○国務大臣(佐藤一郎君)
先ほど申し上げましたように、佐藤内閣というような区切り方が適当かどうかわかりません、私にとっては。しかし、まあ、佐藤内閣をとってみますと、歴年でいうと少し上がっているんです。ところが年度でいうと下がっておるんです。この
物価指数というものはある時期に非常に季節的に上がったりする
関係もありまして、そういう異動があります。で、
先ほど申し上げた年度でとると、平均が四十四年までについて言えば、それ以前の五年間ぐらいよりも下がっていることも事実です。ただし、その後最近の
情勢は
御存じのように上がっておるわけでありますから、私
どもといたしまして、もちろんこの
消費者物価の
上昇の問題というものが最も重要な問題であるという認識に変わりはございません。そういう観点に立って申し上げますると、毎々申し上げておりますように、何といいましても
昭和三十年代の半ば近くから始まったところの
高度成長、この
高度成長というものがだんだんと定着いたしまして、そうして今度それに基づくところの膨大な
需要に追い着くところの
供給の不足、特にこれがいわゆる生産性の低い部門において消費の
需要あるいは消費の形態の変化に追いつくことが非常に
供給面において困難があった。それに伴うところの
物価の
上昇があった。このことがやはり何といいましても一方において
卸売り物価が安定しておるにかかわらず、一方において
消費者物価が上がったと、こういういわゆる
消費者物価と
卸売り物価の乖離という現象になったわけであります。このことをまた別の形で言いますると、
卸売り物価の対象品目は大体大
企業でございます。それから
消費者物価の対象品目はいわゆる低生産性部門と称せられる部門における生産品が大部分であります。こうしたことにおいて、いわゆる大
企業は生産性がどんどん上がってまいる、また
供給力が
需要に対応してまいる。それに対してその大
企業を
中心にして起こったところの
高度成長に伴う
需要に低生産性部門が
供給するところの消費財というものの
供給が追いつかなかった。そのことからして
卸売り物価の安定にかかわらず消費財の価格の
上昇がもたらされてまいった。これがやはり三十年代の後半において非常にわれわれが注目しなければならぬところであると思います。
そうして、また同時にこれだけの
成長をもたらした結果として、労働力の需給が非常に逼迫をし、したがって、また賃金の
上昇をもたらすことになった。そうして、この生産性が一方において
先ほど申し上げましたように、大
企業と生産性の低いところで違っておるのに賃金だけはその格差がございましたが、それの平準化連動が起こりました。まあ、おかげでと言っていいかどうかは知りませんが、
高度成長のよき一面であろうと思いますが、いわゆる格差があったところの部面において賃金の
上昇が見られた。サービス部門もそうでございますし、それから、その他の中小
企業部門もそうでございます。そういうことで、今度はさらに賃金の
上昇ということの結果がめぐりめぐって再びまたこの
物価の
上昇に拍車をかけると、こういう現象も出てまいっておる。
でありますから、何が
原因かと言われると、一言には言いにくい、非常に複雑なものでございますが、一方において高度な
需要があり、また一方において少しずつでありますけれ
ども、コストプッシュ的な傾向も出てきておる。こうした点がわれわれが見た先進諸外国の過程というものに酷似しつつあるように私は思います。