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1971-08-16 第66回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年八月十六日(月曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 坂村 吉正君 理事 塩谷 一夫君    理事 湊  徹郎君 理事 山口 敏夫君    理事 大出  俊君 理事 伊藤惣助丸君    理事 和田 耕作君       大村 襄治君    笠岡  喬君       鯨岡 兵輔君    國場 幸昌君       木原  実君    鬼木 勝利君       受田 新吉君    東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 西村 直己君  委員外出席者         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         総理府総務副長         官       砂田 重民君         警察庁刑事局長 高松 敬治君         防衛庁参事官  高瀬 忠雄君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         法務省刑事局長 辻 辰三郎君         大蔵省主計局次         長       平井 廸郎君         大蔵省理財局国         有財産総括課長 窪田  譲君         運輸省航空局監         理部長     住田 正二君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 八月十六日  辞任         補欠選任   阿部 文男君     大村 襄治君   中山 利生君     國場 幸昌君 同日  辞任         補欠選任   大村 襄治君     阿部 文男君   國場 幸昌君     中山 利生君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公務員給与に関する件(人事院勧告に関する  問題)  国の防衛に関する件      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 これより会議を開きます。  公務員給与に関する件について調査を進めます。  去る十三日の一般職職員給与等改定に関する人事院勧告につきまして、人事院より説明を聴取いたします。佐藤人事院総裁
  3. 佐藤達夫

    佐藤説明員 去る十三日に給与勧告を申し上げたわけでございますが、その後、日ならずしてこの機会をお与えいただきましたことに対しまして、厚く感謝をいたします。  私は、お手元にお配りしてあると思いますが、「給与勧告についての説明」という刷りものをながめながら御説明を申し上げますので、お聞き取りを願いたいと思います。  例年のとおり、本年四月におきましての官民給与格差比較いたしましたのでありますが、その結果、格差は一一・七四%であることが明らかとなったわけでございます。したがいまして・この格差を埋めるためにはぜひとも給与改定が必要であるというふうに認めまして、勧告を申し上げました。  本年の給与改善にあたりましては、御承知のように、昨年高額でもありましたし、また大幅にいろいろな点につきまして懸案解決をいたしましたこともございまして、ことしはわりあいに簡単で、かつじみな形になっております。この内容を以下御説明申し上げます。  まず第一は、当然のことでありますが、俸給表改善でございます。俸給表改善は全等級にわたって改善をいたしましたわけでありますが、特に初任給、それから二人世帯形成時から三人世帯形成時にかけての職員給与引き上げを中心といたして力を入れました。すなわち、中位等級以下の給与改善に重点を置いた次第であります。したがいまして、ことしは昨年に比べますと、格差の率は低かったのでございますけれども、たとえば行(一)の五等級あるいは八等級というようなところでは、額はもちろん率も去年以上に力を入れております。それから、行口の五等級その他これに準ずることになりますが、ただし、その結果といたしまして、たとえば行(一)の一等級のように、額さえも去年に及ばないというお気の毒な結果を生じたことになります。  次に、初任給でございますが、初任給につきましては、前々から予測されておりましたとおり、民間初任給は依然として非常に高うございます。その結果、一般事務技術系の場合につきましては、大学卒は五千円引き上げまして、俸給で四万一千四百円となっております。それから高校卒は四千八百円引き上げまして、その結果、三万二千百円ということになりました。なお、初任給等級につきまして、号俸間引きをやりました。それは、高校卒人たち、すなわち初級試験を通った人と、大学卒上級乙試験を通った人との間に若干開きがありましたので、これは従来問題点として指摘されておったところでございますが、この際この点を合理化する趣旨におきまして間引きをいたしました。したがいまして、初任等級号俸が一つ減るということになりますが、これはその辺の方々に対してはたいへん喜んでいただけることだと思います。  それから、職種別に見ました俸給表改善といたしましては、技能免許職員、それから研究補助員、薬剤師、看護婦等につきまして特に配慮をいたしました。  なお、海事職俸給表口の適用を受けます職員初任給のきめ方につきまして、相当幅を広げるというような意味改善をいたしております。  次に、義務教育学校等職員に対しまして、先般、教職調整額が設けられました。これが明年一月一日から実施されることになりますので、この関係におきまして、高等専門学校講師等の場面において若干調整いたしませんと不都合を生じますので、このような調整をやはり明年一月一日から行なうということにいたしました。  次は諸手当改善でございます。  まず扶養手当でありますが、扶養手当につきましては、民間調査をいたしました結果、やはりこれを引き上げる必要があるということで、配偶者、これを五百円上げまして、現行千七百円から二千二百円といたしました。  それから子のうちの二人目、これは民間の上がりが相当顕著でございますので、現行四百円から二百円増しまして六百円といたしております。  次に、関連して母子家庭世帯主など、配偶者のない職員の子のうち一人は千四百円。現在は千二百円、これを二百円上げております。なお、明年一月一日から児童手当法が施行されることになっておりまして、これが施行されますと、該当の子供に対して三千円支給されることになるわけであります。その場合につきましては、給与表における扶養手当の扱いにつきましては、児童手当支給対象となる子は扶養親族としないことにしております。  次は、医療職俸給表(一)のお医者さん等の関係についての調整手当でありますが、これは依然として格差が非常に高く出ておりますために、要員確保上の必要から、従来あります初任給調整手当についてさらに思い切った引き上げをいたしました。その最高額は、現在の四万五千円から八万円ということにいたしますとともに、支給期間の限度はすべて三十年に延長する、そしてその後漸減さしていくというたてまえにいたしております。  次は看護婦関係で、夜間、病棟に勤務する看護婦について夜間看護手当というのが先般来設けられておりますが、この額を勤務一回当たり現在二百五十円を三百円に引き上げることにいたしております。  それから次は航空交通管制関係でございますが、これに従事いたします航空管制官、それから航空管制通信官、これらの人々の勤務状況にかんがみまして、実は御承知のようにことしの四月相当大幅な改善はしたのでありますけれども、なおこの際たたみかけてこれの改善をいたそうというわけで、支給対象となります空港の範囲が現在限定されておりますが、それを拡大いたしますとともに、それらの管制手当の額の引き上げをも行なうことといたしております。  次に期末勤勉手当でございますが、これにつきましては、民間調査の結果、やはり公務員側の分が落ちておりますので、従来の四・七カ月分を今回四・八カ月分にいたしました。これは六月に支給される期末手当〇・一月分増額ということにいたしております。  なお、特別給関係では、昨年報告で触れましたところでありますが、民間特別給支給状況を見ますと、職務段階の別を考慮に入れ、あるいはまた役付手当算定基礎として支給額を定めておる事業所が多数にのぼっておりますことから、年間給与の面においての民間との均衡を考慮しつつ、今回管理監督の地位にある職員の一部、大体本省課長級以上でありますこれらについて、その職責に応じて俸給月額の二五%以内の額を期末勤勉手当算定基礎に加えることにいたしております。勧告では二五%といたしておりますが、当面二〇%ぐらいのところを最高支給しようかということも考えております。  次に、筑波研究学園都市移転手当というものを設けることにいたしております。現在進められております筑波研究学園都市の建設に伴いまして、研究学園地区に移転した機関に引き続き勤務する職員等に対しまして、一定期間これを支給する、その額は俸給俸給特別調整額及び扶養手当月額合計額の八%以内ということにいたしております。  以上、大体概略でございますが、これらのうち官民給与比較基礎となる給与についての改善は、俸給で一〇・三六%、諸手当で〇・七一%、その他で〇・六七%、合わせまして一一・七四の格差を満たすことになります。一一・七四は、額にいたしますと平均八千五百七十八円ということになります。  この勧告は、本年の五月一日にさかのぼって施行していただきたい。なお、筑波手当関係は、本年十月一日からということにいたしております。  以上、簡単でございますが、今回の勧告内容の大略を御説明いたしました。     —————————————
  4. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  5. 大出俊

    大出委員 このたびの勧告をお出しになるにあたりまして、例年のことでありますが、たいへんに御心労と御苦労をなさったようでありまして、特に一時金の傾斜配分なんという点につきましては、たいへん気をつかわれたあと歴然たるものがございまして、その意味で御慰労申し上げたいと思っておるわけでございます。ただ、にもかかわらず、たいへんな御努力を認めるわけでございますけれども、大きな点について幾つか何とも納得いたしがたい点がございます。時間がございません関係等もございまして、実はぶっつけ本番的質問になるわけでありますが、したがって私の御指摘申し上げる点で、拙速でございますから私の側にも誤りがあるかもしれませんが、それはひとつぜひ御指摘をいただきまして、かみ合う議論にさせていただきたいと思います。  第一の問題は、四月実施をなぜしないのか、なぜ書かなかったのかという点でございます。  そこで、まず承りたいのでございますが、官民給与格差が四月を基準としていることにより、五月実施とする、こういう表現を使っておりますけれども、これはどういう意味ですか。
  6. 佐藤達夫

    佐藤説明員 これはたしか昭和三十五年以来のきまったことばであるわけで、それを踏襲した。五月一日ということを勧告実施期日にしておる以上は、それを変えないほうがよかろうということでございます。
  7. 大出俊

    大出委員 どうも総裁も、自分で答弁をされてついにやりとりされるところに、このことばがあまりにも古くなり過ぎたわけですよ。明確に書いてあるのですから、皆さんのほうに。先般のやりとりの中でも、一体いつを基準にするのだというやりとりで、四月を基準にしているのだから四月実施でおかしくないじゃないかという私の議論に、いや旧来から四月調査で五月実施としているのだというお答えしか返ってこない。ここにまたまた、官民給与格差が四月を基準にしていることにより——官民給与格差が四月を基準にしているなら、なぜ四月実施ができないか。わざわざここに、四月を基準にしていることにより五月実施と、一カ月飛び越してしまっている。  これが総裁、時間を倹約する意味で申しますが、政府完全実施をしないという時点であれば、こういう表現もある意味ではいたし方がないとも言える。が、しかし、昨年御存じのとおりに完全実施をするとおきめになって、政府意思決定をして完全実施をおやりになった。私は本会議総裁にも、ここから先の勧告のあり方という質問をいたしましたが、あそこで私は触れているのです。四月調査なんだからこれからは四月実施ですよ、四月調査で五月実施では筋が通らぬという意味の主張を私はしている。ですから、ことしはおそらくこの書き方を何とかお変えになるだろうと思った。ところが八年前からそのまま実はあるのでという。いま総裁は理由を言いましたが、このほうがいいだろうというふうに判断したというのですが、私はそうではないだろうと思うのです。長年書いてきた皆さんのほうの勧告だから、あまり気にもしないでこう書いたと私は思う。それとなく打診してみると、そういうことをあまり深くお考えになっていない。すらすらとそう書いたということなんですね。私はここのところは気をつかっていただきたかったところなんです。  もう一ぺんお答えいただきたいのですが、官民給与格差は四月を基準としているということにより五月実施、これは筋が通らぬ、論理的でない、非常に非論理的な表現だという点についてお認めになりますか。
  8. 佐藤達夫

    佐藤説明員 自然な形で書いたのだろうというお話では、私はまさにそのとおりだろうと思います。  実はさっき、にやっとしましたのは、私はひそかに、大出委員がきっと一言ここのところをおっしゃるだろうと思っておったところ、まさにそのものずばり、まず第一にその辺にお触れになりましたから、さすがにと思いまして、敬意を表しながらにやっとしたのであります。
  9. 大出俊

    大出委員 年の功というものはおそろしいものですね。そう言われると二の句の継げぬところです。  ということは、そういう予測をお立てになっておったとすれば、この文言が今日的世情から見ると、公務員立場から見るといささか非論理的である、この点はお認めになっただろうと思うのです。長年ただこう書いてきたのだから、今回変えないほうがいいというふうに何となく考えたということなんですね。だとすれば、ここのところはこの次は変えていただかなければならぬ。総裁、これは非論理的だということについて、いや論理的だという反論もない。かつて八年前そう書いてやってきたからそうやっているにすぎないということだけだ。おそらく一言ぶつけるだろうという予測を持っておられたわけで、気がついておられたわけでありますから、これは当然変えなければいかぬということになると思いますが、いかがでありますか。筋が通らぬ。
  10. 佐藤達夫

    佐藤説明員 気がついておりながら変えなかったということは、ますます悪質な根性ではないかということにもつながるわけです。私どもの基本的な立場は、前回までたびたび申し上げましたような立場におりますので、まだはっきり踏み切った段階には行っておらないということからいえば、従来の例に従うことはむしろ自然な形であろうというように考えております。
  11. 大出俊

    大出委員 そこで、八月十四日の朝日新聞の「人事院勧告に欠けるもの」という社説がございます。私も各社の社説をずっと読んでみましたが、この問題に触れまして毎日新聞なんかもこう書いていると思うのですが、朝日がずばりとこう書いている。総裁も気にしておられるのでお読みになったと思いますが、念のために読み上げます。  「実施月について、人事院勧告は「五月実施」と簡単にのべているだけである。組合側は「民間企業の四月分の給料を調査して引上げを勧告する以上、公務員給与も当然四月から引上げるべきだ」と主張し、佐藤人事院総裁は、さる七月の公務員共闘会議との会見で「理屈として分るし、検討するがむずかしいと思う」と答えている。むろん、昨年はじめて五月実施になったことや財源がふえること」——まあ大蔵省の方おいでになりますがね。「財源がふえること、政治的配慮などの事情もあろうが」——だれが考えてもここに政治的配慮が入ってくる。社説もそう書いてある。「スジ論公企体も四月実施になっていることからいっても、来年の勧告では四月実施への足がかりを示すべきであろう」、こう書いてある。これは立場立場ですから急いでものを言いますけれども、第三者なる新聞がこうお考えになって、来年はと、ここで言っておられるのですね。そうすると、一理あるというところから始まって納税者皆さんがと、こういう総裁の御発言があった。   〔委員長退席坂村委員長代理着席〕 ある意味では世論を代表する新聞の論説がここまでお書きになるということは、私は、一理の先が少し抜けてきた、こう考えていい時期に来ている、こう思うわけであります。  だから、結果的にどういうことになるかは別として、やはりこの辺で来年は、八年間踏襲してきた——つまり不完全実施の場合ならば自然であったかもしれない。しかし、完全実施を約束し、かっこの委員会で、山中さんおいでになりませんけれども人事院が四月実施とお書きになるならば、蛮勇をふるって四月実施をいたしますとおっしゃっているところまで来ると、この表現はいずれにせよ次の機会には検討すると、そこまでは総裁、これは言っていただかなければ、私は、筋論としても公企体の四月実施考えても筋が通らぬ、こう思うのですが、ここのところは、次の機会に向けて御再考あるいは再検討いただけませんですか。
  12. 佐藤達夫

    佐藤説明員 新聞で一つの問題点として取り上げられたことは、私はいいことであると思っております。  ただし、新聞態度をいろいろ見ますと、中には懐疑的な態度でこれを論じている新聞もございます。まあ、とにかくそれに結論がきまったというところには、まだほど遠いものと思います。私どもは、先般来申し上げたような基本的な態度によって慎重に検討を続けていきたいという気持ちでおります。
  13. 大出俊

    大出委員 重ねて申しますが、官民給与比較が四月を基準としていることにより五月実施というのは、これは筋が通らぬ、この表現は。これだけは私はお認め願わなければいかぬと思うのですよ。四月に調査をしておられるのだから、四月基準民間との給与格差調査をされているわけだから、五月実施というのは筋が通らぬ。この点については来年もこのままだというものの考え方だとすれば、これは私は非常に大きな問題だと思う。だから、いまこの席上ではそこから先踏み込んでいってはいない、そこらはこの表現の矛盾ということに気がついておられるのだから、来年はここのところは検討すべきではないか、こう申し上げているのですよね。そこはいかがですか。
  14. 佐藤達夫

    佐藤説明員 四月説が絶対正しいという結論に立っておれば、それはもちろんそこの文章を変えるのはあたりまえでありますが、先ほど来申し上げておりますように、そこまでの結論を得ておりませんから、したがって、そのような形になりましたということになるわけであります。
  15. 大出俊

    大出委員 今回はこのような形になりましたというわけですから、来年に向かってそこのところを御検討願いたいと申し上げているのですが、そこのところはいかがですか。
  16. 佐藤達夫

    佐藤説明員 それは、たびたび申し上げておりますとおり、われわれは従来どおりさらに熱心に検討を続けていくかまえでおるわけであります。
  17. 大出俊

    大出委員 いま一つむだなことを、一言多いですな、総裁は。あっさり検討する気になりませんですか。そこらのところはいかがですか。一言多いじゃないですか。
  18. 佐藤達夫

    佐藤説明員 いま初めて出たお話なら検討いたしましょうと申し上げますが、もう前からたびたび伺っているお話でございますから、そのつなぎから申しましても、従来どおりということばが入るのは、これは一言多くも何もないと私は思います。
  19. 大出俊

    大出委員 だから申し上げたいのですが、実はこの国会で私はほかの党の皆さんにもお願いをいたしまして、この人事院勧告を受けて総理府給与法改正案国会にお出しになるころには、私ども、ことしはひとつ修正案をつくって提出をしたいというふうに思っておるのですよ。そういう態度なんです。そういう問題とからみまして、ここのところは政府にもものを言わなければならぬ筋合いでございます。まあ、従来検討してきている、そういう意味で従来どおり検討する、こういうことだとおっしゃるから、そういう理解をいまの点はいたします。従来、一理あるところまできて、二理、三理があるという点について検討してきているというのが総裁答弁ですから、それが従来どおり人事院態度なんだというならば、そういう意味検討をするというふうに受け取っておきます。時間がございませんから、その点だけ申し上げて次に移らしていただきます。  二番目に一時金の問題でございます。これは傾斜配分と私は言いたいのでありますけれども、この「参考資料」を見ますと、三七ページから何か五ページか六ページか、えらい長々と、今回の一時金を指定職なり一等級、二等級によけいくっつけたことについて、説明がついているのですね。表が載っかっている。こっちのほうは公務員平均給与額や何かですか……。何か知らぬけれども、とにかくかつてなく何ページもここに使っているということは、どうもやはりこの傾斜配分については、何となく皆さんのほうは気になっておられる。だから必要な理由づけをする、御苦労をなさった、こういうふうに受け取るわけなんであります。この傾斜配分の形で、ここから先皆さんは確信をお持ちでございますか。うまくいくとお思いでございますか。各方面からこれはいろいろな反論が出てくると私は思うのでありますが、そこらはどう考えますか。
  20. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 特別給につきまして、今回、管理監督者の一部につきまして、いわゆる特別調整額的なものを基礎にするという点を新たに御勧告申し上げたわけでございますけれども、この関係は、昨年の調査におきましても、やはり特別給支給方法が非常に職務段階的に差がございます。ただいわゆる月給だけで官民較差をやっていくという従来の方法では、一部の職員につきましては、年間給与としまして、非常な格差がいつまでも残っていくという関係がございますものですから、どうしてもこれはほっておけないということで、今回いろいろな調査をいたしまして、できるだけ各方面の御納得を得るようなことのために調査をいろいろな角度からやりまして、それをごらんいただいておるわけでございます。  で、やります方法は、いわゆる役付手当的なものを基礎にしていくということでございますけれども民間におけるいわゆる役付級のボーナスの支給のしかたが上のほうに非常に多いという点を考えますと、ほんとうにほっておけないというところだけにできるだけ限定をいたしまして支給をするということにいたしたい。当面は、そういう点で言いますと、やや内輪な形に、たとえば特別調整額は二五%の者については二〇%、二〇%の者については一〇%といったような程度で、範囲本省課長級に原則として限定をするという形で、そういう民間でいえば非常に格差の多いところだけについてともかく支給方法改定をいたしたいという気持ちでございます。
  21. 大出俊

    大出委員 私の申し上げているのは、尾崎さん、これは指定職一等級、二等級までですね。そうなると、給与カーブを引きますと、給与総額からいくと、二等級以下、つまり等級のところで折れ曲がりますね。なぜかというと、これは時間がありませんから私のほうで申し上げますが、この傾斜配分の中身というのは、行(一)の一等級、二等級在職者で、俸給特別調整額一種または二種該当者、それと指定職一種二五%、二種二〇%のいわゆる管理職手当調整額算定基礎は二種が本俸の一〇%、一種指定職は二〇%、こういうのですね。間違いないですな。これは指定職の場合は管理職手当を本俸に入れたのです。旧来は入っている勘定なんです。勤勉手当はありませんけれども。なぜ一体指定職までこうしなければならぬのかというのが一つ問題がある。これは指定職というものの中には、俸給に含まれてるわけですから、そこで勧告された中身を一時金月数に引き直しますと四・八カ月分。今度は〇・一ふえるわけでありますから、旧来四・七カ月分が四・八。それに二〇%ですから、これを足すと、一種の方は五・七六カ月。一般職員は四・八カ月だけれども一種の方々は五・七六カ月。二種の方も同様に五・二八カ月になる、算定基礎を一〇%入れますから。そうすると、一種が五・七六、二種が五・二八カ月、一般の方々は四・八カ月分、これだけ差が出てくる。指定職でさえも、これは管理職手当は入っていると思います。この俸給表には勤勉はありませんけれども。二〇%を入れますと、これが三・六カ月なんですね。だから四・三二カ月になる。間違いないでしょう。指定職が四・三二カ月分になる。そうすると全体的に見ると、年間の年俸、つまり年間の総収入という面でいきますと、今回は上のほうを低くしたと調子いいこと言うけれども、そうではない。一体何で指定職についてまでこういうことをされるのですか。
  22. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 ただいまお話しになりましたように、指定職のいわゆる特別給につきましては、昨年、民間のいわゆる重役級の調査をいたしたのでございますけれども、その結果が、一昨年のボーナスを昨年のベースアップ後の月給で割りました結果といたしまして四・五月分出ているということを、昨年の給与報告の資料で御報告を申し上げて御参考に供しておるわけでございますけれども、その場合に、それでも四・五月分出ているということでございます。  指定職関係は、一番最初のいわゆる指定職の前身でございます特号俸昭和三十八年につくりましたときには、確かに諸手当、たとえば通勤手当扶養手当特別調整額等の手当は個別に支給いたしませんで、全部包括的に本俸へ入れるというふうにいたしたことはございますから、そういう意味では、中に含まれているということが言えないことはないかもしれませんが、最近の指定職の、前回のたとえば給与決定にあたりましては、民間指定職の−指定職といいますか、重役級の給与調査いたしまして、たとえば昨年の場合は、民間の専任役員の給与平均額が四十万円であるということを考慮しまして、これは指定職俸の最高号俸に、参考としてそこまで引き上げるということをいたしておりまして、そういうことで、月給そのものをそういう形で考えてきておるわけでございますけれども、ボーナスはボーナスとして別途考えてまいりますと、去年御報告申し上げましたように、少なくとも四・五月分は出ておるという関係考えますと、それも一昨年のボーナスでございますから、低目に考えられておるわけでございますけれども、それに対しましてこちらの場合には、指定職として三・五月分しか出ていないといったようなところから考えますと、やはりこれもほっておけない、むしろ勤勉手当支給すべきじゃないかという議論なんかもございますけれども勤勉手当というような性格のものではなくて、期末手当的な性格のものといたしまして、それ自体として方法はいろいろございますけれども、やはり同様な措置によって四・三月分程度を支給することによって、民間の参考とする給与に少しでも近づけたい、そういうような気持ちで、これを同じような方法で改正するということにしたわけでございます。
  23. 大出俊

    大出委員 公務員共闘会議皆さんとの会見の席上で、逆転防止なんということをおっしゃっておる。これは、こういう指定職乙の最低号俸などと一等級号俸との関係を言っておられるのですね。そこのところはそう受け取っていいのですか。
  24. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 その点につきましては、一等級、二等級につきましてこのような特別措置を講じまして、もし指定職にその措置を講じませんと、年間給与としまして、大体指定職——従来一等級から指定職に上がるわけでございますけれども、上がる場合の金額が二号俸も逆転するという面が現実にございます。いわゆるそういう下からの昇格にあたっての逆転面ということも、もちろん技術的な問題でございますけれども、そういう面がございます。それと先ほど申しましたような面等を考慮しまして、期末手当だけに限定をしておりますけれども、同じような方法をとることがふさわしいというように考えたのでございます。
  25. 大出俊

    大出委員 逆転防止といっても、尾崎さん、あなたは専門屋でしょう。指定職乙の一号、今度の勧告でいくと十八万四千円でしょう。指定職は七号刻みです。一等級最高十五号俸でしょう。これは十九万九千七百円でしょう。そうすると、指定職乙の一号というのは十八万四千円、一等級最高号俸というものは十九万九千七百円で、本来俸給表一等級のほうが高くなっている。逆転もヘチマも、初めから指定職の乙が低い。そんなの理由にも何にもなりはしない。俸給表が低いものしようがない。ずいぶん苦しい理屈をおつけになっているので、私も感心して聞いていたんですけれども、そういう理屈をあえてお述べにならなければならぬほど苦しいということならば、それはそれでもいいのですけれども、私はいまのお話、筋が全く通らないと思うのですよ。  そこで、年間のトータル収入はあなたおっしゃっておる。それじゃ私はここに例をあげますが、そろばんはじいてみた。計算機回してみた。一九六九年から七一年の二年間で、本省の次官と局長、それから一等級の六号、まん中をとって三等級の九号、五等級の十号、六等級の九号、八等級の二号、これがどういうふうに年間トータル収入が動いているか、調べてみますと、次官が六九年から七一年で年間幾らかと言いますと、六百五十二万八千円なんですよ。六百五十二万八千円から、六九年の年間のトータル総収入、年俸の四百五十四万三千円、これを差し引きますと、次官が年収で幾らふえているかというと、この二年間で百九十八万五千円ふえている。これを月当たりに直しますと十六万五千四百十六円上がっている。局長が同じ方式でやりますと、七一年が四百八十九万六千円、六九年が三百十一万六千九百六十円、差し引き年間で百七十七万九千四十円ふえている。月に直しますと十四万八千二百五十三円。これはいずれも百九十八万円、百七十七万円とたいへんなふえ方です。ところで一等級の六は、いまの筆法でいきますと、七一年の二百八十万七百五十二円から六九年の二百十六万八千九百二十五円を引くと、六十三万一千八百二十七円、年間収入でふえている。月に直しますと五万二千六百五十二円。さて三等級、課長補佐の方々、ここが七一年で百八十三万六千二百四十円、六九年で百四十七万七千五百七十五円、差し引き年収で三十五万八千六百六十五円ふえている。月当たりで二万九千八百八十八円。五等級の十、大体これはほとんど核家族です。これが七一年で百三十六万八百円、六九年で百八万九百十五円。差し引きいたしまして二十七万九千八百八十五円年収でふえている。月額に直して二万三千三百二十三円しかふえない。六等級の九、今日まで五万九千四百円というところですよ。三十四歳、四人世帯、平均核家族です。ここが七一年で百十一万八千八百八十円の年収です。六九年が八十七万五百四十円。だから差し引き年間でわずかに二十四万八千三百四十円しかふえていない。月当たりにすると二万六百九十五円しかふえていない。八等級の二が、七一年で五十三万九千二百八十円、六九年が三十八万一千八百十円。だから差し引き十五万七千四百七十円年収でふえている。月当たりに直すと一万三千百二十二円しかふえていない。  これは皆さん、六の九の一九六九年から七一年までのふえ方をお考えになればわかるじゃないですか。次官なんというのは百九十八万五千円もふえている。局長が百七十七万九千円も年間でふえている。六等級の九号の方は、四人世帯、苦しいところですが、二十四万八千円しかふえていない。月に二万。八の二あたりになってくれば、十五万七千円しかふえていない。月当たり一万三千円しかふえていない。上のほうは八倍こしちゃっている。今回あなたのほうが官民比較の面で上薄下厚なんということを言うけれども年間トータル収入でいってごらんなさい。明らかに上厚下薄ですよ、今回の傾斜配分というのは。そういう結果になるんじゃないですか。尾崎さん、どうですか、ここのところは。少し下のほうがかわいそうじゃないですか。——時間がありませんから、あとでまとめて答えてください。  これは尾崎さん、私は念のために、急ぎましたから多少の数字の端数の違いはあるかもしらぬけれども、もう一つ数字をあげます。次官の、つまり去年とことし、年収でどのくらいふえるかというと、今回六・四%、物価上昇分だけカバーしたというわけでしょう、上のほうは。そうでしょう、尾崎さん。下のほうは、さっきの総裁の報告だ。上のほうは物価上昇分くらいしかカバーしていない、下のほうはたいへんに上げた、上薄下厚だ、そんなことはない。七〇年と七一年です。次官は、七一年が六百五十二万八千円、七〇年が五百八十九万円。差し引きますと六十三万八千円ふえている。これは月に直して五万三千百六十六円ふえているんです。年間収入、本俸といまの傾斜配分による一時金。それから本省の局長さん、一等級、これが今度は年間四百八十九万六千円になります。昨年が四百三十四万円です。だから五十五万六千円ふえている。月に直して四万六千三百三十三円。指定職の乙を一つ取り上げてみても、やはり似たようなことがいえる。一等級の六号の場合、これが三百四十五万五千五百二十二円、こうなる。それから二百八十五万五百九十円、これを差し引きますから、一等級のところで六十万四千九百三十二円ふえている、年収で。月に直して五万四百十一円、こういう数字です。ところで、さて六等級の九号、ここを一つ当たってみると、ちょうど六等級の九号は、今日月給でいって五万九千四百円。これが今度は六万六千六百円になります、本俸で。ここのところで百十八万一千八百円、これが今度。昨年は九十九万一千九百八円、だから年収で十二万七千円しかふえていない。月に直すと一万五百円、これは本俸と一時金です。年収ということになると、今回の一時金の措置というものは、これだけ大きな役割りを果たしている。決して総裁が言うように、上のほうにうんと薄くして物価上昇分をカバーしたのだ、下は上げたのだ、そんなことになっていない。このあたりを、いま二つほど私は数字をあげましたが、どういうふうにお考えでございますか。
  26. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 御指摘のように、月給面とボーナスを含めました年間給与の面と両方、今回は視点を二つの点に置きまして、適正な給与というものをいろいろ考えたわけでございます。月給を中心としてきた従来の面から申しますと、やはり指定職につきましては、指定職甲としましては六%、それから甲、乙平均しまして七%ということになっておりまして、しかし、そういう月給面だけの格差を追及しておったのでは、先ほど申しましたように、民間との関係におきまして、やはりどうしても格差が大きく残るところがございまして、人材の維持という、いい人材をとめておくという点から申しますと、やはりいろいろな問題がございます。そういう意味合いで、今回年間給与もいろいろ調査をしまして、できるだけ御納得を得られるように、その資料を十分いろいろな角度から調査いたしまして、民間でもやはり一般的には常識的にいって、そのボーナスの面につきましては、役付的な関係で、職務と責任に基づいてボーナスというのが支給されておるという実情を、従来からそういう点が強くいわれておったのでございますけれども、いろんな面で調査をいたしまして、少なくとも役付手当的なものを考慮することによって若干でもそういう面の配慮をする。内輪でございますけれども配慮をするという点で、今回の年間給与的な観点の勧告を申し上げたわけでございます。で、年間給与の手取り面でもいろいろ考えてございますけれども年間給与的な上昇という、結果としては御指摘のような感じにはなるわけでございますけれども、手取りになりますと、上のほうの関係の税率の関係もございまして、若干低目になるという点はございます。
  27. 大出俊

    大出委員 私があげた数字は、これは計算機ではじいているのですから間違いないのです。お認めになっている。だとすれば、この書き方だっておかしな話で、総裁お話だって全くおかしな話ですね。俸給月額をとらえて、上のほうは六ないし七ぐらいのところに押えたんだ、下のほうを上げたんだから上薄下厚だと言って、しかも下のほうをよく見たようにおっしゃるけれども、そうじゃない。実際には年間トータル数字でいったら上のほうの方々はたいへんなふえ方です。三十四歳で四人世帯なんてものは、とてもじゃないが見ちゃいられぬでしょう。そういう出し方をしちゃいけませんよ。やはり皆さんのほうは、今回傾斜配分をした結果として年間でこうなると、わかるように、明確にそうお書きになるのが正しい。いまになってあなたそれを認められたって——税金があるからと言うが、私ども給与だって四十万だなんだといっても、税金が四七%私の場合にはついているのだけれども、そんなことはいつだって新聞は書いちゃいないんだ。そんなことをいまさら人事院が持ち出したって理屈にならぬ。そうでしょう。こういう出し方は羊頭狗肉というのです。みんながすみを食って生きているんじゃないのですから、けしからぬですよ、それは。時間がないからそれだけ言っておきます。  次に一時金ですけれども、何でまた〇・〇七切ってしまったんですか。〇・〇八九ですか、切ったことがある。これは前回もさんざん言ったんだけれども、〇・〇五というのは数字じゃないのですか。〇・〇五という数字もあるのですよ。尾崎さんいかがですか。
  28. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 これは毎回いろいろ申し上げておりますように、公務員期末手当関係はやはり非常に固定的になるものでございますから、民間の場合の景気の変動に合わせる合わせ方につきまして、あまりこまかいところまで合わせますと、たとえば昭和四十年のときのように、前年の四・三三月分が〇・〇三月分下がる。そういったような、コンマ二けたまでやっていきますと、そういう下がる関係も出てまいります。そういう関係で、かたいところでやっていくことがやはり民間関係に合わせる公務員のあり方ではなかろうかということで私どもはやっておりまして、今回も若干多目な切り方にやはりなったのでございますけれども、やむを得ないというふうに考えております。
  29. 大出俊

    大出委員 人事院のほうがやむを得ないなんて割り切ってしまっては困るのですよ。もらうのは公務員諸君でしょう。官民比較をあなた方はやっておられて、物価は上がりっぱなしに上がっているでしょう。下がりましたか。物価は下がりはしないじゃないですか。私の質問にお答えにならぬ。〇・〇五という数字はないのかと私は聞いている。人事院は〇・〇五という数字を扱ったことはないのですか。
  30. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 かつてだいぶ前には、たとえば本俸面の勧告は留保して、〇・二五をやった、そういうような事例はございます。
  31. 大出俊

