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1971-09-16 第66回国会 衆議院 大蔵委員会金融及び証券に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員会昭和四十六年七月二十三日(金曜日) 委員会において、設置することに決した。 七月二十三日  本小委員委員長指名で、次の通り選任され  た。       上村千一郎君    奥田 敬和君       木村武千代君    中川 一郎君       藤井 勝志君    松本 十郎君       村上信二郎君    毛利 松平君       吉田  実君    平林  剛君       広瀬 秀吉君    堀  昌雄君       坂井 弘一君    竹本 孫一君 七月二十三日  藤井勝志君が委員長指名で、小委員長に選任  された。 ————————————————————— 昭和四十六年九月十六日(木曜日)     午前十時九分開議  出席小委員    小委員長 藤井 勝志君       奥田 敬和君    木村武千代君       松本 十郎君    村上信二郎君       広瀬 秀吉君    堀  昌雄君       坂井 弘一君    竹本 孫一君  小委員外出席者         大蔵委員長   齋藤 邦吉君         大 蔵 委 員 坂元 親男君         大 蔵 委 員 松尾 正吉君         大蔵省証券局長 坂野 常和君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         大蔵省国際金融         局次長     林  大造君         参  考  人         (東京銀行頭         取)      原  純夫君         参  考  人         (日本証券業協         会連合会会長) 瀬川美能留君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事長)  高城  元君         参  考  人         (日本軽工業製         品輸出組合理事         長)      十場久三郎君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融及び証券に関する件(最近の金融及び証券  問題)      ————◇—————
  2. 藤井勝志

    藤井委員長 これより会議を開きます。  金融及び証券に関する件について調査を進めます。  本日は、最近の金融及び証券問題について、参考人から順次御意見を承ることといたしております。  御出席を願う参考人は、東京銀行頭取原純夫君、日本証券業協会連合会会長瀬美能留君、商工組合中央金庫理事長高城元君、日本軽工業製品輸出組合理事長場久三郎君の各位であります。  ただいま東京銀行頭取原純夫君、日本証券業協会連合会会長瀬美能留君が御出席になっております。  まず、両参考人から御意見を求めることにいたします。  原参考人瀬川参考人には御多用中のところ御出席いただき、まことにありがとうございます。  本件についてそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  まず、原参考人
  3. 原純夫

    原参考人 原でございます。よろしく。  最近、円の問題をはじめわが国を取り巻く国際金融通貨情勢はきわめて困難な事態に立ち至っておりますが、本日私は外国為替銀行立場から、特に為替取引現状問題点ということに焦点をしぼりまして、次の四つの点について述べさせていただきます。  その四つの点といいますのは、第一がわが国対外取引特質であります。第二が変動相場制への移行前の状況であります。第三が変動相場制移行後の状況問題点であります。第四が今後の輸出入のあり方についての所見でございます。  時間の制約もございますので、まず私の意見を簡単に申し上げさせていただきまして、足らない点につきましては御質問に応じて意見をつけ加えさせていただきたいと存じます。  第一に、わが国対外取引特質でございますが、まず、為替取引現状について申し述べます前に、わが国対外取引特質につきまして申し上げさせていただきたいと存じます。  それは、わが国では欧米の主要諸国と違いまして、対外取引のほとんど全部が外貨建てで行なわれておる、九九%といっても間違いないと思います。またその金融につきましても外貨建てで行なわれておるということであります。外貨建てでありますだけに、平常な状態におきましてもすべて為替変動リスクが伴うということでございます。  輸出取引を例にとって御説明いたしますと、ドル建て輸出契約をいたしました輸出業者は、船積みしましたあと為替を買ってもらう。それを、幾ら相場ドル手形が買い取られるか、幾らの円を受け取れるかというのに不安定の要素があるわけでございます。契約から船積み後、円代金を受け取るまでの間にもし大きく為替相場変動がありますと、契約時にはじきました採算が狂ってしまうという危険を負っているわけであります。このような危険に対しましては、為替銀行との間で先物為替の予約を行なうということによってその危険をカバーする、あるいは船積み後直ちにその手形為替銀行に買い取ってもらうということによって、金融を受けると同時にリスクカバーをするという次第でございます。  為替銀行はこれに必要な資金調達を行ないまして、かたがた為替リスクを、内外為替市場におきまして為替を売買するということによってカバーするということになるのでございます。このように、お客さまから引き取りました為替リスクを的確に処理いたしまして、みずからのリスク負担危険負担を最小限にとどめる、同時に代金回収までの間に輸出業者金融をつける、また輸入業者金融をつけるということが為替銀行の基本的な仕事なのでございます。  わが国の場合、対外取引のうち輸出入だけを取り出してみましても年間約四百億ドルという大きな規模に達しておりますので、この金融にはかなり資金を必要とするばかりでなく、特に近年は輸出輸入のギャップが大きい、輸出が御案内のとおり非常に多いということもありまして、このような為替操作も技術的にむずかしくなってまいっておる状況でございます。これを円滑に遂行するということが、わが国為替銀行に課せられました役割りであるということがいえると思います。  さて第二段の、変動相場制への移行前の状況について申し上げます。  近年わが国貿易収支の引き続く黒字を背景といたしまして、かねて円の対外価値につきまして論議内外で高くなってきておりました。ところが本年五月に、御記憶でございましょうが、ドイツでごたごたといいますか、シラー蔵相の発言その他が契機になりまして、結局ドイツ・マルクが変動相場制移行するということになりました。これを契機といたしまして円の切り上げ不安というものが一段と増してまいったのでございます。このような事情を反映いたしまして東京におけるドル先物市場は名目的な存在となってしまいました。先物取引がきわめて困難な状態になりました。この間いわゆるリーズ現象も手伝いまして——リーズ現象といいますのは、いま言いましたように輸出した人は早くドルが値の十分あるうちに円にかえたいという、繰り上げてでも円を受け取りたいということでございますが、いわゆるリーズ現象も起こりました。輸出為替はますます増加いたしましたが、他方為替銀行はこの買い取りに応じながらも、国内の諸規制による制約もございまして、直物市場でこの買い持ちの危険を処分することがままならない状態に置かれ始めました。先ほど申しましたように、先物市場はもう名目的でほとんど取り引きできない、直物でもカバーがむずかしいという状態になったのであります。  実はこの段階で為替銀行といたしましては、その買い持ちリスクを回避する道は必ずしもないわけではなかったのであります。当時新聞紙上をにぎわしておりましたドルシフトというものがそれでございまして、これは、このような為替リスクを回避する一つの手段といたしまして、従来輸出為替買い取り資金を御案内外国為替資金借りという制度等によりまして円で金融しておりましたのでありますが、これを円でなくて外貨での金融に切りかえるということにいたしますとこの回避ができるということになります。が、こういたしますと円を使わないで外貨を使うということになりますので、結局そのあげくの果てはそれだけ日本外貨準備がふえる。つまり、外国の金でやりますから日本外貨準備はふえてくるという結果を招きますために、円の切り上げの圧力がますます強まるということがあって、いわばそういう大きな立場から遠慮せぬならぬという事情が出たわけであります。  このような状況のもとで、去る八月十五日ニクソン大統領によって突如金・ドルの交換の一時停止、一〇%の輸入課徴金の賦課ということを含みまする、いわば非常にドラスティックな新経済措置が発表されたのでございます。これは、第二次大戦後の世界経済の発展をささえてまいりましたところのIMF体制ガット体制を根底からゆるがすものでありまして、世界じゅうに大きな不安と動揺をもたらしたのでございます。これはまさにドル・ショックでございます。これによりまして円切り上げ不安は現実の問題としてわれわれに襲いかかってきたといってもよろしいと思います。ことに、先ほど申しましたように、ドル債権を持っております方々はこれを一刻も早くそのときの相場で、ドルが円にあらわしてまだ十分三百六十円の値打ちがあるというときの相場で円にしたいということで、為替管理法上許されるあらゆる方法を講じたのであります。いろいろ言われますが、やはり経済人としては自己防衛目的とするものでありますので、当然の成り行きだと私は考えます。  一方、為替銀行といたしましては、お客さまのこのような要望にこたえますためにこれを買うというのが本来の使命でございます。が、他方、冒頭にも申し述べましたように、為替銀行自身為替持ち高を持つべきではない。つまり、外貨を抱いているとかあるいは売って、売りの地位におるとかいうような持ちを持っちゃいけない。つまり持ち高がゼロになるように——このようにドルは円に対しては下がるということになりますと、例は悪いですが、そういうことばを使ってはいけませんが、ドルというのはばば抜きばばみたいなもので、持っている人は必ずそれははずしていきたいという、為替銀行も当然のことで、持ち高を持つべきではないということになっております。それが、このような何が起こるかわからない時期におきまして多額のドル債権持ち続けるということは、とうてい私企業としてはたえ得られない。これは銀行お客さんも同様でございます。したがって、これを直ちに処分する必要に迫られたという次第でございます。  もともとわが国におきましては、為替管理上の制約から、貿易業者はもちろんのこと、為替銀行におきましても、その為替の危険をカバーする、ヘッジするという機構、メカニズムが制約されておるのでございます。これに加えまして、このように一時期に大量のドル為替が殺到いたしました。それもあり、当局為替銀行に対する規制もさらにこの間一部強化されるということになりました。八月の中旬末ごろには、そういうお客さんに対してはお買いしなければならない。しかし自分で一ぱい抱き込んだままゲームセットになったのではたいへんだというので売らなければならない。売るのに自由には売れない、制約が強いという、為替銀行としましては非常に困る状態。その結果、不本意ながら一時はかなり為替取引を手控えるというようなことをせざるを得ない事態となった次第でございます。これが変動制移行までの状態でございます。  第三が変動相場制移行後の状況、それと問題点についてでございます。  わが国もとうとう八月二十八日から変動相場制実施に踏み切りました。これは御案内のとおり五月のとき、あるいはすでに去年カナダがやったというような前例がありますが、外国でも五月の危機を乗り切るために若干の国が始め、今回はヨーロッパのおもな国が大体変動相場制になってしまっているというような状況でありますが、わが国もとうとう八月二十八日からそれになった。そして多国間の平価調整を通じまして、国際通貨体制の再建に協力してまいるということになりました。  変動相場制というのは、本来自由な市場取引を通じて直物及び先物相場が形成される制度でございます。しかしながら現在とられております変動相場制は、多国間の平価調整が完了するまでの過渡的な体制であるだけに、そのような本来の形では機能いたしておりません。  まず先物について申しますと、変動相場制移行後も先物相場先行きへの不安が依然として解消しません。で、先物市場はほとんど麻痺状態となっております。このために、為替銀行先物市場お客さんから買いましたドルを売る、そしてカバーをとるということが実際上不可能な状態となっておるのでございます。  次に直物について申しますと、わが国の場合は、変動相場制移行後、為替取引上の規制制限は一段ときびしさの度を加えてまいりました。これによりまして、為替銀行直物によってリスクカバーする、つまりお客さんからドルを買うわけでございますから、別に直物ドルを売るということが要るわけでございます。それが従来以上に困難になったということでございます。  このようにして、為替銀行持ち高処分が八方ふさがりとなっております結果、わが国為替取引、さらには貿易金融かなり不円滑な状態になりつつあります。すなわち、本来投機的ないし撹乱的な取引を防止することを目的とするこれらの諸規制が、何ら制限を受けるべきでない経常的な輸出入取引をも大幅に制約するという面があらわれてまいっているのでございます。  このような不自然な状態は、多国間の平価調整を経て、国際通貨金融体制が新しい秩序に落ちつきまして初めて最終的に解消される性質のものであることは申すまでもございませんが、多国間の平価調整という問題自体かなり長期化するという見通しも御案内のとおりかなりに出てきております。その場合に、わが国が今後この平価調整の過程で対外的に息の長い、粘り強い交渉を行なってまいりますためにも、国内において少なくとも輸出入などの経常的な取引が円滑に行なわれ、いやしくも日本の内部から行き詰まりを来たすということのないような状態を確保することが必要だと考えます。特に、しわの寄りやすい輸出専業ないし輸出関連中小企業に対しましては、適切な対策がきわめて必要であるというふうに思います。  そこで、為替取引規制投機的資金規制などにとどめまして、経常的な取引につきましてはこれが円滑に行なわれるという体制が最小限度必要であると考える次第でございます。すなわち、特にこの際、為替銀行の良識に信を置かれまして、為替リスクカバーのための外貨資金調達などにつきまして、ゆるやかな活動余地を与えるということにしていただきたい。そうしていただけば為替銀行の本来的な機能かなりに復活いたします。それによりまして事態は多少なりとも改善されるというふうに考えるのでございます。  さらに、これら経常取引円滑化を効果的に進めますためには、以上述べましたような諸規制の緩和のみではなくて、さらに進んで、国または中央銀行為替銀行為替金融機能を積極的に補強するような施策が必要であるというふうに考えます。  さて次に、第四の今後輸出入をどのように考えるかという点について一言申し述べさしていただきます。  私は特に皆さまに訴えておきたいと思いますのは、今後、現在のような相場先行き不安と課徴金の帰趨が明らかでないこの混迷した状態が長きにわたって継続いたします場合には、対外取引、特に輸出取引新規成約が著しく阻害されまして、数カ月経過後はわが国輸出水準の急落を余儀なくされ、深刻な社会問題にまで発展するということもあり得るわけでございます。この点、今後の国民経済にとりましてきわめて憂慮すべき問題であると考える次第でございます。今後わが国経済が健全に発展してまいりますためには、輸出輸入が均衡のとれた形で拡大していくことが望ましい、これは申すまでもございません。輸入需要の拡大をもはからねばならないということ、もちろんでございますが、一方、輸出もまた健全な姿でこれを伸ばしてまいるということは必要だと考えます。もし近ごろいろいろいわれておりましたように、輸出正常化というような名のもとに単純な形で輸出を縮小すれば足りるというよりな論議があるといたしますならば、これはまことに当を得ない、日本の将来のために憂うべきものだというふうに思います。国といたしましてもこのような考え方に立たれて、今後の諸施策を強力に進めていただきたいというのが私のお願いでございます。  御清聴ありがとうございました。
  4. 藤井勝志

    藤井委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。松本十郎君。
  5. 松本十郎

    松本(十)小委員 ニクソン緊急経済政策が発表されましてからちょうど一月、その間、思い出してみてもいろいろなことがあったわけでありまして、ただいま原東銀頭取のほうから、変動相場制移行前の実情あるいは移行後の姿と問題点ということを話されたわけでありまして、確かに現在は、発表後のあの激しい動きというものと対比して、一応表面的には平静化しているかと、外国為替市場は見られるわけでありますが、しかし、そこに内在する問題はいろいろ多いと思います。  そこで、いろいろ御質問したいと思うのでありますが、時間の制約があるようでありますから、一つにしぼりまして伺いたいと思います。と申しますことは、現在の変動相場制、やはりいま申されましたようにかなり規制が入っておる。したがって経常取引そのものすら円滑に行なわれない、こういうことで、輸出成約先行きを見て問題ではないか、こういう御指摘でありましたが、そういう内圧というものを培えなければならないし、一方ではまた外圧と申しましょうか、先進諸国国々は、日本政府変動相場制移行したとはいいながら、そこに中央銀行介入等による規制が入っているじゃないか、あるいはまた外国銀行の中には、円転換規制をきびしくすることによって困ったことが起きている、こういう言い方でございまして、内外からするそういう現在の変動相場制そのものに対するいろいろな批判なり突き上げというものが予想されるわけでありますが、それに対して頭取も、ここで何かゆるやかな活動余地を為銀に与えるように、あるいはまたそれを積極的に補強する施策をやるべきである、こういう御意見であります。しかしまた政府立場というものもわれわれは十分理解できるわけでありまして、この辺で少し穴をあければそれがまた現在の為替市場というものを混乱におとしいれるもとになるのではないか。変動相場制移行前のあの大量の中央銀行によるドル買いといいましょうか、為銀その他によるドル売りというものは、事実はわれわれはまだつまびらかではありませんが、やはりいろいろの批判があるわけでありまして、そこで為銀の活動機能をゆるやかにするということで余地をゆるやかにするということになれば、そこからまたそういう問題がないとも限らない。しかし、そうかといってこういうままで続けていけば、きのうきょうのロンドンにおける蔵相会議成り行きを見ましても、なかなか簡単には多国間調整はちょっとできそうもないわけでありまして、さらにまた月末の第二回の蔵相会議あるいはIMF総会におきましても、そう簡単に今度の国際金融問題の決着がつくとは見通せないと誓えられる状況のもとにおきましては、かなり長期的に持久戦にたえ得るような日本のやり方ということを頭に置かなければならないと思うのでありますが、そういうものを考えました場合に、いろいろ頭取も言っておられますが、具体的に、ゆるめなければ先行き困るし、ゆるめればまた混乱するし、このジレンマをどのように解決したらいいとお考えになっておるか、ただ一言この点について御質問したいと思います。
  6. 原純夫

    原参考人 ただいまの御質問の点は非常にいま重要表問題だと私は思います。通貨価値が変わるというときには非常に大量の資金が動くというのは、ドイツの場合でも、また今、度の日本の場合でもごらんのとおりでございます。それを全部当局カバーするということがたいへんであることもおっしゃるとおりでございます。  私、御質問の問題につきましての解決といいますか、一〇〇%の解決はなかなかないと思います。しかし、それをいかにして、常識的に見て不当でないようにするかというので考えるべきだというふうに思います。その一つは、先ほどもるる申しましたように、経常的な取引でない、逆にいいますと投機的な資金移動などで混乱もし、その結果国が、あるいは当局が損をしょい込むというようなことは常識的にもとうていたえられない。ただこの制度が、長い間IMF体制で安定した為替市場が続きましたものですから、いま現にそれを維持したいというようなことから、このような大きな資金移動が横行しているというか、あるような状態でございます。やはり、こういう乱れた状態になりますれば、経常取引と、非経常といいますか、簡単にいえば投機的な取引について規制を加えるということは当然だろうと思います。日本制度もそういう趣旨でできておると思いまするし、ヨーロッパ諸国もこの混乱を通しまして、前は大体そういう通貨金融市場は自由にしておくのだという思想が非常に強かった国々におきましても、いまや相当に規制をいたしております。フランスのごときは、御案内のとおり市場を二本立てにいたしまして、経常取引は前からの相場でがんばっていく、そうでない、資本取引といっておりますが、そのほうはもう相場は自由に突っ放すというようなことをやって曲り、その他の国もそのような色合いのことを多くの国がやっております。多くの国というか、もう全部やっておるといってよろしいと思います。  それが一つであると思いまするし、また、経常取引といいましても、取引自体が長い取引ができにくくなるといいますか、これは経済要求からいえば、何年先に金をもらうということでもやりたいという気持ちはある、ただそれが、何年の間に相場が変わるのがあたりまえだというような事態になりますと、なかなかそういう取引がこれは自然にできにくくなると思います。その辺、自然にまかすか、あるいは経済界でもそれらについてどういう態度をとるかというよう次点は、やはり大きな政策問題であり、また経済界としても大きな方針の問題であろうと思います。いってみますれば、長い取引、あるいは貿易取引につきましても、ユーザンスといいますか、金融をつけてもらう期間も若干は縮みがちになるということもあるかもしれません。私、いまの気持ちは、少なくとも船積みして荷物を出すというときに、御案内のとおり、三カ月、四カ月先に、ドルならドルをもらうという手形をつくって、それを買ってもらうわけですから、その三月、四月先、そのくらいのなには絶対にカバーがとれる、ということはこれを割ったらもう貿易はとてもたいへんだろうと思います。経済人といたしましては、なるべく長い期間カバーがとりたいという気持ちはございますが、その辺は、先ほどの国の立場当局立場、また経済を極力活発に進めていくという要求からくる弾力性要求というようなものをかね合わせて考えるべき問題かと考えます。  不十分でございますが、なおあとございましたら……。
  7. 藤井勝志

  8. 堀昌雄

    ○堀小委員 最初に国際金融局にちょっとお伺いをしておきますけれども、今度の為銀の海外短期資産負債残高が八月中に十億九千万ドル前後悪化した、このことは結局、要するに為銀が外銀から取り入れておった残高をふやしたということじゃないですかね。ちょっとそれを答えてください。
  9. 林大造

