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1971-07-20 第66回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年七月二十日(火曜日)     午後三時二分開議  出席委員    委員長 岡崎 英城君    理事 奥野 誠亮君 理事 鍛冶 良作君    理事 久野 忠治君 理事 吉田 重延君    理事 堀  昌雄君 理事 伏木 和雄君    理事 門司  亮君       小島 徹三君    田中伊三次君       永山 忠則君    灘尾 弘吉君       西宮  弘君    山本 幸一君       二見 伸明君    岡沢 完治君       林  百郎君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         自 治 大 臣 渡海元三郎君  委員外出席者         警察庁長官   後藤田正晴君         警察庁刑事局長 高松 敬治君         運輸大臣官房長 高林 康一君         自治省行政局選         挙部長     中村 啓一君     ————————————— 委員の異動 七月二十日  辞任         補欠選任   林  孝矩君     二見 伸明君     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  公職選挙法改正に関する件      ————◇—————
  2. 岡崎英城

    岡崎委員長 これより会議を開きます。  公職選挙法改正に関する件について調査を進めます。  この際、自治大臣より発言を求められておりますのでこれを許します。渡海自治大臣
  3. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 私は、今般の内閣改造に際し、自治大臣に就任いたしたのでありますが、選挙関係につきましては、当委員会皆さま方にかねてから格別の御高配にあずかっておりまして、この機会に厚く御礼申し上げます。  選挙は申すまでもなく、民主政治の基盤であり、民主政治を発展させ国民政治に対する信頼を高めるためには、国民意思が正しく反映されるとともに、安定した政治が行なわれるような制度を確立することはもちろん、政党の近代化国民政治意識の高揚につとめることが必要であるとかねてより考えておる次第でありまして、その責任の重大さを痛感するとともに、できるだけの努力を傾注する所存でございます。何とぞ格別の御指導と御協力を賜わりますようお願いを申し上げます。  この機会に、去る六月二十七日に行なわれました第九回参議院議員通常選挙の結果につきまして、その概要を御報告申し上げます。  まず今回の改選議員の定数は、全国区五十人、地方区七十五人の合計百二十五人であり、ほかに沖繩選出が一人あります。  選挙当日の有権者数は七千百十七万人で、国の選挙に一おいて初めて七千万人の大台に達し、前回通常選挙より五百二十九万人増加しております。  投票状況について申し上げますと、投票当日は、一部の地域が小雨であったほかは全国的にまずまずの天候でありましたにもかかわらず、その投票率は全体で五九・二形という成績でありました。  参議院議員通常選挙が今回のように四月の統一地方選挙に引き続いて六月に行なわれましたのは、十二年前の第五回目のときでありますが、その際の投票率は五八・七%で、これまでの最低となっておりましたので、政府といたしましては、選挙管理機関選挙啓発関係団体はもとより、報道機関の御協力をいただきまして、全有権者がこぞって自覚ある一票を行使されるよう呼びかけてまいったところであります。しかし、その投票率は、先ほど申し上げましたように、遺憾ながら十二年前をわずかに上回る結果にとどまったのであります。  立候補状況について申し上げますと、今回の立候補者数は、全国区では百六人でありまして、その競争率は二・一倍、前回の九十三人に比較をいたしまして十三人増加しております。地方区では沖繩を含めまして二百二人でありまして、その競争率は平均二・六倍、前回の二百十二人に比較して十人減少しております。  次に当選人状況について申し上げます。自由民主党は、全国区で二十一人、地方区で四十二人、沖繩で一人合計六十四人、日本社会党全国区で十一人、地方区二十八人合計三十九人、公明党は、全国区で八人、地方区で二人合計十人、民社党全国区で四人、地方区で二人合計六人、日本共産党は、全国区五人、地方区一人合計六人がそれぞれ当選いたしております。無所属当選人全国区で一人だけでありました。また、そのうち婦人の当選人は八人で前回の五人より三人増加いたしました。なお、去る七月八日参議院議員山本伊三郎氏の死去に伴い黒住忠行氏が繰り上げ当選になり、この結果日本社会党当選人は三十八人、自由民主党当選人は六十五人となっております。  次に党派別得票率を見ますると、全国区では、自由民主党は四四・四%、日本社会党は二一・三%、公明党は一四・一%、民社党は六・一%、日本共産党は八・一%、諸派無所属は六・〇%となっております。  これを前回比較いたしますと、自由民主党公明党民社党及び諸派無所属得票率がそれぞれわずかばかり減少いたしております。これに反しまして日本社会党及び日本共産党得票率がそれぞれ数%増加いたしております。また、地方区では、自由民主党四四・三彩、日本社会党三一・二%、公明党三・五%、民社党四・八%、日本共産党一二・一%、諸派無所属四・一考となっております。前回との比較による党派別の増減の傾向全国区の場合とほぼ同様であります。  最後選挙違反状況について申し上げますと、七月十五日現在の検挙件数は二千六百八十三件、検挙人員は四千百四十四人でありまして、前回比較しまして、ある程度減少しているとはいえ、なお違反あとをたたないことはきわめて遺憾に存じております。  以上をもちまして、今回の参議院議員通常選挙の結果の御報告といたします。
  4. 岡崎英城

    岡崎委員長 次に、先般行なわれた参議院議員通常選挙の結果の概要、並びに選挙違反取り締まり状況等について、自治省及び警察庁当局から説明を求めます。中村選挙部長
  5. 中村啓一

    中村説明員 お手元に配付申し上げております「参議院議員通常選挙結果調」によりまして、ごく簡単に、ただいま大臣から申し上げました御報告の補足を申し上げます。  二ページをお開きをいただきますと、今回の第九回参議院議員通常選挙投票率が、都道府県別掲記をされておるところでございます。今回は五九・二%、男性と女性の差がほとんどない、わずかばかり女性が上回るという結果になっております。投票率のいいところは、一番いいのは島根県でありますが、投票率は七八・一四%ということで、三年前よりはかなり低下をしておりますし、つい二カ月前にありました知事選挙が九〇%近くでありましたのと比較をいたしますと、島根県の場合におきましても、投票率は低いほうでございました。なお、七〇%台の投票率を示しましたのは島根、鳥取、福島、高知、山形といった五つの県にとどまりました。また、投票率が最も悪うございましたのは千葉県でございまして五〇・五九%、わずかに五〇%の台に乗ったという程度・であります。その他神奈川、埼玉といったところが五一%そこそこということでございます。また、愛知県も五一%ということで、大都市周辺県あるいは大都市をかかえた県が、比較投票率が悪いという形になっておるわけでございます。  それから次に一〇ページをお開きいただきますと、大臣から報告のありましたところでありますが、党派別得票数の推移があがっておるところでございまして、今回の得票党派別に見ますと、「計」の欄の「今回」という欄にございますように、自民四四・四、社会二一・三、公明一四・一、民社六・一、共産八・一というような形になっておりまして、「差引」の欄にございますように、結局共産党だけが前回よりも得票数から見ますと上回っておりまして、他の党派は、社会党は率としてはかなり上がっておりますが、得票数におきましては前回を若干下回ったというような姿になっておるわけでございます。  それから地方区につきましては、一四ページにその数値が出ておるところでございますが、傾向としてはほぼ同様でございます。  それから一七ページをお開きをいただきますと、今回の全国候補者当選点についての若干の特色が見られるわけでありますが、五十番目に当選をされましたのは立川談志さん、本名松岡克由さんでありますが、この方の得票が四十四万三千八百五十四票でありまして、三年前の五十位がたしか四十七万七千票であったのでありますから、むしろ今回は当選点が下がったわけであります。さらに、その後の繰り上げ補充ということで、四十万八千の方が当選人になるという事態が起きたところでありました。  最後に、数字説明といたしましては、三五ページに全国選挙についての無効投票状況掲記をいたしておりますので、その点だけ御説明を申し上げますと、今回の投票にあたりまして、全国選挙での有効投票の総数は三千九百九十三万票でありまして、案分の関係等でどの候補にも属さないというものが幾らかありましたほか、無効投票がここにあがっておりますように二百二十二万票ございました。これは三五ページの一番下の無効投票率という欄に出ておりますように五・二七%に当たります。前回よりも無効投票率は若干上回った形に全国区は出ております。しかし地方区につきましては、一番最後の四八ページでありますが、今回は無効投票率は四・三四%でございまして、これは前回よりも若干減っておるという姿になっております。いずれにしても、無効投票は、ほかの選挙に比べますと、参議院選挙はたいへん多いわけでございまして、その理由はと申しますか、無効投票になる原因は、約半分程度候補者でない者の氏名を書いた票がある。そのために、無効投票になったというのが約半分という形でございまして、普通の選挙無効投票は二%台ということでございます。  以上、数字説明はこの程度にさせていただきまして、今回の選挙管理をめぐりまして、特に特異でありました事件一点だけについて、簡単に御報告を申し上げます。  それは、今回の参議院全国選挙におきまして、選挙公報をめぐりまして、あるいはお耳に入ったかと思いますが、いままでになかったまことにレアケースな事案がございました。その事情をここで申し上げたいと存じます。  今回、百六人全国区に立候補されましたが、九十九番目に受け付けました候補者窪田志一という人がおりました。その人が、ここに実物を持っておるわけでありますが、この右側にございますような形の政見を持ってまいりまして、これをこのまま選挙公報に載っけてほしいということでありました。見ますと、まず見出しからいわゆる差別浮き彫りにするような表現が使われております。そこで、私どもこれを受けます際に、もとより私どもは決して候補者の方の政見内容に立ち入ろう、チェックをしようというようなことはさらさら考えないところでございますが、こういうふうな差別浮き彫りになさるような表現をお使いになりますと、非常に社会的に問題になるのではないでしょうか、したがって、この表現をおとりにならないで、あなたの政見が周知できるような御配慮がいただけないでしょうかということで、候補者に対しまして、とくとくとお話し合いをいたしました。候補者の翻意を求めまして、実は十日間ほどあとの段階では、ほとんど連日候補者のお宅にまで参上をして、夜間にかけてお話し合いをいたしたところでありました。しかし、候補者は、やはりこの表現が自分としては大事なんだという主張を変えませんでした。ところで、次第に時刻がたってまいりまして、公報全国七千百万人の有権者方々に、各世帯に配らなければいけないということになりましたので、説得につとめるかたわら、都道府県にこの右のほうの原本を送りまして、都道府県でそれぞれくじをして、選挙公報の印刷に入る段取りを進めることにいたしました。その過程でこういう差別賤称用語があるということが、やはり関係者の間にもおのずからわかることになりまして、関係者の間では、この用語というのは、関係者にとって単なる賤称というにはとどまらない。このことばだけをめぐって、関係者にとっては、死を宣告されるよりももっともっと深刻な事態が当然にあり得ることであるし、そういう受け取り方をせざるを得ないという声がだんだん強くなってまいりました。  そこで、私どもといたしましては、これに対応をして、どうしたらいいか、中央選挙管理会も異例に回数を重ねて審議、討議をいたしたところでございました。もとより一番大事なことは、選挙の際の言論は一〇〇%自由であるべきだ、いやしくも選挙管理機関が、検閲的なにおいのするようなことをやるべきではないということは、基本的なたてまえと存じてはおりました。そういう意味で、決して窪田候補に対して、職権で落とすというようなことで臨むような姿勢はとらないで、御本人の納得の得られますように相つとめた次第でありました。しかし、いずれにしても、この表現はいわゆるヒューマニティーと申しますか、ナショナルマインドから見まして、非常に不適切な用語であるということも事実であります。それのみならず、やはりこの用語が使われておることによりまして、円滑に選挙公報配布をするということはとうてい不可能であるということが、幾つもの府県から次々と中央選挙管理会に申し入れがあるという事態になりました。選挙公報は全世帯に配られて、候補者政見の周知の手段としては、現在のところやはり最も大切なものでございます。この公報が配られないということになりますと、少なくとも窪田さんを除いた百五人の候補者選挙運動、あるいはそれよりももっと早い時期からお始めになった政治活動、そういうばく大なエネルギーが、少なくとも部分的であるにしろすっ飛んで、選挙無効ということになりかねないという事態が考えられるところでありました。なお候補者だけ、関係者だけでなしに、多くの有権者が加わって六月二十七日迎えるその選挙が、みすみす選挙無効の原因をつくるということになったのでは、これは窪田さんの表現の自由を守ることももとより大事でありますけれども、しかし全体の選挙を円滑にとり行なうということをいろいろと比較検討をして思いめぐらしますと、この際やはりそういう極端な賤称用語だけは除かしていただく。この左側でございますが、極端な賎称用語だけは除かしていただくということを、中央選挙管理会責任で、そういう問題が予想され、あるいは現実化しておる府県についてはとらざるを得ないと判断をいたしたところであります。  そういう経緯をたどりまして、最終的に二十六都府県につきましては、この左にありますように、候補者が出しましたもののうち三カ所、見出しの部分、それから次の一つフレーズとそれからその次のフレーズの二字を落としまして配布することを中央選挙管理会責任で認めました。残りの二十県につきましてはこっちのほうの、候補者が前に出した内容配布をいたすことにいたしたのでございます。こういう形でございまして、私どもといたしましては、公職選挙法上は確かに明文の規定のないところでありましたが、事後の裁判救済というような手続をもってしては、とても回復することができない著しい障害がある。しかも守るべき公共の福祉ということをいろいろ比較検討してみますと、この際円滑に公報配布をし、選挙無効の原因をつくらないで、今回の参議院選挙を、とにもかくにも円滑にとり行なうということが大切なのではないだろうかと判断をいたしてとった次第なのでございます。しかしながら、もとよりこの措置につきましては、窪田候補におきましては、中央選管の措置に異議を唱えておりますので、最終的には、あるいは法廷の判断を仰がざるを得ないところかと思います。  なお、二十県につきましては原文のまま出しました。これは申し上げましたように、中央選挙管理会として検閲的にすぽっと落とすということではなしに、手順手順を重ねて候補者説得につとめましたわけであります。したがって、技術的に円滑に公報を所定の期日までに配るには、これを刷り直すとかいうのに限度がございました。そういう面もありまして二十県は従来のまま、二十六都府県は削除したものという形になったのでございますけれども、考え方の基本は、決して検閲をしたという意味合いでないことを最後に申し上げまして、今回の特異なる選挙公報事件の御報告にいたしたいと存じます。
  6. 岡崎英城

  7. 後藤田正晴

    後藤田説明員 先般行なわれました参議院議員選挙違反取り締まり状況について、概要を御報告申し上げたいと思います。  今回の選挙にあたりましても、私どもといたしましては、従来からとっておりました基本方針にのっとりまして、つまり選挙違反取り締まりというのは公正な競争を担保する、こういう観点に立って、厳正公平な取り締まりを行なう、こういう基本方針で臨んだわけでございます。したがいまして、私どもとしては、一つ買収、供応、公務員の地位利用、組織的、計画的な形式犯、その他選挙の公正を著しく害するいわば選挙妨害事案、こういった点に取り締まりの重点を置く。軽微な形式犯につきましては、選挙管理委員会等十分連絡をいたしまして、積極的に事前に注意とか警告を行なって、そうすることによって、まずとりあえず違法状態の濃厚な色合いのあるものを除去する、そうして違反続発防止に資する、こういう基本方針で臨んだわけでございます。  取り締まり状況でございますが、現在まだ捜査進行中でございますので、最終の見通し等は申し上げかねますが、十五日現在で申し上げますと、件数で二千六百八十三件、人員で四千百四十四人、大体前回参議院選挙と比べまして、人員検挙件数ともに四〇%減の状況に相なっております。  全国区と地方区に分けて簡単に概要を申し上げますと、地方区違反につきまして前回選挙と比べますと、件数で二三・一%、人員で二八・四四%の減少となっておるのに比べまして、全国区の関係違反件数で四八・二%、人員で四九・三%、相当大幅な減少を見ております。  罪種的に申し上げますと、やはり買収文書違反が大半を占めております。買収で千百十七件で、違反全体の四一・六%、千九百六十三人で四七・四%、文書違反関係が千百五十九件、違反全体の四三・二%、千六百九十六人で四一%、こういう数字になっております。  全国区について見ますと、やはり文書違反が多いようでございます。全国区の違反全体の大体五〇%強、これが文書違反買収関係が三〇%強、こういう数字になっておりますが、地方区について見ますと買収が目立っております。全体の大体七割見当、七〇%前後が地方区の場合には買収事件でございます。文書違反が大体二〇%弱、こういう数字を示しております。なお、これらの数字は中間的なものでございますので、今後まだ相当状況は変わってくるかと思います。  なお、私ども事前によく府県に通達をいたしました事前警告の問題でございますが、この点については前回比較しまして、人員で一二・五%の増となっておりますが、特に文書関係警告人員は四〇%の増加、こういうことに相なっております。  最近の選挙につきましては、世論等も相当きびしいものがございます。私どものほうで、できる限りこういった軽微なものは、事前警告でお取りやめを願う、そして公正にやっていただく、こういうことで警告いたしておりますが、その点については従来よりは非常によく候補者の方の御理解を得て、そういった警告の結果取りやめる、こういった事態が相当多くなっているわけでございます。  以上で大体今回の参議院議員選挙取り締まり状況報告を終わらせていただきます。     —————————————
  8. 岡崎英城

