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1971-03-13 第65回国会 参議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月十三日(土曜日)    午前十時七分開会     —————————————    委員の異動  三月十二日     辞任         補欠選任      市川 房枝君     山高しげり君  三月十三日     辞任         補欠選任      中山 太郎君     小山邦太郎君      安田 隆明君     玉置 猛夫君      渋谷 邦彦君     鈴木 一弘君      春日 正一君     渡辺  武君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         古池 信三君     理 事                 岩動 道行君                 小林 国司君                 白井  勇君                 林田悠紀夫君                 森 八三一君                 山崎 五郎君                 竹田 四郎君                 三木 忠雄君     委 員                 江藤  智君                 金丸 冨夫君                 小山邦太郎君                 郡  祐一君                 斎藤  昇君                 塩見 俊二君                 杉原 荒太君                 高田 浩運君                 玉置 猛夫君                 中村喜四郎君                 堀本 宜実君                 三木與吉郎君                 山本 利壽君                 上田  哲君                 小柳  勇君                 鈴木  強君                 永岡 光治君                 西村 関一君                 阿部 憲一君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 萩原幽香子君                 渡辺  武君                 山高しげり君    国務大臣        外 務 大 臣  愛知 揆一君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        通商産業大臣   宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君        建 設 大 臣  根本龍太郎君        国 務 大 臣  佐藤 一郎君        国 務 大 臣  中曽根康弘君    政府委員        公正取引委員会        事務局長     谷村  裕君        首都圏整備委員        会事務局長    川島  博君        防衛庁参事官   鶴崎  敏君        防衛庁長官官房        長        宍戸 基男君        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁人事教育        局長       江藤 淳雄君        防衛庁衛生局長  鈴木 一男君        防衛庁経理局長  田代 一正君        防衛庁装備局長  蒲谷 友芳君        防衛施設庁長官  島田  豊君        防衛施設庁総務        部調停官     銅崎 富司君        防衛施設庁施設        部長       薄田  浩君        防衛施設庁労務        部長       安斉 正邦君        経済企画庁調整        局長       新田 庚一君        経済企画庁国民        生活局長     宮崎  仁君        経済企画庁総合        開発局長     岡部  保君        沖繩北方対策        庁総務部長    岡田 純夫君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省欧亜局長  有田 圭輔君        外務省条約局長  井川 克一君        外務省国際連合        局長       西堀 正弘君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        大塚 俊二君        大蔵省主計局長  鳩山威一郎君        大蔵省主税局長  細見  卓君        大蔵省理財局長  相澤 英之君        大蔵省理財局次        長        小口 芳彦君        大蔵省銀行局長  近藤 道生君        国税庁長官    吉國 二郎君        通商産業省企業        局参事官     増田  実君        通商産業省重工        業局長      赤澤 璋一君        通商産業省鉱山        石炭局長     本田 早苗君        中小企業庁長官  吉光  久君        運輸省港湾局長  栗栖 義明君        建設省計画局宅        地部長      朝日 邦夫君        建設省道路局長  高橋国一郎君        建設省住宅局長  多治見高雄君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十六年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十六年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十六年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 古池信三

    委員長(古池信三君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十六年度一般会計予算昭和四十六年度特別会計予算昭和四十六年度政府関係機関予算、  以上三案を一括議題といたします。     —————————————
  3. 古池信三

    委員長(古池信三君) この際、参考人出席要求につきましておはかりいたします。三案審査のため、本日、日本銀行総裁佐々木直君を参考人として出席を求め、意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 古池信三

    委員長(古池信三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 古池信三

    委員長(古池信三君) それではこれより一般質疑を行ないます。鈴木強君。
  6. 鈴木強

    鈴木強君 日銀総裁にお尋ねいたします。本日は御多忙のところありがとうございました。わが国経済現状を見ると景気停滞をしている、こういうふうに見られるわけですが、まあこの見方に対して一面ではたいした心配はないというような意見もありますし、それから不況が深刻化してきているという心配も出ておるわけでありますが、総裁としては、現在のこの景気動向をどういうふうにごらんになっておりますか、お伺いいたします。
  7. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 昨年の秋以来企業在庫投資並びに設備投資が漸次鎮静してまいりまして、その結果として生産出荷等経済関係の諸指標経済鎮静化を示してまいっております。ことに去年の十月、十一月の生産の伸び悩みが非常に目立っておるのでございますが、その後の推移を見ますと、生産調整中心といたします企業在庫投資調整、これはまだ進行中でございまして、底入れという段階にはまだまいっておらないようにうかがわれます。これがいつ終了いたしますか、いまのところ、具体的にはっきりした見通しを立てることは困難でございます。ただ、総需要のうちで、財政の支出に関する需要、それから輸出関係需要、それに個人の消費需要、この三つはいずれも相当強い状況が続いております。一方において金融の面では、ことしの初めから都市銀行に対する融資規制を撤廃いたしておりますので、その結果、都市銀行中心といたしまして金融機関貸し出しは相当急速にふえておる状況でございます。さらに今後金融市場におきましては、年度末の財政支払いがこの下旬に相当集中して行なわれる見通しもございますし、それをきっかけに金融市場資金需給は相当緩和を示すもものと思われます。こういう背景がございますので、やがて経済活動は全体に徐々に活気を取り戻してくるものと、そういうふうに考えておる次第でございます。
  8. 鈴木強

    鈴木強君 けさ通産省が発表した一月の鉱工業生産指数を見ますと、いま総裁のおっしゃったような主力産業景気動向というのは、全体として依然停滞をしておる。生産出荷在庫、いずれも指標悪化してきている。これは通産大臣、一月の生産指数を拝見したのですが、二月はまだ発表できないのでございますか。
  9. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 二月の暫定数をまだ集計いたしておりませんで、月末近くなるかと思っております。
  10. 鈴木強

    鈴木強君 総裁もたいして心配はないという御判断に立っておられるのだと思いますが、一面、中小企業の倒産あるいは下請代金支払い遅延、こういうふうなものも出ておりまして、現在の総裁がおっしゃったような、一月からの都市銀行貸し出し規制緩和という程度で持ちこたえていくものでございましょうか。その点何かさらに特別の金融上の措置というものをする必要があるんではないかと思うのですが、その点いかがでございますか。
  11. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまも御説明申し上げましたように、総体としての金融機関貸し出しは急速に増加しておりますので、その結果として、企業支払い条件悪化はもうほぼとまってきておるように思います。そういうような状態で、中小企業金融がこれ以上そういう支払い条件悪化から非常に苦しくなってくるということは、ほぼとまってきておるように思います。しかしながら、やはり親企業生産が伸び悩んでおりますと、下請に対する発注額が落ちるというようなこともございますので、そういう面につきまして、各企業ごとのいろいろいわゆるきめのこまかい金融上の配慮は必要であろうと思いまして、私どももいろいろな問題に関連いたしまして、そういう具体的な措置については注意をしてまいっておるつもりでございますが、この年度末につきましては、政府関係中小企業金融機関につきましては、貸し出しワク増加もはかられておりますし、そういう政府の御趣旨に沿いまして、民間金融機関でもそれに順応した金融態勢を整えておる状況でございます。
  12. 鈴木強

    鈴木強君 私がひとつ心配するのは、やはり中小企業資金の面で、三月の末から四月にかけての手形決済期の時期的な点も考慮すると、何か手を打ってあげなければ、持ちこたえることが非常にむずかしいのではないだろうかというふうに思いますが、その辺はいかがですか。
  13. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま申し上げましたように、政府関係中小企業金融機関ワクもこの年度末にふえる状態でございますし、それに対応した民間金融機関融資につきまして特別な配慮をいたすことになっております。それと、先ほどもちょっと御説明申し上げましたけれども年度末は最後の一週間くらいは財政支払いが非常にまとまって出ます。それから四月がまた季節的に金融のゆるむ時期でございますから、いまのここまでまいりました本日までの状況から考えますと、この年度末にさほど中小企業金融につきまして波乱が起こるという心配はまずないと信じておる次第でございます。
  14. 鈴木強

    鈴木強君 特別措置はどういうことをされますか。
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) つい数日前に財政投融資、これは非常に異例のことでありますが、年度末にあたりまして中小企業金融ワクを二百億円近く増額をした。これが特別の措置であります。いつもでありますと、年度末にあたりましてはそういう措置を講ずるのですが、年度末にそういう措置をとったということは、近年、異例のことであります。
  16. 鈴木強

    鈴木強君 この景気停滞状況はお互いに確認し合えるわけですから、それを脱出していくというための措置というものは当然やらなければならぬと思うので、大蔵大臣のいまの金融措置では、私はちょっと不十分ではないかと思いますけれども政府の意のあるところはわかりました。  で、総裁、いま金融緩和のいろいろの措置をしていただいておりますが、特に外貨準備高との関係で、きのうもちょっと論議が出たのですが、円の切り上げ問題というのがいろいろ出ておるわけです。うわさされておるわけです。大蔵大臣は毛頭考えておらないというきのう御発言がありましたが、総裁としてはその点どのようにお考えでしょうか。
  17. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 最近、日本外貨準備が相当ふえてきております。それから一方において、また日本輸出がわりあいに好調が続いておるというようなことが、いまお話にもございました円切り上げ論が出る背景かと思いますけれども日本国際収支というのは、実は三年前までは非常に赤字でございまして、戦後における金融引き締めはいつも国際収支悪化ということで引き締めが行なわれきてたというわれわれの歴史がございます。そういうことを考えますと、それからまたさらに、今後のわれわれの海外に対する支払いの点を考えますと、GNPの一%というようなレベルを考えております後進国援助、それからまた資源開発のためのいろいろの投資その他いろいろ外貨で支払わなければならないものが予想されております。したがって、この最近しばらくの国際収支の好調をもってすぐ円切り上げというようなことを云々するということは、全く当を得たものではないと考えております。そういう意味で、私どもは、円の平価というものについての変更というようなことは全く考えておりませんし、その必要もないと、こういうふうに存じております。
  18. 鈴木強

    鈴木強君 もう一つ、米国の金利が、御承知のように、急激に低下をしておりまして、公定歩合も三度引き下げておるようでありますが、そういったことから外資が日本にどんどん流入してくるというようなことも問題になってくると思いますが、いずれにしても、そういう面と金融緩和の面との両方から勘案をして、日本も二度も公定歩合引き下げをいたしましたが、さらにこれを引き下げていくというようなことは、景気脱出との関係と勘案して考えられないことでしょうか。
  19. 佐々木直

    参考人佐々木直君) お話しのとおり、アメリカ短期金利は最近急速に下がってまいっておりまして、まだ完全に下げがとまる状況でもないようでございます。したがいまして、そのアメリカ短期金利の下がりました影響は世界的にいろいろな反響を呼んでおることは事実でございまして、国際間の短期資金の移動がこのアメリカの急速な短期金利低下によっていろいろ変化を生じております。日本に対しましてもある程度その影響が出てきておりまして、貿易金融につきまして、いままで日本金融によっておりましたものをアメリカ金融に切りかえるというようなこともぽちぽち行なわれている実情でございます。しかしながら、いまのところ、その体制はそれほど、その動きはそれほど大きなものではございませんし、いま御質問のございました日本公定歩合の問題は、何と申しましても日本国内事情、これを中心に考えていき、海外のそういう変化はその国内情勢中心に考えた上でこれを考慮してきめるという性質のものであろうかと思います。それで現在、日本国内情勢は、一月に下げました公定歩合、その引き下げ影響が漸次行き渡っておりますし、先ほども申し上げました一月からの都市銀行貸し出し規制の廃止ということによる量的な緩和も目下進行中でございます。一方において卸売り物価は、この二月に〇・二下がりまして、この一年間にマイナスが出るという最近珍しい状況が出ておりますけれども、御承知のように、消費者物価はまだ完全に落ちつきを見せるに至っておりません。こういう環境でございますので、われわれといたしましては、いまの一月の公定歩合引き下げ、それと同時に行なわれております量的な緩和、この影響日本経済にどういう影響を与えていくかということにつきまして見守っていかなければならない時期であると、こう考えておるのでございます。
  20. 鈴木強

    鈴木強君 昭和四十四年の秋ごろから金融引き締めの必要があって引き締めましたね。それで昨年のまた秋からこれを緩和していくというような方向で金融面からの調整をしてきたと思うんですが、その効果の面で総裁としてはどういうふうに御判断なさっているでしょうか。われわれは、日銀がこの措置をとる目的は、一つには経済の過熱を鎮下する、もう一つはやっぱり物価を安定するというところにねらいがあったと思うんですが、物価安定の面は一向にきき目がないわけですね。ことしも当初四・八%と見込んだ政府目標が七・八%ぐらいになるんじゃないかというような予想も立つわけですけれども、この点について総裁は、せっかく皆さんが苦労しておやりになったこの金融措置というものがどういう効果をあらわして、どこに欠陥があって消費者物価は下がらなかったのか、安定しなかったのか、こういうふうな分析検討をされておられますか。
  21. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 御指摘のありましたように、消費者物価はまだなかなか落ちつく姿を見せておりません。去年の十月に引き締め緩和いたしますときに、一番に障害になりましたのは、障害と申しますか、考えさせられましたのは、消費者物価が依然として高い上昇を続けておる点でございまして、ただ一方において生産活動に直結しております卸売り物価のほうが去年の五月から約半年間ずうっと安定してきておりましたことが十月の金融緩和を踏み切らせた物価面での決定的な要因であったのでございます。その後におきまして卸売り物価のほうは引き続き低下が続いておりまして、この二月で四カ月間続落をしておるような状況でございます。したがいまして、卸売り物価に関する限りにおきましては、今度の金融引き締めは功を奏したと見てよろしいかと思うのであります。消費者物価のほうも、この東京都の消費者物価が二月に、少しではございますけれども低落いたしました。私どもとしましては卸売り物価低落は、ある程度の時間的なズレはございますけれども、やがては消費者物価落ちつきにつながるものと、そういうふうに期待しておりまして、それが一日も早く出てくることを待っておるのが現状でございます。
  22. 鈴木強

    鈴木強君 卸売り物価低下消費者物価低下影響してくるだろうとおっしゃるのですが、これはもうここ数年の間、日本の場合には卸売り物価はある程度横ばいであっても、消費者物価はどんどんどんどん上昇していくというちょっと異常な状態を示しているわけです。ですから、金融措置をしてこれを鎮圧しようとする、安定しようという考え方であるならば、これが、こういう状態になったときに、せっかくの投資が、融資が効力を発効していないわけですからね。その分析をもっと研究して、どこに問題があるかということを検討してしかるべきだと思うのですが、これは政府との関連もあると思いますが、いかがですか、日銀総裁として。
  23. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 消費者物価がなぜ上がるかということにつきましては、いろいろ私どもももちろん分析はしておりますのですが、まあよくいわれますように、生鮮食料品の値が上がっておること、あるいはまた、生産性の上げにくいサービス業の料金が上がると、そういうような点にいろいろ問題がある。したがって、中小企業中心とするそういう生産性の向上のための投資というものを今後行なっていかなければならないというような点は、いろいろ分析の結果出ております。御指摘のように、消費者物価は全体の卸売り物価その他が落ちついておりますときにも上昇をしておるのでございますが、その上昇の幅が四%台か、あるいは先般までのように七、八%台になるか、その辺の差の問題であろうかと思います。先ほども申し上げましたように、卸売り物価の中で、消費者物価にわりあいに影響の多い繊維関係でございますとか、食料関係でございますとか、そういうようなものが実はこの一、二月卸売り物価の中で低落をしてきております。そういうようなことがやがては消費者物価落ちつきにつながるのではないかという希望を持たせる一、二の点であるという意味先ほどちょっと申し上げた次第でございます。
  24. 鈴木強

    鈴木強君 この点は私は少し不満ですけれどもね、もう少し金融面においても慎重なひとつ検討を加えてみてほしいと思うのですね。  それから次に、この停滞からいつ脱出していくのかという点について、まあゆるやかに上昇していくだろうという総裁の御見解ですけれども、まあ在庫製品がどういうふうにはけていくか、いろいろ回復への条件というものを刺激をしなければならないのですが、金融面からはお話しのように、これ以上はたいして手をつけないということでございますね。そこで、一体いつごろに、この停滞から脱出していく時期は大体いつごろと判断をしておられるのですか。
  25. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま御質問のございましたその時期でございますけれども総体としての経済動き判断いたします場合に、個々の業種によりましてそれぞれいろいろ事情が違います。中には、まだ当分そういう停滞から脱出する見込みが立たないということを言われる業種もあるわけで、したがいまして、総体としての景気転換時がいつであるかということは将来の問題で、私どもといたしましても予測がきわめて困難でございます。ただわれわれとしては、そう落ち込みもひどくないかわりに、上昇のテンポもおそく、かつカーブもゆるいのではないかと、こういうふうに考えておりますので、どうもはっきりいつがその転換点になるかということの見通しは目下きわめて困難なのが実情でございます。
  26. 鈴木強

    鈴木強君 それでは、具体的に景気回復へのファクターとなるべき問題を示しますから、それについてひとつお答えいただきたいと思います。たとえば設備投資とか在庫調整ですね、この動きはどういうふうになっていくだろうかということが一つですね。それから、製品在庫目標の水準まで圧縮されているかどうかということですね。それからいつ出荷回復が順当になっていくかということ。それから特に大きい伸びが予定されておる電力等、非製造業設備投資がいつ表面化するかということ。四十六年度財政需要がいつごろ本格的に動いてくるかという、これは大蔵大臣関連ですが、そういう点についての分析はどうなさっておりますか、日銀総裁は。
  27. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま御質問のありました点は、実は将来の推移を具体的に予想するのは非常に困難でございます。ただ、いまお話がございました設備投資がいつ上向くであろうかというようなこと、これはたとえばいまお話がございました電力などの四十六年度設備投資計画は非常に大きなものがございます。そういう意味で、電力中心といたしました非製造業の四十六年度における設備投資増加率は二〇%をこえるように聞いております。したがって、これがいつ現実に総需要の中の設備投資需要として出てくるか、その時期は実はちょっとまだよくわからない。電力会社の方に伺いますと、発電所の敷地の獲得などにいろいろ手がかかっておって、思うようにいかないというお話もございます。したがって、その設備投資増加する時期がなかなか私どもとしても見通しが困難でございます。  それから製品在庫の問題でございますが、いままでの景気調整のときの経験から申しますと、製品在庫の量が絶対量として減るということはあまり期待できません。在庫率低下には出荷量の増大ということで、初めて変化が起こるというのがいままでの例でございます。したがって、ただいま御質問のありました、要するに出荷がいつごろふえるかというお話、これとうらはらの問題になると思いますけれども、これもいま申し上げましたように、設備投資需要総体としていつごろ出ていくのか、その時期がちょっと見通しがつきませんと、同じように、出荷の増大がいつ始まりますか、私どもとしてはもうそう長い時間はかからないのではないか、出荷停滞が始まってからもう相当時間もたっておりますので、いままでの経験から申しますと、それほど長い時間を要せずして上向くのではないかと、過去の経験で実は推測をしておる程度でございまして、どうも具体的な時期につきましては、なかなかただいまの時点で判断がむずかしいのが実情でございます。
  28. 鈴木強

    鈴木強君 日銀はこういうデータをいろいろの角度から分析をし、それはなかなか経済景気見通しについてはむずかしいと思います。むずかしいと思いますけれども、コンピューターの時代ですからあらゆるくふうをして、少なくとも当面、半月後にはどうなるだろうかという、一年後にはどうなるだろうかという、そういうおおよその指標というものだけはやはり出してもらわなければ、これは私は責任を果たしているとは言えないと思いますけれどもね。それでたとえば、東海銀行が九日に調査した結果を発表されておりますが今回の景気後退が、四十年不況よりも軽く済むと判断をしておるようです。それで、在庫調整完了の時期は七月から九月、したがって景気回復は十月以降と予想しているわけです。民間の東海銀行でもそういう分析をしておられるのに、ましてや政府出資の日銀においてそういう調査ができないということは、それは予想でございますから、われわれもそのつもりでもちろんお聞きするし、するのですが、せめてそれくらいのことはやっておらないのですか。この東海銀行のはごらんになっていますか。どうですか、これに対して。
  29. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 最近は、民間の各方面でもそういったような景気の先行きについての調査が行なわれております。みんなそれぞれの立場でいろいろやっておられますので、その結果もいろいろ差があるようでございますが、そういう予想を立てられておりますその推移と申しますか、筋道につきましては、われわれも十分そのデータも存じておりますし、計算の方法もよくわかっております。そういうことはわれわれも勉強はいたしておりますけれども、将来の問題につきまして具体的な時期を的確に示すということは、われわれの立場から非常にむずかしいことでございまして、勉強はいたしておりますけれども、それはなかなか決定的なことを申し上げるところまではまいっておらないのでございます。
  30. 鈴木強

    鈴木強君 大蔵大臣にさっきの関連でお伺いしますが、従来、毎年度予算が成立したあと、この予算の執行については公共事業費を調整弁に使いますね。ことしは一兆七千億公共事業費があるのですが、この支出については、現在の景気動向関連をして大蔵大臣としてはどのように上半期、下半期をお使いになる御予定なんですか。そういう計画はお立てになっていますか。
  31. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これからの景気動向を考えるときには、まあ金融政策もあります。ありますが、財政のほうがかなり影響力を持ってくる。つまりいまの景気金融的にはまあいろいろ手が打たれております。まあ、金融だけの角度から見ると、もうだんだんこれから明るくなると、こういう展望であることは総裁から申し上げたとおりなんです。あとは、その直接需要を喚起する、そういう問題が過大になってくるわけでありますが、それは、どうしても、いま財政というところになってくるわけなんです。そこで、いま御審議を願っておる四十六年度予算をどういうふうに執行するか、これは景気情勢から非常に重要な要因になってくるわけでありますが、私どもは、従来ややもすれば、個所づけというのがあるのです、公共事業費の、どこの県のどこの川をどうする。これは、そういう指定をしまして、そうして指定が終わりますと、その川をどういうふうに今度は修復するとか、橋をかげるとかの設計等があります。そういうことが、まあ国会での予算が、成立を待って始めるのだというかたい考え方の、手がたい考え方もありまして、どうも四月一日には新年度が始まりまするけれども、予算の執行は具体的にはずっと立ちおくれると、こういう傾向がありますが、いまの景気情勢からは、それはよろしくないと、こういうふうに判断しまして、建設省、運輸省、農林省などを中心とする公共事業の執行官庁におきましては、個所づけは急いでおります。また、個所づけに基づきまして設計、そういう調査を、これも急いでおります。そこで、新年度の開始、これと同時に予算の執行が進むという態勢は整えておる。さて、それをどういうタイミングにおいて、どういう速度をもって実施するかという問題につきましては、大体二月の経済情勢がどういうふうに推移しているか、これの指標が三月の下旬になると出てくるだろうと、二十日過ぎぐらいになりますか、その辺になると出てくるのです。その指標もにらむ、その他総合的にこれからの景気情勢判断しまして、これは財政はこの速度で、この量で執行されなきゃならぬと、こういうふうな結論が出てくるんだろうと思うのです。準備はしております。その判断はまあ二十日過ぎ、下旬の段階できめていきたい。さような見解であります。
  32. 鈴木強

    鈴木強君 これは毎年伺っていることなんですけれども、おおよそ景気調整をしなきゃならぬだろう、その調整のためにですね。ということですから、ときには下半期にずらすこともありますし、それから上半期に繰り上げてやる場合もある。大臣のいまのお話しございました、当然上半期のほうに、ことしは繰り上げて相当の支出をし、契約をしておくという、そういう考え方は基本を持っておられますか。
  33. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大体基本的にはそういう考えです。ただ、量的に時期的にどういうふうにするかという具体案は三月下旬の段階でひとつきめたい、かように考えております。
  34. 鈴木強

    鈴木強君 わかりました。それで、総裁の御都合が、時間的に制約されておりますから、もう少しやりたいんですけれども、次に移ります。  沖繩の施政権返還は既定の事実になっておりまして、いまその準備を政府としてもおやりになっておるわけですが、特に返還に伴う沖繩のドルから円への通貨の切りかえですね、この準備は日銀としてどのようになさっておられますか、お伺いします。
  35. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいま沖繩ではドルが通用しておりますので、こちらに返ってまいりますときには、それを円に取りかえなければなりません。それで、こういう例はいままで奄美大島、それから小笠原両所でございましたけれども、今度は経済の規模が格段に大きいので、その引きかえ事務は相当な事務量になろうかと思います。したがいまして、私どもといたしましては、昨秋以来二回にわたりまして向こうに調査の人間を出しまして、その報告に基づいていま実行の段取りその他についてこまかい準備をいたしておるわけでございます。引きかえのためには、こちらから日本銀行券とそれから硬貨とを持っていかなければなりませんが、向こうではそういう大量のものを保管する場所が全然ございません。したがいまして、われわれのほうとしては、那覇に新しく営業所をつくりまして、しかもそこにちゃんとした金庫をつくって、いまの準備用のものを持ってまいり、その後のいろいろ事務にも使わなければならない、そういうことで、ごく最近、すでにその営業所並びに金庫の建設に着手いたしておりまして、これはいまの予定では十分今度の返還の時期に間に合う予定で仕事を進めておるのが実情でございます。
  36. 鈴木強

    鈴木強君 大体準備しなければならない現金ですね、円の、どの程度予想されていますか、切りかえのための必要額。
  37. 佐々木直

    参考人佐々木直君) これは沖繩に通用しておりますドルが幾らあるかということが、オーソリティーのあるものには全然ないのでございます。私どもの例でも、日本の中のことを考えてみましても、たとえば四国なら四国にどれだけ円札が通用しているかということは、実はなかなか統計的にはむずかしいのでございます。したがいまして、ある程度の予想を立てまして、それに二割、三割大事をとってかけて、それで用意をするということしかないのではないかと思いますが、まだその金額につきまして、目下いろいろの資料を集めて推定を行なっておる途中でございます。もちろん、いろいろ返還の時期までにはある程度見当をつけて準備をいたすつもりでおります。
  38. 鈴木強

    鈴木強君 万遺漏ないようなひとつ御準備をぜひお願いしたいと思います。  それからもう一つ最後に、御承知のように、第一銀行と勧業銀行が合併をいたしました。これについてはいろいろ見方があるわけですが、総裁としては、歓迎すべきものであるというふうにお考えになりますか、どうです。
  39. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 今回の第一銀行と勧業銀行との合併は、その両行の歴史、それからいま現状におけるそれぞれの特色、そこをいろいろ考えてみまして、たいへんけっこうな合併であり、その合併の効果が出ることは大いに期待のできるものだというふうに考えております。合併だけが問題の解決ではございませんけれども、この両行の支店網その他いままでの仕事のやりっぷり等を考えますと、この合併は新しい銀行の発展に非常に役に立つものだと、こういうふうに考えております。
  40. 鈴木強

    鈴木強君 これは大蔵大臣にもちょっとお尋ねをしますが、大蔵大臣もおそらく積極賛成論者だと思います。再編に対しての行政指導というとあれかもしれませんが、そういう指導方針はおとりになっていると思います。  ところで、いまも総裁が期待されると、こうおっしゃるんですね。その成果は一体何か、合併による成果はですね。ただ銀行がりっぱになり銀行の経営だけがよくなるということじゃ、これは困るわけですから、預金者と、それからそれを融資する国民の利益は一体どう効果として出てくるのか、そこらに問題がひとつあると思うんですが、それはどういうふうに分析をされているか。あなたはいずれ認可しなければならぬ立場ですから。
  41. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まさにそういうところを評価いたしまして、この合併はいい傾向だと、こういうことなんです。この両銀行の支店の配置網を見ますと、重複した地域ですね、ある一地点に重複して店舗を並べておるというのが非常に多いんです。六十店舗ぐらいがそういう状態であります。今度合併が行なわれますると、それが一店舗に統合される。そして余力がつきますから、人も余りますから、今度は新しい新興地帯に支店を設置できると、こういうようなことになる。それからそういう状態国内でもそうでありますが、国外においてもそうなんです、海外支店。そういうようなことで、銀行のコスト、これが非常に下げ得るという状態になる。  それから第一銀行の融資先、また勧業銀行の融資先、こういうようなものを見てみますと、第一のほうはいわゆる財閥的な色彩が多い。それから勧業銀行のほうは、どっちかといえば中小相手のほうが多い。そういうことで片寄った性格を持っておりましたが、今度の合併によりまして、両者がバランスのとれた形になっておると、こういうようなことで、銀行のあり方として安定した姿になる。つまり今度は、要するに銀行は低利安定資金を供給するということが役割りでございますが、より豊富な資金を吸収し得る態勢になり、かつその資金をもって低利にこれを貸し得るという態勢になりまするので、大衆のためにたいへんいい効果をあげていくだろう、こういうふうに考えております。
  42. 鈴木強

