運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-03-22 第65回国会 参議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月二十二日(月曜日)    午前十時九分開会     —————————————    委員の異動  三月二十二日     辞任         補欠選任      藤原 房雄君     内田 善利君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         古池 信三君     理 事                 岩動 道行君                 小林 国司君                 白井  勇君                 山崎 五郎君                 竹田 四郎君                 吉田忠三郎君                 三木 忠雄君     委 員                 江藤  智君                 梶原 茂嘉君                 金丸 冨夫君                 小山邦太郎君                 郡  祐一君                 斎藤  昇君                 杉原 荒太君                 玉置 猛夫君                 平島 敏夫君                 二木 謙吾君                 堀本 宜実君                 三木與吉郎君                 安田 隆明君                 上田  哲君                 小柳  勇君                 杉原 一雄君                 鈴木  強君                 永岡 光治君                 西村 関一君                 羽生 三七君                 松本 賢一君                 内田 善利君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 萩原幽香子君                 向井 長年君                 渡辺  武君                 山高しげり君    国務大臣        外 務 大 臣  愛知 揆一君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  坂田 道太君        厚 生 大 臣  内田 常雄君        通商産業大臣   宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君        郵 政 大 臣  井出一太郎君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  佐藤 一郎君        国 務 大 臣  保利  茂君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣総理大臣官        房交通安全対策        室長       須藤 博忠君        警察庁刑事局保        安部長      長谷川俊之君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省国際連合        局長       西堀 正弘君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        大塚 俊二君        大蔵省主計局長  鳩山威一郎君        大蔵省主税局長  細見  卓君        大蔵省理財局長  相澤 英之君        文部大臣官房審        議官       西田亀久夫君        文部省初等中等        教育局長     宮地  茂君        文部省大学学術        局長       村山 松雄君        文部省社会教育        局長       今村 武俊君        厚生省公衆衛生        局長       滝沢  正君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省児童家庭        局長       坂元貞一郎君        農林大臣官房長  太田 康二君        食糧庁長官    亀長 友義君        通商産業省化学        工業局長     山下 英明君        運輸省自動車局        長        野村 一彦君        郵政大臣官房電        気通信監理官   柏木 輝彦君        郵政大臣官房電        気通信監理官   牧野 康夫君        郵政省郵務局長  竹下 一記君        郵政省電波監理        局長       藤木  栄君        郵政省人事局長  北 雄一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十六年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十六年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十六年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 古池信三

    委員長(古池信三君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十六年度一般会計予算昭和四十六年度特別会計予算昭和四十六年度政府関係機関予算、  以上三案を一括議題といたします。
  3. 古池信三

    委員長(古池信三君) この際、参考人出席要求についておはかりいたします。  三案審査のため、本日日本銀行総裁佐々木直君を参考人として出席を求め、意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 古池信三

    委員長(古池信三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  5. 古池信三

    委員長(古池信三君) それでは、前回に引き続き質疑を行ないます。渡辺武君。
  6. 渡辺武

    渡辺武君 私きょう佐々木日銀総裁の御出席をお願いしておりましたが、ただいま伺いましたら、総裁はきょうあまりお時間がなくて十時五十分までしかおられないということでございます。きょう突然そういうことをおっしゃられても、ずいぶん前から通告してあることでございますし、私の質問がすっかりこれはもうこの組み立てがくずれてしまうという状態でございます。できたら総裁に私の質問の終わるまで御出席いただきたいと思いますけれども、その点総裁に伺いたいと思います。
  7. 古池信三

    委員長(古池信三君) いかがでしょうか。
  8. 佐々木直

    参考人佐々木直君) できるだけご注文のようにいたしたいと思います。
  9. 古池信三

    委員長(古池信三君) ありがとうございます。
  10. 渡辺武

    渡辺武君 それでは質問順序を変えまして、まず最初に、日本銀行総裁に伺いたいと思います。  いま銀行オーバーローンということが従来から非常に問題になっておりまして、現在もまだ解消されていないというふうに思います。ところが、この銀行オーバーローンをささえるものとして、従来から言われておりましたのは日本銀行貸し付け金であります。この日本銀行貸し付け金の一九六〇年以降の推移はどうなっておりますか。また、現在日本銀行券発行高の何%をこの貸し付け金が占めているか、それからまた、都市銀行日本銀行からの借り入れ負債総額中の何%になるか、まずその辺から伺いたいと思います。
  11. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまお話がございましたように、戦後荒廃から立ち上がりましたわが国経済が、その資金源金融機関貸し出しに仰いでまいりましたことは事実でございます。そしてまた、この資金が非常に多く金融機関から供給された結果オーバーローンが進んできた、それがこの二十数年の歴史でございます。この傾向は経済相当高い成長が続いた関係もございまして、その姿が依然としてあまり変わっておりません。また、この背後に日本銀行金融機関に対する貸し出しが増加してまいったことも事実でございます。したがいまして、こういうオーバーローンを何とか是正するということを目的といたしまして、昭和三十七年、日本銀行ではいままで貸し出し中心として資金供給しておりましたのを切りかえまして、原則として銀行券の増発に見合う程度のものは債券買い入れによって資金供給し、季節的な資金調整貸し出しによって行なう、こういう方針に切りかえてまいりました。その後は日本銀行貸し出しは増加がとまっておりまして、むしろ一般的な貸し出しは減少してまいっております。ほかに輸出関係貿易関係貸し出しが増加しておりますものですから、貸し出し総額としては増加いたしておりますけれども、いわゆるオーバーローンという観念につながります日本銀行貸し出しは、むしろ絶対額が減少しておるような状況でございます。ただいま御質問がございました日本銀行銀行券発行高と、それから貸し出し残高、この割合は大体現在は四分の一ぐらいが貸し出しということになっております。全国銀行貸し出しの中といいまずか、借り入れ金の中における日本銀行貸し出し割合でございますが、これはただいままだ用意しておりませんでしたので、後ほどお答えさせていただきたいと思います。
  12. 渡辺武

    渡辺武君 ただいま御答弁のありました債券買い入れ、いわゆる買いオペレーション、これについては、またなお後ほど御質問したいと思います。しかし、ただいまのおことばでもわかりますように、日本銀行貸し出し金、これは従来、市中銀行オーバーローンをささえて、そうして市中に過度な通貨信用の創造を行なってきたということについては、これは否定すべくもない事実だと思います。現在、貸し出し金のこの率が、これが日本銀行発券高の中で四分の一とおっしゃいましたけれども、半分程度を占めているのではないですか、相当比重が大きいと思いますが、どうですか。
  13. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま御質問のございました日銀券発行残高と対民間貸し出し割合は四分の一でございます。
  14. 渡辺武

    渡辺武君 いずれにしてもいままでの通貨膨張、それからまた、この信用膨張、これの一半の責任、かなり大きな責任日本銀行が負っているということについては、否定することは私はできないと思う。そこで、いろいろ詳しい質問に移る前に最初に伺いたいのは、日本銀行は、通貨信用供給基本を現在どこに置いておられるのか、それを伺いたいと思います。
  15. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 日本銀行といたしましては、通貨価値維持ということを第一の目標として金融調整を行なっておるわけでございます。通貨価値安定維持ということは、結局は卸売り物価、それから消費者物価の安定ということになるわけでございます。現実に戦後そういう物価上昇をしてきていることは事実でございますので、そういう意味では通貨価値の安定を目標としながら、その目的を十分に達し得なかったということは、これは否定できません。しかしながら、われわれとしては、あらゆる政策手段を使いまして、この安定に努力してきております。最近、昭和四十四年の九月から金融引き締めをいたしまして、去年の十月まで引き締めをいたしましたのも、従来と異なりまして、高い外貨準備を保有しながら、なお引き締めを実行いたしましたということは、やはり物価安定ということをわれわれが非常に目的とし、その努力の結果、卸売り物価につきましては、その安定の目的を現在では達しているというような実情でございます。
  16. 渡辺武

    渡辺武君 いま通貨価値の安定を重点としてやっておられるというようにおっしゃいましたけれども、それはちょっとおかしいのではないでしょうか。総裁言明現実との食い違いをどういうようにして御説明なさいますか。いまもちょっと触れましたが、時間がないので若干省略はしましたけれども日銀貸し出し金が従来非常にふえておって、これが銀行オーバーローンをささえる。そうしてまた、この銀行オーバーローンにささえられて、企業は、いわゆるオーバーボローイングをやり、むちゃくちゃな投資をやってきた、これが現実でしょう。それに加えて、先ほどおっしゃいましたように、新通貨調節方式、公債、政保債などに対するオペレーションをやって、そうして通貨供給を大々的に発展させてきた、これが日本銀行の従来やってきたことだと思う。この結果、何が起こっているのか、総裁もいまちょっと言われました、日本経済の一方では、高度成長が大企業中心として確かに行なわれてきた、しかし、他方では、消費者物価急上昇がまさにそのことによって起こっているじゃないですか、この食い違いをどう御説明なさいますか。
  17. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 日本経済の高い成長をささえておるものが大企業であるというお話でございます。大企業の占めております割合が生産の中で相当高いことは事実でございます。しかしながら、日本経済全体が成長しておったということも、これも事実だと思います。ただ、日本銀行が今日まで通貨供給の仕事に当たってきておりまして、その供給の量の調節が必ずしも理想どおりにはいかなかったということは事実でございますけれども、しかしながら、ほかの国々と比べまして日本が特にインフレーションが進んだといったような事実はないと思います。そういう意味で、われわれとしては、先ほど申し上げましたように、通貨価値の安定を目標として努力してきたという事実はお認めいただきたいと思います。中央銀行といたしましては、日本経済の必要とする通貨はこれは供給しなければならない。問題は、その必要とする通貨がどの程度であるかという判断がなかなかむずかしいと思いますし、それからまた、現実通貨日銀券需要があらわれてきましたときにこれが調整できるものではございませんで、それに至るまでの道程の経済のふくらみ方、それをあらゆる金融政策手段によって調整して、結果として通貨需要量が適当なところに落ちつくように調整しなければならないわけでございます。したがいまして、日本銀行としては、その必要とされる通貨供給方法としては、外貨金を買うこと、有価証券を買うこと、金融機関貸し出しを行なう、この三つ方法しかないのでございまして、この三つのものをどういうふうにそのときの情勢によって組み合わして行なうかということが、そのときどきの情勢によって判断、決定さるべき筋であると思います。
  18. 渡辺武

    渡辺武君 なお重ねて伺います。  金融制度調査会昭和三十五年九月に出した日本銀行制度に関する答申並びに説明書というのがございます。この説明書の中で、日本銀行通貨供給目的健全通貨供給に置かなければならぬということを一致して結論として出しておりますけれども、しかし、目標健全通貨供給だけれども現実通貨供給についての運営ですね、これについては両論があって一致しなかったということを言っている。その一つ議論は、これは通貨価値の安定、これを第一に重点にしていくべきだという議論他方経済発展のための通貨をまかなうということを重点にしていくべきだという両論があった、こういうふうにはっきりと説明書の中で書かれております。これは総裁御存じのとおりだと思う。いま総裁のおことばを伺っておりますと、通貨価値の安定、これを運営基本にしておられるという御趣旨の御答弁をなさいましたけれども現実はいままで日本銀行通貨供給現実運営基本経済発展のために必要な通貨をまかなうというところに置いてきた、そういうことを現実が示しているじゃないでしょうか。
  19. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 私は、やはり中央銀行としての責務通貨価値の安定にあると思います。しかしながら、現実経済発展してまいりますときに、その発展しつつある経済の要求する通貨供給することももちろん中央銀行としては考えなければならない責務でございます。非常にぜいたくな言い方かもしれませんけれども通貨価値の安定と経済発展とをともに実現することができれば、これが一番中央銀行としてはいいのだと思いますが、私はこの二つ両方が、中央銀行としてその業務の目的として運営されてきておりますけれども、その中でどちらをおもにすべきかということになりますと、通貨価値の安定であると信じておるのでございます。
  20. 渡辺武

    渡辺武君 日本銀行通貨価値の安定、それから先ほどはっきり言明されましたように、消費者物価の安定、これを現実運営の第一の重点にしておるというふうにされておったならば、いま起こっているような、一方で高度成長がどんどん進み、他方消費者物価急上昇が起こるというようなことが起こりようはずがないじゃないですか。あなたがいまおっしゃった言明とは別の高度成長のための資金需要、これをまかなうことに政策重点を置いてきたということは、これは現実がはっきりわれわれに教えてくれているのじゃないでしょうか。もう一回御答弁いただきます。
  21. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 私ども努力してまいりました目標が、通貨価値の安定であります。これは重ねて申し上げます。高度成長に伴う物価上昇がその間に生じておるという事実はもう私は否定いたしませんけれども、しかし、われわれの努力目標が、通貨価値の安定であったということは、重ねて申し上げます。
  22. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますと、その現実を踏まえて、今後どのような政策を具体的におとりになりますか、通貨価値の安定、消費者物価の安定、これについてどういう具体的な政策をおとりになりますか。
  23. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 現実の問題といたしましては、金融政策の面では、先ほどもちょっと触れましたけれども昭和四十四年の秋以来の金融引き締めを、昨年の秋から解除してきておる実情でございます。したがって、いまこの時点におきまして、日本銀行物価対策として、ここで金融の面でいわゆる引き締め措置をとるというような考え方は持っておりません。いまの段階では、先ほども申し上げましたように、卸売り物価につきましては、安定の目的を達しておりまして、むしろ前年同期に比べて下がっておるような実情で、これの影響がやがては消費者物価に及んでくるものと期待して状況推移を見ておる状況でございます。
  24. 渡辺武

    渡辺武君 いま卸売り物価については、引き締め効果が出たというふうな趣旨の御答弁ですけれども先ほど総裁は、通貨価値の安定すなわち消費者物価の安定だと、こういうような御趣旨のことを申されたのでしょう。なぜ消費者物価が上がっているのに、金融引き締めをゆるめなすったのですか。
  25. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 先ほど私は御説明で、物価には卸売り物価と、消費者物価とあると、そういうふうに申し上げまして、この物価の安定が私ども目標であると、こういうふうに申し上げたのでございます。
  26. 渡辺武

    渡辺武君 これは総裁御存じだと思います。あの物価問題懇談会が、昭和四十一年の十月に提言をしております。その中で、「通貨価値の安定を目指すことは、金融政策の最も重要な使命である。この場合通貨価値の安定とは消費者物価の安定でなければならない。」と、はっきり言明している。いまの総裁のおことばだと、卸売り物価消費者物価両方がある。そうして現実金融引き締めをゆるめたのは、これは卸売り物価が下がってきたからだと、こういう。卸売り物価のほうを重点にして消費者物価のほうは二の次にしている。これがいまのあなたのお取りになった政策じゃないですか。これは物価問題懇談会が、はっきりこういうふうに指摘しているのとははずれたところだと思います。私は、卸売り物価ではなくして、消費者物価の安定、したがってまた、通貨価値の安定、これを政策の第一にすべきだと思いますけれども、その点どうですか。
  27. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 金融政策影響をし得る、その物価の安定という場合には、最初にやはり影響があらわれますのは、卸売り物価のほうでございます。消費者物価のほうは、金融政策とは直接関係のない要素によって変動する場合もずいぶんございますので、どうも物価の中では、消費者物価のほうは金融政策効果というものが間接的にあらわれる性格がございます。したがって、先ほども申し上げましたように、卸売り物価にまず影響が出て、それがその次にある時間を置きまして消費者物価影響があらわれてくる、こういう性格を持っておるように存ずるのでございます。
  28. 渡辺武

    渡辺武君 効果波及順序を伺っているのじゃないのです。あなたの政策基本を伺っているんですよ。通貨価値の安定、これはすなわち消費者物価の安定だということをはっきりと物価問題懇談会が言っている、私はこの立場に賛成です。あなたが通貨価値の安定を現実運営の第一の重点に置きたいとおっしゃるならば、これは卸売り物価の安定ではなくして、消費者物価の安定に第一の重点を置くべきだと思う。そうして初めて日本銀行政策というのは現実物価対策として効果のあるものになってくると思う。いまのおっしゃり方は逆だと思う。卸売り物価、これは資本資本企業企業との間の取り引きにおいて影響のあるものです。これをまず第一に重視するということは、大企業立場を重視するということでしょう、利益を。しかし、国民には消費者物価が問題なんです。消費者物価の安定を大事にして、そうしてそういう面から通貨金融政策現実運営をやっていくべきじゃないでしょうか。そうして初めて経済の安定、成長も確保できると思う。どういうふうに思われますか。
  29. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 物価に対する金融政策影響のしかたをただいま御説明申し上げましたが、いまお話しの御質問のございました私ども消費者物価を全然問題にしてないというような御趣旨でございましたら、それでは私ども考え方は違うのでございまして、もちろん私ども消費者物価を安定しなければならない。それが通貨価値の安定である。国民にとっての物価というものは消費者物価であるということは十分承知いたしております。ただ現実の問題として、消費者物価の安定がいままでの歴史におきまして、戦後の状態においてはやはり卸売り物価に比べますと、なかなか安定の確保はむずかしかった、この事実はこれは私も否定できません。わりあいに上昇の幅の少ない年でもやはり四%ぐらいの上昇はあったわけでございます。これがどういう理由でそういう消費者物価が上がったかということの原因につきましては、いろいろ事情もございますけれども現実消費者物価については物価安定の目的を達し得なかった。しかしながら、われわれとしても、もちろん今後さらに消費者物価の安定につきまして万全の策をとってまいりたいと、こう考えておるのでございます。
  30. 渡辺武

    渡辺武君 それなら重ねて伺います。日銀貸し出し金がこれが銀行オーバーローンをささえて、これがなんですね、消費者物価値上がり一つ原因になったということについては先ほど指摘しましたけれども、この日銀貸し出しにかわって、いわばかわって三十七年の十一月から特に大規模に採用された買いオペレーション、これについて伺いたいと思う。これも市中に対する通貨信用供給を非常に大きくして現在の通貨価値の低落、消費者物価値上がり、これの大きな原因になったと私は思う。この方式で買い上げられた国債政保債日銀保有高、これはいまどのくらいになっておりますか。そうして特に福田大蔵大臣発行し始めた新国債、これの発行現在高の中における日銀保有高はどれくらいの割合になっておるのか。最後に、この国債政保債日本銀行通貨供給高の中でどのくらいの割合を占めておられるか、これらについて伺いたい。
  31. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 四十五年の三月末における日本銀行債券市中から買い入れました残高が二兆二千六百十三億に相なっております。これがその同時期の銀行券発行高四兆三千二百五十八億円に対しまして、五二%に当たっております。それから国債につきましては、四十五年の三月末で日本銀行が一兆一千七十億所有いたしております。
  32. 渡辺武