    大出委員 三十七年の八月十日に勧告をお出しになったでしょう。この三十七年八月十日勧告というのは、いまあなたのおっしゃる期末手当〇・二五、勤勉手当〇・〇五という切り上げ方をされておる。分けて、ちゃんと期末手当〇・二五、勤勉手当〇・〇五。〇・〇五という数字をあなたのほうは扱っておるじゃないですか。何であなたは今回またまた——これは一体何回目です。何で〇・〇五切るのですか。〇・〇七がぐあいが悪ければ、〇・〇五だっていい。三十七年の勧告であなたのほうは、わざわざ〇・〇五という数字をあげているじゃないですか。〇・二五という扱いをしたことがありますとあなたは言いますけれども、〇・〇五という扱いをしているじゃないですか。〇・〇七切るんだって、〇・〇二切って〇・〇五生かしていいじゃないですか。それをやむを得ない、やむを得ませんとあなたがかってに言ったって、それじゃ一体人事院の職責はどうなるんですか。官民比較の面でちゃんと数字が出ておるものを、〇・〇八九切った。今回はまた〇・〇七を切る。それじゃ公務員諸君が気の毒過ぎるじゃないですか。だから私は、もう〇・〇五を期末手当につけなさいという修正案出したい。そう毎回毎回、端数といったって〇・〇五以上のものをみんな切られたらたまったものじゃない。そのときにこれは人事院は反対しないでください。いかがですか。
  32. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 三十七年には御指摘のとおり三・七二月分が出まして〇・〇二の関係はこれは除外をして、三・七月分に〇・三月分を改善をするという方法でやったわけでございます。   〔坂村委員長代理退席、委員長着席〕 その〇・三月分の改善の中で、御指摘のとおり、期末手当と勤勉の配慮のしかたにつきましては、〇・二五と〇・〇五という形をとったわけでございますけれども、全体の民間関係公務員に持ってくるという点につきましては、三・七二月分を三・七月分に持ってくるという形でやったわけでございます。
  33. 大出俊

    大出委員 私は数字の扱いを聞いておる。〇・〇五という扱いをしたことがある。いまお認めになったとおり。だから、この点は再三私も申し上げておりますけれども、今回こういう傾斜配分などをおやりになる時期だけに、このくらいのところはきめこまかくひとつお考えおきいただかぬと、納得せよといったって公務員諸君は納得できないことになる。だから、いやだけれども、この給与法が出てくる時点で、そんなものは通せないなんて騒ぐことになりかねない。そこを私は心配をする。四月一日扱いにしても、あるいは上薄下厚だ、こうおっしゃるんだけれども年間トータルからいけば、さっき私が申し上げたようなことになっている。そういう大きな傾斜配分をおやりになっておる。しかもさっき言った、あなたのほうで的確な御答弁をなさらぬけれども一等級、二等級というところまで手をつけますと、三等級以下はどうするのですか。課長補佐、係長の中から不満が出るに違いない。そこがダウンしているんだから。そうでしょう。特別調整額の分を二〇%、一〇%認めたんだから、三等級、四等級のところは年間トータルで落ちるのですから。そうすると、この次の段階では、落ちているんだからここを上げますという傾斜配分になる。その場合にまた理屈が一つくっついて、逆転防止だ、こう言う。逆転防止だといって指定職のほうまで含めて上げていったら、その次には今度はまた、四等級、五等級のところはまた引っ込んだ、そこをまた上に上げる。また逆転防止だといって一等級、二等級指定職までならしてしまうということになったら一体どうなるのですか。下のほうは気の毒千万です。上のほうだけ年間トータル収入がふえる方向ばかり考えているということで、表向きは物価上昇分くらいをカバーしたんですという言い方をされたんじゃたまったものじゃない。そういう傾向を持っておるのです。いままでの人事院の慣行では、どこか引っ込んだところがあれば、次はそこに乗せるんだ、そういう引き方をするから私はものを申し上げておるのです。これは十分お考えいただかなければ困りますよ。あなたのほうは出されたんだから、いまさら勧告の中身を変えるとは言えないでしょうから、ここらはひとつ先々の論議に残したいと思います。  ところで、時間がございませんから、あと一、二点でやめますけれども改善率、つまり本俸比、ここのところをちょっと申し上げたいのでありますが、七一年、七〇年、六九年ということで本俸比の数字を拾ってみた。そこで、まず承りたいことが二つ三つある。  一つは、今度の人事院の資料によりますと、七一年春闘の賃上げ率と額というのを当たってみると、今回の賃上げの労働省調査その他があります。労働省は百四十五組合の春闘の平均をとっておる。これは、ことしは二八・六%と出ている。間違いございませんな。昨年はこれは一八・三%だった。ところで人事院は、昨年は労働省の春闘の上げ幅一八・三%であるにもかかわらず、この上げ幅を一八%ということで労働省調査よりは低く見た。私は昨年だいぶこれに食いついた。ことしは労働省が一六・六%と春闘の上昇分を見た。そうしたら、人事院はことしはぴったりそれに合わした。人事院はことし二八・六%。これは文句を言わなきゃ人事院はおやりにならぬのですかな。昨年私は、労働省が一八・三%、権威ある国の機関が出しているのに、なぜ人事院は〇・三%切って一八%にしたのだ、そんなふざけた話があるか、おのおの政府機関じゃないかと言ったら、理屈にならぬ理屈をつけた。ことしは労働省は一六・六%と出したら、人事院も一六・六%。こんなに奇妙に一致するものですか、調査結果というものは。政治的配慮もいいかげんになさい。これはやはり言わなきゃ直らぬことになる。ここらは一体どういうことなのかを少し理由を承っておきたい。  それからもう一つ、中身に入っていきますと、公労協のほうの上げ幅が一一・七で七千二百九十四円になっている。人事院のほうでごらんになっても、去年が一二・五で六千七百五十一円。つまり公労協と一一・七四の——ここで俸給表を中心に考えていった場合に、本年は扶養手当が三百十六円ありますね。そうでございましょう。扶養手当の三百十六円、これを入れてみても公労協並みにならぬじゃないですか。七千二百九十四円と書いてある。  そこで問題は、皆さんのほうの場合、つまり公務員の場合は管理職が入っているわけですよ、皆さんのおあげになっている数字の中に。ちょっと念のために申し上げますと、配分というところに、本俸が一〇・三六、七千五百七十二円、この内訳を拾ってみますと、扶養手当が〇・四三で三百十六円、医師の初任給調整手当が〇・二八で二百六円。号俸間引きというのがありますね。これが〇・〇二で十七円。この号俸間引きというのは、初任給のところで八の二をなくして八の三にした。これも去年私がだいぶ詰めたところです。これの間引き十七円。その他いろいろのはね返りが〇・六五ございまして四百六十七円、こういう数字になっています。  私はここでふしぎに思うのは、お医者さんというのは四千百十人しかいない、四十八万人の対象人員、公務員の中に。そうでしょう。これは間違いないでしょう。公務員四十八万人の中にお医者さん四千百十人しかいない。ところが、医師の初任給調整手当は、一人頭〇・二八、二百六円くっついている。だから、四十八万なんですから、十倍からの頭の方々からおのおの二百六円ずつ切ってきて、お医者さんの初任給調整手当が出てきている。そうでしょう。そうすると、これは一体どういうことになるのでしょうかね。これは全体の行(一)、行(二)の諸君なんかにしたら、たまったものじゃないです。  いま三点ばかり承りたいのでありますが、まずそういう点をどういうふうにお考えになるか、簡単でけっこうですから、お答えください。
  34. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 一番初めの労働省の調査でございますけれども、労働省のいわゆる春闘の妥結状況として発表しておりますものは、会社数が二百社弱でございまして、非常に数が少ないわけです。それで、その平均が二八・六%、九千五百二十二円ということになっていますけれども、私ども調査は、基本的には、四月分として支払われるということで、個人別に支払われるものにつきましてはすべて個人別に調べてまいりまして、等級別、学歴別、年齢別という形で、こまかく格差計算をしておる。いわゆる本格差というものでございます。そういう関係が主力の調査でございますけれども、それだけではやはりいわゆる積み残しというものがあって来年に残ってしまうという面がございまして、会社によりましては、調査に行きました場合に、個人別の関係はまだきまっておりませんけれども——きまったものはすでにとってきておりますが、そういうものがきまっていなくて、ただ四月分として遡及して改正をするということがきまっておって、かつその平均改定率というものがやっときまったというようなところにつきまして、いわゆる積み残しとして、積み残し事業所として調べてまいるわけであります。そういう関係が、毎年全体の約二六、七%の事業所がございまして、これがいわゆる積み残し事業所でございます。ことしの場合には二六・一%の積み残し事業所がございまして、その平均改定率が一六・六%であるということでございます。  ことしはそういう関係が、労働省は春闘の中の一番前のほうの大企業だけを調べるということで一六・六でございましたけれども、私ども関係は、四月分として支払われる中でいわば一番おくれた会社を調べまして、それを二六%について調べましたら、それが一六・六であるという、たまたまの話でございます。去年の場合には、これが一八・〇でございまして、労働省の関係は一八・三。その前は、私どものほうは一五・七で労働省のほうは一五・八。大体似たり寄ったりの数字が出てきておるということで、これは、私どものほうは非常に数も多うございますし、正確であるというふうに考えております。
  35. 大出俊

    大出委員 尾崎さん、知らないで聞いているのじゃないですよ。どうしてこの数字になったかがわかっていて聞いているのです。ここから先は申し上げませんが、たいへん御苦労をいただいたことについては感謝をいたします。ただし、そういう御努力をいただければやはりそういうふうになるわけですから、政治的配慮というものもありましょうけれども、さっき幾つか申し上げたような点は、もう少しはっきりさせておいていただかぬと、上薄下厚だなんて簡単に言われても困る。それは人事院といえども、裁判の法廷じゃありませんけれども、いろいろな質問が出るのをさばいていかなければならぬでしょうから、書き方としてはいろいろな書き方がありましょう。ありましょうけれども、そんなにめくら千人じゃないのだから、そこのところは少しお考えいただきたい、はっきりこう申し上げておきたいのです。  そこで、行政(一)表五等級から八等級つまり管理者を抜いたところ——これは、いまわれわれの論議しているのは管理者が入っていますが、公労協は管理者が入っていませんから、そうすると、行(一)の五等級から八等級のところ、これは六千九百四十五円です。それで、行(二)を入れてどうなるか、六千九百三十五円です。つまり管理者を抜いた当務者です。これが三百十六円の扶養手当を入れても、なおかつ公労協並みにならない。だから、皆さん方が史上最高なんということを新聞におっしゃる前に、私はこの間、一一・七を少し上回ったくらいでは公労協並みになりませんよということを申し上げておいたはずだ。公労協並みになっていない。ここのところはどうお考えになりますか。一音でけっこうです。
  36. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 公企体関係との比較でございますけれども公企体の場合には八%プラス二千三百円ということで一一・六八%、七千二百九十四円でございます。しかし、これは御指摘のように管理職は入りませんで、ある一定の水準、一定のグレード以下のものでございます。  それがわがほうとどういう見合いになっているかという点につきまして、いま五等級以下とおっしゃいましたけれども、そういう関係で、最近の職務評価関係からいって正しいかどうかという点などいろいろ問題がございます。いま御指摘の関係で、かりに五等級という感じでやりましても、私どもは直接こういう関係比較はしておりませんけれども、率と額で、片一方は上がったり片方は下がったりしまして、そんなに違うことはないのじゃないかという感じは持っております。
  37. 大出俊

    大出委員 そんなに違わないけれども……。
  38. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 大出君、時間も過ぎたようですから……。
  39. 大出俊

    大出委員 あと二点で終わりますから。  そこで、大事な点が一つございます。非常に重要な問題点がございます。官民比較という点で、まず行政(一)表は七千六百七十円なんですね。改善率一〇・九%です。間違いないでしょう。行政日表は五千四百八十六円で九%です。海事が五千八百七十七円で六・一%。こうずっと並んでいるわけでございます。さて、官民比較の面で、調査の結果、官のほうが民間よりも高い。これを称してマイナス要因、こう人事院はおっしゃっている。そうでございますね。このマイナス要因が各種俸給表の中にどれだけあるかと言いますと、海事(一)表、海事日表、それから教育の(一)表、(二)表、それから医療職日表なんか特にマイナス要因ですね。総職種で言いますと、これは五千九百八十五円で八・二%になるのですね。本来は、ここをちょっと頭に入れておいていただきたいのですが、行(一)の七千六百七十円の一〇・九%というのは、これは官民格差分だけなんですから、春闘分が入っていない。春闘分が三・五%でありますね。一〇・九%は本格差です。だから、要するに一〇・九プラス三・五の一四・四、これだけほんとうは使えるはずなんですね。ところがマイナス要因がずっとあるから、これを引いてしまうから、実は三・五プラスできない、上乗せできない。数字からいくとそうなる。  そこで、さっきお医者さんの例をあげましたが、四十八万の中の四千百人の方々を行(一)、行(二)あたりへ引っぱってきて、みんなこっちへ乗せてしまうわけですからね。そうでしょう。同じような意味で、海事だとか教育だとか医療だとかいうのは、毎年毎年マイナスなんでしょう。国が例年高いのでしょう。これは比較にはならぬということですよ。これを総合格差方式でみんなほうり込んでならしてしまうわけだから、行(一)、行(二)なんというのは毎年それだけおっこちてしまう。だから、この間私申し上げましたように、人事院が幾ら努力をされても、結果的に労働省の賃金センサスに出てくる数字までどうしてもいかない。その根本原因は何かというと、官民比較の面で民間より常に高く出る看護婦さんだとか、国家公務員である学校の先生であるとか、まずこれは一つ大きな問題は、比較のしようがないものがあるわけですよ。たとえば税務だとか公安(一)だとか公安口だとかいうのは、民間にはないでしょう。民間には税務署員がいないのだから、ない。そうするとこれは行(一)表を対象にして、それも個々にベースアップをするのですよ。そうでしょう。そうすると、それだけは行(一)、行(二)がかぶって落ちてしまう。だから、行政職(一)表、(二)表等で働いておる国家公務員皆さんというのは、官民比較の面で国のほうが高いといってマイナスして足を引っぱられて、そのたびに落とされておる。これが長い間の人事院給与方式の最大の特徴です。だから賃金センサスで労働省が、これこれの金額なんだといってモデル賃金を出しても、幾ら苦労したって、このモデル賃金は、前に言いましたから言いませんけれども、追いつかない。つまりそれだけ年百年じゅう生活が苦しい、こういうことになっているというのが今日の公務員給与です。これは尾崎さん長年やっておられて、研究しておられて、百も二百も知らないはずはない。ここの問題は、将来の問題点としては考えなければならない。  具体的に言います。中教審の答申が出ました。賛否は別です。別ですが、学校の先生には特によけいに金を出すという。しかも皆さん意見書をお出しになって、来年一月から先生には四%つくわけでしょう。そうでしょう。そうすると、そちらのほうの先生たちの給料を高くしようとしたら、行(一)表、行(二)表を含めて引っぱらなければ、頭もそっちに持っていかなければ、総合格差方式でいくといってもやっていけやしません。それだけ落ちる。落ちるのを、人事院給与の門番だといって腕を組んで見ているというふざけた話はない。そうなると、こういうものは別ワクにしなければだめだ。さっき管制官の話が出ました。私も、管制官なり管制通信手当をふやせといって、尾崎さんにもずいぶんお骨折りをいただき、総裁にもお骨折りをいただいて、四十二年に管制手当をつけていただき感謝しています。感謝していますが、これはいうなら特別会計なんです。そうすると、これも運輸省にまかせて別立てにしなければ、尾崎さんもお乗りになったことのあるYS11のパイロット、あの方たちと、全日空や日本航空のパイロットと比べてごらんなさい。こんなに違う。寝物語に奥さんに食いつかれて、これではどうにもならない。そういうものまで一緒にほうり込んだら、俸給表は成り立ちませんよ。行(一)なんか年じゅう損ばかりしている、女房、子供に苦労さして。それをわかっていて、賃金勧告をお出しになる立場人事院が、いままで手を触れないというふざけた話はない。だからこういうマイナス要因なるものは除く。学校の先生のように、特殊な事情があってよけいつけなければならぬものは除く。別ワク、別立てにする。管制通信等については別ワクにする。こういうふうに、民間比較のしようのない税務だとか公安とかいうものは別にする。大蔵省もうしろにおいでになるけれども、そういう方式をとらなければ、近代的な民間給与の変化に追いついていけなくなる。モデル賃金はじたばたしても追いついていけなくなってきておる。こういう、もちろん一番中心になるところに一言も触れておいでにならぬということでは、完全実施後における勧告意味がない、ここまではっきり私は申し上げておきたい。御意見をいただきたい。
  40. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 御指摘のとおり、行政職(一)で比較をいたしました場合に、格差を完全に埋めるということにはなっていないわけでございます。比較職種の上で、海事職、あるいは教育職、あるいは看護婦さんなどの職種につきましては、官民比較をいたしますと、常に公務員のほうが上回っているという関係——一部は、たとえば初任給等については違いますけれども、原則として公務員のほうが高いという面がございます。そういう関係のあおりを食いまして、行(一)職の場合には、いつまでも完全に埋めるということにはならないといったような点が確かにございまして、そういう点につきましては、いろいろ反省すべきことはございますけれども、しかし行(一)の中でも、たとえば級地別に考えてみますと、五等級の無級地、いなかの場合にはほとんど格差はないといったような状況もございます。したがいまして、やはりそういう官民比較の問題はいろいろ問題がございます。さらに民間では男女格差が非常にございますけれども公務員の場合はないとかいろいろそういう点が問題がございます。  私どもとしましては、そういう比較方式につきましていろいろ検討しておりますけれども、やはり大きな筋としましては、民間にも公務員にも両方あるという職種について、比較を高いのだけとって比較をするというのもどうだろうかというような問題がございまして、低いものはとらないというような点もちょっと問題があるものでございますから、やはりそういう比較すべきところは比較していくことは適当なんじゃなかろうかというような気持ちで現在やっておるわけでございまして……(大出委員「そこまででいいですよ、時間がないから」と呼ぶ)非常に詳しい御指摘でございましておそれ入りますけれども、さらにそういう関係をよく勉強したい、このように考えます。
  41. 大出俊

    大出委員 委員長の御注意もありますからやめますが、いまたまたま尾崎さん、男女格差の話が出ましたので、これは聞き流せないのです。これは口にされましたから。私は、ここに公務員の方で女の方もおいでになるかもしらぬけれども、これはやはり人事院の責任があると思うんですよ。他人事のようにおっしゃられては困る。何事によらず主導型というのは、国へ右へならえということはあり得ることなんです。給与のあり方、政策について、民間を見ますとこういうことなんですよ。  男女格差を申しますと、四十五年七月のいま申し上げました労働省の賃金センサス、四十五年、昨年七月、初任給で男は三万一千七百円です。たいへん明確な数字ですから御記憶願いたいのですが、初任給、男が三万一千七百円、女が二万八千五百円。これが二十五歳になりますと、男は四万八千三百円、女が四万七百円。八千円近く違う。さて三十歳になりますと、男は六万四千八百円、ところが女が四万六千三百円。二万円から開いてしまう。三十五歳になりますと、男は八万一千七百円、女性は——女と女性と使い分けて恐縮ですけれども、五万一千九百円。三十五歳になりますと三万違う。これを単純計算で足して二で割られたんじゃ、公務員の男子はたまったものじゃないですよ。そうでしょう。そうすると、同一労働同一賃金といっている世の中なんですから、同一労働をやってないということにもなるかもしらぬけれども、ここらのところは、人事院総裁の名で長大論文を書いて、あるべき姿はこれじゃいけないならいけないんだということを、皆さんが言わなければいけないですよ。そしてこういう目に見えている男女格差をつけている民間会社が山ほどある。ただ、そこまで深入りすると労働組合がもたないとか、何か言えない場合もあるのだから、それを人事院が世の中に向かって、賃金政策のあり方として、男女格差というものはかくあってはいかぬということを言わなければいけない。諸外国の例もある。それを何もしないでおいてあなた方は、簡単に男女差がありますからなんということをおっしゃられては迷惑です。何のために人事院総裁長いことおやりになっているかと言いたくなる。せっかく人事院総裁が、新聞記者諸君が一年ごとでかわって認識の度合いが浅いからといって、一生懸命教育方式をお考えになって、公務員の賃金はなんということをレクチュアされる世の中なんですから、それならばここらのところは、尾崎さん、他人事におっしゃってはいけません。そういうところに非常に消極的過ぎる人事院のあり方、これは正しくない。そこらはもっと前に出ておっしゃる、それが私は必要だと思います。それはいけません。  高いところだけ比較する、そんなこと言ったって行政職(一)表の方はどうするんですか。年がら年じゅうしわ寄せを食って泣いていろとおっしゃるのですか。数を考えてごらんなさい。三十八万あるんですよ。四十八万の中で行政(一)表、(二)表だけで三十七、八万いる。公務員の分布図を見てごらんなさい。四十八万のうち行政(一)、(二)が三十八万もあって、残り全部ひっくるめて十万何ぼしかないのに、その三十何万の人たちが、あとの十万の特殊な方々のために頭を取られている。そんなに何年も何年も黙っていられますか。だからあえて言う。私は、きょうはぶっつけ本番だから持論が出るのだけれども、これだけは人事院も、先ほどのようなきれいごとでなしに、将来の給与政策の国家公務員についてのあり方、あるいは日本の賃金のあり方ということでものをお考えいただかなければ困ります。  最後に、手当についてちょっと一言申し上げておきたいのでありますが、住宅手当あるいは通勤手当、いろいろ手当があります。民間と公務の違いということをさっきおっしゃったのだけれども、まさにその意味では違いがある。民間の会社というのは会社の周辺に社宅をずっと置いている。通勤費がかからない。それから民間の場合には住宅手当出しているのは借家だけじゃない。公務員の場合には昨年制度をおつくりになったが、借家だけです。ローンで自分たちが一生懸命建てて、夫婦共かせぎで払っているところは顧みない。やはりこれは問題があります。だからそういうふうな点は、それこそ公務の特性というものをお考えいただいて、検討事項でございましょうから、その検討の成果というものを次の機会にはお出しをいただきたい。それこそ公務の特性ですよ。そうお考えを賜わりたい。  三つ私は申し上げました。三角のマイナス要因になっているところをどうするか。学校の先生の中教審答申もある。税務職だ公安だなんというのもある。もうここのところ長い年月にわたってマイナス要因が続いているということになると、ここの政策の問題が一つ。男女格差の問題が一つ。いまの手当の問題等がある。そういう意味で、最終的に総裁に、そこらを政策的にどうお考えになるのか。もちろんむずかしい問題です。だから先を急ぎはいたしません。いたしませんが、いまこの時点に立って、勧告完全実施が去年行なわれて、さてその次の第一年度の勧告が出たわけでありますから、この機会に、ある新聞が、将来に向かっての給与政策を人事院が出すべきであるなんということを書いている社説もあります。にわかに出ないことは知っています。知っていますけれども、いま私が申し上げた点は一つの大きな論点です。そこらをどういうふうにおくみ取りになっているか、お聞かせいただきたい。
  42. 佐藤達夫

    佐藤説明員 いずれも基本的なポイントに触れての御指摘であるわけです。われわれとしても、従来問題意識を持って考えてきていることでございますので大いに傾聴するわけでありますが、いまの行(一)と他の俸給表との関係については、たとえば税務、公安なんか、おっしゃるように別にしてありますから、その線には沿っているわけですが、お医者さんの場合なんかは、御承知のように格差がまだ残しっぱなしになって始末がつかない。看護婦さんは今度はこっちが逆になっているというようなことでございます。これは現実でございますけれども、大きな目で申しますと、やはり民間との対比の問題と、それから公務部内の均衡と申しますか、部内特有の配分の問題というものが、これは給与のポリシーとしては、御承知のように二本の柱になっているわけであります。そこの問題に触れる、これは相当きわどい点を含んだ問題であると思いますから、にわかにわれわれ右左に踏み切るわけにはいきませんけれども、確かに問題ではあろうという気持ちを持っておるということを申し上げておきます。  それから男女格差の問題は、これはなかなか頭の痛いところであることは事実でございます。しかしながら、先ほど大いにわれわれを御激励いただきましたけれども、どうもわれわれ民間との比較をたてまえとしておりますと、やはり民間の男女格差がどういうところから出ているのか。これは労働基準法にまっこうから違反した形として出ておるのかどうか。そういうことになると、これは労働省の問題ですので、相当労働省で張り切って調べていただかなければならぬことになります。われわれとしては、そこまではもちろん深入りはできませんけれども、その仕事、その仕事でつかんでいくほかはないということでございまして、結局公務だけで区別をすることは、これは明白に憲法第十四条違反になりますからそれはできないということで、労働基準法と民間との関係というようなことも一つのポイントではあるまいかという気持ちを持って臨んでおりますす。いろいろお教えをいただきましたが、非常に敬意を表して拝聴いたしました。
  43. 大出俊

    大出委員 ぜひこれは、公務を所管しておられる人事院総裁以下の皆さんですけれども、ただ、これの影響するところはやはり全体の賃金政策とからんでいるわけでありますから、あと追いということだけでは済まない。どういうふうに、あるべき日本の賃金の姿というものを将来に向かって位置づけるかという、そういうところまで入らなければ、私はほんとうの公務の賃金の安定はできないという気がする。そういう意味で、これはぜひ御検討いただきたいのであります。  それから、最後に大蔵省皆さんに、どのくらいの賃金勧告完全実施するという政府立場ですか。地方公務員の場合は、自治省お見えになってないと思うのですが、そこらのところを、予算的にこのくらいのところかかりますと、旧来は人事院がよく書いたのですけれども、そうでないことになっておりますから、お聞かせいただきたいと思います。
  44. 平井廸郎

    ○平井説明員 正確な数字はただいま調査中でございますから概数で申しますが、四十六年度の一般会計所要額は二千五十億程度でございます。それに対して五%計上額が七百六十八億でございますので、差し引きいたしますと、所要額といたしまして新規に手当てを要する分が千二百八十二億程度であります。これはちょっと概数でございます。  それから、特別会計分は四百五十億程度でございまして、それに対して計上額が百七十三億でございますから、差し引きいたしまして二百七十数億になろうかと思います。合計いたしますと、所要額は一般会計、特別会計合わせまして二千五百億程度、五%計上額が九百四十一億でございますので、千五百六十億程度が差し引きの所要額になろうかと思います。ただし、一般会計と特別会計との重複がございますので、純計計算をいたしますと、差し引きの所要額が千三百五十億程度になろうかと考えております。  なお、地方公共団体分でございますが、これは自治省が御計算中でございますが、承っております概数は、所要額が二千五百六十五億、五%計上その他手当て分を入れまして千六百七十億でございまして、差し引き所要額が八百九十五億という数字と伺っております。
  45. 大出俊

    大出委員 終わります。
  46. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 鬼木勝利君。
  47. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 佐藤総裁の御尊顔を久々に拝しまして、まことに光栄に存じます。先ほどから大出議員の御質問でしたが、私も同じことを一、二お尋ねしたい。同じことであるからといったって、これは、おぼしきこと言わぬは腹ふくるるわざ、お尋ねしないわけにいかない。  勧告実施時期の件でありますが、先ほどから大出議員からよくお話があっておったようであります。ちらちら承ると、従前どおりであって、検討はいたしております、しかしまだ結果は出ませんということでございましたが、どのように具体的に検討されたのか。また、いつごろあなたは結果を出すおつもりであるのか。昨年も国会で、私はあなたにお尋ねいたしましたときに、四月一日に実施すべきではないか、こういうお話は決して聞き捨てにはならない、一理なきにしもあらず、これは正直に申しまして、そういう気持ちでそういうお声が出てからずっと検討はしております——いまさら検討ということで、従前とおり、従前どおりで、これはもうずいぶん長い問題なんですね。本年突如として、こういうことが起こったわけじゃないでしょう。あなた、いつまでじんぜん日を延ばして、その場のがれ、その場のがれでいかれるのか、これは第一条にも載っておりますように、あくまで民主的に、しかも公務員を保護しなければいけない。公務員立場がいいように、公務員皆さんの生活が豊かになるようにという、保護をしなければならぬ目的がございます、こういうことまであなたは、三歳の童児に言い含めるように、言い聞かせるようにおっしゃっておる。それで、従前どおり、従前どおり検討いたします、検討いたします、同じようなことを毎年毎年繰り返されたんじゃ——そういう点について、私は前のあなたとの質疑応答の議事録を持ってきております。これはもう読まなくても、あなた方御承知のとおりと思います。私は相当時間をかけてお話し申し上げておる。どういうふうに具体的に検討されたのか、どういうわけで結論が出ないのか。すでに民間においては四月一日から実施しているんですね。これは率直に申し上げまして、五月実施といえば一月おくれになるんですよ。それをいかなる理由によって結論が出ないのか。どういう点で実施ができないのか。予算の面においても、これは四月にさかのぼっても——これは大蔵省にもお尋ねしたいのだが、たしか七十億か八十億があればできるのですよ。その点をもう少し、内容にわたっては大出議員が詳しくお尋ねになっておったから、私、繰り返しませんけれども、あなたのお考えをはっきり明確に、毎年同じような答弁でなくして、的確な御答弁を承りたい。温情ある人事院総裁だと、私は昨年そのときに申し上げたところが、あなたもそうおっしゃった、温情は私も十分に持ち合わせておりますと。ここに載っているのです。それをはっきり答弁してくださいよ。同じようなことばかり聞いたってしようがないのです。どうです総裁
  48. 佐藤達夫

    佐藤説明員 鬼木委員のお留守中にもだいぶ議論がはずんで、そのたびごとに申し上げてはきてまいりましたけれども、的確なるお答えをするような段階にはありませんけれども、大体どういう気持ちでおるのかというお尋ねのようであります。その気持ちを重ねて申し上げさせていただきます。  とにかく私どもとしては、これは相当重大な問題であると考えておるわけです。しかもそれは昭和三十五年以来ずっと五月実施勧告を申し上げてきた。最近になって、いろいろ四月のほうが正しくはないかという御議論が出ましたけれども、この五月実施を打ち出した当初は、もう全然それについての御批判に当たるようなお声も、世論にもなければ国会でもなくて、ずっと一種の安定した形で今日まで来ているというのが現実なのです。したがいまして、これは卒然として私どもが思い立って、この五月を四月に改めるという簡単な問題ではあるまい。私たちは公務員各位の福祉を至上の念願としてきてはおりますけれども公務員の待遇は、すべて納税者を含む国民大衆の負担によってまかなわれておる。これはやはり給与勧告といえども国民全体の方々の御納得がなければならないことだというふうにわきまえておるわけであります。したがいまして、新聞社説などにもしょっちゅう気を配っておるという態勢でおるわけであります。  ところで四月が問題に出てきた。この間も大出委員に申し上げたと思いますけれども、老練な政治家であるならば、重大問題として慎重に検討いたしますと言い続けてくれば、二、三年ぐらいは十分もつことでありましょう。そこまで申し上げたので、私としては、これは全然理屈のないことでもなさそうだ、一理なきにしもあらずというお答えを申し上げました。場合によっては一理あるくらいのところまで申し上げていいのではないか。無視すべからざる大きな問題であるということは自覚しているわけです。しかしながら、先ほど申し上げましたような大前提から申し上げまして、一理程度で卒然としてこれを軽々しく踏み切るべき事柄ではない。それよりもさらにこれは重要な事柄であろうということで、これも一理ということばを使いましたから申し上げますけれども、二理、三理、四理くらいのところまでちゃんと固めて、そして国民大衆が、なるほどそうかという御納得いただけるような態勢に持っていく。その説得性のある結論を得ませんと軽々しく踏み切れない。それには、まだちょっとそこまでは至っておりませんけれども、しかし、公務員各位の利益という点においては、これは疑うべからざる点でありますからして、われわれの立場から言うと、なるべくその一理、二理、三理というところまで持っていきたいのは、これは個人的な気持ちと言ったほうが正直かもしれません。そういう気持ちを持って問題と取り組んでおりますよということを、ずっと申し上げてきているわけであります。したがいまして、われわれとしては、さらに今後も真剣なる検討を続けていきたいという態勢を持って臨んでおるということでございます。
  49. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それは、いまあなたの御説明を聞きますと、すこぶる抽象的な御説明であって、むろんこれは、五月実施ということが、いまおっしゃったように、苦節十年でようやく実現した。過去においては、十月にやったり、九月にやったり、八月にやったり、答申は尊重しますと言いながらやらない。長い間皆さん方の御苦労は大いに多といたします。だから、その五月から実施さえできないときに四月ということを言っても、それは通らないのです。ですから突如とおっしゃるけれども、決して突如じゃない。あたりまえのこと、当然のことなのです。だから、それを検討しておるとおっしゃるけれども、私は、こういうことで突き当たった、あるいはこういうことで結果が出なかった、こういう研究をしたけれどもどうもうまくいかなかったと、この点この点この点でこういうわけでまだ結果が出ていないと、具体的に説明をお願いしたい。ただあなたのお気持ちだけを私聞いているのじゃない。それは人事院総裁として、当然公務員に四月から実施してあげなければならぬという温情があなたにないということは言えない。あるはずだ。なければ人事院総裁としての資格なし。あなたもみずから、私は温情を持って臨んでおりますと言っておられるのだから、それは私は認めますよ。しかし、どのように検討されたか。ただことばで、検討している、検討しているというような抽象的では承知できない、これを申し上げているのです。ところがその御答弁がない。大出委員からもずいぶんお話があったようですけれども、私はあなたのいまの御答弁に対してはいささか納得がいかない。  人事院民間給与にならって、いわゆる民間追随といいますか、ことばが悪いかもしれぬが、追随主義でやっておる。であるならば、民間改定時期は四月一日ですから、で、四月一日の時点で調査されておるのだから、当然四月一日にさかのぼるべきであると私は思う。ことに現業職員に対する仲裁裁定は、十年くらい前から四月一日実施ということになっておりますよ。人事院傘下の公務員だけができない。そういうあなた方の具体的に検討された御苦心のあとを承りたい。まだそういう点までは行っていないなら行っていないでいいですから。抽象的にぼかしてあいまいもこたる御答弁じゃ、私はちょっと納得できない。
  50. 佐藤達夫

    佐藤説明員 ぼかしておいたほうが結局いいのではないかという気持ちがありますのですけれども、ただ、あまり開き直って御追及になりますと、われわれも、先ほど触れましたように、昭和三十五年以来ずっと五月一日を堅持してきたわけですから、五月一日が間違っておるのじゃないかというおしかりに対して、今度われわれとしてはやはり弁明をしなければならぬ立場になるのです。しかし、事はそういう現状維持的な考えではなく、革新的な方向に向かっていかなければいけないという気持ちでこれを謙虚に検討すべきだろうという気持ちでおるわけであります。  ただ、いまおことばにありました、民間は四月に上がっておるじゃないかとおっしゃいますけれども民間は最近だいぶん四月に上がる企業がふえてまいりましたけれども、春闘、秋闘といいまして、いまでもまだ秋に賃上げをしておる企業は相当ございます。あるいは公労協の場合には、組合側は十二月一日に上げてくれ、一月一日に上げてくれということを主張して、そして四月に裁定が下ったというケースもございますものですから、いまのような点をいろいろ掘り下げて御論議になりますとあまり——要するに、あまり掘り下げてこちらも御議論申し上げないほうがいいのじゃないかということですね、結論は。
  51. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 ぼかしておいたほうがいいだろう、開き直ってお話しをすれば何でも言うことがある——それは大いに私開き直ってひとつやっていただいてけっこうだが、何しろ時間があと二、三十分しかありませんので、これはいずれまた沖繩国会でも私十分申し上げたいと思いますが、しかし皆さん方が、民間給与にならった。すぐに民間民間とおっしゃるけれども、私は、そういう点をおっしゃるならば、これはまた話が違いますけれども、今回のベースアップも、一一・七四%引き上げるとおっしゃっておるけれども民間の春闘相場の一六・六%、公労委の仲裁裁定は一四・九%、こういう点から考えても、これは民間民間だとおっしゃるけれども、ずっとまだ下回っておりますよ。これは皆さん方もよく御研究なさっておると思います。それで、今回のは非常に上薄下厚だというようなことをおっしゃっているけれども、決してそうじゃない。ですから民間に合わせるのだとおっしゃるならば、これはぜひ四月にさかのぼって民間と同様に実施をしていただきたい、こういうことを重ねて要望いたしておきます。  でございますので、いずれにしても、次回は大いに前向きに検討するというように理解してようございますか。うしろ向きに検討なんということはあるわけはないのだから、前向きに検討するということで理解してようございますか。どうです。
  52. 佐藤達夫