    林説明員 ただいま堀先生の御指摘のとおり、八月中に為銀部門短期資産負債残高を合わせました残高が、約九億九千万ドル前後負債がネットでふえたということは、それだけ資産サイド負債サイド、差し引きで外銀からの借り入れがふえたということでございます。
  10. 堀昌雄

    ○堀小委員 原さんにお伺いをいたしますが、私、いまお話しになっております、為銀を信頼して、リスクをある意味で日銀なり政府もかぶってもらいたい、こういうお話だと思うのですが、私も実はこの間、九月一日の委員会で、政府に対して、抽象的ではありましたけれども、この状態ではもう輸出がストップをする、何とかひとつ調整の手段を日銀も政府も考えてもらいたい、こう申してあるわけです。時間が制限されておりましたから具体的には申しませんでしたけれども、少なくとも先物がもう完全にストップしておるということは日銀総裁もそのときお答えになっておりますので、先物引き受けといいますか、目下やるべきことを少し考えたらどうかということが一つの中身であり、一つ日本銀行の再割りの処置をしてみたらどうかというようなことを考えておったわけでありますけれども、非常に技術的でもありますしするので避けたわけでありますが、私はやはり今度の経過の中で為銀のポジションがこういうふうに悪化したという、実にどうも私ども、やはり為銀全体として少し信頼ができないという点があるのです。為銀が完全にニュートラルになるということであるならば、私どもは何とか政府にもう少し積極的に、こういう先物引き受けなり日銀の再割りなりあるいは預託の問題にしろ、やり方はいろいろあると思うのですが、どうもその点にちょっと私ども不安を感じておるわけです。東京銀行がということではございませんよ、要するに東京銀行を筆頭とする為銀全体の中にやはりどうも適切でない処置が今度あった、こう思うのですが、原さんはどういうふうにお考えでございましょうか。そのあったかなかったかの点をちょっと……。
  11. 原純夫

    原参考人 私は大きなそういう御批判を受けることはなかったと思います。非常にどさくさのときで、先ほど申したような、ばばを持っておる者はどうしても売りたい。それ以上に欲が出ますと、ばばを売り過ぎにしておけばもうかるというようなことがあります。それも、そういうことは銀行屋であれば当然わかりますから、そういう誘惑が全然ないということはいえないと思います。しかしながら私は、日本為替銀行がそのような態度で仕事をしておられるということは全然思いません。その上、そのような態度でいたしましても、日本規制というものは独特に、非常に、何といいますか、強度にできておりますので、もういわばガラス張りの中でやっているというようなもので、当局の目から見れば一切わかってしまうというようなことになっておりますので、とうていそういうことはできない。またお客さんに対しましても、お客さんがそのばばを持って、これはたいへんだと言っていられるのを、自分は売り持ちのポジションでもうけるというようなかっこうでいったのでは、これはもうお客さんから見ましても実にけしからぬ銀行だということになりますね。特に今度のように非常に逼塞してしまって、私どももそうでしたけれども、一時、為替を持ってこられてもそのままではかえないというような事態まで起こした中での銀行でありますから、とうていそういうことはできない。それこれ考えまして、私はそういうことはなかったと確信いたします。
  12. 堀昌雄

    ○堀小委員 もう一つ、二十七日に御承知のように変動相場制に、まあ八時ごろ移行したわけですけれども、伝えられるところによりますと、この日には日銀は時間を延長してまで為銀からドルを買い取った、三億ドルぐらい買い取った、こういわれておるわけでありますが、大体あの前に円転規制の緩和があったり外貨預託を三億ドルもしたりしておる経過から見まして、二十七日時点では為銀はほとんど買い持ちがなくなったと見てよろしいのでしょうか、どうでしょうか。
  13. 原純夫

    原参考人 大体そうだろうと思います。ただ一言つけ加えさしていただくならば、買い持ち持ちながらぽかんとしているというのは、とうてい銀行経営者としては全然アウトなわけです。これはもう教科書にも一番はっきり書いてあるところなんですね。しかもあの時期というものは非常に危険の増した時期です。その前は、先ほど申し上げましたようにいろいろな事情持ちを持たざるを得ないということになっておったわけです。それは反面で何かのときに、あぶないときに、このままゲームセットになったら困りますよという気持ちはありました。それで最後に大体持ちがゼロになるということになったということでございます。
  14. 堀昌雄

    ○堀小委員 私どもはどうもそこらが、要するに二十七日の午後八時に発表される事前に十二億ドル全部買い持ちが売られて、為銀がニュートラルになったというのは、何か私どもたいへんふしぎな印象を受けるわけですね。そのあくる日に全部売られたとかいうならわかるのですけれども、午後八時に発表になるときに、午後三時に全部為銀がニュートラルになるというのは、何かどうも私どもは、それは日銀がどうしたのかわかりませんけれども、やや為銀にフェーバーをたいへん与えた。それは別にもうけたわけじゃなくて損をしなかっただけだといえばそれまででありますけれども、非常にそこらに私ども疑惑があるものですから、その前段の、要するにポジション悪化の問題といまの二十七日の問題とあわせて考えますと、為銀は自分たちを守るに急であって、やや全体的な情勢の中では少し問題があったんじゃないか。それがどうも私ども、今後各種の規制緩和をするために非常に逆にマイナスになってきているのじゃないかという感じがちょっとしておるわけであります。  それはそこまでにいたしまして、もう一つは、ちょっときょうもお触れになっておりますが、五月のマルク・ショックがきましたときに、たしか先物のディスカウントはかなり広がりつつあったと思うのですが、しかし当時これがあまり拡大をされないで処理がされたと思うのです。これについてはおそらく政府なり日銀が一応の介入の処置を、要するにディスカウント幅を拡大させないために処置をとったと思うのですけれども、これはどういうふうな処置をとったのか、ちょっと具体的にお伺いをしたいのです。
  15. 原純夫

    原参考人 あのとき御措置になりましたのは、そうですね。そうはいってもその後、先物市場はノミナルなようになっておりますから、実際われわれが先物として概念しましたものは、外国為替資金借りをして、それで業者から輸出ビルをお買いする。その場合に業者から金利をいただく。外国為替資金借りの金利はもちろんいただかなければ合いませんからいただきます。が、一方で先ほど申しましたように外国為替資金借りをいたしますと、それによって買ったビルは買い持ちになるわけです。それは何というか、売れないようなかっこうになっているものですから、それは先物で売っておかなければならぬということで、先物で売ります場合に、通常は金利差というもので先物と現物の開きがありますけれども、こういう不安な情勢になりますとその差が非常に開いてくる。開いたものをお客さんからいただかないと銀行は合わないわけです。先物市場はあまり立っていないのだけれども、そういうことから外国為替資金借りをもとにして輸出ビルを買います場合の金利を相当高くしないと合わないということになりまして、それはまた非常に困るという面もありまして、われわれ、当局の、何というか、御希望、意も察しまして、それをかなり低いところで金利の相場を出しました。そのために当局は為銀の外貨ポジションのほうに応援をされるというようなことがございました。  私あまり精細には申し上げられませんが、大きな点はそんなようなところじゃないかと思っております。足りなかったら補足いたします。
  16. 堀昌雄

    ○堀小委員 最後に一問だけ。これからちょっと具体的に、たとえばいま新聞で伝えられているところでは、為銀に対し外為会計から外貨を預託して中小企業だけの輸出手形買い取りをさしたらどうかというような問題とか、外銀借り入れの規制ワクを少し拡大をしたらどうかというような問題があります。さっき私が申し上げたような先物引き受けの問題もありましょうし、あるいは日銀の再割りの問題もありましょうし、そういうふうに具体的に幾つか今後実際上に金融取引を正常化させるための手段があると思うのですが、いま為銀としてはどれが一番——ほかにさっき松本委員のお話のように、その他に、影響をもたらすことが最小であって実際上の経常取引円滑化させるためにはどれが一番よろしいのか。いま私かりに四つほど例をあげましたけれども、ちょっと順位をつけていただきたい。最後に……。
  17. 原純夫

    原参考人 非常にむずかしい御質問で迷います。が、実際論といたしまして、輸出が非常に契約しにくくなっている、また契約してある人も出すか出さぬか迷っているという状態は非常に深刻なものがある、一日を争う問題だと私は思います。そういうことで言いますと、たとえば先物市場をつくれということを申し上げましてもこれはそうすぐにはできない。やはりすぐできるものからやっていただきたいと思います。すぐできるものとしましては、外貨が非常にたくさんおありになることでもありますから、預託をやっていただくというあたりはわりあい早くできるかもしらぬ。それから輸出手形買い取りをやられるということもできないことではないけれども、これにはいろいろむずかしい議論がありますので、そう簡単とも思われません。先物市場というのはおそらく一番むずかしいでしょう。言うべくしてなかなかむずかしいということだと思います。大体順序はそんなことでよろしゅうございますか。
  18. 堀昌雄

    ○堀小委員 終わります。
  19. 藤井勝志

  20. 坂井弘一

    坂井委員 原参考人にお伺いいたします。  いまも出ておりますが、輸出が非常にむずかしくなるのではないかということでございますが、九月といいますと、例年輸出が急増する。商社あるいはメーカーにしましても、やはり資金繰りの問題もありまして、例年ならば急増したわけです。今回はやはり為替不安があって、それでなかなか輸出が伸びない。しかしまた反面、八月には相当不安の見通しが先にあって、そして輸出かなり伸びた。その反動がこの九月に来ているのではないか。しかしまた決算期がだんだん迫ってくるということになりますと、どうしてもやはり商社、メーカーは輸出を急がざるを得ない。そういうようなことで、おそらくやこの下旬にかけて輸出が相当殺到するのではないか、こういうことが予測されるわけです。そういう事態になってまいりますと、為銀の手形買い取りの余力がだんだん細まる、弱ってきておる、ですから実際にはなかなかそれもむずかしいのではないか。したがって、下旬以降には輸出手形をめぐるあつれきが相当強まってくるのではないか、そういう心配がかなりあるようなんですけれども、そういうことに対する見通しあるいは対応策についてどうお考えか、ひとつお伺いいたしたいことと、同時に、いまも外貨預託の積み増し等、こういうことはやれるのではないかということですけれども、しかしはたしてそれが中小企業、特に一番深刻な打撃を受けるであろうといわれるそうした中小企業に対してそれがうまく働くかどうか、その辺のところも非常に大きな疑問があるのではないか、こう思われるわけです。それらを含めてひとつ御見解をお伺いいたします。
  21. 原純夫

    原参考人 ただいまお尋ねの点が、私どもいま毎日毎日、心配をし、会議をし、手を打っているところでございます。お話しのとおり、八月はこの関係ではかけ込みといいますか、繰り上げ輸出というようなものもだいぶあったようで非常にふえた。九月に入って減っております。減っておりますが、しかしそうすぐ半分になるというようなものではないと思います。大体の感じで二割か何割かというようなことだろうと思います。いずれにしましてもおっしゃるとおり輸出月でありますので、いまのところは非常に大混乱あとなものですから、そしてかけ込みがあった、それから前受け金も入ったというようなこともあって、為替買い取り要求といいますか、お売りになる額がわりあい少なくなっております。しかしなかなかこれでは済まないだろう。そして先ほど申しましたように、お買いしましたドル銀行が売ってカバーをとるということが非常に窮屈になっておりますので、いつまたお買いするのを控えなければならぬかというのは非常にこわい状況でございます。それはまさに、先ほど堀先生もおっしゃったような手段をすみやかにおきめになってとっていただくということで対処する。もちろん為替銀行為替銀行としてできるだけのことをいたします。  最後におっしゃいました、中小企業が特に心配だということにつきましても、もうすでに、非常に混乱してわれわれ為替銀行も手控えなければならぬというときにも、やはり一番おそれましたのは、中小企業の方の手形を買えないじゃいかぬじゃないかというので、ですから、見ようによってはたいへんけちなやり方かもしれませんが、金額の少ないものは買う、あるいはまた中小企業の多い店については特にそういう点を注意してやるようにと、十分にはできなかったと思いますが、やっておりまするし、今後もそれはもう当然の配慮だろうと思います。十分に研究もし、手を尽くしてまいりたいと思っております。
  22. 坂井弘一

    坂井委員 それからもう一点だけ簡単にお尋ねいたしますけれども、最近ユーロダラーがもう四百億ドル以上になってきた、こういう状況下において国際通貨を安定させるということはきわめて困難なことであるということでございますが、こういうばく大な投機的な資金に対する対策はどうあるべきか、いかにあらなければならぬかというようなことにつきましてお伺いいたしたいと思います。
  23. 原純夫

    原参考人 国際通貨金融問題の一番のずぼしの御質問だと思います。私個人の考えとしましては、ユーロダラーマーケットというものはなかなかいいものだということをいわれますけれども、このように弊害が出てはとうていそのまま置いておけない。額も、もういまや四百億ドルもこえ、五百億ドルもこえ、六百億ドルだというような話もつい先日聞いたようなわけでございまして、つまり、この通貨市場というのは、そんな多額の金がいつどう動くかということがわからない。非常にたくさんガソリンが野放しになっているというようなことですね。しかも、私調べてみましたら、ドイツ通貨量は預金通貨を入れまして四百億ドル相当額くらいです。フランスもそれか、ちょっと多いか。イギリスもそんなものです。それらの通貨というのは、大体みんなが物を買うために、あるいは結婚の用意に、いろいろふところに持っているわけですね。そんなのは全部大挙して投機に行きやしない金なんです、一部は行くだろうけれども。しかしユーロ通貨というものは日銭があったり、一週間、十日、一月というような、もう何度も何度も回っているわけです。そのときに何かあれば、それを扱っている金融業者はすぐにそれを投機に充てられる。投機に充てるというのは、結局、強い通貨がある場合に、この通貨の投機というのは、弱い通貨を売るというのはなかなかできにくい。強い通貨を買う。しかも幸いなことに、長年の安泰な世の中になれて各国戸締まりがしてないということで、猛烈に入るわけです。御記憶でしょうが、ドイツの最後のときなんというものは、一時間足らずに、幾らですか、十億ドルだったか何億ドルだったか、たいへんなものが入るというようなことがありました。そういう揮発性の強いマーケットであるということから、やはり私はそれを少なくとも規制はすることが必要だ。その動きはもう出ております。ドイツのこの混乱あとに行なわれました十カ国蔵相会議あたりでもその必要は認めておりますし、手も若干は打っておりますけれども、まだまだとても足らない。私は個人的には、ユーロダラーマーケットというものはもっと縮小しなければいけないというふうに思います。これはもう大問題だと思いますし、それがあるので残念ながらこういう混乱もなかなか急にはおさまりにくい、たいへんむずかしい時代に入ったと私は考えております。
  24. 藤井勝志

  25. 竹本孫一

    竹本委員 時間の制約があるようですから、私はまとめて四つ伺いますから、簡単でけっこうですから御答弁を願いたいと思います。  第一は、為替銀行ドル売りの額はどれくらいと見ておられるかということです。  それから二番目は、日銀のドルの買いささえというものは、買いささえが最後まで成功するという見通しがあるときにだけ私は正しいと思うのです。ところが今度のように、ちょっとやってみてもうさっぱりだめになるというようなことであっては、その間に、先ほど堀委員から御意見も出ましたように、為替銀行の損失を肩がわりするというような効果はあったかもしれない。しかしそれはまた国民にそれだけの損失を与えるということにもなるでしょう。そういう問題も大事ですけれども、もう一つは、できもしないものをああいう形で買いささえをやったために、国際関係からいえば非常な誤解を招いていると思うのですね。あるいは日本に対する反感も招いておると思うのです。そういう点をどういうふうに評価しておられるかということ。  それから三番星は、外貨資金調達について、先ほど御説明の中に、ゆるやかな活動の余地を与えてもらいたいということで、また御議論が出ましたけれども、当面に外貨資金調達をどのくらい必要と見ておられるのか、その資金量をどういう判断をしておられるのか。いまお話の出ました中小企業にもその恩恵が及ぶようなところまでの資金調達ができるためには、当面どのくらいを考えておられるか。  最後に、為替金融機能を積極的に補強することを国や中央銀行で考えてほしいと言うけれども、補強工作としては具体的にはどういうことを要望しておられるのか。  以上、四点であります。
  26. 原純夫

    原参考人 たいへんむずかしい問題が四つありましたので、なるべく時間を短くお答えいたします。  ドル売り幾らだったということにつきましては、私、当局の関係の方にお聞きいただくほうがよろしいのではないか、私が申すのもいかがかと思います。  それから買いささえにつきまして、国際的な誤解というか批判ということについてのお尋ねでありますが、なるほど国際的な批判はございますけれども、私はその点では日本当局は決して間違っていたのではない、そしてやはり胸を張っていっていいのではないかと思います。というのは、当局のやられようとしたこと、まあいまもそうだと思いますが、投機は困る、しかし経常取引はささえていきたい。まあ経常取引自体が非常にむずかしくなってきているので問題なのでありますけれども、態度はそうであろうと思います。この態度は、先ほどもお答えに申し上げましたように、ヨーロッパの各国、ああいう自由主義というものをいわばもう宗教的にとっております国々でも、すでにこの混乱を通して投機のようなことを自由にしておいちゃいかぬのだということで、いろいろ手を打っておるわけなので、彼らもよく考えてみればわかるだろうと思います。おそらく惰性的な彼らの、自由のほうがいいのだ、日本規制しているのはけしからぬのだという、非常に先入観で、自由にしてどうなったって、それはそれで自由の代価じゃ、ないかというようなことをいつもいっておる。それを日本にも押っつけたいというか、そういう気持ちがあったので出たのじゃないか。私はそうその点は気にしなくていいのじゃないか。ただし、だいぶぎくしゃくしました中には、実は外銀との関係でもありますので、そういうことは私どもも困ったなと思っていることはあります。それは批判があっても全部が正しいとは思いませんけれども、いたし方がないというふうに思っております。  それから外貨資金調達量を幾らというのは、ちょっととっさには私思い浮かびません。結局一番大事なのは、輸出のビルをお買いする。輸出は御案内のとおりいま月三十億ベースですから、そのビルをお買いするのを各行がやる、そしてそれのカバーをとるというような意味で外貨調達しなければいかぬわけなんですね。そのオーダーのそれを、何カ月のビルかというようなことから何倍になるというようなことじゃないかと思いますが、数字的に正確に申すのはたいへんむずかしいと思いますので、そのようにお考えいただきたい、さように思います。  それから最後は、為替銀行に対するバックアップする手ということですが、これは先ほど堀先生もおっしゃいましたような、輸出手形中央銀行が再割りというか、買い取っていただくとかあるいは先物市場をつくり育てるということとか、あるいは外貨預託を、なさるとかいうようなことでございます。  簡単でございますが……。
  27. 藤井勝志

    藤井委員長 原参考人には御多用のところ貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。どうぞお引き取りいただいてけっこうでございます。     —————————————
  28. 藤井勝志