    鈴木強君 ただし、その預金の利子というものはきまっているわけでしょう。ですから、それを合併することによって、たとえば借りるほうも金利が非常に安く借りれると、それから預金したほうも多少の金利が経営努力によって余分に出るというものじゃないでしょう、これは。その辺はどういうふうに考えておられるんですか。だから、全体を潤すというメリットがなければならぬと思うんですけれども、そういう点はどうお考えですか。
  43. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはまず預金の量です。この支店網が充実すると、いままで出したいところも出せないというのに、今度は人手もあきますから、そこにも出せると、こういう状態になる。量的にいいわけですね。それから重複が回避できるわけですから、コストも少なくて済むと、こういう状態になる。したがって、貸し出し金利低下し得ると、こういう態勢になるということを申し上げているわけです。
  44. 鈴木強

    鈴木強君 利息はないんでしょう、金利のほうは。
  45. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 金利のほうも安くなし得るわけであります。
  46. 鈴木強

    鈴木強君 預金者の金利ですよ。これはきまっているんでしょう。
  47. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 預金者ですか。預金者のほうは、これは大体協定しておりますから、そっちのほうには影響はただいまの段階ではないわけであります。
  48. 鈴木強

    鈴木強君 ですから、預金者は金を預けて何ぼかの安い利息をもらっているわけですよ。その今度は預金したものを動かして商売しているわけだ。銀行というのは非常にうまい商売だと私は思うんですがね。だから、その借りるほうの人たちはいいかもしらぬが、預金している一番お客さんですね、だんなさまが、あんた協定されておって、利息が努力したら五分が六分になるとかという、そういう励みが出てくるのならいいんですが、そういうことはだめでしょう。その辺は何とか考えなくちゃいかぬのじゃないですか、もしこういうことになるなら、これは将来。
  49. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ですから、将来の問題を展望しながら、金融界の再編成、これは非常に望ましいと考えております。そうして金利なんかも自由化するとほんとうはいいんです。しかし、ほんとうに自由化すると、これはまたいろいろそのための悪影響というものも出てくる。そこでたてまえとしては自由化にしたんです、今度。しかし、大蔵省の内面指導もありまして、大体協定金利というような形で動いておりますが、再編成が進み、各銀行の基盤も強化されるということになれば、もう名実ともに自由化と、こういう方向に行き得るので、日本金融界全体としてたいへんいいことになりはしないか、そういう第一の道程というか、一つのサンプルができたと、こういうふうに評価しております。
  50. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、まだどんどん統合させていくという、再編していくという考え方だと思いますがね。そうすると、最終的に幾つぐらいの銀行になったら理想だとお考えですか。
  51. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) とにかく、いま日本の大銀行というのは十指を屈してなお余りあると、こういう状態です。こういう状態はどこの国にもないのです。やっぱり日本におきましても、企業は巨大化する、けれども、銀行のほうはどうもそれに追随できなかったというのが実情でありますが、今度おそまきながら第一歩を踏み出したと、こういうふうに見ておるのです。これがある程度の影響を持つであろうと、こういうふうには思いますが、大蔵省といたしまして、積極的に、どういうふうな組み合わせでどうと、こういうような行き方は避けたいと思います。やっぱり、金融界の自体におきまして内外の情勢をごらんになりまして、どういうあり方がいいかということに基づいて動きがありますれば、それがいい動きであれば、私どもといたしましては、これを助成をする、協力をすると、こういう立場をとっていきたい、かような考えであります。
  52. 古池信三

    委員長(古池信三君) 佐々木参考人に申し上げます。  鈴木委員の御質疑も終わったようでございますから、お引き取りをいただいてけっこうでございます。本日はたいへん御多用中を御出席いただきまして、まことにありがとうございました。お礼を申し上げます。
  53. 鈴木強

    鈴木強君 公取の委員長に伺いますが、いまの問題で、事前に何かお話がございましたか。
  54. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 別に何らの事前のお話は承っておりません。
  55. 鈴木強

    鈴木強君 いまお聞き取りのように、銀行の寡占体制ということが考えられるわけでして、そこには寡占金融ということが生まれてくると思うのですね。いずれ、これは正式に公取のほうにお話があると思いますが、その際どういうふうなことをおやりになるのか。委員長の御見解をこの際承りたい。この合併に対する基本的な考え方ですね。
  56. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 御質問を二つに分けてお答え申したいと思います。  第一それから勧銀両行の合併問題ということになりますと、これは、ただいまの法律における、合併することによって一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるものであるかどうかということについて具体的に審査することになると存じます。  それから第二に、大蔵省で考えておられます、金融機関あるいは都市銀行といったようなものの今後のあり方というふうなものが、ただいまお触れになりましたような産業組織とか、あるいは一つの、経済の中における、何と申しますか、有効競争を減殺するような形になるかどうかというふうなこと、これは金融制度調査会のほうのあれでも触れておりますが、そういう一般的な問題については、私どもはまた別途いろいろと検討してまいりたいと、かように考えております。
  57. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 関連。  大蔵大臣に伺いたいと思うのですが、先ほどの第一と勧銀との銀行の性格をお述べになったわけですけれども、勧業銀行のほうが中小企業向けが多くて、第一銀行が旧財閥的なほうへの貸し付けが多い、こういうお話でありましたけれども、この合併によりまして資金コストあるいは資金の合理化というような面から、かつても中小金融機関資金を大企業のほうが利用しようという形で、たいへんいろいろ動きがあったようであります。こういう形になりますと、中小企業金融のそうしたワクが、かなり大企業のほうに回っていく、こういう心配を私どもは非常にするわけです。そういうものに対する歯どめがなければ、全体的な経済の構造から見ても、中小企業への投資というものはふやしていかなければならないという全体的な要請の中で、むしろ中小企業金融ワクが小さくなる。これに対する何か歯どめというようなものを考えになっておるか。
  58. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大銀行の中小企業に対する金融の問題ですね。これは量の問題にあるんです。どうも大銀行が最近とみに資金量が手簿になってきておる。この十年間ぐらいを見ましても、一時は、総預金量、その中で大銀行が三七%くらい占めておった、それが二七%くらいに今日減ってきておるわけです。たいへんな減り方です。そういうことから、大企業といわず、中小企業といわず、大銀行の手元というものが非常に窮屈な状態になってきておる。これは非常に顕著な状況になってきておるわけです。その手元をふやす、これが中小企業に非常に大きくいい影響を与えていくだろう、こういうふうに思うわけなんです。そういう意味において、今度の合併はたいへんけっこうだ、こういうことを申し上げたわけなんですが、いま、大銀行だから大企業だけに金融をしておる、こういう状態じゃ実はないんです。これは二五%余の額を中小企業のほうにさいておるわけでありまして、その辺は、合併が行なわれましょうとも、私は変更はあるまい、また大蔵省としてもその辺をにらみながら、これから行政指導していかなければならないというふうに考えておりますが、今度の合併が、ともかく、中小企業に回りかねた金、その金が用意される、こういうことになる点におきましてたいへんいい効果がある、こんな見方をしておるわけであります。
  59. 鈴木強

    鈴木強君 それでは次に、外交問題で一、二伺いますが、外務大臣、英国のエリザベス女王が日本にいらっしゃるようなお話があるけれども、これは真相はどうでございましょうか。
  60. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 政府としては、かねて英国の女王陛下及びエジンバラ公殿下の訪日御招待について英国政府に打診を行なっておりましたところ、このたび同国政府から、女王陛下及び殿下には適当な機会に日本を訪問される御意向である旨を伝えてまいりました。ただ、実現の具体的の時期についてはまだ決定されておりません。
  61. 鈴木強

    鈴木強君 次に、繊維問題で若干伺いますが、繊維問題に対するニクソン声明に対して、きのうの御答弁ですと、政府は事態の推移を静観する、こういう御方針のように伺いましたが、いつまで静観の態度をおとりになるのでございましょうか。私は、ニクソン声明はあえて繊維問題の円満解決を阻害し、日米関係に禍根を残すことにとどまらず、米国内に根強く動いている保護貿易主義の台頭にかっこうの口実を与える結果になりやしないかと案ずるのでありますが、政府としては、日米間の友好親善関係ということがそこなわれるような心配はないのかどうなのか、その点を一つ伺います。静観をして、円満に解決するという自信がありますか。
  62. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 昨日も、渋谷委員の御質問に対しまして詳細に、かつ率直にお答えをいたしたつもりでございますけれども政府としては、米大統領の声明にもございますように。二年間にわたって政府間の交渉に努力を続けてまいりましたけれども、不幸にして今日まで結論を得ることができませんでした。その間、日本の繊維業界が大所高所から非常な決断をされて、自主規制を踏み切られたわけです。これは、昨日も私くどくどと申し上げましたように、これは政府間の交渉とはいうものの、たてまえからいいましても、性格からいいましても、大切なことは、日本側としては、結局、手段、方法としては業界の自主規制という方法をとる、こういう性格の問題でございます。日本政府といたしましては、当初から、たとえば法令をもって新たな立法措置とか、あるいは政令措置とか、行政措置で規制をするというようなことは全く考えてもおりませんし、これは、本件の取り扱いの筋合いから申しましても、そういう方向をとるべきではないと考えておるわけでございます。また、国会の累次にわたる本件についての御決議や御議論も、もちろん、そういう点におきましては政府の考え方と全く同じであるわけでございます。そういう点から申しまして、今回、日本側の業界の方々がオーダリー・マーケティングということを中心にして非常な勇断をもって決心をされて、内外にその態度を表明される、これは政府としても高く評価すると同時に、この方法によって本件を解決する以外に日本としては方法はないと考えますから、多少の時間はかかりましょう。また、アメリカにもいろいろの事情があって、アメリカの業界その他からいえば、今回の日本側の示した態度についてはずいぶん不満もあろうかと想像されます。しかし、これまでの経緯に徴しましても、日本側がこうした態度をとりましたことは、結局において私は理解を得るものと信じますし、また、ぜひ理解を求めたい。したがって、現在静観するということは、日本側の業界がせっかく内外に示された誠意ある態度が行動の上にあらわれて、そうしてこれが、なるほどという評価を得られるということが望ましい姿であると、かように考えておるわけでございまして、今後も、米国内において、あるいは国際的にもいろいろの動きがございましょうが、日本といたしましては、この日本の繊維業界の方々のとられたる措置というもの、とられたる態度というものに十分の理解を与え、また十分の協力をしてまいりたい、かように考えている次第でございまして、これは自信があるかというお尋ねでございますが、お互いに日本側といたしましては今後とも協力し合いまして、米国のみならず、世界的にこの態度を理解させるように努力するのが、これからのわれわれのつとめであり、責任である、かように考えておる次第でございます。
  63. 鈴木強

    鈴木強君 通産大臣、繊維業界がきのうお集まりになったようですけれども、どういうふうな意思決定をしたんですか、この問題について。
  64. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨日声明が出ましたときには、一部にはかなりセンセーショナルに受け取った向きもあったようでございましたけれども、一日たちますと、多くの関係者が、いろいろ先さまにも事情があることであろうというような理解に大体落ちついてきたように思いますが、繊維業界自身は、私の聞いておりますところでは、もう少し事態を詰めて考えておりましたから、一般の世の中ほど、あの声明について大きな反応は示さなかったようでございます。ちょうど昨日私が申し上げましたように、いずれにしても一方的な規制宣言であり、先方がそれをどう受け取るか、あるいはどのように反応するかということは、いわば第二義的なものであって、いろいろ条件はございますけれども、ああいう自主宣言をした基本方針に変わりはないと、こういうように概して受け取っておるように聞いております。
  65. 鈴木強

    鈴木強君 外務大臣、これは私は、日本政府としても重大な責任があると思うんですよね。この二年間の紆余曲折をした経過の中にもですね。そこで、いまあなたも、わがほうの態度を先方によく理解をしていただく努力はしなければならぬ、そうして業界が実績をもって向こうにこたえるような、なるほどというような実績をあげてもらうんだと、その時期まで待つというお話なんですが、しからば、そういうふうなことに対してお互いに意思の不統一の点があるかもしれません。総理も、二度ほど、きのう、おとついと、マイヤー大使にお会いになっておるようですが、なお、たとえばあなたが行くにしても、あるいは通産大臣が行くにしても、そういう事情をよくアメリカに説明するために出向くようなことも考えたらどうですか。そうして、できるだけそこに溝のないように、相互理解ができるような措置をとるべきではないか。そういうことについては検討の要はないですか。
  66. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) まことにごもっともな御意見でございまして、過去二年間の間におきましても、いかにこの問題がむずかしいか、また、いかに双方の見解というものがなかなかまとまらないかということについても、いろいろの貴重な体験といいますか、苦い体験もしてまいりました。同時に、一応政府間の交渉がまとまらなかったということは、何としても残念でもあり、遺憾なことでもございます。私は、繊維問題については、先ほど申しましたような考え方で正しいと思うのでありますけれども、これがやはりいろいろの意味で、他の経済あるいは政治その他、いろいろの点に波及をするようなことが、かりそめにもあってはたいへんなことでございますから、今後におきまして、いま非常に具体的な御提案や御意見も伺いましたが、それらも含めまして、これから日米間の関係がますますよくなるように、いささかも悪くならないように、ということにつきましては十分の配慮検討をいたしたいと思っております。
  67. 鈴木強

    鈴木強君 それでは次に、今月の十日に、中国と北ベトナムは、周恩来中国首相のハノイ訪問に伴って共同コミュニケを発表しております。このコミュニケに対して外務大臣はどういうふうに受けとめておられますか。
  68. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいまのお尋ねは、周総理のハノイ訪問に関連する問題であると思いますけれども、今回の周総理のハノイ訪問というのは、北京政府の北越に対する支持と協力の関係を広く内外に印象づけるということが大きな目的であったのではないか、その点は、ただいま御指摘の共同コミュニケにおきましても明らかにされておるものと観察をいたしておるわけでございます。また、今次の周総理のハノイ訪問によりまして、中共・北越両国間でインドシナ情勢の一般について相当の意見交換が詳細に行なわれたように観測いたしておるわけでございますが、これからいかに両国として対処すべきかということについても、相当真剣、深刻な意見交換が行なわれたのではなかろうかと、さように承知しておる次第でございます。
  69. 鈴木強

    鈴木強君 いや、行なわれたように思う、それはまああなたの推測であり、いわば一方的の見方かもわかりませんが、いろいろ見方というものはあるでしょうけれども、外務省としては大体そういう見方をしていることはわかりました。  そこで、いま私がもっと聞きたいのは、そうでなくて、この中に、米帝国主義者が今後も侵略の道を歩むなら、中国人民は北ベトナムを全面的に支援するため最大の民族的行為を払うのを惜しまない、また、米国の戦争拡大は中国に対する脅威であり、ニクソン政府の軍事冒険行動への対抗措置検討し、完全に意見の一致を見たと、こういうふうに言っているわけですが、アメリカは、今日ベトナム戦争をまた拡大しようとしておるようですが、ラオスにも進攻して。しかし、あくまでも中国がベトナムに介入をしないと、そういう判断をお持ちになっているんじゃないかと思うんですが、これはアメリカのことですから、あなたに聞いても、わかりませんと言えばそれだけのことだけれど、少なくとも日本の外務省としては、そういうことについてどう判断をされておるか。介入するということはないということを考えながら、いまやっているわけでしょう。と思わないですか。
  70. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは、ただいまも御指摘のように、こちらが当事者ではございませんから、観察をしたり、観測をしたりするだけでは、基礎のないことでございます。願望も含めまして、これ以上中華人民共和国が軍事的な直接介入ということをしてもらいたくはないという、また、おそらくはそうであろうという願望をこめての観察をいたしておりますが、同時に、本件については、昨日も、これまたきわめて率直に申したつもりでございますけれども、いまの時点から今後において、だれがどう、どこの国がどうということよりも、インドシナがこれ以上戦争状態にエスカレートするということを避けるということが、われわれとして最も努力をしなければならないところであると思います。で、何と申しましても、日本の立場、あるいは力、あるいは日本の特殊な立場というのは、たとえば軍事力を全然持っていないというようなことも含めまして、そういう立場から、やり得ることにおのずから限度はあると思いますけれども、とにかく、政府としても一生懸命その点については努力を続けておるつもりでございます。詳しくは、もう前々から申し上げておりますけれども、したがって省略いたしますけれども、たとえば、ラオスに波及いたしました状況に立って、二月の初旬から中旬にかけて、日本政府といたしましては、外交上のいろいろの手段あるいは工作をいたしましたが、率直に申しまして、昨年カンボジアに急変といいますか、政変が起こりましたあの当時の日本のいわゆるジャカルタ会議その他に示しました努力の受けた評価よりも、今回のほうがより強く、より広く、いろいろの国々からの共感あるいは理解、同調を求め得たように思うわけでございまして、これは、たとえばいわゆるジュネーブ協定の共同議長国である英国はもちろんでございますが、ソ連政府に与えました、何と申しますか、日本側の誠意のあるアピールというものの受け方も、そのときよりはもっと強くなっているように思われます。それから、国際監視団の関係でも、カナダはもちろんでございますが、インドも前回よりもっとこの日本の考え方に同調した態度を示しております。また、何はともあれ、ラオスのプーマ政権が、御承知のように、北からも南からも承認され、支持されている政権でありますが、このラオス・プーマ政権が、日本をはじめとするこうした各国の動きによりまして、相当の自信をもって、みずからも安定化への努力というものを始め得ているということも一つ効果ではないかと思います。で、こうした動きや、こうした考え方は、当事者でありまする南越、アメリカ、また、一方におきましては、先ほど来御指摘の北越あるいは中華人民共和国というようなところへも、直接ずばりとインパクトのあるような結果にはならないにしても、私は、心理的にも、その他の面におきましても、少なくとも相当の影響力を与えつつあるのではなかろうか。こういう環境の中で、私は、先ほど申しましたように、日本国民としての、これ以上エスカレートしない、少なくともこれ以上エスカレートしない、そうして、なるべくすみやかに外国軍隊の撤退ということが実現できるように、こういうふうな考え方で今後も努力を続けたいと思っております。
  71. 鈴木強

    鈴木強君 私も、相当論議したことですから、多くは申し上げませんが、特に中国との関係も、最近、御承知のような状態になっているわけですから、私は、絶対に中国がインドシナに介入することのないような努力をあらゆる角度からすべきだと思うんでございます。大臣のおっしゃるような御意見は私も同感でございまして、そこでひとつ、戦争不拡大、それから平和解決、こういう努力を、日本として、この際あらゆる角度からおやりになったらどうでしょうか。これは、中国は国交がありませんけれど、まあいろいろな角度から接触もあるでしょうし、また、ベトナムのほうは、とにかく、そういう外交のあらゆるルートをどう使うかということは自主的なことでけっこうですから、実効のあがるような方法を考えて、日本がこの際積極的に仲介の労をとるというようなお考えはないんですか。私はそうしてほしいと思うんでございますけれども
  72. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) なし得る限り積極的な行動をいたしたいというのが念願でございまして、たとえば日本一国だけでは、なかなか、先ほども申しましたように、限界があります。これは昨年からのずっとつながりの関係もございますけれども、マレーシア、インドネシアというようなところと共同したいろいろの行動に出ているというようなことも、日本だけでは通じないような、それぞれの相手筋に対しても同調する、そうして、同じような気持ちとコンセンサスを持っている国々が同時にいろいろのアピールや工作を展開するということは、それなりに私は効果のあることではないかと考えているわけでございまして、今後も、いろいろのやはり状況によって、いろいろと、何と申しますか、知恵、才覚をふるいまして、努力を一そう強くいたしたい、かように考えております。
  73. 鈴木強

    鈴木強君 その次に、台湾の国府政府から、台湾海峡の資源開発計画について協力方を、日本政府と石油開発業界に要請が来ておるということですが、事実でございますか。
  74. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 民間の業界同士で、技術協力の話が、昨年、いっときあったようでございますけれども政府としては、つまり政府間では何もそういう話はございませんでしたし、民間の話も実はその後あまり進展していないのではないかというふうに存じております。
  75. 鈴木強

    鈴木強君 去年の秋に、小宮山通商産業政務次官をはじめ、通産関係あるいは石油開発公団関係、それから民間の帝石などの技術陣が現地を視察をしている。この事実はありますか。
  76. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年、小宮山政務次官が参りました事実はございます。両国の一般的な通商問題等々を先方で話したようでございまして、その際に、民間にこのような話があるということは一応話題にはなったようでございますけれども、別段結論めいたものもなく、政府間でどうこうというような話もなかったというふうに聞いております。
  77. 鈴木強

    鈴木強君 昨年の春、台湾政府から高官が日本に参られたときに、総理大臣に協力の申し入れをしたということを私たちは聞いておるわけですけれども、その際に、総理大臣も、日華協力の見地から検討しようという約束をされたということを聞くのですけれども、そうすると、これはうそですか。
  78. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 事情をつまびらかにいたしておりません。私どものところへ、そういうお話について総理大臣から指示があったというようなことは別段ございませんでした。
  79. 鈴木強

    鈴木強君 外務大臣は、このことについては御存じないですか。
  80. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私も、いま宮澤大臣からお答えされたとおりでございまして、特に、いま、総理との何かお約束のようなことでございましたけれども、これは、そういう具体的な何か話というものが出たことは、私も全然聞いておりません。
  81. 鈴木強

    鈴木強君 台湾から孫経済部長が再三日本に来られて、通産省や、それから帝国石油会社の社長と折衝したということも聞いておりますが、それは事実でないのですか。
  82. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いろいろ両国間、通商経済問題がございますので、そういう行き来というものは、おそらく、当然にこれはあることでございますけれども、少なくとも私が知らなければならない程度の話、そういう進展があったとは思いません。
  83. 鈴木強

    鈴木強君 じゃ、小宮山政務次官が、このことだけでなく、一般的な視察に行かれたというお話ですね。そうではないんですよ、しかし、それは。どういうことを言っておられましたですか。大臣に報告があったですか。
  84. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたように、一般的な通商貿易問題等について話し、そうして、先ほども申し上げましたが、御指摘のようなことも民間で話が出ておるというようなことについての話は聞いたけれども、それがどういう方向になるのか、政府間でどうしてほしいといったような話には至らなかった、そういうことはなかったというふうに聞いております。
  85. 鈴木強

    鈴木強君 少し政府側は、問題を、回答をぼやかしておるのですがね。もう少し、この問題は重要ですから、明確にしてほしいと思うのですよ。私は、機会を見て帝国石油社長さんもひとつ参考人として、委員長、呼んでもらいたいと思います。これは理事会でひとつ検討していただきます。  それで、まあ雲をつかむようなあいまいさの中ですから、ちょっと私の意見は出しにくいのですけれども、しかし、去る一日の日中覚え書き貿易の政治会談のコミュニケの中でも、中国は、周縁海域における日本、韓国、台湾三国の資源開発動きに対しては非難を集中しているわけであります。おそらく、もしこういうことが具体化しますならば、中国を極端に刺激をして、たいへんな紛争を招くおそれが私はあるように思う。したがって、こういう計画については協力すべきでない、こう私は思いますが、政府としての御見解を承ります。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、確かに将来に向かっていろんな問題を含むことだと考えますので、ただいま具体的な話は、申し上げましたように、進展をいたしておらないようでございますけれども、もし、そういうきざしが見えましたときには、外務大臣ともよく御相談をいたしまして、慎重に対処をいたさなければならないと思っております。
  87. 鈴木強

    鈴木強君 外務大臣は……。
  88. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 一部の報道等によりますと、日本、それから国民政府、あるいは韓国政府も加わって、三国間で何か委員会でも組織してやっているようなふうに報道されておりますし、また、そういうことを受けて、いま御指摘のコミュニケにも出ているのではないかと想像されますけれども、その三国政府間云々という事実は全然ございません。それから、ただいまの日本と台湾との関係におきましても、先ほど来申し上げているとおりでございますし、また通産大臣の言われたとおりでございまして、もし、そういうことが、今後、関係民間の業界の方々などから出てまいりますような場合があれば、慎重に、真剣に検討をいたしたいと思います。
  89. 鈴木強

    鈴木強君 それでは次に、防衛問題で中曽根長官にお尋ねします。  第一は、在日米軍の兵力は、現在どのくらいございますか。
  90. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 四十六年一月末の在日米軍の兵力は、陸軍が約五千人、海軍が約八千人、海兵隊が約六千人、空軍が約一万七千五百人、計約三万六千五百人という状況でございます。
  91. 鈴木強

    鈴木強君 三万何ぼ。
  92. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 三万六千五百人でございます。
  93. 鈴木強

    鈴木強君 その軍の装備についてはわかりませんか。
  94. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 在日米軍の装備でありますが、陸上部隊は補給関係の部隊でありますので、格別の装備はございません。そこで、主としては空軍の部隊でございます。御承知のように、横田、三沢のF4の部隊が、それぞれ韓国及び沖繩に移駐いたします。それからRF、偵察の部隊が米本国に帰ります。それと、輸送機も解体されて米国のほうに帰ります。残りますのが、岩国の海兵隊の関係の部隊及び海軍のP3Vという偵察関係の部隊、そういうふうなものが主として残るというような状態。あと、日本にあります、母港として使っております艦艇としましては、第七艦隊の旗艦が巡洋艦としてあるほかは、掃海艇そのほか小艦艇だけが母港として使われている、そういったものが大体の装備の状況であります。
  95. 鈴木強

    鈴木強君 過去、重要な装備の変更があって、日本に通知のあったことはございますか。
  96. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の記憶では、ないと思います。
  97. 鈴木強

    鈴木強君 在日米軍使用の基地は、全国に何カ所ありますか。また、基地の総面積はどのくらいになっておりますか。陸海空別に分けて、お知らせを願います。
  98. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 本年二月末現在の米軍の提供施設数及び面積でございますが、提供施設は百十八施設ございまして、そのほかに、自衛隊の施設を地位協定の二条四項(b)によりまして米軍の使用を認めておるものが二カ所ございますので、計百二十施設でございます。面積は、百二十施設につきまして見ますと、約三百六平方キロメートル、こういう状況でございます。陸海空軍の内訳、ちょっと後ほどまた御報告いたします。
  99. 鈴木強

    鈴木強君 このうち、国有、民有、公有に分けて、どのくらいになりますか。
  100. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 三百六平方キロメートルの内訳として、民有、公有とちょっと分かれておりませんが、民公有として約百十二平方キロメートル、国有が約百九十四平方キロメートル、こういう状況でございます。
  101. 鈴木強

    鈴木強君 その民有に対する基地の賃貸料というのは幾ら払っていますか。
  102. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 四十五年度におきまして約四十億でございます。
  103. 鈴木強

    鈴木強君 四十六年度は幾ら。
  104. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 四十六年度は約四十五億でございます。
  105. 鈴木強

    鈴木強君 その賃貸料の算定の基礎になるものはどういうものになりますか。
  106. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) お答えいたします。  賃貸料の基礎となりますのは、宅地につきましては相続税財産評価額を基礎といたしまして、それに大体四%をかけております。それから農地につきましては、そこの粗収入の農業収入からの収益にかける、これはその場所によって違いますが、おのおのパーセントをかけて計算しております。それから林野につきましては、そこにございます木の種類等によりまして、これもおのおの計算方法がございましてちょっとこれは複雑な計算でございますのであれでございますが、それによって年間借料を出しております。
  107. 鈴木強

    鈴木強君 それは資料で出してくれますか。
  108. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) 資料として提出させていただきます。
  109. 鈴木強

    鈴木強君 それから、一番近い機会に多少その算定のしかたを変えたところがありますか。賃貸料を増額したところはありますか。
  110. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) 先生の御質問の具体的に急激に変えたところはございませんが、ただ御承知のように、いまいわゆる宅地化、それから開発が相当進んでおりますので、年々の借料においてその開発状況等をよく見まして、先ほど申し上げました、その財産税相続評価額でございますか、それとの関係で計算上いろいろ改善はしております。
  111. 鈴木強

