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1971-07-23 第66回国会 衆議院 内閣委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十六年七月十四日)(水曜日) (午前零時現在)における本委員は、次の通りであ る。    委員長 天野 公義君    理事 伊能繁次郎君 理事 佐藤 文生君    理事 坂村 吉正君 理事 塩谷 一夫君    理事 大出  俊君 理事 伊藤惣助丸君    理事 和田 耕作君       阿部 文男君    加藤 陽三君       笠岡  喬君    鯨岡 兵輔君       齋藤 邦吉君    篠田 弘作君       辻  寛一君    中山 利生君       葉梨 信行君    古井 喜實君       堀田 政孝君    湊  徹郎君       山口 敏夫君    上原 康助君       川崎 寛治君    木原  実君       佐々木更三君    横路 孝弘君       鬼木 勝利君    正木 良明君       受田 新吉君    東中 光雄君     ――――――――――――― 七月十四日  天野公義委員長辞任につき、その補欠として  伊能繁次郎君が議院において、委員長選任さ  れた。 ――――――――――――――――――――― 昭和四十六年七月二十三日(金曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 伊能繁次郎君    理事 佐藤 文生君 理事 坂村 吉正君    理事 塩谷 一夫君 理事 湊  徹郎君    理事 山口 敏夫君 理事 大出  俊君    理事 伊藤惣助丸君 理事 和田 耕作君       阿部 文男君    天野 公義君       笠岡  喬君    辻  寛一君       中山 利生君    堀田 政孝君       上原 康助君    川崎 寛治君       木原  実君    桑名 義治君       東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君  出席政府委員         人事院総裁   佐藤 達夫君         行政管理政務次         官       岩動 道行君         防衛政務次官  野呂 恭一君  委員外出席者         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         総理府人事局長 宮崎 清文君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         行政管理庁行政         管理局長    河合 三良君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      江藤 淳雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 田代 一正君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛施設庁長官 島田  豊君         外務省アメリカ         局外務参事官  橘  正忠君         大蔵省主計局次         長       平井 廸郎君         運輸省航空局監         理部長     住田 正二君         自治大臣官房参         事官     佐々木喜久治君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十四日  辞任         補欠選任   齋藤 邦吉君     熊谷 義雄君 同月十五日  辞任         補欠選任   熊谷 義雄君     園田  直君 同月十六日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     谷口善太郎君 同月二十一日  辞任         補欠選任   谷口善太郎君     東中 光雄君 同月二十三日  辞任         補欠選任   正木 良明君     桑名 義治君 同日  辞任         補欠選任   桑名 義治君     正木 良明君 同日  理事熊谷義雄君同月九日委員辞任につき、その  補欠として山口敏夫君が理事に当選した。 同日  理事伊能繁次郎君同月十四日委員長就任につ  き、その補欠として湊徹郎君が理事に当選した。     ――――――――――――― 七月十四日  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、第六十五回国会閣法第一九号)  行政管理庁設置法等の一部を改正する法律案  (内閣提出、第六十五回国会閣法第二八号)  労働省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、第六十五回国会閣法第九二号) 同月二十一日  靖国神社国家管理反対に関する請願青柳盛  雄君紹介)(第一号)  同(浦井洋紹介)(第二号)  同(小林政子紹介)(第三号)  同(田代文久紹介)(第四号)  同(谷口善太郎紹介)(第五号)  同(津川武一紹介)(第六号)  同(寺前巖紹介)(第七号)  同(土橋一吉紹介)(第八号)  同(林百郎君紹介)(第九号)  同(東中光雄紹介)(第一〇号)  同(不破哲三紹介)(第一一号)  同(松本善明紹介)(第一二号)  同(山原健二郎紹介)(第一三号)  同(米原昶紹介)(第一四号)  同(青柳盛雄紹介)(第一六号)  同(浦井洋紹介)(第一七号)  同(小林政子紹介)(第一八号)  同(田代文久紹介)(第一九号)  同(谷口善太郎紹介)(第二〇号)  同(津川武一紹介)(第二一号)  同(寺前巖紹介)(第二二号)  同(土橋一吉紹介)(第二三号)  同(林百郎君紹介)(第二四号)  同(東中光雄紹介)(第二五号)  同(不破哲三紹介)(第二六号)  同(松本善明紹介)(第二七号)  同(山原健二郎紹介)(第二八号)  同(米原昶紹介)(第二九号)  同(青柳盛雄紹介)(第三九号)  同(浦井洋紹介)(第四〇号)  同(小林政子紹介)(第四一号)  同(田代文久紹介)(第四二号)  同(谷口善太郎紹介)(第四三号)  同(津川武一紹介)(第四四号)  同(寺前巖紹介)(第四五号)  同(土橋一吉紹介)(第四六号)  同(林百郎君紹介)(第四七号)  同(東中光雄紹介)(第四八号)  同(不破哲三紹介)(第四九号)  同(松本善明紹介)(第五〇号)  同(山原健二郎紹介)(第五一号)  同(米原昶紹介)(第五二号)  同(青柳盛雄紹介)(第一三五号)  同(浦井洋紹介)(第一三六号)  同(小林政子紹介)(第一三七号)  同(田代文久紹介)(第一三八号)  同(谷口善太郎紹介)(第一三九号)  同(津川武一紹介)(第一四〇号)  同(寺前巖紹介)(第一四一号)  同(土橋一吉紹介)(第一四二号)  同(林百郎君紹介)(第一四三号)  同(東中光雄紹介)(第一四四号)  同(不破哲三紹介)(第一四五号)  同(松本善明紹介)(第一四六号)  同(山原健二郎紹介)(第一四七号)  同(米原昶紹介)(第一四八号)  靖国神社国家護持早期実現に関する請願外五  件(中曽根康弘紹介)(第五三号)  特定郵便局長恩給通算に関する請願外一件  (佐々木秀世紹介)(第五四号)  同外一件(南條徳男紹介)(第五五号)  同(塩川正十郎紹介)(第一五〇号)  同(徳安實藏紹介)(第一五一号)  旧軍人に対する恩給処遇改善に関する請願外  一件(奧野誠亮紹介)(第五六号)  同(佐々木良作紹介)(第一四九号)  狩猟者団体法制定に関する請願中曽根康弘君  紹介)(第五七号)  同外五件(福田篤泰紹介)(第五八号)  同(森下國雄紹介)(第五九号)  元師範学校訓導等恩給処遇改善に関する請願  (池田清志紹介)(第二四〇号)  女子職員恩給是正に関する請願池田清志君  紹介)(第二四一号)  恩給共済年金受給者処遇改善に関する請願  (池田清志紹介)(第二四三号)  板付基地用地返還に関する請願中村寅太君  紹介)(第二四六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月二十一日  靖国神社国家護持に関する陳情書  (第一号)  同(第八四号)  同和対策事業の促進に関する陳情書外一件  (第二号)  国立大学教職員定員増員に関する陳情書外二  件  (第三号)  地震災害防止対策に関する陳情書  (第四号)  野生鳥獣保護対策に関する陳情書  (第二五号)  自然保護対策強化に関する陳情書  (第四九号)  琵琶湖の禁猟区指定等に関する陳情書  (第五〇号)  自主防衛強化等に関する陳情書  (第五一号)  恩給共済年金仮定俸給額是正等に関する陳  情書  (第五二号)  リマ米軍演習水域指定解除等に関する陳情書  (第八五号)  人事院勧告完全実施等に関する陳情書  (第八六  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  公務員給与に関する件  国の防衛に関する件      ――――◇―――――
  2. 伊能繁次郎

    伊能委員長 これより会議を開きます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  今回、全くはからずも当内閣委員会委員長就任いたしました。はなはだ微力短才でございますが、委員各位の御交誼と格別の御協力によりまして、円満かつ適正な委員会運営を行ない、その責任を全ういたしたいと存じます。皆さま格別の御協力と御鞭撻を心からお願いいたしまして、ごあいさつといたします。(拍手)      ————◇—————
  3. 伊能繁次郎

    伊能委員長 理事補欠選任に関する件についておはかりいたします。  理事熊谷義雄君が去る九日委員辞任され、また私の委員長就任に伴いまして、現在理事が二名欠員となっておりますので、これよりその補欠選任を行ないたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 伊能繁次郎

    伊能委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  それでは、理事山口敏夫君、湊徹郎君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 伊能繁次郎

    伊能委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  今国会会期中、国の行政改善をはかり、公務員制度及び給与の適正を期する等のため、  一、行政機構並びにその運営に関する事項  二、恩給及び法制一般に関する事項  三、国の防衛に関する事項  四、公務員制度及び給与に関する事項  五、栄典に関する事項 以上の各事項について、小委員会設置関係方面からの説明聴取及び資料要求等の方法により国政調査を行なうこととし、議長にその承認を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 伊能繁次郎

    伊能委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  7. 伊能繁次郎

    伊能委員長 この際、中村行政管理庁長官及び岩動行政管理政務次官よりそれぞれ発言を求められておりますので、これを許します。中村行政管理庁長官
  8. 中村寅太

    中村国務大臣 私、このたびの内閣改造にあたりまして、行政管理庁長官を拝命いたしました中村寅太であります。  きわめて浅学非才、微力でございますが、委員長はじめ委員皆さま方の御支援、御協力によって大任を果たしてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手
  9. 伊能繁次郎

  10. 岩動道行

    岩動政府委員 私、このたび行政管理政務次官を仰せつかりました岩動道行でございます。  はなはだ至らぬ者でございますが、職務重要性にかんがみまして、全力を傾注してその職務を全ういたしたい、かように考えておりますので、皆さま方のこの上ともあたたかい御支援と御鞭撻を賜わりますよう心からお願いを申し上げまして、ごあいさつといたす次第でございます。(拍手)      ————◇—————
  11. 伊能繁次郎

    伊能委員長 公務員給与に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  12. 大出俊

    大出委員 しばらくぶりで公務員給与に関して承りたいのでありますが、その前に、給与とも非常に密接な関連がございますが、行政管理庁中村長官出席をいただいておりますので、時間の関係もございますから、この際、冒頭に少し承っておきたいと思うのであります。  給与の面からいきますと、パイロットにいたしましても、あるいは管制通信その他をやっておる方々にいたしましても、実は民間皆さんの賃金と非常に大きな開きがあるわけであります。これはあとから少し具体的に申し上げますけれども。したがって、せっかく人を見つけましても、やがて民間に引き抜かれていってしまう。だから、予算上の定員はあっても実在定員がいないという問題が実はあるわけでありまして、この点は、人事院の側でこの際ひとつ思い切ってお考えいただかぬとまずいと思っておるのですが、もう一面、最近の東亜航空事故等関連をいたしまして、行政管理庁という立場で一体何をやったらいいかという問題があると私は思うのです。  中村長官前回運輸大臣に御就任時代、たまたま航空機事故が社会問題としてたいへん大きくなりまして、御就任早々からたいへん御活躍を続けておられましたので、他の方が行政管理庁長官におなりになったんではなくて、運輸大臣時代にそのときの経験を豊富にお持ちの中村さんが御就任になったわけでありますから、実情については、私からとやかく申し上げる以前に、すでに十分御承知だと思うのであります。  そこで、幾つか具体的な問題を承りたいのでありますけれども、たび重なる航空機事故の原因の一つに、行政機関の側で負わなければならないものがたくさんあると私は思っておるのであります。そういう点をとらえて保安庁構想などという言い方をされたりもいたしておるようでありますが、この辺のところを大づかみに、つまり行政面から見て一体どうしたらこの種の事故を防いでいけるかという点、ここのところを、まずもって基本的なお考えを承りたいのであります。
  13. 中村寅太

    中村国務大臣 第一点の公務員給与の問題でございますが、一般公務員給与は、公務員以外の、会社とかあるいは銀行とかその他の一般俸給生活者給与に比べまして、大体に低いような傾向にあると考えられますので、できるだけ給与体系を整えて、安心して生活のできるような基盤をつくり上げていくことが大切なことだと考えております。  第二点の航空事故対策でございますが、きわめて広範にわたると思いますけれども、そのまず第一点は、航空技術者に優秀な者をそろえるということでございます。現在の日本航空需要がたいへんな増加状態にありますのに、対応するパイロット養成機関等もきわめて弱いものであり、あるいはそういう点で、優秀なパイロットなんかをそろえるということも、技術上からくるあやまちを防ぐ大きな力になると思います。  それからもう一つ大事なことは、飛行機が飛びます場合の気象情報等を完全に把握しておるということが必要だと思います。その方面設備が、日本空港を全般的に見ましても、非常に不十分といってはちょっと適当でないかもしれませんけれども、実を申しますと不十分な点がある。この設備を十分整えまして、飛行機が飛ぶ場合の航路の気象状況等を完全に把握して、安全であるということを確認して飛んでいくという、そういう設備の面も必要であると思います。  そのほか航空関係には、いわゆる航空需要に対する行政という面から見ましても、機構体制等が立ちおくれておるというような点がかなりあると思いますので、こういう点については、すみやかに現在の航空需要に合うような体制を整えることが必要である、かように考えております。
  14. 大出俊

    大出委員 そこで承りたいのですが、三年五%の削減計画行政管理庁から提起をされまして、総定員法等ともからみましてずいぶん各般の論議をいたしましたが、私は実は当時佐藤総理に、この席からその点についてこまかい質問を少ししたのであります。ここに当時の資料がございますが、いま再度調べてみましても、三年五%の削減計画——これは四十三年のときでありますけれども、四十三年十月二十五日の資料がここにございますが、これを見ますと、地方航空局航空交通管制部、ここで三年五%の削減数が、前者つまり地方航空局が七十五、それから航空交通管制部が十五、こういう削減数が当時出ておりました。これが最終的にどういうふうに詰まったかという点等を調べてみますと合計七十三名です。いま私が申し上げました数字は九十名でありますが、この数字がその後いろいろ詰まってまいりまして、合計七十三名削減をされている。つまり二種空港なりあるいは三種空港なりというところの管制部門、そういうところにもたいへん大きくしわが寄っている。いま申しましたのは、これは現に両方合わせて三・四%の削減になっている。このときに私は、二種空港にしろ三種空港にしろ——三種空港なんか管制官なんというのは全くいないのでありますから。管制官という官職がおらなければ、法律的にも指示もあるいは指令も出せません。そうなりますと、飛び上がった飛行機が、気象の急変その他があった場合に、一体この三種空港ではどういう連絡をとるのかという点等の問題について触れて、この種の部門を減らすということは人命にも関する、あり得べきことではないではないか。なぜ行管はこの諸君を減らすのだ。もう一つ気象観測等の問題がありまして、富士山頂のレーダーじゃありませんけれども、昼間だけ動くけれども夜は動かない、さっぱり天気予報当たらぬことになっておりますけれども、なぜだと言ったら人がない。人がないところにまた行管は、観測部門気象面についての人を減らそうという三年五%をかぶせている。この二点をとらえて総理を追及いたしましたら、総理の答弁は、あり得べきではないから検討するということだった。ところが、当時私が質問したときには、いまの部門は九十名の削減計画でありましたが、結果的に七十三名に減っている。そういうことを行管がやっておって、それが今日的事故の大きな側面になっている。これは前行政管理庁長官時代でありますけれども、このことの責任はどうお考えになるのか、この際明らかにしていただきたい。
  15. 中村寅太

    中村国務大臣 大出委員の御指摘になりました点は、私も行管長官になりまして、さっき大出さんもおっしゃるように、前に運輸大臣をしておったときのみずからの体験から考えまして、管制官というようなものはふやしこそすれ減らすべきものでないという態度で、運輸大臣のときにいろいろやったのでありますが、やはり一律的な削減計画というもので、実は私どももその当時閉口したのでございます。しかし、運輸大臣として運輸省所管の全体を見渡してみますと、やはり需要がますますふえておる航空輸送の面がある。反面には、なくしてということまではいろいろ語弊がありますが、少しぐらい少なくしてもいいような個所もありますので、そういうものをあんばいしまして、そうしてふやさなければならない点はふやすというようなことを、私は自分でやってみたのでございますが、しかし、大出議員の御指摘の点は、これはきわめて重要な点で、しかも管制官なんというものはほかの者ではできない、しかも安全に直接つながる面でございますから、ふやさなければならない点はやはりふやしていく。そのかわりに薄くしていける面をやはり吟味しまして、ふやすのと減らすのとでできるだけ調和を保ちながらやっていきたい、かように考えております。  大出さんは、管制官は減っておるということをおっしゃいますが、局所的には、二種空港とか三種空港というようなところでは、いろいろくふうをして減らしておるところもあると思いますが、全体的に見ますと、四十三年、四十四年、四十五年、四十六年と大体はふやしてきておるようでございます。四十三年は、四十二年から比べますと六十九名の増員をやっておるようでございます。それから四十四年は、四十三年の八百四十二名に対して、さらに三十八名ふやしまして八百八十名。あるいは四十五年は、さらに四十四年に五十名ふやしまして九百三十名。四十六年は、四十五年から百六十四名ふやしまして千九十四名。こういう定員にしているようであります。しかし、いま大出議員指摘なさったような点は、行政管理庁の仕事としては、やはり削減をしていく方向に歯車を回していかなければなりませんけれども、ふやさなければならない面には思い切ってふやす、そのかわり減らす面は思い切って減らす。一般に役人の通例といいますか、通弊と言ったほうがいいかもしれませんが、ふやすほうはふやしたがるが、減らすほうは減らしたがらない例が多うございますので、そういう点は思い切って、佐藤さんじゃないが、勇断をふるってひとつ行政管理庁の目的を果たしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  16. 大出俊

    大出委員 私も長らく内閣におりますので、定員その他よく知っているつもりでございます。知り過ぎているわけですが、時間がありませんから、いまの問題をさらに掘り下げますと時間がかかりますから、具体的に例を申します。  ここに私の持っております数字は、航空管制通信官配置状況という数字であります。東京航空局管内で申しますと、これは大阪もあるのでありますが、東京だけで申しますと、管制通信官は、空港名で申しますと稚内が二、女満別が一、旭川が二、紋別が一、中標津が一、釧路が二、函館が四、青森が二、秋田が二、花巻が二、佐渡が一、東京の江東が二、成田が三十、大島が二、三宅が二、八丈が二、松本が二、計六十二名です。こうなっているわけですね。これは東京航空局管内でございます。この中で一例をあげますと、紋別中標津釧路、こう三つありますが、この三つ釧路だけでやっておる。だから紋別中標津の様子は全くわからない。実際には釧路だけでやっておる。  そこで一つ例をあげたわけですが、なぜこういうことになるか。実際は紋別中標津はいないのですよ。なぜかといいますと、ここに予算定員がある。航空管制官配置状況、四十七年七月一日現在、これは予算定員ですよ。これでいきますと、東京管制部、福岡、札幌と、こう始まりまして、岡山で七百八人と、こうなっているのです。ところが、定員があっても実在人員がいないのです。そこへもってきて今度は板付返還がある。成田空港ができる。沖繩の問題が出てくる。これは、一体管制通信官をどうするつもりなのかということです。予算的に、予算定員の面からいってこれだけあると言ったって、現実にいない。そうするといまの七百八名——さっき大臣はおっしゃっていましたが、この数字の中で、板付が返ってくる、成田が開設をされる、沖繩がとなりましたら、幾つかの空港を閉鎖しない限りできない。そうでない限りは認めるわけにいかない。いま私が実際の例を申し上げた紋別中標津釧路、この三つは、紋別中標津はいないから実際には釧路がやっている。わからぬでやっているのです。こういうことに現実的になっている。だから実際には、そろばんをはじいてこうだからということでは事済まない。ここらのことを、行管という立場でどうして調査をされて、実際をかちっとつかんでものをおっしゃる態度をおとりにならぬのですか。定員の動きだけをいま並べられたからといって、現実事故が起こる穴はどこにもある。この点を行管皆さんは一体どうお考えですか。
  17. 中村寅太

    中村国務大臣 非常にこまかい点に触れられましたので、局長から御答弁申し上げます。
  18. 河合三良

    河合説明員 御指摘の点につきまして、これは定員配置の問題、それから実際の運営の問題で、削減計画につきましては、この削減の具体的な個所につきましては運輸省におまかせしておるわけでございます。また、その運用につきましても、それは運輸大臣責任においてやっていただきます関係上、その点につきましては、私どもといたしましては運輸省におまかせしておるわけでございます。
  19. 大出俊

    大出委員 まかせておいて、頭から削減削減といって押しつけただけでは問題は解決しない。いまの点について、そうおっしゃるならもう一つつけ加えて申し上げますが、これからの削減計画について、あなたのほうは内示をいつされるのですか。きょうじゃないのですか。これまた申し上げておきますけれども、三種、二種にかかわる、つまりおたくのほうの九%の四十七年からの削減計画、この内示がきょう行なわれるはずですよ、あなたのほうから運輸省に。運輸省すみっこにおいでになるのだが、そうでしょう。これが中身百八十名ぐらいおるのですね。だからそこのところを、きょうでないというならきょうでなくてもいいけれども、行政管理庁のほうは、これから先の削減計画九%、この部門についてどうお考えになりますか。
  20. 河合三良

    河合説明員 きょう内示するということになっておりません。これはまだ未定でございます。内容につきましては、もちろん航空管制の問題につきまして、非常に削減がしにくい職種であるということは十分承知いたしておりますので、そういう点を十分頭に入れまして、現在案を作成中でございます。
  21. 大出俊

    大出委員 内示と言ったら言い過ぎかもしれませんが、おたくのほうのやっているのを見ますと、いつの場合も担当者その他が積み上げていますね。そこで出てくる数字皆さんの手元——皆さん上のほうにおいでになるから、皆さんのところまで行く間には、ずいぶん担当の方が苦労して上げていくわけですね。だからお調べいただけばわかりますけれども、こういう数字が現にある。  そこで運輸省の方に承りますが、先ほど私は東京航空局管内数字を申し上げましたが、実際こういうことになっている。だから、将来に向かって、成田空港だの板付だの沖繩が返った場合にどうなさるおつもりですか。
  22. 住田正二

    ○住田説明員 管制官定員が確保されましても、実際の玉といいますか、そこに配置する人間が不十分であるという点は非常に問題でございまして、ことし七月から板付返還を受けまして、やりくりをいたしまして配置をいたしたわけでございます。来年沖繩が返ってまいりますと、現在の状態では、定員をつけていただいても、実際に玉を配置する状況が非常にむずかしい状態でございます。そのために、防衛庁のほうにお願いをしまして、防衛庁の管制官を私のほうへ出向するなり、あるいは身分を移していただくというような話し合いをいま進めております。それができませんと、沖繩が返りましても直ちに管制業務が開始できるかどうか非常に疑問だと思います。
  23. 伊能繁次郎

    伊能委員長 大出君に申し上げますが、中村行政管理庁長官は地方行政委員会のほうへ参りますから……。
  24. 大出俊

    大出委員 長官に二点だけ承りまして、長官に対する質問を終わります。  いまの住田さんの御発言で長官おわかりだと思いますけれども、実際に定員配置されても玉がないという。だから、七月一日から板付という問題になってきているんだけれども、無理をしているという。無理をしてほかから持っていっている。玉のないところから持っていっているんだからたまらない。ますますそこが穴があくわけですよ。だからさっき私があげた例ができる。定員上あっても実際に人がいない。だから、二つのところはいないのだから、釧路でもって三つ分やっている。こういうむちゃくちゃじゃ因る。いつ何が起こるかわからぬ。起こったら一体行政責任はどうするかという問題になる。その意味では、行政管理庁、おまかせをしたと言ってないでもう少し実情を調査されて、国民にかかわる問題ですからね。気象なんかの場合には、いにしえからずいぶん苦労されて調査されて、勧告を何べんかお出しになって、その事後を一つ一つ追っておられるわけですね、行管は。だから、やはりここまでくると、長官責任で、特に航空に関する問題については詳細な——どれだけやってもやり過ぎるということはないのですから、実態を調査されてしかるべき方法をお考えにならぬと、これは行政責任怠慢だと言われかねないと私は思いますから、その点が一つ。その意味では、これ以上減らすなんという——実際に玉がないのでどうにもならぬ、たまらぬと言っているのに、これ以上かぶせることだけは私はしてほしくない。  もう一つ長官のおっしゃっている航空庁構想ですかが一つある。それとも関連がございますので承っておきたいのでございますが、いま運輸省の本庁で、航空局その他で五カ年計画の繰り上げその他をめぐりまして、たいへんな実情になっているのを長官は御存じかどうかということです。私は実はお伺いしてみてびっくりしたのですけれども、一日おきに徹夜なんですね。これは五カ年計画を三年に短縮する。きれいごとはいいんですけれども、実際にやっておられる方々、本省の航空局の無線課だとか計画課だとか建設課だとかいうところ、または地方局の照明なんかも同じです。メンテナンスなんかやっておる部門もみんなそうでありますけれども、毎晩おそくまで居残りをやって仕事をする、機械の設置その他を含めまして。ところが、一日おきに泊まりになってしまう。この状態が五年間続くのだとすれば、本局の皆さんは人間の命の限界だと言っておる。これは私どもにしたって見るに見かねる。この点は、私は念のために、住田部長お見えになっておりますから、どんなことになっているかということをあまり飾らぬで言ってほしいのが一つ。  それから、その上で長官に、こういう状況になっているのに、なぜ一体これは予備の定員なり何なりの措置をしないのかという点。これは人間の努力の限界を越えておる。こういうことにしておいて、表街道からだけ、航空機事故責任というので運輸省をたたいてみても、私は決して運輸省の肩を持つわけではないけれども、そこで働いておられる人の身になってごらんなさい。耐えられぬですよ。これは、人がいない、繰り上げだというのでやたら働かされる。しかたないからやっておる。やっておるけれども、もうどうにもならぬというところに来ておる。  こういう現実に立って三点目は、簡単に航空庁構想と言われても、あるいは運輸大臣がおっしゃっておるような保安庁構想を立てられても、それで現実に動くかという問題がもう一つある。その三点だけ承っておきたいのです。
  25. 中村寅太

    中村国務大臣 私は、まず第一点の技術者の養成、これはさっき航空局長も言いましたように、玉がないということがやっぱり一つの悩みだと思うのです。それで、この特殊の技術者をどうしてそろえるかということですが、私は、航空行政の基本的な立場からやはり考えなければならぬ一つは、人間をそろえるためには、技術者の今日置かれておる状態は、いま大出委員もおっしゃるように、非常に忙しい人間わざでないような仕事を押しつけておる。その反面には処遇が悪い。それから、一生涯部長にもならなければ、局長にもなっていけないというような一つの欠陥がある。それから、技術者の処遇をよくするということが前提になって、やはり人数をそろえる、設備を整えていかないと、実際はなかなか玉がそろわないのではないか。これは私は運輸大臣をやったときの実感でございます。  それから、五カ年計画を三年に繰り上げて、これは突貫工事です。そういうことをやろうとすれば、やはり予算を短期間に使うのでございますから、これは人間なしにはできないことはきまっております。それで、それにはやはり人間をそろえて仕事ができるようにしなければ、それは絵にかいたもちになってしまう。行管の使命というものは、何も人間を減らすことだけが能じゃない。必要なところには十分振り当てていく、余裕のあるところには薄くしていくというような基本的な立場に立って、そうして今日急務であるのは、やはりこれだけ国民の足が航空機を利用するようにもう急速度に変わっております。この情勢に対応するためには、ただ人間さえ減らせばいいという考えでは行管はやるべきじゃない、そういうことを私は考えております。だからといって、定員をどんどんそこにだけふやせるかという問題がすぐ起こってきます。しかし、これはきわめてむずかしい問題でございますが、知恵を出してくふうをして、困難を乗り越えて航空体制だけは私は整えなければならない、かように考えております。
  26. 伊能繁次郎

    伊能委員長 中村行政管理庁長官はよろしゅうございますか。
  27. 大出俊

    大出委員 ちょっと待ってください。
  28. 住田正二

    ○住田説明員 五カ年計画の実施あるいはその繰り上げに伴いまして、現在航空局は連夜おそくまで仕事をいたしておるわけであります。ただいま先生からお話しがありましたように、もう限界に来ておるというような感じを持っておりますので、行政管理庁あるいは大蔵省に、本年度の定員をふやしていただくという措置を、現在お願いいたしておる最中でございます。
  29. 大出俊

    大出委員 これまた運輸省の住田部長もお認めになっているので、大臣せひひとつ、これはもうとにかく限界ですから、早急にこの人をふやすということをお考えいただきたいのです。   〔委員長退席、坂村委員長代理着席〕  そこで、四月から航空保安大学というふうに名前を変えましたが、前の航空保安職員研修所ですね。こまかい数字、ここに全部ありますが、時間がありませんから申し上げませんが、ここに入って、二年コースなら二年コース、つまり管制の専修科もございます。ここを出る過程で、出てまたつとめて、みんな端からいなくなっちゃうんですね。これは給与の問題も大きくからんでいる。ここらは抜本的に変えなければ、玉がないと言い続けなければならぬことになる。ここらは行管の側からもやはりバックアップしていただかないと、いま玉の話が出ましたが、玉なしのままでますます危険度をふやしていったのでは、これは、とてもじゃないが行政責任は果たせません。  この点をぜひお考えいただきたいのと、最後に、運輸大臣保安庁構想が出ております。あるいは航空庁。行管からそういう言い方が出ている。ここで考えなければいけませんのは、この監督課あるいは管制課、羽田の例をあげれば監督課があります、管制課があります。監督課というのはどういうところかといいますと、会社から民間航空機のダイヤ編成を認めてくれといって入ってくる。ところが、管制課はどうかというと、航空安全という、保安という面から考えて、そういうダイヤを組み込まれても、これはとてもじゃないが危険で認められないという立場の課です。そうすると、管制課というものと監督課というものが、そこでうまくほんとうに人命安全を考えて調整をはからなければ、たいへんな事故が起こるという場面です。この二つの部門を切り離して、運輸大臣がおっしゃるように保安庁構想で、そっちはそっちだ、外局にするんだ、ところが片方のほうには監督も残っていくというかっこうになると、一体どういう調整をするのかという飛行場の問題が出てくる。これは世間ていがいいからというので保安庁構想、簡単にそういうことを言ったってまことに困る。航空庁構想も、そういう面からいくと必ずしも妥当かどうか疑問がある。だから、そうなると一番すなおなのは、私がこの席で問題の論議を始めてから、東京、大阪という航空局を二つにした。このときに四つという構想も現にあった。もう少しきめこまかい四つぐらいの航空局をつくるべきであるという、そこに人を質的にも充実しようじゃないかという構想。私はやはりそこらのことが、何年か論議をしてまいりまして、一番正しい気がするのです。だから軽々しくこの点は、行管の側で言われる航空庁であるとか、運輸大臣のぽんと言われた保安庁構想であるとかいうことではなく、その中身が一体どうなのかということを、これは一ぺん真剣に大臣考えていただきたい、こう私は思っている。職場の実態、羽田空港なら羽田空港現実から見て、世間ていだけで問題の解決をしない。そこのところを大臣これは頭にお入れいただいて、前に運輸大臣の御経験を持っておられるのですから、ぜひひとつ、そこらを前向きにどうするかということを考えていただきたいので、この点だけ申し上げまして、終わりたいと思います。
  30. 中村寅太

    中村国務大臣 私は、行政管理庁で航空庁ということを正式に頭に抱いたことはないと思います。これは前に私が運輸大臣をしておりましたものですから、そのときに航空庁をつくると言っておったのが、それが流れてきたと思うのです。  私は、いま大出さんがおっしゃるように、庁にするとかしないとかは別にして、やはり航空体制というものを、一本のところで総合的に計画して実行していくような一つ行政機構をつくらなければいかぬ。これにはやはりパイロットとか管制官とか、いろいろそういう特殊技術屋まで養成するような、そういうものまで含めて。ただ私は、運輸大臣が保安庁とか言っておることは聞きませんけれども、そういうものでなくて、やはり名前は何でもかまわないと思うのです。機構そのものを、きちっとした、連携のとれた、総合的な体制につくらなければ、今日の航空事情についていけない。   〔坂村委員長代理退席、委員長着席〕 これはやがてそこのすき間ができると、きわめて重大な事故というようなものにつながっていく可能性がありますから、そういうことのないようにどうしてもしなければなりませんので、私はそういう意味で、航空行政体制を整えるためには、行管としても慎重に検討してまいりたい、かように考えております。
  31. 大出俊

    大出委員 前向きにお答えいただきましてありがたいのですが、これは予算官庁との関係もあります。河合さんうしろにいて御存じだと思いますが、なかなか予算官庁との関係も出てまいりますから、ぜひそこのところを行管のほうでいろいろバックアップしていただきたいということをお願いいたしまして、終わりたいと思います。  運輸省の側も実態を御存じなんですから、ぜひひとつ思い切って要求すべきものはして、世論的に見ても、いまの航空利用者というのはこれだけどんどんふえている、アメリカ式にエアバスになってしまうわけですから、三分おきに飛んでしまうことになる将来の展望もあるわけです。ですから、ぜひそこのところはお考えいただきたい、お願い申し上げておきたいと思います。また、行政管理庁は私ども委員会の所管でございますので、これから機会あるごとにひとつ論議の場所をつくっていただきたい、こう思っております。どうも運輸省の皆さんありがとうございました。  航空関係給与の問題は、運輸省の皆さんのおいでにならぬところで一番最後に質問さしていただこうと思っております。尾崎さんがたいへん苦労されて調査をされておられますので、ひとつ最後にお聞かせいただきたいと思っております。  本日は、総裁、どうも少し間を置き過ぎた感じでございまして、総裁の顔をもう少し早く見ないと、おそくなればなるほどどうも勧告の中身が減っていくような感じがしまして、いささかおそきに失したわけでございますが、精一ぱい調査なさっておるわけでございますから、確たる御答弁をいただきたいと思っております。  それで、ことしの調査の時期はやはり四月からだろうと思いますが、たまたま本年はあまりどうも人事院参りを私自身がしておりませんので、事情にうといわけでございますけれども、大体どういう方向での調査をおやりになり、かつ重点をどの辺に置かれているのかという点、まずここらのところをひとつ承りたいのでございます。
  32. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 大体御承知のような例年のペースでやっております。ただ、ことしはまた特に春闘がおくれたような点もありまして、統計局に調査表を持ち込むのがちょっとおくれましたが、しかし、幸い非常な御努力によって、大体例年どおりのペースで八月中ごろには勧告できるものという見通しでおります。これの集計がまとまってまいりますのも、これも例年どおりということで、八月早々に出てまいりますので、さてどういう数字が出るか、手に汗を握ってその帰趨を見守っておるというのが現状でございます。
  33. 大出俊

    大出委員 これは手当その他を含めまして、調査の重点というのは、ことしはどんなところでございましたか。
  34. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 御承知のように、手当その他大体去年総ざらい、従来の懸安を解決したような形になっておりますので、ことしの調査で調べましたおもな手当としては、扶養手当、これはことし調べております。それから特別給、これは去年報告書でうたいましたその関係の特別給のこまかい調査というようなことが主眼であると申し上げます。
  35. 大出俊

    大出委員 これは給与局長に承りたいのでございますが、ことしの春の賃上げが、各民間あるいは公労協等で行なわれていますが、このあたりをどういうふうに見ておられますか。つまりそれぞれの発表がありますが、どうも数字が多岐にわたりまして、どこをどうとらえたら正確なのか苦しむ点があるわけであります。私も一応の数字を当たってはありますけれども、民間なり公労協なりというところは、調査対象のとり方もございまして、つかみ方でうんと違ってまいりますが、そこらのところを人事院側でとらえて、例年人事院がものを言っている立場から見て、どの辺のところと押えておるわけですか。
  36. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 いままで発表されておりますいろいろな指標といたしましては、たとえば労働省の、これは二百社ぐらいでございますけれども、春闘のアップ率が、昨年は一八・三%でございましたのが本年は一六・六%という形になっておるといった資料、あるいは労働省が毎月勤労統計によりまして、規模三十人以上の事業所につきまして調査いたしておりますものが、昨年は二八・〇%でございましたのが、本年は一四・九%という形でマイナス一・一%といったようなことになっております。また仲裁裁定は、御承知のとおり昨年は約一二・五%でございましたが、今年は一一・六とか七とかいったような数字になっているわけでございますが、それぞれの立場による指標としては、それぞれ今年の状況を反映したものというふうに考えて承知しておりますけれども、国家公務員の在職者がいろいろな構成になっておりますので、私どもとしましては、民間の状況がどうなっておるかということで、その在職者の構成に合わせるような詳細な調査をいたしておりますので、公務員給与を改定するという私どもの立場・からいうと、その結果を待つというのが正確なものと考えております。
  37. 大出俊

    大出委員 いまの点は後ほどの議論にしたいと思うのでありますが、次に、当然こういうことになるんだろうと思うのでありますけれども、実施時間の問題でございます。ことしは四月一日とお書きになりますか。総裁いかがでございましょう。
  38. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 この問題は、前からここでときどきお尋ねのある問題でございますが、従来の態度をさらに進めつつ目下検討中であります。
  39. 大出俊

    大出委員 これは、八日の日に関係公務員皆さんに会ったときに、総裁が、しっかり運動をやってくれと言ったというのですけれども、ずいぶんしっかりやっているじゃないですか。だから私もますますしっかりやれと言いますので、ひとつ四月一日ということで前向きでお進めになるお気持ちはないでしょうか。
  40. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 給与引き上げの運動については、この四月問題ばかりでなしに、全面的にしっかりおやりなさい、そういうことを申し上げて大いに激励してきておるわけです。
  41. 大出俊