  29. 瀬川美能留

    瀬川参考人 日本証券業協会連合会会長の瀬川でございます。  委員の皆さまにおかせられましては、平素何かと証券市場のために御配慮、御指導いただきましてまことにありがとうございます。この席をかりまして厚く御礼申し上げます。  本日は、証券市場の当面する問題について意見を述べよとのことでございますので、いささか所見を申し上げまして御参考に供したいと存ずる次第でございます。  皆さま御承知のように、八月十六日の米国ニクソン大統領ドル防衛策の発表を契機といたしまして、株価はいまだかつて見ないほどの急落を演じたのでございます。本年に入りましてからの株価の動向を見ますと、輸出の好調、外八投資の増大などを背景といたしまして、年初来堅調に推移いたしまして、特に六月以降株価は一段と上昇傾向を強めまして、八月十四日には東証株価指数は二〇九ポイント、旧ダウ平均で申しますと二七四〇ポイントという市場最高値を記録したのでございます。ところが週明けの十六日のドル防衛策発表当日は二一〇ポイントの急落を見せまして、その後四日間で実に五五〇ポイントの下落を示したのでございます。その下落率は二一%でございまして、昭和二十八年のいわゆるスターリン暴落の際、二十三日間で二二%の下落率を示したことと比較いたしますと、今回の下げがいかにきびしかったか、いかに激しかったか、おわかりいただけるだろうと思うのでございます。  本連合会といたしましては、今回の暴落より一カ月ほど前の七月の九日に、証券会社に対しまして、「証券市場は、年初来活況の一途を辿りつつある現状にもかんがみ、協会員は国際化された証券市場の担い手として、苟しくも行き過ぎた投資勧誘に亘ることのないよう一層適正かつ慎重な態度を保持されたい」旨の通達を出しまして、強く業者に要望した次第でございます。また、暴落の直後におきましては、八月の十九日付をもちまして「証券会社は事態の推移を冷静に見極わめ、いやしくも証券界の信用を失墜することのないよう一層慎重に行動されたい」旨、要請したのでございます。  東京証券取引所におきましても、株価の暴落に際しましては、理事長から一般投資者並びに証券会社に対して同様の要請を行ないますとともに、信用取引の委託保証金率の引き下げ、値幅制限の強化など、証券市場の安定化並びに秩序の維持のため所要の措置を講じたのでございます。  その後、八月二十八日の変動為替相場制への移行の際は、証券市場は冷静にこれを受けとめ、為替相場が安定的に推移いたしたこともございまして、証券市場は波乱含みながら落ちつきを取り戻しておるのでございます。この間、わが国証券市場が一日たりとも閉鎖という事態に立ち至らずにその機能を発揮し得ましたことは、関係当局の御理解と御尽力並びに一般投資家各位の冷静な御協力のたまものでございまして、深く感謝の意を表するところでございます。  今回のようなドル防衛策が講じられましたことは、わが国の円の強さ、すなわちわが国経済の力強きことが大きい原因でございまして、このような点から見ますと、今回の措置はわが国経済の前途に致命的な打撃を与えるということではなくして、長期的に見ますなれば、新しい国際経済の均衡のもとにわが国経済は引き続いて着実に発展していくものと存ずるのでございます。と申しましても、わが国経済が新しい国際的均衡に適応していくまでの調整過程におきましては、わが国経済はきびしい試練に立たされるものと考えられます。  これに対処いたしまして、政府当局におかれましては大幅な国債の増発を行ない、大規模な社会資本の充実と大幅減税を実施することを考慮されている旨承っております。このような思い切った経済政策を実施いたしますことは、これまでややもすれば立ちおくれておりました社会資本を充実し、高度の福祉実現に資するのみならず、国際収支の不均衡の是正にも役立つものでございまして、私どもは全面的に賛意を表する次第でございます。  なお、このような新しい経済政策を実施するにあたりまして、輸出の減少によって特に打撃を受ける中小企業に対し積極的な対策を講ずるなど、きめこまかい配慮を加えられるようにお願いいたしたいのでございます。  ここで、証券市場立場から若干意見を申し述べさせていただきたいと存じますが、まず第一は企業の自己資本充実についてでございます。  これは毎回毎回繰り返されたことでございますが、皆さまもよく御承知のように、わが国企業の自己資本比率は諸外国に比べまして著しく低く、最近では一七%を割るというまことに憂慮すべき状況でございます。今後わが国経済の国際化が進展いたしまして、企業が一そう激しい国際的な経済変動にさらされるということを考慮いたしますと、企業の体質を一段と強化していくことが緊急の要務でございます。これがためには法人税の引き下げあるいは減価償却の促進など、内部保留を増加させる方策を講ずることはもとより必要でございますが、積極的に株式資本を増加いたしまして、これによって自己資本を増強するとともに、国際的な乗っ取り、買い占め等に対しましてあらかじめ備えておくことが特に肝要でございます。  現在、企業は、不安定な国際通貨情勢による輸出の減少、さらには将来予想される不況の到来に備えまして、それぞれの立場からいろいろの対策を講じているところでございますが、最近の動向を見ますと、中には不況対策の一環として配当率の引き下げを検討している向きもあるやに聞いております。しかしながら、経済の一時的な波乱に際会いたしまして、安易に配当率の引き下げをはかることは、企業の長期的な発展、企業の安定化の見地から非常に大きな問題があろうかと存ずるのでございます。この際こそ、企業経営者におかせられては株主尊重に徹せられ、配当の維持につとめられることが自己資本充実につながる道であると存ずるのでございます。  委員の皆さま方におかせられましては、この点について十分な御理解を賜わりまして、企業の当面する不況に対しましては積極的にその対策を講ぜられるとともに、税制その他諸般の施策におきまして、企業経営者が配当を行ないやすくするような環境を整備していただきますように、本席をかりてお願い申し上げる次第でございます。  第二は国債発行に関する問題でございます。  まず、今後予定されております国債の発行は、その金額が大幅にのぼるということもさることながら、日本経済が全く新しい局面を迎えた現段階において発行されるものであるということにつきまして、国民に十分理解を求めることが必要であろうかと存じます。政府当局におかせられましては、国際的な通貨不安という環境下での国債発行であればあるだけに、それがわが国経済の安定、国民福祉の増進に資するものであるということを十分強く訴えるとともに、健全なる通貨並びに国債は、国民が誇りをもって守っていかなければならない国民資産であるという意識を国民の間に高めていただく必要があろうかと存ずるのでございます。このためには積極的な国民運動を展開すべきでないかと考えておる次第でございます。  国債発行の姿勢といたしましては、わが国が当面する経済的難局に対処して、緊急、非常の措置として巨額の国債発行を行ないます場合は、あるいは市中消化によらず、その多くを資金運用部資金ないし日銀引き受けによって行なうこともやむを得ないものと存じますが、本来、国債発行に節度を持たせて、財政の健全性を貫くためには、発行条件、発行量等は市場原理を踏まえて弾力的に決定さるべきであり、この意味から、長期的には原則として市中消化によらなければならないと存ずるのでございます。私ども証券界といたしましては、長期資金資金調達のにない手といたしまして、業界あげてその販売体制の確立につとめ、個人消化の促進をはかりたいと存ずるのでございます。  どうぞ、委員の皆さま方におかせられましては、国債の個人消化の見地から、償還期限、利率等、発行条件の弾力化の再検討、証券市場におきますところの引き受け、流通金融の拡充や流通市場の一そうの整備をはかられますことはもとより、個人に対しましては税制上の配慮を厚くするなど、諸般の施策を総合的に推し進められるよう御検討願いたいと存ずる次第でございます。  特に税制上の措置といたしましては、国債に対する別ワクによりますところの少額貯蓄の非課税制度の限度額を引き上げられたいのでございます。限度額は現在五十万円、そのワクは明年一月には百万円に引き上げられることになっておりますが、国債の急増に対処するため、この限度額をもっとさらに拡大する必要がございます。そのほか、国債に対する相続税について何か特別措置を講ずるなど、国債を国民の金融資産として一そう魅力あるものとされたいのでございます。  以上、今回のドル防衛措置に関連いたしまして所見を述べたのでございますが、証券市場わが国経済の国際化の進展に伴いまして、国際的資本交流の場としていよいよその重要性を高めるのみならず、今後の国債発行を基軸とする長期資金調達機関としてその責務は一そう重かつ大になってまいるのでございます。われわれ証券業に携わるものといたしましては、この際、証券市場がさらに円滑な機能を発揮し得るよう、売買仕法の改善、投資勧誘態度の一そうの適正化、証券会社の資産内容の充実をはかり、証券界に負荷されました責務を果たしていきたいと存ずるのでございます。  どうか、皆さまにおかせられましては、私どもの意のあるところをおくみ取りいただきまして、証券市場の健全な発展のため御配慮を賜わりますよう、特にお願い申し上げる次第でございます。  御清聴ありがとうございました。
  30. 藤井勝志

    藤井委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。松本十郎君。
  31. 松本十郎

    松本(十)小委員 これまた時間の制約があるようでありますので、質問をごく限って伺いたいと思います。  ただいまドル・ショック以後の証券界の動きなりあるいはそれに対処すべき証券業界のあり方、使命感というものを伺いまして心強い感じでありますが、特にこの機会に一言伺って感触を聞きたいと思いますのは、やはり何と申しましても、長期資本を調達すべき証券業界の責務といいましょうか、使命だろうと思うのでありますが、先ほどお話がありましたように、これからの財政経済の運営の一つの柱として、国債発行による社会資本の充実と社会福祉の増進、これはどうしてもとるべき方向だろうと思うのであります。この国債発行につきまして、先ほども観念の転換、新局面に対処するのだとか、こういう御意見でありましたが、まさにそのとおりでありまして、わが国におきましては明治以来の国債の発行というものが、ともすれば戦争につながったとかインフレにつながったとか、こういうことで国債に対するやや罪悪感的なものがあるわけでありますが、しかし歳入の大宗というものは、一つは租税であり、一つは国債である。これは先進諸国の姿でありまして、わが国におきましても、ここで国債発行というものが、その発行政策なり管理政策よろしきを得るならば決して悪いことではない、むしろ望ましいことであると、胸を張ってこれはやるべきだというべきだろうと思うのでありまして、そういう観点に立ちます場合に、やはり証券業界というものが長期資本調達のにない手として、前向きにひとつそのファンクションを果たしていただきたい、こういうことであります。  従来、ともすれば日本の長期金融というものは主として、実情としては市中銀行がそれを受け持ってきた、こういう感じでありますが、しかしこれからはやはり先進諸国の例にありますように、アンダーライターあるいはマーチャントバンク、こういう特殊の一つのファンクションを持った機関が長期資金調達に努力してきているわけでありまして、わが国におきましてもそういう方向で証券業界が一段とひとつ努力をしていただく。今度は、体質も強かったために、相当激しいドル・ショックではありましたが、証券市場にとっては激しい暴落でありましたが、これに十分耐えて、しかも現在の平静さを少なくとも表面的には保っておられる証券業界でありますが、さらに百尺竿頭一歩を進めて、そういう方向で、これから発行されます公債の市中消化、特に個人消化を目ざして長期資金調達の使命を一段と発揮していただき、あわせて私企業がいまのところは萎縮しておられましょうが、これからほどほどの、モダリートな民間設備投資も必要でありましょう。その設備投資資金というものが主として証券業界を通じて調達される、これが望ましい方向だろうと思うのでありまして、そういう意味での使命感というものをざらに一歩進めていただきたい、こういう感じで一ぱいでございます。  ドル・ショック以降、何かとうっとうしい話ばかり多かったわけでありますが、せめて災いを転じて福となすと申しましょうか、この十数年来大きく叫ばれ続けながら実現が遅々として進まなかった公社債市場の育成、確立、長期資本市場の発展、こういうことについて証券業界の一段の御努力をお願いしたいと思うのでありますが、これについての会長としての御感触を伺っておきたいと思うのであります。
  32. 瀬川美能留

    瀬川参考人 いろいろ御激励をいただいてありがとうございますが、国債が戦後初めて公募されまして発行されましたのが御承知の昭和四十一年でございます。昭和四十一年と申しますと、証券業界もあの数年にわたる恐慌のあとを受けまして、まだいろいろつめあとも残っておりましたりいたしまして、とかく微力であったわけでございまして、国債の消化も発行総額の一割程度のものをやっと消化したという程度であったのでございますが、今後は局面が少し変わってまいりまして、今後の国債発行というものは、あの当時のいろいろないびつな方法から、全く新しい観点に立って考えていかなければいけないというところへ——市場も御承知のようにだんだん金利が低下いたしまして、しかも国際的な起債も向上いたしまして、だんだんとその実力を発揮できるような時代になってまいりました。業界もおかげさまで、当局の非常に適切な御示唆もありまして、ここ五、六年の間にかなり体質を改善いたしまして、どうやら積極的に仕事に取っ組めるような体制になってまいりました。この機会にわれわれは、環境がしかるべき環境になりつつありますし、一丸となって長期資金調達のために、従来の習性を多少ずつでも訂正していかなければならないと深い決心をいたしております。その点につきまして、われわれの市場市場機能を発揮して、それを拡大していくような一つの自由化への方向というものにつきまして、どうかひとつよろしくいろいろ御指導をいただきたいと実は考えております。
  33. 藤井勝志

  34. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)小委員 二点だけ伺います。  いまの瀬川さんのお話を伺いまして、ドル・ショックによって株が短期間におけるかつてない大暴落をいたしたわけですが、現状はそれでもどうにか落ちつきと秩序を取り戻している、こういうような状況なんでありますが、何といいましても株式の動向というものは景気の先行指標だということがずっと言われてきたわけであります。そこで、いまはたいへんな不況におちいっているわけですが、これからの景気の見通し、まあ中期、長期までは求めませんが、短期的な見通しを証券業界としてはどういうふうに見ておられるか。もちろんこれは政府の景気政策などとも関連するわけでありますが、いままでに、どうするかというようなことについては政府からある程度の輪郭も示されているわけで、そういうものを踏まえた上で景気の動向というものをどういうように見ておられるか。これが一点であります。  それから公債の発行の問題でありますが、私ども今回の場合、おくれた社会資本の充実をいまこそやるべきだという立場に立って建設公債、そして市中消化ということ、特に個人に公債を持てるようにしていこう。しかも七年ぐらいのものではなくて、もっと長期な国債、こういうようなものにしていったらどうか。あるいは二十年、三十年ぐらいのものを出していったらどうか。こういうようなことを考えて、公債害悪論という立場を克服して、いまそういう立場におるわけなんですけれども、そういう中でほんとうに個人の金融資産の保有形態として国債を保有する、喜んで国民が持つようなためには、条件というものをかなりいいものにしていかなければならぬ。しかもかなりの長期になるということになれば、発行条件の弾力化という形の中で非常なメリット、フェーバーをつけていく、こういうようなことを考えていかなければいけないだろうというように思うのでありますが、その発行条件の問題でもう少し具体的に、特に利回りの問題、国債に対する金利の問題、これと、大幅な国債の増発という希望があったわけでありますが、景気浮揚対策として、証券業界としては、また瀬川さん個人でもけっこうですが、具体的にどのくらいという、発行量についての御所見があったら、その二つの点を伺っておきたいと思うわけです。
  35. 瀬川美能留

    瀬川参考人 たいへんむずかしい質問で、私にお答えできるかどうかわかりませんが、今回の証券業界の下げ幅が非常に大きかったことは、ちょうど日本の景気が回復するだろうという、まあ底にあったということが一つだろうと思います。そこへ六月からかなり急激に株価が動いて、歴史的な高値を持っておったところへ急激に株が落ちた。しかも材料が非常に大きな材料であった。いずれは来るだろうと予想された材料ではありましたが、ああいう形で急激に来るだろうとはだれも予想しなかったことであって、株式市場は非常なショックを受けたのでありますが、ドル・ショックなかりせば、私どもといたしましては、この九月期に少なくとも平均として一〇%程度の事業会社全体の収益増であろう、製造業にしまして一五%ぐらいの収益増であろうという予想をしておったわけであります。それが今度のドル・ショックのおかげと申しますか、ドル・ショックの影響でその予想がみごと大きくはずれた。そうしておそらくこの九月には減配、無配会社がかなり出るだろう。あるいは増収益が逆に減益になって、かりに来年の九月に底入れするといたしますと、二年ぐらい続いて減益の状態が続くだろうという予想がされているわけでございますが、政府のいろいろの対策が当を得ますれば、底入れをしかかっておった景気がドル・ショックでこわれた、これが来年の九月ぐらいにおそらくきいてくるんじゃないか。その間通貨の調整の期間とかいろいろ問題がございまして容易に論じられませんけれども、大勢の傾向としては、四十八年ぐらいに完全に景気が回復するのではないかというふうな見通しを一般に立てているようでございます。景気のことはなかなか先のことはわかりませんが、まあ一年ぐらい延びたと大ざっぱに考えておる次第でございます。  それから国債の発行につきましては、いまのところ一兆五千億ぐらいの発行が予想されておるようでございますが、われわれといたしましては何ぼ発行したらいいかどうかということはわかる立場でございませんので……。しかし、先ほども申し上げましたように、国債というものは国民の健全な金融資産であるというふうなたてまえと、それから単に個人のみならず、各種の機関投資家が現金に次ぐ準備として国債に投資する、あるいは産業会社も余剰金を国債に一部投資するというふうな姿勢になってこなければならないと思うわけであります。  条件の弾力化につきましては、昨年もちょうどお願いしたのでございますが、現在七年でございますから、年限につきましては七年をあるいは十年にし、国債であればもっともっと国債の性質によっては長期化してしかるべきものだろうと思うのであります。それにつきましては、お話もございましたように、いろいろ国債を優遇していただきまして、ほんとうに国民が安心して、しかも喜んで持つというふうな国債に条件を変えていかなければならない、そうしていただきたい、そう考えておる次第でございます。
  36. 藤井勝志

  37. 坂井弘一

    坂井委員 端的に一問だけお尋ねいたします。  最近証券会社では国際投資信託の募集を相当盛んにやっていらっしゃるようでございます。今日のドル不安の状況下におきまして、こうした国際投資信託がはたして将来において心配ないかどうか。かつての、国内におきまして投資信託がたいへんな状態になった、そういう過去の経緯から見まして、投資家に対して不測の損害を与えるというような心配はないかどうか、この点について一点だけお尋ねしておきます。
  38. 瀬川美能留

    瀬川参考人 お答えいたします。  国際投資信託は、約款によりまして五〇%外国株、五〇%は国内株ということになっておりますが、ちょうど信託財産全体で見ますと約二%程度の買い付けが終わったところで今度のショックが来たわけでございます。今度のショックで見ますと、ドルの下落率は六%から七%の現状でありますが、投資いたしました各銘柄によりましては、ニューヨークの株式が御承知のように六百円台から九百円台に暴騰いたしましたものですからして、ドルは下がりましたが、価格は一割とかあるいは一割二分あるいは六%と、平均しまして一割程度の騰貴を見ておりますので、いまのところ国内株に投資しておいたのとたいして変わりはない、むしろ安定しているという状態に現在なっておるわけでございます。しかし、投資信託の運用の態度といたしましては、こういう通貨不安の中でございますから非常に慎重に運用をいたさなければならないわけでございますが、やはり長期的に大局的に、いろいろ世界的な産業なりあるいは発展していく産業を見詰めまして、非常にきめこまかく調査をして投資をいたしておりますし、それから短期的な投資よりもむしろ長期的な安定投資ということを観点に置きまして、会社の選択とかあるいは国の選択ということについて非常に厳重に行なわれておりますので、これが投資家に不安を与えるということはないと信じます。むしろ、為替が再び安定する時代が参りましたなれば、投資信託の危険分散の原則によりまして、各国の景気の消長がございますからして、その中に各国の投資信託が分散投資されているということはやはり投資家に対して安定性を保証することになろうと思っております。いま募集は盛んに——盛んにと申しますか、先般募集をいたしましたが、運用の内容につきましてはそういう状態になっておりまして、かなりの現金も残しておりますし、それから国内株の運用も、安いところでは、五百円、五百五円と相当下がったところでは、投資信託が、機関投資家が、そういう防衛と申しますか、投資態度、買いの態度をとりまして市場を安定させたというメリットもございますし、大局的に見まして非常に慎重に運用いたしているようでございますから、御心配はないと思っております。
  39. 藤井勝志

