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1971-03-27 第65回国会 参議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月二十七日(土曜日)    午前十時六分開会     ―――――――――――――    委員の異動  三月二十六日     辞任         補欠選任      安田 隆明君     吉武 恵市君      峯山 昭範君     鈴木 一弘君      市川 房枝君     青島 幸男君  三月二十七日     辞任         補欠選任      矢追 秀彦君     沢田  実君      須藤 五郎君     岩間 正男君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         古池 信三君     理 事                 岩動 道行君                 小林 国司君                 白井  勇君                 林田悠紀夫君                 森 八三一君                 山崎 五郎君                 竹田 四郎君                 吉田忠三郎君                 三木 忠雄君     委 員                 植木 光教君                 江藤  智君                 梶原 茂嘉君                 金丸 冨夫君                 郡  祐一君                 斎藤  昇君                 塩見 俊二君                 杉原 荒太君                 平泉  渉君                 平島 敏夫君                 二木 謙吾君                 堀本 宜実君                 三木與吉郎君                 山本 利壽君                 吉武 恵市君                 上田  哲君                 杉原 一雄君                 鈴木  強君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 松本 賢一君                 沢田  実君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 萩原幽香子君                 向井 長年君                 岩間 正男君                 青島 幸男君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  植木庚子郎君        外 務 大 臣  愛知 揆一君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  坂田 道太君        厚 生 大 臣  内田 常雄君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君        郵 政 大 臣  井出一太郎君        労 働 大 臣  野原 正勝君        建 設 大 臣  根本龍太郎君        自 治 大 臣  秋田 大助君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  佐藤 一郎君        国 務 大 臣  中曽根康弘君        国 務 大 臣  西田 信一君        国 務 大 臣  保利  茂君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        公正取引委員会        委員長      谷村  裕君        警察庁刑事局長  高松 敬治君        行政管理庁行政        管理局長     河合 三良君        行政管理庁行政        監察局長     岡内  豊君        防衛庁参事官   高瀬 忠雄君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛庁長官官房        長        宍戸 基男君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁人事教育        局長       江藤 淳雄君        防衛庁経理局長  田代 一正君        防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君        防衛施設庁総務        部調停官     銅崎 富司君        防衛施設庁施設        部長       薄田  浩君        防衛施設庁労務        部長       安斉 正邦君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     宮崎  仁君        経済企画庁総合        計画局長     矢野 智雄君        沖繩北方対策        庁長官      岡部 秀一君        沖繩北方対策        庁総務部長    岡田 純夫君        法務省入国管理        局長       吉田 健三君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省経済局長  平原  毅君        外務省条約局長  井川 克一君        外務省国際連合        局長       西堀 正弘君        大蔵大臣官房審        議官       吉田太郎一君        大蔵省主計局長  鳩山威一郎君        大蔵省関税局長  谷川 寛三君        大蔵省理財局長  相澤 英之君        大蔵省理財局次        長        小口 芳彦君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君        厚生省公衆衛生        局長       滝沢  正君        厚生省環境衛生        局公害部長    曾根田郁夫君        厚生省薬務局長  武藤琦一郎君        農林大臣官房長  太田 康二君        水産庁長官    大和田啓気君        通商産業省貿易        振興局長     後藤 正記君        通商産業省重工        業局長      赤澤 璋一君        通商産業省繊維        雑貨局長     楠岡  豪君        通商産業省鉱山        石炭局長     本田 早苗君        運輸大臣官房審        議官       見坊 力男君        運輸省海運局長  鈴木 珊吉君        運輸省船舶局長  田坂 鋭一君        運輸省港湾局長  栗栖 義明君        運輸省鉄道監督        局長       山口 真弘君        郵政省電波監理        局長       藤木  栄君        労働省労働基準        局長       岡部 實夫君        建設省道路局長  高橋国一郎君        自治省行政局選        挙部長      中村 啓一君        自治省財政局長  長野 士郎君        自治省税務局長  鎌田 要人君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和四十六年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十六年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十六年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 古池信三

    委員長(古池信三君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十六年度一般会計予算昭和四十六年度特別会計予算昭和四十六年度政府関係機関予算、  以上三案を一括議題といたします。  これより締めくくり総括質疑を行ないます。羽生三七君。
  3. 羽生三七

    羽生三七君 今国会における予算審議もいよいよ終局を迎えることになりましたが、本論に入る前に、私の所見を少し述べて総理のお考えを承りたいと思います。  きょうは承ると、総理七十歳の御誕生日のようですが、質問の中には、場合によると総理にとっては不愉快なことがあるかもしれませんが、ひとつ御了承をいただきます。  この衆参両院予算審議の過程で私は感ずることは、今国会ほど問題が次々と続出したことはあまり例がないと思います。たとえば、わが党の石橋書記長指摘した公害に関する企業事務当局との癒着問題、あるいはその後次々に起こった問題を数え上げればほとんど際限のないほどたくさん問題がございます。しかも、その多くはほとんどが失政と言われる性質のものでございます。ではこのようなことがなぜ起こるのかと考えますと、その要因は数多くあると思いますが、私は次のことを第一に痛感をいたします。  それは二十年余にわたる自民党の四分の一世紀にわたるようなこの長期政権、それとこれにかわって政権をとることのできないわれわれ野党の力のなさ、無力さ、これにあると思います。それから二十余年にわたる長期政権は、政治やあるいは行政に携わる者の心に弛緩を生みあるいは惰性を生じ、新鮮さや能動的な活力を失う結果となりました。なお、行政に携わる者の多くはすぐには政権交代がないことが予想されますので、長期政権に追随することが習性となるような抜きがたい影響を与えておるのであります。そして、このようなことが国民の間に政治に対する不信を招来するようになった大きな原因であると思います。  私は、佐藤総理閣議の席上で、あるいはその他の場所で問題の起きるつど必要な発言をしたり指示をしたりしておることを間接に聞いております。しかし、このように持続する種々の不祥事件は、そのよって来たる根源が深いと見なければならぬと思います。その根源は、やはり何といいましても長期政権惰性ということであります。私はときどき政治不信が生んだかつての五・一五事件あるいは二・二六事件等を想起することがございますが、もちろん当時と今日では時代がかわり、また、戦後の民主主義も昔日と比較にならぬほど成長をいたしております。しかし、それにもかかわらず政治家が十分戒慎しなければならないという客観的条件は存在しておると思います。このような条件下において、もちろん自分自身――私自身も含めて政治に携わる者が十分な責任を感じて自粛自戒しなければならぬことを今回ほど私は痛切に感じたことはないのであります。質問に先立ってこのような所見を開陳した次第であります。総理をはじめ政府首脳が新たな決意を持って、国民の間に根を張りつつある政治不信を一掃するために真剣に対処されることを要請しまして、本論に入る前に、総理のこの問題に関する所信を伺っておきたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 冒頭における羽生君のただいまの御意見、私も謙虚に伺ったのですが、確かに御指摘のような点があると思います。やはり長期にわたる政権、そのためにどこかゆるみがあるのじゃないかと、そういうことを考えますと、われわれは絶えず綱紀を粛正して、ほんとうに国民の信頼にこたえるその態度でなきゃならないと、かように感じております。しかしていま御指摘になりましたように、野党皆さん方も、そういう意味で時局を見ると、こういうお話でございます。私はその意味からは、今回のこの国会は対決の姿勢でなくて、対話姿勢が持ち込まれたと、かように思いまして、この対話姿勢、これは大事にすべきだと、ここらに国民の期待するものもあるのではないか、かように思いながら、一面国会の行き方はこれで正しい方向にまあ向かいつつある。同時に政局を担当する者としては、御指摘になりましたように、どうも、やすきにまたなれるというようなことがあってはならない。絶えず心を新たにして、迫ってくる難問題と取り組み、国民の期待に沿うと、この決意でなきゃならないと深く感じたような次第でございます。皆さん方の御鞭撻を心から感謝しながら、ただいまのような感じを率直に御披露いたす次第であります。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 この問題で多くの意見がありますが、多く触れません。  そこで次に、最初に内政問題からお伺いいたしたいと思いますが、まず四十六年度予算に関連して、日本経済の短期及び長期見通し、さらに六〇年代とそのパターンを変えようとしているように思われる七〇年代の日本経済の基調及びこれに関連する財政上の諸問題について質問したいと思います。なお、予算の一々の内容についての見解は留保いたします。大局的な判断を中心としての質問であることをまず御了承をいただいておきます。  質問の順序として、最初にまず当面の景気動向についてお伺いをいたしますが、さきの本委員会での同僚議員質問大蔵大臣は、曇り後晴れ、かんかん照りではないが薄日がさす程度と答えられましたが、曇り後晴れの時期、あるいは薄日がさす時期はおおよそいつごろと想定されるのか、この辺を承ります。特に昨日閣議公共事業の繰り上げ支出予算決定されましたが、これは予算編成前にこのような決定をされることはきわめて異例なことと思いますが、これらの決定も含めて、当面の景気動向、それも曇り後晴れと、かんかん照りではないが薄日がさすその時期の判断も含めてひとつお答えいただきたいと思います。
  6. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私はかんかん照りは、これは絶対に避けなければならぬと、そういうふうに思うわけであります。つまり超高度成長、これは資源、労働、そういう制約を受けまして長続きはしない、やはり安定した持続的な成長、これが大事だと、こういうふうに考えるわけであります。さらばといって、今日は非常に景気が落ち込んでおる、一〇%をかなりめり込んでおるという状態です。これは是正しなきゃならぬ、こういうふうに考え、そして金融のほうでもかなりの施策をとっておるわけです。四、五月の金融情勢はかなり引きゆるみまして、おそらくコールレート、これなんかは〇・五%ぐらいは必ず下がるだろうと、こういうふうに見通しております。しかし、金融だけではこれは十分でない。そこで財政もまたこれに順応しなければならぬと、そういうふうに考えまして、一兆五千億円増額しました予算、財投、そういうものにわたりまして繰り上げ支出をすると、そして景気浮揚体制をとると、こういうふうに考えております。  見通しといたしましては、まあそういう財政金融両方面の施策、これが効を奏しまして、逐次これから上向きに転ずると、こういうふうに見ております。時期はという話でありますが、これからだんだんつま先上がり景気は明るくなると、かように見ております。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 いや、実際は時期を私かなり重く見て聞いたのですが、それはあとから触れるとしまして、景気動向と関連をして製品在庫動きがやはり問題になると思いますが、現在の動向はどうか。在庫はまだふえると言われておりますが、現在の動向はどうですか、お伺いをいたします。
  8. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 数字だけ申し上げます。一月の指数は、前月比製品在庫が一・一%の増でございます。前年同月に対比いたしますと二六・六の増でございます。二月の暫定指数前月対比一・六の増、前年同月比二九・六の増でございます。なおしばらく在庫の増が続くかと存じますが、ただいま大蔵大臣の言われましたようなことで、ほぼ峠に近かろうと観測しております。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 その不況の中で鉄鋼、自動車、家電などのいわゆる主要産業が不振で、これらの業種が在庫圧力がきついことはこれは言うまでもないと思います。これらの動きをあわせてお聞かせいただきます。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 在庫率で申し上げます。ただいま四十六年二月の時点を一年前の四十五年二月に比較して申し上げますと、工作機械が二〇四、カラーテレビ二八〇、普通鋼鋼材一三六、軽四輪トラック二二五等々でございます。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 今度は、生産面での鉱工業生産指数はどうでありますか。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一月の生産指数前月比〇・五マイナスでございます。前年同月に対比いたしますと一〇%であります。二月の暫定指数前月比に対して〇・一の微増、ただ前年同月比にいたしますと七・五ということになっておりますので、政府見通しに対比いたしまして生産の水準がかなり低いということになります。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 これらの景気停滞動向から判断して四十五年度の政府改定経済成長率実質一〇・八%を下回るんじゃないかと、この改定見通しの一〇・八%の達成はむずかしいという意見のほうが強いようであります。改定して一三・九%としたわけですが、それをも下回るのではないかと言われておりますけれども、以上の動向から判断をしてなお下降中なのか、底が入って上昇に転じつつあるのか、その辺はどうでありますか、判断伺います。
  14. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 経済成長一〇・八でございますが、まあ私たちもいまのままでいきますとだいぶ下回るように考えております。まあ一〇%を割るかどうか、そこいらの前後のところぐらいにまではいくんじゃないかというふうに考えております。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 公共事業の繰り上げ支出はきめたようでありますが、状況によっては公定歩合の再再引き下げ、あるいは弾力条項を使うようなことも考えられるのか。そこまでいかなくとも、政府見通しどおり達成はできるのか。かりにまた、そういうことをやった場合に、過度の財政てこ入れ、これは物価にはね返ってくることは必然であるのですが、その返はどういうふうに判断をされ、またどうされようとするのかお伺いいたします。
  16. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私ども両面作戦なんです。一方においては適度の成長を維持しなければならない、しかし、他方におきましては物価の安定を期さなきゃならぬと、そういうので、きわめてデリケートな心使いをしておるわけであります。したがいまして、財政のほうでは繰り上げ支出をしますけれども金融のほうでいま公定歩合の引き下げ、そういうことをするということはまあまだ適当ではないと、かように考えております。  なお、予算に関連して弾力条項をお願いいたしておりますが、これが発動は当面必要はないと、かように考えております。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 かりにそういう政策を使うようなことがあった場合、それは四十六年度政府見通し実質一〇・一%を達成するためか、あるいは財界の一部なんかにあるように、一一、二%の要望もあるようですね。そこまで持っていくためか、つまり一〇・一%を達成するにもそれだけのいろいろなてこ入れが要るというのか、その辺の判断はどうされておりますか。
  18. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) あくまでもかんかん照りはいかぬ、一〇%を大幅に上回るというような状態はよくない、一〇%ということを目途にいたしました経済運営であります。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 そこまで目途をしたけれども達しなかった場合にはどうなるんですか。
  20. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) どうも、問題は傾向が大事だろうと思うんです。一〇%にならぬならぬという場合に、その内容がまあ将来に向かって落ち込むというような状態であると、これはさらにてこ入れを要する、そういう際にはこの弾力条項発動、また新たなる金融政策、こういうふうになろうかと思いますが、まあ一〇%を大体目途といたしまして、経済運営施策をやっていく、それが九・五%になったからそれであわてて何か施策をとるということではなくて、九・五%ということであればその内容が下向きなのか上向きなのか、そういうところをよく見きわめまして対策をとりたい、かように考えます。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 今回の景気動向と関連しましてこれをやや長期的に見る場合、新経済社会発展計画中、この五十年までを含めて民間設備投資をどのように見ておるのか、これは企画庁ですか、お伺いいたします。
  22. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 新経済社会発展計画におきましては、民間企業設備でございますが、これにつきまして五十年まで大体伸び率でいいまして二二%ぐらい、これは過去の十五年間で一七%ぐらいのものを大体一三%ぐらいのところに置いていきたい。さらに過去の六年が一五%です。そういうものから比べますと、二ポイント方低いぐらいの伸びに持ってまいる、その結果といたしまして、いわゆる国民生産の中におきますところの構成比も、従来でございますと大体四十四年度でもって二〇%ですが、これを一八ぐらいに落としていきたいと、こういうふうに考えております。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 さきにこの主要産業在庫問題等でお答えがありましたが、そういうことから四十六年の設備投資はかなり控え目になるんではないかと思うんです。したがって、四十六年度の政府企業設備見通しですね、これは対前年度比伸び率一二・六%をかなり下回るんじゃないですか。
  24. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) これは大体先般の政府見通しと、これとちょうどいいところに来つつございます。いまの御質問は四十六年ですか……。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 四十六年の見通し
  26. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 四十六年の見通しですか、四十六年の見通しですと、大体一二・六ですから、現在四十五年のところで大体一三%ちょっとぐらいまでいくんじゃないかと見ておりますから、ちょうど今日の年度間平均、上半期に四十五年非常に高うございましたから、それを平均したところ、ちょうどいいところに落ちつくんではないかと、こういうふうに考えています。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 それは四十五年度の実績見通しの場合はそうですよ。しかし、四十六年度の場合は私は違うと思います。しかし、それはまたあとにいたします。この民間設備投資動向につきまして、先ごろ三つの機関調査結果を発表いたしております。それによると、四十六年度の設備投資見通しは全産業日経調査は七・七%、それから日銀は六・五%、開銀は六・二%となっておりますが、これは政府見通しのほぼ半分ですね。これらの調査機関調査と関連して政府はどう判断されますか。それはちょっとその一%とか二%じゃない、半分ですからね。あまりにも開きが大き過ぎると思いますが、どうお考えになりますか。
  28. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) これは従来から二月の調査というのは、非常にどっちかというと低目に見られております。それからまた、見通しが、現在御存じのように、いわゆる景気の落ち込みのムードの一番激しい時期でございます。こういうときに立てられる見通しというものはとかく非常に小さくなりがちでございます。それからまた、この見通しの中には、いわゆる景気動向に非常に敏感な流通段階のもの、あるいは中小企業関係もの等も入っておりません。大体従来から非常にやや低く出過ぎるきらいがございます。まあ、私どもは、そういう意味においてはもう少し情勢をしっかりと見きわめなければならない、こう思っております。  で、政府としては、今日、先ほど発表いたしました、さっき申し上げた一二・六以外の数字はまだ持っておりませんけれども、われわれの見通しとしましては、下半期にだんだんと設備投資も回復してまいる、それから非製造業部門においては依然として相当高い設備投資意欲がある、これらを総合いたしましてあの見通しはいささか低きに失するというふうに感じております。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 まあ、非製造業部門伸びていますが、私たちは全産業質問しているのですから、そのつもりで。  それから六〇年代は民間設備主導型の経済成長であったと思います。これはだれも異論がないと思います。ところが、七〇年代に入ってから、この民間設備投資伸び率が鈍って、それが今日の景気停滞となっていることは、これは言うまでもないと思います。この問題については、これは周知の問題でありますが、下村治氏はこれを次のように言っておりますが、設備投資増加速度は年とともに伸び率が減る方向に進んでいくと思う。したがって、大きな歴史的な設備投資の減速過程が始まったものと思う。こう言って、さらに、それは循環ではないということですね。大きな富士山のような山の裾野におりる過程と、こう言っております。私は、ここで理論的な問題は別にいたします。ただ設備投資主導型の経済が財政依存度を強めるようなパターンにウエートが移行を始めたのではないかと思われることは、これは確実だと思います。私は右から左にびっしり変わったというのじゃないですよ。この主導のウエートが漸次移行を始めたのではないかと思われますが、その辺はどう判断されておりますか、お伺いいたします。
  30. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 下村氏の言うほどかどうか別といたしまして、徐々に減速をしていく、これはまあいろいろな各種の今日置かれている経済条件からいっても当然そうだと思います。私たちの経済見通しにおいても、大体そういう方向を見通しているわけであります。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 この四十六年度予算は中立機動型予算といって、財政景気を下ざさえしようとしているわけですが、総理大臣や大蔵大臣が安定成長と言い、あるいは安定成長の定着と言う場合、財政的にささえられた経済運営が不可避であって、これを長期的に判断した場合、この財政主導型の経済運営ということを頭に描いておられるのか、これは一時的にこういう現象なのか、この経済の安定成長あるいはそれの定着と言われる場合はどういう姿を描いておられるのか、ひとつお聞かせ願いたい。
  32. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 安定成長と申しますのは、景気に山、谷――山が非常に高い、谷が非常に深いと、そういうようなでこぼこを是正する、なだらかな成長ということと、もう一つは、質的に各方面が均衡のとれた発展、つまり業種別に見ましても、産業別に見ましても、それらがみんな均衡をとる、また資源の問題、労働力の問題、それと成長の高さとの均衡、また対外均衡といいますか、国際収支の均衡、さらには物価が安定をする、そういうようなもの一切を含めて均衡状態において経済がなだらかに成長発展するということを申しておるわけでありまするが、これが自然の状態においてそういう状態が実現される、それは非常にけっこうなことでありまするが、そういうことを考えながら、もしそれに、軌道にはずれる、そういう考え方にはずれるというような事態がありますれば、これは財政は随時に出動する、こういう使命を持たせべきである、かように考えておるわけであります。大勢といたしましては、先ほど企画庁長官からお答え申し上げましたように、財政主導型の傾向を持つであろうと、かように思います。
  33. 羽生三七

    羽生三七君 この均等成長は当然、私、あとから触れていく問題ですが、それは別として、そういうような考え方でいった場合、年一一、二%の線で設備投資の増加率を安定させれるかどうかという問題がありますね。これは四十年不況以後の実績を見てみましても、四十一年度の二〇%、四十二年度の三三%、四十三年度の二三%、四十四年度の三一%、四十五年度は実績見通しで一八・九%から見ても、これは今回は相当な落ち込みになるわけで、財政てこ入れなしにはこの年一一、二%の民間設備投資の増加率をそういうところで保っていくということは非常に困難だと思いますが、その辺のお見通しはどうですか。
  34. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 設備投資には最近の公害設備投資、それから近代化、合理化、生産性向上のための設備投資、つまり生産の増加につながらない投資もかなりあるわけなんです。ですから、私ども考えておりますのは、これは総需要の均衡、また商品ごとに、また経済全体として需要の均衡、こういうことにあるわけでありまして、鉱工業生産、これが一体どういうふうになるか、それが問題だろうというふうに思いますが、とにかく総需要、これが安定した高さでなければならぬ。その際に、総需要において落ち込みがあるというような事態でありますれば、随時機動的に財政は出動して、これが調整に当たる、こういうふうな考え方でございます。
  35. 羽生三七

    羽生三七君 これに関連するいろいろな問題がありますが、これ飛ばしまして、ところで総理大臣は、最近しきりと高福祉、高負担と、こう言われるわけですね。その背景には、この日本経済成長のこのパターンの変化という問題があるのではないかと思われるわけであります。すなわち、先ほど来述べてまいりましたような情勢と、さらにまた、との従来の高度成長に対して安定成長路線をとるというこの総理政府みずからの意図によって成長率を実質一〇%程度に押えるというのであるから、税の自然増収の増加比率も自然減ると思います。増加比率ですよ、これは自然減るのじゃないかと思う。伸び率です。ところが、他方七〇年代の新しい課題としてこの公害対策あるいは人間の環境整備、各種公共事業、そうして社会資本の拡充が一そう熾烈な要求となることは間違いないと思います。もちろん私は、公害対策などは、企業公害防止投資の形でやられることが望ましいと思います。しかし、それにもかかわらず、政府や公共団体の経費が増大することもこれも間違いないと思う。とにかくそうして社会資本関係の増加は必至と思いますが、またそれは当然拡充しなけりゃならぬ、そういう性質のものでございます。ところが、いま述べたように、経済成長率との関係で税の自然増収の伸び率は減少すると見なけりゃならぬ。伸び率でございますよ。したがって、今後伸び率が大きく期待できないと、反面ですね、財政支出は増加する、これ必至であります。したがって、減税はあるにしてもきわめて小幅なものになる。ここに総理が言う高福祉、高負担、つまり高福祉低負担といえないこの日本経済の基調変化という背景があるのではないかと思う。私はこれが六〇年代から七〇年代への基本的な変化――若干でこぼこはありますよ。しかし、大勢としては、おおよそそういう方向にいくのではないかと思いますが、その辺の認識をこれはひとつ総理から伺わしていただきます。
  36. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大体羽生君の御指摘になるように私は見ておりますが、ただいま、私が申し上げるまでもなく、日本の経済成長は非常に急激だと、それで、それに伴う一つの非常に顕著な現象として都市集中がますます激しくなって、これは激化しております。そうして、新しい公害問題なども起きておりますから、社会資本の充実ということによほど力を入れなきゃならないと、住宅あるいは上下水道、道路等々ですね、社会資本の充実によほど力を入れないと、真の福祉国家はできないように思います。そこで、ただいまのように、やはり負担もふえるがやはり福祉国家にはなる、こういうことになる。そのための基本的な問題として、やはり個人の所得が伸びるということが一つの要素だと思います。自然増収は減ると、しかし、収入が在来どおりで税負担だけ重くなる。これはとても耐えられるものではない、かように思います。しかし、片一方でやっぱり所得はどんどんふえていく。そうすると、その負担というものがいわゆる負担感を持たないで税の支払いができる、こういうようなかっこうにもなるのじゃないか。まあいろいろ新税その他創設するというような議論もございますが、その問題は、新しいものはよほど慎重にやらなけりゃならないと、しかし、総体として見てはやっぱり自然増収だけにたよらないで、いまのような一般的な傾向として個人収入もふえてまいりますから、いわゆる負担傾向というものがあまり圧迫感なしにいけるような、そういう状態になるのじゃないだろうか。またそういう状態をつくるべきだと、これは私どものねらいでもあります。したがって、いわゆる福祉国家をつくる、それはどこまでもやらなけりゃならない。そうして、その福祉国家を建設する場合に、国民の負担が重税感だとかそういうもとにおいて実現することではどうも納得がいかないのだ、そういうもののないような、そういう状態をつくると、こういうことだと思います。
  37. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、いまのようなことから、この直接税から間接税への移行ということが考えられて、付加価値税等が検討され始めたんではないかと思いますが、付加価値税はいますぐやることじゃないでしょうが、東畑税調会長が先日付加価値税の導入を申し入れましたね。まあそのこともあるわけですが、それは要するに、いまのようなこの日本経済のこの体質の変化が直接税から間接税への移行を要求するような状態になっておるのじゃないですか。その辺はどうですか。
  38. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それはそういうわけじゃないのです。かりに、いま総理がおっしゃるように、まあ国民全体の税負担率がふえないという場合におきましても、これはどうしてもいまの直間比率、つまり所得税偏重の税制はこれを改革しなけりゃならぬと、こういう立場に置かれておるのが私どもであると、こういうふうに考えております。つまり、いまこの所得税、まあ法人税も含めますと、直接税の租税全体に対する比率は三分の二まできておるのです。これをほおっておきますと、この三分の二という六六%は、さらにさらにこれを増大いたしまして、あるいは七〇%あるいはそれをこえるような状態に近い将来にいくかもしれない。それは国民に対して非常な負担感を与えます。私は思い切った所得税減税をすべきである。所得税減税をするためには差しかえの財源が要る。それは何に求めるというと、これは間接税に求めるほかはない。そういうようなことから自動車新税というような問題も起きてくる。また、いまEEC諸国で採用し、また英米においても検討を始めておる付加価値税論議というものも起こってくるわけなんであります。あくまでも国民に負担感のない、所得税偏重でないところの税制、こういうものを考える時期にきておるという認識からこの付加価値税論議が始まっておる、こういうふうに御理解願います。
  39. 羽生三七

    羽生三七君 付加価値税はどの程度まで検討されておるのですか。
  40. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政府のほうはまだ全然検討いたしておりません。自由民主党のほうでぼつぼつ検討が始められておりますが、政府のほうは、この夏ごろ税制調査会にその検討をしてもらうというふうに考えておる段階でございます。
  41. 羽生三七

    羽生三七君 いま蔵相は、私の先ほど申したことに羽生君とはそれは少し違うと言われましたが、それはおかしいので、つまり、所得税減税をしたいと、国民に負担感を与えたくない、したがって、間接税と言うのでしょう。ところが、付加価値税をいま渋っているのは、それをやれば物価が上がるからでしょう。大きなはね返りがある。だからそれは、もし上がるならば、所得税減税はそれで相殺されてしまうわけですね。何も意味ないですよ。しかもこれは大衆課税ですね、決定的な大衆課税です。ですから私は、これは国民の負担感を減らすかもしれませんが、それは表面上の負担感を減らすので、実質上の負担はむしろ重くなるのではないかということを指摘だけしておきます。もしそういうことをお考えになるならば、私は税収の道を別に考えるべきだと思う。それはやはり法人税率の引き上げ、これはここに資料を持ってきておりますが、法人税率の引き上げ、あるいは脱税の徹底的捕捉あるいは交際費課税の強化ですね、あるいは防衛費の削減あるいは広告課税も先日検討されたようですが、そういうもので財源を捕捉すべきで、大衆課税でやるということは私は誤りだと思う。いかがですか。
  42. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 考え方は、どこまでも国民の税負担を付加価値税に求めるという、そういうような発想じゃないのです。直接税、特に所得税を大幅に減らすということが、蓄積の少ないわが国におきましては必要である。いま諸外国に比べればさほど高くもない所得税率ではございますけれども、それでも所得税の重い重いという不満がある。そういうのはどういうところからきているかというと、やはり直接税というものが負担感というものに大きくのしかかる、そういう状態かと考えますので、その点を是正したいという考えであります。もとより、そういうものと並行いたしまして、いろいろな租税特別措置、そういうものに対しましてメスを入れる、これは当然のことでございます。
  43. 羽生三七

    羽生三七君 次に、この経済社会発展計画見通しとかなり狂ってくると思うし、もう一つは、これは国際収支の均衡を主要な柱としておりますね。それからいま述べてきたようにこの経済成長のパターンの変化もある、したがって、これはどうしても改定しなけりゃならぬことになるのじゃないですか。私は数字の若干の誤差とか乖離とか、それは問題にしません。そうでなしに基調そのものに大きな変化がきておるのですから、これはこの間蔵相の言われたように、あえてそれにこだわる必要はないと言われましたが、それはこだわるこだわらぬじゃなしに、基調そのものが変わってきておるのだから改定は必至ではないか、このように考えます。
  44. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) これはわれわれももちろん流動的な経済情勢でございますから、一がいに改定をしないというような気持ちは持っておりません。情勢に応じていつでもこれを改定するのにやぶさかでございませんが、目下のところの情勢を見ますと、大体一〇%前後の経済成長というものを見込んだこの大きなラインというものは大体見通しの線と現実というものは沿ってきているのじゃないかと私は考えております。ただし三年目には、これの改定を当然考えておりますし、そういう意味においては、われわれも改定の準備のためのトレースを常に怠らないでやっております。
  45. 鈴木強

    鈴木強君 関連ですが、簡単に一つお伺いしますが、いまの経済企画庁長官の経済見通しに対する改定問題ですね。私は、いま羽生委員が七〇年代の長期展望に立った日本経済のあり方をお尋ねしていると思うのです。この際に特に日本の場合は、アメリカに対する貿易の依存度が非常に強いわけですから、アメリカ経済というものが今後どういうふうに変わっていくかということを大きな判断の要素の一つとしておかなければいかぬ。そういうことを踏まえていったときに三年目に当たる四十七年に経済社会発展計画はあらためて改定することになっておりますので、そういう海外の、特にアメリカの経済はどういう動きをしていくのかということを見きわめた上で、経済成長率の点で民間銀行の調査と大きく差が出てきていると竹田委員指摘したその点はそういう段階で考えるとしても、アメリカ経済の動きは一体どうなっていくかということを、日本は、経済企画庁長官どうつかまえているのか、その点だけ伺いたい。
  46. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) もちろんこの計画改定にあたりましては広く内外の情勢を十分見きわめてやることでございます。そしてまた、日本とアメリカ経済との密接な関係あるいはまたアメリカ経済の世界経済に占めるウエートから言いましても、アメリカ経済の動向というようなことも十分これは頭に入れてやらなければならないと、こういうふうに考えております。目下のところ、アメリカ経済はいわゆる低成長に悩んでおりますし、さしあたっての景気の回復もなかなか思うようでございません。今後の政策のこれは動向にもかかわることでございますけれども、これを現在ニクソン政権が打開しようとしております。そこいらの方向も十分見きわめる必要があると、こう考えております。
  47. 羽生三七

    羽生三七君 そこでですね、この日本経済成長要因にはいろいろあると思いますけれども、これはよく蔵相が言われるように、戦後の荒廃からの復興とか、あるいは教育程度の高いこととか、あるいはこの旺盛な技術革新の取り入れとか、いろいろあると思いますが、それにしても投資が投資を呼ぶというような形での設備投資伸びというものは今後あまり望まれぬと思いますね。先ほど申し上げたような一応社会資本型の財政需要が非常に起こってくると思うわけです。それは非常に望ましいことではありますが、これはある程度この経済成長の上にも、非生産部門が多いと思いますけれども役立つと思うのですね。それは従来のこの民間設備投資にどの程度代位できるのか。これは足りぬときには財政てこ入れするわけですね。しかし、そういう種類の公害対策とか、環境整備とか、あるいは一般的に公共投資、社会資本というようなものは、従来の民間設備投資のこの伸びが減ったような場合にはどの程度の力をもって代位することができるか。これは想定することはむずかしいと思いますが、相当な私は役割りを果たし得るし、そういう意味での均等成長が私は必要になってくると思うが、いかがでありますか。
  48. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 数字でここで申し上げるのはなかなかむずかしいわけでありますが、いま感じとしては民間国民消費ですね、これは旺盛でありまして、この勢いはずっと続くと思います。それからわが国は卸売り物価が安定しておる、諸外国は卸売り物価もまた高騰しておると、こういう状態でありますので、わが国の輸出体制はますます強化されると、こういうふうに見ておりますので、そこで輸出は依然として私は好調裏に推移すると、こういうふうに見ておるんです。ただ民間設備投資、これにつきましては、いままでの旺盛な設備投資の反動というような状態に今日あるわけでありますが、そこでまあたいへん落ち込んでおる。ですから総需要とすると、この設備投資の落ち込みというところにマイナス要因があるわけなんです。そこで総需要、これの高さを一〇%成長ということを目途といたしまして、その差額を財政が補てんをする、こういう考え方にいま立ちまして、財政運営をやっておる、こういうことでございますが、今後といえども考え方といたしましてはそういうふうに財政をリードしていきたいと、かように考えます。
  49. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、このいまのような経済の体質のパターンの変化が若干の連鎖作用を生むわけですが、実はこれは三十九年、本予算委員会で私と当時の田中蔵相と論議をしたことがあります。これはそのときのあれですが、その論議はこういうことですね。私の質問です。一体今後どういう予算の形というものが想定されるかと、税をふやすことなしに、あるいは公債を発行することなしに、年々強まっていく歳出の硬直性で当然歳出はふえてくると、新規事業はほとんど予想できなくなる、こう言ったのです。これに対して当時の田中蔵相は、予算に弾力性がなくなって硬直性をだんだん帯びてくることは認めますけれども、経済が安定成長にまいりますので、税収も正常な状態に確保できると思うと、こう答えられているわけですね。ところが、先ほど来申し上げたように、税収は伸びても伸び率が減っていく、しかもそれは政府金融政策設備投資が落ちたわけじゃないのですね。若干コントロールしたことはありますが、自律作用で落ちてきたわけです。そうでありますから、したがって、この経済の安定成長という場合に、必ずしも大きな、大幅な税の増収は望めないと、そこへもってきて、予算の弾力性がなくなったために新規事業がほとんどできないわけですね。当然増、自然増に食われちゃう。四十六年度、これ大蔵省からもらいましたが、九兆四千億余の予算の中で新規事業がわずかに四兆七百十六億、全部当然増、自然増に食われちゃうでしょう。そこで何かやろうと思えば新しい金が要るわけですね。そこで増税はできないから間接税と、こうなるわけです。そこで法人税率を改正することはできませんか。もっと上げていいのじゃないですか。ここに外国との比率もある。
  50. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 各常任委員会で法人税の増徴はというような御意見がありますが、いま法人税率は、わが国におきましては大体西欧先進諸国に比べまして、まあ高くもなし、低くもなしという中間的なところでありまして、そこへもっていって、わが国は諸外国と違いまして企業の蓄積が非常に弱いです。一八%の自己資本比率という嘆かわしい状態なんです。そういう状態下におきましてさらに法人税を増徴する、私は減税はまだ考えておりませんけれども、これ増徴するというのは、これは大勢から見まして妥当であるかどうか、私はその辺はたいへん疑問に思います。
  51. 羽生三七

    羽生三七君 財政問題でお伺いしたいことまだ一ぱいあるのですが、時間の関係であとのことが残っておるので……。  次に、これに関連をしてお伺いしておきたいことは、円切り上げの問題ですが、私は円切り上げをやるかやらぬかというようなやぼな質問はいたしません。円切り上げと公定歩合の操作はこれはその日まで言いっこないですから、そんなことは聞きません。ただ、問題は何で円の切り上げが要求されるのか、理由ですね、これは輸出競争力が強いからでしょう。だから輸出競争力を弱めるために円の切り上げということがいわれている。私はそういうことはやらぬほうがいいと思う。やるなら労働条件を変えよということです。これが将来の望ましい姿ではないか、私は前からそう思っているわけです。そういう意味で外国と均等の条件で輸出競争をやるならやればいい。労働条件の改善というと労働時間、いま賃上げのことは言いません。労働時間短縮にしぼって私考えておるのですが、この辺はどうお考えになりますか。外貨減らしに、別荘買い入れに不動産買いを認めるというような、そんなつまらぬことはやらないほうがいいと思うのです。いかがですか。
  52. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま羽生さんは、わが国が円の切り上げを要求されておる、こういうようなお話でありますが、要求はされておりませんです。この円の切り上げ、これは対内的、対外的両面の意義を持つ、対外的にはわが国の輸出競争力を弱めるということになるし、と同時に、対内的には物価の鎮静化、また賃金の切り下げ、こういうような影響を持つ、これが通説でございますが、いま私どもがこの対外的な関係、これを考えてみますと、円を切り上げるということになるとどういう事態になるか、これはいま申し上げた貿易の関係もありますが、わが国自体の立場から見ますると、わが国の所有する外貨債券、これの価値をそれだけ喪失するということになるのです。わが国は、いま資産超過の状態にある。しかもその資産は、その多くをドルの形で持っておる。そういうわが国が円の切り上げをするということになると、これはばく大な国損になるわけでありまして、これは慎重に考えなければならぬ問題である、そういうように考えます。また、海外との輸出入の関係、これはそれだけ輸出力を減殺をするということになるのですが、わが国が努力をいたしましてこれだけの地位を築いた、それなのに弱い外国がわが国に対して、その力をそげというようなことを求める、それよりは外国として、みずからを正すべきだという主張をすべきである、そういうように考えるわけであります。国内のそういう事情がありますので、円の切り上げというようなことは、これは国益を考えると、そう軽々に論ずべきでもなく、またいたすべきでもない、こういうように考えますが、そういうことを考えまするときに、国内ではいま物価が不安定な状態である、そういう方面に効果があるかということを考えると、あのマルクの切り上げ、マルクは切り上げましても決して賃金が安定をする、物価が安定する、そういう効果は持たなかった。むしろあのときを契機といたしまして、ドイツの経済は混乱をしてくるというようなことになりました。ああいう先例等も考えますと、これもそう簡単にいままで経済学者が言っておったようなそういう通説に従うことはできない、かように考えておるわけであります。諸外国でも、いわゆる専門家筋は、賢明なる日本が、ドイツのあの失敗の轍を踏むというようなことは万あるまい、こういうように考えておるのが、これが一般でございます。また、私も円の切り上げについて海外から要請を受けたことは全然ありませんから、ひとつそういう点はとくとお含み置き願いたいと存じます。
  53. 野原正勝