    岡崎委員長 以上で説明は終わりました。  質疑の申し出がありますので、これを許します。奥野誠亮君。
  9. 奥野誠亮

    奥野委員 このたびの参議院選挙にあたっては、投票率前回よりも一〇%程度下回ったと思います。国民意思を国政の上に反映させる点から考えまして、たいへん残念な結果であった、かように考えているわけでございます。十二年前にも地方選挙に引き続いて参議院選挙、その際の参議院選挙投票率も悪かったこともございまして、地方選挙に引き続いての参議院選挙であったことが、投票率を低下させた一つの大きな原因ではないかと一般にいわれているように思うのでございます。  同時にまた、せっかく地方選挙を統一して行なうのに、その時期を四月に定めている結果、予算編成にあたって骨格予算しかつくれないとか、あるいはまた議員方々審議に身が入らないとかいった事情も生まれているようでございます。ことに今日景気沈滞、それを救うために、財政金融の弾力的な運営をするんだということで、国の予算を編成したわけでございますけれども弾力的運営どころか、平常の年よりも予算上の支出もおくれているんじゃないか、景気沈滞に拍車をかけているんではないだろうか、私はこういう感じを持つのでございまして、二千六百十億円の財政投融資追加が行なわれましたが、追加以前に予算に組まれたものの支出がおくれているんじゃないか、こういう不合理な点も残念に感じている一つでございます。  そういうことを考えますと、やはり十二年先にまた同じような問題が起こるわけですから、せっかく地方選挙を統一するんだったら、その時期を六月なり七月なりにおきめになったほうがいいんじゃないだろうか、そして参議院選挙と相前後して行なうというようなことが考えられるんじゃないか、こう思うわけでございますので、私の提案もひとつ御検討いただけぬだろうか、かように考えるわけでございます。  そういう意味で、投票率の悪かった理由をどう考えておられるか、これからの改善をどうしようとしておられるのか。同時にまた、各市町村の選挙管理委員会投票率を高めますために、いろいろなくふうをこらしております。入場券くじをつけたりというようなこともあったわけでございますが、それぞれのくふう、これを尊重していただいて、あまりよけいな干渉を中央からしないくらいの姿勢が大切じゃなかろうか、こういうふうにも思っておりますので、これらについての自治大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  10. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 今回の参議院選挙投票率が低かったことは、いま奥野さんも御指摘のように、統一地方選挙と重なったことが大きな原因であった、これは私もそのように考えます。ほかにも農繁期がおくれた、そのために農繁期とかち合ったというような個別の問題はあろうと思いますが、一〇%も少なくなったその根本の大きな原因は、統一地方選挙と重なったために起きた現象であろうと思います。  自治省当局といたしましても、十二年前の投票率がいままでの参議院通常選挙最低である。したがって、こういうふうな現象もあるということで、選挙管理委員会その他選挙啓発団体等が、そのようなことのないように、全面的な活動をされたようでございますが、なお、いまのような問題を解決することができず、十二年前よりはわずかに上がりましたが、前回と比べましたら一〇%も下がったということで、今後考えなければならない大きな問題であろうと思います。  その点に関しまして、いま奥野委員から御指摘のありました、統一地方選挙と時期的にもう少し近づけることによって、投票率を上げるというふうなことを考えてはどうか、まことに傾聴に値する意見じゃないかと思います。選挙管理委員会また各党の御意見等も聞きまして、今後の改善に善処してまいりたい、かように考えております。
  11. 奥野誠亮

    奥野委員 先ほどの御報告では、選挙違反件数がかなり大幅に減ってまいったようでありますけれども、マスコミの世界では、かなりこれらの違反をきびしく批判されているようでございます。しかし私、これは参議院選挙制度にも大きな罪があるんじゃないだろうか、こう考えるわけでありまして、個人を責めるばかりでは問題は解決しないんじゃないだろうか、こんな気持ちを抱いているものでございます。  まず全国制度一つとってみましても、七千万人をこえる人たちが、百人余りの人の中から一人を選ぶわけでございまして、大部分の方々が、百人余りの中からじゃ知った者はいないという感じを持つのは、私は当然じゃないだろうかと思います。投票所へ参りますと、全国区の候補者の一覧表をきょろきょろ見回しておられる方々が非常に多いという話を聞くわけでございますけれども、この辺の事情を示しているものではなかろうか、かように考えるわけでございます。  同時にまた、選挙運動に当たる人、これはやはり全国の各地域に散在していなければ選挙には勝てないわけでございます。全国各地域に選挙運動をおやりになる方が散在しておられて、みんなが選挙法規を熟知しているかといいますと、これまた無理な注文ではなかろうか、そこからどうしても違反がつきまとってくるのじゃなかろうかという心配もいたすものでございます。  私は、全国区、地方区、どういう意味でこれができているのか、いろいろな考え方があろうかと思いますけれども、やはり参議院は批判の府として、各界の権威を全国制度を通じて参議院に送り出すのだという趣旨ではなかろうか、こう思います。そういうふうなことをあわせ考えていきますと、もうそろそろ政党に投票してもらう、したがって比例代表制を採用していく、政党が責任をもって各界の権威を選び出していくというような体制に持っていってもいいんじゃないだろうかなという感じを抱いている一人でございます。  同時に、地方区につきまして、定数是正の意見が圧倒的に多いようでございます。人口に比例して地方区候補者数をきめるのなら全国制度は要らないことになる。全国制度ほど各地方の人口に比例して候補者を送り出せる仕組みになっているものはございません。先進国、連邦国家が多いわけでございますけれども、その上院を見てまいりますと、大体各邦人口のいかんにかかわらず、同じ人数を上院に送っているわけでございます。私は、そういう性格のものじゃなかろうか、地方区は人口の大小にかかわらず同じ議員数を送るのだ、地方自治といいましょうか、連邦国家じゃございませんけれども、地方団体の長は住民が直接選んでいるわけですから、人口の大小にかかわらず、その地方の団体の代表を参議院に送っていくのだ、地方自治の代表を送っていくのだ、反面、全国区は、各界の権威なんだというような仕組みであるのが穏当じゃなかろうかと思っておるのでございます。これらについては、人それぞれによって意見が違いますので、よく御検討をいただかなければならぬ問題ではございますが、いずれにしましても、三年先にはまた参議院選挙があるわけでございますので、三年先には改革された選挙制度で臨むんだということになりますと、やはり相当早い時期に結論を出してしまいませんと、とても実施できないことになってしまうと思うのでございます。こうなってまいりますと、改革に取り組む自治大臣の決意いかんということになってくるように思うものでございますので、この点についての自治大臣のお考え方を伺っておきたいと思います。
  12. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 全国制度のあり方、いまいろいろお話がありましたが、確かに問題点はあろうと存じます。また、現在の地方区における定数配分が非常に人口とアンバランスになっておる、これは改正せなければならない問題であるということも考えるのでございます。しかし、それを改正するとなりますと、結局選挙区別の総定数をどうもっていかなければいけないか、全国区とあわせ七の考え方、あるいは選挙区別の定数の基準をどこに定めるのかという選挙制度の根本に触れてくる問題でなかろうか、かように考えます。  いまこのような根本につきまして、根本的に選挙制度のあり方について、選挙制度審議会で御審議を賜わっておるのでございますが、これとあわせまして、いま申しましたような点をどのように解決すべきか、不均衡の問題、奥野さんのような地方区の定数のきめ方に対する案も一案と思いますが、それらも選挙の根本問題とあわせて御審議願っておるという姿でございますので、できるだけ次の参議院選挙までにはそれらをあわせて御答申を賜わり、答申が出ましたなればこれを尊重して、私はぜひとも実現しますように努力をいたしたい覚悟でございます。  そのような姿でいま選挙制度審議会で御審議を賜わっておりますが、私もこの審議会における審議をできるだけ急いでやっていただくようにお願いし、ぜひとも答申を賜わり、その答申の実現を期するようなことにしたい、このような決意でおります。
  13. 奥野誠亮

    奥野委員 マスコミの世界で若干の人たちが名前をあげて毎日糾弾されている。私は非常に気の毒なような感じがしているのです。その人たちは違反と知って故意にやっているわけじゃない。制度がそういうような多くの違反をおのずから呼び起こしている。そういう面が非常に多いように思うものでございますだけに、そういうこともあわせお考えいただきまして、ぜひ三年先には改革された選挙制度で臨めるような体制をとっていただけるように、強くお願いを申し上げておきたいと思います。  その次に、選挙運動政治活動との区分の問題、これはきわめて不明確であります。不明確である結果がまたやはり選挙違反に導いている。非常に混乱めいたものが多いように思うのでございます。  たとえば、ポスター一枚証紙の張ってなかったものだということで検挙されている。そうかと思いますと、政治活動文書だということで各戸に配布されている。これは違反ですけれども、検挙されていません。それはたくさんあります。あるいはまた、ちょっと私は行き過ぎているんじゃないかと思うのは、同業の方々の寄宿舎に警察官の方が訪ねてこられて、あなたの室内にこういう人のポスターを張っていませんかということで訪ねて回っておられる。自分の部屋にだれのポスターをかけようと、そんなことは選挙違反でも何でもない。のみならず、ある組織で推薦している場合には、その組織のそれぞれに、自分たちの組織はだれを推薦しているかということを知らせても何ら違反ではないわけであります。会報に名前を掲載してそれを配ることも、会員である限りにおいては何ら違反ではないわけでございます。それにもかかわらずそういうことが行なわれているということは、やはりポスターの取り締まりに急なるのあまりではなかろうか、こんな感じも持つわけでございまして、これにしましても、出先の取締官をどう理解させ、どう指導していくかということは、いまの制度のままでは私はたいへんなことではないだろうかという感じがいたします。むしろ取り締まりに当たられる人たちに対して同情したい気持ちでございます。しかし、こういう姿で置いておきますと、選挙はこわいものだということになってしまいかねないのでございまして、これは私の一番おそれる問題でございます。そういうことからも、むしろ選挙活動期間中には政治活動をやめちゃったらいいではないかというような議論をされる方もございますけれども、いずれにしても、これらの問題もあわせまして、選挙運動というものと政治活動というものとの区分、これをもっと明確にされなければ、末端で混乱してしまうではないか。私は、現状はそういう区分を理解させるについてたいへん不備だ、こんな感じを持っているものでございます。警察当局、自治省当局、両方からお考えを聞かしていただきたいと思います。
  14. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 選挙制度そのものの中にも違反が起こりやすいような姿が……。選挙運動は本来自由濶達にやるべきものでございますが、それによって弊害があるものでございますから、一定の取り締まり法規をつくりましてこれをやっておりますので、それがまた行き過ぎますと、いま奥野さん御指摘のような自由濶達な選挙が行なわれないという弊害が伴うことは当然でございます。いま御指摘がありました、選挙運動政治活動が混同されやすいという姿は、私も同感でございまして、幸い各党の御意見も、本来選挙運動というものは一つのルールでございますので、当委員会等の皆さま方の御同意によりまして、実情に合うた濶達なる選挙ができるような制度にぜひとも改正していきたい。そのために、今回の統一地方選挙あるいは参議院制度のあり方について、反省、検討を加えていきたい。私たちも、責任者といたしまして、皆さま方の御意見を尊重して、そのような改正を加えてまいりたい、このように考えておりますので、せっかく御協力を賜わりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  15. 後藤田正晴

    後藤田説明員 私も、仰せのように、選挙というものは、国民が積極的に政治参加できる唯一の機会であるという自覚のもとに行なわれる、楽しい国民的行事であってしかるべきだと思います。暗いものであっては絶対にいけないであろう、私もその点は奥野さんと同意見でございまして、そういう意味合いから、私ども取り締まり当局の立場から申しますと、今日の選挙法の罰則その他については、選挙制度調査会等で十分ひとつ御審議をしていただきたいという希望を持っておるものでございます。  また、その次の御質問の中にありました、選挙運動政治活動の区分でございますが、これもまた、私ども取り締まり責任をになわされておるものとしては、非常にやっかいな問題でございます。今日の選挙法は、こういった、選挙運動とは何ぞや、政治活動とは何ぞや、つまり、よく問題になるのは事前運動の取り締まりの問題でございます。事前運動という、事前はよくわかっておりますけれども、その事前の運動、つまり選挙運動とは何か、この点について、必ずしも選挙法では明確に規定がございません。結局は判例に従うということになりますけれども、判例に従うということは、その事前に行政当局の公権解釈が優先をすることになるわけです。これは私は本末転倒しておる。これはやはり立法によってきちんとしていただくのが、私どもとしても非常に明確になり、また本来の仕事の進め方が当然そうあるべきである、かように考えておるものでございます。  最後の御質問の寄宿舎云々の点でございますが、これは私、実は内容を承知をいたしておりませんが、御質問のとおりであれば、そこまで一体いまの警察がやるだけの余裕があるのか、そんな手間ひまがあるくらいなら、率直に、ことばは悪いけれども、もっと気のきいたことをやったらどうだ、私はそう思います。そこで御質問の点は、私の推測でございますが、今日、家に一軒一軒たずねていって、あなたのところにこういうものがありますかとは警察官は言わないだろう。やはりそれは、頒布について何らかの事前情報が入ったに違いない。そこで、その頒布先をたずねていった、こういうことではなかろうか。これは私の推測でございますので、はっきりしたことは申し上げられませんが、一応その程度のお答えで御了承願いたいと思います。
  16. 奥野誠亮