    鈴木強君 地元に紛争が起き、あるいは賃貸料がなかなか理解できないで、受け取りを拒否しているところが幾つかありますね。
  112. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) いわゆる借料につきましては、大体年度当初にいろいろ計算をして価格交渉に入っておるわけでございますが、いろいろその交渉中で年度末になるようなものがございます。現在、訴訟で賃貸料の支払いができないのが第一ホテルの例がございます。
  113. 鈴木強

    鈴木強君 北富士、山梨県。
  114. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) 北富士の件につきましては、現在四十三年度まであれしておりまして、四十四年度と四十五年度につきまして、現在、演対協を中心といたしまして価格交渉中でございまして、われわれの希望及び予測といたしましては、近く妥結さしていただけるのじゃないかと、こういうふうに考えております。
  115. 鈴木強

    鈴木強君 その金額は幾ら。それから供託をしておりますか。受け取らない分についてはどうしていますか。
  116. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) 北富士の借料につきましては、四十三年度、県有地につきまして八千万、それから四十四年度は、われわれの考えといたしまして約倍額の一億六千万と、こういうふうに考えております。それから四十五年度でございますが、これは二億二千万というふうに現在考えております。
  117. 鈴木強

    鈴木強君 これは供託されておりますか。
  118. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) 供託されておりません。
  119. 鈴木強

    鈴木強君 どうしてですか。
  120. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) 現在価格交渉中で、年度内に支払えるものと、こういうふうに期待しております。
  121. 鈴木強

    鈴木強君 いや、そうじゃないのですよ、四十三年、四十四年、これ、未払いでしょう、それはどういう措置をしているかというのですよ、繰り越しになっていますか、繰り越し明許になっていますか、承認されていないですか。
  122. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) 四十四年度につきましては繰り越しをいたしまして、今年、四十五年度のあれで処理いたしたいと思っております。
  123. 鈴木強

    鈴木強君 四十三年度は。
  124. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) 四十三年度は供託いたしております。
  125. 鈴木強

    鈴木強君 供託してある。
  126. 薄田浩

    政府委員(薄田浩君) はい。
  127. 鈴木強

    鈴木強君 日本全国で百十八施設、自衛隊のものを使っているのが二カ所、合計百二十で三百六平方キロメートルが米軍の基地に使用されているわけですが、このうち自衛隊が共同使用を認められているものはどことどことどこでございますか。
  128. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 米軍の提供施設を地位協定二条四項(a)によりまして自衛隊が共同使用いたしておりますのはキャンプ千歳、岩国飛行場等でございますし、民間が共同使用しているものは板付飛行場、佐世保ドライドック等でございますが、合わせますと六十一施設でございます。これは自衛隊のみならず民間関係も使用いたしておるものでございます。そのうちに、自衛隊が共同使用いたしておりますのが二十五施設ございます。この施設名、一々申し上げましょうか。
  129. 鈴木強

    鈴木強君 資料で。
  130. 島田豊

    政府委員(島田豊君) はい、じゃ資料として提出いたします。
  131. 鈴木強

    鈴木強君 次に、自衛隊プロパーの基地は全国に何カ所あってその面積は幾らになりますか。
  132. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) 自衛隊の施設を陸海空別に基地の数と面積を申し上げますと、まず陸上自衛隊につきましては、全体で千百五十二カ所、面積にしまして八億三千万平方メートル、このうち国有が約二億七千万平方メートル、民公有が六千百七十万平方メートルでございます。それから海上自衛隊は、全体で四百三十五カ所でございまして、面積が三千二百六十九万平方メートル、このうち国有が三千二百六十六万、民公有は三万五千でございます。それから航空自衛隊は三百三十六カ所で、面積は六千八十一万平方メートル、このうち国有が六千万平方メートルで、民公有が約四十七万平方メートル、合計いたしまして全体で千九百二十三カ所で、面積が九億二千五百三十一万一千平方メートル、このうち国有が八億六千三百万平方メートル、民公有が六千二百二十四万平方メートル、こういう内訳になっております。なお、このほかに内部部局と付属機関、こういったものの施設が百十ばかりございまして、面積が千五百八十七万平方メートルございます。  以上でございます。
  133. 鈴木強

    鈴木強君 これを四国にたとえて、四国の面積ぐらいあるんですか、どのぐらいになりますか。
  134. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) 四国と直接には比較しておりませんが、香川県の面積が十八億五千九百万平方メートルでございますから、これの約半分。それから低渡ヶ島が八億五千七百万ですから、佐渡ヶ島よりも少し広いという程度でございます。
  135. 鈴木強

    鈴木強君 大した多いもんだな。  それから自衛隊が米軍基地を共同使用をしている法的根拠というのは日米安保条約のどこの項に該当するんですか。
  136. 鶴崎敏

    政府委員(鶴崎敏君) 地位協定の二条4項(a)に、米軍に提供しておる施設は、米軍の使用に支障のない範囲内におきまして、日本政府あるいは日本国民に使用を許すことができる、これは合同委員会で合意の上でそういう措置をとるわけでございます。この二条4項(a)の規定に基づいて共同使用しておると、こういうことでございます。
  137. 鈴木強

    鈴木強君 これは後ほど北富士との関係で私はもう一回やりますが、ここではこれだけにしておきます。  次に、昨年十二月二十一日の日米安保協議委員会の決定で、在日米軍兵力は逐次引き揚げを行なっているようですが、最終的にはどのぐらいになる予定でございますか、現在は三万六千なんですが。
  138. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 昨年の十二月二十一日の安保協議委員会における協議におきましては、兵力としまして約一万二千が撤退をする、こういうことでございます。
  139. 鈴木強

    鈴木強君 いま現在まで幾ら撤退しましたか。
  140. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 先ほど申しましたように、三万六千五百人でございますので、それから一万二千人が移動する、こういうことになるわけでございます。
  141. 鈴木強

    鈴木強君 そうすると、最終的には二万四千五百人が日本に駐留をすることになるわけですね。そこで、この安保条約を結んでもう十数年ですね、結局は有事駐留的な形にいまなっているわけですね。現在の安保条約からして、こういう大変革があったのでありますから、この条約自体を変える必要はないものでしょうか。
  142. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 安保条約を変える必要はないと思います。日本の防衛は専守防衛で、核抑止力並びに攻撃的な部分というものは安保条約によって米軍にたよっているところでありまして、その機能はやはり依然として必要であると思っております。
  143. 鈴木強

    鈴木強君 ですから、最終的に二万余の兵力になっていくわけでしょう。ですからして、二万四千五百人になっていくわけですから、じゃ、一旦有事の場合、アメリカがどういう作戦行動をとってくれるか、そのことがわからなければ、日本の自衛隊だけで守れない場合、共同防衛する場合のことですが、ですからその際にはどういうふうなアメリカは体制をもって日本本土を防衛してくれるかという、そういう話し合いはしていないんですか。もう二万何ぼしかここにおらぬわけでしょう、有事のときにはどうなるのですか。
  144. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) アメリカは一部移動いたしましても、必要に応じて随時、協議その他によってアメリカがまた日本側の了解のもとに来ることもあります。そういうように安保条約というものを弾力的に適用しながら時勢に合うように運用しておるわけでございまして、安保条約の機能自体はやはり必要であると考えております。
  145. 鈴木強

    鈴木強君 長官は沖繩返還後、沖繩に米軍はどのくらい駐留をしてもらったら日本の安全は保てると思われますか。
  146. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 正確に研究したことはございませんが、大体現在駐留しているものに多少の変動はあると思いますけれども日本側の負担し得ない部分については、やはりアメリカ沖繩におって機能を果たしていくということは必要であると思っております。
  147. 鈴木強

    鈴木強君 そうしますと、現状体制にあまり変化はないと、こう理解していいんですか。
  148. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) さしあたりはないと思いますけれども、やはり客観情勢変化、時代の流れ等によっては多少は変わっていくこともあり得ると思います。
  149. 鈴木強

    鈴木強君 いま沖繩では毒ガスの撤去の問題で非常にもめているわけですね。けさの新聞を見ると、立法院の軍事関係委員会で一つの案が示されたようですが、少なくとも返還までにはこの毒ガスとか、あるいは核兵器その他もしあるとすれば、そういうものも撤去してもらわなければ困るわけですが、そういうふうな軍の秘密にかかわるようなことについて、実際に米軍がどういう核を持っておるか、どういう機密兵器を持っているかということは、日本として知る由もないわけですね。しかし、いよいよ日本領土になった場合には、これは安保条約に基づいて当然日本はこれを認めないわけです、核兵器についても。そういう話はいつどういう時点でやるわけですか、向こうを一回調べさしてもらうわけですか。
  150. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) まず沖繩の毒ガスの撤去の問題ですが、これは大体こういうふうな状況になっております。  もう撤去することについては問題ない。それからアメリカとしての受け入れ態勢は、ジョンストン島の工事が、わがほうの要請にこたえて非常な突貫工事が行なわれておりますから、受け入れ態勢はほとんどもう問題なく整備がされつつある。そこで、沖繩の知花弾薬庫からの搬送の経路だけが沖繩の県民の方々の御安心になれるような態勢ができさえすれば、もう何どきでも搬出ができることになっております。  それから御承知のように、沖繩における毒ガスの問題については、日本側の専門家の派遣ということも、先般の百三十トンの場合にも行なわれまして、これが実際上その場所その他も現認しておるわけでございますから、こういったようなかっこうで、これは返還前でございますけれども、毒ガスについては完全撤去ということが現認されて、撤去後におきましてはほんとうに御安心が願えると思います。  それから核の問題につきましても、日米両方の最高の約束で、沖繩が核抜きになって、そして返還後は本土と同様な安保関係取りきめが全部適用されますから、本土と全く同様に扱われることになるわけですから、それでまあ十分であるということを基礎に考えてよろしいと思うのでありますけれども、たとえばナイキ、ホーク等を自衛隊が、あるいは引き継ぐというような場合に、ある時期において核に備えるような施設があったとしても、これはやっぱりその際に現認される、こういうことにもなります。できるだけそういったような手段、方法を積み上げて、いやが上にも核抜きであるということを、国民に御安心を願えるような措置については十分の配慮とくふうをしてまいりたいと、こういうふうに現在考えておる次第でございます。
  151. 鈴木強

    鈴木強君 せんだって日韓の両国軍の演習がありましたね、防衛演習というのですか、そのときに、アメリカの極東空軍だと思いますが、行くときは沖繩のほうを回っていったんですが、帰るときは三沢へ着陸し、給油したのか何かわかりませんが。そういう三沢に着陸をしていったか横田に着陸していったか、ちょっと私も、三沢だと思いましたけれども、そういうことをおやりになっているのですが、これは事前に日本政府には何ら通告をしてこなかったわけですか。
  152. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは、通告は随時受けております。同時に、これは演習でもございますし、それから安保条約の関係、あるいは地位協定の関係から申しましても、本土、あるいは返還後の沖繩において、本拠として、米軍の相当の部隊が本拠として、常時駐留するという場合は、場合によりまして、配置の重要な変更ということになりますけれども、きわめて一時的な出入であり、かつ演習でございますから、そういう関係から申せば、事前協議の対象というようなことでは全然ございません。したがいまして、かつて四十四年にフォーカス・レチナ演習というものが行なわれましたときと同様の扱いでございまして、今回も帰りの飛行機で、からになったものが本土の飛行場に数機立ち寄ったということも事実でございます。
  153. 鈴木強

    鈴木強君 その協議事項ではなくても、好ましいことではないでしょうね。ですから、やはりそういう通知を事前にアメリカ日本にするということはたてまえじゃないですか。そういうことに対して、米軍と話し合いをしたらどうですか。
  154. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これはいま申しましたように、事前協議の対象ではございませんけれども、事実上通報を受けておりますし、それから、いま申しましたような事情でございますから、こちらとして特に反対すべきものではないというのが、従来からの政府の考え方でございます。
  155. 鈴木強

    鈴木強君 それで、まあ在日米軍兵力が縮小されるに伴って、日本に米軍基地が返還されていくと、現在のところ、どの基地が日本に返される見込みでございましょうか。
  156. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 沖繩の問題でございますか。
  157. 鈴木強

    鈴木強君 いや、日本全体。
  158. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 日本全体、これは防衛庁長官からお答えしたほうがよろしかろうと思います。
  159. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 昨年の十二月二十一日に、日米安保協議委員会で両者の合意を見たことは公表されたとおりでございますが、将来にわたって具体的にどの基地がそれ以外にどういうふうになっていくか、いまのところ心当たるものはございません。
  160. 鈴木強

    鈴木強君 さっき沖繩の問題については、長官から伺いましたけれども、外務大臣も、沖繩はどうなるかですね、大体現状維持ということだったんですね、防衛庁長官は。
  161. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 考え方といたしましては、返還になりますれば、いわゆる基地というものの態様、性格が変わるわけでございまして、日米安保条約の使命を達成するために、日米が合意して、必要と認めるものを日本側が施設、区域として提供することになり、そしてその施設、区域の活用については、安保条約関連取りきめ、事前協議等が本土並みに適用になるわけでございます。そうでございますから、かりに安保条約から言えば、これは観念的な問題になるかもしれませんが、はずれるようなものについては、こちらは施設、区域として提供する範囲外になるわけです。したがって返還後に提供すべき施設、区域は、安保条約の目的に沿うものでなければならない。それからいま一つは、沖繩の再建のためにどうしてもこれが必要であると思われるようなものは、提供する施設、区域からはぜひはずしたいと、この二本の柱で、できるだけ現在のいわゆる基地よりも規模を縮めたいということが、この折衝に臨む基本的な姿勢でございます。  これについては、すでにある程度の折衝が、そういったような基本原則に基づいて進められておりますけれども、その内容の具体的に、それならどういうところがいわゆる返還になるかというような点については、まだちょっと申し上げ得るまでに話が進んでおらないので、この点は御了承をお願いいたしたいと思います。
  162. 鈴木強

    鈴木強君 これは事前協議の対象になるわけですか、その場合に。
  163. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 事前協議の対象ではございませんで、返還についての協議の内容ということに相なります。そして一九七二年のX日を返還の日といたしますと、そのX日から、全く本土で提供しております施設、区域と同性格になって、地位協定その他も全部それの対象に相なるわけでございます。で、それまでに、常識的なことばを使いますれば、整理されるものは整理されておるわけでございます。こういうかっこうに相なるわけでございます。それで、そのX日には整理されるというものは、法律的に申せばその瞬間から提供せざるほうに入りますから、固有のこちらの何といいますか、領域に残って、施設、区域ではなくなるわけでございます。
  164. 鈴木強

    鈴木強君 これはいま協議の段階ですから、私は強い希望を出しておきますが、沖繩は、御承知のように戦後二十五年間、基地の中に住んでるんだというような、極端に言えば、そういうふうなことで、だいぶ苦労されてきております。したがって、できるだけ米軍基地を縮小していくということがわれわれの願いです。防衛庁長官のお話ですと、在沖繩の米軍兵力というのはそうたいして変わらないだろうというお話もあります。そうなりますと、自然的に基地の問題についてもなかなかむずかしいと思いますが、ひとつ外交折衝の中で、国民の悲願が達成できるように、ぜひ外務大臣にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  165. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この点については、ただいま申しましたような基本的な考え方で、もう全力をあげて努力をいたしたいと存じておる次第でございます。
  166. 鈴木強

    鈴木強君 それから次に、米軍から返還をされたあとの基地の利用の問題ですが、これは一般論として伺いたいんですが、これはどうなりますか。
  167. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは自衛隊あるいは公共使用、あるいは民間使用、基地の、ケース・バイ・ケースによりまして、相談をしてきめていきたいという考えでおります。われわれの防衛庁としましては、地元の皆さん方の御要望もよく把握して、自衛隊が使おうとする場合には必要最小限度にして、そして地元の皆さんの御要望をできるだけ達成するように配慮していきたいと、このように考えております。
  168. 鈴木強

    鈴木強君 長官ね、まず、原則として、駐留軍の使用が終了したときは、終了時の状態のまま遅滞なくその土地、建物、工作物等の所有者に、これは賃貸人も含めますが、返還することが原則でしょう。原則でしょう。あなたのは少し原則からはずれている。
  169. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 返還される土地が民有地であります場合は、もちろんその土地の所有者に返還をされる、返されるということになるわけでございまして、その土地が国有財産という場合には、これを大蔵省側のほうで、その国有財産の自後の処理につきましてはいろいろ検討されまして決定せられる、こういうことでございまして、その際にいろいろ先ほど大臣からお話がございましたように、自衛隊が使用したいという希望もございますし、また、地元の公共団体なり、あるいはその他の住民の方々から、たとえば公園地でございますとか、あるいは住宅地でございますとか、あるいは学校施設でございますとか、そういう御希望がございますので、そういう点につきましては、十分調整をはかりながら最後に決定をされるべきものだと、こういうふうに考えておるわけであります。
  170. 鈴木強

    鈴木強君 質問をよく聞いていないのですよ、私の質問を。よけいなことを言うのだ。私が読み上げたことは返還の原則でしょう。そのとおりならそのとおりと言ってください。国がどうとか民がどうとか、そんなことは聞いていない。答弁し直してください。
  171. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま施設庁長官が申されましたように、国有地であるか、あるいは民有地であるかによって性格が違うわけであります。大体米軍に提供しているものの中には、枢要な基地というものは国有地が多いわけです、旧軍施設等でございますから。そういうものにつきましては、これは自衛隊あるいは官公庁、公共需要、それから民間からの御要望、そういうものをよく検討して、ケース・バイ・ケースで考えていきたい。民有地の場合は、一応民有地としてお返しをする、所有者と話をする、そういう形になるんだろうと思っております。
  172. 鈴木強

    鈴木強君 だから所有権者に返るということでしょう。ぼくの言っていることは、国であるかどうかという、そういうことでしょう。そこで、さっき伺ったように、三百六平方キロメートルのうちで民公有地が百十二平方キロメートルあるんですよ。国有地は百九十四、だからしてこの民公有地は当然民公有地の所有権者にいくし、国有地は国に返ってくる、そういうことが原則でしょうと言っているのです。
  173. 島田豊

    政府委員(島田豊君) そのとおりでございます。
  174. 鈴木強

    鈴木強君 したがって返還をする場合には、民公有地の場合には、少なくともその所有権者、地権者の了承が得られない限りは、自衛隊がかりにそこを自衛隊の基地に使おうとしてもできないでしょう。
  175. 島田豊

    政府委員(島田豊君) そのとおりでございまして、自衛隊が使用する必要がある場合には、当然、たとえば民有地の場合には、その地主と協議をいたして契約をする、こういうことになるわけであります。
  176. 鈴木強

    鈴木強君 そこでこの返ってくる、予定されている基地の名前を言ってください、海空陸別に。
  177. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 昨年の十二月二十一日の協議に基づきまして発表されましたのがいわゆる五施設でございまして、北から申し上げますと、三沢、それから横田が一部機能が縮小いたします。それから板付、横須賀並びに厚木でございます。そこでこの五施設の今後の処理につきましては、先ほど大臣から御答弁ございましたように、いまいろいろ協議中でございまして、たとえば横田の基地につきまして考えますれば、横田のファントム部隊は撤退いたしますけれども、その基地のステータス−状況そのものにつきましては、これは何も変更がないわけでございまして、機能が変わってもその基地が返還されるということには直ちにはつながりませんので、これは別個な問題として考えなければならぬと存じます。  今回の五施設につきましては、いまのところ三沢、横田につきましては、これはそれぞれ米軍が使用していく、三沢の場合に一部自衛隊も使用する、こういうことになろうかと思います。それから厚木につきましては、これは米軍も一部専用区域を保有いたしますが、それを返還になりました場合に、自衛隊なり、あるいは民間航空がこれを使用する。板付の場合におきましては、御承知のとおりに民間航空が主体となりましてあすこを使用するわけでございまして、ただ一部米軍もそれを使用するという状態でございます。横須賀につきましては、これは施設につきましては縮小をされるわけでございますけれども、これが返還に一部なるわけでございますが、そういう返還の土地の処理につきましてはまだ未決定である、こういう状況でございます。
  178. 鈴木強

    鈴木強君 この五つの三沢、横田、板付、横須賀、厚木の中に、民公有地は幾らございますか。
  179. 島田豊

    政府委員(島田豊君) ちょっといま手元に資料がございませんので、さっそく調査いたしまして御報告申し上げます。
  180. 鈴木強

    鈴木強君 それではそれはちょっと資料をすぐ出してください。それを保留して、ちょっとよそに、その次に進んでおきますから。  それでは次に、北富士演習場の問題でお尋ねをいたしますが、まず昭和三十三年一月以降、米軍の北富士演習場の使用状況はどういうふうになっておりますか、お知らせを願います。
  181. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 昭和三十三年以降の北富士演習場における米軍の使用状況でございますが、三十三年が使用日数が百四日、三十四年が八十六日、三十五年が二百四日、三十六年が百十二日、三十七年が十六日、三十八年が七日、三十九年が五十三日、四十年が二十五日、四十一年が一日、四十二年が六日、四十三年が三日、四十四年はございませんで、四十五年が二十一日、四十六年は、先般の射撃演習三日間いたしておりますのでこの三日間、こういう状況でございます。
  182. 鈴木強

    鈴木強君 二月の二十三日から三日間米軍が実弾射撃をやっておりますが、その射撃規模、内容はどういうものでございますか。
  183. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 第三海兵師団の一個連隊がやってまいりまして、人員にしまして約千名程度だったと思います。射撃いたしました砲の種類は一〇五ミリりゅう弾砲、それから一〇六ミリ無反動砲、それから八一ミリ迫撃砲、それから小銃の擲弾筒、こういう種類のものの射撃演習をやっておるわけでございます。
  184. 鈴木強

    鈴木強君 この一〇五ミリの無反動砲というのは、どのくらいの距離が飛ぶんですか。
  185. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 一〇五ミリ無反動砲は、当日は約千五百メートルの射程で打っております。
  186. 鈴木強

    鈴木強君 聞くところによりますと、今月の十七日から何日間かまたこの北富士演習場で演習を行なうということですが、どうなっておりますか。
  187. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 米軍からの通知によりますれば、来たる十七日から三日間、北富士演習場で射撃演習を行なう予定でございまして、いまのところ弾種は一〇五ミリりゅう弾砲ということになっております。
  188. 鈴木強

    鈴木強君 最近、昭和四十一年から見ても、四十一年は一回、四十二年が六回、四十三年が三日ですな、四十四年がこれは五十二回ですか、四十五年が二十一回——四十四年ちょっと教えてください。
  189. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 四十四年はゼロでございます。
  190. 鈴木強

    鈴木強君 失礼。四十四年はゼロ、四十五年が二十一、この五年間くらいはほとんどあそこは米軍使ってないですね。最近また使いだしたんですが、何かこれは理由がありますか。
  191. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 射撃演習が回数が減りました理由は、最初オネストジョンを、四十年ごろでございましたか、撃ちまして、そこでいろいろ問題がございまして、自今、地元の住民の演習実施に対する反対運動が非常に熾烈になったわけでございますし、しかも、政府のほうとしましては、その地元の演習場使用の正常化ということについていろいろ努力をいたしてまいりましたけれども、なかなか地元の相互間における利害の対立等もございまして、そういう問題が十分解決されないままに今日まで至っておりまして、現実にもいろいろ一部落を中心とする妨害行為がございましたので、それによって演習をまあ規模を縮小せざるを得なかった、こういう状況のようでございます。
  192. 鈴木強

    鈴木強君 この北富士演習場の最近の施設の状況はどんな様子でございますか。その周辺の環境をも含めてひとつ報告をしてください。
  193. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 北富士演習場は、面積が六千四百九十万平米程度でございます。そのうちに国有地が二千百二十万平米程度、それから民公有地が四百三十六万平米程度でございます。そこで国有地の中心部分に弾着点がございまして、その周辺に砲座を据えまして、それから弾着点を目がけて射撃をする、こういう状況でございます。そこで周囲の状況でございますが、非常に広大な演習でございますので、その演習場の境界を明確にするための境界の標——くいはずっと打ってございますけれども、一般の住民あるいはそこを通行する人がある程度自由に入れるというふうな周囲の状況になっておるわけでございまして、したがって、それが演習場の管理あるいは演習の実施の上におきましていろんな支障がございますので、われわれとしてもいろいろその対策に腐心をしておるという状況でございます。
  194. 鈴木強

    鈴木強君 最近、米軍が盛んに演習を始めまして、基地の中に不発弾が幾つかまだあるのですね、この安全性はどうして確保するのですか。
  195. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 自衛隊の場合もそうでございますが、米軍の場合も、射撃演習をやりますと必ずその直後に清掃班を編成いたしまして、それでその辺の不発弾の発見、処理、これに当たっておるわけでございまして、二月二十三日から行ないました三日間の演習直後もやはり米軍自体が清掃班を出しまして清掃している、こういう状況でございます。たまたま昨年でございますか、二人の少年が不発弾をもてあそびまして、それが原因となって一人重傷、一人死亡、こういう結果がございましたが、これの直後におきましても自衛隊がさらにその周辺を徹底的に清掃しているという状況でございまして、今後とも十分そういう安全の確保ということについてはわれわれとしても気を配ってまいりたいというふうに考えております。
  196. 鈴木強

    鈴木強君 清掃をしていると言うけれども、その清掃がいいかげんなもので、ちょっとこれ防衛庁長官見てください。——こういうふうなやはり不発弾が十日に滝ケ原でもって発見されまして、非常に危険なんですよ。だから十分清掃しておらない、安全性が確保されておらない。
  197. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 事故の起こらないように、よく清掃を完全に行なうべく努力いたします。
  198. 鈴木強

    鈴木強君 さっきの施設庁長官の基地周辺の環境、状況ですが、現在金網をめぐらしたり、それから着弾地を整地したり、それからせんだって二十ヘクタールにわたる草原が、だれが火をつけたかしらんが焼かれておった、一晩、目が覚めたらね。こういう事件が起きているが、これらの問題についてはどういう見解ですか。安全性の問題、あるいは金網を張りめぐらす問題、これに対する見解を承りたい。
  199. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 昨年の十月の時点でございますか、米軍が着弾地の一帯をブルドーザーで整地除草いたしました。これは着弾地付近でございますし、そこへ一般の住民の方々が入られるということは非常に危険であるということでやったものでございまして、これは非常にやむを得ない措置ではないかというふうに考えております。  それから、いまのさくの問題でございますが、山中湖側から富士吉田市に行きますあの国道のところは、先ほど申しましたように、くいが打ってありまして、それで境界を標示しているというだけでございまして、地元の方々はもちろん、一般の通行者もそこに自由に出入りするということができる状況になっております。そして、先ほど指摘のような危険な状態も完全に払拭、除き切れないという場合もあることを予想いたしますと、非常に危険でございますので、その境界を明確にするという意味で山中湖村から富士吉田市に至る間約三千六百メートルにつきましてはっきりとしたさくをつくりまして、その中間にはもちろん入り会い等のために入る場合がございますので、そういうための門扉はつくりますけれども、ここは境界であるということをはっきりさせるためのそういうさくを設けることが安全確保上必要ではないかというふうに考えているわけでございます。  それから、ただいまカヤを焼き払ったということでございますが、これは確かに三日間にわたりましてそういうことがあったようでございまして、これは施設庁の吉田事務所のほうはさっそく警察にも連絡をとり、また消防隊、自衛隊も出まして消火に当たっておりますが、その原因についてはまだ不明という状況でございます。われわれとしましては、演習場管理という立場から、そういう点については今後十分注意してまいりたいと考えております。
  200. 鈴木強

    鈴木強君 まず第一点の金網の問題ですが、あなたが言うようなことではないのですよ。明らかに反対農民の基地内への立ち入りを遮断しようという意図じゃないですか。
  201. 島田豊

    政府委員(島田豊君) あくまで演習場管理の一環といたしましての措置としてわれわれは考えておるわけでございまして、妨害者を排除する、そういう意味じゃございません。あくまで安全確保ということでございます。
  202. 鈴木強