    国務大臣(野原正勝君) わが国の労働時間の問題は、近年技術革新の進展や生産性の向上等を背景にいたしまして、中小企業を含めまして、全体として改善の方向にあります。特に最近では大企業を中心に週休二日制や夏期休暇制などを採用する企業も増加してまいっております。労働時間の短縮は、それが経済発展の段階に応じまして適切に行なわれるならば、労働者の福祉の向上の見地  から望ましいと考えております。労働省におきましては、現在中小企業その他おくれた分野に対しましては、法定の基準が守られるように監督指導を進めるとともに、進んで大企業等につきまして  は、労使の自主的協議によりまして、実情に即した労働時間の短縮が行なわれるように期待しておるわけでございます。労働時間の問題は、社会経済や労働の実態、生活慣習等と密接な関係がありますので、それらの実態との関係等を含めまして、現在慎重に検討しておるところでございます。
  54. 羽生三七

    羽生三七君 あと外交の時間がなくなりますので、簡単に農業問題で一点だけ農林大臣に――当面の食管制度や米の減反問題等、一切触れません。一つだけ。  基本法は改定を必要とするのではないかということです。それはもう兼業が圧倒的多数、八四%になったという事実、それから基本法の第二条第三号で農業経営の規模の拡大、農地の集団化をうたっておるし、それから第四章第十五条では、自立経営の育成をうたっておりますが、全部統計はこれと逆の方向になっているので、いい悪いという問題じゃありませんよ、私は批判はいたしませんよ。いま基調として農業基本法は改定を必要としておるのではないか。それに対する論証は非常な長い時間がかかりますので、全部これはやめます。そんなことを言わなくても大臣が御承知だと思いますから。必要とするかしないか、それだけ承っておきます。
  55. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お話しの基本法農政は、国民経済の成長発展、それから社会の進歩向上に即応して、経営規模の拡大、それから基本法にもありますように、協業の助長を通じて農業の近代化をはかって、他産業との生産性及び所得の格差を是正することを目標としておるわけであります。この方向は、私ども総合農政においてというときにも同じ方向をとっておるわけでありまして、今日においてもこの方向は妥当ではないかと考えております。  同法施行後、今日までの間に生じました経済の国際化や公害問題、物価問題等、わが国の経済社会の変化や、これに伴う新しい農業の動向、特に農地流動化の停滞、兼業の増大等を十分に配慮いたしまして、現実に即した農政の本格的な展開をはかってまいりたいと思うのでありまして、基本的に大筋において私どもは、やはり自立経営農家を中核にして、そして協業等もそれに含めて、他産業に劣らない所得を得させるという方向の基本法農政は、今日なお妥当いたしておるものであると存じますので、その方向によって総合農政を推進してまいりたいと、こう思っておるわけでございますので、基本法について同様に考えておるわけであります。
  56. 羽生三七

    羽生三七君 そういう問題を理想として掲げていくというなら、それはそれでいいんです。理想は理想としてあっても、現実はそういうことになっておらぬということを、私は論証なら一ぱいしますが、これは時間の関係でやめておきます。  そこで、次に外交問題に入りたいと思いますが、中国問題を最初にやりますけれども質問の前提に私の気持ちですね、これは相互内政不干渉、相互主権の尊重ということを前提で質問しておるのでありますから、御了承いただきます。  総理は、この前も私触れたことがありますけれども、中国問題については、国際信義ということを重点に言われております。それからまた、日華条約を守るということを至上命令のようにもされておるような気がいたします。しかし、この前のことを重ねて申し上げますが、国際信義ということは、私は原則的に異論はございません。しかし、いまの日本の当面する外交課題としては、国際信義という問題をもう一つ高い次元で、原点に戻って考えねばならぬところにきているのではないか。この基本的なことをまず最初にお伺いいたしておきます。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ことばにとらわれるわけではありませんが、いま原点に返ってと言われるが、日本と中国との関係、これはさきの戦争、これが原点ではないか。そうしてその原点では、日本は敗れた敗戦国だ、そういうところで日華平和条約が結ばれた。かように私は思いますので、原点に返れということはそういうことをやはり意味するのじゃないか。さきの戦争、そのだれと戦ったか、これは中国、当時はやはり蒋政権、これと戦った、そうしてそのもとで敗れた。それは原点ではないかと、かように思いますが、いかがでしょう。そういう意味から私どもが日華平和条約を締結した。その国際的な条約を守る、こういうことが今日の日本のあり方でございます。
  58. 羽生三七

    羽生三七君 その原点の前に、もう一つ私は言ったことがあります。より高い次元でと、これはあとから漸次お伺いいたします。  総理は、中国は一つと言っておりますが、それは正しいと思いますが、ところで中国が一つという立場をとる限り一つの中国、一つの台湾、二つの中国はない、こう理解してよろしいのですね。
  59. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一つの中国、これは中国も主張し、台湾も主張している。私もそのとおりだと思います。これについてわれわれ第三国がとやかく言う筋のものではない。一つの中国、そのとおりじゃないかと、先ほど言われたように、お互いに内政に干渉しない、こういう立場に立てば、なおさらはっきりするのじゃないか、かように思っております。
  60. 羽生三七

    羽生三七君 そこでですね、一つの中国論を唱えながら日華条約はあくまで守るということは、実際問題としては台湾が全中国を代表するという議論にも、また、二つの中国論にも、あるいは一つの中国、一つの台湾論、どれにも通ずる議論じゃないですか。
  61. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 問題は、フィクションだといえば双方ともフィクションじゃないか。現実には二つの政権のあること、これはもう確かですから、われわれが台北の蒋政権、中華民国政権を否定はしない、また北京にある中華人民共和国、その政権も否定はできない。これはもうはっきりした事実でございます。そうして、その二つとも一つの中国を主張しておる。言いかえるならば、自分たちは正統だと、かように申しておる。そうしてそれが原点に返ってみて、一つのいきさつがあって二十数年間経過した、その事態においていまさらとやかく言ってもいかぬのじゃないか。どうもいわゆる原則論というものが先に出ている。現実論はそうはならないのじゃないかと、かように私は思いますので、そこらにわれわれがとやかくは言わない、現実に二つの政権がある状態、これはひとつ二つがお話し合いになったらいかがですかというのが現在の日本の立場でございます。
  62. 羽生三七

    羽生三七君 いま総理が言われました原則問題と現実問題は、これからあとから触れますが、問題は北京の中華人民共和国、台湾の国民政府、いずれが中国を代表する正統な主権者であるかということでございます。この場合総理は、先ほど来申し上げましたように国際信義を第一に置くわけです。私は、この場合の最善最高の指標は何かというと、常識だと思います。道理にかなったこと、これ以外にはない。そこで、一つの中国という場合に、台湾、国府が全中国を代表すると考える国は世界の中で一つもないのじゃないですか。これは一つくらいどこかにあるかもしれませんが、私は一つもないと思う。これは世界の常識であります。そこで中華人民共和国が中国を代表するという立場をとる国がすでに世界の過半数をこえ、これが近く世界の大勢となるということは決定的であります。ただこの場合、国府、台湾をどうするかということで、北京の主張に留意する、テークノートですね、留意するという表現で態度を留保しておる国があるこどもこれは事実であります。その場合でも、いま述べたように、中華人民共和国が全中国を代表する正統な主権者という立場であることを公然と、あるいは暗黙に認めたその上の措置でありますね。そういうことは確実であります。したがって、このような大勢が世界の常識になっておるときに、いまや日本の政府のやらなければならぬことは、やはり世界の常識や道理にかなったことをやることではないか、こういうことじゃないでしょうか。
  63. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは外務大臣からお答えしたほうがいいかと思いますが、いま、どこかの国一つくらいは中国というふうに、たいへんはっきりしたお話をされましたが、どうも私ども見るところでは、国民政府が全中国を代表する正統政府だ、かようなたてまえをとっている国が現在六十五ですよ。そのうち国連加盟が六十二でございます。一方、中華人民共和国のほうは五十八です。そのうち国連加盟国が五十四と、こういう状態ですから、ただいまの事態は、いまのお話はちょっと実情に合わない、このことだけはやはり訂正されたほうがいいように思います。
  64. 羽生三七

    羽生三七君 それは台湾と国交を持っておる国はそのとおりです。しかし質問をして、どっちが全中国を代表するかといった場合に、答える国はいま私が言ったとおりだと、こういうことを言っておるわけです。そこで総理は、先ほど答弁の中で、中国は遺憾ながら原則を主張しておるが、もっと現実の問題を考えてほしいと、こう言っておりますが、しかし、私がここで言いたいことは、原則を認めることが実は現実問題の解決に役立つのではないか、私はこれが根本だと思いますね。原則を認めることが実は現実問題を解決するのに非常に役立っている、そうお考えになりませんか。
  65. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ここはまあいろいろ御議論になるところだと思いますね。原則を認めて現実がそれで解決されるという場合もあるし、現実を認めて原則論が立つと、そういう場合もあると思います。だからいわゆるどちらにいたしましても、現実と原則論といわれるものがいまちぐはぐになっておる、そういうところに問題もあることでございます。これはもう問題自身を解決しようとして問題自身を提供されたと、かように思いますが、どうもそこが問題なんじゃないでしょうか。
  66. 羽生三七

    羽生三七君 この問題を論議すると非常にめんどうなことになってくるわけですが、そこでよく北京人民共和国を承認して台湾を見殺しにするか、こういうことをよく言う人がありますがね。しかし、台湾が地上から消え去ることはあるはずがございません。また、中華人民共和国が台湾は中国の領土の一部であり、それは中国の内政問題である。したがって、そのために中国がとる手段について他国からかれこれ言われる筋はない、内政干渉は許さないと、こう言っておるのです。そこで、それでは武力解放をやるかと、先般この問題が、武力解放云々ということが当委員会である委員から言われて問題になったこともありますが、これは別として、武力解放はやるかというと、私はそんなことはあり得ざることだと、現実の問題ではあり得ない。ただ、そういうことは内政問題だから他国の干渉は許さぬというだけで、現実に武力解放なんということはあるはずがないと思うのです。そういう行動は中国はとらないだろうと思うのです。したがって、中国は内政干渉問題と言いながらも、その解決のためには百年も待つと言ったことがあるでしょう。最近はそうは言いませんが、これは急いでいるようですが、そういうことを言ったことがある。ところが大陸反攻などと言って武力問題をにおわしたのは台湾でしょう。中国が武力解放などと言ったことが一度でもありますか。逆に台湾の蒋政権です。この辺はやはり武力問題云々を言われますが、非常に大きな私は勘違いをされておるんではないかと、やはり中国の言うように、原則に立って問題の解決をはかって、それでその原則を認めた上で台湾問題、内政問題として双方に平和的で話し合いが解決できることを期待すべきではないか。しかしそれは私は可能だと思うのですね。原則を絶対認めぬから非常に問題で、一たん認めて、そこで武力を行使しないように――武力は行使しっこないから、お互いに平和的に話し合いをしてもらいたいといえば、私はそこにおのずから話し合いの筋というものが生まれてくると思うのですが、その辺はどういうふうにお考えになるでしょうか。
  67. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) たびたびこの問題については私から羽生委員にお答えいたしておりますから、つけ加えることもございませんが、要するに、たてまえの問題としては、中国自体の内輪の問題であり、内政の問題であって、双方ともが唯一の合法政権を主張しておりますが、これは双方当事者同士の話し合いで解決すべき筋合いのものであると、そして幸いにしてそういうことになれば、その結果は隣国たる日本として、これを尊重していくのは当然であろう、これが筋論とでも申しましょうか、原則論であると思います。  それからその次に武力抗争のお話が出ましたが、これはわれわれとしてはさようなことはもちろん希望もしていないし、予見もいたしておりません。しかし、かりに武力で事を片づけようというようなことにでもなって、かつこれが非常に大規模な武力抗争というようなことになれば、単なるこれは内乱とか内政問題では済まないような状態になり得る。これはまた日本といたしましても自国の安全保障の問題として見過ごしていくことはできないこともあり得ようと、さような場合には、そこに重要な関心も持たざるを得ないので、武力抗争というようなことは絶対にやらないでほしいという、起こり得ざることとは思いますが、念のために、いわば願望を表明しておる、これが現実の事態である、かように存ずるわけであります。そしてしばしば申しますように、日本としてはポツダム宣言の受諾、降伏条約の調印というような沿革や歴史や経過に基づいて、中華民国を代表する機関としての国民政府との間に日華平和条約を結びました。これは条約論としては一ぺん限りの、つまり平和回復の戦争状態終結、あるいは戦争前の条約の効力等が主たる対象になっておるものであって、こういう種類の条約は一ぺん定まりました以上は、国と国との関係においては、双方が国の意思として法的には拘束されるものであって、戦争状態はしたがって終結したものと解するのが妥当であるというのが日本政府の態度でございます。同時に、その見解に対しては、中華人民共和国政府がさような見解は全然とらない、反対であるという態度を表明しておることもまた日本政府のよく承知しているところでございます。これらの見解はしばしば申し上げたとおりで、全然変わっておりませんし、ただいま総理の御答弁の中身もそのとおりを言われているわけでございます。
  68. 羽生三七

    羽生三七君 しばしば承っておりますけれども、それは道理に違っておると、こう申すわけですね。それは中華人民共和国と戦争が済んだなんと言ったところで、それは蒋介石と条約を結んだからそれで片づいたんだと、それで通るような問題ではないのです。だから常識、いや道理が大事だということを私は申し上げているのです。  そこで、これはいまちょっとたまたま外相が触れられたから、私は触れるつもりはなかったけれども、一応ちょっとこれは申し上げておきたいと思うのですが、先日、この席で平泉議員の質問にお答えになった際に、台湾は内政問題だが、台湾海峡に紛争が起これば、いまお話しもありましたように、それは重要な国際問題だと、そこまではいいのですが――よくもないけれども、それは了解するとして、わが国の自衛権発動との関連において重大な関心を持たざるを得ない、こういう発言をされておりますね。これは日本が直接攻撃を受けるのでないのに、どうして台湾海峡の紛争が日本の自衛権と関係するでしょうか。これはちょっと拡大解釈じゃないですか。これは非常に問題だと思いますね。
  69. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これもたびたび念を押して申し上げておりますように、現実の事態として予見し得ることではない、また、そういうことの起こらざることを期待し、またそれに十分の抑止、危険の起こることを未然に防止し得るような抑止体制ができておりますから、なおさらもってだいじょうぶであると思います。しかし、観念論あるいは法律論、条約論等から言えば、これは国連においてもすでにはっきり通説として認めておりますが、ある複数の政権がそれぞれ相当長期間にわたってそれぞれある地域を有効に支配している、その政権同士に武力紛争が起こったような場合は、その態様いかんによってはこれは国際紛争と見ざるを得ない。そしてそれには戦争という観念からのいろいろの国際法規その他が適用される、そしてその場合にはまた、その周辺においてその緊張の激化によって影響を受けるような場合においては、自衛権あるいは集団自衛権の発動の対象になり得るというのが国連におけるところの、あるいは国際法論議における通説でございますから、その通説が当てはまるということを観念論あるいは条約論として主として申し上げた次第でございます。
  70. 羽生三七

    羽生三七君 私は、これは総理も外相も御記憶かと思いますが、長い間こういうところで質問して、いまだかつて戦争になったときを想定して議論したことはあまりないのですね。戦争にならないようにするにはどうしたらいいかという、これが私が一貫してとってきた考え方でありますから、この予防戦争的な考えは絶対にとらぬということであります。  そこで、わが国が今日まで国連の場でとってきた態度をここであらためて私は蒸し返すつもりはございません。それはないんですが、その後の日本の動向を見ておりますと、国連の中で中国問題について新戦術を練っている節があるんですね。新戦術ということばが適当かどうかは別として、とにかく何らかの対策を練っていることは、これはもう確実だと思います。で、外相は昨年十二月三日、本院の外務委員会における私の質問に対して、重要事項指定方式を今後とも引き続いて維持していくことは不適当というふうに考えるのがいいのではないかと、こう答えておられますね。ところが、それが衆議院では若干違ってきておるんですよ。しかし、私はあの場合に十分念を押しました。そのときの私に対する御答弁と、いまでもお変わりはないのかどうか、これをまず承ります。
  71. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これも羽生委員がよく御理解いただいているところでございますが、私の言っておりますことを全体のコンテクストの中で御理解をいただきたいと思いますが、要するにこれを集約して申し上げますと、今国会の冒頭に外交演説の中で言っておりますように、国連においての中国代表権問題の扱い方については、昨年の総会でのアルバニア決議案の扱い方等にもかんがみて、今後の国際情勢の流動的な状況をよく見きわめ、また関係各国とも十分連携をとりながら、日本としてとるべき措置について慎重に、真剣に検討をいたしてまいりたいと思いますと、こう申し上げております。これが政府としての見解でございまして、それ以上にただいま申し上げるところまでまだいっておりません。  ただ一言つけ加えますならば、何と申しましても、これは国連としての非常に重要な大切な問題であるということは、昨年までの総会での本件の扱い方における各国の態度などからも十分に見取られることであって、これはほんとうに大切な問題として慎重に特に日本としては扱わなければならない問題である、このことだけは明らかに申し上げておきたいと思います。
  72. 羽生三七

    羽生三七君 この中国問題が重要であることは、これはもう当然な話で、そんなことはきまり切ったことなんです。ただ、問題は中国問題が重要であるということと、従来とってきた重要事項指定方式によって中国の国際社会への復帰を阻止したり、代表権問題に歯どめをかけたりするようなことを中国問題は重要問題という意味なのか、そこが問題なんですね。中国問題が重要であるということは、それはもう全然私も変わりありません。政府と私と同じことです。ただとるべき手段が、それに藉口して国際社会への復帰を阻止するためなのではないか、どっちに重点を置いておるのか、それを聞いておるわけです。
  73. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 国連の憲章は、いまさら申し上げるまでもありませんが、全体を通じての精神から申しましても、あるいは第十八条の規定から申しましても、国連加盟国のステータスを変更するというようなことは重要なものであるということが明記されているわけでございまして、そういう意味においても私は非常に重大な問題である、こういうふうに考え、かつそういう見解を申し上げている次等でございます。
  74. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、これも御承知のように、アメリカの上院ではマクガバン議員によって一つの中国という決議案が初めて、これはアメリカで初めてですが、上院に提出されたようでありますが、そういうような動きがアメリカの中にあるにもかかわらず、日米当局が相談をして、やはり何か従来の重要事項指定方式がまずければほかのひとつ何かうまい方法を考えようじゃないかということで、何か新戦術を練っておるんじゃないですか、その辺はどうですか。これは形式は問いませんよ、私。そういう形式のいかんにかかわらず、何か国際的世界的な流れの中で率先してこの中国問題にある程度の何らかの役割りを果たさなければならない日本が、むしろ逆にそれを国際社会に復帰を妨げる意味の役割りを果たすために、何か新戦術を練っておるのではないかという、この報道を聞くたびに、まことに私は情けない気がするわけです。その辺は一体どういうことをお考えになって、またお答えはいつも、秋までには時間があるからと、必ずそうなると思うのですが、ことしは少し違うと思いますよ。秋の国連総会前に安保理事会で必ずこの問題の討議があると思う。日本はそこで意見を述べんならぬ機会が起こるかもしれません。ですから私は秋の国連総会なんてのんきなことじゃなしに、外務省はいまどういうことをお考えになっているか、お聞かせ願いたい。
  75. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これもしばしば申し上げておりますように、昨年十一月の投票の状況をごらんになりましてもおわかりのように、棄権が非常に多いわけでございますね。この一例にもあらわれますように、各国ともこの問題については、実に頭を悩ましているということだけは間違いのない事実だろうと思います。したがいまして、日本としてどういう態度をとるかということについても、国連加盟国である立場の百二十幾つかの国国がどういうふうにこれを考えていくか、また国連というものを大切にして、ユニバーサリティーの原則を初め、どうやってこの国連というものをよりよき機構にしていくか、そのためには中国代表権問題をどう扱っていったらいいか、ほんとうに真剣で真摯な各国の研究というものが現に行なわれておると私は理解いたしております。特に日本としても、アジア太平洋諸国、その他友好の国国との間に、いろいろの機会を通じて意見交換をしていくと、そうしてだんだん、だんだんに日本としてとるべき態度というものを、だんだん練り上げていくということは、先ほど申しましたように、政府としてとるべき真剣で慎重な態度であろうかと思っておる次第でございます。
  76. 羽生三七

    羽生三七君 真剣に日本のとるべき態度を練り上げていっても、それはわかりますが、それが全くいまの世界の大勢なり、あるいは中国との基本的な問題解決に役立つか、役立たぬかが問題で、練っていること自体に価値があるわけじゃないですね、これは余談ですが。そこで今日中国問題については、この前の十二月の臨時国会のときにも申し上げたと思いますけれども野党間においては、それぞれ若干のニュアンスの違いがあっても、ほぼ合意が成立していると思います。大筋においては一致しておると思う。原則的には日中打開で一致しております。そう見て間違いがございません。また、それと同じような考え方を持つ自民党の議員の方々も相当数存在していることも、これも間違いない事実だと思います。国民の大多数も日中国交回復に賛成であることも、これも間違いないと思います。ただ問題は、総理と自民党内の一部の議員の皆さんの動向にかかっておるわけです。ここまでくれば、総理が決断することが残された道ではないかと思いますが、そう決断されても――決断といったって、決断にもいろいろありますから、右もあれば左もあるけれども、私の申したような意味で決断されることが、国民の大多数も歓迎されるのじゃないでしょうか。総理はどういうふうにお考えになりますか。
  77. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま決断はしておると、しかし決断はしたが、皆さんと意見が違っておる、こういうのがいまの現状でございます。だからその点ははっきり申し上げておきます。ただ、先ほど来いろいろ話があり、あるいは一部の誤解もあろうかと思いますが、一つは、私が昨年参りまして、ニクソン大統領との間の共同コミュニケ、これがひとつ問題になっている。もしも台湾海峡に問題が起きたら、これは重大だと、こういう点が北京からも日本は内政干渉するのじゃないかと、こういうような批判を受けたり、あるいは軍国主義化したというその一つの例にそれが取り上げられたりしておる。しかし、このことは、先ほど来外務大臣からお答えしておりますように、どうも一言多かったのかなと、こういう感じもいたします。しかし、とにかく平和憲法のもとにおいて日本が積極的な行動のできないこと、これはもうおわかりだと思っております。また日本はそういうことを考えるつもりはございません。ただ日米安保条約の存することは、これはもう厳然たる事実でございますし、自動延長された今日もなおこれは続いてまいります。日本の場合におきましては、日本の安全確保のためには、足らないところをどうしても日米安全保障条約にたよる、こういう形がございますから、これだけははっきりして、そしてその観点に立って、ただいまのような、もしも戦争が起こると、これは米軍自身が米華条約、それをたてにして国際的な義務を果たす、こういうことになりましょうから、この戦争が日本にも及ぶだろう、こういうような意味で、たいへんわれわれは関心を持っておる、かようなことでございます。最近台湾に出かけた連中も、かつては横幕に大陸反攻ということばがあったようですが、最近はないと言っております。とにかく台湾においてはそういうような大陸反攻というようなことばはもう消えておる。かように理解して、とにかく平和のうちに話し合いをつけようという態度ではないか、私はかように考えておりますから、今日においては、ただいまのような点は問題にする必要はないように思います。  ところで、いま日中、中国の問題について、この中国大陸と国交を開けというものが七〇%あるという。また同時に台湾というものをやっぱり存続しようというものも七〇%あります。これはちょっと矛盾するようだが、矛盾ではなくて、それが現実の姿ではないかと思っております。だからわれわれがやっぱり政治を担当し、また国民を指導していく、そういう上からは、ただいまの世論の動向というものはそういう意味においてこれは半々というか、圧倒的にその二つの政権というものを大事に重く見ているのだ、こういうことを見落としてはならないように思います。国民の見方は一方に偏しておる、こういうものではないように思う。私はただいまの事態はさように認識しております。この点の認識が誤っておれば、これまた別ですが、この機会に羽生君と議論するまでもないことではないだろうか。ただいまの統計の数字だけを御披露いたしまして、そういう間に処して、そうして先ほども国際的にも、中華人民共和国を承認している国、また国民政府を承認し、それと親交を深めている国、その数も国際的にはまだ国民政府のほうが多いという話をさっきしたばかりでありますから、重ねては申しません。こういう事柄を踏んまえて、日本のあり方、これがいわゆる緊張激化の方向に日本が行動することが、そういうようなことをかもし出してはならない、かように思います。  私どもは緊張緩和、そういうところに重点を置いてこの問題と取り組む、これがわが国の姿勢でございますから、その点は誤解のないようにお願いいたします。重ねて申し上げません。長いこと申すとどうもわかりにくい。われわれは、だから簡単に結論だけを申し上げる。どうも緊張を激化するようなことは避ける。しかし、在来からわれわれがとってきた態度、これは別に間違いはない。原点に返ればなおさらのこと、これは大事だ。国際信用を高める、そういう態度で日本は行動すべきだ。また世論の動向も十分見きわめて動くべきだ、私はかように思っております。
  78. 羽生三七

    羽生三七君 第一番に緊張緩和といいますが、緩和するにはどうしたらいいかという点で、総理と私とはだいぶ意見が違うようです。  それからもう一つは、やはり国民の世論を見る、世論の動向を見る、この場合も当然であります、それは。しかし、総理大臣、一国の責任者としてのリーダーシップというものはどこにあるか、これは私がお尋ねするのも、これも当然のことだと思いますね。そこで問題は、結局総理は、国連における決定、つまり世界の大勢がきまるまでは日本としては独自の姿勢はとらない、こういうことですか。いまのお答えを要約すればそういうようにもとれるんですが、いかがですか。
  79. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本の場合は、世界の動向がきまってからついていくということでなしに、やはり日本は独自の立場できめるべきだ。場合によったら世界の動向をもリードするくらいの考え方で、隣の国、中国大陸との問題、また、いままで親交を厚くしてきた台湾との関係、その関係でございますから、そういうような立場で積極性を持つべきだと、かように考えております。
  80. 羽生三七

    羽生三七君 ただ、世界の大勢は、いま日本が若干の積極性を持っても、この大勢をくつがえせるようなところへはなかなかいかぬのじゃないかという感じがいたしますが、それに関連して、総理が在職中にこの日中問題が片づくかどうかは別として、みずから積極的に打開に取り組む御意思があるのかないのか。口では言われましたが、それじゃどういうことをなさるというのか。私この間テレビを見ていましたら、与党の自民党の有力な方が、佐藤総理在職中は何をやってもだめだと、これをテレビで断言しておりましたが、私は総理が在職中は幾らでも質問いたします。それは在職中はだめだと投げて、まだ来年の十月までは総理任期おありになるんでしょう。その間われわれは腕をこまねいて、在藤総理に何を要求したってだめだ、そんなばかな私は政治はないと思う。私は何回でも積極性を求めて質問するつもりですが、それはともかく、いずれにしても、口の上だけでなしに、総理が積極的に打開ということは、結局二つの中国論のほうへ動くという意味ですか。一つの、いわゆる世界の大勢の方向で、台湾と条約結んでいる国の数じゃないですよ。いま現に起こりつつある世界の動向の中で、どういう対処をされようとするのか、リーダーシップをとられようとするのか、それを承っているわけです。
  81. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) かつて私の在職中はきまらぬだろう、こういうことを申しましたが、これは取り消しておきます。いまそう簡単に短期間の間に結論は出ないだろうという、こういうように解釈していただけばいい。在職中云々、たいへん投げやりなことばを使ったことは、これは責められてしかるべきだ、かように思います。とにかく短かろうが長かろうが、そういうことは別として、在職中私はやはり力をいたすと、日中関係の改善には力をいたす、こういう態度でありたい、かように思っておりますから、そこはいままでのところは取り消します。  ところで、それは別といたしまして、ただいまの動向がどういうような方向に動くか、相手方としてお互いにもう少し理解し合うことが先決ではないだろうかと思います。お互いに知らな過ぎる、こういうことでは、どうも問題が多いのではないだろうかと思っております。この理解が先に進みますと、お互いに提携するという感じも出てくるでしょう。どうも十分知らないでとやかく批判しておると、ここに誤解を招く、さらにその誤解が不信を招く、そういうことになるように思います。これはもう問題は申すまでもなく、過去の戦争がさような状態をつくっている、かように思いますから、その過去の忌まわしい戦争、これに対しても十分考えなければならない。そのためにはお互いに不信、誤解、そういうもののないように正しい認識を持つ、そういう立場に返ることがどうしても必要ではないかと思っております。そうして、ことに羽生君が先ほど言われるように、お互いが相互の立場を尊重し、そうして内政に干渉しない、そういう立場でものごとを進めていく、こういう態度が望ましいんではないか、かように思います。  私は、一部でも今日中国大陸に出かけられる方がだんだん日本側からは多くなっておる、これはけっこうな状態ではないかと思っております。しかし、中国大陸から、北京政府の関係から日本へ来る人ももう少しあってしかるべきではないか。卓球選手だけではどうももの足らないように思う。どうかそういう意味で、われわれは門戸を開放しているんですから、また、どういう場所でも望んで話し合いたい、かように申しておりますので、あまり好ききらいを言わないで、やはりどういう人とも話ができる、こういうような状態になってくると問題は自然に解決ができる、その方向へ進むんではないかと思います。いまのような状態で、どうもあれではあの男とは話ができない。とにかく自分のほうへ、四原則を了承しなければ話ができないとか、あるいは台湾とつき合っておる業者とは話ができない、つき合いはできない、こういうように非常にかたくなになってくると、これは問題が多いように思います。とにかくお互いに信頼関係、その信頼関係こそ両国の親善友好を深めるゆえんだ、かように思いますので、そのためにもこういう交流がもっとなければならない、かように私は思います。私の考えがあるいは間違っているかどうか、私は、ただいまの状態においてはそういうような相互の交流をもう少し盛んにするようにあらゆる機会を持って努力する、これが私の態度でもあります。
  82. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、いま総理からお答えの中にあったように、双方でことばの投げ合いをやっておってもだめだというのが私の考えです。そこで、人事の交流も必要です。卓球選手も大ぜい来ました。けっこうなことであります。そこで問題は、このことばの投げ合いの中で、やはり問題は一つ、私は、相互内政不干渉ですから、原則的にそれを確認しての発言ですけれども、やはり中国の、北京の中華人民共和国は、戦争は片づいておらぬと思って、被害を与えた日本が、まるで中華人民共和国のほうが日本に弁解せんならぬようなそんな立場に置かれている。これはけしからぬじゃないか。だからいろんな悪口が出てくるわけです。特定の個人の名前をあげてやるのはどうかと思うけれども、しかしあげざるを得ないような状況が存在しておりますが、そういうことで、いま総理のお話のようにお互いにもっと話し合いの機会をつくる、こういう場合に外相、外務大臣は二十二日にこういうことを言っておられますね。日中間の話し合いを政府間ベースで行なわれることを期待しております。こう答弁されておる。これははっきりここで言われました。そこで、そういうことばの投げ合いをお互いにやっておるのではなしに、理解を深めるというのなら、一度、たとえば外相なり閣僚級なりが話し合ってみてはどうか。相手が断わるなら別ですよ。佐藤総理在職中は日中問題で話し合わぬと向こうが言うなら、これはしようがないですよ。そうでなしに、まだ出先の大使館を通じてサウンドするという程度で、根本的な申し入れなんかしたことが私はないと思う。したがって、これほど重要な問題をお互いにことばの投げ合いだけでやっておる。ますますこれは疎隔がエスカレートしてくる、それを埋める道はどこに問題があるのか、それはお互いに幾ら言ってもだめだ、もうこれは話し合う余地はないということも起こるかもしれないし、あるいは、そういう考えならこの点をこうすれば理解ができるということも起こるかもしれぬ。そういう意味で、外務大臣なり閣僚級が一度正式に話し合いを持つような機会を積極的につくられたらどうですか。そうでなかったらことばの投げ合いのエスカレートで、絶対問題の解決にならぬと思うので、総理、ひとつ考えていただきたいと思いますが、いかがでありますか。
  83. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 戦争があってその勝敗、その決はついた、日本は負けたんです。勝った北京、これは中国は勝っているんです。勝者たる態度で敗者に臨んでおるかどうか、その辺がまだどうもはっきりしない。ここらが私ども負けたほうから言うとちょっとおかしくはないのか。もう戦争に負けて手をあげて、講和条約も締結したんだけれども、あれが認められないのか。これはどうもちょっとふに落ちないことです。それかと思うと人事交流は行なわれておる、覚書協定もある、その他民間ベースの貿易は行なわれている。そうして戦争もなお続いているんだと、こう言っている。そこらにもふに落ちないことが山ほどあるんじゃないか。しかし、いま言われるようにもっと積極的に政府自身がひとつそういう会見を申し込んでみろ、こういうこと、これは十分私どももよくお話をそれなりに受け取りまして、検討してみることにいたします。
  84. 羽生三七

    羽生三七君 日本の国会で検討という場合は大体消えてなくなるんですが、どうかそれが生きるようにこれはひとつお考えいただきたい。ほんとうにこれはまじめな私、要請です。  それから、そういう根本的な問題が解決するまでは、前進に役立つような一つ一つの積み上げというものはやらないのかどうか。どうも最近は根本問題が中心になりましたから、そういうことが出てこないわけですね。私は、ここでいま吉田書簡、あるいは輸銀使用何々と言って、あるいは航空協定とかいろいろありますが、一々あげませんが、そういう問題の一々のせんさくはとにかく、根本問題の片づくまでは一つ一つの積み上げはやらぬのか。これもずいぶん私はおかしな話だと思うのですね。そういう点はどういうふうにお考えになっておるのか。少しは前進をさしたらどうですか、お伺いをいたします。
  85. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これも従来から政府としては態度を明らかにしておるつもりでございますが、たとえば、実務者間の話し合いによっていろいろな仕事がより一そう円滑にいくというようなことについては、前向きで考えてしかるべきではないかと思います。国交が正常に行なわれておりませんから、政府の承認というようなことと直接関連するようなことはいまのところ望めないと思いますけれども、そこに至らざるものについては、できておるものもございますし、また郵便、小包、その他についても実務者間の協定といいますか、取りきめができて、それによって行なわれているわけでございますから、そういう点などの改善というようなことができることは好ましいことであると思っております。
  86. 羽生三七

    羽生三七君 そういう一つ一つの積み上げをやりながら、根本問題の論議もそれにあわせて行なっていくという姿を私は望んでおるわけでありますが、そこで、私が総理に積極的な姿勢を望むにはいろいろな意味があります。もちろん、正しい解決への前進を期待しての発言であることは言うまでもございませんが、実はこのことが日中復交後の日本の国益には私は重大な関係があると思うからであります。私は昨年の十二月、総理も御記憶と思いますが、この席でいわゆるバス論議をいたしました。私はバスに乗りおくれるとか乗りおくれないとか、そんなさもしい議論をする意思は毛頭ありません。そんなことは全然問題じゃないです。あるいはアメリカが上院に一つの中国の決議を出したということも一つの重大な動きであるが、それだから日本がすぐまねをしようというわけでもない。そうではなしに、この基本的な問題が実は日中間の不幸な歴史、あるいは先方に与えた深い傷――蒋介石で片づいておると言われる方もありますが、私はそうは思いませんから、そういう深い傷、それから、これからのアジアの平和の問題、さらに経済面、文化面、あるいは学術面、その他の全分野にわたるこの相互利益ですね、あらゆる問題を大局的に考えた場合に、困難な事情はあっても、それを乗り切ることが真の国益につながるのではないか、こう思うわけです。ただそこのところが台湾問題でちょっと意見が――ちょっとじゃない相当な意見が、食い違いができて、何が国益かということになると問題になるようでありますけれども、私は、これは長い日中間の問題を考えた場合に、いまの日本の政府のとるべき方針が非常に重要なことになると、こう考えるわけです。それで、むしろある意味では世界の中で最も積極的な役割りを果たさなければならないこの日本が、先ほど総理は最後まで残るなんということは考えておらぬと言われましたが、とにかく理屈からいうと最後まで残りそうですね。ということになれば、それは佐藤総理佐藤内閣は国府に対して義理が済むかもしれぬ、これは総理、いやな気持ちで聞かぬようにしてください、これは一つの議論としてですから。それで国府に対して佐藤内閣の義理は済むかもしれないけれども、しかし長い目で日中関係を考えて国家の将来を考えるならば、私は必ずしもそういう決断がプラスに、復交後の長い将来の日本にとって利益になるかどうか、いささか疑問に思うわけです。信義の必要なことは先ほど私が申し上げたとおりでありますが、しかしそれにもかかわらず真の信義とは何かということをもう一度考えていただいて、そうして総理の決断を求めたいが、どうも――ここのところおこらぬようにしてください――どうも総理の個性が強過ぎるような感じがするのですね。どうかここはもっと大局的な判断をしていただきたいと思うが、いかがでございますか。
  87. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私をだいぶん高く評価して、個性が強いと、こう言われますけれども、私くらい個性のない人間はないようにみずから考えております。たいへん妥協的な人間でもあると、かように思っております。  それはともかくとして、日本の国益、その立場に立って物事を考えなきゃならぬと、ましてや政局を担当する者は絶えず個人的な問題ではなく国民全体、また日本国の国益を考えるべきだと、これはもうお説のとおりであります。またお話の中にもありましたが、長い目で見てという、この長い目で見てというそのところにも、過去が長かったというばかりじゃなく、これからもとにかく隣同士というその関係はいつまでも続くのですから、これはやっぱり長い目で見て、問題を正しい形において解決するということが望ましいことであることは、これはもちろんでございます。私の先輩吉田先生は、どうもこの問題はいままでとやかく言われておる、しかしやっぱり歴史的にそういう目で解決せざるを得ないのじゃないかと、相当時間のかかる問題だと、かような意味の話をしばしば私にもされました。私も、今日まで国民政府との関係を考えながら、また中華人民共和国のあり方等を考えると、やはり長い目で見ざるを得ないのじゃないかと、これはいま使われた羽生さんの長い目というのは、おそらくこの際、将来のことを考えて決然たる態度で断を下せと、こういう意味の御鞭撻ではなかったかと思いますけれども、どうもこの問題はそう簡単に、カナダやイタリアのような場合とは違う。そこで、日本の場合は、十分事態の認識を正しく認識し、その意味から国民のコンセンサスも得て結論を出すべきじゃないかと、私はかように思っております。それがまだもう少しかかるのではないだろうかと、かように思いますけれども、それだからといってほうっておくわけにもいかない、やはり解決する方向であらゆる考え方を進めていかなければならないと、かように思っておりますから、そういう意味の考慮ということでありますので、ただ何にもしないで無為にして過ごすと、こういう意味ではございませんので、しばらく政府を御鞭撻賜わりますようお願いしておきます。
  88. 羽生三七