  40. 竹本孫一

    竹本委員 一つは、変動相場制の問題について瀬川さん独自のお答えを持っておられるようでございますけれども、この機会に承りたいというふうに思います。ただそれにつきまして、ドイツがやったように一つの国が変動相場制をやる。私も七月の予算委員会における質問をするときまで、日本はむしろ変動相場制をとるべきであるという意見を前提にして七月の質問をいたしましたし、考えておったわけですが、その後、八月の事件以来、世界各国がみなフロートしてきたわけですから、そういう場合の変動相場制と、一国あるいは限られた国だけが変動相場制をとるときとは条件が違うと思うのです。そういう意味において、そういうことも含めて、瀬川さん、変動相場制についてどういうお考えであるか、伺えればありがたい。  それから第二の点は——まとめて申し上げます。経済同友会あたりも、このままでずっと持っていかれては、先ほど来お話がありましたように、商売はストップしてしまう、経済機能も麻痺してしまうということで、何とか早く、極端な場合には日米間だけでも固定相場に復帰できるような形を望む意見もあるようですが、同友会あたりでは、少なくとも積極的、自主的に自分の案を出して問題の解決をはかるべきではないかというような意見も出されておるようでありますけれども、そういうことをいうならば、アメリカは課徴金を撤廃せよ、金の切り上げあるいはドルの切り下げをどのくらいやるべし、あわせて日本もここまでは妥協し、協力をするという線を出さなければ具体的に問題がならないと思います。そういう問題について日本としては、この程度切り下げなら切り下げ、切り上げなら切り上げをやるべきである、そうして問題の早急の解決をはかるべきであるということについて、積極的、具体的な御意見があればひとつ承りたいのです。  最後に国債の問題でございますが、これはいま国民運動まで展開したらという非常に積極的な御意見がございました。私も原則的にむしろ賛成であります。実は私どもは自動車新税のときにも、これから大いに道路の問題を片づけていく、道路建設をやろうといったような問題は、単にそこを通っておる自動車に少し税金をかけてみようといったようなこそくの手段ではなくて、やはり七〇年代は社会資本の充実、社会開発の積極化という新しい一つの政治の課題を持つわけだから、それに取り組む財源措置としての新しい国債政策を確立すべきである、こういうことを強く主張いたしたのでありますけれども、政府はそのときは御承知のように自動車重量税で問題をごまかして、そうしてまた今度新しい情勢の中で国債問題を取り上げよう、こういうことでございますが、私は公債政策は、どうも発行条件がむずかしくなってきたから条件を弾力化しようとか、少し足らないから量をふやそうとかいったような、思いつきで次々に公債を発行し、量をふやしていくというようなことであってはならない。条件の緩和も必要であるし、弾力化も必要でありますけれども、一番必要なことは、七〇年代の日本の新しい財政経済政策はどうあるべきか。その社会開発に本格的に取り組む日本の政治姿勢の中で、財源措置の一環としての公債政策はどうあるべきか。またそれをかかえ込む日本の財政あるいは予算の編成も、従来のような、圧力団体に押しまくられてどこへ予算は持っていかれるかわからないようなだらしのない政治姿勢では困るので、やはり、き然とした政治姿勢を確立する。いずれにしましても、国民に向かって公債発行に協力してほしいという運動を展開する前に、新しい七〇年代の政治課題、政策課題に取り組む国債政策はどうあるべきか。またそれが単なる公債インフレにならないようにするためには政治の姿勢はどうあるべきかということで、むしろ政府に向かって公債政策の確立を叫ぶべきであるというふうに私は思っておるわけですけれども、その点についての瀬川さんの御感想も伺いたい。  以上、三つであります。
  41. 瀬川美能留

    瀬川参考人 為替の問題についてはもう原さんがお答えになっておるし、私は全くのずぶのしろうとでありましてお答えはできませんからお答えいたしませんが、同友会あたりが、このままでヘビのなま殺しになると弱るから、何とか早くひとつ日本が積極性を持って態度をきめてくれという気持ちも民間人としてはよくわかります。よくわかりますが、これはその当局者といたしましては、こういうむずかしい複雑な問題ですからなかなか、そう思っておっても軽々に態度を出せないし、またいろいろの多国間のかけ引きもあるんだろうし、肝心のアメリカ側の振り上げたような態度だけでは何とも取っつく島がないというのが現状じゃないかと想像するわけでございますが、何とか、けさほどの話にありましたような、まあ場ふさぎではありますけれども、いろいろな策を講じて、とにかく商売ができるように、貿易ができるように講じていただくより、当面しかたがないと考えているわけでございます。  国債につきましては、政府が姿勢をまずきめて、そうして国民に訴うべきだという御意見でございますが、私が申し上げました、国民が心から金融資産として円なり国債なりというものを愛して、そして心から持つというものにしていただきたいと言ったことも、御指摘されるとそういう意味が含まれておるかもしれぬと思うのでございますが、国民が納得する国債をひとつ納得する条件で持たしていただきたい、そういう意味でございます。
  42. 藤井勝志

  43. 木村武千代

    ○木村(武千代)小委員 瀬川会長、きょうはどうもありがとうございます。  私の質問はちょうど広瀬さんの質問に関連をいたしておるのですが、結局国際通貨調整の時期が日本の景気の回復の時期に影響すると思うのであります。これは当面の問題としましては、国際通貨の調整ができるということが第一番の当面の時期だと思います。しかしながら長期的な見通しといたしましては、やはりこれはニクソンが中共へ行かれまして、そしてベトナム戦争の解決をどうするかということに一番大きな景気の見通しがかかっておるんじゃないかと思うのです。ベトナム戦争が終結をして、アメリカ自身が自国の需要に対して自国の生産能力を転換していくということになりますと、日本貿易も、特に日米貿易においては非常な転換期がここに起こってくると思うのでございますが、その点に対する会長さんの御感想をお願いいたしたい、こう思うのであります。
  44. 瀬川美能留

    瀬川参考人 大きな観点では確かにそのとおり、そうじゃないかと私も思いますが、いま通貨の問題にいたしましても、肝心のドルが一体切り下げられるのかどうなるのかということがきまらずに各国が議論ができるはずがないので、こいつが片づかぬ限りはなかなか時間がかかるんじゃないかなというような気がいたしております。  中共問題が片づきましたら何かアメリカの景気が根本的によくなってくる、それで日本貿易がふえるだろうというふうな、そういう御意向でございますか。——御論旨がそういう御意向のように承りましたが、いま置かれましたような状態からいたしますと、アメリカの景気の回復が決して日本の景気にマイナスであるはずはないわけでございまして、それは大いにプラスでございましょうけれども、今後は主としてやはり輸出圧力を少し減らしていかなければならぬ、国内景気を振興していかなければならぬということでございますから、国内の景気振興策がうまくいって、国内がそれに乗ってくるかどうかということのほうがむしろ重点が大きいんじゃないかというふうに私は考えているわけでございます。
  45. 藤井勝志

  46. 堀昌雄

    ○堀小委員 最近OEGDでは、日本の資本の自由化問題で日本が五〇%というのはおかしい、これはやはり一〇〇%にすべきだというような意見が述べられておるようであります。一方では、参考人がいまお述べになりましたように、日本の自己資本比率は一七%を割るような状態である。私はどうも、OECDの意見は別として、アメリカでも何かそういう声があるようですが、アメリカは自分の国の雇用条件が悪いのに、よその国にともかくコングロマリットが出かけていって、そしてそこで他国人を雇用して、そこでできた生産物をアメリカへ売り込むことによってアメリカ人の雇用を下げるということをやっているわけです。私は今度のニクソン声明というものを、実はこの間委員会でも申したのでありますが、ずっとあれを読んでみますと、最大の柱はアメリカの雇用問題をどうするかという国内問題が実は一番多くの部分を占めておるわけでありまして、そのためには課徴金もやろう、最終的には通貨調整もやろう、こうなっていると思うのですが、どうもそのロジックがちょっと私は合わないと思うのですね、一〇〇%自由化しろという話、五〇%じゃだめだという話。しかしそうやってどんどんアメリカから資本を持ってきて、日本市場日本人を雇ってやるということは、結局それはまた日本の対米輸出を増加することに結果としてなるのではないかという気がしまして、この点私は、いまOECDにしろアメリカにしろ、言っていることに非常に疑問があるのですが、いまの自由化問題について瀬川参考人はどういうふうにお考えになりますか。
  47. 瀬川美能留

    瀬川参考人 いま御指摘になった点は私ども一番問題だと思う。それについて何の対策も考えていないし、何の言明もないことは、非常に大きなアメリカの手落ちか、あるいは見落とし、故意に見落としたか。アメリカに中古になった古い産業ばかり残して、優秀な企業はみな外へ出ていっておる。外へ出ていってそこで資本を持ち出す。雇用はそれぞれの国でやってそれが自分の国にはね返っているということは、これは大きな問題だと思うのです。その点について何ら触れられておらぬ点は、大いにこれは突っ込む余地があるのじゃないかと考えておるわけでございます。  私は本来、資本の自由化を一〇〇%であるか五〇%であるかということは、事業によりますけれども、全般としてはこんなものはこだわる必要がないのであって、五〇、五〇であろうと、二〇、八〇であろうと、三〇、七〇であろうと、これはお互いに企業の経営者、企業をやる人たちが相談してやるべきであって、アメリカの資本を一〇〇%ちょうだいしていい場合もあれば、三〇%あるいは——それぞれの率というものは全く自由に民間にまかせればいいのじゃないかというふうに私は思うのでありまして、五〇、五〇でないといかぬという思想は非常におかしい。ただ五〇、五〇でおやりになったほうが、その国の労働力も集めやすいし、またその国の習慣にもとけ込みやすいし、イコールパートナーでやったほうが事業の運営上便利である、そのほうがお得であるということをアドバイスしているにすぎないというふうに思うのでありまして、それぞれの状況によってどうやるかということは、それぞれ考えてやっていい問題じゃないかというふうに私は考えておる。個人の意見でございますがそう考えておるのでございます。五〇、五〇という意味は私はそういう意味だと解釈いたしておるのでございます。
  48. 堀昌雄

    ○堀小委員 その次に、実はこの前、長期金利の改定ということが行なわれました。私はこの前から当委員会、大蔵委員会のほうでございますが、日銀総裁なり大蔵大臣に、今度は何にしても金融がゆるむから、この際ひとつ長期金利を弾力化してもらいたい、こう強く要請しておりましたが、弾力化ではなくて改定になったわけです。私は、改定というのは固定金利の上から下へ下げるか、下から上へ上げるかで、弾力化ではないと思うのですね、改定というのは。弾力化ということは、少なくとも今度の為替相場のように——現行平価を維持しつつだそうですからどうもこれは本物のフロートであると思いませんけれども、〇・七五幅をとっ払った、こういうことになりますとこれは弾力化ですね。本来ならこの平価のところもフロートしなければ本物のフロートだとは思いませんけれども、そういうことだと思うので、これについてはかねて証券界のほうでは少し上下幅の、ワイダーバンドにしたいという意向があって、私もたいへんいいと思ったのですが、そのワイダーバンドの幅よりも少し大きく動かしたらそのほうがいいんだということに私はならぬと思うのですね、改定では。私は適当な委員会で大蔵大臣に、改定はこれを最後にしてもらいたい。もうあとは自由化だ。もう弾力化という話ではなかなか追いつきませんので、自由化だ。上がるときには一ぺん自由に上げろ、下がるときにはまた下げろ、こういうことにしない限り、私はどうも問題は解決しないと思う。さっきおっしゃったいろいろな金利機能の問題というのは、ここで問題をきちんとしないと、大量国債発行というのはきわめて危険な状態をもたらすというふうに感じておるわけでありますが、この間の長期金利改定という、この改定は、私はそういう意味では弾力化、自由化に逆行した、こう判断しておるのですが、会長はどういうふうにお受け取りになっておるか。さらに今後の方向としては、私はいま申し上げたように、少なくともこれを最後に、ひとつ金利にはさわらない、フリーにするということが、私は国債を発行する一番大きな歯どめになる、こう考えておりますが、いかがでしょうか。
  49. 瀬川美能留

    瀬川参考人 長い道行きからきた、しかもこれから長い道行きのある問題でございますので、今度のこの間の条件の改定は、将来の弾力化あるいは自由化を打ち切ったかとおっしゃる、逆に、御高見のように将来の弾力化、自由化にやはり進んでいかなければならないというふうに私どもも考えておるし、当局もお考えになっておるし、一般もそう考えられておるようであります。  ただ非常に烏兎匆匆のとき、特別な急激に金利が引き下げられたような時期でありましたことと、社債の条件改定の前提にはやはり金利全体の自由化の問題が多く入っておるわけでありますから、依然としてほかの長期金利の繰り上げとか、あるいは金融債の繰り上げとか、そのほかの条件も考慮しながら進んでいかなければならない問題でございまして、一歩一歩、一皮一皮そういう方向に進んでいくべきじゃないか。あるいは情勢によってはかなり飛び越えになるときもあるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  50. 堀昌雄

    ○堀小委員 ちょっと国債に触れましたが、先ほど広瀬委員からのお話にありましたように、いま政府が考えておりますことは、緊急避難に何か国債を発行しようという感じがしてならないわけであります。私はそういう国債発行は実はやめてもらいたいと思うのです。これからさっきもお話しのように輸出圧力をある程度下げるためには、どうしても国内の需要というものがかなりそれを吸収できるような条件をつくらなければなりませんから、長期的なプログラムを考えて、少なくともこれから五年とか十年とか十五年というような長期的なプログラムで公共投資を全体として考えるということにならなければ、ことし不景気になったから五千億、来年は一兆五千億出す、それからちょっと景気がよくなってきたらまたこれは四千億に減らすのだというようなことでは、私は今後の日本経済の運営に大きな瑕疵をもたらすことになるのじゃないかと思います。ですからこの際私は、思い切って政策転換をするのだということになれば、国債発行の前にそういうプロジェクトをきちんとするということがまず先でございまして、そのプロジェクトに対する資金需要をそれではどうするのかといえば、そういう長期のプロジェクトを考えるならば、当然それに見合う資金というものは長期資金でなければならぬではないか。それがかねてから私が三十年国債、五十年国債という長期国債を言っている一つの論理でございます。ですからそういう意味でプロジェクトをつくって長期国債を出す。私は、九%くらいの金利にするということであれば国民は喜んで買うであろう、こう思いますが、そういうことが一つあります。  しかし、財政調整の問題がもう一点あると思うのです、景気の変動がありますから。そうすると、そういう三十年、五十年の国債を出すかたわら、現在の七年の国債というものはもっと短期のもの、たとえば三年の国債とか、そういう調整財源ですね、景気浮揚その他のいろいろな調整をするための調整財源としての短期国債、こういう二本立ちの国債論というのが私は今後の長期的な展望に立った国債論でなくてはならぬのじゃないか。あわせて、最近は外為証券のような短期証券をだいぶ企業はどんどん買っておるようでありますが、たいへんけっこうだと思うのですけれども、それだけでは年度越しにこれは使えませんので、やはりそれは短期国債で処理をし、片や長期国債で計画的な公共投資をする、これが私は本来のこれから日本が進むべきコースではないだろうか、こう考えますけれども、それについてお考えをちょっと承りたい。
  51. 瀬川美能留

    瀬川参考人 全く御意見どおりだと思います。やはり大量に出すものは目的国債でなければならないと思います。
  52. 堀昌雄

    ○堀小委員 もう一点。実は最近発表になっておりますところの株式分布の状況でございますけれども、どうもだんだん個人のウエートが下がって法人ウエートがふえつつございます。その法人ウエートの中でも事業法人のウエートがふえつつある。これは私は非常に証券上問題があるような気がするのであります。というのは、株が持ち合いになっておるということは、実質的にはそれだけは相殺される問題だと思うのであります。個人が買う、あるいは金融機関が買う。金融機関の株もまた持ち合いになっておると思いますけれども、どうも安定株主操作といいますか、いまのテークオーバーに対する対策として安定株主操作というものがかなり主張されて、そのことがこういう株の持ち合いを非常に促進しておるのじゃないか。しかし、そのことは架空資本といいますか、ノミナルな資本といいますか、ちょっと中身を伴わない問題がここに非常に大きく出てくるおそれがあると思うので、私はこの点は、確かに安定株主操作ということも企業側でわからぬわけではありませんけれども、しかしそれは、同時に安定株主になるような、要するに個人投資家を育成するといいますか、という問題もあっていいのじゃないだろうか。そのことはどうはね返るかといえば、さっき会長がおっしゃったように、株主を優遇するということなくして安定株主というものは本来できないのじゃないか、私はこう思うのですが、どうもそこらがさか立ちになって、株主の優遇はしないでおいて、要するに何かの利害関係だけで安定株主をつくって、そこへはめ込んでいくということがテークオーバーに対する対抗策だなどということは、ちょっと論理がさか立ちしているような感じがするのでありますが、この点についてお伺いして私の質問を終わります。
  53. 瀬川美能留

    瀬川参考人 最近事業会社にふえているという事実は、これは昭和三十年から三十四、五年ぐらいまでは事業会社の持ち株というものはお互いに持ち合いして、その背後に銀行の借り入れ金があって、擬制資本であって、ほんとうの資本金ではないというふうな状態であったと思うのでございますが、この五、六年の間にかなり大きな蓄積ができまして、昭和四十年と四十六年を比較いたしますと、会社全体として純資産が倍にふえているというふうな状態でございますので、いまの持ち合いの範囲がだんだんと堅実化してまいりまして、自分の積み立て金の範囲とかあるいは引き当て金の範囲とかというところにとどまっておるようでございますから、あるいは会社によっては積極的に株式投資をするという会社もできてきておるわけで、一がいにテークオーバー・ビッドに備えての架空の持ち合いだとはいえないと思うのでございます。  それから、個人の株主が減っている、非常にゆゆしき問題だということでございますが、これは確かに金額の上ではそういう傾向が多くあるということは否定できませんが、株主数でいきますと非常に多くなっているのじゃないかと思うのでございます。と申しますのは、現在私どものほうで国債、社債、投資信託、株式を含めましてマンスリー・インベストメント・クォータ、月賦販売口座というものを証券界でやっておりますが、これが口座数が全体で二百二十五万ぐらいに現在なっておりまして、そうしてその二百二十五万口座が持つ有価証券が全体で六千四、五百億ぐらいに現状なっておるのでございます。その中にかなり株式に投資している人もあるし、それから昨年からスタートしました従業員持ち制度によりまして、個人個人が一つの名義で、会社の会の名義とかあるいは会社の従業員の一つの名義で株式投資に参加する員数が、おそらくここ一、二年の間に数百万にふえていくだろうというふうな傾向にもございますので、傾向としてはすそ野はだんだんできてきているという状態でございます。
  54. 藤井勝志

    藤井委員長 瀬川参考人には、御多用中のところ貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。どうぞお引き取りいただきましてけっこうでございます。     —————————————
  55. 藤井勝志

    藤井委員長 次に、商工組合中央金庫理事長高城元君及び日本軽工業製品輸出組合理事長場久三郎君から御意見を求めることといたします。  高城参考人、十場参考人には、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本件について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いを申し上げます。  まず、高城参考人からお願いいたします。
  56. 高城元