    鈴木強君 それから、これはまあ入り会い権もあるわけですから、金網を張って農民を入れないということはこれは言語道断だと私は思うのです。それから、二十ヘクタールが焼けたんですが、この草原は、カヤがあればカヤは農民が取る権利がある、これは入り会い慣行上。そういうものをガソリンをつけて二十ヘクタールも焼き払ったのはだれが焼いたかわからないなんという、そんなことで国民に顔が立ちますか。もっと原因を追及してみたらどうですか。
  203. 島田豊

    政府委員(島田豊君) なお、警察とも十分連絡いたしまして原因の究明に当たりたいと考えております。
  204. 鈴木強

    鈴木強君 それから着弾地の整地についても私は防災上重大な問題があると思う。実は御承知のとおり、いまは雪が降っておりますから雪しろ川が流れることはありませんけれども、これは雪しろ川が流れるころになりますと、みぞが全部縦についております。そこを水が流れる。ところが、あれを整地してしまったから、そこで水は左右に流れて防災上の危険がずいぶんある、これは。そういうことに対する安全性の確保をやっていますか。
  205. 島田豊

    政府委員(島田豊君) あの地帯を除草整地いたしましたことに伴いまして、そういう具体的な障害というものが一応予想されるわけでございますので、われわれのほうとしましては砂防堰堤等をはじめといたしまして、そういう障害防止工事を施行いたしまして、そういう障害の起こらないように措置をいたしたいということで、現在その措置をいたしておるところでございます。
  206. 鈴木強

    鈴木強君 これは防衛庁長官に伺いたいのですが、非常に北富士演習場の環境というものはよくない。したがって、十七日からまたおやりになるそうですけれども、非常に問題が多うございます。特に刺激をするような草原の焼き払いとか、そういうようなものが出てきて、ますます地元農民の反対の意欲というのが強くなってきている。だから、もう少し地元と話し合いをするということを基本に据えて解決を急ぎ、当面は米軍に対しては演習の延期を申し入れたらどうでございましょうか。
  207. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 演対協の皆さんとよく連絡をとりまして円滑に事務が動くように努力してまいりたいと思います。
  208. 鈴木強

    鈴木強君 あの北富士演習場はやがて日本に返ってくると思います。また返ってこなきゃいけない。これは地元の山梨、静岡、神奈川県の三県で富士箱根伊豆総合開発協議会というのをつくりまして、会長に田辺山梨県知事、理事長には小林中・日本地域開発センター理事長がなっていろいろと検討した結果、この地域を平和利用のためにぜひ使おう、こういう方針をきめられているわけです。だから、自衛隊があそこをお使いにならなければこの基地は返還の暁にはすぐ返ってくる。これは過去のいろんな折衝のいきさつからしても私はそう判断をいたします。この点に対する長官のお考え方はどうでございましょうか。
  209. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自衛隊といたしましては、当分の間やはり演習場として使用したい考えであります。
  210. 鈴木強

    鈴木強君 この地元の意見を無視して自衛隊が返還の際に使おうとしてもこれは不可能でしょう、地元がそういう意見を持っているわけですから。基本に地元の意見を尊重するという考え方があるんですか、ないんですか。
  211. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 演対協を構成しておりまする各村あるいは組合の皆さんにいろいろ了解願うように努力をしておりまして、ほかの組合や村においては了解されているものもあるわけです。忍草組合のようにやっているのはごく少数で、あの演対協の内部におきましても非常にいろいろな考えがあるようでございます。ですから、演対協全体を相手にいたしましていろいろ了解を得るように努力してまいりたいと思うわけであります。
  212. 鈴木強

    鈴木強君 私はいまから一つの提案をしますけれども、その基本になるのはやはり地元の意見を尊重するということを基本に据えていただいて、三つの点について私は意見を出しますから、その点はどうかという回答をひとつ長官からいただきたいと思います。  一つは、入り会い権があるかないかという問題です。入り会い慣行ということを政府は言って、入り会い慣行はあるとおっしゃっておる。せんだって東京地裁で建造物保全の仮処分の申請を地元の農民がやった。その結果、判決の決定の中で、入り会い権はある、こう言っておる。だから、この入り会い権の問題について、入り会い慣行があると言うなら、これは「権」「慣行」ということはイコールのようなことですから、その点で入り会い権ということを認めることができるかどうか。そうして現在、入り会い慣行だから見舞い金でよろしいのだという考え方を補償料として支払っていくという考え方が一つ。  それから契約期間については、国のほうでは一回契約すればそれはいつまでも続くのだという解釈をとっておる。いわゆる「不確定」の解釈をとっておる。ところが地元は確定解釈をとって、毎年毎年やるべきだという解釈がある。私は、地元の意見に従って毎年、年度初頭に契約をしていくということにしてもらいたい、これが二つ目。  それから自衛隊使用の根拠は地位協定三条でありますが、それはもともと米軍がその基地を使用するという目的のために貸したものでありますから自衛隊が使う場合には、これは土地使用者、この場合には地権者の承認が必要である、こういうことから、この解釈をめぐっていま裁判が行なわれておる。聞くところによると、この裁判は違法だという判決が出そうであるということも聞いておる。したがって、現在政府は訴訟を取り下げて何とか和解をしようじゃないかという動きをやられておるというようにも聞いておる。そうであるならば、米軍使用から自衛隊使用にする場合には地元の地権者の承認が絶対必要であるという考え方を明らかにすべきである。  この三つが当面問題を解決する一つの前進になると思うのだが、これに対して政府はどうお考えですか。
  213. 島田豊

    政府委員(島田豊君) まず、入り会い権が権利として認めることができるかということでございますが、これも久しい間政府の見解は国有地には入り会い権は認められない、こういう方針できておりまして、現在もその方針には変わりはないというふうに考えております。したがいまして、いわゆる入り会い権に対する補償ということでなくて、われわれとしては十分入り会い慣行というものを尊重いたしますので、従来からそういう慣行を認め、したがいまして現実に基地を提供することによって阻害されておるそういう実損額の補てんをするという意味で補償をしてまいっておりますので、今後もそういう線で補償は十分やっていきたいというふうに考えておりますが、入り会い権というものはわれわれの考えとしては認められない、こういうことでございます。  それから、不確定期限の問題でございますが、やはり米軍に提供いたしまして、それが使用が継続しておる間は、やはりこれは契約が続いておるのだという従来の考え方はわれわれは変えておらないのでございます。ただ、現実に賃貸借契約そのものが、現在の予算制度が単年度主義でございますので、一年一年に更改いたしますけれども、契約としては不確定期限である、こういう説をわれわれとしては持っておるわけであります。  それから自衛隊が三条で米軍の管理権に基づいて土地を使用しておる、こういうことでございますが、私どもとしては、このこと自体違法ではない、適法であるというふうに考えておりますので、そういう意味で、必ずしも一々地元の承認を得るという必要はないというふうに考えておりますが、北富士演習場については、先生御承知のとおりに、前からいろいろ問題がございまして、現在、演対協を中心としましていろいろそういう問題についての解決をはかるべく努力をいたしておるところでございます。したがいまして、問題は米軍の使用なりあるいは自衛隊の使用というものが十分地元の御了解を得て正常化していくということがわれわれの念願でございますので、そういう意味で、北富士につきましては、できるだけ東富士の場合と同様に、自衛隊が管理をして米軍がそれを随時使用していくという、いわゆる二4(b)の形、使用転換ということをわれわれとしては目標といたしておりまして、そういう線で地元の方々といろいろ話し合いを進めておるというのが現在の段階でございます。
  214. 鈴木強

    鈴木強君 これは防衛庁長官、少し角度の高い政治の舞台でやらなければならぬことだと思うので、お役人ではだめです。だから、長官として、そこが私はこの問題の解決のポイントになってきていると思いますので、それに集中をして、少し積極的にこちらからも向こうに出かけていって、長官がいらっしゃるか施設庁長官がいらっしゃるか、いずれにしてもそういうコネクションをつけて、コンセンサスを求める努力をしてくださいよ。これは出発点から間違いをおかしているから、こういうことになったのだから、いかがですか。
  215. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまも演対協を相手にいたしまして、県当局等も入れていろいろ具体的な話し合いを進めておる段階でございまして、この努力を継続させていきたいと思っております。私も、政治的な大局的な見地に立って、最終的な結論については、よく慎重に注目して考えをまとめていきたいと思っております。
  216. 鈴木強

    鈴木強君 くどいようですけれども、十七日からの演習はそういう意味でひとつ延期をさらに申し出ていただけませんか。
  217. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 延期を申し出る意思はございません。
  218. 鈴木強

    鈴木強君 あの時間がちょっと切迫しましてたいへん恐縮です。建設大臣、この宅地建物取引業者が乱立をして悪質業者がだいぶふえているのですが、これをまあ締め出すといいますか、正常化するという意味において、宅地審議会の答申が出ておりますが、このうち営業免許権の分離と営業保証金の引き上げについては、どうも今度の改正法律を政府がお出しになろうとしておりますが、完全に無視されている。私はとんでもないことだと思いますが、これは業界の圧力に負けてこうなったわけですか。
  219. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。  現状は、御承知のように、これが全部一律に十万円の保証金でやっているわけなのです。これにつきまして宅地建物審議会でいろいろ検討した結果、三つに分離して不動産仲介業、売買業、開発業と三つに分けて、それぞれ十五万円、五十万、二百五十万円にしてはどうかと、こういう答申があったわけです。ところが、これにつきまして建設委員会の与野党の理事の方々がいろいろ検討した結果、どうもこれは必ずしも実際の消費者保護にならないのではないか。今日これほど物件の高くなっているときに、十万円を十五万円にして保証が確立したとか、それからいま何十億という仕事をやっておるデベロッパーに対して、二百五十万円でこれで保証したということはおかしいじゃないか。むしろこれは、そういうふうな事務的な形式的な保証制度よりも本格的な保証のための基金制度を設けるべきじゃないか。これによって、たとえば大手なら大手のグループでもう何十億という保証金を積ませて、それでその業界で何かまずいことが起こったらその基金で保証してやる。特に中小企業がこれが必要じゃないじゃないかと、だからいまこんなことをやったらかえって根本的な問題を忘れて形式的に、まあ法律上これだけの消費者保護をやったというだけではおかしいじゃないかという実はもっともなる進言が私のほうに出てきたわけです。そこで、ところが、これは基金で保証制度をやるとすれば、よほどのデータをはっきりとつかんで、業界もそこまで意思統一させないと、法律だけではこれはなかなかできない。そこでいまこれをせっかく前向きに進めるために私も本格的にこれに取り組んでいるということでございます。したがって、これは決して業界が圧力をかけたのではなくて、むしろ政治的な判断で国会内からこれが出てきたということです。そうして、ただこの——したがって、この免許を三分割していままでの十万円を十五万円にするということはもう取りやめにして、むしろ契約内容においてはっきりと消費者保護の内容を規定する、あるいは青田の売買を、これを禁止するような、またそれについては保証を現実にやれるようなことをやるべきだ、こういうことで現在もうむしろ審議会の答申以上一歩進んで消費者保護をやるということでいま検討しているのでございまして、御心配の点はよくわかりますけれども実情は業界からの反対ではなくして、むしろ政治的な判断が必要だということでこういうことになっている状況でございます。
  220. 鈴木強

    鈴木強君 そうおっしゃるが、とにかくインチキな不動産業者というものが相当おりますよ。そのために善良な国民が泣いていますからね。そういう意味において、それは保証金にしてももっと私はたくさん積まぜてしっかりした会社をつくるということでなければ、こんなことでどんどんどんどん仕事をされたのでは迷惑するのは国民ですからね。だからもっと勇断をもってやるべきで、宅地審議会の答申が私は正しいと思うので、政治的な判断で、大臣はどっちかから振り回されているわけだけれども、もし国会から出たというならばちょっと私はその意見は——いろいろ見方はあるでしょうけれども、私はちょっとおかしいように思います。まあしかし、そういうことであればとにかくですね、しかし、あなたがおっしゃるように、もっと前向きに消費者保護という立場に立ってやっぱりやってほしいですね。再検討はできませんか。
  221. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) ただいま申し上げましたように、これは衆議院でも参議院でも、われわれの建設省でやるときには、役人の発想や審議会のあればかりでなく、事前に相当私は国会側と連絡しながら立法措置を考えているのです。そういう立場からしてこれは与党ばかりだったらあるいはということもあるかもしらぬけれども、野党も含めて、これはむしろ形式的に保護を法律上かっこうをつくっても、十万円の保証金が十五万円になって、これが確実なのかというわけですね。それから不動産売買で五十万円の保証金で何が保証できるか、こういうことなんです。だから、むしろ、それはむしろそれあればこれでできたということで、かえって国民に安心感を与えてマイナスになるから、むしろこれはもっと時間をかけて検討すべきだ。それよりもいまの青田売買とかあるいは契約の内容でいまでは非常に不確定なことでやっているのだから、それをしっかりしたほうがよろしい。そうしてその間にできるだけすみやかに基金制度、保証制度を確立すべきだ、こういうもっともな御提案があっているので、その線に沿うていま極力検討しておるということでございまして、鈴木さんの言われる発想の趣旨には全く同感なんです。ただ、手段としてこれを十万円を十五万円にしてそれでいいかというところに問題が出てきたのでありますから、あらためてこの点はよく御配慮のほどをお願いしたいと思います。
  222. 鈴木強

    鈴木強君 時間がもうなくなりまして、たいへん恐縮ですが、簡単なやつだけ一つ通産大臣に伺いますが、電算機の輸入自由化についてですが、これは早期に実施するような最近海外からの圧力というものが加わってきているのですが、昨年通産大臣が、情報処理振興事業協会をつくったときに、私に答えたように、すなわちこれはもう自由化の一番最後にもっていくと、こういう方針には変わりないですか。
  223. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはなおいろいろ私も考えているわけでございますけれども、大型の電子計算機あるいはインテグレーテッド・サーキットは、将来のわが国の産業をになっていかなければならないものと考えますので、扱いは慎重にしなければならないと思っておりますことはただいまでもなお変わっておりません。
  224. 鈴木強

    鈴木強君 九月に予定されている第四次の資本自由化のときにこの問題が出てくると思うのですが、これに対する対応策は持っておりますか。
  225. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは一般論としてのお話でございますか……。  一応予定どおり外資審議会の議を経まして最終段階の自由化をいたそうと考えておりまして、いろいろ事務的に計算をいたしてまいりますと、時期はやはり九月、それより前ということは事実上不可能であると考えております。しかし、これはもうかなり長いこと業界にも予告をいたしておりますので、大部分の業界についてもうすでにそのための心準備はしておられると思いますので、ただ私が考えをきめかねておりますのは、先ほど指摘のございましたそのあたりの問題でございます。あとは、もうかなり長いことずっと第四次までしぼってまいりましたので、心の準備は整っておられることというふうに考えております。
  226. 鈴木強

    鈴木強君 これは、一方では電話回線の開放問題も考えられているようですね。そこで、おそらく大型は、ハードウエアのほうでも日本は負けている、ソフトについてはもう十数年アメリカにおくれていますね。ですから私は、日本国内コンピューター産業六社がもっと体質を強固にして、かりにIBMがやってきてもそれに打ちかてるようなやっぱり体質改善と強化をしておかないと非常にあぶないように思うんですよ。ですから、これは慎重にやってほしいと思うんですが、この意見は賛成ですか。
  227. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) やはり御指摘のように、ソフトウエアの問題というのは結局は教育の問題でございますので、速成というわけにまいりません。しかもハードウエアとソフトウエアをまた分けるということが、理屈の上では言えましても、実際は非常に困難なことでございます。それらのこともよく勘案をさしていただきたいと思います。
  228. 鈴木強

    鈴木強君 もう時間が来ましたので、きょう、経済企画庁長官にはたいへん申しわけないことをしました、お忙しいところを来ていただいて。実は物価問題で、下請代金支払い遅延、それから歩積み両建て、再販商品の問題に対する弊害規制の問題、自動車の純正部品価格差別の問題等について公取の委員長にもお伺いし、また物価問題はじめ、経済企画庁長官にお伺いしたいと思いましたが、時間の関係でお許しをいただきたいと思います。いずれ分科会等でお願いします。税金も大蔵大臣、また別途やりますから。  どうもありがとうございました。
  229. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもって鈴木君の質疑は終了いたしました。  午前はこの程度とし、午後一時四十五分再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      —————・—————    午後一時五十一分開会
  230. 古池信三

    委員長(古池信三君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、質疑を行ないます。中村喜四郎君。
  231. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私は首都圏整備の諸問題、特に北関東開発の諸問題について関係大臣にお尋ねいたします。  御承知のように南関東地域への人口、産業の過度集中によって、土地利用の混乱、地価の異常な高騰、都市災害の危険度の増大、交通渋帯と事故の多発、大気汚染、水質汚濁、産業廃棄物の堆積等各種公害の拡大、あわせて住宅難、用水不足等、国民の生活環境は最悪の事態におちいっております。  これら諸問題を具体的に解決し、豊かな都市環境をつくるためにどうするか。七〇年代における内政上の最大課題の一つであり、この問題には真剣に対処する必要があると思うのであります。特に、ロスアンゼルスの地震以来、東京における災害発生など、議論が盛んになっているが、もし関東大震災が再びあるとするならば、都市の現状にかんがみ、一千万都民はそれこそ火攻め、水攻め、ガス攻め、車攻め、人攻めの災難にあうことは明らかであります。  さて、政府は、さきに新全国総合開発計画及び首都圏基本計画において、北関東の新大規模都市群の建設を促進し、総合的な土地利用構想に基づく環境開発を行なうことの提案がなされているが、従来のようなあと追い計画、あと追い投資的な施策であっては、都市環境の悪化に挑戦することはできないと思います。思い切った先行計画と先行投資による新しい大規模都市の建設こそ急務であると痛感いたします。そこで、昨年五月二十五日に政府は、北関東新大規模都市建設のための開発区域を指定しましたが、この地域における工場の受け入れ、住宅の建設、交通網の整備とあわせ、今後の物資流動にどう対処していくのか。それらの計画及び所信等について、関係大臣に私はいまからお伺いしたいと存じます。  まず第一に、根本首都圏整備委員長にお尋ねいたします。根本大臣が水戸・日立、宇都宮、高崎・前橋の大規模都市群の構想について発表なされましたが、これは群馬、栃木、茨城等においても非常な反響で、すばらしいアイデアだと、秦野ビジョンに対応するすばらしいものだという考え方で地元は受けとめております。さらに、道路網の整備の問題、あるいは新しい港建設問題、こういう問題が非常に地元に対して大きな影響を与えていますが、これに対する北関東の新大規模都市群の構想はどのようなものか。ひとつ具体的に明らかにしていただきたいと思います。
  232. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) ただいま中村さんから御指摘になりましたように、現在の日本の高度経済成長に伴いまして、大都市に対する人口、産業の集中が想像以上に著しいのでございます。特に首都圏におきまして、東京都、神奈川、埼玉の南部、それに千葉の一部、ここに非常な急速なる産業、人口の集中がありまして、このために公害の問題、交通の渋滞、住宅問題、都市用水の問題、あるいはいま御指摘になりました一たび震災等が発生した場合における対応策は、観念的にはいろいろ考えられるけれども、実質的にこれをやるとすると、もう膨大なる資金と、それをたとえやるにしても時間的に非常に大きな障害があるという点が考えられるのでございます。しかも、もう一つ東京における問題は、東京湾が海外との流通の貿易港としてもう限度に達している。したがいまして、従来のようにあらゆる道路あるいは鉄道等が東京湾から海外に商品を運び、あるいは原料を東京湾岸に持ってくるということになってきますと、ほとんどこれは機能停止になるおそれがあると、こういうふうに考えまして、昨年私は首都圏の整備委員長として、首都圏をずっと一巡してみました。ところが、一方において首都圏に近い群馬の奥地、栃木、茨城、これは過疎現象が起こってきています。しかもそこには土地が豊富にあり、また水資源もあります。りっぱな労働資源と申しますか、それもございます。そこでこれを、従来もややその気持ちはあったようでありまするが、思い切って南関東に対する過度集中を、むしろ北関東に社会資本を充実することによって政策的な方向づけができますというと、首都圏全体がバランスがとれて過疎過密現象を相当程度これは解消できると、こう思いまして、実は関係の知事さんたちにも一応私の構想を示してみました。そうしたところが、そういうふうな構想でならば、われわれも非常に仕事がやりやすいし、可能性があるというような見通しがつきましたので、私が実は首都圏整備委員長の構想として発表したわけでございます。これに関しましては、関係省におかれましても重大な関心と前向きの協力をされるような態勢がありましたので、そこで今度は具体的に首都圏整備委員会の事務当局をしてこれを裏づけするような作業をいたさせ、また整備委員会でもそういう方向でいま検討を進めておるという段階でございます。  具体的に申しますというと、いま御指摘になりましたように、群馬県は高崎・前橋を中心とする地区に約百万都市をつくる。宇都宮を中心とするところに一つつくる。それから日立・水戸方面に一重点をつくる。その際一番首都圏で大きな問題は水の問題でございます。現在、首都圏の水問題を解決しようとして北関東地区に水資源の開発をもう鋭意努力しているのでありまするが、どうも地理的な利害関係が対立いたしまして、水源地帯の方々はなかなか協力してくれない。ところがこれが、群馬県が北関東の重点地方として、群馬県内に百万都市が構成できるということになりますれば、あすこの住民が、自分の郷里に一つの新しい都市機能を持った農村と工業と一体となった都市ができるということになって、感情的にも非常に前向きに協力していただけるようでありますし、同時にまた、ダム地帯に入るところの人々をそこに吸収しますれば、単なる補償だけでそこから追い出されるという感情がなくなって受け入れやすいということがあります。これは群馬においても栃木においても茨城においても同様な意見になるようでございます。  それからもう一つ現在問題になっておるのは、新しい大都市を構成する場合に非常な問題は土地です。これが土地を一々買い入れてやるとすれば、土地をますます高騰させます。また一面において高騰さしても農民は自分の土地を放そうとしないから、このためにこの計画が挫折するおそれがあります。そこで、私はそういうことをせずに、農民が土地を所有したままに長期に賃貸の制度をとってはどうかと、これに対して地方自治体あるいは農協がこれを保障するという形でいきますれば、農民も非常に安心して手放さずに収入がふえるということですから、水田の転換も可能であり、土地の値上がりもさせない。一方、進出してくる企業にとっては、土地取得のための膨大な資金が要らなくなる、利子のかかる金が要らなくなる、造成費だけがあればよろしいと、地代はこれは経費として税制上処分されるから非常にやりやすいと、こういうことで、いま三県知事とも、あるいはまた地元の政治家の方々もこの構想でやろうではないか。ただそういう場合に必要なのは、道路網をいままでのように全部東京に集中することを避けまして、むしろ北関東を横断しまして、そうしてこれが太平洋——具体的に言いますれば茨城県の海岸に人工の大きな港をつくりまして、そこにはけ口を求めていくと、こういうことにいたしますれば、北関東の開発と同時に、東京湾の過密によるところの機能麻痺が打開できる、こういうふうな構想をとるべきだということをいま考えておる次第でございます。そのためにいま首都圏で一応の構想を事務的にまとめつつありまするが、必要とありますれば、これは事務局長から御説明いたさせますが、大体の構想はそういう状況でございます。
  233. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 すばらしいアイデアだと思います。それを実行に移さなければならない時期だと思います。いま南関東の都市に人口が集中するということ、まさにそうだと思うんです。私の調べたところでは、神奈川県は五年間で百万の人口がふえておる、一年二十万。千葉県が十六万、埼玉県が一年間に十八万ずつふえています。いわば佐賀県一県がすっと五年間にできてしまった、こういう形になって人口がふえていく。いま大臣が東京湾港が満ぱいだと、まさに満ぱいだと思います。将来の予想をすると、約十億トンの物資が扱われる。十億トンというと五トン車で二億台、一日に五十五万台の車が東京都内既成市街地を通らなくちゃならぬという、こういう現実が公害を生み出した最大の原因だと思う。そこで、いま大臣がおっしゃるように、東北、信越、北陸からのものをカットして、横断道路をつくって太平洋の中に門戸を開くというこのアイデアというのは、私はすばらしいアイデアだと思うんです。それはまたそうしなければ東京、南関東の過密を防ぐこともできないし、公害を防ぐことはできないと思う。そこで、それを生かしていくためには、じゃどうするのかと、特に交通施設の問題と都市施設のものがぴちっとなっていなければ、これは絵にかいたもちになってしまう。向こうへ移転しなきゃならない、これは学園都市の例等を見ても私たちが痛切に感ずる。そこで、都市施設とそれから交通施設の問題についてはどのような考え方を持っているか、お伺いしたいと思います。
  234. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 御指摘のように、この構想を生かすか殺すかの非常に大きな問題は、現在の計画されておる道路網を相当修正して横断道が十分にこれを消化し得るような道路整備をしなければこれはいかないと思います。それで去年から一応の調査をいたさしておりまするが、この昭和四十六年度から本格的にこの構想を生かすための道路の整備のための調査に取りかかることにいたしておる次第でございます。具体的な問題はまだまだこれは固まっておりませんが、必要とありますれば、事務当局から御説明いたさせます。
  235. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 この北関東は、いまの道路の問題、じゃ事務局のほうから、北関東横断道路と常磐自動車道、この問題についてちょっと説明していただきたいと思います。
  236. 川島博

    政府委員(川島博君) お答え申し上げます。  北関東の大規模都市、三地区ございますが、これらを結ぶ北関東横断道路につきましては、この三つの大規模都市を連絡をいたしまして、ただいま大臣からお話ございましたように、これを東の太平洋岸の大きな流通港湾と結びまして、これらによって北関東の開発の基軸たらしめようというものでございますが、この北関東横断道路は首都圏の基本計画におきましては、関東環状道路と称しておりますが、この道路につきましては、首都圏の基本計画におきましてもその建設を促進をいたすことになっているわけでございます。私ども首都圏整備委員会事務局におきましては、昭和四十四年度からこれに関する貨物の流動調査を行ないまして、その流動状況等を検討してきておりますが、来年度におきましても継続して調査を行なう予定でございます。なお、関東横断道路関連調査を進めますために、ただいま大臣からも御答弁ございましたように、昭和四十六年度の国土総合開発事業調整費から相当額を支出するよう経済企画庁に要請する所存でございます。そのほか、この北関東の開発のために必要なものといたしましては、従来から建設を進めております東北縦貫自動車道、関越自動車道、常磐自動車道等がございますが、これらは既定計画に基づましてただいま建設を促進をしているところでございます。
  237. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 先ほど根本大臣のお話の中で、土地用地取得のための新しいアイデア、これは私はすばらしいアイデアだ、そうなければなかなか用地確保ができないと思います。現在通産省が要請しているのは七千五百万坪の用地を求めておるけれども、現実にこれを求めることはなかなか困難だ、そのような土地政策を生み出さなければならないと思います。そこで、私はそのほかに民間のエネルギーをどう吸い上げてこの開発を進めていくか、このことについて大臣の構想ありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  238. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 私は、これはまだ具体的に動いてないけれども、構想として現実に大蔵、農林の両大臣に提言しておりまするのは、御承知のように現在の農林中金は四十八年になりますと、これは現在の機能のままではおられなくなります。そこで私は農林中金を不動産の担保事業がやれるような機能を持たしてはどうかと、そうしていまの農地を農民が自分が所有したままに宅地あるいは工業用地、あるいは工業団地等に長期で貸し付けする裏づけとなる機構を持たしてはどうかと、こういう提言をしているのでございます。そうすると、農民の方々は五十年あるいは六十年という長期で貸しても、他の金融機関よりもやっぱり自分たちが育てた農林中金が名前は変わっても自分たちのものだという安心感がある。それから農林中金はいま少なくとも五兆円以上の預金を持っているわけです。ところが、これは農業関連だけにしか使えない。ところが、いまのような構想でいきますというと、農業と工業とバランスのとれた都市づくりがやられますから、そのときにあたっては、私は農林中金の持っておる金を、そうしたところの新しい北関東の農工一体の開発の資金に動員し得る裏づけをさしていいではないか、これはかなり大きなウエートを占めるようになると私は思います。それに開発銀行、これは私はぜひやっていただきまして、普通の都市銀行金融のほかに、地域開発というものを、しかもこれは過密都市の弊害をなくして新しい都市機能を持った都市づくりでありますから、これこそ日本開発銀行が相当思い切ってここに投資するように政治的な配慮をしてしかるべきではないか。これは私の主張でございまして、いよいよこれが発足するまでには、経済企画庁あるいは大蔵大臣関係大臣にも申し入れまして、そうしたところの新しい手法をも考えていいじゃないかと考えておる次第でございます。
  239. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 東京から学園都市を通って勿来までのいわゆる常磐自動車道のコースの問題について一応考えられるわけですけれども、いまの北関東横断道路については、高崎、、前橋、そして宇都宮、そして太平洋に門戸を求める、先ほど申しましたように、東京湾が満ぱいになっている現実の中から、新しい港建設だと、当然北関東横断道路の調査路線、あるいは将来予想されるものは水戸近辺に当然結ばれるということは、こういうように理解してよろしゅうございましょうか。
  240. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 大体私はそのほうが適当ではないかとこう思っています。しかし、港湾のことは私の所管でありません。運輸大臣とよく連携をとりましていきたいと思いまするが、いま私自身が考えておる線は、あそこの付近が、かなり広範囲のところがら選択をすべきだけれども、その地区のうちで一番土地を取得し得る条件のところをまず選ぶべきだ、こう思っております。
  241. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 川島局長に、先ほどの北関東横断道路の問題は調査すると、調査費用の問題は経企庁に繰り込まれた調整費の中からこれをやって調査する、こういうふうに理解していいですかな。
  242. 川島博

