄

    ○合沢委員 それから、さっきも御質問があったのでございますが、貿易自由化といったようなことで農民は非常に不安を持っているわけです。将来の農業に対する自信もなくしているわけなんです。私たちも大臣等からよくお話を聞きますが、はたして政府農業を守り、そうして国民食料をほんとうに確保していこうという意思があるかどうかという心配を私自身も持つわけなんです。  そこで、それでは悪いというならば、いま政府がいっている総合農政でもけっこうです、そういったものについて五年あるいは十年というような長期の財政的な裏づけ計画というものをつけて、そうして政府はほんとうにこのようにやるんだという姿勢を出すべきじゃないかと思うのです。口だけで言っても具体的にそれは出ていない。一兆円予算になっておりますが、今日一兆円予算を何年続けたといっても、今日の国際農業情勢から見て、日本農業が国際的な農業に体質改善できるとは考えられないわけです。この際大幅な五年あるいは十年というような長期的な観点に立った日本農業の体質改善のための財政的な裏づけが必要じゃないか。防衛計画等を年次別につくるよりも、よりこのことのほうがわが国の安全と平和のためには必要だというふうに考えるのですが、そういった御意思は大臣ございませんか。
  65. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農業見通しというようなものにつきましては、農林省としても出しております。ただしこれを財政的な基礎の上にどういうくらいの財政投資を何年間のうちにすべきである、こういうようなものはまだできておりません。ただ予算の問題なども、単年度予算でございまして——防衛予算なんか別の面もありますが、単年度予算でございますので、まだそういうことを決定的にはかっておりません。交通関係だとかいろいろな何カ年かの計画を立てて長期的な計画を出している面も相当あります。農林関係だけはまだそういうものを出しておりません。出しておりませんが、その見通しに沿うて財政的な裏づけというようなものもこれから検討していかなくちゃならぬと思っております。
  66. 合沢栄

    ○合沢委員 最後にお伺いしますが、実はさっき園芸局長からアメリカに行ってのお話を聞きましたが、局長は温州ミカンの対米輸出拡大ということが主任務だったと思いますが、お話を聞いてみますと、そういった面での結果の報告がないようなんで、どうも単に検疫の問題、かいよう病の問題を中心として行かれているような御報告でありました。確かに温州ミカンの対米輸出拡大を阻害しておる問題は防疫の問題だと思います。検疫の問題が大きいと思いますが、しかしそれでもって明るい見通しじゃ困るので、それだけではなくて、もっと突っ込んだ話はなかったのかどうなのか、その面いま少しひとつ御説明願いたい。  同時にオレンジあるいは果汁といったようなものについて、あるいはまたアメリカのほうから強い要請が局長にあったのではないかと思うのですが、そういう最近のアメリカオレンジあるいは果汁についての日本輸出に対する動向なりそういったものもあわせてお聞かせ願いたい。  それからもう一つ、これは国内の問題ですが、グレープフルーツの自由化によってナツミカン等は直撃を受けるわけなんです。そういった直撃を受けるところの農家、ナツミカンその他温州ミカン等については対応策が急がれて、検討していると思うのですが、そういった対応はどのようになっておるのか、その対応策についての内容もお知らせ願いたいというように考えるわけです。
  67. 荒勝巖

    荒勝説明員 先ほど私が御説明申し上げましたように、対米輸出ミカンの解禁州の拡大の問題については、やはり大前提といたしまして、かんきつかいよう病のアメリカ側の持っておる懸念といいますか、心配感をいかにして払拭するかということが一番大事なことだと考えまして、問題はその点に超重点をしぼりまして今回折衝したわけでございます。先回参りましたときも、かんきつかいよう病に対するアメリカ側の懸念が非常に大きかったので、その問題を解決するということで、今回参りまして、その後アメリカ側とのいろいろな折衝等で、アメリカの心配している点を十分データとして相そろえまして、安尾部長から十分説明した、その結果、アメリカ側としては温州ミカンのかいよう病についての心配感はある程度解決した、こういうふうに考えておるわけでございます。それで今後かんきつ——日本の温州ミカンの輸出拡大の問題が逐次具体化していくのではなかろうか、こういうふうに私自身考えておるわけでございます。  そのほかの問題につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、いわゆるそのほかの貿易の拡大ということにつきましては、時間的余裕があまりなかったということで、いろいろな方にはお会いしましたが、要するに日本側は非常に困難な国内情勢にもかかわらずグレープフルーツの自由化をしたのであって、その反対としていよいよアメリカ側が温州ミカンの解禁州をさらにふやすべきだということを強調したにとどまりまして、具体的な貿易の拡大問題ということにつきましてはあまり話はなかった、こういうふうに御了解願いたいと思います。  また今度のグレープフルーツの自由化を契機といたしまして、夏ミカン等一部の国内産のかんきつについて若干の悪影響なきにしもあらずというふうに農林省のほうでも考えておりまして、これが対策につきましては、従来からグレープフルーツの自由化というものを前提といたしまして、過去二、三年の間にミカンの生産の拡充対策あるいは流通対策としまして倉庫等の増設あるいは果汁工場の新設、こういった一連の日本の果樹産業の近代化、合理化を進めてまいっておりますが、今回のグレープフルーツの自由化を契機といたしまして、さらにそういった一連の近代化、合理化作業を進めますとともに、従来まだ欠けておりましたジュースについての、あるいはその原料果実についての対策あるいは今後さらに夏ミカン等を改植していく必要な対策、こういったものにつきまして現在検討中でございます。
  68. 合沢栄

    ○合沢委員 まだこの問題については申し上げたいのですが、時間がないので後日に譲るわけです。
  69. 藤田義光

    藤田委員長 午後一時四十分に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時二分休憩      ————◇—————    午後一時五十二分開議
  70. 熊谷義雄

    ○熊谷委員長 代理休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長が所用のため若干おくれますので、その指定により、この間委員長の職務を行ないますので、よろしくお願いいたします。  質疑を続行いたします。松沢俊昭君。
  71. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私は、米問題につきまして御質問を申し上げたいと思います。  最近、「米が不足する」という本が出たり、あるいはまた「過剰の中の米不足」という文章が雑誌等に載っておりますので、そこでお伺い申し上げるのですが、ことしの稲作の作柄というのは大体どんなような状態になっているかということです。西日本のほうにおきましては災害がありましたし、そしてまた東日本のほうにおきましては霜の害等がこの春ありましたので、そういう点からいたしまして、作柄というのがどうなっているかということは、この米不足という問題と非常に大きなつながりが出てくるのじゃないか、こういうぐあいに考えますので、その点をまずお伺い申し上げたいと思うわけなんです。
  72. 中沢三郎

    ○中沢説明員 お答え申し上げます。  四十六年産水稲の作柄につきましては、去る七月二十三日に一道十二県の早場米地帯の作柄状況を公表しておりますが、その後東北におきます気象の好転もございまして、早場米地帯で申し上げますと、北海道を除きまして、現在の段階ではほぼ平年並みというふうに考えておりますが、北海道におきましては、一部冷害が懸念されるような状況でございまして、やや不良というふうに、前回よりも少し落ちている状況でございます。  それから早場米地帯以外の西のほうの状況でございますが、これは八月十五日現在であらためて調査をする段階になっておりますが、統計調査部系統におきます試験地における試験結果から推測しますと、全般的にはほぼ平年並みというふうに現在では考えておる状況でございます。
  73. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 七月二十三日現在で早場米地帯は平年並み、それから北海道のほうは不良、あとの地帯におきましては大体平年並みということになるのだそうでありますけれども、今度西日本災害があるわけですね。そうなると平年並みよりも下がる可能性というのはないのですか。
  74. 中沢三郎

    ○中沢説明員 現在まだ災害の規模、内容がはっきりしておりませんが、先ほど申し上げました西日本方面における作柄が現在の段階においては全般的に平年並みというふうに考えられると申し上げましたのは、現在起こっております災害状況というものを考慮しない場合の全般的な現在の段階における推測でございます。その災害の規模いかんによりましてはあるいはどういう状況になるか、災害に関する詳細の報告を待って判断したい、こういうふうに考えております。
  75. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そこで、平年並みということになりますと、反収にいたしまして大体どのくらいになるのですか。
  76. 中沢三郎

    ○中沢説明員 四十六年水稲に関します平年収量は、この春農林統計審議会の作況部会の御審議をいただきまして、十アール当たり四百四十キロというふうに決定しておるわけでございます。
  77. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 この四百四十キロというのは、何年度の平均が四百四十キロになるわけなんですか。昭和四十二年から豊作が続いておると私思うわけなんです。要するにそういう豊作が続いて四十五年まで来ておるわけですが、それはやはり平年作というふうな考え方に立つということは誤りなのではないかと考えますので、そういう点からいたしまして、それ以前の年の三年なり五年なりの平均というものが平年ということばで表現されるところの作ということになるのではないか、こういうぐあいに考えますが、いま四百四十キロという根拠はどういうことなんですか。
  78. 中沢三郎

    ○中沢説明員 先ほどお答え申し上げました四百四十という平年収量ということでございますが、これはただいま御質問になりました過去の実績の反収を考慮した上の見通しでございます。御質問の趣旨は、過去の水稲の十アール当たり収量は確かに御指摘の中にあったと思いますが、四百四十キロをこえておる数年がございますが、平年収量ということばの概念そのものが、技術なりあるいは気象条件が平年ならばどのくらいとれるだろうという推測値でございます。したがいまして、特殊の気象条件、非常に気候がよかったということによりまして反収が非常に高かった年もございますが、そういう場合には平年の気象条件に引き戻されて推測されておる、こういう要素がございますので、過去の実績から見ればやや低目の感じがありますが、そういう性質の数字でございますので、私どもといたしましては、従来と同一の方法考えてまいりました結果の四百四十キロの数字でございますので、過去の実績と比べましてやや低目な実感を持つのもやむを得ない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  79. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 これは食糧庁の需給関係について御質問を申し上げるわけなんでありますが、昭和四十六年度の需給見通しといたしましては、二百三十万トンの生産調整をやらなければこれは千三百九十五万トンとれる、これは四百四十三キロの計算をされての話だと思うのです。そこで生産調整をやるということになると千三百六十五万トン、こういうことになる。これが需要量ということになると思うのですが、そこで、いま統計調査部のほうからお答えをいただいた範囲におきましては、七月二十三日現在で北海道は不作、それからあとの地帯は平年並み、こういうことになっておるわけであります。それが、今度台風等の被害によりまして九州方面が相当やられてきているわけなんでありまして、そういうことになりますと、だいぶ反収というものを下げて見通さなければならない、こういうことになると思うわけなんであります。そうなりますと、生産調整が一〇七%の達成率だということで、ここで十七万トンぐらい不足してくるということになると思いますが、そのほかに、不作によって生ずるところのマイナスというようなことを考えました場合、やはり当初政府のほうで考えておられましたところの需要量というのが相当不足してくるのじゃないか、こう思うのですが、その点はどうお考えになっておるか、長官からお答え願いたいと思います。
  80. 亀長友義

    亀長説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のように、本年度予算編成の当初におきましては、これは平年作ということで計算をいたしまして、御指摘のような考え生産調整をいたしておるわけでございます。問題は、この生産調整が多少計画よりも十七万トンほどよけいいっている。それから、政府の予約のほうも七百六十万トンが七百四十六万トン、ちょうど生産調整の増加に見合うかのごとく、約十四万トンほど減っております。気象条件の変動に関しましては、非常に予測のむずかしい問題でございますけれども、一応予算編成の段階におきましては、私どもの単年度需給ということで、先ほどの生産調整なり政府買い入れを計画いたしました段階におきましては、前年度産米を例年百万トンほど繰り越して、翌年度の操作用あるいは備蓄を兼ねて翌年度の配給に入れる、そして新米はまた百万トンほど残して次の年へ送る、かような操作を背景とした単年度需給考えたわけでございます。生産の予測に関しましては、統計調査部長からもいろいろ話がありましたが、これはまだ確定するまでには若干日時もあることでございますし、これからもいろいろ変動要因もあるかと思いますが、私どもとしましては、四十五年産米を百万トン繰り越すという計画が、いまのところ少なくとも百五十万トン以上の持ち越しになるであろう、かように考えております。したがいまして、当初考えました計画よりは持ち越し量が五十万トンほどふえておるというような状況でございますので、作況に若干の変動がかりにありましても、その程度は十分カバーできる。また、百五十万トンの四十五年産米の持ち越しがある以上、かなりの変動がございましても、四十七米穀年度への持ち越し量百万トンという計画、四十六年産米を四十七年度へ百万トン持ち越すという来年の計画には、あるいはこれが若干切れるということがあるかもしれませんが、四十六米穀年度の配給につきましては何ら支障がない、むしろ平年作であれば四十六年産米が五十万トン過剰として出てくるのではないか、かようなふうにすら考えておるわけでございまして、私どもといたしましては、四十六米穀年度の米の需給に関しましては何ら不安は持っておらない実情でございます。
  81. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 政府のほうとしては奨励品種をやはり奨励しておられるのでありまして、私、新潟なんでありますが、新潟の場合等はやはり東北品種のほうが増産ができるわけなんです。レイメイだとかフジミノリだとか、それがコシヒカリにかわることによって、減反の成績はある程度あがったとしても、反収そのものは相当下がる、そういう可能性というものがやはりあると思うのです。そういうことは新潟だけでなしに、全国的に通ずるところの問題だと思うのです。  そこで、お聞きしたいことは、奨励品種というものを奨励して、多収穫の寒冷地型——新潟なんかの場合には寒冷地型の品種を増産するわけなんですが、そういうのを抑制したことによって反収が下がるというようなものは、つまり四百四十三キログラムという計算を出す場合においてどの程度織り込んで計算されたのか。その四百四十三キログラムの基礎をひとつお示し願いたいと思います。
  82. 亀長友義

    亀長説明員 うまい米、いい品種をつくれば収量は下がるじゃないかということは、昨年来、今年度予算を編成する際にもいろいろ議論のあった問題でございますが、農林省では当時技術官も含めましていろいろ検討いたしました。もちろん、局地的なりあるいは農家が自分の食べ料と申しますか、そういうふうな形で特定の品種を自家用に温存しておるというようなものにつきましては、うまい米をつくると収量が大幅に減るということは認められておりますけれども、うまいといわれる米でも、いわゆる種子が市場に流通しておる、農家なり農協の間で取引されておるというような奨励品種につきましては、必ずしも大幅な減産ということにはつながらないのではないか。また、かりに急速によい品種にかわれるというのは、長年の耕作の慣行もありまして、一年に一割ぐらいじゃないか。かりにそれが一割減収しても、全国の収量からいえば一%の響きにしかならない。これはたとえの話でございますが、そのくらいのうまい米をつくるということでの減収率というものは、国全体から見ればそう大きく考えるべきではないというのが、昨年予算編成時の結論でございました。四百四十三キログラムを算定するのに、これはおそらく例年の反収の伸び等から計算をいたしたのだと私は考えております。したがいまして、いまのよい品種にかわるという点は、本来農林省の専門家の間ではあまり高く評価すべきでないというふうな観点であろうかと思いますので、実は専門の人が来ておりませんので正確にお答えいたしかねますが、私の記憶では、そのような点は反収に織り込むというまではまだ結論が出ていなかったように記憶をいたしております。それで、四百四十三キロの数値が本年の反収としてどのようになるにせよ、現在私どもは農家からすでに予約限度数量として七百四十六万トンの予約をいただいております。これはおそらく確実に出荷をされるであろうと私は期待をいたしております。そのほかに、いろいろ先生の御出身の新潟等ではまだ余り米もある、また宮城等でも若干はある、秋田等でもあるというふうに、各地でそういう実情にあるようでありまして、もちろんこれも今後の作柄いかんでございますが、先ほど申し上げましたような事情で、新米穀年度の米の配給には現在のところ不安は感じておらない、私どもとしてはかように考えておる次第でございます。
  83. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 統計調査部にお伺いをしたいのですけれども、四百四十というところの平年作のキロ数ですね、これはやはりいままでの品種をそのままの状態にしておそらく出されたところの数字だと私は思いますが、この品種の面等も考慮して出されたところの数字なのかどうか、その点はっきりしてもらいたいと思うのです。
  84. 中沢三郎