    羽生三七君 これは、総理のみならず日本の閣僚の皆さんがカナダやイタリアと日本は違うということをしばしば言われた、その違う意味が私とは違うのです、私とは。確かに違う。台湾と条約を結んで、近いところに台湾が控えているから違いますけれども、同時に、あの広大な北京の中華人民共和国と戦ったのは日本であるという、ほかの国は戦争しているわけじゃないですから、その違いのほうはそっちに置いておいて、台湾の関係だけをもって違うと言われるから、私はこの点は、違いを言われる場合には、その私がいま述べた側面も見ていただかなければいかぬと思います。問題は、ちょっとまた繰り返しみたいなことになりますけれども、結局、総理自身がどういう方針を持って、どういう指導性を発揮するかが問題です。これはたとえば日中打開のために自民党の中をどうやってまとめるかと、私は他党の内政に干渉する意思は毛頭ございません。そんな資格もない。しかし国民世論をどう操作するか、そういうリーダーシップを総理はどういう立場でとるか、非常に重大だと思いますけれども、どうも見ておると、いま世界で言われておるような日中打開と違った意味で何か総理は腹を固められているのではないかというような気もするので、これは非常に残念なので、できれば、先ほど来申し上げた原則を認めて、そういう中で相互に内政問題として、しかも平和的に解決できるようなことを期待しながら、やはり原則というものは原則として認めるような姿勢をとっていただくことが、私は将来の日中関係あるいは世界の大勢、この国際社会への復帰というものは単に日本にとって国家的、民族的な課題であるだけでなしに、今日の私は世界的課題だと思いますね。それに誤まりなきひとつ判断をしていただくことを特に要望いたしまして、この中国問題に関する質問を終わりますが、最後に、もう一回御見解を承っておきます。
  89. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま誤解はないだろうと思いますが、カナダやイタリアと違っていると申しますのは、これは現実に戦った日本、また現実に負けた日本、カナダやイタリアは中国とは戦争はしていない、こういう状態でございますから、それから後に発展した、あるいは台湾国民政府と条約を結んだとか結ばないとか、そういう問題とはやっぱり基本的に根本的に違うのです。そうしていまわれわれが取り組んでおる姿勢も、そういう意味から取り組んでおる。やっぱり中国自身、これ当時蒋政権、これと戦争したこと、これはだれも否定する者はない。また、その蒋政権のもとで敗れた、これと平和条約を結んだ、講和条約を結んだ、これもだれもふしぎには思わない。しかしもうそれからずいぶんたっておるじゃないか。たっておると、その現在の状態においてどういうように選択するかと、こういうところに追い込まれておるわけです。しかし現状を、いわゆるわれわれが日華条約の相手方として講和条約を結んだ相手は中国大陸には施政権は及んでおらない、これも事実でございます。また、北京政府自身が、これは武力解放はしないと、そういうことで台湾省に対しては手が伸びておらない、これも事実であります。しかしそれは小なりといえども台湾にある蒋政権、これが過去においてわれわれの相手として、時には近衛内閣みたように相手とせず、蒋政権を相手とせずというようなこともございましたが、とにかく戦争したことは事実であります。そのもとで敗れたことも、これもはっきりしておる。だからいま中国大陸に対して、いま時分に反省しろとか、いろいろなことを言われると、勝った国が一体どういうつもりでそんなことを言っているのか。どうもそこらにも、勝ったら勝者としての誇りを持ってやっぱり対したらどうなのかと、こういうような感じが出てくるのですよ。こういうところも、やっぱり中国大陸の方々も、自分たちは戦争した、そうして日本は過去において悔い改めた、そうして現在のような平和国家に生まれかわったと、これはそのまま承認したらどうかと、それはぜひ認めてもらいたいと、かように私は思いますがね。いままで日本の中にもやっぱり、中国大陸で日本軍があばれた状態でわれわれは中国に対して頭を下げなければいかぬのだ、こういう感じがいまなお残っておる。私はどうも過去の、それは乱暴な、ずいぶん残虐な行為、そういうものについては、戦いの勝負でもう結末がついたものだと、かように考えざるを得ないのじゃないか、考えるべきじゃないかと、かように私思いますけれども、日本国民になおそういうような意味で中国大陸にあらためて謝罪しろとか、こういうような気持ちが、まあ絶えずそういう意味の反省はこれは望ましいことです。望ましいことですが、ややオーバーではないかなと、どうも敗者としてそんなにいつまでも、子々孫々までもそういうことがいわれると、ややオーバーではないかなあと、かように私は思うのですがね。これはまた御批判もいただきたいと思いますけれども、さような意味も含めて、とにかく中国大陸と仲好くしていかなきゃならぬことは、これはもう間違いのないことですから、それについてもっと積極性を持てという、さらに鞭撻しようという、ことに前提は、その基礎的な考え方は政府と同じような考え方でいま質問するのだと、かように言われるそのことは私もそれなりに承っておきますが、私はそういう意味で鞭撻をいただく、そのことこそ大事なことではないだろうかと、かように私は思います。とにかく中国問題は、これは一朝一夕にして片づく、そういうものではないようです。これはずいぶんいろいろな誤解や不安、危倶、そういうものを過去の戦争が生み出しておりますから、今日なおそういうものが続いておる、そういう状態でありますので、それがやっぱり氷解すると、そういうところにまでいかないと、話し合いは簡単にはつかないのでないだかろうか、かように私は思います。
  90. 羽生三七

    羽生三七君 だから先ほど申し上げましたように、長い間、長期にわたってそういうお互いの、向こうは向こうで言い、こっちはこっちで言うことが続いておるから、対話を日本が積極的に求めてはどうかということを申し上げているわけです。そうでなければ、ことばの投げ合いを幾らやってもだめだ、ますますエスカレートしていく、こういうことでございます。中国問題はそういう意味で、私が言ったような意味での積極性を求めて、次に沖縄問題に入ります。  それでは次に沖縄問題に移りますが、この沖縄返還協定の調印の時期ですね、これはもう間近であることは間違いありません。新聞によれば、返還は来年の四月一日というような希望も出ているようでありますが、それは間違いないとしても、とにかく今国会は五月で終わります。予算委員会あときょうと二十九日で終わりますね。そうすると実質上、特別のことがない限り、総理が出席されて沖縄問題について質疑する、総理出席のもとで沖縄問題を質疑できる機会はほとんどないということです。残されたきわめてわずかなことになる。そこで、私がしばしば指摘をいたしておりますように、調印後に国会に条約が提出された時点でどのように質問したところで、これが改変される可能性は全然絶無です。そうであるならば、この問題を論議するならば今国会中以外にないわけですね。もちろん今国会でも沖縄問題はずいぶん論議をされましたけれども、まだ核心に触れておらない。そこで私が総理に要請したいことは、今国会中適当な時期に、沖縄返還協定に関する中間報告をすべきではないかと思うのです。いかがでございますか。
  91. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沖縄返還交渉、これはたいへん国民の関心の重大な問題でございます。したがって、適当な時期になれば、ただいまのようなことがあってしかるべきだろうと思います。私、いま専門家に、外務省並びに総務長官に、あるいは防衛庁長官にそれぞれの分野で接触さしている、大蔵大臣ももちろん入っております。そういうことで、まだまとめて全部の報告は伺っておりません。しかし、これは問題として、やっぱり適当な時期にそういうことがとれればたいへんけっこうだが、いまはたしてそういうことの用意ができるかどうか、その辺は関係者等からもう少しお聞き取りをいただきたい。とにかく出ておる際に遠慮なしに、また話は事前に、こういう点を要望しろとか、こういうような御注意が最も望ましいことではないかと、かように思いますので、いままでせっかく対話の形で国会の運営もできておりますことですから、いまのような点も御遠慮なしにひとつお話し願いたいと思います。中間的な問題としては、ただいま申し上げるように、いまそういう機会ができるかどうか、ちょっと私自身にまだ見当がつかないものですから、それは留保しておきます。
  92. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、この外交上の重要案件について政府が交渉の途中で国会に中間報告した事例は何回もあります。たとえば第十六国会でMSA協定に関する中間報告、それから第三十三国会の日米安保条約の改定交渉に関する中間報告、第四十六国会では日韓会談の経緯並びに現状に関する中間報告、これ、重要な問題はみんなやっておりますね。ですから、今度は若干の個々の質疑応答はあっても、核心が何にもわからないわけですね。だから総まとめにしてこの中間報告を今国会中に行なうべきではないか。知らぬうちに調印ができてしまって、あと国会終わってしまう、あるいは国会が終わったあとに調印でしょうから、これでは私非常に困ると思いますから、この問題はそういう方向で考えられることを重ねて要望いたしておきます。  次に外相に、これは先日の外務委員会で聞くと、返還協定に返還という字句が入るかどうか疑問だと言われましたが、その場合にはどういう表現を使われるわけですか、奄美大島あるいは小笠原等の例もありますけれども
  93. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 返還協定は、いまの前段の御要望にも関連いたしますが、いま実は総理から御答弁があったそのとおりでございまして、まだ十分に煮詰まった話し合いになっておりませんものですから、いまここでおおよそいつごろということを申し上げるまでまだ確信がないわけでございます。  それから協定の文言については、そういうわけでございますからどういうふうな文言になりますか、これもまだ何とも申し上げかねるわけで、そういう意味で、返還というようなことばその他についても、しかとそうなるのかあるいはほかの表現があり得るか、その辺のところもまだ合議がそこまでできておりませんから、はっきりしたことを申し上げなかったわけでございまして、しかし返還ということには間違いないわけでございますから、そういうことで文言もできるはずでございます。
  94. 羽生三七

    羽生三七君 次に、返還協定の中に核抜きは明示できるかどうか、お伺いします。
  95. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 返還につきましては、もう一昨年の十一月の総理と大統領との間の確約が内外にはっきりされておりますから、その合意されたものが条約的にもかっちり押えられるようにいたすつもりでございます。
  96. 羽生三七

    羽生三七君 じゃそれは明記できないということですか。
  97. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 一つは、文言的にはいま申しましたようにまだ合意ができておりませんから、一般論としてはっきりした文言について申し上げる段階になりませんのと、それからいま一つは、核の問題については、一つはもう最高の約束が、合意ができているわけでございますし、それから安保条約事前協議等を含むところの一切の関連取りきめが何らの変更なしに沖縄に適用されるということがすでに合意されているわけですから、そのことが協定ではっきりすれば、それでよろしいのではないかと考えております。
  98. 羽生三七

    羽生三七君 それほど日米共同声明なり、この前には岸・アイク共同声明の交換公文のことも触れられましたが、それほどすべてに明らかになっておるのなら、返還協定の中に明記できないという理由は私はないと思うのですね。これはアメリカ大統領の専管事項と言いますが、それが大統領の専管なら、それを明記することも大統領の権限でしょう。これ問題ないじゃないですか。そんなことを避けて国民に誤解を与えるよりも、堂々と明記したらいかがでありますか。共同声明の中にあるのなら、明らかに条約の中に明記すべきでしょう。
  99. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 共同声明の第八項は御承知のとおりでございますし、それから条約の構成といたしまして、核の問題は事前協議の対象になるということが確保されているわけでございます。その確保されている条約のワク組みが何らの変更なしに沖縄に適用される、こういうわけでございますから、この安保条約のていさいといいますか適用と、それから両国首脳の合意された基本方針というもの、これで十分に確保できる、かように考える次第でございます。ただ念のために申しておきますが、返還の協定の文言をどういうふうにつくり上げるかということは、一般論といたしましても、まだ最終的な合意まではなかなかいっておりません。
  100. 羽生三七

    羽生三七君 ただ日米共同声明の八項では、確かに「日本政府政策に背馳しないよう」にということもありますけれども、同時に、アメリカの政策ですね、「事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく」、それも入っておるわけですね。したがってどっちにこれ、ウエートがあるのか、これ問題があると思います。したがってこれ、両方あるわけですね。それが一つと、それからもう一つは、核の配置を、何かアメリカの国内法で、マクマホン法の関係で、できるとかできぬとかいうことがありますが、これは私はおかしな話だと思うのですね。国際法上の議論はいたしません。ただ、核があるなら別ですよ。ある核をあるとかないとかいうのは配備に関することです。絶対にないものなら、ないものは配備じゃないですから、そんなものを配備に関連してアメリカが明記できるとかできぬとか言うことは私は筋違いだと思います。あるんなら別ですよ。絶対にないものはないんですから、ないものは配置じゃないんですから、何もマクマホン法に関係はございません。これはどうですか。
  101. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) まず、その前段の第八項についてのお尋ねは、これはよく御承知のとおりでございまして、安保条約上核が禁止とか何とかいう条約になっているわけではなくて、事前協議の対象にしてある。そして事前協議のあった場合に日本政府の態度はこうであるということが明確になっておるわけであって、これを何らの変更なしに沖縄に適用されることに相なるわけでございます。  それから、第二段のマクマホン法その他のことがいろいろ御論議に出まして、政府として明確に御答弁申し上げておりますことは御承知のとおりだと思いますが、そういう法律があるからといって、日米間の、たとえばもしそういう法律があらゆるところに適用があるんだとすれば、日米共同声明で大統領が総理に約束をされるはずのものもないわけでございまして、こういうふうな国交関係等についてマクマホン法が適用の対象になるということではございません。この点はきわめてはっきりいたしております。それから先は一種の政策論になろうかと思いますが、ないものをないと言えるはずだとか、あるものは言えないはずだとかいうことはごもっともなお尋ねだと思います。そういう点につきましては十分御意見を体して当たってまいりたいと存じます。
  102. 羽生三七

    羽生三七君 これは、時間がわずかになりましたので、基地の縮小はその後どの程度進んでおるんですか。これは防衛庁長官ですか、どこですか。
  103. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私からお答えいたしますと、これはまず一番大事なのが原則でございます。つまり返還と同時に日米安保条約によって、日米両国政府が合意したものを日本政府が施設・区域として提供するわけですから、いままで自由に使っておりましたものとは全然性格が違いますから、その目的に応じたものを施設・区域として提供することにしたい。裏から言えば、現在基地といわれているものが縮小されるわけでございます。それからもう一つの基本原則は、沖縄の県民のために必要と認められる施設等についてはできるだけ提供するものからはずしたい、こういう二大基本方針によりまして具体的に米側と折衝をいたしておりますけれども、まだその内容等につきまして具体的な地名その他を申し上げるまでに話が煮詰まっておりません。
  104. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、時間の関係でこれ要約いたしますけれども、ちょっと結論みたいなことを先に申しますが、沖縄の基地は日本防衛という問題よりもアメリカの極東戦略の拠点ですね、要衝としての役割りが多かったんです。私はそう思っております。だからしたがって、日本に対しては過大な要求をすべきではないし、また日本も過大な要求を受け入れるべきでない、そういう前提で、たとえば安保のワクからはみ出すと思われるもの、たとえば第三海兵師団関係、それから第七心理作戦グループの問題、あるいは戦略空軍航空団の問題、陸軍第二六七化学中隊、陸軍情報学校、それからVOA、そのほかにもまだ軍港あるいは空港、あるいは対潜核ミサイルサブロックの問題、いろいろありますが、一体どの程度つまり安保のワクからはみ出すといわれているもので撤去の話が進んでおるのか、これはひとつ具体的に聞かしていただきたいと思います。というのは、もう間近に調印しようというんでしょう、あと一月か二月で。それなのにここで何も述べられないなんということはどうしても私理解できないので、少しはっきり聞かしていただきたいと思います。
  105. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ごもっともでございまして、安保条約によって日本の安全、それから日本を含む極東の安全に寄与するという目的のために施設・区域が日本から提供されるわけですから、その施設・区域を活用する軍隊というものはおのずからそれによって目的、性格というものが限定されると考えるのは、これはもう自然のところであると考えます。同時に、軍隊というものの性格から申しまして、能力があるからといって、そうしてそれが提供される施設・区域ではその能力が限定されるわけでございますね。そういうものでございますから、核とか毒ガスというふうなものはもちろんさい然と別でございますけれども、ある種の軍隊の持てる能力等については必ずしも非常に限定された基準というものが当てはまらない場合があり得るかと思います。そういう点も含めまして、アメリカ側に十分当方の考え方というものを通じ、また話し合いをいたしまして、いま申しましたような基本的な考え方に沿うようにいたしたいということで鋭意折衝いたしておるわけですが、ただ、これはおことばを返し、また恐縮に存じますが、一つ一つの部隊等について何がどうでこうというところまでまだ申し上げるまでに至っておりません。
  106. 羽生三七

    羽生三七君 これがたとえばこの心理作戦グループですね、ある特定国を対象として、これは中国本土、北朝鮮、北ベトナムなどに数十億万枚のビラをまくというんでしょう、宣伝謀略の。あるいは戦略空軍の中のSR71戦略偵察機、これはマッハ三・三で、しかも二万四千メートルの超高空を飛んで水爆を搭載できるという。それは中国領土に入らぬということを条件をつけて何かしばらく延ばすということを言っておられますが、そんなことはわかりっこないんですね。U2型機のときの例もありますね。だから二万四千メートルの高空を飛んでいって、一々日本がそれは中国領土に入ったか入らないか検証できるはずがない。ですからそれを暫定的にも認めるんですか。いま現在の時点では、外相、どうお考えですか。
  107. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 他国の領空、領海等に浸入して云々というようなことは確かに好ましくないことであると思います。ですからそういう考え方に立って交渉を煮詰めてまいるべきものであると思います。同時に、法制的、条約的に申しますと制約があるわけでもございますから、そういう点とにらみ合わせて十分努力を続けてまいりたいと思います。
  108. 羽生三七

    羽生三七君 時間がないのでたいへん残念ですが、たとえばVOAですね、この場合も、中国あるいはベトナムあるいは北鮮等に対する謀略放送だということはこれはもう明瞭なんですね。だからもし暫定的にでも認めれば、これは一年半か二年ですか、あるいは三年になるかもしれない、それがやはり日中間の一番大事な時点ですよ。日中関係をもし打開する話し合いをするというなら、この二、三年が一番重要な時点ですね。そのときにそういうことを許すなんということは、私は外交というものはどこにあるか疑いたくなってくる。軍事優先ですよ。これはもう絶対にいまのこういうような謀略関係のものを沖縄に残すということは、私は暫定的にしても考え直していただかなければならぬ。私は特に強くこれは要請したいと思います。これは日本がほんとうに平和愛好国家で、自国の防衛以外に何らの余分な意図がないということを立証するためにもこれを明らかにしておく必要があると思いますので、私は重ねて念を押しておきます。
  109. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) VOAは確かにお話しのとおり、これは軍事施設ではないし、提供する施設・区域というような問題ではございません。アメリカの組織としてはUSIAに所属しておる機関でございますから、この実体等についてはとくと調べまして、ただいま御要請がございましたが、その御要請の趣旨を十分体してまいりたいと、政府としてもさような考え方でおります。
  110. 羽生三七

    羽生三七君 もしこれを拒否すればどういうことになるんですか。何か返還条件上に悪いことが起こるんですか、どうでしょう。
  111. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) まあこれはアメリカが現に持っているUSIAの施設でございますから、向こうの立場からいえば、これはこれこれの性格のものであり、同種の施設が友好国であるイギリスにも、西ドイツにも、あるいはアジアではセイロンにもあって、こういう活動をしておりますということを説明はいたしております。しかし、それはアメリカ側の説明であり、言い分でございます。
  112. 羽生三七

    羽生三七君 断わったときにどういう反応が起こるか。
  113. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは今後の折衝に待たなければなりませんで、まだこれで決着がついたというようなところまではいっておりませんから、先ほど申しましたように、御要請のありますところを十分体しまして、私としてもできるだけの努力をいたしたいと考えております。
  114. 羽生三七

    羽生三七君 それで、あとに関連質問があるようですから、この問題について一応まとめますが、これまでの質疑を通じて明らかになったことは、このような形での返還では本土並みとはいえないのではないか。これは言われておるように、要するに施政権は返還されても、基地の中の沖縄、米戦略、極東戦略拠点としての沖縄という印象があまりにも強くはないかと思う。  したがって、私は、時間がないのでこれ一々、たとえば今度は米国に対する資産関係の問題、ここに一ぱい問題を私整理してきました。このほか軍港の問題、それから空港の問題もあります。それらの問題を聞く時間がありませんけれども、本土並みというのなら、本土並みに値するような、いわゆる基地機能を整備するように、特に外国に対する謀略関係のものは、絶対にこれを認めることのないように強く要請をいたして次の質問に移ります。
  115. 鈴木強

    鈴木強君 関連。二つの点でお尋ねしたいのですが、一つは、沖縄返還交渉が政府の御苦労で順調に進んでおるようですが、羽生委員質問しましたように、一体いつ返ってくるかということは、これはもう国民の一番知りたいところでございます。ですから、四月一日という問題については、外務大臣も、日本国の立場からすれば、早い機会ということで御尽力をされておると思いますが、一体、それは相手のあることですからむずかしいと思いますが、基本的には四月一日を主張しておやりになっていただきたいと思いますし、その見通しはどうかということをもう一回念を押しておきたいと思います。  もう一つは、核抜きのことですけれども、これは分科会のほうに外務大臣の御出席をお願いしましたけれども、他の委員会の関係で出ていただけませんでした。そこで、私はここで伺いますが、核抜き返還ということは、佐藤・ニクソン会談できめられていますね、共同声明で。したがって、私は、沖縄返還交渉の中でこの点は明らかにされるべきであるという考え方に立つわけです。そうであるならば、いま現在沖縄に、まあメースBは引き揚げましたが、ミサイル基地の中に核弾頭がつけられるものがあるということを聞いておるわけです。ですから、そういったものが返還期にあるのかないのかということをやはりはっきりしていただきたいというのが私は国民考え方だと思います。あえて核抜きをきめたのは、やはり日本国民の、世界の各国の人たちに比べてもより強い関心があるだろうと私は思いますので、この点ははっきりしていただきたいと思います。一説によると、日本政府のほうからアメリカにお願いをして、そして何かニクソンさんに核は抜けたという声明か何かしていただいて、それで条約の中には書かないとか、交渉では見送って、要するに安保の適用ということによって糊塗しようというようなことも聞くわけでして、この点非常に心配ですからはっきりしてもらいたいと思います。  それから特殊部隊については、これもあなたに聞きたかったのですが、なかなか問題があると思います。防衛庁長官は安保条約の解釈上当てはまらないものは出ていってもらう。こういうことを明確にお答えいただきました。個々の問題については伺いませんけれども、極東の範囲を越えて出動するようなものがあるとすれば、それは明らかに安保条約にも触れるわけでありますし、できれば自然にそういった怪しげなものは引き揚げていただくことが原則ですけれども、そういう点についてもひとつ安保の解釈上からいっても危険なものがあると思いますから、二つの歯どめによってこれは処理するのかどうなのか、その点を明らかにしてもらいたい。これだけです。
  116. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 返還の期日の問題でございますが、これはただいま鈴木委員のお尋ねのとおり、まだ先方、相手のあることでもございますししますが、私どもといたしましては、会計年度の関係はもちろんでありましょうし、それから琉政の発足の記念日でもございます、四月一日は。そこで、かねがね沖縄の方々からも非常に強い御要請がございますので、しかとこれを腹に入れまして現に交渉に当っている次第でございます。  それから核抜きにつきましては、ただいま羽生委員にお答えいたしましたように、安保条約の本土並み変更なしの適用ということと、それから総理・大統領の共同声明、これによって骨組みといいますか、これは十分にできておると、こういう基本姿勢の上にやってまいるつもりでございます。もちろん返還のときには核抜きで、きれいな形で返ってくるということに相なるはずでございます。  それから第三の、こういうふうに申し上げればいいかと思いますが、余剰能力とでも申しますか、安保条約からいいますと、それをこえた活動をやるような力のあるもの、あるいは安保条約の目的からいえば、非常に逸脱しているようなもの、これは好ましくないということは、先ほども申しましたとおりで、その考え方を基本にいたしましていろいろといま折衝をやっておるような次第でございます。
  117. 鈴木強

    鈴木強君 私の質問によく答えてないですよ、非常に不親切ですよ。アメリカに対して大統領の声明かなんかでお茶を濁ごそうというようなことは。
  118. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 失礼しました。そういうことは考えておりません。アメリカの大統領に何か声明を出してもらうようなことをやっているのではないかと、そういうことは、現在そういうふうな話し合いはやっておりません。
  119. 鈴木強

    鈴木強君 核抜きということを共同声明にうたったのは、返還の交渉の段階でそういうことをはっきり確認すべきだから、日本が向こうに行って確かめてもらわなければならぬ、沖縄に行って。あなた外務大臣の目で確かめたらいい。
  120. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 核抜きになりますことは、私はただいま申しましたことで十分かまえといいますか、ワク組みはできておると、そういう考え方に立っておるわけでございます。そこで、ないものはないんだということをどうやって確認をして安心をさせるのかというお尋ねだと思いますが、そういう点については、先般来当委員会におきましてもいろいろと関係者から申し上げておりますように、いろいろくふうをしてみまして、何とか、いやが上にも沖縄の方々をはじめ国民的の御納得を得るような方法をとくと考え、また措置するようにいたしたいと存じております。
  121. 羽生三七

    羽生三七君 いまの核抜き検証問題は、あとから防衛庁長官にその後どうされたか伺いたいと思いますが、最後に、核抜き、きれいにすると、いま外相のお話ですが、核がなくなった場合に、しかし、それでもアメリカの核抑止力には日本は依存するわけですね。その場合に、アメリカの核抑止力は、それはポラリスか、あるいは第七艦隊か、あるいはICBMか、あるいは近隣諸国か、それは問いません、そんなことは問わないが、その場合、日本はアメリカの極東の核戦略ですね、日本防衛ということに対する核戦略については、何らの協議も何もないのか、すべてアメリカまかせか、これはどうなっておるか、これは防衛庁長官ですか、お伺いいたします。
  122. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本が自己の防衛上アメリカの核抑止力についてはこれに依存しているということはわがほうの方針であります。このことは佐藤総理とジョンソン大統領との共同声明あるいは私とレアード国防長官との会談等において意思表示もあるわけであります。しかし極東全般にわたるアメリカの核戦略というものに対してわれわれが介入するということはありません。抑止力に依存するという部分においてはもちろんわれわれとはある意味においては連係があるわけではありますけれども、アメリカの極東核戦力にわがほうが介入するということはありません。
  123. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと長官、介入するんじゃないんですよ、あちらさままかせですかということです。
  124. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 極東の戦略というものはアメリカはアメリカ固有で立ててやるわけです。日本の防衛戦略というものは日本が日本で固有に立ててやるわけです。それは並行して行なわれておるのでありまして、その点についてわれわれがとかく介入という――介入というと表現がオーバーでありますけれども、参加するとかあるいは意見を言うとか、そういうようなことはありません。
  125. 羽生三七

    羽生三七君 それからもう一ついまの総点検問題。
  126. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 沖縄におきましては核の問題と毒ガスの問題につきましては非常に県民の方々が御心配になっているわけです。日本におきましては、本土では核がありませんでしたけれども、沖縄におきましてはメースBがすでにあったという事実もありますから、沖縄の皆さんの御心配もわれわれは想像できることです。そこで大統領と総理大臣の厳粛な声明があるので、それはもちろん実行されることは確信してやみませんけれども、いやが上にも沖縄の皆さんに安心させるような措置を講ずるということは政治的に本土のわれわれ考えなきゃならぬと思っているわけです。しかし軍事基地をほかの国の者が点検したり、検分するということはこれは国際儀礼上ないわけです。ですからこれは両国の合意に基づいて好意的な措置として何らかの便法を講ずることが日本とアメリカ及び沖縄の民衆と米軍当局との友好上非常に望ましいと私は思います。そういうおもんばかりから、たとえばナイキの基地につきまして、アメリカ側は日本側に対して条件が合えば譲りたいという話もあります。そこでいま調査団が行きまして、一体どんなものがあるか、どの程度古いか、もし譲るとすれば性能はどうか、値段はどうか、あるいは核との関係はどうか、これを転換する場合にはどういう措置が必要でどれくらい金がかかるか、そういうようなことをいま視察にやっているわけであります。ですから、沖縄が返還されまして、そういうようにナイキの基地を引き継ぐということがもう出てくるわけでございますから、返還と同時に連絡員を派遣するとか、あるいは要員を派遣するとか、そういうことによってその問題は私は確認できると思いますし、そういうことをしたいと思っております。そのほかの心配している向きがもしありますとすれば、米軍当局とよく話し合いまして、合意の上でそういう両国の国民が安心し得るような措置を技術的に講じてみる努力をいたしたい、こう考えているわけであります。
  127. 羽生三七

    羽生三七君 その問題は一そう促進することを期待いたします。  そこで最後に、防衛庁長官は国防の基本方針を改定する作業を始められるようでありますが、これはどのような方針で改定されるのか伺います。
  128. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題は事務レベルで検討を続けておりますけれども、私個人といたしましては次の新防衛力整備計画が正式にできます前後に適当な修正、補足ということを講じてみたいと思います。その趣旨は、次の新防衛力整備計画が正式にできる――いままですでに軍国主義とか何とか言われて、私から言わしむれば、理由のない非難や何かがありますけれども国民の皆さんの中にも不安を持たれる方がないとも限らない。したがってそういう万一にも軍国主義やその他に走らないようにちゃんとブレーキをかける必要もあるわけであります。そういうことも考えまして、たとえば総理がいままでよく言われておりますように、憲法を守って文民統制のもとに国防は行なうべきである、そういうような思想を修正、補足として入れたらどうか。まあそういうようなことを私としては考えているわけであります。
  129. 羽生三七

    羽生三七君 非核三原則はどうですか。
  130. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私といたしましてはそういう思想を入れたいと思っているのです。しかし、その表現をどういうふうにするか、これはもう関係各省、各大臣の御意見によってきまることであります。
  131. 羽生三七

    羽生三七君 総理大臣は、その国防の基本方針改定に同意されておるわけですかどうですか。
  132. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いままで国防の基本方針、ここであまり論議されておりませんが、かつては論議されたが、最近ないんですね。ところが中曽根君からみますると、やはり憲法との関係を明確にしておくことが必要じゃないか。あれは憲法の関係が全然出ておらないんです。まあその辺は私は賛成でございます。そうして専守防衛というようなことばも使っておりますが、そういう点があとでいろいろ誤解を受けるようなことのないように、憲法の規定、この条章を守って、それに従ってというようなことは適当なる表現方法じゃないかと、まあそういう意味で誤解のないようにもう少し案をよく練ることだと、かような中曽根君に対しては話をしておる次第でございます。
  133. 羽生三七

    羽生三七君 案を練ることには賛成なんですね。
  134. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 案を練らないと、途中でひょっと出ますといろいろ議論をかもしますから、そこらはよく各関係省と相談をしろ、こういうことを言ってあります。
  135. 羽生三七

    羽生三七君 いまの非核問題は、あとから関連質問もあるようですからあとからにいたしますが、この国防の基本方針をもし改定するなら、私ひとつ次の提案があるのです。そうすれば外国から軍国主義国家などと言われないで済むと思う。それはですね、今日外国からいろんな批判を受けておるわけですが、その場合、日本に対する直接攻撃がない限り――日本に対する直接攻撃、それがない限り、日本はいかなる軍事行動をとる意思もないし、またアメリカと共同行動をとることはないことを明記することです。こうすれば、私軍国主義という批判は中国は二度と言わなくなると思う。これならば軍国主義批判に対する最高の私は回答になると思うのです。つまり直接侵略のない限り日本みずからあるいはアメリカと共同して軍事行動をとる意思はない。これを明記することです。これをやる意思はありませんか。
  136. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 有力な御提案だと思います。それはまあ専守防衛ということをそういう表現で御表現なすったようにも考えられますが、よく検討してみたいと思います。
  137. 上田哲

    ○上田哲君 関連。総理伺います。  いまの国防の基本方針の改定に関連をしまして、根本的な考えとしてさきの非核中級国家を非核専守防衛国家に変えて統一をされました。一体これは国家構想なのでありますか防衛構想なのでありますか。それから中級ということばがぐあいが悪くて非核専守防衛ということばに変わったということでありますと、どこがぐあいが悪くて、そして非核専守防衛という構想の内容はどういうことを総理は指向されるのでありますか、まずその点を伺います。
  138. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 第一問のほうはちょっと私によく聞きとれないというか、何を聞いておられるのかよくわからないのです。
  139. 上田哲

    ○上田哲君 防衛構想か国家構想か……。
  140. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国家構想というのがわからないんですよ。
  141. 上田哲

    ○上田哲君 非核専守防衛国家です。
  142. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それはもうどこまでも防衛構想であることは間違いない、かように御理解いただきます。  それから中級国家、これも、軍国主義でも弱い国が中級国家かもわからない。そういうたいへんな誤解を招くおそれがあると、かように私思いますので、日本は強かろうが弱かろうが、いずれにしても軍国主義じゃないんだと、そういうことをはっきりさすべきだ。そこで専守防衛と、これなら間違いないだろう。こういうように表現が変わっておるわけです。どうも中級国家というものになりますと心配だ。だんだん中級から高級になってくると、これは完全に軍国主義だ、こういうことに、いまねらわれておるのはそういうことじゃないだろうかと、かように思いますが、どうも聞かれる皆さん方のほうにも中級国家という聞き方は一体どこに重点を置いているんだろうか、軍国主義には変わりはないんだと、かように思うから、軍国主義でないことをはっきりさすべきだと、かように私は思っております。
  143. 上田哲

    ○上田哲君 そうしますと、国家構想であったら私はたいへんだと思うんです。名前が非核専守防衛国家ということばになっておりますから、そこで念のために確認をしたわけでありますが、総理が三月九日に非核中級国家ではなくて、そういうことばを使わないんだということを言われた翌日に、パレスホテルで、経団連、日商、同友会、日経連の共催の懇談会に出席された御挨拶の中で、このことをはっきり否定されておる、非核中級国家は使わないと。そのときに漏れ聞くところでは、中級ということばがたいへんにぐあいが悪い。私どもは中級がいいかどうかは知りませんけれども、少なくとも巷間いま総理のことばとして受け取られているように、どうも経済大国ということばとオーバーラップして、もっと大きくなきゃならぬ。日本は大国であるというところが防衛構想の中に、中級ということばと矛盾して、飛び込んできて、大きくなきゃならぬという指向性を中級で歯止めされてしまったらいかぬという感触がにじみ出ているように思われます。そうじゃないということじゃないと、防衛構想であると、そして中級ではいかぬということになると、大きくあるほうがいいじゃないかということになるんじゃないか。少なくとも中級ということばの中にはウエートを示す指向性があったと思うんですが、それが専守防衛ということばになったことによって、そういう歯止めがなくなって、再び国防の基本方針の文言を使うならば、「国力、国情」論ということばの中で指標されていたことにまたつながってくる心配があります。はたしてそういうことであるのか、ないのか。中級ということばを隠されたということは、決して上級あるいは大級ということを防衛構想として持つのではないということをやっぱりしっかり伺っておきたいということが一つ。  それから、国防の基本方針を改定なさるということであり、しかも明らかに非核専守防衛というのであれば、国防の基本方針の改定の中には非核ということをはっきり盛り込まれなければならないということになると思う。その辺の決意総理から承りたいと思います。
  144. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もうしばしば言うのですから誤解はないと思いますが、あらゆる機会に経済大国にはなっても、過去の歴史がたどったように、経済大国即軍事大国、さようなことはやりませんと、こういうことをはっきり申しております。またそういう感じがどこかに出てくるような中級国家というような表現はあいまいだと、かように思いますから、これはもう軍国主義化しないんだということをはっきりうたったつもりであります。また、いまのその非核専守防衛国家、これはもう非常にはっきりしているんで、防衛国家、これはもう専守防衛だと、そうして非核というところにやっぱり重点を置いていいんじゃないだろうか。これはいま表現が、どういうように今後防衛の基本方針、これを変えるか、まあ先ほどいろいろ議論されてる最中でございます。いまの上田君の御質問のような点が誤解を受けないようにしたいものだと、かように思います。
  145. 上田哲

    ○上田哲君 はっきり言えますか。
  146. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それがまだはっきりわかりませんから、それは十分御意見のあるところを伺っておきます。
  147. 羽生三七

    羽生三七君 この防衛力の限界ですが、これは具体的なことは聞きません。  ただ、四次防で政府の目標なり、意図のどの程度が達成されるとお考えになるのか。そこにはまだ天井がなくて五次六次といくのか。腹づもりとして、長官はどの程度第四次防で目的を達せられると考えるのか。
  148. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体海のほうの力はまだ不足しているように思います。次の防衛計画におきまして日本近海において潜水艦の跳梁を許さない。近海とは、尖閣列島から沖の鳥島、南鳥島その辺をずっと包む日本近海である。そういうことを申し上げておりますけれども、そういう構想から見ますと、海上自衛隊の力はまだ十分とは言えないようです。  それから日本の防空力の面におきまして、ナイキ、ホークがそれだけでまだ十分であるとは言えない。大体重要な海峡であるとか、政経中枢の上についてはある程度の防空の網を張っておく必要がありますが、それがまだ完全にはまいらないと思います。  それから国産兵器と、アメリカから第二次世界大戦後譲り渡された無償有償援助できたもの、特に無償援助できた第二次大戦の古い兵器がまだ多分にございます。これらが大体いま五対五であるのが八対二ぐらいになりますけれども、これが将来でき得べくんば一〇〇%アメリカの第二次大戦の古い兵器はもうやめにしたい。そういう点におきましてもまだ十分ではございません。しかし、次の新防衛力整備計画ができますと、ややかなりの力が概成できると思います。したがって、その次の計画になると、その概成したもの中で足りない部分を補っていくとか、補修していくとか、そういう形に変わっていくのではないか。しかし、戦闘機やそういうものになりますと、耐用年数がありまして、常に新しいものへ、新しいものへと更新されていくわけです。そういう意味におきましては、機種その他において性能の向上ということが当然見込まれていくと思います。  大体そういうところであると思います。
  149. 羽生三七