    政府委員(川島博君) お答え申し上げます。  北関東横断道路の調査費につきましては、私どものほうにも毎年わずかでございますが、調査費がついております。これは主として物資流動関係の調査をいたしておることは先ほど申し上げたとおりでございますが、そのほか建設省におきましても、来年度は本来の道路事業調査費で何がしかの調査費を計上するように承っております。また国土総合開発調整費につきましては、これは企画庁の所管でございまするが、私どもは来年度の七十八億の予算の中から、必要な相当額を関係省庁に御配分くださるように要請をする予定にいたしておるわけでございます。
  243. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 港の問題が出ましたので、関連して橋本運輸大臣にお尋ねいたします。  先ほど建設大臣がお話しのように、海上も陸上も物資の輸送能力においてすでにパンク寸前になっている。特に東京港湾の問題が満ぱいになっているという状況ですが、これらの状況について少し詳しくひとつどのような滞船状況になっているか、どのくらいの貨物の出入状況であるか、それをちょっとお尋ねしたいと思います。
  244. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 数字の問題はあるいは私からこまかく説明するよりも事務当局で説明をさしたいと思いますが、概略の点は私から申し上げます。  中村さんも御承知のように、現在東京湾に出入の貨物の総量は四十四年度の計算で三億二千五百万トンであります。そのうちいわゆる流通物資、これが一億二千万トンと推計されます。この状態をいわゆる昭和六十六年度の新全総、これは計算がありますけれども、従来は八億五千万トンといっておりますが、新社会経済発展計画、これは五カ年計画ですが、それによりますと昭和五十年で六億二千四百万トンになる。これをそのまま伸ばしてまいりますというと、昭和六十年には十二億三千万トンという数字になるわけであります。しかし、これは最近における伸び率をそのまま伸ばしていくという計算でありますから、必ずしも十二億三千万トンという数字が妥当かどうかは疑問があるので、一応私たちは試算としては十億トンぐらいに押えていいのではなかろうか、こう考えております。そこで先ほど申し上げましたように、現在東京湾のいわゆる港湾の能力は三億二千五百万トンでありますからして、その差額の、いわゆる十億トンと計算いたしましても六億七千万トンというものを東京湾で全部引き受けられるかどうかということになりますというと、港をつくるということだけで言うなれば、もちろんこれは全部引き受けられます。しかし、物資の流通というものは海上だけの問題ではありませんで、陸上との関係において、すなわち総合交通という面から見て、これだけのものを東京湾内で引き受けるということになれば、もう陸上は全然動かなくなることは火を見るよりも明らかであります。したがって、陸上においていわゆる建設省が考えておりまする湾岸道路、あるいはその他まあ八環といっておりますが、その他の道路等を考慮して、そこで東京湾内で受くるべき物資数量というものは、昭和六十年時点を考えても大体三億ないし四億トンの増、現在の約倍ちょっとぐらいが東京湾内で引き受ける数量ではなかろうか。残りの約二億トンといいましょうか、二億トンというものは東京湾外、すなわち千葉の太平洋岸から茨城の太平洋岸並びに神奈川、静岡の太平洋岸でこれを受けるべきであろう。これが二億トン、あるいは二億五千万トンぐらいを受けるということになると思います。そうなりますというと、現在のいわゆる千葉の太平洋沿岸から茨城沿岸では十分なる港を持っておりません。まあ中村さんは北関東を中心に御質問でありますから、その方面のお話を申し上げますというと、現在茨城の太平洋岸におきましても港らしい港というのは日立港一港だけであります。日立港の計画は現在は、昭和五十年を目途として大体一万トン級の船の水深を計算して、そこで五百四十万トンというところが現計画であります。それ以外には、大洗がありますが、まだこれは本格的な港の計画ではありませんが、現在の状態ではこれはわずかに年間四十万トンという計画でありますからして、もし東京湾外で二億トンのものを受けるとなれば、その半分をいわゆる北関東といいますか、千葉県沿岸を含めて一億トンを受けるとなれば、この程度のいわゆる日立港——いま申し上げたような港であっては全然これは問題にならない。そこで、これは先ほど来、根本設備大臣から話がありましたが、北関東横断道路の問題及び常磐高速道路及び成田の高速道路、これを延長し、東関東自動車道路と言っておりますが、こういう道路とのにらみ合わせ及び関越自動車道路、こういう点等を考えて、そこで北関東から入る物資をどれくらいまでわれわれは拡大できるかというと、どうしても将来首都圏の人口がまあ最低見て三千五百万人、これは全体の人口ですが、しかし、おそらく四千万人を突破するだろう。情報化時代においては当然いわゆる管理センターには人が集まってくるのであります。そういう意味において、首都圏の人口はおそらく四千万人を突破して、あるいは四千百万人ぐらいを昭和六十年度と見てよろしいと思う。そういう観点からしますというと、かなり人口は首都圏全体に広がると見てよろしい。あるいは、形から言うなれば、旧東京都内といいますか、二十三区内は一種のドーナツ現象を呈する、そうして周辺及び以遠の土地にかなり人口が張りつけられる、こう見てよろしいと思います。そういう意味からいって、横浜、神戸あるいは東京等の港から物資が中に入ってくるのと、北関東の有力なる港から入ってくる数量というものは、かなりパーセンテージからいっても、もちろん東京が多いわけでありますけれども、なおかつ、いわゆる北関東における港の役割りは重要である、こういうことを考えまして、もちろん本格的な計画はこれからするわけでありますけれども、一応私たちが試算的に考えておりますのは、日立港においてはいろいろ背後関係がありますので、これを拡張いたすにいたしましても千万トン程度以外には拡張はできない。しかし、船は大型化しておりますので、港は少なくとも五万トン級の船が入るようなことを考えなければならぬ。大洗港——大洗・涸沼港と言いますか、涸沼総合開発ということを県のほうでも考えておるようでありまするが、大洗港を本格的に重要港湾に考えていく、こういうことになりますと、これは背後がありますので、この大洗港でやはり五万トンくらいの船は入れる可能——もちろんそれ以上の船の入る港をつくることも可能でございますが、流通港湾というたてまえから言えば大体五万トン、あるいは将来考えれば十万トンの必要がありましょう。一応そういう計算のもとに考えて、ここで二千万トンのものを受ける。でも、これはわずかに合わせて三千万トンほかないのであります。残り七千万トンをどこで受けるんだ、その全部を茨城県の太平洋沿岸で受けることは困難ではありますけれども、少なくとももう一カ所を、いわゆる根本建設大臣が前に茨城振興と言っておりましたが、その重要な大きないわゆる流通港湾が建設されないというと、せっかく北関東自動車横断道路というものはできても、十分な活躍を示すことができない。そこで運輸省としては、将来射爆場が返還されるのであるなれば、ここにひとつ五万トンないし十万トンの大型貨物船の入れる、そうして年間少なくとも四千万もしくは五千万、五千万と言うと、現在の横浜港が流通港湾としては年間五千万でありますからして、相当の時間を要さなければなりませんが、少なくとも将来の終局目標は四、五千万トンぐらい年間使える、この程度の港を建設しなければならぬ、また建設する余地はあるわけであります。こういうことによって、東京湾内の二億トンのうち、約一億トンというものを、千葉のいわゆる九十九里浜から、そうしていま言った北関東、茨城、太平洋岸に港の設定によって、ここで一億トンのものを消化し得る、こういう考え方でこれを片づけていかなければならぬと思っております。まあそれには、もちろん射爆場返還というものが前提に立つわけでありますが、こういう首都圏の将来の構想から考えましても、思い切った措置を今日において立てなければ、これは将来に首都圏建設の上においてもあやまるであろう。  話は別でありますけれども、ド・ゴール大統領が就任早々にして、一九五〇年代でありましたが、将来のパリ、二十一世紀のパリはどうあるべきか、こういうことを一九五五年代に彼は諮問をいたしまして、数年かかって、いわゆる構想を固めて、そうしていまから三、四年前にまずパリの改造を始めたのであります。そのド・ゴールは四十年後の先、五十年後の先を考えて、二十一世紀のパリのあり方、交通から都市開発、こういうものをまず構想をつくって、そのもとに、御承知のようなパリの地下鉄の改造が行なわれつつあります。  私はこの機会にかようなことを申し上げましたが、中村さんも御承知でありますけれども、水戸から宇都宮、高崎にまいる、ここには現在国道五十号という道路があります。私は先人に敬意を表するゆえんのものは、いまから数十年前に、もちろんその当時は国道ではありませんでしたが、とにかく五十年も前に、いわゆる水戸からして宇都宮、高崎を経て行くという道路を決定したということは、われわれの先人はとにかく大きな構想のもとに仕事を始めておった。にもかかわらず、今日のわれわれは残念ながら、きょうだけを見てあしたを考えない。これはわれわれは政治家として大いに考えを新たにしなければならぬと考えておる次第であります。  以上のような方針として、運輸省としては積極的に首都圏の総合開発、同時に総合交通体系を明らかにしたい、こういうふうに考えて、目下具体的な検討を進めておる段階であります。
  245. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 大臣の構想よくわかりましたが、いまの大臣の説明で、東京湾港の将来の、六十年代の貨物輸送量というものが、大体十二億トンというふうに想定されると、十二億トンというと、一トンドラムかん五本、こう数えると、ドラムかんにして六十億本、これを二十本ずつ一台のトラックに乗せたとしても、三億台、三億台の車が三百六十五日、大体九十万台の車が東京都内を通らなければならない、こういう実態に即応する態勢を整えていきたい、こういうことだと思いますが、そのうちの二億トンを東北から来るもの、あるいは千葉でカットすると、現在北海道開発等も進められておるとすると、当然このままでいったら、東京湾港に運ばれる荷物の量というものは、さらにふえていくと思う。また、陸上輸送からすれば、東北、あるいは北陸等を通じてくる荷物の交流というものは非常にはげしい、そこに新しいカット線としての北関東横断道路の問題が生まれてきたという、先を見越して、四十年先のことを見て、私もそうありたいと思う。そうなければならないと思うのです。そこで問題は、いままで、四十四年五月三十日に閣議で決定された新全国総合開発の中では、東京湾港外の構想として、茨城県臨海部に拠点港湾を建設するというこの閣議決定の新全総がございます。さらに、国土総合開発審議会の大規模開発プロジェクト研究会主査の四十五年十一月八日の報告においても、東京湾港及び大阪湾港の補完的な役割りを果たすため、首都圏にあっては茨城県臨海部に、近畿圏にあっては若狭湾とその近傍地域に大規模な流通港の建設が必要である旨報告されております。さらに、四十五年の十月の自民党政調北関東大規模都市群の建設試案の中でも、北関東開発の海の玄関として、また東京湾港の機能の一部を負担する流通港湾として、水戸地区に大規模な港湾の建設を行ない、北関東横断道路の建設と相待って、北関東の門戸を開くと述べてあります。さらに四十五年八月首都圏整備委員会では、北関東大規模都市の流通拠点として、茨城県北部臨海部に新規港湾を建設し、北関東地域の港湾経由貨物をこの新港に転換し、東京湾港の輸送の軽減をはかる必要があると報告をしておるわけであります。  以上申し述べましたとおり、各機関とも物流緩和の必要から、茨城県北部臨海部に新規港湾の建設が要望されておるわけであります。大臣の先ほどお話と同じように、これは各機関ともこのような構想を進めておるわけでございますが、今後運輸大臣としては、具体的には、この問題をどのように進めていく考え方でしょうか。もし、構想からさらに進めて、こういう方向で持っていきたいというお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  246. 橋本登美三郎

    国務大臣橋本登美三郎君) 先ほど一緒くたに申しましたから、具体的にお聞き取りが願えなかったかと思いますが、いま申しましたいわゆる北関東の周囲部の地点は、鹿島港は、これは工業港でありますから、流通港湾はこの中に含まれておりません。したがって、現在計画されておりますのは、日立港である、同時にまた大洗港が小規模ながら着手をしつつある、しかし、それだけではとうてい先ほど申しましたように、日立港は背面地等のことから制約されまして、せいぜい五十年までに五百四十万トン程度でありますが、これはもちろん拡大しなくちゃなりませんが、いかに拡大しましても一千万トン程度であろうと思うのです。  それから、大洗港、これは背後地がありますので、この点においては私は現在の計画を根本的に直しまして、そうして少なくともここで二千万トンぐらいのものは取り扱えるようないわゆる流通港湾にしなければならぬ。  もう一つ、それだけじゃまだ三千万トンにすぎませんからして、一億トンの三分の一ほかありませんので、そこでやはり四、五千万トンのいわゆる流通港湾を考えなければならぬ。  これは、先ほど根本建設大臣が申しましたように、北関東横断道路にいわゆる直面するところでなければならぬ、こうなりますというと、大体場所は限定されまして、すなわち大洗と日立の間にある、いわゆる世間で言うところの射爆場のところでありまするが、この付近、これを中心にした地帯で、ここにやっぱり大きな流通港湾を設置しなければならぬ。これがまあ四、五千万トンぐらいの年間物資流通を扱えるだけの港にする。これだけのものができますというと、北関東横断道路というのは思い切った規模でそのかわり建設してもらいたい。従来、建設省にいたしましても、細い道路をつくる傾向がありますからして、せめてこの横断道路は幅員最低六十メーターぐらいの道路をつくっておきませんと、非常にこれはあとでまた難渋をきわめる。ということは、この横断道路に高速道路で入ってきますものは、常磐高速道路が一つ、東関東自動車道路、これはまああるいは横断道路と一緒になるかもしれませんが、とにかく東関東自動車道路が入ってきます。それと常磐高速道路、そうして東北縦貫道路、それからもう一つは、関越高速道路、こういう四本のいわゆるインターチェンジがつくられるわけでありますからして、相当大きなものをつくっておきませんと、またあとで拡張しなければならぬ、こういう問題が起きますので、何でもでっかいことはいいことでありますから、やはり思い切った措置を講じてもらいたい。どうせ相当長期計画でやらなければなりませんので、やはりこの都市開発あるいは国土総合開発というものは、二十年もしくは三十年の先を一応見越して、そこでやってまいりませんというと、途中ですでに行き詰まってしまう、かようなことになりますので、建設大臣にはそのようにお願いをいたしておるわけであります。
  247. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 運輸大臣の説明よくわかりました。長い将来を見てやっていくんだ、横浜港に匹敵する港をつくっていくんだと。それには道路を結びつけなくちゃならぬという、その構想を、私は政府部内の将来統一した意思として具体的に実現することをまず望みたいのですが、運輸大臣は所用があるそうですから、どうぞ、それでわかりましたから。  なお、建設大臣も御用件があるそうですから、私は、問題をちょっと変えまして、研究学園都市の問題、一つだけを大臣にお尋ねします。そして退席してけっこうでございますから。  筑波研究学園都市の問題は、根本大臣の代に非常な意欲的な構想、そして具体化、地元の納得、そしてまた議会もこれに同調して、五月十三日には衆参両院とも議員立法で建設促進法をつくり、その建設促進法に基づいて建設計画が具体的に練られているわけです。その法の審議の過程の中において大臣は、各省とも向こうに移転することは非常に困難な省もあるのだ、行きたくないと言っているものもある。これをセレクトする、そして、具体的に移転年次計画を立てるというようなことに委員会で説明されておりますが、その後具体的な移転年次計画等についてはどのようになっているか、お伺いしたいと思います。
  248. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) ただいま中村さんから御指摘になったように、この計画は万博よりも、それから鹿島のあの構想よりも早く国策として決定されたにもかかわらず、なかなかこれが実がならなかった。むしろ成田空港のほうに重点が入れられたとさえ思われるような状況である。しかしながら、この研究学園都市の持つ日本の将来のために、国策のためにこれは非常な重要性があるということを、国会の皆さんから特に強調されて、昨年議員立法でこの促進の方策がなされたのであります。これを受けまして、私は、権限はございませんけれども、担当ということで、各関係閣僚の方々にもよく御説明を申し上げ、協力を得て、四十六年度予算では一応発足して、だいぶおそくなりましたけれども、具体的にこれに取り組み得る段階になってきたと思います。  で、具体的な計数並びに移転の現在の状況については、事務局長から御説明申し上げさせます。
  249. 川島博

    政府委員(川島博君) お答え申し上げます。  筑波研究学園都市の建設の促進に関しましては、先生も御承知だと思いますが、昨年の七月、研究学園都市建設推進本部で申し合わせをいたしまして、これを促進することといたしたわけでございます。  その内容は三つございまして、研究学園都市建設計画の大綱を定める。第二は、公共公益事業等の整備計画の概要を定める。第三点が、御指摘になりました移転予定機関等の移転計画の概要を策定をする。以上三点の早急実施を策定を申し合わせいたしたわけでございます。  この申し合わせ事項に基づきまして、本年の二月の十九日、推進本部会議におきまして、第一の、建設計画の大綱、及び第二の、公共公益事業等の整備計画の概要につきましては、本部会議の御了承を得たわけでございます。ただいまは引き続きまして移転に伴なう各省庁それぞれ問題をかかえておりますので、これらの諸問題の処理について、関係省庁の間で検討を重ねておりますが、これと並行いたしまして、移転計画の作成作業に着手をいたしております。しかしながら実際のところその調整にはやや時間を要するものと思われますので、私どもの希望といたしましては、できれば今月中にまとめたいと考えておりますが、おそくとも四月の末ごろまでには移転計画が策定を終わるように努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  250. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 大臣が、権限はないがと言うが、従来ともすれば学園都市関係の問題、どこに権限があるかという問題があったから、法律がつくられて、建設法がつくられ、そうして主務大臣は建設大臣だと。そこで大臣には勧告の権限等々もこれはあるはずと思います。  そこで問題は、いまの川島局長の説明の中で、公共事業その他の問題は、一つ定着している。移転の問題の作業に着手したけれども、時間がかかっている。ネックになっているのは何なんですか。そういう時間がかかって、移転のために非常に困難を来たしているネックは何なんです。それをちょっとお伺いしたい。
  251. 川島博

    政府委員(川島博君) お答え申し上げます。  先ほどお話申し上げましたように、移転予定機関は三十六機関あるわけでございますが、それぞれ各機関は内部的にこの移転を決定するに当たりまして問題をかかえておるわけでございます。たとえば職員の移転に伴いまして、住宅の問題でありますとか、あるいは家族の問題でありますとか、あるいは給与の問題でありますとか、いろいろ希望が出ているわけでございます。これらを関係の省庁が寄りまして、それぞれ問題ごとに分担をいたしまして検討を重ねておるわけでございますが、これらにつきましても、一気に全部を解決できない問題も含まれておるわけでございます。これにつきましては解決の方向につきまして、この各省の意思を統一しようということで作業をしておるわけでございますが、この諸問題の取りまとめ、調整にただいま時間をかけているわけでございまして、これがまあある程度のめどがつき次第、各省とも移転計画をきめるということになっております。したがいまして、移転予定機関はすべてこの移転をするということにつきましては皆さん御異論がないわけでございますが、そういった前提問題の処理にもう少し時間をかしてほしいということで、ただいま若干時間がおくれているという実情にあるわけでございます。
  252. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 この学園都市が御承知のように成田と比較しまして、成田と距離も東京から同じ、地価の価格も同じ、買収価格は成田が約四倍、面積にして筑波が三倍五百八十万坪、しかも何のわだかまりもなく五百八十六万坪という用地が地元の協力を得て買収完了、九九・三%というこういう実績、しかも移転がきまっておりながら、なかなかおくれたこと、そのことを憂えて建設大臣も積極的になってこれが解決をはかる。そのために地元は今度は政府はやる気になったという考え方なんです。ところがいまのように移転年次計画というものは具体的に地元民に説明されてないとなかなか納得しないわけですから、ネックその他の問題は私たちにはこれはわかりません、これとこれ。しかしやる気になっていけば私は進出、移転計画を具体的に立てることは可能であると思います。したがってこの問題はお答えは要りませんけれども、地元の関係者であり、しかもこの法の立案者の一人として私は当局に対して強くこの問題を要請しておくわけでございます。大臣はどうぞひとつ……。
  253. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 御質問はございませんけれども先ほど私が答弁した中にちょっと足らない点がございました。それは私が権限がないというのは、主管大臣は私でございまするが、これをほんとうに推進するにはまだまだ私に権限的にも不備な点があるという意味でございます。  それからいまお示しになりました件は、私も非常にこれは地元民に対して、政府として相すまなく思っております。あれだけの協力をしておるにもかかわらず、地元民からするならば、これだけの協力にもかかわらずなぜ政府がやらないかというふうな、むしろ不満から恨みに思った気持ちが現地に行って私もひしひしと感じてきました。そのためにこの旨を閣議に報告いたしまして、総理も、これは重大なことである、しかも将来日本にとって非常に大事なことであるから関係各大臣も協力するようにという御指示も得ておる状況でございまして、それを受けて現在、事務局長から御説明申し上げたように、従来にない相当の決意で各省とも協力されていただきます。ただ何しろ東京にあるいろいろの機関があすこにまだ十分なる設備がないところに移転するために、しかも現在の職員の方々の私生活の問題にもからんでおることであり、教育問題にからんでおるために、それぞれ要求する条件がかなり高度に予算の配慮を特別にしなければならぬ問題があるわけでございます。それを現在の予算のたて方でそうしたものがはたして吸収できるか、いなかという問題があるわけでございます。勤務地に対するところのいろいろの配慮をしてやらなければ気の毒な点もありまするが、現在の法規ではなかなかそれを満足させることもできないというような問題が各所にあるようでございます。こういう問題を相当きめこまかに詰めていって、そうして行く人もこれによってまあこれなら行けるという気持ちにするまで詰めていかなきゃならぬ。そういう点が一つ難点だと思います。できるだけそういうものを関係各省よく打ち合わせまして、すみやかに移転計画ができるようにこれからも努力したいと思います。
  254. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 いまの大臣のよくわかりました。私はこの筑波と成田と比較した場合に、成田が四千何百円、筑波が千二百円、三分の一、四分の一の価格、しかも騒ぎなくおさまったというのは、権限、権力でなく、納得いかせたということが一番大きな原因であったと思う。したがってこの移転機関のスケジュールがなかなか立たないという、それはそこに移る人たちの生活の問題もありましょう。これは権力で押えることはできません。いま大臣が言うように、予算の特別な配慮というものが必要だ、私は後刻この問題については大蔵大臣にお尋ねしたいと思いますが、特にこの移転機関については特別の配慮をしていただくことをお願いしておくわけでございます。  佐藤経済企画庁長官にお伺いいたします。  日本経済の高率的な発展と過密化による各種公害の解消をはかるために、京浜、京葉地帯の人口、産業問題をどのようにとらえ、それにどう対処するか、大まかな一つの構想をお伺いしたいと思います。
  255. 佐藤一郎

    国務大臣(佐藤一郎君) 御存じのように、新全総は都市の過密化というものの弊害を除去し、国土の利用を全国にわたって抜本的に再編成をする、こういうことでありますが、その一番具体的な問題点は、工業その他の施設というものを思い切って地方に分散する、ただ地方に分散するというものの考え方が二つの方向がございまして、一つはたとえば東京を中心として例にとりますと、首都圏というような広範な地域がございます、この首都圏の地域の中には東京都の中心部のような過密的なところと、それからまたいま先ほどから議論になっておりました北関東のようにまだまだ開発適地が非常に多いにかかわらず、その開発がおくれておるところがある。そこで新全総はどういう考え方をしたかといいますと、この際いたずらにただ都市の中心部に人口が集中するのをどうしても防いで、そうして御存じの都市化によるところの各種のひずみを、弊害を直すために、いわゆる中枢機能の集積ということを一方に考えております。すなわち、情報機能あるいは管理機能、こうしたものはやはり大都市に集積をしなければならない、そうして今度は、それと同時に、生産であるとかあるいは流通の物的な機能、そうしたものをできるだけ地方に分散をする、で、この関東でいいますると、東京の周辺地区あるいはその周辺に少しはみ出した辺までも、そうした物的な施設というものを分散させる、そうしてその拠点として地方都市をつくる、地方の中核都市というものをつくり、そうしてそこを中心にして生活環境というものの改善をはかり、そうして大都市と地方とのいわゆる生活環境の格差というものを地方の中核都市を整備することによって解消していく、そうしてこの地方の中核都市とこの中心部との間をいわゆる交通のネットワークによって結んでいく、これがいわゆる一つの考え方でございます。  そうしたことに即して申し上げますると、この関東地方におけるところのいわゆる南部京浜地方の工業地帯、この異常な集中というものを何とか分散をする。御存じのように、都市の再開発であるとか、そうした各種の制度もございます。あるいはまた逆にいわゆる首都圏の中におけるところの工場等の立地を制限する制度もございます。そうしたものを活用いたしまして、そうしてこれを先ほど申し上げました周辺地区といいますか、北関東のような開発可能地域にこれをできるだけ移してまいる。そうして交通のネットワーク、先ほどいろいろ議論の出たようなところのいわゆるネットワークの結び付きによって、管理機能、中枢管理機能といわゆる物的生産機能というものの結びつきを行なってまいる、こういう考え方でございますから、もうすでに具体的な話が関東を例にとって、先ほどから展開されておりましたから、私はもう申し上げることもないと思いますけれども、新全総のそうした考え方に沿って今後全体のいわゆる集中の弊害を除去し、そうして地方にすべてのものを分散してまいる。そうしてそれによって、生活環境の問題について起こっておる都市のひずみを直し、社会開発を促進すると同時に、地方におけるところの格差の解消をはかる、こういう方向であろうと思います。
  256. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 その企画庁長官の言う中心的な機能の集中ということ、これは私は日本のこの終戦後にずっと財政経済等が伸びた大きな原動力だったと思うのです。ただ、しかしそのことが多くなり過ぎたために問題が起きたわけです。そこで、工場を分散させるにはどうするんだ、たとえば東京、京浜、京葉工業地帯に約五万の工場がある。その工場を、移りたくても移れない状況、分散させるにはどうするのか、そのことを、何かあったらひとつお聞かせいただきたい。さらに工場立地制限の問題についてもお聞かせいただきたい。
  257. 佐藤一郎