    高城参考人 商工中金の高城でございます。日ごろ先生方にはたいへん御配慮いただき、この席で厚く御礼申し上げます。  まず最初に、去る八月十六日に行なわれました米国のいわゆるドル防衛策声明以降の一連の動きが中小企業に及ぼしました影響等につきまして、当金庫の把握いたしました点を申し述べまして、今後の金融面の対応策といったものにつきまして考えておりますところを申し上げたいと存じます。  ニクソン声明以来ちょうど一カ月を経過してきたわけでございますが、輸出、特に対米輸出に大きく依存しておりますわが国中小企業が大きなショックを受けまして、すでにいろいろな面で影響が出ておりますことは御高承のとおりでございます。とりわけ、変動相場制移行後も、先行きの不安から新規の商談はほぼ全面的にストップいたしております。この状態が続きますと、今後年末にかけまして、多くの業界で滞貨あるいは減産というような事態が発生をいたしてくるものと予想をされます。また、課徴金あるいは変動相場制等によりまする為替差損は、低マージンで輸出を行なっております中小企業には非常な負担となるわけでございます。すでに商社などから値引きの要請を受けている例が相当見られておるわけでございます。和歌山のメリヤス業界、既契約分につきまして一〇%の値引き要請がある。あるいは瀬戸の陶磁器、既契約分につきまして五%の値引き要求があるというような事例もございます。  各業界の状況をやや具体的にお話ししてみたいと存じますが、まず輸出手形買い取りは、いまのところ各金融機関ともおおむねこれに応じておるようでございまして、大きな支障は来たしておらないようでございます。ただ一部では、九十日あるいは百二十日もの等のユーザンス手形あるいは輸出信用状のつかない手形買い取りに応じてもらえない、あるいは買い取りの条件として積み立てを要求されているような例もございまして、この面から資金繰りに影響が出てきておるところもあるようでございます。  次に、輸出契約の面でございますが、すでに契約済みのものは契約取り消しなどの例はあまりないようでございますが、繊維の一部あるいは金属洋食器、玩具等の業界でキャンセルが起きている事例もございます。新規の契約につきましては、為替リスクがあります上に、変動相場制にふなれだというようなこともございまして、すでに申し上げましたように、大かたの業界はほとんどストップという状況でございます。現在のところ、おおむね二、三カ月分の手持ち受注を持っておるところが多いようでございますが、これから、例年でありますればちょうど来年ものの商談期に当たっておりますので、大多数の業界としては、受注ストップに焦燥の色を濃くしておるようでございます。たとえば北海道の合板、大阪のボルトナットあるいはクリスマス電球の各業界では、新規の商談がないわけでございまして、今後大幅な減産を検討しているような状況でございます。一部の商社では、いわゆる仮レートを想定して商談を進めているものもあるようでございますが、この場合は、かりに成約ができましても、円高のために成約額が減少する場合もございます。また、値引きによって切り抜けるという場合には、メーカーへの負担が大きくなるというわけでございます。  いずれにいたしましても、現状のような不安定な状態では、新規契約はきわめて困難でありまして、各業界とも、政府によりまして、スムーズな契約ができまするような何らかの措置を講じていただきたいことを期待をいたしておるわけでございます。  次に、課徴金為替差損の負担の影響でございますが、原則的には課徴金は向こう持ち為替差損はこちら持ちと考えておるようでございますが、現実の取引では、こちらの業者とアメリカの輸入業者との力関係できまる例が多く、課徴金の場合でも、折半して負担する、あるいは日本のメーカーと商社とアメリカの輸入業者が各三分の一ずつ負担するというような例もかなり見受けられるようでございます。一方、為替差損につきましては、日本の業者が負担せざるを得ないというような立場から、商社とメーカーで折半して負担する例が多いようでございますが、この場合も結局弱いところにしわ寄せがくるということになりまして、零細な下請業者は値引きを要求され、苦境に立たされることが予想されるわけであります。また、アメリカの業者の中には、日本事情を非常に詳しく知っておりまして、故意に契約を延ばしまして、課徴金及び為替差損の負担につきまして有利に運ぼうというような動きも出ておるわけでございますが、特に中小商社の場合には、元来マージンが少ない上、相手の輸入業者も必ずしも力が強くないというようなことで、最終消費者に価格転嫁をすることができないで、日本側でもろに影響を受けまして、これがさらに下請メーカーにしわ寄せされるというような状況でございます。特に下請へのしわ寄せ懸念の例としてはクリスマス電球、かん詰め、関の刃物等が考えられております。  次に、今後輸出がどの程度減少するかという見通しでございますが、一部の業界、これは装身具や喫煙具の業界の一部でございますが、これは輸出はさほど減少しないという見通しを持っておるわけでございますが、大半の業者は輸出の減少は避けられないと考えております。この減少予想につきましては観測はまちまちでございますが、全般的には二〇ないし三〇%を予想する向きが多いのでございます。中には桐生の織物あるいは泉州の輸出織物のように、五〇%くらいの大幅の減少があるのではないかというふうにいっておるところもございます。  各業界とも輸出の減少を防止するために懸命に対策を立てておりますが、輸出マージンの少ない繊維、雑貨業界等にありましては、どうしても競争力が弱いわけでございまして、輸出の減少を防止するということはなかなか困難でございます。このような情勢下におきまして、高級品の輸出競争力は衰えておりません。こんなことから、ある意味で今後の中小企業対策と申しますか、一つの示唆を与えられているのではないかと思います。  なお、今般のドル・ショックによりまして対米輸出の減少が最も懸念されることはもちろんでございますが、たとえば栃尾、見附地区の織物あるいは大阪地区の自転車及び自転車部品のように、東南アジアのドル地域に対します輸出の減少を招いている例も多うございます。したがいまして、輸出市場の転換と一口に申しましてもなかなかむずかしい面があるのではないかと考えております。そこで、このような事態を切り抜けますために輸出品の製造業者が内需に転換するという動きが出てまいるかと存じますが、この結果国内市場での混乱を心配している業界も多いようでございます。  以上がドル・ショックにより当面中小企業が受けております影響でございますが、先に申し述べましたとおり、輸出契約の停滞と輸出の減少によりまして、滞貨あるいは減産ということが発生することが予想され、これに伴います資金需要、また内需転換のための資金需要というものも考えられ、今後年末にかけまして相当な額の資金対策が必要になると考えておるわけでございます。  当金庫といたしましては、主務省の御方針に従いまして、これらの資金需要には格段の配慮を払っているところでございまして、すでに影響の出ている業者からの融資期限の延長などのいわゆる条件変更あるいは融資相談等が多数ございますので、積極的に応じております。しかしながら、前述のようなドル・ショックの影響の度合いが非常に広範囲でありかつ深いということで、今後とも資金需要は長期間にわたり多額にのぼるものと予想されるところでありますので、これに要しまする貸し出し資金の確保につきましては、主務省とも御相談をいたしておりますが、十分な貸し出しワクと、自己調達資金が不足する部分につきましては政府資金の御支援をいただきたいと考えております。  また、今回影響を受けております中小企業にとりましては、おそらく信用力が十分でないというものが多数あるかと思いますので、円滑な金融が受けにくいという場合も予想されますので、信用保証の限度の引き上げと、保険公庫のてん補率の拡大あるいは保険・保証料の引き下げというような、広く信用補完の方策の強化が必要ではないかと思っております。さらに、これらの資金の返済は、長期にわたり、しかもできるだけ低利であるべきであるというふうに考えるわけでございます。当金庫におきましては、九月一日から全般的に長期資金金利〇・二%、短期資金金利〇・一%の引き下げがあったのでございますが、この種の資金につきましては、さらにこれを引き下げて中小企業の要望に沿うことができますよう政府の御支援をいただきたいと存じておる次第でございます。  以上、今回のドル・ショックに関連しまして中小企業への影響と当金庫の対応策などにつきまして簡単に申し述べました。
  57. 藤井勝志

    藤井委員長 次に、十場参考人
  58. 十場久三郎

    ○十場参考人 私は、おもに中小企業が携わっております雑貨の輸出関連業者の立場から最近の様子を御報告させていただきたいと思います。  輸入課徴金につきましては、単独の問題といたしましては比較的影響が軽かったのでございますが、これがアメリカの太平洋岸の港湾荷役業者のストライキがまだ終わっていないということ、大西洋岸が十月一日からこれも決行されるといわれておるというような状態で、船積みの延期を要求された荷物についても課徴金がかかってくるということになったために、それらの注文品の取り消しないしはストライキが解決するまで船積みの延期をしてくれというような要請が出ておりまして、これが滞貨の原因となっておるものがございます。  為替市場混乱いたしました際に、制限つきながら一覧払いの手形はどうにか全部買い取っていただいておるのでありますけれども、九十日とか百五十日とかいうような期限つきの手形のものが、為銀がその間のレートの危険の負担をきらって買い取りを拒まれて、取り立て手形というような形でまだ現金化しないものがございます。これらは期日が来なければ現金化しませんので、これらも金融の圧迫の材料になっておるものがございます。  為替相場変動制になりましてからは、一覧払いあるいはいま申しました期限つき、ともに為銀が買い取ってはおりますが、円高を反映いたしまして、御承知のとおり一覧払いで六%強、百五十日の期限つきでは八月の十五日以前と比較いたしますと約一割、円の手取りが少なくなってきておるような状態でございます。  これに加えまして、輸入業者との間で為替差損金の、だれが負担するかという問題が進まないために、既契約のものでも船積み中止というようなものがあります。  こういうふうな四つの原因が重なり合いまして金融が逼迫し、そのしわ寄せが主としてやはり中小輸出品の生産業者にかぶさってきておる状態でございまして、このままにほうっておきますと、やはり倒産にまで追い込まれる企業が続いて出るのではなかろうかというふうに心配いたしております。困ったことには、円が不安定なために新規の取引が成立しないということでございます。このまましばらく続きますと操業をとめなければならぬという日も自前に迫ってきておる業種もかなりあると思います。中小企業の多くは、操業を中止いたしますと直ちにそれが倒産につながるというようなことの事情にあることは皆さん御承知のとおりだと思うのでございます。  為替問題でございますが、円の変動相場制になりまして六%ないし一〇%の差損がすでに出ていることはいま申し述べましたが、中小の輸出専門商社は、たとえば私の会社を例にとってみますと、資本金が三千万円でございます。年間の輸出額が約五十億円でございます。税引き前の利益が平均いたしまして五千万円のところが大体の標準でございまして、おそらくこれはわれわれのような業種の平均の率じゃないかと考えます。そうして大体平均の常時契約の手持ち高は三カ月分、まあ私の企業で申しますと、したがって大体十二億円内外というのが普通の契約の手持ち高でございます。かりに契約の残十二億円に対しまして平均七%半の差損を計算いたしますと九千万円ということになりますので、とうていドル単価で契約してあるところの注文の完全な履行はそういう面からも残念ながら不可能であるというような状態でございます。  変動相場制になりますまでは、課徴金日本側で負担せよというような要求はあんまり来ておりませんでした。ですが、円が変動を始めましてから急に課徴金を持て、あるいはその一部を持て、でないと売り値に合わせられないというような要求がたくさん出てまいりました。これは原則的には、課徴金は向こうが持つ、為替の差損は日本側で持つということでありますが、為替の差損金のほうが大きいだろうというような予測から、アメリカのほうではまずその交渉に移る前に課徴金の負担を主張して、円とドルの交換の差損の負担をひとつ突っ放してやろうというような考え方のように受け取っておりますが、どちらにいたしましても円の相場変動による損金は向こうのほうでは受けつけまいという努力がここに認められるわけでございます。  輸出雑貨のように、発展途上国の追い上げを受けまして、必死の努力でようやく採算すれすれの線で輸出しておる業者にとりましては、大幅の円切り上げにはとうていたえられないということはもちろんでございますが、だからといってこのまま変動制を続けて、先の見通しがつけられないまま商売ができないということが一番困ることなんでございます。現実の問題といたしまして、仕事さえあって回転していけば、一時損があっても何とか将来の努力で埋め合わすということなんでございますが、注文がなくなってしまいますと、その時点で直ちに立ち往生してしまわなければならぬというような運命のもとでは、何としてもここで為替相場を、先物を含めまして安定する施策を講じていただくことがまず先決問題じゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。  かれこれそういうふうなことから考えまして、業界がどういうふうなことを期待いたしておるかということについて御参考までに申し述べたいと思いますが、第一番にやはり当面の金融を何とかしてもらいたいのだということだと思います。滞貨金融あるいはつなぎ資金の融資、これについては融資条件の緩和、業界ではこれはひとつ天災に準じるようなことで、われわれの力ではいかにも防御のしようがなかったので、特別の考慮をこの際払ってもらいたいのだというふうな声が盛んに聞こえます。そのほか、ただいま高城参考人から申し述べておりましたように、中小企業の信用保険公庫の引き受けワクの拡大、あるいは信用保証協会の保証ワクの拡大、あるいは保証限度の拡大、状況によっては先ほど申し述べましたように、日銀法の第二十七条も発動していただけるような準備もひとつしておいていただきたいというようなことでございます。  為替相場のことでございますが、これは即時何とかひとつ安定する方策を考えていただきたい。につきましては、外国為替買い取り制度をひとつ拡充して、中小企業のものだけでも直・先物を含めて安定した相場で買い取っていただきたいということ。  三番目は、そういうふうに国内のほうからあまり火の手が上がらないような用意をしていただきまして、円平価の調整あるいは課徴金の撤廃などにつきましては、腰を据えて国際間の交渉を強力にお進め願いたい。  四番目は、為替差損金につきましては、為替集中制度下にあることを念頭に置いて全額これを補償していただきたい。  五番目は、貿易振興税制は絶対に存続してもらいたい。あるいは名目を変えるということはやむを得ないかもしれないけれども、実質的には絶対に存続をしていただきたい。  六番目には、中小企業の基盤強化のために、税制面であらゆる角度からひとつ見直していただきたい。特に中小企業についてやっていただきたいのだ。それと並べて申し上げますと、為替変動準備金制度のようなものを設けてもらいたい。法人税、事業税はひとつ安くしてもらいたい。物品税がこれまた輸出の際にいろいろじゃまになるので、ひとつやめるか軽減していただきたい。為替差損金の繰り延べあるいは繰り戻しに関する税法上の特例をこの際ひとつこしらえていただきたい。それから事業転換及び高度化に対する設備等の耐用年数をひとつ短縮してもらいたい。あるいはときによっては中小企業に対しては納税の猶予をしてもらいたいというようなことを期待いたしておりますので、御報告をさせていただきまして、私の説明を終わることといたします。
  59. 藤井勝志

    藤井委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。広瀬秀吉君。
  60. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)小委員 最初に十場参考人にお伺いしたいのですが、今度のドル・ショックにおいて、何といっても一番打撃を受けるのは中小企業だ。特に、いわゆる対米輸出依存度の高かったもの、そして輸出をやりながらきわめてぎりぎりの収益しかあげていなかった、こういう中小企業、特に産地産業といわれるものにきわめて集中的に打撃が大きい、こういうことはそのとおりでありまして、特に十場参考人みずからもやっておられるようでありますが、雑貨関係というものはそういうものに該当するだろう、こういうことなのでありますが、先ほどちょっと、課徴金は向こう側に持たせるということに話し合いがついた、しかし為替差損のほうはこちらで持て、こういうことのようでありますが、十場さんがやっておられる軽工業製品輸出組合、こういうものがこっちの雑貨関係ではあるわけですが、アメリカ側で輸入をする業者でそれに見合うような、一番打撃の大きい業界を代表して一本の窓口で、そういう問題などについてこれからも強力な折衝ができるような体制にやはり向こう側もなっておるのでありますか。その点ちょっとお伺いしたい。
  61. 十場久三郎

    ○十場参考人 アメリカ側では商品別の輸入業者の団体というようなものは、私の存じております限りございません。したがいまして、ひっくるめて交渉するというようなことが行なわれていないのでございますが、そういうふうな状況下で、私たちの団体としてとれる唯一の方法は、こちら側から声明書と申しますか、あるいは依頼状と申しますか、一般の業者が個々に相手先と交渉をしやすいように、軽工業製品の輸出組合といたしましては課徴金はそちらの問題で片づけていただけるものだというふうに考えておるので、いずれ組合員からいろいろな御相談はあるだろうけれども、そういうふうにひとつ処理をしていただきたいというふうなサーキュラーをこしらえまして、それをもとに皆さんがひとつ交渉していただくというような関係をとっております。アメリカでも輸入業者の組合はございますが、その中でわりあいに大きな業種はグループというものでときによって交渉はしておりますが、先ほども申しましたように、課徴金につきましては、向こうから、これをそちらの義務だから持てというような形で交渉してきておるものはございませんので、これについてはあまり交渉に困難を感じていない。ただし、最近のところ円と抱き合わせて交渉になってきておりますので、これに少々辟易しているというのが現状でございます。
  62. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)小委員 その点はわかったのですが、そうしますと、やはり軽工業製品輸出組合というようなものに完全に見合う向こうの一本の窓口というものはない、大体そういう方向でいこうということを申し合わせして、あとは個別の企業でそういう方針で折衝をやるということで、大体その方向でよかった。ところが最近では円切り上げの問題とのからみで必ずしもそうすっきりはいっていない、こういうように理解をいたします。  そこで、いろいろな産地産業を中心にして軽工業が形成されておりますが、こういうようなところは町ぐるみ、地域ぐるみでたいへんな打撃を受けるわけでありますが、いまそういうところが、大体今後、こういうような新しい事態になり、変動相場制に移り、課徴金というようなものがいつはずされるか、これはそう二年も三年もということではないだろうけれども、かなり長期化するだろうという見通しもあるようでありますが、そういうことで、そういう事態に耐えられていままでどおりの輸出をしていける情勢になるのか。もちろん皆さんの環境を取り巻いている問題は、いわゆる後進国の追い上げという問題があり、あるいは労働力不足の問題もあり、特恵関税の供与の問題もあり、非常に苦難な状況にあることはわかっておるわけですが、そういう中で、はたしていままでどおり、この問題が何らかの落ちつくところに落ちつくならば、以前と同じようにやはり貿易をふやしていける立場にあるものと、この際はもうどうにもならぬ、これはもう思い切っていわゆる職種転換をやらざるを得ないのだ、こういうような二つにこの機会に分かれるのじゃないか。この点について、これはどの業界はどうだろうこうだろうということはなかなか立場上もむずかしいだろうと思いますが、その点はこれは抽象的でもよろしゅうございますから、どのように見られておるか、この点をちょっとお聞きしたいと思います。
  63. 十場久三郎

    ○十場参考人 いまの問題は、日本の軽工業品業界のかかえておる非常に大きな悩みなのであります。大きく申しまして、やはりこのままの構造では、落ちつきましても従来と同じような活躍はできないだろうというような観念を、いまでは業者自体持っておると思います。しからば全部なくなるのかということでございますが、対応のしかたによって、たとえば開発途上国と差別でき得る製品、価格で競争して売らなくてもいい製品というものを開発し、それの商談を進めておられるお方は、これはまず大きな影響はない。しかしそれらはどちらかといえば、同じ業種の中では比較的トップクラスのお方である。そのトップクラスのお方は何とかいけるであろうけれども、現実にただいまではやはり同じような打撃をこうむっておるので、ここでその芽をつんでしまうということになるとともどもにやられてしまうということはあると思いますが、そういう業種は私はやはり日本国内で従来どおりの仕事は続けていけるというふうに考えております。しかし、全体的にとりましては、この問題がなくても、先ほど申しましたとおり、かなり発展途上国に追い詰められておる。この通貨問題がなくなりましても、おそらく、アメリカも国際的に約束をいたしておりますので、これが落ちついたところで、アメリカが特恵関税を実施せざるを得ないというようなことにもなってくると私は考えております。そういうことで、これは全般の問題として長期策をここで考えておかなければならない、転換をしなければならないということは必至の状態だと思いますが、これをいかにスムーズに運ばすかということがこれからの課題でなかろうかというふうに考えております。
  64. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)小委員 その辺のところが、ドル・ショックがなくても、やがて後進国の追い上げあるいは特恵関税の供与というようなことで、あるいはまた国内では労働力不足というようなことで、もういまの状況で、いまのままの企業体制で続けていくことは困難な企業というものもある。それが今度のドル・ショックにあうと、これはたいへんな打撃を受けるわけでありますから、当然そういうものに対する思い切ったいわゆる職種転換の対策を十分立てていかなければならぬだろう、こういうように思うわけであります。  そこで高城参考人にお伺いをいたしたいのですが、今日まで貿易がきわめて不振におちいって、滞貨金融であるとかあるいはつなぎ融資であるとかいうようなものが非常に出てきつつあるだろうと思いますが、この状況を金額的にあるいは数量的に、このドル・ショックによってそういう面での金融が、商工中金において——これは中小企業全体もわかっていたら教えていただきたいのですが、もうちょうど一カ月になるわけですが、一カ月の間にどのくらい需要がふえてきたか、そういう点についてひとつお示しをいただきたい。
  65. 高城元

    高城参考人 実は当初予想いたしましたほど具体的にまだ出てきておりません。と申すのは、資金が要らないということではないので、まだ混乱状態にありまして、一体どれだけ借り入れをしたらいいんだろうか、今後の生産計画をどう立てたらいいんだろうか、所要資金の計算ができない段階であろうと私は思います。現実には業界ぐるみということで、これは北海道の合板でございますとか、大阪方面のボルトナット、あるいは電機関係の下請、あるいは玩具、クリスマス電球、あるいは洋食器、刃物というようなものが、これは具体的の要求と申しますより、自分の業界でこれぐらい要るであろう、若干腰だめが入っておると思いますが、それでこれぐらいのものをひとつ考えてくれという話が来ておりますのがいまのところ二百億ちょっとでございます。思ったより少ないということは、これはまだ対策が立たない。非常に手当ての早いところは、まず従来の貸し出しの条件変更と申しますか、返済を延ばしてくれ、こういうように具体的に出ております。すでに十数件出てきておるわけでございます。これは具体的に延ばしてくれということで、新規貸し出しということではございません。それから、すでにこの関係で貸し出しましたものは、私どものところで六十二件、十五億円という程度でございます。これは具体的に、もとの貸し出しの金融ベースでもう出てきた。先ほどのは相談と申しますか、これぐらいひとつというのがいち早く出てきておりますが、これからだんだん出てくるのじゃなかろうか。実は総額でどれぐらいになるであろうかということについては、たいへんむずかしい、見当がつけにくい金額でございます。お役所等もいろいろ調査をされておりまして、近く出てくるのじゃないかと思いますが、私どもだけで考えましても、どうせ、先ほど申しましたように、これが年末に向かってしわが寄ってまいります。そうしますと、やはり年末融資ということにつっくるんで考える必要がある。もちろん特別の条件ということは必要だと思いますが……。昨年で、私どもでは四百二十億ばかり年末につけていただいたわけです。おそらくそれに千億以上プラスしないとちょっと需要には間に合わないのじゃないか、私どもだけではそう思っております。
  66. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)小委員 ありがとうございました。  十場さんにまた返ってお伺いするのですが、この変動相場制に移ってから——やはりドル・ショック以来と言ったほうがむしろいいかもしれませんが、新規契約がほとんど成立しない、こういうような問題があるわけでありますが、そういう情勢を踏まえて、何カ月分かの既契約分の輸出は、課徴金の問題はあるにもせよ、まあ何とかいくだろう、この期間というのは大体どのくらいでございますか。やはりもう十月ごろからはかなり深刻な事態に突入していく。もう滞貨金融も、あるいはつなぎ資金も、それから転換資金というようなものが、いまのところはショックのあまりの大きさにやはりどうしていいかわからぬというようなことで、商工中金にかけ込むのも、あるいは中小公庫にかけ込むのも、まだその目安が立たぬのでできないという状況であるけれども、そういうものが何とか今後見通しをつけて資金需要として顕在する、業界から言えば一番どん底に到達するという時期は、これはもうすでに始まってはいるのだけれども、底をつく、そうして資金需要がやはり政府三公庫にも集中してくるというような時期の見通しはどの辺のところでございますか。
  67. 十場久三郎