    羽生三七君 後段のところはそれでいいんですが、そうじゃないんですよ。目標を一〇〇とした場合に、ほぼ四次防で、割合で言えば、何十%ぐらい達成できるかとお考えになるか、そういうことです。後段のほうはいいんです。
  150. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ちょっと、数量的に表現することはむずかしいと思いますし、まだ正確にそういう数量計算をしたことはありません。が、しかし、大体七、八合目ぐらいまでくるのではないか。自分の感じとしてはそういうふうに感じます。
  151. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、国会でも非核宣言はしない、沖縄返還協定にも非核を明記できるかどうかわからない、国防の基本方針を改定する場合にも非核三原則が入るかどうか、これも疑問だと。一番入れんならぬことをどうして避けるのですか。どうしても理解に苦しむのですね。これこそ日本が、原爆被災国としての日本がこれこそ一番明記せぬならぬことをすべて避けていくわけですね。どうしてもそれが私にはわからない。ちょっとこれは説明を聞かしていただきたいと思います。どなたですか、これは総理ですか。
  152. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 核兵器というものはこれはもうたいへんな威力を持っているものだ、これはもう御承知のとおりであります。これが一体核兵器があると言ったほうが抑止力になるのか、ないと言ったほうが抑止力になるのか。私どもは核兵器を持ちたくない。だからこそ最高のところで非核三原則を確認し合ったと、こういうことでございます。しかしながら、国民の皆さんから見ると、日本に核は全然ないのだ、もう安心だと、こう言われるから、とにかくわれわれはかつて本土がよもや空襲されるとは思わなかった――本土が空襲されたその経験を私や羽生君はよくおわかりだと思います。ちゃんと経験したのです。ところが、このごろの若い連中はそういう経験は持っておりません。三十代の方は、戦争に、外地には出て行ったけれども、本土が空襲を受けた、そういうことにはなかなかぴんとこないのじゃないだろうか、かように思います。  まあ最近、関東大震災になると、これはもう私どもの大学生の時代ですから、これも震災のおそろしさがわからないことはこれはもう当然だと言ってもいい。しかし、戦争で空襲を受けたその経験、その苦しさというものは、これはなかなか簡単に説明できないのじゃないだろうかと思います。やはり何といっても戦争の起こらないような状態、これが望ましいのではないか、かように思っております。  私は、いま日米安全保障条約というものが一体何を果たしておるのか、かように考えたときに、日本の自衛力を充実して、攻めてきたらこの自衛力で十分働くが、やっぱり何といっても日米安全保障条約、それが戦争抑止力がある。その抑止力があるということは、アメリカが持つ核の力だと、かように私は理解しております。  したがって、その点でわれわれはアメリカに核の抑止力を期待している。それをさらに、どの地域にはあるんだとか、ないんだとか、絶対におかさないんだと、こういうことがわからないわけじゃありませんが、いま最高のところで非核三原則をお話しし合っている。それをやっぱり信頼していただいてもいいんじゃないだろうか。どうしてもそれが心配だと――あんなには言っているけれども、核が持ち込まれる、やるんじゃないだろうか、こういうような心配をはたしてすべてが持つかどうか。私はそこの点を、もう少しやっぱり、政治の担当者の責任において処理されることだ、かように考えられてもしかるべきじゃないだろうか。国民大多数はむしろそのほうを期待しておる。政府に頼んでおけばこの国は守ってくれる。日米安全保障条約――一部に廃棄論はあったが、やはり安保自動延長、これがやっぱりあまり抵抗なしにそのまま過ぎているということを思うと、やっぱり日米安保条約、これは必要なんだ、かように私は理解しているんですがね。ただいまの点でわれわれは、核はつくらない、使わない、持ち込みも許さないという、この非核三原則、これは国民皆さん方にはっきりとお約束をし、また皆さん方にそれを訴えておる。まあ、世界で最初の被爆国だ。今回は天皇陛下もお立ち寄りになるという、そういう状態でございます。われわれやっぱり新たにして、非核――核のない世界、そういうものをぜひとも実現したいと思います。  そういう意味から申し上げておるのでございまして、私はいま、ただ政府を信頼しろ、それだけ申し上げてもなかなか疑われる。これはどこまでいっても疑われる問題じゃないだろうかと思います。ことに、もう核はないんだということになると、相手方とすればたいへん安心だ。絶対に日本は核兵器は使わないんだと。核のないところ、そういうものと対等に話をするという、それは、その心配ないんだというたいへん見おろした考え方にもなりやすいんじゃないだろうか。やはり防衛体制とすれば、そういうところに日米安全保障条約の存在が必要なんだ。どういう際にその核を使うかという、そういうことをアメリカからはっきりさすという、そういう筋のものでもないんじゃないだろうかと私は思いますが、これはたいへん議論のあるところで、これはわずかの間にお話しすることも、あるいは説得することもできないかと思いますけれども、私は、ただいままでのところ、経過から申しまして、最高の責任者が約束したと、それを十分ひとつ信頼してくださいと、かように申し上げる以外に、実はそれより以上の説明はないように実は思っております。
  153. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっとその御答弁まずかったと思うのですがね。私、アメリカの核抑止力を言っているのじゃないのです。日本は持たぬというのだから、それなら明らかにしてはどうだ。しかし、アメリカの核抑止力依存ということは、先ほどお話があったからそれを言っているわけですが、そこで、これで終わりますけれども、いずれにいたしましても、軍事力だけが一国の安全保障の手段ではないのですから、たとえば、日中で国交回復して、日中不可侵条約を結ぶとか、あるいはソ連とも不可侵条約を結ぶとか、そういう外交による安全保障ということをもう少し真剣に日本でもお考えになってはどうかと、一片の条約が何の価値があるかというようなことになればこれは話は別でありますが、そういうこともお考えいただきたい。  それから、経済問題では、人間のしあわせのためにほんとうにいい経済政策の運営をやってもらいたいし、日中問題を打開し、沖縄も真に本土並みの返還を勝ち取り、防衛力はいま申し上げたように、それだけの増強ではなしに、外交手段を使って日本の真の安全のために一そうの努力をされることを希望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  154. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもって羽生君の質疑は終了いたしました。  午前はこの程度にとどめ、午後一時三十分に再開いたします。  それまで暫時休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十一分開会
  155. 古池信三

    委員長(古池信三君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。竹田四郎君。
  156. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 きょうは総理の古希のお祝いでおめでとうございます。このあとでいろいろ選挙違反の問題をお聞きするわけでありますが、あるいは失礼になるかと思いますが、その点をお許しをいただきたいと思います。  まず、自治大臣、国家公安委員長にお聞きしたいと思いますが、ここに東京都教育振興連盟、これは全国の中学校長会の団体だということでありますが、ここでこういうビラを出して町内会を回覧をしているという話であります。さらにここには「都議会自由民主党」という文字がありまして、やはりこういうビラが十八日の毎日新聞の朝刊に折り込んで三多摩のほうをまかれたというわけであります。こういうのは一体選挙違反のビラではないかと思うんですが、どうですか。ちょっと見てください。そういう形で選挙ルールにきめられていないビラがたいへん出回っているわけでありますが、こういうルールに違反したビラについて、一体国家公安委員長はどんなふうにお考えなんですか。取り締まりをするおつもりですかどうですか。
  157. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答えいたします。  不偏不党、厳正公平な取り締まりを志しておりますが、具体的には政府委員からお答えします。
  158. 高松敬治

    政府委員(高松敬治君) このうちの「″東京大地震″」「こうして都民を守ろう」、これにつきましては、これは三月の十六日だったと思いますけれども、市内一般に折り込みで配られた。これにつきましては、私ども調査いたしまして、これは政治活動の文書であるというふうに考えました。この点はこの前の法務委員会でもそのように御答弁をいたした次第であります。それからあとのこの二枚のビラ、教育振興連盟のビラは、実はこれは私初めて見るビラでございますが、これについては違反の容疑があろうかと思います。調査をしてみたいと思います。それから毎日新聞の折り込み、十八日のビラにつきましても、これは私も初めて見るビラでございますけれども、これについても調査をしてみたいと思います。ちょっとこのビラ自身で直ちにこれが違反文書になるかどうかということは、もう少し調査を進めてみなければ判断いたしかねると、かように思います。
  159. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 総理にお尋ねしたいと思いますが、三月二十三日付の自由新報という新聞がございます。発行所は自由民主党本部ということになっておりますが、この五面ですか、ここに三月の十三日に武道館ではたの章氏の激励会がありました。そこへ行きまして佐藤総理は、自民党の総裁ということだそうでありますが、その中にこういう記事が載っております。「わたくしは総理大臣や党総裁という資格でいうのでなく、″東京の心・都民連合″の一会員として先ほど入会手続きをとって参加しました。はたの君の四兆円ビジョンの実現のために、新しい予算に一億円の調査費を盛り込んでいる。はたの君を立派な知事にさせ、住みよい東京をつくろうではありませんか」と、こういうふうに呼びかけていたという記事がございますが、総理はそういう趣旨の御発言をなさったことがございますか。
  160. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへん――選挙の始まる前ですから、私なるべく違反行為にならないように気をつけたつもりでございますので、その前半は、さようなたまたまその会に私が出た、しかも都民連合の一人として出た、これはそのとおり間違いございません。そしてその席で、いわゆる四兆円ビジョンというものにも私も賛成の一人でございます。それからいま大都市問題とは、これは東京に限りませんけれども予算で御審議をいただいておるように、ただいまの一億円というものを計上はいたしております。それがいま四兆円ビジョンと直接つながりがあるようにそれではなっておりますけれども、そこのところは違います。ことにあとの投票を依頼したというそういう点はやや違います。やや違うというのは、私自身がそこに出ておりますから、それはなかなか納得されないだろうと思いますが、そういうような状況であります。
  161. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 総理に重ねてお尋ねしたいと思うのですが、そうすると、この一億円というのは別に四兆円ビジョンとは関係ないわけですね。
  162. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは大都市問題としての調査費用でございます。それはもう首都圏全体というか、さらにまた大阪や名古屋あたりにも使って差しつかえない金だと思います。
  163. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと、この記者が誤ったのかどうかわかりませんけれども、自由新報の記事等は正確でないと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  164. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま少し私も記憶があるいは薄れておりますから、そういうように先ほど来お答えしたような気持ちでございますので、その記事のとおりでないと、そこらはやや違っておると御理解いただきたいと思います。
  165. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それじゃ私はこの一億円というお金は四兆円ビジョンと関係のない一億円だと、このように理解いたします。  次に移っていきたいと思います。パイプライン問題についてお尋ねをしたいと思います。最近パイプライン問題たいへんやかましく新聞で書かれております。私はこれはパイプラインというのは新しい一つのやり方でありますし、これは当然どこかきまった省がその所管をし、責任を持つというあり方が適切であると考えるわけでありますが、今回関東内陸部にパイプラインを建設するということで、通産、運輸両省がたいへん縄張り争いをしているように思います。総理のほうからも建設大臣を中心として、両大臣にひとつ調整の話し合いをしないか、こういうふうにお示しになったそうでありますけれども、新聞の報ずるところによりますと、この調整もまとまらなかった、こういうふうに新聞は書いておりますけれども、その辺のいきさつ、どういう点でまとまらなかったか、これは私ども非常に関心を持っておりますし、国民も関心を持っておりますが、いかなる点でまとまらなかったか、そのポイントをひとつお尋ねしたいと思うのですが、これはむしろ調停役をなされた建設大臣からお伺いしたほうがよろしかろうと思います。
  166. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。  パイプラインの必要性は御指摘のとおりでありまするが、これについて申し上げることはいま当面の答弁じゃありませんので、どうした関係で調整ができなかったかということでございますが、これは内閣として、今国会は非常に短期間でやらなきゃならない。そこで三月の十六日までに閣議決定しなければ政府提案はできない、こういうふうに約束しているわけでございます。ところで、その前日でございますからして、なかなかこれは立法上むずかしい問題がたくさんございます、日本で初めてでございますから。そういう関係ですぐにこれを立法措置して提案するところにはいっていないということが主たることで、今国会には間に合わないということです。引き続いて三省間で検討するということでございまするが、見解の相違はどこにあるかと申しますと、運輸省としては、これはパイプラインは一つの輸送機関の変形したものである、したがって輸送を担当するのは運輸省である、そういうことでそういう見解を持っておられます。ところが、欧州等においては、むしろこれは一つの商品をいかにして安定して、かつ低廉にこれを目的とするところまで届けるかということで、それはむしろ商品としての合理化、そういうところに重点を入れておりますので、欧州では大部分の国がほとんど日本でいえば通産省所管になっている。したがって、これは輸送手段として見るところもあるけれども、やはり物価政策、それから安全性、こういう点から見るべきだというところで、そこになかなかまだしっくりいかないところがあったことは事実でございます。で、建設省がこれに関連しておるのは、パイプラインをつくるときには鉄道を使おうとも何を使おうとも、大部分が将来は公共用地としての河川敷あるいは道路敷を使うようになるであろう、そうすればこれは建設省の所管事項に関係するから関連すると、それからこういうパイプラインを設置するときにあたっては、また民間の用地をこれは使わしてもらうことも必要がある。そういう場合には必然的にこれは収用権の問題が出てくる、それも建設省の所管だ。こういうことがからみ合っているので、すぐに合意するにはまだ時間が足らない点があるから、それでこの国会が終わってから引き続いてこの問題を検討したいということで今日に至っておる段階でございます。
  167. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 運輸大臣にお尋ねいたしますけれども、これは新聞報道あるいは私の地元あたりで国鉄関係者がおっしゃっているお話、こういうのを聞いてみますと、国鉄は四月から直ちに工事に入るつもりだ、こういうふうなことをおっしゃっているわけでありますが、四月から工事に入りますか。
  168. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 先ほど竹田さんから縄張り争いじゃないかというお話でありますが、まあ特に縄張り争いというわけでもありませんで、いわゆる新しいことが出てまいりますれば、いずれともきめがたい問題が出てくるわけであります。たとえば今度のパイプライン輸送のごときは、輸送事業か供給事業かということで、まあこれは閣僚としてもお互いに意見の交換をすることは当然でありますから、ただ一回だけの会議ではまとまらなかったというだけの問題であります。運輸省としては四十四年の閣議決定で、国鉄再建基本方針の中でパイプライン事業を付帯事業として行なうということをきめております。したがって、当時から国鉄では自分がいま御承知のように鶴見線はいわゆるレールで油を運んでおります。これが四十七年の十月ごろになりますと、民間の需要の増大に伴って、それ以上にレールで油を運ぶことができなくなります。したがって、こういうある意味においては危険物でありますから、こういうものを今度はトラックで大量にそれ以上運べないものを道路で運ぶということになれば非常に危険があるのみならず、油をいままで運んでおった国鉄でありますから、その輸送の潤滑化をはかりたいというので、当時からこの計画を進めて、すでに工事計画書のようなものはできておるようであります。昨年度も工事を始めたかったのでありましたが、いろんな都合でもってこれが延びまして、四十六年度の予算には、皆さんの御審議を願っておりますが、その工事費の中に約四十億の予算が組まれてあります。したがって、これが将来、もちろんこれは民間でやることも可能でありますから、民間の輸送事業として、たとえば国鉄があり私鉄があると同様に、パイプライン事業においてもそういうことがあり得ると思います。ただ問題は、意見の相違になったのは、輸送事業か、単なるガス、電気のように供給事業かという点で議論がまだ煮詰まってはおりませんけれども、一応国鉄としてはいま申したような将来計画から見て、四十七年の十月にはもうレールで送れないのだ。そうなった場合に、何十台、何百台というトラックで油を運ぶことの危険性があるわけであります。そういうことからして、どうしても四十六年度の四月からにでも工事が始まりませんと、いわゆる四十七年の十月に増大してくる油を切りかえることができない。こういうことからして国鉄当局としては四月からひとつ工事を始めたい、こういう意向を持っておると聞いております。
  169. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵大臣にお伺いしますけれども、このお金は大蔵省はお出しになりますか。
  170. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国鉄の予算の中に四十億円計上されております。これは予算に計上されておりますので、予算が成立いたしますれば、これはそのとおり実行願う、そういう考えです。  それから通産省のほうに、あれは五千万円でありましたか……
  171. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 七千三百万円。
  172. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 調査費が組んでありますが、これも調査をいたすということにいたしたいと存じます。
  173. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 日本では初めてのことであります。それから私が調べた範囲では、鉄道のわきにパイプラインをいけている例は世界でもまれだそうであります。しかも、十分に両省の間あるいは国鉄を含めて、あるいは石油連盟等も含めて十分話し合いがついて――総理が調整しろというお話を出したけれども、それも調整はまだできていない。こういう形で、この問題も総理としては見切り発車で国鉄が四月から始めるというならばやらせると、こういうつもりなんですか。どうですか。
  174. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 十分よく関係省で話し合うこと、これが必要なことです、まず。それからもう一つは、一省だけでやるというようなものでも性質上ないと、かように思いますので、それらの点で関係省がよく話し合って結論を出したらいいと、かように思っております。
  175. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 総理、まだ結論はいつ出るか、これはわかりませんけれども、私どもがうかがい知る範囲では、そうなかなか両者のもつれが解けそうにもございません。それでも、もつれが解けなくて話し合いができなくても発車させると、こういうおつもりなんですか、どうなんですか。四月から国鉄は工事に入ると、こう言っております。どうなんですか。
  176. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) あまり見切り発車は望ましいことじゃございません。それだけ申し上げておきます。
  177. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 十分ではございませんけれども総理が見切り発車は好ましいものではないというお話ですから、そのおことばはいただいておきたいと思います。  建設大臣にお伺いしたいと思いますが、おそらく国鉄は線路敷をずっとやるんだと、こういうふうにおっしゃっておりますけれども、私はすべて線路敷で間に合うとは実は思いません。地形の関係あるいはその辺の河川、地質、そうした関係で線路敷ばかりを通っていくというわけにはいかないと思います。そうしますと、ほかの民有地を通るというようなことも、これは当然起きてくるだろうと思うんです。いまのままではたして国鉄から土地の収用権、使用権ということを要求してきた場合に、土地収用法に基いて建設大臣としてはお認めになるつもりなのかどうか。
  178. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) いま国鉄がパイプラインを敷くために民間用地を取得する必要がある、そのために収用権を発動するかということでございまするが、これは若干検討しなきゃならぬだろうと思っております。そのために実は三省で一つの立法をいたしまして、その立法に基づいて収用権を与えるということを実は考えておったのでございます。その意味でこれはいま実は国鉄から、こういうものをつくるから、そのためにこれこれの土地について収用してくれという具体的な提案もありませんし、したがいまして、これはただいま総理からも言われましたが、私もこの問題をなるべく各省間が円満に話し合いの上合理的な結論を出すように言われておりまするので、その線に沿って収用権の問題等もあわせて考えてまいりたいと思っております。
  179. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは法制局長官にお聞きをしたほうがいいかとも思いますが、先ほど油を運ぶんだから輸送事業なんだからというようなお答えも一部建設大臣からそういうお話もありましたけれども、これは日本国有鉄道法第三条の一項によってこの業務を営むことができるのかどうなのか、この点をお伺いします。
  180. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。  実はパイプラインの問題では、建設大臣からお話がありましたような経過がございましたが、いまお話もありましたように、なお関係省の間で話を詰めている段階でございます。したがって、また事実私のほうに法律上の問題について問い合わせも実はいただいておりません。したがって、そういう際でもありますし、ここでそのことを御答弁申し上げる用意もございません。そのお話し合いの進行に即しつつ検討してまいりたいと思っております。
  181. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は法律的にお聞きしているわけで、そういう調整がつかなければ解釈は出ないというものではないだろうと思うんですね、だから法律的にひとつお答えをいただきたいと思います。
  182. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 実はそんなわけで私ども何といいますか、こう深い程度に検討しておりませんけれども、御質問があれば法律上の問題ですから当然お答えしなきゃなりません。  私、ただいま聞いておりまして気がつきますのは、むろん御指摘の日本国有鉄道法の三条だったと思いますが、一号に「附帯事業」というのがございます。「附帯事業」というのは文字どおり「附帯事業」でございますから、いまパイプラインの問題になっておりますような事業、そういうものまでできることになるかどうか、これははなはだあやしいものだと思っております。しかし、「附帯事業」と言えるものであれば、もうこれは法律のことばをそのまま申し上げるようなものでありますが、「附帯事業」と解されるものであれば問題ありませんが、いま問題になっておりますパイプライン事業というのはもう少し規模の大きなものではないかと、これはかってな想像でございますが、そういう気がいたします。何せ詳しい話を聞いておりませんので、これ以上申し上げることは少し危険ではないかという気がいたしますが、ごくいまの率直な考え方を言えといえば、法文からいってそんなふうに考えられます。
  183. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 運輸大臣にお聞きしたいと思うんですが、私どもいただいているいろいろなパンフレットあるいは宣伝のビラ、こういうものを見ますと、運賃がたいへん安くなる、二、三割方は安くなると、こういうふうにおっしゃっているんですが、いまのタンク車で運ぶ場合の運賃と、それからパイプラインによって運ぶ場合の運賃と、具体的にどのぐらい違うんですか。それともパイプラインで運ぶ運賃も同じなのかどうなのか。どうなんですか。
  184. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 具体的な計画は国鉄でありますので、私から内容等については具体的な説明ができませんが、国鉄当局の説明によりますと、現在レールで運んでおる運賃よりも二割ないし三割引き下げることができると、こう言っております。
  185. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは事務担当者でけっこうだと思うんですが、コストが安くなるのか、具体的な料金が安くなるのか、はっきりさせていただきます。
  186. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) コストの面からいきますと、パイプラインでございますから、非常に人件費等も要らないわけでございまして、そういう意味で非常に安くできます。現在大体二割ぐらいは安くできる、少なくとも実際上二割ぐらいは安くすることができるというように考えております。
  187. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 コストが二割安くなれば料金もそれだけ安くするのかどうなのか。
  188. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 料金につきまして、国鉄の運賃は全体としての総合原価計算主義でございますから、具体的に幾ら安くするかということは今後の検討問題でございますが、少なくともコストが相当下がれば相当料金も安くするということが適当ではないかと、このように考えております。
  189. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 料金も安くするというんですが、それはどういう規定で安くするんですか。
  190. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 日本国有鉄道法は国家の全額出資の法人でございまして、国の特別な監督のもとに服しております。そうしてその特別な監督の方法といたしまして日本国有鉄道法によりまする監督規定がございますから、その監督規定によりまして実際上の運賃の規制というものをなし得るものと考えております。
  191. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 料金の問題はひとつ今後さらに見てみたいと思うんですが、一番心配されるのは電車の線路わきにパイプを四メーター離れたところに一・二メートル以上の深さで埋めるということであります。そうしますと、電気は架線からモーターを通って地下へ流れていきます。この際に迷走電流というものが発生するのではないか。その迷走電流がパイプに穴をあけていくという可能性が私は非常に強かろうと思います。これについてはどういう措置をされて、電蝕防止をなさるつもりなのか。電蝕防止に百十億の工事費の中で一体どのくらいの費用を使うつもりなのか。
  192. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) パイプラインを通す場合におきましては、これの技術上の問題について安全性の面、あるいは特に鉄道線路の場合でございますと、鉄道との影響の関係というものを、十分技術上の検討をいたしております。それで、それに関しまして技術的には土木学会に委託をいたしまして、土木学会の学者の方に十分審査をいただいた上で、具体的な設計をするということにいたしております。当然電蝕等の問題につきましても、その中の一環の問題でございまして、線路中心間隔からの距離とか、あるいは一般用地からの間隔、あるいは線路に対する被覆の問題、その他各般の具体的な措置をとりまして、電蝕防止は万全を期し得るというふうに考えております。
  193. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 電蝕防止のための費用をどのくらい百十億の中で使うかと聞いているのです。
  194. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 現在計画しておりまする線路の工事費が百十億程度でございますが、その中の電蝕防止、直接の電蝕防止関係の費用が一億強でございます。
  195. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は技術屋じゃございませんしいたしますが、どうもそのくらいでは私の感じでは十分な措置というわけにはまいらないと思います。このパイプラインの内圧というのが六十から七十気圧ということであります。でありますから、大体計算いたしますと、いまあちらこちらで水道管が破裂したという、かなり大きな水道管、径四十センチくらいの水道管の場合に、大体四気圧から七気圧くらいということになりますと、その十倍の気圧を持ったものであります。でありますから、かなり強い圧力でもって油を送るわけでありますから、当然若干のパイプにある傷というものも、当然それだけの圧力をかけられれば、これはそこからパイプが割れていく。まあおそらくロサンゼルスでガスパイプが割れたというようなところまでいくかどうかわかりませんけれども、それはやがて地下水に入って地下水をよごすと、こういう問題もあるわけであります。あるいは建設のしかたによっては、そうしたパイプに傷をつけやすいような工事になりやすいわけです。おそらく大きな建設会社が直接やるのでなくて、建設については必ず小さな下請というようなところにやるというふうになりますと、はたしてそのパイプのまわりを砂等で固めるというお話でありますが、そうした砂の中に確実に石というようなもの、そういう異物が入らないという保障は私はちょっとないと思う。そういう異物がやがてパイプの外を巻いてあるいろいろなアスファルトとかなんとかを破って、それが地下水にさらされる。あるいはさっき言った迷走電流がそこから入っていく、こういうようなことがあろうと思います。あるいはパイプの溶接にいたしましても、日本の技術はなるほど高いわけでありますけれども、しかし、そうした高い技術を持った作業員というものが、量においては必ずしもそうたくさんあるというふうには私は聞いておりません。そうした高い技術を持った技術者というものをもっともっと、労働者を含めて、養成をしていかなくちゃならないという時期にあるわけであります。こう考えてみますと、私はかなり材質の基準にいたしましても、設計の基準にいたしましても、建設の基準にいたしましても、検査あるいは保守の基準にいたしましても、これはやはり十分きびしい基準が必ず守られるということが必要であろうと思います。もし、これが守られないということになれば、あとで大きな災害を引き起こすということは目に見えているわけであります。そういう意味で、私はその基準が一つ一つこまかいものまで法律できめるということは、むしろ融通性をなくするという意味で、あまり賛成ではございませんけれども、しかし、たとえば、土木学会でこういう報告書を出されて、これに基づいて国鉄では基準をおつくりになるんだろうと思います。しかし、たとえば、こういう基準によって工事をやらなければいけない、こういう基準によって材料を選ばなければいけないとか、こういうことについては、私は法律で担保をしなければいけないと思います。かってにそれが変えられるというような形で進んでいったならば、これの安全性を私は確保することはできなかろうと思います。そういう意味で、そうした安全基準を、大きく申しました安全基準というものを法律で担保するために、私は法律ができなくちゃいけない、それができないままに材質が選ばれ、設計され、建設されるということであれば、むしろそれは事故をあとに残すものだというふうに思うんですが、どうでしょうか。
  196. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) パイプラインの保安に対しましては、私どもパイプライン自体の構造なり、あるいは先ほどお話がございましたような材質なり、あるいは管の厚さなり、その他各般のパイプライン自体の安全というものも、まず、ひとつ考え、同時に、たとえば、鉄道線路の下を通るとすれば、当然鉄道の列車の運行あるいはその振動その他、それからあるいは万が一の鉄道の事故というような場合におけるパイプラインの安全というものをも、あわせて考えなければならぬわけでありまして、そういう意味の各般の安全というものを、十分に具体的に相当研究をいたしまして、それを規制をするということにいたしております。  なお規制の方法につきましては、先ほどもお答え申しましたように、国のほうの考え方といたしまして監督の規制をいたす、国鉄だけにまかすということではなく、国としての監督をいたす、このように考えております。
  197. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 通産大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、通産省としては、石油の輸送をパイプラインによってやっていこうという構想をお持ちだろうと思います。この全体の構想は一体どんなふうにお考えになっておるのか。いま具体的に問題になっておるのは関東内陸だけでありますけれども、おそらくこの問題は関東内陸だけで済まない問題であろう、日本全国の主要な石油精製基地のあるところと、その消費地を結ぶという形でのパイプラインというものをお考えになっておるんだろうと思います。通産省ではどのようにお考えになっておりますか。
  198. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまお話になっておられますいわゆる横浜から八王子のほうへいきます線のほかに、中央ラインと申しますか、関東の中央部を南から北へ走るパイプラインが考えられておるわけでございます。  先ほど総理はじめ関係各大臣がお答えになりましたように、権限といったような次元の低い問題を実は議論しておるわけではございませんで、このように新しい仕事でございますから、将来に向かって理念を確立しておく必要がある、こういうことで調整、相談をしておるわけでございます。これは関東のことでございますけれども、関西地区においてもこの関東の実績を見ながら、おそらくそういう話が起こってまいると思いますけれども、関東ではすでに会社ができております。関西ではまだそのようなことがございません。しかし、やがてこれは予想されることでございます。ただいま私ども、したがって、全国的な青写真といったようなものを具体的にはまだ持ってはおりません。
  199. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 この事業はかなりほかのものに比べまして、投資額というものも大きいものであります。また一回これを施設したならば、簡単にあちらこちらとパイプをいけかえるということも現実にはできないものだと思うんです。そういたしますと、これはやはりかなりあちらこちらの調整というものが具体的についた後でなければならないと思いますけれども、石油関係の石油連盟とか、あるいは石油パイプライン会社ですか、こういうほうのいま国鉄がやろうとしている事業に対してどんなふうにお考えになっておりますか。
  200. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆるユーザーたちがどう考えておるかということにつきましては、私の聞いておりますところでは、しかるべき立地ということ、それから経済性ということ、保安ということ、料金というようなこと、それから運転のためのかなり高等な技術が要るということで自分たちなりの希望を持っておられるようでございます。しかし、これは総合的に最終的には政府が統一して判断をいたすべきものだと考えます。
  201. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 通産大臣、あなたはこの国鉄でやろうというパイプラインについて、いまどういうふうにお考えでございますか。
  202. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど理念の問題と申し上げましたのは、国鉄に並行してパイプラインをしかれるということであれば、これは何といっても運輸大臣のお仕事であり、国鉄の仕事である、これは常識的に私はさように考えていいのじゃないか。ただ、道路であるとか、河川敷であるとかという全然関係のないところにしかれますものをどういうふうに理念づけるかということが、いま三大臣が寄って考えているところでございます。で、私は運輸大臣が御自分の権限に基づいて十分にユーザーの意見、保安等々お考えの上で重複投資などの危険性もお考えの上でおやりになるのであれば、私がとやかく申すべきことでない、こういう態度でございます。
  203. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 運輸大臣、これは国鉄の赤字解消策の一環ですか、それともそうでなしに、国鉄の独自の事業としていわゆる鉄道の会計とは切り離して、これはこれで独特にやる、その間に共通性を持たせない、こういう考えですか、赤字対策ですか、どちらですか。
  204. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 全く赤字対策とは考えておりません。したがって、料金の決定につきましても各方面の公正な意見を聴取した上で、その上で運輸省がこれを決定すると、もし実際にやることになりますれば、そういうことによってやりますので、いわゆる赤字のために収入を得るという目的でやるものではないことはもう明確であります。
  205. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと、このパイプラインの事業というのは黒字になりますか。
  206. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) したがって、工事費等を計算いたしまして、先ほど来人件費の節約その他のことからして、その工事費がいわゆる汽車で運ぶよりも二割ないし三割安くなるという前提に立ちますから、そういう計算でまいりますので、したがって、料金等は当然従来よりも安くなる。  もう一つは、安全輸送ですが、御承知のように、国鉄はまず第一に安全輸送というものに、これは油だけではありませんけれども、実際のことに専心努力しております。かつまたいま布設しようとしまするいわゆるパイプラインのところは、現在すでにレールによって油を運んでおります。これは御承知のように、一つのタンクの中に入れて非常な安全度を高めつつ今日まで間違いもなく運んでまいっておるのでありまして、その方面における経験も十分に持っております。のみならず、工事施工につきましても、国鉄は厳重に各方面の学者の意見等を積み重ねて、そうして安全輸送のできるように措置をするということでありますので、まあ、工事計画書ができませんとわかりませんけれども、われわれは安全性においては信頼できるものと、かように思っております。
  207. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 稼働率は年間どのくらいに見ておりますか。
  208. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 一応稼働日数は年間三百日程度と考えております。
  209. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 その年間三百日というのは実行できますか。
  210. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 現在の関東地区におきます油輸送の実態その他、非常に逼迫をいたしております貨物輸送の実態等を考えまして実行できるものと私ども考えております。
  211. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 その実行できる根拠をお示しいただきたいのですが、各石油精製メーカーとある程度のお話し合いができた上で大体このくらい送れるんだ、こういうことなんですか。それは国鉄の一方的な、かってな計算ですか。どちらですか。
  212. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) これは結局、各石油の需要の状況、現在たとえば高崎地区だとか、そういうような地区ではほとんど一〇〇%――九九・何%というものを輸送しておりますわけでございますから、そういったような現在の石油の輸送状況だとかいうようなものを考えてみて、そうしてまた、各会社の出荷量等をも考えてみて、その程度のものが確保できると私ども考えております。
  213. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 局長ね、これは何かこちらからぽんと持ってきてこう送るというものではないでしょう、これは。当然、どこにターミナルを置くか知りませんけれども、ターミナルと石油会社との間にこれはパイプラインで持ってこなくちゃならぬものでしょう。そうすれば、事前に油が送られるその瞬間から石油精製会社とターミナルとの間はパイプでつながっていなくちゃならぬ。その話までいかなければ稼働率が一体幾らになるのかということは言えないでしょう。それは一体そのターミナルまで石油会社からどうやって持ってくるのでしょうか。私は、常識的にはこれはパイプで持ってくるのが常識だと思うのです。だから、当然それは特定の石油会社とターミナルとの間を結ぶ、パイプラインをこの間で結んでいくという話ができなければ油は送れないじゃないですか。
  214. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 石油の輸送の場合には、当然集荷部分におきましては、先生御指摘のように、製油所等からのパイプの布設というものが必要でございまして、その意味におきましては、このパイプラインを建設するにつきましては集荷先といいますか、荷主側の石油事業者、事業の会社というものと十分の話し合いをつけた上でこれを建設するということは必要であろうかと思います。
  215. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 先ほどの話では、需要量がこのくらいになる、消費量がこのくらいになる、だから三百日の稼働というものが可能であろうというお話であります。これは送るほうが主体なんです。受けるほうは幾ら待っていたって油が流れてこなければこれはどうにもしょうがないのです。しかも送るほうと石油精製会社との間にパイプで結びつくということが必要であります。その話ができないで稼働率が三百日だとか何とかということは、あまりにも大ざっぱな根拠のない稼働率だというふうに私は思いますが、そういう石油精製会社と国鉄の間では、一体何社くらいとの間でそのパイプラインを石油精製会社とターミナルを結ぶという話がついていますか。
  216. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 私、三百日と先ほど申し上げましたのは、これは現在、石油の輸送の状況をごらんになっていただきますとよくおわかりと思いますが、たとえば高崎地区等におきましてはほとんど一〇〇%近いものが鉄道のタンク車によって輸送しているわけでございます。で、もしこれがいまの輸送力の増強ができないとすれば、今後増加する輸送量に対しましてはもう鉄道輸送ではできないということになるわけでございまして、そういう意味ではこれは当然話し合いをつけて、そうしてパイプで輸送をするという必要があろうかと思います。したがいまして、パイプラインの建設につきましては、出荷の会社たる石油事業者との間で話を完全につけて、そうしてそれを集荷をしてこれを輸送する、その場合には先ほど申しましたような実績が期待できる、こういうことでございます。
  217. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そのことは当然でありますよ。だから、具体的に何社と話し合いがついておりますかと聞いているんです。
  218. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 具体的な、会社と話し合いがついているかということにつきましては、まだ完全に話し合いはついてございません。いろいろと話をいたしておる段階でございます。
  219. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、これは当然石油メーカーと話をつけなければ、一体どうなることなのか、たくさんの金をかけていいのか悪いのか、パイプの太さは一体どのくらいの太さにしなくちゃいけないのか、こういうことがきまってくるんではなかろうかと思います。幾らメーンパイプを国鉄のほうがおやりになっても、そこへ集まってくるパイプがきまらなければ、このパイプは遊んでしまうわけであります。だから、その辺をはっきりしてくれなければ、結局過剰投資、あるいはせっかく投資しても、それは遊休な施設になってしまう、こういうふうになるのですが、どうですか。
  220. 山口真弘