    渡辺武君 これは非常に重大なことだと思うのですね。二兆二千億をこえるほどの国債政保債の保有をやって、それと引きかえに日本銀行通貨信用を創造して市中にこれをばらまいている、こういうことでしょう。しかもこの国債政保債というのは一体何か。特に国債はこれは税金を吸い上げてこれを使うという財政のワク外で、いわば財政上の資金不足を補うために新たに出されたものです。これを日銀直接引き受けではないにしても、市中銀行を通ってオペレーションでこれを買い上げて、そのかわりに日銀券発行するというようなことになれば、これは再生産過程への、その外からの日銀券の新たな注入ということになりましょう、当然これは貨幣価値の低落、物価上昇、いわゆるインフレーション現象を起こす要因になることはこれは避けられないと思う。あなたが消費者物価の安定ということを盛んに強調されるならば、こうした国債買いオペレーション、これをやめる方向できびしく制限する方向をとるべきだと思う。その点どうでしょうか。
  33. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまの御質問には二つの点があると思うのでございますが、一つの点は、いまの銀行券発行残高が多過ぎるのかどうなのか、適正なのかどうかということと、もう一つの問題は、そういう銀行券供給と申しますか、資金供給します方法は何がいいのかという問題と二つがあると思うのです。いまの銀行券の四兆円という残高、これは大体最近は毎年五、六千億円ずつ増加いたしております。問題はこの五、六千億という銀行券の増発額が大き過ぎるのだ、これを四千億ならいいか五千億ならいいかというような問題の検討があろうかと思います。しかし、いま御指摘の問題は第二の点のように存じますが、もし五千億なら五千億円という銀行券の増発額を、これをもしそのぐらいの金額がよろしいといたしますと、その五千億の供給のしかたはどうするかということになってまいると思う。それにつきましては、先ほど私が申し上げました三つしか方法がないのでございます。外貨金を買うか、あるいは有価証券を買うか、貸し出しをするか、この三つしかございません。この三つの中のどれを選ぶかということは、これはいろいろそのときの情勢によって違うわけでございます。もし外貨が非常にたくさんふえるような場合には、それでもう銀行券供給されてしまう場合も理論的には考えられます。有価証券を買います場合には、有価証券の何がいいかということでございますが、その場合には、中央銀行としては最も信用の高い債券を買うのが普通でございます。外国の例で見ましても、中央銀行がまず有価証券を買います場合は国債を買うわけでございます。あるいは、その次には地方公共団体の債券を買う場合もございます。日本ではやっぱり国債が一番信用が高い、その次が政府保証債である。こういうふうな信用順序で買っておるのでございまして、この有価証券の種類がそのままこちらの供給します資金とつながるわけではないのでございます。
  34. 渡辺武

    渡辺武君 私は、通貨価値の安定、消費者の物価の安定ということを政策重点にした場合に、どういうふうにして日銀通貨信用の創造を規制すべきかということを伺っている、現実のいろいろな手続を伺っているんじゃないんです。いま申しましたとおり、国債というものは、これはいわばそれを買い上げて新たな通貨供給すれば、再生産過程の外からの通貨の注入になる。いま日本銀行がやっていらっしゃるように、流通過程から出てきた手形を割り引くという形ならば、これは流通過程に必要な通貨がそれでまかなわれるということになるでしょう。国債をオペの対象にして、そうして日銀券発行するということは、これはインフレーションの原因になる、消費者物価の安定を言うならば、通貨価値の安定を言うならば、それを規制しなければならぬじゃないかということを申し上げている。その点どうですか。
  35. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 私は、物価関係のありますのは銀行券の増発の量であって、それの増発額に対してどういう方法資金供給するかという方法物価には関係ないものと考えております。
  36. 渡辺武

    渡辺武君 この通貨金融の元締めがそんなふうな御見解じゃこれは国民浮かばれませんね。困ったことです。もう少し国会の論議などもよくひとつお聞きいただいて、いま言明された通貨価値の安定、消費者物価の安定、これを政策基本にほんとうにするようになさっていただきたいと思うんです。  これと関連してもう一つ伺いたいと思いますけれども先ほど日銀貸し出し金の問題が問題になりました。このために銀行オーバーローンがどんどん行なわれて、そうしてこれがまた企業のオーバーボローイング、そうして設備投資がむちゃくちゃにやられる。一方で高度成長他方消費者物価上昇ということになってきた。ところで、この日銀貸し出し金が、これが国債政保債を担保にして行なわれるということになっておりましょう。どうでしょうか。
  37. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 日本銀行貸し出しには形といたしまして割引手形の形式によりますものと、手形貸し付けの形式によるものとございます。割引手形の分は、これは先ほどお話がございましたが、市中銀行が取引先から割り引いた手形をまた日本銀行で再割引をするという形でやっております。それから手形貸し付けのほうは、これは担保を取りまして、その担保に対して貸し出しを行なうと、こういう方法によっております。この手形貸し出しの場合に、普通は有価証券を担保とするのが普通でございまして、その有価証券の中には国債、それから政保債金融債、社債、こういうようなものが入っておるのでございます。
  38. 渡辺武

    渡辺武君 ですから国債政保債を担保にして貸し付けをやれば、これは国債の買いオペと同じような性格通貨が増発されるということになりましょう。これを規制しなければ通貨価値の安定、物価の安定は期待できないじゃないですか。おやりになるかどうかということを伺っているんです。
  39. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま貸し出しの中に手形貸し付けが約七千億ございます。この七千億の中には、国債政保債を担保としたものが入っておることも事実でございます。それは現実に行なわれております。
  40. 渡辺武

    渡辺武君 規制をなさるかどうかということを伺っているんです。規制をしなければインフレ的な性格の金が流通過程に投げ込まれることになるわけですよ。先ほど総裁は、通貨の量が問題であって、その性格は問題でないとおっしゃったけれども、しかし、いま総裁が御指摘になったように、市中でもって現実の取引の中から手形が出てくる、そうしてそれを日本銀行が再割引するという形の通貨供給ならば、これは流通に必要な金がたとえ増発されようとも、それはインフレ現象なんてのを起こすものじゃない。先ほど申しましたように、国債発行などのような現実の流通過程に必要以外のものが基礎になって通貨が増発されれば、これは性質としてインフレまでの供給になるじゃないですか。だからこそ規制したらどうかと伺っている。規制する意図がおありかどうか。
  41. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 先ほど申し上げましたように、日本銀行はいま貸し出しの総額につきましては貸し出し限度を設けておりまして、それ以上に貸さないように押えております。したがいまして、手形貸し付けも金額的には押えられておるわけでございます。ただ、その手形貸し付けの担保になっておるものが何かということになりますと、これは非常にこまかいことになりまして恐縮でございますが、借り手の銀行有価証券国債政保債あるいは社債、金融債、いろいろ自分の手元にありますものを適当に組み合わせまして日本銀行に据え置き担保として入れておりまして、それに対して手形を振り出して手形貸し付けを仰ぐというのが現実の運びでございます。したがいまして、私どもとしては国債だけを、あるいは政府保証債だけを担保から抜き出して担保としての扱いをやめるという考え方は全く持っておりません。
  42. 渡辺武

    渡辺武君 それでは通貨価値の安定、物価の安定というのはこれは絵にかいたもちになるということをはっきりと私ここで申し上げておきます。  質問をさらに移しますけれども日本銀行は現在手形割引市場を育成して手形をオペの対象とする新しい通貨供給方式を検討しておられるということを聞いておりますけれども、その内容を詳しく御報告されたいと思います。特に手形割引制度がすでに存在するのにもかかわらず、なぜ手形の買いオペが必要なのか、オペ対象の手形は具体的にはどういうようなことを考えていらっしゃるか、これは総裁の言われた通貨価値の安定、消費者物価の安定にどのように寄与すると考えておられるか、それらの点について伺いたいと思います。
  43. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 手形買い入れ制度につきましては、目下検討中でございまして、まだ成案を得ておりません。しかし、ものの考え方といたしまして、この問題が出てまいりました経緯を御説明申し上げたいと思いますけれども、いま申し上げましたような通貨供給方法、外貨、有価証券、それから貸し付け、この三つ方法をいままで実行してきておるわけでございますけれども、その中で有価証券を対象といたしますオペレーションがだんだん有価証券の量もそれほど増加いたしませんので、底をついてまいりましたような現実実情がございます。それで手形を買いますということは、いまお話しのように、割引の方法もとっておるわけですから、そのほかに手形の買い入れをするということがどういう意味を持つかという点が問題であろうかと思いますが、私どもといたしましては、手形の割引の場合には公定歩合で割引をいたすわけでございますが、手形を市場の相場で買うという考え方になりますと、それは公定歩合とは違いましたその日その日の金融市場における金利を反映したもので行なうことができる、そういうふうなプラスがあるので、こういう方法を新しく加えたらどうかというふうに考えて、いま研究しておる最中でございます。
  44. 渡辺武

    渡辺武君 肝心な点を御答弁いただけないんですが、いまおっしゃったような方式は、一体通貨価値の安定、消費者物価の安定にどのように寄与するというふうにお考えなのか。  それからオペ対象の手形の種類、これはいまどんなことを考えていらっしゃるか。
  45. 佐々木直

    参考人佐々木直君) どうもいまの物価との関係におきましては、私の考え方が増加する資金供給量と申しますか、具体的に言えば日本銀行券の増発額でございますが、その増発額をどの程度調整するかということが物価には関係のあることであって、その銀行券の増発額をどういう方法資金的に供給していくかという方法は、直接的には物価関係がないというふうに私考えておりますものですから、どうもいまの御質問のお答えが十分でなかったかと思うのであります。私どもとしては、金融政策目標通貨価値の安定であり、それの具体的なつながり、金融政策物価へのつながりが一番具体的に出てまいりますのは銀行券の増発額である、こういうように考えております。
  46. 渡辺武

    渡辺武君 通貨価値の安定、物価の安定ということをおっしゃりながら、それはさっぱり頭の中になかったということがはっきりしましたね。いままでも日銀券日銀信用、これはもう出過ぎているんですよ。これは総裁急がれるものですから、この質問の前段階でそのことを申し上げようと思ったんですけれども、出過ぎておるんです。出過ぎておるからこそ通貨価値の低落が起こり、物価上昇が起こっておるんです。その上に、やれ債券買い入れはもう限度に来たから、新しくまたオペレーションをほかの手形を対象にしてやりたい、ますますもって新たな通貨増発になっていくんじゃないですか。あなたの言明と実際やっておられることが全く反しておる。結局のところ、大企業高度成長に必要な資金をまかなうということがあなたの政策重点だということがここにはっきり浮き彫りされているんじゃないでしょうか。どう思われますか。
  47. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 重ねて申し上げますけれども日本銀行券の増発額がどの程度であるのが経済の健全なる発展にいいかという問題については、確かにいままでの実績についていろいろ議論の余地があろかと思います。しかしながら、いまの発展する日本経済日本銀行券の発行額が増加をとめる、一切とめるということは現実には不可能でございます。増発額に対する供給方法を考えるということは、それを発行額の増加を前提とすればもう必要なことであると私は信じておるのでございます。
  48. 渡辺武

    渡辺武君 答弁にならぬじゃないですか。もちろん私は、通貨の増発を全然やめろなんてばかなこと言っているんじゃないんです。経済の規模が拡大すれば、通貨の増発が必要なことは当然のことですよ、これは。しかし、あなた自身が先ほどは否定されたから、私はあえて立ち入らなかったけれども、何によって通貨の増発をまかなうか、これが問題なんですよ。公債や政保債、これをオペの対象やあるいはまた担保にして貸し出しをやるというようなことをやったら、インフレマネーの供給になる。そのことを私は先ほど申しました。その点をなぜお考えなさらないんですか。また、いまのように手形を市中銀行がこれを引き受けて、市中銀行の持っておる手持ち資金のワク内でまかなうというんなら、これはまたインフレという問題からは若干はずれてまいりますけれども日本銀行がこれを買い上げて、そうして新たに通貨を増発させるということになれば、これまたインフレ的な通貨増発の要因になりかねない。結局あなたは通貨の安定、物価の安定ということは何も考えていない、成長資金をまかなうかどうかということでもって考えておられるということじゃないでしょうか。
  49. 佐々木直

    参考人佐々木直君) どうも私ども物価の安定を考えておるということにつきまして、いろいろの点で御疑問がおありのようでございますけれども、私どもとしては、現実にわれわれが使い得る金融手段を使って物価の安定をはかる。それでそういう点につきまして先ほども御質問がございましたけれども国債を担保とした手形貸し付け、あるいはまた国債の買いオペ、こういうことで資金供給いたしましても、それが物価上昇につながるとは考えておりません。
  50. 渡辺武

    渡辺武君 まさに国民にとってはぼくは不幸な事態だと思うんですね。口で言いながら、実際のところ消費者物価の安定に役立つような何のこともやっておられない、そういうことだと思うんです。しかし、もう時間もないので、もう一つ二つ伺って終わりたいと思いますが、現在わが国の外貨保有の増大に伴って、そのことが要因となっての日銀券の増発が行なわれるというのが目立ってきております。これはどういう経路で行なわれているのか、まずその点を伺いたいと思う。
  51. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 最近外貨がふえてきておりますが、このふえてまいります場合には、政府の外国為替特別会計が買い入れを行なっております。したがいまして、現実に市場に金が出ます場合には、外国為替特別会計の支払い超過額として出ておるわけでございます。現実の問題といたしましては、この一年間を振り返ってみましても、日本銀行券の発行増加額のほうが外為会計の支払い超過額よりはるかに大きいものでございますから、これが直接的に通貨増発の原因になっているとは思いません。いまの大体銀行券が四兆といたしますと、外貨に置きかえてみますと、大体百十億ドルくらいになろうかと思います。したがいまして、いまの程度外貨準備の増加額というものが銀行券の増発に直接的につながるとは、そういう状況ではないと見ておるのでございます。
  52. 渡辺武

    渡辺武君 それじゃ日本銀行が外為証券を保有していると思いますけれども、この外為証券の保有に伴って日銀券が出ていると思います。その保有高は一体どのくらいか、また、日本銀行の外貨保有につれていわゆる日本銀行の海外資産勘定、これももうすでに一兆円をこえていると私は見ております。これも日本銀行券の増発の要因になっているものと思いますけれども、その点どうですか。
  53. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 政府短期証券の最近の日銀保有高は、四十五年の三月末で八千二百億に相なっております。それから日本銀行の所有しております外貨資産、これも約一兆二千億をこえております。これがやはり日銀券発行高の四分の一近くになっておるかと思います。結局貸し出しが四分の一、外貨が四分の一、それから有価証券が半分と、こういうことになっておるわけであります。
  54. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますと、今後外貨の手持ちがずっとわが国でふえていけば、それに伴って国内へ日本銀行券がどんどんどんどん出ていく、平たく言えばそういうことになると思うんですね。この日本の外貨保有の増大ということは、これはアメリカを中心とする外国のインフレーションの高進、これが日本に波及してくる一つの私は形だと思う。これに対してどういう対策をお考えになっていらっしゃるのか、これを伺いたいと思います。
  55. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 先ほども申し上げましたように、銀行券が出てまいります三つのルート、そのうちの外貨を通ずるものがふえてまいりますと、像かの有価証券買い入れ貸し出しの増加、そちらのほうをとめます。それによって、ですから外貨の増加による銀行券への影響調整ができると思います。ただ問題は、適正なる銀行券の増発額をこえて外貨が入ってきたときにどうするかということでございますが、そのときには積極的に有価証券並びに貸し出しについては逆の操作を行ないまして、それで必要な銀行券の増額程度信用供給量を調整する、こういうふうになってまいるつもりでございます。
  56. 渡辺武

    渡辺武君 まあ多少具体的な御答弁のあったのがいまが初めてだと私は思うんですがね。  外貨の流入に伴う日銀券の増発が行なわれれば他方のほうを圧縮するということをおっしゃいましたけれども現実はどうなっているかと言えば、これを含め、買いオペレーションを含めあるいは日銀貸し出し金を含めて通貨の増発がどんどん多くなる。昨年の末は五兆五千億をこえるというようなべらぼうなことになってきている。いままで総裁にいろいろ伺いましたけれども総裁は、口では健全通貨供給目的にするとか、消費者物価の安定を重点にするんだとかいうことをおっしゃいましたけれども、しかし、通貨価値安定のための具体策、これについては何ら実のあるものを私はお聞きすることができませんでした。おそらく従来どおり今後も経済成長第一の政策を続けようとしておられるのじゃないかという印象を強く持ちました。そこで、今後の通貨金融政策重点はほんとうに通貨価値の安定、消費者物価の安定に置くべきであって、そのためには最低限、先ほど申しましたように、国債の買いオペと保有、それから国債担保の貸し付け、こういうものをやめる方向できびしく圧縮していくということをやるべきだと思う、これは最低限です。それをおやりになるおつもりがあるかどうか、重ねて伺って総裁に対する質問は終わりたいと思います。
  57. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 今後の金融政策運営目標につきましては、重ねて申し上げましたからここでは繰り返しませんが、ただいま具体的に御指摘のありました国債を対象とするオペレーション並びに手形貸し付けは、今後も実行していくことが適当と考えております。
  58. 古池信三

    委員長(古池信三君) 佐々木総裁に申し上げます。本日は御多用のところ御出席いただきまして、御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。お引き取りいただいてけっこうでございます。厚くお礼を申し上げます。
  59. 渡辺武

    渡辺武君 質問順序がすっかり逆になってしまいましたが、まず政府の物価対策について伺いたいと思う。  佐藤内閣は組閣の初めから、経済の安定成長、それから物価の安定などをしばしば言明されてきました。ところが、その実績はどうか。経済の安定成長について言えば、この予算委員会の総括質問の冒頭で、佐藤首相自身が、意に反して経済高度成長になってしまったということを言わざるを得ないというような状態です。  物価のほうはどうか。私はお願いして資料をつくってもらってありますが、一九五〇年代、それから一九六〇年代、さらに一九六〇年代を二つに分けて、佐藤内閣成立以前と佐藤内閣ができた以後、消費者物価卸売り物価の年平均の伸び率はどうなっているか、お答えいただきたいと思います。
  60. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) いまちょっと手元に資料がございませんが、前回もそうした質問がございました。佐藤内閣が成立した前と、それ以前の池田内閣との比較においてたしか議論があったと思いますが、その際には、消費者物価で申し上げますと、三十九年から四十四年度が五・五、それからその前の三十五年から三十九年が六・一と、こういうことになっております。  卸売り物価は三十九年−四十四年が一・八で、三十五年−三十九年が〇・四、こういうことになっています。
  61. 渡辺武