    大出委員 旧来の尾崎さんの答弁からいけば、院議の重要な課題となっているということ。院議の重要な課題というのは政治的判断が非常にむずかしい、そういう段階だという御発言なんですね。そうなりますと、これはたいへん政治的なことになる。ということになると、ここでもう少し理論的に攻めたいのですけれども、総裁になってから五月実施と言ってこられたのですが、五月実施と言った理由はどこにあったのですか。
  42. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは大出委員十分御承知のことでありますが、従来とにかく、なるべくすみやかにと言ってまいりましたのを、私の就任前の昭和三十五年に五月一日になった。これもいろいろ御議論の末そういうことで出発をして、そして今日までずっと来ておるという関係がありまして、私も就任早々、五月一日になった理由いかんというようなことは、当然先輩に聞いたことは聞いたのです。それは、従来これでちゃんと来ておる、それはそれで筋があるということでございますので、軽率にこれを変えることはもちろんできませんので、これを尊重してまいったということでございます。
  43. 大出俊

    大出委員 いま総裁は少し時間をかけてお答えになりましたが、中身は何もないのですね。私はもう少し理論的に攻めたいと申し上げたのです。だから、どういう理由で五月一日にしたかということを承った。できるだけすみやかに、こうなっていたけれども先輩が何となく五月一日にしたというだけでは答弁にならぬじゃないですか、総裁。ただ何となく五月一日にした。それならば理由はない。格差は四月から開いているんでしょう。違いますか。五月から開くのですか。
  44. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 四月をめどにして格差を調べておる、これはもう厳然たる事実でございます。
  45. 大出俊

    大出委員 そのほうが理由としては正しいのでしょう。五月一日の理由をおっしゃらぬのは理由がないということです。なければ、四月から調査をされて、そこに中心を置かれておるのですから、格差は四月から、こうなる。そうなれば、四月一日はあたりまえでしょう。だから、旧来何となくいろいろなことを浅井さんの時代言ってきたが、それはぐあい悪い。四月一日というのは昔ある。五月という意味のことを言ったときもある。あるいはいにしえには時期を書いてない勧告もあった。それらいろいろあって総裁が御判断になって、四月調査だから五月からという、そうたいした理由のないところで、しかしそういう目標を立てなければならない。完全実施しない政府なんですから。それで押し通してこられた。だからわれわれからすると、四月調査なんだから四月と書けばいいじゃないかと言ってみたようなものの、いや私になってから五月と言っているんです、こうなっている。はるかかなたの十月実施なんて言っているけれども、それを尊重して、せめて総裁の言っている五月までは持っていこうと思って、四月という理屈を言わぬできた。それでようやく五月になった。当然出てくるのは、理論的に四月でお調べになるのですから、四月というのは当然な話です。そうすると、当然ことしは四月一日という予測が成り立つのは、いままでの議論の経過からいったってあたりまえなんですね。それをここで、尾崎さんのことばじゃありませんけれども、院議の重要な課題となっているとこうおっしゃる。これは人事院の院議ですよ。つまりこれは政治的な段階であるということです。そうすると、これは総裁の政治的御判断をいただかぬことには、世上紛々として、あるいは騒かつ然として、これはどうも四月一日でなければならぬというその判断がようやくそこで総裁に出てくるというなら、これはまた別に考えなければいかぬ。しかし人事院立場というのは、そういうものじゃないと私は思うのですね。  やはりここまで来れば、さっきから申し上げているように、公務員というのは、民間のほうとの関係でみんな逃げてしまう。公務員試験を受けたって消えていくのが相当部分あるということになってくると、この際初任給だって、総裁苦労されておるけれども、決してほめられた金額じゃない。そうなると、理論的に成り立つのですから、このくらいのところの魅力は持たせなければ。だからやはり四月一日。十一カ月分です。一年十二カ月あるんですからね。そうでしょう。そういう意味では、四月一日となぜ踏み切らぬかというのです。踏み切らぬとおっしゃるなら、四月一日に踏み切らぬ理由を聞きたいのです。
  46. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 まだ熱心に検討を続けておる段階でございますからして、五月説絶対に正しく四月説絶対に間違っているとも申しませんし、四月説が絶対に正しくて五月説が間違っているとも申し上げかねるわけであります。しかし、これもたびたび申し上げておりますように、確かに一理はあるわいというところまでだいぶん気持ちは進みながら、そういうことで検討を続けておる。何とか五月が正しいという理屈を発見しようというような方向で努力はしておらない。公平に考えて筋の通った結論が出れば、それを断行するという気持ちでおるわけです。
  47. 大出俊

    大出委員 たいへんむずかしい政治的御発言でしてね。四月実施も一理はあるわいというところまで来たのですね。五月実施の理由を見つけようとは考えていない。したがって、さっき私質問したら理屈はおっしゃらない。つまり五月というのは、しいて言えば理屈はないのですよ。そうなると、一理あるわいじゃなくて四月実施が筋なんですよ。それを時の政治情勢その他いろいろあって、総裁御就任になってぴしゃりと五月をお出しになった。これは理屈はともかくとして、公務員の側からすれば、相当前向きに五月とおっしゃったということなんですよ。これは総裁の執念かもしれませんが、おやりになっている間に五月完全実施になった。私自身なんかも長年やりとりしておりますから、よかったなという気持ちが相当にある。これは全くよかったなの上にまた四月というのは、長年の経緯がありますだけに言いにくい面がなくもないと思う。しかし、公務員皆さんのほうからすれば、いま総裁のおっしゃるように、四月一日に一理だけでなく二理も三理もあるのです、理屈は。そこで私はやはり、総裁いま非常に微妙な発言をされましたが、言い直せば、五月、四月でいろいろ検討してきた、四月一日に一理あるわいというところにようやく来た、だから五月実施の理由をさがそうということは全く考えていない。そうすると、五月というのは政治的に五月と言ったということになる。予算官庁その他の関係もあったということになる。だからそうなると、公務員給与をそういう意味で政治的に左右されちゃ困る、こう申し上げざるを得ない。そこで、そこまで総裁お話しになりましたから、私は答弁をいただいている張本人ですから、四月一日という感触でいまお考えになっているのだというふうに受け取ります。  そこで、山中総務長官きょうおいでにならないので困るのです。ここにおいでになると、まことにいいぐあいなんですけれども。四月一日実施と総裁佐藤さんが勧告に書いてしまったら、山中さん、一体あなたはどうするか。まだ内閣改造のちょっと前だったから、あなた残れるかどうかわからぬというように話が進んでいったのです。そうしたら、これはたいへんな蛮勇が要るよ、私がもし閣内に残っておるとすれば、福ちゃんを泣かせるのはたいへんだよというのです。これは雑談だから非公式な話だけれども、福ちゃんというのはだれかと思ったら、福田大蔵大臣なんです。その福ちゃんを泣かせるのはたいへんだよというわけです。ところが、その福ちゃんなる福田大蔵大臣も、ちょっと外のほうに横すべりしちゃった。今度は水さんを泣かせるのはたいへんだということになるのだと思うのでありますが、しかし、そこまで言っておられるのですね。  そこでどうですか、ここで一つ理由があるのですけれども。保利官房長官、この方もおかわりになりましたが、これは何というふうにお答えになっているかといいますと、前回は、四十五年度からはいかなる困難があっても完全実施に努力します。いかなる困難があってもと言っておられる、官房長官は。これは人事院総裁が踏み切らぬでいる非常に困難な一つなんですよ。四月というふうに踏み切っていただければ困難は解消する。そうすると山中総務長官は、蛮勇をふるうと、こういうふうに申さざるを得なくなる。したがってポイントは、この際は人事院総裁が勧告にあたって、四月実施と勧告にお書きになるかならぬかで、四月実施が実現するかしないかの分かれ道になる、こう考えているのですが、総裁、そうお思いになりませんか。
  48. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 完全実施ということがおそらく今後ずっと確立されていくだろうと私は信じて疑いません。その前提から考えますと、人事院の勧告の実施期日というものも、書いたとおりにこれを実現するのがあたりまえであり、またそうであろうと私は考えております。ただ、先ほどおことばの最後のほうに、何か四月一日に踏み切るような気持ちを言ったというようなことをおっしゃいましたけれども、これは私がそのまま黙っておりますと、きょうの夕刊には、佐藤総裁は四月実施と話したと必ず出ますから、これは先ほども申し上げましたように、一理あるという態勢で熱心に検討を続けておるということで御了承願いたいと思います。
  49. 大出俊

    大出委員 いや、新聞の皆さんは、総裁は四月一日実施に一理あるという態勢で検討している、五月の理由づけはさがさない、こう書いていただけばいいのですよ。そうすれば世の中の公務員は、ああ四月一日だ、こうなっちゃうのですけれども、それでいいのです。それをへたな言い回しをするとよけいいけないのですよ。それは言いっぱなしにしておけばいいのですよ。だから私は、そのことを追及しない。いま記者諸君にしたって、総裁としては五月の理由はさがさない、四月実施に一理あると言っておる——片方はさがさないのだから、そうでしょう。そう書いていただければ、総裁がそう言った、これは大きなニュースなんです。世の中の公務員が喜んでしまって、やあ四月一日だ、一カ月多くいただける、女房に、おい一カ月よけい出るぞ、こういうことになります。それが人事院総裁の政治性でしょう。そのくらい考えておかなければ給与は上がりませんよ。それはいいでしょう。だから総裁は、私からすれば、四月一日実施。時間がまだ八月十三日にならぬから、したがって、いまその程度にものを言った、こう受け取っておきます。  そこで勧告はいつ出ますか。八月の中ごろとおっしゃいましたから、十三日ごろですか。何曜日か知りませんが……。
  50. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これももう去年の勧告の実情を御承知の上でのお尋ねであります。半ばごろと申せば、その前後だなということは当然ぴんとこられると思うのですが、御了承をいただきたいと思います。
  51. 大出俊

    大出委員 これも予定を立てる上で、私ども非常に——けさも理事会で、担当委員会ですから、来月のいつ委員会を開こうかという委員長からの御発言があって、あした理事会で相談をしよう。うっかり、じゃ八月中旬にしようかといっても、勧告がその日に出ちゃったというふうにぶつかっちゃうでしょう。あなたは先ほど中旬とおっしゃった。十日は中旬に入らないかもしれない。そうなると十三日ごろ。十三日に出るのなら十四、五日。また、十五日ということでかち合っても、委員会が先になっても困りますから、だから昨年度ぐらいのところをお考えだ、これはそれでいいでしょう。そして総裁の御懸念の点は、おそらく四月云々の点は、四月に一理ある、ようやくそこへ来た、五月の理由は見つけない、こう総裁の言ったところでおしまいにしていただけば、新聞関係の方は御心配はない。それで八月十三日前後である、いいですな。
  52. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 八月十五日の前後になると思います。勧告の暁には、すみやかに委員会をお開きいただいて、大いにまた御激励をいただきたいと思っておりますので、その節はよろしくお願いいたします。五月説、四月説は、これは両方平等に考えておるということをさらに繰り返して申し上げます。
  53. 大出俊

    大出委員 総裁、ちょっと一言多いですな、いまのは。(笑声)平等といったって、あなたは五月の理由は見つけないとおっしゃったでしょう。理由はないのです。四月は一理ある。こういうことでしょう。そこへ来た。そこまでにしておきなさいよ。平等もへちまもないですよ。そこのところはどうですか。一言多く言われると、私どものほうもどうしても一言多く言いたくなる。
  54. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 違ったことばで言えば、四月説は間違っておる、それから五月説は正しいというような片寄った態度で検討に臨んではおりません、裏から言えば。
  55. 大出俊

    大出委員 それでは四月説が正しいということですな。そういうことになります。わかりました。それでけっこうです。  そこで、次に伺いたいのは一時金の問題なんですけれども、人事院は妙なことをいままでやられる。私は、世の中は四捨五入というか、端数が出たときにはそうするのが通例だと思っておるのですが、社会一般通念を度外視されて、〇・〇八九なんというのまで切っちゃうというのは、これはどこに理由があるのですか。
  56. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これはわれわれとしては切り捨てるということは非常につらいことでありますけれども、筋の問題としては、どうも切り捨てざるを得ないという結論のもとに今日までずっと来ております。これは御了察を願えると思いますが、特別給の問題、われわれが調べております相手の民間の特別給というのは、そのときそのときの業績に大きく左右されるものである。非常に業績が上がりていると上がるという要素が主となっておるものだと思います。したがいまして、われわれとしては、ことばは非常に悪いことばでありますけれども、これを適用するというか、便乗すると申しますか、そういう形をとってきておるということでございます。片やわがほうは、これは一応一般職の給与に関する法律という固定的な一つ体制の中にそれらを振り込むという形になります。もし民間のほうが非常に下がればこっちもそのままほおかぶりしておるというわけにはいきませんけれども、一応固定的な制度として取り入れるということになりますから、民間の業績をめどにして、それから数字をさらに水増ししてそれに乗るというような筋のものではあるまい、きわめて簡単に言えば、そういう考え方であるわけであります。従来それでやってまいりましたし、これは一理どころじゃない、二理も三理も四理もあるというふうに考えております。
  57. 大出俊

    大出委員 それは総裁、間違いですよ。尾崎さんが数字はよく御存じですけれども、いまは国家公務員の平均ベース、これは勧告の面で幾ら出るかわかりませんが、私どもが見る限りは、格差ベースは七万三千円ぐらいじゃないかと思うのです。これは寒冷地給なんかがありますから、そんなものを入れれば。だから、一時金の基礎ベースというのは大体七万円、大体そのくらいじゃないかという気がする。だから、その辺で、〇・〇九とか〇・〇八九とか、こういう数字というのはどのくらいになるかというと、公務員の賃金に直せば六千円以上になるのですよ。そうでしょう。六千円以上にもなるものを——総裁、それを冷酷むざんと言うのですよ。あなたは冷酷むざんなことはしないと年じゅう口癖でおっしゃる。おっしゃるけれども、いま民間の例をおとりになって、そこまでのことはせぬでもいいだろうというが、六千円切られてたまりますか。切りっぱなしなんだから、これは。今後景気がどうなるか、それはわからぬけれども、一つ間違うと切られっぱなしで、ことし期末手当の増額がきまる——ことしは出ると思います。民間の状況を見ていて、〇・一だけは間違いなく出る。〇・一五以上の端数が出たときに、また切られたら、これは切られっばなしでおしまいなんですよ。そうでしょう。四月一日実施もさることながら、六千円からの期末手当の端数切り捨てということは、四月一日実施とからんでものを申し上げれば、その意味ではむしろ大きい。もちろん皆さんは額の問題はまだ言っておりませんけれども、一二・六七お出しになるとすれば、これも八千二十二円という数字になっておりますからあれでございますけれども、六千円からの切り捨てを冷酷むざんにおやりになって、そこまでやる必要はなかろうなどと言っておられたのでは、それにまた一理も二理も三理もあったんじゃ、とんでもない話ですよ。それは間違いですよ。総裁、どうですか。
  58. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 大筋は総裁からお答え申し上げたとおりでございますが、具体的に、やはり民間の景況に応じまして、たとえば昭和四十年には四・三三月分というようなことでございましたけれども、次の年四十一年には四・三〇月分というふうにしてマイナスが出るというような、月分としましては、どうしてもその景況によりましてやはり若干のプラスマイナスが出るという面もございますので、民間のボーナスはかなり固定的な面もございますけれども、そういう端数関係につきましては、やはり景況に左右されるというような関係もございますが、公務員の場合には、安定的といいますか、制度的に保障するという形になりますので、端数は取り上げないという形にしておるわけでございます。
  59. 大出俊

    大出委員 給与局長、それを全くの形式と言うのですよ。その形式を重んじて、中身のほうは六千円ずつ切られた日には、〇・〇九三ぐらいになっているやつをすっぱり切っていた。〇・〇八九なんというのを切っちゃってみたり、ことしまた〇・〇五上回った場合に切っちゃったら、それを全部つなぎ合わしてごらんなさい。それは個々の公務員皆さんにとってごらんなさい、たまったものじゃない。それで何を言うかというと、制度的にまるい数字にならなければ、一にならなければ一でない、そういうことを考えていたんじゃ——標準生計費みたいなことについてものを言えば、ずいぶんいいかげんなことをやっておられて、それで、こんなときになってそう形式ばってものを言う。それは尾崎さん筋が通らぬですよ。総裁、その端数の問題はひとつ考えてくださいよ。この景気の今日的状態をながめたときに、私は非常に心配するのですよ。期末手当というものはこの際ひとつはっきりしておかぬとまずいという気がする。できればいままで切られっばなしのものは取り返したい気がする。だから、何年か切ってきたから、この際は少し足らぬけれども一にすると言ったっていいじゃないですか。理由は成り立つじゃないですか。これは非常に大きな問題ですよ。総裁、これは理由のつけようで、一理も二理も三理も理屈はつくのじゃないですか。どうですか。
  60. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 去年切り捨てた分がお預けになっておりますから、ことし平でまた対応させると、それがまたものを言うこともあることは申すまでもないことであります。いまのお話ですと、小数点以下のずっと下までそういうことをやれというお話ですか。
  61. 大出俊

    大出委員 そういうことじゃない。〇・一八九になった場合、〇・一八九なら大体〇・一九でしょう。そういうのを切ってきた。だからこの際はという言い方はできるだろうと言っているので、小数点〇〇幾つまで端数があったから全部それを集計してと、そんなことを言っているわけじゃないですよ。それは総裁、さっきの話と逆になるじゃないですか。それは給与だってその意味じゃ常識でしょう。
  62. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 小数点以下何位までも取り入れろとおっしゃるのであれば、一理なきにしもあらずという気持ちで伺っておったわけであります。そうではないことになりますと、さっきの筋論とのかみ合わせの問題が依然として残るということを申し上げたいと思います。
  63. 大出俊

    大出委員 そうでないことになると、筋論としてのかみ合わせで防ぐ以外に防ぎ手がないということですよ、あなた方のほうからすれば。六千円からの金なんですから、公務員皆さんにとってみれば。わかった人から見れば、〇・一八九になったのに〇・一しかくれない、六千円ばかりぶった切られた、そんなばかな話はないじゃないかというのが公務員皆さんの頭に入っているというんですよ。組合の役員の方々は職場へ行って説明するのだから、人事院総裁というやつはひどいやろうだ、佐藤総裁は幾つだ、百までも二百までも生きるわけじゃないだろう、〇・一八九だというのを〇・〇八九切っちゃって、諸君のベースに直してごらんなさい、六千円からになる、こんなものを許しておけるか、そうだ、そういうことになるのです。だから、それが積み重なってきたから、人事院は例年切ってきたのだから、この際ひとつその辺のところはこう見たということがあってもおかしくはないだろう、こう言っているわけです。それはわかるでしょう。その筋は一理あるでしょう。
  64. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 おっしゃる御趣旨はもちろん十分わかっております。貴重なおことばとして承っておきたいと思います。
  65. 大出俊

    大出委員 総裁は一番最後に、貴重なおことばとして承っておきますと言うが、例年見ていると、あなたのほうは、貴重なおことばとして承ったやつはやらない。やるやつは案外一生懸命防いでいて、あっさり貴重ななんということは言わないのだけれども、これはそういう意味じゃなしに、ことしの職場の状況を見ると、そういう空気が非常に強いんですよ。私は職場の実際の皆さんとよく話しているものですから申し上げるので、またことし端数が出たら切るのか、そこのところに大きな問題がある。あと引き続きやるかどうかという問題もありますので、この点はぜひひとつそういう意味で御検討いただきたいと思います。  次に、先ほど総裁は、扶養手当の話をされまして、この調査一つの重点におあげになっているのでありますが、この点は昨年以前の例もございまして、民間の扶養手当の伸びから見て、私は、公務員の場合にもう少し上げるべきである、こう思っておったのです。最近新聞が書いている中に、児童手当云々なんということを書いていますが、私はあえてそれとは関係がない、こういうふうに考えているのですけれども、そういう意味で扶養手当については、今日までの傾向としてどういうふうにお受け取りでございますか。
  66. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 扶養手当の調査は、御承知のように一年、二年飛ばしながら調査をしております。ちょうどことしは調査をいたしましたわけですから、毎年調査とは違って、やはり相当な数字が出るのじゃないか、その結果を心待ちにしておるというのが正直なところであろうと思います。  児童手当との関係はなかなかむずかしい問題があります。いま検討を続けておる最中でございます。何か審議会での意見の中には、重複給与はやめろというような趣旨の意見もあります。そういう点も無視はできないということも頭に置きながら研究中でございます。
  67. 大出俊

    大出委員 併給しないという問題等も確かにございますから、そうなればそれなりに割り切れるわけでございまして、そうするとやはりこの際、扶養手当について何とかこれは考えなければならぬということになるわけでありますが、配偶者の千七百円、これを二千七百円ぐらいに上げても、民間の動向から見ると、これはおかしいとは言われないと私は思うのですが、そこのところ、今日までの傾向から見てどうお考えになりますか。
  68. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 従来の傾向といたしましては、毎年若干ずつ上がってきておるという感じはございます。昨年の民間における給与改定の中身などでも、いわゆる扶養手当の増額をしているところも散見されるわけでございますけれども、こういう関係が今度どういう形で出てくるかということで、いま待っているところでございます。
  69. 大出俊

    大出委員 ここで一つ問題は、つまり寡婦の方の第一子の問題がございますね。扶養手当をいじるなら、当然ここのところも考えなければならぬ筋合いにバランス上なると思うのです。だからたとえば配偶者を二千五百円なり二千七百円なりにするとすれば、第一子の方々については、寡婦の場合には二千円にするとか、やはりそういうことがなければならぬと私は思っているのですが、そこらまで調べておりますか、民間関係は。
  70. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 いわゆる母子家庭におきます第一子に対する手当につきましても、今回民間給与調査で調べておりますが、その結果をよく見たいというふうに思っております。
  71. 大出俊

    大出委員 かりに配偶者二千五百円にしてみても、原資の面からいけば四百円ぐらいでしょう。ですから、これはやはりことしは懸案でもございますから、飛び飛びやっておられる調査ですけれども、たまたま重点にされておられるようでございますから、この点はひとつ、ここで深い論議はしませんけれども、十分御検討をいただきたいと思っているわけでございます。  それからお医者さんの初任給調整手当、ここらあたりは沖繩もございます。どういうふうに考えておりますか。
  72. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 医者の初任給調整手当につきましては、昨年非常に格差があったということで、毎年のことでございますけれども、初任給調整手当をもちまして相当な穴埋めをするという方向でやってまいっております。本年も、去年相当手厚い引き上げをいたしましたので、その結果が格差の上にどういうふうに反映されるかということで、その点を心待ちにしておるわけでございますけれども、その結果を見まして、やはりおそらくはそういう格差がいずれにせよ相当あるだろうという感じはいたしますので、初任給調整手当につきましての改善というものもやはり検討しなければならないのではないかという気持ちで考えております。  一方におきまして、今後、沖繩公務員が復帰後国家公務員に入ってくるという関係の中にお医者さんがいるわけでございますけれども、沖繩の医者の給与というのは、いわば住民に対する医者の比率というのが本土の三分の一というような状況のようでございまして、いわゆる需給関係が非常に逼迫しておる。それで給与も非常に高いといったような状況のようでございますので、復帰の場合にそれをどういうふうな関係関係づけるかという点は、今後向こうのほうの給与ももう少しよく調べまして見ていきたいというふうに思います。
  73. 大出俊

    大出委員 時間がございませんから、あと二点、ポイントについて承りたいのでありますが、まあ、いまの医者の件は、あるいは一万円ぐらいに上げるつもりがおありなのかもしれませんけれども、それはまたこの次の場面でひとつ承っていきたいと思います。問題は、この引き上げ幅、引き上げ額の問題でございますが、例年の答弁からいきまして、総理府に持ち込んでいるのだから、結果が出なければということになると思うのでありますが、別な面から一つ承りたいのですけれども、一つは標準生計費ですね。この標準生計費というのは、今度の傾向としてはどのくらい上がってくるのですか。
  74. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 標準生計費の関係は、一つには、一般における生計費の上昇という面が強く反映をするわけでございます。それから他面といたしましては、一人世帯、二人世帯、三人世帯という、世帯人員別のいわば増加係数といいますか、そういう関係がどうなっていくかという面も影響するわけでございますけれども、後者のほうの関係は現在研究を詰めているところでございますが、前者の関係は、一般的の統計といたしましては総理府の統計がございますけれども、いわゆる平均と平均がどの程度上がっておるかという点の調査がございますが、それが東京では大体七%くらいでございますのに、全国平均では一一、二%上がっているというような状況でございますので、そういう関係が、それぞれ東京の場合も全国の場合も反映してくるものと予想しております。
  75. 大出俊

    大出委員 他の質問の方がございますので、これは深く突っ込んでいるわけにはいきませんが、標準生計費の算出にあたって、旧来、食料費をまず理論生計費に求めておられますね。そうしてその他の費目は、総理府の家計調査による実態生計費から並み数、数値をお求めになるという方式ですね。並み数というのがいいのか。中位数というものの考え方だってあるわけでありますから、七割程度に見るのと八割くらいに見るのと違いが出てくるわけでありますから、私は納得できない面が旧来からたくさんあったのでありますけれども、いまそれを突っ込んでいる時間がありませんので、ここで申し上げておきたいのでありますが、旧来、三十五歳、核家族といいますか、四人世帯というところをとらえて、いま一一、二%のようなことを言いましたけれども、全体的に見て一三%近くなるのじゃないか、動きは。こう見るんですね。その辺で数字的にあげていただくと、どういうふうに動いていきますか。
  76. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 いわゆる平均と、それから並み数の関係指摘されておりますけれども、統計局の普通の調査の結果といたしましては、どんな高い生計費の人も、低い生計費の人も、すべておしなべて平均という形で出しておるわけでございます。かつ二人世帯も五人世帯もすべておしなべて一世帯という形で出しておりまして、したがって、平均といたしましては、家族人員が四・〇何人とかいう形で幾らというふうに出ておるわけです。したがいまして、その単純な平均としましては、一一、二%上がっているという面もありますけれども、さらに世帯人員の数も若干動いておりますので、正確な関係はいまいろいろ詰めておるところでございます。  いま並み数のところについて若干問題提起をされておりますけれども、並み数という関係は普通のところという意味合いでございまして、たとえば百人の生徒がおりました場合にその生徒の身長がみんな一メートル五十センチであった、それが普通である、ところがその中にかりに二メートルの人が一人か二人おりますと、平均というのは一メートル五十五センチという感じになるわけでございます。そういう一メートル五十五センチというのはやはり普通の状態ではないのでございまして、一メートル五十センチというのが大多数の人ならば、それが普通の状態だという形で、われわれとしてはそういう状態のものを、普通のものをとらえるというのが標準生計費の並み数というところをとっている理由でございます。
  77. 大出俊

    大出委員 これは、その問題の論議をしようというのではないのですが、昨年のおたくのほうのはじき方からすると、全国平均で六万一千百円ですか、核家族、三十五歳、つまり四人世帯ですね。だから、それがことし一二、三%動くという勘定になっていくわけでしょう、さっきのお話からいくと。そういう計算になりますね。そうなりますと、調整手当その他の関係もあります。だから、そこらを計算していって六万一千百円プラス七千九百四十三円で六万九千四十三円です。だから、そうなると、六等級の九号をとりますと、数字からすると五万九千四百円でしょう。そうするとこれはこの間にだいぶ落ち込みがある。だから生計費のほうの側からいってみて、これは、実はここで申し上げたいのは、労働省の賃金センサスがありますが、このセンサスなんかにいうところのここにある数字は、秋田県と山形県だとか神奈川県だとかいろいろありますが、ここらの数字を拾っていきますと、三十五歳、四人世帯で、全産業でいきまして、いわゆるモデル賃金と言ったらいいですか、八万一千七百円という数字がここにある。そこらのところとあわせて考えてみると、まだだいぶ遠い、こういう感じがする。そういう点等から考えると、行(一)の六の九をとりますと五万九千四百円ですから、調整手当のはね返りの千八百円、扶養手当の二千七百円を入れて六万三千九百円ですから、そこらのことから考えると、感じとして相当の開きがあるという気がする。こまかく計算しておりませんけれども。だからそうすると、相当な人事院の御努力をいただかぬと、生計実態からいってまずいのではないかという気がする。それは皆さんのほうは、調査諸表を総理府のほうに持っていって、こういう結果が出るんだということで、人事院独自の方法だと言って済むのだけれども、われわれのほうにはいつもなかなかお出しにならぬのだから、別の角度から見ざるを得ない。そういうことになると、ことしの賃金の引き上げ幅というものをどうとらえるかということについて、これは非常に大事なことになってくるということでいま問題提起をしているのですが、そこらを人事院の側は一体どうごらんになるかということなんです。
  78. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 昨年の場合には、三人世帯の標準生計費が、全国の場合でございますけれども、五万三千十円でございました。それは大体六等級七号俸のいわゆる月給に相応しておるという形でございます。本年の場合にそれがどの程度上がるかという点は、いま最終的に詰めておるところでございまして、先ほど御指摘になりましたような、一〇%をこえるような数字になろうというような感じがいたしますけれども、それに対応して、それではいわゆる月給のほうがどうなるかという点も、また格差との見合いでございますので、また格差の上の配分の問題でもございますということで、そういう標準生計費との見合いにつきましても、十分例年のように注意してまいりたいというふうに考えております。
  79. 大出俊

    大出委員 大体この辺で結論を出したいのでありますが、もう一つ初任給ですね。この初任給の決定の方法は、いろいろ旧来の方式がございますけれども、これも深く申し上げている時間がありませんから、ここでひとつ幾つかの数字をあげておきたいと思うのでありますが、賃金センサスに基づく労働省の数字がある。これを見ますと、このセンサスは四十五年の七月なんですね。ですから、以後だいぶ上がっていると思うのですけれども、全産業でいきまして三万一千七百円。もちろんこれは高校卒です。こういう数字が出ている。それから東京商工会議所の調査がここにございますが、これが、産業平均でいきまして、新高卒で、男女差が多少あります。ウエートの相違がありますが、男で三万三千七百円、こういう数字がここに出ております。これを秋田、山形などをとりましても——これは神奈川なんというようなものは特に高くて二二万八千七百円という数字が実はここに出ている。これは労働省のセンサスです。東京の場合が三万五千六百円。秋田あたりに落ちて見ましても、高校卒で二万九千円がここに出ているのですね。こうなってまいりますと、民間の、あるいは一般の初任給の動向というものの見当はつく。四十五年ですから、人不足を反映いたしましてさらに上がっているわけですからね。そうすると、人事院の旧来いっている初任給というのは、どうも初任給のていをなさないのではないかという気がする。どうすれば一体これは民間の初任給に追いつくのかということですね。ここのところを慎重に考えないと、これは総裁がいつも言う、公務員になり手がなくなるということにつながるのです、こんなに大きく開いているわけですから。だから、そこのところを一体どうお考えなのかという点、これだけははっきりしておいていただきたい。どういうふうにするつもりですか。
  80. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 私どもも、初任給につきましては、やはり国家公務員の採用という点が任務になりますので、非常に注意してきておるわけでございますが、いわゆる官民格差の関係調査とは別に、初任給調査ということをやっておりまして、この初任給調査という点では、普通の民間の場合には、人をとる場合の四月に一般的には決定して、いわゆる在来の人々の給与アップをする前に、新しい人をとるための初任給決定をやっているところが普通でございます。さらにベースアップをした場合に、若干そのとった場合の初任給に五百円とか幾らとかさらに積み上げるという場合もございますけれども、いずれにせよ、新しいその年のための初任給をつくって、そして人をとるというのが一般の状況でございまして、そういう関係の初任給を、私どもとしましてはとってきておるわけでございます。したがって四月の状態といたしましては、その初任給調査としましては、非常に注意をして、しかもアップしたものをとってきておるということでございまして、高い、低い、いろいろございますけれども、そのちょうど中間的なところ、まん中のところ、平均のところを出しまして、そこで押えるということを例年やっておるわけでございます。今年もそういう調査をしておりますので、その結果を現在待っておるということでございます。
  81. 大出俊

    大出委員 昨年は新高卒で八の二、二万七千三百円でしたかね。大卒で三万四千五百円でしょう。公務員の場合は男女ウエートでいって、男八六、女一四ですね。民間の場合は男三六、女六四ですね。ここらを考えてもとうてい追いつかない。ここに去年の上場七百五十八社、非上場二百三十九社の四十五年の平均確定初任給がありますけれども、高卒男子が三万一千五百三十二円で、一八・四%上がっておる。女子でも三万百七十二円ですから、一七・七%上がっておる。だから、ここらあたりは、もう少し人事院は何かお考えはないのか。例年どおりやっておりますだけで済むのかと申し上げたい。それを聞いておるわけです。昨年どおりやっておれば、また昨年どおり少なく出てくるに違いない。民間との初任給の開きというものはどんどん出てくるに違いない。そのままほうっておいていいのかということを言っているのです。もう時間がありませんから長い答弁要りませんけれども、そこらのところをどうお考えかということをやはりはっきりしませんと、土台ですから。私ども、人事院考え方、そこのところどうもわからないのですけれども、開く一方になってはいないかと言っておるわけです。
  82. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 初任給につきましては、私どもも非常に注意をしてやっておるわけでございますけれども、先ほど申しましたように、民間において現実に四月にきめておる初任給を網羅的にとってきておるという状況でございますので、その調査の結果に間違いはないというふうには思っております。民間調査の結果はいろいろな形で出ますけれども、初任給といたしましても、やはり全国的には非常な格差がございまして、大都会の場合には相当高うございますし、地方の場合には二割も低いという面もございます。で、大体民間の従業員のウエートは大都会にかかってきておりますから、そういう点では、平均しますと大都会の金額がどうしても出てくるという面はございますけれども、国家公務員の場合には地方に非常に分散しておりますので、やはり地域給を加味するような形で初任給を設定するという以外に方法ないと思います。そういう点で、調査は間違っていないと思いますけれども、なおこの関係は十分注意してやりたいというようには思っております。
  83. 大出俊

    大出委員 ここで大蔵省、自治省の方にちょっと承りたいのですが、公務員給与というものは、ことしは予算的にはどのくらい見ておるのですか。
  84. 平井廸郎

    ○平井説明員 一般会計におきまして、五月実施を前提にいたしました五%分といたしまして、七百六十八億円を予定いたしております。
  85. 大出俊

    大出委員 それは五%ということですな。
  86. 平井廸郎

    ○平井説明員 はい。
  87. 大出俊

    大出委員 五%で四月ということになりますと、予算的に足らない分は幾らになりますか。四月が間違っているとは総裁おっしゃらないのだから。
  88. 平井廸郎

    ○平井説明員 ちょっと全体のはね返り関係がよくわかっておりませんし、また現在までのところ、四月実施という点について結論を得たというように伺っておりませんので、私どもとしてもまだ作業いたしておりませんが、大ざっぱに見まして、その一割くらいであろうかという感じはいたしております。
  89. 大出俊

    大出委員 総裁は、四月のほうに一理あって、五月の理由は見つけないというので、四月が間違っているとは決して申し上げないというのだから、これはもうぼつぼつ四月で準備していただかなければなりませんのですけれどもね。ところで昨年は、一二・六七のときには、最終的に予算措置はどうなりましたか。
  90. 平井廸郎

    ○平井説明員 一般会計について申し上げますと、給与改定所要額千八百九十一億円に対しまして、五%計上額が六百四十四億円、その差額につきましては、不用額の充当は百八十二億円、補正計上額が千六十五億円ということになっています。
  91. 大出俊

    大出委員 ことしはやはり、不用額あるいは節約財源その他できることは全部やって、結果的に足りなければ補正をする、こういうことでいいわけですね。
  92. 平井廸郎

    ○平井説明員 人事院勧告がまだ出されておりませんので、全体の金額が明らかになりませんので、財源の見通しについては申し上げることはむずかしいかと思いますが、一応先ほど申し上げましたように、まず原則的には五%を充当し、さらにその不足分については、不用額なりあるいは予備費の充当という問題も考えられます。その上で財源的に不足するかどうか、これはまだ現在の段階では見通しがつきませんので、それ以上のことはいまの段階ではお答えいたしかねます。
  93. 大出俊

    大出委員 何で五%を組むのですか。
  94. 平井廸郎

    ○平井説明員 五%の根拠いかんということでございますが、これまた先ほどの五月実施論とやや似た議論もあろうかと思いますけれども、一応人事院勧告というのは、たてまえといたしまして、俸給表に定める給与を百分の五以上増減する必要が生じた場合に出されるというようなこともございます。最近における物価上昇等を勘案いたし、あるいは生計費の上昇等の傾向を見ておりますと、例年勧告が行なわれるのも通例であるということもいわれますので、最低限度五%程度の計上は必要であろうという感覚で処理いたしておるものと考えております。
  95. 大出俊