    政府委員(山口真弘君) 先ほど申し上げましたように、現在、関東地区におきまする石油の輸送における鉄道のタンク車による輸送というものが非常に大きなウエートを占めておりまして、したがいまして、そういうタンク車による輸送というものをパイプラインに振りかえていくという必要が、鉄道の貨物輸送並びに旅客輸送上、どうしても必要であるわけでございまして、そういう意味で、当然それだけの輸送量は確保しなければいかぬし、また確保できるものと考えておるわけでございまして、これにつきましては、具体的に発側の石油会社というものがこれと協力をしていただかなければ、これは当然その構想というものはできないわけでございまして、ただ、その場合には当然石油輸送ができないということになるわけでございまして、これは日本の石油の需給のためにも非常に問題であるわけでございますので、十分に話し合いを進めた上で、こういったものを建設していくということになるわけでございます。
  221. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ひとつここで、総理にお聞きしたいのですが、いまのやりとりをいろいろお聞きいただいたと思うんですけれども、こういうまだ詰めというものは全然できていないわけです。ただ、鉄道輸送でこれだけいっているんだから、当然それがパイプラインに振りかわるだろうということしか、そういう頭で三百日の稼働だと、こう言っている。ところが、ターミナルへ持ってくるのはパイプラインで持ってこなくちゃならないということになれば、その会社も、それでは私のほうも協力してパイプラインを私のほうで引きましょう。このパイプラインができなければ、幾ら油を送ろうと思っても送れないわけです。その詰めば全然できていない。こういう状態で四月から仕事が始められるということは、いまのお話では、一社や二社ぐらいは私はその話し合いが実はついているかと思いました。まだ全然ついていない。こういうことでは一体どういう設計をしたらいいのか。これは何本も何本も次から次へとおそらくパイプをいけるわけにはいかない。そういう詰めができていない。したがって、パイプの太さがどれが一番適切であるかということについても考えてみなくちゃならぬ。そういう状態の中でどんどん発車をしていくということは、私は資源の使い方、あるいはお金の使い方、こうしたものがだいぶむだな使い方におちいらざるを得ないんではないかと思うんですが、先ほどは見切り発車は好ましくないというふうに御答弁いただいたわけですが、どうでございましょうか。
  222. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま見切り発車――、これは、先ほど申したのは、主として各省間の意見がまとまらないと、こういう場合に、なるべく話をまとめると、こういう意味の見切り発車です。ただいまのやりとりのお話をそばで聞いていると、まだ具体性がないという、そういう点がもっと詰めが要るんだろうと、かように私思います。これはもう竹田君の御指摘のとおり、おそらく四月一日から、これは着工するという、それまでには、おそらくいま言われるような点がもっと詰まってこなければ、四月一日着工といっても、なかなかそのとおりにはいかないんじゃないだろうか、かように思います。その辺は、運輸大臣がどんな見通しをしておりますか、そのほうにひとつ意見を聞いてもらいたいと、かように私は思います。
  223. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 御答弁いただけますか。
  224. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) ただ、ひとつこれはお考えおき願いたいんですが、先ほど申しましたように、いま製油所から運ぶ手段はレールが大部分で運んでおるんです。一部はトラックで運ぶのもありましょう。ところが、四十七年になりますと、もうレールで運べないんです。そうなれば、トラックで運ぶか、パイプラインで運ぶかということになりますね。ですから、そのパイプラインができるのは本年度早々から始まって、そうして四十七年の十月でなければでき上がらない。もうそれまでにはパンクしてしまうんだ。パンクしてから今度はトラック輸送に回すというわけにはいかぬでありましょうから、もちろん、これは業者との間に話し合いもよく進めなくちゃなりませんけれども、業者のほうも製油所に油を積んでおったんでは商売になりませんね、現地まで、消費者のところへ持ってこなければ。でありますから、私は石油業者との間にも従来話を進めてきたんですから、問題点いろいろありましょう。お互いに資本を出し合ってやろうとか、いろいろこまかい点がありましょうが、油を輸送するということについては私は異議がないと思う。製油所のタンクの中へ石油を詰め込んでおいたってしかたがないんですから、現在のレールでは四十七年以上は運べない状態なんです。ですから、国鉄としては、そのお客さんに対するところのいわゆるサービスのためにも、あるいは国鉄自身も年間百万トンの油を使っております。こういうためにも、やはり輸送の新しい手段を考える。そうしてお客さんに迷惑をかけない、これは当然のことであると思う。問題は、安全な工事、安全な輸送をやらせるということが大事な眼目であろうと考えておりますが、おっしゃるように、全般の十分なる了解を詰めた上でもちろん工事は進めることと思いますので、いま、いきなり、ただ形式的に四月一日に工事を始める、こういうわけにもまいりますまいとは思います。
  225. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうも運輸大臣のお話を聞いていても、頭はメインラインだけにあるんですね。あるターミナルからあるターミナルへ移るメインラインの話はそのとおりだと思うんですよ。ただ、各メーカーからこう集めてくるパイプ、一体どれだけの各メーカーごとのタンクを置いたらいいのか、どういうパイプを各メーカーとつないだらいいのか、その地積はどのくらい要るか、こういうものまでやっていかなければ、私はターミナルの立地そのものから狂ってくると思う。だから、もう少し、私は国鉄なり、運輸省はひとつ冷静になって、この問題をもう一回考え直してもらいたい。あまり私のほうの権限だ、私のほうがやるんだ、私のほうが予算を使うんだといって大騒ぎをしているようなやり方でいくと、私はそれは必ずあやまちをおかす、あるいは将来そうした点で手落ちができるかもしれない。この点は、あまりこれ議論をしていますと、ほかの質問できませんから、私この辺で終わりますけれどもひとつ、その辺はもう少し冷静になって私は考えてもらいたい、そのことをお願いをしておきたいと思います。  建設大臣にお伺いしますが、いままでのパイプラインの事故というものは、これはガスにしてもほかのものでもそうでありますが、大体、他工事による事故というのが一番多いわけですね。で、いま、都会の道路の下には各種各様なパイプがいかっておるわけです。それが一体どこに、どのようにパイプが入っているのかということは、道路を掘っていく場合に、図面を一々見ながらやらなくちゃならない。場合によると、その図面も、どういうパイプが道路の端からどこにどれだけの深さで埋まっているということも、これはおそらく明確なその書類あるかないかわからないと思うんですよ。道路管理者は各種各様であります。したがいまして、それによって、たとえば道路の舗装工事をやる、あるいは水道工事をやるというので、それはパイプラインに穴をあけるということが大きな事故のもとであります。でありますから、この道路に、私は、これから標示をすべきだと思うんです。どういうパイプがどこにどういかっているのか。工事をやる者はその標示を見れば、ああ、この下に、深さ一メートルなら一メートルのところには、東京ガスのパイプが通っているなということがわかるような形、こういう形でやらなければ、私は事故は起きてくると思う。おそらく国鉄がおやりになるか、将来通産の所管のほうでおやりになるパイプラインも出てくると思うんです。そういう場合に、ちゃんと標示をしないと、私はそれは将来危険が出てくると思うんです。そういうことを、今後、道路行政の中で義務づけさせていく、こういうおつもりはおありでしょうか。
  226. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 御指摘のとおり、現状においては必ずしもこれが十分に整っておりません。これはいままで、道路管理者、それから事業をやるほうが、それぞれ権限とあれが異なっておったためにそういう傾向があったために、数年前から、鋭意、地下埋設物の配置図を綿密に調査をして、それを一つのテーブルに、一つの図案に明確にさせるということを進めております。将来について、地下埋設物を許可する場合に必ずこれを義務づけるということは必要であると考えています。  なお、いまのパイプラインについては、その意味においても、今度は、先ほど竹田さん御指摘になりましたように、これは非常に高圧です。しかもこれは危険物です。そういう意味から、やはりこれは相当厳密なる安全の確立を持たせなきゃなりません。それは構造において、あるいは材質において、それから管理の面において必要だと思います。したがって、そういうものをも、私は、これは関係省が合意をしてはっきりしたものを示してからやるべきだと。そういう意味においても、先般私が、調整と言うてははなはだ権限が大き過ぎますけれども、仲立ちをさせられた場合にも、いまこれを、まあまあ君のほうががまんして妥協せいというようなことのものではない。やはりこれは本格的にそうしたものも含めてやっていかなきゃいけないと思ったもので、御指摘の点は、特に石油パイプラインを国で許可をし、これを奨励していく場合には、非常に必要な条件であると考えております。
  227. 鈴木強

    鈴木強君 関連。総理大臣、閣議決定の権威について私は伺いたいのです。四十四年に、国鉄が再建の一環としてこのパイプラインを建設するということをきめましたね。その決定に従って国鉄はいま着々と準備を進めておると思うのです。ところがいまになってこういう論議が行なわれるということは――当時の閣議決定の際に、日本のパイプラインは一体どこが、将来、どういうふうな方法で、安全性についてはどうで、事業量はどうでということを計算しておきめになったのではないかと思うんですね。そうであれば、いまこんな論議は出てこない。もう一つ大事なことは、さっき法制局長官が、国鉄法から見て疑義があるがごときことを言われた。法理論的にですよ。これはとんでもない話であって、閣議決定のときに、法律的に、国鉄がやることが違法か、あるいは疑わしいということであれば、そんなことをやっておらなかったはずだと私は思うのです。私もかつて運輸委員会でかなりこの問題は論議したことがありますけれども、そういう閣議決定の権威というものについて、非常に私は疑問を抱くのです。当時、閣僚諸君はいなかったかもしれませんが、これは総理大臣からお答えいただきたいと思う。
  228. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) いま総理お答えになると思いますが、その前に、国有鉄道法上の疑義を述べたではないかというふうにおっしゃいましたが、その一点についてお答え申し上げます。  私、先ほど申し上げたのは、日本国有鉄道法第三条の第一号だと思いますが、国有鉄道の「附帯事業」、附帯事業とされるもの、これは規模によってはあり得ると思います。で、そういうものであればむろんいいのだけれども、いま、世上といいますか、関係大臣等でお話し合いになっているパイプライン事業というのは、そういうものよりももう少し広範囲な、事業法とでもいうべき筋合いのものではないかと。そういうものになると、国鉄だけで処理するわけにはいかぬであろうと、これは常識的に当然そうだろうと思いますが、そういうことを申し上げたわけで、国鉄の附帯事業として考えられる範囲のもの、これは国鉄でできることは当然のことでございます。
  229. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 鈴木君にお答えいたします。  とにかく、国鉄はいろいろ多角経営に乗り出したらどうかと、そういう意味から、いまのパイプラインも経営したらと、こういうような議論があって、そうしてそれはよろしいと、かようになったわけでございます。
  230. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まだ、いろいろお聞きしたいことございますけれども、時間がありませんので、次へ移りたいと思います。  次は、FM東京について質問をいたしたいと思います。  FM東京の場合に、FM東京から免許申請書は出ておりましたか、どうですか。
  231. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) これは中央FM音楽放送というものの申請書が出ておりました。それが最終段階でFM東京という社名の変更になって出てまいったと、こういうふうに了解しております。
  232. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それでは一番初めの免許申請書というものは出ていなかったと、こういうふうに了解してよろしうございますね。
  233. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) FM東京の名義のものは、当初は出ていなかったと、しかし中央……
  234. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いや、出ていなかったらそれだけでけっこうです。
  235. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) そうですか。
  236. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 申請書の取り下げ願いを出さなかった申請者はございますか。
  237. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 三十一社を一本化したわけでございますから、いま申し上げた中央FM音楽放送だけがそのままで、あとの三十社は取り下げ届けが出たわけであります。
  238. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 その申請者は、中央FM音楽放送ですね、そうしますと、訂正届けを出した名義人というのはだれですか。
  239. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 発起人の代表である梶井剛氏であると記憶をいたします。
  240. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 梶井剛氏だけでございましたか。
  241. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  取り下げ願い届けを出した人たちは、発起人代表の人たちでございます。
  242. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私は、訂正届けを出したその代表者は梶井剛氏だけだったかと聞いてるのですから、すなおに答えてください。余分なことはいいです。要らないです。
  243. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  発起人代表は六名おりまして、足立正、大野勝三、梶井剛、林屋亀次郎、松前重義、大友六郎の六名でございます。
  244. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 中央FM音楽放送の申請者でありますところの発起人代表は何名で、だれとだれとだれでしたか。
  245. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  中央FM音楽放送の発起人代表は七名でございまして、梶井剛、高田元三郎、秋山龍、中山次郎、丹羽保次郎、駒井健一郎、小林宏治の七名でございます。
  246. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 その中央FM音楽放送の発起人の七名、そこからは訂正届けは出ましたか。
  247. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  先ほど申し上げました六名の方が、FM東京の発起人として申請をされたということでございまして、七名のおのおのの方からは訂正届けは出ておりません。
  248. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 おのおのという問題では私はないと思うんですね。一人一人が出すというものじゃなくて、発起人の代表を連ねて出すものだと思うのですけれども、おのおのから出ていないということは、全然出ていないと、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  249. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、三十一社の申請が出ておりまして、そのうち三十社が取り下げ届けを出されまして、残った中央FM音楽放送が、名前も変えましたし、発起人も変えまして、先ほど申し上げました六人の発起人の代表の方の名前でいわゆる改訂届けが出されたと、そういうことでございます。
  250. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと、足立正以下六名で出された訂正届けが中央FM音楽放送の訂正届けであるということをどういうことによって認定いたしましたか。
  251. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  私どもとしましては、訂正届けにございます発起人二十五名中には中央FM音楽放送の発起人十一名が含まれており、三十一社という多数の一本化にもかかわらず、発起人の約半数が中央FM音楽放送の発起人であるということから見ましても、中央FM音楽放送が主体となり、これに統合されたと、そういうふうに認めたわけでございます。
  252. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いま、ダブっている人が十一名あるから、それで認めたと、こういうわけですね。そういうふうに理解していいわけですね。
  253. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  中央FM音楽放送の発起人の代表でございました梶井剛さん、この方が実質上の取りまとめをやっておられたと聞いております。その方も入って、発起人代表の一員として入っておられる。それから先ほど申し上げましたような、発起人二十五名中十一名が入っておられると、こういうことで私どもは認めたというわけでございます。
  254. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうすると、訂正届けには、中央FM音楽放送発起人代表梶井剛と、こういうふうに書いてあったわけですか。
  255. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  先ほどお答え申し上げましたように、六名の発起人代表のお名前で訂正届けが出されたというわけでございます。
  256. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私はそういうことを聞いていないわけです。訂正届けに梶井さんの肩書きは中央FM音楽放送発起人代表という肩書きが書いてありましたかと聞いているのです。
  257. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  梶井剛さんは、中央FM音楽放送の発起人代表ということでは名前はございませんで、FM東京の発起人代表という名前で出されたわけでございます。
  258. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと、梶井さんは、私は物質的にはなるほど梶井さんという一人の人間だろうと思います。しかし、肩書きは二つ持っているわけです。中央FM音楽放送の発起人代表、FM東京の発起人代表、二つ持っているわけなんです。この二つの肩書きが一緒であるということは、一体どういうことからそういうことになるわけですか。たとえば佐藤総理を例にあげて申しわけないわけですが、内閣総理大臣としての佐藤さんと、まあ、会社の社長になるわけにはいきませんけれども、たとえば、これは設例でありますから、松坂屋の社長の佐藤さんというものと、私は全く同じじゃないと思う。同じ人間ではあっても、肩書きが違うということは、その下の実体が違うから違うと思うのです。それと同じように、FM東京の発起人代表である梶井剛さんと中央FM音楽放送の梶井さんという二つの人格を持っている。これはどこでつながっているのですか。つながる根拠があったら、その資料を示してほしい。
  259. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  中央FM音楽放送の訂正届けというものが出てまいりまして、その中に、その社名もFM東京に変更すると、そういう届けがあったわけでございます。
  260. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それはどうしてあなたはそういう梶井さんが入っているということで中央FM音楽放送の訂正届けだというふうに認定したのですか。
  261. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  訂正届けの中に、社名の変更ということで、株式会社中央FM音楽放送を株式会社FM東京とすると、そういう訂正があったわけでございます。
  262. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そういう訂正があれば、二つの人格を持っている梶井さんが同じものだと、そういうふうにして認定したのですか。
  263. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、三十一社の申請がございまして、そのうち三十社が取り下げ届けを出した。残っている中央FM音楽放送というものが、いま申し上げましたようなことで、名前は変えましたけれども、先ほどのような経緯で訂正届けを出されたということによりまして、私どもは、それが三十一社が一本化されたと、そういうふうに見まして、それを審査の対象としたと、そういうわけでございます。
  264. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうも、あなたの言っていることは、その辺で逃げているというか、どうしているかわかりませんが、そうしますと、梶井さんという人は、中央FM音楽放送のすべての権限を持った代表であったわけですか。
  265. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  梶井剛氏は、この発起人代表六名の委任を受けられまして処理をしたと、そういうことでございます。
  266. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 委任を受けたというなら、委任を受けたという証拠をはっきりしてください。
  267. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  委任状を発起人代表の六名から提出されております。
  268. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 その証拠を見せてください。――それは中央FM音楽放送の委任じゃないでしょう。東京FMの委任でしょう。東京FMの委任状を持った人がどうして中央FM音楽放送の委任状であるというふうにあなたは判断したんですか。
  269. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  先ほどは失礼申しました。委任状は、FM東京でございます。ただ、私どもは、先ほど来申し上げておりますように、郵政省としましては、最初足立正さんに一本化をお願いした。足立さんがその後おからだのかげんで梶井さんに連絡責任者をお願い申し上げたと、そういうことで……。
  270. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 問いに対して答えてください。余分なことは聞いているわけじゃないんですから。そんなことはこの前の委員会で聞いていますから、わかっているんです。
  271. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) それで、私どもとしましては、先ほど申し上げましたような経緯で、三十一社が一本化して中央FM音楽放送をもとにして一本化されて訂正届けが出てきたと、そういうふうに認めたわけでございます。なお、その際に、社名がFM東京と、そういうふうに変更されたと、そういうわけでございます。
  272. 古池信三

    委員長(古池信三君) 答弁者に申し上げますけれども、質疑者の問いに直ちに答えていただきたいと思います。
  273. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 先ほど聞いていることについて答えをいただいておりませんが、梶井剛氏がどうして中央FMを代表しているというふうにあなたは認定したんですか、それに答えてください。
  274. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  私どもとしましては、先ほどもお答え申し上げたわけでございますけれども、訂正届けにございまする発起人代表のうちに中央FM音楽放送の発起人代表である梶井氏がFM東京の場合も入っておりますし、また、FM東京の発起人二十五名中には中央FM音楽放送の発起人十二名が含まれていると、そういうようなことから、中央FM音楽放送が主体となって三十一社が一本化されたと、そういうふうに認めたわけでございます。
  275. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうすると、局長に聞きますけれども、それはあなたの主観的な認定であって、それを証する根拠はなかったと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  276. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  私の主観ではございませんで、役所としてそういうふうに認めたというわけでございます。  なお、いわゆるFM東京の予備免許という問題につきましては、現在行政訴訟が提起されているということは、御存じのとおりでございます。
  277. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 関連。いま、監理局長が、役所ということばは、郵政省でそういうふうに認定したと、こういうことだと思いますが、あなたは衆議院で答えているでしょう、このことについては。私の推定でこの認定をしたと、こう衆議院で答えている。先般来この問題がいろいろ問題になっているんですが、きょうまでに十四回この問題は国会で取り上げられていますね。会議録をしさいに検討してみますと、君の答弁は全くそのつど変わってきているんです。そこに疑惑の問題がある。この点をはっきり答えなさい。
  278. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 吉田さんに私から先にお答えをしておきますが、おっしゃるように、この問題は本日で十数回のようであります。そこで、その間、答弁がいろいろと二転三転したというお話でありますが、少し時日が二、三年前のことであり、かつまた、当時の関係者もかわったというふうなこともございまして、あるいはそういうおしかりもあろうかと思いますが、最近この前の委員会でお答えをしたところをむしろ中心にお考えをいただけばしあわせかと思います。  あとは、局長から申し上げます。
  279. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 私の答弁が前の答弁と違ったことをということでございますが、私の調査が不十分であったということのために御迷惑をかけたということもございますわけで、ここでおわびを申し上げたいと思います。
  280. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 もう一つ関連して伺いますが、私は、三月の二十二日のこの質問で、その過程で資料要求いたしました。その資料要求の一つは、許認可事項でありますから、免許をしていく場合の方針の要領があるんです、郵政省にね。それを出していただきたいと。了解したんですよ、郵政大臣は。出てきたものは、電波監理法の写しなんです。こんなものはここにあるんですから。電波監理法はここにありますから、なにも資料要求をわれわれ求める必要はない。なぜ、こういうわれわれが要求したことに対して、ことさらに的をぼかすようなことを郵政省がやっておるか、この点を答えてください。
  281. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  私ども、初め、この法令とそれに基づく省令を差し上げたわけでございますが、それで私どもはいわゆる法律並びに省令に基づいてやっているわけでございますが、そのほかに、適用の方針というものもございますので、あとからお渡ししたかと思っております。
  282. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そういうものは来ていませんよ。
  283. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 適用の方針というものは、あとから先生のところだけにお届けしたと、そういうふうに聞いております。
  284. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 受け取っておりません。方針の要領というものがあるでしょう、あんたのところに。――来ておりません。
  285. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 電波局長、どうも、私、あなたの言うことがわからないんですがね。梶井剛という人には二つの人格があったというふうに私申し上げました。中央FM音楽放送の発起人代表としての梶井氏と、FM東京の発起人代表の梶井氏と、その間に連絡がないんじゃないですか。たとえば中央FMのほうの発起人総会で、そういう訂正に応じますという議決をするとか、そういうような、それを証するものもなしに、肩書きが違うから、梶井剛さんがFM東京に名前が載っていたからいいんだと、こういうことは、私は一般的には通らぬと思うんですがね。郵政省だけこういうのは通るんですか、そこを答えてください。
  286. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。先ほど来申し上げておりますように、この三十一社が合同しまして、三十社が申請を取り下げたと。それで中央FM音楽放送というものが母体となって一本化がされたと、そういうふうに私どもは認めたというわけでございます。
  287. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 役所の書類の審査権というのはそんなもんですか。私は、少なくとも、それが正規の訂正届けであるというならば、少なくとも中央FMのほうの発起人総会の議事録ぐらいは、こういうふうに社名を変更してよろしい、これに合流してよろしい、こういう議決書等は、当然これは添付して出されるべきものだと思う。それもなしに、梶井剛さんの名前が両方に載っていたから、これは訂正届けとして正当なものだと、こういうふうに、日本の役所はそういうふうな文書の取り扱いになっているんですか。
  288. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。私ども、電波法令上審査すべき事項というものは、免許を受けまして、将来設立される会社が法令に適合し、免許を付与するに値するかいなかということを審査するわけでございまして、実際上の取り扱いといたしましても、自主的に最初の申請者と認められる者から訂正届けの提出がございますれば、正規の訂正があったものとして取り扱いまして、申請書を審査しているというわけでございます。  先ほど来申し上げておりますように、FM東京の場合は、足立さんから調整が行なわれまして、申請三十一社のうち三十社の取り下げ届けが出されまして、これらが合流して一本化したものと見られるわけでございまして、しかも依然として、中央FM音楽放送が主体であると認められる訂正届けが提出されたわけでございますので、これを適正なものとして受理いたしまして審査した結果、免許を付与したというわけでございます。
  289. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 きわめて奇々怪々な話だと私は思うんです。電波監理局というのは、とにかく書類が出れば、その書類だけで審査するんですか。その実態はどういうふうに間違っていようがどうしようが、書類の形式だけ整っていればそれで免許出すんですか。郵政大臣、どうですか、そういうことやっていますか。
  290. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 決してそういうわけではないと思いますが、出されました書類について、いまお聞き及びのように、十分に検討をしたと、こういうふうに私は承知をしておるわけであります。
  291. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ですから、郵政省というところは、間違った書類でも書類さえよけりゃいいということですか。それが電波監理局に与えられた審査権という権限ですか。
  292. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。もちろん私どもは書類で審査をするわけでございますが、その際、いろいろ問題がございますれば、当然必要な書類の提出ということは求めるわけでございます。
  293. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それじゃ、なぜ中央FMからそれを証するような資料を取らないんですか。それは郵政大臣の権限として、資料を取ることができるはずだと思いますが、なぜ取らないんですか。
  294. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 実態に即しまして、いま具備しておる書類を検討した結果、それで有効であろうと、こういう判断をしたようであります。
  295. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大臣、冗談じゃないですよ。その当時、あなたがやってなかったからしかたがないかもしれぬけれども、これだけ問題がもめたので、書類だけで、しかも発起人代表の名前が一名だ、だからこれはこっちで、この訂正届けは正しいんだ、そんなことはどこへ行ったって私は許されぬと思うんですよ。もしその訂正届けが出ているならば、これは正しい訂正届けであるかどうか、私は、それを審査するのが審査権だろうと思う。  これは総理大臣にお聞きしたいと思うんですがね、こんなつまらない議論してたって議論進まないんですよ。こういうことは常識ですか。少なくとも中央FMのほうがそういう議決をしたなり、そういうことを議決しましたという書類が出るなり、あるいは委任状でも、中央FMから梶井さんを全権として委任しますと、こういうものが出ているなら、私いいと思うんですよ。中央FMのほうから何も出ていない。FM東京のことだけでやっている。こうしたことを認められるというのならば、名前を連ねておけば何だってできるわけです。人の財産取ることだってできるんです。私は、こういうことは不適当だと思うんですが、これは大臣、この前の席でも、適法であってもそれは行政の筋が通らなけりゃいけないんだと、こういうことを言っておりますけれども、先ほどの訂正届けの内容を審査したと言うんですが、これは何ら実態を審査していないわけです。私は、この訂正届けというものは瑕疵のある訂正届けだと、こういうように思いますが、どうですか。
  296. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 先ほど来お聞き及びのとおり、あるいは竹田さんおっしゃるように、書面によってということでなければいかぬという御主張でありますが、当時、実態を中心といたしまして、まあ、これだけの要件を具備していればよかろうという判断に基づいたと思うんであります。
  297. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん先ほど来、私も聞いておりまして、どうも私にもわからないことが非常に多い。お尋ねの竹田君には不満だろうと思います。とにかく行政はやはりただ形式、形が整ったというだけでも困りましょう。やっぱり筋が通ったことでなきゃいかぬ。実態に即した処理が行なわれるということ、それは何よりも必要なことだと思っております。一応形が整っているからこれでどうだろうというようなわけにはいかぬと、かように私は思います。
  298. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 関連。いまの総理のことばを、私、全く正しい見解だと思いますね。いままでの竹田委員質問に対しても、いろいろ答えておりますけれどもね、たいへん根の深い問題だと思うんです。この委員会においても、この間来、あえて私は氏名などは言わなかったけれども、いろんな記録が残されておるんです。これは郵政大臣ね、どうなんですか。三十一社を全部、これは郵政省が取り下げ届けをさしたんです、職員が回りましてね。ですけれども、結果、三十社だけが取り下げ届けをして、一社は取り下げ届けに応じなかったわけですね。それが中央FM音楽放送、こういうことになっているんですね。ですから、そのときは足立さんがいわゆる一本化をお願いしたということですから、私は、それはそれなりに了といたしましても、一本化されたものが三十社です。ですからこれが一社、それから一本化に応じなかった中央FM音楽放送というのが一社、結果、二社。そうですね。そうしますとね、いま総理がお答えいたしましたことが、これはもう当然のことですよ、常識でもあるし。そのために、ここにもありますけれども、商法で記載されているのです。この会場でちょうだいをいたしました免許の方針を見ましても、そういう点が明らかですね。  で、私が言いたいのは、この免許方針に従いまして免許を申請をして、郵政省がこれを審査しなければならぬ過程で戸籍抄本、印鑑証明あるいは決議が変更された場合においては――この場合は変更されていますから、当然決議の変更が必要ですね。そういう場合の議事録等々全部書類が整備をされて訂正届けというものをなされなければならない。この東京FM放送というものは、申請書も出ていなければ、いま二、三私が申し上げました具体的なそういうものが整備されていない。一つの中央FM音楽放送は申請書は前から出ている。そうして法規、慣例に従って訂正届けというものが出ている。それがいろいろここにございまする資料等を勘案してみますると、当初から郵政省は、郵政省の支配下における新しい会社をつくってやろうという考え方から、その訂正届けというものを横取りをして、しかも申請の出ていない、郵政省でお願いしたと称される足立さんのほうの一本化になったものにくっつけて出して、あなたのほうはわずか一日間で審査等々をして、受理したから適法である、こう言っているところにいろいろ衆議院あるいは参議院におけるこの委員会において答弁があいまいであって、明確でなくて、そうしてしどろもどろの答弁をしているということになっているんじゃないですか、この点はどうでしょう。
  299. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 前回吉田さんにお答えもいたしましたように、こういう場合、役所がどの程度に介入すべきものか、行政指導の限界というふうなものがなかなかむずかしいということは申し上げたわけでございまして、その取り下げ届けを集める私はお手伝いをしたと申し上げましたが、そうじゃないのだ、こういう問答があったわけでございますが、その点は、私は、最終的のお答えで行き過ぎがあったという点を遺憾の意を表したような次第でございますから、そこはひとつ一段落ついたようにおとりを願いたいのであります。  それから答弁が二転、三転するという問題は、さっきもちょっと申し上げましたけれども、ずっといろいろな経緯があったようでございまして、そういう点の記憶違い等もありましたようで、これもここ一両回たいへん明確になってきておる、こういうふうに考えております。そのような次第でございまして、三十一社のうち三十が取り下げられた、残るところは一社である。この一社が大体その主体となる人々はFM東京と変わりはない、こういうことで、これを一つの継承者というような形で取り上げたということに考えております。
  300. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いま郵政大臣が継承者と言っているのですが、継承者なら継承者と称するものを出しなさいよ。継承者と称するものは何一つ出さないで、継承者だと認定しているじゃないですか。そんなばかなことがありますか。それであなた方は適法にやった、適法に受理したと言う。受理する書類だって添付書類全部整っていないじゃないですか。形式的にだって不備じゃないですか。実体的なものは何ら検討しないで書類だけで検討している。こんな訂正届けは適法だと言えますか。称するものがあったら出してください。そんないいかげんな認定で免許ができているのか。称するものを、証拠を出しなさい。
  301. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。先ほども申し上げましたように、まだ会社ができているわけではございませんで、あくまでも免許を受けるということでございます。したがいまして、先ほども申し上げましたように、この私どもの審査というものは、将来設立される会社というものが適法であるかどうかということを審査するというわけでございまして、先ほど来、大臣からも申し上げましたように、この三十一社が一本化して、三十社が取り下げて、残った一社に統合したというかっこうを私どもは認めたわけでございますので、それに対して審査をして免許をおろした――私どもは、いま申し上げましたように、この三十一社の申請のうち三十社が免許の取り下げを出しまして、残りの一社が改定されてFM東京になった、そういうふうに認めたと、そういうことで審査をしたわけでございます。
  302. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そういう点で――それならば、私は、当然一社になったならば、中央FM音楽に、これが一社にまとまったんだからこれに統合すべきである、やってないじゃないですか。
  303. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。私どもとしましては、中央音楽FM放送に統合されたと、そういうふうに考えているわけでございまして、ただ、その際、統合した際に名前をFM東京と、そういうふうに変更した、そういうわけでございます。
  304. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 発起人も違うし、資本金も違うじゃないの。だめだよ、そんなの答弁にならない。資本金だって違うじゃないの。答弁にならないよ、もう一度答弁しなさいよ。答弁しなさいよ、資本金だって違うじゃないですか。発起人だって違うじゃないの。
  305. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 関連。委員長ね、いま発言者の言っているのは、資本金も違うし、それから事務所も違うわけでしょう。それから戸籍謄本も必要だし、これは商法で明らかでしょう。それと印鑑証明、そういう決議をした場合に決議の会議録、委任した場合に委任状、そういうものが必要なんです。それがないから質問者は答えてくれと、こう言っておるのですよ。そういうものあるなら出しなさいと、こう言っておるわけです。
  306. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。いまおっしゃったような証拠書類というものはございませんけれども、私どもとしましては、先ほど来申し上げているようなことで、三十一社が統合して一本になった、その際、もちろん統合したわけでございますから、資本金、株の配分であるとか、役員、その他の事項が変更になるということは当然であろうかと思っております。
  307. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 かってに株式の割り当てとか、発起人を私どもは変更することはできないと思う。民法からいっても、会社法からいっても私はできないと思う。そういう意味で、これは明らかに瑕疵のある訂正届けだ。瑕疵のある訂正届けに基づいた免許は私は無効だと思うんですが、どうですか。これはほかの瑕疵のある訂正届けに基づいて与えた免許は私は無効だと思うんですが、どうですか。これは法律家が答えてください。
  308. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) それでは、法律家からお答えを願う前に、私どものほうとしては、この免許は、必ずしも会社が明確に登記までやって設立をしない段階であっても、その中身について申請書の審査をする、こういうことでございまして、会社法あるいは商法に抵触するというふうには考えておらぬのであります。
  309. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 法制局長官、そのとおりですか。変えていいんですか、それで。そんなことないと思うのだが。
  310. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 先ほども申しましたように、無線局のあるいは放送局の予備免許というものは、会社が設立される前におおむね行なわれているわけでございまして、私どもは、予備免許のときに条件をつけまして、一定の期間のあとに会社が設立したかどうかを確認することをやってるわけでございます。
  311. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そんなことはわかってるのだ。証拠を出してくださいよ、証拠を出さなければ審議は進まないですよ。証拠を出してください、はっきり。つながりを示す証拠を出してくださいよ。
  312. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) お答えをいたします。その際における、ただいま竹田委員の御要求にかかわるような書類というものはございません。そのときの状況を判断してさような、あのような結論を出したと心得ております。
  313. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうすると、何らそういう点でつながりについての証拠はないと、結局、電波監理局長の個人的な裁定の判断でこの訂正届けは正しいものだと、こういうふうに認定する以外には証拠はないと、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  314. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) さようなことでございます。
  315. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうすると、実体的な審査は何らやらないで、証拠のない書類だけで審査をして認可を与えた、私は、これは公務員として重大な過失を犯しているものだと思うのですが、そういう公務員はそのまま認めてよろしゅうございますか。
  316. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) まあ、竹田委員はさようにおっしゃいますが、その点は、事は身分にかかわる問題でございますから、なお私のほうはよく調査をいたします。
  317. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 郵政大臣ね、調査する、調査すると言うけれども、あなたは一体いつからいつまで調査すればこれはわかるのですか。去年の五月からあなた調査すると言っていますよ。もう一年になりますよ。これだけ重大な電波法に関する問題が一年かかっても調査ができないというような郵政大臣じゃ私は困ると思う。どうですか、その点は。
  318. 井出一太郎

    国務大臣井出一太郎君) 十分入念にやっておる次第でございます。
  319. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 委員長、ばかばかしいからこんなものやめます。それで、この免許はそういう意味で取り消しをすべきである、取り消しをしなければ私どもはどうもわからない。これはさらにあと委員会等で進めていただきたい。奇々怪々なことだと、こういうふうに申し上げて、一応この問題については終わります。  たいへんこれで時間をとりまして残念でありますけれども、日本の資源関係についてお伺いをしたいと思うのですが、十分お伺いする時間がございませんので、簡単に御質問をいたしたいと思うのですが、最近、石油の消費量というのは経済の成長とともに非常にふえてきております。おそらく昭和六十年には六億キロリットル以上の石油を使うということになるわけであります。一体、日本のこの狭い国土で、まあ輸入量は世界第一でありまして、消費量は世界第二であります。日本の空をよごさない、環境を破壊しない、こういう立場で考えますと、脱硫技術等々を考えても、私は、石油の消費量というのは一定の限界がなければならない、こういうふうに思いますが、どうですか。
  320. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和六十年にやはり推定六億ないし七億キロリットル、おっしゃいますとおりと思いますが、結局これからわれわれがどうやっていわゆる低硫黄の原油を探し得るかということと、国内において直接脱硫及び排煙脱硫の技術がどれだけ進められるかということ、それからLNGがどの程度確保できるか、原子力まで申しませんでも、石油関係でもそういう問題がございます。で、直接脱硫についてかなり今度は技術的に自信を持ちましたので、まずいまから二年ぐらいのうちには現在の二倍程度の四千万キロリットル余りの直接脱硫はできるであろうと考えております。これは新しい精製設備にそういう義務を課しておりますので、かなり有効に行政ができます。排煙のほうはまだ三カ所ばかり始めたばかりでございますので、もう少し時間がかかりますけれども、しかし、おそらく数年のうちに整備をされると考えます。したがいまして、これらのことを総合していきまして、まあ六十年までの見通しを非常に正確に述べろと言われますと、事の性質上困難でございますが、かなりのことがやっていけるであろう。ただ同時に、いろいろ問題はございますけれども、現地精製といったような問題がどうしてもこの間には出てくるのではないだろうか、消費地だけの精製でどこまでいけるかという問題は確かにございます。いろいろ問題はありましても、やはりそういう方向にも一部動いていかざるを得ないのではなかろうかと私は考えております。
  321. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いまのような脱硫技術がたいへん発達をしてきたということは、私も望ましいことだと思うのですが、おそらく脱硫技術が発達して脱硫をかなり進めても、消費量がふえていくということになりますと、その脱硫技術の向上した効果というものは少なくなってくる。でありますから、当然私はこの辺で、日本のエネルギーというものを一体何にたよっていくのか、いつまでも石油ばかりにたよっていくというようなことは、私は正しくない。そう言っても、原子力がどれだけ発展するかということについても早急に発展するというふうには考えられない。こう考えますと、この辺で重油を最も重要なエネルギー源として考えるという考え方も少し変更せざるを得ないだろう、私はこのように思います。私はできたら、そのつなぎとしてLNGあたりを大量に輸入するということによって、亜硫酸ガスによる大気汚染というものを防いでいくべきではなかろうか。それを輸入しても窒素酸化物の問題がまた出てまいりますけれども、一応そのように日本のエネルギー源というものを転換すべきであるというふうに考えておりますが、どうですか。
  322. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 方向といたしまして同感でございます。先ほど御指摘昭和六十年における原子力の一次エネルギーとしての比率を大体一〇%程度と考えておりますので、これは六千万キロワットぐらいな発電量になるわけでございます。総発電量の四分の一ぐらいになるかと存じます。それにいたしましても、LNGというものは私ども非常にほしいのでございまして、ただいまブルネイなどから買っておりますけれども、御承知のように、これについて非常にやっかいな問題は船でございます。わが国にまだこれを運ぶ船をつくる技術がない、しかも非常に高いということで、このほうの研究開発も伴わなければならないと考えております。
  323. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 時間がありませんから、あまり深く触れられませんけれども、いまのところ、OPECの問題が出てから自主開発、自主開発と、これには幾らでも金を出してやるというような形で自主開発が進められておるような気がいたします。しかし、このOPECの問題一つを見ましても、発展途上国がそういう資源を持っておる場合が多いわけです。そういたしますと、日本がそういうところに自主開発をしていく場合に、それらの発展途上国のナショナリズムと相当な調整をしていかないと、その辺で衝突を起こす心配があります。まあOPECという四字の文字であります。私が若いときに、ABCDラインをひとつ突破して南下しようとして起きたのが日本の太平洋戦争だと思うのです。どうもOPECという字が四字でありますし、ABCDが四字であります。そういう点で私はそういうイメージをこの問題について非常に感ずるわけであります。そういう問題については一体、そうした資源を有する開発途上国と日本の自主開発、こういうものの調整を一体どのように考えるか。このままでいけば非常に私は問題が出てくると思います。きのうの分科会でも、この石油の開発の問題についてはいろいろ論議があった点は私も聞いておりますけれども、いまのままで進んでいくということになれば、必ずそれとぶつかってくる可能性が私はあると思う。そういうものに対する調整というものをあらかじめ考えておかなければいけないと思うのですが、これはむしろ総理に伺ったほうがいいと思いますが、外務大臣……。
  324. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 総理からもお話があると思いますけれども、確かにおっしゃるように、なかなかこれはむずかしい問題であると感じております。ある人たちは、この石油の問題を南北問題というふうにとらえておる人たちもあるくらいでございまして、日本といたしましては、たまたま産油国がいろいろの点で日本の経済援助あるいは技術援助等を求めておるところも相当ございますから、これらと結びつけて自主開発、あわせて産油国に対するその他の面の経済開発その他に協力するということで協調してやってまいりたい、こういうふうに考えております。ところがやはり、他の経済先進国におきましても、やはりエネルギー問題は相当の問題でもございますので、いま御指摘がありました問題以外に、そういう国々とまた日本としても、場合によると競合するようなところもございますので、ずいぶんこれは外交政策といたしましてもむずかしい問題でございますが、あくまで関係国と協調してやっていくという線でいかなければなるまいと思っております。
  325. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま外務大臣のお答えになりましたとおり、これらのOPECの国国の基本的な立場は、自分たちの産出するほとんど唯一の産物を有利に活用し、売りさばいて経済開発をしていきたい、これは当然の気持ちだと思います。そういうことでございますから、われわれとして、もともと発展途上国の援助をしたいと考えておるわけでございますので、これらの国の開発に役立つような手助けをしながら、そういう資源の開発も一緒にやらしてもらう、こういう基本的な態度が必要ではなかろうかと思います。
  326. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ひとつこの問題は十分対策を練っていただきまして、基本方針をしっかり立てていただいて、開発にいったそこのナショナリズムとぶつかってしようがない、あるいはせっかくつくった施設というものがとられてしまう。こういうことがあってはならないし、他方、やはりいま軍国主義の復活とかなんとかという、日本に対する話もありますから、そうした面でも私は、ちゃんとした対策を立てておかないと、いたずらにそういう非難というものをさらに濃くしてしまう。そういう意味でひとつこの点は、十分に検討していただかなければならない問題だと思う。国民にもその点ははっきり明示しておいていただかなければならない問題である、こういうふうに考えます。さらに申し上げたいことがありますけれども、時間がありませんから、また他の機会にひとつ譲りたいと思います。  次に、厚生大臣にお伺いいたしたいと思うのですが、現在、医師の診断によっておりますところのスモン病というものと、これも医師の診断でありますが、多発性神経炎というものの関係は一体どうなっているんですか。同じものと見ていいのか、あるいは全然別個なものと見ていいのか、その点をひとつ。それからスモン病の患者というのは男に多いのか、女に多いのか、この辺はっきりさしていただきたい。
  327. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 多発性神経炎は、そのとおり人体の各部位の神経に炎症を起こすのでございますが、スモン病は、その多発性神経炎の一つと言えば言えますけれども、独立して特徴がございますのでスモン病という特殊な病名がつけられたのでございまして、多発性神経炎はかなり広い意味の表現になっておりますので、関連なしという否定はできないと思います。それから男女の関係につきましては、大体七千八百人ぐらいの疑い患者を含めた患者数のうち、三分の二が女性でございまして、三分の一が男性でございます。
  328. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 スモン病の原因というのは何であるというふうに考えられていますか、わかりませんか。
  329. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) スモン病につきましては、わが国の独得な疾患としてきわめて重要な問題でございまして、研究の成果につきましては、ただいま研究協議会が四十四年、五年引き続き検討をいたしております。その結果から見ますと、最近特に明らかになりました治験といたしましてはキノホルム、いわゆる整腸剤等に使われておりましたキノホルムがかなり有力な原因であるという説が有力になってまいりまして、三月一日、二日の研究協議会の結論につきましても八割方はキノホルムが原因であろうということでございます。しかしながら、これにつきましては疫学的に、昨年の九月にキノホルムの使用を停止する以前からも――六月からも減少を始めておるという一部学者の説もございますし、それからキノホルム自身が全然関与なしの患者も発生いたしておるという事実も指摘されまして、一〇〇%キノホルム説というものはまだ確立いたしておりません。
  330. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 厚生省では、一九四六年のアメリカの医学雑誌に載っておりますカッター博士の二浴式パーマ液の影響というものとスモン病との関係については御存じですか、御存じないですか、この説は。
  331. 武藤き一郎