    渡辺武君 つまり、佐藤内閣ができてから消費者物価卸売り物価ともに最も上昇率が高い時期だということになりますね。
  62. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) いや、そうではなくして、三十九年と四十四年では平均五・五ですから、三十五年−三十九年の平均六・一よりはもちろん低くなっておるわけであります。
  63. 渡辺武

    渡辺武君 ちょっと御答弁趣旨、よくわからぬのですけれども、具体的に伺いますが、一九五〇年代、消費者物価の年平均上昇率は何%ですか。
  64. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 一九五一年といいますと昭和二十六年からですが、これが三十四年までで四%です。
  65. 渡辺武

    渡辺武君 一九六〇年から七〇年まではどのくらいですか。
  66. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 五・九です。
  67. 渡辺武

    渡辺武君 一九六〇年代の、佐藤内閣の出る前、つまり一九五九年から六四年まではどのくらいですか。
  68. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) ちょっとそういう平均をとっておりませんが、大体五%ぐらいのところだろうと思います。
  69. 渡辺武

    渡辺武君 答弁がまごつかないように、ちゃんとあらかじめ準備してくださるようにお願いしてある。私から申しますけれども、佐藤内閣成立以前は五・四%、六〇年代の前半期。佐藤内閣が成立してから五・八%、卸売り物価指数について言えば、佐藤内閣成立以前が〇・五%、佐藤内閣ができてから一・九%、年平均の上昇率がそういうことになっているんですよ。このことは佐藤内閣の物価対策が失敗したことを示していると思う。一体この失敗の原因はどこにあると思っていらっしゃるか、それをまず伺いたいと思う。
  70. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) 先ほど申し上げましたように、佐藤内閣というような区切り方が適当かどうかわかりません、私にとっては。しかし、まあ、佐藤内閣をとってみますと、歴年でいうと少し上がっているんです。ところが年度でいうと下がっておるんです。この物価指数というものはある時期に非常に季節的に上がったりする関係もありまして、そういう異動があります。で、先ほど申し上げた年度でとると、平均が四十四年までについて言えば、それ以前の五年間ぐらいよりも下がっていることも事実です。ただし、その後最近の情勢御存じのように上がっておるわけでありますから、私どもといたしまして、もちろんこの消費者物価上昇の問題というものが最も重要な問題であるという認識に変わりはございません。そういう観点に立って申し上げますると、毎々申し上げておりますように、何といいましても昭和三十年代の半ば近くから始まったところの高度成長、この高度成長というものがだんだんと定着いたしまして、そうして今度それに基づくところの膨大な需要に追い着くところの供給の不足、特にこれがいわゆる生産性の低い部門において消費の需要あるいは消費の形態の変化に追いつくことが非常に供給面において困難があった。それに伴うところの物価上昇があった。このことがやはり何といいましても一方において卸売り物価が安定しておるにかかわらず、一方において消費者物価が上がったと、こういういわゆる消費者物価卸売り物価の乖離という現象になったわけであります。このことをまた別の形で言いますると、卸売り物価の対象品目は大体大企業でございます。それから消費者物価の対象品目はいわゆる低生産性部門と称せられる部門における生産品が大部分であります。こうしたことにおいて、いわゆる大企業は生産性がどんどん上がってまいる、また供給力が需要に対応してまいる。それに対してその大企業中心にして起こったところの高度成長に伴う需要に低生産性部門が供給するところの消費財というものの供給が追いつかなかった。そのことからして卸売り物価の安定にかかわらず消費財の価格の上昇がもたらされてまいった。これがやはり三十年代の後半において非常にわれわれが注目しなければならぬところであると思います。  そうして、また同時にこれだけの成長をもたらした結果として、労働力の需給が非常に逼迫をし、したがって、また賃金の上昇をもたらすことになった。そうして、この生産性が一方において先ほど申し上げましたように、大企業と生産性の低いところで違っておるのに賃金だけはその格差がございましたが、それの平準化連動が起こりました。まあ、おかげでと言っていいかどうかは知りませんが、高度成長のよき一面であろうと思いますが、いわゆる格差があったところの部面において賃金の上昇が見られた。サービス部門もそうでございますし、それから、その他の中小企業部門もそうでございます。そういうことで、今度はさらに賃金の上昇ということの結果がめぐりめぐって再びまたこの物価上昇に拍車をかけると、こういう現象も出てまいっておる。  でありますから、何が原因かと言われると、一言には言いにくい、非常に複雑なものでございますが、一方において高度な需要があり、また一方において少しずつでありますけれども、コストプッシュ的な傾向も出てきておる。こうした点がわれわれが見た先進諸外国の過程というものに酷似しつつあるように私は思います。
  71. 渡辺武

    渡辺武君 政策の失敗の原因を伺いましたら、物価上昇のメカニズムの御答弁がありました。時間もないので重ねて聞くことはやめますけれども、私は佐藤内閣の政策のこの失敗の原因、これは政府がいま御答弁の中にもありましたけれども物価上昇の根源がどこにあるかということの認識をまず誤っておる。したがってまた、それに基づく政策そのものも間違っている。ここに一番大きな原因があると、別のことばで言えば、物価上昇の根源は、いま長官が言われたようなところにあるのじゃなくて、大企業の製品価格の不当な引き上、げ、つまり独占価格、それから、大企業高度成長をささえる財政金融当局のインフレーション政策、さらには政府の相次ぐ公共料金の引き上げ、これが私は根源だと思う。ところが、政府の物価対策は、いまの御答弁にもありましたけれども、この根源に触れようとしない。逆に物価値上がりの犠牲者である国民、これに責任をなすりつける。やれ、賃金が上がったからこれを押えなければならぬ、所得政策だ、あるいはまた農民や中小企業、これは低生産性部門だからこれの近代化をやらなきやならぬ、こういうことで十年一日のような答弁を繰り返してきておられる。ここに私はこの失敗した最も重要な原因があるかと思います。そういう政策をいまや根本的に転換すべきだと思います。そうして独占価格の引き下げ、インフレーションや公共料金の引き上げをやめる、そういう方向に政策を転換すべきだと思います。いかがでしょうか。
  72. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) まあこれは第二次犬戦後、御存じのように世界各国がとったところの一つ成長政策というものをどう評価するかという問題になろうと思うのであります。もちろん御存じのように第二次大戦以後、いわゆる各国の経済政策がいずれも完全雇用ということを目標にしてやってきておるわけであります。そうしてまたそうした観点からする成長政策のメリットというものも、これは十分評価されてしかるべきものであると私は思います。そういう意味において、わが日本においても当初大企業中心にして成長が行なわれたわけでありますが、もちろんそれは大企業だけに終わらず、低い生産部門の成長にも連なってきておるわけであります。ただその間の格差というものがなかなか縮まらない。そうした格差をさらに縮めていく、これがわれわれの方向である。まあいま渡辺さんのお話ですと、大企業は伸び過ぎているんだから押えろと、こう言う。そうして低いほうの部門のせいにしてはいかぬと、こういう話でありましたが、そうではなくして、大企業成長というものは確かに行き過ぎたものは押えなくてはいけませんが、同時に低い生産部門の生産性を上げてその成長をはかる、これもまた必要なことであろう。そうして生産性の格差をできるだけ縮めてまいる、こういう方向に今後持っていかなければならない。そういう意味において、おっしゃるようにあまりにも高い成長のし過ぎというものについては、もちろんわれわれもこれの転換をはかる、そういう意味において最近軌道の修正、安定成長の定着、こういうふうに言われておりますところのいわゆる方針というものを立てておるようなわけでございます。
  73. 渡辺武

    渡辺武君 そういうことをおっしゃるから、私は物価問題というのは解決しないんだと思いますね。主として構造的要因をいまおっしゃいましたけれども、いわゆる低生産部門と高生産部門との構造的な違いなどをおっしゃいましたけれども、しかしそれはそういう要因も多少あるでしょう。しかし主要な原因じゃないことは、これは明らかだと思う。この点に関して物価安定推進会議が四十四年の一月でしたかの提言の中で次のようなことを言っております。「最近の消費者物価上昇要因には、必ずしも構造政策のみでは対処し得ないものがあると認められる」というふうに述べております。そうして「経済成長通貨供給量との妥当な関係について検討すること。」というはっきりした提言をしております。またこの推進会議の前身の物価問題懇談会が四十一年の十月に出した提言の中でも、「財政及び金融物価に大きな影響を持つものであることは、否定し得ない。」ということも述べておる。いまの長官のおことばの中には、財政の問題も通貨信用の問題も一言も触れられませんでしたけれども、これらの提言を無視されるおつもりなのか。経済企画庁長官、それから大蔵大臣に伺いたいと思うのですが、財政それから金融及び通貨供給物価上昇の要因であるということを認められるか、また消費者物価安定のために、この側面でどのような対策を講じようとなさっておられるのか、お答えいただきたい。
  74. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) まだ御質問がそこまで行ってなかったんで私は申し上げなかったんですが、もちろん渡辺さんのおっしゃるように、その問題は重要な問題であり、先ほどから質疑の重ねられたところでございましょう。まあ物価安定対策会議あるいはその前の会議において、いま御指摘のような点がございました。ただあそこの場合において指摘されておりますように、成長通貨関係はまだ必ずしも定説がございません。むしろ経済動向に対して通貨供給はどちらかと言うと受動的であると、こういう意見が強かった。最近においてはアメリカ等を中心にいたしまして、通貨供給というものをもっと重視すべきであるという議論が強く行なわれつつあることは御存じのとおりでございます。そういう意味において、なかなかこれはいわゆる鶏と卵の議論のようなもので、なかなか定説のないむずかしい理論的な問題であろうと思いますが、しかしいずれにいたしましても、あなたも御議論がございましたように、私どももいわゆる総需要の抑制ということを一つの大きな物価政策の柱にしております。これはやはり成長の行き過ぎというものを押え、そうして総需要も抑制してまいる。このことはすなわち通貨供給にもおのずから関係のあることでございまして、そういう意味においてあの安定会議の提言もなされておるわけでございます。われわれもそういう意味から財政、金融調節という方法を通じて総需要の抑制という方向をやはり一つの大きな柱として今後もやってまいる、こう考えておるわけであります。
  75. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 物価の問題は私から申し上げるまでもなく、主たるこれを動かす要因は需給の関係と生産費の関係だと、こういうふうに思うんです。需給の関係からすると、最近までの数カ年間の経済成長の高さにあらわれておるように、需給強化というような関係にあったと思うんです。これはなぜかと、こういうことを反省してみるんですが、結局四十年のあの不況ですね、これが谷が深過ぎた。これはもう息の根がとまりそうな様相の不況であったわけであります。それを回復しなきゃならぬというので、公債を発行するとかあるいは財政を拡大するとか、いろいろな対策をとった。その結果四十一年暮ごろから経済は回復に向かったわけなんでありますが、谷が深いものですから、また山も高い。反動として景気回復が急ピッチで行なわれた。そして四十二年、四十三年、四十四年、引き続いて平均一三%、世界で類を見ない奇跡といい驚異といわれるような大発展をしたわけなんであります。あの四十年の不況から四十一年にかけての立ち上がり、これがなだらかにいくと、これは一三%成長というようなああいう勢いはなかったというふうに思うんですが、とにかく谷が深い。でありまするからこれを放置するわけにいかぬ、急速に回復しなければいかぬという施策がとられた。そういう辺にも問題があろうかというふうに反省をいたしております。でありまするから、いまそれを是正する対策が進められまして、その効果があらわれてきた。その効果があらわれて、今度はまた私どもが現想的な経済成長、需給の状態として見ておる一〇%、その程度よりはかなり低いところにいっておる。そこでこの経済状態を回復させる、それにはなだらかな回復のしかたというものが必要じゃないか、そういうふうに考えておりまして、まあ経済の実験というものはそうやってみるわけにいかぬが、四十年から四十一年のあの貴重な経験というもの、これを生かしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。  それからもう一つの需給のほかの生産費要因、これは賃金の急速な上昇、これもあります。それからまた海外の物価高の要因、こういうものもあります。それに対してどういうふうに対処するか。賃金問題については私いま所得政策というようなお話がありますが、これをいま私はわが日本において採用するという考え方は持っておりませんけれども、その賃金問題というものもコスト要因の一つである。こういう認識は国民全体がこれは見なければならぬ問題点であると、こういうふうに考えます。  それから海外の要因でありますが、これはなかなか消しとめるのがむずかしい、むずかしいが、関税の引き下げを行ないますとか、そういうようなことで極力対処しなければならぬ問題である。それからさらに生産費要因といたしましては、中小企業の問題があるわけです。あるいは中小企業と同じような農村の問題、そういうものがある。これのおくれの取り戻し、つまり、それらの低生産性部門の近代化、合理化、この施策をさらにさら・に強めなければならぬ、こういう時期にきておる、こういうふうにいま観念いたしましてそういう施策を強力に進めなければならぬ、こういうふうにいま考えております。さような考え方のもとにこれから財政金融政策、これは進めていかなければならぬ、それが私の考えであります。
  76. 渡辺武

    渡辺武君 いまお二人の御答弁を伺っておりますと、やはり物価上昇原因を根本的に見誤っておられるということがよくわかりました。企画庁長官は総需要抑制政策というようなことで、物価上昇の要因を需要供給関係を非常に大きく考えておられる。大蔵大臣も同じような立場でございました。しかし、御存じのとおり、最近の物価上昇は景気のいいときも上がるけれども、景気が悪くて在庫がたくさんあって売れなくて困っているというようなときにも、つまり需要供給が非常にゆるんでいるときにだって上がっているのですよ。需給関係というのは、それは確かに物価影響あります。しかし、現在の物価騰貴の主要な要因でない、副次的な要因にすぎない。私は先ほど申しましたけれども、現在の物価上昇要因の三つ根源をあげましたけれども、その中の一つ、きょうはインフレーション問題を質問したいと思っているわけですけれども、現在物価上昇の急速な進み方、これは通貨価値の低落をあらわしているというふうに私は思っておりますけれども、その点どんなふうにお考えなのか。
  77. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) よく言われるいわゆるインフレということはこの関連であろうと思うのであります。これは私たちはいわゆる通貨価値というときに卸売り、消費者物価ともに非常な関係を持つわけでございますから、その両方の傾向というものを考える、一昨年から卸売り物価が非常に上がりまして、私たちは多年卸売り物価消費者物価がともに並行して定着的に上昇を続けるというふうなことになると、これはたいへんである、こういうことでありましたが、卸売り物価はどうやら落ちついてきました。そういう意味において、通貨価値というものがいま全面的にどうだ、こういうところまでいっておりませんが、しかし、いわゆる消費者の立場からみまして、消費者物価上昇する、それだけいわゆる購買力というものが減少するわけでありますから、そういう意味での御質問であれば、明らかにそれだけのものが減少しつつある、こういうふうに言えると思いますが、いわゆる通貨価値というときにはもっと広く対内、対外を通じて議論をするわけでございます。そういう意味においていま通貨価値基本がどうなっているというところまではいっていない、そう考えています。
  78. 渡辺武

    渡辺武君 国民は何よりもその生活上、消費者物価値上がり、これは通貨価値の低落だと考えている。一九六〇年から七〇年にかけて消費者物価上昇率は政府の統計でも七五%、昔の千円はいまは五百円か六百円の価値しかない。通貨価値は明らかに低下している。その通貨価値の低下、先ほど日銀総裁質問しましたけれども日銀通貨信用の過度の膨脹、これにささえられて再生産過程にたくさんの通貨信用がもうすでにダブついてきている、これが通貨価値の低落の現在の原因だというふうに詳しくは論ずることができませんけれども、はっきり申し上げておきます。それをとどめるような政策をとらなければ、政府の物価対策は有効なことにならぬと私は思うのです。この点は十分に考えて今後の物価対策をやっていくおつもりがあるかどうか。総需要抑制政策はもうすでに失敗は明らかだ、佐藤内閣になってから消費者物価上昇率が非常に激しくなってきた、これでもその失敗は明らかなんです。したがって、総需要抑制政策というようなものではなくして、財政、金融通貨政策、これを通貨の安定と消費者物価の安定、これに基礎を置いた政策に私は転換すべきだと思う。その点そうなさるおつもりがあるかどうか。  それから大蔵大臣に最後に一言だけ伺いたいと思う。  今後、消費者物価上昇させる財政上の要因というものはますます私は大きくなると思う。たとえば、一つ国債発行です。これは予算の規模の中で国債発行高の占める割合がどのくらいかとか、国民総生産の中でどのくらいの割合を占めるかとかいうようなことが問題ではない。先ほど申しましたように、国債がもしこれを基礎にして日銀信用創造の基礎になるようなことになれば、これは性格としてインフレ的なものになってくる、インフレマネーの供給ということになる、そういうものは今後、財政規模の膨張に伴なって、財政の五%ということになれば、絶対額はふえていくと思う。これが第一です。  第二には、第四次防その他でもはっきりされておりますけれども、軍事費及びこれに伴う軍需生産の拡大、これが今後ずっと行なわれる。アメリカが現在、軍需インフレーションが起こっておるように、この軍需生産の拡大に伴うインフレーションというものも、これも今後の要因として私は無視できないと思う。  第三に大きな問題は、付加価値税制の採用、これはもう西ヨーロッパで採用して、はっきりと実証されておるように、大きな物価上昇要因になります。今後そういう要因がふえてきて、国民生活はますます物価上昇で圧迫されるということになるおそれが十分あるわけです。この点を十分に考えて、こういう物価上昇要因、これは今後の財政政策に採用しないということを政策基本としてとるべきだと思う。この点を大蔵大臣に伺いたいと思います。
  79. 佐藤一郎