    奥野委員 約束の時間でございますから、あとはやめます。
  17. 岡崎英城

    岡崎委員長 堀昌雄君。
  18. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと、いま奥野さんのおっしゃったことに一件だけ関連して、私、ちょっと見解の違う点がありますので申し上げておきたいと思うのです。  統一地方選挙を何かうしろへずらして、参議院選挙と一緒の時期にしたらどうかとおっしゃるのですが、選挙というものはおのおの性格の違う選挙ですから、地方選挙地方選挙としての性格がありますから、それは、ある時期にある程度一緒にやっても、これは私は差しつかえないと思いますが、国の選挙地方選挙が重なるというようなことは、それでなくても選挙管理上もたいへんな問題が起きるし、同時に選挙民の側にも著しい混乱が起こるおそれがある。一体どの選挙がどれだか−大体いまの統一地方選挙といっても、知事の選挙あり、市長の選挙あり、県会議員あり、市会議員ありと四つあるのですから。ただ、これは地方という意味では一応関連があるから、私は、選挙民はそれなりに理解して選挙ができるからいいと思うが、この上に参議院選挙がかぶるようなことになりましたら、これは国民の側に重大な混乱を招くおそれがあるので、私はこの点は実は賛成いたしかねます。  ただ問題は、それでは、地方選挙のほうがややもすれば関心が高いわけですから、順序を逆にして参議院選挙を前に持っていってやっておく、それが済んで一定期間たって地方選挙をやる、これならば、私は筋道としては立つと思うのです。どうしても地方選挙のほうが身近な選挙でありますから投票率は高い。一回やったあともう一ぺんくると、この間選挙をやったところでという気持ちがあって、参議院投票についての関心がやや薄れる可能性がある。特に参議院選挙というものの性格上からもそういうおそれがありますからね。ですから、それを配慮されるならば、私は逆にしてもらいたい。要するに参議院選挙を前に繰り上げて、そうしてうしろに統一地方選挙を適当な時期に持ってくるというのならば、投票率の問題については問題がありませんが、私は国民の立場に立って、選挙の重要性にかんがみて、奥野委員の先ほどの御提案については異議があるので、その点ちょっと申し上げておきたいと思います。  二点目、奥野委員がちょっと御指摘になった、いまの参議院選挙選挙違反制度が呼び起こしておる、こうおっしゃっておるわけですが、私はこれは重大な発言だと思うのであります。要するに、なるほど制度がややそういうことを起こしやすい要素が多少はあるかもしれませんけれども、一体国が定めた法律にそういう選挙違反を起こすような制度をもしきめておるとするならば、これは、その点においてはわれわれ立法府の重大な責任なんですね。私は、現行の参議院制度なり選挙法そのものが、選挙違反を呼び起こすようなふうにはなっていないというふうに確信を持っておるのですが、この点について自治大臣警察庁長官にお伺いしたいのです。いまの制度参議院違反を呼び起こすようになっておるか、なっておらないか、イエスかノーかだけはっきりお答えいただきたい。
  19. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 第一点の期日の問題でございますが、奥野さんの御意見も、必ずしも統一地方選挙と同時に行なうんだという御意見ではなしに、この期日のあり方等によって投票率を高めていくということも考えられるのではないかという御意見のように私は承り、十分検討に値する御意見である。堀委員のいまの御意見もごもっともな意見と考えますので、それらを十分参考意見にしてやらせていただきたいと思います。  なお、いま奥野さんの言われた、制度そのものが違反をつくるようにもなっておるんだという意味じゃなくして、いまの選挙全国区等のあり方、あるいは政治活動選挙運動とのあり方から、制度そのものが違反を起こしやすいような姿にある。違反をやるのは、無知にいたしましても、選挙法を知らないからいけないんだということはいえないのでありますから、当然そこに慎むべきものがあることは当然でございますが、仕組みの中にも、そういったあやまちを起こしやすいような姿があるんじゃないかという御意見ではないか、私は、そういうふうに聞いております。
  20. 堀昌雄

    ○堀委員 あなたはどう思うかということを言っておる。あなたは、いまの法律が、そういう違反を起こすような制度になっておると思うのか、思わないのか。
  21. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 いま言われました全国区のあり方というものが、七千万の有権者に向かって一人の方を知っていただく、末端まで目を配ることはできない。その末端の中にはいろいろ不知の点があって、自分は知らないが起こし得るという姿もあるというふうな、全国区があるとすればこれはやむを得ないのでありますけれども、また、そういう姿があるということは認めるが、しかし、私たちがつくった制度そのものが違反をつくるような制度である、こういうふうなことは考えているものではありません。
  22. 堀昌雄

    ○堀委員 よくわからぬな、いまの答弁は。では警察庁長官、ひとつ答えてください。
  23. 後藤田正晴

    後藤田説明員 たいへんむずかしい御質問でございますが、私は、奥野さんの御意見もよくわかるのです。また堀先生の御意見もよくわかるのです。それは、奥野先生のおっしゃった中に、政治活動選挙運動との区別がきわめて不明確じゃないか、したがって候補者本人としては正当な政治活動の一部であると思ってやっておったところが、これは選挙運動であった、そして事前に検挙せられた、といったようなことのないようにしたらどうだろう、こうおっしゃるのは、私は、その限りにおいては非常によくわかるのでございます。また、堀先生のおっしゃる意味も、これまたよくわかる。というのは、選挙違反というものは結局人がやるのですね。しかも選挙というものは、およそ自粛といいますか自戒といいますか、私は、慎んでやるべき本質のものだと思います。いやしくも、李下に冠を正さずといいますか、これはあぶないなと思えば、当然差し控えてやるべきものだ。そうするならば、現行法のもとにおいても、私は、違反なんというものはあり得べきものではなかろう、こう思います。そういう意味合いにおいて、私はお二人の先生方の御意見、双方ともよくわかるのでございます。
  24. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がありませんから、またの機会にいたしますが、私は、現行法を守るということが、少なくとも自治省選挙管理当局及び警察庁の使命だと思います。現行法を守るということは、これはもうすでに憲法において明らかにされておるわけですから、要するに法律を順守すべしということになっておるわけですから、そのことは、私は、いささかもあやまちがあってはならぬと思います。ただ、制度の改変については、もちろん参議院全国区の制度は、私は、いまのままでいいと言っているわけではありません。それを直すというのはまた別の問題だと思っているのです。選挙違反の問題とは別の問題ですから、その点ははっきりと、現行法がある限りこれを守って、いささかも選挙違反があればきびしく摘発をして処置をするということでなければ、私は、話の筋が通らないと思いますので、その点は十分ひとつ……。ものの次元が違う。立法府において考えるべき次元と行政府が考えるべき次元とは、おのずからこの問題については違うということをここではっきりと皆さんに確認をしていただかないと、いまのようにあいまいなことで、全国区の選挙違反をやりほうだいだというようなことになれば、これはたいへんなことですから、この点は十分ひとつ御要望申し上げます。  次に、時間がありませんからちょっと。  実は、私も第一次選挙制度審議会の委員でありましたけれども、第一次選挙制度審議会では、実は次のような答申を行なったわけであります。これは昭和三十六年十二月二十六日に、当時の選挙制度審議会会長野村秀雄さんが、当時の内閣総理大臣池田勇人殿に対して「選挙制度の改正に関する件」という答申を行ないまして、その五項に「高級公務員の立候補の制限」「国又は公社、公団若しくは公庫の法律で定める職にあった者は、離職後最初に行なわれる参議院全国選出議員選挙に立候補できないものとすること。」こういう答申が行なわれたわけであります。この答申があったにもかかわらず、自民党政府は、公務員の地位利用という法律にこれを置きかえたわけであります。  そこで、もう時間がありませんから、私がきょう警察庁長官のほうに特にお願いをしておきたいのは、最近の数次の選挙における高級公務員の地位利用のために被害を受けた公務員——被害というとおかしいのですが、実は地位を利用する立場に立たされて選挙違反を行なったわけですね。もしその高級公務員が立候補をしていなければ地位利用責任を問われることなく、そういう選挙犯罪による被害を受けなくて済んだ者が一体どのくらい——過去三回ぐらいでけっこうですが、前回は有名な小林参議院議員の専売公社におけるたいへんな職員の被害が出たわけでありますけれどもあとで私どもの西宮委員から、この問題について詳しい論議が行なわれますから、私は中身には触れませんが、今日、この高級公務員立候補制限という問題があるために、そういう系統の中における公務員が実は立場上、上からいろいろと指示されてきたものをやらないわけにはいかない、やれば選挙違反にかかるというきわめて気の毒な立場にあるということを私は皆さんに認識をしていただきたいと思うのです。まさに一将功成りて万骨枯るという状態ですから、もう一ぺん第一次選挙制度審議会の答申に立ち返って、このような公務員の悲劇は抜本的に改めなければならぬと私は思うのです。  要するに、その機構を通じてやることによって、横着な者は案外やられないで、わりにおとなしくてまじめで、上から来たからしようがない。ふだんならまじめな職員であった者がそのために職を失い、家族は路頭に迷うというような状態にさせるようなことは、かりそめにもやってはならぬと私は思うのです。それが今日ずっと続いておるわけです。小林さんの選挙、それから黒住さんの選挙というふうに次々とこの問題が続いておる現状を見て、どうしても高級公務員の立候補制限の問題は、もう一ぺんもとの次元に返って考えてもらいたい、これを私は特に要望しておきたいと思うのです。自治大臣のこれに対する御見解を承っておきます。
  25. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 いわゆる高級公務員の立候補そのものを制限するということは、第一次選挙制度審議会の答申にございましたが、その答申でも、憲法上、立法上の技術の問題もいろいろ議論されたところでございます。いろいろ議論があろうかと思いますが、しかし、高級公務員が選挙運動を地位を利用して行なうということは、これは選挙の公正を害するものでございますので、今後も厳に慎んでいただくように、私たちも一そう厳重な自戒を求めてやってまいりたい、このように考えております。ただ、いま堀さんが指摘されました、善良なる公務員がそのようなことで泣いておられるという事実は、私もよく存じておりますが、そういうことのないように、今後とも十分注意してやってまいりたい、このように考えております。
  26. 堀昌雄

    ○堀委員 憲法上の問題は、当時、憲法学者がたくさんおられる選挙制度審議会の中で、憲法上問題がないということでこれが答申になっておりますので、この点はひとつさらに検討を進めていただきたいと思うのです。また、特に必要があれば、当委員会の中に懇談会等を設けて、この問題については政府だけでなく、当委員会としても検討を進める必要のある問題ではないか、私はこういうふうに考えますので、委員長におかれても、この際、ひとつ十分善処方をお願いしたいと思うのであります。
  27. 岡崎英城

    岡崎委員長 ただいまの堀君の御意見につきましては、当委員会としても十分考慮をいたすようにいたします。
  28. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一点だけ自治大臣にお考えを伺っておきますが、実は、イギリスで選挙権の年齢が満十八歳に引き下げられ、アメリカも十八歳になりました。先進諸国、特にそういう選挙による民主主義を重要な基盤としておる英米両国が、選挙権の年齢を引き下げたという問題について、私は日本の場合もこの問題を考慮をする段階に来たのではないか、こう考えるのでありますが、自治大臣の見解を承って私の質問を終わります。
  29. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 この問題は、私も諸外国の例を見まして、大臣に就任します前から関心を持って、将来はかくあるべきがその姿でなかろうかというふうに考えておりましたが、これを実施するにつきましては、現在の選挙のあり方等につきまして、青年が政治あるいは選挙というものにどれだけの意識を持っておるかということを、国情に応じて十分調査の上、実施すべきものかどうか検討を加えてまいりたい、このように考えております。
  30. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの大臣の答弁ですと、意識があるかないかを調べてやるということですが、おそらくイギリスやアメリカは、そういうこまかい調査というのではなくて、要するに現在の全体の国民の意識、そういうものから見て、満十八歳という年齢が政治的には判断のできる年齢だ、こういうことになって行なわれておると私は思うのですね。ですから、いまおっしゃるように、いろいろ調べた結果、意識が低いからやらないんだというような話は逆であって、十八歳に引き下げることが、若い人たちの政治意識を高くすることであって、権利のない者に意識があるはずはないのですから、権利を与えることが意識を高めることになり、そのことがいまの棄権その他の問題に関しても、重要な一つの変革をもたらす方法になるのではないか、私はこう考えるのであります。これは考え方の問題でありますから、いますぐ御即答はできないかもしれませんけれども、少なくとも英米両国でやっておることが、日本ではできないという積極的な理由がない限りやるのが筋道ではないか。そのことが国民政治に対する関心を高めて、民主主義の基盤をかたくすることになるのではないかと私は感じますので、ちょっとその点は要望を申し上げておきます。
  31. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 意識ということばが少し間違っておったのではないかと思いますが、英米がやっておることを日本も、これは御指摘のとおりでございますけれども、おのおのの国情もあることでございますので、そういった意味におきまして、慎重を期してこの問題を前向きに検討をしてまいりたいという意味で述べましたので、意識ということばについての誤解がありましたらひとつ……。
  32. 岡崎英城

    岡崎委員長 西宮君。
  33. 西宮弘

    ○西宮委員 非常に限られた時間でありますので、ごく問題をしぼってお尋ねをいたしたいと思います。  ただいま堀委員から、いわゆる高級公務員の選挙違反について、従来あった大きな事件をあげてくれ、警察のほうで説明をしてくれ、こういう話がありましたが、実は私も用意をしてまいりまして、昭和二十二年四月二十五日に行なわれた第一回から第九回までのいわゆる高級公務員と称する人たちのリストをつくってきたわけであります。ですから、さっき堀委員指摘をされたような問題について、もし調査をされるのでありましたならば、私も若干やってまいりましたので、ぜひこれも参考にしていただいて、私もその結果をぜひ聞かしてもらいたいと思うので、これはよろしくお願いしたいと思います。  次に私が限られた時間でお尋ねをしたいのは、いまマスコミその他があるいは世人が非常に大きな関心を持っております黒住さんの問題であります。実は黒住さんは、今日では国会議員になられたわけでありまして、いわばわれわれの同僚の一人であります。そういう特定人を対象にいたしましてこういう議論をするということは、私も非常に心苦しく思います。しかし、いやしくも良識の府といわれる参議院において、こういうことが堂々とまかり通る、こういうことでありますると、国民は良識の府である参議院に非常な失望をする。あるいはまた同時に政治全体についての信頼感を失う、こういうことにならざるを得ないのではないかと思うわけであります。したがって、私は、そういう国民政治不信を救うためにも、ぜひこの問題は明らかにしておく必要があると思う。ですから、民間の多くの心ある人たちが要望いたしておりまするように、黒住さん自身がみずから出処進退を明らかにする、こういうことにしていただくならば、私はこんな不愉快なことを申し上げる必要はないので、ぜひそういうふうに黒住さん自身が決意をしてほしい、こういうことを私は心ひそかに念願をいたしておるわけであります。非常に強くそのことを期待をいたしておるわけであります。しかし、それが今日まだ行なわれていない時点におきまして、ではやむを得ませんので、私は二、三の点をお尋ねをしておきたいと思うのであります。  時間的に申し上げると、一番初めこの問題がマスコミで取り上げられましたのは、私の選挙区であります仙台の気象台で配布をされましたあいさつ状が問題になったわけであります。なるほど、これを見ますと、これは普通の退官あいさつとはたいへん違うわけですね。「この度退官に際し、諸先輩並びに同僚友人各位から、たってのお薦めがあり、かつ、永年の運輸行政が培った知識と経験とを生かすため政界に進出せよと強い御推挙を賜わりましたので、更に広い視野に立って国家社会に貢献いたすべく決意いたしました。  幸いこのほど自由民主党から来年の参議院議員選挙にあたり公認候補全国区)の決定を得ましたから、この上は不敏をも顧みず新たな決意をもつて皆様の御期待に添うよう努力する覚悟でございます。  つきましては、何卒倍旧の御支援と御指導とを賜わりますよう伏してお願い申し上げる次第でございます。」  これが「黒住忠行」という名前をもって本人から出されたあいさつ状であります。そうして、これを管区気象台の総務課長が、たくさんまいりましたあいさつ状を全部一々配っているわけですね。全部一々配っているということは、この総務課長自身が新聞にこのように語っております。「黒住氏が役所に小包で退任と立候補のあいさつ状を送ってきたのを、あて名によって気象台内部のひとりひとりに配った。そのために参院選の警告第一号ということで、去年八月警察から調べられた。悪質ではないというので、送検にも起訴にもならなかったが、一時は役所をやめようとさえ考えたほどだ。黒住氏が立候補さえしなければ、わたしなんかが迷惑を受けることもなかったのに、とも思った。」こういうふうにみずから語っておるわけであります。これは新聞の談話そのままであります。あるいは大阪においても同様に、文書を係員が配布をした、こういうことになっておるわけであります。なるほど、警察問題としては、あるいは悪質でないというので、特に起訴するというようなことをしなかったかもしれませんけれども、運輸行政の監督者としては、これは明らかに公務員の地位利用なのでありますから、これに対して、当時どういう措置をとられたか承りたいと思います。
  34. 高林康一