    佐藤説明員 先ほど申しましたのは非常に遠回しに申し上げましたけれども、われわれをして前向きに検討させるようなムードでひとつやっていただきたいということです。
  53. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 また来年が楽しみでございます。来年また相まみえますから、そのときをお楽しみにどうぞ。  次に、これも大出議員からお話が出ておりましたので、二重になるようでございますが、期末勤勉手当についてです。「管理監督の地位にある職員の一部に対する期末手当および勤勉手当について、その職責に応じ、算定基礎とする給与俸給月額の二五%以内の額を加えることとすること」、今度勧告にこういうふうに出ております。いわゆる特別給だと思いますけれども内容については、先ほど詳細にお話が出ておったようですから繰り返しませんが、どういうお考えのもとにこういう処置をとられたのか。一般の人は、本俸に扶養手当、それから調整手当、これの四・八、こうやっておる。ところが特別給だけは、二五%を本俸にかけて、それをプラスして期末手当、こうなっているのですが、特別給だけにのみこういう手当をやったその根拠、理由ですね。つまり上厚下薄がここにはっきり出ている。その的確な根拠を、だらだら言ってもらわぬでいいから簡潔に御答弁願いたい。
  54. 佐藤達夫

    佐藤説明員 問題の根本は、御承知のように、私どもの盛りつけております給与というものは民間比較をしますけれども、これは特別給は別立てでやっておりまして、月給分を民間と突き合わせて、それで民間と合ったというような立場できておったわけです。特別給につきましては、四・七カ月分というような民間の総合した水準をそのまま、上下階層を問わず公務員にはかけておった、これが現実でございます。ところが、民間における特別給支給のやり方を見ますと、階層別にきわめて顕著な傾斜をしておる。たとえば、事務部長でいえば七月分もらっているのが係員でいえば四月分というような、その間に課長とかなんとか入っていて、ずっと傾斜がついておるという現実をとらえて、今度は特別給を含めた年間の総所得を民間と突き合わせてみますと、特に、たとえば民間事務部長あるいは課長に当たるような人の面は、月給のほうでは合っておりますけれども特別給を加えて年間所得で計算すると、はるかに足元にも及ばないという顕著なる事実があるわけです。したがいまして、昨年の報告にその点を指摘をして、研究の必要のあることを申し上げたわけであります。  われわれとしては、民間と合わせるというたてまえをとっている以上は、そういう点も含めて民間と合わせないと、たとえば人材防衛というようなことばがありますけれども、ひっこ抜かれる、民間に流れるのを防ぐという意味でも、そのクラスそのクラスごとに民間と見合った給与を保証しないと、これは筋としてもおかしいということから、民間ではどういうやり方をしておるかというところを調べてみましたところが、階層別に頭から職務を念頭に入れて割り振っておるのもありますし、また一方においては、役付手当というのを算定基礎の中に入れておいて、そしてその役付手当を入れた俸給に何カ月分というのをぶっかけておるというやり方をとっておる民間が相当ある。そこで私どものほうも、とりあえずその解消の方法としては、役付手当に相当するものとしていわゆる管理職手当というものがございますから、それを本俸に入れて扱おう。そういうことにすれば多少いまのギャップが埋まるだろう、これは名案だろうというつもりで今度御提案申し上げておるわけであります。これは別に、配分ということばをお使いになると非常に語弊があるので、若い人あるいは下のほうの人の分を取り上げてそっちのほうに回すというんじゃなしに、そのほうの原資はまた別にそれはそれとして出てくるものというふうに考えておるわけであります。まあ、あんまり一挙にということもどうかと思いますので、管理職手当はいま一番トップが二五%になっておりますが、それを二〇%だけ本俸に入れよう、二〇%口は一〇%ということでいっておるわけです。それから適用者の範囲も、本省課長級以上、一等級、二等級以上の人たち限定してまいろうというのが今回の提案の趣旨でございます。
  55. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 大体それで趣旨はわかりましたが、そうしますと、本省の課長級以上、地方の課長は入らない。つまり管理職の一種、二種、まあ二等級以上、こういうことになると思いますが、大体こういう期末勤勉手当つまりボーナス、こういうものを民間公務員とを比較すること自体が、その基準となる根本の考え方が違いやせぬかと私は思うのですよね。いいですか。会社というものは、御承知のとおり営利本位。ですから、部長級とかあるいは役員、そういう人たちが企画、運営をされて、非常に利益をあげたということによってボーナスがおのずから違ってくる。いわゆる会社運営自体の業績によってそういうボーナスを支給するという考え方であるが、局長とか部長、課長は、一般公務員と比べてどういう業績があるんですか。   〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕 何か公務員を営利本位のようなお考えのもとに、会社ではこうだ、公務員と会社の上のほうのあれとあまりに開きがある一しかし公務員には、別に重役がおるわけでもなければ、専務がおるわけでもない。そういう点で比較をされるということは、私は少々無理ではないかと思うんですがね。その根本的なあなた方のお考え——いや、私はよくすることを悪いというんではない。よくしてもらうのはけっこうだけれども、地方の課長なんか恩典に浴さない。では、二等級とすぐ下位の人とは、どれだけ業績が違うか。そのために指定職として、本俸も日ごろよけいやっているのですよね。どうも民間のそういう役員と比較をされるというところに、いささか私は納得いかない。会社自体は業績によってボーナスの支給のしかたが違ってくる。それをそのまま公務員に移して考えていこうという。では次官や局長や課長はどういう業績があるのか。そして二等級以下は業績はないのか。ここに私はどうも納得がいかない。総裁いかに御答弁なさいますか、承りたいと思います。
  56. 佐藤達夫

    佐藤説明員 そういうお考えのあり得ることは確かにあるだろうと思います。ただ、会社のトップクラスであれば、また話は多少お話に近いところも出てきますが、ただいま申し上げましたわれわれの調べた表は、事務部長、事務次長、事務課長、事務課長代理、係長、主任というようなところまで傾斜がずっとついておるわけです。それがいまの、会社の業績をあげたかあげないかという点で、トップならまた別として、そういうところまで傾斜をつけるという理論が立つかどうか。これはよけいなことでありますけれども、そういう気持ちをまた一方においては持ち得るということを申し上げてよろしいと思います。しかし、何せ積極的に民間に合わせようというのがわれわれの態勢ではないので、あまりに隔たりのひどいところを消極的に、多少形をつけていかぬと——人材の防衛ということばを使いましたけれども、やはりそのランク、ランクで大体民間の見合うところには給与を合わせておきませんと、これはひどいことになるのだという面が、むしろ現実的なわれわれの考え方であります。結局、積極的に合わせようというよりも、消極的にあまりのアンバランスを調整しようというところに主眼があるというふうにお考えいただければけっこうであります。
  57. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それはあなたが会社の実態をまだ御存じない。これは失礼な言い方だけれども。会社あたりで実際に運営をして会社の業績をあげるのは、課長だとか部長だとか係長、主任ですよ。重役だとか取締役だとか、ああいう人たちは、ある一定の方針を踏んで監督するかもしれませんけれども、実際に第一線においてその会社の営業方針に沿って動いているのは、部長、課長以下ですよ。これが中心です。それで、その会社が非常に利益をあげるかあげないか、販売、営業すべてそういう点はみな一手に握ってやっているのですよ。ところが、公務員の課長あるいは部長が、では昨年からことしどういう業績をあげたか。民間のボーナスは全部業績によってボーナスを云々しておる。したがって、会社が非常に営利が思ったとおりいかない、ことしは昨年よりも非常に運営がよくない、言いかえれば利益が少ない、こういうときにはボーナスが少なくなりますよ。結局その業績によってボーナスを渡す。公務員というものは、この課長はこういう業績をあげた、この局長はこういう業績をあげた、だからこれは去年よりもどうだこうだ、そういうことで私はやるべきじゃないと思う。そういうことも考えられるかとも思われますけれどもなんて、冗談じゃありません、あなた何を言っているのです。そういう考えのもとにあなたはやっているのでしょう。考え方はそれよりほかにないじゃないですか。何か特に特別職の人にはこうやらなければならないという的確なあれはない。民間のそういう業績をあげている人と比較している。それでは一般の方がかわいそうだと私は言いたい。じゃ二等級以下の人は、一種、二種以下の人は全部業績をあげていないということになるのか。それじゃかわいそうじゃないですか。しかも本省の課長までで、地方の課長にいくともうだめだ。どうですか、総裁
  58. 佐藤達夫

    佐藤説明員 いま鬼木委員がおっしゃることをあまり強調されますと、一体、特別給民間と合わせるのはこれいかにということになる。〇・何何%ぶった切るのはあたりまえじゃないかという話のほうに今度はつながっていく。それだけに、これは確かにデリケートな問題だと思います。私どもは、お話お話としてわかりますけれども、しかし、いま申し上げたような趣旨で、とにかく対応する役職を見てあまりにバランスがひど過ぎるというところを、少し遠慮深く調整するくらいのことはよろしくはございませんかということを申し上げているのです。   〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうしますと、今度は私はこういうふうに申し上げたい。あなたが民間民間だとおっしゃるならば、じゃ二等級以下にそういうふうに差別をつけられるならば、一般公務員の方で二等級以下の方には、争議権を与えなければならぬということになるのですよ。一般の人にはかわいそうじゃないですか。だから私は、民間と同じように一般の方には争議権を与える、そこまで発展していくことになるのじゃないか。民間と同じようにやはり争議権を与えるべきではないか。その点はどうですか。
  60. 佐藤達夫

    佐藤説明員 争議権の話には、これは直接つながるのには早過ぎると思いますのは、先ほど申し上げましたように、たとえば特別給だけで民間の例を見ましても、上が七カ月分、下が四カ月分ということになっております。いまお示しのような人々に対して今度切り下げるかというと、われわれは切り下げないわけですね。いままで有利に温存されてきたその地位をそのまま温存していって、上のほうだけ水増しする、しかもその原資はよそから持ってくるというたてまえですから、争議権の問題にはまだちょっと早過ぎるのではないかと思います。
  61. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 争議権の問題なんというものは早過ぎるなんて、あなた方がそんなのんきなことをお考えになっているから、いつでも後手後手になる。当然こういうことが予想されます。すでにそういう論議がもう行なわれておりますよ。その上に差別して——われわれを差別するならば、民間と同じようにするというようなたてまえにおいてそういうことをやられるならば、われわれに民間と同じように争議権を与えてもらいたい、ちまたにそういう論議がすでに起こっておるのですよ。早いとは何ですか。ずいぶんあなたは感覚がずれていますよ。もう少し時代の流れをキャッチすることに敏でなければいけない。そういう声がすでにちまたに満ちている。  ですから、都合のいいときには民間に合わせるのだ、都合の悪いときには、そんなことはまだ飛躍した論議で早過ぎるというようなことで、一方的にあなたは何でもお考えになっていくのじゃいけない。大体、人事院勧告でも、もう少し過程、経緯というものをはっきり示して、ただ結論だけ出すのじゃなくして——結論だけを出して、それで皆さんこういうふうにやりますよ、御納得いただきたい、私どもは温情主義をもってやりましたというような、ただ結果論だけでやるのじゃなくして、経緯、資料を出して、こういうわけでこうでこうなった——ただ一方的に結果論だけばっと出して、どうもそういう点においては人事院はまだ考え方が民主的ではない。山中総務長官も見えているけれども人事院からのこれが出てきてまだ何だから、おれからどうも言うわけにいかぬといってすぐ逃げられるから、総裁、もう一度その点について御答弁願いたい。
  62. 佐藤達夫

    佐藤説明員 総務長官は決して逃げられるような方じゃないと私は思いますけれども、私が受けたお尋ねですから私からお答えを申し上げざるを得ないわけです。  これは何か結果論だけだとおっしゃいますけれども、いま御説明した特別給民間関係などは、さっき表が多過ぎるといってしかられたぐらいに、われわれの参考資料の中にはたくさん表をつけてごらんに入れて、かつ御納得のいくような御説明も申し上げているわけです。ただ、私も口べたですから何ですけれども、これが直ちに争議権の問題には——もっとこれは次元の高い大きな問題として取り上げられるべき問題だろうという気持ちがしたものですから、そういうことを申し上げて、これは口べたのいたすところで、御了承をお願いします。
  63. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 鬼木君に申し上げますが、時間も参りましたので、よろしくお取りまとめを願います。
  64. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 まあそうせきなさんな。  それでは総裁、あなたはいま民間とのことを盛んにおっしゃっておるが、今後三等級、四等級にまでこれを広げていくおつもりがあるのですか。ここまででとめるという、あなたのただ一方的な考えですか。これは大事なところですよ。笑いごとじゃないですよ。総裁、その点をひとつ御答弁願いたい。
  65. 佐藤達夫

    佐藤説明員 この参考資料にあります表でごらんいただきますと、やはりその辺のところにも格差はございますけれども、私は先ほど申しましたように、顕著なところをある程度ここで手当てをするという態勢で出発しておるわけでありますから、そこまでどうというようなことは考えておりません。
  66. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 そうすると、私がさっき言ったように、二等級と三等級のボーダーラインといいますか、今度下の方とどれだけの業績に違いがあるかと私は言っているのです。一種、二種だけには二〇%も増す。それ以下はもうばっと切ってしまう。その根拠があまりにも薄いと私は言っているのです。下の方は、すぐ下位の方はあまりかわいそうじゃないですか。だから将来は、これを徐々に三等級、四等級にまで幅を広げていきますというのだったら、私は皆さんも了解されると思うのです。納得されると思う。非常に温情主義、温情をもって今度の勧告もされたとおっしゃっておるけれども、案外冷たいことをおっしゃるのですね。そして新聞なんかにはえらい書き立てて、上薄下厚だなんて、何が上薄下厚だ。上厚下薄じゃないですか。
  67. 佐藤達夫

    佐藤説明員 ばっと切り拾ててというて、今度は別に下のほうの給与をばっと切り拾てるのではなしに、先ほど申しましたように、従来民間に比べると相当有利な地位をお占めになっておったその地位は温存してまいりましょうというわけですから、ばっとも何も、そのところは考え方は全然ないわけでございます。しかし、お話の点は相当きわどいところに触れておりますから、十分承りまして、なお将来の検討に資したいと思います。  ただ、上薄下厚というのは、私どもが言ったように皆さんお受け取りになっていますが、私どもは上薄下厚ということばは使いません。パーセンテージにおいてこう、額においてこう、その言いませんと、また、上薄下厚じゃないじゃないかと必ずしかられることは、前々からの経験でよくわかっておりますから、上厚下薄だとか、上薄下厚だというようなことばは、非常にあいまいなことばでございますから、私どもは使わない。世の人がこれをどう見るか。何も上薄下厚が美徳であって上厚下薄は悪徳だというのではない。筋に合っているものが美徳だという考え方に徹しているわけでございます。
  68. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 さもあらんかと思って、私はあなたが言ったということは言っていない。よくものごとを考えて、私の言ったことをよく聞いておきなさいよ。年のとりがいもない。  それは新聞なんかは書き立てた。やはり根拠のないところは新聞書きませんよ。やはりあなたたちがうまいこと、そういうようなことを言うから書いているのですよ。直接あなたが新聞に発表したと言うと、あなたが必ず文句を言うだろう。私はそのくらいのことはわからぬ男じゃないですよ。だてに年はとっていない。そんなつまらぬことを言うのじゃない。ですから、いまあなたが言われたように、将来はまた——また検討ということばが出る。佐藤首相は慎重に慎重と言うが、あなたは検討ということを毎年毎年言っておる。将来は三等級、四等級にも検討する用意、準備がありますか。もう一度その点を……。
  69. 佐藤達夫

    佐藤説明員 とにかくいまのお話に出た点は、今後の検討ということばを封ぜられましたけれども、やはりこれはボキャブラリーがほかにありませんから、なるべく検討すべき問題として十分心にとめておきたいと思います。
  70. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 鬼木君、時間が参りましたので、ひとつおまとめを願います。
  71. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 あなたは、先ほどから私がたびたび言っておるように、大出委員からの四月実施の問題でも、あなたは検討する。昨年の私の質問に対してもあなたは、検討する、こう言っておる。これから来年はひとつ——来年のことを言うと鬼が笑うといいますけれども検討するとおっしゃるならば、かようかくかくしかじかで、こういうわけでこのように検討したけれども結果はこうだ、遺憾ながらこういうわけだからまたお待ち願いたいとかいう具体的なことをひとつやってもらわぬと、ただ、検討する、検討する、検討するというような、そういう月並みなことばでその場限りの答弁では、われわれは承知できない。  承るところによると、あなたも近いうちに御任期だとかいうけれども、あるいはまた二年か三年は延びそうだといろ話も聞いておる。それは真実かどうかわからぬけれども、私どもは、あなたは人事院総裁としては、今日まで大過なく、ほんとうによくやられたと思う。われわれも尊敬しておりますので、永久にやってもらいたい。あなたでけっこう。あなたでと言うとはなはだ御無礼であるが、結論においてはあなたをほめておるのだからね。それはわかってもらいたい。いいですか、そこで、われわれがあなたを尊敬しておるなら、尊敬に値するようにやってもらわぬと困る。ほとんどわれわれは単なる人事院総裁の言いなりになってしまう。それじゃ困る。だから、これはまた、来年は検討するということを私はお聞きしましたので、これははっきり速記録に載りますから、また来年相まみえましょう。またこの時期に相まみえることにいたしまして、それではまだ二、三問お尋ねしたい用意をしてきておりますけれども、非常に時間に制約されて困っておるのですが、これは通常国会でなくして、今度のいわゆる沖繩国会、十月の国会で十分審議していただいて、直ちに実施できるように、支給できるように補正予算でも組んでやるようにしていただきたいと思うのですが、これは総務長官、どうですか。これはあなたにお尋ねしていいでしょう。
  72. 山中貞則

    山中国務大臣 これはいい悪いじゃなくて、私自身の範囲でございます。  私は、この勧告政府としていただきましてから、さっそくその日の午後、給与関係閣僚会議を招集いたしまして、その席において、勧告内容を私から説明し、そして政府の姿勢として、勧告内容どおり完全実施すべきものを給与関係閣僚会議としては確認いたしました。すべきであるということであります。最終的には閣議決定を来週の火曜日に行ないたいと思っておりますが、目下のところ、それに対して閣議決定を阻害するような要素は何もない。したがって、給与関係閣僚会議の方針どおりにきまるであろうというふうにお受け取りいただきたいと思います。  さらに、これは大出君の質問にも答えてあるわけでありますが、なるべく早く公務員支給してあげたい。できれば、ことしの予算編成でも、当時の福田大蔵大臣と私との間で、財政法その他の解釈をしながら内払いの方法検討してみたのでありますが、いかんせんやはり、法律が国会を通過したという事実がありませんと払えないということがはっきりいたしましたので、やむを得ず昨年の様式を踏襲いたして予算を組みましたが、しかし、国会が開かれた一番近い機会に、公務員の方々に、同じさかのぼるにしても手取りを早くしてあげるというのが、きまったことに対するまた愛情ある配慮だと思います。でありますから、次の沖繩臨時国会といわれるであろう国会において、沖繩関係法案以外は提出をしないという私どもの党の事情もございますので、そこらのところは、公務員に対して出さなければならないものでありますから、それならば一日も早く出してあげたいということで、沖繩国会、しかもそれの冒頭に衆参両院のできれば御一致をいただいて、すみやかに支給の措置ができるようにしたい。予算上は可能なわけでありますから、法律さえできればよろしいということで、そのようなことをもって党と折衝するということも給与関係閣僚会議においてきめておる次第でございます。
  73. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 総務長官の非常に積極的な御意見を承って、私はまことにありがたく存じます。いまおっしゃるとおり、公務員諸君が、一日も早く支給していただきたいというのは一人漏れなくみな感じておることでございますので、人事院から勧告が出た以上は、いまおっしゃるとおり、全面的にこれを実施するという長官のお考えでございますので、長官の政治的手腕によってぜひこれを——党の方針もありましょうけれども、自民党ただ一党の問題ではないんです。全国民の問題でございますので、私どももできる限り努力いたします。御協力申し上げますので、いまおっしゃったとおり、すみやかに十月の国会において、冒頭にこれを出していただいて通過さしていただきたい。一日も早く公務員皆さん方を喜ばしていただきたい。くれぐれもお願い申し上げておきます。いまの御答弁で私も大いに意を強ういたしました。さすがに山中総務長官、機を見ることまことに敏であります。まことにけっこうであります。ではこれで私、質問を終わります。どうも失礼しました。
  74. 大出俊

    大出委員 関連質問さしてください。
  75. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 大出俊君。
  76. 大出俊

    大出委員 山中総務長官にちょっと。  いまのままでおさまると、ちょっと私のほうが困るものですから申し上げたいんでありますが、先ほど来質問人事院総裁に続けてまいりまして、事の中身を明らかにいたしてありますが、一つは、実施月四月一日を私ども考えてきたわけでありますが、この官民格差調査を四月にしている。したがって五月実施をする、こういうふうに表現されているんでありますが、四月調査をやるのならば何で一体四月に実施できないのかという問題がまず一つあるということを、これはさっき論議いたしましたが、したがってこの点が一点。  次に、一時金なんですけれども、たいへんな傾斜配分になっている。これは了解するわけにまいらない。したがって、この点については、私どもとしては修正をしていただきたい。  もう一つ、一時金〇・一七という数字が官民格差の面では出てきているわけでありますけれども、〇・〇七を切ってしまったということ。これはたび重なるわけでありまして、〇・〇八九まで切っている先例もある。ところで、過去昭和三十七年には〇・〇五という勤勉手当の数字を人事院勧告出したことがある。〇・〇五という数字にしたわけではない。だから、〇・一七という数字になっているわけでありますが、七という数字がはんぱだというならば、〇・一五だっていいわけであります。そういう意味では、〇・〇五というのは、今回国会という場で修正をしてもらいたい、こういう考え方等々がございます。したがいまして、次の国会を目ざしまして、そういう私どもの準備をして修正案出したい、こういうふうに考えているわけであります。  いま長官の御答弁の中で、沖繩国会という特殊な国会で、党が他の法案を出さないという方針もある。しかし、あえて必要なんだから出せ、こういう折衝をやれ、かつできれば衆参両院一致をもってというお話が出てまいりましたので、ちょっとそう簡単にまいりませんので、私どもはそういう態度修正案を提出をして、完全実施をおきめになった政府の昨年の態度から、本年初めて新たな角度からの勧告というふうに受け取っておりますから、そういう意味で実は修正案出したい、こういう気持ちでございます。まだ具体的な中身はまとまっておりませんけれども、そのことをあらかじめ申し上げまして、先ほど長官は、できれば衆参両院のというおことばがあるのですけれども、そのことにかかわらず、私は、政府勧告を受けて一番近い国会給与法改正案を出す責任と義務がある、こういう立場からだろうと思います。したがって、そういうのが一番ひっかかりますから、衆参両院という点は私どもそう簡単に考えておりませんので、そこらを踏まえてもう一ぺん御答弁願いたいと思っております。
  77. 山中貞則

    山中国務大臣 私の言ったのは、簡単にやれということではないんで、衆参両院の同意を得た後に法律ができるわけですから、そうすると、支給はすみやかに開始できるわけですね。そういうことを希望するというわけです。それに対して、いま社会党の立場からでしょうが、野党から修正案とか何かおつくりになるなら、これは国会のことですから、私どもとしてはそのときの問題として、かりにこれが全会一致で修正案が通れば、そのとおり政府はしなければならない義務を負うわけですから、その仮定の問題についての問答をしようとは思っておりません。したがって、私の言うのは基本的な姿勢であるということであります。
  78. 大出俊

    大出委員 かつて給与法を修正したこともありまして、一回先例はあります。したがって、私どもそういうふうに考えておりますが、基本的な政府の姿勢として、衆参両院一致云々、このようなことでなしに、できるだけ近い国会給与法の改正も出すという、これが政府の基本姿勢であり、党との関係においてもそういう点で努力をし提出できるようにする、こういうように受け取っておいていいわけですね。
  79. 山中貞則

    山中国務大臣 まさにその表現どおりでございます。
  80. 大出俊

    大出委員 了解しました。
  81. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 受田新吉君。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 今度人事院勧告並びに報告書を拝見しまして、先般の委員会で論議したポイントについてのある程度の満足が得られ、また同時に予想外の不満が見られる内容であることを指摘したいと思います。  基本的な問題点だけで質問を終わりたいと思いますが、第一に、こうした人事行政、人事管理上の基本問題として、総理府に人事局がある、同時に人事院が、長期にわたって公務員のよき保護者として、その機関の任務を果たしてきておるという関係について、ちょっとだけお尋ねしたい点があるのです。  総理府に人事局がありまして、そこで公務員の服務関係を含めた重大な基本問題にあわせて、行政各部のこうした人事行政上の総括的、調整的役を果たしていることは御存じのとおりですけれども人事院が持つ公務員立場上の公正な権利を確保すること、あるいは保護を確保することというようなこととの関連をちょっと伺いたいのです。  人事局の、つまり総務長官の部下である局長の任務の中に、行政各部の総括的、調整的人事管理上の問題が含まれるとするならば、特別職を含み、また都合によるならば特殊法人の公務性を強く持つものまでも広く含めた、広い意味の総括的調整責任があるのかどうかということでございまして、人事院の持つ公務員に対する公正な保護を加える立場とあわせて、行政上の運営の相違点を明確にお示しを願いたいのです。
  83. 山中貞則

    山中国務大臣 人事院は、自分たちのよって立つ法的な根拠の分野に従って、その範囲内で勧告を出されます。したがって、全体の公務員の問題から見ますと、たとえば、文部省の定時制通信教育の手当、あるいは産振等の手当については、勧告の対象外である。人事院と相談された教特法に基づく四%の支給について、産振並びに定通の手当等の関係については人事院は触れられないというような問題等が存在しております。このことは私も、これは文部省がいまの段階では、直ちに、同時にこの配慮をしなければいけない。しかしながら、将来は、人事院勧告の中に、そのようなものが全般的なバランスのとれたものとして取り入れられるように配慮をされたらどうかということを、文部大臣に申し入れております。  あるいはまた、今回の勧告の中で、現在最も国民の人心に不安を与えております航空関係の事故、ニアミスの防止、こういうこと等について、管制官の不足、あるいは管制官の異常は心身ともに消耗し尽くすいわゆる反射神経にたよらなければならない、三十歳をこえたら下り坂というような特殊な職場に対する配慮のしかた等について、一応人事院事務当局としては、ことし先取りをして、これは人事院の先見の明ということもありましょうが、若干の手当てがしてあるので、したがって夜間の看護手当の五十円引き上げについては、上限ですけれども人事院規則で九月から実施をするように配慮をするが、この管制官については少しおくれるかもしれないというような感触等がございました。しかしながら、やはり今回、今日のこの環境から見て、航空交通の基本的なルールの確立も必要ならば、それに従事する諸君の特殊な勤務形態というものを配慮して、そのようなものが勧告の中身にあるとするならば、その実施もなるべくすみやかなるがよろしい。しかしながら、これは人事院段階大蔵省と詰めなければならない問題で、困難性がありましょうから、私も大蔵省のほうに、給与担当大臣としてやや出過ぎておりますけれども、いいことをするわけでありますから、人事院の要望があったら、それに沿ってなるべくすみやかに年度内に管制官の手当も五十円引き上げるようにしてほしいという折衝をいまいたして、応援をしておるところであります。したがって、そのように足らない点があることは私も認めますが、これは、気がついたら応援する形なり、あるいはそれらのあっせんをとる形なり、やはり給与担当相としての責任を果たさなければならないと考えておる次第であります。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 熱心な御意見です。決意のほどを承ったわけですが、人事管理上の基本的な方針、計画というようなものは当然人事局がなさり、そしてそれに対する必要な総合調整というものがそこから自然に生まれてくる。人事院公務員の、つまり職員という人事行政上の問題の公正を確保することと公務員の利益を保護するという大きな柱を持っておるわけなんです。そこのかみ合わせをよくやることで、先ほどから論議をされておる問題点の解決が可能であると思うのです。  そこで、基本的な問題を前提としたお尋ねをするわけですが、人事院勧告をしない分野について、長官は人事行政上の計画性を十分発揮し、その調整、統一をはかるという大所高所からの任務を遂行するための完全実施プラスアルファの法案を出すということも政策的には可能であるということは、いまのお話で私わかったんです。つまり人事院勧告完全実施した上に、なお政府として総理府が十分勘案してプラスアルファで提案すべきものがある場合には、それは出してもいいんだというような内容を含んだお話だと承ったんですが、さよう了解してよろしゅうございますか。
  85. 山中貞則

    山中国務大臣 それは違います。人事院勧告したものを完全に実施する責任が給与担当大臣にある。しかし現行のただいま例をあげましたような点が存在することにかんがみ、それらについては、相なるべくんば人事院勧告の中に組み入れられることができるように、人事院勧告ができるように配慮してほしいという連絡をとり、そしてそれまでの間は、定通あるいは産振の手当等について、文部大臣が直ちに、このような勧告があった対象外の人たちに対して配慮をされるようにということを申し上げたということであります。したがって、勧告したもの以上に、あるいは勧告したものの一部を切るとかいう人為的な操作、政治的な操作はいたさないたてまえを守ることのほうが法律上正しくはないかと思います。
  86. 受田新吉

    ○受田委員 人事院勧告完全実施する、これはたてまえとして私もうなずけるわけです。ところが、人事院勧告なさった中になお漏れた問題で、政府としては早急に政策的にプラスアルファの措置をとるべきであるというような場合には、政府案として勧告プラスアルファを加えても、これは人事行政上差しつかえないと私は考えるのですが、人事院勧告せざる限りは、こうした給与関係の一切の法案はプラスアルファで考えることがないというきびしい原則でおやりになるのか。政府は別途プラスアルファを出したって決して差しつかえないと私は思うのでございまして、人事院勧告の線に——たとえば教員の待遇なとについては、人事院は今回でもりっぱな勧告をしてないのです。そうして文部省がかってに案を出そうとするときには、総務長官を抜きに総裁のほうへ交渉されるというようなこともあるわけで、そういうことも考えるならば、勧告の中に漏れた大事な問題があるならば、かつて寒冷地手当などが独自の立場で提案された歴史もあるわけなんでございますが、そういう意味で、国会で独自の立場で地域給の法案を出した往年の歴史などにもかんがみて、つまり人事院勧告プラス政府案というようなことをやって差しつかえない。決して、それが給与体系を乱したり、人事管理上の問題に根本的な間違いを起こすということは、あり得ないと私は思うのです。議論になることですから、これはそのままで見解としてひとつ傾聴願っておけばいいと思いますが、掘り下げてお尋ねしたいことがあります。  人事院総裁がせっかく御努力されたにかかわらず、今回も教職員初任給調整手当等についての根本的な解決がされてない。研究職のような高度の知性と技術を必要とする皆さんに対する報いも全くないと言うていい。つまり一般的な調整しかされていない。医師の処遇だけは特別調整がされていること、もう申し上げるまでもないことでありますが、ほかの教職にある人、研究職の立場にある人など、あれほど大きな要請がされ、人材を確保するためには、教育の世界に活を入れるためにも、研究の浸透をはかるためにも、特別の処遇改善をはかるべきであるというきびしい世論に対して一向にこたえていないというような問題があるのですね。こういうものは、やはり勧告からはずれた基本問題として、人事院総裁そのものがなお手がつかぬようなときは、政府、総務長官で総裁と十分意見交換をされながら、すかっとプラスアルファの提案をされてもいいのじゃないかと思うのです。総裁、私がいま指摘した教育職及び研究職の処遇改善に世論として厳しい要請がされているこの問題の解決がなぜはかられなかったのか、お答えを願いたい。
  87. 佐藤達夫

    佐藤説明員 はかられておらないようなお話でございますけれども、私どもとしては十分はかっております。教員の処遇改善問題は、もちろんわれわれとしても十分考慮しております。しかも来年、別の一法として四%の処置をしておる。研究職は、御承知のように、去年たいへんな大英断をふるいまして改善をいたしました。その結果、ことしは格差はあまり出ておりませんけれども、しかし、研究補助員という若いところは、だいぶてこ入れをする必要があるというので、研究補助員に相当力を入れました。お医者さんのお話がございましたが、これはとにかく格差が四五%という格差ですから、これをまともに埋め切れずにまだ今日まで来ているということでございますが、しかしお話のように、初任給調整手当を思い切ってやったなということがありましたが、これは思い切ってやりました。やりましたけれども、まだ格差は解消に至っておりませんが、そこの努力は買っていただきたいということです。
  88. 受田新吉

    ○受田委員 調整手当は三千五百円程度の金額が研究と教職に出ている。つまり一般的な扱いしかしていないという、私が指摘したようなかっこうなんですけれども、こういうふうに、医師の処遇に比べるとあまりにも原則的過ぎる。お医者さんは、民間との比較においてなお著しい差があるということも私よく知っております。昨年の研究職の特別措置もよく知っております。知っておりますけれども、しかしそれは、こうした比較論において、教職、研究職というものは、医師と同じような感覚で処遇改善をはかってあげるべきだと思うのです。こつこつと身命を賭して研究している皆さんに、専門職的立場の処遇ということを当然してあげなければならぬ。そうした教職員の待遇の問題、研究職の待遇の問題は現在研究の段階であるということを、きっと総裁自身もすなおにお認めになっておられると私は思うのです。できればすみやかに解決してあげたいが、なお時間をかしてほしいというお気持ちがあるのではありませんか。これでもう満足だというようなお気持ちであってはならぬと私は思うのです。真意をひとつ表明していただきたい。
  89. 佐藤達夫