    ○国務大臣(佐藤一郎君) お断わりいたしておきますが、私どもも、先ほどから申し上げておりますように、今日の物価上昇の問題は、ただ需要の問題であると申し上げてはおりません。先ほどから申し上げておるように、最近においては、いわゆるコストプッシュ的な要素が非常に濃くなってきておる。この点は十分これは注意を要する。先進諸国の過去の経験にかえりみても、われわれはただ需要の抑制だけで済むものではない、そういう感じがだんだん強くなってきておる。それは先ほど私がすでに指摘をしておるところでございます。そういう意味において、ただ総需要の抑制だけが物価対策でないことについては、われわれとしても十分認識をしておるつもりでございます。  それから、通貨価値維持ということは、対外的には一方ですでに円の切り上げというような議論さえ出るくらいに対外的には円の通貨としての力が強い。そうして他面において、国内においていま御指摘のように、消費者物価上昇がある、こういうことで、今日円の価値、通貨の価値というもののつかみ方が非常に複雑でございます。しかし、いずれにしましても、われわれとしましては、消費者物価の抑制ということがやはり通貨価値の安定につらなるところの重要な問題でありますから、当然のことながら、今後、いわゆる需要の抑制だけでなく、あらゆる物価対策を通じて、そうした安定に努力しなければならぬ。ただ御存じのように、今日のような経済構造がすでに成り立っておるわけでございますから、そうした通貨価値の安定というか、消費者物価の抑制には時間をかけなければならない、これを一挙にやるということは、それはそれでまた非常にマイナス面も生じてくるわけであります。これをしんぼう強く、根強くこの対策を継続的に続けてまいる必要がある。そうして、いわゆる経済社会発展計画でもいっております三%台というような上昇率のところにまず持っていくような方向で努力を進めていく、われわれはいつもそういう気持ちでやることに変わりはございませんから、その点は十分御認識をいただきたい、こう思います。
  80. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 財政金融政策物価問題に至大の関係がある、これは非常に関係があるのです。なぜ関係があるかというと、これは総需要を構成する要因としての影響、これが主であります。私どもは財政金融政策運営するにあたりましては、常に総需要の中において金融がどういう役割りを占めるか、また、財政はどういう役割りを占めるか、これをつぶさに検討して、そういう適正総需要量の中でいかなる金融政策、いかなる財政の規模、そういうものが適正であるかということを判定してこれに当たっていきたいと、かように考えております。  それから第二は、軍事費というか防衛費ですね、防衛費とインフレとの関係、これは財政の中における防衛費であります。その防衛費を含めての財政の総需要がどうなるかということ、これは厳重に見つめなきゃならぬ問題である。同時に、防衛費につきましては、他の諸国策とのバランス、内外の情勢、そういうものをよくにらんできめなきゃならぬが、特に総需要の中においてこれがバランスを失するというようなことのないように十分注意してまいるつもりであります。  それから付加価値税のお話でございますが、まだこれはわが国においてこれを採用するというふうにきめたわけじゃございません。ただ、EEC諸国におきましては、ほとんどの国がこれを採用しておる。それから英、米におきましても、これが採用方を検討に入っております。私は、日本状態としてどういうふうにこの傾向を見るかというと、所得税減税というのを大いにやりたいんです。しかし、所得税減税をするということになりますると、どうしてもそのかわり財源を必要とする。そういう意味から、いろいろ模索してみると、どうしても付加価値税というものが目についてならない。また、世界的の傾向というものが頭に来るわけであります。そういう意味において、大胆な、思い切った所得税減税を行なわんとすれば、どうも付加価値税方式を採用するほかないんじゃないか、そんな感じがいたしてならないんです。しかし、いま御指摘のように、付加価値税方式は、これは物価との関係が非常に微妙であります。重大な影響があると、こういうふうに考えますので、かりにこれを採用するというようなことがありましても、これは物価との関係というものをほんとうに真剣に考えてやらなきゃならぬ問題である。私どもは、世界的なそういう付加価値税の傾向でございますので、この検討はいたします。しかし、実施にあたりましては、きわめて慎重な態度で、特に物価がある程度安定の方向に向かうというような時期でなければこれは採用はできないものであると、そういう考えでやっておる次第でございます。
  81. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもって渡辺君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  82. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、山高しげり君の質疑を行ないます。山高君。
  83. 山高しげり

    ○山高しげり君 私は、モーテルの問題につきまして、関係の大臣たちにお伺いをしたいと思います。  四十五年の十月の警察庁の調査によりますと、この一年間、つまり四十四年の九月から四十五年の九月まで、この一年間に、いわゆるモーテルというものが千六百四十八増加をしていると、こういう数字が示されております。モーテルにつきましては、昨年七月、旅館法の改正が行なわれたわけでございますが、これには猶予期間が一年ついておりまして、まだ改正の結果はあらわれておりません。新設についてはやや鈍化をしているかという当局の見方もございますけれども、たとえば埼玉県で昨年問題になりました丸木美術館のかいわいにも問題になったモーテル以外にも増加をしているようでございますし、また、最近千葉県にも婦人保護施設の三メートル道路を離れたというところに建築が始まったというような事例もございます。その中で特に私どもが注目をいたしますのは、四十五年の六月にも殺人が一件ございました。その後心配をしておりましたら、本年の二月にまたも殺人が行なわれたと、こういう現状に対しまして、二月の十二日に二院クラブの山田勇議員が質問を申し上げましたところが、厚生大臣はよろしく対処をすべきだというような意思表示をしておられますけれども、まず、厚生大臣に、その後この問題についてどんなふうにお進めになりましたか、承りたいと思います。
  84. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) モーテルの問題でございますが、これは、そのものずばりで申しますと、モーテルは野放しで取り締まり法規がないような状況であるように私は感じます。形式的にはこれは旅館の一種であるということで、山高さんからただいまお話がございましたように、昨年の国会で旅館業法の一部改正をいたしまして、たとえば学校ばかりじゃなしに、児童福祉施設あるいは社会教育施設等の周辺には設置の許可をしないようなことにいたしましたり、あるいはまた、既存のものをも含めまして旅館業法で規制するとすれば、やはりお客の顔なり様子なりに接することができるように玄関、帳場というようなものを必ず設けるようなことにいたしまして、新しいものは施行されておりますけれども、前からありますものにつきましては一年間の猶予期間が置いてありますことはお話のとおりでございますが、改正するといたしましても、旅館業法ではその程度の改正しかいたしておらないわけであります。しかし、世に言うモーテルの弊害等は、いま私どもが改正をした程度のことをもって満足されるような状況ではなしに、学校のそば、あるいは児童福祉施設などから離れております場合にも、こうしたものがあったり、営業の状態そのものが社会風教上非常に憂うべき影響を与えていると私は考えますので、警察庁方面からの御協力や御観察もいただきまして、それがいいかどうかわかりませんけれども、たとえば浴場なんかにつきまして、特殊の浴場につきましては、あれはトルコぶろと申すのでございましょうか、ああいうものと同じように風俗営業取締法の対象などとしても御研究を願わなければ、厚生省だけの旅館業法の規制ということでは、世の批判に対応し得ないと私は考えるものでございます。そういう状況のもとにおきましても、行政的に私どもは都道府県とは打ち合わせまして、できる限り現行法の範囲で弊害のないようなことにはつとめてまいるべきだと私はまじめに考えております。
  85. 山高しげり

    ○山高しげり君 国家公安委員長にその点でお伺いをしたいと思いますが、最近新聞紙等に伝えられましたように、風俗営業等取締法を将来改正をなさって、その中にこのモーテルを加えるというようなお考えが出てきているようでございますが、それらの点について伺いたいと思います。
  86. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答えいたします。  モーテル対策といたしましては、いまお話が出ておりましたように、昨年旅館業法の改正が行なわれまして、設置場所及び構造設備に関する規制の強化がはかられましたが、本年七月以降全面的に適用されることに相なっておりますことは、いまお話しのとおりであります。したがいまして、現在は、この旅館業法改正の成果を見ているところでありますが、今後依然として風俗上の問題が改善されない場合には、風俗営業取締法の改正を行なって、営業の場所、構造等について規制を強化いたしたいと、いま検討しているところでございます。
  87. 山高しげり

    ○山高しげり君 旅館業法改正の結果を見てということになりますと、やや時間的にこうゆるやかなように私どもは感じますけれども、国家公安委員長としては、すでに殺人が二件も行なわれている、これはモーテルの構造が密室でございます関係から、最初から心ある人たちには憂慮されておった点でございますけれども、四十五年に最初の例が出まして、それからしばらくございませんでしたが、本年に入ってさらにそれが行なわれた、こういう事態につきましては、旅館業法の改正をあまりゆっくり見ての結果というわけにはまいらないのではないでしょうか。国民としては、なるたけお急ぎを願いたい、次の通常国会にぜひ御提出願うようにお急ぎを願いたいように思いますけれども、いかがでございますか。
  88. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答えいたします。  大体仰せのとおり、次の通常国会を目ざして検討を進めておるところでございます。
  89. 山高しげり

    ○山高しげり君 それでは希望を一、二申し上げますけれども、今度許可基準を相当強化をなさりたい、現在は学校とか病院とか、あるいは住居地域等はそこへ建ててはいかぬ、それにさらに児童福祉施設とか社会教育施設とか、そういうものもお含めを願うようでございますが、ぜひそれは一つきびしくやっていただきたいと思いますのは、先ほどちょっと申し上げました千葉県の館山市内のかにたというところにございますこれは婦人保護施設でございます。かにた婦人の村、厚生省の御所管だと思いますけれど、たった三メートルの道路を離れたところに会社の寮を建てると申しまして五つの部屋にそれぞれ、バス、トイレつき、それで会社の社員の寮であると。会社の大小もございましょうが、五つの部屋の一つずつにバスが、一体普通の会社の寮に要るものでございましょうか。地元から問題が起こってまいりまして、この件は大体はもう目鼻がついたようでございますけれども、その間多少私どもも調査にタッチをいたしましたけれども、厚生省御当局のお考えと、千葉県当該のその責任を持っておられるところの間にも、私どもから考えますと、あまりこまかに連絡がとれていないというような感じがいたします。婦人保護施設というようなものは県条例の中になかったというようなことがゆるやかに許可を許したというような結果のようでございますが、こういうことについて厚生大臣はどうお考えでございますか。
  90. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) いまの具体的の千葉県の話は私は存じておりませんが、これは御承知のように、許可は都道府県知事の許可でございます。それで一体何をモーテルというかというと、これは一体どこまでがモーテル、モーテルと書いたものはモーテルということですと、今度はカーテルというようなことばを使ったり、あるいは休息旅館というようなことばを使いますので、帝国ホテルまで同じ規制の対象にするかというと、そこの限界がわかりません。そこでいつも問題がございますことと、都道府県知事の許可を要するわけでありますが、都道府県知事が許可をいたします場合には所在の管轄の保健所、これは旅館でございますから、どうしても規制が構造、設備と申しますか、通風、採光、衛生、保健というようなことが主でございますので、保健所が窓口というか、協議機関になっております。その辺に今後の警察庁にいろいろお願いをいたすにいたしましても問題があろうと思います。千葉県のかにた女子寮の付近、これは正常な環境のもとに、かつてそういう好ましからざる方面に足を入れた婦人たちを保護している施設でございますから、また逆戻りをするような環境になっては、厚生省が困るわけでございますので、千葉県とも十分協議をいたさなければならないわけでありますが、その経緯は私は存じておりません。あとでまた必要があれば担当者のほうから御報告を申し上げたいと思います。
  91. 山高しげり

    ○山高しげり君 大体かにたの火は消えたようでございますから、いま厚生大臣が逆戻りは困るとおっしゃった一言で私は満足をしたいと思います。新しい風営法改正によってモーテルが規制をされる場合にも、ただいま触れましたような諸点をぜひ国家公安委員長としてもお考えくださいまして、よろしくお願いをしたいと思います。  時間がございませんので次に進ませていただきます。再び国家公安委員長にお伺いをしたいと思いますけれど、先ほど申しました風営法の改正を大体二本立てになさる、新聞で読んだだけでございますから、間違っていないとも思われませんが、二本立てになさる、そしていままでの風俗関係営業のそれをひとつ一括なさる、それからまた射幸遊技場と申しますか、パチンコ屋さんとかいろいろそういうものも分けてお取り扱いになる、それはそれでよろしいんでございますけれども、そのいままで出ております御案の中で二本立てにしてそのいずれもが営業時間の延長というようなことがお話に出ておると聞きまして、私どものところにもいろいろな方面からそれは困るじゃないか、ぜひひとつよく承ってほしいという要求が非常に強くまいっておりますので、この点をお尋ねをしたいと思います。何でございますか、都市生活者の夜の生態というような実態に合わせて云々というような表現を新聞などは使っておりますけれども、その辺いかがなものでございましょうか。
  92. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答えいたします。  最近の社会情勢の進展は、風俗営業の面におきまして多くの問題を生じておりますのは、御指摘のとおりでございますが、警察庁におきましては現在その改善について検討を加えているところであります。御質問の営業時間の問題もその一つであります。御承知のように、料理店等の従来からの風俗営業は原則として午後十一時までとなっておりますが、最近急激にふえておりますスナック等の深夜飲食店については時間の制限がございません。一方、その営業の内容等を見ますと、両者はほとんど区別のつかないものでありますので、善良な風俗の保持等の観点から、これを改正する必要があるのではないかと考え、先般来各方面の意見を聞きながら検討を加えております。もとより営業時間の問題は、国民の日常生活に影響するところが大きいのでございますから、今後とも慎重に検討を加えて成案を得ましたときはおはかりいたす所存でございます。
  93. 山高しげり

    ○山高しげり君 これからもまた御相談に乗せてくださるらしゅうございますから、あまりたくさんない時間の中でこれ以上申すこともないようにも思いますけれど、私どもはいま自動車の問題の中で飲酒運転による人身重大事故というようなものが非常に多い、それらと考え合わせましても、夜おそくまでお酒を飲んでおられるということは、一体事故を減らすことになるんだろうかどうだろうか、委員長のいまのおことばの中に、社会情勢の進展に伴って云々と、まあ進展でございましょうかね、大都市の夜の市民の生活が変わってきている、それに実態を合わせるというようなお考えが、まああるようでございますが、また、もっと健康な、夜は睡眠をとって、あしたの活動に備えるものだという、たいへん古いかもしれませんけれど、大多数の国民の常識から考えますと、夜はさっさと寝る方向へ持っていくほうが改正ではないかしら、どうやら営業時間の延長は改悪のように私どもにはとれるんですが、それはあんまりいい気でない人間の声とお思いになるかわかりませんけれども、ひとつ、それらの点もよろしくお考えあわせて善処をいただきたいと思います。他日、この問題ではまたお話をすることもあろうと思いますので、先へ進ませていただきます。  その次には、文部大臣にお願いをいたします。実は、これもまあ新聞等を通してでございますけれど、おそらく私のみならず、皆さま方も御同感かと思われますことは、若い親たちが自分の子供を殺すとか、虐待をするとかいう、たいへんに痛ましい事実が頻発をしておるという現実でございます。それらのことに対しまして、社会教育の所管でいらっしゃる文部大臣のお考えをまず伺いたいと思います。
  94. 坂田道太

    ○国務大臣(坂田道太君) 若い母親が自分の生んだ子供を虐殺したり、あるいは勉強ができないと旧いうことで、なぐったりというような、まことに考えられないようなことが現実には起こっておる。で、昨年来の荒れ狂いました大学紛争も一応収拾に向かいましたが、しかし、それはまた非常に過激な赤軍派などの学生の運動が現に存在するわけでございまして、しかも、昨年でございましたか、大学の構内でリンチをするという、一体、最高学府に学ぶ、あるいはそこに籍を置く者が、このような人間にあらざるような行動をとっていいのかということが、世間の非常な批判の的になったわけでございますが、どうも現実の社会というものは、いろいろ福祉の面においても、あるいは便利さの点においても、あるいはものの豊かさの面においても、かなり前進はしておりますけれども、実は、そういう面においては前よりも、戦前よりも悪くなってきておるんじゃなかろうかとさえ考えられるようなことになってきております。これはひとり子供であるとか、青少年であるとか、学生であるとかいうことだけじゃなくって、その子供の母親であり、父親であり、おとなであるもののモラルも低下をしてきておる、こう考えて見なきゃならぬ。大学紛争は、私、取り組んでみまして、大学紛争は大学だけの問題じゃない、やはり大学を包んでおる社会全体にも一つ原因がある。あるいはこの二十五年間の日本のデモクラシーというものがまだまだ十分に定着をしていないんだと、こういう感じを私は持ったわけでございます。したがいまして、そういう意味合いにおきましては、国民が全体としてそのモラルが向上する、あるいは生命あるもの、そういうものに対する尊厳といいますか、あるいはとうとさというようなものがだんだんわからなくなってきてしまっておる、そういうようなこともあるわけでございます。私どもといたしましては、学校教育と並びまして、学校教育をうまくやる上においても、社会教育というものをもう少し充実していかなければ、結局いけないんだ、世の中はよくなっていかないんだと、あるいは政治をよくしていくということでも、おとなの社会、そういうものがうまくならなかったならば政治もうまくいかない。その意味において、社会教育の重要性というものは非常に大きくなったと思いますし、また、そういういろいろな現象が出ております根源は、一番はやはり家庭から出発すべきだ。学校教育も大切だし、社会教育も大切だ、しかし、家庭が崩壊をするというようなことのないように、まず、父親、母親、特に、若くして結婚をし、子供を生み、育てる、大部分の方々はりっぱな方でございましょうけれども、中には、やはり核家族みたいな形で、親あるいは年寄りというものがどういうような生き方を今日までやってきたんだというようなことに対する十分の理解というもののないために、そういうようなことになるんではなかろうかと思います。私どもとしては、いろいろ婦人家庭教育振興につきましても、たとえば家庭教育学級補助金、あるいは家庭教育テレビ番組、家庭教育録音器材複製配布等の、四億二千万円程度のお金を四十六年度も用意をしておりますけれども、こういうようなことではまだ十分ではないんではないか。しかし、国民全体の父親、母親がまずモラルを大事にしていくということがなければ、なかなかこういうような痛ましい現象というものはなくならないんではないかというふうに考えておる次第でございます。
  95. 山高しげり