    ○高林説明員 まず運輸省からお答えいたします。  当時、そのような黒住氏のあいさつ状が仙台の気象台のほうにまいっておりましたので、係員は通常のあいさつ状と思って若干配布をしたようでございます。その事実が明らかになりましたときに、私どもといたしましては、そのような配布を停止するようにということで、気象台にその旨を通知し、注意をしたというのが当時の措置でございました。
  35. 西宮弘

    ○西宮委員 こういう問題をこまかくあれしようとは思いませんけれども、いまのお話はたいへん違うと思うのですね。これを見れば、いま私が読み上げたとおり、御本人自身が立候補のあいさつ状を送ってきたので、ということを言っておるのですから、通常の退任あいさつ状だと思った、こういう弁明はとうてい通用しませんよ。御本人はちゃんとそれを配っておるわけです。だから、これは当然運輸省として部下に対する何らかの監督の措置をとるべきだったと私は思うのです。  ではお尋ねしますが、これはちゃんと承知の上でそういう措置をしたのですか。
  36. 高林康一

    ○高林説明員 そのようなあいさつ状がまいりましたことは、私ども新聞記事その他で、あとでよく承知した次第でございます。
  37. 西宮弘

    ○西宮委員 本人は、みずから万事承知の上で立候補のあいさつ状を配ったと言っておるのですから、これは明らかに公務員の地位利用だと思う。ただ、この本人も、当時はもうこれだけで私は役人をやめようかと思ったというほど、小さい胸を非常に痛めておるわけです。私はその点は非常に同情する。さっき堀委員が言ったように、全くそういうえらい人が出たために、心ならずもそういう結果におちいる、こういうことはほんとうに気の毒だと思うのですよ。私はそういうことを思うにつけても、監督の立場にある人がそういうことを十分戒心をしてもらわなければならぬ。私は当然何らかの行政措置をとるべきであったと思うのです。その程度は問題にしませんけれども、そういうことが一切不問に付されるというところに、そもそもいろいろな問題が起こってくる理由があると思うのです。  時間がありませんから続いて申し上げますけれども、大阪におきましても、たとえば七月の一日に大阪の阪急ホテルで無線タクシー業者の大会があって、会員七百八社が集まっております。すでに退任をされた黒住さんはそこに出席をいたしまして、私としては不敏ではあるが、政治が行政に優先するという考えから、政治への道を選ぶことにした、こういうあいさつをしておるわけであります。そこに武石章という大阪陸運局の自動車部長でありますが、この人が出てたいへんに黒住さんを礼賛をしておるわけであります。新聞の見出しには「黒住路線を推進」こういう見出しで書いてありますが、要するに黒住さんがやったことがたいへんりっぱな行政だ、こういうことを礼賛をしておる。これはもちろんいまのような問題、もうすでにこういうあいさつ状が回って立候補をすることは百も承知の上なんです。そういう時点においてその大会に出て、片や黒住さんは立候補のあいさつをする、片や自動車部長は黒住さんの礼賛をする、こういうことがよろしいのかどうか。  もう一つついでに申し上げます。同じその人でありますけれども、これは九月の二十六日でありますが、大阪にリース研究会というものができて、そこに黒住さんといまの武石自動車部長が並んで出て講演をしておる。こういう講演そのものは、もちろん選挙に関連したことではないと思います。しかし時間の一時間を割り振って、黒住さんが三十五分、この自動車部長が二十五分、こういうことで講演をしておるわけであります。私はこういうことは当然に避けるべきだと思う。こういうことはやって一向に差しつかえないことなのかどうか、運輸大臣にお聞きします。
  38. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいま西宮委員からの御指摘でありますが、私その当時就任しておりませんので、這般の事情を詳しく存じてはおりません。しかしいろいろ御指摘の点もありましたが、たしか昨年の十一月の当委員会におきまして、そのことにつきましては西宮委員からるる御質問がございまして、当時の大臣の橋本運輸大臣からいろいろ御説明もし、釈明もしております。速記録にも載っておる次第でございます。ことに、いやしくも今後こういうような疑惑を持たれることのないよう、口頭あるいは文書で厳重に戒告をして、今後あやまちなきを期したいという答弁をしております。おそらく西宮さんもその点で御了承をいただいた、こういうふうに私は思っております。
  39. 西宮弘

    ○西宮委員 いまの大臣のその事実認識は全く違うので、私はきょう初めてこの問題を取り上げたわけです。黒住さんの問題についてはやりましたけれども、この問題は私は全然議論をしておらない。私は、運輸官僚がこういうことをやっておるということは何としても許せないと思うのです。  もう一つ同じような例を申し上げたいと思うのですが、これは昨年の七月二十七日に大阪のハイタクが合同いたしまして、その大会に出て、黒住さんは、やはり同じようにその問題の解決は政治にあるというようなあいさつをしておるわけであります。特にそこで問題になっておりますのは料金の値上げであります。  この協会会長である人は、業界の総力を結集して運賃値上げに突進、こういうタイトルの論文を発表いたしました。したがって、それがその大会でのテーマであるはずでありました。そこで黒住さんは、その料金の問題などを取り上げて、これは政治力に待たなければならぬ、こういうあいさつをしておるわけであります。さらにその席には大阪の陸運局長も同席をしておるわけであります。私は、こういうことはきわめて誤解を受けやすいことだし、ことに堂々と立候補を声明している時点なんですから、こういうことはやるべきではないと思う。したがって、私が大臣にお尋ねをしたのは、あの当時大臣ではなかったということではなしに、これからのそういう役人の姿勢の問題なんですから、それについて明らかにしてもらいたい。
  40. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 いまの私の答弁、ちょっとその事実を、御質問の内容を間違えておりまして恐縮でございます。  役人の姿勢の問題といたしましては、いやしくも瓜田にくつを入れずと申しますか、疑われるような行為は絶対にとってはいかぬと私は思っておる次第でございまして、実は就任以来綱紀粛正につきましては、私は強く言っておりまして、あらゆる問題につきまして疑わしき行為をしたり、あるいはいまのお話、堀委員からも先ほどお話がございましたが、先輩がせっかく来たので、その札儀のために出たのじゃないか、こういうようにも思う次第でございますが、いやしくも疑わしいところに出たりなんかしないように、厳重にこれから注意をしていくつもりであります。
  41. 西宮弘

    ○西宮委員 ぜひそれを励行してもらいたいと思います。  そういう疑惑を持たれてはいかぬというので、去年堀委員指摘をされたし、私も若干お尋ねをいたしましたが、それは、例の現職の自動車局長が九州を回ったという問題なんです。これは当時マスコミが大きく報道したわけでありますが、特にこれが問題になるのは、もう一ぺん繰り返してみると、退任をした、将来立候補する人が退任あいさつに回って、そのあと数日置いて今度は現職の自動車局長が回る。しかもその現職の自動車局長は福岡の出身であります。あるいは同時に、この福岡の陸運局に一年半ほど勤務しておりました。したがって、九州地方には非常に影響力の強い人、こういう人がたずねてくる。そして至るところで宴会をして、業者と飲み食いしているわけです。こういうことが非常な大きな疑惑を生んだわけでありまして、もし、それがどうしても現職の局長として必要だというのであれば、これは当然に全国を回るべきだ。ところが単に九州だけをやった。その影響力の最も強いところだけをやった。話が直ちに通ずるような相手のいるところだけまずやった。こういうことにそもそも問題があるし、それからこの人が現地でやっているのを見てみると、十一月には残った二県をやるのだということを言っておるけれどもあとをやっていない。おそらくこれ自身に非常にうしろめたいことがあったからだと私は思うのですけれども、これは去年やったことですから私は繰り返しません。  一つだけ指摘をしておきたいのは、この日に今度逆に役所が、陸運局が主催をして、この局長も呼び、同時に業者も招待しておるわけです。これは新三浦という料亭でありますが、役所のほうがこういうことをやっておるわけですから、私は大いに問題だと思う。おそらく現職の大臣はいまのことは御承知ないでしょうから、あとで十分お調べになっていただきたいと思います。  問題は、要するに業界と役所がこういうふうに癒着をしておるということが、いま世間から最も批判を受けている点であるわけであります。したがって、私はそういう点で少し質問を進めてまいります。  警察当局にお尋ねをいたしますが、新聞によりますと、今回八千万円をばらまいた、こういうふうにいっておるわけであります。新聞では「八千万円ばらまく」という記事でありますが、ばらまいたという言い方は必ずしも適当ではないかもしれません。いわゆる実弾で買収したのは五百万程度だということをいわれておりますから、八千万がその実弾としてばらまかれたというのは適当ではないかもしれませんが、この八千万円の金はどこから集まった金かという点について、警察のほうからお答えいただきたい。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕
  42. 高松敬治

    ○高松説明員 一部の新聞にそのような記事が出たことは私も見ましたが、その根拠と申しますか、そういう八千万ということにつきましては、私どもは全然承知いたしておりません。したがって、これがどこから出たというふうなことは、私どもにもわからないわけでございます。
  43. 西宮弘

    ○西宮委員 これは新聞ですから御承知ないと言われればそれまででありますが、これは、目下「追及中の警視庁参院選違反取締本部は、十四日までに同派が使った選挙運動費は八千万円を上回ることを突き止めた。」これは要するに貯金の通帳を発見した、そうしたところが、一億あったのが一カ月後の七月には、その中の八千万だけ減っておる、こういうことが根拠だというふうに新聞は書いております。したがって、要するに根拠は警視庁の参院選取り締まり本部だ、こういうことになっておるわけですよ。御承知ないと言われればそれまでですからやむを得ないかもしれませんが、おそらくそんなことはないと思いますね。
  44. 高松敬治

    ○高松説明員 事件の中心は警視庁で現在捜査をやっております。いろいろ調べておりますけれども、ただ、いまおっしゃったような話のそういう事実を、警視庁で把握されておるというふうなことには私どもは聞いておりません。したがって、その真偽というものについては私は存じません。新聞の記事につきまして、それが警察から出た話であるかどうか、私はその点はむしろそうではなかろうという感じを持っております。   〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕
  45. 西宮弘

    ○西宮委員 それでは、これは目下捜査中でありますから、あとで結果を聞くことにいたしましょう。ただ、私は千葉県のある業者から聞いたのでありますが、この人は百万円要求されたけれども六十万円だけでかんべんしてもらった、こういうことを言っております。したがって、一業者がこの程度に出しているとすれば、八千万ぐらいは当然オーバーしていると私は思いますね。ですからそういう常識論からいっても、これはおそらく八千万程度ではないと思うのですよ。とても八千万程度であれほどのことはできないと思う。さらにこれよりははるかに大きな金額だというふうに私どもは想像いたしております。  それから、この選挙運動の中心になっておりますのは、御承知のように峰須賀国雄という人でありますが、この人は、大阪の陸運局長の当時にタクシー汚職で検挙をされて、最後には起訴猶予になりました。しかし、運輸省としては戒告処分に付しまして、現職を取り上げて、いわゆる左遷をしたわけであります。この人を、それから一年ばかりおいて直ちに今度はいまの日本バス協会の理事長にいわゆる天下りをさせたわけであります。こういうことがそもそもこういう問題を起こす土壌になっているのではないか。この点について大臣の御感想はいかがでしょうか。
  46. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 いまの御指摘の点も、申しわけない次第でございますが、私初めて伺った次第でございまして、とかく運輸行政を行なう上におきまして、非常にいろいろむずかしい問題をかかえております。そのうちに、やはり運輸行政を担当する公吏の姿勢といたしましては、あくまでも清らかに、そうして厳正なる態度を要求されておる次第でございますので、将来はあらゆる問題におきまして、いやしくも疑いを持たれるような措置はいたさないつもりでございます。
  47. 西宮弘

    ○西宮委員 官庁と外郭団体と業者と、この三つを連ねたのがいわゆる癒着のパターンだと思うのですね。そういう官庁と業界との癒着と称される中に、少なくともいままで刑事問題で問題になり、運輸省としても行政処分をした人をいわゆる天下りとして送り込むというようなところに、私はまず第一に問題があったと思うのです。しかも、その人が今度は選挙運動の最高責任者になっている。それからその運動の会計責任者は沢辺正明という人でありますが、この人は役人ではありませんけれども、日本バス協会の専務理事であります。しかもこの人は昭和二十九年の六月二十九日には選挙違反で懲役六カ月の刑を受けているわけです。四年の執行猶予についておりますけれども……。そうして、あとでこれは国連加盟の恩赦で助かった、こういう人なんであります。ですから、いわば選挙違反を免れるためには全くのベテランですよ。こういう人が会計責任者としてこの黒住会を牛耳っているわけです。これは私は非常に危険千万だと思う。前の小林章さんのことがどの新聞かに報道されておりましたけれども、つまり小林章さんは、一期六年間つとめる間にほとんど国会議員としての活動は何もできなかった。世間の目がきびしくて何もできなかった、こういうことをいわれております。私は、黒住さんがもしいまのままで現職にとどまるとしても、おそらく結果は同じようではないかと思う。ただし黒住さんは、私は支持者の期待にこたえるんだ、こういうことを言っているわけですね。その支持者というのは、すでに御承知のようにこの自動車業の各界がその支持者になっているわけですね。バスなりトラックなりハイヤーなり、あらゆるものが、この自動車業界が全部をあげて推薦をした応援をしている。これが支持者なんですね。そういう支持者の期待にこたえるんだということでありますが、国会議員としての活動はほとんどできないでしょう。そういうことになれば、これはいやでも、支持者にこたえるためには裏で取引をしなければならない、こういうことにならざるを得ないと私は思うのですね。私はそういうことになったら、これこそまことに危険千万だと思う。これに対する大臣のお考えはどうですか。
  48. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 非常にむずかしい御質問でございまして、すでに国会議員になられている黒住さんが、国会議員活動ができるかできないか、これは御本人の御意思と御本人のいろいろの行動にまつというよりしかたがないと思います。私がとやかく推測をすることはできないので、この点の判断は御容赦願いたい、こう思う次第でございます。  ただそういったいろいろの業者の御支持を受けているから、それでそっちのほうばかりをやるかということでございますが、私ども運輸行政を担当しておる責任者といたしましては、運輸行政は、国民全般のためにこれは行なわなければならないということをかたく信じてやっております。業者も国民全般のためにある、こういう観点で私どもこれから接触をしてまいりたい、こう思っておる次第でございますので、やたらに業者の利益のために運輸行政が曲げられるとか、そういうことは絶対にしない覚悟でやってまいりたいと思いますので御了解願いたい、こう思う次第でございます。
  49. 西宮弘

    ○西宮委員 その次に指摘をしたい点は、運輸大臣がその黒住さんの立候補について、業界にある種のサゼスチョンを与えた。新聞によりますると、大臣が、黒住さんが立候補するということについて、立候補するというニュアンスを伝えた。そこで業界としては、まだ退官する以前だったけれども、推薦する態度をきめたんだ、こういうことを言っております。言っておるのは、いま逮捕されております日本バス協会の専務理事沢辺という人であります。  したがって、これは警察庁にお尋ねをしたいけれども、ただし、目下捜査中でありますからお答えはいただけないと思います。捜査中というお答えしかもらえないのではないかと思いますけれども、これは捜査の過程において当然に明らかになることであります。私は、もしそうであるとすれば、これはまことに重大な問題だと考えるわけですが、そういう点を十分徹底して捜査をしてもらって、明確な答えを聞かしてもらうということをお願いしたいと思うのですが、その点いかがですか。
  50. 高松敬治

    ○高松説明員 事件の捜査に関連して、犯罪に関連しております事項については、私どもはこれを徹底的に捜査をやってまいります。現在も捜査を実施しているわけでございます。ただその過程で、たとえばいまお尋ねのようなことを将来お答えできるかどうか、そういうことが出てくるかどうかということは、これは何とも予測がいたしかねますので、これはちょっといまそういうふうに申し上げるわけにもまいらない、かように存じます。事件につきましては、徹底的に捜査をやっておるつもりでございますし、またやってまいるつもりでございます。
  51. 西宮弘