    佐藤説明員 おことばをまつまでもなく、これで満足だなどとは毛頭考えておりません。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 そうした問題を含めて、個々に当たるとなお手を入れなければならぬ問題が幾つもころがっておる。これはひとつ、できれば総理府でそういうものをプラスアルファで進んで処置するという勇気もほしいなと私は思っておるのですけれども、大臣、検討の種にしておいていただきたい。  そこでちょっと総裁に、局長でもけっこうですが、私、官民給与比較論で実態に即してお尋ねをしてみたい点があるのです。  今回の調査でもまた途中で調査が不能になった企業がたくさんある。五百十六という調査不能の数字をここに出しておられる。この実態は、途中で倒産したとか、あるいは資格を失った会社であるとか、いろいろあると思うのですけれども、これだけばく大な調査不能という数字が出るということは、どこに原因があるのか、基本的な問題はどこか、御調査の過程でおわかりと思います。お答え願います。
  91. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 ことしは七千二百事業所を調べまして、調査できなかった事業所は約五百ございました。その割合は、大体従来からこの程度の割合でございまして、その五百十六の中の大多数は不適格と申しますか、こちらのほうで事業所の規模五十人以上、会社の規模百人以上ということで選んで実際に調査に参ったのでございますけれども、その選び方というのは、税務署からことしの初めのデータをちょうだいしまして、それを現実に五月、六月のころ、半年後に行ってみますと、事業所の規模五十人以上というのが四十九人になっておったり、そういう関係がございまして、規模の縮小というのがほとんど大部分でございます。それが三百三十ほどございまして、三分の二ございます。それ以外に、調査に参りましたところが、いま争議をやっておって非常に忙しいとかいうことで、たまたまその会社が、去年はよかったけれどもことしはちょうど争議の途中である、そういったような関係がある事業所がございます。あるいは閉鎖してしまったというような事業所もございました。そういう関係が百八十ほどあります。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 私は、この職種別、規模別の事業所調査段階で一つの疑義を持っておるわけです。これは、いままでもちょいちょい発言をしたことですけれども、ことしはこのあたりで、人事院としてすかっとした方向をきめていただきたいと思うのですが、いま三百三十という事業規模の関係調査できなかったお話も出てきておったようですけれども、五十人から九十九人の五十人以上の事業所、一人欠けたら四十九人、行ってみたら四十九人になっておったというようなものを調査の対象にしておられるということに、一つの問題があると思うのです。私は、五十人以上の事業所、百人以上の企業、この段階はひとつ問題として削除してもらいたい。少なくとも国家公務員は、五百人以上の事業場であり、企業であるという立場で計算をして、なおかつ非常に過小評価されるような立場の非常に大きな規模である。たとえそれが出先機関といえども中央と同じ立場の仕事をしておるのでございますから、したがって、公務員民間給与との比較検討にあたっての調査対象は五百人以上。せめて段階的に百人以上とぴしっとして、五十人以上の事業所などというものはもう廃止して、第一段階で百人以上というようにちゃんときめたほうがいいと思う。  その五十人以上九十九人までを、数においては比較的少ないけれども、なお調査の対象にしておる。そういうところでは、給与体系などが全く思いつきでなされておって、人事院比較検討されるにあまりにも幼稚なところです。中身を見ると、つまり役付の待遇なども、つい調子のいいときはとんでもない待遇をやっておる。なまけ者をばかに冷遇しておる。したがって、今回勧告の中にも出ておるような、期末手当基準の中に、管理職手当、本省課長以上の二五%以内というようなものが出てくるようなかっこうのものが、とても大きなかっこうで、その人数の少ないところは、おかしいと言ってはいかぬけれども、極端な給与体系というものは私はあると思うのです。こういうところを対象にされないで、五百人以上となれば安定した調査ができると思うのです。そして、段階的にやむを得ぬとしても、五十人以上をやめて百人以上という対象にされる。国家公務員という大規模の公務員の集団に対して、五十人以上の事業所を対象にして、しかもそこではとんでもない給与体系の中に置かれておる実情を調べたときに、私はこのあたりでさらりと従来の行きがかりを拾てて、人事院調査対象をぴしっと切り上げてやられるということをなさってはどうか。それが尾を引いて、今度は公務員等級別の比較のところで、下級の者は低い人数のところを対象にし、上級の者は高い事業所、工場、企業を対象にするというような不合理が、そこからまた発生しておる。つまり、上に薄く下に厚いという方針と逆の現象が、こういう対象を低いところに置くがゆえに起こってきておる。これをひとつ根本的に直すべきである。これは、長官がお急ぎの御様子でございますので、いまの答弁を長官にもう一言だけお答え願って、お引き取りを願うことにいたします。
  93. 佐藤達夫

    佐藤説明員 私からお答えいたしますが、私はときどき申し上げておると思いますが、大体五百人とか何とかいうおことばでございますけれども、五百人そのものがもう非常に小さ過ぎやしないか。せめて一流のトップ企業くらいに合わせて、さらにそれでも足りないかもしれないがというような、やはりその気ぐらいは持っていなければならない。御承知のように、昔は民間比較などをやらずに、公務員にふさわしき俸給などということで、白紙に書いておったわけです。しかし今日においては、やはり公務員も勤労者あるいは労働者の一人というような立場になって、特権的な立場は持っていないわけですから、したがいまして、われわれとしては、やはり全国の全従業員、職員の半数以上をカバーするようなところをとらえて、その水準を持ってきて、せめてここまではぜひお願いしますというような立場に立って、ただいまお話しの五十人あるいは百人というような基準ができておるわけです。したがって、その立場を堅持する以上は、やはり今日のようなことになりますと、これは民間の変化いかんによってはさらに上がるかもしれません。今日はやはり公務員立場が昔とは違ってきて、特権的なものとは言えないということと、それから納税大衆、国民大衆が納得が得られるような給与でなければならぬ。最近の新聞などに、もはや公務員は安い俸給とは言えないというような大きな見出しがあったりして、われわれはちょっと抵抗を感ずるわけです。そういう目で見ておられる人もあるということは、やはり考えなければいかぬと思います。
  94. 受田新吉

    ○受田委員 長官一つだけでけっこうです。  私は人事行政上大事な問題は、公正な職務と責任に対する給与支給されること、公平な人事が行なわれること、そこに国家公務員も地方公務員も喜んでその職務に精励してくれると思うのです。そこに不公平があり、そして堕落した執務に対して厳格な——官紀綱紀が紊乱しておるとすると、いいかげんな公務員ができるということになる。私その意味においては、人事局をあなたの所管として握っておられる山中先生として、国家全体の公務の執行者に対して、安んじてその公平な人事と公正な給与のもとに、乏しきを憂えずしてひとしからざるを憂えるという原則をりっぱに実行する政治をやってもらって、士気を鼓舞し、国民全体の奉仕の任務を果たしてもらいたいと思うのです。お答えは簡単でけっこうです。  私は、現在の公務員給与というものを民間比較する際に、むしろ人事院勧告をすることについても考えてもらいたいのですけれども公務員の場合には職務に精励するという点において、民間が超過勤務ども返上してからがむしゃらに働きおる、ああいう勤務形態と、公務員の場合の、つまり机上において執務する場合とにおいての馬力のかけ方に、どこか違うところがあるのではないか。私は民間企業などへ行ってみて、命がけで勤務しておるあの勤務形態、そのかわり、そういう者に対しての待遇がしっかりされておるという実情を見るときに、公務員にも、その執務をしっかりやらして、同時にそれに報いるのに公正な給与をやるというかっこうをとらなければならぬ。  そのために、この俸給表内容を見ると、下に厚く上に薄いという原則を少なくともとらせるように人事院配慮しなければならないし、また総理府もそういう考え方で法案を出していただきたい。一般職が特別職にもつながってくるわけですから、今度特別職の俸給表を法案としてお出しになる際にも、そういうことを前提としながら、超過勤務その他の問題も含めた処遇改善をしっかりして、同時に職務の精励の度合いを、一般民間の最も典型的なところをモデルにするぐらいの馬力をかけて人事行政をやってもらいたい。そうして省間の人事交流がりっぱにできて——各省の間で、この省はばかに待遇がいいがこの省はばかに低い、この省はばかに忙しいがこの省はゆっくりしておるという役所が確かにあるのです。私、見てわかる。そうして、同じ公務員試験に合格してある年数をたったときにおいて——人事院などはもう一番おくれている役所だと思うのです。昇給昇格がどんどんおくれておる。五十を過ぎても課長にならぬ上級職の合格者がある程度おりますか、おりませんか。おる。ところが一方は非常に早く課長になっていくというような、各省間のアンバランスがあるのですね。これはやはり人事局を中心に人事院がその認定をしなければいかぬ。  これは山中先生、あなたも総理大臣にかわるポストにある方として、ぜひ各省間の人事行政のアンバランスを是正すること、各省間の給与の公正を期すること、そうして各省間で、ばかに忙しく熱心にやっている役人がおると思うと、比較的のんびりたばこを吸ったり新聞をゆっくり読んだりする役人がおる役所もあるし、このところは、十分各省間にバランスがとれて、みんなが精励できて、そうしてそれに報いて公平にいけるように、これは出勤時間、退庁時間、それから汚職や疑獄事件等を起こす職員のない、きれいな役人生活、官紀綱紀の粛正に徹底的に取っ組む、こういうことをひとつやっていただきたいと思うのです。長官、あなたに重い使命があるが、国家百年の大計から見て、これは最も大事な問題であって、人事の公平、給与の適正、そこから勤務の厳正、国家の公務、全体の奉仕者としてすばらしい成果があがることを、大臣、あなたの御手によってやってもらいたい、よろしゅうございますか。
  95. 山中貞則

    山中国務大臣 これは行政管理庁長官とも一緒に承るべき御高説のように私は思いました。ということは、先般管理庁が閣議に提出、決定をいたしました内容を見ますと、相当な傾斜した配分とか配慮がなされておるようでありますが、七月一日に発足したばかりの環境庁もやはり同じように、パーセントがある程度低いとはいえ、供出を余儀なくされておりますし、先ほど申しましたが、ふやさなければならない管制官にもやはり削減率がかかっておる。こういうのは、やはり悪平等的な硬直した姿勢だと私は思います。一方においては、身近なところでは、沖繩復帰対策についてほとんど夜おそくまでやっております私のところの職員などは、いま各省間の公平のお話がありましたが、まさにそのとおりで、私は、異例のことですが、閣議で発言を求めて、各省庁から六カ月間借りたい、出向さしてくれということで、かろうじて、いま病人続出の状態でありますけれども、それでも何とかやっておりますが、これは借りてきておる職員であります。しかも六カ月たったら返すという約束で閣議了解をとったわけでありますが、ここらのところは、もう少し各省の定員のあり方等について、そしてまた服務の形態というものについて十分配慮した人事行政が行なわれなければならぬ。  ただ、服務の実態と給与という問題になりますと、これは実は勤務評定とかなんとかいうことに直結しなければ、なかなか客観的に判断のむずかしい問題になりますから、これはそのようなことも確かに指摘され得る点がある。したがって、研究課題的な問題ではあるが、ここで、即刻、ではこのような案がというあれをお示しするのには、もう少し検討の必要があろう。これは給与体系全体の問題として考えなければならぬと思っております。
  96. 受田新吉

    ○受田委員 私は、長官がだいぶ気をつかっておられて、行管との調整もやりながらやりたいという意気込みを示していただきたいと思うのですが、総理府に人事局ができたということは非常に前進なんです。人事院も、決して人事院の仕事が減ったわけじゃない。人事院の任務は別の任務を安心してやれるようになった。その意味では、人事局を最高に生かしてもらいたい。そして各省間ににらみをきかしてもらいたい。そして最終的には、総理府とまた人事院ががっちり人事行政を握る二つの役所として栄光をになってもらいたい。総裁、長官、それぞれひとつ強大な御決意を持ってやってもらいたいことを御注文申し上げなければならぬと思います。  どうぞ長官、あなたの御任務があるようですから……。  私、もうちょっとだけお許しを願いたいのですが、委員長、発言時間もう何分ありますか。もう大体来ておるくらいだと思うのですが、十分くらいあるでしょう。もう少しお許しいただきたいと思います。
  97. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 五分程度しか……。
  98. 受田新吉

    ○受田委員 総裁筑波の今度職員になられる方についての宿舎はどうなっておるのですか。これは大蔵省がおられるが、いまの移転手当のことは承っておるが、公務員宿舎の法律によると、無料の宿舎が提供される規定があるわけですが、筑波山の研究学園については、無料の宿舎を提供するのかどうか、これはつながりがあるからひとつお答え願いたいのです。
  99. 窪田譲

    ○窪田説明員 お答え申します。  筑波山の宿舎、ああいうまだ都市も何もできていないところに職員を持っていくという問題で、宿舎の問題が非常に大きな問題になっておるわけでございます。そこで宿舎については、今度移転する職員に見合った十分な宿舎を配慮いたしておりますけれども、無料宿舎という点につきましては、この無料宿舎は、勤務状況というものが、国民の安全の保護、そういうものに限られたものだけについて無料宿舎を提供するということになっておりまして、ああいう研究機関につきまして、現在無料橘舎というものは、一部ですが、たとえば動物、植物の実験をする、したがって、常に夜でもその宿舎からつとめ先にかけ込まにゃいかぬというものについてだけ無料宿舎ということを考えておりますので、特に筑波だから無料だということは現在考えておりません。
  100. 受田新吉

    ○受田委員 筑波の場合は、いまお説のようなものに似通うものができるのじゃないかと私は思うのですね。そこへ泊まり込んで研究する、そうしたような事態がきっと起こってくると私は思うのですが、これは、いまの無料宿舎提供の対象に、全部はならぬでも、相当数があるとにらむべきものではないか、こう思うのですが、御研究してもらいたいと思います。
  101. 窪田譲

    ○窪田説明員 私のほうで現在聞いておりますのには、そういうような、夜でもかけつけるというような研究所というものの要求はございませんので、現在のところは無料宿舎ということは考えてございませんが、今後各省から、そういう研究所あるいは研究員というものが筑波へ行くということになりますれば、各省の要求に基づきまして私のほうでも十分配慮したい、こういうぐあいに考えております。
  102. 受田新吉

    ○受田委員 私、公務員の処遇というのは、給与だけではなくて、実物給与のようなかっこうになる宿舎というものが大事だと思うのです。つまり衣食足りて礼節を知るですから、その住まいというものは公務員基礎になる。したがって、公務員宿舎が、できれば、欧米の国々のように全員に行き渡るべき性質のものです。安心して執務してもらうために。したがって私、他の一般の一称、二種住宅の問題等もあるし、公団住宅建設計画、地方の供給公社のような問題等もあるが、公務員の場合に一つのぜひしてもらいたい点は、公務員精舎の建設年度、つまり持ち家あるいは借り家等を含めて、一応さしあたり大体全国的な要求が満たされる年度をどこへ置いて大蔵省は宿舎計画を立っておるのか、これをお示し願いたいです。
  103. 窪田譲

    ○窪田説明員 大蔵省で設置いたしておりますのは、私のほう、国家公務員宿舎法の四条一項と考えておりますが、いわゆる五現業とか公共事業とか、そういう職員を除いた職員に対する宿舎でございます。これにつきまして、現在どのくらいの職員が宿舎がほしいと言いながらその宿舎がないかという点を、私のほうは毎年九月一日現在で調べております。それによりますと、大体現在一万九千名程度の人間が、宿舎がほしいと言いながらまだ割り当てられていないという点がございます。  そこで、われわれのほうといたしましては、この人数、並びに、ただいま独身でおります者も、結婚すれば家族寮が必要になってくるでございましょうし、あるいは転勤その他の問題が出てくると思います。そういう者を含め、あるいは老朽しておる宿舎でそれを建てかえにゃいかぬというのを考えますと、大体四万五千戸程度のものをこれから五年間に建てて全体の需要を満たしたい、こういう予定でおります。しかし、これにつきましては、主計局との財政事情というような点もございますので、その辺に努力してわれわれのほうとしては完成したい、こういうぐあいに考えておる次第でございます。
  104. 受田新吉

    ○受田委員 それでけっこうです。そこの問題だけで、どうぞお引き取り願って……。  私、あとでまたやることとして、この一点で質問を終わります。防衛庁が来られて騒々しくなっておるようで、私のほうも早く打ち切りますが、昭和三十五年から例の勧告実施期日についての規定が生まれてきておる。それまではこの規定がなくても適当にやってきておったわけです。これははなはだ時代の流れを如実に示しておるおもしろい問題として考えられるのですけれども、いま大出さんや鬼木さんからも指摘されたので、私、質問を重ねませんけれども人事院がこの実施時期というものを三十五年からうたわざるを得なくなった原因がどこにあるとお考えですか、総裁。それまでこれは別にうたわなくても済んだ理由はどこにあるか、ちょっとその点を顧みたいと思うのです。
  105. 佐藤達夫

    佐藤説明員 私はつぶさには承知いたしませんが、結局、調査時期というものが一応はっきりしている以上は、四月調査である以上は五月一日からというようなことで最初出発している。これは文献によればそういうことなんです。
  106. 受田新吉

    ○受田委員 それから、最初は、三月時点に調査しておったわけです。そうして三月ではこれはどうも、新任をする四月からのほうが都合がいいじゃないかということで四月に変わってきた。それで、四月に変わっておれば、七月ごろに勧告されておったのが今度は八月に勧告がずれる。この暑い盛りに審議せなければならぬ。これは七月に勧告されておれば、今度の問題はもう国会でことしは片づいておる。惜しいところであった。そういう調子になって、時の流れが、われわれ過去を顧みてはなはだ感無量のものがあるわけですが、ここまでくれば五月実施という実施時期を今度は四月として切りかえられてもいい。つまり、三月が四月になって、今度は四月時点に調査したのが勧告案に五月という実施時期が盛られてきたという歴史を顧みるときに、今度はいよいよ四月実施という時期を明確にされる勧告段階も来るのじゃないかと期待しておるわけです。そういうことをひとつ十分前提にして、過去の歴史の上に立ち、四月実施という新しい道を選ばれるように来年あたりは御検討をいただきたいと思うのですが、よろしゅうございましょうか。
  107. 佐藤達夫

    佐藤説明員 先ほど来申し上げましたような態度で、重大な一つの課題として検討を進めてまいりたいと思います。
  108. 受田新吉

    ○受田委員 大蔵省の主計局次長さんにお伺いしたいのですが、われわれもひとつ知恵をめぐらしてみたいけれども大蔵省としてはどういう知恵があるか、知恵の幾つかを方法論として検討しておられることを聞かしてもらいたいのです。つまり完全実施案で政府が法案を出すのに時期的におくれてくる。それをできるだけ早く実を結ばせるためには、いま各省の給与額の予算の上に上積みされている五%部分というものを、法律のどこかに——つまり勧告が出たならば、その勧告案の本俸部分だけを内払いとして支払いすることができるなどという立法措置を講ずるか。あるいは行政措置としては、法律の根拠に基づかざる支出は財政法上許されないことであるから、名案を幾つか御研究されておると思うのです。できるだけ早く本人たちにこれが支給される方法をどうとるべきか。つまり方法論としていかなるものがあるか、御研究された結果を報告されたい。私がいま指摘しておりましたようなスライド的な内払い方式というものが可能であるかどうか。つまり、毎年勧告があったら、たとえば本俸部分だけは直ちにその上積みした分から支給してよろしいというような立法措置を講ずることができるかどうか。そうしたら、勧告があれば、政府がオーケーと言っても言わなくても、すぐ法律の根拠で支払いができるということになりはしないかと思うのですが、この一案はいかがなものですか。
  109. 平井廸郎

    ○平井説明員 先ほど総務長官から御答弁申し上げましたように、たとえば予算に五%つぎ込んであるというような事情もございまして、勧告が出た場合に何らかの形で先払いができるような方法はないかということをいろいろ検討したようでございます。ただいま先生が御指摘になりましたように、給与法なら給与法の中にそういうことを書いておいて、本俸なら本俸に限っては、人事院勧告が出た場合には国会審議なしに支給することができるというのも一つの考え方であろうかと思いますが、基本的に考えました場合、これまた先生御指摘がございましたように、国家公務員法第六十三条の規定による給与法定主義というもののたてまえからいたしまして、やはり勧告ごとに国会の御審議というものがない限りは、政府限りでそのような会計措置をとることが妥当かどうかという問題があろうかと思います。それを本俸に限ってという議論もなかなかむずかしいのではなかろうかと考えておりまして、そういう点から見れば、法律的には抽象的には可能ではございますけれども、いまの国家公務員法六十三条等の関係から見て、あるいはさらに一般的な勧告に対する国会審議権との関係から見て、必ずしも適切ではなかろうというふうに考えるわけでございます。
  110. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 受田君に申し上げますが、だいぶ時間が……。
  111. 受田新吉

    ○受田委員 それではこれで質問を終わります。どうも御苦労さんでした。
  112. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 東中光雄君。
  113. 東中光雄

    ○東中委員 時間がありませんので、簡単にお聞きしたいと思います。  総裁人事院勧告のときの談話によりますと、公務員給与民間給与の水準に追いつかせる趣旨で公務員給与民間給与の水準に合わせるものだ、これは当然のことでありますけれども、これと先ほど来言われております実施の時間の関係を見ますと、「官民給与の較差が、四月を基準としていることにより、この改定は同年五月一日から実施すること」、これは明らかに矛盾しておるわけであります。四月を基準にしておるのだから、そこで明らかになった格差を近づけて同一にする、だから四月から実施するというのなら、これはあたりまえのことであります。先ほど来ずいぶん論議されておることでありますからあれですが、いろいろな歴史的な経過もあるし、そういう問題がからんでおるということはよくわかるわけでありますけれども、科学的にすかっと見て、四月実施を当然やられるべきではなかろうかと思うのです。重ねてこの点お聞きしておきたいと思います。
  114. 佐藤達夫

    佐藤説明員 いまおことばの「四月を基準としていることにより」というのは、申すまでもありませんが、昭和三十五年初めて五月一日実施をうたいましたときにすでにこういう文章で響いておる。それからずっと長年やってきておるわけであります。その当時、これは何も間違いじゃないかという御指摘をいただかないままで、ある意味で安定した形になってきていることは事実であります。しかし、これはたびたび申し上げますとおりの問題でありますから、われわれとしてはなおさらに検討を続けてまいりたい、結論はそういうことでおります。
  115. 東中光雄

    ○東中委員 来年の実施については、特にこれは強く要請をしておきたいと思います。  今度の勧告では中位等級以下の給与改善に重点を置いたというのが一つのポイントになっておるわけでありますが、具体的な例で検討してみますと、中堅クラスの三十五歳、四人家族の行政職の公務員労働者の場合を検討してみたのです。行政職(一)表の六等級九号として見てみますと、現行では五万千四百円、勧告では七千二百円上がりますので六万六千六百円。扶養手当が三千四百円ついてちょうど七万円になるわけであります。一方、労働省の昨年六月の賃金構造基本統計調査によりますと、これに相当する民間の額は八万一千七百円という数字が出ております。これは昨年六月現在でありますから、この春の定昇なりアップなりを含めますと、その格差は二万円近く開くということになると思うのですが、こういうことになっておるのではないか。その点中堅層で二万円も開いているということになっているという事実。そうなっているのだということは、給与局長どうでございましょうか。事実そうでしょうか。
  116. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 本年は職員団体の方々から初めてそういうお話を伺ったわけでございますけれども、最近明らかになりました労働省の昨年の大調査、いわゆる賃金構造基本統計調査の結果からそういう関係が明らかになりましたので、そういうお話があったわけでございます。ただいま御指摘になりました昨年の調査のところで、三十五歳で男子の、しかも扇等学校を出まして直ちに職につきまして、そのままずっと勤続しているという最も条件のいい方のお話でございます。そういう方が一体どういう会社につとめているか、こういう十何年も同じ会社に勤続している方というのはどういう職員であろうか、そういったことをいろいろ詳しく調べておりますが、そういう方は、結局千人以上の大会社に圧倒的に多いという関係になっております。しかも、民間におきましては男女差がございまして、ただいま御指摘になりました男の場合には八万一千七百円でございましたが、女の場合には五万一千九百円というふうにして、三万円も差が出ているわけでございますけれども、それを公務員のほうでどういう関係になっているかということをいろいろチェックしてみますと、大体三十五歳で最初から勤続している人につきましてはどの程度の号俸であろうかというふうに見ますと、五等級の七号ないし八号におられる方、六等級の十号ないし十一号におられる方が大体半々くらいの感じでございます。  本年の関係でそれを見ますと、ここであります詳しく申し上げるのもなんでございますけれども、今回の結果として見合わせますと、そういう方は、当然大会社でほとんど調整手当の八%地域におるわけでございますから、そういう形で合わせてみますと、若干二、三%、こちらのほうが低目という感じはございます。ございますけれども、大きな意味で、二、三千円から三、四千円の、八万円ないし九万円の中でその程度の違いになっているということでございます。その関係は、いま申し上げましたように、大体大会社の、しかも男の関係であるという点で、いわゆる官民格差が一番多く出るところでございます。一方、公務員のほうの三十五歳程度の方はどういうところにたくさんおるかということを見ますと、大体五等級あるいは六等級の方は、大都市におる方よりはいわば地方のいなかにいらっしゃる方が非常に多いわけでございます。たとえば五等級の無級地におきましては格差が二%しかないという状況でございまして、六等級の場合には七%しかないという状況でございます。したがって、公務員として三十五歳くらいの多くの方は無級地におって、そういうところではあまり格差がない、そういう感じにはなっておるわけでございます。
  117. 東中光雄

    ○東中委員 労働省の賃金構造基本統計調査は、対象は十人以上の企業について全部やっているはずであります。いま言われたような、実態に即して個別に千人以上の企業の中での人をいまさがして比較をされておるようでありますけれども、とにかく三十五歳、四人家族、いわば一番標準だと思うのですが、そこでの格差が非常に大きいということが、これは官民格差考える場合に一番重要な問題だと思うわけであります。  それで、先ほども質疑の中で出ておりましたが、勧告の別表第一の「官民給与の較差」、これは明らかに不合理なやり方ではないか、こう思うわけであります。十業種についての全職種のトータルでの「官民給与の較差」が出されておるわけですが、これは先ほども言われておりましたけれども、行政職(一)表、(二)表について、しかも男子についてここでやるのが一番基本になるのじゃないか。そうでなければ、実際に圧倒的多数を占めている公務員の労働者の皆さんが、民間との格差が非常にある、自分の知っておる、あるいは同級生のそういうものと比較して大きな差が出てきておるということは、これはもう解消する方法がないわけであります。たとえば医療職とか海事職とか、あるいは特に教育職、これは特殊な条件がまさにあるわけなんですから、特殊な条件を——民間との比較でいっても明らかに特殊な条件があるわけですから、それを突っ込みで平均してしまうこの調査のやり方というものが、実は矛盾が出てくるもとだと思うのですが、この調査方法ですね。行政職の公務員給与民間事務系男子職員との給与を対比してやっていく、それを基本にするという方法をぜひとられるべきだと思うのですが、その点いかがでございましょうか。
  118. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 先ほど大出委員からの御質疑にもございましたように、いまのいわゆる官民比較の方式は、いろいろ民間にもあり公務員にもある、一般的に両方に存在している職種につきましては、相互ではどうなっておるかという点を比較をして、その関係を総合するという方式でやっているわけでございまして、その関係の御指摘でございますけれども、そういう点で、常に格差の相対的に大きい行政職(一)の場合には、民間給与のほうがむしろ公務員より低いという職種でございます海事職あるいは教育職、そういう関係に比べまして配分上不利になってきておるという点は御指摘のとおりで、私どもとしましても、この関係が何とかもう少し改善されることにならないかという気持ちでいろいろ考えて、反省しているわけでございますけれども、そういう点で、長い目で見てみますと、従来、たとえば教育職あるいは看護婦さんの場合には、公務員のほうがたいへんよかったというのが、最近はだんだんそれが縮まってまいりまして、公務員のほうがややいいという段階まで近づいてきております。そういう点で両方のだんだん望ましい方向には来ておるということで、もう少しその点がバランスがとれてくれば非常に望ましいということを一方では考えながら、この職種の比較そのものについていろいろ反省はしているわけでございます。しかし、一方におきまして、やはり格差のある職種だけ選んで改善するというのもどうだろうか、そういうことを考えながら現在の関係をいろいろ見て、まだ今回はやむを得ないというふうに考えているわけでございます。
  119. 東中光雄

    ○東中委員 その格差のあるところだけを見てというふうに私は言っているのじゃなくて、行政職は公務員の労働者のうちの大部分を占めているのだから、それが一番基本になるべきだ。あと内部の問題については、他の部門との均衡というものを、それぞれの特別職的な性格を持っている海事にしろ、教育にしろ、医療にしろ、それはそれとして考えるということを言っているだけであって、差のある部分だけとってきて、それだけをやっていけというふうなことを言っているわけじゃないのです。局長は当然おわかりのことだと思うのですけれども。だから、そういう点からいって、いま現実に公務員労働者が、非常に給料が低いのだということを感じておる。これは動かせない事実なんです。それはどこから来ているかといえば、いまの行政職の男子についての基準がそこからやはり出発していないところから来ている現実の矛盾だと思います。そういう点で、ぜひひとつ今後のやり方として検討していただきたい、こう思うのですが、総裁、いかがですか。
  120. 佐藤達夫

    佐藤説明員 おっしゃる御趣旨はよく理解できます。そういう一つの御提案もあり得るということも感じます。しかし、それはまたたいへんな重大な問題になりますから、貴重な御意見として胸におさめながらなお検討してまいりたい、こう思います。
  121. 東中光雄

    ○東中委員 それと、もう一つ、それに関連しまして、行政(一)表だけでもいいんですが、年齢別、男女別の平均給与の実態を提出してもらいたいと思うのです。民間給与実態調査のほうは年齢別に出ておるのですけれども公務員のほうは経験年数別しか出されていない。これじゃほんとうに比較できないわけなんで、そういう点で経験年数を年齢に置きかえた、そういう実態調査の表をぜひ出していただきたいと思いますが、いかがでございましょう。
  122. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 調査の上では両方年齢別に比較をしておりますけれども公務員実態の関係は、経験年数別、あるいはそんな形で発表はしておりますけれども、御必要な部分につきましてはごらんいただきたいというふうに思います。
  123. 東中光雄

    ○東中委員 なぜ、民間は年齢別の実態表が出ておって、公務員のほうはそれがあるのに——あるといまおっしゃったのですが、あるのに出されないというのはなぜでしょう。もともと、それは出されてこそ非常に納得のいく問題解決ということになると思うのですが、ぜひその表を出していただきたいと思うのですが、どうですか。
  124. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 一般的に給与計算の上で申しますと、単なる年齢というよりは経験年数で何年という関係のほうが——給与決定のき実体そういう形をやっておりますので、そういうのが原則だろうというふうに思います。そういうことで、従来から公務員実態の関係はそういうふうにいたしておるということだろうというふうに思っておりますが、比較の面では年齢別で比較をしておりまして、いま御要求もございますから、必要な部分についてごらんに入れたいというふうに思います。
  125. 東中光雄

    ○東中委員 時間がございませんが、次に特別給の問題について。  民間特別給支給、状態に対応させて、管理監督の地位にある職員の一部について、その職責に応じて俸給月額の二五%以内の額を期末勤勉手当算定基礎に加えることとするということでありますが、もうこまかいこと申し上げませんけれども、いわゆる管理職手当の一部を特別給算定基礎に加えるということに結局なると思うのですが、管理職手当というのは、もともとは一般職員の超勤手当に相当するものだという、そういう発想、説明がされておったように思うのですが、そうでございませんでしょうか。
  126. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 現在の俸給特別調整額は、管理監督の地位にある職員の職務の特殊性に対しまして支給をするというたてまえになっておるわけでございます。従前は、いわゆる管理職手当と称しておりますけれども、この管理職手当が設定されます以前は、課長級も部長級も超過勤務手当支給されていたことが一時ございます。終戦直後でございますけれども、一時ございます。しかしながら、そういう局長級あるいは課長級等について一時間当たりの超過勤務手当を出すというのも、非常に管理のしにくい問題でございますし、労働基準法におきましても、管理監督関係は、そういう勤務時間及び超過勤務手業の関係の適用外という形にいたしておりまして、そういう関係から、そういう一々の勤務時間による手当というものをやらないで、そういうことはなじまないということで、いわゆる管理職手当といわれるものをつくったというわけでございます。  今回これを基礎にいたしますというのは、民間のいわゆるボーナスの支給のしかたが、基本的に言いまして、職務と責任に基づく支給のしかたというものをしておるということでございまして、その格差が非常に大きい。そうして、じゃ支給のしかたをどうしているだろうかということを調査いたしてみますと、たとえば部長級につきましては高い計数をつける、課長級につきましては何割増しとかいう計数をつける、そういう計数でやっておる事業所が相当ございます。それ以外に、役付手当を持っておる事業所では、役付手当基礎にしておるというところも相当多いわけであります。手当基礎にしておるというところでは、現在こちらのほうは地域給とか扶養手当基礎にしておりますけれども民間ではそれ以外に役付手当基礎にしておる、職務と責任によってボーナスを出しておるというのが普通の常識的な現象でございますので、そこはほっておけないということで、管理職における職員の一部につきまして、その二五%の範囲内におきまして、どうしてもほっておけないという部分に限定をしまして支給をすることといたしたということでございます。
  127. 東中光雄

    ○東中委員 管理職の超勤手当がなくなって、と同時にいわゆる管理職手当というのが出てきた。だから、性格的に言いますと、それはいろいろなニュアンスはありますけれども給与の一つの形態としての管理職手当というのは、基本的には超勤手当に照応する形で、ただ一々時間ごとに計算するとかなんとかいうことはしないけれども、そういう性格を持っておる、こう思うのですが、それが今度の手当特別給算定基礎に加えるということになりますと、一般職員の超勤手当についても、やはり同じような考え方をしなければ矛盾が出てくるのではないか。すぐに民体企業における重役と同じような発想方法に進んでいくとすれば、従来の超勤手当的性格を持っておった管理職手当というものの性格を変えていくことになる。民間企業の会社重役には、超勤手当も何も、そういう発想方法は全く起こってくる余地がないわけですけれども、そういう点で、超勤手当的性格を持っておるいわゆる管理職手当特別給算定基礎にするということは非常な矛盾があると思うのですが、一般職員の超勤手当を同じように考えるか考えないか。あるいは管理職手当の持っておる性格を、今度いままでとは違った考え方に切りかえるという、いわば非常に御都合主義になるのですけれども、そういうふうに変えられるというお考えなのか、そこらの点をお聞きしたいと思うのです。
  128. 尾崎朝夷

    尾崎説明員 管理監督のいわゆる役付手当管理職手当を受ける職員が、勤務時間外にもいわば超勤的なことをするというケースがあるわけでございますけれども、そういう場合にはその超勤的な面と相応する面がないことはない。しかし、管理監督のための手当というものは時間外だけの問題でもないわけでございまして、そういう関係で、それではいまの管理監督手当は、超勤手当に見合う分は幾らであり、そうでない分は幾らであるかということを区別することは、これはなかなかむずかしい問題でございます。  むしろ問題なのは、一般的に民間におけるボーナス等の特別給支給方法を見てみますと、民間の場合には、たとえば課長とか部長とか、こういう職務と責任に支給することが非常に強く行なわれておりまして、そうしてその支給のしかたというのは、部長は何割増しあるいは何倍という形、課長は何割増しという形の計数を使って支給するところが相当ございます。しかし、当面そういう計数を使って支給するというのはどうかという問題もございますし、民間の場合にはほかの手当よりは役付手当を一番基礎にしているという面がございますものですから、そういう点は民間にならいまして、役付手当的なものを基礎にしてその一部を支給していこうということで内容考えたわけでございます。
  129. 東中光雄