    ○山高しげり君 いま文部大臣のおことばの中にも、私が指摘したような悲劇が何か特に母親において行なわれるように聞きとれましたけれど、もちろん、両親、父親も含めてというふうに、あとではおっしゃったわけでございますが、確かに母親に多いことは、私も女性の一人としていつもつらい気持ちで新聞の記事なども読むわけでございますけれども、たとえば動物園のサル山でも、コンクリートの動物舎でございますと、サルもノイローゼになるそうでございます。それで、そういう状態から動物を守るのにも緑の木を持ち込まなければならないとかいったような専門家のお話を聞きますと、人間もサルよりもっとノイローゼを起こしやすい私は動物かと思うわけでございまして、その問題が起こってまいります基盤については、大臣のおっしゃったことに賛成じゃないわけではございませんけれども、私が大臣に、この問題から入りまして、伺いたいことは、社会教育もさることながら家庭教育云々とおっしゃいましたけれど、全国の家庭の中で、まあ家庭の日というものやらを各都道府県が設けて、守っておるといいましょうか、守らせておるのが現実かと思いますけれど、守りたくても守られない、守ることができない家庭が激増しつつあるということは私が申し上げるまでもないと思います。日に日に出かせぎ問題がやかましくなってまいりますけれど、てて親が出かせぎ、さらに母親がそれに加わっていくというような現状では、家庭教育学級には孫のおもりをしているおばあちゃんが出てきますという実例を私どもはたくさん知っております。そういう意味で、豊かでもないけれども、それらの予算も云々とおっしゃったんでございますが、私が文部大臣にお聞きをしたいと思いますことは、その家庭教育につながってまいります社会教育の場におきまして、たとえば地方の公民館とか、これは末端は市町村の教育委員会の御所管かと思いますけれど、いまだにこの各種のたとえば婦人団体のごときものが存在いたしておりまするけれど、地域婦人会は社会教育団体だからよろしい、農協婦人部とか、漁協婦人部とか、未亡人会とかいうのは、それは社会教育団体ではないからというような差別的な扱いがいまだにたくさん残っておりますということにつきまして、大臣はそれをお認めになるか、お認めになるとすれば、今後どういうふうに対処をしていただきますか。三月三日に社会教育局長が各種婦人団体をお招きになって御懇談をなさった席でも、最も活発に出た意見の一つがそれのように漏れ聞いておりますので、お返事をいただきたいと思います。
  96. 坂田道太

    ○国務大臣(坂田道太君) 最近、社会情勢の非常な変化によりまして、どんどん出かせぎ等が出てきておる、そのために子供がおっぽり出されておるということはやはり考えなければならない問題でございまして、やはり家庭に帰る方策というものを政治の面において考えていかなきゃいけないというふうに私は思います。  それから、いまの地域婦人団体と社会教育との関係でございますが、おっしゃるような事実があるようでございます。私もいなか育ちでございますからわかりますが、何かこう社会教育は社会教育、そうすると、厚生省所管の福祉事業の関係はそれはまたそれということで、受け取っております市町村の対象になる婦人やあるいは一般の人たちは非常に二重も三重ものお呼び出しがあったりなんかしておる、何かこれを市町村で一体に考えたらいいのじゃないか、大きい意味においては社会教育という形でこれをとらえて、それは場合によっては文部省の関係もございましょう、あるいは厚生省の関係もございましょう、未亡人関係の団体もございましょう、あるいは農林省関係の農協の関係もございましょう、そういうものをもう少しほんとうに各省のひもつきというような形じゃなくって、その地域におる人たちはもうちゃんとはっきりしておるわけなんで、何か全体として総合的にそれをやれるという道はないのか。私どもも出先の者どもに対しましては、そういうようなことをやらなきゃいけない。私どもが聞いてみますと、いや、私どもが社会教育という形でとらえますと、言うならば、社会教育といいますか、文部省で社会教育団体を支配するというか、コントロールする、そういうおそれがございますので、向こうさまのおっしゃる、あるいは自主的にひとつというようなお申し出があるならばわれわれは考えますなんというようなことを申すわけでございますけれども、それはちょっと私は、そういうことじゃいかぬよ、もう少しお互い地域住民、同じ地域社会におるのであるから、よく話し合いをして、そこのところを調整する役目こそまた社会教育の仕事じゃないか、あるいは教育委員会の仕事じゃないかというふうに申しております。まあ日本全国を見ますと、先生の御指摘のところがあることを私は承知いたしておりますが、しかし、そういうところをもう少し地域社会に即した行政指導をやらなきゃならぬというふうに考えておる次第でございます。
  97. 山高しげり

    ○山高しげり君 婦人の側から重なり合ってのお呼び出し云々というおことばがございましたけれど、それもさることながら、農協婦人部、漁協婦人部、未亡人会等がいま深刻に持ち合わせている問題は、交通災害、あるいは産業災害等によりまして若年の母子家庭がふえてきているということでございます。戦争未亡人の子供はすでに全部成人をいたしましたので、いま当面の問題の若年母子家庭なるものは、そういったような原因で発生をしてきているものでございまして、この人たちに子供をしっかり育てるように、また暮らしとしっかり取り組んでもらいたいという考え方から、そういう人たちの勉強をする機会をつくりたいということをいま申し上げたような団体でよく申しておりますけれど、公民館へ行ってみても、婦人会は社会教育団体だ、あなた方はときには援護団体であるとか、いろいろな名称をおっしゃるので、お勉強をする場が与えられないと、実は、国家公安委員長の荒木さんが前に文部大臣でいらっしゃったときにも、私は数年前に同じ質問をいたしました。そうして、そのときの文部大臣として、荒木さんは、社会教育というものは地域住民のためにあるものだから、団体等で差別はしてはならぬと思うということをおっしゃったので、私どももそのお考えは正しいと思いました。ところが、末端へまいりますと、なかなかそうまいりませんで、公民館の当局とか社会教育主事とか、そういう方々の御見解がややとらわれているというか、狭いというか、しゃくし定木というようなことがございますようで、先般の各種婦人団体懇談会でも、その問題について当局は、まあなるたけ社会教育関係者の全国集会等でこのことを徹底させましょうというようなお話があったそうでございますが、そういうおりを待ちますまでもなく、ひとつこの際、文部大臣のほうから何かこれに関係した通牒等をお出しいただくことによりまして、できるだけ迅速に当局の御方針が末端に浸透できますようにお計らいがいただけないものかどうか、この点をお伺いいたします。
  98. 坂田道太

    ○国務大臣(坂田道太君) その点は、私、十分考えてみたいと思います。検討いたしたいと思います。  それから、ことしの予算ではかなり公民館の予算を、十億程度まで実は取ることができたわけでございますが、その気持ちは従来の公民館といいますと、あまりにも小さくて世の中の変化に対応し切れない、したがいまして、そういう各種の団体等を一緒にということができなかったわけでございます。そういうようなことにも対応できるような意味で中型、大型の公民館をひとつつくろう、それが今日の時代の要請ではなかろうかという気持ちで、そのような施策も進めておるわけでございます。
  99. 山高しげり

    ○山高しげり君 ぜひひとつよろしくお願いいたします。  厚生大臣が何かお急ぎのようでございますので、午前の質問を打ち切る最後に、もう一点、厚生大臣にお伺いいたします。  ただいまのような問題につきまして、いわゆる若年母子家庭の問題につきまして、四十六年度の予算案の決定をされる経過におきまして削られた予算に、厚生省の児童家庭局の予算に、母子家庭自立促進費、金額にいたしまして三千五百九万円、全くささたる予算かと思いますけれど、これがもしも予算に削られずに通っておりますれば、全国の母子福祉センターというようなところで、そのお金でいわゆる母子福祉センターがかけ込み寺的な機能が発揮できたのではないかと考えられる点もございます。かけ込み寺といいますと、それは婦人の一時保護ではないかと専門家はお片づけになるでしょうけれど、安心して飛び込んでいかれるところが一カ所でもあるということは、今日やはり非常に追い詰められております若いおかあさんたちの何か明るい一つのよりどころになるのではなかったか、ああいう予算がたいへん簡単に削られたように思いますけれど、そうも簡単ではなかったのでございましょうか、もう削られた予算に対して何か申すことは、女はだから恨みがましいなどとおっしゃるかもしれませんけれど、一言ちょっとお願いいたします。
  100. 内田常雄

    ○国務大臣(内田常雄君) 厚生省の予算というものは社会福祉を対象にいたします場合に、きめこまかい配慮が必要だと、また私ども自身も口癖のようにきめこまかい施策をいたしますというようなことを申し述べるわけでございますが、さような線に沿いまして、母子家庭の自立促進費というようなもの、お説のとおり、三千数百万の概算要求に持ち込んだわけでございます。しかし、これは何をやるかといいますと、当時の考え方では、いまもお話がございました比較的若い母子家庭のおかあさん、御主人がなくなられたおかあさんに、いわば職業指導といいますか、訓練といいますか、ことに厚生省内部で、ホーム・ヘルパーのような方々のボランティアがなかなかむずかしくなっておりますので、人手が。そういうホーム・ヘルパーにでもなっていただくための講習会等をやりたいと、こういうようなことで持ち込んだものでございます。ところが、母子家庭等に対する対策につきましては、もう山高さんよく御承知のように、また、かく申す私なども、あなたと一緒に母子家庭の福祉資金とか、あるいは寡婦家庭の福祉資金貸し付け金とか、そういうものを増額する運動でございますとか、あるいは母子相談員の運動でございますとか、あるいはまた、ことに御主人がなくなられました場合の母子福祉年金、あるいは母子年金、あるいは、場合によりましては児童扶養手当、生別をされた若いおかあさんなんかが子供をかかえる場合に、一般の国民年金が出ませんのですから、児童扶養手当というようなものを出すわけでありますが、これらの増額というものも、たくさん大蔵省に持ち込んでおったわけでございますけれども、とどのつまりは、やはり母子福祉資金の貸し付け、寡婦福祉資金の貸し付けの増額とか、いま申しました年金の増額とかいうことでございますとか、あるいはまた児童館とか、保育所というようなものの施設の整備予算というようなもの等、いろいろ並べてみました際に、そのほうに重点を置いたほうがいいと、こういうことになりまして、三千五百万円は実はことしは割愛をいたしました。そのかわり、それの何十倍かの予算は獲得いたしたと、こういうことでございますが、母子家庭につきましては、私どもも厚生省といたしましては、あたたかい気持ちを持ってやりたいということで、それがだめでも、また来年は来年でいろいろのくふうを持ち出しまして、そして母子家庭の幸福なり、あるいはまた広くは社会の安定というようなことのためにつとめてまいりたいと思うものでございます。
  101. 古池信三

    委員長(古池信三君) よろしいですか。
  102. 山高しげり

    ○山高しげり君 きめこまかいというのは、ああいう小さな予算が案外通ることじゃないかしらんと思いますけれども、大蔵大臣にはまたあとで申し上げることにいたしまして、実は若年母子家庭がかかえております遺児、ことに交通遺児の問題等につきまして、何かお調べが厚生省にあるだろうと思いまして、調べていただきましたら、何と四十四年四月一日のが一番新しいのでございまして、それが「交通遺児に対する手当等の支給状況」というもので、しかも内容はたいへんお粗末と申しちゃ失礼でございますけれども。それで、希望をこの際申し上げておきますのは、地方でもずいぶんいろいろな子供に対する手当がふえてきております。国もいよいよことしから児童手当に歩み出していらっしゃるわけでございますけれども、それとまた別に、地方自治体は自治体として、いろいろやっていらっしゃいますので、そういうものを総合的に見渡したいなあと私ども思うものでございますから、できましたらそういう調査をしていただきたいように思うわけでございます。  交通遺児関係は午後に譲りたいと思いまして、午前の質問はこれで一応打ち切ります。ありがとうございました。
  103. 古池信三

    委員長(古池信三君) 内田厚生大臣、いいですね。  山高君の質疑の途中でありますが、午前はこの程度とし、午後一時十分に再開いたします。暫時休憩いたします。   午後、零時十三分休憩      —————・—————    午後一時二十一分開会
  104. 古池信三

    委員長(古池信三君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、山高君の質疑を行ないます。山高君。
  105. 山高しげり

    ○山高しげり君 総理府総務長官にお伺いをしたいと思います。  四十六年度の予算で交通遺児の調査をなさるように存じ上げておりますが、最近、大阪府の社会福祉事業協会の調査・交通遺児世帯調査——二百四十三世帯でございますが、それによりますと、保護者の年齢が平均三十九歳、そしてその中で母親が八九・八%を占めております。子供の数が五百二人でございまして、そのうち十八歳未満が四百十二人、それ以上が九十人。生計中心者が父親から母親に移ったという者が二百十一人で、八六・八%を占めております。そうして補償問題未解決が百六十一名で六五・六%と、こういう現状でございます。これは単に大阪だけの調査ではございますけれども、大体の傾向がくみ取れるように思いますので、総理府が第二回としておやりになる今度の調査に対する長官の御抱負をひとつ伺いたい。
  106. 山中貞則

    ○国務大臣(山中貞則君) 昭和四十二年にとりあえず小中学校生についての概略調査みたいなものをいたしたわけであります。その結果、交通遺児育英会というものが誕生いたしたわけでありますが、ことしの予算要求の際には、実は調査するところまで考えていませんでした。率直に申し上げて予算編成の最中ごろでございますか、交通遺児育英会の募金の実態等があまりかんばしくない、目標額完遂に遠い実態で、婦人の方々がだいぶ一緒に来られまして、ただいま言われましたたような実態について、いま少しつまびらかにしなければ、対策の立てようがないではないかというお話がございました。私ももっともだと思いましたので、あとから追っかけての要求でございましたけれども、大蔵大臣の御了解を賜わりまして、調査費をつけることができました。そこでいま、国家公安委員会、それから運輸省、厚生省、労働省、こういう関係省と私の手元で相談をいたしながら、どのような調査をすべきかということをいま相談をいたしておりますが、いまのところでは、まず調査の対象範囲を広げよう、それは保育園から幼稚園、そして小中学校はもちろんのこと、高等学校まで、ぜひ第一段階としては交通遺児の名簿を作成して実態を完全に掌握をしたい。まず数というものを掌握したい。それからさらに、追跡調査というものを行なわないとどうしてもいけない。交通事故で遺児になってしまった子供たちをただ調べた数だけでは、そこからは政策の展開のしょうがないといえば実はないわけなんです。そこでやはり追跡調査というものがどうしても必要になる。そういうことも考えまして、その問題は少し濃密に追っていく必要がありますので、大体七府県ぐらいを考えております。これから相談をしてきめることでありますし、予算もまだ成立いたしておりませんので、確定的なことは申し上げられませんが、典型的な大都市としての東京、大阪、それから大都市であって、しかも通過車両が非常に多くて連年の交通事故のトップを占めている愛知、それから大都市周辺の交通事故現象のドーナツ化ということがよく言われますが、そういうことから考えて群馬県というものを対象にしてみたらどうだろう。さらに、このような調査でございますので、交通遺児だけでなくて、やはり職場災害というものの遺児も、だいぶ数字から見て遺児になっているものが多いと思いますので、そういう労働省関係の不慮の災害等も考えなけばなりませんし、さらにまた海上遭難による水難遺児というものがおるわけであります。これは全漁連−全国漁業協同組合連合会において自発的に婦人部が中心になって、そういう救済のための募金あるいは計画を立てておりますが、何ぶんにもはかばかしくいっていない。しかし毎年確実に海難遺児は出てくる、こういうこともありますので、そこで北海道と高知県とを追加してみたらどうだろうか。さらにまあ地域的に福岡というようなことで、大体それらのところを濃密に、一般の不慮災害による死というものも、海難等も含めて、案態を掌握することが政治としてはこの機会に必要ではなかろうかと考えるわけであります。  さらに第三点は、いわゆる実態調査の追跡でありますが、これは一般家庭というものの御協力を願って、学校の御協力も必要でありますから文部省もお願いをしておるわけでありますけれども、父親を失ったものが大部分でありますが、要するに遺児になった君たちがその後どんな学校の生活環境と申しますか、実際の家庭生活あるいは学校におけるその子供の変わり方、あるいは勉強の成績なんかにも出てくるでありましょう。そういうようなこともありますし、場合によっては父親がなくなったために母親が働いて助けていきますから、その家計を営む者が変わったということも調査しなければなりません。しかし、それを数だけで見ますと、前のいつ起こった事故であって、そしてそのために母親は子供を養うためによその県に出ていって学校がすなわち変わっているという実態もあるかもしれませんので、現在交通遺児である点に変わりはなくとも、いまの学校で交通遺児になったのか、あるいは交通遺児になったときはいなかのほうだったけれども、おかあさんが自分たちを養うために都会に出て働いて、自分たちを都会の学校に通わしているのかどうか、そういうもの等も調べる必要があろうと思います。さらに育英会の今後のあり方と関連をいたしまして、進学に関する希望、あるいは保護者から見た進学の実態、あるいはさらに福祉施設等も当然——最近は両親ともに失うという事故がございますので、そういうところまで調査をしたいと考えるわけでございますが、若干予算の金額が私の考えていましたよりも少ない金額でございますので、できるだけ有効に利用をして、この調査結果によって、交通遺児を中心とする親を失った不幸な子供たちが、かけがえのない一生をその事故によってめちゃくちゃにされないような政策を政府がとる必要があると考えて私の手元で調査をするつもりでございます。
  107. 山高しげり

    ○山高しげり君 ただいま承りまして、たった三百万円でよくもお調べになれるものだと感心をしようかと思いましたけれども、足りないそうでございまして、まずひとつよろしくお願いをしたいと思います。  次に運輸大臣に伺いたいと思います。運輸省でも、交通事故の問題について日弁連に五百万円か補助金をおつけになって調査をなさいますそうですが、その調査につきまして承りたいと思います。
  108. 橋本登美三郎

    ○国務大臣(橋本登美三郎君) 御質問の件でありますが、この調査費五百万円は、四十六年度の予算が通過いたしますと使えることになるわけでありますが、ただいまのお話のように、この調査は日本弁護士連合会がやるわけであります。四十六年度中に自動車事故の被害者の実態調査ということでやりますが、その内容は、まあ弁護士でありますからして、したがって損害賠償の解決に関連していろいろ問題があるわけでありましょう。そうして、補償関係及びその後の生活の実態調査も触れていきたい、こういう考えのようでございます。これは御承知のように、一つには、いろいろ制限といいますか、一応の規定がありますからして、最近の傷害というものと、その内容ですね、せんだっても、嗅覚がきかなくなったということで、重度ではないかと、こういうような被害者の訴えもありましたが、現在の規定では、それをなかなか重度として取り扱うことがむずかしいとか、いろいろな問題がございます。そういう点、弁護士の立場から、いわゆる賠償解決の条件といいますか、そういう問題にも触れていくことが主だろうと思います。しかしながら、同時に、いわゆる自賠法による限度五百万円ということで、その後の実態生活がどうなっているだろうか、及び、またもちろんこれは自賠法以外に任意保険を奨励しておるわけですが、それらを含めて、弁護士会としては将来への一つの提言を行ないたいという気持ちもあると思います。もちろん運輸省としてはたいへん適切な調査でありますから、この調査ができましたなれば、その調査に従って、十分にいい資料として検討していきたい、かように考えております。
  109. 山高しげり