    ○中沢説明員 非常に御専門的な御質問で直接お答えしかねて恐縮でございますが、平年収量を考えます場合には、先ほども申し上げましたように過去の反収を実績で産んだ場合の条件として気象とか技術条件というものが非常に大きな影響を及ぼしておるわけでございます。そういう作柄を推定するわけでございますから、そういう作柄を推定するに必要な条件というものを考えて、昭和三十年以降の作柄と実績を見て一定の式を立てまして出しておるわけでございますが、その場合に品種の大きな変化を考えているかということでございますが、過去の実績の中にその品種の変化が及ぼす収量の結果というものが出ておりますので、そういう意味におきましてはあらわれた実収反収といいますか、それの中に先生の持っておられます御質問意味が含まれているというふうに考えます。ただ、はっきりいたしませんが、あらかじめこういう品種がこういうふうに変わるだろうからこういうふうになるはずだという要素考えていないというふうに思っております。
  85. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そうすると、長官のほうのお答えといたしましては、すでに七百四十六万トンの予約を私たちは受けつけたんだ、だからこの米というものは確かに農民は売り渡してくれるであろう、こういう想定をしておられるわけなんであります。私もそのくらいな米はおそらく売り出しをやると思うのです。ただしかし、いま統計調査部のほうからお話もございましたように、やはり品種が変わることによってこうなるという計算はやっておらない、こうなるわけです。したがって政府に売るところの自主流通米も含めました七百四十六万トン、これはそれなりに問題はないと思っております。おりますけれども、要するに全体の需要、農家の四百五万トンだとか、そういうものはやはり大幅に減ってくるというところの可能性というものがあるのではないか、こういうぐあいに私は思うわけなんであります。同時に私はどうもわかりませんのは、一つはやはりこの前の委員会のとき長谷部委員のほうからも質問がありましたが、米の需要というのは伸びているわけなんですね。私もことしの四月までと去年の四月までの数字を持っておりますけれども、やはり六カ月間で二十万トンあまり伸びている、こういうことになるわけなんでありまして、したがってこの一年間このような状態で伸び続けているということになると相当の量が必要になってくる。反面においては反収の面等においては品種が変わることによって下がってくる。反面においては食べるところの量というものがふえてくる、こういうことになれば米の需給というものは逼迫してくる、そういう見通しはつけられるのではないか。だからこそ米は不足するとか、あるいはまたその他いろいろな論評というものが出てくるのではないか、こう思いますが、長官はどうお考えになりますか。
  86. 亀長友義

    亀長説明員 御指摘のうまい米、いい米をつくれば反収が減るかどうかどいうことにつきましては、私が先ほどお答えいたしたとおりでございまして、われわれの専門家の見解では、全体的な日本の米の量から見ればそれほど大きな影響を持つとは思われないというふうな見解であります。しかし、これは当然具体的には統計調査部が予算編成の時点におきましては過去の経験値からはじき出された反収なり、あるいは耕作面積というものから千三百九十五万トンですか、そういう推定を出しておるわけでございますが、具体的には本年の作付の状況、さらに各地ごとの作付品種の生育の度合いというものをそれぞれ時期の推移に応じて判定をいたしまして、具体的に推定実収高というものが本年の十月くらいには出るわけでありますから、具体的にその判定に従って私どもはまた需給というものを考えていかなければならぬと思います。  それから米の需要の面でございますが、御指摘のように、本年度の政府売却量がふえておる。また自主流通米も当初計画どおり百七十万トンが達成できそうであるということは事実であります。ただこの増加数量は大体において十五万トン前後だというふうに考えておりますが、今後いままでのような数字がそのまま伸びていくかどうか、またいままでの増加がほんとうの米の需要の増加であったかどうかという点につきましては、私どもはなお検討の余地があるのではないかというふうに考えます。と申しますのは、従来統計にあらわれない米の消費、簡単にいえばやみ米というものが自主流通制度の創設によってかなり減少をしてきておるという事実も私どもは感じておるわけでございます。特に本年、昭和四十五米穀年度の後半期におきましては、十二月過ぎてからは、いわゆる新米というものが特段の価値を持たなくなった時点から、そういうふうな傾向が強くなってきておるのではないか。これは実質的には消費の増加ではない、いわゆる流通ルートの変更であるというふうにも考えられるわけでありまして、この点は私どももう少し研究をしてみたいと思います。  片一方で小麦の消費もかなり伸び悩んでおります。これが一体小麦から米への転換を意味するものか、あるいは全体的な所得の増加に伴うでん粉消費の減少ということが依然として続いておって、米だけであったものが小麦へ、この一、二年前からあらわれておる傾向がさらに顕著になって小麦の減少というふうになっておるものか、そこら辺はなお私どもとしては研究を要する点ではないかと思います。しかし、かりにこれがある程度の米の増加を伴うものであるにいたしましても、四十六米穀年度全般を通じて見ましても、その数量はおそらく十万トンか二十万トン程度と見るべきではないかというふうに考えます。  かように考えてまいりますと、先生御指摘のように、米のうまいものをつくれば収量が減る、あるいは昨今の売れ行きを見れば、米の需要の増加があるのではないか、そういう点も確かに面としては言い得るのでございますけれども日本の千四百万近い全体の米の生産量、あるいは生産調整をいたしましても、やはり千百五十万トンあるいは六十万トンというふうな米の消費をいたします国民の食生活の中における米のウエートから申しますと、全体需給に響くほどの大きな変化要因としてはいまだ考えられないのではないか、かように考えておる次第でございます。
  87. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 若干のズレがあるけれども、そうたいしたズレは出てこないという御見解なんでありますが、これはやはり一つの新たな見解なんでありまして、結果が出なければわからないわけでありますが、ただ昨年も四十五年産米のもので七百四万トン政府が買い付けるというところの予算を立てられたわけでしょう。ところがこれが六百七十何万トンですか、しか買いつけられなかった。これは西日本災害影響したのである、こういうことでありますが、それだけではなしに、全体的には、やはり自主流通米なんかができてから、品種の面等においてもだいぶズレが出てきたために、買い付けが不能になったんじゃないか、こういうぐあいに考えるわけなんです。  それから、需要が伸びているのかどうかということについては、いろいろ検討してみる必要があるということを言っておられます。しかし、御質問を申し上げますけれども、いままで古米、古々米、そういうものを新米と混入をしながら配給をしてこられたわけですね。で、ことしと去年の要するに混入の変化、おととしと今年度の変化というものはどうなっているのであるか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  88. 亀長友義

    亀長説明員 古米を、これは翌米穀年度における操作用として食っていくということは、従来からの食管の運営の基本原則でございます。米が足りないときには、御承知のとおり早場米を奨励して、農家から政府が買い付ければすぐに配給をするという時代も、もちろん不足時代には続きましたけれども、米に余裕ができてからは、それをもちろん新米とまぜて配給をするという考えでございまして、私どもは、百万トン程度は新米穀年度において新米とともに消費をする、新米はまた百万トン持ち越すというのが、現在の国民食料確保の原則であろうというふうに考えております。しかし、だんだん米が余ってまいりまして、四十四年くらいになりますと、どうも百万トンは食いたくないというので、四十四年も百万トンの目標でございましたけれども、実際には九十万トンを割るような事情でありました。(松沢(俊)委員「米穀年度ですか。」と呼ぶ)米穀年度でございます。四十五米穀年度におきましては、やはり九十万トンを少し割りまして八十五万トン程度でなかったかと思います。私どもとしては、やはり百万トン配給をしたいのでありますけれども、四十四年、四十五年について考えてみますと、新米につきましても完全に供給より過剰の状態にあったわけでございます。四十五年産米につきまして、政府は七百四万トンの買い入れ見込みであったと先ほどおっしゃいました。そのとおり予算上はなっておりますが、これは需要量から計算をした七百四万トンではないのでございまして、四十四年、四十五年は、当然それは無制限買い入れの見込み数量であったにすぎないのであります。したがって、すでにその数は需要を上回っておる。そういう状態のもとで、消費者からは新米も余るのになぜ古米を食わすのだというふうな強い反論もございまして、私どもとしては、百万トンの計画については多少これを緩和せざるを得なかったというような状況で、四十四年、四十五年は百万トンを若干割って、九十万から八十五万程度のものを、それぞれ新米にまぜて古米を配給してきたという経緯でございます。
  89. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 それで、需要が伸びたということは検討しなきゃならないというけれども、うまい米を配給すれば消費の量がふえるということは、裏づけられてきておるのじゃないかと思うのです。ですから、あなたのほうではそう心配したものでないということを言っておられますが、しかし、生産調整の計画というのは五年計画ということになっております。これは四十七年には心配ない、こういうお話でありますが、四十八年、四十九年というふうにこういう状態が続くということになりますと、五カ年間の生産調整というものは変更しなければならないという時期が来るのではないかというふうに私は考えますが、その辺は長官、どう見通されますか。
  90. 亀長友義

    亀長説明員 御指摘の点は、現在農林省が一昨年来進めております生産調整、あるいはその基礎になっております単年度需給均衡の原則、こういう点についての御批判であろうかと思います。現在実施しております考え方といたしましては、千四百万トン台の日本の米の生産水準は、これはおおむね安定、定着をいたしておる。今後そのまま推移すれば——これはもちろん農業生産のことでございますから年によって若干の高低あるいは変動はあるにしても、その変動量というのはきわめて限られた幅のものであって、千四百万トン台という基本的な生産力水準は大きく変わることはないという前提に立っております。したがいまして、ことし単年の結果はどうであるといたしましても、計画いたしました五カ年計画、あるいはそれの基礎になっております農産物需給の長期見通しあるいは地域分担の指標、そういうものの数字の基礎になっておりますものは、私がいま申し上げましたような考え方に基づいておるわけでございまして、今年単年の結果は別といたしまして、五十二年まで長期的に見れば、御指摘のような不作が続くというようなことは、従来の経緯から見て、あり得ないという前提に立っているわけでございます。  御指摘の点は、その大前提について御議論がある、こういうお話だろうと思いますが、その点は、私ども考えてまいりました考えから申しますと、そう大きく反収なり生産変動というものは、五十二年までの間にはあり得ない、基礎的生産力は変わらない、かような考え方に立っておる次第でございます。
  91. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 これは見通しですから、変わるか変わらぬかはあとからはっきりしてくると思います。  そこで、それと、一面「過剰の中の米不足」ということばもあるわけなんでありまして、結局、農家の保有量というものを四百五万トンというふうに見ておられるわけです。ところが、実際は、この基礎になるのは一人一カ月十七キロ、こういう計算だそうですけれども、しかし実績は十四キロ。それから、種もみとしては、十アール当たり十キロというふうな見方をしておられるわけですね。それが、普通は四キロ程度使えばもみは十分だということになるわけでありますから、この農家の四百五万トンというものは、やはり相当ゆとりのあるところの米ということになるのじゃないか、こういうぐあいに実は考えるわけなんです。  それからもう一つの問題といたしましては、これは食糧庁のほうで通達を出されたのですか、ある雑誌に出ておりましたけれども、「五百八十万トンにとどめるように末端ではあらゆる手段を講ずること」それから「そのためには、自主流通米の検査を政府買入米の検査より優先させる。政府買入米の検査は幾分控え目にすること」同時に、「自主流通米は目標百八十万トン以上になるよう強力に指導すること」それから「予約限度数量をこえる余り米の検査は予約限度数量に達するまでやらないこと」こういう指導ですか通達ですかわかりませんけれども、流しておられるということを私聞いているわけなんでありますが、そういうことになりますと、結局は、まず自主流通米というものをどんどんふやしていって、できるだけ政府の直接金を出すところの米というのは不足にしていこうということであります。それからさらには、その上に立って、余り米というのは一番最後に検査をやる、こういうことになるわけでありますから、逆に言うと、農家の立場からするならば、その対応策として、余り米なんというものは、それほど政府がじゃまにするのであれば自由に売ってしまったほうがいいじゃないか、こういうことになる。それから農家に余裕があるところの米というものも、これまた自由に売ってしまうということになる。そういうことになりますと、赤城農林大臣食糧管理制度の研究会というものを設けることは設けるけれども、食管制度というものをくずすという前提に立ってこの研究会を設けるのではないのだから、その点は安心してもらいたいという答弁が行なわれているわけなんです。でありますけれども、行政庁のほうといたしまして、要するにそういう食管制度そのものを空洞化させる方向で指導しておられるということは、これは大臣のお考え方と皆さんの考え方というのはずれているのじゃないか。そして、この前私が御指摘申し上げましたように、すでに関西においては正米市場の開設をやろう、こういうことが新聞に出ております。すでに事務所なんかを開設されたということも伝えられておるわけなんです。そういうことになると、結局は食管制度の研究会なんというものをつくる以前に、皆さん自身が食管制度を崩壊させてしまう、そういう指導をやっておられることになるのじゃないか、こういうぐあいに考えますが、こういう指導というのはどうして出されたのか、その御答弁をいただきたいと思うのです。
  92. 亀長友義

    亀長説明員 まず第一は自主流通の問題でございますが、私どもとしては政府買い入れ量は五百八十万トンにできるだけ押えたい。自主流通米はできるだけ促進をいたしたい。総量が七百六十万トンでございますから、自主流通米が促進されれば当然政府の買い入れ五百八十万トンは減るということにつながってまいりますが、いずれにいたしましても、自主流通米を促進をするということはすでに政府方針として決定をいたしております。本年予算編成時に際しまして、政府・与党の首脳の会合で決定された要綱によりましても、自主流通米はできるだけ促進をする、かような前提に立っておるわけでございます。したがいまして、私どもとしては、政府買い入れの五百八十万トンはできるだけふやさない。自主流通米の百八十万トンはできるだけふやす、かような方針で臨んでおります。もちろん自主流通米をふやすと申しましても、これは金倉等の助成がございますけれども政府のほうは高く買って安く売っておるわけでございますから、これには限度がございます。おそらく百八十万トンの目標を大きく上回るということは実際問題としてむずかしかろうと思いますが、自主流通米をできるだけ促進してこれをできるだけ売る。これは同時に農家の手取りの増加にもつながることでもあるし、また銘柄格差というものを織り込んだ自主流通米の価格形成されるわけでありますから、かような観点から申しましても、この自主流通米を促進するということは既定の方針であります。  また、これが食管制度をくずすのかどうかというお話でございますが、御承知のように自主流通米の流通経路というものは食管法に基づいて規制をされておりまして、かような観点からも、現行食管法のワク内のものであるということは、もう自主流通制度創設以来一般に私は了解されておるところであろうと思います。  それから余り米の問題についてお話がございました。検査のやり方に関連しての主として御質問であろうかと思いますが、実際に検査を受け付ける場合には、政府買い入れ米と自主流通米、すなわち国民への配給上必要なる七百六十万トンのワク内で予約をされた米、これについてはできるだけこれを優先的に検査をいたしたい、かように考えております。したがいまして、余り米のほうは論理上そのあとになるということになるわけであります。ただ実際上私どもとして、原則的にはかように考えておりますけれども、それぞれ現地の実情に応じて対処をしていいのではないかというふうに私どもは弾力的に考えてまいるつもりであります。ということは、余り米の検査を先にしても、政府買い入れ米あるいは自主流通米、すなわち予約の米が確保される、あとから検査をしても必ず確保されるのだという見通しがつく場合には、余り米の検査を先にやっても差しつかえないわけでございまして、また農家にありましても、早場のものをつくってまた片方ではおくてのものをつくるという場合もあります。そういう各地域の出荷の時期等をも考えますと、私どもが最初申し上げました余り米はいつも一番あとだという原則にこだわるのもいかがか、かように考えますので、あとからでも政府の予約は確保されるという場合には、余り米についてそれぞれ地域の事情に応じて検査をしてもよいのではないか、かような弾力的な幅を持たせた指導を行なうつもりでおります。
  93. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 時間が参りましたのでやめますけれども、問題は、いまのような指導方針でいきますと、結局は第三の米になるのは金倉敷がつかないわけでありますから、損するところの米ということになるわけなんです。だからそういう米はできるだけいい米を出す。その次に自主流通米を出す。そうして政府に売るものは一番まずいものを出そう。こういうことになりますと、実際上今度消費者の立場から考えますと、政府の配給ルートを通じてくるところの米はまずいということで、やはりやみ米だとか自主流通米だとかいうとほうもないところの値段で買わなければならない米を買わされるという結果になって、結局要するに食管制度はあるけれども、食管制度が機能しないという結果になってしまうのではないか。だからこういう通達を出される、そういう指導をされるということは、私は食管制度そのものを危機に追い込むということになるのではないか、こういうぐあいに考えて御質問申し上げているわけなのであります。  それからもう一つの問題といたしましては、県あたりの食糧事務所長なんかの指示を末端の検査官が受けているのによりますと、いままではもみのまざったところの米というものは再調整させたわけです。要するに持っていっても再調整して持ってきなさい、こういうわけで戻したわけでありますけれども、ことしからはそういうことをやらないで、それはすぐ不合格米ということで検査をしてしまうのだ、こういう指導もやっているわけであります。そうなりますと、さっき私が申し上げましたように、全対的においては必ず米不足というものが出てくるだろう。しかし現在の段階でもう米が不足するということはちょっと考えられない、それはわかります。わかりますが、一面農家の手持ち米だとかそういうものは余裕がある、それから不合格米になったところの米が出てくる、それから余り米というものは一番最後に検査しろ、そういう方針でいくということになれば、これは全部やはりやみ米に流れるということになるじゃないですか。そういうやみ米に流れた場合においては厳重に取り締まりをやるということであるならば、これは話はわかります。しかしいままでの食糧庁のやり方からいたしますと、やみ米はどんどん出ているわけです。出ているけれども、これに対するところの厳重な取り締まりというのはほとんど行なわれてきていないわけであります。したがって、こういうような事態になれば、なおさらのこと皆さんのほうでは厳重な取り締まりというものはおやりにならないと思うのですよ。そうなれば、食管制度はあるとはいいながら、実際上は機能しないという結果になってしまうのではないか。そういう点を一体どう考えられるかということを質問しているわけであります。だからあなた方の方針はわかりました。しかしあなた方の方針どおりにいけばこういう結果になるじゃないかと私は言っているわけだから、それについての御答弁をいただけばいいわけなんですよ。
  94. 亀長友義