    ○十場参考人 多少業界によって異なるというふうに考えるのでございますが、その前に、輸出雑貨類の既契約というのが大体私たちでは三カ月分と踏んでおりまして、これまでの推移から見ましても、三カ月分ぐらいの既契約の手持ちが常にあったという状態でございますが、今回の通貨不安というようなことで、御承知のとおりわれわれ中小の者にはこれを防衛する手段は一つとしてなかったというような状況下におきまして、私たちはここへ来るまで、もうそろそろやはりだいぶんあぶなくなってきたのじゃなかろうかということで、注文の引き受けをちゅうちょいたしておりましたというような関係で、おそらくこのショックのあった当時の既契約というものが、従来の年のそれよりも少なかったのでなかろうか。私の会社自体でも、大体例年の三分の一ぐらいはもうその時点ですでに遠慮しておって、減少しておったというような状態でございます。したがいまして、それがあと二カ月余りの既契約分しかない。二カ月といいましても、二カ月で済んでしまうということじゃなしに、先のものもあれば、期近のものでもまだ余裕があるというような関係がいろいろございますけれども、総体として二カ月余りの既契約分しかなかったというようなことでございます。  それじゃ、例をクリスマス電球というものにとってみますと、これはストライキというような問題が一つ影響いたしまして、大西洋岸のストライキに突入するまでになるべく全部送り込んでしまってくれというような条件が一つありますので、クリスマス電球については今日では既契約というものはほとんどゼロだ、もうすでに仕事するものがないというような状況でございます。それから燕の洋食器をとってみましても、これは御承知のとおりにタリフクォータというふうな問題が、二年間ほどかかりましてアメリカ政府といろいろ交渉した結果、どうやら十月一日からそれが現実に入ったという状況でございますが、その前にやはりできるだけ輸入しておこうという試みがあった。それで、それが実現いたしましたときには買い手がちょっとないというようなことで、現実には、アメリカに関する限りはほとんどいまのところ既契約というようなものもなくなってしまっておる。したがいまして、こういう業界にはもうたちまち、きょうあすの問題だということでございます。しかし、そうでなくて、年間平均していつも需要のあるというような商品、たとえば文房具であるとかというようなものにつきましては、ある程度の契約残があるので、いまたちまちの問題としては起こってこない。しかし多くの、たとえばはきものであるとか、いまの洋食器であるとか、クリスマス電球であるとか、玩具のようなものにいたしましても、これは年じゅう需要のあるものではありますけれども、大体クリスマス向けのプレゼントとして仕入れをするというような関係にありますので、こういう業界はもう一カ月も待たれないんだというような状況下にあるというふうに私個人では判断いたしております。
  68. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)小委員 あと各党御質問がありますからこれ一問で終わりますが、高城さんに最後にお伺いしたいことは、こういう重大な、打撃の大きい状況ですから、いまの十場さんのお話のように、もう一カ月も待てないというような状況にもあるところもあるのだということでありますから、まあ中小三公庫も政策金融機関として十分これに対して適切な、早目早目の対処というものがやはり必要だろうと思うのです。第一次追加を不況対策として財投から資金追加が出されましたけれども、最近また第二次追加が中小三公庫で一千億ぐらいというようなことのようでありますが、これは銀行局長にはまたあとで聞くことにしまして、一体十月から年末に向けて、いわゆる第三・四半期においてどのくらいの資金需要を見越して、政府に向かって資金調達をしておいたらよろしいかというようなことについての、あなた自身の御意見と見通しをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  69. 高城元

    高城参考人 私どもの感じで、先ほど申し上げましたように、昨年は四百二十億の追加が年末に向けてありましたが、それに対して千億以上上乗せをしていただきたいということをお願いいたしたいと考えております。ほかの二公庫につきましては幾らということを私もちょっと申し上げられませんが、やはり相当の財投が要るんじゃないか。ただ、現在御承知のように金融緩和でございますので、私どものほうは努力をいたしますとある程度債券の市中消化ができるわけでございます。いまの上乗せを全部財投でいただきたいということはお願い申し上げないで、自己努力というもので相当程度いくんじゃないかとは思っております。まだ具体的に銀行局のほうにもお願いをいたしておりませんが、われわれとしては自己努力をなるべくやって、それからワクをお認めいただきたい。それと若干の財投というような考え方でおるわけでございます。
  70. 藤井勝志

  71. 木村武千代

    ○木村(武千代)小委員 まず、高城参考人にお願いいたします。  先ほど高城参考人からお話がありました中小企業の困っておる業種の中には、手袋縫工業というのがありますが、これが抜けておったように考えるのです。あれも相当やはり打撃を受けておりまして、それで手袋業は大体いまのところ三〇%ぐらいの打撃を受けるというようなことを言っています。実際現地へ行きまして、香川県なんか白鳥とか三本松、そういうところへ行きますと、政府のほうから救急処置がいろいろな新聞なんかを通じて報道されていますが、実際業者が商工中金さんあるいは中小企業さんなんか行きまして、政府関係だということで行ったら、その方針は聞いておりますけれどもまだ具体的なる処置については聞いていません。やはり金を延ばしてもらいたいと言っても、まだそれが来ていないということ。それからつなぎ資金を貸してくれ。どうしても金融ベースでなければいかぬ、こういうところで非常に困っておるわけなんです。それについて高城さんのほうとしましては、この前ドル・ショックがあってからすぐにどういう処置をとられたかということをひとつお聞きしたい、こう思うのであります。
  72. 高城元

    高城参考人 実は先ほど十場参考人がおっしゃったのでありますが、私ども、これはどうも災害みたいなものじゃないか。そうしますと、災害融資のときと同じような態度、これで対処しなくては、なかなか普通の態度ではむずかしいのじゃなかろうかというようなことで、まず前の貸借関係の条件変更、これを前向きに取り組むように指示をいたしております。  それから、新しい融資につきましても同様な方針で取り組むようにいたしておりますが、ただ新聞にいろいろ出まして、低利・長期というようなのがときどき出ますので、それでやってくれというと、これはちょっと政府のほうで措置をとっていただかないと、いままだ私どものほうではなかなかやれぬというようなことで申し上げたのではなかろうか。普通の貸し出し関係でありますれば、前向きにやっておるはずでございます。  それからもう一つ金融ベースの問題、これは私どもは金融ベースでやりませんとできないわけでございます。したがいまして、私どもとしても、先ほど申し上げました信用保証制度の拡充と申しますか強化をやっていただきたい。これは国会の問題があるかと思いますが、これをできるだけ早くやっていただきたい。おそらくいま借りておりますところが、自分のところの保証限度一ぱい保証協会にお願いしてしまって、二千五百万でございますか、それ以上できないのだというような状況が非常に多いのじゃなかろうか。特に繊維はみんなそうでございますが、雑貨でも多いのじゃなかろうか。どうしてもワク上げ、かさ上げをやっていただきませんと、いまの制度ではなかなか保証もむずかしいというような感じでおるわけでございます。  それで、ちょっと釈迦に説法みたいになって申しわけないのでございますが、三機関の中小企業金融に占めますシェアは一〇%でございます。残りの九〇%は民間金融機関でございます。民間金融機関でございますと、私どもよりさらに危険についてナーバスである。やはり保証を上げていただきますと民間金融機関からの金も出る。そのほかに三公庫に対する特別の措置をやっていただく。両々相まちませんと、なかなか三機関だけでこの問題をどうこうするということは、資金量から申してもとうていできないことではないか。やはり信用補完制度の強化ということが非常に急務ではなかろうかというふうに存じておる次第でございます。
  73. 木村武千代

    ○木村(武千代)小委員 大体いま高城さんがおっしゃったような状況でございますが、よくわかりました。  その次に十場さんに伺いたいのですが、信用保証の増大ということがいま当面一番の問題になっておりますが、これは三公庫の問題にしましてもあるいは地方銀行にしてもなかなかやってくれないので、また信用保証協会も、いま申したように限度一ぱいにどこもみなやっているのですよ。そうすると政府が相当手を打つとしましても、なかなかこれは急の間に合いませんですよ。カンフル注射のような、いままでの政府の手の打ち方を見ましたら、腹痛にすぐに薬がきくようなやり方はちょっとないのじゃないか。相当時間がかかると思うのですよ。暮れまでにできたら大成功だと私は思っておりますが、そうするとやはり自己防衛のために、お互いの業者間におけるところの——保証能力のあるところがありますね。そういうことで、業者間によって自己防衛をするという機運がいま出ておりますかどうかということを、ちょっとお聞きしたいのです。
  74. 十場久三郎

    ○十場参考人 一つの問題としてこういうことがあろうかと思うのです。いま円は市場にだぶついているのだ、しかしほしいところには来ないのだということ。輸出の面で申しましても、商社の側ではわりあいに資金があるんだ、それがメーカーにいまの状態では回っていかないのだという問題が一つあります。これは商社といたしましても、やはり生産企業がなければ商いになりませんので、これは一つの考え方でいかなければならない。しかし、なぜそれがいま直ちに行なわれていないかということの問題でございますが、これは先行きの見通しがつきませんので、都合によったら死んでしまうというような金は企業としては出せないのだ。ですからこれが、商社が為替の面で見通しがつくという段階になれば、価格その他のいろいろの交渉はございましょうけれども、一応仕事は続けられていくような状態になるということで、一つのこれは手っとり早い金の道のつけ方じゃなかろうかというふうに考えます。  それからもう一つ、個々ではもう現状一ぱいでなかなかできないのだけれども、あるいは束になってというようなことがいま御示唆があったわけでございますが、先ほども申しましたとおり、何といいますか、一般的に中小企業と申しますか、特に輸出関連中小企業では、そういうことがこれまででも必要であったものがなかなかやはり行なわれなかったというふうな現状にあったと思います。その条件は変わらないのではありますけれども、ここでそうしなければ立たないのだというような事態に立ち至った今日、こういう方向をこの際やはりかなり積極的に御指導願って取っ組むべきだというふうに私は考えています。
  75. 藤井勝志

  76. 坂井弘一

    坂井委員 十場参考人にお尋ねをします。  中小企業が予想外の深刻な打撃を受けておる、お説のとおりだと思う。為替面だけでなくして、税制あるいは金融面でもって中小企業の救済策を講じていこう、またいかなければならない。税制の問題は別としましても、金融面では、ワクの拡大であるとか、あるいはまた返済の繰り延べ等も考えなければならない。そうしたもろもろの条件の緩和あるいは特に利子の引き下げであるとか、あるいはまた貸し付けワク、信用補完制度の問題だとか、さまざまな問題、そうした一連の対策を総合的に講じていかなければならない、こういうことで具体的に例をあげて御説明いただいたわけでございます。実は私が承知しております、これは一部の企業でございますが、ことに零細下請ですね、これはもう融資どころの話ではない。税制というようなことはもうそれ以前のこと、実際に転廃業、職種の転換ということ自体も具体的に一体どうしたらいいのか、またそれに対して一体どう措置を講じてくれるのか、何ら対応策がない。親企業からも現実に操業の停止、これを迫られておる。ですから仕事はストップしてしまう。何人かあるいは何十人かの従業員をかかえて、全くとほうにくれている。これが一部の下請零細企業のまことに深刻な現状でございます。したがってそういうような企業、これは業種によっていろいろあるでしょうけれども、一体これから先どうなるのか、またこうしてもらわなければどうしようもないのだというような、もっと深刻なものがあるのではないかと私承知しております。したがって、そういういま申しましたような事例等が具体的にこうこうこういうところであるということがありましたらばお教えいただきたいと同時に、またそういう事態に対しては政府はかくあるべきだというものを、忌憚ない御意見もひとつ拝聴させていただきたい、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  77. 十場久三郎

    ○十場参考人 ちょっとむずかしい御質問であったかと思うのですが、中小企業あるいは下請業者、特に下請の場面で多いだろうと思いますけれども、まことに困ってどうにもならないのだけれども、それだからといって倒産というようなこと、これまたなかなか出てこないというような一つの特殊な性格がございまして、従来までもあまり業績がおもしろくなくて、約手を出してその場をまとってきたのだというようなところは、仕事がとまりますと一ぺんに手をあげてしまう。しかし、そういうことでなかったら、現実の問題といたしましてなるほど仕事もない、金もうけもない、食い込んでいくのだというのではあるけれども、しかしそれが倒産というようなかっこうの数字の中にはなかなか入ってこないというようなことで、実際にこの数字あるいはその表面にあらわれてくるのはいかにもつかみにくいような状態にあると私は思うのです。しかし現実の問題といたしまして、私が関係いたしております業種の中でも、やはりすでに仕事がとまってしまっておるものがございます。まだ倒産はいたしておりません。しかしこのままでほっておけば、倒産しなくても、何かにすぐに転換しなければいずれどうにもならないという業種であるかと思います。業種の名はここで申し上げませんが、そういうものが幾つもございます。ほかの商品でも、なるほど私たちの取引しておるところの相手はどうにかやっておるけれども、それがやっていけるということは、やはりその下請に犠牲をしいているために何とかその場をやっていけるのだ。ただ最後はやはり下請が一番かぶり込んでしまっているというような状態で、具体的の数字も何も持ち合わせはございませんが、そういう事例はすでにたくさんある、私はそういうふうに承知いたしております。  また、将来これをどういうふうにしていけばいいかということなんでございますが、やはり私たちの業界全般を通じて長期的に考えてみましたときに、先ほども申し上げましたように、もう一度事態を見直して、転換すべきものはしかるべき方向に転換していくという方向でなくてはどうにも解決のしようがないのじゃなかろうかというふうに考えております。しかし家業として代々この仕事を続けておるのだというところには、それ以外の仕事につけといってもなかなか実際的には困難な問題がたくさんございます。たとえば先ほど例に申しましたクリスマス電球のようなものでも、これはアメリカが特恵を実施いたしますと、またそこに価格の面で二割というギャップが新しく出てまいります。そういうふうなことを踏まえまして、ここに余剰の設備もありそれの技術も持ちというようなものは、これは私の考えでは、国として、やはり労働賃金の安い発展途上国に進出するように積極的に誘導してやるべきだ。それには、中小企業でございますので、手続の面だとかあるいは資金面だとかいろいろの不自由があって、なかなか実行し切れないのですが、こういう面、この際国としては思い切って積極的に協力してやるということが、私はこの解決の根本の問題ではなかろうかというふうに考えております。  先ほど、内需に転向するというお話も出ておりましたが、輸出雑貨の多くのものが、内需に回しておるよりも輸出のウエートのほうが重いというものが多うございます。そういうものが一度に内需にラッシュいたしましたときには、これまで内需で立てておったところもこの際この騒動に巻き込んでしまうというおそれが非常にある。だからこれはやはり慎重にしなければならぬ問題だと考えております。
  78. 坂井弘一

    坂井委員 高城参考人にお尋ねいたします。  中小企業輸出の新規商談というのは、一部はほとんどストップしておる。課徴金の交渉が双方で、先ほども十場さんからお話がございましたけれども、しかしケース・バイ・ケースで交渉がなかなかスムーズにいかないというようなことも、新規商談がなかなか成立しないという原因の一つであろうかと思います。しかし、より根本的には、やはり為替変動成り行きというものがさだかでない。したがって輸出も値ぎめが非常に困難だというのが一番大きな問題ではないか、私はこう見ているわけでございます。そういう中で、かりにいま既契約分についてせっかく船積みをした。八月なんか相当やっておりますね。九月に入りましてからはかなり鈍化している。しかし決算期を間近にしておりますので、おそらく何としても船積みせなければいかぬというので、それは相当進むだろう、こう思われるのですが、しかしせっかく船積みしましても、これがはたして輸出手形を為銀が買い取ってくれるかどうか、その辺の不安もあるというようなことになってきますと、勢いそうした不安定な中小あるいは零細企業等においては、もういいかげんにこの辺で円の切り上げなら切り上げやむなし、固定相場に早く復帰してもらいたいというような声が相当切実にあるように私聞くわけでございますけれども、そうしたような事態から推察いたしますと、いまも部の零細企業と下請はもうストップだというような状態について申し上げたわけですけれども、なかなかこれからの金融ということについても、いままでのようなあり方ではなくして、よほど根本的に考え直したところの形でこれに対応していかなければとうてい救済できないのじゃないかという感を私、実は深くするわけでございます。したがって、そういうような点も含めて高城さんから、そうした深刻な事態に対処する金融のあり方といいますか、根本的に、先ほどもいろいろお話ございましたけれども、何かひとつもっとほかに方法があるのではなかろうかなという実は感じを受けるのですが、いかがなものでございましょうか、御意見ございましたらひとつお聞かせいただきたいと思います。
  79. 高城元

    高城参考人 たいへん大きな問題で、お返事できるかどうかわかりませんが、一つ輸出手形買い取りをもっと促進できないかということでございます。私どもではよその銀行に再割りをしてもらうわけでございまして、最近は各銀行外国銀行もございますが、取引先をふやしております。いろいろ為替銀行にもリスクの負担というようなことがございまして、ある場合一定のワクを持っておるわけでありますね。それ以上はちょっと危険負担しにくい、そのワクをできるだけ使わしてもらうために、たくさん取引先を実はふやしました。バンク・オブ・アメリカその他ふやしまして、まあ一応やっておるわけでございますが、しかしどこの外為銀行も引き受けてくれないということになりますと、いたし方ありませんので、仮レートをきめまして、それであとで清算をいたしましょうというようなことでとりあえず金融いたしております。それもむずかしいという場合には、為替手形を担保で円の金融をいたしております。私どももそうむやみに危険負担ということもなかなかできませんので……。  そこで、現在の変動為替の中でどういうことをやれば、私どものほうは外国為替取引は金額わずかでございますが、各金融機関が安心して買い取りができるようになるかということが一つの手段であろう。外貨貸しとかいろいろな御意見があるようでございますが、何かそのどれか、ぐあいのいいのをやっていただく必要があるのじゃないか。固定為替を早くきめろというのは確かにそのとおりでございますが、現在御承知のようにかけ引き中と申しますか取引中でございまして、どうもそのことを私から申し上げることもできませんが、そういう要望の強いことは御承知のとおりです。何でもいいからひとつきめてもらえぬかというような気分があることは事実でございます。はたして早くきめることがいいかどうかという問題につきましては、ちょっと私からは申し上げにくいわけでございます。  何か新しい金融の方法はないだろうかというようなお尋ねですが、これはたいへんむずかしいあれでございまして、私としてはやはり信用補完、要するに信用がない、あるいは信用が不足であるというところに信用を補完いたしませんと、やはり金融機関としては——これは貸し出しということは金融機関の本来あるべきビヘービアでございまして、なかなか、危険だけれどもそれは幾らでも貸してやろうということは、ちょっと金融機関としてはできないであろうと思うわけでございまして、やはりどうしても信用補完、思い切って信用補完の手を打っていただきたいということをお願いをしておるわけでございます。なかなか新しい金融というようなことは、実はちょっと思い浮かびませんので……。
  80. 藤井勝志