    国務大臣(佐藤一郎君) もうすでにわれわれが経験しておるところでありますが、まず、その前提として交通ネットワークの整備、これがやはり基本でございましょう。東名の高速道路一つとりましても、あの完成というものは、非常に立地に大きな変更を与えております。そういうことで、やはり早急に、この交通、鉄道あるいは道路、そうしたものの幹線的なもの、あるいはまたそれにつらなる支線的なものの整備をやはりはかってまいる。そうして、今度その上に立って、いわゆる一つのプランができあがるわけでありまして、その場合には、先ほどから議論が出ておりましたように、工業なら工業、農業なら農業、それに即した例の水の問題もございましょう。その他全体としてのエネルギーの処理の問題あるいはまた都市としての中核的な地方都市としての整備をはかるための先行投資、そうしたものが要るわけでございます。そうしてまた、同時に、現在の都市部に対する過度集中を防ぐ意味において、首都圏のいわゆる立地規制に関する法律というようなものをさらに強化し、これを活用していく、こういう方向があるわけであります。
  258. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私の質問は、あるいは通産大臣の御説明をいただく分野かもしれません、ただいまの工場分散の方策等々についてという経企庁長官の。それじゃあらためてひとつ通産大臣にお尋ねしたいと思うのですが、こういうふうに工場規制をしなければならない現実、さらに工場を分散させなくちゃならない、分散させて、より自主的に積極的に分散させる方策は何か、通産省としては考えておりますか、お伺いします。
  259. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ここ十年ぐらい前から、過密地帯からの分散ということが、まあ行政の各省の意識にあったわけでございますけれども、そうして、それについての幾つかの誘導策は講じられたわけでありましたけれども、自然の、どう申しますか、経済だけではないんでございますけれども、やはり環境といったようなものがございますから、ほんとうに企業側が言われずとも分散をしたい、過密地帯を逃げ出したいという意識を持つようになりましたのは、私はこの二、三年ではないかというふうに考えております。つまり行政の意識は非常に早くからあったわけでありますけれども、多少の誘導策をもってしては、なお過密地帯にいたほうが企業としては便利だという時代が比較的最近まで続いたのではなかったか。しかし、この一、二年企業の側でも、もう過密地帯にいることが、外部経済が大きいといったようなこと、それから公害の問題が起こりましてからなおさらでありますけれども、いいところがあればむしろそちらへ移りたいという企業側の自発的な意識が、かなりこの二、三年高まってまいりましたと思います。  昭和四十四年に東京通産局で南部の既成市街地ております企業に対して移転を希望しているかどうかという調査をいたしたことがございますが、全面移転または部分移転を希望しておるものが実に二〇数%あったわけでございます。これはかつてはそういうことはなかったのでありますが、この二、三年そういう環境になってまいりました。幸か不幸かそういう環境になってしまったわけでございます。それを反映いたしまして、たとえば関東四県の工業出荷額は、ちょうどそのころに三兆円といったような非常に大きな伸びを示し始めまして、現在でもその伸びは続いておるわけでございます。もちろん政府として幾つかの誘導手段を持っておることはおるわけでございまして、御承知のように開発銀行による団地の造成でありますとか、あるいは地方開発の融資でありますとか、また税法で申しますと用地の買いかえの場合の特例、これはかなり誘導手段としてきく手段でございますけれども、そういうもの、あるいは固定資産税の減免といったようなものが、ほんとうに企業側が自発的に希望をする段階になって効力を発揮し始めたのではないか、こういう見方をいたしております。  したがって私ども実は四十六年度においても今度はもう少し大々的に外部、ことに関東の場合でありますと、北関東になりますが、移転の具体的な希望等を企業調査をいたしたいと考えておるわけでございますが、これは先ほどお話の北関東大規模都市といったような構想が将来の見取り図としてまず信頼できるということになりますと、そういう分散のスピードはいよいよ早まっていくのではないであろうか。これはちょうどいまになりますと政府が強制しませんでもどうも動いたほうがいいという雰囲気が、考え方が企業の側に出てまいっておりますから、そういうことを促進する結果になるのではないだろうかと考えております。したがって私ども北関東大規模都市という構想にはその観点からも非常に賛成でございます。
  260. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 確かに自然の流れに従ってという通産大臣の考え方よくわかるのですけれども、私どもモスクワあるいは北京あるいはパリ等の都市人口の抑制状況を見て、ああいうふうな形で力、法律で抑制する行き方というのは、これは不自然であるという考え方はわかりますが、ただ問題は、私はこのままに放任しておったのではパンク寸前になってどうにもならない事態が起きてくるのだ。そこで政府としては、工場分散をするための政府としての手当てをどうするのだ。たとえば用地もこうして確保してやるのだ、税制措置はこうするのだ、あるいは期限つきで分散させるのだというような、そういう施策が、呼び水がなければ私は自然の流れのままに待っておったのではならない。もう少しそこを突っ込んで話していただきたいと思う。
  261. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は先ほど一部触れて申し上げたつもりであったのでございますけれども、たとえば都市再開発、それから流通機構の整備といったようなことで開発銀行が特別の融資を御承知のように出しております。これによりまして関係府県がいわゆる団地の造成をいたしておるわけで、これは先行投資をいたしておるわけでございますけれども、北関東では実は先行投資が始まりますと、もう希望がすぐに一ぱいになってしまうというような情勢でございます。  これなどは一つの誘導の方法でありますが、それから同じく開発銀行と中小企業金融公庫で地域開発の融資というのを御承知のとおり持っております。これはやはり地域、既成市街地以外への工場を誘導するための金融上の手段というふうに私ども考えております。  それから移転いたします場合の税制の、土地の買いかえ措置でございますけれども、これは御承知でございますが、既成市街地の土地を高い値段で売りましたときに、今度は同額のものを地方に求めるという場合の、いわゆる譲渡所得をなくすると、同額であれば買いかえの際の課税をしないというこういう措置がございます。これはまあ企業にとりましては、かなり大きな税負担の軽減になっておりますし、また固定資産税の減免もあることでございますから、それらのものが大体かなり事態によっては有効な誘導手段になり得る。また、他方で首都圏の中には工場立地の規制法もございますし、公害の規制基準というものもかなりきつくなってまいりました。これらも間接的に、いわば既成市街地あるいは過密地帯から工場に外へ出ていってもらう、そういう誘導手段として効果を持っておる、これからもっと持つようになると考えておるわけでございます。
  262. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 通産大臣もう少しお尋ねしたいんですけれども、将来、日本経済、工業の伸び、そして京葉、京浜工業地帯のこの現実からしまして、工業用地はどの程度必要と、こう考えられますか、通産大臣
  263. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点、たまたま経済企画庁の開発局長がおられますので、お答え願いたいと思います。
  264. 岡部保

    政府委員(岡部保君) お答え申し上げます。  首都圏といたしましてこれから工業用地の需要という問題、これはまことに申しわけございませんが、ただいま具体的な数字を私持ってきておりませんのですが、考え方といたしまして、いわゆる重化学工業と申しますか、臨海性の工業用地というものの需要はむしろ押えぎみで、抑制ぎみの考え方でいくべきではないか。ただ御要望としては、需要としてはまだあることは事実でございますが、むしろ抑制するべきではないかという考え方でございます。むしろ内陸型と申しますか、そういう工場の用地需要というものを伸ばしていくべきではないかという考え方に立っておるわけでございます。ただいま数字をちょっと持っておりませんので、定型的な御答弁で恐縮でございますけれども、そういう考えでございます。
  265. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 重化学工業の地帯の問題でなく、いまの考え方とすれば、京葉工業地帯の皆さん方が北関東とかその他に移りたい、いわゆる内陸型工業の用地取得のために苦労しておるわけです。どのくらいの面積、大体のこと、これはわかりますか。もしわからなかったらけっこうですが、問題は、私どもの関東、北関東の場合、茨城県の場合は二億七千万坪の平地林、さらに栃木県で約二億坪の平地林、群馬県で約二億坪。約六億五千万坪程度の平地林があって、そこには工場の進出可能性を持っておる。さらに住宅の団地を考えていけば、少なくとも十万ヘクタールぐらいのものは将来の構想として考えている線。したがって、おおよその形でこの程度のものは京葉工業地帯で、先ほど通産大臣は、二八%が外へ出たいんだと、東京では公害調査局、東京都の。これは約三〇%がよそへ出たいという、こういう希望を持っているが、しかし土地はどこにとれるんだ、こういう問題で非常に困っているわけです。この点について、なおひとつ経済企画庁のほうで私にお答えできたらひとつお答えいただきたいと思います。  もし、時間的に無理だったならば、さらに私は通産大臣にお尋ねしたいのですが、とにもかくにも京葉工業、京浜地帯、都市の流通の非常に激しい中、公害の起きている中、東京都二十三区、その面積五百七十平方キロ、茨城県の十分の一ぐらいのところに一千万の人口、そして工業生産が、先ほどおっしゃったように、八〇%近いものがここから出ている。こういう現実で、また公害が起きないのはふしぎなんですよ。この公害を防ぐためにも、あるいは先ほど私は冒頭に申しましたように、大災害のあったとき、またこれを防ぐためにも、工場分散措置というものは、政府のひとつの主導型でもってやっていかなきゃならない。そのためには土地の手当てと開銀あたりの融資のしかたも、もっと積極的な姿勢で考えてやっていかなくちゃならないと、こう考えるわけですが、通産大臣いかがでしょうか。
  266. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは最近、御指摘のように、公害等の問題が加わってまいりましたので、将来からの傾斜をもう少しつけていかなきゃならぬではないかといわれますことは、私どももそのとおりだと思います。
  267. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 経済企画庁長官、それから通産大臣、所用あるそうですからどうぞ、けっこうですから。  その次に中曽根防衛庁長官にお尋ねいたします。  先般、アメリカに交渉に行かれた結果、水戸対地射爆場の問題、演習中止になって、十五年にわたる県民の射爆場返還への熱願は一部果たされたわけでございますが、その後全面返還の交渉はどのようになっているか、お尋ねをしたいと思います。
  268. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 水戸射爆場につきましては、従来、誤投下あるいは隣接東海村に原子力産業施設等がありましたので、政府は、多年にわたりこれを他の適当な施設に移転させるべく努力してまいりましたが、昨年九月、私が訪米した際、レアード国防長官等にもこの問題について強く要望いたしまして、米軍は、本年一月一日以降、射爆撃訓練を停止するに至りました。今後の本施設の取り扱いについては、返還問題を含めて、目下米側と折衝を行なっているところであり、まだ具体的な結論を得るに至っておりませんが、できるだけ早期に結論を得るように努力したいと考えております。
  269. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 爆撃演習を停止する、こういう結果、私ども政治的な感覚、さらには地元の方々とすれば、この三百五十万坪に及ぶ射爆場が、いわば作業要員も全部解雇になり、さらに米軍も引き揚げてそのままになって、いわば無人地帯になっている。こういう現実の中で、射爆停止後、少なくとも半年か一年後で返ってくるのではないか、返還されるのではないかという認識に立っているわけです。そういう考え方に立っているのですが、もう少しそのアメリカ側との交渉の経緯等について、私どもに御説明いただけることならば、ひとつ御説明いただきたいと思うのですが。
  270. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 当方といたしましては、もちろん日本側に返還されることを目的にして交渉したのでございまして、いずれそういう方向に早晩なると思います。  現在におきましては、射爆撃訓練の停止に伴い、とりあえず制限水域の解除方を申し入れ、近く実現する見通しであります。これは要するに、いままでは飛行機からの対地射爆をやっておったので、それは停止した。したがって対地射撃に必要な制限水域を解除してもらう、そのことです。しかし米軍は一月一日以降も引き続き人員、物資投下訓練を実施しておる。射爆撃はしないけれども、人員、物資の投下訓練は実行しておる。現在、射場管理部隊は引き揚げましたが、横田、ジョンソンから米人三名、日本人警備員五名、計八名が警備に当たっております。米軍提供国有財産の管理については、防衛施設庁が、大蔵省から一時使用承認を得て、これに当たっております。何はともあれ、できるだけ早期に返還を実現いたしまして、日本国民側の要望にこたえるようにいたしたいと思っております。
  271. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私のお尋ねしたいのは、さらにもう少し突っ込んでお尋ねしたいわけでございますけれども、三百五十万坪に及ぶこの射爆場、この場所がわずかの人員で管理されている、有刺鉄線で囲まれている、立ち入り禁止になっている。その中にもし事故等が起きた場合には、これは日本側としても中に入って始末するわけにはいかないし、さらに地元の考え方としては、射爆撃が停止されたということ、そして横田基地からして物資投下というのはほんのわずかだと私は考えます。そこで、もう少し現地の実情に即応して、防衛庁側としては、返還を促進することをひとつ強力に私は要請したいんですが、もう少し詳しく御説明をいただけませんか。
  272. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御説のように思いますので、われわれも返還実現方についてさらに強力に努力したいと思っております。  本件土地につきましては、茨城県知事、そのほか地元の各市町村長からも長年にわたって要望もありましたし、また自衛隊といたしましても、習志野にあります空挺団の降下練習場が、まわりにアパート群ができて、降下練習自体が非常に危険な状態になったので、この返還したあと、一部をそれに使わしてもらうように検討もしておる最中でもあります。いずれ返還見通しができた上は、関係各庁あるいは知事さんその他ともいろいろ御相談をして、円満にこの問題の処理を行ないたいと思っております。
  273. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 それでは、返還交渉を続けている——具体的にひとつ至急やってもらいたいと思うんですが、返還された場合に、このあと地は、私は、国家的な公共事業のために活用されるものと考えるわけです。かつての土地提供者あるいは地元市町村、さらには群馬、栃木、茨城の三県知事等、国土開発の一環として一大流通港湾の建設を熱望しているわけでございますが、先ほどから防衛庁長官お聞きのとおりでございます。いまちょっと防衛庁長官触れられましたが、習志野の空挺部隊が一部使用したいという考え方をいまお話でございますが、私どもは、地元のこの土地提供の過去の経緯、そしてまた流通港や公共事業という関連からしてまいりますと、やはり公共事業の中にこれを織り込んでいくほうが最も正しい行き方のように考えられますが、いかがでございましょうか。
  274. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 地元の御要望もよくわかっておりますし、ただいま建設大臣や運輸大臣の大構想も私は拝聴しておりました。しかし自衛隊側にはまた、いま申し上げましたような習志野というところは非常にアパートが林立して危険な状態にもなりましたので、われわれの要望もあるわけでございます。そういう点をよく返還前後に調整いたしまして、円満にこの問題を処理するように努力していきたいと思います。
  275. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 習志野のほうが手狭になったから——私は、やはり同じようなことが生まれてくるんではなかろうか。かりにこの射爆場のところにそういうようになっても、現実にはまわりがなってくれば同じような結果が出てくる。茨城県の場合、御承知のように、自衛隊の施設として勝田の施設、古河の施設、阿見、土浦の施設、霞ケ浦の施設、百里基地と、全国の自衛隊の施設の中で、その面積の十分の一を茨城県で占めている現状でございます。  さらに国土防衛という問題を、私は、別の問題から論じてみたいと思うんですが、国土防衛のための土地使用計画というものは、国土の総合開発という面から一つは考えなくちゃならぬということ。それからもう一つは、先ほどから繰り返されているように、首都圏の主要課題というのは人口、産業を適切に分散させるということ、それから交通網を整備するということ、それから物流体系の高度化、円滑化というものを、これはやっていかなければ、ほんとうのいわゆる防衛体制というのは整っていかないと、こういう観点を一つ持っています。もう一つ私は、ドイツのあの復興の原動力、ハンブルクの港あるいはアウトバーン、ハイウエー、こういう道路網のつくり方、これを進めたことがドイツ復興の大きな原動力であったということ。あるいはスエーデンあたり見ましても、御承知のように港、道路、そして土地を利用した工場分散、そして衛星都市のつくり方、これがスエーデンの御承知のような永世中立の原動力になっているということ、さらにスイスの状況を見てもそうだと思います。スイスが山を、地形を利用し、その水を利用して、そしてまた道路を利用した、あの中立体制を唱えた国防体制というのは、これは私は国の政治のあり方として、防衛体制のあり方として考えてみなくちゃならないと思う。そういう面から考えてみるならば、あの三百五十万坪の射爆場というものをもう少し国土開発の面から、国土の土地利用という面からも考えていく必要があるんではなかろうか。  もう一つ、あの大東亜戦争当時のことを振り返ってみまするに、あの当時、この日本の機動力というのか、科学力というのか、自動車の免許証所有者が陸海空軍、全国民合わせて十六万五千人しかなかった。車両が十八万しかなかった。現在二千四百万人の人が、国民四人に一人は免許証を持っている。これは潜在戦力ですよ。潜在防衛力ですよ。国民のほんとうの防衛力です。そういうものが国内の防衛力です。そういう観点に立ったときに、この射爆場返還というものを広い角度から、先ほど橋本運輸大臣や根本建設大臣等々が述べた観点からも、ひとつ広い視野から国土防衛、私は、防衛というものは当然必要だ、せねばならない運命を持っていると思う。さらに一九七〇年代の一番の問題というのは公害と防衛だと思うのです。公害の問題を一生懸命これを進めていけば防衛が弱ってくる。防衛を進めれば公害の問題を解決できない。こういうネックがそこにインフレの問題も起きておる。そういう観点から考えると、日本のほんとうの力というもの、そしてまた茨城県の県議会や地元民、そして群馬県の知事も栃木県の知事も、北関東を伸ばして、これを強力な一つの産業体制を整えていこう、道路の問題でも港の問題でもそうです。そういう観点から私は国土防衛というものを考えていく要があるんではなかろうかと思いますが、中曽根長官いかがでございましょうか。
  276. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私も、先生おっしゃるように、非常に総合的な視野から国土防衛というものは考えていかなければならぬと、このように思います。
  277. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 ぜひひとつそういう立場から大局的な立場、しかも私はあそこを拒否するというんではないんです。現実問題をじっくりと考えて、射爆場のようなああいうものは、臨海の原野の中にあるものはもうほかにないです。山林地帯と違います。そういう点から十分ひとつ防衛庁長官としても、施設庁のほうと打ち合わせの上、御検討いただきたいと思います。  そこで、群馬県の太田の大泉米軍キャンプの——これは四十三年の十二月に返還されたわけですが、この返還のあと始末は、これはどうなっているんでしょうか。
  278. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、私のほうの所管になりますのでお答え申し上げますが、あれは、一部は県民全体を対象としますが、太田市が中心になりまして、スポーツセンター、スポーツ公園と申しますか、そういう施設に利用したいと思っているんです。それからその他の地域は、富士重工の所有しておる地域と国有財産とが錯綜しております。これをまあ区画整理というか、交換分合といいますか、それをしなけりゃならぬ。それをした上、この国有財産をどういうふうに利用するかということにつきましては、これはもう一括利用といいますか、全体計画を立てまして、そうして有効にほんとうに国民全体のためになるような施設、あるいは工業団地にしますか、どうかということが話題になっておりますが、それも一例でございますが、とにかく切り売りはしない。一括して統合した目的でこれがお役に立つようにということをいま考えているんですが、具体案はまだできていないんです。
  279. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 そうすると、大蔵大臣にお尋ねしたいんですが、三百五十万坪の射爆場が返還された場合は、これは大蔵省の所管のいわゆる普通財産になってまいりますですね。
  280. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、一部が山林なんです。これは農林省所管の行政財産、ですから、あれが返ってくれば、農林省所管に一部はなります。しかし残りはこれは国有財産です。一般普通財産でございまするから、これはまた大蔵省で管理をすると、こういうことになります。いま初めて聞きましたが、防衛庁も御要請があるようでありますが、そういうものも含めまして、これも国家公共の用途に充てると、これはまた国の財源をあげるという切り売り主義はとらない考えでございます。
  281. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 あらためてお尋ねしたい。そうすると管理責任というのは、移管返還された場合には、大筋は大蔵大臣にあると、こういうわけですね。
  282. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国有林部分は農林省、それからその他の部分は大蔵省と、こういうことに相なります。
  283. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 こういう返る場合のこと、返った曉のあと地利用という高度利用の面から申しますと、大蔵大臣としても、これは射爆場の全面返還というものをひとつ急速に具体的にする必要があると思うんですが、いかがでしょうか。これはひとつぜひ政府部内の意向として。
  284. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私もそう考えます。まあ中曽根長官に大いに努力していただきまして、一刻も早くこれが返ってくるようにということを念願しております。
  285. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 大体防衛関係の問題、これ以上申し上げることなしに次の問題に移りたいと思います。  大蔵大臣に、学園都市の財政負担の軽減措置の問題についてお尋ねしたいわけですが、この前の六十三国会の際に、大蔵大臣は私の質問に対しまして、地元の六カ町村は財政負担能力はきわめて低いと、しかも土地は安い値段で提供したので、政府としてもできるだけの公共事業の面でも見ていきたいという考え方、さらに学園都市立法の際に、中川政務次官も、地元の財政能力に応じた財政援助をするというようなことになっていますが、具体的にもう公共事業やその他のものが進められていますが、この財政の負担軽減措置については、大臣としてはどのように考えられるか、お尋ねしたい。
  286. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず特別措置法によりまして、公共事業費のかさ上げというか、特別の補助率ですね、これを適用いたしまして負担の軽減をはかると、それから自治省にもお願いしてあるわけですが、この交付税の配分ですね、これにつきましても考えていただく、なおいろいろ施設をしますので、起債等の必要がありますが、起債についても格別の便宜をはからうと、こういう各種の対策をとっております。とにかく関係町村は財政力は弱いです。弱いですから、それらが支障がないように今後とも気をつけてまいりたい、かように考えます。
  287. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 新産都市やその他の特例かさ上げ措置、これはよく私どもわかっておるわけですが、それであっても現実には無理だと、あすこに公共事業というものは約五百億、そして地元のあの貧弱な町村としても約三十億から五十億は持たなくちゃならぬ。財政規模から言うと、あの六カ町村では、昨年あたり七億程度、総合計で。その中でそういうものをやっていかなくちゃならぬということを考えると、起債のめんどうだけでもなかなかこれはできないし、あるいは住宅公団等の立てかえ工事でやっていっても、現実は立てかえ工事であってあと負担しなくちゃならぬ。こういう現実問題が重なっているために関係町村長は頭を痛めておるわけでございますが、特別措置は何かありませんか。
  288. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 特別措置というのがただいま申し上げました高率補助、それから公団なんかがいろいろお手伝いをすると、こういう措置、それから交付税の配分にあたりまして特別に配分額を厚くするという措置、とにかくいろいろの措置を集中的にやらなけりゃならぬだろうと、こういうふうに考えております。この関係市町村の財政規模というのは、いま七億というお話でございますが、これは七億じゃないんです。二十五億ぐらいになるわけであります。それにいたしましても、なかなかあれだけの公共事業を執行すると、その負担は容易なことじゃないと思いますが、中心となるのはやっぱり補助率のかさ上げと、もう一つは交付税の配分ということじゃないかと思いますが、なお、関係町村が財政上これにたえ得るかどうか、これによく注意してまいりたいと、かように考えます。
  289. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 財政能力がそういう低い中でいま苦しんでいるわけですが、起債その他の特別交付税の問題で十分めんどうを見るというわけですが、ひとつ大蔵大臣のほうから、自治省のそれぞれの担当の人にもぜひひとついまの大蔵大臣の考え方をよくわかるように、また、地元の人も納得して不平不満が起きないように、そして成田のような二の舞いが起きないように、ぜひひとつ御心配をいただきたいと、こうお願いして私の質問を終わります。
  290. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもって中村君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  291. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、上田哲君の質疑を行ないます。上田哲君。
  292. 上田哲

    ○上田哲君 三月もあと半分であります。四次防の防衛庁原案の作成は、スケジュール上は、いかがですか。
  293. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 連日、具体的にいま詰めをやっております。きょうもこれが終わったら、私は行って、やるつもりであります。
  294. 上田哲

    ○上田哲君 予定どおりですか。
  295. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大体、予定どおりいくだろうと思います。
  296. 上田哲

    ○上田哲君 前二回を通じて、四次防のさらにこまかい内容について説明をしていただくことになっています。ぜひ具体的な説明を期待します。
  297. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 次の新防衛力整備計画のうちで、陸上自衛隊に関する部分を大体申し上げます。これは、あくまで防衛庁の原案、目下策定中のものでありまして、多少の変動や流動性はあるということを御承知願いたいと思います。  まず第一に、師団等の戦闘力の向上、これは戦車の更新それから増強など、装備の近代化を推進する。その結果、戦車、火砲等の供与品・国産品の比率は、現在の防衛計画は五対五でありますが、次の防衛計画の末期においては二対八にしたい。大体、戦車は四百両程度調達して、現在の三次防末が七百両に対して、千両程度にしたい。第二に、ホーク。三次防完成時五個隊に加え、さらに三個隊を補強する予定であります。ヘリコプター。各方面のヘリコプター部隊を中心にし、空中機動力を大幅に増強する。主要なヘリコプター機数は、期間中に約二百三十機を調達いたします。  次に、予備自衛官。予備自衛官につきましては、三次防末三万九千人から六万人に増員する。  次に、海上自衛隊につきましては、艦艇、大体三次防末が約十七万六千トンでございますが、次期防においては二十四万五千トン程度に引き上げたい。期末の勢力は、三次防末において約二百隻、約十四万四千トンでございますが、次期防におきましては約百七十隻、十八万五千トン内外になる見込みであります。なお、新規建造艦艇のうちには、高速ミサイル艇十四隻、潜水艦九隻を含みます。それから、次に、航空機。対潜用航空機約百機を調達し、三次防末、三次防完成時において約二百機でございますが、次期防完成時においては約二百二十機とする。  航空自衛隊。航空機の勢力は、三次防完成時において約八百六十機でございますが、次期防完成時においては約九百機にいたしたい。要撃戦闘機部隊として、沖繩配備一個隊及び昭和五十四年度減耗補てんのための一個隊、計二個隊のファントム部隊を新たに整備するため、既定の百四機に加えてさらに五十四機を調達する。その結果、F104部隊は三次防完成時六隊、次期防完成時は四隊、ファントム部隊は三次防完成時四隊、次期防完成時六隊となります。要するに、F104とファントムが入れかわって四六、六四と、こうなるわけであります。  ナイキ部隊は三次防完成時五個隊に加え、さらに二個隊を補強する。それから偵察機の更新、現有偵察機RF86F部隊をRF4E部隊に更新する。このため、RF4E約二十機を調達する。以上のほかに、C1輸送機約三十機等を調達する予定であります。  なお人員につきまして、私が次期防において約八千五百人程度増員を要すると申し上げましたが、四十六年度予算で沖繩関係の予算は増員分が認められなかったので多少変動がある見込みでございます。  その他研究開発といたしまして、将来の防衛力の向上に役立つものとして特に研究開発には力を入れて、総経費約千七百億円、三・三%を見込んでおります。これは、三次防が四百八十九億円であるのに対して三・五倍にあたります。研究開発の方向は航空機、ミサイル、電子機器等が主要分野でありまして、従来は航空機に非常に重点が注がれておりましたが、電子部門やミサイル等においてもかなり伸びを多くしようと考えております。  それから情報指揮通信、情報機能を全般的に充実向上させるために統幕に情報中枢機能を整備して、三自衛隊の情報の統合的分野をはかる予定です。もっともこの情報中枢機能は長官直轄にして統幕とも連繋を持たせるという案もいまありまして、これはいま流動性を持っております。それから通信の抗堪性を高めるため、本土を縦貫する自衛骨幹通信計を建造いたします。  所要経費内訳のおもなものについて三次防との割合を見ると、陸上自衛隊が約一・九倍、海上自衛隊が二・三倍、航空自衛隊が約二・八倍となっております。研究開発費は約三・五倍でございます。人件費の割合等を見ますと、人件費の全体に対する割合は三次防が約四四%であったのに対して、次期の計画では三六%になります。つまり機械化、省力化を進めるということがここに出てきているわけであります。次期防の所要経費がかりに五兆七千億円とした場合に、かりに防衛関係が等比的に伸びるとすれば、大体逐年一八・二%程度の伸び率となります。五兆七千億円ないし五兆八千億円は、期間中のGNP総額六百三十兆、これは新経済社会発展計画における見込みでございますが、これに対しては〇・九%に当たります。このうちの五兆七、八千億と、この前申し上げましたが、大体従来の三次防に当たる金額は五兆二千億でございまして、その間の六、七千億というものは人件費の増、ベースアップによるものを見込んで、そのようにしてあるわけであります。以上でございます。
  298. 上田哲

    ○上田哲君 五兆七千億、一八・二%と、GNPの〇・九%という数字が出ました。いままで新聞でいわれていたわけですが、お隣におすわりの大蔵大臣、これについてどういうふうにお考えですか。
  299. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) とっさのお話なんで、正確なお答えをするわけにはまいりませんが、これは一八・二%の増加と、こういうと今後の日本経済の発展、これはまあ超高度成長から安定成長に移る、そういう際における財政の規模、そういうようなものから見るとなかなかこれは重大な問題であるというふうに考えます。しかし私は、前々から申し上げておりまするように、自衛力は漸増しなきゃならぬ、こういうふうに考えておりますので、財政と新四次防との調整をどうするか、慎重の上にも慎重を期してまいりたい、かように考えます。
  300. 上田哲