    ○山高しげり君 まあ五百万円でこれだけの調査と、まあでき上がった結果をやはり期待をしたいと思うわけでございますが、ことに先ほど申し上げました大阪府の社会福祉協議会の調査の数字を見ましても、やはり賠償問題の未解決ということが一番多うございまして、私どもにも被害者である母子家庭のおかあさんたちからの訴えが一番強いのでございますから、二つの調査に関しまして、私どもも大いに期待をかけたいと思います。ありがとうございました。  次に大蔵大臣お願いいたします。先ほども大蔵大臣は所得税減税をやりたいのだとおっしゃいましたけれど、先ほど厚生大臣とのお話の中にも出てまいりました、たとえば、この寡婦福祉貸付金の予算のごとき、一応前年度より増額を見ている。そのことは私ども立場からも喜ばしいわけでございますが、このお金をお借りして、これはただいただくお金でございませんから、お借りをして、ちゃんと利子もおつけしてお返しをする、そういう性質のお金で、これを借り受けて活用をいたします寡婦は、すでに扶養親族を持っていない年齢の人たちでございまして、そこで、せっかく自分の老後の対策等にこのお金を生かして使う、そこで収入がございました場合に、その所得に対して、いわゆる寡婦控除ということの恩典がない人たちでございますので、毎回申し上げておそれ入りますけれども、その問題を大蔵大臣も、もうそろそろ何かお考えいただいてもよろしいのではないでしょうか。一言お答えいただきとうございます。老人対策がたいへん深刻でございまして、そうして老人対策費というものがだんだんかさんでおりますけれども、私思いますのに、お金は使いようではないか。さっきの、きめこまかい云々につながるわけでございますけれども、こういうふうに寡婦に貸し付けて、寡婦自身がそれを活用して、自力において自分の老後に備える、こういうお金が出ますことは、私は生きた使い方のように思いますので、その場合に、寡婦控除がこの人たちにございましたら、なおこれはあたたかいことになるのではなかろうか。将来別な老人対策費でお使いくださるよりも、よほどよいのではないかと思いますので、一言お願いいたします。
  110. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 山高先生から、あるいは寡婦の問題について、あるいは母子家庭の問題につきまして、あるいは老人の問題について、いろいろ御教示にあずかります。  それで、政府といたしましてもこれらの諸問題にはかなり努力をいたしておる。先ほども厚生大臣から、きめこまかなといいますが、たとえば母子福祉対策といたしましても二百十億円の金が四十六年度ではつぎ込まれる。こういうことで、かなり手厚い対策となっておるというふうに私は見ておるわけですが、ただ、これを税の面からどうかということになりますと、税は公平原則というものがありまして、なかなか税でこの寡婦問題にお手伝いをするというのがむずかしいのです。ただ、いま山高さんも御承知のように、扶養家族を持った寡婦、これについては特別の対策をとられておるわけです。それは、扶養家族がある、まあ係累があるわけですがね、その人のためには寡婦控除という制度を認める。これは扶養すべき係累がある、これはそういう事実を特別に考えなければならぬというところに立脚しておるわけなんでありますが、係累のいない寡婦ということになりますと、あるいは男やもめとの関係もありますし、あるいは結婚しないで子供のない御婦人の方、そういう人との権衡の問題、そういうものもありまして、ちょっとむずかしい問題じゃないか、そういうふうに考えておるのであります。  先ほども申し上げましたが、私は、所得税というものは大幅に軽減するということを、ある時期においては実現をしたい、将来の問題ですが。そういうふうに考えておりますが、そういう際でもないと、なかなかこの問題は、今日この段階では取り上げにくいのじゃあるまいか。そういうふうに考えておりますが、しかし、税というばかりじゃありませんから、一般の歳出面なんかでますます努力をして、お気の毒な寡婦の方々の立場の改善ということはやってみたい、かように考えております。
  111. 山高しげり

    ○山高しげり君 もう、前回と一向前進をしていないようで遺憾でございますけれども、私どもも寡婦の実態につきましては、できるだけ大蔵大臣に御理解をいただくようにつとめたいと思いますので、やはりこれは老人問題の一環をなしているという意味で、ひとつ今後とも御研究を願いたいと思います。  続きまして大蔵大臣に、もう一つお尋ねございますが、それはたばこの問題でございます。たばこの有害表示の問題につきましては、すでに去年WHOの勧告もございましたことで、また、本年に入りましても、国際対ガン連合からも有害表示の勧告が加盟各国に送られて、日本も当然加盟しているという現況におきまして、専売事業、審議会の三月三日の御答申では、この有害表示を当分見送るというような結果になったと聞いておりますが、そのとおりでございますか。
  112. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) この問題は、お話しのように昨年WHOのほうから厚生省に対しまして警告が行なわれたわけです。そこで、専売事業審議会に対しましてこの警告を受けまして、どういうふうにしたらいいかということを御諮問申し上げたところ、専売事業審議会では、癌研の吉田所長ですね、など五人の方を特別委員にお願いをいたしまして研究をしていただいたんです。特別委員の審議会に対しまする御報告は、医学上肺ガンだとか、そういう病気とたばことの因果関係、これはどうも断定することができない。しかし、たばこが何らか健康に関しまして問題があるという考え方は、国民の間に広く高まりつつある。そこで審議会から委嘱を受けました特別委員といたしましては、たばこの害毒の問題につきましては、国民にかなりの心配する向きもあると同時に、これが国民の間に広く定着した喫煙風習というふうになっておる。この両面を踏んまえて対処せられたいという、きわめて抽象的な答申が審議会に対してなされたわけです。それを受けまして審議会のほうでは、まあいろんな答申が行なわれておりますが、この有害問題につきましては、とにかくニコチン、タールの含有量を、これを銘柄ごとに表示するというような方向で警告を与えるというような措置をとったらいかがであろうかという答申を、私に対しまして行なっておるわけであります。その答申を受けまして、専売公社当局に対してどういう指示をしますか、まだ結論を得ておりませんけれども、そういうふうに審議会のほうでは言っておりますので、まあその辺かなあとも考えておるんでありますが、まだ最終的な結論は出しておらない、これが実情でございます。
  113. 山高しげり

    ○山高しげり君 ニコチン、タールの含有量というものは、いまでも一部分店頭とか自動販売機のところで表示していらっしゃるんではないんでございますか。
  114. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 店頭でまあ掲示はしておるんです。おるんでありますが、これはなかなか目につかないようなかっこうでありまして、まあ具体的な警告方法というふうに理解できますかどうか、その辺は問題があろうかと思うのです。で、今度はそのケースにそういうことを書き込むというふうにしたらどうかというようなことを言われておるわけなんでありますが、それらの御意見等もよく参酌し、国会等における御議論、これなんかもよく踏んまえまして適当な指示を与えたいと、かように考えております。
  115. 山高しげり

    ○山高しげり君 先ほどの特別委員の御答申の内容でございますけれども、まあそのガンなどとの因果関係が病理学的にまだはっきりしてない点があると、それならチクロもやっぱり、チクロの場合も動物実験だけであったようかと思うのでありますが、これは、もう厚生大臣おいでになりませんけれども、有害認定というものは厚生省がなされるものなんでございましょうかね。とにかく国民としては、チクロの場合はたいへんに禁止が早かった。そのかわりあとからゆり返しがございまして、緩和がございましたからまあ同じようなものかもしれませんけれども、たばこの有害性ということは、相当みんな考えております。それでなぜお踏み切りにならないだろうかと——国がです。まあたばこは国営でいらっしゃるから、国で売っていらっしゃるから、自分のところで売っているものを毒があると張り札をするのはまずいと、そういうことでございますか。
  116. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 特別委員のお考え、先ほど申し上げましたが、これは国民の間に有害であるかどうかという関心が高まりつつある。同時に医学上は有害性が断定はできないけれども、しかし精神医学の面からいうと、その危険表示をするというのもいかがであろうか、こういう御意見もつけ加えられているわけであります。まあ喫煙の風習が非常に広い、広く行なわれている。そこへこれは有害ですよと、こういうような表示をするショックというか、そういうものも考えなければならぬじゃないかということもつけ加えられておるわけなんです。そういうようなことを考えますと、なかなかこれ扱いのむずかしい問題なんでありますが、とにかくアメリカが一番これは徹底というか、している。去年の秋ごろまではメイ・ビー・ハザダスという表示をしたのですが、昨年の秋は、デインジャラス、こういうほんとうの危険信号を出したわけなんですね。その他四、五の国でしょうが、これはまあわりあいに小さい国でありますが、同様またそれに近い表示をしているのです。昨今イギリスがそういう方向にふん切りをつけたというわけでありまして、まあそういう表示をしている国はごくまだ少数ではございまするけれども、まあわが国といたしまして、とにかく国民の健康ということは大事にしなければならぬ、そういうようなこと、それからアメリカがなぜそういうふうな危険表示にふん切ったかというと、わが国と違いまして、未成年者喫煙禁止法というものはアメリカにはないのです。そこがわが国とは非常に違うわけでありまして、とにかく何らかの警告表示という程度のことはしなければならないかと、同時に未成年者喫煙禁止法というようなものもありまするので、それの徹底方、これも考えなければならぬかなと、かように考えている次第でございます。
  117. 山高しげり

    ○山高しげり君 一応御説明はわかりましたけれども、あえてもう一回申し上げますけれども国民感情はとにかく何かやはりアメリカのような民営でないという点が、日本でこのことが進みにくい理由のように考えているものが多い。それからWHOにいたしましても、国際対ガン連合にいたしましても、相当権威のある機関でございます。それらからたまたま有害表示の勧告をすでに受けている日本が、あえてそれに従わないということは、結局何か日本の国が利益を、利益優先、そして国民の健康はあと回しというような印象を受けやすいように思いますけれども、まあいま国民の健康は大事だからと大蔵大臣もおっしゃいましたけれども、そういう印象があるということ、その点もう一ぺんお伺いいたします。
  118. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) アメリカあたりと違いますのは、未成年者に対しまして喫煙禁止法というものがあるということが、まあ根本的にあると思うのです。わが国ではやはりそういう法令が順守されるようにつとめるという必要はあろうかと思います。これが国営でというか、公社で国の専売収入源となっているからというような考え方はすべきじゃないと思います。いやしくもこれは有害であるということが断定できるということになりますれば、これはそういうことには顧慮いたさないで処置をとらなければならぬというふうに考えますが、とにかくわが国の最高権威者五名に参集をお願いしまして御意見も承ったところでは、どうも因果関係が断定できない、一方においてその警戒表示をすることは心理学的にいかがなものであろうかと、こういうようなことを言われておりますので、徹底した有害表示というのも、なかなかむずかしいのじゃないかと思いますが、とにかく御意見のようなお考えの方も多いわけでございますから、それらも総合いたしまして妥当な措置をとりたいと、かように考えておるわけであります。
  119. 山高しげり

    ○山高しげり君 どうぞ国民のあらゆる方面の声を正しく御総合を願いたいとお願いをしておきます。  最後に、通産大臣にお願いをしたいことがございます。  それは、いま公害も幅が広いのでございますが、いわゆるプラスチック公害と申しますか、その問題でございますが、プラスチックの生産量は世界第二位と、GNPと同じくらいのようでございますが、そのプラスチックのごみを捨てる量は世界第一位と、たいへん不名誉な第一位のようで、もう一つ老婆の自殺というのも世界第一位ということで、これも私どもは不名誉な一つの統計のように思っておりますが、そのことにつきまして、二月の十九日に、衆議院の物特のほうで、砂田委員の御質問に対しまして、通産大臣が消費者団体についていささか御発言でございますが、そのことについて伺いたいわけでございます。録を読み上げる時間ございませんが、たいへん、消費者団体に聞いてみたけれど、こうであった、ああであったと、速記録に残っております大臣の御発言は——消費者もずいぶん幅も広いのでございますが、どこのどんな消費者団体とあんなお話をなさったんでございましょうか。そういう聞き方は失礼かと思いますから一般論でけっこうでございますが、何かお答えいただきます。
  120. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、本年二月十九日、物価問題の特別委員会等の連合審査会におきまして、砂田重民委員にこういうことを私が申し上げております。「その問題は以前からしばしば議論になっておりまして、私も、かつて消費者の団体の方々に、そういう一見むだだと思われる包装のあるものとないものと二つ並べて、そして幾らかでも安ければ包装のない、つまり必要な部分だけを買っていかれるというようなことにならぬものでしょうかということをお聞きしたことがございますけれども、経験的にはそれはむ、ずかしいそうでありまして、消費者というものは、やはり包装というものを買っていく部分があるんだそうでございます。」云々でございます。こう申し上げましたことから、ただいまのような御疑念が出たといたしますと、これは私の申し上げ方が当時十分でなかったというふうに考えます。実は私、前後四年ほど経済企画庁の長官をいたしまして、消費者の団体の方々とは数十回お目にかかり、かなり親しくさせていただいておりました。そういう際に、いろいろ御要望なり、御要求なりがあって団体の方々もお見えになりまして、正式のお話が済みますと、雑談というような形で、よくこの包装、過剰包装というような問題をお互いにお話をいたしました。私がいま読み上げましたようなことを申し上げますと、まあ奥さま方、これは団体の代表という資格ではむろんございませんで、雑談の部分でございますが、実は自分たちもそういうことに非常に苦労をしているんですが、なかなか末端まで指導が届かなくてというようなことをよくおっしゃっていらっしゃいました。そういう事柄を実は御紹介したいと思って、こういうことを申し上げましたのですが、第一に、これは団体を代表してのお話ということではございませんし、また、そういうことを肯定するというお立場ではなく、むしろそういうことをやめて合理的な買い物をさせたいと、そういうコンテクストにおいての実はお話であったわけでございます。したがいまして、あたかも団体の代表であるような理解をこの速記録が与えるといたしますと、これは私の申し上げ方が適当でございませんでしたと思います。
  121. 古池信三