  81. 竹本孫一

    竹本委員 最初に高城参考人に。  ただいま問題になりました点に関連をして、私は従来こういう考え方を持っております。それは、特に最近の情勢で強くなったということですが、これは従来から続いておる長い不況の問題、それから今度のドル・ショックや円の切り上げの問題、それからやがて出てくる特恵の問題、こういうような中小企業をめぐるいろいろの問題を考えますと、何と申しましても中小企業の構造改善と申しますか、体質改善ということについては、もう抜本的な、そして国際競争力に耐え得るような体質に変えていかなければならぬ、こういうように思うわけです。しかし、それはちょうど農業の場合と同じですが、農業や中小企業の場合においては、自主的に努力をしなければならぬということは当然でございますけれども、非常に大きな限界がある。したがって、その体質改善をきびしい国際競争や最近の経済情勢に対応できるように、テンポを早く、スケールを大きくやらせるということになれば、自主的な努力というものは非常に限界がある。したがって、その大きな転換、体質改善は何としても政府あるいは国家の力というものがむしろ主導的な役割りを演じなければならないのではないか。ドイツにおける経済政策の一つの特色はそういう点に私はあると見ておりますが、そういう観点から政府三機関の従来の性格と申しますか考え方をこの際、いわゆる発想の転換をやらなければならぬのではないか。具体的に申しますと、先ほども理事長のおことばにもありましたように、補完的な金融だ、補完であるという考え方ですね。私がいま申しましたように、転換は国の力で主導的に行なわなければならぬのであるという考え方と、政府三機関に対する従来の政府のお考えである補完作用をやるんだという考え方とは、大きな食い違いがあると思うのです。したがいまして、私はこの際は、補完的な金融機関であるというその性格を変えなければならぬ。少なくともいままでのように一割のシェアぐらいで補完作用をやっておるというようなことでは、とうてい間に合わない。かりに補完的なものであるとしても、その量をいまの倍ぐらいに担当、役割りを変えなければ間に合わないではないか、こういうように考えております。いろいろお話がありましたけれども、基本的に三機関の役割りというか性格というものについて、この際考え直すべき時期ではないかと思いますが、この点についてだけお伺いしたいと思います。
  82. 高城元

    高城参考人 たいへんむずかしい問題でございますが、実は先ほど補完と申し上げましたのは、量的に一〇%ぐらいだということでございまして、私ども商工中金は補完金融機関とは脅えておりません。これは組織金融機関であって、組織に乗ったものは自分のところがやらなければならぬというふうに考えておりまして、補完とは私どもは考えておりません。他の二機関につきましては、あるいは補完金融機関というようなことをいわれておるかもしれないと思います。中小企業金融は、御承知のところでございますが、常に資金量が足りないということを言っております。それから常に金利の面において大企業に比べて不利であると言っておるわけでございます。したがいまして、今日私ども三機関の持っております資金量というものが、これで十分であるとは考えておりません。毎期、大蔵省、通産省にお願いをしてできるだけふやすようにいたしておるわけでございますが、ただ、各銀行というのが中小企業金融の四五%ぐらい、それから相互銀行、信用金庫、信用組合、この三機関で四五%、それから私どもも含めまして政府関係機関が一〇%というのが、中小企業金融におきまするいわゆるシェアに現在なっておるわけです。このシェアを大いに上げたらどうかというお話、私どもとしてはたいへん賛成でございますが、いろいろ政府の財政の都合等ございますので、一挙にということは現実問題としてはむずかしい問題であろうと思いますが、私どもは常にそういう希望を持っております。  それで、ほかのほうはあまりよく存じませんが、たとえば構造改善の問題等におきましては、中小企業振興事業団が主体になりまして、その自己資金に当たる分、三割というようなものは私どものほうで全部融資をいたしております。必ずしも市中銀行にお願いをいたしておりません。そういう意味では、いわゆる政策金融機関というようなつもりでやっておるわけでございますが、中小公庫、国民公庫、おのおの特別の政策に沿った融資があるわけでございますが、その面につきましては補完ではないのだろうと私は考えております。自分が主体でやって、足りない部分を市中銀行というような形になるのではなかろうか。まあしかしいずれにいたしましても、全体の資金量が足りませんことには、手品もできないわけでござ  いますので、この量をふやしていただきますことについては私どもは大々賛成でございます。こんなところでひとつ……。
  83. 竹本孫一

    竹本委員 次に、十場参考人に三点ほどお伺いをいたしたいと思います。  まとめて申し上げますが、先ほど来クリスマス電球その他についていろいろお話がありましたけれども、軽工業製品の輸出組合の理事長というお立場もありますので、倒産が次々に出るだろうといろいろ心配もされておりますが、そういうような非常に深刻な倒産続出の問題をかかえておると思われるものについて、結論的になりますけれども、まとめて、産業別、産地別にひとつ理事長の立場からお話を伺いたい。これが一つであります。  それから次には、外国為替買い取り制度の問題についてお話があったわけでございますけれども、この際私はひとつ、いろいろの質疑応答があったわけですけれども、大事なことは為替の差損の問題でございますけれども、これはいままで論ぜられておるのは、多くは産業政策、金融政策として議論されておるわけですね。しかし、それだけでいいかという問題をぼくは持っておるわけなんです。それは、たとえば為替管理がないドイツのような場合で為替差損ができてくる場合と、日本のように、先ほど原さんでしたかもお話がありましたように、為替リスクヘッジのメカニズムがどうにもならぬようになっておる、すなわち対応策を講じようと思っても、政府ががんじがらめに縛って対応策を講じさせない場合にできた為替差損とは話が違うと思うのです。動けるようにしてやって動いて、動きそこなったものは個人が負担の責任を負うのは当然です。しかし、動かせないように手足をがんじがらめに縛っておいて、そうして損が出た、こういう場合の損失については、これは極端な言い方をすると、政府のやり方によって国民の財産権を侵害したものが、こういうふうにいってもいいんじゃないかと私は思うのです。したがいまして、この為替差損の問題については、単に産業政策あるいは金融政策といったような次元の低い感覚だけではなくて、これは政府の政策のへたなやり方によって国民の財産権を侵害したものである、こういう観点から、角度を変え、次元を変えてこの問題と取り組まなければならぬのではないか。特に中小企業の場合においては制度もかんじがらめになっておる、ヘッジのメカニズムが全然役に立たないということだけでなくて、企業の体質からくるまた制約もありまして、いよいよ対応の手が打てない苦しい立場にあるのではないかと思うわけです。そういう意味で、これは私の考えでは財産権の侵害であるという、そのまた財産権に対する補償の問題であるという角度から取り上げなければならぬと思うが、十場参考人はどういうふうにお考えになるか。またそうした立場から、この日銀の買い取り制度について特に具体的な御注文があれば、具体的にお伺いをいたしたい。  それから第三番目に、きょうは十場参考人からある意味において重大なる発言があったと思うのでありますが、それは中小企業の体質改善の問題に関連をいたしまして、先ほど来申し上げましたようなドル・ショックの問題あるいは不景気の長く続いておる問題のほかに、これから特恵関税の問題がある。これらの問題を考えると、中小企業のある分野、ある部門についてはどうにもならなくなるのではないかというようなことを、ある意味において業界の立場にあられながらもはっきり言われた。そしてまた転廃対策についても、そういう意味ではっきり認識をさした上で真正面から取り組むべきではないかという、非常に積極的な具体的な御発言があったと思うのです。これは私注目すべき御発言と承ったわけでございますが、そういう立場からその取り組みをやるについて政府のほうに具体的に要望される問題があるならば、それも承りたい。さらに業界として、それだけの進んだ認識を持っておられる立場から、業界の自主的な盛り上がりとしてある構想があるならば、その構想も承りたい。  以上、三点であります。
  84. 十場久三郎

    ○十場参考人 一番最初は産業別、産地別の状態であろうかと思いますが、これは御承知だと思いますけれども、輸出雑貨につきましては比較的産地化しておるものが多うございます。したがって数もずいぶんございます。例をあげてみますと、私たちの管轄と申しますか、中でもクリスマス電球あるいは漆器、それから玩具もそうです。双眼鏡もそうです。作業工具も片寄っております。それから木製品も片寄っております。金属洋食器はもうまさにそのとおりでございます。楽器もそのとおり、スキーのようなものもそのとおり、グローブ、ミットもそのとおり。陶磁器はこれはもう御承知のとおりだ。人造真珠しかり、あるいは、はきものしかり、めがねとかあるいはめがねのレンズもそのとおりである。竹製品も、すだれというような大きなものになるとかなり片寄ってしまっておる。敷きものもそうだ、ボタンもそうだというようなことで、ちょっと目立つ産品というものはほとんど産地を形成しておるというようなことでございまして、その限りにおいて、これは各個の企業になりますと同じ影響でございますが、そういうふうに集中いたしておりまするところでは社会的な不安に直ちになりやすいということで、非常に大きな影響があると思うわけでございます。  これの一つ一つについてどういうことがいいかということなんでございますが、たとえば燕の洋食器というようなものになりますと、これが先ほど申しましたように、一応の関税割り当てというものができまして、その割り当ての数量以内では——いまのところ、見越し輸出がありましたので、少し低迷はしておりますけれども、いずれその割り当て以内ではこれは計画的に輸出ができていくものじゃなかろうかというふうに考えますので、それはそれなりの対応策があろうかと思うのでございますけれども、これも、先ほど例にとりましたクリスマス電球というものにつきましては、特恵その他を勘案いたしますと、特殊なものを除いては、ほとんどその大部分はいずれそのうちに、比較的早い時期に低開発国に移行しなければならないような運命の商品じゃないか。これは私の個人的の考えでございますので、あるいは反対の御意見もあるかとは存じますけれども、私自体ではそういうふうに考えております。そういう産業に対しましては、これは幾らここでがんばってみても大勢はそういうことであるということであれば、先ほどのお話のように、いち耳くその進むべき方向を、中小企業のことでございますので、やはり政府が主導権をとってその環境を早くつくってやるということが必要であるかと思います。竹のすだれにしても同様じゃないかと思います。それからはきもののようなものにつきましては、これはかなり高級品を除いて、やはり低級品については同じことが言えるかと思います。これは二つの政策をとらなければならないというような業界であるかと思います。  まあこういうことで、業界別に私それだけの知識もございませんので、詳しくはあるいは御質問に答えることにはならないかと思いますが、一、二の例を申し上げますと、もう少しこまかい観点から、業種別に親切に政府がここのところ手をとって引っぱっていくということが、今後いろいろな社会的な問題で政府がお金をかけるよりもかえってスムーズにいき、しかも安上がりではなかろうか。商売人の感覚からいたしますとそういうような気分がいたしております。  それから、為替先物が見通しがつかないので商売もできないし金にも困るということの問題でございますが、これにつきましてはいろいろ困難な状態があろうかと考えます。たとえば、変動相場制に入ります前に日銀がかなりドルを買い取ったということについても、局外者からはかなり批判のお声があったかというふうに聞いておりますが、やはりこれをスムーズに取引さしてやるということは、日銀の介入がなくてはいまの制度ではどうにもならない問題だ。どの程度日銀が介入するかということにかかる、その決意にかかるというふうに私考えております。それで、われわれの立場とすれば介入していただきたい。政府がそれだけの負担をするということにはなりますけれども、その負担をしなかった場合にやはり関連の業者が、まあわれわれからいいますと中小業者がそれのしわを全部受けて、そうして倒産する立場にある。いずれにしても国の問題であるので、そういうふうな事態を起こさないように早目に、ある程度の犠牲はあっても政府で手を打っていただくべきであるというふうな考え方を持っております。これはどの程度介入していただけるかということにかかっておると思います。先ほど申しましたのですが、これはやはり外国為替買い取りというものを確実にひとつやっていただく。もしそれがいろいろの御事情で全部ができないということであれば、中小企業のやつだけでもやってやるのだというふうな決意を固めていただきたいというふうに考えております。  それから転換の問題が、先ほど一緒にお話しいたしましたようなことになりましたが、雑貨の輸出輸出雑貨というものは、その大半をアメリカの貿易に従来依存しております。これをもう少し市場別にも開拓すべきじゃないかというような御議論がございますし、また業界といたしましても一つに片寄るということの危険性は感じておるわけでございますが、御承知のとおり雑貨を消費する国といえばやはり進んだ国ということになります。したがいまして、アメリカの次にはどこだ、ヨーロッパ、ECということになるわけですが、これはまだたくさんの対日差別待遇をいたしておりまして、幾ら安いものでいいものであっても、こちらの思うようには向こうに輸入さしてくれないというふうな事情がまだ残っております。この点業界の努力も——実は政府間ということでなしに、業界なりにグループとグループの間でいろいろの準備交渉、あるいはまたPRというようなものをやってはおりますが、この点につきましてはひとつ国として経済外交を強力に進めていただきたい。それについては、先ほどから問題になっております為替のレートとか、あるいはわが国自体の自由化の問題だとか、いろいろの問題が関連はいたしてきておるものでございますけれども、一応この辺で、先ほどお願い申し上げましたように、国内対策を、もう不安の起こらないようにひとつ十分にとっていただいて、外へ対する外交についてはやはり腰を据えて、この際根本的にいろんなことをパッケージにして片づけるのだというくらいの意気込みでお願いしたいというふうに私自体としては考えております。  ある程度お答えにならない点もございましたが、これでひとつ……。
  85. 藤井勝志

  86. 奥田敬和

    奥田委員 各委員からほとんど意見が出尽くしたわけでございますけれども、高城参考人が御出席の機会に、私の地元である石川県の実態の一、二例をあげまして、今後の金融措置の参考にしていただきたいと思います。  私は、現状のままでは、先ほどから十場参考人も御意見を述べられましたけれども、この年末にかけてたいへんな状況になるのじゃないかということを憂慮いたしております。温泉で有名な山中という町ですけれども、人口が約一万二千人くらい、漆器産業が年間約六十億、観光産業が四十億、大体百億程度の生産を持っておる町でございます。ところがこのドル・ショックを契機——大体山中漆器というのは比較的安い漆器、特に最近プラスチックに変わっておりますが、安い贈答用品程度のやつです。ちょうどこの年末から来年にかけて非常に契約をするシーズンにぶつかった。いつもですと、この八、九月にかけて大体百三十件くらいの対米向けの注文があるそうです。大体漆器のうちの約二割が対米向けだそうですから、十二億ほどでございます。ところが、ことしはちょうどあれにぶつかったもので一件ほどしかないということで非常に困っております。このことは逆に国内向けのお歳暮用品等にもやはり波及してくるわけです、大体こういう不景気でございますから。したがって不況感というものが非常に深刻になっております。ただしかし、このレートがきまりさえすれば、あるいはこの不況の底が抜ければ絶対勝負していけるということで、漆器産業自体は先行きに関しては自信を持っているわけですけれども、ちょうど協業化等で国の資金を入れまして、あるいはホルマリンの公害防止等の施設も県等の援助も受けてりっぱにしたあげくにこれだったものですから、先ほどから各委員からの御質問にもありましたように、どうか返済期限を延ばしていただく——ちょうど返済期限にきておるわけです。大体三年前くらいに完成して、二年据え置き条件、いろいろの形の中で、ちょうど長期資金の返済期限にきておる。そういうわけですから、これは何も山中漆器に限らず、こういうケースは多いと思います。したがって、これは決してうしろ向きということじゃなくて返済を繰り延べていただくなり、あるいはさっきおっしゃられました信用補完内のワクを増大していただく、そうしてきめのこまかい形でこの不況を乗り切らしていただきたい、かように思います。  いま一つ、石川県は御存じのとおりに、対米向けの輸出化学合成繊維、特にポリエステル、こういう関係では日本の主力産地でございます。私もつい最近アメリカへ行って帰ってきたわけですけれども、これがアメリカの市場では、爆発的というとちょっとオーバーですけれども、ものすごい売れ行きなんです。ところがあのとおり、そのことが災いしてか、逆にああいう規制措置を受けているわけですけれども、しかしこのポリエステルのニット関係だけを見ましても、メーカーは非常に付加価値の高い商品開発に努力したわけです。したがって、日本国内価格よりも何倍という価格で向こうは売れているわけですから、その間の流通の問題は別としても、根強い需要があるということは間違いないと思います。したがってメーカー自体も、この円レートがはっきりするまで安売りで売り急ぐようなことはすまい、少なくともわれわれは何年間もかかって技術を蓄積して、今日アメリカの繊維産業の、特にポリエステル部門に関しては二年間くらいの格差をつけて進んでおる、こういう形で、決してダンピングしないでひとつ持ちこたえようという形におります。そういたしますと、具体的に問題になってくるのはやはり滞貨金融です。操短もやっておりますけれども。こういうわけで、これはうしろ向きの滞貨金融ということではなくて、前向きの滞貨金融、そういう形で私はお願いいたしたいと思います。これに付属して一流の機械メーカーも、マンホールをつくったりするような状態にもなって、いまこれに付随した繊維機械メーカーあたりがたいへん困っておりますけれども、しかしこれらは、非常に不況感はありますけれども、五カ年間くらいの好況の蓄積を持っておって、いま耐えておるといったような状態でございます。  そこで、ひとつ高城参考人におかれましては、何とか滞貨金融、つなぎ資金を積極的に取り入れていただきたいということと、返済を繰り延べて、新規の貸し付けワクをふやすなり、信用補完の意味でいろいろな手を講じていただいて、きめのこまかい形でこの不況を乗り切っていただきたい、積極的な措置を講じていただきたいと思います。  これに関して参考人の積極的な御意見と、そうして先ほど、これはまあ委員長にお願いしなければいかぬことですけれども、非常に十場参考人は、激甚災害、天災に準ずるような御措置をしてくれ、このドル・ショックの形は輸出小メーカーにとっては非常に天災にも匹敵するものですから、こういう形のお願いがありましたけれども、これもぜひ当委員会で取り入れていただきまして、政府に申し入れをしていただきたいと思います。  時間もたいへんおそくなりましたので、一方的な発言になりましたけれども、高城参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
  87. 高城元

    高城参考人 繊維の関係につきましては、石川県はたいへん組合がしっかりしているというか、産元制度をとっておられまして、非常に長くお取引をいただいておりますし、事情がわりあいによくわかっております。山中の漆器につきましては私初めて伺いますが、支店のほうに連絡をいたします。  全般論といたしましては、ただいま仰せられましたように、できるだけ返済条件は延ばそうじゃないか、または新規の貸し出しについても、ちょっとお話がございましたけれども、災害に準ずるような考え方でやっていかなくてはとうていこの場は乗り切れないんじゃないか。実は私心配しておりますのは、こういう輸出関連の産業、それだけじゃないんじゃないか。一般的の不況感というのを、よほど早い手を打って、これは私ども自身の直接の問題ではございませんが、いろいろな財政的措置をとっていただきまして、一般の不況感というものがあまり浸透していかないように——むろん輸出関連についてはすぐ手を打たねばならぬと思います。  そのほかに、私どもこれを一番心配しておりますが、不況感がありますとこれがまた資金需要になって、直接ドルと何の関係もないのがまた資金需要になってくる。そうなるととても受け切れないんじゃないかというように心配をいたしております。私ども、よけいなことでございますけれども、中小企業の皆さんがショックを受け過ぎまして、あまり心配をし過ぎて、何と申しますか、これはとてもいかぬのだというふうにみんなが考えますとそうなってしまうのではないか。妙なことを申し上げますが、このドル・ショックはたいへんなショックでございますが、もしかりにこれが一−三か四−六に来たらたいへんなことであったろう。四−六で一応在庫調整というものが済みましたので、まあまあ時期的には中小企業にとりましても不幸中の幸いだというような感じがいたしております。私どもとしては、できるだけこの輸出関連の問題については全力を尽くすつもりでおります。また、できるだけ組合員の方の御要望に応ずるようにいたしておりますが、よけいなことかも存じませんが、一般的に不況感の出ないような財政措置なり何なりをひとつとっていただきたい。こちらのほうがおそろしいような感じが私どもいたしておりますので、よけいなことですが、ちょっと申し上げます。
  88. 藤井勝志

    藤井委員長 ただいま奥田委員から委員長あての御提言ですが、これは明日また大蔵委員会がございますので、きょうこの小委員会においての各委員の御発言を踏まえて、でき得れば大蔵委員会でしかるべき意思表示をしてもらうべく、明日の理事会におはかりしていきたい、こう思っております。  ちょっと私、委員立場高城参考人に……。  ただいま奥田委員から言われた従来のあと始末だけれども、実際前向きの金融体制だ、こういう面をひとつぜひ考慮していただきたい。特に法的に、二年据え置きの八年ということを、法律的にしりがくくられておりますね、こういう問題については、将来法律改正もあえてやるというようなかまえで御検討を願いたい、こう思います。  それからもう一つ。景気浮揚対策としてこれから割賦販売というものが相当普及するといいますか、また国内市場有効需要喚起のために普及させなければならない。そのためには、やはり積極的に割賦販売のできるような運転資金ワクをやはり考えてやることが必要ではないか、こう思いますので、これまたひとつ御検討願いたい、こう思います。  これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。高城参考人、十場参考人には、御多用中のところ、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。どうぞお引き取りくださいませ。     —————————————
  89. 藤井勝志