    大出委員 予備費に給与分を想定して幾ら組んでおるのですか。
  96. 平井廸郎

    ○平井説明員 給与部分想定の予備費という考え方は持っておりませんので、予備費全体といたしましては千四百億円でございます。
  97. 大出俊

    大出委員 あまり非現実的なことばかり言っていらっしゃるから、少しは言いたくなるのですよ。実は時間があればもう少しこまかく申し上げようと思って数字のことを調べてみたのだけれども、時間がないから言わないのですがね。これは私どもの党の堀さんが、給与予算はどうなっているのだといって皆さんに質問をしている。私も聞いていたのだけれども、あまりばかげているから少しものを言いたくなってきておるのですけれども。それは、法律上五%とあったにしても、それは知らない人はないのだから、ともかくだれが考えても、まさか五%でおさまると思っているわけではない。実は、予算のことはいいといえばそれまでなんですけれども、やはりそこまでちょっとものを言わないと、どう見たってそろいませんから、だからものを申し上げるのですが、ともかく総裁、どのくらいの上げ幅かということについて、標準生計費のほうからものを見る見方もありますし、いろいろなことがありますが、ともかく——そういえば、この間毎日新聞に一一・五%というのがありましたですな。あれは総裁どうお考えなんですか。これはクラブ勧告ですがね。
  98. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これから八月中旬を控えまして、ますますこういうような観測記事は出ると思います。これは例年のことで、これはもう全然なくてもさびしいようなことで、たいへんけっこうなことではありますけれども、しかし、そのために関係皆さま方に一喜一憂していただくというのも、これまたある苦心味においては、なかなかいろいろな面を含んでおると思います。要するにこれは、クラブの衆知を集めての、あるいはクラブの各社の独自の推測に基づく数字であるというふうに、これはかねがね申し上げてきておりますし、今後も私どもが、こうなろうというふうなことを申し上げるはずがありません。われわれのほうは民間の集計を厳格に守っております。それができますまでは申し上げられるはずもないので、そういうものだというふうに御了解を願っておけばよろしいかと思います。
  99. 大出俊

    大出委員 これでおしまいですけれども、公労協の一四・九ですか、さっき尾崎さんおっしゃいましたね。これは金額にすると七百円足らず上がっているわけですね。公務員の場合に昨年一二・六七で八千二十二円ですね。どうも出た結果からの逆論ですけれども、人事院は公労協の側をにらんでおる感じが、旧来の経緯の中でちょいちょいする。だから昨年もそういうふうに論議をしましたが、公労協並みを考えていま計算してみると、一一・九%ぐらいないと、これは公労協並みにならない、七百円というところをめどにすると。そうなると、このクラブ勧告にしては、人事院がもう少し高く出そうと思っているのに、ずいぶん内輪に、しかも早くクラブ勧告をお出しになったものだという気が私はしているわけです。  そこで、これは例年のことでございますけれども、公労協の出している裁定、これを下回るということであっては、片や交渉権があるのですから、まことに困るというふうに私どもは考えている。昨年もそういう言い方を私はしているわけです。そこで、そうなると、公労協見合いでいくと、これはやはり一二%ぐらいのことに、どうしてもそれをこえていくぐらいのことにはならないと、交渉権がない、そういう公務員皆さんですから、たいへんこれは困ったことになる。その辺の勘どころぐらいのところは、昨年もちょっと総裁触れましたが、ものを言っていただいていいじゃないか。いい線いきます——これは去年ですよ。いまの実情に合わせていい線いく、こういうことでなければ困ると思うのです。これはいかがですか。
  100. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 去年はずいぶん大きな声で申し上げたこと、思い出しますけれども、ことしはもう慎重に、あまり軽はずみなことは申し上げません。  公労協との関係でたびたび御指摘ございますけれども、第一にカバーする範囲が違いますし、かたがた公労委でおやりになっておりますのは、私どものやっておりますような精密な調査ではないわけです。私どもはあくまでも、民間調査ということを周到に行なった上での結論でございます。いわばわれわれの調査の結果から、公労委の仲裁裁定はどうだったか、案外間違っておらぬわいとか、あるいは少しずれたなとか、これはむしろこっちのほうが尺度になる。われわれのあれからはずれておりませんから、さすがに公労委さんまあいいところへいっているなと、われわれの調査が逆にその評価の基準になるという心がまえで、たいへん口幅ったいことを申し上げて恐縮でございますけれども、やる気持ちでおるわけであります。またそれが正しいと思います。
  101. 大出俊

    大出委員 公労協さんいいところいっているなということになりますと、いいところをいっているのを下回っちゃ困るわけでして、そこで、公労協のほうはわれわれのように精密でないとおっしゃるけれども、精密でないということになると政治的だということで、春闘の一般の情勢をながめて、多少あるいは相当に政治的にものを考えて出した。ところが皆さんのほうは、精密にとおっしゃって精密にやってみたら、精密でないほうを下回っちゃったということになると、これは一体公務員はどうなるんだということになる。だからそこのところを私はとらえて、公労協を下回るようなことがあっては困るという表現にしている。その意味では、いい線をいくとおっしゃっていただければ、この問題は結着なんですよ。いかがですか。
  102. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 いまの筋合いから申しますと、そういう表現はわれわれとしてはできないわけです。われわれは多額のお金を使って、たいへんな労力を使って民間調査をやっておる。これは何のためにやっているんだというお話にもつながります。公労協の裁定が基準になるならば、やめてしまえばいいじゃないかということになります。われわれとしては、われわれの調査は権威を持っておるものと考えますから、公労委の仲裁裁定とのつながりは、これは必然的なつながりは全然ないというふうに考えています。
  103. 大出俊

    大出委員 ことしも去年もその相関関係は変わらなかったわけでありまして、公労協を下回るようなことがあっては困ると言ったら、ちょうどきょうと同じ答弁をされて、まあ最終的に総裁が話しておったのは、いや、いい線いきますよということなんです。つまり、公労協を下回らぬという表現をされたその土台になっている相関関係は、去年だって金をかけておる。ところが、ことしは去年と同じような意味のことをおっしゃらぬとなると、これはちょっと事件でございまして、人事院に意図ありと、これは重大な事件です。かね太鼓で総裁を攻めなければならぬということになる。政治的に総裁はものを考えては困るということになる。また調査書を出せと言わなければならぬことになる。それらを含めて関係は変わってないのですから、いまに始まったことではない、何年も金をかけておるということで、私どもは公労協を下回っては困る、そういう意味の線をやはりおとりいただきたいと思うのです。いかがですか。
  104. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私の申し上げておるのは、同じ趣旨の御質問に対しましては例年同じことを申し上げておると思います。これは速記録に出ておるとおりでありまして、今回の発言についても何ら変更はないというふうに御了承願います。
  105. 大出俊

    大出委員 自治省のほうに承りたいのですが、いまどうなっておりますか。六大都市の交通その他の、昨年のベース勧告に基づく改定が制度的にまだ行なわれていないのじゃないですか。
  106. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 財政再建をやっております交通事業につきましては、北九州市でありますとか鹿児島市あたりは、中小の公営交通関係は終了しております。東京都を含む六大都市の交通事業につきましては、昨年の給与改定分はいまだ実施されておりません。
  107. 大出俊

    大出委員 これは公営企業法の改正をやって、佐々木さんですから知り過ぎておられるわけで、私も初めて話し合っておるわけではないから、それで聞くのも妙な話なんだけれども、最近のことをお考えになって、法律改正されたときの中心は参事官の鎌田さんですが、今日ながめてみて、あのときの自治省の意図というのはどうなったとお考えでございますか。
  108. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 昭和四十一年に公営企業法を改正いたしまして、財政再建の規定を入れると同時に、一般会計並びに企業会計間に負担区分の規定を入れたわけです。財政再建につきましては、交通事業並びに病院事業を除く事業につきましては、各団体の非常な努力によりまして現在順調な再建が進捗中でございます。病院事業並びに交通事業につきましては、その後のいろいろな企業環境等の変化によりまして、必ずしも順調な推移をたどっていないということで、私どももそれに対応する措置を逐次とりながら、いま再建計画を何とか進めてまいりたい、かようなところでございます。  また、この財政再建と関連いたしまして、一般会計と企業会計の負担区分の問題につきましては、現在の法律並びに政令の規定にきめられております事項につきましては、でき得る限り財政的にも措置を進めるというふうなことで、逐年、財政計画の策定にあたりましては、一般会計からの繰り入れというものも、こうした負担区分の規定をでき得る限り適用いたしまして措置をいたしておるわけでありますけれども、一般会計から見ますならば相当な繰り入れを実施しておるにかかわらず、病院会計、交通会計のほうは財政状況なかなかまだ好転しませんというのが現状でございます。
  109. 大出俊

    大出委員 最後に、これはお願いをしておきたいのですが、横浜の市長等とも話してみましても、これは去年の制度化がまだできてないわけです。そこへことしの勧告が出てきてしまうのですからね。一生懸命働いて、バスなんかやっておる方々にしても、走行キロ数は減るばかりです。東京だってそうですけれども。それは幾ら合理化合理化と言ってみたって、現実はどうにもならぬ。そして一般行政職の方々と大きな開きが出てきておる。期末手当なんかだってそうです。開いたままです。それを何か少し考えようとすれば、すぐ自治省に一喝食らってしまうわけですからね。そうすると、制度化に踏み切りたくとも、何か市長などの言い分によると、何か雰囲気としてまあよかろうという——何書言っても、こういうことに踏み切るのには、それなりの雰囲気がないとできないわけですよ。理屈はみなお互いにわかっておるわけですから。そうでしょう、佐々木さん。だから、その辺で少しはおたくのほうも雰囲気をつくる努力をしていただいて、事を急いでいただきたいのです。これはよろしゅうございますか。
  110. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 御指摘のように、いま交通事業につきましては、路面電車の事業や地下鉄の事業等につきましては、財政措置についても、相当な措置がとり得る基準というものをつくりまして、また国の補助等も制度もつくってきたわけでありますが、確かにバス事業につきましては、現在のところほとんど措置がとられておらない。といいますのは、ここ二、三年前まではバス事業は何とかやっていけるような状況にあったわけでありますけれども、最近急速に事業の内容が悪化してまいりました。これはもう御指摘のとおりであります。それに対応いたしまして、現在私どもも、バス事業についてどういう考え方で客観的な基準をつくっていくべきかということを検討いたしております。でき得る限り私どもも検討を急ぎまして結論を出してまいりたい、かように思います。
  111. 大出俊

    大出委員 尾崎さん、これは要望しておきますが、住居手当は三千円をこえて、六千円を予測をして三千円、つまり合計九千円、そういうことに去年まとまった。私は、入れものをつくってくれぬかということで一生懸命質問したのですが、さて入れものができたわけで、去年言いにくいところでいたしかたなしということになっておりますが、持ち家の方々等の場合、これはプライベートな問題に触れるからというようなことではなくして、とりあえず詳細な調査をしていただいて、またやってもおられるわけですから、やはりそこまで少し考えていただかぬと、これは自治体なんかの場合は、あの金を広げて——持ち家の人などから文句が出るわけでして“借りている連中だけといったって、おれたちだつて、借金して夫婦ともかせぎで一生懸命金を払っているけれども、全く住居手当からおっぱずされて、どうするんだというので、話し合って平等に分けちゃったというところも実際にあるのです。そうなると、これはやはりそこまで踏み込んでもらわぬとおさまりはつきません。あわせて、これはワクをつくったから中身をふやせというのはあたりまえなんで、一体それで家が借りられるかということになるんだから、そこらのところはことしはどういうことになるのですか。これは要望をかねて最終的に聞いておきたいのです。
  112. 尾崎朝夷

    ○尾崎説明員 住居手当につきましては、昨年いわば踏み切ったわけでございますが、その範囲も家賃等が非常に高くて生計が圧迫されておるということで、若年層が特に問題になっておるわけでございますけれども、こういう職員につきまして生計費の負担を緩和するという点がポイントであったわけでございますが、支給のしかたは非常に複雑なやり方をして、事務担当者には相当迷惑をかけておるという状況でございますが、その支給の実態を、現在鋭意いろいろ実態調査をやりましてつかんでおるところでございます。調査の上で結果をよく見まして、現在の手当制度についてどういう問題があるかという点をいろいろ検討しまして、次の段階をさらにどうするかということに踏み出そうと考えておりますが、御指摘のように、いままでは借りておって手当をもらっておったけれども、金を借りて家を建てたといったような状況の場合に、そういう職員には、借金は相当返しているけれども手当は出ないという点のバランスの問題という点は確かにございますけれども、一方では持ち家といってもいろいろあるものでございますから、そういう職員内部の問題もございますし、今後、持ち家の状況の実態もいろいろ調べまして、よく検討してまいりたいというふうに考えております。
  113. 大出俊

    大出委員 長い時間ありがとうございました。
  114. 伊能繁次郎

    伊能委員長 伊藤惣助丸君。
  115. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 人事院総裁からただいま大出委員に詳細に答弁ございましたが、私も同じような質問になるかもしれませんが、さらに一歩進めて質問したいと思います。  まず初めに勧告でございますが、先ほどの答弁によりますと、八月十五日前後になるというお話のようでございますが、いいことは早いほうがいいわけでございますから、何も例年にならう必要は私はないと思う。もっと早くやるべきじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  116. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 洗いざらい申し上げますと、そのころ国会でも開いていただいて、ほいきたというような調子でこれも立法化していただいて、すぐそこで差額支給が始まるということであれば、それだけに非常にやりがいのある問題だろうと思いますけれども、大体例年の形から申しまして、そういうことはわれわれとしては常識的に考えられないということになります。したがいまして、この八月の勧告の時期というものは、それほど厳格な問題ではないのではないかということも一方においてありますけれども、しかしこれは、いまおことばにありましたように、大体公務員皆さんお待ちかねのことであります。早いものは早いほうがいい。もちろん申すまでもなく、その心組みでやっておる次第であります。
  117. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その点、要望しておきます。十五日前後といわず、十日前後でもけっこうでございます。もうすでに調査を終わりまして集計の段階だと聞いておりますので、例年によらなくても、こんなことはならう必要はございませんので、早目にそういう勧告をしてほしいと要望をしておきます。  次に勧告の改善率ですが、いまいろいろお話ありましたこの改善率については、例年の傾向を見ますと、公労協の仲裁裁定より〇・一%程度高く勧告されております。またことしの仲裁裁定のアップ率は一一・六八%となっておりますが、これが例年どおりだというふうに先ほどからも話を聞いておりますが、そうなりますと、公務員給与改善率は二・七八%以上、こういうふうに考えられるわけですが、その点についてさらに総裁からお考えを聞かしてもらいたい。
  118. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これはなかなか軽々しく無責任なことを申し上げられない事柄でございますので、公労委の関係は、先ほども申し上げましたように、むしろわれわれのほうの調査が周到であり精密である、また正確であるということで張り切ってやっておるわけでありますから、われわれの調査の結果がどう出るかということに期待をしておるという以外に、それから先のことは、実際問題としても、筋論としても、申し上げられないことでございます。
  119. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 人事院は毎年四月に官民給与の比較を行なうために、一般職の公務員の全員について給与の実態調査をしておるわけですね。大体それによりますと、民間企業の規模百人、事業所規模五十人以上、全国で約七千百五十の民間の事業所について、公務に類似する九十一種、五十三万人を対象として職種別民間給与の実態調査を実施している、これが昨年の勧告にあったわけですが、これは毎年同じ企業規模を対象にしていくのか、またはこれを将来の基準にしていくのか、またこれを変えて五百人以上の企業の規模を対象にしてやるという考えがあるのか、人事院としての将来の展望、こういうことについて、基本的な問題でありますので、伺っておきたいと思います。
  120. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 いまの企業規模の問題でございますが、以前は五十人以上で押えておりましたのを、百人以上に上げまして、ずっとそのままきておるわけでございますが、これは私どもの基本的な考え方は、やはり国民の皆さまの税金によってまかなわれる給与であるということから申しますと、納税者を含む国民大衆の御支持あるいは御理解というものがなければわれわれの仕事はできないという立場から、その御納得を得るために妥当な線はどこかということで考えて、最近百人にいたしました。これは百人にいたしますと、大体日本の組織と申しますか、企業の従業員の五、六割ぐらいまではカバーしている。したがいまして、過半数程度の民間の従業員の皆さんの水準にはせめて合わしていただきたいというたてまえできておりますので、これが、だんだん一般民間従業員のほうの事情が変わってまいりまして、五百人で半教以上カバーできるということになりますれば、これは当然踏み切るべきである。五十人から百人にいたしましたときも、そういう計算の末のことでございます。
  121. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この人事院勧告の実施時期ですが、先ほども四月に一理ある、必ずしも五月にはこだわらぬ、こういうお話でありますけれども、これは四月に調査されるわけですから、調査の月を含めて実施する、あるいはまた勧告としてはなされるのが当然ではないかと私は考えますが、もし四月に勧告できないという理由があるならばどういうことなのか。たとえば、これが大蔵省であれば、先ほども聞きましたけれども、あとで伺いたいのですが、予備費には約千四百億ですか計上されておりますけれども、大体今年度の人事院勧告の分を五%見ている。それによると七百六十八億円である。もし四月実施になった場合でも一割程度であるということから考えますと、今年度の予備費の使い方から見れば、たとえ四月という勧告があり四月に実施しても、予算上何ら問題ないんじゃないかと思うのです。そういった点も含めて答弁願いたいと思います。
  122. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 この問題はここ数年来たびたび御指摘がありますが、先ほども申しましたように、私どもは虚心たんかいに筋の問題として考えております。したがいまして、五月が絶対に正しいとかいうような片寄った気持ちで問題には臨んでおりません。そういう意味から、四月説も一理なきにしもあらずというようなことをたびたび申し上げておるわけでございまして、基本的の態度としては、そういったことにはとらわれない考え方で検討に臨んでおります。しかしまだ今日の段階では結論を得ておらないというのが正しいお答えになると思います。
  123. 平井廸郎

    ○平井説明員 先ほど私が申し上げましたのは、五%分についての話でございまして、五%を上回る勧告がなされます場合には、その部分については全部予備費あるいは不用分にまずかかってくるということになるわけでございます。したがいまして、その点からいたしまして、当然予備費でできるかどうかという問題も一つございます。さらに先ほど大出委員にもお答え申し上げたわけでございますが、予備費は全体としての予備費でございまして、そのほかにも予備費使用の要因等もございまして、すでに約七十億程度は使用されておる面もございます。したがいまして、現在の段階で四月一日の勧告がかりになされました場合に、いまの予備費でまかなえるかどうかという点については、お答えはむずかしいのではないかと考えております。
  124. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 なかなかむずかしい答弁ですけれども、総裁、この調査をするのは四月だから、四月を含めて実施することが当然ではないかと私は思うのですが、その点についてはどうなんですか。
  125. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 一理あるという気持ちは、これはずっと持ち続けながら検討いたしております。
  126. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ことしは民間の春闘が例年になくおくれているわけです。その積み残し分があるわけですが、それについてはどういうふうに対処をされるか、この点いかがですか。
  127. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これははなはだ残念なことに、春闘は次々と例年おくれぎみになってきておりまして、ことしも相当おくれておるということ、これは事実であります。したがって、私どもが調査に参りましても、まだいま交渉中で答えは出ておらぬというようなことで追い返される。そこで今度は、まとまった時期を見てまたそこの企業へ出かけるというような手数を踏んでおるわけで、私どもとしては、できるだけそういうことの調査漏れのないようにという努力はしておりますけれども、依然として出てくるということが、これは例年の御指摘でございまして、私どもとしては、それをもちろん切り捨てということにはまいりません。積み上げた形のものを全体の格差として勧告を申し上げておる。おそらくことしも、その部分がどのくらいになりますか、これはわかりませんけれども、若干はやはりそういう部分があるのじゃないかということを考えております。しかし、できるだけ取り入れて勧告を申し上げたいと思っております。
  128. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 初任給の件です。これも先ほどお話ありましたけれども、民間の初任給が非常に上がっていることはよく存じておりますが、これに対して公務員も、人材確保のために引き上げが毎年行なわれているようでありますけれども、こうなりますと、公務員の中年層に対する昇給というもの、この中だるみの方向がますます強くなる。いままでもそうでありますが、そういう傾向であります。それに対してどういうふうに対処されるのか、その点いかがですか。
  129. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 全く考え方の筋道としてはそういうことになりますので、民間でも近年非常に初任給を上げております関係上、どうしてもいま御指摘のような面に手薄な面が出てくるという実情は、これは否定できないと思いますけれども、われわれとしては、その面も決して無視できないことでありますから、たとえば標準生計費というようなものを、従来は初任給のささえのほうに使っておりましたけれども、ここ二、三年来、二人世帯、三人世帯を見る場合のめどに使いまして、いま御指摘のような給与の盛りつけに、大いにそれを参考にしながら、その基準の一つとして使っておるというような心組みでやっております。
  130. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 特別給与について伺いますが、四十五年八月の人事院給与に関する勧告と報告、この説明の「その他」に(2)というところがあるのですが、その(2)には、「民間における特別給の支給割合には、職務の段階等に応じて相当の差異があることが明らかとなったので、期末、勤勉手当の支給のあり方について、今後さらに検討する」、このようにあったわけです。今年の勧告にはそれが載せられていくんじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  131. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 相当重要な問題と思われますので、事実を率直に昨年の報告で明らかにいたしまして、とにかく無視できないこれだけのはっきりした事実があるということだけを問題を投げたわけであります。それを受けまして、ことしの民間調査におきましても、さらに少し立ち入った調査をしております。もちろんまだその結果は出ておりませんけれども、それらの結果とも照らし合わせながらなお研究をしようという心組みでおるわけでございます。その形がどういう形になって出てまいりますか、とにかくほうってはおけない問題だという意識はわれわれは持っておるわけであります。
  132. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 昨年の民間の特別手当というのは史上空前であったといわれておりますが、公務員の特別手当というのは、一年おくれでいつも勧告がなされているわけですが、そうなりますと、本年も当然一年おくれの勧告が出てくるものだと思っております。特に私は、この中で、先ほどもお話ありましたが、端数についても乗せるべきじゃないか、こういうふうに思いますが、その点いかがですか。
  133. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先ほど来おことばがありましたし、従来それらについての御不満があることも、われわれとしてもずっと関係の向きから承ってきておるわけでありまして、私どもは、たてまえはたてまえとしていくべきであるという気持ちを持っておるわけであります。しかしながら、そういうおことばはおことばとして十分拝聴してまいりたいという気持ちでおります。
  134. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 住宅手当の問題です。これも先ほど大出委員から最後に質問がありましたが、最近公務員宿舎の使用料の値上げ等があります。当然そういうことから考えても増額されると思いますが、どの程度考えているのか。それから持ち家の居住者といいますか、こういう方々に対しても、同時に支給対象として考えていくべきじゃないかと私は考えているのです。その点いかがですか。
  135. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 従来この委員会におきましても、住宅手当をなぜ早く支給しないかと毎回たいへん攻め立てられまして、そのつどいろいろ申し上げておったときに、たとえば持ち家の人をどうするかというようなむずかしい問題がありまして、かりに踏み切るとしてもなかなかむずかしい問題がございます、というようなことを申し上げてきたのですが、去年踏み切ってしまったのですが、しかし、私どもがかねがね申し上げておった問題は、いま御指摘のとおり残っておる。したがいまして、これも問題点としてはわれわれ大いに考えていかなければならぬと思いますけれども、先ほど給与局長がお答えしましたとおり、昨年踏み切ったばかりで、その運用の実態というものをいま一生懸命つかんでおる最中でございますから、ことしはおそらくそっちのほうに専念せざるを得ないのではなかろうか。  公務員宿舎の値上げの関係は、去年われわれの勧告の一つの趣旨は、公務員宿舎に入っている人と入っていない人とのアンバランスにありましたから、宿舎の値段が上がるということは、得になるか損になるかというと、にわかに判断のできないところで、まあしばらくは、そこのところは黙っておろうやということでございます。
  136. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 持ち家の人も支給対象として考えるべきじゃないかということ……。
  137. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 それは、先ほど来申し上げましたのは、そういうことにも触れておったのでございます。そういう問題もありますからむずかしいです、ということを前々から申し上げておった。しかし、それにもかかわらず踏み切ったのですから、それはそれとして問題は残しておいて、あまり責めないでおいていただきたい、そういうことを露骨に言ってしまいましたけれども、心の中ではそういう気持ちを持っております。
  138. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 責めるわけじゃありませんけれども、そういう不満のないように考えていただきたいわけです。最近の物価上昇なり、また安い給料で働いている皆さん考えたときに、私たちは前向きに検討すべきじゃないか、こういうことを申し上げたいわけです。  最後に、来年一月から国立の義務教育学校職員の教職調整手当、これが本俸の四%支給されることになったわけですね。これに関連して、同じ国立の高校大学の教職員に対してもやはり同じように取り扱うべきじゃないかと思うわけです。今後どういうふうな考え、また態度で臨むのか、その点についてお伺いして質問を終わりたいと思います。
  139. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先ごろ提出いたしました教職員特別手当の問題は、率直に言って、当面超過勤務手当の問題がきわめて深刻化しておったその事態をとらえまして、処置したわけであります。しかし、あの根本に流れておる教員の方々の勤務の特殊性ということから申しまして、いま御指摘になりましたように、大学とか高専の問題ございますけれども、しかし実態はよほど違うということが一つあるわけでございます。したがいまして、その関連の問題として、もちろんわれわれとしては周辺を検討いたします。たとえば幼稚園の問題もございます。それらも含めて検討はしておりますけれども、よほど実態は違うということだけは御了解願っておきたいと思います。
  140. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 実態は違っても、これはやはり考慮していただかなくちゃならぬ方々でありますので、その点も十分考えて今後対処していただきたい、このことを要望申し上げまして終わります。
  141. 伊能繁次郎

  142. 東中光雄

    東中委員 だいぶいろいろの論点について聞かれましたので、ダブらぬように一点だけお聞きしたいと思うのですが、その前に、いま公務員の労働組合では基本給一万五千円ないし一万二千円の要求を出しております。配分については、最低額を一万円ないし一万二千円ということでありますが、これでいろいろ交渉をやられておるようですが、この要求についての総裁のお考えといいますか、ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  143. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私ども、公務員の各位が要望としてお出しになることは、これはもうけっこうなことで、何とも批判すべき限りじゃございませんけれども、私どもの勧告はやはり官民の比較ということに基本を置いておりますために、理屈の問題として、官民の比較が二万円と出れば二万円引き上げざるを得ない、一万円を割ればまたそれなりの引き上げにとどまらざるを得ないというたてまえのものでありますので、われわれとしては、御要望は御要望として承る。ただ、最低保障的な考え方とか一律とかいうような、いろいろな御要望がございますけれども、これは現実問題として申し上げれば、大体、初任給というものを、われわれとしては相当重く見てきめておりますものですから、初任給がどういうふうにきまるかによって、これはずっと底上げ的な働きを持つわけで、そういう点においては、初任給のきめ方というのは、現実的にはそういう御要望に近い作用を営んでおる、そういうことは申し上げられると思います。
  144. 東中光雄

    東中委員 昨年の勧告の際にも、中位等級以下の人たちの待遇改善に重点を置く、こういうふうに言われておるわけですが、なおいま公務員労働者がたとえばこういうことを言っているそうですね。給料日になると憂うつだというようなことが出てくる。あるいは給与を見ておると、自分の値打ちがこれだけしかないのかという、非常に奇妙な状態といいますか、そういう事態が起こっておるということであります。  私いまここに資料を持っておるのですが、全司法関係で調べた資料ですが、生活保護基準を下回る人が相当たくさんいるということであります。一例をあげますと、これは大津市に勤務する三十六歳、勤続二十年七カ月という男の人の場合ですが、昭和四十五年現在行(一)の事務官でありますが、扶養家族が四人、うち二人は学童です。この人の四十四年十一月分の手取りは、行(一)の六の一〇ですが、四万七千九十円であります。この人の生活保護基準を調べてみたら五万三千百四十四円。これだけ長くつとめている人で、三十五歳の男子が生活保護基準よりも下がっているという状態であります。いまのは四十四年ですが、この人の四十五年の十一月分、これは行(一)の六の一一になっておりますが、五万三千六百八十一円、生活保護基準は六万七千七百六十九円、こういう数字が出ているようであります。そのほか、たとえば神戸市に勤務しておる二十六歳の勤続五年十一カ月の人ですが、交換手の女性であります。これは昭和四十五年現在ですが、扶養家族は幼児が一人、四十四年十一月分の手取りは、行(二)の四の六ですが、二万三千九百六十円、ところが生活保護基準では三万四百十二円、こういう数字が出ておるようであります。この人の四十五年の場合は家族構成がずいぶん変わっておりますので、いろいろ比較はしにくいわけですが、それにしましても、四十五年十一月分の手取りで、これは昇格して行(二)の三の二になっているわけですが、それでも二万九千二百八十二円。結局、昨年の保護基準よりも下回っている。そういう状態になっておるわけですが、こういう状態というのは、憂うつになるというのも無理もないというふうに思うわけです。そういう意味での底上げ、これはひとつぜひ重点を置いてもらいたいと思いますが、いかがでございますか。
  145. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私どもの立場から一応筋論を申し上げれば、御承知のように、生活保護というものは社会保障制度であって、俸給、給与というのは勤務に対する報酬、これは筋が違うのだと冷たいことばで言えば、それで一蹴できることかと思いますけれども、現実問題は、そんなことで冷たくあしらうべき問題ではないということで、われわれとしては十分留意をしてまいっておる問題であることははっきり申し上げられます。しかし、生活保護基準の関係から申しますと、たとえば給与以外の収入がどのくらいその人におありになるかというような問題、その他、一人一人の生活環境というもののからみ合わせの問題でありますから、一律には、そういう人はいるはずはないということは申し上げられませんけれども、実際上は、このすれすれの方々というのはずっと例年減ってきておるという事実は、われわれとしてはつかんでおります。ただし具体的な個々の方々についてよく調べてみると、たとえば給与の扱いのほうで、もうちょっと上げてもよかったというような個々の給与の問題が出てくるということも、これはございますから、ですから具体的のケースがあれば、これは給与局なり何なりに、ここでひとつ、ほんとうに正しい給与にこれはなっているのだろうかというような形でお当たりになっていただくことも、またそういうことによって、これは間違っておったということもなきにしもあらずなのです、実際のあれから言いますと。私どもとしてはそのくらい気を配っているということだけははっきり申し上げておきます。
  146. 東中光雄

    東中委員 先ほど申し上げました神戸の例で申しますと、勤続五年十一カ月で二十六歳の女性で幼児が一人いる、ほかの収入なんというのは、特別などこかからの援助がなければ——あれば別ですけれども、やっていけない。つとめないほうがまだ生活がしやすいということになってしまうわけです。全司法労働組合で近畿地連が調べたわけですけれども、いま申し上げたような例がずいぶんたくさんあるので、私びっくりしておるわけですが、この調査は、四十四年に一回行なって、四十五年にもう一回追跡調査をやっておるわけですが、大阪、神戸、京都、和歌山、それから大津、奈良の六支部でやっています。そして調査対象は、行(一)表適用の電話交換手と庁務員、それから行(一)の五ないし六等級の事務官でありますけれども、三百七十七人を対象にして、四十四年十一月の給与、年間総手取り額についての生活保護との対比ですが、四十四年十一月分の手取りについて言いますと、三百七十七人中百六人、実に二八・一%になるわけです。なるほど年間総合にすれば、一時金や超勤手当なんかを加えますと、これは十一人になりますけれども、しかし、あとでもらうやつは、その間借金しておかなければいかぬということになってしまうわけですから、やはりそのときの手取りということでなければどうもならない問題だと思いますが、そうしますと二八・一%、ずいぶん大きな数字だと思うわけです。  それから、この前、昨年の勧告は、「初任給および世帯形成時等の職員の給与の引き上げを軸として、中位等級以下の職員の給与改善に重点をおく」、こういうふうに言われたわけですが、そういう立場でやられてなおこういう問題がずっと残っているわけですので、これはぜひ今度は配慮してもらわないと、これは生きるぎりぎり一ぱいです。給与というものについての考え方をどういう考え方にするかという理屈を私いま申し上げようと思っているのではなくて、現実生活保護基準にさえ及ばない。生活保護基準は大体一般給与の五〇%くらいだというのが常識的にいわれておりますが、そういう点で言うならば、これは権利という形でぜひ考えていただきたい、こう思うわけですが、その点どうでございましょうか。
  147. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先ほど触れましたように、われわれとしては非常に気にしながらやっておりますけれども、理論的にはこれはあり得るということを申し上げざるを得ないと思います。しかし、そういう理論の問題にことばをかりずして、われわれとしては、いまお話がありました行政(二)表の問題に特にこれは密着した問題であると思います、給与のつけ方は。したがいまして、行政(二)表について例年非常に力を入れてまいっておるということは、これまた実績が証明しておる点であります。したがいまして、またわれわれの調べた範囲でも、そういう生活保護基準の問題に触れるような方々がどんどんと減ってきておるということも事実であります。ただあとは、具体的の個々の給与の算定その他が万一間違いはないかどうかという問題も一つありますということを、よけいなことをつけ加えて申し上げたわけであります。要するにそのくらい気を使っておりますということを申し上げたいわけであります。
  148. 東中光雄

    東中委員 いわゆる底上げを要求している労働組合の問題提起というものは、結局生きるということから出発しているわけですから、どういう理屈であろうと、とにかく現実に生きていけない、あるいは社会的基準からいって生きていけないような、そういう状態をなくしていく、そういう体制をとられなければいかぬのじゃないか、こう思うわけですが、その点を強く要請しまして質問を終わりたいと思います。
  149. 伊能繁次郎

    伊能委員長 午後一時四十五分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時八分休憩      ————◇—————    午後二時十九分開議
  150. 伊能繁次郎

    伊能委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  増原防衛庁長官及び野呂防衛政務次官からそれぞれ発言を求められておりますので、これを許します。増原防衛庁長官
  151. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 このたび防衛庁長官を拝命しました。格別皆さまにお世話になることになりました。たいへん不敏の者でございますが、よろしく御指導、御協力をお願い申し上げます。
  152. 伊能繁次郎

  153. 野呂恭一

    ○野呂政府委員 このたび防衛政務次官を命ぜられました野呂恭一でございます。  私にとりましては、たいへん未知の点が多いわけでございますが、一生懸命勉強いたしまして職務に励んでまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。      ————◇—————
  154. 伊能繁次郎

    伊能委員長 国の防衛に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  155. 大出俊

    大出委員 時間の関係等ございますので、どうもこの人員で始めるのもちょっと気になりますけれども、先のこともございましょうから、なるべく午前中に相談をいたしました時間でまとめるように努力はいたしますが、坂村理事以下の皆さんに、よろしくその点は委員長からお話しおきいただきたいと思います。  長官に初めてお尋ねをするわけでございますので、時間がたいへん短くなっているのでありますけれども、かといって、基本にわたります問題を全く素通りもできないというふうに思いますから、とりあえず、基本にわたります問題の何点かを承りたいのであります。  一つは、先般レアード国防長官が来日をされたわけでありますが、たいへん数多くの新聞記事、外電等が乱れ飛びました。その中で、レアード長官が記者会見をされて、佐藤総理なり中曽根前長官なり増原新長官なりに会った、そしていろいろ申し上げたし、また話も聞いたという前提で、記者会見を通じまして記者の質問に答えているわけでありますが、時間がございませんから多くは申しませんけれども、その中の幾つかの点についてまず新長官のお考えを聞いておきたいのであります。  レアード氏の言っております中に、将来、日米両国の軍事的な努力というのは相互にとれる形をとって進んでいくのか、つまり軍事的な意味における日本とアメリカの今後の提携のしかたというふうなことを中心に質問が出ておりますが、これにレアード長官答えまして、七〇年代が進行すれば日本の自衛力はますます重要な責任と役割りを持ってくる、こう前置きをいたしまして、特に日本本土と返還をされる沖繩においてますます重要になってくると考えている、そして、自衛隊の任務が沖繩等において増大していく、こういうふうに述べているのでありますけれども、レアード氏に直接会って話をされている長官のことでございますから、ここらのアメリカ側のものの言い方、特に、時間がありませんからあわせて承っておきますけれども、これはレアード氏がほかにも書いておりますけれども、総合戦略構想というものを強調されているわけであります。これらとからみまして、ここをどういうふうに新長官はお考えになっておりますか。つまり、軍事的な意味における日米関係はますます重要になると、たいへん大きな期待を相手方は表明をしておりますし、おそらくそれに答えておられるのだろうと思うのでありますが、あわせて、いま私申し上げました総合戦略構想というものをレアード氏が説明をしているわけでありますけれども、そこらの点について長官のお考えを承っておきたいのであります。
  156. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 レアード長官と私との話ではそういう問題は出ませんでしたが、中曽根前長官の話の際には、いわゆる総合戦略構想というふうな話があったようでございます。  わが国の自衛力、自衛隊の力というものは、御承知のように、発足は昭和二十九年でございまするが、一次防を策定いたしましたのがたしか昭和三十二年でございますか、一次防、二次防、三次防という段階を経まして、だんだんと自衛隊の力というものが増してまいりました。さらに、いま策定をし決定をしようといたしておりまする四次防の段階においてさらに自衛力が強化をしてまいる。アメリカでいう総合戦略構想というのは、いわゆるニクソンドクトリンでありまして、それぞれの協調、同盟の国との総合的な自衛力を総合的に考える。それぞれの協調、同盟の国でできることはやってもらって、核の抑止力というようなものはアメリカが全部引き受ける。あと、空海の特に戦略的攻撃力というふうなものはアメリカが十分にこれを受け持つが、それぞれの国でなし得る通常兵器による防衛、自衛というものは、それぞれの国で整備をしていってもらいたい、もらうことを期待するというのが、大ざっぱにいいましてアメリカの総合戦略構想であると思います。そういう意味で、日本の自衛隊の力というものは、いままでだんだんと整備はいたしてまいりましたが、大きい力とはまだ申せない段階である。これが四次防が遂行され、さらに五次防が遂行されるというふうな一九七〇年代においては、相当の自衛の力になるであろう、そういうことを言ったものであろうと私は推察をいたすのでございます。  われわれが米軍との関係においてありますのは、日米安全保障条約というものを根底としての問題でございます。最初に安保条約のできました時分は、まだ日本には自衛力のない時代であります。三十五年に改定をされる時期には、自衛隊というものができて数年を経過して、ある程度の自衛力ができたということであったわけでございます。日本の国が自分の国の安全を守るためになし得ることは、やはり自分の国でやらなければならぬ。自主防衛ということばが使われておりますけれども、自分でできることは自分でやる。しかし、わがほうは核を持たないという基本的な政策を堅持しております。核の抑止力というものはアメリカにこれを期待する。そして、憲法のたてまえのもと、日本の自衛隊というものは防衛、自衛に徹しなければならない。専守防衛のたてまえでありますから、自衛ということの本来の必要からいいまするならば、場合によっては戦略的攻撃力というものが必要であるのでありまして、そういうものは日米安保条約による米軍に期待せざるを得ない。そういうものはまた、米国も、核のかさ、戦略的攻撃力というようなものは、自分で安保条約に基づいてこれを提供することができるというたてまえをとっておるわけでございます。そういう意味の総合戦略構想であり、そういう意味におけるわれわれの自衛隊、自衛力の整備であるというたてまえをとっておるわけでございます。
  157. 大出俊