    ○東中委員 要するに、いわゆる管理職についての超勤手当をいままで払っておったのを払わなくなる、そういうこととの引きかえと言ったらおかしいですが、別のねらいもありましたが、管理職手当ということになった。今度はその管理職手当特別給算定基礎にまた入ってくる、こういう形でいわゆる高級公務員については徐々に民間企業の重役と同じようにしていくという、一つのステップをまた新しく踏み出す、そういう方向に向いていっていると思うのですが、私は、これは非常によくない、民間重役と公務員と同じように考えていくというのは全く発想方法としてよくないというふうに思うわけであります。そういう中で、今度また指定職については二万から四万上がってしまうということになってきていると思うのですが、これは昨年も申し上げたわけですけれども、重役と同じような発想方法に持っていくということ自体、非常に好ましくないことだということをはっきり指摘しておきたいと思うわけであります。  最後に一点だけ申し上げたいのですが、扶養手当児童手当関係であります。これは児童手当が設けられた趣旨からいっても、当然併給さるべきものだと私は思うのですが、新聞報道によりますと、日経連は今回の勧告のこの措置を見て、「児童手当法を考慮にいれたことは評価できる。児童手当をうけられる第三子以下には、家族手当支給しないことにしているが、民間企業もこれにならって労働協約上実現させる必要がある」、こういうふうに非常に露骨に歓迎しているわけですが、これは非常に悪い賃金政策を民間出していく、社会政策と賃金とをこういう形でやっていくのは非常によくないのではないか、こう思うのですが、総裁、いかがですか。
  130. 佐藤達夫

    佐藤説明員 それは日経連ばかりでなく、あまねく評価されてしかるべきだと思うわけですけれども、この間ここでお尋ねがあったかどうか知りませんが、この児童手当の審議会の前身であります懇談会の意見書の中にも、公務員給与のうち扶養手当等は併給しないというような意見が盛り込まれております。  それは刑として、われわれ率直に考えましても、とにかく一人について三千円もらうわけです。この三千円もらった人にさらにまたこっちの扶養手当を差し上げるということにするよりも、受益者の幅は御承知のように非常に少ないのですが、少数の人に二重の利益を得ていただくよりも、そのお金があったならば、わずかではあるけれども、その人も含めて一般公務員に均てんさせていただいたほうがさらにベターではないかという考え方に立ちますと、これはそうするのがあたりまえじゃないかという気がするのです。これをそのままマイナスにしてしまうわけではないのです。その分はみなの公務員で分けてということでございます。
  131. 東中光雄

    ○東中委員 質問を終わりますが、家族手当が赤常に低いわけですね。そして公務員給与そのもののベースも低いことが問題になっておる。社会保障が一方でとられるからといって、それですぐその家族手当でほんとうに扶養できるのかどうかということになれば、これは労働力の再生産というような観点から見たらできないという性質のものなんだから、社会政策があるからといって、すぐ給与でこういう規制をしていくのは好ましくない、よくないことだ、こう思いますので、その点を申し上げて質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  132. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 次に、国の防衛に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。大出俊君。
  133. 大出俊

    大出委員 先般、合同委員会が行なわれましたあの経緯から今日までの間に、たいへんいろいろなことが起こっておりまして、新聞紙上にも幾つか報道もされているわけでありますが、実は今回こういう事件が起こって多数の人命が失われたという前提に立ってものを考えますときに、当時の総理の答弁その他から見て、その後の西村長官の言っておられることの中身が少し違うのではないかという印象をきわめて強く持つわけであります。私は極端に申し上げて、総理にもう一ぺん御出席をいただいてやり直していただきたい、これが私の主張です。ですから、状況いかんでは、この委員会がどうなろうと総理の御出席をいただきたい、こういう主張で私は最後まで要求をしたいと思っておるわけなんです。そこで、本日は総理に御出席をいただこうと思いましたが、時間的な関係もございますので、とりあえず総理にかわりまして竹下官房長官に御出席をいただいて審議を進めたい、こういうことにさせていただきます。竹下さんからは二時過ぎに御出席をするという御返事をいただいておりますから、やがてお見えになるだろうと思うのであります。  まず、実は官房長官に承ってから防衛庁長官質問を申し上げたいと思ったのでありますが、時間が貴重でございますから、ずばりひとつ防衛庁長官に承りたいのであります。  この間、いわゆる訓示ということになりますか、これをお出しになっているようでございますけれども、これは何日でございましたか。
  134. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 私が着任したのは二日でございますから、諸般の事項または政府の航空安全対策等も閣議了承等を得る、そのあとでございますから、十日でございます。
  135. 大出俊

    大出委員 長官の訓示があるというので、私も私の筋から、どういうふうなことをお話しになるのか気になりましたから聞いてみたところが、私、実は印刷をしたのをいただきまして、中身を読ましていただきました。「着任に際しての所信」ということになっておりまして、ある意味ではごもっともな点もございまして、この程度のことであれば、取り上げてとやかくいうことは遠慮しようか、こういう気になっておったのでありますが、たまたま十日の夕刊を見ますと、私がいただきましたこの「着任に際しての所信」というものの中に何にも触れていないことが夕刊に載っている。どうしてこういうことになったのかと思って、そのニュースソースの側をいろいろ調べてみたわけでありますが、表にお出しになったのはこれだと思うのです。どうもあとは長官が御自分で防衛庁の全国組織に対して全国放送の形でお話しになった、こういうわけです。お話しになったほうに、表にお出しになった印刷物にないことをお話しになっているというわけであります。私もそれなりに、長いわけでございますから、お話しになった中身を聞いた方に承ってみたりいろいろいたしましたが、正確を期する意味で、実は防衛庁の方々をわずらわして長官がお話しになったのをいただいたわけでありますけれども、これはどういうわけで表にお出しになったのとお話しになった中身とを変えて——変えてというとおかしいのでありますが、出た結果は変わっているわけでありますから、変えてお述べになったか、そこらのところをひとつ。表向きは表向き、内輪は内輪というのじゃ困るのです。
  136. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 大事な自衛隊の大きな総反省の時期でありますから、従来は着任してごあいさつを直ちにやるのでありますが、事故対策ということで政府全体の意思等を見きわめまして、そうして実は基本的には、私は文書で所信としてこれを出発点としたわけであります。ただ全体に対するあれは、この文章に書いたようではきわめて抽象的でありますから、そこで、航空安全対策ではこういうものが出たとか、犠牲者に対してはさらにこういう心がまえでいけとか、これは単に航空だけの事故じゃないのだ、全体の、たとえば火器を持ち危険物を持っている、教育に従事する者もすべて全体の機関としてこの事故を受けとめてもらいたい。それから私の心がまえは、具体的には「勇気ある行動」ということばで出ておりますが、この「勇気」という意味は、ほんとうの勇気でなければいかぬのだ、口や形だけの勇気ではいけないのだ、そういう趣旨は私は長官として全体としてさらに訓示と申すか、口頭で言った。ことに第一線の兵の諸君は、必ずしも文章を読んだだけでは私の気持ちがわかりにくいだろう、そういう意味で、ある意味ではかみくだいて申した、こういうことであります。
  137. 大出俊

    大出委員 ちょっと待ってくださいよ。いま、文章にお書きになって紙に書いてお出しになったのは、基本的なことを書いたとおっしゃっている。そうなると、あとお話しになったほうは、この基本的な点については、これに書いてあることと、いまの御答弁からするとそう変わらぬはずなんです。ところが、まさに最も基本的なことについて、この紙にはない、印刷物にはないのだが、こちらのほうでまことに基本的なことについて、しかも総理の答弁とはたいへん食い違いのあるお話をされたというのはどういうわけですか。  具体的に言いましょう。この中にはいろいろ問題があります。ありますが、まず一番この問題は合同委員会等で論議をしておるわけでありますから、これは前のほうから少しひっかかりがありますけれども、この一番最初のほうには、「もちろんためにする批判もあったかもしれませんが」ということが一言入っていますが、それはそれとして、どうも一生懸命合同委員会その他で議論をしていて、ためにする議論があったかもしれないなんということを、自衛隊の隊内の方々に長官の口から言われたのではたいへんこれは迷惑で、後ほどでいいのですが、何が一体ためにする議論だったということを克明にお話いただきたいのです。  さらに、まん中のほうには、「特に今回、軍事優先けしからんと、民間優先だというふうな声があります。私は必ずしもこれは当らない」、はっきりこう言っておられるわけですが、軍事優先けしからぬという議論は合同委員会で初めからしまいまでありました。それに対して総理は答弁されている。竹下官房長官があとでかわって答弁をされている。初めからしまいまで、軍事優先ではいかぬということを口をそろえて皆さんが言った。そして総理の一番最後の締めくくりは、民事優先、こういうふうに言われている。速記をそういうふうに直してくれていいとまで言われている。私は誤解のあるようなことを言っていない、そういう趣旨で言ったんだから、木原君の軍事優先は、速記はそこのところを民事優先に変えてもらっていい、そう理解しているから——そういうふうに総理は答えておられる。明確な議事録をここに持っている。だから総理は、軍事優先ではなく民事優先、これでいくのだ、党の総務会はじめそういうふうにきめているのだ、こういうふうに答えている。三カ所そういう答弁をしている。にもかかわらず、「特に今回軍事優先けしからんと民間優先だというふうな声があります。私は必ずしもこれは当らない」、これは一体どういう意味なんですか。ここのところは、軍事優先というような批判はけしからぬ、当たらぬとおっしゃるなら、軍事優先ないしは軍事優先に近いことになるじゃありませんか。少なくともそれに類することになるじゃありませんか。当たらないとあなたははっきり言っている。そうなるとこれは、総理にお出かけをいただいてやり直さなければならぬ。どうお考えですか。
  138. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 私が最初に、「ためにする批判」というのですが、所信は、公正な批判はあくまでも謙虚に全体をあげて受け入れてみたい、こういうことを申しております。その気持ちであります。それからこれは委員皆さんには届いておりません。私の口頭でございますから、文章としてはダブったりいろいろしております。また録音もあるわけでございますから、これはお聞かせしてもいいわけでありますが、大体趣旨は、まず第一に自衛隊の事件を起こしたことに対するおわびと、御冥福を祈る遺家族対策を述べたものであります。それからもう一つは、自衛隊というものの使命は国民のための自衛隊である、国民のために生命、財産を守るのだ、とうとい命を一瞬にして失った、その場合に、素朴な国民が、自衛隊要らないじゃないかという感情に対して立ち入ったのもあろうと思います。やむを得ないじゃないか、こういうふうに私としては反省する思想であります。そうしてそれに対しては、合同慰霊祭をやるから、その際には全自衛隊をあげて御冥福を祈りたい、こういうふうに隊員に呼びかけたわけであります。そうして、さらに遺族に対しては十分な誠意をもって補償に当たりたい、それで私は特にこの際に所感として文章は出しておる。これは自衛隊は、単に制服だけじゃない、いろいろな機関の人も全部これをひとつよく受けとってくれ、それから単に航空事故だけじゃないのだ、全自衛隊の国民の信頼に関係する大きな事故だと謙虚に受けとめてまいりたい、こういう気持ちで所感というものを出したのだから、各方面の機関におかれましても、この気持ちでひとつ反省すべき点、公正な批判はわれわれは謙虚に受けまして、今日直ちに、現在から国民の信頼をさらに積み上げていくようにいたしたいと思います、こういう趣旨を述べております。  重ねて、こういう意味で今回所感というものを出しましたので、関係機関におかれましては十分私の意のあるところをくんで、各隊員の諸君にも気持ちをひとつ伝達をしていただきたい、要旨は、結局われわれは国民のための自衛隊なんだ、国民とともにある自衛隊なんだ、ここからいけば私は自衛隊の原点というものは十分守られて、そこに立って、その上で時代に即したいわゆる訓練なりあるいは装備なりというものを持ってやってまいりたいのだ。うっかりすると、これは空幕の事故であったというふうな感覚で私の言うことを遠くの方々が聞いてくれては困る、こういう中で自衛隊がいろいろなあぶないものを持っている、火器を持っている、危険物を持っている、全機関をあげてどうぞお願いしたい、こういうことを申しております。そうして、しかも防衛という国土を守るということの基本は、やはり外交とか経済とか、そういう問題も基盤にあるのだ、したがって、国の安全のためには、その分において政治はしっかりやっていくことを期待したい。私自体も国務大臣でありますから、その一半の責任を負うている趣旨を述べたわけであります。  同時に、私どもとしては日米安保体制というものをやはり守っていかなければならぬ立場である、そうして日本にふさわしい、日本人にふさわしい自衛力の中核体としての自衛隊というふうにやってまいりたい、こういう気持ちだということであります。こういうようなことを申し上げて、それから若い隊員が災害出動、ジャンボリー等で働いたことに対しては敬意を表するということであります。  次に、航空安全につきまして閣議でもってきまった趣旨のことをずっと述べておりまして、これはアメリカでも協力する意思があるし、それからこれは非常に緊急対策だから不合理はだんだんたお互いに調整しなければならぬ。いま御指摘になった「軍事優先けしからんと民間優先だというふうな声があります。私は必ずしもこれは当らない」ということばを使ったのは、軍事ということばは、いま日本の憲法上でも認められていないのです。軍事じゃないのです。隊務です。軍事ではないのでありますね。われわれは国土防衛のために隊務であります。隊務と他のものとは憲法の中で両立しなければならぬ。  その次に申したのは、しかし、ただあくまでも国民の生命財産を守るということ、いわゆる国民の安全という大前提のもとにその隊務の遂行は許される、こういうふうに言っておるのでありますから、私は単に、国会で軍事優先とか言われたのを批判したのじゃなく、憲法のもとにおいてわれわれはやるんだ、こういう趣旨のもとに私はこういうことを申したのであります。
  139. 大出俊

    大出委員 これはあなた、どう答えようかと思ってずいぶん考えてお読みになったのでしょうが。(西村(直)国務大臣「そうじゃないのです。そのとおりなんです。」と呼ぶ)だけれども、ここに明確に書いてあるじゃないですか。「特に今回、軍事優先けしからんと民間優先だというふうな声があります。私は必ずしもこれは当らない」。あなたはっきり否定している。詭弁はいけませんよ。あなた、日本国憲法には軍事はないんだなんていま言うけれども、あなたの一番最後の段はなんて書いてありますか。一番最後には、「事故によって被疑者になっておられる諸君」、隈さんだとか市川さん、「どうぞ武人としての立場——武人とは何を言っているのですか。隊務だ、軍事じゃないと言うならば、武人とは何ですか。そういうことばの上で言ってはいけませんよ。あなた、そういうことを言うなら、ここまで出てくるでしょう。総理があれだけ長い時間かかって論争をして、軍事優先という皆さんの集中的な御批判があった。それをためにする議論と言って、あなた一番先に書いておるけれども、そうおとりになるのはこれは別だ。どこの新聞でも見てごらんなさい。軍事優先の結果だとか悲劇だとか一ぱい書いてあるじゃないですか。それをあなたはここで、自衛隊の全国放送で、表に出した印刷は印刷、あなたがしゃべったものはしゃべったもの。これは録音にとってあるとおり全部写してあるのでしょうけれども御苦労をかけましたが、この中でそういう言い方をされたんじゃ、総理答弁どこかへ行っちゃうじゃないですか。  総理はここで明確に——議事録はここに持っています。木原さんから、軍事優先の体制だけはこの機会にはっきり決着つけてくれ、こう言われた。そうしたら、いま軍事優先ということばをお使いになった、木原さん、速記の分をいまのやつは民事優先だというふうに書き直していただいてけっこうだ、私はいままで答えてきたけれども、そういう趣旨で答えているので誤解を受けるようなことばでない、だからどうぞ民事優先でいいんだからそう書いてくれとおっしゃった。しかもその前のほうは、わが党の総務会その他でもきめている、そこまで総理はここで発言をされている。党でも決定したようでございますと、ここではっきり、民事優先が党でもきまっておる、こういうふうに言っておられる。そのことを受けて楢崎弥之助委員が官房長官に、総理がそういう答弁をされておるんだけれども、総理にかわってあなたからひとつそこのところを承りたいんだがと言ったら、官房長官は、総理がそのような答弁をしている限り、そういう方針が正しいのだ、こういうふうに官房長官もお答えになっておる。一番これが中心点です。この考え方が、長官がいまここにしゃべっておられるようになっている限りは、そのあといろいろな事件が起こっておりますけれども、これは直らぬ。一番根本的な問題です。  官房長官に私は承りたいのですが、総理がおっしゃっていた、党もそういう方針をきめている、私が述べてきたことも、木原さん、あなた、ここで軍事優先の決着をつけろというが、それを民事優先、そういうふうに書きかえてもらってけっこうなんだ、誤解を受けるようなことはいままで言っていない、こういうふうに総理が言っておられる。これはあの場所であれだけ論議をしているのですから、これはやっぱり竹下さんのほうも、そういうふうに受け取ってもらわなければ困る。民事優先でないなんて言っていない。これはいかがでございますか。
  140. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私もそのときには半分ばかり同席をいたしております。で、総理が申し上げましたのは、民間といわず自衛隊といわず、生命を大事にするということでなければなりません、したがいまして、軍事優先ということばがかりにあり得るとしたら、それに対処して軍事か民事かと言われた場合、もとより民航優先というようなことは、党のほうでも、あれはきめたあとでありましたか、言ったことは、きまっておるという表現だったと思います。  ただ、申し上げておる大前提として、むしろ別の角度から、民間航空は安全で、そうして自衛隊の訓練は少々乱暴なことをしてもいいというふうな言い方であってはなお悪いので、民航といわず、自衛隊といわず、あくまでも生命第一、安全第一という原則の上に立たなければならないという趣旨のことを繰り返して申しておるようでございます。ただ、その経過の中で、木原委員からさらに御質問があって、それに対して総理が、木原委員のその限りにおいての考え方を肯定をした答弁をしたというふうに記憶をいたしております。
  141. 大出俊

    大出委員 それが、私がいま申し上げた、軍事優先の決着をつけろということだが、だから記録に軍事優先は残るでしょうが、そこは民事優先というふうに書きかえていただいてけっこうだ、私がいままで述べてきたことはそういう趣旨なんで、誤解を招くような発言はしていない、総理がこういうふうに話しておる。これがこの場面の決着です。そうなると、やはりこれはいま新聞がいろいろ書いておりますけれども、その中で何が心配かといえば、私も、竹下さんがいま言っているように、自衛隊の皆さんのほうはどうなってもいい、そんなことは考えていない。人の命のことでありますから、そんなことは当然の大前提。だがしかし、今回の事故の結果から見て、スクランブルというのは、航空路というようなものはある意味では度外視をしなければならぬ性格を持っている。そこに航空法の適用除外もある。その意味では、今日の自衛隊の訓練は優先をしていることに間違いない。航空法三十七条という規定もある。そういう意味で、やはりこの際、総理があそこまでお答えになったのだと私は思っている。その趣旨に防衛庁長官が乗ってくれなければこれはやはり困る。別なことをここで言われたんじゃ、これはたいへんなことです。しかも表にあなたが印刷物でお出しになっているのと中身が違う。そういうことをやられては納得できませんよ。ここのところはお直しください。
  142. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 私の言ったのは、この大前提があります。大前提、これはもう国民の生命、財産を守る、そういう大前提のもとにひとつすべては立ってもらいたい。それからわれわれとしては、民間航空が安全であるということは当然であります。大前提になりますから。ただ、自衛隊の隊務というものもまた、公益事業である輸送事業と両立しなければならない、これは私、職責がございます。そういう中で、だからすべて隊務はただあとへくっついて歩け、こういうことにはならない、こういう趣旨で私は申したように考えております。大前提がある。言いかえれば、民間の安全というか、生命の安全というのが大前提である。ここに書いてあります。大前提のもとに許されるということ、これをひとつ読んでいただきたいと思います。
  143. 大出俊

    大出委員 全部読んであります。あなたはいまそういう言い方をされるけれども、昔の軍隊だって、国民の生命と安全、財産を守る。生命線ということばも出てくる。そういう中で軍事優先、軍国主義が戦争を起こしているじゃないですか。あなたはここで明確に、せっかく合同委員会であれだけの論議をして総理が答えているのに、ためにする議論だとか、そうかと思うといまここで私があげているような、軍事優先というのは当たらないとか、おまげにこの緊急対策、やがてこれは不合理なものは直していくのだ、こういう調子のものの言い方をされると……。やはりそれは自衛隊に対して信賞必罰、悪いものは悪い、明確になさらぬと私はやはりいけないと思っている。  時間がきょうは非常にないわけでありますが、竹下さんに先ほど総理の答弁を再確認を願いました。木原質問に対してこう答えたということまではっきりおっしゃっておられるので、この基本線が変わらない、これなら長官が言っているこの言い方については、お取り消しを願うか、たいへんな釈明が要る。いま長官が言っているのは総理が答えた趣旨であるということになるのだろうと思う。そこの点だけは私は明確にしておいていただきたい。いかがですか、そのところは。総理が答えている、いま竹下さんが答えているそこのところを踏みはずされたんじゃたいへんです。こういう書き方をされたんじゃ、踏みはずしたことにならざるを得ない。夕刊がどう書いていますか。軍事優先という批判が当たらないか、そういう感じが書いてある。そうでしょう。
  144. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 結論を端的に申し上げます。私は総理大臣の指揮下に立っておりますから、総理の方針の中でこういう趣旨を述べております。
  145. 大出俊

    大出委員 こまかいことを取り上げる気はありません。基本的なことを言っている。この中にない。ないから、そこのところを明確にしていただいた、こういうわけであります。次にそういう考え方が尾を引くとえらいことになる、そういう心配を私はしているのであります。  そこで、訓練再開の問題について、ここにも一つ問題がある。運輸省、防衛庁の話が九日の晩いろいろ行なわれていた。なぜ一体、十日にぽかっと訓練をするということを内外に明らかにしなければならなかったのですか。しかもこれは国際法との関係もある。私は、これは時間を省いて申し上げますが、たまたま心配もあって運輸省の航空局長さんの部屋に入っていって、その間のいきさつは聞きました。運輸省の方々は防衛庁に抗議をしたとおっしゃっている。国民がこれだけ心配しているのに、何で一体、そんなに拙速に、しかも話が最終的につかない間に、防衛庁は訓練再開すると言わなければいけないのですか。明確にしていただきたい。
  146. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 訓練再開、これは事前に十分政府内部で練らなければならぬ大事な問題でありますから、七日の日に実は総理出席で全関係閣僚が集まりました。その席で、これが閣議決定した後に、われわれは一部から解除したいという申し入れをした。その席には運輸大臣も、もちろん運輸省の関係者もみな列席をしておりました。大体のめどは十日以降、それも一部である、こういう表現で了承を得ております。それから約四日ないし五日経過しまして、十一日に陸が、海上のほうは特に気をつける意味で十三日まで延ばした、こういう経過をたどっております。私が独断でやったものではございません。全体の政府としての了承を得て、そしてその間に準備を進めてもらいたい、大体その中で了承を得ております。
  147. 大出俊

    大出委員 これも防衛庁の意図はそこにはなかった。運輸省のほうに承りますが、あとすぐ運輸省から防衛庁の久保さんのところに、困るじゃないかという話がいっている。防衛庁は何とそれに答えているかというと、防衛庁のいう訓練というのは、ここにあった飛行機をこっちに移す、これも訓練だ、いわゆる訓練をやるというんじゃないという言いわけをされている。いまあなたの言っているのと、実際には違うんじゃないですか。運輸省から、話が詰まっていないのにこれは困る、両局長の話になっているんじゃないですか。その結果あなたが言うようになった。そこらをあいまいにしちゃいけませんよ。運輸省、いかがですか。
  148. 住田正二

    ○住田説明員 運輸省といたしましては、防衛庁のほうで十一日から訓練を再開されるという話を伺いましたので、その間、運輸省と防衛庁の間で緊急対策要綱に基づきまして協議をいたしておったわけでございます。そして防衛庁のほうの御説明では、十一日から再開するのはいわゆる訓練空域における訓練ではなくて、移動訓練等を行なう話であって、その限りにおいては対策要綱には基づかないのだ、訓練空域については従来どおり協議を進めてきまった線でやりたいというお返事をいただいたのであります。
  149. 大出俊

    大出委員 長官、これは官房長官にもお答えいただきたいのですが、国民がたいへん心配をしておるのです。二度とあってはいけないという気持ちになっておる。訓練をしない、こういうことになったけれども、やがてまたやるのじゃないかということでたいへんな心配が各総合誌その他を通じてたくさん出ておる。新聞その他にも出ておる。そういう中で訓練を再開するなら、たとえば国内線だって、一週間なら一週間という周知期間が必要なわけです。だから、ある一定の空域でということであったにしても、それが一日や二日や三日じゃ困るということは間違いがない。  私が運輸省の航空局長さんに会ってそこを質問したのです。局長さんは何と言っておったかというと、久保さんとは旧来からの関係があった、彼とは話はどうでもできるから話したのだ、中身はこうだ、しかしやはり一定期間は期間を置いてもらわなければ困る、がしかし、練度が落ちるという理由で、どうしても何かやりたいのだというお話でした。運輸省の側では、できれば一週間なら一週間という期間をちゃんと置いてやってもらいたいという希望を強く持っておられる。これは当然だと私は思います。練度が落ちるといってもプロペラ機でしょう。ジェット機じゃない。一番落ちるのはジェット機です。国民が心配しておるのだから、ここら辺政府として……。  これは官房長官に承りたいのだけれども政府不信を招くことは与野党を問わず困る。日本の将来のためによくない。だから、きちっとすべきものは全部やって、心配だ、誤解だ、両省間……抗議ということばを運輸省は使われておる。私が局長室に行って聞いた。閣議でこういうふうにしゃべったからというので、きまらぬうちに何だといって抗議を申し入れた。その結果、久保と私の間だから話が早かった、こう言っておる。つまりすべて結着がついていないからそういうことになる。だから新聞だってそう書く。この時期はこういうのが国民の目に触れるようになってはいけない。そこらはもっと慎重に、わずか三日や五日なぜ一体あせらなければいかぬのですか。早く巻き返さなければいかぬという気持ち防衛庁にあるなら別だ。論外だ。なぜこういう拙速なことをおやりになるのでしょうか、理由を承りたい。
  150. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この問題につきましては、たまたま砂田総理府副長官、むしろ今度の副本部長という資格のほうが適切かと思いますが、その会議に一応かけて、いわゆる防衛庁の考え方に引きずられたとかというようなことでなく、公正な本部の会議にかけて決定をしたというふうに私も報告を聞いております。  なおまた、いまいろいろな大出委員調査と申しますかについての御発言も含まれておりましたが、確かに新聞紙上等に、あるいは抗議でありますとか、両省の意見対立でありますとか、そういうようなことはきびしく避けるべきであるということで、さらに本部の会議において確認をいたしましたところ、両省の局長の間で話がきちっとついたものであるということでありましたので、それも特別砂田副本部長から確認をしてもらったと報告をいただいておる、こういうことでございます。
  151. 大出俊

    大出委員 これだけのことが起こっているのですから、やはりおのおの各省の立場がありましょうが、その上に立って、なおかつ国民に納得してもらうという進め方をしてもらわなければならぬ筋合いだ。筋をはずされては困ると私は申し上げておる。そこへもってきてまた例の全日空とのニアミス問題が起きておる。これを電話で福岡から私が聞いたのは昼ちょっと過ぎ。さっそく私のほうも調べてみた。ところが、この時点で私も心配になったから、どうなっておるのかと思って、午後の一時半過ぎに防衛庁まで行ってみた。これは小倉の管制塔には、もうちゃんと初めから時間も、私、電話で受けたとおり書いてある。〇七九の針路、東北東をとる、高度四千フィートというところから始まって報告している。九時三十一分になっている。小月のNDBを通過して、管制塔から一万一千フィート、三千三百メートルまで上昇せよという指示を受けて上昇している、というところから始まりまして、このときの状況は、私も当日伝えられたのは知っている。小倉の管制には入っているのはここに書いてある。全日空の機長さんから小倉空港への状況報告というのが来ている。これを見ますと、小倉タワー了解というところから始まって、どうぞということになって、いま小月上空で自衛隊の小型練習機の二機編隊が接近してきた、こちらの高度は五千三百フィート、自衛隊機との距離は機体の番号が読み取れるくらいで、約半マイル、自衛隊機は海上自衛隊の小月基地のT34——これはあと違ったようでありますけれども、T34型の練習機と思われる、以上報告します、とちゃんと入っています。これは閣議できまって、この種のニアミスは全部総理に報告するようになったんじゃないですか。
  152. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そのとおりです。
  153. 大出俊

    大出委員 ところで、この件について、一体防衛庁はどういうふうにつかんで、どういうふうに処理されたのですか。結果的に、該当機はあるのですか、ないのですか。
  154. 久保卓也

    ○久保説明員 私どものほうでは、その午後から夜にかけまして、部隊からの報告を求めました。詳しくは、お求めがあれば御報告いたしますが、機長の言っていることと、われわれが実態を把握したところでは、若干違っておる。たとえば高度につきましては、九時三十分の高度を求めて調べたのですけれども、二千フィートから三千五百フィートの間。これは、全日空機と交差する四つの編隊の航跡といいますか、それを取り上げますと、九時三十分でいま申し上げたとおり、それから距離で見ますと、調べた範囲では、近くてホーマーから七、八マイルから十数マイルくらい。機長のお話ではホーマーから二・五マイルとありますから、距離がもう少し縮まるかもしれませんが、現実にはそういったことがわかりました。この点は新聞にも発表しておりますが、このわかった範囲内におきまして、夜、総理の秘書官に報告をし、翌日朝、さらに追報を書類にして総理の秘書官を通じて報告した。こういうことであります。
  155. 大出俊

    大出委員 これもあなたのほうの発表を見ると、私は三時半ごろから防衛庁から出ましたけれども、五時過ぎ、おたくのほうで非公式にものを言っている。おたくの説明では、まず小月の管制塔で全日空機の接近を見つけた、そうしてすぐ全練習機に通報した。どの練習機もニアミスに気がついていなかったことが認められる。そうすると、全日空機の接近は小月の管制塔は知っていたことになってる。それからあとは今度は変わってる。海上幕僚監部の運用課長の宮沢正介さん、一佐の方ですが、全日空機にミスがあった、運輸省と自衛隊で協定ができていて、小月の上空の民間航空機の高度は四千フィートときめられてる、それなのに五千フィートの高度で自衛隊機とニアミスをしたのは全日空のほうにミスがあるんだ、こう言っておる。  次に、防衛庁の渡辺伊助さんという教育課長から、訓練機は小月基地付近で編隊訓練をしたが、ルール違反ではない。小月上空を民間機が通る場合は運輸省の管制事務所から通報があるのに、この日はなかった、相手が悪い。さらに四時間半たっておる。最後には何かというと、民間機を最初に見つけたのは小月基地の管制塔と言ったけれども、これは誤りだった、編隊飛行中の訓練機だった、これが見つけた。小月上空の計器飛行航路付近は三千五百フィート以下で飛ぶように指示されていた。最後に、午後十一時過ぎになったら、どの練習機も全日空と離れた地点、異った高度を飛んでおり、該当機はないと判断をした——これは一体何ごとなんですか。私も時間を追って聞いておる。ちゃんと書いてある。
  156. 久保卓也

    ○久保説明員 そのところ、そのところの発表について不的確であったことは——そのとおりであれば、私は不的確だと思います。現実の姿は、九時二十七分に南西の方向を飛行しておりました編隊機が見つけております。それをすぐにタワーに報告した。そこでタワーから全編隊機に、全日空機がこの方向で飛行しているということの報告といいますか、通報をしました。ですから、タワーが最初に知ったというのは間違いで、もちろん編隊機が最初に長府上空で知ってそれを通報したということであります。  それからいまのお話の中で、全日空機にミスがあったということを強調されておりますが、現状において私は、全然ミスがなかったとは申しませんけれども、それが別に原因ではない。こちらのほうですでに各編隊機に通報しておりますから、これはそれほどあげつらう問題ではなかったというように私は思います。
  157. 大出俊

    大出委員 あげつらう、あげつらわない、ころころ変わって、何をやっているのか、防衛庁というのは。前回の全日空機との衝突事故、あれだって、隈機の左後方と発表しておいて、今度右に変わって、何でそうころころ変えなければいかぬのですか、あなたのほうは。何でこんなに不正確な発表をするのですか。
  158. 久保卓也

    ○久保説明員 これは私は庁内でも発言をして、いずれクラブの方と御相談をしていただきたいというのが本心でありますが、クラブのほうでは、当然報道の任務としてなるべく早く正確な情報を知りたいわけであります。ところが早さと正確さというものは往々にして相反します。したがって、早さを求めますと、どうしても不正確になる、正確を求めるとどうしてもおそくなる、これがどうしても私どもの非常な泣きどころであります。そこで当然、早く正確にという報告をどういうふうにしてなすべきか、これを私どもは、今回の事件及び前の事故についても、速報体制といいますか、正確な速報体制、もう一ぺん各幕は反省してほしいということを申しました。したがいまして、今回のケースについての報道といいますか、私どもが報道陣に発表したやり方については反省すべき点があろうと思います。
  159. 大出俊

    大出委員 これは何があらわれているかというと、各幕がかってなことを言っておるのを内局は一体何をしているか。あなた方はぴしゃっと押えなければいかぬのではないのですか。それもできないでシビリアンコントロールもヘチマもありはしない。幕の方じゃないのですか、ものを言っておるのは。だから、いろいろ聞いてみると、あの事故の起こった当座はおとなしくした。各幕はしゅんとした。あたりまえの話。だんだん失地回復して各幕が強くなる。あなた方がそれに巻き込まれている。長官の訓示だって、私は多分に迎合的なところがあると思っておる。こまかいことを申したくないのですけれども、やはりこういう時期に御就任になったのだから、しかもほかならぬ西村さんなんだから、言うべきものはびしっと言わなければならぬと思っておる。この訓示の中身というものはまことに不満です。それではシビリアンコントロールもヘチマもないですよ。てんでんばらばら、かってなことを言っておる。最後には、該当機がないんだ、そういうふざけた話はない。これは長官どうお思いになりますか。私も克明に聞いているのですよ、時間を追って。
  160. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 報道でありますから、報道陣としては非常に急がれましょうし、それからいろいろ変わってまいる、その間に二転、三転という印象を与える、これはできるだけわれわれも気をつけなければならぬと思います。  それから大事な点は、シビリアンコントロールに立って、私は私なりに極力努力をして、各幕の諸君に私の意思を浸透してまいるつもりであります。これはほんとうに自分で誠心誠意をもってやってまいるつもりでございます。
  161. 大出俊