    亀長説明員 農家がこの余り米という問題に対してどういう対応をされるのかということが非常に大きな問題であるという点に関しましては、松沢先生と私も同感でございます。問題は、先生御指摘のように需要が大幅に伸びれば別でございますけれども、大体一年間の所要量が七百六十万トンしかないというところに余り米があり、さらに先ほど御指摘の農家の四百五万トンが多過ぎるんだ、そこからも余り米が出るんだということになれば生産調整をもっと大幅にやらなければならぬかどうかという問題、さらに一応の生産調整をやったけれども、やはり依然として余り米が出るということであれば、これは生産調整ということをいろいろやっておるけれども、食管なり米の過剰問題は依然として解決しないということであります。したがいまして私は、余り米の行くえがどうであろうと過剰問題が解決しない以上は食管制度が安定するということはなかなかむずかしいのではないか、かように考えます。したがいまして、食管問題を安定するには米の過剰が解決するということが先決であり、またわれわれはそのような態度で今日まで対処してきたつもりであります。私はかように考えております。
  95. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 これで終わりますが、こういうことになると思うのですよ。米は総体的には不足になっている、これは間違いないと思うのですよ。総体的には不足になっていて政府の手持ち米というものはさらに不足になる、過剰とかそういう意味ではないですよ、政府のルートに乗らない米がよけい出てくるということなんですよ。全体的には不足になっていても、そのウエートからいくと政府の米が不足になっていてやみ米というのがよけいになってくる。生産調整をもっとやらなければならないという理屈は出てこないと思うのですよ。そういうことではないんではないか。政府の手持ち米が不足になってやみのほうが拡大されていく、そういう結果になる、そういう点はやはり問題があるんじゃないか、こういうことを言っているわけなんでありまして、生産調整を余っているからもっとやらなければならぬなんてそんな答弁をもらうつもりで私は質問しているわけじゃないのです。そんなことはないでしょう。全体的には不足になっているのですよ。だけれども、不足になっている中でさらに不足になるのは政府米じゃないか、そういうようなことでは食管制度というのは空洞化されてしまうんじゃないか、こういう質問なんでありますから、これはお答えを願ってそれからやめたいと思います。
  96. 亀長友義

    亀長説明員 御質問の趣旨もよくわかっているつもりでございますが、私どもとしまして基本的には、米が非常に不足しておった、あるいは国民食糧をまかなうだけの生産力がなかったという時代とは食糧管理のあり方というものについて考え直してもいいんじゃないかというふうな考えがあるわけでございまして、自主流通制度の創設というのもかような観点から発足いたしたものだと私は思います。したがいまして、政府が直接買って直接配給するというものは、現段階においては国民が消費するもののすべてであることは必ずしも必要ないんじゃないか。政府は、たとえば自主流通米、農協を通ずる自主流通米というふうな形で中間経費もより合理化され、農家にとっても銘柄格差等の入った米価が実現をしていくというふうな方法があり得るんじゃないかということで現在自主流通制度というものも本年度は予定どおり百七十万トンも達成されようとしておるわけでございます。余り米の問題につきましても、私どもはこれは決して野放しにしておるわけではございません。自主流通米と同じようなルートでまたこれは配給計画に乗っけて売るべしということを食管法の上でも規定をいたすことにしておるわけであります。私は、農家の方も米の秩序ある流通ということを希望されるのであれば、当然やはり余り米につきましても自主流通米と同じような売り方をして農協なりの一定のルートに乗せていくというような御協力があってしかるべきではないか、かように考えます。私どもとしましては買い入れに際しましては——買い入れでございませんが、自主流通の扱いに関しましては、農家の便益も考えまして、いわゆる本来の自主流通米と余り米につきましては検査上も特別の極印は押さないということもいたしておるわけであります。私は、やはりこれは現在の食管の規制するルートということを守っていただく以上は、農家の方々もそういう面からやみに売るというようなことではなくて、農協を通ずる自主流通のルートに乗せていただくという御尽力をいただくことが米の管理を安定させる方法だろうと考えております。
  97. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 じゃこれで終わります。  なお、これは時間がありませんから、また次の機会にひとつ論戦をやりたいと思います。
  98. 熊谷義雄

    ○熊谷委員長代理 瀬野栄次郎君。
  99. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 午前中に引き続いて、午前中は集中豪雨及び台風十九号の問題を農林大臣質問してまいりましたが、時間の制約の関係大臣以外の質問として通告いたしておりました環境庁に対する質問をただいまから順次行ないたいと思います。  特に環境庁には自然保護という問題と、いよいよ十一月一日から解禁になります狩猟法の問題について、特に現在予算編成のときでもございますので、そういった意味で若干の質問をやりたい、かように思います。  森林は林産物の生産及び国土保全その他公共的機能を通じて国民経済の発展国民生活の向上に寄与していることは言うまでもありません。御承知のように経済的機能とまた公益的機能があるわけでございますが、最近のように公害問題があちこちでこんなに騒がれまして、環境庁も設置され、いま前向きに意欲的に取り組んでいただいておりますが、森林においても産業施設等の拡大に伴って水源涵養林あるいは防災資源としての森林への依存度、こういったものがますます高くなっております。レクリエーションの利用の増大によるところの保健林、休養のための資源としての森林の重要性が高まってきておるわけですが、環境庁に対して私はまず最初に、環境保全の中で自然保護ということを大きく取り上げておりますが、これに対する基本的な方針を冒頭承っておきたい、かように思います。きょうは環境庁長官が所用のため出席できませんが局長のほうから御答弁をいただきたいと思います。
  100. 首尾木一

    首尾木説明員 美しい国土を保全しそしてこれを長く子孫に残すということはきわめて重大な問題でございまして、環境庁といたしましては一方に公害の一元化という問題と同時に、やはり自然の保護ということを人間環境の問題といたしまして重要な柱といたしまして取り上げることとなったわけでございます。  自然保護の問題は従来自然公園法でございますとかあるいは森林法でございますとか、その他個別的な法律はございましたけれども、全体としてわが国の行政の中にいわば自然法という柱が大きく打ち立てられてきておらなかったというのがこれまでであったというふうに考えられるわけでございますが、このたび環境庁の発足に伴いまして自然環境の保護という問題が人間環境の保護、保全といったような面で特に重要な問題であるということとして浮かび上がったものと考えておるわけでございます。したがいまして私どもはどちらかと申しますと従前自然環境の問題につきましていわば開発主導型といったような形のそういう結果になっておりました点に対しまして反省をいたしまして、全体といたしましてやはり開発と同時にまた保護すべき自然環境というものを強く保護していくといったような姿勢で今後の自然環境の保護、保全の行政を進めたい、かように考えておるわけでございます。
  101. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 局長は従来の開発主導型を反省して全体として強く保護していくという姿勢でやっていくというような意味の答弁がございましたが、もちろんそうでなくちゃなりませんけれども、先般八月の二日か三日のように記憶しておりますが、閣議の席でも大石環境庁長官がいろいろと自然保護、そういった問題で報告されたように聞いておりますが、今後環境庁はやはり各省庁との関係が大きな問題になってくると思います。こういった意味で、今後環境庁が大きな仕事を国民の要請にこたえてやっていこうとすれば、どうしても各省庁との関係が今後折衝の大きな問題になってくると思うのです。そういった点については、いかなる対処方針で臨まれるのか、この機会に承っておきたいと思います。
  102. 首尾木一

    首尾木説明員 私ども環境庁に与えられた調整権に基づきまして十分各省に対しまして提言をし、わが国全体の自然環境の保全について強く推し進めていきたいと考えておるわけでございます。  なお、私どもといたしましては、長官もすでに前臨時国会におきましてお話を申し上げておりますように、わが国全般の自然環境の保全ということに関しまして、いわば自然保護法、仮称でございますが、自然保護法といったようなものの制定について、次の国会を目途に努力をしたい、かように申し上げておるわけでございますが、私どもこの趣旨に従いまして、今後この点につきまして強く検討を進め、努力をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  103. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 自然保護法の制定の問題が出ましたが、自然保護法については早くから民間団体からも要請があっているわけでございますし、これはもう当然のことだと思うわけです。ぜひひとつ次期国会には自然保護法の制定ができるように準備を進めていただきたい、強く要望いたす次第でございます。  さて次に具体的な問題に若干入ってまいりますが、先日環境庁長官並びに局長も同行されて群馬県の尾瀬に行かれて、いろいろ地元と対策をされてきたように報道されておりますが、御承知のように、この尾瀬は得がたい植物、また高山地帯の植物等もありまして、日本のいわゆる自然の宝庫と言われております。今回、観光道路によって自然保護と観光開発のあり方ということが問題になりまして、その節、大石環境庁長官は自然を保護するために道路計画の変更を地元の県に要請したいという意味をおっしゃったように聞いておるのでありますが、いわゆる地元は地域発展のために迫られた、また迎えたところのこの観光道路であり、それが開発によって自動車の公害、あるいはその他の諸問題が起きてきまして、つい最近では環境破壊になっている元凶であるというようなことで問題化されておるわけです。  聞くところによると、地元では道路はぜひ貫通したいと言っているし、また長官としてはいろいろニュアンスの違ったような発言もあったように聞いておりますが、これはここだけに限らず、各地で問題化してくる問題でありますが、この尾瀬に行かれたときの模様について、また今後これに対してどのように視察の結果対処される方針であるか、承っておきたいのであります。
  104. 首尾木一

    首尾木説明員 問題となっております道路は、群馬県の沼田市から福島県の南会津郡田島町に至る主要地方道のうち、群馬県利根郡片品村大清水から、福島県南会津郡檜枝岐村七人までの三十キロの区間が問題になっている道路でございます。  ただいまその道路三十キロのうち、工事中の区間は、群馬県の利根郡片品村地内の柳沢から三平峠下の六・一キロメートルの区間が昭和五十年までの間の事業として工事中の事業でございます。その他の区間につきましては、ただいま申し上げました福島県側との貫通をいたします道路につきましては、いまだ承認をいたしておらないような段階になっておるわけであります。   〔熊谷委員長代理退席、委員長着席〕  この道路が通じますと、一つは、やはり先ほど先生も申されました尾瀬の自然というものが道路の工事によりまして破壊をされるという問題、それからもう一つは、道路が開通をいたしますと車が非常にふえまして、現在でもかなりの尾瀬の利用者というものがふえておるわけでございますが、これが激増することになるではないか、そのことによって尾瀬の自然というものが荒らされるおそれがあるのではないかということが問題になっておるわけでございまして、そのようなところから、今回環境庁長官がこの地区を、現地を視察をいたしたわけでございます。  環境庁といたしましては、今後この問題を処理をいたさなければならないわけでございますが、実はこの道路は、福島、群馬、新潟の三県が協議の上でこれをつくることをきめておる問題でもございますので、したがいまして環境庁といたしましては、三県の知事と十分話し合いまして、その協議によって私どもとしては尾瀬の自然を十分に守れるような計画に変更することに努力をしたいというような考え方でおりまして、来週にも環境庁長官が三県知事に来ていただきましてその点について協議をいたそう、その結果、それに基づきまして結論を出したい、かように考えておるわけでございます。
  105. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 ただいまの答弁で一応了とします。来週中にも福島県、群馬県及び新潟県の三県知事を呼んで協議をして、自然が十分に守れるように計画変更について努力していくということでございますが、もちろん地域の発展という問題、また森林の経済的な機能という問題、いろいろむずかしい問題がからんでまいりますが、やはり工事費の増額等によって、捨て土の処理等によってもかなりの効果があがるわけでございます。いわゆる切り取ったどろを下へ、谷底に落とす、これが河川を浅くしたり、あるいはまた崩土によっていわゆる傾斜地をこわすというようなことにもなりかねないので、そういったことも十分対処されまして、今後もあることでありますが、ひとつ十分にこの計画変更等について対処をしていただきたい、かように強くまたお願いをする次第であります。  同様な例は何も尾瀬に限ったことではありません。環境庁も掌握しておられると思いますが、北アルプスの乗鞍岳の道路、それから先般も問題にいたしました南アルプスのスーパー林道がございますし、また福島県の磐梯吾妻スカイライン沿いでは亜高山帯の樹木の枯死がずいぶん目立ってきている。二年前にも富士スバルライン沿いの亜高山林では年間二万本の木が枯れたといってずいぶん警告された例がありますし、また昨年の九月完成した四国の石鎚山の国定公園の石鎚スカイライン、これは十八キロありますが、これもかなり被害がひどいといわれております。さらには北海道の大雪山、それから北アルプス北部の朝日岳も問題でございますし、昨年から問題になっておる奥秩父あるいは奥日光の戦場ヶ原、千葉県の房総半島の房総スカイライン、こういったことで各地にたくさん問題が起きております。こういったことについても早急にひとつ掌握をされて、いま長官は意欲的に各地を回っておられるようでありますが、ひとつ対策を立てていただきたい、かように思うわけです。  国立公園、国定公園、県立公園などは観光業者がどうしても投資をしてこれを開発するというようなことで、そういった面からもますます被害に拍車がかかってくるという傾向が例年強くなってきておりまして、得がたい国民の自然が破壊されるということがますます強くなり、一説にはジェット機が一機飛ぶと五万人分の酸素を使用するといわれるように、酸素補給林がだんだん少なくなっていくという憂慮すべき事態にもなってきておりますので、こういった面を踏まえて真剣にひとつ対策を立てていただきたいと思うのです。  そこで、ほんとうに自然を保護する気であるならば、やはり土地を行く行く公有化して開発をきびしく規制しなくてはだめだというのが関係者の一致した意見であります。かといって、またそうばかりもいかぬ面もあることも十分承知しておりますが、要するに自然公園法というものを近く改正すべきではないか。それで必要な土地の買収と公園管理機構の拡充強化ということを規定すべきではないか、かように私思うのでありますが、この点についてひとつ環境庁の御見解を承っておきたいのであります。
  106. 首尾木一

    首尾木説明員 先生の前段に申されました道路と自然公園との関係の問題でございますが、私どもやはり道路がそういったような自然の破壊というものとかなり結びつきやすいということにつきまして十分認識をいたしております。したがいまして今後このような道路の設定の問題につきましては十分慎重に考えてまいりたい。もちろん公園でございますので、一面において利用ということも考えなければなりません。それからまたわが国のようなところにおきましては、特に山林の林業関係でございますとかその他の問題での、たとえば防災問題といったようなことでどうしてもやはり道路を必要とするといったような問題もあるかと思いますが、それらを認めるにあたりましても、それによって自然が破壊されることのないように、その被害を最小限にするように十分努力をしたい、かように考えておるわけでございます。  それから後段の土地の買い入れの問題でございますけれども、これは実は従前から国立公園あるいは国定公園に関しまして土地の買い入れ制度を強化すべきであるという意見は強かったわけでございまして、予算上も、ごくわずかでございますが、現在土地の買い入れについて都道府県がこれを買い入れる際に二分の一の補助をするというような制度ができておるわけでございます。しかしながらこれはあるいは御案内かと存じますけれども、四十六年度予算で補助金にしまして五千万円、したがって事業費にいたしまして一億という非常にわずかなものでございますので、これは当然今後拡大をしていかなければいけない。これを十分にやるということが自然公園の保護という面においてきわめて重要な問題であるというふうに考えておるわけでございます。ただいま先生の御意見のように、この土地買い入れ制度についての法制化の問題でございますけれども、これは先ほども申し上げましたように、私ども自然保護法といったような考え方でいま自然環境の保護のために法制を強化していきたいというふうに考えておりますので、それの一環といたしまして今後検討してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  107. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 ただいま局長から答弁いただきましたが、二分の一の補助を県に出して県が民有地を買い入れる場合の補助にしているということでございますが、これは四十二年度以来進められて今回これが厚生省から環境庁に移管されたわけでありますけれども、いまおっしゃったように昨年度五千万円、事業費が一億とおっしゃいますが、昨年度の五千万円は瀬戸内海の国立公園などたしか四カ所であったかと思いますが、百九ヘクタールくらいの買い上げしかできなかった。こんなことではどうしようもない。実にほんの一部分でありまして、いまも、これの財源を拡大せねばならぬ、きわめて重大な問題であるから今後考えていきたいということでありますが、日本列島至るところ公害におかされているときに、せめて自然は、何百年も経てあのような森林が形成されてきている場所も数多くあるわけでございますので、一朝一夕にこれが形成されるわけでもありませんので、ひとつこれの財源確保に、予算時期でもありますからしっかり力を入れてもらいたいと思うのです。  そこで来年度予算を検討するにあたって、いまも発言ありましたようにきわめて少ない、今後当然拡大していくという御答弁がありましたが、環境庁としては来年度どのような考えで臨んでおられるか、いまやらなければ来年度おそいわけです。そういった面で決意のほどを承りたいのであります。
  108. 首尾木一