    政府委員武藤琦一郎君) 昨年の当委員会でもその問題が取り上げられたことは聞いておりますが、パーマ液がそういう病気を引き起こすということについては専門家の報告はございません。アメリカの、いま先生のお話でございますが、アメリカの学者がパーマ液が皮膚等に着いていろいろ刺激症状の病気が出ているという警告を発していることについては承知いたしております。
  332. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そのことについては厚生省としては、この意見は取るに足らない、こういうふうにお考えですか。
  333. 武藤き一郎

    政府委員武藤琦一郎君) アメリカのFDAに、その問題につきまして尋ねましたけれども、否定的な意見でございました。
  334. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これもあまり長くやる予定ではございませんが、そういう説があるわけですね。コールドパーマの二浴式の最初の液、この中に含まれているSH根による中毒である、こういう説がありますし、そのことを診断した資料も私かなり持っております。いま時間がありませんから、この問題を詳しくやる時間的な余裕はありません。しかし、スモン病というものの原因というのは、さっき申しましたように、キノホルム説というのもあるようでありますが、キノホルムを投薬して出た結果については、必ずしもスモン病と同じような結果があらわれていないわけです。スモン病の場合に、その病状というのは足が非常に冷えるということが大きな特徴でありますし、あるいは赤血球にしても、白血球にいたしましてもその数が非常に下がる。こういうところに特徴があると言われておりますので、この点はこのほうもひとつ十分研究していただいて、スモン病というのはおそらく不治の病だとさえ言われておるわけでありますから、ひとつ早急にこの点を十分研究をしていただきたい、このように思うわけであります。  それから最後に一つ、港湾問題について。港の問題についてお聞きしたいと思うんですが、時間がありませんのでたいへんかけ足で申しわけないと思いますが、今度第四次の港湾整備五ヵ年計画というものが出て、第三次の計画というものが三年で切り上げられてしまった。三年で切り上げて第四次に移った。その移らねばならなかった背景というものについて御説明いただきたいと思います。
  335. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 御承知のように、第三次五ヵ年計画は三年目で変更いたしまして、四十六年から第四次五ヵ年計画をつくることになったわけであります。このバックラウンドは、これも御承知のとおり、政府が策定しました新全総あるいは長期経済計画等に従って、当初第三次当時にきめましたいわゆる基準では追いつかない、貨物量等が非常に増大してきておる、こういうことからして一応三年で――三年までやりましたが、それ以後新しい計画でやる、これが一つであります。同時にまた、港湾自身のいわゆる内容が変わってきた。御承知のようにカーフェリーあるいは外貿埠頭等のコンテナー埠頭等も含めまして、さような機能自身も変わってきたと、こういうことからして従来の計画を手直しをする必要が出てまいった。この二つの条件でいわゆる五ヵ年計画をきめるに至ったわけであります。
  336. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 この前、当委員会で首都圏の港湾についていろいろお話をいただきまして、私も非常に参考になったわけですが、この前のお話は港をつくるということに重点があったように私思います。私は、いまの港湾をもっと効率的に使うことを考えるべきだ。たとえば東京湾一つとってみましても港湾管理者が五つですか、あります。港の船の動きも湾口から各港に直接いくんじゃなくて、湾の中を行き来する船も非常に多くなってきた。こういう中では港湾管理者の、たとえば料金の問題あるいはいろいろな手続の問題、こうした問題も複雑であるということで、そうした需要に応じ切れない。ですから、この各港湾管理者が統一的にいろいろなオペレーションができるようなことをひとつ今度は考えてもらわないと、ただ港湾の施設さえつくればいいという形では、ただ金だけかけましてその結果あまり変らない、こういうことにもなります。それから港湾自体の考え方も、公共埠頭制度というものの考え方だけでいいのかどうなのかといいますと、これにも私は検討を加えなければいけないと思います。また、港の内部の情報についても統一的にオペレートできるような形というものをつくっていかなければ、ただ単に港湾に荷物が滞貨するだけだ、こういう問題もあろうと思います。あるいは港湾管理者の財政力の強化の問題も、これは大蔵大臣考えてもらわなければならぬ問題だと思うんです。それらを一々聞いていましては、もう時間になりましたから、私はそういう面について御検討いただいておると思いますが、さらに検討をしていただいて、次の機会にそれらについてお答えをいただくということにいたしまして、きょうは終わりたいと思います。お願いをいたします。
  337. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもって竹田君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  338. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、三木忠雄君の質疑を行ないます。三木忠雄君。
  339. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は経済援助及び防衛問題を中心として、特に日本と韓国の関係について、並びに現在消費者にしわが寄せられておるところの石油の値上げ問題等について、何点か質問したいと思います。  最初総理にお伺いしますが、佐藤・ニクソン会談の共同声明における韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要であると、このような声明に対して、佐藤総理は具体的にどのように定義づけられているか。あるいはどのように今日まで総理自身としてやってこられたか。この点についてお伺いします。
  340. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 申すまでもなく韓国はわが国と一衣帯水、その隣合わせの国でございます。だから、ここで平和が維持されていることは、もちろん日本に好ましい状況だと思っております。したがって、ここに問題が起こると、私どもの憲法の制約ももちろんありますから、その介入はいたしませんけれども、いわゆる火の粉が飛んでくることをたいへん気にする、こういうような関係にあると御了承いただきたいと思います。
  341. 三木忠雄

    三木忠雄君 その火の粉が飛んでくるような関係にあると、こういう緊密な関係の中にあって、具体的にどういうふうに今日まで――経済援助の問題等は大蔵大臣にお伺いしたいと思いますけれども総理として約一年有半、この韓国との関係をどのようにこう進めてこられたか。
  342. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、なかなかできないことでしたが、国交の正常化をまずはかること、これが私の着手した一つの仕事であります。日韓間の問題が正常化された。また前回は大統領の就任式に私自身が出かける。こういうようなことでございまして、私はただいまの状況は両国間においては誤解なしに親密の度を増していると、かように思っております。
  343. 三木忠雄

    三木忠雄君 それで、外務大臣あるいは通産大臣、防衛庁長官大蔵大臣にお伺いしますが、この共同声明以来、この韓国との緊要の問題について、具体的にどういうふうに行動面において実施をされてきたか。あるいは経済援助なり各種の問題点について、各省でどのような具体的な対策を講じてこられたか。これについてまず外務大臣から。
  344. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 各大臣からも詳しくお話があると思いますが、ただいま総理から述べられた基本的な考え方で、日韓間の関係は私はきわめて現在友好的であり、お互いの協力関係は非常にうまくいっているように思われます。で、その中心は、たとえば毎年一回相互交換で日韓間の経済閣僚合同会議を開いております。そして経済協力を中心にいたしまして、まあ一言にして申しますれば、韓国の民生向上のために具体的なプロジェクトを中心にして、たとえば中小企業等の育成振興というようなことを中心にいたしましての、あるいは融資の面もございますが、その他の協力関係を設定しておる。それから韓国は、御承知のように一面国防、一面建設という、非常に二つのむずかしい命題を掲げて国策の基礎にしておりますけれども、ただいまの状況としては、治安関係等は相当に安定しておる、また緊張状態というものもさしておそるべきような状況ではないと、こういうふうに見られておりますが、なお一そうこの民生の安定向上ということに成果があがるに従って、この堅実な状態というものが一そう促進され、またそれが望ましいことであると、かように考えております。
  345. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 共同声明以来というお話でございますが、共同声明以前から韓国に対しましては各種の経済協力、援助をいたしております。その援助の姿勢は、共同声明以降も変わるところはございません。格別共同声明以降こうしたという、変わったことはございません。
  346. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 衛防庁では特にこれということはやっておりません。ただ、先方との友誼を深めるためとか、あるいは招待等がありまして、たしかここ二、三年の間に三十九名ぐらいの自衛官が韓国へ渡って調査をしたり、あるいは歓迎を受けたりしております。
  347. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年の夏に日韓の定期閣僚会議がございましたときに、四つのプロジェクトを先方が希望してまいりまして、重機械の工場と造船所と特殊鋼工場と鋳物銑の工場でございました。十月に政府調査団を出しまして、これらのものの可能性につきましてかなり詳しく調査をいたしました。その結果、比較的早く始められそうなものと、相当技術的な習得を重ねなければならないものとがあるということで、なおおのおののプロジェクトについて具体化いたしますときは、さらにフィージビリティーと申しますか、具体的な実施計画を立てるために必要な事項を検討すべきであろうという、いわば調査団の所見を韓国政府に申し伝えた次第でございます。
  348. 三木忠雄

    三木忠雄君 最初に外務大臣に伺いますが、昨年の日韓閣僚会議で、大筋の援助計画はいろいろきめられたと思うのですね。ところが、実施段階になってくると、この援助計画というものを再点検しなければならないと、実際になって外務省としても今後の経済援助の問題をこの時点において練り直さなければならないと、こういうふうに承っておるわけでありますけれども、この問題についてはいかがでございますか。
  349. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 韓国も先ほど申しましたように、非常に建国については張り切っておるわけでありますから、いろいろの意欲的な建設計画を持っておるわけでございます。それらの関係もございまして、たとえば、借款の問題などにつきましても、相当の要請を持って会議にも臨んできたわけですけれども、やはりこれはプロジェクトベースで適切なものを双方相談の上で十分選んで、合理的で経済的で平和的な目的というものを選定していく必要がございますから、ものによりましては抽象的な原則論を閣僚会議で一応合意しておきまして、あとはワーキングレベルの相談に譲ったものも相当ございます。ただいま通産大臣からもその中の要点と思われるものについて触れられましたけれども、そういう点を積み上げまして、いわゆるつかみで借款をどうというようなかっこうではなしに、まじめに双方とも合理的なものを積み上げていくというふうに、これは今後とも行くべきものであると、かように考えますから、昨年八月に原則的な合意を得たものであって、実際の具体的にはまだ話のきまっていないものも相当ございます。そういう関係でございます。
  350. 三木忠雄

    三木忠雄君 大蔵大臣にお伺いしますが、最近問題になっております韓国に五千万ドルの銀行借款の問題でありますが、昨年の閣僚会議において一億ドルの対日借款問題に対して具体的にどういうふうにするかというようなことはなかなかきまってなかった問題が、特に四月の大統領選挙、そういう政治的ないろんな色彩があって、まあ政府の官ベースにおける借款問題はできないけれども民間関係において融資関係を結ばすと、こういう問題が最近クローズアップされてきておるわけでありますけれども、この五千万ドルの借款問題についてはどのように考えておりますか。
  351. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 五千万ドルとこの間新聞に報ぜられましたが、そういう話があるようです。これはもう全く民間の銀行同士の借り貸しの話でございまして、政府のほうには何らの関係ない――去年一億ドルという要請を受けましたそれとは全然関係のない問題でございます。それで、これは民間の銀行、あれは七行というふうに聞いておりますが、七行が韓国の銀行に対して金を貸すと、で、場合によればユーロダラーですね、ユーロダラーを入手して、それをそのまま韓国のほうへ回すと、こういうようなことも一部考えておると、こういう話でございますが、いずれにいたしましても政府には関係ないんです。
  352. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ確かに民間ベースでありますけれども、韓国の現在の対外債務が累積しておる現在において、こういう割り高のものを民間から借款するということは、政府からはずして民間のほうに移したということについては、私はこれはちょっと考えなきゃならない問題じゃないか。まあ大蔵省も何か認めたという話は、この了解事項になっているようでありますけれども、この点はいかがですか。
  353. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだ正式な相談は受けておりません。で、韓国はとにかく利息が非常に高いんです。二〇%、三〇%、そういう利息のような状態でございます。でありまするから民間銀行――日本の民間銀行から金を借りましても十分償うと、こういう状態ですが、何か三木さんは政治的な関係でもあるような含みの口吻のお尋ねでございますが、そういうことは全然ないんです。これは民間から盛り上がりまして、民間において行なうと、こういうものでございます。
  354. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは、通産大臣先ほど述べられました国防色の強い四工場の、重工あるいは機械、あるいは造船、あるいは特殊鋼ですね、こういうものへの協力要請があった問題に対して、具体的に日本側の協力体制はどういうふうになっておるか。
  355. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 調査団を送りまして調査をいたしたわけでございますけれども、これは何ぶん相手側の政府の委託によりましたことでございますので、その詳しい所見等につきましては申し上げないことが適当であろうかと存じますが、これらのうちで比較的早くやれそうなものにつきまして、民間ベースで話が出てまいりましたら、これは韓国と話し合いになるわけでございますけれども、ただいまのところまだ具体化した話を存じておりません。
  356. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは昨年秋に、これは通産大臣じゃなしに重工業局長伺いたいんですが、日本政府の派遣として重工業局長調査団長として現地に行かれた、その結果の報告をしていただきたいと思うのです。
  357. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) ただいまも大臣からお答え申し上げましたように、韓国政府の企画いたしましたプロジェクトでもございますので、ここで詳細に申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思いますが、私ども政府の命令で、韓国の重工業の今後の育成方策、それから韓国重工業の一般的な状況、これについてつぶさに調査をいたしてまいったのでございます。全体の感じから申しますと、韓国においてはまだ重工業を今後育成していくと申しましても、非常にいろんな基礎的な問題の整備が十分行なわれていない。非常に過去十年ぐらいの間の進歩は目ざましいものがございますが、特に技術の問題あるいは設備の問題等々におきまして、これから先も、じみちにこういったものをつちかってまいりませんと、いきなり大型の新規プロジェクトをつくりましても、今後有効に作動しないのではないかといったような点も見受けられるわけでございます。こういったような観点を含めまして、私ども調査団といたしましては、そういった努力も加えながら、今後、先ほども大臣が申し上げましたように、比較的やりいいものから逐次具体的民間協力の形において進めていくのが適当であろうというような点を指摘いたしたのでございます。きわめて簡単でございますが、以上が私ども調査報告書の概要でございます。
  358. 三木忠雄

    三木忠雄君 いまもお話のあった、ほとんど明らかにされないように、私たちもこの調査報告書をいろいろ要求したんですけれども、なかなかいただけない。まあ具体的には民間協力の形のほうに、何か方向がずいぶん進んできていると、こういうように私たちは受けとめておるわけでありますけれども、この韓国側に対して、計画の練り直しを求めて、いろいろ近く提出が予定されておるそうでありますけれども、具体的に韓国政府がすでに重機械においては新進自動車工業ですか、造船所においては現代建設、あるいは特殊鋼においては大韓重機、あるいは鋳物においては江原産業と、こういうようにプロジェクトを担当企業を指名してきて、個別に日本側企業と合弁事業を組んでいくと、こういうような形で、すでにもう資材の買い付け等が始まっていると、こういうふうな私たちは理解をしておるわけでありますけれども、この点については通産大臣いかがでしょうか。
  359. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 韓国側が提示しておりました四つのプロジェクトにつきましては、現地でも十分韓国政府意見を聴取をいたしました。向こう側の考え方は、いまお話もございましたように、韓国側においては有力と思われる企業を指名をし、その企業が日本側のパートナーを見つけて、それぞれ合弁投資の形で事業を行ないたいということを原則として考えておるということでございました。計画の内容につきましては、韓国政府がつくりました四つのプロジェクトのそれぞれ計画内容がございますが、先ほども申し上げましたような観点から、私どもそれぞれの計画についての一応の所見をまとめて韓国政府に提示しております。韓国政府は、その後この私ども調査報告書を受け取りまして、それに基づいて、私どもが聞いておりますところでは、一部計画の内容等を変更し、さらにそれが具体化するにつれて、計画の概要というものをこちらに提示をし、政府間でもある程度了解を得たところで、それぞれ企業企業ベースにおいて、いまお話のような具体的なステップをとっていく、こういうことに段取りとしてなるわけでございます。現状におきましては、私どもとしては、まだ韓国政府がファイナルにそれぞれのプロジェクトについて、こういった内容に改めた、あるいは改めるがどうかというような申し出は受けておりませんし、したがってまた、調査といったような段階で、それぞれの企業があるいは何らかの活動をしておるかもしれませんが、具体的にプロジェクトをまとめて、まあ私どものあれでいえば、延べ払いの申請をするとか、あるいは投資の申請をするとか、そういったような段階になってはいない、こういうふうに現状了解をいたしております。
  360. 三木忠雄

    三木忠雄君 具体的にこの四部門において、日本の資本参加の実態はございませんか。あるいはまた資材の買い付け等、具体的にやられておるという点はございませんか。
  361. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) この四つと申しましても、それぞれの産業部門では、あるいはそういったようなことがあるかもしれませんが、昨年の閣僚会議に基づきまして、新たにスタートをしようというプロジェクトについては、そういう事実はまだ承知をいたしておりません。
  362. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは通産省のほうもなかなか言いづらい問題かもしれませんけれども、現実に新進自動車なんかは具体的にもう進んでいるのじゃないでしょうか。
  363. 赤澤璋一

    政府委員赤澤璋一君) 新進自動車は、御存じのように日本のトヨタ自動車から技術援助を受け、かつその部品をノックダウンで輸入をいたしまして、向こうで組み立て生産をしているという企業でございます。同じような新進糸の企業におきまして、トヨタ自動車あるいはその他のところと合弁でもって、あるいはプレスでありますとか、あるいは自動車のエンジン用の鋳物であるとか、そういったものを国産化したいという計画があるように聞いております。しかし、具体的にその計画が日本側企業との間で何らかの形で合意に達し、こういった計画について政府に承認を求めてくるという段階にはまだ立ち至っておりません。
  364. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは、実際に民間ベースでほとんど話が進んできていると、私は受けとめているわけでありますけれども、もう一つ、昨年の閣僚会議で約束をされた地下鉄建設ですね、これは運輸大臣に伺いたいのですけれども、最近八千万ドルにのぼる資金協力の要請が正式にきておる、こういうふうに言われておるわけでありますが、その実態はどういうふうなぐあいになっておりますか。
  365. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 昨年の日韓閣僚会議でこの問題が両国の運輸大臣会議の中でも出まして、共同コミュニケにもそれが入っております。その際の合意しましたのは、ソウルの地下鉄の調査をやってもらいたいということでありまして、その点は引き受けましたということで、調査団を作成いたしまして、現地を見て、そうして昨年の暮れには報告を受けまして、本年になりましてから、またより具体的なものを知りたいということで、作成してもらいたいということで、こちらから数名の専門家を派遣して、目下調査中であります。これに関していわゆる借款の話があるかどうかというお話でありましょうが、私のほうにはまだ正式にそのような申し入ればありませんし、この調査をわれわれが受けましたときには、借款問題はこれとは全然別個のものである、運輸省としては技術的協力といいましょうか、調査には十分協力はするが、借款問題は別個であるということをあらためて念を押しまして、そうして調査を進めてまいっておる次第であります。
  366. 三木忠雄

    三木忠雄君 運輸省として、最近調査には行かれる予定はありますか、計画は。
  367. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 最近、技術者を数名派遣いたして目下検討中であります。
  368. 三木忠雄

    三木忠雄君 当初、この問題一つにしましても、調査だけで行ったのですけれども、最終的には、まだ現に運輸省には申請は出ておりませんけれども、実際に八千万ドルにのぼる資金協力の実体がのぼってきておる、こういう感じで、これは地下鉄の問題のみならず、あらゆる銀行の借款の問題にしましても、あるいはまた重工業との結びつきにしましても、一つ一つそれが民間ベースでどんどん進められている、確かに政府間ベースは薄くなってきているとはいいますけれども、やはりその風向きが全部民間のほうに、いろいろな形でしわ寄せがきている。そうして知らず知らずのうちに日本と韓国との結びつきというものが非常に緊密になってきておる。  そこで私は、一昨年の六月に設立されましたところの関釜フェリーの問題について、何点か伺いたいと思うのですけれども、この路線については、世間では政治航路であるとか、あるいはまた軍事航路であるとか、こういう国民の疑惑を招いておるわけでありますけれども、この韓国の緊要というこの問題について、この関釜フェリーとはどういう関係にあるのか、まず総理大臣にお伺いしたいと思います。
  369. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私からの御説明であるいは不十分かもしれませんが、関釜のフェリーのお尋ねですけれども、従来、御承知のように下関と釜山の間には定期の連絡船が運航されておったわけであります。これが昨年廃止されまして、新たに下関市に関釜フェリー会社、それから釜山市に釜関フェリー会社が、それぞれの国内法に基づいて設立されまして、昨年の六月からフェリーが運航されておるわけでございます。  このフェリーの運航自体については、従来の定期連絡船の運航と何ら変わるところがございませんで、日韓間に特別な条約とか取りきめというものは必要ではない、こういう見解に立って、両方の民間同士の船会社の間でフェリーが運航されておるわけでございます。そうして、それぞれいろいろ相互乗り入れに伴う免許の問題とか保健、検疫、通関、安全基準、いろいろの問題がございますが、それぞれ日韓両国の関連の国内法規を比較検討いたしまして、さしたる支障なく運営されているように見受けられます。なお、さらによくなるためには、国際条約等に日本側が入っておって、韓国も入った場合においては、安全基準、免許の取り扱いその他、もっと円滑になるわけでありましょうけれども、韓国側がまだ国連加盟国でない関係などもございまして、そういった条約上の基準を相互に使い得る関係にはございませんけれども、現状をもって、たいした支障なしに運航されているように見受けられます。
  370. 三木忠雄

    三木忠雄君 運輸大臣に伺いますが、この下関側にある関釜フェリーと韓国側にある釜関フェリーの関係について、両者の代理店契約、あるいはいろいろ契約が結ばれていると思いますけれども、その契約の内容とか当事者はどういうふうなぐあいになっておりますか。
  371. 鈴木珊吉

    政府委員鈴木珊吉君) お答え申し上げます。  こちら側の関釜フェリー会社と、釜山におきまする代理業務というものをお願いいたしておる釜関フェリーという会社がございます。釜関フェリーという会社はもちろん韓国の法人でございまして、こちらの関釜フェリー会社が釜山の港におきまして、たとえば入出港関係とか、あるいは停泊に伴う諸官庁の手続関係、そういったものとか、あるいは向こうでの乗船切符の発売とか、あるいは船荷証券の発行とか、そういったような仕事を委託しておる、そういう関係の代理店契約を両者が結んでおるということでございます。
  372. 三木忠雄

    三木忠雄君 その代理店契約の内容は、どういうふうなことになっておるのですか。
  373. 鈴木珊吉

    政府委員鈴木珊吉君) 代理店契約の内容につきまして、私いま手元に実は契約書を持っておりませんけれども、いま申しましたような業務を委託する、あるいはそれに伴ういろいろな、お金等を精算するということなんでございまして、そういったようないわゆる商業上の内容の契約でございます。
  374. 三木忠雄

    三木忠雄君 代理店契約の問題についても、運輸省も十分御存じだと私は思うのですがね。この契約者当事者はどういうぐあいになっておりますか、その関釜フェリーと釜関フェリーとの関係は。代表者はどうなっていますか。
  375. 鈴木珊吉

    政府委員鈴木珊吉君) 実は、私ども関知しておりますのは、この関釜フェリー会社がこういう事業を開始するということで、海上運送法に基づきまして届け出を行ないました。その届け出の中に、一項目といたしまして、代理店という項目がございまして、代理店の名前と代理店の所在地を書くようになっております。その限りに私どもは知っておるわけでございまして、それによりますると、代理店といたしましては、先ほど申しましたように釜関フェリー会社、これは釜山市にございますが、その会社を代理店とすると、そういうことが要するにフェリーの業務開始届け出書の中に記載されておるということでございます。あとはその両者の間に商業的な契約が結ばれておるということでございます。それからなお、こちら側の関釜フェリーのほうの会社の代表者は、会長が松村という名前の人でございます。それから代表取締役社長が入谷さんという名前の人でございます。それから相手の代理店業務をやっておりまする韓国側の釜関フェリーのほうの会社の社長さんは、釜関フェリーの会社の役員でございますが、これは私ども関釜フェリー会社から聞いたのでございますけれども、代表理事、会長が鄭建永さんという人、それから社長が劉興守さんという方でございまして、この両者間で商業的なベースでの代理店契約が結ばれておるというふうに承知しております。
  376. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあこれは民間に実際にやっている実態でありますけれども、これは日本ではフェリー会社をいろいろやっておられる方であるし、まあ韓国のほうでは代表の方が非常に日本に関係の深い実力のある人でありますし、あるいは社長さんはといえば、韓国政府の任命された軍人さんなんですね、元軍人さん。こういう関係になってきまして、この代理店契約書を読みますと、一切のあらゆる荷物の取り扱いから業務一切をこの両社にゆだねられるという、こういう非常に緊密な関係がわれわれの知らないうちに、まあ商業上のベースと言われれば、それかもしれませんが、こういう点が、まあ運輸省としてもいろいろ代理店契約等にも目を通されているんでしょうけれども、こういう外国船舶の取り扱い許可等について、非常に私は書類一本で簡単に許可しているような感じを受けるわけでありますけれども、この点はいかがですか。
  377. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) まあ、これは私がお答え申し上げるまでもなく、国際間の海運活動というものはできるだけ自由濶達に、そうして人間の交流、あるいは物の交流を円滑に行なうというのが、国際間における慣用といいますか慣例でありまして、したがって国際間の海運については、許可制でなく届け出制を行なっておるわけであります。それによってお互いが自由な国際経済の発達を期し、かつまた人的交流、文化交流を期そうと、こういうことになっております。現在この関釜フェリーですが、関釜フェリーはいま申したように届け出によってできておりますので、したがって、ことに韓国側はまあ全体国家じゃありませんけれども、仕事の上においては日本のような経済的な自由はないかもしれませんが、日本のほうは完全な自由経済でありますから、したがって届け出制で行なわれておるわけでありますけれども内容としてやっておることは、現在は自動車――乗用車ですね、カー、そして人の運びをやっておるようであります。物資及びトラック等はまだ運んでおらないようでありまするが、もちろんこれはやればやれる問題であります。したがって、いろいろの意味におけるさような御心配といいますか、何か軍事面の御心配があるようですが、そのような面については、少なくとも現在の状態ではないように、われわれの調査の上ではそうなっております。
  378. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ現在は民間ベースの関釜フェリーの、実際にカーの輸送とか乗客の輸送とかいう点に焦点なっておりますけれども、実際に現在やっている内容から見ましても非常に赤字でありますし、いろいろ地元のいろんな評判を聞きましても、この航路は軍事航路だとか政治航路だとかいうような思わしくない評判が立つということは、やはりこういう契約者に軍人が入っているとか、韓国政府の人間が入っているとかいういろんな感じで疑惑を招くような点が、現地でも非常に心配しているような声があるということですね。実際に現在赤字である会社にもかかわらず七十二年には二番船が大型船で計画造船されているというこういう実態、あるいは将来は株の相互持ち合いも検討されている、こういうふうな結びつきを考えてみますと、私はまああまりにも緊密な関係というか、これからあとからいろいろの何点か私は指摘をしたいと思うのですけれども、まあつくられたこの関釜フェリーというものが、ほんとうに純民間的なカーフェリーの実務であれば私はいいと思うのですけれども、実際にこれから何点か指摘をしたいと思うのですけれども、この問題点が数多く疑問視されるような点があるということ、これについてはこの外航船舶のこの許可の問題が非常に私は簡単に行なわれているということが、これは運輸省としてもう一歩検討を加えなければならないのじゃないか、こう思うのですけれどもどうですか。
  379. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) ただいま申しましたように国際的な通念としていわゆる届け出制、これは韓国に限りません。将来民間で他の全体主義国家、自由主義国家とそういうようなことがありました場合も、これは届け出制という、これはもう国際慣例でありますから、それをひとり韓国なりある一国に対して許可制をとるということになれば、これこそ差別待遇になりますので、運用の状況については、もちろんこれは十分運輸省としては考えてまいりますが、少なくとも現在の状態においては、いわゆる軍事的な目的に使われるものとは考えられない。安全については、これはもう御承知のように、船舶建造のあるいは運航基準等によって安全を期しておりますので、危険はありませんし、かつまた韓国と日本との間の人的交流は、これはもう当然これから盛んにもなるでありましょうし、ことに韓国の観光ルート、これは日本でも非常に関心を持っております。あるいは韓国の安い物資を日本に入れて物価政策にも役立てる、こういう面から見れば、必ずしもこれから幾つかのルートができましても、それをもって軍事面ではないかという疑いは、まあ単なる疑いにすぎないと、こう私は考えざるを得ないのであります。
  380. 三木忠雄

    三木忠雄君 それではこのフェリーに関連してくる数々の問題を私は何点かお聞きしたいと思うのですけれども、まず防衛庁長官にお伺いしますが、この昭和四十五年八月十九日から二十五日にかけて、朝霞から別府間において長距離機動研究演習というものを行なっておりますが、これの実際の内容及び目的等について、説明願いたいと思うのです。
  381. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この演習は、陸上自衛隊の車両部隊の長距離連続機動を実施して、輸送に関する基礎的なデータを得ることを目的として実施したものであり、高速道路を選定しましたのは、交通状況等を勘案し、機動の迅速性及び安全性等の観点から行なったものであります。概要は、実施時期が四十五年八月十九日から八月二十五日まで。実施場所は東京の朝霞の駐とん地から大分の別府の駐とん地まで幹線道路二千五百八十キロメートル。演習実施部隊は統裁官陸上自衛隊輸送学校長、参加人員百九十三名、車両六十二両、ヘリコプター二機。主要研究項目、操縦手の疲労度の測定、車両の性能整備諸要、故障の頻度、一般及び高速道路の行進諸元等でございます。
  382. 三木忠雄

    三木忠雄君 そこでその高速道路の研究項目として高速道路が初めて取り上げられているわけでありますけれども、何か特別な意図があって高速道路というものを、特に今回のこの長距離輸送の研究演習の科目に加えたのかどうか、この点について。
  383. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 一般道路をやりますと、交通妨害になりましたり、事故が起こったりいたしますので、比較的安全と思われる高速道路を選んだものと思います。
  384. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは、高速道路を初めて演習を行なった最適行進隊形というのですかね、この問題については具体的にどういうことでしょうか。
  385. 高瀬忠雄

    政府委員(高瀬忠雄君) 高速道路を選びましたのは、いま大臣からお話があったとおりでございますが、高速道路は、御承知のように一般の道路よりもスピードが速く出せます。そういうところにおきまして、ある特定の部隊をつくりまして自衛隊の車両が行進をすると、そういう場合におきましては、車間距離を普通の道路の場合よりもある程度広くとらなくてはならない、そういう事情がございます。そういうような実態を調査をするというのが目的でございますし、それから部隊の間隔も、普通の道路では一定の間隔でいいわけですけれども、高速道路におきましてはさらに広げる、そういった事情を生ずるのではないか。そういったいろんなデータをとる必要があります。さらに、操縦をする者の疲労の度合いが、普通の道路の場合と高速道路の場合ではどんなふうに違うか、あるいは、そのための回復をするためにどうしたらいいかというようないろんなデータを取得すると、こういうのが目的でございます。
  386. 三木忠雄

    三木忠雄君 防衛庁長官伺いますが、この輸送の指揮に当たったのは輸送学校長の岩下ですね。これは実際に兵員輸送の訓練をまず下関を経由し、大分間に練習を行なったと、兵員輸送訓練だと、こう考えてもいいんじゃないかと思うのですけれどもね、この点はいかがですか。
  387. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 兵員を輸送するのを主たる目的としたのでなくして、自動車の性能であるとか、あるいは運転員の疲労度であるとか、そういうことをよく調査をして、いずれ将来兵員輸送の訓練をする場合のいろいろなデータを得るためにやったのだと思います。
  388. 三木忠雄

    三木忠雄君 事務当局でもけっこうですがね、朝霞から下関を経由し別府間のこの往復の輸送経路ですね、あるいは走行距離あるいは走行時間について、資料がありましたら説明してください。
  389. 高瀬忠雄

    政府委員(高瀬忠雄君) 第一日目は八月の十九日、朝霞から姫路まで。これは二十日の朝、午前零時に着いておりますが、この距離は六百四十キロメートル。それから翌日は姫路から別府、これが五百八十キロメートル。それからその翌日は、別府から、今度は別な経路を通りまして、出雲の駐とん地まで四百二十キロ。それから出雲から守山に出まして、五百四十キロ走行いたしました。それから、守山からは、仲仙道ですか、こちらを通りまして、朝霞の駐とん地に参りました。この間が四百キロメートルございまして、総行程二千五百八十キロメートル。それから、走っておりました時間は六十四時間三分ということになっております。
  390. 三木忠雄

    三木忠雄君 この輸送経路、私も資料でいただいたんですけれども、実際に下関に近い小郡を起点にして、往復の経路はいろいろ異なった形に輸送訓練がされている。別府のほうから下関への九州の輸送計画、あるいはまた今回の兵員輸送訓練において、東京以西のほとんどの主要幹線道路の試走というものが、全部私は輸送訓練が終了したんじゃないかと、こういうふうに考えているんですけれども、防衛庁長官いかがですか。
  391. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ほとんど完了したということはないと思いますが、主要道路についていろいろ試験を実施したということは言えると思います。
  392. 三木忠雄

    三木忠雄君 それで私は、防衛庁長官もいろいろな意図があってこの訓練をされたと思いますけれども、まあ関釜フェリーとの連係ではありませんけれども、たとえば下関から釜山への関釜フェリー、あるいは今度、釜山から高速道路でソウルまでの非常にいい高速道路ができている。こういう関係をいろいろ私は考えますと、この関釜フェリーというものが非常に重要な役割りを持ってき、それに対する防衛庁のいろいろな活動計画というものが事前に行なわれて、実際に兵員訓練の終了はしてしまったと、そういう輸送体系は防衛庁としてはもう十分でき上がっていると、こういうふうに私は考えるわけなんですけれども、それにつけ加えてもう一点お伺いしたいわけでありますけれども、日本の国内において、フェリーで戦車をいろいろ運搬されているという事実があるのですけれども、これはどういうことで、どの程度戦車を運ばれたか、この実施要領等についてお聞きしたいと思います。
  393. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 戦車の輸送は、道路を使ったり鉄道を使ったりフェリーを使ってやっておりますが、最近は、道路の損傷とかあるいは混雑防止等のために、鉄道やフェリーを使うことが多うございます。特に、試作した戦車を演習場に運ぶという場合には、鉄道とかフェリーを使う場合が多いのでございます。具体的に申し上げますと、函館-函館間、これは戦車一台、四十三年九月二日。四十五年一月二十九日、青森-室蘭間、これは上富良野演習場に持っていくため新型戦車。四十五年三月八日、室蘭-青森間、技術試験を実施するため、これも一台。四十五年七月八日、神戸-大分間、これは日出生台演習場において新型戦車運転のため。四十五年七月三十日、大分-神戸間、技術試験を実施するため、これも試作車等でございます。
  394. 三木忠雄

    三木忠雄君 運輸省では、戦車の輸送等についてはどのように掌握されておりますか。
  395. 鈴木珊吉

    政府委員鈴木珊吉君) お答え申し上げます。  運輸省におきましては、船舶の運航事業者等が提出いたしまする定期報告に関します省令がございます。その省令によりまして、フェリーも年間の輸送統計をとっております。しかしながら、私どもがとっておりまするフェリーの輸送統計の内容におきましては、そのフェリーの運んだ自動車の実績といたしまして、車の種類をバスと乗用車とその他の自動車という三種類に分けておりまして、それ以上詳しく車種別に統計をとるようにしておりませんので、私どもといたしましては、その他の自動車の中に、おそらく戦車なら戦車が入っているのではないかというふうに推定するしかできないのでございます。そういう実情でございます。
  396. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は運輸省からもらった資料の中でも、何件か戦車を運んでいる事実の資料を得ているわけでありますけれども、それはそれにしまして、戦車の輸送について、長官からもいろいろ、新車ができて運ぶためだとかいろいろ言われておりますが、たとえば、フェリーに積載可能テストを具体的に実施された経験があるのじゃないかと思うのですけれども、この点についてはいかがですか。
  397. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) 先ほど大臣がお答えしました四十三年九月二日の函館のケースが、このテストをしたものでございます。大臣が申し上げましたように、陸上輸送なり道路輸送なり行なっておりますけれども、フェリーという新しい輸送方式が出ましたので、その搭載方法なり陸揚げ方法なりあるいは固定方法なりということについて、安全性なり便益性を確認するために、一回行なっております。
  398. 三木忠雄