    委員長(古池信三君) 時間が参りました。
  122. 山高しげり

    ○山高しげり君 関連で、いまのちょっと……。
  123. 古池信三

    委員長(古池信三君) それじゃ簡単に一つだけ。
  124. 山高しげり

    ○山高しげり君 適当でなかったとお認めになりましたのでございますから、それでよろしいのでございますが、すでに過大包装と消費者団体が取り組んでおりますことも御承知をいただきたいわけでございまして、たとえば、発泡スチロールのようなああいうものが非常にたくさん用いられまして、従来の上げ底以上に大きな弊害をもたらしていることに対して、婦人団体等がそういうものをやめてくれということも百貨店協会とか、各方面に要望をいたしておりますし、とにかく、ごみを減らすということにつきまして、ごみになるものを家庭へ持ち込みたくないと、その意味でデパートの包み紙の返上運動さえすでに起こっておるということもどうぞ大臣はお含みくださいまして、宮澤大臣にしてこんな不用意な御発言と実は速記録は読んだわけで、失礼でございますけれども、今後どうぞよろしくお願いをいたします。  ありがとうございました。
  125. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもって山高君の質疑は終了いたしました。
  126. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、吉田忠三郎君の質疑を行ないます。吉田君。
  127. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 外務大臣に一点だけ伺います。  最近、アメリカでは、中国の旅行について制限を一切やめますと、こういう記事が載っていますね。それと、中国政策におきまして、二つの中国ではなくして、一つの中国を示唆するような国務省の発表が出ております。これを見ますると、従来のアメリカの中国政策は、非常に微妙でありまするけれども、変わっているように思うのでありますが、この点をどうわが国の政府、特に外務省は見ているのか、この一点だけ伺っておきます。
  128. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) まず、お尋ねの第一点のアメリカの対中国の旅行の制限緩和の問題でございますが、これは、アメリカのとった措置というものは、お尋ねのように、中国向けの希望のある場合には米国国民に対して旅券の発給をすると、その制限を解いたというふうに報ぜられております。そのとおりであると思います。まあこれはお尋ねになりました以外のことでございますけれども、アメリカとしては、従来中国に対する旅行についてもいろいろ配慮しておったようでございますが、現在まで実績として、正式に旅券を発給してかっこれが有効に利用されて中国に渡りました実績はわずかに三人といわれておるわけでございまして、これはわが国の実績が年間三千人に近いというようなこととはちょっと比較にならないような状況であると、こういうことが言えるかと思います。  それからもう一つの、アメリカの中国政策が変わったように思われるがどうであるかというお尋ねでございますが、これは一番最近のところで公の形で出ておりますのは大統領の外交教書、そして、特に中国に関するくだりであると思います。これは中華人民共和国が建設的な気持ちで国際社会に入ってきてくれるようになることを希望するという趣旨であり、そして、そういうことであるならば接触をしたいという希望的な意見が表示されております。それから国連に関する問題としては、まあ一口に言えば、現加盟国である国民政府の追い出しというような犠牲においてこれをすることについては反対であるという趣旨がきわめて注意深く書かれてあるわけでございます。また、いわゆる一つの中国問題というものは当事者間で話し合いできめるべきものであるというような趣旨もあらわれておるようでございます。それらを注意深く読んでみまして、私といたしましては、そんなに大きな中国政策に対する変革が行なわれた、あるいは行なわれつつあるというふうに見えませんけれども、いま申しましたように、このニクソン外交教書の中国のくだりはかなり注意深く書かれているなという感じを率直に言って受けるわけでございます。こういうふうな感じを持っておりますことを率直に申し上げる次第でございます。
  129. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 もう一つ伺っておきますがね、いままで佐藤内閣——特に今国会でも佐藤総理大臣がこの問題について答えているのでありますが、台湾との関係を非常に重視をしていますね。まあこれは台湾だけではなくして、国際的な外交面から見ますると、アジアの関係もあるでありましょう、いろいろこう複雑な問題があるわけであますが、私は、大臣も御承知のように、最近特に中国の問題が七〇年代における国際的な一つの課題だとも、こういわれています。その認識は私、正しいと思うんですが、そういう立場で考えてみますると、もはや、ただ単に台湾政府との平和条約があるからといって、これをいままでのような何かそれは一つの中国みたいに言ってみたり、あるいは現実に両政府があるから二つの中国であるというような意味の言いのがれ方だけでは済まされないんじゃないか。この際は積極的に外交の場を整えて、その準備のためにもお互いに言いたいところを言い尽くして中国問題を取り扱っていくということにならなければならないんじゃないか、こう思いますがね、この点はどうですか。
  130. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) まことにごもっともなお尋ねであると存じます。政府といたしましても、したがって、いろいろの角度からいままで申し上げておるわけでございますけれども、中国、大陸との間には政府間の接触をもうぜひ持ちたいと、ただそれは相互の立場を尊重して、そして双方が内政干渉というようなことでなくということで話し合いに入りたいものであるということで、大使級会談その他の提唱をいたしておるわけでございますが、いまのところ、まだこれが実らないということは残念でございますけれども、いまもお触れになりましたように、政府間の接触、対話ができるようになりましたら、その中において、いろいろの問題について双方腹蔵なく意見を開陳し合っていくということに、多年にわたる不幸な、正常ならざりし状態というものが解決できるような必ず話し合いができていくのであろうと、これをまあ期待しているわけでございます。一方、国民政府との間におきましては、るる申し上げておりますから特につけ加えることはございませんが、長年にわたって、ことに日本が降伏文書に署名をいたしまして以来の関係、環境から、この政府を中華民国を代表する機関として平和条約を結んで、その限りにおいて、平和条約に関する限りは、日本と中華民国、国と国との間の関係においては法的に戦争状態が終結したものであると、こういう見解をとっておることは御承知のとおり。同時に、この条約あるいはこの考え方に対して、中華人民共和国政府がそれを認めていないと申しますか、これに全く反対の見解を堅持しておるということもまた日本政府といたしましてはよく承知いたしておりますということ、またいつも申し上げているとおりでございまして、こういう何と申しましょうか、これはかなり私としては率直に申し上げているところでございますが、そういう立場に立って、いま申し上げましたような日中間の話し合いというものが政府ベースにおいても行なわれるようになることをこれ望んでおると、この環境を御了察いただきたいもんだと思うわけでございます。
  131. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣ね、いままで大臣が申されてきたことは従来一貫して答えてきたことですよ。ですけれども、いま大臣も申されたように、この台湾との平和条約の中における交換公文、御承知ですね、あの中の領域の規定についても、当時、私は、その内閣総理大臣でありました吉田さんはたいへんあそこで苦心をしたんじゃないかと思うんですよ。私は、そこの部面はかなり評価していいと思うんですよ。しかし、それはそれとしてですよ、どんなにあなた方が台湾との平和条約を結んでおりまして戦争状態が終結をしたとしても、言い張っても、隣の七億余にわたる大国、人口を擁した、大国ですよ、中国は。それと現状のままでいいとは、私はさすが外務大臣も申せないと思うんです。そこのところをやはり私ども政治家としてはとらえなくちゃならぬと思うんですよ。私は一挙にやれなどという性急なことを言っているんじゃないんです。そのことをとらえて、佐藤内閣としても中国問題は七〇年代の課題であるということを言っているんですから、その課題は何かということを思い知っていかなければならぬわけでしょう。ですから私は、やはり何といたしましても外交の場というものを整える、そのための準備をする、その準備をいまからやらなくちゃならぬじゃないか。なぜこういうことを申し上げますかというと、アメリカが従来ああいう中国政策をとっておりましたけれど、ジュネーブにちゃんと、中国との、その関係の、非公式であるけれどもルートを持っている。わが国はないでしょう。そういう中からアメリカの中国政策はどんどんどんどん変わっていっている。このままになってまいりますと、私は、日本は中国問題についてはバスに乗りおくれるんじゃないかと、こういう危惧の念を持つからあえて聞くんですよ。
  132. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) ただいまも申しましたように、私は、その吉田委員のお考えやお尋ね、まことにごもっともだと思います。お気持ちは私も私なりによくわかるわけでございまして、そういうことも、いろいろな要素を十分腹に入れて、そして、政府として申し上げておりますような見解、これ詳しく繰り返して申し上げませんけれども、それをせんじ詰めて政府の公式の見解ということにいたしておることを御理解いただきたいと思うわけでございます。  それからなお、これはまあ私特に申し上げるまでもないことだと思いますけれども先ほども申しましたようにですね、たとえば旅行制限ということをアメリカが撤廃というか、緩和いたしますと、日本でやらぬことをやっているではないか、これは中国問題を皆さんが非常に大きな問題として御懸念になっておりますから、そういうふうにとらえられるのも、これもごもっともだと思いますけれども、実は、日本はさすがに隣国でありますだけに、中国向けの旅行者にしても年間にほぼ三千人ぐらい毎年毎年これもふえておりますが、そういう状況に比べますと、まあアメリカも、あるいはその他の国も、未承認の国々の間でも、いろいろのくふうはこらしているようでありますが、少なくとも今日までの状況において、日本は決してそれらの国におくれをとっていたわけではない。いや、むしろ貿易にしても、あるいは新聞記者等の交換などにいたしましても、例をいろいろあげられると思いますが、ずいぶんこういう不正常な状態の中ではかなりなこの交流を行なっているということは、これは事実の問題としてお互いに認識していく必要もあろうかと考える次第でございます。
  133. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 まあこの問題は、大百ね、時間私ありませんから、たくさんありますが、これは前に進めるためにこれで終わります。  郵政大臣にちょっと伺います。最近有線テレビの法律案が今回会に出されるということから、各個の、世論形成にたいへん貢献いたしております報道関係が一斉にこの問題を取り上げまして、非常に疑問が多い、朝日などは社説でも反対である、こういうことを言われているんでありますが、大体私ども調べてみますと、問題点は三つあるように考えるんですが、この三つの問題点をどう考えていますか。
  134. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 有線テレビの法案は衆議院のほうへ提出という段取りに相なっておりますが、これは一昨年来だいぶ紆余曲折があるわけでございまして、その間世論の動向にも十分意を用いまして、従来は事業ごとに免許という考え方でございましたが、これを施設だけについて免許をする、そしてその事業は届け出にまかせるということにいたしたわけでございまして、まあ今度お目にかける法案は、そういう意味においてはたいへん時代に即応したものに相なっておると、こう心得ます。  そこで、吉田さんのいま御指摘の三つの点とおっしゃるのをちょっとお示しをいただいて……。
  135. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 一つはね、いまあなた答えて、私時間ありませんから立ったままで、あなたはぼくの質問に対してよく聞いていなかったから立ってください。ここでちゃんと言うから、立ってください、いいですか、立ってください。ぼくは立ったら時間がなくなるんですから、あんたは聞き漏らしたんだから。一つはね、この各論調の内容をずっと見てまいりますと、問題点の一つは、第十八条ですよ。業務の停止を命令する、その権限を郵政大臣に与えている。このことは、時の権力者が、あらためて中立であるとか、電波——波は中立であるとか、あるいは政治的に公正を口にするけれども、自分の都合の悪いときは一方的な判断でこの放送業務が停止をされたり、される危険性は否定できないではないか、これが一点ですよ。  第二点は、施設の立ち入り検査、このことについても、これは二十条の関係でございますが、ただ単に施設を検査するということだけでは、チェックするということだけでは非常に御念が入り過ぎているではないか。それは何かというと、いままでの電波行政についての不信感が存在をしているからだと思いますけれども、いままでの行政があまりにも直接、間接的に強権的な作用を生んできていることに起因しておる、こう論評されているんですよ。  それから三番目は、先般も同僚の鈴木委員が指摘したように、NHKの自由投資をすることが言論の統制の心配があるではないか、これですね。なぜこういうふうに論評されておるかというと、これは記名入りで朝日は書いておりますが、小笠原さんという新聞記者さんですな、そこで書いていますが、それはとりわけNHKはこのごろ国営放送色を顕著にしているという批判も強いからである、こうなっているんですね。この三つの点でございます。
  136. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) お答えいたします。  この八条は、さっき私が申し上げました、^うに、施設の免許でございますから、これは技術基準というようなものを常にその水準を維持していかなければならぬ。こういうことに出ておるわけでございまして、業務に対してチェックをするというふうなことは考えておらぬのであります。  それから二十条で立ち入り検査というふうな問題にお触れになったんですが、これはそれだけ慎重を期して、たとえばそういう場合、身元を証明する文書を携行しなければならないとかいったような規定を設けまして、これは特にいまおっしゃるようなことがあっては相なりませんから、慎重を期したんだというふうに御了承をいただけばしあわせであります。  第三点のNHKでございますが、これはNHKも参加の道を開いておるということでございまして、これが義務を課しておるというのではないのであります。現に東京その他のケーブルビジョンというふうなものができておりますが、これには電電公社であるとかNHKであるとか、やはり公共的な立場に立つものがこれらの機関に参加をしていく道を開いたほうが、よりオーソライズされますし、地域のためにもなる、こういう趣旨に出ておるわけであります。
  137. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 いま郵政大臣はそれぞれ答弁されましたが、私はその答弁についてどうこう反論する気はありませんがね。ありませんが、新聞論調で指摘をされておる心配が実はやっぱりあると思うんです。そのあるという実証をここへいまあげたいと思うんですが、これは先般同僚の鈴木力君がここで取り上げましたFM放送のときにもそういう問題がある。そういう幾つかのいままでに問題がありまするから、私は新聞論調はこういうふうに指摘をして反対だと言っているんじゃないかと思うのですが、時間がありませんから進みますけれども、特にこの問題は一つ一つ詳しく申し上げておりますと、時間が私はありませんから、項目的に簡単に申し上げますから、率直に答えもそのように答えてもらいたいと思います。  一つは、このFM放送についての調整役を足立正さんにお願いをしたと前から言っております。その経緯と理由を申し上げてもらいたいと思うのです。なぜかというと、他の名古屋であるとか大阪等には、すべて都道府県知事に依頼をしておるのです。東京だけが前商工会議所か何かの会頭さんですね、この足立さんがなっている。この経緯を言ってもらいたい。
  138. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) これは前回も答弁を申し上げたわけでありますが、割り当てられました周波数というものが何としても限定をされておるわけでございます。その周波数一つに対して複数の申請がなされます場合、それを優劣比較を行ないまして、最もすぐれたものに免許を与えるということがたてまえであるのでございます。しかしながら、なかなかこの申請は数が多うございまして、東京の場合は六十幾つというふうなものが出てまいっておる、こういうことでございますから、どうしてもこれを調整をして、なるべく多数の方々がこれに参加をする、これがまあ地域のためにも相なるという観点から、どこでも調整というやり方をいたしておるわけであります。その際、府県知事等をお願いした例もございます。それからまた、そうでない場合も私は調べてみたらあるんでありますが、東京の場合は足立正さんにお願いをしたというゆえんのものは、日本商工会議所の会頭であるということはもとより、郵政審議会の会長を、ずっとやっていらっしゃいまして、こういうことにも造詣が深いというふうなことからお願いをしたと、こういう経緯でございます。
  139. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 許認可事項でありますから、免許する場合に免許するための方針があるはずです。そのための要綱があるはずです。ございますか。
  140. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) これは電波法に基づき、さらにこれを受けての省令というふうなものにそういう基準があるわけであります。
  141. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 時間ありませんから、私はこの免許方針の要領を資料として要求します。
  142. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 承知しました。
  143. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 それから大阪、名古屋、福岡等々の場合は、たくさんの申請者を一本化する場合に話し合いをさせていますね。あるいは、申請者同士で話をさせておりますが、東京の場合、やりましたか。
  144. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) これも先般鈴木さんにお答えいたしましたが、そういう意味で足立さんにお願いをいたしまして、そのお手を借りて申請者の皆さんをお集めをいただいて、時間もだいぶかかっておりますが、数次の会合をやってだんだんに煮詰まってきたと、こういう経過をたどっております。
  145. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 何回やりましたか、それ。
  146. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) たしか五回というふうに記憶しております。
  147. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 関連。この一本化ですね、足立さんにお願いして一本化をした時期というのは、一体何年何月何日ですか。それと、もう一つは、三十一社の申請が出ました。そこで、それを一本化するということで足立さんに頼んだ、そうして、それと同時に、その一本化した時期がいつですかわかりませんが、取り下げ願いを郵政省の職員が持って歩いているわけですね。ここに郵政省の取り下げ願いというのがありますが、これは郵政省で歩いて、一体取り下げ願いというのは何通もらったのか、何月何日から始まって、何月何日に最後に取り下げ願いを受け取ったのか。それと、一本化の時期との関係はどうなっているのか。
  148. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) これは事務的な問題にもわたりますので、政府委員から答弁させます。
  149. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  一本化の時期と申しますのは、結局、申請書が改訂されまして郵政省に届けられたという時点かと存じますけれども、そういうことでございますると、昭和四十四年の十二月の十七日というわけでございます。  それから取り下げ願いの件でございますが、これは一挙にやったわけではございませんで、こちらから足立さんの依頼を受けまして、取り下げ願いをいただきに伺ったことはございます。しかし、最終的には郵政省が受理ということになりますと、先ほどの一本化といいますか、最終的に申請が出てきた、たしか前の日だったかと存じあげております。
  150. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 何通。
  151. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 三十通でございます。
  152. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 はっきりしてもらいたいのですが、一体いつから始めて、いつまでに終わったか。始めた日と終わった日ですね。それを先ほど質問しているのですが、一向にお答えいただけないのですが、その日をはっきり言ってください。
  153. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  取り下げをいただいたのは四十三年の十二月ごろからでございますけれども先ほども申し上げましたように、役所としてこれを正式に受理をいたしましたのは四十四年の十二月十七日ということになっております。
  154. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私はそんなことは聞いていないんですよ。いつから始めたんだと言っておるわけです。あなたのほうでは受理した書類というのは持っているはずでしょう。だから、何月何日にどこから取り下げ願い、届けが出たかということはわかるはずじゃないですか。わからなければ、これを見せてあげますよ。
  155. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。一番初めは四十四年の三月二十六日でございまして、それから三月二十七日の日付もございますし、それから四十四年の十二月十日といった日付もございますが、いずれにしましても、最終的に役所が受理した日は四十四年十二月十七日と、そういうことになっているわけでございます。
  156. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これを見ますと、二十七社は三月二十六日から七日の二日にかけて出ているわけですね。それから株式会社FM新東京放送は、これは林屋亀次郎さんの発起人代表の名前になっておりますが、これは日付が出ておりませんね。出ておらないですね。これはなぜこういうのをそのまま受理したのか。役所としては私はこういう日付のないのはあまり受理しないのが普通だと思うのですが、これは日付がなくてなぜ受理したのですか。  それからその次は、十二月の十日が二つございますね、こういうのは役所として日付のないのを受理するということはどういうことなんですか。この点がよくわからない。それからもう一つ先ほどお話で訂正届けが出されたというわけですがね。これはどこの会社から訂正届けが出されたのか、その点をはっきりしていただきたいと思うのですが、おそらくFM東京というものは免許の申請をしていなかったのではないか。それを他の取り下げ届けを出さなかった社の名義を使って実際には訂正届けを出した、こういうふうに私は思うのですが、その点の真偽はどうですか。
  157. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  取り下げ届けに日にちが入ってないというのは事実でございまして、これは私どもの手落ちでございます。ただ、そのときに、十二月十七日に受理したということは、私どもとして正式に受理しておるというわけでございます。  それから、この最後の訂正は、いわゆる中央FM音楽放送の訂正届けということで私どもはそれを受理いたしまして、それを審査——ただその訂正届けの内容は、たびたびこの席でもお話し申しましたように、三十一社が一本化されて出てきたというかっこうでございますので、発起人の代表あるいはこの社名自体もFM東京というかっこうに訂正されて出てきたと、そういうことになっておるわけでございます。
  158. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 委員長、もう一つ……。
  159. 古池信三

    委員長(古池信三君) 関連ですから、もう……。
  160. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いま三十一社が一本になってということなんですが、この三十一社の申請者の代表がお互いに集まって話をして、完全に了解の上でこれは一本になったものですか。その辺はどうなんですか。
  161. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますように、三十一社の申請がございまして、そのうちの三十社が取り下げ願いを出され、そして残りの一社、すなわち中央FM音楽放送というものが主体となりまして、それを訂正されて訂正届けが出てきたというかつこうでございますから、私どもとしましては、三十一社が一本化されて新しい申請が出てきたと、申請届けが出てきたと、そういうふうに理解したわけでございます。
  162. 鈴木強

    鈴木強君 関連。  この問題は非常に私は重要な問題であるし、根も深いと思います。それで、いま吉田委員がおっしゃったように、こういうことが出てきたのは、電波行政に対する国民の不信が根強くあるからだと私は思います。  私もかなり逓信委員会等におきましても、電波に対する免許のしかたについては、十数年間、いまのやり方が間違いだと、直すようにと迫ってまいりました。特に三十九年にあの例の放送関係法制調査会から答申が出て、免許については大臣権限からはずして、そして第三者によってこの免許権というものを行使するようにしなさいという法律改正に対する答申が出ている。それだって今日まで改正をサボってきているじゃないですか。そうして、FM放送というものが日本に初めて実現される段階になって、東京、大阪、二つのこのエリアに免許を与えることになったんだが、いま言ったような競願になった。競願になったんだが、その競願の整理のしかたについても私は問題があると思う。これはFMだけじゃなくて、UHFの複数設置の場合にもそうです。あなた方はその調整役を、たとえばある自民党の代議士に頼んでやらせてみた。そうするとその代議士はくにに帰って、まさに郵政大臣が自分に免許の行使権を与えるかのごとき宣伝をして、地方新聞に堂々とこれが出ている。それを見たときに、一体十社、二十社と出している人たちはどういう考え方を持つか。そして、権力によってものをおさめようとするような傾向すらあったじゃないですか。  だから、根本的な免許のあり方に対する姿勢を直さないところに、いつまでたってもこういった国民に疑惑を持たれ、不信を抱かれるようなことが出てくると私は思うのです。東京の場合だって、まあ足立さんに調停役を買っていただいた。足立さんは郵政の審議会の委員長をしておられた。これは郵政大臣の立場からすれば、そういうことも一つの考えであったかもしれないが、問題は三十社なり三十一社が、全部が理解と納得のいくような形においての調整ができるならば、これは私は一つ方法だと思います。しかしそのやり方については、現にこの内容を見ると、Aという申請人の中の代表が今度できた、免許された会社のまた発起人になっておる。実にふかしぎなんですね。ですから、その辺の競合に対して、あなたのところではこういう株式の取得については何%持ってくれというような一つのものをまとめて、それをあなた方は足立さんに託してやってもらったんでしょう。一体それはだれがつくったんですか。FM東京の場合ですね。どういう比率をつくられたか。そのつくったのは一体だれなのかですね。そうしてそれによって結果的には、株の取得についてはどういう比率になったのですか。そこのところを私は伺いたいのです。
  163. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 多数競願の場合に、これをどういう方法で優劣を判断したらいいか。この問題は私も、まあ既往のことでありますが、ずっとトレースしてみまして、なかなかむずかしい問題だという感じはいたしております。それだけに、まあ従来たいへん苦心はしてきたものだと思うのです。  そこで、この基準というふうなものを明確にすべきだという鈴木さんの御主張でありますが、電波法、放送法の改正は昭和四十一年ですか、三十九国会と覚えておりますが、そのときに、残念ながら審議未了のまま今日まで至っております。これに対しては先般も当委員会で出ましたとおり、電波法、放送法の改正をする意図ありやと、こういう御質問もございました。したがいまして、まあそういう準備はいま始めておるんでありますが、できれば来国会あたりにひとつ日の目を見せたいと、こういう気持ちで進んでおりまするので、まあそういうときに、御意見のことは十分に参考に供したいと、こう考えております。  そこで当面、まあ行政指導ということになるんですが、これはなかなかむずかしい問題でございまして、もっと親切にめんどう見ろという御要請もある。同時に、どうも介入し過ぎて、過ぎたるは及ばざるがごとしと、こういう御批判も出てくる。そういう次第で、今回の場合は、たとえばこれだけの多数の競願の中から、マスコミに関係のある人々が二重にこういった言論報道の機関を独占するというふうなことは、これは考えものであろうから、これはひとつこの際は御遠慮を願うほうがよかろう、こういう方向はひとつ出したようであります。  それから株の割り当て等については、これはもう足立さんを中心にお取りまとめをいただいておるわけでありますが、そのときにも、あまりに片寄った株式の保有をするとどうしてもそこにアンバランスがあるから、そういう点はひとつ意を用いていただきたいと、こういう考え方は役所のほうからも表明しておるようでございます。
  164. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣ね、その一本化のための調整作業、五回ほど会合があった、こう言っていますがね。その会合の名前は何という名前ですか。それから五回開かれました、何月何日、議題は何であるかということを明らかにしてください。
  165. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) これはまあ、この前資料をもって当時の鈴木さんの御質問にもお答えをしておりますが、最初に開かれましたのが昭和四十四年の三月の十二日、それから最終がその秋でございますから、十二月の九日、それまでに五回会合が開かれております。
  166. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 第二回は。
  167. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 第二回は六月の三十日、第三回が十一月の十二日、四回が十二月三日と、こういうことでございまして……。
  168. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 議題は何ですか、議題。
  169. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 議題は、第一回の際は趣意書をつくり、株式の配分等を議題にいたしておるようであります。それから第二回は発起人の問題が対象になっております。第三回は免許の推進というようなことが議題でございます。それから四回は発起人の代表をだれにするか。さらに促進を一そうはかろうとするための決議書がそこで決議されております。それから第五回は一番具体的になってまいりまして、株式あるいは発起人、その中から発起人六名を選ぶ等々の問題であります。
  170. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 この中で、一本化の調整役を依頼した足立さんが何回出ていますか。——すぐわかるじゃないか、郵政省の役人は何しているか。
  171. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  足立先生は六月三十日……。
  172. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 あと出ていないだろう。
  173. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 失礼しました。
  174. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 一回しか出ていないのだよ、一回しか。
  175. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) 第一回の三月の十二日と、それから第二回の六月三十日、それから四十四年の十二月三日、それから十二月の九日、こういうことでございます。
  176. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 いかに郵政省の役人はでたらめな報告をしているかということです。足立さんは一回目に出たきり、病気で休んで委任状になっているのです。出ていないのです。いいですか、大臣。それからこれは会議の名前は何という名前ですか。
  177. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) まあ、有志会という名前が使われておるようでございますが、その点は五回とも全部そういう形ではなかろうと思うのですけれども、詳しいことは政府委員から申し上げます。
  178. 藤木栄