    大出委員 竹下さん、これは私、ここのところ幾つかまだいろいろございますが、例の楢橋渡さんと赤城さんで取りきめた覚え書き、かくて中央協定十五条によって地方協定、こう出ております。しかし、そこからまた通達が出ております。基準があります。これは御破算。御破算ということばが悪ければ白紙でもいいけれども、そういうことになっているはずです。これはとにかくいろいろあると思うのです。その間すでに四機も飛んじゃっている、スクランブルかけちゃっている具体的事実があります。私もこのニュースソースを調べてみた。四機。これはあとから言いますけれども、こういうふうなことが次々に起こる。これは非常にいろいろ大事な時期です。だから、ここのところはやはり、こういうてんでんばらばらじゃなしに、ぴしゃっと中心を据えて、押えるものは押えて、国民の皆さんが納得するような体制をつくるために、訓練を中止なら中止、それで幾つか案が出ていますけれども、どうするかということは抜本的にぴしゃっときめて、二度と起こさないということで出発をしなきゃならぬときにきていると私は思っている。ここらの責任は一体だれが負うのですか。官房長官にしかと承りたい。どうするつもりなんですか、混乱し切っているこの状況を。
  162. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ただいまの御質問でございますが、総理の指示によって総理府がそうした連絡会議を持ったということも、いわば国民の皆さまの前に一つの姿勢を明らかにしようとした趣旨であろうと存じております。その上に立って、そのような機関というものの存在を踏まえながら、両省それぞれ緊密な連絡でやられておるという限りにおいては、私はこれらに、非常に急いだ結果である、そういうことではなくして、それなりの正当性があろうというふうに理解しております。  ただ、申されるように、いわば、絶えず防衛庁当局も苦心しておられるところでありますが、取材に対して速報体制——別に体制をとったわけではございませんが、急いでそれぞれのところから新聞記者会見、発表という形ではないにしても、取材されたことが誤解を生む結果になったということに対しては遺憾に思っておりますし、そうした点については今後とも、防衛局長から再三私も話を聞いておりますが、きちんとした体制のもとに公表もしていこうという姿勢を貫きたい、このように思っております。
  163. 大出俊

    大出委員 お忙しいところを御出席いただきましたから、官房長官にもう一点だけで質問を打ち切りますけれども防衛庁が、この全日空機の自衛隊機との衝突事故、この当初に発表したときに、教官機が前におる、その左後方に航空学生の市川さんの飛行機がいる、こういうふうに出しておられる。これが右にきた。これは見方によりますと、これは私もあとから、詳しい質問は、担当の警察庁の皆さんなり、あるいは調査委員会担当の砂田さんお見えになっておりますから、承りますけれども、これは一つ間違えると将来の遺族の方々に対する補償にまで影響する。そのときにあった二つの飛行機の位置というのは、ホフマン方式ならホフマン方式で将来計算する場合に非常に大きな問題になる。  例をあげますと、全日空という会社は約款で六百万となっているけれども、国がやる補償については万全の措置をとると、総理はこうおっしゃつておられる。そうすると、それが一千万になるのかどうか知りません。知りませんけれども、きのうの新聞に出ておりますように、ジェット航空路のすぐぎりぎりに隈という人の飛行機があった。こういうふうに身柄拘束されておる隈さんが言ったというように書いてあるのです。右後方ということになりますと、教官機はジェット航空路に入ってない。右側にあったとなれば、ジェット航空路、民間航空路に入ってないことになる。そういう理屈が成り立つ。ところが、いろいろ物的証拠、散乱している残骸その他から見て、警察庁の私が聞いた方は、航空路の中に入っていたと概略判断ができます、フライトレコードその他の調査依頼は委員会に委託しております、それが出てこなければ最終、最後の詰めができませんが、概略中に入ったと言えると言っておりますけれども、その間の結論が出ないままに終わるとすると、ホフマンという方式は単利、複利両方ございますけれども、過失相殺という問題が出てくる。そこで、どっちがほんとうに悪くて、片方が全然無過失であったかどうかというきめ手は位置なんです。そこが結論が出ない、相対立する意見だということになって残るとすれば、ホフマン方式で補償するにあたって、過失相殺二割、三割というのが必ず出てくる。先例がないのじゃない。こうなると、この問題は万全の措置をといってもそこまで影響してくる。だからそう簡単な事件じゃない。この点は詳細にあと詰めますけれども、私はここで、そこらを踏まえて、政府はなくなられた御遺族に対する万全の措置としてどういう補償を将来を見通してお考えになっておられるのか、この点をひとつ、どなたからというわけにまいりませんので、官房長官に明確に承っておきたいのです。
  164. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ただいまの御質問でありますが、現実問題としてホフマン方式というようなことも十分考え得る一つの算定方式であると思います。が、今日私どもが政治の姿勢として持っておりますことは、いずれにしても、国の責任においてこれらの手厚い補償をやるという大前提に基づいて、その後対策本部のほうで、その内容については、もとよりいま大出委員がおっしゃった事故原因調査の問題等もいろいろな形において響くでありましょう。しかし、その問題はそれとして、今日対策本部で検討してもらうようにして、その姿勢としては、国が遺族に対して万全の措置を行なう、こういう姿勢のもとにそれらに対応していくようにという指示を与えて、いま対策本部で検討中である、このように御了解いただければ幸いだと思います。
  165. 大出俊

    大出委員 長官の時間の関係ありましょうから、事の性格上、賃金も人事院勧告が出たところですから、おのおのの質問が少しずつ延びるのはごかんべんいただきたいのですが、そういう意味で、午後予定した防衛庁長官の出席時間についても御配慮いただきたい、このお願いを委員長にしてありますけれども、それにしても時間の関係ございますから、ここでもう一つ長官に承りたいのでありますが、このサーブなるものについて、この間の合同委員会でも意見が何人かの委員から出ております。さっき申し上げました赤城さんと楢橋渡さんの覚書、これに基づく中央協定十五条に基づく地方協定、ずっとこうある。これはその後御破算と総理はおっしゃった。その後白紙ということばも出てきた。ところが実際に新協定をという形、考え方が防衛庁にはある。西村さんの訓示の中でも、緊急対策なんだからこれは守ろうじゃないか、不合理はやめて直そうじゃないかということをおっしゃっておる。そうすると、ここのところに防衛庁案というものがなければならぬ。御破算、白紙と言っている中央協定、地方協定、関連する通達を含めまして、どういうふうな形のものを——ジェット機の訓練再開の問題もあります。どういうふうなものをお考えなのかという点、国民のたいへん心配するところでもあります。一つ間違えると、先ほどの軍事優先につながりかねない、そう考えます。したがって、その点について明確にひとつ防衛庁のお考えの構想を明らかにしていただきたい。
  166. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 例の協定の問題は、私どもとしては、これを白紙に戻して、そうしてすみやかに結論を得るという政府全体としての結論を得ておるわけであります。  そこで問題は、先ほど来繰り返しておりますように、国民の安全と申しますか、生命の安全と申しますか、財産の安全と申しますか、本来、自衛隊もその趣旨でありますし、また一番大切なことであります。それは同時に、われわれにはわれわれなりのいわゆる自衛隊の隊務、その中で隊務を遂行するということになっておる。ですからスクランブルのごときは、国民の生命、財産を守るという意味では、スクランブルというものはどうしてもやらなければならぬ。そうすると、スクランブルというものに対しては将来訓練をどうするかという問題。それから第三点は、例の大規模な演習というものが一つひっかかるので、したがって、軽量、順序もありますから、私どもとしては、今回のいわゆる自衛隊として国民の生命、財産を守り、かつ安全を確保するという中で隊務を遂行さしていただくという中で、防衛庁の考え方を漸次練ってまいりたい。具体的にはまだこの席を通して申し上げる段階まではきておらないわけでありますが、そういう思想の中でひとつやらしていただきたい、こう考えております。
  167. 大出俊

    大出委員 具体的に言いますが、自衛隊法八十四条で、スクランブルというものは領空侵犯に対する法的措置、これはきまっている、いまおっしゃったとおりでありますが……。ということで、この事故以後、三沢の基地から計四回航空自衛隊のF104J、これを出撃さしておられる。久保さん、御存じですか。あわせて、この間、実は八カ所おきめになったのも、協議書の形で皆さんは運輸省に出しておられますね。ペンディングになっている点が五カ所ばかりありますが。おそらくこの協定の場合でも、防衛庁案をお出しになり協議を求める、こういうかっこうになるんだろうと思うのです。  ただその場合に、これはどこのレベルの協議かわかりませんが、皆さんのお考えの根底にあるのは、国籍不明機が防空識別圏に接近をした、その場合に、地上のレーダー基地から四十マイル、約七十二キロですね、この空域では民間機から三マイル、五・四キロ離れて飛ぶように誘導する、これが一つ。それからさらに四十マイルの空域の外にいた場合、民間機から五マイル、九キロの間隔をとる。そういう経路を指示している。訓練飛行についても同じ方式をとりたいという考え方が一つ前に出ている。これに対して、運輸省の皆さんなり砂田さんなりから、いろいろと御意見のあるところだと私もそれなりに聞いている。防衛庁はこういうようにお考えのようだけれども、そう簡単に踏み切るわけにはいかぬとか、いろいろある。だから具体的にそれぞれの関係のところでは話がいろいろ行なわれている。したがって、これは私も非常に心配になるところなんで、長官はそこまで御存じないかもしれないけれども、専門的にその衝に当たっている防衛局長から、ここらのところについては御説明願いたい、疑問に思いますから。
  168. 久保卓也

    ○久保説明員 いまの御指摘の点は、私どものほうとしては、踏襲をしても差しつかえないのではないかという考え方をとっております。全般的についてまだ成案があるわけではありませんが、この問題については少なくとも私の耳には、運輸省側から異論があるというふうには聞いておりません。しかし、もちろん今後協議をする段階のものでありますので、運輸省から御意見があれば当然われわれとしても検討いたしたい。  なお、この覚え書きの問題につきましては、運輸省と私どもだけではなくて、総理府に置かれました連絡協議会の席上で御審議願う、そしてそれでよろしければ、閣議に御報告するかどうかは後の問題といたしまして、その後に運輸省と防衛庁とで覚え書きを定める、こういうかっこうになります。
  169. 大出俊

    大出委員 いま踏襲してもいいと思っているという御回答がありました。これは非常に問題になると思う。  そこで砂田さんに、きのうおそらく日曜も休まずに調整されていると思うのでありますが、ジェット機の訓練再開、スクランブル訓練、ここらの問題があります。久保さんは、前にこういうのがありますけれどもそれを踏襲してもいい、というふうにいまおっしゃっているわけでございますが、ここらのところをあわせまして、どういうふうに考えておられるのか、明確にまずしていただきたい。
  170. 砂田重民

    ○砂田説明員 御承知のように、交通安全基本法の中にきめられました中央交通安全会議がございます。閣僚会議でございますけれども、また同じようにその会議の幹事会があって、今回の事態にかんがみまして、閣議の了解で、その幹事会の下準備と申しますか、そういうことをいたします航空交通管制連絡協議会を新たに設けたわけでございます。いま申し上げました逆の順序を経てきめてまいりましたのが、先般発表いたしました例の緊急対策の何項目かであります。その中に第六番目に、先ほどからお話のありますところの防衛、運輸両大臣の覚え書きを白紙に戻して、航空安全の角度からこれを再検討して結論を出す、そういうことが書かれているわけでありますから、両省間だけで話がついたからといって、この問題についてはすぐに飛び立てるものではない、かように私は理解をしております。  いま大出委員の御質問の中に、ジェットの訓練ということがございましたけれども、御承知のようにこの緊急対策の中には、運輸、防衛両省の中で緊急にこまかいことを詰めなさいという項目が幾つかありました。それでプロペラ飛行機の訓練場所がきまってきたわけでございます。ですから、ここにおきます訓練は、先ほどお話がありますような範囲内においてすでに自衛隊が始めた。  それからジェットの訓練空域については、まだ両省問で話が決定しておりません。回廊もまだきまっておりません。これらがきまらなければ、ジェット訓練は開始されないものと、この航空交通管制連絡協議会の庶務をやっております総理府としては、さように考えております。したがって、両省の間でジェットの訓練空域というものがきまり、回廊の話がきまってまいりましたならば、この連絡協議会に持ってきていただいて、いままですでにきまっておりますプロペラ機の訓練場所等も、あわせてこの連絡協議会で決定をしていく。ものごとによりましては、交通安全基本法に基づくところの中央交通安全会議という閣僚会議まで上げていく。私は、スクランブルの問題とスクランブル訓練の問題等については、やはり国民の航空旅行に対する不安感というものをこの際払拭をいたさなければなりませんので、そういう趣旨で設けた機関でありますから、やはりそこまで持って上がって、スクランブルのことについては、新たな航空安全を目的としての運輸、防衛両省間の話し合いというものを、政府全体としての責任をとらなければいけない、かように私は考えております。
  171. 大出俊

    大出委員 前の覚え書き協定ですね。御破算、白紙、こういうことなんですが、西村さんはそうお答えになりましたが、この中にある思想の踏襲というのは、よほど気をつけていただきませんと、ジェットルートを考えずに行かなければならぬ、スクランブルという解釈ですから。そうなるとどうしても、これは先般来問題になっている自衛隊機が、という問題が出てくるわけでありまして、したがって、私はここのところは、根本的におたくのいまの機関で考え方を変えてもらいたい、こう思っているのですが、時間がありませんから中身に触れません。  そこで、二つ、三つ簡単な点を承って、あとまた事務当局に承るつもりでおりますが、大臣の時間がありますから……。  そこで、一つは、警察庁の関係の方々が調査をいろいろとやっておられる。そこで、この十四時二分ですか、衝突が起こった。そこで教官機が帰投した時間は五十四分です。そうすると、教官機はこの間五十二分間飛んでいたことになる。これは松島基地へ帰るのに十何分で帰れるはずです。衝突が起こった、それから五十二分ばかり飛んでいた、これは一体どうなっているのかという疑問。これは、いろいろな関係の、記者の方々からも、専門家からも出てくる疑問です。私も大きな疑問を持っている。  そこで、ある記者の方が隈さんという方に会見したときにそれを聞いている。一言だけ答えている。何と答えたかというと、教官機の隈さんは、自分の立場が地上にいる方々に理解してもらえるように通信をしていた、というのです。VHF、UHFがあります。これは「よど号」事件のときに私は長い質問を合同委員会でいたしましたが、これは波長が違います。だから、管制に入ってきているメーデー、メーデー、緊急通信というものは、新聞記者クラブで、皆さんやりとりをかけて聞かしたわけですから、これはわかっている。たいへん落ちついているという印象が残っているくらいのことで、私も知っていますが、さてそこから先、地上とどういう通信をやっておられたのか、これは全くわからない。これは皆さんの側でなきやわからない。これは一体何だったのかという点、それとさっき申し上げた位置の問題、ここらは警察庁の側でお調べになっているわけですから、どういう結果になっているのかという点。捜査中だから言えないということばはよくあるけれども、これは普通の何とか事件じゃないのです。国民注視の的で、いまいろいろ問題になっている事件です。事国会でも論議をしていることですから、この辺のところは、言えることは言ったほうがいいと私は思っている。そういう意味で、ひとつ疑問な点についての解明をいただきたいのと、どの辺までこの捜査というのは——警察庁の側は、とにかく二人の方の身柄を拘束されているわけですから。これが一つ。  それから、もう一つの点は、新聞によると、航空法に適用条項がないという。さて、私、適用条項がないかと思っていろいろ調べてみると、ある。これは、私は警察庁の方々においでをいただいて聞いてみた。ところが検察庁の御意見だという。検察庁の意見が入っているという。過失傷害致死のほうが量刑が重いのだ、だからそれでいいじゃないかということを新聞に書いている。だけれども、事の性格上——公務執行妨害罪には罰金はありません。このくらいは罰金でいいはずだと思ったって、法律がそうなっているのですから、罰金がないのだからしようがない。それと同じように、やはり衝突をしたのだから、これは航空法上規定がないのだといっても、適用すべきものはなぜ適用しない。責任の所在がはっきりしない。そういう点について、いまどき検察庁の意見が入っては困る。じゃ一体法務省の刑事局長さんはどう考えているのかという問題が出てくる。そこらのところを、ことごとにあいまいにされてしまいそうな感じが非常に強い。だから承りたい。ほかにすでに先例がある。防衛庁のかつてのいろいろな事故、結局うやむやにされてしまう。今回もそういう傾向が非常に顕著である。だから、いまの点について明確にしていただきたい。  それからもう一点だけ。いま砂田さんのほうでいろいろ手がけておられる調査委員会、これは権限は何もない。権限がないものが、片一方軍事機密というものをかかえている防衛庁、ここを相手に、各幕を相手に、一体山縣さん以下何が調査できるかという問題。その権限のない調査委員会に警察庁が委託をしている。それは悪口を言えば、ある人が私に、防衛庁の次官の内海さんは前の警察庁の刑事局長じゃないか。宍戸さんから始まってみんな警察庁じゃないか。だから警察庁と同じレベルの方々がやっているから、そんなことわかるはずがないだろうということを言う人がいるけれども、そんなことじゃ困る。だからそこらのところを、将来に向かって、どういう権限をこの委員会に総理みずからが与えて、ほんとうの調査をさせようとなさるのかという点。これが抜けたのじゃ、幾ら調査委員会に警察庁が委嘱したって、ろくな結論は出ない。私はそういう意味では、将来山縣さんにここにお出かけをいただいて、どこまで立ち入った調査をしたのかという点を承りたい。二転、三転ずる防衛庁のいまの態度からすると心もとない。ここらは一体どうお考えなのか。この点だけ長官のいるところでお答えをいただきたい。
  172. 砂田重民

    ○砂田説明員 まず、最後の点、私どもへの御質問だったと思いますので、お答えをしておきたいと思いますが、事故が起こりましたときに、私どもが事後処理として一番先に考えましたことが三つございます。一つは、すでに心に深い傷を負われた御遺族の傷をこれ以上深めては断じてならない、補償の問題を含めてその問題。二つ目が、航空法の改正等先にならなければならない問題、あるいは金と時間をかけなければならない安全対策の問題とは別に、当面、国民の皆さんが持たれた航空旅行に対する不安感をどう払拭すればいいかという緊急的な安全対策の問題。もう一点が、ただいま御質問にございました原因の厳正な究明、調査の問題でございます。  そこで、従来の慣例と申しますか、こういった事故がありましたときに事故調査委員会が置かれてまいりましたけれども、その様子もさっそく調べてみましたが、これは運輸省に置かれた事故調査委員会でございます。航空法を私も自分で調べてみましたけれども、事故調査委員会というものが明確に航空法では定められておりません。ただ、事故調査の権限を運輸大臣が持っておられる。その運輸大臣が任命する調査委員ということで、いままではやってきたわけでございます。ところが、一方自衛隊法を調べてみますと、この運輸大臣の事故調査権限というものを自衛法でははずしておられる。法律に事故調査の問題について不備な点があったと言われれば、まさにそのとおりでございますが、当面国民の皆さま方のお気持ちに立って、それでは事故調査をどういう形でやっていけばいいかということを考えたわけでございます。  そこで、これはやはり政府全体の責任として、総理が直接委嘱をする事故調査委員会というものを設けよう、委員の任命については特に配慮をいたしまして、全日空、自衛隊、当面の責任があると考えられる関係者は一切委員には任命しない、そういう基本線をきめまして、総理府の訓令を出しました措置として、今回の総理大臣が任命をする調査委員会というものを初めてつくったわけでございます。大出先生がおっしゃるように、権限がないではないかとおっしゃられれば、まさにそのとおりでございます。しかし、総理がみずから責任をもって厳正な事故の究明をしようという決意で、いろいろ世論は、運輸省にそういう機関を置くことはおかしいではないかというふうな意見も、また片方、「ばんだい号」事件のあとあったわけでございますから、国民的な御要望の上に立った行政措置として今回の事故調査委員会総理府訓令に基づいて発足をさせたわけでございます。したがって、いま大出委員が御心配になりますようなきびしい調査ができるだろうか、当然私どもはこれについて、今度は調査委員皆さんに責任を持たなければなりませんので、運輸、防衛、全日空、関係先は全部連絡をとりまして、警察にも御連絡をいたしました。刑事事件として捜査中ではありますけれども、刑事訴訟法等の許される範囲でできるだけの実情を委員に伝えてもらいたい。いろいろな調査の委託もまた警察からこの調査委員会にございましたので、そういう委託に基づいて、警察も捜査中の問題について調査委員会にすべてのことを説明もしてください。いままで、三沢の基地でございますとか、松島でございますとか、あるいは札幌の全日空の運航関係事務所でありますとか、現場はもちろんのこと、関係先の調査は順調に進められております。特に山縣委員長に私どもから申し上げてありますことは、もしも調査に差しさわりのあるような隠しだてとか、あるいは関係先の調査への非協力のようなことがありましたならば直ちに御連絡をいただきたい、これは総理府配慮をいたします、こういうことを委員長にお約束をしてあるわけであります。  私どもは、先ほど申し上げましたような姿勢で今回つくりました調査委員会でございますから、この調査委員会がたとえ法律的な権限はなくても、国民的な御期待、御要望の線の上に乗った行政措置として設けられた委員会でありますから、厳正な、また厳密な、公正な調査をしていただけるもの、また、していただけるような協力を全面的にする。出ました答えにつきましては、この委員を任命いたしました総理大臣が、総理大臣としての責任をとって政府部内で措置することがあるならば、これは総理の指揮によって措置をする、かようにこの委員会の性格をお考えいただきたいと思います。
  173. 高松敬治

    ○高松説明員 隈一尉が五十数分間、基地に帰投するまでに時間があったということについての調べでございますが、これにつきましては、本人の供述では、救援機の到達するまで現場を中心にして飛行を続けた、こういうことでございます。  それから、事故調査委員会と警察の捜査の関係でございますが、これにつきましては、私どものほうから事故調査委員会に対して、鑑定の嘱託をいたしております。したがって、先ほど砂田副長官から御説明がありましたような行政官庁としての協力ということのほかに、事故調査委員会としては、私どもの警察からの鑑定嘱託に基づいてのいろいろな調査、あるいは品物、落ちたいろいろな機材なりそういうものを調査委員会に運んで調査をする、場合によっては近隣の人にもいろいろ当たって状況を聞き得る、そういうふうな形で両方結びつけて事故調査委員会調査の鑑定をお願いしておるような次第でございます。
  174. 辻辰三郎

    ○辻説明員 隈さんと市川さんの事件につきましては、現在盛岡地方検察庁におきまして、岩手県警と緊密に協力して捜査を進めておるわけでございます。その間におきまして、検察庁は航空法上の罰則の適用はないんじゃないかということを言ったかどうかという御疑問でございますが、そういう事実は検察庁としてはございません。検察庁といたしましては、まず事案の真相を究明することが第一でございますから、その真相の究明をいたしまして、現在両氏を拘束しております罪名は刑法上の業務上過失致死罪でございますけれども、この犯罪の成否は、もちろん航空法上の罰則に触れる行為があったかどうかという点も含めまして、あらゆる角度から鋭意慎重な検討をいたしておる段階でございます。
  175. 大出俊

    大出委員 こまかい資料に基づいていまの点を質問いたしたいのですが、長官の時間もありますので、最後に一問で私は打ち切りますが、実は大回廊方式ということを久保さんお答えになったことがありますね。これはあとで中身が明らかになってきておりますが、もう一つ運輸省の皆さんの側は、複々線方式なり北上、西行きなんという形の航路別に分けていこうという案が出ておりますね。たいへん違いがあるわけですね、両方。そこらのところは防衛庁と運輸省との間の関係はどうなっているのですか。
  176. 久保卓也

    ○久保説明員 私はこの航空交通のルールというものを思想的に申し上げてみたわけでありまして、この回廊を必ずこうしなければならないという航空路再編成の一案をお示ししたわけではございません。したがって、航空局の考えておられますのは一種の分離交通、右行き左行きあるいは南行き北行きという分離を考えておられるということでありますから、これは思想的には私もけっこうなことだと思いますし、それからなるべくならば、海上のことを申しましたが、海上についてこれを集約することは合理的であろうと私はいまも思っております。こういう思想のもとに具体的に航空路を再編成するにはどうするかということは、今後運輸省がお考えになることですけれども、私どもとしてもいろいろと御注文申し上げたい、かように思うものであります。
  177. 大出俊

    大出委員 そこで運輸省側はどうなんですか。
  178. 住田正二

    ○住田説明員 運輸省といたしましては、将来の航空機の需要の増加ということを勘案いたしまして、特にふくそういたしております航空路につきましては、複線化をするとかあるいは複々線化をするという計画をつくっている最中でございます。今回の事故にかんがみまして、民間航空と防衛庁の航空機との分離ということを考えなければいかぬ段階に来ておりますので、今後防衛庁の話し合いを伺った上でわれわれの計画も再検討してみたいというふうに考えております。
  179. 大出俊

    大出委員 それとこのジェット機の訓練というものはおのずから別だということになりますな。
  180. 住田正二

    ○住田説明員 ジェット機の訓練空域はいまの問題とは別に、航空路を、あるいはジェットルートを含めました航空路を分離した形で訓練空域を定めるということで、いま防衛庁と話し合いをしております。
  181. 大出俊

    大出委員 それでは長官に。こういう時期でございますだけに、またこの種のことが次々に表に出てくるということになりますと、これは国民的な立場に立ってたいへん——私とも政治の分野へ足を入れておりますから、責任が負いかねる問題が出てくると思いますので、ひとつ十分そういう点を踏まえていただいて、いまのジェット機の訓練、つまり高々度におけるここらの問題についてお急ぎにならぬで、万全の措置をとおっしゃる意味の、国民に安心感を持たれるところまでの措置をおとりにならぬうちはやらぬというところまで、これは慎重にお運びをいただきたいと思うのでありますが、長官いかがでございますか。
  182. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 航路の将来と申しますか、少し長期的な問題、それから当面の緊急対策の実行、これは分けられなければならない場合もあると思います。しかしあくまでも基本は国民の安全というところを主眼にしてまいりたい、こういう考えでおります。
  183. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 木原君に申し上げますが、順次時間がおくれておりますし、西村防衛庁長官に対するあとの方の質問もあるものですから、時間もたいへん逼迫しておりますので簡明にお願いいたしたいと思います。  木原実君。
  184. 木原実

    ○木原委員 時間がありませんので、私は一つだけ長官に確認をいたしておきたいと思います。  すでに大出委員が幾つか触れましたことに関連をいたしますが、ただいまの御発言の中でも、安全を第一義に、こういう御発言がございました。しかしこの実態は、航空行政の安全上の措置として要求するものと、それからコンバットチームといいますか、戦闘的な任務を持って隊務に従事をしておるそういう飛行機が飛びかう状態というものは、並存をしていくということはなかなかむずかしい側面があると思います。そうなりますと、やはり安全ということを基準に置きますと、どちらかが、何かが譲歩をするというか、犠牲を供するというか、そういう措置が必要だと思うのです。その上に立って、私は先般の連合審査会で総理の御決断をということで御回答を求めましたのは、そういう際にあえて民事優先でまいりますのかと総理の決断を聞いたわけでありますけれども、その際に総理は、民事優先でまいるのだ、こういう御回答があったわけであります。ところが、先ほど来もいろいろやりとりがございましたが、なかなかむずかしい要因がある。しかし、そういう際にもやはり安全ということを第一義に考えて、民事優先ということで防衛庁も全面的に協力をしていく、こういう姿勢なのかどうか。これは確認になりますけれども、長官の御回答をいただいておきたいと思います。
  185. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 私の思想は、国民の航空の安全、しかもその中で民間航空の安全ということが第一義でございます。ただ、民事優先ということばの中に、何でもかんで毛、自衛隊の隊務の遂行が困難になって全然できないというようなものまで含めるという意味ではございません。自衛隊の隊務もまたわれわれ法律に基づいて許されねばならない。したがって自衛隊員は、私の訓示にもございますけれども、制約を受ける、非常に困難も伴う、それ自体が訓練なのだ、こういうふうに私は訓示している次第であります。
  186. 木原実

    ○木原委員 これで時間がないので終わりますけれども、私は後段の御発言がたいへん気になる。ただいま大出委員が指摘をいたしました長官訓示にいたしましても、忍びがたきを忍んでそのうちに、こういうお考えがほの見えておるわけであります。隊員の士気の高揚、士気を維持するという面から配慮があるといえばそれはそうかもわかりませんけれども、しかし出されておる問題は、それを越えてもっと深刻な問題が出されておるわけですね。そうなりますと、これから先さまざまな空の安全上の改善が論議されるわけでありますけれども、一番焦点になるのは、自衛隊がこれに対してどれだけの協力ができるのか、こういうことが絶えず焦点になってくるわけです。ですから、先ほど来も話がありましたように、緊急発進、スクランブル問題にしましても制限を受けるだろう。それの用意があるのかどうかということを明確にしてもらいませんと、ただいま長官の後段のような御発言があれば、これはやはりスクランブルというものが優先をしていくということになれば、幾ら航空行政の安全措置として求められるものが深刻でありましても、一方でやはり、隊務だ、スクランブルの優先性ということが強調されれば、これはもう形の上での安全ということはでき上がりましても、実際問題としてはいつもしりの抜けた方法しか講じられない、あるいはまた不測の事故が起こり得る条件を残したままの航空行政しか実施をされない、こういうことが心配になるわけであります。ですから私は、長官がそういうふうにお述べになるのはわかりますけれども、どこまでも空の安全ということを第一義に考えて、その中で隊務が一定の制約を受けてもやむを得ないのだという御姿勢になっていただかなければ困ると思うのです。その辺いかがですか。
  187. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 おっしゃるとおりであります。私どもは、隊務を優先なんということはとても考えてない。また、忍びがたいことを忍べということは、何も一時しのぎをしろとか、こういう思想ではございません。制約された区域の中でもまた、英知を働かしてやる訓練もあり得るわけでございます。いろいろなそういう条件の中で隊務というものを維持をしてまいるということが必要であろうと思います。何と申しましてもいわゆる航空安全、これは当然の基本であります。
  188. 木原実

    ○木原委員 先ほどもちょっと論議になりましたけれども、しからば、スクランブルならスクランブルについての訓練等についても、安全のために十分に協力をするという観点から、具体的には、従来のやり方についてかなりの改革なり制限なり、こういうことを含めて協力をするという御意思がおありですか。
  189. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 スクランブルも一つの国土防衛と申しますか、国民を守る仕事ではございます。これは確かに国民の生命、財産を守るためのスクランブルである。しかし同時に、その場合でも、航空安全というものが基本にならなければなりません。したがいまして、これは単に防衛庁が協力しただけで済む問題ではありませんで、政治全体の場でこういった問題は最終決定はしていかなければならない。そういう意味で私は、いろいろなやり方についての最終的な基本的な問題は、やはり総理の判断も必要とする、こう考えております。
  190. 木原実

    ○木原委員 どうも長官は、絶えず二つの答弁を用意されておるから困ってしまうんです。総理はそういう際に、大出委員が指摘をしましたように、民事優先でいくんだとおっしゃっておるわけなんですね。その決断を必要とするほど、今度の事故は非常に大きな問題を含んでいる。単なる事故でもなかったという側面があるわけなんです。ですから私は、少なくとも従来のスクランブルその他の問題についても、自衛隊のほうで合理的な反省を加えて、制限するところは制限をしていく、こういう姿勢でもって、まずここで安全第一義の航空行政に協力をするという姿勢がなければ、絶えず長官のお答えの中には、そうであるけれどもまた別の観点でスクランブルは必要なんだということを振り回していけば、これは堂々めぐりになってしまうと思います。それだから、今度の事故のあとのいろいろな経過を見ましても、不安が残るわけなんです。その点についてもう少しきちんとした御答弁はできないでしょうか。
  191. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 航空の安全、特に民間の方々の生命、財産、特に生命の安全ということが基本である、これだけは当然でありますし、その中でわれわれは与えられたる任務をやる、こういうことになると思います。
  192. 木原実

    ○木原委員 これで終わりますけれども、もう一つは別のことですけれどもお伺いしたい。  先ほど総理府副長官が申しました、今度の事故の調査につきまして、初めて関係者を入れない第三者機関の委員会が発足をした。私どもは、別の機会にしばしば、海難審判に見合うような、空の事故についてはきちんとした第三者機関をつくるべきだ、こういう主張をいたしてまいりました。初めて今度の事故でそういう機関ができました。ところが従来、たとえば自衛隊内の事故、たまたま私は今度の事故の前に下総基地の事故の調査の問題について触れましたけれども、こういう事故の扱い方につきましては、庁内での調査にとどまっておりました。ですから私は、将来、今度の経験を前向きに生かしていって、第三者機関の空の航空事故の審判の制度というようなものができた場合には、これまた自衛隊の協力を求めなくちゃならぬと思うのです。いろいろな条件があろうかと思いますけれども、かりにそういうものができた場合には、自衛隊は、隊内の事故を含めてそういう機関にゆだねるという御意思がおありかどうか、お伺いいたしておきたいと思います。
  193. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 それらを含めまして、私どもの中でもいま検討の機関をつくっておる最中でございます。言いかえれば、航空安全のための検討のプロジェクトチームをもうすでに発足さして、そういう問題を同時に検討さしておるところでございます。
  194. 木原実

    ○木原委員 ちょっと御回答がそれたような感じがするのですけれども、私どもは、たとえば空については、自衛隊の空の事故も含めて、常設機関として第三者機関というようなものがますます必要になってきたのではないのか、そういう考え方なんです。今度の委員会はそういう形で発足をいたしております。だからもしこれが発展をしていくということになれば、自衛隊の中で安全上の措置をとる委員会とおっしゃいましたけれども、それに自衛隊も協力をしていくという姿勢なり御意思なりがおありかどうか、こう聞いているのですが、いかがでしょう。
  195. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 私どもは、したがってそういう問題を含めて庁内で研究はいたしております。ただ御存じのとおり、自衛隊は自衛隊の任務というものの一つ特殊性もあります。したがって、事故の大小によっていろいろそういうことも考えなければなりませんから、検討案としてわれわれは研究をしていきたい、こういう姿勢でおります。
  196. 木原実

    ○木原委員 これで終わりますけれども、しかしこれは、検討では私は困ると思います。別の機会にこれはもう少し論議をいたしたいと思いますけれども、私は、むしろ自衛隊のためにも、隊内で起こったその種の事故は第三者機関にまかせたほうが、より自衛隊が国民に近づいていく道じゃないかと思うのです。いままでの自衛隊内で起こった事故の扱い方についてはまことに閉鎖的です。好んで自衛隊が孤立をして閉鎖的に内部的に処理するという傾向が強かった。その姿を私ども何回も見てまいりましたから、そういう機関ができるのなら、自衛隊が進んで、自衛隊内の事故については国民の納得のいくような第三者機関にいつもまかせる用意がある、こういう姿勢にならなければ、それこそ、安全も、事故の絶滅の問題も、いつも内部的に操作をされてしまう。これでは進歩がないと思うんですね。重ねてお伺いをいたしますけれども、御協力の方向を出すということはできませんか。
  197. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 私は、ただいまの段階では、それは前向きな検討段階にとどめたいと思います。
  198. 木原実