    大出委員 これは少し時間をとって論争をしなければならない御発言がいま幾つかあるのでありますが、本日は、坂村さんおいでになりますが、おたくのほうで時間を割り振っていただきましたが、三十分余をここで待ちましたので、時間の約束は御破算に願いましてと言いたいのですけれども、あすもあるわけでありますから、がまんをいたしまして、きょうのところは承るだけにさせていただきますが、いまのお話は、要するにニクソンドクトリンというものは、ニクソン政権ができる以前からニクソン氏の考えとして表に出てきたわけでありますが、さてこのニクソンドクトリンと申しますのは、簡単にいえば、核のかさは貸しましょう、条約に基づく義務はアメリカは守ります、しかし攻撃があった場合には自国の軍隊が第一義的に責任を負うという自助の原則を守れという、そういう発想ですね。言うならば三つの柱があるわけです。そこでこれは、佐藤さんがアメリカからお帰りになって、国を守る気概という言い方を始めたころから、自主防衛ということばが使われるようになった。ところで今日、このレアード長官とのやりとりを見てまいりますというと、期待に十分こたえ得る四次防、さらにその先にもう一つ五次防——中曽根さんではございませんから、そこまでの回答は求めませんが、五次防段階で中曽根氏がこの席で述べてまいりましたのは、二十四万トンちょっとこえる四次防末年の海上自衛隊の艦船のトン数。これをさらに五次防という段階にいけば三十五万トン、こういうふうにこの席で中曽根前長官は述べている。となりますと、このレアード発言とあわせて、当然第七艦隊の肩がわりという問題は、私ども長く歴代の長官とやりとりをしてきている側からすると、レアード氏が言っている意味がわかる。したがって私は、やはりある意味における、全部とは申しませんが、肩がわりというものをこれから日本の自衛隊は一つずつやっていく、そういう筋道を進んでいく、こうならざるを得ぬし、またなる、こう思っているわけでありますが、そこらのところを長官は、アメリカのアジアにおける兵力の削減なり、あるいはドル防衛もからむのでしょうけれども、沖繩返還にまつわる数々の問題、これを前提にして考えた場合に、好むと好まざるとにかかわらず肩がわりの形にならざるを得ない、こういうふうに進んでいくんだという点について、私は現実をさしているわけでありますが、つまり考え方という意味でなしに、現実はそうなっている、こういうふうに認識をするのですけれども、そこのところを長官はどういうお考えでありますか。
  158. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 中曽根長官が五次防の段階でさらに海上自衛隊の艦艇の力をふやすというふうに言われたということでありますが、そういう艦艇が実現をしたといたしましても、日本の自衛隊の艦艇の力というものは、やはりあくまでも自衛、防衛ということに基本として徹するわけでありまして、いわゆる戦略的攻撃力というふうなものを持たないというたてまえでいくのであり、いくべきものでありまして、そういう意味において、第七艦隊の肩がわりということは、機能的にもできないことであるし、また日本の憲法のたてまえからいっても、そういうことをやろうとは考えておらず、やってはならないという問題でありまして、一部、日本の艦艇がふえてまいります際に、海上輸送の安全を確保するというようないま持っております任務が、現在よりもさらに大きく広く達成できる、そういう意味において、私どもがある程度、万一の場合に第七艦隊に現在ではそういうことも期待をいたしておるという部面が自分の力でできるという面はあるわけでございまして、これはしかし、日本の自衛力というものを、本来できるだけ自分でやれることは自分でやるという意味で増強をしたものが、日米安全保障条約というたてまえがありますので、いままではアメリカに期待をしておった、そういうものを期待しなくてもいい部面が出てくる。これをそういう客観的な点からいいまして、肩がわりと言われる方があるわけでありますが、私どもは、それは肩がわりという性格のものではないというふうに理解をする。具体的には、そういう意味の肩がわりというものがこれから増強されれば出てくる、こういうことでございます。
  159. 大出俊

    大出委員 最初ですから少し承っておきたいと思ったわけなんですが、私のいま言っているのは、いま長官が最後に結論として話しておりましたが、アメリカの側は、自主防衛と名がついておりますけれども、平たくいえば、日本の軍事力——皆さんは自衛力とおっしゃるのでしょうが——の今後におけ、る大幅な拡大を期待をしている。これはもうレアード長官日本に来てしゃべっている中に随所に出てきているわけですね。随所に、日本の自衛隊が四次防、五次防という段階で拡大をされていくということに対する期待、非常に大きなものが出てきている。だから向こうから見れば、四次防、あるいはさらに五次防を見通してものを言っておられる中曽根さんの発言というものは、非常な大きな期待にこたえて、日本の自衛力あるいは防衛力、軍事力というものは進んできている、こういう見方になっている。それをいま長官の言われた、つまりものの考え方からすると、できることは自分でやる、憲法の制約がある、専守防衛なんだというワクの中でこれをふやしているのだ、たとえば三十五万トンになっても。しかし、それはできる範囲の肩がわりということに結果的にはなるかもしれない、こういうことになるのです、いまの御発言は。だから、そのことは非常に危険な接点がそこにある。つまり、どこまでがいわゆる専守防衛の肩がわりなのか、どこから先がいわゆるアメリカの期待、アメリカの戦略理論の中に組み込まれていくのかという点は、非常にこれはかみ合うわけでありますから、非常にむずかしい時点に来ている沖繩返還をめぐって、久保防衛局長と調印をいたしました配備計画等につきましても同じことが言えるということを、ここから先は論争になりますから、ここまで申し上げておきたいのであります。  そこで、きょうは時間の関係で、核の問題その他につきまして少し突っ込んだ論議をしたいと思っておりましたが、いまの論点、あるいは自主防衛の行きつく先に当然出てくる核の問題、これは防衛庁の技研などでやっておられることなどもございますけれども、そこに入りますについては時間が足りません。まあ沖繩国会もありますから、あまりみな言ってしまっては沖繩国会のときに困るのですからいいですけれども、ここから先そういう論点があるということを前提にして、さて、しきりに最近、共同使用、共同使用ということが、沖繩返還協定にまつわる基地の使用その他をめぐりまして、幾つも出てきているわけであります。しかも、昨年十二月の例の合同委員会発表の基地縮小と称する中身も、実際には板付あるいは厚木のごく一部ぐらいになるのでしょう。ほとんどはこれは共同使用。これもまた維持管理を含めての肩がわりの一種だと思いますが、あるいは有事再使用というかっこうが背景にあるとすれば相当問題があるわけであります。そういう形のものが、最近至るところに出てきているわけであります。  そこで、前提としてひとつ承りたいのですけれども、共同使用ということは法的に一体どういうことなのか。ここのところをまず承っておきたいのであります。共同使用というのは一体どういうものを共同使用と称するのか、承りたいと思います。
  160. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 具体的な申し方のほうがいいかと思いますが、飛行場等の共同使用という場合は、大体態様は二つあると思いまするが、管理権を日本の自衛隊が持って、そうして必要ある際、支障のない際は米軍にも使用させるというものと、管理権を米軍が持って、必要の際、支障のない際には日本の自衛隊がこれを使うという、二つの態様がございます。いわゆる共同の使用でありまして、しかしどちらかに主体はちゃんととってある。これはわれわれとしては、必要があってやむを得ないものは米軍に使用させるという形で多くのものが始まりましたが、さしつかえのないものはやはり管理権を日本返還をしてもらって、日本のものとして米軍に共同使用させるということが、全然返還をできなくとも好ましいというたてまえでそういうことをやり、また、その段階に至り得ないものでも、米軍が管理をしておるものであってもわれわれも使用をするということで、ここは一歩われわれの力をそこに入れていく。それは次の段階では日本の管理権で米軍に使用をさせる、そのあとは全然返還をしてもらうということにしたいということで、そういくわけでございまして、非常にけっこうだからそういう共同使用をやるというたてまえの場合はきわめて少ないと思うわけでございます。
  161. 大出俊

    大出委員 そうすると、これは米軍が管理権を持っている場合、たとえば二4(a)という場合ですね。こちらが管理権を持った場合、たとえば二4(b)という場合ですね。この二つをいま例におあげになったわけですが、いまのお答えの中からすると、アメリカの都合で、この際日本にいる在日米軍を縮小しよう、しかし基地は手放したくはない、事あるときには飛んできて使う。有事再使用といいますか。実はこのケースは、この問題が表に出てきて以来、中曽根氏と私は、中曽根氏が長官になったとたんに、予算委員会で私が質問いたしまして、地位協定の変更なしにできるのか。当時、山上さんが施設庁長官で、詰めてまいりましたら、それはできないということになった。外務省も当時、たとえば演習場を貸すとか、射撃場を貸すとか借りるとかということは、「一時的に」あるいは「一定の期間」という表現の二4(a)なり二4(b)なりでやっていける、しかし有事再使用というケースについては、地位協定の変更なしにはこれは無理である。ところが、沖繩返還にかかわりますから、安保条約ないしは関連諸取りきめは変更なく適用されるといっているたてまえ上、外務省、それは困るというので、この問題二転三転してきたわけです。これはもう御存じのとおりであります。ところが最近、有事再使用というケースに当てはまるものがあるにもかかわらず、簡単に共同使用という形でものを片づけている、こう残念ながら受け取らざるを得ないものが出てきている。そうするとこれは、地位協定の変更をお考えになっているのならいいのですけれども、そうではない。二4(b)のケースの中で有事再使用に類するもの、飛行場なら飛行場の場合にそういうことになるのだとすると、これはこの問題が提起され始めた当初に返って、一体、現行地位協定の性格上、有事再使用などというケースが地位協定のワク内として許されるのかという問題が実は出てくる。そこを私は一番最初にはっきりしておきたい。  そこで、もうちょっと具体的に申し上げますと、いま管理権の話が出ましたけれども、二4(b)の場合に、返してもらった自衛隊に管理権がある。一定の期間米軍の使用を認める場合に、管理権というのは一体どういうことになりますか。つまり、依然としてあるのか、一定の期間は相手に移るのか。管理権というのは一体どうなるのです。
  162. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 飛行場等につきまして、その一部を二4(b)で米側に随時使用させるという場合、その管理権は日本側にある。したがって、使用を認めても、その使用を認める期間に米軍に管理権が  一時移るという考え方はないということでございます。
  163. 大出俊

    大出委員 その場合の管理権というのは地位協定の何条ですか。
  164. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 地位協定の二条四項(b)では、米軍の使用を一定の期間を限って認めるということでございますから、日本側が当然その管理権を持っておるということは、この条文の解釈からしても出てくると思います。また、その場合の管理権というものは、三条に該当するものを持っておる、こういうことでございます。
  165. 大出俊

    大出委員 三条でしょう。そこで承りたいのですが、たくさん例がありますけれども、二4(b)というのは七つかそこらしかないと思いますけれども、その後ふえたかどうかそれは知りませんが、幾つか例をあげましょう。  ここにございますのは昭和四十四年九月二十日の官報でございますが、一八三〇号、ここに「長坂小銃射撃場 神奈川県横須賀市長坂」と土地の表題が出ておりますが、この中で「合衆国軍隊の使用期間中は、地位協定の必要な全条項が適用される」とある。地位協定の必要な全条項が適用される。全条項ですよ。この表現は長坂だけではない、ほかに何カ所かある。私はこれを方々で確かめた。「必要な全条項」とは一体何だ。ここにもあります。これは富士の演習場。四十三年七月三十一日、これによりますと、「合衆国軍隊の使用期間中は、地位協定の必要な全条項が適用される」。この中に三条を含むのか含まぬのか。含むという解釈か。そうすると、いま鶴崎さんがおっしゃっておられるけれども、その間の管理権がもし自衛隊にあるのだとするならば、その管理権はこの間寝ていることになる。具体的なケースがあとから出てきますが、だからその点は明確にお答えいただきたい。
  166. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 ただいまお話がありました「必要な全条項」という場合には、「必要な」という限定がついているわけです。したがって、その基地の使用態様その他によって、適用される条項はケース・バイ・ケースによって違ってくるということでございますが、ただ、いま問題になっておりまする三条の管理権、これにつきましては、二4(b)の場合にはいわゆる必要な適用条項の中に入らない、その場合あくまでも管理権は日本側が持っておる、こういうふうに理解をしております。
  167. 大出俊

    大出委員 あなたがそう思うということであって、どこにもそんなことは書いてない。しかも地位協定というものは国会で論議をされてない、したがってある意味の有権解釈みたいなものはない、裁判の先例もない、こういうケースを申し上げる。解釈をどういうふうにお考えになるか、まず承ってからにしたいのでありますが、これは実は、沖繩が返ってまいりますとすると、たくさんのケースが出てくる。私は十幾つのケースをここに持っておりますが、ここでその論争をするとまた時間がなくなりますから、きょうは承るだけ承っておきたい、どうせ沖繩国会もあることですから。  そこで、たとえば沖繩が返ってきた、地主さんが反対だといって、再提供は反対と裁判所に訴えた。そうするとこれは、民事訴訟法上検証をするという問題が出てくる。その土地の検証、当然であります。これは合同委員会で合意された事項がございますけれども、御存じでございますか。  時間がもったいないですから私が言いましょう。あとでひとつ御勉強いただきたいのですが。昭和二十七年の七月、日米合同委員会、ここで「日本国の民事裁判所は、合衆国軍隊の使用する区域又は施設内で検証することができる」と合意しておりますよ。この場合問題になりますのは、「当該区域又は施設の司令官は、裁判所の要求があるときは、これを許可し、かつ、護衛兵を附するものとする」、これも取りきめです。鶴崎さん、実はこれは裁判所の権利じゃないのです。だから米軍が許可をしなければ検証はできないのです。これが単なる一時使用であるとか、一時的にであるとかいうならば話はまた別になる。何年何月何日から何年何月何日までという、おおむね半年を出ないのですから。ところが、そうでない有事使用の形になってくると、そういう期限がつけられない。そうなると管理権という問題は、単にあなたのほうで簡単に——私がどういう問題提起をするかあなたは御存じないのだけれども、きょうはその問題を討議する時間がないから聞いておくだけにしようと思う。  あなたはさっき明確に、三条という管理権が二4(b)の場合でもある、こうおっしゃっているけれども、きょうはそこだけはっきりしておけばいいんですが、いま私が合意しているという点を指摘を申し上げましたが、間違いないでしょう。この点いかがですか。
  168. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 私が先ほどお答えしました趣旨は、二4(b)で米軍に施設区域の使用を一定の期間を限って認めている。その一定の期間を限って現実に米軍が使用しておる場合の管理権はどうかという問題につきましては、その間といえどもその管理権は日本側にある、こういうことをお答えしたわけでございます。
  169. 大出俊

    大出委員 だからそれは鶴崎さん、あなたの解釈であって、ここには「全条項が適用される」と書いてあるだけで何の取りきめもない。そうでしょう。アメリカ側が、いや地位協定三条も必要なんだ、適用されるんだと言ったら必要な条項は適用されることになっておるのだからいたしかたがない。ぎりぎりせっぱ詰まった裁判事項になってくると、法的な争いになると、「必要な全条項が適用される」と書いてある限りは、三条といえども、米軍が必要なんだと言ったら、これはそうならざるを得ぬ。じゃあなたは、何の根拠に基づいてその場合であっても管理権があると主張されるか、詳細に承りたい。
  170. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 先ほど申し上げましたように、二条四項(b)の場合には、米軍に提供しておる施設を、一時、日本国政府ないしは国民に、使用目的を阻害しない範囲内において使用を認めておる。二4(b)の場合は、逆に日本側が一時米軍に使用を認めるということで、この場合の管理権は日本側にあるということで、少なくも、使わしてない期間については日本側に管理権があるということは明確であります。したがって問題は、米軍が使用しておる期間がどうであるかという点にかかってくるわけでありますが、維持管理の責任というものは、やはり米軍の使用の期間も含めて日本側が実際に負わなければ、その期間だけ米側が維持管理の責任を負うということは実際問題としても不可能であると思います。たとえば東富士演習場のような場合、それでは米軍が来て使っておる間だけ維持管理の責任を米側が現実に負っておるかというと、これは負っていないということでございますから、やはり維持管理の責任というものは、当事者間の一方が一貫してになうということが現実的であり、また、そう解釈するほうがすなおではなかろうか、こういうふうに思います。
  171. 大出俊

    大出委員 現実的であり、すなおではなかろうかというのは、法律上の争いの答弁にはならない。あなたの主観によって、そのほうがすなおであろう、現実的であろうとおっしゃるだけであって、私があげましたこの中身というのは、必要な全条項を適用すると明確になっている。この中に三条が入らないのだという立証をあなたがされるなら、それなりの理由がなければならぬ。一言もそれにお触れにならない。私は二4(a)のことを聞いておるのではない。二4(a)は、管理権は向こうにあるのはあたりまえだ。二4(b)は、こちらに返ったから三条という管理権がこっちにあるはずだ。にもかかわらず、一定の期間という条件のもとにアメリカが使用する場合に、地位協定の必要な全条項を適用すると明確になっているから、全条項を適用する限りは、三条だって向こうが必要なら入る。それは入らないんだという実証をするならば、すなおであるとか、そういう主観じゃなしに、この全条項の中に三条だけは除くとどこかに書いてあれば別だ。ないでしょう。だからそれは答弁にならない。それをやっておりますと時間がなくなるので、御検討を願いたい。きのうきょう論争している問題じゃないから、ここで鶴崎さんを責めたってしょうがない。御検討いただければいい。そのうちに問題提起をいたします。  きょうはその中間を省略いたしまして、厚木の飛行場問題で実は承りたい。厚木の飛行場の滑走路を含む分というのは二4(b)ですか。
  172. 島田豊

    ○島田説明員 先月の二十五日の日米合同委員会で合意されましたその中には、飛行場の主要部分、つまり滑走路あるいはエプロン、こういうところが形態としては二4(b)、こういうことでございます。
  173. 大出俊

    大出委員 島田さん、何か、はっきりしたような、少しはっきりしないような御答弁だけれども、二4(b)ですね。いいのですね。
  174. 島田豊

    ○島田説明員 そういうことでございます。
  175. 大出俊

    大出委員 そういたしますと、二4(b)というのは、これはここに地図がございますけれども、アメリカが依然として管理権を持っていく地域というのは相当の部分残りますね。そういうことになりますと、つまり返ってくる面積、そして返らない面積、こうなるわけですね。ここに地図がございますが、これはお見えになると思うのですが、滑走路を含むこの部分は、二4(b)で自衛隊の管理権という形になる。依然として大きく残りますね。ということになりますと、これはアメリカ側は必要なわけですね。そうすると飛行機が飛んできた、アメリカの専管地域に入るということになると、ここは滑走路が実は一本しかないのですよ。そうすると常時この滑走路を使わなければ入れない。そうでしょう。アメリカ側の飛行機はいずれも、厚木飛行場と名がついているのですからここにおりる、この滑走路を使うということになると、二4(b)の「一定の期間」というのは、どういう取りきめをしようとお考えなんですか。詳細に聞きたい。
  176. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 厚木の飛行場につきましては、いまお話のように、滑走路、誘導路、エプロンの地区が、二4(b)で管理権が日米側にあるわけでございますが、これの使用の形態としましては、他に米軍の専用の施設があるということで、そこに出入りするつどにその飛行場部分を使うという形になろうかと思います。
  177. 大出俊

    大出委員 その取りきめは、どういう形式でどういう書類手続をおとりになるのですか。
  178. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 合同委員会で合意をしまして閣議決定をするということに相なります。
  179. 大出俊

    大出委員 まだいたしておりませんか。
  180. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 先月末にいたしております。
  181. 大出俊

    大出委員 そうすると、その中身は、どういう取りきめの、どういう書類になっておりますか。
  182. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 その使用転換部分につきましての使用目的としては、「滑走路分等を海上自衛隊の管轄管理する施設とし、合衆国軍隊に対しては地位協定第二条四項(b)の規定の適用のある施設及び区域として一時使用を認める。」こういう表現になっております。そして備考として、第一に「本件飛行場は米側航空機による米側専用区域への出入のため、及びそれに関連したその他の運航上の必要を満たすために使用される。」、二として「合衆国軍隊がその施設を使用している期間は、地位協定の必要な条項が適用される。」、こういうことになっております。
  183. 大出俊

    大出委員 「必要な」で「全」は入っておりませんか。
  184. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 これは「全」はございません。
  185. 大出俊

    大出委員 数あるこの取りきめの中にすべて「全」が入っていた。それだけは抜いた理由はどういうわけですか。ほかにありませんかね。新形式ですか。どういう意味ですか。——もう一ぺん言いましょう。ここに私二4(b)のケースは全部持っておりますが、実は「全」を取ったというのは、どういう理由で「全」を取ったのですか。
  186. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 全条項という表現をやめて、必要な条項という表現をしたのは、これが初めてのことでございます。
  187. 大出俊

    大出委員 何か意味があるのですか。初めてだといまおっしゃるでしょう。なぜ「全」を取って「必要」だけ入れたのですか。
  188. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 先ほど先生の御質問になったような疑問を生ずるおそれがあるということから、「必要な条項」という文言に改めたということでございます。
  189. 大出俊

    大出委員 わかりましたが、つまり「必要な」ということになりますと、この条項は必要だといえば、その取りきめはやはり適用されるということになる。どうせおやりになるなら、もう少しそこのところをうまくおやりになったらよかったと思うのですがね。これはまた論争になりますから。私は、その形でいまのようなお考えだと、地位協定違反の問題が出てくると思いますけれどもね。  そこで承りたいのですが、つまり「一定の期間」という解釈は、そうなると、いま鶴崎さんお答えの形の「一定の期間」というのは、具体的に言うとどういうことになるのですか。いつからいつまでか、「一定の期間」だから定めがなければなりませんよ。不特定じゃ一定にならぬ。一体この二条四項(b)に明確に書かれている「一定の期間」というのは、旧来これは例がありますけれども、何月何日から何月何日まで、ないしはいつからいつまでの間、どういう「一定の期間」になるのですか。
  190. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 この二4(b)に言う「一定の期間」ということばの解釈につきましては、前国会におきましても問題になりまして、当時の中曽根防衛庁長官からお答えをしておられるわけでございますが、まず第一の形としましては、年間何日以内というふうに日数を限定して提供する二4(b)の施設がございます。これは、先ほどお話に出ました長坂の小銃射撃場等は、そのケースでございます。それから、日本側と調整してそのつどに使用期間を定めて使うもの、これは東富士演習場のように、沖繩の米海兵隊の演習等をやる場合に、事前に自衛隊と演習計画を調整して、今回の演習はいつからいつまでというふうに相談をしてきめておるわけでございます。それから第三番目に、米軍の専用しておる施設区域に出入のたびに使用を認める。これは、いつからいつまでというふうにきめがたいケースでございますが、たとえば硫黄島の米軍の通信施設に出入りするたびに、現在自衛隊が管理しておる飛行場を利用するというような、米軍の専用施設に出入りするたびに使う、こういう形のものもあるわけでございます。  その他これらに準ずるものということで、大体この四つのタイプが二4(b)ということになっておりますが、いまお話しの厚木の飛行場につきましては、修理施設その他の米軍の専用施設がございます。そこに所用があって行くときに飛行場を利用するということで、この第三のタイプに入る、こういうふうに理解しております。
  191. 大出俊

    大出委員 硫黄島の例は、私が昨年暮れの十二月二十五日の質問のときに、その問題を取り上げた。だから私も硫黄島まで行ってきた。そうしたら、いや、そういうことになっていますということになった。ただあれは、あのときも私もちょっと触れましたが、小笠原返還協定というものが前提になっている。小笠原返還協定で「引き続き」ということで認めている。そうして暫定措置を国会でつくって、その中の条文に基づく政令で三年ないし五年ときめた。ロランCです。いまそのロランCの基地は、五年になっていて、まだたっていない。その他は三年になっている。だから、その取りきめの中身はここにございますけれども、つまり小笠原返還協定が前提になっておる。ちゃんと書いてある。今回の厚木とはケースが違う。私は、そういう便宜的解釈で、専管地域をわざわざ残して、その専管地域に、こちらが滑走路その他を管理し、二4(b)の出入権でございますというかっこうでやられたのでは、一体、アメリカの地位協定なのか、日本の地位協定なのかわからない。そんなことをやったら、それはアメリカの専管地域を少し残しておいて、そのためにといって、日本の自衛隊の飛行場はどこだって使える勘定になる、突き詰めていけば。これは当初の出発は外務省の考え始めたことのようだけれども、私は、地位協定の曲解もはなはだしい、これはたいへんなことになると思う。この点は、私は昨年暮れの十二月に、だから、五%か一〇%か厚木飛行場百六十万坪の中で専管地域を残す、返しておいてあとは二4(b)の硫黄島方式を使って出入権、こうなりはせぬかと言った。中曽根長官はあのとき否定された。しかし、知っていて聞いたんだということで、鶴崎さんのほうが、どうもそうのようだというお答えになった。そうだということになった。いまそれが出てきた、こういうわけだ。そういう意味では非常にやっていること自体が疑わしいですね。  そこで、私は、これも論争をあとに残しますが、おいでにならぬ議員さんなどいるから、いま眠っておられるけれども、どうも私もたいへん時間のロスをしておるので、ここのところは少し省いて急ぎますけれども、きょうは聞きたいことだけ聞かせていただきたい。  そこで、この厚木でございますけれども、まず、昨年十二月二十一日の日米安保協議委員会で発表された厚木米海軍の縮小計画。この十二月二十一日のときと七月一日で、移管をする飛行場は地元との合意によってあとからと、こうなっているわけですけれども、この計画変更、つまり中身が違うのですね。昨年の十二月と今回と違う。これはその後一体どういうことでこう変わったのですか。昨年十二月の発表と今回のものとたいへん違うのだけれども、どういうわけでこう違いましたのですか。これは鶴崎さんは四者会議をずっとやってこられたんだから、御存じのはずで、きまったんだから言ってください。
  192. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 昨年暮れの安保協議委員会できめました厚木に関する主要な事項としましては、まず第一に、飛行場部分は日本側に維持運営責任が移るということ。それから人員とか航空機の大部分が、海外といいますか、日本の国外に行ってしまう、こういうようなこと。しかも、その維持運営責任が移るのはことしの七月五日、こういうことでございまして、日本側に移るとされたものは、厚木のエアベース全体ではなくて、当時からエアフィールドといういわゆる限定された飛行場の部分であるということからいえば、今回閣議決定したものは、当時の考えと違ってはいない。それから若干飛行機が残る。特にEC121が残るということは、大部分の飛行機が引き揚げるということばの裏には、若干は残るんだということがございますので、そういう点からいっても、機種の問題はとにかくとして、若干の飛行機は残るということも当初から予定されておったということで、基本的な線においては変わりがない、こういうふうに考えております。
  193. 大出俊

    大出委員 私はさっきお断わりしましたように、時間がありませんので、事の真相を、どうなったかということを詳しく承っておきたいので、そういう意味で聞いているので、いま鶴崎さん御自分で言われたEC121、例の北朝鮮との間で問題になりました、撃ち落とされたEC121ですが、これは私が調査に参りましたときには、厚木の基地に三機ございました。だからEC121が残ることは、それがそのまま残る勘定になるんだ。いまそれを鶴崎さんのほうからおっしゃったわけですから、聞こうと思った点一つ省けたわけでありますが、しからばEC121が残った場合に、また問題が一つふえるわけでありまして、これは沖繩のSR71なども同じケースでありますけれども、EC121型というのは、必ずしも日本の領海を飛ぶ、領空を飛ぶというわけじゃありません。とにかく北朝鮮の領海で撃ち落とされた現実があるのですから、このEC121型はそこまで行くに違いない。それは当然でしょう。いかがでございますか。
  194. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 私がいまEC121が残ると申し上げたのは、ちょっと用語が適当でなかったかと思いますが、これは一応そこに常駐するものではない、日本の国外へ引き揚げるけれども、連絡、補給等の必要のたびにこちらに来るということで、ここに張りつけになっておるということではございませんので、訂正をいたしたいと思います。
  195. 大出俊

    大出委員 ちょっと待ってください。そう逃げてはいけませんよ。一ぺん公に答えているものを、私が次の問題を提起したら、あわてて言い直すなんてふざけた話はないじゃありませんか。あなたが明確にお答えになったのは、大部分の飛行機が厚木の飛行場からアメリカその他に行ってしまった、行ってしまうということの裏には、EC121型機といわれるもの数機が残るということなんです。あなたはみずからお答えになったじゃないですか。それを私が、EC121型というのはどういう飛行機かと聞いたら、あわてて前に言ったのは不適当だったという言い方はないでしょう。これは長官だってお聞きになっていらっしゃるでしょう。私の申し上げたいのは、だから事実を聞きたいと申し上げているので、残るのは残るでいい。そういうことを言っているわけじゃない。わけじゃないが、EC121型機が、期間はどれだけか知らぬ。それはアメリカの戦略的な配慮でしょうから聞かない。SR71だってマッハ三・三、二万メートルの高空を飛ぶわけでしょう。これだって、三千七百キロも航続距離のあるたいへん早いものが、三・三マッハもあるものが、日本の領海、領空なんということをいったってできっこない。だから沖繩で問題になるわけでしょう。何か知らぬが、それを領空にとめるような、現実に不可能なことを言う。それならSR71は要らない。同じ意味をEC121も持っているわけですよ。だから念を押したのだけれども、滑走路は一本しかない。それが二4(b)なんですから、管理権の所在もまた不明確となって問題が起きますけれども、あなたのおっしゃるように、自衛隊が管理権を持ち続けているならいるでいい。一時使用の間、あるいは、二4(b)だから一定の期間アメリカに移るのだというなら話は別だ。私と見解は違うけれども、あなたが固執されるように、つまり滑走路というものは今後七月一日以降永久に管理権は自衛隊にあるんだという御主張なんだから、そうだとすると管理責任は自衛隊にある。つまり滑走路もEC121が利用する。使わなければ飛べないんだから。そうでしょう。そのことを日本の自衛隊は認めることになる。日本の自衛隊が認めるというのは、意思を働かせるわけですから認めたことになる。EC121型が飛んで行く先が、日本の領海、領空ではない、北朝鮮に行った。一ぺん起こったんだから、再び起こらぬ限りもない。国際的トラブルが起こったら、今度は前のようにはいかない。日本の自衛隊が持っている管理権、そのもとにおける滑走路、厚木の飛行場、ここから飛んで行って国際的問題が起こったということになる。これは沖繩も同断であります。このことが、たいへんわれわれにとって、国民にとってよろしくないということを私どもは言っているわけです。現実に厚木の飛行場はそうなる。増原さん、この点はどうお考えになりますか。日本の自衛隊が管理権を持っている厚木の滑走路は一本しかないのですから、数機残ったEC121型機がこの滑走路を使うのは、日本の自衛隊がだめだと言えば使えない。防衛庁がだめだと言えば使えない。つまり飛んでいけない。飛んでいくということは、日本の自衛隊が認めた、日本の政府が認めたことになる。しかもこのEC121型というのは、国際的に有名なスパイ飛行機です。これは間違いない。すでに北朝鮮で落とされている。それを日本の政府の意思で認めたことになる。そのことは、日本国憲法に基づいて、先ほどお話の専守防衛とおっしゃっている。北朝鮮の領空に飛んで行って問題がすでに起こっている飛行機を、日本国憲法のもと、自衛隊の管理権が明確にあるのに飛ばせることを、あなたはお認めになりますか。これは政治的な問題ですから、増原長官に明確に聞いておきます。長い論争を私はずっと筋立てて聞いている。お聞きになっていてわからないことはないでしょう。その責任はあなたにあるのですから、お答えください。
  196. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 いまの問題は、基本的には安保条約の問題、安保条約に基づく、日本を基地として、日本の基地をどういうものが使用できるかという問題であると思うのです。おっしゃるとおり、日本の管理権のもとにある滑走路。管理権があるのですから、それを使って飛び立った。それは一時使用でありましても、日本がそれを認めて飛ばしたことになることは、おっしゃるとおりです。それが安保条約に基づく基地使用の解釈上どうなるかという問題であると思うのです。私は121というものは問題はちょっとよくわからぬところがありますから、検討させていただきたいと思います。
  197. 大出俊

    大出委員 安保条約の問題だということになりますと、安保条約に基づく地位協定でございますから、そうすると安保条約の本条約の条文との関連が出てくる、いまの御答弁ならば。そうしますと——久保さん、そんなに心配しなくてもいいですよ。新長官ですから、昔の警察予備隊長官時代、次長の時代もおありで御経験のある方でございます。先輩でございますから、決して新長官をねじふせようなんて考えているわけじゃないから御心配なく。  これは、いま増原さんのおっしゃっている趣旨からいきまして、安保条約ということになりますと、まず五条がございますね。五条でいう日米共同戦闘というような場合は、「日本の施政の下にある領域における」という明文がある。施政のもとにおける領域が攻撃されなければ、日本関係のないところの紛争について五条は適用されない。だから五条から出てくることはない。そうすると六条の問題がありますね。事前協議がございます。日本以外のどこかで何かあった。たとえば早い話が北朝鮮で戦争が起こりそうになった。これは全くの仮説です。前から方々で論争をしておりますけれども、戦争が起こった、起こる、起こる瞬間、起こりつつある、どこで一体安保条約が発動されるのかという問題。皆さんの答弁は、それまでの準備過程まで含めて——そうすると仮説を立てますが、北朝鮮で何か起こる、起こりそうである、偵察の必要がある。これは戦争の一環です。紛争が現に起こりそうである、あるいは起こりつつある、だからEC121が飛んでいく。あるいは起こった、起こってから飛んでいく、こういう形になる。これは六条です。日本の「施政の下にある領域」ではございませんから。安保条約六条に基づく岸・ハーター交換公文の事前協議の条項には、安保条約五条を除くと明確に定められてある。安保条約五条、つまり日本の施政のもとにおける領域で、日本あるいはアメリカの基地、これが攻撃されれば自動的に共同戦闘なんですが、これを除いていますから、つまり日本の施政のもとの領域にはないほかで起こった戦争にアメリカが日本の基地を使うという場合には事前協議になる。だからEC121型も、安保の問題だとおっしゃるなら、紛争が起こる、起こる可能性がある、起こりつつある、起こった、偵察が必要である、この時点であるとすると、これは事前協議です。そこまで行く飛行機なんですから、偵察機といえども戦争の一環です。それならば、厳密に解釈をして、つまり日本の領域以外に偵察に行く、ひとつ間違ったら戦闘行動。これは第五空軍の戦闘に関する規定がちゃんとある。交戦準則、戦争をする場合の準則がある。準則に、相手が攻撃してきた場合には直ちに撃ち落とせと書いてある。これは第五空軍傘下であればすべてそういう戦闘任務を持っているのですから、何が起こるかわからない。だから、そうしますと、安保条約の面から考えても、日本国憲法の面から考えても、日本の国の意思が働く。つまりさっきお話のとおりに、長官お認めのとおりに、管理権というものがあって認めることになるんだ。そこまで踏み込む日本の意思が働く。そういう形の中でEC121型が飛んでいく。つまり認めて飛んでいく。これが領空でないとなると、まずもってこれは、その事前に、日本国の専守防衛という立場からして認めるべきではない、こういう筋になる。安保条約の問題だと言えば五条か六条しかない。そういうことになると、いずれにしても、EC121型が厚木に残って、しかも管理権がこっちに返ってきて、そこから認められて飛んでいく、そんなばかなことを認める筋合いではない。その点、長官どうですか。
  198. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 いま私が申したのは、五条、六条の問題ということではなくて、正当に管理権を米軍が持ったとしても、日本における基地から飛び立って——これは自衛隊に管理権がなくとも、日本にある基地を使って米軍が飛んでいって、ほしいままな攻撃行為とか戦闘行為とか領空侵犯をやるとかというふうなことは、私は安保条約の解釈として認めることはできないのではないか、そういう問題として申し上げたのです。
  199. 大出俊

    大出委員 EC121型の偵察行為はどうなるのですか。
  200. 久保卓也

    ○久保説明員 整理いたしますと、こうだと思います。  EC121は、念のために申しますが、私の昔書いたメモを見ますと、EC121、七月十六日までグアムヘと書いてありますので、一応撤退しております。しかし数機が……。
  201. 大出俊

    大出委員 そんなことは答弁要りません。いまさら、そんなあなたの古いメモなんか持ち出されては迷惑千万だ。時間がない、時間がないという世の中に。長官がいまお話しになっている筋ならば、EC121を飛ばすわけにいかない。戦闘行動に類似する——偵察行動も戦闘行動の一環ですよ。だから、日本の自衛隊が管理権を持っている滑走路を使わすということになったら、あなた、重大な問題だ。たいへんな問題です。だから、あなたはそれをお認めにならぬという趣旨ならば、ならぬとおっしゃっていただけばいい。
  202. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 私も久しぶりに防衛庁に帰ってきたので、そういう点まだ少々勉強不足です。だからいま、ここで121の性能をあれし、その行動の実態を的確にお答えができないので、ちょっとこれは待っていただきたい。
  203. 大出俊