    藤井委員長 政府側に質問の通告がございますので、これを許します。堀昌雄君。
  90. 堀昌雄

    ○堀小委員 国際金融局の次長に少しお伺いをいたします。  八月の十九日以来、大蔵省、日本銀行が今回の為替その他の取り扱いについて行ないました措置を日別にちょっと最初にお述べをいただきたいと思います。それについて個々にそれの内容等を少し伺いたいと思いますので。  八月十九日に円転換規制の強化、外銀取り入れの禁止等が行なわれているようでありますが、これを契機に処置がいろいろ行なわれておりますので、それをひとつ日を追って最初に御報告いただきたいと思います。
  91. 林大造

    林説明員 ただいま御質問がございました八月の十九日以後の措置でございますが、まず八月の十九日に、外銀借り入れ、自由円、ユーロの取り入れ、コールの取り入れなど、対外債務残高を十八日残高以内にとどめるように行政的な指導をいたしました。それと同時に、これは新たな措置ではございませんけれども、円転換規制の順守を要請いたしました。  それからその後、これは特に今回だけというわけでもございませんが、外国為替公認銀行及び商社に対する為替検査を実施いたしました。  それから次に、八月の二十七日に、自由円預金残高を二十七日の残高以内にとどめるように要請をいたしました。  それから八月の三十一日に、輸出前受け代金の円転換を規制するための省令を公布いたしました。と同時に、証券会社の特別勘定残高の増額を規制いたしました。第二の点は行政上の措置でございます。  それから最後に、九月七日に、円転換規制、それから債務残高規制、それから自由円残高規制につきまして、従来は指導、要請をいたしておりましたのを、法制上の根拠を整えまして、これに伴い円転換規制を従来月中平残と月末残高の両面から押えておりましたのを、毎日残高ベースを原則とするように指導の方針を改めました。  特に申し上げますのは以上のとおりでございます。
  92. 堀昌雄

    ○堀小委員 八月十九日に円転換規制の強化を指導されて、さらに外銀からの取り入れを十八日現在高に押えるような指導をされた。それから外為銀行及び商社の立ち入り検査を行なった、こういうことでありますが、その次に、八月二十四日に外国為替資金貸し付けの返済を月末までに四ないし五億ドルまでは認めるというような方針に転換されておる。これは日銀だけの処置ですか、それともこれは大蔵省はタッチしていないか、この点はどうでしょうか。
  93. 林大造

    林説明員 ただいま御指摘日本銀行外国為替資金貸し付けの期前返済の点でございますが、この点は、従来から、五月に西独のドイツ・マルクがフロートいたしましてから、次第に外国為替資金貸し付けの残高を減らすような方向で進んでまいりましたのでございますが 八月の二十五、六日ごろだったかと思いますが、そのころにこの残高をさらに減らすということを認める措置をとりました。  で、本件は大蔵省が直接にとったものではございませんで、これは全く日本銀行の貸し付けでございますから、日本銀行がとりました措置でございますが、ただ本件は、やはり円転換規制順守を容易にするという内容のものでございますから、当然に日本銀行と十分連絡をとって措置されたものでございます。
  94. 堀昌雄

    ○堀小委員 もう一つ、八月二十六日には円転換規制の範囲内で外国為替資金貸し付けの返済を無制限に認めるということにさらにここでもう一ぺん変わっていますね。そしてさらに、このときに外貨預託を三億ドル行なっておる、こうなっているわけですが、いまの私が前段で述べたほうは、これは日本銀行の処置でしょうが、このあとのほうの外貨預託三億ドルというのは、これは日銀ですか、大蔵省ですか、どっちですか。
  95. 林大造

    林説明員 ただいま御指摘外貨預託は、これは大蔵省がいたしました措置でございます。
  96. 堀昌雄

    ○堀小委員 さっきのあなたのあれの中にこれが入っていなかったわけですが、そこで、確かに円転換規制をやりやすくするために貸し付けの返済をこうやってどんどんゆるめてきた。そしてさらにここで八月二十六日に外貨預託を三億ドルまで認めたということは、これはいずれも外為銀行に対しては非常にフェーバーであった、こう理解をしておるわけですが、大蔵省はどういう認識のもとにこういう処置をとったか。あるいは外国為替資金貸し付けの返済を事前に認めるというような措置、これは確かに円転換規制がやりやすくなるということはありますが、どうも主たる目的が外為銀行にとってきわめていずれも有利な措置であったというふうに私は判断をしておるわけですが、その点はどうでしょうか。
  97. 林大造

    林説明員 まず最初に外貨預託について申し上げますと、これは三月以来とられました措置でございます。三月当時には日本と米国との間の金利差が、米国が非常に低くなりまして、したがいまして、従来とってまいりました輸入関係資金の円シフト、これがたいへんやりにくくなりましたものですから、そのときに新たに外貨預託の制度を設けました。で、それ以後五月に実は本件を強化いたしております。これは西独のマルク・フロートに伴いまして、さらに外貨ドルへのシフトが起こりそうな状況があり、さらには国内における輸出入関係の金融が不円滑になってまいりましたのを防止する趣旨でとられた措置でございまして、五月以来四カ月の期限で、五、六、七、八と毎月月末に実行いたしております。八月分につきましても、五、六、七、八、四カ月で一巡するわけでございますが、その最後の四カ月目を実施いたしたわけでございまして、従来の方針を踏襲したものでございます。したがいまして円転換規制につきましては、格別にここで外国為替銀行資金繰りに影響を及ぼすという意図を持ったものではなく、既定方針の続行ということでございますが、片方におきまして外国為替資金貸し付けの返済をかなり自由に認めたということにつきましては、これは従来はドルシフトをおそれましてたいへんきびしく規制しておりました。で、五月以来徐々にゆるめてまいったわけでございますが、八月の十九日に対外債務残高の増をストップいたしましたので、したがいましてこれ以上ドルシフトが起こるおそれはないというふうに判断いたしまして、このような措置をとっても格別の支障はあるまいということでとりました措置でございます。
  98. 堀昌雄

    ○堀小委員 五月、六月、七月はこの外貨預託は毎月一体幾らやって、期日はいつやっていたのですか。
  99. 林大造

    林説明員 五月でございますが、五月に新しい措置に移りまして実施いたしましたのが五月の三十一日でございまして、そのときに二億ドルいたしました。それから六月は二十一日、七月は二十一日、八月は二十六日と、いずれも約三億ドル実行いたしております。
  100. 堀昌雄

    ○堀小委員 大蔵省は、二十七日に変動相場制移行することについては、二十六日にはあなた方は当然計画を承知しておられたと思うのですが、これは二十六日にやらなければならなかったことではないのじゃないかと私は思うのです。二十八日であっても、三十一日までならこれはよかったのじゃないか。それを先へ出して、そうして結局この分だけは、外為銀行とすればこれをもう一ぺん市場に売れるわけですからね。私は、この時期に、二十六日にやったということはどっちから見ても外為銀行に非常に大きなフェーバーを与えることであったと第一点思うのです。  第二点目に、さっき私は原参考人に伺ってみると、二十七日に外為は全部買い持ちを売って、大体ニュートラルになった、こういうふうに原参考人も言っておられる。これは日銀の問題でありますから、あらためて明日日銀に来ていただいてこの問題の詳細は伺うつもりでおりますけれども、しかし少なくともこの外貨預託三億ドルというのは、ここでやらなければならぬという必要性はなかったと私は思うのですが、二十六日にやらなければならなかった積極的な理由を伺いたいと思います。
  101. 林大造

    林説明員 二十六日に実施いたしましたのは、実はどちらかというとむしろおくれぎみであったわけでございます。従来のやり方でございますと、五月は新規のこの方式に移行いたしました関係上、三十一日に二億ドル実行いたしておりますけれども、上旬から下旬まで従来方式を実行いたしました関係上、三億数千万ドル外貨預託を実施しているわけでございます。その後大体二十日前後、六月、七月と二十一日に実施したわけでございますから、八月も普通でございますれば二十一日に実施してしかるべきだったわけでございますけれども、いかんせん十六日のニクソン・ショック以来当方の手もいろいろとふさがれておりまして、おくれて、ようやく二十六日になって実施し得る段階になったというのが実情でございます。
  102. 堀昌雄

    ○堀小委員 ちょっと私納得できないのですがね。この三億ドルは、それでは結局どうなりましたか。外銀に二十六日に預託をした三億ドルは、二十七日にこれを平衡買いで日銀が結局買い取ったということではないのですか、どうですか、そこは。
  103. 林大造

    林説明員 この外貨預託されました金額は、堀先生よく御存じのとおり色がついておりません。したがいまして、これが具体的にどういうことになったかということになりますと、それは全体の姿で詰めていくよりほかしかたがないわけでございます。ただ概略的に申し上げられますことは、先ほど先生も御指摘いただきましたように、八月中に約十億九千万ドル前後外国為替銀行の短期の対外債務は増加しているわけでございますが、その大部分は八月のニクソン・ショックがありましてからの第一週、すなわち十六日から二十二日までの週にそのような債務増加が起こっておりまして、その次の第二週にはほとんど債務は増加いたしておりません。これは当然のことでございますけれども、外貨の借り入れを残高規制いたしました結果でございます。
  104. 堀昌雄

    ○堀小委員 いや、いまの後段の話は私それでいいと思うんですよ。ただ私、どうも三億ドルにちょっとこだわっているわけだ。こんな時期に預託をしなくても、二十七日をこえてから預託したって別に差しつかえなかったのじゃないか。二十七日をこえたら都合が悪いという、それじゃ何か積極的な理由がありますか。
  105. 林大造

    林説明員 当時は為替市場かなり混乱をいたしておりまして、したがいまして五月、六月、七月と実施してまいりました外貨預託を一刻も早く行なって鎮静化する必要が強かったわけでございます。で、その意味から申しますれば、二十六日でもむしろおそ過ぎたわけでございまして、したがいまして、当然二十七日以降にするというようなことは許されなかった状況だったわけでございます。
  106. 堀昌雄

    ○堀小委員 どうもちょっといまの答弁、説得力ないですね。何も私はこの時期に——なるほど五月から始めて六、七、八、これはまあ円シフトの問題に関連はしていたかもしれないけれども、ここではもうそんな問題の時期ではなかったのじゃないですかね、実際問題としては。だから、これはまあ水かけ論でありますから、いずれ、また日を改めて、大臣が帰られてから一ぺんやりたいと思いますけれども、これが非常に納得ができない点であります。  その次にもう一つ。三十一日に貿易取引の管理に関する省令を臨時特例で改めまして省令を施行しましたね。これだって私は、もしここでやるぐらいなら——十六日からスタートしたときに前受け代金がどんどん入ってきておることははっきりしておったわけであるし、輸出について一年、プラントについて三年などというものが、この前も委員会で申し上げたように、大手の企業、商社だけがそれをどんどん現地法人その他から調達をさせて処置をするときに、どうしてこれは、八月三十一日にやれるものをもっと早くやることができなかったのか。この点も、それはもちろん企業、商社にすれば為替リスクをチェンジできてよかったかもしれませんけれども、中小企業との間に著しいバランスを欠いた。特に皆さんのほうでは外銀取り入れの規制をしておるわけだから、外銀取り入れの規制は、主たる目的は、もちろんここで短資の入ってくることを防ぐ意味では有効でありましたけれども、しかし中小企業側にすれば、外銀取り入れの規制が行なわれたために実は前受け代金の処置はできなくなった。こういうような一連の経過を見るとまことに片手落ちの処置であって、八月三十一日にやれるものならもっと早くやってしかるべきではなかったのか、こう思うわけですが、この点についてはいかがでしょうか。
  107. 林大造

    林説明員 この点につきましては、二つ実は事情がございまして、一つは五月当時にも似たような状況が出たわけでございます。五月のマルクのフロートのときには、それを防止いたしますために現地貸し、現地保証、それから本社保証の規制という三つの措置をとりまして、この三つの措置をとりました関係で、輸出前受け金の流入がかなり有効に抑制できたという事情がございます。その措置はその後も継続しておりましたので、ある程度規制できるのではないかという期待感があったわけでございますが、日時を経過するに従いまして、どうもこれは十分働いていないということがわかってまいりました。そこで、当然輸出前受けの規制をできるだけ有効に行ないたいという要望は強かったわけでございます。ただいかんせん、輸出前受けそのものは認めながら、ドルを円にかえるのを制限するというのが非常にきつい制限でございまして、したがって、そこにいきますまでにはいろいろ関係方面とも折衝し、手続をとる必要があったというわけでございまして、ここにくるまでの決心、それから手続に時間がかかったということでございまして、もっと早くやっておればよかったではないかという御指摘は、それはそのとおりだと存じますけれども、事情やむを得ないものがあったということを御了承いただきたいと思います。
  108. 堀昌雄

    ○堀小委員 そこで、いまだいぶん経済界中小企業、皆さんのほうから、何とかしてくれという要請が非常に強くあるわけですね。私、さっき原さんとの間で少しお話をしましたが、政府は、いま新聞で伝えておるところによると、為銀に対し、外為会計から外貨を預託して、これをひとつ中小企業輸出手形買い取りに充てるというようなことを考えているとか、あるいはある程度の外銀借り入れの規制ワクを拡大するというようなことが実は新聞で伝えられておるわけですね。そこで、私もいまのままでは、これは内部的に、早く切り上げをしてひとつ固定平価にしてくれという力が猛烈に加わってきて——私どもは何とかしてこの問題を、やはり国益の見地からすれば、万やむを得ない場合でも小幅にとどめたい、こう考えておるけれども、内部的な圧力のために、実際にはそれがなかなかむずかしくなる情勢がいま少し芽ばえておると思うんです。私はあの日に抽象的にしか発言をしておきませんでしたが、当然こうなるだろうという予測があったので、日銀と大蔵省に対して、正常な輸出取引が行なわれる、払うに配慮をしてもらいたい、こう言ったわけですが、結論はどういうことかといえば、今日ある為替リスク輸出企業が負うのか、為銀が負うのか、日銀が負うのか、外為会計でMOFが負うか、いずれかが負わなければ、要するにだれとてもリスクを負いたくないというのはこれは当然のことであります。そうすると、そのリスクを何らかのかっこうである程度分散して負うというか、まるまる政府が負えということを私は言うつもりはありませんけれども、しかしこれに関連するところがある程度のリスクを負うということなくしては、いまの変動相場制のもとで、私は輸出を正常化することはちょっと不可能じゃないか、こういうふうな感じがしておるわけですね。ですから、あのときに日銀総裁は、輸入予約もだんだんふえるような見通しだと、こう言っておられたけれども、輸入予約はふえていますかね。私はふえていないと思うんですね。さっきから皆さん、先物取引はどうにもならぬと言っているところを見ると、輸入予約などはふえておるというようにも思われないのですが、何かやはり大蔵省としてもそういう点に対する対策を考えなければならぬところまですでにきておるのじゃないか、こう思うのですが、やる、やらないは別として、大蔵省として考えられる対策というのはどういうものがありますか。
  109. 林大造

    林説明員 ただいまたいへん貴重な御意見をいただきまして、実はおっしゃいますようなことを勘案しながら、いかにして対処すべきかというのを検討中でございます。論理的に申しますれば、今日も参考人の方々からお話がありましたような方法は、いずれも論理的には取り上げられ得る方法でございますが、それぞれにメリットもありデメリットもあり、しかしじんぜん日を過ごしておりましてもぐあいが悪いわけでございまして、目下政府部内で早急に結論を出すべくせっかく努力中であるというわけでございます。
  110. 堀昌雄

    ○堀小委員 それは努力していただくのはけっこうですけれども、私は大体こういう質問をするときは、中身はいいですけれども、大体いつごろまでには何らかの処置が打てるかという期限を聞くのが私の大体のルールなんですね。大蔵大臣は十八日に帰ってきますか。すると、少なくともこれは大臣がいないところで決裁の処理ができることではありませんから、やはり大臣が帰ればすみやかに何らかの処置をとる必要がある。大臣は十八日に帰ってきて、次はIMFに出かけるために、何日こちらにいるのですか。ちょっと答えてください。
  111. 林大造

    林説明員 現在の御予定でございますと、土曜日にお帰りになりまして、月、火、水と東京におられまして、木曜日ごろに御出発になる予定と伺っております。
  112. 堀昌雄

    ○堀小委員 できるだけ大蔵大臣が、滞日もおかしいけれども、日本にいる間にやはりある程度のめどをつけた処理をして、少なくともIMFの会議に出られるときには、日本持久戦にも耐えられるという条件をつくっておかないと、いまのような情勢で、国内にこういう意見がどんどん出ておるままで、IMF総会に大蔵大臣が出席することは適当でない、こう私は考えておるわけです。  いま私、藤井委員長にもお願いをしているわけですが、大臣がこの三日間、月、火、水と三日間おられる間に一ぺん大蔵委員会を開いていただいて、この日米経済会議及び十カ国蔵相会議の御報告をいただきたい、こう思っておるわけでありますが、そういう適切な時期に、中身は私も触れませんけれども、ひとつ大蔵省としてIMF総会出席できる基盤をすみやかにつくられるように要望いたしまして、私の質問を終わります。
  113. 藤井勝志

    藤井委員長 だいぶ時間が経過しておりますが、ちょっと一言だけ簡単に私からも関連してお願いをしておきますが、お願いをする前に私の意見も前提にお聞き取り願いたいと思いますが、ドル・ショックということをよく言われるけれども、先般も大蔵委員会でいろいろ意見が出ましたけれども、いままでいわゆる円平価堅持ということを強調して、あれは八月十七日ですか、閣議で円対策八項目が再確認されたり、そういう形でともかく固定相場制を堅持するということを言って、そういう姿勢が続いておったのが、急に百八十度転回して変動相場制に変わった、これに大きなショックを受けた。私はいわゆるドル・ショックの受け取り方としては、むしろそういう面が大きいという気がするのですよ。いまここまで来て振り返ってみれば、端的に言いまして、いささか政府当局に対して激しい言い方かもしらぬけれども、いかにも波のまにまにこの情勢でずっと引きずられてきて、最後追い詰められた、こういうことに相なっておるというふうに言われても私は弁解の余地がないんではないかというふうに思うのです。  それはそれとして、十六日欧州各国が為替市場を一斉に閉鎖したにかかわらず、日本政府が、先般も指摘したごとく、この為替管理ということを前提に二十八日まで固定相場制を堅持されてきましたね。あの十六日になぜすぐ変動相場制に切りかえなかったか、この辺がどうも合点がいかないのです。為替リスクを、一部投機筋にリスクカバーをして、むしろ投機筋をもうけさして国益に反したのではないかという国民の不信と疑惑ということに対して、政府はまじめにひとつ答えなければならない。先般の大蔵委員会においては、三十分間の時間の制約が私の場合にもあったから、答弁の時間も長いけれども、全然詰められなかったのですよ。この点、大臣も帰られますからなんですが、大臣に限らず、担当の局長で、よく、あしたも大蔵委員会があるはずですから、質問もしますから、事前にお答え願えるような準備をしておいていただきたい。  それともう一つ、いわゆる通貨調整というのは、多国間の調整ということ自体、これは私はそのとおりだと思うのですが、ただ問題は、そういうことだけで結局また無為無策に終わるということで、最後追い詰められるということになってはいけない。すなわち、ただ欧米の情勢の推移と情報集めぐらいで日を過ごして——やはり今度の国際通貨問題が起こった最大の焦点は円問題というのが私は大きなウエートを占めていると思うのですよ。そうなれば、やはり欧州各国の出方をうかがった上でこっちの出方をきめるというふうなことではいかぬので、経済戦争だからざんごうの中に閉じこもって静かに見るのだというようなことだけではいけなくて、やはり円の主体性を持ってヨーロッパ各国とも話をして、共同の立場事態を収拾するというふうな積極性と主体性があっていいではないか。それがどうもうかがわれない、私はこういう感じがするのですね。そこら辺もひとつ万遺憾なきを期してもらいたい、こう思いますので、一応最後になりまして蛇足ですけれども、お願いしておきます。  本日は、これにて散会いたします。    午後二時六分散会