    首尾木説明員 ただいまも申し上げましたように、この予算の拡大につきましては私ども強く要求をしたい、かように考えておるわけでございますが、ただいまのところ予算要求の編成作業は私ども自然保護局内において行なっておる段階でございまして、いまだ環境庁全体としてその最終的な態度をきめておらない状況でございます。しかしながら私ども自然保護局といたしましてはこれは当然相当大きな要求をいたしたいということでございまして、今後具体的な買い上げの必要なところ等につきまして各県からいろいろ資料を集めまして、そういう可能なところの買い上げを要求をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  109. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 われわれも十分ひとつ期待し見守ってまいりたいと思います。予算編成作業が現在局内で行なわれている、十分承知しておりますが、どうかひとつ思い切った要求をして国民の期待にこたえていただくように環境庁としての真価を発揮していただきたい、かように思うわけです。  次に国立公園の問題でございますが、国立公園、国定公園をひとつ総点検してチェックをすべきじゃないかということを申し上げたいのであります。国立公園の面積というものが現在百九十六万三千七百四十一ヘクタールでありまして、全国土の約五・三一%というふうに私は記憶しております。国定公園のほうは九十一万五千三百七へクタールで全国土の二・四八%となっておると思いますが、この国立公園、国定公園の持つ意義というものは大きくなっておるわけでございます。  先ほどからいろいろ申し上げましたが、時間の関係でこまかいことを省略しますけれども、国立公園、国定公園の中で砂利の採取とかいろいろなことが行なわれたり不法乱掘が行なわれたりしておる事例がございまして、一昨年以来たびたび指摘してまいったところでありますが、環境庁発足にあたりまして、こういった国立、国定公園等の総点検、チェックを行なうべきではないか、かように思っているわけでありますが、これに対する御見解を承りたいのであります。
  110. 首尾木一

    首尾木説明員 私ども国立公園内の自然保護あるいはその利用の適正化といったようなことにつきましては、従前厚生省の国立公園部当時からできるだけのことをやってまいっておるつもりではございますけれども、しかし何ぶんにも、先生がおっしゃいましたように、国立公園二百万ヘクタールに対しまして、これを管理する事務所が全国で六カ所、いわゆるレンジャーと申します国立公園管理員が約五十名というような少数のものでございまして、十分な目が行き届いておらないということもまた事実であろうというふうに考えておるわけでございます。私どもは、このような国立公園管理員あるいは都道府県と十分連絡をいたしまして、従前から問題の個所については実態把握ということをつとめてまいりましたけれども、そのような状況で十分でないということも承知をいたしておりますので、来年度の予算編成にあたりましては、こういったような点も十分考えまして、今後この国立公園の問題について十分に目を届かしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それから、なお、国立公園内にいろいろ砂利採取でありますとか、その他いろいろの問題があるではないかというような御指摘でございますけれども、これらの問題につきましては、一応従前の国立公園指定当時の既着手工事でありますとか、あるいはその他地域的に申しますと、ある程度産業との共存を認める地域等におきましてのこれを認めておるというような状況もあるわけでございます。  それから、なお、国立公園も昭和の初めから指定をされておりまして、最近の指定にまで至っておるわけでございますけれども、だんだん年次を経るに従いまして、国立公園の地域というものを再編成をするといったようなことも考える必要のある地域が出てきているのではないかというふうに考えておりますので、それらの点も今後検討をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  111. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 次に、狩猟の問題について若干お尋ねして質問を終わることにいたしますが、昨年の十一月一日の狩猟の解禁日に事故が続発して強い国民の批判を受けたことは御承知のとおりであります。林野庁においては、直ちに対策を講じ、当時でございますが、関係省庁と協議して狩猟の適正化及び鳥獣保護のための対策というものを立てられて、政省令を改正するなどやっておられますが、この点について、本年度猟期を前に、あと二カ月余りとなってまいりましたが、再び昨年のような事故を繰り返さないためにも、ひとつこの狩猟行政という問題について、十分なる対策をいまから検討して臨んでいただきたい、かように思うわけです。ライフル銃の規制その他かすみ網の問題等、多数ありますが、国会の場で、ひとつこの狩猟の適正化及び鳥獣保護の対策についてどのような対策を立てておられるか、明確にしていただきたい。
  112. 首尾木一

    首尾木説明員 最近における鳥獣保護及び狩猟の適正化に対する要請の高まりに対応いたしまして、中央鳥獣審議会その他関係者の意見を十分に聞きまして、先般政省令の改正を行ないました。  その一点は、カモの一部その他を狩猟鳥獣の指定からはずすとともに、捕獲数の制限を強化をいたした点であります。  それからなお第二点といたしまして、小口径ライフル銃、四連発以上の散弾銃、とりもち、おし、弓矢の使用、いわゆる猟具の制限等をいたしたのでございます。また狩猟者講習会における実技訓練を義務づけるなど、一連の措置をいたしだのでございます。  今後、鳥獣の保護及び狩猟の適正化につきましては法律の運用面におきまして銃猟禁止地域の拡大でありますとかあるいは鳥獣保護地区の拡大でありますとか、そういうことをやってまいりたい、かように考えておるわけでございますが、さらに制度的な面につきましても、「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」の改正問題につきまして検討を進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  なお今日日米間におきまして、渡り鳥及び絶滅の危機に瀕する鳥類及びその環境の保護に関する条約について話し合いが進められておりまして、今後これの条約化というような問題につきまして早急に取り組んでまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  113. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 時間が参りましたので、もう一点だけ聞いて質問を終わります。  いろいろ対策についてはこまごまあるようでありますし、恒久対策について関係各省と協議をして検討しているということでありますが、どういうような恒久対策考えておられますか。特に猟区の問題等については大幅拡大ということは一応わかりますけれども、一部には、むしろ今度は狩猟の場所を設定して全般的に猟区を制限したらどうかという意見もあります。そういった点についても恒久対策としてお考えであるのか。若干そういった見解を承っておきたいと思うのであります。
  114. 首尾木一

    首尾木説明員 御案内のように非常に大きな問題でございまして、いわば「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」の抜本的な改正といったような問題であろうかと考えておるわけでございますが、私どもも、そのような点を含めまして今後制度的にどうするかということについて検討をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  115. 瀬野栄次郎

    瀬野委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  116. 藤田義光

  117. 川村継義

    川村委員 おそくまで御苦労さまでございます。三十分ほどいただきましたので、私は一言だけこの際お尋ねをしておきたいと思います。  それは農民の健康、生命にかかわる大きな問題だと思いましてお尋ねをいたします。当局のほうはいろいろ御存じでもありますけれども、私の熊本県は岡山、広島県等と並んで畳表の原料となるイグサ栽培の生産が高い地域であります。御承知のとおりに、現在イグサは全国で約一万一千二百ヘクタールぐらい栽培されておるといわれますが、私の熊本県はおおよそ五千五百ヘクタール栽培をしております。その大半は八代海に面する益城平野、八代平野で生産をしておるわけでありますが、現在、米の生産調整等の問題も大きくなりますし、畳表の国内生産は七六%程度の需要しか満たしていないということで、最近このイグサ栽培は急激に増加をしておる傾向であります。熊本県にいたしましても、十年前に比べるとおおよそ三倍程度の面積を広げて生産をしておる、こういうような状況でありますが、ただ、ここでたいへんおそるべき問題は、農民の中にイグサ生産によるところのけい肺病が増加をしておるということであります。昨年、熊本大学の公衆衛生学教室で、私の地域の三カ町村の農協組合員を、職員を合わせて三百二十六人抜き出して健康調査をいたしたのでありますが、おそるべき結果が出ております。いまここで、レントゲンの所見等この調査の結果はるる申し上げません。ただ、この中で、イグサ生産に従事しておる男女が、大体四名に一名の割でけい肺病におかされておるということであります。  これはまことにショッキングな問題でございまして、私が申し上げるまでもなく、いまのところけい肺病は不治の病気だといわれております。これの対策としては、これはいろいろと検討をされねばならぬ課題があると思いますが、たとえばイグサの生産に従事しておるところの諸君の健康管理をどうするか、あるいはイグサを生産するときに、御承知のとおりに、染め土という土を染料がわりにしてかわかして、その染料から舞い上がる粉じんがけい肺を引き起こしておるという事実等を考えると、これらの対策もまた考えねばならないと思います。ただ、それらのことはこれから検討されるといたしましても、いま起きておるけい肺病、あるいは熊大の教授が指摘しておりますように、今日のイグサの増産の趨勢の中においては、もっともっとたくさんのけい肺病を引き起こすのではないかということでありますから、農民の健康、生命を守るためには、何とかしてそこに一つの救いの手を打たねばならぬということになると思います。  そこで、私は、まず初めに労働省の基準局のほうにお伺いいたしますけれども、労働者災害補償保険法の対象になり得るものであるかどうかということでございます。労働者災害補償保険法の第四章には特別加入の制度が設けてあります。その第三十四条の十一の五号に「労働省令で定める種類の作業に従事する者」という規定がありますから、労働者災害補償保険法施行規則の第四十六条の十八を受けて、農業者もこの特別加入制度に参加できる道が開かれておるようであります。そこで、このイグサ栽培に従事する諸君の健康、生命を考えるときに、この第四十六条の十八の規定に従って労災保険の適用を受けられる道があると考えていいかどうか。それが一つの前提であります。  いま一つ、法律解釈についてお伺いしておきますが、第四十六条の十八には、「法第三十四条の十一第五号の労働省令で定める種類の作業は、次のとおりとする。一 農業における土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽培若しくは採取の作業であって、労働大臣が定める種類の機械を使用するもの」と、こう書いてあるのだが、その労働大臣が定める種類の作業とは一体どういう定めになっておるのか、その法律解釈上のお尋ねが一つ。  それから、先ほども申し上げましたように、このイグサ栽培というものは労災法の適用範囲に考えられるものかどうか。私は、考えてしかるべきものではないかと思います。  実は、熊本の労働基準監督署の見解を伺ったのでありますが、このイグサのけい肺については、特別加入の制度で救済できるのではないかという見解がございました。そこで、労働省の御見解をまずお聞きをいたしたいと思います。
  118. 倉橋義定

    ○倉橋説明員 お答え申し上げます。  まず第一点の、イグサ関係作業に従事する方々の労災保険の適用の問題でございますが、イグサ関係作業に従事する方々は、雇用関係にある者と、そうでない、いわゆる自営でやっている方々とに大別できるのではないかと思います。そういたしますと、先生御承知のように、労働者災害補償保険法につきましては、労働基準法に基づく使用者義務の災害補償を、労働者災害補償保険法によって実行を担保しようという趣旨に基づいて制定されました法の趣旨から申しまして、雇用労働者につきまして保険法の適用があることは申すまでもないわけでございます。二番目に類別されます自営業者ないしはその家族従業者でございますが、原則といたしまして、労災保険につきましては、いま申しましたように、労働者の業務災害を補償する目的をもってつくられたものでございまして、事業主なり自営業者または家族従業者などの方々の業務災害につきましては、その対象とすることがたてまえになっていないわけでございます。しかしながら、業務災害におきましても、いろいろ、業務の実態なり災害の発生状況等から見まして、労働基準法の適用労働者と同じようなまたはそれに準じた保護をするにふさわしいようなものに対しましては、特に法律に特別加入制度を設けましてその保護をはかっているわけでございます。したがいまして、イグサ関係の自営業者等の方々につきまして直ちにこの労働者災害補償保険法の適用があるということにはならないわけでございます。  第二番目の御質問でございますが、現在、特別加入制度一つといたしまして、御指摘のように法三十四条の十一の五号で「労働省令で定める種類の作業に従事する者」につきまして特別加入の道を開きました。この労働省令につきましては、労働者災害補償保険法施行規則四十六条の十八によりましてその内容を定めております。同条の第一号で「農業における土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽培若しくは採取の作業であって、労働大臣が定める種類の機械を使用するもの」と規定しているわけでございます。このような規則を設けました趣旨は、最近、農業経営が非常に大型機械を導入することによりまして、いわゆる農家の方々の災害、トラクターの転覆等によります事故が相当出ているわけでございます。こういう実態に着目いたしまして、特別加入の道を開いたわけでございます。ここにおきまして、労働大臣が定める種類の機械の中身でございますが、労働省告示、昭和四十年十月三十日告示第四十六号でございますが、その中身といたしまして動力耕うん機その他の農業用トラクター、そのほかの機械といたしまして、イ 動力溝掘機、ロ 自走式スピードスプレーヤーその他の自走式防除用機械、ハ 自走式動力刈取機、コンバインその他の自走式収穫用機械、ニ トラックその他の自走式運搬用機械を告示で指定しているわけでございます。  以上のことから現在特別加入の道が開かれているのは、いま申しましたような大型農業用機械を使っている農家の方々と御理解いただきたいと思うわけでございます。
  119. 川村継義

    川村委員 お話でございますが、労災保険法は幾たびか改正をされた。いまあなたのおことばにあったように、使用者責任義務というか、そういうものの考え方から社会保障制度的な考え方に移ってきていると私は理解をしております。そこで、いまお答えがあったところの農業者についても、労災保険法施行規則第四十六条の十八によって農業者も特別加入の道が開かれた。現在、私は、トラクターを使ったり耕うん機を使ったりするところの自営農家で団体を組んで加入をして効果をあげているということを聞いております。ところが、お話を聞いていると、どうもはっきりしなかったのですが、雇用労働者に対しては問題ないようだけれども、自営業者や家族労働者に対してはどうもぴったり当てはまらないものだというようなことでありますけれども、たしか北海道であるとか静岡であるとか、こういう大型の農機具等を使っている自営業者の人たちが団体を組んで、この特別加入に入っておるということを聞いております。そうなりますと、たとえ稲作であろうとイグサ栽培の農作であろうと、私は自営業者の団体を組織して加入するという道はあるのではないか。また当然それは考えてやるべきではないか、こう思うのですけれども、いま一度お考えを聞かしてください。
  120. 倉橋義定

    ○倉橋説明員 お答え申し上げます。  団体加入の件でございますが、この件につきましては、いわゆる労働者を雇っておられる中小企業の方々が特別に加入するということでございまして、先ほど御説明いたしました法三十四条の十一の五号ではなくて、むしろ二号に該当すると理解しております。と申しますのは、あくまでも中小企業の方々は労働者を雇っておられる。その労働者が労災保険に加入する場合に、事務組合方式をとりまして、中小企業の方々が組合をつくり、団体加入という形で参画をしていることが多いわけであります。このような加入方式をとっている場合につきましては、特に中小企業の自営主の方、この方々につきまして特別加入の道を開いているわけでございます。
  121. 川村継義

    川村委員 いま私が重ねてお聞きしましたのは、耕作地があってトラクターを使ったり耕うん機を使ったりしておる自営農家があったとする。静岡や北海道でそういう例があるということを聞いておる。そういう自営農家が団体を組んで労災保険に加入できる道が開かれておるということを聞いておるが、そういうことはありませんか、労災保険の今度の特別加入というのはそういうことを保障しておる道が開かれたのではないか、こうお聞きしたわけです、中小企業のその云々の問題でなくて。
  122. 倉橋義定

    ○倉橋説明員 お答えいたします。  団体加入につきましては、そのような、御指摘のような事例はございません。むしろここで五号でいうのは必ずしも団体で加入するということを要件としておりません関係上、事実上五号の作業に従事する者は集団的に入るということはあり得ると思いますが、法律構成といたしましては、必ずしも集団的に入るということは五号では求めておりませんで、むしろ二号で、具体的には法三十四条の十二にそのような中小企業事業主が集団で入るということを予定しておりますが、御指摘のありました農業関係団体が、自営業者のみが団体で入るということは制度的にはないわけでございます。
  123. 川村継義

    川村委員 そうすると、ある一つ農業組合、農業団体が傘下の農家をまとめてこの労災保険に加入するということは不可能ですか。その道はございませんか。
  124. 倉橋義定

    ○倉橋説明員 雇用労働者を含めまして集団的に入る道は開かれているわけでございます。
  125. 川村継義

    川村委員 イグサ栽培を考えると、季節的に働きに来るたくさんの雇用労働者もおります。また、家族労働者等もおります。もちろん、中には親類等から働きに来る者もおります。そういう諸君があるいは時には違った日射病におかされる場合もありましょう。あるいはいまの農作業を通じて、特にイグサ栽培のイグサ作業を通じてけい肺におかされるという危険が非常に高い。こういうときにお話のようなことであれば、私は農業組合等が一つ団体を組織してすべてのものを含めて、自営者も季節労働者も含めて労災に加入する、そういう道はあるのではないかと思うのですが、いかがでございましょう。
  126. 倉橋義定

    ○倉橋説明員 季節労務者である雇用者を含めまして集団加入する道は開かれております。御指摘のとおりでございます。
  127. 川村継義

    川村委員 それでは、これはもう少し検討せねばなりませんが、時間がございませんからどうもあれなんですけれども、どうぞ労働省のほうにおいてももう少し——こういうのは農家のことだからあまり労働省に関係がないような考え方でなくて、ひとつお考えおき願いたいと思います。もちろん、けい肺にかかった場合に労災保険に加入したほうが、加入者の負担がどうなるかとか、現在の国民健康保険でやったほうがどうなるかとか、いろいろ問題がありましょう。しかし、これは何といってもやはり災害保険に加入の道が開かれるということになれば、掛け金をかけるところの負担は別にして、私はいろいろの面でやはり農家の諸君の健康、生命を守るところの大きな道が開かれる、このように思っておりますから、これはぜひひとつ検討をお願いをしたいと思うわけであります。
  128. 倉橋義定