    大出委員 それじゃ次の機会に、これは委員長に申し上げておきますが、御検討いただいて長官にお答えいただければけっこうです。私の質問を保留さしていただきます。よろしゅうございますね。  時間がございませんから、きょうはなるべく論争を避けてまいりたいのでありますが、ところで私は、私流に言えば、いまのような関係があるので厚木基地の問題の扱いというのは非常にむずかしい。非常に危険なことになりかねない要素を反面持つということを心配をしているという点を、実は解明をしていただきたくて申し上げたわけであります。  次に、海上自衛隊の移駐計画なんですが、これは部隊編成計画を含む、こういうわけです。これからまた、この海上自衛隊の移駐計画から出てくる自衛隊の移駐は、これは任務という問題がございます。部隊編成をなさることですから。したがって、私ここで、この新しい部隊編成、つまり厚木の飛行場には自衛隊のどういうものが入って、どういう部隊を編成して何を目的にするのか、ここをひとつ明確に御答弁をいただきたいわけであります。
  204. 久保卓也

    ○久保説明員 四十六年度は、下総にあります第十四航空隊、これはS2Fという小型機と申しますかの航空隊でありますが、それと第六十一航空隊、これはYS11等でありますが、これが参ります。四十七年度には、第三航空隊、これはP2Vであります。それから、基地隊が編成されます四十八年度でさらに第五十一航空隊、これはP2Jの部隊でございますが、それとHSS2のヘリコプターの部隊、第百十一部隊であります。  以上が下総からこの厚木基地に移駐いたしますけれども、この任務としましては、当然哨戒の任務であります。したがいまして、日本の中部地域について一定の区域を定めて、有事の場合にこれが哨戒をする、常時においてはその哨戒のための訓練を行なうという任務を持っております。
  205. 大出俊

    大出委員 ここに実は一つ文書があるのですが、これは四十八年まで書いてないのです。おたくのほうの文書なんです。いまのお話では、四十八年にまたふえるのですね。となるとだいぶまた話が違うのですがね。先々ふやすときには協議するなんということを、いま地元との交渉の中ではやっているのですね。そうすると、なるほどこれでわかったのですが、二年間ぐらいしか責任が負えないなんということを陰では話に聞く。いまの表街道の話し合いというのはあとから言いますよ。四十六年、四十七年の計画しかないことになっている、これを見ますと。読みますが、厚木飛行場にかかわる海上自衛隊使用計画、こういうので、四十五年五月十七日、これは横浜の防衛施設局、これは横浜、現地なんですから間違いない。これを見ますとだいぶ話が違うのです。いまの第一次の四十六年、第十四航空隊、第六十一航空隊など約六百人。航空機機種、S2F1が十一機、YS11、これが原文でいくと三機、R4D6が一機、S2FU三機、計十八機、こうなっておるのです。なお、準備のため昭和四十六年六月一日、三百人を配置した。昭和四十七年度以降、航空集団司令部、第四航空群司令部、第三航空隊など司令部ができるのですね。いまおっしゃらぬけれども。約千五百人から二千人と書いてあるのですよ。だいぶ違うのです。航空機の機種P2V十六機、S2F十二機、YS11七機、S62、MSSですか、十三機、これはヘリコプターですね。計四十八機、こうなっている。これは昭和四十七年度以降。これはおたくのほうのです。おかしな話じゃないですか。
  206. 久保卓也

    ○久保説明員 同じことであります。私は、部隊といいますか、航空機を持っております部隊単位に申し上げましたが、その上部機構つまり外ワクをくくれば、いまおっしゃったような部隊になります。
  207. 大出俊

    大出委員 そうすると、これは航空集団司令部あるいは第四航空軍司令部などができるわけですな。そしてこのほかに四十二検査隊なんという話もありましたり、第一航空軍というのが、これは鹿児島県の鹿屋というのですか、上林山さんがいつか行ったところですな。有名なやつです。これは鹿屋から来る。ここらのところはちょっと疑問があるのですよ。いまのようなことがここに書いてないのですけれども、どうなんですか、あわせてひとつ……。
  208. 久保卓也

    ○久保説明員 いまちょっと部隊編成を持っておりませんので、先生の言われた部隊の下部機構を私は申し上げたわけでありますが、集団司令部も当然ございます。それから軍司令部も入ります。それを部隊単位に申し上げれば、いま私が詳しく申し上げたことで、言うなれば私は中身を申し上げたことになります。
  209. 大出俊

    大出委員 なるほど。ある記者の方が私に、どうも厚木というのは得がたい基地で、とにかく下総のほうも、成田空港もできるし使いづらくなる、何としてもほしいという自衛隊の執念めいたものがあって、これはかっての連合艦隊の航空部隊を、それこそ海軍航空隊のような中枢的な司令機関をつくりたいということを防衛庁の皆さんの中には考えているのだなという話を聞いて、そうかいと私は話を聞いていたのですが、まんざら夢のような話でもない。たいへんなことに将来なりそうな感じがするのであります、いまの話を聞いていますと。  そうなると、そこが中心基地になると思うのでありますが、これは将来ますますふえることはあっても減ることはちょっとないという感じがするのであります。四十八年までお話になりましたが、その辺までの計画で、それから先はないわけでありますか。それとも、それから先ますます充実をしていく、こう見てよろしいわけですか。
  210. 久保卓也

    ○久保説明員 一応四次防の段階ではこれで計画は終わっております。将来どうなるかわかりませんが、機数がふえましても、やはり飛行場の収容能力というものがありますので、そうむげにふえていくものでもございません。
  211. 大出俊

    大出委員 これは、いよいよ厚木は、あそこは修理能力もありまして、そうするとこれは、海上自衛隊の航空部隊の中心基地、しかも司令部強化。これは将来五次防でどういうことになるか、ちょっといまの段階で見当つきませんが、相当なものになりそうだという感じがいたします。きょうは実は実情だけ承っておきますから、四の五のは申しません。  次に、海上門衛隊と米軍の共同作戦の関係一つここで出てくるのです。これは海上哨戒、対潜哨戒、そこらが主たる任務で、ほかにはありませんですか。
  212. 久保卓也

    ○久保説明員 哨戒任務は、海上艦艇の哨戒及び、哨戒の中には潜水艦の哨戒も入ります。
  213. 大出俊

    大出委員 まあ、われわれ流に考えると、非常に危険な基地になりそうだという感じがいたしますが、時間がありませんので、先に進みます。  次に、概略でいいわけでありますけれども、民間航空機の乗り入れ計画、これは運輸省の方、住田さんお答えいただけますか。いまどうなっておりますか。
  214. 住田正二

    ○住田説明員 御承知のように、羽田が一ぱいになっておりまして、すでにその能力の限界を越えております。したがいまして、現在、四月以降の増便を押えている状況でございます。私どもといたしましては、ことしの七月からプロペラ機に限りまして、一日五十便程度厚木を使わせていただきたいという計画で、地元と話をしているわけでございます。
  215. 大出俊

    大出委員 これは前の議論がございまして、平林剛委員等が質問をいたしましたとき、佐藤さんと橋本登美三郎さんでありますが、このときの答弁は民間で使いたい、これが非常に強かった。そして青少年のボーイスカウト大会が箱根であるので、当面五十機ぐらいは使いたい。一応成田空港の開港までにするのだけれども、成田空港は、羽田があくとそれとの関係が出てくる。しかし一日十便ぐらいは残して使っていきたい、こういうお話が一つありました。そうして昭和五十年に羽田、成田がまた一ぱいになる。そうなったら、本格的に727だとかあるいは737だとかいうふうなものを使いたい、こういうふうな話が出てきている。私は実は航空局長に前に一ぺん詳しく聞いたのですけれども、一日三百便くらいの発着を考えたいということをあのときお答えになった。そうなると、ここのところ二、三年でやはり本格的な民間航空という問題が表に出てくる、こういうように考えなければいかぬような気がするのですが、住田さん、そこのところいかがですか。
  216. 住田正二

    ○住田説明員 先ほど一日五十便ということを申し上げたわけですが、成田の飛行場ができますと、大体年間五万回ぐらい羽田から成田に移るということで、その五万回が一ぱいになるには、いまのところ何年ぐらいかかるか正確には計算しておりませんけれども、大体五十年ぐらいまではもつのじゃないかという見通しでございます。したがいまして、羽田が一ばいになりますからそのあと厚木を使いたい。それが一日三百便というような大きな数字にはならないと思うのです。  なお、羽田のほうは、本年度から拡張の調査をいたしておりまして、できれば昭和五十二、三年ぐらいまでにもう一つ滑走路をつくりたいという計画がございます。それができますと、厚木のほうにそう移さなくてもいいのじゃないかという感じでございます。
  217. 大出俊

    大出委員 という意味で、三百便というのは多いということになるわけですね。しかし相当な数になることをやはり予測されているということですね。  そこで、運輸省のお考えはわかりましたが、この海上自衛隊の移駐に伴う地元対策というのが防衛庁の皆さんの側に一つありますね。ここでイーストキャンプの問題がございますが、このイーストキャンプの問題などは、防衛庁との関係で、大和市の中央公民館をつくりたいという地元の計画があって、これについても、土地を提供してくれれば建てるということのやりとりがあるように聞いているのです。私が直接聞いたのじゃありませんけれども、ここらのところの真偽のほどと、それからイーストキャンプの返還はどういう順序で返されていくのかという問題、ここらのところはどういうふうにお考えですか。
  218. 島田豊

    ○島田説明員 最初の問題は、民航の乗り入れだけでございませんで、海上自衛隊が共同使用します場合にも、これは地元の大和市及び綾瀬町からいろいろな条件、要望がございます。そこで、その問題についていま鋭意協議をいたしておるところでございますが、一つの問題が先ほどの民航の問題、それからイーストキャンプ、ピクニックエリアの返還あと地の利用問題、それからいろいろな周辺対策事業の問題、こういう問題でいま協議をいたしておるところでございます。  そこで、イーストキャンプにつきましては、これは先ほどの合同委員会におきまして、返還についての合意を得たわけでございます。イーストキャンプ、ピクニックエリア、そのうちのイーストキャンプにつきましては約四万二千平米、ピクニックエリアにつきましては二万七千平米、これは即時無条件返還ということで返還になるわけでございますが、その後につきましても、実測の手続等についていま準備中でございます。それ以外の部分につきましても、できる限りすみやかに両政府間で取りきめる、こういうことになっておりまして、原則的には全体を返還する、こういう話し合いになっております。
  219. 大出俊

    大出委員 運輸省のほうの関係だろうと思うのですが、中央公民館云々というのはどっちの関係ですか。
  220. 住田正二

    ○住田説明員 厚木飛行場は自衛隊が管理いたしておりますので、周辺の騒音防止事業は、自衛隊のほうにお願いするというたてまえになっておるわけでございます。しかしながら、民間が使いまして騒音防止を何もしないというわけにもまいらないということで、私のほうの関係の公益法人で航空公害防止協会というのがございますが、そこを指導いたしまして、いまお話の出ました公民館もその協会につくらせるということを考えております。
  221. 大出俊

    大出委員 だけれども金は国が出すのでしょう。というのは、私疑問を持っているのは、羽田にも何か妙なものがあるのですけれども。きのうも、運輸省の自動車局の関係で二十か幾つか、とんでもない法人がやたらできていて、何かやたら国の金が流れていくような感じのする、そこに古手官僚の皆さんがずらりお並びになっているという。これも、民間国際航空協会とかなんとかいう名前が一つ出てきているのですが、ここに補助金を出している。また整備法の四条の共同利用計画なんというのもある。これまた、どうもしっぽがどこにあるかわからぬようなことになりかねない気がする。こういうことが、そう次々にうまく許されて、地元が言うから民間航空をやりたいというので、適当に何か法人をこしらえて、そこへ金を流してやる。そうして、公民館をちゃんと建てて差し上げましたなんというので国の金を使う。こういうことをあっさりお考えになるというのは、どういう神経か私はわからぬのですけれども、これは法的に問題はないのですか。ないと言われれば調べたくなるのですけれどもね。
  222. 住田正二

    ○住田説明員 航空公害防止協会というのは、船舶振興会から補助金を受けておる団体でございまして、国のほうからは補助金は出しておりません。
  223. 大出俊

    大出委員 船舶振興会だの自転車振興会だの、これくらいとんでもないものはない。この間も参議院の内閣委員会で足鹿覺さんがやっておりましたが、まるっきり答弁にならぬ。私行って一時間半見ていたけれども、しどろもどろもしどろもどろ、ほんといって、あればよく警察が黙っていると思う。そういう船舶振興会なんというものを考えられたのでは、これはまるきりギャンブルを奨励するようなものになってしまいますね。そういうことでまたやろうなどということになるとすると、これはちょっと重大事件だと思う。穏やかでないです。そういうことを地元の方々が了解をするとすれば、これまたけしからぬと思う。私は、幾らおこられてもそういうまねはすべきでないというふうに実は思っている。住田さんに言うのではないですよ。私個人が考えれば、そういう薄ぎたない根性で民間飛行場をつくろうなどという考え方はやめていただきたいという気がする。だからだろうと思うのですが、これは知事さんに会って聞いたわけじゃないのでわかりませんけれども、四十六年七月二十二日——七月二十二日といいますと、きょうは二十三日だからきのう、神奈川県知事津田さんのお名前で、運輸大臣丹羽喬四郎さんあての、民間航空飛行場なんというものは断じてやめてくれと書いてあるのがここにございます。航空局長、飛行場部長さん等にきのうそう言ったら——森久保さんという副知事が行かれたのでしょう。そうしたら、自衛隊の飛行機を認めておいて何だという話になったという。これは決して自衛隊の飛行機を認めておるわけじゃないけれども、あなた方は何でもかんでも入れという、自衛隊の皆さんは。そういう関係にいまなっておるわけでございます。私は、実情がわかればわかるほど、どうもそう簡単にそうでございますかと言えない気がするのでありますが、時間の関係がありますから先へ進みます。  ここに昭和四十六年七月一日、今月の一日の横浜防衛施設局長さんから大和市長あての回答がある。これはいわゆる第三次案というのでしょう。これを見ると、中身は全く何もないような感じがするのですね。これの第一には、「滑走路の新設、延長等飛行場の拡張は行なわない。また、客観情勢に対応し、極力その整理縮小に努力する」、こういうふうに、全くそらぞらしく感じるのですけれども、書いてある。先ほど来の両省のお考えを聞いてみると、運輸省の皆さんも、羽田を拡張するから三百機の発着とまではいかぬけれども、相当なものだとおっしゃっている。防衛庁のほうは、これは五次防あたりがまだきまらないからだけれども、ますます昔の海軍航空隊の総本山でもその中にできてしまいそうな感じがする。そしてこっちのほうの文章には、「滑走路の新設、延長等飛行場の拡張は行なわない。また、客観情勢に対応し極力その整理縮小に努力する」——そんな客観情勢にないのでしょう、両方の省が担当しているのだから。そうでしょう。こういうことをおっしゃっておられたり、その次を見ますと、「自衛隊は厚木飛行場にターボジェット発動機をおもな動力とする航空機を配備しない」。これは陰の話ですと、鶴崎さんそこにおられるのでぐあいが悪いけれども、鶴崎さんは二、三年限度しか責任は持てないとおっしゃっておる。これはまた人づてなんですがね。もっとも鶴崎さんも、ぽんぽんぽんとおかわりになっておいでになりましたから、いつまでそうやっておられるかわかりませんから、おれのいるうちは、ぐらいのことになるのかもしれませんが、どうもこうなると、これもまた、つばをつけてものを考えて、この裏にあるものを見直さなければならぬ感じがする。  それから、時間がないから言ってしまいますけれども、その次に何と、「将来大幅な増強のため今回の自衛隊の使用計画を著しく変更し、当該飛行場内諸施設の新設もしくは拡張または隊員及び航空機の増強を大幅にはかるときは、あらかじめ大和市に協議する」。上のほうでは、さっき申し上げましたように、滑走路の新設だとか延長だとかいう拡張なんというのはやらないのだ、客観情勢に対応して整理縮小に努力するのだ、こういっておられて、下のほうへいきますと、「大幅な増強のため今回の自衛隊の使用計画を著しく変更し」——これを書く限りは、著しく変更する意思がなければ書く必要はない。長官そうでしょう。語るに落ちるもいいところです。「当該飛行場内諸施設の新設もしくは拡張または隊員及び航空機の増強を大幅にはかるときは」——はかる意思があるのでしょう。「あらかじめ大和市に協議する」。これは全くどういう神経で書いておるのかわからぬのですけれどもね。あまり長くなりますから、この辺でひとつ皆さんの心境を聞かせていただきたい。
  224. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 ただいまお話のありました、大幅な拡張というような場合には事前に地元に協議するという条項が入ったいきさつは、当初地元側から、何か建物、工作物等をつくる場合にはすべて事前に地元に協議をせよ、こういう条件が出てきたわけです。そうしますと、何かちょっとしたものをつくるのでも一々地元に相談をしなくちゃならないということになりますと、これは飛行場の運営上はなはだ困るということで、協議はしてもいいけれども、協議するならば、それはあくまでも大幅な場合に限るのだというようなことからその条項が入ったわけですが、私の個人的意見では、それはもう削除してもいいのではなかろうか、こういうふうに考えております。
  225. 大出俊

    大出委員 これは鶴崎さん、地元からそういう意見があったからといって、第二次案もここにありますけれども、こんなものは影も形もない。そうでしょう。これはいろいろな皆さんの側の計画があって、しかし何でもかんでも獲得したい、こうお考えになってやってきた。条件が出てきて話し合いになっていった。その過程で、皆さんのほうは本来こういう計画があるのだ。さっき久保さんだってお話しになっている。将来計画を持っている、ふえる——さっき詳細にお答えをいただこうかと思ったら、末端でしかお話しにならぬ。久保さんは、部隊編成を持っていないというのだけれども、下だけ申し上げたというけれども、久保さん、あれは上を言うのが肝心なんです。そうでしょう。司令部なんですから、規模がわかるわけですから。それをあなたはおっしゃらぬ。だから、おたくの文書を提示したら、間違っておる。間違ってないはずですよ、おたくの文書だから。そうでしょう。おたくは、どこからそんなものを抜かれたかといって、首をかしげられるかもしらぬけれども、ジャの道はヘビで、いろんな人がいるのだからしようがない。とうとうおたくのほうも、お認めにならなければしようがない。おたくのほうの文書なんだ。それに合わせると、この文書が出てこなければおかしいんだ。この文書が初めからなければおかしい。三次案なんて——もういいですよ、あなた心境をお答えになったんだから。私はきょうは実情がわかればいいと申し上げているのだから。しかしこれはたいへんなことです。自衛隊だって大幅な、飛行場だって大幅な——わざわざ「著しく変更し」なんだ。著しく変更する気があるからこうなる。  次にイーストキャンプですか、これはどうなるんですかね。いまの四万四千ですか、イーストキャンプというのは。ただで該当の市にくれるのですか。どうなんですか。これは売るのですか。
  226. 島田豊

    ○島田説明員 イーストキャンプにつきましては、大和市並びに綾瀬町といたしましては、地元で利用したいという希望を持っておりますが、何ぶんこれは大蔵省の財産になりますので、その点はこれから大蔵省との詰めということになると思います。
  227. 大出俊

    大出委員 そうなると、当面返ってくる四万四千でさえただの約束はいたしかねる。なぜならば大蔵省だから。大蔵省はただなんて言いっこないです。あのくらいがめつい省はないんだから。さいふのひもを締めたきりあけたことのないようなことを言う省なんだからしようがない。そうすると、とてもじゃないが、無償でなんて地元が言ったって、神奈川県知事が幾らそう叫んでみても、とんでもない話でございますということになってしまうのが落ちですね。ところが、ここに何か知らぬけれども、関係機関の折衝について防衛庁は積極的に努力するというのですが、そうすると、これは努力してみせるということですか。努力したができませんという先の展望があって努力してみせる、こういうわけですか。
  228. 島田豊

    ○島田説明員 極力努力するという趣旨でございます。その返還につきましては、日米間では大体合意を得ておりまして、ただ、その時期につきましていろいろ米側から条件がございますので、その条件を充足することによって返還になる。その時期についてはまだ末確定でございますが、そのあと地利用については、地元はいわゆる地元返還を強く要望しておられる。そこで大蔵省との協議の問題になりますが、われわれとしては、この実現に向かって最大の努力をしたい、こういう考えでございます。
  229. 大出俊

    大出委員 そうすると、米軍のほうと話がついているというのはどうです。
  230. 島田豊

    ○島田説明員 イーストキャンプ、ピクニックエリアの返還につきましては、一部は無条件返還、その他の残余の分につきましては、ある条件を充足することによって返還される、こういうことでございます。
  231. 大出俊

    大出委員 これだけの基地で、これは小さくすればこうなるのだけれども、四万四千というのはこれだけでしょう。そうでしょう、イーストキャンプといったって。それがこんなに飛び離れているのですから、返還についての合意はないとか、しないなんというのは、初めからおかしい。全然飛び離れてある。ここのワク、これだけで四万四千なんです。そのわずかこれだけのものが、これだけ長年地元の皆さんに迷惑をかけてきたわけですから。皆さん迷惑だとおっしゃらぬかもしらぬが、相手は米軍なんですから、まさに迷惑だと思う。それを、いまごろになって、これぐらいのことが無償でと言えない。極力努力してみせる——アメリカが返すと言ったら、これは国有財産なんですから、大蔵省の所管になるに違いない。大蔵省と話がついておりますというなら別ですよ。つきそうもない、こうお思いでしょう。それを、米軍と話がついていますなどということを言われても、極力努力してみせるということにしかならない。  次に、もうじき終わりになりますけれども、次の問題は、「飛行場の縮小の際には、大和市の計画実現に必要な土地などの利用または返還について積極的に努力し、または公共施設の設置に関し法令の範囲内で積極的に努力する」、こうある。これも時間を省きましてこっちから申し上げますが、おそらくこれは弾薬庫のところをさすのだと思うのです、将来返してもらえるときがあればと。これは弾薬庫のところの三角地がある。ここをさしておられるのだろうと思うのです。ここに三角地、これはお見えになるでしょう。こっちから見るなら、進入方向からすればこれですね。これもたいして意味のある問題じゃない。あればあると言っていただきたいのでありますが……。そうすると、この中身を見ていって、おまけにここには指定区域がありますね。転移表面と進入表面とあって、そこに指定区域がありますね。ここの問題に触れておられて、ここで何か格別に配意するというのですけれども、あそこは行ってごらんになればわかりますけれども、それほどたいした意味があるというところじゃない。ましてそのあとの、つまり都市計画の二百十号の新道の下のところですね。境橋地点というのですか、下境橋というのですか、ここのところと、それから飛行場周辺の路線については優先的に配慮する、こういうのです。この飛行場周辺の道路を優先的に配慮するというのですけれども、人はいないのですよ。ここは人がない。   〔委員長退席、塩谷委員長代理着席〕 島田さん行ってみればわかりますが、人はいないのです。人のいないところの道路を一生懸命つくってくれるというのですが、それは入った自衛隊にはたいへん都合がいいでしょう。人がいないところの路線を一生懸命整備してくれたって、これは本来飛行場です。そうすると、ますますもってこの三次案というのは、これでは、地元を納得せいといったって、しようがないでしょう。そこでいま四次案というわけです。きょう出すのかどうか知りませんけれども、四次案。この四次案のほう、これまたこの中に一つ大きな問題は、これは自衛隊だけじゃないのです。「自衛隊等」という「等」が入る。つまりこれは民航の拡大を含むのでしょう。先ほど住田さんが言っているやつが文書に出てきた。だから神奈川県知事のほうは気を使って、「等」をどうしても取りたいというわけだ。取れないという、この「等」は。これは、など論争になりまして、たいへんなことになります。つまり、こういう当たり方をしていきますと、私は、皆さんがどういうふうにお考えかということもほぼわかります。わかりますが、これは地元にとってはそう簡単に、それじゃよろしゅうございますと言えた筋合いのものじゃない。だから、ここでもう一ぺん念を押しますが、私がいまいろいろ申し上げたことに間違いがあればこの際直していただきたいのと、それからもう一つ、七月一日で移管をした、つまり返還を受けたのだが、さて地元が了解しなければ自衛隊を持っていくことはしない、こうなっていますね、とりあえず。ここのところについて、やはりそのぺ−スを守っておいでになるつもりかどうか、これを承っておきたいのです。無理なことをおやりになる気がありますか。
  232. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 ただいまお話しのように、いろいろの条件につきまして現在地元と折衝しておるわけでございますが、円満に話し合いがつくまでは、下総の航空基地から自衛隊機を持ってくることは、その間は差し控えたい、こういうふうに考えます。
  233. 大出俊

    大出委員 そうしますと、私がいま承ったように、このイーストキャンプの問題も、米軍が返還するということは言っているけれども、大蔵省財産になるから、だから無償だと言われたって、ちょっとそれは見通しとしてはわからない。困難である、しいて言えば。そういうことははっきりしておいてほしいのです。それから大幅に、もう取ってもいいとあなたはおっしゃるけれども、もう取ってもいいと言ったって、あなたはあと在任どのくらいですかと言っているのですけれども、おれがここにいる間ぐらいは何とかもつだろうということじゃ困る。ここに書いたとおりの腹はあるけれども、地元がうるさく言うならば抜いておこう——それでは困る。先々のトラブルの種になるだけです。つまり一般をごまかしたことになるからです。これだけは私は困る。だからそういう点はやはりはっきりしておいていただいて、真相を明らかにするものはして、将来こういうことになるのだということを明らかにして、その上で地元の了解を得るということに私は持っていっていただきたい。それをいろいろ隠してというのは小細工ですよ。それはよくないと思うのですが、いかがですか。
  234. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 先ほどお話のありました横浜の施設局長から地元に出した計画書でございますね。それは余すところなく示しておるわけです。決して隠しておらないと思うのですが、先ほど話が出ました、著しく変更するとか拡張するというのは、その既定計画以上に著しくやるような場合ということですが、私の判断では、そういうことは無用の文言ではなかろうか、こういうふうに解釈しております。
  235. 大出俊

    大出委員 時間の関係がありまして、たいへんどうも時間をとりましたが、ただし、これは坂村さんの責任が多分にございますので、御了解を願っておきたいと思います。  それからここに、昨日これもせっかく参りましたので、伊能先生おいでになりませんが、坂村先生おいでになりますから、御了解いただきたいのですが、私も地元から前々から、私も神奈川県の出身でございますので、お話がございまして、きのうたまたま内閣委員会が視察に参りました関係で、各党全部おいでいただいたわけでありますが、相模原地域における補給廠がございます。キャンプ渕野辺がございます。米陸軍の医療本部がございます。相模原の住宅地区がございます。キャンプ座間がございます。キャンプ座間の、つまり昔の相武台士官学校のございましたところ、三分の一、あれは座間町でございますけれども、三分の二は相模原市でございますから、そういう意味で、これは相模原市のほうに大きな問題がございます。ところで、これについてキャンプ渕野辺など——つまり、相模原にはおみやげがないからキャンプ渕野辺などを少しいじってなどという話が、ちらほら私の耳に入ったことがある。したがってこの地域全体を考えて、この五つの基地をどう動き、どういうふうに防衛庁はお考えになり、どういう処理を将来に向かってされようとなさっておるのか、時間がありませんから一括大づかみに私お聞きしたいのでありますが、その点についての御回答をいただきたいのであります。
  236. 島田豊

    ○島田説明員 相模原を中心にしまして、いま御指摘のような、米軍のいろいろな施設がございまして、座間につきましては、一部相模原に返還、こういう説もございましたので、実は相模原市のほうからも非常に強い返還についての御要望がございました。私どももいろいろ折衝いたしておりますけれども、いまのところキャンプ渕野辺をはじめといたしまして、まだ米側のほうから、この見通しについてはっきりしたものは来ておらないというのが現状でございます。実は私どもといたしましては、ただいま御指摘のような趣旨から、今後できるだけ米側と強力に折衝いたしまして、一部でもいいから早く返還が実現しますように努力したいという考えでおります。
  237. 大出俊

    大出委員 そういたしますと、キャンプ渕野辺ですか、これはこの委員会で電波障害地域の拡大十二カ所というのが楢崎質問で出まして、当時私も関連があっていろいろ御質問した経験がございますが、今日これは全くのたな上げになっている。瀬谷なんかにしても、この司令官の格下げもして通信施設だけになってしまっている。だから非常に大きく状況は変わっているのですね。変わっているのをいつまでもこのままにしておくわけにはいかないのでありまして、したがって、だんだんというのでなしに、キャンプ渕野辺を一つとらえて申し上げれば、これは一体どういうふうになるというお考えですか。またどうしろと言っておるのですか、米軍に対して。   〔塩谷委員長代理退席、委員長着席〕
  238. 島田豊

    ○島田説明員 米軍の施設の中で、機能を停止いたしましたとか、あるいは閉鎖になりましたようなところ、しかしそれが返還にならないという基地がかなりございます。そういう個所につきましては、われわれとしては早期返還ということを強く訴えておるわけでございますので、この通信基地につきましては、これは全国的にかなりの通信基地がございますが、通信系統については、米側としても非常に検討いたしておるということは申しておりますけれども、それについて具体的にどう措置をするかということについての回答に接しておりませんので、われわれとしても、これは渕野辺のみならず、いろいろな通信基地がございます。そういうところについても米側として早く計画を立てて、そして整理をするということを申し入れさしておりますが、この通信系統の検討というのがどうもまだ向こうで行なわれておる作業中かと思いますので、それについての結論を得ておらないという状況のようでございます。
  239. 大出俊

    大出委員 これで締めくくりにいたしますけれども、せっかくの地元の皆さんの御希望でございますから申し上げておきたいのでありますけれども、ここにありますように、たとえばキャンプ渕野辺、これはアメリカの国家安全保障局の在日太平洋事務所という通信施設のほかは、米軍人、軍属の家族住宅、馬場などのレジャー施設、これだけなのです。そこで、昭和四十二年の十二月の国会で問題になりました、さっき申し上げた電波障害制限区域の指定問題、これは情勢の変化によって永久的たな上げということですね。こんなものをほっておく筋合いないのです。これは当然早急に返還を求めるべきであり、かつ返還をさしておくべき筋合いのものだと考えるわけであります。それから相模原住宅地区なんかも、これは基地の一部返還ということだけでなしに、やはり相模原住宅地区というのは、あれだけ発展してきた相模原の町なのですから、あること自体たいへんに迷惑な話でありまして、したがってこれまた当然処理をしていただかなければならぬ筋合いなのであります。  そこで鶴崎さんに承りたいのですが、この相模原補給廠、これは在日米軍がいる限り何カ所か要ると思うのですが、きのうも行って見たのですが、あんなべらぼうに広いところをふざけた話でございましてね、遊んでいるような、最近はろくなものも扱っていないところが何でこんな広いところを占領しているんだということを、だれが行ったって感ずる。これはいままで交渉したことはないのですか。それからいま申し上げたキャンプ渕野辺、それから医療本部、それから住宅地区、キャンプ座間——座間は、おたくのほうは片っ方だけと言うのですけれども、これは交渉した経過はないのですか最近は。
  240. 島田豊

    ○島田説明員 先ほど申しましたように、遊休施設と思われるところ、あるいはすでに機能を閉鎖しておると思われるところ、そのようなところにつきましては、われわれとしては極力返還要求をいたしておるわけでございます。先ほど申しましたように、今日の段階でまだ向こうから措置についての意見が参っておらないということであります。
  241. 大出俊

    大出委員 では、遊休施設については返還せよ、こう言っている。そしてキャンプ座間はいま話がもめておりますから、座間町のほうは御存じのとおりのことでございますけれども、ほかのほうのは自衛隊との関連というものは共同使用その他含めてございますか、将来。
  242. 鶴崎敏

    ○鶴崎説明員 ただいまのところ、相模原市内の米軍施設について、将来自衛隊が共同使用するというような話は出ておりません。
  243. 大出俊

    大出委員 それでは、先ほど増原さんからお話がございましたEC121型系統に関連をする問題、これは長官のほうであとから御検討くださるということでございますから、またあらためてお伺いいたしますけれども、この基地の返還ということについては、住民運動も起こったり、それなりの団体もできたり、厚木の周辺などはもう十年余になるのですね。爆音防止期成同盟などというものがございましたり、いろいろするわけでございまして、だから一日も早く返還をといって長年やってきた中で、都市化現象をかぶってくる。相模原なんかもたいへんな都市化現象でございます。そういう中で今回やっと返ってくるとなったら、それが自衛隊との共同使用である。米軍側にとっては有事再使用である。あるいは、騒音はむしろ民間機のほうが高いというふうに考えなければなりませんが、そういう民間の飛行場用地ということで問題が提起されてくる。だから、住民の皆さんにすると耐えられぬところがあるのですね。きのうもそういう話は何人にも聞きましたけれども、地元が納得しないという限りは、厚木なんかもそうでございますけれども、知事さんはじめ不賛成だと言っているわけでございますから、そこらのところは慎重にひとつお考えをいただきたい。私の自論からすれば、こういう都市近郊の基地というものはあっさり市民、県民、国民のために開放する、返す、これが筋だと思うのですけれども、そういうことを基本にお考えをいただきたい。まさに手を変え品を変え、あめとむちと工作をしながらという行き方が過ぎますと暴発をしますので、そこらのところは十分にひとつ御配慮をいただきたいと思うのでございます。  新長官でございましたけれども、ほんとうは少し防衛の基本に触れて論議をしたいと思ったのでございますけれども、時間その他の関係ございましたので、地元の問題、当面の問題に限りましたけれども、今後ひとつよろしくお願いいたします。
  244. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 基地が返ってくる問題についての包括的な御要望、御意見、ごもっともと存じます。ただ、自衛隊が配備をされて自衛力を整備をしていくという問題も、私どもの立場におきましては、どうしてもやっていかなければならぬことであるということでありまするので、大出委員立場では、手を変え品を変えまことにしつこいというふうにおっしゃるのでございまするが、われわれとしてはいろいろ手を尽くして御了解を得てやりたいということなのでありまして、いやしくも緊急の要がない、ことにいわんや不要のものであるというものについて、そういうことをやろうとは絶対に考えておりません。十分御要望の御趣旨に沿うように努力をしてまいります。
  245. 大出俊

    大出委員 外務省きょうお見えいただいたのですが、たいへんお待たせしてすみません。最後で恐縮でございますが、エンタープライズの第七艦隊配属の問題でございますね。そしていま横須賀に原子力潜水艦一隻入っているのですが、ペインブリッジ、フリゲート艦ですね。これがアベック寄港になって来ておるということで、おまけに最近の神奈川の状況からすると、ずいぶんたくさん横須賀に次々と入っているのですね。ここにございますが、航空母艦がレインジャー、ミッドウエー、サイコンデルカー。これは航空母艦でございますが、このほかにもう一つバッファーという非常に新しい原子力潜水艦、これが相次いで全部入ってきておる。そこへベインブリッジなどの寄港でございますが、作戦任務についておる第七艦隊に配属されたエンタープライズは、かつて佐世保に来たときも第七艦隊に配属されて来たわけであります。いまこれは全く米軍の町でございますから、うわさが飛ぶのも早いのでございますけれども、いよいよ来るのだということ、横須賀市当局者以下皆さんが、実はそういう腹をくくらざるを得ない、こういうところに来ておるわけでありまして、たいへん実は心配で、諸所の方面からの集会その他もいま用意を漸次されつつあって、ある意味では異常な雰囲気がございます。これは放任できませんので、たいへんな不安が広がっておりますから、その辺のところ、エンタープライズはいつごろ、どう入ってくるのかという点、入る場合には当然認めるのかどうかという点、そこらのところを外務省の側からはっきりさせていただきたいのです。
  246. 橘正忠

    ○橘説明員 エンタープライズは七月の上旬に第七艦隊に配属になったのは事実のようでございます。ただ、ただいまのところ、公式にも非公式にもエンタープライズが横須賀に寄港するということは米側から聞いておりません。御存じのとおり、エンタープライズは原子力を推進力とする船でございますから、条約上は日本に寄港することは問題がない。ただ御存じのとおり過去に寄港したことがございます。そのときにはいろいろ安全上の問題も考慮して寄港を認めたわけでございます。ただいまのところ、寄港するという話がございませんので、もし寄港の要請があったらどうなるということはまだ仮定の問題でございますが、そのときは、いろいろの状況を考えてどうするかをきめたいと思っております。
  247. 大出俊

    大出委員 前回のときもそうなんですがね。エンタープライズが入ってくるというのは、公式ということになりますとそれなりに手続が要りますが、やはり非公式には佐世保に来るのだな、こういうのは早くからたくさん情報が入ってくる。だからこれは公式、公式と言ってないで——公式の場合はいつものようなことになる。横須賀のSRFではありませんけれども、あんなばかげた公式があっては困る。だから、第七艦隊もますますもってこれは居すわるのだなという空気も、七艦の事情からこまかに申し上げるときりがありませんが、明確に目に見える、そういう状況なんですからね。そこらのところはやはり的確に、外務省もまた防衛庁当局も、とらえるものはとらえていただきませんと、前のSRFみたいなことになっては困る。増原さん、この間横須賀に視察にお見えになった。これは例の昭和二十五年の旧軍港市転換法の意に沿わないようなことはしないとおっしゃっておられる。行ってごらんになっているのですから、そこらのところはもう少しこまかく気を使ってほしいのですよ。全くの気配もないのですか。何にもないですか。
  248. 橘正忠