    ○木原委員 これはもうやむを得ません。  終わります。
  199. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 鬼木勝利君。  鬼木君に申し上げますが、長官の時間の都合もありますから、長官に対する質問を重点にやっていただきます。
  200. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 長官のお時間がないらしいので詳しいことはお聞きできませんが、できる限りひとつおつき合いを願いたいと思います。  ニアミスの問題についても私お尋ねしたいと思うのでございますが、その前提といたしまして、四次防の問題について少しお尋ねしたいのですが、最近の国際情勢と極東の軍事情勢の分析に対しまして、長官のお考えを私は承りたいと思うのです。  たとえて申しますならば、御承知のとおり、ニクソンの訪中の問題、あるいは南北朝鮮、米ソ間の平和共存の確立、そのほかヨーロッパでの独ソ条約の調印とか、従来の冷戦というような考え方、いわゆる軍事的、政治的あるいは共産圏封じ込め政策とか、こういうことがだんだん私は時代とともにくずれつつあると思うのです。こうした国際情勢のもとにおいて、中国との国交回復、国連に加盟させる。まあ、われわれの力ですぐにそれがどうということはないでしょうが、その糸口を見出すという重大なる段階に私は来ておると思うのです。  そういうときに、国防白書、それから「日本の防衛」というものが昨年出ておりますが、その中に書いてあることからも考えますると、当然この四次防という防衛庁の考え方も変えなければならない。私は極論するならば、四次防はここでストップすべきである。世事に申しますように、まず進まんとするならば一歩退け、三歩進まんとするならば一歩退け。ここで冷静にお考えになって、四次防対策に対しては、ストップされるべきだ。佐藤首相がいつも言われるように、慎重にここでひとつ考えるべきときが来ているのじゃないか。佐藤総理のおめがねにかなって、あなたは再び長官になられたのです。だったら、佐藤首相はすべてを慎重に考えていく型の人だから、長官、その点いかがですか。まずひとつその点からあなたにお尋ねをしたい。まだあとでゆっくりずっと申し上げますけれども
  201. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 率直に申しますと、アジアの情勢、ニクソンというか、米中間の緊張緩和、あるいは南北朝鮮間の多少の緊張緩和等々、確かに情勢は流動していることは、私も率直に認めます。また一面におきまして、確かに従来の冷戦構造というものは多少ゆるんできているという見方も成り立ちます。しかし一面において、核の相互抑止力がまた世界の安全をささえている面もまだあり得る。こういうような中で、わが国の防衛はどうあるべきかという観点であります。しかも、日本の防衛というのは単にあしたの防衛ではございませんで、やはり長い目で見た長期の中において考えられなければならない。  そこで、ただいまの四次防というものは、そういうものも関係してまいりますが、同時に長期的な中から日本の自衛隊の足りない部分を補おうという形で一応の案ができているわけであります。もちろん、これはこれから政府関係機関で十分、それこそ慎重に議論されるのでございますから、そういう中で私どもは十分これを見詰めてまいりたい。したがいまして、ただいまこれをやめる、撤回するとか、そういう考え方はございません。
  202. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 四次防を全部撤回せよと申し上げておるのではない。ここでストップして冷静に考えるべきときではないか。まず進まんとするものは一歩退く、前に三歩進まんとするならば一歩退く、その時期に来ているのじゃないか。ここで全部やめてしまえということを言っているのじゃない。やめてしまえばなおいいけれども、あなた方はやめてしまわぬでしょう。何ぼやめろと言ったってやめぬでしょう。私の言っていることをよく考えてくださいよ。私はそんなことをあなたに言っているのじゃない。また、あなた一人でやめられるべきものじゃない。佐藤さんがやりたがっているのだから。  ところが、これはあなたのほうから出ているのですよ。防衛庁長官に近ごろなったのだとおっしゃるかもしれぬけれども防衛力整備計画、防衛庁原案、四十六年の四月二十六日に出ている。これには「全面戦争はもちろん、全面戦争に発展するおそれのある大規模な武力紛争は強く抑制又は回避され、その生起の公算はほとんどないと考えられる」と書いてある、これは防衛庁のほうから出ているのですよ。そういう侵略というような大きな危険にさらされるようなことは、今日の情勢においてはないと書いてある。ところが、その次のページに「国内の潜在的な不安定要素が」と、こう書いてある。うまいこと書いてある。「外部からの影響等によって誘発され間接侵略事態に発展する可能性にも留意する必要がある」。「国内の潜在的な不安定要素」だというならば、これは内政の充実の問題であって、四次防の必要はない。あるいは物価、社会保障の問題あるいは住宅、交通安全、内政充実の問題で、五兆八千億なんという金を——これまたあなたは変に曲解されるかもしれないが、全部回せというのじゃない。この内容充実に回したらどうか。ここらで四次防をお考え直すお気持ちはないのか。防衛庁長官を二度もつとめておられる老練なる西村防衛庁長官に私はそれをお尋ねしておる。こういうようにここに載っているのだ。問うに落ちずに語るに落ちた。そういう戦いはないと書いてある。いかがですか。
  203. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 ただいま御引用なさいましたのは「新防衛力整備計画について」という文書だと思います。これは前々長官の際に委員会にすでにお渡ししたもので、秘密のものでもなければ、隠しているものでもございません。世のいろいろな角度の御批判は受けるべく出したと思うのであります。  そこでこの中で、御議論の中の、大規模な武力紛争は核均衡その他によって強く抑制される、また外交面での大きな変化もあると思うのであります。しかし同時に、限定的な武力紛争といいますか、こういうものについては、やはり一応この自衛を任務とする者としては想定せざるを得ない。  こういう中で私どもとしては、現在原案として出されておる四次防がいろいろな足りない面を補って、時代に応じたように人の部分、物の部分等々を合わせて四次防として原案をつくっておる、こういう意味でございます。
  204. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いや、だから私が言っておりますのは、社会、国際情勢というものは変わっておるのだから、流動しておるのだから、それに対して四次防というものは絶対的なものではなくして、その社会情勢、国際情勢に見合ったようにここで慎重に考慮すべきではないか。手直しをするお気持ちはないのか。四次防をいつまでもいつまでも金科玉条のごとくこうやるのだ、こうやるのだ——時代は全部変わっておる。しかもあなた方のほうでは、そういう大規模な戦争はない、あれば、国内的な、潜在的なこれらの問題からそういうことになってくるのだと言っている。非常に変わっておるのですね。ここにも書いてある、「人類的憂心に伴われ、そして総合的政治戦略に導かれた「国土と共同生活体の防衛」でなければならない」。総合的政治戦略に導かれるということは、これは軍事力ではなくして外交力ということを物語っておる。これもあなたのほうから出たのです。これは外交力によるのが大事だ。およそ国際間の紛争を軍事力で解決しようというような考え方はとんでもない間違いです。あくまで外交力によって、外交の力ということが大事なんです。これはもう過去の例をあげてもいいけれども、時間がありませんから省きますが、その点を申し上げておる。西村長官も近ごろおなりになって、まだ御勉強が足らないかと思うけれども、前にはそういう経験もお持ちだから、もう少しはっきり具体的におっしゃったらいかがですか、長官。
  205. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 確かに一国の安全は軍事力が正面に立つべきものではございません。外交、また経済、特に民生の安定あるいは国民の理解、これなくしてはまず基本が立たぬ。しかしどうしても中核的には国土の自衛というものはわれわれはやらなければならぬ。それが私どもに与えられた任務だ、こう考えるのであります。  それで、情勢判断でございますが、確かにおっしゃる面もあります。しかし一面におきまして、すでに防衛庁の新防衛力整備計画の中にもあらわれているように、全面戦争はないが限定的な局地紛争の可能性はあるという判断は一応持っておる。また、従来の自衛力というものが不十分であるという点から、積み上げ的に四次防というものをつくられておるのでございます。したがいまして、私としてはこの四次防の基本は別に直さないでもいいという考え方であります。ただし、今回の事故等もかんがみて、より以上安全というようなことを反映させるような努力はさらにしていきたい、こういうふうに考えております。
  206. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 鬼木委員に申し上げます。  たいへん恐縮でございますが、長官三時半に知事会に戻る予定でございましたが、もう一時間近くたちますので、当面の四次防の問題は次の機会にもお尋ねいただけると思いますし、本日の議題は主として全日空の問題でございますし、ちょっと他の会議と違って知事会でありますから……。
  207. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 その問題にこれは関係しておるからお尋ねしておる。  四次防、四次防と急ぐから、だから全日空のような問題が起きたのではないか。ようございますか。これは重大なる因果関係があるのです。これは四次防に基因しているのですよ。これは航空自衛隊のあせりからきている。ですからああいう空前の悲惨事になった。これは自衛隊のあせり、言いかえますならば、国際情勢の的確なる把握をなさないで、ただ四次防にのみ先急ぎをする。だからこういうことになるのですよ。隈一尉にしても、軍事優先でとんでもないことを言っておるじゃないですか。そういうことを私がいま申し上げておるのであって、パイロットの養成にしても、あるいは先ほどお話しがあっておった、運輸省との緊密な連絡をとっておるとおっしゃっておるけれども、連絡はとれていない。これは全部訓練を主体としたいわゆる軍事優先の四次防の計画からきておる。そのことを言うために、時間がないので、もっとはっきり申し上げたいのですけれども。  そこで長官、なぜそんなに中国を警戒しなければならないのか。それほど中国を警戒しなければならぬという何か具体的な理由があるか。それは長官がそんなにお急ぎだったらよろしゅうございます。防衛局長がおりますから、決して無理におとめしてあなたの御計画を何してはいかぬ。  中国の脅威があるならば、どういう点が中国の脅威だ、中国の脅威はどういう点だ、もう少しはっきりそれを国民に知らすべきです。そういうことを「日本の防衛」の中に書いてあるのですよ。では長官はお急ぎだったらどうぞ。
  208. 西村直己

    ○西村(直)国務大臣 一言だけお答えしまして、知事会へ行かしていただきます。  御指摘の、私どもは特定国家を敵視したり、特定国家を仮想敵と考え考えは毛頭ございません。ただ、あくまでも日本の安全、平和というものは外交その他の施策でやるべきでありますが、同時に、最終的なものとしての最少限度の自衛力というものはやはり備えたい。そのためにある程度の計画を持って、ある程度の訓練をしたりということは御了承願いたい、こういう考えでございます。  なおまた、後日にお目にかかりますが、局長が御答弁申し上げます。
  209. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 御苦労さんでした。長官はいいですよ。  ところが、長官はそんなことを言っておられるけれども、これには書いているんだ。「特に」と書いてある。「特に」ということは、これは特定なんです。長官がおるとたいへん都合がいいけれども、いいときに行ってしまった。「特に」ということは、これは中国をさしているのでしょう。「特に中共および北朝鮮は」と書いてある。「引き続き硬直した対外姿勢を堅持しているが、アジアにおいて核兵器を開発している唯一の国である中共の動向や」と、長官はこれは御存じないかもしれぬけれども、ここにはっきり書いてあるじゃないか。私どもは特定の国をどうだこうだというような考えはございませんと言っているけれども、「特に中共」と書いてある。だから、なぜ中共をそんなにおそれなければならぬか。だったら、もし中共にそういう脅威があるならば、なぜ外交力によってこれを解決しないか。軍事力によって国際間のことを解決するというようなことは、これはもう時代錯誤もはなはだしい。神農虞夏忽焉として没す、暴をもって暴に易う、いまだその非を知らずと、ちゃんとはっきりある。そんなばかな話ありゃしない。だから、四次防をここらで手直しする必要はないか、ここで一歩踏みとどまって考える必要はないか、こういうことを私は言つくいるのですよ。自衛力を全部ここで没にしろと、そんなことを言っているのじゃない。佐藤首相の言うように、慎重にここで考える必要がないのか。ただ四次防、四次防だと先ばしりをするから、こういう全日空事件のような空前の悲惨事を惹起する、こういうことを申し上げておる。
  210. 久保卓也

    ○久保説明員 四次防を一たん待つ必要があるのではないかというお話でありますが、これは長官がお答えになりましたので、私がつけ加えるすべもございません。  そこで、その他の点について申し上げてみますると、国際紛争を軍事力で解決することは時代錯誤であるというよりか、むしろ憲法の違反になります。私どもはそういうことはさらさら考えておりません。もちろん、外交であれ、内政であれ、そういったものの充実が第一義であることは申すまでもございません。  それから、お話の中で出ておりました、中共を脅威と見るのかという問題についてでありますが、私どもは必ずしも中共を、特定の国を脅威というふうに見ておるわけではありません。ところで、脅威という場合に、ことばの問題でありますけれども、私どもは、考えておりますのは以下のようであります。  つまり、世界的に常識とされておりますのは、脅威というのは、軍事的な能力と、それから相手の国に入っていこうという侵略的な意図、それらの二つが結び合ったときに初めて脅威であるということばを使っておるようであります。言うならば、それは顕在的な脅威でありますが、そういった意味での脅威を持っている国、あるいは持たされている国というのは、われわれの周辺にはございません。しかしながら、軍事的能力だけを持っておる国——意図は別にわかりませんが、能力だけを持っておる国というのは、これは私ども日本の周辺には幾つもございます。それに対応する兵力といいますか、防衛力というものを持つというのが一応の考え方であります。是非はまた、御批判は当然いただきますけれども、そういった意味での脅威という場合、これは潜在的脅威ということばが使われております。  その潜在的脅威というのは、この四次防の原案の中にもことばは使ってあると思いますけれども、そういう意味での潜在的な脅威、単に周辺諸国に軍事的な能力があるから、それにある程度対応し得る力を平素から持っておるというのが、一般の世界各国の防衛力のあり方である。しかしながら、周辺諸国がさらに侵略する意図を持つ、あるいは国際的な紛争要因があるというような場合には、これは脅威が顕在化し、軍事力といいますか、防衛力というものは相当に大きくなる。しかし、わが国はそういうものではありませんから、そういった大きな防衛力を持つ意図はない。そういうふうに私どもはこの脅威というものを解釈いたしております。
  211. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 あなた方がそういう詭弁を弄して、ああ言えばこう言う、こう言えばああ言うで言っておられるけれども、あなた方の出された「日本の防衛」というこの中には、はっきり特定の国がさしてあるのです。先ほど言ったように「特に中共」と。だから、中共にそういう脅威があるならば、なるほどそういう脅威があるかなあと国民が納得するように、具体的にその脅威を述べてもらいたい。われわれが考えたらそういう脅威はない。もしあれば外交の力によってこれは解決すべきだ。ですから、国際情勢がこうした流動的な今日に、四次防というその基本精神、基本計画はともかくとして、内容においてそれを変更する、あるいは手直しをするという気持ちはないのか、こういうことを尋ねておるのですよ。それをあなた、何かわけのわからないようなことばかり言っておるが、その点をもう一ぺんはっきり言ってごらん。大臣がおられぬから、あなたの考えでもいい、防衛局長として。
  212. 久保卓也

    ○久保説明員 まず「特に中共」云々と書いてあると申されましたが、その場合に、中共の核兵器の存在というものが脅威であるかないか、それは議論の分かれるところであります。私は脅威ではないと思っておりますが、全般的に脅威であるという見解も多いわけで、この文章の中では、そういった動向について注目する必要があるという趣旨のことが書かれてあるようであります。  ところで、それでは四次防の修正をする、あるいは一年待つべきではないかという問題についてでありまするけれども、いま私が申し上げましたように、特定の国がわが国について脅威を与えているという判断には立っておりません。また特定の国と国際紛争の要因があるとも考えておりません。しかしながら、一定の水準の防衛力は持っている必要があるであろう。これは外国もやはりそういった考え方であります。ということは、どこかの国が攻めてくるであろう、それに対応してわわれはある時期までにある相当の兵力を持たなければならないという、そういった発想に立っておるのではなくて、一応周辺諸国の軍事的能力がある、それに対して限定的な程度で見合った防衛力というものは常時持っておりましょう。そうしますと、わが国に対して万が一にも攻めてくる気はなくなるでありましょう。そういった意味での防衛力、言うならば、基礎的な防衛力は持っていようということから、これは周辺の国際情勢の推移が非常に激変すればともかくとして、ある程度の変更がありましても、これはまだその下の基礎的な防衛力でありますから、これは計画的に整々とまだ防衛力を整備していく段階であろう。ただし、いま申されましたような、航空交通の安全の問題であるとか新しい問題が出てくれば、そういったものを取捨選択をして加味をしていく、こういったことは当然考えるべきである、さように思います。
  213. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 あなたの答弁はまことにあいまいだが、いま言われたのは、特に中共の核の問題なんかに注意をするというふうに書いてあるようでございますということでしたが、この「日本の防衛」という名のこれを出すのに、防衛局長に何も関係しないのですか。
  214. 久保卓也

    ○久保説明員 残念ながら私は昨年の十一月の末に着任したものですから、これそのものはもちろん読んではおりますけれども、立案には参画しておりません。
  215. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それでは、あなたの考えとはこれは違うということだな。あなたの防衛局長として考えておることとは、これは違う。考え方が違うということだな。
  216. 久保卓也

    ○久保説明員 違うというわけにはまいらないと思います。やはり防衛庁で出された白書でありまするし、私も公の席で答弁しておりますから、違ったことを申すわけではございません。ただ、この防衛白書というものを私なりのことばで解釈する、あるいは理論づけすると、私が申し上げたようなことになるであろうか、そういうことであります。
  217. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 いやしくもあなたいま防衛局長ですからね。防衛庁から出ておる「日本の防衛」にそういうふうに書いてあるようでございます、なんていうような考え方じゃ困るんですよ。じゃ、あなたの着任前のことは聞かれぬということになるのですか。そういう防衛局長ならば退場してくださいよ。西村長官だって同じじゃないか。いやしくも防衛問題をここで質疑するのに、おれの着任前だからなんてそんなこと言われるのは困るじゃないか。
  218. 久保卓也

    ○久保説明員 私はそういうことを申し上げたわけではありません。これの計画作成に参加したかと申されましたから、私は参加しておりませんということを申し上げたわけであります。  それから、書いてあるようでございますと申し上げたようでありますが、いまお読みになっておるところをいまここで私広げてないものですから、該当の場所がどれかわかりません。そこで、先生のおっしゃったようなことがおそらく書いてあるに違いないと思って、そうであろうと思いますと、こう申し上げたわけでございます。
  219. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 なおさらよくないね。いやしくも防衛局長の座に着きながら、「日本の防衛」というのを出しても、これを読んでないとは何事ですか。
  220. 久保卓也

    ○久保説明員 読んでないとは申しておりません。いまおっしゃったところの該当の文言を、ここに手元に出しておりませんので、いまここで確かめておりませんということを申し上げたわけでございます。
  221. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 確かめておりませんと言うが、防衛局長はそのくらいのことはわかっておらなければ。いまここに出しておらぬからわからぬなんて、大体の基本計画というものはここに載っておるのだから、そのくらいのことはわかっておかなければ。巧みに答弁を逃げようとするけれども、だめですよ、そんなことじゃ。どうも防衛局長は、先ほどからの答弁もはなはだ不親切であり、無責任きわまる答弁をしておる。何です、もう少し慎みなさい。  そこで、先ほども長官に申し上げましたが、こういう世界情勢の中で、ただ四次防を急ぐのあまりに、そこでニアミスのような問題が起こったんだ。ところが、これは新聞記事ですが、「四次防の目玉の一つになっているヘリ六機積載艦や四次防原案で新たに追加されたファントム五十四機などが、五次防に見送られる公算が大きい」と書いてある。こういうふうに、あなたたちは何ぼがんとして、四次防だ、四次防だ、これを遂行すると言っても、こういうことになっておるのですよ。内容は変わっていくのじゃないですか。もう少しすなおに、基本計画は変わらなくても内容においては少し検討する必要があると思います、慎重に考え直す必要があると思います、、という答弁ができないというのはおかしいじゃないか。  なおこういうことが書いてある。「大蔵省は一八・八%の防衛費の伸び率は、過去五年の一般会計の平均伸び率二八・八%を大きく上回る。もし毎年一八%以上もの防衛費を認めれば、社会資本、社会保障など他の民生部門を大きく圧迫するなどから、五兆八千億円という数字は予算上無理といっている」、こういうふうに大蔵省は見解を、発表したのかどうしたのか、いきさつは知りませんけれども新聞にこういうふうに出ておる。そういう点どのように考えておりますか。
  222. 久保卓也

    ○久保説明員 五兆二千億という、ベースアップを除きました要求に関しまして、私どもは原計画どおり認められることを望むわけでありますが、やはり財政の諸状況、特に経済情勢が変転しつつある今日、そのまま必ず認められるであろうという推測をしておるわけではございません。やはり関係各省庁あるいは国会その他いろいろ御議論があるわけで、そういった諸条件の中でこれが調整され検討されて最終的にはどういうものになりますか、原案のものよりも修正されたものになるであろうということは予想しております。  それから、一八・八%の毎年の伸び率でありますが、まあ非常に大きい数字ともいえますけれども、四十六年度の場合には前年度に比べまして一七・八%の、これは実際に予算をお認めいただいたという実績がございますので、一応要求官庁といたしましては、まずまずのところではなかろうかということで要求をしておるわけで、いま申し上げたように、それがそのまま通るであろうとは必ずしも考えておりません。
  223. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 だったら、大蔵省あたりもそういう考えを持っておる、一般国民もみな、四次防はあまりにも膨大だ、行き過ぎだ、そういう情勢の中において、私が先ほど言ったように、ここで四次防は手直しする必要があると思います、そういう考え方になぜ立たないのか。この「日本の防衛」というあなた方から出されておる冊子から考えても、四次防は無理じゃないか、なるほどこれは国民生活を圧迫する膨大な予算であります、こうあなた方は考えるべきじゃないか。国民の支持なくして、協力なくしてどうしてできますか。  なおまたこういうことが書いてある。ずっと前は略します。「飛行機をレーダー面上に映して、その飛行方向や目的飛行場への着陸序列を調節誘導する装置や気象レーダーなどを完備させる方針をきめたが、これに経費を回すため、かなりの兵器装備が四次防後半または五次に繰り延べになることが必至」である。大事なことに、「またパイロットの養成も、現在の年間七十人を、四次防では、ファントム機が二人乗りになるなどの事情から、百二十人とふやす計画だった。しかし安全対策の面から訓練空域が海上に移されることになった結果、パイロットの養成がかなりおくれることが予想される」。そういうように、パイロットの養成がおくれるということになれば、これは飛行機をつくったってしようがない。ここにもまた計画が狂ってくる。「したがって戦闘機の機数整備もそれに見合ってスローダウンさせる必要があり、五十四機のファントムについては、計画がずらされる可能性が出てきた。いまのところ防衛庁は四次防の基本計画は変える考えは全くないといっているが、こうした客観的事情から四次防の大幅手直しは避けられない情勢だ」。これだけ国の大勢がこうなってしまった。社会情勢、一般情勢がこうなっておるときに、いつまでも四次防だ、四次防だ、この計画は絶対変えません、変えません、そんなかたくななことを言っているから、間違いばかり起こる。長官が的確な答弁をしなければ、私はできませんと今度言われるかもしれぬけれども防衛局長はどのように考えますか。
  224. 久保卓也

    ○久保説明員 四次防の基本的な考え方、基本的な計画というものは手直しをする必要はなかろうと思うのです。しかしながら、一部、たとえば航空交通安全の関係でありますとか、あるいは教育訓練の関係でありますとか、そういったものがどういうふうな影響を与えるか、これは現在検討いたしております。またこの教育訓練に与える影響は、民間機と自衛隊機の航空路の分離といった原則がどういうふうに航空路の再編成の中で実現されるか、そういうこととも関連があります。したがいまして、ぺンディングの問題もありますけれども、一応われわれとしてはある程度の見当をつけて、年末までに四次防がきめられるとすれば、それまでに何らかの具体案をその中で織り込んでまいりたい、こういうような考え方であります。
  225. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 この四次防の問題については、また徹底的に私お尋ねしますから……。
  226. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 時間もございませんので、委員長としてもさようにお願いいたします。
  227. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 大かたそうだろうと思う。そこで四次防の問題はそのくらいで、あとにまたお尋ねするということにいたしまして、今度はニアミスの問題についてちょっとお尋ねしたい。  これは訓練再開が十一日でしたか、私が調べたのが間違っておったらまたあれですが、十一日に陸を再開し、十三日に海を再開した。これは運輸省との話がついた。なおまた民間航空と防衛庁との航路の分離も決定した、空域設定はまだ未決定だというような話を聞いたのです。ところが、新聞でもうすでに皆さん承知のとおり、去る十四日には、また再びあと十秒もおくれておったら大惨事を引き起こしただろうというような事態が起きておる。  そこで私がお尋ねしたいのは、緊急対策も、あるいは連絡協議会等できておるようでございますが、抜本的な恒久安定策は、いつごろまでにきちっと両者緊密な連絡の上におやりになるつもりか、その点を、防衛局長でなければだれか航空関係の方に伺いたい。
  228. 住田正二

    ○住田説明員 自衛隊機と民航機のニアミス防止につきましては、航空交通安全緊急対策要綱に基づきまして、現在防衛庁と運輸省との間でいろいろ詰めております。すでに低高度の訓練空域につきましては八カ所防衛庁と運輸省との間で話がついておりますが、そのほか高々度の問題あるいは回廊の問題、相当技術的な問題がありますので、なお相当の時間がかかると考えております。
  229. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 なお相当な期間がかかりますなんということをあなた方言っておられるが、災害というものは待ちませんから、一刻も早くこれははっきり国民に安心していただく。防衛庁長官は、国民の生活を守るという自衛隊の原点に返るということを先般言っておられた。きょうもそれに似たようなことを言っておられたようですが、国民をほんとうに守るという考えがあるならば、これは運輸省もともどもに一日も早く恒久安定策を立てなければ、その間にもし事故が起きたらどうしますか。十四日のような、あと十秒もしておったら一大惨事をまた繰り返す、こういうたいへんな事態が起きておる。しかも防衛庁と運輸省が対立して、どうだこうだ、ああだこうだ言っている。そういうことで責任が果たされますか。さきの自衛隊と全日空の問題は完全に防衛庁のミスですが、運輸省とても非常に事故が多いのです。これは防衛庁と運輸省と両方にひとつ申し上げるが、民間航空にも非常に事故が多い。しょっちゅう事故をやっている。これは一体どういうわけでそんなに事故があるのですか、民間航空は。その原因、どうしてそんなに事故が多いか、その点をひとつここではっきりしてください。国民は安心して乗れませんよ。
  230. 住田正二

    ○住田説明員 先ほどお話しいたしました防衛庁と運輸省との話し合いでございますけれども、高々度の訓練空域あるいは回廊の問題につきましては、なお技術的な問題がありますので時間がかかると申し上げたわけでございますが、その間は防衛庁の飛行機は飛ばないということでございますので、訓練空域あるいは回廊の設定がおくれましても、それによりまして防衛庁の飛行機と民航機が衝突するという危険はないと考えております。  それから、最近非常に民間機のトラブルといいますか、故障が目立っております。これはどういう原因であるか、いま原因を調べております。特に会社のほうでも総点検をいたしまして、どこに問題があるか調べておるところでございます。したがいまして、そういう点検の結果を報告を受けまして、今後さらに民間航空が安全に飛べるようにいろいろ指導をしてまいりたいと考えております。
  231. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 鬼木君に申し上げますが、時間もまいりましたから御質問をおまとめいただきたい。
  232. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それはしかし、ちょっと待ってください。私の責任じゃないですからね、おそくなったのは。
  233. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 いえ、あなたの持ち時間がおおむね超過をいたしておりますからおまとめを願いたい、かように思っております。
  234. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 委員長のおっしゃることはよくわかります。御協力はいたします。しかしながら、中途半端で切るわけにいかぬから、まあ待ってください。  これは、自衛隊と運輸と交互に私はやりますからね。時間があれば整然とやっていくのだけれども、時間がないもので……。  そこで、これはいままで言い古されたことだから、こんなことを私はどうこう言いませんけれども、隈一尉が、航空路を一々考慮していては訓練にならない、こういうことを言っているのですな。これは軍事優先という自衛隊全体にみなぎるところのもっともよろしくない思想じゃないですか。単なる隈一尉の発言でなくて、自衛隊に流れておるところの最も国民を無視した軍事優先のあらわれではないですか、防衛局長。
  235. 久保卓也

    ○久保説明員 私はそういった思想が自衛隊に流れているとはさらさら考えません。たまたまテレビを見ておりましたが、テレビで松島のパイロット数名についてインタビューをいたしておりました。そしてただいまのような御質問がありましたが、そのパイロットは異口同音に、あの隈一尉の発言は本人の真意とはとうてい考えにくい、かりに本心であったとしても、それは自分たちパイロットの共通の意見では絶対にないということをテレビでは申しておりました。私は、そのテレビで申していたパイロットのことばが、おそらく自衛隊一般ことばであろうと思います。
  236. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それは当然あなたの答弁としてはしかるべきだな。そうなければならない。しかしながら、現実において日本の空をわがもの顔に自衛隊が縦横に飛び回ってこういう事件を起こした。そして西村長官は、国民の生活を守るという自衛隊の原点に返る——自衛隊の原点に返るということは、いままで返っていなかったということなんだ。だから自衛隊がいままでわがもの顔にかってなふるまいをやっておったということを、これはあらわしておるのだ。長官がおればたいへんよかったのだけれども、いらっしゃらないから。  いいですか。国民の生活を守るという自衛隊の原点に返る。原点に返るのだから、いままで原点に返っていなかった、自由気ままな、かってなことをやっておったというように、われわれ解釈する。だから局長の答弁としては、そういうことは総意ではありません。それはあなたの立場としては言わなければならぬと思う。むべなるかな。そのとおり。しかしながら、現実においてはそうでない。言語道断。先般の空の事故については、これは全面的に自衛隊は反省しなければならぬ、かように私は申し上げるのですが、民間航空のほうについても、先ほどから言っているように非常に事故が多い。総点検をした、反省をした。どのように総点検をやったか。どのように反省をしたか。内容はどういうことを調べたか。そういうことをひとつ監理部長からお話を承りたい。
  237. 住田正二

    ○住田説明員 「ばんだい号」の事故を起こしました東亜国内航空につきましては、運輸省のほうで一斉総点検をやりまして、その中身は、運航と整備、営業、非常に広い範囲にわたっております。現在その結果を取りまとめている段階でございまして、最終的な結論はまだ出ておりませんが、近くそれに基づきまして、会社に対して改善勧告を出す予定にいたしております。  それから全日空につきましては、会社のほうでみずから総点検をやっております。今月一ぱい総点検をやりまして、その結果を私どものほうに報告することになっております。同様に日本航空におきましても総点検をやっておりまして、まだ報告は受けておりませんが、その報告を受けましたあとで、その報告を検討いたしまして適当な措置をとりたい、かように考えております。
  238. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 ついでに運輸省にお尋ねして、それから防衛庁に戻りたい。  空の安全航空ということに対しては、五カ年計画でこれの整備の完璧を期するという最初の計画が、三カ年計画でこれを整備する、安全対策を講ずる、こういうことに聞き及んでおりますが、三カ年でできるものを、なぜ五カ年計画だといって、やらないのか。そして今度はこういう事故が起きて三カ年でやる。だったら、なぜ最初から三カ年でやらないか。そういう点を運輸省もなぜ指導監督しないのか。その点をはっきりひとつ……。
  239. 住田正二

    ○住田説明員 五カ年計画を三カ年に繰り上げて実施するということが新聞に一部報道されておりますけれども、正確な内容でございませんで、私どもとして計画いたしております航空保安設備にはいろいろございます。五カ年を三カ年に繰り上げるといいますのは、空港の保安施設を五カ年間の予定を三カ年に繰り上げるということでございまして、そのほかの航空路の保安施設あるいはレーダー等につきましては、必ずしも五カ年計画を繰り上げて実施するということをまだきめておりません。
  240. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それは空港の整備もですが、航空路の整備でも、五年と言わなくても三年、三年と言わなくても二年、最大限において努力すべきじゃないですか。まだやっておりませんなんて、五カ年のままなんですなんて、なおよくないじゃないですか。
  241. 住田正二

    ○住田説明員 航空保安施設といいますのは、そう簡単に、きょう計画してあした着手するということにはまいらないわけでございます。たとえば航空路監視レーダーをつくりますにも、どこにつくるか。やはり電波を発射いたしますので、電波が十分到達するところでなきゃいかぬということで、レーダーをつくる場所を選定し、またレーダーは山の上に通常置きますけれども、その山の上から、たとえば大阪周辺の山の上につくった場合に、レーダーに映ったものをなまで東京まで引っぱってこなければいかぬということで、回線の技術上の問題もあります。それから、レーダーでいろいろ管制する場合には、レーダーの管制官の養成という問題もございます。そういうことで、五カ年計画を簡単に、三年に繰り上げるとか、あるいは二年でやってしまうということはできないわけでございます。先ほど申し上げました航空保安施設、これは主としてVORとかDMEというものでございますけれども、これにつきましては、大体従来五カ年計画でやる予定にいたしておったものを、三年でできるという判断で三年に繰り上げたわけでございますけれども、そのほかの問題につきましては現在検討中でございまして、いま先生の御指摘がありましたように、できるだけ早く完成するようにしたいとは考えておりますが、現在の段階ではまだ検討中ということで、結論が出てないわけでございます。
  242. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 こういう大事な人命を預かっているものが検討中、検討中では困る。そこに問題がある。いいですか。私が申し上げたいのは、実力、身分に相応した会社の運営をやればいいのに、たとえて言いますならば、絶対に飛行機を利用しなきゃならないという、ビジネスだとか、あるいは国務に専念している皆さんとか、そういう方々がぜひ使わなければならぬという大事な使命もある。ところでまた一方、観光、観光だと、実力以上の、身分に不相応な人集めをして、それで運ぼう。言いかえるならば、いまあなたのおっしゃった大事なレーダー基地でも、レーダーがきちっとそれまでできていない。全国で二カ所ぐらいだ。しかも、一カ所福岡は夜間は機能が発揮できないという。そんな不十分なことで、大事な生命を預かっている会社自体が身分不相応なことをやっている。実力以上のことをやる、そして営利主義にいく、観光、観光でどんどん人を集める、そういうことをなぜ運輸省は指導監督をやらないか。これは運輸省の指導監督の大きな欠陥だ、指導監督の怠慢だ、かように私は申し上げたい。それはきょう言うてあすできるわけはない。そんなことはあなたが説明せぬでもわかっていますよ。  また、聞くところによると、予算がないからとか、なおさらよくない。予算がなくて会社を経営するというのは何事です。とんでもない。そういう先走りをしている。勇み足だ。ただたくさんの人を集めてレジャーブームでどんどん運んでいけばよろしい、実力はない、そういうこまかいところのきめのこまかい指導監督をなぜ運輸省はやらないのか。運輸省となれ合いになっているのではないかと言うんだよ。なれ合いとは言ってないよ。いいか。そんな足とられるようなことは言わぬよ。そういう疑惑が生じてくる、こういうことなんだ。その点どうですか。
  243. 住田正二