    ○倉橋説明員 ただいまの先生の御指摘につきましては労働省といたしましても、イグサ作業に従事する方々の業務の実態、災害の状況等を十分把握いたしまして、その災害の発生状況等を調査検討いたしまして今後の対策考えていきたいと思っております。
  129. 川村継義

    川村委員 熊本大学のほうでいろいろと健康診断をいたしましたデータもあるようであります。なお、あなたのほうの熊本の労働基準局もこの問題につきましては非常に頭を痛めてくれておる事実がございます。ひとつ十分御検討を願いたいと思います。またいずれ機会を見つけてお尋ねいたします。  そこでもう一つ労働省にお尋ねしておきますけれども、もしもそのような道が開かれたとして、けい肺となると、労働基準法を考えてもあるいはこの労災のことを考えてもどうしても職業病としての認定が必要になるのではないか、私はこう思うのですね。そこで、施行規則の第四十六条の二十七に「法第三十四条の十一各号に掲げる者に係る業務災害の認定は、労働省労働基準局長が定める基準によって行なう。」とありますが、この場合には「特別加入者に係る業務災害の認定」という項目であります。この農家のけい肺については、労働基準局長がこれを認めていこうというように決定されるならばいいのか。あるいは労働基準法施行規則の三十五条の三十七号に、労働基準審議会等の意見を聞いてきめるというような条項もあったと思うのです。そういうことで、イグサけい肺の職業病認定については労働基準審議会の意見によって決定されるものか、先ほど申し上げますように、「特別加入者に係る業務災害の認定」という項で労働省の労働基準局長が定める基準によればいいのか。この辺の解釈、いかがでしょう。
  130. 倉橋義定

    ○倉橋説明員 保険法の制度上の問題といたしましては労働基準局長が決定すればいいわけでございます。
  131. 川村継義

    川村委員 わかりました。それでは先ほどお願いしておきましたように、検討おきお願いいたします。なお私もさらにいろいろ実態を調べ、またお尋ねを申し上げる機会もあろうかと思いますから、労働省に以上のことをお尋ねいたします。  最後に農林省の蚕糸園芸局長のほうにお尋ねをいたしますが、局長にはこの問題について先月の半ば、農林省としていろいろとお考えいただける手だてをぜひお願いいたしたわけであります。その一つは、けい肺については、いまのようなどろ染めをしておるということになりますと、いまのイグサ栽培に伴うところのけい肺の恐怖からのがれるわけにいかないので、染める染料開発の問題があろう、あるいはそのほか、作業に伴うところのいろいろの施設、集じん機を取りつける等々の問題もありましょう。そういうような対策を立てていかなければおそるべきけい肺を防いでいけないのではないか。それがためには農林省のいろいろの対策、指導をお願いしたいことが一つ。  それから第二には、先ほど申し上げましたように、このイグサがもう一地域の特産物でないというような道をたどっておる農産物でありますから、このイグサのもっと根本的な研究をするために、国立の試験研究所あたりでイグサの生理生態からそういう基礎的研究をやっていただくところの方法はとれないかということなどつぶさに要望を申し上げて御相談をいたしたところであります。そこで局長のほうから、現在それらについてお考えいただいておる手だてをこの際ひとつお示しいただきたいと思います。
  132. 荒勝巖

    荒勝説明員 イグサにつきましては、従来から農林省といたしまして地域特産農業の推進事業といたしまして、イグサの乾燥、加工等の共同作業を行なうために集出荷施設あるいは共同加工場等の設置に助成を行なってきております。それで、昨年からの稲作転換対策事業が非常に進む過程で、熊本県を中心といたしまして稲作からイグサの栽培への転換が非常に大きく行なわれておりまして、こういうととも考えまして、昨年までは熊本県に対しましては地域特産農業の推進としまして補助金はほとんど出していなかったのでありますが、四十五年には一カ所を初めて地域特産の農業の対象といたしまして、ことし四十六年度におきましては稲作転換の関係もありまして、熊本県で非常に推進されておりますので六カ所を認めて、ただいま七カ所が地域特産農業の対象になっております。  それで、地域特産農業の対象といたしましてことし六カ所指定するに際しまして、イグサのけい肺病の対策ということを十分考慮に入れまして、新たに集じん機あるいは換気扇の設置をこの補助の条件といたしましてこういう環境の改善をはかってまいりたい、こういうふうに思っている次第でございます。  なお、このイグサにつきましては、ただいまの段階ではどろ染めということがやむを得ない一つの加工過程でございまして、それが大きなけい肺病の懸念があるというふうにいわれておりますので、われわれといたしましてはこのどろ染め方法にかわる新しい物資の開発研究について早急に着手いたしたいというふうに考えておりますが、さしあたり当面、そういう新しい開発研究ができますまでの間モノゲンとかラベリンとかいう添加薬剤を添加いたしますことによって染土の使用量を多少でも減少して、あるいは飛び散りを防ぐことによってけい肺病の予防に多少でも役立つことを期待しましてこういうことを進めてまいりたい、こういうふうに思っております。  なお、基本的にこういったイグサのどろ染め方法にかわるいわゆる人工着色といいますか、どういう方法がいいのか等につきましては新たに今後技術会議に研究の指導をお願いすることにいたしておりますので、技術会議の事務局長がお見えになっておりますので、基礎的な研究につきましては事務局長からお答え願いたいと思います。
  133. 加賀山國雄

    ○加賀山説明員 ただいま蚕糸園芸局長からいろいろお答えがございましたが、続きまして試験研究関係のことをちょっとお答えしたいと思います。  イグサの研究は御承知のようにいい品種を育成するという仕事から栽培、それから収穫の調整、加工等のいろいろの研究があるわけでございますが、ただいま各種の研究にかなり力をいたしておりまして、広島に指定試験を置きましてかなりの仕事をいたしておりますが、当面問題でございますのは収穫後の問題でございまして、これにつきましては必ずしも十分な研究が行なわれておるとは思いませんので、今後検討してまいりたいと思いますが、四十六年度では熊本の大学のほうに研究費を若干補助いたしまして、先ほど蚕糸園芸局長のほうでお答えになりました染土にかわる何かいい物資が出ないか、そういう研究を工学部のほうに依頼をいたしております。しかしいずれにせよ、われわれのほうもイグサ関係の研究者が少ないということもございますが、栽培面積も増加してございますので、この問題に正面から取り組んでまいりたい、かように考えております。
  134. 川村継義

    川村委員 時間が参りましてまことに申しわけありませんが、農林省のほうにもこのイグサ生産の問題にはいろいろとまだ基礎的な研究をしなければならぬ課題が課せられておるようであります。現地のこの試験等にあたっておる諸君も何としても国の力で、もう少し品種の開発であるとかあるいは染土の開発であるとかいろいろな問題についての研究をやはり国にお願いしたいという願いが強うございますから、そういう点のお力添えをぜひひとつ願いたいと思います。特に先ほど申し上げますように、農林省としてはやはり農村の諸君のけい肺という問題はこれは実におそろしいものでございますから、それらについてのいろいろの指導をお願いをしておきたいと思います。  委員長、またいずれ時間をいただきましていろいろとお尋ねをする機会もあろうかと思いますので、きょうは時間が過ぎてしまいましたが、以上で私の質問を終わっておきます。
  135. 藤田義光

    藤田委員長 小宮武喜君。
  136. 小宮武喜

    ○小宮委員 私は水産業振興立場から質問をいたします。と申しますのは、近々、長崎県の西彼杵郡の崎戸町に建設が予定されております三菱鉱業の石油精製基地計画について水産庁、通産省、運輸省、環境庁に対して質問したいと思います。  その三菱鉱業の事業計画によりますと、第一期工事として約四百三十億を投じて一日十五万バーレルの生産設備を昭和四十九年初めまでに完成し、引き続いて第二期工事として昭和五十年以降さらに約四百億を投じて十五万バーレルの生産設備を増強する計画であります。としますと、この第一期、第二期工事分を含めますと全敷地面積が五十一万坪、日産三十万バーレル、トン数にして四万七千八百トンの生産能力を持つわが国でも有数の石油精製基地が建設されることになっております。しかし御承知のように長崎県は全国でも有数の水産県であり、また水産業は長崎県の基幹産業でもあります。とりわけ崎戸町を含む西彼沖、北松地区、五島地区は長崎県でも水産資源の豊庫でありまして、この海域に出漁する漁船は年間一万二千隻、水揚げが二百五十億にも達しておるのであります。このため地元漁民をはじめ五万に及ぶ関係漁民の人たちはこの石油精製基地の設置によって甚大な被害をこうむり、また生活が破壊されるという立場からこの基地建設については絶対反対をいたしております。  そこでこの五万の漁民の立場に立ってまず質問したいのは、この三菱鉱業の崎戸石油精製事業について、通産省に現在申請があっておるのかどうか、この点をまず最初にお伺いしたいと思います。
  137. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 三菱鉱業から崎戸島におきまして石油精製を行ないたいという旨の非公式の意思表示は受けておりますけれども、これが今年の秋に行なわれます石油審議会に上程されるかどうか、そういうふうな公式な申請はまだ聞いておりません。
  138. 小宮武喜

    ○小宮委員 この事業計画によりますと、もうすでに土地造成が四十六年の十一月から四十七年の二月までに計画されておる。そこでおそらくこれは、私きのう長崎を立つ前に、ちょっと新聞を読みましたところ、今月中に申請があるのではないかということが新聞で報道されておりましたが、おそらくこれは来月の石油審議会を控えて、今月中には申請があるのではなかろうかというように考えます。だからこの問題については早々と申請すると、いろいろな問題が派生するので、ぎりぎりのところで通産省には申請をするのではなかろうかというように考えます。そういった意味で、申請がされることはもう明らかでありますから、そういった意味でいまからいろいろ質問しますが、石油審議会は九月の何日に開かれますか。
  139. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 現在のスケジュールでは九月二十三日の予定でございます。
  140. 小宮武喜

    ○小宮委員 通産省としては、申請があれば石油審議会に諮問して石油審議会の答申を尊重するという立場に立つだろうと思いますが、この問題については関係漁民の五万の方々が非常に反対をし、これで自分たちの生活はどうなるかということで現在非常にいろいろな反対運動も行なっておりますが、そういうような漁民の気持ち、その考え方に対して、通産省として諮問する場合あるいは石油審議会から答申がある場合、そういった漁民の反対の気持ちをどのような形で尊重するのか、その点通産省からお答え願いたい。
  141. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 従来とも石油精製所の立場と地元漁業との関係につきましては各地方自治体の意向を確認いたしまして、また事前に水産庁とも意見調整をはかりまして、地方自治体、水産庁との協議を経ました後に、石油審議会にその旨をはかりまして、しかる後に許可、こういうふうにいたしております。
  142. 小宮武喜

    ○小宮委員 地方自治体とそういった関係漁民の意向も尊重してということでございますが、この問題については地元の町長あるいは県知事も地元の漁民たちを説得にかかっておるわけでありますが、なかなかいまの状態では説得される、また納得するというような段階ではないと思うのです。また水産庁の立場としても、これはあとで質問しますけれども、やはりこういった非常に重大な問題に対して水産庁としても安易にオーケーというようなこともなかろうというように私は考えます。そうしますと、そういうような、おそらく石油審議会が九月二十三日に開催される、それまでに地元のそういった漁民と町、県、こういったものの意思がやはり一致しなければ、石油審議会にはかけないということなんですか。
  143. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 地元漁民との調整がつかない限り、これを強行して審議会にかけたり、あるいはその場で強行するというふうなことは考えておりません。従来ともそのとおりでございます。
  144. 小宮武喜

    ○小宮委員 いずれにしましても、それを聞いて安心をしましたけれども、地元漁民の方々の反対理由の中に、われわれが、もっともだ、確かにこの問題が解決しなければ、漁民の方々は納得しないだろうという非常に重大な問題が含まれておるわけです。したがって、その問題を質問しますけれども、その前に、まず、水産庁として、現在沿岸漁業は衰微の一途をたどっておるわけですけれども、さらに、こういった公害によって沿岸漁業が非常に破壊されるというこの問題について、水産庁としてはどのような所見を持っておられるのか、ひとつその考えをお聞きしたいと思います。
  145. 太田康二

    ○太田説明員 本件に限りませず、確かに沿岸漁業におきますところの漁場の環境が非常に悪化しているという点につきましては、先生御指摘のとおりでございます。そこで、われわれといたしましては、御承知のとおり、先々国会におきまして公害の諸立法が制定されましたので、これの厳正なる運用によりまして、少なくとも水質汚濁面につきましては、現状以上に悪化をさせない、むしろ、少しでも水質基準を厳重にいたしまして、水質の汚濁の度合いをよくするということに、まず第一に力を注ぐべきであろうというふうに考えます。  第二に考えるべきことは、そういうことをやりました結果、なお非常に老朽化しておるような漁場につきましては、漁場の復旧のための事業を実施する、これによりまして漁場の機能を回復させる、この事業を実施すべきであろうと思います。さらに、現在国が瀬戸内海を中心にいたしておりますところの栽培漁業センターがございます。ここらでいろいろ稚魚等の人工ふ化もできるようになりましたので、これらの技術を駆使いたしまして、そういった漁場に、瀬戸内海の場合でございますと、クルマエビ等がすでに実用の段階に達したわけでございますが、今後もこの栽培漁業の範囲をできる限り全国一円に広げることによりまして、栽培漁業を育成し、これによりましてふ化放流事業をさらに強化しまして、沿岸漁業におきますところの増殖、養殖事業に力を入れてまいりたい、こういったことで今後沿岸漁業の振興をはかってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  146. 小宮武喜

    ○小宮委員 水産庁として、私が聞きたいのは、こういった漁民の方々が非常に生活権を奪われるというこの問題について、先ほど通産省からもお話しがありましたように、石油審議会がかりに開かれても、その間に地元、県、漁民、こういうような人たちの意思統一がなされなければ審議会に諮問することをしない、また強行することをしないというようなことに対して、水産庁の意向を聞いてということも先ほど言われておりますので、そういった意味では、こういった問題が現地ですべて解決するまでは、水産庁としても、通産省に対しては、この問題については軽々に結論を出すべきではないという立場で今後やっていくということですね。
  147. 太田康二

    ○太田説明員 先ほど通産省の課長からもお答えがありましたが、私のほうにも実は先般この問題に関しまして陳情がございました。私、直ちに関係課長をして通産省に連絡いたさしたわけでございますが、水産庁の立場といたしましても、県を指導いたしておるわけでございますが、何と申しましても、地元との意向の調整が第一でございまして、これを基本として、まず地元の漁民の方々との話し合い、これの基本的な解決がつかない限り事は運ばないわけでございますので、そういったことを指導の基本理念といたしまして、実は県の指導に当たってまいるということにいたしておるわけでございまして、基本的な考え方につきましては、先ほど通産省の課長が申し上げたとおりの基本的な態度で対処いたしたい。従来とも、こういった問題につきましては、そういった指導をいたしておるわけでございますので、今回のこのケースにつきましても、そういったことで厳正に指導をしてまいりたい、かように考えております。
  148. 小宮武喜

    ○小宮委員 通産省、それから水産庁の基本的な考え方了解いたしました。  そこで、やはり具体的な質問をしてまいりますけれども、漁民が反対している理由一つとしては、やはり基地から排出される含油排水及び各種タンカー船から排出されるバラストビルジ等の油の被害による悪臭魚の発生を非常に心配しているのです。そのために漁獲高が減少したり価格が暴落することによって漁民の収益が非常に減って、そのために生活が苦しくなる、破壊されるということを心配しているのですが、通産省として、この工場排水対策についてどのような指導を従来やってきているのか、また、今後も従来のような指導を踏襲していくのか、その点についてまず考えをお聞きしたいと思います。あとからいろいろ意見がありますから……。
  149. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 工場排水その他の公害要因につきましては、各地域地域におきまして公害防止協定というものを結ぶことを指導しております。その中で、排水につきましては、公害防止協定に定められた基準値以下にするための施設が完全であるかどうかということをチェックしております。しかる後に、その工場が、その立地が適正であるというふうな判断をいたしました後に石油精製の許可をするというふうな態度で臨んでおります。
  150. 小宮武喜

    ○小宮委員 これは三菱鉱業の公害防止対策計画はあるのでしょうが、しかし、それはいま言われたこの工場排水対策を見ても、これだけでほんとうに完全にその対策がなされるかどうか、非常に疑問だと思う。したがって、漁民の方々はこういった説明も十分聞いております。聞いておる中で、これではなかなかそうはいかぬぞということで納得しかねているわけです。したがって、こういった企業から出されたこういうような公害対策だけではやはりまだまだ漁民は非常に不満でありますし、また非常に不安を持っておりますから、そういった意味で、通産省としての立場から、しかし、こういう計画について悪い点があれば直させるとか、もっともっとこういうような対策をするというような強力な指導をするとか、そういうふうなことも含めてやるということなんですね。
  151. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 三菱鉱業の崎戸計画につきましての排水による公害防止の具体的な方法というものを、私どもまだ説明を受けておらないのでございますけれども、従来、現在ございます技術の可能な範囲内で最善のあらゆる技術を駆使いたしまして、排水を浄化する、そうして各企業の計画がもし十分でないときには、もっともっといい方法、万全の方法を採用するようにということを勧告いたしまして徹底さしております。
  152. 小宮武喜