    ○橘説明員 ただいま申し上げましたとおり、政府としては、公式にも、それからまた非公式にも、まだ寄港するという話は米側から全く聞いておりませんでございます。
  249. 伊能繁次郎

    伊能委員長 木原実君。
  250. 木原実

    木原委員 新長官就任早々、国の防衛に関する基本的な問題で、たいへん大きな問題が相次いで起こっておるように考えるわけであります。きょうは一つ一つ御見解をお伺いしたいところなんですけれども、残念ながら時間がありません。端的に二、三の問題をお伺いをし、あわせて先般の海上自衛隊の事故についてお伺いをいたしたいと思います。  先般自衛隊の沖繩配備について、何かアメリカ側との取りきめが行なわれたという報道がありましたが、御存じのように、自衛隊の現地配備については、かねてから自衛隊のほうで計画があるのは、私どものほうで承知をいたしております。しかしながら、御存じのように地元では、自衛隊の配備について非常に大きな疑問と、それからまた反対の声が上がっておる。しかも先般、琉球政府では屋良主席が、公式に自衛隊の配備については反対の意思表示も行なわれておる。こういう情勢があったのは御案内のとおりだと思うのです。しかし報道されました文章によりますと、アメリカとの間には取りきめが行なわれた、こういう姿なんですが、あの取りきめに従って、これはどうしても反対があってもやっていくという御決心でございますか。
  251. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 沖繩返還をされるということは、私どもは国民みなの希望であると思います。私どもも沖繩が早く返ってきてもらいたい。返ってきますると、申すまでもなく、わが日本の国で防衛、自衛の措置をとらなければならないということでございまして、適当な陸海空自衛隊の配備をするということは、私はどうしても必要であるというふうに考えるのでございまして、これは必要でないものを配備をするのではございませんので、あくまでも地元の了解を得、よくお話をし、事情をわかってもらい、了解を得て配備をいたしたい、こういうように考えます。
  252. 木原実

    木原委員 先ほども地元との関係の話が出ましたけれども、明らかにいままでそういう意思表示があった、必要だから配備をされるというのは、これは政府のほうのお考えですけれども、しかし、御案内のように、沖繩返還に伴ってまだ未処理のさまざまな問題がある。その中で、沖繩の現地の人たちが、一連の政府の措置に対して、いまだに大きな不満を持っておるのは、県民不在だ。返還についてさえも、主要な点については、ほとんど多くの犠牲をこうむった地元の人たちの声を聞かないで、頭越しの流行時代ですけれども、頭越しにいつもやられておる、そういう問題があったと思うのですね。ですから、了解を求めたいというならば、いままでもしかるべき措置があってしかるべきだと思うのですけれども、しかし、これから先も、何かもう一方的にアメリカとの間に話し合いを行ない、取りきめを行なって、そしてやるんだ、これから了解をとるんだ、こういう姿だと思うんですね。これじゃ、配備をしましても、現地の人たちの協力は得られないんじゃないかと私は思うのです。むしろ自衛隊のために私は惜しむ。了解を取りつけるためにどういう努力をなさるおつもりですか、その辺をひとつお聞かせを願いたい。
  253. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 了解を求めるの方法は、それぞれの事案に従いまして、それにふさわしい了解の得方をしなければならぬのでありまして、一言にしておおうというわけにはまいりません。やはりよく事情をお話をして、それぞれ関係の地元の了解を得ると申し上げるよりほかありません。  繰り返して申し上げるようですけれども、自衛隊の配備というものを私どもがするのは、これは反対に考えてみまして、沖繩を返してもらいたいということで返してもらった、自衛隊は配備しない、沖繩については自衛の配備をしないということになりますと、なぜしないかと言われたときには、もう全く申しようがない。私どもとしては、日本返還をされますれば、日本の手で自衛、防衛の措置を講じなければならぬ。適当な自衛隊の配備をしなければならぬ。アメリカと相談をして、地元の意思を何も聞かないでやった——アメリカと取りきめを結びましたのは、アメリカがいままで施政権者としてあそこでいわゆる防衛の措置をやっておりますので、それが日本の自衛隊の手に取ってかわるという、その間の調整をするための取りきめをしたということでございます。アメリカの話だけを聞いて、地元には了解なしにやるんだという、そういうたてまえの取りきめではございません。地元の了解を得まして、ぜひ了解をしてもらって配備をしたい、こう考えるわけでございます。
  254. 木原実

    木原委員 きょうは時間がありませんので、なぜ必要かどうかというふうな、それにかかわる一連の問題については、きょうは論議はいたしません。ただ、私どもがたいへん不満に思うことは、アメリカとの間にはかなり具体的な取りきめが行なわれた。しかし、明らかに反対の声が上がっておる地元に対しては、いまだ何ら事前の了解、事前の努力も行なわれていない。押しつけです、これは。そういうことで、将来配備をされるかもしれませんけれども、そういう自衛隊の機能が果たせるのかどうかということさえ心配なんです。そういう押しつけを、しかも沖繩の問題については、返還協定その他をめぐってまだ一連の政治的な問題が残っておる。特に現地の関係の中で残っておるのは御案内のとおりと思うのです。そういう状況の中で、アメリカとの間の話はきめたわけです。それなのに、地元との間には事前の何らの協議といいますか、了解もなかった。そうなりますと、結局、押しつけでやることに私はなると思う。こういう運営をやるのならば、私は、先が思いやられると思うのです。そういうことです。ですから、新長官が了解を求められるというならば、了解を求めるどういう——それぞれの機関であるいはそれぞれの努力をやるという、それはそうでしょう。そうでしょうけれども、よほどの努力がございませんと、世論調査その他を見てみますと、県民の過半数が自衛隊の配備に対して反対をしておる。しかも県民を代表する主席が公式の場で反対の意思表示をしておる、そういう姿なんです。ですから、これは一言ではおおいがたいということをおっしゃいますけれども、よほどの努力をされるか、あるいはまた、計画についての重要な変更その他を含めて考え直してもらいませんと、このままでは、私どももやはり無理押しだという印象をぬぐいがたい、そういう感じを持っておるわけであります。いかがでしょう。
  255. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 繰り返すようですけれども、アメリカとは話をして取りきめをして、地元にはそれから話をするという、これはアメリカとは返還をまず話をして、その返還に伴うこまかい手続の取りきめというものがこの間の取りきめであります。先に話をしてどうこうという、そういう性質のものではない。この返還に関する話、取りきめをした。ですから、地元に対しましては、そういう返還取りきめに即応をしたお話し合いをこれから一生懸命やっていく。御理解を得るための努力も、おっしゃるとおり、なかなか容易でないことは十分承知しております。あらゆる方法、あらゆる熱意を込めまして、その点を話し合いをしてまいりたい。その点ひとつどうぞよく御協力を私お願いをしたいと申し上げたいのでございます。
  256. 木原実

    木原委員 この問題につきましては、また別の機会に少し突っ込んだ議論をしなければならぬと思いますので……。  もう一つお伺いをいたしたいと思うのですが、御承知のように、ニクソン大統領の訪中の問題その他がありまして、たいへんあわただしい動きがあります。あなたの前任者の中曽根さんは、国の防衛は外交が優先をするんだ、こういうような意味のことを繰り返しおっしゃいました。私は、これからの国の安全をめぐる問題が、外交との関連中でたいへん大きく変わっていこうという段階にあると思うのです。しかも自衛隊にしますれば、来年度から四次防を発足させるというふうな、これまた一つの大きな転機を求めているわけですね。そういう状況の中で、一体新長官は、外交というものと、それからこの自衛力の増強いうこと、その辺のことについて何か御見解をお持ちでありますか、ひとつ所見を承っておきたいと思うのです。
  257. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 自衛隊を設け、これを整備するということは、平和を確保する、安全を確保するということをよく申しますが、これは安全で平和を確保するということに目的があるわけでございます。日本の国の安全、これはアジアの平和、世界の平和ということになるわけでございます。そういうものを確保するためには、いわゆる自衛隊の整備をするということ以上に、基本的には、やはり外交によって平和を確保するの道を講じていく、緊張緩和の方途を講じていくということであることは、私も中曽根長官と同意見でございます。そういう基本的な考え方に沿って自衛隊の整備という問題を実現をしてまいりたい、こう考えております。
  258. 木原実

    木原委員 伺いたいのは、外交のあり方によって当然防衛政策に影響を受けるとは思うのですけれども、御承知のように、予想されるこれからの動きの中で、たとえば中国と米国との間に修好関係が回復をする、あるいはまたそれにつれてわが国の対中国政策も転機を求めようとしておる、そういう状況があるわけです。私自身は、自衛隊を増強するよりも中国との間に安定した回復を求めるほうが、国の安全という立場からすればはるかに有効な措置だ、こういう考え方を持つ一人なんですけれども、たとえばそういう大きな変化の中で平和への努力が積み重ねられておる。そうなりますと、当然、自衛力の増強、あるいはまた日本の武力の増強ということについても、それに従って影響を受ける立場ではないのか、こういう感じがするわけなんです。その点についてたいへん大きな変化の一歩を歩み出そうとするこの段階で、近い将来にわたって防衛政策が影響を受けるとお考えですか、いかがですか。
  259. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 ニクソン大統領の訪中決定というふうなたいへんいい事実、ニュースがあるのでございます。申し上げたとおり、われわれは、自衛隊を整備することは、平和を確保し日本の安全を確保することである、アジアにおける緊張緩和ということが、ニクソン大統領の訪中ということで実現されそうな状態ということは、たいへんにいい、ありがたいことであると思います。したがって、そういう緊張緩和の実態が実現をされるということが、日本防衛、自衛隊の整備ということに大きい意味で影響を持ってくるのは当然であります。ただ、いま私どもが策定をいたし皆ささま方の御承認を得ようと思っておる四次防は、いまの自衛隊というものが、自主防衛、専守防衛という立場に立ちまして考えて、まだまだたいへん不十分であるというところを整備したいという、そういう意味の四次防の性格でございまして、緊張緩和という非常にありがたい見通しが立っておる中にありまして、いまの四次防というものを大きく検討し修正をする、まだそういう性格のものにはなっていない。この四次防は大体いまのような形——これはまだ決定をいたしたものではございませんが、一番大事な大蔵省との接触が残っております。私どものいまの構想そのままでまいるわけにはまずまいらぬと思いますが、大体あの構想というものは、そういう意味の自衛隊の自衛力の整備、自主防衛という立場における整備でございます。アジアにおける緊張の緩和、米中関係がたいへん好転をするということを十分願いまして、しかしこの計画は大体こうした形で整備、実現をさしてもらいたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  260. 木原実

    木原委員 そうしますと、極東の情勢がかりに好転をしていくという情勢があっても、四次防については修正というようなことはあり得ない、こういうふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  261. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 申し上げたとおり、大体四次防はいまの形で整備、実現をいたしてまいりたい、こう考えております。
  262. 木原実

    木原委員 これはたいへん大きな問題を含んでいると私は思います。きょうの時間だけではちょっと論議をし尽くせないと思いますので、はんぱな議論はやめたいと思いますけれども、ただ私ども疑問に思いますことは、四次防はいわば専守防衛の整備の段階だ、こうおっしゃるわけなんですけれども、しかし整備の方向についてはたいへんな予算も使うわけですし、私どもも、かねていろいろ疑問を提出しておるわけなんです。しかも四次防が発足するという状況と照らして、周辺国の中ですでに軍国主義云々というような非難のあることも、御案内のとおりなんです。  それからやはり私どもが一番心配をいたしますのは、わが国を取り巻く国の安全にかかわるような諸情勢の変化にかかわらず、何か自衛隊は整備だとか充実だとか、こういう名目で、ともかく大きいほど、強いほどいいのだということでどんどん拡張の道を歩いている。これではかねて指摘しているように、一体とどまるところはどこだという心配が絶えずあるわけです。何回ただしましても、自衛力を増強させていく歯どめになる策が見えないという不安を絶えずわれわれは持っている。四次防に次いで五次防がある。既定の事実のような形でそれが語られる姿がある。ですから、国民が平和を願って、できることならば武力などというものは要らないのだという考え方で願っているのですけれども、周辺がいろいろな形で落ちついてきても、なおかつ国力に見合った自衛力の増強だというようなことで、これはこれだけで一人歩きをしてどんどん自衛力が増強されていく、そういう姿というのは、まさに軍国主義への道じゃないかという感じがするわけです。周辺の政治情勢やあるいは武力、対応すべきさまざまな問題がどうであっても、一たび歩み出しておる自衛隊の増強への努力というものは、それ自体が自己目的になって増強の道を歩いていく姿がある。これでは私どもはたいへん大きな疑問を抱かざるを得ない。何のための武力増強だ、こういう感じがするわけであります。  きょうの議論ではありませんけれども、四次防にしましても、究極のところ、なぜ武力を増強するのかという具体的な論拠というものは必ずしも明らかではない。ですからやはり、一定の武力は必要だというような抽象的なことでしかわれわれと議論ができない。そういう問題が残っているわけです。しかも、ともかく訪中の結果がどうなるかわかりませんけれども、中国との間の安定した姿というものが、アメリカの中でも努力が行なわれ始めた。佐藤内閣を除いて、議会の中でも、わが国の中でも、ともかくやはり一つの安定した姿を求めようとする努力が急速に盛り上がっておる。これはいずれも平和を願う努力です。そういう努力が何か明るい見通しを持ちそうだ。ベトナム戦争も終結が近いのではないか、こういう状態の中で、相変わらずそれにかかわりなく、ともかく自衛隊の整備だ、充実だ、専守防衛だという名目のもとにどんどん進んでいく、これでは五兆八千億の納税者のさいふのひもを引くために、われわれとしてははなはだ逡巡せざるを得ないわけです。そういう問題が、私どもとしてはいま出されているのではないかと思うのです。  ですから長官は、そうであっても、四次防は性格が違うのだから修正なしにやっていきたいという御意見でございましたけれども、簡単にそうおっしゃってよろしいものかどうか。せめて四次防については、あるいは五次防については、長期の展望の中では、こういう状況が来たら自衛隊も縮小の方向に向かって努力をするというような発想はできないものですか。
  263. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 私の申し方が舌足らずであったので、いま申されたような受け取り方をされたのかとも思いますが、私は、申しましたように、今度のニクソン大統領の訪中決定というような、これからの一連の予想される動きというものがたいへんありがたいものであって、それによってりっぱに米中関係改善され、アジアの緊張が緩和されることを心から願っております。そうすることが、国の平和、安全を保つ一番いい道でございますから。しかし、そういうことに進む、予想される緊張緩和という状態を考えてみましても、そういう場合になると一番いいのは、各国、全世界が武力というものをなくする、大きく縮小、削減をするという実態が出てくることになることが、一番ありがたいことでございます。  しかし、私どもの見るところでは、今度の訪中によりまして米中関係改善なりアジアの緊張緩和はできるであろう、それをまた強く望んでおりますが、できた段階における平和保持の具体的な手段としての各国の自衛力というようなものは、まだまだ相当程度に保持される形において、残念ながらこの平和が維持され、保たれるということを私は考えます。私は、そういう状態の改善にかかわらず申したのでは決してない。今度の自衛隊の四次防計画というものは、日本防衛日本の平和保持というたてまえで考えまして、まだこの整備をすべき段階の程度である。改善される状態を予想しても、この程度の整備というものが必要であろうというたてまえで、この大なる検討、修正ということなしに実現をさせてもらいたい、こう申しておるのでありまして、緊張緩和というたいへんいい情勢にかかわらずということで申したのでは絶対ありません。その点は誤解のないように御了解を得たいと思います。
  264. 木原実

    木原委員 一般的な話は別の機会にひとつ譲りたいと思います。  もう一つだけ聞きますけれども、自衛隊が前提にいたしておりますたとえばアメリカの核抑止力、こういうものについてこれから先、とことんまで信頼ができるとお考えですか。
  265. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 現在の米国の核抑止力というもの、核の力関係というものは、御承知のとおりだんだんバランスが変わってきております。きわめて優勢な米国とソ連との核の関係というものがだんだん接近をして、今後数年にしてパリティといいますか、ほとんど同等のものになろうとしておる状況、そして相当有力な核の力が中国に実現しようとしておるということでございます。しかし、そういうことを考えましても、なお米国の核の抑止力というものがまだまだ相当の期間は有効に働くであろう、そうしてまた有効に働くように保持することを、米国としてはりっぱにつとめるということをこの間レアード国防長官も申しておるわけでございます。これはたいへんむずかしい問題とは思いまするが、私どもは、相当期間にわたって米国の核抑止力というものは、ソ連、中共等を考えましてまだ保持されるものというふうに考えております。
  266. 木原実

    木原委員 大事なことなので、これもまた議論は先に保留したいと思いますけれども、一つだけ。  レアードさんがどうおっしゃったか知りませんけれども、わが国とのかかわり合いの中で、アメリカの核抑止力に対してこれから先なお長期にわたって信頼を保持される、そういう根拠が何かおありですか。ちょっと質問がおかしいですけれども、ほんとうに信用していいのですかね。どうですか。
  267. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 その意味は、米国というものは信頼していいのかという意味のように受け取りましたが、米国の核ではなくて、米国の意思を、威力というものを信頼していいかというふうに言われたように思います。その意味では私どもは、米国との相互信頼、米国の意図を信頼してまいる、信頼してよろしいというふうに考えております。
  268. 木原実

    木原委員 時間がございませんので一般論はこれでやめまして、先般の事故について、たいへん不幸な事故ということなんですけれども、ひとつ簡潔に御報告いただきたいと思います。
  269. 久保卓也

    ○久保説明員 下総基地の所属でありますP2V、乗員は十一名でございましたが、七月十五日夕方五時五十四分、下総を離陸して洋上で訓練をしておりました。それで午前三時四十分ごろに、下総基地の北方約百五十メートルのところの松の木に翼のチップタンク、増槽と申しますか、燃料タンクをぶつけまして、それが落下したわけであります。そこでバランスをくずしますので、他方の翼端にあるタンクを落下しなければなりませんが、陸上ではあぶないと思って海上に出たようであります。そして海上に出ましたところが、下総基地の視界が悪くなりました旨言ってまいって、どこか視程のよい場所に向かいたいという連絡があったようであります。そこで、下総基地から浜松の基地に行けということを指示いたしましたが、四時十五分に通信が途絶をした、そしてちょうどそのころに、嶺岡山にあるレーダーサイトでもその飛行機をレーダーから見失っておる、エコーが消えたということでありまして、その後捜索を進めておりますが、今日まで遺体を六体収容いたしておりますが、原因はまだわかっておりません。  いままでのところですと、飛行機が飛行場に入ってくるときには、GCAといいまして、地上からの誘導をするわけでありますが、それが通常百メートルのところで誘導をやめまして、あとは視認、目でもって滑走路に入ってまいります。ところが、その線の上には松は出てこないわけです。松にぶつかったということは、その百メートルのところから急に高度を落としてぶつかったように思いますので、これは機械が原因でありますのか、あるいは操縦の不手ぎわでありますのか、これはもう少し機械を海中から収集してみないとわからない、そういうような状況であります。
  270. 木原実

    木原委員 私も当日現地へ参りまして、二、三関係者の意見も聞いたり現地を見ましたけれども、何かたいへん疑問の多い事故のような感じがします。おっしゃったように、おそらく間接の原因は、降下をするときの松の木にひっかかった状態だと思うのです。ところが、この松の木は十五メートルぐらいとおっしゃいました。民家の真上ですけれども、おそらく平家から少し出たくらいの、そんなに高い松ではありません。あれにひっかけたわけなんです。それからもう一つは、そこはすでに滑走路に大体二百メートル。三百メートルはないと思うのです。そういう近接のところなんです。ですから、これは着陸をしかかって、その際にタンクが落ちたので、おそらくバランスを失いそうだという判断で再び飛び上がったと思うのですが、その指示は地上から出したのですか、それとも機長の判断で再び飛び上がったのですか。その辺はおわかりですか。
  271. 久保卓也

    ○久保説明員 その点は機長の判断であろうというふうに申しております。
  272. 木原実

    木原委員 そうですか。地上からは特別な指示は出していない……。
  273. 久保卓也

    ○久保説明員 この場合には出しておらないようです。
  274. 木原実

    木原委員 ところが、非公式な関係者の話によりますと、燃料をほぼ出し尽くしたタンクが片一方なくなりましても、そんなに操縦上のバランスがくずれるはずはない、どうしてあそこで入らなかったのだろう、こういう疑問を出しておる諸君もいるわけなんです。どうでしょうか。
  275. 久保卓也

    ○久保説明員 図面で見ていただけばわかりますが、百メートルのところでGCAから離れて、視認で入ってまいります。その線がこういう一定の線で入ってくればちょうどうまく着陸できるわけですけれども、この場合には滑走路から約四百メートルとなっておりますけれども、四百メートルのところでいまおっしゃった低い松にひっかかっているということで、おそらくそのままでは滑走できなかったので、もう一度上に上がったものだろうと思います。そういうことも加味されているのではないでしょうか。ただ、この調べの中では、一応他の翼端にあるタンクも落としたいと感じたのであろうということをいっております。
  276. 木原実

    木原委員 それから、たまたまここで自分の裏庭の松の木を折られた栗原さんというお宅の若い主人に聞きますと、従来も非常に低空で真上を、屋根をすれすれに飛ばれるので、ともかくコースを変えてくれという話を基地のほうに何回か持っていっている。だから、これはある意味では起こるべくして起こった事故じゃないか、こういうことをおっしゃっているわけなんです。いままでもそういう意味でコースを変更してくれ、こういうことを言っていたのですけれども、それがどういうかげんかほとんど無視をされて、従来そういう形で飛行機がおりてきていた。たまたま私が調査に参っておるときも、すぐ上を飛びましたけれども、周辺には家がないのです。四軒ばかりある家のそれをかすめて通る、こういう姿なんです。これは将来の問題としては、少しずらしてもらえばいいと思うのですけれども、しかし、そういうことから考えますと、これはそういう声もあるし、それから訓練で着陸する場合に、基地のあれとして少し配慮が足りなかったんじゃないか、こういう問題を実は私は持ったわけなんです。基地のほうではいろんなことを申しておりましたけれども、やはり基地の使用につきまして、今度の事故のおそらく一番大きな要因になったのは松の木にひっかけたということですから、まことに初歩的な事故だと思いますね。そういうことにつきましてどういう調査をなさっているのか。事故の究明をされるいろんなことについて、何かやり方をここでひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  277. 久保卓也

    ○久保説明員 現在、海上自衛隊には、長官訓令でもって事故調査委員会をつくっておりますが、その調査委員のうち四名を現在現地に派遣して調査に当たらせております。従来は、事故調査委員会は、海上幕僚監部の幕僚副長を委員長にしまして、海上幕僚監部内の幹部を当てておりました。しかし、今回いろんな問題もありまして、技術研究本部の幹部二名をさらにつけ加えております。将来の問題といたしましては、外部からの人を入れるのはどうかと思いますが、少なくとも全庁的な調査委員会、たとえば空幕などの専門家も含めましたそういった全庁あげての調査委員会、これは大規模な事故の場合に限ってけっこうだと思いますが、そういうような方向を進めてまいりたい、かように思っております。
  278. 伊能繁次郎

    伊能委員長 木原君に申し上げますが、事務的な問題なものですから……。
  279. 木原実

    木原委員 はい、もう終わります。  事故調査の方法ですけれども、これも御案内のように、「ばいだい号」事件がつい先般ございました。やはり一連の民間航空事故調査関連をしましても、調査方法その他についてとかくの議論があるわけです。自衛隊がこの種の事故について、今度は全庁的にと、こういうふうにおっしゃっておるわけなんで、私は広げるほうはいいと思いますけれども、従来どういうわけか自衛隊のこの種事故については、究明の調査の方法がわれわれから見ると閉鎖的であったと思うのです。内部で処理をする。八百長ということは言いませんけれども、そこにはどうしても客観性を欠くようなものが多かったんじゃないかと思うのです。ですから、全庁的に委員を広げるという御指摘でございましたけれども、こういう事故につきましては、やはり外部の人も入れて、少なくとも国民の前に——ともかく今度の場合でも十一人の優秀な青年がこのために人命を落としておるわけですから、これは内部的な処理というよりも、やはり第三者を入れて、国民の前に納得のいく究明をする、こういうことがやはり犠牲をこうむった人たちに対しての一つの礼儀じゃないかと私は思うのです。あるいはまた、家族の人たちに対しても一つの礼儀ではないかと思うし、あるいはまた、自衛隊の中で事故を防止していく、この中から教訓を学び取っていく、こういう観点から見ても必要じゃないか、こういうふうに思うわけです。従来よりも広げて全庁的に委員を広げるという御見解、これは一歩前進だと思いますけれども、しかし、ともかくこの種の事故ですから、これはひとつ思い切って第三者も含めて、国民の前に公明にこの事故の原因や経過やいろんなものを明らかにする、それだけの努力をこういう機会にやってもらいたい。これは私の要望になりますけれども、そういう考え方を持っているのですが、いかがでしょう。
  280. 久保卓也

    ○久保説明員 人命の尊重はもちろんとして、機材も重要でありまするし、私どもの内部では、外からとやかく言われるまでもなく懸命に事故調査をやりたいわけでありますが、航空機事故の場合に、えてして機体そのものが損壊されたりしまして、なかなか原因が究明されない場合が多いのは、民間航空の場合と同じであります。そこで、「ばんだい号」の事件に関連をしていろいろ批判が出まして、運輸省といたしましても、常設的な第三者機関を設置すべきではないかというような意見も出ておるようでありますから、そういった動きとからみ合わせまして、第三者をどういうふうに取り入れるか、適当な方をどういうふうなかっこうでわれわれと御一緒にやっていただくか、検討してみたいと思います。
  281. 木原実

    木原委員 これで最後にいたしますけれども、これは長官にお伺いをいたしたいのですけれども、あなたの前任者は、何といいますか、自衛隊のモニターというような制度——いまどうなったかわかりませんけれども、そういうことまでやられて、たいへん国民に近づいたなんて評判がよかったようなんです。こういう事故のときこそ、国民に対してやはり公明正大に、客観的に通用するような究明のしかたをして、ある意味ではやはり国民にわびなければならぬと思うのですね。内部だけで処理をしたということになると、どんなに事故が究明をされましても、国民の目から見るとやはり疑問が残るわけです。私も特に事故の現場へ参りましたが、たとえば遺族の方々にしましても、そう言ってはなんですけれども、民間機の事故なんかの場合には、やはり遺族の方たちは感情も高ぶっておられますし、ある意味では、御自分のさまざまな意思をその場で述べられるということができるのですけれども、しかし自衛隊の場合ですと、家族の控え室に参りますと、やはり部隊のことですから、家族の方たちも感情を押えて、言いたいことも言わないまま指示に従っておる。そういう姿を見ておりますと、これではいかぬと思いました。これは内部の、内輪のできごとじゃないわけですから、いつまでも内輪の中で処理をしていこうというような考え方があったのでは、かってにしゃがれということになりますよ。やはりそういう姿勢はもう改めてもらわなくちゃならぬと思いますね。  あわせまして、これまた依然として事故に対する救援の措置というものが自衛隊の場合はたいへん薄い。毎回のことですけれども、今度の事故の場合も、救恤金がどの程度——これは制度のワクがありますから限定をされておりますけれども、それにしましても、あまりにも補償その他の措置がやはり低きに過ぎると思うのですね。制度がありまして、公務員全般のこの種の犠牲に対する共済なりあるいは補償の措置が低いということは問題なんですけれども、やはりこれはこれですから、犠牲者に対してはやはりしかるべく格段の措置をとるような、そういう努力をしてもらいたいと思うんですが、ひとつ長官の御見解を聞きまして、終わりたいと思います。
  282. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 この事故がありました際、木原委員にはさっそく防衛庁へおいでをいただきまして、ちょうど私やむを得ざることでお目にかかれなかったのですが、たいへん御好意のある御助言をいただきました。ほんとうにありがとうございます。  仰せのとおりでございまして、私も、この事故がありまして、従来の例によりまして海幕で一生懸命全知識を動員して事故調査をやるという措置をとっておりましたが、それではいけない、さっそく第三者に来てもらうということは手配が間に合わないからということで、全庁的な調査委員会に切りかえさして調査さしたわけでございます。これは木原委員仰せのとおり、第三者も含めました、一般の人が見て権威のある、ほんとうに外部の人の信頼できるという感を与えるような調査委員会をつくるように、これからの問題として十分に考えてまいります。  なお補償の問題、仰せのとおりでございまして、今度の場合、さっそく補償関係を聞いてみますると、たいへん不満足な状態でございます。各員が保険に入っておる。これは補償が十分でないということから見まして、防衛庁としても積極的に慫慂をしたもののようでございまするが、保険に入っておるので若干の補いができるということで、たいへんに私ども残念に思います。これは、いま木原委員のお述べのとおり、他のいろいろの各省とのつり合いとかなんとかいうことでうまくいかないといままで聞きましたが、何らかの方法で補償の問題はひとつこれを大きく前進させてもらうように折衝し努力をしてみたい、かように考える次第でございます。
  283. 木原実

    木原委員 終わります。
  284. 伊能繁次郎

  285. 桑名義治

    桑名委員 本日は、陸上自衛隊武山駐とん部隊の第百五教育大隊におきまして、去る三月の二十二日営内において起きた傷害致死事件における疑問点について質問をしてみたいと思います。  私は、愛される自衛隊あるいは明朗な自衛隊として運営を願うからでございます。災害のときの救助、あるいはまた、民間人の急病人やあるいは輸血の場合に、ヘリで運んで人命を救ったとか、そういういわゆる明るい自衛隊としての評価も一面あるわけでございますけれども、いまから申し上げる問題は、前に申し上げました愛される自衛隊から不明朗な自衛隊への一部の変貌である、こういうふうに非常に残念なことであるわけでございますし、隊内の隊員の不信と不満を除き、安心して隊員が任務を遂行し、また隊員の人権を守るためにその一石として私は質疑を進めていきたい、このように思っている次第でございます。  まず初めに、いま申し上げました横須賀市の武山駐とん部隊における三月の二十二日の傷害致死事件についての概要を説明していただきたいと思いますし、あわせてこの事件はどこが一番主体になって調査をしたか、それも明らかにしていただきたいと思います。
  286. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 先般の武山の暴行傷害致死事件についての概要を御説明します。  本年三月二十二日午後九時三十分ごろ、陸上自衛隊第一教育団の第百五教育大隊第三百十二教育中隊営内班におきまして、同中隊の所属であります——以下みなまだ成年に達しておりませんので本名を略して申し上げますが、Sという二士が同僚とふざけていましたが、これに対して制止のことばをかけたUという二士と口論を始めたところから、U二士の友人であるKという二等陸士がS二士に対しまして数回足げりの暴行を加えたことによりまして、これに憤慨したS二士が持っていたくだものナイフでK二士の腹の部分を刺しまして傷害を与え、これがもとで、去る二十八日午前五時三十分にK二士は横須賀市内の加藤病院において死亡するに至ったものでございます。本件の捜査、調査にあたりましては、久里浜の警務隊がこれに当たっております。
  287. 桑名義治

    桑名委員 いまのお話によりますと、この犯罪につきましては、すべてが警務隊の手によって処理をされた。この警務隊につきましては、一応自衛隊法の九十六条で司法警察権というものを有しているわけでございますので、一応調査という点については法律的には正しいとは思いますけれども、しかしながら問題になりますのは、この警務隊の任務の内容と、それからこの警務隊を人選する場合どういう基準で人選をするのか、あるいは任命権者はだれであるのか、あるいはこの警務隊の隊員の教育はどういう教育を行なっているのか、この点についてまず聞いておきたいと思うのです。と申しますのは、この警務隊につきましては、いろいろとちまたに流れている話は、警察よりも捜査の面については非常に技術的に劣る、こういうふうによくいわれております。この点について最初に伺っておきたいと思います。
  288. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 警務隊は、部内における自衛官の犯罪あるいは部外におきまして自衛官に加えられました犯罪等を捜査する司法警察権を持った自衛官でございます。これらの者の人選につきましては、部隊の中におきましてあらかじめ警務隊所属の人間をきめるわけでございますが、これらの者の教育につきましては、わが自衛隊の内部におきしてその教育機関がございまして、そこで専門に司法警察官として勤務できるような警務官の育成をはかっております。また、その教育機関が不足な場合におきましては、一部警察に対しまして教育の支援を受けてやっております。したがいまして、実際の警務隊の捜査能力というものは、それほど警察に劣っているとは考えておりません。また、現に入っております警務隊の隊員の幹部は警察官から転換してきた者もかなりございまして、捜査方法についての研究なりあるいは教育につきましては、常時警察と十分連絡をとりながらその資質の向上につとめておるのでございます。
  289. 桑名義治

    桑名委員 任命権者は……。
  290. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 任命権者はもちろん長官でございますが、具体的には陸上幕僚長でございます。
  291. 桑名義治

    桑名委員 そこで今回の事件は、いまお話がございましたように、自衛隊の警務隊によって一切の調査が行なわれた、こういうお話でございます。そこで私は、今回のこの事件につきまして最も不審を抱きます点は、三月二十二日午後九時三十分ごろ、営内におきましてこの事件が発生をしているわけでございます。ところが、強制逮捕の手続をとられたのが三月二十七日午前十一時三十五分、それから強制逮捕に踏み切ったのが十二時五分、こういうふうになっているわけでございます。  そこで私はお尋ねしたいことは、一般民間人であるとするならば、こういう事件が起こった場合には、これは即座に現行犯逮捕ということで強制逮捕に踏み切るわけでございますけれども、今回のこの事件は、どうしてこういうふうに二十二日の事件が二十七日に強制逮捕に踏み切ったか、どういう理由でこの五日間という時間的な経過をたどってきたのか、ここら辺に問題がひそんでいるように私は思うわけでございますが、この点についての説明を願いたいと思います。
  292. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 隊内に起きた犯罪でございまして、加害者そのものが特に逃亡のおそれがあるとも考えられませんし、また証拠の隠滅をするというようなおそれもございませんので、したがいまして、初めの段階におきましては任意捜査の形式で捜査を進めまして、大体その調査内容が整いましたので、そこで逮捕に踏み切りまして、それで翌日検察庁へ送検したということになっておりますので、この点は、部隊の中における犯罪につきましては、必ずしも最初から強制逮捕をする必要もないものかと思います。
  293. 桑名義治

    桑名委員 いまのお話は、私は非常に納得しかねるわけでございます。何となれば、この司法警察権というものは、警察もあるいはこれも同一であるとするならば、その事務的な処置についても当然同一でなければならない、こういうふうに一つは思うわけでございます。これは、私は一般通念ではないかと思うのです。それと同時に、私はここで調査の段階で最も不審に思ったのは、被害者の病状が悪化したので強制逮捕に踏み切った、こういうふうに現地の幹部が言っているわけでございます。このことを御存じですか。
  294. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 事件の内容によりますが、一般に単に暴行傷害程度であれば、必ずしも逮捕しまして身柄を持っていかなくても、身柄をそのままにして書類だけ送検する場合もございますので、その傷害の程度の進行状況を見つつ、結局二十七日に逮捕令状をとりまして逮捕し、身柄をそのまま検察庁へ送ったということになっております。
  295. 桑名義治

    桑名委員 いまの答弁は非常におかしいと思いますよ。あなたは暴行傷害と言いましたけれども、これは暴行傷害じゃないですよ。腹を突き刺されたのが軽傷ですか。私はそういうことばは理解しかねますがね。おそらくこの委員会の会場にいらっしゃる皆さん方も、あなたのいまの答弁を聞いたら、これは不審に思われると思うのです。腹を刺されたならば命は助からないだろうというのが、普通一般の通念じゃございませんか。もっとも、いまは医学が発達しておりますから、必ずなくなるとは限りません。だけれども、腹を突かれたならば必ず死ぬ、ほとんど死ぬというのが一般の通念です。これは余談になるかもしれませんが、たたかれても、なぐられても、け飛ばされても、うんとも言わないようなプロレスの力道山さえも、腹を突かれて死んでしまった。それが軽傷ですか。はたしてそれが二十七日まで放置しておいていいような犯罪でしょうか。そういうふうにあなたは判断をなさったのですか。  それともう一つ。あなたはいま私の質問に答えていませんよ。現地の幹部のことばの中で、被害者の病状が悪化したので強制逮捕に踏み切った——これはうわさではないのです。調査に行って現実に聞いてきた。私はこういう考え方が問題だと思う。この点についてもう一ぺん答弁を願いたいと思います。
  296. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 自衛隊の中におきましては、残念なことでございますけれども、暴行傷害事件というものはございます。その場合におきまして、それらのものをすべて逮捕しまして、身柄をそのまま一緒に送検するということは必ずしもとっておりません。一般に暴行傷害の場合におきましては、書類送検という形式のものが多いかと思います。ただしかしながら、この場合は遺憾ながら本人が死亡になりましたので、暴行傷害致死事件ということになりましたので、そこで逮捕状を正式にとりまして、本人を逮捕して検察庁に送検したということになったのでございまして、特にその傷害の程度が軽いからどうであるからという意味のものではございません。一般に従来やっておる方法としましては、暴行傷害事件というものはかなりございますが、書類送検の形式でやる場合が多いというふうなケースでございますので、今回も、その被害者の病状の進行程度を見ながら逮捕に踏み切ったというのが実情でございます。
  297. 桑名義治