    政府委員(藤木栄君) お答え申し上げます。  正式の名前としては、東京地区FM放送設立有志会ということでございます。
  179. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣ね、有志会ですね、一本化のために足立さんに依頼したのなら、足立さん一回目しか出ていないのですが、一回目から株の割り当てを一あなたのいまの報告では、答えでは、株の割り当てを議論したということは、これはたくさんの数ある賛成者を一本化するためのものじゃないのじゃないですか。これはどうなんですか。
  180. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 足立さんの出席については、あるいは事務当局と少し食い違いがあるようでありますが、それにしましても、足立さん出席不能の場合には、ほかのしかるべき方を依頼をして議事の運営をお願いして、ずっと取りはからってこられた、こういうふうに聞いております。  それから株の割り当ての問題でございますが、これは最終的には、一本化ができました際に決定するという性質のものでございましょうが、これが途中において話題になるということは、これはまあ、あるいはあってもしかるべきことだろうと思うのです。そうして、それは先ほど私が申し上げましたように、あまり片寄り過ぎて独占のようなことに相なってもいかぬというふうなことは、役所のほうの感触としても打ち出してあるはずでございますから、そういうことは、あるいはその会合の過程に、最終段階を待たなくても話題になったということはあり得るでございましょう。
  181. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 話題になったことはあり得るということですけれども、これは一本化になっていないのですよ。一本化のための第一回の会合ですね、すでに株の問題が話題になるという問題じゃないですよ。そんなものじゃない。現に、この問題については郵政省が株の割り当てに介入しているということなんです、すでにもう。ですから、一本化じゃないですよ。郵政省の意図する株式会社を新たにつくろうという意図があったからなんです。現に、ここにありますよ、証拠。これはどうなんですか、これは。三月十八日に株の割り当て、これは郵政省がやっておるじゃないですか。おかしいじゃないか。一本化の前にやっているじゃないか。しかも、郵政大臣、この株式会社FM東京の事業目論見趣意書、この中に明らかに郵政省が調整したと書いてありますよ。ここに書いてある、郵政省が。あなたの答弁では、この間、郵政省は関知していませんと、こう言っているでしょう。私は、こういう場所ですから、あえて何のたれ兵衛という名前を言いませんよ。どうなんですか。これははっきりしてください。これは否定できますか。——もしあなた方、これを否定したら、不実文書になりますよ。
  182. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 私としては、その事実は存知いたしませんけれども
  183. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 公文書の前提で出ているじゃないか。
  184. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) その趣意書を、足立さんの御趣意に基づいて郵政省がお手伝いをした、こういう事実はあろうかと思います。
  185. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 お手伝いにしては手が込んでいますよ。では、大臣ね、時間がなくて困るのですがね、あなた行政法を見てごらんなさい、行政法。これは行政法です。見てください、時間がかかりますから。とてもそこでやっていられません、行政法を見てください。行政法には役人の裁量の規定がありますよ。その点を越えているじゃないですか。越えた場合にはどういう罪になるかと、ここにちゃんと書いてありますよ。見てください。
  186. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) ここで吉田さんと法律論をいたそうというつもりもありませんが、いまお示しになりました行政法による裁量権の問題でございますね。これは、私さっき申し上げておるように、行政指導という、その限界が一体どこでとどまれば適正であるかどうか、この辺はなかなか判断のむ、ずかしいところでございまして、まあ私は、先ほど来申し上げておるように、これ、お手伝いという限界だろうと、吉田さんはしからずと、こうおっしゃる。どうもそういう点になりますと、なかなかここでどういう黒白をつけるか、たいへんむずかしい問題のように存じます。
  187. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 関連。  郵政大臣ね、おかしいと思いませんか。第一回の会合が四十四年の三月の十二日にホテル・オークラで開かれてるわけですよね。この費用は郵政省が出しておるのですね、この費用は。そして一本化したのは、先ほど局長答弁では十二月十七日、取り下げ願いが出た最終日は十二月十日です、日付は。ところが、三月の十八日にすでに株式の割り当てが、こういう形でいってるわけですね。おかしいんじゃないですか。少なくとも株式の割り当てがやられるということになれば、発起人の会合が開かれて、そこで株式の割り当てをやることになってるわけでしょう。それを、有志会の第一回の会合が終わったとたん、一週間たつかたたないのに、もうこういう株式の割り当てがいっているという、こういう形でいいんですか。商法の規定に合いますか。四百九十条に合いますか。
  188. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) まあ、株式の問題につきましては、私先ほど申し上げましたように、およその、独占になっては相ならぬというふうなことは行政官庁として示してしかるべきだと、こう考えます。そこで、それを受けて、足立さんを中心とする会合のほうで、まあおよそこんな見当というふうなものをお示しをしたものではなかろうかと、これが決定的なものではなくして、まあ一つの試案のようなものを示されたというのではなかろうかと、こう思うんでございます。その証拠には、最終的にきめられた株式の割り当ては、その当初のものとは相当に違ってきておる。変動しておる。そのことに徴しましても明らかではなかろうかと、こう心得ております。
  189. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 委員長
  190. 古池信三

    委員長(古池信三君) 関連、なるべく短くお願いします。
  191. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いまのお話ですとね、そういう株式の割り当てについて、郵政省が裁量でやったと、こういうふうに理解していいんですか。
  192. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) そうおとりになっては困るんでございます。郵政省は、先ほど来申しているように、あまりにもアンバランスでないようにと、こういう示唆は申し上げてあろうかと思うのですが、それを受けてとって個々の数字をはじき出すということは、いまの足立さんを中心とする委員会のお仕事であったと、こう御理解を願えばしあわせであります。
  193. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 おかしいね、それは。そういうようなやり方というものを、郵政省はいつもやってるわけですか。こういうようなやり方を、郵政省はいつもやってるわけですか。商法の四百九十条に違反しませんか、それで。しかもですよ、一本化の話がついたのは、とにかく最終の処理が出ているところの十二月十七日でしょう。一本化ができるかできないかわからぬじゃないですか。中には、一本化をするのはいやだといって、郵政省の職員が持って回った取り下け届けを、判を押さないのもいるわけですよ。そうでしょう、具体的に訂正届けの書類を見せていただきたい。これは改ざんしていませんか。それを見せてください。
  194. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 改ざんをするというふうなことはございません。そうして、これはたしか前回の資料要求に基づいて、写しは差し上げてある。概要だけはそのときに資料要求に基づいて差し上げておるはずでございます。
  195. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 どうも、関連質問を含めまして、肝心なところへいきますと、もやもやとした答弁になっていますね。私は、大臣、時間がありませんから、同僚の鈴木君が要求したときに、あなた先ほど答えられた、五回会議をやっているのです。そのときの会議の会議録を出しなさいと言ったが出さなかった。衆議院では、これは届いていますということですよ、届いていますということで。ところが、こっちへ来ますと、ない……。なければ、あげましょう、これをよく見てください。これを見てください。当時の会議録。それからこれは衆議院で答えた全部の内容です。法務委員会、逓信委員会、それから衆議院の予算委員会、全部郵政省の役人の答えは食い違っている。食い違っているから、われわれ食い違いをほどくためにも、ここで質問しているのです。これもあなたに差し上げますから、見てください。しかも、ここまであなた方は答えを隠すなら、はっきりしましよう。当時、浅野という事務次官が参加しているじゃありませんか。当時、石川という電波監理局長が参加しているじゃありませんか。当時、河野業務課長というものが参加している。これで一体、郵政省として、この問題については全く関知しませんと言い切ることができますか。その証拠を出せますか、証拠。
  196. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 郵政省が関知していないというふうな答弁が議事録にあるという御指摘でございますが、まあ、あるいは決算委員会あるいは逓信委員等々において幾度かこの問題に触れてお答えをいたしたと思います。その間、あるいは不用意な表現があったろうかと思いますが、最終的に、結論的には、この委員会が一番最近の委員会でございまして、そこで、いうならば統一的にお答えをしておる点が郵政省の考え方であると、こういうふうに御了解をちょうだいいたしたいと思います。それからこの……。
  197. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そこには、政界、財界、官界の名前が出るから読み上げないが、あなたが会議録というものを出さないから、ぼくは持っているから、あなたにあげたんですよ。
  198. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) これは有志会の会議録でございますから、役所側がこれに介入をするというようなことはないわけでありまして、これは役所の保存書類というものにはこれと同一のものはないと、これはあくまで民間ベースの議事録であると、こういうふうに私は理解をいたしておるわけでございます。
  199. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 こんなことで私質問続けるわけにはまいりません。委員長にこの扱い方を一任しますが、その内容のテープがこれですよ。大臣、いいですか、これはこのテープですよ、この議事録のテープ。これは第三回の株の割り当てをやったときのテープですよ。かけますか。これはつまり、郵政省の役人と、裏面で、某なる者だ、ぼくはあえて名前を言いませんが、某なる者との会談のテープですよ。あなたそこまで言い張るならば、まだあるんです。あえて私は言わぬ。これは、政府の役人に関係するテープがある、ここに、政府の。これは取り下げ届けの関係の郵政省の役人のテープです、これは。いいですか、これは財界における、これはあなたのところの当時の次官が入ったテープなんです。これでもあなた言い張りますか、これでも。この扱い方あなた……。委員長、わかってください、私、質問続けるわけにまいりません。
  200. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) その前にちょっとお答えをいたします。
  201. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 ぼくは大体名誉に関することだから名前を言わぬだけですよ。もっとまじめな答弁をしなさい。まじめな答弁
  202. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) いろいろ資料をお示しなわけでありますが、その間を通じて郵政省の役人が参加をしておるのではないか、こういう御指摘なんでありますが、さっきも申し上げましたように、行政の介入する限界というものがなかなかむずかしいんでありまして、足立さんその他におまかせをいたしましたものを解き合っては、こういう事項はどうやるというお問い合わせも、これはあるわけであります。したがいまして、そういうところに列席をした、オブザーバーという形で列席をした、こういうことは、まああり得ることだと私も思っておるわけであります。
  203. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 オブザーバーになぜ金を払う、経費はどこから出るの。
  204. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) そうして、いまの最初の会合の経費を郵政省の費用で払ったということにお触れになったのでございますが、これはとにもかくにも足立さんをお願いをいたした、そういう最初のことでもございますから、これをセットいたしました以上、まあ一種の社会的な常識みたいなものでお払いをしたのではなかろうかと、こう思うわけであります。もう一言つけ加えさしていただくならば、これは先般本委員会の総括質問並びにその最終の段階で、お尋ねにお答えをして、総理みずからも筋を通して行政はやらなければならぬと、こういうことを明確にお答えになりました。私も郵政の行政にタッチしてみまして、いま数々御指摘のようなこと、決して明朗であるとは思いません。そういう次第でございますから、これはやっぱりこういう機会を契機にいたしまして、電波に対する行政のあり方というものを、十分にえりを正してやっていかなければならぬ問題であろうと、かように心得まして、今後はこのお示しの諸点を十分なる教訓として電波行政の運営をやってまいりたいと、こう考える次第でございます。
  205. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 官房長官、この質疑応答を聞いておって、きょう総理おりませんが、先般総理は、いま郵政大臣が言ったような行政にえりを正す、こう言っておったのですが、それだけのものを出されて、私だってこれは名誉に関することですから、名前は言ってませんけれども、そこにテープあるんです、記録されて。こういう段階で、いまの質疑応答を聞いて官房長官どう思いますか。
  206. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 私は衆議院のほうでも、また、こちらのほうの当委員会で先般来この問題で質疑応答が繰り返されておりますけれども、私はほんとうにまだ自分でああそうかという理解、納得が、この問題はややこしい問題のようですからわからぬのでおりますけれども、問題は、どうもFM東京という電波、非常に大事な電波、国民のためのこれは電波でございますから、したがって、それが国民のために利用される上において、いろいろなまたやりたいという方が殺到される。と、まあ利用はしなければならぬ、しかし、数多く出されてきて、当局者としても非常に困られる。しかし、できるだけ納得のいく形で、免許でございますか、認可でございますか、処分がされることが必要であろう。そういうことで、どなたから見ましても、足立さんのような方がお世話をしてくださるならばというようなことで、足立さんにお願いをされて、そしてこういう結論をつけられたわけだろう。これはいろいろたくさんの方が、おれもやってみたい、おれもやってみたいということでございましょうから、なかなかそれじゃ腹からこれでいいと皆さん満足されるような形にはなかなかならないんじゃないか。あるいは非常に御不満の方もあるだろうし、あるいは、まあしかたがないという方もあろうかと、もう少し私も郵政大臣からでもよくお話を伺って聞かないと、これは何かこう伺えば、聞けばよくわかるようでございますから。
  207. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 テープの表題見てください。なぜ私はあえてここで名前を言わないか。
  208. 保利茂

    ○国務大臣(保利茂君) 先般来その点について、吉田委員が非常な配慮をされて、あえてこれを資料としてここへ出されても、なおかつ人名等を公表されない、その配慮に対しては、私は深く敬意を表しておりますけれども、事態はどうも、そういうことから、この問題はたいへんしろうとわかりのしないむずかしい問題だなというふうに私は感じておりますが、しかし、それだけに行政の者としての姿勢といいましょうか、かまえというものは、やはり先般来るるお話しのようなことで、ただいまも郵政大臣お話しのような、御意見の発表がありましたように、そういう姿勢を強く要請される問題である、私はそういうふうに考えます。
  209. 古池信三

    委員長(古池信三君) ちっと委員長として申し上げますが、ただいま吉田理事の御発言の問題につきましては、本日は時間もないことでありますから、追って理事会において十分に協議をして善処したいと思いますから、どうか御了承を願いたいと思います。
  210. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 理事会をやってください。
  211. 古池信三

    委員長(古池信三君) 追って理事会において協議をしたいと存じます。御了承いただきます。  それからもう一つ、竹田理事から先ほど要求のありました資料につきましては、これを提出をしていただきたいと思います。  それでは、このまま暫時休憩いたします。    午後三時十分休憩      —————・—————    午後三時三十八分開会   〔理事白井勇君委員長席に着く〕
  212. 白井勇

    ○理事(白井勇君) 予算委員会を再開いたします。  この際、井出郵政大臣から発言を求められております。これを許します。  井出郵政大臣。
  213. 井出一太郎

    ○国務大臣(井出一太郎君) 今回の問題につきましては、行政面において指導に行き過ぎの点もあったかと認められますので、今後は、国民の電波の利用については、十分に国民のためにえりを正して行政を行なってまいりたいと存じます。
  214. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 私の質問は、時間がございませんから、本日は、残余のたくさんまだ質問しなければならぬことがございますが、これでやめたいと思います。  この問題を同僚の鈴木君から引き継ぎまして、いろいろ調べてみますると、どうしてもやはり法的にも違法性があると思うんです。きょうは時間がありませんからやめますが、追って分科会、締めくくりの総括質問、あるいはその後は逓信委員会等がございますから、そういう点をこれから質疑をしてまいりたい、こう思っております。この法的に違法性があると言っているのは、民法、会社法、それから行政法、その手続上違法性があると、こう私どもは見ているわけであります。それに電波法等々の法律から照らしてみてきわめて違法性が濃厚である、こう見ていますから、こういう点を追って質問をいたすことを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。  最後に、先ほど来申し上げました資料については、次回のそうした分科会であるとか、あるいは締めくくりの総括質問であるとか、あるいは逓信委員会に間に合うように提出を要求いたしまして終わります。
  215. 白井勇

    ○理事(白井勇君) 資料はだいじょうぶですか。  ——吉田君の質疑は終了いたしました。  以上をもって一般質疑は全部終了いたしました。  明二十三日から二十六日午前中にわたって分科会の審査を行ないます。  次回の委員会は、公報をもってお知らせいたします。これをもって散会いたします。    午後三時四十一分散会