    ○西宮委員 私はそれはおかしいと思うのですね。つまり私の質問したようなそういう点は、いわゆる刑事事件としての捜査の対象外だ、こういうお気持ちだろうと思うのだけれども、いまの答弁の意味はそういうつもりだろうと思うのだけれども、私はそれがもし事実ならば、これは公務員の地位利用に該当すると思うのですよ。つまり、大臣がそういう点でそういうサゼスチョンを与えたというようなことがあるとすれば、これはまさに公務員の地位利用だと思う。したがって、当然に警察庁として捜査すべき、捜査の範囲内の問題ですよ、だから、その点も十分明らかにしてあとで答えてもらいたいと思うのです。いいですね。
  52. 高松敬治

    ○高松説明員 犯罪になるものにつきましては、十分に捜査をいたします。
  53. 西宮弘

    ○西宮委員 それではそういうことにお願いしたいと思います。世上ややもすれば、こういうことを言ってはたいへん相すみませんけれども、一番の中心人物であります峰須賀国雄さんとは、まあこれは世間のうわさですよ。高松局長とは同期だ、あるいは黒住さんもいわゆる役人としては同期だ、あるいは同じように、陸軍と海軍の違いはあるけれども主計大尉だ、こういうことで、だいぶ縁が近いから、この事件も大体いいかげんのところで終わるのではないかというようなことを世間ではいっているわけです。私はそう思いませんけれども、そういうことをいっている人もあるので、ひとつそういうことのないように徹底的にやってもらいたいと思うのだけれども、その決意はどうですか。
  54. 高松敬治

    ○高松説明員 峰須賀という人は、私とは同期でも何でもございません。黒住氏のほうが私とは海軍の主計で同期でございます。しかし、そういうことと仕事は、これは別でございますので、その点は私どもは十分に心得て、公私の別は明らかにして仕事をやってまいるつもりでございます。
  55. 西宮弘

    ○西宮委員 わかりました。その点私自身もそう信じておりますから、ぜひそのようにがんばってもらいたいと思います。  時間がなくなりましたので、最後に一点だけお尋ねいたしますが、さっきの文書ですね。あいさつ状、これは警告で終わったのですよ。私は、これほど堂々と自由民主党から来年の参議院議員選挙に公認候補として云々と、この程度まで書いたならば、これは単に警告で終わるべき問題ではないのではないかという気がするのですがね。  ひとつ最後に警察当局のこれに対する解釈をお聞きをして、私の質問を終わりにしたいと思うのですが、私はこれは単なる警告にとどまる問題ではないのじゃないか。  実は私は仙台で、これは事件としてはまことにささやかではありますが、つまり、候補者の奥さんの友だちが集まって、候補者のだんなさんを推薦したことばなんです。「この度六月に行なわれます参議院議員選挙に、私共のお仲間であります戸枝けい子さんのご主人、戸枝義明氏が全国区から立候補を予定されております。戸枝氏は現職の牧師であると同時に生協運動の先頭にたたれ、又、北日本アカデミー話し合い活動の指導者として、幅の広い活動をなさっている方でございます。  私共は戸枝けい子さんの友人として戸枝氏のお人柄や日常活動をつぶさに存知上げております。そこで、「戸枝義明をはげます会」の婦人グループを結成して活動をすることにいたしました。討議資料を同封致しましたので、よくご検討頂きたく存じます。」ということで、こういう手紙を出したわけです。これは候補者の奥さんのお友だちが十名ばかり名前を連ねて、奥さんのお友だちに手紙を出したわけです。二百通だとか三百通だとかいわれておりますが、これがいままで大がかりな取り調べを受けているわけです。こっちは、候補者自身が、候補者たるべき人自分自身がこういうことをいっている。どっちが大事だといったら、私は黒住さんのほうがはるかに問題だと思うのですよ。そういう点についてどうなのですか。これは単なる警告で済む程度か。もしこれが警告で済むならば、運輸省の役人は約三万五千もいるわけですね、大体その半数くらいにあてて出ていると推定されます。そういう大量のものを、日本全国の運輸省所管の陸海空、気象台、海上保安庁全部に配っているわけですけれども、それに比べて、全国区の同じ候補者でわずか二百名か三百名の相手にお友だちが送ったということが問題だ。こっちの文書と、こっちの文書を比べて見ると、どこにも違いがない。むしろこちらのほうがはるかに問題だと思うのですが、その点はどうですか。
  56. 高松敬治

    ○高松説明員 最初の黒住派の文書につきましては、去年の何月でございましたか、かなり早い時期だったと思います。もう一つは未配布のものがまだかなりあった。そういう状況も勘案しまして、仙台の宮城県警本部とそれから警視庁からこれを警告して、そういうような配布はやらせないということに決しました。あとの戸枝派の問題はちょっと私記憶がないのでございますけれども、この派で問題になりましたものは、選挙告示に非常に近くなってから、いろいろな文書が出たということで、文書違反ということで事件を立てておるものは若干あると思うのです。あるいは、その  一つではなかろうかというふうに考えております。事前におきましては、つまり今回は警告が非常に多くて、先ほど長官も説明いたしましたが、文書違反だけでいいますと、この前の違反より約四〇%ばかり多く警告をやっておるということで、やってまいったわけでございます。
  57. 西宮弘

    ○西宮委員 私が指摘をしたのは、この程度の単なる警告でよろしいのかどうか、つまり、全部配っちゃって、それでその警告をもらったら、済みませんと頭を下げればそれでよろしいということなら、配ったほうが得だ、こういうことにだれでもなると思うのですよ。これだけの内容ならば単なる警告で済ませる程度ではない。しかもこれは本人が出しているのですから。私はそういうふうに思うのだけれども、もしそれでよろしいというなら、これからおそらくみんな競ってやるだろうと思うのです。やっちゃってあとからあやまればいいのですから。私はそんな筋合いのものではないと思うのですが、どうですか、もう一ぺんだけお答えいただきます。
  58. 高松敬治

    ○高松説明員 退官のあいさつの文言の中には、確かにそういうふうな記載がありまして、たいへん違法といえば違法の文書であると思います。ただ、その配布先が一般の民間の人、そういうことよりも特定の限られたところであった。しかも比較的早い時期にそれを押えることができたということで警告にいたしたわけでございます。警告で行くか検挙で行くかということになれば、これは私もその件については非常にむずかしい問題だと思いますが、ただ配られた時期、数量、配布先その他を勘案いたしまして、警告ということで、仙台と東京と両方で警告をさせたわけでございます。
  59. 西宮弘

    ○西宮委員 時間がなくなりましたので、またあとでこの問題は議論をしたいと思います。  最後に、両大臣がおられるわけでありますが、このいわゆる高級公務員の問題は、いずれも自民党の候補者なんですね。この公認をされた自民党の責任を私は問いたいのでありますが、しかし、両大臣がその責任者ではもちろんないわけでありますから、そういう意味でお答えをいただくことはもちろんできないと思います。しかし両大臣とも自民党に党籍を持ったお二人でありますので、感想だけをお聞きをしたいと思います。  私はまず第一に、自民党の中から高級公務員が立候補するということは、現在の行政そのものが一政党に片寄り過ぎているというか、一政党と密着をしている、こういう点がまず一つ問題だし、したがって、そこから高級公務員の相次いで選挙違反者が出てくる、こういうことになると、やはり公認した政党として責任を感ぜざるを得ないというのは当然だと思うのであります。ややもすると、いわゆる不潔感というような感じが今日——そう言っては失礼でありますが、自民党につきまとっている、こういうことを言われておるわけであります。そういうことになりますると、私はどうしても自民党として姿勢を正さなければならぬということは当然なことだと思うのでありますが、お二人からそれに対する感想をお聞きをいたしまして終わりにいたします。
  60. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 私も自民党員の一人でありまして、同じ自民党の同僚から選挙違反の方が出ておられるということに対しましては、党員としてはその点私自身も慎まなくちゃならないというつもりで責任を感ずるものでございますが、ただ私は、いま閣僚という立場で、特に選挙の点につきましての担当する大臣といたしまして、高級公務員が地位を利用して行なうということは、これは明らかに選挙の公正を害するものとして選挙法で禁止されておりますので、今後そのようなことが起こらないように、私も最善の努力を尽くして自覚を促してまいりたい、このように堀さんにも答えたのでございますが、重ねてお答えさせていただきます。
  61. 丹羽喬四郎

    ○丹羽国務大臣 ただいま自民党員としてどうお考えかということでございますが、いま渡海自治大臣がお答えになりましたとおりでございます。
  62. 岡崎英城

  63. 二見伸明

    二見委員 私も高級公務員の立候補制限について、自治大臣の御見解を承りたいと思います。  先ほど堀委員の質問のときに、自治大臣は、高級公務員の地位を利用することは公正を害するのできびしくしたい、こういう趣旨の御発言がございましたけれども、私は、高級公務員の選挙違反の問題は、単に地位利用をきびしく規制するだけでもってできるものだとは考えておりません。  この点、警察庁にお尋ねしますけれども、公務員の地位利用ということについて、私は二つの側面から考えられるのじゃないかと思うのです。一つは、候補者自身、本人が地位利用するという問題であります。もう一つは、本人じゃなくて、本人の部下あるいは関係者がその地位を利用するという、二つの場合があるはずです。本人がすでに在職中に地位を利用すれば、これは明らかに地位利用になりますけれども、たとえば黒住さんは六月にやめて、仙台で文書違反の問題での第百万の警告が発せられたのはたしか八月です。そういう退任して一カ月ないし二カ月のブランクがあった後においても、地位利用ということは適用できるのかどうか。
  64. 高松敬治

    ○高松説明員 たとえば本人の部下が地位を利用していろいろやった、自分の職務の影響力を使ってやったということが違反であることは明白であります。それから本人自身が在職中であれば、これは問題なしに地位利用になります。それから本人が退職しております場合には、それを地位利用というわけにはまいりませんけれども、仙台の問題は、むしろ文書違反であるかどうかというふうな問題に私は理解いたしております。
  65. 二見伸明

    二見委員 そうすると、極端なことを言えば、退任したあくる日からは地位利用にならぬわけですね。
  66. 高松敬治

    ○高松説明員 御承知のように、百三十六条の二の規定でございますが、これはやはり現職中、自分の地位を利用した者というふうに理解すべきであろうと思います。
  67. 二見伸明

    二見委員 退官した直後にやった場合には、現職中の地位利用になるわけですか。それはならぬと言うのでしょう。
  68. 高松敬治

    ○高松説明員 はい。
  69. 二見伸明

    二見委員 ただ、その部下がやった場合には、その部下が地位利用ということですね。
  70. 高松敬治

    ○高松説明員 そういうことです。
  71. 二見伸明

    二見委員 そうすると、部下にも二通りあるのです。積極的にやった場合と、いままでの上司からきたんだからやむを得ないからやる場合と、二通りあるのです。やむを得ず、たとえば仙台のように文書を配った、自分はやりたくないけれども、やむを得ない、いままでの行きがかりがあるから。そうすると、本人については地位利用にはならないけれども、やむを得ずやった部下は地位利用でやられるわけですね。そういうことですね。たとえば黒住さんの場合、新聞報道によると、腹心の部下を三人ほど大阪とかその他へ転勤さしたということが出ています。腹心の部下であるかどうか、おたくのほうでお調べいただく以外にわかりませんけれども、そういう在職中に候補者関係のある者が地方へ出ていって、あるいはその場所でもかまわないけれども、それが自分の地位を利用して選挙違反をやる。この場合にはもちろん地位利用になるけれども候補者との間に指示、要請という関係がなければ、これは本人にはかからぬわけですか。
  72. 高松敬治

    ○高松説明員 教唆その他共犯ということでなければ、本人の問題は生じないというふうに思います。
  73. 二見伸明

    二見委員 そうすると、本人が指示をした、要請をしたということは、たとえば部下なら部下が自白しても、自白しただけではいまの裁判のやり方では証拠になりませんね。指示をした、要請をしたということは、たとえば明確なる文書なり何かの証拠がなければ、これを指示されましたといっても、本人が私は指示をしていない、こう言い切ってしまう、その間に何の取り交わした文書もないということになれば、高級公務員の本人の地位利用というのは実態としては絶対に発生しませんね。
  74. 高松敬治

    ○高松説明員 主観的な意思をどのように立証するかという問題でございますが、これは必ずしもこの問題だけに限りません。たとえば選挙運動の目的というものをいかに立証するか、それが必ずしも文書その他でなくても、お互いの自供なりこれを補強し合うものによって、何らかの形でそれを立証してまいっているということで、必ずしも文書その他の明確なものがなければ立証できないということにはならないと思います。
  75. 二見伸明

    二見委員 明確な証拠、たとえば指示をした文書がなくても情勢から、ある高級公務員の候補者の在職中にそれに関係のあった者がやった、その間に指示をした、要請をしたという明確なものはなくても、そういう関係性からこれは指示があった、要請があったというふうにみなし得るわけですか。
  76. 高松敬治

    ○高松説明員 たとえば片方が指示があったということを自供する、片方は否認する場合に、どちらに信憑性があるかという問題になります。信憑性があるというふうに考えられるもの、あるいは何らかの報償、それに付随する何らかの事情というふうなものをあわせ判断してまいっているというのが現在のやり方でございます。
  77. 二見伸明

    二見委員 いままでそういうことでもって明確になった実例というのがございますか。
  78. 高松敬治

    ○高松説明員 地位利用につきまして、そういうふうな形が明確になったものは私としては記憶いたしませんけれども、立証としてはそういうふうな立証になってまいるわけです。
  79. 二見伸明

    二見委員 四十年の小林章さんのときも、あれだけ騒がれながら地位利用にはならなかったわけですね。不起訴処分になった。ということは、法律には書いてあるけれども、そういった立証というのは非常にむずかしいし、地位利用ということでもって本人にまで及ぼしたというケースは、いままでの実例から見ても非常に少ないのじゃないか、ほとんど皆無じゃないかと私は思うのです。警察庁あるいは自治省どちらでもかまいませんけれども、四十年、四十三年、四十六年の三回にわたって、高級公務員の立候者の数とそれの選挙違反の数、選挙違反の全体に占める割合、たとえばことしの場合のいわゆる高級公務員七派の選挙違反は、全体の四分の一だという報道が出ておりますが、それをいまおわかりでしたらば御報告願いたいと思います。
  80. 高松敬治

    ○高松説明員 私のほうの選挙の統計は罪種別にはとってはございますけれども候補者別の統計はとっておりません。したがいまして、いまおっしゃったような、たとえば高級公務員の選挙違反の総数は何年の選挙で幾らあったかというようなことは、ちょっとわかりかねる事情にございます。  地位利用という違反につきましては、三十七年が三百五件、三百二十名、四十年が三百十二件、二百六十一名、四十三年が二十二件、二十四名、本年は七月十五日現在で十六件、十三名という数字でございます。
  81. 二見伸明