    ○上田哲君 以前から、金には心配ないというお話でしたが、この数字をごらんになって、そのお考えはどうですか。
  301. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ客観情勢ですね。内外の情勢それから経済力の情勢、それから国民生活の状態、そういうものから見まして、これはどうしても軍事力に重きをおかなきゃならぬ、軍事力というか防衛力ですね、重きを置かなきゃならぬ、こういうことになれば、このくらいの金は何でもない。私は、あるいはもっとと言うこともあり得るかもしらぬ、こう思います。しかし現実の問題としては、いまGNPにおいて防衛費は〇・八%、その辺は一つ目標である。それから予算の中で七%、その辺も一つ目標である。それから社会保障費それとの対比、これも一つの大きな基準になるだろう。そういうものを考えまして、そのときどきの時点できめていかなきゃならぬ、こういうふうに考えております。
  302. 上田哲

    ○上田哲君 前々からの質問でくどいようですけれども、一般会計の伸びの平均よりは二%近く上回るわけです。それでたとえば、民生関係などに対する圧迫という問題はありませんか。
  303. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それは相対的な問題だと思うのです。内外の情勢が緊迫して自衛力を増強する必要が非常に高まってきた、こういう状態であれば、他の経費を多少詰めても自衛力を増強しなきゃならぬ。ですから、そういう問題をどういうふうに判断するか、その辺に問題があるのです。私は、基本としてはいまのGNPに対する比率、予算の中の比率、それから他の諸経費とのバランス、そういうものを一応基本として考えなきゃならぬのじゃないか、かように考えております。
  304. 上田哲

    ○上田哲君 他の経費を詰めてもやらなきゃならぬというお話がありましたけれども、詰めねばならぬような状態ですか。
  305. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その辺は、これからの防衛会議ですね、これがあるのですから、そういうところで十分論議を尽くしてやらなきゃならぬと、かように考えます。
  306. 上田哲

    ○上田哲君 もう大体きまっちまったような感じがいたしますけれども、スケジュールはこの前も大体御確認になりましたけれども、八月ころまでに政府案がこれをもとにしてきまるということでよろしいですか。
  307. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この前も申し上げましたように、来年度予算が第一年次にあたりますから、概算要求の加減もあって八月ごろにはきめたいと、そう考えております。
  308. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは私といたしましては、なおよく、内閣全体の問題でありますから、防衛庁長官の要請を踏んまえながら、内閣全体で相談しなきゃならぬと、かように考えます。
  309. 上田哲

    ○上田哲君 四次防の概要が出ましたわけですから、正式に、中を少しずつ伺っていきたいのですが、情報機能を非常に重視すると言われる。防衛庁長官直轄の統合情報中枢機能というのですか、それをもう少し説明してください。
  310. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 従来は、三自衛隊におのおのそういう情報あるいは調査部門がございまして、統幕でそれを統合調整するという形になっておりますけれども、比較的に情報の重要性に関する認識が薄かったと思うのです。そこで各三幕の情報機能を生かしつつ、これを統合してそしてこれを解析し、判断するところが非常に弱いように思うのです。そういう意味において、解析し、判断する中枢を強化する。それを統幕に置いていいか、あるいは今度アメリカのレアード国防長官の国防白書にも書いてありますが、あれはブルー・リボンとか何とかいいましたけれども、勧告を受けてやはりシビルでやる、そういう案を採用すると書いてありました。大体そういう情報の判断というものは制服を着た人間よりも、もっと視野の広い人間がいいという形で、アメリカもそういうふうに変化しつつある。そういう情勢も踏まえまして、それをどういう形にするか、検討しておるという最中であります。
  311. 上田哲

    ○上田哲君 御説明の中にはなかったのですが、やはりそういう機能を、外側へのそういう機能を含めて非常に注目されているのはAEW、早期哨戒機ですか、非常に大物であります。いまのスケジュールで行けば、もう旬日余りで決定をしなければならないことになる。AEWの決定はもう目の前に来ていると思いますが、いかがですか。
  312. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは採用すればかなり多額の金額を要するものでありますから、慎重の上にも慎重を期してやっております。しかし三月中ぐらいにはもちろんきめなければならぬと思っております。
  313. 上田哲

    ○上田哲君 AEWを採用するということですね。
  314. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 採用するかしないかも含めて慎重に検討しておる最中であります。
  315. 上田哲

    ○上田哲君 それならば伺いますが、常識的なスケジュールでいえば、もうほんとうに数日の間にきまらなければ原案に入ってこないことになる。総額が五千七百億ということになって、これだけ大きいものですから、私はもう目の前に来ていると思いますが、明らかにしていただきたい。
  316. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま作業を一生懸命やらせておりまして、懸命にやっておるという最中で、いまのところ、いつということを申し上げる段階には至っておりません。
  317. 上田哲

    ○上田哲君 数日の間に決定をするというふうに私どもは聞いております。数日後に決定することになっていて、この場でまだその話はできないということになると、これはとても国民の理解を求める自衛隊ということにはならぬでしょう。きまるのならば、もう長官の腹は確定していなければならぬと思います。採用する腹なんですか、採用しない腹なんですか。
  318. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのことも含めていま慎重に検討しておるという最中で、私がいろいろ要求している資料、説明がまだ完了していないわけなんであります。したがいましていま、いつ決定をするということを申し上げかねる段階であります。
  319. 上田哲

    ○上田哲君 採用しないことはあり得ますか。
  320. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 採用するかしないかも含めて目下検討中と、さっき申し上げたとおりであります。
  321. 上田哲

    ○上田哲君 採用する場合には、もういま決定しなければならないと私は思いますけれども、その時限はいつですか。
  322. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) するかしないかも含めて目下検討中と申し上げているのでありますから、これ以上どうも申し上げにくい状態であります。
  323. 上田哲

    ○上田哲君 するかしないかをいつまでにきめますか。
  324. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく三月一ぱいくらいまでの間に、この問題はセットしたいと、そう考えております。
  325. 上田哲

    ○上田哲君 長官は、AEWは、何やらにダイヤモンドというようなものだと言われましたが、その考えは変わりませんか。
  326. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はしろうとで、そういう兵器については初めて聞いたようなところもありまして、われわれのしろうと考えではそういう感じもすると、そういう疑いを晴らさなれけばならぬと、そういう意味でその発言をしたのであります。
  327. 上田哲

    ○上田哲君 いまはダイヤモンドを手にしたいと思っていますか。
  328. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国のためにどうしても必要なら必要でありましょうし、それが必要でないならば別に必要でもない、そういうことであります。
  329. 上田哲

    ○上田哲君 必要でない状態というのは、どういう状態ですか。
  330. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それだけの大きな金額をそこに投ずるという選択性、プライオリティの順序がそういうふうな重要性を持っているかどうか、そういうことでもあります。
  331. 上田哲

    ○上田哲君 AEWを入れなければバッジシステムは死ぬのですか、生きるのですか。
  332. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 完全にはなりませんけれども、機能はしております。現在でもかなりの機能はしておると思っております。
  333. 上田哲

    ○上田哲君 しかしAEWがなければ非常に不完全なものになるのですか。このままでも五年間はやり得ますか。
  334. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現在のレーダーによりますと、レーダーの光が直線で伸びていくものですから、地球がまるいので低空から入ってくるのをレーダーがつかめることができないわけです。そういう意味で低空から入ったくるものをつかめるために、飛行機を飛ばして、電波を発射して低空から入ってくるものを捕捉するという飛行機がAEWであります。ですから、完全に日本の防空システムを整備しようとすれば、高空から来るのも低空から来るのも、できるだけ早期に捕捉するというのが好ましい考え方であって、そういう機能は必要であります。しかしそういう飛行機を手に入れるということが、かなりの金額にもなりますものですから、ほかのいろいろな諸元等々も考え、また全体の次の防衛計画のトータルサムがどの程度にそのために変わっていくかということも考え、ほかを犠牲にするに対してどの程度の考慮をしたらいいか、そういうようなことも考え、選択についてまだ私の手元に確固たる判断をする資料が整備されていないというのが実情でございます。
  335. 上田哲

    ○上田哲君 そういう機能は必要だと。そうすると、そういう機能がなくては、あなたが重点施策と考えておられる情報機能の充実ということにならないではありませんか。
  336. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 完全ではありません。
  337. 上田哲

    ○上田哲君 どのくらい完全でないかということを、他の費目との関係云々ということを言われるところで、もう少し具体的に説明してください。
  338. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは先ほど申し上げましたように、高空から入ってくるものは現在のレーダー網で捕捉できる、しかし低空で入ってくるものについて捕捉できないということは、現在の防空網から見れば非常な脆弱性であり欠点でもあります。しかし低空で入ってくるという場合には相当な——エンジンを全開しますから——ガソリンの消費量が多くなる。そういうふうな場合で来た場合に、滞空時間やら航続距離やら、そういうものも考えて見、それからいま航空自衛隊や海上自衛隊でやりたがっているいろいろな問題もございます。自衛官の待遇改善の問題、そういう宿舎やその他の問題でも非常にいまがたぴしゃしている問題もあるわけです。そういうような問題とのプライオリティーをどう判断するかということが大事なので、単にその武器の性能で優秀だからといって、いいおもちゃだからといってすぐ手に入れたいと、そういうような簡単な論理で言うべきでない、そう考えておるわけであります。
  339. 上田哲

    ○上田哲君 私どもはAEWを買うことに意味があるという主張に立つものではありません。しかしあなたの主張されておられる「長い耳」の戦略体系からするならば、このAEWというものは、おそらくバッジシステムとの関係において不可欠のものでなければならないと理解をしています。もしそうであるならば、AEWを完備されないということになれば、中曽根防衛構想は破たんすることになりませんか。
  340. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 機能的には、先ほど申し上げましたように非常に重要な機能であります。それが欠けているということも防空体制から見たら欠点であります。だがしかし、ほかのものとの選択性、プライオリティーという面は、単にAEWのみにとらわれないで、ほかの諸元もやはり考えなければならぬ情勢であります。そういう意味で目下検討しておるのであって、完全ではない、がしかし情報機能の充実という面については、ほかの部面でもいろいろやるべきこともありまして、たとえば在外武官をもう少しふやすとかそのほかのこともございます。そういう意味において、総合的にこれをとらえていただきたいと思うのであります。
  341. 上田哲

    ○上田哲君 財政的許容があればぜひほしいということですか。
  342. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それも一つ条件です。
  343. 上田哲

    ○上田哲君 くどいようですが、一つというと、ほかは何があるのですか。
  344. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 財政的な面もありますし、しかし代替能力がほかのものでないかとかあるかとか、そういういろんな問題がまだ考えるファクターとしてはあるわけであります。
  345. 上田哲

    ○上田哲君 集中的に言えば、財政的許容があればほしいのだという意思表示だと思いますから、ファントムのときにも一機二十億円ということが問題になった。これは七十機とも伺っております。こういう大きなものを、全体の金額からいえば決して大きなパーセンテージではないでありましょうけれども、シンボリックに大きいこうしたものが、やはりあっという間にきまってしまうとか、説明が十分でなくてきまるというようなことがないように、この際私はくどく申し上げているわけです。  そこで、財政的な許容があればほしいのだというふうに理解をした上で具体的に伺っておきたいのですが、ひとつとるかとらぬかというところまで来ているわけですから、AEWについての性能をまず伺っておきたいと思います。
  346. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 最近の航空攻撃は低空における攻撃、五千フィート以下における攻撃が常態になっております。そういたしますると、日本の周辺ではレーダーサイトの高さによってカバレージが違ってまいりまするけれども、低空攻撃の場合に百マイル以内、通常ですと、高高度でありますと二百マイルくらいきくわけでありますが、低高度の場合には百マイル以内ということであります。そういうことではレーダーでキャッチをいたしまして飛行機に通知をし、飛行機を上げて飛行機を管制して会敵させるというような操作ができかねます。時間的にかないません。したがいまして、低空において相手をキャッチし得るような距離、おそらく百マイル以上のものを要求し得れば、その程度において相手方の高さなり位置なりを確認し得る、そうしてそれを飛行機に通知し得る能力、そういうものを要求するわけであります。
  347. 上田哲

    ○上田哲君 価格はどれくらいのものでしょうか。
  348. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 購入の場合と研究開発の場合の見込みとでそれぞれ違いますが、大体一機七十億ないし八十億程度にお考えいただければよろしいかと思います。
  349. 上田哲

    ○上田哲君 かりに、長官は必要を認められているわけですから、これを日本列島に配置するということになれば、上限下限いろいろあると思いますけれども、必要機数、十分機数ということでいうと、どういうことになりましょうか。
  350. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 予備機をどういうふうに見るかとか、十分な機数をどういうふうに見るかとかで、なかなか数字が違ってまいりますが、数十機という、範囲の低いほうの数字という感じであります。
  351. 上田哲

    ○上田哲君 ちょっと物理的によく数字がわからなかった、申しわけありません。
  352. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 金持ちのアメリカでも相当たくさん持っているわけではありませんで、わが国が持つといたしましてもせいぜい二、三十機の範囲内でとめるべきであろう、また現実に整備する機数というものはその中でまた別途検討しなければならない、そういうふうに考えます。
  353. 上田哲

    ○上田哲君 実際にこれを使う場合には、どこをどういうふうに飛ぶか、公海、領海という問題などがあると思います。その辺をもう少し詳しく。
  354. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 先ほど申し上げましたように、低空攻撃を予想いたしますると、地域、海域によって違いまするけれども、わがレーダーサイトのレーダーのカバレージが百マイル見当から以内と申せば、AEW機を飛ばすのもそれから先に出た海域を飛ばすということになります。
  355. 上田哲

    ○上田哲君 これを配備するという場合には購入になるのでしょうか、研究開発になるのでしょうか。
  356. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それがいま検討しているところなので、完成品を買うのか、あるいは技術導入するのか、あるいは国産をやるのか、あるいは部分的に技術導入をやるのか、あるいはこれは中止して延期するのか、そういういろいろな選択があるわけです。そういうような各項目について検討を加えているという状態であります。
  357. 上田哲

    ○上田哲君 私の理解では、当面四、五機を購入をして、五次防にかけて研究開発を進めるというようなことだというふうに推理しておりますけれども、情報とはあえて言いませんが、そういう考え方はどうでしょうか。当たっておりますか。
  358. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま初めてそういうお考えをお聞きいたしましたが、すべてを含めて検討しているという状態であります。
  359. 上田哲

    ○上田哲君 何しろ七十億から八十億というわけですから、やはりこういうものが一つ指標にもなるので、国民理解という点からいっても、やはり抜き打ちというようなことになってはいけない。スケジュール上でいえば、もう寝ないでやっても二週間しかない時期へきているのですから、まだ頭の中で、腹の中で考えているといわれても、具体的にはやはりもうある程度可及的すみやかな時期を選んでお話しになることが私は正しいだろうと思うんです。そういう姿勢をお持ちになるかどうか。そこをひとつ伺います。
  360. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私ら国会議員が議院内閣制で行政官庁を受け持たされているというのは、やはり国民の意思を代表して防衛というものを監督し、あるいは指揮するという立場にあるからだろうと思います。したがいまして、国民の皆さまの気持ちになって税金のむだづかいがないように、また、性能その他においても落ち度のないように厳重に慎重に監督し、実行していく必要があると思っておるのです。ですから税金の納入者の素朴な疑問というものに完全な解明が与えられるようなところまで自分たちの考えがまとまらなければ、そうなかなか簡単に踏み切っていいものではありません。私はそういう国民の代表だと思ってあらゆる問題について研究を命じ、報告を命じ、いまやっておる最中なのであります。したがいまして、慎重にやるという方針は、やはり続けていきたいと思っております。
  361. 上田哲

    ○上田哲君 慎重はけっこうです。一つお約束をいただきましょう、いまのお話を具体化して。いつごろまでに——もうとにかく長い話でないことははっきりしているんですから、いくにせよいかざるにせよ、いつごろまでにはきめると、そのあたりをもう少し具体的に伺いたいと思います。
  362. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのことがいま申し上げましたように、ここでお約束することができない段階でありますと申し上げておるのであります。
  363. 上田哲

    ○上田哲君 くどいようですが、二週間と一週間に分ければ一週間以内にきまらなければならぬと私は計算しているんです。それでいいですか。
  364. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく今月中と申し上げるということで御了解願いたいと思います。
  365. 上田哲

    ○上田哲君 今月中に——長くても今月中に採否を決定をするというふうに。できればほしいということで理解をします。  大蔵大臣、七十億、八十億というのは、それは小さい単位でありますからトータルでお考えになるとは思うけれども、こういうのはどうでしょう。
  366. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまお話を伺っておりますが、これは防衛庁内部の話なんです。まだ私どものほうへ別に相談があるという段階にはならないのでありまして、いずれ四次防というものがそれらを織り込んできまっていくだろうと思います。そして防衛庁原案ができます。そしてまあ、特に大蔵省には緊密なる接触がとられる。大体、大蔵省も大体この程度かという見通しに立って防衛庁長官は国防閣僚会議をまあ要請すると、こういうことになろうと思うのであります。まだ私のほうにはその具体的な話は全然きてない問題でありますので、ここでどうのこうのとはお答え申し上げかねるのであります。
  367. 上田哲

    ○上田哲君 ここから耳を澄ませていましたら「ほう、七十億か」という驚きの声が聞こえましたが、驚きましたか。
  368. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ驚いたというか、ずいぶん金を食うもんだなあと、こういう感じがいたしました。
  369. 上田哲

    ○上田哲君 外務大臣、公海上を飛ばなければならぬです。こういうものが、電子計算機を積んでいるんで別にそれ自身は危険じゃないだろうが、公海上をたくさん飛んでいくと、数十機なんということはすぐにできよう道理はありませんが、こういう点はどうでしょうか。
  370. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 公海上の航空と一口に申しましても、いろいろの場合があると思いますが、たとえば公海上を航空して、さらに進んで他国の領空に及んでいろいろの行動をするというようなことが、あるいはお尋ねの中に含まれているかと思いますが、それが、またいかなる場合にどういう点をどういうふうな角度で問題にされ、論議されるか、いろいろのケースがあると思いますから、もし何でございましたら、いろいろの御設問の場合をあげてお尋ねいただきたいと思います。また法律的、条約的な解釈等の問題でございましたら、政府委員からも御説明いたさせます。
  371. 上田哲

    ○上田哲君 じゃ一つだけ。実際に公海上を飛んでいるということになると、いつでも国際紛争が起きるのは、領海か公海かということになります。なかなか限定しがたいところで水かけ論というのでしょうか、そういうことになってきます。専守防衛ということはよく理解をしておりますけれども、そういうものを飛ばすごとが平和外交を進めるということ、特にいろいろな議論がある中で、好ましいとお考えになるかどうかという予防措置の問題として、御見解をまず伺いたい。
  372. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 専守防衛の立場に立っても、公海上の何か必要とする目的のために飛ぶ場合におきましては、これは条約上、法律上、国際法上、私は問題はなかるまいと思います。
  373. 上田哲

    ○上田哲君 そこから先は仮定の問題になりますので、後のまた議論にいたしましょう。  問題をひとつ陸上自衛隊のほうに移します。陸上自衛隊の師団装備、これを近代化するということばでありましたけれども、その内容を御説明いただきたい。
  374. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) ただいま長官が申されましたようなことでありまして、戦車の数を約四百両ふやして千両にするというようなこと、それから装甲車あるいは対戦車の誘導弾、それから自走火砲、そういったものの増強、それから高射機関砲、L99もありますが、そういうもの、それからホークが先ほどありましたように五個大隊が八個大隊になるといったようなものが主たる内容になります。
  375. 上田哲

    ○上田哲君 私はここまでまいりますと、GNPの何%とか、将来の兵力の上限がどこにくるかというような大ざっぱな議論ではなくて、一つ一つの軍事力というのでしょうか、防衛力というのですか、それがどういう——戦闘力といったら間違いが起きるので、私は迎撃能力と言いたいけれども、どういう迎撃能力の積み上げかという、積算の上に一つの姿を置かれたいと思うし、少なくともそういう説明がもうあるべきだ。仮想敵がどこにあるかなんという議論はいたしません。共通の場を求めるために、その能力測定をしたいと思うのですが、そういう点で私は、ORなんという役目が、かなり未熟ではあるけれども、努力をされているというふうに考えてみたいのです。そこで、陸上自衛隊の師団装備が近代化されるということで、三次防から四次防にかけて装備が近代化された、強められたということが、どれだけの迎撃能力をふやしたのか、こういう根拠があるかないかということをひとつ聞いてみたいと思います。
  376. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 各国の軍隊でも、わが自衛隊でも同じでありますけれども、そういった物理的な能力を一応比較をするわけでありまして、実際の戦闘力となりますると、地形なり用法の関係あるいはもちろん海空の共同作戦その他によって非常に違ってくるわけでありますが、単純に火力のみをもって比較をいたしてみますると、たとえば火力指数という評価のものさしの基準があります。これでやりますると、たとえば各種火砲の精度、距離、それから弾薬量——一分間に発射される弾薬量といったようなものを総合計いたしまして、これを小銃に換算するのだそうでありますが、こういうような数値でもってまいりますと、現在、四次防以降において装備定数を改めて、火器の増強をはかろうとしておるわけでありますが、これは外国の水準にならって増強しようとするわけでありますが、四次防ではまだ途中の段階でありまするが、標準定数を満たすようになりますると、現行の定数のほぼ四割くらい増ということになろうと思います。
  377. 鈴木強

    鈴木強君 関連して。  防衛庁長官にお尋ねしますが、いま上田委員の御質問は、防衛庁でいませっかく四次防を作成する段階における一つの試案といいますか、そういうものだと承りますが、一体四次防が完成した場合に、現有兵力から見てどの程度の力がふえてくるのか。われわれは、一面には憲法第九条というものがあるわけです。したがって、戦力と自衛力ということでいままでやってきておるのだが、九条の自衛力ということでやっていくならば幾らでも自衛隊をふやす、装備をふやしていっていいのだ、そういう考え方が終始流れておると思うのです。しかし、やはり九条そのものを頭の中に入れておかないといけないと思うのです。そういう憲法上の問題との関連ではどういうふうになると考えておるのか、この二つをお聞きしたい。
  378. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 憲法上との問題は、いつも私たちの頭を支配している重要なポイントであります。したがいまして、そのことは、一面におきましては、その兵器の選択、攻撃性とか、あるいは他国に対して脅威を与えるような性格を持つものは持たない。そういう兵器の選択、それから運用の方針等にも出てきているわけであります。それから絶対量等におきましても、この列島防衛にふさわしい程度のものにしておかなければならない。そういう意味において、客観情勢国際情勢推移等を見つつ、どの程度がこの列島防衛の限度内として認められるか、そういう配慮を持って絶対量についても考えておるところであります。この点は、われわれとしても一番私たちの頭の中にあって、そして慎重な配慮をしておる部分であるということを申し上げたいと思います。  最初の御質問はどういう御質問でしたか、よくわからなかったわけですけれども……。
  379. 鈴木強

    鈴木強君 航空機の軍事装備の研究開発が相当に進んでおりますけれども、それでかなり思い切った内容的な質的な変化があると思うのです。したがって、現有の自衛隊の力というのから見て何倍くらいの力になるか、そういうこと、四次防の終わる段階で……。
  380. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何倍かということばを単純には言えないものだと私は思います。金額的に見ますと約二・二倍程度になります。それで、重点指向する部面が、いま申し上げましたような機動力とか、火力とか、そういう面にもございます。ですから、じゃ総合的に見て防衛力として何倍かと言われると、五割増しとか、八割増しとか、そういうことばでは言えないような情勢で、その点、発言することは差し控えておきたいと思います。
  381. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、外側からとか上限をという議論をとりあえずおいて、中からどういう積算でつくったんだと、こういうことを伺いたいわけで、いまの政府委員の説明の中にあった火力指数ということが、防衛庁では具体的な陸上自衛隊の迎撃能力を算出する上で基準になっているわけですね。
  382. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 先ほど鈴木委員の御質問の場合に、なかなかお答えし得ないのは、いろいろな条件が入るからであるわけでありますが、いまの御質問の場合には、火力指数という一つの物理的なものさしを選んで、それで整備目標と考えるからそういう比較ができるわけで、一つのものさしとしてそれを取り上げております。
  383. 上田哲

    ○上田哲君 火力指数というのは世界的に共通なものですか。概念として、基準じゃなくて。
  384. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 全世界的にどういうふうにやっておるかわかりませんが、一応自衛隊がやる場合に、外国の装備表がわかれば見当がつくということで、世界共通とは申しませんけれども、比較的客観的にとらえ得るものさしだと考えます。
  385. 上田哲

    ○上田哲君 ひとつ防衛局長のほうから「火力指数とは」ということをわかりやすく説明してください。
  386. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 一分間に打ち出す弾薬の量、これはたとえば百六ミリの砲でありますと何キログラム、小銃ですと何グラムということになりましょうが、そういうもの、それから正確度、それから射距離、そういうものを総合しまして、たとえば一万なら一万という数字になります。そういうものを一つの師団の総合火力としてとらえて、それを一〇〇なら一〇〇、一なら一という指数に換算してまいる。そこで、まあこれは師団をとらえたわけでありますが、連隊なら連隊と他の連隊、旧師団と新しい師団の比較、そういったような場合に、客観的な数値としていま申し上げたようなものを総合して指数としてとらえるということであります。
  387. 上田哲

    ○上田哲君 師団、連隊にはいろいろな単位がありますけれども、その一定単位で火器の一分間の発射弾量、有効射程、命中精度、というようなものを、いろいろな火器はあるけれども、小銃に換算をして比べると、こういうふうに理解していいわけですね。
  388. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) さようであります。
  389. 上田哲

    ○上田哲君 陸上自衛隊の兵力というのは、軍事力というのは、そういう火力指数によって一義的に基準化されて積算をされている、というふうに考えていいわけですね。
  390. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 師団の装備の定数の変更によってどういうふうに火力がふえたかという場合の基準に使います。また、外国の師団との比較の場合に、わが国がどういう位置づけにあるかという場合に、そういったものさしを使います。
  391. 上田哲

    ○上田哲君 陸上自衛隊十七万九千というような数字は、上側からがぼっときめるのじゃなくて、下からそういう形を積み上げて出ている数値だと考えていいか、ということです。
  392. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 十七万九千とか十八万とかになりますと、いまのような火力指数とは直接は関係ございませんで、一応日本の陸上防衛のためにどういう第一線部隊が必要であるか、あるいはそれの補助部隊がどれぐらい必要であるか、そういうものの積み上げである、そういうふうにお考えいただいたほうがよろしかろうと思います。
  393. 上田哲

    ○上田哲君 師団についてはそうなっているわけですね。
  394. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 師団につきましては、この席上でも再々長官から御説明がありましたように五つの方面隊に二個師団ずつ最低限のものとして割り当てまして、北海道は重要であり、広い地域でもありいたしますので、二個師団を加え、また中部方面隊は非常に広い地域を管轄いたしておりますので一個師団を加えて合計十三にしてある、ということであります。
  395. 上田哲

    ○上田哲君 そういうことじゃなくて、師団を一つの火力指数の単位として積算をしてあるんですね、ということです。
  396. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) さようであります。
  397. 上田哲

    ○上田哲君 そうすると、九千師団が一つの標準なんでしょうが、九千師団を基準なら基準とした場合に——九千師団が基準ですか。
  398. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 一個師団四個連隊で、これが基準編成で九千師団になります。なお、九千師団が七つありますから、まず基幹部隊とお考えいただいてけっこうだと思います。
  399. 上田哲

    ○上田哲君 九千師団の火力指数を一と考えて計算をしているというふうに私は伺っているのですが、それに間違いありませんか。
  400. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 他の類似の師団、国内でいいますと、七千師団でありますとか、北海道にある機械化部隊である第七師団などの比較の場合、あるいは外国の師団との比較の場合に、それを基準に使っておると申してよろしいと思います。
  401. 上田哲