    三木忠雄君 もう一度ですね、そのほかに耐寒訓練ですね。これもやられていると思うんですけれども、これはどういうことです。
  399. 蒲谷友芳

    政府委員(蒲谷友芳君) これも先ほど大臣がお答えしました四十五年の一月の上富良野のケースでございますけれども、これは新型戦車を現在開発中でございますけれども、その技術試験としまして、大体兵器につきましては高温と低温の実験をする必要がございますので、上富良野で冬季に厳冬間の技術試験を行なっております。
  400. 三木忠雄

    三木忠雄君 防衛庁としまして、今後フェリー輸送を将来ともどんどん進めていく計画であるかどうかですね。
  401. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何か韓国あたりに海外派兵の目的でそういう練習しているように私聞こえましたが、そういう事実は全然ございません。全く国内的な技術的なテストをやっているというのが現状でございます。今後ともフェリーというのは重要な輸送手段でもありますから、フェリーに戦車を乗せることは多くなるだろうと思います。
  402. 三木忠雄

    三木忠雄君 そこで、防衛庁として韓国に軍事事情視察を何回かに分かれてやっていると思いますけれども、その報告の内容あるいは出張の実態ですね、それ等についてお聞かせ願いたいと思います。
  403. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 韓国に対しましては、先方から招待がある場合あるいは当方で調査の必要がある場合等には、適当に派遣をしております。先方から招待がある場合というのは、記念日に各国の武官あるいは自衛隊員等が招待される場合であります。それから調査という場合は、たとえばニクソンドクトリンが実施されるのがどういう情勢で実施されるか、一万人撤兵とか二万人撤兵とかいわれるけれどもどういう実態で行なわれるか、そういう調査の必要がある場合に行っている場合です。ただいままでの例を見ますと、先方の招待によって参ったというのが、陸幕長山田正雄外二名、四十四年六月、空幕長緒方景俊外二名、四十五年九月、それから調査のため、視察のために行ったのは陸幕二部長、これが四十三年十月、陸幕二部坂本力外二名、四十四年十月、海幕調査部長、四十五年五月等で、四十二年から四十五年十二月までに計三十九人行っております。
  404. 三木忠雄

    三木忠雄君 その行った、特に軍事事情視察に行ったその報告内容等についての要諦をお聞かせ願いたいと思います。
  405. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいま申し上げましたように、米軍部隊が韓国から撤兵するという問題が昨年来ありましたけれども、そういうものの中身はこういうものであろうとか、そういう程度の報告内容でございます。儀礼的に行ったものは、儀礼的に行ってきたという報告を受けておる程度でございます。
  406. 三木忠雄

    三木忠雄君 その報告内容については、具体的にはこれは御説明願えないということ私わかっておりますけれども、実際にいろいろな状況が韓国から防衛庁あるいは外務省等に報告、連絡がきていると思う。特にニクソンドクトリンからの影響を受けて、私は外務大臣に伺いますけれども、外務省の駐在員の中で軍事情報部の資料収集のために防衛庁から出向されていると思うんですけれども、その状況等について報告は受けておりますか。
  407. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) かねがね在外公館に対しましては、防衛庁から出向の専門家を求めておりまして、これを駐在させております。で、これは各在外公館では、大使館の一員となって大使の指揮下において仕事をいたしておるわけですが、そこからは大使を通じまして随時報告、情勢判断等を聴取いたしております。
  408. 三木忠雄

    三木忠雄君 その情報あるいはそのいろんな問題、報告内容等について、外務省は現在韓国においていろいろ予想されている問題に対してどう対処されようとしておるか、その意見をお伺いしたいと思います。
  409. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほど申しましたように、韓国としては、一面建設、一面国防ということで非常な建国の努力をしておる状況下にあるわけでありますし、そして同時に三十八度線を控えておりますことは、いまさら申し上げるまでもないところでございますから、韓国の国情あるいは韓国がこれからどういう点に力点を置いて政策を展開していくかというような点については、隣国としての日本としても、いろいろの点からできるだけ詳細な状況を知りたいところでございまして、そういう意味におきまして、防衛庁から出向を求めておりますいわゆるアタッシェの報告というものも、たいへん貴重な報告であるわけでございます。
  410. 三木忠雄

    三木忠雄君 それで、防衛庁としてその出向職員からいろいろ情報を得て数々の分析をされていると思いますけれども、それに対して、まあ現時点においてこの在韓米軍の撤退の問題とからみ合わしまして、韓国に対してあるいはまた日本の防衛姿勢として、どういう態度で今後臨んでいこうと思考されておるか。
  411. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 別に変わったことはありません。われわれはいわゆる日本列島守備隊として国土防衛に徹しておるのでありまして、韓半島に行こうなんということは全然考えてないことでありますから、日本は日本のことを自分で始末するということで一生懸命努力しているところでございます。
  412. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ、そのほかにいろんな問題点があるわけでありますけれども、特に通産省あるいは大蔵省にお伺いしたいんですけれども、この関釜フェリーで現在輸出物資をいろいろ送られていると思いますけれども、特に四十五年の十月にいろいろブルドーザーとかあるいは放射線測定器等が輸出されていると思いますけれども、この実情はどういうぐあいになっておりますか。
  413. 後藤正記

    政府委員(後藤正記君) 関釜フェリーによります輸出につきましては、他の輸送手段による輸出と全く同様の輸出管理をいたしておりまして、特別の取り扱いをいたしていないのが実情でございます。
  414. 三木忠雄

    三木忠雄君 特別のあれはしていないと思うんですけれども、その輸出物資の中に特に機械類ですね、あるいは放射線の測定器等が輸出されているという私は報告を受けているわけでありますけれども、これは具体的にどういうところの会社からどのように送られているか、数量等についてわかれば教えていただきたい。
  415. 後藤正記

    政府委員(後藤正記君) 先ほどお答えいたしましたように、特別の輸出承認等関釜フェリーに限っていたしておりませんので、この関釜フェリーによる輸出の実績は把握いたしておりません。
  416. 三木忠雄

    三木忠雄君 私はそういう点が非常に、税関の問題にしましても、輸出の問題にしましてもこの関釜フェリーの問題は、非常に地元のほうでもそういういろんな意見がうわさされているわけでありますけれども、近々何か原子炉の模型まで輸出されるというような話も承っているわけですけれども、こういう点が税関のチェック等においても、非常に私はずさんなところがあるんじゃないかと思うんです。大蔵大臣伺いますけれども、今回の関税定率法の一部改正等によって、このコンテナのチェック等が非常に簡素化されると、こういうふうな法案だそうでありますけれども、これは私は非常に武器輸出の面から、まあそういう危険な部品等が送られるための、ひとつ言えば隠れみのみたいな感じを受けないまでもないと思うんですけれども、こういう点はもう少し明確にチェックのできる体制を整えるべきじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。
  417. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今度フェリーが日韓間にできました関係に伴いまして、大蔵省では特に人員を整えまして、この税関の事務が円滑に執行されるように特段の注意を払っております。まあ持ち帰り手荷物でありますとか、貨物でありますとか、そういうような税関上のこの検査、それは遺憾なぎようにいたしております。他の諸地域と一切異なる待遇はいたしておりませんです。  それからフェリーができたに伴いまして、何か簡素化しておるんじゃないかというお話でございますが、これは税関事務全体につきまして、こういうことはしているんです。つまり日本のほうは少し窮屈過ぎる、そういうような批判が国際的にありまして、そして多少何というか、機械化というか、合理化というか、そういう事務を迅速にするというような配意は、あらゆる税関においてこれは共通の問題としておりますが、特に日韓間において、その特例を設けるというようなことは一切いたしておりません。
  418. 三木忠雄

    三木忠雄君 そういうふうに大蔵大臣も認識されていると思うんですけれども、ところが現実、現地のほうへ行ってみますと、この税関のチェックというものは非常に関釜フェリーに関してはずさんだという、そういう声が聞こえるわけです。たとえば、あそこの入管関係には、観光汽船も関釜フェリーと同じ会社の経営者がやっているわけですね。そこで、実際に税関のチェックをしているような実態で、そこの営業担当の人が元――天下りが悪いとかいいとかいう問題じゃなしに、税関の関係者が入っておる。実際に、こういう点でコンテナの今回のこの法案とからみ合わせて、非常に危険な物資がこの関釜フェリーの航路を通って輸出されるんじゃないかという非常に現地のほうにおいても疑惑を持たれているわけですね。いろんな心配が持たれている。こういう点については、私はこの警備体制等についても伺おうと思ったんですけれども、その他の質問が数多くありますのでできませんけれども、実際に、この今回の法案とからんで、韓国の輸出物資に対するチェック体制は非常に弱められたんじゃないか、これを私は非常に心配するわけでありますけれども、この点についての厳重な検査といいますか、監視をやっていただきたい。この点についていかがですか。
  419. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この輸出の商品のチェックは税関の仕事じゃございませんから、これはどこの仕事になるか――政府委員から……。
  420. 谷川寛三

    政府委員(谷川寛三君) 先ほど大蔵大臣がお答えしたところでございますが、決して違法なものが出ていく、入っていくようなことはしておりません。輸出にいたしましても、関係各省の承認が要りますものはすべて承認書を添付したところで通関を認めております。むしろ、フェリーにつきましては、一般の検査よりもきついぐらいの検査をいたしております。万全を期しております。
  421. 三木忠雄

    三木忠雄君 それはあんたはここで言うだけであって、現実にそうじゃないんだよ。答弁は何でも簡単に言えることさ、現地はそうじゃない。実際に、現地はそういうような不安があるから私は言っている。じゃ、実際に、現実にこういうものが運ばれているという、ブルドーザーが何ぼ運ばれているとか、あるいは放射測定器が運ばれているという事実すら実際掌握できてないじゃないですか、こういう点が私は問題だと思うんですよ。どうですか。
  422. 谷川寛三

    政府委員(谷川寛三君) 開設以来ブルドーザーは輸出されておりません。それから、放射能の測定器は承認を受けたものが五台ぐらいいったように聞いております。
  423. 三木忠雄

    三木忠雄君 ブルドーザーのような大きなのがいくわけないよ。実際にブルドーザーの部品がそういうふうに送られているわけだ。ブルドーザーがいきゃ戦車がいったと思うじゃないか。そういう点が非常に税関のチェック等においてもあいまいであるし、今度はそういうものはコンテナで実際に輸送された形になってくる。ところが、コンテナの監査が非常に骨抜きになってくる、こういう点、私は非常に心配を抱いているわけです。実際、その会社が関釜フェリーと同じ会社の系統になって、そうしてチェック体制がほとんどできないような体制で、私はこの関釜の航路を通って危険なものが輸送されるということを非常に心配しているわけだ。その一つの問題が、実際に許可の問題にしましてもいろいろ矛盾点がありながら、見切り発車といいますか、よく言われることばでありますが、実際に、簡単に許可されて関釜フェリーの運航が行なわれているということなんです。たとえば、この関釜フェリーは設立が四十四年六月でありますけれども、四十五年の六月、この就航に対して運輸省の海運局から九州海運局長あてにいろいろこの航路については非常に困難な問題があると、こういう点がいろいろ指摘されていろいろ言われているわけでありますけれども、実際に許可をされている。いろいろな隘路があったわけです。この問題については、運輸省としても承知されていると思いますが、海運局長、この通達を出したいろいろ問題点について私は言っていただきたいと思うのです。
  424. 鈴木珊吉

    政府委員鈴木珊吉君) お答え申し上げます。  関釜フェリーを計画中のことでございますけれども、この関釜フェリーというものが就航する場合に、いろいろな問題が起こってくるのではないだろうかということを当事者がいろいろ心配したわけでございますが、それは当然のことでございまして、そういう問題が片づかない限り船が就航できないことは当然でございます。それにつきましては運輸省関係のみならず、いまお話に出ましたような税関関係とか、いろいろあったと思いますけれども、私どものほうといたしましては、まあ運輸省関係だけに限りまして、いろいろな問題があったので検討をいたしたのは事実でございます。  たとえば自動車関係で申しますと、相互の自動車がそのフェリーに乗りまして入ったり出たりするという場合の自動車のいわゆる検査とか、登録をどうしたらいいんだろうかという問題。それから自動車の運送事業という営業もございますけれども、自動車運送事業の営業のトラックがお互いの国に入り合った場合にはどういう取り決めが必要なんだろうかという問題、あるいは自動車の自賠関係――損害賠償責任の自賠関係の問題につきまして、相互の国でどうしたらいいんだろうかという問題等がございまして、あるいはまた当時、船舶を共同運航しようというような案が、まあ下案であったようでございまして、共同運航するような場合には、たとえば、韓国側が日本の籍の船をはだか用船するという場合に、韓国側が乗り込ます船員につきましては、これは国籍が日本の船でございますから日本の船員関係の法律が適用される、こういう点について韓国側はどうするだろうかとか、この問題につきましては、実はその後共同運航せずに、日本側だけが船を持ったことでございまして、その問題はそういう必要がいわゆるなくなったわけでございますけれども、前に申しましたような自動車関係の問題があったわけでございます。これらの点につきましては、実は検査、登録の件につきましては、韓国側は国際条約――これは道路交通に関する条約でございますが、条約に入っておりませんので、これはやはりそのつど、たとえば韓国側の車が下関に入って来ますれば、日本の国内法でもって基準に合うかどうかを調べまして、それで基準に合えば国内に入って来てもいいと、同じように韓国側も、そういうような向こうの韓国の国内法によりまして検査、登録をいたしまして、安全を確認してから走らせようと、そのつど、そういうことをやるということで、現在事実上は解決をいたしております。それからまた自賠関係につきましても、現在、一般に外国から日本へ車が入ってくる場合、やはり日本の要するに、自賠法によりまする措置をその持ち主はとるというふうになっておりますので、それと同様に韓国の自動車がフェリーに乗って入ってきました場合には、そのときに下関におきまして、日本の自賠法に入る契約をするという措置を義務づけられておりまして、そういう措置をとっております。そんなようなことでございまして、自動車の運行等につきまして、事実上はさしたる問題なしに現在は進みつつある。ただ問題は、自動車運送事業につきましては、まだ、両方からの話し合いが済んでおりませんので、これはまだペンディングになっております。したがいまして、営業用の自動車がこっちにくるということには現在はなっておりません。  以上が運輸省関係の実情でございます。
  425. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ個々の問題に私は立ち入るきょうは時間がありませんけれども、実際に運航等についても、これは一例でありますけれども、非常に問題点をいろいろ指摘されながら、この運航に踏み切っておるという事実が各所にわたっていろいろあるわけです。たとえば、運輸省から九州海運局長あてにあてられたこのような問題点にしましても、一例をあげますと、非常に数々の問題点が明らかであり、非常にこの関釜航路の実現というものは困難であるという、こういう通達を出して間もなくこの関釜連絡船が就航しておる。この点には、いろいろいま局長も触れましたけれども、そういう何点かの解決されないままの問題が残ったまま実際にこの関釜フェリーが就航しておる。あるいはまた、この問題に対して各省間でいろいろ折衝して、外務省としてはいろんな条約やあるいは協定事項等についても非常に消極的である、こういうふうにも各省間でいろいろ言われ、いろいろ数々の問題はあるけれども、とにかく関釜フェリーは出航したと、こういうふうな問題点を私は何点か考えましても、実際、先ほどの輸出の問題ではありませんけれども、そういうふうに数々の今後の問題点として、何か力の強いいろんな圧力によって、この関釜フェリーが前進していき、将来へのいやな予想するような航路にならないように、私はこの航路をしっかり見届けていかなければならないんじゃないかと思うんです。特に、この問題についても、いろいろ現地では取りざたをされて、あるいはこれは佐藤総理に申しわけない話かもしれませんけれども、実際に韓国の新聞はこういうように報道しているんですね。いろいろその関釜フェリーが赤字の会社でありながら、いろんな株式公募等においても援助者があったという陰には、今後当分の間、黒字経営が見込めないにもかかわらず、株式公募に成功したのは、山口県出身の佐藤総理、岸元首相がこのために活躍したからだ、あるいは彼らがかつて関釜連絡船があったところでにぎやかだった下関がすたれたのを見て、再びここで国際港として復活させることを願ったんだと、こういうふうに数々報道され、いろいろいやなうわさを私たちは耳にするわけです。こういう点はやはり関釜フェリーがほんとうに正常な民間の航路として、あるいは先走ってつまらない問題が起こらないような完ぺきな航路として私は運営されなければならないと思うんです。これはまた、この関釜フェリーの就航を記念して国賓として招かれた日本の有名な人たちが勲章までもらって、就航記念を祝っていると、こういう問題を考えましても、まさしくこの日韓一体の姿というものが、この関釜フェリーを通して、いろいろ問題点が私は浮き彫りされてくるのではないかと思うのです。そういう意味におきましても、特に、佐藤総理のおひざ元でもありますし、この下関の過去のいやなイメージを私はなくしていただきたい、このことを強く総理に要望したいわけでありますが、いかがでしょうか。
  426. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 下関はもちろん私の出身地である山口県の一部でございます。しかしながら、選挙区は一区と二区の関係でございますので、私のほうではございません。しかし、ただいま私の名前が出ておるということですが、よもや名前が出ているはずはないと思っておったら、いま韓国の新聞だということでお読み上げになりました。私は、実はこれができ上がるまでもちろん知らない。運航を始めてからその事実を知ったと、こういうような状態です。ところで、一番心配なのは、戦前ありましたような、運命共同体だとか、あるいは国防の第一線だとかというようなことばがもしも復活するとしたら、これはたいへんだと思います。まあ先ほど中曾根君もさような誤解のないように特に話をしておったと思って私は聞いておりまして、やっぱり防衛庁長官はそういう誤解のないように特に気をつけておるなと思って聞いていたのですが、申すまでもなく、わが国の憲法は外国に派兵をする、こういうような事態はもちろん禁止しておりますから、さような危険はないのであります。ただ、仲のいいあまり、運命共同体だというようなことばがつい出てくると、これはたいへんな誤解を受けることになるのじゃないか、かように思いますし、また、先ほど来フェリーと言おうが、連絡船と言おうが、とにかく外国航路に就航している船だと、こういう意味で、先ほど来の御質問は同時に御注意だと、かように私は聞き取ったのでありますが、そういう意味で、外国航路における特別な便宜を供与すると、こういうようなことのないように、やっぱり法規は法規どおり守られると、こういうことで各関係の省庁、また役所も十分気をつけてもらいたいと、かように思います。重ねて申しますが、運命共同体だとか、防衛の第一線だとか、かようなことばは間違っても口に出さないつもりですから御安心願います。
  427. 三木忠雄

    三木忠雄君 韓国との問題の最後に外務大臣にお伺いしますが、二月二十七日のジャパンタイムズのウイークリー版に、南朝鮮のスキャンダルと、こういう特集記事が載っている。これはアメリカのワシントンポストの極東特派員ハリソン記者が、取材して書いたものだそうでありますが、先に解任された丁一権という韓国首相が、韓国版キーラー事件として有名な鄭仁叔の射殺事件に関係があった、こういうようなことを暴露した記事だそうでありますが、この事件が載ったときに、韓国から外務省にいろいろ連絡があって、実際に外務省の幹部が、とにかく名前は伏せますが、ジャパンタイムズに飛んで行って発売を押えたという、こういう事実はございますか。
  428. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) お答えいたします。  いま念のためにアジア局長にも確かめましたが、その記事はどういうことであるのかということを尋ねた事実はございますけれども、その記事を押えるとか、何とか、そういうことではございませんでした。
  429. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は、この問題に深くは言及する時間がありませんけれども、日本の政府として、外務省がこういうような韓国の問題等にもお先棒をかついで、やはり押えたり、あるいは連絡をしたりするというこの日本と韓国との緊密な関係というものは、そういう点は私はちょっと注意していかなければならない問題だと思うのですけれども、これは外務大臣としてもお気づきだろうと思うのです。この点については、私は十分注意していただきたいと思うのです。  それでは、この問題はこの程度で終わりまして、次に、石油問題について若干御質問したいと思います。特に、通産大臣がいろいろ消費者に転嫁するのを防ごうとして努力されたことは私も十分承知しておるわけでありますけれども、実際に、この石油問題で今回の千二百円の値上げが、ほとんど消費者に転嫁をされると、こういうふうな私は実態になってきているのじゃないかと思うのですけれども、この点はいかがですか。
  430. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、ときどきそんなふうに報道されておりますので、申し上げておきますけれども、少なくとも何がしかはメージャー及び精製業者のところで吸収すべきだと私ども申しておりまして、ある程度その話は進みまして、いま、どれだけ吸収できるかということが個別に話されているようでございます。どっちみち、ただで済むとは存じておりませんけれども、ある程度のものはそこで吸収をして誠意を示してもらいまして、その後どうしてもやむを得ないものを製品の間で開くと、こういう段階にやがてなろうかと思います。
  431. 三木忠雄

    三木忠雄君 それで、この千二百円の値上げの内容を、私も一つの会社の実態を分析をしてみたわけでありますけれども、実際に一般消費者の使用するガソリンであるとかあるいは灯油であるとかというものは、非常に値上がり率が大きくて、産業需要であるところの重油等については非常に値段が押えられていると、こういう私は、これはまあ試算でありますけれども、実際にいままでのこの四十五セントの値上げを見ましても、消費者に全部しわ寄せがきているのじゃないかと、こういうふうに私は考えるわけでありますけれども、いかがでございますか。
  432. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年の秋の値上げが一部スタンドにぼつぼつあらわれたところがございますんですが、いまおっしゃいました全体の四十五セントでございますか、これは昨年の秋ごろから、おそらくことしの八月ごろに、もう一度、例のOPECとの話である勘定になっておりますから、その総体を言われたと思いますが、私は、ただいまの様子では千二百円なんていうことにはならないのではないか。先ほど申し上げましたようないろいろな折衝の結果でございますが、ならないのではないかと思って見ておりますが、これは社によって違いますが、それがどの程度になりますか、まだもう一つはっきりいたしておりません。その後に、いよいよそれをどのように各製品に開いていくかという問題が、これから出るというふうに私は考えております。
  433. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ実際にガソリンの値上げあるいは灯油の値上げ等で消費者に高くなっていく、まあ全部しわ寄せが、ほとんどが消費者のほうにしわ寄せがくるのじゃないかと。そのほかにもいろいろ考えてみますと、やはり石油業界のいろいろな体質的な問題があって、通産大臣だけではどうにもならないような問題が私はあるのじゃないかと思うのです。まあ石油連盟にはいろいろな、国民協会あるいは政治家との結びつき、あるいはまた全石商にとっても、油政連という政治団体等があって、非常にこの石油の問題が、独禁法対策とかいろいろな点で、通産行政に対しても非常に圧力といいますか、この石油の問題に対しては通産大臣が具体的にもう行動がとれないような点が多多あるのじゃないかと私は思うのです。したがって、こういうガソリンスタンドとかあるいは元売り業者であるとか、そういうところのこの値上げの引き受け分というものは少なくて、そのほとんど大半が消費者に押し込められてくると、こういう石油業界の体質というものを、私は、通産大臣はどういうふうにお考えになっているかということなんですね。
  434. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまのお話は、一部ちょっと私には理解し得なかったのでありますけれども、もしスタンドの業者たちがかなり強ければ、それを通じての消費者への負担というものは、かなり実は逆に軽減――軽減と申しますか、そう負担増にならないはずなんでありまして、どちらかと申しますと、まとまって買います電力業界あるいはナフサ等々が、あるいは強い、あるいは不況であるというようなことのほうが、この際問題なのではないだろうかと、こう思って見ております。
  435. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあそういうふうに通産大臣もいろいろ考えられるのですけれども、実際にはこの消費者へのしわ寄せ、あるいは、私はまあガソリンスタンドを何も敵視をするわけじゃありませんけれども、いろいろな点で価格協定が行なわれたりあるいは消費者にしわ寄せが来、実際に消費者の生活に大きな影響を及ぼすという点は、私はいなめない事実じゃないかと思うのです。  それはあとでいろいろ指摘したいと思いますけれども、通産省が全石商にいろいろな指導、監査をされていると思いますけれども、この全石商の中に官公庁の対策委員会というものが設置されているそうでありますが、こういうことは御存じでございますか。
  436. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点はあらかじめ御通告がございましたので、調べさしたのでございますけれども、どうもそういうふうな事実は、調べた限りはなかったと申しております。
  437. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、この官公庁への石油製品の販売についていろいろ談合が行なわれて、そうして官公庁への石油を納入していると、こういう事実については通産大臣御存じですか。
  438. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはございますと、公正取引の問題になるはずでありまして、たしか東京都か何かの関連で一度、何かそういうことを聞いたことがございましたが、その結末をちょっと、私の所管でもございませんでしたので、はっきり存じません。
  439. 三木忠雄

    三木忠雄君 公取委員長から。この官公庁への納入に対する談合問題が随所においていろいろ行なわれているそうでありますけれども、この四十四年に正式な公取の審決を出された、この官公庁への納入に対する談合の実例について御説明願いたいと思うのです。
  440. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 昭和四十四年の十二月二十六日に、私ども公正取引委員会から勧告いたしました事件がございます。これは東京都庁への石油等の納入に関するものでございます。石油連盟の東京支部は、東京都財務局に対する石油製品の納入価格が他の官公庁への納入価格ひいては一般市況にも影響を及ぼしているものとしまして、かねてから支部員各社の特約店の――特約店というのはまあ最末端の売るほうでございますが、財務局への納入価格を何とか少し引き上げようということを考えておりまして、支部員各社を指導しておったのでございますが、昭和四十四年の六月三日に開きました代表者会で財務局に対する納入価格の最低価格をきめまして、その最低価格を、支部員各社をして、それぞれの最末端の売る特約店に守らせるというふうなことをしたわけでございました。それが調査の結果発見されましたので、そのようなことに対する、私どもとしては協定を破棄せよということを勧告したわけでございます。
  441. 三木忠雄

    三木忠雄君 もう一つ公取のほうに伺っておきたいのですが、最近起こった問題として、やはり石油の価格協定の問題で、石油の販売に対して業者を獲得するために保険をかけて、そうしてもし安くする業者があったならばそれから保険金を取ると、こういうふうな一例をつくって、この価格協定をやった実例がございますか。
  442. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 御指摘事件は、この二月十二日に、私どもからやはり協定の破棄を勧告いたしました愛知県石油商業組合に関するものでございます。これはまあいまお話が出ましたように、末端の石油スタンドの方々でございますが、価格引き上げをいたすというのに関連いたしまして、何としてもそこの競争をある程度おさめておかなきゃいかぬという意味で、組合員の得意先を組合に登録させます。そしてお互いにこの組合員が得意先を取りっこするということをまあ一応防ぐつもりでございましょう、もし組合員のAからBにお客が移ったというようなときには、組合が――いま保険金とおっしゃいましたが、私どものほうで調べた名前では共済金と言っておりますが、共済金を支払うということをいたしております。そしてその共済金を支払うための資金として、一給油所当たり月額五百円を組合に積み立てさせるというようなことをしていた事件でございます。  これは、そういうことを調べました結果、そもそも基本になるさような協定を破棄させることといたして勧告をし、その勧告に従ったわけでございます。
  443. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあこれは、いま一、二の例を公取委員長からお聞きしたわけでありますが、こういうふうに元売り業者にはいろいろ石油連盟、あるいは全石商に対しては油政連と、こういうふうな形でいろいろその利益を守るためのいろんな圧力が働いておる。実際にその余波を受けているのは、私は消費者じゃないかと思うのです。こういう意味においても独禁法が――いまいろいろ破棄されたとか、いろんなことが言われますけれども、実際にこれを圧力をかけるために、私は油政連が結成されていると思うのです。まあ油政連の結成においても、独禁法対策等を控えて組織をあげての強力な政治力の発揮が必要であると、こういうふうにして、いろいろ決意もし、そしてこの価格協定等をいろいろ破棄させるためにも、いろいろ権益を守るために、この油政連の活動を応援するという名目のもとに、このスタンド業者から賦課金を徴収しているわけですね。こういうふうにしてスタンド業者から金まで取って、そして独禁法対策をやっているという、そういう姿があるわけでありますが、この問題につきましては、通産大臣は御存じですか。
  444. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 全国石油商業組合連合会でございますが、これは中小企業団体法の団体であると思いますから、それ自身は特定の政党のために利用されてはならないということになります。これは法律の規定がございます。ところで、その油政連というものの性格が、私にちょっとはっきりいたしませんので、厳密に、ただいまのような法律の規定に違反するかどうか、にわかに私に判断ができません。もし石油業者の、いわゆるその販売業者の事業の安定のためというようなことであれば、特定の政党のため云々ということには必ずしもならぬだろうと思いますけれども、これは油政連の活動いかんによると思いますので、少し調べさせていただきたいと思います。
  445. 三木忠雄

    三木忠雄君 自治大臣に伺いますが、この全石商あるいは油政連への政治献金の問題、あれは私は調べておりますと、国会議員がわざわざ油政連への献金までやっておるわけなんですね。ちょっと納得できないような問題があるのですが、これは自治大臣、どういうふうになっておりますか。
  446. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) ただいま御指摘の事実につきましては、私、存じません。まことに寡聞で申しわけございませんが、その事実につきましては、私、承知いたしておりません。
  447. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは私は前もって通告しておいたのですけれども、大臣は御存じないというのは、私はちょっとふに落ちないのですが、事務当局でもおわかりになれば……。
  448. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 政治献金等のことについての御質問があるというふうには伺っておりました。その点につきましては、事務当局に調べさせてございますから、事務当局から答弁いたさせます。
  449. 中村啓一

    政府委員(中村啓一君) 三木先生からお話のございます全国石油政治連盟という団体が、私どものほうにいわゆる政治団体として届け出がございます。結成されましたのは四十四年の五月でございまして、自来、いわゆる油政連ということで活動をいたしております。油政連は、四十四年の下期で収入が約九百万円、支出もおおむね九百万円でございました。四十五年上期につきましては、約四百五十万円の収支をやっておる団体でございます。
  450. 三木忠雄

    三木忠雄君 こまかなことは、私はきょうは省きますけれども、非常に奇々怪々な問題が何点かあるのです。国会議員から全国石油政治連盟に寄付金がいった、あるいは、今度は逆に全石商からこの政治連盟に献金がいったり、そして価格協定あるいはそういうものを独禁法から守るために、公取から守るために、いろいろこの政治連盟の働きとして、ガソリンスタンド会社から政策部会に、賦課金として実際に三千万あるいは三千四百万、こういうふうに徴収をし、それは政治の活動に使われていると、こういう事実が何点かあるわけでありますけれども、この点については通産大臣、御存じありませんか。自治大臣。
  451. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) さような事実につきましては承知いたしておりません。
  452. 三木忠雄

    三木忠雄君 通産大臣。
  453. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは先ほど申し上げましたとおりで、全石商というのは中小企業団体法の団体でございますから、特定の政党のために利用されてはならない。そのことに、油政連に対する寄付金が該当するかどうかということは、油政連の性格によると存じますので、調べてみたいと申し上げました。油政連はおそらく政治団体でございますから、それについては、そのような問題はなかろうかと思います。
  454. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあこれ、具体的に、時間がありませんのであれですが、この政策部会に、実際に全石商から賦課金として集め、それが実際にガソリンスタンド業者の外郭を守っているというか、そして、その価格協定等の独禁法違反もいろいろ政治的に圧力をかけて対策を講じておる。そうしてそのしわ寄せが全部この消費者にくるような、こういうような問題が、如実に物語っている例が数多くあるわけです。まあ、通産大臣は、あとから調べられるというわけでありますけれども、こういうふうにガソリンスタンドからまで賦課金を取って、そしてその賦課金を取った分がどこにしわ寄せが来るかというと、結局は消費者のガソリンの値上げにつながっているわけです。こういう点については、私は通産省としても、もっと中小企業協同組合法あるいは団体組織法でしっかり指導監査すべきだと思いますが、通産大臣いかがですか。
  455. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点はよく調査をいたしてみたいと思いますけれども、実は論理といたしましては、全石商というのはスタンドの人たちの集まりでございますので、消費者にしわ寄せをされるというのは、結局スタンドを通じてしわ寄せされるわけになりますから、その間の消費者との連関の論理がちょっと私にわかりかねるわけです。しかしいずれにしても、その事実そのものは調べて見なければならないと思います。
  456. 三木忠雄

    三木忠雄君 ガソリンスタンドからこういう金を取れば、それだけガソリンの値上げにつながることは、これはもう常識でわかっているわけですね。そのほかに、この活動をしやすいために、四十六年の二月に、石油製品販売業者の軽油引取税特別徴収業務に関する、この徴収業務に対する助成制度の確立についての要望が自治大臣に、油政連あるいは全石商から、軽油引取税の還元をしてもらいたいと、こういう要望が私は行っていると思うのですが、いかがですか。
  457. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) 石油業者から、軽油引取税の徴収に関する経費を償ってもらいたいというような要望がきておるということは聞いております。
  458. 三木忠雄

    三木忠雄君 このことについて、自治大臣は、この還元をする予定でございますか。
  459. 秋田大助

    国務大臣(秋田大助君) これは、特別徴収義務者は特別の地位にあるゆえをもちまして、徴収義務を課せられておるのでございまして、現行のたてまえといたしましては、これの税の徴収に要する経費を償う金を出すということはされておりませんので、いまそれをしようということにつきましては、このほかの同じような、特別徴収義務にかかわる税目の徴収とも関連をしておる問題でございまして、これは慎重に検討を要すべき問題と考えられるのでございます。
  460. 三木忠雄

    三木忠雄君 この問題について通産大臣は何かお聞きになっておりますか。
  461. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは聞いております。  問題は二つありまして、一つはまあ欠減という問題でございます。もう一つは、末端のスタンドが事実上税金分を消費者に十分に転稼できないという事実問題があるのだろうと思います。しかし、税の理論で言いますと、非常にいまの話は構成がむずかしいのではないか。実情でいろんなことがあるということはわからぬではございませんけれども、よほど研究をいたしませんと、結論の出せない問題ではなかろうか。私の所管ではないんでございますけれども、私は実はそう思って事態を拝見しております。
  462. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは私は、昨年もこの予算の上がってくる前に、欠減問題で数億円、この全石商に流れるという話を聞きまして、何点か事務段階で私も指摘をしたわけでありますけれども、今回のこのガソリン軽油引き取り税の問題もほとんど話が煮詰まっていると、実際に百分の七のうち百分の四・五も特別徴収義務者であるこの石油販売業者に還元交付するという、こういうふうに話を進められていると、その百分の一を――約十五億円ですね。これを全石商の組織の活動資金に使いたいと、こういうふうに大体話が固まっているという、私は情報を受けているわけでありますけれども、この事実は通産大臣ございませんか。また、将来こういうことはやるつもりはないと、ここで明言をしていただきたいと思うんです。
  463. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 税の、つまり、徴収交付金のようなものでなく、欠減に伴うものにつきまして、いろいろ議論されておりますことは聞いておりますけれども、どのような結末になりますのか、私、実は詳しいことをほとんど存じません。
  464. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ、もう少し煮詰めたいんですけれども、時間も限られておりますから、実際は具体的に話が進行しているということは、私も聞いているわけであります。こういうふうにしてガソリン引き取り税が、不明朗な形で組織なんかに流れていくことのないように、私は今後も厳重に見詰めていきたいと思うのです。で、たまたまこの全石商の四十六年度の予算編成方針の中に、いろいろ見てみますと、特にこの政治対策政策部会に対するいろいろな問題がある。参議院選挙対策のための油政連の活動費と、一般政治活動費に充当するための経費を見込むとか、あるいはこのために賦課金を四十五年度より三〇%アップをして、三千九百万円の収入を見込むことにしていると、そのほかに、こういう還元金を受け取ると、こういうふうないろいろな計画が四十六年度の方針の中に、もうすでに盛り込まれている。自民党商工部会等においても、いろいろな検討を私はなされているんではないかと思うのです。こういう点の活動が実際にどういうふうに消費者にはね返ってくるかというと、結局は全石商の政治活動が、価格協定とかそういう独禁法の問題、いわんや公取の骨抜きの問題にまで、私はこういう全石商の政治活動が及んでいるということを、私は実際に指摘をしておきたいと思うのです。したがって、こういうことが実際に起こらないようにですね、私は前もって指摘をしておきたいと思うのです。  次に、公取に若干御質問申し上げて私は質問を終わりたいと思うのですが、公正取引委員会は消費者の味方として実際いろいろ勧告はされているんですけれども、実際にこの監査を行なった事実があるのかどうか。
  465. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 監査というのはおそらく独禁法の六十四条にある字句をさしておっしゃっておるんだと思いますが、私どもとしては立ち入り検査までして監査をしました件数は、最近においてはたとえば日鉄の関係でございます。
  466. 三木忠雄

    三木忠雄君 それで石油の価格協定ですね、この十年間に約千二百件の勧告をしているわけですね。しかしながら、勧告はするけれども、一向に下がらない。公取が何か値段を下げるような大きな期待を消費者は持っているんですけれども、勧告はするけれども、実際にこれが値段が下がらない、この点はどうなんですか。
  467. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 現在の法律によって与えられております公正取引委員会の任務は、有効な競争条件を確保するということでありますので、協定を破棄させましたあとは、これはそれぞれの業者の自主的な活動によって起こってくるという事態をもたらせば、それ以上のことを私どもが現在の立場においてやるというわけはないのでございます。そして、価格がどういうふうに動くかは、いわゆる市場の動き、価格メカニズムによってきまると、かように私ども考えているわけでございます。
  468. 三木忠雄

    三木忠雄君 この独禁法には引き下げ命令ができないわけなんですか、これは。どうなんですか。
  469. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 競争を制限する、たとえば、協定を破棄せよということは申します。破棄したあとは自由な姿になります。それ以上に、さらに具体的にどういう値段にせよというふうな権限は、私ども、ただいま法律上は持っておりません。
  470. 三木忠雄