    桑名委員 あなたの答弁は、また前の問題を繰り返したような感じがするのです。先ほど来申し上げているのは、実際に現地の幹部のことばの中に、被害者の病状が悪化したので強制逮捕に踏み切った。これは逆に考えれば、死ななければ、こういうふうに病状が悪化をしなければ、ただ腹を突いただけならば、普通の、一般の書類送検だけで終わりである、こういうふうに裏を返せば考えられます。そういうことで、自衛隊の隊内におけるいわゆる傷害事件は、一切がっさいが自衛隊の営内において処理をされてしまう、こうなってくれば私はゆゆしき問題だと思う。また、まじめな隊員が本当に喜んで心から隊務に服することはできないと思う。だから、この点についてはどうしても私は納得いきませんので、もう一ぺんお尋ねしておきたいと思うのです。被害者の病状が悪化したので強制逮捕に踏み切ったという。裏を返せば、もし生命がなくなるおそれがない場合は、ただ単なる傷害事件で、一切がっさい書類送検で終わっておったのだ、こういうふうに考えざるを得ないわけですが、その点どうですか。
  298. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 先ほど申し上げましたように、隊内におきましては、若い者の集団でございますので、かなり暴行傷害事件というものがございます。その場合におきましては、一般には書類送検しまして、あとは検察庁の判断で、本人を逮捕して持っていく場合もあり、あるいは自衛隊内にそのままにしておいて検察庁が調べるということもあり得ると思います。ただ今回の場合は、死に至りましたので、これは当然強制逮捕してそのまま身柄を検察庁に送致する必要があるというふうに判断しまして、病状の進行状況を見ながら、そこで逮捕に踏み切ったというのが実情でございます。
  299. 桑名義治

    桑名委員 だから考え方がおかしいというわけですよ。三月二十二日の事件が三月二十七日に初めて強制逮捕の手続をしたということですから、検察庁と相談してというけれども、実際に二十七日まで検察庁に何の連絡もとっていないじゃないですか、とっていますか。ここに問題があるのじゃないですか。私は、自衛隊内における犯罪が、警察から見た場合に、治外法権的なそういう姿になることは非常に好ましくない、こういうふうに思うわけです。世間も非常に疑惑を抱くと思うのですよ。そういった姿がここにあらわれていると思うのです。それと同時に、先ほどから何回も申し上げておりますように、被害者の病状が悪化したので初めて強制逮捕に踏み切った。それじゃ本人が死ななかったら逮捕しなかったのですか。腹まで突いて、しかも腹の傷は大腸が一カ所、小腸が二カ所でしょう。二十二日に事件が起こったときに手術をしている。そのときに大腸に一カ所、小腸に二カ所傷がついている。そういう状況というものが、ただ単なる簡単な傷害事件であり暴行事件であるというふうに片づけられるような犯罪でございましょうか。そこのところをもう一ぺんあなたに意見を伺っておきたいと思います。
  300. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 暴行傷害事件が起きました場合には、もちろん当然送検するわけでございますけれども、送検する前に、部内におきまして警務隊員が実情を調査するわけでございます。その調査期間というものは普通一週間前後かかると思いますが、その調書ができまして、それを添えて検察庁に送検するわけでございます。したがいまして、その場合、一般に身柄まで逮捕して送検するか、書類だけ送検してあとは検察庁の判断を待つか、いずれかの場合があると思います。  今回の場合は、非常に症状が重くなってきましたので、これは逮捕して送検する必要があるという判断で、このような措置をとったということになっております。
  301. 桑名義治

    桑名委員 いまのあなたの答弁は、私の質問に答えてないのですよ。二十二日に事件が起こった、そして開腹手術をした。そうしたところが、大腸が一カ所、小腸が二カ所切れておった、これは医者で明白なんです。それが軽傷であり、逮捕するまでに及ばない犯罪であり傷であるかということを私はお聞きしておるわけですよ。その傷に対する、犯罪に対する認識をあなたにお聞きしておるわけですよ。
  302. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 なお、この逮捕に踏み切った理由の大きなものの一つは、病状悪化もございますけれども、実はこの本人から自衛隊をやめたいという申し出があったわけでございます。もちろんこの事件は部内の秩序、規律の重大な違反事項でございますので、事件の直後懲戒処分をいたしておりますが、本人からやめたいという希望が出てまいりましたので、三月二十六日に退職承認をするということになったわけでございます。そうなりますと、これが営外に出るということで、同時にこれは逮捕する必要があるということになったわけであります。
  303. 伊能繁次郎

    伊能委員長 桑名君に申し上げますが、長官に対する質問者がまだだいぶ残っておりまするし、長官は実は新聞記者の方々を招待しておられるということで、時間がかなり切迫しておりますので、事実の調査につきましては、別途防衛庁に直接お調べを願うか、長官に対する御質問を中心に願えればたいへんしあわせでございます。
  304. 桑名義治

    桑名委員 これは最終的に長官の御意見を伺わなければなりませんので、最初に長官からぼんぼんお聞きしても、これはちょっと質問の順序としておかしいと思うのです。だから、経過をよく長官にお聞き願って、その上での長官の御意見を伺う。普通一般の質問ならばそうする必要はございませんけれども、この種の問題でございますので、私は最後まで長官がいらっしゃるという前提のもとに質問を始めたわけでございます。その点はひとつ御了承願いたいと思います。  いまの御答弁でございますが、だんだんおかしくなるわけですね。じゃ、逆に裏を返せば、本人から退職の意思が明らかでなかったならば逮捕しなかったということになりますよ。強制逮捕に踏み切らなかったということになりますよ。あなたが答弁すればするほど、何か知らないけれども不明朗な点がだんだん明らかになっていくような気がしますがね。それはほんとうでございますか。
  305. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 そのような事故の場合におきましては、警務隊が内部で任意調査する、捜査するというのにやはり三日なり五日なりの時間がかかります。その間調査を進めまして、大体捜査も終わった、調書もできたというところで、また一方本人の退職の希望もあるというような——退職の希望、これは長官承認になりますから、退職の承認をするのと逮捕するのとうらはらの関係になるわけでございますが、逮捕することをきめないでいきなり依願退職で外に出すわけにもいきませんので、その点は多分に時間的にはうらはらになりますが、とにかくこの調査が、この場合は少し手間どっておったということは申せると思います。
  306. 桑名義治

    桑名委員 そこで、私がこの点についてさらに疑問に思うことは、本来ならば、一般の自衛隊外で行なわれた犯罪であるならば、これは現行犯ならば、即座に逮捕して、四十八時間検事勾留、送検、こういうことになるわけです。自衛隊は一週間もかかっているわけですが、そういうふうに、ゆっくりゆっくり、ゆるりゆるりといわゆる調査を進められるのですか。そういう点についても、私はなお一そう疑惑を深めていくわけですよ。そういうふうに私がこの問題についてあれしているのは、結局は、隊内にいるまじめな隊員が、こういうことであるならば迷惑をする。だから、犯罪人は犯罪人として一般の市民と同じような取り扱いをすべきじゃないか。そして、言うなれば信賞必罰といいますか、まじめな者はよく賞するし、ふまじめな者、あるいは犯罪を犯した者は罰する、こういう信賞必罰ということを明確にしていくことが私は大事なことだと思うのです。とするならば、営内で起こった犯罪であるならば、外で起こった犯罪よりも調査のほうだって早く進められるわけですから、そういう姿がないことが非常に私は残念でならないわけでありますし、そういったところに、いわゆる官僚の事なかれ主義というものがあらわれているのじゃないか。でき得るならば、いわゆるこのままの状態で書類送検ぐらいで終われば、こういう事柄が表に明らかにならないで済む、そういう配慮があったのではないか、こういうふうに疑わざるを得ないわけでございます。  そこで、私はきょう特に申し上げたいことは、そういったまじめな隊員が喜んで隊務に服せる、迷惑をしないという、そういう体制というものをここで明確に打ち出しておかなければならないことを私は特に強調をしておきたいと思うわけでございます。  この問題をまだまだ詰めてみたいわけでございますけれども、私はこの問題についてはまたほかに聞きたいこともございますので一応これで打ち切りたいと思いますが、最終的に長官は、いまのやりとりをお聞きになりまして、非常に明朗な処置がとられた、また現在とられている、こういうふうにお考えになりますかどうか。あるいはまた、警務隊のあり方についていまから改革をしていかなければならない、こういうふうにお考えになるかどうか。この自衛隊というのは一つ体制内でございますし、外からは遮断をされているという、そういう姿の中にある。しかも警務隊員は長官の任命であるということになれば、体制内の長の言うことを聞かなければならないという体制の中にあるわけです。そうなってくると、外から見た場合には、なお一そう明朗な上に明朗な措置をとっても、これは疑惑の目を持たれるわけでございます。その点についての長官の御意見を伺っておきたいと思います。そして次に進みたいと思います。
  307. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 この問題、本日御質問があるということで私初めて承知をしました。たいへん恐縮に存じます。  事件が二十二日に起きまして二十五日には一応行政処分としての停職三十日というのをやっておるわけでございますが、それまでに一応の調査はできておったと見ていいのだと思います。それから、本人の申し出に基づいて二十六日に依願退職をした。そして依願退職をすれば外に出る、隊内の処理ということにならないということとあわせて、病状が悪化をしたということで二十七日に逮捕に踏み切った、いま御質問で明らかになったとおりでございます。これは、隊内における警務官の捜査としては少し遅延もいたしておりまするし、その間の検察庁への連絡というものも、私はおそきに失したのではないかという感じを受けます。仰せのとおり、こういう問題は迅速に的確に処理をして、一般の人々が、隊内においてこういう不明朗なことが行なわれておるということを感ぜられないようにする重要な任務が、私は自衛隊の規律保持上あると考えます。その点においては、もう少し迅速に、そうして的確に検事のほうへ連絡をして処理をするという措置をやるべきであった。将来そういう点について遺憾のないように十分の指導と監督をやっていかなければならぬ、かように考える次第でございます。
  308. 桑名義治

    桑名委員 先ほどから事件の概要についての説明もございました。ところが私の調査によりますと、事件の概要と真実は相当な食い違いがあるようでございます。と申しますのは、私は、彼と同窓といいますか、同期の人、その場にいた四人の人といろいろお話を申し上げた。それから友人一人と、全部で五人の人にお会いしました。もちろんこの中には調書をとられた方もおられるとは思いますけれども、事によって私、名前を伏さしていただきますが、そういう人々のお話の中では、被害者が加害者に対して暴行を加えたという事実は、全部否認しております。ところが、いま皆さまの御説明によれば、髪の毛を引っぱり三度足でけとばしたという話がございました。同じ隊内に全部でたしか三十六人くらいいたはずでございます。そのときは三十三名いたはずでございますが、そういう状況の中で髪の毛を引っぱり足で三度けとばすというようなことがあるとするならば、その部屋の中のほとんどの隊員の方は全部おわかりになると私は思うのです。黙ってけとばされ、黙ってたたかれているはずはないわけでございますから。そういった人々の証言によりますと、これは全部そういうことを否定しているわけです。そういったところにも私は非常な疑惑を抱いているわけでございます。何らかここに意思が働いたのではなかろうか。幹部の意思がですね。要するに、この問題を単なるけんかだ、こういうことにすりかえたい、あるいはまた、この問題が外に出ないようにという、そういう事なかれ主義の気持ちが幹部の中にあらわれた結果ではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。  それと同時に、いま御説明のあったことと、おかあさんがお聞きになったこと、いわゆる被害者の両親がお聞きになったことは、いま、あなたがおっしゃったとおりのことをおっしゃった。それを聞いて、そこに居合わせたいろいろな隊員がお通夜のときに話した事柄が、また全く違うわけです。そういうように非常に不明朗な点がたくさんあるわけです。私は、あえてこの問題を大々的に取り上げてがたがたしようとは思わなかったけれども、しかし、まじめな隊員のために、まじめな隊員が喜んで、いわゆる人権を保護されるように、こういう気持ちでこれはやったわけでございますし、なくなった両親に対しても、真実というものを明らかにしてあげることが大切だ、こういう気持ちからあえて取り上げたわけでございます。  そういうように、あなたのいまの説明と、私が会った五人の方のいろいろなお話とは、全然違います。実はテープもとっているわけでございますけれども、そのテープを出せば名前が出てくる。そうすると、また何らかの仕返しがあっては——ないとは思いますけれども、という配慮から、きょうはそのテープをかけることはやめますけれども、これはそういう事情でございますので、再度調査をしていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  ところが、そこで問題になりますのは、その教育隊員がそれぞれの地に赴任したのは何日でございますか。
  309. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 これら同僚の隊員は、三月二十二日で所期の初任教育が終わりまして、翌日の二十三日に、大部分北海道でございますが、北海道のほうへ赴任することになっておったのでございます。この関係者以外の者は翌日に赴任いたしております。ただ、関係者あるいはその周辺の者は、これは参考人として取り調べの必要がございますので、その後必要期間残留いたしておりました。
  310. 桑名義治

    桑名委員 何日ですか。
  311. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 何日か、私、実は詳しくは存じませんが、おそらく一週間ぐらいであろうと思います。
  312. 桑名義治

    桑名委員 日にちを合わせちゃだめですよ。二十七日という日にちと合わせては困ります。いまその日にちと合うような答弁ですよ。はっきり言えば知っているのですよ、私も。まあうそは言わないようにしてください。だから結局、そこら辺にもう一つの問題がある。  それから被害者の臨床尋問です。これは警務隊が二十四日の日にとりにいっておりますね。ところが、病状が非常に悪いので調書がとれませんので、さらに二十五日にまた調書をとりにいっております。そのときに、隊員の方は全部外に出てもらって、おかあさんと二人立ち会いのもとで警務隊の方が調書をとったわけです。ところが、そのときのおかあさんのお話しによれば、二十二日の夜手術をしてから二十七日の再手術をするまで、毎日ばた狂ったというのです。(「七転八倒したんだ」と呼ぶ者あり)それこそ、いまそこから声がかかりましたけれども、七転八倒の苦しみをしたということでございます。そして二十五日の日には、すでにもう目のふちには黒いくまができて、意識がもうろうとしておった。そういう状況のときに調書をとることが是か否かという問題と、そのときにとった調書に効力がはたしてあるかどうかという問題なんです。もちろん、そういうときに調書をとれば、本人は苦しいばかりですから、片っ方からたったかたったかしゃべれば、うんうんと言って、それがみんな返事になっちゃっているのですから。そうなったらいわゆる公正な判断はできないのではないか、こういうときにはもう少し配慮をすべきであろう、こういうふうに私は考えるわけでございますが、このときの調書についての信憑性をどのようにお考えになっていらっしゃるか、その点についても伺っておきたいと思います。
  313. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 被害者に対する取り調べと、その調書をとる等のことにつきましては、それは慎重を期すべきであったと思います。ただ、その調書の証拠としての信憑性につきましては、これは現在訴訟になっておりますので、訴訟の段階におきましてこれは裁判官が判断さるべき問題であろうと思います。
  314. 桑名義治

    桑名委員 では、この問題は別にしまして、さらに新しいこういう問題が提起されたとします。同じような状態のときに調書をとられたとする。そのときに、あなたは、その調書に信憑性がある、非常な効力があるとお考えでございますか。
  315. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 その状況によるわけでございますが、本人が心身耗弱の状態にあるという場合におきましては、もちろんその証拠の信憑性というものはないわけでございまして、それはケースによって判断すべきものであろうと思います。
  316. 桑名義治

    桑名委員 もちろんそういう状況は、私もケース・バイ・ケースで当然判断をすべきだと思います。だから、これと同じような状況下に置かれた場合という条件をつけたわけでございます。  そこで、そういうようにいろいろな面で疑惑を持たれることはたくさんあるわけです。だからこそ私は、この問題を本日ここに提起したわけでございます。私が皆さんに申し上げたいことは、現在の警務隊のあり方そのものを大きくここで改革をしていかなければならないこれは一石ではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。  次の問題でございますが、二十二日の日に被害者が直ちに病院に運ばれたわけでございます。ところが、Kという一般の町医者に運ばれたわけでございますが、このKという町医者に運んだ理由というものは、どういうところにあるのですか。
  317. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 この加藤病院なるものは、外科、内科並びに産婦人科ということになっておりまして、隊員が外科等で手術を必要とする、あるいは入院を必要とするという場合には、これは救急病院の指定になった病院でございまして、その意味におきまして、今回はこの加藤病院に収容したということになっております。
  318. 桑名義治

    桑名委員 距離的な面から言いますと、自衛隊から加藤病院までは約七百八十メートルぐらいあります。自衛隊から市民病院、総合病院までは六百二十メートル。むしろ市民病院のほうが近いわけでございます。どちらが非常にいい手当てができるかということは、これは常識的に考えますと、距離の面からいくとやはり市民病院です。では病院の設備はどうかというと、個人病院よりも総合病院のほうが設備も整っておるはずだと思います。であるにもかかわらず、その加藤病院を選んだという理由、その理由が私は明確ではないのじゃないかと思うのです。こういう重大な病人であるならば、これは市民病院に連れていくのが当然なことではなかろうかと私は思うのです。  それと、もう一つ問題があるのです。それは、自衛隊のこういう事件であるならば、当然自衛隊の病院に連れていくのが私は筋じゃないかと思いますが、どういう理由で市民病院を避け、あるいは自衛隊の病院を避けたわけでございますか、その点について明快なお答えを願いたいと思います。
  319. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 第一教育団におきましては、従来から加藤病院を診療委託の病院に指定いたしております。したがいまして、第一教育団の患者で入院を要するようなもので緊急のものにつきましては、加藤病院を利用しておるということでございます。もちろんこれは暫定的のものでございまして、この場合におきましても、病状が許せば自衛隊中央病院にヘリで移したいという考えは持っておりましたけれども、遺憾ながらそこまで達しませんうちに死亡いたしたということになっておるのでございます。
  320. 桑名義治

    桑名委員 中央病院、それがもちろん一番けっこうなことは私も変わりありません。横須賀の中にも自衛隊の病院はあるのでしょう。その病院をなぜ避けたかという疑問なんです。この病院というのはベッドがないわけですよね。そして、手術する段階におきまして、ガーゼが足らぬとか何が足らぬとかいって、自衛際の中から運んでおるわけですよ。外の病院にかかる。ちょっとした傷ならば自衛隊の営内におけるいわゆる診療所的なものがあるわけですから、そこで手当てができるわけです。営外に運ぶ場合には、これはもうほとんど重病人だと思います。とするならば、これは最もりっぱな病院を選ぶべきじゃないですか。私は常識的に考えてそうだと思います。にもかかわらず、こういうベッドのないような病院を指定しているというところに重大な問題があるのではないかと私は思うのですが、その点について再度……。
  321. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 実際の状況につきましては、私は現地のことをそう詳しく知っておりませんので、あるいは加藤病院を現在指定して診療委託をしておるということが適当かどうかにつきましては調査する必要があると思います。しかし、この場合は非常に急を要しましたので、従来どおり加藤病院を使用したという状況でございます。もちろん横須賀病院というものもございますけれども、これは私はよく存じませんけれども、内科を中心とした自衛隊病院でございまして、外科のほうはあまり——どの程度の内容を持っておりますかよく存じませんが、従来からの緊急病院の指定として診療委託を今回利用したということになっておるわけでございます。その点につきましては調査しまして、もしも適当でなければ指定がえをする必要があるとも思います。
  322. 桑名義治

    桑名委員 いまのお話によりますと、内科のほうは専門で、外科——−このあとは言いかけたけれどもやめられました。ということは、あまりよくないということだと私は判断するわけでありますけれども、そういったところで開腹手術をするということが適当であるかどうかということになりますと、私は非常に疑問が出てくると思います。  もう一点の疑問は、被害者のおば、これは国立病院の看護婦さんでございますが、二十四日の日に来て手当てを見て、何だ、こんな手当をすれば生きるものが死んでしまう、病院を変えなさい、こう開口一番言っているわけです。本人も苦しみながら、二十二日から死ぬ二十八日の朝まで、病院を変えてくれ、病院を変えてくれと言っているわけです。そういうことで、自衛隊にいろいろ要求しておるわけですけれども、拒否をされた。拒否と言えばことばは少し強過ぎるかもしれませんが、そういうことですが、これはどういうことで病院を変えられなかったのですか。おかあさんのお話によれば、本人がそういうふうに苦しんでいるし、もう最終的には死相まで出たものですから、死んでもいいから本人が希望する病院に入れてあげたい、こう言って懇願したと言っているわけですけれども、この点について……。
  323. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 確かに両親から病院を移してほしいという要望があったことは事実でございます。自衛隊におきましても、できれば自衛隊中央病院にヘリで送りたいという団長の指示でやっておったのでございますけれども、遺憾ながら、現地の武山駐とん地の医官が加藤病院の医者と相談しましたところ、やはり三週間は絶対安静で動かせないということでございましたので、そこは自衛隊といたしましては、医者の判断に従うしかないのではないかということで、やむを得ず移管できなかったということでございます。
  324. 桑名義治

    桑名委員 おかあさんも、その点は医者の判断で云々というお話でございましたし、もう一つ医者のメンツもあるのでということを言っておりました。医者のメンツでそういう重大病人がよそに移されないということになれば、これは重大問題だと思う。そういう状況であれば、ほかのお医者さんを呼んであげてもいいはずだ、無理だと思えば。だから私は、ほかのお医者さんでございますけれども、もしそういうときに、病院を移りたいと言った場合にはあなた拒否しますかどうですかと聞いてみた。それは呼んでいただきますよと言うのです。それはそうでしょう。最終責任がお医者さん一人にかかるよりも、たくさんの医者の目で見たほうが、治療したほうがいいにきまっていますから。そういったところにも私は、今回の治療措置について自衛隊のほうに大きなきずがあったのではなかろうか、こういうように思います。  それと同時に、こういう重病人なら完全看護をしてあげるべきだと思います。ところが完全看護ではないのですよ。おかあさんがつきっぱなし。だから適当な治療ができなかった。ところが、看護婦さんのおばさんがおいでになったものですから、一応の治療ができたわけですよ。そういうところに人権無視の姿が出ている。それでは私は隊員がかわいそうだと思います。そういう姿勢は、またさらにここで直していかなければならぬのじゃないだろうか。しかも、その入院をさした病院が適当であるかどうかということは、もう一ぺん調べるとあなたはおっしゃった。しかも、外科のほうは、というように首をかしげられた。こういった問題から考えますと、死ななくていい人をなくしたのではないかと、私はこういう心配もするわけでございます。  さらに私が非常に憤慨したのは、その被害者の友人のお話でございますが、同じように、両親と、上官に医者を変えるように申し入れをしたときに何と言ったか。兵隊の一人や二人死んだからといってびくびくするな、こう言われたといいますけれども、これは私は問題だと思います。私は、これこそ人間性無視の考え方ではないかと思う。そこから一番最初、冒頭から申し上げたような処置がなされたのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。これは一般の隊員が非常にかわいそうだ、私はこういうように思うわけでございますが、この点について私は長官の御意見を伺っておきたいと思います。
  325. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 初め警務隊の調査に欠陥がなかったかというふうに受け取ってお話を聞き、さっき意見を申し上げました。ほぼ全貌がいまの御質問で明らかになりました。全体を通じまして、人事教育局長がこの問題で調査をいたしましたところを私は承っておったのですが、お話を聞きますと、たいへんな事実のそご、食い違いがあるようでございまして、これは私、実態をさらに明らかにいたさなければならぬと思います。そうして趣意は、あなたのお述べになりましたとおり、人権尊重のたてまえを貫きまして、こうした問題については、万遺憾のないような措置を将来ともとれるように、十分事実の調査、これに対する措置をいたしたいと考えます。
  326. 桑名義治

    桑名委員 私は、長官自身が遺族にあやまりに行かれるべきだと思いますし、次のもう一点は補償問題について伺っておきたいと思います。  今回の事件で遺族の方にどのくらいのお金がおりたか、その点についてお知らせ願いたいと思います。
  327. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 今回の場合は公務災害でございませんので、国からの支給額はたいへん少なくなっております。国から直接支給されましたものは、退職金、遺体処理料、供物料、親族出頭旅費等合わせまして八万三百八十円、それから国以外でございますが、国に準ずるものとしまして、共済組合からの埋葬料、それから防衛庁共済会からの弔慰金、それから防衛庁内に特設しました団体保険等を合わせまして四百四十七万五千百円、その他武山教育団の隊員有志の香典が十七万二千円、合わせまして四百七十二万七千四百八十円となっております。
  328. 桑名義治

    桑名委員 いまのお話を聞いてみますと、実際に国から出たお金は退職金の二万五千円だけであるということですね、結局は。四百万円は本人が積み立てた保険料でございますし、埋葬料は共助会から出ておりますし、それから四十五万円も共助会から出ております。それから旅費等につきましては、これはもう当然なお金でございます。そうやって考えますと、本人がなくなったことによって得たお金というのは二万五千円の退職金だけ、これでちょんです。はたしてこれが、一人の生命をなくしたことに対する国家としての処置であろうか、こういうふうに考えますと、私は非常に残念でもあるし、これは大きく改めていかなければならないのではないか、こういうふうに思うわけでございます。そこで私が申し上げたいことは、はたしてこの種の問題がいわゆる国家賠償法の適用を受けないかということでございますが、その点について考えられたことがございますかどうか、伺っておきたいと思います。
  329. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 国家賠償法の適用の問題は、一般に遺族からその請求があった場合に検討すべき問題でございます。御承知のように国家賠償法というものは、国が公権力の行使をするにあたって、故意または過失があった場合に国が賠償の義務を負うわけでございますが、今回の場合には、国そのものが損害賠償の責任者になるということは、私としては考えておりません。
  330. 桑名義治

    桑名委員 そうしますと、本人は自衛隊の中に二十四時間寝泊まりをしているわけでございます。共同生活をしているわけでございます。それには必ず監督の責任があるはずでございます。あるいはまた営内での共同生活を行なっている以上は、営内の規則を守らなければならない権力に服しているときでございます。そういった場合に、要するに監督責任の過失というものは認められないのですか。監督は完ぺきであったとあなたはおっしゃるのですか。それからさらにそういう宿舎でございますので、営造物管理責任の過失もございませんか、どうですか。
  331. 江藤淳雄

    ○江藤説明員 隊員の指導監督と申しますか、特に若年層の隊員の訓育につきましては、平素から十分われわれとしましては留意して実施しておるのでございますが、今回の事件を未然に防止し得なかったことはたいへん残念に思っております。しかしながら、部隊側の責任と申しますと、営造物の瑕疵という問題ではございませんで、隊員同士の暴行事件であるということでございますので、営造物に瑕疵があったというふうな解釈はできないのではないか。それからもちろん、道義的にも、あるいは行政的な面におきましても、監督責任というものはございます。しかしながら、それと補償、賠償という問題とは、直接つながりにくい問題ではなかろうかというふうに考えております。
  332. 桑名義治

    桑名委員 あなたのおっしゃっていることは、ちょっとおかしいと思うのですよ。あなたたちは、これがけんかというふうに理解されているが、私はけんかとは理解していないのです。百歩譲ってけんかとして理解しましょう。百歩譲ってですよ。認めるわけじゃないですよ。けんかによって相手に害を与えた、その賠償は、本人、被害者と加害者との賠償問題であって、監督者とその被害者との関係性は、これは別問題じゃございませんか。私は混同してもらったら困ると思うのですよ。だから、二十四時間営内にいるということは、その隊務、いわゆる規律に服しているということでしょう。権力がみんなに及んでいるわけでしょう。したがいまして、監督をする義務があるわけでしょう。また服している実態にありますし、さらにそれを監督をする責任もあるはずでございますが、こういう状態が起こったということは、はたして善良なる管理であった、こう断定できますか。先ほどからいろいろな事実関係が話が出ました。そうすると、これを守ろうと思えば、これはりっぱに管理者としてできたはずです。なぐったとか、けったとか、文句言ったとか、いろいろ言っているわけです。ではその管理者が、監督者が一ぺんでも注意をしましたか。説得をしましたか。そういうお話は全然出てこない。そしてこういう事件に最終的に発展をした。こういうことになりますと、監督者の過失というのは当然出てきます。また、それがあなたたちの判断で、どうしても国家賠償が無理だというふうにお考えになっても、いわゆる遺族の方々に、こういう救済する方法もございますよという、いわゆる親切はないのですか。わが子がこういうような状態に置かれたときに、あなたのお子さんが置かれたときにどうお思いになります。その賠償の問題は大いに皆さんいまからでも研究をして教えてもらいたいと思うのです。  私はきょうここに判例を持ってきているのです。これは村立中学校における工作授業中の受傷事件で国家賠償が認められた事例です。要するに中学校の子供さんが、自分の失敗で、のこで手を切ったというのです。そういうときにその学校に責任はないかということなのです。子供さんの自分の失敗ですよ。それでも、その町村には、先生には管理者としての責任はあるとはっきり勝訴になっておる、この賠償は。これはあとからゆっくり読んでください、判例時報ですから。こういうのは皆さんもお持ちでございますから。そして、そういう論理から考えますと、いわゆる国家賠償法の第一条の公務員の過失という条項に必ずはまると思います。そういう手続等についても親切に教えてやるだけのものがなくて、ただ二万五千円だけの退職金を渡してちょん、鳴りもの入りで募集をしておいて、一たん事故が起こった場合には、二万五千円退職金を渡してぽい、こういうことでは、私はあまりにもかわいそうだと思います。私はきょうここに被害者の胴巻きを持ってきているのです。これは要するに、事件が起こったときに巻いておった胴巻きで、ここに切り口があります。おかあさんは毎日これを出して涙にくれています。そういった御両親のお気持ちというものを考えてごらんなさい。その立場に立って一切の処理はしていかなければならないと思います。この賠償の問題をまたさらに御答弁を願いたいと思いますし、さらにもう一点これに付随しましてお話しをしておきたいことがあるのです。  それは、先ほど申し上げたように、自衛隊のほうから報告があった実情と、それから友人の方々がおいでになって話した事情との食い違いがある。そこで、ほんとうのことはどうでしょうか、ほんとうのことがわかっても決して子供は生き返らないけれども、しかし真実というものは私たちは知りたい、こういうことで手紙を出した。そうしたところが、五月九日の日に行きましょうという幹部からの手紙が来ました。心待ちに待っておりましたところが、その御両親のところに、行けないので、自衛隊まで来れば——横須賀ですよ。群馬県から横須賀ですね。自衛隊まで来れば内容を詳しく聞かせましょう、こういうことなのです。おとうさん、おかあさんの悲しみはともかくとして、実情というものが、疑問を持ったままでいままで伏せられておった。しかも二万五千円というお金を渡したきりで——あとは全部自分の金です、掛け金ですから。これで一切がっさいが終わる、こういうふうな状態は、はたして許されるものかどうか。  しかも、いろいろな面から被害者が悪いみたいなことを言っておりますが、まだ一年未満でありながら、ことし入隊して三月二十八日にこういう事件が起こって死亡しているわけですけれども、わずかこれだけの期間の間に、被害者は表彰状を四つもらっています。模範隊員ですよ。どなたに聞いてもリーダーである。また、ちょっと上の友人に聞きますと、非常に優秀なリーダーであって、非常に慕われておったわけです。そういった事実をいろいろ考えますと、さぞかしおとうさんおかあさんは悲しみのことだろうと私は思います。それにこたえるだけの処置をすることが私は大事だと思う。  私は第四次防については反対でございますけれども、こんなことがばたばた起こってごらんなさいよ。こういう処置がなされておったらなお一そう人間は集まりはしません。いわゆる明朗な自衛隊になり、しかもまた、一般の隊員の方々が喜んで隊務に服する、そして人権が守られる。それは、いろいろ隊務に服しているときも、あるいは事故が起こったときも、そのときには、金銭的にも、あるいはまた形式的にも、ほんとうにみんなが満足できるような状態に置くことが最も大事なことだと思います。この点についてもう一度係官と大臣からお答えを願って私の質問を終わりたいと思います。
  333. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 全貌がはっきりいたしまして、私もまことに遺憾、恐縮に存じ、その点はおわびを申し上げます。お話の全貌に従いまして、私どももう一度よく調査をいたしまして、そういう実態があるということでございまするならば、それぞれ適切な処置をとり、また、こういう事態、あるいはこういうような措置が再び起こりませんように、十分の是正、監督指導の措置をとってまいるつもりでございます。
  334. 桑名義治

    桑名委員 もう一つだけお願いしたいのですが、長官、いま国家賠償法の問題を言いましたが、これをもう一ぺん研究をさせていただきたいと思います。
  335. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 研究をします。
  336. 桑名義治

    桑名委員 以上で終わります。
  337. 伊能繁次郎

    伊能委員長 伊藤惣助丸君。
  338. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ただいまの自衛隊の傷害致死事件については、最後に長官から、前向きで再調査をして善処をする、こういう答弁がございましたので、私もそれ以上申し上げることはございませんけれども、ただ一つ申し上げたい点は、人事局長にいたしましても、長官にいたしましても、こういう事件がすでにわかっておったわけであります。しかしながら、最初のほうは、どこまでも自衛隊員の立場、自分の立場のみに固執したような答弁に終始したところに私も非常に腹立たしさを感じたわけであります。たとえどんな理由でそういう事件が起きたとしても、長官責任者である局長がまずもっておわびを申し上げる、これが当然であります。さらに、この問題は家族から出ているわけでありますけれども、また、きのうあたりから公表されたことでありますから、さっそく家族に対して、自衛隊側から誠意のあるおわび、あるいはまた訪問をし、事情を申し上げるぐらいの、そういう自衛隊でなければならぬと私は思います。そういうことがなかったということは、私はたいへん残念に思います。その点も重ねて申し上げておきます。かつて、これは前々代の増田防衛庁長官でありますが、事故が起きたときには、家庭を一軒一軒歩いて、そしておかあさんに頭を下げた、そういう事実があるのですかですから、そういう点について、もし長官が忙しくてそういうことができなければ、少なくとも長官代理ぐらいの方が行く、家族に対してそのぐらいの誠意を示すべきじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  339. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 その点、さっき申し上げましたように、事実を再調をいたしまして善処をいたす中に、そういうことも含めて考えます。
  340. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 きょうは実は時間の申し合わせをしておって、ほんとうはいまごろとっくに終わっているはずでありますが、自民党さんがいなかったり、あるいはまた時間が非常におくれてまいりまして、多少おそくなりますけれども、御容赦願いたいと思います。  私は、きょうは聞きたいことはたくさんありますけれども、特に新長官、新委員長の第一日目でもございますので、一つ長官に基本的な問題。それからきのう相模原兵器廠を調査しての結論といいますか、その結果について、施設庁及び外務省に今後の具体的な方策を伺って質問を終わりたいと思うのです。  まず初めに塩素ガスの問題でありますが、きのう相模原兵器廠に参りましたら、塩素ガスの貯蔵所はもうすでにきれいに撤去されておりました。したがって確認するものは何もなかったわけであります。  ただしかし、ここで問題になりますことは、確かに、塩素ガスを撤去したことによって、地域住民に被害を与えるようなものはなくなりたわけでありますが、どこまでも疑問として残る点が数多くあります。一つは中曽根防衛庁長官が、相模原にある塩素ガスというものは、在日米軍基地において水道の消毒用あるいはまたプールの滅菌用に使っている、そして年間の使用量は二百本である、それを丸紅飲田から調達をしている、こういう報告があったわけであります。しかし、きのうもあの兵器廠のトンプソン中佐ですか、副司令官に聞いた話では、そこがちょっと違う点であります。どういうふうに違うかといいますと、私が質問したのは五月の十四日、そして調査をして報告しますといって報告したのが五月の二十一日です。それでそのときの報告がいま言ったとおりであります。ところがきのうの話では、さらに私が、消毒用、滅菌用より以上に大量の塩素ガスを購入していた事実があるではないかと申し上げましたところ、つい最近まで在日米軍基地だけではなくて空軍や海軍に調達しておったのだ、こういう一つの新しい事実をトンプソン中佐が言ったわけであります。しかも五月に納入された四十三本は、横田の空軍基地に輸送したものだということであります。したがって、滅菌用、殺菌用のいわゆる在日米軍基地で使うより以上のものは、実は相模原兵器廠から別に空軍にも海軍にも輸送しておった、このことを明言しております。  したがいまして、私が申し上げたい点は、丸紅飯田から調達したその消毒用、滅菌用の二百本のほかに、すでに十一月からではありますけれども、半年間で三百八十一本にものぼる大量の塩素ガスを調達しておった。しかもそれが米軍基地以外の空軍や海軍に使われておったという新しい一つの事実であります。この点については、じゃ何に使ったかと聞いたわけでありますが、それは言えないということであります。そして今後はどうするかと聞いたら、もう相模原兵器廠では扱わない、扱わないけれども今度は直送するというわけであります。したがって、私の大きな疑問であった、この塩素ガスというものが、軍事的に、あるいはまた化学兵器の原料として使われたという疑いは消えないのであります。しかも今後は、それをやめるのではなくて直送するということであります。  長官御存じのように、塩素ガスというのは、ジュネーブの議定書によって、毒ガスの例示の中にある一番低いものではありますけれども、塩素、ホスゲン、イペリットというようなものはつくってはならない、使ってはならないというふうな規定があるわけであります。この問題についてはかって外務大臣が、在日米軍基地の中にジュネーブ議定書に規定されているところの毒ガスはないと明言しております。しかしながら、もしあったとするならばどうするか。これはたいへんなことだから前向きで善処する、このことも答弁しております。実はこの委員会においてその問題を追及したわけでありますが、この委員会に外務大臣は急遽参りましてそのことを確認したわけであります。したがって、今回の撤去はそういう意味においては非常にすみやかな処置であった。私はよかったと思っております。しかしながら、先ほど申し上げましたように、毒ガスの原料として、あるいはまた化学兵器の原料として使われてきたんじゃないか、またこれからも使われていくのじゃないか、こういう疑いは消えないわけであります。  しかも、米軍が常に、いろいろな弾薬や、あるいはまた軍需物資を輸送することについては、われわれは何も知らないわけであります。これをどこでどのような扱いや、また輸送が行なわれていたかわかりませんけれども、あってはならないことだと思います。そこで私が申し上げたい点は、もう私としても、これ以上追及しても、向こうは軍事機密である、私は言えないことだ、こう言われた以上は、これ以上追及はできないわけであります。したがって、ここで私が明確にしておきたい点は、今後、相模原兵器廠といわず、消毒用、滅菌用以外に使うような塩素ガスの搬出、搬入は、日本の基地においては絶対しないということ。さらにまた外務省の方に伺いたいのですけれども、外務大臣の答弁にもありますように、この問題については、前向きに米軍に、消毒用あるいは滅菌用以外の塩素ガス、軍事的な化学兵器の原料や、あるいはまた軍事的に使われるようなものについては、日本の国に持ってきてはいけない、あるいはまた、そういうものを保管してはいけないということを、外務省当局から申し入れをしていただきたいと思うのですが、その点についてまず明らかにしていただきたいと思います。
  341. 島田豊