    ○小宮委員 いまの、現在のこの設備でほんとうに排水中の油分濃度を完全に分離するような新鋭の機械、設備がありますか。おそらくいまのままでは、たとえそういった油水分離を使っても油分濃度はやはり何PPMか残ると思うのですが、完全に処理できるというあれが現在の設備の中であるのですか。
  153. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 現在石油精製工場で使っております排水中の油分を少なくする方法につきましてはオイルセパレーター、凝集沈でん法あるいは活性汚泥法というふうなものを採用しております。これによりまして現在のところ異臭魚の発生ということは防止しております。
  154. 小宮武喜

    ○小宮委員 そういうような施設を使った場合には完全に分離できますか。
  155. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 完全という意味合いでございますけれども、現在のところ石油精製工場で各地区と結んでおります公害防止協定の一番シビアなものは一・〇PPM以下ということで協定を結んでおりますけれども、これらの方法によりまして一・〇PPMに油分を下げることは可能でございます。
  156. 小宮武喜

    ○小宮委員 これは、ここにも資料があるのですが、既存の石油精製工場で排出される含油排水の油分濃度が一PPM以下というのはないのです。大分の九州石油では五PPMから一〇PPM程度、鹿児島の日本石油では二PPMから四PPM程度となっているのです。それで崎戸でいま言われたような設備をやろう、こう言われておるのです。しかし現実には大分の九州石油でも鹿児島の日本石油でもいま言う一PPM以上の濃度がやはり出ておるわけです。現在までのいろいろな既存のものを見た場合に一PPM以下というものはないのですよ。そうしますと、いまのようなこの資料だけではほんとうに、環境庁の一PPM、水質基準の問題がありますけれども、大体一PPMという基準そのものも非常に甘いのではないかというように私は考えるのです。しかしいまの説明で、水質基準からいって一PPM以下ならよろしいということではあるけれども、ところが現実には出ておらぬわけです。みんな一PPM以上なんです。その点は調査されたことがありますか。
  157. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 各地区との公害防止協定の中で結ばれる排水中の油分の量につきましては、おのおのその工場の立地、潮流であるとかあるいは地形等によっていろいろ違うわけでございますが、先生ただいま御指摘の一・〇PPMというふうなもので地方とそういう公害協定を結んだところがあるかというふうな御質問につきましては、現に瀬戸内海の姫路の製油所であるとかあるいは坂出の製油所であるとか、そういうところは一・〇PPM以下にするということで協定を結んでおりますし、事実現在そういうことで稼働しておるものもございます。
  158. 小宮武喜

    ○小宮委員 協定は一PPM以下ということであっても、現実に一PPM以下になっておるかどうかということなんです、私の心配は。それはそれでいいです。  かりに一PPM以下にもし処理できても、その油分の蓄積という問題が考えられるわけですね。その場合にやはりそのために魚ににおいが付着しやせぬかという問題があるのです。魚の着臭の問題はまだはっきりしておりませんが、魚の種類によっては〇・〇一PPMでもにおいがつく魚があるのです。それから〇・三PPMで魚体に影響が出ている。〇・七PPMで離散し、二五PPMでは魚が死ぬという実験資料も出ておるわけですね。したがってこれについて水産庁としては、こういったかりに一PPM以下であっても魚種によってはそういった被害が出る、この一PPMという問題について、油分の濃度の問題についても大体どの程度まで油分を落とせばいいのか、これで資源が枯渇するわけですから、もろともっと水産庁としても研究してもらいたいと思います。水産庁の立場から見た場合には、どれくらいの油分濃度であれば大体魚がだいじょうぶだというふうに自信を持っておられるのか、水産庁の立場からひとつお聞かせ願いたい。
  159. 太田康二

    ○太田説明員 実はこの点につきましての水産庁の試験研究の成果というものはほとんどないわけでございまして、今後こういった面にも力を入れていかなければならないと考えております。従来科学技術庁でいろいろ研究をおやりになってまいったわけでありますが、その成果から見ますと、活性汚泥処理を条件といたしまして排水基準一PPM以下というふうにいたしますれば一応着臭魚は防止できるということがいわれておるわけでございまして、われわれも一応この見解に従っておるわけでございます。
  160. 小宮武喜

    ○小宮委員 環境庁にひとつお尋ねしますが、この水質基準の一PPM以下であればだいじょうぶという何かそういう根拠がありますか。それで将来一PPM以下ならば魚に対して影響がない、そういうような悪臭の付着なんかないというふうに考えておられるのか。私から見れば一PPMという基準は甘いのじゃないかというように考えられるのですが、ひとつ環境庁の所見を求めたいと思います。
  161. 山中正美

    ○山中説明員 お答え申し上げます。  いま水産庁長官がお答えになりましたように魚の着臭というのは非常にむずかしい問題でございまして、昭和三十八年からやっておりました科学技術庁の報告でも、一応石油精製工場の廃油等からでは〇・〇一PPMでアジに着臭するということになっております。ただ軽油分等につきましては三PPMくらいまで着臭しない、そういう意味で非常に複雑なものでございまして、現在しかるべき報告がないわけでございますけれども、いま長官がお答えになりましたように、活性汚泥処理をした場合には大体一PPMくらいまで着臭しないのじゃないかというのを工業技術院の微生物工業技術研究所ですか、ここで一応データが出ておりますので、私どもそれにのっとりまして大体海水でその十倍に希釈されるだろうというふうに考えまして、活性汚泥処理をいたしまして一PPMということを限度として一応着臭は出ないのではないか、こういうふうに判断しております。
  162. 小宮武喜

    ○小宮委員 この悪臭魚の発生は岡山県の水島、山口県の徳山、茨城県の鹿島、それに大分、鹿児島でもこの石油精製基地周辺では多数起きておるのです。そのため買い上げ価格は市価の三分の一程度になったりあるいは悪臭魚として返品されるなどで、非常に漁民は甚大な被害をこうむっておるわけです。この周辺の油分の濃度は大体どれくらいですか。一PPM以上だったわけですか。水産庁自身こういうような事実は承知しておるわけですか。それでこういうような事態が起きておるのですが、環境庁としてそれに対して大体何PPMくらいかということを調査したことがあるのですか。
  163. 山中正美

    ○山中説明員 お答え申し上げます。  瀬戸内海一円の製油所等につきましては、旧水質保全法で一応指定水域に指定しておりまして、水島地区につきましては平均一PPM、かつ活性汚泥処理またはこれと同等の処理をするようにという条件をつけております。ただ一応海水中につきましては現在ノルマルヘキサン抽出法で油分を測定するわけでありますけれども、この方法によりますと検出限界がちょうど一PPMになっております。ただ今度七月一日からJISが改正になりまして、それによりましてようやく〇・五PPMまでしかはかれない、一応こういうふうになっております。そういう意味で、海水中の、水島地区におきましても、ほとんど〇・五を若干こすぐらいのところが従来の規制の前の油分濃度でございます。規制後につきましては、一応はかっておりますけれども、岸壁の非常に近くは別といたしまして、少し沖合いに行きますと、ほとんど現在の分析法ではかかってこない段階、つまり着臭の限界の〇・〇一PPMとそれから検出限界の〇・五PPMのあるいは間にあるかもしれませんけれども、何ぶんこの規制が今年からちょうどかかるようになってきておりますので、この規制の実効のあがるのを待つ段階でございます。
  164. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは環境庁がきめた一PPM以下で着臭して、先ほど言ったようにもしその悪臭魚で返品されたり市価の三分の一とか五分の一になった場合に、その場合の補償はどうなりますか。これは環境庁がきめた一PPM以下で排出しておるんだから私のほうでは企業の責任はありませんということになりかねないので、その場合、これは水産庁としてもそういった漁民の生活を守っていくという立場から見れば、こういうような問題が起きる可能性がもう十分にあるわけですから、そういった場合にその一PPM以下でこういうふうに着臭した場合の補償の責任はどこにありますか。これは水産庁のほうはどういうふうに考えておられますか。
  165. 山中正美

    ○山中説明員 お答え申し上げます。  先ほどの一PPMの基準というのは旧水質保全法の基準でございまして、この六月二十四日に施行になりました水質汚濁防止法では、その地域の実情に応じましてさらに上のせできびしい基準を県条例できめることができるようになっております。そういたしますと、先ほど御紹介申し上げました旧水質保全法でできましたたとえば一PPMの基準を、実情に合わなければさらに上のせしてきびしい基準を県当局がつくることができる、こういうふうに一応なっております。  以上でございます。
  166. 小宮武喜

    ○小宮委員 その次の問題は、石油の原油を持ってきて、搬入時の漏洩事故の問題でございますが、崎戸の場合もシーバースによって原油の搬入をやろうということですが、このシーバースによる場合も非常に流出事故が発生しておりますね。たとえば徳山でも、シーバースの故障が四十五年の十二月二十八日に起きておるし、また陸上タンクの故障が四十六年の一月十二日にも発生して被害を受けております。また大分県の鶴崎地区でも当初シーバースを採用していたが、続けて三件の流出事故があったので現在では桟橋方式に変更した。しかしその桟橋方式でもやはり事故がたびたび発生をして非常に漁民は被害を受けておるというような状態が続いておるんですが、この崎戸の場合はシーバースを採用しようということなんですが、通産省として、この場合こういったシーバースで許可をする考えなのか。もっともっとそういったシーバースとか桟橋方式にしてもいろいろな問題が起きておるわけですから、十分やはり従来の既存の基地のそういった実情を調査をして、許可をする場合は考えてもらわぬと、やはりいまの場合シーバースと桟橋方式しかないのかもしれませんが、もっともっとほかにないものかどうか、そういうような技術的な検討も研究もしてもらわなければならぬと思いますが、このシーバース方式の場合いまのような事故が起きておるわけですが、通産省としてはシーバースか桟橋方式か、そのほかにあるのか、それらの点についてはどのように考えておりますか。
  167. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 崎戸製油所につきまして具体的にお答え申し上げるべきかどうかはちょっと疑問な点があるかと思いますが、一般的に申しまして、シーバースというものは、正常に操業されるなら一滴の油も流れないようにできておるわけでございます。しかしながら船舶の不注意であるとかあるいはコントロールの不備から、エラーによりまして瞬間的に少量の油が流れるということは、これは人の操作するものでございますので、絶無というわけにはいかないかと思います。したがいまして、そういう場合にいかに迅速に、害を及ぼさないようにこの油分を回収してしまうかという、いわゆる被害を最小限におさめるための防災の施設が問題となってくるわけでございます。そのためには、製油所における油の沈降剤あるいはオイルフェンス等の設備あるいはこれらのものを施設しますタグボートであるとかそのような施設が完全であるかどうかというふうなことを、設備を認可するときに当然チェックするわけでございます。
  168. 小宮武喜

    ○小宮委員 いま言われた結局オイルフェンスの問題ですが、千葉県とか大分県では、オイルフェンスを設けても、多数の油が一度に流入した場合は全く役に立たぬということで、大分の場合はあんまり使用されていないのです。そういったオイルフェンスもあまり役に立っておらぬということが非常に立証されているのですが、そういった場合にどういうような形にするのか。またその場合に中和剤、オイルフェンスで使う中和剤ですね。それで魚が死んだり、また沈でんした油のために異臭魚の発生などの要因になりはしないか等いろいろな問題が考えられるわけです。そのために水産庁として、このオイルフェンスを使った場合でもそういうような問題が起きる可能性がありますし、またオイルフェンス自身がすでに役に立たなくなっておるということが立証済みでもありますから、そういうような面で、これは水産庁がやっぱり人ごとではなくて、自分の五万の漁民の生活がかかっておる問題ですから、もっと真剣にやはり考えてもらって、このようなオイルフェンスだって私はあまり役には立たぬと思っておるのですが、水産庁どうなんですか。
  169. 太田康二

    ○太田説明員 昭和四十六年度の予算におきまして、いま御指摘のオイルフェンスの設置助成等の予算等も計上いたしたのでございますが、これによりましても十分でないというような御指摘もあるわけでございますけれども、従来そういった面での施策に欠ける点がございまして、公害の防止というような観点から、四十六年度からこれを取り上げたということでございます。  なお、これも部の県で実施されておるようでございますが、油水分離器等による物理的回収が可能な場合には、そのほうが一番、たとえば中和剤の投下によるよりも望ましいというような結果も出ておるようでございまして、現に兵庫県等におきましては、油水分離器を備えた四十トン程度の油の回収船を操業いたしまして試験中であるというふうに聞いております。これらの成果等も参考にいたしまして、いま御指摘の点につきましての対策をさらに強化する必要があるかと存じております。
  170. 小宮武喜

    ○小宮委員 それからタンカー船からのビルジバラストの排出による海上汚染が各製油基地付近で起きておるわけです。海上保安庁の報告によっても、これらの取り締まりの方法としては、拿捕しても罰金が二十万円という現状です。だから二十万円払っても廃油処理施設を利用するよりは安上がりだということで、結局もう廃油処理施設を使わずに海面に投棄する。そのために見つかっても、二十万円罰金を払えばそのほうが、廃油処理施設は一キロ当たり大体六十円ですから、そういった意味ではそのほうが安上がりだということで、なかなか違反事故が絶え間ないというようなことが報告になっておりますし、また千葉県を例にとっても、セスナ機を使って空から監視をしておって、そういうような流した場合に監視船に連絡をとって行って拿捕しても、実際は廃油事故約四百件のうちで約百件しか処理できないという現状なんです。したがって、このタンカーの廃油処理施設があっても、現在使用はなかなかしておらない。大分県の場合、これは四十五年度に入港したオイルタンカー船千五百隻のうち、処理施設で処理したものはわずかに五十七隻という資料が出ておるのです。したがってこれは運輸省に、これは港湾局ですか、廃油処理施設の利用状況と、なぜ利用されないかという原因。もちろんその中にはいまの使用料が一キロ当たり六十円だ、それで運賃の一割に当たるというようなことで使用されない面もあろうし、またこの船が晩に入ってすぐあす出航という問題もありましょうし、そういった面では、やはりたとえば海洋汚染防止法がこの前運輸委員会に出た場合は私も質問してまいりましたけれども、やはりこれは法の盲点になってくるのではないかということを考えて、今度の場合もそういったことで廃油処理施設が実際は利用されておらないということになると、これは法律のまた盲点になって何ら効果をあげることができないのではないかというふうに心配されますので、運輸省のほうに質問したいのは、廃油処理施設の利用状況とその利用されておらないという原因をどのように見ておられるのか、ひとつお聞きしたいと思います。
  171. 西村俊之

    ○西村説明員 お答えいたします。  廃油処理施設が整備されましてからもう五、六年たっておりますが、廃油処理場の利用実績が低いという御指摘でございます。一般的に、地方公共団体とそれから民間が整備しているものと両方ございまして、地方公共団体が整備しておりますところの利用率は、これは先生おっしゃるとおりに低いわけでございます。ただこれに比べまして、民間の製油業者が整備しております廃油処理場、これの処理実績を申し上げますと、最大処理能力の二〇%くらいは処理しておる。その中でも特に利用率の高いのは喜入でございまして最大処理能力の約七〇%処理しております。こういう事態でございまして、先ほど御指摘のございました千葉県——低いところを申し上げますと、千葉県について申し上げますと最大処理能力の約一五%程度を処理しております。ちょっと申しおくれましたけれども、いまの実績は四十六年の一月から三月までの実績でございます。この以前四十五年度におきましてはもっと低かったわけでございますけれども、だんだんに処理が上がってきております。  いま御指摘ございましたどうして利用されないかという点でございますが、私どもの感覚から申し上げますと、廃油処理場が現在盛んにほうぼうで整備されておりますけれども、どこに整備されたかという告示と、それから操業開始というのが別になっております。告示されました港が現在十五港ございますけれども、これについては船舶のほうも承知しておるかと思います。ただその港の全体の処理能力をまかなえない処理能力しか持っていない府県につきましては多少告示がおくれております。そういう点から、船舶のほうで知らないという点もあるかと思います。そういう点につきましてはできるだけ船舶のほうにPRしていきたいというふうに考えておるわけでございます。  そのほかもう一点でございますが、処理施設がございまして、それで処理する船舶は、油の種類から言いますとビルジバラスト水、それからタンククリーニング水というようにございます。タンククリーニング水につきましてはこれは修理に入る前、こういう時点でやりますので問題が少ないかと思いますけれども、バラスト水につきましては非常に天候の悪いときにしかバラスト水を積まない、こういう点がございます。天候がいいときにはバラスト水を積んでまいりませんので、このときには処理場の利用が非常に下がるわけであります。  ただいま実績を申し上げましたけれども、これも一月から三月でございまして、比較的海象気象条件の悪いときでございますので、処理実績が上がっていることと思うわけでございます。そういう点から処理実績といいますか処理の稼動実績が低いのではないかと考えておるわけでございます。
  172. 藤田義光