    三木忠雄君 私はここが問題だと思うんですね、総理大臣。実際に消費者は公取が一生懸命やってくれたから、勧告してくれたから値段が下がると期待しているわけですよ。ところが全然政治的な圧力の強い団体等については、独禁法なんか守らなくてもいいという指示が具体的に流れるような実態になっているわけですね。したがって、破棄通告はするけれども、実際に物価は下がらないんです。この点はもう一歩私は進めるべきじゃないかと思うのですが、この引き下げ命令ができるかどうかの法的根拠はどうなんでしょうか、法制局長官。
  471. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 公取委員長からは、すでにお答えがございましたが、権力的な下命行為には当然法の根拠が必要であることは申すまでもないことで、ただいまのお尋ねも、結局、法の根拠が現行認定法の中にあるかないかに、まあ帰着するわけでございます。その点については、まさにさっきお話がありましたように、独禁法上そのものずばりの根拠規定というものがあるようには思えません。
  472. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは私はどうも納得がいかないのですね。公害罪の無過失責任と同じことが言えるのじゃないかと思うんです。消費者には非常に公取がはでに働いて、実際に価格を下げてくれているようなイメージを与えているわけでありますけれども、実際に幾ら勧告をしたって物価が下がってない。勧告を破棄しなさいというだけなんですね。この点について、もう一歩強い権限は公取としてはやれないのでしょうか。
  473. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 私のただいまの責務は、与えられた法律の執行をすることでございますが、もし私に対して、意見として言われるのであれば、そういうことをするのが、いわゆる独占禁止法とか、競争条件維持とかいう問題の法体系の中に入るかどうかというふうな、そういうことが議論になるかと思います。
  474. 古池信三

    委員長(古池信三君) もう時間ですが……。
  475. 三木忠雄

    三木忠雄君 実際、したがってこの公取というのは、悪いことばですけれども、番犬と同じで、ほえることはできるけれども、つかまえることはできないというわけですね、実際に。これでは何にも消費者の味方にはならない。したがって、たとえば千二百件の価格協定があっても、公取はそれをつかまえるのが精一ぱいであって、実際につかまえてもそれをここまで下げなさいということはできないわけですね。したがって、政治の強い、圧力の強いところはそんなものはほっとけばいいんだと、公取が来ればわかりましたと言って、それだけ勧告を受けておればいいんだと、こういうわけで、そのしわ寄せが全部消費者に肩がわりされてしまうという、こういう独禁法上の問題を、私は総理大臣として、前向きにこの独禁法を改正すべきじゃないかと思うんですが、いかがでございますか。
  476. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ちょっと公取にそれだけの権限を与えることは、私はいかがかと思います。やっぱり主務官庁、事柄が通産省所管なら通産省が行政指導すると、だから公取から注意を受けるような事態は、やっぱり通産省にも同時に、こういうことを注意したよという程度の公取から連絡があると、そうすると、やっぱり通産省は行政指導すると、こういうふうに踏み切るべきじゃないかと、かように思います。いまはそういうことも公取ができるという、そういうたてまえでないように思いますから、その辺はよく考えることにいたしたいと思います。
  477. 三木忠雄

    三木忠雄君 だから実際、そういう実態では、通産省は企業から圧力がかかり、財界から圧力がかかり、実際はできない。公取がやろうとしても骨抜きである。結局は、公取が消費者物価値下げのためのカムフラージュになっているみたいな、こういう実態としか私は受け取れない。これは私はもう一歩前向きに、この公取の体制、あるいはこの独禁法の問題を検討していただきたい。このことを私は要望して質問を終わりたいと思うんです。
  478. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもって三木君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  479. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、向井長年君の質疑を行ないます。
  480. 向井長年

    ○向井長年君 私は、まず、日中問題についてお伺いいたしたいと思います。  特に、私は、この際、佐藤総理国民の要望にこたえて、沖縄の返還、いわゆる核抜き本土並みという形で返還にこぎつけたこと、まだまだ協定の中で問題点はあろうかと思いますけれども、これは、私はまず高く評価していいのではないか、こう思うわけであります。そこで、次に来たるものは、もう御承知のごとく、日中問題であろうかと思うのです、外交問題の大きな課題というものは。そういう中で、日中問題については、午前中羽生委員から、いろいろと詳しく質問がございました。私は、この問題について、まず、総理決意のほどを伺いたいんです。ということは、巷では、佐藤内閣の間は、日中問題は改善されないであろうとか、いろんなことが各所でうわさされておるわけです。しかしながら、きょうの質問の中の答弁を見ましても、決して私はそうじゃないと思う。したがって、少なくとも佐藤内閣の中で日中の国交正常化、あるいはまた友好改善、こういう問題を真剣に、ことばのいわゆる羅列じゃなくて、真剣にやるところの決意があるかどうか、この点をまずお聞きしたいと思います。
  481. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) きょう午前中羽生君から、ずいぶん中共問題、中国問題ではお尋ねを受け、それに答えました。したがって、もう重ねて申し上げることはございませんが、ただこの問題について、私の決意のほど、あるいは覚悟はできておるのか、こういうお尋ねでございますから、午前中も、私の時代ではできないだろうということを一度申した、これはたいへんな間違いを引き起こしたと、その職にある限り、どうしても問題を解決するという、そういう意気込みでこの問題と取り組む、したがって、前言は取り消しますと、かようにさけほどお答えしたばかりでございまして、私は早かれおそかれ、いずれにしても、この問題は解決せざるを得ない問題でございますから、できるだけ、早ければ早いほどがいいのですから、そういう意味で、この問題と真剣に取り組むと、これはことばだけの問題ではございません。したがって、具体的にもいろいろ外務省からも問題を提起しておると思いますが、あらゆるただいま門戸を解放しているというか、いつでも、またどこでも話をしようと、こういうことを申しております。また、午前中は羽生君から、そういう程度ではなしに、積極的に総理みずから、あるいは外務大臣みずから交渉するとか話し合うとか、こういうような姿勢はとれないかとまで、そこまでのお尋ねまでございましたが、だいぶ意見もまじえてのお尋ねであったと思いますが、私は積極的にこの問題と取り組むべきだと、かように決意しております。そのことだけ申し上げておきます。
  482. 向井長年

    ○向井長年君 そこで、この問題については、二つに分類できるのじゃないかと思うのです。一つは、やはり国連の場においての中共の地位をどうするかという問題、もちろん台湾政権の問題もございますけれども、こういう問題に対して、日本政府はいかに今後取り組むかという一つの問題、しかし、それまでに現在中共との交流なりあるいはまた中共との今後の友好、こういう問題に対していかにすべきかと、こういう二つに分類ができるかと思います。  そこで、さきの問題につきましては、これもけさから触れられておると思いますけれども、ただ、先般は、外務大臣は冷静にひとつ静観をしておるようなことがどこかで発言されております。もちろん、国際情勢動きもありましょうし、あるいはまた、外務当局でもいろいろと検討をされておるように聞くのでございますけれども、この問題については、ただ静観とか、あるいはまた、若干これに対してよそを見ておるという、こういう時期ではないと思います。そろそろ日本政府が対処する一つの方針を固めなければならぬ時期がきておるのじゃないか。これはきょうの新聞にも、夕刊に、アメリカ自身がもう数ヵ月内に結論を出すと、こう言われておりますね。これは私は新聞で見たのですが、ロジャーズ米国務長官がそう言われている。これだけ急務だということですよ。この急務の問題を、日本政府は、ただこうやらねばならぬ、こういう考え方で、いろいろと冷静に情勢を見ておると思いますけれども、そういう時期じゃないじゃないかと、こう私は思うのですが、外務大臣、いかがでしょうか。
  483. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) まことにごもっともなお尋ねとも思いますけれども、同時に、やはり、午前中にもいろいろの角度から申し上げましたように、慎重の上にも慎重にいろいろと検討をすべき私は段階であると、決してあせるべきではない、こういうふうに考える次第でございます。  なお、前段にお尋ねがございましたが、二つの方向から見ていくべきものであるということで、これは日本自体が中国とどういうふうにやっていったらいいかという、いわばバイラテラルの関係、それから国連を中心にする代表権の問題と、この双方のことを言及されたものと思いますが、なるほどそういう見方もごもっともだと思います。しかし、同時に、これは相互相関連しておりますことも、また申すまでもないところである、かように存ずる次第でございます。
  484. 向井長年

    ○向井長年君 どうでしょうか、外務大臣、いま関連はしておりますけれども、これは秋には何らかの方向をとらなければならぬということで、アメリカでも検討を始めておると。しかも、数ヵ月後には結論を出したい、こういうことがきょう報道されておるわけです。政府としても、何らかの、日本政府として特に台湾との関係がございますから、そういう問題について、やはり一つの、いろいろ検討の中からそろそろ行動を起こすべき時期じゃないか。行動というものは何かというと、いわゆる苦悩している国々ですね、言えば、現在。こういう国々と十分やはり中共の地位の問題、あるいは台湾をどうするか、あるいは国民政府をどうするか、こういう問題等もあわせて検討し、ともに話し合わなければならぬ時期に来ているのじゃないかと、そう思うんですよ。それを、静かに、慎重にだけでは、これは前向きに行かないのじゃないですか。そうすると、最後は困るのじゃないですか。アメリカがきまればそれに追従しようと、そういうことではないと思うんですが、それもあわせて、日本の立場というものを検討の素材として話し合うという一つの行動を起こすべきじゃないかと思うのですよ。この点、総理、あわせて。
  485. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいまお答え漏れがございましたが、いろいろ新聞等でも、アメリカの態度がどうであろうか、あるいは他国がどうであろうかと、いろいろやはり大切な国際的な大問題でございますだけに、いろいろの報道がございますが、まあアメリカの態度としては、最近一番はっきりしておるのは、やはりごく最近の大統領の外交教書であろうと思います。先般も申し上げましたように、たいへん配慮深くあの文章はまとめられておるように思われます。また、きわめて近く国務長官が外交白書を発表するようでございますが、それぞれ各国とも非常に慎重に、同時にそれぞれいわゆるワーキングレベルと申しましょうか、いろいろ事務当局等が情勢の分析をしたり、あるいはそれぞれ意見の交換をしたりというのが現在の段階でございます。まだ政策としてそれぞれの政府決定する時期はまだまだ先ではないかと思います。  また、問題の性質上、何と申しましても十月以降、十一月でございますから、国連の総会にいたしましても。いまから表向きにどうこうという動きが顕著にあらわれてくるような段階ではまだないと、かように見通しております。
  486. 向井長年

    ○向井長年君 この新聞というやつは、素朴に国民は信頼するわけですよ。きょう羽生委員質問が「閣僚級の訪中検討」というように出ております、大きな字で。それとあわせて、「首相答弁″二つの政権″とも重視」と、こう書いてある。見られたですか。出ておるのですがね。国民はこれを見て、これをどう見るかというわけです。私は、これを見ると、二つの政権とも重視ということは、これは二つの中国という方向に国民は受け取るのじゃないかと思うのですよ。だから、そういう趣旨ですか、これは。いわゆる総理羽生さんに答弁されたやつが新聞ではそう報道されている。「重視」ということ、これは二つの立場はわかりますがね、そういうように受け取られるわけだ。その点について総理の心境をお聞きします。
  487. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 中国は一つと。しかし、政権は二つあると。そして、北京と台北にあるものが、そのいずれもがその正統性を主張している。これが現状だと、かように思います。その現状をやっぱりいろいろ話しすると、どうもいまのような間違った記事にもなりがちだと、かように思いますので、はっきり申し上げますけれど、これはもうテレビで国民の耳にじかに入っている。中国は一つだと、かように私も考えております。しかし、ただいまのところ、政権は二つあると、かように思います。
  488. 向井長年

    ○向井長年君 当然だと思うんです。したがって、「重視」ということがそういうようにとられたと思いますけれども、いま言われたように、中国は一つでなけりゃならぬ。したがって、そういう立場から、今後国連の場において中共の地位をどうするかと、いわゆる代表権問題をどうするかと、こういうことで、これからの検討になろうと思うのですが、これは二つがこうして同じように主張し合っておるのは、これはいつまでも平行ですね。そこで、やはり、一般世界の情勢というものは、もう日に日に変わりつつあるのじゃないですか。この情勢の中で、やはり日本が最も関係のある中で、一つの方向性というものを見出さなきゃならぬ。しかし、一方には、台湾という、あるいはまた国民政府という、こういう一つの政権があると。こういう中で、私は、これは、内政干渉という意味じゃございませんが、やはり国連の場で、中共は一つである、いま大半がいろいろな形で承認されつつありますね。指向されつつある。そういう国々の言うことももっともですから、そういう中で、やはり日本政府は、中共政府は唯一の方向である、指向する方向であるという中から、台湾問題については、これはやはり国連の場において期限を切って両方話し合い、国連がその中にあって解決するというような、こういう方向もあるのではないかと思うのですよ。そういう問題について、どうでしょう。考えられませんか、外務大臣。
  489. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) きわめて複雑で、かつ長い間解決のなかなかできない問題でありますだけに、いろいろの考え方が、いろいろのお知恵のある方々や国々の間の中からも出てきているように思われます。向井委員の御説は、ひとつ中華人民共和国が唯一の合法政権だということを認めていこうではないかと、しかし、台湾というところのステイタスもまた、何と申しますか、同情に値するから、まあ十年ぐらいの間かかってそちらのほうの処理をしよう、こういう一つの御提案で、これも向井委員もずいぶんいろいろとお考えになった御意見であると私も拝聴いたしておるわけでございますけれども、まあ政府といたしましては、これらの点についてまだ意見を申し上げる段階ではない、こういう次第でございます。どうぞ、御了承いただきたいと思います。
  490. 向井長年

    ○向井長年君 十年というようなことを別にいま言ったつもりじゃないんですが、何らかの期限を定めて国連の場において相互話し合って解決に持っていくと、こういう方向ですよ。これは一つの意見としてひとつ検討に値する意見だと私は思っておるのですが、これは、総理大臣、いかがでしょう。
  491. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、この問題は、急にいま始まった問題じゃない。戦後からずっと引き続いてこの問題がもう二十数年たっている。それがまだ解決しないだけに、いま外務大臣が申しますように、なかなか複雑で、そう簡単なものではないと。しかし、ただいま向井君の御提案、一つの案であることはと、こういうように申しております。ただ、政府が直ちにそれに賛成だと、こう言うわけにいかないというのが、そのほんとうの気持ちじゃないだろうかと、かように思います。私は、いまの、無意味なお話だと、かようには思わぬです。しかし、ほんとうにこういう問題については各方面の意見も聞かなきゃならないと。その場合に、私どもは先入観を持たないで各方面の御意見を聞くという、そして結論を出すと、こういうことにならないと、いますぐ云云することはいかがかと、かように思いますので……。
  492. 向井長年

    ○向井長年君 その問題を、すぐ私はどうこうの答えを出してくれということは言っておりません。少なくともそういう国々に相談をし話し合う中で、そういう問題も一つの方法として考えられるのじゃないかということを言っておるのであって、これは正しいほかの方法もあるでしょう。そういう一つの検討をし、早くそういう話し合いの場をつくっていく時期じゃないかと、こういう立場から、その例を言ったわけですが、これについてはひとつ十分検討を願いたいと思います。  そこで時間がございませんが、きょう朝のこれ、あと一つの問題ですね、中共とのただいまの友好を深めていくという問題、これについてけさからも総理から発言されておりますが、閣僚級の訪中検討と、こう出ておりますが、これはまあ言われたとおり出ております。これはいいことだと、前向きだと思いますが、この閣僚級というのは、どうですか、現在の閣僚級のことを指しておるのか、それとも前にやっておった閣僚級ですね、自民党の中で、そういう人ということですか。この点、どうですか。
  493. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま検討している最中でございまして、まだ具体的にどういう人を考えているかと、こういうことではございません。
  494. 向井長年

    ○向井長年君 人じゃないです。この閣僚級というのは現在の閣僚級を、あるいは今度改造されて閣僚級になるかわからぬが、過去にあった人じゃないという、羽生委員は現在の閣僚級というように解釈しておるようですが、その点どうでしょうか。
  495. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあとにかくできるだけはっきりいまの人も含めて考えるべきだろうと、かように思います。だれでなきゃならんとは思いません。いままで閣僚級の人は行っておりますが、しかし、それだけでもいかない。やはりいまの政府に近い人でないと、どうも向こうで受ける場合にも受け方もあるだろう、かように思いますから、そういう点も考えるということです。
  496. 向井長年

    ○向井長年君 それは総理、そんなことを言うべきじゃないですよ。やはりだれをということを私は言っているのじゃなくて、閣僚級といえば、現職閣僚級と、向こうの評価が違うのですよ、過去にやった人と違うはずですよ。したがって、やはり現職の閣僚級、いつかわかりませんよ、そういう人をひとつ派遣するように検討したい、こういうことで、私は受け取っておるのですが、それでいいのでしょう。
  497. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は午前中の羽生君、並びにいまの向井君、そういう御意見のあることを十分考えて御返事を申し上げた次第でございます。
  498. 向井長年

    ○向井長年君 そこで、まあ非常にこれは前向きに、総理姿勢も非常に前進してきていることだと私は思うのですが、少なくとも、わが国から中共にそういう友好を深め、理解をさすために行く、こういう形は非常にいいんですが、しからば、中共からも、誤解があるだろうし、あるいはいろいろなことを言われておりますから、中共の要人も来てもらう必要もあるのじゃないか、招請するという必要もあるのじゃないかと、こう思うわけです。それに対しましては、先般私が本会議で施政方針に対する質問をいたしましたが、これは形は違いますけれども、日本の国益を著しく阻害されない限りにおいては特別の規制をいたしませんというような、こんなむずかしいことを言われておるのですが、もっと快く、理解を深めようというならばこっちからも行く、向こうからも来てもらおうではないか、こういう形で、素朴にやはり総理考えておられるのじゃないか、こう私は思いますが、その点、いかがでしょう。
  499. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) あまり理屈っぽくなく、こちらからも行くし、向こうからも来ていただきたいと、かように思います。まあしかし、日中間の場合には、当方から先に出かけるのが一応礼儀かと、かように思いますので、そういう点で、とにかくあまりむずかしく、かどばらないような形で、そういう交流が行なわれることが望ましいと、かように思います。
  500. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、まあ、行くということも検討する、それからあちらからも招請するということも検討すると、こういうように解釈してよろしいですね。
  501. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) けっこうです。
  502. 向井長年

    ○向井長年君 だいぶ前進してまいりまして、けっこうです。  そこで、日中貿易の問題について若干お伺いをいたしますが、特に今後、この日中貿易が、四次五ヵ年計画によってプラント類の買い付けが始まれば、中国を承認した国々はこれに対していろいろな交渉を持つと思いますけれども、日本は、吉田書簡といいますか、こういう問題で非常に窮地に立つのじゃないか、こう思うのです。その点について、どう政府は対処するつもりであるのか、お聞きいたしたいと思います。
  503. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 吉田書簡については、もうたびたび申し上げておりますとおりで、これは本来が私文書でもございますし、廃棄するとか存続するとかいうふうな対象として政府として論議すべきものではない、これが政府の従来からの態度でございますし、また、今日もそうであって私は適当であろうと思います。
  504. 向井長年

    ○向井長年君 ただいまLT貿易とか、あるいはまた国際貿易――友好商社のほうでね、貿易とかいうものは、これは少なくとも国際貿易というようなものではないと思うのですよ。異常なものだと思うのですよね。したがって、これに対して日本政府がいかに中共にアプローチするかと、こういうことを私はまあ聞いておるわけですが。
  505. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) とにかく、まず金額で言えば、他国に比べて、比べものにならないくらい日中間の貿易の数字は大きいわけでございますね。それからその中で、いわゆる覚え書き貿易の占める比重は最近非常に低いので、これはもっと増すことが私は適当だと思いますけれども、これもやはり、双方、あるいは先方の経済事情等に原因が非常にあるようでございまして、これは故意にどうこうと言うのではなくて、自然の取引きの話し合いからこういうふうな結果になっている。しかし、とにかく総額が八億ドル以上というようなことは、私は、こういうふうな不正常な状況のもとにおいては、たいしたもんだと思うのでございまして、なお今後におきまして、先方も経済状態がいろいろ進歩といいますか、発展することでございましょう。また、いわゆる輸銀の問題にしましても、ケース・バイ・ケースということはかねがね申しておるとおりでございますから、今後いろいろの状況がよくなるにつけて、こうした経済交流の関係や、いままではあまり具体的な話し合いがなかったことも、だんだん開けてくるのではなかろうか、そういうふうに考える次第でございます。
  506. 向井長年

    ○向井長年君 中共は、われわれが聞く範囲においては、依然として、ユニチカのビニールプラントとか、あるいは日立の造船、こういう問題につきましては懸案事項として残っておると思うのですよ。非常に中共は要望しておると思うのですよ。こういう問題について、やはり現在の中ではこれが実現できないという状態、まあ特に輸出入銀行の延べ払いの問題がございますが、少なくともこういう問題については、やはり政府は積極的に乗り出すべきではないか、こういう感じを持つわけですが、この点、いかがでしょう。
  507. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 実は、率直に申しますと、やはり中国も文字の国でございますから、何何原則とか、何々文書ということが非常に好きで、あるし、また、少しずばりと言い過ぎるかもしれませんが、非常にそういうことにこだわりを持つわけですね。ですから、周四原則というようなものがどうして言われるんだろうか、吉田書簡というものを日本政府が廃棄すればそういうものもなくなるのじゃなかろうかと、こういうふうなものの考え方をする向きもございます。そうすると、吉田書簡は日本政府が廃棄だというようなことを言えばいいじゃないかというような考え方も私はあり得ると思いますが、しかし、やはり日本政府といたしますれば、吉田書簡というものが、前々から申し上げ、また、いまも申し上げているような性格の問題でございますから、日本政府としてこれを廃棄だとか存続だとか言うべきものではございませんという、この政府の立場というものは中国側でも十分理解されてしかるべきではないだろうかと、私はかように考える次第であります。
  508. 向井長年

    ○向井長年君 そういうように外務大臣は言われますけれども、やはりこれが支障になっておると思うのですよ。そこで一つの方法として、日中貿易公団というようなものをつくって、そしてそれに対処をすると、こういうことも一つの方策として考えられると思うのです。これは、自民党内部でも若干そういう意向が検討されておるというか、意向があるようでありますが、その点、いかがですか。
  509. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私は、率直に申しまして、いまの日中覚え書き貿易のやり方というようなものが、先ほど申しましたように、一つのパイプであり、これが広がっていくとことに、政府としてもまあ陰ながらお手伝いをしていくということが一番実際的だと思っておりますから、公団というところまで実は私も考えておりませんでしたが、これは通算省その他、十分ひとつ御提案を検討させていただいてしかるべきではないかと思います。
  510. 向井長年

    ○向井長年君 通算大臣に。
  511. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先方が窓口が一つでございますから、こちらもという御発想、あるいはその他の、先ほどからお述べになりましたこととの連関の御発想、いずれかであろうかと思いますが、さあ私もちょっと、にわかに判断いたしかねますので、よく外務省と研究してまいります。
  512. 向井長年

    ○向井長年君 総理、やはり幾らどう言おうとも、吉田書簡というものはひっかかってくるのですよ、中共側としましては。したがって、やはりこういう日中貿易を拡大して相互の利益をはかろうとするならば、やはり、こういう公団のような形でそれをはかっていくという法も、私は一つの方策だと思う。自民党の党内でもいろいろ検討されておるというように聞くのですが、これはひとつ総理、今後こういう問題、検討に値いするだろうと、こう私は思っておりますが、いかがでしょう。
  513. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 公団方式というのは、かつてソ連に対してもそういうことを言った人がありました。しかし、私は、中国の場合、北京政府がはたしてそういう形が好ましいと考えるかどうか、疑問なきを得ないように思っております。
  514. 向井長年

    ○向井長年君 大蔵大臣、中国との円元決済の問題ですね。この問題について衆議院でも若干発言されておりますが、今後これに対して、政府として、どう取り組みますか、一応検討されて……。
  515. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 決済方法が障害になって日中間の貿易を阻害すると、こういうことは私は非常に遺憾なことだと、こういうふうに思います。でありますから、中国側におきまして、円元決済あるいは元元決済と言ってもいいと思いますが、いずれかの方式、そういうものの御提案がありますれば、私どものほうはこれを積極的に受けて立つ、そういう姿勢でいいんじゃないか、さように考えております。
  516. 向井長年

    ○向井長年君 通産大臣、石油問題について私いろいろと聞きたいんですが、時間がございませんから、一つだけ。  いま、ベトナムの沖で石油開発の問題に取り組んでおられますね、民間が。海洋石油会社ですか、これを設立して南ベトナムの沖合い大陸だなで石油開発をいまやろうといたしておりますが、これは目下激しい内戦状態の中にあるわけでございまして、これは私は将来に禍根を残すような問題が起きやしないか、こういう懸念をするわけです。したがって、現状においては、一応これは留保し、見合わすべきではないかと、こういう感じもするんですが、いかがでしょう。
  517. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 海洋石油株式会社というのが設立されたわけでございますけれども、これはベトナムを考えて設立されたと申しますよりは、東南アジアの海域ということでできたわけでございまして、たまたま偶然に時期が一致いたしましたからそのように言われましたが、それを目的としてできたわけでもございませんでした。ベトナムの場合、国内の石油開発法のような法律が成立したよしでございますけれども、その後どの鉱区なり、あるいはどの地方でどうするかということについてベトナム政府側のその後の意思表示がございませんので、まあ事態は、いわばそういう意味で流動的と申しますか、はっきりいたしておりませんいろいろな情勢もございますから、外務当局の判断ども伺いながら、慎重に対処をいたすべきだと考えております。
  518. 向井長年

    ○向井長年君 これはぜひ、まあ技術協力なら別ですけれども、そうじゃなくて、この開発の問題については、ぜひひとつ慎重に取り扱って、現状ではひとつ、やめる、こういう方向を私は要望したいと思います。  続いて、総務長官にお伺いいたしますが、沖縄が返還されますと、これに対していろいろと沖縄の開発なり整備が必要でございますが、政府の出先機関ですね、今日、運輸にしても、建設にしても、農林、各省ありますが、こういう問題はどうやられますか。いうならば、いまだったら九州ブロックに入っておりますが、そういう問題について今後特殊な形を取られるかどうか。たとえば、北海道開発庁というような形で取られるか、この点について、ひとつお聞きいたしておきます。
  519. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 出先機関は、沖縄が御承知のような日本最南端の離島でございますので、主として国の固有行政のサービス行政、許認可その他でございますから、できれば県民の利便のために一ヵ所にまとめて、総合出先機関、ただし、特殊な保安庁その他例外といたしまして、まとめたいと考えておりますけれども、これには、国のほうの役所である中央の機構をどうするか、いまおっしゃいました、仮称、かりに沖縄開発庁という、沖縄県のためのみにめんどうみる役所をつくる、つくらないかという問題とも関連をいたしていますので、私どもは、新生沖縄県の第一歩が、国の予算がきまったときに、国が予算で一体どれだけめんどうをみてくれたのだということがわからないというのでは気の毒だと思っておりますが、しかし、一方、やはり県政の自主性、沖縄県民の自治というものを中央権力で二重機構によって押えるのではないかという、当然のことながら、一方においていろいろの憶測がございます。そこで、第二次復帰対策要綱に入れたほうがよろしいとは考えておりましたものの、それらの現地側の御意向が十分まとまりまして、沖縄のためにいずれがよろしいかという結論が出た後に、できれば第三次要綱の中でそのような機構を円満に合意して、つくるほうが沖縄県民の未来のためにいいのではなかろうかと考えておりますが、現地側の御意向のまとまるのを待っておるというのが現状でございます。
  520. 向井長年

    ○向井長年君 もう一つ。  この基幹産業の問題について、現地ではいろんな報道がされております。特に電力の問題、先般も長官には個人的にはお会いいたしましたけれども、沖縄の新聞では、「本土側手つかず」というようなことを書かれたり、あるいはまた「配電五社はすでに条件提示」と、こういうことを書かれたり、あるいは「本土並み民営で五日閣議決定した」というような、こういう報道がなされておるようですが、これ、現状どうであるか、また今後どうしようとするのか、ひとつ一ぺんこれは答弁願いたいと思います。
  521. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 沖縄の未来を設計いたしますのには、電力と水というものが一前提条件でございます。その一つの柱である電力というものが現在民政府の所管になっておるわけでございます。しかしながら、本島においては五社の配電会社が民営で行なわれて配電事業のみを行なっておるわけでございます。民間においては、この五社を七月一日で沖縄電力として統合合併して発足するようでございます。このことはたいへん好ましいわけでございますが、現在、大蔵と米財務省との間の資産引き継ぎの問題に関連をいたしまして本土政府のほうでどのような引き継ぎをいたしましょうとも、現地沖縄県には無償でそのまま渡したいという願望をもって沖縄側の期待に沿いたいと思っておりますけれども、そのあと県営発電をされるのか、その他の点がまだ詰まっていないようでございます。これを全部民営ということになりますと、採算の問題その他非常にむずかしい問題が起こってまいりますし、新規発電の能力等はもちろんのこと、本島に比べても二割ないし三割も高い電灯料金を払っております離島の電力料というものに対して配慮がなされていない。それは別の問題だという構想でもあるようでございます。  そこで、本日も琉球政府の企画局長に、すみやかに琉球政府側の考え方をまとめてきていただきたい、現在の公社の程度の発電、配電、送電等の範囲を県営で行なう道もあり得るのではないか、その場合においては原油の免税等も公共団体であるから考えられる、しかし、民営の場合においては、料金を徴収するのであるから、国から無償で渡したものを琉球政府が受け取って、民営にまた有償で渡すというのもおかしな形式になる、いずれにしても沖縄県の電力というものは非常にこの整理が急務であるし、さらに未来に向かってもその基礎条件を整備しなければならぬ問題であるので、本土電発の腰をどこまで入れていくかの問題等も含めて、当方としては十分に沖縄側の希望に沿い得ると思うので、その案をつくってきてほしいということをお願いをして帰した次第でございますが、まだ現地側の統一された形というものが、はっきりあらわれておりませんので、これも十分に、しかもまた沖縄の未来に電力問題で悔いを残すことのないように配慮いたしてまいりたいと存じます。ことに従業員問題等は、たばこの問題その他とも同じように、非常な身分上の不安等をも伴いますので、巷間伝えられておりますような、かりに民間会社がこれを全部引き取って、そうして縮小して、二分の一ほど人員整理をすることが必要だ、あらゆる条件の中にそういうことが伝えられた次第でございますが、これらの問題等は、なるべくそういうことにならないような処理のしかたというものを念頭に置いて相談に乗っていきたいと考えます。
  522. 向井長年

    ○向井長年君 通産大臣、この問題についてですね、これは事実だろうと思いますが、砂川通産局長は、電力事業の沖縄側による発送電一元化について通産省は基本的に了解している、こういうことを発表されておりますが、ちょっとまだ長官の意見とは違うのですが、もうはっきりそういうことを言われておるのですが、この点、どうですか。
  523. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま山中総務長官のお答えになりましたので、そのとおりで私どももけっこうでございます。なお、電発が応援に出る必要がございましたら、いつでも出ていくようにいたしたいと思います。
  524. 向井長年

    ○向井長年君 そういうことじゃなくて、通産大臣、砂川通産局長っておられるでしょう、この人が現地で記者会見をして、そして一元化において民営でこれをやらすというようなことを、これを発表しているんですよ、現地で。これは事実だと思うですが、そういうことになってくると、いま長官が言われたこととちょっと違うのです。長官は、まだまだそうするかどうか検討するんだということを言われているわけです。これはどういうことなんですか。
  525. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それでございますから、山中長官の言われました御趣旨も、現地に一番都合のいいように考えてやりたいと、こういう御趣旨といま承りましたから、私どもといたしましても、まことにそのとおりで、それでけっこうだと考えます。せんだって実は関係の皆さんがおいでになりまして、私もお目にかかりました。いろいろな御意見がまだあるようでございますから、現地の御意見がすでに一致をしたというふうに私ども考えておりません。一致をしますれば、それが一番現地のためにいいことであろう、山中長官の言われたとおり私も考えます。
  526. 向井長年

    ○向井長年君 これは、山中長官、いろいろとあるいは通産大臣、これからの検討の素材になると思いますけれども、いろいろ問題はありますけれども、一つのあの小さい県でですよ、発送電を分けたり配電を分けたりじゃなくて、少なくとも送配電一元化、一社という一つの基本線に基づいてやはり効率的にやるべきであろうと、こう私は思うわけです。そのためには、特に先ほど言われた、アメリカからの資産の引き継ぎあるいは琉球政府に渡す、この方法がいろいろと検討されると思いますけれども、あくまでも一つの方向で進むという基本線の上に立ってひとつ検討を願いたいと思います。いかがでしょうか。
  527. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 基本的には、お示しのとおり、全琉一元の電力というものを総括していってもらわなければ、とてもやっていけないし、離島の方々を電力の時間送電等や本島に比べて二倍以上の料金の中に甘んじさせるということは、われわれ、奄美大島の昭和二十八年の復帰後今日まで、九州電力合併なくして奄美大島の本土復帰は終わっていないということばが、なお言われておりますることをたいへん申しわけなく思っておりますが、この轍を沖縄では踏んではならないと考えておりますので、お示しのような考え方を前提にして、沖縄のためにとるべき最もいい手段に対して本土政府のできる限りの応援をしたいと考えます。
  528. 向井長年

    ○向井長年君 最後に、これは総理にお伺いいたしますが、いま、この国会に靖国神社法というのが議員立法で出されております。これ、毎年毎年、これ四回出されましたか、四回出されて、廃案になっておるわけです。で、これに対しましては、国民の中にも、あるいは各党の中にも、あるいは自民党の中にも、賛否両論があると思うのです。先般この委員会において、総理は、そういうものは十分国民の理解の中からやるべき問題であって、無理押しすべきではないと、こう言われました。非常にこれはけっこうなことだと思うのですが、私の考えといたしましては、過去、あの戦時中に、自分の意思ではなくて、国の要望に従って、そして戦地で殉職された、こういう諸君を国が祭るのはあたりまえですよ、これは。国が祭るというのは、これは基本的にそれに反対する何ものもいないと思う。ところが、現状では、憲法の二十条なりあるいは八十九条に抵触するおそれが非常に強いと、こういう中から賛否両論が出ている、そうでしょう。したがって、私は、こういう問題についてせっかくのこの提案でございますけれども、そういうものを政争の具に供したり、あるいはまた、たなざらしにして廃案にするようなことは、これは英霊に対して、英霊を冒涜するものじゃないか、こういう感じを持つのですよ。したがって、われわれは、この問題については、あの問題は靖国神社は靖国神社でそのまま置いておきなさい、そこで、英霊を国が祭るということと、それから国民感情にこたえるということと、あわせて遺族にもこたえると、こういう立場から英霊を顕彰し、そして再びこういう間違いを起こしてはいけないぞという平和祈願の祝日を私は制定すべきだと、国の行事として。これは宗教団体じゃありませんよ。たとえば、武道館で年に一回、八月十五日なら八月十五日に英霊を顕彰しよう、そして再び間違いを起こしてはいけないということで平和祈願をやろう、こういうことで国の行事として、まずやる、そして、国民はこぞってその当日は休日にして、そして英霊を祭り、あわせて今後の平和祈願をしようという、こういう形の法案としてこの国会において成立さすほうが私は望ましいのじゃないか、それであるならば各党ともおそらく反対はしないであろうと、こう私は思うわけです。したがって、そういう点について総理所見を聞きたいし、また、事実そういう形がなされるとするならば、やはり政府みずからがこれに取り組んでもらいたい、こういう要望も含めまして総理の所信を聞きたいと思います。
  529. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのは、まあ八月十五日、この前の終戦の日、これを記念しての、昨年でしたか、武道館における記念行事、陛下のお出ましもいただいて、私、たいへんに盛大に行なわれたと、かように思います。だから、その八月十五日、それを一つの祭日にするという、そういうことについて異を唱えるものではございません。しかし、私は、やはり勝った場合には、勝った過去の場合には全部靖国にお祭りされている、しかし、どうも今回の敗戦の場合だけは靖国に祭られない、これはずいぶんひどいことではないだろうか。そうして、生きている人たちからもいろいろな議論をされる。素朴な感情からいったら、同じように国のために命をささげた人たち、戦争の勝ち負けにかかわらず、当然祭らるべき筋のものではないのか、それが憲法違反その他というような議論があるから、そういう点をよけた今回の法案を提案している、これがいまの現状でございます。その点では、いま向井君の言われるように、無理やりに出され、召集に応じて、そうして外地で、また内地で命を失った、そういう方を祭ることについて、だれも反対はない。ただ、宗教法人的な見方からいろいろな議論がある、こういうような御指摘でございます。私は、それらの点を十分ひとつ話し合って、こういうものは超党派といいますか、一党一派にかかわらず、全体がやはり祭る気持ちにならないと、英霊もなかなか満足がいかないのじゃないか、ある党は賛成だが、ある党は反対だ、こういうようなことでは、命をささげた方も安心されないというか、安らかに眠れない、それがいまの状況ではないだろうか、かように思います。たいへん私の考え方は素朴な考え方であります。いままでの戦争に勝ったときの場合はみな祭られている、負けたときだけ祭らないのか、こういうような感じがどうも残ってはいないか、かように思うのです。私は、今回のほうがより苦しい戦いをしただけに、われわれとしても、やはりお祭りするというが、同様に扱うべきではないだろうか、かように思うのでありまして、いまの八月十五日の問題は、これは別の問題として考ればいい、かように私は思っております。だから、いま靖国神社法案として御審議をいただいているものと八月十五日の問題は、これは別の問題として取り扱うべき問題ではないだろうか、かように思っております。
  530. 向井長年

    ○向井長年君 総理、幾らそう言われましても、国民の中にも、やはりこの問題については非常に大きな意見があるわけです。また、この国会の各党内においてもあるわけだ。だから、そういうことで何ぼそういう総理の意思であったところで、これはやはり問題点を残して、今国会でおそらく――採決で自民党が多数とってやるといえば別ですよ、そうじゃない限り、それはやりたくない、そんなことをやったら英霊を冒涜することだと言われておるんだから、そうなれば、これはまた通過しません。そうすると、またたなざらしですよ。三回、四回、五回と、たなざらしするということは、かえってこれは国民感情にこたえる道ではないし、英霊を冒涜するものである。あるいは、場合によっては、これを政争の具に供するような状態も若干ないとは言えない。だから、そういうことはいけないから、かわる問題じゃないけれども、それはそのままにして、靖国神社は現在の宗教法人としてやりゃいいじゃないですか、現在やっているんだから。そこで、国民感情なり、それにこたえる道で別な方途も考えられるのじゃないか、そういう立場から、私は、いま言いました祝日、英霊顕彰と平和祈願、この日を国家的行事で、いまやっておるあの問題じゃなくて、国民全般がそれに参加してやり得るという――みな東京に集まるというわけじゃありませんが、そういう一つの方途を講じて、あの問題はケリをつけることが最も望ましいじゃないか、こういうことで私は申し上げたんで、ひとつ早急に検討をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
  531. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもって向井君の質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にとどめ、次回は明後二十九日午前十時開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十一分散会