    二見委員 こうした公務員の地位利用による選挙違反を規制するということは、三十七年の改正で確かに地位利用という一項を設けられました。三十六年十二月二十六日の選挙制度審議会の答申に基づいて、それをすりかえた形で地位利用がここに規定された。しかしそれによって規制された事実はない。たとえば小林章さんにしても、今回のいろいろな問題にしても、明らかに地位利用ではないだろうかと思われていながら、現実的には、地位利用でもって当選が無効になったとかそういうことはいままで行なわれていないわけです。だから先ほど大臣がおっしゃったように、地位利用をきびしくするという精神的なものでもって、私は公務員のこういった違反が根絶やしになるとは思わない。しかもこの高級公務員の立候補制限については、きのうきょう選挙制度審議会で論議されているばかりではなくて、私は、これは政府としての基本的な方針だろうと思う。  というのは、これは昭和四十年八月十一日の参議院の議運の会議録ですが、こうなっています。当時の官房長官橋本登美三郎氏は、「この高級公務員の立候補の制限につきましては、次期公選法の改正に際しまして、これを、ひとつ、ぜひとも実現すべく最善の努力を払って、かようなことのないように措置いたしたい、かように考えております。」こう答弁している。これは明確な答弁です。それから当時の永山自治大臣も、「高級公務員の立候補の制限につきましては、次期の公選法の改正の際には実現をすべく最善の努力をいたしたいと存じておる次第でございます。」こうあります。  その前に、選挙制度審議会で二回答申が出ております。四十年にこういう政府の明確な答弁があります。その後公選法は一回も改正されなかったのではなくて、何回か公選法は改正されておりますけれども、この趣旨はいままで公選法には盛られておりません。四十年のときも問題になったし、今回もこれだけ問題になったのですから、これは自治大臣としては、いろいろ論議もございますでしょうけれども、この点については、次期の公選法の改正というより、次の通常国会なら通常国会に、きちんとした公選法の改正案をお出しになる御決意があるかどうか、この点はいかがでしょうか。政府がこういうふうに答弁されているのです。
  82. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 いまの二見委員からの四十年に対する政府の橋本官房長官、永山自治大臣の答弁は、私、参議院における審議だった関係か、いままだそこまで事務当局から聞いておりませんので、その間の経過等もし必要でしたら、事務当局から答えさせたいと思います。  しかし、私といたしましては、高級公務員の立候補制限そのものにつきましては、これはいろいろ議論のある問題ではないかと思っております。問題があとを絶たずに、地位利用の法律だけではできないという事実は、いま二見さんが言われるように考えます。しかしながら、制限すべき問題であるかどうかということは、もっと慎重に検討すべきではないかと思います。幸い選挙制度審議会におきましても、そのものは審議になっておりませんが、参議院の根本的な改正についてもお考え願い、全国制度のあり方等もあわせて御議論があろうかと思います。それらの審議の過程等も十分しんしゃくいたしまして、今後検討してまいりたい、このように考えます。
  83. 二見伸明

    二見委員 この点は、法律学者の間でもいろいろ論議のあることは私も承知しておりますけれども、これはぜひともやっていただきたい。今回の事件に関しましても、各紙の社説でも、これは退職時から二年間ぐらい立候補させるべきではないというきびしい論調も、大臣は十分御存じだろうと思います。  憲法問題に対しては、国家公務員法百三条だと思いますけれども、お役人が天下りする場合には人事院の許可を得なければならないという規定があるわけです。それとの関連からも憲法上問題がないという強い主張があることは、大臣は十分御存じだろうと思います。憲法論議、憲法論議ということでお逃げにならないで、私は、この問題はまっこうから取り組んでいただきたいと思います。  それから参議院の定数是正の問題。奥野委員のほうからは、定数是正という問題よりも、区制のほうの問題で定数是正の問題が出ましたけれども、今回も、たとえば大阪と高知だったと思いましたけれども、五倍の差がある。参議院の定数是正の問題はこれから大きな問題になるだろうと思います。同じように、衆議院のほうも大きな問題になると思います。参議院の定数是正は、ほんとうはこの間の国会に出すはずだったのです。この経過は御存じでしょう。ところが前回の国会に出なかった。もし参議院の定数是正をお出しになるとするならば、次の通常国会に出さなければ間に合わない、その次の選挙が来ますから。これはもう選挙制度審議会の答申が出ております。ところが国調の結果、違いが出てきたので、あの選挙制度審議会の答申のとおりいかないという理由で、一応前国会では見送りになっておりますけれども、この問題はどういうふうな形で処理されるのか。もう一度選挙制度審議会におたくのほうでこの定数是正について諮問をして、その答えが出なければできないものなのか、あるいは一応の答えが出ているのだから、それをもとにして、自治省の作業でもってできるものなのか、この点はいかがでしょう。
  84. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 一応の答申をいただいておることは事実でございます。しかし答申後国勢調査がございまして、あの答申そのものが、現実的に実情に合わなくなったということもこれは事実でございます。幸い目下衆議院のほうもあわせて考えていただいております。しかしながら、同様に参議院の定数も、根本的な問題に触れる問題、たとえば総定数の問題、あるいは区制になにしましても、奥野君からも議論がございました。これは確かに一つの議論であろうと思います。その議論が唯一のものであるかどうか、ほかにも議論がありますが、これも一つの議論でしょう。そういった問題も考えまして、このアンバランスの是正という問題だけは、一つの理論のもとに私はぜひとも次の選挙には、できたものから、改正したものでやっていただくことにしたいというふうに思っております。そのために、必要とあらば、選挙制度審議会からこの分だけはぜひやれというふうなあるいは御答申になるかもわかりません。しかし、いずれにいたしましても、その点を早急に、ぜひとも次の選挙までには実現できるような時期において、御答申を願うように御努力賜わるように御審議賜わりたい、このように考え、出ました以上は、その答申を私どもは尊重いたしまして、実現に持っていきたい、このような決意を述べさせていただく次第でございます。
  85. 二見伸明

    二見委員 定数の是正についてもう一度選挙制度審議会に諮問するわけですね。
  86. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 この間もこれは選挙制度審議会で御質問が出まして、諮問はしておりませんけれども、あわせてお考え願いたいということを述べております。それを含めて御議論願いまして、それらを検討いたしまして私たちは措置いたしてまいりたい、このように考えております。
  87. 二見伸明

    二見委員 それからもう一点、これはやはり自治大臣にやっていただきたいことなんですけれども政治資金の規制です。これについては、きのうの総理大臣の答弁ですと、何か選挙制度審議会に諮問をしてあるような答弁のしかたです。あれは総理大臣の勘違いか、あるいは私の聞き間違いかどちらかだろうと思います。この答申はすでに出ておりますので、少なくともあの答申の線に沿った政治資金規正法の改正案を、自治大臣としては初仕事としてお出しになる決意があるかどうか。いままでの大臣は、慎重に検討、検討、検討でずっと通常国会を乗り切られたわけですけれども自治大臣は、今度そういう乗り切り方ではなくて、出すということで乗り切っていただきたいとわれわれ思っておるのですが、いかがでしょう。
  88. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 昨日の総理の御答弁は、ほかの部面もあわせて一緒にして答弁されたから、いまの二見さんのような聞き方もあったのではなかろうかと思います。選挙を浄化し政治に信頼を取り戻す、これはもう国民の声でございます。そのために政治資金規正法を実現したい、私もそう考えるものでございますが、私自身この委員会におりまして、いままでの経過その他もよく承知いたしておりますので、それらをあわせ、またいま政党本位の金のかからない選挙というものもあわせて慎重にここでは検討させていただきたい、そう思っております。政党がほんとうの政治活動のために金がかかるということは当然でございます。ただ、その金のかかり方をガラス張りにしたい、それがあり方でないか、こう考えております。いま選挙制度審議会でもその意味の根本策は考えていただいておりますので、それと並行いたしまして、慎重に検討してこの問題も解決さしていただきたい、このように考えております。
  89. 二見伸明

    二見委員 そうすると大臣は、政治資金規制と選挙区制とは一対のものとして国会に出したいというお考えですか。それとも、区制は区制として選挙制度審議会で審議しているけれども、まず政治資金を規制すべきだという立場で、まず政治資金規正法を最初に出そう、区制についてはいろいろ論議があるだろうからそれは差しおくとしても、まず規制のほうをまっ先にやってしまおうとお考えなのか、どちらのお考えですか。一対のものとしてお出しになるのですか。
  90. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 ただ、あの答申の際も、とりあえずこれを出すということでございましたが、その根本は金がかからない、政党本位の選挙のあり方とあわせて考えるべきであるというような意味の、あるいは間違っておったかもわかりませんけれども、それが答申の中にもあったのじゃないかと思います。これまでの国会の審議等をあわせ考えまして、答申にありましたその意義を含めて、慎重に検討さしていただきたい、こう思っておるわけでございます。
  91. 二見伸明

    二見委員 よくわからぬのですが、要するに大臣としては、規正法の改正案を先に出すということは考えないわけですか。あくまでも一対のものとして、政治資金規正法を出す場合には区制の改正案も出す、一緒でなければ出せないという基本的な考え方に立っているのか。それとも、まず政治資金の規制を先にやるべきだ、一対ですと前にあったいわゆる両輪論になるわけですよ。まず政治資金規制を先にやるのだ、これはとりあえずやるべきだという答申があるのですから、これをとりあえずやろう、こういう立場で臨んでいくのか、あくまでも一緒に出さなければならないというお立場でこの問題を処理しようと考えているのか、基本的な問題なんですけれども……。
  92. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 必ずしも両輪論ではございません。しかしながら、これまでの審議の経過からながめまして、成立するような案を出さなければならない。そのためには、本来の金がかからない政党本位の選挙というものが前提にあって、初めて政治資金の規制というものも実効をあげるような法律ができるのじゃなかろうか、こういう考えのもとに検討を加えていきたい、このように考えております。
  93. 二見伸明

    二見委員 実は大臣、そのお考えをずっと詰めていくと、一緒に出さなければならないことになるわけです。政治資金規正法だけを単独に出すわけにはいかないということになるわけです。ところが選挙制度審議会の答申はお読みになったでしょうけれども、「最近の政治資金をめぐる問題、選挙の実態等、諸般の政治情勢に鑑みるときは、これを選挙制度全般の改善が実現されるまで現状のまま放置することを許さないものがある。」あくまでも区制とは切り離して出せ、「当審議会は、当面緊急に措置することを要する事項として政治資金の規正および連座制の強化等について、その改善合理化を図る必要があるものと認める。」選挙制度全般と一緒に出すべきでない、そこまで待っていられない、政治資金規制を先にやるべきだというのが選挙制度審議会の答申の大きなねらいじゃないかと思うのですが……。
  94. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 その点は私も承知いたしております。ただ、本来はあわせて考えるべきものであるが、現状はそれを待っておってはいけないから先にやれ、こういう姿が答申でなかったかということを言ったのでございます。ただ、その後国会での審議の御過程を経まして、本来の問題も考えなければいけないのではないか、それの前提が必要ではないか、こういうふうに考えるものですから、私はあわせて検討させていただきたい、このように言ったわけであります。
  95. 二見伸明

    二見委員 以上で終わります。
  96. 岡崎英城

    岡崎委員長 門司亮君。
  97. 門司亮

    ○門司委員 私は、率直に逆に聞いておきますけれども、きょう選挙制度審議会も第二委員会をやっておるわけです。私もそこにさっきまでおったわけでありますが、ここでも金のかからない選挙、金のかからない選挙と盛んに言っているのです。そこで、ひとつこの機会に金のかからない選挙というような抽象的なことでなくて、どういうところにどういうふうに金がかかるかということを政府のほうでは研究していると思うのです、金のかからない選挙ということを言われているんだから。その辺をこの機会にひとつはっきりしておいていただきたい。金がかかるのがわからないで、ただお題目だけかからないように、かからないようにといったって始まらないので、どういうところによけいなお金がかかっているかということを政府のほうではどういうふうにお考えになっているか、これがやはり政治資金規正法の基礎になると思うのです。抽象的なものではおさまらぬと思うのです。それはどうお考えですか。これは大臣からでも事務当局からでもどっちからでもいいですから……。
  98. 中村啓一

    中村説明員 ただいま門司先生からお話のありました点は、かねて選挙制度審議会の間で非常な大きな問題点として議論をしてきておるところでございますが、結論的に、いま選挙にたいへんな金がかかっておるというのは、必ずしも選挙運動期間に候補者が展開をするに必要な経費には限らない。むしろ平常政治活動の名のもとに行なわれておるその経費、これがたいへんな多額に及んでおるというところに問題がある。しかも、その政治活動の主体が、いわゆる五大政党といわれるようなりっぱな政党が組織的におやりになっておるのならともかくとして、多くは個人後援会が主体になっておる。全国に一万七千余にのぼる政治団体があって、それが政治活動の名で、極端にいえば選挙目当ての活動をしておるというところに非常な問題があるというふうに認識をしておるようでございます。したがって、そういう意味合いで、選挙制度審議会としては、選挙のそういう体質を直さなければいけないというところに問題意識を集中いたしております。しかし最も根本的な体質改善という前に、対症療法的にも、いろいろな論点があるということでの議論もあわせて行なっておるというのが現状であるわけでございます。
  99. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、金がかかり過ぎるといったって、金を一番使い過ぎると考えられておる、また不正を行なう一つの母体のように考えられておる個人の後援会というもの、これをある程度制限すればよろしいのじゃないですか。それでなければ、いわゆる政治資金規正法の届け出によって、政治結社というような名前でたくさん出てきているものの実体が、一体どういうものかということについて規制を加えるという方法があろうかと思う。この後援会の問題については最高裁の判決があるはずであります。これは、個人の特定の学術であるとか、あるいは特定の技能を伸ばしていくとかということについての後援会は、別に禁止すべきではないというような事例が、たしか最高裁にあると思います。それが選挙のほうにも及んできていると思います。したがって、後援会というものは公認されているからよろしいのだ。だからどなたでも、どなたでもというと皆さんに悪いのでありますが、後援会趣意書を見ても、政治的のなにを伸ばしてあげるとか、なにしていくというようなお題目がちゃんと書いてある。こういう本来の姿としての後援会は、私は禁止すべきじゃないと考えている。純粋な意味での、その人の政治的のいろいろな学識というものを伸ばしていこうとするもの、これはそれだったらそれでよろしいと思う。それが乱用され、悪用されているところに問題がありはしないかというのです。そうなってまいりますと、乱用され悪用されている面の規制をするほうが、やかましい議論をしているよりも手っとり早いんじゃないか。要するに、後援会という名前でやるならば何をやろうとかまわない。お金をどこから持ってきても、本人が受け取らないで後援会のほうにお金を入れて、そこから使う分にはちっともかまわない。それが寄付とすれば、本人に寄付したつもりでいるが、それが後援会というような隠れみのでやられておる、こういうことはそちらのほうを何とか制限する方法はないのですか。こういうことを言うと同僚に私はおこられるかもしれないが、しかしいまのお話では、後援会その他がこういうことになる危険性なり、実際の問題として悪いのだというような形で寄付を規制する必要がまず最初にありはしないか。そうしてその上に立って議論をしてくれば——ただ、選挙当時における選挙費用というものについては、個人だけしか許さないというような形がこの前出たのであります。そういう形に直す必要がありはしないか、こう考えますけれども、その辺はどうなんですか。
  100. 中村啓一

    中村説明員 門司先生のお話しのように、まずさしあたって一番問題は、個人後援会の現在のあり方ではないか。そこで可能であれば、個人後援会がこれだけ選挙に大きなウエートを占めなくていいようなシステムが考えられないか。しかし、それは基本的な制度論議にもあるいは通ずることになるかもしれない。かりにそうであるとすれば、基本論までいかなくても、とにかく五大政党と個人後援会と、あるいはよくいわれるような派閥とか、何系といわれるものの政治団体の収支等が、あるいはそれの構成が全く同列になっているところに問題があるということは審議会でしばしばいわれております。したがって、いま門司先生の仰せになりましたように、よりよき選挙のあり方に一歩でも近づけるという意味で、個人後援会のあり方にメスを入れるということは、私どもいままでの審議会の論調から見て、一つの方法ではないだろうかというふうに考えておるところでございます。しかし、この問題はよく各党の先生方の御意向等も拝聴しながら進めなければいけないというふうに存じております。
  101. 門司亮