    藤田委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  173. 藤田義光

    藤田委員長 速記を始めて。
  174. 小宮武喜

    ○小宮委員 それではこれは、この事業計画には何も載ってないのですが、崎戸にはそういった漏油、廃油いろいろな問題が起きますし、タンカー船がおそらく一日に何十隻と入るわけですから、そういう場合には廃油処理施設をここには義務づけてつくらせるのですか、そのことを通産省にお聞きします。
  175. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 廃油処理施設の設備は、これは運輸省所管でございますが、私ども運輸省と協議いたしまして、運輸省が必要であるというふうに認定された場合には、石油精製設備のほうに廃油処理施設をつくるようにという指導をしております。
  176. 小宮武喜

    ○小宮委員 長崎県にはいま一カ所廃油処理場をつくっておるのですが、これは長崎港も佐世保港も含めて一つですから、当然いまの長崎、佐世保——佐世保港だけでも年間一万七千隻入るし、長崎港にも何万隻と入るのですから、そういった中でたった一つぐらいの処理施設では当然処理し切れないから、まあ途中で捨てるということにもなりますし、これは海上保安庁としても万全を尽くされ幾ら監視艇で回っても追っつきはせぬのですよ。だからそういう意味で、こういう廃油処理施設を、やはり石油精製基地がある場合は、運輸省のほうにもぜひ話をして——この返事は運輸省のほうで答弁してもらってもけっこうですが、ぜひふやしてもらいたい。  それから基地が建設されると、ここに入出港する船が多いのですね。たとえば原油を積んでくる、それを排出する、おそらくこの船が、大体三十万バーレルというのは徳山と同じような規模になる。そうすると徳山の場合で船舶の総数が年間四万七千三百八十三隻、そのうちタンカー船が二万一千六百九十四隻です。そうすると、崎戸の場合にこの基地ができた場合、これを大体八〇%と見ても三万三千九百六隻の船舶が予想されます。それにタンカー船だけを見ても一万七千三百五十五隻、一日の出入港船舶は四十八隻と予想されます。そうした場合に、これは私の計算ですから、だから通産省として、この第一期工事、第二期工事が終わって、三十万バーレルの石油精製基地ができた場合に、どれくらいの船舶が出入するのか、その点についてひとつ通産省の御見解をお聞きしたい。
  177. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 崎戸にもしも三十万バーレルという製油所ができたといたしますと、年間の原油処理量は約千五百万キロから千八百万キロリッターぐらいになると思います。したがいまして二十万トンタンカーで年間八十ないし九十隻——年間三百六十五日ですから四日に一度として八十ないし九十隻、タンカーにつきましては二十万トンで計算いたしますとこういうことになります。  それから製品の搬出のコースタル・タンカーでございますが、これにつきましては、油種によりまして船型多種多様でございますのでいかようにも計算のしかたがあるかと思いますが、平均的にこれをもし三千トンということにいたしますと、二十万トンの約七十分の一でございますので、先ほど申し上げました数字の約七十倍を少し下回るような隻数になるかと思います。
  178. 小宮武喜

    ○小宮委員 いろいろちょっと反論があるけれどもそれは申しません。しかしそのために——大きい船は二十万トンから二十五万トン、おそらく三十万トンの船が航行するわけですから、そこに全部入出港するわけですから、そうすると先ほど申し上げましたように五島とか西彼、北松などの、ここは主要漁場で水産資源の一番宝庫なんですね。そこに一万二千隻の漁船が操業しておる。その中に大型タンカーの二十万トン、三十万トンが入ってくる、そうした場合に、当然これはもう海難事故を防止するためにもやはり航路の設定を行なわねばいかぬと思うのですよ。そうしないとやはりもう漁船の小さいものは、無動力船から動力船から、もう五トン、十トンから、いろいろな船が一ぱい操業しておるのですから、そういった中に二十五万トンタンカーが入ってくると、そのうねりだけでも小さい船はひっくり返るというような問題も起きてきますから、そういった点から、遠からずこの航路の操業制限という問題が起きてきやしないか。それと同時に海難事故の問題がありはせぬかということをいろいろ心配しますので、その点についてひとつどう考えておるかということ、これは海上保安庁にお聞きします。  それから、もし石油基地が建設された場合に、今度亜硫酸ガスによる大気汚染の問題があります。これはいままで煙突を百メートルぐらいにして薄めておりますけれども、御承知のようにあそこは国定公園に近いところで非常に風光明媚なところで、そういった亜硫酸ガスの大気汚染の問題がありますから、これについての対策はどうするのかというような問題、これは通産省ですね。  それからさらに問題になるのは、この石油事業計画によりますと、電力の需要は、第一期で昭和四十九年度が一万三千キロワット、第二期工事完了の最終には三万キロワットになる。いまの電力では足りない。足らないから今度は必ず発電所建設の問題が出てきます。うわさによれば、同じ崎戸の中で発電所建設の問題がすでに出ておる。そこでまた今度は公害問題が心配されておるわけです。そういった意味では、この発電所建設がどうしても出てくると思うのですが、そういうような場合にこれはどうなるのかという心配がまたあるわけです。  それからもう一つは、せっかくここで石油精製基地をつくると、次は石油コンビナートの問題が出てきます。これは、あそこで石油基地をつくったら、ただ原油を排出して精製品を送るということでなくて、必ずあそこに石油コンビナートの問題が出てくる。それがまた今度は大気汚染、いろいろな公害の問題が出てくる。そういったことで非常に心配されておるのです。まあそれは通産省としても、まだ具体的な申請を受けておらぬから、それはわかりませんというように大体想像するわけですけれども、しかし必ず出てくる。また、もうこれは火力発電所の建設は必至です、三万、四万キロというようになると足らぬわけですから。そういうような問題もあるし、この問題については、漁民の方々は、ただ石油精製基地をつくるということだけではなくて、そのあとの二弾としてくる発電所の建設、石油コンビナートの問題、これを非常に心配しておるのです。だから、こういうような問題も含めてやはりこれはコンビナートができるということは私は大体うすうす聞いておる。しかしこの問題、抵抗があるから表面に出しておらぬというのが事実のようです。そういった問題もすでに出ておりますので、非常に問題だと思う。  さらに工業用水についても、あそこは島ですから、そういった意味では現在でも、あそこの大島炭鉱がつぶれた場合に、産炭地振興であそこで水を対岸から導入したわけですから、これについてさらに、一期の四十九年の一日一万五千トン、第二期工事計画は一日四万トンの水を使用することになっておる。この工業用水はどうするのか。またこの問題が出てくるのです。  そういったもろもろの問題が山積しております。したがって私は、また次の機会といってもなかなか、次は半時間になるとまた別の質問が控えてきますので、私はもう思ったことを全部質問しますから、まだまだ足りませんけれども、いま言われたコンビナートの建設の問題、それから発電所建設の問題、工業用水の問題、大気汚染の問題、こういうような点について、通産省なりそれぞれの所管の省からひとつ御答弁を願います。
  179. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 まさに先生御指摘のとおり、私どもまだ内容につきまして一度もチェックしたことはございませんので、あるいは答弁に正確を欠くかと思いますが、まず、もしも崎戸島に三十万バーレルという計画どおりの製油所ができたといたしますと、おそらく崎戸島では現在のところせいぜい四十万から五十万坪ぐらいしか用地がとれないのじゃないかと思います。その意味におきましては、三十万バーレルの製油所に対しても少し手狭でございます。いわんや同じ島の中に他のコンビナートを併設するということは、技術的に見て不可能かと思います。  また、御指摘のように工業用水の問題がございます。したがって何か別の方法工業用水が得られない限り、あの島だけで工業用水を確保するということは非常にむずかしいかと思います。  電気のことでございますが、御指摘の一万五千キロあるいは三万五千キロと申しますのは、いわゆる電力会社による電気じゃなくて、自家発電の、いわゆる自分の工場内で消費するためのごく小規模の発電機のことかと思いますが、これに用います油、これは大気汚染に関係するわけでございますが、自家発電の燃料に限らず、石油精製工場自身で他の目的に使います燃料もございます。それらも含めまして、現地で、崎戸地区における大気汚染防止をどうするかということの総合的な判断から、使用すべき燃料はおのおのの地区で結ばれる公害協定の上で明らかにされるわけでございまして、もし公害協定の中で、これこれしかじかの燃料を使えということが設定される場合には、企業としては当然その協定の範囲におさまるような燃料を使わなくてはならないわけでございます。
  180. 小宮武喜

    ○小宮委員 最後にひとつ確認します。  いま大型タンカーがあそこを航行する場合に、うねりだけでもたいしたものですな。そうすると、五トンや八トンや十トンの船は、そのうねりだけでひっくり返るわけです。そういうようなことも考えられるので、これは海上保安庁ですか、海難事故の問題が非常に心配になるのですが、その問題についての見解をひとつ求めたいと思います。
  181. 上原啓

    ○上原説明員 お答え申し上げます。  実は海上保安庁といたしましては、崎戸港の問題につきましては具体的な事業計画一切、まだてまえども知っておりませんので、したがいまして先生のお話が具体的なものであるならばという前提でお答えさせていただきたいと思うのであります。  先生御指摘のとおり、お話しのとおりの大規模な基地ができるといたしますれば、現在の小型の内航船ないしは漁船程度しか出入港しておらない崎戸港の様相というものは一変するかと思います。船舶航行の安全の問題、先ほどから御議論になっております海洋汚染の問題、その他もろもろの問題がございますので、保安庁といたしましてはさらに調査を進めまして、具体的なこの問題についての対策というものを詰めてまいりたいと考えておりますが、一般論として申し上げますれば、このような大施設ができました場合、現在の崎戸港の区域といたしましては非常に狭いのではあるまいか、港の区域を相当大幅に広げる必要がある。これにつきましては関係方面とよく御相談した上でないとできないことでございますが、港の区域を大幅に広げる必要がある。  それから船舶の航行の安全ないしは荷役中の事故防止のためには相当緻密な規制をかける必要がございますので、これにつきましては特定港に指定するというふうな制度上の問題も考えなければならぬかと思っておるわけでございます。ここらあたりは、計画の内容が判明いたし次第、関係方面と御連絡の上ですみやかに適切なる対策を確立してこれを実施に移したい、このように考えております。  なお先生の御意見、ちょっとなんでございますが、一言申し上げておきますと、海上保安庁の行き方——海上保安庁と申しますよりも、現在の海上交通関係制度のあり方といたしまして、港内それから狭水道が現在問題になっておりますけれども、それ以上の外洋に至るまで航路を設けてこれに航行規制をするというふうな制度には現在なっておりませんで、これは国際的な一般ルールであるところの海上衝突予防法によって解決するというたてまえになっております。したがいまして、先ほど申し上げましたような航行安全のためには、どの程度まで港域を広げたらいいのかということに帰一するかと思います。その点をお含み願いたいと思います。  また、船の運航する波によって非常に被害が出るのではないかという御心配のようでございますが、そういう心配は一般的には確かに非常にあるのでございますが、実はふたをあけてみますと非常に少のうございまして、海上保安庁に報告されております例でも、年間に十件とは達しておりません。そういう状況でございますので、その点誤解のないように御了承願いたいと思います。なお、最近の大型タンカーは波の起こるのを防ぎますために、造船上非常にくふうをこらしておる、そのように聞いております。航波の問題につきましてはさほど御心配になることはないのではあるまいかと、たいへんかってな言い方でございますが、そのように考えております。
  182. 小宮武喜

    ○小宮委員 最後にちょっと確認だけ、通産省……。  それで、先ほど地元と漁民、それから地元、県、そういったものの意見が一致しなければ石油審議会に答申はしない、答申しても強行はしない。結局言いかえれば、意見が一致しなければ石油審議会にも諮問をしないというふうに理解していいですか。
  183. 斎藤顕

    ○斎藤説明員 およそそのとおり御理解いただいてけっこうでございます。
  184. 小宮武喜

    ○小宮委員 それでは質問を終わります。どうもありがとうございました。
  185. 藤田義光

    藤田委員長 津川武一君。
  186. 津川武一

    ○津川委員 水産庁にお尋ねします。  大分県の臼杵市の漁民が県を相手どって起こした漁業権確認と、公有水面埋め立て免許取り消しの訴訟に対して、去る七月二十日大分地方裁判所が漁民側の全面勝訴の判決を下したことは御存じのとおりでございます。   〔藤田委員長退席、熊谷委員長代理着席〕 この問題は大阪セメント株式会社の臼杵市進出に対する地域住民の公害予防運動として市長のリコールを成立させ、全国の注目を浴びております。公害防止の住民の戦いとして今後に与える影響も大きいものがありますが、私はこの裁判での争点となった漁業権の問題について質問してみたいと思います。  大分合同新聞では「守られた漁民の権利、安直な権力に歯止め」朝日新聞は「私権保護を打出す、自治体の独善にクサビ」と、いずれも漁民の生活、生存のための漁業権の保護を尊重した判決を支持すると同時に、行政当局や独占企業の力で押し切ろうとするやり方に対して批判しております。漁業権放棄無効の訴訟がなされておるにもかかわらず、昨年の十二月二十五日に県は埋め立て免許を与えたのですが、水産庁がその訴訟中に安易に埋め立て免許承認を与えたのはなぜでございますか。判決が出たいまどう考えていますか。お答えいただきます。
  187. 太田康二

    ○太田説明員 御承知のとおり県が公有水面の埋め立ての免許をいたすわけでございますが、漁港区域にかかる場合には農林大臣の事前の認可を受けることになっております。その認可を昨年のたしか十二月二十一日にいたしております。これは私どものたてまえといたしまして、手続的に全く不備な点はないという認識のもとに認可をいたしたわけでございまして、それに基づきまして大分県知事が十二月二十四日に埋め立ての免許をいたしたのでございます。訴訟が起こりまして、訴訟についてもいろいろ解釈の問題もあるわけでございますが、われわれが手続的に別に問題はないという認定をいたしましたのは、実は今回の判決とからむ問題でございまして、漁業法の第八条の問題とそれから漁業権の放棄を規定いたしておりますところの水産業協同組合法の解釈の問題にかかるわけでございまして、実はこの点につきましてすでに高松の地方裁判所の一審判決で、われわれ政府側の見解を支持している判決がございます。と申しますのは、一応漁業協同組合法の規定に基づきまして、三分の二の組合員の議決がございます場合には、漁業権の一部放棄が可能であるということでございます。実は今回の臼杵の場合も、地元の漁業協同組合で総会を開きまして、そういった手続はとっておるわけでございますが、今回の判決におきましては、それではなお漁民の保護に不足がある。特に共同漁業権の場合に漁業権の行使をするのは、具体的には漁業協同組合ではなしに個々の漁民である。その漁民の権利を保護するために漁業法の第八条で漁業権の行使規則の変更手続の規定がございます。総会を開く前にこの変更手続をとるべきであるという判決をいたしているのでございまして、この点につきましては、実は先ほど申し上げましたように高松の一審判決の例もございまして、われわれはそういった変更手続は要らないと、こういうふうに解釈いたしておりますので、その点に食い違いがございますが、われわれはそういったことで手続的に何ら瑕疵がないということで、先ほど申し上げたような経過で認可をいたした、こういうことでございます。
  188. 津川武一

    ○津川委員 高松の裁判所の判決の後に今度の大分の判決が出たわけですが、判決を見て何と考えておりますか。
  189. 太田康二

    ○太田説明員 同じ一審同士の判決でございますので、まだ確定いたしたわけではございません。われわれは現在におきましても応われわれの解釈が正しいというふうに考えておりますので、この点につきましてはまだ争いが確定いたしたというふうには考えていないわけでございます。
  190. 津川武一

    ○津川委員 それでは少しくどいようだけれども、判決の内容に触れなければならなくなりました。  今度の判決で、漁業協同組合は漁業権を掌握するにすぎず、実際に漁業を行ない、それにより利益を受ける権利ないし地位は、漁業権行使規則により定められた各組合員にある。したがって漁業権行使規則の変更を水協法五十条の規定にのみゆだねては、多数の組合員の意思により具体的な漁業を営む権利を有していた者の意思に反してその権利が奪われる危険がある。この危険防止のため、法律は漁業権行使規則の変更には漁業法第八条四項の行政庁の認可のみならず、同条三項の規定、共同漁業権の内容のうち、当該区域で漁業を営む権利を有する組合員の三分の二以上の書面による同意を総会前に必要とする、こういう規定により、現に漁業を営んでいる組合員の利益を擁護していると解釈される、こういうのが判決の要旨であり、さらに判決は、漁業権の放棄の場合は、一度権利を失った者がそれを回復することが困難であり、権利の喪失は永久的確定的である。したがって現に漁業を営んでいる者の保護の必要性はより以上に大きなものであり、漁業法第八条三項の適用は必然である、これが判決の要旨でございます。  そこで長官、この立場に立つのがあなたたち水産庁のお仕事ではありませんか。これに対してあなたたちは漁業協同組合の合併、大型化を進めて、運営を民主化するのを妨げ、個々の組合員の権利や意思が無視されることが多く、今度の問題も臼杵漁協の非民主的なボスの支配と国や自治体が癒着して、独占資本と結びつき、漁民の生活権を奪い、公害に不安な地域住民の声を無視したことから起きると思うのでございます。そこで水産庁の本来の任務は何なのか、これが一つ。  第二番目には、この判決に対して大分県の代理人の弁護士はこう言っているのです。従来全国で行なわれていた漁業権放棄の手続は誤りであって、八条三項をやらないためにたくさんとられたのだ、こう指摘しております。臼杵の漁業協同組合長も、漁業法第八条の手続の必要なことは県から指導されていない、こう言っているのです。あなたたちはこの八条、これをやらないでいままでやってきたのではないか、このことが二つ。  三つ目には、あなたたちは、今度は県が控訴した、これを支持するのかどうかということ。いまはしなくもあなたは、まだ判決がきまってないのだから従来どおりの考え方でいくのだ、こういうことなんですが、八条三項をきちんとさせることが水産庁の行政の核心だと思うのですが、この点の意見、いかがでございますか。こういう形で問題を見たならば、セメント会社は何と言っているか、県や市の態度を見て次の行動をきめる。県や市はどんなことを言っているか、会社の態度を見てきめる、明らかに会社と県、市が癒着している。これが今度の事件。だからこそあなたたちの正しい指導が必要になってきているのです。この点控訴を取りやめるようにあなたたちが指導すべきだと思うが、これはどうか。  それから今度はさらに経済審議会の産業立地研究委員会などでは、臨海工業用地、都市再開発用地の造成目標として今後十九万ヘクタール、これをやろうとしている。政府はこれに対して今度の判決を無視して、漁民から漁業権を奪うのに手をかすのか、八条の適用をきちんとさせて漁民を守るのか、今後の方針もあわせて聞かしていただきます。
  191. 太田康二