    ○上田哲君 わかってきました。そうすると、陸上自衛隊の場合は、九千師団を単位を一とする火力指数によってすべての火砲その他の力を一義的に基準化して、それで迎撃能力を積算をしてつくっていくと、こういうことで配備していると、こういうことになるわけですね。
  402. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) いまの御質問が正確であるかどうか、ちょっとわかりにくかったんですけれども、私が申し上げるのは九千の師団を一にいたしまして、その場合に七千師団はどれぐらいの火力指数になるか、第七師団はどうか、外国の師団はどうであるか、そういう比較の基準に使いますということであります。
  403. 上田哲

    ○上田哲君 そうすると、九千師団を一とした場合に、アメリカなりソビエトなりの外国の師団ですね、これをどういうふうに計算をしていますか。
  404. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 陸上自衛隊で幾つかの国の師団を計算したところでは、これも装備定数を基準にするわけでありますから、現実にそれぞれの国がどの程度装備を充実しているか、充足しているか、これはわかりません。したがって、いうならば架空の比較になるかもしれませんけれども、わが国の場合でも、まあ現在の師団の、九千師団の装備定数を基準にいたしております。そういたしますと、それを一にすると、大体二流国の陸軍の標準的な師団とほぼ同じぐらい、それから一流国ですとわが国の倍ぐらい、もっとも人数が二割から倍ぐらいに多いわけでもありますが、一流国、先進大国でありますと、大体倍ぐらいという感じであります。
  405. 上田哲

    ○上田哲君 九千師団を一とすると、アメリカの歩兵師団が二・〇七、ソビエトの自動化狙撃師団が一・八五という数字は間違いありませんか。
  406. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 大体そんな数字です。
  407. 上田哲

    ○上田哲君 これに合わせて九千師団を一とする火力指数で迎撃能力をつくると、こういうことで、これがいまの一が四次防で一・四になると、こういうことですね。
  408. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) いまアメリカの例が二・幾つと申されましたが、これもさっき申し上げたように、アメリカの装備定数ですから、アメリカがいま嘆いているごとく、それが十分に充足されているかどうかは疑問であります。それからわがほうの一・四というのは将来の整備目標、装備定数であって、四次防ではまだそこまでいかない、大体まん中辺ぐらいという感じではなかろうかと思います。
  409. 上田哲

    ○上田哲君 最終的な姿をとるか一・二ぐらいをとるかということはわかりませんが、どっちをとってもけっこうです。説明していただきたいのは、そうすると装備を近代化する、火力指数を上げて、それでいまの例で言いますと、私はこれを使っていただくとわかりやすいから、ぜひお願いするが、アメリカの歩兵師団なりソビエトの自動化狙撃師団というものに対して、自衛隊の九千師団は一体どういう比率の迎撃能力を持つことになるのか。
  410. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) これは単純に火力指数のみを基準にして計算いたしますと、まあ架空といいますか、ペーパープラン的なことになりまするけれども、一応の基準にはなります。そうしますと、さっき申し上げたように、一流先進国は現在のわが九千師団を一とした場合の基準でいけば倍ぐらいということですから、たとえば十三個師団ですと、その半分ぐらいの一流先進国の火力指数とほぼパラレルになるということになります。逆に申せば四、五割ぐらいに能力アップいたしますると、十三師団ですとほぼ九個師団ぐらいにパラレルになるという感じになります。これは単純に計算だけの問題であります。
  411. 上田哲

    ○上田哲君 そうすると、師団配備としてはアメリカ、ソビエトといういまあなたが一流国とおっしゃったが、そういう師団に対しては一・五師団を持って対応しようとしてつくり上げられている、これでいいですか。
  412. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) なかなかそう簡単にも言いにくいところなんですけれども、少なくとも現在たとえばわが国の九千師団に比べて外国の一流国が二割から倍くらいの人数を持っておりますが、そういった師団に対して、わがほうが一というのでは、やはりよくない、まあ一・四ないし五くらいまで持っていく必要がある。そうすると、ちょうど逆に申しますれば、御質問のようにそういった先進国の一師団に対してこちら一・五ぐらいがイコールであるというぐらいの感じがちょうどよろしいということに、これは逆から申せばそういうふうになりますが、一応われわれの装備定数としましては、そういうことを目標にいたしておるということではあります。
  413. 上田哲

    ○上田哲君 わかりました。つまり五方面三個師団というのはアメリカ、ソビエトのこうした師団に対しては向こう一つに対して一・五で対応するということを根拠にして配備が行なわれている、装備が行なわれているということが四次防の計算だということがわかりました。で、そうなると、そういう配備を積み上げていけば当然十八万というところにならなければいけないのだが、十八万はずれているとさっき言われたのはどういうわけですか。
  414. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 師団の数が十三というのは、いま言いました地勢的な関係で出てくるわけであります。そうして十八万というのは、この師団なりその他の補助部隊の積み上げでもって十八万というものが出てくる。そこで十三師団の一つ一つの師団を取り上げみると、いま申し上げたような、少くとも一・幾らといったような火力指数を持つ必要があるということで、両者の結び合わせがなかなかむずかしいところであります。
  415. 上田哲

    ○上田哲君 簡単に言いますと、この火力指数という一つの基準を使って師団の迎撃能力というものは積み上げてきたのだ。ところが十八万というのはもうちょっと違った、もっと悪いことばで言えば目の子できまっているので、そこは結びつかぬ、こういうことでしょう。
  416. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 十八万の数字がめのこでないのは、この委員会でも再々に説明があったそうでありますが、一番当初に十八万という数字が想定されたときには二十万前後の数字がよろしいということは、これは二十年近く前にいろいろな機会に言われて、その二十万前後の数字の中で少いほうの数字が十八万であるというふうに、昔のことを思い出すとそう考えるわけでありますが、しかし一たんこの第一次防衛力整備計画以降で十八万という数字がきまった後におきましては、これは純粋にいろいろな部隊の積み上げ計算がある、ということであります。
  417. 上田哲

    ○上田哲君 十八万の陸上自衛隊をもっていま迎撃し得る能力ですね。これを師団の数や兵員の数というのですか、それであらわせばどういうことになりますか。
  418. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) さっき、机上の計算ではあるがと申し上げて、単純にこの火力指数の比較だけで申し上げてみたわけですが、その場合に算術計算をやれば十三師団の第一流の国家の師団であれば半分ぐらいになりまするし、それから装備定数が新しくなった場合には三分の二程度の相手の火力指数ということになるというふうに申し上げました。しかし、具体的に日本の防衛というものを考える場合には、これはどういう地域にどういうような攻撃が加えられるか、それによって違ってまいりますので非常にむずかしい。まあしかし、少くとも四次防の前提になっておりまするのは、一定地域について数個師団が上陸しても、われわれはこれを追落とし得る能力は持っているというふうに考えているわけであります。
  419. 上田哲

    ○上田哲君 もちろん、これは火力指数だけから出ていることですから、何べんも注意深く言われることのとおりですが、あなたのことばをそのままここで結論づけてもう一ぺん言い直すと、十八万の陸上自衛隊の迎撃能力は、これを火力指数でいう限り、一流国に対しては九万に対して対応できる、二流国レベルは十二万に対して対応できるという積算に立っているのだ、こういうことでいいですね。
  420. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) さっき師団数で申し上げましたように、人数ではありませんで、十三師団の半分であるか十三師団の三分の二であるか、火力指数の算術はそういうふうにお受け取りいただきたい、師団の火力指数で申し上げたわけですから。
  421. 上田哲

    ○上田哲君 もう一ぺん正確にあなたの表現で言い直してください。
  422. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 十三師団、現在の十三師団の装備定数による火力指数の比較から申し上げれば、一流国家に対しては十三師団の二分の一、それから装備定数を改めて、それが達成し得たとすれば、十三師団の三分の二に相当し得る、火力指数の上からはそう申し上げられるということであります。
  423. 上田哲

    ○上田哲君 わかりました。そういう積算があるんだと、しかし、この積算はどれぐらい四次防のトータルを決定していく、方針を決定していくことに役立っているのか、そのあたりを承りたいんです。これできまったと考えていいわけですか。
  424. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) そういった火力指数を基礎にいたしますると、いろいろの戦闘、運用方法、それから海空の協力関係、それと地域的な関係、たとえば全国的に陸上攻撃が行なわれるということでなくて、特定地域に攻撃が行なわれる。そこで、われわれのほうではある地域には師団を留置、控置しておきながら他の師団を集中し得るということになりますると、こういうことで大体数個師団——現在から見て将来考えられる、脅威の対象と考えられる数個師団についてまかない得るというような計算が出てくる。したがって、そういった火力指数が一応まず基礎にはあるということになろうかと思います。
  425. 上田哲

    ○上田哲君 くどいようですけれども、この火力指数以外のどういうものが、つまりウエートとしては、これ以上にもっと頼るべき指数はたくさんあるということですか。
  426. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) それは指数というよりも地勢的な問題、それから運用上の問題、それからたとえば海上自衛隊なり、航空自衛隊の協力の度合いの問題、そういったような問題でどの程度陸上防衛を全うし得るかということであります。
  427. 上田哲

    ○上田哲君 長官、そういう別な次元を加えれば何ですけれども、私は、こういう積算のありようがあった。そこで、それらを含めてどういう形で十八万でいいということになるんですか。
  428. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまのような積算もございます、各次防計画ができましてからは。しかしもう一面からは、日本の人口の増加あるいは雇用問題の傾向とか、あるいは経費の関係、そういういろんな諸件が次の段階でかぶさってくるわけでございます。で、三自衛隊を通じまして、各幕は各幕で専門的にいろんな積み上げ等もやって金額を出してきておりますが、もちろんこれはかなり大きな数字になるわけです。その三自衛隊の専門的な考え方の延長でいえば、それは合理性がありますけれども、今度は国政全般とのバランスという面をわれわれはまた考えなきゃなりません。したがいまして、かなり多額に上がってきたものをみんなぶった切りまして、そして先ほど申し上げましたようなトータル・サムに一応おさめようと努力しているわけなのであります。ですから、われわれの段階になりますと、そういう専門的な積み上げ以外にほかの政治的、社会的ファクターが入ってくる。そういう意味においては、三自衛隊はそういう彼らが考えておるあり得べき防衛構想からすれば、かなり切られたり、涙をのむというところもあるわけで、これはやむを得ないところであると思っております。
  429. 上田哲

    ○上田哲君 自衛隊の定員を決定する場合にさまざまの要素はあると思いますけれども、いま説明をいただいたようなこういう計算のしかたですね。この方向をやはり重視されるのですか。
  430. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 基礎的な作業としてはもちろん重視いたします。
  431. 上田哲

    ○上田哲君 最終的には、そういう積算の結論ではなくて政治値としての十八万ですか。
  432. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 予備自衛官というものもその背景にまた考慮をしているわけでありまして、そういうものも含めた全般的考慮の上の十八万とお考え願いたいと思います。
  433. 上田哲

    ○上田哲君 火力指数等の積算のあり方というのはそうした全体的な兵力決定、定員決定の根幹をなしているわけですか。
  434. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 師団装備においては、そういう点を非常に考えてやっているわけであります。しかし、人員の面はいろいろな政治的、社会的要因というものも考えざるを得ないし、経済的要因も考えなきゃなりません。そういう意味で、予備自衛官という構想が入ってまいりまして、それと結合して一体をなしているというふうにお考えを願いたいと思います。
  435. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 関連。  これは通産大臣か、あるいは外務大臣かよくわかりませんけれども、南ベトナムから二千台のバスの贈与を日本政府にしてほしいというような申し入れはありましたのですか。
  436. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 南ベトナム政府からバスが二千台でございましたか、それからYS11十機か十一機だったと記憶いたしますが、提供してほしいという要請がごく最近ございましたことは事実でございますけれども、これは先方からのそういう申し入れがあったという事実だけでございまして、これに対してどう対処するかというようなことについてはまだ政府としては全然、検討も十分していない状況でございます。
  437. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 このバスとかYS11というのは、これは一体いままで南ベトナムに政府がいろいろ援助をしておりますけれども、これはその社会福祉的なものなのか、あるいは軍事的なものなのか、軍事援助的なものとも考えられるのですけれども、これはどういうふうに判断をなさっていらっしゃいますか。
  438. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 実は率直に申しまして、先ほど私本省のほうへ、この時間の合い間に戻りましたときに電信を見まして、サイゴン駐在の高官からそういうふうな申し入れがあったと、で、その背景、理由等についてはまだつまびらかにいたしておりません。そういうわけでございますから、どういう理由、どういう環境でそういう要請がありましたか、とりあえずということで、そういう電信が来ておりましたのをつい先ほど私も読んだ次第でございますから、先ほど申しましたように、そういう要請があったことは事実でございますが、これをどういうふうに受け取るかということについては十分検討をする必要があると考えております。
  439. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まあ私どもはこれは、しかも、いま一番情勢的には問題がある情勢であります。この前も通産省のほうが台湾沖の石油開発についてはこれはやめたほうがいい、そういうような決定もなさっているようでありますが、まあ私どもは非常にいま中国、北ベトナムの関係というのは周恩来の訪問以来これはかなり神経的になっている地域であろうと思う。まあ私どもはこれを拒否したほうがいいと、こう思いますが、どうですか。
  440. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) いま申しましたとおりの実情でございますから、いずれ、交信その他でその申し入れの背景などがわかると思いますから、その上で政府としては検討いたしまして態度を決定いたしたいと考えております。もし、たとえば人道上の問題というようなことで、その希望している用途等がわかりますれば、またそれ相応の考え方をしなければならぬと思いますが、ただいま竹田委員の御指摘になりましたような諸般の情勢を十分考慮いたしまして真剣に検討すべき問題である、かように考えております。
  441. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まあバスがですね、二十台程度ということであれば、これはやっぱり民生安定、福祉という問題もあると思うのです。バスにして二千台という数字というものはかなり大きいと思います。それから、YS11にしても十一機ということでありますから、これもかなり大きい、となると、普通の、そう簡単に民生安定的だというふうに私ども国民はとらないと思うのです。どうでしょう。
  442. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) それがただいま私申しましたように、そういったような要請の内容を十分検討しなければなるまい、かように考えておる次第でございます。
  443. 鈴木強

    鈴木強君 関連。  さっきの上田委員質問を私聞いておりまして、防衛庁でいま考えている第四次防の内容をずっと聞いておったのですけれども、なぜそういうふうに日本の自衛力を増大しなければならないのか、その点に非常に疑問を持ちました。憲法上の問題と同時に、わが日本憲法があくまでも平和を追求し、国際親善を追求していくという、そういう崇高な精神に立っておるわけですから、どうして自衛隊を現在の二・二倍もの国費を使ってそれだけ増強しなければならないのか、国際的にそういう必要性が出てきておるのかどうなのかということに対して非常に私は疑問を持ちます。その点は、防衛庁長官としてなぜこういう情勢があるからこれだけの体制をつくるのだということについて明確なひとつお考えを聞かしてもらいたい。
  444. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 客観情勢あるいは国内経済あるいは人心の動向、そういうものを全部考えまして、しかも、防衛というものは一朝一夕になるものでなくして、やはり祖先から孫に伝えていく日本の共同体とその国土を守る、そういう蓄積というものも考えておかなければならぬわけであります。そういう点からしまして、陸上自衛隊というものでは、日本列島の一角に数個師団ぐらいのものがもし万一上陸してきた場合に、これを単独で激攘して排除すると、そういうようなことができるということを一応の目安にしております。それから海上自衛隊につきましては、日本の海峡あるいは大阪湾とか東京湾の湾口、近海、その辺に敵の潜水艦の跳梁を許さない、そういう程度の防潜対策といいますか、潜水艦対策の力を備えていこうと、それから航空自衛隊にいたしますれば、レーダー網を整備すると同時に、一面においては、航空機というものはみんな各国とも能力が向上していっておりますから、それに伴ってこちらも能力を向上して、更新していく必要があるわけです。大体、戦闘機というようなものは耐用年数が十年とか何とかとちゃんときまっているわけです。そういう機種の更新という面と、それからナイキとかホークという防空網を、日本の政経中枢あるいは産業活動の中枢の上に網を張っておこう、そういう面から見ると、まだここのところは網が足りない、ここは足りない、そういうわけで、次の防衛計画で二個隊ずつふやしておこうと、関門地帯にふやそう、あるいは沖繩にひとつ持っていかなければならぬ、そういうのは出てくるわけであります。そして、総じて申しますと、アメリカ軍が貸与した古い第二次大戦の兵器がまだうようよしているわけです。陸上自衛隊にいたしますれば、戦車はまだほとんど——ほとんどと言っては言い過ぎですけれどもアメリカ軍の第二次大戦の古いものが多うございます。で、いま国産とアメリカから貸与された古いものとが五対五ぐらいですけれども、これを八対二まで更新したい、それを次の防衛計画の一つの最終段階の目標にしたい、そういう計画もあって、できるだけ国産品にかえて新しいものにしていこうと、そう考えているわけであります。簡単に申し上げれば、そういうように陸海空がおのおのの防衛目標を考えまして、それを充実していこうという考えで基礎ができているわけであります。
  445. 鈴木強

    鈴木強君 私は、そういうことでなくて、平和外交によって戦争状態というものが、地球上から起きないように、日本政府は全力を尽して平和外交を推進すべきと思うのですよ。だからそのものの考え方に立って、万一のことを想定し、わが防衛力を増強していくということだと思うのです。しかしその際に、この防衛力増強というものが国際情勢変化の中で、いまどういうものが考えられるかということは、これはむずかしいことですね。将来のことですからむずかしいのですけれども、大体こういう状態を想定して、これに備える自衛力をこういうように増強していくんだという、そういう根拠を国民に示さなければ、平和外交を忘れて、何か国民の税金が第四次防の中で、自衛力増強にずっと使われていくんだという、そういう不安というものが残りますよ。ですからその必要性というものがどこにあるのか、そういう国際情勢が将来どう展開するかということに対する見通しを持っているかどうかということを私は聞いているのです。
  446. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはここでいつも申し上げるように持っております。それで、外交を非常に重要視している。それから他の国民生活との調和を考えている。そういう基本的観念に立脚して計画ができているわけであります。
  447. 上田哲

    ○上田哲君 時間の段取りも話し合いがついたそうですから、防衛庁長官以外の大臣はけっこうです。
  448. 古池信三

    委員長(古池信三君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  449. 古池信三

    委員長(古池信三君) 速記をつけて。
  450. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、このあとアメリカの国防報告にも関連しながら防禦力と抑止力の関係などについて伺いたいのですが……。
  451. 古池信三

    委員長(古池信三君) それでは、ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  452. 古池信三

    委員長(古池信三君) 速記をつけて。
  453. 上田哲

    ○上田哲君 それでは、そちらのほうに入りたいのですが、その前に一つ伺っておきたいことは、日本の基本的な防衛構想をこれから論ずるにあたって、先般の予算委員会の席上で、佐藤総理は非核中級国家構想を全面的に否定をされたわけです。こういうことになると、これまでの防衛白書の中を流れていた基本的な考え方はもとより四次防そのものを構成している原則というものが、構想としてくずれてきたというように考えなくてはならなくなります。一体それを防衛庁長官としてはどのようにお考えになりますか。
  454. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あれは中身を否定したのでなくして、表現が適当でない。中身は一致しております。おそらく佐藤総理のお考えは、非核専守防衛国家みたいな、そういうニュアンスではないかと思うのです。その点については私らも一致しているわけです。大体、防衛庁長官の私が試案を出して、佐藤総理がそれを修正して、国民の皆さんや議会でそれを批判していただく、そういう正反合で政策というものが出てくることが自由、民主的であると私は思います。そういう意味で、中身はほとんど全部と言っていいほど変わっていない。ただ、表現をどういうようにするのが適切であろうかという点が変わっている。そういうように御認識を願いたいと思います。
  455. 上田哲

    ○上田哲君 総理は防衛白書を読まなかったと、ここで言われたわけですが、読まなかったという御理解に立つわけですか。
  456. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 言われる前に大体内容はこうでありますと、私、申し上げまして、それなら出していいだろうと、こういうことでございました。まあ一ページ、一ページお読みになったかどうか知りませんが、目次とか、あるいは大事なところくらいは、あるいはお読みになっているのではないかと思います。
  457. 上田哲

    ○上田哲君 そういう簡単な形では、これを読まされていた国民ははなはだ迷惑であります。少なくとも、二月二十四日の参議院本会議並びに三月九日の参議院予算委員会において総理が二回にわたって懇切丁寧にこれを否定された。しかも総理はその直後に、国会外ではありますけれども、ある団体の席で「中級」ということばをやはり内容的に否定をされております。これは内容的には同じだということにはならないと思いますが、いかがですか。
  458. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 内容的には同じであります。つまり、憲法上の制約、それから政治上の制約、それから運用上の制約、それから兵器の制約、そういう自己抑制をしていく、そして専守防衛の体系を築いておる、そういうことで完全に一致をしておるのでありまして、総理はその上に非核三原則ということをつけ加えられましたが、もとよりわれわれもそれを考えておるので、内容については一致しております。ただ、「中級」という名前の表現が適当であるかどうかという点が、総理の考えと私と変わっておったということでございます。
  459. 上田哲

    ○上田哲君 その後総理と話し合われましたか。
  460. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何しろ国会が忙しいものですから、まだ話し合いません。いずれいろいろお話ししたいと思っております。
  461. 上田哲

    ○上田哲君 防衛庁長官と総理がそういう話をその後されないままに、総理はほかの場所で「非核中級」、特に「中級」というのは困る、こういうことを言っておられる。しかもそれは、ことばが困るじゃない、「非核中級」ということが困ると言われておる。しかも総理と長官とは話し合いをしておられない。一致しているということはどういうことですか。
  462. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その後は会いませんけれども、その前にはいろいろ話しております。ほとんど、時間があれば閣議のあと等に残って防衛問題についても話しておりますし、その他の機会を通じましても御意見を伺っておるわけです。白書をつくるについても、その思想については総理にいろいろお伺いして、そしてその基本的なポイントを考えてつくっているわけであります。ですから、不一致というようなことはございません。
  463. 上田哲

    ○上田哲君 前にいろいろあった末、否定したということが問題なんじゃありませんか。
  464. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは私の長官談話と、私が自分で書いた部分に関してその表現が適当でないというふうに言われたので、白書の内容とは別であります。
  465. 上田哲

    ○上田哲君 あなたが外人記者クラブなり年頭のあいさつなり、あるいは当然付属文書と考えるべき防衛白書の前文の長官談話の印刷文の中に、「非核中級国家」という構想が防衛白書の中身であり、四次防の中心をなすものであるという表現を使っておられる。そのことを否定するということは全体の考え方を否定するということに論理的にならざるを得ないと思います。
  466. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 「非核中級国家」というものが中心をなしているというような表現を私使った記憶はございません。それは「非核中級国家」ということばを自分は出してみるが、これはまだ完全なものではない。大方の皆さんの御叱正を得てりっぱなものをつくりあげていきたい、そういうように白書には書いてある。この前も朗読したとおりでございます。
  467. 上田哲

    ○上田哲君 あなたの「年頭の言葉」の中には、「わが国で初めての防衛白書である「日本の防衛」を閣議了解を得て発表しました。この白書は、「非核中級国家」としての防衛構想を提唱したものであります。」と書いてあります。これで、防衛白書なり、あるいは四次防を通じての新防衛力整備計画の中核が「非核中級国家」という考え方でないということになりますか。
  468. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは私の表現によるものであって、防衛白書とか政府の閣議とか、そういうものの表現とは別であります。
  469. 上田哲

    ○上田哲君 総理が欠席された閣議は去年の秋であります。以後閣議は何回もあります。その間そういう意思の疎通が十分でないということはどういうことでしょうか。
  470. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 「非核中級国家」ということばで話したことはございませんが、ほかの問題ではいろいろ話してあります。自衛隊の理念であるとか、あるいは自衛官に対する心がまえの問題であるとか、そういういろいろな問題についてはよく話してあります。
  471. 上田哲

    ○上田哲君 いろいろの話をするならこれが一番大事ではありませんか。少なくともこういうことばを、あなたの麾下にある二十六万の自衛隊員をはじめ、国の安全保障の問題に関心を寄せる者は、賛成、反対の別なく「非核中級国家」ということばを知っております。そうして「非核中級国家」——あなたが未熟な概念と言われるものを具体的に内容として理解するためにそれなりの勉強や努力をしております。しかるに、国防会議議長と防衛庁長官の間に、そのことばが、国会で二回にわたって否定されるまで十分話し合われていなかったという事実というのは問題だろうと思います。
  472. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 談話の中で私が、私の見解としてと断わって申し上げておるのでありまして、それは閣議了解を経たものでも何でもありません。しかもそれはまだ未熟なものであって、この考え方についていろいろ教えを受けたい、そういう意味でたたき台としてあれは出しておるということが明らかになっているわけであります。それについていろいろ御批判していただくことは非常にありがたいことだと思っております。
  473. 上田哲

    ○上田哲君 断わっておきますが、私は「非核中級国家」という概念の賛否についてはまた別といたしましても、少なくともここまで肥大した自衛力、防衛庁その他の防衛体系というものを、何がしかの具体的な概念を表示することによって国民の中に広く議論を巻き起こすということ自体には賛成であります。その限りでは、全然具体的なパターンを持たずにぐいぐい肥大していくというような形よりは、少なくとも、まともな、まじめな姿勢だと私は考える。そういうような考え方が、その程度の手続といいましょうか、段取りの不一致の中からでも理解されない、ことばとしても理解されないということは、はなはだ国民のコンセンサスを欠く態度として反省さるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  474. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 大いに根回しをよくしてやります。
  475. 上田哲

    ○上田哲君 二人の大臣の間の根回しという問題ではありません。まじめに答えていただきたい。
  476. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく私案を出しまして、いろいろ皆さんから御批判を受けるということは防衛問題について非常に大事でありまして、私は今後とも謙虚に皆さんの御批判をいただいていきたいと思っております。
  477. 上田哲

    ○上田哲君 使嗾するわけではありませんけれども、私はあなたが未熟だと断わりながら出されている「非核中級国家」という——これは国家概念であるよりは防衛構想だと思うのですけれども、そういうものをもっと自信なら自信を持って強調されればいいと思う。これがことばだけの問題だということではなくて、もっとあなた自身が——これはきのうやきょうではない、われわれがこのことばを聞いたんだって一年半くらいさきなんですから、この間、防衛庁長官として個人的だとか公的だとかいろいろのことばの表現のしかたはあろうけれども、少なくとも国民の中にこれだけ膾炙してきた問題を、あなたはもっと堂々と旗を振っていま宣明さるべきだと思うのです。
  478. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 問題は中身が大事なので、表現はまた客観的に人間の癖がありますから、人々の御意見を聞かなければならぬでしょう。私は中身さえしっかり国民の皆さんに了解していただけば非常にありがたいと思っております。
  479. 上田哲

    ○上田哲君 元気のいい中曽根長官が名前については旗をおろしたということを私は多少残念に思いますけれども、名前の旗をおろした、中身は変わらぬと。しかし名前がついてこそ中身もわかるのです。名前がなくて中身があるということは具体的にならぬ。表札のない家には入っていけぬ。それじゃ、しからばどういう名前にするのですか。
  480. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはひとついい知恵を教えていただきたいと思っております。上田さんならば、どういう名前が適当であるか、この機会に教えていただけば非常にありがたいと思います。
  481. 上田哲

    ○上田哲君 私は、そういう茶化しの話ではないつもりで、きわめてまじめに——いま非常に日本の進路に大きくかかわるこの問題について、閣内不一致などということばを使いはしません。しかし、そういうことがどれくらい国民の中にある種の亀裂といいましょうか、混乱といいましょうか、起こしているかという問題を、少なくともこの問題をこの国会の場で議論する立場の責任感といいましょうか、使命感というものの中から、かなりまじめに私は言っているつもりです。私には「非核中級国家」にかわるべきことばをつくり出すべき何らの使命も義務もありません。あなたとともに——あなたの責任においてその内容を、一日も早く名前なり概念なりを明らかにすべき任務が、防衛庁長官として、国民から負託されているものとしてあると私は申し上げます。  約束の時間がきましたから、あとの議論は次に譲ります。
  482. 古池信三

    委員長(古池信三君) 上田君の質疑の途中でありますが、本日はこの程度にとどめ、次回は明後十五日、午前十時開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会