    ○門司委員 それからもう一つは、選挙というよりも、むしろ選挙を通じて政治のあり方についていろいろ派閥の問題が出てきている。派閥を解消するために小選挙区にしたほうがよろしいという議論があるわけであります。この派閥の問題についてどう考えるかということになると、その派閥にも政治資金規正法の届け出というような形で、政党の中に幾つあるか知りませんが、おのおの派閥があって、そこに資金源がある、こういうことになっておる。こういう問題はすべてを一ぺん洗い出して、そしてほんとうに政治というものがきれいになるような姿ができないものかということです。単に選挙についていろいろ議論いたしておりますけれども、実際は選挙だけでなくて、現在の政界の清掃をしなければ、選挙だけをどんなに議論をしていても政治はよくならない。派閥だって何も親分、子分、親分のところからお手当を受けた——こんなことを言うとまた皆さんにおしかりを受けるかもしれぬが、そのことのために派閥ができているということになると、そうしてそれは何々会というような形でちゃんと政治資金規正法の届け出をしておるから、そこに何億寄付しようと、そうしてそこから何億使われようと大きなお世話なんだというようなことで、結局派閥ができてくる。いまの政界における派閥というのは、ほんとうの政策論議からきた派閥ならまだしもでありますけれども、そういういろいろの選挙とその裏にある資金とのつながりによってできている派閥というものは、正しい派閥ではないわけであります。思想的に考え方が同じであるとか、あるいは学問的にいろいろな政治問題を研究していこうとかいう純粋な派閥なら、それでも派閥という名前をつければ派閥かもしれませんが、私はこれは別に問題にならないと思う。しかし現在の政界における派閥というのは、これはやはり選挙につながっているということであります。この辺をやはり選挙の面で少し考えてみたらどうかと思うのですけれども、そこまで幅を広げて選挙問題に対する論議をすることについては、いささかまたこれ本文句のあるところだと思います。思いますが、現状の派閥というものが選挙に関連がないとは絶対にいえないのであって、それがあるからこそ自民党さんの提案の中には、一人一区にしなければ派閥になる、こうおっしゃっているのです。どうもその辺に問題があろうと思う。だからその辺について、どのようにお考えになっているのか、あわせてこれも聞いておきたいと思います。
  102. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 派閥の問題を云々するわけでございません。その議論を離れ、私は、一人一区じゃないとそれが解消できぬとかいうんじゃなくして、政党本位の選挙ができることが、いま申されましたそういった問題を解決するのじゃなかろうか、政党本位の選挙ができるような仕組みに何とかくふうがないだろうか。いま申されました個人後援会の純粋のものは、これは当然よいものであろうと思いますけれども、それが選挙に乱用される、あるいは派閥が選挙のために資金集めをするような団体におちいりやすいということが起こるのじゃないか。本来派閥そのものは必ずしも絶対に悪いものであるということは考えられない。いま門司先生の言われました政策その他の面において同志相寄りまして、お互いに研さんを加えていくという面も当然認められるべきものだと思いますが、ただ、政党本位の選挙が行なわれにくい、そのために、そういった個人後援会とか派閥とかが選挙のために使われやすい、そこに弊害が起こるという姿でございまして、金がかからぬ選挙にまずする、同時に政党本位の選挙が行なわれるような仕組みを検討していただかなければならない、このように考えておるような次第でございます。
  103. 門司亮

    ○門司委員 ずっといままで言い古されたことばだけでございます。別に新しいことばでも、発想でも、構想でもございませんが、それはそれとして、時間もございませんから、もう一つ……。  ことし行なわれた選挙の中で、一つ非常に特徴的にだんだん悪くなるというものに、選挙の開票事務に対するミスが非常にふえてまいっております。そうして、そのことがある場合においてはどうも陰謀的に、何か投票されている箱について途中で入れかえたとか、いやどこへ持っていったとかいうような、選挙の事務の乱れというものがかなり目立ってまいりました。地元の恥を言うようですけれども、私のところの横浜などは選挙管理委員長が、結局、自分のせいではないんだけれども、各区の選管のミスがたくさんあったという非難を受けて、辞職をしなければならぬというようなところまで追い込まれてきた。やはりそれを指導している自治省としましても、こういう選挙管理事務のミスなんというものは教育等によって、それからその行ない方の事務の徹底によってできるわけなんですね。たとえば今度の選挙でも、どこかで投票用紙を入れかえてどうだこうだ、これが裁判ざたになってけんかしたところもありますし、それからずっと以前には、選挙の開票の立ち会いに行っている職員が、みんな消しゴムと鉛筆を持っていたという事実もございましたが、一体何をやっているのかわからぬようなことになっている。今度でも全国区と地方区と間違えて投票用紙を渡して、それを取り戻すというわけにまいりませんので、それだけはひとつ別に封印して、これはそっちへ置いておいて、そうして、間違えて投票用紙を渡した人で、まだ会場のまわりをうろうろしている人をあわててもう一ぺん呼んで投票し直したというような問題までも出てきているんですね。そういうミスがたくさんあって、ミスにミスを加えて、どうにもならないという事件が最近新聞紙上で非常に伝えられている。そうすると、これは何といっても、選挙制度の問題でなくて、選挙運営の問題でありまして、そういうことから、やはり選挙に対する不信と、よけいな争いを来たしているということ、それから、投票数が必ずしも当落に影響はないかもしれないが、しかし、あけられた数字というものが適確ではないということは言えるわけであります。何票かはうその票が入っているということが——入っているか、足らないか、どっちかであって、公正な選挙とは言いがたいということ。当落に関係がないから、別に訴訟ざたも起こりませんし、表面にあらわれてこないようでありますけれども選挙の公正というか、厳正というような面から見ればきわめて遺憾なことである。この点について何か自治省で、そういうことのないようにお考えがありますか。ただ、指導監督するとか、そういう通達を出しましたというようなお役所のありきたりのことでは、こういう問題はなかなかなくならぬと私は思う。
  104. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 いま、選挙管理執行で多々問題が生じたこと、私も痛感いたしております。これは、単に選挙管理委員会の問題でありまして、地方自治体のほうでやっていただかなくてはならない問題でございます。日ごろから、知事、市町村に対して、選挙管理委員会の機能の強化充実について、今後とも十分研究もし、推進をしていただくように平時心がけておかなければならない、このように私自身決心をいたしております。いま門司先生が言われました、単に今後注意するということではなしに、具体的なものがあるかということになりましたら、そこまでつかんではおりませんが、何か具体的に、そのようなことが、今後の選挙において行なわれないように処置せなければならないということにつきましては、痛感しておるような次第でございまして、具体的な問題等につきましては、事務当局からいまお答えさせます。
  105. 中村啓一

    中村説明員 ただいま大臣から申し上げましたように、私どもも、選挙管理の公正が疑われるというようなことになったのでは、ほんとうにゆゆしい大事だというふうに深刻に反省をいたしております。いままでは、ともすれば、やはり一人でも多く投票してもらいたい、また、一刻でも早く開票したいということにあるいは力を入れ過ぎたかと思います。そのもっと基礎に、点検体制を整えるということが大切でございます。その点につきましては、関係者と具体的に研究をいたしております。しかし、今回も問題になりましたように、横浜市なり大阪市というようなマンモス有権者をかかえておりますところでは、いろいろな面で問題が出てきております。まさに過疎、過密の問題も、また選挙の世界にあらわれておると言えると存じます。  そこで私どもは、具体的には、投開票の事務改善委員会のようなものを、関係者、特に第一線の関係者を入れてつくりまして、具体的に問題を解明をし、解決をしていきたいというふうに存じておる次第でございます。
  106. 門司亮

    ○門司委員 どうもあまりいい答弁ではないようですが、私はそういうことではないと思うのですよ。基本は、市町村の選挙管理委員会を通じて、開票事務のようないわゆる選挙事務に携わる職員がいないということです。専門職員がいないですよ。そうして、選挙の便利のことのために投票所、開票所の数はふやさなければならない、そうして、できるだけ早く何かニュースを出さなければならぬというようなことが、非常に大きな作用をしておるのじゃないか。だから私は、もう少し自治体における——小さな町村ではどうかと思いますけれども、しかし何といっても、自治体における選挙事務に対しまする一つの訓練というようなものに、政府はもう少しお金を出すべきだと思うのですよ。これはあなた、政府のお金の出し方というのはおかしいのですよ。  これは、これとは違いますけれども、たとえば今度東京都で、参議院地方区の掲示板を三十人分こしらえたでしょう。十六人しか立候補していないですよ。そうすると、千六人分の費用しか出さぬと言うのですね。自治体のほうは三十人ぐらい出るだろうというのでこしらえて看板をかけたところが、実際は十六人しか出なかった。政府のほうは、十六人しか候補者がないんだから、一人の候補者で幾らだから十六人分やるということになりまして、あとの十四人分は自治体のしょい込みですよ。こういう問題がありはしませんか。もう少し自治省選挙部のほうで、選挙の係の人は、末端の機構がそういう憂いのないように動くようにしてもらいたい。  選挙投票所に行ってみると、まず受付にいる人あるいは札を渡す人というのが、いずれもアルバイトにすぎないということだ。あるいは、それでなければ、せいぜい各局課から集めてきた日雇いの——日雇いというとおこられるかもしれませんが、その日一日限りの選挙事務に携わっている人たちであって、選挙の何なのかほとんどわからない。もう都会では、おそらく人間の顔だけを見て識別するわけにいきません。人の出入りが非常に激しいですから。そこで結局事務的になってしまう。そこで生年月日も聞かないではいはいと渡しているというようなことが多くの間違いをこしらえて、再投票の最大の原因になっている。最近、選挙の中で再投票がだんだんふえてきたけれども選挙のそういう事務のミスが多過ぎるのですよ。これでは、ほんとうに選挙の正しい数字が出ているのだかなんだかわからないですね。実際はそういうものが中に腹蔵しておっても、当落に関係がなければ五票や十票どっちにどうなろうと、別にどうだということはないのだということで大体過ごされておるんですね。たまたま最下位と次点者との間に僅差のものがあれば、これは訴訟ざたになったり、あるいは再点検を要求するというような事態に発展をいたしますけれども、それ以外のものについては、ほとんどそういう事故は起こらぬのです。私どもから考えてみると、こういう事故が頻発してくるということになると、先ほど申し上げましたように、どうもこの得票はほんとうかなという疑いが出てくる。だれかのやつに千票ぐらいよけい入ってはしないか、だれかのやつは千票ぐらい減ってはしないかということになってくると、投票した人に対してきわめて不見識な話ですね。わからぬからいいようなものだけれども、神さまが上から見ていればおかしなことになってるだろうと思うのですよ、実際は。私はそういうことを考えると、もう少し自治省は、各市町村の選管に対して手当てを十分にして、少なくとも民主主義政治の原則であり、原動力であり、基本でなければならない選挙だけは、非難を受けないようにしてもらいたいですね。どうも最近そういう傾向が非常にふえてしまって、おろそかになっているということについて、私はそういういろいろな原因があると思いますよ。だから、それの原因を押えようとすれば、もう少しお金をそういうほうに使ってもらって、そうしてそういうあやまちのないように措置するということであって、選挙にたくさんのお金がかかって、そうしていろいろ議論したりする人もありますけれども、何といっても選挙だけは——よけいなお説教をするようですけれども、公正に行なわれて、その結果は厳正でなければならないということであって、選挙が公正に行なわれないで、結果も何だかわからぬというようなことになると、これはもうどうしようもない。  これより以上私はきょうは質問をいたしませんけれども、いまのようなことはひとつ改めることに努力していただきたいということでありまして、それに御意見があるならひとつこの際承っておいてもけっこうですけれども……。
  107. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 選挙執行の予算の面等、具体的な例をおあげになりまして御指摘がございました。いろいろ示唆に富む御意見ありがとうございました。現状に対する認識、私も門司委員の言われるとおりであろうと思いますので、この点改善されるように、私たちといたしましても十分検討を加えて、いま言われましたような努力の積み重ねによりまして、選挙の管理執行が適正に行なわれるように、今後努力いたしてまいりたい、そのような決意でございます。
  108. 堀昌雄

    ○堀委員 関連。いまの件は、すでにこの前の公職選挙法委員会で私が具体的に取り上げて、秋田自治大臣は、予算の面を含めてですが、善処するという答弁をやってますから、ひとつ会議録等も十分読み返していただいて、それはもうあなたの前に約束があるのだから、ちゃんとやってもらわなければ困る。あなたはいまのは読んではいないだろうし、そのとき出席しておられないからわからないでしょうけれども自治大臣がかわったからまた別の角度でというのじゃ困るから、前の秋田さんが私に約束したことはそのようにきちんとやってもらわなければ困りますから、私もいまの門司さんと全く同意見で、前回の公選法の委員会で触れておりますから、会議録をよくお読みいただいて、善処されることを要望いたします。
  109. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 承知いたしました。
  110. 岡崎英城

    岡崎委員長 林百郎君。
  111. 林百郎

    ○林(百)委員 高級官僚の選挙違反についてはずっと問題になりまして、厳重に取り締まりをするというお話もあったわけですが、ここに一つの新聞の例をとってみますと、ある新聞の記事には、「官僚この“黒い票”集め」「買収資金も業界もち」「ハレンチ違反全国総まくり」ということで、九人の前運輸省自動車局長——これは御承知のとおりの黒住君です。元大蔵事務次官、前農林事務次官、前厚生省児童家庭局長、前農林省建設部長、前林野庁長官、前建設省技監、元建設省技監、元郵政事務次官なんというのが出ているわけですね。厳重に取り締まりをするするというお話ですが、もう少し具体的にこれは処置しませんと国民は納得しないと思うのですよ。官庁ぐるみでやっている。自分が在職中には官庁の費用で選挙運動をやる、自分がやめたときには、自分の部下に官庁の費用でやらしているという例もわれわれ知っているわけです。  具体的な処置をここで聞きたいと思いますが、先ほど同僚委員も聞いておりますけれども、公務員法の百三条にあるように、「離職後二年間は、」「離職前五年間に在職していた人事院規則で定める国の機関と密接な関係にあるものにつくことを承諾し又はついてはならない。」こういう天下り禁止規定もありますけれども、あなたは議院運営委員会委員長をやっていたからよく知っていますが、こういうように、高級官僚がやめてから、一定の期間は選挙に立候補することができないという制度はできないものでしょうか。こんな天下り人事の制限がもやんと公務員法の百三条にあるわけですから、これどうでしょうか、こういう措置をお考えになっていませんか。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕
  112. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 堀委員からも、この問題につきまして、第一次選挙制度審議会で答申があったということ等も御指摘になり、また、二見委員からも、昭和四十年において参議院委員会におきまして、そういったことを考えたいというふうな永山自治大臣の答弁もあったということもいま議論の対象になりました。私、かつて議運委員長といたしまして、天下り人事のことについてはよく承知いたしておりますが、それを直ちに立候補国民政治参加、被選挙権並びに選挙権、これは国民の権利であり、また義務でありまして、これを制限するところまでその規定そのものからすぐ持っていくかどうかということについては、種々検討をさせていただきたいと思いますが、いま堀委員二見委員あるいは西宮委員から、この問題について種々林さんと同じように制限してはどうかという御議論がございましたので、これは全国区等の問題ともあわせまして、選挙制度審議会でも根本問題の一環として当然議論も出るだろう、いまこの問題についての審議はいたしておりませんけれども、御議論が出るところであろうと思いますので、それらを慎重に検討させていただきたいというふうに答弁させていただいた次第でございます。   〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕
  113. 林百郎

    ○林(百)委員 選挙部長、何か具体的にこれを規制する方法をお考えになりませんか。ただ、厳重に取り締まる、厳重に取り締まるといって、どう取り締まるのですか。高級官僚がやめてすぐ立候補して、そして自分のつとめた官庁あるいは天下りした特殊法人、公団だとかそういうものを全部動員して選挙運動するというのをそのまま許しておくということは、これは公正な選挙を行なう上において正しくないのじゃないですか。抽象的な厳重な措置ということでなくて、何か具体的な措置を考えておりませんか。
  114. 中村啓一