    ○太田説明員 いずれにいたしましても、それぞれの漁民の方の納得を得なければならぬということは当然であろうかと思いますが、従来の法解釈といたしまして、総会の議決、しかも特別議決の場合には、総会の特別議決の性格上、これは相当権威のあるものであり、尊重すべきものであるということも事実でございます。したがいまして、従来ともかような場合には、実は漁業協同組合の特別議決をもって漁業権の一部の消滅は可能であるということの解釈をわれわれはとってきたのでございます。現にそういった解釈につきまして支持した一審の判決もあるわけでございまして、今回の大分県の場合には、たまたまいま先生が御指摘のような、漁業法の八条の手続を事前にとるべきである、これは一つの解釈としてそういった解釈もあり得ようかと思いますが、われわれは従来はそういった解釈はとっていなかった、そこに争いがあるわけでございます。  いずれにいたしましても、私どもは訴訟当事者ではございませんわけでございまして、県といたしましては、もちろんその法解釈の点につきまして、われわれの指導もそうであったこともありましょうから、控訴をいたしたようでございまして、いましばらく事態の推移を見守りたい、かように考えておる次第でございます。
  192. 津川武一

    ○津川委員 水産庁が認可を与えるときに、法八条の手続をとったかどうか確認しておったかどうか、これが一つ。  今度も、これから十九万ヘクタールなんという、たいへんな地域が出てきますが、そのとき、法八条三項の規定をしなくても、埋め立てなどということ、漁業権放棄を認可するつもりかどうか、この二つを明らかにしてもらいたい。
  193. 太田康二

    ○太田説明員 この大分県の臼杵の場合には、御承知のとおり、まだ係争中ではあったわけでございますが、一応従来の一審判決によりますれば、八条の手続は要らないということになっておりましたので、私、当時、まだ水産庁にはおらなかったわけですが、おそらく水産庁といたしまして、八条三項ないし四項の変更手続については確認をいたしておらない。おそらく水産業協同組合法の五十条の規定に基づきますところの総会の議決ということが適法に行なわれたという前提で認可をいたしたというふうに考えております。  なお、今後の問題につきましては、われわれの解釈が、現段階におきましては、われわれとしては正しかろうというふうに考えておりますので、いままでどおりのことで進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  194. 津川武一

    ○津川委員 そうすると、関係する利害関係者三分の二の書面での承諾なくても、五十条でこれからやり抜く、こういうつもりでございますか。水産庁の行政の指導の基本が、五十条と八条を守り抜くことではありませんか。その点が言い切っていいかどうか、はっきり態度をさせていただきます。
  195. 太田康二

    ○太田説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、いずれにいたしましても、こういった紛争が起こりますのは、地元の漁民との間の話し合いが十分行なわれていないという点にあることは、御指摘のとおりだろうと思います。しかしながら、一応従来の考え方といたしまして、協同組合法の規定に従いまして、総会の特別議決によって漁業権の一部放棄というのは可能であるというふうにわれわれとしては解しておるのでございます。  そうはいいましても、事前の手続といたしまして、十分関係の漁民の方の納得を得るというようなことは、事実上必要であろうかと思いますので、そういった面の指導には遺憾なきを期してまいりたい、かように考えております。
  196. 津川武一

    ○津川委員 関係する漁民の意思を尊重するという立場をとった、よろしい。  そこで、その条件として、八条の三項、四項を条件とすることが必要と思いますか。その腹が、方針があるかどうか。
  197. 太田康二

    ○太田説明員 その点につきましては、しばしば申し上げておりますように、われわれの従来の解釈は、その手続は必要でないということに考えておりましたので、一応現段階におきましては、従来どおりの方針でまいりたい、かように考えております。
  198. 津川武一

    ○津川委員 水産庁長官が法八条を守るつもりでありますかどうか、お答えいただきます。
  199. 太田康二

    ○太田説明員 八条四項それ自体が実際に働く場合には、当然八条四項の規定を尊重すべきことは言うまでもございません。ただ、いま申し上げましたように、漁業権の放棄の場合には、別途水産業協同組合法でその手続がございますから、その手続にのっとって行なわれました手続につきましては、これを尊重するということを申し上げておるわけでございます。
  200. 津川武一

    ○津川委員 あとでまた実際問題でやります。  そこで国鉄と農林省の方にお尋ねいたします。  私は、さきの農林水産委員会で、国鉄の駅の無人化、貨物取り扱い廃止駅がたくさんふえておるので、そのために農産物の輸送に非常に大きな障害を来たしていることを指摘して、赤城農林大臣質問したところ、大臣は、国鉄の問題はよくわからないので調べて、支障があるようなら国鉄と交渉する、とこう答えておりますが、農林省、その後どうでしたか。   〔熊谷委員長代理退席、委員長着席〕
  201. 下浦静平

    ○下浦説明員 国鉄の貨物駅の集約化の問題につきましては、国鉄合理化の……
  202. 津川武一

    ○津川委員 いやいや、どうしたかということを聞いている。大臣が、調べて、障害があるなら善処すると言っている。調べたことがあるのか、障害があるのか。
  203. 下浦静平

    ○下浦説明員 それは一般論としてでございますか。
  204. 津川武一

    ○津川委員 いや、具体的に、農林省は調べたのか、そのことを聞いているのです。
  205. 下浦静平

    ○下浦説明員 現地につきましては、調査をいたしております。
  206. 津川武一

    ○津川委員 障害がありましたかどうか。
  207. 下浦静平

    ○下浦説明員 青森県五能線藤崎駅の問題につきましては、この駅から五・八キロメートルほど離れました板柳駅を、国鉄利用債の利用等によりまして、リンゴの集散地として施設整備をすることを条件に集約すべく、地元と交渉中の由でございます。  地元の、主としてリンゴの出荷と存じますけれども、これに支障があるかどうかにつきましては、これは地元の判断のいかんによろうかと存じております。
  208. 津川武一

    ○津川委員 農林省は別にやります。  そこで、国鉄にお伺いしますが、こういうふうに無人化、貨物取り扱い廃止駅をたくさんふやしてきて、そのために、ミカンの産地愛媛県では、国鉄の了解と指導によって、たとえば伊予北条駅ですが、駅の隣に選果場をつくり、選果、荷づくりしたミカンをベルトコンベアで輸送しておりましたが、これが今度貨物取り扱い廃止になってたいへん困るのでございます。  もう一つ、先ほどの青森県の五能線、ここはふぶき地帯であり、小中学生たちが近くの駅からふぶきに帽子や雨具をとられながら、駅に行って汽車通学しています。一番ひどいのは、たとえば岩崎という村で、大間越、黒崎、松神、沢辺という四つの駅から小中学生が乗って岩崎に通うのですが、これらの四つの駅が無人化される。子供たちは火のない駅で待たされる。ふぶきの中なので列車がおくれる。そのおくれも知らないで寒さにふるえる。また、いま農林省で話した藤崎、森田、鶴田は貨物取り扱い廃止になる。板柳に持っていけと言う。持っていっても、板柳は入れところはございません。リンゴはダンボールです。雨で、みぞれで、雪でよごれて凍りついてしまいます。こういう形での損害が数億円にのぼるという状態です。この状態を農林省は調べたのかどうか。  そこで国鉄はこういう農産物の輸送に対して、漏れ承るところによると、あまり扱いたくない、できるならばやめたい、一回五百トンぐらいのものを扱いたい、こういうふうなことをいっていますが、この第一次産業の産物に対する国鉄の方針を伺わしていただきたい。これが一つ。  これらの駅の無人化と貨物取り扱い廃止はぜひやめるべきだと思う。地域住民が全部反対している。先生方も反対している。PTAも反対している。農民も反対している。地方自治体も反対している。この人たちとじっくり話してみて、国鉄の本来の姿に立ち返らせる意図があるかどうか。その必要があると思いますが、お答え願います。
  209. 泉幸夫

    ○泉説明員 貨物局長の泉でございます。お答えをいたします。  国鉄の現在の貨物駅は全国に二千五百駅ございます。全部で二万キロでございますので、八キロおきに一つ駅があるという状況でございます。これはかつて道路のないころ、牛馬車時代でありましたころには、まことに地域住民にも十分利用いただける駅体制であったわけでございますが、その後道路の整備によりまして、あるいはトラックの普及、大型化によりまして、やはり国鉄は大量の物資を運ぶ、あるいは中長距離の貨物を運ぶというようなことに徹することによりまして、自動車とのいい意味の結合輸送を行ないまして、全体としていいサービスを提供するということで、牛馬車時代の貨物駅は重点的に拠点として整備されます駅に集約をして、その間は自動車との共同輸送をやる、そういうことで、国民の皆さんにも大きな赤字という形での御迷惑をおかけしないように、また御利用いただきます荷主さまにもいままでよりもよりいいサービスを提供するということに国鉄は徹すべきではないかというのが運輸省にございます総合交通体系の考え方でもございますし、数年前に私どもの国鉄財政再建会議におきましてもそういった結論が出てまいっておりますので、私どもも地元の皆さん方の御理解と御協力をいただきながら、現在四キロおきにございます貨物駅を逐次集約さしていただきまして、いいサービスを提供するという形に逐次全国的に進めておるようなわけでございます。地元の御理解を十分得ながら円滑にこれを進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  210. 津川武一

    ○津川委員 この岩崎というところに四つの駅から子供さんが通っている。ふぶきのときはほんとうに服をとられてしまう。駅に行ってあったまる。駅員が親切なんです。あっためてくれるのです。そして行っているのです。汽車がおくれたならば、石炭をたいてあっためて出してくれる。これがなくなる。バスがない。この事実を知っているかどうか。もう一回調べて、学校の先生方、父兄と対策を話すかどうか。これが一つ。  もう一つ、森田、鶴田、藤崎を板柳に持っていくというけれども、現場を見ているかどうか。リンゴというのは一ぺんに持ち込まれる期間がある。いまは駅があいているが、置くところがないんですよ。市場のあるところに注文があればいつでも持っていかなければならぬ。それに最近はダンボールです。雪が、みぞれが入ってくる。リンゴが凍る。こういうことなんですが、知っているかどうか。この二つの事実を地域住民とじっくり相談して納得がいかなければやらないという気持ちがあるかどうか、二つ答えていただきたい。
  211. 泉幸夫

    ○泉説明員 無人駅の問題につきましては、私貨物局長でございますので、ここで責任ある御回答を申し上げるわけにいきません。帰りましてさっそく調べましてお答え申し上げたいと思います。  板柳貨物駅の集約の問題でございますが、板柳には地元の御協力を得まして、四千万円の利用債で積みおろし場の拡大あるいは舗装、それから上屋の建設ということをこの十一月一ぱいに完成をいたしまして、いま先生の御指摘のございましたようなことで荷主さんに迷惑をかけないようにいたしてまいりたい、かように考えておるわけであります。  時期でございますけれども、五能線全体で現在貨物駅が二十二ございます。これを八つにする、十四駅を廃止するということで地元と交渉をいたしておるわけでございます。
  212. 津川武一

    ○津川委員 十八ではありませんか。
  213. 泉幸夫

    ○泉説明員 二十二駅を十四駅集約をいたしまして八つにする、こういうことでございますが、板柳関連につきましては、いま申しました貨物駅の整備ということが前提になりますので、これが竣工を見ます十二月一日を目途に地元と交渉いたしております。その他の駅につきましては、たいした設備上の問題はございませんので、十月からやるということで地元と十分折衝をいたしており、現地管理局長が責任をもって対処いたしておるようなわけでございます。
  214. 津川武一

    ○津川委員 最後に一つ、貨物局長、板柳というところを御存じか御存じないかわからぬけれども、ふぶきで非常にぶうぶう来るのですよ。上屋に持っていっても、ダンボールに雪が入る。それが貨車に積まれて市場に持ってくると、雪が解けて、ダンボールがぬれる。あなたは上屋をやって事を済ませるというつもりかもしれぬけれども、この点局長としてもう一度現地を実際に見て、ことしの冬を見てから、皆さんが納得するかどうか聞いてみるだけの度量があるかどうか、最後にこの一点だけ明らかにしていただきます。
  215. 泉幸夫

    ○泉説明員 私も現地は十分存じておるわけでございませんが、現地の管理局長の報告によりますと、そういった点に御迷惑をかけないという十分の自信を持っておるということでございます。  なお、板柳駅に集中することによりまして、在来大阪の市場では四日目売りでございましたのが三日目の市場に間に合うということで、その面での非常なサービスアップと申しますか、スピードアップができるわけでございますので、むしろリンゴ業界の方からは非常に喜ばれておるというふうに私ども承っておるようなわけでございます。
  216. 津川武一

    ○津川委員 スピードアップと言うけれども局長冗談言っちゃ困るよ。トラックで持っていって、いろいろなことをして交渉をしても、駅が込むとなかなか受け付けてくれない。それでどれほど時間がおくれるかわからないから、私はもう一度検討して、その検討の上で事をはかるように、少なくともことしの冬だけは検討してからやるべきだと思うのですが、どうでございますか。
  217. 泉幸夫

    ○泉説明員 いま先生の御指摘のございました点につきましては、現地とも十分相談をいたしまして、迷惑のかからないような形でやらしていただきたい、かように考えております。
  218. 藤田義光

    藤田委員長 本日の質疑はこれにて終局いたしました。      ————◇—————
  219. 藤田義光

    藤田委員長 この際、農畜産物輸入自由化対策に関する件について決議をいたしたいと存じます。  各党の理事間におきまして協議願っておりましたが、その協議が整い、案文がまとまりました。  便宜、委員長から案文を朗読いたします。    農畜産物輸入自由化対策に関する件(案)   政府がさきに抜打ち的にグレープフルーツの自由化を決定したことは、誠に遺憾である。さらに、いわゆる円対策の一環としてオレンジ類、果汁、牛肉、畜産加工品、雑豆等についても自由化検討を進めているようであるが、これら品目は、総合農政推進上の重要な農畜産物であることにかんがみ、日本農業基本を守るという観点に立って、これら農畜産物が国際競争に耐えるようになることを柱とする基本対策が確立されるまでは、その自由化については特に慎重を期すべきである。   従つてこの際政府は、その基本対策を速急に確立するとともに、当面左記各項の実現にいかんなきを期すべきである。       記  一、果樹、畑作農業生産性を飛躍的に向上させるため、長期的観点に立って、生産基盤整備事業、広域主産地形成事業、加工流通の合理化事業等必要な施策を速やかに充実強化すること。  二、グレープフルーツ等の輸入については、生産者団体を中心とする窓口一元化等秩序ある輸入体制の確立を検討するとともに、輸入に伴い国内果実等の価格が異常に低落した場合においては緊急関税の発動等必要な措置を講ずること。  三、グレープフルーツの自由化により直接的被害を被る果樹農家に対しては、制度資金の償還期間の延長、利子の減免および改植更新等に対する助成、必要な長期低利資金の融通等その経営安定を図るための措置を講ずること。  四、国産果実の価格安定をはかるため、その加工品を含めた価格安定制度の創設について検討するとともに、国産果実および農畜産物等の需要拡大をはかるため、学校給食等政策需要の拡大に努めること。  五、アメリカにおける温州みかん輸入解禁州の拡大について早急に解決するとともに、果実をはじめ農畜産物の対外輸出振興策の強化に努めること。  六、果樹および畑作農業振興発展のため、国等の試験研究をさらに充実するとともに、果実の輸入に伴う植物防疫体制を整備すること。    右決議する。 以上でございます。  ただいま読み上げました案文を本委員の決議とするに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  220. 藤田義光

    藤田委員長 起立総員。よって、さよう決しました。  なお、ただいまの決議の関係当局への参考送付等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  221. 藤田義光

    藤田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十二分散会