    ○島田説明員 昨日、先生方現地を御視察になりまして、私のほうから五月二十一日でございましたか、御報告申し上げましたことと若干違いがあるということであります。納入の数量につきまして、これは年間二百本ということでございますが、確かに私どもがその後調べたところでも、先生の数字に近い数字をわれわれも把握しておりますので、この二百本だけではなかったということはわわれれも確認いたしております。それから、補給先はもっぱら在日米軍、陸軍各施設ということでございましたが、私どもその後調べたところでは、やはり一部空軍等にも補給しておる、こういうことも承知いたしておりますので、その点は合致いたしておるわけでございますが、ただこれは、われわれ依然として水道あるいはプールの滅菌用、消毒用というように認識しております。そこで、その各軍の水道施設あるいはプール等は、陸海空それぞれ相当ありますが、そういうところに補給されているものというふうにわれわれは信じております。私どもから申し上げることはその程度でございます。
  342. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私、きょうこれでもう一切毒ガスの追及はやめようと思っているわけです。ですから問題を提起して、今後の対策について十分な国民の納得できる一つ対策を言っていただきたいと思うわけですが、先ほど言ったように、どこまでも施設庁長官は、消毒用、滅菌用に使っているんだというふうにもし思われたとするならば、これは考えを改めていただいて、やはりこの問題についてはそうじゃないわけですから、在日米軍基地で約二百本くらいしか使ってないわけですが、それをたった半年間で、在日米軍基地が使う二百本をこえて、三百八十一本をほかに納品されているんですよ。ということは、これがたとえ消毒用、滅菌用といったって、それ以外に使われているという疑いが消えないのです。しかも、きのうのトンプソン中佐の話によりますと、今後は全然調達をやめたのじゃないのです。もうこれからはじかにやるというのです。どこかわかりませんけれども、直送するというのです。ですから納得ができないわけですね。だから私は、このことについては、滅菌用、殺菌用以外に軍事的に使われているんじゃないか、あるいはまた化学兵器の材料に使われているんじゃないかという疑いを持つわけです。しかし、きのうのような短い時間では質問は何べんもできないし、しかも言えないとい・うことですから、追及してもそれ以上何ら回答は求めることはできないと思いましたので——ほかにもいろいろ質問しましたよ。けれどもそれは全部答弁しません。たとえば昨年の七月に、トラックに三本しか積めない大きな塩素ガスを入れるタンクがあそこに数十本あったのも、従業員が見ているわけです。それはどこに使ったのだと言っても、それも言えないということであります。そういうようないろいろな疑惑があるわけです。ですから私は、今後あそこには再びそういう搬出、搬入はないと思いますけれども、やはり大事なことは、日本政府として厳然と——ジュネーブ議定書に毒ガスはつくってはならない、使ってはならないというふうにある。しかも日本政府としては、核どころじゃない、それはとんでもないことだから、もしあるとすればすぐ——そして始まったのが沖繩ですよ。一番最初は、沖繩には毒ガスはないと言っておりました。しかしながら、あとになって事故が起きて、実はあったと言っておりますよ。だから私は、同じように在日米軍基地の中でもあるのではないかという疑惑が実はあるわけです。ですから、もし今後そういうことがあったのでは、やはり日本政府が米軍になめられておるということにもなりますし、私はその歯どめとして、そういうようなものについては搬出、搬入はさせない、あるいはまた、そういう問題については今後は一切日本から供給しない、こういうふうに前向きでやることが大事じゃないか、こう思うのです。  それからもう一つは、きのう相模原市役所においても陳情がありました。事実、市役所の調査によっても、私の調査によっても、あの付近に住む地域住民から被害が出ております。それについても、米軍はどこまでも塩素ガスの被害ではないと言い切っておりました。しかしそれは調査した上のことじゃない。事実、三十八年から今日に至るまで、何回となく塩素ガス漏れによる事故は出ておるわけです。しかも政府はそれに対して補償も払っておるわけです。ですから今回は、撤去したから、もうないからいいじゃないかということじゃなくて、現在まで起きた被害者に対して、実情を調査して何らかの形で補償をやるべきじゃないか、こう思うのです。  それからもう一つは、地域住民の要望もあり、伊能団長も明言したことは、相模原というのは非常に広い土地です。そうしてまた作業状況といいますか、トンプソン中佐は、忙しいのは私一人だ、あとはあまり忙しくないと、その仕事の内容についても言っておりました。そうしてまたウエストエリアというのですね、塩素ガスのあったところ。あそこも撤去したわけですが、そういう返還にも前向きで施設庁も対処すべきではないか。団長も、そのことについては努力するということも言っておりましたので、その点もつけ加えて伺っておきたいと思います。
  343. 島田豊

    ○島田説明員 この塩素ガスの用途につきましては、先生のような御疑惑の点もございますので、外務省とよく相談いたしまして、米軍のほうにしかるべき措置をとりたいと思います。  それから、周辺住民の被害につきましても内々調査しておりますけれども、その結果によりまして、適切な措置をとりたいというように考えております。  それから相模原にあります米軍施設の返還問題、これはきょう大出先生にも御答弁申し上げましたように、今後とも極力、不要不急、遊休の施設につきましては、われわれとしては返還を米軍に求めたいと考えております。
  344. 橘正忠

    ○橘説明員 アメリカの政府はかねて、本土では致死性の化学兵器は持たない、貯蔵しないということを言ってきております。したがいまして、この点はいままでも確認はしておるのでございますけれども、この機会にさらに確認をいたしたいと思っております。ただいま問題になっておる物資についても、こういうものは兵器用に使われるのではないかという点も、あわせてその機会に確認をしておきたいと思います。
  345. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それじゃ、新長官三つばかり聞いて、きょうは時間もおそくなりましたから終わりたいと思うのです。  長官の略歴を見ますと、たいへん防衛庁には御縁が深くて、初代の警察予備隊の本部長官ですね。それから保安庁の事務次官ですか、なさってまいったわけですね。それで伺いたいのですが、新長官となりまして、いわば就任のごあいさつ、先ほど聞いたのですが、よろしくお願いしますというだけで、私よくわからなかったのですが、要するに、当時、警察予備隊の本部長官なり、初代の次長ですか、なさいまして、現在の大きくなった自衛隊を見まして、どういう感想を持たれておりますか。そうして今後自衛隊のあるべき姿をどのように長官考えているのか。一説には、中曽根前防衛庁長官は、自衛隊の五年先も十年先も、さらに十数年先までも示唆したいろんな角度からの答弁といいますか、自衛隊の方向を示唆しているわけでありますが、やはりそれについての見方、感じ方もあると思うのです。まず、その点について長官から率直な御感想を伺いたいと思います。
  346. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 私は、いまの自衛隊が警察予備隊という形で発足をしましたときの最初の本部長官でありまして、その後、保安庁に変わりまして保安庁の次長となり、自衛隊に変わります防衛庁の次長となり、七年間つとめました。それから国会に出まして十四年間、十四年ぶりに防衛庁へ再びつとめたわけでございます。しかし、私は参議院に出ましてからも、あるいは内閣委員として、あるいは党の国防部会部員というふうなことで、防衛庁の仕事には国会議員の立場で関与してきておりまして、十四年間全然音信不通で行ったのではございません。特にあらためての感想というものはございませんが、その間にだんだん自衛隊が整備され、大きくなった状況を見ておりました。特別の感想はございません。しかし、自衛隊というものは国の平和を守り安全を守っていくという立場は、時代の動きあるいはアジアの情勢、世界の情勢の動きの中で、ますます非常にむずかしく、また大切なものになってきておる。そうして一方では四次防というものが発表をされたことなどにもからみ、日本の経済力がたいへん大きくなったということにもからみまして、日本に軍国主義が復活をしつつある、あるいは軍国主義はもう復活をしたというふうな声も外国にはあるということも承知をしておりますが、自衛隊というものは、決してそういうふうなたてまえでいま整備をされておるのでないことをよく承知しております。そのことをしっかりと夢寐にも忘れることなく、一般隊員がほんとうに自衛、防衛ということ、平和を守るということに徹し、いやしくも軍国主義が復活しつつあるなどというようなことを言われるようなことのないように、十分にその点はしかと自粛をいたし、もともとたてまえがいわゆる文民統制と申しまするか、そういうたてまえでいまいっておる自衛隊であります。このたてまえを、政治が自衛隊というものをしっかりと把握、統率をしていくということを、さらにかたく堅持していきたい。しかし一面では、やはり自衛隊というものが規律が正しく、訓練もしっかりやりまして、国を守るという意識、気概が旺盛なりっぱな部隊、部隊員として育っていくように、お互いがしつかりと努力をしていかなければならない。そういう意味のお互いの努力を、私は長官として隊員とともにしっかりと堅持して心してまいりたい。  私は、遠い将来の防衛構想というもの、これは具体的な構想としまして、そう遠い将来というものが、いまのような時世でなかなか見通せるものではないという考え方でございます。しかし、第四次防、五カ年計画というふうなものは、これはもう具体的なものを策定をしなければなりません。さらにやはり十年先くらいは、一応の構想としてはこれを持ちまして、時々の変化をよく見まして、これを適切に修正をしていくべきものでありますが、十年先ぐらいは見通した形における平和の確保、そういう意味の自衛隊の練成、自衛隊の整備というふうなことをやっていかなければならない、そういうふうな所見をいま持っておるわけでございます。
  347. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 三つだけ聞きたいのですが、一つは国防基本方針の改定問題であります。これは中曽根長官が、四次防の決定前後に国防の基本方針を改定したい、こういうことを、議事録にもありますように、よく申しておりました。そしてその改定の内容というものは、昨年に中曽根防衛庁長官が提案しました自主防衛五原則というものがあります。その五原則の趣旨に乗って国防の基本方針を変えたい、こう申しておりました。特に、中でも長官が強調した点は、日本が軍国主義化という非難に対する歯どめとして、憲法を守り文民統制のもとにしっかり専守防衛でいくのだ、そして今後は自主防衛を第一義として安保体制の補完にするのだ、こういう趣旨の発言をしていたわけです。この国防基本方針の改定問題について中曽根長官はそう言っているわけでございます。言ったままその基本方針も出さずに交代をなさったのでありますが、その点について長官はどういう考えなのか、また改定するならば四次防をほんとうにやるのかどうかという点はいかがでありますか。
  348. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 国防の基本方針というものについて、中曽根長官の構想も私は国会議員としても承りました。引き継ぎの際にも、この点についての若干の申し継ぎを受けました。受けましたが、いまおっしゃるように、軍国主義というふうな声があがることのないように、憲法を順守し文民統制をしっかりやる。自主防衛ということの意味合いを、自主防衛をもって安保補完の作用をせしめるというふうな趣旨のことを国防の基本方針の中に取り入れるということであることを承っております。そして私のいまの考え方は、中曽根前防衛庁長官も、こういう趣旨でひとつ国防の基本方針の改定に努力をしてくれというふうな引き継ぎはなかったわけでございます。こういう構想を持っておった。  私、考えまするに、申されることは、みなたいへん重大な、もっともなことでございますが、いまの国防の基本方針という中に、そういうことは、明文にありませずとも非常にはっきりした前提というふうになっておるわけでありまして、ここで国防の基本方針を変えてこういうことばを入れるということは、場合によっては、あらぬ誤解というと語弊がありますが、何かあらぬ意図を推測されるというようなこともないではないというふうに考えますので、ただいま就任早々でございますが、ただいまのところ、国防の基本方針を中曽根長官の構想に従って変える必要はないのではないかというふうな気持ちをいま持っております。
  349. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 もっともっと話を詰めたいのですが、ほかの先生方もおりますので、もう二言だけ言わしてください。  一つは、防衛庁は四次防原案を出しました。四次防はまだ原案の段階でございますから、先ほど長官の答弁によりますと、いいんじゃないかという話も聞きましたが・最終的に決定するには、大蔵省や、また国防会議の審議を通じて決定しなければならぬと思うのです。しかし、四次防はもう来年度から始まりますし、これもやはり夏ごろまでにはと長官は言われたことがあります。したがって、いつごろこれをきめるのか。新長官はやはり大丈夫でありますので、そういった点もひとつ明確にめどを伺っておきたいと思います。  それからもう一つ、先ほどから日本の軍国主義が復活したとか、復活しつつあるとか、いろいろ誤解されているということがありましたが、それは自衛隊の整備計画というものが、一つは目標が非常にあいまいであり、また限界というものが常に明確にされなかったところにその原因があるわけであります。そういう点で、もしまだ長官考えておらなければ、またこの次の機会にでもお伺いしたいと思いますが、やはり平和憲法にはおのずから限界というものがあると思うわけでありますが、無制限に四次防、五次防、六次防というふうに大きくなることは決して合憲だとは言えないと思うのです。おのずから限界がある。専守防衛にしても、たとえ近代兵器の進歩によっていろいろな兵器が出たとしても、やはり限界というものは明確にしなければならぬというふうに私は思うわけであります。  そこで、限界とはいいましても、まず防衛費の費用の面での限界はどのくらいに考えておるのか、あるいはまた、その量的な人員だとかあるいは装備だとかの限界ですね。また三番目には質的な限界。これは装備のことで言えますけれども、そういう問題。それから公海、公空、いわゆる防衛出動の地域的な限界、こういったことをどのように考えられて今後対処するのか。その二点についてお伺いして質問を終わりたいと思います。
  350. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 四次防は、防衛庁としての構想は御承知のとおり一応まとまっておりますが、これからまだ各省との——一番大きいのは大蔵省でございますが、大蔵省との調整という重大な関門があるわけでございます。さらに国防会議にかけるわけでございます。国防会議は、幹事会に各省の次官が入っておりますので、そこの段階でも各省との調整はとれるわけでございます。  そういうことでまいりますので、いまの防衛庁案がそのままで通るものではまずまずないわけで、若干の修正はあるかと思いますが、そういう段階を、手順を早く踏みまして、やはり第一年度の予算を組むということもありますので、来年度予算を組むという時期までには、この四次防を国防会議の議を経て計画として確定したものにいたしたい、そういうつもりでこれから促進をしていきたい。(伊藤(惣)委員「いつごろですか」と呼ぶ)おそくとも十二月ということになると思います。  そうして、軍国主義その他いわれる場合の自衛力、日本における自衛隊の目標、限界という問題でございますが、これは量的なもので、申し上げることはなかなか困難だと私は思います。しかし、抽象的なもので申し上げましても、これはいわゆるシビリアンコントロールと言いますよりも、政治が基本をしっかりとっていくという体制ができております。防衛計画なり経費の点は国会の議決を経て定まる。そういうところで必ずしっかりした歯どめがあるということを、具体的に私どもは考えてよろしいように思うわけであります。そうして経費の点でも、したがいまして、GNPなり予算なりに対して一〇%ぐらいがいいとか、一%ぐらいがいいとかいうふうな言い方は、なかなかできにくいと思うのでありまして、日本のように急速にGNPが伸びるところでは、必ずしも一%とかいうところにこだわる必要がなく、若干それが下回るということであってけっこうな場合が十分あると思います。そういう点での歯どめというのはなかなか困難だと思います。  それから自衛力の量といった面でも、なかなか量的なあれはっけにくいと思います。陸の問題などを考えますと、現在の十八万というふうなものは、沖繩が入ってまいりますと、一応六千八百名ばかりのものをいま防衛庁としては考えておりますが、陸の問題が若干ありますので、大体一八万というふうなところが一つのめどだというふうに考えていいというふうに私は考えております。そうしてその点は、さらに自衛力の整備としては装備の改善、これも量をふやすのではなくて、質的な改良ということでこの整備を強化していくということがいいと思うのであります。空のほうも、この主力は要撃の戦闘機というようなところにありますが、この数も、四次防において考えまする数をそう大きくふやすことは考えなくてもいいのではないか。これもやはり、科学の進歩に伴いまして質的な改善はやっていかなければいかぬというふうに思うのであります。海のほうは、やはり日本のいまの国家の成り立ち、国民生活の成り立ちが、海外貿易、海外からの資源の輸入、製品の輸出というようなところに大きくかかっておりまして、海上の航路安全という点が重要な問題でありますので、海のほうは、量的な数がどれほどというわけにはまいりませんが、さらに量をふやすという問題が考えられなければならないというふうなことを考えております。  あくまでも四次防から五次防とさらに量的に陸海空とも大きく伸びる、質的にも改善をするというふうな考え方はとらなくてもいい、そういう意味での一応の歯どめも十分考え得るし、基本的には政治統制という形における防衛力の整備、防衛計画の策定というところでりっぱに歯どめをつけておる実態である、まあ、そういうふうに考えておる次第でございます。
  351. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いろいろ聞きたいことがありますが、同僚議員の質問もありますので、これで終わります。
  352. 伊能繁次郎

  353. 和田耕作

    和田(耕)委員 長官に、きょうは時間がありませんので、緊急の問題で一つだけ御質問申し上げておきます。  ニクソンさんの訪中という問題は、日本の今後の安全保障という問題について非常に重要な影響があると思うわけですが、この背景と申しますか、日本の安全保障に関連をするようなニクソン訪中のいろいろな問題を、長官はどのようにお考えになっておられるか。
  354. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 ニクソン大統領の訪中ということは、米中関係の基本的な改善という方向が踏み出されたというように考えまして、これが実現し、その訪中の成果がりっぱに実ることをたいへん待つわけでございます。これによって極東の緊張、世界の緊張が緩和されるということを期待し、その点をたいへん待ち望むという気持ちでございます。
  355. 和田耕作

    和田(耕)委員 そのような期待というものは、その裏づけになっている問題は、ベトナム問題がこの訪中によってどのように解決されるであろうかという見通しの問題と、台湾問題を中心とした問題がどのように話し合われるだろうか、この二つの問題について、このニクソン訪中というものが具体的にどのような話し合いをしつつあるのかということについての報告を受けた上での長官のいまの発言ですか。
  356. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 いまお尋ねのような事項についての内容の報告なり情報の収集などはいたしておりません。まだ私にはありません。
  357. 和田耕作

    和田(耕)委員 その具体的な情報なしに、米中関係が緩和されるとか、日本と中国の問題が好転していくとかいうような発言ができますか。どういう根拠で長官は、この訪中によって、大きく今後、日本と中国との問題、あるいはアメリカと中国との問題が改善されていくという判断をされておられるのか。
  358. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 先ほど申し上げたように、ニクソン大統領の訪中決定ということは、米中関係改善をされるきっかけになるものだと期待をし、それを望みます、そういう意味においてたいへんけっこうなことだと思うし、そうして訪中がされて成果を生むことを望みます、期待をいたしますと申したのであります。それによってアジアの緊張の緩和、世界の緊張の緩和ができることを望みます、そう申したのでありまして、そういうふうに必ずなるだろうという情報をもって申したのではございません。そういうふうになることを希望いたしますと申したわけでございます。
  359. 和田耕作

    和田(耕)委員 外務省の方お見えになっておりますか。——今度のニクソン訪中の問題について、事前にこれがわからなかったということは理解できます。こういう問題はキッシンジャーが中国へ行って、そしてこの話がつくかつかぬかわからないような状態があるので、その前にアメリカとしては、日本にいろいろなとやかくの情報を出すことはできなかっただろうということも、たいへんこれはなめた話だと思いますけれども、その点については私は理解ができる。しかしあのニクソンのテレビの声明があった以後一週間になりました。この一週間の期間に、この訪中の問題について、アメリカがどういうような意向を持っているのか、どういう見通しを持っておるのか。つまり、いまのベトナムの問題と、そして台湾の問題と、あるいは国連の問題の三つの懸案について、どういう方針を持っているかということがいまだにはっきりしない。まだ長官はよく具体的に知らないというわけですけれども、はっきりしないというのはどういうわけですかね。その問題について、外務省としてはアメリカとどういう接触のしかたをしているかということについてお伺いしたい。
  360. 橘正忠

    ○橘説明員 ニクソンの訪中が発表されましてから、たとえば十九日に牛場大使がロジャーズ長官に会われた。それをきっかけにいたしまして、米国責任者側と極力接触をし話をしておったのであります。ただニクソンの訪中も、明年の五月までというような時間がございますので、またこの内容もどこまできまっておりますか、いろいろいまから話すのは、どうも向こう側も差しさわりがあると思っておるようにも思われますので、なかなか的確な情報はまだ参っておりません。ただ入手にはつとめております。
  361. 和田耕作

    和田(耕)委員 日本はいままで、佐藤総理大臣もよくおっしゃっておったように、アメリカとしては最大の友邦として扱っておる。あるいは日本も国運をかけるような安保条約を結んでいる関係にある。この二つの関係を持っておる日米関係で、いま申し上げたとおり、ものになるかならぬかわからぬような交渉にキッシンジャーさんは行っている、そういういきさつがありますから、事前に日本に対して、こういうことをやるつもりだというようなことを言えなかったということは、これは理解できる。しかし、いま申し上げたとおり、十五日のテレビの声明があって一週間になります。この一週間の期間に、最大の友邦といわれるアメリカと日本との関係において、いまだにその方向すらわからない、これはどういうわけですか。いま外務大臣は御病気と聞きますけれども、日本の安全保障の問題に非常に決定的な重要な意味を持つことですから、防衛庁長官、外相にかわって防衛庁長官としてもアメリカに出かけていって、レアードさんがあの直前に来ても言も言っていないのですから、レアードさんと会って、どういう腹なんだということを聞くぐらいの努力が必要じゃないでしょうか。防衛庁長官総理大臣じゃないんですから、総理大臣に聞くことかもわかりませんけれども、長官としては、四次防その他の重要な国防の問題を控えて、しかもこれの前提が大きく変わっておるという段階において、大事な問題について積極的にこれを確かめようとする努力をまだしておるように見られない。総理大臣の衆参両院の予算委員会の答弁においても、二転三転としているような印象を与えている。これが責任を持った態度ですか、総理大臣でも防衛庁長官でも。こういう問題について御意見をお聞きしたい。
  362. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 お尋ねの趣旨はわからぬではございませんが、防衛庁長官立場でそういう問題に直接取り組むというのは、私は防衛庁の立場としてはむしろ適当ではないのではないか。やはりこれは外務省、外務大臣なりのところで、この点についての情報収集の努力をしていただくということがいいのではないかと思います。
  363. 和田耕作

    和田(耕)委員 防衛庁長官として、総理に対してそのような御意見を述べたことはまだないんですか。
  364. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 まだございません。
  365. 和田耕作

    和田(耕)委員 私はそういうふうな態度はよろしくないという感じがいたします。前の中曽根長官は、あの「よど号」事件のとき以来口をすっぱくして言うことは、日本防衛にとっては情報を的確に把握するということが非常に重要なことだということを言っておられました。私もそうだと思います。現在の日本の置かれたこの立場において、限られた自衛力しか持っていない、日本防衛のおもな部分は外交という面に依存をしているというこの実情は長官もお認めだと思いますけれども、そうであればあるだけ、こういう新しい事態が起こった場合に、それは言うだけではなくて、長官としての責任において総理にそれを進言をする。外務大臣がそれができなければ、適当なかわりの人がアメリカに行ってアメリカの態度を確かめてくる、こういう努力が必要じゃないですか。今後も、これは先ほども申したけれども、総理大臣に言うことですけれども、防衛庁長官としては、日本の安全保障に対して一応責任を持っておる、そういう立場から、総理に対してそういうような意見具申が適当でないというふうに考えておられますか。どうでしょう。
  366. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 情報の大事なことは、中曽根長官が申したとおり私も同意見でございまして、情報収集についての防衛庁としての機構なり人的整備なりをやりたいと考えております。しかし、今度のような問題が起きた場合に、防衛庁長官が先頭に立ってこの問題を推進をするというのは、私はそう適当ではないというふうに考えております。
  367. 和田耕作

    和田(耕)委員 大臣として総理に意見具申をするというお気持ちもないのですか。適当な人がなければ私が行ってもいいという——適当な人がなければですよ。確かに、アメリカに行く場合に、あなたが行くのは適当だとは私は思わない。外務大臣は病気で休んでおられる。代理はおられるけれども、これは代理です。このニクソン問題について一番大きな影響があるというのは、日本の安全保障の問題、そうと思いませんか。
  368. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 もちろん安全保障に重大な関係があると考えます。しかし、私いままでこの問題について総理に意見具申をしておらぬわけですけれども、私はこの問題で意見具申をし、まあ適当な人がなければ私が参りましょうかという、そういう言い方をする、そういう動きをするということが、私は防衛庁長官としては必ずしも適当ではないというふうに考えております。
  369. 和田耕作

    和田(耕)委員 牛場大使にまかして情報をキャッチするという態度をやっておられると思いますけれども、この前の牛場大使が国務長官と会っての話は、外務省としてはかなり十分な情報を得られましたか。
  370. 橘正忠

    ○橘説明員 十九日の日に会われましたが、約三十分間で、その際は、一部新聞にも出ておりましたが、米国政府が背景の説明をした。その範囲はあまり多く出ておらなかったと思います。
  371. 和田耕作

    和田(耕)委員 あらためて二回目に牛場大使に対して、もう少しはっきり向こうの意向を知れという訓令は出されましたか。
  372. 橘正忠

    ○橘説明員 単に二回目というだけではなく、今後米側と密接に協議し、意見を言い、それから情報をとるようにという訓令は出ております。
  373. 和田耕作

    和田(耕)委員 この一週間のやりとりを見ても、いかに日本防衛責任を持っておる総理大臣、あるいは防衛庁長官、外務大臣が、日本防衛という問題を自分のこととして考えてない、アメリカに寄りかかっている、アメリカの情報を提供されるままに日本の方針を変えていく、こういうことがはっきりと浮き彫りにされるような思いが私はするのです。日本防衛大臣は、日本の、自分の国の防衛という問題をしっかりと踏まえておれば、そういうふうな人まかせの状態でおっていいと思いますか。私はそう思わないのですけれども、長官の御意見を聞きたい。
  374. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 防衛の問題を人まかせにしていいとは考えませんし、人まかせにしてやっておるとも考えておりません。今度のニクソンの訪中の問題というのは、ニクソンが米中関係改善、打開をしようという手を打ったということで、それがもとより日本の安全、防衛にとって成果のあがるような重大な関係がある。りっぱな成果をあげてくれることを期待をしておるということを先ほども申し上げたのでございまするけれども、そういうことでございまするが、日本防衛をあなたまかせで考えておるということとは違う私どものたてまえをとっております。
  375. 和田耕作

    和田(耕)委員 しかし、ニクソン訪中の背景がどういうふうになっているかわからないけれども、これがどのように進展するかということは、先ほど大臣もおっしゃったとおり、日本の安全保障のあり方、特に日本の自衛隊の運営あるいは配備の問題について、あるいは四次防の問題について非常に大きな影響を持っているということは、長官お認めになりましたね。しかも日本の四次防なりあるいは日本の安全保障という問題を、これからは次第に日本自身の判断で日本自身の態度を打ち出していかなければならないという、そうでなくてもそういう時期に来ておった。ところが、ニクソンのあの問題が伝えられるような形の展開があれば、これは日本の国防会議というものが適当であるかどうか私はわかりませんけれども、ここで日本の四次防というものを踏まえての防衛の問題に対する基本的な検討を始めなければならぬ。そういう検討をやっておられますか。
  376. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 ニクソン訪中が決定をしたといういまの段階で、そこまでの手続、措置をとることは、いまのところ私は考えておりません。訪中の結果どういうことになるか、いい結果が出て米中関係改善をされるということを大いに期待をしておりまするが、どういうことになりまするか。先ほど来お話しのとおり、まだ情報もなかなか——私は情報のとれないことが、こういう問題ではむずかしいのが筋道のようにも思います。情報もとれないような状態であります。訪中の成果がどういうふうに出るかということは、もう少し情勢を見なければわからない。訪中の成果があがることを期待をしてくるということで、仰せになったような手順をいま運ぶということは、私はまだ考えておりません。
  377. 和田耕作

    和田(耕)委員 つまり、そういうふうな長官の心がまえというものは、アメリカさんに対するあなたまかせの態度、これは従来の惰性としてそういうような態度があると私は思うのですよ。こういう時期には、もっと積極的な態度をとって、アメリカはどういうふうな態度で交渉しようとしておりますか、日本の安全という面から見ればこういう点、こういう点が大事だと思う、これに対してアメリカとしても十分な一つの考慮をすべきではないかというような意見は、当然出ていい時期ではないのでしょうか。先ほど私申し上げたとおり、ニクソンの訪中が決定前の情報についてつんぼさじきに置かれたという問題は、私はそう思いますけれども、これについては話はわかる。話はわかるけれども、その後一週間たっても何ら確たる情報を持たないというのは何たることかということを申し上げたい。また、その努力も十分してないと思います。牛場さんに訓令をして、牛場さんがそっけなく扱われた。はっきりわからない。ただまあどうやら、国連あるいはその他の問題についてアメリカは本気らしいというような情報しか得られない。それに従って総理の答弁が二転三転するような印象を与えている。この問題があったときに、四年前でしたか、ジョンソンさんが北爆の停止を声明をした。すぐ南北ベトナムが、あるいはアメリカと北が会談をして、ベトナムに平和が来るような報道のしかただった。あの報道と同じくらいの大きな活字で新聞で報道した。しかしその結果は、御案内のとおり何も変わらない、そういうことがありましたね。あのことを私はあの直後にさっと頭をかすめたのです。しかしその後の経過を見れば、どうも今度は本物らしいという印象をいま持っている。そうあってほしいと私は思っている。こういう問題は、そういうふうな例もあることであって、日本政府としては、じっと静観をしているということは、たとえばイギリスとかフランスならば、あるいはそれでいいですよ。日本というこの立場においては、そんなことで日本の安全保障に責任が持てるかと私は申し上げたい。先ほど申し上げたとおり、私はあなた自身の責任とは思わない。総理大臣責任だと思いますけれども、あなたは日本の安全保障の責任を持っておられる。したがって、そういう問題についてもっと本気になってアメリカの態度を調べる。牛場大使にまかせるのではなくて、適当な閣僚が向こうへ出かけていく。そういうふうな努力が私は必要だと思うのですけれども、なおかつ長官は、まだそういうことは必要でないとおっしゃるのですか。
  378. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 それはことばの使いようで、誤解を生ずるといかぬと思いまするけれども、先ほど申したのは、そういうことを総理に進言をしないか、したかということであったので、進言をいたしておりません、そういうことをいま防衛庁長官の私が総理に進言することは、私は防衛庁長官としては適当と思いません、こう言ったのです。そうしておっしゃるように、この問題についての適切な情報を収集する人をやるとなれば、何といっても私は外務大臣代理が行くことが一番適当であると思いまして、そういったところでこの問題の収拾その他を考えることが適当であるというふうに考えておるということでございます。防衛の問題、安全の問題がきわめて重要な問題であることは先ほど申し上げたとおりでありまするが、防衛庁長官立場で私がそういう進言をすることを適当とは思いません。それはあなたまかせなどというものでは絶対にございません。
  379. 和田耕作

    和田(耕)委員 私はその問題と関連して、情勢の変化に即応するような防衛上の基本問題についていろいろお聞きしたいと思っておるのですけれども、これはこの次の機会に譲ることにいたします。ただ一言、防衛庁長官は、就任されたとき、新聞記者との会談で、日本防衛の限度というふうな問題に触れて、四次防ができても一%以内になっているというおことばを言われておりますね。つまり長官の頭の中には、日本防衛は、憲法上のいろいろな制約等を考えて、GNPの一%ぐらいが限度であるというお考えがありますか。
  380. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 先ほど、どなたかにはお答えをしたように思いまするが、あのときの新聞記者会見においての談話が出されておるのは、GNPの一%くらいを欲するか、一%以上を欲するか、そういう程度であればいわゆる軍国主義なんといわれることはないというふうなものを考えるかというような質問がありまして、私が答えた基本は、GNPの一%であればよろしい、二%であればいけないというふうな言い方はむしろ適当でない。GNPがどんどんふえていく日本においては、特にそのパーセンテージだけでものを考えることは適当と思いませんということをまず申して、しかし日本の自衛隊の整備を考える場合に、これは陸海空それぞれの目標を分析をしてみる。日本の守るべきものを一応想定して、陸海空の整備を考えてみる場合に出る四次防の構想、そうしてそれはGNPに比例をとると、一%以内であるというふうなものは決して多過ぎるものとは思いませんということを言ったのでございまして、一%であるからいい、したがってこれからも一%はちょうだいする、そういう言い方をしたのではございません。
  381. 和田耕作

    和田(耕)委員 あの言い方は、新聞記者の報道ですから正確でないかもしれませんけれども、私の読んだところでは、GNPのまだ一%に四次防ができてもならない、したがって軍国主義といわれるいわれはないのだというお答えをしておられましたね。これはそういうことはないのですか。
  382. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 GNPだけでないのだという言い方をしたわけではありません。この四次防の自衛力整備の形というものは、軍国主義といわれるような、そういうおそれがあるものではないし、かたがた初めに質問があってGNPが出ておるものですから、GNPも一%にとどまりますと、こう言ったわけであります。こういうことを全然言わなかったわけではないが、ものの申し方はそういう形で申した、こういうことでございます。
  383. 和田耕作

    和田(耕)委員 もう一点、あの談話の中で、二次防なり三次防、四次防、そして五次防ということばが出ておるのですけれども、それも大体同じようなテンポで発展していくというようなお話があったようですけれども、やはり五次防というものは、現段階で防衛庁長官は、同じようなテンポで発展していくようにお考えになっておられますか。
  384. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 私は、五次防のことは強く話をいたしたのではございません。一次、二次、三次とやって、今度四次防というものがいま策定の段階にきておる。そのあと五次防というものも行なわれるでしょうという意味で申したのでありまして、四次防と同じ増強のテンポで五次防もいくというふうなことは申したのではございません。
  385. 和田耕作

    和田(耕)委員 これで終わりますけれども、いままでの四次防までの議論というのは、日本がソ連あるいは中共、大陸中国というものを目の前にして、きびしい冷戦の構造というものが世界政治の中にあった、これを踏まえて日本防衛という問題を議論をしてきた。したがって吉田茂首相が、戦力なき軍隊などというおかしなことを言っても、私どもは、そういうふうに言いのがれなければしようがないのかというような感じを持って理解してきた。しかし今度の場合は、冷戦の構造が大きく変わる可能性を持ったのはニクソンの訪中です。そういうものとして長官総理大臣もこれを期待している、こうおっしゃる。こういうことですから、防衛の基本的な条件が変化しようとしておる。どうなるかわかりませんけれども、変化しようとしておる。それを日本の政府としても望んでおる。こういう段階で日本防衛、安全保障の問題について、自衛隊の兵力あるいは外交の問題その他すべての問題を踏まえての日本防衛問題の基本的な前提について、それと関連した自衛隊のあり方について、再検討でなくて基本的な検討をしなければならない時期に来ていると私は思うのですけれども、長官、どういうようにお考えですか。
  386. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 何度も繰り返すようですけれども、ニクソンの訪中決定、そうして訪中が実現をし、米中関係が基本的に改善をされる。アジアの緊張が緩和される、したがって世界の緊張が緩和されるという形になることを大いに望みます。そういうことでいわゆる防衛日本の平和確保というものの基本というものにいい変化が来ることを望みます。望みまするが、そういう変化が来ることを想定をいたしまして、いまの四次防というものの自衛力整備というものを考えてみますると、日本防衛、これはどこが侵略をしてきそうだということよりも、場合によって日本に攻撃を与える能力を持っておる国との対比において、もちろん、それが緊張が緩和されておるとされておらないとで違うわけですけれども、そういうことのたてまえにおいて自衛力を整備をするというのがいまの四次防の考え方でございまして、まだまだ四次防が整備をされれば、日本のいろいろ想定される安全確保に、もうこれで十分足りたというものには、なかなか私どもはまだなるものではなかろうというふうな見方をしておるわけでございまして、ニクソン大統領訪中というりっぱな成果を生むことを、そうして緊張が緩和されることを期待をいたしますが、そういう期待のもとにあっても、いま基本的に四次防の考え方を再検討するという必要はないであろうというふうにいま一応考えております。
  387. 和田耕作

    和田(耕)委員 まだいまの長官の御答弁には私は不満なんです。内容云々よりも、長官の安全保障の責任者としてのかまえに私はまだ不満な点が多々ありますけれども、きょうは長官の時間がないようですから、次の機会に、これに引き続きまして、もっと具体的な問題を踏まえながら御質問を申し上げたいと思います。  終わります。
  388. 伊能繁次郎

    伊能委員長 次回は、明二十四日午前十時より理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時十二分散会