    中村説明員 林先生の仰せのように、選挙に役所の影響力を持ち込む、あるいは役所ぐるみ、組織ぐるみに選挙をやるということが最もいけないことだということは、仰せのとおりでございます。  そこで、端的なやり方として、公務員であった者は一定期間立候補できないということが最も効果的ではないかという御議論もございました。何回もそういう方向で検討いたしましたけれども、結論的に、現時点までは公務員であったがゆえに悪いのではなくて、公務員であったそのことを利用し、役所なり関係団体なり関係業界が、組織的に選挙の応援をし、あるいは選挙に有効な活動をするとことが悪い、したがって、それをできないような仕組みにしようということで、現在の百三十六条の二でありますとか、二百三十九条の二でありますとか、二百五十一条の三という規定が設けられたわけでございまして、その点につきましては問題意識は十分に持ち、何とかその方向で効果的な立法をということで事務的にも研究をし、御相談してきたところでございます。そういう経緯をたどっておる問題でございまして、やはり役所ぐるみ、組織ぐるみというようなことについて、いま法制的には一応の手当てができておるはずでございますが、この上とも、具体的にさらに何とかするかという点につきまして、先ほど来いろいろお話もありますし、またかねて問題の御指摘もありますので、私どもの立場でもなお研究はさせていただきたいと思っております。
  115. 林百郎

    ○林(百)委員 その何とか立法しようとする、その何とかを聞いておるのですよ。何とかはどういうことなのか。時間もありませんので、それでは私のほうで具体的に提案していきますが、たとえば、地位利用選挙違反に対する罰則をもう少し強化するという方法はどうでしょうか。まず一つの方法ですが、こういうことは考えられませんか。それと、あなたが何とか考えておる、その何とかというのは何ですか。その何とかを言ってみてください。何とかだけでは何もわかりません。
  116. 中村啓一

    中村説明員 林先生のお話のように、これは長い間、少なくとも十年越しの論議を重ねてきておりまして、役人なりあるいは役人の関係をしておりますような団体が、その地位を利用して選挙運動をやれば、普通の違反よりは重くなっておりますし、それだけではなしに、むしろ選挙運動にまではいかないけれども、それに近いような行為もこれを処罰の対象にしようということで、法律上の構成要件をいろいろつくられておるわけでございます。何とかするということは、そういう構成要件をさらに手を入れる余地があるかどうかということになろうかと思います。私どもはあの当時、立法の経緯から見て、選挙運動にまぎらわしい行為も役所がその地位を利用してやるということになれば、選挙運動ではないけれども、処罰の対象にしようということで設けられた規定なわけでございますので、そういう構成要件をさらに精緻にする余地があるかどうかという点について、研究をさせていただきたいと思っておるところでございます。
  117. 林百郎

    ○林(百)委員 御承知のとおりに、高級官僚のうちではこういうのもあるわけです。昭和四十五年の一月から十二月までの一年間で、総理府で調べた特殊法人に天下った人事だけでも六十七人いるわけなんです。これは私のほうで表も持っております。それから民間企業へ天下ったのが百九十三人いるわけです。だから、こういう民間企業や特殊法人に天下りをして、業界と直接間接癒着して、しかも官庁総ぐるみで運動するということは、いまの罰則規定だけでは手の及ばないところで選挙運動ができるようになるんじゃないですか。こういう特殊法人に天下り人事で下ってくる、あるいは民間企業へ天下りで下ってくる、これは人事院できめるわけなんですけれども、そうしてそれと業界と癒着して、しかも官庁も、まだ新しいから癒着していく。こういうものと、普通の政治家になろうとして純粋に立候補している者との区別は、もっと明確にする必要があると思うのですが、そういう点で罰則をさらにもう少しこまかいところまで手を伸ばす必要はありませんか。
  118. 中村啓一

    中村説明員 林先生の仰せのように、選挙に役所の影響力を利用するということはほんとうに遮断しなければいけないと存じます。そういう意味で、さらにいまの法律の規制の構成要件を精緻にする、罰則の面においても手を加えるというようなことも、当面あるいは対症療法として必要かと思っております。研究をいたします。  しかし、やはり根本的には、全国区という仕組みがいろんな意味で問題を投げかけておるということは、先ほど御論議がありましたけれども否定できないと存じます。しかし、そこまでいまここで申し上げるということは、私どもの立場では行き過ぎかもしれません。さしあたっての対症療法についても、なお研究は十分させていただきたいと思っております。
  119. 林百郎

    ○林(百)委員 その次に、連座制の強化の問題ですが、官僚が全国的な組織、ブランチを持っているところの首脳者であるだけに、非常に大きな問題があると思うけれども、これは言うまでもなく、現行法では選挙運動全般を指揮した総括責任者ですね、連座制になるものは。二が選管に届け出た出納責任者、または法定選挙運動費の半分以上を支出した実質上の責任者、三は選挙区の半分以上で運動の中心になった地区責任者、四は候補者の父母、妻子など、候補者と一体となって選挙運動をした者、これは連座制になっているようですね。それで、これが禁錮以上の刑に処せられた、出納責任者が法定費用以上の運動費を支出したということで刑に処せられた者となっている。  ところが、今度の黒住君の例を見ますと、表の責任者と裏の責任者があって、実質的には裏の責任者によって違反行為が行なわれていて、連座制を免れるような巧妙な組織になっているわけですね。こういうところから見て、連座制を一そう強化して、後援団体あるいは支援団体関係者違反行為にまで広げていく、要するにこういう連座制をもう少し広げていかなければ、黒住君みたいに、裏にちゃんと実質的な選挙運動の全般的な総括者がいて、そしてやっているという場合は、これは連座制にならないんじゃないですか。みんな判決が確定すれば、連座制になってやめなければならないからおやめなさいなんて言ったって、連座制にかからないような、そういう巧妙な手段でやっておるわけなんですから、この連座制を強化するということについては考えておいでになりませんか。これは渡海さんと選挙部長と両方にお尋ねしたいと思います。  ことに、全国区で選挙区の半分以上で運動の中心になった地区責任者なんて言ったって、全国区の場合は全国の半分ですから、こんなこと有名無実になってしまうわけです。これについてはどうお考えになっておりますか。
  120. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 選挙事務長とかなんとか、私たち通常やりまして、それが総括責任者とかいわれておりますが、選挙事務長というものは法上確かに選挙法の規定するもので——何も法的なものではなかったと思います。そういう意味におきまして、いま言われました連座制にかかる規定というものについては検討すべきでないかと思いますが、御意見を承りまして、よく検討させていただきたいと考えます。
  121. 中村啓一

    中村説明員 林先生のお話しのように、役所ぐるみと申しますか、役所が組織的に外郭団体、後援団体まで利用をして選挙をやるということが最もいけないことだと存じます。したがって、そういう組織的に役所が動いて選挙違反があったという場合には、かりに当選をなさっても、その当選はすっ飛ぶという公務員の特別連座という規定もさきに設けていただきました。設けていただきましたが、この点は先ほどお話のありましたように、現行で十分かどうかという御指摘でございます。その点はなお構成要件について研究をいたしたいと思っております。
  122. 林百郎

    ○林(百)委員 その次に政治資金の問題ですが、渡海さんが七月十三日の第七次選挙制度審議会で、「政治資金規正法改正はこれまでの国会の論議も検討し、政党本位の選挙と関連しで検討したい」、こう述べておるわけなんですけれども、これはどういう意味なんですか。政治資金は政治資金、政党本位の選挙は政党本位の選挙、これは別の問題なんで、たとえば私のほうの新聞で見ますと、今度の参議院選だけで、自民党に財界から約五十億円の献金がなされておるということが入ってきておるわけなんですけれども、昭和四十六年の参議院選挙及び都知事選挙資金として、ことに公害の企業から十六億もの金が入ってきているわけなんですね。だから政党本位の政治ということと、それから政治資金ということとはこれは別の問題なんで、むしろ政治資金規正法を厳格にやることが本来の政党の正しい、たとえば政策を発表するとかあるいはビラを配るとかあるいはパンフレットを配るとか、政策本位の選挙になるので、政治資金規正法と政党をからみつけての意味だと思いますが、七月十三日の第七次選挙制度審議会でのあなたのことばというものは、これはどういう意味なんですか。
  123. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 これもいまも二見委員とこの問題についてお話ししたのでありますが、政治並びに選挙を浄化したいという国民の期待にこたえるために、政治資金の規制については、私も実現いたしたいと考えておりますが、従来これが実現しなかったという、国会の信義にもかかわることでありまして、いま政党本位の選挙制度と言われましたが、同時に金のかからない選挙のあり方というものをあわせて真剣に検討させていただきたい、こういう意味でお答えさせていただいたのであります。
  124. 林百郎

    ○林(百)委員 「政治資金規正法改正はこれまでの国会の論議も検討し、政党本位の選挙と関連して検討したい」という、政党本位の選挙と関連するというこの政党本位というのは、具体的にどういうことをお考えになっているのですか。
  125. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 これもいま二見さんの御議論の中で言いましたのですが、結局金のかからない選挙を考えるべきじゃないか、そのためには、政党本位の選挙ができるように、その金はどこにかかるんだという門司委員の質問もございましたが、結局後援会とか何かが日ごろから個人的にやっておる。それが金がかかるという根本じゃないか。だからそういうふうなものじゃなくして、金のかからない選挙というものは政党本位の選挙区で選挙制度を考えるのじゃなかろうか。私は、その点、政党本位の選挙制度というものが必ずしも小選挙区というものには限定はいたしておりませんが、政党本位で選挙ができるような制度にもっていく仕組みが何か考えられないかという意味でお答えさせていただいたわけです。
  126. 林百郎

    ○林(百)委員 政党本位の選挙が行なわれないから金がかかるということと別じゃないですか。むしろ、政党本位の選挙をやるということで金がたくさんかかっておるんで、あなたの言うのは、そうすると、政治資金規正法はお出しになることはなるんですか。それは選挙制度とからみ合わせて出すということなんですか。はっきりそこを言ってください。出すつもりなんですか。
  127. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 実現いたしたいと考えておりますが、提案する以上は、私は、成立するような姿で出させていただきたい。そのためには、いま申しましたような背景のある姿において、選挙資金の規制という問題も考えたい。この意味で慎重に検討させていただきたい、こういうように考えております。
  128. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、選挙制度とからみ合わせて政治資金規正法を出したいというのがあなたのほんとうの腹なんですか。要するに、金のかからない選挙という名のもとに、選挙制度とからめて政治資金を出す。政治資金は政治資金として出す、さっき選挙制度審議会の答申も読まれましたけれども、それではなくて、選挙制度とからみ合わせて、あなたの言ういわゆる金のかからない選挙ということで、選挙制度の改正とからめて政治資金規正法を出したい、こういう諮問を選挙制度審議会になさったんですか。
  129. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 諮問はいたしておりません。
  130. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、あなたの言われたこの政治資金規正法改正は、政党本位の選挙と関連して検討したい、あなたのきょうの答弁ずっと聞いていますと、選挙制度を金がかからないような制度にして、そろいうこととあわせて政治資金規正法を考えたいということは、両方からみ合わせるということなんですか。そこをはっきり答えてください。
  131. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 そういう背景のもとに、はじめて実現できるのが政治資金の規制じゃないか、こう思いますので、そういうふうな背景とあわせて慎重に検討さしていただきたい、こういうふうに思います。
  132. 林百郎

    ○林(百)委員 背景ということはどういうことなんですか。それを立法化し、さらに政治資金規制も立法化しなきゃ、背景だけあったって、背景の具体化をしなきゃあなたの言うとおりにならないわけですよ。だから、選挙制度も背景として具体的に立法化し、それと政治資金規制をからめる、あるいは政治資金の中に選挙制度の改正も入れる、そういうことなんですか。ただ背景、背景と言ったって、背景として考えていればいいんですか。それとも、それは立法化するお考えなんですか。
  133. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 立法化するときにはじめて両方を一緒の立法でもっていくんだ、そういう考えではございません。それで背景ということばを使わしていただいたのでございますが、少なくともいままでの国会論議からながめまして、これを切り離して考えることは非常に実現が困難である。答申にもありますように……。
  134. 林百郎

    ○林(百)委員 ちょっとわからないのですが、切り離して考えるわけにはいかないといいながら、必ずしも一緒にしないということは、論理が矛盾しているじゃないですか。切り離せないということは、一緒にするということでしょう。一緒にするということは、選挙制度とからめて政治資金規正法を出すということにならなければ、切り離しては考えられないことにならないじゃないですか。それは一応別個の次元として考えますけれども政治資金規制は政治資金規制として考えます、しかし、選挙制度選挙制度として、また別個に考えますならわかるけれども、両方切り離すことができないということは、一緒にするということじゃないですか。切り離すことができないという日本語の訳は、一緒にするということじゃないですか。あなたの言うことちっとも論理が合わないですよ。
  135. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 同じ時期に立法を両方ともしなければならないという意味の合わせ方でなくして、考え方の中に両方を勘案して考えさしていただきたい、こういうふうに言っておるわけであります。
  136. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、考え方の中に両方考えれば——そうすると、その考えを具体化する場合はどうするのですか。(「やる気がないのだから、質問してもしようがないよ」と呼ぶ者あり)やる気があるのですか、ないのですか。
  137. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 必ずしも立法そのものの時日を、同じ法律の中で同時期でないとやらないという意味でなくして、その意味におきましては、必ずしもそうでないという意味を申し上げたわけです。
  138. 林百郎

    ○林(百)委員 じゃ、この問題はもう同僚のアドバイスもあるから、その次もう一つだけ聞いておきますが、参議院全国区の問題ですが、佐藤首相が六月二十九日の記者会見で全国区制を考慮するということを言っておりますし、それから田中前幹事長は、テレビ放送の政党討論会で、定数是正よりも全国区制の廃止が先決であると言っておるのですけれども、こういうことは何かいま考慮になっているのですか。あるいは選挙制度審議会の中で論議になっていますか。これは選挙部長だいぶ耳打ちをしているようですから、両方からお聞きしたいと思います。
  139. 渡海元三郎

    渡海国務大臣 いま選挙制度審議会で御諮問願っておりますものに、参議院のあるべき姿等が、ほんとうに機能を発揮できるような姿に根本的に選挙制度審議していただきたい、こういうことで御審議賜わっておりますが、その意味におきまして、全国制度のあり方というものも御議論の対象にしていただきたい、そのように申し上げておる、こう解釈いたしております。
  140. 中村啓一

    中村説明員 本日の選挙制度審議会の運営委員会におきましても、いまの全国区という仕組みは問題が多過ぎる、ぜひ今度これにメスを入れたいということを強く述べられておりまして、審議会としては全国区のあり方について、根本的な検討を始めることになると存じます。
  141. 林百郎

    ○林(百)委員 この衆参各選挙区の著しいアンバランス、定数是正、この問題を避けて、この問題と関連すると称して、次元の違った参議院全国区制の廃止というようなことを持ち出す態度はおかしいじゃないですか。全国区制の問題にメスを入れるというのは、どういう問題があってメスを入れて、何を直すのですか。
  142. 中村啓一

    中村説明員 全国区制をめぐる論議は、非常に多角的、多面的、多元的であると存じますけれども選挙制度審議会の現在の論調といたしましては、全国制度は存置しながら、いまの仕組みでは非常に矛盾と申しますか、選挙の実相というものに問題があり過ぎるということで検討したい、したがって、方向としては全国区制は存置をしながら、いまの仕組みを改善するということで検討したいということでございます。
  143. 林百郎

    ○林(百)委員 いまの部長の問題、非常に重要な問題で、参議院全国区制については重大な問題で、いろいろな問題を含んでいますが、時間がありませんのできょうはこの程度にして、次回にこの問題をさらに質問したいと思います。きょうはこれでやめます。      ————◇—————
  144. 岡崎英城

    岡崎委員長 次に、閉会中審査に関する件についておはかりいたします。  公職選挙法改正に関する件について、閉会中もなお審査を行なうため、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 岡崎英城

    岡崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会中の委員派遣に関しおはかりいたします。  ただいまの閉会中審査の申し出案件が付託になり、その審査のため現地調査の必要が生じました際には、議長に対し委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 岡崎英城

    岡崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、派遣委員の人選、派遣期間、派遣地その他所要手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 岡崎英城

    岡崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時十二分散会