    ○住田説明員 現在、航空旅客というものが、相当大きな伸びで毎年伸びているわけでございます。その中の大きな部分といたしましてレジャー客が非常に多いということは、御指摘のとおりでございます。それで運輸省といたしましては、現在動いております路線を大幅に切っていくということになりますと、航空が大衆化いたしております現状におきまして旅客に迷惑をかけるおそれがありますので、今後はできるだけふやさないという方針で臨みたいと考えております。特に団体客につきましては、飛行機の座席の中で占める団体客の比率を押えまして、できるだけ一般のビジネス客が乗れるというような方向で指導してまいりたいと考えております。
  244. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 鬼木君に申し上げますが、だいぶ時間もたちましたので、次の質問者もございますから、どうぞひとつ取りまとめを願います。
  245. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 だから私はその点を言っている。いまごろあなた方はそんなことに気がついているのでしょう。防衛庁だって運輸省だって同じだ。全部後手後手です。一手のおくれは千手のおくれだ。だから私は申し上げているのですよ。ますますそれは確実ですよ。自衛隊機、民航機、あるいは米軍機、あるいは一般機、これはもう空はたいへんですよ。それをいまごろになって気がついて、こういう災害があって気がついて、こういうふうにやりましょうなんて職務怠慢もはなはだしい。だからこういう悲惨事が起こる。運輸省は大いに反省すべきだ。どうですか。
  246. 住田正二

    ○住田説明員 航空機の旅客の伸びというものは、運輸省といいますか、行政の力で押えていくことがいいか悪いかという基本的な問題があると思います。しかしながら、現在の過密の状態においてこれ以上ふやすことはよろしくないという意味で、先ほど申し上げましたように制限していきたい。制限いたしますと一般のビジネス客が困るので、ビジネス客の利便をはかるために団体客を制限していこうということで、先ほど申し上げましたような団体客の制限を行なう予定にいたしております。
  247. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 それから防衛庁にお尋ねしたいが、「空は危険がいっぱい」、こういう書籍が出ている。そして今日の全日空のようなああいう悲惨事をすでにここに書いてある。予言してある。これは四十五年の十一月十日に発行になっている。奥宮正武という方が「空は危険がいっぱい」ということで、今日のああいう全日空の悲惨事を想定している、必ずこういうことが起きるぞと。こういうのをどなたかお読みになりましたか。
  248. 久保卓也

    ○久保説明員 私は、本を持っておりますが、内容を読んでおりません。
  249. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 本は持っているが内容は読んでいない。じゃ、持たぬのと同じことじゃないですか。これには例をあげて——昨年の十一月ですよ。空においては必ず衝突事件が起きる。「本日午前〇時〇分頃、愛知県知多半島河和付近の上空で、自衛隊のジェット戦闘機と定期ジェット旅客機が空中衝突し、両機とも墜落した。」これは昨年出してあるのです。しかも、まさにたなごころをさすがごとく、「戦闘機のパイロットは落下傘で降下したが重傷、」——この点がちょっと違うな。重傷じゃなかった。無事に助かっている。「降下したが重傷、旅客機の乗員、乗客は全員が死亡した。」これはまだずっと書いてあるのですよ。「旅客機は羽田から大阪空港に向かうもので、計器飛行方式で高度一万八〇〇〇フィートを飛行中、自衛隊機は有視界飛行中であった」。これはずっと読めば長いから読まないが、こういうことまで言って国民は心配しているのですよ。そういうことを想定して全部ここに書いている。これをのんべんだらりとして何にも防衛庁は御存じない。何にも知らない。いいですか、まだありますよ。その点、防衛局長は持っておるけれども読んでおらぬ。あとの人はだれも黙って寂として声がないが、空の安全ということに対して非常に無関心である。防衛局長どう考えますか。
  250. 久保卓也

    ○久保説明員 私がなぜ読んでいないかと申しますと、現在、勉強不足で役所の書類を読むのが精一ぱいでありますので、そこで安全の問題については、確かに事故の後に目ざめたということは申せます。従来、各自衛隊で航空交通の安全については相当の努力をしておったことは、これまた真実であると思いますけれども、私ども内局のほうでそういった関心をもっと盛り上げて、その問題を取り上げるということをすべきであったろう、また訓練空域なり、あるいは航空路の問題について関心を持つべきであろうということを、いま反省をいたしております。
  251. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 これは空の安全対策として航空自衛隊が報告書を出している。「全日空機と自衛隊機の空中衝突事故により航空法の改正、航空路再編問題が、長期的安全対策を確立するため急務となっているが、航空自衛隊は、たまたま事故が起きた先月三十日、これらの問題点改善点をこまかくまとめた「飛行安全監察報告」を作成しており、印刷ができ上がった十一日、運輸省に提出した」。事故は三十日だったら、この自衛隊から出されたという安全監察報告を、あなた方はどのように受けとめ、どのように対策を立てられたか。今回の事故は起こるべくして起こっておるのですよ。ちゃんと民間にも、こういう警戒をしなければいけないという書物が出ておるのですよ。出ておりながら、持っておりながら読まない。自衛隊では、空はあぶない、危険だという監察報告が出ている。それをだれも取り上げていない。防衛局長も長官も、だれも取り上げていない。前もってこれがあぶないということを言ってあるのだ。今回の事故がやむを得ずして起こったとか、あるいは偶然だとか、それはどうも不可抗力だとか、断じてそういうことではない。全部これは政府の怠慢だ。出ておるのだ、ちゃんとここに。防衛庁どう考えますか。
  252. 久保卓也

    ○久保説明員 これは、昨年の七月から年末にかけて、航空自衛隊で監察官が総合的に監察をした結果の中で、防衛庁限りでは処理しきれないで、運輸省その他の行政官庁にお願いをしなければならないといったものを取りまとめたものであります。それで日付が七月の三十日になっております。私どもは数日後にこれをもらっております。これは監察官の報告でありますから、運輸省に出しましたのは、運輸省との会議がありましたときに、参考資料として空幕のほうから出されたというものであります。したがって防衛庁からのいわば要望という正式文書にはまだなっておりません。  そこで、私どもはこれをどう受けとめているかと申しますと、長官も先ほど申されましたが、航空交通安全対策のためのプロジェクトチームをつくっております。その中でこの問題を取り上げて、防衛庁としては陸も海もありますから、その辺の意見も吸い上げて、全般的な防衛庁としての見解ができれば、これは運輸省のほうに参考としてまた差し上げたい、かように思っております。
  253. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 鬼木君、再々申し上げますが、あとの質問者もだいぶ待っておられますから、恐縮ですがまとめていただきたいと思います。
  254. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 この点で論及したいのですが、いずれにしても、今回の空のああいう痛ましい、まことに私どもは何と申し上げていいかわからない、ほんとうに残念、遺憾千万な悲惨事でございますが、これは防衛庁のミスであって、防衛庁自体の考え方が非常に安易な考え方、こういうふうになりますよ。なりますよということは、これは各方面からの声であった。その声を聞かないで軍事優先的なことをやって、しかもまた二、三日前、危うくそういう大惨事を引き起こそうというようなこと、これはとんでもないことであります。こういう点において、私は防衛論議はもっと突っ込んでお話し申し上げたい、追及申し上げたいと思っておる。しかし、再三にわたる委員長の督促がありますので、この辺で私はとどめますけれども、このニアミスの問題、四次防の問題に対してはまだ永久に続けますから、これはまだ各論、総論まで行っていない序論だから、十分ひとつ皆さん方がこれに対しては対策を講じてもらいたいと思う。防衛局長どうですか。
  255. 久保卓也

    ○久保説明員 各種の御意見は十分に身に体して検討の材料にしてまいりたいと思います。
  256. 鬼木勝利

    ○鬼木委員 では委員長、まことに残念ですけれども、これで御無札しましょう。御苦労さんでした。
  257. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 東中光雄君。
  258. 東中光雄

    ○東中委員 海上自衛隊が訓練を始めたら翌日にまたニアミスが起こったわけですが、このニアミスが起こったことについて、防衛庁の幹部の方で、ニアミスというのはあれは主観の問題なんだというふうな発言をされたとか、あるいはたとえて言えば夜道の一人歩きの女性が、こわいと思えばこわいという程度のものだということを言うというふうに新聞で書かれておるのもあるわけですが、一体ニアミスというのは防衛庁どうお考えになっておるのか、お聞きしたいのです。
  259. 久保卓也

    ○久保説明員 運輸省にもお伺いしているわけですけれども、なかなかこのニアミスの実態と申しますか、定義と申しますか、これを確定しがたいようでありまして、再々申し上げておりますが、私どもの一つの難点というのは、今日の自衛隊側と民間機の場合のニアミスについてだけ申しますと、それが相対的であるということにひとつ問題があります。自衛隊の場合には自分が運航して身軽いものがありますから、比較的近くまで接近してもだいじょうぶであるというふうに意図的に運航しておる場合があります。ところが民間機のほうでは、やはりそれに対して懸念と申しますか、心配と申しますか、そういうことを感じておるというふうに、片一方では心配でない、片一方では心配であるというふうな場合に、自衛隊機のほうではニアミスにならないのに民間機のほうではニアミスになる、こういうところに問題の発想があろうかと思います。そこで、アメリカの定義によりますると、片一方が危険だと感じたらそれはニアミスだというふうに規定をしておるようでありますが、私どももそういうことを参考にしながら、何かもう少しニアミスというものを、具体的にこういう場合はニアミスであるということを設定していく必要があるのじゃないかというふうに考えて、運輸省とも御相談しておるのでありますが、なかなかむずかしいようであります。
  260. 東中光雄

    ○東中委員 民間からニアミスがあったというキャプテンレポートがあがる。しかし自衛隊のほうでは、それはニアミスでないという回答をしているというのが非常に多いと思います。逆の場合はありますか。
  261. 久保卓也

    ○久保説明員 私はその数字を存じておりませんが、実は具体的にはそういった例が私はあるように思います。一つの例は覚えておりますけれども、全般的に統計的にその数字を把握しておりませんが、ケースとしてはあり得ると思います。なお、つけ加えれば、ほかの方から伺ったところでは、そういう例がわりとあるということを聞きました。
  262. 東中光雄

    ○東中委員 ほとんど逆の場合が多いので、しかも先ほど防衛局長言われたように、ニアミスというのは危険だと感じるか感じないかという、そういう問題がある。航空交通管制運営懇談会ですか、ニアミス防止対策分科会では、一応ニアミスというのは、飛行中の航空機が空中接触または衝突の危険があると認めた場合、そして空中接触ないし衝突の危険があると認める場合が民間機には非常に多くて、自衛隊には意識しておるから比較的少ない、こういうことだと思うのですけれども、ここに非常に危険な、危険というものに対してどう見るか、安全に対してどう見るかという違いがあると思うわけです。  この間の合同審査のときに私あげました高松上空でのYS11に対するF86Fのあの場合なんかは、時間的にいえばコンマ四秒から五秒、反転して切りかえしたときで二秒にはならない。これはしかし、自衛隊側は意識していて、そしてなお意識していたからニアミスではないのだ、こう言っているわけですね。今度起こった小月基地の上の問題にしましても、自衛隊側は、編隊飛行していた人は認めていないというふうになっているわけです。認めていないからニアミスでないのだということになれば、見張りをおろそかにしておればニアミスでないということになっちゃう。この間のあの大悲惨事になった事故は、まさに認めたときはもう接触したというふうに、隈一尉にしても、市川二曹にしても、そういうふうに言っておるわけですね。だから、ニアミスと認識するのが非常に自衛隊側が少ないというのは、結局安全に対しての感覚が非常にずれていると言いますか、危険をあまり危険だと思わないというところに原因がある。そしてあの事故が起こったのだ、こう思うわけですが、そういう点でニアミスを防止していくという点で安全に対する感覚ですね。先ほども問題にされました、航空路のことを考えておったら訓練にならぬ、それが真意であるかどうかは別としても、そこで言われているのと同じような思想が、ニアミスと認めるのが自衛隊に非常に少ないということの中にあるのではないか、こう思うのですが、そういうことについての自衛隊としての安全対策といいますか、自衛隊のパイロットに対する教育対策ですね、どうされておるか、お聞きしたいわけです。
  263. 高瀬忠雄

    ○高瀬説明員 自衛隊の航空機操縦関係の安全対策につきまして御説明申し上げます。  航空自衛隊におきましてはいろいろな課程がございますけれども、T34からT1、T33、F86Fというような課程を通じまして、それぞれの課程の教育体系をつくっております。そういった飛行の教育のほかに、特に安全教育として安全関係の課程を一つ設けております。たとえば学科の教育におきまして、航空機の構造とか機能とか、あるいは航空気象、航空法規、そういったものを教えるとか、これは学科教育でありますけれども、そのほかに、実際に飛行をする場合におきましても、特に、飛行の場合一番大事でございますので安全教育の徹底をはかるというような考え方から、飛行をする前の、フライト前の教育を特に重視しまして、飛行隊長から事故の例の活用などにつきまして飛ぶたびに反復しましていろいろ教えるというようなこと。それから、ただいまお話しの特に異常接近の防止につきましては、危険報告などが参りましたその事例などを活用いたしまして、そしてこれの防止をはかる。あるいは航空交通路の状況などにつきまして特にどのような状況であるかというようなことを飛ぶ前に教える。それから飛行の規律の厳守を強調するというようなことで、従来からも安全対策はやっておりました。  今回このような事故がございまして、実は今月の三日から六日までにかけまして航空幕僚監部で安全対策の問題につきまして監察を実施いたしました。これは主として教育関係の飛行教育集団隷下の第一航空団松島派遣隊とか、あるいは当該司令部等につきまして、安全対策はどうなっているかというような検討をさせております。まだその結果がまとまっておりませんけれども、それによりまして、なお一そう安全のための教育体系といいますか、教育のしかたなどにくふうをいたしまして、十分その成果をあげたいというふうに私ども考えております。
  264. 東中光雄

    ○東中委員 そんなことを聞いているのではないのです。それはいままでからやっていたことで、その結果、たとえばニアミスについて言うならば、民間と自衛隊とでは明らかに違うという結果が出てきている。それに対してどういう対策をとっているかということを聞いているので、そういう一般的なことを聞いているのではないのです。そういう一般的なことだからこういう結果が起こっているのではないかということを言っているのです。むしろ逆に言うならば、それではなぜこの間再開されたばかりのこの十四日の日にあのニアミスが起こったか。全日空機ははっきりニアミスだと言っている。自衛隊はそれさえ認めていなかった。そういう結果が出てくるのは一体どこから起こってくるか、原因は一体何なのだ、どういうふうにお考えになっておるのでしょうか。
  265. 久保卓也

    ○久保説明員 いまの小月の問題をニアミスとして取り上げる場合に、やはりニアミスとは何であるかという問題に返らざるを得なくなります。たとえば航空路の上で有視界飛行の飛行機と計器飛行の飛行機とが、高度差は五百フィート、百六十メートルでありますが、これでかりに行き合った場合に、五百フィートの高度差では非常に危険と感ずる人もありましょう。ところが規則の上では、五百フィート離しなさいというわけで、それの上下にはなり得ないわけです。ということはニアミスにはなり得ないことになります。それから今回の場合に、半マイル離れておるということでありますから、約三千フィート近く。しかもわれわれのほうでは高度差があるということでありますし、パイロットによりますると、同じレベルであるか、あるいは六十メートルぐらい。ですから、二百フィートぐらい上であるというふうなことも申しております。もし同じ高度差でかりに半マイル先を横切った場合に、それをニアミスというのかどうかという問題があろうと思います。しかし、同一平面での交差ということはたいへん基本的にまずいことですから、これはニアミスと考えてよろしいのですが、高度差がたとえば千フィートあったとします。千フィートの高度差で半マイル先を横切ったということになりますが、そういった場合にニアミスであるかどうか、やはりそういった問題になるので、そこで先生のいまの御質問、私は二つに分けて考えるべきだろうと思うのです。  一つは精神面であり、もう一つは物的な規制と施設の面。精神的な問題については、ただいまお話がありましたような、民間航空の安全を軽視する風潮が自衛隊の中に体質としてあるのではないかという御趣旨の御質問であろうと思いますけれども、この点については、私どもは、そういろ気持ちはないはずでありますけれども、もう一度それを振り返って裸になって考え直してみようというのは、先ほどの御質問にありました原点に立ち返って考え直す。国民の安全ということを国民の立場になって考えるということが基本であるということを宣明されたわけでありますから、そういった面での再出発ということを、これは長官以下あるいは各幕僚長、各部隊長以下の者がそういった趣旨で再教育をする、精神教育という面であろうと思います。  もう一つの面は規制と施設の面でありまして、施設の面は、これは防衛庁の施設もありまするし、運輸省の全国的な施設の問題もあります。これは予算を取って整々と整備していかなければなりませんし、それからルールの関係では、これは対策要綱の中で当面の対策要綱として実施されます。したがって、これに従って小月の訓練は実施されたわけであり、私どもの観点からするならば、少なくとも私ども調査したパイロットの証言が確かであるならば、これはこの対策要綱に従っており、かつまた危険な事態ではなかったというふうに私は思うわけでありまして、いずれにせよニアミスをどういうふうに考えていくかという問題にどうも関連するように私は思います。
  266. 東中光雄

    ○東中委員 ニアミスは、一方が危険だと感じるような状態がニアミスなんだと先ほど局長も言われましたけれども……。
  267. 久保卓也

    ○久保説明員 アメリカでですね。
  268. 東中光雄

    ○東中委員 当然そういうものであるべきだとぼくは思っております。特に今度の場合なんかは、自衛隊側は認識をしていないのですよ。認識をしていないで接近をしているのですから。わずか時間にすれば十秒足らずのところへ、しかも航空路を横断するという形で行っているということなんですから。ただ私は、いま防衛局長が言われたようなそういう考え方が、防衛庁の中でずっと下まで通っておるからよけい危険なんだと実は思うのです。  この前にお伺いしたあの浜松上空におけるYS11とF86Fとのニアミスについて、これは標的にしたんじゃないかということを私は申し上げたんですが、というのは、写真撮影をやるのに十時方向から四時方向へ行って、反転してまたやるというようなことで、写真撮影ということは考えられぬわけですから、それは調査するということだったですけれども、この問題についていまどうお考えになっていますか。
  269. 久保卓也

    ○久保説明員 その際に私申し上げたと思いますけれども、航空路の上において写真撮影のために特別の飛行体形をとるということは適当でないと思います。のみならず、今回の事故のあとで、緊急対策要綱では明確でないかもしれませんが、この航空路における写真偵察ということは中止いたしております。これは運輸省と話をして中止いたしております。この写真撮影は自衛隊のためだけではなくて、国土地理院あたりが地図をつくるためにも必要視されて、われわれは要望されてやっておるわけなんでありますが、したがって、この必要の度合い、及びどういうふうにして写真撮影のときに安全が確保し得るかという問題を解決した後に写真撮影をやる、それまでは中止をする、こういう考え方でおります。
  270. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると結局は、自衛隊の飛行機というのは、写真撮影あるいは訓練、そういう目的を持ってやっているわけでしょう。民間の飛行機というのは航空路を安全に輸送するという目的でやっているわけです。一方は安全を文字どおり第一主義にしておる。一方は違う目的を持ってやっているわけですね。そういう状態で、意識しておるときは、だからぎりぎり一ぱいまでいってしまう。意識しないで訓練をやっていたら、今度の小月のように、わからないままでこういう結果が起こるわけです。  それを客観的に、そういう危険のないようにどう安全第一にするかということがいま問題の中心点だと思うのですが、そこで最近、青函連絡船も標的にされておったという記事が報道されております。ことしの六月下旬です。「午前七時三十五分に青森桟橋を出港した青函連絡船「大雪丸」が陸奥湾平館沖にさしかかったとき、突然、海上自衛隊の大型ヘリコプター二機が飛来してきて、連絡船の真上を旋回しはじめた。北山栄雄一等航海士が驚いて甲板にでると、ヘリコプターは連絡船の航路を約九百メートルほど先に進んで、いったん空中に停止、うち一機が白っぽい大きな筒を海面に投下した。筒はコードでヘリコプターと結ばれており、海面上五十メートルの高度だった。連絡船がその筒の投下海面を通過したあと、ヘリコプターは筒を引っ張り上げて帰投した」、こういう報道がされておりますが、これは実際確認されておるようでもあります、新聞報道によると。だから浜松上空でのニアミスの問題といい、この問題といい、訓練が第一といっている場合に、標的にされ、あるいは標的にされないまでも、民間航空機が無視されるという状態が実際に起こっておるのではないか。いままでそういうことがあったかなかったか、系統的に調査をされ、そういうことについての基本的な方針の再検討をされておるのかいないのか、その点いかがでしょうか。
  271. 久保卓也

    ○久保説明員 この問題については、当然民間機を標的にするような訓練はしておらないと思いますけれども、この点は、この前も申し上げましたが、私どものプロジェクトチームで具体的に、民間会社のパイロットのレポートを中心に私ども——どもといいますか、そのチームで分析をしまして、その結果によって指導してまいりたい。もしそういった民間機を標的にするような事態があらわれておれば、これは当然改めるべきであるし、私どもとしては、そういった民間機を標的にする必要はないはずだと十分に考えておるのです。  なお、この民間機の場合といまの船の場合とはちょっと事情が違いまして、ヘリコプターの場合に下に筒をおろしましたのは、これはソーナーと申しまして、いわば海中聴音器でありまして、いろいろな音を聞き分けをするための訓練をいたしております。したがって、海中でものの音を聞く場合には、魚の音でありますとか、海中の動きの音でありますとか、もちろん船の大小、船の種類その他によっていろいろ違ってまいります。そこで、そういった訓練をするためにいろいろな物体と申しますか、物音を出すところでそういうものをおろして訓練をする、これはあり得ると思います。しかし、もちろんその場合に、民間の船に不安感を与えるといったようなことを絶対にさせてはならないというような指導のもとにやらしておるということで、民間の飛行機の場合とはちょっと様子が違うのではないかというふうに思います。
  272. 東中光雄

    ○東中委員 絶対に不安感を起こさせないようにするようにということですけれども、現実に不安感を感じて航海士が甲板に飛び出して、船長がいろいろ調査をしているという事態が起こっているのですよ。そういうことはないといったって、現に起こっているのですから。相手方に不安を抱かせるような状態が起こっている。ニアミスというのもそういうことですね。相手方に衝突の危険を感じさせるようなことが起こっている。それが、そういうような感じを起こすほうがおかしいんだと言わんばかりの答弁を先ほどされているわけです。いまの小月の基地の上の問題などというのはそうですね。そういう姿勢だったら、これは安全第一は確保できないということを私は申し上げておるのですが、どうなんでしょう。やっぱり依然としてそういう態度は続けるということですか。
  273. 久保卓也

    ○久保説明員 基本的には相手に不安感を起こさせるのがいけない。相手がその場合に悪いということは私は申しません。ただ小月の例の場合には、少なくとも私どものほうの調査では、相当遠距離、遠いところにあることになっております。しかも高度差が大体二千フィート前後。指導では、小月のホーマーの上四千フィートの指定に比べて、三千フィート以下で飛行するように指導しておりますから、高度差も千フィート以上ある、そういった場合に不安を感じるのは私どもとしてはちょっと困るわけで、相当遠距離にありますし、高度差があるという場合にはこれは往々にしてある。先ほど申し上げたように、航空路の場合に、高度差五百フィート、これが法定の高度差でありますから、そういう場合もあり得る。これは陸上交通の場合もやはり同じではなかろうか、そういうふうに思います。だけれども、基本的には不安感を与えないような指導をしてまいる、これを基本姿勢といたしたいと思います。
  274. 東中光雄

    ○東中委員 時間がありませんから、もう一点別のことを聞いておきたいのですが、この前の緊急対策要綱で、運輸省と自衛隊との間のいわゆる覚え書きは白紙に戻すということでございましたが、白紙に戻した段階——現在まだ次のものはつくられていないわけですけれども、白紙に戻した段階で、この覚え書き第一条に書いてあるスクランブルの場合、あるいは大規模の演習に参加する航空機、あるいはスクランブルの演習についての最優先権というものが、白紙に戻したからなくなっているわけですね。現在はどういうふうになっているのですか。
  275. 久保卓也

    ○久保説明員 三つの類型があるわけでありますが、そのうち大規模な演習飛行訓練、教育訓練、それからスクランブルのための事前の訓練ということは現在とめられておりますが、スクランブルそのものはやっております。
  276. 東中光雄

    ○東中委員 日本の航空管制は運輸省がやっておられるはずですが、この覚え書きがなくなった状態で、そしてスクランブルが優先的にやれる、実際上の優先権を持っているという根拠はどこにあるのでしょうか。運輸省いかがでしょうか。
  277. 住田正二

    ○住田説明員 スクランブルの場合に、自衛隊のほうから、私どものほうの交通管制部に、飛行計画の承認あるいは航空交通の指示を求めてくるわけでございますが、それに対して通常の手続に従って指示を与えているということでございます。
  278. 東中光雄

    ○東中委員 その場合に優先権を与えるということが覚え書きに出ているわけですね。いま実際覚え書きがなぐなっている状態で、そういう指示を求めてきた場合に、優先権を与えて指示をしているわけですか。
  279. 住田正二

    ○住田説明員 特に優先権を与えるということでなくて、通常の手続に従って飛行計画を承認し、あるいは航空交通の指示を与える、そういうことでございます。
  280. 東中光雄

    ○東中委員 そういう状態で防衛局長、防衛庁から見て何か不都合が起こっていますか。
  281. 久保卓也

    ○久保説明員 現在具体的な問題としては私聞いておりません。一応とりあえずスクランブルはやるべきだし、行なわしていただいておる、こういうことしか存じておりません。
  282. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、この覚え書きでいっておる優先権というのですけれども、これは、破棄された、白紙に戻された現在の状況では、運輸省は優先権を与えるようにつとめているわけじゃない、普通に扱っている。普通に扱っているけれども防衛庁は別に何も感じていない、こういうふうにいま御答弁があったわけですが、それでなおあらためてこれに類する覚え書き——この間の防衛局長の話では、スクランブルについては優先権を与えるような覚え書きはこれは白紙に戻して、あらためてつくるもので考えなければいけないということを言われておったのですが、別に何も起こっていないけれども、しかもやはりそういうものを考えていく、こういう立場でしょうか。
  283. 久保卓也

    ○久保説明員 優先権がないが不便を感じていないというお返事は、絶対にただいま申したつもりはございません。私が具体的な問題として聞いておりませんということを申し上げたわけであります。どういう不便があるのかどうか、そこは存じませんが、ただ理論的には、言うまでもなく、相手方の非常に高速のジェット機が参る場合に、こちらが発進するのは一分一秒を争うという実態が日本の独立を守るために必要であろう、そういう発想に立っておりますので、私どもとしては、かなう限り、つまり航空の安全なりその他に支障を大きく及ぼさない限りにおいては、なるべく便宜をはかっていただきたい。したがって、将来覚え書きをつくる場合にはそういうことを盛り込んでいただきたい、私どもはそういうふうに考えております。
  284. 東中光雄

    ○東中委員 覚え書きを必ずしもつくる必要はないので、つくろうということになっておるわけでもないわけなんです。しかし、それで現実に、防衛局長の立場におる人が、この期間何も感じてない、こう言うておって、聞いていないと言うのですから、防衛局長の耳に入らない程度のことなんですから、それでもやはり優先権は確保しておくような覚え書きをつくっていきたい、こういうふうに主張されていることになるのですが、私はそういうことをやめるべきだということをはっきり申し上げておきたいと思うのです。  もう一点、高々度でのジェット機の訓練空域がきまったようでありますけれども、これは航空交通管制空域あるいは航空交通管制圏内には全然入っていないのか、入っているのか。入っているとしたらどこが入っているのか、これをひとつ。運輸省ですか。
  285. 住田正二

    ○住田説明員 高々度の訓練空域につきましては、現在防衛庁と私どものほうで話し合いをいたしておる段階でございまして、まだきまっておりません。
  286. 東中光雄

    ○東中委員 十二カ所きまったというような報道がされておりますが、そうじゃありませんか。
  287. 住田正二

    ○住田説明員 まだきまっておりません。
  288. 東中光雄

    ○東中委員 この話し合い、協定というのは、一体何に基づいてそういう話し合い、協定をせなければいかぬのですか。
  289. 住田正二

    ○住田説明員 今月七日にきまりました航空交通安全緊急対策要綱の第一項に基づきまして協議をいたしておるわけでございます。
  290. 東中光雄

    ○東中委員 もともと航空交通管制区もしくは航空交通管制圏等の指定に関する告示できまっておる空域内ですね。それは訓練飛行は原則としてやるべきでないということになっておるのではないですか。法律上そうなっているのじゃないですか。
  291. 住田正二

    ○住田説明員 航空法の中では、民間の訓練空域については触れてございますけれども、自衛隊の訓練空域については規定がございません。
  292. 東中光雄

    ○東中委員 航空法の九十三条の規定は、これは自衛隊を除外するのですか。要するに「航空機の操縦の練習又は航空機の試験のための飛行は、航空交通管制区又は航空交通管制圏において行ってはならない。」ただし書きは別にしまして……。
  293. 住田正二

    ○住田説明員 この九十三条の規定は前条の九十二条を受けております。「前条の航空機」の中には自衛隊の航空機は入らないということがあります。
  294. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、自衛隊の航空機の訓練空域の設定については、たとえば高々度空域については、一般民間機の場合は、九十三条で原則的にほとんど——日本の領土の上空、相当広範な地域ですから、原則として排除されているわけですが、自衛隊については、その協定ができなかったら、日本の航空、東京FIRについての責任を全般的に持っておる航空局としては、自衛隊と話し合いをしてきめるのじゃなくて、最終的には運輸省の責任できめるべきことじゃないのですか。
  295. 住田正二

    ○住田説明員 自衛隊の訓練空域については、いままでの取り扱いといたしましては、自由に自衛隊できめられておるというたてまえになっておったわけでございます。今回のことにかんがみまして、自衛隊の訓練空域をきめる場合には、先ほど申し上げました緊急対策要綱の第一項に基づきまして、防衛庁と運輸省とが協議してきめるということになるわけでございます。
  296. 東中光雄

    ○東中委員 もう時間がありませんから端的にお聞きしたいのですが、日本の空は、特別な規定がなかったら、原則としては運輸省が管制し管理するんじゃないですか。部分的には、航空法の規定なんかに基づいて、防衛庁長官に委任したりいろいろありますけれども、その委任事項の中には入っていないものは、全体からいえば運輸省が管理をするんじゃないですか。
  297. 住田正二

    ○住田説明員 いまお話のございました管制の問題と、訓練空域をどこに設定するかという問題とは、違った問題だと考えております。管制につきましては、御指摘のありましたように、現在運輸省が一元的にやっておりますけれども、有視界飛行で訓練空域の中で飛ぶという問題につきましては、特に航空法で自衛隊に関しましては規制をいたしておりませんので、自衛隊が自由にきめられ得るというのが、これまでの取り扱いでございます。
  298. 東中光雄

    ○東中委員 航空管制区域の中に高々度空域というのは入っているわけでしょう。だから、その管制権を運輸省が持っている以上は、高々度空域については管制する権限があるわけでしょう。管制されない、かってに飛ぶ訓練を許すか許さないかということは、管制区域内においては、管制権限を持っておる運輸省のほうが最終的な責任を持っているんじゃないですか。
  299. 住田正二

    ○住田説明員 運輸省が管制をしておるといいますのは、計器飛行方式によります飛行でございまして、訓練の場合は、通常有視界飛行方式でやるわけでありますから、それについては運輸省は管制をしていないということになるわけです。
  300. 東中光雄

    ○東中委員 民間機の訓練については、高々度空域について、あるいは試飛行については、有視界飛行であろうと一切管制するわけでしょう。九十三条からいけば原則としてそうなっておる。自衛隊についてはそれはもう全くほっておく、こういう立場でいままでもきたし、これからもいく、こういうことになるわけですか。
  301. 住田正二

    ○住田説明員 九十三条の訓練空域、まあ民間がやる場合でございますけれども、これは管制ではなくて、この九十三条で定めました空域で民間の航空機が訓練をする有視界飛行による訓練でございます。したがって、有視界の飛行の訓練ということにつきましては、自衛隊はこれまで、その高々度においても自分できめて、そこで訓練をすることができる、そういう取り扱いになっておる、その点をこれから直していきたい、こういうことでございます。
  302. 東中光雄

    ○東中委員 質問を終わりますが、結局九十三条でいくと、航空局が管制を行なう管制区域——高々度空域というのは管制区域の中に入っている。その場合には、民間機はそこで訓練ないし試飛行は全面的に一応禁止されている、これが法の原則ですね。それに対して、自衛隊は自由にやれるという考え方をいままでとってこられて、今度はそれをある程度協議で制限する、こういう方向をとっているということになると思うのですけれども、それなら民間機との関係でいくならば、軍事優先というか、そういう原則をここで貫いていることになるわけで、日本の空に対して、管制全体について責任を持っている運輸省としては、協議ができなかったら話がつかないというのじゃなくて、運輸省の責任できちっとすべきものはすべきなんじゃないか、このことを私は言っているわけです。そうでないと、先ほど来論議になっておる軍事優先というのが、やはりあくまでもそういう面で出てくるということを指摘しているわけです。そういう点で、運輸省が民間優先、航空安全という立場で、日本の空を軍事優先をなくしていくという点ではっきりした態度をとられることを強く要請したいわけです。最後に運輸省の見解をお聞きして終わりたいと思います。
  303. 住田正二

    ○住田説明員 現在、防衛庁と話し合いをいたしております訓練空域は、航空路、これは当然でございますが、ジェットルートを含みまして、そういう航空路から完全分離するということを前提といたします。したがって今後防衛庁と話し合いできまります訓練空域につきましては、民航機と自衛隊機がニアミスを起こすというおそれはないと、このように考えております。
  304. 東中光雄

    ○東中委員 私が言っているのは、ジェットルートだけではなくて、高々度空域というのは全部管制区の中に入っているじゃないか、民間と同じように扱うべきだ、法の趣旨は少なくともそうなっているということを申し上げているわけです。運輸省の言われている内容はわかるけれども、それじゃだめだ、ほんとうに国の空を軍事優先にしないような、そういう体制でやるべきだということを強く要請しておきたいと思います。  終わります。
  305. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十七分散会